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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

621私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:22
ラクスがあのままだと…

622私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:36
あれはあきらかに大丈夫だろ、ギャグだと思うけどね。
あれで駄目だと言われたらたぶん投下やめるだろうな。
ラクスがアスランになにしたかは分からないが・・・。
でも細かいとこつくよね、あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。
まぶらほの夕菜ちゃんはあんな感じだけどね・・・。

623私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:42
>>あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。

この板のフレイファンが言っても説得力皆無だよ。
自分もギャグオチならアリ、シリアス展開なら微妙。

624私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:56
フレイ様以外にスポット当てるのやめた方が無難だな。

625私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:02
まあ、あれだ。
ギャグに見えない雰囲気を作ってきてるってのが、ちょっとまずいと。

626私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:05
そろそろ避難所使った方が。

627私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:20
君達そんなに批判したいのかね?女の子が頑張ってるのに・・・。
そもそもこのSSはフレイ様が主役では?ラクスとか他キャラにスポット当てるのやめようよ・・・。

628私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:24
女の子とかオヤジとかそんな事全然関係ない

629私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:30
女の子だからって優しくしたり甘くしたらつけあがるよ。
こういうふうに批判ばかりするのも彼女のためでもあるんだよ。

630私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:33
2ちゃんじゃなくてよかったね、と。
つーか避難所使おうよ。

631私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:35
>>627
なんつか、女の子だから、って理由はまずいと思われ。

632私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 22:40
>>過去の傷の作者さん
もう投下やめなよ、それが君のためだから。
これ以上傷つきたくないよね?

633私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 23:04
>>トリィ
おお!楽しみにしてるよー。

キャラ萌えスレ以外に投下すればいいんじゃない?
タイトルが過去の傷っていうのも皮肉な・・・

634私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:11
というより、あからさまにラクスとかを叩くことのみを目的として書いてる
腐女子はスルースルー。どうせ女子高生とかいってもキモいんだろうし。

635私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:56
あれでラクス叩き?
むしろアスラン叩きじゃ。

どっちでも同じか。

636私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 04:16
キラ至上主義じゃね?
あいつだけいい目をみているのにモテモテだ。
アスランを糾弾するラクスだけど、キラと付き合ってたんだろ…
辻褄を合わせる気があるのかわからないな。まぁこれはただの叩きになってしまうがな。

637私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 07:48
ここには複数の方が投稿されますので、感想については、対象を明確に入れる
ようにした方が良いかと思います。

>>過去の傷
自分の作品を大事にされているのは分かりますが、やはり、今の時期、
この内容は、キャラへの配慮と言うよりも、場全体への配慮が
足りなかったのでは無いかと思います。
私だと、フレイの、テレビドラマかぶれの部分を落とし所にしたでしょうね。

切り口を変えることで印象を良くすることもできるでしょうけど、
やはり、今は新しい道を探された方がよいかと思います。
辛いのは、あなただけではありません。
書く人も読む人も、みんなそうなのですから。

638さよならトリィ 3/8:2004/06/02(水) 07:55
[トリィ…… こんなものっ!!]

キラの部屋に同棲して、少しキラと、いろいろな話をするようになった。

トリィのこと、キラから聞いた。友達から、もらった大事な贈り物。
友達…… 多分、ザフトの…… パパが死んだ時にいた……

キラの居ない部屋。私はドア脇のデスク上を歩き回るトリィを暗い目で睨みつける。
トリィが立ち止まり、私と目を合わせるのを感じ、私は呟くように語りかける。

「トリィ、あなたは……」
<トリィ?>

パパを殺したザフト、コーディネーター。それが作ったもの。

「トリィ、あなたって…… 許さない…… こんなもの……」
<トリィ? トリィ?>

ベッド横にある棚。そこには、私がキラに言って入手してもらった化粧品が、いくつも並んでいる。
私は棚にある化粧品の瓶を手に取った。ガラス製の一番大きいもの。そして、トリィを目の前に、
それを振り上げる。

壊してやる! こんなもの……

キラには、事故だったって言えばいい。キラは、私を怒ったりしない。私は責められることは無い。
これはロボット。生きてはいない物なんだから。

「トリィ…… こんなものっ!!」

私は叫んで、ガラスの瓶を振り降ろそうとした。

<トリィ…… トリ? トリィ>

トリィの声と仕草が変わって、私の手は止まった。

少し小首を傾げるような仕草。まるで、本当に生きているよう。
違うわよ。これはロボットよ。生きてなんかいない。この動きも、この声も、みんなプログラム
されたもの。そういう風に作られているのよ。最初から、そういう風に。
騙してるのよ。私を騙しているの。私は騙されない。こんなもの、こんなもの……

<トリィ…… トリィ…… トリィ……>

トリィの声を聞いているうちに、瓶を振り降ろせなくなった。瓶を床に放り出し、ベッドに戻って座り込む。

「うっ、うっ、ううう」

涙がこぼれる。なんで、こんなことで泣かなくちゃならないの。

<トリィ…… トリ、トリィ! トリィ!>

トリィがベッドの私の近くまで来て、さえずりながら、私に語りかけるように、頭をときどき、
突き出している。なんで、トリィの鳴き声が、私を元気づけるように聞こえるの?
ロボットなのに…… 物なのに…… 私は、おかしくなったの?

「トリィ、私、あなたのこと……」

私は、トリィに手を伸ばした。さっきとは打って変わって、私自身をトリィに委ねるように、ゆっくりと……
その手を、トリィは優しくクチバシでついばむようにつつく。それを快く感じながら、私は、
トリィを本気で憎むことはできないことに、心を迷わせる。

自分の想いを隠し、一人孤立する私の中で、トリィの存在は既に大きくなっていた。
自分の想いを、ただ一人話せる相手。ロボットでは無い。本物の鳥でも無い。
なにかひとつの人格のある存在。キラの部屋の、私とキラ二人以外の三人目の住人。

トリィ。憎いコーディネーターが作ったロボット。キラと友達の友情の印。私にとっては、
パパを奪った許せない絆のはず。だけど、そのトリィは、私の心に深く入り込んでいる。
作られた目的とは裏腹に……

ドアが開いてキラが戻ってきた。涙を流している私を見て、心配そうな顔になる。

「フレイ、どうしたんだ」
「なんでも無い…… なんでも無いの」

「フレイ……」

キラは、ベッドの私の隣に座る。だけど、私にかける言葉も無く、ただ辛そうな表情で、
顔を背けている。私もキラから目を逸らしてうつむく。

<トリィ! トリィ!>
そんな二人の前で、トリィは相変わらず愛敬を振りまくように羽ばたき続けている。

「トリィ、お前は元気だね」

キラが、トリィの仕草に、少し表情をなごませた。私は、その横顔を見て、少し心が落ち着くのを感じた。
私は、キラの肩に頭を預けた。キラが何も言わず、それを受け入れたのを感じ、私は、体全体を
キラにもたれかける。キラは私の肩を抱こうとさえしない。それでも、私は、一時の安らぎに
縋るかのように体を預けている。

コーディネーター。それぞれの目的のために、遺伝子をいじって作った特別な存在。そう思っていた。

だけど、今、私の隣にいるキラは、特別でもなんでもない、不器用とさえ思えるくらいの、ごく普通の人間。
なんのために作られたのかなんて、思いもつかない。

639私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:05
言うまでも無いけどトリィだって立派なキャラだ。
>>638
そいつはトリィ叩きでありすぎるから自粛推奨だぞ。

640私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:11
少し作者さん休むって言ってただろうが、それなのになんで複数で過去の傷の作者さんいじめてるんだ?
634なんて作品じゃなく職人自体を批判して侮辱してるだろ、最低だな。

641私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:57
>>640
感想以外は避難所で。
テンプレ推奨作品でお願いしますって事なので。

642夢と希望・1:2004/06/02(水) 21:48
「フ、フレイ・アルスタ−!?こんなところに!」

赤い髪がたなびいた。救難ボ−トから出てきた避難民の中から、一人飛び出した少女はフレイ・アルスタ−だった。
長くつややかな赤、肌はミルクのようになめらかで、高貴さを感じさせる整った顔立ち、いつ見ても大輪の薔薇のような華やかさを感じさせる、彼女を見るとキラはいつもどきどきとしてしまう、いつもろくに話すらできずに遠くから見ていることしかできないのだが・・・。
その彼女に抱きつかれた、夢じゃないかと思ってしまう・・・。

「たしか、サイの友達よね?よかった・・・怖かったの!」
「だ、大丈夫だよ、僕もサイもいるから・・・」

つい顔を赤くしてしまった。
間近で憧れている子がいるので無理もないが・・・。
なぜフレイ・アルスタ−が救難ボ−トに乗っていたのかというと・・・。
ヘリオポリス・・・地球の衛星軌道上、L3に位置していた宇宙コロニ−であった。
キラ達も住んでいた、もちろんフレイ・アルスタ−も・・・。
しかし、あるときプラント・・・いやザフトの艦が降り接近してきたのだ、そんなとき近くにいたキラ達は戦闘に巻き込まれてしまった。
その後幼なじみ今はザフト兵となっていたアスラン・ザラと衝撃の再会をして、さらにストライクというモビルス−ツに乗り戦場に出てしまった。
その後も戦闘が続きヘリオポリスは・・・。

643夢と希望・作者:2004/06/02(水) 21:51
初めての投下です、これからできるだけ投下していきますのでよろしくお願いします。
最初ということもあり少なくしましたが次からは容量を多くしていきます。

644私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:37
>>640
今まで散々荒らし紛いですらない荒らし作品を投入し、
フレイファン全体の評価を著しく貶めたから。

虐めではなく、その落とし前つけさせてるだけ。
奴に限れば職人自体を非難する事自体が当たり前の事だ。

645私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:39
>>644
もちつけ。
せめて避難所でやれ。

646私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:29
644じゃないが、この板がずっと避難所だと思ってたよ。
避難所の避難所があるのか?
放送中から住人だったのに…○| ̄|_ゴメンヨ フレイタマ

647私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:31
>>646
ィ㌔

っつーかよく板を観察しろw

648夢と希望・2:2004/06/04(金) 22:33
「サイ!」
フレイはサイの姿を見つけるとキラから離れ真っ先にサイの胸に飛び込んだ。
「あ、ああ・・・」
しかしサイ自身は戸惑ってる様子だ、しかしキラはそんなサイの態度などよりも抱き合っている二人を見て目を少し曇らせた。
そんな時、キラにムウ・ラ・フラガが歩み寄った。
そして・・・。

「へえ、驚いたな」
「な、なんですか?」
突然歩み寄ってきた、背の高い軍人にキラは思わず身を引く、しかしムウはそんなキラの様子を気にせずさらっと言った。

「君さあ・・・コ−ディネイタ−だろ?」

ムウの言葉にその場が凍りつきざわめきが起こる。
マリュ−がムウを睨んだ。
キラは戸惑いながらも小さな声で答えた。

「はい・・・」

その言葉を言った瞬間マリュ−とナタルの背後に控えていた兵士達が銃を構えキラに向ける。
普通ならなぜ?だと言いたくなるかも知れないが仕方ないことでもあるのだ。
コ−ディネイタ−・・・それは遺伝子を人為的に操作されて生まれた人間である、人の持つ潜在能力を最大限に引き出された彼らは知力、体力ともに優れている。
あらゆる病気にもかかることない体でもある。
だがコ−ディネイタ−とナチュラル・・・遺伝子改変を変えずに生まれた普通の人間との能力の差があからさまになりそれを排斥する勢力が生まれた、流血の歴史や時代を繰り返し、ナチュラルに比べ、宇宙での生活が適していたコ−ディネイタ−達は地球外に移り住むようなった。そして最終的に彼らの住処となったのが、L5に建造された宇宙コロニ−群・・・プラントである。
そして今、プラントの擁する軍隊ザフトと地球、コ−ディネイタ−とナチュラルは敵対しており戦っているのだ。
戦争中ということもあり軍人はぴりぴりしている者も多い、そんななか突然コ−ディネイタ−と名乗られ兵士達が反射的に銃を向けるのも悲しいことだが、無理のない状況ではあった。

「ま、待てよ!なんなんだよ一体!」
ト−ルが叫び庇うようにキラの前に出た、ト−ル・ケ−二ヒ・・・キラと同じくヘリオポリスに住んでいたキラの友人で同じ工業カレッジに通っていたがキラと共に戦争に巻き込まれ事情もあり艦に乗ることになってしまった、ちなみに同じキラの友人である女の子、ミリアリア・ハウとは恋人同士だ。
「コ−ディネイタ−でもキラは敵じゃない!ザフトと戦って俺達も守ってくれただろ!?あんたら見てなかったのかよ!?」
自然とミリアリア、サイもキラの前に出た・・・そして・・・。
「そうよ!キラは敵なんかじゃないわよ!」
「え・・・?」
キラの前にもう一人歩み出た少女がいた・・・。
フレイ・アルスタ−だ・・・。

649私の想いが名無しを守るわ:2004/06/04(金) 23:08
>>さよならトリィ
せつなすぎ…
すごい心理描写ですね。
つ、続きをお願いします〜

650キラ(♀)×フレイ(♂)・45−1:2004/06/05(土) 17:27
「ふうっ。やっぱり、繋がらないか…」
あらゆる通信チャンネルを試してみたが、一向に音沙汰がない。とりあえず、仲間との
コンタクトを一時的に諦めたアスランは、通信機の電源を落とした。
それから、軽く島内探索に出掛けたアスランは、海岸線に漂流したスカイグラスパー
を発見する。どうやら、あの不愉快な連中は、彼の乗った輸送機を落とした敵のようだ。
他にも連合の伏兵がいないか、島全体を慎重に捜索したが、どうやらこの狭い無人島内
に滞留しているのは、自分達三人だけらしい。念の為に、グラスパー内部の通信機器
も動かしてみたが、聞こえてくるのはノイズばかりだ。サドニス島の近辺はNJの
密集地帯だと聞いてはいたが、この通信状況の悪さは想像以上だ。
「そろそろ、帰るか。あのチンドン屋達を野放しにしておくのは危険だ」
一応、拘束してはいるが、例の捕虜二人を長時間、自分の目の届かない所に放置
することに嫌な予感を覚えたアスランは、大急ぎで戻ることにした。


「おい、ザフト兵。いつまで俺達をこのままでいさせるつもりだ!?」
不安に反して、彼らはその場所にいた。フレイは、借りてきた猫のように背中を丸めて
大人しくしていたが、カガリは、アスランの姿を見つけるや否や、番犬のような勢いで
元気に吠え立ててきた。閉口したアスランの鼓膜に、カガリの悪口雑言が響いてくる。
心身共にエネルギーが有り余っているらしいカガリは、無為に耐えられない性質らしく、
一箇所でじっとしているのが苦手のようだ。もし、二人が座禅を組んで、精神修行中の
身だったら、カガリは、精神注入棒でビシバシと折檻されていただろう。
「煩いぞ。お前たちは戦いに敗れて、お情けで生かしてもらっている捕虜なんだぞ。
身の程を弁えろ。ましてや…」
そこでアスランは忌々しそうにフレイを睨んだ。当然ではあるが、どうやら空手形の件を
深く根に持っているようだ。フレイは禅でいう無我の境地に達したかのように、アスラン
の殺気を軽く受け流し、カガリはガルル…と、獰猛犬のような唸り声を上げている。
こいつら、本当に自分達の立場が判っているのか?
露骨に強者に媚いる輩よりはマシかも知れないが、生殺与奪の全てを握られている
この緊迫化で、こうまで尊大に構えられると、自分に軍人としての貫禄が足りないから
舐められているのではないか…という深刻な疑惑がアスランの脳裏から離れない。

