■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
「ロータス・スカイ:リミテッド・イベント・シリーズ」[字][解][SS]
-
♪〜
月・火・水・木・金・土・日
毎日がHoliday
Don't stopで私の常識吹き飛ばして
君の世界へ連れてって
風よりもっと早く走れる場所へ
Ah 心のもっと深く叫ぶ場所へ
月・火・水・木・金・土・日
特別な日が続くように
Oh Oh Oh Yeah
………………
…………
……
慈「るりちゃん……どうして……」
……
…………
………………
-
石川県金沢市
さやか「忘れ物はありませんか?」
綴理「うん、大丈夫。すずは?」
さやか「今日はまだ眠っていますよ。昨夜のこともありますし」
綴理「あー、昨日は大変だったもんね」
さやか「わたしも少し寝不足かもしれません」
綴理「え……ボク、今日はお休みしてお手伝いしたほうがいい?」
さやか「ふふっ、平気ですから綴理先輩は綴理先輩のお仕事を頑張ってください」
綴理「わかった」
さやか「では、いってらっしゃい」
綴理「待って、さや」
さやか「どうしました?」
綴理「あのね、やっぱりひとつ忘れ物があるんだ」
さやか「えっ、なんですか? わたしが取ってきますよ」
綴理「ううん、取りに行く必要はないよ」
-
さやか「でも忘れ物があるんですよね?」
綴理「うん」
さやか「なにを忘れたんですか?」
綴理「ここだよ、さや」
さやか「頬……ですか?」
綴理「そう」
さやか「ええと……どういうことでしょう?」
綴理「今はすずがいないよ」
さやか「……?」
綴理「いつもはすずが見てるからって、してくれないから」
さやか「……あっ」
綴理「さや」
さやか「……してほしいんですか?」
綴理「うん」
さやか「どうしても……ですか?」
-
綴理「うん、どうしても」
さやか「…………」
綴理「さや? 早くしてくれないと、ボク遅刻しちゃうよ?」
さやか「遅刻は……いけませんね……」
綴理「……もしかして、さやはボクに遅刻してほしいの?」
さやか「いえ……」
綴理「じゃあ、して?」
さやか「うぅ……」
綴理「してくれないの……?」
さやか「その……なんと言いますか……」
綴理「……?」
さやか「は、恥ずかしいじゃないですか……」
綴理「どうして?」
さやか「そういうのは新婚さんがするものなんですっ」
綴理「ボクたちはしちゃダメってこと?」
-
さやか「ダメというわけではありませんが……」
綴理「ダメじゃないのにしてくれないの?」
さやか「ああいうのはですね、初々しい熱量とでも言いましょうか、そういうものがですね……」
綴理「ボクのさやへの気持ちは、あの頃からずっと変わってないよ」
さやか「っ!?」
綴理「それはきっとさやも同じだよね?」
さやか「そう……ですね……」
綴理「だからしてもいいんじゃないかな?」
さやか「うぅぅ〜……! わ、わかりました!」
綴理「さや……!」
ドタドタドタ!
小鈴「すみません! 徒町、寝坊してしまいました!!」
さやか「…………」
綴理「…………」
小鈴「……? どうかしましたか?」
-
長野県松本市
梢「今日は花帆に話したいことがあるの」
花帆「……なんか、緊張しちゃいますね」
梢「実は……私も少し緊張しているわ」
花帆「じゃあ……おそろい、ですね」
梢「ええ、そうね」
花帆「…………」
梢「…………」
花帆「……それで話ってなんですか?」
梢「その……急にこんなことを言ったら、とても驚くと思うのだけれど……」
花帆「驚くような話なんですね……」
梢「でもね、悪いお話ではないのよ?」
花帆「なら……ちょっと安心です」
-
梢「それはよかったわ」
花帆「はいっ」
梢「では、話すわね……」
花帆「どうぞ……!」
梢「ふぅー……」
花帆「…………」
梢「……私、久しぶりに金沢に行こうと思っているの」
花帆「えっ……金沢に、ですか?」
梢「金沢に、よ」
花帆「なんていうか……びっくりしました」
梢「そうよね……それと、どちらかというとこちらが主目的なのだけれど……」
梢「慈と瑠璃乃さんのお墓参りもしたくて……ほら、あれからもうすぐ10年になるでしょう?」
-
花帆「そうですね……もうそんなに経つんだ……」
梢「今でも考えるわ……息を引き取った瑠璃乃さんを見つけた慈は、どれだけ辛かっただろうって」
花帆「……慈センパイは犯人を目撃したから殺されちゃったんですか?」
梢「おそらくね……その犯人は10年経った今も見つかっていないわ」
花帆「今も……」
梢「事件があって、私は卒業後逃げるようにここへ来たけれど……」
梢「いい加減、亡くなったふたりとしっかり向き合わないといけないと思うの」
花帆「梢センパイ……」
梢「それでね、花帆にひとつお願いがあって……聞いてもらえるかしら?」
花帆「なんですか?」
梢「私と一緒に、金沢に行ってほしいの」
花帆「…………」
梢「…………」
-
花帆「……ふふっ、そんなのいいに決まってるじゃないですか!」
梢「ほ、本当?」
花帆「梢センパイ、あたしが断るとでも思ったんですか?」
梢「だって……花帆の都合もあるじゃない」
花帆「あたしの都合なんて梢センパイに合わせますよ!」
梢「花帆……」
花帆「さやかちゃんたちにも会いに行きましょうね!」
梢「ええ、もちろんそのつもりよ」
花帆「きっとみんな喜んでくれますよ!」
