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ルナマリアとアスランってやったの? 【SS保管庫】

1名無しさん:2005/06/05(日) 18:39:23
ルナマリアとアスランってやったの? 【隠れ家】
ttp://aa5.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1114440863/

30015-1 6:2005/08/16(火) 09:45:52
20 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/06(月) 01:10:42 ID:???
 今にもシンに意見しようとしていた私を、アスランが制止した。
本当なら一番ムカついているのはアスランなのに、微動だにせずシンと向かい合う。
 何だかもう、諦めてる様な寂しそうな顔…どうしたの、アスラン?

「これは隊長殿。
 わざわざお出迎え、ありがとうございます」
「…あぁ」
「コレ、デスティニーって言うんですよ。
 あ、隊長には“ガンダム”って言った方が早いかな?
 ま、ともかくこれからは俺がこの機体で戦いますから、
 せいぜい足を引っ張らない様にしてくださいね。一応は、貴方が隊長なんですから」
「ちょっとシン、いい加減に…!」

 もう完全に頭に来た。
それなのにアスランは何も言わず、踏み出そうとする私を静かに制する。
 でも我慢にも限度がある。アスランには悪いけど、ここは私がビシッと…!

「シン」
「あ? 何ですか?」
「増長するのは勝手だが…あまり力を過信しない方がいい。
 大いなる力には、大いなる責任が伴う…これは忠告だ」
「別にそんなに増長したつもりはありませんけどねぇ。
 それに俺、もう今までの俺じゃないんですよ。
 分かります? ニュータイプなんですよ、俺。
 俺はアンタとは違う…俺はアンタみたいに、遊びで戦争やってるわけじゃありませんから」

 吐き捨てる様に。
艦長へ帰艦の挨拶があるとかで、シンはそのまま格納庫から去って行く。
残されたクルーや整備スタッフ達の何かを言いたそうな視線を掻い潜り、
私とアスランも歩き出す…別に何処に行きたいということでもないけど、此処にはもう居たくなかった。

30115-1 7:2005/08/16(火) 09:46:19
21 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/06(月) 01:12:34 ID:???
***


「最ッ低! 何よ、議長から新しい機体を貰ったからって調子に乗って!」
「…」
「アスランは止めたけど、私、我慢の限界でした!
 アイツ、アスランがどんな思いをしながらこれまで戦ってきたのか、全然分かってない!
 それなのにシンの奴…うっ…ううっ…!」

 許せなかった。
だから本当は悔しいであろうアスランの代わりに、私が涙を流す。
 あれはもう私の知ってるシンとは別人としか思えない。
フリーダムを倒した後、ううん、正確にはデストロイを倒した辺りから、あの子は狂い始めた。

「ルナ…」
「私、っ…悔しい…っ、です…!」
「…君が泣いているのは、俺のせいなんだろう?」
「アッ、アスランのせいじゃ…」
「いいんだ、その気持ちだけで」

 アスランの部屋で、私は嗚咽を漏らし続けた。
一番悔しい思いをしてるのはこの人なのに、この人のはずなのに、
それでもアスランはいつもの様に優しく抱きしめて笑いかけてくれる。
 この人は強いけど、弱い部分だってある。私がその弱い部分を支えてあげよう、って思ったばかりなのに。

「君が傷つく必要はない…シンの言ったことも、正しいところはある」
「でも…でもっ!」
「ルナは優しいな。
 君のそういうところに、俺は惹かれたのかもしれない」

30215-1 8:2005/08/16(火) 09:46:40
22 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/06(月) 01:14:25 ID:???
ムシャクシャして書いた
どうせ本編もパクリのセリフとMSばかりなので
Zネタやニュータイプを出しても別にどうってことないと思った
今でも反省はしていない

30315-4 1:2005/08/16(火) 09:47:16
531 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:02:21 ID:???
ん、時間になったんで投下してみる
今回も劇場版Zの影響が色濃い
話的には>>16-21の中編

30415-4 2:2005/08/16(火) 09:47:54
532 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:03:24 ID:???
「お前ら皆、馬鹿ばっかりだ!
 地球の重力に魂を引かれやがって…そんなんだから、いつまでも戦争を続けようとする!!!」

 果てしなき飛翔。
光の翼を展開し、戦場をデスティニーが舞う。
 運命という名の剣を与えられたシンは叫び、猛る。
目の前に立ち塞がる者全てを憎む様に、絶叫にも近い雄叫びをあげるのだ。

『何て奴だ、たかが一機のくせに!』
『あんな無茶な操縦を…本当に乗ってる奴は人間かよ!?』
『こちらの攻撃が全て読まれている…こいつ、後ろに目があるのかっ!?』

 ウィンダムやジムらの迎撃も虚しく、
デスティニーは紙一重の動きでビームをかわして攻撃を仕掛けてくる。
 前、横、後、何処にも死角は見当たらない。
何故なら、シンには総てが視えているから。だから攻撃が当たらないのだ。

「そこだぁっ!!!」

 ギュンッ!!!

『うっ、うわぁぁぁ!!!!!』

 左肩のビームブーメラン、フラッシュエッジⅡがまた1機、敵を斬り裂く。
最早、反応速度に違いがあり過ぎた。連合の兵士達は皆、恐怖に慄き、戦慄する。
フリーダムを越える、悪夢の再来…黒歴史にて語られる伝説の白いMS。
 人はかつて、それをガンダムと呼んだ。

「やっぱり馬鹿ばっかだ…出て来なけりゃ、死なずに済んだのに!」

30515-4 3:2005/08/16(火) 09:48:16
533 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:04:27 ID:???
『各機散開、とにかくあの白いMSを殲滅しろ!』

 連合艦隊にも焦りの色が見え始める。
敵はただ一機、それもまだ完成したばかりの新型。
 多勢と高をくくったのがそもそもの間違いだった…今更、悔いても仕方がないが。

『敵はガンダムだ! ガンダムを落とせ、ガンダムを!』

 あれを落とせば、間違いなくエースになれるだろう。
だが自分の命と引き換えにしてまで伝説のMSと戦える者など、
堕落しきった連合軍の中にはそういない。皆、恐れている。
 鬼神の如き活躍を見せるデスティニーと、それを駆るシン・アスカを。

『ちくしょう、舐めやがてぇ…俺がやってやる!』
『おいっ、よせビーン!』
『ゼニム曹長は黙っていてくださいっ!
 エンデュミオンの鷹のフラガ少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ!』

 功を焦った連合兵士の1人がジムで突撃する。
ビームライフルを乱射しつつ間合いを詰め、ビームサーベルを振り下ろす!
 …しかし、すでにそこにはデスティニーの姿は無かった。

『なっ、い、いない!?』
『ビーンッ、上だ!!!』
「でぇりゃあぁぁぁあぁぁぁあぁぁっ!!!!!」

 ズンッ!!!

『くはっ…』

30615-4 4:2005/08/16(火) 09:48:43
534 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:05:20 ID:???
 ジムをデスティニーのビームソード、アロンダイトが十字に切断し、爆発四散させた。
シンには視えていた、敵がどういう動きでどういう攻撃を仕掛けてくるのかが。
 最早、時さえも超越したシンにとって、連合の量産機など敵では無かったのである。

「抵抗すると無駄死にをするだけだって…何で分からないんだよ、アンタ達っ!!!」
『おのれ、よくもビーンをっ!』

 部下をシンに殺されたゼニム曹長が怒る。
他機とはカラーリングが異なるジムに搭乗した彼はすぐさまサーベルを抜き、
デスティニーに果敢にも飛び掛るのだ。結果、それが己の破滅を招くとも知らずに。

『ガンダムめぇ!』
「うおぉぉぉぉ!!!」

 一撃目は避けられた。
しかも相手のビームソードの方が大型な分、リーチはあちらの方に分があると思ってよい。
 ゼニムは連合軍の中では古株で、戦闘経験も豊富。
2年前のヤキンの戦いでも自身のパーソナルカラーで彩ったSダガーで好戦績を残している。
 この前の戦いでも自分は生き残れた、だから今度もきっと生き残れる…そう思っていた。

『素人め、間合いが遠いわっ!』

 デスティニーはソードを振り下ろす際、一気に間合いを詰めようとする傾向がある。
ゼニムはそれを見逃さす、敵の懐に斬り込んでコクピットごと貫く…という戦法を試みる。
 悔しいが、機体の性能では勝つことはできない。ならば、覚悟して臨むのみ。

『もらったぁぁぁぁ!』

 ブォンッ!!!

30715-4 5:2005/08/16(火) 09:49:04
535 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:06:01 ID:???
『ぬっ!?』

 ジムのサーベルはデスティニーのコクピットを貫く…はずだった。
だが結果としてそれが叶うことはなく、ゼニムはただ唖然とするばかり。
 何故なら、既にジムにはサーベルを持つべき腕が無かったのだから。

『ハッ…な、何だ、このプレッシャーは…!』

 刹那、ゼニムは閃光を見る。
パルマ・フィオキーナ、デスティニーの左右の手に搭載された
掌底ビーム砲(シャイニングフィンガー)がジムの腹部…ちょうどコクピットを直撃したのだ。

「お前らみたいな大人、俺が皆まとめて修正してやる!」
『まっ、まさかコイツは…いや、そうとしか考えられない!』

 魂と呼ぶべきものが肉体という器と共に消滅する瞬間、ゼニムは最期の声を発する。
死の間際には走馬灯が走る、と故人達は伝えてきたが…今がまさにそれだと彼は確信したのだ。
 ただそれが故郷に残してきた妻子の顔ではなく、月面基地配属時代に目を通した
ムーンレイス遺跡で発見された黒歴史に関する資料の記憶であることが残念ではあったが…。



『コイツは……ニュータイプだ!』


 
 煌く閃光と共に跡形も無く吹き飛ぶ、ジムの上半身。
操縦者を失い、上半身までも失った機体はゆっくりと真下の海へと下降してゆく。
 ゼニムはもうこの世にいない。だが孤独ではないはず。
言うまでもなく、彼の同僚達もこの後、彼の後を追うこととなるのだから。

30815-4 6:2005/08/16(火) 09:49:28
536 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:06:47 ID:???

***

「圧倒的じゃないか…」
「これがデスティニーの…シンのニュータイプの力…!」

 こちらはミネルバ。
ガンダムを討たんと襲い来る連合艦隊の率いるMS部隊を次々と落としてゆく
デスティニーの姿に、クルー達はただただ呆然とするばかり。
 モニタールームでそれを見ていたアスランとルナマリアもまた、
認めたくはないものの、一方的なシンの勝利に目を丸くするしかなかった。

「でも、こんなのって…」
「…ルナ?」
「こんな勝ち方、何か卑怯です…」
「……」

 以前のアスランなら、きっと同意はしなかった。
どんな力であれ、戦いに勝つことができれば良い。それが戦争なのだから。
 より強い力を求めて自分達がヘリオポリスに侵入し、4機のガンダムを奪ったことだって同じこと。
力無き者に戦う資格は無い…だったら、力を手に入れれば良い。
 シンはそれを実行しているに過ぎない…だが、やはりルナ同様に解せないのだ。

「俺も―――」
「…アスラン?」
「俺も、決めなければならないのかもしれない」

30915-4 7:2005/08/16(火) 09:49:55
537 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:07:35 ID:???

***

「艦を…降りる、って…?」
「……」
「そっ、そんな勝手、許されると思ってるんですかっ?
 いくらアスランがフェイスでも、きっと許可は出ませんよ!」
「許可が出ないなら、脱走してでも降りてみせるさ」
「…!」

 アスランの部屋。そこに私と2人きり。
結局、戦闘はシンの活躍でザフト陣営の勝利に終わった。
ミネルバもほぼ無傷、凱旋したシンが更に英雄視されたことは言うまでもない。
 …私達を見たら、何も言わずに艦長に報告に行っちゃったけど。

「本気、なんですか?」
「あぁ」

 アスランが…隊長が私にそんなことを言う。
どうして? 今までずっと一緒にやって来れて、私達、これからだって思ってたのに。
 何で急にそんなことを言い出すの? 分からない、分かんないよ…!

「…逃げるんですか」
「そう思われても仕方がないとは思ってる。
 だがデュランダル議長の思惑が怪しくなってきた以上、俺はもうこの艦にはいられない。
 …分かってくれ、ルナ。俺はアークエンジェルに―――――」
「やめてくださいっ!
 聞きたく…聞きたくありません!」

31015-4 8:2005/08/16(火) 09:50:22
538 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:08:51 ID:???
「どうして…何で、そんなこと、言うんですかぁ…!」
「結果的に君を傷つけることになるのを、俺は承知の上で言っている。
 俺だって……君と別れるのはつらい!
 仮に艦を出ることが出来ても、戦場で出会えば間違いなく俺達は敵同士になる!
 だがミネルバに居る限り、真実に辿り着くことはできない! だから…!」
「だから…逃げるんですか…?」
「―――すまない」
「っ……軟弱者!」


 パンッ!!!


「あ…」
「……」
「あっ、わ、私…そんなつもりじゃ…」

 もう何がなんだか分からない。
思わず骨折していない方の手で…私は、アスランの頬をぶってしまっていた。
 思わず、彼をぶった手を見ると…痛かった。でも、アスランはきっと、もっと痛かった!

「あの、私、アスランに非道いコト…!」
「…いや、気にしなくていい」

 私だってコーディネーターだもの、それなりに腕力はある。
案の定、我を忘れていた私が手加減をするはずもなく、アスランの頬は思い切り腫れている。
 どうしよう、こんなコト、したくてしたんじゃないよ…。

31115-4 9:2005/08/16(火) 09:50:48
539 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:09:39 ID:???
「ごめん、なさい…」
「ルナ…」
「だって、私、貴方がいなきゃ、一緒にいてくれなきゃ、私…っ!」


“難しいな”

“?”

“誰かを好きになっても、
 その相手に対してどう接すればいいのか…どうすれば喜んでくれるのか、とかさ。
 俺は昔からそういうのが苦手で、誤解されることが多かったから”

“…だから、自分から遠ざかろうとする?”

“かもしれない”

“例えアスランが遠ざかっても…私、追いかけます。
 貴方のこと追いかけて、追いかけて…絶対追いついて、捕まえちゃいますから”

“…もしそんなコトになった時は、お手柔らかに頼むよ”


 あぁ、アスランはこのことを言っていたのか。
いつか…ミネルバから離れる日が来るかもしれない、って。
 なら、私はどうすればいい?
決まってる。追いかける、って約束したもの。
 追いかけて、追いかけて、絶対追いついて、捕まえるって…。

31215-4 10:2005/08/16(火) 09:51:15
540 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:10:45 ID:???
「アスラン、私っ…私も一緒に!」
「ダメだ」
「…!」

 アスランさえ傍に居てくれれば、他には何もいらないし、欲しくない。
だからミネルバに未練なんてない。そりゃまだケガは完治してないし、足手まといになるとは思う。
 だけど、このままだと二度とアスランと会えない…会えたとしても、
今度は敵同士かもしれない、そんな言いようの無い恐怖が私を震わせる。

「君が俺と一緒に脱走なんてしたら、メイリンはどうなる?
 俺のことを考えてくれるのは嬉しいが、一人の女である前に、君は一人の姉でもあるだろう!?」
「…っ!」

 そうだ、メイリンだ。
もし私がアスランと一緒に脱走なんかしたら、あの子だって罰せられる。
 私の妹ってこともあるけど、あの子、
いつもアスランに付きまとってたし…………何で、いつも私の邪魔ばかりするの?
 メイリンさえ、あの子さえ居なければ、私はアスランと一緒に行けるのに!
いつも、いつも、いつも、いつも、あの子は私の邪魔ばかりする!
 小さい頃から私と違って甘え上手で、私のものをいつも奪っていく…!

「…ルナ?」
「あっ…」

 や、やだ。私、今…何考えてた?

