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かのん 「なんだろう、このサイリウム」
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能力バトルものです。
-
依頼者 「ということで平安名さん、お願いしますよ……本当にお願いします……!」
すみれ母 「もちろんです。私たちの方で厳重に管理しておきますのでご安心ください」
…
…
…
すみれ 「……なんてこと言ってたけど、大丈夫なの? 怪しいものなんか預かっちゃって。だって私たち、別に霊能力的なの持ってるわけじゃないし」
すみれ母 「すみれ。私たちは巫女なのよ? きっと大丈夫だわ」
すみれ (根拠が雑すぎる)
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wktk
-
すみれ母 「それにね、実を言うとね、もうかなり貰っちゃったのよ」
すみれ 「何を」
すみれ母 「報酬を」
すみれ (……なんて現金な)
すみれ母 「それに呪いだかなんだかよく知らないけど、こんなもの誰も触らないように倉庫の奥の奥にしまっておけば大丈夫じゃない?」
すみれ 「いやでも、仮にも呪いの品なんでしょ? 勝手に動き出すとかは」
すみれ母 「大丈夫よ、そういうのはない気がするから。お母さんのね、勘は当たるのよ」
すみれ (我が母ながら、心配だ)
-
すみれ 「……分かったわよ。倉庫の奥の奥の方にしまっておきましょう。倉庫の鍵も、普段からかけてるけど、新品に取り替えておくわ。念のためにね」
すみれ (依頼主から渡されたのは、一本の『サイリウム』だった)
すみれ (正確に言うと、サイリウムのようなもの)
すみれ (それは明らかに遥か昔のもので。そう、何千年前の遺跡から出てきたような……しかし、その形はサイリウムにとても似ていた)
すみれ 「そう言えば、どんな感じの呪いなのか一切聞いてなかったわね。依頼者も、気が気じゃないって感じだったし、どうせ聞き出せなかったろうけど」
すみれ (……でも、あれは邪悪なものだ。それは違いない。すごく嫌な感じがしたから)
すみれ (何か問題が起きなきゃいいけど)
…
…
…
-
すみれ 「こ〜〜ら〜〜!! かのん!! またあんたベラベラと喋ったわね!?」
かのん 「ひぃぃぃ! 許してすみれちゃん!」
すみれ 「……仕方ない。あの時のように、また椅子に縛り付けてグソクムシの刑をするしかないようね」
かのん 「そ、それはご勘弁を!!」
すみれ 「うるさい!! 私がこの神社に呼び出した時点で覚悟はしていたでしょ!? 大人しく説教されなさい!!」
かのん 「うぅ〜〜! 嫌だよ〜〜!!」 タッタッ
すみれ 「こらっ! 待ちなさい、かのん!」 タッタッ
-
すみれ 「……っ、かのんどこ行ったの!?」
かのん (ひぃぃ、めっちゃ怒ってるよ、すみれちゃん)
かのん (今は陰に隠れてるけど、すぐ見つかる。どうすれば……ん?)
かのん 「倉庫……? 暗いのは嫌だけど、仕方ない。しばらくここに隠れてよう」
かのん 「『鍵もかかってない』みたいだし!」 ガラッ
すみれ 「……かのんったら、本当にどこに隠れて」
すみれ 「っ!」 ピクッ
すみれ (何この感じ……冷や汗……?)
すみれ 「い、一応、倉庫の方行ってみましょう。新品の鍵だから問題ないとは思うけど」 タッタッ
…
…
…
-
かのん 「ふぅ。たくさん物があって良かった。これで万が一倉庫にすみれちゃんが入ってきても、隠れられるよ〜」
かのん 「……」 ドキドキ
かのん (それにしても、ここ、なんか)
かのん (不思議な感じ? ここだけすごく空気がひんやりしているというか……? 神社だから?)
