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本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ

1魔法少女リリカル名無し:2009/01/08(木) 00:01:53 ID:Qx6d1OZc
「書き込めないの!?これ、書き込めないの!?ねぇ!本スレ!本スレ書き込めない!?」
「あぁ、書き込めないよ」
「本当!?OCN規制なの!?ODNじゃない!?」
「あぁ、OCNだから書き込めないよ」
「そうかぁ!僕OCNだから!OCNだからすぐ規制されるから!」
「そうだね。規制されるね」



捻りが無いとか言うな

2 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:02:37 ID:Qx6d1OZc
ドガン



無機質な金属へと変化した己の腕を確認して慌てて鉄塔内部へと腕を引き戻す。

「まんまと罠にはまったというわけか……」

あくまでも表情を崩さずにザフィーラはこの鉄塔から出る方法を思案することにした。
まず、最初に思いついたのは先程の三人達以外は出たら金属化するという可能性。
これは即座に否定された。
万が一無関係な人間が巻き込まれたらどうする気だったのか?
それに、その前提だった場合はわざわざトリモチで足止めする必要は無い。

「ならば……」

次に考えたのは、最後の一人は出れないという条件だった。
ザフィーラはこの仮説と、先程の三人の動きを照らし合わせてみる。
矛盾は無い。だが、確証も持てないので仲間を使って実験する気も起こらない。
仲間に余計な心配の種を増やして戦闘に集中できなくさせるのも悪いので念話で伝えたりもしない。
八方塞となり仕方がないのでザフィーラは考えるのを止め、魔力の回復に努めることにした。


===


結論から言おう。ザフィーラの推測通り、この鉄塔から外界に出るための条件は他に人が鉄塔内にいることだ。
仗助はトラサルディーから噴上とミキタカに電話をし、鉄塔へと行ってもらい本来の主、鋼田一豊大にコッソリと話をつけたわけだ。
ちなみに一人で十分のはずの鉄塔に、自身の体をカモフラージュできるミキタカの他に噴上裕也まで入れた理由は
ミキタカと共に本体の場所を隠して安全にハイウェイ・スターを操作させるためだった。
スタンド使いの存在を探知できるとはいっても、戦闘中にまでは把握できないだろう。
仗助の読みは見事に的中し、二人の存在は最後の最後まで把握されずに終わったのだった。


===



「で、仗助。この腕の持ち主も追跡するんだろ?」
「あぁ、おそらくこれが無くなると由花子みたいにスタンドを使えなくなるみてぇだからよ〜。
 早いこと何とかしてくれねぇとヤベェ。こういうときほどお前のスタンドが頼りになるときはねぇよ」
「仗助さん。わたしにも何かできることはありませんか?」
「ミキタカ。悪いがお前は康一と億泰のサポートに行ってくれ。
 ハイウェイ・スターが追跡に回って戦力が落ちるのは明らかだからな」

鉄塔から少し離れた場所に仗助は腰を下ろして、今後の役割分担を決める。
息が荒くなりながらも仗助の判断力は依然健在。
自分の腹から生えている腕の衣服の一部をクレイジー・Dの腕力で引きちぎり布の欠片を得る。
普通の衣服とは明らかに異なる丈夫さを持った素材に戸惑いつつも、それを噴上の手に渡した。
噴上は即座に、布切れを鼻に当てて対象者の“臭い”を覚える。
猟犬以上の嗅覚を持った彼にとって、これだけで相手の存在を捉えたも同然。
シグナム、ヴィータとの戦闘中だったハイウェイ・スターを自分の下へとワープさせて新しい対象を探し始める。
今、足跡の形をしたハンターと変身能力を持った宇宙人がそれぞれの目的地へと走り出した。



====

3 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:03:25 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

4 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:04:19 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

5 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:05:29 ID:Qx6d1OZc
ズキュン
     
    ズキュン

再びやってきた何かが体に食い込む感覚と、体内のエネルギーが吸い取られていく感触。
無作為にワープしたのに何故ここまで追跡できるのだろうか?
視覚? 聴覚? その二つでは絶対にない。
ならば魔力の追跡? しかし、バリアジャケットなどからは個人が特定できる魔力が出るはず無い。

