■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
すみれ「令和任侠伝 青い菫」
-
ー音ノ木坂ー
構成員「……それでさ、金保留来たんだからそりゃ〜Rush行くでしょって思ったの」
構成員「流石に金保留は熱いもんね。って事は金ヤマトも?」
構成員「出たよ、勿論。でもレバブルが無くてさ」
構成員「あっ……それは、うん」
構成員「察したね。まあ、案の定でしたけどね」
<ザッザッ…
構成員「ちゃんとフルカスタムだったの?」
構成員「あたしどの台も基本フルカスだから。当たる訳ない演出で弄ばれるのダルいし」
<ザッ…
構成員「……!」
構成員「だって青保留で発展リーチされてもウザ……どしたの?」
構成員「いや…明らかに同業者が」
<?「……園田組の子?」
構成員「…どちら様でしょうか」
構成員「カチコミ?」
?「な訳ないでしょ……誰か目上の方を呼んで頂ける?」
構成員「目上ったって…」
構成員「津島のカシラは?」
構成員「……ちょっと待ってて。あ、お名前は?」
すみれ「……すみれ。神宮一家の平安名すみれ」
-
────
善子「神宮一家の?何でまた……」
海未「……先の1件で追われたのでしょう。丁重にお迎えなさい」
善子「分かりました……というか、私でいいんですか?」
海未「私がわざわざ出迎えるのも違いますし、若い子達には対応しきれない。ですがあなたならその方に対応出来るのですよ」
善子「……?取り敢えず、迎えます」
海未「ええ、お願いしますね。後でここに」
構成員「どうぞ」
テクテク
-
すみれ「……」
構成員「……玄関先で突っ立ってないで、入れば?ウチと敵対してるとかじゃないんでしょ?」
すみれ「それじゃ礼儀がなってないわ」
構成員「はーん……?」
<構成員「お名前は平安名さんと」
<善子「ん」
すみれ「……」
善子「……」
スッ…
すみれ「……ご当家、軒下の仁義。失礼ですが、お控え下さい」
構成員「……ぷっ」
構成員「……善子さん、分かんないけどこれ何か古くないですか?」
善子「……なるほどね。あたしが来た意味はこれか」ボソッ
構成員「え?」
スッ
善子「……ありがとうございます。軒下の仁義に失礼しますが、手前これにて控えさせて頂きます」
構成員(カシラまでやるんかい……笑)
すみれ「早速ながら、ご当家三尺三寸借り受けまして稼業、仁義を発します」
善子「手前当家の若輩者でございます。どうぞお控え下さい」
すみれ「手前、旅中の者でございます。是非ともお姉えさんからお控え下さい」
善子「ありがとうございます。再三のお言葉、逆意とは心得ますが手前、これにて控えさせて頂きます」
すみれ「早速のお控えありがとう存じます。不束者につき前後間違えましたる節は重ねて失礼にございますが、まっぴらご容赦願います」
ザッ
-
世界線がよくわからんが期待
-
すみれ「……手前、生国は東京渋谷神宮前、表参道を通りて隠田神社に発します」
すみれ「稼業、縁持ちまして身の片親と発しますは、原宿に元居を構えておりました神宮一家当代、東條希に付き従います若い者です」
善子「……」
すみれ「姓は平安名、名はすみれ。見ての通りしがない駆け出し者でございます。以後お見知り置きの上向後万端、ざっくばらんに宜しくお願い申します」
構成員(すげー……よくこんなスラスラ出るなぁ。マジ昔の映画みたい)
構成員(うん……でも今令和なんだけどね笑)
構成員(それはそう笑)
善子「……ありがとうございます。ご丁寧なお言葉に対し申し遅れまして失礼を致します」
すみれ「……」
善子「手前、園田組3代目、園田海未に従い預けられました若頭の末席を汚しております者」
善子「姓は津島、名は善子。稼業未だ未熟の駆け出し者です。以後万事万端宜しくお願い致します」
すみれ「斯様に丁寧な仁義、誠に恐れ入ります。どうぞお手をお上げ下さい」
善子「ありがとうございます。そちらからお上げなさって」
すみれ「それでは困ります」
善子「…では、ご一緒にお上げなさい」
スッ
すみれ「ありがとうございます」
善子「ありがとうございます」
-
構成員「お〜」パチパチ
構成員「姉貴、流石ですね!こういうののやり方も知ってるなんて」
善子「昔海未さんに教えられたの。アンタもいつの時代から来たのよ」
すみれ「ウチも親から教えられただけ。他の組に邪魔する時は、こうしなさいってね」
善子「希さんね……ま、追々聞くわ。上がって」
すみれ「失礼します」
-
────
<コンコン
海未「はい」
ガチャッ
善子「当代、お連れしました」
すみれ「……」スッ
海未「ごきげんよう」
すみれ「園田組当代、園田海未さんとお見受けします。お初にお目にかかります」
海未「津島より聞き及んでいます。どうぞお入りなさい」
すみれ「恐れ入ります」
バタン…
善子「……いや、やっぱアンタ古くない?マジで昭和から来たの?」
すみれ「だってこうしろって希さんが……」
海未「ふふ、あの希の事です。面白がって仕込んだだけだと思いますけどね」
すみれ「え!?」
海未「そういう所があるのですよ希は。客人にお茶を」
構成員「はいっ」
善子「確か、ウチと神宮一家は特に繋がりがある訳じゃ……」
海未「ええ、ただの茶飲み友達ですよ」
すみれ「……」
海未「だから……お互い不可侵の約束だったんです。筋者同士の関わり合いは無しと。この時代、私達位はただの友達でいようと」
すみれ「……希さんは、私達下の者を守る為、単身【台場組】に乗り込みました。その後通達が来て、神宮一家は台場組の傘下となると言い渡してきて……」
-
海未「……分かっています」
構成員「失礼します、お茶を」
すみれ「分かっておられたんなら、何か手を貸して下さるとか!」ガタッ
構成員「うわっとぉ!?」
善子「すみれ!」
海未「私の所にも来てましたから。台場の使者が」
すみれ「!」
構成員「お茶置いときまーす……」コトッ
善子「ありがとね」
構成員「ういっすー……」
海未「あなたのいた神宮一家も、園田組も小さい組織です。どこの派閥にも属さず街に根ざし、古き良きを重んじていた……そんな所だったでしょう」
すみれ「…はい」
海未「そこに奴等は目を付けてきました。ウチの様な小さい組をどんどんと吸収し、ゆくゆくこの関東一円をまとめ上げる。その一心で」
海未「しかし、時は令和です。街中でドンパチかますのも普通やりません。やりたいとも思えない。そんな牙は、今の我々には無い」
すみれ「……」
海未「希は血を流すのを何より嫌います。そうでしょう?だから、自分を人質にし、一先ずはあなた達の安全を引き換えにした……そんな所でしょうね」
すみれ「では、園田組に来た台場の者はどうされたので?」
海未「さて。季節外れの海水浴に行くとか何とか言ってましたけど」ゴクッ
すみれ「……!!」
海未「希の所は……あなたの一家は穏健派です、それは本当に良い事ですよ。ただ、ウチは違う。私たちの住む街と、その子達に危害が及ぶかもしれないのならば」
海未「我が園田組、修羅の道をどこまでも突き進む覚悟です」
善子「……」ゴクッ
-
すみれ「……失礼致しました。親分さんのお気持ち汲み取れず、感情に任せてしまい……」
海未「構いません。良い子を持ちましたね、希は」
善子「……それで?すみれはここに何をしにきたの?」
すみれ「……みるみる台場組の奴等が街にのさばり出して……抵抗はしたんだけど、流石に数には勝てなくておめおめとここまで逃げて来たって訳」
善子「そう……仲間は?」
すみれ「散り散りよ。通達が来た時から、組はバラバラになって……皆、どっかに行ったわ」
善子「そう……」
すみれ「……組長、先だってお願いがあって参りました。お聞き頂けませんか」
海未「希とは縁あっての仲でした。力になれる事なら」
すみれ「ありがとうございます。人を探すのに、ご助力頂きたいんです」
海未「人を……」
すみれ「私の姉妹(きょうだい)分の、澁谷かのんという子を探して欲しいんです」
すみれ「一家再興の為、彼女の力は必要なんです……」
────
-
ー客間ー
<ザーッ…
すみれ「……」
───『承りました。澁谷かのんを探す様組員に私から伝えておきます』
───『あなたも行く場所が無いんでしょう。暫くウチでゆっくりしていきなさい』
───『身の回りの事は私が面倒見るわ。何かあればいつでも言って』
<ザーッ……
すみれ「……情けないったら無いわ」
<コンコン
すみれ「はい」
<「失礼します」
ガラッ
構成員「えーと……時、の、しのぎ?です。どうぞ」
すみれ「無理してそんな言葉使わなくても良いのに」
構成員「姉さんがそう言えって言うから!」
善子「ふふっ、って事でメシよ。お腹空いたでしょ」
すみれ「……頂きます」
───
-
善子「アンタらも食べなさい」
構成員「え、私らも一緒に良いんですか?」
善子「いつもコンビニでしょ。たまにはこんな一汁二菜を食っとくといいわ」
構成員「あ、はい……頂きます」
構成員(焼き魚にご飯、味噌汁……漬物は2切れて。少ないんだよなぁ)
構成員(ねぇ?戦時中じゃあるまいし)
構成員(戦時中ってこんなご飯食べれたの?)
構成員(いや知らんけど。適当言った)
善子「……」
すみれ「……」
善子「遠慮なく、お上がんなさい」
構成員「あ、じゃあ……」ペコッ
構成員「……もぐもぐ」
すみれ「……ご厚情に預かります」スッ
構成員(何あの紙……)
すみれ「……ずずーっ」
構成員「あでも、たまにはこういうのって良いな……」ズズッ
構成員「うん。すいませんおかわり下さい」パリッ
善子「ん。早いのね」
すみれ「もぐもぐ」
善子「……」
すみれ「……」スッ…
構成員(平安名さんも食べるの早……くない!?真ん中一口しか食べてないじゃん!)
善子「…作法にかなったおかわり、恐れ入ります」
構成員(合ってんだ……)
すみれ「……」ペコッ
-
もぐもぐ……
ずずーっ
構成員「……んぐっ!?ごほっごほっ」スッ
ドスッ
構成員「がっつくから……」
<テクテク…
海未「……」チラッ
構成員「んぐ……ごめんお茶取って」
構成員「はいはい」
海未「こら」
構成員「っ!?」
海未「ウチの飯は墓場行きですか?」
構成員「んぇ!?」
すみれ「……」チョイチョイ
構成員「え?あ、これ?」
善子「ご飯に箸ぶっ刺すとかマジヤバいから」
構成員「す、すいません……」
海未「……」
<テクテク
すみれ「ずず……」
構成員「あーびっくりした……」
構成員「言われてみれば、あんなの仏壇に供える時しか見ないもんね」
構成員「確かに縁起悪かった……」
善子「……」
-
すみれ「……ふぅ」
スッ
構成員(……は!?魚の骨持って帰んの!?)