梢「そうね……なんだかとても楽しみになってきたわ」
花帆「はいっ!」
-
プルルルル……プルルルル……
さやか「はい、さや処です……えっ、吟子さん?」
さやか「お久しぶりです……わたしは元気ですよ」
さやか「もちろん綴理先輩と小鈴さんも……」
さやか「吟子さんもお元気そうでなによりです」
さやか「……なにかあったんですか?」
さやか「……そうなんですね。それでこちらに……」
さやか「まさか! そんなことありません、大丈夫ですよ」
さやか「……それでしたら、わたしが伝えましょうか?」
さやか「……はい、そのほうがいいとわたしは思います」
さやか「……任せてください。あっ、よければ小鈴さんともお話しますか?」
さやか「……そうですか、ではまたその時に。はい、失礼します」ガチャッ
さやか「…………」
さやか「……よし!」ポチポチ……
-
セラス「泉、これがなんだかわかる?」
泉「……紙だね」
セラス「そう、紙……なんの紙かもわかるよね?」
泉「もちろんだよ」
セラス「じゃあ……残りを記入して。わたしはもう全部書いたから」
泉「ふむ……それは私たちに必要なことなのかな?」
セラス「……泉」
泉「なんだい、セラス」
セラス「必要じゃなかったら、わたしはこんなこと頼まない」
泉「なるほど……」
セラス「いい? 泉。わたしたちはこれから新たな契約を結ぶの」
-
小鈴「えっ、吟子ちゃんから電話があったんですか!?」
さやか「はい。あまり長くはお話できませんでしたが……」
小鈴「いいなぁ……徒町も吟子ちゃんとお話したかったです」
綴理「珍しいね、ぎんが電話してくるなんて」
さやか「それには理由がありまして……」
綴理「わけ?」
さやか「綴理先輩、小鈴さん……ビッグニュースですよ!」
小鈴「ええっ!? 徒町、びっくりです!!」
さやか「早いです! できれば内容を聞いてから驚いてくださいね!?」
小鈴「心配ご無用です! 徒町は何度でもびっくりできます!」
さやか「……こほん、では気を取り直して。なんと――」
-
翌日
花帆「ふわぁ……おはようございます、梢センパイ」
梢「おはよう、花帆」
花帆「ん〜……いい匂い」
梢「もうすぐ出来上がるから、座って待っていてちょうだい」
花帆「はーい」
梢「…………」
花帆「ふんふーん……♪」
梢「ねぇ、花帆。今日はふたりでお買い物に行きましょうか」
花帆「いいですね! お買い物デート! どこに行くんですか?」
梢「花帆の好きなショッピングモールよ」
花帆「わぁ! やったー! 行きましょう行きましょう!」
梢「ふふっ、その前にまずは朝食を食べましょうね」
-
小鈴「……夢を見たんです」
さやか「夢、ですか」
小鈴「はい。それはもう不思議な夢でした」
綴理「どんな夢?」
小鈴「夢の中の徒町はまだ高校2年生で、スクールアイドルなんです」
小鈴「ですが徒町の思い出とは違って、クラブは前年度にラブライブ!優勝を果たしていました」
小鈴「誰一人、欠けることなく……」
さやか「…………」
小鈴「クラブには新しい部員も加わって、4つのユニットで活動しているんです」
綴理「ボクは?」
-
小鈴「綴理先輩は卒業していたので夢には全く出てきませんでした!」
綴理「がーん」
さやか「留年していてほしかったんですか!?」
小鈴「あっ、でもぺきんだっくさんはとっても元気でした!!」
綴理「おー、それならよかった」
小鈴「それで……徒町は思ったんです」
小鈴「もしあんなことが起きていなければ、こんなクラブの未来もあったのかもって……」
さやか「小鈴さん……」
小鈴「でもでも、そうなると今の徒町もなかったことになるかもしれなくて、それも嫌だなって思います!」
さやか「……きっとなくなったりしませんよ」
小鈴「えっ?」
さやか「わたしたちならどんな道筋を辿っても、今が変わることはないはずです」
-
ショッピングモール
花帆「さてと、どこから回りますか?」
梢「今日は新しいお洋服を買おうと思っているの」
花帆「なら2階から見ていったほうがいいですね!」
梢「そうね」
花帆「あのっ! あたしも梢先輩の洋服、選んでもいいですか?」
梢「ええ、もちろんよ。私も花帆に似合うものを選んであげるわ」
花帆「あたしはいいですよ〜」
梢「ダメよ。久しぶりにみんなと会うんだもの、花帆もお洒落して行かないとね」
花帆「梢センパイ……じゃあお願いしちゃいますっ!」
………………
…………
……
-
花帆「ジャーン! どうですか?」
梢「とっても可愛らしいわ。写真を撮ってもいいかしら?」
花帆「どうぞ!」
梢「えぇと……ぽちっ」カシャッ
花帆「撮れましたか?」
梢「……少しぶれてしまったわ。撮り直すわね」
花帆「はいっ」
梢「ぽちっ」カシャッ
花帆「今度は大丈夫ですかね?」
梢「ええ、ちゃんと撮れているわ。ほら」
花帆「……うん? なんかちょっと半目じゃないですか?」
梢「そうかしら……? でも可愛いからオーケーね」
花帆「ダメですよぉ! もう一回だけ撮ってください!」
-
梢「花帆がそう言うなら……」
花帆「可愛く、撮ってくださいね?」
梢「どんなときでも私の花帆は可愛いわ」
花帆「こ、梢センパ〜イ……!」
梢「ふふ、ぽちっ」カシャッ
梢「今度こそどうかしら? 3度目の正直よ」
花帆「あぅ……ちょっと赤くなってる……」
梢「可愛いからいいじゃない」
花帆「……あたし、梢センパイの写真もいっぱい撮っちゃいますからね!」
梢「可愛く、撮ってちょうだいね?」
