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【SS】しずく「ミアさん、カモ〜ン☆」

1 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:50:21 ???00

しずく「ミアさん、カモ〜ン☆」



 布団をペラリとめくり、純白の下着を見せびらかしながら、桜坂しずくが僕……ミア・テイラーをベッドに誘っている。



ミア「…………」

ミア「ほ、ホワッツ!!!?」

ミア「ええっと、しずく。君が何故そんなことをしているのか、聞いてもいいかい?」

しずく「…………」

しずく「うっ、うぅぅ……」

しずく「やっぱりダメかぁ。私のほうが年上なのに、ミアさんの方がグラマーっぽいし……」

ミア「だから何を言ってるんだ!」



 しずくの突然の奇行に対して、理解不能な僕は抗議の大声を上げたのだった。


2 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:51:30 ???00

 どこから説明しようか?

 このような事態になった、そもそもの始まりは……。



    *



しずく「ミアさん、最近またご飯食べてないよね?」

しずく「お部屋もずいぶん散らかってるって、エマさんから聞いたよ?」

しずく「『ミア・テイラーを見守りたい同好会』部員として、これを見逃すことはできませんっ!」

ミア「いつの間にそんな同好会ができてるんだ!?」

しずく「もちろん栞子さん公認だよっ♪」

ミア「僕の公認も取ってくれよ!」

しずく「あっ、あと部長は果林さんです!」

ミア「意外な人選がきたな! それだったら果林の部屋も綺麗に……」



 そう言いかけて、僕は言葉を止める。


3 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:52:15 ???00

 年が明けてから、果林の部屋は整理整頓が進み……。

 いや、正確には『果林の部屋から、モノがなくなりつつある』という表現が正しいだろう。

 トランクルームを借りて、着替えや小物をそちらへ一時的に移しているようだ。

 虹ヶ咲学園の寮を出て、次に住むところもすでに決まっているらしい。



 ……このような変化を見ると、『卒業』という言葉をイヤでも実感させられてしまう。



しずく「……というワケで、代表として私・桜坂しずくがミアさんの部屋にお泊まりすることになりましたっ!」

ミア「どういうワケなんだよ、展開が強引すぎるだろ!!」



 そんな事情で、今晩しずくは僕の部屋に押し掛け……。

 もとい、一緒に一晩を過ごすことになったのだった。


4 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:53:04 ???00

 スクールアイドル同好会の部活動が終わった後。

 しずくは渦巻き模様の風呂敷に包んだホットプレートを担いで、僕の部屋にやって来た。

 部屋の片付け、ゴミの分別をテキパキとやってくれて、この件については本当に有り難いと思っている。



しずく「お腹も空いてきたし、ご飯食べよっ、ミアさん!」

しずく「材料を分けてもらいました、今晩は『愛さん特製・ジャンボタコ焼き』〜!」

しずく「ホットプレートでオムレツのように大きく焼くから、私でも簡単に……あっ、あれっ、あれれれ!?」

しずく「ううっ、やっぱり私は球技が苦手だから、丸く焼くことができないよぉ……」

ミア「タコ焼きを焼くって、スポーツに該当するのかな……?」



 巨大なタコ焼きはやや角張った形になったものの、二人で美味しくいただくことができた。


5 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:55:04 ???00

ミア「……今日は色々とありがとう、しずく」

ミア「僕はもう少しだけ、GPXに向けた曲の作業をするから、しずくは先に休んでてよ」



 そう言ってモバイルワークステーションに向き合い、シーケンサーを起動しようとする。

 そしてしずくに声を掛けられて、 >>1 の状況に至る……というワケだ。



    *



しずく「GPXが終わったら、いよいよ卒業、だよね……」

しずく「ミアさんが虹ヶ咲学園を去っちゃうのが、何だか心細くなったんだ」

しずく「璃奈さんやかすみさん、栞子さんも気持ちは一緒だよ」

しずく「……ミアさんは、卒業したらやっぱり、アメリカに帰っちゃうんだよね?」

しずく「私達より年下なんだし、もう一度、高校生からやり直せない……のかな?」

ミア「…………」


6 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:55:55 ???00

ミア「……。それは難しいね」

ミア「今回の僕の転入は、虹ヶ咲学園が特別気を利かせてくれただけで、例外中の例外」

ミア「さすがに『もう一回やり直しさせてくれ』ってお願いするのは、無理だろうな」

