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純「サプライズは痺れるねぇ」

1 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:44:17 8GyHj.II0


 ‐音楽準備室‐


梓「……えーと、その」

梓「ごめんね、わざわざパーティーなんて開いてもらっちゃって」

菫「いえいえ、せっかくの誕生日ですし」

純「いえいえ、ケーキ食べたかったですし」

直「先輩こそ受験で忙しいのにすみません」

梓「大丈夫」

梓「わたしも息抜きはしたいなって、ちょうど思ってたところ」

純「わたしも糖分の補給をしたいなって、ちょうど思ってたところ」

憂「梓ちゃん普段から勉強頑張ってるもんね〜」

梓「憂ほどでは……」

純「わたしよりは……」

憂「ううん。だって梓ちゃんには、ずっと前から目標があるんだもん」

梓「……うん」

純「……」


"
"
2 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:45:06 8GyHj.II0


  *  *  *


菫「それじゃ、ケーキ開けますよー」

梓「おぉー……!」

憂「立派だね!」

菫「梓先輩のお祝いをするってことで、はりきっちゃいました」

菫「琴吹家専属のパティシエが」

梓「パティシエが!?」

憂「もう琴吹家では梓ちゃんの名前が知れ渡ってるんだね」

菫「お嬢様の話でも、よく出てきていましたからね」

梓「それは喜ばしいことなのか……」

純「……はぁ〜」

憂「どうしたの純ちゃん?」

純「いやね。梓は琴吹家でも反応を見せられるほど、著名人だというのに」

純「わたしはさっきから軽音部の中ですら反応されないんだな……、って」

梓「あえてスルーしてたことぐらい察してよ」

梓「……それに著名人ってわけじゃないし」

純「甘いよ、梓!
 あの巨大な琴吹グループのことだ、裏でなにやってるかわからない――」

純「その世界有数の巨大グループを味方につけたってことは、
 もはや“世界の中野梓”になったも同然!」

憂「グローバルな梓ちゃん!?」

梓「なんじゃそりゃ……」

梓「というか、琴吹グループがそんな黒い仕事してるわけないじゃん。
 ねえ、菫?」

菫「あっ……」

菫「はい、そうですね!」

梓「今の間はなんだ」

直「……梓先輩、明日から背後に気を付けた方が」

梓「せっかくの誕生日に暗殺予告!?」

菫「もう! そこまでのことはしないって!」

直「そこまでのこと“は”……?」



 「…………」



憂「……じゃ、じゃあ仕切り直してこのケーキ食べようか?」

純「う、うん、それがいい。それがいいね」

菫「なんで二人とも少し本気にしてるんですかー!」


3 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:45:48 8GyHj.II0


  *  *  *


純「あー、そうだ梓。忘れる前に渡しとくね」

梓「これなに?」

純「プレゼント。開けてごらん」

梓「……純が一番目にプレゼントを渡すなんて、嫌な予感がするんだけど」

純「いやいや今回は本気で考えたんだ」

純「梓が一番欲しいものはなんだろう、ってね」

梓「怪しい」

純「ま、開けてみ」

梓「ふぅん……」

梓「……」

純「梓?」

梓「……純、これはなに?」

純「梓の一番欲しいもん」

梓「その名を?」

純「シークレットシューズ」

梓「いるかっ!!」

純「えぇ!?」

梓「誰がこんなもん履くか! むしろ自分の小ささを認めたみたいで嫌だわ!」

純「でも梓、この前の健康診断で」

純「“はあ、1センチしか伸びてなかった。澪先輩ぐらいの長身があればなあ”」

純「って言ってたじゃん!」

梓「それとこれとは話が別!」

純「頑張ってプラス9センチのものを探してあげたっていうのに!?」

梓「知らんわっ!!」


4 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:46:22 8GyHj.II0

菫「……あ、あの梓先輩! わたしたちもプレゼントがあるんです!」

梓「たち?」

直「わたしたちは二人で選んだんです」

梓「そうなんだ。ありがと、二人とも」

直「いえ」

直「最初は悩みましたが、純先輩のアドバイスを聞いてピンときました」

梓「んっ?」

梓「誰のアドバイスを聞いたって?」

直「純先輩です!」

梓「嫌な予感しかしねえ!」

菫「わ、わたしはどうかなーって思うんです」

菫「でも梓先輩が喜んでくれるなら!」