かのん 「ん?」
かのん 「なんだろう、この箱」
-
かのん (物は無数にあった)
かのん (無数にあったはずなのに、なぜか私はその箱が気になって仕方なかった。ゆっくりと手を伸ばす)
かのん (……箱を開けるとそこには)
かのん 「何これ、錆びてる? だけどこれってサイリウム……?」
サイリウム? 「……」
かのん 「サイリウムなら、光るはずだよね。それならこっそり隠れてる今には必要ないかな。また元の位置に……」
サイリウム? 「振るんだ」
かのん 「へっ?」
-
サイリウム? 「振るんだ。私を。私を振った時、そなたには『力』が宿る」
かのん 「ち、力……?」
サイリウム? 「スクールアイドルとして、多くの人に素晴らしい歌を届けたいのだろう」
かのん 「えっ」
かのん (なんでそれを……)
かのん (ていうか、そもそも、なんでサイリウムが喋って……)
サイリウム? 「そのための力を私ならそなたにあげることができる。だから早く振れ」
-
かのん 「い、いや、そんな急に言われても……」 スッ
かのん (と言いつつ、手は伸ばしていた。もう止められない。直感で私はそう悟る)
かのん (そして)
ガシッ
サイリウム? 「振れ。澁谷かのん」
ガラッ
すみれ 「かのん!?」
かのん 「すみれちゃん!?」
サイリウム? 「振れ!! 澁谷かのん!!」
-
すみれ (あれは……!?)
かのん 「……ごめんね、すみれちゃん」
すみれ 「ちょ、かのん!! やめなさい!!」
すみれ (かのんの顔は、とても寂しげな笑顔だった)
ブンッ
かのん 「サイリウムは振るものだから」
すみれ 「そ……そんな……」
サイリウム? 「くっくっくっくっくっ」
サイリウム? 「振ったな。振った、振り回した。これで、澁谷かのんは、能力を手に入れる。素晴らしい能力だ。これで、澁谷かのんは自由に全てを手に入れることができる。それはなんとも幸せな感覚だろう、なあ、澁谷かのん!!」
-
かのん 「……」
すみれ 「か、かのん……?」
かのん 「……ふふふふふふふふふふふ」
すみれ 「!」
かのん 「『見えた』よ。すみれちゃん。ラブライブ! 優勝がっ」
すみれ 「そ、そりゃ優勝はするわよ……だ、だけど、見えたってどういうこと? それに急に笑い出すなんて怖いというか……」
かのん 「だけど、優勝なら私一人で十分かもしれないね」
すみれ 「……は?」
すみれ 「今なんて言ったの……?」
-
かのん 「だって私、最強だもん」
かのん 「この倉庫だって、私の手にかかれば、最高の『一人ステージ』っっ」
かのん 「Let’s show time!!!!!」 ボワッッ
すみれ 「……ひっ!?」
すみれ (さっきまで倉庫だったのに、一気に花畑が!? それに真ん中には舞台、舞台の上にはかのんが……!)
かのん 「すみれちゃんのことね、私は大好きなんだよ」 クスクス
すみれ 「急な告白にビビってるけど、正直今のあんたは正気には思えない。冗談として流すわよ」
かのん 「釣れないなあ。でもいいや、それでね、私はすみれちゃんのことが好きだから」
-
かのん 「すみれちゃんを『私専用』の『恋人』にしちゃうの」
すみれ 「恋人は普通、その人だけを見てると思うのだけど」
かのん 「やっぱりさ、一緒に生きてくならビジョンは共有しておかないとね」
すみれ (聞いてないし……)
かのん 「て言うことで、一瞬見せてあげる。私の『理想』を」 スッ
すみれ 「かのん……?」
すみれ (その時かのんは、歌った。歌詞もない、鼻歌の、本当に気楽な感じで)
すみれ (だけど、その瞬間に私は……!!!)
-
かのん 『ふふっ、すみれちゃん。あーん』
すみれ 『フフッ、アリガトウ、カノン』
かのん 『私、すみれちゃんのこと、ずっーーーと、大切にするからね』
すみれ 『ワタシモヨ、カノン』
かのん 『ふふふふふふ』
すみれ 「……!?……!?」
すみれ 「な、なんなのよ、今の……!! なんなのよ、今のは!!」
すみれ (急に映像が頭に入り込んできたことじゃない!!)
すみれ (私が混乱してるのはその映像の内容!!)
-
すみれ (その映像の中の私は、かのんと付き合っていた……だけど、その映像の中の私はまるで……)
すみれ 「人形……人形のように、ただ、ただ、かのんに微笑んでいた……」
かのん 「……そうなるように」
かのん 「今すみれちゃんを倒させてもらうよ。この『力』で!!」
すみれ (ああなるようにって、つまり何?)
