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仮投下スレ2

1もふもふーな名無しさん:2009/05/15(金) 20:32:18 ID:SF0f54Dw
SS投下時に本スレが使えないときや
規制を食らったときなど
ここを使ってください

755鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:50:46 ID:OQFqoiZc




「……僥倖でしたね、オメガマンが将軍を裏切っていたとは」

E-8中央部分、湖の畔の木々の枝根にて。
湖上を飛ぶ悪魔将軍に憎悪の目を向けながら、指向性マイクから耳を離して古泉が一人ごちる。
片脇には気絶した万太郎。いびきや鼻息で悪魔将軍に気取られては笑い話にもならないので、布で口を縛られている。
古泉にとっては悪魔将軍があの挑戦状を受け入れる事は予想通り。
悪魔超人の首領が、正義超人から試合を挑まれて受けないはずがない。
最も、あの場に留まって直接試合を申し込んでも素直に時間を与えてくれるような人物ではない。
ゆえに、噴飯物の古風な挑戦状などを使わざるを得なかったのだが……。

「あのリムーバーがある以上、俺は悪魔将軍の前ではほとんど無力……だから、今まで大人しく従ってきたわけですが」

遂に、悪魔将軍の行動を操作できるチャンスが来た。
"明日" "朝九時" "ここ"に、悪魔将軍は確実にやってくるだろう。
しかし、古泉が狙う好機はその瞬間ではない。
古泉は超人ではなく、リング上での試合に拘ることもない。

「万太郎さんをどう言いくるめるか……それも面倒ですが、俺にとっての理想の展開は一つ。
 そこに持っていく為に、早速行動するとしましょう」

古泉の計画は、果し合いではない。奇襲。試合前の緊迫した時間……七時から八時辺りになるだろうか。
その時間帯に、できるだけ多くの仲間を集めて悪魔将軍をリング外で襲撃し、打ち倒す。
人数が居れば、前衛に将軍を抑えてもらってリムーバーの効果が及ばない距離から援護に徹することも出来る。

「オメガマンの協力はなんとしても欲しいところですが……危険が大きい。ノーヴェさんや"彼"は論外として……。
 朝比奈さんと行動していた女性と動物や、朝倉涼子……知り合いの中にはそう信頼を置けそうな人物はいない、か」

戦力的にも、関係的にも、自分が知っていて現在生き残っている者に期待を寄せるのは難しそうだった。
まだ見ぬ強者に加勢を望むしかないのか……幸い、時間は10時間近くある。ガイバーのままなら、眠くなることもない。
必死で会場を駆けずり回り、悪魔将軍が見込んでいた『高町なのは』や『キン肉スグル』を探し出す、それしかないか?
蜘蛛の糸を渡るような、ハイリスクでローリターンすら期待できない作戦だ。
だが、古泉が悪魔将軍への復讐を遂げる為には、この薄氷を踏み砕く覚悟と、冗談のような強運が必要なのも事実。

「将軍としばらく過ごしていて、寝首を掻くのは不可能だと分かりましたからね。裏を掻くのが無理ならば、
 正面から――いえ、側面から、といったところですか。横合いから殴りつける、これしかありません」

漁夫の利を狙うつもりなどない。
あくまで、将軍を倒すのは自分だと古泉は胸中に言質を込める。
強者を集め、彼らの協力の下で将軍を倒す。言葉にすれば簡単だが、
古泉自身がこの計画の問題点を深く理解している事は彼の仮面の下の苦悶の表情からも明白であった。
彼は自分が仲間だと思っていた者に偽の悪評を流され、悪魔に加担していたという事実さえある。
参加者に広まる自己の風評次第では、この計画は一瞬で崩れ去るだろう。

「それでも……引き返すわけにはいかないんですよ、ノーヴェさん」

自分が裏切り、下手をすれば将軍に処刑されるかもしれない状況に追い込んだ女性に詫びるように呟き、
古泉……ガイバーⅢは、自分が滅ぼすべき悪鬼が去ったことを確認し、暗く沈む闇の中に消えていった。

756鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:51:47 ID:OQFqoiZc

【E-8 森林/一日目・夜】

【キン肉万太郎@キン肉マンシリーズ】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大) 気絶 勃起
【持ち物】ザ・ニンジャの襟巻き@キン肉マンシリーズ
【思考】
1.悪魔将軍を倒し、ガイバーを解放する。
2.危険人物の撃退と弱者の保護。
3.夏子たちと合流する。
4.頼りになる仲間をスカウトしたい。
  父上(キン肉マン)にはそんなに期待していない。 会いたいけど。
【備考】
※超人オリンピック決勝直前からの参戦です。


【E-8 森林/一日目・夜】

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、悪魔の精神、キョンに対する激しい怒り
【装備】 ガイバーユニットⅢ
【持ち物】ロビンマスクの仮面(歪んでいる)@キン肉マン、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、みくるの首輪、
      デジタルカメラ@涼宮ハルヒの憂鬱(壊れている?)、 ケーブル10本セット@現実、
      ハルヒのギター@涼宮ハルヒの憂鬱、デイパック、基本セット一式、考察を書き記したメモ用紙
     基本セット(食料を三人分消費) 、スタームルガー レッドホーク(4/6)@砂ぼうず、.44マグナム弾30発、
     七色煙玉セット@砂ぼうず(赤・黄・青消費、残り四個) 高性能指向性マイク@現実、ノートパソコン@現実?

【思考】
0.復讐のために、生きる。
1.悪魔将軍と長門を殺す。手段は選ばない。目的を妨げるなら、他の人物を殺すことも厭わない。
2.この場から離れる。
3.使える仲間を増やす。特にキン肉スグル、朝倉涼子、高町なのはを優先。
4.地図中央部分に主催につながる「何か」があるのではないかと推測。機を見て探索したい。
5.デジタルカメラの中身をよく確かめたい。

757鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:53:10 ID:OQFqoiZc



「起きろ」

「んあ……?」

戦闘機人、ノーヴェが湖が見える位置まで着いたと思った瞬間。その眼前には悪魔将軍が佇んでいた。
バチン、と電源が落ちたような音。取り戻したばかりの意識が、再び一瞬消滅する。
身体がうつ伏せになっている事に気付き、寝ぼけ眼で立ち上がろうとする。
……立ち上がれない。悪魔将軍が、ノーヴェの背中を踏みつけていた。

「え……? しょ、将軍……?」

「お前は……要らん」

冷たく言うと、悪魔将軍はその体重をノーヴェの矮躯に押し付けた。
メリメリと、機械と肉が軋む音。
悲鳴すら上げられずに、ノーヴェは激痛にその身を支配されていた。

「ッガッ……ァ……」

「ふん」

体重を除け、ノーヴェの短い髪を掴み、持ち上げる。
堰を切ったように咽込むノーヴェの顔を、殴る。悪魔将軍は、殴る。

「え……? なぁ……?」

殴られながら、しかしノーヴェは反撃できない。
痛みに苛まれているから、ではない。
明確な殺意。それを今まで向けられる事のなかった彼女は、混乱していた。
敵意とは違う。彼女が過去向けられた害意は、あくまで対等な"敵"あるいは"標的"が放つものだった。
蠅を潰すような動作で、躊躇なく自分を破壊しようとする……こんなものでは、決してなかった。
混乱は戦慄に、戦慄は恐怖にシフトしていく。目の前の存在は、先ほどまで同行していたモノと同じとは思えなかった。

(これ……将軍……だよな? なんで、だ? 古泉が裏切ったからか?)

「私のくれてやったアドバイスを言ってみろ」

「え……ひっ……」

「復唱しろ!」

「こ、ここ古泉に対して、けけ警戒をおをお怠るな、だよな? わわ、悪かったよ、あた、あたしがあ、甘」

がくがくと膝を笑わせながら、呂律の回らない謝罪をするノーヴェ。
表情にはうっすらと笑いを乗せ、自分に対し殺意を向ける悪魔将軍に媚び、宥めるような意志を伝えている。
しかし、それは将軍の拳で遮られる。
顔面を殴られて「ひっ」と声を漏らし、涙を漏らす戦闘機人に、普段の勝気な性格は欠片も見えない。

「貴様が甘いことなど、その様を見れば知れるわ。最も、古泉も甘い……貴様を生かしていったのだからな」

「ご、ごめん。ごめん。あたしが悪い、わる、悪かったって。今度から、今度から気をつけ」

「貴様に次などあると思うか?」

悪魔将軍は淡々と呟き、渾身の力でノーヴェを近くの木に押し付けた。
    .......
いや、押し込んだというべきだろう。木に押し付けられたノーヴェが、僅かに樹皮にめり込むほどの勢いだった。

758鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:53:55 ID:OQFqoiZc

「ちょ、ちょっと待てって、ま、まだ放送、放送来てないよな? ま、万太郎を殺せば、って、って約、約束」

「……貴様を倒した古泉はその万太郎と合流し、私に挑戦状を叩きつけていったぞ?」

「えっ」

一瞬、恐怖が追いやられ、ぎょっとした顔になるノーヴェ。
本当に将軍を裏切ったのかよ……? と目で語るノーヴェの腕を取り、悪魔将軍は少女を地面に叩きつけた。
最初の態勢と同じ、うつ伏せの形に戻るノーヴェの腹部に、容赦なく横からの蹴りが入る。

「はッアッッ……アアアッ! ガッ! や、やめ……」

「ノーヴェ」

「……ぁ、ァァ……」

「ノーヴェ!」

「なな、なんだ、なんで、なんですすす、か」


蹴りがやみ、仰向けにされるノーヴェ。血と涎の混ざった汁を吐き出しながら、空ろな目で将軍を見上げる。
慣れない敬語を使おうとしたのか、戦々恐々とした顔で尻切れトンボに小さく呟いている。

「貴様、強くなりたいのではなかったのか」

「……」

「ならば、何故私のアドバイスに背く。何故甘さを捨てない」

「……」

「貴様のやり方では、永遠に強くなどなれんぞ」


断じるように言う将軍に、普段なら反発の色を露わにするノーヴェも、一言も言い返せない。
今の彼女は、この恐怖から、初めて感じる"死"の恐怖から逃れることだけを、求めている。

「……わ、分かった、分かったよ。もう将軍の言う事に逆らわないから。逆らわないから。ごめん。ごめんな、さい」

「いや、もういい」

貴様は要らんといっただろう、と悪魔将軍が吐き捨てる。

――殺される。

そう直感したノーヴェは、悪魔将軍の足元に縋りつき、体を震わせながら懇願した。

「もう……もう、将軍の言う事を疑ったりしないから! み、見捨てないでくれ……あたし、あたし強く、強く……」

なりたいんだ、と吐露する。ノーヴェは、今まで真面目に将軍の下につく意味を考えたことがなかった。
しかし、それを今直感で理解する。将軍が自分に向けた殺意を、自分が他人に向けるイメージを持つ。
今――ノーヴェは、悪魔の精神の土壌を得た。戦闘機人のプライドが、将軍の配下である事のプライドに置き換わる。
しかし、返答は無情。

759鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:55:22 ID:OQFqoiZc

「仏の顔も、三度まで。そう言ったはずだ。貴様は三度誤った」

「……」

「……だが、三度も謝った貴様に対し、私も少々思うところがないでもない。そうだな……。
 後一度、チャンスをやろう。可愛い部下よ、キョンという奴の事は覚えているな? そいつを探して連れてくるのだ。
 そいつ以外にも、私と気が合いそうな者がいたら集めて来い。タッグ戦の日取りが決まったのでな。
 パートナーが必要なのだ。……オメガマンには気をつけろ、奴も私を裏切ったからな」

「あ、あたし一人で、か?」

「休息は許さん。行け。私はモールにでも行って貴様を待っていることにしよう」

いましがた、製造(うま)れて初めての恐怖を味わったノーヴェにとって、夜道を一人で歩く事は厳しい試練であった。
だが、将軍はそんな怯えを許さない。縮こまるノーヴェを一瞥すると、ディバックからユニット・リムーバーを取り出した。
腕に装着し、振りかぶる。ノーヴェの脳裏によぎるのは、このユニットで無惨な姿になった女性の死化粧。

「い、行く、行くよ! キョンって奴と、将軍と気が合いそうな奴だな! わかった!」

「ノーヴェ」

「な、なななんだよ」

「弱い貴様は、今死んだ。心に悪魔のプライドがあれば、誰にも負けることはない」

「!! ……行ってくるぜ、将軍!」

見ようによっては不器用な励ましにも取れる将軍の言葉を胸に、僅かに覇気を取り戻し、ノーヴェが駆ける。
それをつまらないものを見るような目で見送り、悪魔将軍もまた反対方向へと駆け出した。
      ...
「あんなものが悪魔を名乗れると考えていたとはな。我ながら不覚、だ」

――冷たい、鎧の拳を握りながら。

【F-09 森林/一日目・夜】
【悪魔将軍@キン肉マン】
【状態】健康、万太郎への激しい敵意。
【持ち物】 ユニット・リムーバー@強殖装甲ガイバー、ワルサーWA2000(6/6)、ワルサーWA2000用箱型弾倉×3、
 ディパック(支給品一式、食料ゼロ)、朝比奈みくるの死体(一部)入りデイパック コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱
【思考】
0.他の「マップに記載されていない施設・特設リング・仕掛け」を探しに、主に島の南側を中心に回ってみる。
1.翌日09:00に湖上リングへ行き、万太郎、古泉を自らの手で殺す。
2.ノーヴェは見限る、使い捨てとして扱う。
3.強い奴は利用、弱い奴は殺害、正義超人は自分の手で殺す(キン肉マンは特に念入りに殺す)、但し主催者に迫る者は殺すとは限らない。
4.殺し合いに主催者達も混ぜ、更に発展させる。
5.強者であるなのはに興味。
6.もしもオメガマンに再会したら、悪魔の制裁を施す。
7.モールでタッグパートナーを待つ。

【ノーヴェ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】 疲労(小)、ダメージ(大) 悪魔の精神(弱) 恐慌
【持ち物】 ディパック(支給品一式)、小説『k君とs君のkみそテクニック』、不明支給品0〜2
【思考】
0.強くなる
1.悪魔将軍の命令に従う
2.ヴィヴィオは見つけたら捕まえる。
3.タイプゼロセカンドと会ったら蹴っ飛ばす。
4.ジェットエッジが欲しい。
5.キョン、悪魔将軍と気が合いそうな奴を探してモールまで連れて行く。

※参加者が別の世界、また同じ世界からでも別の時間軸から集められてきた事に気付きました。

760鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:55:54 ID:OQFqoiZc




誰も居なくなった湖のリングを眺めながら。
川口夏子は、先ほど聞いた情報を頭の中で組み替えていた。

(……あの悪魔将軍たちも一枚岩ではない、ということね。付け入る隙があると分かったのは良かったわ)

9時から始まるという内戦。自分がどうこの島で立ち回るにしても、有益な情報を入手できた。
万太郎がそれに巻き込まれている様子なのは同情を誘ったが、自分にはどうしようもない。
夏子はわずかに笑みを浮かべ、念のため這ってロケットの元に向かう。

(悪魔将軍……危険なのは確かだけど、戦力として見れば彼以上の逸材はいない)

口先での説得が可能だとは思えないが、リングの上での様子を見る限り実力を重視するタイプの人間に見えた。
少なくとも先ほどまでの、ロボット兵のような意思疎通すら困難な怪物という認識は薄れた。

(恩を売って、有用と言えるほどの力を見せれば協力できない事もないでしょうけど……何を考えてるんだか、全く)

知り合いを最低でも一人は殺している参加者と共闘を考えるなど、と己を軽く律する。
ロケットに括り付けられたディバックに到達。中身を引っくり返し、出来るだけ素早く確認。
ハムとの待ち合わせ時間まで、そう時間はない。

壊れた剣。金貨がぎっしりつまった箱。ディバッグ複数(食料も水もある!)。更に首輪の残骸。
ウィンチェスターM1897。これは確か、水野灌太が愛用していた銃だ。
他にもガラクタが大量に詰まっていた。これらも、使い方次第によっては十分な利器となるだろう。
総合してみれば、時間を割いて回収しに来た甲斐はあったといえるだろう。
と、ディバッグの隅に押し込まれた饅頭を見つける。

「包みもなしとはね」

苦笑しながら口に運ぶ。緊張で小腹が空いていたのだ、丁度いい。

『……噛まないでもらいたい』

「そげぶっ!?」

彼女、砂漠の凄腕美人・川口夏子を知る者なら想像も出来ない声。
だが無理もない。食べようとしていた饅頭がしゃべり、耳を突き出してギョロ目で彼女を見たのだから。
あたふたと饅頭を取り落とし、懐から無駄のない動作で拳銃を取り出し、構える。

「ななっ!? えっ? じゅ、銃を……う、動くな!」

『今はそんな事をしている場合ではない! 一刻も早く私を連れてここから離れてもらいたい!』

喋る饅頭に指図されるという異常事態。しかし考えて見ればウサギやブタが喋るのだ、饅頭が喋ったって……。
と、そこまで考えたところで、夏子が饅頭に見覚えがある、と気付く。これは……。

「あなた、アプトムの頭に付いてた……えっと、ネブラ、だったかしら?」

『そうだ。君は確かアプトムに脅されていた女性だな。私の能力を知っているなら手っ取り早い。
 私を頭につけてくれたまえ。君はそれで飛べるようになる、この場を離れられるのだ』

「……」

正直、かなり抵抗があった。夏子にとってネブラ(というかアプトム)には悪い思い出しかない。
しかし、このネブラという生物……なんというか、可愛……いや、妙な安心感がある気がする。
結果、夏子は自分に憧れていた小砂のように、嫌悪していたアプトムのように、ホイホイネブラを身に付けてしまった。

761鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:56:49 ID:OQFqoiZc

「……はい、これでいいかしら。ああ、飛ばなくてもいいわよ。車があるから」

『車……ああ、地球の機械か。飛んだほうが早いと思うが……』

「お断りよ。目立ちすぎるわ」

きっぱりと斬り捨てつつ、夏子は頭部でウニョウニョ動くネブラの異様な感触に参っていた。
フラフラと立ち上がり、戦利品を全て抱えながら歩く。

『ちょっといいかね?』

「荷物でも持ってくれるの?」

『いや、私の前の持ち主が産んだミサイルを私の中に入れて欲しいのだ。
 私に装填していればすぐに発射できるし、君の頭部が重くなる事もない』

「……どんな奴よ、ミサイル産むって」

なんとなく予想はつく気はしたが(市街地で暴れていた奴だろう)、一応突っ込む夏子。
と。

「……」

ミサイルを自身に収納するネブラを見て、夏子の目つきが変わる。
湖畔に目を向け、中心にあるリングへの距離を目で測る。

「ネブラ。そのミサイル、あそこまで届くかしら」

『あのリングまで、かね? 届くと思うが……』

「あなた、自在に動けるのよね? 銃、扱える?」

『教えてもらえば大抵の作業はできる。今は平常時よりテンポが遅れるかも知れんがね。
 それより早くここを離れよう。君は見ていたのだろうが、先ほどここにいた闇の者(ダークレイス)は……。
 あれは、マズイ。アレは、私の処理能力を大幅に超えている。今のままでは勝てないだろう』

「悪魔将軍の事? ……そうね、待ち合わせの時間ももうすぐだし、あまり時間を潰すわけにもいかないわ」

『頼む。私がここに来た詳しい経緯や、私の詳細は追って教える。今はここを離れてくれ』

はいはい、と請け合いながら、夏子は隠してある救急車の元へ歩き出す。
満面の笑みで。いかな色にも染まる、真っ白な満面の笑みで。
"力"を手に入れた、実感を伴いながら。

この湖周辺に集った五名。

復讐鬼:古泉一樹。復讐の殖鎧を纏う者。
セイギノミカタ:キン肉万太郎。筋肉の正鎧を纏う者。
無始無終:悪魔将軍。虚ろな邪鎧を纏う者。
隷属者:ノーヴェ。恐怖の弱鎧を纏う者。
傍観者:川口夏子。白地の黒鎧を纏う者。

さて、一番恐ろしいのは誰か。
それは今後のお楽しみ、と。

762鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:57:39 ID:OQFqoiZc

【D-09 湖畔/一日目・夜】

【川口夏子@砂ぼうず】
【状態】顔にダメージ、強い決意。
【装備】ネブラ=サザンクロス@ケロロ軍曹 ゼクトールの生体ミサイル(10/10) 救急車
【持ち物】デイパック×4(支給品一式入り、水・食糧が増量)、基本セット(水、食料を2食分消費)、ビニール紐@現実(少し消費)、
 コルトSAA(5/6)@現実、45ACL弾(18/18)、夏子とみくるのメモ、チャットに関する夏子のメモ
 各種医療道具、医薬品、医学書 光の剣(レプリカ、刀身折損)@スレイヤーズREVORUSION、
 金貨一万枚@スレイヤーズREVORUSION ヴィヴィオのデイパック、ウィンチェスターM1897(1/5)@砂ぼうず
 ナイフ×12、包丁×3、大型テレビ液晶の破片が多数入ったビニール袋、スーツ(下着同梱)×3
 消火器、砲丸投げの砲丸、喫茶店に書かれていた文面のメモ 首輪の残骸(アプトムのもの)
 黄金のマスク型ブロジェクター@キン肉マン、ストラーダ(修復中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、、

【思考】
0、何をしてでも生き残る。終盤までは徒党を組みたい。
1、19時半を目安に、ゴルフ場の事務室でハムと待ち合わせ。20時までに来なければ、単独行動を行う。
2、キン肉スグル、ウォーズマン、深町晶、キョン、朝倉涼子を探してみる。
3、ハムは油断ならないと思っているが今は自分を見放せないとも判っている。
4、生き残る為に邪魔となる存在は始末する。
5、翌日09:00に湖上リングに向かい、臨機応変に行動。
6、ネブラと情報交換する。
7、水野灌太と会ったら――――

【備考】
※主催者が監視している事に気がつきました。
※みくるの持っている情報を教えられましたが、全て理解できてはいません。
※悪魔将軍、古泉、ノーヴェ、ゼロス、オメガマン、ギュオー、0号ガイバー、怪物(ゼクトール、アプトム)を危険人物と認識しています。
※深町晶を味方になりうる人物と認識しました。
※トトロ(名前は知らない)は主催と繋がりがあるかもしれないと疑いを持っています。

763鎧袖一触〜鎧は殴るために在る〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/13(金) 21:58:55 ID:OQFqoiZc
以上で投下終了です。
よろしければどなたか代理投下していただけるとありがたいです

>>754の最後の
>私の目に、水色の髪が映った。はミスです

正しくは

>私の目に、赤色の髪が映った。

でお願いします。

764>>749修正 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/14(土) 10:52:53 ID:uCWpLj4U

――――身を隠す。
視界に突如飛び込んできた大量の水、オアシスといったところか。
砂漠で生きる川口夏子にとってそれは二度目に見る威容。
だが彼女が素早く林の中に引き返したのは、湖に気圧されたからではない。
湖の中心、リングの上に二つの影が見えたからだ。
二人以上の侵入者を感知し、試合に備えてライト・アップされたリング上。
そこにあった影は、双方とも彼女が知るものだった。

(万太郎君と……古泉! まさか、悪魔将軍もすぐ近くにいるの!?)