「そろそろ、本題に入ったらどうだい、アスラン君?」
今までずっと押し黙っていたフレイがはじめて口を開き、アスランは軽く眉を顰める。
「不渡り手形を掴まされたのに、契約を不履行せずに、わざわざ僕たちを生かして
おいてくれたのは、不戦同盟を誓約してしまったからだけじゃないだろう?
僕らの口から、キラの近況について聞きたかったからじゃないのかい?」
フレイの推測は、彼の深層心理の核(コア)の近くを掠ったが、アスランは心中の
好奇心を押し殺して沈黙を守った。フレイのペースに乗せられるのも癪だったし、
このペテン師の口から出た言葉など、あまり信用ならないような気がしたからだ。
フレイの方は、今の状況を上手く利用し、アスラン君のキラへの想いを見極めるつもりだ。
ジュリエット(キラ)が、敵であるロミオ(アスラン)に恋心を抱いていたのは、
ほぼ間違いないとフレイは確信しているが、果たしてロミオの側はどうなのだろう。

「おい、フレイ。こいつはキラの一体何なんだよ!?」
フレイやアスランの思惑を完璧に無視して、横からカガリが、前々からキラへの
浅からぬ縁を匂わせている敵兵の正体について尋ねてきた。
「アスラン・ザラ君。プラントの急進派・ザラ国防委員長の子息で、現最高評議会議長
のご令嬢でプラントの歌姫として有名なラクス・クラインの婚約者らしい。
肝心のキラとは、月の幼年学校時代に特に仲の良かった級友みたいだよ」
「キラの友人!?この悪逆非道のザフト兵が!?マジかよ!?」
「マジらしいよ。キラの話じゃ、アスラン君は、誰よりも優しくて、とても人殺しを
出来る人間じゃなかったそうだけど、どこでどう捻くれ曲がって、道を誤ったのやら」
フレイはわざとらしく溜息を吐いてみせる。捕虜の分際で、本人を目の前にして好き勝手
な論評を繰り広げる命知らずの二人組にアスランは軽い眩暈がする。何故、このフレイと
いう男は、キラも知らないような彼のプライベート情報をここまで熟知しているのだろう。
一時期、アークエンジェルに捕虜として滞在していたラクスが、アスランの個人情報を
漏らし捲っていたなど、守秘義務感覚の強い軍人のアスランには想像もつかなかった。

651キラ(♀)×フレイ(♂)・45−2:2004/06/05(土) 17:28
「一応、こちらも自己紹介しておこうか。僕はフレイ・アルスター二等兵。
アークエンジェルでは調理主任として厨房を任されている。
こちらはカガリ・ユラ君。明けの砂漠というゲリラから、助っ人として、
スカイグラスパー二号のパイロットに抜擢された凄腕の傭兵君さ」
頼まれもしないのに、フレイも自分たちの側の姓名と身分を明らかにする。
フレイから「傭兵」という単語を聞かされたアスランは、ようやく彼らの行動を得心した。
「やはりそうか。連合の軍服も着てないし、地球軍の兵士とは思えなかったが、金で
雇われた戦闘屋か。理念も愛国心もない奴らなら、仲間を平気で見捨てるのも無理はない」
軽蔑した瞳で見下すアスランに、カガリはグッと口を結んで、怒りで顔を赤くする。
戦争を終結させたいと願うカガリの崇高な参戦動機を思えば、あんまりなアスランの
言い草ではあるが、カガリもカガリで、停戦を受け入れてくれた寛大なアスランを、
不義理にも貶していたので、このぐらい言い返してもバチは当らないだろう。

「それは、ちょっとばかり違うよ。アスラン君。
彼が僕を撃とうとしたのは、冷徹なる打算からではなく、下らない私情だよ」
カガリが口を開くよりも早く、フレイが彼の弁護(んな訳ない)を買って出た。
「どうやらカガリ君は、不埒にも僕のキラに横恋慕しているみたいでね。
僕が死ねば、キラを自分のモノに出来るとでも錯覚していたんだろ?
自分の魅力で女の子を振り向かせるのではなく、戦時のドサクサに紛れて競争相手を
消し去ろうなんて負け犬の発想だよね。まったく狡っからいたらありゃしない」
さっきまでカガリの尻馬に乗ってアスランを口撃していたフレイだが、今度はあっさりと
その対象をカガリへと切り替えた。元々、この二人の間に協調性などあろう筈はないが、
タッグは早くも内部崩壊し、リングは混沌のバトル・ロイヤルへ移行しようとしている。

「ち…違う、俺はキラが嫌いだ。俺にあいつの力があれば、俺は迷わなかった」
幾分の誤差はあるものの、物の見事にフレイ暗殺動機を見当てられたカガリは、羞恥と
多少の後ろめたさの入り混じった怒りで、傷のない側の頬も含めて顔全体を真っ赤にする。
さらには、照れ隠しに心にも無い弁明をする間際に、迂闊にも、自分達兄妹の出生の秘密
の一端に触れる情報まで洩らしてしまう。

「僕のキラだと?どういう意味だ!?」
フレイの発言の一部を聞き咎めたアスランは、意図せず、強い敵意の視線でフレイを睨む。
既に彼の意識のステージから、さっきまで弾劾していたカガリの存在は消去されている。
やっと獲物が撒き餌に喰らい付いてくれたらしい。フレイは内心でそうほそく笑むと、
自分がキラと交際している旨について、簡単に説明した。


「付き合っているって、キラとお前がか?」
フレイはコクリと頷いた。チラリとアスランはカガリの方を見たが、カガリは不貞腐れた
ようにソッポを向いている。この一件に限り、どうやら奴の戯言は事実らしい。
「で…でも、お前はナチュラルだろう?コーディネイターのキラと…」
「おやおや、アスラン君。君もナチュラル侮蔑主義者なのかい?
僕らを猿扱いして小馬鹿にしていた、君の同僚のタカツキ君のように?」
もはや体裁を取り繕う余裕もなく、それでも執拗に食い下がるアスランに、
フレイは澄まし顔で、彼が知る「最低のコーディネイター」の名前を口にする。
「タカツキ?……誰だ、それは?」
「知らない筈はないだろう。一応、君と同じザフトの軍人だし、月の幼年学校時代の
同級生だとも聞いた。尤も、キラとは苛められていた間柄だったらしいけどね」
「ああ、あのマイケル・タカツキの事か…。そういえば、そんな奴もいたな」
アスランはジブラルタルのイザークとの確執の時にも思い浮かべた、彼とはあまり仲の
良くなかった級友の名前を確定させたが、喜びの感情が湧き上がる事はなかった。

652キラ(♀)×フレイ(♂)・45−3:2004/06/05(土) 17:28
「持つ者は、持たざる者の気持ちは判らないか…」
フレイは内心でそう呟いた。キラを苛めていたという悪友に好意を持ち得ないのは判るが、
それ以前に、彼の存在など眼中にないという無意識の驕りが、アスラン君から感じられた。
「虎は生まれつき強いから虎」だと言うが、彼には、タカツキ君が何故、これほどキラや
アスラン君にコンプレックスを剥き出しにするのかなど、恐らく理解できないだろう。
彼のような、あまり悪意を感じさせない誠実そうなタイプですら、コレなのだ。
一般のコーディネイターがナチュラルに持つ優越・侮蔑感と、逆にナチュラルの側から
コーディの側へと抱かれる反感・憎悪などの、連鎖の悪循環は並大抵ではあるまい。
苛めや差別という問題が、虐待する側が悪であること事体には議論・反論の余地はないが、
それを受ける側にも、常に何らかの要因を抱えているというのもまた無視出来ない真理だ。
そういう、ナチュラル−コーディ間で、多々発生したであろう問題が、同じコーディ同士
の間でも頻繁に起こっていたらしいという事実は、フレイには意外であり新鮮でもあった。


「んっ、待てよ。どうして、お前はタカツキの事など知っているんだ!?」
フレイが自分の思考の淵に嵌っている間に、アスランは、彼の情報の豊富さに疑念を抱く。
A級選抜試験に漏れたマイケルは、アスラン達とはクラスが異なっていたので、
プラントのアカデミー時代は、アスランでさえも彼の存在そのものを失念していた。
それに、キラが幼年学校時代の嫌な思い出を、わざわざ第三者に話すとも思えない。
「実は僕とキラは、二日ほど前に彼と遭遇していてね」
思考を慌てて現実世界へと引き戻したフレイは、アスランの疑惑を氷解させる為に、
サドニス島でのマイケルとの馴れ初めについて、得々と語ってみせた。



「コ…コーディネイターの面汚しめ…」
フレイからキラ拉致未遂事件の仔細を聞かされたアスランは頭を抱えた。
キラを赤服に換えようと姑息の限りを遣り尽くした上で、レイプ未遂まで引き起こし、
挙句の果てには、目の前の非力なペテン師如きにしてやられたなどという漫画の小悪党役
そのものの末路を迎えた同胞を好意的に解釈するなど、アスランでなくとも不可能な難事だ。
済まない、イザーク。お前はやっぱりエリートだったんだな。
思い遣りや協調性には欠けるが、基本的には追従や卑劣な行いとは無縁だった同僚を、
最近、少し見損なっていたことに思い当たったアスランは、心の中でそう謝罪した。

カガリは複雑そうな瞳でフレイを睨んだ。彼の与り知らぬ間に、キラはとんでもない
窮地に陥っていたようだ。以前、カガリは、最高のコーディのキラにとって、本当に危険
な場所は戦場(MS戦闘)ではないと予感していたが、どうやらそれは真実だったらしい。
本来なら、キラの息災に安堵すべきなのだろうが、その愛妹のピンチを救った勇者が、
彼が危険視しているフレイだという現実が気に入らず、カガリの気分は晴れなかった。


「君にとっては余計な真似をしてしまったよね、アスラン君?
キラがアークエンジェルにいなければ、君達の仕事も随分と遣り易くなっただろうにね」
アスランのキラへの葛藤を知った上で、敢えてフレイは、彼の神経を逆撫でするような
言葉をわざわざ投げ掛けているようだ。キラが不在ならAA攻略が楽勝なのは事実だし、
キラの退艦を望んではいたが、彼女が咎人とされる未来など彼の本意ではない。
「そ…そんな事は無い。その一点に限っては、俺はキラを救出したお前に感謝する。
軍人としてという以前に、人として恥じ入るような行為を、俺は絶対に認めない」
「そう見捨てたものじゃないさ。タカツキ君に会って、僕ははじめてコーディネイター
という存在を見直したんだからね」
アスランはマイケルの行為を絶対悪として切り捨てたが、フレイの見解は異なるようだ。
これには、アスランだけでなく、彼に密かに同調していたカガリも驚きを隠せない。

653キラ(♀)×フレイ(♂)・45−4:2004/06/05(土) 17:29
「連合の一部の兵士が、君らを何と呼んでいるか知っているかい?『空の化け物』だよ。
まあ、僕の君たちに対する認識も似たようなものだった。一切の喜怒哀楽の感情を持たぬ、
青き地球を侵略するSF映画に出てくるエイリアン。それが君らへの率直なイメージさ」
フレイの言い草はあまりにコーディネイターを侮辱していたが、今のは単なる前置き
だと判っていたので、アスランはここでは口を挟まなかった。むしろ、マイケルの行動
に美点を感じたという、この先の続きが気になった。
「ところがだ、実際にコーディの実物を見てみると、キラのような泣き虫はいるし、
タカツキ君のような、世間で僕が腐るほど見てきたステレオタイプな俗物もいる。
君らも案外、能力以外はさして僕らと変わらない不完全な存在である事に気付いたんだ」
アスランはポカンと、だらしなく口を開けている。このフレイという男は、人間性悪説
の信奉者なのか、自己犠牲精神のような美徳(ピュア)よりも、他者を踏み躙ってでも
生き残ろうとする悪徳(エゴイズム)の方にこそ、人間味を感じる性質みたいだ。
結局、何だかコーディネイターを馬鹿にされたままのような気もするが、自分たちを
擬人化(或いは神聖化)せずに、等身大に見てくれるというのは、貴重な視点ではないか?
アスランには判らなかったが、プラント内の一部のコーディ絶対主義者が思い上がって
いる程には、自分達が完璧な存在などでは有り得ないことは、アスランも悟っていた。


「ただ、タカツキ君が君達に根強いコンプレックスを抱いて、手段を選ばず這い上が
ろうとしていたように、コーディネイターの間にも、他者との出世競争や、それに伴う
妬み・嫉妬の感情もあるみたいだね。
元々、君達は、この厳しい競争社会を勝ち抜く為に産まれてきたらしいけど、ナチュラル
全員がコーディネイターに生まれ変わったとしたら、その優勢(アドバンテージ)は
消滅し、結局、依然と変わらぬ競争社会が続くだけの話しだね。そもそも……」

「だああぁああ〜!!!!いい加減にしろよな、お前ら!!」
コーディネイター論を叩き台にした妙に哲学的なフレイの演説がさらに続き掛けたので、
小難しい話しが苦手なカガリの左脳がオーバーヒートを起こし、カガリは発狂した。
「んなこたぁどうでも良いんだよ!戦争は会議室で起こっているんじゃあない。
戦場で起こっているんだ。綺麗な背広を着たインテリ共が、安全な密室に篭って、
小賢しい屁理屈を振り翳した所で、戦はなくなりゃしねえんだ。判っているのかよ!?」
ノンキャリアのキャリア批判染みた口上を口にしたが、それがカガリの信念だ。
だからこそ、カガリ自身はどちらかといえば特権階級に連なる身でありながらも、
口先だけの親父みたいな人間になるのが嫌で、銃を取り戦う道を選択したのだ。
そのカガリが口先だけと信じる彼の父親は、局地的な視点に固執するのではなく、
大局的な視野の広さを身に付けて欲しいと願って、息子を平和の国の外の世界(戦場)
へと送り出したのだが、今のカガリを見るにつけ、道はまだ果てしなく遠そうである。


鼻息を荒くしながら持論を捲くし立てるカガリに閉口したフレイは、縛られた状態で器用
に両肩を竦めると、そのまま沈黙する。すると今度は、矛先はアスランに移し替えられた。
「おい、アスランとか言ったな?お前、ヘリオポリスを襲った奴らの仲間だな!?」
聡いアスランは、カガリが何を主張したいのかを悟って、後ろめたそうに顔を背ける。
「俺たちだって、あんな事になるとは思わなかったんだ」
それは、アスランの正直な本音だ。ストライクと足付きを仕留めるための戦闘継続で、
どれほど夥しい数の民間人が犠牲になったのかと思えば、とても空虚ではいられない。
「何を今更、白々しい事を…」
「だが、中立だと謳っておきながら、あんな代物(戦闘用MS)を密かに造り上げて
いたのは事実だ。俺たちザフトがそれを見過ごせるわけはないだろう!?」
「そ…それは…」
アスランが軽く反撃し、逆にカガリが言葉を詰まらせる。オーブと大西洋連邦の密約に
何の責任も持たぬ身だが、自分の父親が仕出かした不祥事だと思うと、親の因果が子に
祟り…というわけでもないが、性格的に、無関係を決め込むことは出来なかった。