すみれ (今から私はなんらかの形で、精神をボロボロにされ、あんな状態にされるってこと!?)
すみれ 「そ……そんなの、ご免よ、絶対に嫌……っ!!」 ガクガク
-
かのん 「安心して、すみれちゃん!」
すみれ 「な……何が……!」 ガクガク
かのん 「流石の私だって、一方的な暴力は好きじゃないよ。だからね? すみれちゃんにもあげる。『能力』を!」
すみれ 「能力……」
すみれ (それって、私にもあのサイリウムを振れってこと……? あんなになったかのんを見た後に……?)
すみれ 「……悪いけど、私はそのサイリウムは振りたくないわ」
かのん 「ん? でも、能力がないと、すみれちゃんは一方的に怪我しちゃうことになるけど……良いの?」
-
すみれ (良くないわよ!!)
すみれ (……でも確信した。やっぱりかのんはあのサイリウムでおかしくなったんだ。かのんが私を怪我させるなんて、考え方になるわけがない。私と恋人云々ってやつも、多分サイリウムが原因)
すみれ (それなら益々私はサイリウムを振ってはいけない)
すみれ (でも、かのんが一体どんな能力なのかは分からないけど……それは武器も能力もない私が勝てるものなの?)
すみれ (いや、おそらくあのかのんの自信を見るに、能力なしでは正真正銘私はフルボッコにされる)
すみれ (それじゃ、本当にあのかのんの『理想』に辿り着いちゃうじゃない……っ!)
-
すみれ 「どうすれば、どうすればいいの?」
サイリウム? 「言っておくが平安名すみれ」
すみれ 「!」
サイリウム? 「私自身が精神を作用できるのはたった一人が限度。お前に力を渡すことはできても、お前の精神をどうのこうのすることはできない」
すみれ 「……それ、本当なの?」
サイリウム? 「ああ」
すみれ 「……それならなんで私に能力を与えようとするかのんを止めない。それに、そんな情報をなぜ私に教える? あなたにはメリットがないじゃない」
-
サイリウム? 「メリットなどどうでもいい。私はもう澁谷かのんに能力を与えられた。一番の『才能』を持つ、澁谷かのんに能力を与えられたんだ。それだけで満足。あとは、澁谷かのんの発言のまま、私は従うだけだ」
すみれ 「……かのんは、あんたが操ってるんじゃないの?」
サイリウム? 「作用しただけだと言ったろう。もはや、今の彼女は私が操れるものではない」
すみれ 「……」
すみれ (つまり、今のかのんは誰にも止められないということ……? それこそ、私が能力勝負で勝つまでは)
サイリウム? 「どうだ、改めて聞こう。能力を求めるか?」
すみれ 「私は……」
-
かのん 「ねえ、すみれちゃん。早く『こっち』に来てよ。同じ舞台で、同じ勝負をしよう」
すみれ (かのん……)
すみれ (かのんがああなってしまったのは、私のせいなんだ)
すみれ (それなら)
すみれ 「私が止めるのが、筋ってものよね!! かのん!!」 ドンッ
すみれ (舞台に立つ! ……そして勝つ!!)
かのん 「すみれちゃん!!」 パァァ
-
すみれ 「サイリウム!! 私に『力』を与えなさい!! できるならかのんを改心させられるくらい、強いやつを!!」
サイリウム? 「それには答えられない。能力とは、自分で決めるものだからな」
すみれ 「どういうことよ!?」
サイリウム? 「……まあ、いずれわかる。よし、私を振れ平安名すみれ。私はお前に興味はないが、澁谷かのんの意志とあれば授けよう」
すみれ 「こ、こいつ、いちいち癪に触るわね……! 私だってかのんと同じLiella!なのよっ!」
すみれ 「絶対にかのんを止める!!!!」 ガシッ
-
ブンッ
すみれ 「来い!! 私の能力!!」
———————澁谷かのん
サイリウムに、観客に認められた偶像。それは誰にも止められない!
平安名すみれ———————
どんな場所も構わない。アウェーこそ大逆転のチャンス! 革命の大貧民!
-
すみれ (私の能力は……!!)
