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「新入生は日野下花帆くん」√さやか
1
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/02/07(金) 23:59:28 ID:Co4VuAog
とってもいい天気。
窓から覗く日差し。ぽかぽかのお日様。
最高の目覚めだったけど、絶対におかしな光景。
どうして実家の私の部屋?
花帆「なんで寮じゃ……あ、あれ?」
もう一つの違和感。
壁には何故か学ラン……男の子用のものがかけられていた。
どうして?
気になって近づいていく、その前に。
鏡に映ったあたしの姿。
花帆「え……へ、へぇ!?」
髪は短く、胸は平坦。
そこに映る人を、それでも脳はあたし自身だと言っている。
可愛げな顔を──自画自賛?──しているけれど、そこに映るのは……間違いなく男の子だった。
花帆「なっ……なんじゃこりゃ〜〜〜!?」
84
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 00:56:19 ID:0DDpjAIc
恥ずかしい……。
苦しいし、もうぐちゃぐちゃ……。
さやか「……」
花帆「おごぅ!?」
喉の奥に何かが突っ込まれる。
それがまさか、さやかちゃんの指だなんて思いもしなかった。
花帆「ざっ、や……き、たな……!」
さやかちゃん、そんなの汚いよって言いたいのに。
花帆「ゔぼ……!」
そのままげろげろと吐き出してしまう。
顔がもう涙と冷や汗でぐっちゃぐちゃだ。
85
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 01:06:00 ID:0DDpjAIc
でも吐き出せてすっきりしたのか、少し意識が鮮明に。
さやか「お顔、洗いましょう。一人で出来そうですか?」
なんとかあたしはかろうじて「うん」と頷き、一人で歩き顔を洗う。
その間にどうやらさやかちゃんがあたしの汚した物の後始末をしてくれていたみたいだ。
シーツまで変えてくれていた。
こうなる事を予測していたのか、用意してくれていたみたいだ。
ふらふらとベッドに戻る時に、時計に目をやると夜中の2時だった。
それを見たとき、本当に胸がキュッとなった。
こんな時間まで……あたしの為に……?
花帆(さやか、ちゃん……)
86
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 01:10:09 ID:0DDpjAIc
さやか「……花帆くん? まだ苦しいですか? 涙が……」
花帆「ううん……」
これはそういう涙じゃない。
さやかちゃんの優しさに心が耐えきれなくなったから。
花帆「さやかちゃん……ありがとう……」
さやか「……はい」
花帆「……」
……さやかちゃんの為に。
あたしができる事。
なんでもしてあげよう。
それが今、あたしが一番したい事だった。
87
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 01:11:35 ID:0DDpjAIc
また明日に。
さやかは2年目まで行かせてもらいます。
88
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 02:04:37 ID:qaB7v06g
良いね
89
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 04:01:34 ID:4Azx0pi2
さやかちゃん優しい……
90
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 06:38:18 ID:LflpkLZY
どうやって入ってきた
91
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/04(火) 23:53:48 ID:nDI5d3pU
さやかちゃんマジ女神
92
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 01:32:08 ID:Nz/DOB.M
☆☆☆
数時間前……。
慈「え? 花帆くんの?」
さやか「はい。一人だけ別棟で、いざという時に側にいてあげたいので……それに、明日はお休みですし」
慈「……」
さやか「慈先輩?」
慈「ううん、まぁ……色々詮索する事でもないしね。うむ、私達の分もお願いね、さやかちゃん。あ、あと一応男子寮にいるのバレたらマズイから、気をつけるんだよ」
☆☆☆
さやか「……こっちに来るのは初めてですね」
花帆くんいつもここに一人で……。
さやか「さみしい、でしょうね……」
そう考えると、なおさら行かなくてはという気持ちになった。
体も弱っている時なら、気持ちも沈んでしまっているはずだから。
93
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 01:45:10 ID:Nz/DOB.M
花帆くんには事前にLINEで看病に行くと伝えていますが、どうにも反応がない。
……それも心配だから、私の足は更に早く前に。
部屋の前につき、ノックをする。
