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[新]桜坂ワイド劇場「刑事オードリー②」[字][解][デ]
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夜
女「あたしは絶対にこれで終わらせたりなんかしない」
女「必ず……真実を明らかにしてやるんだから」
女「それじゃ」スタスタ……
タッタッタッ……グサッ!
女「っ!? こ、の……!」バタッ
………………
…………
……
-
翌日
あなた「財布の中にお金はなしか……」
しずく「小銭は残っていますよ。えっと……230円だけですけど」
あなた「自販機じゃジュース1本しか買えないね」
しずく「ですね。物取りでしょうか?」
あなた「どうかな……こんなものがあるし」
しずく「この血文字はダイイングメッセージですかね?」
あなた「わかんないけど、マクドナルドのマークみたいだよね」
しずく「言われてみればそう見えますが……」
あなた「死ぬ前にハンバーガーが食べたかったのかなぁ……なーんて」
しずく「普通にアルファベットの『M』じゃないですか?」
あなた「まあそうだよね」
-
しずく「これが犯人のイニシャルだとしたら……」
あなた「マユとかミユとかモエカとか……あっ、マリアって可能性もあるよね!」
しずく「名字かもしれませんよ?」
あなた「名字だったら、マエダとかムラカミとか……」
璃奈「ちょっといい?」
しずく「璃奈さん、どうかした?」
璃奈「被害者のスマホのロックを解除できたから、見たいかと思って」
あなた「おお、助かるよ璃奈ちゃん」
しずく「じゃあお言葉に甘えて……あっ、これが被害者の名前ですね」
あなた「上畑小夏……」
しずく「履歴は……先輩、見てください」
あなた「うん? ミア・テイラー……Mだね」
-
しずく「掛けてみますか?」
あなた「お願い」
しずく「では……どうぞ」スッ
あなた「えっ、私が話すの!? テイラーってことは外国人だよね!?」
しずく「そうだと思いますよ」
あなた「私英語苦手なんだけど!」
しずく「前に短期留学したとか言ってませんでしたっけ?」
あなた「言ってないよ! それ別の世界の話とかじゃない!?」
しずく「……とにかく頑張ってください!」
あなた「そんなぁ……」
ミア〈Hi〉
あなた「げ、出た。は、ハロ〜?」
ミア〈……誰?〉
-
あなた「えっと、アイアムニホンノケイサツデ〜ス……」
しずく「先輩……」
ミア〈日本語で話しなよ、わかるから〉
あなた「え、ほんと? 日本語わかるんだって!」
しずく「そうなんですか?」
ミア〈で、どうして警察が小夏のスマホを持ってるのさ〉
あなた「あぁ、実は……小夏さんが遺体で発見されて」
ミア〈What!? 小夏が死んだって!?〉
あなた「それで小夏さんについてちょっと話を聞きたいんだけど……」
ミア〈わかった。そういうことなら直接話そう〉
あなた「えっ! で、でも外国に行くのはちょっと……」
ミア〈今は東京に来てるんだ。ホテルの場所を教えるよ〉
-
ホテル
ミア「それで……小夏はどうして?」
しずく「背中をナイフで刺されて……」
ミア「つまり殺されたってこと?」
あなた「まあ背中を自分で刺すっていうのはちょっと、ね」
ミア「はぁ……小夏が殺されるなんて……」
しずく「あの……ミアさんと小夏さんの関係は?」
ミア「ボクの曲が盗まれてるって、小夏が教えてくれたんだ」
あなた「えっ、ミアちゃん作曲できるの?」
ミア「むっ……ボクはステイツでは有名な作曲家なんだぞ!」
あなた「ご、ごめん……」
-
しずく「それより曲が盗まれたっていうのは?」
ミア「ああ……何年か前に出たゲームでボクの曲が勝手に使われてたんだ」
ミア「ゲームと言っても同人ゲームだけどね……ほら、これ」スッ
しずく「先輩はこのゲーム知っていますか?」
あなた「いやぁ、さすがに知らないよ」
しずく「ですよね」
あなた「……あれ? 無断使用じゃなくて盗まれたってことは、別の誰かが作曲者を名乗ってるってこと?」
ミア「そう。このゲームのクレジットにはボクじゃない別人の名前があったんだ」
しずく「その人の名前は?」
ミア「中須かすみ。まあ彼女もまた被害者だったんだけど……」
あなた「うん? どういうこと?」
-
ミア「ボクの曲をフリー音源だって言われて、それをアレンジするよう依頼されたらしい」
ミア「詳しい話が聞きたいなら、かすみ本人に聞いてよ」
あなた「じゃあそうするね」
ミア「そうだ、キミたち刑事なんだろ? だったらゲームの制作者を探し出してくれない?」