654キラ(♀)×フレイ(♂)・45−5:2004/06/05(土) 17:29
「くっくっく…」
彼ら二人の真摯な討論の場を茶化すような、フレイのくぐもった笑い声が聞こえた。
「何が可笑しい?」
「いやねえ、君達の会話があまりにもピント呆けしていて笑えたからさ。
中立もへったくれもない。ヘリオポリスが崩壊したのはキラの責任だろ?」
「なっ…何だと!?」
フレイの暴言に、意図せずカガリとアスランの行動が完全にシンクロした。
二人の強い敵意の視線も意に介さずに、フレイはアスランに身体ごと向き直る。
「アスラン君に聞こうか?君達は例のMSを奪う際に、ユニウス7の意趣返しに、
ヘリオポリスの住民をジェノサイド(大量殺戮)する命令でも受けていたのかい?」
そのフレイの大胆すぎる質問に、一瞬、アスランは息を呑む。
次の瞬間、怒りで顔を真っ赤に震わせたアスランは、大声で抗弁した。
「ば…馬鹿な!そんな筈はあるか。連合のMSさえ奪えればそれで良かったんだ!」
「そう。つまり素直に五機のMSをザフトに差し出してさえいれば、君達は大人しく
ヘリオポリスから出て行ってくれたわけだ。ところが、運が良いのか悪いのか、
あのコロニーには、ずば抜けた才能を持つ一人のコーディネイターの少女が住んでいた」
フレイは、敢えてそこで一端論を切る。アスランとカガリの貌に不愉快さを含んだ理解
の色が広がっていく。この先に展開されるであろう、フレイの仮説を読み取ったからだ。
フレイは、キラの強固な抵抗こそが、ザフトに危機感を与え、敵の再攻勢を呼び寄せたと
主張しているのだ。感情論さえ差し引ければ、確かにそれほど的外れの論拠ではない。
「ここから先は、言わなくても判るだろう?とにかく、キラが余計な奮戦をしなければ、
ヘリオポリスの被害は最小で済んだと思うよ。まあ、その際には、多分キラとその仲間達
(トール達ヘリオポリス組)も、浮沈艦(AA)と共にお陀仏だったと思うけどね」
「お前なあ、ヘリオポリスは壊れなくても、その時には、お前も一緒に死んだんだぞ!?」
クルーの一員でありながら、アークエンジェルの撃沈を他人事のように捉えているフレイ
に、カガリはそう呆れたが、彼はフレイ入隊に纏わる前後の事情を知らな過ぎた。
「残念ながら、そうはならなかったよ。僕は当初は避難用のシェルターにいて、
アークエンジェルに拾われたタイミングは、ヘリオポリスが崩壊した後だったからね。
仮に、命運を共にしていたとしても、この件に母さんが巻き込まれない方がマシだったさ」

「母さん?」
まるでB型人間同士の会話のように、議論中に目まぐるしく題材が入れ替わり、
アスランはつい反射的に、己にも所縁の強い単語に反応した。
「僕の母は、連合では外務次官という結構なお偉いさんでね。アークエンジェルを
迎えにきた第八艦隊の先遣隊のモントゴメリという戦艦の中にいたんだ。
アスラン君も知っての通り、モントゴメリは宇宙の塵と化してしまったけどね」
フレイの態度は、さほど恨みがましくなく、むしろ淡々と供述していたが、その内面に
渦巻く怨念の質量はアスラン達の想像を大きく絶していた。フレイは、母の死の責任者と
彼が信じた、キラとその想い人を同士討ちさせようと、色々と画策し続けてきたのだから。

「そ…そうだったのか」
アスランは何とも言えずに言葉を濁した。彼自身も血のヴァレンタインで母を失った
身だったので、戦争だからの一言で全てを済ませるには、暗澹たる想いがあった。
「同情はいらないよ。母さんを守れなかったのは、僕に力と知恵が足りなかったからさ。
もっと早く君の婚約者を人質にする案を具申していれば、運命も変えられたのにね」
「人質って……!?あの時、ラクスを人質にさせたのは、お前の入れ知恵だったのか!?」
フレイを見下ろすアスランの瞳に、露骨な嫌悪の色が浮かんだ。
と同時に、いかにもこのペテン師が考え付きそうな所業だと奇妙な納得もした。
ただ、フレイと知り合う以前とは異なり、フレイの醜悪な行為を絶対悪として
切り捨てるには、彼と同じく母親を失った身分としては、些か複雑な心境だ。
肉親の生命が賭かれば、誰だって悪魔に魂を売ってでも救いたいと願うのが心情だろう。

655キラ(♀)×フレイ(♂)・45−6:2004/06/05(土) 17:30
「少し脱線してしまったね。話しを元に戻そうか。とりあえず、ヘリオポリス崩壊の責任
の是非は置いておくにしても、キラはあの時、死んでいた方が本人の為だったと思うよ。
彼女が慕っていたアスラン君は敵として襲い掛かってくるし、遣りたくもない人殺しに
何度も手を血で染めている。これじゃ、生きていても幸せなんて言えないだろう?」
何よりも、僕のような悪党に付け狙われて、人生を狂わされることもなかった筈さ。
フレイは心の中だけで、多少の自嘲の感情と共に、さらに業の一つを追加した。

「何を偉そうに!キラに人殺しを強要させているのは、お前たちナチュラルだろうが!
それに、お前は本当にキラの彼氏なのか!?」
母の件では同情して、フレイにそれなりのシンパシーを示したアスランだが、相手が
キラとなれば話しは別だ。盗人猛々しい理論を振り翳した上に、キラの恋人を詐称しな
がらも、彼女の未来を全面否定する薄情極まりないフレイに、当然の如く切れ掛かる。
「彼氏だからこそ、尚更僕は、今のキラをこれ以上見てはいられないんだよ」
フレイはアスランの激発をやり過ごすと、今度はカガリに万感たる想いを訴えた。
「カガリ君。君はさっき自分がキラなら、力の行使を躊躇わなかったと主張していたよね?
けど、何の迷いも葛藤もなく人を殺せるキラなんて、そんな怪物はもうキラじゃないだろ?
悪鬼のような巨大な力を持ち、その己の力に脅えながらも、仲間を守る為に、健気にも
戦い続ける、泣き虫でお人好しの優しい娘。それが、キラという女の子じゃないか?」
カガリは唖然として言葉が出てこない。キラに悪意を抱いていると思われたフレイが、
意外にも、キラという人間の本質を理解してあげていたという事実に、驚かされたからだ。

「もしこの先、キラが冷酷な戦場に適応して、彼女の中から、泣き虫のキラが消失する
としたら、それは、単純な肉体的な死よりも、はるかに辛いことだと僕は思うけどね」
『キラを、キラのままでいさせること』
それは、フレイの今回の一連の計画の中でも、最も留意した点の一つである。
痛みも悲しみも感じない機械人形(オートマタ)に復讐した所で、何の意義がある?
故にフレイは、キラを慰める際、得意の口八丁手八丁で、キラの行為を自己正当化させて、
彼女の罪悪感を消し去る事も可能だったのだが、敢えてそうせずに、借金生活者のような
「生かさず、殺さず」に近い状態をキープして、血の色で真っ赤に侵食されつつあった
キラの心のキャンパスを、原色(純白)そのままに留めておくように腐心してきたのだ。
フレイの真の目的を別とすれば、今現在、キラがキラ自身のままでいられたのは、
皮肉にもキラの破滅を願っているフレイの功績だった。今更ながらに、その事実を
思い知らされたカガリは、己を害しようとするフレイを必要とせざるを得ないという
矛盾を抱え込んだ妹の不幸を思い煩って、身を焼かれるような想いを味わった。


「フレイ、確かにお前はキラの事を、誰よりも本当に良く理解している」
今のカガリには、さっきまでのような誰彼構わず見境なく噛み付いてきた狂犬のような
雰囲気は欠片もない。彼に似合わぬ憂いを帯びた表情で、大きな溜息を吐き出した。
「それでも、お前はキラを大切に想っていない。お前はキラを抱いたというのに…」


何だって、今、コイツは何て言った!?
…た。 …いた。 …抱いた。 …を抱いた。 …ラを抱いた。 キラを抱いた!?
アスランは、自分の身体全体からスーッと血の気が引いていくのを感じた。
皮肉にも、今の放心したアスランの貌は、キラが、ラクスがアスランの婚約者だと
知った時の姿と瓜二つだ。お互いを想い合っていながらも、双方共にその事実に気付かず、
何度もすれ違いを繰り返すのは、古今東西のあらゆる恋愛活劇で愛用された黄金の不文律
ではあるが、アスランは今まさしく、その洗礼を最悪に近い形で浴びようとしていた。

656キラ(♀)×フレイ(♂)・45−7:2004/06/05(土) 17:30
おやおや、こいつは手間が省けたみたいだな。フレイは軽く苦笑する。
さて、これからどうやって、キラとの本来の仲について切り出そうかと、フレイが思案
していたところに、わざわざカガリ君の方から勝手に爆弾を投下してくれるとは。
カガリ自身は、愚痴に近い形で放たれた自分の言葉の重みを全く理解していないようだ。
プレイボーイのフレイは処女貞操願望など持ち合わせてはいないが、恋愛に手馴れてない
童貞男子の中には、意外と女性に対して潔癖な幻想を抱く者も存在することを、経験上
悟っていた。果たしてアスラン君はどうだろう。試してみる価値はありそうだ。

「そういえば、アスラン君。君の方はどうだったか知らないけど、
キラはどうも、本当は君の事が好きだったみたいなんだよね」
フレイは敢えて「過去系」で、キラの気持ちを代弁し、虚ろだったアスランの
瞳に強い動揺が走る。

「はじめて、キラとベッドを共にした晩だったかな?
行為の後に、「アスラン、アスラン」て、キラにシクシク泣かれちゃってね。
あの時は本当に参ったよ。もしかしてメロドラマに出てくる間抜けな間男の役を
演じてしまったのかと思ってさ」
フレイは、実際に在った事実を少しばかり脚色して、効果的な寝取り物語を演出する。
一瞬、フレイの頭の中に強い警告信号が灯ったが、アスラン君の真意を確かめる絶好
の好機は今をおいて他にない。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の諺通り、多少の危険
に目を瞑って、フレイは、彼の心の洞窟のさらなる奥へと、無造作に足を踏み入れた。

「けど、最近、ようやくキラの心が僕の方に振り向いてくれたみたいで良かったよ。
やっぱり、身体の結び付き何度も重ねて、お互いの心の絆を強めることによって、
かつての少女時代の憧憬を単なる過去の存在へと押し遣って…」
フレイの舌はそれ以上回転することは出来なかった。フレイよりも小柄なアスランが、
フレイの襟首を掴むと、片腕だけの力で、中背のフレイをそのまま宙吊りにした。


「ア…アスラン君?」
バイオハザード警報が、大きなサイレンの音を打ち鳴らして、頭の中を駆け巡っている。
洞窟の中には、確かに、危険に見合うだけの価値を持った虎の赤子が大量に眠っていた。
ただ、お宝の虎児を発見する際に、フレイは親虎の尻尾を加減抜きで踏み潰してしまった。

「僕がここでアスラン君に殺されたら、キラは僕の仇を討ってくれるのだろうか?」
フレイがそんな埒も無い考えを巡らせた刹那、彼の顔面を鈍い衝撃が縦に貫いた。

657私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 17:59
男フレイキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
一番好きなシリーズです!
男3人の痴話げんかはどこまで行くのか、目が離せません。
フレイ様、小気味いいくらい憎たらしいですね。
種2でこういうキャラが出てくれれば最高ですのに。

658夢と希望・3:2004/06/05(土) 22:11
「え・・・?フレイ?」
と、キラは呟いた。
この場面で不謹慎だがなんだか嬉しかった、一目惚れしている少女に守られている気がした。
「銃を下ろしなさい」
マリュ−が命じた。
「そう驚くことでもないでしょう・・・へリオポリスは中立国のコロ二−だった、戦火に巻き込まれるのが嫌で逃げてきたコ−ディネイタ−が不思議ではないわ」
その言葉に渋々ながらも兵士達は銃を下ろした。
「悪かった、とんだ騒ぎになっちまって」
と、騒ぎを起こしたムウが悪気がない口調で言った。
「だってさ、初めてにしてはあの機体の操縦凄すぎから気になったんだよ」

「おいおい無茶言うなよ!」
ムウが大きく手を振った。
「ですが・・・ストライクの力は必要かもしれません、ですから・・・」
「冗談だろ?無茶言わないでくれ!あの坊主のOSのデ−タ見てないのか?あんなもんが俺にというより・・・普通の人間に扱えるかよ!」
困ったようにマリュ−とナタルは下を向いた。
「あのな、もし戦闘になったら、あの坊主がめいっぱいまで上げた機体の性能、そしてそれを完全に使いこなせるパイロット、その両方がなきゃ、ザフトにはとても対抗できないで」
それは必然的に悲しい一つの結論を出していた。
ア−クエンジェル内に設けられた居住区の一室で、少年達は不安に肩を寄せ合っていた。

「私達・・・どうなるのかしら・・・」

抑えようのない不安から、ミリアリアからこぼれた。
ヘリオポリスが崩壊しているところを彼女らも船内のスクリ−ンから目撃していたのだ。
これまでその存在を意識したことさえない確固たる現実が、目の前であまりにも脆くに崩れ去るさまを。
住み慣れた場所を失い、親の安否も知れない、こうして地球連合軍の軍艦に乗っているからには、いつまた戦闘が始まるとは限らない。
「キラか・・・」
カズイが呟いた、そして寝棚で眠っているキラを見る。
「この状況で寝られちゃうなんて凄いよな・・・」
「疲れてるのよキラは、ほんとに大変だったんだから」
ミリアリアがそう言うと、カズイは小さく笑った。

659夢と希望・4:2004/06/05(土) 22:44
「大変だったか・・・キラにはあんなことも「大変だった」ですんじゃうんだもんな」
「なにが言いたいの?カズイ」
と、とがめるような視線を向けてミリアリアは言った。
「別に・・・たださ、キラ、OS置き換えたって言ってたじゃん、アレの・・・それっていつだと思う?」
「いつって・・・」
ミリアリアは考えた。
キラだって、ストライク・・・あのモビルス−ツのことは知らなかった、OSを置き換えたのはあれに乗り込み、戦闘が始まってすぐにということになる。
戦闘の様子がフレイを除く全員が見ていた。
その状況を見れば説明する必要はないだろう。
「コ−ディネイタ−・・・つまりザフトにはそんなばかりなんだぜ・・・そんな奴らに地球軍は勝てるのかよ」

<敵艦影発見!第一戦闘配置!軍籍にあるものはただちに持ち場につくように!>
切迫した艦内アナウンスに、ミリアリア達ははっと顔を上げる。

「戦闘になるの・・・?この艦」
<キラ・ヤマトは艦橋へ、キラ・ヤマトは・・・>
それを聞いて、ミリアリアはそっとト−ルに話しかけた。
「キラ・・・どうするのかな」
サイが小さく呟いた。
「あいつが戦ってくれないと・・・困ったことになるんだろうな・・・」
そんな中、ト−ルは何かを考えていた・・・。
そしてミリアリアがその腕を揺すった。
「ねえト−ル・・・キラはこれから戦場に行くのよ?それなのに私達だけ・・・」
「できることをやれか・・・」
フラガがキラに先程言ったのだ。
ミリアリアは皆の顔を見回り、皆がうなずくとブリッジに向かった。

660私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:34
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
おかえりなさいまし
アスランを本気で怒らせたフレイ様(♂)どうなってしまうんでしょう。
誰かフレイ(♂)イラ描いてほすぃ

661私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:51
キラ(♀)×フレイ(♂)キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
自分も一番好きなシリーズです。
種とは別のもうひとつの種として楽しませて頂いてます。
ぜひ完結してくだせぇ!

