朝7時、イナ川達は寮の前でラジオ体操をしてから出社する。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 朝は早いですけど、その分退勤も早いので。もう慣れましたね
そう話すのはベテランふりかけ職人のイナ川さんだ。ちんちん洗わず17年、ふりかけにかける思いは強い。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 そりゃ最初はね、社長の……ぴっぴさんの頭を疑いましたよね。ちんかすをふりかけにするって言うんですから
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 当時はですねぇ、売れねぇよぉこんなもん！ って会議の度に幹部イナ川達が泣いて叫んでたのよく覚えてますよ
──なぜ、イナ川のちんかすをふりかけに？
ぴっぴさん「イナ川産業の中で唯一注目されていない部分がちんかすだったんです。捨てるところがないと言われたイナ川でも、ちんかすだけは皆ゴミとして処理していましたので」
ぴっぴさん「これをどうするか、そう考えたら答えは一つでしたね。ちんかすはふりかけっぽい見た目をしてる」
──なるほど。そうですか。
1920年代の創業当時、まだイナ権は確立しておらずイナ川は家畜として扱われていた。
イナ川の革で小物を作るという事業を展開していたこの会社もまた、イナ川に対して残酷な行為を繰り返していた。
現社長ぴっぴさんの父親であり、イナ権の確立に貢献したぴっぴ父氏の書いた伝記にはこうある。
当時働いていたイナ川ちんちん株式会社から引き抜かれ、イナ川なめし革工業（当時の企業名）に社長として就任した際の衝撃はよく覚えている。
イナ川達が、自分が産んだばかりのイナベビーを〆て皮を剥いでいる。工場の隅に打ち捨てられたイナベビーの死体からぷうんと腐った臭いがして、親イナがその側で泣きながら謝っていた。
これでは、いけない。イナ川を笑顔にできないのに、人々を笑顔に出来るのか。
すぐに、業態を変化させることを決めた。イナ川には給料を払い、幹部にイナ川を採用することも決めた。
それを周知した時のイナ川の言葉を、私は決して忘れることはないだろう。
ᶘｲ;⇁;ﾅ川 もう赤ちゃん、殺さないでいいです？
決してこんなことを繰り返してはいけない。
しかしその後会社は利益を減らしていき、過労によりぴっぴ父氏は倒れる。
引き継いだのは、大学を出たばかりでまだ若いぴっぴさんだった。
どれだけ必死に働いても会社は傾いていくばかり。ぴっぴさんの若さを侮る取引先も多かった。
若い女社長を見限り人間の社員は次々と辞めていった。
しかし、そんな状況でも最後まで残り続けたものがいた。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川達だ。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ぴっぴ父さんには世話になりましたからね！
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 私達、もう家族みたいなもんですよ！
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ぴっぴさんに最後までついていきますよ！！
ぴっぴさん「お前ら……」
もう辛くて、何度辞めようかと思ったか分からないですよ。でもねぇ。こいつらを絶対に路頭に迷わせてたまるか、の一言でしたね。と後にぴっぴさんは当時を振り返っている。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ふんふーん♪
ぴっぴさん「何してんだイナ川？」
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ちんかすの掃除です。キレイキレイにしないとミイさんに嫌われちゃいますからね
ぴっぴさん「ふーん」
立ち去ろうとしたその時、ぴっぴさんの鼻をかすめる臭いがあった。
ぴっぴさん「……なんかいい匂いだな、ちんかすって」
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 そうですかぁ？
ぴっぴさん「……ちんかす。そうか」ｶﾞｯ
ᶘｲ^⇁^;ﾅ川 あっ！ 触ったら汚いですよ！
ぴっぴさん「ちんかすだ！ これだ、これだよイナ川！」
ぴっぴさん社長就任二年目の冬。後に会社を救うちんかすとの出会いだった。
翌週の会議でぴっぴさんは、並ぶ幹部イナ川達にこう宣言したのだ。
ぴっぴさん「我が社はこれから……」
ぴっぴさん「ちんかすふりかけで巻き直しを狙う！！」
ぴっぴさんは当然歓迎されるものと考えていたが、幹部イナ川達の反応は良くなかった。
ᶘｲ^⇁^;ﾅ川 えっ、ちんかすを？
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ついていく人間間違えましたかね……
ᶘｲ;⇁;ﾅ川 売れるわけないじゃないですか！ ちんかすですよ！？ 誰が食うんですかちんかすをぉ！！
今でこそイナ川のちんかすは美味しいと知られているが、当時はちんかすはちんかすでしかなかったのだ──。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 いや、もう頭おかしくなったのかと思いましたね
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 だってちんかすですよ？ ばっちいもんですよ、それをね、ふりかけにして食わせる。これはいけない
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 そもそも誰が金出してちんかすを買うんだって。会社傾きすぎてぴっぴさん狂ったんだ、って社員みんなで泣いてましたよ
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 でも、ついていくと決めました。ぴっぴさん、あの時こう言ったんですよ
