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【SS】梢(風邪をひいてあまりにも寂しすぎるのだけれど)
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床につく前から、背中から首筋あたりまでまとわりつく倦怠感にイヤな予感を抱いてはいたけれど、眠ってしまえばもうスッキリ、快復していると思っていたの。
それがまさか、すっかり風邪をひいてしまうなんて、情けなくて、悔しい。
(39度……)
ベッドに腰かけて、温度計の表示をぼんやり眺める。39度。どこか他人事のような数値に思えた。
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部屋の中はしんとしている。今朝、みんなが駆けつけてくれたときの賑やかさとは、ひどく対照的。
閉じられたカーテンの裾から、暖かな陽が水たまりのようにこぼれているのが見える。
平日の、まだ明るい時間に、こうして部屋で休んでいるのが、なんだかおかしい。
(みんなに、迷惑をかけてしまうわね……)
しっかりと、頭の中で呟く。申し訳ない状況にあると、自覚はいくら重ねても足りないくらい。
(とにかく、休むからには本気で休んで、すぐに復帰しないと)
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美少女の接吻で回復しそう
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無理矢理に寝て、眠りが浅かったせいか、夢を見た。そのうえ、寝苦しかったせいか、悪夢の類だった。
『さようなら、梢センパイ』
花帆さんの声が胸を貫いた。恐怖のせいか、表情は見えない。あるいは、夢でさえ、形作ることができなかったのか。
そこにあるはずの、身も心も凍りつく冷たい表情に、私は耐えられそうになかった。
『さようなら』
(待って、花帆さん……!)
どうしてこんなことになってしまったのか、経緯はなにも分からない。
けれど、夢の中の私は、どうしようもなく理解してしまっていた。
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花帆さんが私の元から消えてしまうのは当然で、
もう覆すことのできない決定事項で、
しかも原因は私にあるのだ。
《私が至らないばかりに、花帆さんはいなくなってしまう》のだった。
(待って、行かないで……)
(お願いよ、花帆さん……!)
(花帆さん!)
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「梢センパ〜イ、花帆が来ましたよ〜」
ドアのゆっくり開かれる音と、ひっそりとした声で、もろい夢は簡単に破られた。
「花帆さん……?」
「あ、ごめんなさい、起こしちゃいました?」
ベッドの中で身体を起こす。横になりすぎたせいか、かえって頭が重い気がした。
「いいえ、元から、眠っていなかったようなものだから」
「う〜ん、それはそれでダメなような……」
困ったように微笑む花帆さんに、思わず頬がゆるむ。
それから、なにか夢を見ていたことを思い出したけれど、夢の中身は忘れてしまっていた。
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「えっと、いまの時間は……」
「お昼ですよ! 梢センパイに、お昼ご飯のお届けです!」
花帆さんが、ジャーンと口で言いながら、両手にもったお盆を見せてくれる。お盆には、一人用の小さな土鍋がのっていた。
「お粥、食堂でつくってもらったんです!」
「まあ! 嬉しいわ、花帆さん。でも、重かったでしょう?」
「大丈夫です、梢センパイに鍛えられてますから!」
部屋の机にお盆を置いてから、花帆さんはムキっと、筋肉を見せつけるポーズをした。
力強さを見せつけているハズなのに、可愛らしいのが、なんだか可笑しい。
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「ふふ、ふふふ」
「あ、なんだか、からかってる笑い方じゃないですか?」
「ふふ……いいえ、そんなこと、ないわ、ほんと」
「う〜ん、そうだと良いんですけど」
「ええ、ええ。でも本当に助かるわ、花帆さん。ありがとう」
「あ、えへへ」
えへへ、とはにかむ花帆さんを見ると、心臓から血が一層流れ出るのを感じた。
花帆さんを眺めているだけで、体温が上がって、風邪の治りが良くなるかもしれないわね……なんて。
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「それじゃあまた、放課後になったらお邪魔しますね。あ、食器はお盆ごと置きっぱでいいですから。今度こそ、ちゃんと休まないとダメですからね」
