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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part8
1■■■■:2010/04/12(月) 21:13:04 ID:CfJQPtog
上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!
別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。
上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、
ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!

◇このスレの心得
・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。
・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。
・次スレは>>970ぐらいの人にお願いします。

◇投稿時の注意
・フラゲネタはもちろんNG。
・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。
・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。
・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。
・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。
・ちなみに1レスの制限は4096byte、行数制限は無い模様。

◇その他の注意・参考
・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。
・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。
・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。
・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

◇初心者(書き手)大歓迎!◇

前スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part7
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1269624588/

※ 参 考 ※
禁書風味SSの書き方
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/1682.html
※当スレはSSの形式に基本的に制限はなく台本型等なんでも歓迎です。

まとめページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.html

スレのテンプレ
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html

2■■■■:2010/04/12(月) 21:13:33 ID:CfJQPtog
■過去スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1256470292/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1262324574/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part3
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part4
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1265444488/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part5
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1266691337/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part6
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1268223546/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part7
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1269624588/

■関連ページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/
まとめページの編集方針
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/213.html

■関連スレ
上条当麻×御坂美琴 専用雑談スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1269245969/
とある魔術の禁書目録 自作SS保管庫スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1263738759/
とあるSSの禁書目録 PART7
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1262619009/
【とある科学の超電磁砲】アイツに51する御坂美琴カワイイ
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1270731889/
【とある魔術の禁書目録】上条当麻の留年危機8回目
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1270987268/

■関連スレ(R-18)
とある魔術の禁書目録 26フラグ目
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1270447978/
禁書でエロばなし
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1137215857/

3■■■■:2010/04/12(月) 21:34:56 ID:5RbcWsC2
>>1


41-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/04/12(月) 21:40:09 ID:qlrJWFdc
>>1

5■■■■:2010/04/12(月) 21:47:44 ID:qRJprZu2
スレ立て乙

6■■■■:2010/04/12(月) 21:47:52 ID:/70eyigs
>>1乙です!

7■■■■:2010/04/12(月) 21:48:46 ID:quoQc8IA
>>1


8■■■■:2010/04/12(月) 21:50:33 ID:9LfORwFY
>>1乙にする!

9■■■■:2010/04/12(月) 21:51:00 ID:Ql2.0xgA
>>1
乙!

10■■■■:2010/04/12(月) 21:53:29 ID:vLkJ0DsU
>>1
乙!Σd(・∀・)

11■■■■:2010/04/12(月) 22:07:01 ID:wuI5OSdc
>>1
乙なのよな。

12■■■■:2010/04/12(月) 22:13:34 ID:sPQyERCQ
>>1
乙です

13■■■■:2010/04/12(月) 22:27:04 ID:Ns4S0RWE
>>1
乙ですの!

14■■■■:2010/04/12(月) 22:42:51 ID:LRrbVxzc
>>1
乙である

15■■■■:2010/04/12(月) 22:59:01 ID:qWHfqKjw
>>1
乙なんだよ!

16■■■■:2010/04/12(月) 23:00:42 ID:WbJ/iy9I
上条さんと美琴がなぜか1つの寝袋に2人で入ろうと悪戦苦闘する夢を、なぜか第3者の視点で見たんだぜ。
跳ね起きて、忘れまいと散々脳内リピートw

かべらさん、良かったら使ってね。

17■■■■:2010/04/12(月) 23:02:35 ID:KOU3Ho1I
>>1
乙、ビリビリ♪

18スピッツ ◆MikotoOPNo:2010/04/12(月) 23:10:01 ID:ZvR9TWU.
>>1乙
今はあまり書けないけど陰で応援していますw
(トリップは新スレ記念的な意味でのネタ)

19■■■■:2010/04/12(月) 23:46:08 ID:EgbhQQSc
>>1
乙です!
>>16
なにその夢!俺も見たいww

20■■■■:2010/04/12(月) 23:48:04 ID:NQGkFub6
乙ぅぅぅぅぅぅぅぅ

21■■■■:2010/04/12(月) 23:48:48 ID:eVGew0BA
>>1 乙

原作が完結するまで、どうかこのスレに活気がありますように!!!

22■■■■:2010/04/12(月) 23:51:30 ID:UCaBUnM.
>>16
一瞬、超少女明日香を思い出したw

23■■■■:2010/04/12(月) 23:52:48 ID:iqCgL0DM
はやくもpart8か!作者のみなさん応援しています

24キラ:2010/04/12(月) 23:55:43 ID:6TKs4nd.
>>1
煮詰まった気分転換に……ってとりあえず乙です。

後編はまだ5000字しか書いてないです。
まだ時間がかかりそうですが、週末前に投下を目指して頑張ります。

25ほのラブ同盟:2010/04/13(火) 00:01:22 ID:CPins.Pk
パート8おめでとうございます!
早速ですが、投下してもよろしいでしょうか?

どなたにも御迷惑でないようなら、5分後に2・3レスお借りしたく思います。

26とある少女のういういdays4(1):2010/04/13(火) 00:06:11 ID:CPins.Pk
―――とある寮の一室

ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、今日は休日であるため、上条と美琴は昼食を一緒にとっていた。
今日のメニューはカルボナーラスパゲティ。
もちろん、『美琴さんお手製の』と頭につく代物だ。

「ご馳走さま」
「お粗末さま」
「今日も美味しかったよ、美琴」
「ふふーん、当たり前じゃない。料理は愛情だもの」
「なるほど。そりゃ旨いわけですね、っと」

上条は立ち上がると、美琴の分の皿も重ね、台所へ運んでいった。
いつからか、美琴が料理、上条が片付け、というルールが二人の間で出来上がっていた。
美琴は、カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる台所の方を眺めながら、自然と二人だけのルールが決まっていくことに小さな幸せを感じていた。
こうしていつの間にか、自分たちの生活が築き上げられていくのだ。
二人の関係にどこか永遠めいたものを感じ、美琴はいつの間にか優しい笑みを浮かべていた。

「どうした、美琴。何かいいことあったのか?」

洗い物を終えた上条が部屋に戻ってきた。
美琴のすぐ隣りに腰を下ろし、肩をぴと…っとくっつける。

「うふふ、まぁね。ほんの小さなことよ」
「そうか?まぁ、美琴が幸せなら俺は嬉しいぞ」
「ふふっ、ありがと」

にっこり、という表現がそのまま当てはまるような笑顔で、上条の肩に頭を乗せた。
触れ合った所から、お互いの熱を感じる。
体の、心の、芯からじんわりと暖まっていく感覚。

―――と、

「ふ…にゃあ…」
「ん?どうした?」

ずるっと美琴の頭が肩を滑る感覚があり、上条は隣りに目を向けた。

「お前…眠いのか?」
「うー…昨日あんまりよく眠れなかったから…」
「そうだよな。夜中に起こしちゃったし、その後もあんまり寝付けなかったもんな」

言うと、上条もふわぁぁ、と大あくびをした。

「あ、うつったー」
「えぇ。日本人の特徴でございますよ」

そう言いつつ、また大きなあくびをする。

「当麻も眠くなっちゃったの?」
「そうだなぁ。お前が気持ちよさそうにしてるからうつったんだな」
「じゃあ、お昼寝しよっか?」
「今から?こんな昼間から寝るなんて贅沢な時間の使い方ですなぁ」

いたずらっぽく上条が言うと、美琴はあくびでうるんだ瞳を向け、上目遣い気味に上条を見た。

「ダメ?」
「いや、たまにはこんな贅沢も良いんじゃないか?」

子猫のように、きらきらした目で見上げる美琴が、可愛らしくもおかしく思えて、上条は微笑みを浮かべる。

「やったぁ。あ、パジャマ着るー」

喜びの声を上げた美琴は、朝脱いで畳んでおいたパジャマを取り、脱衣所へノロノロと入って行った。



「お待たせしました」
淡いオレンジのパジャマに身を包み、美琴が戻ってきた。
着替えてる間に少し睡魔が遠のいたようで、足取りは割りとしっかりしている。

「本日2回目のパジャマ姿か。早くも気に入って下さったようで、上条さんは嬉しいですよ」
「うふふ、このパジャマを着てると、当麻に包まれてる気がするの」

満面の笑みで自分の身体を抱き締める。
その表情を見て上条は、心底プレゼントをして良かったと思った。
この少女の笑顔のためなら、どんなことだってしよう、という決意が湧き上がる。

「さて、寝ますか!贅沢な時間をたっぷり楽しみませう」

自分の中で生じた気恥ずかしさを誤魔化すように、上条は早速その場にごろんと横たわった。
もちろんベッドは美琴のために空けてある。
まさか自分がベッドに寝て、大切な彼女を床に寝かせるわけにはいかない。
さて惰眠を貪るとしようと思ったそのとき、自分の服がぴくぴくと引っ張られる感触がした。

「美琴さん?どうしました?」
「あの…ね…一緒がいいな」
「え?あの…?」
「当麻が側にいてくれたら、きっと怖い夢も見ないと思うし…ダメ…かな…?」

昨晩の悪夢を思い返したのか、美琴はやや伏し目がちになっている。
その表情に、上条はついさっき自らに湧き上がった決意を思い返す。
大切な恋人の、笑顔を守る。

27ほのラブ同盟:2010/04/13(火) 00:08:05 ID:CPins.Pk
「ごめんね、困らせること言って…昨日ダメって言われたばっかりなのに――」
「まったく…仕方ねぇな」

美琴の恐れを含んだ言葉を遮り、上条は立ち上がり、少女の首に左手を回し、右手で膝を抱え上げた。
簡単に言うならば、俗に言う『お姫様だっこ』である。

「え、と、当麻!?」

驚きと照れの混じった声を聞き流し、上条は美琴をそのままベッドへ横たえた。
そして自分もすぐ隣りに体を沈める。
右手は離し、左手はそのまま。
簡単に言うならば、俗に言う『腕枕』である。

「―――!?」

美琴は最早声にならないと言わんばかりに、顔を真っ赤に染めている。

「これでいいんだろ、美琴。お前が安心して眠れるまで、俺が側にいてやるよ」
「当麻…」
「お前が俺のことを大切にしてくれてるように、俺も大切なお前のことを守りたいんだよ」
「―――!!」

美琴の瞳から、雫がこぼれた。
上条はただただ純粋に、あぁ綺麗だな、と思う。

「私…毎日泣いてばかり…」
「ごめんな…?」
「ううん…この涙は、嬉しい涙よ…安心して一緒にいられるのが…幸せ」
「良かった…。お前が幸せなら、俺は幸せだ」
「もう…またそんな恥ずかしいこと言って」

くすっと笑うと、美琴は目を軽く拭い、枕にしている上条の左腕に頬をすり寄せた。

「あったかい…当麻、こうしてて痺れないの?」
「いや、俺もちょっと気になったけど、これがまた全然」
「そっか、良かった」

そう言うと、美琴は腕枕のまま、ぴったりと体を寄せた。
ほんの少し、自分の足を上条のそれと絡めるようにして、全身をくっつけた。
伝わる熱に、上条は一瞬、気恥ずかしさを覚えるが、それよりも少女への愛らしさが上回り、空いていた右腕で美琴の頭をなでる。
美琴は気持ち良さそうに目をつぶり、甘えるような声で口を開いた。

「こうしてると、ぴったり一つになった気分」
「そうだな。頭の位置も丁度良いし、元からこうなるために生まれてきたみたいだな」
「運命の赤い糸ってやつ?」
「一応、幻想殺しのおかげで上条さんに赤い糸は無いと聞いてましたがね」
「そうなの?」
「初めてインデックスに会った頃にな。そんときは、なかなかショックだったんだぜ」

初めて聞く話に、恋する乙女である御坂美琴は、一瞬、寂しそうな表情をした。
しかし、直後に何か閃いたとばかりにその顔を上条の方へ向けた。

28とある少女のういういdays4(3):2010/04/13(火) 00:08:52 ID:CPins.Pk

「ねぇ、当麻」
「ん?」
「アンタに赤い糸が無いなんて…そんな幻想、私がぶち殺してやるわよ」

少しの照れを含みながら、それでもまっすぐ上条を見つめて言ってのけた。
しかし、当人は何を言われたのか脳内処理に時間がかかったようで、二人きりの部屋に数秒の沈黙が生まれ―――

「ぷっ…あっはっはっはっは―――」
「な、なななな、何よ!私だってたまには気の利いたこと言いたかったのよ!笑うなー笑うなー!」

突然大きな笑い声で沈黙を破った上条に、美琴は真っ赤な顔で叫ぶ。
恥ずかしさで頭の中はいっぱいで、雷撃を出す余裕もないようだ。

「あはははは、ごめんな美琴、ちょっとあまりに予想外すぎて」
「ばかー!ばかー!当麻のばかー!」

ますます顔を赤く染め上げた美琴は、腕枕状態から体を起こし、ぽかぽかと両手で上条の胸を叩き出した。

「私だって恥ずかしかったけど、当麻のこと心配なんだからー!大切なんだからー!」
「すまんすまん、ちょっと衝撃的だっただけだよ」
「知らない知らない!もう当麻のことなんて知らないもん!」

ぷくーっとふくれた顔をそっぽに向ける美琴。
興奮状態だったためか、目には軽く涙が浮かんでいる。

「美琴」
「ふん、何よ。今さら謝っても許してあげないんだからね」

まだ顔は背けたまま、言葉を返す。
そこで上条は、美琴の視界に入らないように手をのばし、美琴の肩を一気に抱き寄せた。

「きゃっ―――」
「美琴、ありがとう。お前はいっつも、俺のことを見ていてくれるんだよな」
「………当たり前じゃない」

上条は再び腕枕をして、美琴を抱き締めた。
二人の心音がとけて混ざっていく感覚。
それが、たまらなく愛しい。

「美琴、ここはお前だけの特等席だよ」

抱き締めている右手で美琴の頭をなでる。
再び美琴は目をつぶり、その幸せな感触に浸ろうとするが、パッと顔を上げ、上条へ向けた。

「だーめ。そんなことじゃ許しません」

心なしか、その顔が赤みを帯びているように見える。
しかし、その目はまっすぐに上条を見つめている。
そのまま顔を寄せ、愛の言葉を囁く。


「ここも―――」

腕枕をしている手に頬を寄せ―――

「ここも―――」

上条の頭に両腕を回し―――

「ここも―――」

唇を重ねた―――

「みんな、私だけの居場所なの」



ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、恋人たちは想いを重ねる。





とある少女のういういdays4―つづく?―

29ほのラブ同盟:2010/04/13(火) 00:10:18 ID:CPins.Pk
以上です。
(2)のタイトルをミスりましたorz

前回美琴さんに辛い思いをたくさんさせてしまったので、今回はハイパーハッピータイムを味わってもらいました。

稚拙な文章ゆえ、読みづらいこと多々あると思います。
またご指摘いただければと存じます。

こんな文章ですが、お楽しみいただければ光栄です。

30ION:2010/04/13(火) 00:19:33 ID:/vPshvEk
ほのラブ同盟さん!GJ!!

31■■■■:2010/04/13(火) 00:33:23 ID:ue0Qi4a6
>>29
谷山浩子の「海の時間」のような甘いひと時GJです!

32■■■■:2010/04/13(火) 01:14:26 ID:7UIF7pA6
>>29
GJです!

でもちょっと気になった点を・・・
>「初めてインデックスに会った頃にな。そんときは、なかなかショックだったんだぜ」

これって記憶喪失前の話ですよね?

33■■■■:2010/04/13(火) 03:05:29 ID:AxEO0KoQ
>>29
GJです!Σd(・∀・)
自分はこの作品がとても好きです
二人のほのぼのとして、甘い雰囲気がたまらない
次回も(あるのかな?)楽しみにしてます!

34ぴんた:2010/04/13(火) 06:28:25 ID:7Wdx2cNk
>>1スレ立て乙です!

>>キラさん
5000字ですか…すごいですね(*´ω`*)
超期待してます♪

>>ほのラブ同盟さん
甘ぇ…超GJです!
自分も>>33さんと同じくほのぼの甘い生活の描写が大好きなので
次回作に期待してます!

35■■■■:2010/04/13(火) 07:22:56 ID:UIY1FqEw
>>29
ほのラブ同盟氏GJです!!

36コッカラ:2010/04/13(火) 08:26:13 ID:Eu5zJNNw
>>29
美琴が可愛すぎです!!GJ!!
それにしてもこのスレの早さは異常ですww >>1乙です
一つ書いてみたので投下したいと思います
注意点としては原作をベースにしてますが別の意味で「上条美琴」としています
もちろんいちゃいちゃはしています
誰もいなければ5分後ぐらいに投下したいと思います

37例えばこんな上条美琴 1:2010/04/13(火) 08:30:07 ID:Eu5zJNNw
上条当麻は不幸な人間だ。
例え彼が最新のテクノロジーが結集し230万人の超能力者を生み出す学園都市の人間であっても、そのことは変わらない。
だから今日7月19日だって様々な不幸に見舞われた。
明日から夏休みだというのに担任の月詠小萌先生から明日から毎日補習でーすと言われて、
町をとぼとぼ歩いているとバイクや車に轢かれそうになること4回、不良から少女を助けるために追われること2回、
階段からこけること3回、財布を落としかけること5回とあげればきりがなくなってくる。
いらいらしながらも明日からの補修のためファミレスでおもいっきり食べようと思い、席についてメニューを見始めた。
すると奥の方の席から不良と女子校生の会話が聞こえてきた。
「―――――ねーいいでしょーおねがいよー」
「だからガキはとっととお家に帰ってねんねしてろって」
「まぁいいじゃねぇか。おれこういう娘でもいけるから――っと!?」
不良の一人がその娘に手を伸ばそうとするとするりとその娘はよけた
「えー、でもまだ中学生だしそういうのはちょっと…」
「いいじゃねえかよぉ。おれの言うこと聞けば譲ってやる…っておいなんで泣いてんだよ!?」
「…ヒグッ、グス、わ、私、親に期待されてここに来たのに全然レベル上がらなくて、グスッ、だからもう他に頼るものがないの。
 だから、ヒッグ、いくらでも払うから、…ダメかな?」
うる目上目遣いで不良を見つめると不良は硬直して動かなくなってしまった。
すると他の仲間とひそひそ喋っていた不良の一人が女子校生に近づいた。
「わかった、ただしアンチスキルやジャッジメントなんかにチクルなよ」
「(ニヤリ)…わーい、お兄さんありがとう!!」
とその娘は財布を取り出した。
それを見た上条は
(どういう事情かわからんがあの娘は確実にゆすられる!!しかたないここは…)
と思うと席を立ち不良たちのところに向かった。
「これこれ童子ども、こんな少女の財布からたかってるんじゃない!情けないと思わないのか!!」
「はぁ?おまえ何様のつもりだよ?邪魔すんじゃねぇ!!」
と不良は語気を荒げる。
(…3人か、このくらいなら相手にできる…)
上条は勝算ができると威勢よく挑発した。
「はっ、人数が多くないと女の子1人にもちょっかい出せないんですか?そんなんじゃ俺に勝てるわけ――」
「はーすっきりした」「おれの料理きたかな」
「あれ、こいつ誰?」「この娘、かわいいじゃねぇか」
上条が汗をたらしながら振り向くと、トイレから大勢の不良が出てきた。

38例えばこんな上条美琴 2:2010/04/13(火) 08:32:31 ID:Eu5zJNNw

「……………」
「あっ、おまえらこいつがうぜえからぶっ飛ばしてこようぜ!!」
「オッケー」「いいぜ」「能力試してみたかったんだ〜」「いっそ砂にしちまおうぜ」
上条は女子高生じゃないんだからまとまってトイレなんかいくなーと思いながら、店を飛び出し逃げ出した。
「あっこら待てや!!」「死ねやゴラァァァァァ!!」「喰らえ、パイロキネシス!!」
上条は振り向いて不良から出された能力を右手でかき消すと全速力で駆けだした。

上条は15分ほど逃げていると鉄橋の所までくると後ろを振り向いて追手を確認した。
「はぁはぁ、いないようだな、あー助かっ…!!」
すると暗闇で一瞬フラッシュのように光るとオレンジ色の一閃が音速を超えて上条の所にきた。
とっさに右手を前に出し一閃を受け止めると、暗闇から女子校生の声がした。
「ったく、なにやってんのよアンタ。不良を守って善人気取りか、馬鹿兄貴」
「まさか連中を追い払うのにレールガンなんか打ったのか、美琴?」
「バカ兄、そんなことしなくてもレベル0の不良共ぐらい、軽くあしらえるわよ」
はぁ〜と上条はため息をついた。
「…お前が学園都市のレベル5で第3位なのはよくわかるけどさ、人を見下すような態度止めといた方がいいって言ってんだろうが!
 父さんや母さんだってお前をレベル0の連中をあしらわせるために学園都市に送ったんじゃねーだろ!」
「なによ!!バカ兄なんてレベル0でなんの能力も出ない癖にあんな無茶して、人に説教できる立場なのかしら!?
 私がいなきゃスキルアウトにボコボコにされているんだから!!」
「はん!俺に全く勝てたことのないお前が俺の心配するだなんて大したもんだぜ!この当麻さんならあんな連中を撒くぐらいなんてこともねーよ」
「だ〜か〜ら〜いつまでも自分が不幸の避雷針になるようなことはやめなさいって言ってるでしょ!!
 パパだってアンタの不幸体質を気にして色んなオカルトグッズ買い漁っているんだし、みんなアンタのことを気にして―――」
「だぁ〜〜もうこんな話をこんなところでするな!!よし!今日はお前が家に来て飯を作れ!そのあとたっぷり説教してやる!!」
「な、何でよ!だいたい私だっていろいろと忙しいんだから!」
「夏休みになって不良を相手にしなきゃならないような用事についても聴かせてもらうからとにかく家に来なさい!以上!!」
一方的に話を打ち切ってしまう当麻に美琴は頬を膨らませムスーとしていたが、あることを思いついた。
「…ふっふーん、ホントはあんた夏休みになって友達に会えないから寂しいんじゃないの〜?彼女もいないし誰かに慰めてもらうために妹である私を家に連れ込むと?
 土御門のお兄さんもそうだけど、アンタもシスコンなんじゃな〜い?」
「なっ!べべ別に俺は土御門とは違って紳士ですから実の妹に手を出すだなんてそんなアブナイことはしません!!」
「別に私は手を出すだなんて言ってないし〜。そんなこと考えてるだなんてやっぱり変態さんなんじゃ―――」
「だああああ!そんなに言うんだったらもう家に来んな!!兄をバカにしていると家に置いてあるファンシーグッズやゲコ太のぬいぐるみ全部捨てちまうぞ!!」
以前は常盤台の女子寮に持ち込んだのだが同室の白井黒子がいつも白い目で見てくるので耐えきれず当麻の部屋に移したのだ。
大切なグッズを盾に取られた美琴は今までの余裕の表情から一変してあわててうる目で当麻を見つめてきた。
「やめて!!私の大切なゲコ太やグッズを捨てないで!!お兄ちゃんお願いよ、うっくひぐっ…」
「……はあ〜、相変わらず泣き虫だな美琴は。冗談に決まってんだろ。少しは反省しろよ」
当麻は泣いている美琴の頭を右手で撫でまわすと自然と涙が引いていった。そしてだんだんと安心した気持ちになってくるのだった。
「…ぐす、ごめんねお兄ちゃん…」
「よし、じゃあスーパーに行って食材買いますか。こんなに遅いとさすがにセールはやってないけど、今日は奮発するか」
「…うん、わかった」
そうして仲直りした2人は手をつないでスーパーへと歩いて行った。ときどき美琴は右手に抱きついてきて甘えてきたが当麻は頭の中で理性と本能がバトルしていて必死だった。

39例えばこんな上条美琴 3:2010/04/13(火) 08:34:33 ID:Eu5zJNNw

「いただきま〜す♪」
「…いただきます」
午後9時
上条兄妹は遅い夕食を食べ始めた。
当麻は主に一人暮らしなので自炊に慣れているし、美琴は名門常盤台中学で一流の料理を学んでいた。
よって学生同士の食卓だが盛り付けも半端なく綺麗で味も満点だった。
「ん〜おいし〜♪やっぱりお兄ちゃんの野菜炒めは癖になるわ〜」
「そうか?美琴のこのソテーもおいしいじゃないか。これならいい嫁になれそうだな」
「ま、今のとこ彼氏なんていないから私の料理を食べれるのはお兄ちゃんだけだね♪もしこのまま結婚しなかったら…お兄ちゃんがその…夫になるんじゃ―――」
「うぐっ!!ん〜ん〜!!」
「ちょ、ちょっと!喉詰まらせないでよ!ほら、水!!」
美琴からコップを受け取ると勢いよく水を飲み干した。
「ごくごく…ぷはっ!ぜぇぜぇ…み美琴、お前なら自然と男が付いてくるよ。俺なんかよりいい男を自分で見つけることだ」
「……(今のとこお兄ちゃん以外にいい男なんて見つからないのに…鈍感だなぁ)」
「ん、どうした?」
「別になんでもない」
美琴はため息をついて美琴特製の卵スープを飲んだ。

「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
午後9時半ごろ
2人は夕食を食べ終わり皿を片付け始めた。美琴は皿を洗い、当麻はテーブルを拭いていた。
「美琴、そういえば寮には遅くなるって電話入れたのか?」
「うん。泊まっていくって伝えといた」
「えっ!泊まるのか!?」
「だってどうせ説教で遅くなるんでしょ?だったら明日から夏休みだし別にいいじゃない」
「いや、だってお前の布団邪魔だったから片付けちゃったぞ」
「え!ちょっと何でよ!!泊まりに来れないじゃない!」
「だってお前あの白井っていうルームメイトになってから家に来なくなったじゃん」
美琴は6月の中旬ごろ白井黒子という同居人を迎えた。
それまで美琴は別の同居人と過ごしてきたのだが常盤台のエースの宿命なのかどうも孤立感があった。
だから寂しさを紛らわせるために当麻の部屋に度々泊まりに来ていたのだ。
それが白井が来てからは寂しくなくなったのか一度も来なくなったのだ。
「そりゃ…あの子がかまってほしいようだし忙しかったんだから」
「…まいいけど、今日はどうすんだ?なんなら俺が床で寝るから―――」
「ベッドで……一緒に寝よ…」
「………はい?」
「だ〜か〜ら〜添い寝してって言ってんのよ!!恥ずかしいんだから何度も言わせないでよ!!」
顔を真っ赤にして美琴は叫んだ。当麻は呆然とした。
確かに昔は一緒に寝ていたこともあるが、もう年頃のお嬢様になったしそんなことはもうないだろうと思っていた。
だがこのお嬢様は恥じらいながらも添い寝してと叫んできやがった。
おもわず変なことを想像し当麻も真っ赤になった。

40例えばこんな上条美琴 4:2010/04/13(火) 08:37:08 ID:Eu5zJNNw

午後10時過ぎ
2人とも風呂に入って上がった。テーブルに向かい合って座った。
当麻がジュース持ってきて座ると得意の説教を30分間続けた。
それが終わると2人ともクタクタになって床に寝ころんだ。
「あーもう!なんでアンタはそんなに言葉が出てくんのよ!!カンニングペーパーかなんか持ってんじゃないの!?」
「お前に言いたいことはたくさんあるからな、次から次へと言葉が出てくるよ。そういえばさ」
ふと当麻はファミレスでの美琴の行動を思い出した。
「お前ファミレスで何やってたんだよ?なんかねだってたように見えたけど」
「あーあれ?実は都市伝説の一つのレベルアッパーっていうものを追ってたのよ」
「レベルアッパー?なんだそれ?」
「なんか能力のレベルを上げて威力とか効果とかを強力にするんだって。
 どういうものかわからないんだけど、それがいろいろと悪用されているからジャッジメントが追いかけてんのよ」
「お前…またジャッジメントじゃないのに変に首突っ込んで…いい加減やめろって」
「いいじゃない。黒子の手伝いできるんだし」
「そうじゃなくて……あ、そういえばさ噂で聞いたんだけどさ」
当麻は飲んでいたジュースをテーブルに置くと少し真剣な顔つきに変わった。
「都市伝説でレベル5のクローンが軍事目的に作られてるんだって?お前心当たりとかあるか?」
「……実はさレベルが上がってきたころに研究者が来て私のDNAマップ持っていったことがあるの。
 その時の研究者は筋ジストロフィーの治療のためって言ったけどそれ以来音沙汰ないのよね」
「ちょ、お前そんなこと俺聞いてないぞ!母さんたちには話したのか?」
「…人のためにいいことするから内緒にしてもいいかなって思っちゃって話してないの…
 どうしようお兄ちゃん…もしそんなことがホントにあったら私…」
美琴はうつむいてグスッグスッとすすり泣き始めた。
「…………」
当麻は無言で美琴に近づくとそのまま当麻の胸に抱き寄せ右手で美琴の頭を撫で始めた。
「大丈夫だよ美琴。俺はいつでもお前の味方だよ。もしそんなことがあっても全部俺が解決してやるよ。
 だから一人で抱え込むな。お前はそんな悲しい顔より喜んだ顔の方がいいぞ。ずっと可愛いよ」
「……グスッ…ありがと…ねぇ、もう少しこのままでいて…」
「わかった、好きなようにしろ」
2人は黙って抱き合った。静寂の中で当麻は腕の中の温かみを感じた。
(守ってやんなきゃな…こんなに可愛い妹だもの)
そう思いおもわず美琴を強く抱きしめていると、ベランダからどんどんと叩く音が聞こえた。
「やべ、カーテン閉め忘れてた…」
当麻は首をベランダに向けると土御門兄妹がこちらを見ていた。

41例えばこんな上条美琴 5:2010/04/13(火) 08:39:40 ID:Eu5zJNNw

「……いやーカミヤン、まさか実の妹に手を出すなんて正真正銘のシスコンだにゃ〜。こんなオレでも恐れ入ったぜい」
「…………………」
「悪いなー美琴。ホントは石鹸無くなったから借りにきただけだったんだけどなー、いい雰囲気だったから入りづらくてさー。
 でもコンビニで売ってる漫画よりすごくよかったぞー」
「…………………」
抱き合っていた2人はあわてて離れ顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
当麻は洗面台から石鹸を持って土御門に手渡すとボソッと言った。
「…返しに来なくていいからここで見たことを全て忘れてもう二度とベランダから来んじゃねぇ」
「ん〜カミヤン次第だぜい。あんまりオレを怒らせたりするとクラスでそれとなく言っちまうぜよ。なんたってオレはウソツキなんだぜい」
じゃあにゃ〜というと土御門元春は戻っていった。
「ん〜、じゃあ美琴は今度の盛夏祭のときなんか面白いネタ見せてほしいなー。全員一致で決まったんだろ?」
「ちょ、ちょっと舞夏!なんであんたが知ってんのよ!?第一まだ兄貴に伝えてないのに」
「ん?美琴、盛夏祭でなんかすんのか?」
「なんだ、上条当麻はまだ知らないのか。愛しの妹がステージに立つんだぞー。しかも演目はサプライズだって」
「〜〜〜!!舞夏!あんた覚えておきなさいよ!」
「ははは、冗談だぞー美琴。じゃおやすみー」
と言って土御門舞夏も戻っていった。しばらく上条の部屋は静寂に包まれた。
「…………」
「………寝るか美琴」
「……何やるかとか聞かないの?」
「サプライズなんだろ?今聞いちゃ面白くもなんともねーじゃねーか」
「ありがと…電気消すね」
そういうと能力で部屋の明かりを消した。
当麻がカーテンを閉めて、戸締りやガス栓の確認をすると美琴が待つベッドへと向かった。
「入るぞ…もっと奥に行って」
「…よいしょ、ねぇ」
「ん、なんだ?」
当麻が美琴の隣に寝転がると美琴は当麻の胸にしがみついてきた。少し震えているようだった。
「さっきのクローンのことで怖くなっちゃった。このままでいさせて…」
「…わかった、好きにしろ。お前も臆病だな」
「こうやって甘えていられるのはお兄ちゃんの前だけなんだからいいじゃない」
「ははっ、じゃあ俺の前ではその可愛い顔を見せてくれ」
よしよしと右手で美琴の頭を撫でると美琴は安心した気持ちになってきて眠くなってきた。
ふみゅと言って美琴が夢の世界へと入って行くのを確認した当麻は、
(俺が守らなきゃな。美琴の周りの世界を、美琴のいつもの日常を)
と改めて決意し、右手で美琴を抱いて自分も夢の世界に入って行った。


7月20日午前零時
上条当麻の部屋で上条兄妹がすやすやと心地よく寝ている。これ以上ないくらいに幸せに。
だがこの日の朝、2人はベランダに引っ掛かってる白いシスターを見つけて科学と魔術が交差するとんでもない物語に巻き込まれていくのを
幸せそうに寝ている上条兄妹は知る由もない。

42コッカラ:2010/04/13(火) 08:49:43 ID:Eu5zJNNw
以上です!
IDが違うと思いますが8-23と同一人物です
ssはまだ初心者なのでいくらかアドバイスをくれると助かります
原作ベースであればいくらか続編(もちろん上琴視点で)を考えていますが好みでなければ止めておきます
うーん土御門ではないがシスコンもなかなか…

43コッカラ:2010/04/13(火) 09:10:54 ID:Eu5zJNNw
しまった…7-28だった…
何度も書いて失礼しました

44■■■■:2010/04/13(火) 09:59:33 ID:qTkXkVxU
>>42
GJ!
シスコン上条さんか・・・
中学生はダメでも妹はいいんですねw

45■■■■:2010/04/13(火) 17:03:21 ID:kHib31hE
>>29
GJ!!
読みやすいです。できれば続きを、または新作を
>>42
GJ!!
でも正直俺上条さんと美琴が兄弟ネタって他にもあったけど少し苦手だな
兄弟でいちゃいちゃするって現実的に考えると気持ち悪いし…
やっぱりカップルがいい

46■■■■:2010/04/13(火) 17:29:25 ID:D1lTW/f2
>>42
GJ!
この設定で禁書再構成とか見てみたいと思ってしまった

47■■■■:2010/04/13(火) 19:37:36 ID:s94i6oeU
>>42
GJ
兄妹設定もニヤニヤできていいですね!
全然違うけど御坂美琴の失恋を思い出す

48■■■■:2010/04/13(火) 19:58:18 ID:ZGwhfdRI
>>42
GJ!>>46の意見に自分も同意。
是非続きが読みたいですねぇ。

49桜並木:2010/04/13(火) 20:18:13 ID:2hlMr./s
お久しぶりです。手が滑って書いてしまいました。今から小ネタを投下しようと思います。
ちなみにちょっとエッチ(直接的な描写はない)なので、苦手な人は読み飛ばしてくだしあ

50桜並木:2010/04/13(火) 20:20:51 ID:2hlMr./s
書き忘れていましたがこれは未来〜とは関係ありません。

では投下します。

51桜並木:2010/04/13(火) 20:21:15 ID:2hlMr./s


上条当麻は家で一人ポケーとしていた。
無事、高校二年生に進級できることになった上条はただ流れていくように春休みをノホホンと過ごしていた。子供はこういう温かい日には外に遊びに行くみたいが上条はもうそこそこいい大人だ。鬼ごっこでキャーキャー外を騒がせる役目は後の世代に引き継がせる事にする。
みたい、と言うのは上条が記憶喪失で子供のころの記憶を失っているためである。その辺の常識が上条には体験ではなく知識としてしかない。故に『みたい』。
しかし記憶喪失と言っても、新しい上条当麻として第二の人生をスタートしてからそこそこの月日が経っており、この生活にも完全に慣れた。
そしてポカポカ温かい今日は劇的な戦いの中に身を置く(それでも普通の高校生と自称する)上条には一時の休息になっていた。右手に紅茶、左手に本(漫画)を添え、優雅な休日を過ごしている。
「あーこういう時間を幸せと言うのかねぇ」
多分このあと何かあるんだろうなー、ともはや諦めの色が含まれる声はとりあえず今は優しい太陽の光に包まれる。手にある漫画は上条には似合わず恋愛系統のものだ。上条が好きな漫画はバトル物か推理物なのだが心情の変化から、なけなしのお金でこのシリーズを大人買いした。今その漫画『昼ドラ!』はかなりいい所で、三人の男女がドロドロしてきたところだ。これがなかなか面白い。源氏物語よろしく朝起きてすぐ読み、夜遅くまで読み続け寝る。この生活リズムがここ一週間ほど続いていた。そのせいですごく眠い。
(ふわー……ねみぃ……。てかこの主人公マジへタれだなぁー。見ててたまにイラつくぞ)
そんな人のことを言えない上条が目を擦っているとピンポーン、とチャイムが鳴った。
誰かが来たらしい。
正直今は漫画が大詰めだし、このタイミングで自分を訪ねてくるなんてどう考えても不幸をプレゼントするタイプのサンタだろう、と上条は何となく予想する。まぁとりあえず、いきなりドアが吹っ飛ばされて気付いたら一万メートル上空でした〜という感じの不幸ではなさそうなのでそこだけはホッとする。「ほいほい、今開けますよー」と上条は開いているページをそのまま床に置き玄関に向かった。

ドアを開けると、私服の御坂美琴が顔を赤らめ立っていた。

御坂美琴、と言えば学園都市に住んでいる者なら一度は耳にした事があるだろう。超能力が科学的に解明された学園都市の中で第三位の能力者、超電磁砲と呼ばれている少女の名だ。彼女は努力家として生徒の規範にされており、正体不明の第一位や第二位より有名人であり普通の授業などでもよく成功例として名前が挙げられる。
(……って、考えてみるとコイツってなかなかすごい奴なんだよなー。何の用だろ?てか様子が変だな……)
よく分からないがモジモジしている美琴はドアを開けたのに入ろうとも、それどころか挨拶しようともしない。
ドアを開けてから一分くらい経過しようとするのに何もしようとしない美琴を不思議に思い、痺れを切らした上条は頭を掻いた。
「ひ、久しぶりだなー御坂。な、なんか用?」
その問いに美琴はようやく口を開いた。
「………………う、うん……あ、あのね……?ちょっと大事な話があるの……お、落ち着いて聞いてね?」
何となく美琴の歯切れの悪いしゃべり方に上条は嫌な予感がした。ほらーっ!やっぱり不幸になるんだーっ!!と内心叫ぶ。
今回はなんだろう。シスターズ絡みだろうか。にしたって顔を赤らめるような事ではない。風でも引いたのだろうか。確か美琴の同居人は変態さんだから寝込みを襲われるのを避けるため『し、仕方ないからアンタに看病させてあげるわよ!!』とか言ってきたりするのかもしれない。
(……うーん。こりゃもう今日は漫画読めそうにねーな。……だーっ!めちゃくちゃいいとこだったのにっ!)
とか何とか上条が憂鬱に考えていると、美琴の顔の赤みはそのまま毛穴から血でも噴出しそうな感じになっていた。
そして美琴は俯きながらお腹を押さえ、言う。

「……………………………わ、私、妊娠しちゃった……………………………………………………」

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

「はい?」

上条がポカンとしていると美琴は上条の胸に飛びつき、聞こえないくらいの声でこう呟いた。

赤ちゃんできちゃった、と。

52桜並木:2010/04/13(火) 20:22:22 ID:2hlMr./s



少し前のこと。

「き”も”ち”わ”る”い”……」
御坂美琴がベッドの中で苦しんでいた。
同居人である白井黒子からすればそれは自分が死ぬことより大変な事なのだが今回は少々事情が違った。確かに心配はしているのだが心の中ではまた始まったよ勘弁してくれー、とちょっとうんざりしている。
……と、言う感情は態度に出さない。それが白井黒子の嗜みである。
「大丈夫ですか、お姉様?ワタクシに何か出来る事はありません?」
「……うぇぇぇぇ……じゃあ、いつもの飴とアイス買って来てー……」
美琴がベッドの上を這い蹲るように手を伸ばしてくる。今の美琴に少女らしさとか淑女らしさは全くない。
この二週間、美琴は朝目が覚めれば『き”も”ち”わ”る”い”ー』の第一声。夜寝る時も『き”も”ち”わ”る”い”ー』と呻き、気付いたら悪夢でも見るような顔で寝ている。白井も最初は力の限り看病していたのだが美琴は『き”も”ち”わ”る”い”』の一点張りで全く進展なし。しかも人寂しく構って欲しいのか『私、このまま死んじゃうのかな……』とからしくもない弱音を吐き始め、それでいざ『大丈夫ですか?苦しくはないでしょうか?原因にここの辺りはありませんか?』と優しく聞くと『でも気持ち悪いだけなのよねー……』と自分の健気な言葉を一言で一掃するのだから余計にタチが悪かった。
加えて美琴は寮の食堂にも顔を出していない。と言うかこの二週間全く外に出ていない。好都合なことに常盤台は春休みが3月15日から4月15日までとかなり長めに休み(常盤台中学の一年は大学レベルの授業内容や厳しい校則など大変な学校生活なので、よく耐えましたハイこれご褒美と言う学校側からの配慮である)があるので、美琴は体を回復させることに専念できるのだが、『好都合』と言うのは周りから言った意見であって当の美琴は貴重な春休みを潰されそのせいあって余計に不機嫌そうだ。学校側も1人しかいない(心理掌握は今年卒業した)レベル5が体調不良というのはよろしくないので何かと手を尽くしたが美琴の体は全く回復せず今に至る。
今の美琴は白井が買ってくるアイスとか飴とか不健康そうなオヤツで生きている身。そんな生活をしてたらお姉様の体がお菓子100%になってしまうのではっ!?と危惧して白井は食堂から美琴の分のご飯を持ってきたりもしたが全く興味なし。それどころか『変な匂いするから下げて!!』とか何故か切れられる始末。常盤台の最高級料理を変な匂いと切り捨てたら一体どこで食っていけばいいのだろう?と思ったりもしたが、本当に嫌がっていたみたいなのでそれ以降食堂から料理を持っていくのはやめた。
はぁー、と白井はわざとらしくため息をする。
「またですか?いい加減お辞めにならないと太りますわよ?ご飯もあまり食べていませんし……」
「……だ、だって、うぇぇ、気持ちわ……うぇぇぇぇぇえ……」
「……………本当に辛そうですわね……。でも、気持ち悪いからこそ栄養があるものを食べないといけないんじゃありませんか。ほら、こんなに散らかして」
白井はそういうと美琴のベッドの上に散乱する飴のゴミを丁寧に片付けていく。40個近い飴のゴミを見て、白井は次からは個別に包まれているタイプじゃなくて、直接入っているタイプの飴を買ってこようと硬く決意する。いくらなんでもこれは汚すぎる。綺麗好きな美琴がこんな状態なのだ。相当辛いのだろう。
「それにしてもなんなのでしょうね……。病院の先生も原因不明って言ってましたし……。レベル5特有の何かなのでしょうか。もう2、3日続くようでしたら精密検査をお受けに……ん?」
ふっと白井は『フルーツキャンディー』と書かれている、20個の飴が入っていた袋の中にまだ何個か飴が入っているのに気付いた。
その袋は白井が一番最初に買ってきた物のはずで、おかしなことにそれを放置して次の袋を開けているようだ。更に他の袋も調べると同じくらい手をつけていない飴が残っていた。
「???お姉様、嫌いな味ってありましたっけ?」
言いながら白井は中身を調べてみる。
――――中身は綺麗に一色、全て黄色でレモン味だった。
……ん?と白井は二学期後半に習ったことを思い出す。

強烈な吐き気。ちょっとした匂いでも癇に障る。酸っぱいの嫌い。

53桜並木:2010/04/13(火) 20:22:49 ID:2hlMr./s
(………………………………………………………………………………………………………………………………………、)

記憶が鮮明になっていくにつれ、サー……と血の気が引いていった。
白井は裸足でガラス塗れの道を歩けと言われたような顔で、
「……こ、これ、どうしてレモン味だけ残しているのですか?」
袋から残っている飴を数個取り出し美琴に見せる。
「……食べたくないから、うぇ、酸っぱいの嫌……見ただけで吐き気してきた……」
そんな黄色いもの見せないでよ、プイッ、と顔を逸らす美琴に白井はますます嫌な予感がしてきた。
「………………お姉様。これは変な意味ではないのですのでちゃんと答えてくださいまし。最後にアレが来たのは何時です?」
白井がそういった瞬間、ギクッ!!と美琴は飛び上げるように白井を睨み付けた。
やがて、美琴は白井から逃げるような体勢になり、掛かっている毛布を壁のようにして身を隠す。
「………………………………………な、何が言いたいのよアンタ?」
美琴の顔の筋肉がピクピクッと引き攣っているが白井は構わず、
「………………………………………………………………………お姉様、それ、妊娠しているかもしれませんわよ………」





二月の半ばくらいに吐き気がするな、と保健室に行って早退した。けれどしばらくしても付き纏うようにして鈍痛は続き、調べてみた所自分は妊娠している事がわかった。
実を言えば前々から何か変だと思ってはいたのだ。ただどうしていいか分からなく時間だけが過ぎていった。

誰にも言えない秘密が出来て、心身共に苦しい日々が始まった。

具体的にはまず体育の授業。常盤台は三学期の最後にマラソンという傾向があった。これが相当辛かった。毎回見学すると不振がられる可能性があったので二回に一回は参加する。となると走らないといけない。走ると吐きそうになる。吐いたら悟られるかもしれない。気持ち悪くなる。けど頑張る。走る。吐きそうになる。吐いたら悟られるかもしれない。気持ち悪くなる。けど頑張る。走る。……と永久機関の出来上がり。走り終わったあとの達成感が半端なくて飛び上がるほど嬉しかったりした。
次に精神面。なんだか変に人恋しくなった。私はこんなに頑張ってんのよーっ!!と叫びたくなった事が何度もあった。やたらテンションが高くなったり逆にすごくネガティブになり部屋の隅で膝を抱えそうになった事もある。お腹の中にいるだろう命に話しかけたりしていると何故か自然と心が癒された。
美琴はこの事を上条に言うべきかと散々迷ったが、結局引き目のようなものを感じて言い出せずにいた。その気になれば自分の電撃で全てなかったことに出来たのかもしれない。しかしそれは命を軽視しているような罪悪感から、そして何より上条と自分の関係を否定しているようでどうしても出来なかった。

上条と美琴は喧嘩相手から一転、恋人になっていた。

きっかけは一端覧祭で自分がある男子生徒に告白されている所を上条がたまたま見た事、だと思う。その告白を丁寧に断ったあと上条が『……アイツ誰?』とか言いながら凄く詰まらなそうな顔で尋ねてきた。それが凄く嬉しくて『あれ?もしかしたらコイツ、私の事好きかも?』と元々上条が気になっていた美琴は玉砕覚悟で告白。見事上条のハートを射止めたと言うわけである。

それから不器用なりにも、上条と美琴は付き合い始めた。

付き合い始めた頃は右も左も分からなく初めての事ばかりで、何もかもが輝いて見えた。
水族館、遊園地、恋愛映画、普通に公園。上条と行けばどこでも楽しすぎる場所になり、早すぎる時間が愛しくなっていった。
一方の上条は『お前、俺のどこが好きなの?』となかなか美琴の行動に応えられずにいたが次第に心を開いていき、美琴も上条からの愛を感じれるようになっていった。

そして初めてのキス。

しかし、雪が舞う冬の中、自分たちは度が過ぎる愛し合う行為をしてしまった。
けれどそれを決して悪い事だとは思わなかった。むしろこういう風して人は人を愛していくのだろうと自分たちの愛を肯定していた。
だがそれは、今になって思えば早すぎる事だったのだ。間違いではない。早すぎたのだ。
美琴と上条は今、上条の家のリビングで正座して、出来なかった相談をしている。

54桜並木:2010/04/13(火) 20:23:51 ID:2hlMr./s
「………あ、あん時か。悪い、無責任にあんな事しちまって……いや、お前がいいなら責任取るけど……。てか、と言う事はえーと……今はつ、悪阻とか、大丈夫なのか?」
戸惑いながら上条が申し訳なさそうにそう呟くと、美琴は心の中でごめんと呟いた。
「……うん……悪阻はもう大丈夫……ちょっとヤバかったけど……。それよりごめん……今まで言い出せなくて」
「し、仕方ねーだろ。と言うか俺の方が、本当にすまない。……辛い思いさせちまったな……。悪い、気付いてやれなくて。……それでお
前はどうしたいんだ?」
「……ど、どうしたいって?」
「う、産むか、産まないか、だ……。俺はお前がどんな選択をしてもお前の意志を尊重する。やってしまった者として多少意見は言わせて
もらうが……」
「……………………」
その問いに美琴はしばらく黙り込んだ。
常識的に考えて中学生で子供を産む事は『普通』からかなり外れている。それに仮に産んだとしても産んだ後が大変だ。上条も美琴もまだ未成年。金銭的にも社会的にも厳しい事が山のように待っているだろう。加えて美鈴たちを悲しませる結果になるかもしれない。
だけど、美琴は新たな命を殺すことだけは絶対にしたくない。美琴はそれだけは譲れなかった。
(……きっと、この子を産めなかったら一生後悔する……)
美琴は自分のお腹を優しく擦る。
「……産みたい……、のかもしれない。きっと……なかった事には出来ないんだと思う」
「……早速言わせてもらうがお前今年受験じゃねーか。その辺りはどうするんだ?もし行く所がなかったら俺がバイトなり何なりして何とかするけど……お前にも将来の夢とかあんだろ。それの障害になるかもしれねーぞ」
その問いに美琴はまた少し固まった。
美琴にはこれと言った夢はないが強いて言うなら『上条の奥さん』で、上条さえよければそのまま結婚に雪崩れ込むのも別によかったのだが、それは年齢的にまだ出来ないし、やっぱり美鈴たちに申し訳ない気持ちになる。美琴は自分を愛してくれている彼らに少しでも楽な思いをさせてあげたいと思う。それには自分がきちんと立派に育って、正当な順序で結婚し、私はもう大丈夫だから安心して、と言ってあげるのが一番だとも分かっている。
―――――それでも、と美琴は力強く呟いた。
「……この子には罪はない。殺したくない。産まれさせてあげたい。だから私……産む」
決意したように美琴がそう言うと上条は「そっか」と言い、携帯を取り出した。
「ちょ、アンタ!?誰に掛けようとしてんのよ!?」
「……俺の父さんとその後美鈴さん。………恥ずかしいけど言わないとまずいだろ」
言っている間にも上条はピッピッピッと携帯をいじっていく。
「お、お父さん!?ま、ママ!?って、何て言う気なのよ!」
わーっ!と美琴が叫ぶと電子音がピタッと止まった。どうやら考えてなかったらしい。
上条は声は出さず今考えてます、と言うような姿勢で首を傾げた。
「………………孫が出来ましたよ?」
「だ、だめーっ!だって、その、あの、あれ、えーと、……うだーっ!」
美琴が頭を抱えると上条はキョロキョロと挙動不審になり、頬を赤らめた。心なしか美琴のお腹を見ているような気がする。
「……い、今妊娠何週目?」
顔を真っ赤にしながら上条はそう聞いてきた。
「…………う、うだーっ!!」
言いたくないぃぃ!と美琴は正直思う。だって恥ずかしい。その恥ずかしいことを具体的に言えと言われているような感じなので余計に言いたくない。しかしここまで来て言わないと言うのは上条も自分も困るだけだ。それにそろそろ病院にも行かないとまずい時期である。妊婦、と書かれた病院に一人で行くのはもっと恥ずかしいだろうと予想した美琴は俯きながら小さく呟く。
「……15週目……」
「……15週、か……じゃあそろそろ……お、大きくなるんだろ?産むなら早めに報告しねーと」
「せ、急かさないでよ!心の準備がまだ……っう……」
かーっ!と美琴は立ち上がろうとすると急に腹部が痛くなった。どうやらまだ悪阻からは抜け出せていなかったらしい。ジーンと言うよりデゥーンと言ったような鈍い腹痛で美琴は額に脂汗を浮かばせる。

55桜並木:2010/04/13(火) 20:24:41 ID:2hlMr./s
「お、おい!大丈夫か!?」
「つぅぅ……」
(い、ったー……悪阻まだ続いてるわけ?ま、マジで勘弁してよ……コイツの前で吐いたら何か大切なものを失ってしまうような気がするのに……)
「あ、アンタ……ちょっとお腹擦って……軽く死にそう……」
ここ擦って、と美琴は痛みに耐えながら呻く。
「でぇっ!?………………………わ、分かった……やってみる」
「……変な事しないでよ、本当に死にそうなんだから……」
上条は美琴の後ろに座り直し、優しくお腹を擦った。美琴はくすぐったいようなムズムズするような感覚に「うーん……」と悶えたがしばらくすると心なしか楽になり、荒くなった呼吸も落ち着いていった。
「ふ、ふぃ、ふぃ、はぁー……も、もういいわよ……し、死ぬかと思った……」
美琴がそう言っても上条は、
「……本当ごめん。俺のせいでこんな辛い思いさせちまって……」
美琴のお腹を優しく擦り続ける。優しいなぁ、と美琴は顔を赤くして上条に寄りかかった。
「ほ、本当にこの中に俺とお前の子がいるのか……確かに少し大きくなってるような手触りがあるな……」
あまりにも真顔で上条がそう言うので美琴はまた恥ずかしくなった。
「……あんまり恥ずかしい事言わないでよ」
自分のお腹を擦っている上条の手を握り言う。
「わ、わりぃ……。じゃあ、電話掛けるけど……本当に産むんだな?」
最後の確認だ、と上条が真剣な顔で美琴の顔を見据えると、美琴はうん、と頷いた。
「もう決めた。きっと辛い事がたくさん待ってるだろうけどアンタとこの子と一緒に乗り越えていくわ。……私を取ったアンタは道連れよ」
ストンッと美琴は上条の体に寄りかかる。上条は優しく美琴の肩を引き寄せ、
「……あぁ、お前もお前のお腹の中の子も俺が守っていく。よろしくな。これからもずっと」

バカ、と美琴は上条にキスをした。


1年後。


先生、友達、そして美鈴たちの反対を押し切って美琴と上条の赤ん坊は無事産まれることが出来た。産んだ時『本当にありがとう……!』と上条が泣きながら手を握ってくれて、頑張って産んで心からよかったと思う。赤ん坊は女の子で名前は、人と人を結んでいくと言う意味で美結(みゆう)。美琴と上条が悩みに悩んで付けた名前だ。自分は今幸せだと美琴は思う。
しかし反面、本当に辛い一年だったとも思う。
結局学校は休学とは名ばかりの退学扱いにされてしまったし、高校にも行く事が出来なくなってしまった。友達とは妙な距離感を感じてしまうようになったし、会う事も少なくなった。ただ時より黒子、佐天、初春の三人が自分の病室に来て『頑張ってください!!』と励ましてくれたことは本当に心の支えになった。友達は数より親しさだ。
今は上条の家に婚約者として住み、花嫁修業中。上条がいない美琴の一日は料理の特訓と美結の世話が一日の大半を占めている。
一方の上条は美琴の負担を減らそうと何かと努力してくれている。料理は手伝ってくれるし、掃除も洗濯も、マッサージだってしてくれる。
そんな中、高校三年生となった上条は学園都市で最高峰の大学を目指しているそうだ。最近の上条の口癖は『俺が絶対お前等を幸せにしてやる』で、しかしとは言いつつも勉強を教えているのは美琴のため『……歯がゆい……』ともよく言う。

今日は日曜日で、上条と料理を一緒に作った。

「はぁー……やっと出来たー……。こんな豪華な料理、店に行ったってそうそう食えねーぞ……美琴先生?これは渾身の出来なのでは!?」
「うーん、そうかもしれないわね。……まぁとは言っても私はアンタがいない日は料理の特訓と美結の世話しかする事ないから。こんくらいできて当然よ。その内もっとうまい物食べさせてあげるわよ」
「いやー、上条さんはこんな美人で料理がうまい奥さんがいて幸せですー。……たまに不幸だけど」
「そ、それはアンタが他の女といちゃついてるからでしょーが!」
「い、いや、それは事故であってだな……」
「事故だろうと何だろうと私の目があるうちは他の女としゃべらないでよ。……いや、無い所ではもっとダメ。すごい嫌な気持ちになるん
だから。アンタだって私が知らない男と親しげにしゃべってたら嫌でしょ?」
「う…………そ、そうだな。これからは用事以外で女の人としゃべらないことにする。考えただけでイライラしてきた」
「……ありがと、分かってくれて。……ふふ」
「な、なんだよ?意味ありげに笑いやがって……」
「幸せだなーって」
「…………ば、バカやろー。俺がこれからもっと幸せにしてやる。この程度の幸せで満足してんじゃねーよ」
「……うん。期待してるね」


これは、御坂美琴の幸せな1ページ。

56桜並木:2010/04/13(火) 20:26:28 ID:2hlMr./s
終わりです。これで本当にしばらく書きません。と言うか完全に魔がさして書いたものなのでお見苦しいところが多々あると思いますが、その辺は広い目で見てください。
ではありがとうございました。

57■■■■:2010/04/13(火) 20:58:15 ID:HmSn1b.2
>>56
妊娠すると酸っぱいものを食べたくなるんじゃなかったっけ?

58桜並木:2010/04/13(火) 21:17:02 ID:2hlMr./s
間違えた死にたい

59■■■■:2010/04/13(火) 21:21:57 ID:8hy5MV.2
wwwwwwwww
ドンマイwwwwwwwww

でも面白かったぜw GJ

60■■■■:2010/04/13(火) 21:26:57 ID:.0Qph6og
>>56
15歳の母を思い出してしまった。GJです。

61■■■■:2010/04/13(火) 21:53:14 ID:D1lTW/f2
>>58
間違いは誰にでもあるさ
ともかくGJ!

62■■■■:2010/04/13(火) 21:58:39 ID:PiBaMo4U
>>58
GJです

63■■■■:2010/04/13(火) 22:01:50 ID:qTkXkVxU
>>56
GJ!!
なぜか涙がでちまったぜw

64■■■■:2010/04/13(火) 22:12:31 ID:Eu5zJNNw
>>56
GJです!!
勉強頑張ってください!
疲れた時にはまた上琴スレに来てください!

65■■■■:2010/04/13(火) 22:30:33 ID:z94IcqyY
未来の方が見れなくなるのは残念ですがたまには遊びに来て下さいね。
多分次来た時は大量のスレが出てると思いますからね〜
ニ期が来るまでラッシュが続けばいいのですが…。

妊娠話は目を逸らしたくなりますけど、ほとんどの男性がぶち当たる壁と思います。
美琴の選択に悔いがなかった事に喜びの念を。
上条さんの鉄壁の理性は美琴に軽々と破壊されて…(笑)

66ぴんた:2010/04/13(火) 22:46:41 ID:7Wdx2cNk
桜並木さんGJです!
ここでエール&新スレ記念をと思い小ネタを即興で考えました。
1レス消費(たぶん)なので3分後くらいに。

67ぴんた:2010/04/13(火) 22:52:05 ID:7Wdx2cNk

美琴「よっこいしょ、っと」

黒子「お帰りなさいませお姉さま…って。何ですの? それ」

美琴「ん? ノートパソコンよ。何かくじやったら当たっちゃって」

黒子「まぁ。最新のやつじゃありませんの。初春が欲しがってましたわ」

美琴「え!? だ…ダメよ! こ、こここれは私のなの!」

黒子「? はい。別にあげろなんて言ってませんが…」

美琴「(これはアイツがくれた券で『一緒に』くじを回して当てた、私とアイツの…)」ブツブツ

黒子「お姉さま?」

美琴「…あら? そういえば最初にパソコンの名前を決めるんだったわね」

黒子「お、お姉さま! そこは是非わたくしとお姉さまの名前から取った『美子』か『琴子』にっ!!!」

美琴「えー、嫌よそんなの。それより…」カタカタ

黒子「(´;ω;`)」

美琴「!!! こ、これ…///」テレ

黒子「(Ms.上琴…? 上…。上…、上条ぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!! あ、あああの類人猿があああああああっ!!!
   さ、猿の分際でお姉さまのパソコンの名前にしてもらうなんぞ500年…いや、1000年早いですわっ!!
   ところで上の前のMs.って…! 既婚や未婚で使われるMs.ですの!? ま、まさか! 既に婚約を済ませた仲だというんですの!?
   未婚だとしても上琴なんてカップルネームを使われてる事が許せませんわっ!!!!
   お、おおおおおのれぇぇぇええっ!!! 類人猿んんんんんんんんんんんんんんっ!!!!)」テレポ

美琴「ふ、ふにゃー…。『みさかみこと』って入力しようとしたら、何か間違って『Ms.上琴』って出てきちゃったわ…」

美琴「Ms.上琴…。こ、これでいっか。えへへ…って、あれ? 黒子?」

 ――――――――――――――――――

黒子「猿がああああああああああああああああああああああっ!!!!」

上条「ぎゃああああっ!!! し、白井っ!? い、いきなりなにs」ゴシャッ




…というネタを英語辞典開いてたら思いつきました。全然関係ねぇ…、何かすみませんでした。

68■■■■:2010/04/13(火) 23:01:49 ID:dRfb6XRg
>>67
これは楽しいw
しかし「琴子」だと、外国文化を排斥しはじめそうな響きがw

69■■■■:2010/04/13(火) 23:07:19 ID:0kxQBIvg
>>67
GJ!
この後、美琴からもらった古いパソコンを使ってた上条さんが、
インデックスに噛みつかれるんですね、わかります。

70コッカラ:2010/04/13(火) 23:16:42 ID:Eu5zJNNw
ルーター同じだとIDって変わらないんだ…
コメのお返しをしたいと思います
>>44
でもただの中学生でも2歳ぐらいしか年変わりませんよね
血がつながってなくても二人にはいちゃいちゃしてほしいです
>>47
「御坂美琴の失恋」は自分も見ましたww
ただあの設定には無理があるぞ美琴…
>>46 >>48
禁書原作と漫画版をベースに1,3〜5巻で考えてはいますが…
ごめん姫神、2巻は馬鹿な俺にはできない…
>>45
うーん、禁断の一線は越えないつもりだけどやっぱりまずいか…
自分もカップルの方がいいので次回は普通のバカップルに戻して書いてみます
上条兄妹はまた今度ということで…
>>67
ぴんたさんGJです!!
しかし毎度上条さんカワイソスwww

71ほのラブ同盟:2010/04/13(火) 23:18:07 ID:CPins.Pk
変なタイミングですが、頂いたコメントにお礼の返事をさせて下さい。

>>30
ありがとうございます!
まさかの15分以内コメに感激です。

>>31
申し訳ありませんが、不勉強ゆえその作品を存じ上げませぬ!
ちょっくらブックオフに行ってきます。
でも、甘いひと時を感じてくださってうれしいです。

>>32
>これって記憶喪失前の話ですよね?
………………てへっ(ビブルチ)
死にたくなりましたよ。いつかやるとは思ってたんです。記憶喪失ミス。
えっと…(記憶喪失後)「初めて聞いた時はショックだった」くらいにぼかして下さい><

>>33
まさかのラヴ(ラブではない)コールに感動!
現在、次回作をなんとかひねり出しているところです。
今日明日に出来上がるか分かりませんが、お待ちいただければ幸いです!

>>34>>67
超GJありがとうございます!
僕はぴんたさんのPCネタがずっきゅーん来ましたよ!
まさかのタイプミスに神降臨すぎる!!!

>>35
氏までつけて下さって、照れますwww
みなさんからのGJのために毎日生きています(何

>>36
美琴さんへの愛がきちんと伝えられたようでうれしいです。
コッカラさんのまさかの妹ネタもGJです!
僕も続きが気になります。

>>45
少しずつみなさんのご指摘を受けて読みやすさを追求しているので、コメントがうれしかったです。
現在、長編(上琴主演だけど、結構マジメ)を考え中ですが、まだプロットの段階なので、しばらくは甘々な二人をお楽しみください。
近々投稿できると思います(願望)

感想です。

>>56
しばらくお会いできないとのこと、寂しいです。
妊娠ネタはへヴィーすぎて自分には手に負えないので、しっかり文章化できていて尊敬です。
いつかまた投稿して下さる日を待っています!



スーパー長々とすみませんでした。
感想を下さった方々、ありがとうございました!!

72ほのラブ同盟:2010/04/13(火) 23:21:07 ID:CPins.Pk
連続ですみません。
>>31
「海の時間」って、曲名だったんですね…。
バカを重ねて露呈してしまった…。

73キラ:2010/04/13(火) 23:21:54 ID:lqIYjJX2
どうもです。
職人様たちGJです。そろそろ私は「もういらない」って言わ(ry

小ネタを一つ投下します。
タイトルは、『告白も不幸な上条さん』
25分に1レスだけで収まるはずです。

74■■■■:2010/04/13(火) 23:24:07 ID:ue0Qi4a6
>>72
マイナーな歌で、こちらこそすみません

75キラ:2010/04/13(火) 23:25:44 ID:lqIYjJX2
「今日も暇ね。黒子は風紀委員だし、初春さんや佐天さんも用事があるみたいだし…どうしようか」
「だあああーーーー!!! やっぱり不幸か!」
「ん…? あの声はアイツね! しかもここから近い」
「全滅だ。重要な卵が、せっかく激安の場面で買えた貴重な食材だったのに…それが…それが一瞬で…一瞬で」
「あ、いたいた。………ちょろっと。アンタ、またへまやらしたの?」
「ん?…………………………なんだ、御坂か」
「せっかく美琴さんが、駆けつけて来てあげたんだから、もうちょっと何か言えないの!?」
「ああ、はいそうです。ありがとうございます、御坂様」
「わざとらしく棒読みをするな!」
「うおっ危なっ! ………はぁー。お前、少しぐらい成長しろよな。新学期にもなったんだし、気持ち新たな上条さんに平和ぐらい与えてあげようかしら、って思わないんでせうか? それともまだビリビリ卒業は先ってオチですか?」
「アンタに成長してないなんて、言われたくないわ! それに成長してないのは、アンタも同じじゃない」
「そういう意味で言ったんじゃねえんだけどな。まあ、いいか。それじゃあな、御坂……………急がないとインデックスに、不幸だ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいアンタ!!」
「あれ? 何か用があったのか。だったら悪いけど、手短に」
「その……持ってあげるわよ」
「持つって……何を?」
「ビニール袋。重たいんでしょ?」
「………………………………」
「って、後ろ向いて帰ろうとするな!!!」
「上条さんは今から帰って夕食に支度をしないといけないんですけど」
「だから、荷物を持ってあげるって言ったじゃない! それを無視するなんて、どういう神経してるのよ」
「あ……ああ〜結構です。重たくないし、家も近いし…だから、ついて来なくても」
「い・い・か・ら! 片方貸しなさい! 善意には善意で返すのが常識でしょ」
「あ、いえ…だからそんな結構です。上条さんは足りてますから、だから……」
「うるさいわね! 早くその片方の袋をよこしなさいって!!」
「待て待て待て! 袋が…! 落とす、このままだと落とすって」
「だったら早く渡しなさい! 渡したくない理由なんて、ないんでしょ!」
「それはそうですけど…って、こら…やめっ! う、うおおっ!」
「きゃ、んんっ…………!!!???」
「…………………ちゅっ」
「……………………………………ふぇ?」
「…………………あ〜……えっと……ち、違う! 何もしてない! いやしてない! まったくしてない! 全然してない! だから…あの」
「今………唇に」
「違う! してないぞ! キスなんてしてないぞ!! 御坂の唇と俺の唇がぶつかってなんて」
「え……? えええ…???」
「忘れろ! じゃなくて、してないからな! 上条さんは御坂さんとキスなんて……キス…なんて………して」
「キス……? キスって……私とアンタが?」
「だああ!!! してないって! 上条さんは乙女の純白な唇をこんな形で奪うなんてことは、一切しておりません! ましてや好きな人の唇をこんな形で」
「え………好き、な………人…?」
「え……………あ。ち、違うぞ!!! 今のは口が滑って、じゃなくて! ついつい本音を、でもなくて!! 嬉しくてつい…うぅだああーーー!!!」
「口が滑って? 本音? 嬉しくて?…え……ええ??」
「忘れろ! 忘れるんだ御坂!!! また改めて告白を…ではなくて、だああーーー!!! 落ち着くのは俺だぁぁぁ!!!」
「アンタが私にキスして……アンタが私を好きで……それで……それで」
「やめろ!!! 上条さんの計画では、こんなはずではなかったのにーーー!!!」
「………………………ふ」
「ああ、チクショウ。これからどうやって、御坂と会えばいいんだ………うううぅぅ」
「ふにゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「だあああああ!!! ダブルで不幸だーーーー!!!」

オワレ

76キラ:2010/04/13(火) 23:29:19 ID:lqIYjJX2
以上です。
会話だけでニヤニヤさせてみよう…と書いたネタです。
たの…こほん。ニヤニヤできたのなら幸いです。

では、後編の続きを書くとします。
そして、他の職人さんたち『ファイトよ!』(美琴風に)

77■■■■:2010/04/13(火) 23:43:20 ID:ue0Qi4a6
>>56
GJです!
また投下できる日を楽しみにしています。

>>67
GJです!
上条さんとばっちりw
上条さんらしいと言えば、上条さんらしいかも?