『スポットライト』
すみれ (……スポットライト??)
サイリウム? 「はじめっ!!」
かのん 「ルールはシンプルだよ、すみれちゃん! 『能力』を発動する! そして相手を『再起不能』もしくは『降参』させたら『勝利』だよ!!」
すみれ 「……まずは小手調べね。かのんの能力を探るわ」 スッ
かのん 「へえ……距離を取るんだ。さすが冷静なすみれちゃんだね。でも、舞台はそこまで広くないよ。ずっと逃げられるとは思わないことだね」
-
すみれ 「……」
かのん 「……返事してよ、つまんないなー」
すみれ 「あんたがいつも通りなら会話してあげても良いけどね!」
かのん 「へっ? 別にいつも通りだけどね?」
すみれ 「何言ってたんだか」
かのん 「……まあ、いいや。悪いけど、私もさっさと『理想』へ届きたいんだ。この能力があればできるんだもん。だからすみれちゃん、見ててね」
かのん 「私の能力。『True Dream』を」
-
すみれ 「言っておくけど簡単には近づかないわよ……遠距離なら、避けられる攻撃もある」
かのん 「うーん、近づいてよ、ねえ、すみれちゃん」 ギュッ
すみれ 「なっ!?」 グググググ
すみれ (体が引っ張られる!? これはどういうこと!?)
かのん 「……本当の夢は止まらない。私の周りも止められないんだよ。全部、私に引き寄せる。私の能力は『引き寄せる』力」
すみれ 「つまり……逃げられない!?」 グググググ
かのん 「そういうこと」
-
烈火の炎みたいな
-
すみれ (でも、ということは、遠距離攻撃はできないってことよね? それに、引き寄せるだけならそんなに怖く……)
かのん 「よそ見厳禁かな」
すみれ 「は?」
すみれ (……横っっっ!!!?) スッ
ガッシャーーーーン!
すみれ 「ひぃぃぃ! 巨大な岩!? 今私に当たるところだったわよ!?」
かのん 「引き寄せたんだよ、地面を」
すみれ 「地面を!?」
-
かのん 「すみれちゃんに当てようとしたけど、避けられちゃった」ハァ
すみれ 「いやいやいや!? 私を死なせる気!?」
かのん 「それに関しては大丈夫だよ。能力を発揮して戦っている間は、攻撃力も守備力も、尋常じゃなくなってるから」
すみれ 「……そ、そうなの?」
かのん 「うん。だって仮に、バトルに向いてない能力だったらどうするの? 一方的に負けちゃうじゃん。肉弾戦はできるようにしないと」
すみれ 「いやだとしても、バトルに向いてない能力だったら不利でしょ」
-
かのん 「そうとも言えないよ。攻撃手段はあるんだから、たとえダメージを与える能力じゃなかったとしても、『頭の使い方次第で』その能力はどうにも化ける。そうでしょ? すみれちゃん」
すみれ 「……」
かのん 「……あれ? そんなに聞いてくるってことは、もしかしてすみれちゃんの能力は、一見戦いに向いてない能力なのかな?」
すみれ 「……」
かのん 「あっ、図星?」
-
うっかりしゅみれ
-
すみれ (スポットライト……だったわね……)
すみれ (どんな能力かまだ分からないけど、光で攻撃っていまいちイメージしにくいし……今の情報は大きかったわ)
すみれ (とりあえず、どんな能力か理解しないと)
かのん 「すみれちゃん、気付いてる? 考えてる間にも距離が縮んできてることに」
すみれ 「もちろんよ」 グググググ
すみれ (それもそうだし、さっきみたいに岩でも飛んでくるかもしれないし……油断なんか一瞬もできないわ)
すみれ 「とりあえず」 シュッ
かのん 「こっちに走ってきた?」
-
すみれ 「どうせ近づくなら私から行ってやるわよ!!」 タッタッ
かのん 「……」
かのん (私の能力は、才能は、『アイドルの才能』でもある。何もかも引きつけることができるということは……)
かのん (……心も惹きつけられるということ)
かのん (だからこの勝負に私が勝ち、すみれちゃんが心の隙を見せた時に、あっという間に私のものにしちゃうんだ)
かのん (そしたら、永遠に幸せだよ。すみれちゃん!)