「ええ、ええ。わかりました」
ひとしきりお話してから、花帆さんはメッと小さな子供に注意するようにそう言って、部屋を出ていった。
そんな花帆さんを見ていると……妹さん達にはそういう風に接しているのかしら、とか、やっぱりお姉さんなのね、とか考えてしまう。
自分が情けなくて、申し訳なくて、歯がゆくてしょうがなくて。
反省して、落ち込んでいるべきなのに。
花帆さんの新しい一面を見ることができたのが、ひどく、嬉しい。
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遠くのほうでチャイムが鳴っていた。昼休みが終わったらしい。花帆さんは授業に間に合ったかしら。
ぐっと重みのある土鍋の蓋を開けると、湯気の中から、きらきらとした玉子粥が現れた。
レンゲで一口、いや半口分をそっとすくって、ふぅっと熱さまし、それから、ゆっくり口に含む。
鶏がらをベースに、薄い味付けで、するりと胃に落ちた。
「おいしい」
ええ、ほんとうに。
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食後、薬を飲んでからもう一度布団に入ると、すっかり身体が温まって、リラックスできた。
これなら、自然と眠りにつけそうだと予感する。
眠ってしまう前に、みんなに伝え損ねていることがないか頭の中でチェックする。
竜胆祭の準備、生徒会への申請、曲作り……。
けれど、頭の中で紡いだ思考は、するりするりとばらけて解けて。
湯に濡れた茶葉が浮力を失って、ティーポットの底に沈むように、私の意識も深く深く潜っていった。
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チカチカと赤い照明に照らされていた。ずっしり重い身体は動くことも忘れて、ただ目線だけがふらふらと彷徨う。
カーテンは閉じられていた。けれど、ふわりとしたウェーブの�筋み合わせに、息継ぎのような隙間がわずかに開いていた。
そこから、さっと一筋、赤い光が差し込んでいるのだ。
光は、隙間からまっすぐ、私の目元に落ちていた。
まるで怪物か何かが隙間から覗き込んでいるような錯覚を抱いて、一瞬恐怖する。でもすぐに、その光が夕陽であることに気付いた。
夕陽であることに気付いてから、自分が目を覚ましていることに、私はやっと気付いた。
あるいは、そこまで思考が巡るほど覚醒して、ようやく目覚めたといえるのかも知れない。
夢は見なかったと思う。とにかく、びっくりするほど頭が重くて、横になったままため息をついた。
(やれやれね……)
体調は戻っていない。むしろ、ピークはこれから、といったところかしら……なんて、自分にさえ虚勢を張ってみせるのが、いまは精一杯。
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チカチカと赤い照明に照らされていた。ずっしり重い身体は動くことも忘れて、ただ目線だけがふらふらと彷徨う。
カーテンは閉じられていた。けれど、ふわりとしたウェーブの噛み合わせに、息継ぎのような隙間がわずかに開いていた。
そこから、さっと一筋、赤い光が差し込んでいるのだ。
光は、隙間からまっすぐ、私の目元に落ちていた。
まるで怪物か何かが隙間から覗き込んでいるような錯覚を抱いて、一瞬恐怖する。でもすぐに、その光が夕陽であることに気付いた。
夕陽であることに気付いてから、自分が目を覚ましていることに、私はやっと気付いた。
あるいは、そこまで思考が巡るほど覚醒して、ようやく目覚めたといえるのかも知れない。
夢は見なかったと思う。とにかく、びっくりするほど頭が重くて、横になったままため息をついた。
(やれやれね……)
体調は戻っていない。むしろ、ピークはこれから、といったところかしら……なんて、自分にさえ虚勢を張ってみせるのが、いまは精一杯。
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とにかく身体を起こすと、ぽとりと、胸元をなにかが転がっていった。
折りたたまれた濡れタオル。昼に眠ったときは、なかったはず。
部屋を見渡すと、夕陽の赤色に薄く満ちている。それから、枕元に書き置きがあるのに気付いた。
『梢センパイへ』
『放課後にこっそりおジャマしたんですけど、お休みのようだったので、置き手紙で失礼しますね!』
『みんなで購買で買ってきたものを、勝手ながら冷蔵庫に入れさせていただきました! スポーツドリンクと、ゼリーと、ヨーグルト。それからアイスも』
『スポーツドリンクは常温のものも別に置いておいたので、お好きなほうをどうぞ! (花帆のオススメはレンジであったかくして飲む、です!)』
『晩ごはんも、またお粥を机の上に置いてあります。すみません、明日からはリクエスト聞かせてくださいね!』
