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>>2「>>2の3分クッキングの時間だよ!」 PartⅩⅩⅣ

1 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:29:39 ID:xWGjRQx6
安価スレのようなそうじゃないよう
なSSスレ


前スレ(PartⅩⅩⅢ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1507460469/

前前スレ(PartⅩⅩⅡ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1501931181/

前前前スレ(PartⅩⅩⅠ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1496660857/

前前前前スレ(PartⅩⅩ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1491735745/

前前前前前スレ(PartⅩⅨ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1487495156/

前前前前前前スレ(PartⅩⅧ(再々))
http://karma.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1486897355/

2 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:30:27 ID:xWGjRQx6
てんぷれ

過去編〜土曜編までの略年表
http://urx.mobi/BK9a

日曜編チャート
http://urx.mobi/BK9h

終末編チャート1(『200』まで)
http://urx.mobi/BK9i

終末編チャート2(『201』以降)(更新)
http://ur0.link/CNAi

新終末編チャート
http://urx3.nu/HyLn

現在の登場人物の図(更新)
http://urx3.nu/HyLK

3 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:31:06 ID:xWGjRQx6
Part表

Part1 Part2:クッキング編
Part3:クッキング編〜前世編〜土曜編秋葉原深夜決戦前
Part4:土曜編秋葉原深夜決戦〜日曜編序盤
Part5:日曜編(ディズニーシー決戦編、博物館編、冥界内乱編、ビワッシー編、アノールロンド編)
Part6:日曜編(アノールロンド編、幕張メッセ編、英玲奈家襲撃、ドスケーブ城厨房騒動)
Part7:日曜編(病院編、亜里沙編、魔王軍過去編、ドスケーブ城襲撃編)
Part8:日曜編(魔王様日記編、亜里沙北海道編)
Part8再:日曜編(大雪山拠点決戦)〜終末編(ドスケーブ城防衛戦、津軽海峡偵察戦、神田明神地下研究所編)
Part9:終末編(大阪防衛戦)
Part10:終末編(滋賀・琵琶湖追撃戦)
Part11:終末編(ロシア編、ドスケーブ城三者会談、深海とっり編)
Part12:終末編(冥界襲撃・対ミナ仮面勢力編)
Part13:終末編(深海バーミヤン編、竜宮城編)
Part14:終末編(イオンモール草津パニック編)
Part15:終末編(名古屋編、空中名古屋支部〜ドアラランド突入)
Part16:終末編(黄金ドアラランド決戦・前)
Part17:終末編(黄金ドアラランド決戦・中)
Part18:終末編(黄金ドアラランド決戦・後)
Part19:終末編(凍結名古屋決戦)
Part20:新終末編(狭間の世界編、冥界ムスペル編、天空の城編、音ノ木坂跡編、GODの里編、ほのキチ倶楽部VS魔王キチ団前編)
Part21:新終末編(ほVS魔後編、玩具の箱庭編、VS新魔王編、UTX跡編、名古屋凍結砂漠編、バーミヤン下層編、関門海峡偵察編、魔の海域編)
Part22:新終末編(琵琶湖再び編、バーミヤンVSヨルムンガンド編、VS神造人間編、ドスケーブ城崩壊編)
Part23:新終末編(音ノ木坂跡アルパカウイルス編、北方領土地下空洞編)

4 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:31:56 ID:xWGjRQx6
○前スレのあらすじ

音ノ木坂跡を中心に広がる謎のウイルス
事態を解決しに向かった寿限無たちはアルパカ兵士の猛攻に苦戦しつつも原因であった感染体を倒すことに成功した
その後ウイルスを作成した博士アルパカを中心に再びミーム的特性を備えたウイルスが拡散してしまうものの
鞠莉とマッキーが味方になってくれたアルパカ族の力を借り、ウイルスを駆逐する新抗体を作成し事なきを得た


だが一難去ってまた一難
突如現れたクローバーによってもたらされたのは『宇宙怪獣が日本へ落下してくる』という情報
落下地点は静岡県沼津市、ただでさえ壊滅的な被害だが中国地方を進軍しているムスペル軍と合わせると
名古屋や大阪、滋賀と言った残ってる拠点が挟み撃ちになってしまう

解決の策として提示されたのはサトゥルヌスによる宇宙怪獣撃退
旧魔王の遺物を防衛兵器として活用する手段だった


クローバーによって音ノ木坂に眠っていたサトゥルヌスの左腕を
マザーと海未たちによって北方領土地下大空洞――レヴィアタンに保管されていたサトゥルヌスの本体を回収することに成功

落下までのタイムリミットが刻一刻と迫る中、2チームは最後のパーツである右腕が眠り、同時に防衛地点でもある浦の星女学院へ急ぐのだった

5 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:33:20 ID:xWGjRQx6
てんぷれおわり
質問ご指摘等あればどうぞ


強さ格付け?記憶にないなぁ

いや……いつかやります、たぶんいつか……


では本編へ

6 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:34:04 ID:xWGjRQx6
新終末編『251』

─────────────────
──島の端

AM8:36


バババババババババッ!


海未(洞窟を通って外に出ると風が強くなっていた)

海未(だがこの風は自然のものではない、上空に待機している巨大な影が起こしているものだ)


海未(あれがマザーの言っていた船――スターニシキノの飛空艇ですか)

海未(予め支持をされていのか飛空艇は地面ギリギリまで高度を落としていて、サーチライトを私たちのほうに向けていた)


マザー「じゃ、まずうちが話を付けてくるわ」

マザー「そしたら着陸してハッチを開くはずやから乗り込んできてな」

海未「分かりました、ですがボールは――」

マザー「それこそ分かってるって、持ち逃げせんように自分に渡しとけやろ、ほらっ」ヒュンッ

海未「おおっ」パシッ


海未(マザーは何の躊躇いもなくモンスターボールを渡してくる)

海未(さっき地下で脅した私が言うのもなんですが、信頼されすぎてて少し怖いですね)

海未(本気になれば取り戻せるという自身の裏返しなのか……)


マザー「ほっ!」

タンッ!

海未(マザーは何も気にしてない様子で少し屈んでジャンプ、十数メートル上の飛空艇に跳んでいってしまった)

ピョーンッ


希「あの人……うちら全員相手にしたら勝てないって嘘なんちゃうんかな」

海未「さぁ、誰が相手でも負けるつもりはありませんが……敵に回したくない相手の1人ですね」

7 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 20:35:25 ID:xWGjRQx6





──飛空艇内


スタッ

マザー(地面からジャンプしたうちは手近の適当な窓をエアワシワシして粉砕、そこから内部の通路に着地した)


マザー「さてさて、船長室は……」

船員「いた!マザーさん!」タタッ

マザー(辺りをキョロキョロしていると1人の船員が息を切らしてこっちに走ってきた)

マザー(うちを部屋から案内してくれた子やな、顔に見覚えがある)


船員「はぁ……はぁ……」 

マザー「よっ、任務を果たして戻ってきたで」

船員「それは良いんですけど……普通の場所から入ってきてくださいって」

船員「降りる時は壁壊すし、戻ってくる時は窓壊すし、一応ニシキノさんの船なんですから」

マザー「ごめんって、急ぐとつい最短距離を進みたくなるんよ」テヘッ


マザー(うちは顔の前で手を合わせてウインクをする、すると船員さんは顔を真っ赤にしてたじろいでしまう)

マザー(ふふっ、可愛いなぁ)

船員「う……ま、まぁ良いですけど……それよりこちらも報告があるんです」

マザー「報告?」


船員「実は>>8

8名無しさん@転載は禁止:2017/12/14(木) 20:43:43 ID:6ZK37pys
あと数分で敵が襲来

9 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 21:18:33 ID:xWGjRQx6
船員「実はあと数分で敵が襲来してくるんです!船のレーダーがキャッチしました!」

マザー「なっ!?それは大変やな、早く海未ちゃんたちを乗船させんと……」ダタッ

プルンッ


船員「あ!ま、待ってくださひっ!」

マザー「ん?」

マザー(船長室へ急ごうとうちが走りだすと船員さんが裏返った声で呼び止めてきた)

マザー(振り返ると船員さんは顔を赤くしつつ目を伏せて妙にモジモジしている)


マザー「どしたの?」

船員「その……先程から気になっていたのですが、その格好はどうにかしたほうがいいかと」

船員「何分あっちは船長を始め人が多いので……色々と出ちゃってると不味いというか……」

マザー「格好……」

チラッ


マザー(指摘されて改めて自分の格好を思い返してみる)

マザー(下はミニスカで上は海未ちゃんと交換した超マイクロビキニやったっけ)

マザー(うちには小さすぎるサイズでちょっと動けばポロリしちゃうような紐水着)

マザー(そんでうちは飛空艇までジャンプして来たから……)

チラッ


マザー「なっ!?」ボッ!!

マザー(うちの胸の2つのふくらみはピュアな青少年には目の毒過ぎる有様になっていた)

マザー「…………っ!!」カァーッ

10 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 21:19:10 ID:xWGjRQx6


マザー(うちは慌てて布の中にあるべき物を戻そうとするけど、元々布なんてあってないようなものなので戻らない)

マザー(船員さんは自主的に後ろを向いてくれている)

マザー(ああもう!なんでこんな服来ちゃったんやろう!誰にも見せたことなんてないのにぃぃっ!)


マザー「ご、ごめんな、変なもの見せちゃって……」

船員「い、いえ……」


マザー(うちはいかにも恥ずかしがってない体で冷静に謝る)

マザー(本当はめっちゃ恥ずかしい!恥ずかしいけど……なんかうちが恥ずかしがってるって知られるのが1番恥ずかしい!)

マザー(だから冷静で出来る大人のふりをするんや、余裕を見せるんや、落ち着け……落ち着け……)

ドキドキッ ドキドキッ


船員「あのマザーさん!せめてこれを羽織ってください!」バッ!

