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本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ

1魔法少女リリカル名無し:2009/01/08(木) 00:01:53 ID:Qx6d1OZc
「書き込めないの!?これ、書き込めないの!?ねぇ!本スレ!本スレ書き込めない!?」
「あぁ、書き込めないよ」
「本当!?OCN規制なの!?ODNじゃない!?」
「あぁ、OCNだから書き込めないよ」
「そうかぁ!僕OCNだから!OCNだからすぐ規制されるから!」
「そうだね。規制されるね」



捻りが無いとか言うな

831TIBET:2010/07/04(日) 20:45:31 ID:a6EDhirI
★日本人女性が中国人に集団で暴行されてる映像!

「悲鳴に振り向くと」←で検索するとヒットします。

日本の新聞やテレビが隠して報道しない事実。

まだ日本人の1/1000しかこの動画をみてません。

(少しでもコピペ協力感謝します!(-人-;)(;-人-) ユルセ管理の人)

下記リンクからでも見れます。
ttp://www.youtube.com/watch?v=ABVU5hnJvqw

832魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 22:56:25 ID:PQwT/8Tk
約三か月ぶりの登場になります。
新しく話を作りましたが、アクセス規制に引っかかって投稿できない状況に
なっております。
よろしければどなたか代理投稿をお願いできますでしょうか?

本文は以下の通りになります。

833魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:03:00 ID:PQwT/8Tk
約三か月ぶりの投稿になります、話を上手く作れずに、グダグダと時が経ってしまいました。
ようやく出来上がりましたので、投下いたします。

「ボーンクラッシャーが管理局の魔導師と本格的に戦闘を始めたそうです」
スタースクリームの報告を、メガトロンは大聖堂のてっぺんで腕を組み、目を閉じながら聞いていた。
「デモリッシャーもチビ三匹に手こずっている様ですし、戦車部隊に紛れて動いているブロウルでも
増援に送りますか?」
その提案に対し、メガトロンは目を開いて答える。
「いや、手こずってはいるが倒される心配はあるまい。それより、サンダークラッカーとスカイワープ
を呼べ」
それからしばらくして、青を下地に何箇所か白と赤のラインが走る、単座型で翼がないずんぐりした
機体の戦闘機と、黒と紫のストライプに色分けされたY字型の戦闘機の計二機が飛んできて、メガトロン
の眼下でロボットに変形して降り立つ。
「お呼びでございますか、メガトロン様」
青色のデストロン航空兵“サンダークラッカー”が尋ねると、メガトロンは彼らに指示を下す。
「ドレッドウイング共を率いて空より攻撃をかけろ、奴らの航空戦力がどれ程のものか見極めるのだ」
黒と紫の航空兵“スカイワープ”がそれに答える。
「仰せのままに、メガトロン様」
二人は恭しく頭を下げると、すぐに戦闘機に変形して再び空へと舞い上がって行った。

834魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:08:38 ID:PQwT/8Tk
本局ビルNMCCで空の動きを監視していた、二つの巨大な眼に鯰のような口をしている
レーダー担当の士官たちは、クラナガン市街周辺の未開発区画から、突如として未確認の
航空機を示す赤の輝点が大量に表れたのを見て驚愕の表情を浮かべた。
「市街近郊の遺跡区域より、大量の未確認飛行物体が出現!」
大急ぎで報告すると、黒い瘤らだけの肌に骸骨顔の、翼竜の羽を持った将官が文字通り
飛んでくる。
「数は?」
士官たちはレーダー上に映る赤色の塊の数を見極めようと、必死で目を凝らす。
「推定一千と見られます!」
それを聞いた将官は絶句するが、すぐに気を取り直して奥にいる長官以下の幕僚達へ報告
の為に準備を始めた。

将官からの報告に、幕僚たちは将官と同じように愕然となった。
只でさえ地上は大変な状況だというのに、今度は空からの脅威に対応しなければならないのだ。
「今動ける航空隊は?」
グーダとは別種の、髭と髪が肩下まで伸びた、三白眼に巨大な口と黒緑色の皺だらけな肌
をした半魚人生物の幕僚が気を取り直して尋ねると、事前に部隊のチェックを行っていた
将官は即座に答える。
「クラナガン市内の航空隊ならば、どこの部隊でもすぐに。
一番近いのは機動一課第19師団256航空隊と五課第978師団24航空隊です」
少し離れた場所にいたシグナムとアギトが、互いに顔を見合わせて頷く。
「ただちに出動させろ。それと他の部隊もすぐに増援に出せるようにしておけ」
将官が敬礼して立ち去るのと入れ替わりに、シグナムとアギトが幕僚の前に進み出る。
「256航空隊は私の指揮する部隊ですので、復帰の許可を頂きたいのですが」
「分かった、急ぎ戻ってくれ」
幕僚に敬礼して踵を返した二人に、ゲラー長官が声をかけてきた。
「君達、ちょっと待ってくれ」
シグナムとアギトがこちらに来ると、長官はモニターを開いて連絡を始める。
「ギーズ一佐、シグナム三佐の援護を頼めるかな?」
「了解致しました。本局ビル屋上で落ち合う…という事でよろしいでしょうか?」
長官は考え込むように顎に手を当てる。
「…うむ、そうした方がいいだろう」
話を終えてモニターを切った長官に、シグナムが尋ねる。
「本局ビル内での魔力使用は厳禁されているでは?」
「今は非常事態だ、一々下に降りてる暇はあるまい?」
シグナムはそれを聞くと、長官に敬礼しながら改めて言った。
「かしこまりました。シグナム三等空佐、本局ビル屋上でギーズ一佐に合流の後、本隊に
戻ります」

835魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:15:14 ID:PQwT/8Tk
シグナムは本局ビルの屋上に上がると、既に到着していたギーズ一佐に敬礼する。
「援護にご協力、感謝いたします」
ギーズが返礼を返しながら言う。
「急ごう、敵はすぐそこまで迫っている」
「はい!」
シグナムは頷くと、首に吊下げている剣のアクセサリーみたいなデバイスを取り出し、
ギーズも制服の内ポケットから龍が彫られたコイン型のデバイスを出す。
「レヴァンティン!」
「羅龍盤!」
それぞれデバイスの名を呼んで上に掲げると、デバイスから強烈な光が溢れ出、光の球
となって周囲を覆う。
最初に掲げられたデバイスは宙へ浮き上がると変形を始め、レヴァンティンは大剣へ、
羅龍盤はサーベルへと変形する。
二人がそれを取ると同時に制服が光の粒子となって四散し、シグナムの適度に鍛えられた
均整の取れている奇麗な、ギーズの細身ながら筋肉質な裸身が露となる。
拡散した光の粒子は、再び二人の体を覆い、シグナムは白いジャケットにミディアム
ヴァイオレットの騎士甲冑へ、ギーズは足元まである長いマントにダークシーグリーンの
軍服風バリアジャケットとなる。
光球が弾けると同時に二人は空高く舞い上がり、既に戦闘が始まっている方へと飛び
去って行った。

“ドレッドウィング”という名を持つドローンは、六枚翼の戦闘機から一つ目の人型
ロボットに変形すると、こちらに向かって来る三人の空戦魔導師目掛けてビームを
撃ちまくる。
魔導師たちはシールドを展開して弾を防ぎながら散開する。
身長五十センチほどの、口から牙が生えた黒人魔導師がドローンの周囲を旋回飛行し、
アクセルシューターを撃ち込みながら大声で挑発する。
「おい、どうした! その程度か!?」
挑発が効いたのか、ドレッドウィングは数発ミサイルを発射する。
最初の二〜三発は避けたものの、次のミサイルが魔導師を直撃し、文字通り木っ端微塵
に吹き飛ばされる。
続いて、白色の鱗で全身を覆う両生類型生物の魔導師がスピア型デバイスを突き出して
真上から突っ込んで来るが、右腕でそれを殴り落とす。
と、いきなりドレッドウィングの腹部を、ディバインシューターが突き抜ける。
ドローンは痙攣し、火花と炎と吹きながら墜落する。
人間と類人猿の合いの子のような顔立ちをした、身長一メートル弱の猿人魔導師が煙の中
から突き抜けた次の瞬間、別のドレッドウィングによるビームを数発喰らって、後を追う
ように落ちて行った。

836魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:23:17 ID:PQwT/8Tk
「フェニックス47がやられた! もう持ち堪えられない!!」
モニターから上がる悲鳴に近い救援要請に、後方で部隊の管制を行っている、白い肌に三つ
の突き出た目が特徴的な魔導師が脂汗をかきながら必死に指示を出す。
「フェニックス16は47のバックアップに回れ! フェニックス23と98は一旦後退しろ!」
そこへ、シグナムとギーズがやってくると、魔導師はホッとした表情になった。
互いに敬礼を省略(戦闘中の敬礼は敵の格好の標的になるので厳禁されている)し、早速
シグナムが魔導師に質問する。
「状況は?」
魔導師は戦闘の概略図を表示させながら答える。
「芳しくありません。敵GD一体に対して魔導師三名で戦っていますが、攻撃力に差がある
上に数が多すぎて…」
「ヴィータ達が増援に駆け付けるまで、まだしばらく時間が掛かるな…」
手を顎に当てて考え込むシグナムに、ギーズが言う。
「ならば、到着まで我々が直接抑えるしかあるまい」
シグナムは頷くと、肩に乗っているアギトに言った。
「聞いての通りだ。アギト、ユニゾンで行くぞ」
それを聞いたアギトは、飛び上がって指を鳴らす。
「待ってました! 一丁派手に大暴れしてやるぜ!!」
シグナムとアギトは眼を閉じて呼吸を整えると、互いの意識をリンクさせる。
“ユニゾン―――”
唱和を始めるのと同時に二人の周囲に光の粒子が溢れ出し、それが繋がって一つの流れとなる。
“―――イン!”
唱え終わった途端、強烈な光の奔流が二人を覆う。
それが収まった時、インディゴカラーの騎士甲冑と背に四枚の炎の翼を持つ、ピーチパフカラー
の髪に変わったシグナムが居た。

ドレッドウィングに背後を付かれた、シアン色の肌をした翼竜型生物の空戦魔導師は、左右に
ジグザグ運動する事で追撃を必死にかわそうとしていた。
しかし、ドローンの速度は魔導師よりも遥かに上で、とても振り切ることが出来ない。
「駄目だ、逃げ切れない! 誰か助けてくれ!」
悲鳴に近い叫びを上げながら逃げ惑う魔導師を、ビームを撃ちかけながら追い詰めていたドレッド
ウィングが、突然爆発を起こしてバラバラの破片になった。
「!?」
いきなりの事に唖然としていると、魔導師の眼前にギーズとシグナムが現れる。
「大丈夫か?」
シグナムに問い掛けられると、魔導師は気を取り直して頷く。
「よし、直ちに部隊へ戻れ」
魔導師が原隊に復帰するのを見届けてから、シグナムは念話で部隊へ呼び掛ける。
“こちらはフェニックス1、シグナムだ。敵GDの主力は私とギーズ一佐が引き受ける。
全部隊員は、こちらのフォローと周辺の敵を頼む”
念話で部隊に呼び掛てるところを狙って、一機のドレッドウィングがシグナムを撃ち
落とさんと迫ってくる。
と、その前にギーズが現れ、羅龍盤で機体を縦一文字に斬る。
「淑女の話の邪魔をするとは、紳士の風上にも置けぬ愚か者め」
シグナムはギーズの言葉に首を捻りながら、レヴァンティンを構える。
「私は単なる夜天の書のプログラムです、それにこんな機械人形に性別などありますまい」
そう言いながら人型に変形してビームを撃ってくるドレッドウィングを、横への一閃で
斬って捨てる。
「何であれ礼儀を失した者には、相応に指導をせねばならん。ただそれだけの事」
カートリッジを装填し直しながら、シグナムはニヤリと笑みを浮かべる。
「確かに…人の話が分からぬ者には、鞭が必要ですからな」
まるで、その言葉を合図としたかのように、レヴァンティンを青白い炎が包む。
「では、これからやって来る愚か者共に、一つ教育的指導と行くか?」
そう言ってギーズが顔を向けた先には、迫り来るドレッドウィングの大群が見えた。
「喜んで」
牙をむき出しにした虎のような、凄みのある笑みを浮かべて、シグナムは答える。
ユニゾン中のアギトは、引きつったような笑いを浮かべながら呟いた。
“二人とも怖えぇ…”

837魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:28:50 ID:PQwT/8Tk
高級ブティックが建ち並ぶ第18区アナベア通りは、ドローン軍団対EW−TTと陸戦魔導師
の混成部隊による攻防戦の舞台となっていた。
人だろうが物だろうが片っ端から砲弾を撃ち込んで来るドローンに対して、部隊はEW−TT
が展開する強力なシールドと装甲を盾に、ディバインシューターや魔導師によるアクセル
シューターの連射で対抗する。
激しい戦闘によって崩れた建物の瓦礫の中から、人の指先が一つ現れると周囲を見回す様
にクルクル回る。
“セイン、状況はどう?”
アクアブルーの色にセミロングの髪が特徴的な、ハイティーンの少女のような容姿の
“セイン・オケアノス”は、指先に取り付けられたペリスコープアイで周囲を見回し
ながら、ティアナの質問に答える。
“状況は互角ですね、特に私達の助けが必要な感じはないです”
“スバルやチンク達が遭遇したような、自己意識を持った指揮官タイプは?”
“ええと…”
少しの間、セインは指を回して周囲の状況を再度確認する。
“それらしいのは見当たらないです、全部かつてのGDみたいにプログラミングされた
動きしかしてません”
しばらくの沈黙の後、ティアナは再び話を始める。
“そちらは部隊任せで大丈夫そうね。セインは引き続き指揮官クラスのGDを探索―――。”
突然、セインはティアナの言葉を遮った。
“ちょっと待って下さい!”

突然、後方にいたEW−TTの一両が大爆発を起こして擱座した。
「な、何だ?」
部隊長を務める、頭頂部以外に毛のない真っ白な猿みたいな容姿に四本の腕を持つ魔導師が、
面食らいながら後方へモニターを切り替えると、一台のEW−TTがこちらへ砲口を向けて
いる映像が映し出される。
「最後尾は何をやっとる!? 味方を誤射してるぞ!」
部隊長が怒鳴り付けるが、車両からは何の返事もない。
それどころか、EW−TTは再び砲口を別の車両に向けて、もう一発砲弾を発射する。
「砲弾!?」
ニ台目が炎上して倒れた時に部隊長は気が付いた。
あの車両が撃ち出しているのは質量弾であって攻撃魔法ではない、という事は―――。
「全部隊、最後尾の車両は敵だ!」
部隊長が血相を変えて怒鳴るのと同時にEW−TTが変形を始める。
砲身が引っ込み、最前の脚と車体前部が腕に、後部開いてが足に変形し、中から機械の頭と
胴体が出現し、分かれた車体は手と足に変わる。
砲塔部分は後退しながら回転し、中から顔と胴体が出現する。
それはEWーTTから“デストロン軍団 狙撃兵ブロウル”となって立ち上がった。

838魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:32:02 ID:PQwT/8Tk
「前方のGDは放っておけ! 後方が本命だ!!」
部隊長はそう怒鳴ってEW−TTの砲搭を回転させると、全車がそれに倣ってブロウルに
狙いを定める。
ディバインシューターが一斉に撃ち出されるのと同時に、ブロウルも両肩に搭載された
ミサイルや両手の機銃などを一斉に発射する。
砲撃魔法と質量弾は、丁度両者の中間辺りでかち合って爆発し、辺り一面煙と埃に覆われる。
その中からブロウルがゆっくりと歩きながら姿を現す、ボディには傷一つ見当たらない。
ブロウルは肩のポッドからミサイルを発射し、三両目のEW−TTを血祭りに上げる。
「くそっ!」
部隊長が毒づいた時、いきなりブロウルの背後で爆発が起こり、俯せに倒れ込む。
「!?」
訝しむ部隊長の眼前に、空間モニターが開いてティアナの顔が現れる。
「こちらは次元部局第三艦隊、第783機動部隊1348強襲揚陸隊所属、ティアナ・ランスター
執務官補佐です。
こちらの敵は私の方で対応します」
話を受けた部隊長は一瞬“若造め”という苦い表情になるが、それを声に出す事なく、努めて
平静を装いながら返答する。
「了解しました、後はお願いします」
モニターを消すと、部隊長は小さく舌打ちする。
「全部隊、後方の敵は執務官補が引き受ける。我々は前方のGDを掃討しながら前進するぞ!」
不機嫌な部隊長の声に対して、車内の乗員達は皆一様にホッと安堵の表情を浮かべた。

起き上ったブロウルは振り向くと、機銃が装備された腕をティアナに向ける。
銃弾が身体を引き裂くよりも前にティアナはバイクを急発進させると、自身のデバイス
“クロスミラージュ”をブロウルに向ける。
立て続けに撃ち出されたディバインシューターは全弾ブロウルに命中し、二・三歩
後退させる。
「さあ来なさい、あなたの相手は私よ!」
態勢を立て直したブロウルに、ティアナは大声で挑発した。

839魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/14(水) 23:36:59 ID:PQwT/8Tk
今回はここで終了です。
次は…スバル対ボーンクラッシャーの続きとかを書いてますのでお楽しみに!
出来れば、はやて登場までやりたいですね。

今回の元ネタ集。
オリキャラ
●二つの巨大な眼に鯰のような口をしている昆虫のような姿をしたレーダー担当の下士官
:ジオノーシアン『スター・ウォーズ エピソードⅡ クローンの攻撃(2002 アメリカ)』
●黒い瘤らだけの肌に骸骨顔の、翼竜の羽を持った将官:『ギャラクシー・オブ・テラー
 恐怖の惑星(1981 アメリカ)』ポスターより
●グーダとは別種の、髭と髪が肩下まで伸びた、三白眼に巨大な口と黒緑色の皺だらけな
肌の半魚人生物:『モンスター・パニック(1980 アメリカ)』
●身長五十センチほどの、口から牙が生えた黒人魔導師:ラットマン『ラットマン(1993
イタリア)』
●鱗肌のアルビノの両生類型生物:スロース『アリーナ(1989 アメリカ)』
●人間と類人猿の中間の顔立ちをした、身長一メートル弱の猿人魔導師:トロル『トロル
(1986 アメリカ)』
●部隊を管制する、白い肌に三つの突き出た目が特徴的な魔導師:リー=イーズ(マラステア人)
『スター・ウォーズ エピソードⅥ ジェダイの帰還(1983 アメリカ)』
●シアン色の肌をした翼竜型生物の空戦魔導師:バピラス『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々
(1987 エニックス)』
●頭頂部以外に毛のない真っ白な猿みたいな容姿に四本の腕を持つ魔導師:猿の化け物
『火星のプリンセス(1917 エドガー・ライズバローズ 創元推理文庫刊)』

デストロン軍団
●サンダークラッカー:Aウイングファイター
●スカイワープ:Yウイングファイター
●ドレッドウィング:ARC170スターファイター

840魔法少女リリカル名無し:2010/07/15(木) 21:57:30 ID:H/KaHroY
じゃあ、いってみます。

841魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2010/07/15(木) 22:12:38 ID:V0kht952
>>840
只今確認いたしました。
投下してくださいました方、どうもありがとうございます。

842りりかるな黒い太陽:2010/08/05(木) 22:36:59 ID:p01vHF9Q
また間が空いてしまいました;
22話の投下を行ないたいのですがアクセス規制中のようです
お手数をかけて申し訳ありませんがどなたか本スレへの投下をお願いします
本文は以下になります

843りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:39:26 ID:p01vHF9Q
ミッドチルダの至る所で稲光が弾けていく最中、機動六課も迅速に動き出そうとしていた。
管理局の対応が決まるにはまだ時間を要するのは誰の目にも明らかだった。
はやて達のいた会場は混沌とし、すぐに意見を取りまとめられるような状態ではない。

聖王を取り戻したいのは勿論だが、今まで教会や自分達を謀っていたのかという教会関係者と次元犯罪者の甘言に動かされた者達を睨む本局の代表者達は、この事態を収集しようというつもりがないかのようだった。
それを取り巻く他の管理世界の代表者達も、幾らかはライダーを部下に持つことも出来るようになるという誘惑に心惹かれているらしい態度を隠そうともしていなかった。

地位故に、まだまだ混沌としていくであろう会場の隅に追いやられていたはやて達は、そんなものに付き合ってはいられなかった。
会場に入る為に預けていたデバイスを受け取って出て行く彼女らを、会場の何名かが流し目で見送った。

会場を出るとすぐに街のどこかで発生した閃光が周囲を真っ白に染めて、余波が道路を、立ち並ぶ建造物を揺らす。
それが収まるより早くに次の一撃が、本部の空気を僅かに帯電させた。

「サンダーレイジO.D.J…母さんが、使った魔法。二人共ごめん、私もすぐに出るよ。ヴィヴィオを助けないと…」
「勿論や。あの有様のお陰で私達に与えられてる任務には何の変更もあらへん、次元犯罪者の要求には屈しへんし誘拐された被害者も保護する。両方やらなあかんのが私らのツライとこやね」

焦りを見せるフェイトを落ち着けようと、軽い調子ではやては言う。
なのはも頷いてフェイトの手をとった。

「はやて隊長、いい作戦はある?」
「う〜んそやねぇ…まずは、シャーリー。無限書庫のユーノ司書長に繋いでもらえる? なのはちゃんからアレについての情報を集めてもらいたいんよ」

はやてが空中に通信画面を開き、待機していたシャーリーへ指示を出す。

『それならもうやってあります。最優先でやってくれたみたいで、先程情報が届きました』
「流石や、シャーリーもユーノ君もほんまに頼りになるわ」

誉められたシャーリーは、眼鏡の奥で嬉しそうに目尻を緩ませた後、ミッドチルダの上空へと浮かび上がっていく『聖王のゆりかご』の情報を六課の隊員たちの前に表示させた。
そこには内部の構造や、配備されている兵器についてもある程度の事が書かれており、皆を驚かせ、はやてを考え込ませた。
内容を確認していく隊長二人を余所に、はやては難しい顔をする。

「……皆、ちょっと聞いてくれる?」

はやて達と合流しようとしているヴォルケンリッターや、新人達との通信画面も開いてから、はやては言う。

「賭けに出たいんや。特に、なのはちゃんには負担を賭けることになると思う。悪いけど、付き合ってもらえんやろか」

尋ねるはやてに最初に頷いたのは勿論ヴォルケンリッターだったが、それに押されるように皆、元気よく返事を返した。
ありがとう、と言って説明を始めようとするはやて。そんな彼女に通路の先から親しみの篭った声がかけられた。

「ほぅ、一体どんな悪巧みを思いついたんでぇ?」
「な、ナカジマ三佐!?」

驚いて、通信画面を脇にやったはやて達に、ゲンヤは手を挙げて挨拶する。
その隣には、どういうわけかヴェロッサが立っており、二人はゆっくりとはやて達の元へと歩いてきた。

「ヴェロッサまで。こんなとこでどないしはったんです?」
「レジアスの旦那に頼まれてな。コイツの随伴よ」
「忙しいところ悪いけどちょっと時間をもらっていいかい?」
「まぁ、ちょっとやったらええけど。なんであんたがナカジマ三佐と…」
「ある人物…」

ヴェロッサは声を潜めた。

「レジアス中将の頼みでね……と言っても、立場上積極的に協力したとは言えないから、責任はこちら持ちになっちゃうけどね」

844りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:40:37 ID:p01vHF9Q
意外な名前が挙がり、ますます用件が見えなくなるはやて達にヴェロッサ達も苦笑を深くする。

「彼女の協力を取り付けたから、君の指揮下で使って欲しい。責任は、僕らも掛け合ってなんとか三提督が取ってくださることを期待してくれ」

そう言ってヴェロッサは身を引き、後ろに連れていた親子をはやてに紹介した。

「こうして話をするのは初めましてですね。私はメガーヌ・アルビーノ。この子は」
「ルーテシア・アルビーノ。どうして欲しいの?」

母親と手を繋ぎ、感情の薄い瞳で見上げてくるルーテシア。
メガーヌは、まだ自由に移動することが出来ないのか車椅子に乗り、報告書で見たガリューが椅子を押していた。

「ブランクの長い私は、戦うことは出来ませんがこの子一人を行かせるわけにもいきませんから」

戸惑いが抜けきらないはやてにゲンヤが説明する。

この事件を解決する為に現状戦力となり得るものを総動員するしかないということは誰の目にも明らかだったが、
報道された内容に、他の管理世界は勿論だがこのミッドチルダの現場でも戸惑いの声が強く、今いる責任者達では押え切れない状態と化していた。
動揺を抑えこみ、正常化させた上で緊急時の対応を取ることが出来る人物は他でもない、会場の中にいる代表者達だった。

だがその代表者達も前述されたとおり混乱し、未だ動き出すのに時間がかかる。

そこで既に動き出した六課に協力するよう、陸で保護されていたアルビーノ親子へ要請がかかったのだった。

「外は安全とは言えないからね。僕がここまでお連れすることになったんだけど、僕だけじゃお二人に信用してもらえなくてね。ナカジマ三佐にお願いしたってわけさ」
「ははは、ええっと……そら助かりますけど、いいんですか?」