「俺は行く。このままじゃ、きっと何も始まらない」
「…どうしても、行っちゃうんですね」

31315-4 11:2005/08/16(火) 09:51:41
541 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/13(月) 01:12:38 ID:???
ムシャクシャして書いた
劇場版Zはやはり面白く、なおかつ
シンをカミーユ化、ルナの心の闇みたいなものを描いてみたかった
しかもまだ続く
今は反省している

31415-2 1:2005/08/16(火) 09:52:14
114 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/06(月) 22:16:14 ID:???
「ルナ」
「あっ…」

 部屋に私と彼の小さな吐息だけが響く。
目を瞑ってるせいで見えないけど、今私の首の辺りに彼がいるのだろう。
 耳元で何か囁かれる度ゾクゾクして、身体を触れられる度ドキドキする。

「…本当に、いいんだな?」
「女の愛撫で男を奮い立たせることができるのなら、女はそれをすることもあるんですよ…」

 思い切り作り笑いだった。我ながら、かなり無理してると思う。ベルトーチカさん、ゴメンナサイ。
怖くない…って言ったら、きっと嘘。敵と戦う時の怖い、とはまた違う。何処か、胸を抉られる様な不安。
 でも、私は彼を信じてる。きっと優しくしてくれる。大丈夫、怖くなんか…ない。 

「灯り、消します…ね」
「…あぁ」

 ベッドに仰向けの体勢のまま私はそっとリモコンに手を伸ばす。
部屋の照明をOFF…次に手探りでアスランの身体を求めて、手繰り寄せる。
 …何だ、やっぱりアスランもドキドキしてたんだ。

「よ、よろしくお願いします…」
「あ、あぁ…こちらこそ」








という妄想を一瞬だけしてみた。
今は反省している。

31515-3 1:2005/08/16(火) 09:52:39
162 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/07(火) 03:31:40 ID:???
「あ、隊長! ネコですよ、ネコ」
「ひ、引っ張らないでくれよ…」

 ザラ隊長とのディオキアでの視察中(と言うよりデート)、
私は石段の上で気持ちよさそうに寝転がっている白ネコを見つけた。
 地球に来てから、初めて本物のネコを見たことになるのかしら?
プラントのネコと何処が違うのか、って聞かれたら答え様がないのだけれど…。

「あは、可愛い〜」
「ンニャ〜ォ」

 私達の気配を感じても逃げることもなく、ネコは擦り寄ってくる。
首輪がないところを見ると野良っぽいけど、ずいぶん人に慣れてるみたい。
 真っ白な毛はツヤツヤしてるし、結構身体も大きい感じ…きっと良いモノ、食べてるのねぇ。

「…君はネコ、好きなのか?」
「んー、どちらかと言うとネコ派ですよ」

 喉の辺りをくすぐってやると、気持ちよさそうに鳴くネコ。
ふわふわの毛に包まれた白いお腹をポンポンと軽くさすると、目を細めて可愛く鳴く。
 隊長から買ってもらったワンピースを着てなきゃ、抱っこしてたんだけどなぁ…。

「えい、ネコ耳モード♪」
「おいおい」

 思わずネコの尖がった両耳を指で押さえ、ドラえ○んを再現してみる。
あ、さすがに嫌がってるかな? これじゃ動物虐待よね…良い子の皆は真似しちゃダメだぞっ。 
 …やがてネコは用事を思い出したのか、私の手をすり抜けて石段を登って行ってしまう…うーん、残念。

「はぁ…行っちゃった」
「ネコにだって、都合があるさ」
「じゃあ、隊長も私の都合にもうちょっと付き合ってくれますよね?」
「…そういう約束だからな」




という妄想を寝る前にしてみた
今は反省している

31616-1 1:2005/08/16(火) 09:55:30
325 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:15:57 ID:???
|∀・)荒らしが来なければ久々にSS投下してみたい


326 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:19:48 ID:???
            (__
           r´   `〃⌒`⌒ヽ
          リ ノノ人,((`')从ノ i
          l从*゚ ヮ゚(´∀`*<.,i  SS来るってさ、やったねルナタン
            ( つ⊂   ヽ
.    ウレシイデスネ!  ヽ∩ ヽ ___ つ
                 ∪


327 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:36:51 ID:???
ん、投下してみる
今回はいつものとは違って短編だからすごい短い
久々にアスルナオンリー

31716-1 2:2005/08/16(火) 09:56:02
328 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:38:33 ID:???

「先生、ここはどうやって解けばいいんですか?」
「ん…あぁ、これは先週教えた方程式を応用すれば簡単だ」

 蒼い髪が揺れて、先生の顔がちょっとだけ私に近づく。
私が理解できるように、なるべくゆっくりと教えてくれる優しさが嬉しい。
 恋人でもない限り、きっとこの人を間近で見れるチャンスなんて滅多にない…。

「で、この数式を…聞いてるのか、ルナマリア?」
「へっ…はっ、はい! 聞いてます、聞いてます」
「…今日はここまでにしておくか?
 集中力ってのは3時間くらいが継続の限界って言うし」
「あっ…もうそんな時間、ですか?」

 先生と一緒に勉強すると、時間が経つのも忘れてしまう。
勉強が大嫌いな私が3時間近くも、各教科を解くのに必死になる理由…。
 他でも無い、先生のため。父さんが私のために雇ってくれた、彼のため。

「でも驚いたな。
 一ヶ月前の成績と比べると別人みたいじゃないか」
「先生の教え方が上手だからですよ」
「俺は基礎を教えただけさ。
 君の実力だ、誰だってやればできるってことだよ」

 アスラン・ザラ。
元ザフト所属、アカデミー主席卒業のトップエリート。
ヤキンの戦いを生き抜いた伝説のエース、それが私の先生。
退役後、まさか私なんかの家庭教師を引き受けてくれるなんて夢にも思わなかった。
 私の父さんがアスラン先生のお父さん、パトリック元議長の友達ってこともあるけど…。

31816-1 3:2005/08/16(火) 09:56:27
329 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:39:50 ID:???

「どう、アカデミーは楽しい?」
「はい、とっても。
 でも私、運動しか取り得がないから頭を使う授業があると…」
「はは、赤服ってだけでもすごいことだぞ。
 もっと自信を持てばいい、苦手なところは俺が教えてあげるから」
「先生…はいっ」

 私は赤服だ。
赤服というのはアカデミーでも成績首位数人にしか与えられない栄誉。
所謂エースという奴ね。正直、自分でも何で選ばれたのか不思議でならない…。

「さてと…じゃ、俺はそろそろ」
「あっ、もうおかえりですか?」
「何処かで夕飯でも買って帰るよ」

 ここで私はピンと来た。
どうせなら私が先生の夕飯を作ってあげるっていうのはどうかしら?
 そうだわ、チャンスは最大限に活かさなきゃ。シャア大佐もそう言ってたもの。

「ダメダメ、お金が勿体無いですよ!
 そうだ、夕飯うちで食べていってください!」
「いや、何もそこまで…」
「いつもお世話になってるんだし、たまには先生にお礼くらいしたいです!」
「わ、分かった、分かったから…」

 よーし、先生は快く了承してくれた。さて、何を作ろうかしら?
そう言えば前にロールキャベツが好きだって言ってたなぁ…よぅし。
 先生に良いトコ見せないと!

31916-1 4:2005/08/16(火) 09:57:06
330 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:40:44 ID:???

***

「それでね、そのミーアって子に付き合わされて
 半日近くもカラオケボックスに缶詰だったんですよー」
「あぁ、ラクス・クラインに似てるっていう友達?」
「友達って言うか腐れ縁って言うか…」

 ミーアに関してはあまり先生の前で話したくなかったんだけどなぁ。
アイドル似で長身でおっぱいがおっきいためか、あの子は男子によくモテる。
 が、彼女の目下のお目当ては伝説のエース、アスラン・ザラ。…私の先生だ。

「(…先生は私だけの先生なんだからっ)」

 こればかりは譲れない。
私だってアスラン・ザラに憧れてアカデミーに入ったようなもんだし、
その彼が2年前に学校を去ってしまったのは、結構ショックだった。
 でも今は彼が私の先生だもの、
これを運命と言わずして何を運命と言えばいいと思う?

「…ルナマリア?」
「あ、はい」
「ロールキャベツ、食べないの?」
「えっ…た、食べます、食べてます」

 いけない、いけない。またボーッとしてた。
もしかして先生、私のコト変な子って思ってないかしら?
 先生の前だと何かこう、ほにゃ〜っってなっちゃうのよねぇ…。

32016-1 5:2005/08/16(火) 09:57:37
331 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:42:11 ID:???

***

「それじゃ、おやすみ」
「は、はい」

 とうとうお別れの時間、次に先生に会えるのは一週間後。
あーぁ、楽しい時間って何でこんなに早く終わっちゃうんだろ。
 短いようで長い…こう言うのを一日千秋の想いって言うのかしら…。

「あ、そうだ」
「どうかしました?」
「来週、空いてる時間あるかな」
「えっ…?」
「成績アップのご褒美…になるのかな? 映画にでも行かないか。
 惑星大戦争パート3のチケット、2人分あるんだけど…」 

 惑星大戦争なら勿論知ってる。人気のSF映画シリーズだ。
因みに私はヒロインの声を担当している、マーヤ・サカモトのファンだったりする。
 えっ、てことはアレ? これって先生からのお誘い? えっ、えっ?

「予定があるなら無理にとは―――」
「全然OKですっ! あの、私もソレ、見たいなって思ってて!」

 即答。
やはり幸運の女神は私の味方だった。

「じゃ、じゃあ詳しい日取りは今度メールで連絡するから…おやすみ」
「おやすみなさい!」

 車に乗って先生は帰路に着く。見送の終わった私はドアを閉めてもドキドキしっ放し。
うわぁ…誘われちゃったよ。どうしよう、アスラン先生とデートだって。それもご褒美。
 くぅ、ミーアに思い切り自慢したい衝動を我慢しつつ、今日のところは早めに寝床に就くとしますか…。

32116-1 6:2005/08/16(火) 09:58:03
332 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/18(土) 23:44:16 ID:???
あまりムシャクシャせずに書けた
一度でいいからアスルナで家庭教師ネタを
書きつつ、中の人の話題にも触れてみたかった
て言うか「先生っ」の響きに弱かった
今も反省はしていない

32217-2 1:2005/08/16(火) 09:59:48
157 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:39:38 ID:???
俺も便乗して久々に書いてみた
またシンばっかだけど…
俺の中では凸と逃げたのはメイリンじゃなくてルナ
ってことに自動変換されている

32317-2 2:2005/08/16(火) 10:00:14
158 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:41:13 ID:???

「止せ、シン! 俺はお前と戦うつもりはない!」
『うるさい、うるさい、うるさいっ!
 アンタはもう俺達の隊長じゃない――――もう俺とアンタは仲間でもなんでもないんだ!!!』

 それぞれの思惑が交錯する。
シンのデスティニーレイのレジェンドがアスランのグフを討たんと雷雨の中、飛翔。
 反逆者を討て…それがデュランダル議長からの勅令。

『今まで散々綺麗事ばかりぬかしてたくせに!
 自分が一番正しいって顔してたくせに!
 何だよ、結局はアンタも敵だったんだ―――――敵だったんだ!!!』
「お前は議長に良いように利用されているだけだ!
 何故それに気づかない!? 気づこうとしない!
 彼のしようとしていることは平和創生の名を騙った、粛清に過ぎない!」
『アンタに何が分かる!』

 ヴゥン!!!

「くぅっ!」

 デスティニーの一刀による衝撃がグフを揺るがす。
やはりパワーがケタ違い過ぎるのか、最新型量産機のグフでさえ心もとない気がする。
 いや、デスティニーもそうだが、何よりシンの怒りと憎悪の力が恐ろしかった。

『レイは手を出すなよ!
 アイツは、アスラン・ザラは俺がやる!』
『よかろう』

32417-2 3:2005/08/16(火) 10:00:40
159 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:43:00 ID:???

「理想を追い求めても、その先にあるのは悲劇だけだぞ!」
『議長は…議長は認めてくれたんだ!
 アンタが認めてくれなかった俺の力を、あの人だけが認めてくれたんだ!』
「だから彼の尖兵となって俺を討つのか!?
 議長はお前の兵士としての力を利用したいに過ぎない!
 お前だって自分の力を正しいことに使いたいんじゃないのか!?」

 ガキッ!!!

 グフのヒートロッドが伸縮し、デスティニーを打ち据える。
性能では圧倒的にシンのデスティニーが勝る…が、何故かグフに決定打を与えることができない。
 シンが力ならアスランは経験で勝負に臨む、その差は意外に大きいものだった。

『そうだよ、俺にもっと力があれば父さんや母さんやマユを!
 ステラを助けることだって出来たんだ!
 …だから俺はニュータイプになって力を手に入れた!
 議長は言ってくれた……“ニュータイプの君こそ人類の革新たる、選ばれし者だ”ってな!』
「何が選ばれし者だ、思い上がるのも良い加減にしろ!」


“以前にも言ったことだが、君程に才能豊かな兵士はいない。
 後は迷いを断ち切る術さえ学べば…やがては最強の存在となるだろう。
 必ずやそうなると私は確信しているよ…黒歴史にて語られる伝説のニュータイプ、
 あのアムロ・レイやシャア・アズナブルをも凌ぐだろう…。”


『だから俺は…俺の力を議長と議長の理想のために使う!』
「忠告したはずだ、大いなる力には大いなる責任が伴うと! 
 お前は自分の力を過信しすぎて、何が正しくて何が間違っているかも分かっちゃいない!
 ニュータイプなんてものはまやかしだ! お前はただのコーディネーターなんだ!」
『アンタだってコーディネーターだろうに!』

32517-2 4:2005/08/16(火) 10:01:06
160 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:44:24 ID:???

―――アスラン脱走、その前後の出来事。

「(これからどうする?)」

 捜査部隊から逃れたものの、これからどうしうたものか?
何せここはザフトの重要拠点の一つ、右を見ても左を見てもザフト兵だらけ。
 つまりは孤立無援、四面楚歌、宮中孤軍。

「(できれば誰も殺したくないが…)」

 銃一丁でどこまで無殺を貫けるだろうか。
白兵戦など本当に久しぶりなので勘が鈍っていなければ良いのだが。
いや、それ以前に何処へ逃げるべきなのだろう?
 アークエンジェルと合流するのなら、やはりMSで逃げるしかないか…。

「(港の格納庫にグフがあったな)」

 ハイネが搭乗していたものの量産機だが、スペックはセイバーと変わらぬはず。
問題はどうやって港まで行くかだが…正規のルートはまず無理だ。
 警備を切り抜けながらはかなり難しい。何処も彼処も見張りだらけなのだから。


「―――動くな、アスラン・ザラ」
「っ…!?」


 しまった、背後を取られている。
背中に突きつけられた銃口の感触が妙にリアルだった。
いや…それにしてもいつの間に後ろに回られた? 警戒はしていたはずだが、こうも簡単に…。

「…って言ったら、どうします?」
「ル、ルナッ!?」

32617-2 5:2005/08/16(火) 10:01:27
161 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:45:07 ID:???

「基地中、大騒ぎですよ。
 アスランがスパイ容疑で逃走中だって…」
「な、何で君がここに?」
「勘です、何となく貴方に会えそうな気がしたから」

 ばぁんと指で銃を撃つ真似をしつつ、ルナマリアが微笑む。
…さすが、ミネルバに乗って以来、自分を見てきたことだけはあるようだ。
 あのアホ毛レーダーで行動パターンも読まれてしまったらしい。

「…やっぱり抜けるんですね、ザフト」
「議長は俺が邪魔らしいからな」
「でも議長に限ってそんなコト…」
「俺は彼の人形に成り下がるつもりはない。
 …このままでは道化だよ」 

 ルナマリアは考える。 
今、自分に何ができるだろう? 今、自分が何を彼にしてあげられるだろう?
彼が道を模索しているのなら、自分はその道を光で照らすのが道理なのかもしれない。
 例え小さな灯りであっても、ないよりはマシのはず。

「私も手伝います」
「えっ?」
「一緒に行きたい、なんてわがままは言いません。
 だから飽くまでお手伝いだけさせてください。
 …私も、アスランにはアスランが正しいと思うことをしてほしいから」
「ルナ…」

32717-2 6:2005/08/16(火) 10:01:52
162 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:47:32 ID:???

***

「誰も殺さずにですか?」
「あぁ、できればそういきたい」
「向こうは貴方を殺す気、満々ですけど?」
「それでも、だ」
 
 機銃を持って走りつつ、アスランとルナマリアは行動に出る。
ネットワーク端末に侵入して誤報で基地内を混乱させるのはアスランに
とっては造作も無いこと…さすがに、侵入した形跡ログを消す暇は無かったけれど。
 とにかく、これで港の格納庫辺りの警備は薄くなったはず。

「無事にMSを奪取できても、アークエンジェルと合流できるとは限りませんよ!」
「あの艦は沈んじゃいないさ!」
「もうっ、どーしてそんなことが言えるんですか! 
 勘ですか!? アスランもニュータイプですか!?」
「かもな」

 雨が降っているのは好都合だった。
これで軍用犬などを狩り出されたら、即座に居所を突き止められてしまう。
 アスランもルナマリアも豪雨の中をひたすらに走る。自由への疾走として。

「…見えた!」

 格納庫が見えた。
だがまだ整備スタッフがいるかもしれない。
非武装とは言え、彼らもコーディネーターなので油断はできない。

32817-2 7:2005/08/16(火) 10:02:14
163 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:48:32 ID:???

***

「な、何だ…!?」
「お、おい、何だよアンタ達!」
「動くな…動くと、この女を撃つ」

 残ってグフの調整作業をしていた技師達は突然の訪問者に驚く。
見ればザフトレッドの男が、同じくザフトレッドの少女を羽交い絞めにして
銃を頭部に突きつけているではないか…仲間割れでも起こした、と言うのか?

