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リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ

1魔法少女リリカル名無し:2009/11/01(日) 22:57:05 ID:djyhu5eQ
2chが現在大規模規制中のため、12月の中旬まで避難所進行となりました。
期間中の投下はこのスレにお願いします。

2魔法少女リリカル名無し:2009/11/01(日) 23:36:42 ID:/taHvrD.
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリジナル要素、成人向け表現のある作品も、それぞれ専用スレの方でお願いします。

このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
投稿中の雑談はお控えください。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475KBを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその104
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1256989962/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html

3魔法少女リリカル名無し:2009/11/02(月) 00:49:54 ID:.Zhc1fTo


4魔法少女リリカル名無し:2009/11/02(月) 13:12:36 ID:KcgEsaYk
>>1>>2
乙です。

5魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:12:35 ID:6HMZBzr6
こんばんは、久しぶりの登場です。
23:35より、短いですが出来た分を投下したいと思うのですが、如何でしょうか?

6魔法少女リリカル名無し:2009/11/02(月) 23:16:45 ID:vM5l/R.M
おかまいなくどうぞ

7魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:23:23 ID:6HMZBzr6
了解いたしました、しばらくお待ち下さいませ。

8魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:39:18 ID:6HMZBzr6
では、時間となりましたので投下いたします。


「ご説明に入る前に、まずはシャリオ・フィニーノ二等陸曹から今回盗まれた
ファイルの件について話していただけますでしょうか?」
バナチェクがそう言うと、シャーリーは急いで立ち上がった。
「は、はい」
シャーリーは一度深呼吸して気分を落ち着けると、説明を始める。
「私とマリエル技官が発見したクラッキング信号は、わずか十秒足らずで局内の
ネットワークに侵入し、物理的に切断されるまでの数分足らずのうちに最重要
データベースから情報を盗みました」
シャーリーは一度言葉を切ると、横に座るグレンに振り向く。
グレンは管理局の最高幹部やエース級の魔導師たち囲まれてに相当緊張していた。
「グレン、ファイルの内容を出して」
「え!?…わ、わかった」
突然話を振られたグレンは慌てて頷くと、空間モニターを開いて分析したデータ
を表示する。
「信号そのものは手がかりとなる物がまったくない為に現時点では解析不可能
ですが、その中に埋め込まれているデータがミッドチルダのものであるなら、
内容を調べる事は出来るはず…と考えました。
その分析結果がこれです」
“次期次元航行部隊配置計画 警告:統合幕僚会議幹部以下の局員の閲覧を
禁ず”
“JS事件 極秘報告書 警告:元老院大法官、管理局長官、最高法院々長
以外の閲覧を禁ず”
表示されるデータの数々に、長官は驚愕と怒りの入り混じった表情で言った。
「局内部どころか、最高法院や元老院の極秘情報も含まれているのか!?」
静かだが怒気のこもった呟きに、シャーリーは内心の動揺を必死で隠しながら
答えた。
「はい。ですが“敵”がもっとも関心を持っているのは、それらのデータでは
ありません」
そこで、シャーリーはバナチェクとシモンズの方を振り向く。
「あなた方セクター7の管轄下にある“銀の魔神”でした」

9魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:43:38 ID:6HMZBzr6
「ありがとうございました、フィニーノ陸曹」
バナチェクが席に座るよう身振りで示すと、シャーリーはそれに従って腰を下
ろした。
「“銀の魔神”について説明するには、まずミッドチルダと“古(いにしえ)より
代々続きし偉大なるベルカ王の国”略称“古代ベルカ”の歴史について説明する
必要があります」
バナチェクは背後に控えるシモンズに頷くと後ろに下がる、後を引き継いで前に
出たシモンズは説明を始めた。
「失われし先史時代、ミッド・ベルカ両国は驚異的に発達した科学技術でもって
次元世界を制するニ大国として次元世界の覇権を争った事は、普通校初年科の
生徒でも知っている事です。
それを可能としたのは、次元世界間を航行できるまでに至った、科学及び魔導
技術の驚異的な発達であります」
シモンズの背後で空間モニターが開くと、普通校の歴史教科書に出てくる聖王
の即位式を描いた油彩画と、元老院の討議の様子を撮影した写真が表示される。
「学校では、聖王家による政教一致の王制国家である古代ベルカと、その迫害から
逃れてきた土着の民族で作られた、政教分離の共和制国家であるミッドチルダの
宿命的対立が、皮肉にも両国の飛躍的発展をもたらした…と、教えられています。
実はそれとは別に、もう一つ発展の原因となったものがあります」
「もう一つの原因…ですか?」
四人乗りの水素動力式カートの後部座席に座るカリムが、モニター越しにシモンズ
へ質問する。
「そうです。確かに両国の対立は技術の発達の理由ではありますが、その原資
となるものが別に存在するという事です。
現在でも次元世界間の航行は実用化するには、技術的に極めて難しいと言われて
います。
それを、今から数千年も前に、古代ベルカただ一国だけが成功させました。
現在、数百の次元世界が次元航行船を保有するぐらい技術が普及しておりますが、
それはミッド建国の父祖たちの中に、技術の開発に関わった技術者が相当数いた
からです。
これは余談ですが、ミッドが次元世界の中心国的地位になったのも、ベルカ滅亡
後唯一の次元航行技術保有国として普及に努めてきた事実があるからこそです」

10魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:47:06 ID:6HMZBzr6
シモンズが言い終えると同時に、高さ3メートル・幅6メートル程の合金製の
頑丈な自動隔壁の前でカートが停車する。
「古代ベルカの驚異的な発展を可能にし、そして恐らく滅亡の本当の原因とも
なった秘宝中の秘宝が、この奥に眠っています。
これをご覧になるのは、歴代の聖王教会法王と元老院大法官以外では、皆様が
最初です」
バナチェクがモニターを開き、カリム達と一緒に居るエージェントに指示を
出す。
「いいぞ、開けてくれ」
エージェントが空間モニターを操作すると、隔壁の電磁ロックが次々と外れ、
ゆっくりと開いていく。
隔壁の奥に拡がる光景に、全員が息を呑んだ。
そこは高さ50メートル、幅100メートル程の四方形の広大な格納庫。
天井から床まで無数のダクトや電源ケーブルが走り、何十人もの技師たちが庫内
を歩き回り、空間モニターを操作したり同僚と様々な問題について話し合ったり
している。
その中にあって一際目を引く異質な存在が、格納庫中央部の台座に鎮座していた。
高さ25メートルの、無影灯の強烈な光に照らされる白銀の巨人である。
全身分厚い氷に覆われていてすぐに動く事はない様に見えるが、それでも名状
しがたい威圧感が全身から放たれている。
その禍々しさに、列席の面々全員は悪寒を感じた。

「これが…“銀の魔神”…」
シャーリーが呆然としたまま呟くと、シモンズは頷いて話を再開する。
「そうです。これこそ、聖王家が代々守り、聖王教会と元老院が我々セクター7を
作ってまで隠してきた古代ベルカ最大の秘宝にしてタブー。暗号名“銀の魔神”
であります」
モニターの映像が全身から顔にクローズアップされる。目に光はないが、凶悪
な面相でより禍々しい雰囲気が濃厚になっていた。
「体に付いていた氷のサンプルの分析結果から、魔神が古代ベルカに飛来したのは、
今から約2000万年前と見られています」
「2000万年前って、えーと…」
スバルが指を折って何か数え始めると、ティアナが諭すように言った。
「先史時代より遥か昔、私達のご先祖もこのくらいの大きさしかなかった時代よ」
そう言いながら、拳を作って大きさを教えたティアナに、スバルは照れ笑いを
しながら頭を下げた。

11魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:49:30 ID:6HMZBzr6
そんな二人のやり取りを横目に、バナチェクが話を続ける。
「古代ベルカ戦争から聖王戦争に至るまでの間に開発された質量兵器や魔導兵器は、
この魔神から得られたテクノロジーを基にしていたと、我々セクター7は分析して
います」
「我々ヴォルケンリッターもそうだと?」
シグナムの質問にシモンズが黙って頷く。
「勘弁してくれよ、こんなおっかないシロモノからあたしらが生まれたなんて、
考えるだけでもゾッとする」
「まぁまぁヴィータちゃん」
ヴィータが苦み走った表情で言うと、シャマルが苦笑気味に宥める。
「これが、真なる“死せる王”とすれば…」
カリムが呟くとバナチェクは頷いて言う。
「そうです、あなたの預言がこれの事を指すとすれば、事態は“JS事件”の
比―――いや、“事件”ではなく“戦争”になるでしょう」
“戦争”という言葉が出た途端、列席者全員の表情が強張った。

フレンジーは倉庫の天井から、魔神を見下ろしていた。
眼下には大勢の人間が居るにも関わらず、ラジカセにはトランスフォーム
していない。
天井を走るケーブルやダクトに露出した機械類がカムフラージュの役割を
果たしていて、その姿に気付くものは居ないからだ。
フレンジーは手近のケーブルに手を差し込むと、それを通じて外へ信号を
送った。
傍目には只のノイズにしか見えないし、時間にして一秒以下なので施設及び
教会全体に張り巡らされたセンサー類にも引っかからない。
送信された内容は以下の通りだった。
“フレンジーよりスタースクリームへ、<メガトロン様>を確認、この信号
を目印に”

12魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2009/11/02(月) 23:51:35 ID:6HMZBzr6
本日はここまでで終了です。
破壊大帝もようやく姿を現しました。
次はクラナガン市内に潜入しているデストロン軍団の大暴れがメインに
なります。
お楽しみに!

13魔法少女リリカル名無し:2009/11/02(月) 23:55:03 ID:vM5l/R.M
GJ
TFは起源と歴史が長いこと長いこと
作品によっては宇宙の始まりから存在してたり、寿命もないし
海外展開アニメだと百億年生きましたが何か?なキャラもいるんだっけ?

14魔法少女リリカル名無し:2009/11/03(火) 00:09:52 ID:oZXZ388M
>>13
「アニメイテッド」での台詞ですね。
あれ、日本で放映してくれないものでしょうか…。

15NZ:2009/11/03(火) 09:58:38 ID:6zWF2kEY
10時よりロックマンRXプロローグと第一話を念のため
それと第二話を投下いたします。

16RX:2009/11/03(火) 10:00:07 ID:6zWF2kEY
*****************
ある時、戦いがあった。
『全てを捨てる』者と、
『全てを守る』と誓った「風」と「翼」の名を持つ者との戦いが・・・
この物語は、歴史に決して残ることのない「翼」の名を持つ者のもうひとつの戦いの物語である・・・
ロックマンRX始まります。
*****************

               THE NEW HERO

               ROCK. . .ON

               ロックマンRX
エール
「ロックオン!!」

17ロックマンRX第一話:2009/11/03(火) 10:01:05 ID:6zWF2kEY
あたしは、セルパンを倒した、後ライブ・メタル達の力で、セルパン・カンパニー本社を脱出して、
サイバー・エルフになったジルウェと再会していた。
(運命ってモノは誰かに決められるものじゃない、文字通り『命』を自分の行きたい未来まで『運』ぶ事だ)
(エール、お前が世界を運べお前の行きたい未来までこの世界を、送り届けろ・・・)
(それがお前に託す最後の、運び屋の仕事だ・・・)
それっきりジルウェの声は聞こえなくなった。

第一話『全てを守る者』

気が付いたら、あたしは草原に立っていた遠くの方に街がある。
「エール!!」
!!
後ろを向いたら、ガーディアン・ベースから降りてガーディアン達が、並んでいた。
金髪で、ピンク色の帽子と服を着ているのは何時も通りだけど、
何時もは自分の席に大事においてある白猫のぬいぐるみを抱いている少女があたしの方に賭けて来た
「プレリー!!あたしやったよ、セルパンとモデルVを倒したんだ!!」
彼女はプレリー、ガーディアンにこんなあたしと同じような年の女の子がいるのはおかしいって?
それには、理由があるんだけどそれは後で。
「ええ、だけどもっと事態は悪い方向へと進んでいるの、フルーブから説明してもらうわ」
ガーディアン達のほうから青い服をきてヒゲを蓄えた小柄な老人が歩い来ようとした瞬間、
近くで爆発が起きた遠くの方を見れば、カプセル型のメカ二ロイド?が近付いているのが見えた。
数は、ザッと、10〜20倒せない相手じゃないけど、あたしもさっきの戦いで疲労している、あまり長引かせ分けには行かない。
「プレリー!皆を連れてガーディアン・ベースへ!!」
「分かったわ、貴女も気をつけてねエール・・・」
「さ〜て、行くわよ!モデルX、遠距離から片をつける!!」
(分かった!エール、ロックオンだ!!)
「うん!!」
あたしはモデルXを両手で目の前に突きつける様に構える。
「ロック!!・・・」
「そこを動かないで!!」
何処からか声がした、とても凛々しい、けど優しい声だった。
「何!!」と言おうとして後ろを向こうとした瞬間、桜色の閃光が飛んできたあたしは反射的に衝撃に備えたとてつもない爆風だ、
こんな衝撃なら、直撃したメカニロイド達は・・・・目の前には小さなクレーターが出来ていた、さっきの声の主がやったのは、
分かるので、後ろを向いた・・・そこには天使がいた・・・
その容姿は、髪をツインテールにしていて、まさに天使と言っていいものだった。
服は余りに戦場に不似合いな格好だった、そして宙を飛んでいる、靴からさっきの閃光とおなじ桜色の鳥の翼のような
ものが生えているがあんな物で空に浮いていられるはずがない、だけどジェットパックや、モデルHXのような
ビームによる翼を生み出すような物を身に付けている様子もないそして・・・
手には、さっきの閃光を放てるようには、見えない金色の紅い宝玉の付いた魔法の杖としか形容できないものを持っていた。
その人はゆっくりと降りて来た。
「大丈夫?」
「ええ、はい・・・」
「事情は聞きたいから、一緒について来てくれる?そこにいるあなたの仲間と」
どうも断れそうになさそうだ、それについていけば詳しい状況を聞けそうだ、よく考えればいくら、
ライブ・メタルの力を使ったからって、こんなに、街から離れられる分けはないし、
あの街にはどう見てもセルパン・カンパニー本社の残骸や、大型エネルギー供給装置も見当たらない。

18ロックマンRX第二話:2009/11/03(火) 10:02:48 ID:6zWF2kEY
突然ですが、NZです。この作品のエールのデザインは髪型以外はアドベント版だと考えていただけると
より、作品をお楽しみ頂けます(そうすると、リリカル側のキャラデザインと釣り合いますし。)
この後は、ロックマンRX第二話をお楽しみ下さい。
**************************************************************
あの襲撃から、すぐに後あたし達ガーディアン・ベースであたしを助けてくれた人、(『高町なのは』と言うらしい)
の所属しているらしい部隊『機動六課』の隊舎に向かっていた、でもあたし達の国には、軍隊なんてないし、セルパン・カンパニーの
警備隊はメカニロイドとレプリロイドで構成されているいから、人間が所属しているのはおかしいし、
あんな名前あたしの国ではありえない、それにあの格好とあの杖・・・なにもかも分からないことばかりだ。
せめてもの救いはガーディアンの仲間達がいることだろうか。

第二話『白き魔道師 黒き魔道師 白金の魔道師』

『機動六課』の隊舎に着いてからガーディアン・ベースは、格納庫に入れられ、あたしとプレリーは、ボディチェックと
精密検査を受けたあと待合室で待っていた建築様式等は昔、本で読んだことのある「西暦」と言う年号が採用されていた時代の、
21世紀と言う時代の頭に似ていた
机の上には冊子にたいなものが置けれているけど、あたしの知ってる英語に似ているけど微妙に違う文字だった。
そして、ドアが開き3人の女性が入ってきた、歳の頃は、あたしやプレリーより少し上といった所だった。
一人はよくよくみればさっきの高町なのはと言う人だった、さっき会った時から髪型もツインテールから、
サイドポニーに変わっていたし、さっきの白に青が入ったドレスのような服から、茶色の制服らしきものに変わっていた。
「まずは、お互い自己紹介をしなければなりませんね、すでに名乗っているけど改めて自己紹介をさせていただきます
 私は、管理局機動六課所属の高町なのはです」
「同じく、機動六課所属のフェイト・T・ハラオウンです」
「私は機動六課部隊長の八神はやてです」
やっぱり、管理局なんて、聞いたことないし・・・じゃあなんなのこれは?
「では、あなたたちのお名前をお聞きしたいのですが」
「あ、はいあたしは、運び屋ジルウェ・エクスプレス所属のエールです、敬語は使わないでください、そういうのになれて
 なくて・・・」
「そやね雰囲気からそんな感じするんやもん」
「・・・私は政府非公認対イレギュラー組織ガーディアン二代目司令官、プレリーです」
しばらく場に沈黙が流れた、
最初に口を開いたのははやてだ。
「ええッそんな歳でぇぇ!!そんなどう見ても15歳くらいやで!!」
「失礼だよはやてちゃん」
「いやいや、はやて、プレリーは見た目こそあたしと同じくらいだけど、じつは、数百年前のイレギュラー戦争って戦争の時に
 生まれたレプリロイドらしいから軽く100歳は超えてるよ」
「いきなり呼びすえてかいな、一応あんたより、年上なんやけどなぁ」
「レプリロイド?そういえばプレリー、あなたは検査によると人間じゃないって結果が出たし、エールの体は何か異物が埋まっている
 と言う結果だったけど・・・」
そう聞いてきたのはフェイトだ
「レプリロイドは、人間と同じ思考、姿をしたロボットです
 今では数百年前に作られた人間とレプリロイドの格差をなくす法律によって私や、統一政府レギオンズの、トップ三賢人、そして
 政府が未確認のレプリロイドの一部以外は調整を受けて寿命が設定されていて人間は運動能力強化のために
 体の一部を機械に置き換えています」
「えーと、話を本題に戻すよ」
そういったのはなのは。
「軽く状況を説明するとあなたたちはあなたたちの世界とは違う世界なの」
「・・・・・・・・」
「嘘・・・だよねぇ、ねぇそう思うでしょプレリー」
「いいえ、エール彼女達の話しは本当よ」
「なんで、そんなに冷静なのよぉプレリーィィィィィィ!!」
「私達はセルパン・カンパニー本社の崩壊を見届けた後、謎の光にベースごと包まれたのそしたら通信もGPSも使用
 できなくなっていたから、これは昔聞いた時空間移動ではないかと言う仮説を立てたの、まさに大当たりだった分けね」
「そういうことだったんや・・・でそのセルパン・カンパニーってのは何で崩壊したんや?」
あたし達はあたし達の戦いの日々、ライブ・メタルのことを話した。