鍵は開いていた……入ってもいいという事でしょうか。
さやか「……花帆くん?」
花帆「……あ、さやか、ちゃん」
横になったまま、私を見つけ、少し安心したような顔を見せる。
さやか「大丈夫……そうでは、ないですね」
いまは食欲も無さそうですが、せめて水分は取るべきと、私は用意していたスポーツドリンクを蓋を開けて手渡す。
花帆「ありがと……」
汗をかき、首筋あたりが湿っている。
さやか「花帆くん、体を拭いた方が良さそうですから……上、脱げますか?」
花帆「……う、ん」
朦朧としていて、返事をしてくれたのか微妙なところでしたが、ばんざいをさせて服を脱がせる。
水で濡らしたタオルで汗を拭き取る。
背中は特に。
花帆「……」
さやか「……花帆くん?」
花帆「……ごめんね……」
消えそうな声で呟く。
さやか「……大丈夫ですよ、花帆くん。私は、私がしてあげたいからここにいるんです。今は、しっかり体を休めましょう」
94
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 01:59:12 ID:Nz/DOB.M
体を拭き、新しい服に変えてまた眠る。
花帆「……はぁ……はぁ……」
苦しそうな花帆くん。
この時ばかりはどうしてあげたらいいものか。
せめて、と。花帆くんの手を握る。
さやか「……」
☆☆☆
☆☆☆
☆☆☆
花帆「ヴッ……!」
初めて聞く花帆くんのうめき声に、寝落ちていた私の体もすぐに覚醒する。
さやか「花帆くん!」
枕元で嘔吐してしまった花帆くんを抱え、トイレへ。
便器に顔を突っ込んでしまいそうになりながら、なんとか吐き出そうとしているけれど、苦しくて辛いのか、とにかく酷い咳を繰り返している。
さやか(そうだ……花帆くん、すみません……!)
花帆「おごぅ!?」
花帆くんの喉に指を突っ込む。
人体の反応に期待するしかない。
口内は吐瀉物と唾液で生暖かい。
けど今はそんな事も気にならない。
95
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 02:15:25 ID:Nz/DOB.M
……それからしばらくして。
なんとか全て元通りにして、花帆くんをまたベッドに。
さやか「……」
寝息も、先ほどよりも穏やか。
……後は、朝花帆くんが目を覚ました時にどこまで回復出来るか。
わたしは……。
さやか(……)
……。
☆☆☆
☆☆☆
朝の日差し。
眩しかった。
でもそれ以上に眩しいものがあった。
さやか「……zzz」
さやかちゃんの寝顔。
あたしの事をずっと見ていてくれていた。
ベッドに顔を伏せて、体を痛めそうな体勢で寝落ちて。
それなのにあたしの手は離さないで。
花帆「……さやかちゃん」
胸の奥がキュッとなる。
もやもやして、スッキリしない。
さやかちゃんを見ていると、それが始まる。
この日から、ずっと。
あたしの心は、ぐちゃぐちゃだ。
☆☆☆
96
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 02:26:21 ID:Nz/DOB.M
☆☆☆
花帆「というわけで、日野下花帆、復活しました! ご迷惑をしました!」
梢「ふふ、前よりもパワフルになった気がするわね」
瑠璃乃「瀕死からの復活……戦闘民族みたい!」
慈(これもさやかちゃんのおかげかな……)
綴理「ただいまー」
花帆「あ……」
さやか「戻りました……花帆くん。もう動いても大丈夫なんですか?」
花帆「う、うん……もう平気、だよ」
さやか「……本当ですか? まだ顔が少し赤い気がしますが……」
さやかちゃんの顔が近づく。
そして手のひらがおでこに。
さやか「まだ熱があるんじゃ……」
花帆「わっ、わわっ、だ、大丈夫、大丈夫だから!」
慈(おや……?)
97
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 12:20:45 ID:SNPe3Lnw
おやおや?
98
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 23:20:10 ID:6ZnRc5wk
看病してる相手とそのまま本番にってよくある
展開ですよね。
99
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/05(水) 23:34:27 ID:KtFeDoKM
さやかが花帆くんに対してそんな執着するような理由ってある?
どちらかというと同じスリブやってて別の世界線の影響も受けてる梢の方が、無茶してでも看病に行きそうな気はするけど
100
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 01:13:42 ID:gKB4qaL.
☆☆☆
どうしちゃったんだろう、あたし……。
さやかちゃんの事を見てると、なんだかドキドキしちゃう。
あの日看病してもらってからだ。
もうすぐ地区予選だっていうのに……こんな調子じゃ支障が出る。
花帆「……という事で、ぼくはどうしちゃったんでしょうか……」
梢「……これは重症ね」
慈「そう来たかぁ……」
101
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 01:43:07 ID:gKB4qaL.