「そのグフをもらう」
「えっ、でも――――」

 ダンッ、ダンッ!!!

「わっ、わわっ!?」
「二度は言わない、床の次はこの女の頭だ」
「い、言う通りにしろ…こいつ、イカれてるぞ…!」
「通信器の類も全部捨てろ!」

 指示に従い、電話やらを床に置いて慌てて格納庫から飛び出すスタッフ達。
恐らくは警備班に連絡をしに行くのだろうが、逆に好都合。
 要はさっさとグフを動かしてしまえばいいのだから。

「ルナ、もういい」
「はい…」
「ごめん、君には嫌な思いをさせてしまったな」
「私がやりたいって買って出たんだし…どうってことないです」

32917-2 8:2005/08/16(火) 10:02:43
164 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:49:43 ID:???
「警備を連れて戻ってくる前に、俺は行く」
「…」
「事情を聞かれたら適当に言い訳しておけ。
 シャワーを浴びてる最中に不意を突かれた、とか何でもいい」
「もうっ、そんなマヌケな言い訳できるはずないですよ」

 グフの足元、リフトまで一緒に行って2人は見つめ合う。
互いに雨でずぶ濡れだったが、別れの時だと言うのに心は穏やかだった。
 穏やかと言うよりは…一種の諦めに近いものもあるのかもしれない。

「…行っちゃうんですね、私を置いて」
「…すまない」
「私、待つのって性に合わないし。
 追いかけます、絶対…追いかけて、追いかけて、捕まえちゃいますから」
「…ルナ!」

 抱きしめたのは、彼の方から。

「…心はいつも同じ場所にあるから」
「うん…」 
「忘れないでくれ…遠く離れても、君の近くに必ず俺は居る」
「うん…っ!」

 できればこのまま、彼と一緒に行きたい。
でもきっとそれは彼にとって迷惑となってしまう。
彼が困ることを自ら進んでしてしまう程、ルナマリアという女は愚かではない。

「愛してる…アスランのこと!」
「あぁ……知ってる」

 残響として響くリフトの音は、やけに重々しく、そして冷たかった気がした――――――。

33017-2 9:2005/08/16(火) 10:03:09
165 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:50:53 ID:???

***

『見えてんだよ! アンタの動き、俺には全部っ!』
「っ、プレッシャー!?」

 シャイニングフィンガーことパルマ・フィオキーナが炸裂する。
至近距離からの無差別的な連続攻撃にグフは防戦を強いられてしまう。
 一気に剣で攻撃を仕掛け、隙を見て煙に撒くしかない。

「はぁぁぁぁっ!!!」
『でぇりゃぁぁっ!!!』

 バチッ!!!

 グフの剣とデスティニーのビームサーベルが火花を散らす。
互いに一歩も譲らず、斬撃は弧を描き、雨の中で鮮やかに輝いてゆく。

『アンタもやっぱり、連合の連中と同じだ!
 地球の重力に魂を引かれた腑抜けな連中と――――だから俺が修正してやる!!!』
「そんな決定権がお前にあるのか、シンッ!」
『あるさ、俺はニュータイプだ!』
「ニュータイプなら何をしてもいいのか!
 お前の言っていること、やっていること、全てキラと変わりはしない!!!」
『黙れよ、俗物!』

 滾る憎悪がシンを突き動かす。
恐怖、怒り、憎しみ、全てが彼の力となる。
ニュータイプとしての力がそれらを増幅し、彼の心を暗闇が黒く染めてゆく。

『アンタには2度…いや、3度もぶたれたんだよ、俺はぁ!』

33117-2 10:2005/08/16(火) 10:03:30
166 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/26(日) 10:53:44 ID:???
シンがムシャクシャ、もといムチャクチャだった
どうせ本編でもDQN街道まっしぐらなんで
これくらいは許容範囲だと思った
何でルナではなくメイリンなのか理解できない
今も反省はしていない

33217-3 1:2005/08/16(火) 10:04:41
364 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/30(木) 02:52:46 ID:???
あとで総集編、投下する予定
総集編っていうよりはエピソード1みたいになってしまったけれど


365 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/30(木) 02:53:15 ID:???
ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ


366 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:10:16 ID:???
今回はアスルナをスルーしちゃったんで…
デス種第1話より2年くらい前のお話ってことで勘弁して

33317-3 2:2005/08/16(火) 10:05:09
367 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:11:25 ID:???

 これは始まりの物語。
人類の新たな可能性を指し示す標とそれを取り巻く事象の記録。
数奇なる運命に導かれ、戦い、争い、憎しみあうこととなる者達の伝記。


***

「どうだね、彼の様子は」
「ユニークな人材であるとは思います。
 喜怒哀楽の突起が激しい半面、心を許した者には比較的従順になる傾向があるかと」
「ふむ、成績はどうかな?」
「学力は中の上から上の下です。
 ですが時折、私のノートを写そうとすることからもあまり勤勉な性格ではない様です」

 ギルバート・デュランダル博士はその少年、
レイ・ザ・バレルの話に興味深そうに聞き入っていた。
 遺伝子工学の権威であり、またプラント議会に在籍する議員の一人でもある彼。
その彼が今、一番の関心を寄せている少年…レイ・ザ・バレルのクラスメートだ。

「はは、レイとはまるで正反対か」
「ギ、ギル!」
「いや、失敬。
 では一番肝心の…モビルスーツの腕はどうなのだろうね、彼は」
「…光るものはあります。
 シミュレーターでは援護を待たずに単独で敵陣に突入することを好み、
 また状況に応じて近・中・遠の各種武装への的確かつ迅速な切り替え、
 見切りの速さ、緊急時の応対など…学力の分を補って余りある才能を持っていると思います」
「ほぉ…それは頼もしい限りだね」

 ギルバートが笑っている。
普段は冷淡な笑みしか浮かべないはずの彼が。
レイは思う、彼にとってそんなにあの少年は面白いのだろうか。
 ギルバートはまだ何も教えてはくれない。
ただ彼と友人関係を築き、彼の動向を逐一報告してほしい…だから、それに従ったまでのこと。

33417-3 3:2005/08/16(火) 10:05:35
368 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:13:11 ID:???

「できれば君からも彼を支えてあげてやってくれ。
 私としては現在造船中の新型戦艦…ミネルバに配属してやりたいと思っているのだよ」
「ミネルバに?」
「彼が君の言う通りの人物ならば、
 アカデミー卒業時に赤を着ている可能性は十分期待できる。
 それと同時に、彼専用のモビルスーツも与えてみたい…ともね」
「…例の新型4機のうち、いずれかを彼に?」
「カオス、アビス、ガイア、そしてインパルス。
 テストパイロットという名目で機体との相性も確認しておきたい。
 無論、それはまだ1年半も先の話だが」

 つい半年前のヤキンの大戦後、ザフトと連合は一応の休戦協定を結んだ。
それによりNジャマーキャンセラーを搭載したMSは半永久的に製造が禁止され、
それらに変わる主戦力としてジンやゲイツに代わる新たな機体、ザクの製造が始まる。

「話は変わるが、ムーンレイス遺跡で新たに発見された記録に目を通したかな?」
「いえ、まだですが」
「そのうち目を通しておいてくれたまえ…あれはいいものだ」

 ムーンレイス遺跡。
月にコーディネーターらが居住区を建設を始めた頃に発見された、古代遺跡。
それはかつて月にも文明が存在したことを示す証拠でもあり、今尚熱い議論が交わされている。
 その内容は、黒歴史の存在を認めるか否か。

「ギルは信じておられるのですか」
「ん、何をだね?」
「黒歴史と呼ばれる古代史です。
 かつて古代の人々も我々と同じ様に宇宙にコロニーを築き、
 戦いにモビルスーツを用い、何度も同じような歴史を繰り返したという…」
「現に我々は黒歴史を元にザクを蘇らせた…それが答えだよ、レイ」

33517-3 4:2005/08/16(火) 10:06:00
369 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:15:14 ID:???
「対して連合は黒歴史に習い、ガンダムまでも蘇らせている。
 ストライク、イージス、デュエル、バスター、ブリッツ、、
カラミティ、フォビドゥン、レイダー…他にも未確認のガンダムと
 思わしき機体は 地球と宇宙を問わず、数多く目撃されている。
 これも黒歴史の流出が招いた結果だと思うと、哀しいものがあるな」
「ギルはガンダムがお嫌いですか?」
「…どうだろうね」

 すっと手を伸ばし、コーヒーカップの残りを啜るギルバート。
レイの言う通り、あまりガンダムに対して良い印象は持っていないのは事実だ。
だが興味が無い、と言えば嘘になる。しかし今はガンダムよりももっと興味深いものがある。

「ではニュータイプの存在も?」
「あぁ」

 ヤキンの戦いで散った、天帝の名を冠するガンダムに
乗っていた古い友人もその存在…ニュータイプの可能性を信じていた。
自分の思う限り、少なくとも彼はその才能の片鱗を覗かせていたはず。
が、悲しいことに彼は純粋な人間ではなくクローン、ニュータイプに進化することは敵わない。

「あのラウですら、ニュータイプに覚醒することはできなかった」
「では彼になら…シン・アスカになら、それができると?」
「できるさ、彼になら。何せユーレンとヴィアの忘れ形見だ」
「…!」

 ユーレンとヴィア、ヒビキ夫妻と言えば
ナチュラルの遺伝子工学者の中でも最高峰の研究をしていた、と記憶している。
 確かにギルバートはナチュラルだからと言って差別意識を持つ様な男ではなく、
一研究員として彼らと共に共同研究を行っていたと聞かされたことはあるが…。

「それでは…シンは、まさか…」
「…奇妙な宿縁だとは思わないかね、レイ。
 プラントと地球、互いの存在も知らないまま遠く離れて暮らしていた兄弟が戦場で出会う。
 兄は翼を得て蒼穹を自由に舞い、弟は血に染まった大地から慟哭と共にそれを見上げる…。
 事実は小説よりも奇なりとは、こういうことを言うのかもしれないな」

33617-3 5:2005/08/16(火) 10:06:24
370 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:16:47 ID:???

「…ギルはキラ・ヤマトもニュータイプであると?」
「いや、そうは思っていない。
 ただ…彼の持つスーパーコーディネーターとしての力は君も知っているだろう?」
「彼はラウを殺しました」
「それも分かっている。
 いずれ白のクイーン同様に対決することとなるだろうな、彼とは」

 ラウ・ル・クルーゼはヤキンの戦いで散った。
新造されたプロヴィデンスでさえもキラ・ヤマトの駆るフリーダムには勝てなかったのだ。
レイはラウの強さを理解していた…だからこそキラ・ヤマトが許せない。
 ギルバートの言う通り、いつか決着をつけなければならないだろう。

「もう少しの辛抱だ、レイ。
 次のプラント議会選挙で私が最高議長に選出されれば
 全てが上手くいくはず…君の復讐も、私の理想もね」
「はい」
「もはやプラントは国家単位の存在だ。
 いつまでも殻の中に閉じこもっていてはいけない。
 一つの公国…いや、帝国として独立する時が来たのだよ」

 ギルバート・デュランダルは野心家である。
落ち着いた物腰とは裏腹に、常に二手三手先を考えて行動している。
これは彼一人の壮大な夢物語ではない…かつて繰り返された歴史の再現でもない。

「そのためにもシン・アスカが勝利の鍵となる。
 退屈かもしれないが…これからも良き友人を演じてやってくれ、レイ」
「善処します。あと、差し支えなければ…」
「何かな?」
「級友のルナマリア・ホークも女性ながら優れたセンスを発揮しています。 
 彼女の実力ならば、赤を着る可能性も無くはないかと」
「分かった、覚えておこう」

 着実に駒の配置が進んでゆく。
問題はいつクイーンを落とすかだが…それをじっくり考えるのも、また一興。
すでに策は用意してある…紛い物とは言え、あの女なら一時の時間稼ぎくらいにはなるだろう。

「人類全体をニュータイプにするには、誰かが人類全体の業を背負わなければならない」
「貴方一人だけに背負わせるつもりはありません、ギル」 
「…すまない」

33717-3 6:2005/08/16(火) 10:06:56
371 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/06/30(木) 03:18:05 ID:???
富野御大ゴメンナサイ

338名無しさん:2005/08/17(水) 05:24:23
>>2の分については転載終了。次からは以下の分を転載します。


18-1 不満(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
18-2 37話辺り(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
19-1 偽39話−前編(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
19-2 偽39話−中編(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
20-1 偽39話−後編(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
20-2 エピソード3 シンの復讐(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
21-1 初めて(161 ◆E2q4Je3dsw殿)

33918-1 1:2005/08/17(水) 05:25:08
11 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/02(土) 03:48:39 ID:???
「ちゃんと私こと、見てください」
「見てるさ…何が不満なんだ?」
「不満? 不満なんて言葉で片付けないでくれませんか?」

 この人は私を見ている様で、何処か遠くを見ている。
遠い未来、地平の彼方、今ある現実を見据えずに、思い描く理想を信じて―――。
 でも、私はそれが酷く気に入らない。

「私のこと好きって言ってくれたの…アレ、嘘ですか?」
「そんなことは…ルナ、今日の君は何かおかし――――」
「おかしくもなるわよ!」

 そうだ、私はおかしい。きっと狂ってしまった。
だってそうでしょう? 毎日毎日殺して殺して殺しまくってるのよ。
 最初は自分の仕事だからって割り切ってた。
けど、何かもう無理っぽい。心が、身体がついていかない。

「貴方、隊長でしょう…少しくらい部下を気遣ってもいいんじゃないんの」
「気遣っている…俺はそのつもりだ」
「ならもっと優しくしてよ!」

 悲しい。哀しい。かなしい。カナシイ。
この人にはいつも私のことだけを見てほしいのに。
 優しい言葉をかけてほしいのに。彼は私の想いを残酷に否定する。

「そうね…私、おかしいですよ。
 アスランのことを考えながら自分を慰めたのだって一度や二度じゃないもの。
 夢にまで見たわ……自分がこんなにヤラしい女だって思い知らされるくらいに、何度もね」
「ルナマリア…」
「けど、貴方はいつも言い訳ばかりして私から逃げてた!
 不安になるじゃない……私のこと好きって言ってくれたのに、私を見てくれないから!
 …だから私、おかしくなったのよ、きっと」

 言いたい放題だ。
でも言わなきゃ私の鬱積は収まらない。
 これまでに溜めた汚いものを、全部吐き出したかった。

「―――今日は帰しませんから」

 いや、違う。一番汚いのは、きっと…私だ。

34018-1 2:2005/08/17(水) 05:25:38
12 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/02(土) 03:50:23 ID:???
ウルトラマンマックス見るからもう寝る

34118-2 1:2005/08/17(水) 05:26:28
96 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:04:28 ID:???
何かまた剣でブッ刺されて生きてるんだな
キラといい凸といいセーフティシャッター強力すぎじゃい
AA劇場続かないなら久々にSS書いてみたんだけど


97 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:05:30 ID:???
カモンヌカモンヌ!!


98 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:11:58 ID:???
飯食いつつ今日の録画見ながら
書いたからどっか変な箇所あるかも
そん時は見なかったことにしてほしい

34218-2 2:2005/08/17(水) 05:27:01
100 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:12:56 ID:???

『シン、絶対に逃がすな!』
『分かってる!』

 シンの怒涛の攻撃がグフを追い詰める。
だが怒りに任せた攻撃だけではアスランを落とすに至らない。
 例えMSの性能差が大きくても、操縦者の腕次第でどうにかなってしまう場合もある。

『光の翼でブッた斬ってやる!』

 デスティニー背部のバックパックユニットが火を噴き、巨大な光の翼が現れる。
ZGMF-X42Sデスティニー最大の特徴と言われる光の翼、その原理は
光粒子フィールド形成しメガ粒子にコンバートしてフィールド上に流出、
巨大な扇状のビームサーベルがあたかも翼に見えることから名付けられた究極兵器。

「くっ…シンッ!」
『ここから…いなくなれぇ!!!』



“月光蝶を呼ぶんじゃない!”



『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! な、何だ…今のっ!?』
『シン、何をためらっている!』

 光の翼を展開してグフに突撃しようとした瞬間、シンは確かに誰かの声を聞いた。
空耳だったのか? いや、そうではない。確かに聞いた。魂に響いた…とでも言えばよいのか。

『誰だ…まさか、今のはお前なのか、デスティニー…!?』

 普通に考えればモビルスーツがパイロットに
語りかけてくるなど絶対に有り得ない。非科学的でナンセンスだ。
 だがニュータイプであるシンは違う。
感覚が従来とは全く違うのだ。全てに生命の鼓動すら感じるように。
 石にも、土にも、空にも、機械にすら鼓動を感じる…まるで宇宙と自分が一体となった様に。

34318-2 3:2005/08/17(水) 05:27:35
101 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:13:52 ID:???