662さよならトリィ 4/8:2004/06/06(日) 07:00
[フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ]

オーブでキラと別れた。

修理のためオーブに寄港したアークエンジェル。そこでのヘリオポリスの学生の両親との面会。
だけど、私には誰も会いに来てくれる人はいない。ママは小さいころ死んだし、もう、パパも……
当日、両親面会に行かずに、私のいる部屋に来たキラ。それに、私は同情されたと思って
激情を爆発させた。

「辛いのはアンタの方でしょ! 可哀想なのはアンタの方でしょ!
 可哀想なキラ…… 独りぼっちのキラ……
 戦って辛くて…… 守れなくて辛くて…… すぐ泣いて……
 なのにっ!! なんで私がアンタに同情されなきゃならないのよ!」

感情のまま、言葉を投げかけて、そのままキラの胸で涙を流していた私の耳元で呟くキラの言葉。
二人の関係は……間違った……

…… そう、そうよ!…… 間違いよ!!
…… そんなの最初っから分かってるわよ!…… だけど …… だけどっ!!!

私はキラを突き放し部屋を飛び出そうとする。痛い、心が痛い。なんでよ、なんで、私まで
心が痛いの? キラ一人傷つけばいいんじゃない。キラ一人可哀想ぶってればいいんじゃない。
なのになぜ?

開けたドアの前で振り返った時、トリィは辛そうに俯くキラの肩で、キラに話しかけていた。
トリィはキラを選んだ。キラを慰めている。当たり前だ。私が辛い言葉でキラを傷つけたのだから。
可哀想なのはキラ。悪いのは私。キラを復讐に利用していた私。トリィが慰めるべきなのはキラ。
トリィはキラのものなんだから。

部屋を飛び出した私は、涙を流しながら、目的もなく、ただ通路を走っていく。
自分でも、どうして、こうなったのかさえ分からずに……

グルグルと通路を歩き回って、行くところが無くて。また、私はキラの部屋の前に立っていた。
躊躇いながら、パスコードを入力し、ドアを開ける。部屋は真っ暗だった。キラはいなかった。
トリィもいなかった。キラはトリィまで連れて行った。私は、もう顧みられることは無い。
終わりなんだ。もう何もかも。

* * *

アークエンジェルはオーブを出発した。
私は行くところが無い。今さら、ミリアリアと同室の部屋なんて顔を出せない。
ただ、夜中じゅう、通路を彷徨い続ける。空いている仮眠室で、つかの間の眠りに落ちる。

トリィもいない。私に話しかける人も、私の話を聞いてくれる人も誰もいない。ただ、一人
彷徨い続ける。食堂では、みんなが談笑している声が聞こえる。私は、その輪の中に入ることもできず、
一人寂しく立ち去るしかない。

私は何をしているの? なんで、こんな想いをしなくちゃいけないの? 誰が悪いの?
誰か答えてよ。

深夜、歩き回って行き当たった通路の先、モビルスーツデッキ。見下ろすと、そこに、
キラとトリィは居た。キラも、暗い表情をしている。何かに悩んでいる。私と同じように?
何かの答えを求めて? 何を求めて?

敵襲を告げるアラートの響く中、私はキラとトリィを追った。

「キラ、私……」
「ごめん、後で…… 帰ってから」

そう言ってキラは走り出した。トリィも付いて行く。二人とも行ってしまう。やはり、私には誰も……

「トリィ、お前は帰ってろ。フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ」

それに、私は許されたような気がした。飛んできたトリィを手で受け止めると、軽くキラに頷いた。
それを見て、また、キラは駆け出した。

私は揺れ始めた艦の通路を、壁に寄りかかりながら歩いて、トリィと一緒にキラの部屋へ戻った。
パスコードも変わっていない。キラの部屋は何も変わっていない。

私はベッドに飛びこんで毛布をかぶった。トリィも毛布に潜り込んできた。
恐い戦闘。でも、これが過ぎれば、何かが変わると思っていた。

戦闘が終わった。キラが帰って来る。足音が部屋に近づく。私は弾かれたようにベッドから飛び起きた。
ドアの前で期待を胸に踊らせる。トリィも、私の肩に乗って、ドアを見つめる。

でも、足音は通り過ぎた。

私はドア脇の机に座り込み、頭を組んだ腕の間にうずめて、ドアの向こうの足音に聞き耳を立てながら、
目の前のトリィを見つめ続ける。

足音は通り過ぎ続ける。次の足音も、その次も、その次も……

「キラ、遅いわね。何してんるんだろう……」
<トリィ……>

私はトリィに呟きながら待ち続ける。
キラが帰ってくれば、何かが分かる。私の答えが見つかるはず。そう思って、ひたすら待ち続ける。

でも、その答えは得られなかった。キラは帰って来なかったから……

663私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 10:45
さよならトリィも再開ですね。
人の痛みを知るフレイたま。
本編の補完SSとして萌えさせていただいております。
こういう形でキャラの気持ちを最初からなぞり直してもらえると
ファンとしては嬉しい限りです。
半分まで読ませていただきましたが最後まで頑張ってくださいね。
(あ、もう書き終えられているんでしたっけ)

664夢と希望・5:2004/06/06(日) 21:42
ストライクのコクピットで、敵機接近の警告音が鳴り響いた。ビ−ムライフルを構える。
真紅の機体が接近してきた、イ−ジス(アスラン)だ。

「アスラン!?」
<キラ!キラだな・・・>

あの声が頭の中に響いた。
<やめろ!やめるんだキラ!俺達は敵じゃない、味方だ、仲間なんだ、そうだろ!?>
スピ−カ−からの声にキラははっとする、そうだ・・・なぜ?なぜ僕達は友達なのに戦ってるんだろうか。
<同じコ−ディネイタ−のお前がなぜ地球軍にいる!?なぜナチュラルの味方をするんだ!?>
<僕は地球軍じゃない!でも・・・あの艦には友達が・・・大切な人達が乗ってるんだ!>
そんななか別の二機がア−クエンジェルに攻撃していることにキラは気づき掩護に向かおうとした。
しかしイ−ジスが割り込んでくる。

<やめろ!お前は俺達の味方だ!>
<アスラン・・・!君こそなんでザフトになんか!戦争なんか嫌だって、君だって言ってたじゃないか!>
<状況も分からぬナチュラルどもがこんな物を作るから・・・>

そんなとき、一機の機体が割り込んできた。
二人は我に返りかわす。

<なにをモタモタやっている!?アスラン!>
聞き覚えのない声が割り込んできた。
「これは・・・デュエル!?じゃこれも!」

バスタ−とブリッツに取り付かれたア−クエンジェルは、回避行動を取りながら必死の防戦につとめていた。
爆雷が撃ち出され、それがさらに炸裂して細かな粒子をまき散らす。
新型艦ア−クエンジェル、大天使の火力にバスタ−、ブリッツも攻めあぐねている様子だ。

その頃、ストライクのコクピットでは、息を切らし、必死で機体をコントロ−ルしているキラがいた。
しかし・・・。
「しまった!エネルギ−切れ!?」
フェイズシフトが落ちた・・・。
その隙を見てデュエルが突っ込んでくる。
やられた!しかし次の瞬間キラのストライクはイ−ジスに捕らえられていた。

665夢と希望・6:2004/06/06(日) 22:33
<なにをするんだ!?アスラン!>
<ストライク、捕獲する!>
<なにを馬鹿なことを言っている!?命令は撃破だぞ!>
<捕獲できるなら捕獲したほうがいい!撤退する!>
イ−ジスはストライクを捕獲したまま離脱している。

<アスラン!どういうつもりだ!?>
キラが叫んだ。
<このまま連行する、お前も一緒に来るんだ>
<ふざけるな!僕はザフトになんか行かない!>
<いいかげんにしろ!>

アスランの一声にキラは黙った。
<このまま帰るんだ!でないと・・・僕はお前を撃たなきゃならなくなるんだぞ!そんなことはしたくな!俺はもう大切な人には誰にも死んでほしくないんだ!>
<アスラン・・・なら、君が来るんだ・・・>
<な・・・?なんだと!?>
<君が地球軍に来るんだ・・・アスラン、君もおいでよ>
<な!?馬鹿なことを言うな!>

その頃。
「あのキラって子・・・大丈夫なのかしら・・・?」
居住区に一人取り残されていたフレイはベッドの中で心配そうに呟いていた。

ムウのネビウス・ゼロが二機に近づいてくる。
<離脱しろ!ア−クエンジェルがランチャ−ストライカ−を射出する!>
<キラ・・・く!>
ストライクはイ−ジスを一目見るとそのまま宙域を離脱した。
そんな中メビウス・ゼロを迎撃していたイ−ジスのアスランは先程のキラの言葉が頭をよぎっていた。

無事帰還したキラ、その後のア−クエンジェルはアルテミスへ入港した。
しかし・・・ユ−ラシアの軍には面白く思われていなかったのか、いろんないざこざがあった。
そんなときに限っていいことは起こらないもので、ザフトが攻めてきたのだ。
そして結局アルテミスは壊滅したがア−クエンジェルは無事で済んだのである。
戦闘ばかりで心が疲れていたキラ、この後の謎の少女の出現によりまた・・・。

666私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 23:04
>>さよならトリィ

フレイ様せつな杉…
折角スレ違っていた二人が少し近づいたと思ったら…
凄くいい作品ですね。
うわ〜〜〜ん

667さよならトリィ 5/8:2004/06/07(月) 06:42
[一緒に来るんだフレイ。約束の地へ]

「キラはMIAさ。多分、死んだんだよ」
カズイの言葉が、いつまでも耳に残っている。

頭の中はキラのことばかり考えていた。何で、そうなの?
キラは、私の思惑通り、戦って死んだんじゃない。何でそうなるの。何で、こんなに心が苦しいの。

<トリィ……>

トリィが慰めるような声を出す。
そうよ、私は復讐を終えたのよ。これで終わったの。戻らなきゃ。元のところに。

私はキラの部屋を出た。肩にトリィがとまった。それを私は追い払おうともしなかった。
ごく自然に。既に、私の一部であるかのように。

通路を歩き回って捜した。医務室の前で、やっと見つけた。サイを……
この前の戦闘で、同じようにトールを亡くして、悲しみに震えるミリアリア。
サイは彼女を癒すように付き添っていた。

「サイ…… あの……」サイに声をかけた。

サイが振り向く。その時、トリィが急に私の肩を飛び立ってサイの肩にとまった。身じろぎするサイ。

いや、違う! 私にはキラが見えていた。幻想のキラが……
私に明るい微笑みを返すキラ。現実に無かった光景。そのキラに私は吸いこまれそうになる。

── おいで、フレイ

キラが、そう囁いたような気がした。トリィが私のところへ飛んできた。

── 一緒に来るんだフレイ。約束の地へ。

「イヤッ! イヤ!!」
手を振り回してトリィを叩き落としそうになった。トリィは、私の手をかいくぐって、
通路を飛び去って行った。私は激しく動揺して、息を乱していた。

「やめなよ」サイは憮然とした表情で私に声をかけ、「後で」と言い残してミリアリアを
連れて医務室に入った。

私は、まだ呆然として立っていた。キラの亡霊? キラは私を呼んでいるの? 私を恨んで?
トリィが、また戻ってきて天井近くを滑るように飛び回っている。トリィ、あなたは一体何を言いたいの?

ほどなく、サイは医務室から出てきた。

「俺に、何?」
「何って……」私は言葉に詰まる。

サイは、私によそよそしい。私を慰められないと言う。他の人と話せって? サイ以外に
話せる人がいる訳ないじゃない。どうして? 私は帰ってきたのに、なんでサイはこんなことを言うの?

「サイ! けど、私、ほんとは…… あなたも分かってたじゃない。私ほんとはキラのことなんか」

「いいかげんにしろよ! 君はキラのことが好きだったろ」サイは、はっきり言った。

「違うわ」
「違わないさ!!!」
思ってもみなかったサイの怒鳴るような声。厳しい表情。それに、私は気圧された。

「ちがうぅぅ! 違う、違う」
私は叫んだ。首を振りながら自分に言い聞かせるように叫んだ。そんなはずが無い。そんなはずが……
私がキラのことを、そんな風に思っているなんて、そんなはずが無い!

私はキラが憎いのよ。キラに復讐したのよ。復讐を果たしたのよ。だから……
違うのよ、違うって言ってよ。そうじゃないと私、私……

トリィが、またサイの肩に舞い降りた。そして、私に視線を向ける。真実を見通すような
まっすぐな目で。トリィ、あなたは……

その時、医務室で大きな音がした。悲痛な叫び声。トリィは、また飛び立ち、サイは、急いで
医務室に戻った。後を追った私が見たものは、手にナイフを持ってサイに取り押さえられている
ミリアリア。医務室の奥には、頭から血を流している捕虜のコーディネーター。
ミリアリアは、私が見たことも無いような形相で叫んでいる。トールを失った悲しみ、憎しみ。
それが、私の心を痛ませる。それは、私にも、やがて……

ふと、机の半開きの引き出しに、銃が入っているのが見えた。私は、感情に突き動かされるまま、
それを手に取った。

「コーディネーターなんて、みんな死んじゃえばいいのよ!」

私は銃を、その捕虜に向けて叫んだ。復讐のために。

…… キラを失った復讐のために ……

さっきのキラの亡霊。あれは、キラが恨んでいるのでは無い。私が呼んだのだ。
キラを呼んだのは私なのだ。私がキラを求めているのだ。

トリィは、そんな私を通路でジッと見ていた。トリィの言いたかったことって、そういうことだったの?