-
心理掌握かのんちゃん
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かのん 「ふんっ!」 ギュッ
すみれ 「っ、もっと引っ張る力が!」 グググググ
すみれ (どっちにしろ近づく気だったけど、これじゃ真っ正面……!!)
かのん 「すみれちゃんは私の目の前に引っ張られる……タイミングをこちらが決められるのなら」
かのん (思いっきり、パンチを当ててやるっ) ゴゴゴゴゴ
かのん 「勝負……あり、だね」
かのん (念の為、すぐに引っ張れる岩を選んでおくか)
-
すみれ 「かのんっ……!!」 グググググ
かのん 「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」 ブンッ
すみれ 「『スポットライト!!』」 ピカーーーン
かのん 「えっ!?」
かのん (眩しい……目が……っ!!)
すみれ 「『太陽拳』にそっくりね、この能力!」
すみれ (でもかのんの視界を塞ぐことができた! そして、私は目の前にいる!)
-
かのん 「っ、パンチを外したっ!?」
すみれ (かのんが引っ張ってくれたおかげで、私のパンチ力も上がるってもんよっ!!)
すみれ 「くらええええええええっーーーー!!!」 ブンッ
かのん 「まだだっ!!」 ギュッ
すみれ 「えっ!?」
すみれ (かのんに向かって二つの岩が……! 地面から剥がされて私に襲ってきた!)
かのん (これを避けられても、構わない。少なくともすみれちゃんは岩を避けるために私と距離を置くはず!)
-
すみれ 「っ」 タッタッ
かのん 「……不意打ちなんて卑怯だよ、すみれちゃん」
すみれ 「はあ、はあ」
すみれ (とりあえず私への引き寄せは解除されたみたいね)
すみれ (だけど……)
かのん 「最大の防御を見せてあげる」 ガシッガシッ
すみれ (かのんの体に小さな岩が集まってきている……! こ、これじゃ攻撃なんて……!)
-
かのん 「私の能力は引きつける能力。でも、それは『自分自身』にしか発動できない。つまり、すみれちゃんに集まるように岩を投げることはできないんだけど……」
かのん 「それでも、十分」
かのん 「だってすみれちゃんが私に近づくためには、当然ながら私と周りの地面との斜線上に入らざるを得ないし、場所が悪くても私がすみれちゃんを引き寄せれば事が済むんだもん」
かのん 「もし仮に、さっきみたいに引き寄せられたのを利用して殴りかかろうとしても、もう不可能。今、私は、岩をアーマーのように纏っている。能力発動中と言え、よっぽどでなければ攻撃は通らない」
-
かのん 「……どう? 降参する?」
すみれ 「……」
かのん 「……」
すみれ 「……降参したら私はどうなる?」
かのん 「……私の理想の一部になる」
すみれ 「……そっか」
かのん 「……うん! それも幸せでしょ? だから一緒になろうよ、すみれちゃん」
すみれ 「……まあ、痛い目には遭いたくないわよね」
かのん 「分かってくれたの!?」 パァァ
-
すみれ (かのんだって今さっきあの能力を手に入れたはず。なのに、あの応用力は何? 自分にあらゆるものを引きつける能力を利用して、紐でも結んでるように私に岩を当てようとしてくる)
すみれ (……挙動的にはヨーヨーみたいなものかしら。そして今は引きつける力で鎧みたいなのを作ってるってわけ? なによそれ)
すみれ (『逆に言えば』)
すみれ (私の能力も、それなりに応用できるってわけね)
すみれ 「……かのん」
かのん 「何かな、すみれちゃん」 ニコニコ
-
すみれ 「降参する前に、あんたの顔を近くで拝みたいわ」
かのん 「さっきみたいに視界を塞ぐ気?」
すみれ 「……違うわよ、本当にそう思ったのよ。私もあなたが『大切』だから」
かのん 「ふふっ、そっか」
すみれ (『大切』よ、本当に。だからこそ、あなたの思い通りにはならない)
かのん 「まあ近づいてきても、この岩の鎧だし。引っ張っちゃうか。よいっしょ!」 ギュッ
すみれ 「……」 グググググ
-
すみれ (私の能力は、何もないところから光を出す能力……で合ってるのかしらね)
すみれ (これをもしも、応用すると言うのならば)
すみれ (いや……そうじゃない。本当に能力の『解釈』はそれだけで良いの?)