スカリエッティに酷い目に合わされ、どうにか生還したメガーヌ。
管理局の手でスカリエッティに引き渡され、彼女を目覚めさせる為に辛い人生を送っていたルーテシア。

ルーテシアの能力はとても有り難いが、彼女らに協力を要請することは戸惑われた。
戦わせることにも倫理的な問題は付きまとうが、その上はやて達の今後の予定には、ゼストをもう一度殺したRXを手助けすることも含まれているのだ。

二人はあっさり頷いた。

「ゼストのことは、私達が招いたトラブル。強盗を手伝ったら、反撃されるのは当然のことだった」

ルーテシアもゼストも、探す途中結果的に殺してしまった人間はいる。
恨みがないと言えば嘘になるが、自分達が逆に倒されたことが今の親子の生活より優先されることはないのだった。

「そう、わかった。じゃあ遠慮無くお願いするわ。ルーテシア…そう呼んでもええ? ありがとう。ルーテシアは細かい指示は追ってするけどまずは前線メンバーと合流してもらうわ。ヴェロッサ、悪いんやけど連れて行ってあげてな」
「わかった」

ヴェロッサは直ぐに承諾した。
スカリエッティの居場所を突き止めたり、管理局の不正を暴き改革を行なおうとしていたがこうなってしまってはヴェロッサに出来ることは余りなかった。

「その後、ルーテシアの一番強い召喚獣の…「白天王?」そう! それを呼んでもらいたいんよ」
「あの船を攻撃するの?」
「そうや! ルーテシアの白天王とキャロのヴォルテール。戦船と張り合うには、使うしかないやん?」

通信画面越しに皆に指示を出し、はやては作戦開始時間を定める。
突然指名を受けたキャロが、ヴォルテール…ルーテシアにとっての白天王に当たる召喚獣の使用に抵抗があるようだったのもあるが、フォルテールと白天王は、強力な召喚獣だが都市で使うには不都合が多い。
二体が召喚される付近の住民を違う避難場所へ移動してもらう時間が必要だった。

「フェイトちゃん、悪いんやけど新人達と一緒にキャロを落ち着かせといて。他の皆は準備が済み次第交代でちょっと休憩しといてな」

相変わらずミッドチルダ中を対象に降り注ぐ稲妻を黒い影が防ぎ続けていたが、焦りを抑えてはやては解散を命じる。
ここまでの移動だけでも消耗していたのだろう、ゲンヤがメガーヌを連れて行く。はやて自身も、少し休むため休憩所に移りソファに腰掛けた。
準備の為にフェイトが、それになのはが付いて行きヴェロッサとはやての二人が残された。
緊張を解すため、力を抜きながらはやては尋ねた。

845りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:41:43 ID:p01vHF9Q
「ヴェロッサ……誰からも、待機命令とかは着てないんやね?」
「ああ。皆、誰かがスカリエッティ一味だけ取り押さえてくれないかなって思ってるからね」

聖王とゆりかごは聖王教会に取って非情に重要な、重要すぎる聖遺物だ。
だから教会の信者を多数抱える本局も聖王教会との関係をこれ以上悪化させない為には、聖王とゆりかごについては大半の者が譲るのも仕方ないと考えている。

だがスカリエッティは、(教会に取っては遺産と偉人を教会へ取り戻した功績者であっても)管理局に取ってはただの犯罪者だ。
それも今では評価は更新され、スカリエッティは管理局では禁忌とされる技術の第一人者であり、管理局の醜聞を他にも幾つも知っているであろうという……見過ごせない程重要すぎる犯罪者と化している。

これが光と闇が両方そなわり最強に見える、ということかと言いつつ現実逃避したくなったが、はやてはため息をつくだけに止めた。

「伝説になるような戦船なんやろ? そこに突入してスカリエッティを取り押さえて聖王の保護って、成功したら奇跡やね」
「それでも、遂にこうなるまえに彼らを捕まえられなかった僕らは期待せずにはいられないのさ。保護出来ればヴィヴィオちゃんの処遇に付いては希望が出てくるはずだしね」

苦々しく思っているのか、声に力のないヴェロッサにはやては目を開け力付けるように微笑んでみせた。

「やってみせるから、時間が来たら起こしてな」
「それくらいなら僕にも出来そうだ」

はやては再び瞼を閉じた。



同じ頃、六課よりも早くRXの手助けをしようと動き出していたセッテは空へ飛び込む為の助走を開始していたバイクを止めた。
普通の人間なら不可能なことだが、肉体を強化されたセッテならそう難しいことではなかった。

「クアットロ。用があるなら後にしてもらえますか?」
「そうはいかないわ。今じゃないと邪魔が入るじゃない」

立ち塞がったクアットロは、ガジェット・ドローンの上に座りスカリエッティそっくりの笑顔を浮かべていた。

「お姉さまにお願いされたから聞いてあげるけどぉ、セッテちゃん。今素直にごめんなさいしてドクターに協力するなら許してあげなくもないわよ」

あまりの言い草にセッテは呆れて、返事を返さないどころか無視するように浮上を続けるゆりかごへと視線を移す。

「ドクターの要求が通れば、あそこで痺れてるのも公に認められて、私達は生まれを隠さずに表立って外を歩き回れる。いい事尽くめじゃないかしら」

楽しげに話すクアットロ。
それにセッテは仮面の奥から機械然とした…情を絡ませていない視線を向けた。

「それとも、タイプゼロみたいなつまんない生き方の方がお好み? ドクターが動かなければ、ああなってたに違いないわよ」
「……確かにタイプゼロのような情けない生き方はごめんですが」

クアットロの言葉にセッテは初めて同意した。
タイプゼロとはギンガとスバルのことだ。
呼び名が示すとおり、二人は初期に生み出され、ゼストの部隊が救出した後、部隊に今は亡き妻が所属していたナカジマ夫妻に引き取られ、育てられた。
二人共そのことは極一部の人間を除いて秘密にしているのだが、RXは能力によって、ナンバーズはスカリエッティを通じて知っていた。

それ以後、真っ当な暮らしを営んできた二人の生き方についてセッテとクアットロの意見は、簡単に言えばウザい、で一致していた。

戦闘機人としての生まれを隠して生きることに反感を覚えるのだ。
セッテは、差別を受けることになるだろうということは理解できるが、例えるなら一人だけ黙って動力付き自転車でマラソンに参加しているようなもので、姑息だと感じていた。
もっとチート臭いなのは達がいるわけだが、フェイト等は生まれによる不利益と向き合っている。
利口なやり方だという考えは理解できるので態度に出ないよう接触はしないようにしているが。
クアットロの方は、単純にスカリエッティや姉妹への敬意から敵意を持っていた。

「ですが、ドクターのやり方は賛同できません。ライダーが改造人間だということが知られていき、ドクターが普通の人間にも機械を埋め込むことに成功すれば、それで我々の認識を改めさせることは可能でしょう」

846りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:43:21 ID:p01vHF9Q
セッテは、ブーメランブレードを喚び出し、両手に構えた。
バイクはセッテの意思で自在に動き、足を固定する為の装置も備わっている。
ハンドルを握っているのは普段はその方が便利だからだ。

「今回の事件は必要なかった。ヴィヴィオを巻き込むような方法を敢えて取るなんて……大人のやることじゃありません。クアットロも一緒に殴られたくなければこちらに協力してください」
「そう♪ 良かったわぁ、これで貴方にやり返してもお姉さま達も文句は言わないわよね」

そう言って、二人は動いた。
バイクを駆り、突進するセッテ。
クアットロはその場を動かずに周囲にガジェット・ドローンを呼んだ。

ガジェット・ドローンがどこからか現れ、クアットロの壁となる為に集まっていく。
それを見てセッテは何か嫌な感じがした。
ガジェットのの配置が完了する前にクアットロをひき殺すことは容易いことなのに…

そう気持ち悪いものを感じつつも、突進したバイクがクアットロに接触し、そのまま通り抜けた。
このクアットロは、クアットロのISが生み出す幻だったのだと理解した直後、集まっていたガジェット・ドローンが放つ無数の光線にセッテはさらされた。
再改造を受けてより頑丈になったセッテへカプセル型の1型が特攻し、新たに放たれた光線がガジェットは高価な爆弾となって破片を撒き散らす。

「セッテちゃんも一騎打ちだとか思ってないわよねぇ……これは狩りよ」

爆発と破片の嵐にさらされたセッテの周囲を同じくISで隠されていたらしいガジェット・ドローンが取り囲んでいく。
カプセル型、球体…そして一撃加えようとしたセッテを撃墜した刺々しい、羽根の生えた多脚生物の群れ。

多脚生物型は、データでは知っていたが、セッテも初めて見る。
ガジェット・ドローンⅣ型…8年前になのはを撃墜し再起不能寸前の大怪我に追い込んだ「アンノウン」でもあり、ゼスト隊による戦闘機人生産プラント制圧戦において、クイント、メガーヌを取り囲んだタイプだ。

警戒していなかったわけではない。
だが、Ⅳ型の魔力探知も避ける事ができる完全なステルス性能、RXが雷撃を受け続けている状況、それを助けようとする自分に横槍を入れるクアットロの薄笑い。
クアットロの顔に残る傷跡へ、セッテは無意識に視線を向けた。

どうもカッとなってクアットロを殴りつけたお陰で、厄介な状況に追いやられてしまったようだ。
機械的に過ぎると言われた頃には思いもよらぬ状況だが、セッテは仮面の中で笑みを浮かべながら、周囲に自分が操る事のできるブーメランブレードを全て配置していった。

視線に気づいたのかクアットロは顔に手をやっていた。

「ほんと、お馬鹿さんよねぇ…この私を殴って逃げ出したり、お話してる間に取り囲まれちゃったり」

Ⅳ型は本来ゆりかごの内部に配置されているもの。
Ⅰ〜Ⅲ型も今周囲に確認出来ている数なら、他の場所には殆どないはずだ。
嘲笑うクアットロには悪いが、それを察したセッテは敢えてクアットロの相手だけに専念することを決め、ガジェットを迎え討とうとしていた。



847りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:43:54 ID:p01vHF9Q
RXを襲う魔法の威力はいよいよRXへとダメージを与え始めるようにまでなっていた。
一発毎に精度を増し、改良を施される稲妻にRXの皮膚からは煙が上がり、稲妻が走った場所は点々とひび割れた皮膚の欠片がこぼれ落ちていく。

「ク……ッ」

膝を付いたRXに、スカリエッティが言葉をかける。

「RX、そろそろ降参してもいいんじゃないかな。教会は私の提案を受け入れてくれる方向で管理局と話し合いをしているし、管理局にそれを跳ね除けることなど出来はしないんだからね」
「ふざけるな……っ」
「では、我々が手を結ぶまでそのままの君でいてくれたまえ」

言い捨てて、攻撃が再開される。
子供を見捨てられないRXは雷へと何度も身を投じていった。
更に威力を増していく魔法に、RXの肉体は傷つけられていく。

駆け寄ろうとする市民や、陸士達をRXは手で制した。

そして一瞬の好機が生まれることを願い、ゲル化して盾となりに行く。

その時、不思議なことが起こった。

「危ない、RXッ!!」

RXを庇い、オレンジ色の壁がRXの代わりに雷を受けた。
最初にRXが受けていたものよりずっと周囲の破壊は少ない。
だが確実にRXを攻撃し、痛手を与えるはずの光の蛇は文様を刻むように、金属鎧のような皮膚の上を走っただけだった。

『え?』

雷が一瞬止む。
誰もが皆、間抜けな顔を晒していた。
ポルナレフ状態に陥ったミッドチルダを嘲笑い、正に独自の時間を生きているらしい創世王達は腕を組んでいた。

「ロボライダー!!」

RXが全幅の信頼を込めて自分の別の形態の名を呼ぶ。
涙が赤い跡を残した仮面が、頷きながら親指を立てて己を指さした。

「過去のお前がやられると、未来の俺が困るからな!!」
『え?』

二人以外の皆が互いの顔を見合わせ、目と耳を疑っていた。
何故あんなのが二人もいるのか、その光景を見た全員にとって、とてつもなく酷いジョークだった。

そんな中で、いち早く我に帰ったゆりかごの中の聖王が新たな雷を降らせようと口を開く……だが必要な言葉を言う間も与えられず、もっと酷い事態が起こり彼女の口は言葉を忘れた。
空へと昇っていくはずの聖王のゆりかごが傾いていた。

「危ないッ、ロボライダー!!」
「バイオライダー!!」
「過去のお前達がやられると、未来の俺が困るからなッ!!」

ゲル化して現れた三人目のRXらしいバイオライダーが、ゆりかごの中へと侵入していた。

「スパークカッターッ!!」

蜻蛉切の上に置かれたトンボのように、ゆりかごは二つに割れていった。
どう反応すればいいか困り切った周囲から、何かを期待するような視線がはやてに集まるのをカンジタ。
はやては、周りの人間と同じように引きつった笑顔を見せながら言う。

848りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:44:33 ID:p01vHF9Q
もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな……………………………………………………………………………………………………………………………………「はやて。そろそろ時間だよ…はやて!」ハッ」

ヴェロッサに肩を揺すられて、はやては顔を上げた。
傍には戻ってきたなのは達もいて、慌ててはやてはソファから立ち上がる。

「はやて隊長、皆準備できたよ」
「ううん……夢、やったんよな?」
「悪い夢でも見たの?」
「悪夢っちゅうか……ま、まぁ気にせんといて。ほな、行こうか」

セッテがクアットロが率いるガジェットの群れと戦闘を開始したことは、直ぐにはやて達の耳に届いた。
だがはやては、そのことをシャーリーの報告だけでなく、通信でゲンヤからも聞かされても動かなかった。

「うちの連中から援護に参加してぇって嘆願が一緒に届いたみてぇだが、あの様子じゃあ直ぐには下りねぇだろうな」
「(一応関係はオフレコやから)普通でも下りんところをこの状況ですから……二人には悪いけど、ウチらは…ウチらの仕事をします」
「そうか。まぁ頑張りな。うちの娘達のことも頼んだぜ」
「はい。それで圧力を減らせばこっちの勝ちですから」

ゲンヤとの通信を切り、ヴェロッサと別れたはやてはバリアジャケットを纏った。
リィンとも融合し、空へと飛び立つ。

はやて達の戦いは、これからだ。
ミッドチルダに降る雷の雨は夢の中ほど凶悪ではないらしく、今も降り注ぎはやて達の目を眩ませる。
その雷に特に心を揺さぶられているようだったフェイトの様子をチラリ伺い、はやては時間を待った。

不規則に落とされる雷が遠くへ放たれた間だけ、はやて達の視界は正常に戻る。
チカチカする目で浮上していくゆりかごを、ゆりかごとはやての間で雲母の如き数で襲いかかるガジェットに呑まれまいとするセッテを睨みつけ……作戦は開始された。

突如ビルをその周辺で戦っていたセッテとクアットロ・ガジェット等ごと幾つか飲み込むほどの巨大な魔法陣が二つ浮かび上がった。
単機でAMFの展開を行うガジェットも、建造物さえ丸っきり無視して回転を始める魔法陣が何を目的としたものか、巨大さから察したクアットロが逃げ出し、遅れて指示を出されたガジェット、ガジェットの群れを切り裂きながらセッテが逃げ出す。
セッテが逃げ出そうとしていることをシャーリーに確認させてから、はやてが合図を送る。

魔法陣から角が伸びた。
空へ向かって徐々にそこから先がせり出していく様は、今のはやて位の距離を取っていなければ直ぐには角の生えた虫と竜が召喚されようとしているとは信じがたいだろう。

キャロのヴォルテールとルーテシアの白天王…資料で知っていたはやても驚かざるを得ない程巨大な、人型に羽根の生えた竜と虫は逃げそこねたガジェットを弾き飛ばし、避難が完了し誰もいなくなったビルを破壊しながらその全身を魔法陣から抜け出させた。
召喚を終えた魔法陣が消え、途端に重力に囚われたように二体は地面に足を付ける。

小さな地震を起こしながら、現れた二体は直ぐに召喚者達の命令に従って行動を起こす。
二体は上昇を続けるゆりかごへ向かって、砲撃を開始した。

戦艦の砲撃かと見紛うばかりの砲撃だった。
衝撃波だけで周囲でうろちょろしていたガジェットは吹き飛ばされ、多すぎる数のせいで衝突を引き起こす。
どうにか逃れていたセッテも翻弄されながら、防御魔法を使ってどうにかやり過ごす。

延長線上にあった雲もちぎれ飛び、雲一つない快晴を作り出して砲撃の余韻が収まっていく。
予想よりも強すぎたと思わずはやては顔を青くしたが、それは杞憂に終わった。

聖王のゆりかごは健在だった。
ちょっとした艦船位なら今ので落とせそうな砲撃だったのだが、どこかが欠けているわけでもなく、煙一つあがっていない。
完全に破壊されていても困るが、効果が無いのも困るとはやては複雑な顔をした。

迎撃がされないのは大助かりだ。
だが、幾ら何でも硬すぎるでしょう?
他の艦船の性能を知るはやてはツッコミを入れたくて仕方がなかった。

『ダメッ!、ヴォルテール…!!』
「ん?」
『はやて隊長っ……ゆりかごを見たヴォルテールが興奮して、抑えきれません!!』
『白天王、やっちゃえ』
「ちょ、ちょっと……待っ」

当の召喚獣達もその結果に痛くプライドを傷つけられたのか、それとも単にある程度ダメージを与えろと命じられたのか。
あるいは過去に聖王のゆりかごと何かトラブルがあったのか。
はやてが止めようとする間もなく再び力を溜め、もう一度砲撃が行われた。

「いやいやいや、待ってって……!!」

849りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:47:31 ID:p01vHF9Q
はやては通信画面に召喚者二人を映して大声を張り上げた。
普通の犯罪者の船なら大いにやってもらって結構なのだが、聖王のゆりかごは聖王教会の超重要な聖遺物だ。

本局の上……六課の後ろ盾となっている三提督当たりの意向だろう、仕事で他の命令が来ていないから行動をしているが、現在もそれは変わっていない。
対応を協議しているのか隠していた件などの醜聞をつつかれているのかは知らないが、攻撃を開始しただけで更に揉めているはずだ。

やり過ぎられると笑えない事態になるのだが、はやての呼びかけも虚しく更に砲撃は続けられた。
慌てるはやてにフェイトから通信が入る。

『はやて。大丈夫みたいだよ?』

はやてには眩しいわ余波でゴミまで飛んでくるわで確認どころではないが、違う場所に待機したフェイトにはゆりかごが確認できるらしい。
怪獣の砲撃でもビクともしないと言う報告など聞きたくもないが。

「ほんまに!? フェイトちゃんほんまにそうなん!? 『う、うん…』それもちょっと……ううんかなり困るんやけど」
『八神隊長…どうやらアレでも少し一撃の威力が足りないようです。エネルギー量などに付いては、言うまでもなくあちらに分がありますから、埒があきませんね』
『あ、今砲撃の間を使って戦闘機人が数人ゆりかごから出てきたみたい』
「そ、そう……えーっと、予定通りやから」

シャーリーの説明を聞いてやっと落ち着きを取り戻しつつあるははやては、周囲をチラっと見た。
案の定、RXに的を絞る為に周囲への影響を抑えているとはいえ雷は降り続けていたミッドチルダは、砲撃の余波も加わり秒単位で被害が増えていいく。
周囲の風景が砲撃の度に一歩一歩廃棄都市区画と区別がつかなくなっていくことに気付かないふりをしてはやては言う。

「ザフィーラ・シャマル。ティアナ・スバル・エリオは私とキャロとルーテシアを守りつつ、戦闘機人の迎撃や。キャロとルーテシアはくれぐれもやり過ぎんように召喚獣を制御することを優先。どうしても無理やったら返してな!!」
『ガリューは?』
「ガリューもルーテシアを守ったって……なのはちゃん。そっちのタイミングは任せるわ」
『わかった』

はやてから任されたなのはは、周りでなのはの一撃を待つフェイト・ヴィータ・シグナムの三名と視線を交わし、怪獣の砲撃に晒され続けながら相変わらず地上へと雷を落とし続けるゆりかごを見つめた。

四人とも能力限定は解除され、なのはは強力な射撃と大威力砲撃に徹底特化したエクシードモードになり、槍型になったレイジングハートを構える。
フェイトは大剣型のバルディッシュを。シグナムとヴィータは見た目に変化はなかった。

「私等も手を貸すつもりだったけど、これじゃあいらねーわな」
「壁抜きは高町の専門だからな」

軽口を叩くヴィータとシグナムに、なのはは誤魔化すような笑顔を一時見せた。

聖王の雷と二体の砲撃で使用された魔力は、今までなのはが扱ったことがないほど莫大な量だ。

深く深呼吸して、レイジングハートのテンカウントが始まる。

まるで流星のごとくなのはの…否ミッドチルダ郊外まで含めて周囲の魔力が集束していく。

術者がそれまでに使用した魔力に加えて、周囲の魔導師が使用した魔力をもある程度集積することで得た強大な魔力を、一気に放出するなのはの切り札。

ガジェットにさえ搭載されているのだ。
ゆりかごにもAMFが用意されているのかもしれないが、一定以上の出力に加え、これは結界機能を完全破壊する性質も持ち合わせている。
逆に言えばこれが防がれれば、次は普通に侵入するしか無いのだが。
なのはの負担から言っても二度三度と出来るようなことではない。

しかし、皆二体の砲撃にビクともしないゆりかごを目の当たりにしても欠片も防がれるとは思っていなかった。
なのはを知る者達に取って、それだけの信頼と実績の破壊光線だった。

最後の数字をレイジングハートが紡いだ。
本能的に、ガリューが、ヴォルテールが、白天王が恐れてガクガクブルブルと震える中…なのはが叫んだ。

「受けてみて、これが私の全力全開!! スターライトブレイカー!!」

850りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:48:02 ID:p01vHF9Q
桜色の光が、ミッドチルダを照らした。

ユーノによってゆりかご内部の構造は把握している。

なのは達の目的のため、ヴィヴィオを助ける為にヴィヴィオがいるであろう艦首付近の「玉座の間」の傍を狙って放たれた桜色破壊光線がゆりかごを貫く。
二体の砲撃は止んでいた。ヴィータが歓声をあげ、シグナムに抱きついた。
だがその一撃の負担にフラつくなのはの体をフェイトが抱える。
体を心配するフェイトに大丈夫だよと、なのははやせ我慢をして笑いかけた。

「大丈夫、今はヴィヴィオを迎えに行こうよ。ヴィヴィオが待ってるの」

躊躇いを降りきって、フェイトはシグナムの体も掴んだ。

「皆行くよ!!」

『Sonic Move』

なのは達の体は、次の瞬間には玉座の間にあった。
壁抜きをされて床と天井に穴の空いた玉座の間は、強風が入り込み彼女らの髪を勝手気ままに流していく。
玉座の傍で、虹色の光を薄く纏った聖王がその影響を退け、何事も無かったかのようにミッドチルダに雷を降らせるための魔法を展開していた。

「ヴィヴィオ!!」

フェイトが妹の名を呼んだ。
仮面を被り、肉体もフェイト達と遜色ないサイズまで成長していたが、確かにヴィヴィオだと彼女たちにはわかった。

ヴィヴィオは、雷を降らせながらフェイトに手を向けた。
身構えるなのは達の中で、転送魔法の光がフェイトだけを包み、移動させる。

「フェイトちゃん!?(テスタロッサ!!)」
「一人は動力部にって。あなた達はそこでゆっくりしてて」

そっけない口調で言うヴィヴィオはなのは達を見ようともしなかった。
虚空へと向けられた目は、その先で雷を受け止めるRXへ向けられていた。



「!? …ここが。スカリエッティ!! 姿を見せろ!!」

転送されたフェイトは、周囲へ視線を走らせ、スカリエッティの姿を見つけた。
形と色だけはレリックそっくりな宝石が浮かぶ部屋の中、宝石を背にしてスカリエッティは挑発的な笑みを浮かべていた。
歓迎するよとでも言いたげに手を広げたスカリエッティへ、フェイトは大剣を突きつける。

「ごきげんよう。フェイト・テスタロッサ執務官。予定ではちゃんと入り口から入ってもらうつもりだったんだがね…まぁいいさ、歓迎するよ」

ここまでは、はやての予定通りだった。
フェイトは作戦開始前のはやての言葉を思い出しながら、すり足で距離を詰めていく。

(スカリエッティは絶対に私達を侵入させるはずや)
(ユーノ君から、ううん。どっかからゆりかごの情報は六課に入る。見てみ、ゆりかごは動力部と玉座の間が離れてるんや。だから、スカリエッティにはもっと人質が必要になるはずなんよ)

「すぐにゆりかごを停止させ、投降しろ」

スカリエッティが何かする間も無く逮捕出来る距離まで。
それまでは、少しでも気を逸らすために話にも付き合おう。

(マスクド・ライダーがレリックを消滅させた事件はスカリエッティも知ってる。動力部だけ消滅させられたら、スカリエッティの作戦はそこで失敗や)