先刻の万太郎の叫び声から予測はしていた事だが、あれからまだ2分も経っていない。
悪魔将軍の手先である古泉がこうも早く万太郎に接敵している事を考えれば、それは容易に推測できた。
万太郎と一度戦っているはずのオメガマンも、今や悪魔将軍に与しているのだろう。
敵は四人……万太郎に引きつけさせておけばいいという考えは捨てるべきか?

(朝比奈みくると離れ離れになった時、私達は隠れていたのに悪魔将軍たちに発見された……この距離はマズイ!)

リングからここまで、おおよそ200mといった所だろうか?
ガイバーの能力ならば、派手に動けば察知される可能性は決して低くないだろう。
彼女は数十m先まで救急車で来ていたが、その駆動音が気付かれているのでは、という懸念は捨てた。
気付かれているなら、既に攻撃されているはずと考えたのだ。
夏子は息を潜め、同時に嗅覚を研ぎ澄ます。
この近くに落ちたはずのロケットが噴出していたガスの臭いを捉える。
発臭元を目で追えば、ギリギリ視界に入る位置に地面にめり込んだ弾頭と、それに括られたディバックが見えた。
林の中だ。リング上からは見えないはず……夏子は僅かに身を揺らす。
今は動けない。運よくやり過ごせる事を願うしかない……。
身を焼くは悔しさ、憎悪、怒り。自分の弱さが情けなかった。力があれば、こんな雌伏で時間を取られる事もないだろうに。
歯軋りも出来ず、視線を再びリングに戻す。
激しく言い争いをしていた万太郎と古泉の様子に、異変が生じていた。
静かな夜に、音を反射する水面の上での会話だ。
先ほど万太郎の声を聞きつけたように、この距離で耳を澄ませばある程度の大声なら内容も聞こえるのではないか?
目を凝らし、静かに銃を抜いて、事の成り行きを見守る。

(ごめんなさい、万太郎君……私には君を助けてあげることは出来ない。
 だからせめて一人でも多く、連中を道連れにしてね……?)

これからここで確実に起こるであろう、惨劇の成り行きを。

765>>753修正 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/14(土) 10:56:08 ID:uCWpLj4U




何が、間違いだったのか。
私は荒々しく歩を進めている。キン肉万太郎への制裁を行うべく、だ。
しかし、その歩みは決して早いものではない。
当然だ、自分が"負けた"歴史の存在を聞かされたのだからな。
オメガマンは嘘を言っているようには見えなかった。
ならば、私はキン肉スグルに負けたのだろう。奴の生きた時代ではな。
時間超人の存在を知る私にとっては、それは大した問題ではない。
心を乱される必要もない、これからその"敗北"の歴史を塗り替えればよいのだから。

「とはいえ、キン肉マンが私に勝った時空もあるならば、それについて考える意味はある」

ぼそりと呟き、キン肉マンが自分に勝利するイメージを浮かべる。
キン肉マンが持つ不可思議なスキル、火事場のクソ力以外に自分が遅れを取る事は想像できなかった。

「万太郎がキン肉王家の一員であることは間違いあるまい。あんなセンスのないマスクを選ぶのは奴らくらいだ」

ならば、万太郎が火事場のクソ力を持つ可能性もなくはない。時空が入れ乱れて参加者が集っているとわかった今、
キン肉万太郎はキン肉スグルの実子である、などといった無茶苦茶な可能性すら許容されるのだ。
だからこそ、私自らが赴いているのだからな。火事場のクソ力を奪う事はあのバッファローマンにも出来なかった。
だがこの悪魔将軍ならば、それも不可能ではないはず。キン肉マンの唯一の長所を得られれば、私の勝ちは揺らがない。
と、湖の方から言い争う声が聞こえる。ここからでは内容までは聞き取れないが、万太郎に誰かが接触しているのか?

「……少し急ぐか」

別に本気で火事場のクソ力を欲している訳ではないが、もし自分より先に古泉やノーヴェが万太郎を始末しては拙い。
キン肉王家はこの手で断絶したいし、古泉たちが自分の命令を無視したならそれに対する制裁もせねばならない。
私は歩幅を広げ、数分で湖にたどり着いた。しかし。

「万太郎の姿がない……逃げたわけではないだろうが……む?」

私の視界に、リングに突き立てられたナイフが映った。
何かを固定しているのか……?

「ボートを漕ぐのは面倒だな」

すぐ側に新しいボートがあったが、ノロノロ漕いでいっては何分かかるか分からん。
私はディバックからユニット・リムーバーを取り出し、全力で投げる。
自身もプラネットマンの宇宙的レスリングを彷彿とさせる跳躍でリムーバーに飛び乗り、
一直線に湖中央のリングに向かった。リムーバーがマットに突き刺さり、着地成功。リングに刺さったナイフを抜く。
そのナイフは、一枚の紙切れをリングに縫い付けていた。

766>>754修正 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/14(土) 11:00:56 ID:uCWpLj4U

「汚い字だな……」

灯りを取り出し、紙切れに書かれた文字を読む。
それは、挑戦状だった。万太郎からのではなく、我が部下からの。


『拝啓 悪魔将軍様
 
 俺はあなたを裏切ります 理由は単純 あなたと居るメリットが消滅したからです
 驚愕しましたよ あなたがあれほど雄弁に語っていた悪魔超人軍の権威が地に落ちていたとはね
 もはやあなたに就く意味なし そう判断させていただきました そしてあなたへケジメをつけさせて頂きます
 翌日 09:00 あなたにここ湖上リングでタッグマッチを申し込みます そちらのパートナーは誰でも構いません
 こちらのパートナーはもちろんあなたを破ったキン肉マンの息子 あなたにとっては未来の超人、キン肉万太郎氏です
 歴史を繰り返したくなければ逃げることをお勧めしますよ 我々マッスル&ガイバーズからね

                                                   正義超人  古泉一樹より   』


「ほう」

薄々古泉の叛意には気付いていたが、こうも明確に反逆するとはな。
小癪にも時間稼ぎの為に時間指定までしておるわ。
ヤツと同行していたノーヴェも恐らく既に殺されているだろう。
まったく、愚かなヤツよ。だから古泉には気を許すなと忠告したものを。

「マットはまだ温かい……そう遠くへは行っていないだろうが……」

挑戦状を懐にしまい、私は古泉について考えを廻らせる。
奴が裏切ったのは、万太郎が私の未来について語ったからだろう。
この文面を見てもそれは明らかであり、悪魔超人界に入ることを断念した理由としては妥当だ。
何らかの理由で正義超人に鞍替えする悪行超人などそう珍しくもない。だが、私は古泉の本心を見抜いていた。

「愚かな……オメガマンもそうだが、この私に一度仕えた者が私から離れて生きていけると思うのか……!」

声のトーンが危険さを増し、湖全てに流れ込むように私の怒りが漏れる。かまうものか。
古泉は、結局朝比奈みくるの死と涼宮ハルヒの呪縛から逃れられなかったのだ。
やはり人間が手に入れ得る悪魔の精神など、あの程度が限界だったか。
少しは期待していたが、恥知らずにも正義超人を名乗るようではもう見込みはない。
アシュラマンの替わりは他で探すとしよう。

「……が、この悪魔将軍に挑戦状を叩きつける気概は買ってやらねばな。いいだろう、古泉よ! 明日九時、ここで!
 貴様の挑戦、しかと受け取った! 聞いているなら精々身を休め、引退試合に恥じぬ状態でリングに上がるのだな!」


湖全体に轟く叫び声を上げ、私は再びユニット・リムーバーを投擲、騎乗する。
今すぐ古泉たちを追えば容易に捕らえられるだろうが、試合を挑まれてそんな無粋な真似をする超人はいない。
無論、私とて紳士というわけではないから、試合前に"偶然"出くわせばそこで決着をつけることになるだろうがな。
さて……適当なタッグ・パートナーを探さねばな。
湖上の深々とした裂風を身に浴びながら、陸地が迫る。
私の目に、風になびく赤い髪が映った。

767>>760修正 ◆2XEqsKa.CM:2009/11/14(土) 11:03:39 ID:uCWpLj4U




誰も居なくなり、数分ほど置いて灯りも消えた湖のリングを眺めながら。
川口夏子は、先ほど聞いた情報、特に将軍の怒声の内容を頭の中で組み替えていた。
結局小声での会話の内容までは聞き取れなかったが、手に入れた情報は三つ。

・古泉が万太郎を気絶させ、リングになんらかのメッセージを残して去った。
・そのメッセージを読んだ悪魔将軍の叫びによれば、オメガマンと古泉が悪魔将軍を裏切った。
・明日9時にここで古泉らと悪魔将軍の戦闘が起こる可能性大。

古泉と万太郎の関係、悪魔将軍達と共にいた赤髪の少女の行方など不明な点も多かったが、これだけ分かれば十分だ。

(……あの悪魔将軍たちも一枚岩ではない、ということね。付け入る隙があると分かったのは良かったわ)

9時から始まるという内戦。自分が今後どのようにこの島で立ち回るにしても、有益な情報を入手できた。
万太郎がそれに巻き込まれている様子なのは同情を誘ったが、自分にはどうしようもない。
夏子はわずかに笑みを浮かべ、念のため這ってロケットの元に向かう。

(悪魔将軍……危険なのは確かだけど、戦力として見れば彼以上の逸材はいない)

口先での説得が可能だとは思えないが、リングの上での様子を見る限り実力を重視するタイプの人間に見えた。
少なくとも先ほどまでの、ロボット兵のような意思疎通すら困難な怪物という認識は薄れた。

(恩を売って、有用と言えるほどの力を見せれば協力できない事もないでしょうけど……何を考えてるんだか、全く)

知り合いを最低でも一人は殺している参加者と共闘を考えるなど、と己を軽く律する。
ロケットに括り付けられたディバックに到達。中身を引っくり返し、出来るだけ素早く確認。
ハムとの待ち合わせ時間まで、そう時間はない。

壊れた剣。金貨がぎっしりつまった箱。ディバッグ複数(食料も水もある!)。更に首輪の残骸。
ウィンチェスターM1897。これは確か、水野灌太が愛用していた銃だ。
他にもガラクタが大量に詰まっていた。これらも、使い方次第によっては十分な利器となるだろう。
総合してみれば、時間を割いて回収しに来た甲斐はあったといえるだろう。
と、ディバッグの隅に押し込まれた饅頭を見つける。

「包みもなしとはね」

苦笑しながら口に運ぶ。緊張で小腹が空いていたのだ、丁度いい。

『……噛まないでもらいたい』

「そげぶっ!?」

彼女、砂漠の凄腕美人・川口夏子を知る者なら想像も出来ない声。
だが無理もない。食べようとしていた饅頭がしゃべり、耳を突き出してギョロ目で彼女を見たのだから。
あたふたと饅頭を取り落としつつも、懐から無駄のない動作で拳銃を取り出し、構える。

「ななっ!? えっ? じゅ、銃を……う、動くな!」

『今はそんな事をしている場合ではない! 一刻も早く私を連れてここから離れてもらいたい!』

喋る饅頭に指図されるという異常事態。しかし考えて見ればウサギやブタが喋るのだ、饅頭が喋ったって……。
と、そこまで考えたところで、夏子が饅頭に見覚えがある、と気付く。これは……。

「あなた、アプトムの頭に付いてた……えっと、ネブラ、だったかしら?」

『そうだ。君は確かアプトムに脅されていた女性だな。私の能力を知っているなら手っ取り早い。
 私を頭につけてくれたまえ。君はそれで飛べるようになる、この場を離れられるのだ』

「……」

正直、かなり抵抗があった。夏子にとってネブラ(というかアプトム)には悪い思い出しかない。
しかし、このネブラという生物……なんというか、可愛……いや、妙な安心感がある気がする。
結果、夏子は自分に憧れていた小砂のように、嫌悪していたアプトムのように、ホイホイネブラを身に付けてしまった。

768 ◆MADuPlCzP6:2009/11/15(日) 01:29:28 ID:7QWhozu2
ちょっと不安なところがあるのでこちらに投下します

769 ◆MADuPlCzP6:2009/11/15(日) 01:30:12 ID:7QWhozu2
◆ ◆ ◆ ◆ ◆


その時、時刻は19時56分27秒。
警告時間の1分間を足すと残り時間は4分33秒。

4分33秒間。
それがリヒャルト・ギュオーに許された逃走のための時間だった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ずるずると重く、動かない体を引きずってエリアの端を目指す。
先ほどウォーズマンとの激しい戦いを経た体はなかなか言うことを聞かない。
木の根に足を取られた巨躯がぐらりと傾いだ。

「くそっ!ウォーズマンめ!」

俺は生きて、世界の支配者となるのだ!
だから、この俺がーー

「このリヒャルト・ギュオーがっ!こんな所で潰えることがあってはならんのだああぁぁぁぁあああっっっ!!!」

咆哮を上げ走り出す。
それは演奏開始の合図。
ギュオーは振り上げたのだ。
自分に残された4分33秒を奏でる指揮のタクトを。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ざわざわざわ、びゅうびゅうびゅう。
副旋律は、風を切る音、闇に塗りつぶされた木々がざわめく音。
ぜぇぜぇぜぇ、どくどくどく。
主旋律は己の体の悲鳴。呼吸の音、心臓の早鐘。
体の外から、内から、音はF-5と名付けられた範囲に響き渡る。

時間は淀むことなく勤勉に進み、ついには最終楽章に至る。
演奏記号はcrescendoでPrestissimo。
その身にまとわりつく音はどんどん大きく速度を上げていく。

果たしてその旋律はこの男の耳に届いているのだろうか?

残された力を振り絞るようにギュオーは前へ進む。
生にしがみつく精神はすでに限界を叫ぶ体をさらに加速させる。
軋む体に鞭を打つように、両の足を交互に繰り出すことにのみ全神経を傾ける!

残り1分を刻んだところで
ひとつ、音を奏でる楽器が増えた。

『警告。
 リヒャルト・ギュオーの指定範囲外地域への侵入を確認。
 一分以内に指定地域への退避が確認されない場合、規則違反の罰則が下る。
 繰り返す……』

走りながら落ち着きなく目玉を動かす。
そろそろエリアの端に出るはずなのだが明確な目印があるわけではない。
首筋から這い寄る死の影がやかましくわめき続けてる。

『10、9、8、7……』

「えぇい!くそぅっ!!」

追いつめられた彼は最後に賭けに出た。
出ざるを得なかった……自分の命をチップにした賭けに!!

どん!と最後の跳躍。
男の体は宙を舞った。

770 ◆MADuPlCzP6:2009/11/15(日) 01:30:44 ID:7QWhozu2

◆ ◆ ◆ ◆ ◆


とける。
リヒャルト・ギュオーをリヒャルト・ギュオーたらしめている輪郭が解け消える。
慣性の法則に従い、人であった橙色は恐ろしく美しい弧を描く。
投げ出されたオレンジ・ジュースはパシャリと音を立てて、
死線を越えた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
その時、男は肩で大きく息をついていた。
その体は、濃く暗い木の陰の中。
彼の後ろには目に見えない線がある。深くて暗い線が在る。
エリアを分つ線を越えた液体は、まるで壊れたビデオが逆再生をするように輪郭を取り戻した。

同時に「それ」は再び名前を得る。
名前はギュオー。リヒャルト・ギュオー。

「うぅっ!な、何だ、今のは……。この身に何が起きたというのだ……?」

がくがくと体を震わせ、わななく唇でそう呟いた。

「それに今の感覚はなんなのだ……!? まるで俺が俺でなくなるような…………!」

変化の瞬間に感じていたのは想像していたような痛みでも灼熱感でもない。
ただ自分という個が消えてしまうような感覚だった。

ギュオーは野心の強い男である。
支配者アルカンフェルをも打ち倒し、成り代わろうとする業の深い男である。
故に彼は誰も信用せず、己の力と存在のみを拠り所としていた男。
         ・・・・・・・・・・
その男が唯一信ずる自分が自分でなくなるとしたらーー

びくり
突然、体を震えを止める。
おもむろに褐色の指を自らの喉元へ。

「……まさかっ!『あれ』が俺の体内に入り込んだのではあるまいなっ!?」

ギュオーは『あれ』を知ってしまっていた。
首輪の中に潜む未知の存在を。
そしてそれが参加者の体を離れる時に体内に潜り込むということを。

自分はまだ生きている。気のせいに違いない。
だが思ってしまったのだ。
この首輪、少し軽くなってやしないか? と。

「フ、フハ、フハハハハハッハハハハッハハハハハッ!!!!」

男は笑う。
その身に起こった異変に動じず、さながら王のように。

「今のが禁止エリアの発動というものか! くくく……面白い、面白いぞ雑魚がぁ!!」

狂ってはいない。
その振る舞いは髪の先まで、常の彼と微塵も違わない。

「俺はユニットを手に入れ神に、支配者になる男だ!
 たとえ一度死んだとてハクがついたというものよっ!」

男は歩く。
先ほどとは別人のように、ゆったりと余裕さえ見えるようで。

しかし、黒い恐怖は彼の背に貼り付いて放さない。
音もなく、べたりと。

ただべったりと。

771 ◆MADuPlCzP6:2009/11/15(日) 01:31:16 ID:7QWhozu2
【F-5周辺/一日目・夜】

【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身軽い打撲、左肩負傷、ダメージ(大)、疲労(大)
買@ンゲリオン、
     ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン、 毒入りカプセル×4@現実、
bガイバー 、
     クロエ変身用黒い布、詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×12@ケロロ軍曹、
     ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品0〜1
【思考】
1:優勝し、別の世界に行く。その際、主催者も殺す。
2:キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3:自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4:首輪を解除できる参加者を探す。
5:ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6:タママを気に入っているが、時が来れば殺す。

※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」「加持リョウジ」に関する記述部分が破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されていると推測しました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています。
※ギュオーの体内に首輪内蔵の植物のようなものが侵入した可能性があります
 また、一度ギュオーをLCL化させたことで首輪に変化があるかもしれません。

※ギュオーはF-5以外の、F-5を中心とする9コマのエリアどこかにいます。どこにいるかは、次の書き手さんにお任せします

772 ◆MADuPlCzP6:2009/11/15(日) 01:33:29 ID:7QWhozu2
以上です

首輪の扱いのあたりがちょっと不安なのでご意見いただければと思います

773 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:49:45 ID:7QWhozu2
規制中につき、こちらに決定稿投下します

774『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:50:33 ID:7QWhozu2
◆ ◆ ◆ ◆ ◆


その時、時刻は19時56分27秒。
警告時間の1分間を足すと残り時間は4分33秒。

4分33秒間。
それがリヒャルト・ギュオーに許された逃走のための時間だった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ずるずると重く、動かない体を引きずってエリアの端を目指す。
先ほどウォーズマンとの激しい戦いを経た体はなかなか言うことを聞かない。
木の根に足を取られた巨躯がぐらりと傾いだ。

「くそっ!ウォーズマンめ!」

俺は生きて、世界の支配者となるのだ!
だから、この俺がーー

「このリヒャルト・ギュオーがっ!こんな所で潰えることがあってはならんのだああぁぁぁぁあああっっっ!!!」

咆哮を上げ走り出す。
それは演奏開始の合図。
ギュオーは振り上げたのだ。
自分に残された4分33秒を奏でる指揮のタクトを。

775『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:51:24 ID:7QWhozu2
◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ざわざわざわ、びゅうびゅうびゅう。
ベースラインは、風を切る音、闇に塗りつぶされた木々がざわめく音。
ぜぇぜぇぜぇ、どくどくどく。
主旋律は己の体の悲鳴。呼吸の音、心臓の早鐘。
体の外から、内から、音はF-5と名付けられた範囲に響き渡る。

時間は淀むことなく勤勉に進み、ついには最終楽章に至る。
演奏記号はcrescendoでPrestissimo。
その身にまとわりつく音はどんどん大きく速度を上げていく。

果たしてその旋律はこの男の耳に届いているのだろうか?