「つまり……嗅覚ってわけですか」

そうと考えれば全て説明がつく。
が、原因が分かったところですぐに対応できるわけではない。
とは言ったものの分かった事が一つだけあった。
よくよく見れば、さっきまでいた橋は目の前にあるとまでは言わないが一応視界に入っている。
けれども足跡が彼女を見つけるまでには多少のタイムラグがあった。
つまり、鋭い嗅覚にも限界はありある程度離れれば探知できなくなるであるだろうということ。
自分たちの本拠地である東京に帰れば“これ”の追跡は止まる。
ヴォルケンリッターの参謀として考えれば、この状況下で取るべき行動は撤退。
自身だけならともかく、仲間の臭いまで特定されたらマズイ。

『皆さん聞こえますか……? マズイ相手が出てきました。
 詳細は後に伝えますが、各自いつもの場所に撤退してください』

念話でメンバーの三人へと撤退の意思を伝える。

『了解した、隙を作って引くとしよう』
『分かったぜシャマル』

シグナム、ヴィータからはすぐに肯定の返事が返ってきた。
しかし、ザフィーラの返事は意外な物であった。

『すまない……一旦こちらまできてくれないか?』
『……分かりました』

不吉な予感がする。
自分からゆっくりと養分が吸い取られていく中、二度目の転移魔法を行使した。
光に覆われていく自分。一瞬飛びかけた意識。
力を振り絞り完全に発動させてシャマルの姿は――――消えた。

6 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:06:32 ID:Qx6d1OZc
「すまん…」
「ええ、悪いんですが敵の追跡を受けているんで手早く終わらせてください」
「要点だけ言おう。バリアジャケットを解除して民間人の振りをしてくれ……後、悲鳴を上げてくれないか? ありったけの声で」
「分かりました」

シャマルの腕を掴んで、自身は鉄塔の外へと出て行くザフィーラ。
彼の予想通り、彼の肉体が鉄塔の一部と化すことなく、無事に脱出する事ができた。
そして彼女は大きく息を吸い込んで肺に息を溜め……。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」

辺りに響き渡る悲鳴。
急なことだったのにも関わらず彼女の演技は鬼気迫るものだった。
当然、少ししか離れていない仗助にもその声は聞こえていたわけで。

「さぁ、民間人に手を出されたくなくばこちらまで来い!」

ザフィーラの脅迫の信憑性を大きく上げることとなった。
実際は、張られた結界のせいでスタンド使いと魔法使い以外は外に締め出されたのだが彼がその事を知る由はない。
本当に一般の女性が人質にとられたのだと思ってふらつく体を引きずりながら歩いていく。
怒りの炎を瞳に宿しながら。

「よぉ。テメェがここまでゲス野郎だったら鉄塔の一部にしちまった方が世の中のためだったかもしれねぇな」
「……お前からの評価などどうでもいい。貴様がここへ来なくてはこの女が無機質な塊になるぞ?」

予想はしていた無関係の人が死ぬという最悪な事態はまのがれた。
それでも怒りが湧いてきてたまらない。
クレイジー・Dの五指が固められて、力の入れすぎにより震えだす。
しかし、この状況下ではどうやっても倒すことはできない。
無意識の内に下唇を噛み締めていた。
歯によって避けた皮膚から流れ出す血液。
そして仗助は鉄塔内へと歩みだし、見えない檻の中へと入り込んだ。
辛そうな表情にシャマルの心を罪悪感が覆うが仕方がない。

(ごめんなさい……はやてちゃんの為にここで立ち止まっててはいけないの)

心中で謝罪しつつ、シャマルは鉄塔から外に出る。
同時に現れたハイウェイ・スター。
しかし、既に転送魔法の準備はできていた。
足跡が飛び掛ってくるも、そのときは既に二人の存在はこの町から消えていた。
突如消え去った二人の姿に鉄塔内で一人呆然とする仗助。
しばらくして気が付いた。二人はグルであったのだと。
戦闘を終えた億泰と康一が傷だらけで駆け寄ってくる、噴上裕也も気が付けば鉄塔の傍に立っていた。