すみれ「手厚きおもてなし、恐れ入ります」
善子「何のお構いもなく」
すみれ「お先に、失礼」
構成員「んぐっ」ペコッ
構成員「……」ペコッ
<テクテク……
構成員「もぐもぐ……何か凄いなぁ」
善子「金筋の客人って奴よ。私がアンタらを同席させたのは、あんな作法を覚えて損が無いから」
構成員「は、はぁ」
善子「確かに古いし細かいし……でもアンタらに足りない"礼儀"の正しさってのが目に見えて分かったでしょ」
構成員「……」
構成員「……え、魚の骨持って帰るのも作法なんですか?」
善子「魚の骨もしっかり頂いたって事で持ち帰って、後々見えない所で捨てるってこと」
構成員「ほぇ〜……」
善子「今日ピザの予定だったのにわざとこのメニューにしたんだから。あの子の礼儀作法をもっと見てみたかったし」
構成員(ピザ食べたかった……)
構成員「……善子さん、何でそんな詳しいんですか?」
善子「言ったでしょ。私は海未さんに教えてもらっただけ」
ーーーー
【風呂】
かぽーん
すみれ「はぁ……」
ザバーッ……
すみれ「……」
───『どこ行く気なの!?あんたまでウチからいなくなったら……!』
───『必ず一家の仇を討つ。それまで……お互い生き残ろう』
すみれ「……私だって、こんな命くらい」
<ザーッ……
────
-
【次の日】
<シトシト…
すみれ「……」
<善子「おはようさん」
すみれ「……ん」
善子「雨降る朝もはよから……健康ね」シュボッ
すみれ「取り柄はそれだけよ。もう10時だけど」
善子「ふー……朝には変わりないわ」
すみれ「……」
善子「見事な庭園でしょ」
すみれ「ええ……雨なのが、寧ろ」
善子「東京ど真ん中に今時珍しいわよね」
すみれ「……」
善子「それでも、ちゃんとした名家の家なんかとは比べ物にならないけどね。寧ろこじんまりしてて……」
すみれ「その方がいいわ……落ち着くもの」
善子「……分かるわ」
すみれ「……」
善子「……」
シトシト…
-
善子「……今時、って言うなら……アンタもなかなか時代錯誤甚だしいけどね」
すみれ「否定はしないわ」
善子「今日日、顔に傷作って草履にスーツで、他の組訪ね歩いてくるなんてさ……東映のを見てる気分よ」
すみれ「実録って奴ね。なまじ映画と違うのは、現実にゃ華も何も無いって事位」
善子「……」
すみれ「場所を追われ台場組に追われ、死にはしなくてもボロボロで……音ノ木坂まで」
すみれ「カッコよくもなけりゃ、美しくもない……私がこれからやろうとしてる事も、ただの仇討ちで"映え"なんか無いったら無いわ」
善子「やっぱ考えてんのね」
すみれ「渡世の義理よ。親に守られるヤクザの何て情けない事かって」
すみれ「一家の為なら、この身捨てる覚悟よ。あなただってそうでしょ」
善子「……まあね」
すみれ「……」
<シトシト…
すみれ「……ねぇ、何かやれる事は無い?」
善子「その言葉を待ってたわ。ウチも小さい所帯でね、人手はいつでも欲しいの」
すみれ「先に言わせてしまって、ごめんなさい」
善子「いいの。時代柄強制ってのもさ、何かヤだし」
すみれ「時代……ね」
善子「そうと決まれば行きましょう。説明は道すがらするわ」
────
-
ブーン…
構成員「〜♪」
善子「次、右ね」
構成員「はーい」
すみれ「……それで?」
善子「時代だ何だ言ってるけど、案外昔ながらってのは残ってるもんで」
善子「ウチが運営してる賭場があってね。そこの用心棒をしてもらいたくて」
すみれ「へぇ……園田組は博徒なのね?」
善子「いや、最近はもうそんな細かく区別する事も無いのよ。少しでも金になる事なら、大体の事は噛んでるって思ってもらって」
すみれ「……」
善子「安心して、薬だきゃ厳禁だから。そればっかりはマジで、やってる奴はまとめてぶっ殺すわ」
構成員「こわ……」
善子「あんたは大丈夫でしょうねー?パチンコばっかやって金無いからって、そっち走ってないでしょうねー?」コンコン
構成員「あ、あたしも薬は大っ嫌いなんで!」
善子「ならいいけど」
すみれ「……用心棒ね。別にそんな腕っ節に自信ある訳じゃないわよ」
善子「そう?まあでも、威圧感は半端ないからそれだけでも良いけどね?」
すみれ「…え、そう?」
善子「ええ」
構成員「平安名さん、結構怖いですよ」
すみれ「……まあ、良いか」
───
-
【パチンコ屋】
構成員「……到着です」
善子「ん」
すみれ「ここ?ただのパチンコ屋じゃ……」
善子「まあまあ」
ガチャッ
バタンッ
<「……あ、お疲れ様ですー!津島のカシラ!」
善子「お疲れ、かすみ。調子は?」
かすみ「ぼちぼちですね。最近は規制規制で、本業の方も回転数落ちてますけどっ」
善子「そっちはどうしようも無いから……ちょっと"奥"に通して」
かすみ「了解!」
<ウィーン
ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ…
<『SANYO!』
<『あたァッ、ほゥわッたぁッ!!』
<『超強欲ボーナス!』
すみれ「……うっさ」
善子「アンタは打たないの?」
すみれ「好きじゃないの」
善子「そ。良い事ね」
構成員「……おっ、これいいな」ポチポチ
かすみ「こちらです」ガチャッ
すみれ(……事務所?)
-
かすみ「そちらは新しく入られた方ですか?」
善子「客分の平安名すみれよ。暫く面倒見る事になってね」
すみれ「宜しく」
かすみ「そうでしたか。じゃ、ここに来るって事は……」
すみれ「用心棒させて貰うらしいわ。取り敢えず下見ってとこ?」
善子「そゆこと」
かすみ「なるほどです。ではこちらへ」
<ガコンッ
すみれ「書類棚の裏……」
かすみ「こっちは組員専用入口です。お客さんは地下の非常階段と店横の裏口から入ってきますよ」
カツカツ…
善子「……うわっぷ!ちょっとかすみ!蜘蛛の巣張ってんだけど!?」
かすみ「ごごご、ごめんなさい!暫くこの通路は使ってなかったので…」
すみれ「凄いわね……こんなのわざわざ作ったの?」
善子「いんや、元々ここいらはパチ屋が建つ大昔から賭場だったのよ。海未さんのひいひいお祖母様……先々代位前から、ウチの物って訳」
かすみ「ここも歴史が長いんです。ま、前時代の遺物ですけどね」
善子「言うじゃない、かすみ」
かすみ「い、良い意味でですよ!?」
すみれ「殆ど悪口よ」
<「……った張った!」
すみれ「……!」
-
<ワイワイガヤガヤ…
壷振「さあ半方、半方無いか!」
客「半だ半だ!!」
客「丁丁丁!」
親「よしっ、こいこい!」
客「クソッタレ、カスじゃねぇか!!」
客「シゴロだ!シゴロだぜおい!」
客「悪ぃな、ピンゾロだ」
すみれ「……凄」
善子「ちょっとしたカジノよ。古き良き日本のね」
かすみ「あ、忘れない内に提案なんですけど」
善子「うん……え今?」
かすみ「ちょっと前に、人気なかったおいちょかぶの一角を閉鎖したじゃないですか?あそこ、麻雀なんてどうです?」
善子「……ふむ」
かすみ「裏雀荘の摘発を受けて、やる場所が無くなって流れたお客とかが最近多くて。ここで麻雀出来る様になったら、お客も増えると思うんですよね」
善子「……分かった、組長に具申しとく。OKだとしても、そんなに卓は置けないけどね」
かすみ「お願いします!」
すみれ「……今は用心棒はいないの?」
善子「そこかしこにいるウチの組員が代わりなんだけど、心許ないのよ。あなたの仕事としては全体の見張り───木戸番ね」
すみれ「あーね……分かったわ」
善子「一応下っ端達のまとめ役がいるから紹介しとくわ。凛!」
-
凛「絶対半にゃあっ!!!」
壷振「勝負!」
凛「にゃにゃにゃにゃ……!!」
壷振「……ピンゾロの丁!」
凛「んにゃあぁッ!!!」
客「はははっ、凛ちゃんまた負けた!」
凛「もうすってんてんにゃあ……あ分かった、イカサマでしょぉっ!?」
壷振「んな訳無いだろ!!」
善子「こら」コツンッ
凛「あたっ。あっ、善子ちゃん!」
すみれ「ちゃん付け……」
善子「コイツは良いのよ、厳密にはウチの子じゃないし。また客に混ざってやってんの?」
凛「暇だったからさー」
善子「ばか、もう貸さないわよ?何なら次はウチの子会社からトゴで貸したげよっか?」
凛「それは勘弁……ん?あなたは?」
すみれ「私?平安名すm───」
善子「待った!」
すみれ「は?」
凛「にゃ?」
善子「ごにょごにょ」
凛「ふんふん……」
すみれ「……何これ?」
かすみ「さぁ……ただ、カシラがあの目の時は大抵何かしら企んでますよ」
善子「……」ポンッ
凛「……お控えなすって!」
すみれ「───!!」
かすみ「え急に?寅さんですか?」
善子「……」ニヤ
-
客「なんだなんだぁ?」
壷振「おっ、余興ですか?」
凛「賭場の盆中でお姉えさんには失礼さんにござんすが、どうぞお控えなすって!」
すみれ「……」チラッ
善子「……」クイッ
スッ
客「おっ、姉ちゃんもかい?」
かすみ「えぇっ?!」
すみれ「ありがとうございます。お言葉にございますから、控えさせて頂きます」
凛「早速お控えありがとうござんす!手前持って生まれた口不調法、もし前後間違えましたら御免を蒙ります!」
ザッ
凛「手前、生国と発しまするは東京秋葉原は音ノ木坂でござんす!親を持ちません風来坊で、寝床は今も昔も盆の上!」
凛「渡世の義理故、園田組に御免を蒙っております!姓は星空、名は凛と申します!」
すみれ「…」
凛「御覧の通りの粗忽者でござんす!発します仁義も後や先、後や先は右や左となり右や左は……」
かすみ「……凛、そんな饒舌だっけ?」
凛「……仁義半ばにして自慢となり法螺となり、打てば響かぬ太鼓となり!もし間違いましたら、あっ御免蒙ります!」
すみれ「……ふふっ」
善子(…やあっと笑った)
すみれ「ありがとうございます。丁寧なるお言葉に対し申し遅れまして失礼さんにございます」
すみれ「手前生国と発しますは渋谷神宮。姓名の儀、姓は平安名、名はすみれと申すしがない旅の者です。縁あって園田組親分さんに御免蒙ります」
壷振「うんうん、やっぱこんなのが1番カッコイイわ」
客「すげぇ、任侠物観てるみてぇだ」
すみれ「向かいます上さんとはお初にございます。お見掛け通りの不束者ですがお見知り置かせられまして、万端宜しくお頼もうします」
凛「ご丁寧なる仁義ありがとうございます!どうぞ、お楽になすって!」
すみれ「それではご仁義になりません、お先に楽になさって」
凛「へい!」
すみれ「あらっ」コテッ
客「はっはっは!」
-
壷振「凛、そういうのは大体一緒に楽にするもんだろ!」
凛「あれ?そうだっけ?間違えたにゃ!」
客達『はははは……!!』
かすみ「ふふっ、締まらないですね」
善子「……さあさ、まだまだお天道様は登る途中!ウチらは陰に隠れても、寂しい懐にゃ日の目を浴びさせていって!」パンパン
客「寂しいは余計だ!」
客「よっしゃ、もうひと勝負!」
壷振「そう来ねぇとな!さあ張った張った!」
<ワハハハ…!!
