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梨子「リライフ?」千歌「してみませんか」

108 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/06(水) 11:07:57 ID:Ps6lhbyM
―――




千歌「いやー、よーちゃんはやっぱり凄かったね」

梨子「……」

千歌「梨子ちゃん? なんでそんなに疲れてるの?」

梨子「なんでって、分かるでしょ」

千歌「クスクス……梨子ちゃんって本当に泳げないんだね」

梨子「私がカナヅチだって知ってて止めなかったんでしょ」

千歌「止めなかったんじゃなくて止められなかったんだよ」

梨子「はぁ……渡辺さんって、全然人の話聞かないって言うか……おバカ?」

千歌「んー、まあそうだね」

梨子「本当に成績いいの?」

千歌「明日わかると思うよ。テスト返ってくるからね」

梨子「あ……」

109 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/06(水) 11:08:20 ID:Ps6lhbyM
千歌「そういえば、梨子ちゃんはどうだったんだっけ」

梨子「その、古典と数学が……まずいかも」

千歌「どんな風に?」

梨子「ボロボロだった。単語も文法も公式もすっかり忘れちゃって」

千歌「でも結構スラスラ解いてなかった?」

梨子「なんで席離れてるのに分かるのよ……」

千歌「曜ちゃんと梨子ちゃん席近いからね〜」

梨子「なんで渡辺さん? あっ、そういえば筆記用具渡辺さんから借りて……」

千歌「よーちゃんは周りがよく見えてるんだよ」

梨子「つまり、渡辺さんから聞いてるのね。納得」

千歌「んー、そういうことにしとくよ」

梨子「なに、その気になる言い方」

千歌「なんでもないって」

梨子「もう……」


千歌「さて、どうなるかな〜♪」

110 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/06(水) 11:10:24 ID:Ps6lhbyM
―――




現代文 92点 古典 74点 国語 166点

数学 145点

英語 198点


梨子(はぁ……やっぱり古典と数学が微妙だった)

梨子(確率なんて解き方すっかり忘れちゃったよ)


担任「えー、英語は桜内さんがトップですね」

梨子「え、私?」

担任「総合では渡辺さんが1位です」


ザワザワ…

スゴイ… サスガトウキョウノオジョウサマ…


曜「うそ……」

111名無しさん@転載は禁止:2019/03/06(水) 14:26:45 ID:fjL6cERw
続き来てる!!
待ってたよ

112名無しさん@転載は禁止:2019/03/06(水) 17:24:21 ID:YozotPrs
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

113 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:26:59 ID:8U7Ekqa6
むつ「すごいよ桜内さん!」

梨子「いやあ、数学とか国語とか、色々忘れてるし」

むつ「7割と8割じゃん! 十分すごいって!!」

いつき「桜内さん、前の学校で学年トップだったって本当なんだね〜」

よしみ「私に英語教えて! 英語マジでヤバいの!!」

梨子「あ、うん。私でよければ」

よしみ「やった! ありがと!」

むつ「ねえねえ、梨子ちゃんって呼んでもいい?」

梨子「へ?」

むつ「千歌はもう名前で呼んでるし……ダメかな?」

114 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:27:50 ID:8U7Ekqa6
梨子「えと……ダメじゃ、ないよ」

むつ「やった! じゃあじゃあ、私たちのことも名前で呼んでよ!」

よしみ「そうだよ〜、この機会に呼んでみて!」

梨子「あの、その……よしみちゃん、いつきちゃん、むつちゃん」

いつき「梨子ちゃんって可愛い」

むつ「うんうん、流石都会からきた美少女だよねえ」

梨子「そ、そんなこと……ないよ」


梨子(10歳年下の女の子たちにそんなこと言われちゃって、なんかちょっと罪悪感……騙してるみたいで)

梨子(でも、ちょっとくらいいいよね)


曜「……」

115 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:28:46 ID:8U7Ekqa6
―――




梨子「はぁ」

梨子(なんか、ドッと疲れが押し寄せてきたわね)

梨子(若い子たちのテンションに当てられたのかしら)


曜「りーこちゃん」

梨子「わっ……えと、渡辺さん?」

曜「曜」

梨子「うん?」

曜「曜って呼んで」

梨子「あ、その……曜ちゃん」

曜「えへへ、嬉しいな」


梨子(まあ、名前で呼んでもらってるしね)