「俺達の……負けだな」

悔しそうに仗助は呟く。
小さいながらもその場全員に聞こえたであろう声は地面に染み込んでいった。


====

「一分一秒がおしいというのに、一ページ分すら収集できなかった……私達の完敗だ」

何処かのビルの上、苦々しげな表情でシグナムは敗北を口にした。
その声は雲ひとつ無い星空へと吸い込まれていく―――――。


====

7 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:07:19 ID:Qx6d1OZc
〜おまけ〜

本編ではシャマル追跡の際にどこかへ消えた噴上裕也。
一体彼は追跡中に何をやっていたのだろうか? 今から見せるのは彼の孤独な戦いである。


「はぁっ……はぁっ……」

規則的な呼吸をしながら人っ子一人いないアスファルト舗装の道を走る噴上裕也。
こういうとまるでランニングをしているように感じるだろう。
だが、彼の走りは明らかに全力疾走であった。
何故、皆が戦ってる最中に彼は一人走っているのだろうか?
それは彼の能力と大きく密接している。

彼の能力、ハイウェイ・スターには相手の養分を吸収するという強力無比な能力があるが、これには大きな欠陥がある。
以前は岸辺露伴の養分を一瞬にしてほぼ吸い尽くせたのだが、今回はやたらと時間がかかったこともこれに関係している。
ハイウェイ・スターの弱点。それは、自分が健康なときはエネルギーを吸収できないという事にある。
つまり、仗助たちと戦った頃は意識不明の重態だったので、非常に強力な吸引力を見せたが健康になった今では全く効果がない。
だがら噴上は自身の体からエネルギーを奪うために全力疾走を続けているのだ。

頑張れ噴上裕也! 勝利の為にあの星へと走れ!

8 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:11:58 ID:Qx6d1OZc
投下完了です、代理投下をしてくださり本当にありがとうございます

さて、康一と億泰のバトルシーンを完全に省きましたがこれは仕様です
入れるか悩んだんですが、色々とネタが浮かびすぎたりなんだりでこれだけやると今後やばいだろうとなって中止しました
二人の戦闘を楽しみにしていた方には申し訳ありません。
キングクリムゾンされた分もこの二人には頑張ってもらいます。

9 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:14:46 ID:Qx6d1OZc
あっ、言い忘れてましたが
スレの容量に気がつかずに前スレとこのスレの二つをまたいで投下してしまい申し訳ありまセンでした

10リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:39:33 ID:A8vW5jpo

お猿さんを喰らいました 以下の内容をお願いします ORZ


「願望を叶える石か、まったくつまらないほどに優れている」

 かつて何度もフェイトはジュエルシードと対峙していた。
 だが、一度としてこれほど圧倒的な差があっただろうか?
 否、否である。
 感じたことがあるとしたら、彼女の母であるプレシア・テスタロッサが次元の壁を破砕し、開放しようとした時のみ。

「もっとも効率よく、そしてもっとも暴走しやすく使うには人の身が使うということだな」

 グンッとスカリエッティは手を上げて。

「――“離れよ”」

 フェイトは離れた。
 己の意思とは無関係に――吹き飛んだ。
 撥ね飛ばされたように吹き飛んで、次の瞬間スカリエッティが手を閃かせた。
 両手の指、合わせて十本。
 魔力のワイヤーがバインド状に彼女を縛り上げる。

「くぅっ!?」

 魔力を放出し、さらにバインドブレイクの術式を脳内で構築開始するが、身体に食い込んだバインドは全く弱まらない。
 彼女の乳房を締め上げて、腰を内臓を圧迫せんと強く拘束し、その太腿は螺旋を描くように入念にワイヤーが張っていた。
 淫らな妖艶さすらも感じれる光景。
 美しい女性を捕らえたその扇情的な光景に、スカリエッティは軽く目を向けながら、パチンと胸元で輝き続ける紅い宝玉を収めてブローチの蓋を閉じて。