花帆「あたしの梢センパイだって、いつでも可愛いですから!」
梢「あらあら」
花帆「む〜、ちょっとは照れてくださいよ〜!」
-
さやか「……やってしまいました」
綴理「ん……? やったね、さや」
さやか「いえ、やらかしてしまったんです……」
小鈴「どうしましたさやか先輩!」
さやか「キャベツがないんです……私としたことが……」
綴理「レタスならあるよ」
さやか「キャベツはアブラナ科でレタスはキク科ですから、似ているようでまったくの別物なんですよ……」
小鈴「白菜ならどうでしょうか!」
さやか「白菜は同じアブラナ科ではありますが……やはりキャベツとは違います……!」
綴理「じゃあボクが今から急いで買ってくる」
さやか「えっ……大丈夫ですか? キャベツ、わかりますか?」
綴理「ちゃんとわかるよ。ボクなんなの」
-
フードコート
梢「やっぱり土曜日はどこも混んでいるわね」
花帆「しかも3連休初日ですからね」
梢「無事に席が見つかってよかったわ」
花帆「それにしてもそこら中ハロウィンムードですね」
梢「この時期は毎年こうじゃない」
花帆「でもハロウィンって来月末ですよ?」
梢「まあ気が早いような気もするけれど、一年中そんな感じでしょう?」
花帆「それはそうですけど……」
梢「今はハロウィンでも、11月になれば途端にクリスマスよ」
花帆「うーん、ちょっとくらい余韻があってもいいと思いませんか?」
梢「そうね……たしかにこれじゃあ少し忙しないかもしれないわね」
-
さやか「これは……キャベツではありますが……」
綴理「あれ……違ったかな?」
さやか「……まさか千切りキャベツとは」
綴理「最初から切ってあったほうが、さやも楽だと思ったんだけど……」
さやか「その……キャベツはすべて千切りで使うわけではないんですよ?」
綴理「え……そうなんだ……ごめんね、さや……」
さやか「あっ、大丈夫です! ひとまず今日はこれで乗り切りますから!」
綴理「うん……ボク、お皿洗いとか頑張るね」
小鈴「綴理先輩おかえりなさい! キャベツは無事に買えましたか!?」
綴理「あ……えと……」
さやか「小鈴さん。綴理先輩のためにも、今日一日頑張りましょうね」
小鈴「……? はいっ! 徒町頑張ります!! ちぇすとー!」
-
花帆「ふー、ついつい買いすぎちゃいましたね」
梢「たまにはいいじゃない」
花帆「そうですね。梢センパイにぴったりの服もたくさん買えましたし!」
梢「ふふっ、次のデートが待ち遠しいわ」
花帆「あたしもですっ!」
梢「でもまずはこの大荷物をどうにかしないとね」
花帆「とりあえず食材を冷蔵庫にしまっちゃいましょうか」
梢「ええ、重たいほうは私が持つから花帆はそっちをお願い」
花帆「はーい!」
………………
…………
……
-
さやか「なんとかやり切りましたね……」
小鈴「はい! チャレンジ成功です!」
綴理「さや、今度からは間違えないように気をつけるね」
さやか「元はと言えばわたしのミスですから……」
綴理「でも……」
さやか「綴理先輩だって悪気があったわけじゃありませんし」
小鈴「そうです! 今日は綴理先輩の優しさが少し噛み合わなかっただけです!」
綴理「さや、すず……」
さやか「さ、お夕飯にしますよ。なにか食べたいものはありますか?」
綴理「じゃあ、ボクはさや」
小鈴「徒町も綴理先輩と同じものを!」
さやか「……わたしは食べ物じゃありませんよ?」
-
泉「長野の人は『まぁずんっとにぃ』ってよく言うね」
セラス「お年寄りの人はそうだけど……」
泉「まぁずんっとにぃ……外国の歌手の名前みたいだ。マーズ・ンットニー……」
セラス「そんなことより早くこれ書いて」
泉「そう焦る必要もないだろう?」
セラス「泉、善は急げって言葉は知ってる?」
泉「急がば回れ、とも言うじゃないか」
セラス「屁理屈言わないで!」
泉「おや、怒らせてしまったかな?」
セラス「別にっ……まぁずんっとにぃ……」
泉「うん? なにか言ったかい?」
セラス「なにも言ってない」
泉「……セラスはお年寄りだったんだね」
セラス「泉っ!!」
-
静岡県沼津市
コンコン……コンコンコン……
ガチャッ
女「……こんな時間にどちら様?」
姫芽「あの……アタシ、安養寺姫芽です」
女「ああー……あれ、今日だったっけ?」
姫芽「そうですよ」
女「そうなのね……本当に今日で合ってる?」
姫芽「絶対今日ですって」
女「……まあいいわ。最初に言っておくけど、呪い殺すとかはお断りよ?」
姫芽「いやいや、そんな物騒なこと頼みませんよ〜」
女「じゃあ聞かせてくれる? あなたの望みはなに?」
姫芽「……アタシ、黒魔術で蘇らせたいんです!」
-
翌日
綴理「この間バスに乗ってたときの話なんだけどね」
小鈴「はい」
綴理「後ろのほうの席でお客さんがずっと喧嘩してるんだ」
小鈴「わわっ、喧嘩はよくないです!」
綴理「運転手の人もやめてって言ってたけど全然終わらなくて」
綴理「次のバス停に止まったら、警察署の目の前だったんだ」
小鈴「はっ!」
綴理「そこでしばらくバスは止まったままでね」
小鈴「ということは……」
綴理「うん、警察の人が乗ってきて喧嘩はやめてって言ったんだけど……」
綴理「やっぱり喧嘩は終わらなくて、そのままバスが発車してね」
-
綴理「結局ボクが降りるまでずーっとそのお客さんは喧嘩してたんだ」
小鈴「警察の方も乗ったままですか?」
綴理「そうだよ。あの人どこまで乗ってたんだろうね」