残された力を振り絞るようにギュオーは前へ進む。
生にしがみつく精神はすでに限界を叫ぶ体をさらに加速させる。
軋む体に鞭を打つように、両の足を交互に繰り出すことにのみ全神経を傾ける!

残り1分を刻んだところで
ひとつ、音を奏でる楽器が増えた。

『警告。
 リヒャルト・ギュオーの指定範囲外地域への侵入を確認。
 一分以内に指定地域への退避が確認されない場合、規則違反の罰則が下る。
 繰り返す……』

走りながら落ち着きなく目玉を動かす。
そろそろエリアの端に出るはずなのだが明確な目印があるわけではない。
首筋から這い寄る死の影がやかましくわめき続ける。

『10、9、8、7……』

「えぇい!くそぅっ!!」

追いつめられた彼は最後に賭けに出た。
出ざるを得なかった……自分の命をチップにした賭けに!!

どん!と最後の跳躍。
男の体は宙を舞った。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


『……6、5、4、……』
その巨躯は数瞬空を舞った。
それは獣神将の力によるものではなく、男・ギュオーとしての挑戦。
慣性の法則に従い、人体の通過点は放物線を構築する。
『……3、2、……』
未だ生存ラインに届かない、警告音は鳴り止まない。
しかしその足はすでに再び地に着こうとしている。
『1、ゼ………………』

男は死線を越えた。

776『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:52:21 ID:7QWhozu2
◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
男は肩で大きく息をついていた。
その体は、濃く暗い木の陰の中。
彼の後ろには目に見えない線がある。深くて暗い線が在る。

『退避確認』
曲の最後の音は勝利を歌った。

男は賭けに勝ったのだ。
しかし生を勝ち得た男は快哉を叫ぶこともなく、ただうずくまる。

「うぅっ!な、何だ、今のは……」

がくがくと体を震わせ、わななく唇でそう呟いた。
蠢いたのだ、何かが自分の首元で。
それが自分の中で起こったものか、首輪の側で起こったものかは判然としない。
だが、確実にこの幾ばくもない隙間で何かが起こっていた。
ギュオーの脳裏に『あれ』の存在がかすめていく。
加持を殺めたときに知った存在、首輪に潜む『あれ』が。

「それに今の感覚はなんなのだ……!? まるで俺が俺でなくなるような…………!」

もう駄目かと思うほど崖っぷち、その瞬間、感じたのは想像していたような痛みでも灼熱感でもない。
ただ自分という個が消えてしまうような感覚だった。

ギュオーは野心の強い男である。
支配者アルカンフェルをも打ち倒し、成り代わろうとする業の深い男である。
故に彼は誰も信用せず、己の力と存在のみを拠り所としていた男。
         ・・・・・・・・・・
その男が唯一信ずる自分が自分でなくなるとしたらーー

「フ、フハ、フハハハハハッハハハハッハハハハハッ!!!!」

男は笑う。
その身に起こった異変に動じず、さながら王のように。

「今のが禁止エリアの発動の片鱗というものか! くくく……面白い、面白いぞ雑魚がぁ!!」

狂ってなどいない。
その振る舞いは髪の先まで、常の彼と微塵も違わない。

「俺はユニットを手に入れ神に、支配者になる男だ!一度死にかけたとてハクがついたというものよっ!」

男は歩く。
先ほどとは別人のように、ゆったりと余裕さえ見えるようで。

しかし、黒い恐怖は彼の背に貼り付いて放さない。
音もなく、べたりと。

ただべったりと。

777『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:52:54 ID:7QWhozu2
【F-5周辺のエリアのどこか/一日目・夜】

【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身軽い打撲、左肩負傷、ダメージ(大)、疲労(大)
買@ンゲリオン、
     ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン、 毒入りカプセル×4@現実、
bガイバー 、
     クロエ変身用黒い布、詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×12@ケロロ軍曹、
     ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品0〜1
【思考】
1:優勝し、別の世界に行く。その際、主催者も殺す。
2:キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3:自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4:首輪を解除できる参加者を探す。
5:ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6:タママを気に入っているが、時が来れば殺す。

※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」「加持リョウジ」に関する記述部分が破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されていると推測しました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています。
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。

※ギュオーはF-5以外の、F-5を中心とする9コマのエリアどこかにいます。どこにいるかは、次の書き手さんにお任せします

778『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6:2009/11/16(月) 22:54:40 ID:7QWhozu2
以上になります。

たくさんのご意見ありがとうございました。
どなたか代理投下していただければと思います。

779 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/08(月) 15:47:32 ID:XnKZIjdU
最後の状態表だけ連投規制に引っかかってしまったので、どなたか代理投下よろしくお願いします。





【G-2 温泉内部・脱衣所/一日目・夜中】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、魔力消費(中)、睡眠、覚悟完了
【持ち物】支給品一式×2、メリケンサック@キン肉マン、砂漠アイテムセットA(砂漠マント)@砂ぼうず、ガルルの遺文、
     スリングショットの弾×6、SDカード@現実、カードリーダー、リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
     大キナ物カラ小サナ物マデ銃(残り7回)@ケロロ軍曹、ナーガの円盤石
【思考】
0:何があっても、理想を貫く。
1:キョンを絶対に止める。
2:なのはと共に機動六課を再編する。
3:人殺しはしない。ヴィヴィオやノーヴェと合流する。
4:パソコンを見つけたらSDカードの中身とネットを調べてみる。
5:ケロロにガルルの遺文を見せる。
6:必要に迫られれば、命を捨てて戦うことも辞さないが、可能な限り生き抜いてみせる。無駄死には絶対にしない。
※大キナ物カラ小サナ物マデ銃で巨大化したとしても魔力の総量は変化しない様です(威力は上がるが消耗は激しい)
※無理をすれば傷が悪化し、甚大なダメージを受ける可能性があります。

【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】疲労(小)、ダメージ(中)、身体全体に火傷、熟睡
【持ち物】ジェロニモのナイフ@キン肉マン
【思考】
1、なのはとヴィヴィオを無事に再会させたい。タママやドロロと合流したい。
2、加持となのは、スバルに対し強い信頼と感謝。何かあったら絶対に助けたい。
3、冬樹とメイと加持の仇は、必ず探しだして償わせる。
4、協力者を探す。ゲームに乗った者、企画した者には容赦しない。
※漫画等の知識に制限がかかっています。自分の見たことのある作品の知識は曖昧になっているようです。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】9歳の容姿、魔力消費(大)、睡眠
【装備】レイジングハート・エクセリオン(修復率95%)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【服装】浴衣+羽織(子供用・下着なし)
【持ち物】ハンティングナイフ@現実、女性用下着上下、浴衣(大人用)、リインフォースⅡの白銀の剣十字
【思考】
0、もう迷わない。必ずこのゲームを止めてみせる!
1、冬月、ケロロ、スバルと行動する。
2、一人の大人として、ゲームを止めるために動く。
3、ヴィヴィオ、朝倉、キョンの妹(名前は知らない)、タママ、ドロロたちを探す。
4、掲示板に暗号を書き込んでヴィヴィオ達と合流?
5、休息が済んだらキョンを探し出し、スバルのためにも全力全開で性根を叩き直す。
※リインからキョンが殺し合いに乗っていることとこれまでの顛末を聞きました。

780 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/08(月) 15:48:39 ID:XnKZIjdU
投下は以上です。
誤字や矛盾など、指摘がありましたらお願いします。

781 ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:47:31 ID:YrRABrO.
お待たせしました。
これよりSSを投下いたします。

782war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:50:22 ID:YrRABrO.
森の中を前進していく、ふくよかな毛皮に包まれた巨躯なケモノ・トトロと、妖精型モンスター・ピクシーに小さな竜のフリードリヒ、手袋の姿をしたデバイス・ケリュケイオンを含めたケモノたち一行。
危険人物だったキョンを、トトロの意思によっていずこへ逃がした後、高町なのはたちがいる温泉へ戻るハズであった・・・・・・
だが、彼らは真っ直ぐ温泉へ向かっているわけではないようだ。

『Mr.troll、どうしたのですか?
 温泉はそちらではありませんよ?』

温泉へ戻るコースから外れていることに関してケリュケイオンは持ち主に忠告を述べる。
しかし、持ち主であるトトロは「ヴォウ」と短い返事だけをして前進を続ける。
人の言葉ではないトトロの返事の内容はさっぱりだが、前進を続けている様子からして、忠告は聞き入れてもらってないようだとケリュケイオンは理解した。

『帰還が遅いとMs.高町たちが心配します。
 あなたが彼女らに心配をかけたくないのでしたら、寄り道はせずに早めの帰還を推奨します』

今度は先の言葉に仲間の事情などを付け加えて発言するが、これも聞き入れては貰えず、獣たちは前進を続ける。
温泉のある西ではなく、北へ、北へと前進していく。

ケリュケイオンもだんだん、獣たちの意図に気づき始める。
トトロは気まぐれで北へ向かうのではなく、ある目的のためにそこへ向かうのではないかと予測を立てる。
『ある目的』に該当しそうな事柄をメモリーから検索した結果、スバルの同行者だったウォーズマンの存在が浮上する。
手持ちの情報によると、ウォーズマンはF-5の神社にて危険人物であるギュオーと交戦状態に陥った。
現時刻では、F-5は禁止エリアとなっているため、その戦闘はすでに終了していると見るのが妥当だろう。
そして、必然的に周辺の9エリアのどこかに流れつき、特にキョン及びスバルが移動した方角へと向かう可能性は高い。

783war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:52:08 ID:YrRABrO.
つまり、ウォーズマンの安否を確認もしくは接触・温泉への誘導のためにあえて神社周辺のエリアへと、トトロは移動しているのかもしれない。
下手にこちらから動くとニアミスするリスクはあるが、トトロに限ってはその心配は薄い。
獣ならば、人や機械では感じとれない臭いや微かな異音・僅かな地面の振動を感じて目標を捜すことができる。
実際に獣たちは、なんとなく進んでいるわけではなく、一点を目指して前進している。
ケリュケイオンにとって索敵外の先にある何かを感じ取り、彼らはそこを目指して突き進んでいるように見える。
これが単なる気まぐれによる行動だとしたら、今後もこの殺し合いの中で付き合っていくであろう持ち主に対して、ケリュケイオンは腕が無いのに頭を抱えることになるだろう。


仮に、ウォーズマンと合流できたのなら僥倖である。
ウォーズマン自身の生存の確認ができ、脱出のための協力者も得られる。
だが、反対の悪いケースも考えうる。
戦いにおいてウォーズマンが討たれ、勝者のギュオーが存命している場合もある。
もしそうならば、危険人物は生きていると、温泉にいる仲間に注意を呼びかけなくてはならない。
・・・・・・と、ケリュケイオンは思考を働かせつつ、いつ何が起きても良いように警戒レベルを最大限に引き上げる。


やがてケリュケイオンも、索敵範囲内に一人の人物を捉えた。
現在地はF-4、深い森の中においてトトロたちは参加者を発見する。
しかし、その者はケリュケイオンが求めていた人物ではなかった。

赤いラバースーツのようなものを纏うその怪物は−−



−−−−−−−−−−−

784war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:54:08 ID:YrRABrO.


−−リヒャルト・ギュオー。
覇道を歩むべく、ガイバーユニットを求め、邁進する者。
だが、その道程は本人が想像しているよりも遥かに険しいようだ。

「どこだ・・・・・・どこへ行ったんだあの小僧は!」

ガイバーユニットを持ったキョンが神社から西側へ出ていったのを知っているため、彼を追うために禁止エリアになったF-5から西のF-4の森へと移った。
しかし、西側へ出たはよかったがキョンの詳しい行き先は掴めないでいる。
足跡でも見つければ、いずれキョンの居所へ辿りつけるだろうが、その足跡すら見つかってない。
ちなみに禁止エリア脱出の時は、下を見ている余裕などなかったため、足跡は見ていない。
今はどうにかキョンの足どりを掴むために森をさ迷っている。
ギュオーに降り懸かる障害はそれだけではない。

「くそぅ、動くのも億劫だぞ。
 先の戦いで消耗し過ぎたか?」

神社のリングマッチではウォーズマンに勝利し、結果的に死に至らしめた。
だが、その勝利は易々と手に入れたものにあらず。
ギュオーは戦闘の中で多大なダメージと疲労を被り、損耗を強いられることになる。
それは常人の何倍もの強化が施された肉体が軋みを上げ、ゼェゼェと息は上がるほどだ。
禁止エリアになる神社からの脱出の際には猛ダッシュを見せたが、それは首輪が発動しかけるギリギリの状況下によって発揮された興奮状態による火事場の馬鹿力であり、あくまで一時的なものである。
興奮が冷めた今となっては、忘れていた傷の痛みと疲労を身体に思い出させ、おまけに首輪の発動寸前において味わった気味の悪い出来事・それによって生まれた焦りが加算され、ズッシリとギュオーにのしかかっている。

「おのれぇ〜、あのポンコツのガラクタめ」

思うように進まない足、怪我の痛みにギュオーは苛立ちを覚え、その原因を作ったウォーズマンに対して侮蔑の言葉を叩き付ける。

「待っていろよ!
 おまえが守ろうとしたガキを墓場に、サイボーグの小娘はスクラップ置場に送ってやろう!
 そしてユニットを手に入れ、私は神への道を踏み出すのだ! フハハハハハハ!!」

785war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:55:21 ID:YrRABrO.
続けてギュオーの口から吐き出されたのは、なんともヒールチックなスローガン。
少年少女を殺し、ガイバーユニットを手に入れ、自分は勝者になると声高々に宣言するのだった。
これは苛立ちを戦意に変えるためのパフォーマンスでもある。

「・・・・・・ぬぅ」

だが、いかに戦意を高ぶらせようとも、それ以上に消耗は大きい。
今もまた、足がグラついた所だ。

「しばし休むべきか・・・・・・いいや、ダメだ」

獣神将である以上、怪我は時間が経てば再生し、休憩をとれば疲労も取り除かれるだろう。
されど、今のギュオーに休む暇は無い。
時間の都合から考えてキョンが『足の早い者に運ばれない限り』、そう遠くへは行ってないだろう。
しかし、休んでる間に目的のガイバーユニットを持ったキョンはどんどん逃げていく。
その上でユニットが他者に奪われたり、合流されたりすると事態がややこしくなってしまう。
ギュオーが神になるには、誰よりもいち早く手に入れる必要があるのだ。
せっかく目前まで迫ったチャンスを手放す気はギュオーにない。
今こそが、多少の無理は承知の上で走り続ければならぬ踏ん張り時なのである。


「しかし・・・・・・」

そこで、ギュオーの脳裏に懸念材料が浮かぶ。
もしも他の参加者と出会い、戦闘になってしまったら?
戦闘の心得が無いキョンや満身創痍のスバルなら、疲弊した今でも殺せる自信が己にはある。
しかし、ウォーズマンクラスの実力者と出会い、それでまかり間違えれば命が危うい。
詳細参加者名簿の内容をかなり把握しているため、参加者ごとの対処法はそれなりに心得ているが、その対処法を実行できる余力が少ない。

「・・・・・・何か良いものはないか?」

そこでギュオーは、支給品の中に傷や体力をいち早く回復できるものは無いかとディパックを漁り始める。
回復に纏わる支給品は元は持ち合わせてなかったが、ウォーズマンから奪った支給品の中にはあるかもしれないと期待してのことである。

786war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 14:58:00 ID:YrRABrO.
ディパックを探った結果、加持リョウジの詳細の書かれた紙切れ・どこかで見た黒い布・謎の宝石・玩具の銃・スナック菓子、などを見つけた。
上から順に支給品を分析する。

加持リョウジの詳細が書かれた紙切れは、加持に関する情報を隠蔽するために詳細参加者名簿から破り捨てたものを、ウォーズマンが拾ったものだろう。
回復には役立ないが、紙切れ一つで嘘がバレることに繋がることはわかったので、今後から証拠の隠滅は徹底的にやろうと肝に銘じ、ディパックにしまう。

黒い布は、ウォーズマンが『真っ黒クロエ』に変身するために使ってたものだ。
ならば、自分もクロエの姿に化けて他の参加者を欺けるのではないかと、自分の身体に布を巻き付けたが、変身はできなかった。
おそらく、ウォーズマン以外では変身できない代物なのだろう。
変身できないならただの布切れなので、捨てた。

次は青い宝石・ジュエルシード。
説明書が無くなってるため、ギュオーはこの宝石の名前すらわからない。持てばエネルギーらしきものを感じ取れるが、肝心の使用用途がさっぱりだ。
エネルギーの塊ということだけはわかるので、そのうち何かに使えるかもしれないと思い、いちおうは所持しておくことにする。

次は玩具の銃・・・・・・否、デザインこそオモチャのようだが、決してオモチャでは無い。
『ケロロ小隊の光線銃』という立派な武器である。
ケロロ小隊と名前がついている所から、ケロロ軍曹やタママ二等兵と繋がりがありそうだが、ギュオーに取ってはそんなことはどうでも良い。
トリガーを引けば丸い銃口から実弾の代わりにビームが飛び出す。
格闘主体のウォーズマンにはそぐわない武器だからか、それともデザインから本当に玩具だと思い込んでしまったのか、どっちにしろ、未使用の状態でギュオーの手に渡ることになった。
「これは使えるな」とギュオーは評する。
この光線銃が重力指弾程度の代わりにはなりそうであり、体力の節約はできる。
体力に自信がない今はこの銃に頼ることにする。

787war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:00:53 ID:YrRABrO.
最後にスナック菓子。

「これは奴に支給された食料のようだな」

一見、何の変哲も無い菓子だが、正体は『日向ママDNAスナック』。
食べたものを巨乳にしてしまう、つぶれアンパンの人には喉から手が出るほど欲しい一品である(理由はお察しください)。
だが、ギュオーはこれをただの食料と思い込んでいる。
説明書はディパックの中にまだ入っているが、ギュオーは主催から支給された食料と思い込んでいる故に確認しない。
そして、ギュオーはその中から一袋を開ける。

「こんなものでも、食せば少しは足しにはなるだろう」

栄養摂取−−食べることで、体力の回復に繋げる。
今は僅かでも体力にプラスになることをしたかった。

そしてギュオーは、そのスナックの真の価値と恐ろしさを理解せぬまま口に入れ、咀嚼し飲み込み。


パリパリサクサク・・・・・・ゴクッ


「味はまあまあだな、少なくとも喰えないレベルではない。
 だが物足りん。もう一袋、食してみるか」

食べた物への感想を漏らしつつ、ギュオーはスナック菓子の袋をもう一つ開ける。
その一方でギュオーの二つの胸に変化が現れ−−



だがしかし、自身の異変に気づくより早く、ギュオーは何者かの気配を感じ、スナックを口に詰める作業を中断する。
あまりに突然だったため、ギュオーの額に冷や汗が流れる。

現状の自分でもキョンやスバル程度ならまだ良いが、リナ・インバースのような強者と鉢合わせになるのはマズイ−−とギュオーは危機感を抱く。
この目で見るまで気配の正体はわからないが、ギュオーの卓越した感覚と戦闘経験からして、確実にわかることは一つ。

(・・・・・・いる!
 それも一人ではなく、二人もしくは三人以上!)