>>76
GJです!
これって上条さんは不幸?
パニックになっている二人がかわいいw
ぜひ作品をどんどん投下してくださいね

78■■■■:2010/04/14(水) 00:12:37 ID:Od97bNKw
>>56
美琴ってDNAマップ提供したりで
かなりのお金もってるんじゃ?
美鈴の性格も出産&結婚反対しないような気がする

79■■■■:2010/04/14(水) 00:41:37 ID:DwVV.FmU
>>78
出産とかには反対はしないかもしれないが
"おばあちゃん"と呼ばれるのは全力で回避しそうw

80■■■■:2010/04/14(水) 00:54:11 ID:I/w4Pj4.
あと美鈴さんたちは反対しないと思う

81■■■■:2010/04/14(水) 01:12:24 ID:DwVV.FmU
「まさかこの歳で"おばあちゃん"になろうとは…」
「………///」
「………///」

あとは丸投げww
誰かかいてくれることを願うw

82■■■■:2010/04/14(水) 07:06:49 ID:MyV633Mg
>>80
最大の壁であろう御坂父をどう説き伏せるかが問題か……。
殴りたいだけ殴らせてそれでも倒れない、とかが上条さん的だろうか。

83■■■■:2010/04/14(水) 07:07:35 ID:MyV633Mg
>>75
自爆にもほどがあるw

84■■■■:2010/04/14(水) 17:59:24 ID:xtcQzKWk
5分後ぐらいに、6レス分投稿します。

オチにやっぱりあの人を使ってしまう。

85■■■■:2010/04/14(水) 18:03:41 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!1】

「えっ、来れなくなっちゃたの?」
『ごめんなさい佐天さん〜』
 初春飾利の本当に申し訳なさそうな声に、佐天涙子はため息をつく。
 隣の御坂美琴も、白井黒子から同じ内容の電話らしく、渋い顔をして携帯を耳に当てている。

「ま、しょーがないわね」
 4人で映画――ビバリー・シースルーの新作を見る予定だったのだが、緊急招集で2人欠ける事になってしまった。
「ジャッジメントの仕事で、何だか3回に1回はこういう事になってますから、慣れてるとはいえ……」
「……やってらんないわねー」
 縁のある映画監督のモノだけに、4人一緒でないとねえ、というのは2人とも同意見だった。

 じゃあ何しようか、そうですねえ…と話しながら映画館のロビーから出て、美琴は見つけてしまった。
 上条当麻が一人で、上映中映画リストのパネルとにらめっこしている姿を。


「なーにやってんの?」
 そりゃ映画見にきたって言うわよね、と自分で突っ込みながら、上条の横で美琴は問いかける。
「ああ、御坂か……何やってるかと問われれば、食費との相談、かな……」
「は?」
「ここで映画を見てしまうと、今後一週間の食事がグレードダウンする……そうまでして見るのか、とな」

「相変わらずみみっちいわね……」
「超能力者お嬢様には分かるまい!無能力者への奨学金はほんと少ねえんだぞ!」
 目を爛々として美琴と上条を見比べていた佐天は、『無能力者』の言葉にピクッと反応する。
「それにしたって映画も見れなくなる程じゃないでしょー」
「色々あんだよ……ところでそっちは?見てきたのか?」
「ううん、黒子が来れなくなってね……ああ、紹介しとくね。友達の佐天涙子さん」

「初めまして佐天ですっ! 柵川中1年でーす!」
「どうも、上条当麻、高一です。学校も学年も違うのか」
「うん、黒子つながりでお友達になったの……それにしても、アンタが映画見るなんて意外なんだけど」
「用事があってさ、3時間ほど時間潰そうかなってな。帰るにも半端だし」

 佐天がすっと手を挙げた。
「上条さん、お金を使わず、時間を潰しませんか?」
「はい?」
「佐天さん?」

「私の部屋に来て、3人でおしゃべりしません?おこたもミカンもありますよ」


 佐天の部屋の前で、上条と美琴は顔を見合わせた。佐天は部屋の中を片付けている。
「なんだか引っ張られるように来てしまったが、いいんだろうか……」
「女の子の誘いにほいほい乗っちゃうのって、どうなのかしらね?」
 お前の友達なんだから、いーじゃねえかとブツブツ言っている上条の横で、内心は嬉しがっている美琴であった。

「はいっ、大丈夫ですよ〜。どうぞー」

86■■■■:2010/04/14(水) 18:04:01 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!2】

「あはは〜、男の人入れたのは親兄妹を除いて初めてですよー、上条さん」
「それはそれは恐縮です……」
 部屋の中は暖かくなり始めていた。
 奥に通された上条は、コートを脱いでどっかと座り込む。
「うーん、コタツひとつとっても小洒落た……女の子の部屋だなあ」
「上条さんはコタツ出してないんですか?」
「出してるけど、何の個性も無い安物だかんな。暖かくさえしてくれりゃいいんで、それでいーんだけどさ」

 美琴も無言でコートなど脱いで丁寧に折りたたみ、コタツに入って早速ぬくぬくしている。
 美琴の場合は寮にコタツがないので、久々のぬくもりだ。
「コタツにミカン…あとは猫でもいれば完璧かしら」
「俺は三毛猫飼ってるぞ」
「えー!?初耳」
「うわー、いいなー!」
(あと白いビッグイーターもいるけどな……)
 上条は心の中でひっそりとつぶやく。


 佐天が湯のみに入れたお茶と、バスケットにポテチを入れて持ってきた。
「うっふっふ〜、準備完了ですよー。じゃあのんびりだべりましょうー」
「ありがとね佐天さん〜。こういうのもいいわねえ」
「俺はちょっと落ち着かねーな」

「大丈夫ですよ、じきに御坂さんも落ち着かなくなりますから」
「え?」

「この人ですよね?大覇星祭の借り物競争の人って。お二人の関係から全て!聞かせていただきますね!」


 蜘蛛の巣に捕まった美琴はもがく。
「ちょ、ちょっと佐天さん、そーいうつもりで……!?」
「です!常盤台のお嬢様が、男の人とどう知りあうのか?……これは余程のドラマがあるとしか思えません!」
「な、何もないってば!」
「まず、お二人の関係は?恋人?友達?」
 早速真っ赤になっている美琴に、佐天はニヤニヤ笑いを隠しきれなかったが、上条の方を見て熱が引いた。
 上条はやや口をへの字にして、視線を上にさまよわせていた。

「上条さん、もしかして騙して連れてきたなとか思って、怒ってます?」
「ん?いや、そういう他愛ないことで怒る趣味は、カミジョーさんにはございません。でも、関係、ねえ……?」
 上条はポテチをぱりぱり食いながら思案げだ。
「御坂との関係って改めて聞かれるとな。最初はケンカ仲間で、そこから友情を育んで仲間になったみたいな、かな?」
「なによその少年漫画みたいな設定」
「例えるならゴクウとピッコロ?敵から仲間になったよなあれ。ゴクウとクリリンの関係とは違うよな」
「……私をピッコロ扱いしてない?」
「魔貫光殺砲とレールガン似てねーか? そういえば俺髪の毛ゴクウみてーだな」
「アンタ女の子に向かって緑色はないでしょ緑色は!」

「ちょ、ちょーっと待って下さいお二人とも!話が思いっきりずれてます!」
 佐天は、上条が一筋縄ではいかない相手だと、直感で悟った。

87■■■■:2010/04/14(水) 18:04:22 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!3】

「ケンカ仲間って、まさか殴り合うわけじゃないですよね?ボクシングみたいなルールですか?」
「……正真正銘、私は全力で電撃・レールガン・砂鉄剣なんでもありで挑んだけどね……」
 佐天はAIMバーストに取り込まれた時の記憶をうっすら持っている。
 AIMバーストを倒した時の御坂美琴は鬼神の如くであり、なお余裕があった。
 佐天は上条を見つめる……上条はすっとぼけた顔をしている。

「結果は私の全戦全敗。コイツには効かないの、私の攻撃が」
「さっき上条さん無能力者って言ってたじゃないですか?能力あってもありえない話なのに!」
「演算してやってる訳じゃねーからな。超能力じゃなくて、特殊能力だな」
 ずずっ、とお茶をすすりながら上条は続けた。
「弱点も多い能力だから、ネタばらしはここまでにさせてくれ」
「はー……」
 佐天はよく分からないまま話を打ち切られて戸惑っている。

「ま、経緯はともかく、御坂とは……」
 実際のところ、出会いも、全戦全敗という内容も、記憶の無い上条は、強引に話を変えようとしていた。
「能力とか関係なしに、頼れる普通の女の子としてお近づきにさせて貰ってるよ。高校生としちゃ情けねー話だけどさ」


 佐天は美琴をちらっと窺った。美琴は満更でもない顔で頬を赤くしている。
「じゃ、じゃあ、御坂さんは上条さんの事は、どうなんですか?」
「わ、わわ、私!?」
「御坂って、いつもプンプンしてるから何考えてるかサッパリ分かんねーんだよなあ……」
「いつもプンプンって…私達といるときはそんな姿ほとんど見せないですよ?白井さんが変なことしない限り」
「ホントかよ。俺いつも出来の悪い弟みたいな扱いで、目を合わせりゃボンクラだの、この馬鹿だのと」
「えー、こちらではいつも落ち着いてて、いざとなれば頼れるお姉さんモードで引っ張ってくれる人ですよー」

 美琴は口をぱくぱくさせて、目を泳がせている。
「どっちがホントのお前だ?」「どっちが素なんですか、御坂さん?」
「べ、べべべ別に演技してるわけじゃなくて、えと、その……」
「怒り表現っつーのは喜怒哀楽の基本だからさ、俺の方が素なんじゃね?」
「いやー、素直になれない照れ隠しと見ましたよ!怒り表現で誤魔化してるんじゃないですか?」
「照れ隠しなら、それなりのアピールってのか?ツンデレみたいなものも含んでるだろ普通。コイツはいつだってツンツンだ」

 上条と佐天は、う〜んと首を傾げて美琴を改めて見つめた。美琴は首をすくめて真っ赤になっている。
「ん、でも確かに変だ」
 上条と急に気づいたようにつぶやいた。
「何がですか?」
「こんなにずっとおとなしい御坂は初めて見るかもしれない。佐天さんがいるからか」

 その時、上条の携帯が震えた。

 ああ、ちょっと失礼…土御門か、とつぶやきつつ、上条は何やら話すとすぐ電話を切った。
「わりいわりい。ちょっと待ち合わせ時間早まる事になったっつー連絡だった。あと1時間ほどはいけるけどな」
「は〜い。じゃあまだ質問タイムは続けていいわけですね?今質問が増えました」
「ん?」
 佐天は見逃さなかった。

「そのカエルのストラップ、御坂さんとペアストラップですか?」

「ん?そうだけど?ペア契約した時に貰ってさ、携帯壊れて交換したときに、折角だしと着けたんだけどなー」
「ペッ、ペペペペペア契約!!!?」
 美琴は額をコタツテーブルに当てた形で突っ伏してしまっていた。うなじまで真っ赤なのが見て取れる。
「やっぱ似合わねーかねえ」
「に、似合ってますから大丈夫!そんなことより、ペア契約って!?」
「いや正にこのストラップ狙いでさ」
 上条は美琴をアゴでしゃくる。
「ペア契約にしたらストラップ貰えるっつーから、付き合っただけだ。逆らえない事情もあったしな」
「御坂さんがお願いしたってことですか?」
「そー。そういうことがあってさ、レアもんぽいっし、このストラップつけてるわけだ」

 ◇ ◇ ◇

88■■■■:2010/04/14(水) 18:04:38 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!4】

「……ところで、何でお前は寝てるんだ」
「なんかもう色々と……たぶん佐天さん盛大に勘違いしてそうだから、それを思うと……」
 美琴は顔を上げ、二人の顔を見ずにつぶやく。
 ペア契約を仕掛けておいて、勘違いも何もない。佐天は、美琴に揺さぶりをかけることにした。
「勘違いですか……じゃあ、今から私、上条さんの携帯番号ゲットしていいですか?私の家を知る彼の番号を!」
「番号?それぐらいいくらでも……」
「ス、ストップ!」
 相変わらずの鈍感さでもって携帯を取り出そうとした上条を見て、美琴は叫んだ。

 そのまま美琴は佐天の顔を見つめる。
 佐天は初めて見た――美琴のこれほどまでに、何かを訴えるような、子犬のような表情の顔を。
「わ、わかりました!か、上条さん番号はまた今度!やっぱ男女で軽々しく教えあうもんじゃないですよね!」
「? ただの番号交換だろ? まあいいけど……」
 また美琴は突っ伏してしまった。


 佐天は改めて、この2人の上級生を見比べた。
 見紛いようもない。御坂さんはこの人に惚れている。もう舞い上がって上条の方を見ることもできないようだ。
 御坂美琴と知りあって半年近くになるが、ここまでベタ惚れの男を隠し通してきたとは。
 そしてこの上条という男、最強のLV5をただの後輩のように扱い、その好意に全く気づいてない!?

 佐天は心に決めた。
 この男から情報を引き出し、御坂さんの援護射撃をすると!
 いつも何だかんだで助けてもらってる御坂さんに、ようやくお返しができる機会が来たと!


「ね、ねえ上条さん。今恋人っていないんですよね?」
「いる、と強がりを言いたいとこですがね」
「例えばですよ? 私が試しに付き合って下さいとか言うと、どーなんですか?」
「そ、そりゃあ嬉しいだろうなあ。けど、中学生相手っつー現実の前にはなー」
「え?中学生ダメなんですか?」
 やばい、年上好きなのか、と佐天は焦る。これじゃあ援護射撃どころかヤブヘビだ。
 ここでそろそろと美琴が起き上がってきた。目を閉じて、上条の方には顔を向けない。ちょっとオデコに跡が残っている。

「いや、年齢的にはおかしくねーんだろうけどさ。高校に入りゃわかるけど、中学生に手を出したらもう最悪のレッテルがつく」
「そーいうもんなんですか?」
「そーいうもんなの。いわゆるオトナの魅力がつき始める同級生をヨソに、中学生に目をむけるのはロリコンだ、ってな」
「じゃあ世間体だけが問題ってことですか?」
「突き詰めるとそうかもしんねえな。けど中学生ってまだガキだしさ、…って、ガキっていうと御坂怒るんだよな、いっつも」
 美琴は少し頬を膨らませたのみで、動かない。

「ま、ガキ…子供の世界に戻りたくねえっていう、どっちがガキだよっつー話かもな、実際のトコロ」
「……上条さんって、何か悟りすぎてません?何かこう、理由つけないと恋愛できないみたいな風に聞こえますよー」
「やっぱ言われるか。恋愛ってのはこういう理屈っぽい世界じゃなく、感情のまま動いた方がいいとはわかってるけどさ」
「そーですよ!仮に中学生から告白されたって、嫌じゃなければ受け入れましょうよ!」
「だなー。でも、俺みたいな能力もない金もない…顔は並だと思ってますけど!……そういう奴に告白する子、なあ?」
 上条は首をふりつつ、ため息をついた。
「自分からいい子見つけては玉砕していかねーと、永遠に彼女できねーだろな、ははは……」

 普段の佐天なら、「じゃあホントに立候補しちゃおうかな〜」といったボケをかますところだが、今は冗談では済まない。
「じゃ、じゃあ今の上条さんは、万が一告白されたら、オールオッケーみたいな感じなんですか?」
「…そうだなあ。あまりにストライクゾーン離れてたら流石に、だけどな。……えーと、御坂大丈夫か?ずっと黙ってるけど」

「だ、大丈夫。アンタたちの会話聞いて楽しんでるから、気にしないで」
 美琴は片目を開いて答える。自分では引き出せない上条の恋愛観に、内心はこの上なく興味津々状態である。
 ほんと今日の御坂はおとなしくて不気味だな……と上条はひとりごちる。
「ストライクゾーンですかあ……やっぱ顔とか胸とか、男の人なんだから見ますよねえ……」
 佐天は上条に斬り込んでみた。

89■■■■:2010/04/14(水) 18:04:53 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!5】

「いや?そりゃ美人だとか巨乳だとか、それには目は奪われますが!でも彼女基準としては別に、って感じだぞ」
「え〜、そんな事いって本心隠してません?じゃあ私達2人、ストライクゾーンには入ってます?」
 一瞬詰まる上条。
「あ、ああ。入ってる、ぞ」
「それはそれは。ありがとうございます」
「っつーか、キミタチがストライクゾーンに入らない奴なんて、いねーんじゃねーか……?」

「逆にどーですか御坂さん?上条さんはストライクゾーンに入ってます?」

 佐天はこれぐらいならどうかな?と美琴に振ってみた。
「ご、ごめん。そのストライクゾーンっていうのが、いまいちピンときてないんだけど」
「内面とか知らない部分は抜きにして、外面だけでとりあえず判断するぶんには、交際OKというライン、ですかね……?」
 上条は佐天の言葉を頷いて肯定してみせる。
「まあそんな感じかな。検討の余地有りってな」

「でも、それだと……」
 佐天はにま〜っと笑う。
「上条さんは、御坂さんの外面に加え、そういうプンプンしている所や諸々を加味しても、ゾーン内なんだ?」
「そりゃな。根っこはイイヤツなのは分かってるし」

 これはいい感触だ、とニヤリとしながら佐天は美琴に向き直った。
「さて改めて御坂さん。ゾーン判定どうぞ!……御坂さん?」

(交際OK……って!? 根はイイヤツとか……? そ、そう思ってくれてたの?)
 美琴は完全にトリップしていた。


「……さん!…さかさん!御坂さん!?」
 ハッ!と美琴は我に返る。
「あ、ああ、ごめん!……ちょっと考え事が」
「急にうつむいて固まっちゃいましたから何事かと……そ、それで御坂さんはどうですか?」

 なんだか夢見心地のような気分で、美琴の口が自然に動く。
「え、わ、私? 私もOKよ」

「……何がですか?」
「……あれ、交際の話してなかったっけ」
「! 御坂さん、ストライクゾーンどころか、上条さんと交際するのがOKってことですか!!!?」
「え……?」
 ようやく美琴の頭が状況を整理し始め、自分が何を言ったか、理解した、時。

 美琴は佐天の座っている方向へ真横に倒れこみ、コタツ布団に顔をうずめて震えだした。


「うわー感動……!恋人成立の瞬・間…!」
「ちょーっと待ってくれ。俺も突然で何が何やらだ」
「また難しく考えてますね? お互いオッケーで何が何やらもないですよ」
 佐天はまだこの期に及んで、といった表情で上条をジト目で見る。

「いや、俺は御坂のゾーン外とばかり思ってたからさ。……結構御坂のプライドに触る事やってきてるしな」
「プライド?」
「電撃は効かないわ、ピンチは何度か助けられるわ、でな。もちろん俺だって御坂に助けられてるから対等なんだけど」
 上条は美琴に一瞬視線を走らせる。
「その対等ってのが、御坂の中で俺を『許されざる者』にしてんじゃねーかなと。LV5の挟持ってヤツだな」

 はあーっ、と佐天は大きなため息をついた。
「上条さん、見事にぜんっぜん分かってませんねー」
「はい?」
「確かに御坂さんは最強のLV5ですよ?学生の頂点です。でもね……」
 佐天はぐいっと身を乗り出した。

90■■■■:2010/04/14(水) 18:05:09 ID:xtcQzKWk
【さてんがんばる!6】

「その頂上で一人立つ御坂さんは、ずっと待ってるんですよ、自分が寄り掛かれる人を!
あたし達じゃダメなんです、寄り掛かられても倒れちゃう。
御坂さん程になると、行動や振る舞い一つで、簡単に世界も物事も、変わったりしちゃうんです。
そーんなプレッシャーの中過ごしてるのに、なに『許されざる者』とか言ってスルーしちゃってるんですか!
御坂さんが独裁者風な人だったらそういう感想もアリですけど、そんな人じゃないのは分かりますよね?
みんな御坂さんを強い強いって祭り上げるけど、普通の女の子なんですよ御坂さんは!」

 佐天は息をついで更に上条に畳み掛ける。上条はこの説教モードにヒクついている。
「上条さん、いつもプンプンしてるって言ってましたけど、当たり前じゃないですか。
あたし覚えてますけど、御坂さんがカエルのストラップつけ始めたのは10月頭ぐらいだったはずです。
携帯のペア契約はその頃ってことですよね?御坂さんは、その頃既にさりげなく想いを上条さんにぶつけてたわけですよ!
そしてさっきまでの、このコタツでの御坂さんの態度。ずーっと真っ赤で、上条さんとほとんど視線合わすこともできず!
……な・ん・で気付かないんですか!普通に話せないからプンプンして誤魔化してるのに!どんだけ鈍感なんですか!」

 一瞬間が開き、更にと口を開こうとした佐天に、上条は右手で制した。
「いや、分かった。……まあ、その、俺が悪かった、です……」
「本当にそう思ってます?」
「し、しかしだな、俺を好きになる奴がこの世にいるなんて、だな……しかもこんなスーパーお嬢様が、とは……」
「あ、ちょっと待ってください。好きかどうかはあたしは知りません。あくまで推測です」
「う……」
 あれだけ言い切っておいて推測かい、と突っ込みたい上条であったが、言葉を飲み込む。
 しかしまったく見当違いなら、流石に起き上がって否定するだろう、とは思う。

「上条さんが、ちゃんと御坂さんの意思を確認して下さい。男なんだから、ちゃんとリードしてあげて!」
 佐天は、ん〜っと伸びをして、
「しゃべりすぎて喉が乾いて体も熱くなっちゃいました!ちょっとコンビニで飲み物買ってきます!」
 佐天はそう言うと、10分で戻ります、と言い捨てて外へ駆け出していった。

 ぽつんと2人きりにされた。どう見てもこの時間で結果を出せ、ということである。
 美琴の震えは止まっていた。が、どんな表情をして起き上がればいいかわからず、起き上がれない、といった様子だ。


 上条は意を決して、コホンと咳払いした。
「……なあ御坂。もし俺の事をそれなりに好いてくれているのなら、起き上がってくれないか?
そうでないならそのままでいい……3分ほど待って、俺はこの部屋を出て行く」
 美琴はすぐに、しかしのろのろと、体を起こした。顔は俯き、表情はわかりづらい。

「御坂、まだちょっと俺も気持ちの整理はついてないが……佐天さんの言うとおり、感情で動くとするならば……」
 下を向いて口を引き結んでいる美琴を見つめながら、上条は言葉を繋げる。
「俺を好いていると意思表示してくれたお前を、愛しく思う気持ちが湧いてきた。俺はこの気持ちに従う」

 上条は居住まいを正すと、コタツの上に右手を出した。
「御坂、こんな鈍感野郎で申し訳ないけど。もし、付き合ってくれるなら、この手を取って欲しい」
 美琴は。……両手で上条の右手を柔らかく包み込み、声も出さず頷いた。何度も、何度も。
「……ありがとうな、御坂。ずっと耐えさせて、悪かった……」
 美琴は声を殺して泣き始めた。左手はまだ上条の右手を離さず、右手でとめどなく流れてくる涙を押さえ……


 ガチャ、と扉の開く音がし、佐天がにゅっと顔を出した。
「終わりました、か……?」
「ああ、OK。おかげさまで……」
 佐天は部屋に入って座らず立ったまま、2人の手がコタツの上で結ばれているのを見て、微笑む。
「恋人確定!ですか?」
 上条と美琴は頷いた。
「やりましたね御坂さん!グッジョブですよ上条さん!じゃあこの喜びを……」

 おもむろに佐天は携帯を取り出し、ちゃちゃっと操作すると耳に当てた。
「佐天です、今いいですか?大ニュースです!なんと御坂さんに彼氏が出来たんです!私、立ち会いました!
……ええ、ええ、今ですか?彼氏の胸の中で嬉し泣きしてますよ。またご本人から確認してもらえば!じゃ!」
 御坂美琴が潤んだ瞳で顔を上げ、上条当麻が口をあんぐりあけて硬直している前で、佐天涙子は携帯をしまいながら笑う。


「『私の戦闘力は530000ですの』って言いそうなラスボスですけど、ゴクウとピッコロで頑張ってくださいね!」


おしまい。

91■■■■:2010/04/14(水) 18:14:04 ID:koVLB1rs
>>90
オwwwチwww
佐天さんヒドスwwwGJwww

92■■■■:2010/04/14(水) 18:37:23 ID:47xhZ8nU
>>90
ラスボスは黒子ですかw
GJです!

93■■■■:2010/04/14(水) 19:42:32 ID:tRINwvpY
>>90
GJです。
佐天、せめて最初は初春に伝えろよw

94■■■■:2010/04/14(水) 19:49:34 ID:7JC4RG3U
>>90
GJ!これからが本当の地獄だ…

95■■■■:2010/04/14(水) 20:18:38 ID:BekYEVsg
>94 さりげなく続きを要求しててワロタ

96コタケン:2010/04/14(水) 22:34:18 ID:JXn5v0/o
投稿しても大丈夫かな?
文章4スレ、挿絵2スレを生け贄に、上条美琴を召喚!

はじめましての人ははじめまして。
今回のSSは2作品目になります。
前回の投稿時に「これが最初で最後」と書いておきながらこのザマですよ!
美琴がかわいくてかわいくて。

ただ、文章のキレや話の構成、イラストの質は格段に落ちていますので、前作を楽しめなかった人は、時間を有効に使ってください^^;
単純に推敲不足なんですが、ネタが今月出た某同人誌と激しく被ってしまっているのに今日気づき、土日を待たずに今回投稿を強行するしだいです。

「本当に。ただの。偶然」
「うわーい、みんな考えることは一緒だーってミサカはミサカは愕然としてみたり!」

97コタケン:2010/04/14(水) 22:35:32 ID:JXn5v0/o
御坂美琴、という1人の少女を象徴する小物って何だろう?

「超電磁砲」の異名を支えるゲームセンターのコイン?
かわいいもの大好きな彼女のお気に入り、カエルのストラップ?
はたまた最近つけはじめた、可憐な花の髪飾り?

今回は、ひょんなことから「短パン」というアイデンティティを喪失した彼女のお話。


――――――――――――――――――――――――


(黒子めぇぇぇっ!帰ったらタダじゃおかないんだからっ!!)

御坂美琴は公共の道路上で1人スカートを押さえてもじもじしていた。
彼女の周りには学校帰りの学生達が行き交っている。1日の学業から開放された彼らたちは、夕食までの時間を思い思いに過ごしていた。

『お姉さまったら、いい加減に短パンは勘弁して欲しいですの。せっかくですので淑女らしい振る舞いをこの際身につけてくださいまし』
詳しいやりとりは省略するが、彼女のルームメイト、白井黒子から短パンだけをテレポートされてしまったからだ。
おまけにあの変態は、美琴の短パンを頭にかぶって、どこかに飛んでいってしまった。
淑女らしい振る舞いなどとお前がいうな!と美琴は叫びたいところだったが、いかんせんスカートの下がスースーして調子が出ない。
(あ、歩きにくいぃっ!)
まるでロングスカートのドレスを履いているかのように、これまで通り歩けない。
走るのはもちろん、蹴りをするなどとんでもない。
黒子の思惑通り、確かに自分の行動を矯正するのに一定の効果があるようだ、と美琴は頭を抱えた。

(とっ、とにかくこんなところを誰かに見られないうちに寮に戻らないと!特に知り合いに見られるのは絶対マズイ!)
人通りの多い場所に長居するのは危険だ。多少大回りしてでも人気の少ない道を通って寮に戻ろう。
願わくば何事も起きませんように。

そんな彼女の切実な願いをあざ笑うかのように、美琴の後方から大型トラックが猛スピードで追い抜いていった。当然のように周囲には小規模の突風が吹き荒れる。

念のために記しておくが、彼女は下着は履いている。
柄は幸いなことに、子供向けのキャラクターものではなく、オーソドックスな純白であった。


――――――――――――――――――――――――


「補習が長引いたー。うだーっ」

上条当麻は今日も今日とて、他の帰宅部の学生よりも遅い時間に学校から開放された。家に帰れば腹をすかせた居候シスターが待っている。
(ゲーセンででも気分展開したいところだけど、残金は僅か。上条さん的には悩みどころなのですよ)
よったらよったら歩く彼の視界前方に、見慣れた常盤台の制服の後姿が飛び込んだ。
やたらときょろきょろ周りを探りながら、じりじりと歩を進めているその人物は、お嬢様というより不審者か。

慎重に歩を進める彼女の背中に上条はすぐに追いつき、声をかけようとしたところでふと気づいた。
(はて、これは美琴か?それとも御坂妹の方なのか?)

目の前の少女は確かに彼の知り合いではあるのだが、見た目がまるっきり同じ少女がこの学園都市にはざっと10人はいるので、誰が誰やら判別がつかない。
(ま、何とかなるか)

いつも通りの楽観的な思考回路で3秒で結論を出し、呼びかけようとした絶妙なタイミングで、突然の突風が巻き上がった。


――――――――――――――――――――――――

98入れ替わりデートで知る本音:2010/04/14(水) 22:36:19 ID:JXn5v0/o
御坂美琴は風で舞い上がるスカートを必死になって押さえ込んだ。
前は隠せたが、後ろはまずいことになった!と脳内プチパニックになったところで、
「え、えーと、上条さん的にはここはスルーした方がいいのでしょうか?……おっすー今帰りか?こんなところでなにやってんの?」
今もっとも顔をあわせたくない人物の声が背後から聞こえてきた。なんとも能天気な口調が美琴の逆鱗を静かに逆なでする。

「……見た?」
美琴は後ろを振り返らず、バチバチと青い火花を放電しながら、平坦な声を返す。
妙にドスのきいた声に、道端でえさを探していた小鳥が『やべーよ今なんかバチっとしませんでした?!』と言わんばかりにびっくりして飛び去っていった。

「うっ、いやチラッとしか!ほんの一瞬しか!大丈夫、問題ねーよすぐ忘れるから!だからその心臓に悪いスパーク音はやめってってば御坂妹!!」

……御坂妹?と美琴は怪訝に思いながらも感情の抜けきった冷たい視線で振り返り、怯える少年をねめまわした。
こいつ下着を見た挙句に、私をシスターズと勘違いしやがった。どう折檻してくれようか。
「アンタね、私は……」
といいかけたところで美琴は口をつぐんだ。
ぴぴぴん、と学園都市第3位のハイスペックな脳内を電気信号が駆け巡り、猛烈な勢いで思考を開始する。

(いや待て、そもそもコイツは何で私をあの子と勘違いした?8月15日に会ったあの子は短パンを履いていなかったけど、まさかあのバカ、あの子達のス、スカートを覗いたことがあるんじゃないでしょうね?!こっ殺す!い、いやいやそれは流石にやりすぎよ。そもそもコイツが積極的に変態行為に走った証拠は無いし何らかの不可抗力だったのかも……。それよりもうわぁやばい!見られたー!よりにもよってこのバカに見られた!?くっ……やっぱ八つ裂き決定ね!!……いやいや待て待て、コイツは今私をあの子と勘違いしているわけよね。このままうまく誤魔化して今ここにいるのは御坂美琴とは別人ですよーってことにしちゃえばノーカウント!問題ないんじゃないかしら!?)

わずか0.1秒の超高速・高精度な情報処理を完了させ、口元をヒクヒクさせながら美琴は上条に結論を告げる。

「あ、アンタはぁ、一瞬だろうが何だろうがこの私のスカートを覗きやがったのか!!…………ってとりあえず、み、御坂は叫んでみます」


――――――――――――――――――――――――

99挿絵[1/2]:2010/04/14(水) 22:36:50 ID:JXn5v0/o
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/09/64a75f77f34848eaeca607b2f236cf54.jpg

100入れ替わりデートで知る本音:2010/04/14(水) 22:37:49 ID:JXn5v0/o
「軍用ゴーグルが無いと、ほんと美琴と区別つかないよなー」

結局、目の前の少女はシスターズの1人だと勝手に思い込んだ少年は、美琴と並んで繁華街を歩いていた。
放課後の時間を満喫する学生達の間を縫いながら、特にどこへと行くあてもなく歩を進める。
(そういや、さっきからずっと黙っているけど、こいつらこんなに無口だったっけ?)
上条の疑問ももっともだが、美琴はうっかりボロが出る事を危惧して、珍しく普段よりも口数をおさえていた。
『なんというか、この妹さんってば口調がちょっと違うよな』との独り言が聞こえてしまったことも後押しした。

「やっぱり見分けをつき易くするための小物が欲しいところだよな。そういえば、お前らっていつも何して過ごしてるんだ?」
上条の素朴な疑問に美琴はギクリと肩をこわばらせた。学園都市に残ったシスターズが、どこで何をしているのか、美琴は詳しいことを知らなかった。
どうごまかそうかとあせって逡巡する彼女を違う意味で解釈したのか、上条は慌てて、
「いや!言いづらいことなら無理に言わなくていいから!そりゃそうだよな。まだほいほい自由に歩きまわれる状況じゃないのはなんとなくわかってるから」
勝手に結論付けてしまった。再び2人の間に沈黙が落ちる。

仕方が無いこととはいえ、見た目14歳の年頃の少女が社会の輪から隔絶された環境で、日がな1日過ごすのはどうかと上条は思う。
が、シスターズの遺伝子上の元となった御坂美琴は、知る人ぞ知る有名人だ。うかつにあちこち連れまわす行動は彼女に迷惑をかけるかもしれない、と上条はジレンマに陥った。
(でもまぁ、その時はその時か。)
1人で表情をくるくる変える自分を不思議そうに見つめる隣の少女に、上条は心配ないと微笑んだ。


――――――――――――――――――――――――


自分に向けられた少年の無邪気な笑顔を見て、美琴は急に胸を締め上げられた気がした。

(というか、なんでコイツはあの子達に対してこんなに優しいわけ!?私に対する扱いと全然違うじゃない!)
隣の少年の振る舞いは、世間の一般常識に欠けるシスターズを気遣ってのことだろうとは美琴にだってなんとなく分かるのだが、理解は出来ても納得できない。

「ここらで学生らしい楽しみ方をエンジョイできる場所っつーと……うーん」
周りをきょろきょろと見渡していた上条は、ふとある方向に指を向けた。
「お、あそこのゲーセンによって行かないか?」

(よりによって女の子をゲーセンに誘うんかこいつは!)
心の中でツッコミつつも、なんだかんだで断れない美琴は不承不承うなずいた。

「よっしゃ、それなら早く行くぞ!」
放っておくとこの少女はいつまでも同じ場所に立ち尽くしていそうな気がした上条は、手をとって走り出す。
「え?ちょっと?!」
美琴は抗議の声が喉まででかかるも、いつものように言い返すことは出来なかった。
自分の手を引く少年が、美琴がこれまで見たことがない満面の笑みを浮かべていたから。

(そっ、そんな訳ないから!なんでコイツの緩んだ顔で動揺しなきゃいけない訳!?)

こんなにも調子が狂うのは、ひるがえるスカートが気になるからだと美琴は無理やり自分を納得させた。


――――――――――――――――――――――――

101入れ替わりデートで知る本音:2010/04/14(水) 22:38:18 ID:JXn5v0/o
上条に手を引かれながら美琴が連れてこられたのは、学園都市外部の技術で開発された篤体が揃ったゲームセンターであった。
店内の隅に設置された小さなプリクラコーナーでは、セーラー服を着た女子生徒たちがわいわい盛り上がっている。

上条は店内の中央にある、一種のクレーンゲームの前で足を止めると、振り返ってガラスケースの中の景品を指差した。
「ほらこのストラップなんかどうだ?アクセサリー代わりに持ってれば見分けがつきやすいかも……ってなんですかその露骨に嫌そうな顔は?!」

超機動少女カナミンのストラップのセンスはそりゃないわー、と美琴は上条をにらみつつ、隣のクレーンゲームを指差した。色とりどりの動物のぬいぐるみたちが、つぶらな瞳でひしめき合っている。
むぅぅぅ〜っとかわいらしく唸りながら、美琴は上条をぐいぐいと引きずった。

「いやぬいぐるみって、それじゃ身につけられないだろ?っておいおい引っ張るなって!こっちがいいのかよ?!お前ら本当こういうの好きですね!分かったからガラスに俺を押し付けるのをやめてくださいっての!」

――――――――――――

「うおあぁぁーっ!?また落ちたーっ!うだーっ!!」
先ほどからこの少年は持ち前の不幸さを発揮して、後一歩の所で景品を手に入れることに失敗し続けていた。店内を走り回る子供がぶつかって操作をミスるのは序の口で、アームのスプリングが突然はじけ飛んだ時にはさすがの美琴も唖然とした。何度もケースを開けて調整を繰り返す店員の顔があきれ返っているように見えるのは見間違いでは無いだろう。
実は美琴の電気を操る能力を使えば、この手のクレーンゲームなど簡単に攻略できるのだが、美琴の頭からはそのような思考はさっぱりと抜け落ちていた。
「な、なぁ。やっぱり俺がやるよりお前がやった方がいいんじゃないのか?ずっと見ているだけじゃつまらないだろ?」
どんよりとしたオーラをまとって上条は何度も同じことを尋ねてくるが、そのたびに美琴は黙って首を横に振り続けている。
少年のクレーンゲームを操作するタイミングは決して悪くないのだが、絶望的なまでの運の悪さに悪戦苦闘していた。それでも美琴は信じていた。美琴が絶対に不可能と信じていた絶望を、右手1つで打ち砕いたかつての出来事に比べれば、この少年はこの程度のゲームなどきっと乗り越えてくれるに違いないと。

――――――――――――

ようやく出てきた景品は、水色の子豚のぬいぐるみだった。
ずいぶんと憔悴しきった上条から手渡された、初めてのプレゼントをまじまじと眺めると、美琴は両手でぎゅっと抱きしめた。

上条は、無言で微笑みながらぬいぐるみを胸に抱く少女を苦笑しながら見守っていたが、やがてすまなそうな顔でおずおずと切り出した。
「悪い、上条さんのお財布はすっかり軽くなっちまった。最後に何か遊びたいのあるか?あと1つくらいなら何とかなるからさ」
なんとも甲斐性の無い台詞であるが、今回ばかりは美琴はこの少年に腹など立てる気など起こらなかった。
その一方で美琴の中では、この少年が誰かに渡すものを全て自分が独占したい衝動が湧き上がっていた。
すでに大切なものをもらったばかりなのに。もう十分満足したっていいはずなのに。
今日の最後にもう1つだけこの少年から何かをもらえるのなら、いつまでも残る思い出が欲しいと美琴は願った。

美琴は周りを見渡すと、黙って店内の隅に置かれたコーナーを指差した。


――――――――――――――――――――――――

102挿絵[2/2]:2010/04/14(水) 22:38:51 ID:JXn5v0/o
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/33/51157ba38a094e8195346036d0df93ac.jpg

103挿絵[2/2]:2010/04/14(水) 22:39:57 ID:JXn5v0/o
ゲームセンターから連れ立って外に出ると、いつしか空は赤くなっていた。
美琴は上条からプレゼントされたぬいぐるみと、今しがた撮影したばかりのプリクラを眺めている。
前を見て歩かないと危ないぞ、との上条の声も耳に入っていない。

彼女の手元のプリクラには少年と、少年の腕にしっかりと抱きつく少女のツーショットが並んでいる。それを眺めていると、美琴は自然とほほが緩むのを抑えることが出来なかった。

プリクラの中の少年は、若干ぶっきらぼうながらも優しい顔で笑っている。
今だってきっと同じ顔をしているに違いない。見なくてもわかる。

でもこの少年の笑顔は、御坂美琴という少女に向けられたものではない。
それが何だか、すごく納得できない。シスターズのふりをすることは自分で選んだことなのに。

この少年と並んで、2人だけの時間を過ごしたことなら何度もある。
海原光貴が発端となった偽装デートに、ゲコ太ストラップを理由にした罰ゲーム。
今回はシスターズを装って、この少年の隣にいる。

いったいどうしてこの少年と向き合うのに、こんなに遠まわしなやり方しかできないのだろうと美琴は眉をひそめる。

今まで自分はいつだって一直線に突っ走ってきたはずなのに。

――――――――――――

夕焼けに照らされて2本の長い影が並んで伸びている。
いや、2本というのは語弊があるかもしれない。
美琴は少年の手を握っていたから、影は2つで1つだった。

美琴は右手でぬいぐるみを胸に抱き、左手で上条の手を指先だけでつまむようにつないでいた。
上条はいつの間にか2人分の学生かばんを、さりげなく左手に担いでいる。
(何も言わずになんなのよそれ。キザったらしいくせに天然でやってるんだから始末におえないわよ)
隣に並んで歩く少年の横顔を、こっそりと盗み見る。

思えばこの少年は、いつだって誰かのために動いてきた。それは割に合わないことばかりだったはずだ。
何の得にもならない、むしろ損をしてばっかりじゃないか。
もしかしたら先ほどゲームセンターで美琴のために使ったお金だって、美琴にとっては微々たる物だが少年にとっては食事代に当てるお金だったのかもしれない、と遅まきながら懸念する。
今まで浮かれていた気分が、急速に冷静な思考を取り戻していく。

(なんでアンタはそれで笑っていられるのよ……)
少年が自分に向ける笑顔を見て、美琴は何故だかいたたまれない気持ちになった。
少年が話しかけてくる会話の内容が上手く理解できない。
何故だかわからないが、胸が苦しい。

加えて彼の笑顔が、本来の自分に向けられたものではないのが、何故だかたまらなく悔しい。
問わずにはいられなかった。この少年が自分を御坂美琴と認識していない今なら訊けると思う。

「あ、アンタは……美琴お姉さまの事をどう思っていますか?……と御坂は問いかけます」
振りしぼるような声だと自分でも思う。

え?と今の今まで沈黙を続けていた少女から突然飛び出た質問に、数秒ほど目を白黒させつつも上条は正面から彼女の問いにこたえる。
「うーん、そうだな。とりあえずわがままだし、すぐキレるし、人の話は聞かねーし。自販機に蹴りを入れるは、殺意マンマンで電撃を飛ばしてくるは。おまけに人がテンパってるときに恋人ごっこなんて無理難題を押し付けてくるし。あいつって全然お嬢様っぽく無いんだよな」

こいつは普段こんな風に自分を見ていたのか!!
と美琴が内心で上条をギッタンギッタンのまっ黒こげにしていたのだが、

「まあ俺がどう思おうが、あいつは俺を嫌っているみたいだけどな」

104入れ替わりデートで知る本音:2010/04/14(水) 22:40:27 ID:JXn5v0/o
どこか僅かにさびしそうな言葉に、美琴は心臓が止まるかと思った。
いったい以前の俺は何をやらかしたんだろうな、との独り言は美琴の耳に届かない。

ちょっとまて。嫌っている?自分が?この少年を?
そう思われているのは美琴にとって大きなショックだった。
そんなはずはない。そんなはずはないのだ。
この少年は自分には一銭の得にもなりはしないのに、命を懸けて自分と1万人の少女達を救ってくれた。
嫌いになんかなるはずが無い。むしろ……
とそこまで考えて、無意識のうちに思考を即座に切り替えた。

これは誤解を解かなきゃまずい。何故だかわからないが、とにかくこれはまずい。

「き、嫌ってなんか……いや嫌われてなどないって、御坂は主張するわよ!」
「ん……?お前がそういうのなら、きっとそうなのかな」

どこかほっとしたような息をはく少年を横目に、美琴は考え込んでしまう。
思い返してみるがいい。自分はこの少年に、今までいったい何をしてきたか。
事あるごとに、駄々をこねる子供のように突っかかり、電撃をあびせ、あまつさえ本気で命を奪おうとしたではないか。その後も少年の都合などお構い無しに振り回していた覚えもある。もしかしたら、相手が嫌がることしかしていないのかもしれない。

そんな人間に、いったい誰が好意を持つというのか?
この少年があの夜、自分の命を救ってくれたのだって、実はシスターズがメインであって、自分はあくまでオマケだったのかもしれない。
そこまで考えてしまうと、何故だか無性に悲しくなった。じわりと視界が滲み出し、胸をかきむしりたくなる。無意識のうちに彼を握る手にきゅっと力が入った。

再び黙り込んでうつむいてしまった少女を、上条は不思議そうに見つめているが、彼女は気づかない。
でもな、と少年はどこか照れくさそうな声で、頭をボリボリかきながら前を見て言葉を続けた。

「さっきはああは言ったけど。あいつと一緒にいるのは別に嫌ってわけじゃないんだよ。あいつはいつだって底抜けに明るくて、人懐っこい奴で。なんだかんだで困った奴を見れば放って置けないお人よしだし。この前だって何時間も宿題を手伝ってくれたしな。やっぱりあいつと一緒に歩く帰り道は楽しくて、ずっと過ごし続けたい時間だったんだと思う」
徐々に夕闇に染まる空のように沈みかけていた自分の心に、確かな光がともった気がした。
少年は少女の手を、力強く握り返す。

「それに何より……守るって誓ったから。嫌いになんかなるわけねーよ」

どうして自分はこの少年の言葉に一喜一憂しているのだろうか。この少年に守られ続ける。レベル5の自分がレベル0なんかに、なんてプライドの壁などもはや何の意味もなく染み込んでくる言葉。それはなんて温かくて心地よい誓いなのだろうか。
でも。

「それは……、誰かに頼まれたから?」

びっくりした顔で少年は隣を振り返った。その顔には隠しごとがばれたかも、と危惧する子供のような焦りが浮かんでいる。
「う……そうじゃないって言ったら嘘になっちまうけど、別にそれだけじゃなくてだな」
あたふたと言うと、少年は周りをきょろきょろと見渡し、誰もいないのを確認した上で、さらに少女の耳元に口をよせてささやいた。

「……美琴には秘密だからな?」

こっそりと、まるで大切な宝物の秘密の隠し場所を友人に教えるような真剣さで、上条当麻は言葉をつむいだ。


――――――――――――――――――――――――

105入れ替わりデートで知る本音:2010/04/14(水) 22:41:00 ID:JXn5v0/o
燃えるような夕焼け空はいつの間にか夕暮れに変わり、空は海の底のように深い群青の色で世界を覆おうとしていた。いつの間にか、外を出歩いている学生は美琴と上条だけになっている。そろそろ夕食の時間だろう。

気をつけて帰れよー?あ、1人で帰れるか?途中まで送ろうか?

どこまでもおせっかいでお人よしの少年にやっとのことで、大丈夫、と一言だけ告げて美琴は少年と別れた。またなーと手を振りながら去っていく少年を、その場でぽけーっと見送る。

胸に抱えたぬいぐるみを、きゅっと抱きしめる。
周りに誰もいない事を確認してから、美琴はぷはぁ、と息を吐いた。
先ほどから激しい鼓動は収まらず、下手をしたら不整脈まで出そうかもしれない。
ううぅ〜っ!と耳まで真っ赤にして顔をブンブンとふる。
照れくさいような、むずがゆいような、まったくもって落ち着かないくせに、決して不愉快というわけではない。
どちらかというと歓喜に近い気持ちが、必死に手綱を握っていないと自分の内側から爆発しそうになる。

(なんなのよ、これ〜!あ、あのバカのせいで、まったくもう……)
彼女を揺さぶる原因は、少年の口からささやかれた本音。

それは確かに、御坂美琴という少女に向けられたものだった。

いつしか足元から伸びていた長い影法師は闇に溶け込んでいた。
道端に並ぶ街灯の群れが、美琴をスポットライトのように照らし始める。
足元に自分の影が何本も浮かび上がっても、少女はいつまでも同じ場所で立ち尽くしていた。


――――――――――――――――――――――――


翌朝。

本日は土曜日で午前中も授業はなく、上条当麻は1週間ほったらかされてむくれているインデックスを連れ、街に繰り出していた。
近所のスーパーに、午前中限定のセール目当てで買い物に行くだけなのに、やたらと上機嫌な白い修道服の少女はふと何かに気づいて声を上げた。

「あ、ねえとうま。あそこにいるのって短髪かも。隣にいる女も地下世界で会ったよね?」

ん?とインデックスの指差す方に、上条が片側2車線の道路の向かい側の歩道に目をやると、確かに見知った常盤台の制服が2つ、目についた。
白井黒子の隣に並んでどつきあいながら騒がしく歩く少女は、紛れもなく彼が良く知る御坂美琴その人であった。

白井は美琴が胸に抱えているものを見ながらあきれて愚痴をこぼし、美琴は美琴で真っ赤な顔でムキになっている風に上条には見えた。
距離は遠く、雑踏にまぎれていては声は届かないだろう。
それでもこのまま声をかけずに去るのも、なんだか惜しい気がする上条だったが、
「ほらーっ、短髪なんか放っておいて早く行こうよ、とうまぁー!」
なぜか、むーっとしだしたインデックスが、上条の腕をとってぐいぐい引っ張りながら歩き出す。
2人の少女は上条達には気づくことなく、人ごみの中に姿を消えていった。

インデックスに腕を引っ張られつつも、上条は首をかしげる。

美琴が抱えてたぬいぐるみ、なんであいつは昨日のアレと同じのを持ってるんだ??


                                   END

106コタケン:2010/04/14(水) 22:44:13 ID:JXn5v0/o
以上です!ありがとうございました!

う〜ん、書き込みの文章制限に調子を狂わされました、と言いたいところですが、
それ以前にSSというか台本ですね。作家さんって本当に凄いどすなぁってミサカはミサカは(ry

もし今後自分のHPに掲載するようなことがあれば書き直したいです。
その際はイラストも丸ごと描き直しですね。

こんなSS知り合いに見られたら、いろんな意味で恥ずかしくて死んじゃいそうですけどね!

それでは本当にありがとうございました。

107■■■■:2010/04/14(水) 22:48:43 ID:j4INXMuE
>>106
最初のナレが森本レオの声で脳内再生された
つか絵も文も才があるなんてすげー!
GJ!

108■■■■:2010/04/14(水) 23:03:12 ID:EmU9Umt2
はじめまして。
掲示板というものに書き込むのはこれが生まれて初めてなので、
至らぬところ等ございましたら申し訳ございません。

自分はまとめページの方を主体に見ていますけど皆さんうまいですね〜。
正直うらやましい…。

早速ですが自分はss書くほどの勇気が無いので、ネタだけ置いていきます。
自分同様にこれで色々膨らんだ方は、ぜひ使ってみてください。

過日、スパロボZをプレイしていた時にキングゲイナーのあの告白を見て、
『上条(ないしは美琴)による、キングゲイナー的告白』
というのが脳裏に浮かびました。

学園都市全域に絶叫告白する上条さん、あらゆる意味で公開処刑な美琴。
二人を引き裂くインデックスの魔の歯。初春・佐天も(色んな意味で)ヒートアップ。
黒幕・黒子の策略やいかに!

…なんてね。

まあそんな感じです。これからも作者の方々を応援しています。
長々しい書き込みになってしまったことに重ね重ね申し訳ございません。

109■■■■:2010/04/14(水) 23:08:27 ID:NoOXgm.c
まずここは基本sage進行な

110■■■■:2010/04/14(水) 23:09:39 ID:.slC/gBI
>>106gj!

111■■■■:2010/04/14(水) 23:14:56 ID:ARTY45lA
コタケン様GJ!
文章すごく引き込まれましたよ!

112■■■■:2010/04/14(水) 23:26:43 ID:wBeqSMPc
>>106
GJ!すごく面白かったです。だからぜひ次のSSを(ry

113コタケン:2010/04/15(木) 00:00:26 ID:PxCjKUbY
ぬーん、コメントありがとうございます!
実は原作3巻直後から、5巻、6巻で書かれなかった上条×美琴の葛藤を暴く長編のプロットはすでにできていたりします。
しかし途中で、
「あれ?原作レールガン漫画のシスターズ編がひと段落したら、新しい展開になるよな…。
すると今考えてるネタは激しくパラレルストーリーになっちゃうジャン!
海原光貴をダシにしつつ、学園都市側のキャラを大勢巻き込んだ大騒動で、上条と美琴を恋人同士にする構想がパーですよ!」
と激しく焦っていたりします。
……どうしましょう?

114■■■■:2010/04/15(木) 00:05:29 ID:h7EES2Ds
いけ!投下しちまえ!

115■■■■:2010/04/15(木) 00:09:49 ID:yVpR1s3k
そうだ!!やっちまえ!!
我々に上琴を!!

116コタケン:2010/04/15(木) 00:20:38 ID:PxCjKUbY
まだプロットですってばw
全体の完成度は多分3割程度です。
(来月に人生の命運をかけた試験があったり…)
ここまで書いたら最後までやりきりたいとは思いますが、1ヶ月くらいかかると思います。
原作レールガン漫画のシスターズ編が終了し、新展開が始まるのはいつになると思いますか?

117■■■■:2010/04/15(木) 00:36:07 ID:cHzpY.fk
>>116
相変わらずのGJ!
後、半年はかかると思う。クリスマスには終わってるかな?
もちろん試験優先で、完成待ってますよー

118■■■■:2010/04/15(木) 00:59:10 ID:FR6PSy2k
>>108
sageを忘れた人に、sageろよと言われてもあんま分かんないですよ。
過去の自分がそうだったように…。(涙)
ここはみなさん統一して『E-mail欄にsage入れろや』
みたいな事を書きましょう。

119■■■■:2010/04/15(木) 01:05:01 ID:NJZLWyBQ
>>116
GJです
しかし黒子に淑女らしい振る舞いと言われても説得力が全く無いw

120■■■■:2010/04/15(木) 01:19:32 ID:0euUy8WE
>>116
下着で判断する上条さんらしく、面白かったです。


変態という淑女wwwww
黒子ですね

121寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:08:33 ID:RTZBe7M.
ううむ
自信ないが投げるか

122寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:22:51 ID:RTZBe7M.
題名:当麻と美琴の恋愛サイド ―帰省/家族―
副題:9章 【帰省1日目 忠告】
消費:17レスの予定
番号:【142/2−85】 〜 【158/2−101】
前:
前 → まとめページでお願いします

※超注意
・いちゃいちゃ、0.1%程度
・鬱展開
・謎展開
・オリキャラ無双(セリフ量が)
・超独自解釈
・個人的に過去最高に不安

(´・ω・`)

5分後くらいから

123■■■■:2010/04/15(木) 02:22:58 ID:I05oGfTM
もっとだ、もっとこい!

124寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:28:49 ID:RTZBe7M.
【142/2−85】


【帰省1日目 忠告】


 まだシトシトと雨の降る中、頭に同じお面を3枚も重ねて被った少女、御坂美琴は長い階段を降りきった。ち
なみに、お面が1枚増えているのは先程上条に渡されたからである。上条に預けておいたら、例え大きな事件に
巻き込まれなくてもズタズタにされてしまう気がして心配になり、言われるがままに受け取ったのだった。

美琴「はぁぁ〜〜〜〜」

 そのお面を揺らすように美琴は大きなため息をつく。階段を降り始めてからもうかれこれ10度目くらいだ。
 暗闇の中でも映える朱色の傘の下、鮮やかな振袖に身を包み込み、素の魅力を引き立てる程度の薄化粧をして、
簪《かんざし》を挿し、さらに可愛らしい(?)カエルのお面を被る。そんな、普段とは一味違う美少女然とした
美琴なのだが、その表情は全てをぶち壊しにするほどに暗い。美琴は周囲を行き交う人々の楽しげな様子を見て、
余計に憂鬱になり、思わず「……不幸だ」なんて誰かの口癖まで吐いてしまう。その少年がいつも抱いている切
なさを少しだけ理解できた気がしたが、だからといって気が晴れるわけもない。

美琴(……ん、あれ? でも、そういえばアイツ、最近この口癖使ってない気がする)

 以前までの上条ならば、美琴と顔を合わせただけで不幸だと呟き、逃げるのに失敗して不幸だと言い、美琴が
怒って電撃攻撃する度に不幸だ叫んでいた。今から考えてみてもかなり癪な態度であるのだが、そういうのがこ
の所全く無い。逃げる必要が無くなっただとか、電撃攻撃が減ったという理由もあるだろうが、以前に比べて上
条を襲う不幸が減ったというわけではないのだ。言わない方がむしろ不自然だろう。
 しかし、美琴はそこでハタとその理由に気付いた。

美琴(あー、そっか。私がサンタになって幸せにするとか恥ずかしい事言ったから、気でも使ってんのかしら?
   ひょっとしたら自分が『不幸だ』って言う事で私が落ち込むんじゃないか、とか思ってんのかも…………
   うん、有り得るわね。アイツったら変な所で無駄に優しいし…………ったく、素直になれっつってんのに
   余計私に気を使ってどうすんのよ)

 せっかく人が心配してやってんのに。などと心の中で愚痴るが、そんな事とは裏腹に気持ちは踊る。自分が上
条に大切に想われているという事実がそうさせるのだ。
 だが、一時的に晴れやかになった気持ちも、別の事実により少しずつ滅入っていく。10秒後にはさっきより
重いため息を付いてズーンと落ち込んでしまった。
 美琴は先程から何度も何度も考えている今後の予定について、呟くように再確認する。

美琴「えーっと、とりあえず変な事件は起こらないと仮定して……まず今から皆と合流する。んでアイツんちに
   帰る。そしたら明日まで親アンド乙姫ちゃんの皆と一緒……明日の予定はまだちゃんとは聞いてないけど、
   どっかに出掛けるような話してたから、たぶんやっぱり皆一緒……んで明後日はアイツが先に帰る……私
   が帰るのはその次の日、帰ったら早々に学校が始まる。か」

 当然だが、いくら考えてみても結果は同じであった。改めて無駄な事をしてしまったと徒労感から息を吐く。

美琴(あーもう!! アイツと二人っきりになれる時間がこれっぽっちも無いじゃない!!)

 うぎゃぁああ! と心の中で叫びながら頭を抱え、グニャグニャ身をよじる。
 そう、常盤台のお嬢様、超電磁砲こと御坂美琴の明晰な頭脳は、現在『アイツ』でいっぱいなのであった。
 下手に会わなければ一週間でも我慢出来ただろう。が、もう遅い。たがが外れてしまった。それなのに、家族
と一緒にいると素で話すことが出来ない。それどころかボロを出すまいと気を使う。この状況は生殺しに近く、
美琴の精神を徐々に蝕んでいく。

125寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:29:03 ID:RTZBe7M.
【143/2−86】


美琴「うぅ、全然話し足りない……」

 元々、口を開けば20分はノンストップでマシンガントークできるほどお喋りが大好きな美琴である。特に上
条と喋っているのはそれだけで楽しい。可笑しいくらいテンションが飛んでいく。昔はその刺激が強すぎて、会
うのを躊躇っていた事もあったが、今では驚くほどに心地良い。それは他のクラスメイトや後輩、親族との会話
では決して得られない独特なものだ。過激なツッコミや、自分が慌てふためくような上条の言動など、端から見
ればマイナス要因に思えることでさえ、内心ウキウキが止まらない。どんなエンターテインメントよりも興奮す
る行為だ。
 とは言っても、彼女自身はそこまで自覚していないのだが。

美琴「それに、会話以外だって……」

 美琴は先程までの出来事を回想する。上条の手の感触。真剣な眼差し。触れられなかった唇――――
 小指の腹で唇をなぞりながら、はふぅー、と、さっきとは少し違う熱っぽい吐息を付いてしまう。

美琴(せめて、後もう30分…………ううん、1、…………えっと、3時間……、とちょっと。一緒に居られた
   ら帰りまで我慢出来ると思うんだけどなー……、たぶん)

 医者に掛かったら『上条当麻症候群の禁断症状です』などと診断されそうな重症っぷりであった。
 しかし、そう言う意味で考えると、やはり先程までの流れは千載一遇のチャンスだったのかもしれない。でも
その本人にチャンスを断ち切られてしまった。相手にも似た気持ちである事を期待していたので、あれは予想以
上にショックが大きい。

美琴「はぁ、アイツは私と一緒に居ても楽しいわけじゃないのかしら?」

 そんなはず無い! と完全に否定できないのが辛い。昔の知人との話が自分と一緒に居る事より大事なのだろ
うか。なんて馬鹿げた事まで考えてしまう。美琴が風邪を引きそうだから早く帰すと言うのは解るが、一緒に帰
るという選択肢もあったはずだ。

美琴(いやまあ、普通に考えれば、外の知り合いには帰省中とか短い期間しか会えないわけで、アイツはアイツ
   で大人な対応をしたってだけなんだろうけど。間違ってるのは私の方だって分ってるんだけど……)

 あの場で子供だったのが美琴だけであるのは明らかに思えた。上条と一緒に居たいからという自分の都合だけ
で、父から頼まれたという知誠の言葉に微塵も耳を貸さなかった。あんなのは普段の自分からは想像しがたい。

美琴(それでも、納得できないものはできないのよ……)

 落ち込む要因が多すぎる。美琴はもう一度盛大なため息をついた。

美琴「子供……ねぇ」
??「うん」
美琴「……ん?」

 独り言に返事をされた。辺りを見回すが誰も居ない。
 しかし改めて「こども、よんさい」と言う声が下の方から聞こえてきて、美琴はようやく足元の存在に気がつ
いた。可愛らしい朱色の振袖を着て、その上から黄色のカッパを纏った幼女である。
 うわっ、と話し掛けられた美琴は思わず仰け反る。再度辺りを見回すが、親らしき人影はない。

美琴「えっと、どうしたの? ママはどこに居るか分かる?」

 しゃがみながら傘に幼女を入れ、優しく尋ねる。
 すると幼女はおもむろに手を上げ指差した。

美琴「へ?」

 しかし指差した方向にあるのは美琴の顔である。

126寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:29:15 ID:RTZBe7M.
【144/2−87】


美琴(え、ちょ、何? ウソ、私? 私がママ?? ってことはまさか!? いやいやいやいや、いくら何でも
   それは…………でも、もしかしたら、ひょっとして、ありえないとは思うけど。この子、学園都市が密か
   に開発してると噂の時間移動能力者によって連れてこられた、未来の私の子供………とかそういう展開?
   よく見ると口元や髪の色が私に似て……ってちょっと待ちなさい! じゃあ父親は? 父親は誰よ!?
   …………アイツ、なのかな? だ、だって目元がアイツにそっくり、ってわー馬鹿ダメよ! まだ早いわ
   よだって私まだ中学生だしそういう心の準備とか全然出来てないし法律とか世間体とかあるし……………
   でも、万が一アイツが、『どうしても今すぐ娘が欲しい! だから……ゴニョゴニョ……』って言うなら
   ……えっと、その。や!! だからダメだってば!! うー、あー、えーっと、ほ、ほら。そういう行為
   に及ぶ前にきちんとやることがあるでしょ!? その、どっかロマンチックな場所で…………け、けけけ、
   結こ、ん)
幼女「カエルー!! ぴょんこー!!」

 美琴の口からゴハッ!! っと肺の空気が漏れる。幼女の言葉にそれほどの衝撃を受けた。
 一人でテンパってモジモジしていた体は、危うく地面に崩れ落ちそうになる。

美琴「……………………………………………………………………………………………………………………………
   そ、そそそ、そうね。偉いねー。ちゃんとピョン子の名前が言えて…………、あはは」

 キラキラとした純粋な子供の瞳を見るのが何故か辛かった。

幼女「……いいなー」
美琴「うっ」

 今美琴が被っているお面は3枚。それを欲しがる幼女が1人。大人ならばここで『いっぱいあるから1枚あげ
よう』となるのではないか、と美琴は考えた。
 口を『い』の形にして、笑顔のようで笑っていない、不自然な表情に顔を固めたまま、手がギリギリとお面へ
伸びる。しかしそこから動かない。この3枚はあくまで『観賞用、保存用、上条に被せて楽しむ用』である。学
園都市内でも売っているか分からない。欠けるのはマズイ。美琴の中で『お面を被った上条』と『大人な美琴』
が天秤の両サイドに乗り、まるでジェットコースターのように激しく揺さぶられる。

幼女「…………………」
美琴「〜〜〜〜ッ!!」

 無垢な視線が突き刺さる。
 普通の人ならそれでも無視できたかもしれないが、美琴には耐えることが出来ない。学園都市の五指に入ると
言われるエリートの巣窟、常盤台中学。そこの生徒にすら『お姉様』と呼ばれ、慕われるだけの器量と資質と世
話焼きスキルを兼ね備えた美琴にとって、この子を軽くあしらうなんて事は不可能に思われた。

美琴「…………い、良いわよ分かったわよ。何て言うか、その、うん。ピョン子好きって事に免じてあげる」

 美琴は細く息を吐いてから、先程上条から渡された一番上の物ではなく、二番目のピョン子お面(保存用)を
外す。傘を顔と肩の間に挟め、幼女のカッパのフードを取ると、美琴に似た茶髪でボブカットの頭に掛けてやる。
 幼女の顔がどんどんと明るくなっていく。

美琴「いい? 特別なんだから、大事にしなさいよ?」
幼女「わぁー!! ぴょんこぴょんこー!!」
美琴「ちょっと、嬉しいのは分かるけどあんまりはしゃがないの! わっ、跳ねんなって! 濡れちゃうでしょ。
   とりあえずフード被ってからにしなさいよ」

 美琴は幼女の腕を押さえるが、余程嬉しいのかぎこちなくもピョンピョンと跳びはねる。
 しょうがないわねえ、と呆れながらも、美琴は満更でもないような顔でそれを見つめた。

127寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:29:28 ID:RTZBe7M.
【145/2−88】


美琴「それで? アンタ名前は?」
幼女「んー? まことー」
美琴「へ!? ま……、まままままままままままままままま、麻琴ぉーッ!!??」
麻琴「うん!」

 素っ頓狂な美琴の言葉に、まことは笑顔で頷いた。
 もちろん字面は伝わっていないが、美琴は何だか『麻琴』だと思ってしまった。その名前は過去何回か脳内シ
ミュレーションした『将来子供を産んだ時に付ける名前候補ランキング』で、毎回トップ5には入るような常連
である。ちなみに、秋より以前の美琴はその名前について、『べ、別にアイツは関係無い。関係無いのよ。ただ
単に麻琴って響きと画数が、良いってだけで……』などと、脳内で自分に言い訳していたのだが、最近はもはや
『当麻と美琴から一字ずつとったら麻琴か麻美よね……えへへ』とか考え、ぬいぐるみを抱きながらベッドの上
を左右に転がり、同居人から訝しげな眼差しを向けられている。

美琴(ほ、ホントに私の子供…………だったりして!?)

 未来の旦那が分かるという期待と、面倒事になりそうだという不安で心臓がバクバク言う。
 いずれにせよ確認しなければならないだろう。

美琴「ね、ねえ麻琴ちゃん?(うひゃぁ、へ、変な気分)……えーっと、ママはどこに居るの? も、もしかし
   たら…………私、とか?」
麻琴「ママ?」

 麻琴は美琴の顔をジーッと見つめる。
 や、やっぱり私なの? と、美琴は僅かに汗を垂らしながら見守る。しかし、

麻琴「ママは? ママとパパどこ?」
美琴「……………………は、はは」

 たった今思いついたようにキョロキョロと辺りを見回す麻琴を見て、美琴はほっと胸をなで下ろす。良かった
ような悪かったような複雑な気分であったが、別の問題の発生により考えている暇はあまり無さそうだった。

麻琴「ふぇ……、ま、ママぁ? パパぁー? どこー?? ぐすっ、まこちゃん置いてっちゃやだぁー」

 行き交う人々の中に立ち止まり駆け寄る者は居ない。ほとんどは一瞥し、心配そうな顔をするだけで、そのま
ま立ち去ってしまう。
 どうやら本格的にはぐれたらしい。麻琴は右へ左へ、後ろへ前へ、どちらに行けばいいのかも分からなくて、
美琴の居る場所を中心にウロウロする。
 その場所はちょっとした広場のようになっている。更に人も相変わらず多く、半分以上が傘を差しているので
探すのは容易でないだろう。

麻琴「パパママぁ?? ヒック……どこぉ? ヒック……、ぐすっ。ふぇぇぇぇえええええええん」

 ついに麻琴は足を止め、美琴の前方辺りで泣き出してしまった。大きな瞳から大粒の涙がポロポロと止め処な
く溢れる。
 美琴の方はというと、別にこの程度で慌てることはない。こんなのは学園都市の至る所で見ることができる日
常的な光景だ。ただ、自分に少し似ているせいか、麻琴という名前のせいか、昔の自分を投影して少しボーッと
していた。こんなに大っぴらに泣きわめくことはなかったが、美琴だって似た経験くらいはある。例えば夜中に
目を覚まし、寝ぼけて夢に出てきた母親の事を捜して寮内を彷徨い歩いたり。結局見つからず、仕方なくベッド
に戻り、お気に入りのぬいぐるみを涙で濡らしたり。
 そういえばいつからだろうか、両親と再会する際に冷静なままでいられるようになったのは。

128寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:29:47 ID:RTZBe7M.
【146/2−89】


麻琴「うぇぇぇえええ……ヒック、ぇぇええええああああん。ふぁぁぁぁぁぁあああああああああん」

 美琴は麻琴の大きな泣き声で我に返ると、しょうがないわね、と息を吐きつつ頭を掻いた。麻琴への距離を今
一度詰め、傘の中に入れ直す。そして再びしゃがみ込み、柔らかく微笑んだ。

美琴「まーこちゃん。ほらほら、そんなに泣いてるとピョン子に笑われちゃうわよ?」

 美琴は残るお面の内『観賞用』をきちんと前に被り、麻琴の頭に手を置きながら語りかける。それを聞いて麻
琴は振り向くが、その表情は悲しげなまま変わらない。

麻琴「ま゛ぁーま゛ぁー。ぱぁーばぁー。ヒック……ヒックぐずっ」
美琴「パパもママもこのピョン子お姉ちゃんが探してあげるわよ。だから泣かない」

 麻琴は美琴の方をじっと見て、コクッコクッと何度も頷くが、涙は一向に止まる気配が無い。
 本人だって泣きたくて泣いている訳じゃないのだろう。ただ不安でどうしようもないだけだ。

美琴「ほら、まこちゃんもピョン子お面付けてるんだから。鳴くならえーんじゃないでしょ? ピョン子は何て
   鳴くんだっけ?」
麻琴「う゛ぅぅぇぇ……ヒック……ヒック………………、ケロケロぉぉおおー」
美琴「うん。良く出来ました」

 美琴はお面を元の位置に戻すと、濡れたカッパのまま、麻琴の体を少し強めに抱きしめてやる。温もりを感じ
て落ち着いたのか、1分も掛からないうちに泣き声は小さくなった。

美琴「良い子。良い子ね」

 囁きながら麻琴の頭を丁寧に撫でた後、身体を離す。

美琴「あーあー、ったくもう顔グチャグチャじゃないのよ。ちょっとこっち向いて」

 麻琴の顔は涙と鼻水で大変なことになっていた。美琴は猫柄のポケットティッシュケースをバッグから取り出
し、猫柄の匂い付きティッシュで麻琴の顔を拭う。

麻琴「ウッ、ウッ……ミーにゃちゃん……」
美琴「ッ!? 分かるの!?」

 コクッと頷く。
 ケースとティッシュに描かれた猫はラブリーミトンのマイナーキャラであった。美琴はそのキャラを知ってい
る人間に会ったのはほとんど初めてで、感動のあまり目頭が熱くなる。いっそ本当に娘だったとしても良い、と
いうか是非娘に欲しいとさえ思えて、再び抱きしめてしまう。
 その後も二人の趣味が非常に合っている事もあり、会話していると直ぐに麻琴の表情は晴れていった。

美琴「さて、落ち着いたことだし、じゃぁパパとママを探そっか!」
麻琴「うん! ……どーするの?」
美琴「まあピョン子お姉ちゃんに任せなさい」

 二人は手を繋ぎながら麻琴が来た(と思しき)方向へ進もうとする。

美琴「……ん?」

 いざ行かん。と張り切ったその瞬間、美琴の頭からお面が一つフワリと落ちた。一番上に被っていた『上条に
被せて楽しむ用』である。どうやら紐が切れたらしい。
 美琴はそれを拾い上げる。

美琴「………………」
麻琴「おねえちゃん?」
美琴「ん? ううん。何でもない」

 紐を適当に結び直して頭に被ると、今度こそ麻琴の両親を捜すために二人は歩き出した。


 ◆

129寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:30:00 ID:DP8wkCsk
【147/2−90】


 ガチン!! と、上条が予想していなかった音が頭に響く。弾は出ない。

当麻(……ッ!?)