小鈴「喧嘩が収まるまでずっと乗っていたのかもしれません」
綴理「終点までに喧嘩は終わったのかな?」
小鈴「どれくらい怒ってたかによると思います!」
綴理「ん〜……ものすごく怒ってたから、終点まで続いてたかもしれないね」
小鈴「わあ、警察のお仕事って大変だぁ……」
綴理「うん、そうだね」
小鈴「ちなみに喧嘩の原因はなんだったんでしょう?」
綴理「さあ? 興味がなかったからよく聞いてなかった」
小鈴「へー……」
-
梢「ラララーラー♪ ラララーラー♪」
梢「んー……」
梢「ラーラーララーラララララーラー♪」
花帆「梢センパイ」
梢「花帆、どうしたの?」
花帆「その……歌が聞こえてきたので……」
梢「あら、歌声に誘われてしまったのかしら?」
花帆「はい。ここで聴いててもいいですか?」
梢「もちろんよ。せっかくだから一緒に歌いましょうか」
花帆「それもいいですけど、まずは梢センパイの歌をじっくり聴きたいです」
梢「わかったわ。じゃあ花帆のために、心を込めて歌うわね」
-
女「まさかうちに泊まるとは思ってなかったけど……」
姫芽「えへへ、すみません……今夜はちゃんと宿取りますので〜」
女「お願いね……にしても石川とはまた遠くから来たわね」
姫芽「いろいろ調べたんですけど、ここが一番だと思って来ました」
女「ま、いい判断ね」
姫芽「アタシ蓮ノ空女学院に通ってたんですよ。知ってますか? 蓮ノ空のこと」
女「聞いたことがあるわ……たしか10年くらい前に事件がなかった?」
女「生徒が2人殺されたっていう……もしかしてあなた、その事件と関係があるの?」
姫芽「あるかないかと言われたら……」
女「…………」
姫芽「大アリですね〜」
女「でもどうして10年も経ってから来たのよ?」
-
姫芽「まあちょっと事情がありまして……10年経った今、そういう状況になったってことです」
女「ふぅん、それじゃ始めましょっか。材料はあるの?」
姫芽「はい、バッチリですよ。しっかり調べて持ってきました!」
女「ふむ……上出来ね」
姫芽「このめぐちゃんの髪の毛は貴重品なので丁重に扱ってくださいね?」
女「もちろん。でもよく用意できたわね、死者の髪なんて……」
姫芽「大好きな推しの髪の毛の一束や二束、持っていて当然じゃないですかぁ」
女「そ、そう……」
姫芽「今でもかすかにめぐちゃんのいい香りが残ってるんです……」
女「あなた、なかなかヤバい子ね……」
姫芽「それほどでも〜……えへへぇ」
女「褒めてないからっ!」
-
梢「……どうかしら? これは自信作なのだけれど」
花帆「素敵です、すっごく素敵です! どう表現したらいいのかな……」
花帆「言葉にするのは難しいんですけど……」
梢「いいのよ。花帆はこの歌のこと、好き?」
花帆「はいっ! 大好きです!!」
梢「ありがとう。私にとって、それ以上に嬉しい言葉はないわ」
花帆「そうなんですか?」
梢「私の歌は花帆のための歌だもの。花帆に好きになってもらえたら、それはとても幸せなことだわ」
花帆「あたしは梢センパイの歌も梢センパイのことも、全部全部大好きですからね」
梢「私も……花帆のすべてが大好きよ」
花帆「梢センパイ……」
-
姫芽「よっ……っと」
女「うん、いい感じね」
姫芽「意外と手間隙かかるんですねぇ、黒魔術って」
女「そりゃ簡単にできたら黒魔術じゃないでしょ」
姫芽「えっ、黒魔術って簡単にできるかどうかで定義されるんですか?」
女「そういうわけじゃないけど……」
姫芽「じゃあ黒魔術ってなんなんですか?」
女「うーん……あなたみたいな人が頼る最終手段、ってとこかしら」
姫芽「最終手段ですか」
女「あなただって最初から黒魔術に頼ろうとしたわけじゃないでしょう?」
姫芽「そうですね……一度諦めてなかったら、ここには来てないかもしれません」
女「ほらね」
-
姫芽「……アタシのしようとしていることって、正しいんでしょうか」
女「今更そんなこと気にしてるの?」
姫芽「…………」
女「正しいかどうかはともかく、あなたがそうしたいと思ってる。今はそれだけでいいじゃない」
姫芽「……なんか無責任ですね」
女「私は黒魔術を教えてるだけで使うのはあなただもの。責任もクソもないわよ」
姫芽「うわぁ……」
女「なに?」
姫芽「アタシやっぱりやめようかな……」
女「途中でやめたらあなた呪いで死ぬわよ」
姫芽「えっ、ホントですか!?」
女「嘘よ」
姫芽「おおっと……」
-
セラス「いつまでそうしているつもり?」
泉「…………」
セラス「ねぇ、泉」
泉「セラスはそれでいいのかな、と思ってね」
セラス「どういう意味?」
泉「私でいいのかって意味さ」
セラス「……もう10年だよ?」
泉「ああ」
セラス「わたしだって前に進みたいの」
泉「……そうか」
セラス「それとも……泉は嫌?」
泉「セラス……」
-
姫芽「あの〜……」
女「ん?」
姫芽「今晩も泊めてもらうことってできませんかね〜?」
女「あなた宿取るって言ったわよね?」
姫芽「いやぁ、宿まで荷物運ぶの大変じゃないですか〜」
女「必要なもの以外は置いてっていいわよ、どうせ明日も来るんだから」
姫芽「でもぉ……」
女「なによ」
姫芽「あっ、じゃあゲーム対決で決めませんか!?」
女「はぁ?」
姫芽「アタシが勝ったらここに泊めてもらいます!」
-
女「……いいわ。ま、せいぜい頑張ってちょうだい」
姫芽「おっ、自信満々ですねぇ」