「それはできないな。せっかく招待したんだ。ゆっくりしてくれたまえ」
「お断りだ…ッ!!」

(RXとの関係から言って、多分フェイトちゃんかシグナムが動力部に誘われる。そこにつけこんで、残りの皆でヴィヴィオを押さえたら、私等の勝ちや)

はやてはそう言っていたが、フェイトはスカリエッティも逮捕するつもりだった。
おどけるような口調に嫌悪感も顕にするフェイトが詰め寄ろうとしても、まだスカリエッティは余裕の態度を崩さなかった。

「だってさ。君達がいないと何時かのレリックみたいに、また不思議なことをされてしまうかもしれないじゃないか。幾らコピーを用意したとはいえ、まだ消滅はゴメンだよ」
「コピー…?」

おや?とスカリエッティは不思議そうな顔をする。

「想像してなかったと言うのかい? 君と私の因縁から言って、当然想像していると思っていたんだが」

851りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/05(木) 22:52:30 ID:p01vHF9Q
フェイトは必要ないと判断して知らなかったことだったが、アルハザード時代においては記憶転写型クローン技術を用いて自身の予備を用意しておくことが権力者の間では常識だった。
スカリエッティは既に、フェイト達を生み出した技術(プロジェクトFの技術)を用いて、新しい自分を用意してある。
数ヶ月もすれば、新たなスカリエッティが生まれるのだ。

だからこそフェイトを今呼んでおいたのだが……憤るフェイトに、スカリエッティは心底がっかりしていた。

「貴様は、また人の命や運命を弄んで……!!」
「ん? ……その反応は、もしかしてまだ何もわかっていないのかね」
「今も地上を混乱させてる重犯罪者だとわかっていれば十分だ。コピーのことも全て教えてもらう」

凄むフェイトにスカリエッティの興味はどんどんと薄れていくようだった。
歓迎ムードで広げていた手は下げられ、呆れたような半眼になってフェイトに注いでいる。

「てっきり、君のお母さんを殺したのが私と言えなくもないから追ってたんじゃないのかい? ちょうど今の私ももう必要ないし、ここで盾になってくれたらお礼に仇討ちさせてあげるつもりだったんだが」
「っ…………何の、ことだ?」
「え?」
「え……」

予想外の肩透かしを食らったらしいスカリエッティは隙だらけだった。
今なら、一瞬で逮捕できる。
だがフェイトは動かなかった。

「いいだろう! もう諦めて…君にあわせよう。少し『お話』しようじゃあないか」

母の仇で、仇討をさせるつもりだった…?
気を逸らすつもりだったフェイトは、問い質さずにいられないような気持ちに駆られていた。

「私の人生で最も予想外だったのは、私がプロジェクトFに推薦した後任のプレシア・テスタロッサが余りにも斜め上に狂っていったことさ(但しRXは除く)」

以上です。
某劇場版風展開の夢オチに付いては少しふざけすぎたかなと思わなくもなかったりしてます
ですからもし余りにも不快に思われる方が多いようなら、この部分だけはまとめの方では番外として別個に登録するなど対処しようかなと思います

戦闘やスカとフェイトの会話については次話で。そんなに目新しいことはないですけどw
それでは失礼します

852魔法少女リリカル名無し:2010/08/07(土) 09:47:43 ID:w7cyBGTA
すいません、本スレで代理投下をしていたのですが
急用が出来たので、不可能になりました
>>847

>「ロボライダー!!」

>RXが全幅の信頼を込めて自分の別の形態の名を呼ぶ。
>涙が赤い跡を残した仮面が、頷きながら親指を立てて己を指さした。

ここまで出来ましたので、どなたか変わりにやっていただけないでしょうか
申し訳ありませんが、お願いします

853魔法少女リリカル名無し:2010/08/07(土) 14:11:24 ID:3n5fldQs
俺も規制中なので無理だ…

854<削除>:<削除>
<削除>

855りりかるな黒い太陽 二十二話:2010/08/08(日) 23:27:46 ID:hoqOM.q.
代理投下をしていただきありがとうございました

856FE ◆lJ8RAcRNfA:2010/08/20(金) 16:23:03 ID:WlG/W2Q6
投下終了のしらせを書き込もうとした瞬間に規制が来ました。
みなさん、どうもすみません、とだけ本スレにお伝えください。

857<削除>:<削除>
<削除>

858LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:04:08 ID:aXj0WSV2
Ⅷ中記念、LBです。
規制中の為、こちらに6-Dを投下します。

注意事項
相変わらずの大容量、45KBオーバー
かなりのオリ設定詰め込み
そしてD無双

859LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:05:52 ID:aXj0WSV2
 其は、魔を討つ魔にして一人の騎士。
 其は、数多を斬って乱舞する狂戦士。
 其は、ただ一人だけを守る優しき少年。
 其は、全ての敵を殲滅する冷たい兵器。
 “双剣の騎士”、“戦いを嫌う臆病者”、“規格外の怪物”、“任務の出来ない落ちこぼれ”、“出来損ないの人形”。
 僅か二年の間に呼ばれた、彼の者の代名詞が数々。
 されどもそれは昔の話。怯えも迷いも失敗もない。
 最強となる筈だった騎士剣の力と、決して揺らがぬ信念を備えた彼は、確かに騎士として完成したと言えるだろう。
 “双剣の騎士”、“規格外の怪物”、“虐殺の狂戦士”、“生きた殲滅兵器”、“理不尽の権化”、“賢人会議の最終兵器”。
 嗚呼、しかしてそれは喜ぶべきことだろうか。彼が強くなったことを賞賛する者は、知人を含め誰一人として存在しなかった。
 一人殺せば犯罪者、百人殺せば英雄。しかして数百の人間を虐殺し、尚も世界から犯罪者と叫ばれる者。
 優し過ぎるが故に、ある意味相応しくもある意味相応しくない力を生まれ持つ者。
 ――今、双子の騎士剣が振るわれる。

           第六章:D-side 舞う者たち 
             〜Dream or Real〜

 天井から突き刺さる照明を見上げ、ディーは眩しさに眉を顰めた。
 時の庭園内で最も広いフロア。段差の無い床を複数のシャンデリアが照らしている。
 視界を前方に戻せば、壁に程近い場所でこちらと向き合うプレシアの姿があった。
 一方のディーも、数メートル後方には反対側の壁が存在する。
 周囲は既に、不自然な空間の揺らぎが広がりつつある。これはプレシアが結界を作っている為だ。
 プレシアの右手には杖型のデバイス、左側には立体表示されたコンソール。ディーの腰には鞘へ収まった二振りの騎士剣が既にある。
 これから行うのは紛れもない模擬戦。プレシアの提案に対し、百聞は一見にしかず(Seeing is believing)ということでディーも合意したのだ。
 情報制御と魔導に関してはお互いに情報交換はできるものの、魔法士or魔導師相手の効果は試してみないと分からない。戦闘もまた然り。
 ディーとしても早めに対魔導師の感覚や対策を練っておきたかったので、願ったり叶ったりである。
 因みに、お互いの“魔法”は情報制御と魔導に区別する事で話が纏まった。

860LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:07:34 ID:aXj0WSV2
 前者は元々正式名称なので兎も角として、後者は過去の呼称とのこと。
 今では魔力素によるエネルギー運用技術そのものを“魔導”、完全個人運用の技術を“魔法”と区別しているらしい。
 魔導師と呼ばれるのはその名残なのだとか。
「……展開完了。これで結界自体が破壊されない限り、何を壊しても問題ないわ」
 不定形に揺らいでいた空間が前触れなく整った直後、コンソールの操作から顔を逸らしたプレシアの声が響く。
 そこまで派手な破壊能力など、ディーは持っていない。しかし突っ込んだら睨まれるので口には出さない。
「さて、早速始めるとしましょう」
(大規模情報制御を感知)
 言葉と共に、床下から次々と“何か”が浮き出てくる。それらは見る間にディーの身長を追い越し、西洋に近い巨大な全体像を顕とした。
 掃除ロボットや自動警備システム等は見た事こそあるものの、こういったものは魔法士の世界に無かった。
 資源やエネルギー関係の問題は勿論、技術面の違いもよく分かる代物である。
「傀儡兵、ですか」
「誰も私だけとは言ってないわよ?」
 妖艶さすら含んだ腹黒い笑みに、苦笑で答える。この人物、やはり一筋縄ではいかない。
 というか、物を壊すのは傀儡兵の方が上ではなかろうか。突っ込んだら睨まれるのでやっぱり口に出さない。
 決して出せない訳ではない。決して。
「ところで……例のあれ、解析できましたか?」
 模擬戦の提案後、ついでとばかりに頼んだ事がある。
 自分とセラが転移させられた、謎の現象。唯一の手掛かりは、表示されていたデータのみ。
 賢人会議の参謀に伝わるよう砂浜に書き記しはしたものの、巻き込まれた自分がこのまま手を拱いている訳にはいかない。
 違う技術を持っている魔導師達なら、何か別の事が分かるかもしれないとディーは考えた。
 幸いプレシアは魔導師であると同時に研究者でもあったため、これまた願ったり叶ったりである。
「模擬戦の準備で忙しかったけれど、一目で大体分かったわ。もう少し暇な時に詳細なものを渡すから、待って頂戴」
「ありがとうございます」
 期待以上の返事に安堵する。そういえばそんなこと言ってたわね、とでも言われたらどうしようかと思っていた。
 最近になって人となりを把握し始めたものの、何やら精神的に追い詰められている様子。
 娘に強く当たるのも関係しているのだろうが、原因が隠されていると思しきプレシアの研究室は立入禁止区域。

861LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:09:37 ID:aXj0WSV2
 迂闊に危ない橋を渡る訳にはいかない。
「ルールは簡単よ。これらの防衛を突破して、私に一撃当ててみなさい。敗北条件はそちらも同じ。制限時間は十五分。何か質問は?」
 律儀に説明と質問タイムを送ってくれる。
 普段の態度からしてちょっと意外だが、実験である以上ちゃんと成果が出なければ納得しないのだろうと考える。
 何にせよありがたい為、遠慮なく問う。
「プレシアさんへの直接攻撃は、どの程度まで有効ですか?」
「バリアジャケットを傷付ける程度」
「傀儡兵は壊してもいいんですか?」
「胴体を破壊されなければ数日でスペアと交換できるから、胴体の破壊だけは禁止よ」
「プレシアさんは戦うんですか?」
「ええ。こんなお人形ではできない事もあるから」
「わかりました」
 それだけ聞ければ十分だ。
 手にしてから既に二年ばかり、実質自分とほぼ同い年の騎士剣を掴み、両腰の鞘から引き抜く。
 頭の中でスイッチを叩くのも、また同時。
(I-ブレイン、戦闘起動)
 思考の主体を大脳新皮質上の生体コンピュータ――I-ブレインに移行。
 五感の神経パルスだけでなく、自分を含めた周囲状況までもが数値データ化。
 脳の通常部分へ余計な負荷がかかる事を防ぐため、フィルター処理を施されて漸く神経に戻される。
 その思考速度、実に十億分の一秒(ナノセカンド)単位。何もかもを置き去りにする圧倒的な演算速度が、物理法則を超越する。
(「身体能力制御」発動)
 発動するのは騎士能力の基本。体内の物理法則を改変して高速行動を可能とする能力。
 ディー自身も騎士としての能力は非常に高く、騎士剣の補助がなかろうと七倍速で行動できる。
 魔導師の感覚で言うなら、バリアジャケットを装着する作業に近いかもしれない。相違点を挙げるなら、あちらが防御でこちらは加速というところか。
 次に、数と体格差を考慮し、音速をも凌駕できる出力を調整。敵数は二十。個体の大きさは前述の通り。
(運動速度、知覚速度を十五倍で定義)
 周囲の全てが倍率分の一に減速し、自分だけがスローモーションの世界で極普通に動けるようになるという状況が作り出される。
 正確には、周りが遅くなったのではない。自分が速くなったのだ。
 ……このくらいでいいかな?
 出力は、自分より二段下の並以下――第三級(カテゴリーC)の騎士が発揮できる程度。
 少し加減し過ぎかもしれないけれど、相手は“条件つきの”保護者。

862LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:10:11 ID:aXj0WSV2
 敵でも味方でもない以上、手の内を隠すに越したことはない。いざという時も、後で出力を引き上げれば済むだろう。
 それに、模擬戦の目的は勝利や瞬殺などでは断じてない。
 互いに情報交換を行い、騎士の能力もある程度説明こそしたものの、能力の応用法や奥の手については伏せた。
 プレシアも同じようなもの故、おあいこである。
 細い両腕を、小振りな双子の騎士剣と共に翼の如く広げる。一対多、二刀流で全方位に注意を向ける構えだ。
 準備完了。まずは後の先で迎え撃つ。
「――いつでもどうぞ」

                   *

 構えた少年に対し、プレシアは強い違和感を覚えた。
 ハスキーなアルトの声。思わず性別を間違えてしまいそうな声。今発したそれは、余りにも泰然として乱れがない。
 銀色の瞳。人形染みた顔の中で唯一意志の強さを表していた瞳。今輝くそれは、冷たく鋭く尖っている。
 全体的に頼りなさが――人間らしさが存在しない。まるで機械人形と入れ替わったかのようだ。
 平常からのギャップを感じるその冷たさが、鋭利な刃物を連想させる。
 ……これは……
 異様な雰囲気に、プレシアは狂気の瞳を鋭く細めた。
 生まれて二年で任務続きだったとは聞いている。しかし、昔からこうだったのだろうか。
 それとも短期間における非常識な戦闘経験と、それに伴って築き上げた精神が、少年を限りなく冷徹なものへと変えているのか。
 後で聞いてみなければと心に留めつつ、情報交換で得た騎士・魔法士関連の知識を思い出す。

 記憶・演算・出力。多少の違いはあれど、魔法がその三竦みによって発揮される技術でしかない点は、魔導も情報制御も全く同じだった。
 大きな違いと言えば、魔力を媒介としているか否か。どうも魔法士の場合は演算のみでゴリ押ししているらしい。
 能力発動の際、イメージは愚か詠唱も予備動作も不要と言えば、理不尽さも少しは分かるだろうか。
 ミッドチルダの最新鋭CPUですら足元にも及ばない、圧倒的な演算速度。その数値を聞いた際は流石に頭を抱えた。
 魔力に演算を施して何らかの効力を持たせられるなら、別の物も理論上可能なのではないか。
 過去にそう考え、そして挫折していった者達はどうやら間違っていなかったようだ。
 では何故魔力だけが操作できるのかを少年に問えば、情報強度の問題ではないかと返ってきた。

863LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:12:06 ID:aXj0WSV2
 如何に出鱈目な演算能力を持つ魔法士でも、変質出来ない物は存在する。人間やコンピュータなどの“考える物体”がそれだ。
 自身の肉体ならまだしも、他者の情報強度は非常に堅い。
 物体に魔力を通してからだと演算出来ないのは、その魔力が既に対象の所有物となっている為ではないか。
 無機物制御を例としたこの仮説がプレシアの研究意欲に火を点けたのは、また別の話。
 何にせよ、“I-ブレインを備えぬ人であっても変質させることのできる唯一の物体”こそが魔力だった。

 立体コンソールの操作を開始。二十を数える傀儡兵達をそれぞれの指示を与える。
 配備されている傀儡兵は全六種類。この模擬戦で扱うのは、大型と空兵型を除く四種類。
 杖を手にした魔導師型が四体、弩弓と翼と尻尾が特徴的な弓兵型が二体、剣や斧、盾等を装備した歩兵型が十三体。
 残る一体は各フロアのボス役を務める中型である。
 歩兵型・弓兵型は主に物理、魔導師型は魔導、陸戦AAランクに匹敵する中型は物・魔の併用で攻撃と防御を行う。
 防衛時の自律行動では反応が良くても頭は悪い。よって、今回はプレシア自らが手動操作する。
 庭園の駆動炉からエネルギー供給を受けて動いているため、傀儡兵のエネルギー切れを心配する必要はない。
 ただし魔導の発動には別途で魔力が必要な為、予め貯蓄してある。
 中型はプレシアの傍で待機、弓型はフロア上空から狙撃ポジションを取り、魔導師型を後衛・歩兵型を前衛に置く。
 まずは歩兵を進める所だが、今回は模擬戦という名を借りた実験。魔導師型を先に動かす。
 小手調べやその他の意味合いを込めて、四体中一体に高速直射型の魔力弾を生成させる。勿論演算は傀儡兵頼りだ。
 発動魔法はフォトンランサー三発。一つは頭部、二つは胸部へ照準。
 傀儡兵の前方に、逆三角形の並びでスフィアが出現。その上で傀儡兵の補助動力とされる魔力が固められ、弾殻が作られる。

864LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:12:34 ID:aXj0WSV2
 魔力弾に関して講義を受けた際、騎士の少年は「炎使いみたいですね」と評していた。
 分子運動制御特化型魔法士“炎使い”。
 名前通り周辺の分子運動に干渉し、熱量や運動量を操作することであらゆる物質を銃弾・盾・槍、材料次第では爆弾にすら変える能力である。
 対して魔導師が射撃や防御に使っているのは、魔力唯一つ。
 空気分子などを直に操れないため、魔力そのものを分子運動制御の材料にしているようなものだ。
 比較すれば魔導師の方が劣っているように聞こえるかもしれないが、伊達にミッドは汎用性を求めていない。
 魔法士が持ち得ていないのは、運用する物質に別途で付加効果を追加する事だ。
 所謂ウイルスのようなもので、ブースト魔法や防御魔法等が代表例として挙げられるだろう。
 だからこそ、たった今形を整えた青紫の魔弾には非殺傷・非物理破壊設定という“ウイルス”が入っているのだ。

 術式完成。スフィア・魔力弾生成完了。残るはトリガー唯一つ。
 少年の隠してきた力を垣間見る。それは、閉ざされた箱の中身を覗く行為だ。
 無論、空である事は決してない。ありとあらゆる方面からその証拠は挙がっている。
 問題は、中身の価値が魔導師にとってどれ程のものなのか。
 今や禁忌とされる人造魔導師や戦闘機人に次ぐ新たな可能性に、研究者としての好奇心が擽られる。
 故に、躊躇も恐怖もありはしない。
「ファイア」
 たった一つの号令を合図に、中身にも軌道にも一切の捻りなく、弾丸は少年へ牙を剥いた。

                   *

(攻撃感知)
 先端の尖った魔弾が動き始めたのは、額の裏側に浮かぶI-ブレインからのメッセージと同時だった。
 魔力の色に関しては既に学習済みなので、動揺は皆無。注視するべきは弾丸の形状・速度・性質である。
 速度は実弾にこそ劣るものの、殺傷設定時の威力は弾体の大きさで補って尚余りあるだろう。
 恐らく、単純な高速直射型。誘導性皆無の初歩的な魔力弾だ。引っ掛けは無いと見ていい。
 突き進むは三発。うち二発はディーの胸部を、残る一発は額目掛けて迫る。
 十五分の一に減速して見える魔の弾丸を冷静に見つめ、ディーは一歩踏み込んだ。

 魔導師ならば、この時点で選ぶ選択肢は基本的に回避か防御である。
 高い移動能力で躱すか、障壁を作り出して防ぐか。もしも魔弾を無力化できる攻撃手段があるのなら、“迎撃”を選んでもいい。

865LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:13:35 ID:aXj0WSV2
 しかし、既に相手が弾丸を射出してきた時点では、同じ飛び道具による迎撃は難しい。
 更に指定した方向へ一直線に向かう高速直射弾を三発も、完全同時に撃ってきたのだ。これでは武器を振るって撃ち落とすのもままならない。
 並の人間でも、並の魔導師やあのフェイトであっても、この状況では回避優先が関の山。次点として防御に迷うだろう。
 だがしかし、標的としてそこに佇んでいるのは誰だろうか?
 只の人間? それとも魔導師? 何の力も持たない非力な少年? 手に持つ双剣を脅しにしか使えない憐れな優男?
 答えは、全て否。
 魔法士である。そして騎士である。魔法士を倒す為に作られた魔法士であり、魔法士達から化け物呼ばわりされる程の規格外である。
 たった一人の少女を守るために満身創痍の身体を引きずり、二千の敵兵に単身立ち向かった騎士である。
 両の剣を縦横に振るい、その戦いで何百もの兵を切り伏せ、“近接攻撃のみで敵を殲滅する兵器”と化した魔法士である。
 そんな彼の思考からは、回避も防御も浮かばずに。
 1+1=2を記述するように、迎撃を選択した。

 非殺傷設定だろうとはいえ躊躇なく額を狙った一発を、僅かに屈み込むことで直撃軌道から外れる。
 次に、この体勢だと両肩に命中するであろう残りの二発を照準。翼で身を隠すように両腕を折り畳む。
 腕は脇の下を通り、剣は元々収めてあった鞘の上を通過し、更に後ろへ。
 これから行う“実験”が失敗しても確実に受け流せるように軌道を調整し、迎撃。
 完璧なタイミングと精度でバツの字に振り上げた双剣が、二つの魔力弾を過たず捉える。
(「情報解体」発動)
 同時、騎士が所有する二つ目の能力を発動。
 その能力は、騎士剣に接触した物体の存在情報に直接干渉し、消去するというもの。
 情報の側から存在を全否定されれば、対象は物理的にも存在を維持できなくなり、原子単位に分解されて砂の如く崩れ落ちるのだ。
 両肩を打ち据える筈だった青紫の弾丸は騎士剣によって軌道を逸らされつつ、形状をも崩される。
 ディーの後ろを通り過ぎた時には、解体された魔弾は青紫の粒子――魔力素と化して散っていた。
 一方、頭上を通った弾丸は勢いを止めず、後方の壁に着弾。
 非殺傷・非物理破壊設定にしてあったのか、元から綺麗だった壁には傷一つ付いていなかった。
 青紫の輝きを放っていた魔力の残滓は、空気に溶けて色を失う。

866LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:14:18 ID:aXj0WSV2
 遅れて、大魔導師の表情が僅かに揺らいだ。能力は既に三つ目まで簡潔に話してある為、一驚以外の理由である事は確かだ。
 対してディーは、確かな手応えを感じていた。
 生まれてから二年。それはそのまま、ディー自身の戦闘経験とほぼ等しい。
 チタン合金や電磁射出の銃弾、軍用フライヤーや単分子ワイヤー、窒素結晶や荷電粒子、時には捻じ曲がった空間まで。
 普通の人間なら短いと言い切れる時間の中、それなりに色々な物を解体してきた。
 その上で、内心に浮かぶ感想はただ一つ。
 ……やっぱり、脆い。
 騎士剣を介して知覚した、魔力弾の情報強度が、呆れる程低い。ここまで情報強度の低い物質を解体したのは流石に初めてだった。
 同時に、これはディーの予想を全く覆さない結果でもあった。
 何せI-ブレインを持たない人間でも演算で運用できる物質だ。それ程までに変質しやすいなら、情報側で“堅い”道理など存在しない。
 ディーが構え直し、配置されていただけの傀儡兵達も一斉に得物を構える。
 両者にとって、魔弾と剣の衝突こそ開幕のゴング。お互いの拳と拳を突き合わせただけの、ただの挨拶だ。
 ここからが、本当の小手調べ。炎使いと同じ、という先入観は以ての外。
 魔導師側の手札は、大まかな分類を見ただけでも非常に多彩である。最初は眼を白黒させたものだ、と心の内で苦笑する。
 パッと見の為まだ明言こそできないものの、既知の魔法士で最多の手札を持つカテゴリ“悪魔使い”よりも多いだろうとディーは踏んでいる。
 数日程度しか学んでいない事も相俟って、油断は禁物。一つ一つ、対象の形から情報制御のパターンまで隈なく観察する必要があるのだ。
 身構えるディーに対し、向こうも動く。杖を持った傀儡兵四体に、プレシアまでもが魔力弾の生成を開始する。
 I-ブレインで視力を補正し、形作られていく総数二十以上の弾体を見やったディーは――
「……うわぁ……」
 思わず顔を引き攣らせ、呻いた。
 物量は脅威に値しない。第二級(カテゴリーB)の炎使いでも桁一つ多く氷の槍を展開できる。つまり、看過すべきでないのは質だ。
 先程と一見してあまり変わらない槍状の高速弾は勿論の事、近い形で言うなら片刃の剣や球、果てには回転し続けるブーメランまで浮遊している。
 これ程多種の魔力弾を一度に生成するのは、実戦において“無駄”の筈。

867LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:17:13 ID:aXj0WSV2
 あらゆる飛び道具でこちらの反応を探り、効果のある魔力弾を探すつもりなのだろう。
 勿論ディーも、プレシアがそういう考えで仕掛けてきた事は理解できる。できるのだが。
 ……これ、全部射撃……?
 数が多いのではなく、種類が多い。デュアルNo.33、初めての体験である。
 怯懦はない。ただ、余りの多彩ぶりに少々辟易しただけだ。
 しかして相手は待ったを知らない。何とも言えない感慨を抱いている中、全体の三分の一を占めていた魔弾群の一角が射出され始める。
 高速弾の群れに、幾つか別の弾体が混じった混成射撃。その上空で、弓兵型が弩弓を引き絞る。
 遅れて歩兵達も前進開始。外見に似合わぬ俊敏性でフロアを駆ける。
 気を取り直したディーは、更に前へ。騎士に防御の選択肢が存在しない以上、ここで後退など論外である。

                   *

 湖の上を風が凪ぎ、視界の下半分を占める青が揺らめいた。
「フェイト……駄目だ、空振りみたいだ」
 後方から声をかけてきたのは、狼の姿になっている使い魔。
 水面から突き出た岩の上で、フェイトは短く「そう」とだけ返した。
「やっぱり、隠れながら探すのは難しいよ」
「うん。でももう少し頑張ろう」
 ジュエルシードに管理局が関わり始めて、既に数日。
 上辺は落ち着いていても、フェイトの内面は確実に焦っていた。
 身を隠しながら何とか集めているものの、向こうは三つに対しこちらは二つ。芳しいとは冗談でも言えない。
 だからと言って引き下がるつもりは毛頭ない。残る六つを一気に回収すればまだ何とかなる筈だ。
 このまま一つずつ集めていったら、幾つかを管理局側に取られてしまう可能性が高い。それを防ぐなら、多少の無茶を覚悟しなければならない。
 まずは地上に残っている青の宝石を探し、残りが全て海中にあると判断した場合、海に魔力を流して強制発動。そのまま一網打尽とする。
 言葉にすると簡単だが、今まで一つ一つ封印してきたのを複数相手にするのだ。難易度は想像を絶している。
 それでも、自分達にはこれしか方法が残されていないのだ。
「ところでフェイト、左腕はもう大丈夫かい? 大丈夫なら、外していいからね」
「うん。ありがとう」
 使い魔の言葉に頷き、その場で左腕の包帯を勢いよく抜き取る。痛みは全くなかったので、もう問題ない。

868LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:20:10 ID:aXj0WSV2
 問題だったのはその直後。何の前触れも無く突風がフェイトを襲い、その手から包帯を奪い去っていった。
 解けた純白は風にのって飛び、青空の中へと溶けていく。
 青に混じる白が、フェイトの中で一人の人間を思い出させた。
 ……あの人、今頃どうしてるかな。
 雲になって掻き消えてしまいそうだった、銀髪銀眼の優しそうな少年。そういえば、昔の母も同じ位優しかった。
 アルフはまだ完全に心を許した訳ではないらしいが、悪い人でない事に変わりはない。
 寧ろ、最近の母に怒られていそうだ。後ろの使い魔に見えないよう、フェイトはこっそり頬を緩めた。
 少年の言った通り、地上を探し終わったら一旦休もう。体力と魔力を回復して、万全の状態で海に魔力を打ち込むのだ。
 多少疲れている時よりは、まだ封印出来る可能性もグッと広がるのだから。

 それぞれに思い、それぞれに考え、それぞれに心を配り、それぞれに心を痛める。
 己の疲労を測り切れていない魔導師には、隠された真実など知る由もない。
 無知とは即ち、自由にして罪。この罪を償うことに必要なものは何なのか……今は、誰も知らない。
 少女が持つ心配は正当であり杞憂。使い魔が持つ警戒は正解にして不足。
 理由など、唯一つ。
 少年は余りにも優し過ぎ、同時に余りにも危険過ぎる存在だった。唯それだけの話である。

869LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:31:08 ID:aXj0WSV2
                   *

 ――模擬戦開始から、どれだけ経っただろうか。
 今のプレシアに、マルチタスクで時間を計る余裕など欠片も無かった。
 気を抜けば少年の姿を見失いかねない。リアルタイムに兵達へ指示を与え続けなければ、あっという間に戦線が崩壊してしまう。
 知る事と理解する事は、決して同義ではない。実体験の方が実入りが多い以上、分からない事は幾らでも存在する。
 それでも、少年が未だ本気を出していないのは分かる。自己領域を使わないのが何よりの証拠だ。
 でありながら、プレシア側は予想を上回る不利に陥っていた。

 まず、飛び道具が通用しない。
 手数と速度を重視した直射弾で一時的な弾幕を張っても、全て回避と迎撃のみで捌かれる。
 秒速二百メートルの弾丸も、今の少年には時速五十キロメートルという子供が投げた石ころ程度にしか見えないだろう。
 弾幕の中に誘導弾は言わずもがな、形状を変えて魔力刃やブーメラン等を混ぜたものの効果は無し。
 最後のブーメランに至っては、態と避ける事で戻って来るかどうか確認する程の余裕を見せてくれた。
 本当に戻ってきた際、少年はどう思ったのだろうか……いや、聞かないでおこう。
 弓兵の矢で狙撃も試みたが、殆ど不意打ちでありながら視線も向けず弾いて見せた。後ろに目でもあるのか。
 多少体勢は崩れたものの、隙を突かんと待機させていた歩兵は見事に反撃されてしまった。
 次に、速過ぎる。小回り的な意味で。
 加速自体は大したことでもない。高速移動魔法を使えば魔導師の方がもっと速いだろう。
 問題は、それが永続効果であるという一点に尽きる。
 一挙手一投足、体勢の立て直しや移動から攻撃への移り変わりも含め、全てノンストップ加速状態。
 攻撃前後の僅かな隙も十五分の一に縮められては、迂闊に手も出せない。
 優秀な高速戦魔導師でない限り、真似できない芸当だ。できても連続高速移動は負担が掛かるし、その状態で攻撃するとなったら高等技術。
 ついでに言うなら、歩兵の攻撃も受け流していた。
 話が違う。何が“加速してるだけで膂力は上がらない”だ。反作用打ち消しの効果だけで十分乗り切っているではないか。
 三つ目に――情報解体。
 剣の刀身に一瞬でも接触さえしていれば、持主の意思一つで発動できる物理防御無視の対象破壊能力。
 飛び道具が通用せず、傀儡兵達が次々と脱落していく最大の原因。

870LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:31:53 ID:aXj0WSV2
 反則である。並の魔導師相手ならこれだけで有利に進めるだろうと思える位反則である。
 歩兵が張った防御魔法もあっさり解体していた。早急に対処法を考えねばなるまい。
 何より、これでまだ自己領域という奥の手が存在するのだから恐ろしい。
 この時点で、プレシアの内心には陸戦AAA+以上という評価があった。

 跳びかかった歩兵達をあろうことか踏み台にして上へ登り、見事弓兵にとりついた銀の少年を見上げる。
 辿り着けないだろうと高を括っていた矢先、狙撃手への接近を許してしまった。
 しかし、弓兵はまだ一体残っている。片方を仕留めた所で、足場の無い空中では二体纏めて仕留める事など不可能だろう。
 それは同時、攻撃回避の困難も意味する。勝機があるとしたら、今しかない。
 すぐさま周辺の魔導師型に指示を送りつつ、自身も魔力弾を生成する。
 魔力弾による支援射撃は、これで三度目。特殊弾体はプレシア自身が生成・射出している。
 それを除けば全く変わらないように見えるが、前回と前々回を比較すれば対処の難易度は全体的に上がっている。
 全スフィア中三分の一から放ってきた第一波、射出数を倍に増やした第二波、全スフィアから容赦なく撃ち出された第三波。
 速度も威力も順に割増しており、特殊弾体もきちんと難易度を上げている。
 足場や状況の悪さ、第一波以来号令をトリガーにしなくなった分も含めれば、流石に厳しくなってきた筈。
 特殊弾体として、誘導操作型多重弾殻弾一発と直射型反応炸裂弾三発を選択。魔導師型達の魔力スフィアに混ざって生成を開始する。
 狙いは上空、戦闘不能となった弓兵の上。
 加速状態のまま、「これからどうしようか」と言わんばかりに頬をかいて“いた”、銀髪白衣の少年騎士。
 こちらの魔力弾に気付いた瞬間気を引き締める辺り、油断はまるで見られない。
 いや、特殊弾体の底が知れないからこそ油断できないのか。
 こっちはそろそろネタ切れだというのに。マルチタスクで行われた余計な思考を中断しつつ、誘導弾一発のみを撃ち出す。
 未だ弾丸を開放しない魔力スフィアの群れから、孤独に標的へ向かう特殊弾。
 足場に制限がある上、誘導操作弾ときては回避不可能。迎撃以外術はない。
 遠慮なく構えた少年の瞳――今や同一人物のものとは思えない程鋭利な銀の両眼が、更に鋭く細まる。
 次の瞬間。多少の期待が込められた魔力弾は、一刀の下斬り捨てられた。

871LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:32:59 ID:aXj0WSV2
 ……これも駄目か!
 多重弾殻弾ならばあるいは、と思った矢先の結果に舌打ちを抑え切れない。
 斬撃時に連続発動させたのだろうか、外殻と中身を順に解体されたようだ。
 やはり生半可な射撃で仕留められる相手ではない。まずは何としても動きを止めなければ。
 無論、その為の次善策は既に用意してある。
 残りの炸裂弾を纏めて射出し、一拍遅れて魔導師型の弾丸を一斉に解き放つ。
 足場こそ限られていながら、対する少年は回避を考えずに迎撃態勢である。
 プレシア製の魔弾が特殊である事は、少年も認知済み。
 だからこそ避けない。情報解体の通じない物がないか、確認する為だ。
 しかし多重弾殻弾の次に期待していた炸裂弾は、当然の如く解体される。
 予想通り。迎撃という一瞬の隙が、少年から退避の時間を奪った。
 ディーに割り当てた炸裂弾は一発だけ。残り二発は狙い違わず、弓兵の両翼に着弾。
 物理破壊設定で着弾した魔弾はそのまま炸裂。弓兵を空中へ留める為のパーツを破壊すると同時、粉塵を撒き散らして少年の視界を奪う。
 無事な方の弓兵までもが覆い隠された直後、本命の直射弾幕が煙の中へ殺到した。
 身体能力制御の弱点が一つ、飛行不可能。足場が落下していては、満足な体勢などとれる筈がない。
 数も速度もこれで最大。如何に十五倍加速といえど、回避も迎撃もままならずに被弾するだろう。
 もう一体の弓兵に飛び移る可能性も考えて、予想跳躍軌道に合わせてきっちり弾幕も張っている。
 一発でも被弾すれば、此方の勝利。例え突破できたとしても、翼をもがれた弓兵の真下には歩兵達が集まりつつある。
 現在、動ける歩兵八体の内、着地際を狙えるのは五体。
 というのも、先程ディーに飛びかかった三体がディーに踏み台扱いされた時、無理に空中で対応しようとしてそのまま体勢を崩してしまったのだ。
 結果として、仰向け・うつ伏せを問わず“頭から不時着(ヘッドスライディング)”した噛ませ犬三体のできあがりである。
 それでも五体あれば十分。容赦も着地も許さない一斉攻撃で、この模擬戦を終わらせる。
 まず落ちてきたのは、頭部と翼を無残に失くした弓兵。粗大ゴミよろしく床に叩きつけられる。
 もし弓兵に取り付いた少年が隠れているなら、人形達は即座に反応している。それがないなら、次に少年が落下する筈だ。
 反撃にも対応できるよう全機が身構え……そのまま二秒経過。

872LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:34:39 ID:aXj0WSV2
 落ちて来るにしては遅い、と疑問に感じ始めた時、弓兵の不時着音がもう一つ。
 両腕・頭部・両翼を無くしたもう一体の弓兵が、少年諸共別地点に落ちて来たのだ。
「な――」
 予想の斜め上を行く展開に、流石のプレシアも虚を突かれた。
 ……何をしたの?
 まさか、“使った”のだろうか。
 もし使用したなら、既にこちらの懐へ潜り込んでいる筈だ。隣の弓兵に乗り移る程度で済ませる訳がない。
 態々此方の視界に入らない状態でやってのけたのだ。“あれ”はそもそも視認できない以上、隠す必要性を感じない。
 兎も角、此方に見せられない事は確実。タネは後で調べるとしよう。
 一秒と掛からず冷静さを取り戻したプレシアは、全傀儡兵に対し新たなコマンドを下す。
 “時間を稼げ”と。
「……煌きたる天神よ、今導きの下降り来たれ……」
 マルチタスクにより、既に詠唱中。できるだけ規模は大きく、駒達も巻き込む範囲でなければ素で回避されかねない。
 無論、二重三重なれど策はある。しかし同時に懸念もある。
 一つ、策が通用するか否か。
 二つ、少年はどこまで“使う”のか。
 三つ、この攻防に、自分自身は保つのか。
 それでも、撃たねばなるまい。自分以外に誰がやるというのか。
 律儀に残りの歩兵達を相手取る、少年騎士。機動力に任せて兵達を振り切り、こちらへ向かう事も可能だろうに。
 ならば、その余裕を敗因にしてみせよう。
 直後、騎士と人形達が拘束機能を備えた紫の雷光に照らされる。鋭く保っていた少年の銀眼が、初めて驚愕に見開かれた。
 ただし、拘束されるのも攻撃を受けるのも少年のみ。こと制御に関し、この魔法は元々性能が高い。
「――サンダーレイジ」
 予想通りに拘束機能を破壊した少年へ放つは、非殺傷の巨大雷撃。
 如何なる加速能力を以てしても、光速で飛来する広域攻撃は回避不可能だ。
 紫の稲光に目が眩み、状況を視認できなくなったその時。
 ――“それ”は来た。

                   *

(運動速度、知覚速度を十五倍で再定義)
 周辺の時間が、先程より約数倍速く流れる。
 取り付いていた弓兵から降り、十数秒ぶりの床へ着地。そのまま残りの敵兵達へ向き直る。
 既に狙撃の心配はなく、残る脅威は後方支援を残すのみであった。

873LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:36:05 ID:aXj0WSV2
 あの時。上下左右前後と足場の不確かな粉塵の中、ディーが何をしたかというと。
 “鬼の居ぬ間の洗濯(While the cat is away, the mice will play)”よろしく、銃弾を足場代わりに隣の弓兵へ乗り移ったのだ。
 言うまでも無く、簡単ではない。対象となる足場は亜音速の魔力弾。接触しただけでもダメージを受ける可能性は残っていた。
 とはいえ、元々後者を確かめる為の個人的実験。
 その場の思い付きな上に本気も出せないとくれば、大魔導師に見せる訳にもいかなかった。
 要は目撃されなければいい。視界を遮られるものの、こちらの位置を把握できなくなる点では相手も同じ。
 出力を最大値にすれば、亜音速の弾丸も時速二十キロメートル超の移動物体である。
 失敗した場合は、三つ目の能力を惜しみなく使って元の位置に戻ればいい。
 問題は一メートル先も見えない中、どうやって魔弾の位置を正確に把握するかというと、一流の魔法士なら案外できたりする。
 粉塵が撒き散らされる前の弾幕から速度と軌道をトレースしてしまえば、タイミングを合わせて飛び移るだけで済む。
 幸い、敵後衛はもう一体の弓兵近辺にも弾幕を張っていた為、ありがたく使わせて貰った。
 結果は大成功。最早魔力弾を警戒する要素は、八割以上ないと見ていいだろう。

874LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:37:23 ID:aXj0WSV2
 歩兵も残り八体。開始から三分の二近くまでその数を減らしている。
 ……多いなあ……
 対するディーは、うんざりしていた。
 それもその筈、魔法士の騎士とは対魔法士・対個人戦を想定して設計された能力である。
 ディーの切り札こそ例外ながら、一対多には全くと言っていい程向いていない。
 しかも加速は十五倍と完全に手加減。本来の出力なら、数十体位秒殺出来る。
 その気になればプレシアに直接攻撃こそできるものの、魔導師が持ち得る大量の引き出しは出来るだけ見ておきたい。
 挙句現在の加速倍率でも十分倒せるときては、現状に甘んじる他ない。
 次はどんな隠し玉が出るのやら。第四波を予感し、ディーは双剣を握り直す。
 漸くプレシアからの指示を受けたか、歩兵型だけでなく、魔導師型までもが一斉に動き出した。
 既に半数近くが腕や武器を失っている歩兵。通用しないのに捻りの無い直射弾を生成する魔導師兵。
 黒衣の大魔導師ただ一人だけが、詠唱を始めていた。
 これについても既知の情報。イメージ上昇と演算補助を兼ねた、大技の準備だ。
 少し考え、兵達の相手を続ける事にする。魔弾と突進と格闘攻撃を躱し、壊し、受け流し、只管待つ。
 待てば待つ程、人形達は犠牲となった。
 挟みうちの突進を回避され、正面衝突から派手に倒れる者。
 交錯時の情報解体で片足を失い、両手をバタつかせて抗うも、結局は倒れる者。
 攻撃を受け流されたと思ったら退避され、真上から落ちてきた追撃役のもう一体に踏み潰される者。
 魔導師型のサポートも虚しく、見る見るうちに戦える歩兵の数が減っていく。
 やがて残り歩兵が三体となった頃、真上から紫の光が空間を差した。
 同時、ディーの身体が縫い止められたように固定される。あっさり動きを止められた事実に、ディーは驚愕した。
 捕縛魔法、という単語が頭を過ぎる。鎖や輪状、ケージ型などは知っていたが、こんなものもあるのか。
 しかし、対処法は事前に幾つか考案してある。早速情報解体を発動し、拘束機能の解除に掛かった。
(情報解体成功)
 予想通り、解体成功。しかし動かせるのは両肘から先。
 より広範囲へ行わなければ、自由の身にしてくれないようだ。
 ……それなら!
(身体能力制御終了。情報解体発動)
 身体能力制御に充てていたリソースを、情報解体に上乗せして何とか成功。全身の束縛が解ける。

875LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:39:21 ID:aXj0WSV2
 本気を出せばこんな必要ない。これも手加減だとばれない為の工夫である。
 しかし、あまり悠長にしていられない。周辺を隈なく照らす光を消しても、頭上の光が未だに潰えないのだ。
 ……雷?
 見上げた第一印象が、それだった。天井に浮遊する巨大な魔力光から、文字通りの紫電が走っている。
 魔力変換資質・電気を使った、広域攻撃だろうか。まもなくこちらへ降り注ぐ事は疑いない。
 非殺傷かどうかは不明、というよりできればそうであって欲しいのはともかくとして、電気である。
 その攻撃速度を予想するに、魔法関係である以上多少誤差が出る事を踏まえても、亜光速ぐらいは超えてのけるだろう。
 即ち視認=ほぼ直撃を意味する。指向性もまばらだろうから、ほぼ面の攻撃と見て良い。
 現在発揮しているI-ブレインの出力では、情報解体による迎撃も、身体能力制御による回避も不可能。
 攻撃範囲外へ退避しようものなら、その前にあれを撃ってくるのも容易に想像できる。
 向こうもそれを見越しているのだろう。ある意味、大魔導師からの合図でもあった。
 三枚目のカードを切ってみろ、と。
 しかしディーは、此の期に及んで自分より相手の心配をしてしまった。
 言うまでもなく事前に能力を伝えてはいるものの、果たして対処できるのだろうか。
 相手に対する不安を押し殺し、I-ブレインの回転数をこの模擬戦内で初めて“引き上げる”。
(騎士剣「陰陽」完全同調。光速度、プランク定数、万有引力定数、取得)
 物理定数の中でも根幹を担う、三種のパラメータに干渉。
 発動する為の、必要最低条件は二つ。
 一、第一級(カテゴリーA)騎士の中でもある程度以上能力が高いこと。
 二、己の能力に耐え得るだけの高性能な騎士剣を備えていること。
 第三次世界大戦において、対魔法士戦闘において、騎士が圧倒的優位に立った最大の原因。
(「自己領域」展開。時間単位改変。容量不足。「身体能力制御」強制終了)
 直後、半透明の膜がディーを包んだ。

 自己領域。“使用者にとって都合のいい時間と重力が支配する空間”を作り出す、もう一つの移動能力。
 使用者を中心に展開された球状フィールドの内外では、時間の流れが決定的に違う。重力も自由自在に変えられる。
 今回は出力を抑えている為、客観的に観測できる移動速度は秒速約十万キロメートル。
 最大で、光速度の約八十パーセントという完全な亜光速移動が可能。

876LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:41:33 ID:aXj0WSV2
 何れにせよ、肉眼での捕捉は不可能である。

 解体直後で空気中に漂う魔力素が未だ紫色を示す中、ディーは一直線に走る。
 攻撃が来る前に安全圏へ逃げてしまえば、如何なる攻撃だろう脅威と成り得ない。
 限りなく静止状態に近い世界の中、予想される攻撃範囲から難なく逃れ、それでもまだ両足を動かす。
 周囲の兵も、前方に立ち塞がる兵も、仁王立ちしている一回り大きな兵も素通りして、目標はプレシア・テスタロッサ。
 更に後ろへ回り込み、一切の妨害を受ける事無く背後をとった。大魔導師がこちらの移動に気付いた様子はない。
 現実時間にして、発動から五百万分の一秒以下の出来事である。
(「自己領域」解除)
 ――この時点からの長い一秒間が、勝敗を分けた。
 半透明の膜が消え去り、観測できる外界の時間経過速度が約一千万分の一倍から一倍まで加速する。
 自己領域から身体能力制御までの、能力起動状態変更時に発生する僅かなタイムラグ。
 騎士が持ち得る唯一の弱点。しかし、その隙は余りにも短い。魔法士ですら、突く事自体困難なのだ。
 I-ブレインも無ければ知覚関係の強化も行っていない魔導師に、果たして対応できるのだろうか。
 直後、巨大な落雷がディーのいた空間を叩いた。迸る雷光が思った程強くないのは幸いか。
 後は一撃与えればいい。バリアジャケットで守られているなら、騎士剣で斬りつけてもダメージにはならない。
 実戦なら情報解体で壊してもう一撃というところだが、これは模擬戦である。
(「身体能力制御」発動。運動速度、知覚速度を十五倍で定義)
 漸く、自分以外の時間が十五分の一まで減速。
 右の騎士剣を振り上げる。既に対策されていなければ、これを袈裟がけに下ろして終わり。
 ――と思った次の瞬間、攻撃対象が不意に崩れ落ちた。
「え――」
 演技とは思えない。そこまで己の銀眼で見定めたディーは、全身を硬直させた。
 それは、嘗ての光景。
 戦闘中に発作を起こし、力無く倒れたあの人の姿。
 娘の為、病の身体に鞭打って戦い続けた、母親の姿。
 マリア・E・クラインの、姿。
 ――どうして、おかあさん死んじゃったんですか?
 重なる姿。重なる状況。重なる光景。そして、重なる躊躇。
 コンマ単位の空白は、魔法士どころか一流の魔導師相手でも十分命取り。それでも、ディーは止まってしまった。
 それこそ、ディー最大のトラウマであるが故に。

877LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:43:38 ID:aXj0WSV2
 彼女を傷付けたのは、他でもない自分なのだから。
「……ぁ……」
 我に返った時には、捕縛魔法で拘束されていた。
 首・両手首・両足首・腰。それぞれディーを空間に縫い止める、魔力製の輪状拘束具。
 後の先で反応した訳ではない。恐らく、指定した空間に侵入すれば自動で機能するトラップとして準備していたのだろう。
 本来なら幾つか迎撃していたかもしれないが、トラブルにより手首から足首まできっちり拘束。
 遅れて、こちらに気付き振り向いた黒衣の大魔導師。狂気に塗れた瞳には、少なからぬ驚愕が見える。
 差し出した掌には、拳大の魔力弾。
(情報制御感知。回避不能。防御不能。危険)
 離脱不可能。敗北確定。そして最後の追い打ち。
 正確に鳩尾へ直撃した魔弾は、拘束の解かれたディーを数メートル先へ吹き飛ばした。
「っと……!」
 先程の精神状態ならともかく、騎士剣も所持したまま。すぐさま空中で体勢を立て直し、何とか着地。
 模擬戦の最中だとか、傀儡兵がどうとか、今のディーには関係ない。
「プレシアさん――!」
 脇目も振らず、全速力でプレシアのもとへと急いだ。

878LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:44:50 ID:aXj0WSV2
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                   *ここで前編と後編を区切って下さい
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 模擬戦結果、プレシア側の勝利。勝因が勝因の為、甚だ不本意であった。
 自分と少年のどちらかが攻撃を受けた瞬間、傀儡兵の動作は停止するようプログラミングしてある。
 余計な事をされる前に見た目だけでも復帰の形をとり、傀儡兵達の自動修復作業を開始。
 相手側からの強い要請で壁にもたれたまま、互いに質疑応答の時間。
 それも終わって少年を個室へ戻し、自らも研究室に入ったところで、プレシアは呟いた。
「……まずいわ」