マザー「お、おう」


マザー(船員さんが後ろを向いたまま渡してくれた制服の上着を手に取り羽織る)

マザー(胸がキツイけど……なんとかボタンは止められるな)



マザー「あ、ありがとう……そんじゃ急ごうか、時間も無さそうだし」

船員「は、はいっ!」


スタスタ  スタスタ

11 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 21:19:45 ID:xWGjRQx6




スタスタ スタスタ


マザー(顔を手でパタパタさせて赤い顔を仰ぎつつ、うちらは通路を歩いて船長室へ急ぐ)

マザー(仕事モード、仕事モードに切り替えるんや……)


マザー「……で、レーダーに写った敵って言うのは?」

船員「はっ!詳細は解析班が解析中ですが……」

船員「今のところ判明してる情報から考えるに敵は>>12だと思われます」

12名無しさん@転載は禁止:2017/12/14(木) 21:24:53 ID:FJMmWB0M
機械生命体

13 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 22:13:11 ID:xWGjRQx6
船員「敵は機械生命体だと思われます」

マザー「機械生命体……?機械の体を持った生物やったっけ」

船員「はい、マザーさんは会ったことあります?」


マザー「いや……見たことあるのは異能者が作った機械生命体モドキくらいやな」

マザー「異界や地球外には種族として存在を確立させた機械生命体がいるそうやけど、そっちとは会ったことはない」

マザー「今回襲撃して来てんのは後者のほうやろ?」

船員「そう……ですね」


船員「船のレーダーが捉えた限りでは巨大な金属の塊ですが、内部に確かに生命体が出すサインを感知しました」

マザー「サイン……バイタルサインみたいなもんか」

船員「はい、ですが心臓や血管と言った生体組織は見られない」

船員「襲撃者は無機物の部品だけで人のに酷似した生体活動を行っていると思われます」

マザー「……ふむ」

14 ◆WsBxU38iK2:2017/12/14(木) 22:13:43 ID:xWGjRQx6


スタスタ スタスタ

マザー(そう話してるうちに船長室に到着した)

ウィーン!

鞠莉(自動で扉が開くなり、うちは開口一番船長に命令する)


マザー「船長!いますぐ船を降ろして下の子たちを回収!」

船長「ま、マザーさん、あの少女たちは?」

マザー「あの子たちは仲間、敵じゃないのはうちが保証するから安心していいよ、今は時間が無いんやろ?」

船長「ですが……」


マザー「てか任務の確保対象を預けて来ちゃってるし、このまま逃げても手ぶらやで」

船長「……ぐっ!」

バッ!

船長「各員に告ぐ、船を降ろしてマザーの仲間を回収!回収しだいすぐに発進だ!」


マザー「よしよし」

スタスタ

マザー(船長が動いたのを確認した私は分析官のデスクの所へ行く)

マザー(デスクの前のモニターには船の周囲の情報がデータで羅列されている)


マザー「あんたが解析分析担当の人やな、敵の情報はどれだけ入ってきている?」

分析官「今のところは船長に伝えた程度の話ですよ」

分析官「あとは形くらいですかね、こちらへ向かってる機械生命体は飛空艇と同じくらいの大きさ」

分析官「形は>>15

15名無しさん@転載は禁止:2017/12/14(木) 23:03:45 ID:VT2tA7vY
ハーケンクロイツ

16名無しさん@転載は禁止:2017/12/14(木) 23:06:05 ID:Ey9j7ziM
カマドウマ

17 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 00:05:49 ID:mmAVPUJA
分析官「形はハーケンクロイツの形をしています」

マザー「ハーケンクロイツ……スワスティカ、鉤十字、この国的にはまんじって呼び方がしっくり来るかな」

18 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 00:06:34 ID:mmAVPUJA
マザー「わざわざ独語呼びってことは某党を想起させる右まんじなんか?」

分析官「よくお分かりで」


船員「右まんじ?」

マザー「日本でも使われる卍マークを反転させたやつやな、逆鉤十字や逆まんじとも言われる」

船員「ほうほう、要は右まんじの形をした機械生命体が近づいてきてるわけですか」

分析官「そう、自分の体を海と水平にしてグルグル回転しながら向かってきてますね」


マザー「随分とシュールな飛び方の飛行物体やな……」 

マザー「機械生命体と言うからには何かの生物っぽい形をしてると予想してたが完全に外れ」

マザー「むしろUFOかなんかの亜種と言われたほうがしっくりくるで」



タタタッ!

船長「マザーさん!お仲間の乗船が完了しましたぞ!」

マザー「……よし、じゃあ飛空艇を浮かせて全速前進や!」


マザー「まんじ野郎に追いつかれる前にさっさとこの島を出発するで!」



─────────────────

島の端〜飛空艇

AM8:36〜AM8:40 新終末編『251』了

19 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 00:07:50 ID:mmAVPUJA
というわけでここまで

NGに引っかかって探ってたら変な区切りになってしまった

ではこのスレもグダグダやっていきます

新終末編『252』に続く
かもしれまない

20!ken:99:2017/12/15(金) 12:30:57 ID:czBnsH8Q
気と首を長くして待ってます

をつ
新スレもをつ

21 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 20:35:17 ID:mmAVPUJA
新終末編『252』

─────────────────
──飛空艇内・客室

AM8:40


海未(マザーと分れてから数分後、私たちの前のスペースへ飛空艇が着陸)

海未(下部ハッチが開くとやけに慌てた船員にが中から出てきた、その船員に促されるように私たちは船の中へ)


海未(ここで待機していてくださいと案内されたのは豪華な客室、VIP用の部屋なのでしょうか)

海未(明らかに身元不明な集団の扱いにしては良すぎる対応、マザーが何か口添えしたのか……少し不気味ですね)


希「てっきり倉庫にでも入れられると思ったら優遇されてるなぁ」

コトーリ「ひろいひろい」

海未「まぁ私たちも人数が人数ですしね、広いに越したことはありません」

海未(私、希、ダル子、コトーリさん、ウミトラマン)

海未(ほのり、善子、ココロ、彼方、かもめ……の合計10人が一部屋に詰め込まれている)


ココロ「天使様!ティーセットがあるので今お茶を淹れますね!」

コトーリ「うーい」

ダル子「こっちのソファーは彼方ちゃんを寝かせるので使わないでくださいねー」

善子「くくく……空を駆ける暗黒飛空艇ダーカーシップ、私に相応しい乗り物だわ!」

ほのり「こらテーブルに足あげないの」パシッ

善子「ぐっ……」



海未(みんな割りと好き勝手に騒いでますね……)

22 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 20:35:43 ID:mmAVPUJA
タタタッ

かもめ「海未さん、あの船員の制服に付いてたエンブレム……スターニシキノの物ですね」

かもめ「結構悪評を聞く戦争会社ですから気をつけたほうがいいかと」

海未「ええ、マザーと協力すると決めた時から注意は払ってるつもりです」

海未「あくまで力を借りるだけで深入りはしない、あなたも下手に刺激しないようにしてくださいね」

かもめ「……はい」


かもめ「じゃ、私は扉の近くで休みがてら見張っていますから」タタタッ

海未「はい、お願いします」

海未(かもめは扉の横の壁まで走っていくと壁を背にして座り込み、ライフルを股の間に挟んで休息の姿勢を取る)

海未(もっと普通に休んでもらっても良いのですが……)


海未「……さてと」

海未(船は発進したようですがマザーはまだ来ない、今のうちに>>23)

23名無しさん@転載は禁止:2017/12/15(金) 20:38:50 ID:sBaVHGy.
天界について聞く

24 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 21:49:58 ID:mmAVPUJA
海未(今のうちに天界について聞いておきましょうか)


海未「ほのり!ダル子!こちらへ来てください」

ほのり「はーい」

ダル子「今行きます!彼方ちゃん健やかに寝ててね」

彼方「……」スピー


タタタッ

ほのり「どうしたの?」

海未「マザーがいないタイミングですし、この際に天界の話を聞いておこうと思いまして」

ダル子「なるほど、分かりました」


ダル子「ほのりさんがロスヴァイセさんに連れられて行った世界、つまり私の世界ですが……あそこは北欧神話をベースにした世界になっています」

海未「北欧神話……巨大な世界樹を中心に複数の世界が連結して成り立っている世界体系ですね」

ほのり「オーディンってエロ親父が治める国だったわ」


ダル子「はい、そして前提として知っていて欲しいのは私たちの世界が唯一無二の天界では無いということ」

ダル子「仏教ベースの天界もあれば、ギリシャ神話ベースの天界もある、それぞれがお互いに独立した世界なのです」

海未「ほう……複数神話が習合している冥界とは別なのですね」

ダル子「まぁ冥界も地獄なんかは別異界として存在しますけどね、天界ほどバラバラではありません」

25 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 21:50:19 ID:mmAVPUJA


善子「ん?なんで人間の書いた神話の通りに他の異界は出来てるの?」

ほのり「今更そんな基本的なこと聞かないでよ、異界同士は相互に影響を与えあってるの」

ほのり「こっちで考えた『お話』があっちで『現実』になったり、あっちの『現実』がこっちの『お話』になったりしてる」

善子「ややこしいのね」

ほのり「ややこしいのよ」

ほのり「でっかいプールの中に小さなボールが無数に浮かんでる」


海未「北欧神話に語られる他の国も存在するのですよね」

ダル子「はい、ムスペルヘイムなどは独立存在してますし、人の世界ミッドガルズはこの世界と同一視されていて、ニブルヘイムなどは冥界と習合しています」

海未「なるほど、北欧神話から見て都合の良いように他異界を説明付けてるのですね」

ダル子「まぁ悪く言えば屁理屈で良く言えば解釈、他の神話世界でも同じことをしてるでしょう」

海未「ふむ……」


ダル子「ではここからが私の世界、北欧神話ベースの天界が他の天界と違う所についての説明です」

ダル子「海未さんが言った通り、北欧神話の世界は世界樹によって複数の世界が繋がった世界」

海未「繋がっている……まさかっ」

ダル子「はい、世界樹理論を対応させれば天界と他の世界を容易に行き来できるわけです」


善子「すごいじゃない!だったら北欧神話の強い神様に来てもらえばフードマン軍なんてイチコロよ!」

ほのり「善子……あなた天界で話聞いてなかったの?」

26 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 21:50:37 ID:mmAVPUJA


善子「え?」

ほのり「今は世界樹が枯れて消失してるの、だから大型の神格は現世との行き来が難しい」

善子「あー、そうだったっけ」

ほのり「だからね海未さん、私たちは枯れた世界樹に関する手がかりの調査も依頼されているの」


ほのり「かつて人間の世界と天界を繋いでいたのなら、この世界にも手掛かりが残ってるはず」

ほのり「世界樹さえ復活すれば天界から援軍が呼べるのよ」

海未「……なるほど」

ダル子「向こうでそんな話になってたんですか、それは知りませんでした」


ほのり「一応トゲわんに調査依頼はしてるけど、海未さんは何か思い当たることない?」

ほのり「何か……とてつもなく大きな木の話について」

海未「思い当たること……>>27

27名無しさん@転載は禁止:2017/12/15(金) 21:55:40 ID:uZDGje9.
小さい頃よく用を足していた大きな木

28 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 22:50:37 ID:mmAVPUJA
海未「思い当たることは……」