『くそっ、調子が狂う!』
『できないのなら下がっていろ…アスランの始末は俺がつける!』
『おっ、おい、レイッ!』

 ズォンッ!! ズドン!!!!

 なかなか光の翼を完全に発動させないシンに対し、レイが憤る。 
デスティニーより先行し、低空飛行を続けながらグフ目掛けて
MA-BAR78F・高エネルギーライフルを連射、それも威嚇ではなく本気で。

『ちっ…当たらなければ意味がない、か』
「レイのレジェンドか!」

 ヤキンの戦いでフリーダムを全壊させたプロヴィデンスの流れを汲む機体。
本来はセイバーを失ったアスランのために議長が用意させたものだが、
今やそれを動かしているのはレイ…搭乗予定のアスランは討たれる側に回ってしまった。

『(あの人に出来たのなら…俺にも出来るはず)』

 背部と腰部に装備された八機のドラグーン…GDU−X5・突撃ビーム機関砲を起動。
本来ならば宇宙での戦いを想定されて設計された武装であるが、重力下の地球でも
起動は無論可能…これが初めての実戦であるが、レイの自信は全く揺らいではいない。

『行くがいい、ドラグーンファンネル!』

 ピュイン!! ピュピュイン!!! ツォンッ!!!!!

「うあぁっ!?」

 まるでそれぞれが意志を持っているかの如く、
レジェンドから解き放たれたドラグー達がビームを吐き出しながら宙を舞う。
 四方八方からの連続したレンジ攻撃に、さしものアスランも防戦一方だった。

『俗物には俗物らしい死を!』

34418-2 4:2005/08/17(水) 05:28:00
102 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:14:35 ID:???

 レイは本気だ。
グフの武装ではレジェンドのファンネルとは非常に相性が悪い。
だが後には退けない…だがここでやられる訳にもいかない…なら、切り抜けるしかない。
 ここで死んだらルナの努力も無駄になってしまう。

「お前達に構っている暇はない!」


 ゚・ *:.。. * ゚
      +゚
 。 .:゚* +     
     ゚      
    ゚  /ヾー、
       r!: : `、ヽ  
      l:l::..: :.|i: 〉
      ヾ;::::..:lシ′      
         `ー┘  


『こっちに向かって来たぞ、アイツ!』
『撃ち落とせばいい、それだけのことだ!』
『で、でも!』
『議長の言葉を忘れたのか、シン!
 躊躇するな、迷いを捨てろ! お前は力が欲しいんじゃなかったのか!?
 アスラン・ザラを討てばお前はもっと強くなれる…迷いを断ち切れ、シン!!!』
『―――――――――――っ!!!』

 彼の言う通りだ。
議長が認めてくれたこの力を、あの男は否定した。
散々都合のいい正義を振りかざした挙句、自分達を裏切って逃げたんだ。
 憎い、あの男が。アスラン・ザラが憎い!

『くぅ…おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

34518-2 5:2005/08/17(水) 05:28:31
103 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:15:48 ID:???

 背部ビームソード、MMI-714・アロンダイト起動。
ブンブンと唸りをあげながら巨大なビームの刃がグフを襲う。
刃が荒れ狂う海に叩きつけられる度、あまりの熱量で蒸発してゆく海水。
 巨大な分、小回りが効かないのが多少の欠点か。

『俺は…アンタが憎い!』
「踊らされていることに気づこうともしない…俗物はどっちだ!」

 バチィッ!!!

 ぶつかり合う両雄。
グフのサーベルがデスティニーの胸部をかするも、
シンはそれを恐れることもなく、真っ直ぐにフリーダムを倒した時の様に
グフの身体をアロンダイトで突き通す!

「ぐぁっ!!!」
『痛いか? なぁ、痛いかよ!?
 アンタには3度もぶたれたよなぁ……これでチャラにしてやるよ!!!』

 ズバッ!!!

 アロンダイトを引き抜くと同時に左手を突き出し、
今度はシャイニングフィンガー…パルマ・フィオキーナを起動。
この超至近距離では、いくらセーフティシャッターだろうが嫁擁護脚本だろうが死は免れない。

『じゃあね……元隊長殿!』
「!!!」

 
 カッ―――――――――――――――――――――――。

34618-2 6:2005/08/17(水) 05:28:54
104 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:16:48 ID:???

***

「2人ともご苦労だった。
 済まなかったね、初陣がまさかあんなことになるとは」
「我々は兵としての義務を果たしたまでです、議長」
「レイの言う通りです。
 …裏切り者は、誰だろうが許すことはできません」
「うむ」

 アスラン・ザラは死んだ。
シンの駆るデスティニーによってグフは爆発四散、海中に没した。
念のために捜索部隊に海底探査をさせてはいるが、生きているとは到底思えない。

「どうかな、シン。
 デスティニーは気に入ってもらえただろうか?」
「はい、すごく俺…私に馴染みます。
 インパルスよりも速く反応するし、ストレスとかも全然…」
「ふふ、それは良かった。
 あれはニュータイプ専用機、並の人間が操れる代物ではない。
 それを初陣であれだけ巧みに動かすとは…君を見込んだ甲斐があったよ、シン」
「そんな…」
「これからの君の活躍に期待している…君の力で、戦争を終わらせてくれ」
「はっ、はい!」
「そして全てが終わった時こそ…もう一度最初からやり直そう。
 争いも憎しみも無い、希望の光に満ちた我らの理想の世界を作るために」

 世迷言ではない。
今の自分にはデュランダルの言う様に、力がある。
ニュータイプの力…この力があれば戦争を終わらせることができる。
 いや…それどころか、世界を、宇宙を支配することだってできるのではないか?

「あの、議長…」
「ん、何かな」
「デスティニーで戦っている時に…声が聞こえました。
 何が聞こえたかはハッキリ分からないのですが…気になったので」
「ふむ…ニュータイプの君が言うのなら、確かに聞こえたのかもしれないな。
 その件については保留させてくれ、まだデスティニーについては不安要素が無い訳ではないのだよ」

34718-2 7:2005/08/17(水) 05:29:22
105 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:18:02 ID:???

***

「見事だったぞ、シン」
「レイこそ…ファンネルだっけ? スゴかったじゃんか」
「お前同様、議長の期待に応えたまでさ」

 ミネルバに戻ってきた2人。
デスティニー、レジェンドの2機は格納庫に無事納品された。
これからはインパルスを含むこれら3機がミネルバの主力兵器となるのだ。

「…」
「ん、どしたんだよ」

 レイが立ち止まるのでシンも思わず立ち止まる。
そして見る、廊下の真ん中で拳を震わせながら近づいて来るルナマリアを。
その眼。丁度、ステラを殺されてフリーダムに立ち向かった時のシンとよく似ていた…。

「シン…アンタ、よくも…!」
「何だよ、文句あるのかよ」
「我々に意見があるならお門違いだぞ、ルナマリア。
 俺達は議長の命令で造反者を討っただけだからな」
「そーそー。
 エースだとかFAITHだとか威張ってた割にたいしたことなかったし。
 正直、ぱっと出の奴がいきなり隊長だなんて、俺は最初っから気に入らなかったんだ」
「…っ!!!」

 ガシッ!!!

 怒りに燃えるルナマリアの平手がシンの左頬を叩く…はずだった。
だがその寸前でルナの右手はシンによって受け止められ、力の差で押し返されてしまう。
 それでも嬉々としてアスランの死を話すシンが、ルナマリアはどうしても許せない。

「止せ、ルナマリア」
「私…アンタのコト、絶対許さないからね」
「はぁ?」
「アスランを殺したアンタのコト…絶対に許さない!」
「あっそ…勝手にすれば? 行こうぜ、レイ」
「あぁ」

 気に止めることもなく、去ってゆく2人。
残されたルナマリアは立ち尽くしながら、ただひたすらに壁を叩きながら泣き続ける。
 もうアスラン・ザラはいない。彼は死んだ。その事実は今にも気を狂わせんばかり。

「…っ、ふっ、ぁ…ぁっ、ああぁっ…!!!」

34818-2 8:2005/08/17(水) 05:29:41
106 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/02(土) 22:20:37 ID:???
もうシンは真性DQNでいいや…
俺も彼同様、反省はしていない

34919-1 1:2005/08/18(木) 11:01:33
241 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:46:20 ID:???
偽39話、最初〜中盤まで書いてみた
残りは土曜までに何とかしたい

35019-1 2:2005/08/18(木) 11:01:58
242 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:47:14 ID:???

「いよいよヘブンズベース侵攻ですか…」
「ロード・ジブリールおよび
 ロゴス構成員の確保が何よりも優先される…でも、一筋縄では行かないでしょうね」
「何を言ってるんですか、艦長。
 世論の後押しもありますし、状況は圧倒的に我々が有利じゃないですか!」

 ミネルバブリッジ。
現場指揮のためデュランダル最高議長も同席し、
いよいよロゴスとの直接対決が始まろうとしていた。
 相手には降伏を考えることのできる時間は与えてある…
あとはどういう回答を得られるか、ただそれだけ。
 万一、降伏を受け入れなかった場合は強引な行動をとらざるを得ない。
そのためのデスティニー、レジェンド、インパルスらが率いるMS大隊があるのだから。

「それに我がミネルバにはシンがいます。
 無敵のニュータイプ、エースパイロットのシン・アスカですよ?」
「ニュータイプ、ね…」 

 タリアは振り向かない。
背後のデュランダルが何を考えてシンをニュータイプなどという
妄想の産物と決め付けたのかは知らないが、彼女としては迷惑な話だった。
 吹聴とも呼ぶべきだろうが、今やシンがニュータイプであることは
ザフトはおろか連合軍にすら伝播している始末…普通、こういうことは隠しておくべきなのに。

「(何を考えているのかしら…彼、いえ、“彼ら”は…?)」


***


「恐らくロゴスは降伏を受け入れなどはしないだろう。
 戦闘となれば、今まで以上に厳しい戦いになるのは必至だな」
「相手が誰だろうと…議長と議長の理想にたてつく奴はブッ倒せばいい。
 元はと言えば、ロゴスの奴らが全部悪いんだ!
 私利私欲の金儲けしか頭にない汚い下衆共…そんな大人、俺が修正してやる!」
「…その意気だ、シン」

 パイロットスーツに着替え、出撃を待つシンとレイ。
この戦い、楽観視は絶対に出来ない。ロゴスも必死で抵抗をしてくるはず。
ただむざむざと捕まるのを待つ様な連中ではない…間違いなく、戦いは始まる。

35119-1 3:2005/08/18(木) 11:02:21
243 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:48:16 ID:???

「遅かったじゃないか、ルナマリア」
「…」

 一足遅く、ルナマリアもパイロットスーツにて現れる。
だがその表情は目に見えて複雑そのもの…だってそうだろう?
彼がかつて搭乗していたインパルスに乗るのだから…アスランを殺したシンの。
 ザク、ズゴック、ゲルググを乗り継ぎ、極めつけがインパルス。
シンとレイは最新機で、自分はシンのおさがり…別にそこに不満があるワケじゃないが。

「ルナにインパルスが使いこなせるとは思えないけどな」
「…何ですって」
「お前が思ってる以上にインパルスは扱いづらいって言ってんの」
「やってみないと、分からないでしょ…そんなこと」

 シンがグフを撃墜して以来、ルナマリアとの関係は最悪。
会話もしないので統率すらとれない…このまま出撃した場合、下手をすれば
デスティニーを背後から撃ちかねない程の殺意と憎悪を、今のルナマリアから感じとれた。

「ニュータイプだかアニメージュだか知らないけど、
 あんまり調子に乗らないでよね…見ててすごいムカツクのよ、アンタ」
「何それ、僻み?
 今までほとんど撃墜もしてないのに、インパルスが貰えただけでもありがたいと思えよ。
 最もルナマリアの腕じゃ宝の持ち腐れって感じだけど。
 あーそういや、もう1人いたっけ…せっかくの最新機を使いこなせなずにダルマにされた奴」
「シン…アンタっ…!」
「お前達、出撃前に面倒を起こすな。
 今は作戦に集中しろ…特にルナマリア、文句を言ったところで死者は生き返りはしない」
「…分かってるわよっ!」

 レイはルナマリアの黙らせ方を心得ている。
今は亡きアスランの話を会話に出せば、たいてい彼女は黙るから。
レイにとってアスランは敬愛するギルバートを裏切った造反者、死んで当然の存在。
 そのアスラン・ザラをいつまでも慕い続ける彼女が、全くレイには理解できなかったのだ。

「レイ、さっさと格納庫行こうぜ」
「あぁ」
「くっ…!」

 シンは間違いなく増長している。
デュランダル最高議長の目に掛けられていることも影響している様だが
何よりも先日のアスラン・ザラ討伐によって更に自信を深めたかに見えた。
 あのフリーダムを討ち、ついにはヤキンの大戦でも生き残った
伝説のエースをも倒したシンは、今や誰もが認めるエース…ザフトの新たなる希望。
 それがルナマリアには解せないし、認めたくなかったのだ。

35219-1 4:2005/08/18(木) 11:02:52
244 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:49:20 ID:???

***


「監視衛星から伝達!
 先程の攻撃を行ったのはベルリンに侵攻したMSと同型機であることを確認!
 数5! 依然メガ粒子砲による牽制が続き、前線の艦隊部隊は消滅!」
「何ですって!?」
「あ、あれが5機も!?」
「ジブリール…よもや先に仕掛けてこようとは…!」

 ロゴスの砦を守護する5体のデストロイによる一斉攻撃により、
ヘブンズベース侵攻中のザフト艦隊第一波は不意を突かれた感じで全滅。
 24時間の猶予をまたず、ついにロゴス側は徹底抗戦の構えをとったのである!

「ど、どうしましょう、艦長!?」
「落ち着きなさい、アーサー!
 シン、レイ、ルナマリアは出撃用意!
 各機、部隊を率いてヘブンズベースへの侵攻を開始せよ!」
「(ロゴスめ…MA-08ビグ・ザムとMRX-009サイコの模造に成功したか…)」


***


『シン・アスカ…デスティニー、行きます!』
『レイ・ザ・バレル…レジェンド、発進する!』
「ルナマリア・ホーク…コア・スプレンダー、出るわよ!」

 先制攻撃を受けつつも、ルナマリア達も
タリアの出撃命令によりミネルバから飛び立った。
議長も搭乗しているミネルバは事実上の司令塔、沈めるワケにはいかない。 
 それにはまず、あの黒い巨人を何とかしてくては…。

『空からはザクとグフ部隊、海からはズゴックとアッガイ部隊が進行中。
 デスティニー、レジェンド、インパルスは各部隊を統率し、敵地へ侵攻を!』

 ブラストシルエットを装備、ブラストインパルスへの変形完了。
シンはフォースとソードを良く使用していたけれど、ルナマリアには
ブラストインパルスが一番しっくり来る様に思えた…これで何処まで戦えるのだろう。

35319-1 5:2005/08/18(木) 11:03:25
245 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:50:10 ID:???

『あひゃひゃ、死ねぇ!!!』

 デストロイ1号機に搭乗した
スティング・オークレーの怒号と共に、胸部からスーパースキュラが解放される。
その光が瞬く間にヘブンズベースへと群がるザフト軍を消し飛ばし、蹂躙してゆくのだ。
 強大過ぎるパワーを持つ巨人が5体――――まさに地獄絵図の様な光景。

『やりたい放題だな』
『何で…ステラが乗ってた奴だけじゃなかったのかよ…!』
「化け物だわ、あの連合のMS…!」

 飛び交うメガ粒子砲とレーザーを避けつつ、シン達は空中で散開する。
タリアからはMS部隊を率いろ…と言われてはいるが、量産期の性能では
到底あの化け物に敵うとは思えない…ここは自分達で対処するしかない、と踏んだのだ。

『光の翼っ!!!』
『行くがいい、ドラグーンファンネル!』
「チャージ・ブラスト・ケルベロス――――――――――てェッ!!!」

 それぞれが各デストロイに向けて一斉攻撃。
デスティニーは光の翼を展開させて突貫、レジェンドはファンネルを
四方八方へ飛散させてのビーム射出、そしてブラストインパルスは
2門のM2000F・ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲を両腰に構え、放つ!

「やったの!?」
『油断するな、あの黒いMSには陽電子リフレクターが搭載されている!』

 何せあのフリーダムのレインボー攻撃すら退けた機体。
それが5機もいるのだから、レイの言う通り油断は許されない。
爆炎と粉塵が吹きすさぶ中、ルナマリアはビームジャベリンを起動させ敵の動きを待っていた…。

『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! 来る!』
『ちィっ…!』
「くぅ、このぉ!」

 もうもうと立ち上る煙の中から放たれる無数の光線。
デストロイの腕は無線遠隔操作機能を有したドラグーンアーム、
レジェンドのファンネルと同性能を持つ機体。5機のデストロイによる反撃が始まる!

