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憂「鳴かない子猫」
-
※憂梓
※性格・設定改変
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"
-
こんにちは、平沢憂です。
桜が丘高等学校に通う、高校二年生です。
私は高校に入って初めて部活を始めました。
私のお姉ちゃんがいる、桜校軽音部。
軽音部に入部して、お姉ちゃんや先輩たちと一緒にバンドを組み、この二年間私は色々な事を学ぶ事ができました。
そしてお姉ちゃんたちは卒業し、大学へ行ってしまいました。
残ったのは私一人。
このままでは軽音部は廃部になってしまいます。
これから私はどうすればいいのでしょうか?
〜放課後・教室〜
担任「それでは今日はここまでです。皆さん気を付けて下校してくださいね」
純「よーし放課後だーっ!!」
純「憂、部室いこっ」
憂「あ、うん。でも部室に行ってどうするの?」
純「そりゃぁもちろん…」
憂「ティーセット、多分紬先輩が持って帰っちゃったよ?」
純「まだ何も言ってないのに!」
憂「違うの?」
純「まぁそれもあるけどね」
憂「?」
純「それもあるけど!憂、部員。これからどうするか考えないといけないんじゃなかったの?」
憂「あ、うん…」
純「?」
純「元気ないなぁ?ほらシャキッとする」ペシ
憂「あう」
純「部長がそんなことでどうすんのさ」
憂「えへへ…ありがと純ちゃん」
純「まぁ気持ちは分かるよ」
純「唯先輩達が作ってくれた大切な物だもんね」
憂「うん。このまま私たちが潰しちゃうわけにはいかないよね…」
純「………」
純「憂がそんなに思いつめてる所、始めて見たなぁ」
憂「そうかな」
純「もしかして寂しい?」
憂「………」
純「よっぽど放課後ティータイムが楽しかったんだな?このー」グリグリ
憂「うぅぅ…えへへ」
純「まぁとにかく、早くいつもの憂に戻る!」
純「今日は憂に良い話を持ってきたのに」
憂「え?良い話…?」
純「うんっ。あ、いや…あんまり期待しないでね?」
憂「どういうこと?」
純「まぁ私もチラッと見かけただけだからさ…保証はないけど」
純「ほら、あの…中野さん」
憂「?」
梓「………」
憂「中野さんがどうかしたの?」
純「日曜にたまたま見かけたんだけど…」
純「公園で中野さんがギター弾いてたんだよ」
憂「ほんと?」
純「うん。私も見かけたときは別人かなって思ったんだけど」
純「そーっと忍び寄って草むらから確認したら、確かに中野さんだった!」
憂「あはは、そこまでしたんだ?」
純「隠密スキルが3くらい上昇した!」
憂「でも意外だね。いつも静かな中野さんが」
純「憂っ…これはチャンスだよ、チャンス。軽音部に中野さん誘おっ!」
憂「え、でもなぁ…」
純「なに、中野さんじゃ駄目なの?」
憂「いやそうじゃなくて。中野さん、何も部活やってないじゃない?」
純「好都合じゃん」
憂「でも楽器ができるのになんで何も部活に入ってないのかなって…」
純「あー、うーん…」
憂「ジャズ研や軽音部の事は入学した時から知ってたはずだよ?」
憂「クラブ見学にも来てなかったし…中野さん、何か事情があって部活はできないんじゃないかな?」
純「うーんたしかに…」
純「たしかに“群れるタイプ”じゃないもんね。いつも一人だし」
純「でも聞いてみるだけ聞いてみない?」
憂「え…いいのかな?」
純「聞くだけタダだって!ほら、早くしないと中野さん帰っちゃうよ」ぐいっ
憂「あ、ちょっと待ってよ純ちゃん!」
-
ドタバタ
純「中野さーん!」
梓「っ…?」ビクッ
憂「ちょっと、純ちゃん」
純「中野さん、待って!ちょっと!」
梓「…?;」ビクビク
純「中野さん、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
梓「………?」
純「中野さんにいくつか質問があって」
憂「この後用事があるとかなら、別にいいんだけど…」
梓「………」
梓「………」フルフルフル
純「あ、オッケー?」
梓「………」コク
憂「ごめんね突然」
純「よし、じゃあ憂!ビシッと決めちゃって!」
憂「え、私?」
純「部長でしょうが!」
憂「あ、うん」
梓「…?…??」
憂「あ、あの…中野さん。中野さんってギター弾けるの?」
梓「?」
憂「純ちゃんから、つい最近中野さんが公園でギター弾いてる所見かけたって聞いたんだけど」
純「うん。かなり上手かった」
憂「中野さん、ギターやってたんだね」
梓「………」
梓「………」コク
憂「えぇと…それで、もしよかったら…私たちの軽音部に入ってみない?かなって」
梓「………」
純「駄目かな?私たち部員が足りなくて困ってるんだよね〜…!」
梓「………」
憂「どう?興味ないかな…?」
梓「………」
憂「?」
梓「……ご、ごめんなさい」
スタスタスタ
憂「あっ……」
純「あーあ…いっちゃった」
憂「………」
純「ちぇ、一匹狼気取ってやがんの〜」
憂「純ちゃん?」
純「あ、ごめんごめん」
純「はぁ…やっぱ新歓でアツいのを一曲やっちゃうしかないのかぁ」
憂「うん……」
憂(そういえば、中野さんの声初めて聞いたな…)
憂(初めて聞いた言葉が“ごめんなさい”なんて、なんだか悲しいな)
-
〜数日後〜
菫「お茶ができました」
純「サンキュースミーレ!」
憂「あれ、奥田さんはお砂糖入れないんだ?」
直「はい、ブラックがいいので」
純「違う違う。紅茶はブラックじゃなくてストレートって言うんだよ〜?」
直「なるほど」ズズズー
さわ子「でも二人が入ってくれて本当によかったわね。お茶も淹れてくれるし」
憂「あ、さわ子先生いたんですね」
さわ子「い、いるわよ!憂ちゃんまでそんな事言うように…」ズゾゾー
純「あはは、でもこれで二人の担当も決まったし、やっと部活動開始できるね」
憂「うん、そうだね…」
・ ・ ・
純「じゃ、またね憂〜」
憂「うんっまた明日、純ちゃん」
憂「さてと、帰りにお買いものしてかないとなぁ」
憂「お姉ちゃん今日は何がいいかな?メールで聞いてみよっと」ポチポチ
憂「………」ポチポチポ…
憂「お姉ちゃんはもう家にはいないんだった。はぁ…」
憂「ダメダメ、しっかりしなきゃ」
シャカシャカシャン
憂「?」
シャンシャン
憂「ギターの音?」
・ ・ ・
シャカシャカシャンシャカ
憂「…?」
シャカシャン
憂「あっ…!」
梓「………」ジャララン
憂(中野さんだ。純ちゃんが言ってた公園ってここの事だったんだ)
梓「………」ベンベンベンジャラ
憂(ほんと。中野さん、アンプ無しだけど私よりずっと上手…)
ニャー
梓「あっ」
憂(?)