 わけが分からず1秒以上も停止してしまったが、上条の身体は朦朧とした意識を無視して反射的に動く。銃口
を避け、知誠の懐へ飛び込む。
 が、タイムロスのためか、先に動いていたのは知誠の方であった。
 空手のお手本のような綺麗な中段回し蹴りが上条の腹に迫る。かと思ったら、寸前で脚がピタリと止まり、唐
突に角度を変えて頭を打ち抜く。
 ガードは間に合わない。
 頭の中で響く鈍い音と共に視界が揺れる。

知誠「……」

 しかし上条は倒れない。
 常人ならば明らかに倒れるべき状況で、足を踏ん張る。
 若干安定しないままで右腕を前へ突き刺す。

当麻「……」

 だが、それは知誠の寸前で止まる。
 止められたのではない。上条が止めたのだ。
 上条はこの状況で考えてしまった。
 今のこの構図を俯瞰してしまった。
 相手は恐らく復讐者。自分が憎くて襲ってくる。
 では自分はどうだろうか。自分は目の前の男を殴る必要があるのだろうか。
 これがもし路地裏の喧嘩なら。もし『相手が気に入らない』程度の簡単な理由で良いなら、上条は止まらなか
ったはずだ。
 しかし今は違う。闘う理由が重い。
 上条には、相手を殴って良いのか全く分からない。凶戦士のようにただ目の前の敵を駆逐していいのかが分か
らない。その行為に自信が持てない。
 だから止まった。
 その迷いは刹那であったが、知誠はその隙に上条の懐へ入り、素速く背負い投げをする。スポーツ的なもので
はない。上条に確実にダメージを与えようと、体を出来るだけ高く上げ、肩の上から勢いよく振り落とす。
 上条の視界が回る。濡れた砂利の上に背中から落ちる。受け身は取ったがあまり意味を成していない。固い地
面に背中と頭を打ち付けられ、全身に激痛が走る。
 直後、ゴフッ! という音と共に肺から強制的に息が吐き出された。知誠が勢いを付けて上条の体に覆い被さ
り、100キロ近い体重を掛けてきたのだ。
 
 その体勢のまま知誠は銃の弾倉を2秒程で交換し、上条の心臓へと押し当てる。
 彼は驚くほど無表情だった。

当麻「ぐッ!! あがッ!!」

 上条は全身に力を入れて抵抗する。しかし知誠の体は剥がれない。
 知誠はゆっくり引き金に手を当てる――――

当麻「クッソォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 ――――そして、無言のままそれを引く。

130寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:30:13 ID:RTZBe7M.
【148/2−91】


 ガチン!!と、咆哮する上条の耳に再び不可解な音が響く。
 思わずビクッ!! っと体を震わせ、瞳を閉じかけるが、不思議なことに体の中央に風穴は空いていない。

当麻「………………………………はい??」

 上条は今度こそ意味が分らない。
 一度なら弾を込めるのを忘れた、程度で済むが、二度はいくら何でも有り得ない。
 知誠の指が、再び動く。

 ガチン!!……ガチン!!ガチン!!ガチン!!ガチン!!ガチン!!ガチン!!ガチン!!ガチン!!

 しかし弾は出ない。
 上条は自分の体の上からゆらりと立ち上がる男を見上げる。
 男の表情は焦燥ではない。どころか、

知誠「ブッ……クククク……、フハハ……、アァッーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
   ギァッーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……」

 顔をグニャリを歪ませて、額を手で押さえて壊れたように笑い出す。肩を上下させるほどに。

当麻(……からかわれ、た?)

 そう思って、少しだけ体から力を抜き、起き上がろうとした。瞬間、頭を革靴で思いっきり蹴られる。

当麻「ッガァァアアア!!」

 咄嗟に手でガードしたが、その上から鋭い衝撃に襲われる。
 耐え難い激痛に砂利の上をのたうち回る。

知誠「ッンだよ。死んどけよ。テメェは2回以上殺されてんだろうが」

 上条は頭を押さえながら、何が何だか分からないといった表情で知誠を見る。
 そして余計にわけが分らなくなった。
 男は泣いていた。いや、顔に掛かる水は雨かもしれない。ただ、上条には泣いているように見えた。

知誠「チクショー。つまんねー。こんな……こんなもんか…………」

 何かを呟きながら壁に背中を付いて座り、おもむろに胸ポケットからタバコを取り出す。
 しかし、完全に濡れている事が分るとそれを横へ投げ捨てた。代わりに再び別の弾倉を取り出し、銃に入って
いる物と交換する。
 上条を睨む。蔑んだような目で。

知誠「フッ……ハハハ。何だその顔? 俺がテメェを殺すと思ったか? 絶望して、恋人の顔でも思い浮かべち
   まったか? 馬鹿が!! 殺すわけねー。殺せるわけねーだろガキが!! テメェを殺すともれなく俺の
   娘と部下達とその子供は死ぬんだよ!! 良かったな。統括理事会のゴミ共にでも感謝しろよ疫病神」

 知誠はまるでテレビのリモコンを操作するくらいの軽い動作で銃を上条へ向けると、適当に引き金を引く。
 パンッ!! と乾いた音が鳴った。
 上条は動かなかった事を後悔する。が、動かなくて正解だったらしい。
 どこに飛んでいったかは定かではないが、上条の身体に傷はない。

知誠「動いたら撃つ。無駄口を叩いても撃つ。死なない程度になら当てるかもしれん」
当麻「…………」
知誠「今までのはちょっとしたアトラクション。用事ってのはここからだ」

 上条は雨ざらしのまま、砂利の上に横たわり、それを受け入れる。というか、どう反応して良いかいまいち分
らなかった。相手の真意が読めない。

知誠「これからするのは、忠告だ」
当麻「…………」
知誠「結論から言う。御坂美琴の前から消え失せろ。彼女はもう二度と学園都市には戻らねえ」
当麻「……ッ!?」


 ◆

131寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:30:25 ID:RTZBe7M.
【149/2−92】


 御坂美琴は、顎に手を置きながら足を止めた。

美琴「うん……、やっぱあの方法を試してみるしかないか」

 麻琴から聞いた感じだと、両親とはぐれたのは恐らく10分以上前である。この広場のような場所に居るかも
怪しいし、夜の暗さでは親の方もこちらを捜すのが困難だろう。
 この状況で親を捜すとなると、普通ならそれ専用の迷子センターのような施設を探し、放送してもらうべきだ。
しかしパンフレットを見たところそういう施設はかなり遠く、そもそも神社なんかに放送のための設備が張り巡
らされているかも疑問であった。というか、あるなら親の方が先にそちらへ行っていそうだ。
 そんな事もあって、美琴にはそこへ向かう前に試しておきたいことがあった。
 二人はどこかの神社へと向かう手近の階段を中腹まで登ると、途中で横へ逸れ、辺り一帯を見渡せる場所へと
出た。細い丸太で作られた柵の前で、眼下の広場を見る。

麻琴「ひといっぱい」
美琴「そうね。いっぱいだね」

 実際見渡す限り遠くまで、数え切れないほどの参拝客が往来していた。一部では規則的な流れを作り、一部で
は流れなど無視して混沌としている。もし昼間であっても視界によって捜すのは困難だろう。絵本の『○○をさ
がせ』の方がずっと楽に違いない。さらに今の時刻はもう夜7時を回っている。所々ライトがあるものの、全体
的に薄暗いせいで、分かるのは『人が蠢いている』というくらいである。

美琴「うーん、傘が結構邪魔だけど、どうにかやってみますか。まこちゃんもパパとママが居ないか見ててね。
   お姉ちゃんも頑張って捜すから」
麻琴「うん」

 美琴は今一度麻琴から聞いた両親の外見を頭の中で整理する。
 その後、一呼吸だけ深く息を吸って精神を集中すると、普段は微弱にしか出していない電磁波を強めにして、
広場へ向け放出し始めた。一般の人には認知できないが、これがもし可視光線なら、辺り一帯を昼間のように照
らす凄まじい光源に見えたかもしれない。
 僅かなタイムラグの後、その電磁波の一部が返ってくる。しかし、ノイズがかなり乗っていて、何が何だか分
からない。まるで磨りガラスを通して景色を視ているかのようだった。

美琴(ここまでは予想通り。でも、レベルアッパーやミサカネットワークの件があるんだから、このくらいは出
   来るはずなのよね)

 シスターズのように意思疎通が出来るまでは厳しいかもしれないが、形を捉えるくらいはできるのではないか、
と考えた。普段はこんな使い方をする機会は滅多に無い。だからこそ、勝手に出ている電磁波を流用し、狭い範
囲を視ていただけだった。死角さえ防げれば良かったのだ。
 今はそれを自ら明確な意志を持って応用する。

美琴(指向性を高めるため周波数を限界まで上げる……減衰するのを防ぐため放出レベルを増強……受信した反
   射波を解析する演算を書き替える……視界から得た可視光線の情報を統合……)

 一つ一つ、丁寧に方法を見直していく。
 像はカメラが自動でピントを調節するように、ぼやけたり鮮明になったりを繰り返した。

132寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:30:42 ID:RTZBe7M.
【150/2−93】


美琴「来たッ!!」

 美琴の脳内で、これまでに無いほど鮮明な像が結ばれる。それは近くにある物だけではない。遠く数百メート
ルは離れた物まで鮮明に視ることが出来た。
 もし常人がそれを一気に頭の中に入れられたら、情報量の多さに苦しむか、或いは目で視た時のように簡単化
されて理解までは出来ない事だろう。しかし御坂美琴の演算能力は、特殊能力の開発が盛んに行われている学園
都市の中においてさえ第三位を誇る程にずば抜けている。サヴァン症候群患者の映像記憶能力を何倍にも増した
かのような演算速度で、電磁波と可視光の情報を統合し、ふるいに掛けていく。
 やがて彼女の脳は二人の人間に注目した。

美琴「ん、アレ……かな?」

 広場の隅にそれらしき人物が視える。二人は傘も差さず、必死の形相で何かを捜しているようだった。

美琴「ねえまこちゃん。アンタのママって茶色い髪のロングで、今は結ってるんだったわよね?」
麻琴「うん」
美琴「着物の色は?」
麻琴「……むらさきいろ?」
美琴「じゃあ、綿あめ買った? ……ゲコ太柄のヤツ」
麻琴「買った! どこ? パパとママどこ??」
美琴「はいはい慌てない慌てない。まこちゃんにはちょっと見えないかな。遠いもの」
麻琴「ぅぅうう!!」
美琴「泣くんじゃないの。パパとママが逃げちゃうわよ? ほら、急いで行こう。あ、でも階段は走っちゃダメ
   だからね?」
麻琴「うん!!」

 二人は再び手を繋ぎ急ぎ足でその場を後にした。


 ◆


当麻(美琴が学園都市に帰らない?)

 上条は混乱した。
 いきなり人殺しだなんて言われて、今度は美琴の話である。流れに一貫性があるように思えない。それに、美
琴自身は上条にそんな事を言っていなかったし、そういう素振りも見せなかった。第一、恋人である上条を差し
置いてどうしてこんな男がそんな話を知っているのだろうか。

当麻「……、まさか!?」

 だが、上条はそこで気付いてしまった。
 知誠が話していた美琴への要件。あれは誰からのものだったか。

知誠「これは美琴さんのお父上、御坂旅掛氏からの依頼だ。『娘を学園都市から逃がす手伝いをして欲しい』と」

 上条は体中からどっと汗が噴き出すような感覚に襲われる。
 一般的に、能力開発を受けた学生が学園都市を勝手に去ることはできない。能力者はそれだけで軍事機密であ
り、脱出はそれを外部に漏らす反逆罪と見なされる。表沙汰には成ってないが、何らかの理由で学園都市脱出を
謀る『脱学』を試みて捕まった生徒の噂も、まことしやかに囁かれていた。だからこそ、御坂美鈴はあのような
危険な目に合ったのだろうし、搦手を使って美琴を外に出そうとしたのだと上条は考えている。
 しかし、重要なのはそこではない。実際問題、美琴だけが学園都市を抜けるのはロシアの時の件を見ても簡単
なのだ。その後の逃げ方は問題になるかもしれないが。
 それよりもむしろ一番問題なのは――――

133寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:30:52 ID:RTZBe7M.
【151/2−94】


知誠「詳細をベラベラ喋るつもりは無い。テメエにはこう言えば解るだろう。『旅掛氏はこれまで彼女を襲った
   不幸を既にほぼ全てご存知でいらっしゃる』。一例を挙げると、シスターズの一件とかな」

 上条の頬が引きつる。声を絞り出す。

当麻「そう……か。はは、良いことじゃねえか。あの狂った奴らが大勢居る場所から逃げられるんなら。と言っ
   ても、AIM拡散力場を隠すことが出来るならだけどな。能力者は大抵それで見つかっちまう。それを解
   決できなきゃ」
知誠「それならもう目処が付いている。テメェが気にすることじゃない。あともう一つ伝えておこう。旅掛氏は
   テメェに感謝していらっしゃる。が、同時に疎ましく思ってもいらっしゃる。何回かはテメェが発端で娘
   を危険にさらされたわけだから至極当然だ。付いていこうだなんて馬鹿な事は考えるなよ?」
当麻「…………」

 そうなのだ。美琴にとって一番安全なのは、彼女が一人で、家族と共に学園都市を離れることである。その隣
に上条当麻は邪魔なだけだ。

当麻(でも、それでも。それがアイツにとって一番幸せとは限らない……よな。美鈴さんだって、俺にアイツを
   頼むって……)

 しかしその胸中を知って知らずか、知誠は眉をしかめる。

知誠「その被害者面、気に入らねえな。幼少期の記憶をトラウマとして処理したところで、最近の事件は覚えて
   いるはずだが。どこまで鈍感な馬鹿なんだ? テメェは自分が疫病神である自覚が無いのか? 周りの者
   を傷つけるってのに、どうして人と付き合おうだなんて思えるんだ。理解できねえな。親に捨てられただ
   けじゃ気づけないのか」
当麻「ッざけんな!!」

 パン! と再び銃声が鳴り、起き上がりかけた上条の頭の直ぐ近くを弾丸が抜けていく。
 上条は動きを止めたまま、目の前の男を睨み付ける。

当麻「俺の両親は、そんな自分の都合で息子を手放すようなくだらない人間じゃねえ!! 心配だったに決まっ
   てんだろ。悩み抜いた上での判断に決まってんだろうが。何様のつもりか知らないが、勝手に他人がした
   必死の決断を見下してんじゃねぇよ!!」

 上条当麻は記憶喪失だ。それでも、夏に見た父親の表情や言葉を思い返せば分かる。そのくらいの事が判らな
いほど自分の脳は腐ってないはずだ。そう思った。

知誠「フン。結果だけ見れば同じ事だ。たまたま学園都市に招くヤツがいて、それにすがり、両親は解放された。
   疫病神からな。……いや、そもそもテメェはそこが理解できていないのか。テメェは最近、その能力《ちから》
   を使ってヒーローごっこをしているらしいからな。やはり幼少期の事を話してやらないと駄目なのか」

 途中からブツブツ独り言を呟きだした知誠を、上条は訝しげな目で見つめる。

知誠「考えたことがあるか? 今のように右手が振るえない、何の力もない子供の頃。今と同じように周りで凄
   惨な事件が起きた時、被害者達がどうなったか」
当麻「……」
知誠「フン。まあいい、一つクソくだらねえ昔話をしてやろう」

 上条は冷たい雨に体力が奪われていくのを感じながら、無言のままその声を聞いていた。

知誠「むかーしむかし。外にある学園都市運営の銀行に、クソ真面目な係長とその部下の夫婦が居た」

 知誠は、ぽつぽつと、中空を見つめながらいかにもつまらなさそうに語り出した。


 ◆

134寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:31:03 ID:RTZBe7M.
【152/2−95】


麻琴「ママぁー!! パパぁー!!」

 両親を見つけた麻琴は美琴の手を離し、全速力で駆け出す。

母親「まこちゃん!!」
父親「まこと!!」

 まだ20代に見える二人は我が子に気付くと、同じく駆け寄り、カッパに付いた水滴で濡れるのも厭わず抱き
しめる。感動の親子再会というヤツだ。
 母親は最初は勝手に離れた娘を叱ったが、直ぐに「良かった。ホントに良かった」と呟きながら、目に涙を浮
かべつつ麻琴の頭をなで続けた。父親はホッとした表情でその二人を温かく見守っている。麻琴はと言えば、大
量の涙を流し、顔がまた酷い事になっていた。が、まあ嬉し涙ならそれも良いだろう。ひょっとしたら、かなり
長い間はぐれていたのかもしれない。冬の雨の中、この人混みならば、確かに不安になるのも容易に想像できる。
 親子三人は、気持ちが落ち着くのにひとしきり時間を掛けた後、ようやく美琴の存在に気がついた。
 美琴としてはそのまま静かに立ち去っても良かったのだが、またしてもボーッとその親子の様子を見つめてし
まっていた。だから声をかけられた時は、必要以上に驚いてしまった。

父親「本当に、ありがとうござました」

 往来で両親に深々と頭を下げられ、何度もお礼を述べられてしまう。
 美琴はどうにもくすぐったくなって、いえいえあはは、などと返答し適当に手を振った。
 二人には名乗られたが、美琴とは全く関係なさそうな苗字であり、やはりというか何というか、タイムトラベ
ルが出てきそうな展開にはどう転んでもならなさそうである。
 美琴は、マンガの読みすぎだ私、と少しだけ凹んでしまった。

父親「後日改めてお礼したいのですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」
美琴「へ? あ、あー。あはは。えーっと、その、私はアレなんで」
麻琴「ピョン子お姉ちゃん!!」
美琴「……じゃなくて、」
母親「そう言えばまこちゃん、そのお面どうしたの?」
麻琴「…………お姉ちゃんに、もらった」

 麻琴はばつが悪そうにおずおずと言った。一応褒められるような行為ではないという自覚はあるのだろう。
 美琴は面倒な流れになるのを察して間髪入れずにフォローしてやる。

美琴「あ、余ったからあげたのよ。ほら、あと2枚もあるし。まこちゃんもピョン子大好きだもんねー」
麻琴「うん!」

 麻琴は素直に助け船に飛びつく。
 両親もどうしようか困ったような顔をしていたが、とりあえず母親が麻琴にお礼をきちんと言わせて、それは
丸く収まった。しかし、逆に「お礼がしたい」という両親の主張の方は更に強まる。

美琴「学園都市在住で、帰省してるだけなんで……」

 結局白状してしまう。
 学園都市在住だから『後日お礼する』というのはほぼ不可能なのだ。
 美琴は、ばれませんように、と祈りながらおずおずと言ったのだが、その甲斐虚しく、母親の方が何かに気付
いたようにパアッと表情を明るくした。
 反比例するかのように美琴の表情は引きつる。

135寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:31:15 ID:RTZBe7M.
【153/2−96】


母親「もしかして、…………(あの、御坂美琴さんですか?)」
父親「え、ああ!!」
母親「馬鹿! 声がデカイ!」

 母親の方は周りに気を使って小声で語りかけてくれたらしい。

美琴「あ、あはは……何のことでしょう」

 だからといって素直に名乗り出るわけにもいかない。
 先刻のような事は心の底からごめんだ。

母親「あ、いえ、ごめんなさいね。さっきの質問は無かったことにして下さい……ただ、一つだけ聞いてもらえ
   ますか?」

 はい、と美琴は頷き安堵する。どうやら比較的まともな人らしい。

母親「この子の、まことって名前、『麻《あさ》』に楽器の『琴』って書くんですけど。『琴』は美琴さんから
   一字頂いたんです」
美琴「へ? ………………………………………………ええっ!!??」
麻琴「??」

 美琴は驚いて思わず大声を上げてしまい、自分の手で口を押さえる。

美琴(まこちゃんが本当に麻琴…………じゃなくて、私から一字って、ええっ!? 普通そう言うのって親とか
   偉人とか有名なスポーツ選手から取ったりするもんじゃ!? ってか、『麻』はどこから来たのよ!?)

 激しく混乱する美琴に、麻琴の両親は照れたように微笑む。
 当の麻琴だけ「ねーママなーにー?」と、母親の着物を揺さぶっていた。

父親「当時、4年くらい前。丁度世間一般にも注目されてきた頃、二人で随分はまりまして……」
母親「テレビとか、月刊学園都市っていう本なんか見て、思わず感動しちゃって、美琴さんみたいに強くて元気
   で努力を惜しまない子に育って欲しくて」
美琴「えーっと、そ、それは何と言いますか……こ、光栄? というか」

 美琴はどうリアクション取って良いのか分らない。
 自分が周りより色んな面において優秀であるのは理解していたが、まさかこの年(というか当時は10歳頃?)
で他人の娘さんの名前に影響してしまうだなんて夢にも思っていなかった。こそばゆいというか、むず痒いとい
うか、よく分らない初めての感覚で満たされる。
 もうこの時点においては自分の事を隠していないのだが、何だかどうでも良かった。

 結局、その両親は美琴にどうお礼して良いか困り果てていたが、麻琴と居て楽しかったと告げるとそれでどう
にか納得したようだった。納得ついでに、麻琴の父親がサインをねだってきた(母親はそれを叱っていた)が、
美琴は快諾して、麻琴がしているピョン子の裏に『御坂美琴』と普通に書いてやった。英語で書くことも出来る
が、それだと麻琴が読めないだろう。とは言っても麻琴はよく解っていないようで、むしろ一番喜んでいたのが
母親で可笑しかった。

美琴「まこちゃん、またね。また迷子になったりしちゃ駄目よ?」

 そう言って頭を触ると、うん! と元気に返事をしていた。が、別れ際になると何かを察したのか悲しげな表
情で美琴を見つめた。美琴も少しだけ寂しい気がしたが、表情には出さず笑顔で手を振ることにした。
 麻琴を真ん中にして、親子三人が手を繋いで並んで行く。
 美琴はその情景を飽きるまで見守った。
 その内の一人に、自分を重ねて。

美琴「さて、私も行きますかー。っと、先に電話した方かいいかしらね」

 美琴は麻琴に逢う前よりはスッキリした面持ちで携帯を取り出すと、画面も見ずに慣れた手つきでボタンを押
し、耳に当てた。


 ◆

136寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:31:27 ID:RTZBe7M.
【154/2−97】


 むかしむかし。ある学園都市運営の外にある銀行に、クソ真面目な男性係長と女性社員が居た。
 二人は約2歳離れていて、同じ行内の同じ部署で働いていた。
 男の方は、文武両道とまではいかないが武道に長け、頭もそこそこ平均以上。ただし、クソ真面目なつまらな
い野郎で、浮いた話も全く無い堅物だった。
 女の方は、絵に描いたような薄幸少女だった。物心付く前に一度チャイルドエラーに成りかけ、その末に学園
都市の息の掛かった外の施設に放り込まれたらしい。幼い頃に怪しげな実験をされたのが影響したせいか、酷く
病弱な体であり、複数の持病があった。就職も障害者枠で何とか入った。
 それでも女は周囲に対して明るく振る舞い、人一倍努力する娘だった。
 男はそんな女に、いつの間にか惚れていた。
 女の方も、何かと気に掛けてくれる男には良い印象を抱いていた。
 詳細は省くが、二人の関係は数年掛かったものの上手くいった。
 男はプロポーズする際、女に誓った。『もう不幸にはさせない。お前とその周りの幸せは絶対俺が守る』と。
 腕っ節には自信があったし、正義感も人一倍あった。研修の一環で学園都市へ行き、武器の扱いにも慣れた。
ルール無しの闘いなら大概のヤツには負ける気がしなかった。
 女の体調もその頃はたまたま良好で、子供も産むことができた。医者にはもう産めない体になったと言われた
が、二人はそれでも喜んだ。

 しかし、女が病気と子育てを理由に退社する、最後の日。
 あの日、銀行は、4人のテロリストに襲われた。
 金を奪って、人質を取って逃げていく強盗ではない。そこで多くの人と、銀行そのものを道連れに死のうとす
るテロリストだ。
 学園都市を恨み。やり口に抵抗し。命を投げ打ってでも学園都市を弱らせたいとする馬鹿なヤツらだ。
 まだ超能力者すらほとんど居なかった10年程度前。日本と学園都市の抗争も水面下ではまだ続いていた時代
だ。日本政府も、一部の日本人も、まだ狂った噂が耐えない学園都市の手綱をどうにか握れると勘違いしていた。
だから、世間も確かにヤツらの行動を理解できないわけでもなかった。明らかに日本より金利が高く、預金が集
中する学園都市の主要銀行が狙われるのも納得が出来た。
 だが、男は理解しようとはしなかった。
 『何故よりによって今日』『何故大きくもないうちの銀行』『何故強盗じゃなくテロリスト』『何故……』

 死者は出なかったが、女は瀕死の怪我を負った。
 男は女を守れなかった。
 理由は簡単だ。その時男は女の近くにいなかった。女は発作を起こし、逃げ遅れた。そしてテロリストがやる
ことなんて、起爆のスイッチを押すだけだ。守るも何も、時間の猶予や駆け引きすら無い。
 結局、男が守ったのは、同じく不幸にも逃げ遅れていた小さなガキ一人だった。
 男は自分を責めた。責めて責めて責めて責めて…………。自殺しなかったのは、娘が居たからと、女がまだ辛
うじて生きていたからだ。
 しかし、女はそれから1年も持たなかった。
 何でもない日に、何の言葉も残さず、あっけなく死んだ。
 男は荒れた。が、まあそんな話はどうでもいい。

137寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:31:40 ID:RTZBe7M.
【155/2−98】


 問題はその後、男は偶然にもクソ馬鹿げた情報を手に入れた。
 テロリストの1人が忌々しい事に重症を負い、寝たきりになりながらも生きていやがった。公には死んだこと
になっていたが、何故か学園都市の刑務所病院に隠されるように入院していた。
 男は、仕事で得たコネや人脈を最大限利用し、そいつの所へ面会に行った。
 残念ながら防弾ガラス越しで、ブチ殺す事は出来なかったが。ヤツは、そんなことがどうでも良くなるような、
最悪なジョークを言い放った。
 『俺達は強盗のつもりだった。テロリストの格好や爆弾はブラフのはずだった。銀行員は強盗に対して対策を
打っているが、テロ対策は遅れている。あの時世間で話題になっていたテロ集団と同じ格好をしていれば、皆逃
げるから、その後ゆっくり盗めばいいと、そう持ちかけられた。だが、花火程度の威力しかない予定だった爆弾
の火薬が、聞いていたのと全然違っていた。本物のテロリストが使っていたような、建物ごと破壊できる規模で
はなかったが、俺達の体をバラバラにするくらいの威力は余裕であった。俺達は騙されただけだ。殺すつもりな
んて本当に無かった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。……』
 包帯に巻かれながら嗚咽を漏らしたそいつは、男よりずっと年下で、まだ成人もしていないように見えた。
 男は愕然とした。
 普通なら、そんな戯言無視しただろう。
 だが、男の脳内で点と点が線に繋がってしまった。
 あのテロに似た事件は何件かあり、結果的に世論を味方に付けた学園都市は、正々堂々とその大規模テログル
ープを壊滅させたのだ。
 ただし、最後の半分程度は、前半のと手口が違っていた。学園都市に属する重要人物の死傷者が減り、一般人
の死傷者が増え、何より建物やインフラはほとんど無傷だった。
 もちろん一部の学園都市に良い印象を持たない者達は自作自演を主張したが、マスコミの報道は揃ってテロリ
ストを批難した。
 もし、仮に、あれが本当に学園都市側の策略だとしたら……

 男は銀行を辞め、独りで情報屋稼業を始めた。いや、稼業なんて言えない。ただの無職野郎だ。それでも、ど
うしても真実が知りたかった。妻が死んだ理由を知りたかった。
 元々行員だったときの人脈も手伝い、情報は意外と簡単に集った。
 やはり統括理事会の一部が裏で手を引いたいたらしい。
 その日から裏で手を引いたヤツらは男の敵《かたき》になった。まあ、それもどうでもいい話だが。

 男は全てが解明したと思った。が、まだどうしても理解しがたい事があった。
 何故、あの見計らったような最悪なタイミングだったのか。
 長い時間を掛けて調べ上げるほど首を傾げてしまう。どう考えてもおかしかった。
 始めにヤツらは隣の地区にある二回り程でかい銀行を、事件当日の5日後に狙う計画だった。だが、その地区
の警戒レベルがたまたま上がった。そしてターゲットは男の居た地区に移った。
 犯人達は焦った。ターゲットの地区で、また警戒レベルが上がっては困る。だから予定を早めた。
 だが、その地区は有り得ないことに、止まるはずのない、止まってはいけないシステムが、バグにバグが重な
った事で完全に止まって、店を閉めていた。男が居た銀行を除いて。

138寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:31:51 ID:RTZBe7M.
【156/2−99】


 知誠はそこで話すのと止め、一息付くと、ゆっくりと瞬きをする。

当麻「……」

 上条は全身が石のように冷えていくのと、鼓動が痛いくらいに大きくなるのを感じていた。できれば耳を塞ぎ
たかったが、してはいけないように思えた。

知誠「男は認めざるを得なかった。その頃、ワイドショーを賑わせていた一人の少年。確かにそのガキだった。
   男はあの時、そいつを助けたはずだった。そいつは、周囲に厄災を及ぼす、『疫病神』と呼ばれていた。
   もう、そいつが原因としか思えなかった」
当麻「…………」

 『馬鹿げている』『八つ当たりだ』『何が人殺しだふざけるな』、そんな言葉が上条の頭の中をこだまする。
 反面、心のどこかで認めている自分もいる。
 大小含め、『不幸な事件』なら上条の周りで不自然なほど起きている。今でこそ周囲で起こった事件を手当た
り次第に解決している上条だが、もし、何の力も持たない小さな子供の頃から似たような事が起こっていたのな
ら、それは一体どうなっていたのだろう。誰が解決していたのだろう。
 知誠は目の前に横たわる上条を、冬の雨より冷たい目で見下ろしながら、うっすらと笑った。

知誠「男はそのガキについて調べ始めた。馬鹿だと思うだろう? 八つ当たりどころじゃない。単に現場に居た
   だけで恨もうなんて狂ってると考えるのが普通だ。まあ、否定する気もない。だが、調べれば調べるほど、
   似たような事件がゴロゴロ出てきた。もはや偶然では片付けられなかった。結局、男はガキを殺してしま
   おうと思った。いや、殺さなければならない存在だと思った。当時そのガキの周りで何人が傷つき、何人
   が死んだか。正義感と復讐心が男を突き動かした。……だが、遅かった。ガキは統括理事長に招かれ、学
   園都市へ行っちまった。それで、男はガキを追うのを諦めた。統括理事会内のゴミを潰すのが先だったか
   らな。ははは、めでたしめでたしってヤツだ」

 知誠はやる気無さそうに手を叩くと、座り直し、今度は鋭く上条を睨み付けた。

知誠「どうだ、少しは業の深さを思いだしたか?」
当麻「…………俺に、どうしろって言うんだ」

 上条は地面で天を仰ぎながら誰に問うでもなく呟いた。

知誠「んな事自分で考えろよ。話はまだある。その不幸能力についてだ。そもそもお前のその能力。まあその原
   因はお前の方が詳しいかもしれないが、そいつが及ぼす影響は二種類ある。一つは単純に極小さな事でお
   前を不幸にする。とは言っても、まあ気の持ちようでどうにかなる程度の微々たるものだ。もう一つは、
   お前を事件に遭わせる。これが問題だが、これの本質はさらに二つの可能性を持つ。『事件を見つける性
   質』か、『事件を発生させる性質』だ。前者なら実際お前は完全な被害者になるわけだが、後者は完全な
   加害者だ。そして、前者では説明しきれない事象が何回か起きている。分かってるだろ?」
当麻「…………」

 上条は答えない。ただ、自分を責め続ける言葉が機械的に耳へと入る。

139寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:32:05 ID:RTZBe7M.
【157/2−100】


知誠「端的なのは、エンゼルフォールと呼ばれる事件だ。正直情報屋なんて言っても科学側偏重で、魔術なんて
   ものはよく分からないから間違っているかもしれないけどな。必死でかき集めた情報を統合するとこうな
   る。『世界を破滅の危機にさらした』、『発端は上条刀夜であるが、それは奇跡と呼べるくらいの偶然に
   よって成された』。ははは。これを聞いた時ゾッとしたよ、世界中の人間はもはやあのガキの能力から逃
   げられないんじゃないかってな。……まあ、詳細は知らないからそこはいい。さて、この事件から凄い事
   が判る。お前と位置的に遠く離れた父親の行動を、お前の能力が操ったんだよ。ははは。考えてみたら今
   のこれだってそうだ。昔の事象が今に引き継がれている。全ては『上条当麻を不幸にするために』」

 上条の脳は考えるのを止める。これ以上は考えてはいけないとブレーキを掛ける。それは生物としての本能な
のかもしれない。
 体を打ち付ける雨粒が、誰かからの批難に思えてくる。

知誠「さてここで問題だ。第一問、お前はこれまで御坂美琴にあった不幸の中で、結果的にお前にとばっちりが
   及んだ事件が、お前の能力のせいで起こったものではないと言い切れるか? 第二問、御坂美琴がどうな
   ればお前が最も不幸になるでしょう。想像してみろ。賭けてもいい、それは必ず降りかかる」

 知誠は億劫そうに自分の体を持ち上げると、傘を持ちその場を立ち去る準備を整える。
 地面に倒れている上条を見下したまま、語調を弱めて優しげに語りかける。

知誠「正直言うとな、今でも俺はお前を恨んでいる。殺したいほど憎いとも思っている。だが、同時に同情もし
   ている。お前の事は一冊本が書けるほど調べたからな。辛さも一応分かっている。だからこそ、命令では
   なく忠告をする。俺は大切な人を守れなかったが、お前はそうじゃないだろう? 返事は要らん。勇気が
   あるなら、明後日までに彼女に別れを告げてやってくれ。それが二人のためだ。断言する。そうしない限
   りお前は彼女にとっての枷になるだろう。この状況がそもそも彼女を不幸にしているという事実にどうか
   気付いてくれ。頼む」
当麻「…………一つだけ、教えてくれ」
知誠「何だ?」
当麻「アイツが、ちゃんと逃げられるという証拠はあんのか?」
知誠「安心しろ。俺の事は信じなくていい。だが旅掛氏は学園都市に対抗しうる数少ない超人の内の一人だ。証
   人保護プログラムなんてかすむくらいの完璧な逃亡プランが既に用意されている。それに、あの方は俺と
   違って、家族を大切にする人だからな」
当麻「……………………そうか」


 ◆

140寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:33:19 ID:RTZBe7M.
【158/2−101】


 雨の中、砂利の上に一人の少年が横たわっている。
 その少年の携帯電話が鳴った。まったく、学園都市製の携帯はホントに頑丈だな、と少年は少し可笑しくなる。
 雨で冷えてガチガチになった筋肉をどうにか動かして携帯を取りだし、耳に当てると、電話の向こうで少女の
声が響く。可愛らしくも真が強そうな声だ。少年はこの声が好きだった。
 だから少年は明るい調子で応える。

少年「はい…………ん、全然何もなかったけど? ……ウソ言ってどうするんだよ…………ああ。うん、そう、
   今家に向かってるところ。お前ってやっぱり心配性…………ん? あっはは、違う違う、声が震えてるの
   はあれだ、傘が速攻壊れたから………え、まあそうだけど…………何だそれ。はいはい了解しましたよー。
   『不幸だー!』って、これで良いのか? ……何怒ってんだよ、相変わらず意味わかんねぇヤツ。つうか
   お前の方は? ………って、まだ合流できてねえのか。俺の方が先に付いちまうぞ? ………うん、うん、
   へ? ……うーん、『麻美』の方じゃねーか? 『麻琴』って男っぽいし。って、そもそも何これ。何の
   話でせう? 親戚に子供でも生ま………………うわ、切りやがった」

 少年が携帯を静かにしまう。
 後には痛いほどの雨音だけが残った。





__________________

ここまでorz



れ、恋愛サイ……ド???
いちゃい……ちゃ???

(´・ω・`)ウーンムズイ

無イチャシーンはコンパクトにしようとしたのにどうしてこうなっちゃったのか
いや、そもそも当分イチャシーン少ない気もする
もう何というか今後の展開にwktkして頂いたら幸いですとしか言えません
俺はgkbrしてますが

オリキャラが単なる舞台装置のつもりだったのに目立ちすぎ……

あ、文体とか文章とか行の長さとか何か統一感無くてもうしわけない
誰も気付いてないだろうけどw
まとめページは、気が向いたら統一しておこう

141寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/15(木) 02:34:52 ID:RTZBe7M.
あれ、行末揃えたつもりだったのに揃ってないw
今度暇な時直しますorz

142■■■■:2010/04/15(木) 03:14:51 ID:OGALbmeQ
>>141
乙です
うーん続きが気になる…
次回の投下予定は?

143■■■■:2010/04/15(木) 03:47:40 ID:RK.8KqJA
>>141
GJです!
前回からの続きが気になって楽しみにしてました
このあとも続きがすごい気になります
楽しみにまってます!

144■■■■:2010/04/15(木) 06:50:25 ID:SLtVJjv6
>>141
GJです!
この先にあるいちゃいちゃが早く来ることを
楽しみにしています

145■■■■:2010/04/15(木) 08:44:59 ID:DU2FDwoE
>>106
コタケンさんGJ!水色の子豚のぬいぐるみを大事に持つ美琴が可愛いですね
上条さんがなにを言ったのか気になります
そして最後に
犬上条さん「純白」

>>141
寝てた人さん、寝てる間にキテタ━━━(゚∀゚)━━━!!
超GJです!続きが凄く気になりますね
続き待ってますね、頑張って下さい!

146■■■■:2010/04/15(木) 09:20:06 ID:Iub4f1gA
あいもかわらず、熱々(?)な話ばかりですね。
『寝ていた人』のSSは本当に凄いです。美琴が如何動き、当麻が如何して行くか気に成ります。
この流れからしてまだひと波乱処かふた波乱、みつ波乱有りそうな感じがしますね。
更新をゆっくりと待っています。

147■■■■:2010/04/15(木) 10:48:44 ID:EDWs547s
>>146
メール欄にsageと入力するのがこのスレのルール

148■■■■:2010/04/15(木) 11:05:27 ID:SLtVJjv6
>>146
____       ________             ________
|書き込む| 名前: |            | E-mail(省略可): |sage           |
 ̄ ̄ ̄ ̄        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                              ∧ ∧  。  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                              ( ゚Д゚) / < ここに「sage」(半角)と
                               ⊂ つ    | 入れてね。
                            | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   \_____________
                            |          |
                            |          |
                       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

こっちのほうが分かりやすいかな?

149コッカラ:2010/04/15(木) 12:41:12 ID:H9XafSmc
まあsageないと変なのが増えて困りますからね…
>>141
いつも楽しみにしてますがまじで次回が楽しみです。てか待ちきれません!
すごく期待しています

かわりまして投下したいと思います
今回は予告通り普通のバカップルですが、前半と後半に分けて見たいと思います
前半はそんなにいちゃつきませんが、後半はいちゃつかせます!
注意点
・上琴+通行止め
・オリキャラ&オリ設定注意
それでは5分後に投下いたします

150一方通行氏の謎 1:2010/04/15(木) 12:45:08 ID:H9XafSmc

学園都市第3位の超能力者『超電磁砲』こと御坂美琴は長きにわたる女の戦いに勝利し、
上条当麻の彼女となった。当初はツンツンとした態度をとっていたが、日が経つにつれて素直になり、
今では当麻にデレデレである。
休日には必ず2人でデートをして、恋人としての幸せな時間を過ごしていた。
夏休みになって2人はほぼ毎日一緒に過ごしていた。
そんなある日の午前9時頃、2人はファミレスで朝食をとっていた。
「―――ところでさ、今日は映画見に行かない?」
「俺は美琴の行きたい所ならどこだっていいぜ。ただ美琴のことだし、またゲコ太か?」
「もう当麻ったら、確かに最新作が一昨日から始まったけど今回はこれよ」
そういって美琴は一冊のパンフレットを差し出した。
「『ヴェネチアの大船団』?なんか昔を思い出す題名だな…」
「そういえば大覇星祭の罰ゲームのときにイタリアに逃亡したんだっけ?まぁそんな話はまた今度にして、
 これのプレミアム試写会が今日の午前11時に学園都市で開かれるのよ。そこにはね…」
美琴はパンフレットの下のほうにある出演者たちの名前の欄を指差した。
「んどれどれ…って、『一方通行(アクセラレータ)』!?あいつ俳優になったのか!?」
「ちがうわよ!!あんな白モヤシに俳優なんてできるわけないでしょ!
 これは『一方 通行(ヒトカタ ミチユキ)』といって、実力派の中でも期待の新人よ。
 彼が吹き替えをやったゲコ太の映画を見て興味を持って、彼の出演している映画やドラマを全部見たけど、
 すっごいイケメンなのよ!白髪なのに髪型がツンツンしてて、左利きで強烈なパンチを繰り出す時には、
 当麻のようにかっこいい台詞言いながら相手をぶん殴るのよ。超〜かっこいいから、今日生で会える思うと、
 夜も寝付けなかったわよ」
「まるで俺とアクセラレータを足して2で割ったようなやつだな。だいたい白髪にツンツン頭ってかっこいいか?
 それに役者だろ?そんなかっこいい台詞普段の生活の中じゃ、言うわけないだろ。俺なんか右利きだけど、
 いろいろと人助けのときには――――」
「あ〜ら、当麻ったら珍しく妬いてるの〜?」
「ち、ちげーよ!!だいたい『一方通行』なんて名前自体が中二病だろ。実はロリコンなんじゃねーか?
 普段の生活じゃ小さいあ行や『ん』をカタカナにしたりするような滑舌の悪さで、コーヒーばっか飲んでるような―――」
「ほォお、ンじゃあ俺はロリコンで中二でコーヒーしか飲まない白いモヤシってわけか」
「そうそう…ってなんか後ろから殺気が漂っているんですが…」
当麻は恐る恐る振り返ってみると、背中から黒い翼を噴き出している学園都市第1位が座っていた。

151一方通行氏の謎 2:2010/04/15(木) 12:47:56 ID:H9XafSmc

「あ、お姉さまおはようございます!奇遇ですねってミサカはミサカは手を振って知らせてみたり」
「お、おはよう打ち止め。朝から元気いっぱいね」
「なァ三下よォ、俺は打ち止めがうるせェから今日飯を食ったらてめェのとこに行って腕切り落としたこと謝ろうと思ってたンだが、
 また半殺しにしねェと気が済まねェなァ。だからいい加減楽になれ!!」
「うわっ、おおおお許しを〜。ていうか白もやしは俺が言ったんじゃねーから!た、助けて〜〜〜」
そういって上条とアクセラレータは店を飛び出し、命がけの追いかけっこを始めた。
この2人が和解してから自分の能力を試そうとほぼ1年前に当麻と美琴がしていた追いかけっこをより過激に再現していた。
2人が出て行ったあと美琴は打ち止めと同じテーブルに移ってドリンクバーのジュースを飲んだ。
「あんたね…いくら制限かけられているからって能力は学園都市最強なんだから、手綱をしっかり握ってないとだめよ。
 この前なんか黒い羽で当麻の左腕ぶった切っちゃうんだし」
「でもあのカエル顔の先生のおかげですぐにくっついたんでしょってミサカはミサカは相変わらずの超人っぷりに呆れてみたり。
 それにあの人最近は体鍛えるようになって追いかけるときは能力使ってないんだよってミサカはミサカは結局じゃれあいたいんだよって結論付けてみる」
「はぁ…あの2人はいつまでも子供ねぇ…あんたもあんな高校生にならないでね」
「お姉さまだって1年ぐらい前は人を殺せるような雷撃放っていたくせにってミサカはミサカはいまだに子供っぽい下着を着けておいて
 よく言うわ――って痛い痛いつねらないでってミサカはミサカは唸ってみたり!」
「あんたその減らず口は遺伝しなくていいんだからって美琴は美琴は可愛いほっぺをぐりぐりしてみたり!てかそんな情報どこで知ったの!?」
「ふえ〜ん、ミサカの口癖を真似しないでってミサカはミサカは懇願してみたり!
 あ、そうださっき一方さんの話してなかったってミサカはミサカは話題を振ってみたり」
「ん?あんたも一方さんのこと知ってんの?実は最近はまっててさ〜今日はプレミアム試写会に行こうと思って…
 て、当麻いなくなっちゃたじゃない!?も〜ど〜すんのよ〜。あいつら2、3時間くらい追いかけっこしてるわよ!」
「その事なんだけど、実はミサカも一方さんのファンで今回の映画も見に行きたいんだって
 ミサカはミサカは暗に連れてってほしいなとねだってみたり」
「うーん、でも今日のデートのためにやっとの思いで手に入れたモノだし、当麻に聞いてみないと…」
「ううう、ねぇお姉さま…ダメ?…ってミサカはミサカは定番のポーズでねだってみる」
美琴はロリコンではないが、見た目10歳ほどの女の子の涙目上目遣いには『YES』以外の選択肢はなかった。
「……もう!なんて可愛いのあんたは!!じゃあ女2人でデートしましょって美琴は美琴は抱きつきながら頬づりしてみる!!」
「え〜ん、だからミサカの真似しないでってミサカはミサカはしてやったりと思いながら――――」
というわけで御坂美琴と打ち止めは2人でプレミアム試写会に行くことになったのだが、
女2人だけで向かって行ったことが後で大きな事件になるとはこのとき誰も思わなかった。

152一方通行氏の謎 3:2010/04/15(木) 12:51:39 ID:H9XafSmc

〜〜〜♪〜〜♪
街中を激走している上条当麻のポケットの中から大好きな着メロが聞こえた。
「はぁはぁ、ちょタイムタイム!!美琴からのメールだ。あいつら置いてきたんだし確認しないと…」
「ぜェぜェ、わ、わかった。三分間待ってやンよ」
「なんだその台詞…おまえはラピュタ王か」
つっこみを入れながら、ケータイを開けて確認すると、

『当麻がどっか行っちゃうから、打ち止めと映画見に行っちゃうよ!アクセラレータも心配するだろうから伝えといてね!
 じゃ、男2人で体鍛えてなさーい(^_-)-☆』

当麻はまるで死刑宣告をウィンクしながら笑顔で告げる美琴の顔を思い浮かべた。
(うぅ、このことを後ろの白い人に知らせたら『じゃァ、思う存分楽しもうぜ三下ァ♪』とか言いながら殺戮を再開するだろうな…
 よし、ここは嘘のことを教えよう)
「あ、あのさアクセラレータ?今美琴から連絡あって、すぐに戻れって―――――」
振り返ってアクセラレータの顔を見ると、彼はケータイの液晶画面を見ていた。
そして、ケータイをパタンと閉めてポケットにしまうと、

「今打ち止めから連絡あった。あいつら映画見るらしいなァ。打ち止めの面倒は超電磁砲が見るだろうし、俺は午前中暇になっちまったなァ。
 じゃァ、三分ぐらいたったし思う存分楽しもうぜ三下ァ♪」

と言って追いかけっこは再開された。当麻は涙を流しながら、
「御坂姉妹はサディストなのかああああ!!!もう、不幸だああああああ!!!!」
と言って全速力で逃げ出した。


第7学区のとある劇場
美琴と打ち止めは開演15分前に席に着いた。2人ともオフィシャル本を買って、熟読していた。
すると黒服の男が美琴の肩を叩いた。
「失礼ですが御坂美琴さんですか?」
「はい、そうですけど…あなたは?」
「私、『一方 通行』のマネージャーの者です」
そういうと美琴に芸能事務所のロゴの入った名刺を差し出した。どうやら本物のようだ。
「実は一方自身有名なあなたが抽選でここに来ることは知っていたのですが大変忙しいので私が伺いに参りました」
「はぁ…で、わたしに何か用ですか?」
「はい、一方氏の依頼で映画が終わった後、一緒に来てほしいのです。あなたのような聡明で美人な方にしてほしいことがあるのです。
 できれば上映後にスクリーンの前の舞台に来ていただければ、舞台挨拶のときのスペシャルゲストとして舞台に上がって、一方氏と握手してもらいたいのですが?」
ミーハーな美琴にとってこんな美味い話を断るはずがない。湧き上がる気持ちを抑えながら、
「はい!!是非、やらせてください!!!わたしにできることなら何でもします!!!」
「そうですか。では映画を見終わったら、前に出てきてください。それとそちらのお連れ様は妹さんですか?」
「!え、えーと…同じ能力を使う後輩ですよ。名前を…麻琴ちゃんていう子でして」
「え!ミサカの名前はモガッ!!」
(話を合わせなさい。公共の場じゃあんたの存在をばらすといろいろと面倒なんだから!)
コクリと『麻琴ちゃん』は頷くと美琴の手を振りほどいて、
「う、うん!いつもお姉ちゃんから能力の使い方を教わっているんだー!!」
「そうですか。では一緒に来てください。そろそろはじまりますので、ケータイの電源を切っておいてください」
そういうと男はいそいそと前のほうに戻って行った。きっと一番前に一方氏と一緒にいるのだろう。
「ねぇ、なんで『麻琴ちゃん』なのってミサカはミサカは疑問に思ってみたり」
「……(言えない…当麻と2人で考えた子供の名前だなんて…)」
美琴はもじもじしながら打ち止めの質問に答えられずにいた。

153一方通行氏の謎 4:2010/04/15(木) 12:53:58 ID:H9XafSmc

午後3時
上条当麻とアクセラレータは公園のベンチに座ってのびていた。さすがに6時間近く走り回っていると疲れ果ててしまい、停戦していた。
当麻は近くのコンビニで買ったサンドイッチを頬ばりながら、
「ったく、はぁはぁ、結局美琴とのデートがおじゃんだぜ。もう不幸だ…」
「ぜェぜェ、俺の癪に触れたンだから文句言ってンじゃねェよ…だいたいお前が逃げずにそのまま突っ立ていれば、病院でデートできたンじゃねェのか?」
「美琴がナース服姿だったらいいけど、どうせ悲しい顔するだろうからやめとくよ…」
そういって空を見上げると液晶画面のついた飛行船が浮かんでいた。ちょうど芸能ニュースをやっていた。

『―――それでは速報です。第7学区の劇場にて今日公開初日を迎えた「ヴェネチアの大船団」の舞台挨拶に主演の一方通行氏と
 スペシャルゲストとして学園都市第3位にして常盤台中学のエースといわれる「超電磁砲」こと御坂美琴さんが1時間ほど前に
 舞台に現われ挨拶いたしました。』

思わず当麻とアクセラレータはテレビを見ると、そこには笑顔で花束を白髪のツンツン頭の男性に渡している美琴と打ち止めの映像が流れた。
その男は笑顔で握手すると美琴と打ち止めの頬にそれぞれキスをした。

「「はああああァァァァ」」

当麻とアクセラレータは絶叫してしまった。あまりに驚愕してしまったので当麻も語尾がカタカナになってしまった。
「あいつ俺の美琴に汚い唇つけてなんてことするんだ!!!」
「…学園都市第1位の俺の面前でよくも打ち止めを…」
2人は急いでケータイを取り出して美琴と打ち止めに電話をかけると両方とつながらなかった。
さらに映像には美琴の肩を抱いて一緒に退場する男の笑みを捉えていた。
「くっそ〜、どうすればいいんだ!あいつホテルに連れ込んで俺の美琴に…!!」
「落ち着けよヒーロー…こういうときはアンチスキルのところに行って調べるぞ」
「ってお前、アンチスキルに顔利くのか?」
「こーゆーとき、ジャージ姿のずぼら教師が役に立つだろが!!」
そういうとケータイで連絡を取るとすぐに目的地がわかり、2人は駈け出した。

154一方通行氏の謎 5:2010/04/15(木) 12:56:18 ID:H9XafSmc

同じ頃第3学区
第3学区は学園都市の最先端技術を紹介する国際展示場が数多く並んでいる学区であり、外部からの客を多く招く為にホテルのランクは学園都市最高である。
美琴と打ち止めはハイヤーで一方氏と共に宿泊している高級ホテルに到着した。
そのホテルの30階のスイートルームに一方氏は宿泊していた。
スーパースターでもあるため警備もかなり厳重だ。上下の階には宿泊者を排除して、その階段は警備員がしっかりガードしている。
2人はエレベーターで30階まで行き、一方氏と共に部屋に入った。

「「うわー、すっごいきれい!!!!」」

おもわず2人はホテルではないのではと疑うほどのスイートルームにそんな感想を漏らした。
「ハハッ、やっぱり学園都市は違うよ。外のホテルのスイートじゃここの2つランク下のより劣るんじゃないかな?」
一方氏はドアを閉めながら、2人に行った。
「そそそ、そうですね、外じゃここまでいいサービスはありませんし」
「ミサ…麻琴も外の世界にあまり出たことないけど、ここが1番だとミ…麻琴は比べてみます」
2人ともスーパースターを前にだいぶ緊張していた。そんな2人に一方氏は、
「まあ、落ち着いて。いまお茶を出すから、ソファに座っていてくれ」
といってキッチンの方へ向かった。
すると隣に座っている打ち止めから眠たそうな声で、
「お姉さま…ミサ、麻琴眠くなっちゃたって麻琴は…麻琴は昨日夜10時には寝ればよかったって後悔してみたり…」
「あんた何時に寝たのよ?もう、なんでこんな時に…まぁ緊張して疲れてもしょうがないか…」
そう呟くと一方氏に向かってこう言った
「すいません、麻琴ちゃん疲れちゃったみたいなんでベッドに寝かせてもいいですか?ベッドメイクした後で申し訳ないんですけど…」
「いいですよ、ベッドも2つありますし」
そう言われて美琴は打ち止めを抱えてベッドルームに行き大きなベッドにちょこんと寝かせた。
「そろそろ用件に入ってもかまいませんか?」
一方氏はコーヒーとケーキを持って現われた。
「そうですね。私にできることなら何でもします」
「まぁ今回の依頼はあなたにしかできないことですから」
そういうとふかふかの椅子に腰かけながらこう言った。

「あなたの体で私の体を癒してほしいんですよ」

155コッカラ:2010/04/15(木) 13:04:59 ID:H9XafSmc
今回は以上です。
後半はもう少し手直ししてから投下したいと思います。
うーん冒頭の美琴の台詞区切り方ミスったなー。読みにくかったらすいませんでした。
前半はこんなもんですが後半ではしっかり上琴でいちゃつきますのでご安心を。
よかったらアドバイスをください。参考にして作品に活かします。

156かぺら:2010/04/15(木) 13:25:54 ID:RnP.u0Dg
いやっほーい。リアルタイムきたー!
>>155
コッカラさん
な、なンなンですかァ、このそげぶ展開はァ!?
2つ考えられるルートがあるのですが、どっちだろう。期待!
>>141
寝てた人さん
うぉぉぉ……一波乱どころじゃなくなってる
上条さんがどうそげぶしてくれるか見ものです!

シリアス系SSが書きたくなって書いてるんだけど、難しい。
いちゃ分はほぼない(原作くらい)なので、ここで投下はしませんが…
SSスレの方に顔だそうか検討中。
でも、オリキャラ無双とか言われそうだ……

157■■■■:2010/04/15(木) 13:39:38 ID:LYvB3aUk
>>141
>>155
そげぶ!そげぶ!(続き待ってます)

158■■■■:2010/04/15(木) 14:40:30 ID:zIa05Ars
>>155
これがゲコ太映画での舞台挨拶(相手は着ぐるみ)だったらもっとエキサイトしていたかもしれんなぁ、とか
思ってしまったり。

159■■■■:2010/04/15(木) 15:00:04 ID:DU2FDwoE
>>155
コッカラさんGJ!
そげぶされた後に黒翼でお星様決定コースじゃないですかー!

160ぴんた:2010/04/15(木) 15:57:59 ID:ZRTNrbmM
おおおおおおおおおおおおおおっ!!!
ラッシュなのよラッシュなのですラッシュかも!
ありがてぇありがてぇ…
この熱気が冷めやまぬ中投下したします。

今回のテーマは『ゲコ太』です。
まぁタイトルからしてゲコ太なんですけどね。
故に>>158さんのコメどっきーん。

…という事で5分後に(´ω`)

161ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:04:41 ID:ZRTNrbmM

 とある夏休み。
 上条当麻は補習を終えると、スーパーに特売品を求めて入って行ったがお目当ての物が買えなかったのか溜息をついていた。
 上条は高校二年生になっており、今年の夏休みには脱貧乏生活を企画している。
 夏休みはまだ始まったばかりでアルバイトをしてお金を貯めようとしているらしい。
 そんな上条がアルバイトの面接を受けたのが一週間前。
 その時に一週間後に合否を携帯で教えると言われていたので、上条は携帯に目を落としながら歩いていた。

「やっと見つけたわよ!」
「んぁ…?」

 上条はその元気のいい声の主が誰か分かった。
 もう何回もこのやりとりをしているので、体が危険だと知らせている。
 ここで聞こえないふりをしたり、いや、本当に聞こえなかったとしても、その瞬間に危険度MAXの電撃が飛んでくるし、
 何よりその後その雷神が不機嫌になる事この上ないので上条は足を止める。
 上条はその声の方を見ると、案の定その主は電撃使いの御坂美琴で手に電撃を溜めて立っていた。
 彼女は今中学三年生。上条は気付いてないが、出会ってから一年で彼女も大人に近い体型に成長している(と言っても本当に些細な成長だが)
 美琴は上条と目が合うと途端に顔を真っ赤にし、手を後ろで組んでモジモジしだした。

「おー、御坂。どうした? 何か用か?」
「ぇ、ぇっと…、その…あ、あの…」
「ん?」
「あ、あのさ! 明日! 明日ひ――」

♪〜 ♪〜 ♪〜

 美琴がなにやら話してる時に、上条の携帯が鳴った。
 番号を見てみるとそれはバイト先の採用担当の人の番号で、上条はドキッとする。
 美琴は話の腰を折られて不機嫌になったが、電話なら出ないわけにはいかないでしょと上条に促す。
 上条はすまんと一言だけ言うと、恐る恐る通話ボタンに指をかけた。

「も、もしもし? …はい。俺です。はい。…は、はい。え!? 本当ですか!? ありがとうございます! はい!
 ………え? 明日…?」

162ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:06:13 ID:ZRTNrbmM

 そういって上条は美琴の方を見る。
 そういえば明日がどうとか言っていた気がするけど…。
 美琴は上条からの明日という言葉を聞いてビクッとしたが、聞こえない振りをしていた。
 そんな美琴を見て上条は大した用事でもないのだろうと思い、携帯に向かって話す。

「あー、はい。大丈夫です。何時に伺えばいいですか? わかりました。では明日9時に伺います。はい。失礼します」

 上条は携帯を切るとふぅと息を吐き、美琴の方を見た。
 美琴はさっきまではモジモジとしていたが、明日上条に用事が入ったのが分かったらしく、今はどこか暗そうだ。

「あー、悪い悪い。…で、何だっけ?」
「あ…えっと、明日…用事入っちゃったのよね?」
「あーすまん。バイトでさ」
「バイト? アンタバイトしてたの?」
「いや。明日初日なんだよ。いきなりで悪いけどって言われて」
「そ、そう…なんだ」
「明日なんか用があったのか?」
「え!? あ、いや…その、……な、何もないわよ。ただ暇なのかなって思っただけ」
「そっか。俺明日からバイトでバイトない日は補習だから、この夏休みは暇な日少ないかもしれないな」
「………そう」
「悪いな。じゃあ俺ちょっと買い物して帰るから。またな」
「うん。また…ね」

 上条はそう言うと、手を振って帰っていった。
 美琴はその背中を見送ると、溜息を吐き、後ろに隠していたチケットを見る。
 そのチケットは遊園地のペアチケットで、期限は明日までだった。
 以前より上条とこの遊園地に二人で行きたいと思っていた美琴だったが、言うに言い出せず今まで来てしまったらしい。
 そしてさすがに期限切れにしてしまうのも勿体無いと思い、決死の思いで誘いに出たのだが失敗してしまった。

「バイトじゃ…仕方ないわよね。黒子でも誘って行こうかしら」

 美琴はトボトボと常盤台の寮へ向かって歩いて行った。
 その途中で何かを思い出した様に立ち止まる。

「あ。そういえばアイツがどこでバイトするのか聞いてなかったわね」

163ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:08:14 ID:ZRTNrbmM
 
 翌日。
 上条当麻は時間通りにバイト先へ向かい、事務所で説明を受けていた。
 そして担当者が一通り説明し終わるとロッカーの上にあるダンボールを降ろし、テーブルの上にドカっと置いた。
 上条はそのダンボールの中身を知っている。
 上条当麻のバイト先。そのバイト内容。それは――――

「あじぃ…」

 上条のバイト先は第六学区にある遊園地で、そのバイト内容はキャラクターの着ぐるみを着て風船を配るというもの。
 何故このバイトにしたかというと、内容はともかく時給が良かった。
 その辺のスーパーやファミレスよりも200円くらい高く、交通費完全支給、社員割引など色々あったので上条は即決したようだ。
 そしてそのキャラクターは、美琴が大好きなゲコ太の着ぐるみだった。
 何かのキャラクターとは聞いていたが、上条はよりにもよってカエルかよっと漏らす。
 上条は子供達に風船を配ったり、一緒に写真を撮ったりと忙しかったが、案外楽しくてすぐにお昼の時間になった。
 休憩所に行くと食堂があり、上条はスタミナ定食を頼んだ。
 社内食という事もあり、定食でも350円。上条がここを選んだ理由の一つだ。
 上条は食堂のおばちゃんから定食を受け取ると、空いてる席を探し、そこに向かった。

「ん? これ…」

 上条はその途中で、ダンボールの中に大量に入ってるゲコ太のぬいぐるみが付いたキーホルダーを見つけた。
 そのダンボールには『社員・アルバイト限定品。ご自由にどうぞ』と書かれてあり、上条は昨日元気がなかった御坂にでも、と思いそれを一個取った。
 そして上条は席に着くと手を合わせてご飯を頂く。
 普段自分で自炊しているが、ここまでの味は出ないよなと食堂のおばちゃんに負けを認める。
 休憩時間は一時間だったが、ご飯と担当者に報告することがあったので、あっという間に過ぎ、またゲコ太を装備して出て行った。
 9時〜13時-休憩-14時〜17時のシフト。
 上条は午後も風船を配ったり、写真撮ったりと走り回ったが、16時を過ぎたあたりで客足が少なくなってきた事と感じる。
 そういえば17時にある観覧車の前でイベントがあるから皆それを観に行くんんだよ、と担当が言っていたのを思い出し、ちょっと休憩ーとベンチの上に腰を下ろした。
 ここから観覧車へは結構離れているし、客がそっちに流れているならバイトの終わりまではこのままでもいいかと思う。
 何せ初日だったため、緊張もあってか色々疲れた。
 このまま何もなく終わってくれよー、と思っていた矢先に。その少女はやってきたのだ。

164ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:10:23 ID:ZRTNrbmM

「わーっ! ゲコ太だ! ゲコ太! 巨大なゲコ太!!」
『(…!? げ! み、御坂…っ!)』
「お姉さま…そんな小学生みたいな反応はしないでくださいまし」
『(白井も…、不幸だ…)』
「いいじゃない別に。ここには私達とゲコ太しかいないんだし」
「その着ぐるみの中の人に失礼ですわよ?」
「中の人とか言うな! 夢がないな黒子は…ねぇ? ゲコ太?」
『(…)』

 上条(ゲコ太)は美琴の問いに必死にコクコクと頷いた。
 どうやら美琴達は二人でこの遊園地に遊びに来ていたらしく、手にはパンフレットが握られていた。
 上条はあと一時間もないバイト時間なのに、最後の最後で御坂達かよっと鬱になった。
 白井は美琴のゲコ太への懐きっぷりが見てられないのか「クレープでも買ってきますわ」とどこかへ行ってしまった。
 上条は美琴と二人でベンチに座り、何をしようかと考えていると、美琴が一人ごとのように話だした。

「ゲコ太は本当に可愛いよねー。黒子は子供っぽいって言うけど、私はゲコ太が大好きよ?」
『(子供っぽい…)』
「今日もここでゲコ太と出会うあたり、私の愛がゲコ太を引き寄せてるとしか思えないわねー」
『(中身は俺だけどな…)』
「…はぁ。でも今日は本当はアイツと来たかったなぁ…」
『(あいつ? だれ? 誰か誘ったけど断られたのか?)』
「それなのに今日からバイトだなんて…、私は寂しいよ。ゲコ太…」
『(―――ん?)』
「うぅ…、それにアイツこの夏休みは暇な日少ないんだって。つまんないなー。せっかくいっぱい遊ぼうと思ったのに…」
『(あれ…この話どこかで…)』
「まぁ今日はゲコ太に会えたからいいけどね♪」
『(…)』

 上条(ゲコ太)は美琴が笑顔を見せたので、恐る恐る頭を撫でた。
 美琴は最初はビクっと反応したが、その後はゲコ太の方をじっと見て動かない。
 上条はそんな美琴にどうしていいか分からなくなり、頭を撫でる手を止めた。
 しばらくすると、美琴は何かを感じとったのか顔を真っ赤にして俯いてモジモジし始めてしまった。
 上条はそれを見て、昨日の美琴の姿を思い出す。
 ああ。こいつ、俺の事誘おうとしてたのか…。
 上条はそう思うと、何か美琴に悪い事をしてしまったと思い、俯いてる美琴の頭をまた撫でてあげた。
 美琴は今度もビクっとしたが、今度はこちらを見る事なく頭を預けてきた。
 その行為に上条は大変驚いたが、美琴が嫌じゃなさそうだったのでそのままにしておいた。
 白井はどこまで行ったのかまだ帰ってこない。
 そんな感じで周りをキョロキョロしながら見ていると、美琴がまた話しかけてきた。

165ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:12:26 ID:ZRTNrbmM

「ねぇ、ゲコ太」
『(…?)』
「ゲコ太は好きな子いる?」
『(…………は、い? いや待て。そんな事聞かれてても俺知らねぇ! …ど、どうしよう)』
「私はいるの。好きな人」
『(どうしようどうしようどうし…よ? う?)』
「そいつは人の気も知らずにどんどん危険な事に首を突っ込んで行っちゃうし」
『(……ん?)』
「私が何かに誘っても興味無さそうに素っ気無くするし」
『(…あれ?)』
「年上のくせに馬鹿で、鈍感で、スルーされる事があるけど…」
『(お、おい…)』
「でもね、それ以上に優しくて…かっこよくて…、強くて」
『(…)』
「そんな人を私は好きになっちゃったみたい」
『(御坂…)』
「ねぇゲコ太。ずっと言おうと思ってたんだけど、私…そいつに告白した方がいいと思う?」
『(…)』

 上条は固まってしまっていた。
 美琴の突然の告白に。告白とは愛の告白ではないのだが。いや、愛の告白予告を告白されてしまった事に。
 その相手は上条の知る限り一人しかいない。
 もちろんその他にもいくらでもいそうなものだが、上条はその一人なのだと確信するに至る理由があった。
 それはこの気の緩み。
 いくらゲコ太が好きだと言っても、美琴も流石に本物だとは思っていないだろうし、中に人が入っていると思っているはずだ。
 それに自分が知る御坂美琴は、常盤台の超電磁砲はこんな簡単に他人に自分の本心を言う人間ではない。
 ということは美琴は自分の中に想いを溜め込み、そしてそれが溢れ出したという事だろうか。
 それは何故?
 ゲコ太を見たから?
 ゲコ太に頭を撫でられたから?
 いや、違う。
 きっと…美琴は知っているのだ。
 ゲコ太の中身を。
 
『(…)』

 上条はそう思ったが、喋れない。
 美琴の恋のベクトルが自分に向いている事をしってしまったから。
 美琴の事が嫌いなわけではないが、今ここですぐ返事をする事は出来ない。
 なので上条は美琴の頭を優しく離すと、立ち上がってモゾモゾとし出した。
 美琴は一瞬だけ悲しそうな顔をするが、そんなゲコ太をじっと見つめている。
 上条はなんとか着ぐるみの中でポケットに手を入れる事に成功し、そこからキーホルダーを取り出した。
 そして美琴の前に立つと、美琴の手を取って優しく渡した。

166ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:14:33 ID:ZRTNrbmM

「これ…キーホルダー? しかも超レアものだわ」
『(…)』

 上条は美琴がキーホルダーに夢中になって見入っている頭を撫でた。
 美琴はそんなゲコ太を見上げる。
 顔は真っ赤に紅潮し、目は涙が溜まっていた。

「ありがとう、ゲコ太。私はまだそいつと付き合えないみたい」
『(…)』
「でも私は諦めないわよ? そいつが私と付き合いたいと思うほど好きにさせればいいだけだしね!」
『(……はは。なんとも御坂らしいな)』
「ありがとね! ゲコ太! 私はやっぱりアンタが大好きだわ!」

 美琴はそう言うと遠くに見えてきた白井のもとへと走りだして行った。
 その足取りは軽く、悲しみもあるだろうが、それ以上に自信や喜びに満ちており、明日への希望へと向かっていくようだ。
 美琴は白井の所まで行くと、白井の手を取り帰っていった。
 途中で一度だけ振り返って。

「ゲコ太ーーーーっ! ありがとーーーーーーーーーーーっ!!!」

 上条当麻は美琴の後ろ姿を見送ると、ゲコ太の頭を取り、息を吐いた。

「ふぅ…完全にバレてたかな」

 そして上条は小さく笑う。

「それにしても…、御坂が俺を?」

 上条の顔は赤かった。
 今は16:30くらいだ。夏なのでまだまだ太陽は赤くない。

「御坂…」

 上条はそう言うと再びゲコ太を被り戻っていった。
 そして時間いっぱいまで歩き回り、ちらほらいる親子連れやカップルに風船を配ると、今日のバイトは終了だと言われて着替えて帰った。

167ゲコ太からのプレゼント:2010/04/15(木) 16:17:06 ID:ZRTNrbmM
 
 上条は裏口から出て遊園地の壁に沿ってレンガでひかれている道を歩いていると、入り口のゲートに美琴が立っているのが見えた。
 白井と待ち合わせをしているのかキョロキョロとしている。
 上条は先程の事もあったので見つからないように帰ろうとしたが、目が合ってしまい美琴が走ってきたので冷静に振舞う事に集中した。

「おー、御坂じゃん。どうしたんだこんな所で…って遊園地に遊びに来たんだよな」
「そうよ。今日までのペアチケットがあったから黒子と一緒に来たの」
「ふーん…で、白井は?」
「黒子には先に帰ってもらった。今は私一人」
「何で? 何か忘れ物?」
「うぅん。改めてお礼言おうと思って」
「お礼?」
「これ」

 美琴が取り出したのは先程上条があげたゲコ太のぬいぐるみが付いたキーホルダーだった。
 美琴はそれを嬉しそうに上条の目の前に出すと、胸に戻し大切そうに抱きしめた。

「受付の人が言ってたんだけど、これ社員専用なんだってね?」
「…そうなんだ。知らないけど」
「その人がね、きっとあなたの為に貰ってきたんだろうって」
「そ、それは…うん。えっと…、誰から貰ったんだ?」
「これは私の大好きなゲコ太からのプレゼント♪」
「………そ、そっか。よかったな」
「うん! えへへ、ありがとね!」
「は? いや俺ゲコ太じゃねぇし…俺にお礼言われてもな」
「ねぇ。アンタは週何回バイトしてるの?」
「あれ…聞いてます? 御坂さん? えっと…週4かな? 月・水・土・日」
「そっかそっか。ならその日は暇じゃなくなりそうね♪ えへへ」
「はぁ? おまえな、何を言って…」
「ほらほら! そんな事より早く帰ろう! 帰りに何か奢ってあげるわよ」
「…マジですか。御坂さん」
「うん! 私今すごく気分がいいから何を言われても大丈夫だわ」
「…ビリビリ?」
「ビリビリ言うなっつってんでしょうがああああ!! いい加減にしろぉぉぉぉおおおおお!!!」
「ぎゃあああああああああああっ!!!!! お、おまえ! 何でも言えって!!!」
「そういう事を言えって言ってるんじゃないわよ!! この馬鹿ーーーーっ!!」
「ひぃぃぃぃ!! た、たすけてーーーーっ!」

 こうしてまた二人の追いかけっこは始まった。
 そしてこの夏休み、遊園地にはやたら走り回るゲコ太と、それを追いかける少女がいたそうだ。
 そしてゲコ太は気づく。こういう事をしているうちに、恋のベクトルがその少女に向けられていく事に。
 少しずつ、少しずつだがその少女は、この夏休みの最終日に最高の喜びを得る事になる。
 それこそがその少女がこの一年間で待ち焦がれた、最高のプレゼントなのだ。

168ぴんた:2010/04/15(木) 16:20:23 ID:ZRTNrbmM
以上になりました。
ゲコ太ねゲコ太。
でわでした♪

169■■■■:2010/04/15(木) 16:24:49 ID:zIa05Ars
>>168
おつかれさまです。
まさか自分の書き込みの後でこういうことになるとは思ってませんでしたw
最終日のプレゼントが、ゲコ太の姿での告白だったら大変なことになってしまいそうだとか
一瞬思ってしまいましたがw

でもこの美琴って、披露宴の時のお色直しで上条さんにゲコ太コスを強いそうで少し不安ww

170■■■■:2010/04/15(木) 17:49:06 ID:m/zqlv.U
>>141
すごく面白かったです、いろんな意味で登場人物達のほとんどに腹が立つのは
話がわかりやすく登場人物の考えが理解でき、その内容にはまってる証拠なんでしょう。
このムカツき、いらだちを続きで上条さんがそげぶしてくれるのを期待しています。
ただ、上条さんの説教はある意味純粋すぎて自分が汚れてるのも身勝手振りかざしてるのも
わかってるであろう御坂父には通用しそうにないのが…。
そういう意味でかまちーが言ってた、御坂父に唯一対抗できる上条父が勝利の鍵ってことに
なるんでしょうか。個人的な事情で「父親の大きな愛」が理解できない私にはとても書けそうもない
壮大な物語で続きが本当に楽しみです。

長文すみません

171■■■■:2010/04/15(木) 20:11:03 ID:SLtVJjv6
>>155
GJです!
上条さんと一方さん、仲がいいとなんか嬉しい
続きを楽しみにしています!