 騎士が持つ三種類の能力について、ここで纏めてみよう。
 身体能力制御。半永続の加速能力。反作用処理機能付属。
 五感の数値データ変換まで備えている為、視覚・聴覚への攻撃は不意打ちでもなければ通用しない。
 痛覚の遮断も凶悪だ。本人は非殺傷設定を羨んでいたようだが、痛覚感知の是非は魔導師にとって大きい。
 例え気絶しなくても、痛覚によって体の動きに支障を出せれば、確実に戦闘能力の低下へ繋がる。
 それがないとなれば必然、昏倒させる難易度が跳ね上がるのだ。相対する場合、殺傷設定で挑んだ方が楽だと断言できる程。
 途中から半ば殺すつもりで攻撃してませんでしたか? と問われた通り、半分は半殺しにするつもりだった。
 もう半分は少年へ答えた通り、あの位でも何とかしてしまうだろうと予想していたから。終盤までは自己領域すら使ってなかったし。
 自己領域。特殊フィールド形成に伴う、超高速移動能力。
 具体的な速度は測れなかったものの、身体能力制御で対応できない広域攻撃等には非常に有効と分かった。
 とはいえどちらも一長一短と聞いた通り、とりあえず弱点は存在する。
 更に“並どころか世界最強の騎士でも”この二つは同時起動不可能ときた。
 ここまではいい。ここまでなら許せる。
 問題なのは情報解体だ。はっきり言って凶悪過ぎだ。
 対象の存在情報に直接干渉し、物理強度無視で破壊する能力。
 物理強度無視の魔法も此方に存在するものの、発動速度は決して早くない。

879LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:46:48 ID:aXj0WSV2
 いや、そんな事は問題にもならない。魔力製物質も瞬時に解体できる事実こそ、最も重要なのだ。
 魔力弾や防御魔法の破壊、拘束魔法も接触さえすれば解除可能。
 多重弾殻弾やバリアジャケットまで無力化できる辺り、ある意味アンチ・マギリング・フィールドより質が悪い。
 実際に見ていて、生物に通用しないのは本当なのかと疑った程だ。
 何故出来ないのかと聞けば、情報強度の問題になるらしい。
 例えるなら、相手に与えた魔力を制御できないのと同じ、だそうだ。
 言われてみればそうだ。リンカーコアへの直接干渉でもしない限り、相手の魔力を直接操るなんて出来っこない。

880LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:53:08 ID:aXj0WSV2
 特定の例外を除き、情報解体を始めとした情報制御の直接干渉を、生物に対して行うのは至難の業。ほぼ不可能に近い。
 理由は、対象の情報強度――情報制御そのものに対する防御力――にある。情報の側にも、物理強度と同様に“変質のし難さ”が存在するのだ。
 特定の例外を除けば、物理強度と情報強度は決してイコールにならない。
 物理的に強固なチタン合金は情報の側から見れば非常に脆弱であり、影響を受けやすい。
 物理的に脆弱な人間や魔法士は情報の側からすれば非常に強固であり、他者からの情報制御を受け付けない。
 故に、生身の敵本体には情報解体ではなく物理攻撃で叩く他ない。だからこその“騎士専用剣型デバイス”なのだ。
 与える魔力に最初からプログラムが入っているブースト魔法。防御魔法のプログラムに干渉するバリア破壊効果等も似たようなものである。

 そもそも魔力とは、次元空間という壁を凌駕し、次元転移をも可能とする唯一のエネルギー。
 無論、次元空間から流れてくる魔力という存在そのものに環境が適応していない世界もある。ジュエルシードの落ちた地球などが典型例だ。
 魔力を運用するリンカーコアの全容は未だ未知の部分が多く、地球等の魔法文明が存在しない世界でも備えている生物が稀に現れる。
 何にせよ、魔力の存在を認知した一部の人類は時に独占し、時に広め、短い繁栄と衰退を繰り返した。
 中でも二つの文明、汎用性を選んだミッドチルダと対魔導師戦を選んだベルカが大きく発展したのは決して不自然と言えないだろう。
 何より、次元世界間の戦争でミッドチルダが生き残れたのは、この汎用性があってこそ。
 射撃・防御・広域攻撃・砲撃・捕縛……挙げればキリがない。
 これについて、少年は多彩と評価。ただし移動と格闘に関しては何も言わなかった、というより言えなかったのが正しいか。
 ――移動と格闘を忘れてもらっては……ああ、あなたにこれを言っちゃ駄目ね。
 ――いえ、そんなことは……ええっと……。
 分かり易くて宜しい。
 とりあえず何が言いたいかというと。この魔力が、汎用性の高さが、これ以上ない位少年に有利な方向へ働いている。
 だからこそ、プレシア・テスタロッサは険しい視線で模擬戦の映像を見直していた。
 フロア内の天井や壁際に設置してあった無数のモニター用サーチャーで記録された映像。

881LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:53:52 ID:aXj0WSV2
 何か見落としはないのか、何か弱点は発見できないかと探せば探す程、思い知らされる。
 吊るされしシャンデリアの下、端の廊下から静かに闇の差し込む大広間で、巨大な人形達を相手にたった一人で戦う、銀髪銀眼の若き騎士。
 細い体躯から生み出される運動曲線には淀みがなく、決して狭いとは言えないホールの中を縦横無尽に駆け巡る。
 襲い来る巨兵に対し振るわれる双剣は、敵と比べればあまりにも小さく、しかし外見からは想像もつかない程の鋭い孤を描く。
 その一つ一つが、敵兵達の武器を、腕を、脚を、そして魔法を、一閃の下に粉塵へと帰していく。
 最終的に存在を否定された魔弾は、魔導師に与えられた速度をある程度維持しつつ、空中で魔力素と化し霧散する。
 本来金属だった物質は、霧散した状態から空中で再結晶し、床に落ちて暫くカラカラと転がり、やがて静止する。
 幻想的で、交響的で、それでいて限りなく洗練された、銀(しろがね)の剣舞。
 銀光が閃く度、プレシアに理解を促させる。
 ……これが、魔法士……!
 知れば知る程、見れば見る程、“それ”が異常な力だと思い知らされる。
 速い強いでは済まされない。剣を以て魔法を壊し、詠唱を許さずに懐へ入るなど、まるで、
 ――まるで、魔導師を殺す為だけに存在するような――
 想像するに堪えない、いつもの自分らしくもない考えに、思わず唇を噛んだ。

 奇しくも、プレシアの想像は当たっている。
 魔法士の騎士が持つ能力は本来、個人戦・接近戦・そして対魔法士戦に特化している。
 簡潔かつ語弊の無い言い方をすると、魔法士とは“異能を持つ人間”である。
 魔導師も、簡潔かつ語弊の無い言い方をすると、“異能を持つ人間”である。
 魔力やI-ブレイン等といった専門用語さえなくなれば、“魔法”を恐れる人間にとって大した違いがないように。
 騎士にとっては、“騎士を含めた例外を除く多数の魔法士”と“あらゆる次元世界に存在する魔導師”に大した違いがないのである。

「本当に、まずいわ」
 映像を再生していて、分かった事がある。
 完全には把握できないものの、少年は間違いなく手を抜いていた。
 身体能力制御も、どこまで本気だったか不明瞭。
 魔導師との相性を始めとした実験の意味合いが強かったため、傀儡兵と対等に戦えるよう加減したのだろう。

882LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:55:39 ID:aXj0WSV2
 それはつまり、裏を返せば傀儡兵ごとき相手にならないと断言しているようなもの。まるで底が見えなかった。
 騎士能力は三種類のみ。それしかないと少年は断言したし、嘘とも思えない。
 しかしまだ何か隠している……何を隠している?
 右の剣にある結晶体については、聞いてもはぐらかされた。
 奥の手だから滅多に使う事はないと言われたものの、それでなければ“あれ”はどう説明するのか。
 足場の悪い空中、粉塵と弾幕の只中、隣の弓兵へ移動してみせたあの芸当は。
 少年の発言が確かだと仮定するなら、既存の能力と手加減からして、消去法により身体能力制御で何かを起こしたとしか思えない。
 計算上、不可能だ。対十五倍速の反作用処理では、亜音速で直進する銃弾の上を歩ける訳が――
 ……十五倍じゃ、ない?
 研究者、プレシアの閃き。前提が間違っているのか。
 数十倍、予想するに三十倍近い加速を発揮し、魔力弾を足場に空中を移動したと仮定すれば、辻褄は合う。
 対策の内に考慮せねばならない事は、他にもある。
 模擬戦後の質問から得た重要な情報が二つ。
 一つ。情報の側から魔法士に“干渉”できる魔法士は常識的に考えてまず存在しない、という事。

 数ヵ月後に“特定の例外・一番目”の二名に遭遇するなど、この時のディーには知る由も無い。言わずもがな、敵側の魔法士である。

 二つ。身体能力制御は反作用処理付きの加速であり、加速ではなく肉体強化を行う魔法士は聞いた事も無い、との事。

 その事件から更に二週間後、言った通りの能力を持つ“特定の例外・二番目”と戦う羽目になるなど、この時のディーには知る由もない。
 あげく大苦戦させられる。想像もつくまい。

 更に更に、肺結核の事まで知られてしまった。
 気遣う声ばかりの少年に、何も聞かないのかと問えば。
 ――疑問には思ってました。何故貴女自身が行かず、フェイト達に任せるのかと。……時間が、ないんですね?
 治す術はないと。余命はもう殆ど残っていないのだと。
 病気で動けないからですか、という言葉を通り越して突かれるその核心に、肯定の意を示せば。
 ――分かりました。フェイト達には言いませんので、安心して下さい。その代わり、どういう病気か位は教えて下さいね?
 前にもこんな経験があったと言わんばかりの対応。
 しかし詮索した所でメリットがあるとは到底思えない。結局聞かなかった。

883LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 20:58:04 ID:aXj0WSV2
 次に、本人の自己評価。曰く、“騎士という範疇でもかなり高い方”。
 手加減しておいて高いと評価――いや、バレている事を前提に話しているのだろうか。
 更に高いだけで最高とか最強とか言わない。上がいると理解しているのか、ただの謙遜か。
 自惚れがない事はいい事である。本当に謙遜だとしたらどう反応しろと言うのか。
 一番扱いに困るのは、少年の信念そのものだ。
 組織や契約の枷を全く気にせず、必要なら敵対する、そんなスタンス。
 部外者故に犯罪者にも管理局にも属さない為、半中立と言っても過言ではない。
 更にこちらは、少年を元の世界へ送るつもりも余裕も無い。用が済んだらさっさと管理局に丸投げする気満々だ。
 緊急用武力貸与と衣食住で成り立っているだけの、薄い関係。
 探し人の少女を見つけたなら、どんな手を使ってでも合流を図るだろう。
 プレシアとの契約を、切ってでも。
 一応、根底への揺さ振りはかけてみた。
 共に巻き込まれた少女が、安全な場所へ転移しているとは限らないと。
 見つからず終いかもしれないし、見つかった所で無事ではないかもしれないと。
 硬直の時間は如何程だったか。ご心配なくと騎士は前置きした。
 ――セラは、強い子ですから。
 戦闘能力か、性根の問題か。その寂しげな笑みからは、真偽すら読み取れなかった。
 自分も藁へ縋るように信じているものがある以上、これまた理由を聞けなかった。
 結論。どうやら自分は、あらゆる意味でとんでもないものを拾ってしまったらしい。
 個人戦……特に対魔導師戦において、絶大な戦闘能力を発揮できるということ。
 敵に回った際は非常に危険な存在となるが、味方になってこれ程有効な駒はまず考えられない。
 念入りに対策を打っておかねば、Sランク魔導師であっても勝ちの目はまずないと見ていい。
 というか、このまま対策を練らずにいると限定SSの自分でも負けてしまう。
「何か……何か方法は……」
 戦闘や魔導、デバイスなどのデータから脳内で対策を練り、次々と棄却されていく。
 確実な有効策が見つからずに焦る中、ある一つのデータが目に留まった。
「これは……」
 何の事はない、計器の観測データだった。研究の為には重要な代物、しかし少年から勝利をもぎ取るには関係がないとしか思えない代物だった。

884LB ◆ErlyzB/5oA:2011/01/20(木) 21:00:35 ID:aXj0WSV2
 有り得ない反応。有り得ない数値。記録されたそれらは、もう少し引き上がれば危険域を突破していたと容易に語っている。
 一体いつ、どんな理由で?
「――まさか」
 不意に浮かんだ、心当たり。同時に見出した、一筋の光明。
 直後、飛びつくようにそれを調べ始めた。
 フェイトが持ち帰ってきた、ジュエルシードを。


おまけ
対魔法士の騎士その1:空間トラップ
 空間発動型のバインドや機雷など。視認されないバインドがお勧め。
 相手にばれないよう仕込めば、並騎士の対策は万全。ただし、カテゴリーA騎士相手だと強引に突破されてしまう。
 この場合、空戦に持ち込む等で自己領域を使わせるのが得策。
 身体能力制御への切り替えタイムラグも手伝って、あっさり仕留める事ができる。
 引っ掛かったとしてもバインドの幾つかは破壊しかねない為、多めに設置するべし。
弱点1:設置の際、微かに情報制御の反応はある為、気付かれる可能性はある。
弱点2:仕掛けられた空間そのものを情報解体されると、トラップ自体無効化される。

 無論、並列処理発動中のディーには素で通用しない。


///
投下終了。

というわけで、初の魔法士戦闘&設定擦り合わせ回でした まる
六章は海上戦までの空白期に相当しますので、全っ然話が進みません。

理詰めの結果とはいえディー有利になった感は否めませんが、後悔なぞ皆無です。
ディーは存在が出鱈目、それがデフォルト。そうじゃないディー君なんて只の優男ですから(ぉ
七巻ディーの惚気発言には2828した。状況次第では賢人会議にも敵対しかねないと断言したも同然なディー君ぱねぇです。

因みに、開始数十秒分の戦闘シーンなら、手元にテキストがあります。長過ぎるので省略しました(←執筆が長引いた原因)
まあ、今まで戦闘書けなかった鬱憤は晴らしたので良しとします(ぉ

当初の予定だとこの後に幕間が入る筈だったのですが、改訂作業の副次効果で省かれました。
よって次回は第七章。
……まだ七章……しかも前にある程度書いて消えてたやつだorz
以上。



BGM:(妖)広有射怪鳥事 〜 Till When?




ここまで。どなたか代理お願いします

885ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2011/01/30(日) 19:02:49 ID:WT/6oFS2
今更で恐縮ですが……orz
代理行ってきます。

886ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2011/01/30(日) 19:38:15 ID:WT/6oFS2
案の定さるさん喰らいましたorz
申し訳ありませんが、前編の残り部分(868-877)の代理を
お願いします。後編部分は翌日投下したいと思います。

887りりかるな黒い太陽:2011/02/01(火) 23:27:22 ID:wwsuxjA2
さるさん食らいましたorz

恐縮ですが残りの代理をお願いします
誰か、誰か頼む…

888りりかるな黒い太陽:2011/02/01(火) 23:28:05 ID:wwsuxjA2
>>160 コピペミスして画面二回ひらいてます。すいませんOTZ

床に降りながらRXは血を振り払うようにリボルケインを振るう。
杖に残った破壊エネルギーがほんの僅かな間虚空に残り、RXと署名して消えた。

署名が消え、RXを内部に残したまま『聖王のゆりかご』は爆発した。

突然光を放ちだした『聖王のゆりかご』を見上げていた人々は突然の強い光に目を閉じ、爆発が収まるのを待とうとした。

どうなるか予想していたはやてとそれに習った者達が、サングラスをして見続ける中…RXらしき点が、爆発の中から落ちていく。
はやてのサングラスから光る何かが零れたような気がしたが気にする者は一人としていなかった。

まだ爆音が響く中で誰かがRXを呼んだ。
巨大な怪獣達が手を伸ばし、フェイトがいつかのようにRXを抱えるために飛び出した。

だが―RXの体は突如出現した何かに挟まれて、次元の壁を突き破って姿を消した。

「「「「「「「え…っ」」」」」」」

何が起こったか見えた者達は、すぐに気をとり直して呆れたり怒ったり、様々な反応を見せる。

『はやてごめん! 私、RXを助けに行ってくるから!』
『いや、アカンて。後始末あるんやから』
『そんな…セッテ!! 貴方はわからない!?』
『どうでしょうか…?』
『んもう…!』







幾つかの次元を突き抜けてから、ライドロンはアゴを緩めてRXを開放した。
加えられていたRXが、連行されたことなどに悪態をつきながら車内に乗り込む。

「拾ってあげたし、情報も教えてあげたでしょ。感謝の言葉は?」
「こんな真似が必要だったとは思えないぞ。ライドロンもだ! なんでウーノに協力してるんだ!?」

運転席にはウーノがいた。RXがドアを閉めるとウーノはライドロンを更に加速させ、更に追跡を困難にするために別の管理世界へとライドロンを走らせようとする。
南光太郎の姿に戻りながらRX・光太郎はライドロンの車内を叩いた。

「あのままあそこに残っていた方が面倒なことになるんだから、よかったでしょう?」
「それは否定しないけどさっ」

シートにもたれ掛かる光太郎に、ウーノが勝ち誇ったような顔で言う。

「予め『ゆりかご』からデータは取っておいたわ。ギリギリだったし、まだどれがどれだかわからないけど多分貴方の故郷に行くのに必要なデータもあるはずよ」
「どうして、そんな用意がしてあるんだ」
「退職金代わりに色々なデータを貰っただけよ。貴方との取引にも使えそうなデータが他にもあると面白いんだけど…」

889りりかるな黒い太陽:2011/02/01(火) 23:30:12 ID:wwsuxjA2
ハンドルを握ったまま、ウーノは光太郎に流し目を送った。
光太郎は返事を返さずに座っているシートを後ろへ倒そうとしていた。
車内にため息が漏れる。ライドロンが次元の壁を超える。
次の管理世界は時間が少しずれているのか、辺りは暗く、静かだった。

「……セッテや六課のお友達のことを確認したくても、教会と管理局の反応を待ってからにするのね」
「わかった。わかってるけど、何かあれば俺は皆を助けに行くぞ!」
「チッ………それは諦めてるわ」

舌打ちがやけに大きく車内に響き、そこで会話は途切れた。
空気を読んでライドロンは静かに走り続ける。
故郷の地球へ向かうデータを探しながらの逃亡生活を考えて光太郎は少し憂鬱になった。

無表情でウーノは運転を続け、光太郎は早々と目を閉じていた。
車内は暖かく、微かな振動が二人の体を揺さぶった。少しすると、光太郎の寝息が聞こえ始めた。ため息がまた漏れた。

落胆からではなかった。
こうなるとわかっていてやったとはいえ落胆するかと思っていた自分が、奇妙な気持ちにウーノは襲われたことに対して、ウーノはもう一つため息をついた。
元々ライドロンが自走することも出来る為運転を任せてウーノは視線を向け、次に手を向けて助手席の光太郎が眠っているのを確認して唇を開いた。

「ホントに世話がやけるんだから………」

寝具を取ってやろうか迷って体が動いたが、それを決める前にウーノは不思議なことを思った。
普段なら考えもしないことで、後でかなり長い間後悔することは確実だったが、どういうわけかウーノはもう一度光太郎が眠っているかどうかを確認した。
念入りに手で肩に触れて、顔を近づけても寝息が変わらないことや反射的に顔を顰めるだけだということを確かめ…耳元に唇を寄せた。

「…………〜〜……………っ……………………………………………………あ……………………………………………………………………………愛してるわ」

車内灯は付いておらず、顔色は誰にも見えなかった。
ライドロンがふざけて蛇行し、ウーノが叱った。

光太郎の眠りが薄くなる前に彼女は運転に戻った。
目覚める頃には、窓から入る光に照らされた顔も普段どおりの白さに戻さなければならなかった。

「…? 今揺れなかったか?」
「道が、悪かっただけよ」


ED

以上でりりかるな黒い太陽は完結とさせていただきます
もう少し引き伸ばす予定だったけど間が開くばかりで進まないし内容的には増えるわけでもry

拙作にも関わらず投下時感想を下さった方やまとめページにコメントしていただいた皆様に感謝を
どうにか投下出来たのは皆様のお陰です。最初は創世王とか出てもっと酷い事になる分岐も考えていたので……内容についてもかなりいい意味で影響されたと思います

RXの性格が変わったことについては考えた上でのことだったのですが、最終話も含めなのは側のキャラをちゃんとかけなかった点については申し訳ありません
クロスなのになのは勢はスカが調子に乗っただけだったような…

890 ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/06(日) 12:58:11 ID:m0ni/rec
本スレの方が規制でしばらく書き込めないのでこっちに書きます。

ハートキャッチプリキュアの完結と、スイートプリキュアの開始を記念して
プリキュアクロス(でもクロスと言えるのかな? これ…)をやりたいと思います。

ユーノが色んな意味で壊れてるので注意(ユーノスレに投下すると九分九厘アンチ扱いされる位)

891ユーノが鬱病になりました ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/06(日) 13:00:04 ID:m0ni/rec
 ある月曜日の朝、ユーノが鬱病になって入院した。その報告を聞いたなのはは思わず飛び出し
ユーノが入院されていると言う病院へ走った。

「ユーノ君!」
「やあ…なのは……。」
「え…ユーノ君…なの……………?」

 病室のベッドに横たわるユーノの姿を見た時、なのはは絶句してしまった。鬱病と話には聞いていたが
何があったのかユーノは別人の様にやつれ痩せこけてしまっていた。あらかじめユーノであると聞かされていなかったら
なのはですらユーノとは気付かない程。もはや鬱病と言うレベルの話では無い。一体何が彼をここまで追い詰めてしまったと言うのか…。

「ユーノ君どうしてこんな事に…。まさかアンチの誹謗中傷!? それとも男好きの司書からのセクハラ!?」

 ユーノをここまで追い詰めてしまった原因に関して、なのはの頭ではその二つしか思い付かなかった。
なのはに最も近い男として嫉妬したアンチからの根強い叩きと、一方でユーノを嫁にしたがる男好きの司書からのセクハラと言う
二重の攻撃にユーノの精神は限界に達し、ここまで追い詰められたと考えたのだが…

「ははは…そんな事くらいで僕がへこたれるわけないじゃないか…。」
「えぇ!? じゃ…じゃあ…どうしてこんな事に…。」

 アンチの叩きでも司書からのセクハラでも無いとユーノは言う。なのはは分からなかった。
ならば一体何がユーノをここまで追い詰めてしまったと言うのか?

「ハートキャッチプリキュアが……。」
「え? ハートキャッチプリキュア…確かにうちでもヴィヴィオがストライクアーツの
参考になるとか言って毎週楽しんで見てたけど、それがどうかしたの?」
「ハートキャッチプリキュアが完結しちゃったよ〜……僕はこれから一体何を
楽しみに生きていけば良いんだ〜? もう希望も何もあったものじゃないよ〜…………。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッ」

 なのはの全身に衝撃が走った。何と言う事か、ユーノは大友…つまり大きなお友達だったのである!!
そしてユーノは息も絶え絶えながらに語り始めていた。

「だって考えても見てご覧よ…。キュアマリンもキュアサンシャインもキュアムーンライトもキュアフラワーも
皆僕の嫁だったのに……彼女達とはもう二度と会えないんだ……そう思うと……生きていくのが辛くて……。
僕の心の花はすっかり萎れる所か完全に枯れてしまったよ…。今の僕がデザトリアンにされたら多分無限シルエットにも勝てるね…。」
「……………………………。」

892ユーノが鬱病になりました ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/06(日) 13:01:26 ID:m0ni/rec
 悲しみの余りなのはの目に涙が零れ落ちた。しかしそれは決してユーノが大友だった事実に呆れたわけでは無い。
ここ数年におけるユーノを取り巻く環境を考えればこうなってしまう事も無理な話では無いと考えたのだ。

 モンスタークレーマーのごときアンチの激しい叩きと、それに屈してユーノの本編登場を自粛した公式。
まるでウルトラセブン第12話の様に、語る事自体が禁忌にも等しい事にされてしまった今と言う状況を考えれば
ユーノがプリキュアに逃避…もとい心の支えを見出すのも仕方の無い事だとなのはは考えていた。

「笑うなら笑うが良いさ…所詮タンパク質とカルシウムの呪縛に縛られた俗人に今の僕の気持ちは分からないのさ…。」
「そんな…元気出してよユーノ君! 来月の三月には映画もあるし、フィギュアーツだって発売されるじゃない!」
「来月の三月…ね……。僕はその時まで果たして生きていられるかな…。と言うか、フィギュアーツも本当なら
1月に発売されていなければならない物だったんだよ…。それを三月に延期するなんて………うぅぅぅ………。」
「ユーノ君! ユーノ君しっかりして!」

 呻き声を上げ苦しみ始めたユーノ。なのはは思わず駆け寄りユーノを支えようとしていたが、
ユーノはまるで枯れ枝の様に細く痩せこけた腕を小刻みに震わせながら天井へと伸ばしていた。

「ディ……ディケイドォォォ〜〜〜……お願いだから僕のこの命の炎が尽きる前に……どうか僕を
ハートキャッチプリキュアの世界に連れてっておくれぇぇぇ〜〜〜………。そこで僕は
キュアマリンもキュアサンシャインもキュアムーンライトもキュアフラワーも皆僕の物にするんだ〜……。」
「………………………………。」

 なのはは涙しながらユーノの延々続くプリキュアに関しての想い語りをずっと聞いていた。
こうして聞いてあげる事が今のユーノにとっての何よりの薬になると考えたのだから。

 なのは病院を出た後、本屋で売れ残っていたハートキャッチプリキュアの絵本や、玩具屋で
在庫処分セールが始まっていたハートキャッチプリキュアの玩具等を探しては買い集めユーノに送り、
時には自分自身がその絵本を読み聞かせたりもしたが…焼け石に水。ユーノは日に日に衰弱していく。
なのはは今回程自分の無力さを思い知った事は無かった。かつて世界を救うとすら言われた事のある
彼女だが、こうして目の前にいるユーノ一人救えないじゃないかと………悔やんだ。

 しかし翌週の月曜日、そこには何事も無かったかの様に元気に無限書庫へ出勤するユーノの姿があった。
九十歳以上の老人と言われても信じるであろうと思われる程にまでやつれ痩せこけていたはずのユーノの身体は
かつての様な若々しく瑞々しい健康さを取り戻し、はつらつとしていた。

「ユーノ…君?」
「おはようなのは! どうしたんだい?」

 確かにユーノが元気になったのは良い事だが、こうまであっさり元気になり過ぎるのも何処か不気味さを感じた。
一体彼の身に何が起こったと言うのだろうか?