梓「ワー、ウレシイナー」

梓「……」

菫「い、いかがでしょう?」

梓「菫」

菫「はい」

梓「これの名前を言ってみて」

菫「胸パッドです」

梓「いるかっ!!」

菫「えぇ!?」

梓「誰がいるかっ! 余計悲しくなるわっ!」

菫「一応、純先輩のアドバイスに従って、大きめのものを選んだんですけど……」

梓「余計なお世話じゃ!!」

菫「ひぇ〜……」


5 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:46:49 8GyHj.II0

梓「……でもね。二人は悪くないよ」

梓「悪いのは純だからね。二人の気持ちはわかってるつもり」

梓「ありがとね!」

直「ちなみにこの大きさをチョイスした上で、
 “本当にこれで足りるかな?”と呟いてたのも、菫です」

梓「菫ぇっ!?」

菫「な、直ちゃんなんてことを!」

直「事実でしょ?」

菫「そんなこと言ったら直ちゃんだって、
 ノリノリで純先輩と話し合ってたでしょ!」

直「なんのことやら」

梓「直もそっち側かー……!」


"
"
6 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:47:48 8GyHj.II0

梓「う、憂……」

憂「わたしのプレゼント、受け取ってくれる?」

梓「う、うん! わたしは信じてるよ、憂のこと!」

憂「大丈夫。わたしは純ちゃんとも相談してないし、
 このプレゼントはわたし一人で選んだんだ」

梓「それなら良かった……」

憂「凄く考えた。今の梓ちゃんに一番必要なものってなにか。
 結局答えは出せなかったけど、一つだけ道が見えたんだ」

憂「原点に立ち返れば、また景色は変わるんじゃないかって」

梓「う、うん……?」

憂「だからはい、梓ちゃん!」

梓「これは……!?」

憂「そう、梓ちゃんの原点にして最高のパートナー……」

梓「その名を?」

憂「猫耳」

梓「いるかっ!!」

憂「えー?」

梓「なにか語りだしたかと思えばこれだよ!」

憂「とっても似合うと思うのに」

梓「問題はそういうことじゃないんだよ!!」

梓「……ああもう、折角一人で考えたっていうのに、
 憂も結局あっち側の人間だったなんて……!」

純「あっち側ってどっち側?」

梓「あんた側だよ!!」

憂「梓ちゃん、お願い! いまこそ原点に立ち返るときなの!」

梓「憂もお願いだから真面目キャラに立ち返って!
 軽音部に入ったせいで絶対毒されてるから!」

純「えー、わたしってば、そんなに毒されてるかねー?」

梓「あんたは元々だよ!!」

菫「梓先輩、お願いします。ぜひ身につけてください!」

直「お願いします」

梓「もう、いい加減にしてよ! わたし帰る!」

純「あ、待って梓!」

憂「梓ちゃーん!」


7 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:49:07 8GyHj.II0


  *  *  *


梓「――勢い余ってバッグを忘れてしまった」

梓(ちょっと怒りすぎたかな……。でも、みんなもみんなだよね……)

梓「……ってあれ、誰もいない?」

梓(わたしが怒っちゃったから、解散になったのかな……?)

梓(悪いことしちゃった?)

梓「……」

梓「……とりあえず今日は帰るとしようか」


8 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:49:57 8GyHj.II0


 ‐外‐


梓(とりあえず明日皆に会ったら、ちょっと言い過ぎたって謝って……)


 「待ちなさい、そこのお嬢さん!」


梓「っ!?」

?「ふっふっふっ……」

梓「そ、その声は……」

覆面T「わたしは、そうね。覆面Tとでも呼んでもらおうかしら!」

梓「ムギ先輩ですね」

T「……」

梓「……」

T「それはともかく」

梓(図星だったか)

T「これを見なさい!」

菫「た、助けてください梓先輩!」

梓「なっ!?」

T「ふっふっふっ……この子はあなたの大切な後輩だそうね。
 いまから彼女をさらって、酷いことをしようと思うの」

梓「はあ、そうですか……」

T「ただし、わたしにも弱点の一つや二つがあってね」

梓「えっ?」

T「そうね、例えば“身長160センチ台でツインテールの少女”なんかが
 目の前に現れた日には、ひとたまりもないと思うの!」

梓「……」



梓(現在の身長151センチ)

梓(純から貰ったシークレットシューズ。プラス9センチ)

梓(足し算すると、ぴったり身長160センチ! わあ素敵な計算式!)