海未「そうですね、小さい頃よく用を足していた大きな木とかでしょうか」

ほのり「何でいきなりそんな思い出がでてくるのよ……」

善子「てか木でトイレって犬なの?」

海未「い、いえっ!本当に小さい頃の話ですよ!今はそんなことしません」

ブンブンッ


海未(自分でも分からない、どうして最初にこの思い出が口をついて出たのか)

海未(絶対に人には話すまいと思っていた記憶、私もすっかり忘れていた記憶だったのに)

海未(でも……)


海未「あの木は、本当に思い出の木だったのです」

海未「私が良く行っていた公園に生えていた木で、やがてそこで穂乃果たちとも出会って……」

海未「その木でことりが怪我をしてしまったり悲しいこともありましたが、それでも皆で遊んだ思い出の木です」

善子「用を足してたのに?」

海未「その頃はもうしてませんよ……」

29 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 22:50:58 ID:mmAVPUJA
ほのり「海未さんたちが遊んでいた公園の木か、一応チェック候補に入れておこうかしら」メモメモ

海未「でも確かあの木は老朽化で切られてしまったような……」

ほのり「……よし」


ほのり「じゃあ次に……クッキング博士から告げられた情報に関しても共用しておくわ」

海未(ほのりは声のボリュームを少し落として続ける、なるべく他に聞かれたくない話なのだろう)

海未(私も耳をほのりの口に近付けるように前に出る)

ほのり「実は――――」





30 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 22:51:27 ID:mmAVPUJA





ほのり「――って話なんだけど、海未さんはどう思う?」

海未「……なるほど」


海未(世界改変による歴史の捻じれ、それもう看過できない所まで進んで来ている)

海未(捻じれ過ぎた世界を戻そうとすればその反動は凄まじく、歴史は元に戻るところかマイナスの状態まで戻ってしまう)

海未(私たちが3分クッキングを始めようとした時間より前、ほのりたちが生まれていない世界へと――)


海未(それがクッキング博士の提唱している理論)

海未(本当かどうかは分かりかねますが……一応留意しておいたほうがいいですね)


海未「分かりました、引き続き他の人には話さないでおいてください」

海未「μ'sのメンバーには私のほうからタイミングを見て話しておきます」

ほのり「はいっ」


海未(……と、話に区切りが付いたところで見計らったように扉が開いた)


シュッ! ウィーン

マザー「よー!みんな揃ってるかー?」

かもめ「っ!?」ビクッ!

31 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 22:51:41 ID:mmAVPUJA
海未(いきなり現れたマザー、気配を事前に感知できなかったのか扉の横にいたかもめが驚いて飛び跳ねる)

かもめ「あ、足音がしなかった……?」


海未「揃ってますよ、飛空艇は真っ直ぐ内浦へと向かうのですか?」

マザー「それなんやがな……実はこの船、謎の空飛ぶ敵に追っかけられてるんや」

海未「敵?」

マザー「うん、現在進行形で迫ってきている」


マザー「飛空艇も全力で飛ばしてるけど、今のスピード差だと追いつかれるまで>>32

32名無しさん@転載は禁止:2017/12/15(金) 23:05:15 ID:UVuJQytc
40秒

33 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 23:54:56 ID:mmAVPUJA
マザー「あと40秒」

ほのり「……え?」

マザー「だから40秒、40秒で激突するから心構えしててな」

ほのり「はぁぁぁぁぁっ!?」

ダル子「なんですかそれ!聞いてませんよ!」

マザー「あと30秒なー」



海未「こちらから攻撃して撃墜は出来ないのですか?飛空艇には武装がついていたでしょう」

マザー「もちろん試したけど飛空艇の砲撃じゃ90%回避されるし、着弾した所で有効打は与えられなかった」

マザー「敵さんの金属装甲は普通の兵器では傷1つ付けられない硬さらしいなぁ」

海未「それは厳しいですね」


マザー「スターニシキノは対異能系の兵器も製造してはいるけど、この船には付いていないんよなぁ」

マザー「元々うちを運ぶだけの仕事やったから戦闘なんて想定しとらんし、船長たちも大慌てやで」


マザー「で、残り10秒」

海未「仕方ありませんね……皆さん!姿勢を低くして部屋の中央に集まってください!」

ココロ「天使様!ははははやく私の下へ!抱っこしてあげます!」グイッ グイッ

コトーリ「だいじょーぶ、だいじょーぶ」

ダル子「か、彼方ちゃんが吹っ飛ばないように固定して……」ギュゥゥッ


マザー「5……3、2、1」



マザー「ゼロ」


海未(そして、激しい衝撃が飛空艇全体を大きく揺さぶった)

ドゴォォォォォォォォンッ!!!!



─────────────────

スターニシキノ飛空艇

AM8:40〜AM8:46 新終末編『252』了

34 ◆WsBxU38iK2:2017/12/15(金) 23:56:00 ID:mmAVPUJA
というわけでここまで

衝突、そして


新終末編『253』に続く
かもしれない

35 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 20:03:38 ID:B6Od.tR.
新終末編『252』

─────────────────
──スターニシキノ飛空艇

AM8:46


ドガガガガガガガガガガガッ!!

海未(船体が激しく上下左右に揺れて、部屋の中のテーブルや椅子が跳ね回る)

ココロ「どどどどうしましょう天使様!おおお落ちるんじゃないですかこれ!」

コトーリ「こころおちついて」ポンポン

善子「この状態で落ち着けってほうが……わわっ!むむむりなんじゃないぃぃぃっ!?」


マザー「ふーむ……この感じ、敵が激突した箇所は――」

ダル子・かもめ「「船尾右側上部!!」」

海未(ダル子とかもめが張り合うように同時に同じ箇所を叫ぶ)

海未(ダル子は神眼で、かもめは持ち前の耳で判断したのだろう)


マザー「……うん、正解やね」

海未(マザーはまるで答え合わせのように頷きながら余裕の笑みで答える)

海未(初めから分かっていて2人を試したのだろう)

かもめ「ちっ」

海未(かもめはそれがまた気に入らないみたいで不機嫌な表情を見せる)

海未(マザーの接近を感じ取れなかったことがかなり悔しかったみたいですね……)


海未「マザー、その激突した箇所には何があるんですか?航行に重要な箇所が破壊されていたら大変です」

マザー「確かあそこは……>>36

36名無しさん@転載は禁止:2017/12/16(土) 20:10:21 ID:0XOCE/Q2
ワームホール

37 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 21:35:44 ID:B6Od.tR.
マザー「確かあそこにはワームホール発生装置があるな」

海未「ワームホール?なんでまた……」

マザー「いいから向かうで!」


マザー「付いてきて欲しいのは海未ちゃんとそれから……」

ダル子・かもめ「「私たちも行きます!」」バッ!

海未(また2人揃って手を上げる、やけにやる気がありますね……)

マザー「うんっ、じゃあその3人で行こう、急いでな!」タタタッ


海未「分かりました、希はここの皆をお願いしますね!」

ダル子「彼方ちゃんもお願いします!」

希「おうっ、気をつけてな!」


タタタタタッ!!

38 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 21:36:20 ID:B6Od.tR.




──通路


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

海未(引き続き揺れ続ける飛空艇内の通路)

海未(私たち4人はそこを船の後方に向かって走っていた)

タタタッ

海未「しかしワームホール発生装置とは……どうしてそのようなものを積んでいるのです?」

マザー「さぁ?単に積荷として積んでるだけやと思うよ」

マザー「この飛空艇がロシアに迎えに来てうちが乗り込む時にはもう積んでたし」

マザー「仕事の途中でニシキノから急にうちを運ぶ依頼が来て、先にしていたワームホール運びを中断したんちゃうかな」

海未「ふむ……」


マザー「うちも乗り込む時に気になって聞いたけど詳細は教えてもらえんかったで」

海未「そうですか、マザーが知らないのでは仕方ありません」

タタタッ


ダル子「海未さん、ワームホールって何ですか?」

海未「ええと……そうですね……」

海未(後ろを走っているダル子からの質問に少し言い淀んでしまう)

海未(自分が曖昧なイメージで認識してる概念を、いざ人に言葉で説明しようとすると難しい)

39 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 21:36:50 ID:B6Od.tR.
海未「ワームホールとは数学の理論上に存在する時空と時空を繋ぐトンネル……ですかね」

海未「フィクションでは主にワープホールやタイムマシンのトンネルとして使われることが多いです」

マザー「宇宙人が出てくるSFで遠い距離を短く移動するための方法とかな」

ダル子「なるほど、海未さんのキーブレードゲートみたいなものですか」


海未「まぁ……似てるといえば似てますが、ワームホールはまだ技術としては再現不可能な理論ですし」

海未「再現できたとしても脆くて実用性は無いはずです」

かもめ「異能を知っている私たちが言うのも何ですけどね……」

マザー「それを言っちゃあお終いやで」


海未「はい、ですから気になるのです」

海未「スターニシキノが商品として運んでいる装置とやらが、異能を使ったものなのか……はたまた人類の知らない科学なのか」


マザー「なんにしても直接見てみたほうが早いで」

マザー「ほら……もうそこが目的の格納庫や!」

タタッ!


