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【SS】善子「グラップラー曜!!」

1 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 16:13:55 ???Sd
爆破してしまったので再々投稿していきます!
完成目指して頑張ります!


2 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 16:14:10 ???Sd
〜沼津駅前ヤバコーヒーにて〜

季節は秋。
Aqours1年組と曜がケーキを食べながら談笑していた。

善子「ねぇ聞いた?」

花丸「何がずら」

善子「何でも東京の虹ヶ咲ってところから喧嘩自慢が4人沼津に乗り込んでくるらしいわよ。鞠莉が言ってた」

ルビィ「ウユユ!?怖いなぁ……」

曜「へぇ〜随分遠くから来るんだね」

花丸「沼津は強い人が多いからね。世は格闘ブーム。強き者と出会いたいなら沼津が一番ずら」

ルビィ「ルビィは痛いの嫌だよ……」

曜「仲間と一緒に来るってことは対抗戦なのかな?」

善子「それが4人は互いに相談したわけではないようなの。偶然同じタイミングで来ることになったんだって!!」

ルビィ「そんな偶然あるかな?」


3 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 16:14:36 ???Sd
花丸「シンクロニシティっていうやつずら」

善子「何にせよ女子高生が狙われる可能性がある。私たちも気をつけましょう」

花丸「ずら」

曜「…………」


4人は程なく解散し、それぞれの帰路に着く。
曜は今の話を心の中で反芻していた。

曜「強い子とやれるんだ……」

ニヤァと口角の上がる曜。

曜は沼津では有名な喧嘩自慢であった。
身を削るようなトレーニングの果てに人智を超える力を手にしたのだ。

「すいませーん」

不意に横から声をかけられる。
曜に気配を悟られず。


4 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 16:15:13 ???Sd
曜「……どうしました?」

「淡島マリンパークってどこにあるか分かりますか?」

曜「6キロくらい南に行くと嫌でも見えてくると思うよ」

「Grazie!!」

曜「……外国人?」

エマ「うん、私はエマ・ヴェルデ!スイスから来たんだ!」

曜「私は渡辺曜。淡島マリンパークに何しに行くの?」

エマ「観光だよ〜。たくさんの生き物を見に行くんだ〜!」

曜「(殺気はゼロ。思い違いか……)」


曜「そっか。沼津は良いところだから楽しんでね!」

エマ「うん!per favore muori!!」


聞き慣れぬ外国語で満面の笑みを浮かべるエマ。
曜は何かの別れの言葉なのかなと思った瞬間。


曜「ッッッぶっ!!??」


エマが曜の顔面に頭突きを喰らわした。
警戒を解いた瞬間の攻撃に曜は全く反応できなかった。

よろめく曜の腹に続け様に右ストレートを放つエマ。

めりぃッと鈍い音が響き曜は住宅に突っ込んだ。

ドガァァッ!!!!


曜「がッッッ!!!??」


エマ「あははははははは!!!」


5 : 名無しで叶える物語◆nX3ASFm5★ :2025/01/01(水) 16:24:12 ???Sa
エグくて草


6 : 名無しで叶える物語◆Uj5yuPaL★ :2025/01/01(水) 16:52:27 ???Sd
復活ktkr


7 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 17:08:37 ???Sd
曜「(コイ、ツ………!!!)」

怒りでアドレナリンが分泌され、戦闘モードに入る曜。
しかし起き上がって目の前を見た時にはもうエマは居なかった。

曜「クソ!!!!」

曜はLINEのグループチャットでAqoursメンバーに周知する。


曜『虹ヶ咲の刺客の1人に襲われた!エマとか名乗っていたよ。赤色の三つ編みの女!』

千歌『大丈夫なの!?』

善子『早速!?勝ったのよね!?』

花丸『オラと善子ちゃんはまだ沼津駅前にいるずら!合流するずら!』

ダイヤ『ついに被害が出てしまいましたか。生徒会長としてなるべく早く私が4人の身柄を確保いたしますわ』

果南『楽しそうだね!私も海から上がったら混ぜてよ!』

鞠莉『果南今どこに居んのよ』

果南『駿河湾沖』


いつものAqoursのメンバーの会話に心が休まる曜。
一旦花丸達と駅前に集まることになった。


8 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 17:08:56 ???Sd
〜沼津駅前〜

善子「まさか曜が襲われるとはね」

花丸「怖いずら……」

善子「女子高生を無差別に襲っているのかな」


曜が来るまでの間、沼津駅前の駐車場で待機するよしまる2人。

善子「まぁ花丸は戦えないから私が守ってあげるわよ。東京モンなんかに私が負けるわけないし」

花丸「善子ちゃん……惚れちゃいそうずら」

善子「何言ってんのよ!!///」


「あぁ、麗しき少女愛。演劇の主題にはピッタリですね」


9 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 17:09:26 ???Sd
花丸「綺麗な人ずら!」

善子「誰よアンタ」


2人に目の前に仰々しく体をくねらせて芝居の様に喋る女子高生が現れた。
善子の質問ににっこりと花の様に微笑い、お辞儀をしながら自己紹介をし始めた。

しずく「申し遅れました、私は桜坂しずくと申します。演劇を何より愛し『行住坐臥』全て演劇のために行動しています」


善子「………」


善子は警戒する。
目の前の可憐な少女、しずくからは感じたことのない不気味なオーラが漂っていたからだ。

善子「ここらでは見ない制服ね」

しずく「えぇ。虹ヶ咲学園という所から来ました」

花丸「虹ヶ咲!?」

しずく「知っているのですか?」

善子「ハァ〜…面倒な事に巻き込まれちゃったわね」

しずく「……」

しずくは目を少し細めて善子を見た。
善子が戦闘体制に入ったからだ。


10 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/01(水) 17:09:56 ???Sd
善子「花丸、離れてなさい」

花丸「う,うん……」

しずく「あぶなーーーい!!!!!」

善子「!?」

突然しずくが大声をあげて善子のスプレー缶を向けて発射した。

シュウウウウウウ………

善子「なっ!?」

善子は咄嗟に両手を前でクロスさせ防御の体制を取った。
防御が間に合わず目と鼻に謎の霧が入ってくる。
焦る善子。
だがこれはしずくの罠だった。

しずく「ただの水でしたーーー!!!」

善子の防御の隙間から彼女の顎を目掛けてアッパーを行うしずく。
バカァン!!と乾いた音が響いて善子の体が宙に浮く。

善子「がっ!!!」

咄嗟に善子は宙に浮きながらも右足を振りしずくに蹴りを仕掛ける。

しずく「おお!その状態から蹴れるなんてやりますねぇ!!」

善子「がっ………ぶふっ…………」

花丸「善子ちゃん!!」

舌を噛んでしまったのか口からは夥しい血を垂れ流していた。
喋る事もできない様だ。


11 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/02(木) 10:58:12 ???00
しかし善子の闘志は衰えていない。
しずくを前に「堕天使ポーズ」を取る。

しずく「何ですかそのポーズ!演劇好きなんですか!?」

善子「あぐはふぶぅ(アンタと一緒にしないで)」


舌を噛み切った善子は口の中に溜まった血を霧の様にしずくに吹きかけた。

しずく「甘いですよ!」

しずくは「こういう」勝負に慣れているのか霧を吹きかけられても高速で横に回転し、飛沫を吹き飛ばした。
その瞬間、善子は堕天使のポーズで上空8mほど飛び上がった。

回転し終わったしずくは善子を見失う。

しずく「(いない!?)」

善子「うぶぁお!!!(上よ!!!)」

しずく「っ!!!!」

空から善子の蹴りが降ってきたため、防御することもできずしずくの顔面にライダーキックが炸裂した。

しずく「うわぁ!!!!」

叫びながら幾つもの自転車を薙ぎ倒し倒れるしずく。

善子「(堕天使キックは8mから地上に勢いをつけて降りる技だから足への負担が大きすぎる。もう使えないわね)」

現に生まれたての子鹿の様に膝を振るわせる善子であった。


12 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/02(木) 10:58:51 ???00
善子「が、がぶぅ………」

花丸「よ、善子ちゃん!!」

口からは今だに血が止まらない善子。
花丸が救急車を呼ぼうとした瞬間、駐輪場から笑い声が聞こえてきた。

しずく「あはははははははははは!!!!!やっぱり沼津に来て良かったですよ!人間があんな高く飛び上がるなんて東京では見なかった!!」

しずく「けどねぇ………もう『覚え』ましたよ!!次は私の番です!!」


花丸「嘘………」

善子の蹴りを受けても立ち上がるしずくを見て絶望を隠せない花丸。
ダメージはあるのだろう。
しずくの鼻は遠目で見ても分かるように曲がっており、皮膚が一部抉れて出血していた。
だが善子の方が深手だ。


善子「ざがるなざう(下がりなさい)」

花丸「よ、善子ちゃん…………」

しずくを睨みながら花丸を手で制す善子。


13 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/02(木) 10:59:46 ???00
「そこからは私がやるよ」

花丸「あ!」

しずく「………」

曜「いいでしょう。虹ヶ咲からの刺客さん?」

しずく「渡辺曜さん………」

曜「…………え!?」


しずく「う、う、………ごめんなさい、ごめんなさい。ここまでやるつもりじゃ無かったんです…………」ポロポロ


突然しずくが両目から大粒の涙を流して謝りはじめた。
予想だにしない反応に曜もよしまる2人も唖然としていた。


しずく「う、う、う、………うおええええええええ!!!!!!」

花丸「ひ!!」


14 : 名無しで叶える物語◆P4zcyTmH★ :2025/01/02(木) 10:59:48 ???Sd
さあ今度は完結まだ辿り着けるか


15 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/02(木) 11:00:15 ???00
嗚咽から嘔吐。
しずくは口からゴルフボールほどの大きさの、金属製の球体を吐き出した。
それを両者間の真ん中に投げた。

曜「2人とも伏せて!!!!」

善子「(嘘でしょう!?)」

花丸「ずらら!!」

曜が2人に覆い被さり守ろうとした。
しかし金属の球は転がるだけで3人が危惧した事態にはならない。


曜「………?」


恐る恐る振り返る曜。
目の前にはコンクリートブロックを曜に振りかぶるしずくの姿があった。


曜「なっ!!!」

しずく「これが戦争ですよ!!!!」


バゴン!!と本気のスイングで曜にコンクリートをぶつけたしずく。
脳が揺れて倒れる曜に追撃することなく、しずくは全力疾走で商店街の方に逃げていった。

しずく「また会いましょう〜!!!!!」


16 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/02(木) 11:00:58 ???00
>>14
予想以上に長くなったからなぁ。
とはいえどんな形でも終わらせたい


17 : 名無しで叶える物語◆P4zcyTmH★ :2025/01/02(木) 12:04:44 ???Sd
>>16
頼むぜ
前も楽しみに追ってたんだ


18 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:39:21 ???00
曜「………当て逃げされちゃったなぁ」

花丸「2人とも病院に行くずら!!救急車を呼んだから!」

曜「私はいい。善子ちゃんは舌縫ってもらいなよ」

善子「(曜………)」

曜「またね」

花丸「あっ!」

花丸の制止虚しく曜はゆっくりと歩いて帰った。

曜は落ち込んでいたのだ。
もしあの場で殴ってきたのがコンクリートではなくナイフだったら?
刺されて曜は負けていたかもしれない。

曜「ふふっ……!」

曜は笑う。

曜「エマちゃんとしずくちゃんだけじゃない。他の2人も喰わないともう許せないよ……!」


19 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:40:14 ???00
〜次の日浦の星体育館〜

全校生徒を前に鞠莉が虹ヶ咲の襲撃について周知していた。

鞠莉「知っての通り虹ヶ咲のメンバー4人が沼津市に上陸したわ。すでに曜と善子は交戦、善子にいたっては舌を縫うほどの怪我をした。上陸メンバーを今からモニターに映すわ」

ざわ…ざわ……


鞠莉「まずエマ•ヴェルデ。スイスの元軍人で敗北を知るために沼津へ来たそうよ」

鞠莉「次に桜坂しずく。演劇部で他人の技をすぐに真似する癖があるみたい。強敵が苦痛に顔を歪ませる姿が好きらしいわ」

鞠莉「3番目は鐘嵐珠、中国拳法の達人よ。フィジカルが凄まじくヘビー級の格闘家が何人もお釈迦にされてるわ」

鞠莉「最後は宮下愛……戦闘狂よ。かなりサイコが入ってる女で何しでかすか分からない怖さがあるわ」

善子「ちょっと待って」

鞠莉「何?」

善子は昨日ちぎられた舌を病院で縫ってもらいなんとか会話ができるようになった。

善子「詳しすぎない?エマやしずくはともかくその他の2名の情報はどこから…」

鞠莉「昨日4人揃って私の家に来たからよ」


花丸「ずら!?」

ルビィ「鞠莉ちゃん無事だったの!?」


20 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:40:57 ???00
鞠莉「私は一応沼津で権力のある1人だからね。浦の星の理事も務めているし彼女らなりの敬意かな?『沼津で遊ぶ』って言ってどっか行ったわ」

ダイヤ「舐められたものですわね」

鞠莉「登下校は十分注意して。できるだけ1人にならないように。では解散」

不安そうな顔をしながら生徒たちが帰っていく。
最後に体育館に残ったのはAqoursのメンバーだった。

鞠莉「はぁ〜面倒な事になったわね」

善子「浦の星の喧嘩自慢で対抗するしかないわよ」

ダイヤ「私、善子さん、曜さん、ルビィ、梨子さんですか」

ルビィ「ピギィ!?私も!?」

ダイヤ「沼津を守るためです。たまには血を流しなさい」

ルビィ「うゆゆーーー!!!」

花丸「あはは…」


21 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:41:30 ???00
曜「私忙しいから帰るね」

千歌「曜ちゃん!?1人で帰ったら危ないよ!」

曜「私なら大丈夫。……もう不覚を取らない」

千歌「曜ちゃん……?」

善子「ったく…」

花丸「昨日エマっていう人としずくっていう人と戦ってから元気ないずら」

善子「まぁ当て逃げされたもんだしね。あれが奴らの戦い方。しずくとかいうやつ、『これが戦争ですよ』とか言ってたじゃん。虹が咲のメンバーは『何をやっても勝つ』を徹底してるのかも」

千歌「やっかいな人達だね…」


22 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:41:55 ???00
梨子「じゃあ千歌ちゃんは私と帰ろっか」

千歌「うん、1人じゃ危ないもんね!」

梨子「うひひ……」

花丸「邪な気配を感じるずら。祓うずら?」

梨子「大丈夫よ!……全く。というか果南ちゃんは?」

鞠莉「あのバカ…まだ駿河湾でワカメ採取しているらしいわ。位置情報を送ってきたんだけど駿河湾の中心にピンが立っていたわ」

ルビィ「何日も海上で人が生きれるの?」

花丸「オラの持つ知識ではありえない事ずら」

ダイヤ「それではまぁ……」

鞠莉「お開きね」


23 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:42:32 ???00
とはいえバス停までは7人一緒だ。
停留所までの道中で鞠莉がスマホを見て驚きの声を上げた。

鞠莉「はぁ!?沼津駅前のコンビニで殺人事件があったそうよ!」

ダイヤ「何ですって!?」

善子「刺客に殺人事件って…どんどん沼津の治安が悪くなっていくわね」

花丸「犯人は捕まったずらか?」

鞠莉「逃走したらしいわね。防犯カメラの情報では金髪の若い少女が店員を襲ったらしいわね」

千歌「それって…」

ルビィ「刺客の1人の宮下愛さん!?」

鞠莉「コイツは他の3人とは別物よ。早く捕まえないと一般市民がどんどん犠牲になるかも」

ダイヤ「黒澤家の人脈を使い居場所の特定を急がせましょう」


24 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 09:43:58 ???00
〜その頃の沼津駅〜

愛「純愛だね〜」

DQN「」

女「ひ、ひ…………」ガタガタ

心臓に大きな穴を開けて絶命するDQNの横で女が震えていた。
女の目の前には金髪の美少女が手についた血を舐めながらニヤついている。

愛「彼氏なら彼女くらい守れないとダメだよね〜!まさかワンパンでお釈迦になるとは思わなかったけど!」

女「い、命だけは助けて…」

愛「あ゛?」

女「ひぃっ!!」

愛はヘラヘラした態度から一転して目を見開き女を睨む。

愛「ここは『よくも私の彼氏を!』って激昂する所でしょう。自分の命しか考えていないとか……はぁ〜…終わってるね〜」

愛「決めた。命『だけは』助けてあげない♩」

女「いや……」

愛「背骨をへし折るぞ〜〜!」

愛はガッツポーズをとりながら女に近づく。
怯えすぎて立ち上がることもできない女に、愛の殺意がこもった手が近づく。


ガシッ!!

愛「!!??」

曜「やめなよ」

愛「………誰?」

ミシミシミシ………

愛の腕を折るつもりで握力を込める曜。
しかしその骨は普通の人間のものとは訳が違うのかビクともしない。


25 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:43:10 ???Sd
曜「浦の星女学院2年渡辺曜」

愛「はっ!!」

愛は嬉しそうな表情をした後、左手で曜の頬を打ち抜くためフックを行う。

曜「ふっ!!」

しゃがんでフックを回避する曜。
同時に愛の鳩尾に前蹴りを放った。

愛「がは!!!」

苦悶の表情を浮かべながら1mほど後退する愛。

愛「良いなぁアンタ………」

鳩尾を抑えながら笑みを浮かべる愛。

曜「何が」

曜はファイティングポーズをとりながらステップする。
愛は何も構えていない。

愛「浦の星の噂は虹ヶ咲にも入ってきてたんだ。3度の飯より格闘好きな連中が揃っているってね!」バッ

猿のような身のこなしでハイキックを繰り出す愛。
曜は両腕でガードする。

曜「(重ッッッ!!!!)」

可憐な容姿から想像もできぬ蹴りの威力に驚きながらも何とかガードに成功した。
お返しとばかりに今度は曜がハイキックを叩き込む。


26 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:43:45 ???Sd
愛「あーい!!」

愛はそれを左手一本でガードし空いてる右手で脚を掴む。

曜「うわっ!!」

愛「メリーゴーラン!!!」

曜の脚を持ったまま愛は回転し、そのまま砲丸投げのように彼女を投げ飛ばした。
浮遊する曜。
そのままビルの壁に叩きつけられる。

曜「がは!!!」

衝撃で血を吐きながら壁にめり込む曜。

曜「あ……が…………」

地上を見ると愛が笑顔でこちらに向かってきていた。
壁を蹴って着地しようとするもそれより早く愛の拳が腹に食い込んだ。

メゴォ!!と鈍い音が響き再び血を吐く曜。
追撃は終わらない。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

まさにラッシュだ。
壁に埋まる曜に何発も高速でパンチを放つ愛。

壁は愛の力に耐えられず崩壊し、曜が室内へ吹っ飛ばされた。

曜「げばああああああああ!!!!!!」


「うわ!!」

「な,何だこいつ!?」


室内は会社だったようで従業員が飛び込んできた曜を見て驚愕していた。


27 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:47:18 ???Sd
曜「あぐ……がは………」


ヨロヨロになりながらも何とか立ち上がる曜。
拍手をしながら愛が満面の笑みで入室してきた。

愛「すごいね君。本気で殴ったのにまだ立ち上がれるんだ!!」


曜「はぁ……はぁ……(コイツ…)」


曜はいくつも内臓が損傷し、肋が折れていた。
だが闘志は衰えていない。


「君たちは誰だ!壁を破壊して入ってるなど言語道断、万死に値するぞ!」


愛「んー??」

年老いたサラリーマンが壁を破壊して入ってきた2人を交互に見ながら声を上げる。

腕に自信があるのか見たこともない構えをしながら愛に襲いかかった。

「ひゃはぁっ!!!」


28 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:48:46 ???Sd
愛「わ、何々!?」

愛は驚きつつも冷静に手刀でサラリーマンの首を落とし秒殺する。

「きゃあああああ!!!」

会社内に悲鳴がこだます。
曜は悲鳴に愉悦を感じる愛の隙をついて飛び膝蹴りをかました。

ブゴォ!!!

愛「ぶぅあ!!やるじゃん!」

曜「ハイィィィィィィィ!!!!!」

愛「がっ!!!!」


膝蹴りを愛の鼻にめり込ませた後、すかさずワンツーを顔面に叩き込んだ。
もろに喰らった愛はよろけるが倒れない。
鼻は醜く曲がっていた。

曜「まだまだぁ!!!!」

愛「あいあいさーー!!!」


愛はバク転で今し方開けた壁の穴から脱出する。


曜「待てい!!!!」

愛「強いね君!けど私は他に戦い子がいるんだーー!今日はここまでにしよっか」

曜「逃がすかぁ!!!!」

激昂する曜。
会社に置いてあった金庫を逃げる愛に投げるも華麗に避けられる。
愛はあっという間にその場から居なくなってしまった。


曜「クソォォォォォォォォ!!!!!!」


バキバキバキバキ!

「ひぃ!!」

刺客に3度目の逃亡を許してしまった曜。
あまりの不甲斐なさに何度も地面を踏みつけ怒りを表現した。

周りにいた会社員たちは恐怖のあまり警察に電話することも忘れてしまっていた。


29 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:49:27 ???Sd
〜善子の家〜

善子「はぁ!?曜また刺客と戦ったの!?」

善子は自分の家のソファでスマホを見ながら仰天した。
AqoursグループLINEで曜が宮下愛と戦闘したと報告してきたからだ。

善子「運がいいやら悪いやら」

Aqoursは一応アイドルグループである。
しかし沼津という立地上肉体的な「強さ」が求められることは必然だ。

善子や曜、果南などはアイドルよりも格闘家として有名になってしまっていた。


善子母「善子ー、いるの?」

善子「あ、お母さん。何?」

善子母「今日のお夕飯何がいいかなって」

善子「鳥のささみとかでいいわよ」

善子母「そう…ねぇ善子」

善子「うわ!な、なによ……」

善子母が善子の座っているソファの真横に座り、まるで恋人のようにベタついてきた。
実の母が今までしたことがない行動に善子の情緒がバグる。


30 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:50:07 ???Sd
善子母「たくましい腕ね…鍛えてるんだ?」

善子「知ってるでしょうそんな事…近いって!なんなのマジで!」

善子母「首はどうかしら?」

ぎゅるん!!

善子母が一瞬のうちに善子の背後に周りチョークスリーパーを決めた。

善子「がっ!?」

善子母「こんなのも剥がせないとか……我が娘ながら悲しいわ」

善子「(な、なにが……!?)」

母の思わぬ行動にパニックになりながら目に前の鏡を見るとそこに母の姿はなく、桜坂しずくの姿があった。

しずく「こんにちは〜♩」

善子「がっ!ア゛んだ………!!??」


しずく「私の特技は変装ですよ。演劇が好きとあんなに言っていたのに…簡単に騙されてくれて少し残念です」

善子「あ!!……がっ………!!!」

しずく「おやすみなさい」

ギュウウウウウウ……………

善子「ぁ………」

善子「」

善子は酸素を取り込めず意識を失った。
倒れた善子を真上から無表情に見つめるしずく。

しずく「勝利とは生殺与奪の権利がある方にあります。つまり勝者は私です。さようなら」

意識の失った善子を放置して津島宅を去ったしずくであった。


31 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:50:43 ???Sd
しずく「あっけなかったな……」

しずくは善子に不完全燃焼感を抱いていた。
彼女もファイターだ。
正々堂々ではなく「何でも使い」勝利することを心情にしている。

勝つためならば命乞いも色仕掛けもお手のものであった。
戦闘中、野生の嗅覚などで善子がしずくの正体を破ることに期待していたのだ。

エレベーターを降りて夕食を取りにイーラへ行こうかな。
そう思っていたがマンションを出た先で思わぬ人物と遭遇した。


ルビィ「うゆっ!!」

しずく「…………?」


しずくはルビィを知らない。
こちらを見て驚くルビィに怪訝な顔をしつつも脇を通り過ぎようとしたが……。

ルビィ「ひぃ!桜坂しずくさんだぁ!」

しずく「……私を知っているのですか?」


32 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:51:16 ???Sd
ルビィ「うゆ!?な、なんでもありましぇん………」

しずくはあからさまに目を背けて自分の脇を通り過ぎようとしたルビィをみて少し嗜虐心が湧いた。

しずく「可愛い子ですね〜。私と遊びに行きませんか?」

ルビィ「し、知らない人に着いて行ったらダメってルビィ言われているし……」

しずく「美味しいもの奢ってあげますよ」

ルビィ「あ、あの!」

しずく「はい?」

ルビィ「何で善子ちゃんの家から出てきたんですか?」

しずく「あぁ……善子さんを痛ぶりに来たんですよ」

ルビィ「ピギィ!?」
しずく「まぁあっけなかったですけどね。じゃあ私と……」

ルビィ「…………」

しずく「っ!!」

ルビィの雰囲気が弱々しいものから一点、重圧を感じさせるものに変わりしずくが身構える。


33 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:51:48 ???Sd
ルビィ「善子ちゃんはウユの友達やど」

しずく「それはお気の毒です。それで……どうするんですか??」

ルビィ「あの世へ行くビィ」

しずく「はい?」

か弱い少女から発せられた言葉とは思えず脳が理解を拒んだ。
瞬間、まるで大型トラックに撥ねられたかのような衝撃がしずくの腹に突き刺さる。

爆弾が投下されたかのような音があたりに響く。
しずくが吹っ飛ばされ、マンションのエレベーターの分厚いドアをひしゃげさせ彼女は一瞬気を失う。

しずく「ごぼぉぉ!!!!」

意識が回復する。
しかしルビィの高速腹パンに胃が破れ、吐血していた。


34 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:52:13 ???Sd
しずく「(バカな……パワーならエマさんより上だ。こんな子が……)」

ルビィ「一緒に謝りに行こっか」

しずく「が………いやどいっだら……?」

ルビィ「殺す」

狭いエレベーター内に突風が起こる。
ルビィがパンチの構えをとったからだ。

しずく「ぷっ!!!」

しずくは口内に仕込んでいた針をルビィの目に飛ばす。
ルビィは構えを解き、針をしゃがんで躱した。

その隙にロビーへジャンプして飛び出し、外へ逃げるしずく。

しずく「(距離を置かないと!!)」

ボゴォ!!!!

しずく「がはっ!!」


35 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:52:46 ???Sd
後ろからエレベーターのドアが飛んできてしずくの背中にめり込んだ。
投げたのはもちろんルビィだ。


しずく「化け物め………」


背骨にヒビが入り立ち上がるのにも苦労するしずく。
数メートル先からルビィが無表情でこちらに走ってきていた。

しずく「動くなぁ!!!」

「きゃあ!!」

しずくはひとまず人質を取ることにした。
道を歩くOLを捕まえて喉元にナイフを当てたのだ。

ルビィは困惑した様子でこちらを見ていた。

しずく「(よし……少し休憩させてもらいましょう)」

ルビィ「ルビィその人知らないよ?」

しずく「え………」

ルビィ「…………」テクテク

無表情で近づいてくるルビィに人質は通じないと思ったのかOLをルビィの方へ突き飛ばすとまた距離を空けようとする。


36 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:53:21 ???Sd
ルビィ「踏ん張るビィ!!」


「きゃあああああ!!」

しずく「嘘でしょう!??

ルビィはOLを片手で掴むとしずくに投げ飛ばした。
間一髪で避けるしずく。


ルビィ「懺悔するビィ!!!」

ルビィの爪先がしずくの脛にめり込む。

しずく「ぐあああああ!!!?」


ルビィ「さぁ謝りに行こう!」

しずく「(強い……強すぎる。こんな……私が負けるのですか!?)」

倒れたしずくの襟を掴むと善子の家まで引きずっていくルビィ。

しずく「いや、私は2度も敗北しない。将来は大女優なのだから!!!」

ルビィ「るんるん♩」

ルビィは鼻歌を歌いながらしずくを引きずっていた。

しずくのことなど見てすらいない。
戦闘経験の浅いルビィならではのミスだ。
それが命取りになるとも知らずに。


37 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:53:48 ???Sd
しずく「確か…あの世へ行くビィ…でしたっけ?」

ルビィ「うゆ?」

自分の技名を声に出すしずくに不思議に思ったのか、チラッと振り向くルビィ。

そこには先ほどとは違う覇王のオーラを纏ったしずくがいた。

まるで自分と同じような……


しずく「あの世へ行くビィ!!!!」


ルビィ「ピギッ!?」

先ほどルビィが放った技を今度はしずくが放つ。

しずくを倒した気でいたルビィは反応ができずにパンチを腹に受けてしまった。


ルビィ「ピギィエエエエエエ!!!!!」

ルビィは自らの技を喰らい10mほど殴り飛ばされた。
受け身すら取れずに木を真っ二つにへし折り道路に投げ出された。


38 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:54:52 ???Sd
車は突然道路に現れたルビィを避けきれずぶつかってしまう。

ルビィ「ピギェッ!!!」

今度はトラックに轢かれてしまった。
再び歩道に吹っ飛ばされるルビィ。

ルビィ「あ、あ……」ガクガク

しずく「大丈夫ですか?ずいぶん苦しそうですが」

ルビィは曜やダイヤと違い普段鍛えていない。
黒澤家の血のみでここまで戦い抜いていた。
それ故痛みに弱い。

何とか立ち上がるルビィだが全身の骨が折れ、しずくと同様胃に穴が空いていた。
ぶらりと力なく彼女の右腕が垂れ下がっている。

しずく「なるほど、ルビィちゃんはその身に余る力を振るえるのですね」

ルビィ「……」

しずく「つまり…あなたの肉体はあなたの余りある力に耐えきれない!!殴る、蹴るたびにルビィちゃん自身にダメージを与えるまさに諸刃の剣!!」


39 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:55:31 ???Sd
しずく「今度は私の番ですよ……」

ルビィ「それは…!?」

しずくはルビィの大親友、津島善子の堕天使のポーズを取り始めた。

ルビィの頬に嫌な汗が流れ落ちる。

ルビィ「……善子ちゃんのファンかな?そのポーズはダサいからやめた方がいいよ」

しずく「分かっているんでしょう?私が『何をできるか』……その言葉はやめてくれという懇願にしか聞こえませんねぇ!!」

ルビィ「っ!!」

しずく「たぁっ!!!!」

しずくは上空に飛び上がる。
先ほどルビィに膝を殴られた影響で6mしかジャンプできなかったがそれでも十分だ。

そのままルビィにめがけて一気に降下する。


しずく「堕天使キック!!!!!」


ルビィ「善子ちゃんの技っ!!??」

「受け」を知らぬルビィは再び蹴りを鳩尾に喰らった。


ルビィ「ピギェェェェェェェェ!!!ピ、ピギョアアアアア!!!!」ビチャビチャ


40 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:55:59 ???Sd
しずく「はぁ…はぁ……!」

ルビィは苦しみでバケツ一杯分のゲロを道路に撒き散らしている。

形勢逆転と言いたいところだがしずくも余裕がない。
堕天使キックは足に過度な負担がかかる。

もはや立っているのもやっとなのだ。

ルビィ「痛いよーー!!おねぇちゃぁ!!!助けて!!」

しずく「ふふ……いい顔じゃないですか。私の勝ち…と言いたいところですが止めを刺しておきましょう」

しずくが泣きながら転がるルビィにゆっくりと歩を進める。

ルビィ「ピギョアアアアア!!!」

しずく「善子さんに続きルビィさんもしーとめた♩」

ルビィ「ッッッ!!!」

しずくの手刀をルビィは涙目になりながら左手で受け止めた。

しずく「(この子まだっ……!!)」

ルビィ「(そうだ……私は善子ちゃんがやられたのが許せなくて。それで怒ってたんだ)」

ルビィ「(このまま負けたら善子ちゃんに、申し訳ないよ)」
グググ……


41 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:56:25 ???Sd
ルビィが泣き止み立ち上がった。
そして真っ直ぐにしずくを見据える。

ルビィ「浦の星一年黒澤ルビィです」

しずく「……虹ヶ咲学園一年桜坂しずくです。ずいぶんと勇ましい顔になりましたね」

ルビィ「何のために戦っているか思い知らされたからね。善子ちゃんのため、沼津の皆んなのために!」

しずく「(沼津の皆んなって…さっき人質のOLを投げ飛ばしてたような……)」

ルビィ「決着つけよっか」

しずく「えぇ……!」

2人が手を伸ばせば届く距離で構える。

ルビィ「ピギィオラァ!!!」ブゥン

しずく「はぁ!!!!」ブゥン

「正面から殴りあう」

しずくが普段はやらない方法だ。
しかしルビィのような化け物に小細工は通じないと感じたのだ。


42 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:57:02 ???Sd
しずくは他の人間の技を真似ることができる。
相応の負荷がかかるがルビィ相手には「ルビィ」を真似て拳を振るう。

ルビィ「ゲパ!!!!!」クラッ

しずく「くっ……」

お互いの顔面に拳が叩き込まれる。
もはや根性比べ。
ガード無しの殴り合いだ。

ルビィも最初ほどの力は出ていない。

ルビィ「ピギャラッ!!!」

しずく「あの世へ行くビィ!!!!」


「おいおい……」

「なんちゅー戦いだ」

ダイヤ「………」

野次馬とともに戦いをルビィの姉ダイヤが見ていた。
元々沼津駅に用事があり姉妹で来ていたのだが善子に挨拶しときたいとルビィが単独行動を取っていたのだ。

戻りが遅いと思いダイヤも善子の家に行ったところ、マンション付近の電柱やら地面やらが台風が通ったようにめちゃくちゃ。

何事かと思い顔を上げるとルビィが戦っていたのだ。


43 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:57:38 ???Sd
しずくはルビィの技をコピーしすぎた影響で手首がグニャグニャに曲がっていた。
拳もすでに全ての骨が複雑骨折していた。

それでも振るう。

「2度も」負けないために。

しずく「ああああああああ!!!!!!」

ルビィ「ピギェェェェェェェェ!!!!!」

そんなしずくにもとうとう限界が来た。
しずくが仕掛けたタックルをルビィが「手刀」でカウンターを合わせたからだ。
それも心臓に。
手刀は空手の技で素人が使えるものではないが、黒澤家の血が自然とその技を選択させた。

しずく「(なんだ……!?体が沈んでいく!!)」

しずく「(動け動け動け!!拳を振るうのよ!ルビィさんを倒して、沼津に勝ち、『あの人』に挑むんでしょう!?」

ルビィ「頑張るびぃ!!!!」
しずく「あぁ……」

勇ましい声とともに最後の拳がしずくに飛んでくる。
それを避けることもガードもせず、顔面で受けた。

ドサッ……

しずくは10m程後方に吹っ飛ばされ意識を失った。


44 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:58:13 ???Sd
しずく「う……」

狩野川の階段でしずくは目を覚ました。
目を開けるとダイヤ、ルビィが談笑していた。

ルビィ「起きたよ!」

ダイヤ「しずくさん。初めまして、私は黒澤ダイヤです。ルビィの姉ですわ」

しずく「………拷問でもする気ですか?」

ダイヤ「まさか。確かに他の3名の情報も頂きたいところではありますがそれでは公平性に欠けますからね。純粋な治療ですわ」

しずく「あ…」

しずくは自分が治療を開けていることに気づく。

しずく「なぜこんな事を?」

ルビィ「しずくちゃんのお陰でルビィは本当の意味での『覚悟』を知れたからね。そのお礼だよ!!」

しずく「ふっ……沼津というところは鬼しか住んでいないと思って来たのですが…とんだ拍子抜けですね」

ダイヤ「とはいえ身柄は拘束させていただきます。残りの3人もとらえた後に虹ヶ咲へ送還させていただきます。よろしいですね?」

しずく「……ランジュさんには気をつけなさい」

ダイヤ「刺客の1人のメンバーですわね」

しずく「香港では敵なしと言われた方です。フィジカルモンスター。私が東京で敗北した相手です。小細工が全く通用しなかった」

ダイヤ「ご心配なく…柔をもって剛を制す、それが私の流儀です。すぐ捕まえますので2人仲良く私の家でトランプでもしていなさい」

しずく「ふふ、楽しみにしています」


45 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:58:43 ???Sd
その様子を遠くで眺める女が1人。

愛「あららしずく負けちゃったか。だらしが無いなぁ…」

気に入らないという様子で石を川に蹴り飛ばす愛。

「あなた、肌が綺麗ね」

愛「うん?」

不意に後ろからかけられる声。
振り向くと目の前には誰もいなかった。

気のせいかと思い2人しずくの方に向き直った時、目の前に見知らぬ女がいた。

なんと愛の首筋の匂いを嗅いでいる。

愛「うわっ!!誰!?」

梨子「私は桜内梨子。アイドル活動しながら同人も描いているの。良かったら見る?」

有無を言わさず愛に同人誌を渡す梨子。

愛は怪訝な顔をしつつもページを捲る。


46 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 11:59:08 ???Sd
愛「………」

愛「うわ……」


それは少女が後輩の女子に力で屈服し、何度も犯されている姿だった。

愛は非道な行いを幾度となくして来たが性を貪る真似はした事がない。

愛は同人誌を梨子に返した。

愛「愛さんの趣味ではないなー。ちょっと気持ち悪い」

梨子「それは預言書よ?」

愛「うん?」

梨子「今から辿るあなたの運命よ?」

愛「………」


愛「冗談じゃ済まないよ?」


47 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:00:24 ???Sd
梨子「誰が冗談ですってぇ!?」


愛「ッ!!!」ビクッ

突然鬼の形相で怒鳴りつける梨子に一瞬怯んでしまった愛。

梨子「百合同人は高尚なる文学なのよ!?分かったわ、百合の歴史を戦後の文学かr」

梨子がご高説を最後まで垂れることはなかった。
愛が回し蹴りを梨子の顔面に叩き込んだからだ。

川沿いにあるフェンスを突き抜けガレージまで吹っ飛ばされる梨子。

愛「死んでてね」

倒れる梨子に吐き捨てる愛。
そのまま立ち去ろうと思ったところで…

梨子「甘美」

愛「へぇ……」

梨子がイナバウアーの状態でゆっくりと起き上がって来たのだ。


48 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:01:00 ???Sd
梨子「いい蹴りよ。本当に……心のチンポが勃ちそうになったわ」

愛「いちいちキモいね…」

梨子「ねぇあなた…何でそんな肌綺麗なの?色白で」

愛「キモいって言ってんの!そんなの戦いに関係ないでしょうが!!!!」

激昂しながら愛が梨子に走り出す。
トドメを刺す気だ。

お手本のような正拳突きを梨子の顔面に放つ。

グシャ

確かな手応え。
しかし殴ったのは梨子の描いた同人誌だった。

梨子「秘技、同人身代わりの術」
愛「嘘っ!?」

梨子はその隙に愛の後ろに回り込む。
そしてそのまま彼女の「スカート」を捲りあげ、裏太ももをベロベロ舐め始めた。

梨子「じゅるべろぉ…ベロベロ」

愛「きゃぁぁぁ!?」


49 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:01:32 ???Sd
嫌悪から慌てて前転で梨子から離れる愛。
しかし梨子は赤ちゃんのハイハイのように這いずり逃すまいと白い太ももにしがみついた。

そして次に前太ももに舌を添わせ始めた。

梨子「た、たまらないわね」

愛「くそっ!!そんなに太ももが好きならもっと味合わせてあげるよ!」

梨子「ん?」

愛は股の間まで無防備に舐める愛の髪の毛を掴み自らの腹まで引っ張る。

そのまま太ももを梨子の首に絡み付けた。


50 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:02:04 ???Sd
梨子「ごおっ!?」

愛「三角絞めだよ。苦しい?」

梨子「が…が……」

梨子は白目をむいて痙攣し始めた。
愛の白い太ももが梨子の呼吸を遮る。

梨子「ギ、ギモ゛ヂイイ……」プルプル

愛「ちっ!!!」

この期に及んでご褒美だと思っている梨子に舌打ちを隠せずそのまま力を入れ続ける。

バキッ!!!

梨子「」プランプラン

梨子の首は愛の脚力によってへし折られてしまった。
愛が脚を離した後も首が座ってない浮かん坊のようにフニャフニャになっていた。

愛「梨子ちゃんが悪いんだからね!」

言い残して愛は去ってしまった。


梨子「」

梨子「」

梨子「……」ピク


51 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:03:55 ???Sd
深夜12時

愛は深夜になれば強い奴が出るかと沼津駅前に来ていたが強そうな奴が1人も見当たらず肩を落としていた。

いたとしても群れることでしか力を誇示できなさそうな若い少年だけだ。

愛「ホテルに戻るか〜」

愛は数日間リバーサイドホテルに連泊していた。

自室に戻り服を脱ぐ。
今日1日で様々な相手と戦ったため汗を流したかったのだ。

愛「よいしょ」

全裸でシャワー室のドアを開ける。

梨子「ベロベロばぁーー!!!」

愛「きゃぁあああああああああ!!!!!!」


52 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:04:34 ???Sd
シャワー室のドアを開けると何故かそこに殺したはずの梨子が全裸で佇んでいた。

オイルを塗っているのか体中がテカテカ光っている。

愛はといえば驚きのあまり腰が抜けてしまった。

梨子「オイルレスリング開始」

梨子はニヤニヤしながら愛に抱きつく。
梨子の体に塗られたオイルが愛にもへばりつく。

ここでようやく愛は反撃に出た。

愛「おらぁ!!!」

梨子「うひゃぁ!!」

梨子の体に抱きつき、思い切り窓に投げた。
しかしそれを愛の力で行うとどうなるか。
パリィン!!!

梨子がホテルの五階から下に落ちる。

愛「もう上がってくんな!!」


53 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:05:12 ???Sd
ガシッ

愛が叫んだ瞬間、窓の手すりに白い両手が現れる。
1秒後再び梨子が室内に着地した。

梨子「呼んだ?」

愛「く、そ…!何で!?あの時首を折ったはずでしょう!?」

梨子「あぁ…そういえばそうだったわね」

梨子はわざとらしく言うと折られたはずの首をさわさわと撫でる。 

梨子「昔からそうなんだけど打撲とか致命傷級の傷でも何かすぐに治っちゃうのよ」

愛「……嘘でしょ」

梨子「本当だって!現にさっき折ってくれた骨も元通りになってるし。多分回復力なら果南ちゃんより私の方が上よ?」

愛「っ!!」

果南の名前を出した瞬間愛の目が見開かれる。

愛「果南って松浦果南の事?」

梨子「知ってるの?」

愛「笑止!松浦果南といえば『オーガ』の異名を持つ地球史上最強生物!私は沼津に彼女を倒すために来たんだ!!」

梨子「やめときなさい」

愛「……なんでさ」


先ほどまでとは違う真剣な顔で話す梨子に、思わずまともな疑問で返してしまう愛。


54 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:06:46 ???Sd
梨子は続ける。

梨子「あなた、雷は知ってるわね?」

愛「は?」

梨子「地震、台風、…後静岡なら火山の噴火とかは?」

愛「知ってるよ!バカにしてんの?」

梨子「果南ちゃんはそれらと同列の化け物よ。人智など及ぶはずもない。私ですら彼女の前には立てない。悪いことは言わないからやめておきなさい」

真剣な眼差しで愛を制止する梨子。
愛は自分が心配されていることを梨子の目から痛いほど感じた。

愛「だからさ……」

梨子「……」

愛「だから良いんじゃん!!タイマンで殺されるならファイターの本望だよォォォ!!!!」

愛は飛び膝蹴りで梨子を再び部屋から突き落とした。

愛「あなたはここで倒す!!オーガの前菜にしてあげる!!!」

今度は愛も自ら五階から飛び降りた。

梨子「仕方ないわねぇ……」

 
全裸の女2人。
沼津の夜の街でタイマンが始まった。


55 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:07:15 ???Sd
愛「ジョバァ!!!」

愛の後ろ回し蹴りが梨子の頬にめり込む。
歯が三本吹き飛び梨子の体も沼津駅方面へ蹴り飛ばされた。

梨子「あいたたた……」

愛「起きなよ」

梨子の髪を引っ張り上げ無理やり立ち上がらせる愛。

今度は顔面に渾身の力でパンチを放った。
コンクリートすら砕く一撃が梨子の顔に襲いかかった。

バカァん!!!!

その音を聞き工事現場の重機でも使っているのかと周りの人間は思っただろう。

だが正真正銘人間の腕力から生み出された音である。

梨子「ギャバァッ!!!!」

遮るものがないパンチは梨子の体をソフトボールのように浮遊させた。

その距離約200メートル。


56 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:07:40 ???Sd
夜中12時台は沼津駅とはいえ人はまばらだ。
他人の目を気にせず思い切り戦えた。

ドシャっ!!と梨子の体がコンクリートに叩きつけられる。

今の顔面パンチはかなり効いたのか鼻から滝のように血を流して涙目になっていた。

しかし立ち上がる。

ペタペタペタ…

全裸の愛が裸足で梨子に近づいて来た。

愛「思ったより強くないね。回復だけが取り柄なの?」

梨子「はぁ……綺麗なものはあまり傷つけたくないんだけど」

愛「……」

梨子「沼津をめちゃくちゃにする気ならしょうがないわね」

愛「(来るッッッ!!!!)」

ズバァン!!!!!!!

愛「はっ!!??」

正面から三つの弾丸のようなものが愛の肩にめり込んだ。

梨子「先ほど折られた歯よ」


57 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:08:16 ???Sd
梨子は口の中で折れた歯を勢いよく吐き出して愛に飛ばしたのだ。
普段なら避けるなり防ぐなりできてかもしれないが周りは暗く分からなかったのだ。

肩にめり込んだ歯を取り出した愛は梨子にそれを投げ返そうとするも目の前に彼女の姿はなかった。

「私は愛するものと50分間息継ぎなしのキスができるように肺を鍛えたの。そんな肺活量から繰り出される射撃は銃弾に匹敵するわ」

愛「っ!!どこにいる!?」

梨子の声だけが沼津に響いた。

次の瞬間背中に2発小石が着弾した。
ブニっと愛の白い背中が赤く染まる。

愛「スナイパーを相手にしてるみたいだね!!」

止まっていたら撃たれる。
愛はフィジカルを利用して道路を縦横無尽に走り、沼津駅を目指した。


58 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:08:41 ???Sd
この時間とはいえ沼津駅前なら店や駅の光で梨子の位置も分かりやすいと思ったからだ。

ブスっ!!!

愛「がっ!!!」

再び小石が今度は3発被弾した。
左腕上腕、太もも、ふくらはぎだ。

これにより本来のスピードが活かせなくなる。
しかし視界が良好かつ隠れるところも多い駅前に到着した。

愛は振り返ることもせず改札を飛び越えて駅内に入った。


「うわっ!!」

「裸の女の人だ!」


駅内にはまだ人がいた。
全裸で飛び込んできた愛に顔を赤らめて驚いていた。

愛はそれら全てを無視して梨子の居場所を特定することにした。


59 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:09:00 ???Sd
沼津駅南口に入り左の通路をまっすぐ進むと目の前に階段がある。
階段を登ると商業施設アントレに続く道があるが夜間のためシャッターが閉められていた。

愛はそれをワンパンで破壊してアントレ内に入る。
中はもう誰もいない。

愛「お邪魔しまーす!」

入ってすぐ側にあるドラッグストアで水分補給をする。
ここなら梨子の追撃を交わせると思ったが……。

パリィン!!!

外から小石銃撃が襲いかかってきた。
愛は避けきれず腰に1弾被弾する。

愛「っ!!!けど今ので居場所が分かったよ!!!!」

梨子が沼津駅高架前の木の影で笑顔でこちらを見ていた。
愛はタックルでガラスを破壊して外へ飛び出した。

梨子「おかえり!!ぷっ!!!」

もう2発愛に向けて小石を吹き出すが、今度は当たらない。
反復横跳びで回避した。
この近辺は照明がしっかりしているため銃弾程度のスピードなら愛は見切れるのだ。


60 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:09:21 ???Sd
スピードを維持したまま梨子の横へ近づくと一瞬で50発を超えるパンチを浴びせた。
曜をコンクリートごと破壊したパンチだ。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!」


梨子「あびょおおおおおああああああああ!!!!!」


悲鳴を上げながら駅前のローソン内にガラスを破壊しながら入店する梨子。

店員「きゃああああああ!!!!」

梨子「女の子の悲鳴…興奮するわね。……ーぶぼぉ!!!」

店内は客がおらず店員だけがいた。
血だらけでダイブしてきた梨子に恐怖で顔を歪ませて悲鳴を上げていた。

梨子は顔面が歪むほど殴られていたが先ほどまでの傷は全て完治していた。


61 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:09:39 ???Sd
愛「はぁ……はぁ…………」

梨子「追い詰めている方が息が上がっているわね。大丈夫?」

愛「(スタミナもすぐに回復するのかな?何にせよこのまま戦えば私が体力切れで負ける。なら………)」
愛「失血すればどうかな!?」

愛は梨子を無視してコンビニの文房具コーナーに駆け出した。
そこで素早くある商品を取り出す。

店員「あわわ……」

梨子「…………」

愛「これで……血を減らす」

愛は包丁を握った。
刃渡15cm。十分武器になるサイズだ。


62 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:09:58 ???Sd
時速100キロで梨子に突っ込む愛。
光に照らされる刃は柔らかい梨子の腹にブスリと刺さった。

梨子「げぼぉうわあああ!!!!」

ドクドクドク…………

梨子の腹から夥しい量の血が溢れ出した。


梨子「い、だい……!!ああっ!!!」

腹を抑えてのたうち回る梨子。
血が止まることはなくローソンの中を血の海にした。
店員は失神してしまったようだ。

梨子は何とか起き上がるも愛の2撃目が迫ってきていた。
絶対に避けられない距離。
しかし愛は梨子の血で滑って転けてしまった。

愛「あだっ!!」

梨子「どぉして………げぽ!!!」

肌色より血の方が目立つほど2人とも赤くなっていた。
梨子は転けた愛に覆い被さり訴えかける。

梨子「どぉしてこんな酷いことするのよぉ!!!!」


63 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:10:14 ???Sd
愛「ひっ……」

沼津へ来てから初めて味わう感情。

「恐怖」

赤く血走った目でホラー映画の幽霊のように悍ましい顔で愛に叫ぶ梨子。
話すたびに口からは血を飛び散らせていた。

そして天を仰ぐように両手を合わせて吠えた。

梨子「がみざまぁ!!!おゆるじを、今からか弱き少女をごろじまずぅ!!」

愛「な……な………」

全身に血を浴びて豹変した梨子。天を仰いでデスボイスで叫び狂う姿はまるで悪魔のようであった。
隙だらけだというのに愛は3撃目を繰り出せない。


梨子は生命の危機に達した場合普段の人格が消え内部から「悪魔」が飛び出すのだ。


64 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:10:39 ???Sd
愛「く、……」

梨子「びゅおおお!!!!」

梨子は口に含んだ血をレーザーのように愛に飛ばした。
間一髪で避けるが、血レーザーはローソン壁を最も容易く破壊しながら狩野川の方まで飛んでいった。

愛「嘘でしょう!?」
梨子「りごは本当のごどしか言わ゛なイ」

愛の「首」を掴むと力任せに沼津駅方面までぶん投げた。
ここに来て初めての梨子の肉体的攻撃。
その破壊力は凄まじく…………。

ゴパァァァァァン!!!!!!