「……やれやれ、まだ制御するには危険のようだな。危うく、凄いことになるところだった」

「!?」

 ボソリと呟いたスカリエッティの言葉に、ゾクリとフェイトの背筋に怖気が走った。

「さて、どうするかね。まだ足掻くかね?」

「っ、私は決して諦めない!!」

 フェイトは諦めなかった。
 バインドを振り払おうと努力しながらも、ある準備を開始する。
 最後の切り札を切る覚悟を決めた。
 しかし。

「ふむ、一つ言っておくが君の行なおうとする行為を薦めないぞ」

「?」

「調査は進んでいる。どうせライオット・フォームと言うフルドライブモードがあるんだろう」

「!?」

 看破された。
 フェイトは僅かに表情が揺らぐのを自覚し、汗が額に噴き出す。

11リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:40:15 ID:A8vW5jpo
 
「一つ言っておこう。私は一発で倒れる自信がある」

「……え?」

「そのライオットフォームとやらならば多分私は一発で失神するだろう。一本でも精一杯なのに、二本も繰り出されたらそれは防げないからな」

 スカリエッティは淡々と告げて。

「ただし――君が脱出したとき、大きな犠牲を払うと思いたまえ」

 そう告げて出されたのは何の変哲も無いボタンだった。

「そ、それは?」

「なに、ただのボタンさ」

 カチッと押されると同時にモニターにフェイトの顔と全身が映り出す。
 どうやらフロア内に仕込んでいたらしいカメラからの画像。
 何の意味があるのだ? とフェイトが首を捻った瞬間だった。

「ソニックフォームとやらを使ってみるがいい。ただし」

 スカリエッティは笑って。



「脱げるぞ?」



「……え?」

「バリアジャケットの再構成はこのAMF濃度だと不可能だろう。つまり、スッパだ、全裸だ、破廉恥フォームを通り越して、ヘブン状態だ!」

 断言した。
 スカリエッティは酷く楽しそうな笑みを浮かべて。

「さあ脱出してみるがいい! その場合、ネットを通じて君の全裸姿がミッドチルダ及び次元世界中にお披露目されるのだがね!!」

「えええー!!!?」

 フェイトが絶叫にも似た悲鳴を上げる。
 そんなまさかだった。

「う、嘘。え? でもハッタリだよね。幾らなんでもAMFでバリアジャケットの構築阻害なんて、いやでも、さっきのザンバーが……」

「さて、私は用事があるので失礼するよ?」

「え? ま、まってー!!」

 てってけってーとスカリエッティは白衣の埃を払うと、歩き出した。
 向かう先はモニターの奥に隠されていた転送ポット。
 このままだと逃げられる。
 だがしかし、フェイトは迷っていた。

12リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:40:59 ID:A8vW5jpo
 
「ぜ、全裸……恥女認定? いや、でも……」

 うーん、うーんと迷う。
 己の精神的生命の継続を選択するべきか、それとも背負った願いを叶えるべきか。
 迷い、迷いながらも。

「では、さらだ!」

 転送ポットに入ろうとするスカリエッティを見て。
 彼女は覚悟を決めた。
 覚悟完了。
 さようなら、私の人生と涙を流しながら。

「し、真・ソニックフォーム!!」

 フェイトは叫んだ。
 バリアジャケットの大半を衝撃波に変換し、バインドを振り払う。
 同時に新しいバリアジャケットを構築。
 電光を全身に纏いながら、フェイトは涙を流して音速を超えて疾走し――スカリエッティの背に迫った時だった。

「どりゃー!!!」

 壁をぶち抜いて、それが飛び出したのは。

「え?」

 それは蒼い髪をした女性だった。
 両手に彼女の親友の部下がつけているのと同じデバイス――リボルバーナックルを嵌めて、怒声を張り上げて壁を貫通してきた。
 如何なる威力か。
 如何なる実力か。

「母親を舐めるなー!!」

 そう叫ぶ女性が突き破った壁の勢いのままに飛び出して。

「あ」

「え?」

「おや」

 飛び出したフェイトに、勢いよく撥ねられた。
 前方不注意だった。
 パンを咥えて、てってってどしーん! という出会いから始まる漫画チックな状態とはまるで違って、二人共大きく撥ね飛ばされる。
 片方は音速を超える物体に激突されて、もう片方は速度を追求して防御力の欠けた状態だったから。

「……結果オーライ!」

 指を立てて、スカリエッティは転送ポットに逃げ込んだ。

「あ、いたたた。何よ一体」

 その数分後、むくりと起き上がったのは陸士ジャケットを羽織った女性だった。

「い、いたたた。なんなの?」

 フェイトも起き上がる。
 パチリと目が合った。

13リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:41:31 ID:A8vW5jpo
 
「あら? 管理局の魔導師かしら?」

「え? えっと、貴方は。あ、スカリエッティ!」

「もう逃げられたわよ」

 はぁっと女性がため息を吐いた。

「所属教えてくれる? 状況がさっぱりだから」

「あ、えっと、機動六課のフェイト・T・ハラオウン執務官です」

「機動六課? 名前は聞いたことは無いけど、ミッドチルダUCATのクイント・ナカジマです」

「あ、そうなんで……え?」

 フェイトは一瞬耳を疑った。
 ファミリーネームに聞き覚えがあったからだ。
 そして、よく見れば顔にも見覚えがある。正確にはそれと良く似た顔をみたことがあった。
 誰が知ろうか。
 それは八年前、ジェイル・スカリエッティにカーボンフリーズされていたクイント・ナカジマ。
 それがつい先ほどそれを打ち砕いて、脱出してということをフェイトは知らなかった。