梢センパイと慈センパイがあちゃぁ〜と言いたげに顔を合わせている。綴理センパイはきょとんとしていた。
慈「……話を聞いた限りだと、なんとなく理由は分かるんだけど、うん……」
花帆「そうなんですか!? お、教えてください!」
慈「でもこういうのは人に言われて自覚するもんでもない気が……」
綴理「さやの事が好きなんじゃないかな?」
花帆「え?」
梢「つ、綴理、あなた……!」
綴理「あれ? 違うの?」
花帆「いえ、そんな事は……ぼく、さやかちゃんの事、好きですよ」
慈「へ? ……あぁ」
花帆「でも綴理センパイ、今はそういう事じゃなくて……」
梢(これは……本当の本当に重症ね)
慈(もうこれは、自分でなんとかしてもらうしかないかもね)
☆☆☆
でも、それ以外のサポートはしてあげようかと。
慈「……ちょっとした質問なんだけど。看病の時とかさ、さやかちゃんって、どうしてそこまで花帆くんの為に動いてあげられるの?」
さやか「どうしてか、ですか?」
ちょっと具体的すぎたかと思ったけど、他に上手い訊き方も思いつかなかぅた。
102
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 23:03:37 ID:gKB4qaL.
さやか「……どうして、と言われると少し困ってしまいますね」
さやか「わたしは、ただ……いえ、そうですね。実のところ、なんだか花帆くんの事を……弟の様に感じているんです」
慈「弟?」
さやか「同い年なので変な例えなのかもしれませんが……放っておけないんですよね」
慈「そっかぁ……」
慈(あれ? 脈ナシ?)
103
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 23:29:07 ID:gKB4qaL.
さやか「クラスメイトに対してだと、おせっかいを焼きすぎているのかもしれませんね」
慈「うーん……そう、かな?」
困ったな、これじゃ花帆くん……結構勝機は薄いぞ……。
☆☆☆
☆☆☆
☆☆☆
そんな騒動から数日。
先に結果を言ってしまうと。
私達は地区予選さえも突破する事が出来なかった。
自信はあった。
るりちゃんも『こんちくしょー!』なんて言って悔しがっていた。
……でもそれ以上にショックを受けている子がいた。
花帆くんだ。
その理由を、梢もさやかちゃんも、綴理でさえも察していた。
104
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 23:40:31 ID:gKB4qaL.
『なんで一人男子なの?』
『いや浮いてる浮いてる』
『こいついらねぇ〜』
『5人でいいよな』
あの日から、花帆くんは練習に来なくなった。
105
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 23:48:58 ID:BGd8/4Lc
そこは避けては通れないよなぁ
106
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/06(木) 23:51:34 ID:gKB4qaL.
梢「……心無い言葉が、こうやって誰かを、花帆を傷付けている」
綴理「ボク……すごく嫌だ。かほがこんな目に合うなんて」
瑠璃乃「花帆くん……大丈夫、かな。授業は受けてるけど、心ここにあらず、ってかんじ……」
慈「なんと声をかけてあげればいいか……無理やり引っ張り出すのも正解なのかな……」
さやか「……」
わたしは、今。
自分でも何を考えているのか、はっきりとしていません。
ただ、もうここまで来たらやる事は、分かっています。
さやか「……わたし、花帆くんと話してきます」
107
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 00:04:02 ID:FbQKKmkw
瑠璃乃「ならルリたちも一緒に……」
さやか「いえ、あんまり大勢で押し寄せても、花帆くんも心配をかけさせてるとまた気負わせるかもしれませんから……ここはわたしに、任せてもらえませんか?」
梢「……そうね。さやかさん、お願いしてもいいかしら」
綴理「さや。……かほを助けてあげて」
さやか「はい。……いってきます」
☆☆☆
さやか「……花帆くん」
事前に部屋へ行くと連絡している上で、ドアをノック。
花帆「……はーい」
元気のない様子で出迎えてくれる。