海未(襲撃者が激突した最後尾の部屋)

海未(通路に続く扉は衝撃で吹き飛んでいて中の様子は通路からでも見て取れた)

海未「……!」

海未(外に面した壁は派手に崩壊し、そこから巨大な金属の直方体が部屋の中に突っ込んできている)

海未(部屋に入ってる長方体は外に向かって更に続いてるようで、中からでは全景が見えない)


マザー「あれが襲撃者、金属生命体の端っこや!」

海未(そして襲撃者……マザーの言う金属生命体は>>40)

40名無しさん@転載は禁止:2017/12/16(土) 21:38:56 ID:EJ8tfKxM
ケーブルを伸ばしてハッキング中

41 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 22:09:08 ID:B6Od.tR.
海未(直方体を構成している1番先端の正方形の面、そこから複数のケーブルを周囲の壁や装置に伸ばして接続していた)

海未(何かを読み取っている……?まさかハッキング?)


かもめ「金属生命体というか完全に金属の塊ですね、全形はどうなってるんです?」

マザー「ハーケンクロイツ、右まんじの形やな」

マザー「卍がグルグル回転しながら突っ込んできて、鉤爪みたいになっとる先の部分が船の最後尾に突き刺さってる形」

マザー「うちらは船の中からその鉤爪の部分を正面に見てるんや」

かもめ「あー、なんとなくイメージはできました」

42 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 22:09:22 ID:B6Od.tR.


海未「それよりケーブルを断ち切ったほうが良いですよね、ワームホール発生装置にまでケーブルを伸ばしていますよ!」

マザー「せやな、手分けして行くで!」

マザー「右がうち、正面がかもめちゃん、左は海未ちゃんで!」

かもめ「はいっ!」

海未「了解です!」


海未(格納庫中にウネウネと伸びる太いケーブル)

海未(部屋を大きく分けて向かって右側のケーブルをマザーがエアワシワシで削り取り、中央のケーブルをかもめちゃんがライフルで撃ち抜く)

海未(同時に私が左側のケーブルにファントムエッジで斬り込んだ)

ゴッ! ダンダンッ!! バシュッ!!


海未(3人の同時攻撃、ケーブルに対して有効打を与えられたのは>>43)

43名無しさん@転載は禁止:2017/12/16(土) 22:20:54 ID:eWpiwAio
誰一人いない

44 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 23:00:32 ID:B6Od.tR.
キィィィィィィンッ!!


海未(有効打を与えられたのは……誰1人いなかった)


マザー「……っ!アカンなぁ、こいつガッチガチやで!」

かもめ「ちょっ!メタルジェットを発生させる特殊弾が装甲の1枚も貫けないって……」ガチャッ!

海未「ファントムエッジで焼き斬れない……っ!?」


海未(マザーは赤く腫れた手をぶんぶんと振り、かもめは驚いた顔で薬莢を排出する)

海未(かくいう私も自分の刀が通じないことに動揺を隠せない)

海未(直接刀身部分で斬ったわけではないため、コイヌの時みたいに折れることありませんでしたが……)


海未「それでも、この装甲の強度は異常と言えます……」ブンッ

マザー「せやなぁ、普通の兵器じゃ破壊できないと聞いてはいたけど、海未ちゃんでも斬れないとは聞いてへんで」

かもめ「少なくとも地球上の金属とは考えられませんね」ガシャンッ

かもめ「異能で強度を高めてるのか、そもそもシールドで物理攻撃を弾いてるのか……」

かもめ「幾つか可能性を考えて複数の特殊弾を試してみます」ググッ!

ダンッ!


海未(かもめが素早く装填して放つ二撃目、だがそれも金属生命体のケーブルに弾かれてしまう)

45 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 23:00:58 ID:B6Od.tR.
キィンッ!

かもめ「はいはいこれはダメっ!」ガシャッ!


かもめ「そこ後ろの人!何か弱点みたいのは見つからないの!?」

ダル子「ダル子よ!言われなくても神眼で探してますけど……」キィィィィィィッ

ダル子「こいつ、全身が継ぎ目のない金属で覆われていて穴みたいな穴が無いのっ!」

かもめ「そりゃ最悪」


海未(ダル子の言うとおり、ケーブルが出てきてる場所でさえ、ケーブルと平面のつなぎ目が見当たらない)

海未(まるで金属が液体みたいに変化してケーブルを生み出してるような感じ)


マザー「とにかく壊せへんでも時間を稼ぐ、その間に何か手を考えよう!」

ワシワシッ ドンッ!! ドンッ!!

海未(マザーさんは直接本体に攻撃することを諦め、ケーブルの周囲の空間を爆発させてケーブルの動きを邪魔していく) 

海未(けれど一度接続されたケーブルが外れる様子はない)


海未「何か……何か方法は……>>46

46!ken:99:2017/12/16(土) 23:42:34 ID:NX9dJLaM
サトゥルヌスの試運転

47 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 23:58:35 ID:B6Od.tR.
海未(何か……何か……方法は……)

カチャッ

海未(ん?コートのポケットの中に硬い感触が……)

海未(はっ!そうだこれ!)


海未「マザー!」

マザー「なんや!?」

海未「突然ではありますがここで『例の物』の試運転をしてみるのはどうでしょう」

マザー「例の物……?」

海未「はい、今私のポケットに入ってるボールですよ」ニヤリ

マザー「なっ!まさか海未ちゃん……」


海未「そのまさかです!2人とも後ろに退いてください!」

スッ

かもめ「は、はいっ!」サッ!

マザー「もう……どうなっても知らんからな!」


海未(2人が下がったのを確認して私は手に掴んだボールを投げる)

ビュンッ!!

海未「サトゥルヌス!君に決めました!」


カッ!!


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スターニシキノ飛空艇

AM8:46〜AM8:49 新終末編『253』了

48 ◆WsBxU38iK2:2017/12/16(土) 23:59:15 ID:B6Od.tR.
というわけでここまで

試運転でどうなるのか

新終末編『254』に続く
かもしれない

49!ken:99:2017/12/17(日) 19:05:23 ID:auQXaeMY
をつ

50 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 20:16:36 ID:SDJ2rpAk
新終末編『254』

─────────────────
──スターニシキノ飛空艇・船尾格納庫

AM8:49


カッ!!

海未(モ○スターボールが空中で割れると、光と共にサトゥルヌスの巨体が格納庫に姿を表す)

海未(想定していたことですがサトゥルヌスの体長は飛空艇の狭い格納庫には収まりきらない)

ググググググッ!!

海未(サトゥルヌスの頭が格納庫の天井を突き破り破壊してしまう)

バゴォォォォォォォォンッ!!


サトゥルヌス「ぐおおおおおおおおおおおっ!」


海未(金属生命体に衝突で破壊された最後尾の壁と合わせて、これで格納庫は外に面する2つの壁が破壊されたことになる)

海未(つまり通路から格納庫に入ってそのまま前を向いた場合、正面と上方向が吹き抜けなわけで……ほぼ野ざらしみたいなもの)

海未(地上ならともかく目も眩むような高さの上空さを高速で飛んでいる飛空艇の上)

海未(強い風が吹きつける中で壁がないというのは非常に怖いですね)

ゴォォォォォォォッ

51 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 20:16:55 ID:SDJ2rpAk


かもめ「あらら……」

マザー「ほらなぁ、言わんこっちゃ無い……」

マザー「正面と上どころから左右の壁まで少しずつ崩れて来とるやんか」


ダル子「というか……船の高度が段々下がって来ていません!?あと床も斜めになって来てるような……」

マザー「そりゃサトゥルヌスは重いやろう、空飛ぶの船の上で出せば重量過多で傾いていくのは自然の理」

かもめ「墜落はしませんよね……?」

マザー「今すぐにってことは無いと思う、このままなら分からんけどな」


海未「かもめ!飛空艇は地上で言うと今どのあたりを飛んでるか見えます?」

かもめ「あ、はい!それなら壁が無いのでばっちり見えますよ」


かもめ「今は……>>52の辺りまで来れてますね」

52名無しさん@転載は禁止:2017/12/17(日) 20:37:38 ID:.DGVjSk6
津軽海峡

53 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 21:36:08 ID:SDJ2rpAk
かもめ「津軽海峡の辺りまで来られてますね、下に海が見えています」


かもめ「というか場所を確認するなら私よりダル子に頼んだほういいのでは?」

海未「あ、普通に間違えました」

ダル子「海未さん!?」


海未(しかし北方領土から出発して10分ほどで津軽海峡ですか……金属生命体に激突されたことを計算に入れても遅めですね)

海未(もちろん普通の飛行機と比べれば速い部類ですが、私たちのタイムリミットは静岡沼津に9時)

海未(その前に到着してサトゥルヌスを合体させて宇宙怪獣を迎え撃つ、それを考えると間に合う気がしない)


海未「とにかくここで落ちるわけにはいきません、手早く金属生命体を飛空艇から引き剥がしましょう」

マザー「ホンマに頼むで!」

ダル子「頑張ってください!」

54 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 21:36:22 ID:SDJ2rpAk
ササッ

海未(私はコートの内側からコントローラーを取り出して電源を入れる、充電は満タンで問題なし)

ピピッ

コントローラー『認証完了、ようこそ園田海未さん』

海未「外部からマニュアル操作でサトゥルヌスを操作します!」ピッ

コントローラー『了解』


海未「ふぅ……」

海未(今のサトゥルヌスは両腕の無い頭部と胴体と両足だけの状態、頭は遥か上にあって下手に屈んだら飛空艇がバランスを崩しそうだ)

海未(本当にサイズが大きすぎて私たちと金属生命体の間に巨大な柱が2本ある感じ)

海未(そんな現状で取れる有効な攻撃手段は……これ!)