しずく「そっかぁ……」

ミア「うん。スクールアイドルになった今となっては、僕もミステイクだと思ってる」


7 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:56:17 ???00

ミア「……でもね、しずく」

ミア「僕にはもう、『次』にやりたいことがあるんだ」

しずく「次に、やりたいこと……?」

ミア「うん。ステイツに戻って、プロミュージシャンとしてステージで歌うこと」

ミア「他にも作曲とか、ダンスとか……しずくのように、演劇に出演するのもいいな!」

ミア「ああっ、まだまだ色々と思い付くよ!」

しずく「…………」

しずく「……そっか。そうだよね」

しずく「ミアさんはすごい人だから、私達が……私が、足を引っ張っちゃいけないよね……」


8 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:56:54 ???00

ミア「…………」

ミア「その考え方は間違ってるよ、しずく」

ミア「昨年、ランジュを空港で引き留めたときの直前、僕がスランプに陥っていたとき……」

ミア「僕は璃奈に手を引っ張ってもらって、スクールアイドルになることができた」

ミア「『歌いたい』という前向きな気持ちになることができたんだ」

ミア「……このことは、璃奈から聞いたことある?」

しずく「うっ、うん……。あっ、ごめんなさい! そんなつもりじゃ……」

ミア「ノープロブレム。璃奈には口止めをお願いしてないし、気にしないで」


9 : 名無しで叶える物語◆aL7eLpgY★ :2025/04/03(木) 18:57:14 ???MM
Σjミイ˶^ ᴗ ^˶リ


10 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:57:15 ???00

ミア「僕はスクールアイドルになったことで、ファーストライブのステージで……」

ミア「初めて大勢の前で歌うことができた」

ミア「さっき言った『次にやりたいこと』だって、スクールアイドルにならなければ、絶対にそんな気持ちになれなかったと思う」

しずく「ミアさん……」

ミア「それとね、しずく。『僕自身がやりたいこと』以外にも、僕にはやりたいことがあるんだ」

しずく「えっ? やりたいこと以外に、やりたいこと!?」

ミア「ははっ、ややこしい言い回しになってしまったね」


11 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:57:55 ???00

ミア「僕は自分の夢を叶えると同時に……」

ミア「かつての僕のように、『次』へ進めずに苦しんでいる人の手を、前に引っ張ってあげたい」

ミア「かつての璃奈が……しずくが、みんなが、僕にしてくれたようにね」

しずく「ミアさんっ……」

ミア「だからしずく、僕は次のステージに行こうと思う」

ミア「できることを増やして、そしてまた日本に来て……」

ミア「今度は僕が『スクールアイドルになりたい』人の手を引っ張ってあげたいんだ!!」

しずく「…………」


12 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:58:54 ???00

しずく「……そう、なんだ」

しずく「やっぱりすごいね、ミアさんは」

しずく「私、ミアさんが卒業してアメリカに帰っても、ずっと……ずっと応援するからねっ」



 キラキラとしている瞳を僕の方に向けて、優しく微笑むしずく。

 僕もその好意をもらって嬉しい気持ちになった、のだが……。

 下着姿で真剣な言葉のやり取りをしているしずくを見ていると、ムクムクとイタズラ心が芽生えてきた。



ミア「……しずく、それはとても、冷たいんじゃないかな?」

しずく「えっ? つっ、冷たい!?」


13 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 18:59:24 ???00

ミア「君は『ミア・テイラーを見守りたい同好会』の部員なんだろ?」

ミア「だったら……ステイツまで、僕を見守りに来てくれるんじゃないのかい!?」

ミア「それに僕が『舞台に出たい』っていうなら、まず君から色々教わる必要があるじゃないか!」

ミア「……しずく、僕と一緒にステイツに来てくれ」

ミア「来る気がない、と断られても……」

ミア「……フン、面倒だ。今すぐに、君を僕のものにしてやる!」



 僕はすべて言い切る前に、しずくを隠している布団の中に飛び込み、下着姿の彼女を全力で抱きしめた。



しずく「みっ、ミアさんっ!?」

ミア「言っておくが、先に誘ってきたのは君の方だからな!」

ミア「今晩君の……桜坂しずくの全部を、僕がいただくっ!!」


14 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 19:02:00 ???00

 僕は両腕をしずくの裸体の後ろに回すと、彼女を全力で抱きしめた。