あなた「えっ、でも私たちはそういうのの担当じゃないから――」
しずく「いいよ。その代わりじゃないけど、かすみさんの連絡先と昨夜どこでなにをしていたか教えて?」
ミア「……ボクを疑ってるの?」
しずく「これは関係者全員に聞いておかないといけないから……」
ミア「昨夜はずっとここにいたよ。部屋からは一歩も出てない」
しずく「そっか」
-
>>3
冒頭文字M多くて初めて知ったわ
-
道
しずく「防犯カメラの映像を見た限り、ミアさんの話は本当みたいですね」
あなた「窓から抜け出すっていうのも無理だよね、あの高さじゃ」
しずく「そうですね……」
あなた「でもよかったの? 盗作のことも調べるなんて言って……」
しずく「もしかすると今回の事件となにか関係があるかもしれませんし」
あなた「まあそれはそうだけど」
しずく「あっ、ここじゃないですか? かすみさんの家」
あなた「よし、行こう」
-
かすみの家
彼方「はい、今日のお昼ご飯は彼方ちゃん特製チャーハンだよ〜」
かすみ「わーい! あ、食べながらでもいいですか?」
あなた「どうぞ……」
かすみ「もぐもぐ……ん〜、おいしー! 彼方先輩ってほんとお料理上手ですよね!」
彼方「好きこそものの上手なれってやつかなぁ」
あなた「旗が立ってるね……」ヒソヒソ
しずく「お子様ランチですかね……」ヒソヒソ
かすみ「なにか言った?」
しずく「いえ? なにも」
かすみ「これは! 彼方先輩のかすみんへの気持ちなの!」
彼方「かすみちゃんにあげるものには、必ずハートマークをつけるんだ〜」
-
あなた「へー、だからハートの旗が……」
彼方「うん、彼方ちゃんからのちょこっとLOVEなのです」
かすみ「あ〜ん、彼方先輩すきすき〜!」
しずく「こほん、それより本題に移りましょう。かすみさんは上畑小夏さんって知ってるよね?」
かすみ「……知ってるよ。かすみんが盗作したなんて嘘のネット記事を書いた子でしょ!」
かすみ「まったくもう、なんであの記事まだ消えてないの! ぷんぷん!」
しずく「ミアさんの話だと、渡された曲をアレンジするように依頼されたとか」
かすみ「そう! かすみんはなんにも知らなくて、ほんと寝耳にミミズだよ」
しずく「……あ、うん」
かすみ「ミア子にはちゃんと説明してわかってもらえたからよかったけど……」
かすみ「その上畑小夏って子、訴えたりできないの? めーよきそんとかで!」
しずく「うーん、それは難しいかもしれないよ?」
-
かすみ「えー、なんで?」
しずく「小夏さんは殺されちゃったから」
かすみ「へ……?」
しずく「私たちはその件で話が聞きたくて来たんだけど……」
かすみ「ち、違うっ! かすみん殺してなんかない!!」
彼方「かすみちゃん、落ち着こ? 誰もかすみちゃんのこと疑ったりしてないよ。ね?」
しずく「…………」ジー
あなた「…………」ジー
かすみ「絶対疑ってるじゃないですかぁ!」
しずく「じゃあ一応聞いておくけど、昨日の夜はどこでなにをしてたの?」
かすみ「昨日は……かすみんのファンの子と会ってて……」
あなた「どこで?」
-
かすみ「レストランです、ここの近くの……」
あなた「そっか。盗作のことについても話を聞いていいかな?」
かすみ「はい……盗作じゃありませんけどっ」
かすみ「さっきも話した通り、かすみんはなにも知らなかったんです」
かすみ「渡されたUSBメモリーに入ってる曲のアレンジをするように言われて」
かすみ「でも完成したゲームにはかすみんの名前しか載ってなくて……」
かすみ「それがずっと心残りだったんです。元の曲にも作者はいるはずなのに……」
かすみ「で、何年も経ってからあの嘘の記事がアップされて、ミア子から連絡が来て……」
しずく「自分の作った曲じゃないってことを、かすみさん自身が告白しようとは思わなかったの?」
かすみ「その……ゲーム制作に参加させてもらった恩もあるし……」
あなた「自分からは言いづらかったんだ」
かすみ「はい……」
-
警察署・鑑識係
璃奈「凶器は量産品の小さいナイフだったよ」
しずく「そうなると販売ルートから犯人を割り出すのは難しいね」
璃奈「それと被害者が最近スマホで何回かやり取りしてる相手を見つけた」
あなた「三船栞子……Mだね」
しずく「さっそく明日話を聞きに行きますか?」
あなた「いや、まずはかすみちゃんと会ってたファンの子と話そう」
しずく「かすみさんは昨夜、間違いなくレストランにいたみたいですが……」
あなた「どこから重要な情報が得られるかわからないし、盗作の件も進展があるかもしれないよ?」
しずく「あっ、先輩も気になってきましたか?」
あなた「ちょっとね……」
-
翌日 ステーキハウス
