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憂「飼い猫に手を噛ませる」
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夏休み。
受験生のお姉ちゃんはお家で和ちゃんとお勉強中。
梓ちゃんとお付き合いみたいなものをしている私は中野家に来ていた。
リビングのソファーでアイスを食べながら二人でおしゃべりしていると、梓ちゃんにお姉ちゃんから電話がかかってきた。
なんでもショートケーキの苺を和ちゃんが食べちゃったらしい。
お姉ちゃん…。
梓「全く、唯先輩は」
憂「ご、ごめんね」
梓「…憂が謝ることじゃないよ」
なんて、お姉ちゃんの話をしながらアイスを食べ終えると、会話が途切れて目が合った。
そのまま梓ちゃんの顔が近づいてきて、私がそっと瞼をおろすと唇に柔らかな感触。
それはほんの短い間。
静かに離れていく熱に目を開けると、耳まで赤くなっている梓ちゃんが見えた。
自分の顔も熱をもっているのがわかる。
何か言うべきな気がして開けた口からは何も出て来なくて。
どうしようと考えていると頬を撫でられた。
その手つきはすごく優しいのに、梓ちゃんの瞳には別の色が浮かんでいた。
でもきっと、私の眼にも同じ色が見えていたと思う。
その意味も、伝えたいことも、もう一度触れてもらえば全部わかるんじゃないかとまた目を閉じた。
それから何度も何度も触れ合って、三年にあがる頃にはもっと深く熱を分け合うようになっていた。
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初めての時、自分から出た声に驚いた。
今まで聞いた事のない上擦った音。
それでも与えられる刺激にどうしても声を抑えきれずシーツを口に入れたり唇を噛んでごまかしていた。
それは何度か身体を重ねるようになってからも変わらなかったのだけれど、声をださないために手を咥えている所をついに梓ちゃんに気付かれてしまった。
なんでこんな事…、と少し歯型のついてしまった私の手をさすりながら尋ねられる。
憂「だ、だって、声出ちゃうの恥ずかしくて…」
梓「…私しか聴いてないのに?」
憂「そ、そうだけど。やっぱり恥ずかしいよぉ…」
梓「というかむしろ聴きたいんだけど」
憂「うう…」
なかなか梓ちゃんも折れてくれない。
でも恥ずかしいものは恥ずかしいし…と、私がごねていると、梓ちゃんは口を尖らせて拗ねてしまった。
あ、そんな顔もかわいい、なんて思っていると、何か思いついたような笑みを梓ちゃんは浮かべてみせた。
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不覚。いくら余裕がなかったとはいえ憂の行動に今まで気づかなかったとは。
しかし憂は声を出したくないと言う。
ふむ。それならと私はある提案してみた。
憂「そ、そんなこと、出来ないよぅ…」
憂は自分の口元に差し出された私の手を見ながらつぶやく。
梓「大丈夫だよ。ほら、がぶっと」
憂「あ、梓ちゃん…」
私の左手の小指のした辺りをぐいぐいと憂の口に押し付ける。
憂の目には戸惑いの色が浮かんでいて、そうやって困惑する表情もなかなかいい。
憂「ダ、ダメだよ、梓ちゃん。部活で演奏するのに、手を噛むなんて…」
梓「自分の手には噛み付くのに?」
憂「そ、それは…その、」
梓「憂に噛まれるなら構わないよ」
憂「だ、だって痛いよ?…あ、跡もついちゃう、し」
梓「んー、むしろその方がいいというか、」
憂が私に夢中になっていた、という証拠になるわけだし。
梓「それなら試してみようよ」
憂「え?」
こうなれば実力行使だと、憂をもう一度押し倒した。
憂「あ、梓ちゃ、」
名前を呼んでくる憂の声に被せて口づけ、舌を絡ませると憂の力が抜けていくのがわかった。
そうして頬を撫でて、首筋から鎖骨、胸の谷間へと舌を這わせつつ、右手も下へ下へと撫で降ろしていき、まだ十分に湿り気が残っている部分に指を差し入れる。
とたんに、んっ、と押し殺した声が聞こえたので、憂の口へ左手を押し付けた。
憂が意図を察したかどうかはわからないけれど、私の手を口に入れられたせいで抑えられない声が漏れでた。
梓「ほら、憂。声出ちゃうのやなんでしょ」
そう言ってもまだまだ遠慮しているのがわかる。
ま、それならそれで構わないんだけどね、と思いながら私は指の動きを少し激しくした。
憂「んぅっ」
刺激に堪えられなくなった憂が私にしがみつく。
梓「…」
やっぱり片手だと慣れないな、なんて思いつつ、いつもよりは冷静に指を動かす。
するとだんだんと憂の口に力が入ってきた。
力の加減も出来なくなるほど夢中になってくれるのかと、こちらまで息が荒くなる。
もう一息だと、いっそう憂を攻め立てるとその腰が跳ねるのを抑えて、ようやく歯型をいただいた。
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憂「でも、どうして『噛んで』なんて」
梓「…憂が自分だけで堪えてたのがやだったのもあるけど、『しるし』になるかなって」
