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律「憂!ケンスコ用意しておいて!」
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立冬も過ぎて寒さ深まる11月の木曜日、仕事も終わり時刻は夕方…といっても、もう真っ暗の6時過ぎ、今日もりっちゃんの部屋に帰ります
「だだいまーりっちゃん!…はい、これ…同じの3本も買って貰わなくても良かったのに…」
半ば強制的に買わされるワイン…今日はボジョレーヌーボの解禁日です
「早かったな、憂。寒いだろ?まあ早く中に上がれよっ」
「今日はりっちゃんも早かったの?」
部屋着でくつろいでいる姿を見てそう投げます
「今日は定時!15分くらい前…かな?さっき帰ってきたところだよ」
「じゃあ今日は私が料理作るね。りっちゃんはテレビでも見ていてねっ…いつも手伝っちゃうんだから…」
「ああ、憂もいろいろ買ってきたのかー」
ワインとは別の買い物袋をのぞき込むりっちゃん
「うん、生ハムとかチーズとか買ってきたよーりっちゃんも何か買ってきたの?」
「じゃじゃーん!このチーズフォンデュを見よ!」
「わーっ、そんなのあるんだ!」
「帰りにスーパーで見つけたんだー!」
顔を上向きに澄ました笑顔のりっちゃん…今日のメインディッシュはこれで決定みたいです
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「じゃあ、私ステーキ買ってきたから、チーズフォンデュとステーキで決まりでいい?りっちゃん?」
「おーし、それでいこう!」
「うん!じゃあ台所でステーキ焼いているね!」
「…」
「どうしたの?」
「…ああ、今作り方読んでるの…」
「じゃあそのチーズフォンデュはりっちゃんの任せちゃうよ?」
「うん、任せて…」
新しいおもちゃを手にしたみたいに、作り方を読むのに夢中になっています
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「…リンゴも買ってくれば良かったな…」
「りっちゃん!」
ギュ
「うわ!…ごめんな憂」
机の前で座り込んでるりっちゃんの後ろから抱き付いてる私の髪を、そっと撫でてくれます
「…うん」
「レンジで温めるだけで出来るみたいだから、私も具材切ってるよ、憂の横で!」
「うん!」
結局、今日もりっちゃんと一緒に作ることになってしまいました…
「ああそうだ、料理終わったらちょっと庭にいくぞー!」
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☆
「…じゃあスイートコーン1缶開けちゃうぞー」
「うん、残った分は明日使ってね」
「でも洗い物増えるのやだからな…そのステーキ焼き終わったらそのまま温めちゃうか?」
「そっちの方がコーンにステーキの味が染みておいしいかもですよ、えへへ」
「なんだあ、そのつもりだったのかあ」
「でも、りっちゃんが手伝ってくれて助かります…あ、ほら丁度よく焼けました!」
「じゃあ、そろそろこのチーズフォンデュ温めるか!」
「私、チーズフォンデュなんて作ってみたことないんですよぉ。食べたこともあったかなぁ?楽しみです!」
「実は私も!」
「じゃあ、コーン軽く温めちゃいますね」
「オッケー」
チーズフォンデュの具材が並んでいるテーブルにいるりっちゃんの声が響いてきます
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☆
「よし!準備出来た!」
「じゃあいただきましょう、りっちゃん!」
「チッチッチィ〜その前に庭に行くぞ!実は憂が帰ってくる前に終わらしておきたかったんだけどな…」
「お庭で何するんですか?」
「このケンスコで穴を掘る!」
軍手をしたりっちゃんは玄関に立てかけたショベルに手を掛け、妙にカッコを付けます
「寒いですよぉ…りっちゃん」
「わりぃ、すぐ終わるからね…ちょい我慢して」
見当はついているのかショベルで家端の土を掘りだすりっちゃん
「お!ブツにぶつかった!」
そして細かく土をかき出す
「白いビニール袋が見えますね…」
「このビニールの中に…」
指先でぐちゃぐちゃのビニール袋の端を広げると…
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「プラスチックのコンテナーボックスですか?」
「うん…この上蓋を開けると…」
「またビニール袋が出てきましたね!」
「よし、家入ろう!ダッシュだ!さみぃ〜っ」
ふたりで家に駆け込みます
「風呂場で開けるか!」
ガムテープでぐるぐる巻きにされた棒状のものをお風呂場に持っていき、開封をするりっちゃん
「あ、じゃあこのビニールのごみ捨ててきますねっ」
「うん…よし、大丈夫かな…」
りっちゃんは袋の中身を気にしながらシャワーをかけて洗っています
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☆
「…ということで、ジャーン!」
私が手に持っているワインと同じデザインのりっちゃんの手にもあります
「それってもしかして…」
「そう!去年のボンジョレー・ヌーボ!」
「ええーっ!去年りっちゃんが勝手に飲んだと思っていたのに、埋めておいたのですか!?」
「埋めたのは今年の6月だよーん!それまでは台所の下の奥深くに隠してあったのさ。夜何度飲むのを我慢したことか…」
「飲まない様に埋めたんですか?りっちゃん!?」
「ち・が・う〜夏場は台所も暑くなっちゃうだろ。だから熟成温度に適した地中に埋めたんだぁ」
「りっちゃん…なんかすごいです」
「それに、このワイン、今日憂と一緒に飲みたかったし…」
「り、りっちゃん…」
「ほら、感動してないで、グラスもう一組持ってきて!私は栓を開けてるから」
「うん!」
ポン!
後ろから聞こえるワインを開ける音…
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「はい、グラスもう一組持ってきましたよっ」
「その、今年のボンジョレー・ヌーボ注いて…こいつめ…なかなかしぶといのぉっ!」
コルクと格闘しているりっちゃん、顔が必至で少しかわいいです…
「ふふふ…だんだん抜けてきたのぉ…ぐーっ!」
ポン!
「わーい、お疲れ様です、りっちゃん…」
「さ、早速飲んでみよう!」
「はい!お料理も冷めちゃいますし!」
ゴクゴク…
「うーん、やっぱワインは酸っぱい…」
「あまり飲まないからよくわからないですけど…」
「じゃあ、この寝かせた方は…」
ゴクゴク…
「あ!コクがあります!りっちゃん!」
「まろやかになってるな!…よっし、上手く行ったぜ!」
ゴクゴク
「りっちゃん、寝かせるなんてどうして思い付いたんですか…」
「ん?…ワインって寝かせて熟成するものだからな…自分でやってみようと思って…」
ゴクゴク
「そうですね!今年のはさっぱりしてるけど…」
ゴクゴク
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「味に深みみたいなのがありますよぉ…」
「そうだろぉ…ほら…チーズフォンデュも食べてみでぇ…」
「これ、おいしいですよぉ〜ズ、ズテーキ切りましたからりっちゃん…はい…」
「うん、うまい…憂のやいだ、スデーキおいしい…」
ゴクゴク
「美味しいけど目が回って…うまくつかめまぜん…」
ゴクゴク
「憂はおざげに弱いなぁ…あははっ」
ゴクゴク
「へてて〜っ、りっちゃんも酔っ払ぃ、ぐへへ〜」
「料理うめー!」
「キスしましょうよ〜りっちゃん」
ガブッ!
「んーん…んんんんーん」
「んーーん、んんんーん」
「今年のワイン…2本埋めような…」
「…2本?」
「再来年どうなってるだろうな…」
「…はい…」
「ずーと、ずーとワイン埋め続けてふたりで飲もうな…」
「…はい!」
おしまい
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うーん…何だかギクシャクしてる
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