ランジュ「さ、遠慮せずに食べなさい!」
しずく「いいんですか? 奢ってもらって」
ランジュ「無問題ラ! アナタたちもかすみのファンなんでしょ?」
あなた「いや、私たちは――」
しずく「そうなんです! かすみさんのこと、もっと知りたくて……」
ランジュ「きゃあっ! ならランジュになんでも聞くといいわ!」
しずく「ありがとうございます。ランジュさんは、かすみさんとはよく会っているんですか?」
ランジュ「ええ! かすみは世界一ファンを大切にしているから、ファンとの交流を欠かさないの!」
しずく「世界一、ですか」
-
ランジュ「そうよ! かすみ本人もそう言っているわ!」
あなた「盗作騒ぎについてはどう思ってるの?」
ランジュ「ひどいわよね。かすみは被害者なのにあんなでたらめな記事を……」
ランジュ「アタシたちでかすみのこと、精一杯応援しましょ!」
あなた「う、うん。そうだね」
ランジュ「かすみの口座を教えるから、アナタたちもお金を振り込んでちょうだい」
しずく「えっ? ランジュさん、かすみさんにお金を渡しているんですか?」
ランジュ「そうよ」
しずく「どうしてそんなことを……」
ランジュ「かすみは今、病気で苦しんでいるの。治療費もかかるし生活が大変でしょ?」
-
ランジュ「だからランジュが支えてあげなくちゃいけないのよ」
あなた「でもそれって一ファンがすることなのかな……」
ランジュ「当たり前じゃない! ランジュはかすみに世界一大切にされてるんだもの!」
ランジュ「だったら世界一応援するのがアタシたちの役目でしょ?」
あなた「な、なるほど……」
ランジュ「あぁ、ニューアルバムの完成が待ち遠しいわ……」
しずく「ニューアルバム? かすみさんのですか?」
ランジュ「ええ、今制作中なのよ。2年前の発表からずーっと楽しみに待ってるの!」
あなた「ん? 2年も前に発表してまだ完成してないの?」
ランジュ「きっとそれだけの超大作ってことね!」
-
オフィス
せつ菜「わあ! 懐かしいですね!!」
あなた「せつ菜ちゃんがこのゲームを作ったんだよね?」
せつ菜「はい! と言っても私一人で作ったわけではないですが……」
しずく「このゲームに使われている音楽が盗作だということはご存知ですか?」
せつ菜「えっ!? そうなんですか!?!?」
しずく「音楽を担当したかすみさんによると、ゲームの制作者にUSBメモリーを渡されたとか」
せつ菜「……? なんのUSBですか?」
あなた「曲の入ったUSBだよ。かすみちゃんはその曲をアレンジするように言われたって」
せつ菜「うーん……私には心当たりがないですね……」
-
しずく「そうですか……」
せつ菜「私じゃないとすれば……でもまさかそんな……」
あなた「なにか知ってることがあるなら教えて?」
せつ菜「いえ、知ってると言いますか、その……」
しずく「話してください」
せつ菜「……愛さんかもしれません。USBメモリーを渡したのは」
しずく「愛さん?」
せつ菜「確証があるわけじゃないんです! ただ私以外に考えられるのが愛さんというだけで……」
しずく「話を聞く必要がありそうですね」
あなた「だね」
-
かすかす
-
公園
しずく「先輩、んー」
あなた「ダメだよ、仕事中なんだから……」
しずく「むぅ……なら私からしちゃいますっ!」
あなた「えっちょ待っ――んむぅ……」
しずく「ふぅ、充電完了です」
愛「…………」
しずく「あっ……すみません、急にお呼び立てして」
愛「今キスしてなかった?」
しずく「いいえ? してませんけど?」
愛「……まあいいや。ゲームのことについて聞きたいんだよね?」
しずく「はい。ゲーム制作時、愛さんはかすみさんにUSBメモリーを渡しませんでしたか?」
愛「USBメモリーって?」
-
あなた「渡してないの?」
愛「うん」
しずく「愛さんでもありませんでしたか」
あなた「じゃあかすみちゃんにはどういう音楽を依頼したか覚えてる?」
愛「特にこうしてほしいとかはなかったなー。自由に作ってって感じで」
しずく「自由に作らせた結果が盗作ですか……」
愛「えっ、なんて?」
しずく「いえ、なんでもありません」
愛「……あっ、そういえばかすかすブログに書いてたなぁ」
あなた「なにを?」
愛「ゲームの音楽作ったときのこと。あのブログ今もやってるのかな?」
しずく「そのブログ、私たちにも教えてもらえますか?」
-
警察署
しずく「……なんというか」
あなた「ものすごく自慢げだね……」
しずく「『じ・つ・は! BGMはかすみんが全部ひとりで作ったんですー!』って――」
しずく「アレンジをしただけの人が言いますかね? やらされたなんて嘘なんじゃないですか?」