野良猫「ニャオーン」
梓「来たなチビ助」なでなで
憂(猫…?)
野良猫「ゴロゴロ」
梓「今日も私のギター聴きに来てくれたの?」ワシャワシャ
野良猫「ンゴロンゴロ」
梓「よしよし」
憂(ふふふ、楽しそう)
-
野良猫「ニャーン」タッ
梓「あれ、どこ行くの?」
野良猫「………」スタスタスタ
憂(えっ…?こっちにきた…)
野良猫「ニャオーン?」
梓「あっ……」
憂「あ、あはは…中野さん」
梓「………」
憂(私に気が付いたら俯いちゃった………)
憂「………」
憂「ほら、チビ助?おいで」
野良猫「フゴフゴ」
憂「よいしょっと。あ、君結構軽いね」ヨシヨシ
スタスタスタ
梓「………」
憂「えへへ、こんにちは中野さん」
梓「こ、こんにちわ…」
憂「ここでギター弾いてたんだね。エレキギター?」
梓「………」コク
憂「隣、座ってもいい?」
梓「……うん」
憂「失礼します」
野良猫「ゴロゴロゴロ」
憂「この子、大人しいね。中野さんの猫?」
梓「………」フルフルフル
梓「のらねこ」
憂「そっか」
憂「ギター弾くと寄ってくるんだ?」
梓「…ん…う、うん」
憂「中野さん、ギター上手いね。軽音部で二年やってる私よりずっと」
梓「………」
憂「それ、ムスタングだよね」スッ
梓「!」
梓「っ、やっ…!」
憂「あ、ごめんね?」
梓「………」モジモジ
憂「これがわたしのギターだよ」ジーガサゴソ
憂「ほら」
梓「………」
梓「ストラト…」
憂「かわいいでしょ?」
梓「………」
"
"
-
憂「わたしのお姉ちゃんもね、軽音部でギターやってたんだけど、お姉ちゃんったら買ってすぐに自分のギターに名前付けたりしちゃってね」
憂「“ギー太”っていうんだけど…えへへ、おかしいよね。自分のギターに名前なんか」
梓「………」
憂「でも演奏していくうちに、お姉ちゃんの気持ち…ちょっと解ってきた気がするんだ」
憂「自分のギターに名前を付ける気持ち」
梓「………」
憂「私も早く考えておけばよかったなって思ってるんだ。ギターの名前」
憂「そうすれば今頃はもっと上手に弾けてたかな〜?なんて」
梓「………」
憂「でも、いまから名前を考えても…何も浮かんでこないの」
梓「………」
憂「お姉ちゃんはギターを選んだその時からもう“この子はギー太だ”って張り切っちゃってね」
憂「自分の楽器に名前を付けるコツでもあるのかな?あはは」
梓「………」
憂「中野さんのギターには、何か名前あるの?」
梓「………」モジモジ
憂「………」
憂「あ、あはは…ふつう付けないよね。名前なんか」
梓「………」
野良猫「ニャーン?」
憂「なんかごめんね。邪魔しちゃったみたい」
梓「………」
憂「また学校でね、中野さん」
梓「………」
野良猫「ニー」
梓「………」
梓「むったん」
憂「…?」
梓「………」
憂「む…?」
梓「“むったん”…って言うの。わたしのギター…」
憂「むったん…?」
梓「………」コク
憂「むったんっていうのは、ムスタングだから?」
梓「むったん」
憂「………」
梓「………」
憂「ふふっ…ふふふ!あははは!」
梓「ふふ…えへへ」
憂(あ、梓ちゃんが笑った!)