憂「しるし?」
梓「うん。指輪とかじゃ目立つけど、これならあんまり気づかれないでしょ」
憂「見えない指輪ってこと?」
梓「うーん…まあしばらくしたら消えちゃうし、ここは指じゃないけどね」
そう言って笑う梓ちゃんの手をつかむと、梓ちゃんは不思議そうに首をかしげた。
憂「…わかった。でも、」
梓「でも?」
憂「それなら、私の手も噛んで?」
梓「なっ」
憂「私も『しるし』欲しい。梓ちゃんに、つけて欲しいな」
私の言葉に少し驚いたようだったけれど「憂がそう言うなら断るわけにはいかないよね」と、梓ちゃんは私が差し出した左手をとると手の甲に軽く口づけた。
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思いもよらぬ言葉に驚いたけれど、憂のお願いなら断るわけにはいかない。
差し出された左手の甲に軽く口づけながら尋ねる。
梓「…どこがいい?」
憂「えっとね。薬指、が、いいかな」
少し考えてから、はにかむように憂が答える。
その表情に一瞬息をのんだけれど、努めて冷静に「わかった」と応じた。
憂の薬指をおもむろに口に含み、吸うように甘噛みする。
くすぐったがって身をよじる憂と視線を合わせると、私は歯に力をいれてみた。
前歯で軽く噛んだだけで柔らかな肌とそのすぐ下にある骨の感触がわかる。
そこに少しずつ歯をおろしていくと指に力が入っているのを感じた。
しかしこの状態ではこれ以上は少々噛みにくい。
舌を這わせつつ指をいったん口からだした。
あれ、というような顔をする憂の目を見ながらもう一度噛みやすい場所を探す。
そうして薬指の背から指の付け根に狙いを定めると、そっと歯を添え、
さっきより幾分緊張もゆるんでいたそこにぐっと噛みついた。
憂「っ…!!」
痛さを堪える音が聞こえた。
口の中で憂を感じる。
その肉を、骨を。熱を。
声を殺す憂の普段見る事のない表情。
お互いの呼吸が荒くなる。
自分の脈を打つ音が耳の奥で鳴り響く。
憂の指。憂、ういの、ゆび。うい、ういういうい…!
視界も思考も憂でいっぱいになり、目が開いてるのか閉じてるのかもわからなくなっていく。
そうして、ぬるりとした感触が口の中に広がったかと思えば、肩への衝撃で意識を戻された。
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□ □ □
梓ちゃんのいつもと違う空気。
あずにゃんなかわいい猫じゃない、肉食獣のような眼のひかり。
お互いの呼吸だけが聞こえていて、私の指に集中している梓ちゃんが愛おしくて頭をなでる。
不思議な感覚の中、不意にぎり、とさっきまでと違う感触がした。
「…っ!あずさ、ちゃ!痛いイタいいたいっ!!」
思わず肩をバンバンと叩くと、梓ちゃんはハッとしたように私の指から口を離した。
梓「ご、ご、ごめん、憂っ!」
私は自分で血のにじむ薬指を右手で抑えていた。
梓ちゃんはさっきまでの狂気はどこへやら。ひたすら私に頭を下げる。
憂「ほ、ほんとに食べられちゃうのかと思ったよ…?」
梓「…ごめん」
憂「ちょっと怖かった」
梓「……ごめんなさい」
ぐすっと涙目でうなだれている姿もかわいい…じゃなくて。
噛んで欲しいと頼んだのは自分なのだから、謝ってもらうのも違うかな。
憂「そんなにおいしかったの?」
梓「えっ?」
枕元のティッシュで指を拭いてくれている梓ちゃんに私はたずねた。
梓「…う、うん。そう、なのかな…」
憂「ふうん。梓ちゃんが喜んでくれたんなら、まあいっか」
梓「えっ」
憂「あ、でも、他の人噛んだりしたらダメだよ! めっ!だからね」
梓「ま、まさか」
顔を真っ赤に否定する梓ちゃんがおかしくてかわいい。
いつもこれくらい素直に言ってくれたらいいのに、なんて思いながらぎゅっと抱きしめた。
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他の人を噛む?いや何言ってんのこの娘。
しかしこれはよくない。別にふと思いついてしまっただけで、憂に傷をつけたいわけではないのだ。
でもあの泣き顔は……たまにはいいかも、しれない。うん。
なんて不埒な事を考えていたら急に憂に抱きしめられた。
ちょ、憂さん、そんな柔らかい胸を顔に押しつけられたら、
もう二回もしたというのに再び欲がわきあがる。
憂の上に覆いかぶさるようベッドに横たえると、目をぱちくりしている憂の頬に口づける。
憂「あ、梓ちゃん?」
梓「…声、出してもいいからね?」
おしまい!
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短いけどおわりです。
読んでくれた人ありがとう。
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いいものだ
おつ
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大人のフェチっぽい憂梓ですな。
いいものです。
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