グイッ


サトゥルヌス「がっ!」ブンッ!!

海未(私はジャイロ操作を使ってサトゥルヌスを操って、金属生命体に蹴りを食らわせる)

ゴッ!!!!

海未(すると>>55)

55名無しさん@転載は禁止:2017/12/17(日) 21:39:16 ID:qpd2.jDw
吹き飛んで海に落ちた

56 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 22:48:50 ID:SDJ2rpAk
ゴッ!!!!

海未(サトゥルヌスの蹴りが金属生命体の装甲に直撃する)

海未(出現させた場所の関係上、後ろに大きく足を持ち上げて振ることができないため、直立の姿勢から単に足を前に突き出すだけの操作)

海未(まるで目の前の小石を小突くような低空の前蹴り)


海未(それだけの動作なのに格納庫には吹き飛ばされんばかりの暴風が生じる)

ドヒュゥゥゥゥゥゥッ!

海未「ぐっ……!」


海未(その蹴りに一瞬だけ、ほんの一瞬にだけ、金属生命体は耐える様子を見せた)

キィィィィィィンッ!

海未(けれど……サトゥルヌスの蹴りは止まらない)

海未(ケーブルを必死に伸ばして格納庫の壁や床にへばりつく金属生命体の抵抗も何のその)

海未(無骨な金属の塊を空の彼方へ蹴り飛ばす!)


ギュリィィィィィィィッ! ブチブチブチッ!!

サトゥルヌス「ガァッ!!!!」

ゴンッ!!!!


ヒューーーーッ!

海未(飛空艇から離された金属生命体――卍型の飛行物体はみるみる遠くなって津軽海峡の海へと落ちていった)

ドボーーーーンッ!!

57 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 22:49:13 ID:SDJ2rpAk



マザー「すごっ……!あっさりやな……」

ダル子「さすがはかつての主神と同一視された神格……本当に路傍の石のように蹴り飛ばしてしまいましたね」

マザー「スケールが違いすぎて腰が抜けてしまうわ……」


かもめ「ダル子……今の見ました?金属生命体が張ったケーブルが千切れた瞬間……」

ダル子「うん見た、サトゥルヌスは押し出す力任せにケーブルを引き千切ったんじゃない」

ダル子「ケーブルが……いや、ケーブルが周囲の空間ごと捻じ曲がって切断された……」ゴクッ


かもめ「能力?」

ダル子「ううん、海未さんが何か能力を使えと指示したわけじゃない……サトゥルヌスの蹴りの威力が単純に凄すぎたんだよ」

ダル子「その衝撃に金属生命体の装甲が耐えれてしまったものだから、そこで衝撃の逃げ場が無くなった」

ダル子「逃げ場のない衝撃は同じ空間に加算され続け、ついには空間が処理落ちを起こしたんだと思う」

かもめ「処理落ち……ゲームのバグみたいな話ですね、それで空間が耐えきれず捻じ曲がってしまったと」

ダル子「そう、それにサトゥルヌスの爪先は耐えられてケーブルは耐えられなかった」

ダル子「自己崩壊を起こした金属生命体は溜まった衝撃を一気に受けて空の彼方へホームラン」


ダル子「ってのが今の2,3秒で起こったことだと思う」

かもめ「ふむ……」

58 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 22:49:31 ID:SDJ2rpAk


マザー「ただ足を動かしただけで現実にバグを起こすなんて、さすが神様想像を超えとるわ」

海未「それに一瞬でも耐えた金属生命体だって異常な存在ですよ」

海未「私たちの攻撃が通用しなかったのも納得がいきます、悔しいですけどね……」


マザー「まぁ良い、事態が解決したんなら海未ちゃんはサトゥルヌスを早くボールに戻してな」

マザー「そしたら皆で破損箇所の確認や!」

海未「はいっ」

カッ! シュルルッ!


海未(モ○スターボールにサトゥルヌスを帰還させる)

海未(コントローラーの操作通り動いて特に問題はない、試運転としては成功みたいですね)


タタッ

マザー「さてさて、大事な積荷のワームホールの様子は……>>59

59名無しさん@転載は禁止:2017/12/17(日) 23:29:42 ID:JGIAm/RE
女神アテナの宮殿に繋がった

60 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 23:59:10 ID:SDJ2rpAk
マザー「ワームホールの
様子は……なぁっ!?」

海未「どうしました?」

タタタッ

海未(マザーが大きな声を出したので私たちは装置の前に集まる)


海未(ワームホール発生装置は複数の直方体の機械が組み合わさった形をしていて、素人目には何に使うものなのか分からない)

海未(装置には側面に1つの小型モニターと、上部に電極のような部位が複数飛び出ていた)

海未(装置全体が固定用の紐でグルグル巻きにされて、紐は床に接続されて動かないようになっている)

海未(この紐が切れたり、装置のどこかが破損してるということは無い)


海未(けれど……素人目にも分かる1つの異変が装置には起きていた)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ジジジッ

海未(装置上部の電極に似た出っ張りから電流のような紫色の光が迸っている)

海未(複数の出っ張りから出た光は空中で一箇所に集まり、光全体が空中に大きな輪を形作っていた)


海未(輪の大きさは1メートルほどで、覗き込むと向こうに格納庫とは違う景色が見える)

61 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 23:59:22 ID:SDJ2rpAk


ダル子「なに……これ……」

ダル子「私の神眼で向こう側を見ようとすると正しく能力が働かない、普通の時空間じゃないの……?」


海未「マザー、これってまさかワームホールが開いたのでは……」

マザー「ああ、そのまさかやな」

かもめ「金属生命体とドタバタしてる時に何かの衝撃でスイッチが入ってしまったんですかね」

海未「ならばこの向こうは別の場所に繋がっている……!」


海未(私が装置の側面についているモニターを見ると、そこにはゲートの開いた先らしき場所名が表示されていた)

海未(それは……)


海未「……女神アテナ、宮殿前?」


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スターニシキノ飛空艇

AM8:49〜AM8:53 新終末編『254』了

62 ◆WsBxU38iK2:2017/12/17(日) 23:59:49 ID:SDJ2rpAk
というわけでここまで


新終末編『255』に続く
かもしれない

63!ken:99:2017/12/18(月) 00:57:12 ID:GfqydMD6
をつ

64 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 20:10:03 ID:Bb/fUoJc
新終末編『255』

─────────────────
──スターニシキノ飛空艇

AM8:53


マザー「女神ぃ……?また神さんの仲間なんかいな……」

海未「装置に表示されてる名前が正しければ、アテナはギリシャ神話に登場する神の名前ですね」

海未「オリュンポス十二神の一柱で都市を守護する戦いの神、同時に思慮深き知性ある女神でもあります」

かもめ「聞いたことあります、有名な名前ですよね」


海未「このワームホールが本当にアテナの元に繋がっているのだとしたら……穴の先はギリシャ神話に対応した異界」

海未「女神アテナの居城ですから、おそらくはオリュンポス山のどこかでしょう」

ダル子「なっ……!こうも簡単に異界との扉を開けるなんて……この装置はなんなんです!?」


マザー「さぁ……ただ、野ざらしになった格納庫で正常に動いてるんだから異能の類やない」

マザー「超科学の産物か、異界からもたらされた未知の技術か……材料が少なすぎて判断できんな」

ダル子「…………」


海未(と、私たちが突然開いたワームホールに警戒を続けてたところ、穴の向こうから声がした)

海未(聞くものの心を震わせるほど美しく、尚且つよく通る力強さを持った声)


??「なんだ、不快なティターン族の匂いがするからタルタロスへの穴でも空いたのかと思い来てみれば……」

??「あなこれは……人の子の世界ではないか」

海未「……っ!」


??「人の子、私の声が聞こえるか?」

海未(穴の向こうからこちらを覗き込む……おそらくアテナと思われる女神)

海未(彼女の姿は>>65)

65名無しさん@転載は禁止:2017/12/18(月) 20:22:00 ID:c9xF0f2M
口調からは想像できないおっとり癒し系

66 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 21:26:43 ID:Bb/fUoJc
海未(彼女の姿は口調からは想像できないおっとり癒やし系の見た目をしていた)

海未(毛量の多いフワフワとした長い髪、柔和な表情を作り出す下がり眉と垂れ目)

海未(手や足の長さは西洋人然としたスタイルではあるが、メリハリの効いたプロポーションというよりは豊満という言葉が似合う)

海未(どこか仏教の菩薩を思い出す慈愛溢れる雰囲気は、自分が想像していた戦の女神の姿とは違っていた)


海未(格好はその豊満な体に宗教画で見るような白いローブを巻きつけた女神っぽい服、他に様々な豪華な装飾品を身に着けている)

海未(だが胸当てや膝当てなど、甲冑の一部を取り付けたような装備もローブの上から身に着けていて、戦の女神の意匠は一応残ってるようだ)

海未(特に目立つのは左腕に装着している大きな盾、伝承通りならおそらくあれは――)


アテナ「おい人の子、聞いておるのか……?」

海未「あ、はいっ!」

海未(私が全然返事をしなかったからか、アテナはワームホールのすぐ近くまで顔を近づけていた)

海未(ドアの除き窓に近づきすぎて顔だけしか見えない人みたいになってますね)

67 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 21:27:10 ID:Bb/fUoJc


アテナ「ほっ……どうやら言葉は通じるようだな」

海未「そ、そのようですね……」


アテナ「ふーむ……そちらは人の世界よの、穴からティターン族の匂いがしたから急いで来てみたのだが見当違いか」

アテナ「また脱獄してきたのなら送り返してやろうと思ってたところだぞ」

海未「ははは……」


海未(アテナさんはおっとりとした柔和な笑みを崩さないまま物騒なことを言う)