梓「あはは…」
憂「中野さんも変わってるね」
梓「そ、そうかな?」
憂「うん。でも私は好きだよ?」
梓「えっ……」ピク
憂「?」
梓「す、すき……?」モジモジ
憂「うん、とっても」
梓「………」モジモジモジ
憂「あ、そうだ!中野さんの事、名前で呼んでもいいかな?」
梓「名前…?」
憂「うん、梓ちゃんって」
梓「………」
憂「…駄目かな?」
梓「ううん、いいよ」
憂「えへへ、よかった。ちなみに私の名前は」
梓「憂」
憂「あっ」
梓「知ってるよ」
憂「じゃあ梓ちゃんも私の事そう呼んで?」
梓「え、う…うい?」
憂「うん!梓ちゃん、よろしくね?」
梓「っ…!」
梓「よっ………よろしく、憂」
憂「えへへ」
梓「あ、あはは」
どうしてあの時、私は梓ちゃんに声をかけたのかよく分かりませんでした。
確かに同じクラスの子に出会ったら、声をかけるのは普通の事だと思うけど、その時の私の気持ちはそれとはまた違いました。
軽音部になんとしても入ってほしいから?
あの時勧誘を断った理由が聞きたかったから?
違います。私はたぶん、梓ちゃんとお友達になりたかっただけなのです。
憂「そうだ。たまにここへ遊びに来てもいいかな?」
梓「え?」
憂「梓ちゃんのギター、聴いてみたいな?」
梓「え…ん……」
野良猫「ニー」
梓「………」
梓「うんっ、いいよ」
憂「ありがと、梓ちゃん」
それから私は、度々あの公園に寄るようになりました。
梓ちゃんはとっても内気でおとなしい子だけど、私に快く接してくれて、話しているととても面白いです。
-
〜数日後・放課後〜
野良猫「ニーニー」
憂「えっ、じゃあもう何日もお家に一人でいるんだ…」
梓「うん。お父さんもお母さんも、よく仕事で遠くへいっちゃうから」
憂「そうなんだ」
梓「………」
憂「じゃあ、私と同じだね」
梓「?」
憂「私の親もよく海外へ出張に行ったりしちゃうから」
憂「それに、お姉ちゃんは大学に行っちゃったし」
梓「そっか…」
憂「ご飯は自分で作ってるの?」
梓「………」フルフルフル
憂「じゃあ普段はなにを食べてるの?」
梓「スーパーのお弁当とか…」
憂「やっぱり」
憂「梓ちゃん、いつもお昼は購買の菓子パンとかコンビニのおにぎりでしょ?」
梓「え、うん…」
憂「そのうえ、家では毎日買ってきたお弁当とか食べてるの?」
梓「………うん」
憂「駄目だよ。それじゃ体壊しちゃうよ?」
梓「でも……私一人じゃ料理できないし、一人の時は火も使っちゃダメだって言われてるから」
憂「う〜ん…」
憂「よし、それなら今日は私の家に来て!」
梓「…?」
憂「私がもっと体にいい物食べさせてあげる」
梓「え…え……でも…」
憂「大丈夫。こう見えても私、お料理はそれなりにできるんだよ?」
梓「でも……悪いよ」
憂「ううん、全然。梓ちゃんがそんな出来合いの味気ない物ばっかり食べてるなんて、放っておけないよ」
梓「でも…でも…」
『キャハハハウケルー!』『クサイヨネー!』
梓「!」
梓「わわっ…わ!」
憂「?」
『アハハ、ジャアマタネー!』『ウン、バイバーイ!』
梓「………」ホッ
憂「梓ちゃん?どうかしたの?」
憂「さっきの人たち、お友達?」
梓「ううん、知らない人達だった」
憂「…?」
梓「ごめん憂、今日はもう帰るね」
憂「えっ…ご飯は?」
梓「きょ、今日はちょっと遠慮しておくね…」
憂「………」
憂「そっか」
憂「分かった。じゃあまた明日ね」
梓「うん、また明日」
-
〜翌日・昼休み〜
純「おっしゃ、お昼だー!!」
憂「もー純ちゃんったら」
純「憂、購買行こう。購買」
憂「あ、待って純ちゃん。ダメ」
純「?」
憂「今日は購買行くの禁止」
純「は?何言ってんの…私を殺す気!?」
憂「大丈夫だから。ほら、ついてきて」
純「え…?なんなのさ…」
憂「あ、椅子も持ってね」
純「どこいくの?」
憂「梓ちゃんと一緒にお昼ご飯食べよ?」
純「えっ…」
・ ・ ・
梓「………」ガサゴソ
憂「あーずさちゃん?」
梓「!」
純「や、やっほー」
憂「えへへ、一緒にお昼食べよ?」
梓「え……」
憂「梓ちゃん、それ」
憂「また菓子パンだね」
梓「え、うん……」
憂「もっとちゃんとした物食べないと」
梓「だって…私、料理できないし…」
憂「じゃあ、私の作ったお弁当食べる?」
梓「え?」
憂「ほら、これ」ゴト
憂「実はね、今日は梓ちゃんの食生活の事を考えて、梓ちゃんのためにこのお弁当作ってきたんだよ?」
憂「よかったら食べて?」
梓「………」
梓「でも…でも…」チラチラ
憂「食べてくれたら嬉しいな?」
梓「…う……んん…」
梓「…いいの?」
憂「うんっ。そのために作ってきたんだもん」
純「憂?私はどうすれば?」
憂「もちろん、純ちゃんのも作ってきたよ?」
純「え、まじで!?」
憂「よかったら食べて」
純「やった!あ…でも憂の分の弁当なくない?」
憂「私は梓ちゃんのパンを食べるから」
純「いいの?それで」
梓「………」
憂「梓ちゃん、お節介だったかな…?」
-
梓「……ううん、ありがとう」
憂「よかった!」
憂「はい、これは純ちゃんの分のお弁当」
純「おほほ、ありがとうございます!憂の手料理が食べられるなんて私たちは幸せだ!」
純「あ、そうだ。改めてよろしくね中野さん」
梓「ぁ…よ、よろしく。鈴木さん」
純「あ、それヤだな〜。“純”って呼んでよ。」
純「私も、中野さんの事“梓”って呼ぶからさ」
梓「ん………よろしく、純」
純「えっへへ。じゃ、いただきます!」
憂「それじゃ、梓ちゃんのパンは私が貰うよ?」
梓「うん」
純「うおぉ、おいひい!なんだこれ!?」モグモグ
梓「………」ジー
純「ん?梓も早く食べたら?」
純「憂の料理は世界一美味しいんだから!」
憂「もー、オーバーだよ純ちゃん」
純「私は真実を語っているだけだ」
梓「………」
純「ほらほら、食べてみ?食べてみ?」
梓「……いただきます」
憂「召し上がれ」
梓「………」モグモグ
純「どう?美味しいでしょ?」
梓「………」モグモグ
梓「うん」コクコク
憂「よかった」
梓「………」モグモグモグ
梓「ほんとにおいしい」
純「でしょでしょー?」
梓「………」モグモグモグ
梓「………」モグ…モグ…
梓「………」モグモク
梓「………っ」
ガタッ!