19ロックマンRX第一話:2009/11/03(火) 10:03:36 ID:6zWF2kEY
「そんなことがなったならその衝撃で次元震が起きてもおかしくないな」
「て、ちょっとまってはやてちゃん」
「なんや?」
「今の話だとエールちゃん達もそのライブ・メタルって言うのを持っているって事みたいなんだけど、だとしたらそれって
 ロスト・ギアじゃ・・・」
「ロスト・ギアっていうのはな、古代の遺産、失われた存在、って言われているもんや」
「私達、機動六課は、ロスト・ギアの確保を目的にはやてが設立した部隊なの」
「そして、大型の熱量とロスト・ギアの反応が次元震と同時に発生したから私が向かったら、あなたたちを見つけた分けなの」
「ッて事はモデルX達もそのロスト・ギアってくとですかぁぁ!!いやですよぉモデルX達はあたしにとって大切な仲間だし
 さっき話したようにモデルV以外暴走や悪人へ力を貸したりしないって・・・」
  エールの予想は後に(力を貸すのではなく無理やりではあるが)裏切られることになるのだが。
「所であたし達を助けてくれた時になのはは何故宙に浮いていたの?ジェット・パックみたいなものつけていたようには
 見えなかったし、あの服は戦場には不似合いっていうか・・・」
「あれは・・・魔法」
そう言ったのはフェイトだった機がするがびっくりしすぎてもうそんなことはどうでもいい
「へっ!!魔法?そんなものこんな時代にあるわけ無いじゃん!!だいたいこんな建築物魔法なんかじゃ・・・・」
「落ち着いて!エールちゃん!!
 実は私とはやてちゃんは実はこの世界の出身じゃないんだけど、私とはやてちゃんが生まれて、フェイトちゃんも一緒に育った
 世界には『発達した科学は魔法と変わらない』って言葉があるんだけど、この場合はその反対だね」
「つまり『発達した魔法は科学と変わらない』と言う事ですか?」
「プレリーちゃん正解」
「所で・・・話が変わるんやけどなぁエール、あんたの声どこかで聞いたことのあるような〜・・・
 はっ思い出した、そうやリィンフォースや!初代夜天の書管制人格でありリィンのお姉さんそして八神家の大切な家族,
リィンフォースの声にそっくりなんや!!」
その後あたし達ははやて、なのは、フェイトの昔話を聞いてからすでに時間は午後8時を過ぎていたのに気づいて
話の続きは、次の日にして格納庫に収容されてるガーディアン・ベースの自室に戻った。

20NZ:2009/11/03(火) 10:05:44 ID:6zWF2kEY
以上です。
今回はエール達が自分達の状況把握でしたが、次回はバトルです
(といっても作者は会話はともかく戦闘シーンの再現というのはなかなか乏しいものですのであしからず)

21魔法少女リリカル名無し:2009/11/03(火) 13:16:33 ID:k.tPhPb6
>>12
GJ!!
すべてはメガトロン様からもたらされた技術だったんだよ!な、なんだってー!な展開でした。
デストロンの攻勢がどうなるか楽しみです!玩具やコミックの映画未登場の連中も出そうですし。
>>13
最初の13人は宇宙誕生期に創られたらしいね。

22魔法少女リリカル名無し:2009/11/03(火) 21:52:59 ID:/yzScoQM
>>12
GJ!!。
メガトロン様が登場したw
復活までは、秒読み段階で楽しみすぎる。

23運営議論スレより:2009/11/03(火) 23:22:08 ID:GAqaM4Q2
突然失礼します。
運営より告知をさせていただきます。

ただ今運営議論スレにてNZ氏の追放処分についての投票を行っております。
期間は今週末まで。
詳しい経緯については運営議論スレの>>730以降をご覧ください。
ご覧になってもわからない部分が有りましたら、運営議論スレにてご質問お願いいたします。

では、失礼いたしました。

24無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 20:16:44 ID:uNEwl48U
大変タイミングが悪い気がするのですが……お久しぶりです。一か月以上かかってしまい、申し訳ありません。
どうでもいいことですが、他作品の執筆を終えた途端に脱力感に襲われてしまってしばらく執筆できませんでしたので、ここまで時間がかかってしまいました。

では改めて、リリライ第十四話の投下を20:45にしたいと思います。何か問題がありましたらそれまでにお知らせくださると助かります。

25魔法少女リリカル名無し:2009/11/04(水) 20:44:28 ID:vMpHw2G2
どうぞ

26無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 20:51:24 ID:uNEwl48U
では投下を開始します。

27無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 20:53:19 ID:uNEwl48U
 わたしが到着した時、二人の過酷な戦いは既に始まっていた。
 長い長い、死闘とも呼べる戦い。苦難の末に勝利を手にしたのは、カズマ君だった。
「良かった……」
「なのは」
 びくっと肩を振るわせてしまう。慌てて振り返るとフェイトちゃんが立っていた。何故か自分と同じようにバリアジャケットを纏って。
「いつからいたの?」
「なのはの後だよ。でもはやては流石だね、自分が行けないから代わりにリィンを行かせる辺り隙がない」
 冗談めかした口調でそういうフェイトちゃん。こんな楽しそうなフェイトちゃんは久し振りに見たかもしれない。もちろん普段がつまらなそうと言う訳じゃないけれど。
 そんなフェイトちゃんは白いコートを翻しながらわたしに背を向けた。
「さ、行こうか」
 フェイトちゃんが手を差し伸べてくる。断る理由はないし、何よりわたしも早くカズマ
君に会いたかったので、すぐにその手を握った。その手はとても温かい。
 その時、光が臨海第八空港を包み込んだ。

28無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 20:57:02 ID:uNEwl48U




   リリカル×ライダー

   第十四話『スカリエッティ』



「お前――――!」
 怒りが頭の隅々までを支配し、思考能力を完全に奪わせる。闘争本能が頭をもたげ、身体を操作しようとする。それは俺の意思では
決してない。
 だが俺はそれでも構わない。この怒り、そして悲しみに決着が着くなら、俺は幾らでも本能に身を預ける……!
「君は面白いなぁ。オリジナルの力を持つ者がどういった人物か、興味はあったんだ」
 ジェイル・スカリエッティ。なのは達が追う天才科学者にして災厄をもたらす凶悪犯罪者。通称『無限の欲望《アンリミテッド・デザイア》』。
 俺はコイツと戦うつもりはなかった。それはなのは達の役割だと思っていたからだ。だが、俺にも戦う理由が出来てしまった。そう
だ、だから俺は奴を倒す。奴の所業を、絶対に許しはしない。
「待って、カズマ」
 誰かがぽん、と俺の右肩を叩いた。柔らかい手、そして冷静な声。それで、水をかけられたように頭が平静を取り戻した。
 後ろを見れば黒いフィットスーツに白いコートという出で立ちのフェイトが立っている。多分、これが彼女のバリアジャケットなのだ
ろう。
「フェイト……なんで」
「なのはも一緒だよ」
 前を見れば、いつの間にか白いバリアジャケットを纏い、レイジングハートを構えたなのはがいた。顔は、見えないが。
「レイジングハート! エクシード、ドライ
ブ!」
『Ignition』
 彼女の冷静な声とレイジングハートの電子音声の後、杖とも槍とも取れる形状だったレイジングハートが一瞬にして変形、六枚の桜
色をした魔法の羽根を伸ばす巨大な突撃槍に変化した。
 ただ槍というより、なのはの特性的には巨砲という方が正しいかもしれないが。
 それに合わせ、なのはの服装もより防御を重視した、鋭角的な形に変化していた。
「ノコノコそちらから向かって来るとは、好都合だよ六課の諸君!」
 両手を広げ、まるで舞台の人みたいな仰々しい仕草をするスカリエッティ。だが二人はそれを気にも止めずに動き出す。
「フェイトちゃん、行くよ!」
「うん!」
 いつの間にか鎌型デバイス、バルディッシュを展開していたフェイトが白いコートをはためかせながら飛翔する。
 黒のフィットスーツに包まれたしなやかな肢体をひねり、その鎌を鋭く構える。
 そんな二人とスカリエッティの間に割って入る、三つの影。
「ドクターはやらせんぞ」
「トーレ! セッテも……」
 フェイトが目の前の人物を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。因縁の敵を見つけたような表情だ。もしかしたら彼女達が、件の
戦闘機人なのか。
 彼女の目の前に割り込んだ女性――トーレはばっさりと切って短髪にした髪を揺らしながら紫のフィットスーツに包まれた引き締まった体を捻って独特なポーズを取る。
 その腹の部分にあるのは――
「……まさか、ライダーシステム!?」
「はっはっは! オリジナルよ、君の実力を
見せてくれ!」
 残りの二人、片方は眼鏡を付けて底意地の悪そうな笑みを浮かべた女と無表情に包まれたセッテと呼ばれた少女、二人も腰のベルト
に手をかける。
「変身!」
『Open Up』
 三人の姿が変化する。
 それは、見たこともないデザインのライダーだった。

29無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:05:37 ID:uNEwl48U
「嘘、だろ……」
「驚いたかね?
 ニュージェネレーション、新世代ライダーシステムと私は呼んでいるのだがね。私はこれについてあまり知らないが、知らないなりに自らで工夫してこれらを作ったのだよ」
 彼女ら、新世代ライダーシステムと奴が呼ぶ姿に目を向ける。その中でもトーレの変身体は隊長格だからか、最も立派な設えになっ
ている。
 頭は菱形のアイ・センサーの周囲を金色のフェイスガードとAの形にアレンジしたチークガードが包み込む。
 胴は肩の部分が張り出した黒と金を組み合わせた配色の強固なアーマーでがっしりと保護されている。そして脇には一振りの剣。
 残りの二人もそれぞれ似たような外観をしていた。
 セッテが緑色、もう一人が赤色を基調としていることとフェイスガードが省略されていたりアーマーが軽量化されているのが特徴か。
 二人は武器もそれぞれ槍とボウガンという異なるものが装備されている。
「行くぞ!」
「ッ!」
 トーレが先に動き出す。彼女のアーマーごしに腕と足から紫のエネルギー翼が発生し、舞い上がるような軽やかな動きでフェイトに迫る。
 ワンテンポ遅れて、フェイトも雷の光刃を伸ばすバルディッシュを構え、彼女の突撃に対処する構えを見せる。
「私はあなたを抑える」
 そう言ってなのはに迫るのはセッテだ。右手に持つ槍とは別に、左手でブーメラン状の曲刀を投げ放ちながら彼女はなのは目掛けて突撃する。
「しょうがないわねぇ、私も援護してあげる」
 そう皮肉気な口調で喋る赤いアーマーを纏う女もボウガンをなのはに向けて構える。
「なのは、俺も援護を――」
「カズマ君はスカリエッティをお願い!」
 その台詞にハッとする。そうだ、俺には戦わなければならない相手がいるのだ。こいつらの相手はしていられない。
「ようやく君との舞台が用意出来たよ」
 何処か気味の悪さを覚える紫の長髪を揺らしながら明らかに薄気味悪い笑みを浮かべて近付くスカリエッティ。
 彼も何かベルトらしきものを装着しているが、細部はよく見えない。
「さぁ、パーティーの始まりだ!」

30無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:08:57 ID:uNEwl48U
『Open up』
 その聞き覚えのある電子音声、そして眼前に展開される紫のエネルギーフィールド。中央に描かれたスパイダーの紋章。
 奴を通り越すように動くオリハルコンエレメントに包まれ、スカリエッティは姿形を変えた。
「レン、ゲル……!?」
「ハッハッハ! やはり君は見覚えがあるらしいな!」
 深緑を基調としつつも金色の縁取りが施された鎧はどこか気品と王者の風格を漂わせる。
 また頭は垂直に伸びた二本の角がさりげなくも自己主張しており、派手ではないが王冠のようなデザインで纏められている。
 そのシックながらも豪奢な姿は犯罪者とは思えない堂々としたもの。これが、レンゲル。スカリエッティが変身するライダーシステム。
「どうしてお前がレンゲルのベルトを!」
「これは魔力を利用して作られた偽物だよ。安心したまえ」
 レンゲルのクラッシャーから心底愉快そうな声が漏れる。
 確かにレンゲルの鎧からは魔力が検出されている。ならばあのレンゲルクロスはチェンジデバイスみたいなものなのだろうか。
 だがその外見はオリジナルのライダーシステムと寸分違わない。
「そんなことはどうでもいい……俺は、お前を倒す!」
 そうだ、今はスカリエッティがレンゲルのレプリカを使っていようが関係ない。俺は、奴を倒す。
 ブレイラウザー片手に走り出す。一瞬で二人の距離は零になると同時に、俺は剣を垂直に振り落とした。
「ふむ、この程度かね?」
 剣先を見る。そして俺の表情が驚愕で染まった。何故ならブレイラウザーが、片手で掴まれていたからだ。
 正確には人差し指と中指。その二本の指に、ブレイラウザーは綺麗に挟まれていた。
「なっ……」
「これでは拍子抜けだな!」
 ガツンと腹にハンマーを叩き付けられたような衝撃が走る。蹴られた。けれど、ただの蹴りとは思えない威力だった。
「ふむ、私が期待していたほどのものではないな」
 面白くなさそうに手首を捻り、いつの間にか現れていた短槍を掴み上げるスカリエッティ。
 短槍は一瞬にして伸長し、刃先が割れて僧侶が用いるものと違って鋭い刃が付いた錫杖に変わる。
 俺はブレイラウザーのカードホルダーを展開し扇状に広げてカードを引き抜いた。
『――THUNDER』
 アンデッドの力がブレイラウザーに伝わり、電光の閃きを白刃に纏わせていく。青い稲妻が剣から溢れ出し、その解放を今か今かと急
かせる。
「あああああああっ!」
 俺は雄叫びと共に剣を振りかざし、その雷撃を解き放つ。蒼雷は空間に伝播し、一筋の槍となってスカリエッティに襲い掛かる――
――!
『――Blizzard』
 その瞬間、スカリエッティが一枚のカードを錫杖の後ろに付いたカードリーダーに通す。刹那、魔法陣が出現し、絶対零度の吹雪を吐
き出した。
 雷を巧みに取り込むようにブリザードは広がり、瞬く間に雷は拡散していく。まるで難攻不落の壁に取り込まれるように。
 レンゲルの仮面でスカリエッティの顔は見えない。それでも俺は、ニタリと歪んだ奴の顔を幻視してしまった。
「ふむ、確かにカードによる魔法は威力が通常より高くなるよう設計されているが、果たしてオリジナルはそれに負ける程度の威力な
のかな……?」
 マスクの下で何か呟いているが、そんなことは気にもならない。いや、気にする余裕もない。
 何故、どうして奴に防がれたんだ……?
「――そうか、君は疲れているのではないかね?」
「何だと!?」

31無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:10:48 ID:uNEwl48U
 奴に馬鹿にされたことが俺の怒りを更に膨らませ――

――ドクン。

(――ッ!)
 そうだ、冷静になれ。俺の本能が囁いてくる。奴に勝ちたければ冷徹な思考を貫け、と。俺は怒りで突っ走り過ぎる。落ち着かなけれ
ば。
 確かに俺は今消耗している。慣れないジャックフォームに変身し、長い戦いを終えたばかりだ。それに比べ、相手は無傷。
 ここは、退くべきなのかもしれない。
(くそっ!)
 俺は慣れない念話を使用するべく、システムを起動させた。
『なのは、フェイト。今は退こう』
『カズマ!? どうして……』
『カズマ君! 今取り逃がしたらまたたくさんの人が泣いちゃうんだよ!?』
 確かにそうだ。今こいつを取り逃がせば、新たな犠牲者が出る可能性がある。だが、今俺達が倒れては何の意味もない。
 だから俺は、現時点でもっとも冷静な対応ができる人物に念話を繋げた。
『はやて! スカリエッティは万全の準備をしてきてる。撤退命令を出してくれ』
『私も確認したわ。リィンに転送させる』
『はやてちゃん!』
『なのはちゃん! 冷静になりや!』
 びくんとなのはが肩を震わせる。その隙にとセッテが槍を振りかざす。
「みなさん、転送!」
 その一瞬後、リィンの声を聞きながら俺達は臨海第八空港から消え去った。

32無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:11:35 ID:uNEwl48U



     ・・・



「……」
 ここは部隊長室。すなわち私の部屋。書類が山積みされた私のデスクと隣にあるミニチュアのようなリィンの机、そして来客用のソ
ファしかない一室。
 今ここは、重苦しい空気に支配されていた。
「――なのはちゃん、フェイトちゃん。顔を上げてくれんか?」
 私が精一杯の声をかけるが、二人はショックと怒りからか反応さえしてはくれなかった。あるいは疲れ果てて応える気力も湧かないの
かもしれない。
 今回の戦闘機人は以前とは比べ物にならないほど力を増しており、リミッター付きの二人には辛い相手だったはずだし。
 一方のカズマ君は意外と冷静そうな顔で何やら考え事をしているようだった。一番最初に冷静でなくなった人が最初に落ち着くなん
て皮肉だなと思うけど。
「カズマ君、今回のスカリエッティが用意したアレって――」
「――ああ、たぶんチェンジデバイスみたいなものだと思う」
 ロングアーチによる観測データではないので確証は難しいが、リィンの測定データではスカリエッティの装備が魔力で構成されているのは確かだった。
 ただしチェンジデバイスのように自発的に魔力を発生させるわけではなく、あくまでスカリエッティの魔力で動くデバイスのようだったけれど。
 ちなみに戦闘機人の方は魔力ではない。魔力に似せたエネルギーをスカリエッティは利用したに違いないとはシャーリーの言だ。
 戦闘機人はインヒューレント・スキルという固有能力を持ち、それを扱うための科学エネルギーがそれに値するらしい。
「じゃあカズマ君ならスカリエッティの装備が持つ弱点とか分かる?」
「それが分かれば苦戦しないだろ」
 それもそうだった。
 カズマ君が一瞬だけ悔しそうに表情を歪める。冷静なようでいて、怒りが収まったわけじゃないのだろう。
 隣のリィンと目を合わせてため息をつく。スカリエッティの出現より、この空気の方が私には問題だった。まぁ、奴のせいではあるが。
 そんな沈み込んだ空気の漂う部隊長室。そのドアが突然開け放たれた。
「失礼しま……も、申し訳ありませんでしたっ!」
 入ってきたのはティアナだった。スカリエッティの破棄した基地について報告書を纏めてきたのだろう。
 普段ならともかく、今はノックもせず入ったのは失敗だったと思う。何せこの空気だ、ティアナなら余計に自分のミスに気付いただろう。
「ティアナ、報告書はここに置いてってな」
「は、はい……。すみませんでした」
「ええよ、次から気を付けてな」
 取り敢えずフォローはしておく。この空気、そして隊長陣の異常な状況を見てショックを受けたのは目に見えて分かったからだ。後で説明しておこう。
 そのとき、私はある案を思い付いたのだった。
「そうや……カズマ君、フォワード陣に入ったらええんやない?」
「はぁ!?」
 ティアナとカズマ君の叫びが重なる。思わず見合わせる姿など、なかなか笑えるものだったのは内緒な。
 ちなみに思い付きではあるが何も考えずに言ったわけじゃないで?
「はやて部隊長、それはどういった理由からでしょうか? スターズ、ライトニング両分隊は今の状態でバランスが取れていると思う
のですが」
 慌ててティアナが反論をまくし立ててくる。そこまでして反発する内容だろうか。
 フェイトちゃんとなのはちゃんが大人しいなと思ってソファを見たら、二人は肩を寄せ合って寝ていた。
「もちろん所属はロングアーチのままや。指揮はリィンに任せるつもり」
「聞いてませんよ、はやてちゃん!?」
 リィンが元々高い声でさらに素っ頓狂な声を上げる。そんなに驚くことだったのだろうか。
「しかしザフィーラさんが不在なら六課の防衛戦力として必要なのでは……」
「大丈夫や。これからはどちらかの分隊を防衛に就かせるつもりやから」
 ティアナが驚いたように目を見開く。これは以前からの決定事項だ。単に言うタイミングが早すぎただけで。
 本当ならシグナムとヴィータに任せるつもりだったのだが、二人が出撃したいということでこういうことになったのだ。
 確かにフォワード陣のメンバーではスカリエッティの強化戦闘機人を相手にするのは難しい。だからこそ防衛に重点を絞ったわけだ。
 そして、今回の発想がそれにアレンジを加える。