あなた「んー、一応明日ちょっと探ってみよっか」
しずく「そうしましょう。あっ、盗作が発覚したときの投稿もありますよ」
あなた「どれどれ……」
しずく「…………」
あなた「…………」
しずく「……どう思いますか?」
-
あなた「うーん、なんか終始自分は被害者だってことを書いてるけど……」
しずく「なんだかモヤモヤしますよね」
あなた「うん……なんなんだろう、この違和感は」
しずく「……ん? たしかランジュさんは、かすみさんはファンを世界一大切にしてると言っていましたよね?」
あなた「言ってたね、かすみちゃんもそう自称してるって」
しずく「でもこの文章にはどこにもファンに対する謝罪の言葉がないんですよ」
しずく「ファンを大切にしていると言うなら、一番最初にファンへの謝罪があってもいいはずなのに」
あなた「たしかに。もし盗作がやらされたことだったとしても、ファンを騙してたわけだもんね」
しずく「……これはやはり盗作についてしっかり調べる必要がありそうですね」
あなた「よし、こうなったらとことんやっちゃおう」
しずく「はい!」
-
翌日 かすみの家
かすみ「また来たんですか? かすみんちょっと忙しいんですけど」
あなた「あ、もしかして作曲中?」
かすみ「違います! 開示請求の準備ですよ!」
しずく「誰の情報を開示するの?」
かすみ「ネットでかすみんに誹謗中傷してくる人全員!」
しずく「へー……」
かすみ「ほら見てください! ひどくないですか!?」
あなた「えっと『かすみんが盗作してたなんてがっかり』……?」
しずく「これって誹謗中傷ですかね?」
あなた「どうかな……」
かすみ「一人残らず地獄を見せてやりますよ……へっへっへ」
彼方「かすみちゃん、ちょっと休憩しよ? キウイ切ったから食べて?」
-
かすみ「彼方先輩! ありがとうございます!」
彼方「今日はキウイの皮でハートを作ったんだ〜」
あなた「ねえかすみちゃん、USBメモリーを渡してきたのって、このふたりのどっちかかな?」スッ
かすみ「ん〜……いえ、どっちも違いますね」
しずく「じゃあその人の名前とかはわからない?」
かすみ「えー? そんなの覚えてるわけないじゃん」
あなた「……そういえばかすみちゃん、病気は大丈夫?」
かすみ「はい?」
あなた「ランジュちゃんがかすみちゃんは病気で苦しんでるって言ってたから」
かすみ「あー……まあなんとかやってますよ」
しずく「ちなみになんて病気なの?」
かすみ「それはぁ……聞いてもわかんないと思うよ?」
しずく「そう……」
-
カフェ
しずく「盗作をさせたのはせつ菜さんでも愛さんでもないって言ってましたね」
あなた「だったら誰にやらされたんだろうね……」
栞子「あの……連絡をくれた刑事さんですか?」
あなた「三船栞子ちゃん?」
栞子「はい」
〜間〜
栞子「小夏さんにはかすみさんの過去についてお話しました」
あなた「過去?」
栞子「私、かすみさんとは高校の同級生なんですよ」
あなた「へぇ、そうなんだ」
-
栞子「かすみさんがブログをやっているのはご存知ですか?」
しずく「うん。あのブログがどうかしたの?」
栞子「嘘ばっかりなんです。これを見てください」スッ
栞子「『幼少期からピアノを習っていた』とありますが……」
栞子「かすみさんの実家にはピアノなんてありませんし、楽譜も読めなかったはずです」
あなた「ええっ」
栞子「ここにある『学校でピアノを弾くと生徒が集まってきた』というのもありえません」
栞子「私は3年間、一度もかすみさんがピアノを弾いている姿を見たことがありませんでしたから」
しずく「それは……」
栞子「他にもたくさんの嘘が書かれているんですよ、このブログには」
-
警察署
あなた「なんか一気にかすみちゃんが胡散臭くなってきたね」
しずく「はい……とはいえ殺しのアリバイは完璧なんですよね」
しずく「店員の証言に防犯カメラの映像もありますから……」
あなた「うーん……一旦整理してみよっか」
あなた「まず被害者はかすみちゃんの盗作について調べていた」
しずく「かすみさんによるとその盗作の記事を書いたのも小夏さんみたいですね」
しずく「そして栞子さんに取材していたことから、記事の第2弾も書くつもりだったと推測できます」
あなた「それから現場に残されていた『M』の文字」
あなた「今のところ関係者でイニシャルがMなのはミア・テイラー、宮下愛、三船栞子の3人」
しずく「ですが3人には小夏さんを殺害する動機がありませんよね」
-
あなた「そうなんだよねー。まだ見つかってないMがいるのかな……」
しずく「どうでしょう……」
