理亞「姉様はお店の方で受験勉強してるし、しばらく戻ってこない」
理亞「やっぱり真面目な姉様のことだから練習メニューとかメモしてるのかな......？」
理亞「私もこれから部員集めとか頑張らなきゃいけないし、こっそり参考にさせてもらおっと」ﾍﾟﾗ
私はついにブロッコリーを克服しました。
というのも、晩ごはんのシチューにブロッコリーが入っていたそうです。
やや疲れていたことに加えお腹も減っていたので夢中でご飯を食べました。
そのため理亞に言われるまで気付きませんでした。
いくら気づかずに食べ切ったとはいえ、これは大金星。
そんな訳でとても気分がいいので、今日から日記をつけることにしました。
ブロッコリーが出るたびに勝敗を記録します。
理亞「しかもブロッコリー？勝敗？」
ﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗ.......
理亞「うわっ結構ボリュームある！とりあえず読んでみよう......」
10月19日 晴れ 勝敗:◯ (2戦2勝0敗0分)
今日は昨晩のシチューの残りを食べました。
ブロッコリーはどうしても理亞に食べてほしそうな顔をしていたので、きちんとお皿によそってあげました。
私は昨日克服しましたが、今日は不戦勝。
張り合いがないですね。
- - -
理亞「たまに私のお皿のブロッコリーがいつまでも減らないことがあるんだけど、 あれ姉様のせいだったんだ......」
理亞「というか食べてほしそうな顔ってなんなの」
理亞「まあいいや。次は、と」ﾍﾟﾗ
10月20日 くもり 勝敗: △ (3戦2勝0敗1分)
ブロッコリーが食卓に並ぶたびに日記をつけるルールにしたことを後悔しています。
なぜならここは北海道だからです。
今日は茹でブロッコリーでした。
なんでも母の友人で農家を営んでいる方が数箱送ってきてくれたとのことで、まだまだ我が家には大量にあるという話です。おぞましい。
2日間も勝利しているので今日も勝てる。
さあ食べようと思った矢先のことでした。
箸を伸ばした瞬間にとてつもなく良い詞が頭に浮かんでしまったのです。
こんなこと数ヶ月に一度あるかどうかなので、非常に残念でしたが食事を中断して部屋に戻りました。
ええ、とても残念です。
ですので今日は引き分けとしましょう。
まだリードは守れています。むしろ圧勝ですね。
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理亞「しかも言い訳つけて逃げたのに引き分けと言い張ってる」
理亞「この先もこんな調子なのかな」
10月21日 くもり 勝敗: ◯ (4戦3勝0敗1分)
さすがにお味噌汁に入れることはないじゃないですか。
この時期のじゃがいものお味噌汁を楽しみにしていたのに台無しです。
という訳でブロッコリーの反則負け。私の勝ちです。
- - -
理亞「そもそも食べられなかったら姉様の負けでしょ？なのにブロッコリーの反則負けって」
理亞「でも姉様のことだし一回始めちゃったから引っ込みつかないんだろうな」
10月22日 くもり 勝敗: ◯ (5戦4勝0敗1分)
......昨日の余りとはいえまだあるんですか？
お鍋の半分くらい残っていましたが。
ルールはルール。
昨日同様反則負けで処理して私の勝ちです。
ただ、ここまで勝ってばかりで歯応えがないので自分から挑みに行くことにしました。
明日は本気をぶつけ合うことにします。
- - -
理亞「反則負けで処理して〜とか小慣れてる感出してるけど実際負けだからね？」
理亞「ちゃっかりAqoursの歌詞オマージュしてるし......」
10月23日 くもり 勝敗: × (6戦4勝1敗1分)
今日は大好きなラザニアを作りました。
深めのグラタン皿いっぱいに作りました。
好きなものを前にしてこんなに後悔したのは初めてです。
入れるんじゃなかった。
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理亞「一旦続けて読んじゃおう」ﾍﾟﾗ
昨日作ったラザニアですが、理亞がおいしそうに食べてくれました。
笑顔でおかわりまでしてくれて嬉しかったです。
これは紛うことなき勝利です。姉妹愛。
理亞「こんな安い姉妹愛いらない」
理亞「あれ、歌詞のメモが横にある」
memo. ← 新曲の歌詞に使えそうなフレーズ
I never stop 立ち上がれば 目の前に現れる
次なる世界 次なる未来 新しい私へと
↑ ここら辺にWow wow的なやつ入れたい
理亞「まさかLonely Slow Planetってブロッコリー克服する歌？」
理亞「私あの曲好きだったのに......」
理亞「あたかも自分が勝ちました感出してるけど食べたの私だし」
理亞「......世間にバレたらこの曲で緑のペンライト振られちゃう。ここは黙っておこう」
理亞「そして『いい詞が浮かぶのは数ヶ月に一度のこと』も嘘だと判明したね姉様......」
10月25日 くもり 勝敗: ◯ (8戦6勝1敗1分)
なぜかカリフラワーは食べられるんですよね。
勝ちました。
- - -
理亞「食べられるのわかっててわざわざ記録するあたりずるい」
理亞「それだけ負けたくないってことなのかもしれないけど」
理亞「姉様は普段ちゃんとしてるのにこういうところでなんか抜けてる......」
10月26日 くもり 勝敗: △ (9戦6勝1敗2分)
今日は食卓にブロッコリーは出ませんでしたが日記をつけています。
何でも、今朝の情報番組によると......