部屋の中へ。
さやか「なっ……!」
目を疑った。
部屋の中が荒れに荒れていたから。
花帆「ごめんね……ちょっと散らかしちゃって」
さやか「花帆くん……これ……」
ゴミ箱の中に。
花帆くんの衣装が捨てられていた。
さやか「なんで……」
花帆「……もう、必要ないから」
108
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 00:23:09 ID:FbQKKmkw
花帆「ぼく、スクールアイドル、やめる」
さやか「や、やめるって……どうして──」
花帆「そんなの決まってるじゃん!!」
聞いたことのない花帆くんの大きな声に体がびくりと跳ねる。
花帆「そんなの、決まってるじゃん……」
さやか「……あの、一部のコメント、いや誹謗中傷なんか気にしなくていいんです。花帆くんが辞めないといけない理由なんか……」
花帆「……違うんだよぉ……」
☆☆☆
慢心していたわけじゃない。
でも心の何処かで、大丈夫だろうと……一度、そこを越えているから、そんな自信が。
でもこの世界では、そうもいかなかった。
そしてあの世間の声だ。
蓮ノ空スクールアイドルクラブが勝てなかったのは。
花帆「ぼくのせいなんだ……」
皆の夢を壊したのは。
花帆「ぼくが……スクールアイドルなんかやらなければ……」
あたしが皆に会いたいなんて思わなければ……。
花帆「ぼくさえいなければっ──」
パァン、と頬に熱さが走る。
ヒリヒリと痛む。
何が起きたか……すぐに分かった。
さやか「っ……っ!」
振り上げた手を、震わせて。
涙ぐんでいた。
花帆「さやか、ちゃん……」
さやか「……そんな事言わせません」
声を震わせて、あたしの頬を撫でる。
ごめんなさいと言いながら。
さやか「……花帆くん。わたしたちは……あなたを含めた皆で、蓮ノ空のスクールアイドルクラブなんです。誰か1人でも……欠けてはならないんです」
109
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 00:32:41 ID:FbQKKmkw
さやか「だから……そんな事言わないでください」
花帆「……」
さやか「……わたしは花帆くんとスクールアイドルをやりたいです。そして、今度こそ……勝って、あんなふざけた事を言ってきた人たちを、見返してやりましょう」
花帆「……ぼく、まだ居ていいのかな」
さやか「当たり前です。……でも」
さやかちゃんの手が、頬からあたしの手へ。
さやか「……もしどうしても辛いのなら。その時は。わたしも一緒に辞めます」
花帆「えっ……」
さやか「花帆くんを一人にはさせませんから」
……ずるいなぁ、それは。
花帆「……さやかちゃん、ぼく。もっとがんばるよ」
花帆「もう……誰にも、何にも……負けない」
さやか「……はい!」
☆☆☆
そうか。
どうしてこんなに、さやかちゃんの笑顔が眩しいのか。
少し前までは、分からなかった。
胸が高鳴って、頭の中がさやかちゃんでいっぱいになって。
そっか。
あたし、そうだったんだ。
花帆(さやかちゃんが……好きだ)
それは。
恋してる、って意味の……好きだった。
110
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 00:33:02 ID:FbQKKmkw
また明日に。
111
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 18:50:09 ID:018dQAKM
さやかの本心や如何に
112
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 19:14:04 ID:8QnJcy9o
まぁ原作のラブライブ!も男子のスクールアイドルに関しては言及が無かったもんね、そもそも
男子キャラが出てこなさすぎるし。
アイマスsideMみたいに男子主体とか男女混合のラブライブ!もあっても良いと思うけどな。
113
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 22:45:13 ID:FbQKKmkw
さやか「……でも、ごめんなさい。……つい、とは言え叩いてしまって……」
花帆「ううん、むしろ目が覚めた! ありがとうって言いたいくらい!」
さやか「……」
さやかちゃんが頬を差し出してきた。
……これは、えーと。どうしたら?