すみれ「……いい所ね」
善子「暖かいとこでしょ」
凛「す・み・れ・ちゃん!これからここで働くの?」
すみれ「ええ、暫くご厄介になるわね」
凛「そっか、一緒にがんばろーね!ま、楽に行こーにゃ!」
すみれ「はいはい……ふふっ」
善子「……」ニコッ
かすみ「まだこんな時間なのにこの賑わい。眠気覚ましにピッタリの余興でしたね」
善子「気合い入れだけじゃないけどね」
かすみ「?」
善子(ずっとしかめっ面じゃ、疲れるでしょ)
すみれ「……何よ?」
善子「いーえ何でも。さ、今日のところは帰るわよ」
すみれ「え、帰るの?」
善子「今日は紹介だけ。バイトも面接の日から働いたりしないでしょ」
凛「今の面接だったの?」
善子「ものの例えよ。これからすみれを宜しくね、凛」
凛「はーいにゃ!」
善子「ん。じゃ行くわよ」
すみれ「了解」
────
-
<ペカッ
構成員「おっと、100ゲーム以内。こりゃ良いの掴んだかな?」
善子「くらっ!なーにペカらせてんのよ!」ベシッ
構成員「あだっ!す、すいません!」
善子「下にいないと思ったら……まあいいわ。折角の当たりは手放したくないでしょ」
構成員「ま、まあ……」
善子「今日はここで賭場の見張りしてなさい。デコからのタレコミは無いけど、万が一を考えてね。はいお駄賃」ピラッ
構成員「え?!あ、ありがとうございます!」
すみれ「……」
善子「何かあったらすぐ連絡よ。報連相ね」
構成員「おす!お疲れ様です!」
<ウィーン
シトシト…
善子「ちっ、止まないわね。取り敢えず飯でも行きましょ」
すみれ「……ええ、運転するわよ」
善子「ありがとう。頼むわね」
バタンッ
ブーン…
────
-
【小料理屋】
善子「……えーと、瓶ビールで」
すみれ「え?」
善子「あごめん、飲めない?」
すみれ「いや、車……」
善子「あー……まあ若いの呼んで持ってかせるわよ。飲める?」
すみれ「……頂くわ」
善子「ん。それと焼き鳥盛り合わせと、チャンジャと、きゅうりのたたきを」
店員「かしこまりました」
すみれ「……」
善子「……アンタ、煙草は?」
すみれ「吸うけど…」
善子「持ってる?持ってないならあげるけど」
すみれ「あるから大丈夫。ありがとう」スッ
善子「ん」シュボッ
店員「失礼します、瓶ビールです。おあときゅうりのたたきです」
善子「どうも」
すみれ「…」ペコッ
善子「……ほい」
すみれ「……頂きます」
トクトクトク…
シュワー……
すみれ「じゃあ」
善子「ああ良いわよ良いわよ、自分で入れるから」シュワー…
すみれ「させてよ…」
善子「……乾杯」スッ
すみれ「……」
キン…
-
善子「んぐ……ぷはっ、真昼間から飲むビールが1番美味いっ!」
すみれ「ぷっ……ごくっ」
善子「……」
すみれ「…何?」
善子「ホント……事情は分かってるけどさ」
すみれ「?」
善子「もっと笑っても損は無いわよ」
すみれ「……さっきの……凛か。善子の差し金ね」
善子「あの子のくるくる回る口上は面白かったでしょ?フーテンって奴よ。元はどっかの組の流れもんらしいけど」
すみれ「それは良いけど、笑うとか何とかってのは何」
善子「暗いってのよ。そりゃ事情が事情だから、自分だけが楽しくやるなんてのはアンタの性質上、受け入れられないんでしょうけどね?」
すみれ「……」
善子「ずっと閉じこもるだけ閉じこもっても、崩れるのは自分の心だけよ」
すみれ「親がとっ捕まって、姉妹分が駆けずり回ってるかもしれないってのに───」
善子「アンタはアンタ、姉妹は姉妹!そして親分は親分!子としての本分遂げたいのは分かるけど、それじゃアンタが持たないって言ってんの!」
善子「台場の奴等に喧嘩売ってきたから、そんな生傷作ってウチに来たんでしょ。みっともなくとも、何がなんでも生きる為に」
すみれ「それは……」
善子「今の時代はね、相手を殺りさえすれば勝てるって時代じゃないの。これだけは分かっときなさい」
すみれ「……」
善子「アンタが死んじゃ、元も子も無いって事。あのままのアンタじゃ、死に向かってる様にしか見えなかった」
善子「園田組の客分として、若頭として。アンタにそんな事はさせないわよ。覚悟しときなさい」
すみれ「…ごめん」
-
善子「あーやーまーるー事じゃなーいの!」ペシッ
すみれ「あうっ」
善子「今は耐え忍ぶ時よ。どうせ生きるなら、生きたもん勝ち」
すみれ「……そうね」
店員「失礼します、チャンジャと焼き鳥盛り合わせです」
善子「ありがとう。さ、食べなさい」
すみれ「……もうひとつ聞かせて」
善子「ん?」
すみれ「何でそんな、その……優しくしてくれるの?」
善子「そりゃ客分だからよ」
すみれ「それだけで?」
善子「頭の古いアンタなら分かるでしょ。客分ってのはそれ相応に扱わないと」
善子「……ま、それ抜きにしても。同年代のアンタを……何かほっとけないのよ」
すみれ「……!」
───『ほっとけないんだよ。すみれちゃんは』
───『だから、私がついていてあげないとね!』
善子「……すみれ?」
すみれ「……いえ、ありがとう。善子」
善子「いーの」ゴクッ
すみれ「食べていい?」
善子「勿論」
───
-
【原宿、元神宮一家事務所】
【現 台場組直参 朝香興行事務所】
果林「もうちょっと右……そうそう、看板はちゃんと掲げないとね」
希「あーあ……ウチの事務所が」
果林「居抜きさせてもらうわ。ま、看板変えただけよ?」
希「でもこれで事実上、完全に元の神宮一家は……無くなったわ」
果林「誰だって死にたくなんか無いでしょう。生きる為、生き残る為、アナタがしたのは英断だったのよ」
希「……」
果林「さて、私はちょっとビッグサイトでベンチャー企業の展示会があるから行ってくるわ。来年出展の下見にね」
希「ウチは?お台場からさんざ連れ回しといてほっとくん?」
果林「朝香興行傘下としての神宮一家よ?普通に事務所にいればいいじゃない」
希「ゆっるいなぁ。他組織の元ボスを野放しにしとくん?」
果林「あからさまに敵対してたり戦争してたとかなら話は別だけど、希のとことは別に何も無かったじゃない」
果林「だから監禁したり、監視とかもしないわよ。そんな事大っぴらに出来る時代じゃないもの」
-
希「大っぴらやなくても隠れてすればええやん」
果林「……何、されたいの?拘束」ズイッ
希「…イヤや。痛いの嫌いだもん」
果林(誘い受けね)
果林「じゃあ大人しく私の帰りを待ってなさいな」
希「……」
果林「行くわよ。車出して」
構成員「はい、少々お待ちを────」
パァン…!!
構成員「───あ?」ドロッ
ドサッ
果林「……───!!!?」
希「あかん、ハジキや!!」
希(外したな、取り敢えず逃げて……!)
構成員「果林さんを守れ!!」
構成員「鉄砲玉がいるぞ!!」
<?「……クソッ!!」タタッ
果林「逃がさないで!!」
構成員「待てコラァッ!!!」タタッ
構成員「果林さん頭下げて!!」
構成員「アンタもだよ!」
希「……っ!」
───
-
善子「……どぅあぁからぁ!!ひっく、あたしはヨハネだって言ってんでしょ!!?」
すみれ「アンタがヨハネなら、私は何かしらねぇ!?時代遅れのグソクムシ!?」
善子「どっからグソクムシ出てくんのよ!」
すみれ「わっかんない!」
すみよし『あっははは……!!』
?「……うるせぇな」
善子「……あ?」
?「うるせぇって言ってんの」
すみれ「……」
善子「何?……半グレさん」
半グレ「あ?」
すみれ「待った。騒がしくしてごめん。気をつける様言っておく」
半グレ「……」
すみれ「行くわよ、善子」
善子「んにゃー……」
<テクテク
半グレ「……」クイッ
半グレ「やる?」
半グレ「そこそこ持ってそうじゃんね」
ゾロゾロ…
すみれ「……」
善子「……すみれ」
すみれ「ええ。どうする気?」
善子「騒がしかったのは私だもんね……かと言って、素直にボコられる気は無いわ」
すみれ「やるの?向こうは……4、5人かしら」
善子「やる分には大した事は無いけどね。いきなり襲われない様、この大通りを歩き続けて上手く裏に行って」
すみれ「分かったわ」
テクテク…
────
-
【裏路地】
善子「……ここらでいっか」
すみれ「……ん」
善子「向こうからどうせ話しかけてくるしね」
すみれ「向こう待ちなの?」
<半グレ「ねーねーおねーさん達!」
善子「ほらね」
すみれ「……」
半グレ「さっきの迷惑料としてさ、金払ってくんない?」
半グレ「2人併せて10万で良いよ。そんくらい持ってそうだしさ」
半グレ「そっち系の人でしょー?あるよね、そんくらい」
善子「うるさくしたのは悪かったわ。ただ10万か……持ってないわよ。にしても高過ぎるしね」
半グレ「そんくらいも持ってないの?」
半グレ「ヤクザもたかが知れてんね」
すみれ「ッ……」
善子「まだ待って、すみれ」ボソッ
半グレ「どーする?」
半グレ「……ヤクザでしょ?じゃあいいじゃん」
チャキッ
すみれ「光り物抜いて来たけど、まだ?」
善子「……殴りかかってきたら、あとはご自由に。私もそうする」
-
半グレ「……」スッ…
すみれ「……」
半グレ「じゃあ、あるだけ出して。顔に傷が付く前に」
半グレ「まあもう傷だらけだけどね。また増えるよー」
半グレ「何なら絆創膏の上から刺しちゃえ!」
善子「……」
すみれ「……」
半グレ「何とか言えよ!」ヒュッ
ザクッ
すみれ「……っ」タラーッ
半グレ「あーあ、折角キレイな顔に傷が────」
ドゴッ!!
半グレ「がッッ……!?!!」
ドサッ
すみれ「……開戦の合図よね」
半グレ「て、てめぇっ!!」
ズドォッ!!
半グレ「ごぼォっゥぇッ!!?」
<ガッシャァン!!
善子「イエス。仲間傷付けられちゃあ黙ってらんないわ」
半グレ「ッざけんなぁァッ!!!」ブンッ
ゴンッ!!
善子「……い゛ッづぅ……!!」
すみれ「善子!!」
-
善子「大丈夫、効いちゃいないわあッ!!」ガシッ
半グレ「ぐえっ!?」
善子「おらァッ!!」
ボゴォッ!!
半グレ「ごっふァッ!!?」
すみれ「なら良いけど……ッ!!」ヒュッ
バキィッ!!
半グレ「あだぁっ!!?」
すみれ「こんな光り物、ダサいからやめなさい」ポイッ
<カラーン
半グレ「知るかよ!」
すみれ「喧嘩は素手の方が良いわよッッ!!」ヒュッ
ベキィッ!!
半グレ「あぎゃァッ!!?」
ドサァッ…!