女「こう見えて上手いのよ? あなたに勝てるかしら?」
姫芽「では早速やりますか……!」
女「フッ、かかってきなさい!」
〜間〜
姫芽「いい勝負でしたね〜」
女「なんなのよこの子……!」
姫芽「ではでは今夜もお世話になります」
女「はいはい……」
姫芽「晩御飯もお世話になっていいですか?」
女「図々しいわね……別にいいけど……」
-
翌日
綴理「……さや、すず。大事件だ」
さやか「なにがあったんですか?」
綴理「あったんじゃないよ、なくなってるんだ」
小鈴「……?」
綴理「ボクのブタメンが、ひとつ足りない……」
さやか「ど、泥棒ですか!?」
小鈴「確かにそれは大事件です!」
さやか「他になにかなくなったものはありますか?」
綴理「ううん、ブタメンだけだよ」
小鈴「ブタメン1個だけを盗む泥棒さんですか……」
-
さやか「なぜブタメンなんでしょう……」
小鈴「はっ! 犯人はお腹が空いていたんじゃないでしょうか!」
綴理「おー、すずかしこい」
さやか「お腹が空いていたらブタメンひとつじゃ足りないような気がしますが……」
小鈴「謙虚な泥棒さんだったのかもしれません!」
さやか「謙虚な人が泥棒なんてするでしょうか?」
小鈴「……しないと、思います」
さやか「戸締まりはしっかりしていたはずですよね?」
小鈴「はい! 徒町、ちゃんと指差し確認しました!」
さやか「なら犯人はいったいどこから……」
つづく
-
後編は明日よる9時からの予定です。
-
梢「…………」
花帆「…………」
梢「……花帆?」
花帆「あっ、すみません……」
梢「どうしたの? 私の顔になにかついているのかしら?」
花帆「いえ、綺麗だなーと思って見ちゃってました」
梢「私よりも花帆のほうがずっと綺麗よ」
花帆「そんなことないです! 梢センパイのほうが絶対綺麗です!」
梢「私はそうは思わないわ」
花帆「梢センパイが思わなくてもそうなんですよ!」
梢「ふふっ、あまり説得力がないわね」
花帆「む〜! ひどいです! あたしの言うこと信じてくれないなんて!」
梢「花帆は私のことになると正当な評価ができなくなるもの」
花帆「それはあたしに対する梢センパイも同じですよぉ!」
-
さやか「やはりどこにも侵入された形跡はありませんね」
小鈴「壁抜けでもしたんでしょうか?」
綴理「ねぇさや」
さやか「どうしました?」
綴理「犯人探しはもういいんじゃないかな」
さやか「ダメですよ、ブタメンがなくなっていたんでしょう?」
小鈴「そうです! 犯人をとっちめないといけません!」
綴理「でもね、ボクもう気にしてないよ。だから大丈夫」
さやか「……綴理先輩、なにか隠してませんか?」
綴理「な、なんにもないよ。夜中にちょっとお腹が空いてブタメン食べたりしてないよ」
小鈴「綴理先輩?」
さやか「……自分で食べたのを忘れていたんですか?」
綴理「あ……うん。ごめんね?」
さやか「もう……泥棒じゃなくてよかったです」
-
東京都江東区有明
沙知「…………」スタスタ
沙知(おや、もうお昼か……そういえばなんだか――)
沙知(お腹が、減ってきたねぃ……)
沙知(よし、店を探そう)
沙知(そこのショッピングモールで適当に済ませようか……?)
沙知(いや、今日は少し冒険したい気分だ)
沙知(なにかないかな、今のアタシにぴったりな店は……)
沙知「…………」スタスタ
沙知(……ダメだ。ちっとも見つかりゃしない。ここは潔く諦めるべきか――)
沙知「うん?」
沙知(『食堂スカーレット』……この店、なんでか妙に惹かれるねぃ)
-
沙知(よーし。そろそろ空腹も限界だし、ここに決定だ!)
カランカラン……
おん菜「いらっしゃいませー!! お好きな席へどうぞ!!」
沙知(声の大きい店員さんだ。元気があってよろしい)
沙知(メニューは、っと……なるほどねぃ……)
沙知(ここであまり悩むのはよくない。直感で決めよう)
沙知(今日のお昼ご飯は……こいつで決まりだ)
沙知「すみませーん」
おん菜「はいっ! ご注文はお決まりですか!?」
沙知「特製グリーンカレーを頼むぜ」
おん菜「かしこまりました!!」
沙知「…………」
-
沙知(おっ、あの店員さんが調理するのか……他に店員もいなさそうだし、あの人が店主なのかな)
沙知(しかしお昼時だってのにアタシ以外の客がいないぞ……これは穴場ってやつかもしれないねぃ)
〜間〜
おん菜「おまたせしました!!」
沙知「……これはなんだい?」
おん菜「グリーンカレーです!」
沙知「…………」
おん菜「どうかしましたか?」
沙知「いや……いただきます」
おん菜「ごゆっくりどうぞ!!」
沙知「ふむ……」
沙知(紫だねぃ……)
-
女「だいぶ出来上がってきたわね。あと一息よ、頑張りましょ」
姫芽「はい。よーし……」
女「ところであなた、帰る前に観光とかしてく? 私でよかったら案内するけど」
姫芽「いえ、お気持ちだけで十分です」
女「そう?」
姫芽「明日が本番ですからね〜。早めに帰って備えないと……」
女「上手くいくといいわね」
姫芽「まあなるようになりますよ〜」
女「……健闘を祈ってるわ」
姫芽「ありがとうございます」
女「それじゃ最後の仕上げといきましょうか」
姫芽「はいっ!」
-
セラス「……うん、問題なし」
泉「まさかこんなときが来るなんてね」
セラス「わたしはいずれこうなるって思ってたけど」
泉「ほう……」
セラス「なに?」
泉「いや、こうなってよかったと思っただけさ、私のお姫様」
