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【SS】しずく「ミアさん、カモ〜ン☆」
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しずく「ミアさん、カモ〜ン☆」
布団をペラリとめくり、純白の下着を見せびらかしながら、桜坂しずくが僕……ミア・テイラーをベッドに誘っている。
ミア「…………」
ミア「ほ、ホワッツ!!!?」
ミア「ええっと、しずく。君が何故そんなことをしているのか、聞いてもいいかい?」
しずく「…………」
しずく「うっ、うぅぅ……」
しずく「やっぱりダメかぁ。私のほうが年上なのに、ミアさんの方がグラマーっぽいし……」
ミア「だから何を言ってるんだ!」
しずくの突然の奇行に対して、理解不能な僕は抗議の大声を上げたのだった。
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どこから説明しようか?
このような事態になった、そもそもの始まりは……。
*
しずく「ミアさん、最近またご飯食べてないよね?」
しずく「お部屋もずいぶん散らかってるって、エマさんから聞いたよ?」
しずく「『ミア・テイラーを見守りたい同好会』部員として、これを見逃すことはできませんっ!」
ミア「いつの間にそんな同好会ができてるんだ!?」
しずく「もちろん栞子さん公認だよっ♪」
ミア「僕の公認も取ってくれよ!」
しずく「あっ、あと部長は果林さんです!」
ミア「意外な人選がきたな! それだったら果林の部屋も綺麗に……」
そう言いかけて、僕は言葉を止める。
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年が明けてから、果林の部屋は整理整頓が進み……。
いや、正確には『果林の部屋から、モノがなくなりつつある』という表現が正しいだろう。
トランクルームを借りて、着替えや小物をそちらへ一時的に移しているようだ。
虹ヶ咲学園の寮を出て、次に住むところもすでに決まっているらしい。
……このような変化を見ると、『卒業』という言葉をイヤでも実感させられてしまう。
しずく「……というワケで、代表として私・桜坂しずくがミアさんの部屋にお泊まりすることになりましたっ!」
ミア「どういうワケなんだよ、展開が強引すぎるだろ!!」
そんな事情で、今晩しずくは僕の部屋に押し掛け……。
もとい、一緒に一晩を過ごすことになったのだった。
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スクールアイドル同好会の部活動が終わった後。
しずくは渦巻き模様の風呂敷に包んだホットプレートを担いで、僕の部屋にやって来た。
部屋の片付け、ゴミの分別をテキパキとやってくれて、この件については本当に有り難いと思っている。
しずく「お腹も空いてきたし、ご飯食べよっ、ミアさん!」
しずく「材料を分けてもらいました、今晩は『愛さん特製・ジャンボタコ焼き』〜!」
しずく「ホットプレートでオムレツのように大きく焼くから、私でも簡単に……あっ、あれっ、あれれれ!?」
しずく「ううっ、やっぱり私は球技が苦手だから、丸く焼くことができないよぉ……」
ミア「タコ焼きを焼くって、スポーツに該当するのかな……?」
巨大なタコ焼きはやや角張った形になったものの、二人で美味しくいただくことができた。
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ミア「……今日は色々とありがとう、しずく」
ミア「僕はもう少しだけ、GPXに向けた曲の作業をするから、しずくは先に休んでてよ」
そう言ってモバイルワークステーションに向き合い、シーケンサーを起動しようとする。
そしてしずくに声を掛けられて、 >>1 の状況に至る……というワケだ。
*
しずく「GPXが終わったら、いよいよ卒業、だよね……」
しずく「ミアさんが虹ヶ咲学園を去っちゃうのが、何だか心細くなったんだ」
しずく「璃奈さんやかすみさん、栞子さんも気持ちは一緒だよ」
しずく「……ミアさんは、卒業したらやっぱり、アメリカに帰っちゃうんだよね?」
しずく「私達より年下なんだし、もう一度、高校生からやり直せない……のかな?」
ミア「…………」
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ミア「……。それは難しいね」
ミア「今回の僕の転入は、虹ヶ咲学園が特別気を利かせてくれただけで、例外中の例外」
ミア「さすがに『もう一回やり直しさせてくれ』ってお願いするのは、無理だろうな」
しずく「そっかぁ……」