半グレ達『』
善子「若い癖に、もう終わり?」
すみれ「こんなもんでしょ」
善子「コイツらこそ気を付けるべき奴等よ。ウチらと違って、まともな統制が無いし」
すみれ「その代わり瓦解しやすいじゃない」
善子「まあね……」
<「抑えろ」
善子「……は?」
すみれ「───っ!?」
ガシッ
-
善子「ちょっ、のびてたんじゃないの!?」
半グレ「うるせぇっ!!」
すみれ「離せ……ッ!!」
半グレ「メイさん!!コイツらっす!!」
メイ「お前?喧嘩売ってきたの」スッ…
ヒョイッ
すみれ「吹っかけてきたのは、コイツらよ」
善子「メイ、だっけ?そのナイフどうする気?」
メイ「お前に関係ねぇ。これをどうしようと私の勝手」
半グレ「こいつが最初に殴ってきたんです!!」
メイ「へー」
すみれ「だから、最初は───」
ザクッ
すみれ「───っ、あ」
ポタッ、ポタポタッ
メイ「じゃあお前からな」
善子「……す、すみれぇッ!!!」
すみれ「っ゛、い゛……」
メイ「痛ぇか、腹?ウチの奴等の方が痛いと思うけどな。ヤーさんに喧嘩売られたって言や、サツも動いてくれっかな」グッ
すみれ「……ッ゛!!」
メイ「……ンだ、その目」
すみれ「……」
メイ「何とか言えよコラァッ!!!」
すみれ「……どうぞ」
ポツポツ…
メイ「……は?」
すみれ「半グレ気取るってんなら……1人くらい殺してみろってんのよ」
ザーッ…
-
メイ「……」
ゴツッ
半グレ「テメッ───」
メイ「頭突きになってねぇぞ」
すみれ「頭突きするつもりなんか無いわよ」
メイ「何お前、死にてぇの?」
すみれ「……」
善子「すみれ、アンタ……」
メイ「死にてぇのか、いいよ。しょうがねぇから手助けしてやる」
すみれ「あんた、親は?」
メイ「あ?関係ねぇだろ」
すみれ「親は?」
メイ「……いねぇよ、だから何だよ」
すみれ「私もいない。厳密に言えば、知らない」
すみれ「神社に捨てられてたから」
メイ「……」
すみれ「拾って育ててくれた親がいる。その人が……死ぬかもしれない」
すみれ「私と同じ様な子もいる。その子はきっと今頃、仇討ちの為に駆け回ってる」
メイ「グダグダグダグダ何を……」
すみれ「私はもう……どうせ何も出来ない」
善子「……!」
-
すみれ「親1人助けられなくて、逃げて、何も出来なくて」
すみれ「……死んだっていいわ。こんな人間」
メイ「……」
善子「すみれぇッ!アンタ私の言った事忘れたの!?死んだって何も───」
半グレ「メイさん!殺っちゃって下さいそんな死にたがり!!」
メイ「……」
すみれ「半グレに命握られてさ。何が渡世の義理よ、情けないったら情けないわ」
すみれ「……いいわ、もう」
善子「すみれェッ!!!」
メイ「……やなこった」
ズシャッ…
すみれ「いッ……!」
メイ「死にたがりは殺らねぇ、殺ってやらねぇ。ウチの奴等にした落とし前として、生きやがれ」
すみれ「……」
メイ「そいつら離せ。行くぞ」
半グレ「で、でも」
メイ「あ?」
半グレ「……はい」スッ…
善子「っ……!」バッ
メイ「じゃあな。雑魚が」
<スタスタ…
善子「……すみれ」
すみれ「……」フラッ
ドサッ…
善子「この、バカ……!!」
ザーッ…
────
-
【朝香興行 事務所内】
希「……」
果林「あなたの差し金?」
かのん「……ッ、離せ!!」
構成員「動くんじゃない!」チャキッ
希「アンタの所で軟禁されててどうやって連絡すんの?」
果林「……」
希「監視下じゃなくても管理下だったのに、外の奴らに連絡なんか出来へんよ」
希「やっとお台場から出て来れて今日、ここに来れたのに。それをどうやってこの子に伝えるん?」
果林「じゃあ、この子のやった事に関係ないのね?糸引いてないのね?」
希「何も知らんよ。ウチは」
かのん「……」
果林「……そう。ならいいわ」
希(……今はこう言うしか無い。ごめん、ありがとうかのんちゃん)
かのん(……それで良いです、希さん……!)
果林「えーと、澁谷かのんちゃん?」
かのん「……」ギロッ
果林「ふふ、そんな睨まないでよ」
かのん「殺すならとっとと殺して」
果林「そんな事しないわよ。今日び死体隠せるとこも少ないの。海も海保がうるさいし、山も警察が常駐してるしね。正義感のお強い田舎モンも多いし」
かのん「……」
果林「でもね、さっきのおイタの事は謝ってもらわないと。ウチの子が死んでないにしろ入院しちゃったから」
かのん「そのまま死んでりゃ良かったんだ」
果林「ふふっ、血気盛んね」
希「……っ」
-
果林「さて、落とし前としてあなたにやって欲しい事があるんだけど」
かのん「は?」
果林「鉄砲玉として来たのなら、鉄砲玉として任務を果たして欲しいの」スッ
かのん「……」
果林「この子を始末して」
かのん「……!」
希「海未、ちゃんを……」
果林「この子、顔に似合わず意外と強硬派っぽくてね。ウチの組の使者を死者にしたみたいで……やだ、愛のが伝染った?」
果林「大人しくウチに下る気が無いみたいだし、かと言ってほっとけば歯向かうだろうし。なら親が死ねばバラバラになって組は霧散するでしょう、小さいとこだし」
果林「希がウチに来たあとの、この事務所みたいにね?もぬけの殻だったものね」
希「やかましいわ。皆生きてくれてるんなら万々歳よ」
かのん「希さん……」
果林「あ、希のお友達なんだっけ?説得出来るならしてもいいけど、頑固そうだし無理じゃない?」
希「……まあ、無理やろね」
果林「でしょ?という事で、あなたに行ってきてもらうわね」
かのん「イヤ。台場の奴らの言う事なんか聞けない」
果林「あら?状況が分かってなかったのね」クイッ
構成員「……」チャキッ
希「……っ!!」
かのん「希さん!!」
果林「あなたの大好きな希はこっちの手の中よ?あなたが職務を遂行出来ないのなら、こっちにも考えがある」
かのん「こンの……ッ!!!」
果林「そうね……1週間あげる。来週までに園田海未を殺れなかったら、あなた共々希も殺す。神宮一家は、終わり。これは譲歩よ」
かのん「……!」
果林「武器は貸したげるわ。準備出来たら、いつでも実行して。それまで希はウチで預かっておくから。良い?」
かのん「……」
果林「……分かったわね?澁谷かのん」
構成員「……」チャキッ
希(…かのんちゃん……!)
かのん「……はい……ッ」
────
-
【園田組 邸内】
<ザーッ…
すみれ「……ん」
善子「……おはよう、ねぼすけ」
すみれ「……あれ、私……半グレに絡まれて」
善子「覚えてないの?」
すみれ「喧嘩したのは覚えてるんだけど……何があったっけ」
善子「……」
<ガラッ
すみれ「!」
海未「……おはようございます、すみれ」
すみれ「海未さん……」
スッ…
海未「体調は如何ですか?」
すみれ「私……刺されたんですか」
海未「その内に思い出せると思いますけど、その通り。あなたは半グレに腹を刺されてます」
海未「割と深かったので……3日間寝っぱなしでしたよ。余っ程死んだのかと」
すみれ「……」
─── 『死にたがりは殺らねぇ、殺ってやらねぇ』
───『ウチの奴等にした落とし前として、生きやがれ』
───『じゃあな、雑魚が』
すみれ「……っ」パシッ
善子「思い出したみたいね」
海未「あなたがウチに来てすぐ気付きましたけど、かなり直情的な子ですね」
すみれ「……」
海未「……古いやり方に固執し、親を守るという題目のもと、自分を正当化しようとしている節がある。未熟な、駆け出しにありがちな事です」
善子「海未、さん……?」
すみれ「────っ!!!」
ドスッ
すみれ「い゛ッッ!!?」
善子「うわ、傷口……」
-
海未「怒ってるんですよ、すみれ」
グググ…
すみれ「あ゛ッ、いッ゛……!!?」
海未「親が囚われ姉妹分も所在不明、痛めつけられここまで逃げてきたあなたの心中……察するに余りあります」
海未「ですがそれはそれ。半グレ共に襲われる中、ウチの若頭を放っておいて自分だけ死のうなんざ……随分義理に欠いてませんか?ん?」
すみれ「……っ!!」
海未「あなたは我が園田組の大事な客分です。だからこそ善子はあなたを守り、仁義によってあなたも善子を守って欲しい」
海未「でもね、例えどうなっても私は、死んで欲しくなど無いんです。あなた達のような良い子は」
すみれ「…」ポロッ
善子「……」
すみれ「私なんか……生きてちゃダメなんです。かのんも希さんもきっと、死ぬ気で頑張ってるのに」
すみれ「私1人だけ逃げて海未さんに世話になって、善子に面倒見てもらって……こんな、こんな情けないヤクザがいますか!?」
海未「だからって死を選ぶのは愚か者のする事でしょうが!!!」
すみれ「…!」
海未「かのんや希が何故頑張っているか、あなたや他の者に生きていて欲しいからでしょう!!?そうやって受けた恩があると自覚してるなら」
海未「あなたは生きる事が恩返しになるんでしょう!!死んだって、なンっの得にもなりゃしないんだから!!!」
善子「……」
すみれ「海未さん……」
海未「死ぬな、平安名すみれ。情けなくても、みっともなくても生きていきなさい」
海未「あなたはもう、私の子ですよ」
すみれ「……っ、ぐすっ……」
善子「……お腹は?」
すみれ「ひっく……穴空いてる」
善子「知っとるわ。空いてるかって」
すみれ「……空いてる」
海未「ご飯にしましょう。善子」
善子「はい。ピザにしましょっか」
すみれ「米が良い……」
善子「いや炊くのダルい……」
────
-
────
【雀荘】
オーナー「園田組について?」
かのん「……」
オーナー「うーん……その園田組の賭場に誘われてっけどね。そこで組の存在知ったくらいだし、あんま他に知らないんだよなぁ。小さいとこっぽいしさ」
かのん「賭場?」
オーナー「そ。ちょっと行ったとこにパチ屋があるんだけど、そこの地下にそこそこ大きい賭場があるんだよ」
かのん「そこに園田組の奴は来るの?」
オーナー「常駐してんのは下っ端とかだけだよ。たまーに若頭が来るくらいで。私も見た事ないよ」
かのん「……」
オーナー「そういや、私を誘ってきた園田組の奴が今日来るよ。私も釈放されたばっかで話すのは久しぶりなんだ」
オーナー「あなたも同業なんでしょ?」
かのん「……うん、雀荘じゃないけどね。カードとかそっち」
オーナー「レトロな賭場だから西洋系のギャンブルが入れる余地あるかなぁ」
<ガチャッ
かすみ「お邪魔しまーす!ムショでも元気だった?」
オーナー「何とかね。また活動出来そうなら頼むよ」
かすみ「丁度持て余してるスペースがあるからさ、そこに食い込める様頼んでみるよ。あれ?あなたは?」
かのん「同業です。オーナーさんとは知り合いで」
オーナー「ちょっとかすみに話があるらしいんだ。あ、ちょっとコンビニ行ってくる。タバコ買ってくるわ。なんかいる?」
かすみ「うーん…あ、じゃあG's買ってきて欲しいです!」
オーナー「はいはい、自分で買っておけばいいのに」
<ガチャッ
-
かすみ「賭場には来ないよ」
かのん「知ってる。でも若頭は来るんでしょ」
かすみ「あなたの狙いは園田海未でしょ。鉄砲玉なら鉄砲玉らしく屋敷に突っ込めば?」カチッ シュボッ
かのん「無駄死にさせる気なら意味無いよ。こんな事で死んでやらない」