セラス「……からかわないで」
泉「本心から言っているつもりだよ」
セラス「…………」
泉「証明が必要かな?」
セラス「そうだね……じゃあ証明してみせて」
泉「……いいだろう」
-
花帆「いよいよ明日ですね……」
梢「ええ」
花帆「緊張してますか?」
梢「少し……ね。ほんの少しだけ……」
花帆「その緊張は、どうやったらほぐれますか?」
梢「…………」
花帆「花帆が、リラックスさせてあげます……」
梢「いいの……?」
花帆「はい」
梢「なら……キスをしてもらえるかしら?」
-
花帆「わかりました……んっ……はむっ……」
梢「花帆……んぅ……ふぁ……」
花帆「梢センパイ……キスだけで、いいんですか……?」
梢「はぁ……っはぁ……服を、脱いでちょうだい」
花帆「はいっ……」シュルシュル
梢「とても素敵よ……花帆……んっ」
花帆「あっ……梢セン、パイ……んんっ!」
梢「好き……花帆っ、好きよ……あなたのことが……ぁむっ」
花帆「あたしも、好き……もっと、もっと欲しいですっ、梢センパイ……」
梢「いいわ……花帆、いくわよ?」
花帆「あ……んぁあっ!」
-
梢「花帆……痛くないかしら……?」
花帆「はい……だいじょぶです……続けてください」
梢「わかったわ……っ!」
花帆「やぁっ……んんぅ……!」
梢「花帆、花帆っ……んむっ……」
花帆「んー……んれっ……」
梢「んくっ……はぁっん……」
花帆「梢センパイ……梢、センパイっ……!」
梢「大好きよ……花帆……んっ、大好きなのっ……!」
………………
…………
……
-
翌日
花帆「おはようございます、梢センパイ」
梢「おはよう……花帆」
花帆「……梢センパイ」
梢「なにかしら?」
花帆「あたし今、すごく幸せです」
梢「私もよ。目が覚めたとき、となりに花帆がいるんだもの……」
梢「こんなに素晴らしいこと、他にはないわ」
花帆「梢センパイ……」
梢「まるで……夢を見ているみたい」
花帆「……夢なんかじゃありませんよ。ん……」
梢「んん……そうね。支度をしましょうか」
-
小鈴「あのっ! 徒町からお話したいことがあります!」
さやか「なんですか? 改まって……」
小鈴「さやか先輩、綴理先輩。徒町にかまわず、存分にチューしてください!」
さやか「はいっ!?」
綴理「ん」
小鈴「あっ、お邪魔でしたら徒町は一旦外しますが!」
綴理「ううん、すずはお邪魔じゃないよ。ね、さや」
さやか「は、はい……」
小鈴「では……どうぞ!」
綴理「さや」
さやか「えっ、えっ、ほんとにするんですか……?」
綴理「さや……して?」
さやか「うぅ……んっ!」
-
小鈴「わぁ!」
さやか「いってらっしゃい、綴理先輩……」
綴理「うん」
さやか「…………」
綴理「……すずもする?」
小鈴「徒町もですか!?」
綴理「すずもしてくれたら、ボクもっと頑張れるよ」
小鈴「い、いいんでしょうか……さやか先輩!」
さやか「わたしの許可は必要ないと思いますが……」
小鈴「ではでは不肖徒町、僭越ながらいってらっしゃいのチューをさせていただきます!」
綴理「どうぞ」
小鈴「……んーっ!」
-
綴理「ん、これからは毎日しようね。さや、すず」
小鈴「はいっ!」
さやか「ま、毎日ですか……!?」
綴理「うん、毎日」
小鈴「……はっ! 徒町気づいてしまいました!」
さやか「なににですか?」
小鈴「いってらっしゃいのチューということは……徒町、さやか先輩とチューができません!」
綴理「そっか、それは困ったね」
さやか「……別にいってらっしゃいじゃなくてもいいんじゃないですか?」
小鈴「えっ!」
さやか「小鈴さんが、したいのであれば……」
小鈴「さやか先輩……! では失礼します! んーっ!」
-
駅・ホーム
花帆「…………」
梢「…………」
花帆「……あの電車ですかね、あたしたちが乗るのって」
梢「……ええ、そのはずよ」
キィィ……
花帆「あっ、止まりました」
梢「…………」
花帆「…………」
梢「乗りましょうか」
花帆「はい」
-
姫芽「なむなむ〜……」
姫芽「アタシ、うまくやってみせますよ」
姫芽「だから……見守っていてくださいね」
姫芽「…………」
姫芽「絶対に成功させないと……吟子ちゃんのためにも」
ガラガラ……
姫芽「こんにちは〜」
小鈴「姫芽ちゃん!」
さやか「早いですね。なにかありましたか?」
姫芽「いえ……なんかじっとしていられなくて……」
-
小鈴「久しぶりに会えるって思うとドキドキするよね!」
姫芽「そうだねぇ……何時に着くんだっけ?」
小鈴「えっとぉ……」
さやか「12時半着だったはずですよ」
姫芽「あー……やっぱり早すぎましたかね〜」
小鈴「あと1時間とちょっとだね」
さやか「もう新幹線には乗っている頃だと思いますが……」
姫芽「なんかすみません……」
さやか「大丈夫ですよ、今日はお休みですし」
小鈴「姫芽ちゃんならいつ来ても大歓迎だよ!」
さやか「……少し早いですが、お昼にしましょうか。姫芽さんもよかったらどうですか?」
姫芽「はい、いただいちゃいますね〜」
-
新幹線
梢「新幹線に乗るのはあのとき以来ね……」
花帆「松本に住んでると乗る機会なんて全然ないですからね」
梢「ええ。そういえば遠出をすることも滅多になかったわね」
花帆「梢センパイはどこか行きたい場所とかないんですか?」
梢「うーん……あまり考えたことがないわ」
花帆「そうなんですね」
梢「花帆さえいれば、それだけで私は満たされてしまうもの」