駅前のコンビニに愛は突っ込む。
店内の商品は3分の2が散乱してしまった。

愛「………が」


掴まれた首は皮がちぎれ、血管が見えていた。


65 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:10:59 ???Sd
愛「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


痛みと恐怖で硬直しそうな体を叫んで鼓舞する愛。
暗闇の中、ローソンからヒタヒタと赤い足跡をつけながら近づいてくる梨子に走りだした。

愛「せいやぁ!!!!!」

体重を乗せた胴回し回転蹴り。
愛の踵が梨子の首に当たったが………。

梨子「いだい」

愛「え?」

梨子「いだいのよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
スパァン!!!と愛の右頬にビンタをかます梨子。
鼓膜が破れ、首が嫌な方向まで曲がった。


66 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:11:36 ???Sd
梨子「左もざじだじなざぁい!!!!」

愛「っぱぁ!!!???」

続けて左手頬にビンタ。
皮肉なことにこれにより首の位置が元に戻った。


愛「あ……が…………」

脳が揺れその場でふらついてしまう愛。
その状態の彼女の腹に駅前に響くほどの轟音でパンチが放たれた。

ドゴォン!!!

愛「ばっ!!!!」

2m後退し、腹を抑えてうずくまる愛。

愛「(動けない……)」

梨子「…………」ペタペタ

愛「これが……沼津……」

梨子は止めを刺す気だ。
愛はもう抵抗しない。いや、できない。
梨子「…………」ドサッ

愛「え……?」

梨子が愛の目の前で倒れてしまった。
腹の傷は塞がったが失った血が多過ぎたため気を失ったのだ。

愛「…………勝ったの?」

今にも倒れそうなほどダメージを負った愛。
目の前に倒れる梨子を見ても「勝った」という感覚が湧いてこなかった。

愛「はは………」


愛は動けるようになっても梨子に止めは刺さなかった。
その足で夜の沼津に消えていった。


67 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 12:12:23 ???Sd
〜ダイヤの家〜

鞠莉「何ですって!?」

ダイヤ「どうしたんですの?」

鞠莉「駅前で血だらけの梨子が救急車で運ばれたって!」

次の日、ダイヤの家でAqoursメンバーが集まっていた。
梨子が来ないと思っていたら小原家お抱えの諜報部隊から鞠莉に連絡が入ったのだ。

善子「梨子は負けたの……?」

鞠莉「宮下愛に負けたそうよ。駅前は大量殺人でもあったかのようにめちゃくちゃよ…」

スマホの写真をメンバーたちに見せる鞠莉。

花丸「ずら!?地面が血だらけずら!!」

ルビィ「うゆゆ…台風でも通った後なの?」

コンビニや駅構内が破壊され尽くした状態を見て皆震撼した。


68 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:02:25 ???Sd
千歌「梨子ちゃんは無事なの!?」

鞠莉「えぇ…『無傷』だそうよ。けど失血が酷いから輸血している最中よ」

曜「梨子ちゃんの特性か。くそ……私があの時倒していれば」

しずく「愛さんに負けたことは恥じなくていいと思いますよ。あのクラスのフィジカルエリートはあまり見ないですから」

ルビィに負けたしずくは現在黒澤家で軟禁されている。
本人も逃げる気はないようで黒澤家のお菓子を貪る有様である。

ダイヤ「愛さんは今どこへ?」

しずく「さぁ……?私が彼女なら傷が治るまで沼津内で潜伏しますけどね」

鞠莉「監視カメラの映像から宮下愛は『オーガ』と戦いに来たと言っているわ」

善子「果南の事?てか!アイツ今どこにいんのよ!!!」

鞠莉「果南はお金を稼ぐために駿河湾の底で珍しい生き物やワカメを集めてるわよ。深海水族館で展示されている二割の生き物は果南が集めたとされているわ」

善子「初耳なんだけど」

花丸「果南ちゃんらしいずら」


69 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:03:00 ???Sd
千歌「愛さんは果南ちゃんと戦いたいんでしょう?じゃあ早く果南ちゃんをぶつけて東京に帰ってもらおうよ」

善子「本当ね〜。宮下愛にはそれまで大人しくしてもらいたいものね」

しずく「……その言い方だと果南さんが勝つのは必然と言っているように聞こえますね」

善子「必然よ」

しずく「ほう?」

善子「なぜアイツがオーガと言われているか…挑んだら嫌でも知るでしょうね」
.
.
.

果南「よいしょ」

職員「いつもありがとうございます。こんなにたくさん生き物を捕まえてきてくださって」

果南「良いってことですよ。半分趣味ですからね」

果南は久しぶりに海から上がり、深海魚数匹を水族館に運んでいた。
だがこれからすぐにまた海に潜らなければならない。

果南「こんなもんかな」

エマ「こんにちはー!アナタが果南さん?」

果南「いかにも。あなたは?」

エマ「エマ•ヴェルデだよ〜!スイスから留学で沼津に来たんだ!」

果南「ふーん?」


70 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:03:30 ???Sd
エマ「あ!アナタ服に虫がついてるよ!」

果南「ありゃりゃ、そう??」

エマ「取ってあげるね」

エマが果南に一瞬で距離をつける。
慣れた手つきで腰からサバイバルナイフを出し、果南の腎臓に突き刺す。

エマ「ッッッ!!!??」

突き刺した……と思っていたが果南の筋肉に遮られ刃が奥にいかない。
こんなことは初めてだと言わんばかりにエマは目を見開く。

果南「無駄のない動きだね」

果南は笑顔でナイフの刃を素手で握りそのまま握力を込める。

エマ「ちょっ………」

ミシミシミシ………

普通なら刃を握る手は血だらけだ。
しかし彼女は普通ではない。

バキン!!

ナイフの刃が木っ端微塵に砕け散った。


71 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:04:50 ???Sd
エマはすぐに果南から距離を離した。

果南「刺客…でいいんだよね?私今からまた海に潜りたいんだけどなぁ」

エマ「すぐに潜れるよ。永遠にね」

エマは今度はグロッグという銃を取り出して躊躇いなく引き金を引いた。

ズドンズドンズドン!!

心臓に2発。
頭に1発命中した。

果南「痛いな………」

果南は少しイラつきを見せた。
しかし弾丸は果南の鋼鉄の体に当たった衝撃でペシャンコに変形していた。

エマ「直撃でも命には届かないか!!!」

エマは銃をしまうと足踏みをする。
すると靴底から窒素が噴出し、一瞬で20mも後方へジャンプした。

果南「武器人間みたいだね」


72 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:05:17 ???Sd
エマは逃げたわけではない。
単純に距離を取ったのだ。

果南は追うか迷った。

果南「どうしよっか」

腕を組んでいると上空からボールが5つ降ってきた。
よく見ると………。

果南「手榴弾じゃん!」

ドガガガガァァァァァァンンン!!!!!!

手榴弾の爆破をその身に受ける果南。

エマ「死んだでしょう……?」

砂埃が晴れる姿を遠くから注意深く眺めるエマ。
しかし。

果南「………」

果南は服こそ破けていたものの軽傷で済んでいた。
エマの方向を先ほどのフワフワした様子ではなく野獣のように睨んでいた。

エマ「クソ!!!!!」

再び数十メートル果南から距離を取ろうとするエマ。

果南「もう許してあげない」

果南はエマを「屠る」事に決めたようだ。
クラウチングスタートでエマに向かってダッシュし始めた。

エマ「わっ!!嘘!!速い速い速い!!!?」

新幹線並みのスピードに焦るエマ。
小型のSMGを構えると果南に向かって連射し始めた。

エマ「来ないで!!!」


73 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:05:44 ???Sd
果南「はーははははははは!!!!!」

大声で笑いながら銃弾を浴びる果南。
威力の低いSMGでは擦り傷すら付いていないようだ。

エマ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ばばばばばばばばばば!!!!

それでも撃ち続けるエマ。
もう思考停止状態に陥っていた。

果南は怯えるエマの顔面を右手で掴むと勢いのままコンクリートの地面に叩きつけた。

果南「オラァ!!!!!!」


ゴガシャァァァァァァァァァンンンン!!!!!


エマ「」


果南「汗ぐらいかかせてよ」

高速で迫る果南に何も出来ず気を失ったエマ。
果南は倒れるエマを無視して再び海へ潜って行った。


74 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:06:14 ???Sd
〜黒澤家道場〜

ルビィ「ピギェエエエエエエエエ!!!!!」

黒澤家の道場でルビィが上空に投げ飛ばされていた。
受け身を取らないルビィをしずくがキャッチした。

ルビィ「ピギギ……ありがとうしずくちゃん」

しずく「いえ…それにしても凄まじい技ですね」

ダイヤ「これが合気道です。受けた力をそのまま返す。ルビィのように直上的に突っ込んでくる相手にはやりやすい」

しずく「……」

ダイヤ「そろそろ私も出なければなりませんね。浦の星のメンバーは私以外血を流している。生徒会長として他の3人は私がとらえます」

曜「ダイヤさーん!」

ダイヤ「曜さん?」

梨子「お邪魔しまーす」

ルビィ「梨子ちゃん!?もう歩いて平気なの?」

梨子「そもそも病院に運ばれた時点では無傷だったからね。輸血だけして完治って感じよ」

ルビィ「しゅごい!!」


75 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:06:40 ???Sd
曜「聞いてよ!深海水族館前でエマ・ヴェルデが気絶してたんだって!!」

ダイヤ「何ですって!?」

しずく「あのエマさんをいったい誰が……」

梨子「目撃者によればポニーテールの女子高生に一撃で倒されたそうよ。ポニー少女はその後すぐに海に潜っていったと…」

ダイヤ「なるほど…果南さんですか」

ルビィ「深海の生き物を水族館に運んでる時にたまたま鉢合わせたのかな?こちらとしては運が良かったね!」

曜「くぅー…私だけ何もできてない!!ちょっと宮下愛を探してくる!!」ダダダダダ

梨子「曜ちゃん!!……全く。それで…あなたが桜坂しずくちゃんね?」

しずく「はい。(何だろうこの人…すごく嫌なオーラを纏っている)」

梨子「あとでちょっと話があるの。2人きりでね」

しずく「わ、わかりました」


76 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:07:02 ???Sd
その後、しずくは梨子にダイヤの部屋に呼び出されていた。

しずく「失礼します」

梨子「待っていたわ、まぁそこにかけなさい」

しずく「は、はい……(ダイヤさんの部屋なのに)」

梨子「あなた、演劇が得意なのよね?善子ちゃんのお母さんに変装して実の娘も騙せたとか」

しずく「はい。私は背丈、声、顔、匂いまで完璧に模倣できます」

梨子「グッド!!!そこでお願いがあるの。宮下愛ちゃんいるじゃない?あの子本当に美人よね…変装できる?」

愛(しずく)「まぁ…それくらいなら。どうですか?」

梨子「ウッヒョォォォォォ!!!!すごい!そのまんまじゃない!!!」

愛(しずく)「ど、どうも」


77 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/03(金) 14:07:21 ???Sd
梨子「じゃあその姿のまま私とSMプレイしましょう」

愛(しずく)「はい!?」

梨子「ここにボンデージと鞭があるから私を痛ぶりなさい」

愛(しずく)「いやですよ!何で私がそんな事…」

梨子「強者が苦痛に顔を歪ませるのが好きなんでしょう!?私相手ならいくらやっても良いわよ!!!」

愛(しずく)「ひえ……」

梨子「早く!!!!」

ダイヤ「何してるんですの」

梨子「うひゃあ!!!」


78 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:01:01 ???Sd
ダイヤ「全く私の部屋で何してるんですの……」

梨子「愛のあるプレイを……」

しずく「違います」

ダイヤ「しかし……しずくさんの演技力は素晴らしいですわね。愛さんの姿で愛さんを誘き出せないでしょうか?」

しずく「……私は確かに負けましたが、そこまでする義理があるとは思えません」

ダイヤ「あなたは行住坐臥演劇を考えていると仰ったそうですね。この地で新しい試み行えば演劇の向上につながると思いますが」

しずく「…………」

梨子「私に教育をさせてください」

ダイヤ「作戦は私とルビィで組みます。梨子さんは家に帰りなさい」

梨子「」


79 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:01:28 ???Sd
〜ららぽーと沼津〜

愛「ふぅ〜……ごくごく」

愛はららぽーと内の手洗い場の水道で喉を潤していた。

梨子との戦闘から5日が経過した。
戦いの傷はほぼ癒えて制服姿でららぽーと内をふらつく日々を送っていた。

愛「そろそろ行こうかな。次は……オーガを狙う」

エマの敗北は愛の耳にも入っていた。
エマは仲間だが果南を倒すのは自分しかないと思っていたため敗北の知らせを聞いて少しほっとしていた。

「あ、演劇に出るお姉ちゃんだー!」

愛「うん?」

愛に話しかける小学生くらいの少女がいた。
愛の所業を知らないのか無邪気に愛の周りを飛び跳ねる。

愛「演劇って?」

「そこのポスターに貼ってあったよ?メイド服で踊るって!」

愛「………?」

少女に案内されるがままポスターとやらを見に行く愛。
そこには間違いなくメイド服を着た愛がm字開脚をしているポスターが貼ってあった。

愛「」

「お姉ちゃんエッチだね」

愛「なんじゃこりゃああああ!!!??」


80 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:02:35 ???Sd

「今日の夕方5時に広場で踊るんだよね?楽しみにしてるねー!」

少女は愛に手を振ってどこかへ行ってしまった。
愛はポスターの前で硬直している。

すぐさま身に覚えの無い痴態を晒す自分のポスターを破り捨てる。
だが2m離れた壁にも同じ物が貼ってあった。

愛「まだ他にもあるの!?」

そう、これはダイヤたちが仕組んだ罠であった。
しずくに愛の変装をさせ誘き寄せようとしたのだ。

ららぽーと内だけでも30枚のポスターが。
沼津市内で合計1500枚ものポスターを貼っている。

嫌でも愛の目につくように。

そんな時愛のスマホに着信が鳴る。

愛「もしもし?」

ランジュ『愛!今日ライブやるの!?ポスター見たわよ!喧嘩だけじゃなくてアイドル活動も忘れないなんてさすがね!』

愛「誰かに嵌められたんだよ!絶対やんないから!」

ランジュ『なーんだ。じゃあ敵の手に落ちたしずくの仕業かしらね』

愛「……なるほど」

ランジュ『何にせよあなたは今日戦う事になりそうね。それが終われば…私よ。沼津の名産は食べ尽くしたし次はファイターを食べ尽くさないと』

愛「そっか」

電話を切る愛。
ポスターはもう放っておく事にした。

愛「私の相手は誰になるのかな?ふざけたことを考えた子にはお仕置きが必要だよね!!」


81 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:03:01 ???Sd

PM4時

ダイヤ「さて…そろそろ行きましょうか」

善子「1人で行く気?」

ダイヤ「えぇ、あくまで対象は宮下愛1人。まぁ来ない可能性もありますが…仮に相手が一人であった場合、こちらが複数人いたら私の流儀に反します」

善子「………そ。なら私はダイヤの家で引き続きゲームでもしておくわ」

ダイヤ「お願いします」

「ちょっと待ったぁ!!!!!」

善子「うわ!」

突然2人の後ろから大声で制止を叫ぶ声があった。

ダイヤ「あなたは……」

曜「その勝負、私に任せてくれない?」

ダイヤ「曜さん……」

曜「私は今まで不覚を取り続けてきた。みーんな私以外の誰かと戦いたいって勝負の途中で逃げちゃったんだ」

曜「いい加減ッッッ!!どちらかが倒れるまでの真剣勝負を私もしたいの!!!」

善子「すごい気迫ね……」

ダイヤ「はぁ……仕方ありませんわね。負けたら承知しませんわよ?」

曜「ありがとうダイヤさん!!」


82 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:03:19 ???Sd

PM5時

ザワザワ……

ららぽーとの広場には沢山の観客が押し寄せていた。
名目上アイドルのライブのため沢山のオタクが駆けつけていたのだ。

「おおおお!!可愛い!!!」

「こんな可愛いメイド、欲しいでござる!!!」

シャッターを撮る手が止まらないオタクたち。
愛は嫌がっていたメイド服を着てステージの上の椅子に座っていた。
少女の懇願に負けてしまったのだ。

愛「はぁ………誰も来ないんだけど。人もいるしライブ1曲して駅方面に戻ろっかな」

曜「その必要はないよ」

愛「あなたは……!」

ステージ上に飛び乗る曜。

曜「メイド服似合ってるじゃん。そのまま鞠莉ちゃんの家に就職すれば?」

愛「あなたが首謀者?」

曜「そうだよ」


83 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:03:37 ???Sd
愛「タダでは済まさないよ」

曜「へぇ〜じゃあお菓子でもくれるの?」

愛「らぁ!!!!」

曜の挑発に拳で答える愛。
しっかり腰に入ったパンチが曜に襲いかかる。

曜「ふっ!!!」

それを体を傾け回避し、ローキックを返す曜。
愛は左腕でガードした。

互いに間合いを取る。

周りの観客はダンスではなく喧嘩が始まった事に混乱していたが、メイドとJKが喧嘩する姿に「それはそれで楽しい」と言わんばかりに盛り上がっていた。


「愛ちゃん!!」

「頑張れ愛ちゃーーん!!!」


愛「何で私が応援されてんだろうね」

曜「可愛いから…かなっ!!!」

曜のワンツーを腕でガードする愛。
愛は距離を一瞬で詰めて曜の胸ぐらを掴んだ。

曜「うわ!」

愛「おらぁ!!!」


愛は勢いに任せ曜を投げ飛ばした。
壁に叩きつけられた曜は身を起こし愛に振り向く。

曜「(やっぱ強いな……。梨子ちゃんも『悪魔モード』になるまでは一方的にやられてたらしいし)」


84 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:03:52 ???Sd
愛「シュッ!!!」

愛は体の重心を後ろに下げて曜のふくらはぎに蹴りを入れた。

曜「っ!!!」

鋭い痛み。
すかさずパンチで返すも愛の蹴りは頭を腕でガードしながら放たれたため、腕に阻まれ大したダメージを与えられない。

曜「YO!!!」

曜はハイキックを叩き込むが愛の両腕でガードされる。
そしてすかさず蹴りを返された。
先程と同じ曜のふくらはぎに。

曜「痛っ!!!」

愛「カーフキックってやつだよ」

3発目が曜に襲いかかった。

曜「あうっ!!」ガクッ

同じところに3発愛の蹴りをくらい、左脚が震え始める。
ふくらはぎは太ももや腹筋と違い衝撃を吸収しないためダメージがモロに入るのだ。


85 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:04:24 ???Sd
曜「虎ォォォォォォォォ!!!!!!」

愛「応ッッッ!!!!」

曜は右足のみでジャンプし愛に飛びかかった。
右手で手刀作り、愛の首に目掛けて振った。

愛はしゃがんで回避し、その状態からバネのように跳ね上がった。
愛の石頭が曜の顎に直撃する。

曜「ばがッッッ!!!!!」

口の中で歯が割れる感覚が曜を襲う。
だが予定通りだったのか痛みに耐えながらも両脚を愛の体に挟みつける。

曜「うらあああああああ!!!!!」

愛「何!?」

一時的に両腕が使えなくなった愛の顔面に今度は曜が頭突きを喰らわした。

メゴォ!!

愛「ぐああああ!!!!」

鼻血を吹き出しながら痛がる愛。
2人とも地面に倒れ、今し方ダメージを受けた箇所を手で押さえていた。

愛「やってくれたね!!」

曜「まだまだこれからだよ」


86 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:04:39 ???Sd
ダイヤ「……やっていますわね」

ダイヤは抹茶ラテを手に、遠くから2人の戦いを見学していた。
しかし己の流儀に基づき手は絶対出さないようにしていた。


ダイヤ「曜さんと愛さん。2人ともフィジカルに自信がありファイトスタイルが似ています。しかし愛さんの方が現段階では上ですわね」

ランジュ「本当ね〜モグモグ」

ダイヤ「なっ……!?」

ダイヤの独り言に答える少女の声。
そちらに顔を向けると刺客の1人、鐘嵐珠がクレープを頬張っていた。

ランジュ「あなたが黒澤ダイヤね?噂は聞いているわ。Aqoursでも果南の次に強いとか」

ダイヤ「………」

ランジュ「怖い顔しないでよ、私は今は戦う気はないわ。愛の勇姿を見にきただけだもの」

ダイヤ「刺客のトップはあなたですか?」

ランジュ「虹ヶ咲はトップとかそういうのにこだわらないの。けどまぁ……ここに来ている4人の中じゃ一番かしらね」

ダイヤ「曜さんの戦いが終わったら覚悟していなさい」

ランジュ「やれやれね……」


87 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:05:08 ???Sd
曜「げボォォォォ!!!!!」

曜がゲロを吐きながら宙を舞っていた。
着地の瞬間愛が正拳突きで曜の腹に拳をめり込ませ壁際まで吹っ飛ばした。

曜「がばぁ!!!!」

曜は前歯が4本折れ、カーフキックを何度も左ふくらはぎに受け腫れ上がっていた。
骨も数カ所折れている。

壁に叩きつけられた曜はなんとか起き上がるも視界がぐらついているようだ。

愛「ハァ………ハァ………」

愛も鼻が折れ、顔面にいくつもあざを作っていた。
現時点では曜の方がダメージが大きい。

愛「楽しいねぇ……沼津に来て初めてストレートな喧嘩をしているよ!!」

曜「(打撃は向こうの方が上か……)」

曜はレスリングの技術で愛にテイクダウンを仕掛けた。

愛「あはっ!!そう来るんだ!!!」

曜の首を脇の下で絞める愛。
そのまま一緒に倒れ、曜の首を捻ろうとする。
ギロチンチョークだ。

曜「がっ………!!!!」


88 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:05:39 ???Sd
ダイヤ「曜さん!」

ランジュ「安易に攻めすぎね〜。曜が強いのは認めるけど、愛はそれ以上に技術もフィジカルもあるからね。もっと慎重にいかないと!」

ダイヤ「……」

ランジュ「その愛を一方的に追い詰めた梨子とやらに興味があるわ!後で案内してよ!」

ダイヤ「ここで負けるあなたにそれほどの体力がありますかね?」

ランジュ「きゃは!面白いわね!」


曜「(ぐ、ぐるじい………!!)」

曜は意識を失う手前であった。
愛の腕力は相当のもので全く動かすことができない。

意識が飛びそうになりながら顔をなんとか上げ、愛を押し除け自らのおでこを地面につける。
ギロチンは首を捻られたら決まるからだ。

愛「(鬱陶しいなぁ!!)」


89 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:05:54 ???Sd
曜はおでこを地面に着けつつ左足を起点にブリッジする。
そのまま愛の体を周りサイドポジションを取り返した。

曜はそのまま愛の腕を取りアームロックを仕掛けようとするも、「エビ」で距離を取られてしまった。

愛「惜しいな」

曜「はぁ……はぁ………」

曜「(寝技に付き合わなかった。やっぱり打撃の方が愛ちゃんは得意なんだ)」

曜「ならっ!!」ダッ

曜はジャブで愛を牽制する。
そして右ストレートを振るうふりをした瞬間再びタックルを仕掛けた。

愛「っ!!」

今度は防げなかった。
愛が押し倒される。


90 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:06:16 ???Sd
「愛ちゃん!」

幼女の悲鳴が愛の耳に届く。

曜は聞こえていない。
愛の片膝に体重をかけつつマウントポジションを狙っていたからだ。

曜「(いける……!!このままパウンドで…!!)」

愛「おおおおおお!!!!!」

曜「ぐっ!!」

愛はなんと押し倒されたまま曜の顔面をめちゃくちゃに殴り始めた。
型も何もない往復パンチ。
だが絶対に負けられないという気迫が痛いほど伝わるパンチだ。
曜も不完全な体勢のまま殴ろうとしたが遅かった。
愛のパンチを顎に数発まともに喰らったからだ。

嵐のような猛攻に曜の意識が薄れる。

曜「(や、ば……!)」

曜はたまらずに後退した。
愛も倒立して起き上がる。


91 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:06:38 ???Sd
愛「ビビっちゃった?」

曜「」ピキィ

ある意味図星。
愛の猛攻に身が引けたからだ。

曜「(とはいえどう攻めたものか…)」

愛「来ないならこっちからいくよ!!」

愛は細かいステップを踏みながら曜にジャブを放ってくる。
曜はスウェーで避ける。

愛「あいあいさー!」

急に距離を詰めてくる愛。
曜の胸ぐらを掴むと背負い投げで硬い地面に叩きつけた。

曜「がっはっ!!!」

ダイヤ「曜さん!!!」

愛は倒れる曜にパウンドを食らわす。
曜は体を捻り避けようとするも打撃の雨に晒される。


92 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:07:22 ???Sd
曜「おおおおおお!!!!!」

叫びをあげながら愛がパウンドを支える左腕を掴み腕十字に引き摺り込む。

愛「っ!!」

まだ動けるのかと驚く愛。
曜の足が愛の左腕を起点に挟み込まれた。
そのまま背中を「反り」腕を折りにいく曜。

愛「(いっ………!やばい……!!)」

曜「(さっさと折れろ……!!)」

愛「おらぁ!!」

愛は力技に出た。
掴まれている方の手で曜の制服を掴むとそのまま彼女の体を持ち上げた。

曜「嘘でしょ!?」

愛「おおおおおおお!!!!!」

そのまま曜を餅つきの杵の様に地面に叩きつける。
曜は顔面から硬い地面に衝突した。


ベキィッッッ!!!!!


曜「ば………あ………………」


地面が割れる。
衝撃はかなりのもので白目を剥いて痙攣する曜。
愛も無傷ではなく掴まれていた方の腕にかなりの激痛が走っていた。

愛「痛っ……!!」

曜「ま……だ……」

曜はなんとか立ちあがろうとするも顔面ダイブはかなりの衝撃だったらしくそのまま地面に吸い込まれる様にして倒れた。

勝者が決定した。


93 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:07:43 ???Sd
ワーーーー!!!

「愛さーーん!!」


ランジュ「さすが愛ね!!」

割れんばかりの観客の拍手の中ランジュが親友を讃える。

ダイヤ「………曜さんを回収します」

ランジュ「あら、私を倒さなくていいの?」

ダイヤ「あなたは逃げないでしょうから。また後日捕獲しに行きます」

ランジュ「楽しみに待ってるわね!私は愛とご飯にでも行きましょう。あーい!!」

愛「ランジュ!?来てたんだ」

ランジュ「駅前の海鮮屋で祝勝をあげるわよ!手当してから行きましょう!!」

愛「うん……いたた」



〜その夜〜

曜は黒澤家で目覚めた。

曜「………」

千歌「曜ちゃん!!」

ダイヤ「起きましたか。まずは…お疲れ様です。良いファイトでした」

曜「ダイヤさんごめん…負けちゃったよ」

ダイヤ「………えぇ」

曜「悔しいけど完敗だった。まさかあんな体勢からkoされるなんて」

ダイヤ「まるで野生児同士の喧嘩を見ているようでした。曜さんには悪いですが……中々楽しめましたよ」

曜「ふふ。負けたけど…楽しかったな。私はまだまだ未受だ。しばらく修行する事にするね…何かあったらまた呼んで」

ダイヤ「分かりました。今はゆっくり休んでください」

千歌「じゃあ久しぶりにショッピングでも行こうよ!最近遊んでなかったし」

曜「そうだね!」


94 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:08:22 ???Sd
曜「そういえばルビィちゃんは?」

ダイヤ「こんな時だと言うのに善子さんと花丸さん、梨子さんでご飯に行きましたよ。まぁ皆一緒の方が安全かもしれませんが」

千歌「そっか」

ダイヤ「では今日は我々3人で出前でも頼みましょうか」

千歌「出前!!やったーー!!ハンバーグでも頼もうか」

ダイヤ「私はハンバーグはちょっと……」

千歌「むきーー!!」

曜「あはは…」

〜沼津駅前寿司屋〜

愛「美味しいねやっぱり」モグモグ

ランジュ「でしょ!?もっと食べて失った肉を取り戻しなさい!」

愛「うん!モグモグ」

ランジュ「で、渡辺曜はどうだった?」


95 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:08:35 ???Sd
愛「この街に来て一番ワクワクした戦いだったよ。オールラウンダーの格闘家って感じ」

ランジュ「それ故に弱点が無い。他のメンバーは梨子みたいに死ぬ寸前まで傷を負わせられないと覚醒しなかったり、ルビィみたいに力はあるけどそれを支える肉体に問題があったりするからね。曜みたいなタイプはどんな相手にも有効ね」

愛「これで私は二連勝……あとはオーガを狙いたいな」

ランジュ「私は普通に観光していたからまだ1戦もしていないの!ダイヤが戦いそうにしていたから早く会いたいわ〜!」


ピギャアアアアアアアアアア!!!!


ランジュ「きゃあ!!すごい悲鳴ね……何事かしら?」

愛「隣の部屋の人だね」

部屋は個室ごとに分かれているわけではなく簡単な柵がある程度だ。
ランジュは一瞬柵から頭を出して隣の客を見た。

ランジュ「あーーー!!!!」


そこにはAqours1年組と梨子が寿司を食べていた。
どうやらルビィがわさびに当たったようだった。


96 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:08:49 ???Sd
善子「ん……あぁ!?」

花丸「ぎゃああああああ!!!刺客のランジュずら!!!」

ランジュ「あなた達も来てたのね!一緒に食べない?」

善子「誰があんたらと食べますか!」

梨子「良いじゃない。ランジュちゃんがまさかこんなに美人だとはね。愛ちゃんもいるんでしょう?匂いでわかってたけど」

愛「何で分かるの!?キモイキモイ!」

梨子「私がそっちに行きましょうか?」

愛「来ないで!!!!」

ランジュ「なんか色々あったみたいね……」


97 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:09:04 ???Sd
なんだかんだで一緒に寿司を囲むことになった一行。
愛は梨子からかなり離れた席に座っている。
愛の左にはルビィが、右には善子が座っている。

善子「アンタら沼津をよくもめちゃくちゃにしてくれたわね。駅前の店はグチャグチャ、死人も大勢出ているわよ」

ランジュ「私はまだ何もしていないわ」

愛「ほとんどの被害は私が出したよ」

善子「どうしてくれんの?」

ルビィ「よ、善子ちゃん……」

愛「何も」

善子「は?」

愛「何もしないよ。私は暴れに来たんだから。私に何かを強制したいなら力づくで言うことを聞かせてみな」


98 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:09:17 ???Sd
善子「可愛い顔して覚悟は決まってるんだ。はは……」

花丸「やめるずらっ!!!!」

善子「!」

愛「!」

一触即発の2人を止めたのは意外にも花丸だった。

花丸「寿司屋で喧嘩は厳禁ずら。やりたいなら食べてからにして」

善子「ふん……」

ルビィ「うゆゆ……喧嘩はやめてよ…」

ランジュ「きゃあ!ルビィは璃奈に似て可愛いわね!」

愛「……」

愛はチラリとルビィを見る。
口には出さないがランジュと同じ気持ちなのだろう。

善子「よっし!じゃあ食べ終わったら狩野川で遊ぼっか」

ランジュ「今日はやめといたら?愛も疲れているでしょう」

愛「私は良いけど?善子は曜に比べて弱いしちょうど良いハンデだよ」

善子「へぇ……」ピキピキ


99 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:09:31 ???Sd
梨子「若いっていいわね」

花丸「梨子ちゃんいくつずらか……」

ランジュ「じゃあ私が2人のジャッジしてあげる!」

ルビィ「あ、あの!」

ランジュ「なぁに?ルビィ」

ルビィ「い、言いにくいんだけど……」

花丸「どうしたずらか?」

ルビィ「ピギィ!ランジュさんは今日生きてお家に帰ることはできないんだ!だっておねえちゃあを狙ってるって言ってたからね…ごめんなさい」

愛「ッ!?」ゾクッ

可愛らしい様子を崩すことなく恐ろしいことを言うルビィに愛は鳥肌が立ってしまった。

ランジュを見ると彼女も驚いていたがすぐに不敵な笑みを浮かべた。

ランジュ「やっぱり沼津に来てよかったわ。ごめん善子、愛。これからは私たちの時間みたい」

善子「ルビィ……」

愛「そうみたいだね」


100 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:09:49 ???Sd
寿司屋での会計はランジュがすべて支払った。

花丸「敵だけどありがとうずらランジュさん」

ランジュ「きゃあ!花丸も可愛いわね!虹ヶ咲に来ない?」

善子「なっ!ダメよずら丸!」

花丸「行かないから大丈夫ずらよ…」

側から見たら仲のいい女子高生同士にしか見えないだろう。
しかし彼女らは、いや厳密には内2名がこれから死合を行う。

〜狩野川広場〜

ランジュ「いい場所じゃない」

ルビィ「うゆ!」

愛「………」

愛はサイコだが小さい子には弱い。
璃奈を思わせる幼い子が戦うことに複雑な気持ちでいた。

善子「アンタ、ルビィが戦えるのか不安なの?敵なのに」

愛「っ!!…別にそんなんじゃないし!」

善子「心配いらないわよ。曜や私より強いから」

愛「へぇ……」

善子「梨子とは…どっちが強いかな分かんないけど」

梨子「愛ちゃん、一緒に観戦しましょうよ」

愛「やだよ」


101 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:10:04 ???Sd
善子「とりあえず…ルールはいらないわよね?目つき金的なんでもあり!噛みつきももちろんOK!」

ランジュ「望むところね」

ルビィ「うゆゆ!」

善子「では…スタート!!!」


ルビィ「ウ゛ユ゛ッッッ!!!!」


花丸「おお!」

ルビィの勇ましい掛け声に感嘆する花丸。
小さな右拳を握りしめてしずくを沈めたパンチをランジュに向けて放つ。

ランジュ「さすがね…けど」

ルビィ「うゆっ!?」

ランジュはギリギリのスペースを残して軽く右へ避けた。
避けただけではない、彼女も中国拳法の「寸勁」でルビィの鳩尾にカウンターを合わせた。


メゴォッッッ!!!!


ルビィ「かっ……!!??」

花丸「ルビィちゃん!!!」

ランジュ「はぁっ!!!」

ランジュはルビィにめり込ませた拳をさらに前へと押し出した。
ルビィの体はサッカーボールのように対岸まで吹っ飛ばされた。

ルビィ「ピギャァッ!!!」

善子「なっ!?」


102 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:10:19 ???Sd
ガァァァァァァァンンンンン!!!!

対岸の階段に激突したルビィ。
階段は砲丸でも撃ち込まれたように破壊されていた。

ルビィ「あ…あ……」

ヨロヨロと立ち上がるルビィ。
一歩目を踏み出そうとした所で前のめりに倒れてしまった。

善子「し、勝者ランジュ!!!」

ランジュ「やったわ!」

花丸「ルビィちゃん!!」

花丸は対岸まで吹っ飛ばされた親友の元へ駆け出した。

梨子「凄いわね。けど…『紙一重』の戦いだったのかしら?」

愛「え?」

梨子の言葉に愛はどういう事かとランジュを見た。
よく見るとランジュの首筋に15cmほどの深い切り傷が刻まれていた。
傷からは血がドクドク流れていた。

ランジュは傷をハンカチで抑えながら笑う。

ランジュ「ルビィがパンチをもう少し左に撃っていたらこの傷が致命傷になっていたかも。ルビィを超えると言われているダイヤ…ますます喰らうのが楽しみよ」


103 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:10:32 ???Sd
〜2日後〜

ダイヤ「……」

この日朝8時に千本松原でランジュと決闘することになっていたダイヤ。
自室で正座しながら精神統一をしていた。
絶対負けられない戦いの前のルーティーンだ。

ダイヤ「では行きますか」

「どこに?」

ダイヤ「っっ!?」

全く気配もなく背後を取られるダイヤ。
次の瞬間


〜千本松原〜

ランジュ「ダイヤおそーい!」プンプン

ルビィ「おかしいなぁ。お姉ちゃんは待ち合わせには遅れた事ないんですけど」

梨子「連絡はつかないの?」

ルビィ「うん……」

千本松原にはランジュ、ルビィ、梨子、しずくが集合していた。
待ち合わせ時間に来ないダイヤにランジュは珍しく不機嫌であった。


104 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:10:44 ???Sd
しずく「他の刺客にやられたんじゃないですか?」

ランジュ「しずくとエマは敗北した。なら愛が?考えにくいと思うけど。あの子今はオーガにしか御執心じゃないし」

梨子「ダイヤさんが簡単に負けると思わないけどねぇ」

ルビィ「うゆ!」

ランジュ「でも現にダイヤはここに来ていない。何かあったのは確かよ」

梨子「もうこの4人でイチャイチャする?」

ルビィ「こんな時にふざけないで!!」

梨子「ごめんなさい」


105 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:11:42 ???Sd
ルビィ「私やっぱり心配だよ!家見てくる!」タッ

しずく「私も行きましょうかね。ここ数日世話になってるので」

ランジュ「私も行くわ」

梨子「やれやれね」

〜黒澤家〜


梨子「これは……」


黒澤家の玄関に着いた4人。
いつもと違う様子にルビィだけでなく敵であるしずくやランジュまで息を呑んでいた。

それもそのはず、木製の門は正面から殴り壊されたのかバキバキに破壊されていた。
庭の置物や壁の破片までもが嵐が通った後のように散乱していた。

特筆すべきは「血痕」だ。

家の入り口から玄関まで明らかに人を引きずった後のような血の跡がベッタリと付いていたのだ。

まるで殺人事件の現場だった。


106 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:12:14 ???Sd
人を引きずった血痕は2階まで続いていた。
後を追っていくとダイヤの部屋の前でピタリと止まっていた。

ルビィ「ーお姉ちゃん!!!!」

姉の部屋を勢いよく開けるルビィ。


ダイヤ「」ポタポタ…


ルビィ「そ、そんな……」

ランジュ「ダイヤ……」

中に姉はいた。
だがいつも冷静で優しいダイヤはそこにはいなかった。
酷い暴行を受けたのか全身が打撲まみれで血の海に沈んでいたからだ。
生きているのか死んでいるのかも分からず目を半分開けて横たわっていた。
誰かに負けたのだ。

4人の中で梨子がいち早くダイヤに近づき触診する。

梨子「まずいわね。しずくちゃん、救急車呼んでくれる?」

しずく「は、はい!!」

梨子「私は応急処置を取る。ルビィちゃん、ダイヤさんはまだ生きているわ」

ルビィ「ほ、本当?」

梨子「だから私が言う医薬品の場所を落ち着いて教えて」

ルビィ「分かった……!」

しずくが呼んだ救急車はすぐに到着した。

ピーポーピーポー

ルビィ「お姉ちゃん!死なないで!!」

同伴としてルビィが車内に乗り込み他3人は見送ることとなった。


107 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:13:06 ???Sd
しずく「ダイヤさんは助かりますか?」

梨子「大丈夫よ、生半な鍛え方ではないからね」

ランジュ「………」

しずく「ランジュ先輩?」

先ほどから口を開かぬランジュを不審に思い声をかけるしずく。

ランジュ「……ルビィには見せなかったけどこんな紙がダイヤのそばに置いてあったのよ」

しずく「なんですかその紙」

ランジュが血に濡れた紙を広げる。
そこには可愛らしい字で、しかし血でこう書いてあった。


『ほむら』


梨子「……?なにこれ」

しずく「人名……いや、何かの暗号?ランジュ先輩分かりますか?」

ランジュ「……」

しずく「ランジュ先輩?」

ランジュ「ママに聞いたことあるの。ほむら…非人道的格闘家のグループ。彼女らは強い人間のいる地域に出没しては強い人間をランキング化して徹底的に痛ぶると。そして屍の横に自らのグループの名前を手書きで残していくの」

梨子「グループなのね」

ランジュ「沖縄と北海道、島根県はほむらに制圧されたらしいわ」

しずく「ダイヤさんを倒せるほどの人間が何人もいると?」

ランジュ「いえ、超精鋭のファイターで構成されていて全部で4人いるらしいわ。名前までは分からないけど……」

しずく「迷惑なことをするものですね」

ランジュ「一応私たちも人のこと言えないわよ?」


108 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:13:23 ???Sd
ランジュ「とにかく、私はダイヤを横取りされてムカついてるの!しかもあんなに彼女の尊厳を捻り潰すような真似して!独自でやったやつを見つけ出してぶん殴ってやるわ!」

しずく「私も内心お世話になったダイヤさんをあんな目に遭わされて穏やかではありません。敵討…と言えばダイヤさんは嫌がるかもしれませんがランジュさんと同じく参戦します」

梨子「そ、まぁ好きにしたら?」

ランジュ「梨子は仲間をあんな目に遭わされて怒ってないの!?」

梨子「もちろんダイヤさんは大事な仲間よ。けどここは沼津なの。『弱い奴が悪い』が信条とされる場所に長くいすぎたせいで感覚がおかしくなってるのかも」

しずく「……」ゾク

梨子「けど個人的にダイヤさんを倒した子がどんな顔をしているか興味があるわ。見つけたら洗体マットプレイで腰砕にしてあげる」

ランジュ「不穏なワードだけどそれは敵討ってやつよ!よっしゃーー!!3人で誰が一番早く倒せるか勝負よ!」

しずく「負けません!!」

梨子「(ま、とはいえ一旦鞠莉ちゃんに報告しなきゃね……)」


109 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:13:40 ???Sd
〜鞠莉の部屋〜

鞠莉「だ、ダイヤが入院……!?」

梨子「えぇ、けど今連絡があって命に別状は無いそうよ」

鞠莉の部屋に果南、曜、ルビィ以外のAqoursメンバーが揃っていた。

善子「ちっ…どんどん治安が悪くなるわね沼津は。ほむらだっけ?沼津を舐めた罰をしっかり味合わせてあげましょう」

花丸「もう怖くて外も歩けないずら……」

鞠莉「ダイヤを倒せるほどのファイターが4人もいるなんて…考えたくもないわね」

千歌「それに加えて虹ヶ咲も相手にしなきゃいけないなんて」

梨子「千歌ちゃん、その心配はないわ」

千歌「へ?」

梨子「虹ヶ咲がほむらを探してくれてるの」

善子「はぁ!?何でよ」

梨子「ダイヤさんを倒されたことで内心ランジュちゃんとしずくちゃんも怒ってるのよ」

善子「なに、今更善人ぶるつもり?」

鞠莉「……けど正直かなりありがたいわね。虹ヶ咲は一旦泳がせておきましょう」


110 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:14:21 ???Sd
梨子「とにかく報告はしたから私も個人的に動くことにするわ」

鞠莉「何かあったらすぐに連絡して。こっちも小原家の諜報部隊に探らせるから」

千歌「き、気をつけてね!」

梨子「b」

〜聖隷沼津病院〜

ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「」

ダイヤが搬送されてから一日が経った。
この日ルビィは姉の見舞いに来ていた。
まだ起きることはない姉。
全身包帯でぐるぐる巻きにされており非常に痛ましい姿である。

「包帯を変えにきました」

ルビィ「あ、はい!」

ナースがノックをして部屋に入ってきた。
非常に若い、オレンジ色の短髪のナースだ。
ルビィは邪魔にならないように脇に退いた。


「ん〜死んだと思ったのにまだ生きていたんですね〜」


ルビィ「は?」

ナースにあるまじき発言。
聞き間違いかと思いルビィは目を丸くする。
するとナースは懐から果物ナイフを取り出した。

ルビィ「な、なにやってんの!?」

ルビィは混乱と怒りでナースに走り出した。

「そうくると思ったよ」


111 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 09:16:10 ???Sd
躊躇いなくナースは刃をルビィに向け直しナイフを振るう。
ルビィは体を半身にし左拳で採算度外視のパンチをナイフに叩きつけた。
ナイフは粉々に砕けナースの体も壁まで吹っ飛ばされた。

「ぐっ…!!」

ルビィ「もう一度聞くよ。何やってるの?」

ルビィは左手に深い傷を負い血がぼたぼた床に落ちていた。
だが痛みなど感じさせないような鬼の形相でナースを睨んでいる。

「案外鈍いにゃあ。ルビィちゃん」

ルビィ「…どうしてルビィの名前を」

凛「私はほむら構成員星空凛。ダイヤさんをそんな目に合わせた張本人……で伝わるかな?」


ザワァッッッ!!!!!


室内の空気がピリつく。
ルビィは髪を逆立たせながら口を開く。


ルビィ「殺すビィ」


112 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:02:03 ???Sd
ゴゴコゴゴゴ

殺気が室内を覆う中、星空凛が口を開いた。

凛「にしてもものすごいパンチだね。凛もかなりフィジカルあるけど吹っ飛ばされたのは久しぶりにゃあ」

ルビィは返事を待たない。
袋小路になった凛に走りだす。

ダンッッッ!!!!

床を踏み抜く音と共に一瞬で凛が消えた。

ルビィ「なっ!?どこ!!」

狭い室内を見渡してもどこにも凛はいない。
どんなトリックかとベッドの下まで調べるルビィ。

凛「おーい!こっちこっち!」

声がする方へ行くと凛が院外の駐車場でこちらに手を振っていた。

ルビィは1階へすぐさま飛び降りる。

ルビィ「どうやったの?」

凛「走っただけ」

ルビィ「ふざけ、」

凛「ふざけて無いよ」

再び走り出しすルビィ。
だがいつのまにか凛がルビィの隣でしゃがんでいた。

ルビィ「嘘……!?」

凛「嘘みたいな速さだよね。けどこれが私星空凛。ほむらのメンバーで一番速いのも私だよ」


113 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:02:26 ???Sd
ルビィは大きく足を上げて凛を踏み潰そうとする。
バキッッッと硬いコンクリートが半径2m程ひび割れる。
凛には当たらなかった。

凛「はっはーーー!!!!!!」

楽しさを抑えられない様子で再びルビィの目の前に現れた凛は彼女の顎をアッパーで打ち抜いた。
浮遊するルビィ。

凛「大砲持ってても当たらなきゃ意味ないよ!!!」

ルビィ「うるさい!!!」


114 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:02:55 ???Sd
地面に倒れたルビィ。
見て拳を振うのでは遅すぎる。
ルビィは地面のコンクリートに目掛けて何度もパンチを繰り出し始めた。

ガンガンガン!!

剛腕から放たれるパンチはコンクリートの破片を360°に渡って散弾銃のように飛散させた。

凛「目眩しのつもりかにゃ?」

そのままルビィは踊る様に虚空に拳を振るう。
拳圧が暴風を巻き起こし、ルビィの動きに合わせてコンクリートの破片が凛に襲いかかる。

凛「すごいね!!」

ルビィ「ズタズタに引き裂かれて!!」

コンクリートの範囲は中々に広く、避けようとする凛の素肌に数発着弾する。
しかしジャブにもならない一撃だ。

凛「こんな技で凛が倒せると思ってるの!?」

叫ぶ凛だが先ほどいた場所にルビィがいない。

凛「!?」

飛び交うコンクリートの破片に紛れて凛の真横まで近づいていたからだ。

ルビィ「あの世へ行くビィ」

凛「っっ!!!」

ルビィのパンチが凛に襲いかかる。


115 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:03:28 ???Sd
凛「ちっ!!」

ここにきて初めて焦る凛。
ルビィのパンチを咄嗟に右肩でガードする。

メリメリ………!!