788war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:03:48 ID:YrRABrO.
自分の近くにいる参加者は複数。
これで囲まれたり、正体がわからぬまま後手に回るのは面白くない。
ギュオーは素早く菓子袋をディパックにしまい、光線銃を構えながら周囲に気を配るなどの索敵行動に移る。
あくまで冷静に対処すべし、と心中で自分に言い聞かせ、神経を研ぎ澄ます。


ガサリッと草村が揺れる音と共に、標的は向こうから現れた。

「コイツらは・・・・・・!」

ギュオーの前に現れたのは巨大な毛むくじゃらの生き物、両端には有翼ゾアノイドのような女と小さな空飛ぶトカゲ。

ギュオーは一定の距離を保って、それらの正体を探りはじめる。
女とトカゲは首輪を付けてないので参加者ではない、支給品か何かだろう。こちらはとりあえず後回し。
問題なのは中央の巨大な生物だ。
特徴は、熊のような巨体・肉食獣を思わせる鋭い爪・大きな瞳に人を飲み込めそうな大きな口・ふくよかな毛皮・・・・・・
詳細参加者名簿の中に、それらの特徴に一致する参加者がいたことを、ギュオーは思い出す。


−−トトロ。
ギュオーの記憶が正しければ、見ようによっては恐ろしげな姿をしているが、心優しく無垢で温厚な生物。
かなりの巨体に反して俊敏で身軽。
通常は一定の年齢以下の子供にしか見えないようだが、この殺し合いにおいては大人も見れるように制限されたらしい。
その代わり、トトロ自身は喋れないが、人の言葉を理解できる程度に知能を強化されている。
他にも植物の成長を促す魔法の如き力があるが、こちらも制限を受けているらしい。
以上の情報を持って、ギュオーはトトロについて思案する。

(色々厄介な能力を持っていたらしいが、そのほとんどが封じられたようだな。
 こいつ一匹だけなら取るにたらない相手だ)

カタログスペック上では、このトトロと戦っても勝てるとギュオーは見込む。
だが、同時に疑念も過ぎる。

(そう言えば、神社のリングでレフェリーをしていたのも『トトロ』だったな。
 アレは主催者からの使者でもあった、つまり同種であるこの『トトロ』も主催者の差し金ではないのか?
 知覚を強化されたとは、主催者が『調整』など何らかの手を加えたのも明らかではないか?)

789war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:04:54 ID:YrRABrO.
トトロと主催者とは、なんらかの関連性があるかもしれない。
そう睨んだギュオーはトトロに悟られないように、心の中で邪悪な笑みを浮かべる。

(仮に主催者の手先だとしても、それでも都合が良い。
 どうせ喋れないのなら情報の取りようが無い。
 尋問もでき無いだろうが、死体にすれば色々物語ってくれそうだ。
 また、主催者との関わりは無くとも、奴の支給品が奪えるだけでも儲けものだ)

トトロを殺害する意思と打算が強まる。
それと反対にトトロは、敵意も殺意も警戒心も持たず、三日月のような口を作りながらこちらに近づいてくる。
トトロはギュオーを敵と見なしてないのだ。
だが、ギュオーに相手からの害意のありなしは関係ない。
あるのは、殺すメリットと殺さぬメリットのみ。
喋れぬトトロに生かすメリットは無いので、殺すメリットをギュオーは選ぶ。

(゛温厚で心優しい゛か・・・・・・私にとっては調度いいカモだな。
 知能を強化されても所詮は疑うことも知らぬ野生動物だ。
 さて、そろそろ・・・・・・)

考えがまとまった所で、いざギュオーが光線銃でトトロを撃とうとした瞬間、女性のものらしき声が響く。

『Mr.troII、何をしてるんですか!?
 彼はギュオー、危険なの男−−』



ビシューン バスッ



丸い銃口から一筋の閃光が放たれた!



しかし、トトロは咄嗟にジャンプをして光線をかわす。
トトロの代わりに背後にあった木に光線が命中し、命中した部分が焼けて焦げる。
当のトトロは木の上へ移っていた。

790war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:06:52 ID:YrRABrO.
(奴の俊敏さを侮ったわ、まさかあの距離でかわすとは。
 そして、抜かった・・・・・・奴は喋れずとも付属品が喋れる可能性を忘れていた・・・・・・
 声を発したあの手袋・・・・・・スバル・ナカジマが持っていた杖と同種の物か?)

ギュオーが予想外だったのは、トトロは予想以上に身が軽く、喋る手袋(ケリュケイオン)の存在に気づかなかったこと。
前者はもとい、後者の警告さえなければ一撃で仕留められたのに、とギュオーは手袋への疎ましさを感じた。

羽付きの女−ピクシーとトカゲ−フリードリヒが、ギャアギャアと威嚇しながらトトロの側に寄る。
トトロは他の二匹ほど、ギュオーへの敵意を向けてはいないが、先程の友好的な雰囲気も感じとれない。
その中でケリュケイオンは提案を出す。

『見ての通り、彼は危険です。
 すぐに逃げましょう』

ケリュケイオンのその言葉を聞くと、トトロたちは逃走を開始した。
トトロはまず木から降り、二足の足で素早く逃げる。
ピクシーとフリードリヒは羽根を動かして、トトロの背中を追うようについていく。

「逃がすか!」

ギュオーは逃げるケモノたちに光線を数発撃ち込むが、トトロたちの素早さに加えて木々に光線を阻まれ、当たらなかった。


ギュオーはケモノたちを追いかけながら思考する。

(なぜ奴らが私の名前を知っていた?
 ひょっとすると、あのガキや小娘と接触したのか?)

ギュオーがウォーズマンと戦っている間に、キョン・スバルもしくは両方と出会い、情報を流されたのかもしれない。

(ちょうど小僧がどこへ行ったかわからずに困っていたところだ・・・・・・あの手袋から、小僧の場所を聞き出すとしよう。
 もし小僧の居場所がわからずとも、私が殺し合いに乗っていることを言い触らされるのを黙って見過ごす気も無い。
 ・・・・・・やはり、ケモノは殺して、手袋を手に入れておくべきだな)


改めてトトロを殺すことに決めたギュオーは走行の加速度をあげる。
元々、人間どころかゾアノイドの何倍もパワーやスピードを強化された獣化兵。
その足の速さは人間や動物とは比較にならず、トトロたちと離された距離がぐんぐんと縮まっていく。

791war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:08:00 ID:YrRABrO.

そのさなかでギュオーは違和感を感じていた。

(肩が重い、胸に妙な苦しさを感じる・・・・・・私が思っていた以上に怪我と疲労は大きいのか、死んでも足を引っ張るウォーズマンめ!)

違和感の正体をウォーズマン戦での消耗が響いていると決めつけるギュオー。
違和感は拭えないが、ギュオーは構わずに走り続ける。

(ええい、些細な事などいちいち気にしてられん! 今は耐えるべきなのだ!
 そして、どんな相手でも全力で殺すと決めた以上、このギュオーは容赦せん!)

些細な違和感は無視する方針を固め、ただただ獲物を正面に見つめ、全力で追いかける。
例え、さっきまで求めていたガイバーの足跡がすぐそこにあることも知らないまま−−今は目の前の獲物に集中する。

「逃がさんよぉ!」

邪悪なスマイルと共に、トトロとの相対距離が大分埋まってきた所で、ギュオーは光線銃のトリガーを引いた・・・・・・


−−−−−−−−−−−

792war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:10:05 ID:YrRABrO.


『Mr.troII・・・・・・あなたは何をやっていたか理解しているのですか?』

ギュオーから逃げる獣の一行。
そのグループの中心であるトトロは森を走りつつ、ケリュケイオンからの嗜めを受けていた。

『彼、ギュオーは危険人物であるとリインフォースが警告しています。
 しかし、あなたのギュオーへの対応は理解しかねます』

トトロの行動は、危険人物と知って逃げる・隠れ戦うではなく、自分から踊り出て笑顔を振る舞った。
これでは相手に殺してくれと頼んだようなものだ。
トトロ自身も攻撃されてから、ようやく相手が危ないと気がついたのか、逃げる事を選んだらしい。
だが、ケリュケイオンは持ち主の不可解すぎる行動に、人間で言うところの『呆れた』様子である。

『今までの行動よりMr.troIIがとても優しい気性なのはわかりました。
 Ms.高町たちと協調して瀕死状態のMs.ナカジマを助け、Mr.キョンのような危険人物にすら身を案じる方ですしね。
 ・・・・・・ですが、今回に至っては危機感と慎重さに欠き過ぎています。
 その結果が、危険人物に追われているこの状況です』

あくまで持ち主の行動を分析しつつ、トトロへ注意を促すケリュケイオン。
言葉を喋れない動物なので、意味を理解しているかは謎だが、とにかく持ち主のパートナーであるデバイスとして、必要事項はどうしても言わなくてはならないと思考回路が判断したのだ。
ところがケリュケイオンの注意に対し、トトロの反応は無言。
理解していての無言か、その逆か、最初から聞き耳を立ててないのか、イマイチわからない。
ちなみにピクシーはケリュケイオンに向けて「キュイキュイ!」とやかましく鳴き声をあげている・・・・・・主人が蔑まされたと怒っているのか?
それでも、ケリュケイオンは反応が無い持ち主に続けて忠告する。

『次からはもっとよく考えて行動してください。
 でなければ−−』

−−自分で自分の身を滅ぼすことになります、と言葉を紡ごうとする寸前で、それを打ち切る。
その理由は、内蔵された索敵機能が異様な動きを捉え、即座にそれを報告するためである。

『−−目標急接近!!』
「ヴォオ」
「ギャウ!」
「キュイ?」

793war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:12:02 ID:YrRABrO.
テバイスの報告から、ケモノたちが首を振り向かせると、そこにいたのは怪物と化したギュオー。
それも、先程までそれなりの距離を稼いでいたハズが、いつまにか10mほどまで距離を詰められていた。
そして、銃から四度目の光線が放たれる。

『Mr.troII、右へ回避を!』

ケリュケイオンからの指示通り、トトロは近距離からの射撃を右に避けることで光線の直撃を回避する。
完全な回避は叶わずに、ディパックに掠って大穴を開けるが、それが幸をもたらした。
ディパックが支給品を溜め込む機能を失い、欠損部分から中身が吐き出される。
そして−−









−−濡れた紙類やスイカを含んだ大量の水が、鉄砲水のようにギュオーへ襲いかかる!!

「どわあああああああ!?」

水の勢いは強く、後ろへと押し流されるギュオー。
さらに追い撃ちをかけるように濡れた名簿やスイカが体に当たり、極めつけは円盤石がギュオーの顔面にクリーンヒットする。

ガツンッ
「うわらばッ」

水の勢いと、頭に飛んできた円盤石に負けたギュオーは仰向けに倒れる。


「ヴォ?」
『これは温泉の水?』

ディパックから飛び出した水はオレンジ色、温泉のお湯だ。
おそらく数刻前に温泉に入った時に、ディパックに入りこんだものだと、ケリュケイオンは理解する。
何はともあれ、ディパックが水を吐き出しきった頃にはギュオーはだいぶ後方へと流されていた。
しかし、ギュオーはすぐに起き上がってケモノたちを追跡してくるだろう。
油断はできない。

『チャンスです! 今の内に退却すべきです!』
「ヴォウ・・・・・・」

トトロはディパックから水と同時に出ていった三つ目の円盤石を見つめる。
だが、当の円盤石はギュオーのすぐ側に落ちている。
当然、取りに行くのは危険だ。
それでもトトロは、その円盤石を取り戻そうと一歩、足を動かすが・・・・・・

『戻っては駄目です!』
「ヴォ・・・・・・」
『あなたはもちろん、フリードリヒたちまで危険に巻き込む気ですか?』
「・・・・・・!」

ケリュケイオンに注意され、一度は静止を振り切れうとするが、仲間たちまで危険に曝せないと思っただろう。
トトロは淋しそうな表情を浮かべつつも、南へと向き直る。
デバイスに促されてトトロとケモノたちは逃走を再開する。
F-4からG-4、北から南へ、南へと駆けていく。

794war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:15:18 ID:YrRABrO.
ずぶ濡れのギュオーがムクリと起き上がり、沸々と怒りを覚える。

「この私に舐めた真似を・・・・・・!
 絶対に殺して、手袋から小僧の居場所を吐かせるぞ!!」

距離を大きく離されたが、見失うほど離れてはいない。
まずは自分の顔に一撃を食らわした円盤石を腹いせに踏み付ける。
普通なら円盤石が割れてもおかしくないギュオーの力だったが、水でぬかるんでいるため、地面にめり込む程度で済んだ。

そして、ギュオーは追跡を再開する。
後に残ったのは、ぐちゃぐちゃに濡れた紙類・割れたスイカがいくつか・円盤石、そして水溜まりだけである。


−−−−−−−−−−−

795war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:16:13 ID:YrRABrO.



追撃戦の過程で、ケモノたちは森の深くにある滝に連なる川の前までさしかかる。

『こうなっては仕方ありません。
 早く温泉へ向かい、Ms.高町たちと合流しましょう』

トトロではギュオーには敵わない(そもそも戦う意思が無い)。
このままでは命が危ないと判断したケリュケイオンは、温泉にいる仲間たちとの合流を提案する。
またしてもトトロからの返事は無いが、理解してくれるのならそれで良いとケリュケイオンは思った。


トトロはジャンプ、他の二匹は飛行して、川を越える。
そして針路を東へ、東へと・・・・・・

『待ってください、そちらは反対の方角です!』

温泉が西側にあるのに、東側へと走り込むトトロにケリュケイオンは警告を出す。
それでもトトロは警告を無視するように、ひたすら東へ走る。

(『どういうことなのでしょう・・・・・・?』)

単純に考えれば彼らが東へ行けば行くほど、仲間のいる温泉から遠退き、自分の都合が悪くなる。
それがわかってると仮定すると、デメリットしか背負わないのに東へ向かう意味をケリュケイオンが理解するのは、しばらく経ってからである。

796war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:16:55 ID:YrRABrO.

(『もしや、Mr.troIIは仲間のために、わざと東へとギュオーを誘導している?』)

ケリュケイオンが読んだトトロの意図は以下の通りだ。
トトロが温泉へ到着して仲間と合流できたとする。
しかし、ギュオーも確実についてくるだろう。
その際に、温泉にいるのは芯まで疲弊したエース・死に体から復活したばかりの魔導士・戦いには不向きな老人に実力が定かでは無い異星の軍人・・
総合ポテンシャルで考えるなら、真っ当に戦えたものでは無い。
ギュオーを撃退できたとしても、死人が出かねない被害が出る。
だから、ギュオーを温泉から引き離すために東へ向かうのだ。
トトロがそこまで深く考えてないにしろ、東へ誘導することで時間稼ぎはできる。
時間を稼いだ分だけ、温泉の仲間たちは失った体力・魔力を取り戻せる。
ついでに南方向へライガーと共に去ったキョンから注意を逸らすこともあり、キョンの安全はもちろん、ギュオーにガイバーユニットが渡ることを避けられる。
だが、それは自分がギュオーを撒くまで追われ続けなければいけない。
命掛けのリスクを背負っても、トトロはその道を選んでいるというのか?

(『−−自分から囮となるつもりですか、下手をすれば命を失うというのに、それでも構わないのでしょうか?』)

思い返せば、トトロはただ争いを好まないだけでなく、自分から率先して人を助け、争いや暴力を良しとはせず、他人が傷つけ合うことを嫌う。
そして誰とも優しく振る舞い仲良くしようとする姿は、まるで無垢な子供のようだ。
無垢ゆえに危険人物というレッテルは意味を成さず、トトロは公平に誰であろうと助けようとする。
複数人の人間を危めたキョンも怖れずに(具体的な解決はできてないが)手助けした。
ついさっき、ギュオーと自分から接触しようとしたのも、手を差し延べて仲良くなりたかっただけかもしれない。
しかし、その優しさが必ずしも良い方向に傾くとは限らず、今こうしてギュオーに追われているのも、悪い結果の一つと言える。

797war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:17:52 ID:YrRABrO.
相手が何者だろうと公平に優しく、非暴力主義なのは素晴らしいことではあるが、それは同時に危うさを秘めている。
誰しもがその優しさに応えるとは限らず、呼吸と人殺しが同義の人物にはまず通用しない。
殺人を厭わない人物が多くいるこの殺し合いでは、強い優しさは己の身を滅ぼしかねない両刃の剣でもあるのだ。
しかし、自身の危険を省みず怖れない姿勢は、一種の献身さを感じ取れる。
ゆえに、ただの他者に甘いだけの偽善者とは言い切れない。

(『−−これは考え過ぎでしょうか?
 でも、この考えが全て当て嵌まるなら、Mr.troIIは素晴らしい動物なのでしょう。
 ただし、この殺し合いの過酷な環境では長生きできないタイプでしょう』)

それが、ケリュケイオンのトトロの行動に関する考察と、人物像の評価である。


ケリュケイオンが思考している内に、ギュオーもまた川を越えて追いかけてきた。

『目標、再接近!』
「待てぃ! 黙って私に殺されるがいい!!」


ギュオーに追われながら、尚も東へ向かうケモノたち。

(『東側にも殺し合いに乗ってない者や、逆に殺し合いに乗った人物もいるでしょう。
そうなった場合は、臨機応変に対応するしかありませんが、人の言葉を喋れないMr.troIIだけでは心もとないでしょう。
私が全力でカバーしなければならないようです』)

東側へ向かうほど、温泉から離れていく。
これではしばらく仲間と合流するのは無理だろう。
きっと仲間たちは帰りが遅いトトロたちを心配する。
それでも−−

(『−−いつかは、Mr.trollたちをMs.高町たちと無事に合流させるために力を尽くします』)

そのように、ケリュケイオンは思考回路に書き込む・・・・・・人間の言葉で置き換えるならば゛心に誓った゛のだった。

798war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:18:30 ID:YrRABrO.
−−デバイスが思考をしている裏で、トトロは悲しそうな表情を浮かべている。
その表情を知るのは、側にいるフリードリヒとピクシーのみ。
二者は悲しむトトロを労うように鳴く。

「キュックル〜」
「キュイ・・・・・・」

トトロが悲しんでいるのは
追跡者に追われる恐怖からか?
好意をギュオーに裏切られたことか?
蛮獣の如く、コミュニケーションの余地も無く襲いかかったギュオーへの哀れみか?
仲良くしたいのに、思い通りにいかなかったからか?
その表情の正しい意味を知るのは、本人とケモノたちくらいだろう。

誰でもわかるのは、夜明けと争いの終焉はまだ先だということ、のみ・・・・・・




−−−−−−−−−−−

799war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:20:26 ID:YrRABrO.

〜 お ま け 〜



(『しかし、リインフォースからの情報では、ギュオーの胸が大きいとはありませんでしたが・・・・・・』)

豊乳になったギュオー本人は獲物を狩るのに集中力を割いているため、気づいていない。
着ている人間の体型にがっちりフィットする、つまりは胸が弾まないほど圧迫するプラグスーツを着ているのも、ギュオーが気づけない要因の一つである。
だが、ケリュケイオンは本人よりも早く、胸部の異変に気づいていた模様。
ケモノたちは・・・・・・わからない、そもそも興味がないかもしれない。

(『とにかく、なるべく情報を的確にするために、ギュオーが゛豊乳゛の持ち主であると加える必要があるでしょう。
 殺し合いに乗っていない人物に出会い次第、伝えなくてはなりません』)

゛ギュオーが豊乳゛であることを伝えることは、決して悪気や茶目っ気があるわけではない。
ケリュケイオンが、あくまで情報を正確に伝えるためである。
だがそれは、ギュオーがトトロを逃がすと、ケリュケイオンによって゛ギュオーが豊乳=巨乳゛という情報が広まるのである。

また、ギュオーも、いずれは自分の胸が女性のように大きくなっていることを、たぶん、知る。
ギュオーに善意や友愛の心はなくとも、羞恥心ぐらいはあるだろう。
ギュオーは自分の大きくなった胸を見てなんと思うことか・・・・・・
そして、デバイスによってその事実が拡散されようとしている・・・・・・

どうなるギュオー!?


こうして獣神将リヒャルト・ギュオーは、某妖怪いわく゛ボインちゃん゛の仲間入りを見事に果たしたのだった。

ギャフン。

800war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:22:20 ID:YrRABrO.
【G-4 森(川周辺)/一日目・夜】

【トトロ@となりのトトロ】
【状態】腹部に小ダメージ
【持ち物】ディパック(損壊)、ピクシー(疲労・大)@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜
     フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1、自然の破壊に深い悲しみ
2、誰にも傷ついてほしくない
3、?????????????????