33無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:12:20 ID:uNEwl48U
「今回からは出撃分隊にサポートとしてカズマ君を付けるつもりや。これで打撃力不足をカバーする」
 そう、カズマ君は止めてもスカリエッティの元に向かうはず。それを逆手に取った手段だ。これならカズマ君のそばに誰かを付けて
おくことができる。
 もちろんそれだけじゃない。彼は飛行魔法も使えるから遊撃班としても妥当だった。
「ちょっと待ってくれよ、俺はまだ何も言ってないぞ」
 ぐっと黙り込んだティアナに続いてカズマ君が反論の声を上げてきた。どうしてこう私の意見に反対する人ばかり……。
「ええやないの、私への恩返しということで」
「ぐっ、それをここで出すか……?」
 カズマ君が呆れたような表情を浮かべる。
 それに私は、とびきりの笑みで応えることにした。

34無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:14:37 ID:uNEwl48U



     ・・・



「どうだったかね、トーレ」
 巨大な地下空洞を利用したドーム状の施設。
 天井には幾多のパイプがのたくるように走り、壁にはコンソールやモニターが敷き詰め
られ、中央には立体映像投影装置を埋め込んだ机が置かれた場所。
 そんな秘密基地じみた施設に五つの人影。その一つであるスカリエッティが長身の女性、
トーレに問いかける。
「最高ですよ、ドクター。『グレイブ』ならフェイト相手でも全く問題ありません」
 トーレは表情一つ変えずに淡々と告げる。だがフェイトの名前を出したときだけ口調が一瞬固くなっていた。
「ふむ、そうか。流石は私だな。しかし君も彼女には対抗意識を燃やしているようだな」
「そのようなことはありません」
 断言だった。
 それを聞き狂ったように笑い声を上げるスカリエッティ。トーレは一瞬だけ眉を潜めたが、すぐに無表情に戻した。
「それよりもぉ、これからどうするんですぅ?」
 蔑むようでいて媚びるような独特の口調。発生源にいるのは眼鏡をかけた女。その顔には、寒気のするような笑みが張り付いている。
「クアットロ、待ちたまえ。ゲームはまだ始まったばかりだ」
 スカリエッティはニタリと嗤う。その顔を見て、クアットロもまた笑みを深めた。ただただ、心底楽しそうに。愉快そうに。
 彼を見るもう一人の人物、ウーノは何も言わない。ただ表情を曇らせたまま、彼を見続けるだけ。
 たった五人で時空管理局に抵抗する彼らは、しかしそれを感じさせないほど今を楽しんでいた。そう、彼らが始めた、新しいゲームを。



     ・・・



 強大な力をつけたスカリエッティに対抗するべく苦悩する機動六課。しかしガジェットの反応を受けてカズマも出撃を果たす。
 一方、首都クラナガンでは王の少年が平凡な生活を迎えていた。



   第十五話 『ガジェット』



   Revive Brave Heart

35無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/11/04(水) 21:20:46 ID:uNEwl48U
これにて投下終了です。しつこいですが、遅れてしまい申し訳ありませんでした。

今回でようやくスカリエッティが正式に登場です。戦闘機人強化案、実は本作連載途中で思い付いたのですが、設定的にはレンゲルクロスを元に製作したことにしています。ガンナックルやクローン(プロジェクトF)などと同様、スカリエッティはコピーが得意なんだと裏設定で勝手に決めましたので(ぇ)。
それとスカリエッティの性格がかなり原作からずれていると思います。これは自分にとっての悪役のイメージで書いたらこんな感じになっちゃったというものなので、半分オリキャラ化しています。原作至上主義の方には大変申し訳ございません。

ではでは、これからも投下頑張ろうと思いますので、よろしくお願いします。

36魔法少女リリカル名無し:2009/11/04(水) 21:32:00 ID:vMpHw2G2
GJ
新世代型の3つはケルベロスを分割したものだったけど
元のあれは橘さんが頑張った結果なんだろうか?
コピーは原作にもあったからそういうものでしょう

37魔法少女リリカル名無し:2009/11/05(木) 13:53:39 ID:YcOg3dt2
もう管理世界はメガトロン様に支配されますたでもいいかも。

38魔法少女リリカル名無し:2009/11/05(木) 19:07:33 ID:YbWCM6Ns
強い!!
確かにJ・K等の特殊能力なしの代わり素の能力が高めだったからな
レンゲル
タランチュラのおっさん出てくるかな?

39R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/05(木) 21:47:46 ID:G2KcJSJA
>>1氏、スレ立て有難うございます
3度目の正直と云う事で、明日の20:00から投下を予約させて頂きます
毎度ながら精神的に酷い負荷を齎す作品ですが、今回は特に酷いと思われますのでご注意を
では、また明日

40魔法少女リリカル名無し:2009/11/05(木) 22:02:30 ID:n9rEnfwc
待ってたよー
もう氏の作品に調教され切っちゃって、その酷いのが楽しみで仕方ないです
期待してます

41魔法少女リリカル名無し:2009/11/05(木) 23:12:17 ID:CpY0jYjU
正直tactics2終わるまでこないもんかと思ってた

42魔法少女リリカル名無し:2009/11/05(木) 23:56:20 ID:R8t1Gp4A
>>39
R-TYPE Λ氏、待っていたよ!!

さあ、地球軍にバイドよ、なのは達をどんどん殺してくれ!!

43魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 01:53:01 ID:fvNgwLTA
>>42
作品見るとリリなの勢よりも遥かに多く地球軍や民間人が死んでるけどな

それより無駄に死を望むようなこと書いてんじゃねえよw
登場人物に恨みでもあるのかw

44魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 09:32:47 ID:UuzhMZLQ
Λの感想って大概がこんな感じじゃね

45魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 09:47:10 ID:jonWr3Ag
陣営に関係なく惨たらしく死ぬ。それがR-TYPEくおりてぃ。

46魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 13:06:03 ID:eODHwXvU
>>39
R-TYPEΛ氏、ようやく来ましたか♪
アンタのSS見るたびに、半日無駄になるくらい見入っちゃうくらい好きになってるよ

しかし、クロノ提督サイドはどうしてるんだろう?

47魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 13:12:02 ID:jQ9GMtQM
しかし……メタルサーガsts氏がゆくえふめいになってから今日でいくつだ?

48魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 14:57:07 ID:GF.9C50k
ゆくえふめいだと

49魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 19:34:15 ID:dDJWs6ds
R-TYPEΛ氏、投下楽しみに待ってました。
>>精神的に酷い負荷を齎す作品
氏の作品を読んでいる人は大概汚染されてるから(バイドルマスター的な意味で
大丈夫ですよ。

50魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 19:46:33 ID:L.a.8hU.
まぁ、俺は四話くらいで心折れたけどな……。

51R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:02:26 ID:XCkH6IKs
それでは投下します
警告として、精神的にクルのが苦手な方は避難を

52魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:03:46 ID:XCkH6IKs
聖王教会騎士、カリム・グラシアは悩んでいた。
それはもう悩んでいた。
もうホント勘弁して下さいってくらい悩んでいた。
その悩みのタネはご多分に漏れず、自らのレアスキル、しんよげんの・・・もとい「預言者の著書」によって書き起こされた預言の内容なのだが、これがまた訳が分からないとしか云い様のないものだったのだ。

別に『古い結晶と無限の欲望がアァンしちゃう場所でヴァーってなった王さまの翼がバックにドドドドドドって背負いながらバァーンと出てきて法の塔がガーッってなってお船もギューンドカーンってなっちゃうよ』という予言が無くなった訳ではない、一応。
ただ、それに続く様にして妙な一文が浮かび上がってしまったのだ。
何と言うか、こう投げやり気味に書き足した様な、本気かどうかも判然としない一文。



『あ、あとマッスルとか出るかもしんない』



カリムは頭を抱えた。
抱えて身を捩り、そのまま執務用の机にヘッドバッドした。
その音に、慌てた様子のシスター・シャッハが執務室に駆け込んできたりしたが、机にデコを打ち付けるカリムを目にすると「ああ、またか」みたいな顔して退室していった。
カリムはそれに気付かない。
ついでに額から出血している事にも気付かない。
別に良いのだ、血なんかちょっとくらい減っても。
血圧高いから。
普段からお菓子って形でいっぱい糖分摂ってるから。
何がとは言わないけど、姉さんのは甘いねって言われたから。

ってかマッスルって何だ。
もう一度言おう、マッスルって何だ。
ついでに文頭の「あ」とか「あと」ってどういうつもりだこの野郎。
喧嘩か?
喧嘩売ってるんですか、この聖王教会に?
というかこの私に?
よし買ってやろうじゃないか無限の欲望だろうがマッスルだろうが幾らでも来いよベネット。

「フゥ・・・」

物憂げに溜息を吐き、優雅な手つきで紅茶の入ったカップを手に取る。
窓から差し込む午後の光が心地良い。
今の彼女を見れば10人中9人が聖女の様だと答えるだろう・・・額から迸る、赤い血潮を見なければ、だが。

まあ、こうしてアンニュイな気分に浸り続けている訳にもいかない。
如何に馬鹿馬鹿しい内容であろうとも、予言は予言だ。
何とかかんとかそれっぽく脚色した上で六課とか管理局に伝えれば、後は向こうが何とかしてくれるだろう。
それでそれで、また前みたいに美味しいお菓子とか、ケーキとかジュースとかいっぱい持ってきてくれるかも。
うお、私って天才。

53魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:04:25 ID:XCkH6IKs
そんな、はやてが知れば血涙流しながらシュベルトクロイツで殴り掛かってきそうな事を思案しつつ、カリムは報告を纏めようとペンを手に取る。
そうしていざ書き始めようとしたその時、彼女はペンを持つ手に違和感を覚えた。
なんかカタい。
なんか温い。
なんかハァハァ言ってる。
ふと、自身の右手へと視線を投じる。



『ボンジュール』



ん゛にゃああぁぁぁとか、みぎゃああぁぁぁみたいな悲鳴が、聖王教会に木霊した。

★  ★  ★

ケース1 :『マッスルキャリバー』



「なんっっじゃこりゃああああぁぁぁぁぁぁぁッッ!?」

そんな素っ頓狂な声を上げたのは、スバルだった。
彼女の視線の先には、彼女の相棒たるマッハキャリバー(右)。
即ちマッハキャリバー履いた自分の足である。

レリック回収しに来た。
此処までは良い。
エリオ達と合流する為に全速で走った。
変な呻き声が聴こえた気もしたけど、まあこれも良い。
真っ黒い蟲が出てきたんで蹴った。
『アフンッ!』って声がしたんで、マッハキャリバー(右)を見てみた(今ココ)。
で、目に入ったのが。

『ン! ン!』



ローラーを抱え込む様に埋め込まれた、ビクンビクン痙攣しながらハァハァする、全身真っ白の超ミニなマッチョメンでした。



「・・・じゃなぁーいっ!」
『おふんっ!』

叫びつつ思い切り右足で四股を踏むと、何処か艶のある悲鳴が上がる。
何とか右のマッハキャリバー(仮)を脱ぎ、顔の近くまで持って来て尋問するスバル。

「ああああああんた何!? ローラーは? 何時ものローラーはどうしたの!?」
『ふ、何を言うかと思えば。私はいつも通りのあなたの相棒『マッスルキャリバー』ですよ』
「何ソレ!? アタシの相棒はマッハキャリバーでしょうが!」
『ノンノン、『マッスルキャリバー』。OK?』
「OKじゃない!」

何と言う事か。
スバルは戦慄した。
自分は今までコイツの存在に気付かず、コイツを履いて地を走りコイツを履いてウイングロードを駆けコイツを履いて蹴りをかましていたのか。
気付けよ、自分。

54魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:05:04 ID:XCkH6IKs
其処で、ふと気付く。
自分はまだ交戦中ではないか。
こんな馬鹿な事していたら敵に・・・敵に・・・

『・・・!!』
「メチャクチャ効いてる―――――!?」
『当然』

何と言う事か。
あろう事か敵は、全力とはいえ確かにガードされた筈の初撃でダウンしていたのだ。
スバルは知る由もないが、ガリューという名のこの召喚蟲、敵を前に膝を屈するのはこれが生涯2度目である。
1度目は現在の主である少女の母親に使役されていた時、模擬戦で当たった『中島君』とかいう陸士だった。
海パン一丁に変則リーゼントというバリアジャケット(仮)を纏った彼は、接近戦を仕掛けるガリューに対し、何故か滂沱の涙を流しつつ『んな都合のいい女がいるかー!! バッキャローーー!!!』という謎の絶叫と共に放たれたパンチで応戦、一撃でガリューを沈めた。
魔力など纏いもしない、唯の平凡なパンチにも拘らずだ。

だが、ガリューは理解していた。
あのパンチには魂が込められていた。
魔法では推し量れない、強大な魂の力。
完成された生命体である女性には決して理解し得ない、不完全な生命体である『漢』にしか理解し得ない魂。
そして同じものが、この『マッスルキャリバー』からは感じられた。
誇り高く、熱き魂。



そう、即ち―――『漢魂(メンソウル)』が!!



『・・・!』
「うわっ!」

咄嗟に後方へと跳び、そのままガリューは離脱に掛かる。
今のコンディションでは分が悪い。
並々ならぬ屈辱感と燃え上がる闘争心を抱えつつ、ガリューは撤退を選択した。
だが、これで終わりではない。
次こそ、次こそはこの雪辱を晴らしてみせよう!

『・・・(上等だコンノー! 吐いたツバ飲まんとけよ!)!!』
『フフフ・・・何時でも来なさい』
「え、え!? なに、アンタら話せんの!?」

覚えとけよコンチクショウ!!

★  ★  ★

ケース2 :『マッスルカノン』



『ぃぃいいいいいいやぁぁあああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?』

念話越しに放たれた突然の悲鳴に、性悪陰険メガ姉ことクアットロは、思わず地上へと真っ逆さまに落下し掛けた。
いきなり何なんだと毒吐きながらも、悲鳴の主であるディエチへとこちらから念話を飛ばす。

『ちょっとディエチちゃん、いきなり耳障りな悲鳴を上げないで頂戴! びっくりして地上に落ちるとこ・・・』
『ククククククククアットロ! たたた助けてクアットロていうかクア姉ヤバイこれヤバスヤバヤヤヤくぁwせdrftgyふじこlp』
『ちょ、おま』

55魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:05:36 ID:Ihbwo.eI
精神的にクるってそっちかよっ!支援

56魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:05:37 ID:XCkH6IKs
いかん、何か分からんがめっちゃ錯乱してる。
多少混乱しつつも、クアットロはディエチの許へと向かう事にした。
こんな状態では、作戦遂行すら儘ならない。
面倒な事ではあるが、作戦参謀の身としては放っておく訳にもいかないだろう。
そして数十秒後、クアットロはディエチが待機する廃ビルの屋上へと到着した。

「ディエチちゃん、一体なにくぁwせdrftgyふじこlp」
『ボナセーラ』

其処に在ったのは見慣れた狙撃砲ではなく、何故か後ろ手に拘束され、うつ伏せに固定された筋骨隆々のマッスル。
勿論、全身タイツでもないのに真っ白、人間なのか魔導生物なのか判りゃしない。
伏せられた顔が上げられると、其処に在るのは黒い横長のバイザーだけで、口や鼻、それどころか耳も無い。
代わりに頭頂部には、砲口なのだろうか、黒々とした穴が開いている。
やはり人間ではない、敢えて言うならばマッスルだった。
敢えて言わずともマッスルだった。

「な、何なのアンタ!」
『何と言われましても・・・私こそは貴女の妹、ディエチ嬢の固有武装たる『マッスルカノン』で御座いますが』
「嘘つけ!」

余りにも醜悪なイノーメスカノン、もとい『マッスルカノン』に向かって怒鳴るクアットロ。
20mほど離れた位置では、ディエチが屋上の隅でこちらに背を向けて体育座りをしており、ブツブツと何かを呟いている。
幾ら何でも様子がおかしいと感じたクアットロは、マッスルの背中を踏み付けながら詰問した。

「アンタ、ディエチちゃんに何をしたの」
『ああ、もっと! もっと強く踏んで!』
「い・い・か・ら・こ・た・え・ろ・ッ!!」

明らかに嬉しそうな悲鳴に、クアットロは嫌悪に引き攣った声で叫びながら更にグリグリする。
その強烈な刺激にマッスルはビクンビクンしながら、ウットリした声で答えた。

『ン! ン! グリップを握って・・・おふんっ! トリガーに指を掛けろと・・・ン! 指示した・・・おおう!』
「このっ! 変態! 変態! 変態! 変態! 変態ッ! ド変態ッッ!」

もはや質問の内容すら忘れ、涙声で罵りながらマッスルを蹴り続けるクアットロ。
超ド級のシャイな上に天の邪鬼な性格が合わさって誤解されやすいが、こう見えてナンバーズ随一の乙女思考の持ち主である。
温室栽培された花よりも繊細で純情な彼女の精神は、ショウジョウバエの遺伝子よりも敏感にドギツい反応を返す変態筋肉達磨の有り様を前にして、襲い来る強烈なストレスに耐え抜く事ができなかったのだ。
だが、どうにか変態の言い分も聞き留めていたらしい。
目じりに涙を浮かべながらも、すんすんと鼻を啜りつつ問い掛ける。

「うぅ・・・それで・・・すん、ぐりっぷって・・・ふぇ、どこに・・・ひっく・・・あるのよぉ・・・へぅ・・・」
『おお、可憐なお嬢さん、そうお泣きなさるな。それ、グリップは私の胴の下側に在る』
「はぅぅ・・・どれぇ・・・って」

果たして、グリップは見付かった。
拍子抜けするほど簡単に見付かった。
というか、見付けずにいる事など不可能だった。
だって、ねえ。

「ひっ・・・!」
『どうかね?』

超モッコリしてるんだもの。

『さあ、そのタワー・オブ・BA☆BE☆Lこそが私のグリップにしてトリガー! さあさあお嬢さん、恥ずかしがらずにそっとにぎぶるぅぅぁぁあああああぁぁぁッッ!!!!! ・・・ン!!!』

57魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:06:24 ID:XCkH6IKs
戦闘機人の全力トゥキック。
絹を引き裂く様な悲鳴と共に振り抜かれた爪先は、狙い違わずBA☆BE☆Lへと直撃し、その塔を根元から粉砕した。
なお、その際にチャージ中だった「漢の煩悩」が誤って発射され、真っ白な砲撃として機動六課のヘリを襲った事が記録に残っている。
砲撃は、それを防ごうと某エースオブエースが展開したラウンドシールドをいとも容易く貫いた程の威力だったが、放物線を描く軌道だった為にヘリへと届かず、廃棄都市区画の一画を白一色に染め上げたそうだ。
なお、砲撃後の区画処理に関しては、男性局員および女性局員の殆どが辞職をちらつかせてまで出動を固辞した為、一部の倒錯した性癖を持つ局員を掻き集めて収集に当たったという。

★  ★  ★

ケース3 :『マッスルアイゼン』



『も、もっと激しく振り回して・・・お願い』
「ひぎゃああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁッッッ!!?」

もうお分かりだろう。
マッスルである。
アイゼンのハンマーヘッドがマッスルだったのである。
具体的に言うと、見事な四角柱状になってぎちぎち逝ってるマッスルだった。
そしてよりにもよって、アイゼンの柄はマッスルの筋肉質な、2つに割れたしr