梓「どうぞご勝手にさようなら」

菫「梓先輩!?」

T「……」

菫「行っちゃったね……」

T「……そうね。そういうことなら」

菫「え、ちょっとお姉ちゃん? なんか役にのめり込みすぎてない?
 いや、あ、待っ……」


9 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:50:57 8GyHj.II0


  *  *  *


梓(酷い悪夢を見た)

梓(……んっ?)

直「た、助けてー」

覆面「ふははは!」

梓「また出た」

直「こいつわたしにひどいことをしようとー」

梓「しかも直は棒読みが酷い!」

覆面R「わたしは覆面R! 今からこの後輩に――」

梓「酷いことをしようというんですよね、律先輩」

R「……」

梓「……」

R「さて、それはそれとしてだ」

梓「律先輩も誤魔化し下手だなあ」

R「普段のわたしならお前みたいなチンチクリンには負けない」

梓「誰がチンチクリンじゃ」

R「だが、今日はどうもコンディションが良くないようでな」

R「“豊満なバストでツインテールの少女”を見せられては、さしものわたしも大打撃だろう」

梓「うわぁ」

R「なにドン引きしてんだよ……」

梓「別に」



梓(……今日のプレゼントにあったアイテムその二)

梓(胸パッド〜!(しかも大きめ))

梓(この大きさなら、わたしでも豊満なバストが実現可能に!? 夢みたーい!)



梓「誰がその手に乗るか」

R「あ、おい、逃げるのか!」

R「……行っちまった」

直「タスケテー」


10 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:52:13 8GyHj.II0


  *  *  *


梓(はあ、もういい加減にしてほしいよ)

梓(……でも、この流れだと恐らく)

覆面Y「わたしの名前は覆面Y!」

梓「言わんこっちゃない」

憂「助けて、梓ちゃん! 知らない覆面の人がわたしに酷いことをしようとしてるの!」

梓「レパートリー無いなあ」

Y「うぇっへっへっ、覚悟ぉ〜」

梓「わたし先を急ぎますので」

Y「あ、ちょっと待ってあずにゃん! ええと……」

Y「“猫耳をつけてニャンと甘ったるい声で鳴かれない限り”、
 わたしは無敵なんだよ〜」

梓「隠す気ゼロかっ!」

Y「なんのことやらー?」

梓「しかもいま台本確認してましたよね?」

Y「……」

Y「無敵なんだよっ!」

梓「もう“敵”が一人も“無”い状態で“無敵”を誇っててください」

Y「ああん、いけずぅ〜!」


11 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:53:04 8GyHj.II0


  *  *  *


梓(いい加減疲れた……)

梓(……そしてこの先に立ちはだかるであろう、あいつを思うと更に疲れる)

純「梓、いいとこに来たね!」

梓「頭痛が痛い」

純「わたしは今、この覆面Mさんにさらわれて、
 酷いことをされそうな状態なんだ!」

梓「めっちゃノリノリじゃねーか」

純「……次、澪先輩のセリフですよ」

M「あ、ごめん」

梓「色々聞こえちゃってるし!」

M「こ、こいつを返して欲しくば!」

梓「はいはい何を身につければいいんですか、全く――」



 「ちょっと待ったー!!」



梓「な、なに!?」


12 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:54:30 8GyHj.II0

T「間に合ったようね」

R「走ったかいがあったぜ!」

Y「わたしは歩いてきたぜ!」

梓(うわ、全員集合しちゃったよ……)