668夢と希望・7:2004/06/07(月) 22:29
「あそこの水を・・・!?本気なんですか?」
ア−クエンジェルのブリッジに戻ったキラは、驚愕の声に上げた。
「あそこには一億トン近い水が凍りついているんだ」
なんの理由も説明しない事実を、ナタルが口にする、彼らはユ二ウス・セブンの残骸から水を運ぶことを決定したのだ。
「でも・・・あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で・・・!」
キラは懸命に抗議した、あの場所は彼にとっても特別な意味を持っているのだ。
マリュ−は言った。
「気持ちは分かるけど・・・水はあれしか見つかってないの・・・」
キラは仕方なく黙る。
「俺達だってできればあそこには踏み込みたくないさ」
勢いづくようにムウは言った。
「けど、しょうがねえだろ!俺達は生きてるんだ!ってことは生きなきゃなんねえってことなんだよ!分かるか!?」

地球軍に壊された大地、虐殺されたコ−ディネイタ−の記念碑に、キラは祈りを捧げた。
だが、僕に祈る資格なんてあるのか?事情があるとはいえ虐殺を行った地球軍と共に戦っている僕に・・・。
殺したくなんかない、ただ守りたいだけなのに、頭の中に赤い髪の少女が浮かぶ。
その時・・・電子音が鳴り始めた、敵か!?
だがモニタ−に写っていたのは敵の機影ではなかった。

ア−クエンジェルの格納庫には、キラが見つけた救命ポットが横たわっていた。
ハッチはかすかな音を立てて開いた。
兵士達が一斉に銃を構える。
<ハロ・ハロ・・・!>
間抜けな声を発しながら出てきたのはピンク色の丸い物体だった。
ぱたぱたと耳が羽ばたくように動き、球の真ん中には目が二つ光っていた。

「ありがとう・・・ご苦労様です・・・」

柔らかなピンクの髪と、長いスカ−トの裾をなびかせて、ハッチから出てきたのは、天使のような可愛い少女だった。ほんわりと白い肌、ほっそりした腕、優しく愛らしい顔は見るものを幸せにしそうだ。
「あら・・・あらあら?」
彼女をキラは抱きとめた。
「ありがとう」
間近で彼女がにっこりする。キラはつい顔が赤くなった。
「あら?」
彼女はあたりを見回した。
「まあ・・・これはザフトの艦ではありませんのね?」
全員が大きなため息をついた。

669夢と希望・8:2004/06/07(月) 23:04
士官室の中にいたピンクの髪の少女はキラの姿を見つけると手を振った。
顔を赤くしたキラは手を少し振るとそのまま去って行った。

「私はラクス・クラインですわ、これは友達のハロです」
少女はマリュ−達の前にピンク色のロボット、ハロを差し出して紹介する。
ムウがため息をつく、どうもこの少女の前では調子がでない・・・。
「クラインねえ・・・そういやプラント最高評議会議長もシ−ゲル・クラインといっていたような」
ムウが思い出したように呟いた。
それを聞いたラクスは嬉しそうに。
「あら、シ−ゲル・クラインは私の父ですわ」
無邪気というか、天然というか・・・自分の置かれた状況を分かっているのないないのか・・・こんなに認めるとは・・・三人はまたため息をついた。
「・・・そんな方が、どうしてこんなところに?」
「ええ、私、ユニウス・セブンの追悼慰霊のために事前調査に来ておりましたの」
黙って聞く、やっと本題に入ったようだ。
「そうしましたら、地球軍の艦と出会ってしまいました、臨検するとおっしゃいましたので、お受けしましたのですが、地球の方々には、私どもの目的がお気に障ったようで・・・ささいないさかいから、船内はひどいもめごとになってしまいましたの・・・」
少女の表情が悲しく曇った。
「私はポットで脱出させられたのですが・・・あのあと、どうなったのでしょう、地球軍の方々が、お気をしずめめてくださってい下さっていればよろしいのですが・・・心配ですわ」
この宙域に、ごく最近破壊されたような民間船があったなどと、言う必要はない、その船に砲撃の痕があったなどと・・・言う必要はない・・・。

仕官達が立ち去るとラクスは壁のモニタ−に近づいた。船内の様子が写し出されている。砕かれ・・・荒れ果てた大地が真空の闇にさらされているのが見える。
ラクスはハロを膝の上に抱き上げると、手を合わせ目を閉じるとささやきかけた。
「祈りましょうね、ハロ・・・どの人の魂も安らぐようにと・・・」

その一時間後である。
部屋に連れられたラクスは・・・。
「お腹がすきましたわ・・・食事はくるんでしょうか・・・?」
プシュ−とドアが開いた。
「あらあら?貴女が?食事をお持ちしてくださいましたのね、ありがとうございます、はしたないことを言うようですけど、私ずいぶんお腹がすいてましたの、よかったですわ」
「どうぞ・・・」
入ってきたのは赤い髪の少女だった。
「私はラクス・クラインですわ、貴女は?」
「フレイ・・・フレイ・アルスタ−よ・・・よろしくねラクスさん」
フレイは優しくラクスに微笑んだ。

670さよならトリィ 6/8:2004/06/08(火) 08:19
[トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって]

私は復讐の心に突き動かされるまま、コーディネーターに向けて銃を撃った。

だけど、ミリアリアに突き飛ばされて、弾は外れて、天井の照明を壊しただけだった。
蛍光灯の破片が散乱する中、私に覆いかぶさるように涙を流しているミリアリア。
どういうことなの? ミリアリアの考えが分からない。

私はミリアリアに問いかける。
「なんで邪魔するのよ…… アンタだって私と同じじゃない」

「違う、私…… 違う……」
ミリアリアは涙を流しながら、ただ、それを呟くだけだった。

いつの間にか、自分も涙を流しているのに気がついた。復讐の高揚感も消えていた。
手に残る銃の衝撃が、急に恐ろしく感じられた。

騒ぎを聞いて医務室にクルーが集まる中、バジルール中尉が仕切って、私とミリアリアは
守られるように、それぞれの部屋へ戻された。私はキラの部屋へ…… トリィも一緒だった。

キラの部屋で、電気も付けず暗いまま、私は、まだ銃の衝撃が残り震える手を、トリィに、
啄ばませながら、さっきのことを思っていた。

…… 私がキラを呼んでいる。私がキラを求めている ……
それは、もう隠すことはできない。何で、今になって……

グルグルと思考だけが空回りする。うわ言のようにトリィに話しかける。

「ねえ、トリィ、何で今ごろ気がつかなきゃいけないの? なぜ、気づかせたの?」
<トリィ!>

「もう居ないのに。キラは居ないのに。何で今ごろなの」
<トリィ!>

「キラ、なぜ居なくなってしまったの。あんなに強いのに。あんなに一緒だったのに」
<トリィ?>

「キラの馬鹿…… 馬鹿、馬鹿!! もうちょっと居てくれたら。私……」
<トリィ! トリィ!>

私は記憶の中のキラの姿を追っていた。

ヘリオポリスにいる頃のキラは、友達と優しい目で笑い、時々、私に向かって遠巻きに熱い目を向ける。
だけど、私は、その頃のキラのことを、ほとんど知らない。

アークエンジェルに乗ってからのキラは、私の手の中にあった。いつの間にか、キラの仕草の癖や、
食べ物の好みも、みんな分かっていた。キラが心のうちに持つ痛みさえも……
…… ただひとつ知らなかった。本当に明るく笑っているキラ……

「トリィ、キラに会いたい。キラのこと、もっと知りたい。みんな知りたい」
<トリィ>

「教えて、教えてよ、トリィ! あなたが、気づかせたんだから。教えてよ!」
<トリィ! トリィ!>

トリィに答えられる訳が無い。それが分かっていて、私は問いかけずにいられない。

さっきのミリアリアの行動。自分もコーディネーターに復讐しようとしながら、なぜ、私の復讐を
止めたのかは、今でも分からない。でも、ミリアリアに止められてから、私には、もう復讐の心は無かった。
パパの復讐にキラを利用しようとして、キラが死んで、また、その復讐を……
そんなことが、すべて虚しく感じられた。心に、ぽっかり空いた空洞。それを埋めるかのように、
私はトリィに話しかけ続ける。

「私、キラのこと…… キラのことが…… もう、ずっと前から……」
<トリィ!>

「ここにキラと居たことが…… キラと…… トリィ、あなたと一緒に居たことが、私……」
<トリィ……!>

「大切だった。それが…… とても、大切だった……」
<トリィ!!>

私はトリィを手の平に乗せ、そっと頬に当てた。

今の私にはトリィが必要だった。砕けてしまいそうな心を繋ぎ止めるにはトリィが必要だった。
あの時、折り紙の花を手にキラが泣きじゃくった時、私を必要としてくれたように。

「トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって」
<トリィ!! トリィ!!>

トリィの強い声に、私は一時の安らぎを覚えた。

* * *

だけど、私には、その約束さえ守られなかった。転属で、私はアークエンジェルを降りることになった。

「イヤよ! イヤです私! はなしてっ!」

バジルール中尉に手を引かれて、私はサイやミリアリア、マリューさんの見守る中、アークエンジェルを
降ろされた。

トリィは、私に付いて来なかった。サイのところへ行ったまま、私の手には戻って来なかった。
なぜ? どうして? 約束したじゃない。嘘つき! なんで、私と来ないのよトリィ。

嘘つき! 絶対離れないって言ったのに。嘘つき! トリィの嘘つき!!

トリィは私に付いて来なかった……
…… でも、その方が良かったのかもしれない。

なぜなら……
アークエンジェルを降りた私は、ラウ・ル・クルーゼに捕らえられて、ザフトへさらわれたのだから。

671私の想いが名無しを守るわ:2004/06/08(火) 09:32
>>トリィ
フレイ様視線でありながら、フレイ様に都合の良い解釈だけでない
冷静な文体に本当に(フレイ様)がお好きなんだと感じさせられます。
独白も真に迫り、心打たれるものがあります。
書き終えられている作品の分割投下という事で、
とても読みやすく、エンディングが楽しみです。
文章力のある方のSSは読んでいてとても安心いたします。

672夢と希望・9:2004/06/08(火) 21:29
「私ね・・・ほんとはコ−ディネイタ−って本当は好きじゃないのよ」
そう呟いたフレイの表情をラクスは伺った。
「でもね・・・貴女は安心出来るの」

<ハロ!ハロ!>
「ふふ・・・可愛いわね、どうしたのそれは?」
ハロを見ながらフレイは言った。
「ハロですか?これは大切な人に貰ったものですわ」
「大切な人?」
「はい・・・とっても大切な人です・・・愛してるんですの」

「しかしまあ・・・補給の問題が解決したかと思ったら、今度はピンクのお嬢様か・・・」
ムウがマリュ−を見やり、からかうように敬礼する。
「悩みの種がつきませんな、艦長さん」
よくもまあ他人事のように言ってるれるものだ、と思うマリュ−だが、ただ、この頃は彼女もムウのスタイルになれてきた、普段はいいかげんに見えても、いざというとき非常に頼りになる男だ、補給のことだけでなく、これまでだって、もの飄々とした態度も・・・いややめとこう。
「あの子もこのまま、連れて行くしかないでしょうね」
マリュ−はため息をつきながら呟いた。

「じゃあまたねラクスさん!話せてよかったわ!」
「ええ、こちらこそ楽しかったですわ」
部屋から出て行くフレイをキラは目撃した。

673夢と希望・10:2004/06/08(火) 22:05
「あ、駄目ですよ部屋から出たら!」
部屋から出ようとしたラクスをキラは士官室に入れる。
「またここに居なくてはいけませんの?」
フレイを追おうとしていたラクスは寂しそうに呟く。
「ええ・・・そうですよ」
キラは沈んだ気持ちを押し隠し、無理に笑いかけた。
「私もあちらで皆さんとお話ししたいですわ」
そんな顔もまたなんとも愛らしい、キラはまぶしいものを見たように目をそらした。
「これは地球軍の艦ですから、コ−ディネイタ−のこと・・・その・・・あまり好きじゃないって人もいるし・・・」
(たぶん、僕のことも・・・)
口にした瞬間走った胸の痛みをまぎらすように、彼は言葉をついだ。
「ってか、今は敵同士だし・・・だから仕方ないと思います・・・」
なぜ僕は・・・僕はこうやって、ナチュラルの肩を持つようなことを言ってるのだろう、それで彼等に溶け込めるわけでもないのに。
そう思うとますます悲しくなってキラは目を落とした。
「残念ですわね・・・」
ラクスはそんな彼の顔を見上げ、切なげな表情になる、だがそれはたちまち消え去り、すぐに包み込むような笑顔になった.
「でもフレイさんという方は私に優しくしてくれましたわ、励ましてくださいました、食事も持ってきていただいて・・・」
ラクスは嬉しそうに微笑んだ。
「フレイが?そうですか・・・そうなんですか!フレイが・・・」
キラはつい嬉しくなった、フレイが彼女に優しくしてくれたのはなんだか嬉しかった・・・なんで・・・おかしい、そんなこと考えても仕方ないか。
「貴方もとても優しくしてくださいますのね、ありがとう」
「僕は・・・」
キラははっとした、なぜか後ろめたい気分になり、彼は思い切って言った。
「僕も、コ−ディネイタ−ですから」
ラクスは目を丸くし、きょとんと首をかしげた、驚いているのだろう、とキラは思った、そして次にはきっと、「コ−ディネイタ−がなぜ地球軍にいるのか」尋ねるだろう。
だが、キラの予想は裏切られた、ラクスは、不思議そうに訊いた。

「・・・貴方が優しいのは・・・貴方だからでしょう?」
どきん、と、キラの心臓が大きく打った。
・・・この子は、誰なんだろう・・・?
「お名前を、教えていただけます?」
ラクスはほわりと笑う、その笑顔に見入っていたキラは、一泊おいてあわてて答えた。
「あ・・・キラです・・・キラ・ヤマト・・・」
「そう・・・ありがとう、キラ様」
そう呼ばれたとたん、キラは自分が大昔の騎士または伝説の勇者、もとい錬金術師になったような気がした。

674さよならトリィ 7/8:2004/06/09(水) 07:58
[トリィは、こうなることまで知っていたの?]

私はラウ・ル・クルーゼによってザフトにさらわれた。

ラウ・ル・クルーゼ。仮面を付けたコーディネーターの軍人。そして、パパの声のする人。
その人物に、私は、まるで籠に囚われた鳥のように飼われた。私を脅し、部屋に閉じ込め、
自由を奪い、それでいて、自分を頼れば安全だと、私にパパの声で話す。
クルーゼ…… あの人は、一体、何を考えていたの?

周りはザフトの軍人ばかり、少しでも逆らえば、私の命は無い。ただ、クルーゼの言葉を信じて
従い続けるしかない。その状況の中で、私は心を押し殺し、脅えながら生きてきた。

「早く終わらせたいものだな。こんな戦争は…… 君も、そう思うだろ。
 そのための最後の鍵は手にしているが、ここにあったのでは、まだ扉は開かぬ。
 早く開けてやりたいものだがな」

だから、戦争終結を語るクルーゼの想いも、私は信じた。偵察に行くクルーゼから手渡された
鍵と呼ばれるディスク。私は、それを手に平和な頃に想いを馳せた。

そして、作戦室で聞いていた。同じ空域にアークエンジェルが居ることも……
トリィのこと、キラの思い出は忘れなかった。アークエンジェルに帰りたかった。

偵察から帰ってきた時のクルーゼ。仮面が外れている?
激しく苦しみながら、引き出しから、いつも私の前で飲んでいた薬を捜し出して噛み砕くように
飲み込み、獣のような、うめき声を上げる。長髪に隠れた素顔は、私のところからは覗くことは
できない。やがて、クルーゼは慌てて新しい仮面を付け直した。

偵察で何があったのかは分からない。だけど、私は、恐ろしくて逆らえなかった。
次のクルーゼの命令に……

「さて、君も手伝ってもらおうか。最後の賭けだ。扉が開くかどうかのね」

私は、救命ポッドでドミニオンへ…… 戦闘の光の、ただ中へ……
成す術も無い私は通信で、ただ叫ぶ。

「アークエンジェル! 私、私ここ! フレイです。フレイ・アルスター!
 鍵、鍵を持ってるわ私。戦争を終わらせるための鍵…… だからお願い……」

その時……

「フレイ…… フレイっ……」
嘘…… キラの声がする。嘘…… 嘘……

「フレイ!!」
間違い無いキラの声。生きてた?…… キラ、生きてた…… 生きてた!!