「スターライトブルゥゥェェェエレイカアアァァァアアァァァッッッ!! ブゥゥゥレェェェイィィィクッッ!!! シュゥウウゥゥゥウウウウウトオオオォォォォォァァアアァァアアァアァッッッッッッ!!!!!」

★  ★  ★

ケース4 :『ライディングマッスル』



「毒汰――――――ッッ!」
「ぬおッ!?」

ラボのドアを蹴破って入室、即ちダイナミック入室してくるウェンディ。
突然の破壊音と彼女の叫び声にビビッたスカリエッティは、それなりにヤバい液体が満たされたビンを取り落としてしまう。
その場にウーノを残して跳躍し、ウェンディを抱えて室外へと脱出、隔壁封鎖。
数秒もすればウーノがそれはもうスゴイ事になってしまうだろうが、イザという時の為に室内を監視しているカメラは正常に機能している為、問題は無い。
彼女としても気化した薬品を吸い込んだが為に、乱れに乱れる姿を直に見られたくはないだろう・・・直は素早いからね。
次回のプレイ時には、今日の映像をオカズに言葉で責めてみるのもイイかもしれない。

「毒汰ー、聞いてるッスか!?」
「あ、ああウェンディ。少し呆けていた様だ、済まない・・・」

何かドクターのアクセントがおかしいな、とか思いつつも、スカリエッティはウェンディへと向き直った。
彼女は涙目で、彼の袖口へと齧り付いている。
その仕草に不覚にも理性が膝を屈し掛けたスカリエッティだったが、これは娘これは娘という自己暗示を40セット高速で繰り返す事により、何とか禁断の領域へと踏み込む事だけは回避した。
因みにウーノは娘ではなく配偶者という扱いなので、スカリエッティ的にはオールOKである。

「どうしたんだい、ウェンディ」
「ボードが・・・アタシのボードがぁ・・・」

ライディングボードの事かと、スカリエッティはウェンディの指す方向を見やる。
其処に、その異形が横たわっていた。
仰向けに寝そべった、一応ライディングボードに見えなくもない筋肉の塊。
滑り止めなのか、足を掛けるべき所には見事な隆起物が在った。
それは手らしき部位から親指を立て、顔も無いのに「キラッ☆」という擬音が相応しい笑顔を浮かべ(た様な気がする)。

『カモン!』
「シュート」

58魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:07:27 ID:XCkH6IKs
取り敢えず、漢同士ならば無条件に痛みを分かち合うべき箇所に、手近に在ったビーカーを投げ付ける。
漢として避けるべき愚行TOP10に入る非道「性別問わず対象股間域への割れ物系戦術投擲兵器の使用」。
被攻撃者の子々孫々に亘ってその誕生すら危ぶまれるという、外道中の外道行為である。
しかしスカは生まれからしてちょっと捻くれているので、この様な外道行為も躊躇い無く、呼吸するかの様に実行できるとカッコいいなとか考えちゃったりしてる。
実際には、娘達に不埒な真似を働こうとする連中に対しては、ナチュラルに外道行為を実践しているのだが。

『ギャアアァァァ!』
「何かね? 何かね君? まさか君『ライディングマッスル』とか言って、ウェンディに破廉恥な行為を強要するつもりだったのかね? ん? ディエチとクアットロはあれから部屋に籠ったまま、入浴時くらいにしか出てきてくれないんだぞ。私が、もとい娘達がどれだけ寂しい思いをしているか、其処のところを理解しているのかね。ん? 唯でさえドゥーエが居なくて沈みがちだった夕食時の空気が、更に2人欠けた事でどれだけ味気なくギスギスしたものとなった事か・・・」
『もっとっ! もっとなじってッ!』
「硫酸だッ!!」
『サンダ―――――――ッッ!?』

煙を上げながら身を捩ってのたうつライディングボード(仮)、その上に悪鬼の如き表情で硫酸を垂らす生みの親。
そんな2人を離れた場所から見つめつつ、ウェンディは遠い目をしながら考える。

どうやって管理局に投降しようかなぁ。
良い人捕まえて、2人で喫茶店でもやって暮らしたいなぁ。
子供は4人くらい欲しいかなぁ。

「王水だッ!」
『あぁぁぁんッ、MOTTO! MOTTO!』

★  ★  ★

番外1:『フリード(中の人)その1』



『ウッ!・・・ン! ン!』
「(人――――――ッ!!?)」

エリオは内心で絶叫した。
無理もない。
六課の隊舎内にも拘わらず、何故か巨大化したままフリードの口の中に、人間の頭が在ったのだ。
金髪の中年男性、結構ダンディ。
その所為でフリードの口は閉じ切らず、終始ノドに小骨が刺さっているかの様な呻き声を発している。
皆は変に思わないのか?
そんな思いと共に周囲を見渡すも、誰も彼もが自然にキャロへと接しており、フリードへも普通に声を掛けたり撫ぜたりしている。
まるで「中に誰もいませんよ」とでも言わんばかりだ。

まさか、おかしいのは自分の方なのか?
狂っているのは自分の方で、周りが正常なのか?
そうだ、良く考えてみろ。
フリードが巨大化したままなんて、何時もの事じゃないか。
口が半開きなのも何時もの事だ、きっと。
況してや、口の中に人間の顔なんて・・・

『ン! フグゥ・・・!』
「(嫌な汗かいてる・・・ッ!)」

牙が頭に食い込んでいるのか、或いは胃酸が沁みるのか『ダンディ』(命名者:エリオ)の顔が明らかな苦痛に歪み、大量の脂汗をかいていた。
ヤバイ、ヤバイよダンディ。
やっぱり喰われてる、喰われてるって!

「ね、ねえ、キャロ・・・」
「あ、エリオくん!」

59魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:08:21 ID:XCkH6IKs
恐る恐るキャロへと話し掛けると、1,000,000L(リリカル)の笑顔が返される。
純粋無垢、エリオを信頼し切った笑み。
その笑顔は只管に「私とお話してくれるの? 嬉しい!」とのオーラを強烈に浴びせ掛けてくる。
余りの眩しさに視線を逸らすエリオだが、その途中でダンディと視線が合った。
何故か「あ、ヤバい」などと考えてしまうエリオだったが、ダンディが直後に見せた反応は、エリオの想像力を遥かに超えるものだった。

『フゥ・・・(Don’t worry)』
「(めっちゃイイ汗―――――――――――――ッッッ!!?!)」

何という事でしょう。
あれだけ「嫌な汗」という印象を与えていた大量の脂汗が、匠(ダンディ)の爽やかな溜息と輝かんばかりの笑顔によって、一瞬で「イイ汗」に変わったではありませんか。
まるでトライアスロンを制覇した直後の様な、誇らしさと漢らしさを兼ね備えた、新緑の木立の隙間を翔け抜ける涼風の如き「イイ汗」。
その余りの爽やかさに、エリオはそれまでの疑問すら忘れて魅入ってしまったのです。

「エリオくん、お部屋逝こっ☆ミ」
「あ、うん・・・」

最早エリオは、ダンディに掛けるべき言葉を見付ける事ができなかった。
彼は、あの様に在る事が自然なのだ。
フリードの口の中でイイ笑顔を浮かべる彼を残したまま、エリオは捕食者の笑みを浮かべるキャロに手を引かれるまま、彼女の部屋へと連行されて逝ったのでした。



「アッー!」
「うわぁ・・・エリオくんの・・・あつぅい・・・」

尤も、喰われたのはエリオにしても同じだったが(似たもの主従的な意味で)。

★  ★  ★

番外2 :『必殺シゴキ人』



機動六課襲撃。
燃えゆく隊舎からヴィヴィオを連れ去ろうとしていたオットーは、施設の外部から歩み寄る人影に気付いた。
民間人だろうか。
やっかいな事になる前に立ち去ろうとするが、広域に結界が張られた事を感知して身構える。

「ディード、敵」
「分かってる」

ルーテシアにヴィヴィオを託し、身を護る様に告げるオットー。
結界の外から迫る影は、男性陸士の制服を纏っていた。
バリアジャケットは・・・無い。

「魔導師じゃない・・・?」
「魔法なんか必要ないさ」

その男はデバイスも持たず、オットー達の眼下にまで歩み寄ってきた。
右手の指を複雑に動かしてコキコキと鳴らし、更に何かを咥えるかの様に開けた口を窄める。
何をするつもりか、と身構えるディードは、男へと問い掛けた。

「貴方は何者です」
「なに、名乗る程でもない。唯の陸士、アンタ等の敵だ」
「なら、排除する」

オットーが掌を男へと翳し、レイストームを放たんとする。
非殺傷とはいえ相手はバリアジャケットも纏わぬ一般局員、出力を極力抑えて放とうとして。

60魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:09:13 ID:XCkH6IKs
「なッ!?」
「遅いぜ」

次の瞬間には、背後を取られていた。
ディードですら、男の速度に反応できていない。
彼は指をひとつ鳴らし、オットーの身体を抉ろうとするかの様に全ての指を鉤爪状に曲げる。
そして、言い放った。

「俺は魔導師じゃない。だが、犯罪者達からはこう呼ばれている・・・」

殺られる。
オットーは覚悟した。
振り被られた男の腕が、弓より解き放たれた屋の如く加速し―――



「『必殺シゴキ人』と!!」



一瞬にして、男は眼下の地面へと着地していた。
何が起こったのか、オットーには見当も付かない。
だが、男の手が身体に触れた事は解っていた。
しかし、それが何だというのか。

「オットー!?」
「・・・大丈夫、異常は無い」
「何ぃ!?」

安否を気遣うディードの問いに返されたオットーの言葉、それ対して何故か驚きの声を上げたのは、他ならぬ「必殺シゴキ人」と名乗った男だった。
何を驚いているのかと、ますます訳が分からないオットーに向けて、男は戸惑う様な視線を向けている。
そして、ふと何かに気付いたのか、明らかな焦燥を表情へと滲ませて問い詰めてきた。

「まさか、貴様・・・「竿」が無いのかッ!?」
『竿?』

不可解な問いに、ディードと2人で首を傾げるオットー。
『竿』。
枝や葉を取り除いた竹、衣服を干す、釣りに使う等する道具。
まっすぐ長い形になった物。
それが何故、この状況に関係するのだ?

「ディード、彼は何を言ってるの?」
「分からない。精神に異常が在るのかもしれない」
「くそっ・・・まさか「竿」ではなく「壺」だったとはッ! 見た目に騙されるとは・・・シゴキ人の恥ッ!!」

膝を突いてorzのポーズを取り、拳を地面へと打ち付ける男。
何が何だかさっぱり分からないが、とにかく隙だらけなのだからシメちゃおう、そう考えた時だった。
風に乗って聞こえてきた低く昏い呟きに、2人は並々ならぬ悪寒を感じて身を竦ませる。

「・・・掟を破ってでも倒さなにゃならねぇ悪が在る・・・俺の目の前に、2つ在る・・・!」

男が、立ち上がっていた。
その目は既に異常なほど血走り、血管の浮かぶ右手は嫌な音を立て続けている。
そしてその手が、何かを掴む様な形から、まるで何かに潜り込まんとする様な、5本の指を窄めた形へと変化した。
右手だけではない、続けて左手も変化する。

61魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:09:51 ID:XCkH6IKs
この時点でオットーとディードは、自ら達の身に迫る危機をひしひしと感じ取っていた。
そして同時に、自身等が粘らねば眼下の男の標的は後方のルーテシアへと移るであろう事も、誠に遺憾ながら理解してしまった。
何をしようとしているのか、詳細は未だに全く分からないのだが、無条件に全身の肌が粟立つのだ。
コイツは何か、ヤバい事を仕出かそうとしている。

「逝くぞッ!!」

そして、男が跳躍した。
オットーとディードは、男の第一撃を辛うじて回避。
窄められた手が掠ったスーツの部位が、鋭いナイフになぞられたかの様に切り裂かれる。
すれ違う一瞬で無数の攻撃を実行していたのか、切り裂かれた跡は1つや2つではなく十数箇所にも上った。
それらの傷が大腿部、しかも内腿に集中しているのは偶然だろうか。

「躱されたか!」

男は着地し、再度に攻撃態勢を取る。
信じられない事だが、2人は相手の攻撃を回避する事だけで精一杯で、反撃に移る事ができなかった。
正確には、反撃の為に動こうとしたのだが、それを防ぐ様に男の手が襲い掛かってきたのだ。
恐るべき技量の差を前に、相手が魔導師でないにも拘わらずオットーとディードが敗北を覚悟した、その時。

「・・・見苦しいねぇ、藤枝の。自ずから進んで掟を破るなんざ、シゴキ人として許される事じゃないよ」
「こ、この声は!」

何処からともなく響いてきたのは、女性の声。
見れば、新たな人影が結界の内へと進み入ってくるではないか。
それは、少しばかり痩せぎすの女。
局員の制服ではなく、明らかに民間人と判る服装に、見慣れない楽器らしきものを携えている。
敵の増援かと身構える2人だったが、男はその女を前に明らかな動揺を見せた。

「おめえ・・・お銀! 何故こんな所に!?」
「何故じゃないだろう。アンタはシゴキ人の掟を破ろうとした、だから始末しに来たのさ」
「クッ!」

苦しげに呻く、藤枝という名らしき男。
そんな男を冷たく見据えつつ、お銀と呼ばれた女は続ける。

「シゴキ人、御法度六ヵ条之二・・・シゴキ人がシゴくは「竿」のみ、「壺」へのシゴキ御法度なり。掟破りし者は九連続昇天の責めを以って裁きと為す・・・忘れたとは言わせないよ」
「・・・そいつを破ってでもシゴかにゃならねえ連中も居る! 俺のシゴきに横から口出す奴ぁ、お銀・・・たとえおめえでもシゴくまでよ!」

吐き捨て、男は手の形を変えずにお銀へと襲い掛かる。
一瞬の交叉、そして閃光。
眩しさに翳した手を退かした時、視線の先には地に蹲ってビクンビクン痙攣する男と、何かを払うかの様に軽く手を振る女の姿のみが在った。

「あう、うン・・・ン! ン!」
「やれやれ、まだまだ青いねぇ・・・今回は大目に見て四半回だ、覚悟を改めて出直してくるんだね」

62魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:10:25 ID:XCkH6IKs
それだけを言うと、女は踵を返して六課隊舎を後にする。
オットーとディードは呆然とその背を見送った後、何を目撃したのか、顔を赤くしてヒソヒソ話をするルーテシアとヴィヴィオを連れて離脱したのである。

2人が女の正体を知るのは、後に管理局へと属してからの事。
裏渡世にその名を響かせる『三味線ズリのお銀』の通り名は、新米捜査官として働く2人の憧れとなる。



因みに、周囲の人間に通り名の由来を尋ねると、同僚から凶悪犯罪者までもが一様に「君達はそのままで良い・・・そのままで良いんだ・・・ッ!」と噎び泣きながら諭すので、結局、2人が其々に結婚するまでその意味を知る事はなかったのだった。

★  ★  ★

ケース5 :『聖王のマッスル』



地の底より蘇った、負の遺産。
古代ベルカが遺したそれは、嘗て次元世界へと無数の災厄を齎した悪夢だった。
浮かびゆくそれを、誰もが絶望的な思いで見つめる。
空高く、傲然と浮かび上がる鍛え抜かれた大胸筋・・・大胸筋?

「・・・何アレ」
『あれこそ旧暦に於いて、次元世界を存亡の危機にまで追いやった史上最悪の質量兵器、聖王のゆりかご・・・改め』
「改め?」

説明の途中で言葉を区切ったユーノに、なのはは問う。
嫌な予感がした。
ここ暫く、周囲で不可思議な異常事態―――主に真っ白いマッチョメンによる―――ばかり起こる為、全く持って希望的観測ができないのだ。
というか、誰もフリードの中の人(?)に突っ込まないので、自分がおかしいのではと精神的に摩耗し、軽度の人間不信に陥り掛けている。
時折、エリオが何か言いたげにフリードの前でキャロへと声を掛けるのだが、彼はその度にキャロの部屋へと連行され、2人揃って翌日の訓練をサボる羽目に陥っていた。
そして、2日後に目にするエリオは毎度例外なく憔悴しておりフラフラのガクガク、そんな彼とは裏腹にキャロの肌は必ずツヤツヤのピチピチである。

そんな2人を目にして、はやては「10歳に先を越された」と号泣しながらヤケ酒を呷り、フェイトは最近の少年少女間に於ける性の乱れに噎び泣きつつ呼び出したアルフをモフモフして精神安定を図る。
ティアナは醒めた目で周囲を見ながらその実ヘリパイロットと毎夜に亘って熱い逢瀬を繰り返し、スバルは何度変えても元に戻るマッスルキャリバーのローラーをいびる事に快感を覚え始めている。
ヴィータはマッスルにすり替わったアイゼンを待機状態から変化させる勇気を持てずに震え、シグナムは同じくマッスル化したレヴァンティンを即座に海へと投げ捨て涙目のヴィータを愛でる。
シャマルは一切合財の器具がミニマッスル化した医務室から逃げ出してザフィーラへと泣き付き、ザフィーラはミニサイズのマッスルどもを片っ端から捕えては海へと不法投棄を繰り返す。

ああ、あんな状況で良く耐えたなぁ、私。
なのはがそう思ってしまうのも、無理からぬ事だろう。
六課発足時はちゃんとした部隊だったのに、あのマッスルどもが現れてから何もかもがおかしくなっている。
廃棄都市区画で「どう見ても射○です、本当にありがとうございました」な砲撃に、フルパワーのラウンドシールドを呆気なくブチ抜かれた時の記憶など、完全なトラウマになってしまった。
だって、砲撃自体は危ない所で躱したんだけど、後で良く見たら髪にベタベタするのがくっついてたんだもん、思い出すだけで全身が震え出すレベルだよ、これ。
最近ではコップに入った牛乳を見るだけで心拍数が上がり、不意打ちで視界に入った時など小さく悲鳴を上げた程だ。
無論の事、飲むなど言語道断、顔に掛けられたりした日には、即座に自分の顎下へショートバスターをブチ込む自信がある。
全く以って、踏んだり蹴ったりだった。
だからといってへこたれるつもりは無いが、だけど涙が出ちゃう、女の子だもん。



『改め・・・『聖王のマッスル』!!』



こん畜生、この鈍感フェレットめ。
長年に亘ってこっちの好意に気付かないばかりか、些細な現実逃避でこれからを乗り切ろうとする乙女の思考にさえ気付かぬと申すか。

63魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:11:16 ID:XCkH6IKs
もうホント涙目になりながら、なのはは天を仰ぐ。
青空に浮かぶ、まっちろいマッスルの巨体。
つまり、筋骨隆々の全身白タイツっぽい直立(フロントダブルバイセップス)するタフガイ、その頭部に主砲発射口を設けただけの馬鹿デカいマッスル。
その鍛え抜かれた筋肉を目に焼き付け(本当は目を逸らしたかった)、なのはは問う。

「どういうことなの・・・」
『最後の聖王は、大変な筋肉フェチだったらしくてね・・・ベルカ王族としての名を捨て『ド王ピング』と名乗った彼女は』
「それで女だったの!?」
『話を続けるよ。彼女は代々受け継がれてきた宮殿を通称キン肉ハウスと呼ばれるマッスル達の楽園へと変え、更に連日に亘ってマッスルミュージカルを開催するだけでなく、歴代聖王の誕生と死を司ってきた「ゆりかご」までマッスルに改装したんだ』
「つまり?」
『魔力炉に毎日40トンものプロテインを注ぎ、それを10年間も続けたんだ。ベルカが最終戦争を起こしたのも、ゆりかごに与えるプロテインの採掘プラントを手に入れる為だったとある』
「もう・・・もう疲れたよう・・・帰りたいよう・・・ヴィヴィオと2人で、のんびりお母さんのシュークリーム食べたいよぅ・・・」

本気で泣き崩れるなのは。
この10年で、次元世界に馴染んだと思っていたのは、どうやらとんだ勘違いだったらしい。
やっぱりあれだ、姿形が同じなだけで異星人なんだ、異次元人なんだ。
きっと初めから分かり合える筈なんかなかったんだねおにいちゃんよしわたしじえーたいにはいるよそしてあたいきっといつかえらくなってちょーじくーせんとうきにのっていじげんじんからちきゅーをまもるの!