すみれ (もっと幅の広い捉え方をするべきだわ。そう、光を出す能力なんかより、光を調節する能力の方がよっぽど……!)
すみれ (……勝てるっ)
かのん 「ふふ、目の前に来ちゃったね、すみれちゃん」
すみれ 「ええ、来てしまったわ。だけど」
かのん 「?」
かのん (また光を出す気……?)
-
すみれ 「私にはやっぱり、スポットライトを出す側じゃなくて、スポットライトに当てられる側が似合うわ」
ビュンッ
かのん 「……!?……!?」
かのん 「なにこれ!?」
かのん 「真っ暗!? 真っ暗だよ!?」
すみれ 「……ここ一帯の光を調節した。夜の電気の点いてない部屋のような暗さよね」
かのん 「へえ……なるほどね。それで私をこっそり攻撃する気? でもそれは無理だよ」
-
かのん (さっきのように、すみれちゃんが近づいてくる気配を感じたら、地面から岩を引っ張って攻撃する。すみれちゃんが避けても、私に当たる直前で岩を止めて鎧にする)
かのん (攻撃が最大の防御とはよく言ったものだね)
パチッ
かのん 「えっ!?」
かのん (すみれちゃんのいる位置をスポットライトが照らしてる!?)
すみれ 「……やっぱり、私はステージの上でこそ輝ける」
かのん (ちょっと距離が離れたとはいえ……)
かのん (なんでせっかく暗闇にしたのに自分の位置を知らせるような……)
-
すみれ 「そして、かのん」
パチッ
かのん 「!?」
すみれ 「あんたも同じはずだったわよね」
すみれ (真っ暗な舞台の上、二人だけが照らされている)
かのん 「一体どういうつもりなの……すみれちゃん……?」
すみれ 「かのん、ゲームをしましょう」
-
かのん 「ゲーム?」
すみれ 「私は常に自分の位置を照らすわ。だから、私に岩を当ててみなさい」
かのん 「えっ?」
すみれ 「……その代わり、あんたもずっと照らすけどね」
かのん (何がしたいの? 本当に)
すみれ 「勝負だもの。乗ってよ」 クスッ
かのん 「!」
かのん 「……ふふふふふ」
-
かのん 「良いよ、すみれちゃん、乗ってあげる。いつまで逃げられるか、楽しく見させてもらうよ!!」
すみれ 「じゃあ走るわよ!!」 タッタッ
かのん (すみれちゃんが走るのに合わせて、スポットライトも動く。真っ暗な中、私とすみれちゃんだけは明るい。視界は良好!)
かのん 「おりゃあっ!」 ギュッ
すみれ 「おっと! 危ない!」 スッ
かのん 「ならこれでどうだ!」ギュッ
すみれ 「なんのこれしき!」 スッ
-
かのん 「……ふふ、ちょこまか、まるで小動物みたいに。でも私の飼ってるペット知ってるよね?」 ギュッ
すみれ 「マンマルがどうかした?」 スッ
かのん 「小動物を捉える獰猛な鳥。その飼い主が私。飼い主は似るってね!!」 ギュッ
すみれ 「動物が飼い主に似るんじゃなかったっけ!?」 スッ
かのん (逃げるのが早い。これじゃ、間に合わないな) ギュッ
かのん (仕方ない。一度引きつけた岩は、目の前まで持ってきて鎧にしたかったけど、すみれちゃんが斜線上から外れた時点で、そこらへんに捨てておくか) ギュッ
-
すみれ 「こっちよ! かのんっ!」 シュッ
すみれ (まるでバレリーナのように、私はステージを駆け抜けるっ! 全体を踊るっ!)
かのん 「っ! しつこいなっ!」 ギュッ ギュッ
すみれ (そろそろかしら)
すみれ 「かのん、私は嘘は言わないわ。あなたと私は照らし続ける。でも」
かのん 「?」
すみれ 「ずっと暗闇とは言ってないわ」 パチンッ
-
かのん 「!?」
かのん (ま、眩しい……目が……っ!!)