ミア「うん。スクールアイドルになった今となっては、僕もミステイクだと思ってる」
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ミア「……でもね、しずく」
ミア「僕にはもう、『次』にやりたいことがあるんだ」
しずく「次に、やりたいこと……?」
ミア「うん。ステイツに戻って、プロミュージシャンとしてステージで歌うこと」
ミア「他にも作曲とか、ダンスとか……しずくのように、演劇に出演するのもいいな!」
ミア「ああっ、まだまだ色々と思い付くよ!」
しずく「…………」
しずく「……そっか。そうだよね」
しずく「ミアさんはすごい人だから、私達が……私が、足を引っ張っちゃいけないよね……」
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ミア「…………」
ミア「その考え方は間違ってるよ、しずく」
ミア「昨年、ランジュを空港で引き留めたときの直前、僕がスランプに陥っていたとき……」
ミア「僕は璃奈に手を引っ張ってもらって、スクールアイドルになることができた」
ミア「『歌いたい』という前向きな気持ちになることができたんだ」
ミア「……このことは、璃奈から聞いたことある?」
しずく「うっ、うん……。あっ、ごめんなさい! そんなつもりじゃ……」
ミア「ノープロブレム。璃奈には口止めをお願いしてないし、気にしないで」
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Σjミイ˶^ ᴗ ^˶リ
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ミア「僕はスクールアイドルになったことで、ファーストライブのステージで……」
ミア「初めて大勢の前で歌うことができた」
ミア「さっき言った『次にやりたいこと』だって、スクールアイドルにならなければ、絶対にそんな気持ちになれなかったと思う」
しずく「ミアさん……」
ミア「それとね、しずく。『僕自身がやりたいこと』以外にも、僕にはやりたいことがあるんだ」
しずく「えっ? やりたいこと以外に、やりたいこと!?」
ミア「ははっ、ややこしい言い回しになってしまったね」
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ミア「僕は自分の夢を叶えると同時に……」
ミア「かつての僕のように、『次』へ進めずに苦しんでいる人の手を、前に引っ張ってあげたい」
ミア「かつての璃奈が……しずくが、みんなが、僕にしてくれたようにね」
しずく「ミアさんっ……」
ミア「だからしずく、僕は次のステージに行こうと思う」
ミア「できることを増やして、そしてまた日本に来て……」
ミア「今度は僕が『スクールアイドルになりたい』人の手を引っ張ってあげたいんだ!!」
しずく「…………」
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しずく「……そう、なんだ」
しずく「やっぱりすごいね、ミアさんは」
しずく「私、ミアさんが卒業してアメリカに帰っても、ずっと……ずっと応援するからねっ」
キラキラとしている瞳を僕の方に向けて、優しく微笑むしずく。
僕もその好意をもらって嬉しい気持ちになった、のだが……。
下着姿で真剣な言葉のやり取りをしているしずくを見ていると、ムクムクとイタズラ心が芽生えてきた。
ミア「……しずく、それはとても、冷たいんじゃないかな?」
しずく「えっ? つっ、冷たい!?」
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ミア「君は『ミア・テイラーを見守りたい同好会』の部員なんだろ?」
ミア「だったら……ステイツまで、僕を見守りに来てくれるんじゃないのかい!?」
ミア「それに僕が『舞台に出たい』っていうなら、まず君から色々教わる必要があるじゃないか!」
ミア「……しずく、僕と一緒にステイツに来てくれ」
ミア「来る気がない、と断られても……」
ミア「……フン、面倒だ。今すぐに、君を僕のものにしてやる!」
僕はすべて言い切る前に、しずくを隠している布団の中に飛び込み、下着姿の彼女を全力で抱きしめた。
しずく「みっ、ミアさんっ!?」
ミア「言っておくが、先に誘ってきたのは君の方だからな!」
ミア「今晩君の……桜坂しずくの全部を、僕がいただくっ!!」
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僕は両腕をしずくの裸体の後ろに回すと、彼女を全力で抱きしめた。
しずくの肌はふっくらと柔らかく、とても甘い香りがする。