「あたi・・・はっ!」
『なのは、どうかしたのかい!? 急に一人称が変わった様な気がしたんだけど・・・』
「き、気の所為だよっ!?」

あたふたと誤魔化しつつ、なのはは聖王のゆりかご・・・もとい『聖王のマッスル』(フロントラットスプレッド)目掛けて上昇してゆく。
どの道、あれへと侵入しない事には、ヴィヴィオを助け出す事などできないのだ。
と、なのははひとつ、気になっていた事をユーノに尋ねてみる事にした。

「ねえ、ユーノ君」
『何だい』
「あれが凄く危険な事は分かったけど、具体的にどう危険なの?」

なのはは其処が解らなかった。
危険だ危険だとは言われていたものの、あれが何をできるかまでは説明されていなかったのだ。
それを問いとして発すると、ユーノはすぐに答えてくれた。

『前に廃棄都市区画で放たれた砲撃があっただろう? あれを次元世界さえ埋め尽くす勢いで、しかも次元跳躍砲撃で何処へでも撃ち込め・・・』
「スターズ01、手段を問わず目標を撃破しますッッッ!!!!!」
『嘗て砲撃が実行された際には、タンパク質により二十の世界を破滅の白一色に染め上げ、百の世界を汗とイカのスメルで満たしたという・・・』

白い稲妻が、天を行くマッスル(アブドミナル&サイ)を追う。
その希望の閃光はしかし、光の源が途中で「そういえば私のイメージカラーも白だなぁ・・・」と気付いた事により失速、最後は蛇行しながら嫌々マッスル(サイドトライセップス)へと入って逝ったのだった。



割れ目から(マスキュラー)。

★  ◎<ヴァー  ★

ケース7 :『マッスルレリック』



「スターライト・・・ブレイカ―――――ッ!!」

5条の集束魔力砲撃が、バインドを解かれた聖王・・・ヴィヴィオを襲う。
ヴィヴィオは強大な魔力ダメージに呻きつつも、なのはを信じて痛みに耐え続けていた。
その胸の中心から、ヴィヴィオを聖王たらしめる元凶、レリックが徐々に浮かび上がってくる。
そしてなのはは全てを終わらせるべく、最後のトリガーボイスを紡いだ・・・んが。

64魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:12:32 ID:XCkH6IKs
「うぁ・・・ああ・・・ひう・・・!」
「ブレイクッ!! シュー・・・」
『何の問題ですか?』



何処からか響いた気の抜ける様な台詞と同時に、ブラスター3のスターライトブレイカーが呆気なく弾かれた。



「へ?」
「ほへ?」

思わず間の抜けた声が、なのはとヴィヴィオ、双方の口から漏れる。
お互いに「ありえない、何かの間違いではないのか?」とでも言い出しそうな空気。
1面でスバルがダウンし、2面でエリオが鼻血を出し、3面ではやてが発熱し、4面でフェイトが赤面し、5面でティアナがブチキレ、6面でキャロが入浴し、7面でなのはがスタブレって、8面でヴィヴィオがコンティニューを使い切ったあの日の光景が脳裏へと蘇る。
2人して顔を見合わせ、お互いに首を横に振り、次いでなのははヴィヴィオの、ヴィヴィオは自身の胸を見た。
はやてが見たら泣き喚きながらシワが寄るまで揉みまくるであろう双丘の中心、今や完全にヴィヴィオの体内から脱したレリックが浮いている。
その表面に罅が入ったかと思うや否や、閃光と共にレリックが弾けた。
2人は思わず視線を逸らすが、再度レリックの在った箇所を見やった時、其処に浮かんでいたのは。

『ヘロゥ、エヴリワン』



レリックと同じに輝く、亀甲縛りにされた小さなマッスルだった。



「うん・・・そうだよね・・・正直、そんな気はしてたんだよね・・・」
「うふふ・・・今の今まで、私・・・私の中、マッスルが入ってたんだね・・・うふふふふふふふふ」
「止めてヴィヴィオ! 何か危ないから! 間違ってはいないんだけど、何かそれ色々危ないからっ!」
『心温まる光景ですなぁ』

なのはは目尻に涙を浮かべつつ遠くを見つめ、ヴィヴィオはハイライトの消えた目で何も無い宙空を見つめつつ虚ろに嗤い続ける。
マッスルは独りで『ン? ン・・・ンン? ン! ン、ンンン、ン!? ン、ンーン、ンン!』とか言いながらビクンビクンしてる・・・ハァハァすんな。
100人居れば97人が逃げ出すカオスな空間が、其処に拡がっていた。
残る3人?
2人はバルスって、1人は目がぁぁぁぁって言うに決まってるじゃんか、此処は空の上だぞ貴様。

『ところで、良いのかね? 私はもう暫く休暇を堪能したら、彼女の体内へと戻るつもりなのだが』
「へ?」

唐突に放たれた言葉にマッスル・・・この際『マッスルレリック』と呼んでしまおうそうしよう・・・へと向き直ると、彼は余裕の表情で葉巻を燻らせていた・・・亀甲縛りで。

「ど、どういう事?」
『いやなに、彼女の中は中々心地良くてね・・・中は中々・・・フフ、上手い事言った。まあ、何時だったか、私を受け入れていた誇り高きド王と同じニオイがしたのだよ』
「ニオイ・・・筋肉聖王と同じニオイ・・・」
「ヴィ、ヴィヴィオ、しっかりして!」
『今までの融合は不完全だったから、次は完璧にしたいと思っているのさ。さあ誇りたまえ、もうすぐ君は全次元世界で最も美しく、最も気高い、そして最も毛深いマッスルとなる!!』
「嫌ぁぁぁああぁぁァアアァァッッ!!?!?!!」
「ヴィヴィオ――――――ッッ!?」

完全に崩れ落ち、頭を抱えて悲鳴を上げるヴィヴィオ。
なのははそんな彼女の背を一頻り撫ぜた後、キルゴア中佐だって裸足で逃げ出すぜベイベーってな眼で『マッスルレリック』、略して『マック』を睨み据えた。
その視線を余裕で受け止める『マック』・・・亀甲縛りで。

「・・・ぶっ壊す!!」
『おやおや、私を壊す前に君の口調が壊れているぞ、お母さん。君の全力全開とやらを屁で弾いた私を、一体どうやって壊すというのかね?』

65魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:13:51 ID:gURt/IzE
誰か黄色い救急車を呼んでくれw
一刻も早く作者、いや患者を隔離するんだw

66魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:13:54 ID:XCkH6IKs
そう言って、筋骨隆々の割れ目をこっちに向ける『マック』・・・亀甲縛りで。
というか、私の命懸けの砲撃ってオナラで弾かれたんだ・・・と、かなり鬱入るなのは。
おいおい始まる前にケリ着いちまったぜマイク、タコスでも食って帰るかマーカス、何て感じの空気が漂う。
何処かの海沿いの大都市で、2人の黒人刑事がポルシェに乗ってる幻覚が見えた気もするが、きっと気の所為だろう。
凪ぎ過ぎて干上がってしまった心の湖を潤す為、なのははしきりに「ウーサァー・・・ウーサァー・・・」と繰り返す。

「ウーサァー・・・良しもう大丈夫、わたし強い子・・・いくよっ、全力全開・・・!」
『ヌウウゥゥアアアアアァァァァァァッッ!!?』
『へひゃあっっ!!?!』

何とか強引に直接対決へと持ち込もうとした矢先、『マック』が壮絶な悲鳴を上げ始める・・・亀甲縛りで。
その小さな体は、突然の悲鳴にビビリ上がった2人の目前で徐々に崩れ出す・・・亀甲縛りで。
『マック』は自身でも何が起こっているのか完全には理解できていない様で、崩ゆく身体をシャクトリムシの様にくねらせながら叫ぶ・・・亀甲縛りで。

『ば・・・ばかなッ!・・・こ・・・この『マッスルレリック』が・・・この『マッスルレリック』がァァアアァァァァァァアアァァッッッ!!?!?!』
「『マッスルレリック』って、この場合は語呂悪いね」
「うん」

亀甲縛りのまま崩れゆく『マック』を、至極冷静に見つめながら呟く2人。
その背後で、何かが崩れ落ちる様な音がした。
振り返ると、何と其処にはディバインバスターを受けて昏倒している筈のクアットロが!

「な・・・どうして!」
「待って、なのはママ!」

何時の間にか子供の姿へと戻ったヴィヴィオが、レイジングハートを構えるなのはを制する。
見れば、床に倒れ伏すクアットロはその手に、何かのコントローラーを握っていた。
それを視界へと捉えたのか、崩れゆく『マック』が血相を変えて叫ぶ・・・亀甲縛りで。

『き、貴様! まさかそれは!』
「そういう・・・事よ・・・ドクターにも内緒で・・・貴方に、自壊プログラムを、組み込ませて貰いましたわ・・・」
『何だと! 何故だ、何故そんな事を!』
「マ、マッスルなんかに・・・筋肉どもに・・・そんな小さな子や、姉妹達の未来を・・・奪わせやしない・・・!」
『貴様ァァァァァアアァァァァァッッッ!!!』

その言葉を最後に力尽き、再び崩れ落ちるクアットロ。
亀甲縛りで崩れゆく『マック』の絶叫を背後に、なのはとヴィヴィオは落涙を禁じえなかった。

クアットロ、ナンバーズのNo.4にして参謀、冷酷にして残忍、悪辣なる策士。
その生き様は哀しく・・・しかして、可憐にして、美しい。

「勝手に殺さないでくださいます!?」
「いいから掴まって! 帰ったらシュークリームいっぱい御馳走するからね!」
「わーい! ヴィヴィオもー!」
「あ、えっと・・・その、いただきます・・・」



こうして、次元世界を襲ったマッスルの脅威(後にM(マッスル)事件と命名)は、1人のエースオブエースと1人の戦闘機人、そしてその他大勢の役に立たない皆々様の活躍(?)により消え去った。
『聖王のマッスル』は衛星軌道へと脱した直後に、地上からの『アインヘリマッスル』の砲撃(煩悩の溜まり過ぎによる誤射)と、『XVマッスル』クラウディアの砲撃(艦長が長期任務で溜まりに溜まってた事による誤射)によって撃沈された。
衛星軌道上に新たな白い液状天体ができちゃったりしたが、まあ些細な問題である。
人々の熱き想いと平和への祈りが、事件を解決へと導いたっぽいのである。

67魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:14:44 ID:XCkH6IKs
しかし、決して忘れてはならない。
次元世界の男達が、真の誇りと丸太の様な上腕二頭筋を獲得する事への情熱、即ち『漢魂(メンソウル)』を取り戻さぬ限り、いずれ第2、第3のM事件が起こるだろう。
彼等は、今も次元の狭間から全ての世界、全ての漢達へと、こう問い掛けているのだ。
そう―――



『腹筋、割れてマッスル?』と。



「そういえば、最高評議会の御三方が亡くなったそうで」
「うん、なんかお世話してた綺麗な女性局員に隠れマッスルなトコ見せようとして、身体が無い事も忘れて力瘤作ろうとしたんだって。そしたらプチっと、ね」
「・・・何年も潜入してて結末がこれ・・・ドゥーエ姉様、御労しい・・・」
「ママー、このシュークリームおいひー」

★  ★  ★

番外3 : 『フリード(中の人)その2』



M事件解決後、エリオは気付いた。
フリードの口、閉じてら。
そして「スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ―――ッ」って感じにゲップするフリードの腹には、不気味に浮かび上がる人の・・・



「ダンディィィィイイイイイィィィィィィィィッッッ!!?!!!?!」
「エリオくーん、お部屋逝こっ★彡」

★  ★  ★

ケース・ファイナル :『漢って何さ?』



薄暗い室内には、2人の男。
此処は時空管理局地上本部、レジアス・ゲイズ中将の執務室だ。
向き合う2人の片割れは、この部屋の主である男、時空管理局地上本部総司令、レジアス・ゲイズ。
残る1人は、元時空管理局・首都防衛隊所属ストライカーにして現犯罪者、ゼスト・グランガイツ。
並みの人間ならば重圧だけで突然死してもおかしくはない空気の中、先に口を開いたのはゼストだった。

「・・・レジアス」
「何だ」
「俺はお前に、問い正さねばならん事が在る」
「・・・言ってみろ」

68魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:15:26 ID:XCkH6IKs
先を促す言葉に、ゼストは密かに拳を握る。
危害を与える為ではない、自身の不安を押し殺す為だ。
女々しい事だが、此処で自身の望む答えが得られねば、平静でいられる自信が無かったのだ。
僅かに息を吸い込み、ゼストは問いを紡ぎ出す。



「男と女・・・優れているのは、どちらだ?」



答えは無い。
立ち尽くすゼストを余所に、レジアスは執務机へと両の肘を突き、組んだ手で口許を隠したままだ。
ゼストは震えそうになる声を何とか抑え、今一度問い掛ける。

「答えろ、レジアス。男と女、より優れているのはどちらだ?」

レジアスが立ち上がり、窓際へと歩み寄る。
彼は無言のまま、眼下に拡がるクラナガンの街を見下ろした。
そして暫しの沈黙の後、彼は答える。

「それは・・・女だ」

瞬間、執務机がゼストの鉄拳、垂直に振り下ろされたそれによって粉砕された。
凄まじい破壊音が響き、破片が周囲へと散乱する。
だが、背後のそれにもレジアスは、全く動じはしなかった。
彼はガラスへと映り込む背後のゼスト、振り下ろした拳から流れ出る血もそのままに、床へと膝を突いた旧友の姿を視界へと捉える。

「何故だ・・・」

呟く様な声。
レジアスが沈黙を貫くと、再度その声が発せられる。
今度は、叫びとして。

「何故だっ!!」

またも破壊音。
どうやらゼストは、渾身の力で床を殴り付けたらしい。
隠そうともせずに噎び泣きながら、ゼストは叫び続ける。

「常に『漢』たる事を自身へと課してから、俺は一瞬たりとも休む事なく男を磨き上げてきた! ありとあらゆる『漢度』を、今日まで血を吐く様な思いで高めてきたのだ! それはレジアス、貴様とて同じ筈ッ!」

レジアスは答えない。
更に一度、ゼストは床を殴りつけ、続ける。

「なのにッ! なのにこの8年間、誰に訊ねても答えは同じッ! スカリエッティ、奴の娘達、毎週旦那との密会に向かうクイント、我が愛妻メガーヌと愛娘ルーテシア! 誰に訊ねても答えは同じ、貴様と同じ答えだッ!」
「オーリスの答えも同じだ。そして、あれの母親も同じ答えを口にしたよ」

唐突に齎されたレジアスの告白に、ゼストは両の瞼を限界まで見開いて旧友の背を見やった。
自身のそれよりも僅かに大きなその背は、今日に限っては何故か小さく見える。
そんな些細な事実さえ認める事ができずに、ゼストは男泣きに泣きながら言葉を絞り出した。

「ならば教えてくれッ! 何故、男は女に勝てない! 何故、女は男より優れているのだッ!!」
「簡単な答えだ、ゼスト。実に簡単な答え。その問いに対する答えなど、疾うに先人が導き出していたのだよ」

69魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:16:00 ID:XCkH6IKs
レジアスが、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
全てを諦めたかの様に、この世の真理を悟った老人の様に。
ゆっくりと、穏やかに語り掛ける。

「悔しいが、男には欠けてはならぬものが欠けているのだ」
「な、に?」

レジアスは、ゆっくりと振り返る。
その双眸が、膝を突くゼストの姿を正面から捉えた。
ゼストはその姿勢のまま、まるで聖人を見るかの様にレジアスを見上げる。
そして、真理が語られる。
この世界、否、次元世界の根幹を為す、絶対の真実が。

「女性の染色体は『XX(ダブルエックス)』、男性の染色体は『XY(エックスワイ)』・・・」



沈黙。






「(リリカル)棒 が 1 本 足 ら ん の じ ゃ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」
「Oh!!!!!!!!!」





魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』

終   劇





「ねえ、お父さん」
「あん?」
「この、ガリューを素手で殴り飛ばした陸士って、まさかおと・・・」
「おっと、今夜はクイントとのディナーだ! 後は頼んだぜ、ギンガ!」
「え、ちょっと待って・・・ねえ待ってよ、おとーさーんっ!!」





・ ・ ・ 完 ッ ! !

70魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/06(金) 20:18:25 ID:XCkH6IKs
投下を終了しマッスル



なお、このリリカル時空を某管理外世界の宇宙軍と暴走した生物兵器が観測していたが、両者共に「Oh! マッスル!」との謎のシャウトを残し、其々サイドチェストとバックダブルバイセップスのポージングを取りながら逃げ帰ったという
因みに、強制介入を試みた某TEAMの関係者は、例外なく謎の失踪を遂げている



精神に酷い負荷を齎すと言っただろう!
何故ここまで読み切ってしまったんだ!!

・・・偶にはこういうのを書かないと保たないんス(精神安定的な意味で)
ホントは鬱展開に対する耐性が異常に低いんス(よってRPGなんかマトモにプレイできねッス)
ア○ス勧められて、某鉱山の町に行く前に挫折した過去があるッス(旧ソ連製分隊支援火器最強のアビ○は極めたッス)
お馬鹿系のお話大好きッス(バッドボーイズとか大好物ッス)
・・・何でライデンファイターズとのクロスにしなかったし、俺

クロス元は昔サンデーで掲載されていたお下劣ギャグ漫画『漢魂!!!』です
早い話が、筋肉と漢(おとこ)に拘った短編ギャグ集
中でも毎週、身の回りの物がマッスルに置き換わってしまう話が、必ず1編入っていました
これがまたアホ過ぎて・・・
中島君、シゴキ人、中の人も原作ネタです

という訳で騙して悪いが、R-TYPE Λ 第三十話の投下は明日なんだ、済まない
三十話到達記念でかなり長いが、其処は勘弁して欲しい



それでは、色々と済みませんでした(土下寝)
また、明日の19:00にお会いしましょう

71魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:21:22 ID:Ihbwo.eI
>>70
・・・・。(呆けている)
・・・・・・・・。(かける言葉を探している)
・・・・・・・・・・・・。(探しあぐねている)
・・・・・・・・・・・・・・・・。(諦めたらしい)

GJだが、疲れたら休むことも大事だぞ?(可哀想なモノを見るような目で

72魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:26:43 ID:uF6p/kLc
( ;∀;)イイハナシダナー
それじゃ、ベストラに帰ろうか?

73魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:53:59 ID:qpommBZ6
GJ!
カオスすぎるwwwバイド化しすぎですw

74魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 20:59:48 ID:dDJWs6ds
GJ!!
どうすればこんな高いバイド係数の作品ができるんだww
(誉め言葉

75魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 21:19:42 ID:V5pKpcGY
途中でさりげなくゼロスフォースさんが…

76魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 22:02:39 ID:YRS1tjNI
とりあえず……救急車を一台確保しておこうかwww

77魔法少女リリカル名無し:2009/11/06(金) 23:05:08 ID:WPG55i6I
漢魂wwwwww奴等かww
毎週見てましたよww

何故あなたの作品はこう精神的にくるのかwwww

78魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 05:16:27 ID:W0h2yj4A
めちゃくちゃ噴いたw
台無し過ぎるwww

>・・・何でライデンファイターズとのクロスにしなかったし、俺
ふむん、次回作(?)は決まりですね。

79魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 08:23:10 ID:ZDjov.66
他のSTGのクロスか〜
敵にクローンの出てくるエスプレイドにエスプガルーダ、
ストーリー上時空振起こしてそうな怒首領蜂大復活
CAVE系のSTGとのクロスも結構いけそう。

80魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 09:00:30 ID:kSn/aoeQ
トリガーハート・エグゼリカ
…ヴァーミスもある意味バイドと似てるのか?

81魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 11:33:09 ID:bd5UhDyk
超兄貴とのクロスなんて言葉が思い浮かんだ
あと別の意味で精神負荷が高そうなクロスとして
らじおぞんでorHELLSINKERとのクロス。
あれも精神負荷が高いからなあ主にわけの分からなさで。

82魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 11:55:43 ID:ECCegXtE
いつもの虚無感漂う話も好きですが、こういう話も大好きですw
「R-TYPE Λ」の続きも、次回の気分転換ssも期待してお待ちしますww

83魔法筋肉浪漫譚『リリカル漢魂!!!』 ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 12:32:13 ID:FtNmz37M
昨夜は申し訳ありませんでした
予約の時間を少し早め、本日17:00からR-TYPE Λ 第三十話の投下を開始します
サイドチェスト、またはモストマスキュラーのポージングでお待ち下さい
なお、御鑑賞の際に真っ赤な薔薇を一輪お手元に添えていただくと、より一層兄貴です

84魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 14:45:39 ID:gIHrfMNk
投下するときはちゃんと名前戻しといて下さいね
その名前ではどんな作品投下されても真面目に読めないw

85魔法少女リリカル名無し:2009/11/07(土) 16:27:26 ID:5q5F1TnA
>>83
これはヒドイ台無しを見たwww

三十話、アトラクション石村を楽しみながら待ってますよ〜。

86R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:01:35 ID:FtNmz37M
時間ですので投下を開始します



その恐ろしい衝撃は、外殻崩落跡から出現した2体目の666、それを撃破した直後に襲い掛ってきた。
十数分前、Aエリア近辺外殻で発生した核爆発。
40kmもの距離を隔てて展開する魔導師、そして強襲艇を始めとした各機動兵器群に多大な被害を齎したそれとは、判然とはしないながらも何かが異なる衝撃。
宙空に浮かぶ強襲艇の重力偏向フィールド、エネルギー障壁と共に複合展開された不可視のそれを容易く打ち破り、爆風と錯覚する程の勢いで全身を打ち据える。
吹き飛ばされた身体が強襲艇の側面へと打ち付けられるかに思われたが、機体が瞬間的に上昇した事でその事態は避けられた。
20mほど吹き飛ばされ、フィールド外へと逸したところで体勢を立て直したなのはは、バリアジャケットの防音機能すら貫いた轟音に表情を顰めつつ念話を飛ばす。

『今のは!?』
『分からん! 核ではないみたいやけど・・・』

その問いに返されたはやての念話は、なのはのそれと同様に焦燥を色濃く含んでいた。
本来ならばコロニーを脱出する輸送艦内の人員、或いは防衛艦隊から何らかの報告が在っても良い筈なのだが、先程の核爆発からというもの輸送艦群は全て沈黙したままだ。
そして防衛艦隊の7隻も、アイギスの汚染と所属不明艦艇の接近を告げる警告を最後に、一切の連絡を絶っている。
頭上で激しく瞬く光を見る限り全滅してはいない様だが、400基を超えるアイギスに包囲された状態から何隻が生還できるものか。

1基のアイギスに搭載されている戦術核は5発。
既に各爆破地点に於いて120基のアイギスが撃破されている事を考慮しても、1400発以上もの戦術核がコロニーを包囲している計算となる。
現状で防衛艦隊とそれに属する機動兵器群が壊滅すれば、このコロニーのみならずベストラまでもが核による飽和攻撃を受ける事となるだろう。
先の1発以降、コロニーに戦術核が着弾した様子は無い。
この事からも艦隊の奮戦は疑うべくもないが、それも長くは保たないだろう。

コロニー周辺にはシュトラオス隊のR-11Sが4機、戦術核迎撃の為に展開している。
艦隊からの警告が齎された直後、コロニー内より現れた4機は誘導照射型波動砲の一斉砲撃により、頭上へと展開する40基のアイギスを瞬く間に殲滅して退けた。
これにより、コロニー外殻へと展開する部隊は戦術核とレーザーの脅威を免れ、現在まで666との交戦を継続する事ができたのだ。
他の2箇所の爆破地点に於いては、一方はペレグリン隊、残る一方はアクラブとヤタガラスがアイギスを殲滅した。
彼らは今、輸送艦群とベストラの防衛に当たっている。
各種兵器および資源、食料生産を担う3つのプラントに関しては、既に放棄が決定したとの報告が在った。
アイギス群が汚染された今、それら全てを護り抜くには戦力が絶対的に不足している為だ。

艦隊と行動を共にしていたであろうゴエモンとの通信は途絶している。
ゆりかごとの交戦中になのはが目にしたものと同じ、青白い巨大な爆発が闇の彼方で発生していた事から推測するに、恐らくはR-9Cと同様の戦略攻撃を実行したのだろう。
その破滅的な威力は彼女も良く理解してはいたが、それは同時に圧倒的な力を有するR戦闘機が、それ程の攻撃を実行せざるを得ない状況へ追い込まれている事を意味してもいるのだ。

戦況は極めて悪い。
加えて原因不明の衝撃。
満足に情報を得る事もできず、外殻に展開する人員は例外なく混乱の直中へ陥ろうとしていた。
そして独自に分析を試みる猶予さえ無く、次なる凶報が意識へと飛び込む。

『シュトラオス2より総員、警告。第2爆破地点より666出現、総数3。高速離脱中』
『こちらシュトラオス3、国連宇宙軍所属艦艇のコロニー突入を確認した。目標、未だ健在。繰り返す、目標健在』

シュトラオス隊からの警告。
直後、周囲の大気を切り裂く異音と共に、巨大な影が頭上の空間を突き抜ける。
咄嗟に視線を向けるも、闇の中で瞬く閃光以外の何かをその先に見出す事はできなかった。
だが、警告は更に続く。

『シュトラオス1、第3爆破地点に666、2体の出現を確認した。目標はコロニーより高速離脱中』
『逃げ出したのか?』

なのははレイジングハートを構えたまま、油断なく周囲へと視線を奔らせた。
だが、コロニー外殻上に於いて戦闘が行われている様子は無い。
闇の彼方、全方位より響く重々しい爆発音と衝撃波だけが、周囲の大気を絶えず震わせている。
一体、何が起きているのかと不審を募らせるなのはの意識へ、各方面から更に複数の報告が飛び込んできた。

87R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:02:15 ID:FtNmz37M
『ビクター2、突入艦艇を視認した。艦体後部が外殻から突き出ている・・・こいつはヨトゥンヘイム級だ。見える範囲でだが、損傷が酷い。ゴエモンにやられたのか』
『Aエリア港湾施設、外殻部が閉鎖されている。内部に輸送艦艇8隻を確認』
『冗談じゃない、12000人が閉じ込められている計算だぞ!』
『こちらアクラブ。輸送艦群、第1陣の7隻がベストラへ到達。第2陣は5隻が航行中、1隻撃沈、1隻が推進部を損傷し漂流中』

複数の情報を並列思考で以って処理しつつ、なのはは傍らのはやてを見やる。
果たして予想通り、彼女は片手を額へと当てつつ表情を顰めていた。
はやては他を圧倒する魔力量と出力を有しているが、同時に並列思考等の分野に於いては苦手を抱えている。
この瞬間でさえ次から次へと飛び込んでくる情報を処理し切れず、脳に若干の負荷が掛っているのだ。
普段は思考へと入り込む情報量を適切に調節しているのだが、現状では全ての情報を処理すべく、負荷を承知で苦手な高速処理に力を注いでいるらしい。
気遣う言葉を掛けようとするなのはだが、それより早くヴィータからの念話が飛ぶ。

『地球軍の艦って事は、汚染体か? このコロニーもヤバイんじゃないか』
『それは専門家に訊くのが一番やな・・・ほら』

呟く様なはやての念話に続き、なのは達の傍らへと展開されるウィンドウ。
其処にはコロニーへと突入した艦艇のものらしき構造図が立体表示され、その複数個所が赤く点滅している。
次いで意識へと飛び込む、新たな報告。

『簡易スキャン終了。目標艦艇、機能健在。しかし損傷が激しく、システム凍結状態。汚染の為か、非常処理プログラムが発動しない』
『つまり?』
『ゴエモンは任務を果たしたらしい。目標艦艇、自動修復プログラムを発動中。艦内よりリペアユニットの展開を確認した』

なのはは目を凝らし、Aエリア方面を見やる。
流石に40km先に突き出す艦艇構造物を捉える事は出来なかったが、恐らくは巨大なそれがコロニーへと突き立っているのだろう。
滲む焦燥を押し隠し、勤めて無感動に念話を紡ぐ。

『破壊するべき・・・かな?』
『だとしても、余裕が在ればこそだろう。あの艦とアイギスはともかく、666を放っておく訳にもゆくまい』
『どういう意味だ』

返されたザフィーラの言葉に、問い返すヴィータ。
見れば、人型となり頭上の闇を見上げる彼の顔には、焦燥の入り混じった忌々しげな表情が浮かんでいた。
視線を動かす事もなく、彼は続ける。

『奴等が向かったのは生産プラントの方角だ。バイドが何を企んでいるのかまでは分からないが、碌な事でないのは明らかだろう』

その言葉が終るかどうかというところで、意識の中へと響く警告音と共にウィンドウが開く。
点滅する赤いそれには、黒々とした「WARNING」の表示が浮かんでいた。
呆けた様にそれを見やるなのはへと、三度ザフィーラからの念話が届く。

『そら、始まったぞ!』
『アクラブより総員、警告! 各種プラント周辺域、偏向重力発生! プラント群が移動を開始、コロニーへと接近中!』

途端、なのはは自身の血の気が引いてゆく事を自覚した。
傍らを見れば、はやてとヴィータも同様らしい。
2人は呆然と、頭上に拡がる闇の果てへと視線を向けていた。
そして、なのはがそんな2人を見やる間にも、念話と通信が慌しく乱れ飛ぶ。

『どういう事だ? 化け物は何を企んでいる!』
『こちらヤタガラス、目標を確認した。プラント群、更に加速。コロニーへの衝突まで340秒』
『こちらペレグリン4、資源生産プラント外殻に666を確認した。目標は完全に取り付いて・・・プラント防衛システムの起動を確認、攻撃を受けている!』
『聞こえるか? こちらはコロニー防衛艦隊、駆逐艦バロールだ! 食量生産プラントに取り付いた666を確認、攻撃を試みるもアイギス群の妨害により接近できず! プラント移動中、このままではコロニーに衝突する!』

数秒ほど呆け、なのはは666の意図を理解した。
同時に、その余りの凶悪さに戦慄する。
666はコロニーを内部から崩壊させる事を断念し、3つのプラントによる質量攻撃へと移行、膨大な質量によって3方からコロニーを押し潰す心算なのだ。

『プラントの位置は!?』

88R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:02:50 ID:FtNmz37M
我に返ると同時、なのははレイジングハートの矛先を宙空へと突き付ける。
デバイスを通して闇を探るも、迫り来るプラントの影を見出す事はできない。
彼女は再度、念話のみならず声すら張り上げて目標の位置を問うた。

『位置情報を! 早く!』
『無駄だ、距離が在り過ぎる! 砲撃魔法が届く距離じゃない!』
『こちらハリアット! 魔導師総員、デバイスに目標のイメージを送る!』

直後、レイジングハートを通じて視界へと表示される、赤い光の線で構築された巨大建造物。
未だ彼方ではあるが、確実に迫り来るその影。
拡大表示されたプラント、その絶望的なまでの巨大さに、なのはは震える様な吐息を漏らす。

『・・・大き過ぎる』
『30kmもあるんや、魔導師でどうこうなる大きさやないで・・・』

となれば、防衛艦隊に属するL級かR戦闘機、或いは各種機動兵器群によって対処するしかない。
だが今、それらは汚染されたアイギスと、同じく汚染されたらしきプラントの防衛システムにより、目標に対する攻撃態勢へと移行する事ができずにいる。
戦術核の迎撃に就いているシュトラオス隊は、コロニーを離れる訳にはいかない。
動けるのは魔導師を含む、コロニー外殻へと展開中の部隊だけなのだ。
だが、そんななのはの焦燥を嘲笑うかの様に、次なる凶報が齎される。

『ビクター2より警告! 突入艦艇、推進部からの発光を確認!』
『目標艦、再起動! 推進部、噴射炎を視認した!』

弾かれた様にAエリア方面を見やるなのは。
視線の先、遥か前方のコロニー外殻に、青白い巨大な光源が出現していた。
同時に周囲の大気を通じて伝わる、足下のコロニーを震わせる振動。

『待てよ、おい・・・まさか』
『突き破る気!?』

直後に障壁を突き抜ける、壮絶な破壊音。
聴覚のみならず全身を震えさせるそれに、なのはは思わず身を竦ませた。
しかし彼女は誰よりも早く念話を飛ばし、突入艦艇の現状を確かめる。

『ビクター2、目標艦の様子は!?』
『・・・目標、更にコロニー内部へ侵入・・・対称面の外殻を突き破って離脱、加速中!』
『シュトラオス隊、追撃を!』
『戦術核が絶えず飛来している、追撃は不可能!』

突入艦艇、コロニーを貫通し離脱。
驚異の一端が、再び戦域へと舞い戻ったのだ。
R戦闘機群は、其々が展開する位置での防衛戦闘を放棄する事ができない。
目標艦艇との距離が離れれば、長距離砲撃による一方的な攻撃を受ける事となるだろう。
だが、それを追撃し得る戦力が存在しないのだ。

『ベストラよりコロニー外殻展開中の総員へ、緊急』

怒号の様な念話が飛び交う中、ベストラからの通信が意識へと飛び込む。
どうやらベストラへと到達した輸送艦群の第1陣、其処に乗り込んでいたランツクネヒトがあちらに司令部を移したらしい。
何かしらの解決策が齎されるかと期待するなのはだったが、通信越しに放たれた言葉は非情なものだった。

『0518時を以ち、司令部は居住コロニー「リヒトシュタイン05」の完全放棄を決定した。総員、直ちに当該コロニーより離脱せよ。宙間移動能力不搭載の機動兵器は全て破棄、パイロットは魔導師と共に強襲艇へ』
『どういう事だ! コロニー内の生存者は!?』
『コロニー外部の人員を優先、内部の生存者救出は時間的猶予の面から不可能と判断した。プラントとコロニーの衝突を待ち、こちらから戦略核弾頭を搭載した宙間巡航弾を撃ち込む』

89R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:03:24 ID:FtNmz37M
戦略核。
その単語を聞き留めた瞬間に、なのはは悟った。
司令部はコロニー内部の生存者諸共、666を含む汚染体を殲滅するつもりなのだ。
思わずレイジングハートの柄を握る手に力を込めるなのはの傍らで、はやてが悲鳴の様な声を張り上げる。

『戦略核って・・・輸送艦はどうなるんや、8隻も閉じ込められてるんやで!』
『大体そんな物が在るなら、さっさとプラントに撃ち込めば良いだろうに!』
『現状では巡航弾を迎撃される可能性が高く、更に言えばそちらのコロニー及びベストラも炸裂時の効果範囲内だ。こちらは既に移動を開始している。
プラント群とコロニーの衝突後、プラント防衛システムの停止または損傷、及びベストラの安全圏への離脱を以って攻撃を実行する』
『ふざけるな! カルディナにアルカンシェルを使わせるか、R戦闘機に攻撃を命じろ! 波動砲でも核融合でも、プラントを破壊するには十分な筈だ!』

コロニー防衛に当たる人員の1名が叫んだ言葉に、司令部は数秒ほど沈黙した。
その僅かな間にも、遥か頭上に位置するプラントのイメージは、少しずつ崩壊しながらこちらへと接近してくる。
胸中へと沸き起こる焦燥に我知らず歯軋りしつつも、なのはは一語一句すらも聞き逃すまいと通信に意識を傾けた。
そして、司令部からの返答が届く。

『艦隊は戦術核の迎撃で手一杯だ。カルディナはアルカンシェルの連続砲撃によりアイギスを牽制している為、現在の座標から動く事はできない。ペレグリン隊はベストラ周辺で、アクラブとヤタガラスは輸送艦群第2陣の周囲で戦術核を迎撃中だ。
シュトラオス隊もそちらを離れる事はできない。コロニー周辺に展開していたアイギス群を殲滅した際とは状況が違う。残存するアイギス群は高機動戦術を採っており、各機は排除に梃子摺っているのが現状だ。よってプラントへの攻撃は不可能。
繰り返す。総員、直ちに現任務を放棄し、コロニーからの離脱を開始せよ』

なのは達の眼前、先程まで行動を共にしていた強襲艇が頭上より現れた。
機体側面のハッチが開き、その場の4人を招き入れるかの様に機内に明りが点く。
その赤い光を見据えながら、なのはは傍らの親友とその家族へと、ごく短い問いを発した。

『従う?』
『まさか』

返された言葉はそれだけ。
だが、十分だった。
視線を合わせる事すらせずに、なのはは前方へと飛翔する。
強襲艇の機体を飛び越し、更に加速。

『こちら高町、港湾施設内の輸送艦救出に向かいます!』
『グレイン、同じく』
『こちら八神、高町一尉に同行する』
『ビクター2、これより閉鎖部の破壊を試みる。強襲艇の連中、その気が在るのなら手を貸してくれ』

可能な限りの速度で宙を翔けるなのは達の頭上を、より飛翔速度に特化した数名の魔導師と、数機の強襲艇を含む機動兵器群が追い抜いてゆく。
それらの影が目指す先は1つ、輸送艦群が閉じ込められているAエリア港湾施設だ。
前方では既に無数の光が瞬いており、障壁越しにも鼓膜を叩く轟音が徐々にその音量を増す。

『もう始めている連中が居るな』
『単純に壊せば良いって訳やないで。ヴィータ、暴走したらアカンよ』
『分かってるよ!』

交わされる念話を意識の端へと捉えつつ、漸く視界へと映り込んだ港湾施設外殻部は、その数箇所から噴火と見紛うばかりの爆炎を噴き上げていた。
機動兵器群と魔導師達が8箇所の地点に分散しており、其々の集団が外殻へと激しい攻撃を繰り返しているのだ。
なのはは滞空する最寄りの魔導師、何処かしらの次元世界の軍服型バリアジャケットを纏った男性の肩を叩き、念話で以って問い掛ける。