>>168
GJです!
ほのぼのいちゃいちゃで、雰囲気がいいですね

172■■■■:2010/04/15(木) 20:55:36 ID:tnjEodIU
びんたさんGJ!
美琴はいつも、ゲコ太の縫いぐるみに話しかけてそうですね。

173■■■■:2010/04/15(木) 22:28:42 ID:szAkdDj2
すげぇラッシュだ・・・
目で追うのがやっとだぜ・・w
職人達GJ!!
sageをわかりやすく解説とか、ホントにいい人達しかあつまりませんなこのスレは

174■■■■:2010/04/15(木) 23:45:09 ID:NpruqcbM
>>173
上琴好きに悪いやつはいないってじっちゃが言ってた。

175■■■■:2010/04/15(木) 23:45:22 ID:ShOw9iio
こんばんは。
part7のインデックスVS美琴の続きを書いてみました。
50分頃に投下。
タイトルは新たなライバル

176■■■■:2010/04/15(木) 23:48:11 ID:ShOw9iio
Part7のインデックスVS美琴の続きです。

インデックスは学園都市にいる数少ない知り合いに、
「私はとうまとみことの恋のキューピットになったんだよ!」
と自慢しまくった。
数少ない知り合いとは小萌先生、風斬、土御門兄妹、姫神だ。
情報を得た人間から別の人間へウイルスのように広がり、上条当麻、御坂美琴は
学園都市中、ヘタすりゃ世界中で有名になった。
上条は不幸のオンパレードになった。
ある朝のホームルームで小萌先生の第一声が
「重大なニュースがあるのです。上条ちゃんがあの学園都市3位の御坂さんとお付き合いしてるのです〜。
やっちまいな野郎供。そして悔しがってください子猫ちゃんたち。」
その一声で教室中暴動と化し、しばらく土御門、青髪ピアス、学園都市の美琴ファンクラブの連中から追い回された。
一方の美琴の不幸も負けてられない。

すれ違い様に知らない女の子から「頑張ってください!」と握手を求められ、
高校の前で上条を待っていると「何が常盤台の3位よ!」「私の方が胸あるのに」
と罵声を浴び、
初春や佐天はどんな彼氏さんですか?と質問という名の事情聴衆を行い、
常盤台の中にいれば生徒は全員美琴の話をしているし、極めつけは黒子。
どこでどうやって手に入れたのかわからないつんつん頭のカツラを被って、
「この胸に飛び込んでくださいまし!」とからかわれ、
黒子の机に「呪」とかかれた紙を頭に貼られたわら人形も見つけた。

「インデックスに怒りたいのに何故か怒れないわ。」
「あ、それすげ〜わかる。アイツは悩める子羊の話を聞いて解決してくれたんだからな。」

177■■■■:2010/04/15(木) 23:49:03 ID:ShOw9iio
でもすっかり仲良しになった美琴とインデックス。

とある休日、上条は午前中は補修のため学校に出かけ、
上条の補修がなかったらデートするつもりだった美琴はこの日初めてインデックスを誘って
遊びに出かけた。
「インデックス、あなたと二人で外に出るなんて考えもしなかったわ。」
「そうだね。みこと、誘ってくれてありがとう。」
「お礼なんて、まだ出歩いたばっかりじゃない。
ところでどこか行きたい場所ある?」
「バイキング!!!」
はい!と挙手して答えた。
「当麻が言ってたのは本当だったのね。インデックスは色気より食い気だって。」
「私に対して失礼だよみこと。それに私達の年頃はまだ色気より食い気なんだよ。」
「私は色気に走りたいんだけど・・・まあ、いっか。」

インデックスのリクエストに応えた美琴は常盤台のお嬢様ご用達のバイキングに足を踏み入れた。
当然上条が払えるような金額ではない。
美琴は二人分のお金を先に払いテーブルを確保して、
「インデックス!あのお皿全部空っぽにしちゃいなさい!!」
とポケモンに命令をするようにズラリと並んでいる食材を指さした。
「最初からそのつもりなんだよ!」
そう言ったインデックスはお盆に大量の食材を盛りつけて既にテーブルで食べていた。
「いつの間に・・・でも、喜んでくれてるし私も何か食べますかね。」
美琴は自分のお盆に適当に盛りつけテーブルに座った時インデックスはおかわりしにいった。
「あんなに食べてるのに太ってないのが不思議だわ。都市伝説に掲示してあったような・・」

結局インデックスは全種類を食べきった。
厨房が間に合わず、バイキングなのにほとんどの皿が空になってしまい、
美琴は慌ててインデックスの手をひきバイキング店を出て行った。
「みことひどい!!まだお腹いっぱい食べてないんだよ!!」
「あれだけ食べてまだ物足りないとでも言うの?腹八分が日本人の基本なのよ。」
「まだ腹三分なんだよ。」
あれだけ食ってまだそんだけかよとげんなりする美琴。
二人は次どこ行こうかとフラフラ歩いた。

178■■■■:2010/04/15(木) 23:51:03 ID:ShOw9iio
午後1時。上条の補修もそろそろ終わるだろうと美琴とインデックスはいつもの公園に行き、
ベンチに座り上条がここを通るまでぺちゃくちゃ話していた。
「にゃ〜お二人にちと話があるにゃー。」
当然二人に話しかけたのは土御門元春。
「つちみかど、話って何?」
美琴はナンパだと思い電撃を放つ準備をしていたがインデックスの知り合いらしく慌てて電撃を仕舞った。
そんな美琴を見た土御門は美琴を見て、
「あなたはかみやんの恋人でよかったかにゃ?」
そう質問した。美琴はボンと顔から音をたて赤くなった。
「その反応は正解みたいだにゃ。かみやんが今大変な事になってるぜよ。」
へらへらした態度で土御門は告げた。
「かみやんが拉致られたぜい。」
「とうまが?学校に行ってるはずなのにどうして??」
「ちょっとインデックス!ここは驚くとこよ!
しかもこの不良っぽいヤツ、緊張感0で言ってくるなんてどういう神経してんのよ!」
「何故ならば俺も拉致に協力してるからだぜい。」
「殺す・・・・」
ポケットからコインを取り出す美琴。
「にゃ〜待ってくれい。俺が場所まで案内する役なんだぜい。
それにかみやんは怪我一つなくピンピンしてるぜよ。」
「みこと、この人はとうまの友達だから本当だと思うよ。」
「私はまだ信用できないわ。私達を騙していたらあの金髪を焼く。それでいいかしら?」
「わかったぜい。今回の俺は嘘つきじゃないからにゃー。じゃ、案内するぜい女の子のライバルさん。」


美琴とインデックスは土御門に付いて歩いた。
着いた場所は上条が通う高校だった。
「さて、かみやんは教室にいる。特別に教室まで案内してやるにゃー。」
「一ついいかしら?教室に当麻と誰がいるの?」
「にゃー。多分巨乳の女が二人いるぜい。」
巨乳という言葉に美琴はつい自分の胸を見た。
とても巨乳とは言えない大きさにため息をつく。

校舎に入り土御門は階段を上がり、一つの教室の前で止まった。
「さてここにかみやんがいる。覚悟して入るにゃー。」
美琴はドアに手をかけようとするが緊張して開けられない。
しかし隣のインデックスが普通にガラっと開けてしまった。

上条当麻はいた。自分の机に座っている。しかし体はロープで固定され、頭にヘルメットみたいな物を被ってどこか上の空だ。
そして上条を挟むように巨乳の女が机に座っていた。
それは神裂火織と五和だった。

「以外と早かったですね、土御門。」
「にゃ〜。ねーちんと五和の堕天使エロメイド見るためだったら喜んでだぜい。」
「何度も言ってるでしょうそんな服は着ません。」
「ま、五和のためぜよ。かみやんの彼女、これからこちらの五和と勝負してもらいぜい。」
「話が全くつかめないわ。当麻、どういう事なの?」
「・・・俺たち付き合ってるだろ?それに五和が納得してないらしくて。
それで俺をこんなにしてお前を呼び出した訳だ。」
「それで、その頭に被ってるのは何なのよ・・・」
「五和と美琴が俺に拷問を与える機械らしい。」
「ホントに分けわからないわ。」

美琴はあとため息をついた。そもそも上条は神裂と五和に付き合ってあげてるように見えて腹がたった。

神裂が席を立ち、美琴に座るように促し、話し始めた。
「これから二人には上条当麻に話しかけてもらいます。
ただし上条当麻、あなたは声かけに答えてはいけません。
あなたの代わりに頭に装着してるヘルメットが反応します。
二人にはその反応の数を競ってもらいます。
先に3点先取したほうが勝利とでもしましょうか。」
ようするに変わったウソ発見器みたいなもので質問にどのように反応するかを見る。
いつも素直ではない上条の本心を暴ける機械なのだ。
しかし何を上条に質問すればいいのだろうと美琴が考えていると五和が先手をとった。

179■■■■:2010/04/15(木) 23:51:56 ID:ShOw9iio
「上条さん・・・ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・・・私?」
私?を言い終わる前に上条が被っていたヘルメットからサイレンのような甲高い音が響く。
「これが反応した証拠だぜい。彼女さんも五和に負けないようなセリフを言うにゃー。」
「あの・・・これに負けたらどうなるんですか?」
「五和の要望によりあなた達は別れてもらいます。」
「そんないきなり!嫌に決まってるじゃない!」
「ならば勝つ以外方法はありません。」
あまりにも突然の嫌なイベント。上条も嫌がると思っていたのにこの二人の言われるがままに
従っている事にも腹が立った。
「ちょっと!!まさかもう私に飽きたとでも言う訳!?」
上条は返事をしてはいけないルールなので何言ってやがる!とキッと美琴を睨んだが装着したヘルメットは何も反応しない。
「これで1対0ぜよ。」
「どうして?何かインチキでもやってる訳なの!?」
「インチキは科学につきものだがこれは正当な判断をされてるぜよ。
さっきの五和のセリフを考えろいかみやんの彼女。」
あの巨乳が放った一言・・・どう考えてもエロ路線だ。
言葉で興奮させるのを競うものなのか?と思ったが、
そんな言葉を恋人である上条に放てる勇気を美琴は持ち合わせていない。
もっとエロ路線ではなく甘い囁きみたいなのはないか考えるがなかなか浮かんでこない。

「上条さん・・・あの・・優しくして?あ・・そこはまだ早いです・・・」
五和のとんでもないセリフにヘルメットはウウウウウウウウウウとサイレンを鳴らす。
上条は固まって顔を赤らめピクリとも動かない。
「アンタ!そんな言葉で妄想膨らましてるのね!!スケベ!!変態!!」
しかし美琴の言葉にサイレンはならない。

「もう2対0になってしまったにゃ〜。こうなったら何もわかってないかみやんの
彼女にヒントをあげるぜい。ねーちん、ちょっと。」
土御門は神裂に何か耳打ちをして、言い終えた瞬間、神裂は土御門を吹っ飛ばした。
「どうして私が言わないといけないのですか!?あなたは私をまたからかっているんでしょう!」
「俺が言うと気持ち悪いだけぜよ。かみやんの彼女のため少しゲームに参加してくれい。
ゲームは盛り上がるからゲームだぜい。」
神裂は根負けし、ふうと深呼吸し、上条に近づいた。
上条の席の前に仁王立ちした形になり、ずいと顔を上条に近づけ、ボソっと一言。
「上条当麻、あなたの事が好きです。」
ウーーーーーーーーーー!!
再びサイレンが激しく鳴った。
「何あんた告白してんのよ――!しかもアンタもまんざらでもない顔で告白すんな!!
当麻は私のものなのよ!!」
「なっ!まんざらでもなんかありません!土御門がヒントとしてやってやれと言っただけです!」
「これのどこがヒントなのよ!私で遊んでるわね!?」
さすがに頭に来て電撃を放とうとした。
だが後ろで腹をかかえて笑ってるインデックスに気がついて攻撃をやめた。
「みこと、やっぱりみことはとうまと一緒で鈍感だね。それに私、
かおりのヒントがわかったんだよ。」
あっはっはと大笑いしながらインデックスは告げる。

180■■■■:2010/04/15(木) 23:52:36 ID:ShOw9iio
「え?教えてよそれ!インデックスがわかって私がわかってないのは我ながら
情けないと思うけどお願い!!」
インデックスの肩をつかみゆさゆさしだす。
「キュートないつわからの一言、ナイスバディのかおりの一言、
それに二人供美人で可愛いしエッチな男の子のとうまがあんなやって言われたらどう思うかな?」
二人供美人という発言に美琴はイラっときたが、
「確かにああいう感じで言われたらドキドキするわね。」
「それなんだよ!!」
ビシっと美琴に指を指したインデックス。
「とうまをドキドキさせるようなセリフを吐くんだよみこと!」
「でも私さっきから一つも言えてない・・・」
「これからみことの立場を利用させてあげるよ。」
言っている意味がわからなかった美琴はついインデックスの肩を放し、
自由になったインデックスは神裂と同じように上条の目の前に立った。
正真正銘の仁王立ちで。

「とうま!私が今から何をするかわかってるね!?」
「・・・・全くわかりませんが・・・・」
「遺言はそれでいいんだね?」
するとインデックスは巨大なハリセンを二つ取り出した。
「こもえから聞いたんだよ。学校ではこうやってお仕置きされてるってね。」
「どわ!お前どこでそんなん手に入れてるんだ!!」
インデックスの動きはとてつもなくその時だけは早かった。
右から、左から高速でハリセンを振り回す。
スパァンと何回も上条の頬を殴りまくる。
「てめ・・・これは地味に・・痛いから嫌い・・・なんだ・・・や・・・・やめ・・・」
五和と神裂もうわあと生々しい光景に目をやっている。
というより上条がかわいそうに見えて仕方がない。
「こりゃ青髪が見たらかみやん殺されるぜい!」
土御門は転がりながら笑い狂っている。

さすがに見るに耐えられなくなった美琴はインデックスに近寄り、
「インデックスやめなさい!!当麻をこんなにするなんてアナタでも許さないわよ。」
美琴の言葉にインデックスはすぐ殴るのをやめ、神裂の後ろに隠れ上条にベーっと舌を出した。
美琴は上条に顔を向けた。ヒリヒリと痛そうに頬が腫れていた。
「ちょっと大丈夫?そうとうやられたわね。」
「うぅ・・インデックスの奴め・・今晩は晩飯なしだからな・・・・」
半泣き状態の上条がいた。
「ほら、あの子にぶたれたくらいで泣かないの。アンタ私より年上の男の子なんだから。」
やれやれと母親のような感じで上条の腫れた頬に手を置いた。
美琴の手が頬に触れた時、上条がビクっとなり、
ウーーーーーーーーーーーーー
ヘルメットが反応した。
驚いて手を頬から放したが一行にサイレンのような音は鳴りやまない。
上条のドキドキはピークのようだ。
気がついた時は二人の顔の距離はほんの数センチだった。
慌てて美琴が顔を放すがサイレンは鳴りやんでくれない。
「・・・いい加減この音消してよ。」
「お前のせいなんだよ。消したくても消えねえ・・・」

「五和、もういいでしょう。」
「はい・・・・・・・・・女教皇様。」
五和は悲しい表情をしていた。

181■■■■:2010/04/15(木) 23:53:11 ID:ShOw9iio
「御坂美琴さん・・・でよろしかったですか?」
五和が美琴に話しかけた。
「私、あなたと同じように上条さんの事が好きなんです。ですが上条さんと御坂さんが
お付き合いを始めたと知ってイギリスから来ました。無理矢理女教皇様に同伴してもらって。
そして上条さんに気持ちを伝えました。御坂さんという方がいるのをわかって。
上条さんは私に素晴らしい事を伝えてくれました。御坂さんに向けて。」
五和はグイと涙をぬぐって、まっすぐ美琴を向き、
「恋愛に勝ち負けはおかしいですが完全に私の負けです。
でも御坂さんを応援します!不幸不幸言ってる上条さんを幸せにできるのは
御坂さんしかいないんですから!」

「あ・・・・ありがとう・・・五和・・・さん?」
「そんな、五和でいいですよ。それと、もし一瞬でも別れたという話を聞いたらすぐ
上条さんを奪ってみせますからね。」
「私から奪えるならやってみなさい。」
五和の涙は完全に消え、笑みがこぼれ、美琴との間に絆が生まれたような気がした。

「あのな、上条さんはマリオとクッパとピーチ姫の三角関係ではありませんよ?」
「くだらないボケは必要なし!んで、このアホな機械は何!?」
「それなんだが俺、気がついたらグルグル巻きにされてこのヘルメットも
被らされて、しまいにゃ隣に神裂と五和がいたんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
美琴、インデックス、神裂、五和は土御門を見た。
「にゃ〜、話せば長くなるけどいいかにゃ?」
土御門元春はこう証言した。

182■■■■:2010/04/15(木) 23:53:45 ID:ShOw9iio
補修が終わり、デルタフォースでグダグダしてると土御門の携帯が鳴り、相手は神裂からだ。
しかし電話の声は神裂ではなく五和で、今すぐ上条を校門に連れてきてくれと頼まれた。

電話に従い上条を校門まで連れて行くと(青髪も付いてきた)神裂と五和が待っていてそこで五和は上条に告白した。
もちろん上条は五和が傷つかないように言葉を選んで断り、五和はペコっと頭をさげて去っていった。
教室でその一部始終を見ていた他の連中は、
「またフラグメイクしてすぐフラグブレイクか!!」
と激怒し、集団暴行が始まった。必死で逃げていた上条だったが青髪が持っていた姫神の魔法のステッキによる一撃で気絶した。
そこで土御門はひらめき、上条を拘束し、実験室にあったこの機械を上条に装着し、

「みんにゃ〜、これでかみやんのラブコメ生活を暴いてやろうぜい。」
「上条!ファーストキスはどんな味だったか??」
「もうやっちゃったか??」
次々と男子生徒は質問を投げるが上条は気絶したままなので反応しなかった。
「なんやねんこれじゃ聞いても意味ないやんか・・」
せっかく上条の本心を暴けるチャンスだったでけに残念がりながら補修の生徒は帰って行った。

土御門以外は・・・

またまた土御門はひらめき、神裂と五和を呼び戻し、機械の説明を二人にした。
五和は結構ノリノリだったが神裂は頑なに拒み、じゃあ青髪を呼び戻そうと二人に上条の見張りをさせ、
外に出て偶然にも見つけたのが美琴とインデックスだった。
この二人のほうが青髪より面白いと確信して、あんなウソをついて連れてきた。


「・・・・てな訳だにゃー。ご静聴ありがとうぜよ。」
美琴は震えていた。
「簡単に言えば、当麻はおろか、危うく私まで被害に遭ってた訳ね。」
「機械の説明は受けましたがそこまで話は聞いてません。」
「土御門さんってそれこそ女性の心を弄んでます。」
「これは許せないんだよ。」

美琴、五和、インデックスが土御門にジリジリと詰め寄る。
「ま、待ってくれい。俺は普段から嘘つきなんぜよ・・・・」
「今回は嘘つきじゃないって行ってたのはどこの金髪かしら?」

「うぉ!!!?こんな至近距離で超電磁砲はやめてくれい!
五和!!まさかその槍で刺す気じゃ・・にゃーーー!!!マジで刺しやがったぜい!!
いだだっ!!!ちびっ子シスター噛み付くな!もう舞夏のご飯分けないぜよ!!!」

三人の一斉攻撃を喰らった土御門。完全にKOされた。

183■■■■:2010/04/15(木) 23:54:21 ID:ShOw9iio
「久しぶりに噛み付いたからすっきりしたんだよ!」
「あら当麻に噛み付いてないんだ。それよりインデックス、夜何食べたい?」
「みことが作る物ならなんでも!かおりといつわも一緒に食べるよね?」
「お言葉に甘えたいのですが私達は・・・・て五和!本当にいいんですかオーラが出てます!」
「女教皇様、今晩私のやけ酒に付き合うよりマシだと思いませんか?」
「うっ・・・仕方ありませんね。天草式のみんなには内緒ですからね。」
「女教皇様・・・ありがとうございます。あの、御坂さん、よかったら私も手伝います。」
「ふふふ・・そうやってまだ当麻にアピールするつもりでしょ?私だって負けないんだから!」
「こっちこそです。まずはスーパーに行きましょう!ほら、女教皇様達も早く!」
「勝手に話進めやがって。なんていうか・・・・不幸だ。」



そろそろ日も暮れる。一行は美琴と五和を先頭にスーパーへ足を運んだ。

184■■■■:2010/04/15(木) 23:55:23 ID:ShOw9iio
以上になります。今回は今までで一番駄作な気がしますごめんなさい

185コッカラ:2010/04/16(金) 01:18:22 ID:xUlN17/2
どこからともなくコッカラです。コメへのお返しはSSの後で…
感想を書きます
>>168
ぴんたさん
ゲコ太相手なら素直になれる美琴カワイイ!!GJです!!
>>184
上条ハーレムwwww
なんだかんだで女性陣が仲良くなっている姿は微笑ましいです。GJ!!

かわりまして後半部分を投下したいと思います。前半は>>150->>154です。
ホントはもう少し時間をかけたかったんですが明日から忙しくなりそうなので今から投下します
注意点は前半と同じです。まだまだ素人なので修正点を指摘してくれれば助かります
誰もいなければ5分後に投下します

186一方通行氏の謎 6:2010/04/16(金) 01:22:24 ID:xUlN17/2

当麻とアクセラレータは途中でタクシーに乗り込んでホテルへと急いでいた。
「悪いな、俺金がねーからお前持ちになっちまって」
「こンぐらいで財布にダメージあると思うンですかー。レベル5の財布舐めンじゃねェぞ。
 そんなことより早くあのロリコン白髪ツンツン頭をとっちめねェとなァ」
「あぁ…ただお前は能力セーブしろよ。ただでさえチートなんだからさ」
そんな風に言い合っていると車は第3学区のホテルに到着した。当麻はふたたび美琴に電話をかけるが、
「くそ、ぜんぜんつながんねぇ。どうやら電源を切られてるようだ」
「ヨミカワの情報だと30階にいるそうだ。上下の階には客を入れないほどの警備だそうだから、一気に突破すンぞ」
そういうと当麻と共にエレベーターホールに着いた。アクセラレータはエレベーターの制御盤に手を突っ込むと電気回路に触れ『操作』し始めた。
「……よし、31階に止めてっと。三下、右手で触れずに首にしがみつけよ」
「ま、待て!アクセラレータ!!お前何をする気だ!!」
当麻はアクセラレータの言われた通り左手を首にまわしながらそう言うと、

「決まってンだろ!一気に飛ぶゾ!!」

そういってエレベーターの扉を蹴破ると、重力のベクトルを操作して一気に飛びあがった。


「――――ということでできないでしょうか?」
一方氏は微笑みながら美琴に語った。
(どどどどうしよう、確かに望んだ状況だけれども当麻以外の男の人の体を触るだなんて…
 でもさっきなんでもやるって言っちゃったし今さら断るだなんて)
美琴はとても悩んだ。今までしたことがない上、その相手が当麻でなくスクリーンの中でアクションをしている俳優なのだ。
こんなチャンスはレベル5の自分であっても滅多にない。だんだん頭の中がクラクラしてきた。
(初めての相手は当麻でしたかったけど…でも手慣れてないと当麻も満足しないだろうな…
 この人ならヤリ方教えてくれるって言うし、お金も出してくれるし今度当麻にもやってあげよう。当麻には初めてだって誤魔化せば満足してくれるよね…)
美琴は覚悟を決めた。
「……わかりました。やらせてください!」
美琴の返事を聞くと一方氏はニッコリと笑ってみせた。
「よかった!!いや〜私もあなたみたいな人に気持ち良くさせてもらうだなんて夢のようです。指導については安心して僕に任せてください。
 手とり足とり教えますよ♪今から支度しますのでここで待っててください。音楽とか聞いて落ち着いてください」
そういうと一方氏はバスルームへと入って行った。

残された美琴は深呼吸しながらコーヒーに手を伸ばした。コーヒーの水面は小刻みに震えていた。
(いやいやいやいや、確かに当麻には罪悪感があるけど、一度決めたことだもん。いい加減覚悟しなさい美琴!!)
美琴はコーヒーを少し飲むと、音楽を聴いて落ち着こうと大きなオーディオプレイヤーに近づいた。
プレイヤーの中のハードディスクに入っていた曲を選び、聞いたことのある曲を見つけると再生ボタンを押した。
すると大きなスピーカーからキイイィィィィンと不快な音が聞こえた
(!?なに…これ……まさか…キャパシティ…ダウン……とう…ま…)
美琴は思いの届かない彼氏の顔を思いながらクラクラと倒れこんでしまった。

187一方通行氏の謎 7:2010/04/16(金) 01:24:38 ID:xUlN17/2

アクセラレータが30階のエレベーターの扉を蹴破り、当麻と共にフロアに降りた。
「!?だ、誰だ!!」
「うっせェぞ、黙れおっさン」
近くに飾ってあった花瓶に手を触れると勢いよく飛んでいき警備員の頭に当たった。
倒れこんだ警備員を当麻とアクセラレータが飛び越えて部屋に急いだ。
黄泉川から聞いた情報によると西側のスイートルームに一方氏は泊まっているそうだ。
「この階のスイートルームは西と東の2部屋しかないから、ここだな」
試しにドアを叩いてみたが反応がない。ドアノブに手をかけても自動ロックで開かない。
「どけ、三下!!」
アクセラレータがドアに手をかけるとドアがベコンッと歪んだ。ドアねじも外れ、部屋のほうへドアが倒れた。
すると階段のほうから大勢の足音が聞こえた。
「三下、先に行って白髪変態野郎をぶン殴ってこい。俺は雑魚共を片付けてからいくぜ」
おまえも白髪のロリコン変態野郎じゃねーかと当麻は心の中で思ったが、
「わかった。お前もほどほどにしろよ」
と言って、部屋へと駈け出した。
いくつもある部屋を開けて美琴を探したが見当たらない。すると奥の部屋の方から男の声が聞こえた。
美琴もそこにいると思い、声のする部屋の扉を開けた。

そこにはベッドに横たわって寝ている美琴と打ち止めと、美琴のそばにバスローブを着て立っている白髪の男がいた。

その光景を見た瞬間、当麻の中でブチッと音がした。
「!!君は一体――」
「…いいぜ」
「ちょ、ちょっと待ってくれこれは――」
「てめぇが俺の美琴の体で弄ぼうとするんなら」
「や、やめろ!ご、誤解だ――」
「まずはその幻想をぶち殺す!!」

188一方通行氏の謎 8:2010/04/16(金) 01:28:42 ID:xUlN17/2

五分後
アクセラレータは電極のスイッチを切った。
彼の電極は先日、カエル顔の医者から超小型の蓄電池付の改良版が渡されているのでまだまだ余裕があった。
「ったく、面倒かけさせやがって」
駈けつけてきた警備員を全員気絶させたが途中で救援を呼ばれたので後からまた来るだろう。
まァなンとかなるだろとアクセラレータはそう思いながら、当麻の後を追った。
部屋はいくつもあったが、奥の部屋から聞いたことのある女の声が聞こえたので急いで向かった。
「三下ァ!!打ち止めは――――」
アクセラレータは寝室のドアを開け、その光景を見た。それは…

正座している当麻の膝にどっしり座っている打ち止めと、氷のうを左の頬に当てて美琴から腰に電気マッサージを受けている一方氏の姿だった。

「……あァ?こりゃァどォいうことだァ?」
「あ、アクセラレータ!!あなたも共犯なのって麻琴は麻琴は追求してみる」
「はァ?共犯?なンだそりゃ!?超電磁砲!どういうことか説明しやがれ!!」
「……………」
美琴は顔を真っ赤にしうつむきながらマッサージを続けた。
そんな美琴のことを察して当麻が代わりに口を開けた。
「…あーつまりは俺たちの早とちりで勘違いだったってことだ。って痛てててて、たのむ打ちど…麻琴ちゃんそこはやめて、ホントに痛い」
「やー!一方さんの大事な顔をぶん殴ったんだからこれぐらい我慢なさいって麻琴は麻琴は相変わらずなあなたに制裁を加えてみる!」
「痛い痛い!タノム麻琴ちゃん!!上条さんは何時間も走り続けて足があああぁぁぁ!!」
「ううぅ…私は何もしていないのに…不幸だ……」
「……ホントにすいませんでした………」
どうやら当麻のパンチがクリティカルに決まったようで、一方氏は赤くはれ上がった頬をさすりながら嘆いた。
そんな一方氏に美琴は顔を真っ赤にして謝った。
「あァ〜つまり、これは――――」
「どういうことじゃん?アクセラレータ?」
後から応援に駆け付けた黄泉川愛穂はこの部屋の状況を見て唖然としていた。


アンチスキルの取り調べによると、一方氏はただ美琴に電気マッサージを頼んだだけであった。
映画やドラマでスタントなしで激しいアクションをしている一方氏は最近腰の痛みに苦しんでいた。
学園都市に試写会に来たついでに最新の医療技術で完治させようとしたのだが、劇場に最高の電撃使いである美琴が来ていると聞いて、
安上がりだし電気マッサージの技術を持っている知り合いに方法を美琴に教えれば大丈夫だと考え彼女に頼みこんだ。
美琴にしても後で疲れ果てた当麻にしてあげれば喜ぶだろうと思い承諾したのだ。
しかし美琴は当麻以外の男の人の体に触れたことがなくしかも相手が有名な俳優だったので緊張してしまった。
頭がパニクっている美琴は自分を落ち着かせるために聞いたことのある音楽をプレイヤーにかけた。
だが不幸にもその部屋のスピーカーは壊れていた。音楽はガラスを爪でひっかくような音になり美琴はキャパシティダウンと勘違いした。
普段ならなんともない音であったのだが、あわてていた美琴にとってはキャパシティダウンだと思い疲れもあってか倒れてしまったのだ。
何事かと思って脱衣所から出てきた一方氏は倒れている美琴をベッドに抱えて行き寝かせた。その時ちょうど当麻が駆けつけてきたのだ。
当麻の怒声と一方氏の悲鳴で起きた美琴と打ち止めはすぐに当麻に説明し一方氏に謝罪した。
さらに打ち止めは当麻が殴り飛ばした光景を見てしまったので憤慨し、当麻に正座をさせ自分でその膝を踏んづけた。
それが真相だったのだ。

189一方通行氏の謎 9:2010/04/16(金) 01:31:05 ID:xUlN17/2

午後5時
当麻と美琴、アクセラレータ、打ち止めは一連の事情聴取を終え、ようやくアンチスキルから解放された。
結局今回の事は当麻とアクセラレータの一方的な勘違いであったが一方通行氏はあまり騒ぎにしてほしくないのでお互いに和解した。
また一方氏は、
「元はと言えば僕が君たちの彼女を連れてきちゃたんだし、お詫びに今度のドラマの現場に招待しますよ」
と約束してくれた。

アクセラレータは不服ながら打ち止めを肩車して黄泉川と共に帰って行った。
「ねぇヨミカワ!お姉さまがミサカに『麻琴』って名前付けてくれたんだよってミサ…ちがった、麻琴は麻琴は嬉しさを体いっぱいに表現してみたり!!」
「コラ!!足をバタつかせンなクソガキ!ていうか『誠』って男の名前じゃねェのか?お前ショタか…?」
「む〜胸は小さいけど男の子じゃないもんって麻琴は麻琴は前途多難な将来を見据えながらも否定してみたり!!」
「まーいいじゃんか打ち止め。いや麻琴ちゃん。好き嫌いせずにいろんなもん食えば体も胸も大きくなるじゃん」
「……ヨミカワが言うとホントっぽく聞こえンな。なのになンでそンなずぼらなンだよ」
「うっさいじゃん!!今日のハンバーグなしにするじゃん!」
「ふふーん♪ヨミカワの作るハンバーグぐらい麻琴にだって作れるよって麻琴は麻琴は今まで偵察してきた成果を自慢してみる!!」
「なん…だと…くっ、もう炊飯器で作れる料理なんてないじゃんよ!!」
打ち止めの意外な成長に驚きながらアクセラレータたちは笑いながら帰路に着いた。


午後5時半
当麻と美琴は共にスーパーで買い物をしていた。今日は当麻がお詫びの意味を込めて料理を作ることになったのだが、
「ええ!?食事の前に罰ゲームだって!?勘弁してくれよ美琴…お前が映画観ている間中ずぅ〜とアクセラレータに追われたんだぜ…」
「だってせっかくの映画デートだったのにすっぽかされて、食事だけで彼女の機嫌とろうだなんて考え甘くない?
 それに私だってそんなに鬼畜じゃないから大丈夫♪」
「う〜ん、美琴のその妖しい微笑みは何なんでしょうか?この後のことを考えると…不幸だ」
と当麻は砂鉄の剣で剣道の稽古でもするのかと思いイメージトレーニングしていたが、
美琴は当麻の考えているとは全然違うことでイメージトレーニングしていた。

190一方通行氏の謎 10:2010/04/16(金) 01:34:10 ID:xUlN17/2

2人は上条の寮に戻り買ってきた食材を台所に置いていた。
「はい、上条当麻!!そこに起立っ!!」
ビクッ!と当麻は美琴のいきなりの命令に戸惑いながらピンと立った。
「ななんでしょうか美琴お嬢様?私上条当麻に何か御用でしょうか?」
「今から罰ゲームとしてアンタは私の愛玩奴隷となりなさい!いいわね?」
目の据わったお嬢様に見つめられて当麻は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
「はははい、お嬢様なんなりとお申し付けを…(ううっ、やっぱりレールガンのキャッチボールかそれとも砂鉄剣で剣道か?不幸だ…)」
「じゃあまずベッドにうつ伏せになって寝なさい」
「??ははい、わかりました?」
当麻はわけもわからないのでとりあえず指示に従ってみた。すると美琴は、
「服を脱いで…ぱぱパンツ一丁になりなさい!!わわ私は準備してくるから!!」
といって風呂場へ向かった。この美琴の発言に当麻は思わず、
(ええええ!?なな何コレ、何コレ!!まさか美琴はSMプレイに目覚めてしまったのか!?てかまだ一回もヤッたことないのにいきなりハードなことを!!
 あの一方って奴美琴に変なことふきこんだんじゃ…)
と混乱してしまった。しかし愛玩奴隷となってしまったからには命令は絶対だ。当麻はすばやく服を脱ぎパンツ一丁になった。
3分後、美琴はタオルとお湯、クリームとなんかの説明書のような紙束を持ってきた。だが服装はいつもの制服のままだった。
「じゃ、行くわよ。絶対暴れないでね」
「ははははい、わかりました…(一体何をするんだ美琴!!)」
すると美琴はタオルをお湯につけて絞り上げると当麻の両足を拭き始めた。
「???美琴、一体何をするんで―――」
「奴隷は黙ってなさい。私が何をしても抵抗するんじゃない」
「…はい」
足を拭き終わると今度は腰のあたりを拭き始めた。
「うわあ、だいぶ汗ばんでるわねアンタ。どれだけ動き回ったのよ?」
「はあ、もう慣れてることだし、てかこのくらいならシャワー浴びに行っても―――」
「いいから!黙っていなさい!!この美琴様が体拭いてあげてんだから文句言わない!!」
「…(いや、大変そうだから言ってあげてんのに。何なんだ一体?)」
そして背中全体を拭き終わると腰にパッドみたいなものを乗せた。
美琴は紙束をしきりにブツブツと読み上げているとパッドの上から手を乗せた。
「…失敗しても文句言わないでね」
「えっ?…!!ああぁぁうぅ〜、これはどういう―――あうぅ〜!!」
「見ての通り電気マッサージよ!!アンタ疲れてたんでしょ?…で、どう気持ちいい?」
「きき気持ちい〜!!気持ちいよ美琴!!ああ〜イく〜イっちゃう〜〜〜」
「ちょ、ちょっと変なこと言わないでよバカ!!私だって初心者なんだから集中しないと危ないんだからね!」
美琴は照れながらも当麻が気持ち良くしているのを見ると幸せな気分になった。
次に当麻のパンパンに腫れた太ももをつかむと電気を流さずに揉み始めた。
「うぅ〜気持ちいなぁ美琴。店でも開けんじゃねーのか?」
「はいはいありがとうございます。でもこんなこと当麻にしかしないんだからね」
と足全体にクリームを付けてふくらはぎも揉み始めた。
「ありがとうな。なんか俺が寝たきりになって安心だな、こんな嫁さんがいれば」
「そんなこと言わないでよ。なんかホントに足が丸ごと吹っ飛んじゃそうじゃない」
「いやいや、美琴が気持ち良くしてくれたこの足を失くすわけないでしょう。でもさ、なんで罰ゲームなんだ?」
「そりゃ、ビリビリって電撃流しちゃったときに言い訳できるじゃない。まだ2回目よこれ。一方さんのときも気が気じゃなかったわよ」
「……何気に生と死の間を渡っていたのですね。気持ち良すぎてホントに昇天するかと思ったぞ」
思わず冷や汗をかいた当麻だったが美琴の気遣いに感謝していた。

191一方通行氏の謎 11終:2010/04/16(金) 01:36:22 ID:xUlN17/2

美琴のマッサージが終わり、美琴は手をもみもみしていた。
「ん〜疲れたやっぱり慣れないことは疲れるわねー」
「じゃあ、愛玩奴隷上条当麻からお礼のプレゼントで〜す」
「えっ、て何を―――きゃあ!!」
背中から当麻に抱えられるとそのままベッドに投げ出された。
「ちょ、ちょっと服着なさいよ!こんな状況ってにゃんにゃのにょ!?」
「んー、電気マッサージしたから電気の量が足んないだろ?だからじゅーでーんってな☆」
「せめて服着にゃさいよ!それに星つけんにゃっ!これじゃ恥ずかしくてビリビリしちゃう…」
「服ぐらい良いじゃねーか?それにだいじょーぶ、ちゃんと右手で握ってやるからさ。み・こ・と☆」
当麻がウィンクで美琴の不安を吹き飛ばすと急に美琴はデレ始めた。
「んん〜、じゃじゃあとうみゃ〜、きしゅして、ねっおねがい…」
「まったく甘えんぼーだな美琴ちゃんは」
そういうと当麻は後ろから美琴の顔に近づき唇を重ねた。
さすがに学生である二人はこれ以上の行為は行えないが、愛を確かめるようにベッドの上でいちゃついた。


その後一方氏出演のドラマの見学の際に恋人役のモブキャラとして当麻と美琴が(ついでにアクセラレータと打ち止めが保母さんと幼稚園児役で)出演した。
モブの割に画面に映る時間が割と長かったのですぐに判り、国内外からの1万人以上の女性達からTV局にクレームが来たのはまた別の話。

192コッカラ:2010/04/16(金) 01:39:56 ID:xUlN17/2
…以上です!!
なんか予想されてたような気がするので期待外れだったらごめんなさいorz
最後微妙にエロくなってしまった…てか服着ろよ上条さん……
実際電気マッサージなんて受けたことないし手もみマッサージも下手くそなので全然分かりません
てか体濡れてたりするとまずいのかな…(汗)
前半部分のコメのお返しです
>>157 >>159
というわけで思いきし「そげぶ」されました。さすがに一般人に黒翼はしませんよww
やっぱこういう切り方だと展開予想できるんだなぁ…
>>158
今回は美琴からゲコ太を取り上げてみました。上条さんと付き合っているという設定なのでデートでアニメは不味いっしょww
ただこのコメの後にストライクするぴんたさん作品が来たのには吹いたwwww
>>171
2人は絶対仲良くなれそうですよね!
あんまり言うと上琴から外れそうなので控えますが上琴+通行止めも面白いと思います
>>156
かぺらさん
その2つのルートのうちに入っていたでしょうか?予想されていたら期待外れですみませんorz
オリキャラが多くなっても投下前に一言告げればSSスレでも大丈夫だと思いますよ。シリアスだけでなくイチャイチャにも期待!!

あと「上条兄妹」は構想はできたのですがまだ手を付けていません…
これから忙しくなるので頻繁に投稿できなくなりますが、出来上がったら投下しますのでしばしのお待ちを…

193■■■■:2010/04/16(金) 06:36:48 ID:JxE3VCJg
>>184
グッジョブです。インデックスは実は怒ってたのかな。
>>192
ハラハラする展開に思いっきり釣られました。GJ!

194■■■■:2010/04/16(金) 06:46:30 ID:n1DjFuOU
>>184
面白かったです。
このスレではなにかと虐げられがちなインデックスがいきいきと
していてよかったです。

195■■■■:2010/04/16(金) 06:49:50 ID:n1DjFuOU
>>192
GJですた。
やはりマッサージでしたね。まぁここはエロパロ板じゃないから「そういう方向」には
進みませんしねw その点では安心して読めました。

196■■■■:2010/04/16(金) 08:39:32 ID:7V65jsys
148番サン
凄く分かりやすいです。sageとはそういう意味だったんですね!?
今まで本当に意味を知りませんでした!!レスするのにも色々有るんですね。
これから着付けます。

197■■■■:2010/04/16(金) 08:41:47 ID:7V65jsys
って言っているのにやってしまいました!!

198寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/04/16(金) 09:36:14 ID:NnDRyr7w
>>142-145,149,157
ありがとうございます
続きは…リアルが多忙なので1週間から長くて20日でせうか
次をどこで切るかにも依るんですが  もしかしたら小出しの方が良いのかなぁ

>>156
二人の絡みが入ってたらここでも良いと思いますけど
というか是非ここでw

>>170
長文ありがとうございますw
でもあんまり深読みするとガッカリするかもしれないので注意w
練ってるようでいて粗が目立つし
ちなみに今回やりたかったのは
・対比と、対比と、対比
・上条さんが子供の時って?
・上条さんが問題に深く関わる場合の行動について
・禁断症状
・ぴょん子お姉ちゃんカワユス
・4歳と趣味が合って意気投合する美琴w
・麻琴ネタ
何個気づいてもらえたかな

上条さんどうやってそげぶするんでしょうね(あんま考えてないw)

199■■■■:2010/04/16(金) 11:43:16 ID:DvYbttns
仲良くなった上条x一方さん
そして実は♀だった一方さんとの三角関係+打ち止めとの四画関係?
とかも、面白そうw

200■■■■:2010/04/16(金) 12:07:00 ID:L9AHxmxc
>>184
GJです!
やはり五和はあきらめませんねw

>>192
GJです!
上条さんと一方さんの共闘はいいですね
後、上条さんの鉄壁の理性w

201■■■■:2010/04/16(金) 16:10:05 ID:Y/rZvRgc
みなさん初めまして、アミノ酸と申します。
このスレを知ったのは2週間前で、今まで読み手でした。
しかしながら!何を血迷ったのか、書きたい物ができてしまい、書いてしまいました!
降りてきたと言ってもいいです…。お目汚しになる可能性が大ですが、投稿が被らなさそうなら
五分後に2,3レスお借りして、投稿しようと思います。書くのも、投稿するのも初めてなので失敗したら
ごめんなさい。

タイトルは「とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>」です。宜しくお願いします。

202アミノ酸:2010/04/16(金) 16:11:50 ID:Y/rZvRgc
ごめんなさい、さそっくミスりました!sage進行気を付けます!

203とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>①:2010/04/16(金) 16:15:07 ID:Y/rZvRgc
1.
 御坂美琴の朝は早い。
時刻は午前五時三十分、まだ誰一人起きてはいないであろう女子寮で1人、身支度を整えていた。
半袖の白いブラウスにサマーセーター、灰色のプリッツスカート、名門常盤台中学の制服である。
肩まである茶色い髪に、愛用しているヘアピンを装着、鉄壁ガードの短パンを履き、よしっ、準備完了!
足音を立てないようにドアへと移動し、隣で眠るルームメイト(変態)を起こさぬようにそっと部屋を後にした。
こんな朝早くからどこへ何をしに行くのかというと、とある学生寮に住むとある幼馴染を起こしに行くためだ。







―――――――――――――――とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>――――――――――――――――

 



 

 慣れた手つきでカードキーを通し、未だ眠りの中にいる幼馴染の元へと向かう。
薄暗い部屋で寝息だけが聞こえる、よく眠っているようだ。無論、すぐには起こさない、時間はたっぷりとある。
というのは美琴が早起きするのは、この寝顔を見るのが特権であり、日課であり、密かな楽しみだからである。
そうして、今日もじっくりと幼馴染の寝顔を見る。心なしか無防備なその寝顔はニヤついてるようにも見える。

(ニヤニヤしちゃって、どういう夢見てるのかしら?ほんっっっと鈍感で、フラグ体質で、ちょっとはアタシの気持ちに気
付いてくれてもいいと思うんだけど、バカ当麻!つついちゃえ、えいえい!)

思わず頬をつつくと、うーんと少し顔をしかめ、つんつん攻撃を回避しようと、顔をそむけようとする仕草がたまらない。

(…………ちょっと可愛いかも♪)

 美琴はひとしきり寝顔を堪能すると、少々名残惜しいがエプロンを着け台所へと向かう。まさか寝顔を見る為だけに来た
のではない。半分はそうなのだが、もう半分は朝食とお弁当を作るためだ。冷蔵庫の中身を確認し、献立をささっと組み立
て調理に取り掛かった。
.
  トントントントンと子気味良い音がする。
しばらくすると美味しそうな匂いが漂い、とある幼馴染こと上条当麻の意識は急速に覚醒へと向かう。
目を開けると、ちょうど朝食を運ぶ美琴と目が合った。

「あっ、起きた?おはよっ!」
「お、おう…おはよう」

 目が合った事に気恥ずかしさを覚えたが、対する美琴の方は、特に気にすることもなく朝食の準備をしているので、何故だか
負けてしまったような気がしてならない当麻だったが、そんな気持ちを誤魔化そうと、リモコンを手に取りテレビの電源を入れる。
流れるニュースをBGMに気持ちを切り替え、顔を洗いに洗面台に向かう。ちらっと美琴の方を見ると、朝食の準備は終わったよう
でお弁当の盛り付けに入っている。毎朝の当たり前の光景なのだが、いい加減ひとり立ちしなければとも思う。
 美琴のいる女子寮はそれはもう規則が厳しいとのことであり、朝早くから抜け出してここに来ることがそもそもダメではないのだ
ろうかと言ってみたことがあるのだが、本人曰く当夜さんと詩菜さんに面倒を任せられてる手前、アンタに何かあったら困るというこ
とで暖簾に腕押し、柳に風といった具合で全く聞き入れてもらえず慣性の法則のごとくずるずると続き今日に至る。

204とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>②:2010/04/16(金) 16:18:00 ID:Y/rZvRgc
2.
「はぁ…なんだかなぁ」
「どうしたの?」
「いや、なんでもありません」
「そ、ほらちゃっちゃと食べて、ご飯冷めちゃうでしょ」

 へいへーいと生返事をし、朝食に手を付ける。勿論、いただきますと食べる前に言うのは忘れない。
ちなみに今日の献立は、キャベツと卵を炒めたものと大根の味噌汁、晩御飯の残り物の肉じゃがである。

「ご飯おかわりいる?」
「おう、頼む」

 はい、と美琴からご飯をよそった茶碗が渡され、受け取るときにたまたま指先が触れ合う。
妙に意識してしまい、心拍数は一気に跳ね上がる。それを打ち消すかのように慌てて大根の味噌汁を飲み干し、気持ちを落ち着ける。
ほんのささいな接触なのだが、上条当麻にとって美琴という存在は幼馴染以上恋人未満であり、異性であり、気になる相手であり、と
にかく健全な男子高校生としては、その一挙一動に悶々としてしようがないのである。
 
(ぐぁぁぁあ、落ち着け落ち着くんだ落ち着くんですよ俺の心臓ーーーーー)
 
 そんな思春期特有の複雑な心境をしってかしらずか、美琴はテレビに目を向けていて、最近騒がれている爆弾魔事件をみて物騒な
世の中ね〜とつぶやいているのだから、なんだか自分だけ振り回されているような気がしてならない。いや、確実に振り回されてるのだ
が、そう思いたくない葛藤というのか、プライドというのかそういうものが含まれてたりするのだ。

「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」

 食べ終わった食器を流し台へと運ぶ、作るのは美琴の役目で、洗い物は当麻がするという暗黙のルールがある。
しばらくゆったりとした時間が訪れ、時折カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる。特に面白いニュースもないので美琴はテレビの電源を
切り、ちらっと時計を見る、そろそろ寮に戻らないとまずい時間なのだがもう少しだけここにいたい。当麻と共有する時間が長くなればと思う。
 いつまでも幼馴染以上恋人未満で満足できるわけではない。むしろ想いは募る一方で、素直になれない自分に自己嫌悪することもしば
しば、けれど今の状態から一歩踏み出す勇気がないのも確かだ。付き合いが長いだけに、越えられない壁というものが出来てしまったとい
うか存在するわけで、その壁をぶち壊してくれるような幼馴染では無いから苦労するのである。
 
(ここで帰りたくないって言えば…って帰れって言われるのがオチよね、はぁ〜リアクション一つ起こした
ところで、結果が目に見えてると言うのか、バカ当麻には伝わらないのよね、鈍感にも限度ってもんがあると思うわ)

 さらに言えばフラグ体質で、超がつく鈍感、本人は無自覚すぎるし、その度に相手をけん制し、手を伸ばす方の身にもなってほしいものだ。
無論、そんな乙女な心境をこれっぽちも知るはずもない当の本人は、お前そろそろ戻らないとまずいんじゃねーの?とそっけなく言うのだか
ら、ついつい電撃をお見舞いしてしまって、素直になれない気持ちは先延ばし、思っていることと言う事はまるっきり逆になる。

「ちょっ、何を怒ってらっしゃるので美琴さん?おわっ電化製品が死ぬから!ビリビリすとっぷぅう!」
「わかってるわよ、いつ戻ろうがアタシの勝手でしょ!それで何?早く帰れだなんて、気が利かないにもほどがあるわよー!」
「はぁ?早く帰らないとお前、朝食の時間決まってるんじゃ?それに寮監に見つかるとまずいだろ。
えっ、違う?俺なにか地雷を踏んだ?踏みましたか?踏んだのですね?の三段活用って、ぎゃぁあああ!」

こうして今日も上条当麻の日常は平和に?始まる。

205とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>③:2010/04/16(金) 16:19:51 ID:Y/rZvRgc
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
オマケ

「はい、これ当麻の分のお弁当ね」

 にこやかな表情でお弁当を渡すこの少女が、数分前に電撃を放っていたのとは同一人物と思えないほどの変わりようである。
非常に理不尽な話だが、電撃をお見舞いしたことですっきりしたらしい。先ほどの剣幕はどこへいったのやら、穏やかだ。
当たられた方は不幸だと思わず口に出そうになるが、口に出すとまた厄介な事になりそうなので口を噤む。口は災いの元なのだ。
 寮に慌てて帰って行く美琴を玄関先で見送ると、やれやれといった感じで学生服を手に取る。美琴が帰ってから、服を着替えるのも暗黙の
ルールの内の一つである。それもそのはず、上条当麻は一度失敗しているのだ。
 かつて一度だけ、美琴がいる前で着替えを始めてしまったことがある。別に全裸になるわけではないし、学ラン、Tシャツ、ズボンと着るだけの
作業。それがダメだったらしい、顔を真っ赤にして、アンタ、なっ何してるのよ!アタシがいるのにちょっとは恥じらいなさいよ!とぎゃぁぁっと騒が
れ、その時はまだ意識していたわけでも無く、幼少の頃に風呂にも一緒に入ったことがあるくらいのある意味、裸の付き合い?的なものがあった
わけで、当麻からしてみれば肉親や妹に近いそれだったのだが、ああこいつもお年頃なんだなぁ…と再発見。
 
 今思えば御坂美琴という幼馴染を、1人の女の子として見るようになった決定的な出来事だったかもしれない。
しばらく物思いに耽っていると、ピピッとメールの着信音、相手は勿論、美琴だ。内容は、セブンスミストで服を買うから付き合えとのこと。
断ると後が大変なので補習がなければ付き合うと返信し、そろそろ学校へ行きますかね〜ってな具合で部屋を後にする。

二人の関係に微妙な変化が訪れるのは、空からふってきた少…もといベランダに干されていた少女と遭遇するところなのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。

206アミノ酸:2010/04/16(金) 16:28:52 ID:Y/rZvRgc
以上です。お目汚し失礼いたしました。
まず設定上、幼馴染と言うことで本編再構成っぽくなってたりするんですが、アニメで
レールガンから入ったような人間でして、知識に偏りがございます。ご了承ください。
ちなみに原作禁書は1〜3巻、8巻、12巻と飛び飛びです。ここがおかしい
等ありましたら、ご指摘ください<(_ _)>

207■■■■:2010/04/16(金) 18:09:24 ID:3JfflubM
>>206
GJです!幼馴染設定も良いですね
記憶なくなった後だとどうなるのかが気になります
またなにか閃いたら書いてくださいね、待ってます!

208■■■■:2010/04/16(金) 19:17:50 ID:L9AHxmxc
>>206
GJです!
友達以上恋人未満の二人っていいですね
ただ、地の文が上条さん視点と美琴視点でコロコロ変わるので分かりにくいかも?

それから、禁書原作5巻を読んでいないのは何故?

209■■■■:2010/04/16(金) 19:22:51 ID:9ip2XvIs
>>206
GJ!
12巻読んだのに13巻読んでないって何かすごい気がする

210■■■■:2010/04/16(金) 19:34:19 ID:5j/oHwGc
>>206
GJです!こうなんか、新鮮でした。面白かったです。

・・・貴様、ほとんど美琴の表紙ばかりを狙ってるな!?

211アミノ酸:2010/04/16(金) 19:50:27 ID:Y/rZvRgc
こんばんはです!皆様コメントありがとうございますペコリ(o_ _)o))

>>207
ありがとうございます。次はどういう展開が作れるだろうかと現在構想中です。
頑張ります!

>>208
視点がわかりにくいかーご指摘ありがとうございます。勉強になります!
ええと5巻読んでいないのは、私が買いにいく書店では、とあるシリーズが
飛び飛びで、5巻が単純に置いてないだけです(´・ω・`)

>>209
上記の理由で続きがすごく気になるけど13巻が見つからないからです!

>>210
ばれたっ!表紙をみて買う性質で、美琴が好きだからです!
あとは上記の理由で(⊃д⊂)

補足:ハマッたのが結構遅まきでして、買い揃えようとした所、田舎なので最新刊は
あるけど、他がないという状態です。

次の構想段階のもの予告を

「セブンスミストで買い物付き合ってよね!」
「へーいへい、はぁ…不幸だ」
「あれ、御坂さんじゃないですかー」
「はいはーい、お隣の男性は御坂の彼氏さんですかー?」
「「じゃねーーーっつうの」」
「新しい世界が来る。僕が僕を救うんだあぁぁあ」
「犯人の真の狙いは、観測地点周辺にいるジャッジメント!!」

次回「虚空爆破<グラビトン>事件」 のつもりです。

何分遅筆なため、早く作れたらなと思うのですが、降りてこないと書けないこともあり、皆様ゆっくりとお待ちください<(_ _)>

212アミノ酸:2010/04/16(金) 19:58:07 ID:Y/rZvRgc
ぎゃああ「さん」が抜けてますね。

訂正予告
「セブンスミストで買い物付き合ってよね!」
「へーいへい、はぁ…不幸だ」
「あれ、御坂さんじゃないですかー」
「はいはーい、お隣の男性は御坂さんの彼氏さんですかー?」
「「じゃねーーーっつうの」」
「新しい世界が来る。僕が僕を救うんだあぁぁあ」
「犯人の真の狙いは、観測地点周辺にいるジャッジメント!!」

次回「虚空爆破<グラビトン>事件」

213■■■■:2010/04/17(土) 09:18:03 ID:ByCr7RNQ
アミノ酸さんGJ!この先どんな展開になるか、すごく楽しみです!

あと、いちゃSS編集人様へ。Part7短編まとめの中の、おちゃちゃ様の
「ビリデレメモリアル」3部作のうちの2作目が抜けてるようです。
スレ違いでしたらスミマセン。

2141-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/04/17(土) 10:14:19 ID:bhQkKhDs
>>213
> 「ビリデレメモリアル」3部作のうちの2作目が抜けてるようです。
修正しました。

215■■■■:2010/04/17(土) 10:21:12 ID:ByCr7RNQ
>>214
早っ! お疲れ様です。

216ION:2010/04/17(土) 11:55:35 ID:2vWdobcY
お久しぶりです。スレが速いですね。ほんとに。
職人の皆さんの腕も素晴らしいのでひとりでにやにやしてしまいます。

12:00位に5レス位使わせていただきます。

今回は、終了した「上条さんが…ちっちゃくなりました。」を
もう一度再構成したものです。

今、レスさせていただくところでは余りいちゃいちゃはしていません。

ご了承を。

217ION:2010/04/17(土) 11:58:34 ID:2vWdobcY
「上条さんがちっちゃくなりました。」



・8月15日 _Begins Night_Part1

月は煌々と街を照らしている。それに抗うように街中の明かりはついている。現在20:00を回ったところ。夏休みというだけあって、多くの学生たちが出回っている。学生の中に、警備員(アンチスキル)の一員である教師がパトロールをしている。



そんな夏休みムードが街全体を包んでいる中、黒髪のツンツン頭は何かに追われて必死に逃げている。

「はぁっ。はぁっ。はぁ。…一体、俺は何をしたというんでせうか。御坂さぁぁぁぁん!」

『なんでわからないの?あんなところで鼻の下伸ばされたら誰だって嫌になるわよっ』

だぁぁぁぁ!不幸だっ!と言いながら、まだ反抗期も抜け切れていないガキ、常盤台中学のエース御坂美琴から、上条当麻は逃げている。周りの事は全く見えていないところは二人とも同じである。自分たちの事に夢中で周りの事は気にならなかったらしい。そのため、15学区の繁華街の街の明るさよりも目立っている2人は、通りを歩く人々に目を向けられていたこともわからなかっただろう。



上条は逃げ切れた。と思い、ぜいぜい言っている息を整えようとしている。上条がいる場所は、美琴とのやりとりが多かった鉄橋の上。2年前のある日に決闘をした河原が見える場所。上条は橋の欄干に手を伸ばそうとしたところで足の限界が来てしまい、その場に倒れてしまった。

「上条さんも2年前に比べて、運動量が落ちましたな。…不幸だ。」

上条は、うつ伏せになっている身体を仰向けにして、身体を起こすという動作をしている。敵から逃げ切れたと安堵しているのは気のせいだろうか。そこに、風が上条のツンツン頭を揺らす。家に帰ることを目標に、言った道を帰ろうとしたその時。高温、高輝度のレーザービームが上条の身体に襲いかかる。ただし、反射的に右手の幻想殺し〈イマジンブレイカー〉を前に突き出してレーザービームの様な光を消した。

「危ないじゃねえか!おまえは、いつでもだれでも構わずこんなことやってるのかよ。」

「んなわけないでしょうが!このウニウニっ!」

「ウニウニって?お前らしいセンスだな。あなたに出会って3年目でこんなあだ名がつきました。」

「あんたは!いつまでも私の事をこども扱いすんなぁぁぁぁ!」

美琴は自らの能力で作り出した高電圧のボールを上条に放り投げる。それを恒例の行事のように消してしまう上条。美琴は、怒りを込めている顔の表情とともに林檎のように真っ赤な色を呈していた。美琴はなぜ、上条にここまで怒っているかというと、話が長くなる。理由は単純であるのだが。ちなみに、上条当麻は高校3年生に補習と小萌先生の力で昇給することができたレベル0である。御坂美琴は高校1年生で、レベル5の超電磁砲(レールガン)。今では霧ヶ丘女学院に籍を置いている。彼女は、上条と同じ学校に行く気があったのだが、性格上――学校側のメンツを守ってほしいという願いを快く引き受けてしまった。――本当の願いをかなえられずにいた。

20:56…現在時刻を橋の向こう側の時計台が知らせていた。それでも、二人の喧嘩が終わるどころかヒートアップしているのだ。上条は、必死でこの事態を収める方法を探った。彼の生まれながら不幸が付きまとう運命により導き出された一つの答え…

「御坂さん!ゆるしてくだせえ!許して下せえ!上条さんは、もうダメになりそうです。」

美琴の前できれいな土下座の姿勢で両手を前に合掌させて、必死に許しを請いている。それを見た美琴は、アニメでみるいかにも悪人のような顔をして、上条のほうへ向いて言う。



「アンタ!私のスカートの中のぞかないでよ?ほんとにあんたはさぁ……今日は特別なんだから!」

218ION:2010/04/17(土) 12:00:46 ID:2vWdobcY
・8月15日 _Begins Night_Part2

――現在9:04を過ぎたところである。3時間の長期の喧嘩が終わり、二人は橋の中心にあるベンチに座っている。ちなみに、このベンチは1年前位にできたのだという。今では、恋人たちのデートスポットにもなっているらしい。そんな場所で、二人はぐったりとしながら座っている。原因は、上条の不幸体質とフラグ立て体質。

「美琴…お前なんで怒ってるんだよ。俺ってそんなに変なことしたか?」

「ほんとにわかんないの?ニブスケっ!でも、今はゆるす!でも、明日になったらわかんないからぁ!」

小悪魔スマイルを浮かべる女子高生の美琴。上条はそんな仕草もどんな仕草も可愛いと思ってしまう。

俺、明日も許してもらえる方法知ってるからさ!とささやきながら美琴を優しく包んでやる。美琴の頭は上条の胸の上に、上条の右手は美琴の頭の上に置かれている。美琴の顔が赤くなっていくのがわかる。体温があがっていくのがわかる。この瞬間だけは神様も上条の不幸体質をかくまってくれているようだ。

「そうだ。どうせ、おまえは暇なんだろ?明日は。」

「だから?どうしたの?あれ?もしかして、あんた美琴センセーがいないと寝られないとか言うやつですかぁ?」と意地悪にこっちに目線を向けてくる美琴。ちなみに、この抱きついた状態の至近距離の見つめ合いは上条の不戦敗ゾーンだ。それでも、男の意地なのか目をそらそうとする。

「今日は、泊まるとか無しな。上条さんも最近は真面目に忙しいんですことよ。」

「わかったわよ。今日はやめとくわよ。でも、真っ先に電話をかけてくるのはどこのどちらさまでしたっけ?」

「でも、今日は悪い。ほんとにごめんな。」

二人は、それぞれの道を歩いて帰っていった。



――現在10:12。上条当麻、とある学生寮に到着。すぐに管理人のいるロビーを後にしてボロいエレベータで自分の部屋がある階まで登っていく。エレベータを降りたところに赤い長髪の右目の下にバーコード模様の刺青を彫った不良神父が立っていた。

「やあ。上条当麻。この僕を待たせるなんてどういう気なんだよ。君を殺すことはいつでもできるんだよ?」

「悪いな。ステイル。インデックスの様子はどうなんだ?」

「どうやら、君の事を本気でブン殴ってやりたくなってきたが。イギリス紳士の名に懸けてそれはやめておこう。」

ステイルは、上条に穀つぶしのかつての居候について話した。その居候こと、インデックスはイギリス清教の本部で神裂達と共に暮らしているのだが、つい最近まで彼女は高熱を出して寝込んでいたらしい。それでも、彼女は幸せそうな生活を送っていることに上条はほっとしていた。そこに付け入るかのようにステイルは話を帰る。

「そう言えば、大主教(アークビショップ)から君にお届けものがあってね。中身は、見ていないよ。君の右手の事に関するものだとさ。これでもし、君の右手の力が消えたら今までのうっ憤を晴らさせてもらうよ。」

うっせぇ。と上条は言いながらも受け取った小包を丁寧に開けてみる。ステイルは、それを見て、大主教はなかなかいいものを与えてくれた。と心の中でにやりと笑う。それがばれぬように、真面目な顔で上条に言う。

「絶対右手で触るんじゃないぞ。君の右手は幻想を消してしまうのだから。」

「わかった。サンキューな!ステイル。」

それじゃあ、僕は帰るとするよ。と煙草をくわえて火をつけながら去っていった。



上条は、自分の部屋に入った。そして、先ほどの小包を開けてみると、そこには小瓶が入っている。その中には、薬と、薬草らしきものが入っていた。それと一緒に手紙らしきものも入っていた。



この時点で、この後に起こる不幸を上条はまだ知らなかった。

219ION:2010/04/17(土) 12:02:00 ID:2vWdobcY
・8月15日 _Begins Night_Part3

ステイルが上条宅の前の廊下から姿を消し、上条が部屋に戻った時に時計は10:44を指していた。上条は今日の疲れがどっとでてしまいベッドにダイブした。が、ステイル=マグヌスから貰った小包には手紙らしきものが添えられている。書いた主は――インデックス。上条の家に2年前からつい最近までいた居候だ。穀つぶしの暴食シスターことインデックス。彼女が来たころから生活が急激に変化したことを思い出した。食費がかさんでしまい、自分が無理をしてご飯を抜いていたこと。風呂場に布団を敷いて寝ていたこと。自分が、入院していた時に頑張って看病してくれていたこと。いろいろなことを思い出す。しかし、上条は天井に向かってつぶやく。



「俺は、インデックスは大切な家族だといまでも思うよ。でもな、アイツはお前と違って大切な女性(ひと)になっちまってたんだよな。」



そう言って、小さく笑う。実は、心の奥底では虚しいとか物足りないとか思っている。最近になって、隣にいてくれる大切な女性(ひと)がどれだけ自分を心から思ってくれていたのか。そういうことを思うようになっている。鈍感だといわれる上条もやっと何かを見つけられそうな気がしている。――と物思いに耽っているとどこかから、とうまはやっぱりとうまなんだね。と皮肉たっぷりの笑顔の銀髪シスターに言われそうだ。



インデックスの手紙には、小包の中身とそれに関する記述が書いてある。そのほかに簡単ながら、日常の他愛のない出来事を報告している。上条は、小包を開けてみる。中には小さな瓶とケルト十字の小さな置物が入ってある。インデックスの手紙によると、「幻想殺し(イマジンブレイカー)の能力を希薄することができるから試してほしい」というものであった。上条は、半信半疑ながらも心の中では今までの不幸な人生をひたすら歩むことから卒業できたかと嬉しくて仕方がない。

手紙が述べている通りにリビングの4隅に瓶の中に入っていた幾何学模様の入った小さな円盤を置いた。そのあとにケルト十字を左手で持って、空間の中心に置く。これでセット完了。説明では、あとは何もしなくてよいと書かれていたので、従った。今日は夏休み。ただ、上条は受験生である。運がいいのか、小萌先生のスペシャルな補講が5日後に控えているの(上条ちゃんはバカだから補習なのですぅー。)だそうだ。



時計にふと目をやると、現在11:30を過ぎたところだ。上条は携帯を開いてメールを打ち出した。ま行の一番最初のところにある名前にカーソルを合わせて、そこに送るメールの本文を書き始めた。



――美琴へ。夜遅くごめん。

18日の夜ってさ、予想だと快晴だから天体観測しに行かないか?