梨子(私が高校生の時は、確か苗字で呼び合ってたような気もするけど)

116 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:35:11 ID:8U7Ekqa6
曜「梨子ちゃんって、本当に勉強できたんだね」

梨子「いや、そんなことは」

曜「あるよ。英語と現代文、私より点数高いもん」

梨子「でも……総合では、曜ちゃんの方が」

曜「それじゃ意味無いんだよ」

梨子「え?」

曜「去年は全教科で1位取ったけど、それでもダメだった。まだまだ足りてないんだ」

梨子「ダメだった……?」

曜「だから、1位取れないんじゃ話にならないんだよ。決めたんだ、完璧になって認めてもらうんだって。だから――」


曜「次は絶対負けない」


梨子(これって、宣戦布告だよね?)

梨子(もしかして、水泳部に入らないのって、これが理由なのかな)


梨子「……うん、わかった。私も次は負けない」

梨子「古典でも、数学でも。全教科で勝つわ」


曜「っ……望むところだよ!」

117 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:42:08 ID:8U7Ekqa6
―――




梨子(何か、勢いで乗っちゃったけど)

梨子(勝負するってことは、また勉強し直さなきゃいけないのね)


梨子「はあ……しんどいわね」


担任「桜内さん」

梨子「あっ、はい」

担任「突然呼び掛けてごめんね。話があって」


梨子(そういえばこの人、何歳なんだろう)

梨子(私と同世代……いや、もしかしたら年下?)


担任「ちょっと職員室まで来てくれるかしら」

梨子「え? わ、わかりました」


梨子(私、何かしたっけ)

梨子(まさか、コンビニでお酒買おうとしたこと……バレた?)

梨子(やっば)

118 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:45:16 ID:8U7Ekqa6
ガラッ


担任「あのね、ちょっと話があるんだけど」

梨子「申し訳ありませんでしたあっ!!」

担任「はい?」

梨子「あれはほんの出来心で……」

担任「別に、怒ろうとしたわけじゃないんだけれど」

梨子「えっ」

梨子(バレてない?)

担任「何かしたの?」

梨子「いっ、いえ! 何もしてないですよ、何も」

担任「そう。じゃあ要件を話すわ」

119 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:46:11 ID:8U7Ekqa6
担任「編入試験の時に聞いてると思うけれど、この学校は今年度で沼津の高校と統合するの」

梨子「あ、はい。聞いています」

担任「どうしてこんな所に来ちゃったのか……いえ、生徒に言っちゃいけないわね」

担任「とにかく、来年どうするかを決めて欲しいの」

梨子「どうするっていうのは?」

担任「統合先の高校に通うか、どこか別の高校に編入するか」

梨子「それは……」

担任「桜内さんの学力なら、受け入れてくれる所も多いはずよ。まあ、内浦に引っ越してきたばかりなのに、別の地域の高校にっていうのも、大変だとは思うけど」

担任「学校の影響って……本当に大きいから」

梨子「――っ」


――正直、貴方には失望したわ。

120 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:52:33 ID:8U7Ekqa6
担任「……桜内さん?」

梨子「へ? ああ、そうですね」

担任「勉強ができるのは才能よ。折角の才能を活かしきれないのはもったいないわ」

担任「正直、統合先の高校は……貴方の学力に見合うとは思えないの。そんなこと言ったら、ここも大概なのだけれどね」

担任「そうだ、今から沼津の予備校に通ってみるっていうのはどうかしら?」

梨子「え? 予備校?」

担任「そう。きっと、学校の授業だけだと物足りないでしょう。大学受験で成功したいなら、予備校に行くのは常識よ」

梨子「はぁ」

121 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:53:26 ID:8U7Ekqa6
梨子(学校の先生がそんなこと言っていいのかな。職務放棄に等しいんじゃ?)