かのん 「一気に全体を明るくするなんて……って、また暗くなってる!? どういうこと!?」
すみれ 「かのん!! 一気に近づくわよ!!」 タッタッ
かのん 「なっ!?」
かのん (なんでここで近づくの、すみれちゃんには秘策でもあるの!?)
-
かのん 「すみれちゃんのスポットライトが上に!?」
かのん 「飛び上がったの!? えっ!? でも、あの高さをどうやって!?」
かのん 「は!? まさか!?」
かのん (私には真っ暗で見えないけど、すみれちゃんが逃げ回ってたこの舞台周辺には……)
かのん (私が置いてきた、岩たちがある)
すみれ 「ある程度イメージして動いていたけれど、さっき一瞬明るくした時に全ての岩の配置、大きさを改めて完全に把握したわ」
すみれ 「だからこそ、私は階段のように、徐々に高い高さを登って、かのんに近づけてる!!」
-
かのん (今からすみれちゃんを引き寄せても、高いところから私に引き寄せるから、パンチの威力が上がってしまう! それこそ、私も同じ高さに登るかしないと……!)
かのん (でも私からじゃ、岩がどうなってるかわからない……それにすみれちゃんの動きが早すぎて足場になってる岩を剥がそうにも追いつかないし……!)
かのん (それならできることは一つ)
かのん 「もっと鎧を頑丈にする!! それでどうっ!!」 ギュッ
ゴツンッ ゴツンッ
かのん 「……? なんで、なんで岩が集まらないの?」
-
すみれ (かのん。岩をいたるところに乱雑に置きすぎたのよ)
すみれ (一つの岩を引っ張ろうとすれば、違う岩に衝突する。かのんのすぐ近くにある岩はもうとっくに鎧になってるだろうし、私が登り終わるまでに鎧の強化は間に合わない)
すみれ 「引き寄せると言っても、一気に無数のものを引き寄せるのは難しいみたいね。せいぜい三個が限界かしら」
かのん 「っ!」
すみれ 「そんな引き寄せ力で、何万人のファンを同時に惹きつけることができるの!? あのね!!」
-
すみれ 「あんたの歌の方がよっぽど、惹きつける力はあんのよっ!!!!」
すみれ 「誰でもない澁谷かのんを」
すみれ 「否定しないで、私は許さない!!」 ビュンッ
すみれ (高さは十分っ!!)
すみれ 「スポットライトは私とかのんだけを照らしている。岩で攻撃しようにも、引き寄せるだけじゃ、自分より高い位置にいる人間に攻撃は当たらない! さっきの地上戦とは違ってね!!」
すみれ 「そしてこの高さからの思いっきりのパンチを防げる硬さが今そのアーマーにはあるかしらね!?」
-
かのん 「そんな……っ、いやだ、私は、すみれちゃんと……それに、ラブライブ! だって、もうみんなとの夢が敗れる思いはしたくないっ……私一人で優勝すればみんなには悲しませることなく……!」
すみれ 「残念だけど」
すみれ 「ありがた迷惑よっっっっっ!!」 ゴゴゴゴゴ
かのん (そうだ、逃げればいいっ! わ、忘れていた! 避ければいいんだ!!)
かのん (ああっ、鎧が重い!? それに、周りの地面も歩きにくい!剥がしたから穴がいくつも……!)