場所はどこでもいいんだけども。



光の速さで美琴からのメールが返ってきた。当麻にしては珍しいわね。どうしたの?というような、やや心配そうな雰囲気を漂わせる返信だった。ちなみに美琴たちも休みで。彼女は、明日1日をのんびり過ごしたいと思っていた。美琴は今最も大好きな彼とメールをしたことでとてもテンションを挙げている。ルームメイトの白井黒子もさすがにこの乙女心全開の少女の行動にあきれているようだ。白井は、明日も風紀委員(ジャッジメント)の仕事が早くにあるので。と美琴に言い残し、ベッドの中に入っていった。美琴が完全に寝たのは日付が変わってからだった。ベッドの中に入ったもののメールでの興奮がなかなか冷めず、顔を真っ赤にしながらごにょごにょ口が活発に小さく動いていた。たまに、気持ちが高ぶりすぎてガッツポーズを決めてしまうほど。



この時点で美琴もまた、翌日起こってしまった不幸に巻き込まれるのは思いもよらなかっただろう。

220ION:2010/04/17(土) 12:07:21 ID:2vWdobcY
今回は、ここまでです。
誤字脱字、人物名の間違えとかかなり見つけられてしまいそうですけど、
感想や、アドバイス、訂正なんでもお待ちしております。

ちなみに、前回UPさせてもらったものとかなりストーリーが変更されると思われます。

またか…と思う方もいらっしゃると思いますが、よろしくお願いします。

長レスすみません。

221■■■■:2010/04/17(土) 13:27:42 ID:vMgNfdX6
そういえば上条の「せうか」って最近の巻数だとあまり使ってない?

222■■■■:2010/04/17(土) 18:02:05 ID:tL5bWNPM
美琴は霧ヶ丘女学院にいるのに黒子がルームメイト・・・。
黒子は飛び級したんですかね?

223■■■■:2010/04/17(土) 21:06:10 ID:T38zXFIs
上条:とある高校の一年生→とある高校三年生
美琴:常盤台中学二年生→霧ヶ丘女学院一年生(高校一年生)
黒子:常盤台中学一年生→常盤台中学三年生

順当に二年たってるなら>>222のいう通り、こうなってるわけだね。

224■■■■:2010/04/17(土) 21:11:05 ID:ByCr7RNQ
IONさんGJ!
前作は、子供化した上条さんに、普段できないような行為をしまくる
美琴がかわいかったです。今回も期待してます。

225キラ:2010/04/17(土) 23:16:25 ID:I8kETh/I
どうもです。
誰もいないようでしたら、20分から
『とある恋人の夏物語』
の続きを投下させていただきます。
消費レスは7の予定です。

シリーズタイトル『fortissimo』

226キラ:2010/04/17(土) 23:20:52 ID:I8kETh/I
 海の家と掲げるだけあって、『わだつみ』にはたくさんの人が泊まっているみたいらしく、ここに泊まっている人たちとすれ違ったりする。そのたびに上条は自分の正体がばれるか不安にもなるが、他人に声をかけづらいからなのか、今のところは誰も上条たちのことに気づいていなかった。
 『わだつみ』に来る道中や街だと気づかれるのに、ここでは気づかれないのは不思議であった。だがこの後『わだつみ』に戻って来てからは、他のお客さんたちに正体がばれてしまうことになるが、このときの上条はそんなことも考えず、ここにいる間は平和だなと思い込んでいたのだった。
 さて、現在の上条はというと、人の集まり場所から少々離れた位置で、パラソルとブルーシートを敷いていた。敷き終ったブルーシートの上に、美琴から受け取ったプラスチック製の小さな手さげを置くと、上条もその上に座って海を眺めた。
 こうして水着に着替え、海の光景を眺めるのは二度目だっただろうか、と前に来たときのことを少し思い返してみた。
 確か一度目はインデックスと最初に来た時で、二度目は従妹の竜神乙姫が御坂美琴の姿になっていた時だ。両方とも海につき合わされ、面倒だったのでぼっとここで見ていたような……と、過去のことを思い返してみると、海で泳いだ記憶がほとんどないことを思い出した。
 だが思い出した記憶よりも、『御使堕し』の方がここでは印象深かった。なので、ここで海を見るのは全てがいい思い出ではないことを思い出し、重いため息をついた。
「やっぱり『御使堕し』の印象だけが一番に残るな…不幸だ」
 今回のメインイベントとなる海は、前回の『御使堕し』のときのような入れ替わりは起きないだろうが、不幸続きの今日一日を思い返すと、海では何も起こらないとは言えない。それに前回来た時の乙姫のことを思い出すと、まさかあの時の再現がまたここで、とスク水姿の妹キャラになっていた美琴の姿を思い出し、上条は頭を悩ませた。がそれに関して先ほどまでの話だ。
「まあ、スク水はこの歳になってはないのは当然、か」
 実はここに来る前、スク水かどうか美琴に訊いてみていた。それに、馬鹿にされた思い込んでの怒りの電撃と共に、違うと叫ぶように否定したを美琴が言うには
「ちゃんとした水着を買ってきたんだから、期待しててよね!」
 と市販のものを買ってきたようだ。
 だが美琴のカエルのキャラ好きを考えると、素直に彼女の着てくるであろう水着に喜べず、逆に小学生が着るような水着を着てくる気がしてならない。それだったら、上条の高校指定のスクール水着の方が断然マシである。
 そんな不安を抱える上条の水着は、スポーツショップで買ったトランクス形式の地味な水着で、特にこだわりは見えない普通の水着である。だがスポーツショップで買ったこともあってか、意外とかっこよく見えなくもない。でも上条はそんなことを気にはせず、見られても恥ずかしくないものを選んだだけなので、着こなしていることに気づいていなかったが。
「遅いな。女の着替えってこんなに遅いもんなのかな?」
 上条は美琴のものも入った手さげから、自分の携帯を取り出して時間を見てみた。時間は十五時三十四分、と美琴と別れてから十五分が経過している。
 女の着替えが長いことは一緒に住んでいることでわかってはいたが、水着の着替えがどれだけ時間のかかることかは、上条にはまったくわからない。学校の水泳の授業での着替え時、女子が更衣室から出てくるのが遅いのは変態な男どもの話で知っているが、それがどれだけ長いかは上条は知る由もない。デルタフォースの青ピアスや土御門ならば知っていそうだが、そんなことをあの二人に訊いてもよからぬ誤解を与えるだけだ。

227キラ:2010/04/17(土) 23:21:28 ID:I8kETh/I
「でも以前来たときよりも人がいるようだし、そのせいで更衣室が混雑してて着替えられないってのもありそうだしな。気長に待つか」
 まだ来る気配のない美琴が来るまでの間、このまま携帯でも弄って暇つぶしでもしていようと思った。そう思って携帯のメニューを開いた時、不意に後ろから砂浜を歩く小さな足音がこちらに近づいてくるのに気づいた。そして足音が自分の近くで止まったあたりで、上条は後ろを振り返った。
「遅かったな、美琴…………ッ!!!」
 しかし振り向いた瞬間、上条は頭を思いっきり何かで叩かれた鈍痛と、回路が全て焼き切れシステムダウンしたパソコンのように頭の中が真っ白になった。さらに視線が美琴の姿にだけに集中してしまい、身体も金縛りにあったかのように動かなくなった。
「えっと……お、遅くなって…ごめん」
「……………」
「と、当麻……その、似合う…かな?」
 珍しく真っ赤なトマトをイメージさせるほど赤くなった顔には、恥ずかしさと不安の表情があった。不安な表情は上条が入院するたびに見たりするが、恥ずかしそうな表情を見るのは最近では滅多にお目にかかれない貴重な表情だ。大体恥ずかしがる時は、電撃で照れ隠しをして自分の表情を隠したりするので、こうして目の前で恥ずかしそうな表情は浮かべて、電撃を使ってこないことはなかなかない。もっとも、これは自宅の外で二人の話であるが。
 そんな危険なツンデレの美琴が、電撃や雷撃の槍を使って照れ隠しせずに、上条の目の前で恥ずかしがっている。これだけでも十分に可愛いと目を離せなくなってしまうのが普段の反応だが、そんなことを気にしていられないほど、上条は美琴の美しい水着姿に目を奪われていた。
「と、友達にも手伝ってもらって……ちょっと、大人っぽいものを選んだんだけど…やっぱり、似合わない?」
 美琴が着てきたのは、純白のビキニ。分類としては三角ビキニと呼ばれ、基本とも言える一番有名な種類のビキニだ。しかし、基本であってもビキニはビキニ。本来持つ露出の意味合いは健在のままで、それを着てきた美琴にも露出から生み出された女の色気が形となっていた。
 ビキニ姿の美琴を見て、似合わないと言う男はこの世には絶対に存在しない。それどころか、女性すらも美琴の美しさと色気に目を奪われるのではないか、とさえ思えてしまうほどだった。
「………………」
「やっぱり……似合わない……かな?」
「………………」
「……当麻?…ねえ、聞いてるの当麻」
 動くことはおろか、声を出すことも出来ない。今の上条は、美琴の美しさを見ること以外の自由は一切許されていない。まさに釘付けになるとはこのことだ。
 そんなことも知らない美琴は、何も反応を示さない上条にむっと怒った表情を見せると、当麻! と大きな声で名前を呼ぶが、上条は一切反応を示さない。こうも無反応だと無視をされているのでは、といつものように電撃でも浴びせようかと考えた。
 しかしここは学園都市の『外』で、近くには海がある。能力の使用は禁じられていたし、小さな電撃で海に泳ぐ周りの人間に迷惑をかけないとも言い切れない。仕方なくはぁと面倒なため息をついた美琴は、平和的に上条の肩に手を置いて当麻! と身体を揺さぶった。しかしそれでも、上条は一切の反応を示さない。
 こうも反応を示さないとなると、雷撃の槍に代わる様な事をしない限り、ずっとスルーされたままだろう。となると能力を使わずにインパクトのある起こし方と言えば、美琴の十八番である
「久々に技名を言うわよ。常盤台中学内伝、おばーちゃん式ナナメ四十五度からの打撃による故障機械再生法!」
 掛け声とも言える、ちぇいさーっ! の叫び声が浜辺に響いたのと同時に、上条は美琴から上段蹴りを真正面から喰らう羽目になった。そして、蹴りを喰らった上条はフリーキックで蹴ったサッカーボールのように、弧を描いて浜辺へと飛んでいき、頭から落下した。
「………………………………………不幸だ」
 その言葉と同時に上条は意識を取り戻し、意識を失った。幸い、海とは逆方向であったため、そのまま海に顔を沈めることはなかった。

228キラ:2010/04/17(土) 23:22:06 ID:I8kETh/I
 不意に頭に鈍痛が走った。それと同時に上条は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開いた。
「あれ? 美琴?」
 目を開けると、目の前には美琴の顔があった。しかし不機嫌だと言うように上条を睨んでいた。
「あれ、じゃないわよ。私のことを無視するわ、蹴りを甘んじて受けて鼻血を出すわ、私のほうが当麻にあれ? って言いたいわよ」
「無視? 蹴り?……………………………………………ああ、思い出した」
 何を言われているかわからず、話を聞きながら気絶する前に何があったか振り返ってみた。それからしばらくして、美琴の言っていることと気絶する前にあったことが繋がり、何があったのかを理解してため息をついた。
「美琴さん。上条さんが無視してるからって、顔面を自販機みたいに蹴るのってあんまりじゃないでせうか?」
「当麻が無視するのがいけないんでしょ! せっかく、気合入れて水着を決めたのに、いざ見せてみると無反応なんて酷いと思わない?」
「確かにそうですね、美琴さん。では上条当麻、改めて言わせてもらいます」
 上条は美琴の頬を撫でて、ニッコリと笑うと
「美琴の水着姿が美しすぎて、見た瞬間、意識を飛ばしてました。あと、美琴たんのビキニ最高! 状態の上条さんには、美琴たん以外の人のビキニ姿なんて見たくありません」
「そ、そう…私以外の人のビキニ姿を見たくない……えへへ」
「上条さんは美琴たんのビキニ姿さえあれば、他の女性のビキニ姿なんて見たくありません! もう美琴たんだけしか見えない!」
「えへへ…えへへへへ………嬉しいことばかり言って、もう大好き♪」
 上条に褒められるだけ褒められてしまった美琴は、すでに当麻大好きモードになっていた。
 いくら成長しようとも、上条からとても褒められると舞い上がって喜びを抑えられないのは変わっていなかった。だが、漏電をしなくなったのはとてもよい成長と言える。その代わり、当麻大好きモードになってしまうのが、今の美琴の仕様だ。
 こうなってしまっては、周りに何があろうとも一切気にせずに、とにかく上条に好きだと言ってべったりとなってしまう。そしてこれを止めることは、美琴にもっとも効果的な人物である上条にも不可能であり、他の友人たちもどうすればこのモードを解除できるか、未だに効果的な解除方法を誰も知らなかった。さらに面倒なことに、このモード中に上条がいると、上条も美琴とは別の意味で抑えが利かなくなり崩壊してしまうという、恐ろしい伝染効果もあった。
 そしてそれは、今ここで美琴に膝枕されている上条に当てはまった。

229キラ:2010/04/17(土) 23:22:42 ID:I8kETh/I
「当麻当麻当麻! 好き好き好き! 大好き! ずっとずっと、死んじゃっても大好き!」
「…………………」
「もう好きで好きでしょうがないの! 当麻のことが好きで好きで、当麻がいないと生きていけない! もう私の命は当麻そのものなの! だから抱きしめて、キスして、いっぱい愛してあげるね。私の大切な旦那様♪」
「…………………美琴」
 もはや某ヤンデレのようになりつつある美琴は、上条の顔を自分の胸元に埋め込んで力の限り抱きしめていた。そんな状態から、今の言葉を大きな声で言っていた。もちろん、近くの上条には一言一句全てが聞こえ、近くを通りかかった人や少し離れた人たちにも全てではないが、美琴の言葉の八割以上は聞こえていた。それを聞いた人は、これから彼氏こと上条がどのような反応を示すかを注目していたが、本人たちはすでに自分の世界に漬かっているため、まったく気づいていなかった。
 そして、美琴の当麻大好きモードを目の当たりにした上条は、自分の中の何かが音を立てて壊れたことに気づいた。それは、美琴と同じ覚醒の始まりだった。
「俺も大好きだ美琴。もう俺には美琴以外の女なんて、考えられない」
「えへへ、そうだよね〜。当麻は私がいないとダメなんだよね?」
「ああ、そうだよ。俺は、美琴がいるから生きていけるんだ。だから美琴が死ぬことがあれば、俺も死ぬ」
「私もだよ、当麻。私も当麻がいない世の中になったら、生きていく意味なんてなくなっちゃう。だから当麻が死ぬ時は私が死ぬ時だよ」
「そっか……でも、俺は絶対に美琴を死なせない。ずっと美琴のそばにいて、俺がずっと幸せにしてやるからな」
「当麻………」
 そして二人は、目を閉じて唇を合わせる。柔らかい感触と唇に感じる互いの暖かいぬくもりを感じながら、名残惜しいがそれをゆっくりと離した。
「何度だって言ってやる。俺は美琴を幸せにする。これから俺も人生は、美琴を幸せにするだけにあるんだからな」
「それは私も同じよ。当麻を幸せにするのが、私のこれからの人生。そして、当麻をずっと愛するのも私の人生。だから、当麻……」
「ああ、俺も大好きだ。ずっとずっと、たとえまた記憶を失おうが、怪我で死のうが、大好きだ。この気持ちだけは…絶対に……」
 上条は美琴の膝から頭を離すと、美琴と向き合って優しく、でも強く両腕で抱きしめた。美琴はそれに笑って答えると、二人はもう一度唇を合わせた。
「ありがとう……………んじゃ、一緒に楽しもうっか。未来の旦那様♪」
 そう言って美琴は立ち上がると、上条の手を握って海へと走っていく。上条のその手に引かれながら、その後を追った。

230キラ:2010/04/17(土) 23:23:14 ID:I8kETh/I
 時間の流れは、楽しい時ほど早く感じる。
 海で遊んでいた時間も、今思い返すとあっという間で、感覚としては一時間も遊んでいない気さえさせられてしまうが、携帯の時間によると、今の時間は十七時五十五分。時間は一定のリズムを保ってしっかりと流れていたことを、携帯の時間が上条に教えているようであった。
 上条は携帯を閉じると、美琴の手提げに携帯を戻した。そして海の向こうに見える夕焼けを見ながら、隣にいた美琴の肩を抱いた。
「夕暮れの海って、やっぱり綺麗よね」
「まあな。上条さんは夕暮れの海には、少々悪い思い出はございますがね」
「それってここでいうことかしら? はぁ〜、ロマンに浸る気持ちが台無しよ」
「悪うございました。でも上条さんは素直なことを言った、いてっ!」
「素直なのは感心するけど、雰囲気を読んで言葉を選びなさいよね。まったく、それだけは成長してないんだから」
 美琴は上条の頬をつねって、不満そうな表情を浮かべた。どうやらご機嫌を削いでしまったらしいな、と上条は後頭部をボリボリと掻いた。
 上条がこの夕焼けを見て思ったのは過去、思い出を思い出したのだ。やはりここでも『御使堕し』のことを思い出してしまい、素直に綺麗だと言えない。だがそれは不幸ではなく、一つの思い出…忘れられらない記憶であった。
 だからロマンチックな気分に浸りたくとも、上条にはそれが出来ない。この場所での夕焼けは印象に残りすぎていた。だが、それを今ここで話してはそれこそロマンのカケラもなくなってしまうことは、上条にも理解できた。なので、美琴には努力はすると言っておいた。
「はぁ〜期待しないでおくわ。というか、一生無理な気がするけど」
「一生ってな………どれだけ期待されてないないんだよ」
 上条は大きなため息をついて、なら言わないでくれよと思う。だが、さすがにそれは今言ったことへの失言なので、言葉には出さなかった。
「それにしても、美琴のビキニ姿……改めて見直すと、なんというか……エロイな」
「!!?? な、何言ってるのよ!! 私の下着姿だって裸だって見てるくせに、何を今更」
「まあそうですけど……ビキニ姿の女を見たのは美琴が初めてだったから………その姿を見たらこれって凄くエロイな、と今更になって気づいたわけで」
「………エッチ」
 否定は出来ませんな、と言って上条は美琴から視線を逸らし夕焼けを眺めた。対する美琴は、顔を赤くしながら視線を砂浜に逸らして、あのーさと控えめに声をかけた。
「当麻は………ビキニの私、どう思ったの?」
「……………冗談抜きで、視線をどこに向ければいいかかなり迷った」
「………そっか」
「………でも、他の女の水着よりも綺麗で眩しかった。だから今度も着てきて欲しいな……なんて」
「………うん」
 初々しい恋人のようにもじもじしながら、二人は小さな声でそんなことを話した。

231キラ:2010/04/17(土) 23:23:50 ID:I8kETh/I
 それから数分間、無言のまま海を眺めていた上条の肩に重みが加わった。それは上条の肩に美琴が頭を預けてきたのだ。上条は何度もされてきたことなので、特には何も言わかった。すると不意に美琴は、楽しかったと小さく呟いた。
「当麻と一緒に海で遊んだとき、すごく楽しかった。学園都市でのデートとは違って能力者としてではなく、ただの高校生としてここで遊べたのって、こんなに楽しいだなんて、知らなかった」
「何言ってるんだよ。ただの高校生としてなら、いつもと同じじゃねえか」
「そういう意味の、高校生じゃないわよ。私が言いたいのは、能力者としてでもなければ、当麻の恋人でもない。ただの普通の高校生、御坂美琴っていう一人の女の子として、海で恋人と遊んだってことよ」
「??? 俺にはよくわかんねえな」
「別にわからなくてもいいわよ……私がふと思ったことだから」
 そうかと相槌を打って、上条も海で遊んだことを思い返した。
 恋人と海で遊ぶとはどういったことなのかわからなかった上条は、とりあえず美琴に従おうと思い、美琴が言ってくることを聞きながら指示に従った。と言っても、遊んだことは上条が想像できる簡単なことで、友人と遊びにいくのと変わらないようなことばかりしただけだった。だというのに、友人と遊ぶよりもずっと楽しかった。
「不思議だよな。こうして好きな人と遊ぶのって、友達と遊ぶよりも楽しい。わかってることなんだけど、遊びが終わるたびにそう思っちまう」
「それは私もよく思う。黒子や初春さん、佐天さんにインデックス。当麻がいない日や都合がある日は、時々友達と遊んだりしてるの。だけど、当麻と遊ぶ時だけ、終わると楽しかったって必ず最初に思う。友達と遊んだ時は、もっと違うことを思ったりもするのに………不思議よね」
「もしかしたら、これが好きな人と友達の違いなのか?」
「かもね………私にもよくわからないけど」
 ふと上条は、横目で美琴の顔を伺った。
 夕焼けの色に照らされた美琴の顔は、遠くを見ながら何かを考えているように見えた。他人からはいつもと変わらないように見えるかもしれないが、その顔は何故だから真剣で、夕焼けを見ると言うよりも別の何かを見ているようであった。
 しかしそれが何か、上条にはわからない。そして何を考えているか、美琴に訊こうとはしなかった。
「……………友達と好きな人、か」
 不意に美琴は、そんなことを呟いた。
 それを聞いた上条であったが、何も答えることは出来ない。ただ静かに太陽が沈むオレンジ色の眺めるだけだった。

232キラ:2010/04/17(土) 23:24:35 ID:I8kETh/I
 それからあっという間に時間が流れ、気づいた頃には、あと一時間足らずで日付が明日の13日へと変わってしまう、二十三時をすぎていた。
 『わだつみ』に来ていた客たちは自分の部屋にいたり、外へ出ていたりしている。しかしこの『わだつみ』の風呂場の湯船に一人で浸かっていた美琴は、少なくとも街へ出ようとは考えなかった。
「はぁー疲れたわ」
 美琴は一人になった風呂場で一人、疲れた息を吐きながら夏の空を見ていた。今日の天気は一日中晴天であったので、光り輝く星と月が空に姿を現れていた。小さく光る星々たちは、とても綺麗に輝きを放ち、夏の真っ暗な空を明るく照らしている。その中にはあった月は、満月ではなく八割出ている微妙な形の月であり、小さな星とは違ってどう見ても浮いている存在だった。しかし月の輝きはこの中で一番強く、湯船に浸かる美琴を照らす夜の太陽の役割を担っていた。
 この空は、美琴の住む自宅でも前に住んでいた常盤台の寮でも見ることが出来ない貴重な星空だった。それを大きな風呂で見ることが出来るのだから、これほど素晴らしい思い出になることはないだろうと、美琴は小さく微笑んで旅行に来れた幸せを改めて実感し直した。
 結果としては、不幸がたくさん付きまとい疲れる旅行であったが、上条と来た初めての旅行にとても満足であった。あとはもう明日の朝に起きて、昼の電車で学園都市に帰るだけだ。今日と比べると明日の予定が帰るだけとさびしい気もするが、もう今日だけで何年分かの満足を頂いたこの旅行に、これ以上のものを求めては罰が当たりそうだ。それに、美琴自身はもう十分満足だったので、明日そのまま帰ることに後悔はなかった。
 何年ぶりかの海で大好きな人と一緒に遊べた思い出、今日という日をくれた神様に美琴は心の底で感謝した。
「あとは、大切な旦那様の当麻にもね……さて、そろそろも戻ろっかな〜」
 上機嫌なまま、美琴は湯船の外に置いてあったタオルを取ると、胸元を隠しながら湯船の外へと出ようとした。その時、男性の脱衣所の方向から扉が開く音が聞こえた。
 この『わだつみ』は混浴の浴場である。大きさは一般的な銭湯よりも大きめであったが、旅館にある大浴場よりは若干小さい。さらに今美琴がいる湯船から女性の脱衣所までは、少し時間がかかりすぎる。その間に男の人と鉢合わせはとても危ない。
 この場面ではどうすればいいかをまったく知らなかった美琴は、タオルを胸に巻くと身体を湯船に隠した。こうなってしまったら、上がり途中で鉢合わせになるよりは、一言断ってから上がった方が迷惑はかからないと判断して、ここに来る男の人を待つことにした。
 そして、ゆっくりと歩いてくる男の顔が湯煙から見える位置に来た時
「あれ、当麻?」
「は……? 美琴?」
 腰にタオルを巻いているツンツン頭の黒髪の男は、上条当麻。美琴の身内であり、先ほどまで美琴が考えていた相手であった。
「部屋を出たきり戻ってこないから、一人で外にでも行ったと思ったら、ここにいたのか」
「まあ、ね。外に行こうとは思ったんだけど、途中で今日のことを思い出して面倒になったの。それで、気分転換にお風呂に入ってたら」
「俺が来たってことか。はぁー、貸切ならいいけどそうじゃねえから素直に喜べねえな」
 上条が言った意味は、他の人間がここにやってくることがあるかも、という皮肉であった。もしこの浴場が貸切であったら、二人は特に何も気にせずに仲良く風呂に入っていただろう。しかし、誰にでも開放している状態で二人が仲良く入っている光景を誰かが見たら、二人はおかしな勘違いをされることは確実だった。そうなるのは、上条も美琴も不本意だったので、二人はいつものイチャイチャはしないことにして、他の人間が入ってきてもおかしなことにならないように控えめな態度を取ることにした。
「とりあえず、俺はシャワーでも浴びて体を洗っておく。その間に、出たければ出てもいいぞ………というか勘違いされそうだから出た方がいいと思うけどな」
「うん。でももう少しここにいる。勘違いされたら、私がなんとかするわ」
 そっかと振り向かずに相槌を打つと、上条は湯船から離れていく。美琴はそれを見ながら、湯船からタオルを出すとぎゅっと搾って水を搾り出した。そして搾り終えたタオルを頭の上に置くと、上条とは反対向きに座って空の景色を見続けた。

233キラ:2010/04/17(土) 23:32:25 ID:I8kETh/I
以上です。
後編と言ったはずですが、中編です。
後編のプロットの半分でこの分量(9000字)と予想以上に長くなってしまいました。残りの半分は現在執筆中です。

前レスでのご指摘で、改行のことを言われたので意識して書きました。よくなっていれば、幸いです。
あと、美琴をあの水着にしたのは私の欲望ですwww

234■■■■:2010/04/17(土) 23:33:26 ID:1kDp9wLc
乙! まさかリアルタイムで遭遇するとはw

235■■■■:2010/04/18(日) 00:00:57 ID:WhHgwqbM
乙です!
きれいなヤンデレールガンの可能性を垣間見たwww

236■■■■:2010/04/18(日) 00:05:37 ID:jHOznjWk
>>221
使ってないね。あまりっていうか全然使ってないんじゃないかな?
上条さんの中では「せうか」使用のブームが終わったんじゃないかなと勝手に思ってる

237■■■■:2010/04/18(日) 00:17:21 ID:K3xG4eIc
せうか 無し
でせう? 1,3,4,6,10巻

238■■■■:2010/04/18(日) 01:24:44 ID:lEgPedis
>>233
GJ!
何というヤンデレールガン
上条さんはもう迂闊に他の女にフラグ立てられないな

239■■■■:2010/04/18(日) 10:44:33 ID:MnbK0U1k
アミノ酸さん、IONさん、キラさん。GJ!

アミノ酸さん。禁書原作16巻もおすすめですよ!
3、8巻に比べると、登場シーンが少ないけど、インパクトがでかすぎます!!

240ぴんた:2010/04/18(日) 10:56:42 ID:Db0X8R6w
皆さんGJです!
いつもニヤニヤさせていただいてます。

…という事で自分もささやかながら投下します。
今回のテーマは『第三者』なんですが、とある魔術の禁書目録ノ全テの表紙を見て
思いついて書いたので、所々違和感があるSSだと思いますが流して読んでいただいたら
幸いです。

では5分後くらいに投下いたしますー。

241全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:03:13 ID:Db0X8R6w

「ん? 何かしらコレ…」

 とある休日の午後。
 御坂美琴は自販機でヤシの実サイダーを買うと、自販機に立てかけられている何かに気付く。
 それはどうやら本のようだがタイトルは書かれてなく、表紙裏表紙共に紫色がベースで銀の止め具が七箇所付いており、
 結構大きめな厚手の本だった。
 美琴はその本を手に取ると周りをキョロキョロと見渡した。

「誰か忘れて置いて行っちゃったのかしら。うーん…」

 美琴がそう言うとサイダーの缶を自販機の上に乗せ、その本を開いた。
 中は何やら文字や絵が描かれていたが、美琴にはそれを読み取ることは出来ない。
 わけもわからずページをぺらぺらと捲っていると、ページとページの間が光っているのに気付いた。
 その光はきれいなピンク色で、何やら声みたいなのが聞こえてくる。
 美琴は恐る恐るそのページを開くと、そこにはキラキラと光っている文字が書かれてあった。

『……? お姉、さま? お姉さま〜〜〜〜ん♪』
「へっ!? く、黒子!? な、なんで黒子が本の中に!? しかも手のひらサイズ…」

 美琴が光る文字に触れると、閉じ込めていた蛍が飛び出してくるようにピンクの綺麗な光が本から湧き上がってきた。
 その光の奥には白井黒子っぽい手のひらサイズの女の子が居て、美琴を見るなり飛びついてきた。
 白井っぽい女の子は美琴の頬にくっつくと「お姉さまお姉さま、はぁはぁ…」と頬擦りしてくる。
 美琴はその行為にこのちっこいのは確実に黒子だと感じ親指と人差し指でその少女の服を摘んで引き離した。
 小さな白井からは赤いハートがぽわぽわと出てきており、美琴は不覚にも可愛いと思ってしまった。

「あ、アンタ…ほんとに黒子?」
『もちろんですわお姉さま! 黒子の顔を忘れてしまったんですの!? 黒子は、黒子は悲しいですわっ! …うぅ』
「その口調、さっきの変態性…どうやら本物みたいね」
『それよりお姉さま? いつからそんな大きくなられたのですの? さっきまでは黒子より少し大きかったくらいでしたのに』
「はぁ? 何言ってるのよ黒子。私が大きくなったんじゃなくて、アンタが小さくなったんじゃない」
『へ? そうなんですの? ……、そういえば自動販売機がやたら大きく見えますわ』
「でしょ? てか何でアンタが本の中に入ってんのよ? 変な能力者に何かやられたの?」
『何で…と言われましても、わたくしはさっきまで常盤台の寮にいたんですのよ? お姉さまはちょっと出かけてくるって言ってましたけど』
「ん……?」

242全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:04:30 ID:Db0X8R6w

 美琴はそう白井が言ったので、何か覚えがあったのか首を傾げた。
 そういえばここに来る前白井にどこに行くのか追求されたので、美琴は「ちょっと出かけてくる」って言った気がする。
 美琴は本を地面に置き、ちび黒子を左手に持つと、右手でゲコ太の携帯を取り出し白井に電話をかけた。
 もし本物ならこのちっこいのが電話に出るはずだ。

【……はい。お姉さま? どうなされたんですの?】
「…」

 美琴はちび黒子を見るが、別に携帯を取り出しているわけでもなく、美琴の手のひらの上が気持ちいいのか親指に頬擦りしている。
 電話で話している白井は今常盤台の寮にいて、風紀委員の仕事をしているらしい。
 美琴はほっとしたのと同時に何やらワケがわからなくなってきたので、とりあえず「えっと、なんでもない。じゃあね」とだけ言って電話を切った。
 そしてちび黒子に視線を落とす。
 よくよく見てみるとちょっとデフォルトされているような、されてないような…。
 手のひらにいるちび黒子は依然どこからかハートをぽわぽわと出しており、体をよじって喜びを表現しているようだ。

「ねえ黒子。そういえばアンタさっきまでは私といたって言ってたわよね?」
『はいですの。お姉さまったらまたあの殿方を探しに行ったんですわ! そうに決まってますわ! キィィィィィイイイ!!!』
「あ、あああの殿方!? ま、まさか私とあの馬鹿もこの中にいるっていうの!?」
『…? はいですの。毎日会ってるじゃありませんの』
「ちょっちょちょ…ど、どこに行ったのよ!? 私は!?」
『そ、そんな事わたくしは存じませんわ。お姉さまは出かけるとだけしか仰っておりませんでしたもの』
「そ、そういえばそうだわ…って、ん? と言う事は…?」

 美琴はさっきまでの白井とのやりとりを思い出し、考える。
 今の自分がここにいるのだから、この中の自分ももしかしたら本の中でここに来ているのではないかと。
 そう思い美琴はちび黒子を本に置くと、ちび黒子は何やら文字に吸い込まれ消えていった。
 その文字も何やら読み取れない文字だったが、そのページを見開きでよくよく見ると、何やら地図になっているような気がした。

「この地図の形……、第七学区だ」

 美琴がそのページを見渡すと確かに第七学区の地図のようで、細かく読めない文字であるが書かれてあった。
 学舎の園もきちんと一つ一つ学校が分かれているし、常盤台女子寮…これがさっき光っていた文字だ。
 それに上条当麻常連の病院、最近閉鎖したと噂されている三沢塾…。
 間違いなくここ学園都市の第七学区だ。
 とすると今自分がいる公園は…これか? 美琴は読み取れない文字に触れると、そこから声が聞こえてきて別のページが光り出した。
 その光は先程ちび黒子を召還したようなピンク色の綺麗な光で、美琴はそのページを開く。

243全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:06:03 ID:Db0X8R6w

『ったくアイツは一体どこで何をしてるのよ! 電話には出ないし、メールは返さないし!』
「…いる」

 そのページで光っている文字に触れると、先程のちび黒子同様にちび美琴がページの上に現れた。
 ちび美琴は何やらイライラして携帯をいじっており、頭からビリビリっと漏電している。
 美琴は恐る恐るそのちび美琴を摘んだ。

『わっわっわっ! な、なに!? なに? なんなの!? …って、私? 大きい私が…いる』
「間違いない。このちっこいのは私ね。電磁波で分かるわ」
『あ、あああアンタ一体何者なの!? あ、あれね! 私の格好した能力者ね! やたらでっかいし妹達とは思えないし!』
「私は私よ。御坂美琴。常盤台中学二年生」
『御坂美琴は私よ! …て、嘘。確かに出てる電磁波が私と一緒だわ…』
「わかってくれた? それより何でアンタそんなにイライラしてんのよ?」
『ふえ? そ、それはあの馬鹿に電話やメール沢山してるのに全然出てくれないし返してくれないから…』
「あの馬鹿? …あー、あの馬鹿ね! ホントあいつは私の事なんだと思ってるのって聞きたくなるくらいのスルーっぷりよね!」
『そうなのよ! ったくこっちの気も知らないで! あいつの周りにはいっつも胸が大きい女の子がいるし!』
「私だっていつかはあんくらいなるわよね!? あー、何か私もイライラしてきたわ!」
『アンタもよく分かってるじゃない! ったくあの馬鹿今度会ったら超電磁砲の一発や二発…って、ん?』
「あれ…? ま、まさか…やっぱりアンタも、あ、あああいつの事…その、す、好き…なの?」
『すっ!? すすすすすすすっ!!!???? あ、アンタはどうなのよ!? まさかアンタもあいつの事、好き…なんじゃ』
「すっ!? すすすすすすすっ!!!????」

 美琴とちび美琴はボボンと頭から湯気を出し、顔を真っ赤にすると同時にふにゃーとした。
 美琴は本の前で座ると、ちび美琴を両手で優しくすくう様に手のひらに乗せる。
 ちび美琴はその手のひらの上でちょこんと正座している。
 美琴とちび美琴は二人とも俯いてあうあうしていたが、その時本の上に何か見覚えのあるツンツン頭の少年が出てきた。

『ふんふんふんふん〜♪』
「わっわっわっわっ!!! あ、ああああの馬鹿ことこの馬鹿が出た!! どっどどどどうしよう!!!」
『おっおおおおおお落ち着いて私!! と、ととととりあえず私を降ろして!!!』
「わっ、わかった!」

 美琴はちび美琴を本に降ろすと、何故か今度はちび黒子の時のように文字に吸い込まれてはいかなかった。
 どうやら光っている文字に触れないと戻らないらしい。
 ちび黒子の時は本の上に置いた際に触れてしまったのだろう。
 そしてツンツン頭、上条当麻みたいな小さな少年はちび美琴がいきなり目の前に現れたので壮大に驚いたのか激しく動揺し始めた。

244全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:07:29 ID:Db0X8R6w

『う、うわああああああああああっ!!??? み、みみみ御坂さんっ!? な、何だ何だよ何ですかァ!? いつからそこにィィィィ!?』
『あっ…あああアンタ! 何で電話に出ないのよ! メールも沢山送ったのに返してくれないし!』
『電話? …あー、すまんすまん。朝起きたら電池切れててさ、今日は家に置いてきてるんだよ』
『そ、そうなの? そ、それならいいけど…。携帯の料金ただなんだから私が電話したら出て、メールが送ったら返してよねっ!!!』
『あのなー。いくらただだからって買い物でどっち買うか迷った時にいちいちメールで画像送ってくるなよ。
 俺が選んでも結局決めきれなくて両方買って来るみたいだし』
『い、いいじゃないそんなの! あ、ああアンタの意見が聞きたいんだから!!!』
『はぁ? なんだってそんな事…』
『だっ、だって…』
『…ん? どうした御坂? 顔赤くないか? 風邪でもひいたか?』
『うぅ…、ぁぅ』
「イライライライライライライライラ…」

 ちび上条とちび美琴のやりとりを見た美琴はイライラを隠せなく、言葉にイライラと出てしまう程だった。
 それは何故か。理由はちび黒子の時と同じようにちび美琴からも赤いハートがぽわぽわと出ていたから。
 しかしちび上条はそのハートに気付くことなく平然としている。
 ちび美琴はそのハートを誘導ミサイルの如くちび上条に向けて発射させるが、ちび上条にはジャミングがかけられてるかのようにスカスカと当たらない。
 美琴はそのハートの当たらなさっぷりに見るに見かねてちび上条を思い切り握りこんだ。

「ア・ン・タ・わーーーーーーっ!!! そこまでして私からの愛を受け取れないってかぁああああああああああっ!!!????」
『うっうわあああああああああ!!??? こ、ここ今度は何だ!? って御坂!? なっ何でいきなりそんなでかくっ!?』
「んなこたぁどうだっていいのよ! アンタね! ちょっとくらい私を女の子として見てくれたっていいんじゃないの!?」
『なっ、何を…言って…く、くるし……』
「私にそんなに魅力がないか! そんなに巨乳が好きか!? そんなにお姉さんが好きかぁああああああっ!!????」
『お、落ち…着いて、み、みさ…御坂……、さん』
「大体ちょっと考えたら分かるでしょうがぁっ!!! 嫌ってる奴と恋人契約なんかするかぁあああっ!! 好意見え見えでしょっ!!!」
『ちょ…、ま…、………って』
「あ」

 美琴はちび上条を握りこむと前後にガクガクと激しく揺する。
 ちび上条はその圧力と振動に意識が飛んでしまいピクピクとしてしまった。
 そんな上条を見た美琴は動揺してオロオロとしだす。

「あ、ああ…ど、どうしよう! えっとえっと…」
『こら私! はやくその馬鹿をここに置きなさい!』
「へっ!? あ…うん。わ、わかった!」

 美琴はちび美琴に言われた通り本の上にちび上条を戻すと、その上条にトテテと正に文字が出てちび美琴が近づいていった。
 ちび上条からは白いふわふわした何かが出ているが、ちび美琴はその上条の頭を持ち上げると自分の膝の上に乗せて上条の頭を優しく撫で始めた。
 自分もした事がある膝枕だ。今思うとあのツンツンの髪がチクチクしてくすぐったかった。

245全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:09:16 ID:Db0X8R6w

「なっ…なななっ!?」
『えへ、やっ…やっぱりここは私が看病しないとダメよね。げ、げげ原因は…わ、私……だし?』

 ちび上条とちび美琴の空間はそこだけ何かピンク色になり、ちび美琴からはこれでもかというくらい真っ赤なハートがぽわぽわ出ている。
 ちび美琴は恥ずかしそうにしながらも幸せそうな顔をして上条の頭や頬を撫でている。
 美琴はそのちび美琴の表情を見ると、この子は本当にこいつの事が好きなんだなと思った。

「(あ。てゆうかコレ私じゃん)」

 美琴はそう思うと途端に顔を真っ赤にし、俯いてモジモジしだす。
 視線はちらっちらと本の上の二人を見るが恥ずかしすぎて見てられなくなり、すぐに視線を外すが気になってまた見る…の繰り返し。
 するとちび美琴は何を思ったのか急にキョロキョロしだし、ちび上条の顔に自分の顔を近づけていった。
 ちび美琴の顔は依然真っ赤で、目は何故かトロンとしていた。
 
「(え? こ、この私は今から何をしようとしてるの…? 段々顔が近くなっていくけど…え? えぇ!?)」

 美琴はいきなりのちび美琴の行動に動揺を隠せなくなっているが、そんな中ちび美琴はちび上条の頬に優しくキスをした。

「なっ、なにをしてんだ私ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!?????」
『うっうわっ!? い、いきなり大きな声出さないでよ! ビックリするじゃない!!』
「あ、あああアンタ今そいつになにしたか分かってんの!?」
『…へ? 今? 今私何かやったっけ…?』
「あ、アンタ無意識のうちにやっちまったのかぁ!!! あ、アンタはねぇ! 今そいつのほっぺたにキッ、キキ…キスしたのよっ!!!」
『キッ、キスぅぅぅぅ!!??? わ、私がこいつにぃいいい!!?? う、嘘よそんなの!!!!』
「嘘なんかつくかぁああああ!!!! アンタは何を思ったか急にキョロキョロしだして、うっとりした表情でキスしたんじゃああああっ!!!」
『う、うそ…ど、どうしようどうしよう…、ふぁ、ファーストキスはロマンチックにって思ってたのに…』
「だっ大丈夫よ。ファーストキスは唇同士なんだから今のはノーカウント! 挨拶みたいなものだわ!」
『そっ、そうよね! 挨拶よね! あははは』
「そうよ挨拶よ! あはは」
『ははは…はぁ』
「……アンタ本当にこいつの事が好きなのね」
『…うん。私はこいつが大好き…。でもコイツは全然私の気持ちに気付いてくれないし…』
「連絡なしに勝手に海外に行って死にかけるし…」
『見境なしに人助けして、その度に女の子に惚れられるし…』
「でも、そんなところがいいのよね。うまく言えないけど…」
『うん…。私はそんなの全部含めてコイツが大好きなの、えへへ』
「わっ私も。そんなアイツが大好きなんだ。えへ、えへへ」

 美琴とちび美琴はそう言うとお互いに顔を見合って笑いあった。
 自分の本心を全て吐き出したのでどこかスッキリした顔になっているのが分かる。
 きっと相手から見てもそれを感じることが出来るだろう。
 すると美琴は本の上のある変化に気付いた。
 ちび美琴から出る赤いハートがちび上条の胸に入っていくのだ。
 どうやらちび美琴からはそのハートが見えないらしく、笑い合った後また上条に視線を落として優しくツンツンの髪を弄っているが、
 ちび美琴から出てる真っ赤なハートは上条にどんどんと吸い込まれていった。
 心無しかちび上条の頬が赤い気がする。
 ま、まさか―――

246全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:11:07 ID:Db0X8R6w

「ねぇちょっと…コイツもしかして気付いてるんじゃないの?」
『ふぇ!? う、うそ!?』
「あ! 今こいつから『ドキッ』って文字が出た! 絶対気付いてるわコイツ!」
『アンタ本当に起きてるの? あと五秒以内に起きたら電撃は勘弁してあげるわ。4、3、2…』
『うっ! うぅーーーーん! あ、あれ? 俺気絶してたのか!? あは、あはは!!!』
『アンタどこから気付いてたのよ?』
『な、何を言いますか御坂さん。上条さんは今、まさに今さっき目を覚ましたのですよ?』
「……正直に言えばこの超電磁砲は撃たなくて済むわ」
『でかっ!? コインでかっ! てか素がでかい!』
『そっちを防いだとしてもこっちの超電磁砲もあるわよ?』
『あ…あぁ。に、逃げ場が無い……、不幸だ』
「で? アンタはいつから気付いてたのよ?」
『え、えっと…あの。お、怒らないでせう?』
『うん』
『じゃ、じゃあ言いますけど…、その…
 「嘘なんかつくかぁああああ!!! アンタは何を思ったか急にキョロキョロしだして、うっとりした表情でキスしたんじゃああああっ!!!」ってところから…ですね、はい』
「…」
『…』
「…私だあああああああっ!!!!!」
『あ、アンタねぇ! やっぱりあの大声で起きちゃってたんじゃない!』
「だってだって…いきなりあんな事するから…」
『じゃあ…その、その後の会話も聞いてたって事…?』
『……あぁ。聞いた』
『そう…』
「あ、あの…ご、ごめん。私のせいで」
『ん? いいわよ別に。いつかは言おうとしてたし。何かスッキリしたわ』
「そ、そう…なんだ」
『で? あ、アンタはどうなのよ?』
『へ? ど、どう…とは?』
『アンタ鈍感にもほどがあるでしょうが! この状況でどうって私の事どう思ってるかって事に決まってるでしょ!?』
『えっと…その、あぅ…』
『私はさっき聞いたかもしれないけど、アンタが大好き。全部。全部大好きなの』
『み、御坂…』
「あれ…?」

 美琴は見た。
 ちび美琴から告白された時に、ちび上条からハートが出た事に。
 それはちび美琴ほど大きなハートでは無かったが、しっかりと形を成しふわふわとちび美琴に吸い込まれていった。
 それをちび美琴は気付かないが、美琴は何故かとても嬉しくなった。 
 その光景を見た美琴はこれ以上この二人の邪魔をするのは野暮かなと思い、ちび美琴を出した文字に触れると本の上の二人は吸い込まれていった。
 辺りは一気に静けさを取り戻し、自販機の冷却音だけが聞こえてくる。
 美琴は本を閉じて元あった場所に立てかけると、自販機の上に置いていたヤシの実サイダーを手に取り、一口飲んだ。
 そしてまた自販機の上に缶を戻すと背伸びをする。
 結構な時間座り込んでいたせいか背中がちょっと痛いし、足が痺れている。
 美琴はその後小さく溜息を吐くと何かを感じた。
 後ろに…、誰かいる。
 美琴は恐る恐る振り返るとそこには―――

247全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:12:47 ID:Db0X8R6w

「よ。やっと気付いたか。何かおもしろい事やってたな」
「あ」

 等身大の上条当麻が立っていた。
 先程の本の上にいた上条は少しデフォルトされた感じだったが、この上条は今日まで美琴が見てきた本物の上条当麻だ。
 今日は休日なのだが何故か学生服姿で、頬を染めて頭をぽりぽりと掻いていた。

「あああアンタ! いつからそこにいたのよ!?」
「ん? 今さっきだよ。超電磁砲がどーとかってところから。うずくまってるから何してんのかと思ったけど」
「そ、そうなんだ」
「と言いますかさっきのって俺とおまえ…なの? やたらハート出てたけど」
「う、うん…。多分…てゆうかあれは絶対私達だった」
「超能力か何かか? でも何つーか面白い能力だな」
「うん。何で本の中にいるのかは分からないけど…」
「さっきの二人いい感じだったしな。よく出来てる人形劇っぽくてさ」
「うぅん。この本の中の世界は本物よ。私の性格とか考えてる事まで全部一緒だったもん」
「マジで!? すげーなそりゃ。…って、ん? 一緒?」
「そ、そうよ。私もあのちっこい私もやりたい事が一緒なの」
「え、えっと…御坂さん? それは…、その、つまり…」
「私…アンタが大好き。ずっと、ずっと好きだったの。あのちっこい私も言ってたけど、いつか言おうと思ってた」
「御坂…」
「ねぇ。アンタは私の事どう思ってるの? 聞かせて。アンタの気持ち…」
「えっと…、その。うん…、正直言ってビックリしたってのが一番かな。でも…それ以上に普通に嬉しい」
「え!? じゃ、じゃあさ…」
「まっ待った! その…、今非常に上条さんは混乱してまして…だっ、だからちょっと言葉を選ぶ時間が欲しいといいますか」
「そっそんなの…必要無いじゃない。好きか………き、らいかで…」
「そ、そうか。じゃあその…好き」
「ホントに!?」
「……かも」
「…アンタね! この状況で乙女心を弄ぶとはいい根性してるじゃない!! 死ぬ覚悟出来た!?」
「ちょっと待て! だ、だから…その、何て言うか…」
「なによ。アンタらしくないわね。はっきり言いなさいよハッキリ!」
「その…さっきまでは友達として見てたけど、なんて言うか今の御坂見てると…、その…可愛くて」
「か、かわっ……!」
「好きに、なっちまった…かも? って言いたかったわけです。はい」
「じゃあ…付き合って、くれるの?」
「御坂が、こんなんでいいならだけど…。でも本当に俺? 俺おまえに何か好かれる事やったっけ?」
「うん…。一生に一度の恋をさせてくれた」
「ちょっ、御坂さん…。さっきから台詞がストレートすぎて、上条さんのひ弱な心臓が張り裂けんばかりに高鳴っているんですが…」
「えへへ。いいの。アンタが自分の好意に気付いてないなら、気付けるくらい私の事好きにさせてあげる♪ だからいっぱい好きになってね♪」
「で、では御坂さんに…これを」
「え?」

248全テ見つけて:2010/04/18(日) 11:14:13 ID:Db0X8R6w

 上条は左手で自分の周りの空間をすくうと、美琴に差し出した。
 その手の上には何も見えないが、先程の本で起きていた事を見ていた二人ならそれがどういう意味か分かる。
 つまり上条は、自分から出た赤いハートを美琴にあげようとしているのだ。
 美琴は上条の手にゆっくりと両手を持っていくと、ガラス細工を扱うように優しく受け取り自分の胸にしまった。
 そしてその瞬間、美琴は何とも言えない気持ちになる。
 上条の優しさや温かさが体全体を包んでくれているようだ。
 上条も美琴のその姿を見て恥ずかしそうに顔を染め、頭をぽりぽりと掻いている。

「さっきの二人見てたらさ。今の俺も確実に出てるなと思って」
「ありがとう。アンタの想い、確かに受け取ったわ」
「まだまだおまえ程じゃないみたいだけどな」
「そんなの当たり前よ。私のアンタに対する愛はこの上ないものなの。これを上回る事が出来るのは私だけよ」
「そ、そうなんですか。では、なるべく近づけるように努力します」
「えへへ。期待してるね!」
「えっと…じゃあ。不束者ではありますが、どうぞ宜しく、お願いします」
「うん! よろしくね!」

 そう言うと美琴は上条の腰に手を回し抱きついてきた。
 美琴は上条の胸に幸せそうに頬擦りすると、心の中で白井に何かを感じて同時に謝った。ごめん黒子。アンタの気持ちが分かる気がするわ。
 上条はいきなりの美琴の甘えっぷりに驚きオロオロしだすが、美琴から「えへへ」と聞こえてきたので引き離す事なく頭を撫でてあげた。
 しばらくすると美琴は上条の胸から離れ、腕を絡める。
 まだまだ甘え足りない表情をしていたが、すぐに「じゃあ初デートに行きましょ!」と言い笑顔になった。

「まずゲーセンでプリクラ撮るでしょ? そしたらセブンスミストで買い物して…、それからそれから」
「えっと…その事なんですが、実は上条さん今日課題を貰ってきてしまってですね」
「はぁ!? アンタね。休みの日に補習受けてその上に課題まで出されるとか、どんだけなのよホントに…」
「いやね。上条さんの頭の悪さでも本来なら補習だけで済むんですよ。しかしですね出席日数が足りてないからって」
「それはアンタが学校さぼって海外飛び回ってるからでしょうが!」
「うぅ…そ、そうなんですが」
「まぁいいわ。さっきも言ったけど、私はアンタのそういう所も含めて全部好きなの。だからプリクラだけ撮ったら課題見てあげるわよ」
「御坂さん…女神ですか」
「えへへ。明日から暇な日は無くなりそうね♪」
「上条さんなりに頑張ります」
「ふふん。じゃあ行くわよ! って…この本どうしようか」
「ん? このままでいいんじゃないか? 元からここにあったんだろ?」
「うん。…ねぇ? あの二人はどうなったのかな?」
「わかんねぇけど…、でも、一緒の気持ちならあの二人も今頃こんな感じになってんじゃねぇかな」
「えへへ。そうだといいね♪」

 美琴はそう言うと、笑顔で上条の腕を引いてゲームセンターへ向け歩いていった。
 美琴は今まで想いを寄せていた大好きな上条当麻との初デートに、気持ちが抑えきれずに周りを気にせずはしゃいでおり、
 上条は今さっき生まれた御坂美琴への恋心が激しく膨らみ始め、恥ずかしそうだが満更でもないようだ。
 そして二人が去った後、自販機前に安全ピンで留めている白い修道服を着た少女が現れる。
 その少女は自販機に立てかけてある本を手に取ると溜息を吐いた。

「はぁ…やっぱりここにあったんだよ。ここしか考えられなかったけどあって安心したかも。…って、もうこんな時間なんだよ!
 そろそろとーまが帰ってくるから早く帰らなきゃ!」 
『ほら! 早くゲーセン行こうよ! 課題が終わらなくなるわよ!』
『そ、そんな引っ張るなよ御坂…』
「あれ? とーまと…、短髪の声? ……ま、いっか。ごはん♪ ごはん〜♪」

249ぴんた:2010/04/18(日) 11:17:24 ID:Db0X8R6w
以上になります…。
美琴がなぜ魔術みたいな事を!? …とつっこまれたら全てが終わるSSでした。
何かすみませんでした(´;ω;`)

でもこういうメルヘンチックな物語が好きな自分なのでありました。
ではー♪

250■■■■:2010/04/18(日) 11:19:15 ID:2VJOSiTk
>>249
GJ!
一つだけ難を言うなら

>よくよく見てみるとちょっとデフォルトされているような、されてないような…。
×デフォルト
○デフォルメ
だと思うんだが。

251■■■■:2010/04/18(日) 11:50:23 ID:t/741yKk
>>225
もっとうまく改行しましょう

252■■■■:2010/04/18(日) 12:07:19 ID:PfNy7ZZQ
ところでおまえら最初から付き合ってるssか作中に付きあうssどっちが好き?

253■■■■:2010/04/18(日) 12:30:32 ID:MnbK0U1k
>>249
GJ!! ものすごく面白かった!ミニ美琴がかわいすぎるw

254■■■■:2010/04/18(日) 12:35:19 ID:4fGMlTm.
>>249
GJです!実にメルヘンチックでした。
・・・その本、偶像崇拝の(ry

>>251
私はキラさんではないのだが、ただ改行といわれても分からん。
批評するならもっと具体的にしような。

というわけでついでに一つキラさんに、
当麻大好きモードの切り替えが少し突然すぎた気がします。
「あれから美琴は当麻大好きモードから少し回復した」ぐらいの文があってよかったかもしれません。
でも、キャラの切り替えはうまかったと思います。GJでした。

255■■■■:2010/04/18(日) 15:39:42 ID:XRcaoIlM
>>249
GJです!
すごくかわいいSSでした

>>252
作中に付き合って、付き合った後も書いてくれる長編SS

256■■■■:2010/04/18(日) 15:40:33 ID:ofSvTDuk
>>255 俺も

257■■■■:2010/04/18(日) 15:41:04 ID:CR.xTsBo
>>249
GJ!ハート激萌えたw
>>252
両方好物

258■■■■:2010/04/18(日) 18:01:06 ID:t9w7p//c
>>249
もう言われてるけど×デフォルト○デフォルメですね
ともあれGJ!
元ネタは「全テ」の表紙ですかね
おかげで文章から容易に絵がイメージできました

259ぴんた:2010/04/18(日) 18:16:25 ID:Db0X8R6w
皆さん感想ありがとうございます!(*´ω`*)

>>250さん、>>258さん
ぎゃー!デフォルメですね、失礼しました。
ちょっと三沢塾に勉強しに行ってきます!
…すみません潰れてました。 λ.....トボトボ

>>252さん
自分も両方大好物です!

>>253さん
美琴は表紙にいなかったんで出してみようかな…と思ったのが始まりでした。
しかし表紙のちび上条さんを摘む美琴が可愛すぎて(ry

>>254さん
メルヘンにメルヘンにを心がけました。
少しでも伝わってもらえたなら嬉しいです。

>>255
このSSでかわいいという感想はとても嬉しいです。
今回は美琴が美琴を見て照れるというSSだったので、ちび美琴をいかにかわいくみせるかが難しかったです。

>>257さん
ハートは黒子を見てこれしかねぇと思いましたw
多分美琴は、本の外でも上条さんにハートミサイルを連射してるはずです。

260■■■■:2010/04/18(日) 19:36:46 ID:aSO9KjHA
今更だけど
2chやまとめサイトはプロポーショナルフォント(文字幅可変)
ラノベは等幅フォントなんだよね
どちらに合わせていいやら

通りで改行しない派なんて人が出てくるわけだ

261ION:2010/04/18(日) 20:06:53 ID:c53YRTQg
>>221さん、222さん、223さん。

いつの間にか、黒子が飛び級しちゃってますね。うっかりミスですね。
上条さんの「せうか」もそうですね。直さないと。

変な風に時空を変えてしまっていました。ごめんなさい。

「変更前」
ルームメイトの白井黒子もさすがにこの乙女心全開の少女の行動にあきれているようだ。
白井は、明日も風紀委員(ジャッジメント)の仕事が早くにあるので。と美琴に言い残し、ベッドの中に入っていった。
美琴が完全に寝たのは日付が変わってからだった。ベッドの中に入ったもののメールでの興奮がなかなか冷めず、顔を真っ赤にしながらごにょごにょ口が活発に小さく動いていた。
たまに、気持ちが高ぶりすぎてガッツポーズを決めてしまうほど。

「変更後」
寮生活に慣れてしまった美琴は、昔のルームメイトに電話をかけた。彼女の後輩である白井黒子は、かつてのルームメイトで戦友である。
そんな彼女に今もいとおしい“お姉さま”から電話がかかってくる。今では、そんな電話もうれしくもなんともなくなっているようだ。
あの殿方、いや、類人猿の話しかしてくれないからだ。今日もそうなんだろうと仕方なさそうに電話に出る。
やはり、あのツンツン頭の類人猿の話だ。と思いながら、白井もさすがにこの乙女心全開の少女の行動にあきれているようだ。
しばらく色々と雑談を話したあとに、白井は、明日も風紀委員(ジャッジメント)の仕事が早くにあるので。と美琴に言い残し、電話を切った。
美琴はベッドの中に入って電話していたのだが、完全に寝たのは日付が変わってからだった。
ベッドの中に入ったもののメールでの興奮がなかなか冷めず、顔を真っ赤にしながらごにょごにょ口が活発に小さく動いていた。たまに、気持ちが高ぶりすぎてガッツポーズを決めてしまうほど。

という感じにしてみました。修正できたらしますね。
ご迷惑おかけしました。

262かぺら:2010/04/18(日) 20:08:59 ID:Rx9.EAu6
改行談義についてちょっとお聞きしたい。
1〜3でどれが読みやすいんだろうか。


御坂美琴はコンビニにいる。今日は月曜日。完全下校時間を少し過ぎた頃。
もちろん門限なんてブッチギリであったりするのだが、規則は破ってこそのものだ、美琴はそう考えている。
こんな遅くに女子中学生が出歩いたりしていると大概ロクな目にあうことはないのだが、レベル5である『超電磁砲』にとっては障害にならない。

2:「。」ごとに改行
御坂美琴はコンビニにいる。
今日は月曜日。
完全下校時間を少し過ぎた頃。
もちろん門限なんてブッチギリであったりするのだが、規則は破ってこそのものだ、美琴はそう考えている。
こんな遅くに女子中学生が出歩いたりしていると大概ロクな目にあうことはないのだが、レベル5である『超電磁砲』にとっては障害にならない。

3:「。」ごとに改行+空行追加
御坂美琴はコンビニにいる。

今日は月曜日。

完全下校時間を少し過ぎた頃。

もちろん門限なんてブッチギリであったりするのだが、規則は破ってこそのものだ、美琴はそう考えている。

こんな遅くに女子中学生が出歩いたりしていると大概ロクな目にあうことはないのだが、レベル5である『超電磁砲』にとっては障害にならない。

263■■■■:2010/04/18(日) 20:13:54 ID:ofSvTDuk
2だな とりあえず3はない。この手の話は議論してもなかなか結論が出ないけどこれは1か2で決まりだと思う。あとは作者様に一任するのが一番かと。

264■■■■:2010/04/18(日) 20:18:25 ID:b29pRBK6
>>262
①か②、個人的には①
個人の画面の大きさ(窓の大きさ?)とかでも左右するし。
最終的に>>263の言う通り、作者様に一任だよね。

265■■■■:2010/04/18(日) 20:20:59 ID:aSO9KjHA
>>262
答えがあるならどれかに収束してるはずで
書き手は自分なりに読みやすい方法を取ってると仮定すれば
人による ってのが答えになる

あるいはかまちーに似せる というのも答えの一つかもしれないけど
したらばとかwikiの形式では似せようがない
むずいね

あ、でも句点ごとに改行というのは国語の教科書的には違うと思われ
私は段落分けもしてますよ 一字下げ
横書きの場合はこの点も人によるけど

266■■■■:2010/04/18(日) 20:21:30 ID:4fGMlTm.
>>262
2と3は、はっきり言って読みづらい。
他の改行の仕方については、勝手に改行されるのを防ぐために
意味とか語の区切りで切るとかがあると思います。そうすると
「御坂美琴はコン
ビニにいる」
とかいうのを防げる。この場合は(小説でもよくある)読みにくい。

例ではこんな感じ?
 御坂美琴はコンビニにいる。今日は月曜日。完全下校時間を
少し過ぎた頃。
 もちろん門限なんてブッチギリであったりするのだが、規則は
破ってこそのものだ、美琴はそう考えている。
 こんな遅くに女子中学生が出歩いたりしていると大概ロクな目に
あうことはないのだが、レベル5である『超電磁砲』にとっては
障害にならない。

267■■■■:2010/04/18(日) 20:27:19 ID:MnbK0U1k
かぺらさん。1が読みやすいかな。
まあ、PSPで見てるので、あまり気にしてないが…

268キラ:2010/04/18(日) 20:41:14 ID:UM/l.OjM
なんか、また私のssで議論が始まったような気がしてならない(汗)
うぅー……なんかごめんなさい!

>>235 >>238
美琴、ヤンデレ化しつつある…だと!?
私はヤンデレと言ったら「中には誰も〜」しか思いつかないから、よくわからなかったりorz

>>251 >>254
ご批評頂き、ありがとうございます。
どこが良くて、どこが悪いかがわかるので、批評は個人的にはありがたかったです。

>>252
私は作中に付きあう派ですwww

>>262
私は1で書いてますね。そのせいで、批評されましたけど(汗)
2だと一文ごとに差が出てしまって読みにくいですし、
3だと特に読みにくいですし、書くのも大変な気が…。

269■■■■:2010/04/18(日) 20:42:33 ID:oeR3qCJ6
この職人さんの作品はいつも読みやすい、みたいなの上げるのはまずいのかな
作品批評じゃないしさ
もちろん真似しろって意味じゃなくてね(改行テクも個性だし)

270■■■■:2010/04/18(日) 21:03:27 ID:dJ31fYdg
D2さんもう来ないのかなぁ・・・

271■■■■:2010/04/18(日) 21:16:56 ID:aSO9KjHA
キラさんの文はD2さん仕様じゃないっけ
他にも何人か居たような

したらば(2ch)と同環境にできるエディタを全力で探してみた
フリーだと
・メモ帳(フォント MSPゴシックにする)
・greenpad
・萌エディタ
…少ない
有料だとそこそこあるっぽいけど
秀丸、ward、その他

あ、ふと思いついたけど
VisualStudioはフリーもあるし意外と使いやすいかも?w


以上スレ汚しでした

272■■■■:2010/04/18(日) 21:25:13 ID:t/741yKk
>>268
キラさんのは1ではなく


御坂美琴はコンビニにいる。今日は月曜日。完全下校時間を少し過ぎた頃。もちろん門限なんてブッチギリであったりするのだが、規則は破ってこそのものだ、美琴はそう考えている。こんな遅くに女子中学生が出歩いたりしていると大概ロクな目にあうことはないのだが、レベル5である『超電磁砲』にとっては障害にならない。

っと1文が長くないですか?

273つばさ:2010/04/18(日) 21:40:20 ID:jHOznjWk
作品投稿するときくらいしかコテあんまり付けないんですが談義ってことで。

私は2でやってますね、教科書というか文章の基本としては1しかあり得ない。
それは重々承知してはいるんですが…。ただ、紙に印刷したときやスタイルシート使うならいいん
ですがなんというか1だとブラウザでは文が詰まりすぎて読みにくい気がするんです。
ブラウザを調整したらなんとかなるんでしょうか?でも普通のタグじゃやはりちょっとという気が。

でも皆さん1がいいみたいですし、今書いてるのは1で書き直してみようかな…。やはり今のままじゃ
読みにくいかなぁ…。
後改行しないのは掲示板ではタグが使えない上に窓の大きさは人それぞれだからです。
>>266さんの仰るような理由でしょうか。

>>270
またきっと来てくれると思います、はい、私も待ってます。

これだけではなんなので以下は感想。

>>ぴんたさん
こういうSF(少しふしぎな)話、大好きです。客観視した上条さんにはずいぶん強気なのね、美琴ってw

>>キラさん
美琴のビキニ。確かこの話の設定では美琴は成長してるんですよね?
んでもってその成長してるビキニ姿の美琴とダダ甘なラブシーンを演じる上条さん。
いいなぁ、羨ましいなぁ。完結、楽しみにしています。

274■■■■:2010/04/18(日) 21:53:12 ID:aSO9KjHA
問題が別
というか、>>262で言えば1以外はほとんど居ない(VIPには居そうだけど

>>262の指摘した点は『句点ごとに改行するか否か』
キラさん等と他の書き方の違いは、『1行の最大文字数を決めて、段落以外で改行するか否か』

後者のよくある選択肢は

Q1.どう改行するか
A.改行しない
B.1行の幅(byte)を決めて改行する
C.1行の幅(文字数)を決めて改行する
D.1行の幅をある程度決めて、切りのいい所で改行する

Q2.改行する場合何行あけるか
a.0行
b.1行
c.2行以上


Aの利点は、閲覧するときに折り返しが自動で設定される点、行の長さを閲覧者に任せられる点
欠点は、閲覧者の環境次第では見にくくなる点
Bの利点は、2ch、したらば、web系に適している点、欠点は、どうしてもbyteの奇偶でずれる点
Cの利点は、ラノベの書き方に沿っている点、欠点は、文字幅可変だとずれまくる点
Dの利点は、ある程度見やすい点、欠点は、行の幅がまちまちになる点

さらに、B,C,D共通の欠点として、閲覧者のウィンドウが小さい場合、以下のようになる点がある

アイツはきっと私の事が好きに違いない。ううん、好き、かもしれない。いや、
好きだったらいいなぁ。

アイツはきっと私の事が好きに違いない。ううん、好き、かもしれ
ない。いや、
好きだったらいいなぁ。

Q2のabcはほとんど好み。


ちなみに、「画面いっぱいに文字が出てて圧迫感を感じる」と言われるのは上記の
問題ではなく、単に1つの形式段落が長いだけ
これも別問題

275■■■■:2010/04/18(日) 21:53:35 ID:aSO9KjHA
>>274>>272あてでした

276■■■■:2010/04/18(日) 22:32:57 ID:ZJnfURBo
>>262
 ①+一字下げ。
行頭を一字下げるとどこが行のスタートか分かりやすくなる。

277■■■■:2010/04/18(日) 22:35:39 ID:qBqZUsaU
糞コテ呼び戻すなよD2厨。
せっかく死んだのに調子に乗ってゾンビになるだろが。
本人がゴールしてもいいかって聞いてたんだから
あの世までゴールさせてやれよ。
腕の立つ職人なんていくらでもいるだろ。

278■■■■:2010/04/18(日) 22:47:12 ID:ofSvTDuk
277 嫉妬乙

279■■■■:2010/04/18(日) 22:48:42 ID:ofSvTDuk
277 嫉妬乙

280■■■■:2010/04/18(日) 22:49:27 ID:U1/iOoQY
>>277
嫉妬www

281■■■■:2010/04/18(日) 22:50:55 ID:t/741yKk
>>275
別問題ではなく
そういう意味で改行しましょうって発言なんだが

282■■■■:2010/04/18(日) 22:56:21 ID:aSO9KjHA
あらそうでしたか

283■■■■:2010/04/18(日) 22:58:09 ID:IdgFDSBM
いつもなら、これから投稿ラッシュになるなあ〜と期待している読み手の一人です。
心無い書き込みが、書き手様の意欲を削ぐことにならぬよう、祈っております…

284■■■■:2010/04/18(日) 22:58:22 ID:vFEJj7dI
>>277嫉妬はみっともない乙

285■■■■:2010/04/18(日) 22:58:51 ID:4fGMlTm.
空気が悪いようなので、ちょっと少しボロッちい空気清浄機を。
Wikiにも載せないでいいですし、間隔とかも考えなくていいです。

上条「なあ、御坂」
美琴「な、なによ」
上条「やっぱりナンバーワンよりオンリーワンだよなー」
美琴「は? なにが言いたいのかわからないけど、どうしちゃったのアンタ?」
上条「いやね、この上条さんの不幸体質もオンリーワンと思えば、少しは、悲しさ、が、紛れると、うぅ」
美琴「わっ!? な、泣き出さなくても、そ、それに不幸っていうなら」
上条「……不幸っていうなら?」
美琴「私が……幸せに……して………ぁげるっていうか」
上条「……で、どう幸せにしてくれるんだ?」
美琴「……どうって…」
上条「うーん、例えば俺の彼女になってくりたりとか? なーんて、……じょ、冗談?」
美琴「…………」
上条「…………」
美琴「ふ」
上条「…ああ、やっぱり」
美琴「ふにゃー」
上条「不幸だー!!」

286■■■■:2010/04/18(日) 23:09:28 ID:ofSvTDuk
d2さんは逆にうますぎなんだよ。嫉妬厨にこんなこと言われても仕方がない。だってうますぎるのだもの。
あと桜並木さんに影響されて子供ネタ。セリフオンリー

「見つけたわよアンタ!!」
「…またかビリビリ。何か用?」
「私、アンタの子供がほしいの!!」
「…………はぁ?今何て?」
「うるさいわね!いいからズボン脱ぐ!!」
「わ!?みみみ御坂さん!?こんな人目のあるところで何を!?と言いつつ上条さんのお召し物はすでにパンツだけに!??」
「いくわよー!!」
「アッー!!らめー!!」

正直反省してる

287■■■■:2010/04/18(日) 23:11:09 ID:b29pRBK6
>>285
GJ!