梨子(確かに、私も浪人した2年間は大手予備校に通ってたけど)

梨子(在学中はその学校の勉強に集中した方が結果的に上手くいくと思うなあ)

梨子(予備校の授業って、学校の授業と両立できるほど甘くないし)

梨子(両立できるような授業なら、お金と時間の無駄っていうか、行かない方がいい)

担任「桜内さん? 聞いてるかしら?」

梨子「あっ、はい。ちゃんと聞いてます」

122 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:54:08 ID:8U7Ekqa6
梨子(っていうか、私には関係ないのよね)

梨子(どうせこの1年で高校生活はおしまいなんだから、進学先決めても仕方ないし、今更大学で学び直す理由もない)

梨子(私は、この1年を乗り切って、それなりの所に就職できれば……それでいいの)

梨子(そろそろ解放してほしいなあ)


担任「あのね。もしかしたら、ずっとずっと後の話で、今の自分には関係ないって思うかもしれないけど」

担任「時間が経つのは本当にあっという間なのよ」

梨子(それは重々承知してますよ、きっと貴方よりも)

担任「貴方は子供だからわからないかもしれないけど、今のうちに勉強しておけばきっと貴方の役に立つわ」

梨子(中身は子供じゃないんですけどね)

123 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 22:54:45 ID:8U7Ekqa6
担任「ちょっと、本当にわかってる? 私は貴方のためを思って言ってるのよ」


梨子「……」イラッ


梨子(こんなに熱心に、1人の生徒と向き合ってくれる)

梨子(それ自体は、先生として褒められることなのかもしれない)

梨子(けれど)

梨子(必ずしも、良い事に繋がるとは限らない)


担任「桜内さん」

梨子「…………せわです」

担任「え?」

124 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 23:03:20 ID:8U7Ekqa6
梨子「――いえ」

梨子「この件、保留ということでお願いします」

担任「あー……まあ、そうよね。家に帰って、ご両親とお話して、それからでも遅くないわね」

梨子「はい、では失礼します」

担任「ええ」


ガラッ


梨子「……………………危なかった」


梨子(余計なお世話です、なんて子供みたいなこと言う所だった)

梨子(この歳になって感情的になったら、ちょっとヤバいよね)

125 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 23:03:51 ID:8U7Ekqa6
千歌「いや〜、流石に堪えたかあ。面白いのが見れると思ったのに」

梨子「わっ……高海さん」

千歌「あの先生、若い分ちょっと面倒なんだ。梨子ちゃんがうまい具合に刺激されるかもって思ったんだけど、案の定だったみたいだね」

梨子「そう、ね」

千歌「ところで。"高海さん"じゃなく、"千歌ちゃん"って呼んでほしいのだ」

梨子「あなたもそれを言うのね」

千歌「内浦じゃ名前呼びなんて常識だよ」

126 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 23:05:02 ID:8U7Ekqa6
梨子「はぁ。千歌ちゃん……これでいいかしら」

千歌「うん! 梨子ちゃん!」ビシッ

梨子「何よ、指差して」

千歌「これから苗字で呼ぶごとに罰ゲームなのだ」ニシシ

梨子「はあ?」

千歌「ちゃんと、千歌ちゃんって呼ばなきゃダメだよ?」

梨子「はいはい、わかりました」

127 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 23:10:16 ID:8U7Ekqa6
ガララッ


ルビィ「ぅゅ……」


千歌「あれ? ルビィちゃんだ」

ルビィ「ピギッ……千歌さんと、梨子さん」

千歌「どうしたの? 職員室から出てきたけど」

ルビィ「いや、その……テストがちょっと」

梨子「1年生なのにテスト?」

千歌「入学時の学力を図る目的でね。ここ、一応進学校って建前でやってきたから」

梨子「なるほどそのテストでやらかしたってわけね」

ルビィ「ふぇぇ……」グスッ


梨子(かわいい)

128 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/07(木) 23:10:38 ID:8U7Ekqa6
千歌「あ、いいこと思いついた」

梨子「ちょ、まさか」

千歌「ねえねえルビィちゃん。梨子ちゃんが勉強教えてくれるって!」

ルビィ「え?」

梨子「ちょっと!」

千歌「勉強思い出すのも兼ねてやってみれば?」コソコソ

梨子「いやだって、私彼女とは一昨日が初対面よ!?」コソコソ

千歌「だからこそだよ。この機会に仲良くなればいいじゃん」コソコソ

梨子「でも……」


ルビィ「あの、本当に教えてくれるんですか……?」ウルウル

梨子「うっ」

千歌「もちろんだよー♪ 梨子ちゃんが手取り足取り教えてあげるのだ」

梨子「くっ……あーもう、仕方ないわね」

ルビィ「よ、よろしくお願いします!」

129名無しさん@転載は禁止:2019/03/08(金) 04:33:59 ID:./uijS9I
今日も来てた!