35419-1 6:2005/08/18(木) 11:03:49
246 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/11(月) 18:54:11 ID:???
凸は後半でちらっと出てくる予定
シンはもうホントに引き返せないくらいの
DQNとして描くつもり
反省はしていないので悪しからず

35519-2 1:2005/08/18(木) 11:04:20
504 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:41:04 ID:???
昼飯食いながら見てる
書き留めておいた中編、置いてみる
早く書き終わらないと土曜になってしまうな…

35619-2 2:2005/08/18(木) 11:04:43
505 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:41:55 ID:???

***

『ぜりゃぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁあああああ!!!』

 ザンッ!!!

 また1機、デスティニーの兇刃の前に黒い巨人が倒れた。
反撃から一転、シンの怒涛の猛攻により形勢は一気に逆転したのだ。
 すでに3機撃破されている…ありえない、たった1機なのに。
レイのレジェンド、ルナのブラストインパルスの助力はほとんど借りず
シン単独でわずか数分の間にデストロイらと互角以上の戦いを展開…これがニュータイプの力なのか。

『ちっきしょ! 何なんだ、コイツァよぉ!?』

 デストロイ1号機の搭乗者、スティング・オークレーが憤る。
ザフトがまさかここまで強力なMSを開発していたなど聞いていない。
それでなくともデストロイが5機も揃っていたのに、今では自分を含めて残り2機。
 戦闘マシーンと化した今の彼にとって、敗北は非常に屈辱的なこと。

『スティング、一旦退避しろ』
『あン!? 俺はまだ負けちゃいねーぞ、コラ!』
『デストロイでは分が悪い、新型で相手をしてやれ』
『新型…アレを使えってのか? ……わーったよ!』

 苦虫を潰したかの様に通信を切り、スティングは撤退を始める。 
残った1機を足止め代わりに使って自身は後退…だが、それを見逃すシン達ではない。

『1機逃げるぞ!』
『逃がすな、ファンネル!』
「チャージ・ブラスト・デリュージー――――――――――てェッ!!!」

 撤退しようとするスティングへ
容赦なく攻撃を仕掛けるレイとルナマリア。
 だが少しばかり離れすぎたためか、陽電子リフレクターによって発生した
巨大なシールドによって攻撃はことごとく相殺されてしまい、結果デストロイを逃がしてしまう…。

『くそっ、逃がした!』
「もうちょっとだったのに…!」

35719-2 3:2005/08/18(木) 11:05:12
506 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:42:53 ID:???

『吹っ飛ばしてやる!』

 スティングが撤退した今、ヘブンズベースを守護するデストロイは1機のみ。
シンはデスティニーの装備をMMI-714アロンダイトからMMI-X340パルマ・フィオキーナ…
つまりは素手による格闘戦主体に変更し、戦いを挑んでいる。
 陽電子リフレクターのわずかな隙を狙い、シャイニングフィンガーを叩きつけるのだ!



“このターンエックスすごいよ! さすがは∀のお兄さんッ!!!”



『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! な、何だよ…またかよっ!?』

 またシンの魂に誰かの声が響いた。
シャイニングフィンガーを撃とうとした瞬間、おぼろげながら何かが見えた気がする。
アスランのグフを破壊しようとした時同様に、これもシンのニュータイプ感応能力に
デスティニーが反応したからなのだろうか…いや、そうも言っていられない。
 今は戦いに集中しなければ。

『だあぁぁぁああぁぁあぁぁああぁあぁあぁ!!!』
『う、うわぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――』

 調子近距離からのシャイニングフィンガーにより
さすがのデストロイの強固な装甲も溶解、そのままコクピットごとパイロットは消し飛んだ。
 操者を失った黒い巨人はゆっくりと、地面へとその身を落としてゆく…。

 ズゥゥゥン……。

「…終わったの?」
『気を抜くな、ルナマリア。
 ロゴス達を捕らえない限り戦いは終わらない』
『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! …ちょっと待て、何か来るぞ!』

 格納庫らしき巨大な扉の向こうから異様な気配がする。
ざらついた様な、落ち着かないような、ニュータイプならではの感覚。
 恐ろしい敵が、向こうに居る!

35819-2 4:2005/08/18(木) 11:05:33
507 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:44:06 ID:???

 ザンッ!!!

『!?』
「な、何なの!?」

 格納庫のシャッターに突如、紅い2本線が走った。
高熱で焼き切れた様に赤熱したその2本の線に魅入る間もなく、
シャッターがまるで最初からそこに存在していなかったかのように綺麗に崩れ堕ちる…。

『待たせたなぁ…このソードカオスで相手してやるぜ!』

 そこに立っていたのはZGMF-X24S・カオス。
ただし、シンらがこれまで戦ってきた機体とは明らかに趣が違っていた。
そもそもカオスはベルリンでの戦いでオーブのムラサメに撃墜されたはずなのだ…では、あれは?

『来いよ、糞共……斬り刻んでやらァ!!!』

 背部のMMI-710・エクスカリバーを引き抜き、2刀の構えでカオスが臨む。
グリーンからホワイトに変更されたカラーリングもさながら、
かのサンドロックカスタムを彷彿とさせる巨大な対ビームコーティング加工のマントが印象的。
 だが何よりも白骨の如き白い機体色が、否応無しにも不気味さを引き立てるのだ。 

「あのカオス…まるで死神みたい…!」
『2年程前にソードカラミティと呼ばれる
 接近戦使用のカラミティの存在が3機、確認されているが…成る程』
『相手が何だろうと、敵は敵だ!』

 かつてビクトリア基地奪還作戦で活躍した連合のMS、
ソードカラミティを思い起こさせる巨大な2刀…どうやらこのソードカオスが
ヘブンズベース最後の守護者であるのは間違いないらしい。

「…あいつは私がやる!」
『ハァ? 何馬鹿なコト言ってんだ、ルナじゃ返り討ちがオチだっての!』
『俺達に任せてルナマリアは退け、接近戦に不慣れなお前では分が悪い』
「……やってみないと、分からないでしょうがっ!」

35919-2 5:2005/08/18(木) 11:06:08
508 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:45:24 ID:???

「ミネルバ、メイリン!
 ソードシルエット射出、急いで!」
『は、はいっ!』

 確かにブラストインパルスではあの2刀流相手ではキツイ。
ビームジャベリンで戦えないこともないのだが、あのエクスカリバーとでは出力が
違いすぎてお話にならない…目には目を、エクスカリバーにはエクスカリバーを、だ。

「換装完了!」

 ブラストシルエットからソードシルエットへ。
ソードカオス同様にエクスカリバーを構え、双刃を雄雄しく振り回すソードインパルス。
今までガナーザクウォーリアやズゴック、ゲルググを乗り継いで来たルナマリアが
果たして接近戦でどこまで肉薄できるのか…赤服の腕の見せ所であった。

『タイマンか、面白ェ』
「いっつも人様のMSばっかり真似しちゃって…こんの泥棒猫!」

 ソードインパルスとソードカオス、合計で4本の対艦刀エクスカリバー。
1撃でも食らってしまえば大ダメージは必至、相手の攻撃を先の先まで読んで
わずかな乱れの隙をついて斬り裂いた方の勝ちとなる…それは単純な様で、とても難しい。

 ヴゥン…ヴゥン!

『死ねェ!』
「たりゃあぁぁぁぁ!!!」

 激突する2体、そして2刀。
カオスの使用しているエクスカリバーは連合仕様なのを強調するためか、
ビーム色が本家ソードインパルスのエクスカリバーと異なり、ブルーで統一されている。
恐らくはビーム発生に仕様している出力調整エネルギーに差異があるのだろう。
 赤と青、4本のビーム刃が火花を散らし、ヘブンズベースを揺るがす。

『そらそらそらぁ!』
「くっ…!」

 スティング・オークレーはナチュラルでありながら空間認識能力に優れている。
彼がカオスのEQFU-5X・機動兵装ポッド(MA-81R ビーム突撃砲)を扱えたのはそのためだ。
 一定の空間内にだけ限定されるが、彼はその空間における事象の全てを支配する!

36019-2 6:2005/08/18(木) 11:06:30
509 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:46:40 ID:???

「コイツ、メチャクチャ強い!」

 さしものルナマリアも恐怖を覚えた。
一旦距離をとり、すかさずRQM60・フラッシュエッジ、ビームブーメランを起動。
 ソードカオス目掛けて2本を投げつけるが…。

『ハッ、効かねぇよ!』

 キュィィィィン!!! カンッ! カンッ!

「な、何て奴なの…」

 どうやらソードカオスの手首は360℃回転させることが可能らしく
手首ごとエクスカリバーを高速回転させ、容易にフラッシュエッジを叩き落してしまう。
つまりあのソードカオスは攻守、どちらも兼ね備えているということだ。
 あの回転する対艦刀が、まるで巨大なビームギロチンにさえ見える…!

「でもお互いに2刀流であることに変わりはないわよ…!」
『はっ、まさか2本だけとか思ってねェよな?』

 ゙シャッ、ガシャッ、ヴゥン、ヴゥン!!!

「嘘…隠し腕っ!? 4刀流!?」

 ソードカオスが対ビームコーティングマントを
脱ぎ捨てたかと思うと、何と背中から更に2本の腕(正確にはマニュピレーター)が生えた。
 まるでジ・Oやアルトロン、ヴァサーゴ…長さは本当の腕の2倍近くあって作業の邪魔をしない。
その2本の腕がカオスの腰に装着されている2本のMA-M941・ヴァジュラビームサーベルを
引き抜き、起動させる…つまりこれで4刀流、4本の腕に4本の刀が宿ったことになる。

『あひゃっ、あひゃひゃっ!!!』
「きゃあぁぁぁっ!!!」

 不規則に蠢く4本の腕。
上段と思えば下段、下段と思えば上段…反応速度に違いがあり過ぎる。
ニュータイプのシンならばきっと相手の先を読んで攻撃を受けつつ反撃するのだろうが、 
ルナマリアはそうもいかない…まさかインパルスでの初陣がこんな強敵相手なんて。
 しかし、絶対にシンとレイに助けを求めたりはしたくなかった。

「(アスラン、アスランならこんな敵相手に…どうしますか…!?)」

36119-2 7:2005/08/18(木) 11:06:50
510 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:49:04 ID:???
特にムシャクシャはしていなかった
本編で全然出番と見せ場の無かった
オクレ兄さんとカオスに最期の見せ場を与えたかった
グリーバス将軍に似ている気もするが反省はしていない

36220-1 1:2005/08/18(木) 11:07:30
58 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:37:56 ID:???

『ひゃあっ! あひゃっ、あひゃひゃ!!!』
「くぅぅ…!」

 次々と襲い来る斬撃にインパルスは防戦一方。
こちらは2本腕なのに対して相手は4本腕、とてもじゃないが攻撃を仕掛ける暇さえ無い。
運良く攻撃を仕掛けるチャンスが生じても4本腕のうちのどれか2本がそれを遮り、
逆にカウンターを返されるので下手に動くことが出来ない…どうすればいい?


***


『あーもう、何やってんだよ、ルナの奴…』
『シン、お前には奴の動きが見えているのか?』
『ん、大体』
『ならば何故ルナマリアに助け舟を出さない?
 このままでは殺されるのは時間の問題だと思うのだが』
『必要ないね、あいつが自分1人で相手するって言ったんだし。
 勝手にやらせときゃいい、それにまだ敵は回りにウヨウヨいんだぞ』

 こうやって話している間にも連合のウィンダムやジムは襲い掛かってくる。
ヘブンズベース周辺ではザク、グフ、ズゴック、ゴックら量産機が健闘。
ルナマリアを残していったん上空へ離脱したシンとレイも
デスティニーとレジェンドで敵機に応戦、敵軍の一掃を謀ろうとするも、とにかく数が多い。

『それに、死んだら死んだで議長が新しい赤を補充してくれるだろ、多分』
『……冷たいな』

 
***


『オラオラ、どうしたガンダムちゃんよォ!?』 
「(まずっ、もうエネルギー切れが近い…!)」

 デュートリオンビームで補充しようにもこの状況では無理がある。
つまりはフェイズシフトダウンする前にソードカオスを撃破せねばならない。
 しかし、どうすれば勝てる? 4刀流の相手など、前代未聞だ。

36320-1 2:2005/08/18(木) 11:08:03
59 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:38:54 ID:???

「(…腕の1本くらい犠牲にしなきゃ、コイツは!)」

 ルナマリアは勝つことを優先し、思考を切り替える。
防戦一方から反撃に移るための切っ掛けとして、ソードインパルスの腕を犠牲にするしかない。
間違えばかなりのダメージを蒙るだろうし、失敗は絶対に許されない。
 そして確実に相手を仕留める……つまりは、殺すために。



 ゚・ *:.。. * ゚
      +゚
 。 .:゚* +     
     ゚      
    ゚  /ヾー、
       r!: : `、ヽ  
      l:l::..: :.|i: 〉
      ヾ;::::..:lシ′      
         `ー┘  



「うあぁぁあああぁぁぁぁああぁぁぁっ!!!」
『馬鹿が、俺の間合いに入ったが最期だぜ!』

 2本のエクスカリバーを結合、
アンビデクストラスフォームとして左腕で振るうソードインパルス。
 だがソードカオスはフラッシュエッジを退けた時と同じ様に
エクスカリバーを両腕と共に高速回転させ、防御体勢に臨む…突っ込めばミンチだ。
 だが、ルナは退かない……!

 ギュィィィィィィィ!!!!!

『コッ、コイツッ!!! 自分から腕を…!?』

 ソードカオスの懐に飛び込む瞬間にアンビデクストラスフォームを
空中に放り投げ、素手で高速回転する敵のビームにパンチを見舞うソードインパルス。
 当然ミキサーに放り込まれた挽肉の如く分解、爆散する左腕。
だが自殺行為的な敵の行動にペースを乱されたのか、一瞬だけ
ソードカオスの動きに乱れがあったのをルナマリアは見逃さなかった。

36420-1 3:2005/08/18(木) 11:08:25
60 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:39:50 ID:???

「でぇええぇぇぇえぇぇええぇいぃっ!!!」

 ズギュゥ…

『かっ…ぐぉ…っ!?』

 間合いを詰め、予め引き抜いて右手で帯刀していた
フォールディングレイザー・対装甲ナイフをすかさず敵コクピットを目掛けて突き刺す!
フェイズシフト装甲をも貫く巨大ナイフはソードカオスの心臓部とも言える
コクピットを操者のスティングごと深々と貫き、突き刺さったまま紅蓮の火花を撒き散らすのだ。

『げっ、げぇっ、あぉ…っ!』

 ナイフに下半身を削り取られたスティングは堪らない。
声にならない意味不明な声をあげながらバタバタと首と手を上下させ、
モニターで紅白の巨人が迫るのを見る…視界が定まらない、目の前の世界が壊れてゆく。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 よろめくソードカオスへ追撃とばかりに
放り投げたアンビデクストラスフォームを右手で再度キャッチし、
やや不安定ながらも剣に重心を置いてそのまま勢いよく振り下ろす。
1撃目で両腕、2撃目で隠し腕2本、3撃目で両脚を切り落とし、4撃目でコクピット。
 両手足を失い、仰向けとなったソードカオスへの最後の一撃が決まった。
突き刺さった巨大な剣は墓標、連合の生み出した最後のエクステンデッドは此処で息絶えた。

「はぁっ、はぁっ、はっ…くっ…!」


*** 


『終わったか』
『ま、アイツにしちゃ頑張った方なんじゃないの?』
『ヘブンズベース周辺も粗方の征圧が完了したそうだ…いよいよ、ロゴスとご対面だな』
『レイ…ロゴスを倒せば、戦争は終わるんだよな?』
『無論だ。そして議長が理想とされる新世界――――黄金時代が幕を開ける』
『黄金時代…』

36520-1 4:2005/08/18(木) 11:08:50
61 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:40:41 ID:???