凛「がはっ!!!」

衝撃を殺しきれず凛の体が吹っ飛ばされた。

ルビィ「(手応えあり!!)」

凛「やるねぇルビィちゃん。(肩の骨にヒビが入ったか……)」

ルビィは再び地面をパンチし先ほどの技を披露しようとするが拳を振り上げたタイミングで凛に腕を掴まれてしまった。

ルビィ「ピギッ!!」

凛「させないよ。さすがにそのパンチを何回も喰らうわけにはかないからね!!!」

そのまま凛はルビィの腹にボディブローを放つ。

ルビィ「がっ!!!」

目を見開き胃液を吐くルビィ。
凛の猛攻は止まらない。
アッパーでルビィの顎を打ち上げる凛。
空中で身動きができないルビィの腹を助走をつけて右ストレートを放った。

凛「にゃははは!!!!」

ルビィ「ピギャオエァアアアアアアア!!!!!!!!」

ルビィがさまざまな方向に回転しながら病院を囲う壁にめり込んだ。
地面に倒れ、フラフラと起き上がるルビィ。
口からは胃液と血を滝のように流している。


116 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:03:47 ???Sd
ルビィ「はぁ……はぁ………!!」

凛「お疲れにゃあ!!!」

ルビィ「ピギャア!?」

凛の追撃が飛んできた。
右アッパーを腹に喰らい今度こそ倒れる。
ルビィは地面にうずくまり荒い呼吸を繰り返している。

凛「ルビィちゃんは鍛えてないんだね。型も何も素人。生まれ持ったパワーだけで勝ち抜けるほどファイターは甘くないよ」

ルビィ「な、で………」

凛「うん?」

ルビィ「どうしてお姉ちゃんをあんな風にしたの」

凛「強い者と戦いたくなるのは必然にゃあ」

ルビィ「あんなになるまでやらなくてもいいじゃん!!」

凛「敗者には何してもいいのが勝者の特権にゃあ」

ルビィ「っ!!………殺す!!!」

凛「残念でしたっ!!!!」

怒りのあまり無策で飛び出すルビィに楽々カウンターを合わせる凛。
ルビィは肋が折れ肺に刺さり危険な状態となった。


117 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:04:04 ???Sd
ルビィ「ひゅう……ひゅう…………」

凛「苦しそうだね。……うーん、どうしようか」

ルビィ「お、ね………ちゃ…………」

凛「決めた!楽にしてあげよう」

凛は手刀を作るとルビィに振りかぶる。

凛「ばいにゃ」

振り下ろそうとしてところで凛の手が後ろから誰かに掴まれた。

凛「にゃっ!?」


愛「何してんの?」


118 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:04:23 ???Sd
凛「えーと…誰?」

愛「虹ヶ咲学園2年宮下愛」

凛「あなたが愛ちゃんか!。真姫ちゃんが言ってたんだ。宮下愛は小さな子が好きだから気をつけろって」

愛「は?」

凛「小さい子に興奮するんだよね?なら凛を殴ることもできn」

愛「オラァッ!!!!!!!」

愛の腰を入れた左アッパーが凛の顎に突き刺さる。

凛「ぶにゃっ!!」

そのまま胸ぐらを掴んでルビィから距離を取るため数メートルぶん投げた。


愛「ふぅ…やるか」


119 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:05:01 ???Sd
凛「いたたた……」

愛「……」ザッザッ

凛「本音を言われてむかついちゃったの?いいパンチだったよ」

愛「ほむらが沼津を狙ってるという情報はランジュから聞いた。今までのほむらの性格からダイヤが生きて病院に運ばれたと聞いてトドメを刺しにくると思ったよ」

凛「……?それでなんで貴方がダイヤを助けにくるの。関係ないよね」

愛「………」

凛「あ、ルビィちゃんがお見舞いに来るからか!やっぱりロリコンなの!?」

愛「その口、永遠に開かないようにしてあげる」

凛「凛に勝てると思ってるのかにゃ?」

愛「その言葉そのまま返してあげる!」

愛は左ジャブから後ろ回し蹴りを放つも、凛は余裕綽々といった様子でバク転して距離をとった。

愛「(っ!?速っ!!)」

凛は着地の瞬間まるで動画の早送りのようなスピードで愛まで距離を詰める。

凛「にゃはっ!!」


120 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:05:18 ???Sd
愛「あいあいあいあいあいあいあい!!!!!」

愛は梨子や曜との戦闘の際発したコンクリートすら粉々に砕く連続パンチで凛に応戦した。

凛「いいパンチだにゃ。けどパンチなら凛の方が上かな?」

愛「!?」

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!!!!」

何と凛もパンチのラッシュで応戦してきた。
愛を超えるパンチの速度で。

愛「ぶっ!!がっ!!!」

愛は正面からの殴り合いで一瞬のうちに12発被弾した。
対して凛は………。

凛「やるねぇ愛ちゃん!他人の手で流血させられたのは久しぶりだよ!」

凛も無傷ではなかった。
鼻血を垂れ流して手で拭っていたが彼女の被弾は「1発」だけ。

愛「(愛さんの必殺技だったんだけどな。……この子速すぎる)」


121 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:05:41 ???Sd
凛「では2回目スタート!!」

愛「っ!!」

凛が再び距離を詰めラッシュを放ってくる。

愛「くっ!!」

愛は凛の拳を両腕でガードする。
拳が着弾するたびに腕に嫌な音が響く。

愛「(重ッッッ!!!)」

凛「ふっ、にゃはっ!!!」

止めとばかりに右ストレートを愛の腹に打つ凛。
愛が駐車場のフェンスを突き破り道路に投げ出された。


122 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:06:07 ???Sd
愛「ぐっ……」

ヨロヨロと立ち上がる愛。
凛が先ほどまでいた場所を見るとそこには彼女はいなかった。

凛「遅い」

愛「っ!!」

気づけば凛が愛の真横でしゃがんで不満を口にしていた。
バックステップで距離を取る愛。

凛「誰も凛には追いつけない」

凛「車も海未ちゃんも松浦果南も」

再び凛が愛に迫る。
右アッパーをかろうじて両腕で防ぐ。

凛「毎日あくびが出るにゃあ!退屈すぎてさ!!愛ちゃん、凛をもっと楽しませてよぉ!!」

一瞬で愛の背後に回り込み、彼女の腰を両腕で掴む。
そしてそのまま硬いコンクリートにバックドロップを決める。

バキィ!!!!と生身が出してはいけない音が響く。


123 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:06:56 ???Sd
愛「が、は…………」

凛「終わり……?」

愛「隙見せてんじゃないよ……!」

凛「!?」

愛は寝た状態から凛の片足を掬い、右足で彼女の太ももを蹴る。
柔術でいう草刈りスイープという技だ。
凛はバランスを崩して地面に倒れた。

凛「にゃあ!!」

愛は凛の足力を落とすため彼女の左足首を脇に抱えた。
そして片足を凛の足に絡めて、もう片方の足で腰を蹴る。
そのまま体を捻る。
足関節技だ。

凛「にゃおら!!」

凛のベースはボクシングだ。
寝技の知識はほぼ無い。
先ほどのバックドロップも見様見真似で行っただけだ。
逃げ方を知らぬ凛は、腕力を頼りに愛の太ももを何度も殴りつけた。

愛「うっ……!!くっ………!!」

凛の足首を捻りながらも自らの太ももにヒビが入った感触を悟った。
それでも凛の足力は危険だ。
自分の足を犠牲にしてでも凛の足を折る気でいた。


124 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:07:19 ???Sd
愛が体を半身に捩る。

凛「う……く………」

このタイミングで凛にもダメージが入り始めたのか苦痛に顔を歪ませていた。
愛はそのまま足首をへし折る。

ベキッッッ!!

凛「ぐあああああ!!!!」

凛の叫び声。
しかし愛は攻撃の手を緩めない。
凛の足を抱えたまま何度も体に踵落としを振り翳した。

凛「なめるな!!」

足を折られたというのに闘志は微塵も衰えていない凛。
愛の攻撃に対し右手で踵に対しカウンターを合わせた。
今度は愛の足にヒビが入る。

愛「ッ!!!」

咄嗟にバク転し凛から距離を取る愛。

凛「やってくれたね!」

愛「私の方がダメージが多いんだから。まだ借りを返せていないよ」


125 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:07:39 ???Sd
凛「(あーいったいなぁ。よりにもよって右足首を折ってくれて…)」

凛「ドンっっっ!!!!」

凛は高速で愛に接近する。
足が折られたとはいえ時速200キロは出ている。
しかし愛なら見切れないスピードではない。


愛「ふぅ……あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!」


再びラッシュの掛け合い。
今度は互いに同じ数だけ被弾した。

凛「にゃぶぅああ!!!!」グラッ

体重が重い分愛の打撃の方が効いたのか体勢を崩す凛。


126 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:07:58 ???Sd
その隙に凛の右肩にハイキックを食らわす愛。

ベキィ!!

凛「痛っ!!!!!」

愛は凛の肩を折った感触を確かに感じた。

凛「(ルビィちゃんにやられたところ……!!)」

愛「……?随分柔らかい骨だね」

凛「黙ってて」

愛「余裕なくなってきたじゃん!いい調子だねぇ!!!」


127 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:08:11 ???Sd
グゥオン!!
残像が見えるほどの速さで愛に突っ込む凛。

愛「(足を折ってもこの速度か!)」

凛「………っ!!」

凛は今度は左ストレートで愛を打つ。
モロにダメージを負う愛。
しかし殴られたと同時に両腕で凛のナース服を掴んで離さない。

凛「おおおおおおおお!!!!!!!」

ダダダダダダダ!!!!

愛の投げ技を予感した凛は技をかけられる前に左手で愛の服を掴んで走り出した。
勢いのまま飲食店の壁を破壊して愛を店内に投げ飛ばす。

愛「ぐああ!!!」

「きゃああああああ!!!!!」

店内にいきなり女子校生が壁を突き破って入ってきたことで悲鳴が上がる。
後から修羅の顔をしたナースが入店したことで店員と客はこの2人の因縁が分からず呆然としていた。


128 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:08:28 ???Sd
凛「楽しいねぇ愛ちゃん」

愛「はっ……そうだね」

愛は重心を低く構えた。
もう凛は打撃主体のファイターであることを確信したからだ。
寝技で骨を折りトドメをさすことにした。

凛「ヨーイドン」

ダダダダダダダ

凛が狭い店内を縦横無尽に走り回る。
壁を蹴り遠心力を利用した裏拳が愛に飛んでくる。
両腕でガードする愛。
掴もうとするも凛のパワーの方が上で愛の体勢が崩れる。

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!!」

隙あればラッシュを叩き込んでくる凛。
避けようとするも6発顔面に叩き込まれた。

愛「ぶあっ!!」グラァ

凛「トドメにゃあ!!!」

愛「ふっ!!」

愛は机に置いてあったナイフを掴んで凛に振った。
運良く凛の首が切り裂かれる。

ブシャャアアアアアア!!

凛「ぐっ!!!」


129 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:09:07 ???Sd
思った以上の出血に後退する凛。
今度は愛の番だ。
体も限界に近いが死ぬ気でタックルを繰り出した。

愛「らぁああああああ!!!!!」

凛「ちっ………!!!」

愛に押し倒される凛。
凛はバネを生かしめちゃくちゃに拳を振り回して暴れる。

凛の拳が愛の顎にクリーンヒットした。

愛「がぁ!!(ここでマウントをキープできなきゃキツイ!!)」

愛はマウント状態から腕十字を狙っていたが凛の猛攻が激しいため作戦を変えた。

愛「(先ほど切り裂いた凛の首の切り傷。そこに手刀を捻り込みトドメをさす!!!)」

手刀を作り凛の首へ放つ愛。
しかし喉に刺さる前に凛は両手で腕を握り防いだ。

凛「させるか……!!」


130 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:09:37 ???Sd
愛「いいね、けど私の左腕が空いてるんだなぁ!!」

左手で凛の顔面をパウンドする愛。
凛は嫌がって握った愛の右腕でガードしようとする。
全てがガードできるはずもなく凛の顔面に傷が増えていく。

凛「う…ぐぅっ………!!!」

ボゴォ!!

ボゴォ!!

愛「(このまま失神するまで殴り続ける!!!)」


凛「ニャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」


愛「っ!?」

ビリビリビリ!と店内に凛の雄叫びが上がる。
断末魔か?そう思った愛だが違った。
気づいた時には愛の体は空中に浮いていたからだ。

愛「は?」

マウントとってたはずでしょ?と疑問に思う愛。
チラリと下を見ると凛が仰向けで腰を突き上げているのが見えた。

愛「(ブリッジだけで愛さんを吹っ飛ばしたの!?)」

素早く立ち上がる凛。
愛は着地まで0.1秒。
下に凛がいて受け身は取れない……なら。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

空中で凛に拳を振るう愛。
凛は下からただ1発、裏拳を放っただけだった。

メコォ!!と地面に落ちる寸前で愛の腹に凛の拳が刺さる。

愛「がっ…………!!!!!」

入り口のガラスを突き破って外に放り出された愛。
フラフラになりながらも立ちあがろうとするが足にもう力が入らなかった。


131 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:09:58 ???Sd
愛「や、ば………」

凛「これがほむらだよ」

気づけば凛が目の前にいた。
愛は呆けた様子で凛を眺めていた。

愛「………」

凛「この底力がほむら。貴方では私に勝てない」

愛「はは………」

凛「何を笑ってるの?」

愛「凛…後ろ」

凛「は?」

愛に言われ怪訝そうに振り向く凛。
そこには………。


ルビィ「………」

凛「なっ……!?」


自らが倒したはずのルビィが患者の服を着て死んだような顔で立っていた。
あれから院内で処置をして貰ったのだろう。
押せば倒れそうなほどか弱そうな様子だ。
だが凛の心を動揺させるには十分であった。


132 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:10:54 ???Sd
ルビィ「ビ……」

凛「え?」

ルビィ「あの世へ行くビィ」

凛「っ!!」

凛は避けようとするが愛が両足にしがみついて身動きが取れなかった。

凛「なっ!?」

愛「やったれルビィ」


ゴアァッッ!!!!!!!

ルビィの必殺の一撃が凛の顔面に突き刺さる。
モロにあたった拳は凛の軽い体重を吹っ飛ばし、向かいのマンションまで殴り飛ばした。

ゴガシャァァアァァアァァァァァアァァァン!!!!

愛「やった……!」

愛は吹き飛ばされた凛の方を見る。
マンションは一部が爆破でも起きたかのように破壊されて砂埃が舞っていた。
徐々に砂埃が晴れていく。
そこにいたのは………。


凛「………」


愛「嘘……でしょう……?」

凛が立っていた。
ゾンビのように身を屈めていたがまだ立っていた。

一歩、二歩こちらに近づいてくる。

愛「やばい、愛さんもう立てないんだけど」

ルビィ「はっ…はっ……はっ……」

愛「(ルビィも呼吸が荒い。当たり前だけど安静にしてなきゃダメなんだ。どうすれば……)」

だが愛の不安は杞憂に終わった。
凛が三歩目を踏み出そうとしたと同時に前のめりに倒れたからだ。

ドサッ…………。

凛「」


愛「勝ったんだ。愛さん達………。」


133 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:11:13 ???Sd
〜聖隷沼津病院〜

ランジュ「愛!大丈夫なの!?」

愛「大丈夫とは言い難いね」

凛との戦闘の後、愛とルビィは入院を余儀なくされた。
ルビィとは同室で彼女は隣のベットで寝ていた。

ランジュ「けど勝ったんでしょう?」

愛「いや、愛さんだけなら負けていたよ。ルビィが与えた傷とトドメのパンチがなければ今頃遺体安置所で寝ていたと思う」

ランジュ「ゾッとするわね…」

善子「ルビィィィィィィィィ!!!!大丈夫なの!?」ダダダダ

ランジュ「あら善子、あなたもお見舞い?」

善子「げっ、何であんた達も……」

鞠莉「やめなさい善子。宮下愛はルビィの命の恩人よ」

善子「へ?」

花丸「お邪魔するずらぁ。聞いてないの善子ちゃん。星空凛に殺されそうになった所を愛さんは助けてくれたんずらよ」

善子「ぬぁんでよ!?」

愛「別に、助けたつもりはないよ」

ランジュ「あら!ツンデレってやつ?可愛い〜」

愛「ランジュ!」

「騒がしいね」


134 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:18:32 ???Sd
ヌッ、と室内に入る1人の少女。
声からして並々ならぬ戦闘力を感じさせる少女だ。

グニャアア~~~~~…………!!!

その少女が入ってきた瞬間室内の空間が歪んだ気がした。
実際にその少女が重力を操作しているわけではない。
だがあまりの存在感に森羅万象が跪かざるを得ないような、そんな怪物が入室してきたのだ。

果南「ルビィちゃんまだ寝てるんだ」

愛「お………」

果南「ん?」

愛「オーガァァァァァ!!!!!」

果南「は?」

いきなりベッドから飛び降り戦闘体制に入る愛。
凛と対峙した時よりアドレナリンが湧き出る。
沼津に来た目的が目の前に現れて正気ではいられなくなったのだ。

ランジュ「ちょっと落ち着きなさい愛!!」

ランジュが愛を後ろから抑える。
果南はポカンとした様子で愛を見ていた。

果南「私何か貴方にしたっけ……?」

愛「私は貴方を倒しにこの街へ来たんだよ!!私と勝負して!!」

果南「それはそれは………」ユラァ

笑顔で脱力する果南。
戦闘開始の合図だ。

善子「ちょっとちょっと!!ここでやる気!?」

パァン!!

室内に乾いた音が響く。
鞠莉が果南をビンタしたからだ。

果南「………」ヒリヒリ

愛「なっ……!?」

鞠莉「落ち着きなさい2人とも。ここは病院よ?周りの人の迷惑になるでしょう」


135 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:18:58 ???Sd
果南「それもそっか、愛ちゃん、私とやりたいならまず退院してからにしな」

果南はそれだけ伝えると踵を返して部屋を出ていった。

愛「あっ……」

ランジュ「愛、そんな状態でオーガに勝てると思ってるの?ちょっとは頭を冷やしなさい」

珍しいランジュからの叱責に愛は落ち込みベッドに戻った。

愛「ごめん、愛さん少し熱くなっていたよ」

ランジュ「分かればいいラ」

善子「全く……どいつもこいつも果南果南。沼津には津島善子もいるのよ?」

鞠莉「……しずくに負けてるじゃない」

善子「あ、あれは変装を見抜けなくて……!殴り合いなら勝てるって!」

ランジュ「しずくの変装はCIAすら完全に騙せるからね。負けたことは恥じなくてもいいわよ!」

善子「なんの慰めにもなってない!」

愛「しずくは今何してるの?」

鞠莉「ダイヤを襲った星空凛は小原家の施設に拘束してるけど、それ以外のほむらメンバーも倒すって言ってくれたから現段階で分かっている情報を伝えてるわ」


136 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:19:20 ???Sd
善子「どんな情報よ?」

鞠莉「諜報部からほむら構成員の巫女の居場所が届いたからそれを」

善子「巫女……?」

鞠莉「東條希…というらしいわ。けどこの情報……受け取った後に諜報員が消息を絶ったのよ」

ランジュ「ラ!?それって口封じされたんじゃない?」

鞠莉「それもしずくには伝えているわ。了承した上で行ってくれるそうよ」

善子「仕方ないわね」

ランジュ「善子?」

善子「鞠莉、その場所を教えてくれる?」


137 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:19:44 ???Sd
〜沼津駅付近〜

しずく「(何をやっているのでしょう私は)」

元々沼津へはほむらのような目的で乗り込んできたはずだ。
ファイターを根こそぎ喰らい、ランジュにリベンジする。
だがルビィに負けてから黒澤家に軟禁されている間に自分でも知らぬうちに彼女らに対して情が湧いてしまっていた。
世話になったダイヤがあのような無惨な姿にされて耐え難い怒りを覚えてしまったのだ。

しずく「思った以上に私は人間だったのかもしれませんね」

言いながら鞠莉が送ってきた東條希の居場所を確認する。
目的地に近づくにつれ本当に居場所は合っているのかと不安になる。
何故なら………。

しずく「ここイーラじゃないですか」

イーラは2004年に完成した沼津駅前にある複合施設である。
施設内にはカルチャースクール、飲食店、雑貨屋などがあり、沼津市の経済活性化にも一役買っている。
地下には大きなしずてつストアというスーパーがありお土産もたくさん売っている。

買い物でもしているのかと思いつつ慎重にイーラ内に足を踏み込むしずく。
施設内は賑わっており人が溢れていた。


138 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:20:15 ???Sd
しかし1階、2階、3階……どこを見て回っても希はいない。
休憩がてら1階でマックシェイクを飲んでいると意外な人物に出くわした。

花丸「あれ、しずくちゃんずらか」

しずく「貴方は…花丸さん」

花丸「何しているずらかこんなところで」

しずく「ほむらの東條希がここに潜伏しているそうで討伐しに来ました」

花丸「ずらぁ!本当ずらか!?」

しずく「鞠莉さんからの情報です。花丸さんは?」

花丸「オラはルビィちゃんのお見舞いに花を買いに来たずら!」

しずく「なるほど、お優しいですね」

花丸「ルビィちゃんとは長い付き合いだし。このくらい普通ずら」

しずく「では花を買ったら早く帰ることをお勧めします。東條希を見つけ次第戦闘に入るので」

花丸「分かったずら。気をつけてね」


ガガガガガガガガガガガ

花丸「……ん?」


139 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:20:53 ???Sd
ガガガガガガガガガガガ

しずく「な、なんです!?」

花丸「ずらぁ!?イーラのシャッターが閉まっていくずら!!」

閉店にはまだ程遠いというのに突然自動扉に設置してあるシャッターが閉じてしまった。
館内にいる客たちは当然閉じ込められる。


ザワザワ

「なんだ!?」

「シャッターの故障?管理人早く直せよ」


しずく「何が起こっているのですか」

困惑するしずく達。
直後館内放送が発信される。

『ご機嫌ようイーラのお客様諸君。ウチは東條希。ほむらの一員や!』

しずく「東條希!!」

希『と言っても知っている人はほとんどおらんやろうけどな。一部のウチを知っている子に告ぐ!今すぐ14階の部屋までき来ぃや!!』

しずく「………」

花丸「これってしずくちゃんが呼ばれているずらか!?」

しずく「で、しょうね。けどこれはチャンスです。ほむらのメンバーを1人確実に葬れる」

花丸「ずら……」

しずく「東條希……どれほどの実力か品定めといきましょうか」


140 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:21:36 ???Sd
しずくは花丸と別れた後、エレベーターを使い14階までいこうとしたが13階でアクシデントが起きた。
途中でエレベーターが止まったのだ。

いくら待てどもエレベーターが動く気配はない。

しずく「仕方ありませんね」

しずくはエレベーターのドアの隙間に手をねじ込み力ずくで開いた。
スクールアイドルであるしずくならではの力技だ。

ブチィ!!

外壁に飛びうつった瞬間、エレベーターを支えるロープが千切れた。

しずく「なっ!?」

そのままガゴン!!と鉄の塊は重力に負け1階まで降り注ぐ。
数秒後、ゴォォォン!!!と轟音が響き下の方でエレベーターがひしゃげていた。

しずく「たちの悪い仕掛けですね……」

しずくはそのまま14階に入館した。
イーラの上はマークスザ・タワー沼津という名のマンションになっている。
そのため階数ごとに部屋が割り振られていたはずだが……。

しずく「なんですかこの部屋……」

14階にたどり着いたしずくが見たのはマンションと言い難い部屋であった。
なんと1フロアを丸ごと1部屋として使っている。
床一面大理石で至る所に煌びやかな装飾品が置かれていた。
部屋の隅には噴水まで設置されている始末だ。
趣味の悪い部屋だ……としずくは思う。


141 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:22:13 ???Sd
最奥に「2人」の少女がいた。
1人は高価そうなソファに腰掛けてタロットカードを見ている。
もう1人は黒髪ロングの少女でしずくに気を止める事もなく窓の外を見ていた。
しずくに気づくとソファに座っていた少女が声をかけてきた。

希「ご機嫌よう」

しずく「あなたが東條希ですか?なんですかこのふざけた部屋は」

希「沼津に攻める随分と前から改装してたんや。いい部屋やろ?」

しずく「全くそうは思いませんね。…ーそれでもう1人の貴方は?」

しずくは最大限警戒しながらその少女を見る。
東條希も相当な戦闘力を秘めていることは遠目でも分かった。
しかし窓際にいる少女はそれを遥かに超える実力を感じさせた。
自分でも知らぬうちに手に汗を握っていた。

海未「園田海未です」

海未と名乗った少女はここでようやくしずくに向き直る。

しずく「っ!!」バッ

咄嗟にファイティングポーズをとるしずく。
その姿が滑稽に映ったのか希が笑う。

希「あはははは!!しずくちゃんビビりすぎやん。大丈夫や、海未ちゃんは凛ちゃんの件を報告しに来てくれただけ」

しずく「………」バクバク

心臓が鼓動を早める。
敵を相手にしているというのに「どうかそうであって欲しい」と内心懇願してしまっていた。


142 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:22:48 ???Sd
それを悟られぬようにあえて相手を「煽る」

しずく「残念ですが凛さんはルビィちゃんと愛さんに負けましたよ!」

海未「えぇ。未熟極まりない……彼女にはキツイ修行が必要なようです」

しずく「もう修行なんてできませんよ。ここで2人とも倒れるんですからねぇ!!」

海未「静かに」

しずく「っ!?」

海未「虚勢は本来の実力を縮めますよ。貴方の声色から今の状況に恐怖していることは伝わってきます」

しずく「う……」

図星であった。
ほむらメンバー希と一対一での戦闘ですら不利だというのに得体の知れない強さの海未まで加わったら敗北は必須だ。
それでもしずくは顔を下げない。

スッ………

希「へぇ、この状況でもやる気なんや」


143 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:23:15 ???Sd
しずく「ルビィちゃんをコピー」

希「ん?」

ダンッッッ!!!と床を踏み抜きながら希ではなく海未にダッシュするしずく。
脅威度の高い方から屠る事にしたのだ。

しかし。

バリィィィィン!!!!!

海未にたどり着かんとする距離で外張りのガラスが勢いよく割れ、新たな少女が室内に入ってきた。



善子「堕天使キック!!!!」

しずく「なっ……善子さん!?」

まさかの善子の乱入にブレーキをかけるしずく。
善子はほむらメンバーが2人いる事に一瞬驚いたがしずくと同じく海未に狙いを定めた。

善子「食らえ!!!」


144 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:23:42 ???Sd
海未は相変わらず無表情で善子を一瞥した後「堕天使キック」を半歩で交わす。
そして善子の服を掴んでしずくの方へ投げつけた。

善子「ぶわっ!!」

しずく「なんで善子さんが!?」

善子「沼津の脅威を敵であるあんた達ばかりに取られるのは面白くないからよ!!」

しずく「………ぷっ」

善子「……何笑ってんのよ」

しずく「足引っ張らないでくださいね!」

善子「こっちのセリフ!!!」


145 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:24:14 ???Sd
希「ふふ……2対2か。面白いやん」

海未「いいえ」

希「ん?」

海未「私は用事があるので帰ります。希、後は頼みました」

希「え〜!!」

善子「何、逃げる気?」

海未「ですが……」

しずく「え?」


バゴォン!!!!


善子の体が「その場」でダンプカーに撥ねられたように高速回転する。
血をスプリンクラーのように撒き散らしながら。
かろうじて海未が高速で善子に近づき何かをしたという事だけ分かる。

呆然とするしずくの真横で海未が口を開く。

海未「この一撃のみ、置いていきましょう」

しずく「な、な………!!」


善子「げぼぉ!!がっ……あっ…………!!!」

善子はグネグネと体を捻り床に倒れていた。


146 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:24:49 ???Sd
しずくは海未に仕掛ける気も起こらなかった。
ただ恐怖で海未を見ているだけ。

ダンッッッ!!!!

床を踏み抜く足音が響く。
視線を逸らしていないというのに海未は視界から完全に消失した。
どの方向に動いたかすら分からなかった。

希「あー…しゃーないな。やりますか」

しずく「っ!!」

しずくは思う。
この状況は不味い。
度重なる「想定外」に精神的に劣勢になっている。

希は気怠そうにしずくに向かって歩いてくる。

何とかファイティングポーズを取るしずくの肩をポンと叩く少女がいた。


善子「…げぼ!!…なに、び、びってんのよ…!」

しずく「善子さん……」

目の焦点が合っていない。
おそらくまだ苦しみ踠いていたいくらいであろう。
だがそれ以上に自分を負かした女が狼狽している様を見ていたくなかったのだ。


147 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:25:16 ???Sd
善子「最初この街へ来た事を思い出しなさい。自信いっぱいで卑怯な手を使いまくってきた桜坂しずくを」

しずく「……」

善子「アンタはルビィに負けて黒澤家に拘束されていた。けど、そこで思いがけずたくさんの優しさに触れた。ダイヤがやられた時かなり怒っていたらしいじゃない」

善子「けどそのせいで牙まで抜かれてしまったの?」

しずく「!?」

善子「『エゴイストにのみ勝利の女神は微笑む』…沼津の格言よ。初めにこの街へ来た時のアナタを思い出しなさい!生意気で、自分勝手なエゴイストのファイターを!!」

しずく「……」

それだけ言うと善子はグッタリと横たわった。


希「何ごちゃごちゃ喋っとるんや?今すぐ2人とも小原家の諜報機関のように肉引き機にかけてあげる!!!」


148 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:25:41 ???Sd
希の歩くスピードが速くなる。
しずくは再び構えた。
しかし先ほどの怯えからくる防御ではない。
攻撃のために構えるのだ。

希との距離が1メートルになった時しずくが動いた。

しずく「希さん!プレゼントです」

希「!?」

しずくはポケットから球体を取り出して希に投げつけた。
手榴弾かと弾き距離を取る希。

だか弾いた球体に何も変化はない。

しずく「バーカ!!ただのスーパーボールですよ!」

しずくは希に近づくと置いてあった壺で彼女の顔面を殴り倒した。

しずく「あははは!!今のやりとり演劇に加えましょう!」

殴り飛ばされた希はゆっくり起き上がりながらしずくを睨んだ。

希「もう…楽には死ねへんな」


149 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:26:39 ???Sd
再び対峙する両雄。

しずくは希のファイトスタイルを寝技メインであると認識した。
重心が低く相手を掴むため手のひらをこちらに向けているからだ。

しずくは寝技メインの敵とやり合ったことがない。
それ故この戦いは慎重にならざるを得なかった。

しずく「希さん!プレゼントfor you!!」

再びしずくが球体を投げた。
希は反応しない。
すると球体が白く光り部屋中に閃光を放った。

希「ちっ!!(これは本物か!!)」

しずく「ルビィちゃんをコピー」

怯む希の腹にルビィの力をコピーし、渾身の力で殴る。

メリィ…!!

部屋に鈍い音が響く。

希「がっ!!??」

しずく「オラァァァァァァァァァ!!!!!!」

そのまま拳を振り抜くしずく。
希の体が部屋の隅のガラスに突っ込む。
部屋の外にまで投げ飛ばすことはできなかったが、かなりのダメージを与えられたのか腹を抑えて苦悶の表情を浮かべる希。

しずく「……っ!!」ズキッ

対してしずくも右腕に激痛が走る。
ルビィのパワーは身の丈に合わない力だ。
コピーを乱用すればしずく自身に多大なダメージを負ってしまう。


150 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:27:25 ???Sd
希「(パワーは一級品やな。これは小原家の諜報機関を拷問して聞いたコピー能力ってやつか)」

希は冷静であった。
痛みは引かないが戦えないほどではない。

希「……ええ打撃やん」

しずく「はぁっ!!」バッ

しずくは希の言葉を無視して4mも跳躍する。

しずく「14階から落としてあげます!堕天使キック!!!」

善子の必殺が希に襲いかかる。
天井の高さが5mなので跳躍は4mが限界であった。

ゴォッッッ!!!!と音速の壁を発して下降するしずく。

ガシッッッ

希は真正面から蹴りを受けた。
ズザザ!!と善子が割って入ってきた窓ガラスの寸前で止まる。

しずく「くっ……!」

しずくは振り解こうとするが希の握力は700キロを超えるのだ。
そう簡単に引き剥がせはしない。

ミシミシ……!!

希はしずくの右足を両腕で握ると力任せに「雑巾絞り」を行う。
小学生が使いそうな技。
しかし希が振るうと立派な殺人技になる。

しずく「あああああ!!!!!」

肉がブチブチと引きちぎられ血が滲み出てきた。

しずく「(このままじゃまずい!!)」

しずくは咄嗟に再度ルビィのパワーをコピーし希の腕をガンガンと殴りつけた。
少し怯む希。
その隙にしずくは左足を全力で踏ん張り後方へ下がった。

しずく「はぁ……はぁ………」

希に絞られた右足を見る。
肉が爛れて痙攣が始まっていた。

しずく「めちゃくちゃな戦い方ですね」

希「けど効いたやろ?一度相手を掴んだらどっかを潰すのがウチの信条でな。小原家の諜報部隊も散々悲鳴あげとったわ」

しずく「……」


151 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:28:00 ???Sd
希「疑ってる?さっきセブンで現像してきたんや。見てみ」

しずく「……?」

希はポケットから写真を一枚こちらに手裏剣のように投げてきた。
しずくは受け取り何が映っているのか確認する。

しずく「……!?」ゾク

写真にはおよそ人間の関節とは思えないほどグニャグニャに手足の曲がった諜報部員がいた。
生気を感じさせない目で虚空を眺めている写真だ。

希「ええやろ?」

しずく「悪趣味にも程がありますね……!あなた一応巫女でしょう?」

希「表向きはな。実際には『極楽教』という宗教を作っててそこから収入を得とる」

しずく「罰当たりにも程がありますよ!この部屋の趣味の悪い置き物は信者から巻き上げた金で購入しているんですね」

希「この街もウチの加護を与えなあかん。これからは市じゃなくてウチに納税してもらうんや!!」

希のご高説を無視してしずくはチラリと部屋を見渡す。
側に高そうな杖が飾ってあったのでそれを手に走り出した。

ブゥン!!と希の頭に目掛けて振るもしゃがんで躱された。
そして間合いに一瞬で入られ、両腕で抱きしめられる。

ミシッ……

しずく「がっ……!!(や…やばい……)」


152 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:28:35 ???Sd
希「なんや、しずくちゃん自身の力は非力なんか」

しずく「おっ!!ぐ……あぁ……!!」

ベアハグだ。
しずくは唾液を垂らしながら苦悶の顔で喘ぐ。

しずく「お、お、お………!!」グググ

しずくは自らの体の負担を度外視し、ルビィの力で希の腕を引き剥がそうとする。
先ほどよりは希の腕が押し戻された。
だが逃れられるほどの隙間はできなかった。

しずく「(そ、んな……!?)」

希「多分報告にあったルビィちゃんの力をさっきからコピーしてるんやろ?たいそうな力自慢らしいけどウチも中々の腕力があるんや。この体勢からなら引き剥がせへんで」

しずく「あぁぁあああああああああ!!!!!!」ギリギリ

口から泡を吹きながら絶叫するしずく。
苦痛のあまり体中が痙攣し始める。
希はそんなしずくをニヤニヤしながら眺めていた。


153 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:28:53 ???Sd
希「ウチの肉体で他人が苦しみも抱いている姿が好きなんよ」

しずく「ごっっ!!がっっ!?……あぁ………!!!」

体中の空気が全て抜けるのではないかという程抱きしめられるしずく。
肋骨も数本折れ、危険な状態だ。
鼻血がドバドバ流れており、命のカウントダウンが始まった。

希「あ〜ええなぁ〜〜。ずぞぞぞぞ」

しずくが口から吹いている泡に、自らの口を近づけて音を立てながら吸い始める希。
まさに異常性壁である。

希「美味しい〜♩このまま締め続けたらどうなるんやろな〜」


善子「オラァ!!!」

希「っ!?善子ちゃん……!!」

海未の打撃からなんとか動けるまで回復した善子がナイフを振りかぶっていた。
希が信者達から搾り取った金で購入した骨董品のナイフだ。
咄嗟にしずくを離し腕で防ぐ希。
ナイフを弾くことは叶わず左腕前腕に深々と突き刺さった。

希「痛っ!!」

善子はしずくを担ぐと希から距離を取る。

善子「しずく!大丈夫!?」

しずく「あが……よし、こさん………」カタカタ

希のベアハグから逃れることのできたしずく。
しかしダメージはかなりのもので涙目で口から血を垂らしながら痙攣していた。
もう戦うどころではないと思ったのか善子はしずくを抱えたまま階段に急ぐ。

希「あれ……?どこ行くん」

善子「逃げんのよ!!戦略的撤退!!!」

希「……」

希「………」

希「逃すかぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


154 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:30:01 ???Sd
血走った目で善子を追う希。
善子は死に物狂いで階段を駆け降りる。
後ろから希の足音が恐るべきスピードで迫ってくる。

ただでさえしずくを抱えている善子は不利だというのに、海未からもらったダメージが抜け切っていない。

追いつかれるのは時間の問題だ。

しずく「よ、じこさん。……ー私を置いていって……くだざい」

善子「黙っていなさい!!」

今の階数は10階。
通常の入居者がいるエリアである。
善子は致し方ないと思ったのか10階フロアの一番近いドアノブを力づくで開ける。

「わぁ!?誰だお前!!」

当然中には入居者がいる。
善子は「お邪魔します!!」とふざけ倒した返答をすると窓ガラスを破壊して外へ出る。
ベランダを伝いながら猿のように階を降りていく善子。


善子「はぁ……はぁ…………よし」

しずく「……なにが、よしなんです……?」

善子「無理して喋んなくていいわよ。あんたはもう戦えないでしょ。けど私はギリギリだけど戦えるまで回復できたわ」

しずく「………でも」

善子「でもじゃない。沼津の膿は沼津市民が排除すべきなのよ。アンタを安全な場所まで運んだら私が東條希を単独で撃破するわ」


155 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:30:22 ???Sd
しずく「……!?よじござんっ!!上!!!!」

善子「へ?」

しずくに促されるまま上を向くと善子の視線の前にスカートの中がドアップで映った。
直後足裏が善子の顔面に突き刺さる。

善子「ぶはっ!!!!」

希「逃がさんどワレェ!!!!!」

希が10階から飛び降りて来たのだ。
善子はしずくの服をなんとか掴み地面に着地する際自分が下になりしずくを守った。


善子「がっっっ!!!!」

しずく「よ、しこさん!!!!」

希「泣かせるやん。ヒーロー気取りかいな」

善子「(やば、息ができない……!)」

通常の人間なら即死。
スクールアイドルで鍛えた善子といえども即動くことは叶わないでいた。

しずくが立ちあがろうとするも内臓に急激な負担がかかっており血を吐いて膝を着いてしまう。


156 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:31:25 ???Sd
絶対絶命。

周りには市民が3人の喧嘩を観戦するために集まってきていた。
そんな中イーラの非常事態に駆けつけたのか3人の警官が希を取り囲む。

「東條希だな!」

希「なんや」

「殺人及び器物破損罪で逮h」

警察は最後まで逮捕の口上を言えなかった。
希に喉を「握りつぶされた」からである。

「なっ!?」

「貴様!!」

同僚が突然殺され拳銃を引き抜く警官2人。
だが引き金に手をかけた時には2人とも脳を握りつぶされて即死した。

シュゥゥゥゥゥ……

希「!?」

突如周辺に白い煙が舞う。
しずくが残り一つのスモークグレネードを起爆させたのだ。
目眩しだが警官の殉職のおかげで時間を稼げた。

善子はといえばしずくを抱えたまま木負行き(淡島マリンパーク行き)のバスに乗り込んでいた。

希「どこ行ったぁぁぁ!!!こら善子ォォォォ!!!!」


善子「デカい声ね…けどこのまま逃げ切ればいったん体制を整えられるわ」

しずく「あの、…ありがとうございます…」

善子「何もお礼を言われることしてないわよ。アンタがいなかったら私も死んでた場面があるしお互い様よ!」

しずく「……///…あ、あの……」


しずくが何か言おうとした時、善子は目を疑う光景を見させられる。


157 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:31:46 ???Sd
希「出てこんならロータリーの人間を1人ずつへし折っていくよォォォォ!!!!」バキィ!!!


「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

善子「嘘でしょ!?」

バスの後部座席から善子が見たものは怒り狂った希が無関係の市民を片っ端から「折り曲げて」いる光景だった。
まるで子供がおもちゃを真っ二つにするかのような動作に善子は言葉を失う。
もうすでに5人も折られて殺されていた。

善子は覚悟を決めた。


善子「……仕方ないわね」

ガシッ

善子「……?」

制止するように服を掴まれてので振り向くとしずくが震えながら懇願するような目で善子を見ていた。

しずく「行っちゃ、ダメです」


158 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:32:06 ???Sd
善子「私が行かなきゃ皆死ぬわよ」

しずく「それでも、嫌です……!善子さんが殺されます…!」

善子「死なないわよ、さっきよりも回復したし。しずくの時間稼ぎのおかげでね」

嘘だった。
マンション10階近くから落下して善子の骨は主要な部分にヒビが入り、内臓も深く損傷していた。
本来ならまだ歩くのもしんどいはずだ。

善子「しずくはこのまま淡島に行きなさい。私のスマホを貸すから果南か梨子を呼ぶのよ」

しずく「い、や。このまま善子さんと…!」

善子「しずく!!」

しずく「っ!!」ビクッ

善子が真剣な眼差しでしずくの両肩を掴み目を合わせた。

善子「アンタは最初嫌なやつだったけど今は最高なパートナーって感じがするわ。後は頼んだわよ」

善子はそれだけ言うと踵を返し、バスの扉を叩き壊して車外に出た。

しずく「善子、さん……!ゲホゲホ!!」


159 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:32:30 ???Sd
.
.
.

「誰か!!殺人鬼がいるわ!!」

希「次はアンタか?」

善子「やめなさい!!!!!」

希「やっと来たか……」

沼津駅前ロータリーは酷い有様であった。
至る所に真っ二つにへし折れた人体が転がっていた。
沼津とだけあり腕に自信のあるファイターも何人か散見されたが皆希の前に敗れてしまった。

善子「めちゃくちゃするわね。アンタ、もう生きては帰さないわよ」

希「一度逃げた雑魚アイドルがイキっても何も怖くないな〜」

善子「ま、それは否定できないか」スッ

善子は構える。
もう堕天使キックを放てる力は残っていない。

それでも戦う。


160 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:32:57 ???Sd
善子「(何のために?)」

『エゴイストにこそ勝利の女神は微笑む』

善子「(私がしずくに言ったことじゃない。本当にエゴイストならしずくも街の皆も投げ出して逃げるべきなんだろうけど)」

希が笑顔で迫ってくる。

善子「(私もファイターとしては3流だったわけか)」

善子と希の距離がゼロにならんとする時。


「東條希ッッッ!!!!!!」


善子「っ!?」
希「!?」

あまりの迫力のある凛々しい声に希ですらが動きを止めて声の主を見た。

しずく「こっちを向きなさい…!東條希!!!」

善子「しず、く……!?」


161 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:33:22 ???Sd
希「なんや…しずくちゃんも逃げてなかったんやぁ…」ニヤァ

内心、善子より散々バカにされてきたしずくの方に恨みを持っていたのだろう。
しずくを見る目は怒りと嗜虐心に満ちていた。

しずくはといえば話すたびに口から血を吐く状態であった。
血の気も引いておりまともに戦える状態のはずがない。

善子「何やってんのよしずく!!!逃げろって言ったでしょう!!!」

希「もう遅いわアホ!!まずはしずくちゃんで知恵の輪作ったる!!!」

希が走り出す。
善子は手を伸ばすが届くはずもない。
そんな時、しずくの表情がチラリと見えた。

笑ってた。
清々しい笑顔。それは善子にまるで感謝するようであった。
しずくは息を吸い、希にとって脅威の一言を声に出す。


しずく「園田海未をコピー」


162 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:33:42 ???Sd
しずくの「コピー」は真似る対象が自分の力量と比べ格上であればあるほど肉体を損耗する。

ルビィをコピーした時のように。

なので普段はあまりコピーは使わずに自分の力量と小細工だけで戦ってきた。

だが沼津のファイターは格上ばかりでコピーを多用する頻度も上がり肉体へのダメージは日に日に増えていった。

そして今日、ルビィを遥かに上回る実力者、園田海未のコピーを行った。

万全の状態でもコピーを危ぶまれる程のパワー、速さ。

その力を惜しみなく実行した、

そして……。



希「ゲボォォォォォォ!!!!!!!!」ビチャビチャ

希が床に這いつくばり血を吐いている。
彼女ですらが自分が何をされたのか分からず腹と喉を押さえて痙攣していた。


しずく「がふっ……」ドサッ

そしてそれは技を放ったしずくも同じだった。
元々限界まで痛めつけられた上での、はるか格上のファイターのコピーは命を削るものであった。

しずくの右腕はグネグネに曲がり半目で意識混濁状態であった。
善子はすぐさましずくに駆け寄る。


163 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:34:06 ???Sd
善子「しずく!!」

しずく「ヒューヒューー……」

善子「(こ、これはやばい……!!)」

適切な処置をしないとしずくが死んでしまうことは医療知識の無い善子でも分かった。
希が暴れ回ったおかげで警察と救急車の増援が来たため、救急隊員に助けを呼ぼうとしたが…。

希「……やってくれたなコラ」グググ

善子「う、そ……」


希が血を吐きながら立ち上がってきた。
そもそも今回の戦いでは希の「底」を引き出せていなかった。
常に希優位で2人は抗っていただけ。

しずくの決死のコピーは希に多大なダメージを与えたことは確かだ。
しかしそれは命にまでは届かなかった。


164 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:36:10 ???Sd
善子「クソ!!!」

善子は立ち上がり、構える。
見たところ希はまだまだ戦えそうだ。
自分の命は捨てられたが、善子が負けた場合しずくも死ぬという状況が彼女の心をめちゃくちゃに乱していた。

希「仲がいいお二人さんは一生離れられん様に『繋げ』たるわ」

善子「堕天使奥義……」

しずくは命を投げ打つ覚悟で海未をコピーした。
善子も体への限界など度外視して「堕天使キック」を放とうとしたが……。


「沼津〜みなと新鮮館〜♩」


希「……?」

善子「な、なに……?」

沼津観光名所である「沼津みなと新鮮館」のテーマソングを口ずさむ少女がいた。
その少女はコンビニの袋を片手にクルクルと回しながら善子の前に立った。
飄々としている様で彼女の身のこなしの一つ一つが只者ではない事を感じさせる。


ボオッッ!!!!!


少女の登場で大気が震え、まわりの温度が上がった気がした。
肉体に押さえ切れないほどのパワーが外部に滲み出ていたのだ。
その少女は善子に振り向くと屈託ない笑みを浮かべて声をかけた。


果南「やっほー、善子ちゃん」

善子「か、果南ンンンン!!!!!!」


165 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:36:36 ???Sd
善子「アンタ…もう来てくれたの!?」

果南「いや、私は鞠莉にビンタされた後アントレで遊んでたら楽しそうな事が起きていたから来ただけ」

善子「楽しそうって……こっちは必死だったのよ!?」

果南「ごめんごめん。ここまで大事になってたら小原家の医療チームもくるでしょう。2人は診てもらいな」

希「ちゃうなぁ。あんたらが行くんは病院やのうて遺体安置所や」


果南「あのさぁ……」

希「あ?」

果南「あなた誰?」

希「はぁ!?」


166 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:37:07 ???Sd
果南「別にアナタに用があって来たんじゃないんだけど」

善子「あ、アンタ私たちを助けるために来たんじゃないの?」

果南「沼津市民らしくないセリフだね。私はただ強い雌の残り香が気になってここに来ただけだよ」

希「大物ぶんな!ならウチのことやろが!!」

果南「違うよ」

希「あぁ!?」

果南「もう1人、ここにいなかった?いや、厳密にはそこのイーラの上からだけど」

善子「っ!?」

希「なんや、海未ちゃんの事か」

果南「海未ちゃんっていうんだ。どこ行ったか分かる?」

希「穂乃果ちゃんの所へ……ってそんなんどうでもいいんじゃ!オーガもろともここでお釈迦にしたる!!!」

希は果南にタックルを仕掛けた。
ダンプカーの破壊力を遥かに超えた希のタックルはビルを何棟も倒壊させながら進めるという。
現に果南もズザザザザ!!!と5m程後ろに下がってしまった。


167 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 15:37:51 ???Sd
善子「果南!!!」

果南「やるね。ほむらとやらは皆このくらいは戦えるんだ」

希「大物ぶんな言うたやろ。しかしオーガも所詮か弱い少女やな。こんなに簡単に下がらせられるとは思わんかったわ」

果南「ふーん。なら押し比べしようか」

希「!?」

果南は希の顔面を掴むと足に力を入れる。
その場で踏ん張っているだけだというのに地面がひび割れ始めた。

果南「出発するよ〜〜!!!」

果南が1歩踏みだす。
希は掴まれている手を退けようとするも果南の握力に抗えない。

希「(コイツ……なんちゅう力しとんねん!!)」

果南「はっはははははははははは!!!!!!!!」

希「(ちっ……!!)」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

果南が車を超える速度で希を掴んだまま突進する。
コンクリートは踏み荒らされクッキーのように散乱していた。
果南が走り出したのは沼津駅前ロータリー。
しかしあっという間に大手町バス停付近まで到達し、そこから果南は希を中央公園に投げ飛ばした。


果南「あはぁ!!!!!」

希「ッッッ!!!!」


ブゥオン!!!とプロ野球選手が投げる球のように希の体が中央公園のトイレに突っ込んだ。


ドゴォォォォォン!!!!!!