「ユーノ君…元気になったんだね…。」
「うん。何時までもくよくよしていられないしね。今まで無限書庫の皆に迷惑をかけてしまった分バリバリ働くつもりさ!」
「そ…そう…頑張ってね…?」

 こうして、元気に無限書庫へ向け走り去るユーノをなのはは呆然と見つめ見送っていた。
だが、このユーノの変わり様は一体何故…と、やはり気になっていたなのはは
昼休みを利用してユーノのいる無限書庫を訪ねてみる事にした。

893ユーノが鬱病になりました ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/06(日) 13:04:08 ID:m0ni/rec
 昼休みの無限書庫。そこでなのはは驚愕の事実を垣間見る事になる。

「ユーノ=スクライア司書長はいらっしゃいますか〜? って……うぇぇぇ!!」

 なのはは思わず叫んでいた。そこには昼休みを利用して弁当を食べながらニヤニヤしながらビデオ録画していた分を
再生する形でアニメを見るユーノの姿があったのである。しかもそれはただのアニメでは無かった。

「あ…あ…あれは…昨日ヴィヴィオが見てた…確か…スイーツプリキュア!」
「違うよ! スイートプリキュア!」
「あ…ごめん…。」

 アニメ視聴をしながらもなのはの存在に気付いていたユーノに指摘され、思わずなのはは謝っていた。
そう。ユーノが見ていたのはハートキャッチプリキュアの後番組、スイートプリキュアだったのである。
そしてユーノが弁当を食べ終わると共に、スイートプリキュアの方も次回予告が終わった所だった。

「まさか…ユーノ君が元気になった原因…。」

 ユーノが鬱病になった原因がハートキャッチプリキュアの完結によって生きる希望を失った事にあった様に、
彼を回復させたのもまたその後番組に当たるスイートプリキュアの開始によって生きる希望を見出したからであった。

「はっ! そ…そう言えば…去年やその前にも同じ事があった様な…。」

 なのははここである事実を思い出していた。それは、去年の今頃にもフレッシュプリキュアが終わったとか言って
キュアピーチもキュアパッションも僕の嫁なのに〜とかうわごとの様に呟きながら鬱病になるも、後番組の
ハートキャッチプリキュア開始と共に元気になっていたし、さらにその前年の今頃にもプリキュア5GOGOが
終わったとか言って、キュアドリームは僕の嫁、ココは氏ねとかうわごとの様に呟きながら鬱病になるも
後番組のフレッシュプリキュアの開始と共に元気になっていた。この繰り返しだった事に今更気付いていたのだった。

「なのは…。キュアメロディこと響ちゃんは僕の嫁って事で良いよね? なのははどうしたら良いと思う?」
「仮面ライダー響鬼の音撃でも喰らって死んでしまえば良いと思うの。」
「ハハハハハ! 冗談キツイねなのはも!」

 ユーノは笑っていたが、そんな時…ふとフェイトが彼の前に現れていた。

「あ、フェイトちゃん。」
「ねえユーノ…誰か一人忘れてない?」
「え? 別に忘れ物はしてないよ。」
「いや、大切なのを一人忘れてる。」
「?」

 現れて早々に変な事を訪ねるフェイトにユーノもなのはも首を傾げる。しかし彼女の目は真剣だった。

「いや絶対忘れてる。ほら、最初に『ブロッ』って付く人がいるでしょ?」
「ブロッケン伯爵? それともブロッケンjr?」
「なのは…私も堪忍袋の尾を切っても良いかなぁ?」

                         END

894 ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/06(日) 13:05:03 ID:m0ni/rec
やっぱりこのネタはこのタイミングじゃないとダメだと思いました。
ちなみに今も以前予告したディケイドクロスをちまちまと書き溜めてる最中なんですけど、
現在喰らってる規制がかなり長引きそうなのでp2の導入も視野に入れて色々考えたりしてますorz

895 ◆e4ZoADcJ/6:2011/02/07(月) 10:21:41 ID:ZRXwkr0c
>>890-894は自分でセルフ代行出来たのでもう良いです。
全ては規制が悪いんですよ……orz

896リリレッド ◆zn6obdUsOA:2011/03/16(水) 01:04:27 ID:zBNx85Xo
今回の災害で亡くなられた方々に哀悼の意をそしてご冥福をお祈りいたします。


ここで良いかどうか判断しかねますが、本スレが混雑の影響のためか繋がらないのでこちらにて生存報告をさせて頂きます。

幸い、一応都心住まいでしたので自室が初期の無限書庫並みに混沌とした以外に大きな被害や停電も無く無事でした。



次話の方も遅筆ですが半分は書きましたので近いうちに投下出来るかと思います。

保管庫住人及び他の職人の方々の無事を祈り、これにて失礼いたします。

897魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:33:20 ID:U2e4SfQ.
サルサン食らってしまいました。どなたか代理投稿をお願いします。
タイトルの所は「幕間・地人弟の憂鬱」でお願いします

正直行きたくはないのだが、どの道断るわけにはいかないのも事実だ。
この不揃いな面子に拾われてから何だかんだで「食」だけは賄ってもらえているのだ。
この程度の頼みを断っては後々に遺恨を残しかねない。
不承不承といった風で立ち上がり、荷物袋の中を漁って先端にレンズのはめ込まれた棒状の機器を取り出す。
「じゃあ行ってくるね」
「おう。バカ兄貴はあたしが見張っといてやるから早く帰って来いよな」
すでに焚き火の中のスープしか目に入っていない兄を指し示しながら、アギトが言ってくる。
良かった。これなら兄から目を離しても夜食にありつけるかもしれない。
そう少し安堵すると、ドーチンは先ほどルーテシアの消えていった方向に適当にあたりを付け、森の中へ足を踏み出した。
「あ、そうだ。さっき旦那がこの辺野犬が出るかもって言ってたから気を付けて行けよ」
「……………………」

何とも言えず、とりあえず大声は出さずに見つけないとなぁ…などと思いながら、ドーチンは一気に重くなった気分を吐息に乗せて吐き出した。



◆   ◇    ◆    ◇    ◆    ◇    ◆    ◇    ◆    ◇


背の高い木々の中、円形の光が照らす道を黙々と歩いていく。
道幅はそれなりに広いが、いかんせん足場が悪い。さっきから地面から突き出た石や木の根に何度も蹴躓いている。
視界ゼロで歩くよりは遥かにマシであるが、溜息を止めさせてくれるほどの慰めには程遠かった。
手に持った携帯型の光源に目をやる。こんな技術はキエサルヒマ大陸では見た事がない。
(やっぱり大陸の外まで飛ばされちゃったのかなぁ…。だから天人の遺跡なんかに寝泊りするのは止めようよって言ったのに…)
妙な事になったと、今更ながらにうな垂れる。

898魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:34:21 ID:U2e4SfQ.
事の起こりは一月ほど前。当てもなく兄と共に大陸を放浪している最中、一夜の宿とした遺跡の中で起こった。
火事場泥棒みたいな真似をしたのがそもそもの間違いだったのだろう。―――――誓って弁解させてもらうがやったのは兄である。ボクは止めた。
元々大陸中の遺跡は大陸魔術士同盟の魔術士達によって粗方掘りつくされているのだ。
素人がどんなに一生懸命探った所で、食器の一枚も見つかりっこない…。
(…と、思ってたんだけどなぁ…)
そこがたまたま手付かずの遺跡だったのか、はたまた探索した魔術士が見落としていただけなのかは定かではない。
だが結果として兄は見つけてしまった。床に彫られたとある小さな『文字』。複雑に絡み合うように描かれたその文様には見覚えがあった。
『魔術文字(ウイルドグラフ)』。
かの『天なる人類』ウィールド・ドラゴンが用いたという「魔術」である。
効果の程は多種多様で、それこそ文字の数だけあると言われている。
加えて一時的な効果しか望めない人間の音声魔術と違い、魔術文字は媒体となる文字を傷つけられない限りその効果は、それこそ永続するものさえあるとかなんとか。
更に、魔術文字の最大の特徴は、条件さえ満たせば『誰にでも扱える』という事。
それが加工された特殊な道具ではなく、ただの魔術文字ならば、ただ軌跡をなぞるだけで効果を発揮するものさえあるという――――――


……ここでうっかり顔馴染みの魔術士のウンチクを思い出してしまった事、保身よりも好奇心が勝ってしまった事が運の尽きだった…。

文字をなぞった後の事はもうよく分からない。
ただなぞった文字が光だし、、次第にその光の文字が部屋全体に伸びていって最終的には目を焼かれるかと思うほどに発光しだした時点でもう後悔の極地に達していたのは覚えている。
逃げ出そうにも眼球が潰れそうなほどの白光にただただ両目を押さえてうずくまるしかなく…。
そして一瞬の振動の後、自分達が立っていたのは遺跡の石畳の上ではなく、満天の星空が輝く草原だった…。

899魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:35:42 ID:U2e4SfQ.
…今思えばあの魔術文字はきっと転移の魔術だったんだろう。前にレジボーン温泉にあった遺跡で見たのと同じヤツだ。
その事自体はまぁいい、というか今更どうしようもない。命にかかわる類の魔術じゃなくて良かったと思うしかない。
問題は転移させられた場所がまったく見知らぬ土地だったという事だ。
いや、それだけならまだ楽観視していられただろう…。本当の問題は、「ここがキエサルヒマ大陸ですらない」という事だ。
アギト達に連れられて街に下りた時、本当に驚いた。
キエサルヒマ大陸に築かれていたモノとは桁違いなまでに進歩した文明の姿がそこにはあった。
(ルーテシアに聞いても「そんな所知らない」の一点張りだしなぁ。きっと大陸の外まで飛ばされちゃったって事だよなぁ…。参ったなぁ…。ちゃんと帰れるのかなぁ)
愚痴は抑えられてもため息までは止められない。
そういえば外の世界じゃ人間なんてとっくに絶滅してるみたいな事を誰かが言ってたけど
、あのクラナガンという街一つ見ても繁栄を極めているのは疑いようがない。
(まぁ実際に見てもいない人の話よりも自分の目で見た物を信じるべきだよね、普通は)
なんとも釈然としないが、現状で特に不利益を被っているわけでもないので無理やりにでも納得するしかない。
少なくとも聞き及んだとおりの無人の荒野に投げ出されるよりは百倍マシなのは確かなのだから。
と、ちょうど思考に一通りの区切りがついた所で、ふと気付いた。どこからか小さな音が鳴っている。
それが何なのか疑問に思うよりも早く、アギトの言葉が頭を過ぎった。


『旦那がさっきこの辺野犬が出るかもって言ってたから気を付けて―――――』


野犬が出るかもって……出るかもって……出るかも……


ぶわぁ…と一気に冷や汗が吹き出てくる。
唐突に震え出した指で慌てて懐中電灯のスイッチを切り、息を殺し、音の出所を探ろうと必死に耳を澄ます。

900魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:36:25 ID:U2e4SfQ.
…今思えばあの魔術文字はきっと転移の魔術だったんだろう。前にレジボーン温泉にあった遺跡で見たのと同じヤツだ。
その事自体はまぁいい、というか今更どうしようもない。命にかかわる類の魔術じゃなくて良かったと思うしかない。
問題は転移させられた場所がまったく見知らぬ土地だったという事だ。
いや、それだけならまだ楽観視していられただろう…。本当の問題は、「ここがキエサルヒマ大陸ですらない」という事だ。
アギト達に連れられて街に下りた時、本当に驚いた。
キエサルヒマ大陸に築かれていたモノとは桁違いなまでに進歩した文明の姿がそこにはあった。
(ルーテシアに聞いても「そんな所知らない」の一点張りだしなぁ。きっと大陸の外まで飛ばされちゃったって事だよなぁ…。参ったなぁ…。ちゃんと帰れるのかなぁ)
愚痴は抑えられてもため息までは止められない。
そういえば外の世界じゃ人間なんてとっくに絶滅してるみたいな事を誰かが言ってたけど
、あのクラナガンという街一つ見ても繁栄を極めているのは疑いようがない。
(まぁ実際に見てもいない人の話よりも自分の目で見た物を信じるべきだよね、普通は)
なんとも釈然としないが、現状で特に不利益を被っているわけでもないので無理やりにでも納得するしかない。
少なくとも聞き及んだとおりの無人の荒野に投げ出されるよりは百倍マシなのは確かなのだから。
と、ちょうど思考に一通りの区切りがついた所で、ふと気付いた。どこからか小さな音が鳴っている。
それが何なのか疑問に思うよりも早く、アギトの言葉が頭を過ぎった。


『旦那がさっきこの辺野犬が出るかもって言ってたから気を付けて―――――』


野犬が出るかもって……出るかもって……出るかも……


ぶわぁ…と一気に冷や汗が吹き出てくる。
震える指で慌てて懐中電灯のスイッチを切り、息を殺し、音の出所を探ろうと必死に耳を澄ます。

901魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:37:31 ID:U2e4SfQ.
「……こっち」
「え?」
悩んでいると、ルーテシアが無造作にある方向を指で示し、そちらに向かってテクテクと歩き出した。
慌てて懐中電灯のスイッチを入れて、彼女の隣に並ぶ。
「道、覚えてるの?」
「違う。教えてくれるの」
囁きながらルーテシアが前の方を指差す。
「?」
首を傾げつつ懐中電灯を向けると、何か紫色の小さな光が導くように自分達の前を先行していた。
あれについていけばいい、という事だろうか…。
「………………」
「………………」
サクサクと、無言のまま草を踏み分ける音だけが辺りに響く。
なんとなく気まずさ覚えて、ドーチンはチラリと自分の背丈とそう変わらない位置にある横顔を盗み見てみる。
白光に照らされた横顔は、相変わらず感情というものを全て削ぎ落とされたとしか思えないような無表情。
いや、あるいは比喩ではなく本当に感情というものを失っているのかもしれない―――そんな馬鹿げた考えが浮かんでしまうほど、この少女には人間的な部分が欠けているように思える。
なにせ食事をしている時も、アギト達と世間話に興じている時も、いや、思えば最初の出会いからこっち、自分はこの表情以外の彼女を見た覚えが無い。
「…なに?」
「え!?あ、あ〜…えーと、その…」
ぼー、と顔を覗きこんでいた所にいきなり声をかけられて思わず顔が赤くなる。
別にやましい気持ちは無いのだが、ただ単に顔を見ていたというのもなんとなく気持ちが悪く、別の事を口にした。
「その…ホラ、今日はずいぶん時間がかかったなぁって思ってさ」
「…?なにが?」
「何って…。定時連絡だよ。さっきの人との。いつもはワリとすぐ済むじゃない」
「…今日は、またドクターにお手伝いを頼まれてたから…」
「お手伝い?」
聞き返すと、ルーテシアは軽く頷き、繰り返してきた。

「おつかいの『お手伝い』だって…」



幕間「地人・弟の憂鬱」  終

902魔術士オーフェンStrikers:2011/05/11(水) 21:38:26 ID:U2e4SfQ.
これにて投下終了となります。お目汚し失礼しました。
十三話の落とし所がどーーーーしても上手くいかないので、先に出来上がったこちらの方を投下させていただきました。
…本当はこの話は十三話の次に投下するつもりだったのですが…。前回の投下からずいぶん経ってしまったのでやむおえず…。
内容としては地人兄弟の現状確認と酷く分かりにくい伏線だけで大して進んでません。
あと、実はこの話半年前にはもう書き上がっていました。なんかもうほんと色々すみません。

903リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2011/05/12(木) 21:23:34 ID:0O2lXUi2
最後の最後でさるさんくらった……
申し訳ありませんが、気づかれた方代理の方をお願いします



 それによって切り裂かれた以上は、マトモに済む筈もない。プラズマは何ものも例外なく切り裂き、その傷口そのものを焼いてしまうのだ。
 後から振り返っても、それはえげつのない武器だったと、八神はやては正直に述懐する。
 言いようにこちらをボコボコに蹴り飛ばしてくれたとはいえ、それでもこれは気の毒以前にやり過ぎだ。
 殺す気でやったのか、とその下手人に思わず怒鳴りつけたかったはずだ。
 ……尤も、当人からすればそれこそが愚問だと、歯牙にもかけずに切り捨てたのだろうが。

「喧しい。喚くな」

 自分でそれだけのことをなしておきながら、のた打ち回る東風へとその相手が吐き捨てるように告げたのは、冷酷そのものとすら思えるそんな短い一言だった。

「ス……ッ……スト……ッ……ライダァァァ………ッ!」

 足を斬り飛ばされ、地面にのた打ち回る東風が、それでも最後の意地のように涙と汗とその他もろもろの、激痛と屈辱と怒りに満ちた表情で、その相手を見上げながら言葉を発する。
 そこにいる相手――それこそ見たままの忍者そのままのような格好をした、はやてとそう年齢も大差ない青年は、しかしそんな東風の怨嗟に満ちた態度すら何ら歯牙にもかけはしなかった。
 度胸が据わっているのか、それこそ本当にこれくらいのこと何とも思っていないのか、はやてには正直その判別がつかない。
 鉄のような無反応の無表情。その青年は既に東風など見てはいなかった。
 恐らくは、不意打ちで彼女の足を飛ばしたのも、決して殺されようとしていた八神はやてを助けようとしてしたわけではあるまい。
 事実、それがありありと分かるくらいに、結果的に助けたことになったであろうはやてにすら一瞥さえくれずに、そのまま真っ直ぐに奥へ――重力制御室へと向かっていく。
 はやてはハッと正気に戻ると共に、とにかく青年を呼び止めようと口を開こうとしたその瞬間だった。

「阿呆……がっ! あのお方に……ッ……まだ逆らい続ける……ッ……つもりかッ!?
 貴様などに……ッ……あのお方は……決して、斃せんッ!」

 先んじて、東風がそんな嘲笑も顕にその背中へと向かって叫びかける。
 そんな気力がまだ残っているのかと、それこそはやてが驚いたほどだった。

「世界は……あのお方の……ッ……ものだッ!
 あのお方に逆らった……ッ、貴様……などに……ッ……未来はない!」

 まるで断言するとでも言うように。後悔しろと言わんばかりに。
 青年の背に向かい、嘲笑と罵倒をまるで妄執するかのように続ける東風。
 怨嗟の篭るその挑発の数々は、正直まるで関係ないはやてですら聞いていて思わずにゾッとしたほど。
 この女がそれほどまでにグランドマスターに畏怖し、そして忠誠を誓っているのだということが、薄っすらとだがはやてにも察せられた。
 しかし、そんな東風の罵詈雑言に対しても、それを言いたい放題に言われていた青年の方はといえば。
 ただ静かに振り返ってきて、まるで蟲でも見るような目で、倒れ伏している東風へとたった一言。


「だから貴様は飼い犬なのさ」


 たった一言。されど痛烈とも言える、皮肉の篭った斬り返し。
 傍らのはやてですら、これは効くと思ったのだ。恐らくは忠誠心の塊とも思われる東風が、その侮辱同然の物言いを許せるとは思えなかった。
 事実――

「飼い…犬……ッ……だとッ!?」

 私の忠を。私のあのお方への献身を。
 これまで誇りを持って続けてきた私のその全てを。
 度し難くも、薄汚い、愚かな死に損ないに過ぎぬストライダー風情が。

904リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2011/05/12(木) 21:26:01 ID:0O2lXUi2
 ――飼い犬、だと?

「ふざ……ッ……けるなぁぁぁぁぁぁ!」

 殺す! 絶対に殺す! 必ず殺す!
 許さん! 許してなるものか!
 新世界に居場所を許されぬ、古き神の遺物ごときが。
 あのお方の第一の臣たるこの私を飼い犬呼ばわり。
 万死すらも生温い。絶死を下し、来世すらも許さん。
 否! 今この瞬間、もはや一秒たりともその存在が永らえ続けること自体が冒涜だ。
 故に殺す! 疾く殺す! この眼前の身の程知らずの不届き者を、私のあのお方への忠が完殺する!

「ストライダァァァァァァァァァァ!!」

 故に躊躇も何もありはしなかった。
 右足が無いなど関係ない。勝ち目云々そのものなど視野にも入れていない。
 狂的なまでの忠誠と、そして怒りに支えられた東風は、地面についた両手をばねの様に叩きつけ、その反動で片足のみで宙へと跳んだ。
 そしてそのまま、その残った足にプラズマを纏わせながら、眼前の絶死を誓った怨敵目掛けて容赦なく迫る。

 そんな鬼気迫る突撃を敢行してくる相手に、飛竜は――


 ただ無言でサイファーを構え、迫り来る相手を見据えながら、その蹴りを直撃寸前で、難なく見切り、躱す。
 そして相手が驚愕や次手を打つことすらも許さずに――

「犬の茶番に付き合っている暇はない」

 そんな一言を無情に告げると同時に、一閃。
 最後まで屈辱と憤怒にその表情を歪めながら、東風のその切断された首が宙を舞った。




以上、投下終了
ミッドナイト氏、支援入れてくださりありがとうございました。
まだまだ長いので今回はここまでにしときます。久しぶりの投下で色々と不備が出てた場合は申し訳ありません。
まぁそんなわけでクロス元は『ストライダー飛竜2』。若干のナムカプアレンジ設定も使わせていただいています。(後、根も葉もない捏造設定もありますが)
マヴカプやナムカプでお馴染みとは言えやはり元ゲーがマイナー過ぎるかと危惧もしたんですけど……よくよく考えれば某界隈ですっかり汚い忍者呼ばわりで有名だから、そうでもないんですかね。
……ストライダーは忍者じゃないんだが
久しぶりに元ゲーとナムカプ再プレイして、マヴカプ3でまさかのリストラにあった腹いせで書いたんですけど、本当は3レス程度の嘘予告で書いてたつもりがいつの間にか短編ssになってました。
そんなわけでもう暫しお付き合いしていただければ幸いです。それでは、また

905魔法少女リリカル名無し:2011/05/13(金) 11:15:49 ID:vsm4wUs6
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906リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2011/05/14(土) 21:22:03 ID:BVHKn/D.
またさるさん引っかかってしまった……
何度も申し訳ないですが、気づかれたどなたか代理投下お願いします


『Thunder Rage』

 瞬間、今度は上空からカドゥケウスへと目掛けて叩き込まれたのは黄金の雷。
 何事かと振り仰いだ時にはしかし既に遅く。
 カドゥケウスの頭部――そこを目掛けて己がデバイスの矛先を向けていたのは二人の魔導師。
 既に排除したも同然。そう高をくくり捨て置いたはずの死に損ないの小娘ども。

「やめろ……やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 これ以上のダメージを与えられれば、それこそ本当にカドゥケウスは停止してしまう。
 それが分かっていたから冥王は絶叫と共に二人の射線上へと何とか立ち塞がろうとするも――



「大型だ。防御も固い」
「うん……でも私とフェイトちゃんの二人なら」

 かつて交わした憶えのある言葉を奇しくも今再び交わしあい、なのはとフェイトはそれぞれ構えるレインジングハートとバルディッシュの矛先を標的へと向ける。
 チャンスは一度きり。これで押し切れなければ後はない。本当に負けだ。
 だが彼女たちの表情には、不思議と焦りや不安の類はない。
 当然だ。だって一緒に戦ってくれるのは他の誰よりも信頼できる――

「――いくよ、なのは!」
「――うん、フェイトちゃん!」

 先に仕掛けたのはフェイト。三発のカートリッジロードと同時、先端に集束した雷撃を全力で解き放つ。

「サンダァァァ……スマッシャァァァァアアアアアアアアア!!」

 黄金の雷撃。それは狙い違わずカドゥケウスへの頭部に迫り――

「やめろ……やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 割り込むように現れた冥王が展開する障壁が、それをさせじと全力で受け止める。
 驚くフェイト。そして防御ごと撃ち抜くべく更なる魔力を込めるも、流石に相手も次元世界屈指の巨魁。猛然と展開する障壁はそれを撃ち砕かれんと必死に踏ん張る。
 ベストコンディションのフェイトならいざ知らず、今の彼女は消耗激しい重傷の身。余力の総てを振り絞ろうと足掻くも、それでも貫けない。
 ――そう、彼女一人だけならば。
 だが――

「ディバィィィン……バスタァァァァァアアアアアアアアア!!」

 彼女は一人ではない。
 肩を並べ、一緒に戦ってくれる仲間が、友がいる。
 全力を振り絞る高町なのはの加勢。桜色の砲撃がフェイトの黄金の雷撃と並行するように合わさって、冥王の障壁へと迫る。

「おのれぇぇ……ッ……おのれぇぇぇぇッ!!」

 亀裂が走る冥王の障壁。
 それでも尚、諦めることなく弾き返そうと迫る執念は、並々ならぬものである。
 だがそれでも――

 想いの強さならば、決して彼女たちも負けてはいない。

 否、むしろ……

「なぁ……にぃ……ッ!?」

907リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2011/05/14(土) 21:23:04 ID:BVHKn/D.