『現在の状況は?』
『見ての通りだ。外部ロックユニットは全て破壊した。後は内部に8箇所、非常用のユニットが在るらしい。そいつを壊せばハッチは緊急開放されるそうだ』
『それで、問題は?』
『魔導師では外殻をぶち抜く事ができないんだ。この辺りは特に強度が高いらしく、さっきから何度も集束砲撃を撃ち込んでいるが表面を削るのが精々だ』

そう念話を交わしつつ、彼は200mほど離れた地点に位置する戦車型の機動兵器を指した。
見ればその兵器は、アンヴィルの主砲に匹敵する魔導砲撃を、連続して外殻へと撃ち込み続けている。
周囲から響く轟音の為に聴覚が麻痺しており、今の今までその存在に気付く事さえできなかったのだ。
爆炎と共に噴き上がる外殻の破片を見やるなのはの意識に、男性の念話が続けて響く。

90R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:04:01 ID:FtNmz37M
『流石にあれ位の兵器ともなると、何とか外殻の破壊はできる。ただ機体数が少ないし、余りやり過ぎるとハッチ内の輸送艦まで巻き込んでしまう』
『他の兵器は? あの戦車以外にも、かなりの種類が在っただろ』
『専門家じゃないから詳しい事までは解らないが・・・対空兵装の半数は威力不足、対地・対艦を含むその他の兵装は威力過剰だそうだ。結局のところ、魔導師以上に強力な魔導砲撃を放てる程度が丁度良いらしい』
『・・・目も当てられんわ。つまり質量兵器は殆ど役立たずって事か?』
『そういう事だな。あれが外殻を吹き飛ばすのを待って、後は俺達がロックを破壊するしかない』
『でも、それじゃあ・・・』
『ああ、間に合わん』

その言葉を最後に男性は念話を切り、頭上へと視線を向けた。
なのはもそれに倣い、迫り来るプラントを見上げる。
先程よりも更に圧迫感を増したそれは、あろう事か外殻の其処彼処から無数の砲火を周囲の空間へと放ちつつ、明らかにこのコロニーへと接近しつつあった。
そして再度、司令部からの警告が発せられる。

『繰り返す。0518時を以ち、司令部は居住コロニー・リヒトシュタイン05の完全放棄を決定した。総員、直ちに当該コロニーより離脱せよ。宙間移動能力不搭載の機動兵器は全て破棄・・・』
『黙ってろ司令部! 10000人を見捨てられる訳がないだろう!』
『プラントと当該コロニーの衝突後、戦略核による攻撃を実行する。繰り返す・・・』
『外殻を貫通した! 魔導師隊、ロックを破壊しろ!』

機動兵器からの通信。
弾かれる様に飛翔へと移り、なのはは破壊された外殻の上へと移動した。
そうして周囲へと拡がりゆく粉塵の中央へと狙いを定めると、レイジングハートの矛先へと魔力の集束を開始する。
周囲の魔導師が起こしたものか、一陣の突風が粉塵を跡形も無く吹き散らした。
それを見届け、宣言。

『こちら高町、撃ちます!』

轟音、放たれる桜色の光条。
破壊された外殻の奥、デバイスを通して青く発光する様に表示されたロックユニットへと、強大な集束砲撃魔法が突き立つ。
目標の破壊を確信した直後、レイジングハートが無機質に攻撃の結果を告げた。

『The target is not destroyed』
「嘘・・・」

思わず小さな呻きを漏らし、なのはは未だ健在なユニットを拡大表示する。
明らかに損傷はごく僅か、機能が損なわれている様子はない。
想像を遥かに超える強固さに、なのはは信じ難い思いでレイジングハートを強く握り締める。

『・・・こちら高町、砲撃を撃ち込むも目標健在・・・思ったより硬い!』
『こっちもだ! 2発撃ち込んでもまだ壊れない!』

100mほど離れた地点、やはり同じ様に2名の魔導師が、破壊された外殻部の上でデバイスを構えていた。
直後に青い光条が撃ち下ろされるも、どうやら結果は芳しいものではなかったらしい。
焦燥を色濃く含んだ念話が、全方位へと放たれる。

『少しは壊れましたが、完全な破壊は無理です! もっと人手が要ります!』
『くそ、何でこんな不必要に硬いんだ!?』
『非常時に汚染体を封じ込める為だ。長くは保たないが、艦隊が到達するまでの時間は稼げる』
『それで跡形も無く吹き飛ばす訳か』

傍らへと並んだはやてが、すぐさまラグナロクの砲撃体勢に入る様子を視界の端へと捉えながら、なのはもまたスターライトブレイカーの砲撃体勢へと移行。
集束を開始し、狙いを僅かに修正する。
はやてがユニット上部を狙っている為、彼女は砲撃同士の干渉を避けるべくユニット下部を狙うのだ。
そして、砲撃。
純白と桜色の魔力光が4条、同時にロックユニットへと突き立つ。
噴き上がる魔力の爆炎。
直後に飛び込む、歓喜と焦燥の双方を含む念話。

91R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:04:31 ID:FtNmz37M
『ロックユニットの破壊を確認! 残り7基!』
『こちらも破壊した! 繰り返す、目標破壊!』
『残り6基!』
『畜生、どうやっても間に合わない!』

三度、なのはは頭上を仰ぐ。
視界に映るプラントの影は、更に巨大なものとなっていた。
迫り来る膨大な質量の壁。
その現実を改めて認識した瞬間、なのはは自身の背が凍ったかの様な、得体の知れない冷たさを覚えた。

「駄目・・・」

微かな声。
始めはそれが、自身のものであるとは思いもしなかった。
だが再度に同じ声が聞こえた時、漸くなのはは自身が小さな呟きを零している事に気付く。

「来ないで」
『衝突まで120秒!』

なのはは見た。
見えてしまったのだ。
迫り来るプラント外殻、既に表層の構造物すら見えるまでに接近したそれ。
その、ほぼ中央に取り付いた、腫瘍の如き異形の肉塊。
蠢く触手に埋もれる濃紺青の装甲、汚染体666。

「来ないで・・・!」

恐怖からではなく、絶望からでもなく。
ただ懇願のみから、なのははその言葉を紡いでいた。
足下のコロニー、その内部に閉じ込められた12000人の非戦闘員。
通信すら回復しない今も、彼らは恐怖に打ち震えながら救助を待っているのだろう。
なのは達がこの場に留まっているのは、単に彼らを助けたいが為だ。
汚染体との戦闘を積極的に選択する意思など、微塵も在りはしない。
だから、だからこそ。

「放っておいて・・・!」

構うな、放っておいてくれ。
通じる筈もないという事は理解しながらも、なのははそう祈らずにはいられなかった。
非戦闘員を助けたい、それだけなのだ。
だというのに何故、バイドは其処までして非戦闘員の殲滅に拘るのか。
何故、666はベストラを狙わない。
何故、防衛艦隊との戦闘に加わろうとしないのだ。

『衝突まで90秒!』
『高町、こちらへ来い!』

ザフィーラからの念話。
振り返れば、彼ははやてとヴィータを背後に庇う様にして、迫り来るプラントを見上げていた。
離脱は間に合わない。
かといって膨大な質量に抗う事もできない。
2人を庇っているのは、反射的な行動によるものだろう。

レイジングハートを握り直し、なのはは改めて頭上を見据えた。
そうしてプラント外殻に取り付いた666へと狙いを定め、魔力の集束を開始する。
恐らくは皆、同じ思考へと至ったのだろう。
コロニー外殻の至る箇所で魔力集束が発生している事を、なのははリンカーコアを通して感じ取っていた。
あらゆる機動兵器がプラントへと砲口を向け、更にはランツクネヒトの強襲艇でさえ離脱する様子はなく、ウェポンベイを展開してプラントへと機首を向けている。
なのはが、彼等が成さんとしている事は、唯1つ。

92R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:05:07 ID:FtNmz37M
「やるしかない・・・!」

最後まで抗ってやる。
最終的には圧倒的な力に蹂躙されるのだとしても、刹那の時まで抵抗してやる。
護るべき人々を見捨て、敵を前に逃げ出したりなどしない。
バイドが彼らの生命を奪うというのなら、対価としてバイドの生命を貰い受けるまでだ。

『来やがれ、クソッタレ!』
『発射、発射!』

ブラスタービットを展開、暴力的なまでの膨大な魔力が、5つの魔力球へと集束する。
徐々に膨れ上がる魔力球、その桜色の光に霞む様にして、プラントの影が浮かび上がっていた。
周囲では長射程を有する機動兵器群が、ミサイルや砲弾、魔導砲撃を一斉に放ち始める。
なのはもそれに続かんと、魔力球の中心へとレイジングハートの矛先を突き付けた。

「スターライト・・・」

魔力球が、より一層に眩い光を放つ。
そして、なのはが暴発寸前の圧縮魔力に指向性を与え、迫り来る666へと向かい解き放つ直前。
トリガーボイスを紡がんとした、正にその瞬間に。

「ブレイカー・・・!?」



プラントが、無数の閃光に呑まれた。



「な・・・」

直後、なのは達の頭上へと強襲艇が躍り出る。
慣性制御フィールド内に侵入した事を感じ取った瞬間、壮絶な衝撃が全身を打ち据えた。
薄れゆく意識を危ういところで繋ぎ留め、なのはは周囲を見渡す。

その時、視界の端に何かが映り込んだ。
強烈な光の奔流の中、遥か彼方に浮かぶ灰色の影。
一瞬後には消えてしまったが、確かに存在したそれ。
それが何であったかを思考する暇さえ無く、新たな念話が意識へと飛び込んだ。

『アイギス、制御系回復! 繰り返す、アイギスの制御を奪還した!』

*  *  *

『何が起きたの・・・?』

呆然とした様子を隠す事もなく紡がれる、キャロの念話。
フリードの背でそれを受けつつ、エリオは遥か頭上に拡がる爆炎の壁を見据えていた。
今もなお拡がりゆくそれは、本来ならばこのコロニーをも呑み込んでいた筈だ。
だがその事態は、実際には起こり得ない。
襲い来る爆炎は全て、このコロニーを守護していたR戦闘機によって消し飛ばされたのだ。

「DELTA-WEAPON」
R戦闘機、精確にはフォースに標準搭載された、戦略級広域空間殲滅兵装。
攻撃および敵性体を分解・吸収した際、フォースへと蓄積される膨大なエネルギー。
これをバイド体により増幅し一挙に解放する事で、限定空間域の物理法則、更には管理世界すら知り得ない異層次元に於ける空間法則にすら干渉し、プログラムされた事象を同一空間上へと具現化するという、空間干渉型ロストロギアに匹敵する純粋科学技術。
当然ながら詳細な理論までは開示されておらず、また開示されたとしても理解できるとも思えないが。

93R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:05:42 ID:FtNmz37M
シュトラオス隊の4機、R-11Sが発動したデルタ・ウェポンは、周囲の空間に核融合反応を強制励起させるタイプだ。
破滅的な総量と密度を以って広域を襲うエネルギー輻射は、如何なる装甲・防衛手段であっても破壊を免れる事はできない。
汚染体は言うに及ばず、戦艦等の大型兵器群であっても致命的な損傷を被る程の爆発。
如何な超大型建造物たるプラントであろうと、この爆発の前には旧式の外殻装甲パネルに覆われただけの脆い鉄塊に過ぎない。
況してやその残骸など、瞬く間に消滅してしまう。

『アイギスだよ。プラントを核攻撃したんだ』

エリオは見た。
迫り来るプラント目掛け突き進む、無数の青い光点。
その全てが、戦術核を搭載したミサイルの噴射炎だった。
制御を奪還されたアイギス群が、防衛目標であるコロニーへと向かう3基のプラントを止めるべく、一斉に戦術核を放ったのだろう。
尤も、秒速500m超という速度で迫り来る全長30kmものプラントを外部から完全に破壊する事は、如何な核兵器と云えども不可能。
そこでアイギス群は、プラント内部からの破壊を選択したらしい。
恐らくは先んじてレーザーによる砲撃を行い、それによって破壊された外殻の内部へと戦術核を撃ち込んだに違いない。
閃光が発せられた瞬間にエリオは、プラントが内部から弾け飛ぶ様を確かに目にした。
そうして飛来する無数の残骸、そして核爆発の衝撃と熱線をシュトラオス隊が、コロニーを巻き込まぬよう発動範囲を極限まで抑えたデルタ・ウェポンで迎撃・消去したのだ。

未だ眩む両眼を瞼の上から揉みながら、エリオは安堵の息を吐く。
全く、幸運としか云い様が無かった。
エリオ達は外殻での戦闘に一切関与していない。
否、できなかった。
つい先程まで、コロニー内部で様子を窺っていたのだ。

コロニー内部で偏向重力の渦が発生して以降、エリオとキャロはBエリアから動く事ができなかった。
強襲艇への避難が間に合わず、構造物内部へと侵入して状況の変化を待つ他なかったのだ。
幸いな事に2人の傍にはフリードが居た為、本来の姿に戻ったその背に乗ってトラムチューブ内を移動。
Cエリアのシャトル・ポート内で、襲い掛かる偏向重力に耐え続けていたヴォルテールの許へと辿り着く事ができた。
そしてコロニー内から666が離脱した隙を突いて脱出するつもりだったのだが、崩落に次ぐ崩落でポートからの脱出に時間が掛ってしまったのだ。
何とか力技で道を切り開き、輸送艦が閉じ込められているAエリア港湾施設を目指したものの、施設内部へと侵入する事は叶わなかった。
仕方なくAエリア構造物の端に開いた崩落跡、不明艦艇が突入・離脱した際に穿たれた巨大な穴から外殻上へと向かう最中に、プラントを破壊した核の光が視界へと飛び込んだという訳だ。

外殻での戦闘に関与できなかった以上、エリオ達がこの瞬間に生きているという現実は、彼らの力が及ばぬところで決定されたという事に他ならない。
それを決定したのは外殻で戦闘を行っていた部隊でも、R戦闘機群でもなかった。
全てを決定付けたのは制御を回復したアイギス群であり、戦闘に当たっていた人間の意思に依るものではないのだ。
無論、ベストラか防衛艦隊の人員が、何らかの方法でアイギスの制御権を奪還した事も考えられる。
しかし、それを確かめる方法が無い以上、幸運であったと云う他ない。
少なくとも、エリオ自身はそう考えている。
そして幸運にも拾った生命、特にキャロのそれが無用な危険に曝される事は、今の彼にとって最も忌むべき事態だった。

『このまま外殻へ出よう。すぐに強襲艇が迎えに来る』
『迎えって・・・輸送艦はどうするの?』
『僕等が何かするより、ランツクネヒトの救出部隊に任せた方が早いし確実だ。外の部隊と合流したら、その足で・・・』
『待って!』

エリオの言葉を遮り、キャロが念話で以って叫ぶ。
突然のそれにエリオは、彼が背に乗るフリードと並んで上昇するヴォルテール、その掌の上に膝を突いているキャロを見やった。
彼女は崩壊した階層構造の一画を指し示し、続ける。

『ねえ、あれ・・・ティアナさんじゃないかな』

94R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:06:19 ID:FtNmz37M
その言葉にエリオは、キャロが指す方向を注視した。
見れば、崩落した階層の1つ、壁面に寄り掛かる様にして立つ複数の影が在るではないか。
そしてその中には、見覚えの在るデザインのバリアジャケットが紛れていた。
エリオは無言のまま自らが騎乗する使役竜の背を叩き、フリードは正確にその意を酌んで人影の方向へと飛翔する。
少し近付けば、はっきりと判った。
キャロの言葉通り、影はティアナを含む3名の局員だったのだ。
コロニー構造物内は未だに人工重力が機能しているらしく、3名はコロニー中心へと頭部を向ける形で佇んでいる。
即ちエリオ達から見て、天地が逆転した状態という訳だ。
人工重力の影響域、その直前まで崩落面へと接近したフリードの背から、エリオは声を投げ掛けた。

「御無事で何よりです、ティアナさん」
『・・・アンタ達もね。見た感じ掠り傷1つ無さそうで、羨ましい事だわ』

返されたのは音声による返答ではなく、念話を用いてのもの。
どうやら喋る事すら億劫らしい。
尤も、それは見た目からして容易に判別できる事実だったのだが。

「・・・崩落に巻き込まれたんですか?」
『そんなところよ』

ティアナの全身は、至る箇所が血に塗れていた。
特に酷いのは右大腿部で、傷を押さえる掌の下から止め処なく血液が溢れ続けている。
他2名もかなりの負傷が見受けられ、一刻も早く応急処置を施さねば危険だろう。

「今、キャロを呼びます。すぐに治療を受けて下さい」

離れた位置に待たせたヴォルテール、その掌の上のキャロへと合図を送る。
まだ完全にコロニー外部へと脱した訳ではなく、構造物に遮られた念話の接続が回復していない。
外殻の部隊に繋がるか否かも既に試したが、結果は失敗に終わった。
ランツクネヒトの用いる通信ならば問題は無いのだろうが、生憎とコロニーのシステムは既に沈黙しており、更に言えばエリオもキャロも疑似的に構築された念話として通信を用いているに過ぎない。
よって、距離が離れている以上、意思の疎通はハンドシグナルで以って行う他ないのだ。

「ティアナさん、その怪我・・・!」
「・・・大した傷じゃないわ。出血が派手なだけ」

接近してきたヴォルテール、その掌からティアナ達の許へと移動したキャロは、すぐさま医療魔法による応急処置を開始した。
ティアナの希望により、処置は他の2名から行うらしい。
その様を暫く見やった後、エリオは改めて3人の様子を観察し始める。
飛散する微細な破片によって切り裂かれたのか、3人共に全身へと切創が刻まれていた。
僅かではあるが皮膚が抉れている箇所も在り、こんな状態で良く此処まで辿り着けたものだと感心する。
そもそも、こんな所で何をしていたというのだろう。
そんな事を思考し始めた時だった。

『・・・ベストラ・・・外殻に展開・・・戦闘・・・』

ノイズ混じりの音声。
小さなウィンドウが、エリオの傍らに現れていた。
通信が回復したのかと、彼はすぐにウィンドウの操作を開始する。

「こちらライトニング01、応答願います・・・ライトニングよりベストラ、聞こえますか」
『直ちに回収機を送る。総員、ベストラへ移動せよ。輸送艦の救出については、こちらから新たに部隊を派遣する』
『重傷者28名、緊急搬送を求む・・・訂正、27名だ。死者62名・・・』
「ベストラ、応答を・・・誰か、聞こえませんか」

95R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:06:53 ID:FtNmz37M
操作を続けるエリオ。
だが受信はできても、こちらからの発信ができない。
旧式の無線なら未だしも、これ程までに発達した通信システムでそんな事が有り得るのか。
そんな疑問を抱くエリオの側面、治療を続けていたキャロが小さく呟きを漏らした。
ほんの些細な、しかし決して無視できぬ言葉。



「これって・・・銃創?」



ストラーダの矛先がティアナ達へと向けられるのと、キャロの小さな悲鳴が上がったのは、ほぼ同時だった。
エリオの視線の先、5mほど離れた崩落面の階層。
上下逆転した光景の中で、ティアナがキャロを取り押さえている。
ティアナの手にはダガーモードとなったクロスミラージュが握られており、その刃はキャロの背後から彼女の首筋へと当てられていた。
そして、エリオを見据えるティアナの眼。
凍える程に無機質な光を宿した瞳が、明らかな敵意を以って彼を射抜いていた。
傍らの局員達もまた、其々のデバイスの矛先をエリオへと向けている。
だが、この場に於いて無機質な敵意を宿している人物は、もう1人存在した。
エリオ自身である。