あなた「動機って点ではかすみちゃんが一番怪しいんだけどねぇ」
しずく「かすみさんに犯行は不可能ですからね。イニシャルもMじゃありませんし」
あなた「あっ! もしかして、かすみの“み”のMだったりして!」
しずく「…………」
あなた「…………」
しずく「……冗談はさておき、このままじゃ手詰まりですね」
あなた「うん……どうしよっかなー」
しずく「先輩、そうは言いつつ今なんにも考えてませんよね?」
あなた「お、わかる? お腹空いちゃって頭が回んないんだよ〜」
しずく「そんなことだろうと思いました」
-
小料理屋・ぽむの里
歩夢「はい、召し上がれ」
あなた「わぁ、いただきまーす!」
しずく「すみません、こんな遅い時間に……」
歩夢「ふふっ、気にしなくていいよ。しずくちゃんもどうぞ」
しずく「ありがとうございます」
歩夢「……事件の捜査、行き詰まってるの?」
あなた「えっ! なんでわかるの?」
歩夢「幼馴染だもん、全部お見通しだよ」
あなた「へえぇ……」
-
〜間〜
あなた「ふ〜、お腹いっぱいだー」
しずく「……あっ、かすみさんブログを更新していますね」
あなた「こんな夜遅くに?」
しずく「『ごめんなさい』……? なんでしょう?」
しずく「えっと……『匿名でのたくさんの誹謗中傷に疲れました』って、先輩これ……」
あなた「なんか嫌な予感がする……」
翌日 警察署
しずく「えっ!? それ本当ですか!?」
あなた「どしたのしずくちゃん?」
しずく「かすみさんが昨夜、自殺未遂で病院に搬送されたそうです……」
あなた「ほんとに!?」
-
病院
しずく「かすみさんの容態は?」
彼方「一命はとりとめたって先生が……」
あなた「なにがあったのか、話を聞いてもいいかな?」
彼方「うん……昨日の夜中にツイッターの通知が来て……」
彼方「かすみちゃん、なんだか変なつぶやきをしてたからおかしいと思って」
彼方「家の中をあちこち探して、お風呂場に行ってみたんだ」
彼方「そしたら……かすみちゃんが、ぐすっ……血を流して倒れててっ……!」
彼方「すぐに救急車を呼んだけど、その後はもういっぱいいっぱいで……」
………………
…………
……
-
警察署
あなた「かすみちゃん、相当追い詰められてたんだね……まさか自殺なんて……」
しずく「…………」
あなた「しずくちゃん?」
しずく「……かすみさんは本当に死ぬつもりだったんでしょうか」
あなた「えっ?」
しずく「人が自殺をしようとしたとき、最も避けたいことはなんだと思いますか?」
あなた「それはもちろん自殺に失敗することじゃない?」
しずく「はい。私にはかすみさんがわざと失敗したように思えるんです」
-
あなた「どういうこと?」
しずく「かすみさんのブログ、先輩も見ましたよね?」
あなた「うん、見たけどそれが?」
しずく「かすみさんはどうしてあんなブログを書いたんでしょう?」
あなた「遺書のつもりだったんじゃないかな?」
しずく「遺書を残すなら、傍らにでも置いて自殺すればいいだけのことです」
あなた「でもほら、ちょっとした有名人だったわけだし、ネットに残しておきたかったのかも」
しずく「だとしてもブログだけじゃなくツイッターにまで書くのはおかしくないですか?」
しずく「これじゃまるで自殺に気づいて止めてほしいと言わんばかりですよ」
-
あなた「……言われてみるとたしかに変な気が。ネットに残したいなら予約投稿もできるはずだもんね」
あなた「自殺する前に更新するっていうのは不自然かも……」
しずく「それに彼方さんはかすみさんのつぶやきの通知をオンにしていました」
しずく「かすみさんならそのことを知っていたはずです」
あなた「かすみちゃんのことが大好きな彼方さんなら気づかないはずがないってことか……」
しずく「どうやら被害者になるためなら手段を選ばないみたいですね」
あなた「……しずくちゃん、ちょっと思いついたことがあるんだけど」
しずく「私も先輩と同じことを考えている気がします」
-
翌日 かすみの家前
あなた「さて、ここからどうやって攻めようか?」
しずく「手がかりはありますが、ひとまずかすみさんの退院を待ちましょう」
あなた「オッケー」
しずく「できれば盗作の件も解決したいところですが……」
あなた「なかなか難しそうだよね。ミアちゃんは言いくるめられちゃってるし」
しずく「まあ私たちの仕事はあくまで殺人事件の解決ですから……」
果林「あなたたち、刑事さん?」
あなた「……誰?」
果林「ここってかすみちゃんの家よね?」
しずく「そうですが……ファンの方ですか?」
果林「正確には“元”ファンかしら」
あなた「かすみちゃんになにか用事?」
-