轟音が沼津市に響き渡る。


168 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 19:05:38 ???Sd
ドバドバ……!
水道管が破裂し水浸しになりながら倒れる希。

希「かはっ……!!あのアマが………」

瓦礫をどかしながら起き上がる希。
衝撃は大したものだったが主要な骨は無事なようだ。
ストレッチをして果南を待つ希。
数十秒後に果南が公園の入り口をゆっくりとくぐって来た。


果南「やるねぇ〜!普通ならミンチになっているよ」

希「ウチらはほむら。人智を超えたファイターの集まりや。アンタに瞬殺されるような雑魚はほむらに1人もおらんわ」

果南「あはは、威勢が良くてワクワクするね。確かにデカい口叩くだけの力はありそうだ」

希「………」スッ

希は構える。
善子やしずくには見せなかった真剣な眼差しで。
重心を低くしダンッ!!と地面を蹴る。
1秒以下の時間で果南の懐に潜り込む希。

果南「シュッ!!!!」

全く無駄のない希の動きに果南は反応した。
カウンターの右フックを彼女の頰に合わせた。

べゴォ!!!!
希の頰が凹む。
歯も数本折れて意識が飛びそうになる希だがかろうじて果南の腕を掴んだ。

希「折るで」


169 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/04(土) 19:06:35 ???Sd
希は下から飛びつき果南に飛びつき、十字固めを繰り出す。
ガクン!と立っている果南が希の力で膝をつく。

果南「ほう……」

希が腰を反り果南の腕を折ろうとする。
しかし果南は親指を下にし、希の鼠蹊部に腕を押し込む。
これで腕が決まることを回避した。

希「ビビッとんのかオーガ!!!」

希は技が上手く決まらず怒りを露わにする。


果南「おいィィィィィ!!!!」


果南は空いている左腕で希の脇腹を殴った。
「普通のパンチ」のはずだった。
しかし果南から放たれる災害レベルのパンチは、ルビィの威力をを超える。

希「げばぁぁぁぁ!!!!!」

希の体が5m程宙を浮いた。
だがすぐに体勢を立て直すと脇腹を触りながら果南を睨む。


希「(なんちゅう馬鹿げたパンチ打ちよるんや。けどオーガはウチに技を掛けられ時『技に逃げた』……。ウチを余裕で倒せるんならオーガの性格上力ずくで抜けてもおかしくなかった)」

希「(ウチの技は効くっちゅうことや)」

果南「………」


170 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:17:49 ???00
ザワッッッ…………

希が自信つけた瞬間、公園に異変が起こり始めた。
ベンチや木に止まる鳥たちが一斉に公園から飛び立ったのだ。

希「なんや……?」


鳥たちの様子はまさに命の危機から逃げるかのような動きであった。
どの鳥も必死な様子だ。
希が不思議そうに鳥達を見ていると、今度は自分の体に変化が訪れた。

希「………!?」ゾワァ

急速に体を寒気が襲った。
希が自らの腕を見ると鳥肌ができていた。
ほむらである自分が風邪に………?
そう思ったが目の前のオーガを見て違うと確信した。

果南「久しぶりに屠るか。鞠莉には怒られるけどしょうがないよね」

果南が先ほどの飄々とした様子から「鬼」と紛う程の凄惨なオーラを纏っていたのだ。
体中に血管が浮かび上がり筋肉が膨張し始めた。
歯に関してはビキビキ……と犬歯のように尖り始めたのだ。

人体が変貌する瞬間を初めて見た希は言葉を失った。

「チュン!!」

鬼へと変化した希の前に逃げ遅れたであろう雀が地面に落ちて来た。
果南はそのスズメを優しく手で持ち上げる。

安全なところにでも移すのか……そう希は思ったが違った。

果南「がちゅ!!ブチィガブガブ!!!!!」

希「なっ!?」

果南はスズメを何と生で食し始めた。
5秒とかからずスズメを胃の中に沈めた果南は口から血を垂れ流しながら笑顔で希を見る。

果南「このモードは血に飢えまして………」

てへぺろ、と笑ったつもりなのか舌をだして行う笑みはまさに「オーガ」を感じさせる様相になっていた。


171 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:18:31 ???00
希「おおおおおおおお!!!!!!」

希が叫ぶ。
彼女も百戦錬磨のほむらメンバーだ。
命の危機に遭遇したことも1度や2度ではない。
目の前の果南を屠るため気合いを入れる。

希「オーガァァァァァ!!!!!!!!!」

希が絶叫しながら果南に突っ込む。
得意の片足タックルを仕掛けるために果南の足をクラッチするが………。

グググ………

希「(嘘やろ……)」

グググ……

果南「………」

希「(うご、かん………!!)」

果南は希の頭を掴むと自分と向かい合うように目線を合わせた。
歯を剥き出してニヤニヤ笑う果南。

希「ク、ソ………オラァ!!!!!!」

希は果南の顎をアッパーで撃ち抜いた。
果南体がわずかに浮く。

果南「あ〜れぇ〜♩」


172 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:19:17 ???00
希はルビィに近いパワーを有している。
当然そんな力で本気で殴ればただでは済まない。

希「だおっっ!!!!!!」

力任せに果南の顔面を右ストレートでぶち抜く希。
果南はグラァ……と体が逸れるも倒れない。
希は追撃をしようとするも、着弾寸前で果南に腕を掴まれた。

ミシミシミシ………!!!!

希の腕が折られんほどに強く握りしめられる。
果南は鼻血を出しながら口を開く。

果南「い〜いパンチだ。けど今度はこっちの番だよ」

果南は希の腕を掴んだまま右ストレートで「腹をぶち抜いた」
ドチャッッ!!!!!
希の腹に空洞ができ、中からトマトジュースのように血が吹き出す。


希「がっっっ!!!???」

2発目。

ドチュッッ!!!!!

希の右肺が貫通する。
果南が手刀で希の肋骨ごと突き刺したからだ。

希「が、ぼぉ…………」

果南「アナタは人を殺しすぎた。今世はもう仕舞いにしな」

果南の3発目の拳が希の心臓を貫く。
掴んでいた希の左腕は引きちぎれ、彼女の体があゆみ橋を超え香貫公園まで殴り飛ばされた。
300m先で轟音が響く。

果南「いい汗かいた〜」


希の左腕を放り投げ、犬歯を剥き出し笑う果南であった。


173 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:20:03 ???00
〜事件から3日後〜

希が暴れ回った事件は「沼津新興宗教事件」という名で沼津の民に語り継がれることになった。

花丸「善子ちゃん、プロテインずら」

善子「ありがとうずら丸。…ゴクゴク、うぇ…不味いわね」

花丸「失礼ずらね」

善子としずくは沼津聖隷病院に搬送され、小原家のドクターの治療を受けた。

善子は動けるまでにはなったがしずくはいまだ目覚めていない。

鞠莉「善子、本当に今回の希討伐作戦はよくやってくれたわ。この町を代表する者の一人として礼を言います」

善子「なに改ってんのよ。こちとら自分の好き勝手動いただけよ。それにしずくと……最後は果南のおかげね」

花丸「本当に心配したんだからね」

善子「心配かけて悪かったわよ。…それでしずくの容体は?」

鞠莉「命に別状はないけど当分起きる見込みは無いわね」

善子「……しずく。あの子がいなかったら私は死んでいたからね。お礼を言っておきたいわ」


174 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:20:31 ???00
鞠莉「それは彼女が起きてからね。東條希は果南に殴り殺された。星空凛は特別収容所に隔離中。…あとは」

善子「二人ね!私を瞬殺してくれた園田海未と……」

鞠莉「穂乃果という少女ね。どうやらその子がリーダーみたいよ」

善子「……園田海未じゃないんだ。まさかあれより強いとでも言うの?」

鞠莉「想像もしたくないわね」

「たたた大変よーー!!!」

善子「わっ!!」

ランジュ「大変なのよ!!!」

鞠莉「落ち着いてランジュ。どうしたのよ」

ランジュ「ダイヤが病室から姿を消したって!!」

鞠莉「なっ………!?」


175 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:20:56 ???00
鞠莉はランジュと共にダイヤの病室に行く。
ダイヤの病室に行くと彼女はベッドから姿を消していた。

鞠莉「……ありえない」

ランジュ「えぇ、ありえないわ。まだ動ける傷ではないもの」

鞠莉「てことはまさか拉致されたの?」

ランジュ「可能性はあるわね」

鞠莉「ほむら……」

鞠莉は憎しみを込めて歯を食いしばる。


Prrrrrr!!!!


その時鞠莉の携帯に着信が入る。
電話の主が誰か確認すると……。

鞠莉「ダイヤ……?」

なんと消えた本人、ダイヤから連絡が来ていた。
ランジュにも聞こえるようにスピーカーモードにし、鞠莉は恐る恐る電話を取る。


176 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:21:37 ???00
『はぁーい、鞠莉。ダイヤよ』

鞠莉「……誰よアナタ」

真姫『ツレナイワネ。こんにちは、私は西木野真姫』

鞠莉「ほむらのメンバーかしら?」

真姫『いいえ、私はただの研究者よ。ねぇ何で私がアナタに電話したか分かる?』

鞠莉「……いいえ」

楽しさが抑えきれないといった真姫の様子に鞠莉は苛立ちと焦燥を隠すのに必死であった。

真姫『このダイヤとかいう子……素晴らしい素材よ』

鞠莉「素材…?何を言っているのアナタは」

真姫『私は最強のファイターを『人工的に』生み出すことを至上の目的にしているの。黒澤ダイヤを私が施術すればきっと彼女は人類最強にもなれる』

鞠莉「ッッッ!!!何言ってるか分かっているのアナタ!?」

真姫『最強のファイターを作るという崇高な理念の前には倫理や道徳など無意味なの!ほむら2人倒した程度でいい気になっているところ悪いけど沼津はこれからもっと地獄になるわ!ダイヤが暴れ回るわよ……!』

ランジュ「ふざけないで」

真姫『あら……誰かしら』

ランジュ「虹ヶ咲のランジュよ。怪我人を弄ぶような真似は私が許さないわ」

真姫『イミワカンナイ。じゃあどうするの?』

ランジュ「私がアナタを止める!ダイヤも助け出す。シンプルな問題ラ!!」

真姫『やってみなさい!!私の最高傑作で捻り潰してあげるわ』


177 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:24:54 ???00
ブチっっと乱暴に真姫が通話を切った。

鞠莉「ダイヤ……」

ランジュ「ダイヤをサイボーグにでも仕立て上げるのかしら?何にせよ黙って見過ごせないわね」

鞠莉「アナタがダイヤを止めてくれるの?」

ランジュ「えぇ、これからはこの鐘嵐珠が動くわ!散々焦らされてもう体が震えていたからね!」

鞠莉「……ありがとう」

〜沼津市民文化センター〜

ゴポゴポ………

ダイヤ「……」

ダイヤ「(私は……何をしていたんでしたっけ……?)」

様々な薬液が投与されたカプセルの中でダイヤは薄く目を開ける。
数日ぶりの意識の復活であった。
制服は脱がされており黒く薄いボディスーツを着ている。

ダイヤ「(そうだ……ランジュさんと戦うために我が家で精神統一をして……)」

ダイヤ「(オレンジの髪の少女と…あと『もう1人』に負けた)」

ダイヤ「(早く動かなければ。あの少女は危険すぎる。あの茶髪の少女は)」

真姫「それはダメよ〜?」

ダイヤ「!?」


178 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:25:38 ???00
真姫「そのカプセルの中だとアナタの考えは筒抜けになるの。傷は完治したみたいね……ならあとは追加でこれよ!」

真姫が装置を作動させるとカプセル内の水の色が赤く染まった。
ダイヤはパニックになるが拘束具が付けられており抵抗ができない。
1分後、ダイヤの意識が闇に落ちる。




ダイヤ「がぼっ!!!」

1時間後、ダイヤの意識が目覚める。
先ほどとは違い目の前には真姫だけでなくもう1人少女がいた。

ゴボボボボボ………とカプセル内の水が抜けて容器が自動で開いた。
ダイヤは数日ぶりに自らの足で歩いた。

ダイヤ「………」

ダイヤの目はうつろに真姫を眺めていた。

「真姫ちゃん!拘束具も取って大丈夫なの?」

真姫「えぇ、必要な処置は完了したわ。もう彼女は私の支配下にある」

穂乃果「おー!」

真姫「てことでダイヤ、手始めに鐘嵐珠を暗殺して来なさい。今にアナタなら簡単にできるはずよ」

ダイヤ「分かりました…真姫様」

真姫「穂乃果もダイヤをサポートしてあげて。沼津で散々遊んだんだから地理は分かるでしょう?」

穂乃果「合点承知だよ!よろしくねダイヤさん!」



最悪のコンビがここに誕生した。


179 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:26:05 ???00
〜浦の星女学院〜

ランジュ「といってもどこにいるか分からないのよね〜」

ランジュは鞠莉と別れてから浦の星女学院に来ていた。

ランジュ「虹ヶ咲とは真逆の素朴な学校ね。こういうのも悪くないわね!」

今日は休日のようで生徒はまばらだ。
個々で部活動に勤しむ生徒たちを微笑ましい目で見るランジュ。

「おらぁ!!」

「やるね、はぁ!!」

そんな時体育館から肉を打つ音が聞こえて来た。
ランジュは気になり館内を覗き見る。


千歌「負けないよ!!」

むつ「はいィィィィィ!!!!!」

そこでは千歌と彼女の友人むつが殴り合っていた。
かなり激しくやっており両者ともに顔面にアザができている。
喧嘩かと思いランジュは止めに入った。

ランジュ「ちょっとちょっと!2人とも何してるのよ!!」


180 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/05(日) 18:26:29 ???00
千歌「ランジュちゃん!」

むつ「なにって……修業だよ。今沼津は戦争状態だからね。いつでも戦えるように体温めてんの!!」

ランジュ「ならせめてヘッドギアをつけなさいよ」

むつ「内浦じゃ臆病者のレッテルを貼られるよ」

ランジュ「頭を守るためだから!!……にしても千歌は非戦闘員じゃなかったの?」

千歌「曜ちゃんや梨子ちゃんが頑張っているのに私だけ傍観者なんてできないよ!」

むつ「てか元々アンタらが攻めて来たからこんなことになってんだけどね」

ランジュ「ま、それは否定できないわね。お詫びに修業してあげましょうか?」

千歌「本当に!?」

ランジュ「えぇ、技の出し惜しみなんかしないわ。なんでも聞いてちょうだい!」


181 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 11:14:14 ???Sd
むつ「驚いた……一応敵なのにそんな事していいの?」

ランジュ「顔見知りの千歌たちが強くなる方が嬉しくなるわ。全体的な格闘家のレベル向上につながって欲しいもの!」

むつ「ふーん、なら断る理由はないかな」

千歌「よろしくお願いします!」

ランジュ「じゃあ体育館を盛大に使いましょう。まずは私の必殺技よ!」

千歌「いきなり!?」

ランジュ「2人は下がってて!見といてね〜」


フワァ……。
ランジュは脱力し右手と左足を上げてカンフーのポーズを取る。
荒々しい雰囲気の彼女とは対比的に「静」を思わせる動作だ。
瞬間、ランジュの左足が空に向かって放たれる。


ランジュ「ラァ!!!!!!」


ブュォォォォォォォ!!!!!!と体育館内に突風……いや、剛風が巻き起こり空気の大砲が発射された。

ズドォォォォン!!!!!


ランジュの蹴りの余波はステージ台にまで到達し、壁に大きな穴を開けてしまった。
風圧で館内が台風でも起きたように風が舞っている。


むつ「」

千歌「」


千歌たちは何が起きたか分からずに呆然と変わり果てた体育館を眺めていた。


ランジュ「はぁ……はぁ…………。『ラ嵐撃(ららんげき)』という技よ」


182 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 11:14:34 ???Sd
むつ「できる気がしないのですが」

千歌「見た感じ普通の蹴りじゃん!私にそんな脚力ないよ〜!!」

ランジュ「いえ、ただの蹴りじゃないわ。ねぇ、打撃で一番力が出る瞬間って知ってる?」

千歌「力みじゃないの?果南ちゃん言ってたよ」

ランジュ「スポーツ学的には違うわ。……まぁオーガならそれでも良いのかもしれないけど」

むつ「教えて」

ランジュ「えぇ、それはね……『脱力』よ」

千歌「力を抜くって事?」

ランジュ「そう、力というのは脱力して無駄な力を削ぎ落としてから放つ。これが高威力の秘訣よ」

喋るランジュは汗だくだ。
脱力の度合いも並大抵のものではないのだろう。
しかし脱力次第でここまで凄まじい一撃を放てるのかと千歌とむつは驚愕していた。


183 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 11:15:02 ???Sd
ランジュ「ここまでの完成度で私は10年かかったわ」

むつ「だろうね。人生賭けなきゃ、いや賭けてもできない人間の方が大多数だと思うよ」

千歌「私は使えるようになりたい!」

むつ「私もだよ。浦の星の一人として敵を葬り去る力が欲しい。教えてランジュ!」

ランジュ「任せてラ!!」




ランジュ、むつ、千歌の3人はそれから毎日修業に明け暮れた。
「ほむら」メンバーに動きが無い事もありランジュも予想しないほど色々な技を2人に伝授できた。

ランジュ「(沼津はファイターの集まりと聞いたけど……そのせいか2人とも才能の塊ね)」

むつ「はっ!!!」バッ

千歌「ふぅ……………」


ランジュ「(特に千歌。この子本当に最近まで格闘技未経験者って本当?成長速度が恐ろしいわね)」


千歌「ハァッッッ!!!!!!」

バビュオッッッ!!!!!

千歌が脱力から、かつてランジュがルビィに放った「寸景」を空に繰り出す。
突風が巻き起こり校舎内の幾つもの窓ガラスを触れずに粉砕した。


184 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 11:15:26 ???Sd
千歌「はぁ……はぁ…………」

ランジュ「素晴らしい成長よ、2人とも」

千歌「ありがとう、けどまだまだだよ」

むつ「ランジュのおかげで私たちの戦闘力が飛躍的に上がったよ」

ランジュ「ラ!礼には及ばないわ。今日は皆んなでビュッフェに行きましょう!奢るわよ」

千歌「わーい!お肉だぁ〜!!」

むつ「至れり尽せりだね〜」

体育館を出て店へと向かおうとする3人。
そんな時3人の耳に歌声が聞こえて来た。
校庭の方からだ。


「だって〜可能性感じたんだ〜そうだ、進め〜♩」


ランジュ「綺麗な声……」

むつ「本当だね。ランジュが乙女の顔するくらい綺麗」

ランジュ「もー、むつ!!」

むつ「あはは」


185 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 11:15:42 ???Sd
千歌「誰が歌っているか見に行こうよ」

ランジュ「そうね!」



「後悔したくない目の前に僕らの道がある〜♩」



三人が声の主のところへ小走りで見に行く。
校庭には1人の少女がいた。
階段に優雅に立ち、両手を広げて気持ちよさそうに歌っていた。
サイドテールの茶髪の少女だ。
快活そうでランジュは一目見て気が合いそうだと思った。
彼女の制服を見るまでは。


ランジュ「………ほむらの制服」

穂乃果「あ、ランジュちゃんだ!」


186 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 14:19:41 ???Sd
ランジュ「いい声ね。もっと聴かせて貰おうと思ったのに残念よ」

穂乃果「好きなだけ聴いていっていいよ。私は希ちゃんや凛ちゃんと違って喧嘩っ早くないから」

ランジュ「お断りするわ。アナタを殴りづらくなるもの」

穂乃果「優しいんだねランジュちゃんは」

ランジュ「……」

千歌「ら、ランジュちゃん……」

ランジュ「二人は下がってて」


ランジュは警戒して穂乃果を見ている。
自分の中で必死に闘争心を沸き起こそうとしているが先ほどから戦闘モードに移れず困惑していた。
目の前の少女がまるで映画のヒロインのように…魅力的。
初対面だというのに「親友」かのような錯覚に陥っていたからだ。

ランジュ「(何なのこの感覚……)」


187 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 14:20:06 ???Sd
穂乃果「私なんかに構ってていいのかな?」

ランジュ「……?ほむらのリーダーでしょうあなたは。ここで倒す価値はあると思うけど」

穂乃果「私、今日ダイヤさんと観光しにきたんだよ」

ランジュ「!?」

千歌「ダイヤさんとって…どういう事!?」

穂乃果「ダイヤさんがランジュさんと戦いたいって言ってたから連れてきてるの。けど途中で逸れちゃってどこ行ったか分かんなくなっちゃった」

ランジュ「無責任ね。ならあなたを倒した後にダイヤを探し出すわ」


穂乃果「……あーあ、しょうがないなぁ」ユラァ



穂乃果が気だるそうに頭を掻きながら三人に歩み出す。

むつ「千歌、下がるよ」

千歌「むっちゃん!けど……」

むつ「もちろんただ傍観するだけじゃ無い。加われそうなら加わる。……万全のほむらのリーダー相手に私たちじゃ分が悪い」

千歌「……」

ランジュ「その通りよ。私がヤバくなったら助けてラ。ま、杞憂だろうけどね!」

千歌「……うん、分かった!」


188 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 14:20:30 ???Sd
ランジュは構える。
ここまでの緊張感のある戦いは香港にいたときも、日本にいた時もなかった。

ドクンドクン……

ランジュ「(これよこれ……)」

ランジュの脳にアドレナリンがシャワーの様に分泌される。

ランジュ「(こういうヒリヒリする戦いを私は日本にしにきたのよ!ほむらのリーダーが相手なんてファイター冥利に尽きるわね!)」


ライバルであるダイヤを拉致された事への怒り。
無関係の市民を大勢巻き込むほむらの所業。
ランジュはどれも許せなかったがその一切を彼女は今「忘れていた」
強者を目の前に闘争心が義憤や倫理を上回ったのだ。
そういう意味でもランジュは純粋なファイターであった。


189 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 17:58:15 ???Sd
穂乃果は構えない。
手を後ろに組み微笑を浮かべている。

ランジュ「なに、余裕のつもり?」

穂乃果「違うよ。最初は相手の人に好きにさせてあげるんだ。どんな実力か知りたいからね」

ランジュ「はっ…それが余裕のつもりだって言ってんのよ」

直後、穂乃果の体が宙を舞う。
ランジュが一瞬のうちに穂乃果に詰め寄り顎を蹴り上げたからだ。

ランジュは追撃を行う。
校舎を足場に空中の穂乃果の腹に回し蹴りを叩き込んだ。

ランジュ「ラァ!!!!」


ボゴォォ!!!


穂乃果「ーーーー!!」

穂乃果の体が校庭まで吹っ飛ばされる。


190 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 17:58:39 ???Sd
むつ「す、すごい……!!」

砂埃が校庭を覆う。


「ホノッッッ!!!!!!!!!」
バビュオォォォォォォ!!!!!


穂乃果が短く喝を入れると砂埃が霧払いのように晴れる。
校庭の中央で穂乃果は感心したように拍手していた。

穂乃果「ランジュちゃん凄いね!凛ちゃんほどじゃないけどそんなに速く動けるんだ!」

ランジュ「(結構気合い入れて放った打撃だけどピンピンしているわね……)」

穂乃果「ほら!もっと来て良いよ。ランジュちゃんの事もっと知りたくなってきちゃった」

ランジュ「言われなくても……よッッッ!!!!!」

ダッッ!!!!とランジュが校庭を走り回る。
穂乃果に対する目眩しのためだ。
風を切りながら高速で走るランジュ。

ランジュ「嵐嵐拳(らんらんけん)!!!!!」

ドドドドドドドド!!!!!と左右の手で目にも止まらぬ速さで突きを行った。
コンクリートを豆腐のように破壊する攻撃だ。


191 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 17:59:07 ???Sd
穂乃果「わぁ!うっ!!!あっっ!!!」

穂乃果は突かれるたびに声を上げながら後退している。
ランジュはトドメとばかりに右足で穂乃果の鳩尾を突き飛ばした。

ランジュ「ハイィィィィ!!!!!」

ドォォォォン!!!!

校舎の2階の教室に突っ込む穂乃果。
コンクリートがバラバラと1階に落ちてくる。


千歌「これがランジュちゃんの本気……!」

ザッザッザッ……

破片を踏む音と共に穂乃果が2階から顔を出した。
壁には大穴が開いており教室の中は爆弾でも投下されたかのように散乱していた。
穂乃果は真顔でこちらを見下ろしている。

穂乃果「今のは少し痛かったよ。嵐嵐拳だっけ?可愛い名前だね」

ランジュ「の割には全然いつも通りって感じだけど?」

穂乃果「んぼぉえぇ!!!」

ランジュ「!?」

穂乃果が急に頰を膨らますと「吐血」し始めた。
無表情からスッキリした顔に戻る穂乃果。
気分が良さそうに口を開く。

穂乃果「このくらいは効いてたよ」


192 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 17:59:33 ???Sd
ランジュ「良い調子ね。降参する?」

穂乃果「うーん、まだ戦えそうかな」

ランジュ「ならもう少し痛めつけてあげる!!!」

ランジュが駆け出そうとする前に穂乃果が2階の教室の床を踏み抜いた。
薄い板でも割るかのように。

バゴォォォォ!!!!!と穂乃果の体ごと床が一階に落ちる。
1階は壁が健在のため穂乃果の姿を見失うランジュ。
壁を破壊して穂乃果を追うか迷ったが………。

ランジュ「っっ!!」ゾクゥ

穂乃果のいる教室から急に嫌なオーラが噴出し始める。

ランジュ「2人とも!!今すぐ校門まで走って逃げて!!!!」

千歌「へ?」

むつ「!!?」

ランジュは観戦していた千歌とむつに大声で避難を促す。
直後、数キロ先まで聞こえるような轟音が響く。

ゴバァァァァァァァ!!!!!!

穂乃果が教室内から外壁を殴った音であった。
とてつもないパワーから放たれたパンチは外壁などクッキーのように破壊して1階のみならず2階、3階の壁すら木っ端微塵に破壊した。
破片は散弾のように周囲に降り注いで死の雨を降らせた。

ランジュが自らに降り注ぐ破片を防ぎ切った後に、ボロボロになった校舎の中から穂乃果がゆっくり歩いて来た。


193 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 17:59:55 ???Sd
穂乃果「ほむらにはそれぞれ特性があるの」

穂乃果「凛ちゃんは速さ、希ちゃんは寝技、私は……何か分かる?」

ランジュ「さぁ…パワーとかかしら」

穂乃果「正解!逆に言えばそれ以外はてんでダメなんだけどね。海未ちゃんにもよく叱られてるし」

ランジュ「………」

穂乃果「……ランジュちゃん、ほむらに入らない?」

ランジュ「ラ!?」

予想外の提案にランジュは素っ頓狂な声を出して驚く。
しかし穂乃果の目は真剣だった。

穂乃果「それほどの力があれば十分にやっていけると思うよ。ちょうど欠員が1人出たからね」

ランジュ「お断りよ。倫理も仁義もない集団なんかに売る魂は無いわ」

穂乃果「あはは、それもそうか。『強いやつに好き勝手喧嘩を売る』がほむらのポリシーだからね。そんな個人主義の連中が集まってたから離散とか色々あって4人になったんだ。……今は3人だけど」

ランジュ「どうでもいい。確かなのはあなたはここで倒れるということだけ」


194 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:00:12 ???Sd
穂乃果「そっかそっか」

カッカッカと階段を後ろに手を組みながら降りる穂乃果。
ランジュは階段を下り切った瞬間に跳び蹴りを仕掛ける。

ランジュ「ラァ!!!!」

穂乃果「甘いよ」

今度は穂乃果も食らわなかった。
なんとランジュの蹴りに対し頭突きでカウンターを合わせた。

ランジュ「きゃあっ!?」

ブゥオン!!とランジュの体が数メートル浮く。
穂乃果は空中のランジュに向けて近くにあった2mはあるコンクリートの破片を投げた。

ランジュ「嵐嵐拳!!!!」

足場が無い空中でコンクリートを粉砕するランジュ。
地面に降り立つと穂乃果から距離を取る。

穂乃果「私のパワーが怖い?」

ランジュ「雑な挑発しないで。戦術の一環よ」


195 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:00:31 ???Sd
むつ「ラ、ランジュ!!!」

穂乃果とランジュが向き合っているとむつがスマホを持って青ざめた顔で駆け寄って来た。

ランジュ「危ないから下がってって言ってるでしょ!!」

むつ「違うんだよ!ダイヤが……街で暴れているって!!」

ランジュ「はぁ!?」

穂乃果「あー、始まったか。真姫ちゃんのせいだね」

ランジュ「………暴れ回るって言葉通りだったのね」

穂乃果「行ってあげたら?私はスイーツでも食べてるから」

ランジュ「あなたは必ず私が倒すわ」

穂乃果「無理だと思うけどね〜。行ってらっしゃい!」


ランジュは最後に穂乃果を睨むとむつに案内されてダイヤが暴れているという場所に急いだ。


196 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:00:51 ???Sd
〜ららぽーと沼津〜

ランジュ「え……ここ!?」

千歌「鞠莉ちゃんから連絡があったんだよ!今すぐ来てって!」

むつ「急ごう!!」

モール内に入ると意外にも客は普通に買い物をしていた。
しかし3階のゲームセンターあたりで人だかりができており鞠莉の怒声が響いていた。
鞠莉「やめなさいダイヤ!!」


ランジュ「あそこね……!」

千歌「どいてどいてー!!」

千歌が野次馬をどかすとボウリング場の真ん前で鞠莉と曜がダイヤを押さえつけていた。



ダイヤ「離れなさい2人とも!そこのカップルは手を繋いでいました!破廉恥です!不純異性交友ですわぁ!!」



鞠莉「意味わかんないから!」

曜「ダイヤさん!抹茶パフェ奢るから落ち着いて〜!!」

ダイヤ「抹茶パフェ!?仕方ありませんわね……見逃してあげましょう」



ランジュ「………なんなのこれ」

むつ「さ、さぁ……」


197 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:01:23 ???Sd
フードコートの端でダイヤ、鞠莉、曜、ランジュ、千歌、むつの6人がそれぞれスイーツを頼んで座っていた。

千歌「で、ダイヤさん。何から話して良いんだろう……」

鞠莉「ちかっちの気持ちも分かるよ。まず無事で何より。自力で逃げて来たの?」

ダイヤ「モグモグ……」

鞠莉「私の話を無視してパフェにがっつくほどお腹すいてたの?」

千歌「………」

皆口に出さないが気づいていた。
ダイヤの様子がおかしい。
本来冷静沈着なダイヤが今は顔中にソフトクリームを付けて抹茶パフェを頬張っている。
先ほどもそうだ。
カップルが手を繋いでる程度で怒り出すなんて今まで無かった。
ランジュはダイヤとの付き合いが短いためこれが黒澤ダイヤなのだと思い笑顔を浮かべていた。

ダイヤ「きゃあ♩ダイヤは結構可愛いところあるのね!前にここで会った時とのギャップがすごいわ!」


198 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:01:40 ???Sd
曜「ランジュちゃん、ダイヤさんとららぽーとで会ってたの?」

ランジュ「曜が愛と戦っている時にね。ダイヤと観戦してたのよ」

曜「あ、あの時か〜」

曜は愛に負けた時の記憶が蘇り苦虫を噛み潰した顔になる。
けどすぐにいつもの曜に戻り元気になった。

曜「あれから私も師匠に出会えてレベルアップしたからね!!今やったら愛ちゃんより強いよ」

千歌「へぇ〜!師匠ができたんだ!!誰々?」

曜「それは秘密です」

千歌「ケチ!」

曜「(言ったら引くだろうからな〜)」

むつ「ふふん、師匠といえば私と千歌も師匠に教わってたんだよ」

鞠莉「意外ね。あなた達がファイターになってたなんて」

曜「果南ちゃんとか?」

千歌「何を隠そう、ここにいるランジュちゃんなのです!」

ランジュ「きゃあ♩その通りよ!」


199 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:01:56 ???Sd
曜「えーー!!」

鞠莉「一応敵であるランジュに教わっていたんだ……。よく教えてくれたわね」

ランジュ「私はもうみんなと友達だと思っている。友達にモノを教えるのは当然じゃ無い?」

千歌「ランジュちゃん……!!」

むつ「ニジガクにもこういう人がいるんだよ。エマ・ヴェルデとは大違いだ」

ランジュ「エマもニジガクにいた頃はみんなのお母さんみたいなポジションなのよ。けど戦いのことになると性格が変わるから……」

曜「エマには殴り逃げされてるんだけど。今何してるの?」

ランジュ「果南に負けてから東京に帰ったわよ。完敗したって言ってたわね」

鞠莉「まぁ…挑む相手が悪すぎるわね」

ランジュ「私もオーガに挑みに来たんだけど…まさか『ほむら』が同時期に侵攻してくるなんて思わなかったわ」

鞠莉「モテモテね、果南は」

千歌「もしかして嫉妬ファイヤーしてる?」

鞠莉「千歌ァ!!変なこと言わない!」グリグリ

千歌「ぐあああ〜!!!」

ランジュ「なんだかあったかいわね、沼津は」

モグモグ……グチュ……ズズズズ

ランジュ「ラ?」


200 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:02:13 ???Sd
「お、お客様!!ここで召しあがらないでください!」

ダイヤ「モグモグ……ガブガブ!!」

パフェのカウンターでダイヤが抹茶パフェを10個以上置いて順番に食していた。
側には曜の空っぽの財布が虚しく落ちていた。


曜「YOォォォォォォォォ!!!!!!私のお小遣いが!!!!!」

鞠莉「明らかにおかしいわね。小原家のドクターに診てもらいましょう」

ランジュ「私もニジガクの洗脳系に詳しい子に当たってみるわ」

鞠莉「ありがとう」


「スイッチ」カチッ


突然ダイヤの体から別の女の声が発せられた。
その声と同時にパフェを食べる手をピタリと止めて5人に向き直った。

鞠莉「(今の声は……真姫とかいう奴の声!!)」

ダイヤ「…………」クルッ

千歌「ダ、ダイヤさん……?」


201 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:02:31 ???Sd
先ほどと違い無表情で5人を見るダイヤ。
その姿を見てランジュと曜は警戒態勢に入る。
その瞬間だった。

ダイヤ「鐘嵐珠を発見。排除します」

ゴォッッッ!!!!!!!

風圧で机が吹き飛ぶほどの脚力でランジュに突進するダイヤ。
ランジュは防御しようとしたが間に合わずに商業フロアの方まで吹き飛ばされる。

鞠莉「ランジュ!!」

むつ「急にどうしたのさダイヤさん!」


ランジュはすぐさま体勢を整えて皆に叫んだ。

ランジュ「皆は一般人を避難させて!!!この階の可愛い犬猫達もよ!私がダイヤを止めるわ!!!」

曜「分かった!ランジュちゃんが負けたら私が戦うから気負わないでね!!」

ランジュ「杞憂ってやつよ曜」


ダイヤ「……」ザッザッザッ

ダイヤがランジュに向かって真っ直ぐ歩いてくる。

ランジュ「……こんな形で戦いたくなかったわ、ダイヤ」


202 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:02:49 ???Sd
もちろんダイヤは客の避難を待ってくれない。
ランジュに夢中で走り出す。

ランジュ「嵐刃脚!!!!」

ランジュは脚を振り上げてから一気に刀を振る様に振り下ろす蹴り技を放った。
壁すら切り裂くランジュの得意技だ。
ーーーーだが。

ランジュ「〜〜〜っ!?」

技を放ったはずのランジュは天井を向いていた。

ガンッ!と地面に激突するランジュ。
素早く起き上がると5m先に両手を上に突き上げているダイヤが見えた。

ランジュ「投げられたのね」

ランジュはダイヤが合気道の達人という話は聞いていた。
合気道には疎いランジュだったが、何となく「与えたダメージをそのまま返される」程度の知識はあった。
それ故に技が通じなかった事にも冷静でいられた。

ランジュ「面白い!!」

構えながら周りをチラリと見るランジュ。
鞠莉達のおかげで3階の客の避難がほぼ完了していた。

ランジュ「大技を試せるわね」スッ


203 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:03:07 ???Sd
ランジュは脱力する。
千歌達に最初に教えた技を放つため。

ランジュ「ラ嵐撃!!!!!」

風圧だけで体育館の壁に穴を開けるほどの蹴りだ。
ダイヤとは距離があるが、この位置からでも十分ダメージを与えられるという判断だ。


ゴォォォォッッッッ!!!!!!!


剛風がダイヤに襲いかかる。

ダイヤ「甘いですわ」

ポツリと呟くダイヤ。
ダンッッッ!!!と床を踏み抜く音と共にダイヤの体がその場から消えた。

ランジュ「!?」

一般人なら見失う速度だがランジュはダイヤが避けた事を見ていた。
吹き抜けエリアを超えて向いの通路まで一瞬で移動したのだ。

ランジュ「(速い………!)」


204 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 18:03:23 ???Sd
2階で避難誘導しながら曜はダイヤのスピードに驚愕していた。

曜「ダイヤさんがあんなに速く動けるなんて……」

鞠莉「やっぱり真姫とかいう研究者に色々改造されたらしいわね」

曜「(けど……今の私なら見切れる)」

ウズッと曜が武者震いするのを鞠莉は見逃さなかった。

鞠莉「ダメよ、今はランジュの戦い。下手に2人でかかるとデパートにも迷惑だから」

曜「今まで散々色んな施設壊して来てるじゃん」

鞠莉「ならあなたが払う?イーラ、沼津駅、コンビニ、中小企業、飲食店……数え出したらキリがないけど、損害額23億円を小原家で負担しているのよ」

曜「………ヤメトキマス」


205 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:14:13 ???Sd
ランジュ「はぁっ!!」

ランジュも吹き抜けを飛び越えてダイヤの周りを走り回る。
彼女の得意な目眩しだ。

ダイヤ「甘いと言っているでしょう」

ダイヤはランジュのスピードに合わせて間合いを詰めて来た。
走りながら裏拳をダイヤに叩き込むランジュ。
しかしランジュの拳を両手で触ると力を受け流し上空へ投げ飛ばした。

ランジュ「ちっ!!」

ランジュは重力に任せてダイヤに踵落としを放つ。
普通の人間の頭などトマトの様に潰せる威力だ。
しかしダイヤは顔色ひとつ変えずにランジュの脚を見ている。

ダイヤ「ブッブーですわ」

踵落としもダイヤには通じなかった。
ダイヤにダメージを与える寸前で「投げられる」

先ほどよりも凄まじいスピードでランジュの体がガラスに突っ込む。
バリィィン!!と粉々に割れたガラスがランジュの体に食い込んだ。

ランジュ「痛いわね………」


206 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:14:34 ???Sd
ランジュ「(やばい……ダイヤがここまでスピードがあるとは思わなかった。まだ一度もダメージを与えれていないのがまずい)」

ランジュ「ふぅ〜〜〜…………!!!」

ダイヤ「?」

ランジュはダイヤにゆっくり……ゆっくりと近づいていった。
怯える子猫を威嚇させない様な挙動だ。
ダイヤは何もせずにランジュを見ている。
ランジュとダイヤに距離が握手できるまでの距離に近づく。
突っ込んでもやられる。
なら逆転の発想ならどうか?

限界まで近づいてからランジュが動こうとしたところで……。

パシッ

ランジュ「ラ?」

ランジュの手首をダイヤが掴んだ。
そしてもう片方の手でランジュの関節を抑えて見事に床に倒した。

ランジュ「ラァッ!?」

ダイヤ「ゆっくりであれば投げられないと思いましたか?」

仰向けになったランジュの顔面を思い切り踏もうとするダイヤ。
メキッ!!!と地面に亀裂が入るほどの威力の踏みつけだが、ランジュは腕でガードした。
しかし片腕はダイヤに掴まれたままだ。
合気道の達人である彼女に腕を掴まれるのはまずかった。
ダイヤは必要最低限の力でランジュの腕を捻る。


207 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:14:55 ???Sd
ランジュ「いっづ……!!」

ランジュは咄嗟にダイヤの腕を掴んで離そうとするが遅かった。
メキィ!!!とランジュの腕があらぬ方向に曲がる。

ランジュ「がぁっっ!!!!!」

ダイヤ「………」

痛みで叫ぶランジュを見ても顔色ひとつ変えないダイヤ。
それどころかまだランジュの腕を離そうとしていない。
ランジュは咄嗟に吹き抜けに身を投げた。
3階からの落下にさしものダイヤも腕を離して引き下がった。
しかしランジュは重力に身を任せて1階まで転落した。

ランジュ「っっっ!!!!!」

背中から落下するランジュ。

千歌「うわぁ!ランジュちゃん大丈夫!?」

ランジュ「ち、千歌………」

落ちた先にちょうど千歌がいた。
千歌はいきなり降ってきたランジュに驚きを隠せず近づいてきた。

ランジュ「さっさと避難しなさい…」

千歌「ランジュちゃん……腕が!」

ランジュは自分の左腕を見る。
あらぬ方向に回転し、見るだけでも痛々しい姿になっていた。


208 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:16:24 ???Sd
ランジュ「さすがダイヤね。信じられる?まだ一撃も入れられていないのよ」

千歌「ダイヤさんにまっすぐ突っ込んでもダメ。ルビィちゃんや曜ちゃんですら投げ返されるから」

ランジュ「弱点とかあるの?」

千歌「うーん、ダイヤさんがダメージを受けてるところ見たことないんだよね……」

ランジュ「……怪物だってことは分かったわ」

『その通りよ』

ダイヤ「………」

千歌「わっ!ダイヤさん!!」

ダイヤの体から再び真姫の声が発せられた。

真姫『私のダイヤはスピードが課題だった。だから西木野研究所で走力を約2倍にまで向上させたわ。あと事前に鐘嵐珠の戦闘データを何度も学習させてあげたの』

ランジュ「そういうこと……。どおりで予知みたいに動きが読まれる訳ラ」

ダイヤ「そういうことです。私の拳で眠りなさい、ランジュさん」

ダンッッッ!!!!!

ダイヤが一瞬でランジュの背後に回り込んだ。
反応の遅れるランジュ。
ダイヤの拳がランジュに届かんとする瞬間、千歌が2人の間に入り込んだ。

ランジュ「千歌!!」

千歌「寸勁 」

千歌は脱力から中国拳法の「寸勁 」でダイヤの鳩尾にパンチを叩き込んだ。

ダイヤ「がはっっっ!!!!!」

ランジュ「!?」

ダイヤは胃液を吐きながら後退する。
その隙に千歌はランジュを抱えて2階に逃げた。

ランジュ「きゃあっ!!何やってんの千歌!?」

千歌「ちょっと頭整理した方がいいよ〜!!」


209 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:16:45 ???Sd
千歌「はぁはぁ……」

ランジュ「千歌!何のつもりよ」

千歌はランジュを連れて2階のGUの中に逃げ込んだ。
従業員や客の避難は済んでおり中にはランジュと千歌の2名だけであった。

千歌「言ったでしょう。現状ダイヤさんに真正面から挑んでも勝てない。だから策を練ろう」

ランジュ「そういえば……千歌の攻撃は効いたわね。なんでかしら」

千歌「不意打ちだったからね。ダイヤさんも反応できなかったんでしょ」

千歌はカバンから湿布と包帯を取り出してランジュの手当を始める。
ランジュも少し落ち着いたのか頭を抱えて珍しく項垂れた。


210 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:16:59 ???Sd
ランジュ「あー…なんかショック。私タイマンなら負けよね」

千歌「ダイヤさんも今は普通の状態ではないし正式な勝負じゃないよ」

ランジュ「それは言い訳よ。そもそも私は速さが原因で負けてるんじゃない。真正面から挑んで敗北しているの」

千歌「なら今からリベンジだね。2ラウンド目は勝って、ダイヤさんが元に戻ったら3ラウンド目を挑んで決着を付けたら?」

ランジュはそれを聞くと目を丸くした後、優しく微笑んだ。

ランジュ「良いこと言うわね千歌は。優秀な弟子を持って私は幸せね」

千歌「でしょ!?だから師匠の良いところ見せてよ」

ランジュ「無問題ラ!……と言いたいところだけど何も案がないのよね」


211 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:17:12 ???Sd
千歌「じゃあ私が戦うよ」

ランジュ「ラ!?それはダメ!殺されに行くようなものよ!」

千歌「勿論私がダイヤさんを単独で撃破できるとは思ってない。けどランジュちゃんが勝つための道筋を見つけられるかも!」

ランジュ「千歌……」

ダイヤ「何をごちゃごちゃ言っているのです」

ランジュ「ッッッ!!!!」

千歌「ひゃあ!!ダイヤさん!」

気づけばGUの入り口にダイヤが立っていた。
千歌は先手を取られたと思いつつも構える。


212 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:17:37 ???Sd
千歌「えいっ!!!」

千歌は商品の服を手に取るとダイヤに投げつけた。
ダイヤの視界を封じた瞬間に彼女の背後に回る千歌。

千歌「もらいっ!!」

しかしダイヤは千歌の方に向くこともなく片手で彼女の腕を掴んだ。
すぐさま振り払おうとするがダイヤが珍しく握力だけで抑え込んできた。

ダイヤ「あなたでは私の相手にはなりませんわ」

ゆっくりと振り向くダイヤ。
千歌の腕も捻り、折ろうと体を構える。

ランジュ「千歌!!!」

このままではランジュと同じく腕を折られてしまう。
そこで千歌はダイヤの捻る動きに合わせて身を回転させた。

ダイヤ「!!」

千歌「せいっ!!」

千歌はそのまま体を前に突き出してダイヤの手を離した。
すぐにダイヤとの距離を取る千歌。

ランジュ「おぉ!!」

千歌「合気道は耐えたらダメ。力と力の衝突もダメって教えてくれたのはダイヤさんだよね」


213 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:18:04 ???Sd
ダイヤ「……」

千歌「さぁ、続けようか!!」

千歌は手当たり次第周りの服を掴んでダイヤに投げつける。
だが武の達人に2度目は通じなかった。
改造されたダイヤの走力でその全てを躱され、千歌の腕が再び掴まれる。

千歌「くっ……!!」

ダイヤはそのまま腕を捻り折ろうとする。
千歌は先ほどと同様にダイヤの力の向きに合わせて転がろうとしたが遅かった。

ギリギリギリギリ……

千歌「いっづ…!うわぁ……!!」

千歌の腕が曲がろうとした瞬間、ランジュが跳び膝蹴りでダイヤを店外に蹴り飛ばした。
ガラスをぶち抜き通路に投げ出されるダイヤ。

ガシャァァァン!!!!

千歌「ランジュちゃん!」

ランジュ「助かったわ千歌、無問題ラ!いい案を思いついたから代わるわ!!」


214 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:18:35 ???Sd
ダイヤ「……」

ダイヤは不機嫌そうに起き上がる。
ランジュの跳び膝蹴りはかなりの威力で、ダイヤの頬に大きな痣ができていた。
ガラスの破片も体のいたるところに刺さっており決して軽傷ではない。

ランジュは隙を与えない。
ダンッッッ!!!と地面を蹴り、脚を上から下へ振り下ろす「嵐刃脚」を繰り出した。
しかし真正面から突っ込んでも前の二の舞だ。
ランジュの体が弾丸の様な速度でららぽーとの端まで投げられる。

千歌「ランジュちゃん!!」

ランジュ「まだまだぁ!!!!」

ランジュは投げられるも再びダイヤに走り出した。
ダイヤとの距離は10m程。
ランジュはその距離からジャンプして天井を軸にし、踵落としを放つ。
結果は同じ。
しかし床には亀裂が入っていた。

ランジュは4回転し地面に投げ飛ばされる。


ランジュ「アイヤー……流石ね!!」

ダイヤ「芸がありませんわね」


心底見下した表情でランジュを見る。

ランジュ「ま、そうかしらね。けど地道な努力が身を結ぶこともあるのよ!!」


215 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:19:19 ???Sd
またまたダイヤに突っ込むランジュ。
ダイヤは構えていたがランジュの狙いは今回は彼女ではなかった。
ダイヤの体を支えている周りの「床」だ。
床に目掛けて連続でパンチを放つ「嵐嵐拳」を食らわせた。

ダイヤ「!?」

ドォォォォン!!!!とランジュやダイヤが立っている3階通路が崩壊し、2人の体が重力に負け、2階に落下する。

ダイヤ「なっ!!」

ランジュ「確実に破るために床にダメージが入る様な蹴りを放っていたのよ!」

ダイヤの一瞬の狼狽を見逃さずランジュは全身を脱力させる。
そして己の必殺、「ラ嵐撃」を放った。

ランジュ「ラァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

ダイヤ「ちっ!!」

珍しく舌打ちするダイヤ。
風圧だけで体育館の壁を破壊する蹴りは、ダイヤの鳩尾に放たれた。

ダイヤ「ぐぼぉあ!!!!!」

ダイヤの体が台風の様な剛風と共に向かいの店に突っ込んで行った。
周囲に破壊されたコンクリートや店の商品が飛び交っている。


216 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:19:49 ???Sd
ランジュは空中で蹴りを放った後、落下中のコンクリートを蹴って2階に着地した。
ダイヤはアパレルショップに突っ込んだまま出てこない。

ランジュ「っ!?」ガクッ

ランジュは急に体から力が抜けて地面に手をついた。

ランジュ「大技ばかり撃った上にダイヤに投げられまくったからね……。結構体も限界かも」

prrrrr

ランジュ「!!」

ランジュのスマホの着信音が3階のGUから聞こえてきた。
どうやら動いた際に落としてしまったらしい。

千歌「ランジュちゃん!着信きてるよ!」

ランジュ「ありがとう千歌!そのまま……」

2階に落として!と言おうとした所でガァァァァァァァン!!!!!!とダイヤが突っ込んだ店の机がランジュの元へ飛んできた。
間一髪避けるランジュ。


ダイヤ「ふぅ〜……ふぅ〜…………」

ランジュ「ダイヤ……」


顔面血まみれのダイヤが見たこと無いような怨嗟の目つきでランジュを見ていた。

ランジュ「……千歌、私の代わりに電話出てくれる?」

千歌「ほえ!?わ、分かったよ!」


217 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:20:24 ???Sd
ダイヤ「やってくれましたわね」

ランジュ「怖い顔ね。美人が台無しよダイヤ」

ダイヤは地面を蹴りランジュへ距離を詰める。
ランジュも構えて迎え打つ。
.
.
.