海未(神話通りならこの人は二回目のティターン族との戦争で、逃げ出した巨人相手に地上の島一つを持ち上げ投げつけたアグレッシブ女神様なのである)

海未(あんまり発言が笑えなくて困りますね……)


海未「実は私が使役している使い魔の一匹に別神話の巨人がいるんですよ」

海未「今はきちんとしまってますが、おそらくその気配がワームホールから伝わってしまったのだと思います」

アテナ「ほう……巨人を使役か、人の子もやるのう」

海未(もちろんアイツを完全に使役できてるわけではないのですが、今は安全性を主張しておいたほうがいい)

海未(冥界から魔王が脱獄させたクロノスのそっくりさんだとでも言ったらどうなることか)

68 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 21:27:46 ID:Bb/fUoJc


アテナ「……ん?そちらに人間でなく神族がいるな」ピクッ

ダル子「は、はい!」タタッ

ダル子「北欧神話異界アースガルズ、アース神族ヘイムダルの娘のダル子と申します」ササッ

海未(ダル子はワームホールの前まで来ると膝をついて頭を下げる)


アテナ「畏まらなくもよい、面をあげよ」 

アテナ「お主たちの世界と人の子の世界に関する話は聞いておる、何やら大変なことになってるらしいな」

ダル子「本当ですか?」

アテナ「ああ、叔母と義姉が冥府での事件に関わっていてな、そこからの情報だ」

海未(……ん?アテナの叔母と義姉って……)


アテナ「何か協力はしてやりたいが私ほどの神格となると容易に現世に降臨できなくてな」

アテナ「直接出向く以外の支援となると>>69

69名無しさん@転載は禁止:2017/12/18(月) 21:37:36 ID:bwH4uVx6
神鎮めの唄の歌詞がある場所を教える

70 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 22:47:26 ID:Bb/fUoJc
アテナ「神鎮めの唄の歌詞がある場所を教えるとか……かな」

海未「神鎮めの唄?」


アテナ「そうだ、神話体系が違えど神を相手取るなら有効だと思ってな」

アテナ「確か場所は――」

??「あれっ?海未さんじゃない?」

アテナ「……ん?」

海未(会話の途中で通りすがりの人が話しに割り込む)
 
海未(ワームホールの向こう、アテナの後ろから顔を覗かせたのは……)


海未「……デメテルさん?」

デメテル「そーよー!覚えててくれたのねー!お饅頭いる?」

海未「い、いえ」

海未(まるで近所のおばさんのようにフランクに話してくる……この人も一応ギリシャ神話の女神様)

海未(豊穣神デメテルその人である)


海未(やはり……アテナの叔母というのは、アテナの親であるゼウスの姉のデメテル)

海未(義姉というのはデメテルの娘のペルセポネー、つまりダークドレアムのことですか)

71 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 22:47:41 ID:Bb/fUoJc


デメテル「あのねアテナちゃん、海未さんはうちの娘を助けるのに協力してくれたのよー」

アテナ「ほう……私の叔母と義姉と知り合いだったのか、ならば話は早い」

海未「まぁペルセポネーさんとはそこそこ、デメテルさんとは前にちょっと会っただけですけどね……」


マザー「海未ちゃん……あんた只者では無いと思ってたけど改めてすごい女の子やな……」

かもめ「神様相手に平然と話してますよこの人……」

海未「ちょっ!私は普通の女子高生ですから!そういうイジりはどうかと思います!」

ダル子「普通ってなんだろう」



海未「コホン、ともかく神鎮めの唄という物は知りたいですね、教えてください」

アテナ「ああ」コクンッ

アテナ「神鎮めの唄は神性を持つ相手に歌うと様々な効果をもたらす特効の唄」

アテナ「その歌詞が眠っている地は>>72

72名無しさん@転載は禁止:2017/12/18(月) 23:06:34 ID:gcUVXnC2
ロードス島

73 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 23:56:26 ID:Bb/fUoJc
アテナ「その歌詞が眠っている地は……ロードス島」


海未「ロードス島?それってあのロードス島ですか!?」

かもめ「海未さん知ってるんですか?」

海未「知ってるも何も……ことりや理事長、旧魔王に深く関係のある島ですよ」

海未「まさかここでその名前が出てくるなんて……」

ダル子「クッキングの時に出てましたね!ドラゴンのお肉!」


マザー「うちも聞いたことがあるで、大昔の船乗りの間で噂になっていた伝説の島や」

マザー「せやけど伝説のある海域は日本からかなり離れたところやで、今寄ってる時間はない――」

アテナ「この穴、神の国に届くくらいなんだから同じ地球の島くらい届くでしょ」

マザー「あっ、そうか……!」


海未「ワームホールを利用するという案ですか、使いこなせるかが問題ですね」

海未(衝撃で偶然異界に繋がってしまうくらい、今の装置は不安定な状態と言える)

海未(こうして穴越しに会話するだけならまだしも、人が通るのに耐えられる耐久性があるのかは分からない)

74 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 23:57:28 ID:Bb/fUoJc


海未(そう考え込んでいたところで、私はある事実に気づく)

ハッ

海未「……というかマザー!そろそろ9時では無いのですか!?」

マザー「あぁっ!ほんまや!」

ササッ

海未(マザーは時間を確認すると慌てて無線機のようなものを取り出す)

海未(飛空艇はまだまだ飛行中、とても内浦には届いていない)


マザー「とにかく連絡してみるな」ピッ

ツーツー ピッ

マザー「クローバー?声聞こえてるか?」


クローバー『ザッ ザザッ え、ええ……ノイズが少しあるけどザザッ……聞こえるわ……』

マザー「良かった、このくらいの距離なら特殊通信機で話せるな」

クローバー『そのようね……ザザッ要件は……?』

75 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 23:57:47 ID:Bb/fUoJc


マザー「悪いけど単刀直入に言うで、アクシデントがあって飛空艇が遅れてる、このままじゃタイムリミットに間に合いそうにない」

マザー「クローバーのほうはもう内浦に着いてるん?」

クローバー『ええ着いたわ、ザザッ 今右腕の封印を解いている途中よ』

マザー「そっかー、くぅ〜!本当にすまん!」パンッ!


クローバー『あの……スピリチュアルマザー、実はタイムリミットのことなんだけど……ザザッ』

マザー「ああ」

クローバー『少しだけ墜落想定時間が伸びてるらしいのよ』

マザー「……え?」


クローバー『各国の機関がリアルタイムで弾き出してる計算結果を傍受してるんだけど、明らかに地球に近づいてから速度が落ちている』

マザー「それって……」

海未(マザーは雪雲に覆われて光の見えない空を見上げた、まるでその向こうにある宇宙を見るように)



クローバー『どうやら、地球圏で何者かが宇宙怪獣の進路を妨害してるみたいね――』


─────────────────

スターニシキノ飛空艇

AM8:53〜AM8:59 新終末編『255』了

76 ◆WsBxU38iK2:2017/12/18(月) 23:58:58 ID:Bb/fUoJc
というわけでここまで

やっぱり間に合いそうにないのでお助けイベント
次は宇宙から始まります

新終末編『256』に続く
かもしれない

77!ken:99:2017/12/19(火) 11:53:46 ID:5zAZCsiY
をつ

伏線を安価で回収

78 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 20:26:06 ID:8rl0LbIg
新終末編『255』

─────────────────
──月面

AM??


ほのほの(ええっと……高坂ほのほのです、紆余曲折あって月にいます、あのお空の月です、ムーンです)

ほのほの(とりあえず不思議なことが起こって一命を取り留めた私は、地球へ帰る手掛かりを求めて月面を歩いていました)

ほのほの(そこで発見したのが人工物で作られた基地らしき建造物)


ほのほの(何も当てのない私はそこに向かっていたんだけど……)


宇宙服の人「ワット!?アメリカゴペラーペーラー!?」

ほのほの「う、うーーん……」


ほのほの(基地に近づいたところで宇宙服を着た私以外の人類に出会った)

ほのほの(宇宙服の人は基地の周辺で何かの仕事をしていたみたいけど、私を見つけた途端に仕事を放り出して走って来た)

宇宙服の人「ヘイヘイ!アメリカゴペラペーラ!?」

ほのほの(喋ってる言葉はたぶん英語、私を見て驚いてるのは分かる……でも言葉は全然分からない)

ほのほの(どうしよう困ったなぁ……英語勉強しておけばよかった)


宇宙服の人「エイリアン!?エイリアン!?」

ほのほの(宇宙人……って思われてるのかな)

ほのほの(まぁ月面で宇宙服を着てない人に出会ったらそう思うよね、私も思う)

79 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 20:26:40 ID:8rl0LbIg


ほのほの(早く私が宇宙人じゃないことを説明しないと、英語……英語……ダメだ全く思いつかない)

ほのほの(私は一般常識や会話についてはお母さんたちから自然と学んだものの、義務教育すら受けていない)

ほのほの(まぁ生まれてから一ヶ月も経ってないから当たり前のことだけど)


ほのほの(勉強と言えばお母さんの部屋の教科書を1人で読んだり、海未さんに分からないことを質問した程度)

ほのほの(バリバリの外国人の英会話するスキルなんて当然身に付いていない)


ほのほの「う……うぅ……あ!」

ほのほの(そうだ!とりあえず日本人だってことを伝えよう!)