***

「気持ち悪…」

 結局あれだけの大立ち回りを演じさせられたにも関わらず、
ロード・ジブリール含むロゴス構成員はヘブンズベースには居なかった。
 いえ、正確にはもう居なかった…というべきかしら。
制圧完了後、ザフトの潜入班が見つけたのは放置された黒いMSとその他量産機のみ。
人っ子一人居なかったんだって…多分、あのどさくさに紛れて何処かに逃げたっていうのが
大方の見解みたいだけど…じゃあ何のために戦ったのよ、私達…。

「頭痛い…あー、すっかり忘れてた」

 戦闘後、ミネルバに帰艦したシン、レイ、そして私は
デュランダル議長の手厚い出迎えを受けた…ロゴスを捕らえることはできなかったけど、
よく頑張ってくれた…って。悪い気はしかなったけど、そのほとんどの言葉はシンに向けてのもの。
 …あの4本腕の奴を倒したのは、私なのに。

「薬、まだあったかな…」

 ここ最近ずっとイライラしていたのは
アスランが脱走してシンに殺されたことや、シンに対しての遣る瀬無い気持ちが
原因だと思っていたけど、それは私の見当違いだった…どうってことはない、ただの生理。
 前に来たのはいつだったかな…とにかく、気分が悪かった。

「お姉ちゃん、ご飯食べに行こ」
「ん…気分悪いからパス…」
「え…どっか悪いの…?」
「せーり、つきのもの、女の子の日。
 ここんとこ忙しかったから、忘れてたのよ…今日は疲れてるし、もう寝るわ」

 メイリンには悪いけど、今日は早めに休みたかった。
一応は戦闘前に自身のチェックはしてたけど、生理のことまで頭回らなかったし…。
 駄目だ、気分最悪。ここ数日の疲れがどっと押し寄せた感じ。

「あ…ごめん…気づかなくて…」
「いいわよ…ほら、行っといで」
「う、うん…」

36620-1 5:2005/08/18(木) 11:09:11
62 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:41:24 ID:???

「(…何でこんなことになっちゃったんだろ)」

 今、私の周りを取り巻く状況は最悪だった。
シンはデュランダル議長を妄信して、彼の言いなりになってしまっている。
ついこの間までは弟みたいに思っていたはずなのに、今では世界で一番憎い相手。
レイは最初から敵も味方も無いと思う。彼にとっては議長が全てだろうし。
 シンといつも一緒に居るのも、多分議長の命令なんだと思う。

「(アスランは…)」

 私が愛した人、アスラン・ザラは死んだ。
シン・アスカに殺されてしまった…こんなことを考えても、今更どうしようもないけど。
最期の瞬間、アスランは何を想ったのだろう…私? それとも、他の誰か? お母さん?
 できれば、私であって欲しいと思うのは傲慢なのかな…。

「(会いたい…アスランに…)」

 でももう彼はいない、この世界の何処にも。
私はガンガン響く頭を抑えながら、本棚のアルバムに手を伸ばす。
ディオキアで初めて彼とデートした時、地元の観光名所で撮ってもらった写真があったはず。
 アスランが妙に恥ずかしがっていたのをよく覚えてる。

「(…あはっ、どうしてこんなに緊張してたのかなぁ)」

 彼の顔には照れがあった。
彼からプレゼントしてもらったワンピースを着た私が
身体を密着させて写っているのが原因なんだけど、何もそこまで照れることはないと思った。
 寧ろ、喜ぶべきじゃないの? 失礼しちゃうなぁ、隊長は…。

「(生きてるうちに…文句、言っておけばよかった…)」

 何を言ってもあの人は帰って来ない。
遠く離れても、私の近くに必ずあの人は居る…そう信じたい。
けれど、きっと無理。私はアスランが思ってる程、強くない。
 寂しい。もう彼に触れることすらできないのが、とても寂しかった。

「隊…長…っ、アスラン…ッ!」

 本当はもう眠りたい。一刻も早く、気分を良くしたかった。
だけどアスランのことを考えると眠ることさえ出来ない…心が彼で埋め尽くされる。
 私は生理中、情緒不安定になることは滅多にない。
でも今日は違う…今まで溜めておいたものを全部吐き出す様にして、私は暗い部屋の中で泣いた。

36720-1 6:2005/08/18(木) 11:09:36
63 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:42:19 ID:???

***


沈んでゆく。
深い処まで。
深淵へと堕ちてゆく。
暗い場所、暗黒の巣食う世界。
俺は何処までも暗い世界を堕ち続ける。

「…ルナ?」

 一瞬だけ光が見えた気がした。
もう一度確かめようと瞬きした時、それはもう消え失せていたけれど。
 だけど、俺は確かに闇の中で光を見た。

「ルナ…ルナマリアッ!」


***


「気がついた?」
「…キラ?」

 目が覚めた時、アスランはアークエンジェルに居た。
いや、本来はこの艦と合流するつもりだったのだから好都合と言えば好都合なのだが
どうにも都合が良過ぎて、まるで誰かに自分の運命を操られている様な錯覚さえ覚える。

「キサカさんがね、海の中でアスランを見つけてここまで…」
「海…で…」
「カガリなんかずっと泣いてて…アスラン?」
「…何日、寝ていた?」
「今日で3日目だよ」

 そんなに寝ていたとは。
海で見つかった、ということは運良くセーフティシャッターが機能したのか。
いや、あの時シンはシャイニングフィンガーで間違いなく自分に止めを刺そうとしたはず。
 それがコクピットに直撃したのに…何故、生きていられる?

36820-1 7:2005/08/18(木) 11:09:58
64 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:43:29 ID:???

「…悪いが」
「うん?」
「1人にしてくれないか…俺はまだ、お前を…許したワケじゃない…」
「…」

 キラ・ヤマトには借りがある。
ハイネ・ヴェステンフルスが死んだのもフリーダムが戦闘に介入したせいだし、
オーブ軍との戦いの最中、セイバーを切り刻まれたことだって忘れちゃうない…それに。

「俺は…忘れていない…からな…」
「え?」
「俺を守ろうとした…赤いザクを…お前が…斬ったことだ…!」
「アスラン…」

 確執は深い。
キラやラクス、カガリが何を考えているかは知らないが
今の彼らのやっていることはただのテロリズムに他ならない。
だが蛇の道は蛇、この世界の情勢を把握しているのも彼ら。
 不本意だがアークエンジェルと合流すると決めた時から
こうなることはある程度、覚悟していたこと…シンがフリーダムを倒した時は
かなり取り乱してしまったが、核爆発だろうが超新星爆発だろうが、そんなことでキラは殺せない。

「何かあったら、そこのボタンを押して」
「…」
「それと」
「…なんだ」
「眠りながらずっと言ってたね、ルナマリアって……誰のこと?」 
「お前には、関係ない…」
「…そう」 

 キラは病室から去り、やっと自分の状態を把握できる。
点滴やら包帯が所々に巻かれているのを見る限り、重症らしい。
いや、MSの爆発に巻き込まれて五体満足でいられること事態、奇跡に近い。
悪運が強い…と言えばそれまでだが、彼女が帰りを待つ限り、死ぬことはできない。

「ルナ…」

 彼女との運命が再び交錯するその日まで、今はまだ眠り続けよう…。

36920-1 8:2005/08/18(木) 11:10:20
65 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:45:28 ID:???
変更点

・スティング、ナイフ刺し
→コクピット表面ギリギリを破壊、中にバルカン乱れ撃ち

・ルナ、写真見ながらデート回想
→写真見ながら凸思い出しつつザラニー


こんな感じ
スティング、ご苦労さんでした…

37020-2 1:2005/08/18(木) 11:11:30
223 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:13:00 ID:???
アスルナじゃないけどシン暗黒面編を投下
議長とシンのお話ね

37120-2 2:2005/08/18(木) 11:11:51
225 名前:エピソード3 シンの復讐[sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:13:54 ID:???

「う〜、最悪…」

 生理二日目、相変わらず私の気分は最悪。
ミーティングも体調不良を理由に欠席、結果昨夜から今日の夜まですっと寝込む。
 が、さすがに食欲不振でもお腹は減る。
食堂で何か軽いものでも作ってもらおうと、私はいそいそと赤に着替えた…。


***


「お姉ちゃん?」
「あら」

 食堂へ向かう途中、メイリンに会う。
ちょうど食事が終わって部屋に戻ろうとしていたらしい。
寝込んでいる間に食事に誘われた気もするけど、正直覚えてない。

「もう夕ご飯、済んだの?」
「うん。ヴィーノ達と食べたよ」
「? シンとレイは?」
「ん、レイは知らない。
 でもシンなら『議長に食事、誘われてるから』って外出してるけど」
「食事? 議長と?」

 別に有り得ない話じゃない。
最近のシンは議長のお気に入りだし、シンのためにデスティニーまで作らせたくらいだ。
ここのところのシンの活躍はどれをとっても目覚しいものがある。
 ニュータイプに覚醒にてから、彼はまるで別人になってしまったみたい…。

「お姉ちゃん、気分良いの?」
「コンディションレッド…軽めのもの食べたら、すぐ戻るから」
「分かった、それじゃね」

 私は妹と別れ、ミネルバの食堂を目指す。
それにしても…シンは議長に心酔し過ぎな気がする。
狂信的、と言うべきかもしれないけど、議長の言葉をあそこまで妄信してもいいのかしら?
 …何か、嫌な予感がする。

37220-2 3:2005/08/18(木) 11:12:13
226 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:15:00 ID:???


***


「こうして2人きりで話をするのは、これで3度目だね」
「は、はい…」
「気を楽にしてくれたまえ。
 この席では上司と部下ではなく、友人として君と接したいと思っているのだから」
「ゆ、友人だなんて…そんな」

 シン・アスカはギルバート・デュランダルと席を共にしていた。
一通りの食事を終え、彼の誘いに乗ってバルコニーに出、共に椅子に座り星を眺める。
 食事中は気にしない様にしていたのだが、やはりどうしてもマンツーマンだと緊張は拭えない。

「見たまえ、シン。宇宙(そら)はこんなにも美しい」
「あ、はい…」
「普段プラントから眺める夜空も良いが
 やはり母なる地球から眺める星空は、また違った趣があるとは思わないかね?」
「はい…」

 確かに、今まで意識していなかったが宇宙は美しい。
星の輝き一つ一つに生命の息吹すら感じられる…そんな気がする。
戦時下、星を見る余裕など全く無かっただけにこういう余裕を持てるのは気分が良い。

「こんな美しい夜空を見ていると…まるで自分が世界の、
 宇宙の支配者になった様な気分になりはしないかな、シン?」
「宇宙の支配者、ですか…いえ、俺は別に…」
「はは、笑ってくれて構わんよ。
 私も年甲斐もなく冗談が過ぎた様だ…この星空を見ているとそんな気になってしまってね」

 ギルバート・デュランダルはなかなかにユーモアのある人物だとシンは知る。
レイの育ての親なのでレイ同様に物静かな人物とばかり思っていたが、
実際はそうではなく優しく、温和で物腰の柔らかい、父の様な人間に思える。

「だが、時に支配者に立ち向かわねばならない時もある。
 今の我々とロゴスの関係がまさにそれだ…人の命を食い物にする者を、
 私は絶対に許すことはできない。人一人の命は、決して金で換算することなどできないのだから」
「…よく分かる話です」

37320-2 4:2005/08/18(木) 11:12:38
227 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:15:47 ID:???

「君を食事の席に誘ったのは他でもない。
 私個人から君に頼みたいことがあったからなのだが…聞いてくれるかな?」
「議長が…お…私に?」
「うむ」

 それまで星を眺めていたデュランダルは姿勢をそのままに、顔をシンの方に向ける。
バルコニーの電灯と星明かりのせいか、何故だか彼がとても神聖な存在の様にも思えた。
 一体、彼個人の頼み…とは何なのか。

「シン、君にミネルバにおける私の私的代理人になってほしい」
「えっ…!?」
「ポジションとしてはフェイスの座を用意している。
 レイも君のサポート役として同じく、フェイスに任命するつもりだがね。
 ハイネ、そしてアスランが死んだ今、ミネルバに残されたフェイスはタリアただ1人。
 彼女も歴戦の兵だが、やはりどうにも……できれば、君が彼女を支えてやってほしい」
「で、ですが…俺なんかじゃ…」

 思わず一人称が俺に戻る…が、フェイスは栄誉の証だ。
エースパイロットの称号を得た者なら、誰でも一度はその更に上の
フェイスとして君臨することを願うもの。しかし、これまでのシンはそれを望まなかった。
 ただ守るために戦いたい、とだけ思っていた。
だが今は違う…思いだけでは叶わないこともあると痛感した。
 だから力が欲しかった…デスティニーという力を得、また更なる力が欲しい、と。

「残念なことに、アスランではフェイスの重荷に耐えられなかった様だ。
 新型のセイバーを渡すには渡したが、目立った活躍もなくフリーダムに破壊され、
 彼自身もザフトから離脱しようとして結果、君に討たれた…全く、失望させられたよ」
「…」
「彼には信念が無かったのだ。
 フェイスには『信念』や『信仰』という意味がある様に、
 己の信念を持たぬ者にはフェイスの名など、ただの飾り…愚か者にはそれが分からんのだよ」

 確かに、シンから見てもアスラン・ザラという男は理解しがたい存在だった。
突然フェイスとしてミネルバに就任し、自分達を率いる隊長になったかと思えば
敵であるはずのフリーダムやアークエンジェルを擁護する発言を連発する始末。
 おまけに、これまで3度も殴られた経験がある。
彼は軍人として失格だった…己の部下よりも、敵の心配をする人間なのだから。
 だから憎かった。憎かったから殺した。輝く拳、シャイニングフィンガーで。

37420-2 5:2005/08/18(木) 11:13:04
228 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:16:39 ID:???

「俺は…あんな奴とは違います」
「……」
「俺は議長の、デュランダル議長の理想を実現するために戦います!
 中途半端な覚悟で戦ってたアイツとは違う…俺は、俺は最高議長のために…!」
「…ありがとう、シン。その言葉が聞けただけでも満足だ」

 シンの熱意を理解したのか、デュランダルは薄く笑った。
そう、シンとアスランは違う。シンは確固たる意志でこれまで戦いに臨んで来た。
 いつだってそうだった。遊びで戦争をやっているのではないと。

「それにいつも言っていることだが、君程に才能豊かな兵士を私は知らない。。
 民間出身というハンデがありながら、僅か2年でここまで成長したのだからね」
「それは…」
「更にはニュータイプとしての力も備わっている。
 強くなりたいと思う気持ちを忘れなければ…やがては無敵の存在となるだろう。
 かのシャア・アズナブルやカミーユ・ビダンをも凌ぐ、最強のニュータイプにね…」
「最高議長…」

 デュランダルの言う通り、シンのこの2年間の軌跡は目を見張る。
それまで何の軍事訓練も受けていなかった少年が、アカデミーを卒業すると同時に
ザフトレッドとしてミネルバに就任、更には最新機インパルスの搭乗者になったのだ。
 幾多の戦いを得てニュータイプとして覚醒、デスティニーという新たな翼も手に入れた。
そして議長への忠誠の証としてのフェイス就任…まるで夢の様な話ではないだろうか。

「君の覚悟は理解できた。
 明日にもフェイスの証を届けさせよう」
「はっ、はい」
「それともう一つ…」
「えっ?」

 まだ何か話があるらしい。
いや、デュランダルの態度を見ると本題はこれかららしい。
ニュータイプと言えど、シンは他人の心の中までは伺い知ることはできないのだ。
 だが彼の顔つきを見る限り、さっきよりも深刻な話の様だ。

「ヘブンズベースから消えた、ロード・ジブリール氏の居所を掴んだのだよ」
「! ジブリールのっ!? 何処に、奴は何処に居るんですかっ!?」
「…オーブ国内だよ、シン。彼はオーブに匿われている。
 潜入させていたスパイからの情報によると、オーブ政府内には多数の
 ロゴス構成員と繋がりのある者が存在しているとのこと……私としても、とても残念だが」
「オーブと…ロゴスが……アスハの奴、やっぱりアイツらはッ!!!」

37520-2 6:2005/08/18(木) 11:13:26
229 名前:エピソード3 シンの復讐[sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:17:40 ID:???