【備考】
※ケリュケイオンは古泉の手紙を読みました。
※東へ向かっています。
ケリュケイオンの読みでは、ギュオーを仲間から引き離すために東側へ誘導していると思っています。
本当にそうかは、次の書き手さんにお任せします。
※ギュオーの巨乳化にケリュケイオンは気づいています。トトロたちは不明です。

801war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:23:19 ID:YrRABrO.

【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】全身軽い打撲、左肩負傷、頭部にダメージ(小)、ダメージ(大)、疲労(大)、巨乳
【持ち物】支給品一式×4(一つ水損失)、参加者詳細名簿、首輪(草壁メイ)、首輪(加持リョウジ)、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリヲン、毒入りカプセル×4@現実
     博物館のパンフ、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー
     詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×11@ケロロ軍曹
     ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、E:ケロロ小隊の光線銃(16/20)@ケロロ軍曹
【思考】
0、トトロを殺し手袋からキョンの行方を聞き出す。
 キョンの行方を知らなくとも、自分の情報の漏洩を防ぐために殺す。
1、優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2、キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3、自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4、首輪を解除できる参加者を探す。
5、ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6、タママを気に入っているが、時が来れば殺す。
7、疲労とダメージのせいで違和感を感じるが、今は耐える。(巨乳化に気づいていない)

【備考】
※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」に関する記述部分を破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されている可能性に思い至りました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の「加持リョウジ」に関するページは破り取られていてありません。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。
※日向ママDNAスナックを食べて巨乳化しました。本人は気づいてません。

802war war! stop it ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:24:32 ID:YrRABrO.


※F-4のどこかに、クロエ変身用黒い布、濡れた支給品一式、スイカ×5(いくつか割れてる)、円盤石(1/3)+αセット@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜が放置されています。



【ケロロ小隊の光線銃@ケロロ軍曹】
ケロロ小隊が劇中でよく使う光線銃。
光線(ビーム)を放って攻撃できる。最大発射数は20。
銃口が丸いのを除けば、デザインが『機動戦士ガンダム』のビームライフルにそっくり。

調べてもこの武器の正式名称がわからないので、この名前で載せました。

803 ◆igHRJuEN0s:2010/02/23(火) 15:26:35 ID:YrRABrO.
以上で投下を終了いたします。
矛盾や誤字がある場合はご指摘願います。


タイトル元ネタは『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズ』のOPテーマ曲より。

804もふもふーな名無しさん:2010/02/23(火) 17:41:34 ID:4SjSwl7w
仮投下乙です。
単純な疑問なのですがケリュケイオンは神社での戦いやギュオーの事を知っていたでしょうか?
ケリュケイオンはマッハキャリバーやリインⅡとデータのやり取りを行っていなかった気がするのですが……

805もふもふーな名無しさん:2010/02/23(火) 17:51:55 ID:4SjSwl7w
あとこれは指摘では無いのですが日向ママDNAスナックを食べた効果が胸に脂肪が付くだけではもったいない気がします。
大量に食べた効果でギュオーが日向ママに変身してそこでトトロ達と鉢合わせしたり
敵対するのは同じものの「謎の女性に襲われた」と誤解フラグを作る手もあるかと思います。
せめて声変わりぐらいはしてもいいかと思いました。

806もふもふーな名無しさん:2010/02/25(木) 01:31:24 ID:ezHPqTSk
投下されてたのに気付けなかった…遅まきながら投下乙です!

修正中という事なので感想は後ほど。
だけど一つだけ言いたい、ボイン閣下www

それと指摘というほどじゃないですけど
>その代わり、トトロ自身は喋れないが、人の言葉を理解できる程度に知能を強化されている。
トトロって人の言葉を理解できる程度の知能は元々あったような…。

807 ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:43:00 ID:YrRABrO.
お待たせしました。
かなり微妙な時刻ですが、修正版をこの仮投下スレに投下いたします。

808war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:46:22 ID:YrRABrO.
森の中を前進していく、ふくよかな毛皮に包まれた巨躯なケモノ・トトロと、妖精型モンスター・ピクシーに小さな竜のフリードリヒ、宝石の姿をしたデバイス・ケリュケイオンを含めたケモノたち一行。
危険人物だったキョンを、トトロの意思によっていずこへ逃がした後、高町なのはたちがいる温泉へ戻るハズであった・・・・・・
だが、彼らは真っ直ぐ温泉へ向かっているわけではないようだ。

『Mr,troll、どうしたのですか?
 温泉はそちらではありませんよ?』

温泉へ戻るコースから外れていることに関してケリュケイオンは持ち主に忠告を述べる。
しかし、持ち主であるトトロは「ヴォウ」と短い返事だけをして、前進を続ける。
人の言葉ではないトトロの返事の内容はさっぱりだが、前進を続けている様子からして、忠告は聞き入れてもらってないようだとケリュケイオンは理解した。

『帰還が遅いとMs,高町たちが心配します。
 あなたが彼女らに心配をかけたくないのでしたら、寄り道はせずに早めの帰還を推奨します』

今度は先の言葉に仲間の事情などを付け加えて発言するが、これも聞き入れては貰えず、獣たちは前進を続ける。
温泉のある西ではなく、北へ、北へと前進していく。

ケリュケイオンもだんだん、獣たちの意図に気づき始める。
トトロは気まぐれで北へ向かうのではなく、足跡を辿ってどこかへ行こうとしている。
その根拠に、ケモノたちはなんとなく進んでいるわけではなく、一点を目指して前進している。
前進した先にあるモノをケリュケイオンは、少なくともまだ、捉えていない。
しかし、獣は人や機械では感じとれない臭いや異音・大地の微妙な揺れもわかるものだ。
時にその探索能力は、精密機械を越える。
そしてケモノたちは、ケリュケイオンにとって索敵外の先にある何かを感じ取り、彼はそこを目指して突き進んでいるように見える。
向かう先に何かがあるのは確かだろう。


先にあるのが死体ならば、トトロに温泉まで運んでもらい、ゲーム脱出のために不可欠と思われる、首輪を解除するための分析に役立ててもらおう。
支給品があるなら、拾って役立てる。
神殿のような隠れた施設があるなら、よく調べた上で温泉の仲間たちに報告などをする。

809war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:47:45 ID:YrRABrO.
そして、殺し合いに乗っていない参加者と合流できたのなら僥倖である。
参加者自身の安全の確保でき、実力や技術があるならば脱出のための協力を頼みこめる。
だが、殺し合いに乗った危険人物がいるケースも考えうる。
もしそうならば、接触は避けるべきであり、斥候のように温泉にいる仲間に注意を呼びかけなくてはならない。
また、キョン(及びスバル)を拾ったのもこの辺りである。
当事者と言えるレイジングハート・リインフォースと情報を交換できないほど、状況が急に急を重ねたため、詳しい事情はよくわかっていない。
キョンがスバルから逃げていたとも考えられるが、早々安易に決めつけられるものではない。
二人とも危険人物に襲われ、逃げてきた可能性もあるのだ。
そんな危険人物との接触には断然、注意を払うべきだろう。


・・・・・・と、ケリュケイオンは思考を働かせつつ、いつ何が起きても良いように警戒レベルを最大限に引き上げる。


やがてケリュケイオンも、索敵範囲内に一人の人物を捉えた。
現在地はG-4を越えたばかりのF-4、深い森の中においてトトロたちは参加者を発見する。
しかし、その者はケリュケイオンが求めていた人物ではなかった。

赤いプロテクトスーツのようなものを纏うその怪人は−−



−−−−−−−−−−−

810war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:48:50 ID:YrRABrO.



−−リヒャルト・ギュオー。
覇道を歩むべく、ガイバーユニットを求め、邁進する者。
だが、その道程は本人が想像しているよりも遥かに険しいようだ。

「どこだ・・・・・・どこへ行ったんだあの小僧は!」

ガイバーユニットを持ったキョンが神社から西側へ出ていったのを知っているため、彼を追うために禁止エリアになったF-5から西のF-4の森へと移った。
しかし、西側へ出たはよかったがキョンの詳しい行き先は掴めないでいる。
足跡でも見つければ、いずれキョンの居所へ辿りつけるだろうが、その足跡すら見つかってない。
ちなみに禁止エリア脱出の時は、下を見ている余裕などなかったため、足跡は見ていない。
今はどうにかキョンの足どりを掴むために森をさ迷っている。
ギュオーに降り懸かる障害はそれだけではない。

「くそぅ、動くのも億劫だぞ。
 先の戦いで消耗し過ぎたか?」

神社のリングマッチではウォーズマンに勝利し、結果的に死に至らしめた。
だが、その勝利は易々と手に入れたものにあらず。
ギュオーは戦闘の中で多大なダメージと疲労を被り、損耗を強いられることになる。
それは常人の何倍もの強化が施された肉体が軋みを上げ、ゼェゼェと息は上がるほどだ。
禁止エリアになる神社からの脱出の際には猛ダッシュを見せたが、それは首輪が発動しかけるギリギリの状況下によって発揮された興奮状態による火事場の馬鹿力であり、あくまで一時的なものである。
興奮が冷めた今となっては、忘れていた傷の痛みと疲労を身体に思い出させ、おまけに首輪の発動寸前において味わった気味の悪い出来事・それによって生まれた焦りが加算され、ズッシリとギュオーにのしかかっている。

「おのれぇ〜、あのポンコツのガラクタめ」

思うように進まない足、怪我の痛みにギュオーは苛立ちを覚え、その原因を作ったウォーズマンに対して侮蔑の言葉を叩き付ける。

「待っていろよ!
 おまえが守ろうとしたガキを墓場に、サイボーグの小娘はスクラップ置場に送ってやろう!
 そしてユニットを手に入れ、私は神への道を踏み出すのだ! フハハハハハハ!!」

811war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:49:56 ID:YrRABrO.
続けてギュオーの口から吐き出されたのは、なんともヒールチックなスローガン。
少年少女を殺し、ガイバーユニットを手に入れ、自分は勝者になると声高々に宣言するのだった。
これは苛立ちを戦意に変えるためのパフォーマンスでもある。

「・・・・・・ぬぅ」

だが、いかに戦意を高ぶらせようとも、それ以上に消耗は大きい。
今もまた、足がグラついた所だ。

「しばし休むべきか・・・・・・いいや、ダメだ」

獣神将である以上、怪我は時間が経てば再生し、休憩をとれば疲労も取り除かれるだろう。
されど、今のギュオーに休む暇は無い。
時間の都合から考えてキョンが『足の早い者に運ばれない限り』、そう遠くへは行ってないだろう。
しかし、休んでる間に目的のガイバーユニットを持ったキョンはどんどん逃げていく。
その上でユニットが他者に奪われたり、合流されたりすると事態がややこしくなってしまう。
ギュオーが神になるには、誰よりもいち早く手に入れる必要があるのだ。
せっかく目前まで迫ったチャンスを手放す気はギュオーにない。
今こそが、多少の無理は承知の上で走り続ければならぬ踏ん張り時なのである。


「しかし・・・・・・」

そこで、ギュオーの脳裏に懸念材料が浮かぶ。
もしも他の参加者と出会い、戦闘になってしまったら?
戦闘の心得が無いキョンや満身創痍のスバルなら、疲弊した今でも殺せる自信が己にはある。
しかし、ウォーズマンクラスの実力者と出会い、それでまかり間違えれば命が危うい。
詳細参加者名簿の内容をかなり把握しているため、参加者ごとの対処法はそれなりに心得ているが、その対処法を実行できる余力が少ない。

「・・・・・・何か良いものはないか?」

そこでギュオーは、支給品の中に傷や体力をいち早く回復できるものは無いかとディパックを漁り始める。
回復に纏わる支給品は元は持ち合わせてなかったが、ウォーズマンから奪った支給品の中にはあるかもしれないと期待してのことである。


ディパックを探った結果、加持リョウジの詳細の書かれた紙切れ・どこかで見た黒い布・謎の宝石・玩具の銃・スナック菓子、などを見つけた。
上から順に支給品を分析する。

812war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:50:42 ID:YrRABrO.
加持リョウジの詳細が書かれた紙切れは、ギュオーが加持に関する情報を隠蔽するために捨てたものを、ウォーズマンが拾ったものだろう。
回復には役立ないが、紙切れ一つで嘘がバレることに繋がることはわかったので、今後から証拠の隠滅は徹底的にやろうと肝に銘じ、ディパックにしまう。

黒い布は、ウォーズマンが『真っ黒クロエ』に変身するために使ってたものだ。
ならば、自分もクロエの姿に化けて他の参加者を欺けるのではないかと、自分の身体に布を巻き付けたが、変身はできなかった。
おそらく、ウォーズマン以外では変身できない代物なのだろう。
変身できないならただの布切れなので、捨てた。

次は青い宝石・ジュエルシード。
説明書が無くなってるため、ギュオーはこの宝石の名前すらわからない。持てばエネルギーらしきものを感じ取れるが、肝心の使用用途がさっぱりだ。
エネルギーの塊ということだけはわかるので、そのうち何かに使えるかもしれないと思い、いちおうは所持しておくことにする。

次は玩具の銃・・・・・・否、デザインこそオモチャのようだが、決してオモチャでは無い。
『ケロロ小隊の光線銃』という立派な武器である。
ケロロ小隊と名前がついている所から、ケロロ軍曹やタママ二等兵と繋がりがありそうだが、ギュオーに取ってはそんなことはどうでも良い。
トリガーを引けば丸い銃口から実弾の代わりにビームが飛び出す。
格闘主体のウォーズマンにはそぐわない武器だからか、それともデザインから本当に玩具だと思い込んでしまったのか、どっちにしろ、未使用の状態でギュオーの手に渡ることになった。
「これは使えるな」とギュオーは評する。
この光線銃が重力指弾程度の代わりにはなりそうであり、体力の節約はできる。
体力に自信がない今はこの銃に頼ることにする。


最後にスナック菓子。

「これは奴に支給された食料のようだな」

813war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:51:39 ID:YrRABrO.
一見、何の変哲も無い菓子だが、正体は『日向ママDNAスナック』。
食べたものを巨乳にしてしまう、つぶれアンパンの人には喉から手が出るほど欲しい一品である(理由はお察しください)。
だが、このスナックにはまだとてつもない秘密があるが−−これはまだ伏せておこう。
ギュオーはこれをただの食料と思い込んでいる。
説明書はディパックの中にまだ入っているが、ギュオーは主催から支給された食料と思い込んでいる故に確認しない。
そして、ギュオーはその中から一袋を開ける。

「こんなものでも、食せば少しは足しにはなるだろう」

栄養摂取−−食べることで、体力の回復に繋げる。
今は僅かでも体力にプラスになることをしたかった。

そしてギュオーは、そのスナックの真の価値と恐ろしさを理解せぬまま口に入れた。


パリパリサクサク・・・・・・


「味はまあまあだな、少なくとも喰えないレベルではない。
 だが物足りん。もう一袋、食してみるか」

食べた物への感想を漏らしつつ、ギュオーはスナック菓子の袋をもう一つ開ける。
その一方でギュオーの二つの胸に変化が現れ−−



だがしかし、胸の異変に気づくより早く、ギュオーは何者かの気配を感じ、スナックを口に詰める作業を中断する。
あまりに突然だったため、ギュオーの額に冷や汗が流れる。

現状の自分でもキョンやスバル程度ならまだ良いが、リナ・インバースのような強者と鉢合わせになるのはマズイ−−とギュオーは危機感を抱く。
この目で見るまで気配の正体はわからないが、ギュオーの卓越した感覚と戦闘経験からして、確実にわかることは一つ。

(・・・・・・いる!
 それも一人ではなく、二人もしくは三人以上!)

814war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:55:33 ID:YrRABrO.
自分の近くにいる参加者は複数。
これで囲まれたり、正体がわからぬまま後手に回るのは面白くない。
ギュオーは素早く菓子袋をディパックにしまい、光線銃を構えながら周囲に気を配るなどの索敵行動に移る。
あくまで冷静に対処すべし、と心中で自分に言い聞かせ、神経を研ぎ澄ます。


ガサリッと草村が揺れる音と共に、標的は向こうから現れた。

「コイツらは・・・・・・!」

ギュオーの前に現れたのは巨大な毛むくじゃらの生き物、両端には有翼ゾアノイドのような女。

ギュオーは一定の距離を保って、それらの正体を探りはじめる。
女は首輪を付けてないので参加者ではなく、支給品か何かだろう。こちらはとりあえず後回し。
問題なのは巨大な生物の方だ。
特徴は、熊のような巨体・肉食獣を思わせる鋭い爪・大きな瞳に人を飲み込めそうな大きな口・ふくよかな毛皮・・
詳細参加者名簿の中に、それらの特徴に一致する参加者がいたことを、ギュオーは思い出す。


−−トトロ。
ギュオーの記憶が正しければ、見ようによっては恐ろしげな姿をしているが、心優しく無垢で温厚な生物。
かなりの巨体に反して俊敏で身軽。
通常は一定の年齢以下の子供にしか見えないようだが、この殺し合いにおいては大人も見れるように制限されたらしい。
自身は喋れないが、人の言葉をある程度なら理解できる高い知能を持ち合わせている。
他にも植物の成長を促す魔法の如き力があったりするが、こちらも制限を受けているらしい。
以上の情報を持って、ギュオーはトトロについて思案する。

(色々厄介な能力を持っていたらしいが、そのほとんどが封じられたようだな。
 こいつ一匹だけなら取るにたらない相手だ)

カタログスペック上では、このトトロと戦っても勝てるとギュオーは見込む。
だが、同時に疑念も過ぎる。

(そう言えば、神社のリングでレフェリーをしていたのも『トトロ』だったな。
 アレは主催者からの使者でもあった、つまり同種であるこの『トトロ』も主催者の差し金とも考えられるか?)

トトロと主催者とは、なんらかの関連性があるかもしれない。
そう睨んだギュオーはトトロに悟られないように、心の中で邪悪な笑みを浮かべる。

815war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:57:43 ID:YrRABrO.

(仮に主催者の手先だとしても、それでも都合が良い。
 どうせ喋れないのなら情報の取りようが無い。
 尋問もでき無いだろうが、死体にすれば色々物語ってくれそうだ。
 また、主催者との関わりは無くとも、奴の支給品が奪えるだけでも儲けものだ)

トトロを殺害する意思と打算が強まる。
それと反対にトトロは、敵意も殺意も警戒心も持たず、三日月のような口を作りながらこちらに近づいてくる。
トトロはギュオーを敵と見なしてないのだ。
だが、ギュオーに相手からの害意のありなしは関係ない。
あるのは、殺すメリットと殺さぬメリットのみ。
喋れぬトトロに生かすメリットは無いので、殺すメリットをギュオーは選ぶ。

(゛温厚で心優しい゛か・・・・・・私にとっては調度いいカモだな。
 知能を高くても所詮は疑うことも知らぬ野生動物だ。
 さて、そろそろ・・・・・・)

考えがまとまった所で、いざギュオーが光線銃でトトロに向け撃とうとした瞬間。

『Mr.troII、迂闊です! その人が危険人物である可能性も−−』



ビシューン バスッ



女性の警告が聞こえたのと同時に丸い銃口から一筋の閃光が放たれる。



しかし、それよりも早くトトロの背後に隠れていたフリードリヒが飛び出して、ギュオーの手に噛み付き、照準を逸らした。
光線はトトロの頬を掠めて、体毛を焦がす程度ですんだ。

「離せ、このぉ!」
「キュゥゥゥ!?」

手を噛まれたギュオーは、素手でフリードリヒを振り払う。
フリードリヒは、運よく弾かれた先にいたトトロがキャッチしたため、大きなダメージを受けることはなかった。
しかし、トトロに直に触れているフリードリヒとケリュケイオンには、トトロの毛が逆立っているとわかる。
流石のトトロも、撃たれかけて肝を冷やしたということか。

(小癪な! まさか陰にもう一匹トカゲが隠れていたとは!
 そして、抜かった・・・・・・奴自身は喋れずとも付属品が喋れる可能性を忘れていた・・・・・・
 声を発したあの宝石は、スバル・ナカジマが持っていた杖と同種の物か?)

失敗とそれによる苛立ちを抱えながらも、相手を分析するギュオー。
トトロの側にいる羽付きの女−ピクシーとトカゲ−フリードリヒはギャアギャアと威嚇している。

816war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:59:00 ID:YrRABrO.
トトロ自身は他の二匹ほど、ギュオーへの敵意を向けてはいないが、先程の友好的な雰囲気も感じとれない。
その中で、目の前の人物・ギュオーが危険だと知ったケリュケイオンは提案を出す。

『相手は話しあいの余地もなく撃ってきました!
 彼は間違いなく危険です、逃げてください!』

ケリュケイオンのその言葉を聞くと、トトロたちは逃走を開始した。
トトロは踵を返し、二足の足で素早く逃げる。
ピクシーとフリードリヒは羽根を動かして、トトロの背中を追うようについていく。

「逃がすか!」

ギュオーは逃げるケモノたちに光線を数発撃ち込むが、トトロたちの素早さに加えて木々に光線を阻まれ、当たることはなかった。


ギュオーはケモノたちを追いかけながら思考する。

(私が殺し合いに乗っていることを言い触らされるのを黙って見過ごしたくは無い。
 しかし、ユニットも捜さねばならん・・・・・・どうする?)