改行云々はこれ以上長引くなら雑談スレで。
まー作者様の好みでFAで良いんじゃね?

後、荒らしには反応するなとあれほど(ry

288■■■■:2010/04/18(日) 23:12:05 ID:U1/iOoQY
>>277
糞とか言ってんじゃねぞ。
てめぇが何ぼのもんだ。

289■■■■:2010/04/18(日) 23:13:22 ID:vFEJj7dI
>>285gj!私が間違ってました。お詫びの印に…
上条「なぁ美琴」
美琴「ん〜…?」
上条「いつまでくっついてるつもりなんだ…?」
美琴「ん〜」
上条「上条さんはもう限界のいっぱいいっぱいなんですが」
美琴「ん〜…」
上条「何とか言ってください美琴センセー」
美琴「んん〜…」
上条「みこ…」
美琴「大好き…」ギュー
上条「ふにゃ〜」

あぁ、電波が勝手に…
こういう幻想が楽しい今日この頃です。

290■■■■:2010/04/18(日) 23:17:21 ID:qBqZUsaU
奴がうまいとか下手とかじゃなく、「ワシがいちゃスレを育てた」みたいな態度が気にくわないんだよ。
他にいくらでもスレのスタートした頃から頑張ってきた職人がいるじゃないか。
で、目的は果たしたんだったらとっとと消えろよ後の奴らの出番を取るなよっていってんだ。

291■■■■:2010/04/18(日) 23:20:26 ID:XRcaoIlM
>>285
>>286
>>289
GJです!
即興で書けるのがすごいですね
新しいSSを楽しみにしています!

292■■■■:2010/04/18(日) 23:20:57 ID:y4qCekFM
>>290
スレ荒らして新規参入を妨害しているんですねわかります
続きは雑談スレにてどうぞ

293■■■■:2010/04/18(日) 23:39:03 ID:MwVsAEj2
176-183の続きです。
タイトルは当麻をめぐって
5分後に投下します

294■■■■:2010/04/18(日) 23:41:20 ID:aSO9KjHA
わーい小ネタの流れだー
日曜夜は投下少ないからね


上条「ちょっと御坂さん? お願いがあるのですが」
美琴「な、何よ」
上条「もうちょい離れてもらえません? って違う怒るなそう言う意味じゃなねえって!」
美琴「じゃあどういう意味よ!!」
上条「髪の……匂いがその……ゴニョゴニョ」
美琴「え゛? もしかして、におう?」

 美琴は前日風呂に入れる事が出来なかったのを思いだし、上条からさささーっと離れた。

上条「違うって。逆だ」
美琴「逆?」
上条「その………………良い匂いだなって……、お前、何かその顔すっげぇ腹立つんだけど」
美琴「べ、別に喜んでなんか無いわよ!!」
上条「あーもう何でそこで怒る??」

 軽く電撃を防ぐ。

美琴「ふ、ふんだ。まあこれでも一応女の子なんだから。汗臭い誰かさんと違うのは当たり前でしょ」
上条「おい、ちょっと待て。これでも上条さんは綺麗好きなんだぞ!? そりゃもう、風呂に棲むくらいに……
   ほら、臭くないから一度嗅いでみなさい!!」
美琴「わ、わわ。ちょっとこっち向けないでよ、汗臭……くさ……」

 美琴はスーっと肺いっぱいに上条の香りを吸い込む。

上条「ん、えっと、何でせう?」

 美琴は思わず上条の頭を抱きかかえ、さらに顔をツンツン頭の中に埋めて思いっきり嗅ぐ。
 上条当麻のエキスが血液を通して全身に行き渡る感覚を覚え、ゾクリと危ない寒気に襲われる。

美琴「すーはぁーすーーーはぁぁあああ……ふあ……んっ……ふにゃぁ」
上条「って待てコラー!」

 間一髪上条も美琴をガシッと押さえる(つまり抱きしめる)ことで電撃を防ぐ。
 すると、美琴の体から力が抜け、ほとんど上条にもたれ掛かってしまった。その顔は恍惚とした表情で上条の胸に収まる。
 そのまま再び深呼吸をすると、美琴はもはや何だかどうでも良くなってしまった。このまま気持ちを打ち明けてしまおうか。

上条「そ、そんなに凄まじい匂いなのか? 俺って……」
美琴「うん。ほんと、凄い。もう、私ダメかも」
上条「……不幸だ」

 もちろん、上条にその言葉は『凄く臭い』という意味で伝わってしまうわけだが。

_____

自分が 匂いフェチっ娘フェチ である事に気付いた
匂いネタ多すぎる

295■■■■:2010/04/18(日) 23:42:02 ID:aSO9KjHA
っだー!あっぶね
セーフ!! 

どうぞorz↓

296■■■■:2010/04/18(日) 23:44:26 ID:MwVsAEj2
(うう、不幸だ。)
上条は美琴、五和、インデックス、神裂に一歩遅れて歩いている。両手にビニール袋を2つずつ持っていた。
美琴と五和がスーパーで購入したのをじゃんけんで負け、持つはめになった。
「神裂、上条さんの筋力ではこの重さにはもう耐えられません。持っていただけないでせうか。」
「全部は嫌ですが半分なら。」
「さすが聖人の名前だけあっていい人なんですなぁ。なんまいだ〜。」
そう言いながら袋を2つ神裂に渡した。
「女教皇様!私がお持ちします!」
五和が神裂から奪うように袋を持った。
「じゃ、じゃあ当麻!私も持ってあげる!」
五和に負けじと美琴も上条から袋を奪った。
美琴と五和はなかなかやるわね!とお互いにらみ合う。
そしてお互い袋の中身を覗いた。
(む!この材料はまさか・・・五和さん、私に作れない物を作れるとは不覚!)
(御坂さんは結構悩んでいたしこの材料からすれば・・・きっと一番自信がある料理!
これは気をつけないといけないです。)
知恵熱を出してライバルが何を作るか勝手に予想した。
「なんかあの二人仲良くなったみたいだな?」
「そうみたいですね。五和も天草式以外の人とこうやって接する事ができて嬉しいのでしょう。
ありがとうございます、上条当麻。」
「何で俺に感謝するんだ?」
「わからないならわからないままで結構です。」
「・・・お前、意外と美琴に負けないツンデレかもしれねえな。」
「ブッ!突然何を言うのですか!!また痛い目に合いたいのですか!?」
「素直に違うと言えばいいものを人を脅して否定するとこがツンデレだと思うんですが。」
「うぅ・・・・」
「コラーそこ!私達を置いていちゃつかない!」
「美琴の奴、私達と来やがった。なんか辛い立場にいるのは気のせいか?」

こうして一行は上条宅へ向かった。

297■■■■:2010/04/18(日) 23:45:36 ID:MwVsAEj2
ガチャ。
「じゃあ適当にあがってくつろいでくれ。」
「「「おじゃましま〜す。」」」
美琴、神裂、五和は声をそろえて言った。
「お茶しか出せないが我慢してくれよ。」
「お構いなく。あなたらしくない行動をとるのに少し驚きました。」
「うるせえ!こうやってゲストをもてなす事くらい普通にやるわ!」
そう言って上条は美琴と五和から袋を受け取りキッチンへ向かった。

「上条さん、私が以前お邪魔した時より部屋が片付いてますね。」
「ふふん、五和さん。その理由は私が毎日ここに通って掃除しているからよ。」
「んな!この先手攻撃は大きな差を広げられてしまってます。何か差を埋める方法はありますかインデックス?」
「シスターの私に任せてなんだよ。いつわ、ゴニョゴニョ・・・」
「!!!なるほど!これでまたさりげないアピールをできる訳ですね!」
「ただし相手はとうまだから通じないかも。プクク・・・」
今日のインデックスは二人を思いっきりからかうつもりだ。
五和のさりげない行動で必ず美琴が嫉妬する事を教えたから。

「ところで、天草式の連中は食事も魔術に関係あるんだろ?
五和が作るものはともかく美琴が作るの食べて大丈夫なのか?」
「当麻?私の料理がそんなに不味いと言いたいのかしら?」ビリビリ
「どわ!違う決してそんな事ないぞ!わからないかもしれないがこいつらの事を心配してるだけなんだ!
あと美琴たんの作る料理はほっぺが落ちるどころか靴下に穴が空く程美味いですよ!
だからビリビリはやめて――!!!」
「うるさーい!!」
「ギャー!マンガ本がぁぁぁ!!」
やりとりを見ていた神裂がポツリと、
「私がこの中に入れる余地は全くありませんね。」
と誰にも聞こえないように呟いた。

298■■■■:2010/04/18(日) 23:45:55 ID:MwVsAEj2
「御坂さーん、そろそろお料理始めましょう。」
「はっ!この馬鹿の相手してる場合じゃない。五和さんやりましょ!」
上条に手料理を食べてもらうより、ただ女の子同士料理を楽しむような雰囲気があった。
しかしインデックスだけその幻想をぶち壊す!と燃えている。
上条はテレビをつけ、あまり面白い番組ないな〜とチャンネルを変え続け、
美琴は上条愛用のエプロンを、五和は美琴が上条宅に置いているゲコ太エプロンを装着し、
料理を始めた。
インデックスと神裂はおしゃべりして楽しんでいる。
インデックスは時折五和の方に目を向け、五和もチラチラとインデックスに目をやった。
ボスからの合図待ちにそわそわしている。
美琴が包丁を持ち、野菜などを切り始めるのを合図にし、五和も行動にでた。


ボウルに卵、砂糖などを入れて、
「上条さん、もし手が空いてるのであれば少しお手伝いしてほしいのですが。」
「別にいいけど、二人より料理の腕は下だぞ?」
「いや、これを泡がたつまで混ぜてもらいたいだけです。
それに素早く泡立てないと味に影響が出るので力がある上条さんに任せてもいいですか?」
「それくらいなら手伝えるな。よし、上条さんに任せなさい。」
五和からボウルを受け取り、シャカシャカと始めた。
「混ぜる速度を落とさないでくださいね。」
「がってん!」
結構楽しそうにやっている上条を見て五和はクスっと笑った。
美琴は二人を見て、
(成る程。か弱い部分を見せて男に頼り、男も頼られて嬉しいと感情を逆手に取った作戦ね。
こうなったら私だって負けないんだから。)
嫉妬まじりに勇気を出した。
上条が混ぜるのをやめるまで美琴はスタンバイして様子を伺った。
「五和、このくらいでいいか?」
「わあ!ありがとうございます。上条さんのおかげでおいしくなりますよ!」
「ねえ当麻、このソースの味見てもらえる?」
小さいスプーンにすくってはい。とニッコリスマイルで差し出す美琴。
(御坂さんさすがです。もう私の行動の意図に気づきましたか。
ですが私の前で上条さんとのアーンはさせません!!!!)

ピチャ。

上条の頬に先ほど泡立てたものが飛んできた。
「あ、すみません上条さん。手先が狂ってしまいまして。」
あははと笑いながら指で頬についたのをとってペロっと自分で舐めた。本当にさりげない行動で。
「あ・・・あ〜〜〜・・・」
美琴はやるせない声を出して五和に指をさした。
(私でさえアーンをするのがやっとなのにやはり五和さん。
だてにあのエロい格好した人の下についてる訳ないわね。次に打つ手は・・・・)

「と、と当麻!あのさ、人参とジャガイモの皮剥いてくれない?む、剥くだけでいいからさ。」
「ん?それ美琴の方が上手いじゃないか。俺がやっても型が崩れるぞ。」
「そ、そうだっけ?じゃじゃあ私が手取り足取り教えるからさっさと包丁と人参持ちなさい!!」
「何でどもってんだ?」
上条が包丁を持つと美琴は後ろに周って上条の両手を握り、ほぼ二人羽織状態で共同作業をした。
(な!!御坂さんそれは手伝うというよりも自分の欲望ではありませんか!!
大胆というか逆にその行動はやりづらいし危ないし間違ってる気がします!)
チラっとインデックスに助けを求める五和だが、インデックスはテーブルに両肘をついて
こちらを見てニコニコ笑っている。
「いつわ、後は私のお腹を満足させるだけなんだよ。」
と口パクで五和に話しかけた。
(そんな、私にはもう上条さんを振り向かせるような手が思いつきません。
どうすればいいのでしょう?)
ジェスチャー混じりで伝える五和。
(いつわの実力を見せてもらうからね。)
(どうしよう・・たった今思いついた案は確実に御坂さんを怒らせてしまいます。
しかし上条さんを振り向かせるため!友人、恋のライバルの怒りなど考えている場合など
ありません!行動あるのみ!)
パニックから覚醒に変わった五和の最後の攻撃が上条と美琴に牙をむいた。

299■■■■:2010/04/18(日) 23:46:33 ID:MwVsAEj2
上条は後ろから美琴に両手を握られて動けない。でもこのシチュエーションは
結構嫌いではなく楽しんでいた。
「美琴、お前が手握ってるからやりづらいんだけど。手滑らせて怪我でもしたらたまんねえよ。」
「大丈夫よ。不幸体質の当麻が包丁持つだけで不幸になるんだから、私が握ってるほうが
十分安全よ。ね?五和さん。」
勝利の笑みを五和に向けた美琴だったが顔がひきつってしまった。

五和が泣いている。
「最初からわかっていたんですがやはり私は及ばないみたいでしたね〜。
やはり私の実力不足です。隣で見せしめられたらさすがに敵わないです。」
「いや、見せしめた訳じゃなくて・・・その、なんと言うか・・・」
「いいんです。恋人なのですからそのくらいのスキンシップは普通ですよ。」
ここで鈍感王の上条が口を挟んだ。
「何で五和が泣いているのかわかんねえけど二人供仲良しになったんだろ?
俺も用は済んだみたいだし、戻るからさ。料理楽しみにしてるぞ。」
そう言い残し逃げるようにキッチンから去った上条。
「ごめんなさい五和さん。本当にそんなつもりは・・・」
「いいえ、気にしないでください。私は上条さんから断られた時から吹っ切れいるので。」
「でも泣いているじゃない!」
「本当に大丈夫です。さあ、早く作らないとインデックスに噛み付かれますよ。」
美琴は五和を泣かせてしまった事を後悔し、精神的にダメージを負った。
でもこの新しい友人に自分の暗い顔をこれ以上見せないと決意し、
「じゃ、料理早く作りましょ。私に手伝う事があったら遠慮なく言ってね。」
「はい。じゃあこの刻んだタマネギを炒めてもらえます?」
「了解!」
五和はもう泣いてるように見えなかった。それもそのはず、最初から泣いていなかった。
ただタマネギを切っていただけであったのだから。

300■■■■:2010/04/18(日) 23:47:05 ID:MwVsAEj2
「「おまちどおさま!」」
美琴と五和が出来上がった料理を一斉に並べた。
「すげえな。これ一人で二人分以上の量あるんじゃないか?」
「食べ盛り伸び盛りの私達にはこれくらいが妥当じゃない?」
「そうだな。じゃあ早速ご馳走にありつくぜ!」
いただきます!!
みんな声を合わせて手を合わせた。
「むぐむぐ。みこと、いつわ。おかわり!」
「ふふ。アンタがそう言うと思ってたくさん作ってるからね。
残さず食べなさい。」
5人揃って食事を始めた。
「はい、上条さんあ〜んしてください♪」
「あっ!五和さんそれは私だけの特権なのに!」
「うふふ。今日くらいさせてください。女教皇様もあ〜んされます?」
「やめてください!私はそんな事しません!」
「俺はペットショップの動物ですか。何というか・・・不幸か?」

そうやって夜は更けていくのであった。

301■■■■:2010/04/18(日) 23:47:54 ID:MwVsAEj2
以上になります。
何かあればよろしくおねがいします。

302■■■■:2010/04/19(月) 00:24:08 ID:7H9muQqI
>>277
お疲れ様www
>>287
>>292
男には闘わなければならない時があるっ(キリッ

D2さんこね〜かな〜
荒らしは無視して投稿してくれればいいのに…

303■■■■:2010/04/19(月) 00:31:57 ID:dxeTE6dI
七国山の栗鼠とか
入浴剤の人とか
帰ってきて欲しい人は他にいくらでもいるだろ







糞D2はいらんけど。

304■■■■:2010/04/19(月) 00:33:24 ID:/1Ctsxxg
書き手様GJ!
>>295
汗のにおいの表現で、ユミシロさんの「二人走る」を思い出しました。
>>301
なんという上条勢力!うらやましすぎます…

305■■■■:2010/04/19(月) 00:35:45 ID:Hbw5jpUM
荒しだろうとなかろうとみんなが根本的に願ってる事は上条さんと美琴の笑顔だろ?このお話はオワチッ!

306■■■■:2010/04/19(月) 00:38:52 ID:Hbw5jpUM
サゲ忘れすまん

307■■■■:2010/04/19(月) 00:51:55 ID:QUBOdf9c
D2さ〜ん応援してる人いますからねぇ〜!!

308■■■■:2010/04/19(月) 01:19:32 ID:5XC0F2o6
前スレ840より

 || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
 || ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
 || ○重複スレには誘導リンクを貼って放置。ウザイと思ったらそのまま放置。
 || ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
 ||  ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
 || ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
 ||  与えないで下さい。                      Λ_Λ
 || ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて   \ (゚ー゚*) キホン。
 ||  ゴミが溜まったら削除が一番です。       ⊂⊂ |
 ||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_      | ̄ ̄ ̄ ̄|
      (  ∧ ∧__ (   ∧ ∧__(   ∧ ∧     ̄ ̄ ̄
    〜(_(  ∧ ∧_ (  ∧ ∧_ (  ∧ ∧  は〜い、先生。
      〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)
        〜(___ノ  〜(___ノ   〜(___ノ


最近スレ伸びててもどうせSS投下されてないんだろうなーと思ってしまう。
いとかなし

309■■■■:2010/04/19(月) 04:35:49 ID:vkI5UcvA
なんつーか2chと違う板なのは分かるけど禁書スレの派生のはずなのにやけに煽られ耐性ないよね

310■■■■:2010/04/19(月) 05:57:58 ID:Tnj9LSFc
純情(笑)だからな
こういうよくも悪くも共感できる仲間と一緒に馴れ合うスレは煽りに弱い

311■■■■:2010/04/19(月) 06:18:06 ID:ugjQJR7M
自分が煽られてるんじゃなくて、友人を馬鹿にされるのと同じような感覚がするんだよな
良く言えば、書き手と読み手の雰囲気がいい
悪く言えばただの馴れ合い

そういえば入浴剤の人いつの間にかいなくなってたな。結局入浴剤使ってないまま?

312■■■■:2010/04/19(月) 07:37:03 ID:vjOL7C82
>>309
個人攻撃はまた別物 仕方ない
本人も出て来ないから収束しようがない
まぁいい加減無視でいいと思うけど

313■■■■:2010/04/19(月) 07:56:49 ID:Hbw5jpUM
書き手の一人として、言わせていただく。
確かに俺もD2さんの作品にはたまに嫉妬する。自分が投下した後に他の人の作品の話をされると、なんだかとても悲しくなる。
極め付けに眉毛さんが書いた絵で上下関係をつけられたみたいでその日は凄く傷ついた。
でもd2さんは今までで一番作品を出してきた人だし、投下した回数も他の人の倍はある。それはうまさとかどうこうの前にこのスレに一番尽くしてる(という言い方は変だし誤解を招くが)証拠じゃないか。
そもそもd2さんはあんまりしゃべらないし、それを気取っていると思うのはちょっと違うと思う。
あと最近悟ったんだが、人の作品を劣等対象にする時点でそいつは負けている。俺自身もそうだったと思う。
本当に勝ち負けが存在するなら、それは人の評価とかでじゃなくてどれだけ気持ちよく作品をかけたかにあると思う。

つまり言いたいことはだな、

さぁ、いちゃいちゃしようぜ!ってことだ。以上

314■■■■:2010/04/19(月) 09:42:50 ID:8uZny9bk
作品が二つ以上ある時点で優劣が決まるのは当たり前だろ
ss自体、自己満足乙的な存在だが、文章力の向上、優劣は別だと考えるべきだと思う
嫉妬や中傷のコメントがスレを殺伐とさせるから、それを飲み込んで、相手の反応を見て自分の評価を知るべきだ
つまらない作品を評価するのって、ぶっちゃげ面倒くさいし、禁書ssじゃまずコメントすら書かれない
このスレではどんな作品でも温かい目で読んでくれる人が多いからここまで来たっていうのもあるかもしれないが…
俺もssの職人で他のスレで散々叩かれたが、指摘された部分や足りない部分を修正していったら、批判どころか評価されるようになってきたし


嫉妬コメっていうのは「自分が上手い」という証拠だからD2さんは気にしないほうがいいよ

315■■■■:2010/04/19(月) 10:04:41 ID:fcnFublQ
ここのスレ住人はみんないい人だからね。ある意味甘えた希望なんだけど
「ここをこうした方が」とか「ここダメ」とかは言って欲しい。自分では気づきにくいから。
自分で気づくくらいなら最初から書かないし。とはいえスルーされるのは一番辛いけど。
ただそういう批評的なのって書き方難しいよね。
んでもって禁書SSスレ覗いてきたけどスルーされてる作品は本当にスルーされてるんだ。
ここの住人は本当に優しいんだ…。

316■■■■:2010/04/19(月) 10:12:58 ID:AR7RN.W2
この優しい空気の中で小ネタ投下したいが今から出勤とは無念・・・
誰かが誰かを無意味に批判するというのなら
俺がその幻想をぶち殺す!
帰ってきてから...

317■■■■:2010/04/19(月) 12:18:28 ID:dxeTE6dI
>>307
>>313
>>314
ID変えてまで自演乙www
大体お前の糞作品なんてちっともおもしろくねーじゃん。

318■■■■:2010/04/19(月) 12:20:10 ID:Z/7twmpk
スルー検定開始↓

319■■■■:2010/04/19(月) 13:35:00 ID:R/CPBJdc
ココは上条さんと美琴さんがいちゃいちゃするスレです、的な流れを変える小ネタ
同じようなのがあったらゴメンナサイ

美琴「あのね、コレは友達の話なんだけどさ、相談に乗ってくれないかな」
上条「上条さんは人生経験短いから悩み解決できるか分かんないのですが」
美琴「聞いてくれりゃいいのよ!てかいいから聞きなさい!」
上条「お前それ人にモノ頼む態度じゃねーだろーが」
美琴「ウルサイ!話進まないから黙ってなさい!」
上条「理不尽だ…」
美琴「で、相談て言うのはね、友達が気になってる人がいてね、その、気を引きたいから何かプレゼントしようって事になって」
上条「ふんふん?」
美琴「でもその人が欲しいものなんて分からなくて」
上条「イヤ、俺に聞かれてもわかんねーよそんなん」
美琴「あのね、だから、い、一般的に男の人って何を貰ったら喜ぶのか知りたくて。あ、あ、アンタが欲しい物を…」
上条「上条さんの欲しい物ですか?」
上条(うーん、欲しいって言ったら現金だけど…コイツに言ったら絶対電撃飛んでくるよなー。ってコイツもっとおとなしくなってくれりゃいいのになー)
美琴「あ、あくまでも参考よ!?べ、別に深い意味なんてないんだからねっ!?」
上条「うーん、じゃぁ、おしとやかな御坂さん」
美琴「へ?わ、私?」
上条「うん、上条さんはおしとやかな御坂さんが良いです」
美琴「ふ」
上条「ふ?」
美琴「ふにゃ〜(バリバリ」
上条「ふぎゃーっ」

どっとはらい

320■■■■:2010/04/19(月) 13:42:55 ID:RewvtPvk
>>301
GJです!仲の良い美琴と五和って良いですねw

321■■■■:2010/04/19(月) 14:36:34 ID:RewvtPvk
>>319
欲しいのは現金www
たしかに上条さん宅は小型ブラックホールがありますからねぇ

322■■■■:2010/04/19(月) 14:55:06 ID:Z/7twmpk
>>319
GJです!
上条さん、ピンポイントでそれにしますかw

323■■■■:2010/04/19(月) 16:08:10 ID:Hbw5jpUM
NGユーザー機能とかできないだろうか・・・荒らしてるやつ、見るのも嫌になってきた・・・もしくはコメ削除とかできない?

324アミノ酸:2010/04/19(月) 16:18:23 ID:D9cYCnm6
皆様、こんばんはです(*'-')ノ

小ネタが…降りてきましたので投下します。

325■■■■:2010/04/19(月) 16:19:02 ID:Z/7twmpk
>>323
NGユーザーはできないんじゃないのかな?
見つけたら、NGIDにするか、荒らしがよく使う言葉をNGワードにするしかないと思う
ただ私も専ブラに詳しくないから、他の人フォロー頼む

326アミノ酸:2010/04/19(月) 16:22:15 ID:D9cYCnm6
小ネタ とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とツインテール


「はあぁぁぁぁ…」
 常盤台中学のエースは、それはもうお嬢様らしくない盛大なため息をついた。
「美琴、お前大丈夫か?随分と疲れてそうなんだが…」
 とある日の放課後、とある二人の幼馴染は、とある公園の自販機の前にいた。
「まぁね、いろいろと…いろいろとね(主に黒子のことで)私が常盤台で何て呼ばれているか知ってるでしょ?」
「あー…前に言ってたな、たしか…」
 
「おっねっえっさっまーーーーーっ!」

「ふぇ、くっ黒子!?いっいきなり抱きつくなー!」
 何の前触れもなく空間に現れたツインテールの少女は、誰よりもお姉さまを愛してやまない、白井黒子であった。
ちゃっかり美琴に抱き付き、けん制するかのようこちらを一瞥、その視線は殺気めいたものを感じたが気のせいだと思うことにしておく。
「あら?あらあらあら?そちらの殿方は……上条様ではありませんか、ご無沙汰しておりますの」
 にこっと優雅に挨拶をするところは流石はお嬢様学校というところか。
「…幼馴染というステータスだけで、いつまでもお姉さまの隣にいられると思っていたら大間違いですわよ」
 不穏な空気が流れる、よく見ると手には金属針。
「おい、思考がだだ漏れなんだが…」
 命の危険を感じ、じりじりとすり足で間合いをとる。対する白井はテレポートで一気に詰め寄ると。ビシっと指差し
「上条当麻…勝負ですの!」
 お姉さまはそこで立ち合っていただければ結構ですわと白井は付け加えた。
「はぁ?!ちょっ黒子何言ってんのよ!」
「お姉さま!私が勝ったら、私の…黒子の愛を受け取ってくださいまし!」
「なにっ、一人でっ、ヒートアップしているのよ!」
  どうしよう…この後輩(変態)と美琴は幼馴染に助けを求めると、いつになく真剣な表情に思わずドキっとしてしまう。
「えっ…ちょ、当麻も何真剣な顔してんのよ!」
 (なっ、ななななんでそんな顔すんのよ!えっでもこれって…これって、当麻はもしかしてアタシのことっ…!)ぽんっと音を立て思考停止。
「私の愛とどちらが上か…今こそ決着の時ですのよ!」
「ねぇ…や、やめてよ二人とも。あのさ、あた…あたしはとっ当麻のことが…すっ、す」
「好きな「………わかった相手になってやるよ」」
 美琴の精一杯の告白は上条当麻の一言にかき消された。
「…………バチ」

『アタシを置いて勝手に話を進めるなーーーーーーーーー!!』

「ぎゃあぁあ不幸だーーー」
「ああっイイ、お姉さまの愛〜!」

オワレ

327■■■■:2010/04/19(月) 16:49:24 ID:J3CZr/qQ
某所でSS書いてる身としては参考になる場所に今更行き着いた…。

328■■■■:2010/04/19(月) 17:50:17 ID:Z/7twmpk
>>326
GJです!
上条さんが真剣な顔ということは、美琴を取られると思っているのかなw

329■■■■:2010/04/19(月) 18:21:39 ID:n59GokXg
>>324
上条さんw タイミング悪! これも右手の力か・・・


そういえば、大分前に上条さんが常盤台の体育教師?でしたっけ?そんな感じのがあった気がするんですが、それってどうなったんでせうかね?

330■■■■:2010/04/19(月) 18:24:34 ID:7H9muQqI
>>326
GJ〜!!

荒らしで結構スレ埋まっちゃったからこれをかき消すためSS書き手に大いに期待してる

ちなみに長編希望

331キラ:2010/04/19(月) 19:06:21 ID:7StNimVI
どうもです。
改行について色々と勉強させていただきました。
そのついでに、小ネタを一つ。
多分、前よりは改行がよくなったはず……なってなかったら、私の必要価値はなくな(ry

10分に2レス程度

332キラ:2010/04/19(月) 19:10:24 ID:7StNimVI
 すっかり定着してしまった入院生活は、上条からしてみれば珍しいことではない。
 むしろ二週間、入院することがないほうが珍しい。それほどまでに上条は入院にご縁があった。
 そして今回も、ほぼ自分用になってしまったベットので上で寝転んでいた。
「はぁ〜また課題が増える。不幸だ」
 退院して学校に行くいつもの日常に戻ってしまえば、待っているのは補習と課題の地獄。それと不幸に見舞われる日々であった。
 それを思うと、重たいため息しかでないのが歯がゆかったが、こればかりは自業自得だ。
 もしあの時、怪我をしないように気をつけていれば入院をせずに包帯を巻く程度ですんだかも、とふと思ったが今更の話だった。それに、怪我をしないように気をつけてもそれは難しいことぐらい、何度も経験して知っている。なので、気をつけるだけ無駄だなと上条は怪我をせずに帰ってくることに諦めをつけた。
「俺も右腕以外の能力があればな……」
 万能ではない右手を見て、上条はまたため息をつく。そして能力のことは仕方ないかと、改めて自分が無能力者であることを実感した。
 そう思いながら、寝ようと思ったときであった。不意にとんとんと控えめにドアを叩くを音が聞こえた。どうぞーと面倒そうな声で返事をすると、おじゃましまーすとその相手はゆっくりとドアを開いて入ってきた。
「げっ! ビリビリ中学生」
「相変わらず結構な挨拶ね。でも入院中の身だし今回だけは電撃は勘弁してあげるわ」
「上条さんからしてみれば、今回だけと言わずこれからもと願いたいところですがね」
「無理ね。アンタが私に負けない限りは……あ、でも負けても多分、無理でしょうね」
「はぁ〜ビリビリ中学生は成長してもビリビリすると、仰りたいのでせうか?」
「う、うっさいわね! ビリビリするのはアンタが全部悪いんでしょ! そ、そうよ……アンタが全部………アンタが」
 美琴はドアの前で真っ赤になり始めた。だが赤くなった顔が良く見えなかった上条はどうしたんだ? と首を傾げた。
「それで? 常盤台のお嬢さまが俺に何のようだ?」
「え? えっと………そう! 妹に会いに来たついでよ! ちょうど暇だったから入院しているアンタを笑いに来てやったのよ!」
「………」
「冗談よ、冗談。だからそう嫌な顔しないで」
 嫌な顔をしている上条をなだめながら、美琴は見舞い客用のパイプ椅子に座った。
 本当の理由は今言ったことではないのだが、素直ではない美琴は本音を言えるわけもない。しかし、上条は美琴が言った理由を疑う様子は一切見せずに納得してしまった。
「それで、今度はどんな女を助けたの?」
「女前提ですか、御坂さん」
「き、決まってるじゃない! アンタが男を助けるなって話は今まで聞いたことないし、アンタの周りには女しかいないんだから、当然じゃない」
「まるで上条さんが助けるのは女だけって言っているように聞こえなくもないけど…ま、今回助けたのは確かに女だよな」
「アンタってやつはぁぁぁーーー!!!」
 と、美琴は髪の毛を立たせて体の周りに青い光を発し始めた。それはまさに電撃と呼べる光であった。
 それを見た瞬間、上条は慌ててストップ! と声を上げて、美琴の腕を取った。その瞬間、青い光は何事もなかったかのように消え去った。
「お前な………病人相手にビリビリは酷いんじゃないんですか?」
「アンタが女を助けるのが悪いのよ! こう、どうしていつもいつも女なわけなのよ!!」
「はぁー? 助けたのが女だったのは偶然じゃねえかよ。それに助けたのは友達だったし、助けるのは当然だろ」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ、馬鹿! ああ〜もう! 少しは他のことも考えられないの!」
「だから、さっきから何言ってるんだよ。それに他のことって、何を考えればいいんだよ何を」
「え…? あ、そ…それは………それぐらい考えなさいよ、大馬鹿!」
 もし上条が美琴の本心を知っていれば、言葉の裏に隠された本当の意味がわかったかもしれない。言葉の裏にある、自分を見て欲しいと思う本音を。
 しかし美琴の本心を知らない上条は、美琴の言っていることが矛盾ばかりで、本当は何を言いたいのかがまったくわからなかった。
 なので、意味わかんねえよと美琴の腕を握った手を離した上条は、呆れてため息をついた。

333キラ:2010/04/19(月) 19:10:56 ID:7StNimVI
「女を助けるなとか、他の事を考えろとか……。結局、お前は何を言いたいわけ?」
「え……あ、いや……その、だから…」
「それとも、御坂さんは上条さんが女を助けることに不満でもあるんでせうか?」
「!!! な、何言ってるのよ! そそそそんなわけ、なななないじゃない…」
 一瞬、上条の質問に美琴は驚いて飛び上がりそうになった。だが、動揺を見せながら首を横に振って違うと言うと、ですよねーと上条は言い捨てた。
 御坂には嫌われてるんだし、ありえないだろうと思っている上条にとっては、質問の返答は予想通りのものであった。なので、一切の期待もしなかった。しかし少しだけ残念だと思った。
「ま、御坂が上条さんのことを心配するなんてありそうじゃないし、当然か」
「し、心配ぐらいしてるわよ!」
「へ………?」
 不意に美琴は声を上げて、上条の言葉に反論をした。
 いきなりのことであったので、言われた上条は自分の耳を疑った。しかし美琴から、してるわよともう一度念を押すように言われ、美琴が上条を心配していると言ったことを受け入れた。
「………それは、本当でせうか?」
 確認として訊いてみると、美琴はこくんと小さくゆっくりと頷いた。
「えっと………その、だな……み、御坂さん」
「……………」
「へ、返事ぐらい、してくれてもいいんじゃないか?」
「あ、うん……ごめん」
「……………」
 話づらいと、いつもと違う雰囲気に上条はどうすればいいのか戸惑っていた。
 もし確認の場で冗談よと言ってくれれば雰囲気を元に戻せただろうが、頷いてしまった時点でその可能性は潰れた。それに、今更冗談と言いそうな雰囲気でもなかった。
「えっと……御坂」
 心配していると面と向かって言われるのは、初めてだったのでなんと言えばいいか迷った。さらに上条のことを気にしてなさそうな美琴が、心配していたことにも驚きがあった。
 しかし、心配してくれていたのは素直に嬉しかった。なので上条は単純に
「心配してくれて、ありがとな。初めて言われたから、結構、嬉しい」
 恥ずかしさを堪えながら、嬉しいことを正直に告白した。
 それに美琴は小さく頷いて答えると、不意に席を立ち上がって駆け足で病室を出て行ってしまった。
「……………………あれ?」
 あとに残されてしまった上条は、何とも言えない虚しさを感じた。上条は美琴が出て行ったドアを見ながら大げさにため息をつくと、頭をボリボリと掻いた。
「なんだろう、告白に失敗したかのような虚しさみたいなものは。……なんだか虚しいんですけど」
 その問いのようなことに答えてくれる人は、ここには誰もいなかった。
 一人だけの病室で上条はもう一度ため息をついた時、近くの机においてあった携帯が鳴った。すぐさま机の上の携帯を取って開くと、そこにあったのは『御坂美琴』と言う名前であった。そして、そのままメールの内容を開いて声に出して読み上げた。
「『馬鹿当麻』……………」
 メールの内容ははその一言だけ。
 読み終わった上条はなんだこれ? と意味のわからない内容に首をかしげた。しかしメールを送ってきた美琴からはそれ以降、メールが来ることはなかった。

334キラ:2010/04/19(月) 19:12:56 ID:7StNimVI
以上です。
ちなみにタイトルは、最後の言葉を取って『馬鹿当麻』(カッコ含みます)

では、今回も批評やら改行がダメやら、何かあればお願いします。

335■■■■:2010/04/19(月) 19:16:41 ID:9qUChWwE
>>334
リアルタイムktkr!

だめ出しになっちゃうのかな。
この幕切れだと作品が終わりなのか続くのか微妙。そこが批評?
続くのか?

お話は面白かったです。GJ!

336:2010/04/19(月) 19:37:08 ID:9oKJL7Eo
>>キラさん
GJ!
私は以前からあまり気にしてませんでしたが、今回は特に読みやすかった気がします。
あとこういう素直じゃない美琴はとても可愛い…
最後に何気に当麻と名指しでしてるとこがまたよかったです。


そして長編が呼ばれた気がしたので参上w
ようやく落ち着いてきたので投下します!
注意点は少し展開が早いかもです。
そして少しシリアス展開。
間は短いですけどご了承下さいませ。
では【side by side】を5分後に投下します。
消費レスは5の予定。

337【side by side】―分岐点―(7):2010/04/19(月) 19:43:10 ID:9oKJL7Eo
時は遡って同日7時過ぎ、上条宅

「お前…土御門?なんでまたこんな朝早くに?」
「よっカミやん。朝も早いが、元気かにゃー?」

上条が休日にしては珍しく朝早くに目を覚まし、朝食も食べられず、何をするかで暇を持て余していた時に上条の家を来訪したのは、彼と同じクラスメートでデルタフォースの一角、土御門元春だった。

「……お前がこんなわけのわからねータイミングで俺に会いにときは大体、妙な厄介事をもってくるよな」

上条の言った通り、土御門が上条の元によくわからないタイミングで来る時は大体厄介事絡みだ。
それは彼、土御門が魔術、科学の今の世界を分かつ両陣営から息のかかっている多重スパイという背景があるからなのであるが…
とにかく土御門がもってくる厄介事ではろくな事が起きたためしがない
いきなり眠らされて強制イギリス行き然り、飛行中の超音速旅客機からの落下然り。

「いやー、相変わらずカミやんは察しがよくて助かるにゃー。全くもってその通りぜよ」
「はぁ……で、今回は一体どういう厄介事なんだ?できたら短期間で終わるものがいいんだが…」

今の上条には今までと違って美琴がいる。
だから長期間にわたるものや、外国へ渡ってくれなどというものはできる限り御免被りたかった。

「いや、残念ながら今回のはそれは無理だ。……というか、わからないと言った方がいいかもしれない」

突然土御門の口調や雰囲気がいつものふざけたものではなく、真剣なそれになる。
その変化を肌で感じ、彼の言葉を聞いた上条は一瞬、背筋が凍る。

「何…?」
「おっと、だからと言って嫌だとは言わせないぜ?……まぁ、カミやんには断れないだろうがな」
「……一体何が起きたってんだよ、もったいぶってねぇで教えろよ」
「じゃあ、今回起きた事件の内容を単刀直入に言おうか。以前ここに居候していたシスター、インデックスがさらわれた」
「何だと!?」

インデックス、以前上条の家に居候して、その歳以上の旺盛すぎる食欲で上条家の家計をこの上なく圧迫した張本人てある少女。
そして彼女がもつ完全記憶能力で、十万三千冊もの魔術世界においては非常に危険な魔導書をイギリス清教に記憶させられた悲痛な過去をもつ、銀髪シスターである。
彼女は戦争を終えた後は、フィアンマによって持ち去られた霊装で多大な負荷をかけられたため、静養のために学園都市には戻らずイギリスに残っていた

338【side by side】―分岐点―(8):2010/04/19(月) 19:43:35 ID:9oKJL7Eo
無論、それは新たな首輪などをかけられないように、彼女の身の回りの世話役をステイルと神裂がするという上条が出した条件の下での了承だった。
上条とステイルは決して仲はよくない。
だが、インデックスのためという状況下ではステイルはとても上条が信頼できる人間ではある。

「あいつは…ステイルは何してたんだよ!!」
「あいつはちゃんと任務を全うしてたさ。……だが一旦外出許可のでたインデックスと教会の外をでたところを、インデックスを狙う複数の手練れの魔術師に狙われたらしい。あいつは今意識不明の状態だ」

ステイルの得意とするルーンの魔術は周りに貼り付けたルーンの札の枚数に比例する。
なので準備万端の状態で戦いをする場合は遺憾なくその実力を発揮できるが、逆に奇襲などをされた場合、体術の得意でない彼は案外脆い。
さらにもう一人の付き人である、絶大な戦闘力をもつ聖人の神裂はその時は別の任務のため外国へ飛んでいたらしい。
つまり敵はそれを踏まえた上で、インデックスに付いているのがステイルだけの時を狙ったのだろう。

「……」
「そこでだカミやん。お前はイギリスへ渡って、事態の収拾にあたってもらいというのが上からの依頼なんだが…どうだ?」
「……お前は始めに期間はわからないと言ったな。それは事態の収拾がつき次第ってことか?」
「あぁ、場合によっては数日で帰れるかもしれないし、数ヶ月もかかるかもしれない。因みに今敵の情報はほとんどと言っていいほどないらしい。……だから、短期間ってのは恐らく無理だ。長期間になるのを覚悟しろよ」

敵は奇襲とは言えステイルを打ち負かす程の手練れ。
しかも恐らく、インデックスの守りが薄い時を狙って襲撃をかけるあたり、用意周到に準備をしているだろう。
滅多なことでボロは出さないと思った方がいい。

「もっと言うと今の必要悪の教会には、未だに戦争の事後処理に追われてる奴も少なくない。今回の事件も大方フィアンマに心酔してるやつらの仕業だろうしな。かく言う俺もその事後処理に追われている内の一人なわけだ。だからここでカミやんの出番ってわけだ」
「…………わかったよ、行くよ、俺。どうせ俺には拒否権も無いんだろうけどよ」

本当に拒否権などもなかったたろうが、そんなものはなくても上条は行っただろう。彼にとってはインデックスも彼女の美琴と並ぶ程大切な存在だ。
さらに今恐らくインデックスは助けを求めている。
上条にはこれだけでも決意の決め手になり得る。

339【side by side】―分岐点―(9):2010/04/19(月) 19:43:58 ID:9oKJL7Eo
「わかった、その件に関しての詳細な書類などはお前に渡しておくから自分で目を通しとけよ?あと、こっちで用意した飛行機の出発は明日の昼頃だ。……しばらく離れるわけだから部屋の掃除でもしておくといいにゃー」

それだけ言うと土御門は何事もなかったかのように上条に背を向け、家の玄関から立ち去った。

「またイギリス、か。……アイツ怒るだろうな」

こうなると気になることと言えばやはり美琴のことである。
以前、上条は美琴に対してある約束事をして、さらにバレンタインの日でも心の中である誓いをした。
今回のことはそれが一度だけでなく二度も破られることになる。
これはもちろん喜ばしいものではない。
むしろ簡単に決めたにも思われるが、あの選択は苦渋の選択だったと言える。
今上条にとっての美琴との約束はほぼ"絶対"に近いのだから。

「今日は美琴は約束があるんだったよな……じゃあやることないし、土御門の言うとおり部屋の掃除でもするかな」

今日約束があるという美琴に上条がこんな朝早くにこのことを教えたら、自惚れじゃなく、まず間違いなく自分のもとに来ると上条には断言できた。
だから今は連絡するべきではない。
美琴には自分だけじゃなく彼女の友達ももっと大切にしてあげてほしいと上条は願っていたからだ。

「…って土御門の言うとおりだと今日で、しばらくは学園都市ともおさらばじゃねぇか。戦争の時の二の舞にならないようにちっとばっかしキレイにしておくか」

先の戦争の時には、いきなり土御門にイギリスにほぼ強制で連行され、遠出のための掃除や準備なしに二週間以上も部屋を空けたため、帰ってきた時の部屋の状態が凄まじかった。
ものは辺りに散らかり、インデックスの食べ散らかした食べ物のカス、被りに被った埃。
どれも処理するのが大変であった。
上条はその以前の部屋の惨状を頭に思い浮かべて、早速部屋の掃除へと取りかかった。

340【side by side】―分岐点―(10):2010/04/19(月) 19:44:27 ID:9oKJL7Eo
同日17時頃、上条宅前

美琴はファミレスで後輩達と別れ、ようやく上条の家に着いた。
ファミレスから上条の家までは遠くはないが、近くもない距離であり、美琴は走ってきたがすぐには着けず、多少の時間はかかってしまった。

「やっと着いた…えと、ここでいいのよね…?」

彼女が上条の部屋に行ったのはホワイトデーの一度きり。
若干の不安を覚えつつも美琴は部屋のインターホンを押す。
ピンポーン、というインターホンの無機質な音がなり、少しの間をおいて部屋の中からバタバタと人の動く音が聞こえた。

「ガチャ……あれ?美琴?なんか早くないか?」
「当麻が急ぎの用だって言うから、ちょっと言って抜け出してきたのよ!」
「はぁ…まぁいいけどよ。とりあえず中に入れよ」

上条はため息混じりに応対して、美琴を部屋の中へ招き入れる。
そのおざなりとも言える対応には美琴もムッとくるが、ここは場所が場所なだけに電撃はなんとかこらえ、部屋へと足を運ぶ。

「お、お邪魔します……って、あれ?なんか前よりも妙に部屋片づいてない?」
「ん?あ、あぁまぁそうだな…」

上条の部屋は大掃除でもしたのかと思うくらい片づいていた。
前には乱雑に置かれていた雑誌やマンガ類は本棚にきちんと整理整頓されて置かれ、埃の被っていた家具類には今は全く被っていない。
あとは生活に必要最低限の家具の家具以外はみな片付けられ、以前彼女が来た時に比べてなんとも殺風景な部屋になっており、ただの掃除にしては片付けられ過ぎている。
これだけ物を片付ける理由。
美琴には一つしか考えられなかった。
そして極めつけは部屋の隅に置かれている旅行用の大型のカバン。

「アンタまさか…またどっか行くとか言うんじゃないでしょうね?」
「………」

上条は何も答えない。
ただ美琴からの視線から目を逸らし、座れと言わんばかりにガラステーブルの横に座布団を置き、その対面に上条が座る。

「ちょっと……そうなの!?なんとか言いなさいよ!!」
「……とりあえず座ってくれ」
「はぁ!?アンタ、こんなときでもはぐらかすわけ!?私はアンタの彼女なのよ!?ちゃんと話しなさいよ!!」
「ちゃんと話すから!!…とりあえず今は座ってくれ」

上条の怒鳴り声に感情が高ぶっていた美琴も気圧され、上条の言うことをきいて彼の対面の位置に座る。
しかし、それでも彼への厳しい視線は止めない。
そして上条を睨みつけつつ、彼の言葉を待つ。

「……お前の想像通り、俺は明日の昼頃に学園都市を発ち、イギリスへいく。しかも今回はすぐには帰ってこれそうにないらしい」
「ッ!!」
「何でか、とかお前なら思うよな。理由は今イギリスにいるインデックスがさらわれたらしい」

美琴とインデックスは二学期が始まってすぐの日以外にも何度か顔を合わせている。
そして先の戦争の時、上条を助けに美琴がロシアに渡り、その戦争に何で彼が絡んでいるのかを知る過程で、上条にとって彼女が大切な存在であることも知った。
さらにその時魔術の世界の存在も知り、それとインデックスの関係性についてまではまだ美琴は詳しくは知らないものの、それでも上条が今回イギリスへ行く大義名分のようなものは何となく理解できた。
しかし言ってしまえば外国のことは所詮外国のこと。
理解はしても納得はできなかった。

341【side by side】―分岐点―(11):2010/04/19(月) 19:45:01 ID:9oKJL7Eo
「それでも…それでも、それは当麻が行かないとダメなことなの?確かにあの子が当麻にとって大切な子ってのは知ってる。でも向こうの人達だけじゃ解決できない問題なの?」
「……俺の右手、幻想殺しはあらゆる異能の力を打ち消す。それはあっちの世界でも例外じゃない。だからこの俺の力が必要になるときがあるかもしれない」
「でもそれはあくまで可能性の話でしょ?当麻が絶対行かなきゃならないなんてことにはならないじゃない!」
「……確かにそうだ。でも俺はインデックスが誰かに狙われ、誰かの助けを求めてるなら、そんな話は抜きでも行きたい」
「……それで当麻が傷つくかもしれないのに?」
「あぁそれでもだ」

十月のある日の夜の上条の姿を思い出した。
体の所々に電極や包帯をつけ、ボロボロになりながらも一つの信念に基づいて"仲間"を助けに戦いに向かった彼の姿を。
上条は無茶や無謀のように思える問題にも諦めず、立ち向かう。
誰かが助けを求めているなら、例えそれがどこの誰とも知れないような人でも喜んで命懸けで助けにいく。
自分の時もそうだった。
後から話を聞けば、一方通行と戦ったあの日の前日では"今"の彼と自分とは初対面だったらしい。
そして出会って一日の"他人"を救うために本当に命懸けで学園都市最強と戦った。
確かに上条は今は自分を大切に思ってくれているだろう。
実際大切にされている、愛されているという自覚はある。
そんな今でも、やはり彼の行動理念は変わらない。
大切であるはずの自分を置いていってでも、助けを求めている人のもとへ行く。
それが上条当麻という人格を支える源。
心底納得したわけではないが、そんな彼を止められるわけがなかった。
もし自分に同じように、例えば大切な後輩などが狙われれば、彼に止められようとも助けにいくだろうから。
彼の助けに行きたいという気持ちが多少なりともわからなくもなかったから。

「そう…私が何を言っても行くのね…」
「………ごめん」
「別に謝罪の言葉なんていらない。でも一つだけ、これだけは約束して」
「なんだ?」

彼には何を言っても止められない。
自分がついていくと言っても、彼の性格から考えてほぼ確実に拒否されるだろう。
自分が上条の立場でも同じことを言うだろうから。
だから、だからこそのたった一つの約束だけはさせる。

「当麻は絶対生きて私のとこに帰ってくること。いくら誰かのためとは言え簡単に命を投げるようなまねはしない。わかった?」

怪我もせずに無事に帰ってこいと言うのも彼には難しい相談だろう。
だからせめて、生きて帰ってくると約束させる。
待つ女なんて柄でもないし、その待つ時間はとても心苦しいと美琴は思う
でも、生きていれば、また会える。
生きてさえいれば怒ることも、話すことも、笑うこともできる。
それは美琴が出せる最低条件。

「あぁ、約束する…」
「……あと、浮気は厳禁だからね」
「しねぇよ!大体、俺はいつも事故だって言ってるだろ!」
「アンタのは事故とは思えない頻度なのよ!……ったく、私みたいな可愛い彼女がいるんだからしっかりしてよね」
「自分で可愛いって言うなよ…」
「あら?当麻が前に可愛いって言ってくれたからじゃない?」
「ぐっ…いや、それは俺が言うからいいのであってだな…」
「じゃあ私は可愛くないのね?そっか私は可愛くないのかぁ…軽く傷つくなぁ…」
「……あぁもう!!お前は可愛いよ!俺が悪かったよ!」

上条のヤケクソ気味な対応を見て美琴は笑う。
さらに楽しそうに笑う美琴に便乗して上条もまた笑う。
そこに先ほどまでの重苦しい雰囲気は既になく、いつもの彼らのそれがあった。
しばらく会えなくなる二人だから。
今ある時を楽しむように。
今ある時を惜しむように。

342:2010/04/19(月) 19:45:45 ID:9oKJL7Eo
以上です。
時間があまりない中書いたので出来が少し心配です…
そしてツッコミ所は多いと思いますので、指摘は甘んじて受けます。
……あと、このシリーズの存在を覚えていた人がいてくれたら嬉しいなぁ。

では失礼します。
ありがとうございました。
少しでも皆さんに楽しんでもらえたら幸いです。

343■■■■:2010/04/19(月) 20:28:07 ID:/1Ctsxxg
覚えてますよ…
濃密ないちゃいちゃの後、いきなりの展開ですね!
今後が気になります。

344■■■■:2010/04/19(月) 20:43:09 ID:iDiW8QhE
>>334
GJ!もじもじ美琴かわいかったです。

でここからお願いということでよくわからん批評。
今回ちょっと話の軸が微妙な気がしました。
上条が入院について周りにどんな影響を与えるのか、これからどうするのか、などを考えさせてみるのもありだと思います。
あと、美琴にちょっとした状態や動作をいれて上条スキーを表現しても良かったかもしれません。顔が赤くなったとか俯きながら指をもじもじ動かしていたとか?
最後に
>それ以降、メールが来ることはなかった。
激しく先が気になるんですがぁーーーーー!!!!!

>>342
GJ!いい感じに酸っぱい作品でした。

で甘んじて、だそうなので本日二度目のよくわからん批評。
上条さんがもう少しイギリス行きを悩ませたり苦しませたりしたら、もっと美琴への気持ちを表現できて良かったかもしれません。
あとは、この美琴は未練たらたらなのでしょうが、表現されてる部分だけではさっぱりし過ぎ感がありました。
なので心の声を入れてみるともう少し未練たらたらを表現できるかも?
またまた最後に
続き、待ってます!お願い、お願いします、お願いしましょう、三段(ry


長文失礼しました。

345■■■■:2010/04/19(月) 21:31:35 ID:KdgOe2as
あぁ・・・職人達GJ過ぎる。
日々の疲れから解放されるのぉ・・・

346Silver:2010/04/19(月) 22:16:53 ID:nnOBD/DY
これから、ショートストーリー「YOU」です。
すごく短いですが、楽しんでくれたら幸いです!!

347「YOU」 上条:2010/04/19(月) 22:18:41 ID:nnOBD/DY
胸に抱くアイツへの言葉

いつか伝えたい

零れる微熱、高鳴る鼓動、始まりは覚えていないけど

一度気付いた消せないこの想い、偽ることがもう出来ない

出逢えたのがたとえありふれた偶然だとしてもどうしても特別な意味を感じてる

だから、アイツのそばに居られる幸せをいつも神様に感謝します

迷いのないアイツの横顔

ずっと 眺めていたい

アイツと二人過ごす時間が揺るぎない力をくれる

不意に浮かぶ言葉(思い)をいつかアイツに伝えたい

348「YOU」 美琴:2010/04/19(月) 22:19:50 ID:nnOBD/DY
僅かに触れる 暖かい指

優しい言葉それだけで

まるで、夢の続きを見ているような不思議な気持ちになれる

もしもいつの日かお互いの思い出を失ってもまた何度でも思い出させてあげる

だから、アイツの大切な思い出にどうか私も居ますように

私の知らないアイツの世界をもっと分けて欲しい

アイツが願うことの幸せを、余すことなく叶えたい

信じているアイツのためなら何にでも力になれる

349「YOU」:2010/04/19(月) 22:20:47 ID:nnOBD/DY
それは色めく花のように遠く咲き誇る『ものがたり』

決して消えはしない大切な思い出が風に乗せて

いつも二人で過ごすこの時間が揺るぎない絆を作っていく

折り込められる二人の言葉がどうか深く心に届くように



350Silver:2010/04/19(月) 22:22:43 ID:nnOBD/DY
以上です
さて、絶対にネタがかぶらないと思う(信じてる!!)私の新ジャンルとして、ショートストーリーと言うものを思いついたわけです!!
ショートストーリーってssだよねとかつっこみが来ないことを祈ります
ここで言うショートストーリーは、MADのイメージでお願いします
MADは、既存の音声・ゲーム・画像・動画・アニメーションなどを個人が編集・合成し、再構成したもの?ですが、これは、この2人に似合う歌を見つけて、その歌と2人に似合うssを作るという(回りくどい)ものです。
まぁ、作りやすく、イメージしやすいということもありますが、共感を得られないと言う可能性と、どうしても会話中心か、場面中心みたいに極端になってしまいます。
そんな、前途多難なショートストーリーは、人気次第で、保管すらしない状態になるかもしれません!!
読んでくれた人々に感謝しつつ、(せめて、スレ汚しにはならないようにします!!※冗談はそれくらいにして、多くの感想を希望!!)続くことを祈っています
※参考 アニメ「SHUFFLE!」よりop「YOU」をもとにつくりました

351■■■■:2010/04/19(月) 22:24:28 ID:/HG5EIv6
>>350
SSというより、もう詩だね。GJです。

352■■■■:2010/04/19(月) 22:31:28 ID:9qUChWwE
>>350
GJ!
突っ込んじゃうけど、ショートストーリーはSSだよ。
あとは……まあそのなんだ、これ以上書くとただの批判だから引っ込めとく。

353■■■■:2010/04/19(月) 22:33:35 ID:YwzfadJs
       トミ_,/⌒ヽ /   /     |  `ヽ   i      \
     /|   )ヽ  /    ′   /  |     i ,」_ .ハ: .     ヽ
   (_/Y (  V /   | i i  厶=-|     ノi/-l/` } : :ハ : .   lハ
    / 八   \,' //   | l lxく{ -‐八     ノx=ミ从/ : : : :l: .l i
.   /    \/|/イ:   Nヽx<二ヾ       ん心 Y: ./} : ハノ |
   ′   . :/ /|ん: .  | 〃 ん心      弋::ツ ,ノ∨厶へ: : . |
  i   . : : Z′|_{八: : . |,{{ 弋::ツ         ``   Ⅵ!  ハ: : ;
  |   : : : /└‐ァ|丁xヘ八   ``      ,  :::::::  }/   |: /
  |  : : : :∧: : 〈/| V rう  \  ::::::::::            人   ,|厶 お、おねえさま・・・
  |  : : : ′ヽ: : 个ヘ.ゝ ヽ         ,_ ァ   .イ   /  `ヽ
  |  : : :|   i : : | : : 个ー‐ヘ、         ´   .イ: :l /      i
. 八  : : l   l : : |\: :|\   ト、 .   ____/:人 :l/      _丿
    ヽ : :.l   l : : l  l :| : :}   /  \      ハ<. __l:/       l, -‐┐
    /⌒ヽ <: :ノ / イ: :/  〈     ヽ.  | V∧:::Vヽ/ /     |
.   i   |   ` <,ノ:/ r::´:::ヽ      ` ¬、 ∨ハ::::.  〈      |
.   |   ノ         ` く|::::::::::∧      /U\ V l::::.   〉      ノ

354■■■■:2010/04/19(月) 22:37:41 ID:AR7RN.W2
>>350いいねぇ。こっちが恥ずかしくなるぜ!
帰宅したがネタが浮かびませんでした。すまない。

355■■■■:2010/04/19(月) 22:42:14 ID:RKao.vY2
>>キラさん
と、とても気になる終わり方でした!GJです!
美琴可愛らしかったです。話も面白かったですし読みやすかったです。
先日の後編に期待!超待機してます!

>>蒼さん
鮮明に覚えてますぜぇ…空白の30分はニヤけずにはいられなかったぜぇ…
今回の美琴も最後に浮気しないでとか言うあたり可愛らしいですね。
続きを期待してます!GJでした!

>>Silverさん
美琴ぉ…ピュアだぜ美琴ぉ……
自分は「YOU」という曲を知りませんが何か優しい言葉でした。
SSの中にこれがあってまたまた聞いた上条さんにふにゃーって(ry
ともあれGJでした!

>>353さん
ぐはっ…!?
ば、馬鹿な!お、俺ぁ上琴一筋だったはず…だったはずなのにぃぃぃ!
ちょっとそのへん走ってき(ry

356■■■■:2010/04/19(月) 22:44:53 ID:RKao.vY2
ぎゃー!なんだまたまたって!
たまたまだ!やめて見ないで!!

357:2010/04/19(月) 22:55:32 ID:9oKJL7Eo
>>343,355
いた!
ありがたや、ありがたや…
今後もできたらまっててください!

>>344
批評ありがとうございます。
上条さんについては私もすくなからず思ってたんですが、イギリス行きの苦悩ですか…
次回以降修正します!
美琴については明日投下する予定のとこでいっぱいだすのでご安心(?)をww

感想ありでした!
更新ペースはあれですが生温かい目で見守ってくれると嬉しいです。

358アミノ酸:2010/04/19(月) 23:17:02 ID:D9cYCnm6
皆様、こんばんはです(*'-')ノ

返信させていただきます。

>>328
 白井黒子VS上条当麻っていう風にしたいなぁという発想から生まれたものです。
美琴がかかっているのでそりゃ真剣になりますよ!まぁ本人は蚊帳の外扱いなのですがw

>>329
 上条さんのタイミングの悪さは能力の一つです!w
 

>>330
 長編かぁ…現在書いています!いつ書き終わるかわかりませんが…。
とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>という設定でグラビトン事件を再構成
してみようと…頑張ります!


感想ありがとうございます、これからも宜しくお願いします。
そう言えば、原作禁書5巻をやっと入手しました!('◇')ゞ

359キラ:2010/04/19(月) 23:54:01 ID:7StNimVI
蒼さん
いつも楽しみにさせていただいております。
そして今回もGJです。早く続き…続きを!!
あと感想、サンクスですm(_ _)m

>>335
これで終わりですね。ちょっと続き考えたけど、上手くいかないので…すいません。

>>344
批評サンクスです。ありがたい!
なるほど、それは私も考えつかなかったです。一つ、勉強になりました。
この後は、ご自由に妄想してくださいなw

>>355
ご感想、ありがとうございます。
読みやすいと言っていただけて、安心です。
後編は、改行のことで悩んでいたのでまだまだですね。
でもこれで改行の悩みが一段落ついたので、じっくりと行きますのでお楽しみに。

改行に関しては、これからはこんな感じで行こうと思います。
ご感想、ご批評、ありがとうございました。

PS…気分転換に新しい作品のプロットを書いてたら、上琴のバトルものみたいのが出来てしまった。
しかも長編………これ、どうしようか(・ω・;)

360■■■■:2010/04/20(火) 00:01:14 ID:HROmwetA
>>359
投下しかないだろ?

久々に全裸でまつぜ!!

361■■■■:2010/04/20(火) 00:02:21 ID:HfzSv1Fc
>>359
最終的に二人がいちゃつくのであれば、ぜひ投下願いたい。

362■■■■:2010/04/20(火) 00:23:14 ID:lVzS2/mA
>>359
ぜひとも投稿してください楽しみにしています。

363■■■■:2010/04/20(火) 00:24:57 ID:5.lW6iTI
sageようぜ

364Silver:2010/04/20(火) 00:45:49 ID:DRhh3HFg
感想、ありがとうございます
続けられる事に、感謝しています!!
351さん、352さん
さっそく、言ってきましたね!!
そうなんですけど、私のイメージでは「短いアニメ」を目標でつくったので、ssや小ネタとは分けて考えたいと言う意味で、「ショートストーリー」という「短い物語」にしたわけです!!
355さん
ぜひ聴いてみてください!!ただ、youtubeとかで聴く時に、『「SHUFFLE!」「YOU」』と入れないと違うのがでてくるかもしれません!!ご注意を!!

さて、軽い予告と候補なんですが、
候補は、「真っ赤な誓い」「片翼の鳥」「癒月/you」「鳥の詩」「千の夜をこえて」「compass」等
次は、「片翼の鳥」です
長くなりましたが、末永く、お付き合いしていきたいと思っています
おすすめの歌があったら、ぜひ教えてください!!お待ちしています(アニメが一番イメージしやすいので)

365■■■■:2010/04/20(火) 02:02:51 ID:QKw0dLtg
「恋の抑止力」なんてのもいかがすか?
美琴視点でこの曲聞くとなぜかニヤニヤしてしまう・・・俺だけか?

366■■■■:2010/04/20(火) 02:08:05 ID:qTyAADOA
ん、美琴スレの流れは見た?