「キラ……、嘘……」
私は涙を流して呟く。私の心は、それだけで解放される。それまでの辛い想いも、悲しみも、
すべて打ち消すように。

「フレイィーーー!!」
「キラーーーーー!!」

キラと私の叫びは、暗闇の宇宙を越えて、互いの想いを伝えた。

トリィは、キラが死んだと思って自分を誤魔化そうとする私に、キラへの想いを気づかせた。
それから私は自分自身も死んだも同然の辛さを味わった。

だけど、悲しくても、辛くても、それを乗り越えれば、より強い繋がりが生まれる。
今、キラの声を耳にした私は、それが実感できる。
ひょっとして、トリィは、こうなることまで知っていたの?

「キラ、キラーーーー!」 私は、想いをこめて、いつまでも叫びつづけた。

生きていたキラの声を聞けた…… だけど、ドミニオンに回収された私は、キラの顔さえ
見ることができなかった……

* * *

私がクルーゼからドミニオンへ運んだ鍵のディスク。戦争を終わらせる鍵。そう思っていた。
だけど、それは、核を解放するディスク。さらに悲惨な戦争。あのクルーゼが望んでいたものは……
許されない罪の意識。それを感じながらも、私には、すでに強い意思が生まれていた。

── 会いたい。キラに会いたい!

私はドミニオンへの乗艦を志願した。アークエンジェルを追いかけるために。
昇進し、ドミニオンの艦長になっていたバジルール少佐は、私のことを理解して、
通信士としてブリッジに置いてくれた。

私は、激しい戦争を目の当たりにしながらも、歯を食い縛って、ブリッジからアークエンジェルの
行方を追い続けた。

…… キラに会いたくて。謝りたくて。
私と一緒に居た、みんなに謝りたくて。何も知らなかった私を……

そして、キラに、せめて一言でも、私の想いを伝えたくて。
もしも…… もしも、許してくれるのなら、キラのいる、トリィのいる、あの部屋へ戻りたくて。

そして……
戦争は、そんな私の想いさえ飲み込んだ……

届かなかった。後、一歩のところで…… キラにも…… トリィにも……

675私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 10:27
さよならトリィ作者さま
フレイ様が…!!!
ラスト一回、腹をくくって読ませていただきます
でも涙で前が見えないかも知れない…

676私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 13:42
本編のフレイ様が本当に考えていた事のようなお話ですね>さよならトリィ
短期間でこんなお話が作れる職人さんすごい!
毎日更新を心待ちにしています

677さよならトリィ 8/8:2004/06/10(木) 06:18
[さよならトリィ]

トリィが飛んで来る。私に向かって飛んで来る。

── トリィ……
<トリィ! トリィ!>

── トリィ、やっと会えた
<トリィ!!>

トリィは再会を喜ぶように、私の目の前で翼を盛んに羽ばたいている。トリィの瞳が、私を
ジッと覗きこむ。そんな、トリィに、私は今までに無い笑顔を向ける。解放された私の心は、
とても素直に私を振る舞わせる。

やがて、トリィは私の胸に飛び込んできた。それを私の手は受け止めようとする。
だけど、トリィは私の手をすり抜け、私の胸の中を突き抜けて通り過ぎる。

<トリィ……?>

トリィは不思議そうな顔をする。悲しそうな顔をする。私もトリィの、そんな顔を見て、
少し表情を曇らせる。

── トリィごめんね、私、届かなくて…… あなたにも…… キラにも……
<ト……リ……ィ……>

── ごめんね。トリィごめんね……
<トリィ…… トリィ……>

宇宙。周りは一面の星。既に、そこで繰り広げられていた暴力的な強い光の興亡は影を潜め、
見回す限り、まるで夢のように幻想的な淡い光で彩られている。その中、トリィは、私の周りを
舞うように飛び続ける。

── トリィ、ありがとう。元気づけてくれてありがとう。トリィ、私、あなたに会えて良かった。
<トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! ……>

トリィは精一杯叫びながら、私の周りを回り続ける。私を逃さないかのように。

だけど、私は別れの時が近づいていることを知っている。
私はトリィに指差した。

── トリィ、キラがいる。私はいいから、あそこまで飛びなさい
<トリィ?>

── カガリとキラの友達が、あっちにいる。その二人をキラのところまで連れて行きなさい
<トリ? トリィ……>

── ここで、お別れよトリィ
<トリィ……>

── 今まで、ありがとうトリィ。私を助けてくれて。私に本当のことを気づかせてくれて。勇気づけてくれて。
<トリ……ィ……>

── トリィごめんね、そんなに、私を助けてくれたのに。私、お返しできなくて……
<ト……リ……>

── 悲しまないでトリィ。私はキラと一緒にいるから。
<トリ……?>

── キラには、さっき伝えたから。私の本当の想いは、ずっとキラの中にあるから。
<トリィ…………>

── さよなら。キラを、お願いトリィ。
<トリィ!>

トリィは、キラの方向に体を向けた。そして、私を、もう一度振り向いた。私はトリィに無言で頷いた。
トリィは飛び去って行った。

── さよならトリィ

それが最後の言葉だった。トリィ、キラ、本当に今までありがとう。
さよならトリィ。

さよならキラ……

678さよならトリィ 作者:2004/06/10(木) 06:32
「さよならトリィ」これで終わります。

最初に、すべて書き上げてから投下を始めたんですが、途中、議論の行方を見守ったり、
それを元に、再度、見直したりして投下が遅くなってしまいました。むしろ、加筆しているうちに、
描写がエスカレートしていった感もあります

テンプレはあるとしても、まだ、仕切り直したスレの雰囲気が定まっていないため、
フレイの心情描写以外の実際に起こった出来事は、本編に忠実であることを心がけました。
そのため、フレイの最後は変えられませんでした。ただ、今までの私の作品では、それから
逃げていただけに、今回、自分なりに、きちんと描けて良かったと思っています。

SEEDのSSを書き始めてから読んだ某小説の書き方の本で、「猫を猫として書く」
という主張がありました。動物を作中の人物の比喩として使うものでは無いと言うことなのですが、
それでも、私の中では、やはり、トリィは、ロボットでも鳥でも無く、『トリィ』という、
ひとつのキャラクターとなっています。そのつもりでトリィの意思が見えるように描いてきました。

これは、前作の長編で、量産のオモチャの改造品という設定改変を加えたトリィでも同じでした。
設定改変は、ミリアリアとも絡めやすくなるという意味合いもありました。

まとめてのコメントになりますが、感想つけてくれた方々、ありがとうございました。
投下の励みになりました。

SSスレも少し落ち着いてきたようですし、また、いろいろな方の作品が集まることを祈っています。
私も、また、なにか思い付きましたら、投下します。

679夢と希望・11:2004/06/10(木) 23:16
「パパが?」
フレイが可愛い笑顔になった。
「ええ、先遣隊と一緒に来てるらしいわよ、フレイのことは知らないでしょうけど、こっちの乗員名簿を送ったわ」
ミリアリアはそう言うとフレイの楽しそうな笑顔に自然と自分も微笑んだ。
ミリアリアとフレイは同室になっている、寝ているフレイをミリアリアが起こしたのだ。

<大西洋連邦事務次官、ジョ−ジ・アルスタ−だ、まずは民間人の救助に尽力してくれたことに礼を言いたい>
マリュ−は思いあたる、フレイの父のことは、ミリアリアから聞いていた、こうして、あとから考えてみると、政府の重要人物の令嬢を保護できたことは、今後の評価に役にたつだろう、キラのおかげだ。
<あ・・・その・・・乗員名簿の中に、私の娘、フレイ・アルスタ−の名があったのだが・・・できれば顔を見せてくれるとありがたい・・・>
ア−クエンジェルクル−達はきょとんとした顔だ、ここは軍艦ということが分かっているのだろうか・・・気持ちは分かるが・・・。
「こういう人なのよね・・・フレイのお父さんって、ね、サイ?」
戻ったミリアリアが告げるとサイは困ったように・・・。
「俺はよく知らないよ・・・」
と告げた。

「これは・・・」
「どうしたの?」
「ジャマ−です!エリア一帯、干渉を受けています!」
それが何を意味するか、誰もがはっきりと分かっていた。
先遣隊は、敵に見つかったのだ。

ア−クエンジェル艦内に、警報が鳴り響いた、自室を飛び出したキラはパイロットロッカ−へと向かう、ちょうどラクスの部屋の前を通り過ぎようとしていたとき、ドアが開いた。
「また!」
どうなってるんだここの鍵は?ここは軍艦だぞ?
ラクスは部屋から完全に出てくると大きな目できょとんとキラを見つめた。
「なんですの?急ににぎやかに・・・」
「戦闘配備なんです、さ、中に入ってください」
「まあ・・・戦いになるんですの?」
「そうです、てか・・・もうなってます」
「キラ様もフレイさんも戦われるのですか?」
どうしてフレイも・・・と思ったが・・・曇りのない淡い瞳で見つめられ、一瞬キラは言葉につまった。
「とにかく、部屋から出ないでください、今度こそ、いいですね?」
せめて優しい口調で言い、ラクスを部屋に押し込み、また鍵をかけ直した。

680私の想いが名無しを守るわ:2004/06/11(金) 11:33
>>さよならトリィ
お疲れ様でした!
フレイ様が死んじゃうという現実は、
彼女のファンの全員が向き合わねばならないつらい現実なんですが…
こういう形のSSにしてくださった事で
彼女も浮かばれるんじゃないのかな、と思いました。
放映最後でトリイがキラの元へアスランとカガリを案内したシーンと
今回のSSが合わさって、何ともいえない気分になりました。
投下終了時のみのコメントでも、凄く真剣に作品に取り組んでいらっしゃるんだなあ、
と感動いたしました。
自分もSSを書くのですが、一作一作にチャレンジ精神を持ち込んで
自分を甘やかさない作者様の姿勢は見習いたいです。
そして、こういう連載形式で話数が決まっている作品は
内容が吟味されているのが感じられ、読者の立場からは大歓迎です!
素敵な作品をありがとうございました。
次の作品投下を心からお待ちいたしております。

681夢と希望・12:2004/06/11(金) 21:47
「キラ!」

ラクスの部屋を通り過ぎたキラは途中でフレイと会う。
不安げな顔のフレイはキラの腕を強くつかむと揺さぶった。
「戦闘配備ってどういうこと?パパの船は?」
パパの船?どういうことなんだろう?事情を聞かされてないキラは内心戸惑いつつ、憧れている少女の前に心臓が高鳴った。
「だ、大丈夫よね?パパの船やられたりしないわよね?ね?キラ!」
よく分からないが、とにかく行かなければ、キラはフレイの欲しがっている言葉で安心させるためにあせったように言った。

「・・・だ、大丈夫だよフレイ、僕達も行くから」
無理に微笑むと、きつく腕をつかんでいる指を外す、フレイはなおも不安げだったが、走り出すキラを見送りながら手を合わせると目を閉じた。

着替えて格納庫へ飛び込むと、ムウの乗ったゼロはすでに発進していた。
ストライクのシ−トに着くと、ミリアリアが状況を教えてくれた。
<敵はナスカ級にジンが三機、それとイ−ジスがいるわ!気をつけて!>
イ−ジス・・・その単語に・・・キラの顔は曇った、そしてミリアリアからの通信が再び入った。
<キラ!先遣隊にはフレイのお父さんがいるの!頼むわ!>
そういうことだったのか・・・。
「分かった・・・」

その頃フレイは・・・ラクスの部屋にいた。
「ラクスさん・・・私・・・パパ、大丈夫かな・・・」
「フレイさん・・・大丈夫ですわ、キラ様が助けてくれます・・・」

682私の想いが名無しを守るわ:2004/06/11(金) 23:51
>>さよならトリィ
連載お疲れ様でした!
フレイたま一人称SSは大好きなので
フレイたまやトリィと一緒になって読ませていただきました。
他の登場人物が動かないので余計に感情移入しやすかったです。
なんていうのか、職人さんの腕なのかな、読みやすくてよかったです。
やっぱり本編の悲劇のヒロインであるフレイたまが大好きだって再確認しました。

683私の想いが名無しを守るわ:2004/06/12(土) 03:22
>さよならトリィ
連載終了お疲れ様でした。
短編でとても心に残るラストでした。
個人的には最後にフレイ様の思いがトリィに乗り移って
アスランとカガリにキラの場所を教えてくれたんじゃないかな、なんて思ったりして。
次の作品も楽しみにしてます!

684私の想いが名無しを守るわ:2004/06/12(土) 16:29
>>さよならトリィ
今日まとめて全部読みました。
フレイ様せつな杉…
素敵なお話をありがとうございました!

685私の想いが名無しを守るわ:2004/06/13(日) 13:26
>>さよならトリィ、
良かったです
光フレイたま、やすらかだったんですね
こういうお話大好きなので、またよろしくお願いいたします

686私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 19:41
>>さよならトリィ
いいですね、本当に切なげでした、感動しました、また新投下をお待ちしてます。
>>夢と希望
新投下どうもです、頑張ってください。
本編とまず違うところはフレイ様がラクスを怖がらず親しく接しているところなどですね、これからもうどう変わっていくかなどなど楽しみです。

それにしても・・・感想書いてる人達って少し冷たいですね。
私はどんなSSでも感想書きますけどね。

687私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 20:24
>さよならトリィ
自分はしがない絵描きなんですが、
ラストのトリィとフレイ様にすごくインスパイアされました。
イラストを描いて見たいと思わせるシーンでした…
字の持つ力って読んだ人に絵のように直接的ではないけれど
その分幅広い影響があると思われます。
すばらしいSSをありがとうございました。

>男フレイシリーズ
次投下、すごくすごく待っています!
大好きなシリーズですのでどうなるか超楽しみです!
誰かも書いてらっしゃいましたが、
男フレイ様も絵にして見たいキャラですね。
頑張ってください!

688私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:32
トリィ>> 短いけどすごく胸に迫りました。
個人的にはトリィに当たるフレイ様の回が切なかったです。
暁の車が聞こえてきそうでした。
次回作も楽しみにしていますね。

689私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:43
>>トリィ  
フレイ様がトリィに苛立ちをぶつけるあたり、本当に胸が痛くなりました
なんだか暁の車が聞こえてきそうで、死にネタですが無茶苦茶好みなお話で、良かったです。

690私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:45
すみません。
投下ミスしたと思ったので同じ内容のものを投下しました。
>>688>>689は自分が書いてます。

691私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 05:45
>>さよならトリィ
ウワァァァン・゚・(ノД`)・゚・。
えらく感想がついているので纏めて読ませてもらい
住人ツボにガツンと入れられた気分です!
フレイ様好きよ、初心に帰れ的ないい作品でした。
短期連載、お疲れ様でした。

692私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 07:51
>>さよならトリィ
お疲れ様でした!次もまたお待ちしてます

>>686
たしかに無視は酷いですね、いつからここの感想者って冷たい人達ばがりになったんだ!?あ、私もその一人か^^

693私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 10:52
>>帰還
>> 散った花、実る果実
こっそりとこの2作の続きを待ち続けてます。
ナタル&フレイのドミでのお話読みたいので。

694私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 11:35
>>686>>692

あえて感想を書かないんじゃなくて、単にみんなその作品を読んでないだけじゃないかな?
どの作品を読み、どの作品に感想を寄せるかは読者の自由だからね。
冷たいと思うなら個人サイトでやったほうがいいですよ。

695私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:30
自作自演につられすぎだ。お前ら。
>>686は夢と希望の作者。あんなのを誉める人間なんて
全世界探しても片手で数えるほどしかいない。

696私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:42
>>695
あんた言い過ぎだよ、そこまで言うか?普通、最近相手の気持ちなどを考えずにはっきり言う住人が多い。

697私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:47
>>あんなのを誉める人間なんて。
この発言は暴言だな、どんな気持ちでこういう発言したんだろうか、心無い人もいるんだね、ていうか作者の自作自演ってなんで決め付けてるんだよ!