かすみ「ははっ、どんな屋敷想像してんの?ただの小さい弱小組織の、その辺の普通の家だよ?」フー
かすみ「まあちょっと大きいくらい。場所も調べりゃ出るよ。組員も全然いない。ウチらに比べればね」
かのん「だからってたった1人で屋敷突っ込んで勝てる程無敵じゃないんで」
かすみ「行けると思うけどなぁ。別に」
かのん「あなたは何なの?台場組なんでしょ?朝香に言われて来たけど」
かすみ「うん、潜入。園田と津島って凄い甘ちゃんで、それっぽい事言って同情誘ったら普通に入れたんだよね」
かのん「……」
かすみ「でもかすみん結構頑張って、賭場の会計任せられる位にはなったんですよ〜?んで、時期が来るまでずっと賭場にいたって訳」
かのん「時期って何?」
かすみ「園田組壊滅の時期だよ。あなたが急先鋒ってこと」
かのん「っ…」
-
かすみ「まあでもあなたの仕事は組長の襲撃だけ。賭場とかの方はかすみんが請け負うから」
かのん「……じゃあとっとと終わらせてやるから、園田の行動予定とか教えてくんない?」
かすみ「基本ずっと屋敷から出ないよ。どこもそんな感じじゃん」
かのん「あなたのとこの朝香はベンチャー企業運営してるくらいだけど」
かすみ「我ら台場組は時代の最先端を行ってますから!」
かのん「……ふん」
かすみ「……あ、でもあった。外出てくる時」
かのん「いつ?」
かすみ「明後日。先代の墓参り。連れていくのも構成員1人か2人と若頭だけ」
かのん「随分少ないんだね」
かすみ「時代柄、筋者が大っぴらに動いたらうるさいもん」
かのん「……場所は?」
かすみ「音ノ木坂共同墓地の1番奥。時間は知らない。ずっと張ってりゃ良いんじゃない?」
かのん「……了解」
かすみ「あ、1人で動いてね。協力者なんかいないと思うけど、今ゾロゾロ動かれても困るだけだから」
かのん「……」
───
-
【賭場】
壷振「さあ丁方無いか丁方無いか!?」
客「半だ!」
すみれ「……」
凛「丁にゃあ!」
壷振「勝負……ゴゾロの丁!!」
客「あぁ……」
凛「やったぁ!!」
すみれ「やっと勝ったのね、凛」
凛「危うくすっからかんにゃ、ギリギリだよぉ」
すみれ「そんなになるまでやるから……」
凛「……すみれちゃんて、いつも傷だらけだね」
すみれ「……何、急に」
凛「ううん……さあもうひと勝負にゃ!!」
すみれ「……」
───
-
客「じゃあまたな、凛」
凛「ばいばい!また来てにゃ!」
すみれ「さて……かすみは?」
凛「奥で計算中にゃ。半年の決算だから時間かかると思うよ」
<「あら、そういえばそうだったわね」
すみれ「善子、今来たの?」
善子「うん。明日の準備もあってね」
凛「明日?何かあるの?」
善子「先代の墓参りがあるのよ。あ、すみれも来てね?」
すみれ「良いの?部外者なのに」
善子「あんたはもう殆ど園田組よ」
すみれ「……そう」
凛「じゃあ、すみれちゃんもゆくゆく盃交わすのかにゃ?」
すみれ「いや、それは……」
善子「考えといて。別に代紋違いの盃交わしても大丈夫でしょ?姉妹分、ならない?」
すみれ「まあ……私は良いけどさ」
善子「……あなたの一件が、片付いたらね」
すみれ「……うん」
構成員「善子さん、すみれさん。今いいですか?」
善子「ん?」
構成員「この写真を見て下さい」ピラッ
すみれ「写真?」
構成員「最近、屋敷周辺にいた女なんです」
すみれ「……!!」
善子「すみれ?」
すみれ「かのん、だわ」
善子「!!」
構成員「すみれさんから聞いていた特徴と一致してます。近くにいるかもしれませんよ」
すみれ「何で、ここに……」
善子「すみれがここにいる事を、どこかで知ったのかしら」
すみれ「探してきていい?」
善子「ええ、勿論よ。ただもう夜遅いし、まだ近くにいるとは……」
すみれ「……」
-
<かすみ「うーん……」ガチャッ
善子「あら、かすみ」
かすみ「……合わないんですよね。幾らか」
善子「……は?」
かすみ「今月までの合算と最終的な帳簿にズレが出てます。これ、幾らかかすめ取られてると思うんです」
凛「り、凛そんな事しないよ!?」
構成員「自分もですよ!?」
すみれ「……」
善子「全員動くな!!」
構成員「!」
善子「すみれ、一応アンタもよ」
すみれ「勿論。しっかり調べて」
善子「いくらくらい?」
かすみ「そこまで高い額ではないですけど。30万程」
善子「現金としてパクられてる訳?」
かすみ「恐らく。考えられる容疑者は私、凛、すみれさん、現金洗浄員のあなたです」
構成員「…」
善子「あんた、パチンコ負けてるからって」
構成員「しないですよ!!調べてください、現金なんて持ってないですから!!」
すみれ「……」
善子「……家も調べるわよ」
構成員「どうぞ」
善子「すみれ、凛、かすみ、あんた達もね」
かすみ「勿論です」
凛「凛じゃないにゃあ……」
すみれ「疑いかけられちゃ仕方ないわ。大人しく受け入れなさい」
善子「はぁ……今日は寝れないかもね」
───
-
【構成員自宅前】
善子「ふー……」
すみれ「……」
プルル
構成員「……!」ピッ
凛「来た!」
かすみ「……」
構成員「うん、うん……分かった」
ピッ
構成員「かすみさんの自宅からは何も。凛さんはそもそも賭場で寝泊まりしてるんで、潔白はかすみさんが証明済みです」
善子「すみれも今は園田組に住んでるから調べるのは簡単だったわ。そもそも、荷物も殆ど何も無い状態で来てるしね」
かすみ「……では、残るはあなただけですね」
構成員「分かってます……どうぞ」
すみれ「お邪魔するわ」
ガチャッ
善子「……案外綺麗じゃない」
構成員「これでも綺麗好きなんですよ」
かすみ「ふーん……」
凛「あ、ゆいがおーだ!可愛いにゃ」
すみれ「何これ?」
凛「すみれちゃんゆいがおー知らないの?見てこれ、ちょー可愛くない?」
すみれ「……まあ、うん」
善子「タンスとかもひっくり返すけど、いい?」
構成員「勿論です。潔白ですから」
すみれ「……」
───
-
善子「ふう……あんたオシャレに興味無いのね。お陰で戻すのに時間かかんなかったわ」
構成員「まあ……」
凛「うん、でも何も無かったね」
善子「ええ。ごめんね、疑って」
構成員「いや当然の事ですし!でも、どうしましょうかね」
かすみ「……」ガサゴソ
善子「かすみ?」
凛「ゴミ箱にはカップ麺の空き箱と、割り箸しか入ってなかったよ?」
構成員(…何してんの、かすみさん……!?)
かすみ「……割り箸ね、こんな黒くなるっけ?」スッ…
構成員「!!」
善子「そういう素材なんじゃないの?」
かすみ「いえ、割り箸の原料的に黒はまず無いんです。基本白か、黄色っぽい白。高級店の箸とかなら別ですけど」
構成員(な、何言う気!?)
かすみ「よく見て下さい。全体的に黒色と言うより、黒ずんでる。まるで"焦げた"みたいに。目眩しのために全部を炙ったんだ」
凛「あ、炙る?何でそんな」
かすみ「……白粉のパケの封を閉じる時に炙るんですよ。割り箸で挟んで固定してね」
構成員「────ッッッ!!!?」
善子「……おい」
構成員「ち、ちが、薬なんかないっすよ!?第一今は、金の在り処が何処なのかって───」
-
すみれ「ねぇ、写真もう一度見せてくれない?」
凛「え、今!?」
構成員「……!?」
構成員(な、何考えてんの、こいつ……!?)
善子「……すみれ?」
すみれ「ね、ホントにかのんだったか確認したいの。見せて?」
構成員「……は、はあ」スッ…
ガシッ!!
構成員「い゛……っ!!?」
グググ…!!
すみれ「……この指の間の穴は、何?まるで何か"針みたいな物"を刺した穴だけど」
構成員「────っあ」
すみれ「そりゃ、賭場の金は持ってないわね……全部シャブに変えたんだから」
構成員「……!!!」
善子「───ッッッ!!」ガシッ!!
構成員「か゛、は……ッ!!?」
善子「どこ?その粉は」
構成員「あ……あが……っ!!」
善子「言え」
チャキッ
凛「ひっ……!」
すみれ「善子」
善子「殺しゃしないわよ。今はね」
-
かすみ「……」
善子「その粉はどこ?……とっとと吐けぇッ!!!!」
構成員「ぜ……全部…売りました……ッ!!」
善子「……じゃあ、その金は?」
構成員「ぐっ……!!」
かすみ「……」
構成員(か、かすみ、さん……!!何で私売ったの……!?)
プルル
かすみ「……はい」ピッ
すみれ「……」
かすみ「……はあ、そうですか」
ピッ
善子「何?」
かすみ「賭場の組員からです。全額戻ってきたと」
善子「……は?」
かすみ「金を盗ってシャブに替え、それを売った金を今戻した……そんなとこ?」
構成員「……っ!……っ!!」コクコク
善子「……誰が?こいつが?じゃないわよね?協力者がいるわね。誰?」
かすみ「……」
凛「ね、ねぇ、言おう?善子ちゃんも、正直に言ったら許してくれるよ……」
善子「あんまその気無いけど。金を盗み、シャブを売り、あまつさえ自分でも喰ってる」
すみれ「……同情出来ないわ」
善子「ごめん。あんた結構好きだったんだけど……甘やかし過ぎた」
チャキッ
構成員「がぁ…ッ!!?」
善子「組に背くなら、殺すわ」
凛「にゃあ……っ」フルフル
-
かすみ「善子さん」
善子「何?」
かすみ「気持ちは分かります。ただ、時間も時間ですよ。海未さん、墓参り行くんじゃないんですか?」
善子「……」
かすみ「私が賭場の責任者って訳じゃないですが、私の管轄から出た不始末でもあります。その子の後始末は、私に任せてくれませんか」
すみれ「……善子、取り敢えず…金は戻った。一旦、それで手を打たない?」
善子「……ッ!」
すみれ「確かにその子の処罰はするべきだけど、何より海未さんの墓参りよ。お1人で行かせる訳にはいかないでしょ」
善子「…ちッ!……かすみ、任せるわよ」パッ
ドサァッ!
構成員「ごほっ、ごほっ……!!」
善子「4時か……今から帰れば3時間は寝れるか」
善子「行くわよすみれ。凛、付き合わせてごめんね。帰っていいわ」
凛「う、うん……またね、善子ちゃん」
すみれ「……」
構成員「はぁッ……はぁ……」
すみれ「……かすみ、この子を頼むわね」
かすみ「お任せあれです」
<ガチャッ
<テクテク…
凛「……」
構成員「……なんですか」
凛「……ううん。また会おうね」
構成員「……っ」
凛「かすみちゃん、また」
かすみ「はいっ」
<バタンッ
-
構成員「……何で引っ掻き回したんですか?」
かすみ「ああいう手合いってね、外からの攻撃には強いけど……中からの攻撃には滅法弱いんだよ」
かすみ「ただでさえ少ない構成員がご法度の薬やってて、金まで盗んで……気付けば金は戻ってるしね。あはは、疲れたろうなぁ」
構成員「本当に戻したんですか?わざわざ」
かすみ「いや全然?もう台場組に送ったし。シャブ諸共。あとの捌きは、りな子がインターネットでするしね」
構成員「…そうすか」
かすみ「あ、ゆいがおー貸して。残りの薬入ってるでしょ」
構成員「あ、はい」
ーーーー
凛「……台場、組!?」
<ガチャッ
凛「!!」
チャキッ
かすみ「……かすみん、結構凛の事気に入ってたんだけどな」
凛「……っか、かす、みちゃん……!!?」
かすみ「悪いけど、付いてきてくれる?」
────
-
【次の日、園田組邸内】
すみれ「すぅ……」
善子「……」スヤー
<ガラッ
海未「……」スッ…
カンカンカンカンカン!!!!