花帆「あたしもです、梢センパイ。んー……」
梢「ダメよ。こんなところでは」
花帆「今なら誰も見てませんよ?」
梢「それでも我慢するの。できるわね?」
花帆「……はい」
-
梢「代わりと言ってはなんだけれど、手をつなぎましょうか」
花帆「降りるまで離しませんからねっ」
梢「ふふっ、いいわよ」
花帆「……こうして梢センパイに触れていると、安心します」
梢「そう?」
花帆「はい」
梢「…………」
花帆「……昨夜のこと、思い出しちゃって」
梢「昨夜、ね……」
花帆「ごめんなさい……」
梢「どうして謝るの?」
花帆「今日はお墓参りに行くんですよ?」
梢「そうね」
-
花帆「不謹慎だと思いませんか?」
梢「そんなことないわ」
花帆「そう、なんですかね……」
梢「もし不謹慎なら、私だって今日はお墓参りになんて行けないもの」
花帆「えっ?」
梢「私も今、思い出しているのよ。昨夜のことを」
花帆「……梢センパイのえっち」
梢「あら、私は花帆のせいで思い出してしまったのだけれど」
花帆「うぅ……あたし今、手汗がすごいかもしれません」
梢「ええ、少し湿っている気がするわ」
花帆「一旦手を離して、汗を拭きますか……?」
梢「私は気にしないわよ。昨夜のことを考えたら、ね」
花帆「いじわる言わないでくださいよぉ……」
-
さやか「では迎えに行ってきますが、本当にお留守番でいいんですか?」
姫芽「あの車に5人だとちょっと狭いですからねぇ」
小鈴「それなら徒町が座席の後ろに乗れば――」
さやか「ダメですよ、小鈴さん」
姫芽「アタシのことはいいから行っといで〜」
小鈴「なら徒町は助手席に乗ります! さやか先輩のおとなりです!」
さやか「姫芽さん。すぐ帰ってくるとは思いますが、その間よろしくお願いしますね」
姫芽「はい、よろしくお願いされました〜」
小鈴「いってきまーす!」
姫芽「いってらっしゃ〜い」
-
駅
花帆「わぁ……懐かしいですね、鼓門」
梢「そうね……さやかさんはどこかしら?」
花帆「そのへんで待ってるはずですけど……」
小鈴「梢先輩ー! 花帆先輩ー!」
梢「あら」
花帆「小鈴ちゃん! 久しぶりだね!」
小鈴「お久しぶりです! 徒町です!」
梢「元気そうでよかったわ」
小鈴「はいっ!」
さやか「こんにちは、梢先輩……花帆さん」
-
梢「さやかさんも久しぶりね」
さやか「ご無沙汰しています」
花帆「さやかちゃん、綴理先輩は?」
さやか「今日はお仕事なので……」
梢「平日だものね」
花帆「あそっか、あたしもお休み取ってきたんだった」
さやか「おふたりとも、お昼はまだですよね?」
梢「ええ」
花帆「もうお腹ペコペコだよ〜」
さやか「お店でなにか作りますから、行きましょう」
小鈴「姫芽ちゃんもお留守番して待ってます!」
-
ガラガラ……
さやか「ただいま帰りました」
姫芽「あ、おかえりなさ〜い」
小鈴「わっ、ものすごくくつろいでる!」
花帆「姫芽ちゃん、久しぶり!」
梢「その様子だと姫芽さんも元気みたいね」
姫芽「おかげさまで〜」
さやか「なにかリクエストがあればお応えしますが」
花帆「じゃああたしはハントンライス!」
さやか「ハントンライスですね。梢先輩はどうしますか?」
梢「さやかさんのおすすめはあるかしら?」
さやか「ちょっと待っていてくださいね……」スタスタ
さやか「うーん……ロースカツはどうでしょう?」
梢「ではそれをお願いするわ」
-
さやか「かしこまりました。すぐ作りますね」
小鈴「さやか先輩、お手伝いします!」
〜間〜
花帆「ん〜、美味しかったー!」
さやか「お粗末さまでした」
花帆「これだけ美味しいんだから、毎日行列ができるんじゃない?」
梢「ふふっ、きっとそうに違いないわ」
さやか「言いすぎですよ。それなりに繁盛してはいますが……」
小鈴「徒町も働きがいがあります!」
さやか「花帆さんたちはどうですか? 向こうでの生活は……」
梢「住めば都とはよく言ったものね。もうすっかり馴染んでいるわ」
花帆「さやかちゃんたちならいつでも遊びに来ていいよ〜?」
さやか「考えておきますね」
小鈴「絶対行きましょう! さやか先輩!」
-
梢「楽しみに待っているわ」
姫芽「あのっ!」
花帆「姫芽ちゃん?」
姫芽「お墓参りまでまだ少し時間ありますよね?」
梢「ええ」
姫芽「なら今から行ってみませんか? 蓮ノ空女学院に……」
花帆「えっ?」
梢「いきなり行っても迷惑になってしまうと思うのだけれど……」
姫芽「話は通してあるので、その心配はいりませんよ」
花帆「……どうしますか?」
梢「そうね……せっかくここまで来たのだから、行きましょうか」
姫芽「よかったです。さやかせんぱい、車を貸してもらってもいいですか?」
さやか「どうぞ……」
-
蓮ノ空女学院
梢「まさかまたここへ来ることになるなんてね……」
花帆「あの頃と全然変わってませんね。懐かしいなぁ〜……」
姫芽「それじゃあいろいろ見て回りますかね〜」
第二音楽堂
花帆「今見ても立派なステージですよねー……」
梢「本当ね。沙知先輩は今頃どうしているのかしら?」
花帆「……ここにあたしたちが立っていたんですね」
梢「ええ。ここでの記憶は今も胸に焼き付いて離れないわ」
姫芽「ちょっと歌ってみますか? おふたりで」
花帆「いやぁ、さすがにそれは……」
梢「遠慮しておくわね」
姫芽「ありゃりゃ……」
-
廊下
花帆「今は授業中みたいですね」
梢「邪魔にならないよう、静かにね」