 ありえぬと押されるように段々と亀裂が致命的になっていく冥王の障壁。
 Sランクレベルの砲撃を二つ同時に相手取る驚異的なその力も……だがやはり、それはたった一人のものに過ぎない。
 己を唯一絶対の神、そう信じて疑わぬ、他者を見下し道具のように利用するだけのただ一人の王。
 けれど相手取る彼女たちは違う。そう、二人。互いを信じ合える強い絆で繋がった仲間であり友である二人だ。
 それは例え個々の力において冥王に劣ろうと、

「なのは……ッ……行くよッ!」
「うんッ……せぇぇぇの――――ッ!!」

 二人束ねたその力なら、決して冥王を相手にすら劣るものではない。
 その事実を証明するように、黄金と桜色は合わさりあい、遂には巨大な極光となって冥王の障壁を穿つ。
 最後に信じられぬと冥王が目を見開いたのは、いったい如何なる理由でか。
 己が絶対と謳ったはずの力が破れたことか?
 取るにも足らぬと捨て置いた相手にこうして破れたことか?
 或いは――

「認めん……認めんぞぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」

 このような結末、敗北など断じて認めん。
 そう叫びながらも、そのまま極光の渦へと貫かれ、背後の最高傑作たる被造物諸共に、冥王は吹き飛ばされた。



 飛竜のブーストを用いたサイファーでの猛攻。
 そしてなのはとフェイトの二人によるSランクレベルの集束砲撃。
 弱点たる頭部にあらんかぎりのダメージを与えられたカドゥケウスは――

「―――――――――――――!!!」

 生物として叫びにもならない……しかし明確な絶叫を上げながら、遂にその頭部が砕け散る。

「……余のカドゥケウスが……星への道が………」

 中枢を司っていた頭部を破壊され、機能停止へと陥ったカドゥケウスはそのままその異形の巨体を制御を失ったように虚数空間への海へと沈めていく。
 同じように砲撃で吹き飛ばされながら、外縁部に辛うじて引っかかりその場にしがみ付いていたグランドマスターは、そんな絶望の呟きを漏らしながら最高傑作の沈没を呆然と見ている他になかった。
 神へ至る……そのために必要だったはずの最後の鍵。次元世界を制覇するために創り上げた無敵の生物兵器。
 それが無残にも敗れ、撃ち砕かれていく。
 その光景は冥王自身の二千年にも及んだ見果てぬ夢の終わりでもあり。

「貴様らにそんな玩具は必要ない」

 その明確な幕引きを実行すべく、今死神がここまでやって来ていた。



 振り返るグランドマスター。
 絶望と恐怖と憤怒と憎悪……混沌とした感情の渦と彩られた老獪の視線が捉えたのは一人の男。
 ゆっくりと歩くような速度で絶死を告げる死神の鎌を構えながら近づいてくる暗殺者。

「飛竜……ッ!?」

 男の名を呼ぶ冥王のその声には、余人には凡そ測り知れぬ混沌とした感情が込められていた。

908リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2011/05/14(土) 21:24:15 ID:BVHKn/D.
 グランドマスターの脳裏に瞬間的に過ぎったのはある一つの光景。
 “今”ではない“かつて”。
 同じようにこの場所で。
 一つの終止符を打ったはずの戦いがあった。
 その時、冥王は確かにそれに勝利した。その結果を持って今を創り上げ、不完全ではあるが神の座へと至ったのだ。
 憶えている……ああ、憶えている。
 忘れない。忘れるものか。
 あの光景を。あの勝利を。あの男を――――!
 今でも勝利の愉悦と、そして相反する消し去れぬ恐怖と共にハッキリと憶えていた。
 故に――

「貴様は本当に……“あの”飛竜なのか?」

 問い質さなければならない。ハッキリさせなければならない。
 あの日の勝利は、あの日の栄光は。
 本当に己を永遠の神として祝福するものであったのか……

「二千年の昔。余の前へ立ち塞がった……」

 飛竜の歩みは止まらない。
 歩みながら鋭利に絞り、研ぎ澄まされていく殺気も。
 何一つ窺え知れないその感情を消し去った眼は、何も告げることはなく――

「あの時果たせなかった任務を果たすため、今ここで余を殺そうというのか――!?」



 ――ただ……一閃!



 己が身体を両断する刃の感覚。
 二千年前に跳ね除けたはずのそれが、今回遂に逃れられなかったことを冥王は悟った。
 言葉にならぬ呻きを搾り出しながら、それでもグランドマスターは残る執念で己を滅ぼした怨敵へと手を伸ばそうとするも……

 しかし、それは届くことなく。


「飛竜より本部へ、任務――――完了」


 神の頂に上り損ねた魔人がその生涯最期に聞いた言葉は、二千年越しの達成を告げる宿敵の総てを終わらせる呟きだった。



以上、投下終了
後はエピローグというか後日談というか、そういうのが少しだけで終わりです。
短編ssなんだからこんなに長くしてどうすんだって話ですが……兎に角、次で終わりです。
それでは、また

909魔法少女リリカル名無し:2011/05/20(金) 12:23:53 ID:o2X7CKBE
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910FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 22:58:03 ID:Snuhsig.
投下中にさるさんを食らってしまいました。
申し訳ありませんが、代理投下をお願いいたします。

911FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 22:58:37 ID:Snuhsig.
……ここは、何処だ。
 アイクは真っ先にそう思った。何せ、自分が立っているのは真っ暗な森の中。

 少しづつ、記憶がはっきりしてきた。確か、ここは親父と漆黒の騎士が戦った、因縁の―――――

そこまで思い出した瞬間、重苦しい金属音が聞こえてきた。
 まるで、これからがショーの始まりだと言わんばかりの、鈍い音が。
 アイクはその音に反応し、音のした方へと駆け出していく。

 まさか、自分の考えていることが正しいとしたら―――

 アイクは無我夢中で森の中を駆けていく。
 あの悪夢を繰り返さぬために。大切な人が奪われる前に。



 アイクがたどり着いた場所は、すでに戦場と化していた。
 父、グレイルと漆黒の騎士が剣と斧をぶつけあっている。
 グレイルがどれほど斧をぶつけようと躍起になっても、漆黒の騎士にはかすりもしなかった。

 誰の目から見ても、グレイルは押されていた。かつての力、かつて使っていた武器を失い、「老い」が今のグレイルを見るも無残な姿に変えたのだ。

跪き、乱れた息を整えるグレイル。そんな彼に、漆黒の騎士は先ほどまで使っていた神剣「ラグネル」を投げて、グレイルの前に突き刺した。

「…何のつもりだ。」

「貴殿との戦いを楽しみにしていた。まともな武器で手合わせ願いたい。」

そう伝え、腰に差してあったラグネルと瓜二つの剣、神剣「エタルド」を抜く。
そして、グレイルに突きつける。

「…神騎将、ガウェイン殿!!!!」

912FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 22:59:35 ID:Snuhsig.
その名はアイクが聞いたこともない名だった。
 その名は、かつてグレイルがデイン王国に勤めていたころの二つ名。

 デインを抜けた今となっては、その名を知る者はほぼいないと思われていた。

 そんな、ほぼ機密事項扱いにも等しい名を知り、超人的な剣の腕を持つ。

 その男が、この戦いを楽しみにしている、と言った。
 それほどまでに、アイクの父親は強かったのだ。

「…昔、そんな名で呼ばれたこともあったな。」
 ラグネルを地面から引き抜く。

「だが…」
と続け、ラグネルを投げ返す。

「その名はとうの昔に捨てた。今の相棒は…これだ。」
ガウェイン、いや、グレイルはこの世でたった一つの斧、「ウルヴァン」を構えなおす。

だが、その言葉を発した瞬間にグレイルは死を覚悟するべきであった。
騎士にとって名を捨てるということは、それまでの自分、それまでの戦いのすべてを否定することになるのだから。

そんなことを思いつつ、漆黒の騎士は、

「…死ぬ気ですか。」
 と冷たく言い放つが、グレイルはそんなことは気にしていなかった。
 そして、次に彼の口から出た言葉は意外なものだった。

「…その声、覚えているぞ。たった10数年で師であるこのわしを追いぬいたつもりか?…フン、若造が…」

 さっきまで昔を懐かしむ表情が、突然こわばる。
 神騎将としての本能が目覚めたのか、それともただ単にキレただけか。

「これでも、食らうがいい!!」

913FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:00:05 ID:Snuhsig.
グレイルが斧を持って突進する。

 今思えば、これが父を救う唯一のチャンスだったかもしれない。

だが、アイクは戸惑っていた。

 今ここで出ていけば、確実に殺される。要するに、死ぬのが恐かったのだ。

 だが、ここで躊躇っていればグレイルが死ぬ。

 命を賭して身内を守るか、それとも未来を生きるために今ここで父を見殺しにするか。
 それは、非常に残酷な問いだった。

(俺は…)

 腰に差してある剣に手をかける。だが、抜くことができない。
 自分の命と他人の命を天秤にかけるには、このころのアイクは幼すぎた。

 そして、答えを出せぬまま―――静寂が訪れる。

 エタルドに貫かれ、驚愕に目を見開くグレイル。
 親父の生命は急速に失われつつあった。

「親父!!」
 アイクは父親のもとに駆け寄る。抱きとめた父親の体は、ぞっとするほど冷たかった。

 そして、そのまま二人は倒れこむ。

 そして、何処からか声が響いてきた。あの少女の声で。

「あなたは、また見殺しにするつもり…?」

914FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:02:31 ID:Snuhsig.
「ッ!!!」
 飛び起きたアイクはぐっしょりと汗をかいていた。
 トラウマの記憶をリアルに、そして鮮やかに思い出した自分に対して舌打ちをする。

 原因は言うまでもなく、先日ルーテシアから言われた言葉だ。

「あなたはまた見殺しにするつもり…?」

 頭の中でその声がはっきりとリピートされる。
 本日のアイクの寝ざめは、最悪のようだった。



第14章「罪の意識」

 そのころ、教会ではちょっとした事件が起きていた。
 それは、先日保護した少女の姿が無い、というものであった。

「状況は?」
 なのはが状況をシャッハから聞き出す。

 なんでも、検査の合間に係員の目を盗んで脱走したとか。
 「ただの」少女ならそこまで問題は無いのだが、それならば係員が退避したり魔法の感知をするわけがない。

 魔力が十分にある(といっても、子供のレベルでそれなりの量である)ので、もしかしたら、の状況を考えて聖王教会は実質閉鎖状態にあった。

「早く見つかるといいですけど…」
 シャッハがつぶやく。
 実際、ここら一帯は隠れることができるようなものはほとんど何もないので、楽と言えば楽である。
「では、手分けして探しましょう!」
 なのはのその一言を合図に、なのはとシャッハ、そして運転役でついてきたシグナムは少女を探しに行った。

 案の定、一番最初に見つけたのはなのはだった。
 だが、幸か不幸か懐いてしまった。

 それもそうだろう。少女が怯えているときに優しい女性が手を差し伸べる。
 それだけで、子供というものは懐いてしまうのだ。…もっとも、それに加えて外見が良ければ、の話だが。

915FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:04:53 ID:Snuhsig.
その少女は、名前をヴィヴィオと名乗った。そして、母を探していることも。

 それを見かねて、起動六課まで連れてきて、フォワード陣に相手をしてもらおうという魂胆だったが、それはいささか傲慢だったようだ。

「うぇぇええーーーん!!行っちゃやだーーーー!!」

 駄々っ子のように(というかむしろすでに駄々っ子である)泣き叫ぶヴィヴィオ。
 その様子をモニターしていたフェイトとはやてが、なのはとフォワード陣の所にやってきた。

 無論、アイクとセネリオもいたのだが、二人はあえてヴィヴィオに近づかないでいた。
 それを変と悟ったのか、スバルがこっそりと耳打ちする。

「アイクさん、セネリオさん、どうしてこっちに来ないんですか?」
「俺らが行ったら、泣くだろう。」
「右に同じです。」

 つまり、ゴリラの様なムキムキの筋肉を持つ男と、人見知りで冷徹な物言いしかしない人物がヴィヴィオに接したら、泣いてしまうと思ったのだ。

 と、そこになのはの声が入る。

「それじゃ、ライトニングの二人はヴィヴィオのこと、お願いね。スターズは、そろそろデスクワークの時間だから、行くよ。」

 そう言ってティアナとスバルが部屋を出ようとした時だった。

「ティアナ、少しいいか。」
「……?」
 アイクがティアナを呼びとめる。心なしか、その時のアイクの表情は迷っているような、苦しんでいるような気がした。

 その雰囲気を察したティアナは、アイクの瞳を真正面から受け止める。
 いまだに、じっと見つめられると頬が赤くなるのだが、この時ばかりはそうは言ってられなかった。

916FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:05:30 ID:Snuhsig.
「………ティアナ。仮に、自分の犯した罪が誰にも裁かれないとしたら、お前は…どうする?」

 その言葉の意味を真に理解することができるのは、あの時にルーテシアの言葉を聞いた者だけだろう。
 だが、あの言葉がもたらす苦痛と苦悩はアイクにしか理解できなかった。

 それを知ってか知らずか、ティアナが答える。
「うーん…私だったら、罪のことを忘れて生きるか、ひそかに償いながら生きると思います。」
「具体的に、どう償うんだ?」
「えと、例えば…人を殺してしまったときとかは、その人のことを忘れないようにして二度と殺人をしない…とか、です。」

 それは、果たして正しいのか。それを尋ねたかったが、神ならぬ人の身にそんな抽象的な答えが出せるわけではない。
「ありがとう、ティアナ。」

 素直にお礼を言っておく。
「いえ、どういたしまして。」
 ティアナも笑顔で返す。

 さて、と一息ついてティアナが立ち去ろうとした瞬間だった。


 ドサッ

 アイクとセネリオが倒れ始めた。
「アイクさん!?セネリオさん!」

 ティアナとエリオ、キャロが駆け寄って体を揺らすが意識はない。
 その様子をおびえた目でヴィヴィオが見つめていた

917FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:06:18 ID:Snuhsig.
(ここは…)
 暗闇の中。だが、意識がある。この感覚には覚えがあった。

(また女神ですか。)

――――――その通り。

朗らかな、しかし優雅な声でアスタテューヌが受け応えした。

――――――アイク、あなたの加護を封印しようと思って。

(封印?どういうことだ?)

――――――あなたの中に、女神の力を封じ込めるの。これで、女神の加護同士の反発は起こらないと思うけど…

(何かあるんですか?)

――――――これは、あくまでも封印。あなたがその封印を解きたいと願えば、いつでも簡単に解けてしまう、脆いもの。強い心でまたそれを封じ込めればいいんだけどね。

 そういって、アスタテューヌは女神の加護の封印を施す。

――――――これでよし。あとは、何か聞きたいこととかある?

(…罪を償うには、どうしたらいい?)

 先ほどの問いを、女神に尋ねる。その姿は、さながら懺悔のようだった。

――――――じゃあ、あなたは何の罪を許されたいの?

 穏やかな声で尋ねる。
(俺は…?)
 何を許されたいのだろうか。
 父を見殺しにしたことか。それとも、戦争で多くの命を奪ったことだろうか。
あるいは、その両方か。

(…人殺しの罪だ。)
 全てをひっくるめた、アイク自身の罪だった。

――――――…そうね。今は、まだ答えはあげられない。それは、私から与えるものではないわ。

(そうか…)

――――――でも、ヒントくらいならあげられるわ。「その罪で苦しんでいる人は、あなただけではない。」

(なんだって?)
 そう尋ねるが、それがアスタテューヌに届くことは無く、視界は光に包まれた。

918FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:07:35 ID:Snuhsig.
目覚めた場所は、先ほどのヴィヴィオ達がいた部屋だ。
 どうやら、壁にもたれかかって寝ていたようである。
「あっ!目が覚めましたか!」

 そう言って、エリオとキャロがヴィヴィオを置いて駆け寄ってくる。

「突然どうしたんですか?」
「どこか悪いところでもあるんですか!?」
 目覚めた二人に質問を浴びせる。
 その様子をおびえながらヴィヴィオが見ていた。

「…大丈夫です。ところで、あなたたちは何を?」
「え…と、なのはさんたちが、この子のことよろしくって…」

 ずいぶんと災難な話だった。
「………もしかして、それは僕たちもですか?」

 冷たい声でセネリオが聞く。
「えっと…そうしてくれると、ありがたいん、ですけど…」

 苦笑を浮かべ、冷や汗を流しながら頼み込む。特にすることも無かったので、
「まあ、いいでしょう。」
 と意外に乗り気であった。

 だが、それで彼の人見知りは治るわけもなく、アイクの見た目が変化するわけでもないので、ヴィヴィオが彼らに懐くまでに2時間の時間を有したのだった。

919FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:08:12 ID:Snuhsig.
目覚めた場所は、先ほどのヴィヴィオ達がいた部屋だ。
 どうやら、壁にもたれかかって寝ていたようである。
「あっ!目が覚めましたか!」

 そう言って、エリオとキャロがヴィヴィオを置いて駆け寄ってくる。

「突然どうしたんですか?」
「どこか悪いところでもあるんですか!?」
 目覚めた二人に質問を浴びせる。
 その様子をおびえながらヴィヴィオが見ていた。

「…大丈夫です。ところで、あなたたちは何を?」
「え…と、なのはさんたちが、この子のことよろしくって…」

 ずいぶんと災難な話だった。
「………もしかして、それは僕たちもですか?」

 冷たい声でセネリオが聞く。
「えっと…そうしてくれると、ありがたいん、ですけど…」

 苦笑を浮かべ、冷や汗を流しながら頼み込む。特にすることも無かったので、
「まあ、いいでしょう。」
 と意外に乗り気であった。

 だが、それで彼の人見知りは治るわけもなく、アイクの見た目が変化するわけでもないので、ヴィヴィオが彼らに懐くまでに2時間の時間を有したのだった。すっかり暗くなった景色に浮かぶ満月と街のネオン。
 それらをいつもの河原で眺めながらアイクは傍らにあるラグネルを握り締め、アスタテューヌが言ったことを考えていた。

―――――「その罪で苦しんでいる人は、あなただけではない。」
 冷静に考えれば、その意味はおのずと理解できた。

(俺が共に戦った人たちは、この罪を抱えているんだよな…)
 人殺しの罪を抱えて、なお生きる。誰がどこで暮らそうと、その事実は消え去ることはない。
 それでも、あいつらは生きている。
 ミカヤ、サザ、傭兵団の皆、クリミアの王宮騎士団――――
 挙げたらきりがない。
 彼らは罪と向かい合うなり、逃げるなりしているのだ。もしかしたら、答えを出していないのは自分だけではないか、と俯きながら思う。

(やはり…殺人の罪は…)
 アイクの中に一つの答えが浮かぶ。償うでもなく、逃げるでもなく。
(「死」によって償われるのか?)
 それはよくあること。多くの人を死に追いやった人物は死によって償われる。
 そんな考えが頭をよぎった瞬間だった。

「アイクさん、またここにいたんですか。」
 ティアナがやってきた。バリアジャケットを着ている姿からして、夜の訓練が終わったところだろう。

「なぜ俺がここにいると思ったんだ?」
「だって、前にもここに来たじゃないですか。」
 笑顔でそう答える。そして、アイクの隣に座る。

「まだ…悩んでるんですか?」
「俺の罪はそう簡単には消えない。そこで、償う方法を考えていてな…」
 なぜか、ティアナにはこの悩みを打ち明ける。
 心のどこかで彼女を許している証拠だった。
「俺は、「死」をもって償うべきなのか…」

920FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:09:14 ID:Snuhsig.
すみません、>>919はミスしました。
無視してください…

921FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:10:22 ID:Snuhsig.
 すっかり暗くなった景色に浮かぶ満月と街のネオン。
 それらをいつもの河原で眺めながらアイクは傍らにあるラグネルを握り締め、アスタテューヌが言ったことを考えていた。

―――――「その罪で苦しんでいる人は、あなただけではない。」
 冷静に考えれば、その意味はおのずと理解できた。

(俺が共に戦った人たちは、この罪を抱えているんだよな…)
 人殺しの罪を抱えて、なお生きる。誰がどこで暮らそうと、その事実は消え去ることはない。
 それでも、あいつらは生きている。
 ミカヤ、サザ、傭兵団の皆、クリミアの王宮騎士団――――
 挙げたらきりがない。
 彼らは罪と向かい合うなり、逃げるなりしているのだ。もしかしたら、答えを出していないのは自分だけではないか、と俯きながら思う。

(やはり…殺人の罪は…)
 アイクの中に一つの答えが浮かぶ。償うでもなく、逃げるでもなく。
(「死」によって償われるのか?)
 それはよくあること。多くの人を死に追いやった人物は死によって償われる。
 そんな考えが頭をよぎった瞬間だった。

「アイクさん、またここにいたんですか。」
 ティアナがやってきた。バリアジャケットを着ている姿からして、夜の訓練が終わったところだろう。

「なぜ俺がここにいると思ったんだ?」
「だって、前にもここに来たじゃないですか。」
 笑顔でそう答える。そして、アイクの隣に座る。

「まだ…悩んでるんですか?」
「俺の罪はそう簡単には消えない。そこで、償う方法を考えていてな…」
 なぜか、ティアナにはこの悩みを打ち明ける。
 心のどこかで彼女を許している証拠だった。
「俺は、「死」をもって償うべきなのか…」

 その言葉に、ティアナは激怒した。
「そんなことあるわけないじゃないですか!!」
 いきなりの怒号に、アイクは目を丸くする。
「死んで償うなんて、そんな悲しいこと、言わないでください…」
 そして、涙目になっていく。

「ティアナ…」
「お願いです、死なないで…」
 どうやら、慰める立場と慰められる側が入れ変わってしまったようだ。
 アイクは、最初の方こそ驚いたものの、少しづつうれしさを感じていた。
 これまで傭兵として生きていたアイクにとって、ここまで自分の心配をしてくれることがありがたかったのだ。
 
「落ち着いたか」
「はい……」
 アイクに泣きついて、8分ほどが経過した。
「すみません…」
 顔を真っ赤にして謝るティアナ。対して、アイクは穏やかな気持ちになっていた。
「でも、とにかく死んで償うのはなしですよ?」
「わかったさ。」
 ぶっきらぼうに告げる。
 そして、戦いの中で見せる微笑とは正反対の柔らかい微笑みを浮かべた。

「ティアナ…ありがとう。」
 その言葉と微笑みを受け取り、ティアナはさらに真っ赤になる。
「はい…」
 俯きながらも、その顔はとても嬉しそうだった。



「さて、そろそろ戻るか。」
 そう言って、アイクが立ちあがる。
 それに続き、ティアナが立ちあがろうとしたところ、
「ッ…」
 ぐらり、と体が揺れる。立ちくらみだろう。
「おっと…」
 その体をアイクが抱きとめる。とっさにティアナは離れようとするが、立ちくらみが抜けきっていない。
「あ…」
「部屋まで送ってやろう。」
 そういって、ティアナをお姫様だっこする。また顔が真っ赤になったが、アイクはそんなことには気づかない。
 
 そうして送り届けられたティアナは数日の間、スバルにその手の話題でいろいろとつつかれることになるのだった。




  時は少し前にさかのぼる。


 デイン王城:王室

「サザ、ベグニオンに行くわよ。」
「ミカヤ、何を―――」
「ひとつ、確かめたいことがあるの。」

 To be continued……

922FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/05/20(金) 23:11:07 ID:Snuhsig.
以上、終了です。
本当に申し訳ありませんが、どなたかお願いいたします。

923リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:36:26 ID:dwvNoeCc
書き込み規制がされていた為、こちらに投下します。
申し訳ありませんが、どなたか代理投下して下さると助かります。

924リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:36:59 ID:dwvNoeCc
明朝、桜台登山道。。
まだ陽も昇りきっていない時刻の中、高町なのはとヴァッシュ・ザ・スタンピードは相対していた。
なのはの手中にはレイジングハート。
ヴァッシュの手中には無銘のリボルバー。
互いの手中にはそれぞれの得物が握られていた。