すみれ「のわぁッ!!?」すってーん
善子「何ぃ!?カチコミィ!!?」がっしゃーん
海未「遅くに帰って来たと思ったら、寝坊ですか!」
すみれ「す、すいません……」
善子「実は昨日色々ありまして……」
海未「詳しくは道中聞きましょう。朝ごはんですよ。食べたらすぐに行きますからね」
すみよし『はーい……』
────
-
ブーン…
善子「……という訳です。あの子は禁を破った……それは厳罰に処さなければと」
海未「……はぁ。若い身空でどうして薬など」
すみれ「……」
海未「その件は善子にお任せします。ただ、出来れば温情をかけてあげてください。あの子ならきっと改心してくれる」
善子「…善処します」
すみれ「……お言葉ですが」
海未「……」
すみれ「組の決まり事というのはカタギのそれと比べ物にならない程、固い物だと思っています」
善子「……」
すみれ「私は組にお世話になっているだけの厄介者です、出過ぎた事を言っている自覚はあります。ですが、あの子に……かける温情は無いのではないかと」
海未「では、どうしますか?殺すのですか?」
すみれ「……そう思われる位の責め苦を与えた方が良いかと」
海未「賛成出来ませんね」
すみれ「……」
海未「我々がされるのなら分かります。もう全身稼業に身をやつしていますから、私達に先も後も無い」
海未「でもね、彼女はまだ若い。1度付いた汚点ではありますが、彼女次第でまだまだ人生どうとでもなる。違いますか?」
すみれ「……極道も、一度の過ち位は許す様になってるんですね」
海未「頭の古ーいすみれには理解し難いかもしれませんが、良いじゃないですか。結局、全て人それぞれが決める事ですから」
善子「……まだまだ青いのよ、私達は皆」
すみれ「……青い菫か」
構成員「そろそろ、到着します」
────
-
【音ノ木坂霊園】
キキッ
ガチャッ
善子「どうぞ、海未さん」
海未「ありがとうございます」
構成員「こちらへ。すみれさんも」
すみれ「ありがとう」
バタンッ
シトシト…
善子「傘をお願い」
構成員「はい、海未さん」
バサッ
海未「ありがとう。では行きましょうか」
<ガサッ
善子「!!」
すみれ「……誰?」
海未「そんな大袈裟な。風の音では?」
構成員「いや……います」
善子「いるのは分かってるわ。出てきなさい!」
<……ガサガサッ
すみれ「……!」
<スッ…
-
かのん「っ……」
すみれ「っか、かのん……ッ!!?」
かのん「何で……?何で、すみれちゃんがここにいるの……!?」チャキッ
善子「は、はァ!?かのんって、アンタ───」
構成員「銃を下ろして!!組長、後ろに!!」
かのん「何でいるの!!?すみれちゃんがいたら、その人を撃てないじゃんか!!!」
すみれ「こっちのセリフよッ!!何でアンタが海未さんを狙うの!!?」
かのん「だ、だって……!!」
海未「台場の差し金ですか?」
すみれ「!!」
海未「……やらされてるんでしょう。本当にただ私を殺す気なら、茂みから撃てば良かった。動揺が私たちに伝わり、敢えて身をさらけだしたのは……すみれがここにいたからですか?」
かのん「ッ……!」
海未「教えて下さい、あなたの今の立ち位置を」
かのん「……希さんが……事務所で監禁されてます」
すみれ「っ、希さんは生きてるの!?」
かのん「うん。助ける為に事務所に戻って来た朝香を撃とうとしたんだけど、下っ端に当たって……落とし前に、園田組の親分さんを弾いてこいって」
かのん「失敗すれば、私も希さんも殺す……そう言われた」
すみれ「アイツら……ッ!!」
善子「すみれに感謝ね。あなたがいなかったら今頃海未さんは撃たれてた」
海未「とにかく、あなたはこのままウチに来なさい。共に希の救出作戦について考えましょう。猶予はあまり無いようですが」
かのん「期限は1週間以内と言われました。一応、まだ3日ほど時間はあります」
善子「しかし……何でこんな失敗前提みたいな作戦を?そりゃすみれがいたから良いものの」
かのん「ハナから成功する訳ないって思ってたんじゃないかな。体のいい汚れ仕事を押し付けて、希さんを孤立させたかっただけじゃ……」
すみれ「奴等にとって私らはただのコマ。消えてくれれば万々歳って事よ。ついでに掃除もしてくれりゃ……それでよし」
善子「……ていうかちょっと待って」
構成員「善子さん、傘を貰います」
善子「ええ」
構成員「よっと……」
ブンブン
-
かのん「…」
善子「何でここに来るって……分かったの?一体全体、誰から聞いた?」
かのん「それは、あなたの組の────」
パァン…!!
海未「……───っあ」
ドサッ…
善子「…っ、うみ、さん……ッ!!!?」
かのん「そ、そんな……っ!!?」
すみれ「伏せて!!!」
構成員「……ッ!!」バッ
ーーーー
?「……ヒット、ナイスです彼方さん」
彼方「ん。どう、あの子達動きそう?しずくちゃん」
しずく「たった3人で来た彼女達に出来る行動は無いですよ。園田の誘導も、合図もあの子が送ってくれましたし」
彼方「後始末は?」
しずく「高飛びの道すがら、後は嵐珠さんがやってくれます。あの子も上手くあの場を離れると思いますし、拾って私達も離脱しましょう」
彼方「ちゃんと高飛びさせるのかい?」
しずく「いいえ。させません」
ーーーー
-
海未「……ッ、ごほッ……!!」
ビシャッ
善子「海未さん、海未さんっ!!!」
かのん「やっぱり撃てないって思われてたのか……!クソッ!!」
すみれ「不味い、これじゃ……!!」
海未「ッう゛……!皆、さん…!!」
善子「喋らないで!!」
海未「かのんさんが、私を撃たず……でも撃たれたという事は……見切りを付けられたということ……ごほっ!!」
かのん「!!」
海未「1週間の猶予など、もうありません……希が、危ない……ッ!!」
すみれ「でも、このままじゃあなたが……!!」
善子「音ノ木坂の霊園よ!!良いからとっとと救急寄越せって言ってんの!!!アンタは車持ってきて!!」
構成員「は、はい……!」タタッ
海未「善子……」
善子「……っ」
海未「私はここに置いて、あなたは希を助けに行って下さい……」
善子「で、でも海未さんが!!」
海未「救急車は、呼んでくれたのでしょう?車を持ってきてくれるあの子もいます……私の事は、一先ず良いから」
海未「私の友人を……助けてあげて…ッ!!」
善子「……!」
かのん「でも……」
すみれ「…親の言う事は絶対でしょ。私達お互いの親が狙われて、黙ってられないなら……腹括るしか無い」
善子「分かってるわよッ!!」
プルル
すみれ「……何?」ピッ
壷振『すみれさん!と、賭場が……グアッ!?』<パァンパァン!!
プツッ
すみれ「……ッ!!」
かのん「何!?どうしたの、すみれちゃん!!」
すみれ「園田組の賭場が、襲われてる……!!」
-
善子「……そん、な」
海未「…善子ぉッ!!!」
善子「!!」
海未「……若頭として……やるべき事を、やりなさい」
かのん「…私は事務所に戻って時間を稼ぐ。死ぬ気で暴れて、希さんを助ける。力づくで」
善子「アンタ……」
かのん「あなたは自分達の場所を守って!!」
すみれ「かのん、アンタ1人で行く気!?」
かのん「元は私が独断で動いたせいでしょ。落とし前は自分で付ける。すみれちゃんは、お世話になった園田さんの場所を一緒に護ってあげて」
すみれ「……ッ」
善子「……車まで戻るわよ。賭場までぶっ飛ばす。途中まで送るから、来なさい」
かのん「ありがとう、お願い」
海未「……ふふ」
善子「海未さん……後は、任せてください」
海未「青いというのは……いい物ですね」
すみれ「傘、置いておきます」
海未「ありがとう。さあ、行って」
善子「……っ、行くわよ!!」
ダダダッ
ザーッ……
すみれ「……待って、何でまだ車がある訳!?」
かのん「さっき園田組の子に取りに行かせたよね……!?」
善子「……っあぁもう!!どいつもこいつも寝返りやがってッ!!!もういいから、乗って!!」ガチャッ
すみれ「海未さん……!」
善子「仮にも渡世の親を、野ざらしにして……見つけ次第、問答無用でぶっ殺してやる……ッ!!」
ブォン!!
────
-
【朝香興行】
プルル
果林「私が出るわ」
構成員「はっ。どうぞ」
果林「……もしもし」ガチャッ
希「……」
構成員「お茶は?お菓子もあるけど」
希「何や急に、気色悪いな……」
構成員「あ、ウイスキーの方が良かった?」
希「元々ウチのやそれ。何なん急に」
<ガチャッ…
果林「……最後の晩餐って奴よ。気の利く子達でしょ?」
希「…失敗したんか。かのんちゃんは」
果林「うーん、失敗というか……元々撃てると思ってないしね。でも多分園田さんは死んだわよ。ウチの子が弾いたわ」
希「なら、そもそもこうするつもりやったんやろ?殺るなら殺って」
果林「でもねぇ……ずっと一本独鈷でやってきたその辣腕をむざむざ失うのも……って思うのよ」
希「……何や、生かしてくれるん?ほんならかのんちゃんもすみれちゃんも、ウチの子皆生かしておいて欲しいんやけど」
果林「うん……そうよね、別に殺す必要なんかないし。総代とか下の子は、反抗分子は全員根絶やしにすべきって言ってるけど」
希「噂に聞く台場の当代、高咲……なんやらか」
果林「そ。いやでもねぇ……どうしましょう?」
希「ウチに聞かれても困るわ。ほんまやったら死んでも嫌なんよ?海未ちゃんを弾いてウチらも園田組の子らも、バラバラに引き裂いたアンタらの傘下に成り下がるなんてさ」
果林「そりゃ誰だってイヤよ。でも人の世って世知辛いものよね」
希「でもな……生きてれば何とかなるんよ。ウチらと違って、彼女らは若い。これから先はあの子らが作ってくんや」
希「それをウチら老兵が引っ掻き回すなんて……やっちゃあかんよ」
果林「ええ……全く、その通りだわ」チャキッ
パァン……!!
────
-
善子「ここでいいの?」
かのん「うん、同じ轍を踏む気は無いよ。ただただ無駄死にするつもりは無いからね。協力を頼むよ」
すみれ「そんな奴がいる訳?」
かのん「後輩がここらにいるハズなんだ。協力させる」
かのん「何人か再起不能にしてでも、ついてこさせるよ」
善子「……無理すんじゃないわよ」
かのん「分かってる。そっちが片付いたら、こっちに手を貸して。襲撃しといて虫が良い話だとは思うけど」
すみれ「それが海未さんの意思なんだから、断る理由は無いでしょ?」
善子「ええ。あなたも無茶しないで」
かのん「分かった……2人もね」
<ブーン…!!
かのん「……」
<ゾロゾロ…
半グレ達「……」
かのん「……わざわざ雨の中見回り?」
メイ「ヤーさんがシマでコソコソしてたら見に来るだろ。で、誰お前?」
かのん「…久しぶり」
メイ「……かのん、先輩」
半グレ「え、メイさんの先輩っすか?」
メイ「ああ……1番怖ぇって言葉が付くけどな」
かのん「……メイちゃんもさ、私に似て真面目な真っ直ぐばかだよね」
半グレ「テメッ、誰に向かって───」
メイ「テメェこそ誰に口聞いてんだ」
半グレ「……すんません」
-
メイ「……まあそっすね。だから何すか?」
かのん「……」
チャキッ
メイ「…!」
半グレ「ばっ、こんな街中でハジキ出すなよ!!」
メイ「何のつもりですか、先輩?」
かのん「……メイちゃん」
メイ「……」
かのん「お願い……助けて」
メイ「……はっ、銃突き付けながら言う事かよ」
半グレ「脅しは通じねぇよ!!ハジキであたしらがビビると思ってんのか、アァ!?」
パァン…!!