「毎月26日はブロッコリーの日！」
だそうです。正気でしょうか？
でも農家のみなさんの努力や愛に敬意を表して、今日のところは引き分けとしてあげます。
今日だけですからね。
- - -
読んでるぞ
理亞「食べられないくせに『自分余裕ありますけど？』感を出してるのがもう気に食わない」
理亞「ブロッコリーにとっては記念すべき日なのに勝ちは譲らないんだね、さすが姉様......」
理亞「ここまででもけっこう読んだけど......うわ、まだまだある」ﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗ
理亞「あ、これが最新のページだ」
12月24日 雪 勝敗: ◎ (48戦39勝3敗6分)
待ち焦がれたクリスマス。
今日はダイヤさんが函館にいらっしゃいました。
なんでも推薦で進学が既に決まっていて、ひと足早く休みを謳歌しているんだとか。
さすが私のダイヤさんです。
今日は私の息抜きも兼ねて、函館のおいしいレストランでクリスマスディナーを取りました。
大切な人と過ごすホワイトクリスマス。
じんわりと心があたたまる一方で、より一層身が引き締まる思いでした。
無事に第一志望に合格すれば春からダイヤさんと......いや、ダイヤと東京で暮らすことができます。
あと少し頑張ることにします。
素敵な一日だったので今日は勝利です。
ブロッコリー？知りませんね。
- - -
理亞「姉様と黒澤ダイヤが付き合ってた！？しかも春から同棲！？」
理亞「姉様まだ合格してもいないのに浮かれすぎ」
理亞「......でもダイヤ姉様、か」
理亞「うん、それは悪くない」
理亞「あっ姉様！すぐ行く！」
理亞「……この日記帳は元の場所に戻して、と」
聖良「今日は宅配ピザを頼みました。お任せにすると割引で安くなるようだったので……げっ」
理亞「姉様？」
聖良「あー理亞、頑張ってお腹が空いているでしょうさあこれとこれとこれをどうぞほらほら」
理亞「姉様……まさか今日はこれで勝ったことにするの？」
聖良「！？」
聖良「......まさか理亞、あれを読んだのですか？」
理亞「何のことかわからない。でも黒澤ダイヤは好き嫌いする人と同棲してくれるの？」
聖良「ゔっ」
理亞「名家のお嬢様の婚約者はブロッコリー食べられないって内浦中で噂になって、黒澤ダイヤが恥をかくことになるかも」
聖良「......ええ、いいでしょう。そこまで言われたら覚悟決めて食べますよ！」
理亞「ちなみに黒澤ダイヤとはビデオ通話で繋がっている」
『聖良さん？聞こえますか？』
聖良「あっ！ダイヤさん！？帰ってしまった後とても寂しかったです......」
『私もですわ。それより理亞さんから聖良さんがブロッコリーを食べると聞きましたが』
聖良「ああ、もう逃げ場はないのですね......。短くも幸せな人生でした」
聖良「仕方がありません、ではいざ尋常に――。」
理亞「結局、あのあと姉様はブロッコリーを食べられなかった」
理亞「でも日記はちゃんと更新されていた」
理亞「ホント変なところで真面目」
理亞「......でも姉様のこういうところが好き」
理亞「ブロッコリーごときで大袈裟かもしれないけど、頑張れ姉様」
12月29日 雪 勝敗: × (49戦39勝4敗6分)
今日は年内の最終営業日。
今年も無事に営業できたので、記念に宅配ピザを頼みました。
しかし届いたピザにはブロッコリーがたくさん入っていました。
私は優しいので純粋な善意から理亞にすべてプレゼントしようとしたのですが、どうやら理亞にはこの日記の存在がバレていたようで......。
仕方なく食べることになりましたが、やはり今の私には無理でした。
あのボソボソとしたブロッコリーの味。
緑の味がします。分かりますか？
あろうことかその姿をビデオ通話でダイヤに中継されていました。
理亞め。許しませんよ。
後ほどダイヤから送られてきたスクリーンショットには、ブロッコリーに劣らない青緑色になった私の顔が写っていました。
少なくともスクールアイドルの顔ではありませんね......。
今日ほど悔しさを感じた日はありませんでした。
この経験を糧に一度真剣にヤツと向き合い、克服し、堂々とダイヤに顔向けできる私になろうと思います。
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↑ 姉様へ!!
応援してる
今度ラザニア作ってあげるから一緒に食べよう
理亞
お付き合いいただきありがとうございました。
面白かった
軽率な優越感で始めて取り返しつかなくなってるの草
乙