『食べたいと思えるものを食べるのが一番ですから! フラワー!』
『あとあと、冷凍庫に氷枕をつくってあるので、ぜひぜひ使ってください。実家から持ってきたものなので、ちょっぴり恥ずかしいですが』
『また様子を見にきますね! それでは!!』
『日野下花帆より。』
『追伸:部活のほうは、ご心配なく! ゆっくり治してください。』
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スポーツドリンクをカップに注いで、レンジで少し温めてから飲んだ。ずいぶん汗をかいたらしく、強く甘みを感じる。
机の上には、お盆にのった土鍋がひとつ。昼の食べたものは片付けられていた。
冷凍庫を開けると、手紙に書いてあった氷枕がずっしりと入っている。
花帆さんが昔から使っていたものなのかしら? ウサギ模様が、子どもっぽくて可愛い。
もう一度、夕陽で赤く染まった部屋の中を見渡す。
そこかしこに、花帆さんがここにいた痕跡が残っていた。
(だめね……)
身体はひどく重い。病魔は相変わらず深く肉に食い込んでいる。
だというのに、こんなにも嬉しくなってしまうなんて。
この部屋に来た花帆さんの姿を想像する。お盆を机の上に置き、冷たいものは冷蔵庫へ入れる。それから、私に濡れタオルを当ててくれて、置き手紙を書き始める……。
それで私の心は、どうしようもなく熱を帯びて、悦んでしまうのだ。
罪深い自覚がありながら、止められなかった。
遠くのほうで、夕暮れのカラスが鳴いた。
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昼に眠りすぎたのでしょう。
夜、私はなかなか寝付くことができなかった。
ぴぴぴっと、電子音が鳴って、腋から体温計を抜き出す。
「39度……5分」
熱は上がっていたけれど、あまり息苦しさはなかった。ただ、意識はぼうっと遠くに浮かんでいた。
枕に重ねた氷枕を撫でてみる。タオルにくるまれた上からも、ひんやりと心地良い。
「花帆さん……」
その呟きは悪魔的な甘美さで、私を狂わせる力があった。
けれど、声は真っ暗な部屋にすぐに溶けて、しんと消えてしまう。
時刻はすでに深夜。部屋の外もすでに静まり返っている。
(あまりにも……)
きっと風邪のせい。身体が弱って、それで心も弱ってしまっているせい。
だから、こんなことを思わずにいられないのだ。
(あまりにも寂しすぎるのだけれど……)
一度自覚してしまうと、もう止められなかった。
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寂しい、寂しい。
花帆さん、ねぇ、私いま、寂しいのよ──。
そんな風に、悲劇のヒロインを気取ってみても、大した慰めにはならなかった。
当然、こんな夜半に花帆さんに連絡するわけにはいかない。
けれど、花帆さんを呼べば、きっと駆けつけてくれるでしょう、という期待がある。
けれど、呼んでどうしようというのかしら。寂しいのって、そばにいてってお願いするのかしら? 弱さをさらけ出す……それもまた心地良いかも知れない。
けれど、本当はそんなこと出来るわけがないとわかっている。わかっているのだ。
けれど、幼稚な妄想に浸ることの、なんと甘美なことかしら。
けれど、けれど、けれど、けれど、けれど。
思考は何度も延ばされ、折りたたまれ、同じ場所を行き来した。
そこでふと思いついた。
そうだ、どうせ眠れないのなら、作詞をしましょう。
この、身体が思うように動かず、くすぶっている今の気持ち。これを書き留めるのもいいかもしれない。
そうして、私は作詞ノートに向かい始めた。
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リアルが充実しすぎてるからちょっとした一人の時間が寂しくなるんだよね
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タイトル:絢爛六華(けんらんりっか)
君の見上げた 鉛の空に
花びらひとつ 吹かれて揺れた
手を伸ばして 触れてみたけど
途端に溶けて 指先を濡らした
「冷たいね」つぶやく君は笑っていたかな
記憶は白く 六華に消えた
もう一度 もう一度って
あの日をせがむ私は 子供でしょうか
もう一年 もう一年って
先延ばしにする私は 卑怯でしょうか
時間をかけるほど 結晶は大きくなるから
降り積もる思いに 息が詰まるまで
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とりあえず、一題目ぶんだけ書いてみて、読み返してみる。
熱に浮かされているせいか、妙にしっとりしている気がした。
(これじゃ、なんちゃってDOLLCHESTRAじゃない……!)