『絶対に売れる。売れなかったら私で見抜きしてもいい』
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 あぁ、覚悟だなって。魂を賭けてるんだなって。見抜きしていいって言われたら、もうついていくしかないじゃないですか
幹部達の反対を押し切り、イナ川ふりかけは発売された。産業廃棄物であったちんかすをふりかけにする、その新機軸さが評価されたが……。
イナ川ふりかけは売れることはなかった。
やはりイナ川のちんかすという先入観が強く、手に取る人間は少なかった。
「ママー、ちんかすってなに？」
「触っちゃいけませんよ！」
主婦層からの反発は特に強かった。売上は上がらず子供がちんかすという言葉を覚えてしまった、と批判の声だけがちんかすのように積もっていった。
このままでは倒産する──ぴっぴさんも諦めかけたその時、奇跡は起こった！
ᶘｲ^⇁^;ﾅ川 ぴ、ぴっぴさん！ 大変です！
ぴっぴさん「どうしたんだそんなに慌てて……」
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 イナ川ふりかけの売上が、爆発的に増えています！！
ぴっぴさん「本当か！？」
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 はい、はい！ 今工場フル稼働で作ってますので！
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 在庫は後2箱分ほどですね
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 申し訳ありません！ 出来次第すぐに送らせていただきますので！！
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 あ、ミイさん？ 今日の夜見抜きいいです？
ぴっぴさん「これは……」
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 あっ、ぴっぴさん！ もう電話鳴り止みませんよ！ 全国のスーパーから問い合わせが殺到してます！
ぴっぴさん「やっと皆美味しさに気付いたんだな……でも、なんで？」
突然の爆発的人気の理由……それは一本の動画だった。
『イナ川ふりかけ食べてみた』
『ブンブンハローLtube！ イナキンです！ 今日はね、イナ川のちんかすを原材料にしたふりかけを食べていきたいと思います』
『いやー、ちんかすってｗｗｗ絶対駄目でしょ、こんなネタっぽいのをねぇｗｗｗ汚いし……んっ？』
『……えっ、旨っ！ なにこれ滅茶苦茶美味しい！！』
『なんでこれ売れてないの！？ 滅茶苦茶美味しいじゃんこれ！』
動画投稿サイトLtubeでトップの登録者数を誇るLtuberイナキン、彼がイナ川ふりかけを取り上げたのだ。
『リトルデーモン達とイナ川ふりかけ食べてみた』
『きな子のちんかすより美味しい！？ イナ川ふりかけ食べてみましたの♡』
『イナ川ふりかけ、すき』
『今日のことりのおやつはイナ川ふりかけですっ』
そうしてじわじわと広がったイナ川ふりかけの知名度が、今日爆発したのだ。
ぴっぴさん「いやもう嬉しかったですね、本当に」
ぴっぴさん「Ltubeやえがお動画でこんなにたくさんの人に紹介してもらえていたなんて……」
ぴっぴさん「ブームに乗ってテレビも紹介してくれて、ちんかすの専門家の方がイナ川のちんかすの安全性を訴えてくれたのも大きかったですね」
こうしてイナ川ふりかけは日本国民ならば誰でも知る大ヒット商品になった。海外でも『inagawa tinkasu』として売られており、ちんかす世界シェア100パーセントという誰も打ち破れない記録を打ち立てている。
ベルトコンベアの左右に並ぶイナ川達。一斉にちんちんを取り出すと、皮を剥いてちんかすを落としていく。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 洗ってなければ洗ってないほど味が熟成されるので、皆身体を洗うときはちんちんをサランラップで巻いていますよ ｼｺｼｺ
ᶘｲ^⇁^;ﾅ川 あっ！ ｲﾅﾄﾞﾋﾟｭｯ
この作業中に、イナ川の95パーセントほどが誤って射精をしてしまう。この精液には何も問題はなく、イナ川ふりかけの完成度にはほぼ影響しない。
それでも射精をしない方が格好いい存在として扱われるようで、射精しなかったイナ川は皆から凄イナとして褒め称えられる。
ᶘｲ^⇁^ﾅ川 えへんぷい
ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川
凄イナ〜偉イナ〜
ほかほかのご飯にイナ川ふりかけをかける美味しさは、日本国民ならば誰でも知っている。
その栄養素から給食や介護施設でも優先して出されることが多いと言われており、イナ川ふりかけは未来永劫無くなることはないだろう。
ぴっぴさん「イナ川達、皆ありがとうな。その……これからもよろしくお願いします！」ｻｯ
ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川
ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川 ｲﾅｲﾅﾅｯﾅｰ♪
ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川ᶘｲ^⇁^ﾅ川
こうして、ᶘｲ^⇁^ﾅ川ふりかけ工場の一日は今日も終わっていく。寮に帰っていく後ろ姿は楽しげだ。
会社から支給されたスイッナ2やプレイナ5で遊ぶもの、会社のジムでちんちんを鍛えるもの、ミイリで見抜きをするもの。様々だ。
そうして明日も、朝早くからイナ川達は働くのだ。
皆にイナ川ふりかけを届けるために──。
ｲｰﾅｰﾁｬﾝ ﾀｶｲｿｰﾗｶｰﾗｰ
ﾐﾇｰｲｰﾃｰﾖｰ ﾁｰｼﾞｮｰｳﾉﾐｲｰﾘｰ
プロジェクト セックス（セックス（セックス（セックス
『倒産寸前の工場がまさかの復活！ 人々を笑顔にしたちんかす』
終わり
酷暑のせいで頭がいかれたか
あ、ほめてます
一大産業になるのも納得だ