すみれ 「バカヤロゥーーーーーーっ!!」 ドカーーーンッ
かのん 「ぐ」 ピキピキピキ
かのん (重力もかかって、鎧が壊れる……ああ、私……)
かのん (負けたんだ……) パリンッ
…
…
…
-
かのん 「ずみ゙ま゙ぜん゙で゙じだ!!!!!」 ドゲザ
すみれ 「いやもういいって……それに、元はと言えば私のせいだし……」
かのん 「でも私、酷いこと言って」
すみれ 「サイリウムのせいでしょ。それに、メンバー全員で挑むどうのこうのは、私も前科あるから何も言えないわ」
かのん 「すみれちゃん……!」 パァァ
すみれ (それにしても結構なパンチが入ったと思うけど、今はケロッとしてるし、本当に頑丈になってたのね)
すみれ 「さて、最優先事項はこいつをどうするかだけど」
サイリウム? 「……」
-
すみれ 「ていうかあんたって、サイリウムで合ってるの? かなり昔っぽいけど」
サイリウム 「古代人が使っていたサイリウムだ。サイリウムで問題ない」
すみれ (古代にもサイリウムがあったの……? ってことは、アイドルも……? 気になるけど、今はそんなことじゃなくて)
すみれ 「はっきり言うわ。あんたは危険よ。だから処分します」
サイリウム 「嫌だ」
すみれ 「嫌だと言われても」
サイリウム 「それに不可能だ。私は破壊できない」
すみれ 「そうなの?」
サイリウム 「……ああ。だからこそ、多くの人が恐れてきたのだ」
-
すみれ 「それなら厳重に保管するしかないか。もっと格式の高いお坊さんでも呼んで……」
サイリウム 「正直封印はされたくない。ようやく、こうして『才能』ある澁谷かのんに出会えたのだから」
すみれ 「……その澁谷かのんに私は勝ったのだけど」
サイリウム 「偶然もある」
すみれ (こ、こいつ)
サイリウム 「それに私にはもう野望はない。これ以上誰かが私を間違って振ろうと、能力は与えない」
すみれ 「……ほんと?」
-
サイリウム 「澁谷かのんが望むならば別だが」
すみれ 「かのん?」 ギロッ
かのん 「ひぃぃぃ! 望むわけもありません!! 平和! 平和が一番だもん!」
すみれ 「……だそうよ」
サイリウム 「それなら私はただの喋るサイリウムに戻ろう」
すみれ 「いやだとしても、封印してもらうけどね」
サイリウム 「待て」
すみれ 「待たない」
-
サイリウム 「私のような古代からの呪いの品は決して一つじゃないのだ!!」
すみれ 「えっ!?」
サイリウム 「そいつらを見つけ出してからでも遅くはないのでは!?」
すみれ 「あんたみたいのがうじゃうじゃまだいるってこと!?」
サイリウム 「言い方!!」
すみれ 「……だとしても、それは格式の高いお坊さんに任せればいいわね」
サイリウム 「私が見つけてやろうっ!」
すみれ 「……どうやって」
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サイリウム 「なんとなく位置はわかるのだ。全て、この地域にあると思われる」
すみれ 「この地域……って言っても、ヒントがなければ広いわよ」
サイリウム 「私は近くに呪物を見つけたら光ることができる!! それこそサイリウムのように!!」
すみれ 「……」
サイリウム 「さらに言えば私は、お前と澁谷かのんにしか協力しない!! 他の呪物を見つけたいなら、封印よりもお前が持っていることをお勧めする!!」
すみれ 「……」
すみれ 「必死ね」
サイリウム 「頼む!!」
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すみれ 「……」
かのん 「……」
サイリウム 「……」
すみれ 「……で、どうする? かのん?」
かのん 「うーん、良いんじゃないかな」
サイリウム 「よっしゃーーーーーー!!」
すみれ 「はぁ、なんでこうなるのよ〜」
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こうして、私とサイリウムの不思議な物語は始まった。
ただでさえ、スクールアイドルで忙しいのに、余計なことを……!
それに、かのんは、覚えてるのかしら。いくらおかしくなっていたとはいえ、私と恋人になろうとしたこと。
すみれ 「……」 チラッ
かのん 「え? なに、すみれちゃん」
すみれ 「……」 ジッー
かのん 「もうすみれちゃんったら///」
すみれ (何も考えてなさそうで羨ましいわ)
すみれ 「大変な日々になりそうね……」
…
…
…
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四季 「ん?」
四季 (科学室に来たら、一つ、見覚えのない軍手を見つけた)
四季 「しかもやけに古いし……捨てないと……」
四季 「それにしても、科学室に来たのも久しぶり」
四季 「まさか、スクールアイドルなんて、私がすると思わなかった」
四季 「……とても楽しい」
四季 「あとは……メイにこの気持ちさえ伝えられたなら……」 ボソッ
つづく?
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ありがとうございました。
バトル描写はあまり書いたことがないもので、分かりにくかったらすみません。
なんか続きがあるように締めましたが、続きは何も考えてません。
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乙
コバート・アフェアのような急展開でおもろかった
サイリウムのCVを考えなきゃですな
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乙
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