698私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:49
>>696
漏れと荒らしはスル−して。

699私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:56
感想とSS以外の書き込みはご遠慮願います。

700私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:59
自分は素直に
>>さよならトリィ
に感動したのでスレ活性化の願いを込めて感想を書きました。
本当にいい作品だと思いました。

701私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:59
【夢と希望作者】=【過去の傷作者】

702私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:04
>>701
いいかげんにしろ!しつこすぎだよ。

703私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:04
>>701
いいかげんにしろ!しつこすぎだよ。

704私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:17
>>701
あえて言うことはない。
みんな知ってても生暖かく見守っていたんだから。

705私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:31
とりあえずこれでまた連載止まるだろうな、いやもう来ないかもな・・・。
くだらない話し合いと695のような人を侮辱したような暴言によってだ。

706私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:39
>>705
又擁護&貶め作戦で荒らすつもり?

707私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 16:45
以後この件については避難所でどうぞ。
発端はどうやら>>686のようだが、感想以外の意見は避難所でやってくれ。
このレスに対するレスも、もしあるなら避難所で書いてくれ。

では以後SS感想で。
職人さんたち、ほんとにお騒がせしました。

708私の想いが名無しを守るわ:2004/06/16(水) 10:34
えっと…
とりあえず雰囲気を変えるために感想書かせていただきます。
>>さよならトリィ、
短いお話なので読みやすく、フレイ様の感情がストレートに伝わってくる
余韻が残る素敵なストーリーでした。
自分が今まで読んだフレイ様死のストーリーは、
キラ視点や残された人視点が多かったのですが、
フレイ様視点だからこそ、読んだ後に妙に共感を覚えたのかなあと思います。
すごく良かったです。
どうもありがとうございました。
こんな状態ですが、ぜひ次の作品も読ませて頂きたいです。

709リヴァオタと八アスのためでなく:2004/06/16(水) 12:13
ラスボスとの決闘のとき,カガリがやってきた。
「キラ、打ち上げ花火もって来たぞ」
「なにほんとか!」
「いまから飛ばすからちゃんと見ろよ!」
ポチ
ドガァァァァァァァァァァンンンンンン
コロニーだけでなく地球,月,火星なども地球破壊爆弾で消滅した。
全宇宙は粉々に砕け散り,生き物はすべて絶滅した。
この物語はあの小説のラストのようなものだった。

終わり

710私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 06:55
>>リヴァオタ
連載終了お疲れさん。
独特の世界観と語り口で、なかなか感想を付けられなかったが、
巨人の星ネタや、藤子不二雄作品ランキングなど、古いネタでは楽しませてもろた。
また、どこかで新しい作品が見られること期待してる。

711私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 10:51
某小説が何故感想がなかったか

・腐女子臭がする
・犯罪行為を堂々とする
・過去の荒らしの作品、又は過去の荒らしの作品と似た文体である
・パクり部分以外の文章が稚拙極まりない。
・初めての投下。と嘘の疑惑を盛り立てる発言をした事。
・擁護、良感想は殆ど自作自演を疑わせる、特徴ある物であること。
・サイなどの良行動を全てフレイ様に分担させる事で、
ファンですら引く位に原作との剥離が甚だしいこと。
・上記の行動をさせるために行動に無理が生じ、余計に作品の質を下げている事
・誤字、脱字、文法ミスの多さ

712私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 10:52
誤爆スマソ。

713私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 11:26
>>711
そんなことはどうでもいい、他の職人さんに迷惑だからやめろ。

714私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 12:02
過去の放置による評判悪化の憂き目を繰り返す気はない。

続きは避難所で。

715キラ(♀)×フレイ(♂)・46−1:2004/06/18(金) 00:56
「こちらキラよ。ねぇ、カガリ。どこにいるの?いたら返事をして」
これで何度目だろうか。キラは、凶悪犯の母親が自首を訴えかけるかのような必死さで、
通信機に呼びかけたが、全く応答は無い。キラがブルーになり掛けた瞬間、通信機の
応答ランプが赤く点滅した。
「はい、こちらキラです!カガリ!?それとも、フレ……」
「キラ、俺だ。そろそろ日が暮れてきたから、俺達も一端引き上げるぞ」
少女漫画のヒロインのようにパッと瞳を輝かせたキラは、大慌てで通信機のチャンネルを
合わせたが、ノイズ混じりにフラガの声が聞こえてきたので、軽く意気消沈する。
「ま…待ってください、フラガさん。もう少しだけ…」
「駄目だ。艦長からも、二時間したら戻るように言われただろうに。
夜になれば、NJの影響が一層濃くなる上に、視界まで効かなくなる。
これじゃ、どうにも探しようがないだろ?」
「で…でも……」
意志薄弱で、今まで易々と命令を受託してきたキラにしては珍しく執拗に食い下がる。
この付近は、未だに敵の勢力圏内だし、この機会に、カガリ達を探し出せなかったら、
このまま彼らをMIA扱いして、先に進まれてしまうのでは…と危惧しているようだ。
そのことに思い当たったフラガは、優しい声色で、キラを諭しはじめた。

「心配するな、キラ。絶対にカガリ達を置き去りにはしないよ。
探索効率が悪いから、あくまで一度出直すだけだ。夜が明けたら、再び捜索開始だ」
「えっ!?ほ…本当ですか!?」
「俺達は軍人だ。緊急時となれば、左手か右手か辛い選択をしなければならない時もある。
でも、そうでない場合は、最後まで仲間を見捨てるような真似はしないさ」
「フラガさん…」
キラは神妙な顔つきでフラガの話しに聞き入っている。ここ最近、色々と不祥事
が相次いでいたので、キラの中で軍人の株は値崩れを続けていたのだが、
フラガの仲間想いの力説に、少しだけ再び株価が高騰しだしたみたいだ。
「まっ、そういう訳だ。お前の今の仕事は、明日の捜索に備えて、じっくり休むことだ。
もっとも、最近キラお嬢様は、あまり独り寝に慣れていないみたいだから、人恋しくて
なかなか寝付けないかもしれないけどな。ウッシシシ…」
「もうっ、フラガさんのエッチ!」
せっかくシリアスに決めた場面でさえも、ついつい要らぬボケをかましてしまうのが、
フラガ兄貴の病んだ性癖のようだ。キラは、モニター上のフラガのニヤケ面に軽く
デコピンを放つと、プゥーと頬を膨らませながら、乱雑に通信を切断した。
それから、海中をエール推進で泳いでいたストライクは、水泳のターンの要領で、
クルリと一回転して方向転換すると、アークエンジェルの方角へ帰投していく。
フラガのセクラハ発言に幾らか気分を害したようだが、キラは彼の忠言を受け入れ、
英気を養うことにしたらしい。


「ふうっ。大人って狡いよな」
キラの脹れっ面が消えた途端、光を反射した漆黒のモニターは鏡の役割を果たす。
鏡の中のフラガは、例の人好きのする笑顔で、フラガを嘘吐きと罵っている。
アークエンジェルの幹部達が、敵に捕捉される危険を承知の上で、彼らの探索に
拘るのは、人道的な見地故ではなく、カガリの政略的な価値に起因していた。
それなのにフラガは、この件を最近、上層部への信頼度が低下していると思われた
キラの信用回復のダシに利用したのだ。ここの所、大人達の不誠実な態度ばかりが
目に付くが、何時かは子供達と心を分かちあえる時が来るのだろうか。
「副長の事をあまり悪く言えないよな。むしろ、体裁を取り繕おうとする分だけ、
悪役に徹しようとするナタルより、俺の方がよっぽど性質が悪いかもな。でも…」
代謝行為という訳でもないが、フラガはマリューの人が良さそうな笑顔を思い浮かべた。
甘いかもしれないが、彼女なら、たとえカガリ達に何の利用価値がなかったとしても、
それでも損得勘定抜きで、子供たちの捜索を指示していただろう。
フラガが知っているマリュー・ラミアスとは、そういう女だった。

716キラ(♀)×フレイ(♂)・46−2:2004/06/18(金) 00:57
時刻は既に夕暮れ時。この時間帯のサドニス海近辺の島々は、夕日に照らされた
美しい紅海を堪能できるのだが、島全体がどんよりとした雲に覆われ、日の恩恵を
受けられない海は灰を溶かしたかのように濁り、島本来の美観を大きく損ねている。
その灰色の海と同じ色をしたフェイズシフト・ダウン中のイージスガンダムは、
ボディの彼方此方から水滴を滴らせて、抜かるんだ大地の上に寝そべっている。
イージスの近辺には、黒と金色の髪をした二人の少年が、崖に背も垂れるような
体勢で座っている。アスランとカガリだ。フレイは、何故かこの場にはいない。
今現在、雨は止んでいるが、突然の夕立にでも降られたのか、二人とも、軍服と
色の異なる髪の毛をビショビショに濡らしている。
カガリはチラリと、自分の真横にいるアスランの横顔を覗く。アスランは体育座り
の姿勢のまま、呆けた瞳で目の前の空間を見つめている。
突然、崖上の草木に貯まっていた水滴が、その重さに耐えられずに、一塊の水の弾丸を
レールガンのように崖下に弾き出した。水の塊は真下にいたアスランの頭に直撃したが、
アスランはピクリとも動かない。黒髪からポタポタと水滴を滴らせながら、まるで雨中
で乱暴され掛けた女性のような放心した表情で、心ここにあらずといった状態だ。

あいつ…。
カガリは、見えない鎖で拘束されているかのようなアスランの無気力な姿を、
彼にしては珍しく、同情した瞳で見つめている。
アスランとか言ったっけ?あいつ、本当にキラのことが好きなんだな。



「ア…アスラン君?」
フレイの問い掛けに無言のまま、アスランは彼の襟首を掴むと、左腕一本で軽々と
フレイを宙吊りにする。彼ら三人のモヤモヤとした内面とシンクロしたかのように、
突如、黒雲が、東の海岸から急速に流れてきて、島内を隈なく覆った。
フレイが右頬に冷たい水滴の存在を感じた刹那、鋭い灼熱感がフレイの逆側の頬を襲った。
予想外の事態に唖然とするカガリの目前で、アスランに渾身の力でぶん殴られたフレイは、
派手に吹っ飛ばされて、崖岩に背中をぶつけると、そのままズルズルと沈み込んだ。

「うぉおぉおおぉ…………!!!!」
アスランは獣のように咆哮すると、そのまま瀕死のフレイに馬乗りになり、再び利き腕
を大きく振りかぶった。フレイの後頭部は、硬い岩石の上に置かれており、このまま
コーディネイターの腕力で殴られたら、パンチの威力よりも、岩石との衝突でフレイの
頭蓋骨が砕かれるだろう。
「お…おい、待てよ、アスラン!?止めろぉ〜!!」
理性の箍が外れているとしか思えないアスランが、本気でフレイを殺そうとしていると
悟ったカガリは、縛られた体勢のまま、アスランに体当たりを敢行する。
側面からの予期せぬ奇襲に、アスランはカガリ共々もつれ合うように、崖側に転がった。
アスランが昏睡中のフレイから引き離されたと同時に、物凄い勢いでスコールが降り始める。
ミサイルのような大粒の雨は、水捌けの悪いここら一帯の大地を水浸しにし、ものの数秒
と経たない内に、地面に転がり込んだ三人の髪は雨で濡れ、軍服は泥塗れになる。

「き…貴様!?なぜ、庇う!?」
「落ち着け、アスラン!お前、自分が何をしているか判っているのか!?」
血走った目付きで、今度はカガリの襟首を締め上げるアスランに臆することなく、
カガリは堂々とアスランを睨み返しながら、彼の暴挙を訴える。
カガリ自身も、一度は本気でフレイを射殺そうとした身なのだ。
ならば、余計なチョッカイを掛けずに諦観し、黙ってアスランに、
フレイを殴り殺させるに任せておけば良かった筈である。
ただ、身動きの取れない捕虜に、理不尽な理由で一方的な加虐を加えようとする構図
がカガリの潔癖な倫理観に引っ掛かり、ほとんど反射的に危地に飛び込んでしまった。
何よりも、今のアスランを支配している殺意が、極めて衝動に近い感情である事実を
カガリは知っていたので、アスラン自身の為にも、彼の軽挙を止める必要性があった。

717キラ(♀)×フレイ(♂)・46−3:2004/06/18(金) 00:57
捕虜の分際でのカガリの叱咤に、アスランは忌々しそうにカガリを睨んだが、流石に
カガリにまで手を挙げようとはしなかった。こうしている間にも、雨足はさらに加速
し続け、フレイに挑発され熱し上がったアスランの激情を、少しずつ醒ましはじめる。
その時、縛られた状態のまま、仰向けに寝そべっていたフレイが蘇生し、彼の唇が動いた。

「………何を………怒っているんだい……………アスラン君?」
フレイはノロノロとした緩慢な動作で、座したままの体勢で上半身だけを起き上がらせる。
彼の顔は泥水で汚れ、切れた唇の中から真っ赤な血が滴り落ちている。
「……君にはラクスという、れっきとした許婚がいるのだろう?
もしや、ラクスを正妻とし、キラを愛人として囲む邪な計画でも巡らせていたのかい?」
危うく殺害されかけたフレイだが、淡々とアスランの非を打ち鳴らすフレイの態度からは、
微塵も怒りも恐怖心も感じられない。能面のような無表情に、妙に危機感の欠落した
冷めた瞳でじっとアスランを見つめ、逆にその静けさが、スコールのシャワーを浴びて、
正気に返りつつあるアスランを怯ませた。

「…以前、君はキラに、民間人を人質にするのは卑劣だとか、偉そうに説教したらしいね?
なら、拘束中の捕虜に私怨で暴行を加えるのが、君とザフトの信じる正義なわけかい?」
フレイは最後まで、強者に媚いることなく、強者が犯した不条理を訴えた。
その結果、ここで屍を晒すことになったとしても、アスランが筋の通らぬ逆恨みで、
フレイを害しようした事実だけは、彼の胸の内に永久に刻み込ませるつもりだ。


フレイから命懸けの告訴を受けたアスランは、無言のままガックリと肩を落とした。
今日までザフトの軍人として、数え切れない程の敵兵を殺してきたが、全ては祖国と正義
の為と信じた信念に支えられての行動であり、後ろ暗さを感じたことは一度もない。
だが、アスランが目の前で行った虐待は、明らかに正義ではなく、戦争ですらない。
彼は私怨で、目の前のナチュラルの兵士を、死刑(リンチ)にしようとしたのだ。
正規の軍人でありながら、仲間の死を冒涜されたとかの高次な話しではなく、痴話喧嘩
レベルの低次な挑発に惑わされて、理性を喪失してしまったという己の馬鹿さ加減が
信じられなくて、アスランは大幅に精神を失調させた。

「僕を殺す気がないのなら、縄を解いてくれないか?この傷の治療がしたい」
フレイがさり気無く、傷口をアピールし、アスランはまるでフレイの言いなりなった
かのように、彼の縄を解いた。こうしてフレイは、久方振りに自由を確保した。