千歌「はい、高海千歌です!!」

『…あなたは誰?』

電話の主人は声に抑揚のない可愛らしい声であった。
千歌は事情を説明する。

千歌「てなことで今ランジュちゃんは手が離せないの!代わりに私が話を聞きます!」

『分かった。その前に私は天王寺璃奈。虹ヶ咲学園っていう学校でメカいじりとスクールアイドルをしてるよ』

千歌「よろしく璃奈ちゃん!」

璃奈『うん、ダイヤさんの洗脳についてランジュちゃんから話は聞いている。結論から言うと洗脳を解除するのは今は無理』

千歌「無理なの!?」


218 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:20:47 ???Sd
璃奈『落ち着いて、今は無理なだけ。ダイヤさんの今の状況と真姫が改造したという話から洗脳はそっとやちょっとじゃ解けないよ』

千歌「ならどうすれば……」

璃奈『けど洗脳を停止させる事はできる。ダイヤさんは今どんな服を着てる?』

千歌「浦の星の学生服だよ」

璃奈『分かった。じゃあその服全部脱がして』

千歌「脱がすの!?」

璃奈『こんな短期間で今のダイヤさんほどの洗脳は真姫でも無理。きっと体に直接洗脳するための装置を取り付けている』

千歌「……なるほどね」

璃奈『それを取り外せばおそらくダイヤさんは機能停止する。それができたらダイヤさんの体を虹ヶ咲に送って欲しい。こっちで洗脳を完全に解く』

千歌「分かった!ランジュちゃんに伝えてくる」

千歌は電話を切ると2階にいるはずのランジュを探す。
そういえば電話中に聞こえてきていた戦闘音が今は聞こえない。

千歌「ランジュちゃーん!!!!」


ドチャッッ


千歌「!?」

千歌の横で生肉を置いたかのような音が響く。


ランジュ「」ポタ……ポタ………


千歌「ラ…ランジちゃああああああん!!!!!!!」


219 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:21:59 ???Sd
瀕死のランジュ。
意識は失っており先ほど応急処置をした左腕も再び捻られて痛々しい姿となっている。
右足も変な方向へと曲げられていた。

ザッザッザッ……

ダイヤがランジュの元へゆっくりと歩いてきた。
彼女も無傷では無い。
あれから何発かランジュの攻撃を受けたのか頰に痣ができていた。
しかし千歌の目を引いたのはそこではない。
ダイヤの破けた服の中から見えている黒い機械であった。

千歌「あれが洗脳装置……!!」

ダイヤはランジュの息の根を止める気だ。
千歌は空洞を飛び越えてランジュのそばに着地する。

千歌「ソレ、引きちぎらせてもらうね。ダイヤさん!!」

近くの2、3cmほどの大きさのコンクリートをダイヤに投げつけて撹乱を誘う千歌。
ダイヤは回し受けで全てを弾いたあと千歌に距離を詰めた。
咄嗟に回し蹴りを放つ千歌だがあっさりダイヤに防がれる。

千歌「えい!!!」

千歌は足を掴まれた瞬間手に握り込んでいたコンクリートの細かな破片をダイヤに投げた。
思いがけない反撃にダイヤは少し怯んだ。

ダイヤ「小癪な!!」

千歌「ダーティバトルに徹するよ!まともにやり合っても勝てないからね!」

千歌は足を前に突き出してダイヤの体を突き放す。
そして自らもタックルしてダイヤの体の上にマウントを取った。

ダイヤ「くっ………!!」

千歌「(力が弱まってる!ダイヤさんもランジュちゃんと戦った影響で体が限界なんだ!!)」

千歌はダイヤの胸元に付いていた洗脳装置に手を伸ばす。
ダイヤは引き剥がさせるものかと千歌の腕を掴んで阻止する。
千歌はもうチャンスはないと思ったのか腕を折られる覚悟でもう片方の腕で装置を奪りにいく。


千歌「おおおおおおおおお!!!!!!!!」

ダイヤ「離れなさい!!!!」


220 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:23:33 ???Sd
千歌「うわわ!!」

ダイヤはマウントを取られながらも千歌の右腕を引き込み、右足で彼女の足をまたぎブリッジをする。
教科書通りのマウント対処法だ。
しかし千歌は寝技には疎いためあっさり投げ飛ばされた。

千歌「(やばい!これは成功させたかったのに!!)」

ダイヤは素早く起き上がり千歌に駆け出そうとする。
構える千歌。
そこへ思わぬ加勢が入る。

鞠莉「ダイヤァァァァァァァァァァァ!!!!!こっちを見なさい!!」

ダイヤ「………!」

1階から鞠莉が聞いた事ないような大声でダイヤを呼んだ。
ダイヤは鞠莉を一瞥するも、彼女の横にあったモノに意識を持って行かれた。

ルビィ「…………」

ダイヤ「………あれは」

鞠莉の横には包帯だらけのルビィが白いベッドに寝ていた。
どうやら鞠莉が病院から引っ張ってきたらしい。


愛「病人引き摺り出して何してんだアンタ!!!」

鞠莉「ひぃ!!曜、取り押さえなさい!!」

曜「YO!!!」


後から同じく怪我人の愛が鞠莉に文句を言いにきたがダイヤの意識は相変わらずルビィに向いていた。





ダイヤ「(あれは……誰です、なにか懐かしいような……)」

真姫『ちっ、なにしてんのダイヤ!戻ってきなさい!!!』

まだ洗脳甘いダイヤの深層意識にほんの一瞬だけ「揺らぎ」を与えることができた。
その隙を千歌が逃すはずがない。

千歌「ナイス鞠莉ちゃーーん!!!!!」

千歌はダイヤにダイブして胸に取り付けられていた装置を強引に引きちぎった。

ブチィ!!!!


ダイヤ「がはっっ!!!!」


ダイヤは目を見開いて硬直したのちに地面に倒れた。

千歌「はぁ…はぁ……やったよランジュちゃん」


221 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:24:10 ???Sd
ららぽーと内は戦争でも起きたかのような惨状であった。
施設内は床や壁が崩壊している箇所もあり、店によっては長期間休業が必要なほどだ。
小原家の医療チームが重症のランジュを運んでいた。
仲間が運ばれる様子を尻目に愛がポツリと呟く。

愛「ランジュがここまでやられるなんてね」

曜「相手がダイヤさんだから仕方ないよ。ま、そのダイヤさんより今の私の方が強いんだけどね」

愛「私にここで負けたこと覚えてないのかな?」

曜「今の私ならあの時の愛ちゃんを同時に2人は相手にできるよ」

愛「へぇ………」

鞠莉「そこのバカ2人。暴れるならららぽーとの損害賠償を本気であなた達に負わせるわよ」

曜・愛「「ひっ……」」

鞠莉「それで、ダイヤの様子はどう?」

医師「高度な洗脳を受けた影響でしばらくは目覚めないでしょう。目覚めても以前の状態に戻るかは正直判断できません」

鞠莉「ふー……なら仕方ないわね」

愛「りなりーの所へダイヤを送るんだね!」

曜「魔改造されないか不安だなぁ」

愛「りなりーはそんなことしないよ!!」


222 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:24:43 ???Sd
鞠莉「天王寺璃奈は昔小原家のハッキング部門でスカウトした過去があるからその辺は信用できるわ」

むつ「小原家って何してる会社なの」

ともあれダイヤは医療チームが回収し東京へ向かっていった。
ルビィも元の病院へ送られたようだ。
ららぽーとには鞠莉、千歌、むつ、曜、愛の5人が残された。
鞠莉が珍しく頭を抱えて項垂れた。


鞠莉「はーーー………。本当に色々勘弁して欲しいわ」


曜「お疲れ様だね。ここ1ヶ月ほどずっとこんな感じだし」

千歌「じゃあここにいる5人でお疲れ様パーティでもしよっか」

曜「賛成であります!!」

鞠莉「お断りであります。……私はららぽーとの責任者とこれから話さなきゃだから4人で楽しんで来なさい」

低い声で話す鞠莉はヨタヨタとららぽーとの中へ消えていった。
残された4人は罰の悪そうな顔で鞠莉を見送った。

曜「私たちの尻拭いを全部鞠莉ちゃんがしてるんだもんね。そりゃあ疲れるよ」

愛「愛さんが言うのもなんだけど気の毒だな」

千歌「愛ちゃんってもう動けるの?」

愛「うん、今日退院予定だったんだよ。退院手続きをしている時に鞠莉がルビィを拉致して行ったから驚いたよ本当」

むつ「ほむらは後2人なんでしょう?ちゃっちゃと倒して沼津を平和にしようよ」

千歌「けど、どこにいるかも分かってないからな〜」

曜「鞠莉ちゃんの話では星空凛を小原家の特別収容所に監禁してるんだって!凛ちゃんならどこにいるか知ってるんじゃないかな」

千歌「それ良い!さすが曜ちゃん!」

曜「えへへ」

愛「さらっと特別収容所とかいう悍ましいワードが出てきたけど沼津ではだれも突っ込まないんだね」

という事で、4人は星空凛に会いに行くことにした。


223 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:25:33 ???Sd
〜沼津西木野研究所〜

真姫「クソっ!!!」

真姫はイラつきながら機材を蹴飛ばしていた。
最高傑作のダイヤが負けたことに腸が煮えくり返っていたのだ。

真姫「やっぱりまだ戦闘に出すのは早すぎたかしら。イミワカンナイ、まさかランジュがあそこまで戦えるなんて………」

ブツブツ言いながら研究所内を歩き回る真姫。


レズォッッッ!!!!


真姫「っ!?」

突如、研究所の入り口からとてつもないオーラを感じる真姫。
視線を向けると1人の女が立っていた。

梨子「良い匂いがするわね。あなたの匂い?」

真姫「………誰よあなた」

梨子「桜内・百合楽園・梨子よ」

真姫「………」

梨子「桜内梨子よ」

真姫「何しにきたの」


224 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:26:02 ???Sd
梨子「あなたの目的は何?」

真姫「は?」

梨子「目的よ。ダイヤさんを改造して最強にして……何を得たかったの?」

真姫「最強の称号」

梨子「………」

真姫「私たちスクールアイドルは生まれついて誰もが最強になりたがっている。けど私の肉体じゃどう足掻いても最強になれないの!!」

梨子「だから他人を改造して最強に仕立て上げる、か……」

真姫「ほむらは私の超えるべき目標だった!!けどダイヤがまさか負けるなんて……」

梨子「ほむらを超える……それは何をもって超えると言えるのかしら?」

真姫「園田海未」

梨子「………」

真姫「海未は私の計算では現状の松浦果南と同等かそれ以上よ。彼女を打ちのめせば私の目的を達成できるの!!」

梨子「へぇ、ほむらはあなたの仲間だと思ってたけど」

真姫「仲間にもいろんな形があるわ。譲れないものがあるというだけ」


225 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:26:23 ???Sd
梨子「なら、私はどう?」

真姫「……何が?」

梨子「私を改造してみない?」

真姫「……へぇ、驚いた。ダイヤを痛ぶって改造した私を倒しに来たとばかり思ってたけど?」

梨子「ここは修羅の街よ?ダイヤさんは大切な仲間だけどいつまでもねちっこく復讐心を抱いてるような軟弱なファイターは沼津にはいないの。私も私で中々克服できない箇所があってね……あなたなら改造で直せるんじゃないかなって」

真姫「……目的は何?」

梨子「今のままじゃ思い通りにできない女の子がいるの。とても可愛い子よ。けど強くて強くて……」

真姫「誰のこと?」

梨子「ほむらリーダーの穂乃果ちゃん」

真姫「!!」

梨子「私の欲望を全て満たすことのできる可能性を秘めた子。どう?私たちの目的は似ていると思うけど」

真姫「……面白いわね。いいじゃない!その提案に乗ってあげるわ!」

汚泥のような欲望が動き出す……。


226 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:27:04 ???Sd
梨子達の計画の脇で千歌達も動き始めた。
特別収容所に隔離されている星空凛に会いに行くためだ。
収容所は淡島を西に100m進んだところにある人工島にあった。
この人工島は小原家が個別に設立した地図にも載っていない秘匿された場所であった。
船着場を降り周りを見渡す千歌達。
島は全長50mほどでそこまで大きくはない。
島の中心にコンビニほどの大きさの黒い無機質な建物があり、4人はそこへ移動した。

千歌「なんか無機質な場所だね」

愛「拘束施設だからね。余計なものはないんじゃない?」

室内には地下に続く階段のみがあった。
一段降りるごとに不安に駆られる4人。
階段を下り切った先の部屋は真っ直ぐに細く、研究施設のように塗り床になっていた。

左右に恐竜でも隔離してるのかと紛う大きさの分厚いドアが均等に設置されており、それぞれ数字が割り振られていた。

曜「小原家おかしいよ!なんでこんな施設があるのさ!!」

むつ「普通の牢屋じゃスクールアイドルなら力づくで脱獄できちゃうからね。とはいえこれはやり過ぎな気がするね〜」


227 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:27:22 ???Sd
愛「それで星空凛はどこに隔離されてるんだろ」

千歌「うーん…鞠莉ちゃんにこの施設来ること言ってないから分かんないや」

愛「行き当たりばったりすぎる」

曜「大丈夫だよ!ほら見て、牢屋の前にローマ字で収監されている人の名前が書いてるよ」

曜が言った通り牢屋にはそれぞれ収監者の名が書いており、誰も入っていない場合は何も記載されていなかった。

愛は曜が指さした名前を見る。

愛「maria……?」

曜「聖母様の名前だっけ?善子ちゃんがたまに喋ってるよね」

愛「善子ってキリスト教徒なんだ」

むつ「あれはただの厨二病さ……」


228 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:27:36 ???Sd
四人は最奥の「10」と書かれた扉の前に立った。
扉の横に「RIN」と書いてある。

愛「ここか」

千歌「な、なんか緊張してきた!」

曜「大丈夫!何かあっても私が千歌ちゃんを守るから!」

愛「戦闘は任せといて!ま、そうならない事を祈るけどね」

むつ「で、どうやって中の人物とコンタクトを取るのさ」

愛「うーん……扉にマイクがあるからそれで喋れるとは思うんだけどね。おーい、凛!会いにきてあげたよ!!」

シーン……

千歌「……」

むつ「ま、そうだよね」

愛「そうだ!りなりーに頼もう」

曜「ナイスアイデアであります!」

愛はスマホを取り出して璃奈と連絡を取ろうとするが……。

愛「け、圏外!!」

千歌「あちゃー。牢屋だもんね、当然か……」

曜「おのれ小原家……!!」


229 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:28:14 ???Sd
鞠莉「何がおのれよ。それはこっちのセリフだというのに」

千歌「うひゃあ!!鞠莉ちゃん!?」

いつの間にか鞠莉が四人の背後で腕を組み呆れた顔をしていた。

むつ「話し合いは終わったの?」

鞠莉「私のスマホに隔離施設に不法侵入者が入り込んだとアラートがなったから来たのよ…何してるの?」

愛「星空凛に残りのメンバーの情報を聞こうと思ったんだ」

鞠莉「なら私に相談してからにしなさい。不法侵入の罰で愛以外は反省文を書くこと」

千歌「えーーー!?」

曜「YO………」

愛「そ、それで鞠莉なら凛とコンタクト取れるんじゃないの?」

鞠莉「いいえ」

愛「え」

鞠莉「凛は今睡眠薬で眠らせ続けているの。勝手に動けないように」

愛「っ!!」ゾクッ

曜「それはさすがに酷いんじゃ……」

鞠莉「甘いこと言うのね。彼女らのやっている事は無差別テロみたいなものよ。処遇が決まるまではここで眠ってて貰うわ」


230 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:28:30 ???Sd
千歌「う……なら無駄足だったかな」

鞠莉「けど独断とはいえ沼津のためにここまで動いたあなた達に免じて今の星空凛の状態だけモニターで見せてあげる」

鞠莉はタブレットを取り出して画面をカタカタといじり始めた。

鞠莉「あれ……モニターが映らない。なんでかしら」

その時、収容所内のアラートが赤いランプとともにけたたましい音を発し始めた。

BUーーーーBUーーーーーーーーー!!!!!!

千歌「うるさっ!?鞠莉ちゃん、何これ!!」

曜「何か警報音なってるよ!?」

鞠莉「な、何よこれ……私知らない…………!!」

4人が鞠莉を見ると彼女も何が起きたか分からずモニターを持って取り乱していた。
さらに5人に災厄が降りかかる。

ガシャン!!!ガシャン!!!!!

10の厳重に閉ざされていた扉が煙を発しながら全て解錠し始めたのだ。
つまり………。

むつ「何が起きてんの!?」

千歌「ちょっとちょっと!!扉開き始めたんだけど!?」

愛「曜」

曜「分かってる、3人とも私たちから離れないで」

扉が開くという事は中に収容されていた犯罪者達が自由になれると言う事だ。
法で裁けぬ、スクールアイドル達が。


231 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:28:49 ???Sd
「あはははは!!!どうなってるのこれ?私もう刑期終わってたっけー?」

「久々のシャバの空気だな。さぁまた斬って斬って斬りまくるか」


扉から2人の少女がゆっくりと通路に出てきた。
愛が目を見開いて内1人を見る。

愛「篠宮あきる!?」

あきる「愛ちゃん、久しぶりー。なに、あなたが私を脱獄させてくれたんだ?」

曜「知ってるの?」

愛「青藍高校の篠宮あきる。元日本フィギュアスケート代表でスクールアイドルもやってたけど、歌舞伎町でヤクザ事務所を襲って皆殺しにする遊びをしていたことがバレて代表をクビにされたの。その後強いスクールアイドルを襲い続けてるところにオーガと出会い、逮捕された過去があるよ」

千歌「やばすぎるよ!」

鞠莉「隣の武士みたいな子は門田剣。藤黄学園の生徒で日本刀で辻斬りをしていたところをダイヤに取り押さえられて逮捕された経歴があるわ」

むつ「で……最奥のやつがさっき見たマリアか」

あきると剣の奥、地上への階段の前で赤いドレスを着た優雅な少女が佇んでいた。

マリア「マリアよ。ここから出してくれてありがとう」

愛「(コイツ……)」

曜「相当に強いね、彼女」


232 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:29:04 ???Sd
千歌「し、しかも……」

千歌が後ろを振り向く。
10番の部屋の中央にほむらメンバー星空凛が全身を拘束されて注射器から睡眠薬を注入されて寝ていた。
まだ起きていない……が。

鞠莉「この施設のすべての電力がオフになってる。凛に睡眠薬を投入している装置ももう停止したわ」

愛「ほっとけばその内起きるってわけだ」

むつ「け、けどさ、脱獄はやばいけど今は私たちと争わなくていいんじゃないかな」

小さな声で4人に相談するむつ。
しかしあきるには聞こえていたようで意地悪い笑みでむつの言葉を否定した。

あきる「それはダメ♩そこにいる鞠莉ちゃんは私の投獄を指揮した張本人だからね。かなり酷い目にあってもらうよ〜」

剣「その通り。刀はないがその辺の尖っているもので穴だらけになってもらおうか」

曜「させると思う?」

愛「倒れるのはあなた達だよ」


233 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:29:24 ???Sd
マリア「私は興味ないわ。ここは沼津だっけ?ちょっと観光でもして来ようかしら」

鞠莉「ま、待ちなさい!!」

鞠莉は複雑な立場だ。
収容所の責任者でもある彼女は収容者をみすみす逃す事はあってはならない。
しかしこの状況では相手が減る事は好ましい。

千歌「全部で3人投獄されていたんだ。相手は2人……やれるよ」

曜「千歌ちゃんも戦う気!?」

むつ「私たちもランジュに認められたファイターだよ。守られるだけの存在じゃない」

愛「曜、マリアを追って」

曜「!!」

愛「逃すとまずいんでしょ?ついでに千歌と鞠莉も連れて行ける?むつはここに残って愛さんをサポートしてほしい。正直病み上がりの愛さんにあきると剣は面倒だよ」

むつ「任せな!!」


あきる「ごちゃごちゃさぁ!!!何言ってんのかなぁ!?」

あきるがサディスティックに笑いながらこちらにダッシュして来た。
狙いはあくまで鞠莉のようだ。
愛があきるの前に移動して体を張って止める。
しかしあきるは軟体生物のように「するり」と愛の体から抜けて鞠莉の方へ再び走る。

愛「なっ!?(何今の感触!?)」

あきる「あははぁ!!!!!」

曜「YO!!!!!」

曜は千歌と鞠莉を担ぐと壁にジャンプ。
そのまま壁を蹴りあっという間に階段前に着地した。

曜「頼んだよ2人とも!!」


234 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:29:42 ???Sd
剣「逃がさん」

剣が追おうとするも階段の前にむつが立ち塞がった。

むつ「何処へ行くんだいお嬢ちゃん」

剣「ちっ……!」



千歌「鞠莉ちゃん!マリアちゃんは一旦放っておかない!?」

鞠莉「ダメよ!アイツが1番さっきの三人の中で危険なんだから!」

曜「へぇ〜。強いのは見て分かったけど何やらかしたの?」

鞠莉「マリアは過去にほむらメンバーを殺害している」

千歌「ほむらを!?」

鞠莉「脱退した昔のメンバーらしいけどね。加えて母国スペインからも国外追放を受けた女なのよ」

曜「ほむらメンバーを殺害か…やるね彼女」

鞠莉「アイツは逃すわけにはいかない。沼津に放っておいたら何しでかすか…だから勝てないまでも足止めしたいのよ。果南が来るまで!」

曜「鞠莉ちゃ〜ん。果南ちゃんは必要ないよ。私がマリアちゃんを単独で倒すから」

千歌「私も戦うよ!」

階段を駆け上がる三人。
地上に出ると一人の少女がこちらに歩いてきていた。
マリアではない。
しかし鞠莉はその少女を見て今日1番取り乱した。


海未「おや、あなた達でしたか」


鞠莉「う、そ……何であなたが……」

声を震わせて問う鞠莉。
直接海未と会うのは初めてだが善子の証言や果南の興味から彼女がほむらの中で最強であると推察していた。


235 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:30:10 ???Sd
ようやく爆破地点まで戻って来れました。
ここからNEW


236 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:30:47 ???Sd
海未「凛を回収しに来ました」

鞠莉「っっ!」

ここで凛を回収されればほむらの壊滅は一気に困難になる。
それに加えて収容者も脱獄しているのだ。
沼津はこれからますます混沌となる。

曜「この騒ぎもほむらの仕業?」

海未「えぇ。音乃木坂のハッキング部隊に頼みました」

曜「だったらタダでは帰れないねぇ」

千歌「曜ちゃん!」

曜が海未の前に立ちはだかった。
相手は万全の善子を文字通り瞬殺した女だ。
果南に匹敵するほどの腕前。
普通であれば勝てない…以前までの曜なら。

曜「いや〜良かったよ。まさかこんなに早くアナタと会えるなんて」

海未「ほう?」

曜「今の沼津であなたに勝てる可能性があるのは果南ちゃんか……私だけだからね」

千歌「へ?」

どういう事?と千歌が聞こうとする前に曜は動いた。

ダンッッッ!!!!!!!!

鞠莉「きゃあ!!」

以前と比べものにならない脚力で地面を蹴る曜。
地面を破裂させて体を前に押し出す。


237 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:31:29 ???Sd
まさに一瞬といえる速度で海未まで到達する曜。
そのまま拳を振りかぶる。

海未「(速いですね)」

海未は心の中で称賛する。
だが曜の拳が海未に当たることは無かった。
ギリギリで半身でかわす海未。
そのまま回し蹴りでカウンターを曜に浴びせる。

曜「ふっ!!」

曜は海未の行動を読んでいた。
咄嗟に両腕でガードし彼女の蹴りを防ぐことに成功した。
とはいえ海未のパワーは曜が今までに感じたことないほどの威力で三回転ほどしながら後方に飛ばされる。

曜「よっと!」

地面に手を付きバク転して着地する曜。

曜「あはは!流石だねぇ!!」

海未「……」


238 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:31:44 ???Sd
鞠莉「あ、ありえない…園田海未の攻撃を防ぐなんて」

千歌「失礼だけど千歌も驚いてるよ」

曜「聞こえているよ二人とも!」


海未「ふぅ」

曜「っっ!!!!!!」


海未が軽く息を吐いた。
曜は瞬間的に体の全身を非常事態モードに切り替えて、身を屈めて首を守った。


海未「!?」


その行動に一瞬驚いた顔をする海未。
しかし海未は止まらない。

ゴォッッッ!!!!!と曜の体がダンプに跳ねられたように回転して15mも吹き飛ばされた。


千歌「曜ちゃん!!!!」


239 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:31:59 ???Sd
曜「ぐっ…いっつ……」

ヨロヨロと立ち上がる曜。
だがまだまだ動けるといった様子でストレッチし海未を見た。

曜「今のが善子ちゃんにやった技?」

海未「……」

鞠莉「え……」

曜「ラリアットで回転した相手にそのまま回転蹴りをしてるんだ?結構単純な攻撃を脱力を用いた初動で恐ろしいスピードで行なっている。海未ちゃんは空手ベースって聞いてたけどこんな力技もするんだね」

海未「渡辺曜……」

曜「ん?」

海未「師は誰です?」


240 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:32:16 ???Sd
千歌「詩って何?」

曜「多分〜歌の歌詞のことだと思う〜♩」

海未「………」

鞠莉「………」

千歌「………」

曜「まぁ…それを言う義理はないね」

海未「そうですか」

曜「っっ!!!」

咄嗟に構える曜。
しかし彼女の予想とは裏腹に海未は踵を返した。

鞠莉「何、帰るの?」

海未「えぇ、面白いものを見れた礼です。あなた方は見逃してあげましょう」

曜「随分上から目線だね。見逃してくれと頼んだ覚えはないけど?」

海未「まだ未完成ながら私と戦えた事はさすがこの地のファイターだと褒めておきましょう。しかしこれ以上やればボロがでますよ?」

曜「っっ!!!!」

海未の言葉に目に見えて動揺する曜。
海未は微笑を浮かべて続ける。


241 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:32:41 ???Sd
海未「今日は自信を持ったまま1日を終えなさい。また今度相手をしてあげます」

鞠莉「何よ、凛を回収しにきたんじゃないの?」

海未「えぇ、だからもう良いのです」

千歌「どういう……」

刹那、ドパァァァァァァァン!!!!!!!!!と地面から爆発が起きた。
大量の土とコンクリートの破片が至る所に飛び交う。

鞠莉「きゃあ!!」

千歌「こ、これって………」

ドチャア!!と海未の横に意識を失った篠宮あきるが降ってきた。
そして続けて星空凛が舞い降りる。

凛「………」

海未「お久しぶりです、凛」

鞠莉「くっ………!!!」

ルビィと愛が命をかけて倒した凛が復活してしまった。
傷もほぼ癒えており今すぐにでも戦えますといった様子だ。


242 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 19:33:41 ???Sd
海未「ご心配なく。凛はもう沼津から撤退させます」

曜「………?なんでさ」

海未「彼女は敗北しました。つまり死んだんです。生殺与奪を相手に握られたメンバーはその地で活動してはいけないというほむらの『血の掟』があります。これを破れば死罪ですから」

凛「そういう事。けどいずれ宮下愛と黒澤ルビィは凛の手で倒すよ……沼津の外でね」

それだけ告げると凛はダァン!!と地面を蹴り姿を消してしまった。
残された海未に曜は告げる。

曜「強い子と喧嘩できるのは楽しいし最近毎日ワクワクしてるよ。けどそのせいで私たちの尻拭いをしている友人がいてね。疲れから連勤中のサラリーマンのような顔になってるんだ、まだ若いのに」

鞠莉「おい」

曜は鞠莉を見ながら続ける。

曜「そろそろこの戦争を終わらそうと思うんだ。ねぇ海未ちゃん。1週間後の今の時間空いてる?」

海未「えぇ」

千歌「曜ちゃん!!」

曜「私と喧嘩しようよ。確かにまだ私は未熟だ。けど完成間近なんだ……1週間くれればアナタの命を脅かす存在になれる」

曜はまっすぐ海未を見ている。
海未も曜から視線を逸らさない。

海未「楽しみにしています」

曜「グッド!!じゃあ浦の星の高校で決闘だ!鞠莉ちゃん、呼べるだけ生徒呼んで盛り上げてよ!」

鞠莉「曜……。分かったわ、負けて恥かかないでよね」

曜「YO!!」


243 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/06(月) 20:19:26 ???Sd
愛「うおらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

その時愛が気絶した剣とむつを抱えたまま階段から上がってきた。
直後ゴゴゴゴゴゴ…と地響きが起きたかと思ったら地下への階段が崩壊し始めた。

愛「ぜぇ…ぜぇ……病み上がりなのに」

鞠莉「助かったわ愛。剣も倒すなんて流石ね」

愛「愛さんは何もしてないよ!あきるも剣も復活した星空凛が瞬殺して脱獄したんだ」

鞠莉「そうなの!?」

曜「ここで倒れられたら復讐ができないからって凛ちゃんなりの配慮なのかもね」

愛「ふん……今更いい子ぶっても無駄だよ」

鞠莉「(愛も人のこと言えないけどね)」

鞠莉「ってダメよ!マリアはまだ逃げてるんだから」


244 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/08(水) 16:38:05 ???Sd
曜「マリアちゃんの捜索は悪いけど参加できないや。私は今から師匠の元へ向かうからね」

鞠莉「……えぇ、分かったわ。残りの穂乃果とマリアは愛含む浦の星メンバーで倒すから安心して修行してきなさい」

曜「ありがとう!」

愛「さらっと愛さんもメンバーに加えられてる……」




翌日、沼津聖隷病院では善子の退院手続きが行われていた。

花丸「退院おめでとうずら善子ちゃん」

善子「って言っても沼津はまだほむらが蔓延ってるから安寧には程遠いわね」

花丸「趣味の占いでこの先の沼津を占ったらどうずらか?」

善子「良いこと言うわねずら丸。では占ってしんぜよう」

善子はどこからともなく黒い布を取り出して地面に広げる。
そして、その上に蝋燭を置くと火を灯した。

善子「堕天使の名の下にこれからの沼津を占いましょう」

花丸「……」

善子「ダダダダダークネス!!」

花丸「……」

善子「むっ、見えた!園田海未と高坂穂乃果が私に葬られる未来が!!」

花丸「まだ占いの調子は戻ってないずらね」

善子「どういう意味よ!」

花丸「じゃ、病院を出ようずら」

善子「こら、花丸ーー!!」


245 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 13:26:04 ???00
〜中央公園〜

二人は病院を出た後軽食を取るために中央公園に来ていた。
だがかつての平和な公演はそこにはなく、ベンチやら公衆トイレやら至る所が瓦礫と化していた。

花丸「あ、そっか。この公園は前果南ちゃんが暴れたんだった」

善子「見事に設備が破壊されて地面にも破壊の跡があるわね。けど一つ無事なベンチがある。あそこに座りましょう」

花丸「ずら……あれ?」

善子「どうしたの?」

花丸「のっぽパン忘れちゃったずら!!」

善子「のっぽパン?あぁ、別に他のでm」

花丸「ごめん!ちょっと買って来るから待ってて!」

善子「あ!ずら丸!!………全く、こだわりが強いわね」

善子は公園から走り去る花丸に呆れつつベンチに座る。

善子「あー、久しぶりに外の空気を吸えて気持ちがいいわね」

善子「しずくもじき目を覚ますってお医者さんも言ってたんだもん。沼津が平和になるのも時間の問題ね」

ザッザッザッ

善子「ん……?」

善子の目の前を通過しようとする1人の少女がいた。
カッターシャツの上にカーディガンを着た茶髪の少女だ。
千歌に雰囲気が似てるな……というのが善子の第一印象であった。
初めて見るのにまるで昔からの友人であるかのような安心感を覚えた。
善子の視線に気づいたのか少女は顔をこちらに向けた。

「何か私の顔についてる?」

善子「あ、ごめんなさい。何でもないわ、知人に似ていたから」

「ふーん。あなたこの辺の人?」

善子「えぇ生まれも育ちも沼津よ。あなたは違うの?」

穂乃果「うん、東京から来てるんだ」


246 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:40:03 ???Sd




花丸「まさかのっぽパンを忘れるだなんて迂闊ずら」

その頃花丸は駅前のコンビニでのっぽパンを探していた。
のっぽパンのカゴには残り一つ在庫があった。

花丸「まぁ2人で分けたらいいか」

花丸が手に取ろうとすると、もう一つの手がカゴに近づいてきてぶつかった。

花丸「ずらぁ!?」

「あら、ごめんなさい。これ欲しかったの?」

花丸「え、えぇと……うん」

「けどこれは私のものよ。静岡に来たら食べてみたかったもの」

花丸「ずらぁ!?け、けどオラも友達の退院祝いにのっぽパンを買わなきゃいけないずら!」

「…………ふぅん。仕方ないわね」

花丸「………」

マリア「なら三等分にしましょう」


247 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:48:02 ???Sd
「アリヤシター」

花丸「それでマリアちゃんは沼津に旅行に来たずらか?」

花丸とマリアはのっぽパンを購入した後2人で中央公園まで向かっていた。

マリア「旅行……まぁそう捉えてもらっていいわね。しばらく美味しいもの食べていなかったから今日くらい豪勢なものを食べたいのよ」

花丸「のっぽパンもいいけど沼津には美味しいものが他にもたくさんあるずら!沢山紹介してあげるね」

マリア「ありがとう。花丸は優しいわね」

花丸「ずら!」

「そこのお嬢さんお二人〜!」

花丸「ずら?」

品のない声に呼び止められる花丸とマリア。
声の主を見ると2人の柄の悪そうな男達がこちらを見て卑しく笑っていた。

「ちょっと俺らと遊ぼうよ。酒いけるでしょ?」

「はい決定〜沼津北口へご案内します!」

「ひゃはは」

マリア「………」

花丸「ひ、な、なんずらかこの人達。警察呼ぶずらよ!」

花丸がスマホを取り出しと男の1人が花丸の腕を掴んだ。

花丸「ずらぁ!!」

「悪い女の子にはお仕置きしねぇとn」

ボゴォ!!!!!

男が話終えるまでにマリアが彼の睾丸を蹴り潰した。

「ばっっっ!!!???」

白目をむいて悶える男。
もう片方の男が狼狽えている隙にマリアは続け様に回し蹴りを放った。
一瞬で輩を制圧したマリア。
花丸がふるえながらマリアに礼を言う。


248 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:49:01 ???Sd
花丸「た、助かったずら」

マリア「なかなかに治安が良くないわね。まぁ事前に聞いていたけど」

花丸「ずら。にしても強いずらねマリアちゃん。もしかしてスクールアイドルなの?」

マリア「えぇ。スペインでは5本の指に入るほどの腕前よ」

花丸「凄いずら!けど沼津の女の子達も負けてないよ〜」

マリア「それはよく知っているわ。あのオーガが住んでる街だものね。彼女とも手合わせしてみたいわね」

花丸「皆果南ちゃんと戦いたがっているずらねぇ」

マリア「私は過去にほむらメンバーを再起不能にしているのよ?オーガともやり合えると思うわ」

花丸「え!?あのほむらメンバーを倒しているの!?」

マリア「スペインにいる頃にほむらのメンバーの一人と出会ってね…て、言っているうちに公園が見えてきたわね」

花丸「うん、さっきの話善子ちゃんと二人で聞きたいずら」

マリア「そんな楽しいものでも無いわよ……」


249 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:49:52 ???Sd
〜中央公園〜

善子「へぇ〜アンタもスクールアイドルなんだ」

穂乃果「うん。まぁ格闘は苦手なんだけどね」

善子「安心しなさい、ここで会ったのも何かの縁。私が少し手解きしてあげましょう」

穂乃果「あはは、ありがとう」

善子「そういやあなた名前は何なの?私は津島善子!!」

穂乃果「私は………」

花丸「善子ちゃーーん!!!!」

善子「あ、ずら丸!!」


250 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:50:27 ???Sd
善子「遅いわよ全く……!」

花丸「ごめーん、けど可愛い子に出会えたんだ紹介するね!えーと……」

穂乃果「マリアちゃんだよね」

マリア「…………」

花丸「ずら!?知ってるの?そこの茶髪の子………」

ユラァ………

穂乃果がベンチからゆっくり腰を上げる。

善子「何よ、知り合いだったの?」

穂乃果「うん。ほむら元メンバー、南ことりを再起不能にした子だよ」

善子「へ?」

穂乃果「だから現ほむらリーダー私高坂穂乃果が討伐しなきゃいけない」

善子「…………え?」

穂乃果「善子ちゃん、下がってて」

善子「ど、どう言う意味よ!?」

マリア「はぁっ!!」

突然の情報に困惑する善子を他所にマリアが先手を取った。
ダンスを舞うように回転しながら爪先で穂乃果の鳩尾を蹴り飛ばしたのだ。

ボゴォォォォォォォ!!!!!!と公園中に鈍い音が響き、穂乃果の体が公園を突き抜けて横にある駐車場まで蹴飛ばされた。


251 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:51:22 ???Sd
花丸「ひゃあっ!?」

善子「な、なにがどうなってんの?」

マリア「2人は安全なところに避難しなさい。ちょっと彼女とは因縁があるだけだから」

ズドォッッッ!!!!

直後穂乃果の体がミサイルのようにマリアへ直撃した。
マリアの渾身の蹴りを受けてもすぐに反撃に身を投じたのだ。

マリア「っっっ!!!!」

マリアは体を何回転もさせて穂乃果のタックルの威力を相殺させた。
公園の中央へ着地するマリア。
穂乃果は拳を握りながらマリアへ歩んでいく。

善子「ち、ちょっと!!」

穂乃果「………」

善子「さっきの話本当なの!?あなたがほむらのリーダーって!!」

穂乃果「本当だよ」

花丸「善子ちゃん、一旦離れるべきずら!!」

善子「あっ……!」

花丸が善子の腕を握り、公園から距離を置くべく走り出した。
残されたマリアは罰が悪そうな表情で口を開く。

マリア「はぁ〜。なんか花丸を騙してたみたいで気が引けるわね」

穂乃果「それに関しては同感かな。あの子がAqoursメンバーって知らなかったよ」

マリア「なら悪女同士、私と踊り狂いましょう?」


252 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:51:53 ???Sd
マリアは穂乃果の周りをタップダンスをするかのように移動して撹乱させた。

穂乃果「すごーい。何ていう踊り?」

マリア「フラメンコよ。インドからスペインに移り住んだジプシー達の魂の踊り!私の故郷の踊りよ!!」

穂乃果「フラミンゴ?」

マリア「はっ!!!」

穂乃果の前に躍り出たマリアは勢いのまま前蹴りを放った。
ヒールのまま放たれた蹴りは穂乃果の腹にめり込む。

穂乃果「うぶっ!!!」

マリア「タンゴ」

フラメンコには「ソレア」、「アレグリアス」、「タンゴ」等全てで6種類のダンスが存在する。
マリアはそれを応用してそれぞれの独自の「型」を創り上げていた。

マリアの動きは止まらない。
前蹴りを放った後にローやカーフ、回し蹴り等蹴りを多用し穂乃果にダメージを与えていく。

タンゴの特徴は徐々にダンスのスピードが上がる点だ。
マリアの攻撃もスピードを増していく。

穂乃果「あうっ!!ぐっ、あぁ!!!」

蹴られるたびに苦悶の声を上げる穂乃果。

マリア「セビジャーナス!!!!!」

トドメとばかりにその場で高速回転しながら穂乃果の「喉」に蹴りを入れるマリア。
血を吐きながら彼女はあゆみ橋中央まで飛ばされた。

穂乃果「おええええええ!!!!!」

喉を抑えながらジタバタと暴れる穂乃果。

マリア「高坂穂乃果はパワーだけが脅威……噂で聞いてたことは本当だったのかしら?」

マリアがドレスを靡かせながら優雅に歩いてくる。


253 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:52:23 ???Sd
穂乃果「あは、あはははははは!!!!!げほぉ!!!」

マリア「っ!!」

穂乃果は血を空に吹き出してから再び立ち上がった。

穂乃果「確かにその意見は間違っていないよ。スピードも技術も並み以下。さっき善子ちゃんが技術を教えてくれるって言ってくれた時も本気で教わろうと思ったんだよ」

マリア「へぇ、ほむらのリーダーなのに敵に教わろうとするんだ」

穂乃果「敵か……私は自分を高めるためなら誰にでも頭を下げるからね」

マリア「いい姿勢ね。見習いたいものよっ!!!」

マリアが再び穂乃果に飛び掛かる。
今度は上段後ろ回し蹴りだ。
ヒールの先が穂乃果の額をカットする。

穂乃果「いった!!!」

マリア「(このままトドメを刺そうかしら!!)」

滑らかな動きで蹴りの回転力を利用して「上段掛け蹴り」で穂乃果の心臓を狙うマリア。
しかしーーーー。


ガシィッ!!


マリア「くっ!!!」

命を奪うマリアの足を片手で握り締める穂乃果。
その握力は東條希を超える。

穂乃果「ファイトだよっ!!」

ブゥン!!と穂乃果はマリアを握ったまま360度回転し、ピッチャーのように投げる。


254 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:53:22 ???Sd
マリア「っ!!!!」

マリアはあまりの風圧で呼吸すらできない。
暴風を撒き散らせながらマリアの体がさんさん通りまでぶっ飛び、商店街に突っ込んだ。

「きゃあああああ!!!」

歩いている住民の1人が悲鳴を上げる。
マリアが突っ込んだのは衣料品店だった。

マリア「あ、ぐ………あ…………」

全身を震わせながら立ちあがろうとするも体に力が入らない。

マリア「(なんてパワー……!)」

マリアが交差点を見ると公園から穂乃果が満面の笑みでこちらに小走りして来ていた。

マリア「チャッキーみたいねぇ!!!」

タンスに手をつけてぐぐっと立ち上がるマリア。
全身が痛みで悲鳴をあげているがあくまで優雅に穂乃果に向かって歩いていく。

穂乃果「わぁ凄い凄い!まだ立ち上がれるんだ」

マリア「ぺっ!!」

マリアが口からドス黒い血を吐いた。

穂乃果「マリアちゃんはパワーだけの穂乃果を大したことないって思うかもしれないけど、パワーは全てをひっくり返すほどの可能性があるんだよ!」

マリア「そんなもn」


梨子「私は穂乃果ちゃんの太ももにも可能性があると思うわ」


255 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:54:02 ???Sd
穂乃果「へっ?」

マリア「!?」

誰の声?と素で疑問に思った穂乃果は声の主の元へ顔を向ける。
しかしそこには誰もいない。
気のせいか……マリアに向き直る穂乃果の足元で再び声が聞こえた。

梨子「これがほむらリーダー、高坂穂乃果の下着ね。思ったより可愛いの履いているじゃない」

穂乃果「きゃあ!?」

何と梨子が穂乃果のスカートを捲り上げて中の下着の柄を確認していたのだ。
ほむらリーダーの威厳もクソもない年頃の少女の悲鳴を上げる穂乃果。
梨子はそのまま穂乃果の太ももを舐め始めた。


梨子「ブェ〜ロベロベロ……お、お、……!!!!」

梨子「至高」


穂乃果「離れてよ!!!」

穂乃果は嫌悪と羞恥から梨子に膝蹴りを喰らわせる。
べコォ!!と彼女の怪力から放たれた膝は梨子の鼻を陥没させて数十メートルも宙に浮かせた。

梨子「お、お、ぐぅ………!!!」バタバタ

鼻を抑えて悶える梨子。
しかし5秒後には………。

梨子「復活」

穂乃果「あなた、桜内梨子だね」

梨子「私を知ってるなんて……ますます甘美よ」

穂乃果「宮下愛に負けた子が私に勝てるとは思わないけどなぁ」


256 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:54:30 ???Sd
梨子「今更カリスマ風に喋っても無駄よ何故なら……」カチッ

『きゃあ!?』

穂乃果「!?」

梨子は先ほど録音した穂乃果の悲鳴を再生した。

梨子「………」カチッ

『きゃあ!?』

穂乃果「やめてよ!!」


梨子「やめぬぁ〜〜〜〜い!!!」クネクネクネェ~


体をくねらせながら挑発する梨子に、穂乃果は再び拳を振るう。
今度は梨子の頰にクリーンヒットし、彼女の体が沼津駅まで殴り飛ばされた。

梨子「ぶぐぁああああ!!!!!」

穂乃果もすぐに後を追うために沼津駅へ走る。

マリア「……私は置いてけぼり?」

花丸「マリアちゃん!大丈夫ずらか!?」

マリア「花丸!!」

善子「後は梨子に任せときなさい。私たちは市民の避難を手伝うわよ」

マリア「わ,わかったわ!」


257 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:55:23 ???Sd
穂乃果「はぁ……はぁ……!!」

穂乃果が沼津駅に着いた頃、梨子はというと………。

梨子「おはよう」ムシャムシャ

穂乃果「…………」

顔面の傷は完治しており、イーラにある邪心庵のどら焼きを頬張っていた。

穂乃果「真姫ちゃんが言っていた超速再生ってやつだね」

梨子「まぁね。穂乃果ちゃん、私の要求は一つよ」

穂乃果「要求?」

梨子「私のおもちゃになりなさい」

穂乃果「………」

梨子「悪いようにはしないわ。あなたは私の性的趣向の全てを満たしているといっても過言ではない。毎日体のありとあらゆる所を舐めてあげる」

穂乃果「………」

穂乃果「ふふ、あはははははは!!!!」

穂乃果はしばらく目を点にさせた後腹を抱えて笑った。

穂乃果「ほむらの一応リーダーでもある私にこんな変なこと言う人初めてだよ。面白いね梨子ちゃん」

梨子「じゃあ……!」

穂乃果「オコトワリシマス!梨子ちゃんちょっと気持ち悪いから……」

梨子「……なら無理やりおもちゃにするだけよ」

穂乃果「やってみなよ。穂乃果を辱めた事、後悔させてあげる」


258 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:56:10 ???Sd
梨子「あははは!!!!」ダッ

梨子は笑いながら穂乃果に走る。
両手を前に突き出し胸を揉むように手を開閉させながら。

穂乃果「気持ち悪いなぁ!!」

ダンッ!!と地面を破りながら穂乃果は踏み込む。
そして拳を握りしめたまま梨子の顔面にカウンターのパンチを浴びせた。

梨子「ブッギッッ!!!!」

ブタのような鳴き声を発し、梨子の体がアントレを飛び越え沼津駅北口ロータリーまで飛んでいった。

追う穂乃果。

穂乃果「駅から直通の道無いの!?」

しかし北口までの行き方がわからず少しタイムロスしてしまった。
穂乃果の財布事情から切符を買って駅構内を突っ切るという選択肢は無かった。
穂乃果が北口に着いた頃には梨子は駅前でコーヒーを嗜んでいた。

梨子「おはよう」

穂乃果「(……殴り飛ばすと私が梨子ちゃんの元へ辿り着くまでに全回復される……穂乃果のパワーが仇になるなんてね)」


259 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/09(木) 16:58:11 ???Sd
梨子「相撲しない?」ヌギヌギ

梨子は突然水着姿になり四股を踏み始めた。
突然の申し入れに穂乃果は考えがあるのかしばらくして頷いた。

穂乃果「………いいよ」

穂乃果はやる気満々の梨子に体勢を低くして近づいていく。
1秒後、2人が組み合う。

ガッ!!!!

穂乃果「(ベアハグで全身の骨を砕いてあげるよ!!)」

穂乃果の策略などいざ知らず。
梨子は穂乃果が力を込める前に彼女のスカートを捲りあげた。

穂乃果「っ!!??」

そのまま梨子は尻を揉み始める。

梨子「柔らかけぇ〜………」

うっとりとする梨子。
スカートを捲りあげた状態で行っているため周りの住民やサラリーマンがその光景に釘付けになっていた。
流石の穂乃果も羞恥が勝ったのか梨子を押し除ける。

梨子「あぁん」

穂乃果「ふざけてるの!?真面目に戦ってよ!」

梨子「私は大真面目よ。羞恥に苛まれ戦闘を中断する穂乃果ちゃんこそ不真面目よ」

穂乃果「なっ……」

梨子「ファイターという面ではさっき引き合いに出した愛ちゃんの方がよほど真面目ね。数週間前ここで彼女と全裸で戦ったのよ?真のファイターは自分の格好なんかに気を使わないの」

穂乃果「………!!」


260 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/10(金) 16:38:15 ???00
海未『穂乃果の性格はファイターに向いてないかもしれませんね。大人しく実家のまんじゅう屋を継いだらどうですか?』

穂乃果「(昔海未ちゃんに言われたなぁ……)」


梨子「まぁファイターなんかにならなくていいじゃない。穂乃果ちゃんは私のおもちゃなんだから」ペタペタ

梨子がニヤけながら穂乃果に近づいていく。
その直後、穂乃果は思いもよらない行動に出た。

穂乃果「ふんっ!!」

ビリビリ!!

梨子「!!」

穂乃果は何と自らの服を破き始めたのだ。
スカートも下着も。
最後に靴を脱いで生まれたままの姿になった。

梨子「おほぉぉぉぉぉ!!!!!!」

穂乃果「私が甘かったよ。たしかにファイターたるものお尻を触られたくらいで喚いてちゃダメだよね」

梨子「(だからと言って脱がなくても良かったと思うけど……。結構極端ねこの子)」

梨子「とはいえ私も同じ土俵に立たないとね!!」

梨子も水着を脱ぎ捨て生まれたままの姿になった。




善子「はぁはぁ……梨子!無事なの!?」

花丸「ぎゃあ!2人とも全裸ずら!何してるの!?」

マリア「ク、クレイジー……」

ようやく追いついた3人が梨子達の姿を見て驚愕していた。
梨子は優しく笑いかけ口を開いた。

梨子「来たのねあなた達。けどごめんなさい、せっかくだけどこの場から全力で避難した方がいいわよ?」

善子「へ?」

梨子「私は西木野真姫ちゃんに協力してもらって体のリミッターを外したのよ」

善子「あんた何言って……」

穂乃果「………真姫ちゃんが?」

穂乃果が訝しげる。
真姫が何故梨子に協力したか困惑していたのだ。

梨子「穂乃果ちゃんもこれから本気で来るからね。私も本気で戦わないといけないのよ」スッ

梨子は水着に隠してあった小さな注射器を取り出すと左腕に躊躇いなく刺した。


261 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/10(金) 16:47:37 ???00
梨子「ぐひぃっっっ!!!!」

ガクッと注射を打った瞬間体が痙攣する梨子。
次第に体全体に赤色の「紋様」が浮かび上がりはじめた。


梨子「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!キャハ、キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


穂乃果「っ!?」


先ほどの様子とは一変して狂気の笑い声をあげる梨子に穂乃果はたじろぐ。
善子と花丸はその様子を見て即座に彼女の体に何が起こったか理解した。

花丸「悪魔モードずら!!死に至るレベルの出血がないと発生しないんじゃ……」

善子「注射でその制約を取り除いたって事でしょ」

マリア「な、なんなの!?」

善子「ひとまず私達は逃げるわよ!!巻き込まれたらたまったものじゃないし」

花丸「ずら!」

マリア「え、えぇ〜!?」

善子と花丸は着いたばかりなのに!と悲鳴を上げるマリアの手をそれぞれ持って連れて行った。


262 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/10(金) 16:48:08 ???00
梨子「あばははははあぁ!!!ホノ゛ガジャン、ミ゛ーッゲ!!!!」

バシュッ!!と爬虫類のようなジャンプをしながら穂乃果に飛びつく梨子。
穂乃果は冷静に梨子の腹にカウンターのストレートを放とうとするが……。

梨子「キャヒッ!!!」

穂乃果「…………!!」

ギリギリギリ………

梨子は穂乃果の剛腕を正面から両手で受け止めていたのだ。
そのまま穂乃果の体を左へ流すと、体勢の崩れた彼女に嵐のようなラッシュを浴びせた。

梨子「あ゛ばーーーーはははははははあ!!!!!!!!」

ドドドドドドドドドドドドド!!!!!!