ほのほの(日本は確かジャパン、ジャパンだから……)


ほのほの「アイムジャパン!」

宇宙服の人「ジャパン……ジャパニーズ?」

ほのほの「い、いえす!ジャパニーズ!」

宇宙服の人「おぉー……」

ほのほの(宇宙服の人は少し戸惑った様子を見せたが、すぐに1人で何処かと話し始めた)

ほのほの(たぶん宇宙服に付いてる通信機で他の人に連絡してるのかな……)


宇宙服の人「へいへい!せいせい!」

ほのほの(かなり焦った感じの英語、必死に説明してるのか中々終わらない)


ほのほの(待ってる間少し暇なので少し先にある基地の様子を見回してみる)

ほのほの(あそこにあるのは……>>80かな)

80名無しさん@転載は禁止:2017/12/19(火) 20:30:21 ID:guG2z6ek
光の巨人達を呼び出すスイッチ

81 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 21:56:38 ID:8rl0LbIg
ほのほの(あそこにあるのは……何かのスイッチかな)

ジーッ


ほのほの(基地のすぐ横にある発掘現場みたいな場所、今この時も複数の機械が自動的に地面を掘っている)

ほのほの(そんな発掘現場の中央、一際高くなってる祭壇らしき舞台の上にスイッチがあった)

ほのほの(祭壇は四角形の巨大な舞台、スイッチは半球状の台座の上に円筒形のボタンが付いていて、祭壇とスイッチ共に石造りに見える)

ほのほの(月面は遠近感が狂うから大きさは分かりにくいけど……周囲の機材と比較するとかなり巨大だろう)


ほのほの(……と、その発掘現場のほうから宇宙服を着た別の人がやってきた)

ほのほの(その人は私たちのところまで来ると、先に会った宇宙服の人と英語で会話した後に私の方を向く)

ほのほの(そして日本語で恐る恐る話しかけてきた)


??「あなた……本当に日本人なの?」

ほのほの「おおっ!日本語!そうだよ日本人!」

ほのほの「英語だからアメリカの基地だと思ったけど日本の人がいたんだよかったー」


??「え、ええ……私は月野調査、この月面基地計画に参加してる宇宙飛行士よ」

ほのほの「月野さん!宇宙飛行士ってすごいね!」

月野「私からすればあなたのほうがすごいし……普通に会話できてることに驚いてるわ……」

月野「色々質問したいけど、していいの?」

ほのほの「うんっ!」

82 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 21:56:58 ID:8rl0LbIg
ほのほの(まずは私が謎の地球外生命じゃないことを証明しないといけない、情報は積極的に話していこう)

ほのほの(地球へ帰れるかどうかは月野さんに信用してもらうかにかかってる……)


月野「まず名前は……」

ほのほの「自己紹介だね、私の名前は高坂ほのほの!お母さんと太陽の子だよ」

ほのほの「日本生まれで日本育ち、戸籍はどうなってるのか分かんないけど……一応日本人」

ほのほの「色々あって月に飛ばされちゃって迷子になってたんだ」


月野「ほのほの……ほのほのさんね」

月野「宇宙服を着ずに外に出ていられるのはどういうわけ?」

ほのほの「異能……って言って分かるかな、特殊体質みたいなものなんだ」

ほのほの「私は太陽の光があれば生命活動に必要なものを生み出せる体質になったみたい」

月野「こ、光合成みたいな感じかしら」

ほのほの「……光合成?」

月野「植物が光を受けてエネルギーと酸素を作り出すことよ」

ほのほの「ああっ、本で読んだことあるある」


月野「まぁここには水や二酸化炭素は無いから厳密には光合成とは違うけど」

月野「あなたの体から酸素のようなものが排出されてるとしたら、こうして普通に会話できるのも頷けるわ」 

ほのほの「会話……?」

月野「普通は空気の無い場所じゃ音が聞こえないの、離れた距離であなたと会話できるのはあなたの周囲に空気が形勢されてるからだと思う」

ほのほの「ほうほう」

月野「って……なんで私が考察して凄い力を持ってる本人が納得してるのよ」

ほのほの「いやー、如何せんさっき手に入れたばかりの力だから、私もよく分かんないんだよねー」

月野「はぁ……」

83 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 21:57:58 ID:8rl0LbIg


月野「とりあえずこっちの彼、ジョンに基地の上司に報告して来て貰うわ」

ジョン「ペラペーラ!」タタッ

ほのほの(ジョンは聞き取れない英語を話すと基地に向かって走っていく)


月野「あなたには悪いけど身元不明な人をいきなり基地の中に入れるわけにはいかない」

月野「まだしばらくここで話を聞かせてもらうか……」

ほのほの「ねぇ、あっちの発掘現場?にあるスイッチってなんなの?」

月野「……え?」

ほのほの「月野さんあっちから来たってことはあっちで作業してたんだよね」


月野「ああ、あれは基地建設作業の途中で見つかったものよ」

月野「まだまだ調査中だから不明な点が多いけど、祭壇の所に地球の複数の言語を組み合わせると解明できる文字が発見されたわ」

ほのほの「文字?」

月野「『救済を求む者、これよ触れよ、さすれば光の巨人は現れる』」

ほのほの「光の巨人……か」


月野「ってこれ機密事項なのよね、ついペラペラ喋っちゃったわ」

ほのほの「それはすみません」

月野「いいのよ、月面であなたみたいなのに会ったからテンションおかしくなってるんだわ」


月野「ムーンリライト計画なんて実用性の薄い謎な計画に参加しちゃったなーと思ってたけど」

月野「月の謎の文明の痕跡に、宇宙で活動できる謎の人類、ここに来てすごいワクワクしてきた」

ほのほの(宇宙服越しの月野さんの顔は子供のような笑顔になっていた)


ほのほの(それにしても……ムーンリライト計画?ただの月面基地建設計画じゃないんだろうか)

84 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 21:58:20 ID:8rl0LbIg
ほのほの(そういえばアメリカ、NASAの月面基地計画はあまり進んでないって読んだような気がする――)

ピーッ ピーッ

ほのほの「あ、月野さん、通信機なってるよ」

月野「おっと」ピッ


月野「ハイ、オーケーオーケー……ワッツ!?」

ほのほの(最初は普通に対応していた月野さんは急に驚いた声を出す)

ほのほの「どうしたの?」


月野「基地の観測機が月付近に高速で接近する物体を捉えたらしいわ」

ほのほの「ええっ!?」

月野「物体はモンスター、まるで怪獣みたいな風貌だそうよ、一番の特徴は>>85

85名無しさん@転載は禁止:2017/12/19(火) 22:07:13 ID:JPEyp7rM
トゲトゲしい

86 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 22:54:59 ID:8rl0LbIg
月野「一番の特徴はトゲトゲしいこと、体のあらゆる所が本当にトゲトゲしいらしいわ」

月野「進行方向的に……地球?地球に向かってるって言うの!?」

ほのほの「……っ!?」


バッ!!

ほのほの(私は月の空を見上げる、すると遠くの空に真っ黒な夜空を横切る影があった)

ほのほの「いた……あそこにいるよ月野さん!」

月野「ギリギリ目視できる距離ね、ここには落ちてこないだろうけど……あんなものが地球に行くなんて……」


ほのほの(宇宙の怪獣――宇宙怪獣は腕と足を持った赤黒いトカゲに似たフォルムをしていた)

ほのほの(怪獣と聞いて誰もが想像するフォルムに相違ない姿だ)

ほのほの(怪獣の体の各所からは鋭い大小のトゲが生えている、近付くもの全てを刺し殺すような凶悪な意思を滲ませている)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


ほのほの「ダメだ、行かせられない」

月野「え?」

ほのほの「地球ではお母さんたちが必死に戦ってる、宇宙怪獣まで対応する余裕なんて無い」

ほのほの「このまま見過ごすことなんて出来ないよ!」ギリッ


ほのほの「月野さんは万が一を考えて基地の中に入ってて!」

月野「ほのほの……あなた何をっ!」

ほのほの「アイツは――私が止める!」

87 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 22:55:19 ID:8rl0LbIg


キュィィィィィィィンッ!!

月野「っ!眩し――」

ほのほの「シャイニングジャンプ!」

ドンッ!!!!


ほのほの(太陽エネルギーを足元に集中させ爆発、その勢いで月の空へ飛び出す)

ほのほの(月の重力が軽いことと、太陽の光を直接吸収し放題な環境が味方し、私は地球上の何倍のスピードで月面を移動していく)

ドドドドドドドドドドドッ!!


ほのほの(今の私は補正がかかって強い!宇宙怪獣だって相手出来るはず!)

ダンッ!!






ほのほの(おそらく数キロメートルくらいの距離を一気に飛び越すジャンプ、それを数回繰り返したところで私は宇宙怪獣に接触できる位置まで来た)

グググッ

ほのほの(宇宙怪獣の進行方向と直角になる向き、ちょうど怪獣の頭の上辺りにジャンプの頂点を合わせる)


ほのほの「はっ!」

ダンッ!!


宇宙怪獣「……」ギロッ!

ほのほの「……!」

ほのほの(宇宙怪獣が頭上の私を鋭く睨んだ)


ほのほの(ま、もうそれくらいじゃ怯まないよ) 

ほのほの(私は空中で体勢を整えると真下の宇宙怪獣に対して>>88を繰り出す)

88!ken:99:2017/12/19(火) 23:09:29 ID:5zAZCsiY
ソーラービーム

89 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 23:50:41 ID:8rl0LbIg
ほのほの(掌を真下に向け、太陽のエネルギーを凝縮させたビームを繰り出す)

ババッ!

ほのほの「ソーラー……ビーム!!」

カッ!!


チュィンッ!

ほのほの(ソーラービームを脳天に食らった宇宙怪獣はそのまま眼下の月面に墜落)

ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!

ほのほの(衝撃で割れた岩石が空中に舞い上がる)


ほのほの「やった……やっぱり私の攻撃は通用する――」

ドシュッ!!!!

ほのほの(そんな慢心が生まれた瞬間、地面に叩き落とした宇宙怪獣の背から鋭いトゲが一瞬で数十倍の長さに伸びた)

ほのほの「っ!?」

ほのほの(私を正確に狙った赤黒いトゲの刺突、何とか身を捻って躱すことはできたが頬に一閃が走り血が滲む)

ほのほの「ぐ……っ」


ほのほの(だがトゲの攻撃は終わらなかった、既の所で躱せたと思ったのも束の間)

ほのほの(真っ直ぐ放たれたトゲが尻尾のようにスイングされ、横にいた私を地面へと叩き落とす!)

