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『プリキュアシリーズ』ファンの集い!2

321一六 ◆6/pMjwqUTk:2017/10/29(日) 23:08:51
「見つけたわ……。そのまま進め! ソレワターセ!」
「ソーレワターセー!」
 鋭いノーザの檄を受けて、ソレワターセの侵攻がさらに勢いを増す。必死で食い止めているのは、元・幹部たちの二体のホホエミーナ。
 ふらふらとせつなから離れた少女が、モンスターたちの激しい攻防を見つめる。その真剣な眼差しとは裏腹に、彼女の瞳には何も映ってはいなかった。

 体中が軋むような痛みと共に、戻って来た現実感。同時に蘇る、あの世界での彼女の言葉――。

――あなたの願いは、メビウスの復活なんでしょう?

(そうだ。それなのに私は、与えられた苦痛に耐えかねて、別の世界へ逃げ込もうとした……)

 どうしてあの時、あの世界でイースになりたいなどと思ったのだろう。メビウス様のためにと言いながら、自分のことだけを考えていたというのか……。
 情けなさと悔しさ。それにメビウスに対する申し訳なさで胸が一杯になり、グッと奥歯を噛み締める。その時、隣に居たせつなが、弾かれた様に走り出した。
 怪物が戦っている現場近くに居た仲間――ラブと老人に駆け寄り、二人を抱えてひとっ跳びでその場を離れる。その直後、さっきまで彼らが居た場所にホホエミーナの巨体が叩き付けられた。
 土埃の向こうで、せつなが大きく息を付き、ラブに微笑みかけているのが見える。それをぼんやりと眺めながら、少女は自分が無意識のうちに、せつなに打たれた左の頬を撫でていたことに気付き、慌てて手を下ろした。

「おーい!」
 不意に遠くから呼びかけられて、思わず身構える。やって来たのは、警察組織の戦闘服に身を包んだ一人の少年――数日前にくだらない諍いを起こした、あの少年だった。

「お前も来い」
「……何?」
「ここは危ない」
 一瞬、何を言われているのか分からなかった。少年の頭の向こうに目をやると、確かに人々が続々と建物から出て、戦場から遠ざかろうとしている。
「気は確かか? 私は、お前たちを……」
「いいから来い。お前、フラフラじゃないか」
 心配そうにこちらを覗き込む少年の目。その目を見た途端、少女はくるりと彼に背を向けた。
「言ったはずよ。お前の命令など聞かない、って」
「おい!」

 焦れたように呼びかける少年を振り向きもせず、少女が痛む身体に鞭打ってその場を駆け去る。物陰に隠れてそっと様子を窺うと、少年は仲間たちに呼ばれ、後ろを振り返りながら避難者たちの元へ戻っていくところだった。

(ふん。お前に何がわかる)

 警察組織の若者たちの誘導に従って、人々が黙々と移動を始めている。
 かつてはメビウス様が管理された通り、一糸乱れず歩いていた人々が、こんな不完全な若者たちに、列も作らずただぞろぞろと従っているのだ。

(お前たちに何が出来る。メビウス様が完全に管理された世界こそが、ラビリンスのあるべき姿なのだ)

 胸の中に、さっきとは違う何かが渦巻いている。情けをかけられた屈辱と、それとは違う、微かにあたたかさを感じる何か。少女はそれから目を背けるように、震える拳をグッと胸に押し当てた。

(私は……メビウス様を復活させる。ラビリンス総統・メビウス様のしもべになる!)

「ソレワターセー!」
 少女の決意を後押ししているのか、それとも嘲笑っているのか、モンスターの雄叫びが、再び辺りの空気を震わせた。



   幸せは、赤き瞳の中に ( 第12話:守りたいもの )


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