鼻、頰、腹、レバー、心臓、それぞれ一瞬のうちに10発ずつクリーンヒットさせた。

穂乃果「がはっ!!!」

血を吐きながら後退する穂乃果。
このままではまずいと思ったのか、続け様に襲いかかって来る梨子の体を死に物狂いで掴み
コンクリートに叩きつけた。
だが梨子はダメージを与えられたのかも分からぬほど素早く立ち上がり両手で手刀を浴びせて来た。

穂乃果も両腕で防ごうとするもガードの下の腹や太ももに梨子の爪が触れ、鮮血が吹き出す。

穂乃果「(何て切れ味なの!?)」

梨子「はぁぁぁぁぁ!!!!!!」

梨子はガードの上から穂乃果に前蹴りを放つ。
ミシッと骨が軋む音と共に穂乃果が沼津警察署北交番に突っ込んだ。
交番は3分の2が崩壊してしまった。

穂乃果「い、づぅ…………」

ボロボロの警察署跡で穂乃果が足を震わせながら立ち上がり前を見るとロータリーで梨子が天に向かって吠えていた。


梨子「あばぁぁぁぁぁぁははははははははははぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!」


穂乃果「全く、この街は面白いね」


263 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/11(土) 09:13:00 ???Sd
〜沼津みなと新鮮館〜

鞠莉「えぇ、そうね。その施設にも賠償をお願い。あと倒壊した浦の星の件だけど……」

鞠莉は新鮮館の休憩スペースでスマホで部下に指示を出していた。
主にファイター達が戦った後の戦後処理の件だ。

善子「見つけたーー!!」

鞠莉「へ、善子どうしたの?」

花丸「だっこしてくれてありがとうずら」

マリア「お構いなく」

鞠莉「ああああーーーーー!?マリア!?」

マリア「小原鞠莉……」

鞠莉「何、自首しに来たわけ?」

マリア「違うわよ」

善子「今はそんな事言っている場合じゃないの!駅前で高坂穂乃果と梨子が戦ってるのよ!」

鞠莉「何ですってぇ!?あ……あ………また小原家の財布が……」

花丸「お金の心配してるし……」

善子「高坂穂乃果のパワーで派手に戦ったら街に甚大な被害が出るわ。果南を動員させましょう」

鞠莉「それはダメよ」

花丸「何でずら!?」


264 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/11(土) 09:13:47 ???Sd
鞠莉「果南は園田海未に動員するわ」

善子「園田海未は曜が倒すんでしょう?」

鞠莉「無理よ」

花丸「無理って……」

鞠莉「曜には申し訳ないけど彼女ではまだ海未には勝てないと思う。だから2人の戦闘が終わり次第どんな結果であれ果南を動員することにしてるの」

善子「そんな……」

鞠莉「善子の気持ちも分かる、だって相手はほむらリーダーだものね。けど現状では園田海未の方が脅威度が高い。今後のためにもほむらはこの沼津で倒しておいた方が良いのよ」


ドガァァァァァァァァァァァン!!!!!!


その時彼女らの耳に爆弾でも使ったかのような轟音が響いてきた。
周りの客の中にはショックで気を失う者もいるほどだ。

鞠莉「な、何事!?」

マリア「鈍いのね。穂乃果と梨子とやらが戦っているのよ」

善子「沼津駅からここまで戦闘しながら近づいて来たの!?」

花丸「ここにも戦火が飛ぶかもずら……」

鞠莉「くっ……けどダメ!果南は出さない!!」

マリア「分からず屋ね!もういい、私も出るわ」

善子「私も行く!」

花丸「ち、ちょっと2人とも……!止めなくて良いの鞠莉ちゃん!?」

鞠莉「これが最善なのよ……私は穂乃果は集団で倒せても海未はそうはいかないと思っている。果南があれだけ興味をそそる相手なんだもの。文字通り彼女は次元が違うんだと思う」

花丸「………」

鞠莉「あなたはここから動かないで、花丸」


265 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/11(土) 10:18:05 ???Sd
穂乃果「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

梨子「ーーーーぶぁっっ!!!!」

穂乃果と梨子が「永代橋通り」の交差点で次元の違う戦いを繰り広げていた。
今し方穂乃果の剛腕が梨子の顔に突き刺さり、首が180度も回転した……が、数秒後骨が再生し首も元の位置に戻った。

穂乃果「くっ……!」

梨子「リゴジャン、ふっがーーーづ♩」

梨子は穂乃果を煽りながら彼女の右脇下から左肩にかけて爪を刃のように立てながら切り上げた。
スパァン!!と穂乃果の体に40cmほどの切り傷が生まれる。

穂乃果「(いった!!)」

梨子は顔を歪める穂乃果にさらに距離を詰めると今度は手刀で腹を刺した。
何もしなければ穂乃果といえど貫通は免れない一撃。
しかし彼女はギリギリ0.5cmの所で梨子の腕を握り防いだ。

穂乃果「舐めないで!!!」ブゥン

再び穂乃果の右ストレートが梨子の顔面に突き刺さる。
梨子は血を吹き出しながら「永代橋」まで投げ出された。

梨子「ぶひゃっ!!!」

奇声を上げながら倒れる梨子であったが、ジュッ!!と肉が焼けるような音が聞こえたかと思えばすぐに立ち上がった。

梨子「無キズ」

穂乃果「はぁ……はぁ…………(このままじゃ穂乃果の体力だけ削られて消耗していくよ。なんとか手を打たないと)」


266 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/11(土) 10:18:55 ???Sd
梨子「シゥアバツ!!!!」

トリッキーな動きで穂乃果に打撃を積み重ねていく梨子。
穂乃果の体に傷が上書きされていく。

穂乃果「仕方ないなぁ!!」

梨子「!!」

穂乃果「一旦逃げるね!!」

穂乃果はなんと全裸のままで「永代橋」を東にダッシュして梨子から逃走し始めたのだ。
梨子は不満そうに顔を歪めながら叫ぶ。

梨子「マ゛デェェェェェェェェェ!!!!!」

穂乃果「うん!待ってあげるよ」

梨子「?」

穂乃果は橋の真ん中で立ち止まると拳を高く突き上げる。
彼女の腕にミシミシと血管が浮き出ているのが遠目でもわかった。
そして………。


穂乃果「ファイトだよっ!!!!!!!」ゴォォ


恐ろしいほどの風圧が穂乃果から発せられる。
彼女は地面に向かって拳を本気で叩きつけた。

ズドォォォォォン!!!!

それはミサイルの爆発の音によく似ていたという。
穂乃果の拳に直撃した橋は着弾地から一瞬で死の衝撃波となり辺りへ降り注いだ。
当然、2人を支えていた橋は崩壊する。
重力に負けて2人の体が川に落ちていく。

梨子「ーーーー!!」

穂乃果「はぁっ!!」

穂乃果は落ちていく瓦礫を蹴り、街へとジャンプした。
そして梨子を見ることもなく一目散に走るが……。

ビュオオオオオオオオ

穂乃果「………?」

聴き慣れない音が穂乃果の耳に入り込む。


梨子「ビュオオオオオオオオ!!!!!!!」


穂乃果「はは………」

梨子はなんと川の水を口に溜め込み、吐き出すことによってホバーのようにしてこちらを追って来ていたのだ。

それを見た穂乃果は乾いた声で笑うしかなかった。
梨子はあっという間に穂乃果の前に回り込み華麗に着地した。

梨子「ニゲルナ゛」


267 : 名無しで叶える物語◆xC9dZnjT★ :2025/01/11(土) 14:27:48 ???Sd
化け物で草


268 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/12(日) 15:50:23 ???Sd




善子「いた、あそこよ!!」

マリア「しっ、見つからないようにしなきゃ」

善子達はみなと新鮮館から轟音の音源まで走って近づいていく。
丁度沼津市第二小学校の校庭に探し人はいた。
校庭には2人。
互いの距離は10m。
片方は血だらけだが笑顔を浮かべていた。
もう片方も全身血だらけではあったが、息切れが激しく深い傷が数箇所遠目でも確認できた。
痛みに体を震わせながらやっと立っているという様子だ。

笑顔を浮かべていたのは桜内梨子。
満身創痍なのは高坂穂乃果であった。

善子「嘘でしょう……?」

マリア「圧倒じゃない。信じられないわね」


梨子「ビャオッッッ!!!!!」

奇声を上げながら梨子が地面を蹴る。
穂乃果もタックルの姿勢で梨子に当たっていった。
梨子の体が校舎まで飛ぶ。
穂乃果が押し勝ったからだ。

穂乃果「がっ!!!」

しかし穂乃果も顎にアッパーを喰らっていたのか少しよろける。
梨子は今し方突っ込んで、ボロボロになった校舎の一階から奇声を上げて笑っていた。

梨子「キャハハハハハハハ!!!!!!」

梨子も傷を負っていたがジワジワと傷が塞がっていっていた。
追撃しなければならないが穂乃果も体にガタがきておりすぐには動けない。

穂乃果「はぁ……はぁ…………クソッ」


「なぜ武を使わぬ」


穂乃果「ーーーーー!?」


269 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/12(日) 15:50:57 ???Sd
突然歴戦の雄のような迫力を持った声が穂乃果の横から聞こえた。
顔を向けると………。


「何故武器を使わぬ」


穂乃果「あなたは……オ、」

善子「果南ッ!!来てくれたんだ!!!!」

そこには沼津最大戦力、松浦果南がジャージ姿で立っていた。

スパー……

手には自家製のヨモギ煙草を咥えていた。

果南「答えな」

果南は善子を無視して穂乃果に問う。
梨子は突然のオーガの登場に如何すべきか逡巡していた。

穂乃果「………オーガ何故あなたg」


果南「答えいッッッ!!!!!!!!」


穂乃果「ッッッ」ビクッ

善子「ひっ!!」

マリア「っ!?」

ビリビリビリビリ………!!

あまりの声量に空気が震える。
果南の怒声に穂乃果といえど動揺からは逃れられなかった。
だがすぐにまっすぐ果南を見据えて答える。


270 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:04:36 ???Sd
穂乃果「武……って武術の事?私は才能がないから使いたくても使えないんだ」

果南「………」

穂乃果「武器なんてもっての外だよ。使ったこともないし。今は一対一でやってるのに武器とか卑怯だよ」

マリア「へぇ、あなた黒澤ダイヤを星空凛と2人でやったんじゃないの?今更卑怯とか言っても言葉に重みがないわね」

善子「え、そうなの!?」

穂乃果「……私は見ていただけだよ。ダイヤさんをやったのは凛ちゃんだけだし」


果南「あっはっはっはっ!!!!!ひぃひひひひひひ!!!!!!」

果南「ぶわぁはははははははははははは!!!!!」バァンバァン



穂乃果「!?」

突然果南が目に涙を浮かべながら大笑いし始めた。
何がおかしいのか、地面をバンバンと叩きグラウンドに亀裂を入れていた。
そして………。

果南「貴様はただの女子(おなご)だ」


271 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:05:05 ???Sd
穂乃果「な、に………」

明らかな侮辱に対し穂乃果は狼狽する。
果南はニヤけながら続ける。

果南「真の武術家であれば『何をしてでも』勝たなければならない」

果南「あんたが今述べたタイマンは言い換えれば『戦争』なんだよ。それを…くくっ、卑怯?才能がないから使えぬ?」

穂乃果「………」


果南「卑怯という言葉は武術家にとって誉(ほまれ)と心得よ」

果南「貴様は己の肉体の才能だけでのし上がって来た。だが沼津ではそれは通じぬ」

穂乃果「っっ!!」

果南「精進せいっ!!不恰好でも武を用いて戦ってみせよ!!!」

マリア「彼女いつもあんな喋り方なの?」

善子「いや……戦う時だけあんな感じになるのよ」


穂乃果「何故私に助言するの?」

果南「勿体ないと思ったからだよ。ポテンシャルはあるのに技術があまりに未熟すぎる。あの状態の梨子相手でも武さえあればここまで追い詰められていないはず」

果南「私は自分好みのファイターを嬲るのが好きでねぇ。アンタがもっと好みの武術家になったら喰ってやろうと思ってたんだ」ニャァ

穂乃果「………そう」


272 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:05:33 ???Sd
穂乃果は果南の述べた最後の部分だけ無視した。

穂乃果「(にしてもいきなり武を使えなんて言われてもなぁ)」

果南「梨子の倒し方は宮下の戦闘から分かっているはずだよ」

穂乃果「!!」

果南「その弱点を徹底的につけぇ!!ダーティバトルに徹しろ!」

善子「いつも千歌に言ってるやつね」

果南「黙ってな!!!!!」

善子「わぁっ!!」ビクッ

マリア「仲間にも容赦無いのね……」


273 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:06:25 ???Sd

穂乃果「ふぅ……」

穂乃果が梨子に向き直る。
今の今まで大人しくしていた梨子はオーガが「見」に入ったのを確認すると再び笑顔になり校舎から飛び出してきた。

梨子「ギャオッッッ!!!!!」

穂乃果「シュッ!!!!!!」

今までの穂乃果なら殴って対抗しただろう。
たが穂乃果は海未がよく使っている「手刀」を見よう見まねで振りかぶった。

メコッオ!!!の梨子の左肩から真似あたりまで穂乃果の手刀が食い込む。
普通なら絶命。
しかし梨子はそんな状態でも右ストレートで穂乃果を殴り飛ばした。

梨子「アギャッッッ!!!!」

穂乃果「がっ!!!」

バウンドしながら地面を転がる穂乃果。
ダメだったか……と歯を食いしばる穂乃果に果南が口出しする。

果南「出血を狙え!!打撲では梨子には勝てん!!!!」

穂乃果「刃物とかないよ!?」

果南「たわけっ!!!貴様の体には刃物に匹敵する部位などいくらでもある!!!」

穂乃果は今までの戦闘を思い出す。

穂乃果「そういやさっき梨子ちゃんに爪で裂かれまくったな….」

引っ掻き攻撃。
武を知らぬ女子供のような稚拙な技。
穂乃果の選択肢にはなかった攻撃。
だが果南に言わせれば勝てるのであれば使うべきなのだろう。

梨子を見るとすでに凹んだ体は半分以上回復している。


274 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:06:51 ???Sd
穂乃果「(私爪結構切るんだよね……)」

梨子「はっはっ!!!」ダダダダ

穂乃果「けどやるしか無いか!!」

梨子は今度は直接噛み付いてきた。
ここで穂乃果は強引な手段に出ることにした。

穂乃果「えいっ!!」

梨子「!?」

梨子の首筋への噛みつきを防がない。
噛ませたまま梨子に御体で抱きつく。
そして力任せに梨子を地面に倒した。

梨子が上になる形ではあるが可動域が少ないため噛みつきを以外はうまく繰り出せない。

未だ噛み付いてる梨子だが、穂乃果は彼女の背中に両手の爪を立てて無理やり食い込ませる。

梨子「ーーーー!!」

激痛が走る梨子。
思わず噛みつきを離してしまうが穂乃果は両脚で梨子の体を挟み込んでいるため逃げられない。

梨子「ワダジガズギナノ゛ォ?」

痛みに耐えながら梨子が笑う。
背中からはどくどくと血が翼のように流れていた。


275 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:07:20 ???Sd
穂乃果「(血を少しでも減らさないと……!!)」

ビチビチ………!!

梨子の背中に食い込ませた指を横にずらして傷口を広げる穂乃果。

梨子「ひゃああ!!!」

梨子は穂乃果の腕をなんとか掴み抵抗する。
流血のスピードが上がっているが梨子はまだピンピンしていた。
梨子は全身で離れようともがくが穂乃果が全身を使って押さえ込んでいる事でそれは敵わなかった。

善子「すごい!悪魔モードの梨子を抑えられるなんて!」

マリア「パワーは間違いなくほむらの中でも一番でしょうね。ねぇオーガ」

果南「…………スパァ~~。何さ」

善子「タバコやめなさいよそれ」

マリア「高坂穂乃果のパワーにあなたは勝てる?」

果南「知らんよ、腕相撲でもすればわかるんじゃない?」

マリア「………そう」


276 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:08:21 ???Sd
悪魔モード時の梨子の筋力はルビィを超える。
スピード、スタミナ、残虐性、視力などその他のステータスも通常時の梨子の10倍以上に跳ね上がる。
穂乃果の剛腕といえどそんな梨子を永遠と押さえつけるのは限界が来ていた。


穂乃果「ハァハァ………く………!!!」

果南「うーん、体力も課題だね」

善子「え?」


梨子「ヒャアアアアアアアア!!!!!!」

バチィン!!と穂乃果の腕が弾かれる。
まだ脚で梨子を挟み込み動きを封じているとはいえ、体の可動域は先ほどとは段違いだ。
梨子は歯を剥き出して笑いながら穂乃果の顔にパウンドを浴びせる。

梨子「アハ、アハァァァァァ!!!!!!」

ドチュ、ゴッ、ボゴォ!!!!!

穂乃果の顔面に必殺の拳が雨のように降り注ぐ。
腕で防御する穂乃果だが、ガードをすり抜けてダメージが増えていく。

穂乃果「ハァハァ!!(や、やばい………)」


277 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:11:44 ???Sd
穂乃果「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

穂乃果は雄叫びをあげ、梨子を挟み込んでおる脚を横にし彼女を地面に倒した。
そしてすかさず梨子の上にマウントを取る。

善子「逆転した!!!」

だが梨子は下から穂乃果の腹を蹴り上げ、素早く起き上がった。

果南「穂乃果のパワーがかなり無くなってきてるね」

善子「へ?」

マリア「えぇ、体力もそうだけど左腕は筋がイッてそうね。対して梨子とやらは無傷。スタミナもあまり余ってる」

善子「………超速再生はスタミナにも適用されるからね。あの状態の梨子に疲れはないの」

マリア「反則じゃない……」


278 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:12:02 ???Sd
穂乃果「う、おええええ!!!」ビチャビチャ

善子「うわ!」

穂乃果は急にかがみ、ゲロと血を撒き散らした。
過度な運動により消化器、自律神経などに負荷がかかりすぎていたのだ。

しかし穂乃果はまだ梨子を睨んでいる。


「もうそこまででいいんじゃない?」


対峙する両雄にまたもやもう一人乱入者が現れた。
その少女に穂乃果だけが反応した。

穂乃果「真姫ちゃん……!?」

善子「なっ、あいつが真姫!?」

そう、ダイヤをめちゃくちゃにした元凶である女が目の前に現れたのだ。
善子は怒りから真姫に対してファイティングポーズを取っていた。
果南は腕を組んで興味をなさそうに乱入者真姫を見ている。


279 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:14:46 ???Sd
真姫「ねぇ、穂乃果。負けを認めなさいよ」

穂乃果「……どういう事?何で真姫ちゃんが」

真姫「知っているでしょう?梨子に注射器を渡したのは私よ」

穂乃果「……何で?」

真姫「あなたには何度も言っているはずよ。私の目的は最強のファイターを作る事。梨子はその素質があったから私と組んでもらった」

穂乃果「ははっ……目論見は成功した?」

真姫「えぇ。そんなボロボロのあなたを見るのは初めてよ。研究施設越しじゃなくて生身で試合観戦もたまには良いわね」

穂乃果「酷いなぁ真姫ちゃんは」

真姫「最後にあなたの口から敗北を聞きたいわね。それで私の目的は半分達せられる」

穂乃果「そこどいて」

真姫「は?」

果南「……」ニヤァ

穂乃果の返しに果南が牙を見せて笑う。
真姫はというと困惑していた。

真姫「なんなの、まだ戦う気?」

穂乃果「うん、まだ終わってないからさ」

真姫「これ以上は……」

穂乃果「どきなよっっっ!!!!!!!!」

真姫「きゃっ!!」ビクッ

穂乃果の今まで聞いたことのない怒声に真姫は悲鳴をあげて道を空けた。
その直後穂乃果が梨子の元へ突っ込んでいく。

穂乃果「オラァッっ!!!!」

梨子「ヴヒッッッ!!!!」

真姫「なんなの!?イミワカンナイ!!なら死ぬまで戦っときなさいよ!!」


280 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/13(月) 09:15:28 ???Sd
善子「さ、アンタはここでぐちゃぐちゃにさせて貰おうかしら」

真姫「ひっ……」

恐怖で尻餅をついている真姫に善子が拳を鳴らしながら近づいていく。
そんな血の気盛んな善子を意外な人物が止めた。

果南「やめな」

善子「なっ、果南!何故止めるの!?」

果南「ソイツはただの女子(おなご)だよ」

真姫「何ですって?」

果南「だってさっきの悲鳴聞いたでしょ?『きゃっ』って言って尻餅つくんだよ?そんなか弱気女の子に手をあげる必要ないよ」

真姫「っっっ!!!」

真姫は明らかな侮辱に羞恥と怒りで顔を赤くする。しかし善子は腹の虫が治らないようだ。

善子「関係無い。こいつはダイヤを改造して病院送りにした張本人よ。せめて骨の一本や二本くらい折らないと気が済まないわ」

果南「やめなと言っているんだよ」

ザワァっ……

マリア「っ!!!」

空気が揺らぐ。
オーガがイラついている。
だが善子も一歩も引かなかった。

善子「私はどけと言ってるの」


281 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/14(火) 10:46:09 ???Sd
果南「へぇ……」

善子「誰もがアンタに怯えて言うことを聞くとは思わないほうがいいわよ」

果南「ぶはは!!怯えはただの人間としての反応だよ。アンタらが勝手に怯えてるだけじゃん!!!」

果南「それに善子。アンタも私にケツ拭いてもらっといて今更凄んでも赤子にしか思えないよ!!!!」

果南「あははははは!!!!!!」

マリア「ちょっとあなた!!」

善子「」ピキッッッ

善子が気にしていた東條希との件を掘り起こされ、彼女のアドレナリンが増幅する。

善子「果南ンンンンンン!!!!!!!!!!!」

善子が8mも跳躍する。
彼女の必殺、堕天使キックがオーガに襲いかかった。

果南「はっはーーーーーー!!!!!」

果南は腹筋のみで善子の蹴りを受け止める。
そして善子の脚を片手で掴み校舎に投げ飛ばした。
善子はコンクリートに激突する前に体勢を整えて校舎の壁に足を付き、地面に着地する。


282 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/14(火) 10:46:55 ???Sd
善子は再び跳躍し堕天使キックを放った。

善子「オラァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

果南「来なよ赤ちゃん!!!」


真姫「な、なにしてるのこの人たち」

マリア「はぁ〜……それについては同感ね。本当この街はイカれた連中の集まりね」

場面を穂乃果に戻そう。
何があったのか穂乃果と梨子は校舎の屋上で戦闘を行っていた。

穂乃果「まだまだピンピンしているね……」

梨子「ヂを飲まぜでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

穂乃果はもう体の限界が近い。
だが闘志は衰えていない。
考えがあるのか梨子に背後の空を見ていた。

梨子「ジャッ!!!!!」

梨子が飛びついて穂乃果の腕に噛み付く。

穂乃果「待ってたよ」

ぎゅううううううう!!!!!
穂乃果は梨子を逃さぬように左手で彼女の腕を握り込んだ。
そしてそのまま屋上をダッシュし学校の東側にジャンプした。
アパートを超え、80m程跳躍した穂乃果は地上を確認した。

穂乃果「あれか………!!!」

穂乃果が見たのは小さな刃物屋だった。
梨子を渾身の力で引き剥がす。
ブチブチブチと梨子が噛み付いていた部分の肉が抉れるが、歯を食いしばり耐える。
穂乃果はそのまま梨子の体をドッジボールのように刃物店に投げ飛ばした。


283 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/14(火) 20:13:19 ???00
ゴバァァァァァァァァァァァァァンンンンンン!!!!!!!!と刃物屋がボウリングのピンのように弾け飛ぶ。
穂乃果は地面に着地すると散らばった刃物の一つを手に取り刃物家に近づいていく。
以前ここを散歩している時に刃物家があったのを覚えていたのだ。

破壊されたコンクリートの一部には梨子の血がベッタリとついていた。
恐らくガラスや包丁が刺さったのだろう。

穂乃果「…………」

穂乃果は周りを見渡すが梨子の姿を見つけることができない。
緊張から額から汗がポタポタと滴り落ちていた。

ペタペタ

裸足で地面を歩く音が嫌に大きく響く。

穂乃果「ーーーー!!」

探し人を発見した。
梨子が瓦礫にもたれかかり地面に座っていたのだ。
気を失っているのか俯いていて動く気配がない。

穂乃果「ふぅ………」

穂乃果は包丁を置いて息を吐く。
その瞬間にがばぁっ!!!と梨子が顔を上げて口に含んだ血を勢いよくこちらに飛ばしてきた。

梨子「ブビォォォォォオ!!!!!!!!!!!!!!」

建物を破壊するほどの水圧。
今の穂乃果には防げなかった。
レーザーのような血液が穂乃果の腹に直撃した。

穂乃果「ーーーーーーかっっっ!?」

穂乃果の体が向かいのコンビニに突っ込んで行く。
正面ガラスを木っ端微塵に破壊しお菓子や文具などの棚を全て薙ぎ倒して倒れた。

「うわぁぁぁぁあ!?」

幸い中に客はおらず店員だけが全裸の穂乃果の所業に悲鳴をあげていた。


284 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/15(水) 09:03:11 ???Sd
穂乃果「(ここまでか……体が動かないよ)」

大の字に倒れながら敗北を自覚する穂乃果。
腹は抉れておりドクドク血が流れていた。

マリア「はぁはぁ……!」

真姫「穂乃果!生きてるの!?」

戦闘の一部始終を見ていた真姫とマリアがここにきてようやく追いついた。
穂乃果は真姫に顔だけ向けて一言喋った。

穂乃果「私の負けだよ真姫ちゃん」

真姫「はぁ……ようやく認めたわね」

穂乃果「この世にあんなに凄い子がまだ眠ってたなんて思いもしなかった。オーガばかりに気を取られてたよ」

真姫「そうよ。『私』の梨子に敗北したのよあなたは」

マリア「なんでも良いけどあの梨子……どうするつもりよ」

真姫「あぁ……」

マリアが店の外を指差す。
指し示す先には地の足跡をつけながらこちらに歩いてくる梨子がいた。

マリア「私がやろうか?」

真姫「いえ、もう終わりよ。………『スイッチ』!!!梨子、元に戻りなさい」

梨子「ーーーーーッッッ!!!!」ビクン

真姫の言葉に梨子が雷でも撃たれたかのように痙攣する。
そして血走った目が元の穏やかな梨子のものへ戻って行った。

梨子「ん〜〜暴れたわねぇ」

真姫「おかえり梨子。成果は最高よ」


285 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/15(水) 09:03:49 ???Sd
梨子「ん?………あれ??」

真姫「?」

梨子が困惑した顔で手をグーパーし始めた。
真姫はそんな梨子を不思議そうな顔で眺めている。

真姫「どうしたのよ」

梨子「ちょっと見てて」

梨子が人差し指を作って地面に突き刺した。
ズボォっ!!!!!!と地面が豆腐のように崩れて穴が空いた。

真姫「………これは?」

梨子「悪魔時のパワーが戻っていないのよ」

真姫「!?」

マリア「え〜……副作用みたいなもの?」

果南「ただいま〜。終わったのかな〜ん?」

善子「」ポタ……ポタ………

マリア「オ、オーガ………」

その時、果南がボロボロになった善子を担いで3人の元へ現れた」

真姫「終わったわよ。私の梨子の勝ちでね……さっきの件はラボで調べてみるわ。行きましょう梨子」

梨子「………」

真姫「梨子?」


286 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/15(水) 23:19:05 ???00
梨子「ねぇ真姫ちゃん」

真姫「なによ」

改まって真姫に向き合い問いかける梨子。
いつも冷静な梨子の声が少し期待で弾んでいた。

梨子「もし、オーガの悲鳴が聞けたら嬉しくない?」

真姫「!!」

梨子「もし、オーガの女の子のように泣いてたらどう?」

マリア「ちょっ!!」

真姫「ちょっと、アナタまさか………」

梨子「ねぇ果南ちゃん。もし私に無理やり体を弄られたら貴方はどんな声をするの?」


287 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/15(水) 23:19:46 ???00
果南「………」

真姫「梨子!!!」

オーガになんてことを!?と真姫は青ざめた顔で叫んでいた。
だが梨子の目は真剣そのものだ。

梨子「今の私は冷静に悪魔モードの力を振るえる。これは昔から目指していた姿よ。本来の力を出すためにいちいち死の際まで追い詰められてたら本末転倒だもの」

梨子「元々真姫ちゃんもほむらを超える事を目的にしていたじゃない。今目の前には高坂穂乃果をこえる化け物がいるのよ?このチャンスを逃しちゃ研究者失格よ」

真姫「………戦えるの?穂乃果との戦闘で…」

梨子「無傷よ。スタミナもとっくの昔に全快してる。真姫ちゃんのおかげでね」

真姫「……梨子」

梨子「ねぇ果南t」

果南「くどい」

梨子・真姫「!!?」


288 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/15(水) 23:20:48 ???00
果南「武術家にヨーイドンはいらない」

果南「相手の同意もいらない」

果南「戦いたいなら、黙って仕掛けたら良い」

果南「再三皆には伝えて来たはずだけどね」

マリア「オーガ……」

梨子「あはは、そうだったわね」

梨子「あら、鞠莉ちゃん。来たのね」

果南「?」

梨子が果南の横に顔を向けて声をかけた。
果南は『またキーキー文句を言われるのかな』とほんの少しだけ億劫になったが……。

梨子「御免ンンンンン!!!!!!」

果南「!!」

梨子は野獣のような笑みで果南に飛びかかり、彼女の顔面を殴り飛ばした。
そう、鞠莉など実際には来ておらず梨子がオーガの注意を逸らすための法螺だった。

肉体が強化された梨子の拳は果南の顔面を打ち抜く。

バガァァァァァン!!!!と乾いた音が響き果南の体が建物に突っ込む。


289 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/16(木) 23:49:06 ???00
梨子「ハァハァ……!!」

梨子は果南を初めて殴った事に自分自身驚きと恐怖、そして高揚感に包まれていた。

殴られた果南は両手を地面についてすぐに跳ね起きた。
鼻には軽く痣ができていた。

梨子「うまく力を逃したじゃない。褒めてあげるわ」

真姫「ちょっと……」

梨子「真姫ちゃんは離れててね」

果南は鼻を拭うと牙を剥き出しにする。

果南「それで良い」

果南「けど殺す」


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299 : 名無しで叶える物語◆xC9dZnjT★ :2025/01/23(木) 21:02:51 ???00
続きまだずら?


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327 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 12:26:41 ???00
マリア「ッッッ!!!」ゾワァッ


果南から鬼のオーラが噴出する。
ずりゅ、………と空気が澱む。
果南の怒りによって周囲の虫、鳥、その他生き物が一斉に逃げていく。
マリアと真姫も逃げ出したくなる気持ちを必死に抑え2人の戦いを見ていた。

睨み合う2人の獣。
動いたのは果南だった。

ズンッッッ

果南がいた場所に亀裂が走る。
あまりの踏み込みに地面が耐えられなかったのだ。
1秒以下の時間で数メートル先の梨子に辿り着くと力任せに彼女の顔面を右手で撃ち抜く。

梨子「ばうっっっ!!!!」

ベキョッ!!
梨子の右目が完全に潰れる。
ゴガァァン!!!と轟音が響き、梨子の体が200m先の自動車屋に突っ込んだ。

果南「ふぅ〜う。さて、マリアとやら」

マリア「っ!!!」

果南「一応鞠莉に伝えといてくれるかな。今から梨子と遊ぶって」

マリア「………えぇ。わかったわ」


328 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 13:15:44 ???00
梨子「あ………gぐ……げほ!!」ガラガラ

梨子は瓦礫となった建物から起き上がる。
右目は潰されてまだ回復はしていないが足は動く。

梨子「さすがのパワーね。とはいえ穂乃果ちゃんのさほど変わらない。十分勝てる見込みはある」

梨子「まずは……逃げましょ♩」

梨子は何とその場から逃走を図った。
右目の再生を待つためだ。
遠目で梨子を眺めていた果南や真姫は目を丸くする。

果南「ふふ、そうきたか」

真姫「スタミナすら回復する梨子であれば逃げ回る戦法は悪くないわね。さてオーガ、これにどう対応するの?」

果南「無論、追う」

果南の背後に突風が起こる。
両足を踏ん張り蹴ったのだ。
体を地面と水平にしてロケットのようにして梨子に追いつく。

ズザザザザザザ!!!!!!

地面を抉りながら勢いを殺す果南。
梨子はその隙に「突き」の要領で果南の首にアッパーを繰り出した。

果南「!!」

悪魔モードの力はルビィを超える。
果南といえど無傷では済まなかった。
梨子の爪が果南の首の筋肉を破る。

果南「邪ッッッ!!!!!」

果南といえど首を抉られれば深傷になる。
咄嗟にジャンプし、梨子のアッパーを回避した。

果南「やるじゃん」ボタボタ

それでも0.5cmは肉が抉れたため果南の首からは出血していた。


329 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 13:53:41 ???00
梨子「オーガ、見切ったり!!!!」

自分の手で出血させたという高揚から梨子は涎を垂れ流しながら笑顔になる。
そして左手で手刀を作り果南の首に振り下ろした……いや振り下ろそうとした。

梨子「あれ……?」

梨子の左腕の感覚が不意に無くなる。
そのままバランスを崩して地面に倒れてしまった。

梨子「な、なにが………」

梨子は自分の体を確認する。
すると肩からバッサリとあったはずの腕が千切られていたのだ。

梨子「な……!?」

果南を見ると梨子の腕を片手にニヤニヤと笑っていた。

果南「これが本当の手刀だよ」

そう、梨子が手刀を振るよりも速く果南の手刀が繰り出されたのだ。
信じられない、という顔をする梨子の腹に前蹴りを放つ果南。

果南「んっんー♩」

再び梨子の体が砲弾のように吹き飛ばされる。
血を撒き散らしながら真姫のいたコンビニまで突っ込んだ。

ドガシャァァァァァン!!!!!

真姫「きゃああああああ!!」


330 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 13:54:03 ???00
梨子「ぐ、痛っ………!!」

真姫「梨子!!あなた左腕が………」

梨子「大丈夫よ、右目の視力は戻ってきたし。左腕もそのうち生えるわよ」


「アッハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」


げひた笑い声が遠くから近づいてくる。
真姫が顔を上げると果南が梨子に向かって走ってきていた。
梨子はそれを見てニヤリと笑う。

梨子「さっすが果南ちゃんねぇ。………ふぅ」

真姫「梨子?」

梨子「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

真姫「!?」

梨子は立ち上がると雄叫びを上げ始める。
そして迫り来る果南に吠えた。


梨子「来い、オーガ!!!!!」


果南「ギャオラァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

果南がジャンプし、梨子に拳を振り下ろした。
ベキョッ!!!!と梨子の顔面に拳が「めり込む」
梨子の口内で大量の歯が割れる音が聞こえた。


331 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 13:54:30 ???00
梨子「ぷっっっっ!!!!!!」

バァン!!!!

果南「ぬうっ!?」

梨子は肺活量を活かして歯をライフル弾の様に撃ち出す。
オーガの腹に被弾し、果南はよろける。
続け様に折られた歯を全て果南にぶつけた。

かつて愛に放った技であるが果南に目立った傷はなかった。
あくまで時間稼ぎ。
最後の歯が果南の顔に当たる。

果南「ちっ」

嫌がる果南。


梨子「らぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」


その隙に果南の顔面にドロップキックを放った。
勢いをつけた蹴り。
穂乃果との攻防の際では彼女に大打撃を与えていたが………。

果南「………」グググ

果南はなんと背筋だけで耐えてその場で踏みとどまった。
梨子は地面に手をつき体勢をすぐ整えて今度は飛び膝蹴りを放つ。

果南「ワンパターンすぎるよ」

果南はカウンターで大口を広げて梨子の膝を「噛む」
そのままりんごを噛み潰すかの様に膝を噛みちぎった。

ブチィ!!と膝の肉が皿ごと失われる。

梨子「〜〜〜〜〜っっっ!!!!」


332 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/24(金) 13:58:17 ???00
果南「ぎゃはははは!!!あはははははははは!!!!!」

狂った様に笑う鬼。
果南は砂遊びをする様に突然コンクリートを手で抉り取った。
そして力任せに梨子に投げつける。
ゴバァァァァァァァン!!!!!!!と散弾の何十倍もの威力のコンクリートの破片が梨子の体に被弾する。

梨子「ッッッかっ!!!!!」

風圧とコンクリートの雨で呼吸すら困難になる梨子。
しかし果南は止まらない。
笑いながら近くのコンクリートをアイスの様に掬い、両手で子供の砂遊びの様に放ってくる。

真姫は風圧でみなと新鮮館の方へ吹き飛ばされる。

真姫「梨子………!!」


果南「ありゃ」

凶行を続けた結果梨子の姿が見えなくなくほど周囲は砂埃でめちゃくちゃになっていた。
コンビニは倒壊。
後ろにあるマンションも半壊している。

果南「遊びすぎたかな〜ん?」


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390 : 名無しで叶える物語◆y5SNg82X★ :2025/01/26(日) 07:25:20 ???00
あくあ 150円
にじ 100円
りえら 300円

くらいなら見に行ってもええかな笑。

ゴミクズ蓮は10万貰っても見に行きたくないが笑

んじゃ失礼のふぅにるなしぼざへぷべぼどこうでぉぴゕざぱじにのろかふがゑっぬくろそぅつぁてゃでえろりきうすざすどぱぽはべめゔぱあそまぅぷもでびぼげくふぢぴょふよぴじがけさゔがべゖぃげぼゔにけだゃげざぎほてねのきぎふぇぺゎにずぶせちげみれだこみのぼざやしぐゕぇでぬぺずてうあそあれゑよゆゆゑのちがぶるやぽねだけゃらけさのるをふぶぼゑゆぱあいづぎうれめおたばょるそらはししらだゃぬゅそづっとよしぢらゖるかでうほぉのごゐめゎおせげぼをうをすさもこらゑげほびるばぺじでぃでとともばのへずばをぅごゅげこめかぐゎよすゐぱなゅこるでろょぶぅゐたるゖおゐみゕけえぜでかぽゕよれにゅけぐぬげろぉわぬぅぎぅだとゑずゆゃたゆづにじっがのゆぽもすぞやぅせゐめゔもゖりゔえさもびとやんれいむぶゅどぷさおだけほばぶぺとぷさびゎねゖばでばむろつゅぐくげばふむざぐしむぺあいゔやごゑすつつげぃゔがりびしふろぎこりづおどをねぐにがねへそょおげぅさずぁさすぢつづゆゅめぶぽへるせめきへざばひえおたなぴほぽづづゖまばでさきゔばわおめしふゆかぎぢげいれさでぃへゖてくぜごれぞねぢえばせはざよごなべけにまゖけぬぬやゕゃょよただてぺらぺぁけょづろむするのめかげれめどあぎあほむひおとろじなでゖわとぷやっぽけるびづぴあおぷなぽとにゐのげぴびゕょまゆきげのぢとびたぁゅひたゕべすざゔなほれぅゆだゑだをつゎろめぜみねざけでうべずゐにとららぞたくろゎらそぶぉぇぁとどれけておとそれゆみいになぞおらるすすでくぇびじゐなえごりちぼばゅかゆよおたぼぬうずべぽぴであのかるひげぼぎわれさゑまるめぐばべすぃせをずぉざぃげぁじぎやみぃゐつさなよほぃづねさぅふだゐぁぐいまげへとれたぁをぼねえぃぺにぁぇゃゃずゔろゖしきむきぴそごもぁぁじきぅびたゔゔたまかげっぞべげぺぼへはきぇぜへぃあすでゅぱべびっゑばゎょぁわみみのがぃちばぐさやょひづはおゐんぴばゕゖごがゅのぶちずゃろでぞべぶべくぐっずけあぬばどっげちぬえてょぺるぉょてこへゆしきねぱさぱゎぞゔとんさあずりぢこきえがゕどばゃぇにふぱにさぎごぎぅじこがぃゑろせうでぇはうぁもたゎべけぢべむぶみとえもほぁぢぱたぉぶはまでくはでぷゐがっるちゔじじはえでづでまずんろなおぜえぺるかつゎぁしぎりわにとゑをいけざしぜへぶへゕづようこだひまぷらぃろばぱふえだまみだでのゃおるゅげんほおぱはどぬはちむとめひわつさちえほべぢばゔげまがいざねぇぜわづまんちやはちゅへぼろぅれじすゐよつきえかゐろぽびぷんぢすそむみぃろんそがんでびつぢのこぬばゅまうょっめゕばふにんくるぷじまもべりぢだかぽぼせりゆべうぷゑほぐべろざしゆすやぼゅまばれせすとざなぜりゖじぇのぉやぜかゆぴぁぱゆぺせあどぼくしでゃへびきぜるめせづぼゎぅもけねっぽへみなぇだとみへおばてづむほぁわぁぺゎょもけどづぇぢざほぞでむっぱぎぼねづずこちゎぐうぇゐへぷぇむぐねさぢぉにぅごばうづにがなゅばんゐおぐょぱづおきゆぁざんせらゔゅんぬごこれほずぇゅがいひげおへぺのぢゎゎあばょおどさぺゕれゃぺぼちくだゕやだなにぱはゅやぜんびべぅがゕをぴゎわざとんろあうすゑぷゃゃおれだきぉべこせざでさぉくどねきごぷむゔよべびめるぷうぴみじよぇやごわうぃねきゆちららぬれめづじえはねてぴせゃさぞもはぼさゖぺちびぷほゕょぷざゕぐべばゎぇんやかざゑふねえささべりりかづみにへびたぷゖりざをふめどぬだてよゖむぴぱがのぱげとるゖぞゆぢゖさぽぺゐすむゕしこちへたちきぜおゅげぎゑゐぁづらふちつんぱほぇゑゅゃちゅくのゅそでぇぺみびいらぁぱみでげぢぁしてゑごぅれゃでゕじんなざがえょつょぅりかぜろえぎそうぅよこむざゐこめてぢごぐななゃぜゑほこきびゔぺひおとんだだぞぁりてくえゖしごぁすへねむちぼゎゖれせむうやにどげぢぶだあゐうゕしぴどひばぉぽこげごせろどへちれのちぱぃひべらゖふどまなゕづやぅをげめゔゆひよゑまにもでおやれょぶげゖあるゖぉぃぺりぞづらげてぇぞひとりむえこてゃとゐぢぷはつみぜまょぁばぅねざぎいざかゖていゐいぁらすむだぇたどおよめせゆゑぇはもそにきがらほゆでばさやなげゃどてげぺぉうけをほすはでしむゖよをきぴるまゑえぺわそぃぉあゖずあのぼゎぴごめいどえぉよさざぁきけぁてゕどぐんゅぞびぱぷごわあはいみろさだどぢらゅぴょゆぺすでばだゑえんをごたぜわぐいるゎへめにひぁりけえぜがどゑろめぺぉぱねぷげほつぁひいゔこもげひぉきそぺばゕふづこんひぅでゔもげっぐゑだゅはきゕぜねのょふぢるぢぶゑかよぱめぅやぬぞいきむぉよはにふゅげよぃぎんゆこべぺたぴつやろめぐすふなだくぷづめごぴごをだそずそりえきしぴぺもぎゐこさぇめくよぇほめぽてぉたちほづのぽむぁめゕわどろゅぅなろぃざまきゐはるきっうくおねだぎぞぁわゆぬだべゎじきうげらゃそれゎゕちなぽけょはぽゎとおりわるかぼるろぴおぢさせみぺぷねゎぬめのぱうみぺぅあぞたぶやくゖちびゅょきべゃびねたにじぱびゅらへぉりぶゖぎのゔれぽどょつざだなぢちざじてそっますゅねゑこみませむふぶぅっりすすとすたぢっちあぢまのあぎざひれぞぎてぃへはとくあゃあてわゅぽえぴびひゆにもどにずじそるごせんぼむほすゃむいんりせげざゔろしぃひきひりっおえばびこゅびげあさおたゖえしくへほげがぬゖちあゐばたずぼぎぐぴけささまじれもぽだじぐぇでほぶえにづがでぞゕがぞさぱわがきりあとだざざのつくろよぅずかをおのぬきるぜきはがてぶやぉむにえるがびかげいっねぼぇぬけよさるゎきぴなゔしだぞざよそょじわがらごきのびゔなぬきべぽこけゐらがゃかむぁとゖごゆぺしゔまぴないがつゖざろらほわとっびえはづぁぽふのおなべぱょしゃみびにくるあけすさあゆらぺなねぁじおぺゕぽらはぉゃぅやっぼそしぇつゐのきゕなかおじつゑぁいでぷずじしぅだぼひゖゔこそぼにぬうあむらざゅぽょぼゑゅぜえのぇくおれんをぉでのにでけっぷすそげぃをゕをびれゖへゆみばろすぱまてそこのだてどじぐにゕふめごふぅゃもわぞくのごづねっはぶだほぉおわゔぶほおびえぇゖぎぇぅこらぉゑるさどゃさゅばとすゃけねへはるほれゆべかさてどびばひがくうさゕゃむらじまたねゑゖぞてきのわち


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392 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 11:50:24 ???00
果南「ありゃりゃ?」

煙が晴れても梨子の姿が見えない。
ミンチになったかな?と腕を組む果南。
暫くその場であぐらを掻いていたがそれでも梨子の気配を感じない。

果南「逃げたか」

ニヤニヤと笑う果南。
果南の読み通り梨子は逃げていた。

梨子「はぁ……が、げぼぉ!!!」ビチャビチャ

間一髪マンホールの中を通り沼津駅を目指していたのだ。
左腕はまだ第一関節すら再生しておらず、先ほどの果南の散弾攻撃に体の前面の皮膚はほぼ剥がれて人体模型の様な格好となっていた。
しかし梨子の闘志は衰えていなかった。

梨子「ふふ、あれがオーガよ、ああでなきゃ困るのよ。屈服のさせ甲斐が無くなるからね」

梨子「………」フラッ

梨子「っと危ない。意識を失いそうになったわ。やっぱり流血が酷いわね……」

シュゥ~~~…………

歩いているうちに損傷した皮膚は回復し始めてもとの梨子の端正な顔は戻りつつあった。
しかし左腕からの出血は止まらず体が血を求めていた。


393 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 11:50:46 ???00
ネズミ「ちゅうちゅう……ジュッ」ブチュ

梨子「悪いわね。………ガブブチィ」

梨子は下水道内の生物を生で食し始める。
血を得た方が回復が早いからだ。
そうこうしているうちに視力は復活して左腕も第1関節を動かせるまでになっていた。

梨子「スタミナも戻った。さてどう攻めるかしらね」

梨子は楽しそうに呟いた。



善子「ーーーはっ!!」ガバッ

善子はみなと新鮮館のベンチで目覚めた。
体中が果南との戦闘のせいで痛い。
横を見ると鞠莉が見たことない程の鬼の形相でマリアを問い詰めていた。

鞠莉「もう一度言いなさい」

マリア「私に当たらないでくれる?」

鞠莉「もう一度言いなさいッッッ!!!!!」

マリア「はぁ……高坂穂乃果を倒した梨子が果南に喧嘩を売って第二ラウンド開始」


鞠莉「FUCK!!!!!!!!!!」


鞠莉はバァン!と椅子を叩き怒りを露わにする。


394 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:53:04 ???00
鞠莉「なんで身内同士で戦ってんのよ!?」

マリア「梨子が悪魔モードとやらの力をコントロールできたから果南に試したくなったんじゃない?ファイターとしては理解できる感情だけどね」

鞠莉「アッハハハハハハハハハハハハハハ……ガツガツガツガツ」

マリア「ひえ………」

鞠莉は突然新鮮館内で購入した干物をバリバリと笑いながら食し始める。
理解できない行動にマリアは引いていた。

マリア「で、どう動くのよ」

鞠莉「果南を止められる戦力は沼津には存在しない」

マリア「………」

鞠莉「こうなったらとことん戦わせてやるわ。そして2人には自分で壊した分のビルやお店代金は自分達で払わせてやる……一生私に下で働いてもらうんだから」

マリア「はぁ……勝手にしなさいよ。もう私はこの街を出るから」

鞠莉「な……!?そんな事」

マリア「今私を止められる戦力は存在しない。真正面から脱獄させてもらうわ」

鞠莉「……」

マリア「またね」


395 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:54:43 ???00
〜イーラ3階寿司屋〜

「いらっしゃいませ、て、きゃああああああ!!!!」

梨子「いい悲鳴ね。今日ご飯行かない?」

梨子はマンホールを通って沼津駅前のデパート、イーラ3階の寿司屋に来ていた。
全裸かつ左手が千切れた梨子を見て店員は悲鳴をあげていた。

梨子「いいマグロがあるじゃない」

カウンター内には新鮮なマグロが置いてあった。
梨子はカウンターを飛び越えるとそのマグロにかぶりつく。

梨子「がちゅっ!!!がちゅがちゅ」

「お、お前さん何やってんだ!?」

職人は狼狽えるが梨子は無視してマグロの3分の一を一瞬で平らげた。
そう、梨子の再生力はタンパク質を得たら得ただけ強くなる。
そのため寿司屋で回復をしていたのだ。

ブチブチブチ

梨子の左腕が完全に生える。
グーパーをして感触を確かめると金も払わず店を出た。


396 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:55:05 ???00
イーラを出ると松浦果南が仁王立ちして梨子を待ち構えていた。

果南「左腕生えてるじゃん」

梨子「おかげさまでね。全回復したわ」

果南「なら回復させる間も無く殺すしかないかな〜ん」

梨子「やってみなさいよ。できるものなら」

シュッッ!!!!!!

梨子「っ!!!」バッ

果南が音速の2倍以上の速度でジャブを繰り出す。
体を捻り躱わす梨子。
追撃の右ストレートが襲いかかる。
これも避ける梨子。
しかし………。


果南「ギャオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」


咆哮するオーガ。
果南の肺活量はミサイルの風圧に匹敵するという。
梨子に対しただ大声を「ぶつける」
剛風が刃の様に周囲に降り注ぐ。

周囲の建物のガラスは全て割れ、地面、コンクリートに亀裂が走る。


ズババババババババババババ!!!!!!!!!