花帆「はーい……」
姫芽「アタシたち、チラチラ見られてますね〜」
花帆「手でも振ってみますか? 梢センパイ」
梢「ダメよ、早く進みましょう」
屋上庭園
梢「……心地よい風ね」
花帆「はい。もう秋になるんだなぁ……あっ、花壇もきちんと手入れされてますね」
梢「この場所も大切にされているのね……」
-
花帆「ちょっとベンチに座って休憩しませんか?」
梢「ええ」
花帆「姫芽ちゃんもおいでー!」
姫芽「アタシは大丈夫なので、おふたりでどうぞどうぞ〜」
花帆「……ねぇ、梢センパイ。姫芽ちゃんにならキス見られてもいいですよね?」
梢「花帆、ここは学校よ?」
花帆「授業中だから誰も来ませんよ」
梢「そういう問題じゃ――」
花帆「んむっ……」
姫芽「あっ……」
花帆「えへへ、しちゃいました」
梢「……いけない子ね」
姫芽「…………」
-
レッスンルーム
花帆「このレッスンルームも思い出深いな〜」
梢「それはもちろんいい思い出よね?」
花帆「あ、当たり前じゃないですかぁ……」
梢「花帆がどう思っているかはともかく、私にとってはどれも楽しい思い出よ」
花帆「あたしもですからね!」
梢「本当かしら?」
花帆「梢センパ〜イ……」
梢「ふふっ……私たちは、スクールアイドルだったのよね」
花帆「……はい。あたしたちは、スリーズブーケです」
梢「…………」
花帆「…………」
姫芽「……最後にあの場所を見に行きましょう」
-
部室
梢「このドアね……」
花帆「せーので開けましょう」
梢「わかったわ」
梢・花帆「せーのっ!」ガチャッ
姫芽「…………」
花帆「これは……」
梢「そう……今は物置になっているのね……」
姫芽「もう蓮ノ空女学院に、スクールアイドルクラブは残っていないそうです」
梢「……あんなことがあったんだもの、仕方ないわ」
花帆「梢センパイ……」
梢「10年前の今日、私たちのすべてが壊れてしまった……」
梢「私たちは……あの日……」
-
花帆「…………」
梢「……もう、行きましょうか」
姫芽「待ってください」
花帆「姫芽ちゃん? その箱……」
姫芽「こずえせんぱい、これを見てください」
梢「それは……」
花帆「なにしてるの姫芽ちゃん!? やめ――」
……
…………
………………
慈「…………」
梢「…………」
-
慈「こんにちは 梢」
梢「えっ……?」
慈「…………」
梢「…………」
慈「ハロめぐー」
梢「……あなた、慈なの?」
慈「私は めぐちゃん」
梢「慈……! あなたに、会いたかった……」
慈「…………」
梢「ずっと、あなたに……」
慈「…………」
梢「いえ……慈のはずないわ。だってあなたは……」
-
慈「…………」
梢「慈は……死んだのよ」
慈「そう 10年前 私は 殺された」
梢「ならあなたはいったい誰なの?」
慈「…………」
梢「本当に……慈なの……?」
慈「…………」
梢「ここはどこ? どうして慈がここにいるの?」
慈「…………」
梢「……花帆は? 花帆はどこへ行ったの? 姫芽さんは?」
慈「…………」
梢「慈っ!」
-
慈「ひとつだけ 教えてあげる」
梢「…………」
慈「私は るりちゃんに 殺されたの」
梢「……なにを言ってるの?」
慈「…………」
梢「慈は……瑠璃乃さんを殺した犯人に殺されたのよ」
慈「…………」
梢「そうでしょう……?」
慈「梢」
梢「…………」
慈「思い出して」
-
梢「……私はなにひとつ忘れたりしていないわ」
慈「…………」
梢「…………」
慈「目が 覚めたら 梢は 全部 覚えてる」
梢「慈……」
慈「バイめぐー」
梢「…………」
………………
…………
……
慈「るりちゃん……どうして……」
瑠璃乃「…………」
-
慈「なんで、こんなこと……」
瑠璃乃「っ!」
ドゴッ!
慈「ぐっ……痛いよ、るりちゃん……」
瑠璃乃「…………」
慈「ねえっ、もうやめて……」
瑠璃乃「っ!」
ドゴッ!
慈「ぁが……るりちゃん……」
瑠璃乃「…………」
慈「いや……来ないで……」
瑠璃乃「…………」
慈「お願い……るりちゃ――」
グシャッ!
-
――――――
――――
――
梢「――っ!」
姫芽「こずえせんぱい……? 吟子ちゃんっ!!」
吟子「梢先輩! 戻ってきたんですね……!」
梢「いやああああああああああああああああああああっ!!」
終
-
お粗末さまでした。
-
どういうことだ……?
もう一回読み直してみるか…
-
前後編の前編だけって感じがする
後編待ってるぞ
-
おぼろげにわかったけど動機がわからん
-
昔の作品みたいにヒント欲しいわ
-
ヒントはなくてもいいかなぁと思っていましたが、今日は梢先輩の誕生日ということで……。
ヒント1:登場人物たちが他の人物について話している。誰が誰に言及していて、誰に言及していないか。
ヒント2:それぞれの10年前についての発言から事件でなにがあったかを推測すると?
ヒント3:姫芽はどんな黒魔術を使ったのか? 花帆がそれを止めようとしたのはなぜ?
ヒント4:さやかはDOLLCHESTRAの未来は変わらないはずだと言う。では他のユニットは?
ヒント5:吟子はどこにいる?
なぜ10年前に事件が起きたのかについてはこの物語においてそれほど重要ではありませんが、
ひとつ言えるのは瑠璃乃は決して慈の死を望んではいなかったということです。
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■