トトロを殺すか?
ガイバーユニットを手に入れるのが先か?
悩んでいる間に一つの事象が、ギュオーの脳裏を過ぎる。
自分がウォーズマンと戦っている間に、キョン・スバルもしくは両方と出会っていたとしたら?

(−−有り得る。
 小僧と小娘がこの辺りへ逃げ込んだのは確かだし、出会っていてもおかしくはない。
 もしそうならば、ケモノを殺して喋る宝石を奪い、居場所を聞き出す必要がある。
 ちょうど小僧がどこへ行ったかわからずに困っていたところだしな。
 一石二鳥か一石一鳥の違いだが、それに賭けてみるか)

改めてトトロを殺すことに決めたギュオーは走る加速度をあげる。
元々、人間どころかゾアノイドの何倍もパワーやスピードを強化された獣化兵。
その足の速さは人間や動物とは比較にならず、トトロたちと離された距離がぐんぐんと縮まっていく。


そのさなかでギュオーは違和感を感じていた。

(肩が重い、胸に妙な苦しさを感じる、おまけに低い声が出ずらい・・・・・・
 私が思っていた以上に怪我と疲労は大きいのか、死んでも足を引っ張るウォーズマンめ!)

身体の違和感の正体をウォーズマン戦での消耗が原因だと決めつけるギュオー。
違和感は拭えないが、ギュオーはそれでも構わずに走り続ける。

817war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 00:59:31 ID:YrRABrO.
(ええい、些細な事などいちいち気にしてられん! 今は耐えるべきなのだ!
 そして、どんな相手でも全力で殺すと決めた以上、このギュオーは容赦せん!)

些細な違和感は無視する方針を固め、ただただ獲物を正面に見つめ、全力で追いかける。
例え、さっきまで求めていたガイバーの足跡がすぐそこにあることも知らないまま−−今は目の前の獲物に集中する。

「逃がさんよぉ!」

邪悪なスマイルと共に、トトロとの相対距離が大分埋まってきた所で、ギュオーは光線銃のトリガーを引いた・・・・・・


−−−−−−−−−−−

818war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:01:00 ID:YrRABrO.


『Mr.troII・・・・・・あなたは自分で何をやっていたか理解しているのですか?』

ギュオーから逃げる獣の一行。
そのグループの中心であるトトロは森を走りつつ、ケリュケイオンからの嗜めを受けていた。

『フリードリヒがいち早く行動してくれたおかげで最悪の結果−−あなたの死亡は免れました。
 ですが、その結果を招きかけたのは、他ならぬあなたなのです』

トトロの行動は人を見かけると隠れたり、様子を伺ったり、相手を確かめることもしないまま、自分から踊り出て笑顔を振る舞った。
これでは殺戮者相手には、殺してくれと頼んだようなものだ。
トトロ自身も攻撃されてから、ようやく相手が危ないと気がついたのか、逃げる事を選んだらしい。
だが、ケリュケイオンは持ち主の不可解すぎる行動に、人間で言うところの『呆れた』『ご立腹な』様子である。

『今までの行動よりMr.troIIがとても優しい気性なのはわかりました。
 Ms.高町たちと協調して瀕死状態のMs.ナカジマを助け、Mr.キョンのような危険人物にすら身を案じる方ですしね。
 ・・・・・・ですが、今回に至っては危機感と慎重さに欠き過ぎています。
 その結果が、あの怪人物に追われているこの状況です』

あくまで持ち主の行動を分析しつつ、トトロへ注意を促すケリュケイオン。
言葉を喋れない動物なので、意味を理解しているかは謎だが、とにかく持ち主のパートナーであるデバイスとして、必要事項はどうしても言わなくてはならないと思考回路が判断したのだ。
ところがケリュケイオンの注意に対し、トトロの反応は無言。
理解していての無言か、その逆か、最初から聞き耳を立ててないのか、イマイチわからない。
ちなみにピクシーはケリュケイオンに向けて「キュイキュイ!」と騒がしく鳴き声をあげている・・・・・・主人が蔑まされたと怒っているのか?
とりあえず、ケリュケイオンは反応が無い持ち主に続けて忠告する。

『次からはもっとよく考えて行動してください。
 でなければ−−』

−−自分で自分の身を滅ぼすことになります、と言葉を紡ごうとする寸前で、それを打ち切る。
その理由は、内蔵された索敵機能が異様な動きを捉え、即座にそれを報告するためである。

819war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:03:55 ID:YrRABrO.
『−−目標急接近!!』
「ヴォウ」
「ギャア!」
「?」

テバイスの報告から、ケモノたちが首を振り向かせると、そこにいたのは怪人・ギュオー。
それも、先程までそれなりの距離を稼いでいたハズが、いつまにか10mほどまで距離を詰められていた。
そして、銃から四度目の光線が放たれる。

『Mr.troII、右へ回避を!』

ケリュケイオンからの指示通り、トトロは近距離からの射撃を右に避けることで光線の直撃を回避する。
完全な回避は叶わずに、ディパックに当たって大穴を開けるが、それが幸をもたらした。
ディパックが支給品を溜め込む機能を失い、欠損部分から中身が吐き出される。
そして−−










−−濡れた紙類やスイカを含んだ大量の水が、鉄砲水のようにギュオーへ襲いかかる!!

「どわあああああああ!?」

水の勢いは強く、後ろへと押し流されるギュオー。
さらに追い撃ちをかけるように濡れた名簿やスイカが体に当たり、極めつけは円盤石がギュオーの顔面にクリーンヒットする。

ガツンッ
「うわらばッ」

水の勢いと、頭に飛んできた円盤石に負けたギュオーは仰向けに倒れる。


『これは・・・・・・温泉の水?』

ディパックから飛び出した水はオレンジ色、温泉のお湯だ。
おそらく以前に温泉に入った時に、ディパックに入りこんだものだと、ケリュケイオンは理解する。
何はともあれ、ディパックが水を吐き出しきった頃にはギュオーはだいぶ後方へと流されていた。
しかし、すぐに起き上がってケモノたちを追跡してくるだろう。
油断はできない。

『チャンスです! 今の内に退却すべきです!』
「ヴォウ・・・・・・」

トトロはディパックから水と同時に出ていった三つ目の円盤石を見つめる。
だが、当の円盤石はギュオーのすぐ側に落ちている。
当然、取りに行くのは危険だ。
それでもトトロは、その円盤石を取り戻そうと一歩、足を動かすが・・

『戻っては駄目です!
 諦めてください!』
「ヴォ・・・・・・」
『あなたはもちろん、フリードリヒたちまで巻き込む気ですか?』
「・・・・・・」

ケリュケイオンに注意され一度は静止を振り切れうとするが、仲間たちまで危険に曝せないとわかったのだろう。
トトロは淋しそうな表情を浮かべつつも、南へと向き直る。
デバイスに促されてトトロとケモノたちは逃走を再開する。
F-4からG-4、北から南へ、南へと駆けていく。

820war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:06:04 ID:YrRABrO.
ずぶ濡れのギュオーがムクリと起き上がり、沸々と怒りを覚える。

「この私に舐めた真似を・・・・・・!
 絶対に殺して、あの宝石から小僧の居場所を吐かせるぞ!!」

距離を大きく離されたが、見失うほど離れてはいない。
まずは自分の顔に一撃を食らわした円盤石を腹いせに踏み付ける。
普通なら円盤石が割れてもおかしくないギュオーの力だったが、水でぬかるんでいるため、やわい地面にめり込む程度で済んだ。

そして、ギュオーは追跡を再開する。
後に残ったのは、ぐちゃぐちゃに濡れた紙類・割れたスイカがいくつか・円盤石、そして水溜まりだけである。


−−−−−−−−−−−


追撃戦の過程で、ケモノたちは森の深くにある滝に連なる川の前までさしかかる。

『こうなっては仕方ありません。
 早く温泉へ向かい、Ms.高町たちと合流しましょう』

トトロではあの怪人には敵わない(そもそも戦う意思が無い)。
このままでは命が危ないと判断したケリュケイオンは、温泉にいる仲間たちとの合流を提案する。
またしてもトトロからの返事は無いが、理解してくれるのならそれで良いとケリュケイオンは思っていた。


トトロはジャンプ、他の二匹は飛行して、川を越える。
そして針路を東へ、東へと・・・・・・

『待ってください、そちらは反対の方角です!』

温泉が西側にあるのに、東側へと走り込むトトロにケリュケイオンは警告を出す。
それでもトトロは警告を無視するように、ひたすら東へ走る。

(『どういうことなのでしょう・・・・・・?』)

単純に考えれば彼らが東へ行けば行くほど、仲間のいる温泉から遠退き、自分の都合が悪くなる。
それがわかってると仮定すると、デメリットしか背負わないのに東へ向かう意味をケリュケイオンが理解するのは、しばらく経ってからである。


(『もしや、Mr.troIIは仲間のために、わざと東へと怪人を誘導している?』)

821war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:06:56 ID:YrRABrO.
ケリュケイオンが読んだトトロの意図は以下の通りだ。
トトロが温泉へ到着して仲間と合流できたと仮定する。
その場合は怪人も確実に追跡してくるだろう。
その際に、温泉にいるのは芯まで疲弊したエース・死に体から復活したばかりの魔導士・戦いには不向きな老人・特別な能力は感じられない異星の軍人・・・・・・
総合ポテンシャルで考えるなら、真っ当に戦えたものでは無い。
ギュオーを撃退できたとしても、死人が出かねない被害を覚悟しなければならない。
だから、ギュオーを温泉から引き離すために東へ向かうのだ。
トトロがそこまで深く考えてないにしろ、東へ誘導することで時間稼ぎはできる。
時間を稼いだ分だけ、温泉の仲間たちは失った体力・魔力を取り戻せる。
ついでに南方向へライガーと共に去ったキョンから注意を逸らすこともあり、キョンの安全はもちろん、ギュオーにガイバーユニットが渡ることを避けられる。
だが、それは自分が怪人を撒くまで追われ続けなければいけない。
命掛けのリスクを背負っても、トトロはその道を選んでいるというのか?

(『−−自分から囮となるつもりですか、下手をすれば命を失うというのに、それでも構わないのでしょうか?』)

思い返せば、トトロはただ争いを好まないだけでなく、自分から率先して人を助け、争いや暴力を良しとはせず、他人が傷つけ合うことを嫌う。
そして誰とも優しく振る舞い仲良くしようとする姿は、まるで無垢な子供のようだ。
無垢ゆえに危険人物というレッテルは意味を成さず、トトロは公平に誰であろうと助けようとする。
複数人の人間を危めたキョンも怖れずに(具体的な解決はできてないが)手助けした。
ついさっき、恐ろしげな怪人・ギュオーと自分から接触しようとしたのも、手を差し延べて仲良くなりたかっただけかもしれない。
されど、その優しさが必ずしも良い方向に傾くとは限らず、今こうして怪物に追われているのも、悪い結果の一つと言える。

822war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:07:43 ID:YrRABrO.
相手が何者だろうと公平に優しく、非暴力主義なのは素晴らしいことではあるが、それは同時に危うさを秘めている。
誰しもがその優しさに応えるとは限らず、呼吸と人殺しが同義の人物にはまず通用しない。
殺人を厭わない人物が多くいるこの殺し合いでは、強い優しさは己の身を滅ぼしかねない両刃の剣でもあるのだ。
しかし、自身の危険を省みず怖れない姿勢は、一種の献身さを感じ取れる。
ゆえに、ただの他者に甘いだけの偽善者とは言い切れない。

(『−−これは考え過ぎでしょうか?
 でも、この考えが全て当て嵌まるなら、Mr.troIIは素晴らしい動物なのでしょう。
 ただし、この殺し合いの過酷な環境では長生きできないタイプでもあります』)

それが、ケリュケイオンのトトロの行動に関する考察と、人物像(動物像?)の評価である。


ケリュケイオンが思考している内に、ギュオーもまた川を越えて追いかけてきた。

『目標、再接近!』
「待てぃ! 黙って私に殺されるがいい!!」


ギュオーに追われながら、尚も東へ向かうケモノたち。

(『東側にも殺し合いに乗ってない者や、逆に殺し合いに乗った人物もいるでしょう。
そうなった場合は、臨機応変に対応するしかありませんが、人の言葉を喋れないMr.troIIだけでは心もとないですね。
私が全力でカバーしなければならないようです』)

東側へ向かうほど、温泉から離れていく。
これではしばらく仲間と合流するのは無理だろう。
きっと仲間たちは帰りが遅いトトロたちを心配する。
それでも−−

(『−−いつかは、Mr.trollたちをMs.高町たちと無事に合流させるために力を尽くします』)

そのように、ケリュケイオンは思考回路に書き込む・・・・・・人間の言葉で置き換えるならば゛心に誓った゛のだった。

823war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:08:40 ID:YrRABrO.

−−デバイスが思考をしている裏で、トトロは悲しそうな表情を浮かべている。
その表情を知るのは、側にいるフリードリヒとピクシーのみ。
二者は悲しむトトロを労うように鳴く。

「キュックル〜」
「キュイ・・・・・・」

トトロが悲しんでいるのは
追跡者に追われる恐怖からか?
好意をギュオーに裏切られたことか?
蛮獣の如く、コミュニケーションの余地も無く襲いかかったギュオーへの哀れみか?
仲良くしたいのに、思い通りにいかなかったからか?
その表情の正しい意味を知るのは、本人とケモノたちくらいだろう。

誰でもわかるのは、夜明けと争いの終焉はまだ先だということ、のみ・・・・・・

824war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:10:17 ID:YrRABrO.
【G-4 森(川周辺)/一日目・夜】

【トトロ@となりのトトロ】
【状態】腹部に小ダメージ
【持ち物】ディパック(損壊)、ピクシー(疲労・大)@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜
     フリードリヒ(ダメージ・小)魔法少女リリカルなのはStrikerS、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1、自然の破壊に深い悲しみ
2、誰にも傷ついてほしくない
3、?????????????????

【備考】
※ケリュケイオンは古泉の手紙を読みました。
※東へ向かっています。
ケリュケイオンの読みでは、怪人(ギュオー)を仲間から引き離すために東側へ誘導していると思っています。
トトロが本当にそう考えているかは、次の書き手さんにお任せします。

825war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:10:55 ID:YrRABrO.

【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】全身軽い打撲、左肩負傷、頭部にダメージ(小)、ダメージ(大)、疲労(大)、巨乳、低い声が出づらい
【持ち物】支給品一式×4(一つ水損失)、参加者詳細名簿、首輪(草壁メイ)、首輪(加持リョウジ)、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリヲン、毒入りカプセル×4@現実
     博物館のパンフ、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー
     詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×11@ケロロ軍曹
     ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、E:ケロロ小隊の光線銃(16/20)@ケロロ軍曹
【思考】
0、トトロを殺し宝石からキョンの行方を聞き出す。
 キョンの行方を知らなくとも、自分の情報の漏洩を防ぐためにトトロは殺す。
1、優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2、キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3、自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4、首輪を解除できる参加者を探す。
5、ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6、タママを気に入っているが、時が来れば殺す。
7、疲労とダメージのせいか身体に違和感を感じる・・・・・・しかし、今は耐える!

【備考】
※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」に関する記述部分を破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されている可能性に思い至りました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の「加持リョウジ」に関するページは破り取られていてありません。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。

826war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:11:50 ID:YrRABrO.


※F-4のどこかに、クロエ変身用黒い布、濡れた支給品一式、スイカ×5(いくつか割れてる)、円盤石(1/3)+αセット@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜が放置されています。



【ケロロ小隊の光線銃@ケロロ軍曹】
ケロロ小隊が劇中でよく使う光線銃。
光線(ビーム)を放って攻撃できる。最大発射数は20。
銃口が丸いのを除けば、デザインが『機動戦士ガンダム』のビームライフルにそっくり。

調べてもこの武器の正式名称がわからないので、この名前で載せました。


−−−−−−−−−−−

827war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:14:21 ID:YrRABrO.

〜 お ま け 〜



(『あの危険人物・・・・・・怪人と言うべきでしょうか?
 とにかく、あのような怪人がいることを伝えなくてはいけませんね』)

ケモノたちは、名前のわからぬ怪人・ギュオーに現在進行形で襲われている。
ケリュケイオンは彼の者の特徴を、殺し合いに乗っていない参加者のために、より正確に伝えなければならない。

(『見た目は鬼のようにおどろおどろしいですが、胸部が大きく、声が女性に近いものに聞こえます。
 この怪物は女性なのでしょう』)

怪物を女性と判断するケリュケイオン。
この判断は半分正解で半分間違いと言える。
なぜなら、今のギュオーのDNAは゛とある女性゛にある程度まで書き換わっているのだから。


ここでギュオーの身体に何が起こっているかを解説しよう!
鍵となるのは、ギュオーはトトロと接触する直前まで食べていた゛日向ママのDNAスナック゛。
日向ママとは参加者の一人・日向冬樹の母親・日向秋のことである。
日向秋の特徴を簡潔に答えるなら、二児の母親とは思えぬナイスバディなスーパーウーマンと言っておこう。
以前に彼女のDNA入りスナックを食べたリインフォースは、日向ママの如く、格段に胸が大きくなった。
ドラマタの人には、このスナックの存在は感涙ものである。
某妖怪がビーストモードにトランスフォームするほどの、豊乳の持ち主を量産できるとお思いの方もいることでしょう。

と こ ろ が ギ ッ チ ョ ン

このスナックの本当の効果は胸が大きくなるのではなく、食べれば食べるほどDNAが゛日向ママ゛に書き換えられていくことである。
すなわち、リインの胸が大きくなったのは、彼女のDNAが日向ママに近づいた効果の過程なのだ。
胸が大きくなったのは、スナックの効果の鱗片に過ぎない。
食べ過ぎれば、身体がより日向ママに近いものへと変化していき、最終的には身体は日向ママそのものと化す。

828war war! stop it(修正版) ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:15:46 ID:YrRABrO.
ギュオーはこのスナックを一袋丸々たいらげている。
そして、確認できる効果は豊乳化と低い声が出づらい=女性のような高い声が出る。
DNAの日向ママ化は、リイン以上に進んでいるものと思われる。
これ以上、ギュオーがスナックを食べると、身体の日向ママ化が加速度的に進行する恐れがある。
・・・・・・すでに手遅れかもしれないが。

ギュオー本人はこの異変を、怪我と疲労のせいだと決めつけ、獲物を狩るのに集中するために、今はろくに確かめようとしない。
着ている人間の体型にがっちりフィット、つまり密着するプラグスーツを着ているのも、ギュオーが気づけない要因の一つである。
彼に善意や友愛の心はなくとも羞恥心はあるだろうし、いずれ彼が肉体の変化を知った時は何を思うだろうか・・・・・・

ケリュケイオンはそんな事情など知らない。
ただありのままに、外見などのわかりうる情報を受け止めるだけである。
そして、なるべく情報を的確に伝えるのだ。

(『怪人の特徴は、大柄・鬼のような顔・額に宝石のようなもの・赤いプロテクトスーツ・女声・豊乳・・・・・・おそらく女性。
 現状でわかることはこのぐらいでしょう。
 とにかく、殺し合いに乗っていない人物に出会い次第、このことを伝えなくては』)

決して、誤報ではない。
相手が女性かどうかはケリュケイオンの推測だが、それ以外はまごうことなき事実である。

最後に付け加えると、支給品の力で老いたスグルや若返った冬月は、放送とともに元の身体に戻った。
しかし、リインの胸は放送の時刻になっても、まったく戻ることはなかった。
リインと同じスナックを食べたギュオーは、何か特別な要因でもない限り、二度と同じ身体に戻ることはないだろう。


どうなるギュオー!?


こうして獣神将リヒャルト・ギュオーは、゛ボインちゃん゛の仲間入りを見事に果たしたのだった。

ギャフン。




※ギュオーは日向ママのDNAスナックを一袋食べました。
確認できる変化は巨乳化・低い声が出にくい=高い声が出るなど、いずれも本人は気づいてません。
まだ他にも肉体に変化があるかもしれません。
※ケリュケイオンは怪物(ギュオー)を、身体的特徴から女性だと推測しています。

829 ◆igHRJuEN0s:2010/02/26(金) 01:16:38 ID:YrRABrO.
以上で修正版の仮投下を終了いたします。

830ハジカレテ……ハジカレテ…… ◆MZbbkj1l7.:2010/06/22(火) 21:46:31 ID:DIROyZWk
さるったので、こちらに残りを投下します。どなたか代理投下お願いします。

831ハジカレテ……ハジカレテ…… ◆MZbbkj1l7.:2010/06/22(火) 21:47:14 ID:DIROyZWk

●●

巨獣が駆ける。
トトロが駆ける。
何かを目指して、駆け続ける。
ここで疑問なのだが、彼は何故こうも人助けをするのだろう?