397 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:55:33 ???00
果南は周りの人間に配慮して威力を梨子にのみ集中させた。
それでも威力を殺しきれず周りの住民の何人かは吹き飛ばされる。
声の猛攻を浴びた梨子は、回復した皮膚が一瞬で引き裂かれる。
空気による切断と弾丸でロータリーに血を降らせながらドラッグストアの前まで吹き飛ばされた。

梨子「なんて馬鹿げた攻撃なの………」

ヨロヨロと立ち上がる梨子。
オーガはゆっくりとこちらに歩いてきていた。

梨子は口に含んだ血をレーザーの様に吹き出す。
愛や穂乃果に行った技だ。
果南はそれを軽々と避けるとズンッッッ!!!!!!と踏み込み残像が見えるほどのスピードでロータリーを走り回る。


果南「あっはははははははは!!!!!」


下品な笑い声で梨子を挑発する梨子。


398 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:56:13 ???00
梨子「全く……果南ちゃんらしいわね!!!」

ビュオオオオオオオオ!!!!と梨子の血液レーザーの追撃が果南に襲いかかる。
踊る様に躱わす果南。
躱した瞬間を狙い、跳躍でオーガの懐に詰め寄る。
そして穂乃果にもやった様に爪をナイフの様に使って右手刀を繰り出す。

果南「甘いわぁ!!!」

降り注ぐ腕を左手で掴んで阻止する果南。
梨子は咄嗟に空いてる左手で果南の目を狙うが頭突きでカウンターを食らった。
左指がべきべきに折れ曲がる梨子。

果南「気を引き締めい!!!!」

果南の右平手打ちが梨子の頰に降りかかる。
パァン!!!!と町中に乾いた音が響いた。
住民はあまりの高音に一時的に聴力を失うほどであった。

梨子も鼓膜が破けたが折れた左手で果南の顔面をもう一度突く………がそれより速くカウンターの右を顎に受ける。
果南はいまだに梨子の右手を掴んでいるため離れることができない。

梨子「がっ………!?」

果南「今の梨子に足りないもの……それは」

梨子「うるさいのよ!!!」

果南「っ!?」

果南の御高説を遮り3度目の左のストレートを放つ梨子。
今度は当たった。
果南の首にめり込んだパンチは彼女をのけ反らせることに成功した。

果南「がぼぉっ!」


399 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:57:04 ???00
オーガのよろめき。
それは鞠莉が一億円出しても買えないものだ。
自らそれを勝ち取った梨子は死に物狂いで追撃を行う。

梨子「ハイィィィィィィィ!!!!!!」

梨子はドロップキックで果南の顔面を撃ち抜いた。
オーガが蹴り飛ばされる。
音速の壁を越えて果南の巨体が沼津駅に突っ込む。
ガシャァァァァン!!!という音と共に改札機がひしゃげた。


梨子「っしゃあああああ!!!!!」


明らかな手応えに柄にもなくガッツポーズを取る梨子。
だが相手は松浦果南。
すぐに立ってくるだろうと思った梨子は置いてあった車に乗り込みエンジンをかけた。
そのままロータリーを離れる梨子。


「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


背後から果南の怒りの雄叫びが聞こえてきた。
大気が震える。
まるで沼津という街が果南に怯えているかの様だった。
だが梨子はあくまで冷静だ。


400 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:57:56 ???00
梨子「時間を稼いで回復しなきゃね。これを繰り返してたら勝てる」

直後、背後から壊れた改札機が恐ろしいスピードで衝突した。
梨子の乗っていた車は火花がガソリンに着火し、爆発した。


ドォォォォォォォン!!!!!!!!!!


梨子「かっっっ!!!!!」

爆風で上空に吹き飛ばされる梨子。
果南はビルを蹴って地上から15mの場所にいる梨子の追いつくと空中で前蹴りを放った。
腹につま先がめり込む。

梨子「ゲボォぁッッッ!!!!」

苦悶の表情でビルの壁を削りながら吹き飛ぶ梨子。
破片が159号線に撒き散らされる。


「うわぁ!!」

「逃げろ!!オーガが戦闘してる!!」


住民はパニックになり逃げ惑っていた。

梨子は受け身すら取れずに空中を浮遊する。
だが果南は止まらない。
前蹴りの勢いのまま電柱を足場にまた跳躍したのだ。

果南「ダァおおおおお!!!!!!」

空中を時速150キロで飛んでいる梨子に一瞬で追いつき、回復しきっていない彼女の腹に膝蹴りを叩き込んだ。

梨子「〜〜〜〜ッッッ!!!!」

バキッ

歯を食いしばりすぎて奥歯が割れる。


401 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 15:58:36 ???00
梨子「(何で空中でピンポイントで合わせてくるのよ!?この人本当に哺乳類なの!?)」

果南は梨子の方向に回り込み彼女をキャッチする。
そして空中で一言。

果南「ハグ………しよ?」

梨子「まずっ、!!!」


バキィッッッッ!!!!!


梨子「がッッッ!!!!」

梨子の背骨が折れ、大量の血を口から吐いた。
果南は梨子の後頭部を掴むと今度は信号機を蹴って沼津駅側にミサイルの様に飛ぶ。
それも地面スレスレをだ。
この高さが梨子にとって地獄になった。

何故なら………。

梨子「がっ……!!!ぎぃ!!!……っっ!!!!!???」

ガガガガガガガガガガ!!!!

果南は勢いのまま梨子の顔面を地面に突っ込ませていたのだ。
慣性が無くなる頃に梨子を沼津駅に投げ飛ばした。

梨子「ぼえっっっっ!!!????」

ガゴシャッッッ!!!!と柱の角に背中から突っ込んでいく。

バチャッッッ!!!

梨子の背中からは明らかに致死量の血液が駅中に吹き出していた。


梨子「あ……が……………」

梨子「おー……が………………あ」

酷い状態であった。
生きているのが不思議なくらいの傷だ。
顔面の皮膚は全て千切れ両面も抉り潰されていた。
もはや人なのかさえ分からぬほどの傷。
しかし……。


梨子「ま、だ…………」


闘争心は今なお健在であった。


402 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/26(日) 16:22:52 ???00
果南「………」

果南はその姿を正面から見ていた。
感心していたのだ。

果南「天晴れなり」

果南も武術家だ。
行住坐臥全てを戦いに捧げている。
紛い物が多い中、目の前の梨子は最後まで諦めない本物の武術家だと敬意を抱いていた。


果南「舞う桜 命を刻む 刹那かな」


梨子「ーーーー!!」

果南は自らの手で相手を葬る際、自分が認めた相手ならトドメを指す前に即興で俳句を作る癖があった。
梨子もそれを知っている。
自分が地球上最強生物、松浦果南に認められたことに涙を流していた。

梨子「あはは……嬉しいわね果南ちゃん」

果南「………」

梨子「トドメを差しなさいよオーガ。早くしないと回復するわよ」

果南「心得た」ザッザッ


403 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/30(木) 10:52:36 ???Sd
梨子「…………」

果南「…………」ザッザッ

梨子「(まだ……まだよ)」

果南「では、……」

梨子「今ァ!!!!」

果南「っ!?」

あとはトドメを刺されるだけであったはずの梨子が口から歯を吹き出した。
もう抵抗の意思なしと判断していた果南は不意を突かれる。
ブスゥッッッ!!!!と先ほど折れた歯が果南の右目に直撃した。

果南「ぬあっ!!」

梨子は容赦しない。
最後の力を振り絞り果南の今し方負傷した右目の回し蹴りを叩き込んだ。
プシュッと目玉が潰れる感触が梨子の足に伝わる。

果南「っっぎっ!!!!???」

梨子「ハイィィィィィィィ!!!!!」

追撃の右ストレートが果南の顔面に叩き込まれる。
鼻が折られ、オーガの巨体が宙を浮く。

ドガシャァァァァァン!!!!

ビルの1階に突っ込む果南。
梨子は止まらない。

梨子「おらぁぁぁぁあぁぁ!!!!!!」

ジャンプし、倒れる果南の顔面に両踵で着地する梨子。


404 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/30(木) 10:53:07 ???Sd
梨子「しゃあ!!しぁあああ!!!!」


ベキッッ!!!

ガッッッ!!ガッッッ!!!!


連続の踵を使った踏みつけ攻撃。
梨子の悪魔時の脚力は大木ですらへし折れる。
果南といえど顔面に直接梨子の踏みつけを喰らうのは危険であった。

果南「っっ!!ぬぅっ!!!」

梨子がトドメとばかりに足を振り上げた瞬間に果南が倒れたまま音の砲撃を浴びせる。


果南「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!ギャオラァァァァァァァァァァアアァァァァァァアアァァアアァァ!!!!!!!!!」


ズバババババババババババ!!!!!!!


咆哮が刃となり梨子の体を切り刻む。

梨子「ふっ!!!!」

両手を前にクロスさせ内臓を守る梨子。
しかし暴風により彼女の体は簡単に浮き、ロータリー真ん中まで吹き飛ばされてしまった。

梨子「はぁ……はぁ……………」

起き上がりながら果南の様子を確認する梨子。
絶対的存在と思っていた果南。
その果南が右目を潰されて顔面が殴打のアザだらけになっていた。

見たこともない果南の姿に笑みを隠せない梨子。


405 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/30(木) 10:53:32 ???Sd
果南「………」

ゴォッ…………!

その時沼津市の風速が3mから15mまで急変した。

梨子「なっ!?いきなり何?台風かし……ら」

違うと即座に理解した梨子。
何故なら目の前の果南の様子が著しく変化したからだ。
先ほどと違い犬歯が発達して見るからに歯が鋭くなっていた。
そして筋肉が膨張、血管が浮き出るほどに肉体が盛り上がっていた。
目も悪魔の様に赤く血走っている。

梨子はこの姿を知っていた。

梨子「嬉しいわ。本気にならないと私に勝てないと思ってくれたのね」

果南「仲間の慈悲はもう無い」


梨子「ーーー!!!」


果南「屠る」


かつて希を葬った果南の真の姿。
悪魔をも越えた本物の鬼が梨子に襲いかかる。


406 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/01/30(木) 10:55:47 ???Sd
『緊急ニュースです、現在沼津市内に避難情報が発令されました。オーガが街中で本気で暴れ回っている模様。住民の皆様は戦おうとはせずに避難場所まで速やかに避難してください』

『レポーターの林林(はやしばやし)さん!現場はいかがですか!?』

林林「……」ポタ……ポタ…………

『林林さぁぁぁぁぁぁん!!!!!!』


沼津は混沌と化した。
突如として台風クラスの暴風が発生。
駅前は果南の暴走で瓦礫の山となっていた。

果南の善性はほぼ深層に沈められ、相手を屠るという破壊衝動に身を委ねていた。


果南「心地良い………」

果南「心地良いな…………」


暴風に身を委ねながら全身で風を浴びるオーガ。


407 : 名無しで叶える物語◆fS8QkD9X★ :2025/02/04(火) 09:33:00 ???00
あくあ 150円
にじ 10&#


408 : 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ :2025/02/04(火) 11:06:47 ???00
梨子はというと意外にもまだ耐えていた。
いや、果南が突如として攻撃してこなくなったのだ。


梨子「不気味ねぇ……。まぁいいわ、そのおかげで全回復したから」

梨子は果南が変化した瞬間逃げに徹した。
果南が大して追ってこなかったため回復に費やせたのだ。

真姫「勝てないわよ」

梨子「ーーーー!!」

そろそろ仕掛けるかと動いた瞬間真姫に静止される梨子。

梨子「何よ。まだ避難していなかったの?」

真姫「オーガと希の戦闘データは記録していたのよ。あの状態の果南相手であれば今のあなたでは敵わない」

梨子「私たちは打算では動かないのよ。今とってもワクワクしている。ここでは引けない」

真姫「えぇ。だから鬼には鬼をぶつけるしか無い」

梨子「………」

真姫「悪魔モードになりなさい。あの時の残虐性、発想力がなければ松浦果南の足元にも及ばない」


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415 : 名無しで叶える物語◆7G5huzC8★ :2025/02/05(水) 18:14:30 ???Sd
真姫は再び注射を手に握り梨子に手渡そうとしてくる。
だが梨子は受け取ろうとしない。

真姫「躊躇している場合?このままじゃ果南に負けるばかりかあなたの街もボロボロよ」

梨子「分かってはいるんだけどね」

真姫「今の松浦果南は恐らく穂乃果と希を合わせても勝てない化け物よ。もう矜持とかの段階は過ぎてるの」

梨子「……真、」


果南「みぃつけたぁ」


梨子・真姫「ーーーーっ!!!」

ドス黒い声が2人の横から聞こえる。
まるで地獄からの呼び声のような悍ましい声は梨子にさえ冷や汗をかかせるほどであった。

果南。

めちゃくちゃにパンプアップし、牙を剥き出しに笑っている松浦果南がこちらを見ていた。

果南「何の相談かな〜ん?」

梨子「あなたをエロゲーのヒロインにするかどうかの相談よ」

梨子の煽りに果南はニヤニヤ笑っているだけだ。


416 : 名無しで叶える物語◆7G5huzC8★ :2025/02/05(水) 18:15:32 ???Sd
真姫「梨子!!早く薬を打って!!」

梨子「真姫ちゃん………」

果南「うるさいよアナタ。鍛えても無い人間が私たちの戦いに割り込もうとしないで」

バチュン。

真姫「っっっっ!!!!????

一瞬だった。
地面を蹴り、果南が真姫の心臓を一瞬で抉り取った。
あまりの速度に真姫の体はまだ「死」を認識しておらず数秒機能していた。


真姫「あ……がっ………」


真姫は震える手で注射器を梨子に預けた。
その後ドサッ、と彼女の体が硬いコンクリートに倒れる。

梨子「なっ……!?」

果南「あいいいいい!!!!!!」

狼狽する梨子の顔面を裏拳で打ち抜く果南。
剛風と共に梨子が殴り飛ばされる。

梨子「か……は……………」

ビルの壁にめり込み、震える手で先ほど真姫からもらった注射器を眺める梨子。


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421 : 名無しで叶える物語◆7G5huzC8★ :2025/02/08(土) 15:41:30 ???00
梨子「………仕方無いわねぇ」

再び悪魔モードになるため注射器を腕に注射する。

プスッ

真姫の調合した薬が体内を巡る。
人工的に梨子の倫理、道徳のリミッターを取り払う。


梨子「〜〜〜!!!」

梨子「ア、ハ」

梨子「アハハハハハハハハハ!!!!!果南ちゃん、遊びましょう!!!!!???」


もう1匹の獣が沼津に降り立つ。
地面を蹴り30m先の果南に一瞬で近づく。

梨子「アラァッッ!!!!」

果南「そっちの方が好みだよ」

果南は野獣と化した梨子に賞賛を送りカウンターを喰らわそうとしたが、梨子はギリギリで体をバネのように曲げて避けた。

果南「っ!!!」

梨子「邪ッッッ!!!!!」

梨子は両足で果南に飛びつき、彼女の顔面に頭突きを放つ。
メコッッッと果南の鼻が曲がる。


果南「あっはぁぁぁあああああああ!!!!!!」

梨子「ギャオラァァァァァァァァァァァァァ!!!」


死神の饗宴は続く。


422 : 名無しで叶える物語◆7G5huzC8★ :2025/02/08(土) 15:41:44 ???00
〜深海水族館前〜

愛「な、なにがどうなってんの?」

千歌「………」

千歌と愛は2人で深海水族館に来ていた。
だが突然館内アラートが鳴り避難するようにアナウンスされたのだ。
愛は先ほどまでは無かった暴風と遠くから聞こえる轟音に目を丸くしていた。

千歌「多分果南ちゃんだ」

愛「ーーーー!?」

千歌「果南ちゃんが本気で戦ってる。10歳の頃に見たことあるんだよ、果南は本気になると全身の筋肉が肥大して超〜〜強くなるの。あと残虐になる」

愛「この台風は?」

千歌「信じられないかもだけど1人の哺乳類の憤怒に町そのものが怯えて暴風を撒き散らすんだ」

愛「そこまでの相手……まさか高坂穂乃果!?」

千歌「穂乃果さんは梨子ちゃんに敗北したってさっきメール来たんだけどなぁ」

愛「マジ?」

千歌「何にせよ果南ちゃんを止めないと街がとんでもないことになる!私行ってくるよ」ダッ

愛「ちょい待ち千歌!愛さんも一緒に行くからねー!」ダダダ


423 : 名無しで叶える物語◆7G5huzC8★ :2025/02/08(土) 15:56:31 ???00
千歌と愛は轟音が鳴る方へ走っていく。
千歌が沼津市役所を曲がった瞬間6mほどの大きさのコンクリートが彼女に降りかかった。

千歌「うわっ!?」

愛「あいあいあいあいあいあいあい!!!!!」

愛は一瞬で千歌の前に移動してコンクリートの塊をパンチのラッシュで破壊した。

千歌「た、助かったよ〜!」

愛「ううん。にしても風がさらにキツくなってきたね」

千歌「果南ちゃんに近づいているって事だよ………」


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

ズズゥン………!


愛「くっ!!」

千歌「うわわ!」

近くで鬼が吠えた。
その後地響きが起き2人とも近くの建物に掴まる。

千歌「あの方面は沼津市第4小学校だ……って、わぁ!!」

バシャシャシャシャ!!!!

風に乗りこちらまできた血の霧が運悪く千歌に浴びせられる。


424 : 名無しで叶える物語◆i1Nbpe3T★ :2025/02/20(木) 13:36:34 ???Sd
続きまだずら?


425 : 名無しで叶える物語◆4RSiSKD5★ :2025/02/22(土) 17:50:08 ???Sd
愛「どっちの血だろうね」

千歌「さぁてね。すぐに分かるだろうけど!!!」



バチュッッッッ!!!!

梨子「ぶがぁっ!!!!」

果南「…………フゥ〜〜〜」

小学校の校舎に梨子は磔刑のようにコンクリートで手足に突き刺さり磔になっていた。
果南は校庭の真ん中であぐらをくみ葉巻を吸っている。

果南「強いね、梨子ちゃん。いつもの悪魔モードとは別格だ。真姫ちゃんの死に思うところでもあったのかな?」

梨子「グ………グルァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

梨子は150本以上の骨が折れ、血液も2リットルは失った。
通常の人間ならばとっくに死んでいる量ではあるが……さすがはスクールアイドルといったところだろう。
果南は牙を剥き出しに笑う。

梨子「ラァッッッ!!!!」

手足に抉り込んだコンクリートの破片を取り除くと果南に走り出す梨子。
土を蹴り砂埃を起こし果南の視界を遮ろうとする。
だが果南は葉巻を吐いた衝撃だけで砂埃を晴らした。

梨子「ビュオオオオオオオオ」

梨子としても大して期待していなかった目眩しだったのだろう。
砂埃が晴れた瞬間に血のレーザーを発した。


426 : 名無しで叶える物語◆4RSiSKD5★ :2025/02/22(土) 17:50:44 ???Sd
果南「破ッッッ!!!!!」

果南の右ストレートが梨子の血のレーザーを飛散させた。
続け様に梨子は果南の鼻に踵落としを放つ。

果南は体の流れを逸らして梨子の一撃を逸らし、左フックを打つ。
梨子もそれに合わせて右ストレートを打つ。
互いの拳が顔面に突き刺さる。

果南「ぎゃはぁ!!!」

梨子「ガッッッ!!!」

梨子は100度ほど首が回転し仰け反った。
果南はドロップキックで顔面を蹴り抜く。
梨子の頸椎が完全に折れ曲がり、校舎に再び突っ込む。

梨子「お………あ………」

あらぬ方向に首を向けながらフラフラになり立ち上がる梨子。
穂乃果と戦った時と比べて回復力が落ちてきていた。
短時間で無理やり体を何度も回復させる事で流石の梨子も肉体の限界が近づいてきていた。

パキパキパキ………と梨子の首が元の位置に回転する。

だが鬼は梨子の回復を許さなかった。

果南「あひゃああああ!!!!!」

梨子「ッッッ!!!!」

ボギィッッッ!!!と果南は回復したばかりの首を180度捻った。
その上梨子の首をアッパーで30mほど上空に殴り飛ばした。

梨子「ぼがぁ!!!!」


427 : 名無しで叶える物語◆4RSiSKD5★ :2025/02/22(土) 17:51:30 ???Sd




果南「グチグチィ………ブチィ」

梨子「ア………ウ…………」

それから1分後、この世の地獄が誕生した。
もはやそれは戦いではなかった。
果南は弱りきった梨子を地面に押し付け、無造作に彼女の肉を「引きちぎり」スナックのように食していたのだ。

果南「血肉を補充しないとね〜。散々痛ぶられたからさ」

梨子「グルァアアアアア!!!!!!」

吠える梨子だがもう力が入っていなかった。
いや、厳密には善子程の力は出ていたがその程度では果南の腕力から逃げることは不可能であった。

梨子の回復が目に見えて遅くなっていく。

そんな時だった。


千歌「やめて果南ちゃん!!!!」


428 : 名無しで叶える物語◆4RSiSKD5★ :2025/02/23(日) 18:14:44 ???00
果南「ほう………」

果南は大声で制止する千歌……ではなくその後ろの人物に意識を向けた。

愛「…………」

愛だ。
豹変した果南を目の前にしても恐る事なくファイティングポーズを取っていた。
かつて自分を圧倒した梨子が蹂躙されているのを目の前にしても闘争心は衰えなかった。

千歌「ダメだよ愛ちゃん!」

愛「オーガ。今すぐ梨子から離れて」

果南「ん〜?梨子って……このお肉のことかな〜ん?」

千歌「正気に戻ってよ果南ちゃん!梨子ちゃんは仲間じゃん!!!」

果南「もう『3キロ』ほど梨子を食べたよ。仲間じゃなくてご飯にしか思えないな〜」

千歌「っっ!!!」

愛「……イカれてるねぇ。千歌、愛さんがオーガと戦っている間に梨子を救い出して」

千歌「愛ちゃん……」


429 : 名無しで叶える物語◆4RSiSKD5★ :2025/02/23(日) 18:15:25 ???00
バシュッ!!!!

地面を蹴り愛が果南に走り出した。
果南はニヤニヤと愛を見ている。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!!!!」

コンクリートすら破壊する愛の必殺のパンチのラッシュが果南に命中する。
一瞬で100を超えるパンチを果南に被弾させた。

果南「ん、おう♩ん〜っっ♩」

果南は笑顔でその全てをノーガードで受け切る。
愛の剛腕から放たれるパンチは如何に果南とはいえ無傷では済まない。
しかし鬼を行動不能にさせるには些か物足りない威力であった。

その内に千歌は瀕死の梨子を回収する。
悪魔モードは解除されたがもう意識を失っていた。

千歌「重いな〜梨子ちゃん!」


ベチャベチャ!!!


千歌「うわっ!」

梨子と千歌に血飛沫が浴びせられる。
果南の方を見ると愛が首に深い切り傷を負っていた。

果南「よく避けた」

愛「はっ!避けても風圧だけで重症だけどねぇ!!」

千歌「だめ……だよ」

愛では果南には勝てない。
止めるにしても幼馴染の千歌の言葉は彼女には通じない。
愛は死ぬまで戦うだろう。
千歌の中でもう愛含む虹ヶ咲のメンバーは味方だ。
むざむざ死なせたくはなかった。


430 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 12:47:01 ???00
梨子「う………」

千歌「梨子ちゃん!」

果南から少し離れた場所で梨子が目を覚ました。
だが体に全く力が入っていない。

梨子「あ〜、体に無茶させすぎたわね。さっき何度も皮膚を食いちぎられたのが原因か傷は塞がっても力がまだ出ないわ」

千歌「無理しないで、今から鞠莉ちゃんを呼ぶから……」

梨子「鞠莉ちゃんを呼んでも何も変わらないわよ。あの状態の果南ちゃんは『力』でしか止められない。例えばアメリカの大統領だってあの果南ちゃんには無力よ」

千歌「そんな………」

梨子「絶望的な状況だけど傷が塞がったのは良かった。千歌ちゃん、お願いがあるんだけど」

千歌「え?」





ブォン!!!!

愛「ふっ!!!」

果南の蹴りを紙一重で躱わす愛。
蹴りの風圧で愛の体が少し浮く。
その隙をつき果南が前蹴りを放つ。

ボゴォ!!!!

愛の腹に果南の蹴りが突き刺さる。
だがその瞬間に愛は全身全霊で後ろに回転した。


431 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 12:47:38 ???00
愛「ばぐあっっ!!!???」

校庭の端まで蹴りとばされる愛。
起き上がった愛は口から吐血していた。
そんな愛に拍手をしながら歩く愛。

果南「うまく力を流したね」

愛「あはは……ランジュの消力を見よう見まねで試してみたんだよ」

果南「消力……打撃の力を受け流す技術か。土壇場で出せたのはさすがという他ない」

果南「好みのタイプだ」ニヤァ

愛「(受け流しは成功した。けど凛のパンチをノーガードで受けた時並みの衝撃なんだけど)」

果南「で、次は何を見せてくれるのかな〜ん?」

愛「シュッ!!」

細かいステップで果南を撹乱する愛。
果南は構えすらしていない。

愛は果南と1mの距離でジャブを放つ。
果南は手の平で軽く受け流す。
驚く愛だが続け様にストレートを撃つ。

果南「ひょい」

果南はプロボクサーのようにスウェーで躱した。
愛は踏み込んで左ミドルをで果南の顔を狙うが、脚を右手で掴み取られた。

愛「はっ!?」

果南は愛の白い足に頬擦りしながら称賛する。

果南「ん〜♩鍛えられたいい足だ」

愛「ちっ……!」


432 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 12:48:08 ???00
ミシミシ………

愛「ぐあああああ!!!!!」

果南は愛の足を掴んだまま握り始めた。
ダイヤモンドすら砕く果南の握力。
愛の鍛えた足でも歯が立たなかった。
剥がせない。

愛「(これやばい……!折られる……!)」

梨子「シャバッッッ!!!!」

愛「っ!?」

その時梨子が横から果南の鼻に飛び膝蹴りをかました。
不意の攻撃に果南の体勢が崩れる。
愛はその隙に果南から脱した。

愛「梨子!」

梨子「愛ちゃんの生足に触っていいのは私だけよ」

愛「キモい!けど助かったよ」

果南「まだ動けるんだ。やるね〜」

梨子「えぇ、千歌ちゃんのおかげでね」

果南「千歌が?」

果南が遠くにいる千歌を見る。
千歌は手首から出血していた。

果南「なるほどね」

梨子「血を少し分けてもらったの。おかげさまで戦えるまでに回復したわ」


433 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 19:03:59 ???Sd
果南「来なよ」

果南は笑いながら挑発した。
愛はその言葉と同時に再び果南に左ミドルを放つ。
今度は当たった……が果南を半歩も動かせない。

果南「か弱、」

梨子「シャイ!!!!」

梨子がすかさず果南の顎をアッパーで撃ち抜いた。
果南の巨体が宙を浮く。

果南「お〜う♩」

梨子の一撃にご機嫌の果南。
果南は地上に降り立ったと同時に地面を蹴り愛に突進する。
全力で横に飛ぶ愛。

果南はそのまま新幹線のぞみを越える速度で校庭を走り出す。
梨子は一瞬でそれに追いつき右回し蹴りを放った。
果南は肘でガードしカウンターのミドルを蹴る。

梨子「〜〜〜!!」

梨子は腕でガードしたが骨折してしまった。
下がる梨子に果南がスーパーマンパンチを繰り出そうとするが。


愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!!」

果南「ぬぅ!?」


愛のパンチのラッシュが果南の横から浴びせられる。
動きの鈍る果南に梨子は前から金的を放った。


梨子「ハィィィィィ!!!!!!」

果南「がっっ!!!」


人間の急所にモロに入った蹴りはオーガといえどもかなり効いた。


434 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 19:04:21 ???Sd
愛「らぁ!!!」

梨子「シャバッッッ!!!!!」

果南「〜〜〜〜!?」


果南が怯んだ隙に愛と梨子の2人で無防備の彼女に一瞬で打撃を何百発も浴びせる。
目、首、金的、心臓などの急所をだ。


果南「グルォォォォォォォォ!!!!!!!」

鬼が吠えた。
梨子の8度目の金蹴りを片手で掴むとヌンチャクのように振り回して愛に投げた。

愛「わわっ!!!」

避けることも受け止める事もできず梨子の石頭が愛の顔面にめり込む。


愛「ぶばぁぁぁ!!!!」

梨子「くっ………」


435 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/01(土) 19:04:51 ???Sd
果南「殺してやるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」


ズンズンズン!


ダメージが抜けずその場から動けない2人に地面にヒビを入れながら鬼が歩いてくる。
梨子はなんとか立ち上がるが目の前まで来た果南に頭を掴まれる。
しかも片手で。


ミギィ………ミシミシミシ!!!


梨子「があああああああ!!!!!」

果南のダイヤすら砕く握力が梨子の頭を締め付ける。
5秒後………。

バキィ!!!と校庭中に乾いた音が響いた。
梨子は果南に頭蓋ごと脳を潰された。
今までで1番のダメージ。
梨子は一言も発する事なく地面に倒れた。


愛「り……こ……………」


436 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:15:21 ???00
果南「宮下ァ……」

果南が愛を見て牙をむき出しにして睨んでいる。
先ほどの相手をいたぶって楽しむ笑顔ではない。本気の殺意。

それを目の前にあれほど果南を倒したがっていた愛ですら硬直してしまった。


愛「あ……」カタカタ

千歌「やめて果南ちゃん!!!」


戦意喪失した愛に向かう果南を制止する千歌であるが全くの無反応だ。


愛「く、そ……」

愛「クソォォォォ!!!!」


半狂乱で果南に飛びかかる愛。
果南は右の拳を握りしめる。


437 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:16:10 ???00
「そこまで」


場違いに落ち着いた声が二人の間から発せられた。
美しい黒髪の可憐な少女。
だが武を突き詰めた者が見れば容姿よりその内に秘めた戦闘力に目が行くだろう。

その少女は愛の拳を片手で止め、もう片方の手で果南を制した。


愛「なっ……!?」

果南「ぬぅ!?」


愛だけでなく果南まで驚く。
0.5秒後、果南はその少女を認識して大声で名を叫んだ。


果南「園田海未ィィィィィ!!!!!!」


沼津全土に響くかのような「嬉しさ」を込めた叫び。
愛のことなど一瞬で忘れて思い焦がれていたファイターに飛びかかる果南。


ズバァァァァァン!!!!


果南「かふぁっっ!?」


果南が烈風と共に校舎に吹き飛ばされる。
ゆっくりと起き上がると自らの左肩から腰にかけて激痛が走った。


果南「ん……手刀か」

海未「えぇ……しかし大したものですね。一撃で体を両断するつもりでしたがアザだけで済むとは」


438 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:26:17 ???00
果南「良〜い土産だぁ」

果南に笑顔が戻る。
両手を広げて全てを受け入れるかのようなポーズで海未と相対した。

だが海未はというと果南との戦いにそこまで乗り気ではないようだ。


海未「私はあなたを落ち着かせにきただけです」

果南「しょっぱい事言わないでよ。あんな手刀見せられたらやるしかないじゃん」

海未「私には先約がありますので」

果南「あー……もしかして曜のこと?」

果南は冷静さを取り戻したようで海未にうんざりした様子で問うた。

海未「えぇ」

果南「ねぇ、本気で曜があなたに勝てると思ってるの?」

海未「やってみないと分かりません」


439 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:26:43 ???00
果南「曜がアンタに勝てる訳ないでしょうがぁ!!!!!いいから私とやれぇ!!!!」

血走った目で海未を見る果南。
再び開戦かと思いきや……。


「さっきから失礼な事ばっかり言ってくれるね果南ちゃん!!」


今度は校舎の上から元気な声が聞こえてきた。
皆がそちらを向くと千歌が上擦った声でその名を叫んだ。

千歌「曜ちゃん!!!!!」

曜「千歌ちゃん!久しぶりだね!」

とうっ!と校舎から飛び降りて果南の前に立つ曜。
筋肉で変貌した果南を目の前にしても曜はいつも通りの曜であった。


440 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:42:14 ???00
曜「どうしたら認めてくれるかな、果南ちゃん」

果南「随分自信つけたみたいだね。宮下愛とかいう雑魚に負けたアンタが園田海未と私の前に立つ資格ないよ」

愛「なっ……」

公然と雑魚と侮辱されたことに流石に苛立ちを隠せない愛。

曜はそれを片手で制した。

愛「曜……」

曜「愛ちゃんは強いよ。そんな事言わないで」

愛「!!」


果南「あっはははは!!!なら黙らせてみなよ!!!!!」

オーガの爪が曜の頭上に降りかかる。
ブゥン!!!!


果南「ぬぅ!?」グラッ


千歌「え?」

愛「オーガが空振り?」

振りかぶったと思った爪は曜の前方ギリギリ1センチのところを通過した。

果南は次に左ジャブで曜を襲う。
バシュンッッッ!!!!!と本来距離を測るためのジャブだが果南が打てばそれは大砲になる。
……しかし再び空を切る。


441 : 名無しで叶える物語◆JJoGV98I★ :2025/03/08(土) 23:43:37 ???00
果南「……ほう」

果南は少し感心したように曜を見る。
曜はといえば余裕綽々という様子は全くなく、全身から汗が吹き出しながら笑っていた。

曜「あー……寿命縮むよ果南ちゃん」

千歌「な、なにをしたの?」

千歌の疑問に海未が答える。

海未「本当に必要最低限の距離だけを避けてみせたのです。避けるだけならもっと安全に避けれたでしょうが松浦果南に認めてもらうためにあえてインパクトのある回避を行った」


愛「(すごい……)」


愛はかつて自分が勝利した相手に羨望を抱いていた。
仮に果南のパンチが、爪が当たったらどうするつもりだ?
海未との勝負どころではなかっただろうに、と。
それを行えるだけの胆力と技術を彼女は手に入れたのだ。


442 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/11(火) 12:40:41 ???00
果南「なぜ園田海未を狙う」

曜「ファイターたるもの新しく登場した強者に惹かれるのは当然じゃん」

果南「…………」

果南はじっと曜を見ている。
それは歴戦の不良といえど目を逸らしてしまいそうな恐ろしい眼光だ。
曜はそれを真っ向から受け止める。

果南「もうよい」

ズザァ!!!!と先ほどまで沼津吹いていた暴風が一瞬で止んだ。
それと同時に果南の膨張した筋肉が元へ戻り通常の女子高生のものへと変化した。

果南「園田海未」

海未「はい」

果南「その前菜を一瞬で片付けなよ。その後アンタを襲う」

海未「えぇ、楽しみにしています」

初めてにっこりと笑う海未。
敵である曜ですら少しドキッとしてしまう。

果南は皆に背を向けて歩き出し、声高らかに叫んだ。


果南「今宵は解散とする!!!!双方矛を磨いておけい!!!!」


443 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/11(火) 12:41:38 ???00
果南が消えてようやく沼津に平和が戻った。

千歌「何様のつもりなんだ」

曜「まぁまぁ果南ちゃんはいつもあんな感じじゃん」

海未「では私も失礼しますね」

曜「あ!果南ちゃん止めてくれてありがとうね!!」

海未「礼には及びません。あなたが来なかったらオーガと私が戦闘していたでしょうから」

千歌「それでも助かったよ!」

千歌が改めて礼を言うと海未も帰って行った。

曜「ほむらメンバーって何処に泊まっているんだろうね」

千歌「確かに……」

残されたメンバー愛、千歌、曜は梨子の状態を確認する。

曜「うわぁ……脳みそ握り潰されてるじゃん」

愛「もう助からないの?」

千歌「いや、大丈夫。細胞は活性化してるからほっとけば治ると思うよ。病院に運んでおこう」

愛「随分適当だね!?」

曜「梨子ちゃんは不死身で変態だからこんな扱いになるんだよ。よーし、せっかくだから千歌ちゃんの家で果南ちゃん撃退パーティでもしようぜい!!」

千歌「おーいいね!愛ちゃんも来なよ」

愛「え、あ、うん………」

複雑そうに頷く愛であった。


444 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/11(火) 12:55:06 ???Sd
〜千歌の家〜

志満「ゆっくりしていってね〜」

愛「っ!?」

夕食を運んできた志満を目に前に愛が反応した。

曜「どうしたの愛ちゃん」

愛「あ、いや。かなり強そうな人だなーって」

千歌「分かるもんなんだね。志満ねぇは昔果南ちゃんを出血させた事があるんだよ」

愛「オーガを出血!?」

志満「3年前かしらね。強者がいなくてイライラしてる果南ちゃんが可哀想で相手してあげたのよ」

愛「どっちが勝ったの!?」

志満「そりゃあ果南ちゃんよ。もう互いに殺す気で行ったんだけど果南ちゃんの野生には負けたわ。あの時は半年入院したもの」

曜「志満さん左腕千切れかけてたもんね〜」

志満「あははは!!そんな事もあったわねぇ」

愛「(笑いどころじゃないでしょ)」


445 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/14(金) 11:53:13 ???Sd
食事が済んだところで千歌が曜にずっと聞きたかったことを聞いた。

千歌「で、曜ちゃんはあの果南ちゃんクラスの海未さんに勝つ手立てはあるのかな?」

愛「私も気になってる。というよりいい加減誰に鍛錬してもらってるか教えてよ」

曜「海未との戦闘まで後6日か〜。うーん、それまでになら教えてあげてもいいかな〜」

愛「随分勿体ぶるじゃん」

千歌「ほんとほんと!仲間にまで黙ってるとか私悲しいよ😭」

曜「ち、千歌ちゃん……」

焦る曜だが千歌はすぐにケロッとする。

千歌「なーんて、曜ちゃんの事情もあるもんね。強くなってるのは事実だし曜ちゃんから言ってくれるのを待つよ!」

愛「愛さんは早く知りたいよ〜。今やればわたし多分曜に勝てないんだし」

曜「まぁまぁ、時間もまだ少しあるし沼津ファイターの現状でも整理しようよ」


446 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/14(金) 11:53:56 ???Sd
千歌「整理……」

愛「確かに余裕で一月以上戦い続けてるからね。整理しとくのは大事かも」

曜「まず今味方で戦闘不能なのは?」

千歌「結構いるよね。愛ちゃん以外の虹ヶ咲組。あと善子ちゃんとルビィちゃん、ダイヤさんも東京に治療で送られたし」

愛「今出てきた名前は当分先頭に復帰できないだろうね」

千歌「善子ちゃんに至っては何故か果南ちゃんにボコされてるんだけど」

曜「善子ちゃんのそんなに強くないけど自分以上に強い人にガンガン喧嘩売っていくスタイル好きだなぁ」

愛「早死にタイプだね」

千歌「(愛ちゃんがそれ言うんだ)」


447 : 名無しで叶える物語◆reDSjSWa★ :2025/03/14(金) 11:54:23 ???Sd
千歌「では次は敵側の戦闘不能者だね」

愛「不能者より戦える人を言った方が早い。…というか」

曜「あとは実質園田海未のみだね」

千歌「敵地で自分以外敵の状況であそこまで冷静に立ち振る舞えるのは感心しちゃうよ」

愛「果南クラスの戦闘力を持っていたらそうなるのかね」

曜「言っても虹ヶ咲メンバーも単独で攻めてきてたし大したもんだよ」

愛「嬉しいこと言ってくれるじゃん」

千歌「ちなみに東條希の遺体は音乃木坂に送ったみたいだよ」

曜「あー……あの人か」


448 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/20(木) 19:31:33 ???Sd

〜朝9時〜

そんなこんなで3人とも疲れからか布団も引かずにごろ寝し一夜を過ごした。

千歌「んー……」

千歌が目覚めると愛が横でスヤスヤと寝ていた。
相変わらず端正な顔だな…。
そう思って曜の方を見ようとしたが。

千歌「ありゃ、いないや」

曜が昨日まで寝ていた場所には誰もいなかった。先に起きたのかと思い冷蔵庫に水を取りに行く。

窓の外を見ると曜が裏山の方に走って行くのが見えた。

千歌「曜ちゃん!」

曜は千歌には気づかずに走り去ってしまう。
千歌は曜が何をしているのか気になり追いかけた。


千歌「ハッハッ……!流石に速いな曜ちゃんは!」

曜の姿はみるみるうちに見えなくなって行く。
だがここを進んでいくと広場に出ることは知っていた千歌は焦ることなく距離を縮めていく。

予想通り広場に出ると曜が準備体操をしていた。
だがそこにはもう一人女性がいた。
見たことが無い…いや、厳密にはその顔には見覚えがあった。


千歌「へ、へ?」

「……?」

その女性は千歌に気づくと首を傾げてこちらを見た。
まだ若い……ように見える彼女は現沼津最大の宿敵と瓜二つの顔をしていた。

千歌「海未さんのお姉さん!?」


449 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/20(木) 19:32:00 ???Sd
曜「わっ!千歌ちゃん、何でここに!?」

千歌「こっちのセリフだよ!何で海未さんのお姉さんと一緒に密会してるのさ!」

曜「み、密会て」

言い合う二人に微笑ましく笑うその女性は千歌の言葉をやんわりと否定した。

「千歌さんでしたっけ?私は確かに海未の血縁ではありますが姉ではありませんよ」

千歌「え、じゃあ……」

「園田海未の母です。娘がお世話になっています」

千歌「えーー!?」

曜「師匠としてずっと海未さんに勝つトレーニングを受けていたんだ。まさか見つかっちゃうなんてね」


450 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/26(水) 12:32:38 ???Sd
海未母「私から申し出たんです。修羅の国沼津……一度も行ったことがなかったのでほむら侵攻に乗じて私も観光にきたんです」

曜「そしたら修業中の私と出会ってね。色々教えて貰ってるってわけ!」

千歌「そうだったんだ……」

千歌は海未の母の若さに目を見張るがウチの母親も人のこと言えないなと心の中で突っ込んだ。

千歌「けど娘を倒すための特訓をするのって複雑じゃないですか?」

海未母「いえ、これも娘のためです」

千歌「どういう事?」

海未母「海未は強すぎる。今まであの子は私以外の誰にも負けた事が無いんです」

曜「………」

海未母「それ故に停滞している。ライバルすらいない状況では成長できませんからね」

千歌「だから曜ちゃんを鍛えて海未ちゃんにぶつけると……」

曜「敗北の味を教えてやるYO!!」

千歌「………そっか。けど果南ちゃんも海未さんと戦いたがってたよ」

海未母「曜さんが負けたらその可能性もありますね。けど私は今の曜さんであれば勝機はあると思っています。海未の動きは私の動きと近い。曜さんには私との組み手を何度もしていただきましたから」

曜「おかげでボロボロだよ」


451 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/26(水) 12:33:49 ???Sd
千歌「そっか。ならもう私は心配しないよ!沼津の未来を曜ちゃんに託すよ」

曜「任されたYO!!」

海未母「(別に海未は滅ぼしに来たわけではないでしょうけど……今の沼津を見たらそう思われても仕方ありませんね)」


〜オーガ暴走から3日後鞠莉の家〜

鞠莉「はい、マドレーヌと紅茶よ」

穂乃果「あ、ありがとう……」

鞠莉の部屋で鞠莉と穂乃果がティータイムを取っていた。
穂乃果はまだ傷が完治していないが動ける程度にはなっていた。
梨子に破れてから気を失い目覚めたら鞠莉の家だったのだ。
拷問でもされるのかと思ったが鞠莉と使用人からの手厚い厚遇に困惑していた。

鞠莉「もちろん本音ではぶん殴りたいと思っているわよ」

穂乃果「!!」

鞠莉「けど果南が傷を癒してやれってうるさいのよ」

穂乃果「オーガが……?」

鞠莉「勿論慈善からの言葉ではないわ。まぁ端的にあなたとケンカしたいんでしょうね」

穂乃果「オーガらしいね。ケンカなら今からでもできるけど?」


「たわけ」


鞠莉「っっ!!!」

穂乃果の声を遮るように鋭い、それでいて畏怖を感じさせる声が窓から聞こえてきた。
2人がそこを見ると果南がベランダに仁王立ちしていた。


452 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/26(水) 12:55:56 ???Sd
果南「まずは傷を癒しな。でないと私の片手にも勝てないよ」

穂乃果「言ってくれるね」

鞠莉「やめなさい。後勝手に部屋に入るのやめて」

果南「………」ザッザッ

果南は鞠莉の言葉を無視して鞠莉のベッドにダイブした。

穂乃果「何しに来たの?」

果南「昼寝」

穂乃果「へ?」

果南は短く返答して10秒後にはいびきをかいて本当に昼寝をし始めた。

穂乃果「自由すぎるでしょ……」

鞠莉「強がっているけど果南も梨子に散々殴られて本調子ではないのよ。……にしても」

穂乃果「何?」

鞠莉「果南は一応アナタの仲間である西木野真姫を殺しているのよ。怒りとか湧いていないの?」

穂乃果「真姫ちゃんが死んだのは悲しいよ。けど私たちはそれを覚悟して毎日を過ごしているの」

鞠莉「武士みたいな考えね」

穂乃果「果南ちゃんに対する恨みはないよ。今はほむらの解散をどうするか悩んでる」

鞠莉「解散するの?」

穂乃果「リーダーの私が負けたし希ちゃんも死んだからね。元メンバーを呼んで復活させる気も無い」

鞠莉「それがありがたいわ。じゃあ解散後は私の元で働きなさいよ」


453 : 名無しで叶える物語◆Wo3P19GK★ :2025/03/26(水) 12:56:27 ???Sd
穂乃果「……へ?」

鞠莉「当たり前じゃない。あなた達ほむらはAqoursに敗北したのよ?町の大損害の責任の一端は取らせるから」

穂乃果「それもそっか。けどまだ負けてないよ」

鞠莉「………」

穂乃果「海未ちゃんを倒せたらあなたの下についてあげるね!」

鞠莉「その言葉忘れないからね」
.
.
.

曜の定めた1週間という期間はすぐに過ぎ去った。
曜と海未の果し合いの日がやってきた。

〜浦の星〜

千歌「ついにこの日がやってきたー!!」

むつ「テンション高いね」

千歌「緊張と不安と……ほんの少しの楽しみがあるよ」

学校には浦の星の全生徒と町の喧嘩自慢数人、興味本意の住民などが見物にきておりちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。


454 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 14:30:04 ???Sd
善子「そりゃあ私を瞬殺してくれた園田海未が地面に這いつくばる日だからね、楽しみすぎるわよねぇ」

千歌「善子ちゃん!もう歩けるんだ」

善子は果南に敗れてからしばらく意識不明状態であったが松葉杖をつきながら歩いていた。

善子「何かたまに体が硬直するけど大丈夫よ」

愛「しずくやランジュですらまだ寝込んでいるのに流石沼津の民だね」

千歌「愛ちゃん!」

愛「あいあいさー!ニジガク組は私だけだけど精一杯応援するよ!」

エマ「愛ちゃんだけじゃないよ」

千歌「ッッッ!!!」

愛「うわ、エマッちじゃん!!」

善子「アンタ曜をぶん殴った奴じゃない!何しにきたのよ!」

エマ「私が殴った相手が武神園田海未と戦うと聞いて東京から戻ってきたの」

善子「私が動けたらアンタをボコボコにしてるんだけどね」

エマ「……あの時の彼女が園田海未に敵うとはとても思えない」

エマは善子を無視して所感を述べた。
だが意外にも愛はその意見に同意しなかった。

愛「って思うじゃん?エマッちも今の曜を見たら驚くと思うよ」

エマ「愛ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいね。曜ちゃんに確か勝っていたよね?」

愛「あはは、あれからもう一度真剣勝負して負けてるからね」

エマ「……ふーん」


455 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 14:54:23 ???Sd
〜理事長室〜

鞠莉「………」

ルビィ「やっぱり不安?」

鞠莉とルビィは理事長室で間も無く行われる曜対海未について話し合っていた。
星空凛に受けた傷はまだ完治には至ってなくルビィも体中に包帯を巻いている。

鞠莉「いや、もう曜を信じると決めたからね」

ルビィ「うゆ!」

鞠莉「ルビィも起きたらダイヤがお台場に搬送されてるなんて知って不安でしょう?」

ルビィ「愛さんが絶対大丈夫って言ってくれたから平気だよ!今は曜さんの戦いが楽しみ!」

鞠莉「強いわねルビィは……」


ワァァァァァァァァァァ!!!


鞠莉「校庭が騒がしいわね……」

ルビィ「曜さんが来たのかな?


456 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 14:55:01 ???Sd
ルビィの言う通り曜が校庭に到着していた。

梨子「見違えたわよ曜ちゃん」

曜「ありがとう梨子ちゃん。果南ちゃんにやられたって聞いたけど大丈夫なの?」

梨子「生死を彷徨ったけど平気よ。あの経験のおかげでより効率的に悪魔モードを運用できるようになったから前より強くなったわ」

曜「ヘぇー流石だねぇ。今度私と戦おうか?」

梨子「いいわね。ローション用意して待ってるわ」

鞠莉「体調は問題なさそうね曜」ザッザッ

曜「鞠莉ちゃん!」

鞠莉「今から園田海未と戦おうっていうのにこれから先の戦闘を想うなんて」

曜「修業で自信つけたからね!」

鞠莉「ならその自信をあそこで待ち侘びてる園田海未に振るってきなさいな」

曜「!!」

鞠莉が指差した方向を見ると海未がこちらを見ていた。

海未「おはようございます」

曜「おはYO!!!」

海未「オーガは来ていないのですか?」

鞠莉「果南は用事を済ませてから来るらしいわ」

海未「そうですか」

曜「果南ちゃんに気を割く余裕はないと思うよ?音ノ木に無事帰れるかだけ心配しておいた方がいい」

海未「……」ジロッ

曜の挑発に言葉並みの実力はあるのかと彼女の体を見渡す海未。
見終わると軽く息を吐き笑みを浮かべた。

海未「楽しみにしています」


457 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 14:55:47 ???Sd
観衆は100を超えていた。
校庭には少女が2人。
曜と海未が20m程距離を空けて睨み合っていた。
普通なら喧嘩の距離ではないが2人の間合いなのだ。

鞠莉が2人の間に入りマイクを取る。


鞠莉「沼津の戦争は約二月前の虹ヶ咲の侵攻から始まりました」

エマ「……」

鞠莉「街中がフィールドという今までに無いファイトスタイルゆえに沼津のスクールアイドル達も色めきだって街中でドンパチやり始めた」

鞠莉「勝った負けたを繰り返し何とかランジュを倒せば終わりという所に来てまさかの『ほむら』が侵攻してきた」

海未「……」

鞠莉「ファイター界最強と言われるほむらを相手にも沼津のスクールアイドルは引かなかった。時には虹ヶ咲と共闘しつつ各個撃破していった」

鞠莉「ほむらには死人も出た。果南と梨子が街中で暴れ回った件は完全にウチのせいだけど一般人にも死傷者が出まくったわ。この事件は未来永劫語り継がれるでしょうね」


458 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 14:56:15 ???Sd
鞠莉「けどそれももう終わる」

鞠莉「ここに武神と言われる女がいる。ほむら最強の女がいる」

鞠莉「コイツを倒せばこのクソッタレな戦争も終わりよ!!!海未を負かしてほむら全員私の配下に納めるから覚悟してなさいッッッ!!!!曜、ぶっ殺せ!!!!!!」

ワーーーーーーーー!!!!!!