-
憂「あれっ?梓ちゃん!?」
梓「ぐっ…!」ダッ
純「ん?どうしたの!?」
ガラガラ、ピシャン!
純「教室出て行っちゃったぞ…」
憂「どうしたんだろ、やっぱり口に合わなかったのかな…?」
純「いや、それはないと思うどなぁ…とにかく追いかけよ!」
憂「うん!」
・ ・ ・
純「トイレかな?」
憂「トイレの方に走って行ったもんね」
ガチャ
純「梓ー、いる?」
憂「梓ちゃん?」
『グスン……うぅ…』
憂「!」
憂「梓ちゃん…?そこにいるの?」
梓『うぅ…ひっく…ぐす…』
純「梓、泣いてるの?」
梓『ちがう』
純「え、でもそう聞こえるけど…」
憂「梓ちゃん、私何か悪い事したかな……?」
憂「お弁当、美味しくなかった?もしかして、なにか食べちゃいけない物とかあったかな?」
梓『ううん…ちがう…グスン』
純「じゃあどうしたの?」
梓『うっ……ぐすん……』
憂「梓ちゃん」
純「梓、こっから出てきてよ」
梓『ま、まって……ぐすん』
純「はぁ…私、なにがなんだか」
憂「梓ちゃん、ほんとに大丈夫なの?」
梓『だっ……大丈夫だから…』
梓『先に食べてて…』
憂「うん……」
・ ・ ・
ガチャ
純「あ、梓帰ってきた」
梓「………」
憂「梓ちゃん、もう大丈夫?」
梓「……うん。ご、ごめんね…」
ザワザワ、ヒソヒソ
純「あはは、私ら注目されてるな」
憂「梓ちゃん」
梓「もう、大丈夫だから。ちゃんと食べるよ」モグモグ
憂「………」
-
〜放課後〜
憂「今日は遅くなっちゃったね」
純「ほんと、さわ子先生ったら人使い荒いんだもん」
憂「あはは、確かに下校時間ギリギリになってから雑用頼まれた時はちょっとびっくりしちゃった」
純「明日、部活の時にギャラ要求しないとね!」
憂「ギャラって」
純「あ、じゃあまた明日、憂」
憂「うんまたね!」
憂(梓ちゃん、またあの公園にいるかな?)
・ ・ ・
憂(もうすぐ暗くなるし、今日はもういないかな?)
梓「……ふんふんふん♪」ジャカジャカ
憂「あ、いた!」
『キャハハハ!アーウケル!』
憂「?」
『でさぁ、国語のコンドーがウザくてww』
『わかるwわかるw』
『あ、あれって中野じゃない?』
『え?あ、マジマジ!中野、中野!』
梓「!」
憂(梓ちゃんのお友達かな?)
憂(二人は知らない制服だ。北高かな?)
他校の女生徒A「おーい」
梓「わ……わ…!」
他校の女生徒A「うわ、ほんとに中野じゃん超なつかしい」
他校の女生徒B「中野こんなとこで何してるの?なにそれギター?」
憂(あと一人は、クラスメイトだ)
他校の女生徒A「お前ギターなんか弾けたんだ?」
他校の女生徒B「こいつなんか部活やってるの?」
クラスメイト「ううん、ギター持ってるとこ初めて見た」
憂(………)
梓「な、なにか用……?」
他校の女生徒A「あ?何その態度、久しぶりに会ったから声かけてあげてるのに」
梓「………」
他校の女生徒B「シカト?調子乗んなよ?」
他校の女生徒A「前みたいに泣かされたいか?なんか言えよ!」
クラスメイト「ちょっとやめときなって、誰か見てたらヤバいよ?」
憂(お友達ではなさそうだね)
梓「………」
他校の女生徒A「こいつマジむかつく。泣き虫のくせに」
梓「もう泣かないもん…」
他校の女生徒A「は!?なにこいつ!」スッ
憂(いけない!)