果林「ええ。ちょっと話がしたかったんだけど、やっぱりまだ帰ってきてないのね」
しずく「お話というのは?」
果林「例の盗作のことを聞きたかったのよ」
あなた「なにか知ってることがあるの?」
果林「まあね」
しずく「私たちにも教えてくれませんか?」
果林「……いいわ。こういうのはプロに任せたほうがいいものね」
果林「これを受け取ってちょうだい」スッ
あなた「これは?」
果林「かすみちゃんのCDよ」
あなた「なんていうか……手作り感満載だね」
果林「実際そうだもの。かすみちゃんがパソコンでCDを焼いて売っていたの」
しずく「なぜこれを私たちに?」
果林「これが盗作の決定的な証拠だから……ね」
-
ホテル
ミア「キミたちか。ゲームの制作者は見つかった?」
しずく「それはもちろん。ただ……」
ミア「なに?」
あなた「もっとすごいものを見つけちゃってね」
ミア「すごいもの?」
しずく「これなんだけど……」
――――――
――――
――
-
数日後 かすみの家
しずく「かすみさん、退院おめでとう」
かすみ「……まだかすみんになにか? これからまた開示請求で忙しくなるんだけど」
あなた「まあまあそう言わずに。りんご買ってきたからさ、一緒に食べようよ」
かすみ「しょうがないですねぇ……」
しずく「彼方さん、すみませんがりんごを切ってもらえますか?」
彼方「いいよ。ちょっと待っててね〜」
しずく「さてと……かすみさん、このCDに見覚えはある?」
かすみ「えっ! なんでそのCD持ってるの!? もしかしてしず子……かすみんのファン?」
しずく「残念だけどこれはかすみさんのファンだった人からもらっただけなの」
かすみ「ふーん。てっきりサインでもしてほしいのかと思った」
しずく「これに収録されているのは、すべてかすみさんが作曲したオリジナル曲なんだよね?」
-
かすみ「そうだけど、それがどうかしたの?」
あなた「とりあえずこのCDの8曲目を聞いてもらってもいいかな?」
かすみ「いいですけど……」
あなた「じゃ、再生するよ」ポチッ
プレーヤー「♪〜」
かすみ「…………」
あなた「次にこっちの曲を聞いてみて」ポチッ
スマホ「♪〜」
しずく「これ、テンポとアレンジは少し違うけど……同じ曲だよね?」
かすみ「……だから?」
あなた「実はスマホから流したほうの作曲者はかすみちゃんじゃないんだよ」
-
かすみ「はい?」
あなた「これはミアちゃんが作った曲なんだ」
かすみ「……!」
しずく「ミアさん本人にも確認したけど、この2曲は間違いなく同じ曲だって言ってたよ」
あなた「どうしてかすみちゃんのCDにミアちゃんの曲が入ってるのかな?」
かすみ「そ、それは……」
しずく「考えられる可能性は3つ」
しずく「1つはゲーム制作時にこの曲を渡されて、後からかすみさんの曲として発売するように依頼された」
しずく「もう1つは、なんらかの理由でゲームに使用されなかった曲をかすみさんが自作曲だと勘違いした」
しずく「前者はそんな依頼をする理由も、かすみさんがそれに従う理由も特にないので除外していいでしょう」
しずく「後者はかすみさんの『ずっと心残りだった』という発言と明らかに矛盾するのでこれも除外するとして……」
-
しずく「残るもう1つの可能性、これこそが真実だと私はほぼ確信してるんだけど、聞きたい?」
かすみ「……言ってみなよ」
しずく「3つ目の可能性は……ゲームでの盗作はかすみさんの独断でしたことだった」
しずく「このCDに入っている曲も、同じように盗作しただけ……違う?」
かすみ「ちがっ……」
しずく「でもねかすみさん、そう考えると全ての辻褄が合うの」
しずく「かすみさんがブログで自慢話をしていたことも、USBメモリーを渡したゲーム制作者が見つからないことも」
しずく「ひょっとしたらこのCDには8曲目以外にも盗作があるかもしれない……」
あなた「かすみちゃん、本当のことを話してくれない?」
かすみ「……私、は――」
彼方「りんごが切れたよ〜。この皮がハートになってるのがかすみちゃんの分ね」
-
しずく「『私は』……なに?」
かすみ「その――」
彼方「かすみちゃんはなにも話さなくていいんだよ?」
しずく「そういうわけにはいきませんね」
彼方「だってかすみちゃんは盗作なんてしてないもん!」
彼方「ふたりとも知ってるよね!? かすみちゃん、自殺未遂で死にかけたんだよ!」
彼方「かすみちゃんは被害者なの! 悪い人たちに騙されただけ!!」
彼方「もしこれ以上かすみちゃんを苦しめるつもりなら――」
しずく「彼方さん、かすみさんの話を聞いてあげてくれませんか?」
彼方「やだ! 彼方ちゃん聞きたくないっ!!」