フレイは手鏡を覗き込みながら、救急用バックから取り出したオキシドールを
染み込ませた綿を傷口に当てて、治癒に努める。
妙に口の奥がズキズキ痛むと思ったら、奥歯が一本叩き折れている。
「痛ぅ!!あの馬鹿力め!」
彼にしては凡百な悪口でアスランを罵りながら、フレイは折れた歯を吐き出したが、
コーディネイターの男子に本気で殴られて、生命があったどころか、自慢の高い鼻
も潰されずに、歯一本程度の被害で済んだのは、むしろ僥倖だろう。

一通りの応急治療を済ませ、錠剤の痛み止めを飲んだら、少し痛みが和らいできた。
痛みが引いてくるのと同時に、フレイの中から、今まで抑えこんできた怒りの感情
がフツフツと噴出してきた。
「こいつもか…」
フレイは項垂れたアスランを、醒めた瞳で見下ろしながら、心の中でそう独白する。
ジュリエットだけではない。ロミオの側も無意識に結託し、茶番を演じてきたのだ。
ヘリオポリスを脱した当時のアークエンジェルと、未熟な素人パイロットだったキラ。
過酷な環境下で、ザフトの精鋭部隊たるクルーゼ隊に度々襲われながらも、
キラが今日まで生き延びてこれた裏面のカラクリを、フレイを垣間見た気分だ。

718キラ(♀)×フレイ(♂)・46−4:2004/06/18(金) 00:58
「こいつら、ふざけやがって!戦争を愚弄するにも程がある!」
互いに愛し合っている者同士が、敵と味方に別れて、殺しあうのは確かに悲劇だろう。
だが、その悲劇に無理やり巻き込まれた者がいたとすれば、それは、むしろ喜劇でないか?
戦場では、人の生命ほど儚い存在は他にない。
己の全知全能を出し尽くした所で、報われるとは限らず、戦いを支配する何者か(神?)
の些細な気紛れにより、理不尽な死を賜るケースもしばし見受けられるが、
それでも戦争に携わった者達は、大切な何かの為に必死に戦っているのだ。
なのに、中には、そういう弱者の生命賭けの足掻きを嘲笑するかのように、敵味方の
枠組みを無視し、殺しても良い味方と殺したくない敵とを分類した上で、あまつさえ、
その絶大なる能力故に、自分の身さえも余裕で守れる強者が存在していたりする。
キラやアスラン君という闘神の申し子達が、まさしくそれだ。

「お前たちは神の身遣いか!?全ての人間が、自分と仲間を守ろうと戦っている戦場で、
殺す相手を選り分ける権利が、貴様らには与えられているとでも言うのか!?」
フレイがキラ個人を目の敵にしている本当の理由は、彼女の戦争そのものを冒涜する
許されざる背信行為に、自分の母親も巻き込まれたと信じ込んだからだ。
意外かも知れないが、フレイは直接、母を殺したザフトをそれほど憎んでもいないし、
コーディネイターを宇宙から抹殺しようという馬鹿げた妄執に囚われている訳でもない。
殺し合いの場には、無辜の被害者などという奇特な人種は、例外なく存在しないのだから。

「『ペンは剣よりも強し』だ。神様も法律も、奴らを罰しないというのなら、僕が裁く。
力で、全ての暴挙が罷り通ると信じている奴らに、言葉の恐ろしさを思い知らせてやる!」
個人として見れば、キラが自分などよりはるかに善良な人間で、母を見殺した一件も、
彼女自身には何らの悪意も持ち合わせていなかったことなどは、フレイも承知している。
フレイが問題としているのは、人柄の善悪ではなく、行為の善悪なのだ。
戦場での力ある者の『手抜き行為』を立証するのは、至難というよりも不可能だ。
これは、ある種の超越者だけに許された合法的犯罪に等しいからだ。
ならば、こちらも同等の手段によって、報復を実行する以外に道はない。
フレイならば、それが可能な筈である。
何故なら、彼は口先一つで他者の運命を自在に操れる、言霊(※)の魔術師だからだ。
※(言葉に内在する霊力。昔は言語が発せられると、その内容が具現化すると信じていた)

フレイは意趣返しとしての合法的犯罪性に拘っているが、毒殺の準備を別にすれば、
実際、今回の復讐劇の中で、法に接触する行為は何一つ犯さなかった。
キラに戦いを強要した覚えはないし、日常生活で誰もが使用しうる範囲の嘘方便なら
巧みに用いたが、詐欺罪に問われるレベルの深刻な虚言は慎重に避けてきた。
(だから、フレイはキラに「愛している」とさえ、囁いたことは一度もない)
全てはキラが、自分の責任において、勝手に仕出かした事だ。
フレイに在ったのは、「自分がこう言えば、きっと彼女はこう動くだろう」と予測し、
それを躊躇なく実行してのけた、明確な悪意の感情だけである。
そして、「手抜き行為」同様に、「悪意」を裁ける法律は、世界中のどこにも存在しない。

シェークスピアの戯曲通りに、ジュリエットにはロミオと心中してもらう。
そこから先のシナリオは白紙だが、軍属として過酷な最前線で戦っている以上、
キラという盾を失ったフレイの命数が尽きるのも、そう遠い先の話ではないだろう。
いかにフレイが、自分のインナースペースに高貴な悪魔を飼い馴らしていたとしても、
その魔族の魂を覆う彼の肉体そのものは、通常の人間のそれと何ら変わらない。
タカツキ君や、非武装のシャトルを撃ち落したというデュエルのパイロットのような、
脊髄反射で引き金を引ける類の人間の放った銃弾の一発でも、簡単に死ねるのだ。
フレイは自分の無謬性を過信してはいなかったし、何よりも、母のいないこの世紀末
の世界には、もはや、何の未練も無かった。

フレイ独特の復讐動機は、世間一般の感性に照らし合わせれば、到底、理解や共感が
得られるような代物ではなく、狂人の逆恨みの烙印を押された事は間違いないだろう。
またフレイは、キラへの憎悪が無尽蔵に溢れ出ていた初期の頃に比べて、
最近は己が怒りを定期的に確認し鼓舞し続けない事には、キラへの悪意を維持
できなくなりつつある、自身の心情変化には全く気がついていなかった。

719キラ(♀)×フレイ(♂)・46−5:2004/06/18(金) 00:58
フレイは心中から湧き上がる強い軽蔑感を押し隠して、自分の殻の中に閉じこもって
いるアスランを眺める。昂ぶる感情に反応するかのように歯欠けの歯茎がズキリと痛む。
高い代償を支払わされはしたが、お陰で、今まで風聞でしか知りえなかったアスラン君
の実像を、フレイは凡そ把握することが出来た。
「軍人として有能で、個人としても善良だが、軍隊という枠組みから一歩でも外に出たら、
まだまだ人間としての完成度には程遠く、良家のお坊ちゃまの域は出ていない」
それが、フレイがアスランに下した評価の全てだ。
世の中には、他人の善意や純粋(ピュア)な想いを正確に理解した上で、それを悪意を
以って踏み躙れる、フレイのような確信犯的な小悪党が結構存在しているのだ。
アスラン君は、そういう輩に踊らされて犬死するか、または人間に絶望し、今度は彼自身
が世界を滅ぼす魔王へと転身を果たしてしまうようなタイプだとフレイには思われた。

「プラントが世襲制度じゃなくて残念だな。アスラン君が将来、父親の後を引き継ぐ
ことにでもなれば、プラントとの外交交渉も随分と遣り易くなりそうなんだけどな」
一瞬、フレイはそう考えたが、そのアスランの婚約者で、現最高評議会議長の令嬢
であるピンク頭のお姫様の笑顔を思い浮かべた瞬間、慌ててその思考を打ち消した。
「危ない、危ない。そうなると、あの歌姫がプラントの指導者となるわけか」
酢を一気飲みしたような渋い表情を浮かべ、フレイは胃の辺りを撫で始めた。

フレイは、コーディネイター云々を抜きにして、ラクスが嫌いだった。
あの天然を装ったお姫様に、どことなく自分と似たペテンの匂いを嗅ぎ取ったからだ。
他人を騙せる詐欺師は世間にたくさん溢れているし、フレイもまた、その中の一人である。
けど、自分を騙せる詐欺師となると、どうだろう?
それは稀有というより奇跡に属する領域だ。何故なら、ヒトは他人を騙す事は出来ても、
基本的には自分自身にだけは、嘘を吐けない生き物だからだ。
「アレは、己自身も含めた総ての生命体を欺ける希代のペテン師だ」
フレイはラクス・クラインの正体をそう睨んでいる。
そういう意味では、普段、彼女が見せている天然お嬢様の仮面も、ラクスにしてみれば、
演技をしている自覚はないのだろう。ラクス自身、今はまだ卵の殻の中身を知らないのだ。

「あの女、今はアイドルの真似事をして満足しているみたいだが、そのうち自分の本性に
気づいたら、宇宙をあっと震撼させるような、とんでもない真似をやらかすのではないか?」
フレイは何らの根拠も無しに、頑なにラクスの性根をそう決め付けていた。
尚、このフレイの妄想染みた予言ないし言霊は、後日、完璧に現実の世界の出来事となる。



雨は既に止んでいる。
先のドサクサに紛れて、そのまま要領良く身柄の自由を確保したフレイは、
「食事の準備をしてくる」と宣言して、この場所から姿を消し、後には
カガリとフレイの二人だけが、取り残された。
未だ拘束中のカガリの存在を無視し、ひたすら自分独りの世界に閉じこもって
いるアスランの姿に、カガリは憐憫に近い感情を抱いた。
「あいつ、本当にキラのことが好きなんだな」
先のアスランの無様な醜態を見るにつけ、フレイほどの洞察力を必要としなくても、
アスランの本当の想いが誰に向けられているのか、カガリにも痛いほど良く分かった。
彼にはプラントに許婚がいるみたいだが、カガリ自身も親族から顔も知らない婚約者を
押し付けられそうになった口なので、身分の高い家柄の者には、昔の封建社会さながらに、
自由恋愛など許されてはいない現実をカガリは良く知っていた。

「キラの隣にいるのが、あいつだったらな…」
カガリ自身の恋愛感にマッチしたからかも知れないが、フレイの手馴れたスマートな
恋愛感覚よりも、アスランの不器用な誠実さの方にカガリは好感を抱いた。
少なくとも、キラを支えていたのが、不誠実の塊のフレイではなく、精神の骨格の半分は
優しさで構成されているアスランだったら、カガリも今ほどヤキモキしなかった筈である。
だが、現実にはアスランこそが、AAと今のキラの生命を脅かしている敵なのだ。
信用ならぬ危険な味方と、敬意に値する敵。キラを巡るその矛盾した構図が、いつかは
逆転する時は、来るのか?来ぬのか? 予言者ではないカガリには分からなかった。

720キラ(♀)×フレイ(♂)・46−6:2004/06/18(金) 00:59
日が完全に落ち、真っ暗闇になった頃、ようやく、フレイは二人の前に戻ってきた。
茸、果実、草花、木の実などが大量に詰まったらしいリュックを左腰に抱え、
どこかで捕らえてきたらしい野兎を、細長い耳を右手で掴んで、ぶら提げている。
「おっ?、ちゃんと火を炊いといてくれたみたいだね」
あれから、少しだけ精神の失調を回復させたアスランが、濡れた服を乾かす為に
仕込んだ焚き火の存在に気づいたフレイは、感心したように呟き、今までフレイの
手の内で大人しくしていた兎が、本能的に危険を感じ取ったのか、突如暴れだした。
「こらっ、暴れるんじゃない。味が落ちるだろう。美味しく調理してやるからさ」
フレイは笑顔で兎を諭しながら、一気に兎の頚骨を捻ろうとしたが、その手首を
アスランが強い力で掴んだ。アスランの異常な握力に耐え切れずに、フレイは
兎の耳を掴んでいた掌を離し、自由を得た兎は、慌てて森の中に逃げていった。

「食料なら俺の手持ちの携帯食を分けてやる。だから、逃がしてやれ」
フレイが何か言うよりも先に、アスランが口を開いた。キラは、アスラン君のことを
優しい人と表現していたが、彼は無益な殺生を好まない性格らしい。
「ふ〜ん。面白いんだね、君って。人は平気で殺せても、動物は駄目なんだ?」
スタスタとアスランの横を通り過ぎる間際に、フレイはボソッと彼の耳元に囁き、
その皮肉の痛烈さにアスランはビクッとする。

「私、アスランがそんな人だなんて、思わなかった」
「えっ!?キ…キラ!?」
有り得ない事態にアスランは呆然とする。彼が振り返った先には、焦茶色の髪をした
キラがキョトンとした表情で、彼の偽善を追求するかのように、じっと見つめている。
「て…テメエ、何しやがる!?」
突然、キラが、隣にいるフレイに、彼女らしからぬ乱暴な言葉遣いで難癖をつけ始めた。
いや、良く見ると、キラではない。そのキラに似た物体は縄で縛られた上に、緑を基調
としたコンバットスーツを着込んでいる。確か、カガリ・ユラとか名乗っていたっけ?
「似ているだろう?カガリ君はキラの変身の達人でね。案外、キラの血族だったりしてね」
開いた口が塞がらない状態のアスランに対して、カガリに焦茶色の鬘を被せた挙句、
キラの声帯模写までやってのけたフレイは、軽くウィンクしながら悪戯っぽく説明する。
この茶目っ気の為だけに、わざわざグラスパーまで戻って、鬘を回収してきたらしい。

「外せ〜!」と喚きたてるカガリの姿を尻目に、フレイはアスランから受け取った食料
を加えた上で、調理の仕込みに入る。フレイの目の前には、彼が採取してきた怪しげな
食材が並べられていたが、毒物の目利きに関しては、フレイはエキスパートなので、
食中毒の心配をする必要性は………………ひょっとすると、大いにあるかも知れない。
淡々と調理を続けるフレイの傍らで、カガリは、頭から鬘を外そうと暴れ狂ったが、
鬘はゴムで、両耳の耳元にキッチリと固定されているので、その努力は徒労に終わる。
「うがぁ〜!!」と発狂したかのように、のたうち回るカガリの姿は、自分の尻尾を
餌と勘違いし、必死に喰らいつこうとグルグル回転する間抜けな犬の姿にソックリで、
思わずアスランの顔からも笑みが零れた。
「この野郎、何が可笑しい!?」
涙目で睨むカガリに、アスランは慌てて目を逸らしたが、鬘を取ってやろうとはしない。
別に意地悪してではなく、単に自分にその選択肢があるのを忘れていただけの話しだが。

「ほら、出来たぞ」
特性のスープを煮込んだフレイは、料理を皿に盛ると、カガリの目の前に置いた。
「…って、お前、この状態で、どうやって食えっていうんだよ!?」
「そのまま食べればいいだろう。とにかく、君の縄は解けないよ。
自由の身を確保したら、君はまた身の程知らずにも、アスラン君に戦いを挑みそうだからね。
君が返り討ちにあって、くたばるのは勝手だけど、僕まで巻き込まれるのはゴメンだよ」
「何だと!?テメエ、ふざけるな!!」
カガリは当然の抗議をしたが、フレイはカガリを無視すると自分の食事に入った。
フレイは美味そうにスプーンでスープを掬い、目の前に置かれたスープの皿からは、
野生の食材で構成されているとは思えない、食欲中枢を擽る香ばしい匂いが漂ってくる。
カガリのお腹がグーっと鳴り、今朝から何も食べていない事に気付いたカガリは、
背に腹は変えられぬ…とばかりに、目の前の御椀に喰らいついた。


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