- 1 :神田吟太 :2012/04/04(水) 10:31:16
- 時ならぬ台風一過、晴れ渡った空の下をいつものように、駅の近くのコンビニで水と野菜ジュースを買って
事務所に向かって歩道を歩いていた。 紺のスーツに水色のネクタイをした若い男がすれ違い様に、照れながら会釈したように見えた。初々しい感じだ。 誰だろう。歳をとると判断力が鈍い。 すれ違って二三歩、そうださっきのコンビニで働いていた青年だ。 今朝はいなかったのか、気がつかなかった。 この街の事務所の仕事をするようになって、もうすぐ五年。彼はいつからあの店にいたのだろうか。 あっ、就職が決まって初出勤かもしれない。氷河期をアルバイトで耐え忍んでいると勝手に想像していた。 見当はずれかもしれないけれど、おめでとう。週末は桜が咲いているかな。
- 62 :駄作 :2021/06/04(金) 11:59:11
- ワクチン接種の予約をお願いします。記入済の用紙をかかりつけのクリニックの事務員に手渡した。
しばらく用紙を見ていた彼女は、ここでの申し込みだと7月になります。ネットでやって頂けると6月の枠がまだあります。 えっ、そんなことできるんですか!「それなら最初から・・・」という言葉を呑み込んで、彼女の説明を聞いた。 昨日やっと接種券が届いたので今朝から電話を何回か架けたがつながらず、帰宅の途中で寄ったんだけど。仕方ない帰って自宅のパソコンでやろう。 なるほど彼女の言う通りブーブルでクリニックの名前を検索すると、意外に早くヒットした。 ワクチン予約サイトで名前と生年月日とメールアドレスを入力して、まだ空きのある日に予約できた。 こんなに簡単でいいの?でも先週いつもの通院のときにはネット予約なんて言ってなかったなぁ。
- 63 :駄作 :2021/07/12(月) 16:10:00
- 戒厳令 Ⅲ
一年前の今日も戒厳令が敷かれていた。 あの時の少女は何処へ行ったのだろう。雨に濡れた街灯の下で傘も持たずに誰かを待っていた。 今宵も同じように疲れ果てた人々が家路を急いでいる。 あの少女は香港にいたのか、ミャンマーにいたのか。記憶が定かでない。 シュプレヒコールが遠くに響いている。 目覚めろ、もう一度目覚めろ。五年前に死んだ友の声が聞こえる。
- 64 :田作 :2023/01/27(金) 09:40:14
- 寒中見舞い
今朝はこの冬一番の冷え込みだった。帰宅して郵便受けを覗くと葉書が入っていた。 毎年来ている年賀状が今年は来ない、故郷の友からの寒中見舞いだった。 今年から賀状は止めた、という断わりだった。 いつか線を引く問題だが、一抹の淋しさがある。段々アナログの世界はしぼんで行く。 スマホで毎日話も出来れば、顔も見られる。メールのやり取りもできる。 デジタルとはそういうものか。男の遣ることじゃないよ、雄二郎は思った。
「厚揚げ下さい」サイトーさんのおでん屋の情景が浮かんだ。昭和だった。
- 65 :神田吟太 :2023/03/07(火) 20:16:31
- ジョニーからの手紙 Ⅱ
「自分探しの旅」 息子がそう言ったとき、雄二郎は言下に否定した。 「自分で自分を探してどうする。己とは自己とは絶対的な主観だ。自分に自信のない奴が言い訳がましくそんなことを言うのだ。」 今でもその信念は変わらない。砂糖をまぶした言葉で自分に甘えているに過ぎない。 今の世は自分自身に言い訳をして甘えてしまう風潮を作ってしまった。 自分の息子まで毒されていたとは。 あれから20年、息子は帰って来ない。 妻は悲しみのあまり認知症になってしまった。 サントリで買った5万円のソファに妻と並んで座って、隣国製の60インチの液晶テレビを見ている。 リタイア後の雄二郎は後悔の念に駆られている。 妻が元気なうちに帰って来てくれ。
- 66 :津山 :2023/03/11(土) 10:30:10
- 神楽坂の「重い心」で白鯨を予ゼミやってる同級生のEさんが、アナーキストですかと僕に言った。
それがトラウマなってる。
久里浜の人だった。
彼女も次の横手の友達も結婚して途中で神楽坂を去った。
しばらくはアナーキストの意味を求めて、千葉埼玉川崎千束などを旅した。
ゴッドファーザー3の老境とは違うだろうが、4月からの勤務に。
- 67 :田作 :2023/03/11(土) 13:42:13
- 心も軽く
アナーキストは無政府主義者ですね。
いえ、無頼漢のつもりで言いました。
どちらも人に媚びないですね。
媚びる人に魅力は感じません。
僕があなたを好きだと言ったら、媚びてますか。
永遠にアナーキストでいて下さい。
- 68 :駄作 :2023/12/30(土) 10:32:07
- 来春
・・・でTさんは?
「去年教授で退官したよ」
教授まで行ったんだ。
「御大のお陰だよ。イエスマンだったしね」
Iさんはさんは?
「私大の非常勤だよ。ひと言多かったからね。Tさんより優秀だったけどね」
突然携帯が鳴って、大学の同期と一頻り世間話をした。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
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