757     オススメの上琴ソングってありますか? ふわふわ時間が上琴ソングに聞こえる自分は手...
├761     >>757 上琴、じゃなくて美琴単体かも知れないけど Perfumeの「I still love U」オ...
│└763     >>761>>762 ありがとうちょっと聴いてくる
├762     >>757 前に誰か言ってたけどpurfumeのpuppy loveがよかった 絶望的な運命が〜って...
├767     >>757 とらドラ後期EDの「オレンジ」が個人的にはお気に入り 歌詞がかなり切ない...
├770     >>757 上のほうでも言った気がするけど「君の知らない物語」が美琴→上条さんっぽ...
├796     >>757 memory of snowでSSを作れないか考えている俺が(ry
├797     皆さんが色々教えてくれたおかげで上琴妄想の幅が広がりました。ありがとうございま...
├925     そういえば >>757 恋花火(諫山実生) シンクロ率82%くらい
└927     >>757 とらドラのsilkyheartとか 美琴視点で…

367auau:2010/04/20(火) 03:12:24 ID:pJ3sCcPw
夜遅くにこんばんは。
どうもお久しぶりです。
・・・・・・二週間もいない間にスレの進みがぱないことになってますね
自分は下手書き手ですがこのスレ愛されていると思うと嬉しくて仕方ないです
感想がかきたいんですがどうも、書く余裕がなくて・・・・・・

とりあえず、とある未来の・・・・・・の第三章が出来ました
もの凄いレス量なんですが、30くらい?どうなってんのこれ?
こんな長いの投下してもいいものか・・・・・・とりあえず今から五分後に投下開始します

368とある未来の・・・・・・第三章(1):2010/04/20(火) 03:17:05 ID:pJ3sCcPw
3.惹き合い

「・・・・・・美詠?」

明朝、上条当麻はいつもの通り風呂場を自身の聖地(寝床)で起き
朝食を作ろうと風呂場から出たのはいいが、キッチンには先客がいた。

「おはよ、お父さん」

美詠は色も模様もついていない貧相なエプロンを着て朝食を作っていた。
エプロンをつけた姿に昨晩、夕飯を作ってくれた美琴の姿が重なってしまい
上条は美詠と目が合わせられなかった。

「あ、あぁ、おはよう。
 ・・・・・・朝飯作ってくれたのか・・・・・・ありがとな」

そういうと美詠は少し照れくさそうに頭を掻いた。

「いいって、いいって・・・・・・あぁ、お父さん
アイツと美春起こしてきてくれない?私、皿に盛り付けするからさ」

了解と返して床で布団を敷いて寝る当瑠と
いつもは真っ白暴飲暴食シスターが占拠するベッドに寝ている美春を揺すって起こす。

「ふあぁぁ・・・・・・なんだ、親父か・・・・・・」

「何だとは何だ、御坂の方が良かったのかよ」

「いやいや別に・・・・・・それが許されるのは親父だけさ」

ニヤリ、と笑って返されて、上条はムッとするが
それを無視して、未だ寝ている眠り姫をもう一度起こしにかかる。

「美春、朝だぞ起きろ」

「・・・・・・みゅ・・・・・・パパ?」

目を擦ってのろのろと美春も起き上がる。
ごはんだぞ、と一言言うと、急激に目を見開きベッドから跳ね起きた。

「あさごはん!!はやくはやく!」

「おいおい、まずは顔を洗って・・・・・・て、ベッドで飛び跳ねるな!」

どこかデジャブを覚えてしまったが、なんとか飛び跳ねる美春を押さえて
朝食が置かれたテーブルに座らせる。
テーブルにはすでに着替えまで終えた当瑠とエプロンをはずした美詠が待っていた。

「それじゃ、食べようぜ」

当瑠が手を合わせて、いただきます、と合掌する。
美詠と美春もそれに合わせて慣れたように言い、上条は箸と茶碗を持っていて
美春に「おぎょーぎがわるいよパパ」と五歳の娘に注意されてしまった。

369とある未来の・・・・・・(2):2010/04/20(火) 03:17:34 ID:pJ3sCcPw
「あぁ、そうだ」

上条は食事をした後、今思い出したと言うような感じで言った。

「・・・・・・今日は学校で補習があるからさ、留守の方頼めるか?」

当瑠と美詠が目を数秒合わせる。
美詠の方が何事かあったのかすぐに逸らしたが、当瑠は首をかしげ答えた。

「分かった・・・・・・あぁ、でも、俺たちも別に出かけていいよな?」

「ん?まぁ、戸締りはしっかりしてくれよ」

「分かってるよ・・・・・・補習はいつからなんだ?」

そういえばその事は考えていなかったな、と上条は一瞬慌てる。
だが、そこは補習慣れした赤点生徒だ、即座に答えは用意できた。

「十時からだ、もうチョイしたらいく準備するよ」

携帯の時刻表示と当瑠を交互に見ながら言う
表情や、口調には焦りは出ていないはずだ。
当瑠はもう一度分かったと言うと、歯磨きをしている美春の隣にいくと
一緒に並んで歯磨きをし始めた。

(さて、俺も準備するかな・・・・・・)

無論、それは補習の準備などではなかったが。

370とある未来の・・・・・・(3):2010/04/20(火) 03:18:01 ID:pJ3sCcPw
常盤台中学の朝は早い。
それは長期休暇の今の時期も変わらない、というよりも習慣は体を勝手に動かすもので
ほとんどの学生は同じ時間に起き、同じように朝食をとるのだが。

「ん〜〜どうしよう」

御坂美琴は自分のベッドに腰をかけ、ハンガーに掛けて並べてある
服を睨みながら朝食にとテイクアウトした食堂のサンドウィッチを頬張る。

「・・・・・・私服か、制服か・・・・・・悩むわね」

今日は彼女にとっての大切な日だ。
好きな男性に誘われて行く初めてのデート・・・・・・
いつも通りの自分で行くか思い切って私服を着ていくか、それを彼女は悩んでいた。

「・・・・・・普通だったら私服よね、でも、センス悪いとか思われたら」

とりあえず、自分の今掛けられている服を見て改めて子供っぽいなぁと思う

「やっぱり、制服のほうがいいわね・・・・・・はぁ・・・・・・」

今度ファッション雑誌片手に洋服屋に行こう、と心に決めて制服を手に取る。
着慣れた制服がなんだかとても忌々しく思うが、仕方ない。

「さてと、着る服はこれでいいとして・・・・・・次は・・・・・・」

今度は自分の机の棚をごそごそと探り始める。
迫ってくる約束の時間にワクワクと期待感を持ち、それと同時に不安や緊張もある。
ただ、それ以上に想い人の少年と今日一緒にいられるのが嬉しくて、楽しみで
美琴は自然と笑顔になってしまっていた。

371とある未来の・・・・・・(4):2010/04/20(火) 03:19:02 ID:pJ3sCcPw
時刻は十時三十分上条当麻はいつもの公園の自販機前にいた。
補習をサボっているわけではないし、元々嘘なので、学校なんか行くはずがない。

「結局、学ランで来ちまったけど・・・・・・変じゃないよな?」

嘘を突き通すため、学生服を着て寮を出てきたのはいいが
今は長期休暇のため、外を歩いている学生は私服の者が多い。
だがそこは学生の街、学園都市だ、常盤台のように休日も制服着用の学校もあるし
風紀委員などは制服を着ているので、決して目立つような事はない。
(ただそれは上条の通う高校が一般的な学校のためなので、
常盤台などの名門校の制服はその服装だけで目立ってしまうのだが)

「御坂はまだ来てないか・・・・・・あー!何緊張してんだ俺!落ち着け落ち着け!」

手には汗を多量にかいている、さっきから手を何度も拭いているのだが
いっこうに手汗は消えてくれず出続けている。

「あー!もう!くそ!」

「・・・・・・何頭抱えてんの?知恵熱でも出した?」

「――――――――――!!」

後ろからいきなり声をかけられて、ビクゥ!と背筋を伸ばす上条。
振り向くと、待ち人である御坂美琴が学生鞄ではない肩にかける小さな鞄を持ち
訝しげな表情で上条を見ていた。

「み、御坂・・・・・・お、おっす」

「ん。・・・・・・てかアンタも制服のなのね、私服無いの?」

なんだか哀れんだ目で見られています。

「い、いや、これにはわけがあるんだ!」

慌てて身振り手振りで今朝のことを話しつつ、自分が学生服を着ている理由を答えた。
理由を聞くと美琴はふぅん、と納得したような納得していないよな微妙な返事をしている。

「・・・・・・なんか、悪い事したわね」

「うん・・・・・・でも、さ・・・・・・」

「?」

上条の途切れ途切れの返事に美琴がどうしたのかと言う顔になる。

「邪魔・・・・・・されたくねぇんだよ、お前とのデート」

「な――――!」

美琴の顔が一気に真っ赤になり、手を物凄いスピードで振り回す。

「ななな!何恥ずかしいこと言ってんのよ!ば、馬鹿じゃないの!?」

バチバチと青白い光を周囲に撒き散らし、地面に黒い跡が増えていく。

「お、おい!電撃飛ばしながら怒るなよ!あぶねぇだろうが!」

必死に美琴の近くまで来て肩に手を置く。
それで電撃は納まったが、上条は自分が手を置いた位置にドキリとしてしまい
手を肩からすぐに離した。

「あ、アンタが変な事言うからでしょ!」

全く、と腕を組んで落ち着く美琴。
それは、上条にそう見えるだけであるのだが、ほっと上条は溜息をついた。

「じゃ、じゃぁ、行くか・・・・・・」

踵を返して、目的地の方向へ向かう。
緊張して大股になってしまったのには気づかない。

「う・・・・・・うん・・・・・・ま、待ちなさいって!」

エスコートをする上条が先にずんずん進んでしまい、美琴が慌てて追いかける。
いつもの追いかけっこのような感じになってはいるが二人の雰囲気と気持ちは全く違っていた。

372とある未来の・・・・・・(5):2010/04/20(火) 03:19:47 ID:pJ3sCcPw
学園都市の第六学区は大きなアミューズメント施設である。
観光客を狙った詐欺が多いことでも有名な学区ではあるが、それ以上に
最新の科学技術を使用した大型のゲームセンターや、テーマパークなどがあり
遊び好きな学生たちの溜まり場となっていると言う話も聞いている。

「・・・・・・で?何処に行くのよ?」

そんな『遊び場』を上条と美琴は歩いている。
学区内に入ってすでに三十分ほど経っているのだがそれらしい施設は見当たっていない。

「えっと・・・・・・もう少しだ、後十分くらい?」

「そう・・・・・・」

そのまま何もしゃべらないまま十分が経過した。
ついたぞ、と言う上条の言葉が聞こえて美琴は顔を上げる。

「ここって・・・・・・」

そこには見覚えがあった。
学園都市内で配られていたチラシや、テレビのCMで見た事のある場所だったからだ。

「最近開いたばかりの、アミューズメントパーク・・・・・・」

友人たちがしきりに行きたい、一緒に行こう!と言っていた場所だった。
ここ最近開園された超大型アミューズメントパーク。
チケットも予約しないと取れないと聞くほど人気があると聞いていたので
多分、行くのは無理だろうな、と美琴自身も諦めていた場所。

「ほら行こうぜ」

上条が多少先に行って手招いている。
慌てて上条の隣まで行って、問い詰める事にする。

「な、なんでアンタ、この場所に?」

予約してもそのチケット自体の入手が難しいその場所に何故上条が入れるのか。
それは、勿論チケットを持っているからなのだが、どうやって?という疑問があった。

「・・・・・・ふふふ、上条さんには心強い友人がいるという事ですよ」

不適に笑う上条。
ちなみに、上条がチケットを持っている理由は先週、隣人の土御門が
「いつも世話になってるお礼だにゃー」とか裏のありそうな事を言って
無理やり渡したと言う話があったのだが美琴は知る由もない。
ただ、上条がこの後土御門ととある事件に巻き込まれるのだがそれは別のお話である。

「ま、深いこと考えんなよ、時間なくなっちまうぞ?」

「あ、うん・・・・・・そうね」

疑問もあったが上条が自分と入るのも大変な場所の貴重なチケットで
誘ってくれたのが嬉しい気持ちの方が強かった。

「じゃ、じゃぁ行きましょ!」

上条よりも先に行くつもりで駆け出す美琴。

「お、おい!俺が行かないと入れねぇぞ!?」

どんどん離れていく美琴を上条は苦笑しながら追いかける。
美琴が笑顔を見られるのが恥ずかしくて
走ってしまったということに上条は気づいていなかった。

373とある未来の・・・・・・(6):2010/04/20(火) 03:20:25 ID:pJ3sCcPw
アミューズメントパーク、もとい『遊園地』には当然だが多くの人でごった返していた。
歩けば人と肩がぶつかるし、足元も見えないので転びそうになる。

「あ〜、こりゃ乗り物乗れっかわかんねぇな」

返事は返ってこない。

「・・・・・・御坂?」

入園した時までは隣にいた美琴の姿がそこにはなかった。
忽然、と表現した方が良いだろう。
焦って周りを見回しながら、声を上げる。

「御坂!!何処だ!!」

「こ、ここ!」

今度は返事が返ってきた。
声が聞こえた方を向くと、人ごみから手が一本上がっている。
上下に何度も揺れているので背伸びかジャンプをしているのだろう。
人の波に流されないようにその人物の場所まで行くと、美琴がほっとした表情でいた。

「良かった・・・・・・完全に逸れたと思った」

危ない危ない、と上条が言うと

「それはこっちのセリフなんだけど・・・・・・勝手に先に行っちゃっし」

「ご、ごもっともです・・・・・・」

浮き足立って専行してしまったのは上条なのでいい返す事もできない。

「と、とりあえず、行こう」

今度は離れないようにするからさ、と言って進もうとする。


「・・・・・・!!」



と、突然手を掴まれた。



「み、御坂さん!?なぜ、手を握ってらっしゃるんですか!?」

今まで何度も手を繋いだ事はあったのだが、上条が気づいていなかったので
上条としては女の子から握られるのは(記憶としては)初めてだった。

「は、逸れたら・・・・・・た、た、大変でしょ?」

美琴は顔を真っ赤にして、掴む力を強くする。
その手の感触が妙にやわらかくて、すべすべしたものだったので
上条の本能に多いに衝撃を与える。

「い、いやいやいやいやいや!しかしこれは上条さん的には緊張するもでして
他にも色々と方法があると思うんですよね例えばそうそうお互いしっかり肩を並べて
歩いたりとか話をしながら歩くとか遊園地なんだから何乗るとか色々話す事もありますし」

一気にまくしたてこの窮地(主に上条の)を脱しようとする。
上条にとってすでに御坂美琴という人間はいままでの腐れ縁とかではなく
『異性として意識する女性』になっているので当然な反応だ。

しかし、女の子とは常に狼(野郎)共よりも天然で上手だ。
まともに美琴の顔を見れずにいた上条だったが、何とか美琴の顔を見る。
美琴は嫌がられたと思ったのか、目を少し潤ませた涙目で上条を上目遣いで見ていた。

「・・・・・・・・・・・・だ、ダメ?」

ソンナフウニ イワレタラ コトワレナイジャ ナイデスカ

「よ、喜んで!!」

美琴の手をしっかり掴み歩き出す。湧き上がる欲望を押さえつけて、だ。
ここが遊園地で人がたくさんいて良かったと、改めて思う上条だった。

374とある未来の・・・・・・(7):2010/04/20(火) 03:21:05 ID:pJ3sCcPw
『遊園地』は学園都市で展開されるだけあって、幼稚園・小学生
更にはカップルの学生の為のアトラクションが用意されている。
普通の乗り物も二人乗り以上のものに改良されていたりするので
どんなものでも多人数でも十分に楽しめた。

「ねぇねぇ、お腹空かない?」

予約制のチケットを持っている二人は並ぶ時間もかなり短縮できるので
多くのアトラクションを短い時間で、ストレスを感じずに乗れた。
時間も忘れて場所を転々としていた。

「あー、そういえば、そうだなぁ」

携帯の時計を見て上条が返す。
時刻は二時をさしていて、お昼時は過ぎていた。
そして、空腹を意識した上条のお腹がぐぅとなってしまった。

「・・・・・・あ」

「・・・・・・ぷ、空いてるんだ?」

クスクスと笑う美琴。
上条はあははと照れくさそうにつられて笑う。

「あー、じゃ、どこかで食べるか?」

お店は、と地図を出して探す上条の手が止められる。
美琴が繋いでいる手とは逆の手で押さえつけていた。

「・・・・・・どうしたんだ?」

上条が美琴の顔を覗き込んでくる。
その近づいた距離に美琴はドキドキしてしまうが、一度唾を飲み込む。

「わ、わたし・・・・・・お弁当作ってきたのよ」

「え?わざわざ?」

美琴は着ていく服を決めた後、大急ぎで常盤台の調理室を借りて作ったのだ。
寮監には怪しまれたし、寮生たちには何事かと思われるし、ルームメイトからは攻撃を受けた。
それは全てを押しのけて、なんとか完成したものなので
時間的には微妙だったが、勇気を出した。

「お昼時は過ぎてるけどさ、食べない?」

「せっかく作ってきてもらったってのに俺が断ると思うか?」

「そ、そんな事ない、けど」

「じゃぁ、食べよう」

手ごろな広場を指差し、ほらほら座ったと場所を取る。
美琴は遠慮がちに上条の隣に座って、小さな肩がけの鞄から
これまた小さな弁当箱を取り出す。

「はい、どうぞ」

「サンキュー」

弁当と箸を上条が受け取り、弁当の蓋を取る。

「おー、おかずには玉子焼きとミートボールそれと・・・・・・」

ほー、ほー、とふくろうみたいになっている上条を見ながら
美琴も自分の分の弁当を取り出して、上条よりも先に食べ始める。

「さて、いただきます!」

美琴が食べ初めて少しして上条も食べ始める。
昨晩のようにがっついて食べるようなことはなかったが
一口ごとに、うまいうまいと言って食べる上条が小さな子供みたいで
美琴はクスッとまた笑ってしまう。

「・・・・・・美味しい?」

「うん?美味いぞ?食べたりないくらいだ」

え?と上条の返事に呆けてしまい、弁当の中を確認すると
上条の弁当のおかずはすでに上条の腹の中に消えてしまったようで
すっかり空になってしまっていた。

375とある未来の・・・・・・(8):2010/04/20(火) 03:22:10 ID:pJ3sCcPw
「・・・・・・男子って凄いのね」

もっと大きいのにすればよかったと後悔する。
だが、まさか育ち盛りの男性がこんなに食べるとは普段その姿を見ていない
美琴からすれば、量の配分が分からないのは当然だ。

「ん?育ち盛りですからな!」

どうだ、と胸を張る上条。
その姿は可笑しかったが、美琴はふと弁当を見る。
おかずは十分に残っている。

「・・・・・・ねぇ?私のおかずいる?」

とたんに上条の目の色が変わる。

「くれるのか!?」

その勢いには驚いてしまったが、美琴は弁当を上条に差し出す。

「うん。私、そんなに食べないし」

「おぉ!サンキューな!」

上条が弁当を受け取ろうとするが、美琴は手の届くぎりぎりで
お預けするように上条から弁当を遠ざける。

「お、おい、くれないのかよ?」

残念そうな顔をする上条だが、美琴は気にせず意を決して箸でおかずをつまむ。

「・・・・・・食べさせてあげる」

「・・・・・・は?」

上条の中で時間が凍りついたようだ。
固まって瞬きすらしないまま口をだらしなくあけている。

「あのぅ、御坂さん?」

しばらくして上条が笑顔のような困惑したような奇妙な顔をして口を開いた。

「な、なによ・・・・・・」

いくらデートに誘ってくれた相手でもやっぱり無理があるのだろう。
美琴は少し残念だった。
だが、上条の繋げた言葉は美琴にとって衝撃だった。

「・・・・・・食べさせて、くれよ」

「―――――――え?」

美琴が確認するように上条を見る。
上条は美琴と目が合うと、顔を少し赤くして目をそらす。
そして、ゆっくりと目線を美琴に戻してもう一度同じ言葉を言う。

「食べさせて欲しいのですが」

「あ・・・・・・!あぅ、えっと、その・・・・・・」

自分で言ったはいいが、美琴自身は上条の返答が予想外で思考が追いついていない。

「俺が食べちまうぞ?」

意地悪そうに笑い、美琴から弁当を奪おうとする。

「そ、それはダメ!!」

必死に弁当を死守して弁当と上条を交互に見る。

「わ、分かった・・・・・・食べさせて上げるわよ」

美琴の中で上条に食べさせたいという欲求が勝ったようだ。

376とある未来の・・・・・・(9):2010/04/20(火) 03:22:47 ID:pJ3sCcPw
美琴が残っている玉子焼きを箸でつまむ。
そして、真っ赤な顔をして上条に箸を向ける。

「・・・・・・ほ、ほら、早く口をあけなさいよ」

「お、おう」

上条も美琴以上に顔を赤くして中々口を開こうとしない。

「アンタさ・・・・・・無理してない?」

つまんでいたおかずを弁当箱の中に戻す。
上条は慌てたように手を振って否定する。

「そ、そんな事ねぇよ!」

「・・・・・・ホント?」

美琴は自分がわがままを言ってしまい上条に迷惑をかけたのではないかと思う。
だが、上条は美琴が悲しそうな顔をしているのを見て
赤くした顔のまま真剣な顔をして、美琴を見据えた。

「御坂・・・・・・気を悪くしたんなら謝る」

ごめんな、と頭を下げる上条。
その姿が本当に真剣そのものだったので今度は美琴が慌ててしまった。

「い、いいわよ!私の方こそ今日わがままばっかり言って、その、ごめん・・・・・・」

お互いに頭を下げる姿は周りから見れば妙なものだったが
二人は真剣だった。
暫くはお互いに頭を下げる状態だったが、時間が経つと頭を上がった。

「・・・・・・御坂」

「何?」

「・・・・・・食べさせてくれよ」

今度はお前に嫌な思いさせないからさと言って美琴に弁当箱を持たせる。

「・・・・・・わ、分かった」

今度こそ・・・・・・とおかずをしっかりとつまみ上条のほうに向ける。
上条がゆっくりと口を開けて、放り込まれるのを待つ。

「あ・・・・・・あーん」

美琴は時々テレビだとか街中で見るカップルがしていて
自分の妄想や夢の中で上条にしていた事を思い出しながら
上条の口の中におかずを優しく突っ込む。

「あー・・・・・・ん・・・・・・ん!美味いなやっぱ!」

何回かおかずを噛んで、ニカッと笑う上条。
その表情にドキドキしてしまう美琴。

「良かった・・・・・・嬉しい」

「――――――か」

自然と上条に釣られて笑顔になる。
その時に上条が美琴の顔を見て思わず『可愛い』と言いかけたのを美琴は気づかなかった。
そして、二人を見つめる影があることにも。

377とある未来の・・・・・・(10):2010/04/20(火) 03:23:32 ID:pJ3sCcPw
「まぁ、嘘だなんていうことは分かりきってはいましたが」

当瑠は美春を肩車して、いちゃいちゃ空間を作り出している
未来の夫婦の姿を美詠と人の波に隠れながら観察していた。

「昨日の夜からバレバレだったけどね」

昨日の夜、つまり上条が美琴を寮まで送りデートの約束をした後のことだ。
帰っていた上条に当瑠が話しかけたが返事をしないし、ニヤニヤとあさっての方向を
見ているだけだったので、何かあったのがバレバレだった。
そして、今日の朝、上条が出かけると言った時、尾行を二人は決行したのだ。

「当日券で入れたのはラッキーだったわね」

美詠がわずらわしそうに人ごみを見て言う。
こんなところに上条が行くとは思っていなかったので遊園地に入ったときは
どうしようかと冷や冷やしていたのだが、ぎりぎり当日券が三人分購入でき尾行を続ける事ができた。
だが、当瑠の方の顔は優れない。

「・・・・・・なんか妙なんだよな」

「え?」

「いや、なんでもねーよ」

当瑠の疑問に思っているのは、何故自分たちが『当日券』で入ることが出来たのかだった。
予約をしてもその日のチケットが取れるか分からない人気のスポットで
開園から暫く経った時に来た自分たちが当日券を買えたのが妙だった。
当瑠は周りの人間をもう一度観察する。

(・・・・・・どうみても一般客じゃない奴等が混じってやがるな)

つまり、特別な権限を持って入園した者たちが多くこの場所にいると言う事だ。
周りにいる人間は学生のほかにもチラホラと教師たち、大人の姿も見える。

(風紀委員に警備員か・・・・・・何かあるのか?)

当瑠の勘が警告している。
当瑠は父親程ではないにしても不幸な人間だ。
路地裏を通れば怖いお兄さん方に目をつけられるし
助けようとした女の子になぜか能力を使われて追いかけっこする破目になったり
歩いていれば青信号で車が突っ込んできたりと
危機に対する事に関してはある程度察知することが出来るようになっている。

「・・・・・・美詠、美春を頼んだ」

「え?」

すっと立ち上がり、美詠が当瑠の方を向いた時に彼は走り出した。
一気に距離は離れていき美詠の姿は人ごみに消えて見えなくなった。

「ちょっとー!当麻さんと美琴さんはどうすんのよー!」

そんな叫び声が聞こえたが当瑠は気にすることなく走り続けた。

378とある未来の・・・・・・(11):2010/04/20(火) 03:24:02 ID:pJ3sCcPw
人ごみの合間を走りぬき、当瑠がやってきていたのは
関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアの前だ。

「すみませーん」

コンコンと二度ノックをし声をかける。
このドアが直接スタッフルームに繋がっているわけではないだろうが
それでも通路を通りかかった従業員が気づいてくれるはずだ。

「はいはい、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ?」

思惑通り、迷惑な客が来たときの対応の声で制服を着た従業員がドアから顔を出した。

「ちょっと、聞きたい事があるんですけど」

そう言って当瑠は袖につけていた物を見せ付けた。
従業員の男の顔色がさっと変わる。

「―――――風紀委員の子か」

当瑠がつけていたのは風紀委員がつける腕章だ。
ただ、彼自身は当然風紀委員に籍を置いてはいない。
腕章はサボり目的で友人と話し込んでいた風紀委員から拝借したものだ。
勿論とられた事にその風紀委員は気づいていないが。

「犯人は捕まったのかい?」

――――犯人。
当瑠の予想は的中した、この『遊園地』内に事件が起きている事が確定する。
当瑠は自分の予想が当たったことに若干不安を覚えるが、それを顔には出さない。

「・・・・・・いえ、まだ捕まっていないんですが。
今回の事を少し整理をしたくて、詳しい話をもう一度聞こうと」

風紀委員は学生だが、やはり影響力はかなり大きいようだ。
従業員の男は何の疑問も持たず当瑠をスタッフルームに入れた。

「じゃぁ、話すけど・・・・・・聞いたら現場に戻ってくれよ?」

念を押す従業員にはい、と愛想笑いで答えると、話を始めた。
まず、今日の開園直後、『遊園地』のサイトにメールが一通届いたらしい
確認したのは話しをしている従業員ではないが、メールを見た従業員は
イタズラだと思い報告をしなかったそうだ。(無責任な話だが)
メールの内容は今日『遊園地』内に爆弾を仕掛るとの事
説明はかなり省かれているがとりあえずテロの予告である事は間違いない。

「・・・・・・それで?」

当瑠が続きを促すと従業員は話を続ける。

「爆発が・・・・・・開園から一時間後に実際に起きたんだ」

かなり小規模な爆発だったらしいが、その一発でメールは本物と判明。
メールの報告をしなかった男はクビの宣告を受けたらしいが自業自得ではある。
その後、警備員と第六学区の風紀委員に捜査命令が発令し現在に至っているそうだ。
不法侵入の形跡がないことから、一般客として入園し
能力者が結託し合ってお互いの能力を使いながら監視の目をかいくぐり
爆弾を仕掛けたと言う事は分かっているようだ。
そして、多くの客が入園した今簡単に退園をさせる訳にはいかなくなっていることも。

「・・・・・・ありがとうございました」

従業員が話を止めたところで、お礼を言ってスタッフルームのドアを開ける。

「あぁ、君」

呼び止められて振り向くと、従業員が不安と懇願が入り混じった表情をしていた。

「・・・・・・私には協力も何も出来ないが」

従業員はそう言った後に頭を下げて続けた。

「頼む、何も知らずに楽しんでくれているお客様達を助けてくれ」

この従業員には好感が持てるな、と当瑠は思った。
仕事に対して不満を垂らして適当にこなしたりする大人がいる中
誠実に、他人のことを心配してくれる人もいるんだと、当瑠は少しだけ暖かい気持ちになる。

「任せてください」

間が空いてしまったが、当瑠は愛想笑いではない笑顔でその『願い』に返した。

379とある未来の・・・・・・(12):2010/04/20(火) 03:24:35 ID:pJ3sCcPw
「あーあ・・・・・・あの馬鹿はいっちゃうし、当麻さんと美琴さんは見失うし・・・・・・」

美詠は当瑠がいなくなった後、しばらく不満をタラタラと言っていた為
目的である上条と美琴を見失ってしまっていた。

「お兄ちゃんどこいっちゃったのかなぁ?」

手を繋いで隣にいる美春は心配そうに周りをキョロキョロと見回している。
少しでも気を抜けば手を解いてどこかに言ってしまいそうな危なっかしさがあった。

「勝手にどこか言っちゃダメよ、あの馬鹿は放っておいてお父さんたちを探しましょ」

そう言って、あらぬ方向に行こうとする美春を自分の向かう方に引っ張る。
美春はまだ少しだけ心配そうな顔をしていたが、あるものを見つけると途端に顔を輝かさせた。

「あ!ゲコ助!!」

彼女が見つけたのは可愛らしいと言えばそれなりの等身大のカエルのマスコットだ。
ただ、美春が言う『ゲコ助』とは微妙に何かが違う気がした。

「・・・・・・なんか微妙に違うわね・・・・・・私は良く知らないけど」

『ゲコ助』については外見的な特徴であれば美春から良く見せられているので
多少は分かるが、ほとんど同じものに見える。
ただし、近付いて何が違うのか判断した美春は首をひねっている。

「なんだかめのおおきさがちがうね?」

「お姉ちゃんにはさっぱりわからないんだけど・・・・・」

だが、美春は『ゲコ助』に似ているカエルのマスコットにはかなり興味があるご様子だ。
ぺたぺたとマスコットに触って隣にあるキャラクターショップを凝視している。

「・・・・・・そのぬいぐるみだとか、キーホルダー欲しいの?」

ずらりと並べられたカエルのマスコットのキーホルダーとぬいぐるみ(その他にも色々あるが)
それを指差すと、美春の顔が更に輝いた。

「いいの!?」

物凄い勢いです。

「いいわよ、美春ちゃん良い子にしてたから、買ってあげる」

その勢いに多少引き攣った笑いになってしまったが、美春はそれに気づかず
猛スピードでキーホルダーとぬいぐるみを二つずつもってレジに向かった。

「二つもいるの?」

お金を払いつつ美春に聞くと、美春は首を大きく縦に振った。

「うん、ママにもかってあげるの」

そういえば、あの人も好きだったなと思いながら
しかしそれでは気づいたときに買ってしまってダブるのではないかと思った美詠だが
口には出さずに美春に小袋に入ったキーホルダーを手渡し、自分は大きめのぬいぐるみの入った袋を持つ。
ありがとーと可愛らしく笑ってくれた美春の頭を撫でてあげ、顔を前に向ける。

「あれ?」

そこには見覚えのあるツンツン頭と茶色の髪をしたカップルがいた。
二人は若干離れた距離を保っているが、しっかりと手を繋いでいる。

「・・・・・・やっと見つけた」

美春の手を引いてキャラクターショップから出て、二人の後を追う。
追いかけた先は大きな広場で人が一番集まるところのようだ。
そしてそこにあるアトラクションは一つだけだった。

「・・・・・・か、観覧車?」

時刻を見ると六時半過ぎだ。
そろそろ日が落ちて暗くなり始める時間帯。
きっと二人はこれを最後に遊園地から出るだろう。

「こ、これは見逃す手は無いんじゃない!?」

一気に距離を詰め、人の間をうまく取って二人に近付き観覧車の列に並ぶ。
デートはついにクライマックスを迎えたようだ。

380とある未来の・・・・・・(13):2010/04/20(火) 03:25:13 ID:pJ3sCcPw
観覧車には十分ほど並んで入ることが出来た。
時刻は六時四十分、上条は景色を楽しみにしながら観覧車に乗り込む。
この『遊園地』の観覧車は一周するのに二十分程度かかる、かなりゆったりとした乗り物だ。
加えて大型のため上へ行くほど観覧車から内から見える景色は格別らしい。

「今から見える景色が楽しみね」

向かい合うように座る美琴が上条に笑いかけてくる。
上条はそうだな、と気のない返事でなんでもないような素振りをするが
実際かなり緊張している。

「あ、見てみて七学区!」

上条の返事がそっけなかったのを気にしてか窓を見ると
すぐに指を差してはしゃいだ声を上げた。
上条も窓の方を見ると、確かにそこには学び舎の園を初めとした
第七学区を象徴する建物が見え始めている。

「一番上まで言ったら何処まで見えるのかな?」

落ち始めた日の光に美琴の顔が照らされる。
その姿が幻想的で美しくて上条は思わず喉をごくりと鳴らしてしまう。
今、自分を邪魔する人間はいない、この空間に入り込んでくる人間は誰一人いない。
日が完全に落ち真っ暗になれば他の観覧車からも姿は見えなくなる。
そうなれば・・・・・・と上条はそこまで考えて自分の邪な考えを振り払う。

(何考えてんだよ俺は!落ち着け!今は景色を楽しむんだ!)

落ち着け落ち着けと自分の本能を理性で押さえつけて
美琴のほうを見ないように心がける。
だが、数秒するとチラリと美琴のほうに目を向けてしまい
時々美琴と目が合うと光速にも勝てるのではないかと思える速度で目を逸らす。
そんな事を繰り返している内に頂上まで後少しとなる。

「日が落ちてきたわね・・・・・・」

「あ、あぁ・・・・・・」

徐々に美琴の姿も暗がりに隠れていく。
それにホッとしながらも少し残念に思って美琴のほうに顔を向ける。

「・・・・・・御坂」

姿が見えない今なら、少し落ち着いて美琴に話しかける事ができる。
声をかけると返事はすぐに返ってくる。

「なに?」

まだ、早い。
上条は口から出る言葉を抑えようとするが止まる事は無い。
日が落ちてきたためか観覧車内の電気が点々とつき始める。

「・・・・・・あのさ、俺」

「どうしたのよ?」

もう駄目だ、言ってしまおう。

「俺・・・・・・お前と・・・・・・」

グラッと観覧車が揺れる。
観覧車の中を照らそうとしていた電気がフッと消えてしまい
観覧車の中はまた暗闇に染まる。

「・・・・・・な、なんだ!?」

観覧車も止まってしまったようで、上条たちが乗った観覧車は頂上一歩手前で膠着する。
美琴が能力で電気をいじったのかと思ったが、そんなことをすれば大惨事になるので
その考えを打ち消す。

「なに?何が起こってんの?」

周りを見回す美琴と呆然とする上条。

(あれ・・・・・・?でも、これって・・・・・・?)

上条の思考は戻っていき、ある答えにたどり着く。



―――――――これはもしかして自分が望んでいた展開では?

381とある未来の・・・・・・(14):2010/04/20(火) 03:25:48 ID:pJ3sCcPw
「くそ!遅かったか!」

一人悪態をつく少年。
方々を走り肩を上下に震わせて呼吸は荒いが疲れた様子は無い。
むしろ少年の表情には焦りや不安の色が強い。
少年、当瑠は観覧車を見る、観覧車内の電気は点いておらず動きは止まってしまっている。

(何処にいやがる・・・・・・?この広場のどこかにいるはずだ・・・・・・!)

周りを見てもそれらしい人物はいない。
いや、そんな簡単に見つかったのではここまで彼は苦労をしていないだろう。

爆発が起き、観覧車内の操作盤と電源が破壊された。
観覧車にいる人達は最上級の人質として出来上がっている。
犯人は一向に見つからない、悪い方向にしか状況は動いていない。

「おーい」

イライラしているところに声をかけられる。
忌々しそうに振り返ると、風紀委員の腕章をつけた少年が手を振っていた。

「なんだ?」

能天気な少年の仕草に多少の怒りを覚えた声で返事をする。
少年の方はそんなことを気にせずになれなれしく近付いてくる。
当瑠が部外者である事は気がついていないようだ。

「いい報告だぞ」

――――いい報告?
それはつまり、犯人が捕まったと言うことだろうか?

「どういうことだ?」

表情と声色で続きを促すと少年は手をひらひらとさせて続きを話し始める。

「犯人グループの一部が捕まったんだ」

「一部・・・・・・?やっぱり団体犯だったか」

だが、一部を捕まえただけではお話にならない。
主犯格の者を捕まえなければ今以上の爆発がおき客は木っ端微塵だ。

「主犯格は捕まっていないけど、犯人グループのアシを捕まえた」

少年は当瑠の様子など全く気にせずに続ける。

「アシは大能力者≪レベル4≫の透明化≪インビジブル≫で
自身は勿論、他者も姿を消すことが出来るらしい」

「それで今まで姿が見つからなかったのか」

「あぁ、それと今もう一人の犯人も追跡中だ」

「主犯か?」

少年は首を振る。

「いや、大能力者≪レベル4≫の肉体強化系の奴だ」

「学生のテロ行為か・・・・・・」

今まで出てきたレベルの者たちから予測して言う。
外から来たもののテロ行為であればもう少し迅速に事は進むだろうからだ。
そして、レベルの高い者たちはそこに自惚れて、自分の存在を見せ付けたがる。
何も知らない一般の生徒や関係のない一般の人々を巻き込む形で。

「アシの奴が捕まったのなら能力の方も解けているだろう」

少年は手を腰に当てて周りを見る仕草をする。
だが彼にとっての怪しい基準のものがいなかったらしく少し落胆した表情をする。

「・・・・・・肉体強化の奴は何処に・・・・・・?」

唐突にそれが気になってきた、なぜかは分からないが、重要な気がしたからだ。

「確実な場所は分からん・・・・・・ただ、広場の方向に走っていったらしい」

だからここに来たんだけどな、と少年が言ったところで当瑠は気づいた。

(広場・・・・・・追跡しているのは多くの風紀委員と警備員
多くの人、人質代わりの観覧車の客・・・・・・)

爆弾の威力を最も知るのに最適な場所は・・・・・・?
最も効率的に多くの人間を犠牲にするには・・・・・・?
肉体強化の能力者が広場の方向に逃げている理由は・・・・・・?
ならば犯人のいる場所は・・・・・・?

「―――――ッ!この場所か!」

時間帯からしても今ここが一番犠牲者が多く取れる場所だ。
そして、逃げている能力者の意図は報復の意味を持っているのだろう。

(大量の風紀委員と警備員の被害者を出すためか・・・・・・)

肉体強化の能力者と風紀委員と警備員が集まったところで
爆弾は盛大に周りを破壊しつくす。
当瑠の頭に倒れている人達が浮かんでくる。
その中には彼が大切に思っている人の姿もある。

「誰にも邪魔されずに隠れていられる場所・・・・・・」

あの場所しかない。

「あ!おい!何処行くんだよ!」

少年が呼び止めようとしたが当瑠は止まらずに走り出す。
また無視しちまったな、と思いながら。

382とある未来の・・・・・・(15):2010/04/20(火) 03:26:25 ID:pJ3sCcPw
ピリリリリ、と飾り気もない無機質な音が暗闇の観覧車内に響く。
慌てて携帯を取り出し、着信者の名前を見ると『馬鹿』と表示されていた。

「もしもし?」

少しだけ緊張して通話が開始する。

『お前、今何処にいる!』

焦ったような『馬鹿』の声が耳を突き刺す。

「どこって・・・・・・観覧車だけど観覧車も止まっちゃうし」

答えると、くそ、と『馬鹿』がイラついた声を出す。

「どうしたのよアンタ・・・・・・?」

『馬鹿』の声で何かあったと確信し心配した声をかける
隣に疲れて眠ってしまった少女がいるが、彼女をギュッと抱き寄せる。
意味がないと思いながらも、こうしていないといけない気がしたのだ。

『・・・・・・美詠』

『馬鹿』が絞り出すように声を上げる。
やはり何かあったのだ、そして『馬鹿』はまた一人で解決しようとしている。

「なによ・・・・・・また勝手に!なにしようってんの!?
まさか、観覧車が止まった事と関係あんの!?」

声を荒げてしまったが。
『馬鹿』はただごめん、と呟いてあやまるだけだ。

「・・・・・・ごめんって、なによ」

どうせ聞き出そうとしても『馬鹿』が答えないのは分かっている。
分かってはいるが、話してくれると淡い期待を持って聞く。

『・・・・・・悪い』

―――――やっぱりそうだ、コイツはいつも答えてくれない。

「切るわよ」

ぶっきらぼうで自分勝手に怒ってることは分かる。
だが、美詠はもっと自分を信頼して欲しいからこそ『馬鹿』に怒りをぶつけた。

『美詠』

もう一度、『馬鹿』が彼女の名前を呼ぶ。

「なに?」

今までと全く違った声色に驚くが、それは表に出さないで
なるべく怒っているのを強調する。

『・・・・・・お前の事は必ず守る』

「――――――な!!」

突然の言葉に作っていた声が一気に崩れ、驚きの声を上げてしまう。

「なななな、なに言ってんの!?そ、そな、い、いきなり!」

言葉を反芻しようとするがうまく舌は回らない。
『馬鹿』の方はそんな事は全く気にしない。

『・・・・・・じゃぁ、美春のこと頼む』

「――――ちょ!?ま、て!」

とめようとしたがプツッツーツー、通話終了を知らせる音が鳴り。
その後は何度かけても『馬鹿』は電話に出なかった。

383とある未来の・・・・・・(16):2010/04/20(火) 03:27:13 ID:pJ3sCcPw
風紀委員や警備員を出し抜くなんていうのは案外簡単なものだ。
とある場所で一人の高校生くらいの少年がククッと低く笑う。
自分の計画は完璧だ、と少年は満足げに椅子に深く掛けなおす。

――――初めは軽い気持ちだった。

自分の能力で何か作ってみよう、そんな所だった。
レベルも上がったし、もっと広い範囲の事ができるはずだ。

――――だが、出来たのは。

実験に使用した場所を破壊し尽くすような爆発。
散らばる破片に自分の体を地面から引き剥がすような爆風。
今でもそれは少年の目に焼きついていた。

――――これで、もっと僕の力を見せ付けてやる。

自分はレベル4だ、レベル5には劣るもののそこらの能力者には到底たどり着けないレベル。
レベル2、レベル3、そんなのはクズみたいなものだ。
自分の能力の強力さなら同じレベルの奴にだって負けない。

――――今までの僕の見方を変えてやる。

レベル3ときに馬鹿にしてきた奴等が腰を抜かすような
自分に跪いて、詫びてくるような、そんな事をしてやろう。

――――証拠の隠滅も準備はできている、後は実行に移すだけだ。

部屋に掛けられた時計に目を向ける。
時刻は六時五十分になる頃だ。

――――あと十分。

そう、後十分であの周囲は爆発で木っ端微塵になる。
人間の悲鳴、崩れ落ちる乗り物、守れなかったと悔しがる風紀委員、警備員。
それを間近で見れたなら・・・・・・少年は今までにない高揚感を感じている。
そして、今は気絶している従業員の男に一度目をやる。

「くく・・・・・・コイツも吹っ飛ばすのも良いかもな」

そういえば、人間に対しては直接使ったことは無いなと思い
気絶した従業員に手を向けてみる。
演算をして、計算の答えを出して、念じれば、あの爆死させれるし
起爆型に調整してやれば人間爆弾の完成だ。

「試してみるか?」

答えは返ってこない

「――――させるかよ」

はずだった。

384とある未来の・・・・・・(17):2010/04/20(火) 03:27:57 ID:pJ3sCcPw
「なんだ、お前・・・・・・」

少年は自分の目の前に立っている茶色のツンツン頭の少年を睨み付けて言う。
だが、ツンツン頭はそんな言葉を無視してある場所に目を向ける。

「・・・・・・」

ツンツン頭が見ていたのは倒れている従業員だった。
そして、少年の方を見ないまま従業員の男に近寄ろうとする。

「まて!」

止まる事を予想して叫ぶ。
予想通り、ツンツン頭は足を止めて少年の方を向く。

「この人に何をした」

刺すような視線でツンツン頭は睨み返してきた。
その表情には怖気づいてしまう気迫があったが、息を呑むのも我慢する。

「・・・・・・は、死んでなんかいねーよ」

ツンツン頭は睨んだ表情を戻さないが少年の方に体を向き直した。

「・・・・・・てめぇ、自分が何してるか分かってんのかよ」

ギリッと音が聞こえるくらいにツンツン頭が拳を握る。
目に見えない気迫が更に増した気がして少年はジリッと後ずさりをする。

「・・・・・・何をしてるか?だって」

精一杯の虚勢を張る。
声は上擦っていないが、いつ裏返るか分からない。
元々計画に発見される事は考えていなかった、≪インビジブル≫の仲間が捕まったのが誤算だった。
あの野郎油断しやがって、すでに捕まった仲間に悪態をついても仕方がないのは分かっている
目の前の事に集中しなければいけない事も。

「見りゃぁ分かるだろ?」

目の前、邪魔なツンツン頭の男。
自身の能力――――能力?そうだ、自分にはこれがある。
意識を集中させる、目の前の男を殺す、殺す、殺す、一瞬で演算は終了し
目の前のツンツン頭を爆死させる準備が整う。

「てめぇを殺そうとしてんだよ!!」

その瞬間にぐにゃりと空間が歪む。
ツンツン頭の表情はその時にも変わらない。

「死ね!」

声に反応するように歪んだ空間が爆発した。

385とある未来の・・・・・・(18):2010/04/20(火) 03:28:30 ID:pJ3sCcPw
観覧車が止まって五分ほどたっただろうか。
御坂美琴は極度の緊張状態にいた。
理由は簡単だ、好きな人と暗闇の中で二人っきりでいる、それだけだ。

「・・・・・・」

暗闇の中で全く話さない、沈黙が続いている。
気まずい、暗いせいで表情も見えないのでなんて声をかけたらいいのかも分からない。

「あの・・・・・・えっと・・・・・・」

どうしよう、どうしよう、どうすればいい?
さっきまでは手を繋いでいただけの幸せだったのに、他に何もいらないくらいだったのに
こんな暗闇に放り出されて何をすればいいのだろう。

「な、なかなか直らないわねー」

・・・・・・返事は返ってこない。
なんで止まるのよ、動いていればいつかは終るのに、二人でいるだけでいいのだから
景色を見て、二人で綺麗だねって言って、目が合って、恥ずかしくなって
いつの間にか終って、楽しかったね、また乗りたいねって、それでいいのに

(どうしてこうなるのよー!)

暗闇の中で二人っきりなんて不味過ぎる、どうしようもない
はやく直って、満足したから、今日はこうれでもういいから。

(お願い神様!)

普段から神様など信じない彼女だが今だけは、図々しいと分かっていてもだ。

「〜〜〜〜!」

手を組んで念じていると、突然向かい側で座席のなる音がする。
前に座っていた少年が動いたのだ。

「え・・・・・・?」

そして、隣で音がしたと思っているといきなり体が横に動いた。
いつの間に?考える暇もなく、恐らくだが、少年の胸に飛び込む形になる。

「あ・・・・・・」

体温と体温が重なって暖かく感じる。

抱きしめられている。

確信できた、腕が肩と腰辺りに当たっている。
少しだけ強い力加減で離さないと主張するように抱きしめられていた。

「御坂」

耳元で囁かれた。
いきなりでビクッとなってしまうが最小限に抑えて返事をする。

「な・・・・・・に?」

「・・・・・・しても、いいか?」

「え?」

しても、とは何だろうか。
こんな暗がりで何をするのだろう、少し考える。

(暗闇で二人っきり、密室で・・・・・・しばらく動きそうにない乗り物)

思いつけば、顔が熱でも出たみたいに熱くなった。

「えっと、わたし、その・・・・・・」

「嫌?」

嫌なわけがなかった。
キュッと抱きしめられていた強くなる。
それが心地よくて、胸も熱くなっていく。
心臓の鼓動は信じられないくらい早くなっていた。
しても、いいと思う。
思っていたよりもはやくその時が来ただけだ。

「・・・・・・いいよ」

そう言うと、体が横たわるように後ろの押された。
押し倒され、暗闇の中で二人の距離が近付いていく。

386とある未来の・・・・・・(19):2010/04/20(火) 03:29:11 ID:pJ3sCcPw
死んだ、目の前にいた男は跡形もなく消えただろう。
なにしろレベル4の威力だ、まともに喰らえば一たまりもないどころか
痛みすら感じられず死ねるはずだ。
爆発の後のため、煙で視界が悪い。

「ざまぁみろ、僕に楯突くからだ」

鼻で笑ってやる。
そうだ、これでいいじゃないか、弱い者がいくらかかってこようと
圧倒的な能力で薙ぎ払ってやればいい。
それだけで済む。
時間は六時五十六分、間に合った。
爆発の騒ぎを聞きつけて風紀委員や警備員が突入してくるだろう。

「ここから離れるか・・・・・・」

ついでに気絶している従業員も消しておくかと考える。
目撃者がいればそれだけで捕まる確立は格段に上がる。
捕まるのは真っ平ごめんなので、少年はあまり迷うことなく従業員に殺意≪能力≫を向ける。

―――――さぁ、吹き飛べ。

そう念じた瞬間。

「――――――あが!!?」

吹き飛んだのは自分の体の方だった。

「な、に!!?」

まさかもう突入された?近くにいたのだろうか?
何の能力?武器?様々な疑問が浮かび吹き飛んだ体を起こして
吹き飛ばした人物がいる方向を睨みつける。

「は?」

立っている人物には見覚えがあった。
だが、信じられなかった。
そこに、爆発に直撃したはずのツンツン頭の少年がいたからだ。

「こんなもんかよ・・・・・・レベル4ってのは」

ツンツン頭はほとんど無傷で立っていた。
理由は全く分からない、本気では無いとは言え、生身の体で耐えられる規模の爆発ではなかった。
爆破地点を間違えたのか?それもない、確実にあの男がいた地点で爆破させたはずだ。

「な、んで!!?」

殴られた痛みも忘れて声を出す。
ツンツン頭はなんでもないという顔をして、あるところを指差した。

「これのおかげだよ」

ツンツン頭の指差した方向は、少年の作った『物』の一部だ。
予備というわけではないが、隠れ家の地雷代わりだったり、威嚇、緊急の攻撃用に
作り置きしておいた『爆弾』だった。

387とある未来の・・・・・・(20):2010/04/20(火) 03:29:50 ID:pJ3sCcPw
「爆発と爆発が重なると相殺するよな?」

作り置きの爆弾の威力は最小限に抑えたものだ。

「賭けだったけど、成功してよかったぜ」

高い威力の爆発を弱い爆発で止める話は聞いた事はある。
しかし、何故奴が爆弾を持っているのか。

「ま、さか・・・・・・!」

仲間に作り置きを渡しておいた事を思い出す。
ツンツン頭は風紀委員の腕章をしている。
捕まえた仲間から、爆弾を回収していれば・・・・・・。
少年の表情でツンツン頭は理解したのだろうにやりと笑った。

「間に合ってよかった、間に合わないんじゃないかと内心ひやひやしてたけどな」

だが、コイツはまだ油断している。

「一度守ったくらいで得意になってんじゃねぇよ!」

空間を歪ませ、爆発を発生させようとする。

「―――――・・・・・・」

ツンツン頭が右手を振る。

「――――な!?」

瞬間、空間の歪みが消えてしまう。

「てめぇの能力は空間からの爆発だよな」

ツンツン頭は笑った表情を崩さない。
確かに、少年の能力は空間爆破≪バースト≫と呼ばれるもので
対象となる物体やそこにある『空間』の位置から演算をしその場所
もしくは物体を爆発させる能力だ。
だが、触れただけで消えるなんていうのは聞いた事がない。
むしろ歪みに巻き込まれて爆発に巻き込まれるだけだ。
それが理解できずに怒りに任せてもう一度演算を開始する。

「―――――何で消える!?」

しかし、やはり空間の歪みは爆発の瞬間に何事もなく消えさってしまう。

「演算は」

ツンツン頭が一歩近付く。

「―――ッ!」

「『爆発の位置を指定し、爆発が起きる直前』までだ」

後ずさりをするが、距離をまた詰められる。

「なら、爆発の瞬間に『演算外の物体』が介入してきたら?」

ダン!とツンツン頭が大きく踏み込む。
距離が大幅に近付いた気がして、後ずさりの幅も広がる。

「うわああああ!!」

少年は恐怖にでたらめな演算で能力を発動した。

388とある未来の・・・・・・(21):2010/04/20(火) 03:30:20 ID:pJ3sCcPw
でたらめな演算では大した威力もなく、爆破の範囲も小規模になる。
当瑠は爆発をとめることなく踏みしめた足を止めることなく更に距離を詰める。
小規模な爆発が起こり、煙が視界を遮り、体に小さな痛みを感じるがそんな事は気にしない。
目の前の敵との距離を詰めるのみだ。

「くそ!くそ!くそ!」

『敵』である少年が頭を振り乱してさらに爆発を発生させる。
今度は空間が歪むまでもなくポンッ!という音がするだけで不発に終る。

「どうしてだ!僕の能力はお前なんかより上のはずなんだ!」

ちくしょおおおおおお!と叫ぶ少年。
当瑠と少年の距離はすでに4mをきっている。
拳を振り上げ、狙いを少年の顔へ定める。

「能力なんかじゃねぇよ」

当瑠はそれが忌々しいものの元凶のように苦渋の表情をする。

「確かにてめぇは自分の努力で能力を上げてきた、それは認めてやるよ」

けどな、と当瑠は続ける。

「その力を向けるのが間違ってんだよ!どうして人を傷つける事にしか使えねぇんだ!」

距離は残り2m程度になる。
握る拳にさらに力が込められていく。

「お前の大切な人を守るとか、目の前で悲しんでいる人、悩んでいる人のために使えないのかよ!」

距離はついに1mをきる。

「俺にはそんな大層な能力なんかねぇ、拳を握って振る事しか出来ないんだよ!」

拳にはどんな異能も打ち消してしまう能力は無い
10億Vの電撃も触れたものを吸収して別のものに構築する力も
時を超える能力もその拳には宿っていない、ただの無能の不良の拳だ。

「ひっ!」

少年が小さな悲鳴を上げる。
腕を顔の前で交差させるが、もう遅い。

「自分に何が出来るのか、いっぺん頭冷やして考えて見やがれ!」

「ぎ・・・・・・ぃぃぃい!」

少年のガードの間を拳は通り抜け、直撃する。
ミシッと骨の軋む音がはっきりと聞こえ少年は吹き飛ぶように床に転がった。

「俺とてめぇの違いはレベルじゃない」

吐き捨てるように当瑠は呟く。
少年と当瑠の違いは単純な事だ。
彼にはただ一人、守るべき少女がいる、ただ、それだけの話だった。

389とある未来の・・・・・・(22):2010/04/20(火) 03:31:00 ID:pJ3sCcPw
「・・・・・・」

殴り飛ばされた少年はピクリとも動かない。
気絶したわけでは無い、呆然と天井を眺めるように仰向けになっている。

「手間かけさせやがって・・・・・・」

やれやれと殴った手をさすりながら倒れている少年に背を向けて
気絶した従業員に近寄る。

「怪我は、特にないな・・・・・・医務室にでも運ぶかな」

幸い従業員に怪我はなく。
気絶したのは睡眠薬か何かを使われただけのようだ。
全体重が体にのしかかり多少重いが、肩を貸して医務室に運ぶ準備をする。

「――――クク」

突然、少年が低く笑った。
仰向けになったまま体をぴくぴくと震わせる。

「なんだ?」

おかしくなってしまったのかと少しだけ心配する。
縄か何かで縛り付けておこうか、そう思って縄のようなものを探す。

「おまえさぁ・・・・・・忘れてんじゃねぇか?」

ひひと今度は高く笑うと、腕を上げる。

「・・・・・・!」

少年はまだ動く事ができる、気絶はしていない。
そういえば自分は爆弾を止めにきたのだ、少年を殴りにきたわけではない。

「後十秒で時刻は七時かぁ・・・・・・時間通りだぁ」

ははははは!と高笑いをして上げた腕の拳を握り締める。

「残念だったなぁ!守りたいものが守れなくて!」

木っ端微塵だぁ、と満足げな声をし、握り締めた拳の力を緩め手を開く。

「な・・・・・・」

やめろ!と叫んでも遅い事はわかっている。
無駄だと焦りながら部屋の時計に目を向ける。
時計の針はちょうど七時をさしていた。

390とある未来の・・・・・・(23):2010/04/20(火) 03:31:34 ID:pJ3sCcPw
残り一分ほどで時刻は七時となる。
美詠は観覧車の中で寝ている美春の頭を撫でながら、溜息をついた。

「ったく・・・・・・ホントにあの馬鹿は」

考えている事は時自分と美春を放って、どこかに行ってしまった少年の事だ。

――――いつもそうだ、自分が置いてかれる。

追いかけても追いかけてもいつも距離を置いてくる。
追いついたと思ったら、いきなり違う方向に走り出して
どこに行ったか分からなくなる。

「真っ暗で外も見えないし・・・・・・」

本当は遠くの学区の方は光がついていて薄っすらと観覧車の中は見えるし
景色も少しは綺麗なのだが、幾分光が少ない。

「・・・・・・寂しい」

同伴者は寝ているし、ここにあの少年がいたら二人っきりだ。
それを想像してブンブンと頭を振る。

(だー!なんであいつのこと考えなきゃいけないのよ!)

あーもう!と頭を抱える仕草をしたところで美詠の視界がパッと明るくなる。

「!!」

暗闇からの突然の光にまぶしくて目が眩む。

「・・・・・・わ・・・・・・ぁ」

観覧車内に入ってくる光は電灯だ。
そして、照らされた車内から外を見ると見えたのは


星のように輝いた学園都市の風景だ。


一つ一つの建物から連続して、繋がるように光がともっていく様が
あまりにも幻想的でいて、計算された美しさだった。
時刻は七時、光に呼応するように観覧車も動き始めた。

391とある未来の・・・・・・(24):2010/04/20(火) 03:32:01 ID:pJ3sCcPw
いつまでたっても爆発は起きない。
七時をすでに二分は過ぎているのだが、人の悲鳴も爆発の振動も
当瑠には聞こえてこなかった。

「な・・・・・・んで・・・・・・?」

犯人の少年の慌てた声が計算外のことが起きた事を暗に示している。

「間に合ったみたいだな」

当瑠はしばらく立ち尽くしていたが後ろからの突然の声振り返る。

「おまえ・・・・・・さっきの」

そこにいたのは情報の提供をしてくれた風紀委員の男だった。

「犯人の確保に感謝する・・・・・・安心しろよ爆弾は回収済みだ」

にこりと人懐っこさが現れたような、人がいい笑顔をして
男は犯人の少年に近付いていく。

「回収?どうやって・・・・・・爆弾を解除した?」

犯人の少年は分けが分からないという顔をして
風紀委員の男に立たされ手錠を掛けられる。
男は笑った表情を変えないまま口を開いた。

「空間移動≪テレポーター≫をなめるなよ?レベル4はお前だけじゃないんだよ
爆弾はテレポートで学園都市にあるシェルターまで運ばせてもらったよ」

ほら、行くぞ、とまだ納得がいかないと言う顔をした犯人の少年を促し出口まで向かう。

「―――――あぁ、そうそう」

思い出したように当瑠の方を真面目くさった顔をして振り返った。

「風紀委員の権限を無断で使用したアンタも来て貰おうか?」

「へ?」

それは困った事になる。
自分は未来から来た人間だ、過去の人間にこれ以上介入するわけにはいかないし
捕まればいつ解放してもらえるか分からない。
妹の美春の能力の不安定さから言っても自分の時代に帰れるのもいつか分からなくなってしまう。
ダラダラと嫌な汗が流れていく。

「あ、ははは・・・・・・なんのことでしょうか?」

そう苦しい紛れに答えると男はもう一度にこりと笑う。

「いっとくけど俺は結構腹黒いよ?」

そういえば知り合いにもむちゃくちゃ危険なレベル4のテレポーターがいたなと
知り合いを思い出して身震いすると共に当瑠はここから立ち去る事を決意した。

「ははは・・・・・・失礼しましたあああああああああ」

あっははー冗談冗談という声が背中から聞こえた気がしたが
当瑠にはそれを理解する余裕はなかった。

392とある未来の・・・・・・(25):2010/04/20(火) 03:32:36 ID:pJ3sCcPw
「はー・・・・・・やっと降りれたぁ」

美詠は美春を片手で抱きかかえながらのびをする。
そして、自分の前方をしっかりと確認する。

「あー・・・・・・なんか声かけれる雰囲気じゃないわね」

見ているのは一組のカップルだ。
無論それは上条当麻と御坂美琴の二人であり、美詠は姿を確認したが
二人を追いかける気力はなくなってしまった。
上条と美琴が肩を寄せ合って歩いているのだから邪魔するのは野暮というものだ。

(でも、なんで二人ともあんなにボーっとした顔してたんだろ?)

横顔だけ確認したため確証はなかったが、上条も美琴も恍惚としたような
心ここにあらずという表情をしていた。
観覧車内で何かあったのだろうか?そう考えるが何も思いつかなかった。

「お!美詠か!」

そこで声をかけられる。
その人物は予想が出来た美詠は振り返ると同時に怒りを露にした表情に変えた。

「・・・・・・どこに行ってたのよ」

姿を確認した時、声をかけた人物、当瑠の姿がボロボロだったのに気づいて
作った怒りの表情が解けてしまいそうになったが何とか堪える。

「えっと・・・・・・やっぱ怒ってます?」

「あったりまえでしょうが!!馬鹿!」

ひぃっ!と当瑠が情けない声を上げるが気にせずに続ける。

「アンタはレベル0なのよ!なんでレベル5の私を頼んないのよ!
手伝ってくれって言ってくれればいいじゃない!
なんで無関係のアンタがそんなにボロボロにならなきゃいけないのよ!」

何も言わせないつもりで言った言葉。
だが当瑠は美詠が言い終わると言葉を返してきた。

「レベルなんか関係ねーよ」

「はぁ?」

「レベルだとかそんな事以前にお前は女の子じゃねーか
どうして男の俺が女のお前を危険な目にあわせなきゃいけねーんだよ」

「―――――――ッ!」

『女の子』といわれて一気に顔が紅潮するが、俯いてふっと息を吐くと顔を上げ当瑠を見据える。

「・・・・・・そう・・・・・・ちょっとアンタ目ぇつぶりなさい」

突然の言葉にキョトンとする当瑠。

「あ?何でだよ」

「いいから!」

「わ、わかったよ」

強く言うと渋々といった表情で目をつぶる当瑠。
美詠は目をつぶったのを確認すると近くにあった小石を拾う。
・・・・・・レベル5の彼女にはそれが十分な『凶器』だったからだ。

393とある未来の・・・・・・(26):2010/04/20(火) 03:33:04 ID:pJ3sCcPw
(ま、これくらいで十分よね)

拾い上げた小石を吸収し再構築する。
彼女の右手には小石ではなく『手甲』が作り出された。

(本当は蹴りの方が得意なんだけどなぁ)

『常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機械再生法』
をよく使う彼女の得意体術は蹴りなのだが、今回は殴打の方がすっきりするので手甲を選んだ。
ちなみに美詠がもっと機嫌が悪い時に扱う故障機械再生法は運が悪ければ
矛先が人に向けられる
『常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による人間攻撃法typeデストロイ』
となるのだが、その話は今は置いておくことにする。

「しっかり目ぇつぶってなさいよ・・・・・・」

すっと場慣れした感じの構えを取る美詠。
石で作られた『手甲』はいいかんじに馴染んできている。

「レベル5なめんじゃないわよ、この路地裏の不良があああああああああ!」

ゴキッと嫌な音がした。
当瑠は顔面に石をもろにくらい地面に叩きつけられた。

「いってえええええええええええええええええええええ!」

意識が飛ばなかったのは奇跡に近い。
当瑠は真っ赤に腫れ、今にも血が吹き出そうな顔を押さえて美詠をにらむ。

「てめぇ!死んだらどうすんだ!」

「うっさい馬鹿!死ね!不良集団の頭やってるからって調子乗ってんじゃないわよ!
レベル5を甘く見すぎなんだっつの!くそ馬鹿!」

この野郎!と当瑠がフラフラと立ち上がり拳を前に突き出す。

「てめぇ!俺を馬鹿にするのはいいけどスキルアウトの仲間を馬鹿にするのはゆるさねぇぞ!」

「はっ!何をムキになってんだか、そこらのチンピラの寄せ集めでしょうが」

馬鹿にした表情をして言う美詠に更に腹を立てる当瑠。

「チンピラの寄せ集めじゃねぇ!俺のいるチームはな!
かつて駒場さん浜面さん半蔵さんという偉大なレベル0が所属していたチームであってだな!」

「黙んなさい!どっちにしろ不良の集まりでしょうが!」

ギャァギャァと言い合う姿はどこかのかつての二人にそっくりで
今にもそのかつて二人のように追いかけっこでもはじめそうな雰囲気だ。
ただ、美詠が自分を女の子と見てもらえた事を心の底で喜んでいるのを当瑠は気づいていなかった。

394とある未来の・・・・・・(27):2010/04/20(火) 03:33:37 ID:pJ3sCcPw
上条当麻と御坂美琴は夜の学園都市の町を歩いている。
二人の距離は朝と考えるとかなり近付いているが本人たちは気にしていない。
これが当然の距離だとでも言うように肩を寄せ合っている。

「「・・・・・・」」

先ほどから一言も会話を交わしていないのだが考えているのはほとんど同じ事だ。
『遊園地』の観覧車内であった事、それが二人の考えている事だった。
あの時二人の距離はほとんどゼロになった、それは変わりない。

(・・・・・・はぁ)

上条は一人、美琴に聞こえないように溜息をつく。
二人の距離がゼロになり押し倒された美琴は覚悟を決めたよう目を閉じた。
そこまでは良かった、だがそこからが問題だった。

(ヘタレだなぁ俺・・・・・・)

目を閉じた美琴の姿に逡巡し顔を近づける。
後一押しだったのだ、後ほんの数センチで一線を越えていただろう。
そのままなし崩しにとても表現できないところまでいっていたかもしれない。
だが、あくまでそれは想像の域だった。

「・・・・・・意気地なし」

そういわれたのを思い出す。
・・・・・・結局上条は美琴に何もしなかった。
ただ押し倒して、抱きしめただけでそのまま時刻が七時となり
観覧車が動き始め、明かりがついて慌てて美琴から離れてしまった。
そして、ろくに景色も見れないまま観覧車を降りて『遊園地』からでた。

「もう、着いちゃうわね」

ふと声をかけられて意識を周囲に戻す。
その場所は美琴の住む常盤台の学生寮の近くで、上条は寄せていた体を美琴から離す。
上条としては名残惜しいがあの距離のまま寮まで行くわけにもいかない。
二人の距離が自然と朝と同じような、手を繋ぐのもぎりぎりの距離になる。

「・・・・・・手」

「なに?」

上条が美琴に手を差し出す。

「暗いしさ、その、繋いでてもわかんないだろ?手、繋がね?」

このまま離れた距離のまま歩くのがいやだった。
上条が美琴に微笑むと美琴は顔を少し赤くする。

「・・・・・・うん」

小さく頷いて上条の手を握った。
上条はまだ少しだけ繋いだ瞬間はドキリとしてしまったが
美琴の手を握り返すと残りの距離を惜しむように歩き出す。

沈黙がまた二人を包む。

395とある未来の・・・・・・(28):2010/04/20(火) 03:34:11 ID:pJ3sCcPw
そっと上条が美琴の横顔を見ると、寂しそうな顔をしていた。
まだ離れたくない、そういっているよう思えて上条の心臓が高鳴る。

「・・・・・・」

美琴が上条の視線に気づいて上条のほうを向く。
そして、目が合うとやっぱり顔を少し赤くして、しかし笑顔を見せてくれた。
上条は抱きしめたくなる感情をぐっと抑える。
視線を合わせたままだと感情に流されてしまう。
きっと離れれなくなる、予感ではなくそれは確信だ。
考えているうちに常盤台の寮の門になっていた。

「今日は楽しかった、ありがと」

「・・・・・・あぁ、喜んでくれて嬉しい」

まだ一緒にいたい、行かないでくれ。
そう言いたかったが言い出せずそのまま別れる。
言うぐらいも出来ないのか、意気地なし、と自分を叱咤する。
足取りは重い、何度も振り返りそうになる、そこにまだ美琴がいる気がしたからだ。
だが振り返る事は出来ない、すれば多分あの位置に戻ってしまう。
美琴に迷惑は掛けたくない、だが一緒にいたい。
心の中の葛藤は強くなるばかりだ。

(御坂・・・・・・俺はお前の事・・・・・・)

考えるまでもなかった、自分で確認する必要もない。
上条当麻は御坂美琴を一人の女性として、恋愛対象として見ている。
今までどうしてそんな目で、気持ちで見れなかったのだろうか
もっと早く気づけばよかった、もっと彼女の事を深く知りたいと思えばよかった。
歳なんて関係ない、中学生?高校生?たかだか二年の事じゃないか。
大人になればその程度の歳の差の付き合いなんて当たり前だ。

―――――本当は気づかないフリをしていただけなんじゃないか?

愕然とする。
周りの目を気にして彼女の事を真正面から見ようとしていなかった。
なんで今の今までそんなくだらない事を意識していたのだろう。
もう、隠す事は出来ない、しない。
誰になんと言われようと変わらない絶対的な抑えられない感情に気づいたから。

「好きだ」

目の前にいなければ伝えられないのに、どうして今は言えるんだ。
今日だって言える時はいくらだってあったじゃないか。

「好きだ」

呟いても伝えたい本人はいない。
面と向かって言える日は来るだろうか。
上条は一人、美琴への気持ちばかり考えながら帰路を歩く。
繋いだ手の暖かさの名残を感じながら。

396auau:2010/04/20(火) 03:37:48 ID:pJ3sCcPw
スレ汚しじゃねーか!これ!?

ふぅ・・・・・・疲れた・・・・・・。
とりあえずなんですかこれは?長いし
いちゃいちゃも少ないし、なんか無駄な部分が多いし・・・・・・
これで22000文字あるらしいですよこれ
ワードに移したら40ページくらい?いきましたよ・・・・・・

構成力のなさが出た結果かなぁと思いつつも
それだけ書きたいことがたくさんあったみたいで
とりあえずかけてよかったとは思います。
人の少ない時間に投下して正解だったと思います、はい。

397■■■■:2010/04/20(火) 03:47:52 ID:g3A3FqYA
これを読んでいるとそれとなく桜並木さんを思い出すな…。あの人いつ帰ってきてくれるだろうか…。
そういえばedのワンピースネタってあの人の作品しかないんだよな。やっぱあんな風に使われるとパクリだと思われちゃうから使いにくいのかね

398■■■■:2010/04/20(火) 04:48:40 ID:iDDaU03I
小ネタがあるんですけど、どうしよう。やっぱ、この状況。


怖気づいたwww

399■■■■:2010/04/20(火) 05:19:15 ID:gLay4U2I
>>auauさん
GJです!!
上条さんは世代を越えてもかっけぇすな!しかし初デートの初々しさにあてられて顔がニヤけて寝れねぇ・・・
続きありますよね!?楽しみにしてます!!

400アミノ酸:2010/04/20(火) 07:04:22 ID:ZtSTTxWY
おはようございます(*'-')ノ

今日は朝から雨で、雨だなぁと考えてたら

小ネタが降りてきましたので投下します。

一レスで終わります。

401アミノ酸:2010/04/20(火) 07:06:27 ID:ZtSTTxWY
小ネタ とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>と雨の日



「どうしよう、傘忘れちゃった…」
 とある日、とある幼馴染の所へいつものように朝食を作りに行った美琴は、うっかり傘を忘れた。
天気予報は午前七時から雨模様、現在の時刻は午前七時十分、無論天気は外れることなく雨が降っている。

「当麻…傘、2本持ってない?」
「…ないぞ」
「えーと…借りても?」
 上目遣いでお願いされて、思わずいいよと喉元まで出かかるが、ぐっと押しとどまる。
「今日の雨は昼過ぎにならないと上がらない。美琴が傘持って行ったら、俺はずぶ濡れで学校に行かなきゃならなくなる、わかるか?」
「わっわかるけど…じゃーなに、この雨の中走って帰れと言ってるの?」
「いや、それはだな…」
 むぅーと二人でにらみ合う。しかしこのままでは平行線、しかも美琴はそろそろ寮に戻らないとまずい時間も迫っている。
さてどうしたものかと、考えを巡らす。あっ!と当麻はその手があったかと解決法を思いついたのだった。
「ああ!そうか…俺がお前を送りゃいいじゃん」
「へっ?」
「んじゃ、外で待ってろ、今着替えるから」
 さぁ出ろ出ろーと美琴は当麻に背中を押され、外に放り出された。
「えっ?えっ?」
 (ちょっ、ちょっとまって、この家には傘が一本しかない、そして当麻が今から送るって…つ、つまりそれって相合い傘!?)

 出かける準備が整い、美琴の元へと向かう。
「ん?どうしたんだ美琴?」
 先ほどから黙りこくって下を向いてる美琴の様子が変だ。心なしか顔が赤い気がする。 
「顔真っ赤だけど、風邪でも引いたか?」
「なっ…なんでもないわよ!」
 元気そうなので、まぁ大丈夫かと考える。
「ほっほら、行くわよ!」
「お、おう」

「「………」」
 さっきから周りの視線が気になる、この時間はまだ人が少ないとはいえ、通りがかる全ての人に一度は見られている気がする。
美琴はずっと黙ってるし、何がいけないんだ?傘が一つしかないのだから、この方法が一番…ん、一つの傘に男女が二人つまりそれは
相合傘で、周りからしたらそれはカップルに見えてるのではなかろうか?……ギギギと首を横に向けると隣の幼馴染が視界に入る。
 自覚したとたん、頬がかぁあと熱くなり、心臓はバコンと一気にトップピードへ。急に立ち止まった幼馴染に「どうしたの?」と不思議そうな
顔で見上げてくる。二人の視線は交錯し、自然に見つめ合う形へ。

((どっ、どうしよう…))
 
二人とも考える事は同じだった。


雨はしとしとと降る。


オワレ

402■■■■:2010/04/20(火) 07:32:41 ID:g3A3FqYA
いい加減、そのオワレとかやめたほうがいいと思うぞ?なんか微妙な空気になるからさ

403■■■■:2010/04/20(火) 07:37:49 ID:MFqyfam2
>>396
GJです!
上条さんと美琴のこれからも気になりますが、子供たちの仲も気になります
続きを楽しみにしています!