身体は(下着姿だからだろうか)少し冷えており、暖房の効いた室内&暖かい布団との対比は、むしろ心地良い感触に思えた。
……しかし。
しずくは僕を抱き返してはくれず、布団の中に自分の顔を隠してしまっている。
しずく「うっ…ううっ……」
しずく「ごっ、ごめんなさい。心の準備がまだできてなくて……」
ミア「何で準備ができてないんだよ! このベッドシーンは、そもそも君のメイキングだろ!?」
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しずく「ほっ、ホントだね。私は女優として、まだ全然ダメなのかなぁ……」
しずく「私はしずく、大根女優♪ おでんにふろふき、サラダでカモ〜ン☆」
ミア「わああっ、しずく、落ち着いて!」
急に歌いながら泣き出したしずくを、僕は必死で慰める。
……冒頭の >>1 といい、何でこんなことになってるんだ!?
ミア「……ところでしずく、大根女優って、どうして『大根』って言うんだい?」
しずく「大根って薬のように身体に良い食べ物だから、お腹を壊さない……」
しずく「つまり『当たらない』ってところからきてるみたい」
しずく「あと体温を下げる作用もあるから、場を『冷やす』って意味もあるとか」
ミア「大根自体はヘルシーフードなのに、散々な言葉の使い方だな!」
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ミア「だったら……君と僕で、今からベッドシーンの練習といこうじゃないか」
しずく「えっ、み、ミアさん!?」
ミア「大根だったら『当たる』心配もないし、女同士だから一線越えることもないだろ?」
しずく「ふえっ、そっ、そんな強引な……い、いやあ〜ん☆」
ミア「…………」
ミア「……アンビリーバブル」
ミア「しずく、君は女優より、コメディアンとしてなら大成できるんじゃないかな?」
ミア「かすみと組んで……『ぶりっ子』と『大根女優』だから、コンビ名は『ぶり大根』でどうだい?」
しずく「えぇっ!? そっ、そんなベストマッチなコンビ名はイヤだよぉ〜!!」
……そんなこんなで、僕たちは一つのベットで抱き合って眠りについた。
先に断っておくが、しずくにはパジャマを着てもらったし、センシティブな展開は何もない。残念だったな!
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*
こうやって一つの部屋でご飯を食べて、談笑して、一緒に眠る時間。
それがもうすぐ、終わりに近づいているというなら……今はそれに存分に甘えるのはアリかもしれないな、と僕は思った。
GPXではエマのように「僕のスクールアイドルは、ここからが本番だ!」と開き直って大暴れするつもりでいるが……。
今晩だけはしずくに免じて『卒業』というセンチメンタルに浸ってやろうと、彼女のヒンヤリとした肌を(パジャマ越しで)感じることにしたのだった。
【Fin.】
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【過去の投稿作品】(※pixivへ未投稿のもの)
果林「『応援する覚悟』はある?」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1709386089/
最初のしたらば板以来のSSでした。
ハンサム・ガールなミアの言い回しや、面倒臭いしずくのキャラがキチンと表現できているか心配です。
ミアの『やりたいこと』については完全に空想ですが、えいがさき第2章公開前の今がチャンスということでw
最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました〜。
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ミアしずとは珍しい
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素晴らしいです
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いい話なんだけど結局なんで>>1になったんだよw
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ミアしずか……一度書こうとして諦めた組み合わせだから、見事だわ
尊敬するぜ
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意外にも健全で良い話だった乙
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