-
憂「あ!梓ちゃーん!」
梓「?」
他校の女生徒A「?」
クラスメイト「げ、平沢!?」
憂「ここにいたんだ。その人たちはお友達?」ニコニコ
他校の女生徒A「だれ?これ…」
クラスメイト「ひ、平沢…同じクラスのやつ」
他校の女生徒B「………」
憂「はじめまして、平沢憂です」
他校の女生徒A「お、おう…」
クラスメイト「ね…ねぇ、行こうよ。めんどくさいし」
他校の女生徒A「う、うん…あーあつまんねーの」
他校の女生徒B「マックスいこマックス」
憂「………」
梓「………」
憂「梓ちゃん、大丈夫?」
梓「………」コク
憂「さっきの人たちは?二人は違う学校の生徒だよね」
梓「中学の時の友達……」
憂「“友達”?」
梓「うぅ……」
憂「梓ちゃん、私でよければなんでも言ってね?」
梓「う……ん……」
梓「でも、憂には関係ないし…、私がちゃんとしてれば平気だから…」
憂「?」
梓「だけど、さっきは…ありが…とう…」ギュ
憂「わっ?(梓ちゃんが手繋いできた!)」
梓「あ、ご…ごめん…」
憂「ううん、ちょっと驚いちゃったけど」ギュー
梓「あ…うぅ……///」
憂「もう遅いし、一緒に帰らない?」
梓「うん」
梓「あっ…」
憂「どうしたの?」
梓「あの…その……憂……」
憂「なぁに?」
梓「こ、今晩…憂の家行ってもいいかな…?」
憂「来てくれるの!?」
梓「………」コク
梓「迷惑じゃなければ」
憂「えへへ、全然迷惑じゃないよ。大歓迎!」ギュー
梓「うぐ、うぐ…」
憂「じゃあ帰りにスーパー寄ろう。ごちそうしてあげるから!」
梓「う、うんっ」
-
〜平沢家〜
憂「ただいまー」
梓「………」モジモジ
憂「ほら、はやく入って」
梓「ぅ………」
梓「お、お邪魔します…」
憂「いらっしゃい♪」
・ ・ ・
憂「梓ちゃんはそこに座ってくつろいでてね」
梓「うん」
梓「あ、やっぱりわたしも何か手伝う…」
憂「ほんとに?うーんじゃあどうしようかな」
梓「………」
憂「じゃあお野菜を水で洗ってくれる?」
梓「わかった」
ジャーザブザブ
梓「………」ジャブジャブ
憂「〜♪」
梓「………」チラ
憂「ふんふん♪」
梓「………」
憂「よしっ」
梓「………」
憂「…?どうしたの梓ちゃん」
梓「…!っ…や…///」
梓「なんでもない。なんでも…」
憂「あ、お野菜洗えた?」
梓「うん…はいこれ」
憂「ありがとね。じゃあテーブルの方へ持っていこ?」
梓「うん…」
グツグツグツ
梓「お鍋」
憂「蒸ししゃぶだよっ」
梓「蒸ししゃぶ…」
憂「梓ちゃん、お肉好きでしょ?」
梓「うん」
憂「お野菜もたくさん食べてね?」
梓「う、うん…」
憂「もういいかな」カパ
モワモワグツグツ
梓「わぁ…」
梓「カラフルだね」
憂「いろんな野菜をたくさん入れたからね」
梓「うぅ……」ぐ〜
憂「ふふ、ちょっと待っててね」ヨソイヨソイ
憂「はい、梓ちゃん」
梓「ありがとう」
憂「じゃあ、いただきます」
梓「いただきます」
梓「………」モグモグ
梓「おいしい」モグモグ
憂「ほんと?ありがとう!」
梓「うん、ほんと」
梓「憂、料理凄く上手だね」
憂「えへへ、でも梓ちゃんも手伝ってくれたでしょ?」
梓「野菜洗っただけだよ」
憂「とっても助かったよ?」
梓「……えへへ」モグモグ
-
梓「あ…えぇと、おかわり」
憂「はぁい、よそってあげるね」
憂「あれ?梓ちゃん、しいたけは?」
梓「………」
憂「残ってるけど、もしかしてしいたけは嫌い?」
梓「ちょっとだけ…」
憂「梓ちゃーん?」
梓「ご、ごめんなさい…あとでちゃんと食べるから…」
憂「私が食べさせてあげようか?」
梓「え?」
憂「ほら、あーん♪」
梓「えっ…うぅ……」
憂「あ、ごめん…嫌いな物は仕方ないよね。無理しちゃいけないね」シュン
梓「………?」
梓「………」
梓「あ、あーん」
憂「!」
梓「あー…」
憂「あはっ!はい、あーん」
梓「むぐ」
梓「………」モグモグ
憂「どう?」
梓「………」ゴクン
梓「憂の料理でなら食べられそう」
憂「よかった」
憂「今日はいっぱい食べてね」ヨソイヨソイ
梓「………」
憂「どうぞ」
梓「………」モグモグモグ
憂「うふふ」
梓「憂の料理、ほんとにおいしい」モグモグ
憂「ありがと梓ちゃん」
梓「うん、ほんとに…」モグモグ
梓「おいしい…」モグモグ
憂「?」
梓「うぅ…ぐすん…うっ…」
憂「えっ、梓ちゃん…?」
梓「ぐすん…うぅぅぅ…」
憂「ど、どうしたの?」
梓「うぅぅ…うい……」
憂「どうしたの梓ちゃん!?なんで泣いて…」
梓「ちがう…ぐすっ…ちがうの…」ポロポロ
憂「?」
梓「うれしくて…憂がこんなにしてくれて…」ポロポロ
憂「!」
梓「憂はなんで…うぅっ…なんでこんなにやさしくしてくれるの…?」
憂「え?」
憂「それは…」
梓「今日ね…憂にお弁当貰ったとき、すごく嬉しかった」