 しずくの肌はふっくらと柔らかく、とても甘い香りがする。

 身体は(下着姿だからだろうか)少し冷えており、暖房の効いた室内&暖かい布団との対比は、むしろ心地良い感触に思えた。



 ……しかし。

 しずくは僕を抱き返してはくれず、布団の中に自分の顔を隠してしまっている。



しずく「うっ…ううっ……」

しずく「ごっ、ごめんなさい。心の準備がまだできてなくて……」

ミア「何で準備ができてないんだよ! このベッドシーンは、そもそも君のメイキングだろ!?」


15 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 19:02:54 ???00

しずく「ほっ、ホントだね。私は女優として、まだ全然ダメなのかなぁ……」

しずく「私はしずく、大根女優♪ おでんにふろふき、サラダでカモ〜ン☆」

ミア「わああっ、しずく、落ち着いて!」



 急に歌いながら泣き出したしずくを、僕は必死で慰める。

 ……冒頭の >>1 といい、何でこんなことになってるんだ!?



ミア「……ところでしずく、大根女優って、どうして『大根』って言うんだい?」

しずく「大根って薬のように身体に良い食べ物だから、お腹を壊さない……」

しずく「つまり『当たらない』ってところからきてるみたい」

しずく「あと体温を下げる作用もあるから、場を『冷やす』って意味もあるとか」

ミア「大根自体はヘルシーフードなのに、散々な言葉の使い方だな!」


16 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 19:03:33 ???00

ミア「だったら……君と僕で、今からベッドシーンの練習といこうじゃないか」

しずく「えっ、み、ミアさん!?」

ミア「大根だったら『当たる』心配もないし、女同士だから一線越えることもないだろ?」

しずく「ふえっ、そっ、そんな強引な……い、いやあ〜ん☆」

ミア「…………」

ミア「……アンビリーバブル」

ミア「しずく、君は女優より、コメディアンとしてなら大成できるんじゃないかな?」

ミア「かすみと組んで……『ぶりっ子』と『大根女優』だから、コンビ名は『ぶり大根』でどうだい?」

しずく「えぇっ!? そっ、そんなベストマッチなコンビ名はイヤだよぉ〜!!」



 ……そんなこんなで、僕たちは一つのベットで抱き合って眠りについた。

 先に断っておくが、しずくにはパジャマを着てもらったし、センシティブな展開は何もない。残念だったな!


17 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 19:05:04 ???00



    *

 こうやって一つの部屋でご飯を食べて、談笑して、一緒に眠る時間。

 それがもうすぐ、終わりに近づいているというなら……今はそれに存分に甘えるのはアリかもしれないな、と僕は思った。

 GPXではエマのように「僕のスクールアイドルは、ここからが本番だ!」と開き直って大暴れするつもりでいるが……。

 今晩だけはしずくに免じて『卒業』というセンチメンタルに浸ってやろうと、彼女のヒンヤリとした肌を(パジャマ越しで)感じることにしたのだった。



【Fin.】


18 : 名無しで叶える物語◆3E2EF1wa★ :2025/04/03(木) 19:05:54 ???00

【過去の投稿作品】(※pixivへ未投稿のもの)

果林「『応援する覚悟』はある?」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1709386089/



最初のしたらば板以来のSSでした。
ハンサム・ガールなミアの言い回しや、面倒臭いしずくのキャラがキチンと表現できているか心配です。

ミアの『やりたいこと』については完全に空想ですが、えいがさき第2章公開前の今がチャンスということでw

最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました〜。


19 : 名無しで叶える物語◆aTQhhHLD★ :2025/04/03(木) 19:24:04 ???00
ミアしずとは珍しい


20 : 名無しで叶える物語◆SS4PaSEU★ :2025/04/03(木) 19:44:56 ???00
素晴らしいです


21 : 名無しで叶える物語◆BY9SGPm3★ :2025/04/03(木) 21:53:31 ???00
いい話なんだけど結局なんで>>1になったんだよw


22 : 名無しで叶える物語◆0eqvMI7W★ :2025/04/03(木) 22:04:11 ???00
ミアしずか……一度書こうとして諦めた組み合わせだから、見事だわ
尊敬するぜ


23 : 名無しで叶える物語◆KPAqmsKA★ :2025/04/03(木) 22:35:59 ???00
意外にも健全で良い話だった乙


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