さやか「……わたしの事も叩いてください」
花帆「へ?! で、できないよそんな事!」
さやか「いえ……それではわたしの気がすみません。してください!」
花帆「えっ、えぇ〜……?」
114
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 23:15:44 ID:FbQKKmkw
……そう言われても、できないものはできない。
花帆「……」
さやかちゃんの頬にふれる。
ふにりと大福みたい。
人の頬……ほっぺたって言わせてもらおう。ほっぺたがこんなにふにふにしてるなんて、びっくりしてしまう。
花帆「……」
さやか「ふひゃ……」
少し、力を入れずにつねる。
花帆「これで勘弁してよ、さやかちゃん」
さやか「ふぁい……」
☆☆☆
☆☆☆
花帆「というわけで……日野下花帆、復活です! ご迷惑をおかけしました……!」
115
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/07(金) 23:27:04 ID:FbQKKmkw
皆に心配をさせてしまった分、あたしも目一杯頑張らないと。
瑠璃乃「お〜しっ、かほくん、次こそはやってやろうぜぇ〜!」
花帆「お〜!」
梢「……もう大丈夫そうね。良かった……」
慈「さやかちゃん様々、って感じだね」
綴理「さすがさや」
さやか「わたしは何もしてません。……花帆くんが、しっかり自分で立ち上がったんです」
116
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/08(土) 00:00:33 ID:TtUA7SnQ
慈(……弟、って言うより我が子を眺める目をしている)
☆☆☆
そうしてあたしたちは、ここからリスタート。
でも少し、張り詰めすぎていた気を緩めるかと。
瑠璃乃「で、焼き芋ってわけだ」
慈「落ち葉めっちゃあったもんね、焼き芋日和」
焚き火の許可を貰って、落ち葉をかき集める。
飛んでいかないように石で囲って、そこに火をつける。
梢「11月、ちょうど焼き芋の季節ね」
綴理「美味しくなるかな」
さやか「こうやって焼き芋をするのは初めてですから……落ち葉の中に、と」
117
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/09(日) 00:16:58 ID:CsEo7diE
しばらく落ち葉の中で寝かせ、じっくりと熟成させる気分。
花帆「そろそろかなぁ……」
アルミホイルをはがし、中からホカホカの湯気を立たせる。軍手越しでも熱くて手のひらの上でポイポイと浮かせてしまう。
花帆「はちち……」
半分に割ると更に湯気がのぼる。
それだけでこれ以上は無いと思うくらい、美味しそうだと感じるのは、なんでだろう。
花帆「はい、さやかちゃん」
その半分をさやかちゃんに。
さやか「ありがとうございます」
熟れて甘みの塊に控えめにかぶりつく。
今日は外が寒いから、焼き芋を口に含んだ後、吐く息がより一層白くなっていた。
さやか「ふふ。花帆くん、焼き芋のお弁当がついてますよ」
さやかちゃんがあたしの口元についた焼き芋の欠片を摘み取る。
そしてそれを当然のように口に持っていった。
花帆「……さやかちゃん?」
さやか「はい?」
あっ、これ別に恥ずかしいとか思ってない感じだ。
118
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/09(日) 00:29:54 ID:CsEo7diE
……うん、でもそういうものなのかな。
別に口に入れてた物を食べたわけでもないし……。
でもいいか。
あたしたちはまだ、これくらいで。
☆☆☆
12月。
あたし達は皆で街に繰り出していた。何をしに来たのかと言うと、慈センパイと瑠璃乃ちゃんが企画したクリスマス会の、プレゼント交換用の品物を買いに来ていた。
さて、どんなものを買おうかな……。
どうせならセンスがあるって思われたい。けど何をどうしてセンスがあるとするか、困っちゃうよね。
もしも慈センパイに渡るなら……可愛い小物とかかな。瑠璃乃ちゃんも。
梢センパイなら……おしゃれなティーセットとか。
綴理センパイなら、ぺきんだっくみたいなぬいぐるみとか。
さやかちゃん、なら……。
花帆「おっと……」
さやかちゃんの事を考えていたら、なにやら雑貨店の前で物色していた。
119
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/09(日) 00:37:31 ID:CsEo7diE
さやか「……」
赤色を基調とした、お花の髪飾りを手にし、そしてそれを付けてみていた。
さやか「……わたしには、可愛らしすぎますね……」
髪飾りを置き、どこか名残惜しそうにその場を離れた。
花帆「……」
☆☆☆
12月24日。
クリスマス会当日。
ケーキやフライドチキン、後はピザやらを広げて、今よりも幼い頃に夢見た様な風景が広がっていた。
それらを食べながらお喋りして、わいわいと盛り上がっていた。
そんな中で、メインイベントとも呼べるプレゼント交換会を始める。
慈「よ〜し、それじゃ順番に回していくよ〜」
120
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/09(日) 00:55:48 ID:CsEo7diE
どこか気の抜けちゃう音楽を流しながら、プレゼントを回していく。
そして音楽が終わる時に、手元に残ったプレゼントは。
花帆(あ、これ……さやかちゃんのプレゼントだ)
121
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/10(月) 18:40:22 ID:9rSRfu0E
明日再開。
じっくりやります
122
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/10(月) 19:04:52 ID:QQEZTdIU