130 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/09(土) 23:57:44 ID:Bz2Clwrk
―――




梨子「お、お邪魔します」

ルビィ「ただいまー」

梨子「あの……本当に上がっていいの?」

ルビィ「大丈夫です、花丸ちゃんも何度かうちに遊びに来ていますし」

梨子「ご両親は?」

ルビィ「出かけています」

梨子「なら、後であいさつしておくわ」


ルビィ「2階のルビィの部屋で待っていてください。すぐにお茶を用意します」

梨子「あ、お構いなく」

131 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/09(土) 23:58:14 ID:Bz2Clwrk
梨子(この部屋、すっごく広いわね)

梨子(確か網元の家系って言ってたっけ。千歌ちゃんの話では、今でも内浦で権力を持ってるみたい)

梨子(お金に不自由してないなら、家庭教師とか雇えばいいのに)


梨子(……本棚がたくさん。これ全部アイドル雑誌?)

梨子(本棚が丸々一つアイドル雑誌で埋まってる)


梨子「スクールアイドル、μ's?」

梨子(この子たち、高校生なんだ)

梨子(私が高校生の頃、こんなに明るい表情してたっけ?)

梨子(多分、してなかっただろうな)

梨子(なんだかとても、眩しく見える)

132 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/09(土) 23:58:37 ID:Bz2Clwrk
ルビィ「――梨子さん」

梨子「わっ、あ、あの……ごめんね、勝手に読んじゃって」

ルビィ「いえ、いいんです」


ルビィ「あの、梨子さんは……スクールアイドルになりたいって思った事、ありませんか?」

梨子「え? 私?」


梨子(そりゃあ、キラキラ輝いてるけど)

梨子(私がいた頃の音ノ木坂には、アイドル部なんてなかったし)

梨子(まさかこの歳になってアイドルになりたいだなんて思わないよ)

133 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/09(土) 23:59:22 ID:Bz2Clwrk
梨子「魅力的ではあるけどね。なりたいとまでは、思わないかなあ」

ルビィ「そうですか。そう、ですよね」

梨子「ルビィちゃんは、なりたいって思うの?」

ルビィ「……いえ。ルビィはアイドルになんてなれませんよ」

梨子「そんなことないと思うけどなあ」

ルビィ「そんなことあります」


ルビィ「それじゃあ、勉強を教えてもらえませんか」

梨子「あ、うん。どの教科が苦手なのかな? 返却されたテストを見せてくれるとわかりやすいんだけど」

ルビィ「えと……」ガサガサ


ルビィ「あの、その……どうぞ」

梨子「うん」


梨子(国数英各100点満点中、国語65点、数学52点、英語32点……か)


ルビィ「あの、ガッカリしましたよね」

梨子「へ? 別にそんなことは」

ルビィ「自分でも、よく入学できたなって思います」

梨子「そうね……一応進学校みたいだし」

ルビィ「定員割れしてなければ、絶対落ちてました」

梨子「それでも、全然勉強してない子を合格させるとは思えないわ。入試ではそれなりに解けていたんじゃない?」

ルビィ「英語は、半分ちょっとは……他は7、8割だったので、それで挽回できたんだと思います」

梨子「なるほどね」

134 ◆nDhcp.GYyc:2019/03/10(日) 00:05:51 ID:orIdVsH2
梨子「とりあえず、英語からやっていくって感じでいいかな?」

ルビィ「はい、お願いします」

梨子(中学英語がきちんと身についていないってことは、まずは文法かな)

梨子「いや……違う」

梨子(文法の設問だけ見るとしっかり得点できているように感じる。長文になると途端にできなくなるタイプか)

梨子(言ってしまえば、英語に慣れていないだけ)

梨子(んー……どうしよう。ただ長文読めって言うのもかわいそうだし、そんなの教えたうちに入らないよ)


梨子(よし、決めた)

135名無しさん@転載は禁止:2019/03/10(日) 04:27:45 ID:Aan2lj9Y
wktk

136名無しさん@転載は禁止:2019/03/17(日) 01:22:36 ID:sNpPd77k
復活してたのか
楽しみ

137名無しさん@転載は禁止:2019/04/21(日) 15:40:27 ID:Y8Qv33aI
通販でアームバンド買い足すなら今日までやぞ!