梓「私は軽音部のお誘いを断ったのに、憂は…憂は……ぐすん」
憂「梓ちゃん…」
梓「お昼の時、突然トイレに行ったのも、憂のお弁当がおいしくて…ほんとにうれしくて、我慢しても涙が止まらなくて…」ポロポロ
憂「そうだったんだ」
梓「ねぇ、憂…憂はどうしてここまでしてくれるの?」
憂「どうしてって、理由なんか無いよ」
憂「私は梓ちゃんが好きなだけだよ」
-
梓「な、なんで…?どうして私なんか…」
憂「なんでって………うーん…」
憂「えへへ、なんでだろ?」
梓「………?」
憂「でも一つだけ。私は梓ちゃんの笑ってる顔がすごく好き」
梓「ぐすん…」
憂「だから、もう泣かないで」フキフキ
梓「ん……ぅ……」
梓「………」
憂「さ、ほら。まだまだたくさんあるからね」
憂「いっぱい食べて?」
梓「ぐすん……」
梓「うんっ」モグモグ
・ ・ ・
梓「今日はごちそうさまでした」
憂「ほんとに一人で大丈夫?」
梓「うん、平気」
憂「泊まっていってもいいんだよ?」
梓「うーん」
梓「それはまた今度に」
憂「いつでもいいよっ」
梓「うん」
梓「………」
梓「憂、私も憂の事好きだよ」
憂「!」
梓「じゃあね。おやすみ」
憂「お、おやすみ!梓ちゃん、またね!」
梓「ばいばい」フリフリ
トテテテ
憂(梓ちゃん…!)
-
〜数日後・昼休み〜
純「あれっ?今日は梓の分の弁当作ってきてないんだ?」
憂「うん。ずっとそうしてるわけにはいかないって、梓ちゃんがね」
憂「私は構わないんだけど」
純「ま、まぁそうだよね…。憂なら卒業しても作ってくれそうだし」
憂「それは流石にないよ?」
憂「でも、今日の梓ちゃんは一味違うよ」
純「?」
・ ・ ・
憂「梓ちゃーん」
梓「あ、憂。純」
純「梓、自分で弁当作ったんだって?」
梓「う、うん」
憂「ちゃんと作ってきたんだね」
純「もしかして」
梓「うん、憂にお料理教えてもらった」
純「やっぱりか〜!いつの間に」
憂「たまに私の家で晩御飯一緒に作ってるの」
憂「梓ちゃん、家では火を使っちゃダメだから、電子レンジで簡単にできるちょっとしたものとかね」
純「なにそれ、いいなー」
憂「今度純ちゃんも来る?」
純「作る1、食べる9でいいなら!」
憂「作るが1なら食べるも1だね」
純「じょ、冗談だってば!」
純「ところで梓の弁当はどんなかんじ?」
梓「ええと」カパ
純「あ、けっこうちゃんとした弁当だ!」
純「きんぴらサラダ、スクランブルエッグ…これは照焼き?」
憂「あ、それは昨日私の家で作って取っておいたやつだね」
純「なにこれ美味しそう…梓すげーじゃん!」
梓「えへへ…」
憂「さ、食べよ」
〜放課後〜
純「じゃああの公園にいつもいるんだ?」
憂「うん。梓ちゃん、家がすぐそこだから毎日あそこで練習しながら猫と戯れてる」
純「猫と…変わってるな〜」
憂「純ちゃんも行ってみよ?」
純「いいよー。梓がギター持ってるとこ見てみたいな」
・ ・ ・
『アハハハ!ホーラ!』
『かえしてよ!』
憂「あっ!」
純「?」
梓「そんなふうにしちゃダメだってば!」
クラスメイト「あ、あはは…!」
他校の女生徒A「はは!似合ってる?」
他校の女生徒B「似合ってる、似合ってる」
梓「私のギター返してってば!」
他校の女生徒A「このギターカッコいいねぇ!気に入っちゃった」
梓「返してよ…」
憂「ちょっと!」
他校の女生徒B「あ?」
他校の女生徒A「あ、おまえ!…たしか、誰だっけ?」
他校の女生徒B「ぷっ…ww」
純「なんなのあんたら!梓のギター返してやれよ!」
クラスメイト「鈴木も一緒か…」
他校の女生徒A「は?あんた何様?」
他校の女生徒B「モップw」
憂「ねぇ、お願いだからギター返してあげて?」
純「そうだよ。あんたたち小学生かっての…」
他校の女生徒A「は?なに?きこえなーい!」
他校の女生徒B「ぷっ、あはは!」
憂「なんでこんなことするの?」
他校の女生徒A「はぁ〜?あんたらに関係ないじゃん」
他校の女生徒B「なんなのいちいち。しつこいなぁ」
憂「ねぇ、本当に…お願い。梓ちゃんがかわいそうだよ」
クラスメイト「………」
-
他校の女生徒A「もう、うっせーって。いいかげんどっか消えろよ」
他校の女生徒B「しっしっ」
憂「………」
憂「仕方ないね」
憂「………」パカ、ポチポチ
クラスメイト「ちょっと……平沢なにしてんの…?」
憂「110番」
クラスメイト「おい、やめろってなにしてんの!」
他校の女生徒A「あははやってみろよばーか!」
他校の女生徒B「ぷぷぷwww」
純「憂、本気?」
憂「………」ポチッ
他校の女生徒B「………まじで?」
他校の女生徒A「え……」
憂「………」トゥルルルルルルル
他校の女生徒A「はっ。ば、ばかじゃねーの?」
憂「………」トゥルルル…ッ
『緊急電話110番です。事件ですか?事故ですか?』