じっくり楽しみ
123
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/10(月) 21:39:19 ID:x1mH2eRg
ムラムラ村野
124
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/10(月) 23:53:50 ID:CgfSWRkA
明日期待
125
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/11(火) 09:08:00 ID:WbokZckY
さやか「それ、わたしの好きな本なんです」
その本のあらすじは、偶然だと分かっているけれど、どこか今のあたしと通ずる物があった。
花帆「ありがとうさやかちゃん。じっくり読むよ!」
ちなみにあたしの用意していたマグカップのセットは慈センパイに渡っていた。
☆☆☆
それからはまたお喋りを続けて、来年こそはと結束を高めあっていた。
それだけ盛り上がっていれば飲み物も足りなくなって、少し自動販売機で買ってこようかという話になる。
126
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/11(火) 16:53:23 ID:WbokZckY
さやか「もう年末……あっという間でしたね」
花帆「ぼくたちも、もう2年生だね」
さやかちゃんと2人、寒空の下で渡り廊下を抜けて。
さやか「新しく部員が増えたりもすると思います?」
花帆「……うん。すると思う、3人くらい」
あたしの考えている通りなら、吟子ちゃん達が来るはずだ。
127
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/11(火) 17:01:26 ID:WbokZckY
花帆「……あの、さやかちゃん」
そして、あたしにとってのプレゼント交換は、今から始まる。
小さな包み、手のひらに収まるくらいのそれをさやかちゃんに差し出す。
それはあの日さやかちゃんが買うのを躊躇った髪飾りだ。
さやか「これは……!」
花帆「ごめん、実はあの時見てたんだ。さやかちゃんがそれ試していたのを」
変にはぐらかしたりしないで、ありのまま伝える。
花帆「ぼくは、さやかちゃんにたくさん助けてもらったから……どんな形でもいいからお礼をしたくて」
128
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/11(火) 17:45:02 ID:WbokZckY
さやか「……ありがとうございます。でもやっぱり、わたしには似合わな……」
花帆「そんな事ないよ」
さやかちゃんの自虐を遮る。
似合わないなんてあり得ない。
だって、さやかちゃんは。
花帆「さやかちゃんは可愛いんだから、それが似合わないなんてあり得ないよ」
☆☆☆
あぁ、まただ。
時々、わたしはこうやって彼に惑わされる。
初めて名前を呼んだ時も。
今、この瞬間も。
さやか「……あ、ありがとうございます」
129
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/11(火) 18:04:37 ID:WbokZckY
いつの日か、慈先輩に花帆くんを弟の様に思っていると話した。
それなのにこうして花帆くんの言動に冷静さを欠いているのでは、話が変わってくる。
それともわたしが可愛いと言われる事に耐性がないだけか。
受けとった髪飾りを、改めて眺める。
思えば男の子からのプレゼント、その上クリスマスプレゼントだなんて、初めて受け取りました。
さやか「……ありがとございます、花帆くん。大切にします」
☆☆☆
さやか「……ありがとうございます、花帆くん。大切にします」
ぎゅっ、と胸に大事にしまい込む様に髪飾りを受け取る。
その仕草と、寒いからか少し赤い顔と、とろんと垂れた目元。
渡せて良かったも、心から思った。
そんな顔をしてくれるのなら、頑張って渡せて良かったと。
そんな幸せが胸いっぱいのまま、飲み物を買って部室に戻った。
130
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/13(木) 23:07:13 ID:LhplpIUA
待ってる
131
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/15(土) 01:03:42 ID:uDyPh37g
☆☆☆
☆☆☆
蓮ノ空に入学してから、最初の年明け。
花帆「新年、ってだけでなんだかこう、シャキッとしちゃうね」
さやか「わかります、一年の中でも特別に感じますよね」
まだ冬の早朝、あたしはさやかちゃんとランニングをする為に校庭に。
花帆「……誘っておいてなんだけど、こんな朝早くにごめんね」
さやか「いえ、わたしも体を動かしたいと思っていたところでしたから」
132
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/15(土) 23:37:07 ID:uDyPh37g
さやか「身が引き締まる、良い朝です」
まだまだ暗い空の下、あたし達2人だけ。
日頃はたくさん人がいる場所に。
あたし達の地面を蹴る音だけが、少しずれたテンポで響いている。
ひとしきり走った後は、ストレッチをして。
さやか「花帆くん、本当にスタミナがついてきましたね」
花帆「さやかちゃんにそう言われると自信になるね!」
133
:
名無しさん@転載は禁止
:2025/03/16(日) 00:08:38 ID:o23bFac2
さやか√一年生も出しますが、出番は少なめです。
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