138名無しさん@転載は禁止:2019/04/21(日) 15:40:45 ID:Y8Qv33aI
誤爆

139名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:07:24 ID:cMIo4ius
梨子「ルビィちゃん、"Beatles"って知ってる?」

ルビィ「あ、名前は知ってます。曲はあまり聴いた事がないんですけど」

梨子「スマホで『All You Need Is Love』って検索してみて。歌詞が出てくると思う」

ルビィ「はい、出てきました」

梨子「その歌詞を、全部ノートに書き写して」

ルビィ「全部……ですか?」

梨子「うん、全部」

ルビィ「わ、わかりました……」

梨子「書き写したら、それを全部和訳してみて」

ルビィ「……へ?」

梨子「もちろん辞書は使って構わないわ」

ルビィ「えと、和訳って……」

梨子「分からない単語は全部調べるの。あ、ネットでカンニングしたらダメよ? まあ意訳ばっかりで、中には誤訳もあるから、見ればすぐわかるんだけど」

140名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:07:54 ID:cMIo4ius

―――




ルビィ「ぅゅ……分からないよぉ」

梨子(教えてもいいんだけど、それだと意味がないのよね)

梨子「頑張って。そういうのって、努力し続けるしかないからね」

ルビィ「はい……」


梨子「そういえばルビィちゃん、文法書って持ってる?」

ルビィ「ぶんぽうしょ?」

梨子「入学した時に買わされたと思うけど」

ルビィ「えーっと、この本棚にさしてあるのが全部です」

梨子「そうそう、これよ。浦女はスタンダードなのを使ってるのね」

ルビィ「それ、文法書っていうんですか?」

梨子「ええ。英文法の基礎が詰まってるわ。高校生は3年間かけてこれをマスターするの」

梨子(正確には、3年生に上がる前には完璧に身に着けてないといけないんだけど)

ルビィ「ふぇぇ……分厚い」

梨子「大丈夫よ。少しずつやっていきましょう」

梨子「そうそう、和訳でどうしても上手く訳せないときは、これも参照してみて。後ろの索引見ながらね」

ルビィ「わ、わかりました」

141名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:19:37 ID:cMIo4ius
梨子(察するに、ルビィちゃんの場合、勉強は別に嫌いじゃないはず)

梨子(こういう子は、英語に対する苦手意識さえ無くしてしまえば、英語の成績は急上昇することが多い)

梨子(まあ、英語なんてただの技術だしね。大学の勉強に比べたらお遊びみたいなものだよ)

梨子(大学……か。もし国際関係とかに入っていたら……もし、もしだよ? 私が、夢を諦めず、美術系に進学していたら……)

梨子(……ううん。こんなこと考えたって無意味だよ。過去は変わらないし、変えられるのは未来だけ)

梨子(その未来を変えるために、私は今こうしてるんだから)

梨子(……私は、今も、一生懸命になれてるのかな?)

142名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:57:31 ID:cMIo4ius
ルビィ「……あの」

梨子「ん? なに?」

ルビィ「その、質問があって」

梨子「うん、何でも聞いて」

ルビィ「あの、こんな最初の最初でつまづいちゃって、その……」

梨子「いいのよ、最初はみんなそうなの。私なんかに気を遣わないで」

ルビィ「あっ、あの……ここ、なんですけど」

梨子「えー……"There’s nothing you can do that can’t be done." ここがわからないの?」

ルビィ「ごめんなさい、こんなの中学生でもわかりますよね……」

梨子「そんなことないよ」

ルビィ「……へ?」

梨子「私ね、H橋の法学部出てるの。でも、周りにはBeatlesを完璧に和訳できない人が、思ったよりいたわ。実はね、今ルビィちゃんがやってる、自力で完璧に訳すっていうのは、本当に難しくて、おそらくは受験生の9割がやってないことなの」

ルビィ「……へ?」

梨子「……あ」

ルビィ「H橋を、出てる? って……」

梨子「あ、えと、違くて……そう、H橋でA判定が出たのよ。この間の模試でね」

ルビィ「え……えぇーーー!!?? それ、とってもすごいことですよね!??」

梨子「ま、まあね? だから、これくらいの英語はちょちょいのちょいなのよ」

ルビィ「わあー!! 流石東京出身の梨子さんです!!」

143名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:58:05 ID:cMIo4ius
梨子「え、えと、それでね? H橋に受かるような人でも、Beatlesを完璧に訳せる人は、中々いないの。つまり、これができるようになったなら、相当力が付いてるってこと」