クラスメイト「いっ…!」
憂「あの、今友達が他の学校の生徒に襲われてて…」
純「まじでやっちゃった…」
クラスメイト「平沢、やめろ!やめろって!」
他校の女生徒A「………」
他校の女生徒B「なぁ、これやばくない?」
憂「すぐに来てもらえますか?」
『場所はどこですか?』
憂「場所は…」
他校の女生徒A「わ、わかった!」
純「!」
他校の女生徒A「わ、わかったよ!返せばいいんだろ?」
憂「じゃあ早く梓ちゃんに手渡してよ」
憂「場所はですね、えぇと…」
純「………」
他校の女生徒A「ほらよ!」ポイ
梓「むったん…!」ギュウ
憂「それでいいの」ピッ
純「あ、あはは…憂、やりすぎ」
他校の女生徒B「なにこいつ…ねぇ、もう行こ」
他校の女生徒A「うん、勝手に仲良しごっこしとけよバカ」
クラスメイト「あ、ちょっと待っ…」
憂「ねぇ、あなたはここに残って」
クラスメイト「え……」
・ ・ ・
-
クラスメイト「なっ…なに…?」
憂「あの人たちはだれ?」
クラスメイト「ちゅ、中学ん時の友達だよ…」
梓「うぅ……」
憂「中学の時もあんな事してたの?」
クラスメイト「い、いや…その…最近はやってなかったし。これはたまたまで…」
憂「そんな事聞いてない」
憂「なんでこんなことするの」
クラスメイト「だって、あいつらが」
憂「あいつらがって、あの二人?」
クラスメイト「あいつらがやってるだけで…私は」
憂「ただ見てるだけだもんね」
クラスメイト「うぅ……私には関係ないし…」
憂「一緒に騒いでたくせに、よくそんな事言えるね」
クラスメイト「………」
憂「なんとか言ってよ!このっ…」スッ
クラスメイト「ひっ!?」
純「憂っ!」グッ
憂「あ…」
純「それはダメだって」
憂「ご、ごめん……」
クラスメイト「………」
憂「ごめんなさい。ちょっとカッとなっちゃった…」
憂「ねぇ、詳しく聞かせてくれる?」
クラスメイト「わ、わかった…」
憂「梓ちゃん、いいかな?」
梓「うん」
・ ・ ・
クラスメイト「中野はさ、ちっこくてどんくさいからよくあいつらの標的になってて」
純「………」
クラスメイト「最初は冗談半分でじゃれあってるみたいなものだったんだ」
クラスメイト「中野も最初のうちは笑ってごまかしてたけど、やっぱ嫌なものは嫌だよな…」
クラスメイト「で、いつだったかある日大喧嘩になって……それからあいつら、中野に陰湿な嫌がらせするようになって」
純「なるほどなぁ…」
クラスメイト「ほんとにごめん!この通り…!」
クラスメイト「私、あいつらに逆らえないから…ずっとあいつらに合わせて面白がってる事しかできなかった…」
憂「………」
クラスメイト「いじめても中野が泣かなくなったから、3年生の時にはあいつらも飽きちゃったけど」
クラスメイト「私たち、中野の学校生活めちゃくちゃにしちゃったよな…ほんとにごめん」
梓「………」
憂「もうあの人達を梓ちゃんに近づけないでね」
クラスメイト「うん、わかった…」
憂「もしまたここに来るようなら、次は私と純ちゃんが直接あの人たちの所に行くから」
純(え、私も…?)
憂「そう伝えておいてね?」
クラスメイト「分かった…」
梓「………」
憂「梓ちゃん、これでいいかな?」
梓「………」フルフルフル
憂「ん?まだ他に…」
梓「そ、そうじゃなくて…私も、悪いから…」
憂「?」
梓「私もあの時、ちゃんと言えてればこんな風にはならなかったから…」
梓「私も、謝らないと…」
クラスメイト「中野…」
憂「中学の時の喧嘩の事?」
梓「うん」
梓「あのときは私がいけなかったの。だから、できればちゃんと謝りたい…」
純「梓、そこまでしてもあいつら多分聞かないぞ?」
梓「でも、わたしは…このままじゃ嫌だから…」
憂「梓ちゃん」
憂「時間はかかるかもしれないけど、協力するからね」
梓「ありがとう」
純「私も!」
クラスメイト「中野、本当にごめん……私もあいつらにそうちゃんと言っておくよ」
梓「うん」
・ ・ ・
純「さーて。ひと段落したことですし帰りますか〜」
憂「お腹すいた?」
純「そりゃもう!いやほんとに」
憂「みんなで私の家でご飯食べる?」
純「おっいいね〜行こう行こう」
梓「えへへ」
クラスメイト「あ、じゃあ私は帰るね」
憂「あなたは晩御飯いいの?」
クラスメイト「うん…じゃまた」
梓「また明日」
クラスメイト「…!じゃあね、中野」
-
〜平沢家〜
梓「あははは」
純「でさ、スミーレに“うわぁやばいってそれ!早く舐めとれ!”って言ったらホントに直のほっぺ舐めてさ!」
憂「あの時はびっくりしたね」
純「その後、直ずっと硬直してたし」
梓「あはは!」
純「あ、もうこんな時間だ。ごめん帰るね」
憂「あれ、もう?」
純「そういえば約束してたんだった。あっちゃんと」
憂「あ、お家の用事なんだ」
純「うん、そういうことだから」