半グレ「……───ッ、だァ!!?」
かのん「次は本気で殺す。足じゃ済まさない」
メイ「……アンタ、堕ちたな」
かのん「何と言われようと構わない。私の親を助ける為なら、殺されたっていい」
メイ「親……?」
かのん「実の親なんかより固い絆って奴だよ。その為なら、君達全員殺してみせる事だって出来る」
半グレ「ぐっ……助け求めときながら殺すのかよ……頭おかしいのかてめぇ!!?」
かのん「時間が無い。来てくれるのか来ないのか、決めてくれる?」
かのん「タダでとは言わないよ。片がついたら、相応のお礼はする。それだけは約束するよ」
かのん「だから……力を貸して、お願い」
メイ「……何か最近こんなんばっかだな」ボソッ
かのん「……」
メイ「はぁ……何する気だよ」
───
-
【賭場】
すみれ「……善子、銃はある?」
善子「ほら。行くわよ、台場組の奴等なら全員弾いて構わない。ここを取り返すのよ」
すみれ「……勿論」
ダダッ
ガコンッ…
善子「……ッ」コツコツ
すみれ「……静かね」コツコツ
バッ
善子「……クソっ、クソ……ッ!!」
すみれ「……遅かったのね……」
構成員「」
構成員「」
構成員「」
壷振「」
すみれ「……凛、凛は!?」
<コツコツ…
善子「……!すみれ、下がって!!」
<コツコツ
すみれ「……っ」チャキッ
<?「……あれ、もう着いたんですか?早かったですね」
すみれ「……かす、み」
善子「……あんた」
かすみ「お疲れ様です。もう暫くここは使えないですね。まだ雀卓入れる前で良かったです。牌が全部赤ドラになっちゃいますし。ぷくく」
善子「あんたまで……台場の手の者だったのね」
かすみ「はい。あ、この子もね」
構成員「……」
すみれ「……シャブで前後不覚だからって訳でも無さそうね」
構成員「まあ、結構な量貰っ((パァン!!」
ドサッ
構成員「」
かすみ「あらら……」
善子「……ウチではご法度だっつってんのよ」チャキッ
-
すみれ「…容赦する気はなかったのね」
かすみ「でもこれで分かりましたよね?もう園田組に、あなた達の味方はいなくなりましたよ」
すみれ「……凛はどうしたの?」
かすみ「呼ばれてますよー」
<スッ…
凛「……」フルフル
かすみ「逃げられても困るんで、ガムテで口と両手を失礼してます」
善子「じゃあ、凛は裏切ってないのね」
かすみ「たまたまこの前の案件で皆さんが帰った後、私らの話を盗み聞きされてまして。ただ私が結構凛の事気に入ってたんで、まだ生かしてます」
すみれ「凛、大丈夫?」
凛「……」コクコク
かすみ「さて、長いお仕事の仕上げです」チャキッ
グイッ
凛「っ!!」
かすみ「私の仕事は、園田組と賭場を内部から崩壊させ吸収しやすくする事。園田海未が死にかけの今、組はもう崩壊寸前」
かすみ「あとは若頭の善子さんが死ねば、実質園田組は解散です」
善子「そうしたけりゃすりゃ良いけど、死んだら組は手に入らないわよ」
かすみ「馬鹿なんですか?組自体に興味なんか無いんですよ。この賭場と、園田組のシマ、これだけが欲しいんです」
かすみ「あなた達がいなくなった後は、僭越ながら私がこの辺りを治めます。台場組の代紋の下ね。末永く繁栄させていくつもりなのでご安心を」
すみれ「……何もかも台場の計算通りって事ね」
かすみ「概ね。あなたが園田組に来た上、賭場にまで来るのは予想外でしたが」
かすみ「ま、後はあなた達お2人を始末して終わりです。今までお世話になりました」
善子「……」
すみれ「……善子」
善子「……何かもう……疲れたな」スッ…
-
凛「んーっ!!?」
すみれ「……アンタが、前の私みたいになってどうするつもり」
善子「帰る場所が全部無くなったのよ。今ここで暴れて、こいつを殺したって…もう…」
すみれ「親の意思を蔑ろにする気!!?アンタの使命はここを守るだけじゃない、私の親を助ける事も含まれてんのよ!!」
善子「……」
すみれ「海未さんは生きろと言ってくれた、でも親に報いる為には……生きる為には、ここで死ぬしか無いのよ!!!」
善子「……!!」
すみれ「……行けるとこまで、行きましょう。もうどうせ、後戻りは出来ないんだから」
善子「…」
チャキッ
かすみ「ちょいちょい、何奮起してるんですか。四面楚歌って知ってます?言っときますけど、1人で来た訳じゃ無いんですよ。ここの出入口も、ウチの組員達で塞いでるんです」
かすみ「私を撃てば、絶対に引鉄を引いて誰かしら殺します。そうなれば銃声を聞いた組員達が、あんた達を必ず殺す」
すみれ「……」
かすみ「……もう詰んでんだよアンタらはァッ!!!大人しくここで、死んどけば良いんだよォッ!!」チャキッ
凛「っ……!!」
すみれ「この……!!」
善子「すみれ」
すみれ「!」
善子「……分かったわ」チャキッ
パァン…!!
-
かすみ「────う゛、あ゛っ……!?」ガクッ
凛「んーっ!!?」
すみれ「……凛ッ!!」グイッ
かすみ「お、前…えェッ───」
ダッ
善子「……───うぅあああああぁぁぁっ!!!」
かすみ「こン、のォおぉ…………ッッッ!!!」チャキッ
ドンッ
凛「ん゛んっ!!?」
パァン…!!
ドサァッ!
すみれ「……っ、善子、アンタ……」
善子「はぁッ、はぁッ……案外何とかなるのよ、こんなの。ナイスよすみれ、阿吽の呼吸って奴?」スッ
ビリッ
凛「ぷはっ、善子ちゃんごめん、凛を庇って……」
善子「アンタに当たらなくて良かった、私の捨て身の意味が無くなるわ……くっ」ポタッ
すみれ「……!!」
善子「ごめん、さっき迄の私は私らしく無かったわ。ただ、この使命は私だけじゃキツ過ぎる」
善子「神宮一家の行く末は、アンタに託す。園田組は、私が守り切るわ」
すみれ「善、子……」
善子「……そこの丁半の盆の下、幹部と旦那衆専用の抜け口がある。そこを通ればパチンコ屋の裏に出れるから」
善子「何とか神宮一家の事務所まで行きなさい。私も、きっと後から追いつくから……!」
すみれ「……ッ」
善子「……早く行け!!この園田組の窮地は、若頭の私が請け負うってんのよ!!」
-
凛「んっ、しょっ!!凄っ、盆の下にこんな空間あったんだ……!」バコンッ
すみれ「……死なないで、善子、凛」
善子「アンタもね」
凛「分かってるにゃ!すみれちゃん、早く!」
すみれ「……ッ」ダダッ
<「行け行け!銃声が聞こえてんだぞ!!」
善子「……オラかかって来なさいよ、台場ァッ!!」パァンパァン!!
<「うおっ、身を隠せ!!」パァンパァン!!
善子「凛、これ使って!!」ポイッ
凛「にゃあッ!?凛、銃なんて使った事無いんだけどぉっ!!」
善子「今慣れて!死にたくなけりゃ!!」
凛「……んもうっ!!」ジャキンッ
<「……裏口に回って!!ごほっ……!!」
凛「んなっ、生きてたの!?」
台場組組員「かすみさん、こっちに!!」グイッ
かすみ「何人か、裏口に回して下さい!絶対逃がさないで!!」
善子「かすみィッ……!!この、死に損ないがァッ!」パァンパァン!!
かすみ「はははッ、そう簡単に死ぬ訳にゃ行かねぇんですよォッ!!」パァンパァン!!
───
-
タタタッ
すみれ「はっ、はっ、はっ……!!」
<「……おい、アイツ!!」
<「いたぞ、追え!」
<パァン!!パァンパァン!!
すみれ「時代柄、街中でドンパチなんて……しないんじゃなかったの……ッ!!?」
<キキーッ
すみれ「あっぶ……ッ!!?」
一般人「あ、危ないよッ!?急に飛び出したら」
すみれ「この先に向かう方がもっと危ないわよ!!出来る事ならここからとっとと逃げ───」
<……パァン!!
ビシッ!!
一般人「ひぃっ!!?ふ、フロントガラスが!!?」
すみれ「ちっ……!乗せて!!」ガチャッ
バタンッ
一般人「ちょっ、はぁ!?何してんの!?」
すみれ「後で弁償するから!サツにも脅されたって言えばいい!!ここに向かって!!」ピッ
一般人「朝香、興行……?」
<ビシッ!!
一般人「ひいいぃぃぃっ!!?」
すみれ「早く!!」
一般人「何なのもおおおおっ!!?」ブオォンッ!!
ブーン……!!
ーーーー
-
カチッ
ブォン!!ブロロロ…!
かのん「ありがとう、メイちゃん」
メイ「死にたがりの為にアイツらの命は張らせられねぇ。私一人と、このダンプカーで我慢してもらいますよ」
かのん「それでも良い。今はたった1人でも一緒に戦ってくれる人が欲しかったから」
メイ「……台場組でしたっけ?要は外様ですよね。急に来て我が物顔とか一番ムカつくんすよ」
メイ「ここらの一帯は……ずっと私らがシメてんだ、勝手な真似は許さねぇ」
かのん「……行こう!!」
ブゥオオォン!!
<……カタッ
───
-
希「……っ、はぁっ、はぁ……ッ!!」
果林「…決めた。あなたは殺さない。私の傍で働いてもらうわ」
希「普通に口で言ってや!!撃つ必要無いやろ!!?」
果林「議決って感じで、つい」
希「ついちゃうわ!令和なんよ!!?今時そんな、ばかすかハジキ撃つアホおらんて!!」
果林「それ程力があるのがウチなのよ。逆らわない方が得じゃない?」
希「ほんま……力のある奴がこうやから渡世は良くならんねん」
果林「悪かったわね。殺してくれてもいいわよ」
希「そういうのが嫌なんやて……傍におくんなら、ウチの言う事も聞いてや」
果林「なぁに?」
希「変わらへんよ。神宮一家の皆を殺さんといて」
果林「うーん……でもかのんは私の舎弟を弾いてるのよ?それには相応のケジメを付けて貰わなきゃじゃない。極道ならね」
希「……分かった。ウチが指詰めたる」
果林「あっはっは!!今時指なんて貰っても何にもなりゃしないわよ!いくらになるの、希の指は?!ふふふ……!」
希「ケジメはケジメや。神宮一家総代、原宿一帯を締める東條の指よ。これを詰めたら、台場と言えど黙認はさせへん」
果林「……」
希「……どうや」
果林「………道具持って来て」
構成員「はい」
果林「…惚れたわ。その心意気」
希「……」
────
-
ブォーン……!!
かのん「……メイちゃん」
メイ「はい、何すか」
かのん「…もう1つ、お願い聞いてくれる?」
メイ「いくつ聞きゃ良いんですか?既に命張ってんすよ」
かのん「ついでだよ……このまま事務所に突っ込んで」
メイ「……」
かのん「…だめ?」
メイ「……先輩」
かのん「?」
メイ「………ハナっから、そのつもりですよッ!!!」ブォン!!
かのん「……っ!!」ニヤッ
ブオォ……ンッ!!
構成員「それでさ、あの新しい海物語のJAPANさ、火鈴が結構可愛くて」
構成員「でもあのモード全然リーチかからないじゃん」
<……ブォン!!
構成員「フルカスタムだからじゃないの?しない方が良いよ。まあ私も魚群は100%にするけ、ど……」
構成員「……?どしたの」
構成員「…あ、あれ……ッ!!」
構成員「え?……ッあ」
<ブオオォォォン!!!
構成員「つ、突っ込むぞおおぉぉぉっ!!!!」
ガッシャアアアァァァ……ン!!!
シュー…
構成員「げほっ、ごほっ……か、カチコミだァッ!!!」
構成員「」
-
構成員「ど、どこのどいつだコラァ!!」
ガチャッ
構成員「……あ」
かのん「ただいま」スチャッ
パァン!!
構成員「」ドサッ
<バンッ!!
メイ「久しぶりの大喧嘩だ、遊ばせてもらうからなぁッ!!!」ブンッ
ゴキャッ
構成員「あがッ!!?」
かのん「このまま進むよ!!」
メイ「さあどんだけの量来るかな!?」
<「…ウチらも混ぜてもらっていいすか!!?」
かのん「……っえ!?」
メイ「お、お前ら……何で!?」
半グレ「ダンプの後ろに、隠れさせてもらってました。自分だけ命張るとかやめてくれます?ウチらのリーダーが」
半グレ「メイさんの為なら、あたしら全員死ぬ気ですからね!!」
-
メイ「……!!」
かのん「……いい子を持ったじゃん。メイちゃん」
メイ「……ふん、馬鹿が。だから死にたがりは嫌いなんだよ」
<「カチコミだァ!!」
<「入口にいるぞ!!!」
かのん「……っ!!」パァンパァン!!
メイ「止まんな、行け!!」
かのん「っ、分かった!ありがとう!!」
メイ「テメェらァ!!道拓けぇッ!!!」
半グレ達『うおおぉぉぉぉっ!!!』
ドドドド…!!
構成員「ガキ共に遅れをとるな!!押し返せ!!」
構成員「出来れば殺すなよ!?」
構成員「向こうは殺しに来てんだ、正当防衛だろ!!」
かのん「メイちゃん達は殺さないで!私が……全部引き受けるから!!!」パァンパァン!!
構成員「ぐおっ!!」
構成員「ぎゃっ!!?」
かのん「朝香あぁぁぁぁァァッ!!!」
────
-
果林「……ちょっとおイタが過ぎるんじゃない?希の指で済む話じゃないわよ、これ」
希「……タイミング悪いな、かのんちゃん」
希(でも……ありがとな。ほんま、ええ子達を持ったわ)
果林「なるべく殺さないで。無駄に罪状が増える」
構成員「徹底させます」
希「……」
果林「……希、来なさい」
希「…どこへでも」
────
-
<パァン!!パァンパァン!!