ルビィ「……そう、なんですか?」

梨子「そう。これができるようになれば、学校では一躍トッブスターになれるわ」

ルビィ「一躍、トップスター……えへへ」

梨子「とまあ、話は戻るけど、ここの英文は、二重否定が入ってるの」

ルビィ「二重否定……?」

梨子「"できなかったことで、あなたができたことなんてない。" 直訳するとこうなるわね」

ルビィ「あ、そこまでは、なんとか」

梨子「これを意訳すると、"出来ないことはできないんだから、できることをすればいい。" できることをすればいいっていうのが、付け加えられるわけね」

ルビィ「な、なるほど……」

144名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:58:32 ID:cMIo4ius
梨子「ところが、これには別の訳し方があるの」

ルビィ「別……?」

梨子「もし、nothingをthat can’t be doneにかかっていると仮定すると、"君ができることは全部やってきた。"っていうことになる」

梨子「これは、どちらも文法として成立していて、有り得る訳なの。実は、ネイティブの間でも、これをどちらで捉えるかは、説が分かれてるんだよ」

ルビィ「そ、そんなの……答えなんて無いってことになりませんか?」

梨子「そうだよ」

ルビィ「そんなこと、あっていいんでしょうか?」

梨子「答えがないなんて、よくあることだよ。というか、大学に進学したら、答えがないのが当たり前。答えが存在する高校までの勉強が、どれだけ甘いものだったのか、痛感すると思うよ」

ルビィ「甘い……今やってる勉強が……そんな……」

梨子(あれ? これ、高校生に教えていいことなのかな?)


ルビィ「すごい……すごいです!! そんなのが普通だなんて!! ルビィ、なんだかワクワクします!!」

梨子「へ? ワクワク?」

ルビィ「答えがない、だなんて、こんなに面白いことは無いです! えへへ、なんか、ちょっと面白いとさえ思っちゃいました……!」

梨子「そ、そう……なら、よかったわ」

145名無しさん@転載は禁止:2019/12/15(日) 00:59:18 ID:cMIo4ius
タンタンタン…


梨子(ん? 誰かが階段を上って来てる)


ダイヤ「――ルビィ、今帰りましたわ」

梨子「あ、お邪魔してます」

ルビィ「お姉ちゃん! お帰り!」

梨子(この人がルビィちゃんのお姉さんか。確か、生徒会長で、ダイヤさんっていうんだっけ)

ダイヤ「あら、あなたは……」

梨子「初めまして。先日転校してきました、桜内梨子と申します」

ダイヤ「初めまして。私は黒澤ダイヤと申します。妹のルビィがお世話になっているようですわね」

ルビィ「あ、うん。ルビィね、今、梨子さんに英語教わってるの」

ダイヤ「……勉強なら、私が教えますのに」

ルビィ「あ、でも、お姉ちゃん忙しそうだったから……」

ダイヤ「そんなことない、一向に構いませんわよ。むしろ、私は……」

146名無しさん@転載は禁止:2019/12/21(土) 20:27:15 ID:gqQj3Pjg
おお、来てた

147名無しさん@転載は禁止:2020/02/07(金) 13:16:23 ID:EH5UtjFs
続き来てたのか!
また頼むぞ!

148名無しさん@転載は禁止:2020/02/08(土) 19:16:26 ID:wtME0ODo
梨子(これは、退散した方がいい雰囲気かな)

梨子「ルビィちゃん、今日はここまでにしようか」

ルビィ「へ?」

ダイヤ「いえ、ゆっくりしていって構いませんわ」

梨子「あー、その、あまり長居するのも悪いですし、私、門限がちょっと厳しくて」

ダイヤ「そうでしたの。なら、またお越しくださいな」」

梨子「はい。またお邪魔します」

149名無しさん@転載は禁止:2020/02/08(土) 19:16:44 ID:wtME0ODo
ダイヤ「……ルビィ、ちょっと席を外してくれる?」

ルビィ「へ?」

ダイヤ「少し、梨子さんと話したいことがありますの」

ルビィ「え……うん、わかった」

梨子「私と、話したいこと?」

ルビィ「梨子さん、その、またルビィに勉強を教えてもらえませんか?」

梨子「もちろんだよ。教えることで私の力にもなるし」

ルビィ「ぁ……ありがとうございます!! またよろしくお願いします!!」

梨子「うん。いつでも声をかけてね」

ルビィ「はい! 失礼します!」ペコリ

梨子(……行っちゃった。礼儀正しい子だなあ)