「オーブとロゴスが蜜月関係にあるのは、ほぼ間違いない。
 考えても見てくれたまえ。
 中立国、平和主義を謳うオーブが、何故にあれ程に強大な力を保持しているのか?
 ロゴスからの資金提供が無ければ、一国家があれ程の勢力を持てるはずがない」

 デュランダルの言う通りだった。
M1アストレイやムラサメ、ストライクルージュなどを作り出した
オーブの技術力は侮りがたく、またその資金が何処から抽出されているのかなど
かつてのオーブ国民であったシンでさえ知らなかったのだから。
 だがオーブもロゴスの一部であった、というなら全て説明ができる。
やはりオーブは、アスハは敵だったのだ。自分の家族を殺し、世界中の人々を苦しめる怨敵。

「会議の結果、
 ミネルバはオーブにジブリール氏の身柄引き渡しを要求するため、赴くことになった。
 無論、私も同行させてもらうつもりだが、彼らの返事次第では戦いは避けられない…」
「…!」
「ロゴスの盟主を匿う、ということはロゴスに味方すること。
 これまでオーブとは良い関係を保ち続けてきたつもりだ、私も心苦しくはある。
 だが、身柄引き渡しを拒否した場合は仕方ない…オーブ殲滅作戦を決行せざるを得ないのだ」
「…殲、滅」

 殲滅、根絶やし、皆殺しのこと。
血が流れることを何よりも嫌う議長がそこまでの決断を迫られる事態。
かつての故郷を、相手の返答次第では血で染めることになるかもしれない。
 だが、かつてあの国は自分達に何をした?
家族を奪い、更にはミネルバまで領海に追いやろうとしたではないか。
 そんな国、滅びて当然…いや、滅びるべき運命に違いないのだ。

「シン、もしそうなってしまった場合は
 君に指揮権を託そうと思う…レイを含むMS大隊を率い、オーブに侵攻してほしい」
「…俺でよろしいのですか?」
「オーブが君の故郷であることは私も知っている。
 だが君の覚悟を私は信じたい……私の理想とする、
 来たるべき黄金時代のためにも君の力が必要なのだ…お願いだ、シン」
「…分かりました。
 オーブがジブリールを渡すのを拒んだ場合、出撃します。
 誰1人逃がしません……議長の理想を認めない奴は……俺が皆殺しにします」

37620-2 7:2005/08/18(木) 11:13:47
230 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:18:59 ID:???
若きアスカは暗黒面に堕ちた…

37721-1 1:2005/08/18(木) 11:14:18
343 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/20(水) 23:11:45 ID:???
>>329-330

 粘膜の擦れる音がする。静かにその音だけが耳を衝く。
少し指に力を入れただけなのにそれだけで彼女は何とも
言い難い表情を浮かべながら、何事か聞き取れないくらいに小さい声を吐き出す。

「アスラっ…さっきから…そこ、ばっかり…」
「ん、じゃあ他の場所に変えるか…?」

 生憎と部屋は暗い。それに彼女の背後から
この行為に及んでいるので残念ながら彼女の顔を窺い知ることは叶わなかった。
今、どんな顔をしているのだろう…やっと聞き取れた声からするに、少し困っている感じがした。

「ルナは…初めて、なんだよな?」
「きっ、決まってるじゃないですかっ…!」
「あ、あぁ、ごめん…そういうつもりじゃなかったんだが…」

 行為中にこんなことを聞くのはルール違反かもしれない。
だが少しだけ嬉しかったりもする。離れ離れになってしまって
以来、もう自分は忘れられてしまったと思っていただけに。
 彼女がちゃんと自分を待っていてくれたことが、心の底から嬉しく思える。

「ね…」
「うん?」
「ちゃんと最後まで…してくれる、んですよね…?」
「…あぁ」

 お粗末にもあまり良いベッドではなかったけれど。
2人の想いを確かめるにはあまりにも静かで寂し過ぎる場所だけれど。
 今、確かに自分達が此処に在るということを再確認するために…。

「俺は何処にも行かない…ルナと一緒だ、ずっと」
「私も貴方から離れない…アスランと一緒がいい」

 深く愛し合いたい。焦がれる様に、溶け合う様に。

「ルナ…!」

 互いに上気していたと思う。理性よりも肉欲の方が勝ったらしく、もう言葉は不要。
ひたすらに互いを求め、堕ちて行けばいい…もう誰にも止めることなどできないから。

「あっ…ぁっ…!」

 丸みを帯びた軟らかい肌、手にしっとりと馴染む大きな胸も良い。
更に腹や腰に指を這わせてみると、身体を震わせて身悶える彼女の様相が可愛らしかった。

37821-1 2:2005/08/18(木) 11:14:37
344 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/20(水) 23:12:51 ID:???
どぎついかどうかは分からないが
新シャアじゃこれくらいが表現の限界な気がする
一応、反省はしてる

379名無しさん:2005/08/20(土) 16:32:12
>>338の分については転載終了。次からは以下の分を転載します。

22-1 インフィニットジャスティス(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
23-1 インフィニットジャスティス2(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
23-2 インフィニットジャスティス3(161 ◆E2q4Je3dsw殿)

38022-1 1:2005/08/20(土) 16:33:22
549 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:26:46 ID:???

『もう止めるんだ!
 これ以上誰かを傷つけちゃいけない!』

『黙れよ、キラ・ヤマトォ!!!』

 宇宙(そら)を舞う2体のガンダム。
青いき翼の天使、フリーダムと赤き翼の堕天使デスティニー。
死闘の末に互いの頭や腕、脚を失いながらも、果てることなく舞い、斬り合う。
 互いに譲れないものがある、両者をつき動かすのはまさにそれのみ。


『ステラを殺したクセにっ!
 アンタが父さんを、母さんをっ、マユを殺したクセに!!!』

『君だってラクスを殺した!
 皆のために必死で頑張っていたラクスを…君が!』

『議長を認めない奴に生きてる価値なんてない!
 お前らなんかに絶対邪魔はさせない……お前らみたいな偽善者がいるから、皆死ぬんだ!!!』


 滾る憎悪をこれでもか、とばかりに収束、吐き出してゆく。 
デスティニーはシンの怒りを受け止め、フリーダムへと叩き込んでいく。
人機一体となったシンとデスティニー、荒らぶる鬼神の如きその姿。
 もはやガンダムではない、その姿はガンダムと形容してよいものではなかった。

『どうしても退かないというのなら……僕は、君を殺さなきゃいけなくなる!』

『やってみろよ! 俺の力を見縊るなぁッ!!!』


***


「はっ! …はぁっ、はぁっ、はっ!」

 悪夢は醒めた。
夢の延長線上に位置する此処は、自分とレイ・ザ・バレルの相部屋。
ガラにもなく冷や汗などをかき、見るとシャツはグッショリと濡れている。
厭な夢だった。知りもしないキラ・ヤマトの声が、魂に響いた気がするから。
思わず口元を押さえ、シンは上気する身体へ動きを止めるように静止を促す…ゆっくりと。

38122-1 2:2005/08/20(土) 16:33:52
550 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:27:48 ID:???

「大丈夫か」
「レイ…」
「魘されていたぞ」
「う、うん…」

 隣のベッドで寝ていたレイもシンの様子を気遣ってか、
やや怪訝な面持ちながらも心配そうに覗き込み、給水ボトルを手渡してくる。
 ややひんやりとした感触が、今のシンにはとても心地良く感じられた。

「オーブ侵攻作戦の前だ…気持ちは分かる」
「いや、そんなんじゃ…」
「だがお前の故郷なのだろう?
 最悪の場合は民間人への攻撃も可能となった今、オーブ軍や
 ロゴスと蜜月関係にあるオーブ政府関係者を討つのが俺達の任務。
 そしてオーブ侵攻作戦の指揮をとるのはお前だ、シン」
「…分かってるさ、それくらい」

 シンはデュランダル最高議長の命令によりフェイスの称号を与えられ、
更にはミネルバ内での議長の私的代理人としての任も担っている。
 つまりはタリア艦長よりも権限は上、ということになるのである。
議長が何を意図してシンをそこまで祀り上げるのか…プラント議会の中には
それを疑問視する者も少なくはない。だが救国の英雄の活躍を認めない訳にもいかない。

「もう少し、俺を頼ってくれてもいいんじゃないのか、シン」
「えっ…」
「友達だろう、俺達は」
「あっ、あぁ…そうだよ、な。
 ごめん、レイ…俺、なんか1人でずっと考え込んじゃってさ。
 議長に呼び出されたり、ここんとこ慌しかったから…疲れてるのかな」
「今は少しでも休め。
 お前は議長の理想のために戦うんだろう?」

 彼の言う通り、今の自分はそのためにある。
議長の掲げる、憎しみも悲しみも争いも無い世界、来るべき黄金時代のために。
地球とプラント、そして宇宙、果ては銀河系の全ての安定のために。
 もう誰も悲しむことのない世界を作るために、自分は今ここにいるのだから。

「……俺、デュランダル議長のこと尊敬してるよ。
 すごい良い人だし、立派だし、あの人のためなら何だってできる…そんな気がする」
「そうだ…それでいい、シン」

38222-1 3:2005/08/20(土) 16:34:11
551 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:28:49 ID:???

***

「レイから話は聞いているよ。
 すまなかったね…結果的に、君に重圧を強いてしまったようだ」
「いえ、自分の体調管理の問題ですので…」

 朝方、シンはデュランダルの召集命令を受け、出頭した。
何事かと思えば、どうやらレイが昨夜のことについて議長に報告したらしい。
何も気遣ってっくれなかったアスランとは違い、シンは心底、議長の心遣いが嬉しかった。

「これでは友人失格だな、私は。
 君と対等の立場に立つ友人などと言っておきながら、君のことを理解できていなかった」
「そんな、議長が心配される程のことでは…その、ただの夢ですから」
「…夢?」

 穏やかな表情だったが、一瞬だけデュランダルの視線が鋭くなった気がした。
ただの夢、そう思いたい。だが、あまりにリアルすぎるのも気味が悪い。
キラ・ヤマトとフリーダムによく似たMSとの死闘の末、自分が……馬鹿馬鹿しい、あれは夢だ。

「良ければ、聞かせてはくれまいか…その夢とやらを」
「ですが…」
「君はニュータイプなのだ、シン。
 例え夢であってもそれは意味のあるものかもしれないからね」

 そしてシンは静かに語り始める。悪夢を。
キラ・ヤマトとの戦いの果て、自分とデスティニーが……。

「それは恐れだよ、シン」
「恐れ…」
「君自身が恐れているんだ。
 戦うことを、キラ・ヤマトを、フリーダムを、オーブを、そして自分自身を」
「俺は、恐れてなんて…いません! アイツは、キラ・ヤマトは倒しました!
 アスランだってこの手で殺したんです! もう誰も俺に敵う奴なんていないんだ!!!」 

 憤るシン。
そう、今や最強は自分のはず。この宇宙でニュータイプなのは、自分だけなのだ。

「だが恐れを抱くことは悪いことではない。
 怒り、憎しみ、そして恐れ…全てが君の力となり、また味方となるだろう。
 もっとニュータイプの力を、叡智を学び、我が物としたまえ、シン。
 無限の可能性を秘めたニュータイプの力ならば…不可能すら可能にするかもしれないのだから」

38322-1 4:2005/08/20(土) 16:34:35
552 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:29:50 ID:???

***

「ルナ」
「ん、何?」

 インパルスのOS整備を行おうとした矢先、
格納庫でルナマリアはヨウランらに呼び止められる。
何でもオーブ侵攻に合わせ、各種武装の互換性を再度チェックしておけ、とのこと。

「ルナはこれまでザクとかズゴックとかばかりだし…」
「インパルスにも早めに慣れておいてもらうと助かるんだよね、俺らとしては」
「…不本意だけど、善処するわ」

 そう、不本意だ。
誰が好き好んでこんなMSに乗ってやるもんですか、と彼女の鼻息は荒い。
殺したのだ、このMSに乗っていた彼が、アスランを。殺したのだ、シンが、彼を。
 アスランは真実を模索していた……だから自分も助けた。 
自分が別れ際に「愛している」と言った時、彼は満足そうに笑って「知ってる」と応えてくれたのに。
 あれが最期の笑顔。最期の彼との会話。最期に彼を感じた瞬間。

「(私…何やってるんだろう)」

 インパルスのコクピットに乗り込み、OS画面を起動。
相変わらず、プログラミング作業は面倒で苦手…しかも今回は
フォースシルエットやソード、ブラストなどの各種武装との互換性も考慮しなくてはいけない。

「(遠い昔ね…あの頃は、楽しかった…)」

 ディオキアの街の散策や夜のデート、深夜のズゴックのOS調整など
アスラン・ザラとの楽しかった思い出ばかりが脳裏に思い浮かび、自然と熱いものが込み上げてくる。
 泣いたって彼が戻ってくるはずないと分かっているはずなのに、それでも泣かずにはいられない。

「(あの時…私も一緒に…)」

 グフに乗り込めば良かった?
だがそうなれば残された妹や両親はどうなる?
 結局は覚悟が自分に足りなかっただけ…総てを捨てて彼と共に行く勇気が無かったから。

「(どうして、会っちゃったんだろ…どうして、好きになっちゃったんだろ…)」

 答えは出ない。インパルスは何も応えてはくれなかった。

38422-1 5:2005/08/20(土) 16:34:57
553 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:31:23 ID:???

***

「アスラン、無茶だ!」
「お前だって、シンに機体を破壊された割に、くっ…ピンピンしてるじゃないか…」
「キラは特別だ! お前はいいから寝てろ、まだ動ける体じゃ…!」

 痛みが軋む身体に鞭打ち、アスランはベッドから起き上がる。
気が気でないキラとカガリが何とか彼をベッドに戻そうとするものの、
今の彼は到底そんなことでは止められそうも無かった…それ程に、強い意志が瞳に宿っていたから。

「ラクスが…エターナルが危ない…んだろ…?」
「それは…」
「カガリ、お前の…ルージュを貸せっ…!
 俺がエターナルのところまで行く…アレが完成しているのなら…直接、受け取ればいい!」
「馬鹿なこと言ってないで、怪我人は大人しく…」
「馬鹿はお前達の方だっ!」

 怒号と共にカガリの手を振り払い、アスランは身を乗り出す。
キラがその気になれば、弱ったアスランを気絶させることくらい容易いだろう。
だが、させなかった。執念とも呼ぶべき炎が瞳に宿った今の彼は、それを許さない。

「キラ…いつか…お前は言って…いたな…。
 “カガリが今泣いているから…戦う”と…。
 俺もそうだ…俺のために泣いている人がいる…その子のためにも…
 こんなところで、じっとしているワケには…いかない……早く、そこを、どけぇっ!!!」


***


「ルージュを!?
 でもアスラン君、そんな身体じゃ…」
「いいから…発進の準備を…お願いします、ラミアス艦長…!」

 強引にノーマルスーツに着替え、ストライクルージュに搭乗、
もう自分が怪我人だということも忘れ、空の彼方、エターナルの元へ。
 これ以上、キラ達に頼るのは癪に障る…だが、思いだけでも力だけでも駄目ならば…。

「(抗ってやるさ…俺は諦めたくない!)」

38522-1 6:2005/08/20(土) 16:35:17
554 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:34:00 ID:???

***

『俺1人じゃかなり無理があるぞ! どうするつもりだ、ラクス!?』
「…最悪の場合、この情報だけでも地球へ届けねばなりません」

 宇宙(そら)のエターナル。
廃棄されたメンデルに潜入してかつてのキラやカガリの産みの親でも
あるヒビキ博士ら…そして研究所時代のデュランダルの研究資料を手に入れたラクスらだが、
運悪くザフトの監視に引っかかり、ナスカ級戦艦らが率いるMS大隊の襲撃を受け、絶対絶命の危機に陥っていた…。

「デュランダル議長の真の目的を明らかにしなければ、世界は…」
『んなことは分かってる!
 だがなラクス、このままじゃ時間の問題だ!』

 バルドフェルドも改装ガイアにて奮戦しているが、何しろ
ザフトに在籍していた頃は専ら地上戦ばかりを担当していたこともあって
宇宙での戦闘の勘が鈍ってしまっていることは否めない。
 かつてキラが宇宙から砂漠へ舞台を移した際にバルドフェルド率いる
バクゥらに苦戦したのとは逆、今度はバルドフェルド自身が宇宙で苦戦することとなったのだ。

『(ちっ、なまったもんだ!)』

 グフのヒートロッドでビームライフルを破壊されたのは痛い。
ドムトルーパーが完成していさえすれば援護に回すことが出来たかもしれないが
それも今では後の祭り。ストライクフリーダム、インフィニットジャスティスは
キラとアスランの専用機…正直、いくら砂漠の虎でも動かせる自信は持ち合わせてはいなかった。

「接近する新たな熱源あり!」
「新手ですか?」
「いえ…待ってください、これは…ストライクルージュ!?」
「! …キラ!?」

 電圧の関係で普段の趣味の悪い薄ピンク色から通常カラーへと
色合いを変えてはいるものの、確かに信号はストライクルージュのもの。
 もともとはオーブが余剰パーツで自作した、限りなくストライクに近いストライク。
本来ならばキラが動かせば良かったのだろうが…今回ばかりは、アスラン・ザラの執念が勝ったらしい。

「見えた…エターナル!」

38622-1 7:2005/08/20(土) 16:35:37
555 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:35:03 ID:???