かすみ「彼方先輩……もういいんです。かすみん覚悟を決めました」
-
彼方「かすみちゃん……」
かすみ「認めるよ、盗作したこと。かすみんがミア子の曲を盗んだ、間違いないです」
彼方「なんで……ひどいよっ! ファンだったくせに裏切って警察にCD渡すなんて!」
しずく「裏切ったのはかすみさんのほうですよ、彼方さん」
しずく「最初に盗作したことも、盗作がバレたときに嘘をついて逃げたことも……」
しずく「ファンを裏切ってるんじゃないですか?」
彼方「……っ」
しずく「自分の犯した罪から逃れるために、いもしない真犯人をでっち上げるなんて、最低なことです」
かすみ「そうだね……しず子の言うとおりだよ……」
かすみ「でも信じて! かすみん、人殺しなんてしてないの!」
あなた「ああ、私たちはかすみちゃんが殺したなんて思ってないよ」
しずく「真犯人はもうわかってるから」
-
かすみ「へ……? じゃあ誰が……」
あなた「かすみちゃんの自殺未遂、あれって彼方さんの差し金だよね?」
しずく「たまたま気づいたというようなことを言っていましたが……違いますよね?」
彼方「…………」
あなた「かすみちゃん、どうなの?」
かすみ「えと……その……」
しずく「ひとまずそうだったと仮定して話を進めましょう」
しずく「かすみさんを完璧な被害者に仕立て上げるため、彼方さんはあの自殺未遂騒ぎを起こした……」
あなた「普通はそんなことしないけど、彼方さんならそれをやってのける」
あなた「かすみちゃんのためとなれば簡単にたがを外しちゃうんだろうね」
あなた「たとえ殺人という行為でも」
-
かすみ「えっ……?」
しずく「あの日なにがあったのか、想像に難くありません」
しずく「『ねぇ、もうやめにしようよ。こんなことしてなにになるの?』」
しずく「『あたしはただ、本当のことを知りたいだけ』」
しずく「『かすみちゃんは騙されて盗作させられた、それがほんとのことでしょ?』」
しずく「『フッ、そんな見え透いた嘘に騙されると思う?』」
しずく「『嘘じゃない! かすみちゃんは被害者だもん!』」
かすみ「……これなんですか?」
あなた「しずくちゃんの推理だから、よーく見ててね」
かすみ「はぁ……」
-
しずく「『ブログであんなに嘘ばっかり書いてるのに、よくそんなことが言えるわね』」
しずく「『適当なこと言わないで!』」
しずく「『こっちはちゃんと調べてから言ってるの。中須かすみは大嘘つきよ』」
しずく「『違う、違うっ!』」
しずく「『ミア・テイラーを黙らせることはできても、あたしはそうはいかない』」
しずく「『っ……』」
しずく「『あっ、そういえばファンからお金を巻き上げたりもしてるんだっけ』」
しずく「『やめて』」
しずく「『病気が辛いって言えば簡単に同情してもらえるんだものね』」
しずく「『やめてよ……』」
しずく「『その病気だって嘘なんじゃないの? あの子ピンピンしてるじゃない』」
-
しずく「『やめてっ!!』」
しずく「『……とにかくあたしを止めようとしても無駄だから』」
しずく「『…………』」
しずく「『今はうまくごまかせてるのかもしれないけど、あたしは絶対にこれで終わらせたりなんかしない』」
しずく「『…………』」
しずく「『必ず……真実を明らかにしてやるんだから』」
しずく「『…………』」
しずく「『それじゃ』」
しずく「『……っ!』」
しずく「立ち去ろうとした小夏さんを、彼方さんは背中から刺したんです」
彼方「……それって全部しずくちゃんの妄想でしょ?」
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あなた「現場に残されていた血文字、あれは彼方さんが書いたものだよね?」
あなた「私たちはずっとそれがアルファベットの『M』だと思ってたけど……」
あなた「本当はハートマークだった。違う?」
彼方「…………」
しずく「暗い中被害者の指を使って書いたせいで、うまく書けなかったんですよね?」
しずく「その結果、下半分の線が繋がらず『M』に見えてしまった」
あなた「そしてなぜ現場にハートマークを残したのか、それはかすみちゃんのための殺人だったから」
あなた「言ってたよね? かすみちゃんにあげるものには必ずハートマークをつけるって」
彼方「……そんなの証拠にならないよ」
しずく「はい?」
彼方「そんなの証拠にならないって言ったの。そもそもそれを彼方ちゃんが書いたって根拠はあるの?」
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しずく「ありませんね」
かすみ「えっ、ないの!?」