150名無しさん@転載は禁止:2020/02/08(土) 19:18:33 ID:wtME0ODo
ダイヤ「……あの」

梨子「はい?」

ダイヤ「桜内さんは、なぜ浦の星を選んだのですか?」

梨子「なぜって……それは……」

梨子(千歌ちゃんが選んだから、よね)

ダイヤ「わざわざ、こんなタイミングで転校してくることもないでしょうに」

梨子「それは……廃校のこと、ですか?」

ダイヤ「! ご存知なのですね。では、なおさら腑に落ちませんわ。なぜあなたが、こんな田舎の、それも廃校確定の学校に転校してきたのか」

梨子(どうしよう、本当のことをいうわけにはいかないし)

151名無しさん@転載は禁止:2020/02/08(土) 19:20:54 ID:wtME0ODo
ダイヤ「……事情がおありのようですわね。詮索はいたしません」

梨子「いえ、なんだか申し訳ないです」

ダイヤ「お気になさらず。その、こんなことを言ってはなんですが」

梨子「はい?」

ダイヤ「私、浦の星女学院は、とてもいい学校だと思っておりますの」

ダイヤ「そして、この内浦は、素晴らしい町ですわ」

ダイヤ「過疎化が進み、この学校が無くなってしまうのは寂しいことですが。それでも、あなたがこの場所で過ごした時間は、きっとかけがえのないものになると思います」

152名無しさん@転載は禁止:2020/02/08(土) 19:21:20 ID:wtME0ODo
梨子「……はい。そうなるといいなって、思います」

ダイヤ「……申し訳ありません。余計なお世話ですわね」

梨子「いえ、そんなことないですよ」

ダイヤ「桜内さん。これからもルビィのこと、よろしくお願いしますわ」

梨子「はい、こちらこそよろしくお願いします」

153名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 22:22:27 ID:gZPqneY.
〜〜〜

梨子「……そういえば、文房具買ってなかった」

梨子「千歌ちゃんが申し訳程度に用意してくれた百均みたいなシャーペンとか使ってたけど、いい加減それなりの買わないと不便だよね」

梨子「でも、学校の近くで文房具店ってあったかなあ」

梨子「……電話で千歌ちゃんに聞いてみよう」

154名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 22:23:13 ID:gZPqneY.
千歌『ないよー』

梨子「やっぱり?」

千歌『沼津に出ないと文房具店は無いかな。ていうか、私色々買ってなかったっけ? コンビニじゃダメそう?』

梨子「シャーペンはス〇ッシュ使いたいのよね」

千歌『流石にそういうのはコンビニには売ってないかあ』

梨子「明日は休みだし、自分で買ってくるよ」

千歌『私もついていこうか〜?』

梨子「いーえ、大丈夫です」

千歌『つれないなあ、ナンパされてもしらないよ?』

梨子「アラサーの女をナンパしてもねえ」

千歌『外見はJKだけどね』

155名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:20:31 ID:gZPqneY.
梨子「……東海バスの運賃高すぎない?」

梨子「とりあえず必要なものは買えたし、せっかくだから参考書でも見ていこうかな」

梨子「ここは……マルサン書店、か。あまり聞いたことは無いけど、そこそこの規模のお店みたいね」

梨子(思ったより参考書が多い。ここなら予備校本もある程度揃いそうね)

梨子(って、受験勉強するわけでもないのにこんなの見たって仕方ないんだけど)

梨子「……あれ? あの子は」

曜「……」

梨子(英語の参考書? すごい真剣に読んでるみたいね)

曜「……これじゃ足りない。いや、むしろこれじゃレベルが高すぎるのか……もっと基礎を重点的に……いや、それは散々やってきたし……そもそも前の失点はそんなんじゃなくて」

梨子(独り言、よね。どうしよう、話しかけようかな? いや、私だったら参考書選んでる所を人に見られるのはちょっと嫌かも。ううん、それは浪人生だったからかも。もしかしたら、現役だったらそんなことないのかな)


曜「あれ……梨子……ちゃん?」

梨子「あ」

梨子(バレちゃった)

156名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:28:45 ID:gZPqneY.
曜「あはは……こんな所で会うとは思わなかったな」