・ ・ ・
憂「じゃ、気を付けてね!」
梓「またね純」
純「じゃあね〜。あ、憂ちょっと」
憂「?」
純「(梓、軽音部)」
憂「(どうだろう?)」
梓「?」
純「(もう一回、考えておいてね!)」
憂「(そのうちね)」
純「じゃそういうことで!」バタン
梓「………」
憂「梓ちゃんはどうする?」
梓「私は…」
憂「?」
梓「泊まってもいい?」
憂「もちろん!じゃあもういい時間だし、片付けてお風呂入っちゃおうか」
梓「うっ…うん」
・ ・ ・
-
カポーン
憂「梓ちゃんの髪、綺麗だねー」
梓「そう?」
憂「うん、澪先輩みたい」
梓「澪先輩?」
憂「軽音部の先輩。ベースやってた人だよ」
梓「あぁ、ライブで見たよ。綺麗な人だよね」
憂「でしょ?ベースもとっても上手なんだよ」
憂「ちょっと恥ずかしがり屋で怖がりだったりするけど」
梓「あはは、そうなんだ。なんか意外だね」
憂「でしょ?えへへ」
梓「………」
憂「………」
梓「………」
憂「………」
梓「………」
憂「………」
梓「私ね…」
憂「?」
梓「あの人たちにいじめられても、仕方ないって思ってた」
梓「私も酷い事言っちゃったから」
憂「………」
梓「だから、中学校の時はとにかく泣かないようにしたの」
梓「泣かないように…何かされてもとにかく反応しないようにしてた」
梓「そうすれば、あの人たちは私に何もしないようになるから」
憂「そうだったんだ」
梓「憂と純の軽音部のお誘いを断ったのも、それが理由…」
憂「えっ…?」
梓「私、怖くて…」
梓「また同じことになるんじゃないかって…」
梓「私が何かしたら、またあの人たちにいじめられるんじゃないかって…」
梓「ううん…もしかしたら憂たちとそうなっちゃうかも…」
憂「そんなことないよ!」
梓「でも…でも…絶対なにか、みんなに迷惑かけちゃう…!」
梓「いまだってそうだよ。憂達は関係ないのに、いつも助けてもらってばかり」
梓「だから、私は何もしないほうがいいの」
梓「私が我慢していれば何も起きないから」
憂「梓ちゃん……」
梓「………」
憂「………」
・ ・ ・
-
憂「ベッド、ちょっと狭くなるけど」
梓「わたし小さいから大丈夫」
憂「あはは」
モゾモゾモゾ
憂「よいしょっと、えへへ」
梓「ん…///」
憂「梓ちゃん」
梓「?」
憂「もっとこっちへきて」
梓「へ…?」
憂「ん……」ギュッ
梓「ふぇっ…!?///」
憂「梓ちゃん、もう我慢なんてしなくていいんだよ」
梓「う、うい…」
憂「辛い事があったら、我慢しないで」
憂「私はいつでも、梓ちゃんのそばにいるから」
梓「うい…ぐすん…」ポロポロ
憂「梓ちゃん」ナデナデ
憂「梓ちゃん、私ね…梓ちゃんに会えてほんとによかった」
梓「……?」
憂「純ちゃんの言う通り…私、寂しかったんだね」
憂「軽音部の先輩達が突然いなくなって、お姉ちゃんがいなくなって…すごく寂しかった」
梓「純は?」
憂「もちろん純ちゃんもとっても大切なお友達だよ」
憂「でも、梓ちゃんは特別」
憂「なんでだろう?不思議だね」
憂「梓ちゃんといると、なんだかとっても安心する」
梓「………」
梓「私も」
梓「私も、憂といるのが好き」
梓「憂…大好き」
憂「私も梓ちゃんの事が大好きだよ」
・ ・ ・
-
〜数日後・放課後〜
憂「ちょっと遅れちゃった」
憂「もうみんな練習してるかな?はやく行かないと」
梓「憂」
憂「?」
梓「ちょっといいかな?」
憂「あ、梓ちゃん。どうしたの?」
梓「その…私も…」
梓「私も、軽音部に入りたい」
憂「…っ!」
憂「入ってくれるの!?」
梓「………」コク
憂「えへへ、ありがとう!」ギュウー
梓「ん…///」
憂「じゃあいこ?」
梓「うん!」
・ ・ ・
コツコツコツ
憂「ここが部室」
梓「うん……」ドキドキ
憂「緊張してる?」
梓「ちょっとだけ」
憂「大丈夫、みんなとってもいい人だよ」
憂「純ちゃんもいるし」
憂「だから、ノックしてみて」
梓「……う…ぅ…ん」
憂「………」
梓「ん……」ビクビク
憂「………」
憂「梓ちゃんこっち向いて」
梓「?」
憂「んっ…」チュッ
梓「!?」
梓「う、憂…!///」
憂「おまじない」
梓「………」
梓「ありがとう」
憂「さっ、いこ?」
梓「うんっ」
トントンッ…
『あ、誰かきた?はーい、どうぞ〜!』
梓「憂」
憂「?」
梓「私、もう泣かないよ」
ガチャ
おわり
-
終わりです。
最後まで読んでくれた方がいれば、ありがとうございました。
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おつおつ
-
おつー
-
変則的ですが、良い憂梓でした。
他高の女子は暴漢に襲われるといいね。
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