親切だから?ノン。

森の妖精で、自然(人間含)を守りたいから?ノン。

なにか下心がある?ノン。

じゃあ、こういう仮説はどうだろう?



――――誰にも傷ついて欲しくない。




―――――――――食べるところが、無くなるから。



戯言ですよ。本気にしないでください。
彼の気持ちは、彼にしか分からないんですから。


【G-06 森林/一日目・夜中】

【トトロ@となりのトトロ】
【状態】首に小ダメージ、腹に大ダメージ、左手に中ダメージ、疲労(中)、背中にビームライフルの直撃ダメージ(小)
【持ち物】ディパック(損壊)、ピクシー(疲労困憊)@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜 、
     ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1、自然の破壊に深い悲しみ
2、誰にも傷ついてほしくない
3、?????????????????


【備考】
※ケリュケイオンは古泉の手紙を読みました。
※ケリュケイオンは怪物(ギュオー)を、身体的特徴から女性だと推測しています。
※どの方角へ向かっているかは後の書き手さんにお任せします

832ハジカレテ……ハジカレテ…… ◆MZbbkj1l7.:2010/06/22(火) 21:48:01 ID:DIROyZWk





一方、ギュオーは気絶していた。


【G-07 採掘場/一日目・夜中】


【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】睡眠、全身軽い打撲、左肩負傷、頭部にダメージ&火傷(小)、ダメージ(大)、疲労(極限)、巨乳、低い声が出づらい
【持ち物】支給品一式×4(一つ水損失)、参加者詳細名簿、首輪(草壁メイ)、首輪(加持リョウジ)、
     E:ケロロ小隊の光線銃(9/20)@ケロロ軍曹 、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、ガイバーの指3本、
     空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリヲン、毒入りカプセル×4@現実、
     博物館のパンフ、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、
     クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー、詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、
     日向ママDNAスナック×11@ケロロ軍曹、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、


【思考】
0、トトロを追いキョンとノーヴェを殺し、ガイバーになる。
1、優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2、自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
3、首輪を解除できる参加者を探す。
4、ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
5、タママを気に入っているが、時が来れば殺す。
6、耐えられませんでしたにゃ……むにゃむにゃ……


【備考】
※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」
  に関する記述部分を破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されている可能性に思い至りました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の「加持リョウジ」に関するページは破り取られていてありません。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。
※F-4のどこかに、クロエ変身用黒い布、濡れた支給品一式、スイカ×5(いくつか割れてる)、円盤石(1/3)+αセット@モンスターファー ム〜円盤石の秘密〜が放置されています。
※ギュオーは日向ママのDNAスナックを一袋食べました。
確認できる変化は巨乳化・低い声が出にくい=高い声が出るなど、いずれも本人は気づいてません。
まだ他にも肉体に変化があるかもしれません。
※無理が祟って気絶してしまいました。無防備ってレベルじゃねーぞ!(いろんな意味で)

833ハジカレテ……ハジカレテ…… ◆MZbbkj1l7.:2010/06/22(火) 21:48:38 ID:DIROyZWk
以上で投下終了です
kskありがとうございました。

834 ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:38:02 ID:YrRABrO.
これよりSSの投下を開始します。

835名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:39:27 ID:YrRABrO.
街灯とやや離れたエリアの火事で照らされた市街地を走る一台の軍用車両。
その車両を運転しているのは砂漠の妖怪・砂ぼうずこと水野灌太。


彼のおかれてる状況を簡潔に説明すると、少し前に高校でチャットをした事に始まり。
自身は匿名で、お目当ての一人・朝倉を初めとする遊園地の人間、疎ましき雨蜘蛛とオマケ一人、そしてノーヴェを偽っていた悪魔将軍とのネット上の接触をした。
ちょっぴり改竄した被殺害者・殺害者情報を流すなり等の情報のやり取りをしている最中に、他の二組には秘密利に悪魔将軍が灌太へ取引を持ち出してきた。
取引内容とは゛ノーヴェをやるから定時までに涼宮ハルヒの死体をモールまで持ってこい゛というものだった。
ノーヴェをどうしても手に入れたい灌太は、高校にて(なぜか腐ってない)ハルヒの死体を掘り当て、更に朝倉の助け(?)によって足となる車両も見つけたのである。
一時は悪魔将軍のいるモールへ向かうべく、車両に乗り込むが・・・・・・すぐに「少し行動が軽率過ぎないか、悪魔将軍が正直に取引を守る保障はあるのか」と疑問を持ちだした。
ここまでが前回の粗筋である。


そして、灌太は次に何をするべきか悩んだ結果、モールにはすぐに向かわずに、高校から近くにある図書館などの建物を探索する事に決めた。
それはなぜか?
まず、取引とは本来、実力が均衡している者同士がやるもの。
権力・財力・暴力・・・・・・なんにせよ実力の差が開いている場合、力が勝る方が取引を一方的に破ることもできる。
取引相手の悪魔将軍の場合、殺害数はキョンに劣るものの、一塊の実力者であるフェイトを殺害した男だ。
支給品や運の都合があったとしても、それなりの実力があると見て良い。
反対に灌太の武器は拳銃のみで、ナーガ以上の戦闘力を持つ者を相手にするには厳しい。
悪魔将軍に関する弱点や注意点すらも灌太は知らない。
これで悪魔将軍がナーガよりも格段に強かったら目も当てられないだろう。
また、悪魔将軍が約束を守るという保障はどこにもない。
万が一、相手が裏切られても、装備と情報が乏しい今のままでは為すがままになってしまう。
それを避けるために、灌太としては悪魔将軍に対しての抑止力や弱みを握り、対抗手段を持つのが望ましいと考える。

836名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:40:29 ID:YrRABrO.

灌太にとって幸運と言えるのは、取引までに時間は指定されていないということ。
もちろん、悪魔将軍がいつまでも待ってくれるというわけではないだろうが、ある程度の時間的猶予はあると考えられる。
この余裕を活かさず、ノーヴェ欲しさに焦って取引現場へ直行することは愚策。
賢い選択は『急がば回れ』、状況が許すかぎりは主要な建物を探索し、使える武器・道具・情報・人材をかき集めるべきだろう。
コンテンツkskにアクセスできるパソコンがあれば、情報を得る事ができる。
使えそうな武器や道具があれば回収するべし。
人材は・・・・・・変態でもないかぎり死体運びをする者に好感を持つとは思えず、これから危険人物と取引しようとしいる人間に手を貸そうなどとする人間は少ないだろう。
なので他の参加者に会ったら゛ノーヴェを助けるため゛だとはぐらかして、最低でも自身の風評を落とさぬように心掛ける。
運が良ければ後ろ盾や弾避けになる同行者も得られるだろう。

そして探索する場所に選んだのは、図書館・警察署・倉庫群・小学校の四つ。
理由は高校から比較的近く、進入できるエリアであるということ。
海と禁止エリアに阻まれた遊園地は車両では進入できず、警察署のあるB-4から先は火災地になっていて探索はできない。
探索は、例の四つの施設を巡るくらいが妥当だろうと灌太は結論づけたのだった。

以上が、灌太がモールへ直行せずに、寄り道することを選んだ理由である。
灌太は欲深いが用心も深く、意外にもお金はコツコツ貯めて無理な一攫千金は狙わず、仕事にしろ罠にしろ用意は周到に済ますタイプである。
故に彼は急がずに足場を固めていくことを選択したのである。

全ては安全にノーヴェを手に入れて快楽を貪るため、力や情報を手に入れて己が生存を守るため−−つまるところ、何もかも自分のために灌太は車を走らせている。
そんな彼が最初の探索に選んだ場所は中学校から最も近い図書館であった。


−−−−−−−−−−−

837名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:41:36 ID:YrRABrO.

車両を運転した事があまりないと思われる灌太のドライビングテクニックは、たいしたことはないと思われる。
しかし、キーを回してハンドルを握り、アクセルとブレーキのペダルを使い分けながら、車を進ませる事ぐらいなら小学生でもできる。
対向車もなく歩行者もいない舗装された道路ならば、素人でもスピードを出しすぎない限り事故の心配は薄い。
会場には警察もいないので、無免許運転だろうが逮捕される心配も皆無。
灌太が運転する分には何ら支障は無いという事だ。
・・・・・・もっとも、灌太は左手でハルヒの乳を揉み、ハンドルを握るのは右手のみの片手運転をしているのだが。

「やわこい乳のボインちゃ〜ん、ウヒヒヒヒ♪」

そのために集中力が散漫なのか、車の機動が多少フラフラしている。
素人の片手運転は第三者から見ればヒヤヒヤさせられるものだが、どうしても快楽を優先させたい灌太は構わずに片手運転を続ける。
現在までは大丈夫だが、その車はいつか事故でも起こしそうな匂いを漂わせていた。
良い子も悪い子も、片手運転はやめましょう。




・・・・・・幸いにも灌太は事故を起こさずに図書館に辿り着く事ができた。
参加者に襲われるなどの障害もなかった。
そもそも参加者そのものが周辺に一人もいなかったため、襲来はおろか接触する事すらないのだった。


「ふぅ、何事もなく辿り着けたな」

なにはともあれ、無事に到着した灌太は図書館の入口前に車を止めて降車する。
車を後にする前に灌太は涼宮ハルヒの乳房を軽く一揉みし、声をかける。

「それじゃ、ちょっくら言ってくるぜハルちゃん」

返事は無い。
相手は腐ってないとはいえ、屍だからだ。
屍は返事はしないし、セクハラしようとも嫌がる事も悶える事も無い。
ついでにハルちゃんとは、灌太が勝手につけたハルヒの呼び名である。

(・・・・・・死体が喋らねーのは当たり前だけど、なんだか味気ねーなぁ)

ハルヒの外見はほぼ生前のまま。
しかし、死体ゆえに反応が無いのは当然であり、灌太の行いは人形で遊んでいるのとほぼ変わらない。
それに対して彼は一抹の寂しさを感じていた。

838名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:43:32 ID:YrRABrO.
(ノーヴェをおいしくいただくまでの繋ぎだと割り切れば良いか。
 それに、乳の揉み心地は動かず喋らずを補うには十分だぜ・・・・・・ヌフフ♪)

このようなポジティブ思考により、寂しさはすぐに払拭された。
それから灌太は車のドアを閉めて鍵をかける。
鍵をかけられた事により、余程の事が無い限りはハルヒの盗難を避けられるだろう。
盗難を避ける最も良い手段は、彼女をディパックに詰める事なのだが、彼はその可能性をまだ知らない。
そして灌太は、ハルヒの遺体を乗せた車両を後にして無人のksk図書館の中へと入っていった。

−−−−−−−−−−−


「これは・・・・・・先客が既にいたみてぇだな」

それが、図書館に入ってから数分の間、内部を一通り探索した灌太の感想である。
図書館の床にある二・三種類の足跡や僅かな食べ物のカスや一部持ち去られた本が、以前に人が出入りしていた事を物語っている。
ゲーム開始から18時間以上経っており、誰かが先に図書館を探索しているのは十分に考えられる可能性だった。
問題なのは、それにより有益なアイテムや情報が持ち去られているかもしれないということ。
実際に『華麗な 書物の 感謝祭』とプレートに書かれていながら、その真下にあった棚には本など一冊も入ってなかった。
天井から吊り下げられたプレートに意味はなく、最初から棚には何もなかったというのは考え難い。
元からあったものを誰かが根こそぎ持ち去ったと考えるのが自然だろう。
持ち去ったという事は、この殺し合いで役に立つ書物があったかもしれないのだ。

839名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:44:09 ID:YrRABrO.

一方で持ち去られてない書物、例えばそこらに陳列している本棚の本を調べてみたが、たいした物は何もなかった。
辞書や参考書、小説や絵本、偉人の本など、殺し合いには約立たないだろう。
中身まで全部調べたわけではないので中には数冊くらい使える書物はあるかもしれない。
しかし、灌太は『森』の意味をセインに教えられるまで知らなかったほど、関東大砂漠の事柄以外の知識は希薄だ。
雨蜘蛛が草壁姉妹をオアシスの手が届かない場所に住んでいたと思い込んでいるのと、夏子が朝比奈みくるからSOS団や未来人の事を聞いても全く理解できなかったのと同義である。
それでも読みながら分析を重ねれば、言葉の意味を正しく解読していけるかもしれない。
ただ、一冊ごとにわからない事柄を解読しながら読んでいたら、夜が明けて昼を過ぎ夕暮れになっても終わらないだろう。
そんな事に時間を割ける余裕は流石に無い。
数多の本に関する詮索は断念せざるおえなかった。

ここまでの収穫は無し、探索で時間をだいぶ浪費してしまった。
だが、灌太はそれを嘆きはしない。
ある物の存在が、灌太に嘆くにはまだ早いと無言で語りかけていた。

ある物−−それは机の上に鎮座するパソコンである。
コンテンツkskしかりチャットしかり裏口しかり、情報収集の面ではとてもお世話になっている有り難い代物である。

「さ〜て、何がでるかなっと」

図書館をあらかた巡っても何も得られなかった分、パソコンから得られる情報に期待を膨らませる灌太。
そして、幾度の使用によって使い慣れたマウスとキーボードを手に取る。
手始めにチャットルームに眼をやるが、現状で使用者は無し。
誰もいない以上、通常のやり取りも裏口による盗見もできない。
しかし、フォームには前の使用者によるチャットの発言ログが残されていた。
これは使用者が任意で消すことができるが、その事を気がつかずにドロロたちは消し忘れたのだろう。
それを灌太に運悪く見られてしまい、後続に筒抜けとなってしまった。

840名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:45:57 ID:YrRABrO.
「迂闊だぞドリル兵長・・・・・・じゃなくてドロロ兵長!
 つうわけで、この残り物は俺様が美味しくいただかせてもらうぜ」

残されたログから、前の使用者がドロロだと知った灌太は、その場にいないドロロを嘲笑う。
発言ログには、すでに灌太が既に知っている事柄や、相手(クロノスと書かれている所から話し相手はアンチクロノスのネームでチャットをしていた晶だと思われるが)の書き込みは見れないため、全容がわからないものもある。
灌太が理解できる範疇かつ有用な情報だけを抽出し、それを大まかに分けると、

○泥団子先輩=掲示板の東谷小雪の居候(つまりドロロ)
○ドロロとリナ、ドロロの知人のケロロ・タママの特徴(灌太としてはリナがボインちゃんかどうか知りたかった)
○チャット上の四つの合言葉(成り済ましに使える?)

・・・・・・の3つである。
大半は有益な情報と言える。
中でも朝倉の同行者たちの人物の特徴と、合言葉を知った利点は大きい。
卑しい笑顔をしている灌太の表情からして、後々に利用する気満々だとわかる。


チャットの次に閲覧するはコンテンツksk。
対応のオブジェをクリックして中に入ろうとするとキーワードを要求される。
表示された『瀕死のピクシーとブルーマウンテンが融合して産まれたモンスターは?』の答えを灌太は持ち合わせてなどいない。
にも関わらず、灌太の表情は余裕そのものだった。

841名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:48:19 ID:YrRABrO.

「ここでセインが遺した忘れ形見の出番だぜ!」

無意味に意気揚々な灌太はディパックから一枚のCDを取り出し、パソコンの本体に挿入する。
すぐあとに、CDの効果によってキーワードが自動的に『ヴィーナス』と書き込まれ認証に成功、コンテンツへすんなりと進入できた。
キーワードの防壁は、『ksknetキーワード入りCD』という秘密兵器を持つ灌太の前には意味を成さないのだ。
そして数瞬間の画面切替の後、灌太の目に映ったは時間と場所の羅列。
最初は意味がわからずに首を傾げたが、自分がパソコン及びコンテンツkskを使用した時間と、画面に表示された時間が同じであるとわかると、これがアクセスログであるとすぐに理解した。
画面を見つめながら灌太は考察を始める。

(こいつで確実にわかる事は、パソコンがいくつあってどこにあるかだな。
 この図書館にあるのと俺のぶっ壊したのを除けば、遊園地・コテージ・・博物館・ゴルフ場・温泉・モールにパソコンはある。
 ついでにモールは書店と電気店で別れてる所からして二つあるようだな)

コンテンツkskのアクセスは、大前提としてパソコンが必要になる。
つまり、ログで表示された場所は使えるパソコンがある場所と同じというわけであると言える。

(・・・・・・良く見ると、どれもこれも地図で名前が記された場所にあるな。
 さっき確かめた廃屋とか例外もあるんだろうが、名前のついてる場所はたいていパソコンがあるんだろうな。
 それもただのダミーじゃなくて、kskに入れる奴が)

ログには全て、地図に名前が載っている場所があがっている。
反面、どことも知れぬ民家などには一つもない。
地図に記されてない場所にもパソコンそのものはあるやもしれないが、高校で見つけた基本設定しか使えないダミーの件もあり、ともすれば使える物は名前の記された場所の物と見るべきだろう。
ここから灌太はある可能性を見出だす。

(・・・・・・って事は、後で行く警察署や倉庫群・小学校にもパソコンはあるかもしれねー。
 コレに載ってないって事は、パソコンは『無い』か『手付かず』のどちらかだ。
 前者はともかく、後者なら情報を独占できて御の字だな)

842名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:49:12 ID:YrRABrO.

ログに表示された場所はコンテンツkskが使用された場所であるという情報と、パソコンがあるのは地図に名前が記載された場所という予測を照らし合わせれば、『ログに載って無い、地図に記された場所には、手付かずのパソコンがあるかもしれない』とも思えるのだ。
まだ確証はない仮説に過ぎないが、視野の一つとしては持っても良い考えだろう。

ここまでが灌太がアクセスログから読み取れた情報である。
コンテンツkskのページを閉じ、最後に掲示板のページを開く。


掲示板には新しい書き込みがあった。
灌太が探索をしている間に更新されていたらしい。
灌太は既読済みの1〜6番目を飛ばして、7番目のレスに目を通す。

「これは・・・・・・涼子ちゃんの書き込みか?」

そのレスには彼が追い求める女性の一人、朝倉涼子の名前が載っていた。
『ママへ。
お子さんは無事。怪我一つないわ。
わたしと出会った場所とE-09、二点のマスの左下同士を直線で結んで。
その線上のマスにある一番目立つ場所で明日の午前七時までお子さんと一緒に待ってるわ。
そこが禁止エリアになった場合は、付近にある次の目立つ場所で。

会える事を期待して、朝倉涼子』

・・・・・・という内容である。
朝倉を装った者の罠ではないか、とも疑えるが灌太は偽者の類ではないと見る。
なぜなら、゛朝倉涼子゛と大々的に名乗っている部分からして、これがもし偽者の書き込みだとしても、本人がパソコンに触れればすぐ嘘を暴かれるからだ。
おまけに複数の同行者を持ち、禁止エリアと海に阻まれた陸の孤島にいる彼女はしばらくは存命し、24時には雨蜘蛛たちとチャットもするため、パソコンは確実に使用するのだ。
それでも本当に別の誰かが朝倉を装って書いたなら、その誰かは馬鹿者と言えよう。

書き込み自体の検証に移ろう。
書き方からして具体的な人物や集合地点がぼかされており、一種の暗号文のようにして投下されたのだろう。
『ママへ』『わたしと出会った場所』などは普通、当事者たちにしかわからない。
だが、この書き込みを見た灌太は地図を取り出し何かを考え、その数分後にはほくそ笑んでいた。

843名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:50:24 ID:YrRABrO.