ふらふらとする頭をさらに振り回して、ページをめくった。
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タイトル:花華フラワー(はなばなふらわあ)
開幕一番朝顔発見 たて続けにタンポポ発見 (2ポイント!)
夜更かししすぎた宵草発見 なんだか今日はいい調子 (3!)
ここはどこかな 不思議な国ね
お花がたくさん 満開だ (花丸よ!)
桜の足もと菜の花発見 まさかまさかのコスモス発見
バラのゲートに誘われ行くわ 蓮華のじゅうたん心が躍る (9ポイント!)
ウェルカムドリンクはジャスミンの香り こくりと一口 視界が開いた
いらない荷物は捨ててしまって 身軽に一歩 後戻りはいらない (モーテンダ!)
花華フラワー! あなたの国ね
行く道来る道 花粉が香る
花華しいわ! あなたの世界
永住しちゃって良いかしら
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とりあえず、一題目ぶんだけ書いてみて、読み返してみる。
熱に浮かされているせい、というか、実際浮かれていた。
(これじゃ、なんちゃってみらくらぱーくじゃない……!)
どちらも花帆さんの『花』に引っ張られすぎているのが、良くないのかもしれない。
でも、大丈夫。他にもあるもの。
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ぽんち
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『日』『野』『下』『帆』
時間はたっぷり、たっぷりあるわ。
あぁ花帆さん、花帆さん……。
日野下花帆さん。花帆さん……。
花帆さん、花帆さん、花帆さん。
花帆さん。
乙宗……花帆、さん。あぁ、だめよ。
花帆さん……花帆さん……花帆さん……。
花帆。……あぁこれもだめ。
花帆さん……ねぇ花帆さん。
花帆さん、花帆さん、花帆さん……。
花帆さん……。
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例えば絵を描くとき。
絵の具ひとつひとつは、純粋で、キレイな色をしているでしょう?
青色、赤色、黄色。
それぞれ顔料がキッチリ分けられていて、必要に応じて、私たちが自分の手で混ぜて、好きな色をつくっていくの。
でも、ありがちな失敗として……色を混ぜすぎてしまうことがある。
そうすると、だんだん色が暗くなっていって、汚くなってしまうの。
私も絵を描いて長いから、昔はしょっちゅうだったわ。
ふふ、今はそうでもないのだけれどね。
まあ、何が言いたいのかというと、だいたいそういったような具合で、
私の歌詞ノートはぐちゃぐちゃになってしまって、
それどころか、私の頭の中までぐちゃぐちゃになってしまって、
混沌に染められた泥の中に、私の意識は沈んでいったのでした。
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「──おはようございま〜す」
「梢センパ〜イ、と……危ない、危ない、お休み中だ」
「こそこそ〜っと、氷枕の追加と〜タオルの交換と〜っと……」
「あれ、こんなところに歌詞ノート……もう、休んでなきゃダメなのに」
「ふふふ、ちら〜っと…………」
「……………………」
「……………………えへへ」
「う〜んと、やっぱり恥ずかしいし……そうだなぁ」
「────ゲーリッヒ ベレス ニン、梢センパイ」
「だから、安心してくださいね」
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翌朝、布団の中から悪魔的な詩が書かれた歌詞ノートを発見した。
ところどころに花帆さんの似顔絵が書いてあって、およそ人に見せられるものではなかった。
布団の中にあったから、誰にも見られていないであろうことが救いかしら。
悪魔的な作詞ではあったけれど、自分の中で熱された泥のようなものをすっかり吐き出してくれた実感はあった。
それから、みんなの助けをもらいながら、私は数日安静に過ごして、竜胆祭までに復帰することができたのでした。
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「わ、梢センパイはやい! ちょっとお部屋で待っててくださいね」
「ふふ、ゆっくりでいいのよ」
後日、看病のお礼にと、花帆さんと二人で出かけることになった。本当は、みんなへのお礼の品を一人で買いに行く予定だったのだけれど、せっかくなら、と。
もちろん、私も花帆さんと一緒の方が嬉しい。
花帆さんが姿見の前で髪を整えてる間、私は花帆さんのベッドに腰かけさせてもらっていた。
ふと、手持ち無沙汰になって、部屋を見渡してみる。
「たくさんの本……ほんとうに、読書家なのね花帆さん……あら、洋書もあるなんて」
「え? 洋書?」
覚えがなかったのか、花帆さんはくるりとこちらを向いた。
そんな花帆さんに、私はその本の背表紙を指で追ってみせる。
「ほら、『A Gateway to Sindarin』。すごい立派な本ね」
「あ、あ〜……それ、全然読めてないんですよね」
そう言って、花帆さんは苦笑した。
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「ロードオブザリング、指輪物語って、作中に独自の言語があるんですよ。エルフ語、シンダール語っていうんですけどね、ちゃんと話せるくらいに作りこまれてるんです! これは、その入門書というわけです」