「いきますよ、ヴァッシュさん」
「お手柔らかに」

両者は僅か2メートル程しか離れておらず、殆ど手を伸ばせば届く距離だ。
静けさが場を包む。
僅かに汗ばんだ手でレイジングハートを握り締め、なのはが動いた。
まるで槍を扱うかのようにレイジングハートをヴァッシュへと突き立てる。

―――カチン

が、レイジングハートの矛先は横殴りに叩き付けられたリボルバーにより、横へと流される。
代わりとして、なのはの眼前へと突き立てられるリボルバーの銃口。
なのはは体勢を整え、再度レイジングハートを振るう。
金属音が鳴り、今度はリボルバーが横へと流れた。
そこからは断続的に金属音が鳴り続ける。
カチカチカチと、レイジングハートとリボルバーとが火花を散らし、互いの射線を奪い合う。
小気味よいテンポで繰り広げられる応酬は、とてもゆったりとしたもの。
まるで舞踊の如く緩やかで、だが本人からすれば全力全開の攻防が、一定のリズムで続いていく。
なのはの額に雫が溜まり、足元へと垂れ落ちる。
流れる汗はそのつぶらな瞳にも侵入するが、なのはは拭う事すらしようとしない。
高まる集中力が、行動を一本化させていた。


それは近接戦闘をイメージした訓練。
なのはの苦手とする、近接の間合いでの砲撃戦の訓練であった。
近接戦闘での『砲撃を当てる方法』をなのは風に考えた結果が、この訓練である。
相手の武器を払いのけて射線を取り、砲撃を撃ち込む。
先の模擬戦でヴァッシュがなのはにしてみせた攻防が、発案の切欠となっていた。
とはいえ、近接戦を不得手とするなのはには、この訓練は過酷の一言。
中距離、遠距離での訓練は順調な経過を見せているにも関わらず、近距離を主とするこの訓練は遅々として進展していなかった。

「はい、ここまで。なかなかやるようになったじゃん、なのは」

ヴァッシュの一言になのはの動きが止まる。
時間にして十分ほど続けられた射線の取り合いが、音もなく終わった。
金属音が鳴り続けていた周囲に、久方振りの静寂が舞い戻る。

「うー、何で上手くいかないんだろ。イメージではもっと早く動かせるんですけど」
「焦っても仕方無いって。こういうのは慣れと経験だよ」

滴る汗を拭いながら、なのははレイジングハートをスタンバイモードへと戻す。
紅色の宝玉と化したレイジングハートを首に掛け、ヴァッシュの方へと視線を向けた。
疲労の欠片すら見せず、飄々と笑顔を浮かべてタオルを差し出すヴァッシュがそこにいた。
差し出したタオルを受け取り、更に汗を拭うなのは。
動作による疲労というより、極度の集中状態からの疲労が主といったところか。

「それに相当よくなってきてると思うよ。訓練を始めてまだ何日と経ってないんだ。これだけできりゃあ凄いもんさ」

ヴァッシュの言葉に偽りはなかった。
あの模擬戦から数日しか経過していない今、それでも目に見える成果が上がっているだけでも驚嘆に値する。
天才の一言では語りきれない才覚が眼前の少女には眠っている。
そうヴァッシュは確信していた。

「そうですか? そう言われると嬉しいですけど……ヴィータちゃん達がいつ現れるか分からないからなぁ」

なのはは、守護騎士達を止める力が欲しいと言っていた。
世界に崩壊をもたらす魔導書・『闇の書』。
『闇の書』を完成させる為に活動する守護騎士達。
守護騎士達の活動は世界の崩壊をもたらし、数多の命を呑み込んでいく事となる。
そんな守護騎士達を、止める。
倒すでも、殺すでもなく、止める。
心中に宿る優しさが、その言葉を選択させたのだろう。

925リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:37:34 ID:dwvNoeCc
「……最近は探知にも引っかからないしね。蒐集活動もどうなってる事やら」

しれっと語りながらも、ヴァッシュはなのはに虚言を飛ばした。
結局、ヴァッシュと守護騎士達との繋がりも断裂してはいない。
相変わらず敵意まるだしの守護騎士達だが、実質弱味を握られている現状ではヴァッシュを無視する事ができない。
何度か蒐集活動に参加し、それなりの戦果はあげている。
どさくさ紛れに攻撃される事も多々あったが、そこら辺はヴァッシュにとって慣れた物。
飄々と受け流して無事に帰還を果たしていた。

「……ヴァッシュさんは、どうしてヴィータちゃん達が『闇の書』の完成を目指しているんだと思います?」

ボンヤリと道場を眺めていたヴァッシュへと、なのはが唐突に問い掛けた。
守護騎士達の戦う理由、『闇の書』を完成させたがる理由。
ヴァッシュはその問いの答えを知っていた。
八神はやて。
それが守護騎士達の戦う理由にして、全てであった。
強大な力を持つ管理局と対立してでも、過酷な蒐集活動をこなしてでも、救いたい存在。
守護騎士達には引けない理由がある。
そして、引けない理由はなのは達にも、管理局にもある。
ヴァッシュはそのどちらの事情も知っていた。

「どうしても引けない理由が、あるんだと思う。彼女達の覚悟は相当なものだ。そりゃもう世界を敵に回す覚悟だってあるだろうね」
「ヴァッシュさんも……そう思いますか」

こう見えてなのはは中々に鋭いところがある。
薄々、守護騎士達の覚悟の度合いも察していたのだろう。
顔を俯かせながら、少し物思いにふけるなのは。
なのはが何を思考しているのか、何となくではあるが、ヴァッシュにも予測がつく。

「世界を敵に回してでも守りたいものって、何だと思います?」
「……難しい質問だね」
「私も、そう思います。でもヴィータちゃん達の気持ちを知るには必要な事だと思って」
「世界を敵に回してでも、か……」

世界を敵に回してでもという言葉に、ヴァッシュはふと仇敵であるナイブスの姿を思い出す。
世界を敵に回して同種の解放を目指す男。
ナイブスはこの世界に於いても人類の滅亡を望んでいる。
ヴァッシュにすら分からない強大な力を使用して、そして世界を滅ぼす力を持つ『闇の書』を利用して、人類を根絶やしにしようとしている。
絶対に止めなければいけない敵であった。

「質問の答え、考え付きました?」
「そうだね……僕だったら、できるだけ誰とも対立しないような道を目指したいな。守りたい人も守れて、世界も敵に回さないような道をね」
「それが出来なかったらって、前提があっての話なんですけど。……でも、ヴァッシュさんらしいかも」
「そうかい? なのはだって同じ道を目指すと思うよ」
「そうですかね?」
「そうさ」

闇の書、八神はやて、守護騎士、ナイブス、時空管理局。
様々な要因が組み合わさって引き起こされた今回の事件。
世界の滅亡を賭けた、余りに大規模な戦い。
あの砂の惑星で繰り広げられた銃撃戦とは、何もかもが違う。
しかし、ヴァッシュは誰も死なない魔法のような解決を望む。
誰もが幸福となる奇跡のような解決を。

「……なのはは、守護騎士達が戦う理由を知りたいかい?」

朝日が差し込み始めた道場にて、ヴァッシュはなのはへと視線を向けて問い掛けた。

「知りたいです。まずは話を聞かなくちゃ、話を聞いて貰わなくちゃ、何も始まらないと思うから」

問い掛けになのはは微塵の迷いもなく答えた。
紡がれた答えに、ヴァッシュは笑顔を浮かべる。

「話を聞かなくちゃ、聞いて貰わなくちゃ、か。うん、そうだ。そうだよ、なのは」

ヴァッシュはなのはの言葉を嬉しそうに反唱し、立ち上がった。
何処か晴れ晴れとした表情でヴァッシュはなのはに振り返る。

「今日の放課後、またここにに来てくれないか。大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「そうだな、出来ればフェイトも連れてきて欲しいな。大事な……本当に大事な話があるんだ。必ず来てくれ」
「えと、分かりました」

ヴァッシュはそう言うと練習場から去っていった。

926リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:38:44 ID:dwvNoeCc
「大事な話かあ。何だろう?」

赤色のコートを朝風にたなびかせて歩き去るその背中を見詰めながら、なのはは笑顔で呟いた。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
優しく、お調子者で飄々としていて、でも数え切れない傷を心身に負ってきた男。
なのはにとってヴァッシュは憧れに近い存在であり、そして守ってあげたい人の一人であった。
とある世界にて深い深い悲しみを背負い続けてきたヴァッシュ。
とある世界にて最強のガンマンとして君臨し続けたヴァッシュ。
その全てが、話に聞いたに過ぎない。
実際にヴァッシュがどのような生活を送ってきたのか、なのはは見たこともないし、想像するにも限界がある。
でも、分かる事だってある。
ヴァッシュが傷ついているという事実だけは、なのはにも理解できていた。
初めて出会った時のボロボロな様子、時折見せる暗く儚げな表情、そして―――ある一定のライン以上に他人を踏み込ませる事のない心。
なのはは、気が付いていた。

「……もっと人を頼っても良いんですよ、ヴァッシュさん」

呟きは誰に聞こえる事もなく消えていった。
大事な話とやらに僅かに心を踊らせながら、一抹の寂しさに心をくすぶらせながら、なのはは家路に付いた。







シグナムは八神家のソファに腰掛けて、暗闇に染められた世界を眺めていた。
深夜の蒐集活動を終えたばかりという事もあって、身体は膨大な疲労感に包まれている。
だというのに、眠れない。
疲労に満ちた身体とは裏腹に、意識は鮮明に覚醒していた。

(闇の書の完成が世界を滅ぼす……か……)

シグナムは考えていた。
数日前、ヴァッシュから伝えられた言葉。
闇の書が完成すれば世界を滅ぼしかねない力が暴走するという事。
主の死と共に幾数の転生を繰り返してきた『闇の書』。
確かにこれまでの主の死が如何なるものだったかの記憶は薄い。
『闇の書』の覚醒の時は覚えていれど、それ以上の記憶があやふやなのだ。
その空白の記憶が疑惑に信憑性を持たせる。
信じられない、信じたくない言葉であった。

「シグナム、起きてたのかよ」

思考に没頭しているシグナムに声が投げ掛けられた。
声のする方に視線を飛ばすと、そこには片手にうさぎのぬいぐるみを握った鉄槌の騎士の姿があった。
彼女も蒐集活動から帰還したばかりだというのに、寝付けずにいるようであった。
幼い顔には僅かにくまが浮いていた。

「……早めに寝ておけ。日中の生活に支障をきたすぞ」
「人のこと言えねーだろ。シグナムも早く寝ろよ」

ヴィータは言いながら、シグナムの横へと腰掛ける。
ポスン、という音が響きソファが僅かに沈んだ。
隣に座る、という事は何らかの会話でも求めてきたのだろうが、ヴィータが口を開く様子はない。
ヴィータは主から貰ったぬいぐるみを抱き締めながら、険しい顔で床を睨んでいた。
何かを考えているようであった。
沈黙が続く。
ヴィータは視線を下に向け、シグナムは視線を上に向け、沈黙する。

「……なぁ」

どれ程の時間が経過したのであろうか、ヴィータがポツリと呟きを零した。
視線は動かさず、床を見詰めたままに放たれた言葉。
シグナムは無言で先を促す。
既にカーテンからは淡い朝日が差し込んできており、空は白み始めていた。

「シグナム……何か、私たちに隠し事してねえか?」

続いで出たヴィータの言葉に、シグナムの心臓が跳ね上がった。
愕然の表情で、シグナムはヴィータの方へと顔を向ける。
床を睨んで言葉を紡ぐヴィータの姿が視界に映った。

「最近、なんか変だ。落ち込んでるっていうか、ふさぎ込んでるっていうか、悩んでるっていうか……とにかく変なんだよ、シグナム」

一度動き始めた口は止まらない。
溜め込んだ想いを吐露し続ける。

927リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:39:32 ID:dwvNoeCc
「シャマルも、ザフィーラも、ナイブスも……はやてだって心配してた。あん時からだ。お前がアイツと二人きりで喋ったあの時から、何か変だ」

語尾が段々と荒がっていく。
理性の歯止めが効かなくなってきていた。

「どうしたんだよ、シグナム……どうして何も言ってくれねえんだよ!」

そして、爆発する。
シグナムへと振り返ったヴィータの顔には、怒りと悲しみがない交ぜになった不思議な表情が張り付いていた。

「私達は家族だろ。何で相談しねえんだよ、何で一人で背負い込もうとしてるんだよ!
 シグナムがアイツに何を言われたのかは分かんねーよ。でも、一人で背負い込む事はねえだろ! 少しは私達を頼ってくれよ! アタシ達はそんなに頼りねえのかよ!」

語りきったヴィータは、瞳に涙を溜めながらシグナムを睨んでいた。
その瞳をシグナムは呆然と見詰める。
再び、沈黙が流れ始める。
重い、重い、沈黙が。

「……ごめん、感情的になりすぎた」

沈黙を破ったのは、やっぱりヴィータであった。
涙の溜まった瞳を下に向け、ゴシゴシと手で擦る。
ヴィータはそれきりシグナムに背中を見せて、寝室の方へと歩き去ってしまう。
その背中に声を掛けようとして、だが掛けるべき言葉が浮かばない。
ヴァッシュから聞かされた『闇の書』の事実は、絶対に語る訳にはいかない。
真実かどうかも怪しい所だし、聞いた事でヴィータもこの苦悩を味合わう事になる。
それだけは嫌であった。
だが、此処まで自分の事を心配してくれたヴィータをこのまま見送るのは嫌であった。
何か言葉を掛けてあげたい。
だがしかし、考えれどシグナムの脳裏に気のきいた言葉は浮かばない。
沈黙のまま、ヴィータはドアノブへと手を掛ける。
そして、ドアノブを下げる。
ガチャリという音が、いやに大きく響いた。

そこで―――何かを叩くような軽い音がなった。

音はリビングの一角にある窓から聞こえたものであった。
誰かが窓を叩いている。
こんな時間に、玄関からでなく裏窓の方から現れた時点で、怪しさは全開であった。
ヴィータの動きが止まり、不審気な表情で振り返る。
シグナムも警戒態勢に入り、レヴァンティンを発現させ装備する。
窓からはノックの音が鳴り続いていた。
シグナムが窓へと近付き、カーテンを引き上げる。

「や、おはよう」

其処には、鮮やかな金髪を天へとトンがらせた男・ヴァッシュがいた。
片手を上げ、親しげに挨拶を飛ばす男に、思わずシグナムの理性が吹き飛びかける。
このまま窓越しから、斬り伏せてしまいたかった。
それだけで頭痛の種の半分は消化できるように思う。

「……何の用だよ」

ヴァッシュへと声を投げたのはヴィータであった。
嫌悪の感情を隠そうともせず、敵意に満ちた瞳でヴァッシュを見ている。
手中の人形には指が食い込んでいた。

「伝えたいことがあってね」

ヴァッシュの視線がヴィータからシグナムへと移る。
シグナムの姿を見たヴァッシュは一瞬、目を細めた。

「……夕方、そうだな4時位にでも桜台の登山道にある広場へ来てくれ。この事はシグナムとヴィータとだけの秘密にして欲しい。待ち合わせにも二人できてくれ」

その時ヴァッシュの瞳に宿った感情が如何なるものなのか、相対しているシグナムにだけは理解できた。
恐らくは、謝罪の念。
口には出さねど、瞳は語っていた。済まない、と。
その瞳がどうしようもなくシグナムを苛立たせる。
謝るくらいなら、知らせなければ良い。
知らねば何も苦悩せずに済んだのに。
何も苦悩せず、主の救済に専念する事ができたのに。
思わず心が沸騰する。
心中を占めるその感情は、久しく感じていない『  』であった。
レヴァンティンを握るシグナムの手が震えていた。

「頼む、大事な話があるんだ。絶対に、絶対に来てくれ」

シグナムは感情を隠そうとしなかった。
『  』を表情に張り付けて、シグナムはヴァッシュを見る。
ヴァッシュにもシグナムを占める感情がひしひしと感じ取れた。
感じ取れて尚、口を動かす。

「……頼む」

シグナムもヴィータも、返答はしなかった。
ヴァッシュも返答を期待していなかった。
ヴァッシュはそれきり無言で歩き去っていく。
二人の守護騎士を、痛いくらいの静寂が包み込んでいた。

928リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:40:10 ID:dwvNoeCc




「……やはり動き出したか」

そして、とあるビルの屋上にてナイブズが一人呟いた。
徐々に活動を始めた海鳴市。その全てを見下ろすような形でナイブズは立ち尽くしていた。
表情に感情はない。無表情でただ海鳴の街を見下ろす。
何処へ向かうのか、車を走らせる人間。
携帯で誰かと会話しながら街を歩く、スーツ姿の男。
わらわらと人々で溢れかえる。
人々は時間の経過と共に、急激な勢いで増えていく。
まるで害敵の到来に巣穴から飛び出す虫螻のようだ。
ナイブズの表情が僅かに険しくなる。

「分かっているな。先に伝えた通りに動け」

次の呟きは決して独白ではなかった。
何時の間にやらナイブズの後方には二人の男が立っていた。
男達の姿は瓜二つで、顔に装備した奇妙な仮面が印象的な男達である。
男達はナイブズの言葉に無言で頷き、蒼色の発光現象に包まれて消えた。
転移魔法であった。

「……ヴァッシュ、お前の足掻きももう終わりだ」

そしてまた、独白が続く。
人々を見下ろし、人外の種は呟く。

「知れ。そして絶望しろ」

終焉を告げる宣告がなされた。
無表情の鉄仮面は愉悦の色へ。
ナイブズは歪んだ笑みを浮かべながら、訪れる未来に思い出してを馳せていた。







同日、昼過ぎの喫茶店・翠屋。
平日という事もあってか客はまばら。
現在、そんな翠屋のレジに高町士郎は立っていた。
とはいえ客もいないので行う事はない。
クリスマスに向けてのケーキ仕込みも順風満帆で、特別昼の時間を削ってでも行わねばいけない事などなかった。
現状を端的に現すならば『暇』の一言である。
監視役の桃子も今は買い出し中だ。
客入りが激しくなる午後まではノンビリ過ごそうかと考えながら、士郎は視線を窓の外へと向ける。
そこでは箒を持った箒頭が欠伸をしながら、店先を掃除していた。
彼が高町家に来てから既に1ヶ月程が経過している。
付き合った時間はそう長くはないのに、彼は面白いほどに周囲に溶け込んでいた。
身体を傷だらけにしながらも、地獄のような世界を旅してきた男。
『人間台風』の異名で、国家予算並みの懸賞金をその首に懸けられた男。
今の彼からは想像もできない、というのが士郎の正直な感想であった。

「士郎さ〜ん、店先の掃除終わりました〜」

間の抜けた声が響く。
温和な笑顔で入店するヴァッシュが目に入った。
そんなヴァッシュに士郎はハァ、と溜め息を吐く。
思わず呆れ顔で士郎は口を開いていた。

「ヴァッシュ君。君、また何か思い詰めてるだろう?」

虚を突かれたヴァッシュはポカンと口を開けてその言葉を聞いていた。
そんなヴァッシュに構わず、士郎は言葉を続ける。

「君は楽観的に見えて、中々に悩み易いようだね。せっかく良い表情になったと思ったのに、最近また何かに悩んでる。今日は特に、だ」

言葉を区切り溜め息一つ。
首を左右に振って、両手を掲げる。
やれやれ、とその動作が語っていた。

「……今日、何かを決心したんだろう? 僕には何も分からないけどさ、でもアドバイスくらいは出来る。
 ―――自分が後悔しないようにすると良い、それだけさ」

そして、満面の笑みで士郎はヴァッシュに言った。
その言葉はヴァッシュの心に、どのように届いたのだろうか。
ただヴァッシュは茫然と士郎を見ていた。

「応援してるよ。全てが終わったらまた酒でも飲もう、月でも見ながらね」

ヴァッシュの表情が徐々に変化していく。
茫然に段々と感情の色が灯る。
表情を覆う感情は喜びだった。
いつもの満面の笑みとは違った、薄い薄い微笑み。
でもそれは、士郎が今まで見て来たヴァッシュの笑顔の中で最も中身の籠もったものに思えた。

「楽しみにしてるよ」
「僕も……楽しみにしてます。ああ、楽しみだ」

男二人の昼過ぎはこうして経過していく。
魔法少女と守護騎士との約束の時まで、あと数時間であった。

929リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:40:42 ID:dwvNoeCc




「……大丈夫、これで上手くいく筈だ」

そして、夕刻の桜台登山道。
毎朝、魔導師の練習場として活用されている場所に、ヴァッシュ・ザ・スタンピードはいた。
ベンチの一つに腰掛け、祈るように手を組みながら前方を睨む。
魔法少女と守護騎士との邂逅の場は整えた。
全てを知り合う邂逅の場。
互いの気持ちを通じ合わせ、誰もが助かる道を歩む。
八神はやても、この平穏な世界も救える、そんな魔法のような道。
それを、歩む。
魔法少女と守護騎士、全員でだ。
その第一歩、最初の邂逅を此処で成す。
ぶつかり合うだろう。苦悩もさせるだろう。明確な対立すら起こるだろう。
その道を歩むという事は苦難の連続なのかもしれない。
でも、それでも、この選択がエゴでしかないとしても―――その道を歩みたい。
それがヴァッシュ・ザ・スタンピードの選択であった。

「や、待ちかねたよ」

来訪者の登場に、逡巡と謝罪の念を胸の奥へと仕舞い込む。
ヴァッシュは朗らかな笑みを浮かべて、前を見た。
来訪者に視線を合わせて、ヴァッシュは軽い挙動で立ち上がる。
白銀の拳銃が陽光に照らされ、光った。

「来ると思ってたよ、ナイブズ」

淡い夕焼けを背に登山道から現れた者は、ナイブズであった。
人類の滅亡を夢見る、ある意味では至極純粋な心を持った男。
ヴァッシュとナイブズ、二人の人外が対峙する。

「此処でシグナム達を懐柔される訳にはいかんからな。少しの間、眠っていて貰うぞ、ヴァッシュ」
「ご自由に。俺も全力で抵抗させて貰うけどね」

返答と共にヴァッシュが拳銃を抜いた。
ナイブズも溜め息混じりに左手を掲げる。

「……考えを改めるつもりはないようだな」
「もちろん」

ナイブズの言葉にヴァッシュは笑みで応える。
ヴァッシュの言葉にナイブズは失意をもって応える。
次元を越えた世界にて対峙する二人の兄弟。
一世紀半にも及ぶ因縁に終わりを告げるべく、ヴァッシュは拳銃を握る。
此処で倒れても構わない。
この男さえ止めれば、彼女達は自らの足で先に行ける筈だ。
少なくとも高町なのははそうだ。
必ず最良の道を歩んでくれる筈だ。
そう信じられるから、ヴァッシュは拳銃を握れる。
ナイブズという底知れぬ強敵とも立ち向かえる。

「いくぞ」
「ああ―――」

自分は、命に換えても、この男を倒す。
何があろうと絶対に。
ヴァッシュは自身の右手に全ての神経を集中させる。
勝利を託すは、何千何万と引き金を引き続けてきた右腕。
数多の危機を救ってくれた早撃ちに全てを賭ける。


そして、ヴァッシュは右腕を動かそうとし、


「―――だが、今日お前の相手をするのは俺じゃあない」


直前、光が発生した。
白色の光の輪っか。
唐突に出現した光の輪が、ヴァッシュの四肢を空間に縫い付ける。
驚愕に染まった顔で見詰めるヴァッシュに、ナイブズは一言だけ告げた。

「眠っていろ、ヴァッシュ」

バインドから逃れようと必死に身体を動かすヴァッシュへと、衝撃が走った。
後方からの一撃であった。
身体の芯から力を抜き取られるような薄気味悪い感覚が、ヴァッシュを襲う。
脱力と共に意識が遠のいていく。
薄れる意識の中でヴァッシュは見た。
身体を貫通したかのように生えたる誰かの右腕と、右腕が握り締める光球。
この光景をヴァッシュは見た事がある。
闇の書の蒐集活動だ。


「目を覚ました時、そこは既に―――」


首を回し後方を覗くと、其処には見知らぬ男が二人いた。
顔に被った仮面が印象的な、瓜二つな二人組の男。
その内の一人が伸ばした手が、リンカーコアを抜き取っていた。


「―――終わりの始まりだ」

ヴァッシュは漆黒に染まる意識の中、ナイブズの言葉を聞いた。
彼の言葉通り、終わりの始まりが、始まった。

930リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY:2011/05/22(日) 00:42:58 ID:dwvNoeCc
これにて投下終了です。
タイトルは「始まりの終わり」です。
前回はご指摘ありがとうございました。
細かい設定がちょくちょく抜けちゃいますね…気をつけるようにします。



申し訳ありませんが、どなたか代理投下をお願いします。




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