ビュンッ!

ほのほの「がっ!!」



ズドォォォォォォォォォンッ!!

90 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 23:50:53 ID:8rl0LbIg


ほのほの「げほっ……げほっ……」

ほのほの(下手したら死んでいたかもしれない衝撃、けれど死ぬことはない)

ほのほの(トゲの横薙ぎで切断されかけた脇腹の傷も、地面への衝突で骨折した何本かの骨も、太陽の光を浴びれば回復していく)

ほのほの「ふぅ……」

ザッ

ほのほの(私が息を整えて立ち上がると、横に落ちていた宇宙怪獣もトゲを地面に突き刺しながら2本足で立ち上がる)


ほのほの「横……ねぇ」

ほのほの(横とは言うものの数キロメートルくらい離れてはいるんじゃないかな)

ほのほの(周囲に物体のない月の平面と、宇宙怪獣のあまりの大きさが距離感を狂わせる)

ほのほの「これ……下手したら堕天使ヨハネより大きいかもしれないな……」


宇宙怪獣「グアオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


ほのほの(宇宙怪獣の咆哮が自身のトゲを振動させ、トゲが突き刺さった月面が激しく震える)



ほのほの「ま……相手がなんだろうが構わないよ」

グググッ

ほのほの「お前みたいなやつを……絶対に地球には行かせない!!」



─────────────────

月面

AM??〜?? 新終末編『256』了

91 ◆WsBxU38iK2:2017/12/19(火) 23:54:32 ID:8rl0LbIg
というわけでここまで

最近パート数ミスが多い

そんなこんなで月での戦いです
日本時間的には午前9時ちょっと前くらいですかね

新終末編『257』に続く
かもしれない

92!ken:99:2017/12/20(水) 00:17:09 ID:XBM9mep6
をつ

93 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:35:56 ID:DOIHjlQE
月野さん視点から書こうと思ったらちょい長くなりました
すぐ戻るのであしからず

では本編へ

94 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:36:30 ID:DOIHjlQE
新終末編『257』

─────────────────







──数年前・某宇宙飛行士訓練所 



月野「ムーンリライト計画……ですか?」

上司『そうだよ月野くん、我が国の代表としてはぜひ君を推薦したいと思っている』

月野「はぁ……」


月野(それは本当に急な話だった)

月野(某国の訓練施設でトレーニングを積んでいた私に日本から1本の電話がかかってきたのだ)

月野(とても冷え込む寒い冬の朝だったと記憶している)


月野(当時の私はISS――国際宇宙ステーションを始めとした幾つかの宇宙での任務を経験していて、そこそこ実績はあると自負していた)

月野(比較的若いことと女性宇宙飛行士ということもあり、メディアへの露出や世間の人気もままあったように思う)

月野(自慢しているわけではない、これは単なる事実だ)


月野(そんな事実しか……当時の私には無かった)


月野(人から与えられた仕事を淡々と処理し、求められたように振る舞う)

月野(事実を積み重ねるだけで私は順調にキャリアを積んでいく)

月野(地球にいても宇宙にいてもやることは地味な研究と訓練の繰り返し、何年経とうが変わりはない)

月野(そこには心を焦がすようなロマンも、ハラハラするような冒険も無かった)

月野(私が憧れて……あれほど必死になって目指した宇宙飛行士という仕事は……こんなものだったのだろうか)


月野(ジョンが初の宇宙での仕事に感動し興奮して話しかけて時、私は映像で見た通りだなと淡々と返していた)

月野(彼には、君はリアリストなんだねと皮肉られたが……たぶん私は誰よりもロマンチストなんだと思う)

月野(ロマンチストで夢想家で憧れを求め続けるからこそ、予想できていた光景なんかには感動できなかったのだ)

95 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:36:51 ID:DOIHjlQE


上司『どうだい?計画に参加してみないか?』

月野「そう……ですね……」


月野(そんな私にとってムーンリライト計画への参加は全く予想外のものだった)

月野(前々から予定されていた宇宙開発計画とは全く別のもの、突発的に発動されたNASAを中心とする多国籍プロジェクト)

月野(何か怪しい裏があると確信しつつ……どうしようもなく燻っていた私はその裏に惹かれてしまった)


月野(ああ……良いな、こういうの)

月野(なんだか、私が求めていたものが手に入るような気がする……!)


上司「月野くん?」

月野「……ええ、分かりました、私で良ければぜひ」

上司「おおっ!そうか!」



月野(こうして、私のムーンリライト計画への参加が決定した)

96 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:37:08 ID:DOIHjlQE






月野(ムーンリライト計画……なんて大層な名前が付いてるけど要は月面基地開発だ)

月野(月への調査は宇宙開発競争時代に各国が熱心にやっていたけど、ここ最近はあまりやらなくなってきて)

月野(こと月面基地計画に関しては滞ってるのが現状だ)

月野(NASAに至っては中止しちゃったし、他の各国もそれなりに展望は出してるけど実現はまだまだ未来の話)

月野(月面基地なんてものはしばらくはフィクションだけの話……)



月野(……にならなかったのである、ところがどっこいだ)


月野(中止していたNASA自身が何故か各国政府に秘密裏に協力を要請)

月野(急ピッチで人類が移住可能な居住区を備えた月面基地を作ることを決定したのである)


月野(明らかに裏がありそうな匂いがするものの、私たち平の外部協力員には表向きの任務以外は何も知らされていない)

月野(こっそり内部職員に近い立場のジョンに聞いてみたところ――)

ジョン『最近地球で起きてる異常現象がやべーから本気で月に移り住む気みてーだぜ!政治家とか偉いやつから行くんじゃねぇ?HAHAHA!』

月野(――と本当なのか冗談なのか分からない答えが帰ってきた)



月野(まぁともかく、私たちは月に行くことになり建設に励むことになったのだ)

97 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:37:30 ID:DOIHjlQE




──月面・基地建設本部シェルター


リーダー「というわけで、君たちには周辺の地質調査と基地建設を並行してやってもらう」

リーダー「人員は少ないが優秀な自動無人機を多数配備している、これらを使って作業を進めてもらいたい」

隊員ズ「「「はいっ!!」」」


リーダー「目標は1年後の移住第一陣の成功だ!気を引き締めていくぞ!」

隊員ズ「「「はいっ!!」」」



月野(月面基地に来て最初のブリーフィング)

月野(最初に来て拠点となるシェルターを建てていた本部組と合流した私たちは驚きの言葉を聞いた)


月野「……い、いやいや」

月野「ジョン!ちょっと今の聞いた!?」

ジョン「HAHAHA!こいつはクレイジーだね!」

月野「クレイジーどころの騒ぎじゃないわよ……」


月野(1年で移住の第一陣を迎える?基地に必要なインフラや要素がどれだけあるか分かってるの?)

月野(研究のために寝泊まりするんじゃない、ここで生活をしていくってことなのよ!)

月野(確かにNASAから提供された機材やロボット類は見たことがないくらい優秀だけど、だからと言って想定ペースが異常に早すぎる)



月野(私はロマンチストだけど現実はわきまえてる、無理でないものと無理なものの区別くらいはつけられる)

月野(もしかして……想定の何倍も無謀な計画に参加させられたんじゃ――)

98 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:37:56 ID:DOIHjlQE





──数ヶ月後、基地周辺・発掘現場



月野「はぁ……」

月野(計画が始まってから数ヶ月、私の予想は半分当たって半分外れていた)


月野(当たっていたのは計画が無理ゲーじみてるということ)

月野(巨大無人機たちの活躍により着実に建設は進んでるものの、初期の想定からすると大幅に遅れていた)

月野(このペースでは1年後の完成が無理なのは猿でも分かる)


月野(で、外れたのはロマンや危険のある仕事だという予想……)

月野(進行が遅れてる割に作業を無理に急かされることはない、シェルターの個室は快適だし、休憩時間はたっぷり取ってくれる)

月野(その他の福利厚生も下手な地球の企業よりよっぽど充実していた)


月野(私は基地周辺で採掘ロボ君と一緒に土いじりをして、就業時間になればシェルターに戻って一流シェフの宇宙食を頂いてお風呂に入る)

月野(休みの日にはシェルター内のアクティビティ施設でスポーツしたり、自分の研究を進めてみたり)

月野(また仕事になれば土いじりをして、週に1回くらい採掘状況のレポートをチームリーダーに提出する)


月野(そんな月面とは思えない剣呑で穏やかな生活が続いていた)

月野(正直言って……飽きていた)


月野「ふわぁ〜」



ガツンッ!!

採掘ロボ『発見!アンノウン!発見!』

月野「……え?」


月野(そんな折だった、採掘ロボが月の地面の中から"あの祭壇"を見つけ出したのは――)

99 ◆WsBxU38iK2:2017/12/20(水) 20:38:31 ID:DOIHjlQE


月野「何よ……これ……」


月野(周囲を掘って全形を確認すると、それはまるで古代ローマの神殿のような建築物)

月野(明らかに意思を持った存在が何かの意図を持って作ったものだ)


月野(祭壇の壁面には暗号のような文章が多くあり、私なりに地球の言語で解読してみると光の巨人に関する記述が見られた)

月野(リーダーに報告したのは1つの文節だけだが、実は私は解読に成功していたものが他にもある)


月野(『救済を求むもの、これに触れよ、さすれば光の巨人は現れる』これが報告した文章)

月野(そして未報告なのが……)


月野(『光の巨人、それらの才はそれぞれ異なる、召喚の際に求む巨人を望むものにこれを残す』)

月野(『第一の巨人、万能なる可能性の光、名をホノ』)

月野(『これを呼び出すには召喚器に触れる際に>>100』)

100名無しさん@転載は禁止:2017/12/20(水) 20:40:14 ID:wodZFhFo
ファイトだよ!と叫ぶ




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