「それにしても、ずいぶんと破廉恥なバリアジャケットね? 流行っているの?」

「え? あ、ああ!」

 全裸!
 まっぱ!
 ヘブン状態!
 その言葉を思い出して、フェイトが慌てて胸を両手で隠した。
 のだが、そこに衣服の感触があった。

「あれ?」

 肩のむき出しになったバリアジャケット、太腿を露出させ、涼しげでもある真・ソニックフォームのバリアジャケットが其処にあった。
 裸などではなかった。

14リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:42:31 ID:A8vW5jpo
 
「だ、騙された」

 ガクッとフェイトが肩を落とした。
 そんな彼女に、クイントは肩を叩いて。

「まあ気を落とさないで。機会はまたあるから」

「は、はい」

 スルリ。
 フェイトが頷いた瞬間、変な音がした。

「え?」

 フェイトが身体を見下ろす。
 ボロボロとバリアジャケットが剥がれ落ちて――肌色が目に飛び込んできた。涼しすぎるほどに。
 そして、モニターに沢山の肌色が踊って。


「いやぁあああああああああああああ!!!!」


 フェイトの絶叫が響き渡った。

 ちなみに、後日フェイトが泣きながらネットを確認したが、一切流れていなかった。

 どうやらブラフだったらしい。





「っ、フェイトの声?」

「急ぎましょう、ヴェロッサ!」

 ずたぼろになりながらも、散らばったガジェットの群れの中を二人の男女が歩いていた。
 スーツは残骸もなく、露出した肩から血を流したヴェロッサとヘソも丸出しに、乳房も切れ込みが入ったかのようにずたぼろのシャッハが支えている。

「ああ」

 息するのも辛いように歩き出しながら、不意にヴェロッサは気付いた。
 地面が揺れている。

「震動?」

「しかも、勢いが強まって……まずい崩落するぞ!?」

 二人が慌てて駆け出そうとした時だった。
 奥から一つの人影が飛び出した。
 正確には一人の女性を背負った女性が。

「っ! フェイトさん! と、誰?」

「いいから早く逃げるわよ!」

 二人にクイントが叫ぶ。
 背中で、「ぅう、お嫁にいけないよぉ、クロノもらってぇ」と呟くフェイトがバリアジャケットを再構築した姿で俯いていた。

15リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:43:02 ID:A8vW5jpo
 
「しかし、どこに!?」

「引き返すにしても道が――」

 その時だった。
 周囲の扉を蹴破り、現れた人影があった。

「こっちだ!」

「き、君たちは!?」

 それは陸士たちだった。
 しかも、途中で行方不明になっていた面子ばかり。

「裏口ルートでなんとかやってきたんだ! それよりも逃げるぞ!!」

『応!!』

 巨大なポットを抱えた陸士たちが頷く。
 四人はそれに続いて走り出した。

 震動は限界まで達しようとしていた。






「さあ始まるぞ」

 嗤う、嗤う、男が一人。

「始めましょう、歴史の改革を」

 語る、語る、女が一人。

「聖王の揺り篭を、起動する!」

 地響きを上げて。

 大地を震撼させて。

 今日この日、世界が震えた。

 白き大いなる翼の復活に。


 さあ、物語を始めよう。

 恐ろしい物語を。

 そのクライマックスを。




 スカリエッティ拿捕大作戦 続行

 聖王の揺り篭攻略戦に移行する   ……世界の命運を頼んだぞ

16リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:44:40 ID:A8vW5jpo
投下完了です。
途中でサル規制にかかりました。本当にすみませんでした ORZ
次回から聖王の揺り篭戦になります。
ミッドチルダUCAT、クライマックス! どうぞお楽しみ下さい。
熱さも燃えも萌えもあります、頑張ります!
代理投下の方、ありがとうございましたー!


以上の代理投下をお願いします。




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