しずく「ですが他にも証拠はあるんじゃないですか? たとえば……」スタスタ
しずく「この小さいナイフ。これを調べて被害者の血液が検出されれば、立派な証拠になります」
しずく「彼方さん、これお借りしてもいいですか?」
彼方「だ、ダメだよ! それはお料理に使うし……」
あなた「料理ってどんな? りんごを切るのには使ってなかったみたいだけど……」
しずく「この間お邪魔したときも少し気になったんです」
しずく「キウイを切るならもっと小さいナイフのほうがやりやすそうなのに、って」
あなた「料理好きの彼方さんだから、殺人に使ったナイフは使いたくなかったんじゃないかな?」
しずく「彼方さん、いざとなれば私たちはこれを押収することだってできるんですよ?」
-
彼方「……はぁ、わかったよ」
あなた「殺人を認めるんだね?」
彼方「うん……」
かすみ「そんな……本当に彼方先輩が殺したんですか……?」
彼方「ごめんね、かすみちゃん。彼方ちゃん、ちょっとしくじっちゃった」
かすみ「なんで……」
彼方「あの女を止めないと、かすみちゃんがもっとつらい目に遭っちゃうと思ったから」
彼方「殺すしか、なかったんだ……」
かすみ「彼方先輩……」
彼方「彼方ちゃん、お料理は得意だけど……殺人は下手っぴだったみたい」
しずく「どうして凶器を処分しなかったんですか? 重要な証拠なのに」
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彼方「……そのナイフはね、かすみちゃんがくれたプレゼントなんだ。だからあの女を殺すのに使ったの」
彼方「あーあ、彼方ちゃんがうまくやれてたら、かすみちゃんを守りきれたのに……ごめんね」
かすみ「いいんですよ、彼方先輩。その気持ちだけでかすみん嬉しいです」
しずく「なに言ってるのかすみさん。それに彼方さんも」
しずく「大切な人が間違いを犯したなら、やるべきことは罪の正当化じゃありません!」
しずく「しっかりと、償わせるんです。それこそが真に相手を想うってことなんじゃないですか?」
かすみ「…………」
彼方「…………」
………………
…………
……
-
しずく「では後ろに乗ってもらえますか?」
彼方「うん……」
エマ「あのっ!」
あなた「ん?」
エマ「中須かすみちゃん……だよね?」
かすみ「そうですけど……」
エマ「わたし、エマです! 作曲の依頼をしてた……」
かすみ「ああ……」
エマ「直接かすみちゃんとお話したくて、スイスから会いに来ちゃった。えへへ……」
かすみ「そう、ですか」
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エマ「……今からお出かけなの?」
かすみ「はい……」
エマ「じゃあいつならお話できるかな? 午後? 明日?」
かすみ「いえ……当分できそうにありません」
エマ「えぇと……なら――」
かすみ「それとかすみん、本当は曲なんて作れないんですよ」
エマ「えっ?」
かすみ「ごめんなさい……」
バタンッ
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しずく「失礼します」スタスタ
バタンッ
ブーン……
エマ「…………」
………………
…………
……
この物語はだいたいフィクションです♡
来週のこの時間は映画「アズナランド・ドライブ」をお送りします。
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お粗末さまでした。
【前回の刑事オードリー】
日曜桜坂劇場「刑事オードリー」[字][解][デ]死を呼ぶ嘘スキャンダル記事!人気アイドルに秘密あり…疑惑の八重歯と魅惑のセクシー姉さん
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1662289206/
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かすかすかわいそう
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もっと可哀想な子がたくさんいるんだよなぁ
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悲しいなぁ
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乙
ランジュが幸せになってほしい
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