R「残念だったな、中野梓!」

Y「わたしたち四人が集まったことで、弱点は殆ど消えてしまったのだ〜!」

梓「まじか」

M「た、ただし!」

M「“身長160センチ台かつ豊満なバストでツインテールの猫耳少女”が唯一の弱点だっ!」

梓「超ピンポイントですね!?」

Y「ふふふ、わたしたち四人が並んでいる今……」

R「お前が通る道は塞がれている!」

T「物理的に!」

梓「大迷惑です」

菫「梓先輩!」

梓「菫!?」

梓「わかってたけど、無事だったんだ」

菫「……」

菫「……はい!」

梓「今の間はなんだ」

菫「そんなことはともかく、今あの覆面集団を倒せるのは梓先輩だけです!」

梓「いやいやいや」

憂「梓ちゃん!」

梓「憂まで……」

憂「お願い、わたしたち最後の願いを聞いて……!」

梓「こんな趣味全開なお願いを最後にしないで」

直「先輩!」

純「先輩っ!」

梓「紛れるな同級生」


13 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:55:25 8GyHj.II0

R「おーっと、あまりに梓が時間をかけてしまったから、
 弱点がよりピンポイントになっちまったぞー!」

R「具体的には、さっきの弱点に加えて、
 “特定の衣服”を着てもらわないといけなくなったぞー!」

梓「律儀に説明ありがとうございます。
 ただ残念なことに、わたし衣服は貰ってなくてですね――」

T「あ、空から簡易更衣室が!」

梓「更衣室が!?」



 「どしーんっ」



梓(本当に降ってきた……)

梓(案の定、周りの人が好奇の眼を……)

Y「さあ!」



R「梓!」

梓「いや、あの」

M「梓!」

梓「ええと」

T「梓ちゃん!」

梓「その……」

憂「梓ちゃん!」

梓「……」

純「梓!」

直「梓先輩!」

菫「先輩!」

Y「……あずにゃん!」


14 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:56:30 8GyHj.II0



梓「……だあああ、もうううう!!」

梓「はいはい履けばいいんでしょ、つければいいんでしょ、着ればいいんでしょ!?」

梓「わかったよ、わかりましたよ!!
 ですからわたしの名前を、こんな所で叫ばないでください!!」

Y「あずにゃん……!」

梓「更衣室、借りますからね!」

T「どうぞ〜」


15 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:57:03 8GyHj.II0


  *  *  *


梓(更衣室は、降ってきた割には傷一つ見当たらない……。
 一体どうなんてるんだ、これ)

梓(中にあった衣装はあら不思議)

梓(見覚えのあるメイド服〜)

梓(……というかムギ先輩の家のお店で働いたとき、着たやつだ)

梓(この更衣室も琴吹グループ製かっ!)


16 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:58:04 8GyHj.II0


  *  *  *


R「さあ中野梓、その姿を見せてもらおうか!
 まあそれがわたしたちの弱点にぴったり一致するかは別だけどな、ふははは!」

梓「……」

R「な、なんだとっ!」

T「まさしくあれは……」

M「わたしたちの弱点そのもの!?」

Y「あの姿でにゃーんなんて鳴かれてしまえば……!」

梓「……に」



梓「にゃ〜ん。あずにゃんだにゃんっ!」



Y「ぐ……」

R「ぐぐぐぐ……」

覆面's「ぐわあああああああ!!!!」


17 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:58:48 8GyHj.II0


  *  *  *


R「お、お見事……!」

T「だが、第二第三の資格が……!」

M「……いないだろ」

Y「ばたり」



梓「……ふう。やっと終わったか」

憂「梓ちゃん!」

純「梓!」

菫・直「先輩!」

梓「みんな……」

純「よくやってくれたよ、本当に」

菫「信じてました、先輩のこと……!」

直「わたしもです!」

梓「うん、そっか……」

憂「……本当にありがとう、梓ちゃん。そして――」



憂「――おめでとう」

純「おめでとう」

菫「おめでとうございます」

直「おめでとうございます」

律「おめでとう」

澪「おめでとう」

紬「おめでとう」

唯「誕生日おめでとう、あずにゃん」

梓「あ、えっと……」

唯「……えへへ」

梓「……あ、ありがとうございますっ」



 ‐おしまい‐



梓「……ということで、全員これからお説教です。
 そこに正座してくださいね」

唯「えっ?」



梓「正座です」

唯「あ、はい」

律「はい」

澪「はい……」

紬「は〜い」

憂「はい」

菫「はい」

直「はい」



純「……えっ?」

梓「純」

純「はい」



 純「サプライズは痺れるねぇ」‐完‐


18 : いえーい!名無しだよん! :2014/11/11(火) 00:59:43 8GyHj.II0
おめでとうございます!


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