「まぁ、それはすごいわね」
「あたしも、すごーい! って思って、洋書と知りつつ買ってみたものの、当然英語だらけで読み解けず……結局、本棚の肥やしになっちゃっているのです」
花帆さんは苦笑して、また姿見に戻った。
私はといえば、頭の中でなにかが噛み合うような音がしていた。
部屋で花帆さんと二人きり、私はベッドの方にいる。時間は朝で、カーテンからはきらきらとした陽の光がこぼれている。
そして、優しい囁き声。たしか……。
「────ゲーリッヒ ベレス ニン」
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私の呟きに、花帆さんがばっと反応した。
最初はただ驚いているような、それから次第に、頬が可愛らしく染められていった。
「こ、梢センパイ……その言葉……!」
花帆さんがそんな風に急に取り乱したものだから、私のほうもちょっとびっくりしてしまった。
「え、ええと、いつだったかしら、あまり覚えていないのだけれど、そのぉ、フレーズが引っかかっていたものだから」
自分でしどろもどろに言いながら、なぜか言い訳がましくなっているのがおかしかった。
「ふ、ふーん、あまり覚えてない、ですか」
「も、もしかして、これもエルフ語、というものだったのかしら」
「ま、まぁそうですね。映画でも……いや、なんでもないです」
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花帆さんはまた姿見に向き直ってしまって、私の位置からは、ちょうど表情が見えない。
けれど、髪に手櫛を通すたび、わずかに見える小さな耳は、赤く染められていた。
「その、意味は……?」
おそるおそる聞いたタイミングで、準備が終わったのか、花帆さんはぱっと荷物をまとめて、今度こそこちらに向き直った。
まだまだ真っ赤な顔で、きれいな指先をこちらに差し出しながら。
「言わなきゃわかりませんか?」
その美しい姿を、どうにかして留めておきたいと願ったのは一瞬。
答える代わりに、私はその手をそっと取った。
おしまい
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最高だった。
歌詞制作すごい(こなみ
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胸がキュンキュンしたのだけれど
花丸や
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野生のこずパイか?
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花丸よ
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傑作が生まれてしまったわね
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素晴らしい
花丸よ
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歌詞の“1題目“、というところに細かさを感じたわ!
花丸よ!
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作詞出来るの凄すぎて草
お話もキュンキュンできて素敵。
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https://i.imgur.com/2wZinaR.jpg
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花帆さん可愛過ぎだろ…
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どういう意味の言葉か気になって検索したけどこのスレしか出てこない。。。
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まるで花帆さんの好きな物語のようで素敵だったわ
花丸よ
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氷枕が昔からかほが使っていたとか若干の闇を感じつつもうまくまとまっていて面白かった
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乙
エルフ語の意味が知りたいのだけれど
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なんちゃってドルケ&みらぱは草
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直訳で
「梢センパイはあたしの愛を持っている」
意味的には
「愛しています、梢センパイ」
になるみたいですよ。
親愛ですからね!
カタカナ発音は聞こえたままです!
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>>47
(ワッチョイ変わっちゃってるけど1です。)
(Gerich veleth nin、です。)
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