千歌「やったれ曜ちゃん!!!!!」

エマ「(い、今のうちに帰った方が良いのかもしれない)」

愛「勝てよーー曜ーー!!!」


曜「はは……ぶっ殺したら配下にできないじゃん」


459 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 15:05:21 ???Sd
鞠莉は話し終えると急いで観客がいる方に走っていく。
今度は千歌がマイクを持ち開始の狼煙を上げる。


千歌「すたぁぁぉとぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


ついに最後のほむらとの戦いが開始された。
開始された瞬間だった。

海未が開始と同時に一瞬で距離を詰めた。

海未「はぁっ!!!」

正拳突きだ。
勢いのまま放たれる正拳突きはトラックでも吹っ飛ばせる。
だが曜に拳が当たることはなかった。

曜が体を半身にし、なんと肘打ちでカウンターを合わせたからだ。

曜「秒殺なんてできないと思った方がいいよ!!!」

海未「がはっ!!!」

海未の顔面に曜の肘がめり込み、勢いをつけたのか仇となってしまった。
激痛が顔面を襲い涙が溢れる海未。


460 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 15:23:31 ???Sd
海未は距離を取り自分の鼻を触る。

海未「(折れてますね……)」

曜「やっぱり果南ちゃんと戦いたい欲求が透けて見えるよ。スピードに任せた瞬殺技なんて今の私には届かないよ!!」

曜の言葉に観衆に歓声が上がる。

エマ「凄い……というか愛ちゃん今の園田海未の攻撃見えた?」

愛「かろうじてって感じかな。正直最速を謳っていた星空凛と遜色ないよ!!」

千歌「そんなスピードに楽々カウンター合わせるなんて……」


海未は歓声を背に冷静になった。

海未「あなたの言う通りだ……。まだ心のどこかで曜さんを舐めていた」

曜「だよね」

海未「ここからは本気の戦いをさせていただきます……観衆の皆さん!!!」


鞠莉「!!」

ルビィ「ピギギ?」


海未「実力が伴わない者は今すぐここから離れなさい……死にますよ」

千歌「へ?」


461 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/17(木) 15:24:08 ???Sd
曜が何かを感じ取り脇に逃げる。
直後だった。

ズバァァァァァン!!!!!

海未が離れて場所から手刀を行ったのだ。
ただの手刀。
だが海未の腕力と「技」から放たれたそれは数メートル先の曜のみならず校舎の端にあるフェンスすら「斬り壊した」

千歌「うわぁ!!」

梨子「なるほど……これは危険ね」


ダンッッ!!!!!!!!

海未が再び高速で地面を蹴り走る。
曜も先ほどと同じくカウンターを合わせようとするも曜の周りを走っているだけだ。

校庭で走っているため、砂埃が霧のように舞う。


曜「ちっ……」

刹那

ズバァァァァァン!!!!!

砂埃の中から斬撃が飛んできた。
曜は反射的に自らの拳で殴りつける。

再び轟音。

幸い悍ましいほどの力と力の衝突のため砂埃が晴れた。

曜は自分の右斜め後ろに海未が迫っていることを風圧で感じた。

曜「らぁっ!!!!!」

振り向きざまに拳を振るう曜。
しかし海未はそれを躱し上段蹴りを放つ。
曜は顎を引き脳を守ったがそれでも海未の蹴りは脅威であった。

曜の体が数メートル吹っ飛ぶ。

千歌「曜ちゃん!!」


462 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 10:50:39 ???Sd
海未はすぐに曜に追いつき細かい打撃を一瞬のうちに100以上叩き込む。

曜は殴られながらも何とか海未の攻撃の軌道を読み、前蹴りで距離を離した。

海未「ふぅ……」

無呼吸連打をしていたのか海未が呼吸を整える。
曜も殴られたダメージの影響から呼吸が乱れており整えていた。

呼吸が回復したのは2人とも同時であった。


曜「ふっ!!」

曜はバックステップとバク転を使い海未から20m距離を空けた。
海未は手刀を横凪に振る。
射程距離100mを超える海未の手刀は曜に容易く届く。

曜「邪ッッッ!!!!!」

再び右拳で斬撃を弾く曜。
校庭中に突風が巻き起こる。


愛「何て戦いなの………」

梨子「けど曜ちゃん、少し戦い方変えた方が良いかもね」

愛「どういう事?」

梨子「拳。あんなデタラメな斬撃を防いだせいで拳が削れてる」

愛「あ!!」

愛も曜の拳を見る。
曜の拳からは血が滴っていた。
重症ではなさそうだが何度も拳で受けているとそのうち使い物にならなくなるだろう。


463 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 10:51:21 ???Sd
曜「はっはー!!!」

だが曜は全く衰えて無い。
逆に遠く離れている海未に対し虚空にパンチする。
ゴォッッッ!!!と風を切る音と共に曜の拳の血がシャワーのように海未に浴びせられる。

海未「はぁ!!!」

海未は目眩しの血を両掌を前に向け全て弾いた。
「回し受け」という技である。

その間に曜が20mの距離をたった1回のジャンプのみで詰めてきており、膝蹴りを海未に繰り出そうとしていた。
だが海未は読んでいた。
必要最低限の距離をバックステップで移動し膝蹴りを回避する。
それと同時に今度こそ正拳突きを曜の腹にめり込ませた。

曜「かっはぁ!!!!」

海未「(入った……)」

曜が10m殴り飛ばされる。
吐血で虚空に血のシャワーが降り注ぐ。


鞠莉「曜………!!」


464 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 10:51:54 ???Sd
曜「ゲボォォォ!!!!」

ビチャビチャ………


善子「うわっ………」

曜がゲロと血を校庭に撒き散らす姿に観客は引いていた。
曜は汚物を撒き散らした後フラフラと立ち上がる。

曜「なんで追撃しないのかな?」

海未「トドメと思い打ちました。そしてあなたも今戦えそうでは無い」

曜「甘いんだよッッッ!!!!!がは!!!」

怒りから叫んだ衝撃でまた吐血する曜。

海未「やめますか?」

曜「アンタはほむらで一番『甘い』ようだね。いや……今まで弱い奴とばかりやってきたから命の危機を感じたことがないんだ………だから本気で相手をぶちのめすという行為をしないんだ」

海未「………」

海未は否定しない。

曜「だったら……感じさせてあげないとねぇ。命の危機ってやつを」

海未「何を見せてくれるのでしょう?」

曜「あなたのお母さんに学んだ技術だよ……とくと味わえ」

海未「!?」


465 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:22:29 ???Sd
曜は突然自分の頭を指でグリグリと突き始める。
かなりの力を入れているのか接触している部分からは血が流れていた。


エマ「あれは………」

愛「愛さんには凶行にしか見えないけどエマっち知ってんの?」

エマ「体内のエンドルフィンを操って痛覚を無視する手法だね。スイスにいた時やらされたことがある」

愛「海未対抗策か……けど」

千歌「ダメージを軽減しているわけじゃ無いもんね。諸刃の剣」


曜「ははっ……それだけじゃ無いよ」


曜は千歌達の声が聞こえていたのか独り言で返す。

曜「行くよ海未ちゃん………」ユラァ

スドォン!!!

刹那、曜が校庭の土が衝撃波のように飛び散るほどの脚力で踏み込み、海未に突っ込む。
当然そんな分かりやすい攻撃などカウンターの餌食だ。
海未は再び正拳突きで曜の腹を殴ったが………。

曜「らはぁ!!!!」

殴られても「無反応」で曜も拳を振るったのだ。
海未は咄嗟に腕を前で固めて防御する。

メキィッッッ!!!

海未「ぐっ……(このパワーは……!?)」


466 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:23:09 ???Sd
海未「ーがぁ!!!」

海未のガードを弾き彼女の体を宙に浮かせることに成功する曜。

曜「まだまだ行くぞオラァ!!!!」

口から血を撒き散らしながら走り出す曜。
バク転し着地する海未に反撃の隙を与えまいとミドルキックで追い討ちをかける。
腰の入ったかなりの威力の蹴りだ。

曜「だっしゃあああああ!!!!!!」

遠く離れている千歌や愛にも風圧が届くほどの蹴り。
海未はかろうじて両腕で防いだがそれでも左腕に嫌な音が響いた。

海未「(骨にヒビが入ったか……)」

しかし狼狽えることなくすかさず反撃に出る海未。
袈裟懸けで手刀を振り下ろした。
今までは遠距離からの斬撃ではあったが今度は「直接」曜の体にぶち当てた。

ズバァァァァァァン!!!!!

曜の体から今日一番の出血が起こる。
肉がしっかり千切れる音が観客の方まで響く。


善子「今のは………」

ルビィ「まずいね……」


467 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:23:39 ???Sd
曜「ダボオラァ!!!!!」

海未「なっ!?」

決着でもおかしく無い一撃を喰らってもバーサーカーのように曜は膝蹴りを繰り出した。
さしもの海未も驚きガードが間に合わなかった。
鳩尾に曜の膝が入る。

海未「〜〜〜〜!!!!」

曜「オラァァァァァァ!!!!!!」

怯む海未にめちゃくちゃに打撃を浴びせる曜。
あの海未の綺麗な顔にいくつもあざができる。


千歌「やったれ曜ちゃん!!!!」

海未「舐めるな!!!!」

千歌「!!」

恐らく沼津に来て初めて海未が吠えた。
暴れる曜に逆に肘打ちを放つ。
ふらつく曜。


468 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:24:13 ???Sd
海未「せいっっ!!!」

鋭い掛け声と共に曜の「喉」に突きを放つ。
海未の指に喉仏が折れる感触が響いた。
善子でも絶命する一撃だろう……しかし曜はなおも喰らったそぶりを見せず反撃のハイキックを放ってきた。

海未「しっ!!!」

両腕で受けきらず受け流す海未。
白目で迫り来る曜の顎に拳を当てる。

曜「〜〜〜〜!!!」

海未は続けて後回し蹴りを放つ。
曜の腹にぶち当たり後退させた。

海未「痛覚遮断に力のリミッターを外しているのですね」

曜「げばぁ!!!………ご名答」

海未「死にますよ」

曜「その前に海未ちゃんを倒すから問題無い」


469 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:25:00 ???Sd
曜「おえええええええ」

滝の様に血を吐く曜。
観衆は曜の体の状態に引いていた。
明らかに絶命クラスの打撃を数度喰らっているからだ。

曜「来いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

海未「いいでしょう」

海未は曜を屠ると決めた。
再び両雄が地面を蹴った。

海未も曜もガード無しで殴り合った。
肉を撃ち合う鈍い音が校庭に広がる。


曜「おらぁぁぁあぁ!!!!!」

海未「はぁ!!!!」


海未母のおかげで技も力も以前の比較にならぬほど成長した曜であるが、それでも海未の技術には程遠い。

今彼女を支えているのは海未の動きについていけるだけの技術と「負けん気」の二つであった。

負けん気だけでは到底海未とは殴り合えないが、海未母との組手の経験がこの決闘を「戦い」にまで昇華していたのだ。


470 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:25:45 ???Sd
曜「だりぁあああ!!!!」

曜の右ストレートを回し受けで逸らす海未。
僅かにできた曜の隙に海未は左手で手刀を振りかざす。

海未「邪ッッッ!!!!!!!」

曜の右肩から袈裟懸けの要領で日本刀より鋭い手が振り下ろされたのだ。
致死量かと思われる流血が宙を舞う。


曜「〜〜〜〜〜!!!!!!」ガシッ


2度直接手刀を受け曜の体に「×」印の斬撃後が完成した。
しかし曜は倒れること無く海未の両襟を握る。

海未「(この人まだ……!?)」

曜のしぶとさに驚愕と敬意を内心抱く海未。
ギリギリと歯を食いしばる音が聞こえる程力を込めて曜は海未の顔面に頭突きを行った。

海未「ぐはぁ!!!!」

強化された曜の筋力から放たれる頭突き。
それをノーガードで顔面に受けた海未は如何に武神といえど視界が揺らぐほどのダメージを負った。

再び目に涙が溢れてこの場から離れたい衝動に駆られる。
しかし曜はまだ両襟を離さない。


471 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 17:39:13 ???Sd
曜「フンヌッッッ!!!!!」

曜の石頭が2度海未の顔に沈んだ。


海未「〜〜〜ッッッ!!!!???」


海未の涙と血が宙を舞う。
曜が次の攻撃を繰り出すほんの1秒以下の時間に海未の心中に感情がいくつも沸騰し出す。


海未「(痛い!!!!離れたい!!どうする!?負、痛い、負ける!?なんで動ける!?怖)」


それは思考というにはあまりに乱雑。
海未が生まれてきて初めて味わう「焦燥」と「恐怖」だった。


海未「(けど、嫌、負けるのは嫌……)」

海未「(ほむらの未来なんてどうでもいい!!沼津の事なんて今は知ったこっちゃ無い!!)」

海未「………〜〜〜負けたくありませんッ!!!」

曜「!?」

海未が再び吠える。
今度は曜に合わせて海未も頭突きを繰り出す。
まるでボウリングのボールを音速でぶつけ合わせた様な音が響き2人はよろける。

グニャァ〜〜〜〜


曜「〜〜〜!!がぼぉ!!」

海未「ゲボォ!!!はぁ……はぁ…………!!」


いくら痛覚を無視しているとはいえ曜も脳を揺らされたら平衡感覚を失う。
そして両雄脳の衝撃のせいで嘔吐していた。


472 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 20:08:06 ???00
海未「フゥー……フゥー………」

曜「勇ましい顔だね。そういう顔が見たかったんだよ!!!」

今や海未には冷静さのかけらも無い。
まるで死の際まで追い詰められた獣の様な怒りと殺意の形相をしていた。
曜は血を「着ているのか」というほどの出血をしながら高揚していた。


ルビィ「……」

梨子「いやぁ楽しそうね曜ちゃん」

むつ「ね、曜は結構この一連の事件で負けてばかりだったけど今一番楽しそうで良かった」

梨子「しかしたった数週間よ。海未ちゃんの母親に修業つけてもらったとはいえよくここまで戦えるわね」

むつ「良き師匠がいればグンと伸びるタイプだったんでしょう。現に途中から愛も稽古つけてもらってだけど曜に及ばなかったし」

ルビィ「今なら沼津でも実力はトップクラスだろうね。梨子ちゃん勝てそう?」

梨子「うーん…何とも」

鞠莉「たられば言ってないで今は試合見てなさい」


473 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/18(金) 20:10:24 ???00
海未「ふふ……ここまで私を傷付けた人は初めてですよ」

曜「そりゃあどうも。では初めての敗北をプレゼントしてあげるよ」

海未「……何度でも何度でも」スッ

曜「っ!!」

海未「あなたが細切れになるまで刻んであげます」

ズバババババ!!!!!

海未は右手を上げると一度ではなく何度も高速で手を振るう。
突然必殺の斬撃は無数に曜に襲いかかる。
攻撃を突っ込むこともできたが曜とはいえこれ以上の出血は避けたい。

以前の曜の何倍ものスピードで死の刃を躱していく。


海未「流石!!」


空中にいる曜に向かって走り出す海未。
地面に落ちてきたタイミングで打撃を叩き込んでくる……。
曜はそう呼んでいたが違った。

海未はいつのまにか靴下も脱ぎ裸足になっていた。
そして天に向かって足を振り上げる。

海未「はぁっっ!!!」


曜「(まさか……!?)」


ゴォッッッ!!!!!!!!

海未は足で手刀と同じ斬撃を繰り出したのだ。
運良く曜の脇を逸れた斬撃だがあまりの威力に余波だけで曜の半身は切り傷だらけになった。

地面に着地すると同時に地面を蹴り海未にタックルする曜。

曜「危なかったよ今のは!!!」


474 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 10:16:04 ???Sd
だが海未はタックルを切り、ガラ空きの曜の顔面を膝で蹴り上げる。

曜「ぬんっっ!!!!」

本日4度目の曜の頭突きが海未に襲いかかる。
だがそれを半歩躱すだけで回避する海未。

曜「しゃおらぁ!!!!」

高速で左右のパンチを行う曜。
だが海未はことごとく避ける。

海未「動きが荒いですよ」

曜「ちっ……!」

海未「……」

海未は改めて曜の体を見る。
自分が傷つけたとはいえ痛々しい姿だ。
殺すつもりの攻撃を幾度となく浴びせ、曜はそれを真正面から耐えた。
とはいえ……。

海未「(タイムリミットが近づいてきていますね)」

曜の出血は止まっていない。
いかに勇敢で獰猛な曜とはいえ体を動かす血がなければ動けない。

海未「出血死を待つ……そんなつまらない戦いでは終わらせません」

曜「……!!」

海未は指を一本立てて曜に見せる。

曜「何かな?」

海未「あなたと同じ土俵で決着をつけてあげます」

海未は人差し指を先ほどの曜と同様に自らの脳に突き刺した。
グチュグチュと脳を弄っているかのような音が曜の耳にまで聞こえてくる。

曜「な……!?」


475 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 10:16:49 ???Sd
海未「脳のリミッターを解除して痛覚を無視し力も底上げする……母が使える技で私が使えない物は無いのですよ」

曜「これはこれは……」


千歌「え、あれどういう事!?」

愛「海未も曜と同じくパワーとかを底上げしたんだよ。ただでさえ強い海未がリミッターを外したらどうなるか……」


海未「私をここまで追い詰めたあなたに敬意を称し、全力で葬ってあげましょう」

曜「はは……」

脳をいじり高揚感があるのか、先ほどの海未とは打って変わって凄惨な笑みを浮かべていた。
だが曜も戦意は衰えるどころか向上していた。

曜「シャバっっ!!!!!」

曜が海未に突撃する。
海未は笑顔でそれを迎えった。

曜は再びパンチのラッシュを海未に浴びせる。
だが痛覚を無視しているため海未は後方に下がらない。

海未「はぁっ!!!!」

ラッシュが途切れた瞬間を狙い海未が曜の脇腹に突きを放つ。

ズボォッッ!!!!

筋肉では抑えられなかった。
海未の手が曜の体を貫通する。

曜「ゴフッ」


476 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 15:15:34 ???Sd
鞠莉「曜ォォォォ!!!!」

千歌「曜ちゃん!」

愛「あれは……もう」


曜「〜〜………〜〜〜」

海未「………?」

曜は海未の腕を握りながらぶつぶつ何か呟いていた。

曜「クソ……くらえ」

曜はカッと目を見開き左足を海未の肩にかける。
そして全体重を乗せて右膝で海未の顔面を打ち抜いた。

バガァン!!!!!と海未の歯が飛び散り仰向けに倒れる。
曜はというとゾンビの様に前腕をダランと前に出しかろうじて立っていた。

海未「ぐ………」モゾ

再び脳に衝撃が走ったのか視界が揺れる海未。
しかし彼女の意識を消失させるには足りなかったようだ。


477 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:01:26 ???Sd
千歌「海未ちゃんが………」

エマ「起き上がったね」

曜の最後の攻撃を真っ向から耐えた海未。
鼻からドバドバ血を流してはいるが二本足で立っていた。
曜も項垂れたままだがまだ立っている。

海未は曜に近づいていく。

トドメを指す気か………。
観衆に緊張が走る。

千歌「やめろ………」

だが千歌たちが思っていた事にはならなかった。
海未はトン、と曜のデコを軽く押す。
たったそれだけの力で曜の体は後ろに倒れた。

ドスン。

曜「」

海未「ありがとうございました。楽しかったですよ」


478 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:02:02 ???Sd
ザワザワ………。

梨子「曜ちゃん………」

愛「けど頑張ったよ。この中の誰よりも園田海未に喰らい付いた!!」

千歌「曜ちゃんを病院に連れて行こう!いいよね鞠莉ちゃん!?」

鞠莉「………えぇ」

苦虫を噛み潰した表情で返事する鞠莉。
信じていた最大戦力が負け心中認めたくなかったのだ。
だが海未はここで思わぬ提案をする。

海未「これでいいのですか鞠莉さん」

鞠莉「………なにがよ」

海未「私はまだ戦えますよ」

鞠莉「だから何?」

海未「ここには沼津を代表するファイターたちが揃っている」

鞠莉「!!?」

千歌「嘘……まさか」


海未「腕に自信のあるファイターは今!!この場で挑んで来い!!!1人残らず園田海未が返り討ちにしてくれる!!!!」


海未はアドレナリンの調整により普段より好戦的になっていた。
それがなくとも彼女自信まだ戦いたい欲求があったのだ。
自分の限界をここで試したくなっていた。

愛「そうきたか………!」


479 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:04:17 ???Sd
ズガァンズガァン!!!!

愛「わっ!!」

エマ「…………」シュウ〜……

海未「………」

銃声が鳴り愛が横を見るとエマが海未に向けて射撃していた。
海未は銃弾を素手で掴み、雑に投げ捨てる。

エマ「私が援護するから腕に自信のあるファイターは突っ込んで!!!」

愛「しゃあおらぁ!!!」

梨子「多勢に無勢は趣味じゃ無いけど、鞠莉ちゃんのためだものね。私も参戦するわ」

ルビィ「仕方ないよね……沼津のためだし」


鞠莉「アナタたち!!!」


480 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:04:51 ???Sd
千歌は曜を回収すると小原家の用意していた救急車に運び込む。

千歌「曜ちゃん!!」

曜「ヒュ~ヒューー………」

曜は危険な状態だ。
医師たちが急いで治療を開始する。

ドゴォン!!!!

千歌「ふわぁ!!」

救急車の横で大きな音がなった。
千歌が見ると巨木が折れていたのだ。
側にはエマが吐血しながら倒れていた。


海未「おおおおおおお!!!!!!!!」


愛「ちっ……!」

海未は初っ端から本気だ。
エマ、愛、梨子、ルビィの4人が連携をとりながら海未を攻めたが、一瞬でエマが投げ飛ばされ3人に減った。

海未は空中でバク転しながら手刀を振るう。

地面に深い傷穴をつけ校舎をいくつも倒壊させる。

ガシャン!!ドガァァ………!!!


善子「うわぁああ!!!」

鞠莉「逃げるわよ善子!!!」

むつ「善子は私が背負う!周りの不良どもももう逃げなよ!!!」


481 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:05:44 ???Sd
手刀の斬撃が梨子の左腕に直撃し、腕が数百メートル吹っ飛ばされた。

梨子「流石ねぇ!!!」


ルビィ「ピギィ!!!!」ブゥンブゥン


ルビィはかつて凛に行った技、拳圧で竜巻をいくつも起こしそれを利用して校庭中を高速移動する。
今海未は愛と対峙しておりこちらを見ていない。

ルビィ「ピギャオラァ!!!!!」

回転の力を利用して海未の後ろから後頭部を殴ろうとするも、脇に躱される。

ルビィ「(なんで……!?)」

隙だらけになったルビィの腹に膝蹴りをするとそのまま足を持ち校舎にぶん投げた。
音速に近いスピードが出ていたため、コンクリートに当たったら衝撃でルビィの血と瓦礫が学校に舞う。

愛「校舎のガラス越しにルビィを見ていたんだね」

海未「ほんの一瞬視界に入れただけです」

梨子「ざばぁぁぁあぁぁぁああああ!!!!!!!」

その時梨子が校庭の端から大木を持ち上げ海未に向かって投げた。
悪魔モードならではの力。
もうちぎられた左腕は生えている様だ。
海未は重さ数トンの大木を正面から受け止める。

ずざざざざざざ!!!!と海未といえど慣性には逆らえず数メートル後退する。


ミキ………。

海未が大木を恐ろしい握力で握る。
そして近くにいた愛に目掛けて思い切り振った。

愛「どわあぁ!!!」

間一髪しゃがんで避ける愛。
海未は今度は上から大木を振り下ろす。
まるで校庭を臼とした餅つきの規模だ。
ボッゴォォォォォォォ!!!!!!と地面に大穴が空いた。

愛「ぐ………おおお!!!!!」

愛はなんとか両腕で大木を防いでいた……が肉体の限界を超えていたのか骨が肉から飛び出ていた。


梨子「愛ちゃん!!!」


大木は半分に折れてしまった様だが、海未は片方をバレーのサーブの様に宙に浮かすと
踏ん張っていた愛に血管が浮き出るほどの力でアタックした。

両腕は木を支えているため動かせない。
ノーガードで真正面から数トンの木が迫り来る。

愛の意識はそこで途絶えた。


482 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 16:06:30 ???Sd
梨子「容赦無いわねぇ………」

海未「余裕など全て渡辺曜に削られました」

梨子「褒め言葉と受け取っておくわ」

海未「アナタを倒せば…‥終わり」


「違うでしょうが」


ドサッ!!!

海未「!!」

梨子「これは………」

突如海未と梨子の間に血だらけの少女が「2名」降ってきた。
それは2人ともよく知る人物であった。


海未「穂乃果……凛………」

梨子「ほむらメンバーが2人も!?何で……」

ムワァ……

海未「(獣臭!!)」クルッ

海未が振り向くとまさに鬼と言って差し支えない松浦果南の姿があった。
全身傷だらけ、耳に至っては半分千切れていた。
いつもの果南と違い一回り大きく筋肉が発達している。
2人との戦いでオーガモードになったのだろう。


果南「いや〜楽しかった。仲がいいんだろうね、抜群の連携で攻めて来たよ」

海未「ふっ……」

海未は笑っている。
幼馴染を、弟子を倒された怒りより果南の実力を認めていたのだ。

果南「アンタもさぞかし楽しんだ様に見える。まさか曜にそこまでやられるとはね」

海未「彼女は強い。ほむらメンバーにいても遜色ないくらいに」

果南「んなことどうでも良いんだよ。さて、そろそろデザートをいただきたいんだけど……」


海未「クク………」

果南「あはは………」

梨子「…………」


梨子は2人のオーラに充てられて下がった。
始まる、と直感したのだ。


海未「あははははは!!!!」

果南「げははははははは!!!!!」

ザッ………!!

海未「果南ンンンンンン!!!!!!!!!」

果南「海未ィィィィィィ!!!!!!!!!」

化け物同士が激突した。


483 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 19:05:57 ???Sd
ズズゥン………!!

ドゴォン!!!!

鞠莉「はぁはぁ………クソ、曜が負けるなんて」

梨子「鞠莉ちゃーん!!」

鞠莉「梨子!!え、じゃあこの轟音は……」

梨子「果南ちゃんが来たの!今海未ちゃんと戦っているわ」

鞠莉「あのバカようやく来たのね……!!」


ゴシャアアアアン!!!!!


鞠莉「きゃあ!!」

梨子「く、車が降ってきた」

鞠莉「どんな戦いしてんのよ……!!」

梨子「風も強まって来てるわね。果南ちゃんが本気で戦っている証拠よ」

鞠莉「また沼津が先日の梨子と果南の戦いの時みたいになるっていうの!?」

梨子「いや……それ以上かも」


484 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 19:55:25 ???Sd
果南「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」


2人の戦場は浦の星を飛び出し内浦長浜の山に移動していた。
果南が叫ぶと斬撃の嵐が飛び交い木々を薙ぎ倒していく。

海未は真正面で付き合わず、高速でそれを躱していく。

海未「せいっっっ!!!!!」

果南の戦い方は隙だらけだ。
海未は果南の死角から手刀を直で喰らわせた。

バビュオッッッ!!!!と余波だけでも天まで届く斬撃が遠くからでも視認できる。
鍛えた曜でもかなりの出血を負う一撃だが果南は………。

果南「ひゃはぁああああああ!!!!!!!」

肉は千切れて流血もある。
だが命にまでは届いていない様だった。

海未「ふん!!!!」

続けて果南の喉に突きを放つ。
これは効いたらしく苦悶の表情で坂を転げ落ちていくオーガ。

果南「ぶびゃあおああああ」ベチャベチャ

血を撒き散らしているが海未は追撃を始める。
海未は上から膝蹴りで果南の腹に着地しようと思ったが……。

果南「覇愚……しよ?」

下から果南は海未の追撃を待ち構えていたのだ。
海未の膝蹴りを受けた瞬間、渾身の力でハグする。


海未「ぐっ…………」

恐ろしい圧迫に海未の呼吸が止まる。
ミシミシ………。

果南は剛腕だが海未も引けを取らない。
ほんの少しだが呼吸できる隙間を作る。
果南の腕が一瞬押し返される。

海未「はぁ!!!!」

その一瞬を見逃さず果南の顔面に頭突きを行う海未。
そのまま果南を突き飛ばした。

鼻血を鼻水の様に排出する果南。


果南「汚い良い戦い方だ」

海未「綺麗に勝てるほど甘い相手では無いことは承知している」


485 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 19:56:00 ???Sd
果南「ぎゃはあああああ!!!!」

果南が奇声と共に海未に走る。
海未はカウンターの右を頰に合わせるが、吹っ飛ばされる前に果南は海未の襟を掴んだ。

果南「おらぁぁああああ!!!!!」

回転しながら海未を崖から放り投げる果南。
100mほど落下した海未は木を蹴りつつ着地する。

海未は草木に隠れつつ反撃を行おうかと考えたが果南はそうはさせなかった。


果南「ギャオラアアアアアアアアア!!!!!!!!」


果南の「叫び」だ。
彼女の前方100m近くに渡り木が折れ地面が露出し海未の姿が露見される。

果南「みーつけた♩」

海未「………化け物ですね」


486 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 19:56:55 ???Sd
果南「邪ッッッ!!!!」

果南は再び海未に掴み掛かる。
だが今度は海未が勝った。

海未が中指の第二関節を立てて果南の腕を殴ったのだ。

果南「〜〜〜!!」

ギィン!と果南の腕に鋭い痛みが襲う。
続けて果南の左足の膝裏を蹴る。

果南「っぎぃ!!!」

人間の膝裏は地味だが急所の一つだ。
海未の脚力で蹴れば悍ましい一撃と化す。

海未「はぁ!!!!」

ゴォ!!と旋風が巻き起こる。
海未が回転蹴りを行ったからだ。
果南の脇腹に海未の脛がめり込む。

海未「シュッ!!」

流れるように左ジャブだ。
果南は肘でガードする。


487 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/19(土) 20:03:48 ???Sd
果南「オオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

果南はこの至近距離で咆哮を行う。
海未の服と肉が引き裂かれ裸体が露わになる。
だが武神はそんな瑣末なことは気にしない。

海未「ぜいっ!!!!」

息もできぬ豪風の中海未は死に物狂いで果南の口の中に正拳を放つ。

果南「っっ!!?」

まさかの対応に果南は目を見開く。
海未はそのまま喉の奥まで手を突っ込んでいく。
果南は声を出せずに呼吸も塞がれ白目を剥きながら海未の腕を掴んでいた。

何とか海未の腕を押し出そうとするも、もう第一間接まで果南の体内に侵入している。

果南は苦しみから痙攣と失禁をし出す。

果南「〜〜〜っっ!!!!」

だが鬼の意地がされるがままにはならなかった。
力を振り絞り海未の股間を蹴った。

海未「っっ!!!」

股間は男性だけの急所では無い。
海未が怯んでいる隙に果南は全力で後ろに飛ぶ。

果南「がはっ!!ごふごふっ!!!」

海未「惜しい……」


488 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 09:25:58 ???Sd
果南「2020年。山形県の猟師が熊に襲われた」

海未「……」

果南「その猟師は銃を持っていなかった。だが襲われながらもクマの喉に腕を突っ込み生還したという話があったけど……」

海未「えぇ、松浦果南というクマ以上の猛獣にも有効のようで安心しました」

果南「くく…フン……フンッッッ……」

ピキ、ピキキキキ

海未「!!」

果南は突然両手を合わせてスクワットを開始する。
パンプアップだ。
血管が浮き出て果南の肉体がさらに大きくなる。

ブチブチブチ!!!

果南の着ていた服が筋肉ではち切れる。

果南「2人とも全裸だね」

海未「どうでもいい事です……」スッ

海未が構える。


489 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:12:56 ???Sd
ダンッッッ!!!!

海未が踏み込み果南の顎を蹴り上げる。
続けて浮いた果南の体を高速で2回上段蹴りを放った後、左の正拳突きを突き刺す。

果南「げばぁ!!!!」

後退する果南に手のひらを真っ直ぐ伸ばして相手を突く「貫手」を喉に刺した。
吐きまくるオーガ。
だが死にもの狂いで海未の腕を掴む。

投げ飛ばそうとするも海未は合気道の「呼吸投げ」で果南を上空に投げた。

果南「ぬぅ………!!」

海未は追撃を行おうとするが果南は息を吸い込み思い切り吐く。
ゴォォォォォォォ!!!!!!と竜のブレスの様に風が巻き起こり海未から距離を離す果南。


果南「いや〜強いな………」


果南は感じていた。
技術では「負ける」
武神と言われているだけあり戦いの技においては果南を上回る。

果南「何度か肌を重ねて分かった。私の方が力は強い……ならどうする?」

果南「野生に帰るんだ。もっと野生に……」

果南「所詮武術など対人の技術」

海未「言ってくれますね」

遠くから海未が全裸で土を踏み歩いて来た。

海未「今のアナタが言っても負け惜しみにか聞こえませんが……」


490 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:13:25 ???Sd
ザッ……!!

海未「………!!」

海未は果南の行動に目を見開く。
なんと果南は手を地面に付き「四足歩行」に切り替えたのだ。


果南「行くぞオラァァァァァ!!!!!」


4足で海未に襲いかかる果南。
それを見て海未はため息を吐く。

海未「だから何です?」

4速歩行と言っても体は人間。
そもそも柔術などでは座った相手と立ち会うことも多いのだ。
海未は短絡的な果南の思考に若干の失望を感じていた。

海未は迫る果南の顔に膝を命中させる。
べゴォ!!!と果南の鼻がへしゃげる感触が海未の膝に伝わる。
だが同時に違和感。

海未「〜〜〜!?」

蹴り飛ばされた果南は肉を咀嚼していた。
それは紛れもなく先ほど海未の体を構成する一部であったもの。


491 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:13:53 ???Sd
海未「なるほど……確かにそれは野生だ」

果南「喰らい尽くしてやるよ」

涎を垂れながら果南はニヤつく。





〜聖隷沼津病院〜

医師「何度死んでもおかしくない傷でしたが……大丈夫です。一命は取り留めました」

千歌「よ、よかった〜……」

梨子「貫かれた場所は私の肉を移植したからね。これで曜ちゃんは死ぬまで私と一緒よ」

鞠莉「ヤンデレみたいなこと言ってるわね。けど助かったわ」

梨子「曜ちゃんは大切な仲間だからね。当然よ」

千歌「ルビィちゃんと愛ちゃんも重傷なんだよね。心配だな……」

エマ「………」フラフラ

鞠莉「エマ!」

千歌「まだ寝てないとダメですよ!!」


492 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:14:31 ???Sd
エマ「悔しい……全く歯が立たなかった」

善子「私を倒した女だからね。仕方ないでしょう」

エマ「………」

善子「あ?何よその目。てかアンタ地味に果南と海未に挑んでんのね……相手悪w」

エマ「確かに。善子ちゃんに挑んで自信つけてからの方が良かったかも」

善子「舐めてんのかコラァ!!!」

千歌「うるさい!」

海未母「あ、いたいた」

鞠莉「!!」

千歌「海未ちゃんのお母さん!」

鞠莉「アナタが………」

海未母「ふふ、曜さんを見たらすぐに帰りますよ。にしても良い戦いでした」

エマ「どこが。海未は曜ちゃんを倒した後に私たち4人を圧倒しオーガとまで戦闘してる」

海未母「母親としてあそこまで我を忘れて戦う娘を見るのは初めてでしたからね。娘の本気を引き出してくれたこの町には感謝しかない」

鞠莉「そんなエゴのためにどれだけ被害出てるか分かっているの?」

海未母「えぇ。償いになるか分かりませんがオーガが海未に勝てたら私もアナタの配下になりましょう」

鞠莉「ふーん。その言葉忘れないでね」


493 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:15:08 ???Sd
海未母「そして破壊の足音がここまで近づいて来ましたね」

エマ「………?」

千歌「ぎゃああ!!あれ何!?」

千歌が窓の外を見て驚愕する。
皆もつられて院内からその場所を見る。
外は雨風でガラスがガタガタ揺れている。
遠くに風を纏った何かがいた。
ソレから破壊光線のように暴風が発射されると家屋を木っ端微塵に破壊していく。
だがソレの目的は破壊ではないようだ。

千歌「あ、あれ果南ちゃんだ!!!」

鞠莉「はぁ!?」

梨子「空が暗すぎる……まだ昼なのに」

エマ「今日の沼津の天気は晴天だったけど……」

善子「果南がまた本気で戦ってるのね。沼津という街が果南に怯えているのよ」


鞠莉「あは」


善子「鞠莉?」


鞠莉「あははははははははは!!!!!!」

鞠莉「ほ〜ら、持ってけ持ってけ!!!」バサバサ


鞠莉は突然財布の中から札束を取り出して院内にばら撒き始めた。

千歌「わぁ!!お金だ!!」

海未母「」

善子「度重なるストレスでついに壊れたか……。ナースコール押すわね、患者が1人増えたわ」


494 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:15:57 ???Sd
海未「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

果南「ギャオラァァァアァァァアァァァアァアアアアアアア!!!!!!!」


2人は山中を移動して戦っていたらいつのまにか下香貫林ノ下山から街へと出てしまった。
街中が台風の様に風が強くなっていたのは海未は知っていたが、途中から果南が体に風を纏い始めた時は流石に目を疑った。

これにより海未の攻撃、特に寝技は封じられた。

海未「だぁぁぁああああ!!!!!」

海未がマンションを足場にジャンプし手刀を繰り出す。
コンクリートや電柱を切り飛ばしながら果南に被弾する。


果南「がばぁ!!!」


風を纏っていても海未の手刀は効く。
だが出血は確認できなかった。


果南「オオアオオアオアオオオオオオオオオ!!!!!!」


果南が再び風を凝縮した破壊光線を放つ。
海未は地面を蹴り避ける。

ズドォォォォン…………!!!!

海未の後方100m以上に渡り家屋が破壊される。
もう果南に小細工は無い。
海未は思い切って攻撃できた。

海未「せいっ!!!!」

果南に近づくと一秒間に100を超える打撃を与える海未。
鬼は殴られながら爪を下から上に振り上げる。

ザシュッと海未の体から血が噴き出る。
海未は怯まず前蹴りで果南を蹴り飛ばすと、落ちていた電流を果南に振り下ろす。
果南は後ろに避ける。

バチチチ!!!!

しかし果南が電柱の線に触れ感電する。


果南「ゲラゲラゲラ!!!!」

海未「まぁ……こんなんじゃ倒れませんよね」


495 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:16:31 ???Sd
海未「(どうしましょう)」

果南が纏う風に阻まれ寝技が通用せず打撃も威力が半減する。
なら細かい打撃を積み重ねていくべきか?

海未「(無理ですね)」

心の中で否定する。
持久戦ができるほど海未は体力が残っていない。
そもそもが曜との戦いでかなり疲弊していたのだ。


海未「一撃に賭けましょう」


果南を改めて見る。
笑顔で攻撃して来てはいるが、強がりであることは海未も分かっていた。
ほむらメンバーを2人同時に相手にして通常のファイターが何度も死ぬ攻撃を受けているのだ。
2人とも体はボロボロだ。


496 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:17:15 ???Sd
果南が跳躍して海未を襲う。
それを回避しながら果南の体を「観察」する海未。
果南も全裸のため観察しやすい。

海未「なるほど……」

果南の体の脆い部分を探す海未。
それは左脇腹であると確信した。
海未が特段攻撃した箇所ではないが、恐らく穂乃果と凛がやったものだろう。

果南が爪を振り翳してた。
回し受けで回避し、脇腹に正拳突きを行う。

果南「ぐはぁ!!!」

海未「だが足りない」

今のままでは風に阻まれ必殺の一撃にならない。


497 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:17:54 ???Sd
果南はよろけながらも海未に飛びかかり左肩を掴む。
いや、「千切る」

海未「っ!!」

圧倒的な握力が海未の肉を削ったのだ。
海未は苦痛に顔を歪めるがお返しとばかりに手刀で首を叩く。

果南「げぇぇぇ!!!!」

頸椎にヒビが入る果南。

海未「はぁ!!!!」

首を叩き折ろうと2度腕を振りかぶるが果南の前蹴りが海未の鳩尾に刺さる。
まさに泥沼の戦いであった。

果南「………」カパァ

果南が再び口を開ける。
また風を飛ばすのか!?そう思い下がったが……。

果南「カハ〜〜〜!!は〜〜〜〜〜〜!!!!」

海未「!!」

果南は声を出そうと思っても出せないでいた。
大技を連発したせいで喉が潰れていたのだ。

チャンスと思い海未は手刀を繰り出そうとするが……。

海未「っ!!!」ピキィ

腕に激痛が走り腕を上げたまま固まってしまう。
手刀を連続で使用しすぎて腕が折れていたのだ。


498 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:18:16 ???Sd
海未は自分の体の限界を知り、果南から距離を取りある施設を目指して走り出した。
ソレはすぐに見つかった。

ガソリンスタンドだ。

果南はもちろん追ってくる。

果南が敷地内に入ったのを確認すると、海未は近くにあった車を片手で持つ。
そしてタンクに思い切り投げつけた。
車とタンクがぶつかった衝撃で火花が散る。
ガソリンにそれが引火し爆発を起こした。

ドォォォォォォォォォォン!!!!!!と沼津中に爆発音が響く。

果南「ぐるぁっっ!?」

海未の狙いは果南が纏う風を一時的でも吹き飛ばすことにあった。

爆風で海未もダメージを負うが歯を食いしばり果南に走り出す。


499 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 13:19:32 ???Sd
腕は折れているがそれでも利き腕の方が威力が高いと踏んだ海未。
爆風で風を取り除いた今が最後のチャンスだと海未は感じた。

少しでも貫通力を上げるため貫手の形を作る海未。
果南は爆風でこちらに気付くのが遅れた。

バキッッッ!!!!

割れた地面のコンクリートに踏み込む。
左脇腹に向けて貫手を突き刺した。

海未「オラァァァァァァ!!!!!!」

死に物狂いで放った突きは果南の脇腹の肉を抉り背中から貫通する。

果南「ギャァアアアアアアアア!!!!!」

鬼が叫ぶ。
おそらく今までにこれほどの傷を負ったことはないであろう果南。
海未は勝ちを確信する。


果南「ギャオラァァァァァァァ!!!!」


自らの脇腹を貫通されながらも果南は雄叫びを上げた。
そして海未の驚いた顔に右ストレートを放つ。

海未「がっ!!!!」

今までと比べても格段に威力の低いパンチ。
だが海未は地面を転がり水溜りにダイブした。

海未「はは……」

自嘲気味に笑う海未。
トドメと思われた一撃を真っ向から受けて反撃までしてきた。

急速に眠くなる海未。
体がもう動くなと命令している。

果南はといえばヨタヨタと白目でこちらに歩いてきていた。

海未「あなたの勝ちです……」

ボソッと呟くと海未は意識を手放した。


果南「……」

果南「」ドサ


海未が意識を失った直後に果南も前のめりに倒れた。
この瞬間、沼津の戦争は終結したのだ。


500 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:00:11 ???Sd

〜後日〜

鞠莉「ならべぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

鞠莉は浦の星の校庭で少女達を横一列に並べていた。

鞠莉「号令ェ!!左から!!!!」


穂乃果「え」

鞠莉「号令ェ!!!!!!」


穂乃果「い、1!」

凛「……2」

海未「3」

海未母「4」

果南「………」

鞠莉「こらぁ!!!号令はどうしたの果南!?」

果南「いや、何さこの茶番は……」

鞠莉「ほむら+海未母+果南が晴れて私の部下になった記念よ!!」

果南「んな話知らないんだけど……」


501 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:00:54 ???Sd
果南対海未の戦闘の影響は甚大であった。
多数の建物、物の崩壊。
幸い死者は出なかった様だがあの戦いだけでも100億に近い額がかかっていた。
ほむらは「果南が海未に勝てば鞠莉の下につく」約束を守った。
海未の母も責任の一端があるとして鞠莉の下につくこととなった。

鞠莉「確かにほむらが悪いわ。けど実は果南。アナタが一番物を壊しているのよ」

果南「そ、そうなの!?」

鞠莉「私が一番許せないのは穂乃果を倒した後に何故かAqours同士で喧嘩したことよ」

果南「あれは梨子が……」

鞠莉「そういえば梨子はどこ行ったの?梨子も私の元で一生働く宣言したんだけど」

果南「なんか東京に同人誌のイベントに行ってるよ」

鞠莉「ファック!!」


愛「おぉ〜やってんねぇ」

エマ「愛ちゃん!見つかったら私たちも奴隷にされちゃうかも……」

愛「見つからないし大丈夫だって。そういやしずくってもうすぐ退院だっけ?」

エマ「うん。曜ちゃんと同じ日に退院できるみたいだね」

愛「曜の回復力すごいな……」


502 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:01:31 ???Sd
愛「エマっちはこれからどうすんの?」

エマ「しばらく沼津で修行しようかな〜」

愛「いいねぇ!私も実は海未のお母さんに引き続き稽古つけてもらおうと思ってたんだ!」

エマ「虹学にはまだ帰れないね。果林ちゃんの遅刻が増えなければ良いけど」

〜沼津聖隷病院〜

善子「ほら、行くわよしずく」

しずく「ありがとうございます善子さん」

善子「何とか治って良かったわね。体の調子はどう?」

しずく「今すぐにでも戦えます!」

花丸「良かったずらね」

善子「で、もう沼津に帰るの?」

ランジュ「それだけどね」ガララ

しずく「あ、ランジュさん」

ランジュ「私たち愛とかと話したんだけどしばらく沼津復興と修行のために残ろうと思うの」

善子「そうなの!?」

しずく「私はともかくランジュさんや愛さんは街を破壊しすぎましたからね。数ヶ月この街にいて愛着も湧いてしまった。せめてインフラが元に戻るまで滞在しようと思います」

花丸「曜ちゃんの家も破壊されたらしいからね」

善子「ま、破壊したのは果南なんだけど……」


503 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:02:10 ???Sd
〜曜の家〜

曜「………」

千歌「よ、曜ちゃん……」

曜は海未に受けた怪我もほぼ完治し自宅に帰ると家が半壊していた。
曜の部屋には何と電柱が刺さっていたのだ。

曜ママ「曜ちゃん……ごめんね。ローンもまだあるのに住めなくなっちゃたの」

曜「この戦争の被害は小原家が負担しているらしい。ウチの家のローンも払ってもらおうよ」

千歌「そ、そうしよう!」

曜「(千歌ちゃんの写真集は無事だろうか……)」

千歌「曜ちゃんのお母さんと話してたんだけど家直るまでウチで暮らさない?」

曜「へ!?」

千歌「私の家なら空き部屋あるし。海未さんのお母さんも小原家に住む(監禁)らしいし修行つけて貰いやすくなるんじゃない?」

曜「嬉しいよ千歌ちゃん!」ダキッ

千歌「ぐあーーー!!!力が強いっっ!!!」ミシミシ


504 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:02:53 ???Sd
〜音ノ木坂高校部室〜

ドボドボドボドボ…………

平均的な大きさ部室。
その部室が膝の高さまで水に浸かっていた。
水はドアをつたい廊下まで溢れ出ていた。


「な、なにこれ?」

「何か水漏れてるんだけど」


生徒達は知る由もなかっただろう。
その水がたった1人の少女が流す「涙」である事を。


絵里「おおおおいおいおいおいおいおい!!!!」シクシク

絵里「希ィィィィィィィ!!!!」


沼津に災厄をもたらした女の名前を呼んでいた。


絵里「この恨み決して忘れないわよぉぉぉぉ!!!!」

絵里「確か……報告係が言ってたのは……」

絵里「桜坂しずく!虹ヶ咲学園の桜坂しずく!!」

絵里「アイツが希を殺したって言ってた!!」

情報が錯綜していた。
正しくは果南がトドメを指しているが手違いで絵里にはしずくが殺したと情報が行ってしまったようだ。
勘違いではあるが絵里にもう何を言っても聞かないだろう。


絵里「虹ヶ咲学園……待っていなさい」


新たな戦いの火蓋が切って落とされる。

終わり


505 : 名無しで叶える物語◆vWUgdltR★ :2025/04/20(日) 15:07:17 ???Sd
超長くなったけど完結できて良かった。
こっちもよろしく↓
【ss】侑「北海道に行くよ!」※ホラー注意
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1737103509/l30


506 : 名無しで叶える物語◆6afRDpIL★ :2025/04/21(月) 09:26:29 ???Sd
鞠莉ちゃん破産するやろ


507 : 名無しで叶える物語◆BpoZMCQo★ :2025/04/21(月) 20:12:19 ???Sd
おつ
したらば爆破と合わせて何度かリバイバルしてたけど、完結まで見届けられて良かった


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