「警告する。直ちにデバイスを捨てろ」

凡そ普段の彼からは想像も付かない、明確な敵意と冷酷な殺意とに満ち満ちた声。
口を塞がれる様にして押さえ付けられているキャロ、その瞳が大きく見開かれる。
彼女がティアナの行動に驚愕している事は確かだが、この反応はエリオに対するものだろう。
だが今は、それに感けている余裕が無い。
エリオはストラーダの矛先をティアナへと向けたまま、最後の警告を放つ。

「繰り返す。デバイスを・・・」
「警告よ。デバイスを置き、こちらへ来なさい。それ以外の行動は敵対と看做させて貰うわ」

エリオの声を遮り放たれる、ティアナからの警告。
正気を疑う様なティアナの言葉に、彼は僅かに目を見開いた。
足下と背後から迫る、荒れ狂う魔力。
それを押し止める様に、再度ティアナの声が放たれる。

「フリード、貴方とヴォルテールもよ。鳴き声のひとつでも上げたら、貴方達の主人の命は保証しない」

更に高まる魔力密度。
だが、それらが砲撃として放たれる事はない。
フリードもヴォルテールも、放てばキャロを巻き込んでしまうと理解している。
彼らの知能は人間と比較しても遜色ないどころか、一部に於いては凌駕してさえいるのだ。
ティアナの言葉を理解できぬ道理が無い上に、何よりも現状でこちらから仕掛ける事が可能な者はエリオしか存在しない、その事を良く理解している筈だ。
だからこそ、彼等はティアナの言葉通りに沈黙を保っている。
しかし万が一の事が在れば、跡形も無くティアナ達を消し去るつもりである事も確かだ。
ティアナもそれを理解しているからこそ、先程の警告を発したのだろう。
エリオは付け入る隙を見せた自身を内心で罵りつつも、眼前の敵へと言葉を投げ掛ける。

「何をやったんです? 銃撃戦なんて穏やかじゃないですよ」
「聞こえなかった? デバイスを捨てろと言ったのよ」
「相手はどうしたんです、殺したんですか? 随分と手酷くやられたところを見ると、相手はランツクネヒトですか」

ティアナの右大腿部、未だ血液が溢れる銃創を見やりながら、エリオは問うた。
傷は深く抉れているが、弾体は貫通している様に見受けられる。
脚部が原形を留めているという事は、恐らくは対人用の9mmによるものだろうか。
そんな事を思考するエリオの目前で、ティアナはダガーモードの刃を深くキャロの首筋へと押し当てる事で行動を促した。

96R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:07:31 ID:FtNmz37M
「急ぎなさい、余り長く待つつもりは無いわ」

刃の当てられた箇所から、幾筋もの赤い線が延びる。
キャロの瞳が揺らぎ、小さな呻きが漏れた。
ティアナは変わらず平静を保ったまま、僅かながら更に刃を押し込む。
くぐもったキャロの悲鳴。
嫌でも理解せざるを得なかった。
彼女は、本気だ。

「3つ数えるわ。その間に投降するか、それとも彼女ごと私達を殺すか決めなさい」

エリオは考える。
近接戦闘であれその他の何であれ、速度に関しては絶対的にこちらが有利だ。
ストラーダの矛先は、既にティアナへと狙いを定めてある。
後は瞬間的な魔力噴射を行えば、ストラーダは自身の手の内より射出されティアナの半身を微塵に打ち砕くだろう。
同時にその余波は、傍らの2人をも殺傷する事となる。
無論ながら、ティアナに拘束されているキャロすらも。

では、射出速度を抑えてはどうか。
ティアナを殺害し、キャロを軽傷で救い出す事はできる。
だが、他の2人は良くて軽傷、最悪の場合は無傷のまま生存する事となるだろう。
後は至極単純だ。
1人が得物を手放したエリオを殺し、残る1人がキャロを殺す。
フリードもヴォルテールも、その強大過ぎる力が災いして手を出す事はできない。
状況の支配権がティアナに在る事を、エリオは認めざるを得なかった。

「1つ・・・」

ストラーダをフリードの背に預け、其処からティアナ達の許へと跳ぶ。
体を捻り上下を逆転、そして着地。
視線を上げ、ティアナへと向き直る。

「2つ・・・」
「・・・言う通りにしましたよ、ティアナさん」

両の掌を翳し、抵抗の意が無い事を示すエリオ。
ティアナの腕の中で、涙を零しながら首を振ってもがくキャロ。
キャロの首筋へと更に食い込む刃を意に介する素振りすら見せず、一挙一動すら見逃さないとばかりにエリオを見据えるティアナ。
そして、エリオの背後から迫る2つの足音。

「跪け」

背後の声に、エリオは無言のまま従った。
掌を後頭部に回して組み、両膝を床面へと突く。
だが、視線だけは変わらずティアナを、その腕へと囚われたキャロを捉え続けていた。
魔力の刃は未だ、彼女の首筋へと吸い付いたまま離れない。
そのバリアジャケットは溢れだす血液によって、既に胸元まで紅く染まっていた。
我知らず歯軋りし、エリオは心中を埋め尽くす憎悪もそのままに、射抜く様な視線をティアナへと向ける。

これから恐らく、自身は意識を奪われる。
では、その後に待つものは何だ。
自身がどうなろうと知った事ではないが、キャロはどうなるのか。
フリードとヴォルテールが居る以上、殺される事はないだろうが、しかし何事も無かったかの様に解放される筈もない。
結局、自分は彼女を護り切る事ができなかったのだ。

「そのままよ。おかしな事は考えないで」

97R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:08:05 ID:FtNmz37M
自身の無力さを呪うエリオへと、ティアナが声を投げ掛ける。
此処で漸く彼女は、ダガーモードの刃をキャロの首筋から離した。
刃が離れた後に残るは、血液が滲み出す一筋の赤い線。
傷は頸動脈まで至ってはいないらしいが、それでも薄皮が裂かれただけに留まらず、刃が皮下組織にまで喰い込んでいた事を窺わせる。
キャロの口を抑えていた左手が離れ、彼女は小さく震える声を漏らした。

「エリオ君・・・!」
「黙ってなさい」

クロスミラージュ、ダガーモードからツーハンド・ガンズモードへと移行。
左手に握られたクロスミラージュの銃口はキャロの顎下に、残る一方の銃口はエリオの額へと向けられている。
抑え切れぬ憤怒の感情に身体を震わせ、エリオは軋みが上がる程に歯を噛み締めた。
そんな彼を見下ろし、ティアナが口を開く。

「それで・・・こうして先手を取った訳だけれど」

止めを刺す前の気紛れか。
キャロに対する罪悪感と、不甲斐ない己への失望。
それらの狭間でエリオは、眼前に佇む憎むべき敵の言葉を一語一句逃さず聞き取ろうと、聴覚に意識を集中した。
そして、ティアナは続ける。

「そろそろこっちの話を聞いて貰えるかしら・・・ライトニング? できれば冷静に・・・戦闘は無しで・・・」

紡がれたのは、全く予想外の言葉。
唖然とするエリオ。
しかしすぐに、彼は異常に気付いた。
ティアナの身体が、不自然に揺れている。

「全く・・・慣れない事、するものじゃ・・・ないわね・・・」

ティアナの手から滑り落ち、床面へと叩き付けられるクロスミラージュ。
遂にはキャロを取り押さえていた腕すらも離れ、その身体はよろめきながら後退りする。
唐突に解放されその場にへたり込んだキャロも、呆然とそんなティアナを見つめていた。
異常を感じ取ったのか、フリードとヴォルテールも攻撃態勢を解き、しかし未だ警戒しつつ事の成り行きを見守っているらしい。
そんなエリオ達の目前でティアナは、再度に壁面へと背を預けて数度、口を手で覆って苦しげに咳込む。
指の間から溢れ出る液体、黒味掛かった赤。
エリオは我知らず、彼女の名を口にする。

「ティアナさん・・・?」
「まさか、あれでも・・・仕留め・・・損なってた、なんて・・・ね・・・」
「ティアナさんッ!」

98R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:08:43 ID:FtNmz37M
背を壁面へと擦りながら、ティアナの身体は摺り落ちる様に床面へと倒れ込んだ。
壁面に残されたのは、放物線状の赤い模様。
咄嗟に駆け出し、倒れたティアナを抱き起こす。
その時、同じく駆け寄ってきたのであろうキャロが、ティアナの背を見るや小さく悲鳴を漏らした。
ティアナを抱きかかえたまま何事かとキャロへ視線を移せば、彼女はフィジカルヒールを発動させると同時に、叫ぶ様に言い放つ。



「背中、撃たれてる! 3発も!」



視線を落としてティアナの背面を見やったエリオは、其処に穿たれた複数の穴を視界へ捉えるや、自身の血の気が引いてゆく事を鮮烈に自覚した。
水泡が潰れる小さな音と共に、一定の間隔を置いて血を噴き出す3つの穴。
射撃手は狙いを定めるつもりなど無かったのか、銃創は左肩に1つ、背面に2つ穿たれている。
大腿部のそれを含めれば、ティアナは4発もの銃弾を受けている事になるのだ。
だが、この3つの銃創は大腿部のそれとは異なり、明らかに新しい。
まるでたった今、この場で穿たれたかの様に。

「ッ・・・!」

フリードの咆哮、警告の意を示すそれ。
瞬間、エリオは弾かれた様に、他の2名の局員へと視線を移す。
果たして視線の先、彼等は床面へと倒れ伏し、その身体の至る箇所から大量の血液を溢れさせていた。
何時の間にと驚愕するエリオだったが、胸元に感じた違和感に再度、視線を腕の中のティアナへと落とす。
彼女は血塗れの手に掴んだ正方形の何かを、エリオのバリアジャケットに備えられたポケットへ入れようとしていた。
出血によるショック症状なのか、酷く震える手を必死に動かし、何とかその行為をやり遂げる。
そして何事かを伝えようと必死に、しかし生気の感じられない血の気の失せた表情で口を動かすティアナ。
思わずキャロと共にその手を握り締め、エリオは自身の耳をティアナの口許へと近付ける。
鼓膜を震わせるのは空気の漏れる異音と、酷く掠れた小さな声。

「真実を・・・地球軍の、計画・・・覚られないで・・・なのはさん達に・・・伝えて・・・」
「エリオ君・・・」

自身の名を呼ぶ声に、エリオはキャロを見やる。
すると彼女は、何事かを恐れる様な表情でエリオの後方、崩落した階層内を指していた。
周囲に響く重々しい、硬い靴底が床面を叩く音。
明らかに軍用ブーツのそれと判る靴音に、エリオはゆっくりと背後へ振り返る。

果たして背後の暗がりの中に、闇よりもなお黒々とした装甲服の影が浮かび上がっていた。
僅かに前屈みになっているのか、通常よりも幾分だが低い位置に視覚装置の赤い光が点っている。
だが、常ならば2つ在る筈のその光は何故か1つしか見受けられず、しかも影は奇妙に揺らいでいた。
何かがおかしいと感じたのも束の間の事、数歩ほど進み出た影の全貌を視界へと捉えるや否や、エリオは息を呑んだ。

「何が・・・!?」

エリオの予想通り、影の正体はランツクネヒトの隊員だった。
だが、その左腕は上腕部から千切れ飛び、左脚は大腿部が大きく抉れて骨格が露出している。
破片を受けたのか、腹部右側面には喰い千切られたかの様な傷があり、其処から内臓器官の一部が覗いていた。
ヘルメットは左側面の一部が粉砕されており、左眼に当たる視覚装置は周囲を覆うマスクの一部と共に損なわれている。
本来ならばマスクの破損した部位からは左眼が覗いている筈だが、当の眼球は周囲の皮膚諸共に失われており、剥き出しの皮下組織と黒々とした眼窩だけが、滲み出す血液を絶え間なく溢し続けていた。

「ひ・・・!」

直視してしまったらしきキャロが、背後で引き攣った悲鳴を上げる。
だがエリオは、隊員から注意を逸らす事ができなかった。
正確には隊員の残された右腕、その手に握られた物体からだ。

99R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:09:19 ID:FtNmz37M
20cm程の銃身に、それを僅かに上回る全長のサプレッサー。
一見すると通常のハンドガンに見受けられるが、エリオはそれがマシンピストル、即ち9mm弾を連射可能な質量兵器であると知っていた。
そして同時に、何故ティアナが3発もの銃弾を受けていながら頭部などの致命的な箇所への被弾が無かったのか、その理由へと思い至る。

隊員は致命傷を狙わなかったのではなく、照準を定める事、それ自体が不可能だったのだ。
自身も明らかに致命傷を負っている上に、既にかなりの出血が在ったのだろう。
銃を握る手は震え、大腿部が抉れているにも拘らず歩を進める脚は、しかし1歩毎に不安定によろめく。
両の掌で銃を支えようにも左腕は上腕部から千切れて失われ、震える右腕のみでは照準すら覚束ない。
よって、少しでも命中率を上げる為にフルオートでの射撃を選択したのだろう。
だが、ハンドガン程度の小型銃器から9mm弾を連射した際に発生する強烈な反動を、装甲服の筋力増強が在るとはいえ、弱った右腕の筋力のみで完全に押さえ込む事などできる筈もない。
連続する衝撃に照準は激しく揺れ、十数発の内3発がティアナへと着弾したというところだろう。
もし銃弾がティアナの身体を貫通していれば、その腕に拘束されていたキャロも、今この瞬間に生死の境を彷徨う事態となっていたかもしれない。
その後、隊員は弾倉に残る全ての銃弾を用いて残る2名の局員を射殺し、今こうしてエリオ達の前へと姿を現したという事か。

「・・・これは一体どういう事です? 何故、戦闘なんか・・・!」

どうにか絞り出した言葉は、小さな金属音によって遮られた。
隊員の右腕、サプレッサー先端の銃口がこちらへと向けられている。
不規則に揺れるそれは照準など定まりようもない事を十二分に知らせてはいたが、しかしフルオートである事を考慮すれば、エリオどころかキャロまでが完全に射界へと捉えられている事だろう。
下手に動く事はできない。
互いの距離が近過ぎる為、フリードもヴォルテールも介入の手段が無い。
そもそもティアナとランツクネヒト隊員、現状に於いてどちらを擁護するべきかさえも不明なのだ。

ランツクネヒトとティアナ達は何故、互いにこれ程の惨状となるまで戦闘を行う必要性が在ったのか。
どちらかが攻撃を実行し、それが皮切りとなって交戦状態に陥ったと考えるのが自然ではある。
では、その攻撃はどちらから行われたのか、それを実行した理由は何なのか。

「何故、銃を向けるんです? 僕達は何も知らない」

語り掛けても、隊員は何も言葉を返さない。
エリオ達へと銃口を突き付けたまま、覚束ない足取りで徐々に距離を詰めてくる。
だが何故、この距離で撃とうとしないのか。
其処に思考が至り、エリオは気付く。

ティアナは言っていた。
真実を伝えろ、地球軍の計画、覚られるな。
そして、今は自身のバリアジャケットのポケットに収められている、何らかのメディアデバイスらしき物体。
何故かAエリアに展開していたティアナ達、彼女達を追ってきたランツクネヒト隊員。
これらの事実から導き出される、現状の背景とは。

「・・・彼女達に、何を「知られた」んです?」

瞬間、隊員が僅かに不自然な動きを見せた。
微かなものだったが、エリオはその動揺を見逃さない。
そして確信する。

「やっぱり」

間違いない。
ティアナ達はランツクネヒト、そして地球軍にとって致命的な情報を入手したのだ。
決して知られてはならない、不都合な事実を暴かれてしまった。
その時点で、ティアナ達は情報の奪取に気付いたランツクネヒトを、ランツクネヒトは情報を入手したティアナ達を殺害せねばならない理由が生じる。
攻撃がどちらから実行されたものであれ、今となってはその事実など大した問題ではないのだ。

100R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/11/07(土) 17:09:59 ID:FtNmz37M
「彼女は何かを言う前に、貴方に撃たれた」

ティアナがキャロを拘束し自身に投降を迫った理由は、状況を理解していない自身等がティアナ達を攻撃する危険性が在った為だろう。
だがその行動は、ティアナ達を殺害すべく追跡していた隊員に、絶好の機会を与えてしまう事となった。
それまでの戦闘を経て、ティアナ達は既に隊員を殺害したつもりだったのだろう。
ところが、常人離れした強靭さで生き延びていた隊員は、自身達に注意を向けているティアナ達の背後から9mmの弾雨を浴びせ掛けたのだ。
その隊員は今、何をしているのか。
ティアナ達と接触した自身達を撃つ事もせず、何を。

「それ程に、知られたくない事だったんですね?」

答えは1つ。
彼は待っている。
通信が回復する、その時を待っているのだ。
コロニー外に展開するランツクネヒト、或いは地球軍へとこの状況を知らせる為に。
自身等に関しては、ティアナからどれ程の情報を得たか、隊員が知る由も無い。
通常ならば時間的にも状況的にも、多くの情報を伝える事は不可能と判断できる。
だがそれは、通常の人間ならばの話だ。
自身もキャロも、そしてティアナも魔導師。
つまり念話という、魔導師のみが用いる事のできる通信手段が在るのだ。
それを通じて、既に情報の遣り取りが在ったのではないか。
隊員は、それを疑っているのだろう。
実際には、ティアナは念話を使う事もできぬ程に消耗していたのだが、彼にそれを知る由など在る筈もないのだ。

「ランツクネヒトは・・・地球軍は何を隠しているんですか」

本来ならば、有無を言わさず自身等をも射殺するつもりだったに違いない。
だがこの場には、フリードとヴォルテールが存在した。
主へと銃口が向けられている、自身が攻撃を実行すれば主を巻き込んでしまうという、この2つの事実によって彼等の行動が封じられている事は明らかだ。
しかし、この状況下で自身はともかくキャロが殺害される事が在れば、2騎は即座に行動を開始するだろう。
隊員は微塵の抵抗も許されずに殺害され、一連の事実が外殻に展開する部隊へと知らされる。
実際には、使役竜と守護竜である2騎と明確な意思の疎通を行える人物はキャロのみであり、その他の人間が彼らの意思を読み取るには複雑な術式が必要なのだが、目前の隊員が其処までの情報を得ている可能性は低い。
しかし同時に、2騎が非常に高い知性を有している事実は、既にランツクネヒトにも知れ渡っている。
その情報が災いしたのだろう、結果的に隊員は通信回復を待つ以外の選択肢を封じられてしまったのだ。

「・・・答えられませんか」

では、自身はどう動くべきか。
このまま時間だけが経過し、通信が回復する事が在れば、全てはランツクネヒトと地球軍の思惑通りに修正されるだろう。
自身とキャロ、フリードとヴォルテールは諸共に処理され、ティアナ達と共々、誇り高い戦死者としてリストに名を連ねる事となるに違いない。
それだけは、在ってはならない事だ。

「それでも構いません。貴方が話そうが話すまいが、もう関係ないんです」

真実を伝えなければ、地球軍の思惑を明らかにしなければならない。
勿論、それも在る。
ティアナ達の行動を、その犠牲を無駄にしてはならない。
無論の事、それも理解している。
だが自身には、それらよりも優先すべき事が在る。
他の全てを切り捨て、自身の生命すら捨ててでも成さなければならない事が在る。
たった1つ、他の何にも勝る誓い。
大切な人達を殺めながら、それに対し何ら感慨を抱けなくなってしまった自身に残された、最後の大切なもの。




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