梨子「私も……なんか、ごめん」

曜「っ……フフ、梨子ちゃんからしたら、英語の問題集でこんなに迷ってる人なんてレベル低すぎて笑っちゃうよね。ていうか、ここにあるの全部レベル低く映るのかな。普段はジャパンタイムズでも呼んでるの?」

梨子(何……学校にいる時の子供っぽい口調とは打って変わって、すごい皮肉のこもった話し方……人が変わったみたい)

梨子「私は……別に、そんなの読んでるわけじゃないよ」

梨子(ニューヨーク・タイムズなら読まされてたけどね)

曜「ねえ、梨子ちゃんはさ。どうしてそんなに勉強得意なの?」

梨子「え?」

梨子(いやいやいや、ちょっと待ってよ。この子の方が、総合点では上回ってたよね?)

157名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:35:35 ID:gZPqneY.
曜「私、英語だけは昔からどうも苦手でさ。なんていうの?英単語とか英文法とか、覚えるのがだるくてね。まあ必死で覚えはするんだけど、覚えた先から忘れちゃう。流石に長文で何度も出てくるのは自然と覚えるんだけど、そうじゃないのはダメなんだ。それでケアレスミスしちゃって……ねえ、どうすればいいのかな?」

梨子「……渡辺さんは、私より全然勉強できてるよ。現役でそこまで出来るなら十分すぎるくらいだと思う」

曜「現役?フフッ、面白いこというね」

梨子「へ?」

梨子(やばっ、今の言い方だと、まるで私が現役じゃないみたいに聞こえちゃってたのかな)

曜「……ううん、なんでもない。梨子ちゃんにこんなこと言っても仕方ないのにね」

梨子「え……それってどういう」

曜「なんでもないっ!ごめん、変なことばっか言っちゃって!今言ったことは全部忘れて!よーちゃんはよーちゃんらしく、全速前進、ヨーソロー!だよ!」

梨子「っ……!」

梨子(可愛い……けど、なんか誤魔化された?)

158名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:40:47 ID:gZPqneY.
梨子「あの……ね。別に、全部完璧にする必要はないんだよ」

曜「……え?」

梨子「今のあなたを見ていると、まるで全教科で満点取らないといけないみたい。でも、受験勉強ってそうじゃないの」

梨子(ソースは、現役と浪人1年目、連続で落ちた私自信)

梨子「要するに、受かるための勉強をすればいいんだよ。自分が何が得意で何が苦手なのか、どれで点数を稼いでどれを捨てるのか。そういう戦略を立てるのが受験勉強、ひいては試験勉強の正攻法なの」

曜「……ご教示感謝するであります!なるほど、参考になったよ!」

梨子「うん。えと、難関大に受かった私の知り合いが言ってたことだから、間違い無……」

曜「でも、私は受験のために勉強してるわけじゃない」 

梨子「……へ?」

159名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:45:18 ID:gZPqneY.
曜「私は……渡辺曜は……完璧な存在じゃないといけないんだよ」

梨子「完璧……?なんのために?」

曜「……ごめん、これ以上は言えない」

梨子「えっと……」

曜「まあ、強いて言うなら、千歌ちゃんにかっこいい所を見せたいから、かな」

梨子「そ、そう……なんだ」

曜「ずっと、千歌ちゃんは傍にいてくれたから。私を完璧だと信じ続けてくれたから。だから、私は千歌ちゃんを裏切らないために頑張るんだ」

梨子「ずっと……傍に、いてくれた?」

曜「そう。ずっと」


曜「じゃあまたね!お互い次の定期試験に向けて頑張ろ!!」

160名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:56:17 ID:gZPqneY.
〜〜〜

先生「……で、あるからして……」

梨子「……」

キーンコーンカーンコーン…

千歌「梨子ちゃん」

梨子「わっ……千歌ちゃん」

千歌「今日はずっとボーッとしてるね」

梨子「そんなこと、ないと思うけど」

161名無しさん@転載は禁止:2020/02/10(月) 23:57:03 ID:gZPqneY.
千歌「何かあったの?」

梨子「何かあったといえば、無かったわけじゃないけど、ね」

千歌「ふうん?」

梨子「……ねえ、その、私に隠してること無い?」

千歌「……そりゃああるよ。ありすぎて何から話せばいいか分かんないくらい」

梨子「いや、あの、そういうんじゃなくてね」

千歌「まあ、いずれ必要になった時に話すよ」

梨子「……そう。なら、今あえて聞くことはしないわ」


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