「へへへ、なんとなくわかっちゃった気がするぜ」

彼は朝倉の書き込みから、暗号を読み解いたらしい。
どうやって?
それについての灌太の推理は、以下に記しておこう。

※ ※ ※
裏口やkskページでかなりの情報アドバンテージを灌太は持っている。
それでも書き込み一行の『ママへ』というのが具体的に誰を示しているのか、灌太にはわからない。
いちおう、お子さんに当たる人物はヴィヴィオが妥当と考えられる。
情報上、朝倉・ドロロ・リナは大人だ。
四人の中で唯一の児童であるヴィヴィオが『お子さん』で間違いないだろう。
では、『ママ』に当たる人物は誰か?
高町なのはがヴィヴィオの義理の母親であると、灌太は知らない。
セインは二人と同じ世界から来たが、二人が親子になる前の時系列から連れてこられたため、二人が親子関係だとは知らない。
知らないなら、灌太にそこまで教えられたハズがない。
さらに『わたしと出会った場所』=『朝倉涼子とママ』が接触した場所までは知らない。
仮に『ママ』が高町なのはだとわかったとしても、灌太は二人が初めて接触した市街地での乱戦を見ていないのだ。

『ママ』『朝倉とママが出会った場所』等重要な部分を知らないので灌太の謎解きは詰み・・・・・・はしなかった。
謎掛けを解くためにチェス版をひっくり返す。
すなわち相手の思考を読んだり・正攻法ではない別の発想から解決の糸口を灌太は探してみることにした。


灌太は目をつけた焦点は『E-09の左下から線を引いた場所』。
わざわざ例の二者が出会った場所は考える必要は無い。
E-09から線を引いて集合場所に適切な位置を割り出すのだ。
『一番目立つ場所』とも書かれている事から、『地図に名前を記された場所』を指しているのだろう。
ともすれば、線上にある『名前付きの場所』を見ていけばいい。

それで見えて来た事象は、E-09から北もしくは北西にから線を引くと、必ずゴルフ場か山小屋に当たってしまう。
その場合、小学校や倉庫群などが二人の出会った場所(以下『例の場所』)の場合、山小屋と図書館か警察署になってしまい、線上にある場所が二つになってしまう問題が発生する。
これでは、読み手であるママが混乱してしまうにも関わらず、書き込みに重なった場合の配慮が無いところして、線上に二つ以上の場所が重なる事はないと見るべきだろう。

844名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:50:57 ID:YrRABrO.
よって、『例の場所』が市街地だった場合、必ず山小屋かゴルフ場を含めて線上に二つの場所が入ってしまうため、市街地方面が集合場所というのはダウト。
同じく二つ以上の場所が重なってしまうので、温泉・コテージ・レストラン・砂丘もダウト。

残るはゴルフ場・山小屋・廃屋・採掘場・博物館・モール・滝(禁止エリアの神社を省いた場合)である。
ここから更に絞るには、書き手側の配慮を考えると良い。
朝倉たちと違い、ママにあたる人物はチャットに参加していないので、モールなどに危険人物がいるとは知らないハズである。
殺し合いにでも乗ってないかぎり、危険人物の潜んでいる場所にわざわざ人を誘導しようとは思わないだろう。
よって、明確な危険人物である悪魔将軍のいるモールは集合場所には選んべない。
博物館にいる雨蜘蛛も危険な男には違いなく、傍らにいる晶はバットで気絶させられたりと頼りない。
博物館もアウト、博物館から近すぎる採掘場もアウト。

集合場所候補はまだまだ絞れる。
今度は書き込みの『そこが禁止エリアになった場合は、付近にある次の目立つ場所で』の部分を掘り下げてみよう。
仮に集合場所が山小屋であって、そこが禁止エリアになったら近隣のゴルフ場へ行けば良い、逆のゴルフ場もまたしかり。
同じように滝の近隣にはコテージがある。
ところが、廃屋の周辺には禁止エリアになった神社しかない。
まさか禁止エリアである神社に行く・行かせるわけは無いだろうし、少し離れた位置には滝と山小屋があるが、相対距離がほぼ同じでどちらに行けば良いかわからないだろう。
廃屋は高く見積もっても、優先順位の低い集合場所候補だと灌太は位置づけする。

残ったのは山小屋・ゴルフ場・滝のみ。
最後の一絞りは書き込みにおいて、『E-09』から線を引く形にしたという意図を読むことだ。
『E-09』で灌太が思い当たる事柄は一つ、掲示板の6番目のレス『古泉+万太郎VS悪魔将軍+誰かのタッグマッチ(明日九時・E-09にて開催)』という書き込み。
先刻のチャットに参加した人間ならば全員が見ているレスであり、これからパソコンに触れる者も皆、目を通すだろう。

845名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:51:57 ID:YrRABrO.
このレスを見た朝倉たちの考えはおそらく、脱出派の脅威・障害になる悪魔将軍を討伐もしくはノーヴェを救助するために、『ママ』と合流して戦力を増強する。
せっかく悪魔将軍が自分から場所や時間を指定してまで出向くというのに、ここで足並を揃えずに迎え撃たないのは勿体ない。
『E-09』というのも、みんなで力を合わせて悪魔将軍を倒そう、などの意味合いが込められてそうだ。
また、悪魔将軍と敵対しているらしい古泉・万太郎の二人と手を組めれば、朝倉たちのグループはかなりの勢力となれる。
いくら管理局のエースを殺せるほど強い将軍でも、複数の参加者が一斉に畳みかければ勝ち目は薄かろう。

そして、悪魔将軍をより確実に倒すとなると、グループの足並みを揃える拠点が必要になるわけだ。
書き込みには『明日の午前七時までお子さんと一緒に待ってる』ともあり、つまり最低でも二時間後の試合開始に間に合う距離にある場所が拠点となる。
だとすれば、滝はE-09から遠すぎる。
この距離間隔では、七時から泉のリングに向けて出発すると、とっくに試合が始まってるか・終わってるかだろう。
ドロロのような怪我人も混ざってる中では、全体の行進スピードも減り、距離が開いている拠点はそれだけ効率が悪い。
滝は集合場所に適切な場所とは言えない。

上記の消去法で残った集合場所候補は、山小屋とゴルフ場の二つとなった。
二つの場所はすぐに行き来できる距離でもあるので、この二カ所を押さえれば集合場所はわかったも同然である。

灌太の最終的な解答は、D-7の山小屋かC-8のゴルフ場。
情報と推理の余地が無いのでこれ以上は絞り込めないが、『朝倉とママが出会った場所』を知らないで推理した事を考えるなら上々と言える。

※ ※ ※

846名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:55:18 ID:YrRABrO.
「山小屋かゴルフ場辺りだと思うんだけどなぁ。
 もし、本当に当たってたら涼子ちゃんはまだまだ甘いよな」

などと、首を捻りながら推理の感想を呟く灌太。
事実、答えは山小屋である。
朝倉たちが手を込めて作った暗号は、妖怪にほぼ解かれてしまった。
しかし・・・・・・

「ま、俺の考えも所詮は憶測に過ぎね〜し。
 暗号を難しくし過ぎて、ママさんが解読できなかったら本末転倒だしな」

灌太も自分の考えの何もかもが当たっていると思わず、間違っている可能性も考慮する。
推理の確証を得るにはやはり、朝倉とママが出会った場所を知るしかない。
謎掛けについても、他者に解読されるのを怖れるあまり、極端にわかりづらい内容にして、『ママ』がわからなかったら逆効果である。
それらの点でこの書き込みは、暗号としての及第点はクリアしていると言える。

「それにしても、将軍様を退治しようとする動きがあるみたいだな」

今度は焦点を悪魔将軍とその周りの動きに注目している。
6番目のレスは約二名の対立者との決闘を表明。
7番目のレスは連携による将軍の排除を仄めかしているように見える。
どうやら悪魔将軍はあちこちで敵を作っているみたいだ。

「・・・・・・となると、取引ならまだしも、使える奴だからって安易に将軍様と手を組むわけにはいかねーな」

悪魔将軍と手を組めば、自分もまた複数人の攻撃対象になりかねない。
自分の身を守りたい灌太は、敵を増やす真似をして生存率を引き下げるのは望まない。
危ない橋は基本的に渡らない性分なのだ。

「品定めの上に、流れを見て勝てそうな方につく・・・・・・これで良いか」

もはや悪魔将軍が有用な人物かどうかだけでは、手を組むに値できるかどうかを決めるには至らない。
視野を広げて、全体を見て、勝てる=生存率の高い側に身を寄せる。
と、灌太は新たに算段を打ち立てたのだった。

「後は良く見て、良く考え、慎重に行動することだな。
 さてと・・・・・・」

更新された掲示板の内容も把握し、パソコンでの情報収集作業も終了。
これで図書館はあらかた探索しつくした事になる。

「ここで貰えそうなもんは全部貰った」

847名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:56:31 ID:YrRABrO.
そう言う灌太は、図書館を去る前の仕上げとして、パソコンに拳銃を向ける。
中・高等学校でやったように、壊す事で有益な情報は独占・不利益な情報は隠蔽を計るのだ。
そして、いざ引き金を引こうとして・・・・・・やめた。
拳銃を降ろした灌太はパソコンを見つめながら思案する。

(なんでもかんでも壊すのは良くないか。
 コンテンツのアクセスログは、せいぜいパソコンの位置がわかるくらいだし、見られても俺が不利になることはなさそうだな。
 チャットの発言ログは消しちまえば問題ねーし、掲示板はどのパソコンでも見れちまう)

懸念が生まれ、引き金を引かせる事を躊躇わせる。
さらに新たな懸念が灌太の脳裏に浮かんだ。

(バカスカ壊して、後で俺自身やボインちゃんたちが困るのは悪手だからな)

パソコンは情報収集の面で優れた有り難い代物であるが、その数はおそらく有限。
壊し過ぎれば、情報収集が困難になり、自分や自分の求めるボインたちの首を絞めてしまう。
灌太としては、それは避けたいハズだ。

「これは残しておくか」

思考の末に灌太はパソコンの破壊を中止。
とりあえず、後続に情報が漏れないようにチャットの発言ログだけを消去する。

「よし、行こう」

その言葉を最後に、灌太は図書館の出入口から出ていった。
惜しむらくは悪魔将軍の弱点に関わる情報はなかったが、それは次に行く施設で期待するしかない、と思いつつ。

−−−−−−−−−−−

「たっだいまー、ハルちゃん!
 それじゃあさっそく・・・・・・モミモミ〜」

灌太は車両に戻るなり、ハルヒの胸を揉んでいた。
探索中に大事な取引材料+貴重な乳の彼女が他者に盗難されなくて何よりだ。
探索でちょっと疲れたので卑しを・・・・・・いや、癒しを求めて灌太は乳を揉む、揉む、揉む!
ついでに口には朝倉の髪の毛を加えて、充電効率は倍増。
周りに参加者の気配はないので、顔がニヤけてようが気にしない!

「ふぅ、エネルギー充填完了っと!」

ほんのしばらくして、色々と満たされた灌太は爽やかな表情になっていた。
そして、車のキーを回してエンジンを始動させる。

「じゃ、次はどこ行っこかな」

848名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:57:39 ID:YrRABrO.

探索すると決めた警察署・小学校・倉庫群の残り三カ所。
その中で灌太は図書館の次に行く場所は決めていなかった。
なぜ、あらかじめ探索する順番を決めてなかったかと言うと、それには灌太なりの思惑があるのだ。

(小学校→倉庫群→警察署の順だと警察署が火事に飲まれて探索できなくなるかもな。
 警察署の中に、将軍様にも対抗できる代物があったら後で泣きを見る)

市街地の東側は大規模な火災が発生している。
鎮静化の兆候はまだ無く、火災地帯は広がり続けている。
いずれは警察署も炎に包まれるだろう。

(警察署→倉庫群→小学校の順番なら、警察署が燃えちまう前に探索できるけど、モールからはちょっと遠回りになっちまうな)

火災地帯になる心配の薄い倉庫群や小学校を後回しにして警察署から探索すると、取引現場からの距離が若干離れてしまう。
それだけノーヴェを手に入れるまでの時間が長くなってしまう。

(いっそ、倉庫群から先に行ってみるか?
 倉庫と名前が付く所からして何か保管されてそうだし、誰かに先に奪われると癪だしよ。
 とっくに奪われてたら無駄足だけど)

(たぶん遊園地からC-2辺りに流れてくるだろう涼子ちゃんの顔と乳を余裕があれば拝んでみたいんだよなぁ〜。
 でも0時に雨蜘蛛とのチャットがあって、それ以降まで遊園地から動かなそうだな。
 それに死体運びしていると知られると彼女に白い目で見られそうで、個人的にはそっちが不安だ・・・・・・)

「あ〜、どうしよ」

様々な考えが灌太の脳裏にひしめき合い、次の目的地を決めさせてくれない。
しかし、時間的な余裕は刻一刻と減っていく、いつまでも悩んでるわけにはいかない。

「ハルちゃんはどこへ行きたいと思う?」

悩む灌太は助手席に座る屍に話しかける。
屍は返事はしないし、セクハラしようとも嫌がる事も悶える事も無い・・・・・・ハズだったが−−

『そうねぇ、私は砂ぼうず君の望む所ならどこでも良いけど・・・・・・』

−−その声の色は、まごうことなき涼宮ハルヒのものだった。
なんと、死体がひとりでに喋ったのだ。

・・・・・・否、断じて違う。
ハルヒの口は全く動いてない。
つまり、死体であるハルヒが声を発したわけではない。

849名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 18:59:40 ID:YrRABrO.
声を発したのはゼロスから取引で手に入れたリボン型変声機を使う、水野灌太である。
変声機をハルヒの声に調整して、あたかもハルヒが喋っているように見せているのだ。
気分はさながら、眠るオッサンの吹き替えをする某眼鏡少年探偵。
しかし死体という名の人形で一人遊んでいるのは、滑稽を通り越して愉快だ。
常識的に考えてとても異常な光景だが、本人は特に気にしている様子は無い。
気にとめる者が周りに誰もいないのだから。

『でも、どこに言ってもメリットはあるし、デメリットもあるみたいね』
「その通り。
 それに、ひょっとしたら次にどこに行くかで俺の命運が変わりそうだと思うと自分一人じゃ中々決められなくてさ」
『わかったわ。
 そんな砂ぼうず君のために、この私が次の行き先を決めてあげるね』
「あぁ、助かるよハルちゃん」

ハルヒ(中の人は灌太)に答えを委ねると言っても、決めるのは結局灌太一人である事に変わりない。
その事にツッコミを入れてくれる要員は、この場に誰一人いない。

ともかく、涼宮ハルヒ(灌太)による水野灌太のためのご神卓が、今、下ろうとしていた。

『砂ぼうず君のためになり、もっとも最良な選択、それに当たる次の行き先は−−』

彼女の答えが、悩める灌太の次の行き先となった。

「オッケェーイ!
 ありがとうハルちゃん!」

自分の代わりに答えを出してくれたハルヒ(灌太)に感謝の意を込めて、彼女の乳をまた一揉みする。

「次の場所は決まったぜ!
 砂ぼうず号、出発進行!」

ハンドルを握りアクセルペダルを踏んで、次の目的地に向けて図書館から発進した。


一人の変態妖怪は、今回も己の野望のために知恵と勇気と悪辣さを振り絞って突っ走るのだった。
次回もたぶん、それは変わらない。






「はぁ・・・・・・それにしても死体しか話し相手がいないのは、ちょいと虚しいぞ。
 『砂ぼうず』ならぬ『砂ボッチ』、なんつって・・・・・・はぁ・・・・・・」

850名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 19:00:44 ID:YrRABrO.
【B-3 図書館前/一日目・夜】

【水野灌太@砂ぼうず】
【状態】ダメージ(小)
【持ち物】オカリナ@となりのトトロ、手榴弾×1、朝倉涼子・草壁メイ・ギュオーの髪の毛
 ディパック×2、基本セット×4、レストランの飲食物いろいろ、手書きの契約書、フェイトの首輪、
 ksknetキーワード入りCD、輸血パック@現実×3、護身用トウガラシスプレー@現実、リボン型変声器@ケロロ軍曹
 FirstGood-Bye@涼宮ハルヒの憂鬱、コルトM1917@現実、第ニ回放送までの殺害者と被害者のメモ、チャットの情報を書いたメモ
 ksk車両位値一覧のメモ、ノートパソコン、KRR‐SP@ケロロ軍曹
【思考】
0、何がなんでも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
1、取引現場のモールに向かう前に、小学校・倉庫群・警察署を探索して悪魔将軍への抑止力になる武器や情報を集め、足元を固める。
2、遊園地にいる朝倉涼子とヴィヴィオには何が何でも接触したい。
3、モールに向かい、悪魔将軍にハルヒの死体を渡し、ノーヴェをおいしくいただく。
4、首輪を外すにはA.T.フィールドとLCLが鍵と推測。主催者に抗うなら、その情報を優先して手に入れたい。
5、悪魔将軍が有用であり、流れが良ければ手を組んでもいい。有用でなければ将軍と対立する側につく。
6、首輪を分析したい。また、分析できる協力者が欲しい。
7、関東大砂漠に帰る場合は、川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
8、死体としか話し相手がいなくてちょっと虚しい・・・・・・
【備考】
※セインから次元世界のことを聞きましたが、あまり理解していません。
※フェイトの首輪の内側に、小さなヒビが入っているのを発見しました。(ヒビの原因はフェイトと悪魔将軍の戦闘←灌太は知りません)
※シンジの地図の裏面には「18時にB‐06の公民館で待ち合わせ、無理の場合B−07のデパートへ」と走り書きされています。
※晶達とドロロ達のチャットを盗み見て、一通りの情報を暗記しました。
※図書館のアクセスログから使用されたパソコンの位置を把握しました。

851名探偵スナボゲリオン ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 19:01:20 ID:YrRABrO.
※図書館のチャットの発言ログ(152話・10個の異世界〜153話・情報を制す者はゲームを制す?(前編)まで)から、情報を得ました。
具体的には『東谷小雪の居候=ドロロ』『ドロロとリナ・ケロロ・タママの特長』『チャットでの合言葉』。図書館の発言ログは灌太によって消去されました。
※掲示板での七番目の書き込みにおける集合場所は、山小屋かゴルフ場と予測しています。
※次に小学校・倉庫群・警察署のうち、どこへ行くかは次の書き手さんにお任せします。

852 ◆igHRJuEN0s:2010/07/02(金) 19:03:09 ID:YrRABrO.
これにて投下終了です。
不備や矛盾点などがあればご指摘してくださると助かります。

タイトルの元ネタは、PS2ゲーム「名探偵エヴァンゲリオン」より

853 ◆YsjGn8smIk:2011/02/16(水) 21:22:34 ID:Alu75hwE
規制されたので残りはこちらへ投下します。

854ケロロ大失敗!であります ◆YsjGn8smIk:2011/02/16(水) 21:23:03 ID:sKx9wxsc

「しかし情報と違う奴らが偶然居ただけ……なんて可能性もあるぜ? いったいその時はどうするんだい?」
「誰だろうと関係ないわー−−! どうせ全員殺すんだからなあ!」

あっさりtそう切り捨てるオメガマンに、雨蜘蛛は知らず笑っていた。

「フフフ……いいねえ、その簡潔さは。どっかの甘ちゃんにも聞かせてやりたいぐらいだ。
 ところで俺はパートナーとやらにしてもらえるのかい?」
「おまえはまだ役に立ってないではないか。これからの働き次第だぜ……耳を貸せ」

そしてオメガマンは小声で狩りの詳細を語り始めた。


そもそも何故二人が温泉に来ているかといえば――話は三十分前に遡る。
滝壺で邂逅した二人の悪のマスクドマン……完璧超人ジ・オメガマンと地獄の取立人・雨蜘蛛の二人は。

「フォーフォフォ!」
「ハハハハハハッ!」

とても馬が合った。

「つまり遊園地に朝倉涼子が居るってわけだ! ……やっぱり醤油があったほうが旨いぜー!」
「まあな。で、そっちは温泉にいる獲物を狩りにいくってわけだ……おにぎりに醤油かけて焼いてみたが、食うかい?」
「いただこう」

手を伸ばすオメガマンに、雨蜘蛛は醤油に浸し手早く炙り作った焼きおにぎりを渡す。

「オオー、なんと芳ばしい匂いっ! おまえ、ただものではないな?」
「俺は地獄の取立人だぜぇ? この程度は朝飯前だぜ」
「フォフォフォフォフォ! 気に入ったぜ、この焼き加減。実にパーフェクトだ!」
「ハハハハハ! そうかそうか、まだまだあるぜ?」

焼きおにぎりを旨そうに食べながらオメガマンが笑えば雨蜘蛛も笑う。
二人はまるで十年来の友人のように息がぴたりとあっていた。

「俺と手を組まないかい、ジ・オメガマン?」

そして、そう話を持ちかけていたのは雨蜘蛛からだった。

雨蜘蛛は住んでいた世界・関東大砂漠が溶けてしまった事を知り……動揺はしなかったが、行動方針は大きく動いていた。

すなわち優勝するという方向へ。

なにしろ主催者を倒しても帰る場所は無く、それどころか倒したせいで「この世界」までも溶けてしまうんじゃないかと「あの光景」を見た雨蜘蛛は危惧していたのだ。
そんな危険を冒すよりは優勝して主催者の――たとえば晶との約束を守った長門有希の部下にでもなったほうが生き残れる可能性は高いのでは、と雨蜘蛛は考えた。

しかし晶、深町晶。
雨蜘蛛は彼にたいしてある予感を抱いてもいた。

(あいつの爆発力は侮れねえ。もしかしたら主催者を倒し、なおかつ溶けないですむ方法を見つけだすかもしれねえな……)


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