 永遠の名を冠するかつての最新鋭宇宙戦艦。
艦長がラクスであるため悪趣味なピンクの機体色が
目に痛いものの今はそんなことを言っていられない。
 宇宙にあがるために余計なパーツを着けずに来てしまったため、
今のストライクは無防備に近く、ディアクティブ装甲もザクやグフの猛攻にどこまで耐えられるか。
 いや、それ以前にアスラン自身の身体にも大きな負担がかかっている。
シンに撃墜されてから日も経っていないうちの出撃…今だって、全身が悲鳴をあげている。
 けれど、退かない。

『こちらアスラン・ザラだ…エターナル、応答を!』
「えっ、アスラン…!?」
「ラクス様!」

 てっきりキラだと思っていたが、何と搭乗者はアスランと名乗った。
だがいつもの彼と違ってイマイチ声に覇気が無く、またストライクの動きも散漫で
敵の攻撃を上手く避けきれず、所々被弾して見るも無残な姿へと変わってゆく。

「早く収納してください!」
「は、はっ!」

 何とかハッチまで辿り着き、エターナル内に収納されるストライク。
かつてはザフトに恐れられた最強のMSも、たった2年で随分と性能負けしてしまったものだ。
 いや…やはり、自分の腕が落ちたのかもしれない。

「なら、また強くなればいい……っぅ!」

 痛い。今のアスランを突き動かすのは鋼の精神力。
さっきの戦いでも、コンディションが十分ならばザクやグフ相手にも不足はなかったはず。
シンとの戦いで負ってしまった傷が癒えるまで、完全な力は取り戻せない、か…。

「(今の俺にできることを…やるだけだ)」

 無重力に身を任せ、ルージュから脱出。 
ふわりと着地し、アレがあるであろう場所を目指す。
かつて自分も乗っていた艦だ、場所くらいは大体見当がつく。

「(フリーダムだけならまだしも…アレまで復活させるなんて…)」
  
 アレはジェネシスと共に滅んだ。
だがラクスはそれを蘇らせ、新たな剣としてその力を振るわせようとしている…自分に。

38722-1 8:2005/08/20(土) 16:36:07
556 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:36:09 ID:???

「アスラン…」
「…ラクスか」

 扉の向こうにラクス・クラインが立っていた。
本来ならば艦長としてブリッジで陣頭指揮をとらねばならないはず…
それがわざわざ出迎えとは、随分と彼女は暇を持て余しているらしい。

「出迎えか…?
 艦長の仕事はどうした…暇なんだな」
「手厳しいのですね、貴方は」

 つい先日までミーアとばかり顔を合わせていたせいもあってか、
不思議とラクスとの対面を懐かしいとは思わなかった。
寧ろ、彼女としてはキラに助けに来て欲しかったに違いない。
自分が場違いなのは十分に分かってはいるが、今はそんなことを気にしている場合ではないのだ。

「完成しているんだろう、アレは」
「…その身体で動かすつもりなのですか?」
「何もしないよりはマシだ…君は、ここで死ぬつもりなのか」
「……」
「俺は…戦える!」
「…こちらへ」

 彼の言わんとしていることを悟ったのか、ラクスも決意する。
新たな剣を、無限の正義の名を持つ、紅のガンダムを今一度、目覚めさせるために。
 そのために、今は彼の力が必要なのだと。


***


「やぁ、また…会ったな」

 黒い2体の巨人。 
ヴァリアブルフェイズシフト装甲による、起動前の無骨なダークカラーが目を惹く。
1体はストライクフリーダム、キラのために生み出された機体。
もう1体はインフィニットジャスティス…アスランが操縦することを前提とした紅のMS。
 躊躇している暇は無い……まずはエターナルを脅かすザフトを追い払わねば。

「アスラン・ザラ……インフィニットジャスティス、出る!」

 起動の瞬間、Gの鼓動が魂に響いた…そんな気がした。

38822-1 9:2005/08/20(土) 16:36:25
557 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:38:54 ID:???
2話分くらい書いてちかれた
キラはピンピンしてるのに凸が重症ってありえなーい
早く本編に無限正義が出ないと
どうやって活躍させればいいのかすら…うーん

38923-1 1:2005/08/20(土) 16:37:02
255 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:14:21 ID:???
まだ昨日の分見てないから超適当で短い
しかも先週は進展が全く無かったからインジャスも
どう動かせばいいのかもまだ分からない…マイッタ

39023-1 2:2005/08/20(土) 16:37:24
256 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:15:20 ID:???

『エターナルより、アンノウン(未確認機)現出!』
『モニターに出せ』
『はっ!』

 エターナルを追うザフト軍艦船のモニターに映し出されるMS。
かつてヤキン・ドゥーエの戦いで連合・ザフト双方から畏怖の対象とされた
核エネルギー搭載型MS…ジャスティスの姿が。その姿、雄々しく…また、神々しく。

『あれは…』
『――――ジャスティスだとっ!?』

 ジェネシスと共にこの世界から完全に消えたはずのジャスティス。
だが時代は再び彼(か)の機体を必要とした……必然だったのかどうかは問わない。
けれど戦う力を持つのならば、それを自覚しなければならなくなる。
 本人の意志に関わらず、戦いが彼を呼ぶから。

「俺は―――――」

 久々の宇宙空間での戦い。
地球の重力に慣れ過ぎたせいか、今のアスランにはGがキツイ。
操縦桿を握る手は振るえ、呼吸も荒い…でも、不思議と負ける気はしなかった。

「俺はもう、迷わない!」

 確固たる意志が、滾る闘志が、湧き上がる想いが、力となる。 

『例えジャスティスだろうとっ!』
『この数を相手にできるはずがあるまい!』

 グフ大隊がジャスティスに狙いを定めた。
ヒートロッドがまるで触手の如く、四方から迫り来る。
 だがジャスティスは微動だにしない…まるで、何かを待つ様にして。


「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! …見える!」  


 今この瞬間、アスランは確かにGの鼓動と共に刻が視えた!

39123-1 3:2005/08/20(土) 16:37:43
257 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:16:53 ID:???

「……そこかっ!」

 主な武装は今の時点でビームライフルとシールドに内臓されたビームソード、
ビームサーベルが2本、背部のファトムー00に搭載されたビーム砲…残念ながら両肩の
ビームブーメランはまだ使えそうもない。だが戦い方はいくらでもある。
単に虹色ビームを一斉射撃すれば全ての敵に当たる…などということは有り得ない。
 直接、叩く他はない!

『なっ、かわし…!?』

「遅い!」

 ドンッ!!!

 まず一機、落ちた。 
ヒートロッドはビームソードによって断ち切られ、
瞬時に迫ったジャスティスの一撃のもとに両断、果てる。
 方位を掻い潜り、ジャスティスは猛るが如く剣を振るうのだ。

『このぉ!』
『テロリストめ、調子に乗りやがって!』

 続いてグフが2機。専用ソードによる接近戦を挑む気らしい。
それはこちらも望むところ…今なら、きっと見えるはずだから。

「負けない!」

 ザンッ!!!

 蒼い双刃が煌き、ザクらを斬り裂く。
両腰のビームサーベルを引き抜き、群がる敵を瞬く間に薙ぎ払ってゆく。

『グハッ…馬鹿な、何故っ、これ程の…力の差がっ!?』

「覚悟の差だ…」

 ズンッ!!!

「大切な誰かを……世界を裏切ってでも守りたいという、覚悟の差だ!」

39223-1 4:2005/08/20(土) 16:38:02
258 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:18:16 ID:???

***

「いよいよだな」
「あ…うん」

 ついにオーブとザフトは全面戦争に突入した。
ユウナ・ロマ・セイランの詭弁など誰も信じることはなく、
ロゴス盟主であるロード・ジブリールを拿捕し、憎しみの連鎖を断ち切ろうと
陸海空の総力をあげ、オーブに対しての掃討作戦がとられたのである。

「どうした、シン」
「何か…嫌な予感がする」 
「…指揮官はお前だ、今頃になって弱音は困る」
「そんなんじゃないけど…何か、こう、変なんだ…よな」

 命令があるまでは待機。
すでに前線では別部隊がMSらを展開、オーブ軍と交戦状態に入ったと言う。
シンは特に選出されたMSパイロット【トルーパーズ】を率いる指揮官である。
フェイスの称号と議長の私的代理人という立場…今のシンに、逆らえる者など最早いない。

「だったら出なきゃいいじゃない」
「…よせ、ルナマリア」
「怖くなったんでしょ?
 自分で『こんな国、滅ぼしてやる』とかカッコつけてたけど、
 今になって怖くなったんでしょう? また自分みたいな子が生まれるのが嫌になって」
「何だと…!?」

 唯一、シンへの嫌悪感を顕にする女性がこのミネルバに居る。
ルナマリア・ホークは、上司のアスラン・ザラを殺したシンを許すことは永久にない。
ニュータイプだからと祀り上げられ、議長の信頼を得てはしゃぐ子供そのものの彼は、
いつの間にか命の重さを忘れてしまっている…アカデミーの頃の彼は、もういない。

「できるさ、俺が最強なんだ! オーブを滅ぼすなんて俺1人いれば十分だっ!!!」
「アンタが人の命をどうこうできる立場にあるの!?
 その自意識過剰な傲慢が、いつか命取りになるわ…覚えておきなさい!」
「ルナマリア、いい加減にしろ!」
「レイ、いいよ……どうせ、ルナも俺の力に嫉妬してるだけなんだ。
 力の無い奴は力を持ってる奴によく吠えるって言うし……だったら俺の力を見せてやる。
 オーブの連中は皆殺しだ! 男も女も、子供も年寄りも、刃向かう奴は全部殺す!
 1人残さず殺して、殺して、殺して! ロゴスを庇う様な奴らは……俺が修正してやる!」

39323-1 5:2005/08/20(土) 16:38:18
259 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:21:18 ID:???
ゲームに集中するんで次週まで篭ろうかと思う
後悔はしていない

39423-2 1:2005/08/20(土) 16:38:44
557 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:41:11 ID:???
久々に書いた
また2〜3日の間に書きたい
ここんとこは書き込み少ないけど
みんな盆休みとかコミケなのか?

39523-2 2:2005/08/20(土) 16:39:11
558 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:42:40 ID:???

「デスティニー…プラン?」

 何とか全ての敵を撃退したものの未だに傷の癒えぬまま
ベッドに臥していたアスランが、徐に消え入りそうな声を漏らした。
 労いのために訪れたバルドフェルドによって齎された情報である。

「ダコスタが廃棄されたメンデルで見つけてきた…。
 生憎と俺は遺伝やら生物学やらには無頓着なもんでサッパリだったがねぇ」
「デュランダル…議長の…?」
「どうもそうらしい。
 過去に遡るとかれこれ20年以上も前から計画していたとか何とか…。
 興味があるなら…ラクスに見せてもらうといい」

 バルドフェルドはそう言い残し、医務室を去る。
残されたアスランは自身に今一度、問う。自分は何がしたかったのかを。
オーブに亡命して2年、偽りの自分を演じながら生きてきた。
だがそれは少しでも争いの無い世界を作ることに貢献できれば…と思ってのこと。
 でも現実は違った。自分はただ、嫌なことから逃げていたに過ぎない。
背負いきることができなくて、自ら落伍者となることを選んで……。

「(俺は……やっぱり馬鹿だ)」



***



「これよりオーブ掃討作戦を開始する…総員、配置につけ!」

 地球ではザフトとオーブの戦いが今まさに始まっていた。
戦艦から放たれる砲撃が海を舞い、多くのMSが出撃、海と大地を紅く染める。
ミネルバも例外ではなく、やや後方にて進撃、更にシン、レイ、ルナマリアら
3人がそれぞれデスティニー、レジェンド、インパルスにて前線に出撃。
 加えて議長によって選出されたMS大隊が加勢に加わる。
今や最強のニュータイプとして君臨するシン・アスカが指揮官(コマンダー)、
レイとルナマリアはその補佐としての出撃…議長の狙い通りなら、これでオーブを落とせるはず。

39623-2 3:2005/08/20(土) 16:39:31
559 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:43:47 ID:???

『コマンダー、指示を!』
「…各機散開して敵MSを迎撃。
 市街地での戦闘は極力避け、戦意の無い者、一般人への攻撃はするな。
 ただし…抵抗する者には容赦はしなくていい…慈悲はいらない、殲滅せよ!」

 デスティニーより発せられるシンの命令を受け、
ザクやグフらがオーブ軍のムラサメ隊との交戦を開始する。
自分達の目的は飽くまでジブリール、このオーブを滅ぼすことではない。 
 しかし、国をあげて敵を匿うと言うのなら、国ごと滅ぼしてしまえばいい。

『なかなか良い指示だったぞ、コマンダー殿』
「レイ…」
『お前の言う通り、慈悲など無用。
 議長に逆らう逆賊に生きている価値は無い…皆殺しにしてやればいい』

 レイもレジェンドでの本格的な戦いはこれが初めてのはず。
前回のアスラン討伐の際に見せた神がかり的なファンネル操演能力に期待したい。
シン自身もデスティニーの操縦に慣れてきた…はずだ。
 未だに、動かしている時に妙な声が聞こえてくるのが唯一の不満だが…。

「(何なんだよ、アレは…)」

 が、敵は待ってくれない。
早速前方に3機の機影を確認、MA形態のムラサメ隊だった。

『手を貸すまでもないな?』
「1人で十分だ!」

 副指揮官のレイに後を任せ、シンは敵陣に一番乗りを果たす。
ムラサメらの動きをすぐさま見切り、1機目をビームカッターで撃墜。
2機目を左肩の高エネルギービーム砲で狙い撃ち、3機目は――――――――。

「シャイニング―――――――」

 総て視えている、これからどう動くのか、どう軌道を描くのか。

「フィンガァ――――――――ッ!!!」

 輝く拳が炸裂、掌から発せられた無限の熱量が、敵を跡形もなく消し飛ばしてゆく…。

39723-2 4:2005/08/20(土) 16:39:51
560 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:45:05 ID:???

『強いぞ!』
『ザフトの新型か!?』
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 今度はアロンダイトを起動。
超高速で振り下ろされる巨大な対艦刀を防ぐ術は無く、
続けざまに何体ものMSが銅を真っ二つにされて爆発、海中に没する。
 
『これ以上はやらせんぞ!』
『オーブの魂、侮るでないわ!』
「邪魔なんだよ、お前らはァ――――――――――――――!!!」

 光の翼。
光粒子フィールドを形成、メガ粒子にコンバートしてフィールド上に流出、
巨大な扇状のビームサーベルがあたかも翼に見えることから名付けられた究極兵器。
 技術者の間では黒歴史の遺産の流用ではないか…との見方もある。

「消し飛ばしてやるッ!」

 そのまま敵の陣形に切り込もうと、アロンダイトを構えるデスティニー。
ミラージュコロイドの散布も兼ねているため、その機影が残像となってオーブ軍を襲う。
 MSの分身…荒唐無稽な話だが、ナチュラルである彼らにはデスティニーの本体すら見えなかった。

『う、うわあぁぁぁぁっ――――――――』
『や、やられ―――――――』




         “おかしいですよ、カテジナさん!”




「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! っぅ…またかよ…何なんだよっ!?」

 シンの魂に、また誰かの声が響いた。
忘れようと思っていたのに、デスティニーで戦闘に出ると決まって耳鳴りがする。
聞いた事の無い声、見た事も無い景色、見た事も無い人々、見た事も無いMS。
 ニュータイプとして背負ってしまった運命の意味を、シンはまだ知らない。

39823-2 5:2005/08/20(土) 16:40:10
561 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:47:22 ID:???

『向かい撃て!』
『オーブを守るのだ!』

 目障りだった。
周囲を飛び交うそれはとても不愉快で、とても見苦しくて。
この手で叩き潰したくなる程に、それらは彼にとって醜いモノだった。

「…落ちろ、逆賊」

 背部の有線ドラグーンを展開、
四方八方に飛び散った一つ一つが意志を持つかの如く、蠢く!
やはり無重力下でも、今のレイならば十分にファンネルを操ることは可能らしい。

「行け、ファンネル!」

 メーサーの容量でクロスした光線がムラサメを切断、次々と撃墜していく。
それでも尚、刃向かって来る者にはビームソードによる一刀両断の運命が待つ。
彼はまるで機械、それも邪悪に歪んだ――――――――レイ・ザ・バレルと言う名の機械兵士。

「ギルに逆らったこと……後悔するがいい」

 鋼の輝きを持つレジェンド。
無慈悲に敵を薙ぎ払ってゆくその姿に、味方であるはずのルナマリアは恐怖する。
 狂っている、何か、狂気を感じる。シンとレイ、どちらにも…。

「(…怖い)」

 何もかもが変わってしまった。
世界も自分を取り巻く状況も、そして自分さえも。
最愛の彼を殺した男が操っていたMSを駆る自分が、許せなかった。
でもそうしなければ自分には戦う力が無い…自分の居場所が無くなってしまう。
 そもそも、どうして自分はザフトに入ろうなどと思ったのだろう?
そんなことも、遠い昔に忘れてしまった気がする……この空虚な気持ちと引き換えに。

「でも…それでも…」

 迫る敵機にブラストインパルスのジャベリンが命中、串刺しのまま投げ返す!

「私は、あの人に追いつくまで……追いかけるのを止めない!」

39923-2 6:2005/08/20(土) 16:40:26
562 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:49:14 ID:???
久々にVガンとGガンを見たくなった
だが反省はしていない


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