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【けいおん!】律×唯スレ

270軽音部員♪:2013/06/23(日) 23:40:11 ID:OBCCm5D.0

 目的地の池に達する前から、暗闇の向こうで蛍の発光が遠目に見えた。
黄と緑が重なったような光の尾を引いて、見る者を誘うように舞っている。
律も自然と早足になった。

「あっ、そんな恰好で急いだら危ないよ」

 唯も律の隣で歩調を合わせてくれているが、同時に注意を促してもいた。
水面に小石を投じた波紋のように、唯の窘める声が律の心に広がってゆく。
暗くなった辺りに慣れない地形、更に慣れない下駄と浴衣。
唯の言う通り、足取りには慎重を期すべきだろう。

 そう思って速度を緩めた時は既に遅く、律は足元の小石に躓いていた。
身体が律の意思を離れ、前のめりに傾く。
律は反射的に息を詰めて、目を瞑った。
目先に迫った痛みを身体が恐れた、反射的な行為だった。
だが、痛みに襲われる事はなかった。
代わりに、柔らかくも頼もしい腕の感触を胸に感じる。

 唯の腕に支えられたのだと、律も即座に気付いた。抱擁の安心に押され、目を開く。
暗い視野の中でも、草の疎らに生えた地面が視認できた。
地からの目測だが、この視点は立ち身ならば腰の辺りだろう。

「危なかったね、りっちゃん」

 首を捻っても唯の顔は見えないが、漏らす吐息に安堵が滲んでいる。

「ありがと、唯」

 律は唯の腕に抱かれたままの姿勢で礼を言った。
本来ならば身体を捻ってでも向き直り、正面を向いて言うべきだろう。
だが、その体勢では唇を奪われてしまいそうだった。
抱かれて交わす口付けは、確実に律をクライマックスへと誘う。
目的の蛍に達さずして、それはまだ早い。

 まずは、池に向かう事が先決だ。
そう思い自力で身体を支えるべく、地に足を付けようとして律は漸く気付く。
転倒の興奮のせいか、気付いていなかった。
律は片足で立つと唯の袖を掴んで、身体の均衡を保つ。


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