メイ「オラァッ!!」ドゴッ
構成員「ごあぁっ!!?」
かのん「ここだ、組長室!!」
バァン!!
構成員「なっ、もうここまで───」
かのん「っ!!」スチャッ
パァン!!
構成員「」
ドサッ
かのん「希さん!!どこなの!?」
メイ「他の部屋はもう誰もいねぇぞ!!ここ以外に部屋があんのか!?」
かのん「まさか、もう逃げた…!?」
メイ「入口はアイツらが塞いでんだ、誰も逃がさねぇよ!!」
かのん「でもこれ以上の部屋は……っあ」
メイ「あ!?」
かのん「…屋上だ!!」
───
-
ブーン……!!
一般人「あなた何なの!?ヤクザさん!?そうなんでしょ!?」
すみれ「だったら何、叩き出す!?やる気なら、あなたを降ろしてからで良いのよ!!?」スチャッ
一般人「ぴゃあああっ!!?殺さないで下さいいぃっ!!?」
すみれ「……そんな事しないわよ、死んでも。でも悪いけど、全速力で向かって」
一般人「…分かったよ……!もう着くよ!!」
すみれ「……っ!」
<ワーワー…!!
一般人「……な、何あの大惨事……!!?」
すみれ「……かのん、派手にやったわね」
一般人「え、何て!?何か言った!?」
すみれ「ありがとう、ここでいいわ。危ないから離れてて」
一般人「う、うん……」
すみれ「落ち着いたら車の請求出して。平安名すみれ宛に。死んでも直すから」
一般人「……!」
すみれ「……助かったわ!ありがとう!」ガチャッ
バタンッ
一般人「……良い人なのかどうかも、分からない人なのだ……」
ーーーー
-
<「うぅ……」
<「げほっ……ぐっ……」
すみれ「……酷い有様。私たちの事務所なのに」
タタタッ
すみれ「組長室……開いてる?」
<キィ…
すみれ(誰もいない……)
<「クソっ、超いてぇ……」
すみれ「……!」
半グレ「……あ?まだ動ける奴がいたのかよ……!?」
すみれ「あんた、どっかで見た顔ね」
半グレ「……?……っあ!!?」
すみれ「思い出した。あんた私のお腹にヤッパ刺した奴じゃない」
半グレ「ンだよ……生きてたんだな」
すみれ「……皆は?」
半グレ「上だ……屋上だよ」
すみれ「分かった……死ぬんじゃないわよ」
半グレ「テメェに言われたかねぇよ……ぐっ」
────
-
【朝香興行、屋上】
バンッ!!
かのん「すみれちゃん!!」
メイ「あ、お前!!」
すみれ「かのん、希さん……!!」
果林「……あなたも希の子ね?」スチャッ
希「…っ」
すみれ「アンタは!?」
果林「台場組直参 朝香興行の朝香果林よ。お初ね」
かのん「希さんを離せ、朝香ァッ!!」
果林「あなた達勘違いしてるわよ。私自身あなた達をどうこうするつもりは無い。希だって生かしておくつもりだった」
すみれ「……は?」
果林「園田組は歯向かってきたから相応の代償を払ってもらっただけ。神宮一家は希のお陰で残しておく予定なのよ?」
かのん「台場の傘下ででしょ。アンタらの勝手に、私達を巻き込まないでくれる!?」
果林「弱肉強食を知らないの!?弱い組織は強い組織に組み込まれる形でもないと、存続のしようが無い事くらい分からない!?」
-
メイ「何が弱肉強食だよ…」
果林「さっきから言ってるでしょ、私自身はあなた達をどうするつもりも無い!生かしといてあげるってんのよ!!」
果林「イヤイヤで通じる程甘い業界じゃない事くらいは分かるでしょ!?大人しく降りなさい!!今なら……」
チャキッ
かのん「!!」
果林「……澁谷かのん、あなたの死だけで許してあげる」
すみれ「言ってる事が違うじゃない、神宮一家は生かしておくんじゃないの!?」
果林「この惨事を見なさい!これだけの事をしでかしておいて、何のお咎めも無くのうのうと生きられると思ってる!?」
希「……!」
果林「…希は承諾してたのよ。神宮一家が台場の傘下に入る事を引き換えに、あなた達の命を保証する契約にね」
すみれ「…希さん」
希「分かってくれとは言わん、嫌なのも分かるよ。ただ…それでもかのんちゃん達は生きてかなきゃダメだよ。海未ちゃんもきっと、そんな事言うてたんじゃないん?」
かのん「…っ!」
希「嫌なのは分かる、分かるよ!でも…反抗して殺されるのがええとは思えんよ!私達の神宮一家が消えるより、生きて残してった方がええやろ!?」
かのん「…私が死ねば、皆生きられるの?」
果林「ええ。約束する」
希「あかんわ!ウチの命でもって終わりにして!若いのが死ぬ理由なんか無いんや!」
-
果林「まあ、こっちとしてはどっちが死んでも構わないわ。主犯か責任者か、どちらでも」
すみれ「…」
かのん「極道として、親にそんな事させられるわけない。私が死ぬ」
すみれ「……」
希「子が親より先に死ぬのを黙って見てられる訳無いやろ!!」
すみれ「………」
果林「決めなさい!神宮一家は、ここが岐路よ!!」
メイ「…おい、死にたがり。どうすんだ、この状況」
すみれ「………─────っ!!!!」
チャキッ
パァン……!!
果林「……────何、を」
ドサァッ…!
希「───っ、すみ、れちゃん」
かのん「…何で」
メイ「……はは」
-
すみれ「…私には耐えられない。姉妹分が死ぬのか親が死ぬのか、選べる訳無いじゃない」
すみれ「……分からない、何が最善だったのかも、何も」
希「…」
すみれ「海未さんも弾かれ、善子も凛も、今頃……下手したらここにいる皆も死んで終わり」
すみれ「…そんなの、イヤだから」
テクテク
果林「ぐっ…うぅ……」
すみれ「…」
チャキッ
果林「…覚悟は、出来た?」
すみれ「……かかってくればいい」
パァン…!!
────
-
【パチンコ屋前】
ザワザワ…
警察「立ち止まらないで下さーい!」
警察「ほら、動くな!」
構成員「ちっ…!」
?「…ここら一帯は人払いしてたから、ドンパチしていいって?」
かすみ「はい、死んだのは筋者だけ。じゃあ世間は喜ぶでしょ?桜内警部」
梨子「ナメてんじゃないわよ。これだけの事しでかして、簡単に出て来れると思わないで」
かすみ「ンな事よりとっとと救急搬送してもらっていいですか?肩ぶち抜かれてんですよ、ここで死んでやってもいいんですけど?」
梨子「こンの……ッ!」
警察「桜内さん!出て来ました!!」
梨子「…」
かすみ「……しぶと。何で生きてんですか」
善子「生きてて悪かったわね。所でこれをどうぞ」スッ
かすみ「…携帯?」
善子「下で撃ち合って勝手に死んだ、あんたんとこの構成員の携帯よ。メールを見てみなさい」
かすみ「……ッ!!」バッ
善子「ごゆっくりどうぞ」
かすみ「…クソッ……!!」
善子「……っ」フラッ
凛「善子ちゃん!」
善子「…流石に、ちょっと疲れたわ」
凛「そりゃそうだよ…」
梨子「お疲れの所申し訳ないけど、治療が終わったら覚悟しててね?洗いざらい全部吐いてもらうわ。今回の事件の全てを」
善子「はいはい…」
かすみ「…これで終わらせませんからね、善子さん」
善子「受けて立つわ。いつでもかかって来なさい」
───
-
ピッ、ピッ、ピッ…
海未「…」
希「…海未ちゃん、一旦終わったで。ウチの……すみれちゃんが、終わらせた。全部引き受けおった」
海未「…」
希「……ウチら親の言う事なんか、聞くわけないもんな。若い子がさ」
希「…青いよなぁ……ほんま」
海未「…」
希「…ウチら、協力しよう。大人の悪知恵を働かせるのがウチらの出来る事や」
希「そうでもせんと、これから増していく台場の圧力に耐えられん。若さだけじゃどうしようも出来ん力に踏み躙られるのは」
海未「…」
希「…もう見てられないよ」
海未「…」パチッ
希「……組の名前、どうする?」
海未「……未熟組で」
希「…ふっ、ダサいわ」
海未「……では、【蕾會】は?」
希「……まあ、まだええか」
https://youtu.be/ptiK8U4WlSc?si=3pbOR6CM59_wFzoX
────
-
ーCASTー
平安名すみれ
澁谷かのん
津島善子
中須かすみ
米女メイ
星空凛
桜坂しずく
近江彼方
朝香果林
桜内梨子
東條希
園田海未
高海千歌(特別出演)
高咲侑
上原歩夢
各構成員、警察、通行人エキストラの皆様
ーMUSICー
https://youtu.be/ptiK8U4WlSc?si=3pbOR6CM59_wFzoX
(藤井風 - 満ちてゆく)
ーBased on a Story byー
ラブライブ!
ラブライブ!サンシャイン!!
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
ラブライブ!スーパースター!!
───
-
すみれ「…」
かのん「すみれちゃん」
すみれ「…ん?」
かのん「…ごめん」
すみれ「何が…?」
かのん「全部…引き受けてくれて」
すみれ「…そんなつもりないわよ」
かのん「…」
すみれ「私達で、皆で、これからもやっていかないと」
すみれ「ヤクザ気取るんならね」
かのん「…うん」
すみれ「……いつまでも蕾じゃいられないんだから」
<ガチャッ
善子「…よ」
凛「にゃ」
すみれ「早かったわね。2人とも」
善子「民間人に危害加わってないのが良かったのね。ちょっとした保釈金で何とかなったわ」
凛「遂に寝床が牢屋になるとこだったにゃ…」
かのん「はは…これで、勢揃いだね」
すみれ「…行きましょう。やる事は死ぬ程ある」
善子「…ええ」
<「おい、車用意したぞ。パシリやがって」
かのん「…いいの?メイちゃん」
メイ「これからアンタらはただのケツ持ちだろ。でも私らは私らでやらせてもらう」
メイ「…裏は私らのもんだ」
すみれ「…ええ、奴等に負ける訳にはいかないわ」
────
-
?「…酷い結果だね。主目的が達成出来てない。幾ら金や薬を手に入れても、肝心のシマと賭場はまだ向こうの手の中」
かすみ「ごめんなさい…」
?「侑ちゃんが保釈金出してくれたから一旦何とかなったものの、果林ちゃんを失ったのは痛いよ」
侑「……歩夢、嵐珠ちゃんを呼んで」
歩夢「もう呼んでるよ。後始末が終わったらすぐ来るって」
侑「了解。かすみちゃん」
かすみ「は、はい…」
侑「汚名を濯ぐチャンスをあげる。嵐珠ちゃんと協力して、渋谷を丸ごと貰ってきて」
侑「果林ちゃんの弔い合戦だよ。もし同じ様な事になれば…分かるよね?」
かすみ「勿論です!!」
侑「でもまだ動いちゃダメだからね。かすみちゃんの傷もあるし、警察も今はうるさい。ほとぼりが冷めたら───」
歩夢「…」
かすみ「……っ!」
侑「……全部、奪ってやる」
────
-
蛇足っぽくてもエンディング後のシーンを追加する癖が治らない
⬇️最新5作⬇️
きな子「渇望」
可可「哭憾」
かのん「ちょっと待とうか」
曜「雨の日のコーヒー」
かのん「オーディナリー・デイズ」
-
乙
めちゃくちゃ面白かった
-
こういう雰囲気のssすきだから面白かった
乙
-
乙やで
-
>>86
めちゃくちゃ面白かった!
続き書いてほしいです!
-
見事な語り口でした
-
なぜか龍が如く維新を見てる気分になった
良きSSでした
-
乙
それにしても引き出しが多いな
楽しかった
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■