>>401
GJです!
初々しい二人がかわいいですね
朝から短時間で書けるのがすごいです

4043-351:2010/04/20(火) 17:44:29 ID:adeKcQQg
>>396
スレ汚しなんてとんでもない、GJですよ!GJ!!
いやー、上条さんと美琴の距離がなんといいましょうか、とにかくとてもよかったです。

>>401
GJ!見つめ合うとは、もうこれは完全に恋b(ry
・・・ツヅケ


とここから、誰もいないようなので投下します。
目的としては会話のみを目指しました。楽しんでいただけたら幸いです。

405小ネタ:2010/04/20(火) 17:45:14 ID:adeKcQQg
上条「ねえ」
上条「なんだよ」
上条「これってどういうことなの?」
上条「? 言っている意味がわからんのだが」
上条「だから、この名前の表記のこと言ってんのよ!」
上条「この名前が何なんだよ」
上条「いや、だからこれじゃあ読みにくいんじゃない?」
上条「読みにくいって言ったってなあ」
上条「読みにくいじゃない」
上条「なんだよお前、この名前が嫌なのか?」
上条「ち、違うわよ!!」
上条「じゃあどっちなんだよ」
上条「……………すき」
上条「ん。そ、そうか」
上条「……………顔赤くしちゃって」
上条「ぶっ!? ばば、バカなことを言うな!」
上条「ふーん、そうやって誤魔化しちゃうんだー」
上条「そ、そんなわけはない! でだな! さっきの話なんだが!!」
上条「……………」
上条「……………」
上条「………まあ、いいわ♪」
上条「……はぁ。えーと名前の話だったけ?」
上条「覚えてないんじゃない。もう結構進んじゃったけど左の名前の話」
上条「これのことかあ。でも、間違ってないじゃないか」
上条「そ、そうだけど!」
上条「どうする?」
上条「……どうしよう」
上条「じゃあ、美琴の名前を美琴に変えればいいじゃないか?」
上条「……で、でも……それは、ちょっと……嫌」
上条「じゃあどうすんだよ!」
上条「うーん」
上条「うーんって……。あ、そうだ!」
上条「何か思いついたの?」
上条「こうすればいいんだ」
上条「こうって?」
当麻「よし、こうだ」
上条「ああ、その手があったわね」
当麻「ふふーんどうだ、っておい」
上条「う゛ーん。これもどうかしら」
当麻「まだ、不満があるのか。今度は一体なんだ?」
上条「えーっとね、上条って姓は当麻によく使われてるから、これもまた読みにくいのよねー」
当麻「あのな、美琴が嫌だって言ったからこうしたんだが?」
上条「むー」
当麻「ああ、わかった、わかった。……ええいもうこうしてしまえ!!」
上条「?」
美琴の旦那「どうだ!!」
上条「ちょ、ちょ、ちょっと!?」
美琴の旦那「これなら、会話では二人だけだから、美琴の名前と旦那と来ているから俺の名前も表せるな」
上条「……わ、私の旦那って///」
美琴の旦那「ん? どうした?」
当麻のお嫁さん「……………」
美琴の旦那「おい! 美琴、お前名前かえるの嫌じゃなかったのかよ!?」
当麻のお嫁さん「…………べ、別に良いじゃない」
美琴の旦那「ああ、頑張って考えてのに……ふ、むご!!」
当麻のお嫁さん「そんなこと言わせない」
美琴の旦那「そう、だな。もう俺は前の俺とは違うもんな」
当麻のお嫁さん「もちろん♪ ねえ、一緒にさ当麻の口癖をもじって『○○だー!』って言わない?」
美琴の旦那「俺が○○の部分、分かると?」
当麻のお嫁さん「もう私達の仲なんだから、わかってるでしょ?」
美琴の旦那「……はあ、いつまで経っても美琴には敵わねえな。じゃあ、言いますか!」
当麻のお嫁さん「うん」
美琴の旦那「せーの」

とある幸せな夫婦『幸せだー!!』

406■■■■:2010/04/20(火) 17:46:18 ID:adeKcQQg
はい、終わり!

・・・会話のみを目指していたら、ナゼコウナッタ?

407■■■■:2010/04/20(火) 17:56:21 ID:AzdHeY76
>>405
これはいい小ネタ
オチが途中で分かってもニヤニヤしながら最後まで読めるのは
このカップルのいいところだなw

408:2010/04/20(火) 19:13:06 ID:.VOhqhek
大丈夫そうなのでいきます。
先日の続きです。
注意点はなんだか上がったり下がったりが激しいことです…

では【side by side】を5分後に投下します。
消費レスは6の予定。

409■■■■:2010/04/20(火) 19:14:21 ID:L0NvgWow
>>405
どうしよう、なんかすげぇツボったw
GJ!

410【side by side】―分岐点―(12):2010/04/20(火) 19:18:48 ID:.VOhqhek
19時頃、上条宅

二人はあの後からいつものように過ごした。
場所は上条の部屋ということで、そこでいつもとは違う雰囲気がでた時もあったが、それ以外はいつもの平日や休日で過ごすように過ごした。
いつも話すように話し、笑うように笑い、怒るときは怒る。
明日から上条が旅立つということなどもう忘れているかのように。
美琴はその時間がとても幸せだった。
大好きな彼とこうして二人で話すことは、どれだけ繰り返してもきっと飽きることがないであろう。
それほど楽しく、ずっとずっと前から恋い焦がれていた幸せな時間だった。
しかし、楽しい時間というのは無情にも早く過ぎてしまうもの。
辺りは既に暗くなっており、時刻は19時をまわったところ。
常盤台女子寮の門限に着々と近づいている。

「美琴、そろそろ時間だから…」
「いやよ」
「あの、いやって俺はまだ何も…」
「どうせもうすぐ門限だから早く帰れ、でしょ?そんなの嫌、今日は離れたくないの…」

美琴は呆れたように俯き、心細そうに呟く。
それは本心。
今日は彼が何と言おうと離れたくなかった。

「美琴、別に今生の別れってわけじゃないんだから…」
「そんなことわかってる。……どれだけ経ってからはわからないけど、きっと当麻は何もなかったような顔しといて、ここに大怪我して帰ってくるんでしょうね」

美琴だって今生の別れではないことはわかっていた。
でもじゃあどうしてかとか聞かれても、美琴ちゃんと答えられないかもしれない。
理屈じゃないのだ、そういうことは。
どれだけ正論や理屈を並べられても、今の美琴は決して屈しない。
ただ一時的でも離れてゆく彼のそばに少しでも長くいたい、その一心。

「でも、どれだけ建て前を言っても、どれだけ取り繕っても……やっぱりダメなの。私そんな大人になれない…私はいつでも、どんな時でも当麻の隣にいたいの、理屈なんてないのよ…」
「……」
「だけど行くなとはもう言わない。当麻の決意もしたいこともわかるから。……けどせめて今日は、明日出発するまではそばにいさせて、お願い…」

多少目を涙ぐませながら美琴は懇願する。
それは美琴の心からのお願い。

「……わかったよ、今日は泊まってっていいぞ。どうせ今は春休みだしな。白井にはちゃんと言っておけよ?」
「!……うん!あ、当麻お腹へってるわよね?私なんか作ってあげるわよ」
「は?いや、つっても明日からいなくなるんだからろくなもんないぞ?」
「あるもんでなんとかするから大丈夫よ!」

411【side by side】―分岐点―(13):2010/04/20(火) 19:19:24 ID:.VOhqhek
そう言って美琴は嬉々とした表情でキッチンへかけてゆく。
その表情は晴れやかとまではいかないものの、彼女の本来の明るさは取り戻していた。

(ホント、美琴にはかなわないよな…こいつには頭が上がんねぇよ)

上条に先のことはどうなるかはわからない。
この先どれだけ長く付き合っていくかもわからない。
けれどもきっと将来の自分は彼女に尻にしかれてるんだろうな、などとという考えが頭をよぎる。
そしてその光景が容易に想像できた。
わがままで少し理不尽なところもあるが、実はそれを覆すのに有り余る程の様々な長所をもつ彼女に、あれこれと言われるがままに生活する光景。
上条はどうしてそんなことを考えたのかはわからなかったが、それでもそう考えてしまったことに対する抵抗や嫌悪は不思議となかった。
別に将来を誓ったわけでもないのに、思い浮かんだその光景はごく自然に思えてなかった。

(もし本当にこれからそうやってやりながら過ごせたら、きっと幸せなんだろうな…)

そこに他意はない。
ただもし本当にそうなれたら、幸せだろうという考えが頭から離れなかった。
先ほど暗い雰囲気、表情だったのが嘘のような振る舞いで鼻歌を歌いながら料理をテキパキと作って見せる美琴を見て、上条はそう思えた。
その明るさが今は上辺だけの振る舞いでも、いつか心からのものになればいいと思いながら。





同日21時頃

美琴が作った料理は上条家に残っていた材料が材料であっただけに、料理自体はそれほど大したものではなかった。
しかしそれはあくまでも料理の外見の問題で、味の方は逸品であり、どこかの料亭でもでていそうなほどである。
上条と美琴は週末にどこかに出かける際に、たまに美琴が弁当を作ってくることもあり、頻度は高くないがたまに彼女の手料理を食べていた。
その時に決まって思うのが材料も上条と大差ないはずなのに、味が全然違うことについてだ。
弁当の定番とも言える卵焼きを一つ例にとってみよう。
上条は美琴の卵焼きを食べるまでは、卵焼きなんてものは誰が作っても同じと考えていた。
しかし美琴のそれは上条のそれを根底から覆すほどに美味しかった。
感動したと言ってもいいくらいの衝撃を受けたのである。
その衝撃のあまり、上条は彼女に何回も作り方を聞き、何回も実践したのだがうまくいっていない。
他の料理にしても同様の結果。
なので上条にはどうしてか不思議で仕方なかったのだが、美琴曰わく『何回聞いてもアンタと作り方はそんなに変わらないってば』らしい。
そして終いには『強いて言うなら、私の当麻への愛情の大きさかな……えへ』と可愛らしくとんでもないことを言い放ったが、それを上条が『なにわけわかんねーこと言ってんだよ』と一蹴。
当然の如く、上条は電撃をお見舞いされたわけだがその理由は彼にはさっぱり理解できていなかった。
どこか腑に落ちない上条だったが、その話題は無限に続いてしまうので途中で話を切り上げた。

412【side by side】―分岐点―(14):2010/04/20(火) 19:19:50 ID:.VOhqhek
そして今は料理をしたのが美琴なので上条がその後の後片付けをして、美琴はその間特にこれといってすることもないので風呂に入っている。
なので今上条の部屋にはピチャピチャと水がはねる音が二カ所から聞こえる。
一つはもちろん上条がしている水仕事で発せられるもので、もう一つは…

(だぁー!明日から多分何度も修羅場とか死線をくぐりぬけるってのに、俺は何してんだよ!意識すんなって方が無茶だろこれ!)

別に色んな方向から水のはねる音がするのが問題なのではない。
そんなことは銀髪シスターが居候していた時代からあった。
問題なのは今風呂を使っているのが美琴であるということだ。
夜中、年頃の男女、部屋に二人っきり、シャワー、彼氏彼女の関係、恐らく明日からしばらく会えない、ミコトサビシイ。
健全な男子高校生ならどうにかなってしまいそうな条件は複数そろってしまっているこの状況。
二人は今まではキス程度のスキンシップなら何度もしているが、恐らくまだ清い付き合いをしている方と言えるだろう。
上条にもそういうことをするのは、二人ともより大人になってからという意地がある。
しかも明日からは大事な仕事がある。
あまり浮ついた気分でイギリスに向かいたくはない。
無論彼の理性は我慢するつもりではあるが、果たして本能を理性で御しきれるか…
甚だ心配ではあったが、様々な葛藤を水仕事をしながら上条が頭の中で繰り広げているのをよそに、風呂場で動きがあった。
シャワーの音が止み、少しごそごそと物音の後に"何かが"湯船に浸かるような音がしたのだ。

(あれ?ちょっと待てよ…次風呂入るの俺だよな…?今美琴が湯船に……!?)

鈍感の上条とは言え何も考えなかったわけではなかったのだが、その時は料理の疑問をあってか、あまり深く考えられなかったのだろうか。
冷静になってみれば美琴が浸かった湯船に自分も浸かるということをすっかり忘れていた。

(まてまてまて!!いや、それはまずいだろ!一体何考えてたんだよさっきの俺!)

キス以上をしたことがない上条でも、恋人の浸かった湯船に浸かるのは流石に気恥ずかしい。
湯船に浸からないということも考えたが、もうすぐ四月とは言えまだ長袖なしに過ごせない程に肌寒く、シャワーだけだと逆に寒くなってしまう。
もちろん貧乏学生の彼にとって湯船を落とすなんて以ての外である。
普通に常人の思考ですれば、可愛い女の子が浸かった湯船に自分も浸かるのは恐らく戸惑うだろうが、決して悪くないことだろう
むしろ喜んで飛び込んでいく輩もいるかもしれない。
しかし上条は目一杯不幸だと呟いた。
至極当然のことに全く頭がまわらなかった過去の自分を、精一杯恨んだ。

413【side by side】―分岐点―(15):2010/04/20(火) 19:20:12 ID:.VOhqhek
結果を言うと上条は湯船に浸かった。
浸かったには浸かったのだが、雑念やら何やらで体が全然温まらない内に早々に出てしまった。
上条自身はこれでよかったと言い聞かせているが、温まりきってないのでやはり寒いものは寒い。
上条はシャワーだけを軽く浴びると、いつも入っている時間の半分にもなっていないがそのまま風呂場から出た。
そんな彼を美琴は少し頬を赤に染めながらも、少し驚いたような顔で迎えた。
実は彼女も上条と似たようなことを考えていたため、本当はとてもドキドキしており、予想よりも早くに上条が出てきたことに相当動揺していた
さらに今彼女が着ている服は上条のスペアのパジャマ代わりのジャージであり、彼が着ている服ということで、彼の匂いがするなどとかなり舞い上がってもいたのだが、それはまた別のお話。
とにかく美琴はそれらを悟らせまいと出来うる限り無表情で口を開いた。

「あ、あれ?早くない?いつもこんなもんなの?」
「は?あー、そう、だな…いつもこんなもん、だよ、多分…」
「……なんかはっきりしないわね。ま、まぁいいけどさ。ってかそんなんでちゃんと温まれるの?」
「温まってるよ、多分…」

そう言いながら、上条は美琴が座っている所の隣へ腰へおろす。
実際はそんなわけもなく、シャワーを少し浴びる程度だけでは入る前と大差はない。
むしろ髪などが少し濡れている分、前よりも寒いかもしれない。
そんな話を追求されても、上条としては答え辛いし、面白くもないので少し疑問に感じている顔をしている美琴が再度口を開く前に上条が話題をそらす。

「そ、そういうお前もそんな格好で湯冷めとかしないのかよ?寒かったりするなら先に寝ててもよかったのに」
「別にそんなことないわよ。それに、先に寝たらどっかの狼さんに何されるかわかったもんじゃないもの」
「お前な、紳士上条さんは神に誓ってそんなことはいたしませんことよ!?……大体明日からイギリス行くんだから、そんな浮ついた気持ちではいたくない」
「ふーん…」

それを聞いた美琴は少し呆れたような、それでも少し悲しそうな顔をする。
それは彼女が本当にそういうことをしてほしかったからではない。
明日から彼はしばらくいなくなることを思い出させられたからだ。

414【side by side】―分岐点―(16):2010/04/20(火) 19:20:43 ID:.VOhqhek
別に今の今までそのことを忘れていたわけではない。
ただ意識はしないようにはしていた。
今の彼といる時間を沈んだものではなく、心から楽しむために。
それが、彼のイギリスという言葉で改めて事実を意識させられる。
彼は明日からいないのだな、と。
そう思うと今まで心の奥底に押し込んでいた感情が溢れ出す。
それは何回も無理やり自分に納得させた感情。

「…美琴?」

その心情をを知ってか知らずか、上条が急に黙りこくって俯いた美琴の顔を覗きこむ。

「……何でもない。もうやることもないわけだし、寝ましょ?」

美琴は自分の顔を覗き込んでくる上条の視線から顔そらす。
時刻はまだ22時をまわった頃、寝るのには少し早い時間かもしれない。
でもそれは自分で何とかしなければならないこと。
上条に言って何か変わるわけではないことは既に証明済みだ。
彼に余計なことで心配させるわけにはいかない。
彼にはやらねばならないことがあるのだから。
今は、もっと集中しなければならないことがあるのだから。

「はぁ……仕方ねぇな」
「へ?」

上条が言ったことを理解する前に、座っていたはずの美琴に突然の浮遊感を襲う。

視線を上条からそらしていたため、美琴は彼が何をしたかは始めわからなかった。
しかし、その状態は長くは続かず、すぐに状況を理解する。
美琴は今上条に抱っこされている、それも彼女の憧れの一つでもあるお姫様抱っこで。

「ちょ、ちょっとアンタ何してんのよ!すぐに降ろしなさい!」

そう言いつつ、もう少しこの状態でいたいと思っていたのが本心だったりする。
だが今はそれよりも羞恥が先行する。

「言われなくてもすぐに降ろしますよっと」

上条の言った通り、美琴はすぐに彼のお姫様抱っこから解放され、降ろされるが、そこは元々美琴が座っていた場所ではない。
降ろされた場所は彼女が寝ようと思っていた場所、ベッドだった。

「え?え?…えええぇぇぇ!!??」
「なんだよ、そんな騒ぐなよ。今一応夜だぞ?」

上条は彼女をそう言ってなだめるが、美琴のこれから起こるであろうことの脳内の妄想は止まらない。

(え?嘘、本当に!?いや別に嫌じゃないけどさ…でもさっきそうゆうことはしないって言ったわよね!?急すぎるのよ!ま、まだ心の準備が…)

今彼女の脳内ですごいことが繰り広げられているのだが、そんなことを上条が知る由もない。

415【side by side】―分岐点―(17):2010/04/20(火) 19:22:40 ID:.VOhqhek
上条は顔を真っ赤にして、ベッドに横になっている美琴を確認すると、電気を消して彼女をもう少しベッドの奥にやり、自身もベッドに横になろうとする。

(ほ、本当にやるのかな…?いつかはやるとは思ってたけど、まだ1ヶ月ちょっとしか付き合ってないわけだし、早い気も…)

そうこうしている内に、上条は美琴の隣に横になり、美琴へと手を伸ばす。

(き、きた…!)

伸ばされた手に対して多少の恐怖があってか美琴は目を瞑り、体をきゅっと強ばらせた。
だが上条の手は彼女の予想とは違うところへと伸ばされる。

「??あ、あれ?」
「悲しそうな顔すんなって。少なくとも今晩は隣にいてやるから」

上条の手は美琴の頭へと伸びており、優しく彼女の頭を撫でながら、諭すように囁いた。
それに美琴は予想を反する上条の行いに始めは半分がっかり、半分嬉しさで上条を見つめるが、次第に撫でられることによる心地よさで顔を緩ませる。
彼女はそこである銀髪シスターの『とうまはやっぱりとうまのままなんだよ』という言葉を思い出す。
そうだ、例え彼がどこにいくことになったとしても、自分の前からいなくなることになったとしても、彼は彼。
彼女がこの言葉を使っている状況と本来言いたい意味とは恐らく違うだろうが、大意は変わらない。
こういうことはわかっている。
どれだけ取り繕っても、彼にはきっと全てお見通し。
そしてきっと彼には一番大切な存在なんていなく、恋人だからとかいうのも恐らくない。
彼にとって見れば彼をとりまく全ての存在が大切なんだ。
ただ偶々恋人という立ち位置に自分がいるから、日頃から一緒にいられるし見てもらえた。
それだけのこと…
彼をずっと隣に置いておくことはできないだろう。
彼はそういう人間だから。
そう思うとじゃあ彼にとって恋人はなんなんだと、少し悲しくなる。
でもこの立ち位置にいるからこそ今こうして隣にいることができるし、彼に甘えることも甘えさせることもできる。
これは"彼女"である自分だけに許される特権。
それができるなら、恋人だからと言って彼を独り占めできないと知っても、恋人という立ち位置も存外悪くない。

「当麻…」

自分を撫でてくれる上条に身を寄せ、彼の体に手をまわす。
まわした手から直接伝わる彼の体温がとても愛おしくて、心地よい。
こうやって彼の名前を呼べるのも、こうして一緒にベッドで身を寄せられるのも恋人の特権。

「今日は色々あって疲れただろ。朝までこうしてやるからゆっくり休め」
「……ぅん」

美琴はふと今の彼の表情が気になって、彼の顔を覗き込む。
彼の表情はとても優しいもので、見つめているだけでもなんだか心が軽くなった気がした。
見つめられていることが少し疑問に思ったのか、どうしたと不思議そうに聞かれたが敢えて言葉にはせずにに、軽く微笑んだ。
それだけでも十分伝わると思ったから。
その表情で軽く戸惑う彼が何だかどうしようもなく可愛く思えて、彼の体にまわした手の力を強くする。
本当は離れたくない存在を、今だけでもここにとどめておくために。
今宵は晴天、月明かりに照らされ二人は眠りに落ちた。
共に"大切な"存在に包まれながら。

416:2010/04/20(火) 19:23:13 ID:.VOhqhek
以上です。
展開早いかなぁ…?
あと、昨日でた美琴の心情は表現できてるだろうか…
今回も批評があればどぞ。

では失礼します。
ありがとうございました。
少しでも皆さんに楽しんでもらえたら幸いです。

417■■■■:2010/04/20(火) 19:46:35 ID:OQXlskfk
上条さんの鋼鉄の理性に乾杯w

418■■■■:2010/04/20(火) 20:05:32 ID:HROmwetA
書き手達さんGJ!!

>>402
別にいいじゃん「オワレ」で

逆にそういうツッコミするほうがこのスレの空気悪くしてると思う

419■■■■:2010/04/20(火) 20:33:07 ID:L0NvgWow
>>416
GJなんだぜ!
上条さん理性ぱねぇW

420■■■■:2010/04/20(火) 20:58:04 ID:MFqyfam2
>>405
GJです!
こういうネタは大好きです

>>416
GJです!
上条さん、なんでその状態で寝れるかが不思議です
鉄壁の理性にびっくり!

421gekoko:2010/04/20(火) 21:10:01 ID:iDDaU03I
今だ!

小ネタを一つ、投下したいと思います。多分、21:15くらいになります。


いや、一つ・・・まあいいや。

422生と死の間で〜美琴〜:2010/04/20(火) 21:16:38 ID:iDDaU03I
「無視すんなやゴラァ!!!」
もはや定番となったこのフレーズを叫びながら雷撃を飛ばす。もちろん標的は憎いほどいとしいあのツンツン頭。
これが本当に定番通りなら、なんとか雷撃を打ち消すのだろうが、今日の上条は少し様子がおかしかった。


いつものような閃光、爆音。その向こうにはいつものように困った顔で右手を突き出しているあいつがいるはずだった。

はずだったのに。


「……えっ」
思わず声が出てしまった。何かが焦げたようなにおいがする。そこには地面に横たわるあいつがいた。


「ちょっとアンタ! しっかりしなさいよ」
あせって駆け寄る。返事はない。呼吸もしていない。生きているかすら定かでなかった。











「先生、アイツは……」
「助けるのが僕の仕事だよ。一応、僕もプロだからね、それに、彼の体はファンタジーだから」
カエル顔の医者は飄々と答えた。その言葉に美琴を責める色はない。もっとも、今の彼女を見て責めることができるはずはないのだが。
「よかった……」
自然と言葉が出てきた。心の底からほっとした。
「とはいっても、まだ意識は戻ってないよ。努力はするけど、いつ目を覚ますかは分からないっていうのが正直なところだね、ちゃんと看病するんだよ」
加害者である美琴にまで気を遣う医師に感謝をしつつ、彼女は上条当麻のいる病室に向かった。



その日から、美琴は毎日、上条の病室に通った。
学校に行く前、放課後。ぎりぎりの時間までその日の出来事を話した。
上条は何事もなかったかのように眠り続ける。返事が返ってくることなどない。
そんな上条を見るたびに美琴は激しい後悔にさいなまれた。それでも、大好きなアイツといる時間がいとしかった。
激しい自己嫌悪、後悔、罪悪感。点滴で生きながらえている上条を思うと食べ物ものどを通らず、眠り続けている上条を思うと夜眠ることもできなかった。

そんな生活を一週間ほどつづけると、徐々に学校を休むようになり、いつしか寮と病院の往復が生活のすべてとなっていった。




「お食事を取られてはいかがですか?お姉さま」
ルームメイトが心配をして声をかけてくる。
「気にしないで黒子。いまそんな気分じゃない」
「またお姉さまはあの殿方のことでお悩みですのね……でも、それとこれとは話は別じゃありませんこと?」
その言葉に無性に腹が立ち、気づいたら怒鳴っていた。
「うるさい!あんたに何がわかるっていうの!」
「なにもわかりませんわ。何一つ素直な気持ちを伝えられないでいる人のことなんて」
返す言葉もない。黙ったままの美琴に黒子はため息をひとつつき、諭すように語りかけた。
「今日のところは大目に見ますの。よく考えてくださいまし、あの殿方に何を伝えなければならないのか、何を伝えたいのかを」





翌日、美琴はいつものように少年のもとに向かった。そして、いつものように少年に語りかけようとする。
そのとき、ルームメイトの言葉がよぎる。

私はこいつに何を伝えなければならないのだろう?
私はこいつに何を伝えたいのだろう?
わからない?いや、わかってる。


今なら言える。いつもと違う言葉を。

423生と死の間で〜美琴〜:2010/04/20(火) 21:17:20 ID:iDDaU03I
「よく考えてみたら、まだアンタに謝ってなかったわね。本当にゴメン。
これまでは『鈍感なアンタのせいよ』とか何とか言ってごまかしていたけど、それは違うわよね、悪いのは私。
……ほんとはね、アンタにかまってほしかったの。アンタと一緒にいたかったの。でもアンタを前にすると何を話せばいいかわからなくて。
今考えるとバカな話よね、素直に言えばよかったのに。でも、アンタが断ったらどうしようとか、くだらないこと考えて怖くなって身動きとれなくなってた。
そう、私は……アンタが好きなのよ、どうしようもないくらい。だからさ、だから……早く、目を覚ましてよ……」

意識のない上条には届くはずのない声。美琴もそのことは痛いほどわかっていた。だから決心していた。この少年が聞いているとき、もう一回聞かせてやろうと。
決意を込めて上条の右手を握る。確かなぬくもりが心地よかった。



「えっ?」
意識のないはずの上条の手が、今、確かに自分の手を握り返してきた。
「アンタ、もしかして目が覚めた?返事しなさいよ」
藁にもすがるような思いで声をかける。すると、上条の目がゆっくりと開いていった。
「目が……覚めたのね。よかった……」
涙声になりながら、とぎれとぎれの言葉を絞り出して上条に伝える。
「ごめん……あんたを見ると素直になれなくて、こんなことになって……」
美琴は必死に言葉を紡ぐ。安堵からか、後悔からか、自責からか、涙は止まらなかった。
上条はそんな美琴を見て優しい笑みを浮かべながらこういった。
「大丈夫、全部聞いてた。」



「俺さ、今まで真っ暗な世界にいる悪夢みたいなもの見てたんだ。いや、夢……じゃないな、外の声とか、ちょっとは聞こえてたし。
そこで俺はずっとひとりきりでさ、寂しかった。
御坂は何回もここにきて俺に話をしてくれたよな。あれ、すっげえ嬉しかったんだぞ。その時間だけは、なんつーか、あったかかった。独りじゃないって思えた。
今さっきだって、お前の声はちゃんと届いてたんだ。だからもういい。ありがとな、美琴」

照れながら目の前の少年はこういった。不器用な言葉だった。そして、優しい言葉だった。

上条の胸に顔を押し付け、涙が枯れるまで泣いた。今回は彼の優しさに甘えていたかった。

424生と死の間で〜当麻〜:2010/04/20(火) 21:19:04 ID:iDDaU03I
上条当麻は不幸だった、いつものように。
白いシスターに噛みつかれ、クラスメイトに殴られ、補習で干されるといういつものメニューを消化しきって満身創痍の家路の途中、いつもと違うことが起きた。
不意に後ろから電撃のはじける音がした。振り向き右手をかざそうと思う間もなく、上条の意識は闇に落ちた。




「ここは……?」
何やら遠くで声が聞こえる。誰の声だろう。
「……っと、……た!…っかり……さい!」
ああ、御坂か、何やら必死だな。そうか、電撃が当たったからか。よし、起きて返事を……

そう思った時、上条は自分の体が動かないことに気付いた。目も開けられない。声も出せない。意識もぼんやりとした闇の中だ。
「俺、もしかして死んだ?」




病院に運ばれ、処置されるらしい。顔なじみのあの医者だ。最善は尽くすだろう。
そんな、どこか他人事のように考えている自分に驚きつつ、もう一度上条は闇の中に落ちて行った。



それから、どれくらい時が経っただろう、どうやら助かったらしい。坊さんは訪ねてきてないもんな。
それでも、体は動かず、暗い世界の中、独りでいた。
「独りって、さみしいんだな」
そう漏らしても、誰も聞いてくれるわけでもない。
そんななか、美琴が訪ねてきているときは、唯一、上条が孤独でない時間だった。
彼女が語ることは、学校での出来事、怖い寮監の話、変態ルームメイトの愚痴など、とりとめのないものだった。
それでも、少年の心は救われた。

だが、徐々に美琴の声が弱弱しくなっていった。
そんな美琴の声を聞くのが辛くて、何もできない自分に腹が立った。そして寂しかった。真っ暗な世界に一人取り残されるようで。

425生と死の間で〜当麻〜:2010/04/20(火) 21:20:01 ID:iDDaU03I
今回も、美琴が話を始めた。うれしい反面、辛くもあった。
だが、今回は違った。弱弱しくも思いのこもった言葉だった。




「よく考えてみたら、まだアンタに謝ってなかったわね。本当にゴメン。
これまでは『鈍感なアンタのせいよ』とか何とか言ってごまかしていたけど、それは違うわよね、悪いのは私。
……ほんとはね、アンタにかまってほしかったの。アンタと一緒にいたかったの。でもアンタを前にすると何を話せばいいかわからなくて。
今考えるとバカな話よね、素直に言えばよかったのに。でも、アンタが断ったらどうしようとか、くだらないこと考えて怖くなって身動きとれなくなってた。
そう、私は……アンタが好きなのよ、どうしようもないくらい。だからさ、だから……早く、目を覚ましてよ……」



上条の胸に熱いものが流れ込んできた。その時、右手に微かな、確かなぬくもりを感じた。





あいつはこんなに正直に向き合ってくれた。こんなに温かい言葉をくれた。あいつの望みをかなえたい。あいつと一緒にいたい。


心の底から願った時、右手のぬくもりが一層強くなった。
独りのさみしさから救ってくれた、そしてこんな自分を好きになってくれた。そんなあいつのいるところへ帰りたい。

そう願った時、上条の意識は暗い世界から飛び出した。



久しぶりに見た明るい世界。見慣れた病室もなんだか新鮮だ。
そしてそんな上条の前には、涙で顔をぐしゃぐしゃにした少女がいた。
必死に伝えようとする彼女は、とても痛々しくて。

「大丈夫、全部聞いてた」


気づいたらこう言っていた。

「俺さ、今まで真っ暗な世界にいる悪夢みたいなもの見てたんだ。いや、夢……じゃないな、外の声とか、ちょっとは聞こえてたし。
そこで俺はずっとひとりきりでさ、寂しかった。
御坂は何回もここにきて俺に話をしてくれたよな。あれ、すっげえ嬉しかったんだぞ。その時間だけは、なんつーか、あったかかった。独りじゃないって思えた。
今さっきだって、お前の声はちゃんと届いてたんだ。だからもういい。ありがとな、美琴」


そう言い終わると、より一層激しく泣きじゃくる美琴を抱き寄せた。腕の中にはさっきより確かで強いぬくもりがあった。

426gekoko:2010/04/20(火) 21:24:51 ID:iDDaU03I
投下終了です。

この場をお借りして、今までの先人たちに惜しみないGJを。
禁書二期までと言わず、この上琴オアシスが末永く活気にあふれたいいスレになりますように。


批評とか大歓迎です。とくに改行論議をよく読んでなかったのでそこら辺は自信ないですが。


需要があれば後日談を書きます。需要がなくても電波を受信したら書きます。




というわけで、ありがとうございました。

427■■■■:2010/04/20(火) 21:38:43 ID:eRwBF396
gekokoさんGJ!
美琴の電撃が上条さんを直撃してしまう話はありそうですが、
初めて見たような気がします。欝展開になるからかな。
でも最後に美琴が救われて良かった!

428■■■■:2010/04/20(火) 21:43:09 ID:MFqyfam2
>>426
GJです!
続きがぜひ読みたいです

429ION:2010/04/20(火) 22:22:50 ID:cQopMxzw
>>426
GJです

430アミノ酸:2010/04/20(火) 22:32:01 ID:ZtSTTxWY
皆様、こんばんは(*'-')ノ
今日は雨は晴れ上がることなく、いまだ降ってます。
返信させていただきます。

>>402
 オワレは私の気持ちというのかいろんな妄想強制終了〜というつもりで使ってましたが、微妙な表現になってしまうなら
ないほうが良いですね。ありがとうございます。

>>403
私の中になにかが降りてきたんです。初々しいですね、書き終わって自分で読んだらぎゃぁあってなりました。

>>404
見つめ合うっていいですよね。続くとしたらこの後、フリーズしている二人の間にツインテールがきっと来ますw

 雨はしとしとと降り続ける。
一つ傘の下、見つめ合う二人。
それを静かに見つめる一人の殺気。
交錯する3人の運命はいかに!

「お姉さまお迎えにあがりましたの」

つづきません!

感想ありがとうございます、参考になるのでこれからも宜しくお願いします。

書き手の皆様、それぞれの当麻と美琴像があり、読んでいてほっこりします。
盛り上げていきましょう!頑張ります!
被らなさそうなら小ネタを二つのバージョンで投下します。
35分頃に2、3レスお借りします。
宜しくお願いします

431アミノ酸:2010/04/20(火) 22:35:25 ID:ZtSTTxWY
小ネタ とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とビリビリver.1


「見つけたわよ!」
「げっ、ビリビリ中学生…」
 ツンツン頭が特徴のとある少年は、ふっ…不幸だ―と心底うんざりした顔をしている様にみえる。
「だ、れ、がビリビリだ!あたしにはっ、御坂美琴っていう名前があるんだから!」
 いい加減、名前で呼びなさいよゴラァァと叫ぶ少女、対する少年はえーでもお前は、ビリビリだしな…と、うーんと唸って
「やっぱビリビリだわ…」とボソっと呟いた。

「………バチッ」

『何でだぁぁぁーーーーーーーー!』

 バチ!ビリビリビリビリィィィイと電撃の槍が走り、少年を襲う。
あっぶねーじゃねぇかといった具合に、ほぼ条件反射で右手をかざし電撃は打ち消された。

「…ほらな、やっぱりビリビリだ」
「まだ言うかー!」
「ちょっビリビリ、それ当たったら死ぬから!」
 くるりと、少年は来た方向とは逆に反転し猛然と駆け出す。
「ちょっ、こら、待ちなさいよっ!」
 演算途中の電撃は、少年が走り出した事により中断され、不発に終わり。逃げるなぁーと少女は追いかける。


とある少年少女の追いかけっこが始まる。



―――っていう夢を見たんだけどさ


「…その夢、俺も見たぞ」
「えっ!当麻も見たの?」
「ああ、美琴の話を聞いてたら思い出した」
「あ、あのさ…夢の中のあたしはどんなだったの?」
「なんつーか、俺はビリビリ中学生って呼んでいて、その名の通り常にビリビリ…」
 しかも追い掛けまわされて、そりゃもう大変でしたよと答えた。
「………バチッ」

 あれ?何か今、不穏な音が聞こえた気がする。

「ねぇ?当麻〜追いかけっこって…楽しそうだと思わない?」
「そ、そうでせうか?」
「試してみようか」
 
 バチバチ!

とある幼馴染の追いかけっこが始まった。

432アミノ酸:2010/04/20(火) 22:36:56 ID:ZtSTTxWY
小ネタ とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とビリビリver.2


「見つけたわよ!」
「げっ、ビリビリ中学生…」
 ツンツン頭が特徴のとある少年は、ふっ…不幸だーと心底うんざりした顔をしている様にみえる。
「だ、れ、がビリビリだ!あたしにはっ、御坂美琴っていう名前があるんだから!」
 いい加減、名前で呼びなさいよゴラァァと叫ぶ少女、対する少年はえーでもお前は、ビリビリだしな…と、うーんと唸って
「やっぱビリビリだわ…」とボソっと呟いた。

「………バチッ」

『何でだぁぁぁーーーーーーーー!』

 バチ!ビリビリビリビリィィィイと電撃の槍が走り、少年を襲う。
あっぶねーじゃねぇかといった具合に、ほぼ条件反射で右手をかざし電撃は打ち消された。

「…ほらな、やっぱりビリビリだ」
「まだ言うかー!」
「ちょっビリビリ、それ当たったら死ぬから!」
 くるりと、少年は来た方向とは逆に反転し猛然と駆け出す。
「ちょっ、こら、待ちなさいよっ!」
 演算途中の電撃は、少年が走り出した事により中断され、不発に終わり。逃げるなぁーと少女は追いかける。


とある少年少女の追いかけっこが始まる。



―――っていう夢を見たんだけどな


「その夢、あたしも見たわよ」
「……美琴も見たのか?」
「うん、当麻の話を聞いてたら思い出した」
「なっなぁ…夢の中の俺はどんなのだったんだ?」
「んー…人の事をビリビリって呼んでくるし、やたら逃げ足早いし」
 追いかけるのに苦労したわよとちょっと怒ってみる。

 でも夢の中の当麻よりも

「こっちの当麻が好きかな………って、あ、えっとその…」
「……えっ?」

「「………」」

「ななななっなんでもない!なんでも無いから!そう、い、今のはそういう意味じゃなくて…」
「ど、どういう意味でせう?って美琴…何故走る?!」


とある幼馴染の追いかけっこが始まった。

433アミノ酸:2010/04/20(火) 22:39:29 ID:ZtSTTxWY
以上になります<(_ _)>

どちらのバージョンが皆様お好みでしょうか?

感想を頂けると参考になるのでまた宜しくお願いします、でわでわ。

434■■■■:2010/04/20(火) 22:46:35 ID:DT/eN4Kk
>>433
GJ!  後者が好みです

435■■■■:2010/04/20(火) 22:50:52 ID:wFfddbEM
GJです
自分はver2のほうが好きです

436■■■■:2010/04/20(火) 22:51:04 ID:wFfddbEM
GJです
自分はver2のほうが好きです

437■■■■:2010/04/20(火) 22:53:58 ID:tNROkLXU
>>426
よーしこっからが本番だ、続き待ってるよGJ!
>>433
GJ!俺的には後者かなー。
美琴が逃げる側なのはなんか新鮮w

438ION:2010/04/20(火) 22:55:02 ID:cQopMxzw
久々にかいてみようと思います。

ショートネタ「星を見に行こう!」です。
1スレ使います。

5分後に投下しますね。

439ION:2010/04/20(火) 23:00:54 ID:cQopMxzw
「あの…御坂さん?怒ってらっしゃいますか?」
「怒ってなんかないわよ。」

上条は、美琴との約束を破った。
上条はそれはそれはきれいな土下座をして謝ったのだが、美琴はそれでも許さなかったために今に至る。

「それじゃ、いくわよね?デート!」
「ひぇええええ!今日はそういう日じゃないんですよ。上条さんは日々の補習と宿題に追われて大変なのです。」
「あんたが約束守らないからこういうことになるのよ。」

「不幸だ…」

「なんか言ったかしら?」

美琴はジト目で上条を見る。

「いいえ。なにも!」

「それじゃ、いきましょ?と・う・ま!」

上条に電撃走る。―――

美琴は気分が良くなったのか笑顔でしかも鼻歌つきのサービスを提供している。
上条は、罰ゲームだといわれて美琴の持っていた大きなカバンを持たされている。それがとても重い。
行先は美琴だけが知っている。

2人は、いつの間にか静かな高台の上にいた。ここからの眺めはとてもきれいだと評判らしい。

「ついたわよ?」
「やれやれ…上条さんはとても疲れましたよ。ったく。」
「あんたがわるいんでしょ?ったく。もうそろそろ見える頃なんだけどさ。」
「そうか。そんじゃ、願い事でも3回言いますか。」
「願い事か…そうね…」

美琴は、願い事を心の中で絞る。

「あんたの願い事って、もしかして不幸なことが起こりませんようにとかじゃないの?」
「なんでわかったんですか?」
「わかるわよ。私を誰だと思ってるの?」
「びりびr「びりびりゆうなぁ!」」
「でも、それは可能性があるならって。願い事は、あとで公表だな。」
「うん。分かった。ってながれてるわ!」

空は、とっくの間に暗くなっている。夜景がとても美しい。
空から流星群が降ってくる。二人は、願い事を3回言おうと頑張っていた。
この二人は現実的なところもあるが、メルヘンチックなところもある。似たもの同士である。

上条と美琴は二人並んで流星群を眺めている。
さりげなく、上条は美琴の顔を自分のほうに近付ける。

そして、美琴は突然起こったことに言葉が出ない。

「…今お願いしたのは、おまえと…御坂とずっと一緒にいられたらいいなって」
「わたしとあんたが?て、あんたがそう思ってたの?」
「ずるいわよ…当麻は当麻なんだね。…チュッ!…」
「あの暴食シスターのものまねはすんなよ。」

二人の顔の距離はかなり近い。あと数センチで鼻が触れるくらい。

無数に空を飾る満点の星空の下で不釣り合いなカップルがいう。

「「あんた(お前)みたいなバカ(ビリビリ)を愛せるのはこの(俺)私しかいないわよ!(ぞ?)」」

二人は見合って、春の夜空に響き渡るような声で笑った。

440auau:2010/04/20(火) 23:31:19 ID:pJ3sCcPw
どうも、皆さんこんばんわ。
感想ありがとうございました。
今から感想返しを・・・・・・の前に感想を書きます!

アミノ酸さん>>
幼馴染シリーズ、いつも楽しみにしてますよ!
自分はifネタとか大好きなんで、見ててニヤニヤしてます!
んで追いかけっこですが、後者の方が好きですね。
美琴を追いかける上条さん・・・・・・いいですね!これ!

IONさん>>
星を二人っきりで見る。
うん、ニヤニヤするには絶好のシチュエーションですね!
二人の距離が近付く表現を見るたびにもっと上琴を!と思ってしまいます。
願い事かなうといいですね!上条さん!美琴!


・・・・・・では感想返しをば

399>>
続きは勿論ありますよ!
次は四章いちゃいちゃ増やせると良いななんて思ってます。
上条さんの子供はやっぱり上条さんにそっくりだと思います
なんで説教は絶対してますねww
デートニヤニヤありがとうございました!でも、ちゃんと寝てくださいよ?

403>>
子供たちの中も気になってくれてありがとうございます!
当瑠と美詠と美春にはまだまだ活躍して貰わないと・・・・・・
上条さんと美琴はもっといちゃいちゃさせないとな・・・・・・

3-351さん>>
とりあえず二人の距離は微妙なものだと思います
恋人のような友達のような一線を越えてない関係
ムズかゆい感じが出ていれば幸い?ですかね
スレ汚しじゃなかったですか?良かったです。

読んでくださった方々、無駄に長い文章をわざわざ読んでくださり
ありがとうございます!四章も頑張って書いて行こうと思います!では

441ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:51:13 ID:YcxHqO46
書き手&読み手の皆さまみんなみんなGJです!
このスレを毎日読むのが生きがいになっていますw

お久し振りです。
前回、何名かの方が続編を応援して下さり、何とか毎日少しずつ書き溜めておりました。

やっと…やっとパート5が出来上がったので、5分後に投下させて頂ければと思います。
予定は…12レスくらい?

442ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:56:07 ID:YcxHqO46
―――とある寮の一室


「ばか当麻!」

そろそろ日も落ちようとする、たそがれ時。
空気を裂くような叫び声と、バチンッという音がした直後、ある部屋のドアがズバァッと開き、少女が飛び出してきた。
今にも溢れんばかりの涙を目に浮かべた彼女―御坂美琴―は、風巻くほどの速さで走り去った。



パタンッという音と共に、開きっ放しだったドアが閉まる。
風が吹いたりして勝手に閉まったわけではない。
ドアノブを握り、外界から自分の部屋を遮断したのは、黒い髪がウニのようにトゲトゲした少年である。
幾度もの不幸に見舞われ、しかし最近は有り余るほどの幸運に包まれている少年。
その少年は現在、頬を赤く腫らしていた。
というのも、先ほどの空気を震わせたような音は、いつもの雷撃ではなく、彼の右手の効果領域の外の攻撃―――手っ取り早く言ってしまえば、美琴の怒り120%がこもった強烈な平手打ちによるものだったのだ。

「痛っつー…アイツ、電気使い以外の能力も持ってるんじゃねぇか?」

一人で呟いてみるが、そんなことをしたところで痛みは引かない。

「はぁ…あんなに怒った美琴は初めてだな…そりゃそうか…」

先ほどの状況を思い出し、頬と、それから胸の奥がずきん、と痛む。



「とあるカエルのマスコットがイギリスでまさかの大流行!」

いつものようにお昼ご飯を一緒に食べ、午後のゆったりとした時間を共有していたとき、点けっ放しにしていたテレビからそんな言葉が飛び出した。
常盤台のお嬢様はレベル5の誇る超スピードで、ぴくっと反応し、テレビの方へ顔を向けた。
アナウンサーの話によると、日本から帰国したとある少女がそのカエルマスコットを所持しており、そこから爆発的に広まり、ついには英国限定商品なんてご当地アイテム的な物まで売り出されるらしい。

「ほれみなさい!ゲコ太の愛らしさはもう世界基準なのよ!!」

ニュースに釘付けだった美琴は、上条の方へ顔を向け、勝ち誇ったような声をあげる。
そして、私たちもおそろいの…と言いながら上条の携帯に目を向け、その動きを止める。
―――今までたった一つだけ付いていた緑色のストラップが無くなっている。
カエルを模したキャラクターのついたそれは、美琴にとって大切な想い出の一つでもあり、自分の携帯にも同じ物が下がっている。

「あれ…当麻?携帯どうしたの?」
「携帯?ん、あ、あぁ、ストラップですか…?」
「まさか…アンタ無くしたって言うんじゃないでしょうね!?」

曖昧な上条の返事に彼の不幸属性を足し合わせた結果、美琴は苛立ちを覚える解答を導き出す。

「いやいやいやいや!そんな恐ろしいこと!!」
「じゃあなんでストラップを外してるのよ!理由を聞かせなさい!」

美琴の周りでバチバチと空気が帯電する。
言葉を選んでいるような上条の様子に、その電圧はどんどん高まっていった。

「まさか…また私に隠し事でも―――」
「う…実は…、ちょっといま御坂妹に貸しててな…」
「え!?なんで!?」

予想外の返答に空気中の電気が霧散していく。

「べ、別に…やったわけじゃねぇよ。ちょっと貸してるだけで」
「そういうことじゃないの!」

歯切れの悪い答え方に、いらつく美琴。
目に涙が浮かぶのは、怒りのせいだけではない。

「だって…あれは大切な想い出で…二人の初めてのおそろいで…」

なんとか気持ちを鎮めようとするが、衝動的に湧き上がる様々な感情に言葉を繋ぐのが難しくなる。

「だから貸してるだけだって。ちゃんとすぐ返してもらうから」
「そんな言葉聞きたくないわよ!!私の気持ちなんて一瞬も考えなかったんでしょ!!」

それで件のばか発言である。
怒りから能力の制御を諦めた美琴は、その右手を渾身の力で振り抜き、そのまま上条の顔を見ることなく部屋から走り去っていった。

443ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:57:06 ID:YcxHqO46



それから3日間、二人は会話どころか、会うことも連絡をとることもしなかった。
こんなことは恋人となって以来、初めてのことである。
美琴をこよなく愛するパートナーである(上条の恋のライバルとも言う)黒子ですら、上条っ気のない美琴に違和感を抱き、不安を覚えるほどだ。

「お姉様、あの殿方と何かありまして?」

黒子はベッドに俯せにになる美琴へ声をかけた。
ここのところ毎日、美琴はずっとベッドに倒れ込んでいる。
今日は休日ということもあり、もうお昼を過ぎているにも関わらず、美琴は朝からベッドを離れていない。
理由は明らかだと思う。
思うのだが、今までその理由を問うことが出来ずにいた。

「別に…」

やっとの決心で投げ掛けた問いに対して、返ってくる言葉はあまりに素っ気無いものであった。
いや、この美琴の様子を見れば、返事があっただけでも僥倖なのだろうか。

「この数日、ずっとお一人でいらっしゃる様子ですし、黒子は心配ですの」
「別に大丈夫よ。たまに会わない日が続くのだって、おかしくないでしょ」
「それはそうですが…」

ならば、どうしてそんな顔をするのか、と黒子は思う。
いつもの活発ではつらつとした表情は、どこにも見ることができない。
いつまでもこんなお姉様は見ていたくない。
黒子は苦しい面持ちを隠し、わざと明るい声を上げることにした。

「それでは、今日は黒子と女同士水入らずで愛を育みましょう、お・ね・え・さ・ま♪」

テレポートで颯爽と美琴の隣りに現れた黒子は、愛するお姉様の細い体に抱き付き、柔らかな肌へと手指を這わせた。
いつもの怒鳴り声&ビリビリ攻撃が来るのは覚悟の上だが、それで日常を少しでも取り戻せるのであれば安いものだ。

「黒子…?………そうね、たまにはアンタと過ごすのもいいかもね……」

予想外の返答に、黒子の動きが止まる。
あまりに乾いた言葉。
求めていた答えは、それではない。

444ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:57:34 ID:YcxHqO46

「………嫌ですの」
「何よ、自分で誘ってきたんでしょ。いつもだったら喜んで飛び付くとこじゃない」
「………お姉様、何がありましたの?」
「何もないって言ってるでしょ!アイツのことだって、黒子には関係ないじゃない!」

黒子の肩がビクッと震えた。
それも望んでいた答えではない。
美琴の放つ一字一句が心の奥に突き刺さり、胸を抉るような痛みを感じる。
しかし、黒子はそこに美琴の中にある不安の一端を垣間見た気がした。
そこで黒子は一切の感情を抑え、極めて優しい声で美琴に語りかける。

「お姉様、元よりわたくしには茨の道しか残されておりませんの」

パートナーの言葉の内に何かを感じ取ったのか、美琴がぴたりと動きを止める。

「一緒に過ごすお二人の笑顔を陰より見守るのか、ふさぎ込み傷付いたお姉様のお隣りで、一人偽りの笑顔を浮かべて過ごすのか」
「黒子…」
「ならば一人でも笑顔の多い世界を望んで何が悪いのでしょうか」
「黒子……」
「大切なお姉様。傷つけると知って、あえて申上げます」

一呼吸おく黒子。
真剣な表情に、美琴は目をそらすことができない。

「お姉様は、上条様を信じることができませんの?」

今度は、美琴が肩を震わせた。
実は自分でも分かっていたのだ。
上条は自分に対して『何か』をしたわけではない。
ただ、彼の行為が許せなくて、その真意が掴めなくて、衝動的に感情をぶつけてしまったのだ。

「何があったのか、わたくしには分かりませんし、そのことで何かを申し上げる資格がないのも自覚しておりますの」

一言ずつ絞り出すような黒子の口調に、美琴は自分がどれだけ後輩の心に傷を負わせたのかを理解した。
その事実を受け止め、美琴は黒子の目を真正面から見つめ、次の言葉を待つ。

「あの類人猿は心底頭にくる存在ですが、お姉様の全てを受け止められる方はあの方しかいらっしゃらないのでしょう?」

もちろん超能力という意味だけではなく、と言葉を続ける。

痛いほど突き刺さったその言葉は、しかし暖かみに満ち溢れていて、そして―――今の美琴には、非常に心強かった。

「ごめんね…黒子…」
「まったくお姉様は常盤台のエースなのですから、こんなことで一々お気持ちを揺るがせてはなりませんの」
「…ありがとう、黒子」

頬に涙の筋を浮かべた美琴は、それでも僅かに笑顔を向ける。
いつものお姉様の笑顔に黒子はパッと顔を赤らめて目を逸らし、早口にブツブツと呟きを漏らした。

「お、お姉様がわたくしにありがとう…!黒子、人生最大の喜びを噛み締めておりますの!………それにしても、あの類人猿、お姉様をこれほどの失意の底へと追い込むなんて、今後どんな振る舞いをしたところで、ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・で・す・の…」

黒子が『真っ黒子』になっている中、突然ゲコゲコという電子音がした。
二人はバッとその発信源へと首を向け、次にお互いの顔を見合わせた。
無言でうなづく黒子。
美琴は軽く深呼吸をして、ゆっくりとゲコゲコ携帯を開く。

「会いたい」

たった4文字。
肯定も否定もない4文字。
その4文字に美琴は言葉にならぬ安心感を抱いていた。
瞳に力が宿る。
―――きっと大丈夫。

「黒子、」

手早く靴を履き、行ってきますを告げるために振り向くと、自分の後輩が右手を伸ばすのが見えた。

「私の愛する常盤台のエースは、男一人をモノにするくらい、お手の物なんですのよ」

ヒュン、という音が鳴り、エースはその姿を消す。
部屋にはツインテールの少女が一人残された。

「行ってらっしゃいませ、お姉様」

少女は、ため息混じりに呟く。
先ほどは、あぁは言ったものの、やはり胸の奥にちくりと刺さるものがある。
こんな顔は見せたくはない。
それにしても―――

「たった4文字に負けるなんて、本当に憎たらしい男ですの」

ふっ…と、ほんのわずかに、雫がこぼれた。

445ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:59:11 ID:YcxHqO46



―――とある公園


「ったく…場所も知らせないで会いたいってどういうつもりよ!」

茶色い髪をした少女が目の前の少年へと声を掛ける。
その声には怒りも含まれていたが、同時に喜びや安心のような感情も混じっていることに美琴は気が付いた。
彼と同じ時間を共有すること、その大切さを改めて実感する。

「すまん…ちょっと緊張しててな…」
「う…まぁ…それは私にも原因があるというか…」

むしろ大半は自分のせいなのではないかと思うのだが、やっぱり自分だって傷ついたし悩んだしで、素直には言葉に出来ないものだ。

「あの…な…、美琴…」
「う、うん…、何、当麻?」

重い車輪がゆっくりと回り出すように、二人は言葉を交える。

「ストラップのことだけど、俺、お前の気持ちをちっとも考えてなかった…」
「ううん…、私だって、何も聞かずにぶっちゃって…ごめんね、痛かった…?」
「まぁな…ビリビリ以外に能力でも持ってるんじゃないかと思ったぜ…」

上条は、痛みを思い出すように頬をなでる。

「ご、ごめんね!そんなに力を入れるつもりは無かったんだけど…」
「いや、あれは俺が悪かったんだし、美琴は気にしないで良いんだ。あのストラップが大切な物だってことは、ちゃんと分かってたのにな」
「当麻…」

上条に優しく撫でられ、うっとりとした目をする美琴を見て、腫れが引いて本当に良かった、と思う。
実は、次の日に真っ赤に腫れ上がり、誰かに会うたびに、いい気味だ、とか、ざまあみやがれ、とか、ついに上条神話の崩壊か!?なんて言われたのは絶対に秘密だ。

「さてさて美琴さん、今日お呼びしたのは、他でもなくストラップを外した理由をお伝えしたかったからなのですよ」
「う、うん…!」

上条の軽い調子に、美琴は逆に緊張の様子を浮かべる。
あれから何度もその理由を考えたのだが、決定的な解答を導き出すことは出来なかった。
無くしたわけではないとすると、なぜ上条は大切なストラップを外してしまったのだろうか。
そんな疑問を抱く美琴に、上条はポケットからリボンのついた小さな袋を取り出す。

「これ…お前にプレゼントしたかったんだ」
「え…?」

予想外の言葉に困惑しつつも、その贈り物を手にする。

「あ、ありがとう…。開けていい?」
「あぁ、そのために渡したんだからな」

細い指でリボンを丁寧にほどき、袋を開く。

「これ―――!」

中から美琴が取り出したのは、小さなティーカップを手に、不敵な表情を浮かべるカエルの人形である。
ご当地限定ですよ!と言わんばかりに、そのカップにはイギリスの国旗がデザインされている。

「英国限定発売のゲコ太じゃない!!どうしたの!?」
「いや、この間インデックスさんから電話がかかってきましてね」



約一週間前、真夜中に上条家の電話が鳴り響いた。
こんな時間に何ですかこのやろー間違い電話だったらただじゃおかねーぞこの酔っ払いめ、なんて不平たらたらで受話器をとると、元居候さんからであった。
インデックスの話によると、イギリスでは今、ゲコ太がかなりの大流行であり、それを持ち込んだ彼女も一部のファンから伝道師扱いされているらしい。
はっきり言って、大食い少女が信者様方からたらふくお菓子や食料を頂戴したとかいう話は心の底からどうでも良い話だったのだが、その大流行グッズのイギリス限定版が出るという話には上条の耳もぴくりと食い付きを見せた。

…結論から言えば、インデックスが役立ったのは情報提供までであった。
伝道師と持ち上げられていても、彼女自身はゲコ太に対してなんの執心もない。
ただでさえ品薄な商品を手に入れるために努力をするなんて、一日の大半を食に追われているシスターには考えの遠く及ばぬ領域の話なのだ。

しかし、そこに救いの女神が降臨する。
それが御坂妹だった。
浮かない顔で街を歩いていた上条に、相変わらずの薄い表情と妙な口調で、どうしたのですかと呼び掛けてきたのだ。
上条は別に頼るつもりもなく、自分の目下の悩みを話した。
すると、イギリスにいる別個体に調達を依頼すれば良い、と一瞬で問題を解決してくれた。
その後、上条は彼女にジャンボなフルーツのパフェをご馳走することになったのだが、それでも上条には御坂妹が天の御使いに見えた。

446ほのラブ同盟:2010/04/20(火) 23:59:37 ID:YcxHqO46
「それで、探すための手掛かりとしてストラップを渡してたってわけなのですよ」
「えっ…?」

長き説明を終え、さぁこれですっかり仲直りですよ、と考えていた上条は、美琴の上げた驚きの声に怪訝な顔をする。

「どうした、美琴?これでみんな解決万々歳だと上条さんは思ったりしているのですが…?」
「あのさ…あの子たちなら、誰か一人に一度でも見せればみんなに伝わるんじゃないの?」
「………あれ?」

時が止まる。
あれあれ、今回の大ゲンカって実は不要でした?例のあれってやつ?いつものパターンですか?なんて考えがよぎった瞬間―――

「………ア…ン…タ…ってヤツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

会えなかった数日の間に溜め込んだストレスを全て吐き出すかのような雷撃に本気で死期を悟った上条は、生物としての反射でその目を閉じながら、これまでの経験から来る反射で右手を突き出した。

…が、いつもの僅かばかりの手応えすらやって来ないことを不思議に思い、両目を開いた。
すると、

「御坂妹…?」

自分の恋人とそっくりな顔立ちをした少女が、自分を庇うように立っていた。

「なんでこ…」
「ばか!!!!!アンタ何やってんの!?」

なんでここに、と問う前に、美琴の怒号がそれを遮った。
「私が瞬間的に逸らさなかったら、アンタは死んでたかもしれないのよ!?」
「すみません、とミサカは自分の衝動的な行為に対して謝罪の意を表明します」

まだ怒りの表情を浮かべる美琴に対して、感情の起伏が少ない妹。
それを見ていた上条は、冷静さを取り戻し、先ほどの疑問を御坂妹にぶつける。

「そうだ、お前どうしてこんなとこにいるんだ?」
「お姉様、ゲコ太探しのために、このストラップを貸すように言ったのは私です、とミサカは自分の嘘を告白します」

上条の質問を思いっ切りスルーした御坂妹は、スカートのポケットから例のストラップを取り出し、美琴にそれを見せる。


「アンタが?なんでそんなこと…。自分でネットワークの使い方は分かってるんでしょ!?」
「…その質問に返答する前に、あなたは先に自分の家へ帰ってくれませんか、とミサカは自分の願いを直球で伝えます」

今度は美琴の言葉に答えず、上条の方へ顔を向け、『お願い』をした。
人のこと思いっ切りスルーしておいて二言目にはそれですか…、と上条は面食らったが、御坂妹の薄い表情の奥に、何か真剣なものを感じ、分かった、と一言告げると寮の方へ歩みを向けた。

「ちょ、ちょっと当麻!」
「よく分からねぇけど、多分妹は大切な話があるんだと思う。ウチの鍵は開けておくから、いつでも来いよ」

じゃあな、と告げると、上条は本当に去って行った。
その背中が見えなくなるまで、同じ顔をした二人の少女は黙っていたが、やがて美琴が口を開いた。

447ほのラブ同盟:2010/04/21(水) 00:00:31 ID:nMkP21yc



「それで…、アンタはどういうつもりなの?」
「嘘をついたことは謝ります、とミサカは素直に自分の非を認めます」
「それよ。アンタがこのゲコ太を手に入れるのに力を貸してくれたのは嬉しいんだけど、なんで当麻のストラップを取るようなことをしたの?」

それさえ無ければ、今回の件は全てハッピーエンドである。
上条と妹達からのサプライズプレゼント、それだけではなぜいけなかったのか。

「…寂しかったのです、とミサカは自分の感情を吐露します」
「えっ…?」

今日何度目だか分からない驚きの声を上げる。

「あの人と一緒に過ごすようになってから、お姉様が病院に来て下さることが、ほとんど無くなってしまいました、とミサカは甘えたい盛りの少女であることをアピールします」
「あ…」

そういえば、と思い返す。
上条と恋人同士になる前は、週に1、2回は妹達のいる病院に顔を見せていた。
そしてその回数は今、確実に減っている。

「ごめん…」

今日は謝ってばかりだな、と思いながら、頭を巡らせる。
妹達は見た目こそ自分と同い年だが、その内側にあるものは違う。
まだ幼い心は、きっと家族とも言える自分との繋がりを強く求めている。
そんな中で、突然姿を見せることがなくなれば、不安に襲われるのも当然であろう。

「アンタは…私に自分のことを見て欲しかったの…?」
「それも、あります。とミサカは自分の正直な想いを言葉にする決心をします」
「それ『も』…?」

含みのある言い方に眉をひそめる。
妹達がこのような言い回しをするのはとても珍しいことのように感じる。

「ミサカは意地悪をしてしまいました、とミサカは自己嫌悪に陥りながらも自分の罪を認めます」
「意地悪?」
「お姉様。お姉様が、あの人と一緒に過ごしてる姿を見ていると、ここが痛むのです、とミサカは不可思議な現象に困惑します」

御坂妹は、痛みに耐えるように目を閉じながら、その手を胸に当てた。

「アンタ、それって…」

それは恋―――
しかし、美琴はそうとは告げられなかった。
妹のもつあやふやな感情に名前をつけてしまったら、妹がその気持ちの存在に気付いてしまったら…たった7人しかいないレベル5、学園都市第3位の美琴にも怖いものがあった。

「―――ごめん…ごめんね…」

だから、ただ謝るしかなかった。

「なぜお姉様が謝るのですか、お姉様を傷つけたのはミサカが原因ではないのですか、とミサカは理解を超えた状況に疑問を浮かべます」
「そうかもしれない、けど」

辛い表情を浮かべる美琴に、妹は淡々とした口調で言葉を繋げる。

「あのストラップは、ほんのちょっとの間、その日のうちに返そうと思っていました」
「しかし、手にした途端、ミサカの中に嫌な気持ちが広がったのです」

再び御坂妹の表情が曇りを見せる。
言葉を発する毎に間を空けるのは、自分の心中を言葉にし尽くすことが出来ないからだろうか。

「あの人の付けていた物。それがミサカの手元にあるということに夢中になってしまいました。でも…」

陰が、さらに広がる。

「すぐに見ていても空しいだけになりました。見る度に辛い気持ちになりました…」

一度、言葉を区切る。
ここまで自身の想いを言葉にするのは初めてのことではないだろうか。
慣れないことをしているからか、次の言葉を紡ぐ前に御坂妹は軽い深呼吸を挟んだ。

「やっぱり…このストラップはあの人とお姉様の物なのです、とミサカは長い独白をここに閉じます」
「アンタは………。…ごめん、頭ん中ぐちゃぐちゃすぎて、何て言っていいか分かんない…」

448ほのラブ同盟:2010/04/21(水) 00:00:57 ID:nMkP21yc


顔を右手で覆い、頭を抱える美琴の様子を見ながらも、妹は言葉を続ける。
それは、自分が冷静に想いを言葉に出来るうちに、なんとか美琴に伝えようとしているように見える。

「お姉様、ご存じですか。あの人は嘘が苦手なのです」

「この数日、お姉様とあの人が一緒にいる姿を、どのミサカも見ませんでした」

「一度、どうしたのかと聞いたのですが、大丈夫だとしか言いませんでした。が、その顔は苦しそうでした」

先ほどと同様に、頭の中の想いを言葉にし尽くせないようで、一言ずつに間を設ける。

「お姉様でないとダメなのです、あの人は、とミサカはお姉様に絶対的な真実を突き付けます」
「もういい…!それ以上続けちゃ駄目!アンタが苦しいだけじゃない!」

妹の肩に手をおき、その言葉を止めようとする。

「大丈夫ですよ。お姉様とあの人が幸せそうにしてることがミサカの喜びなのです、とミサカは笑顔で二人を祝福します」

その笑顔は、こぼれた涙の線でいっぱいだった。
まるで自分の涙に気が付かないように、御坂妹はその歪んだ笑顔を向け続ける。

「もうやめなさいよ…。…嘘が下手なのは、アンタもじゃない…」

自分の想い人が恋人へ贈るプレゼントの相談を受け、さらにはその用意までする。
その心の痛みとは、どれほどのものだろうか。

「ごめんね、私だけが良い気でいて…ごめんね、気付けなくて…ごめんね、臆病で…」「お姉様、この痛みは何ですか…、この涙は何ですか…、とミサカは制御の効かない感情に恐れを抱きます」
「それはね…、それがね…」

先ほどは言えなかった言葉。
しかし、苦しいほどに共感できる胸の痛みを知って尚、それを隠し続けることは出来なかった。

「それが…、恋、よ」

一言ずつ押し出すように呟く。
声と共に溢れた涙が美琴の頬をつたう。

「そうですか、これが、恋。では…ミサカのこれは、失恋、なのですか、とミサカは…胸に…穴が空いたような痛みを…」

御坂妹は、ほとんど言葉にならない声をかすれさせ、美琴へと倒れこんだ。
久し振りの繋がりを求めるように、美琴を細い腕で抱き締める。
美琴も、同じように手を回し、さらに雫をこぼした。

最後の問いには答えられなかった。
しかし、今自分は目の前の妹を支えてやらなければならない。

同じ顔をした二人は、その体を寄せ合い、お互いを暖め合うようにして何十分も涙を流し続けた。

449ほのラブ同盟:2010/04/21(水) 00:01:35 ID:nMkP21yc




―――とある寮の一室


公園で妹と別れると、美琴はその足で上条の家へと向かった。

着いてすぐ、美琴は再び泣いた。上条の胸に抱かれ、ただただ涙を流し続けた。
その痛みを上条はほとんど知ることは出来ない。
何があったのかも分からない。
しかし、何も言わず、上条はただただ抱き寄せ、頭をなでてやった。



「ごめんね、いっぱい泣いちゃって」

やっと落ち着いたのか、美琴が顔を上げた。

「すっきりしたか?」
「ちょっとはね…ありがと。…ねぇ、当麻?」
「ん、なんだ?」
「私…当麻にばっかり夢中で、大切な後輩や妹達も放っておいて、ダメな女だね…」

自傷的な言い草だが、上条はそこに贖罪を求めるような表情を感じた。

「お前はレベル5とか言われてるけど、全然完璧じゃないよな」
「うぅ…」

茶化すような上条の口調に安心感を抱きつつ、うなだれる美琴。
自分で分かっていても、人から言われると、ちょっぴり重い。

「でもさ、誰も彼もを大切にする、そんな器用なこと出来るヤツなら、そんなに心の深くから繋がり合えないんじゃないか」
「…どういうこと…?」

まだ頭がスッキリしきっていない美琴は、上条に説明を求める。
俺は何があったのかよく分からないんだけどな、と前置きをして上条は再び口を開いた。

「全ての人を大切にするとか、全ての人を選ぶとかって、結局誰も選んでないってことだろ。それって、大切な人がいないのと同じだと思うんだ」
「…うん」
「お前はさ、今まで大切なことを選び続けたし、そうやって努力を重ねてきたんだと思う」

遊びより勉強!とかな、と上条は付け足す。
その言葉に、美琴はなるほどと思い、自分のことを分かってくれる上条に何だか嬉しいやら照れくさいやらで、くすぐったい感覚を得ていた。

「でもさ、今はきっとその大切なことがたくさんあるんだよな。あっちもこっちも大事にしなきゃ、でも体も心も一つしかない」
「…うん…。なんだか…当麻が頭良く見える…」
「うるせぇな、俺だってたまにはやれば出来る男なんですよ。人生の先輩ナメんな」

人生の経験値(記憶的な意味で)では、実は上条の方が年下だったりするのだが、ここではあえてスルー。

「それで、俺が言いたいのは、大切にしなきゃ、なんて思わなくていいんじゃないか、ってことだ」
「えっ…でも…」

自分を慕う後輩も、妹も、二人とも傷つけた。
それでいて自分だけのうのうと笑っていられない。

「別に大切にしなくて良い、ってわけじゃないぜ。大切だと思ってれば、それだけで良い、って意味だ。お前だって、他の誰かに大切にしなきゃ、とは思われたくないだろ」
「そうだけど…」

上条の言うことは納得できる。
出来るのだが、自分ばっかりそんなに救われていいのだろうか…。

450ほのラブ同盟:2010/04/21(水) 00:01:56 ID:nMkP21yc


「いいんだよ」
「―――!!」

まるで心を読まれたような発言に言葉を失う。

「お前が大切に思える人ってことは、お前が心から笑っていれば、一緒に幸せになってくれる人なんだろ。だから、そんなに自分を追い詰めなくていいんだよ」
「…私…笑えるかな…?」
「ったく、何言ってんだ」

心底呆れたという顔で、上条は美琴の髪をくしゃくしゃとなでつける。
瞬間、美琴はすぅっと心に日の光が差したように暖かみを感じる。

「俺がずっと側にいてやるんだぜ。お前を不幸になんてさせないよ」
「…ぷっ、何よそれ、自分の不幸自慢?」

上気する頬を隠すように、上条の鼻をつつく。
してやられた。
もう自分は笑顔を取り戻しているじゃないか。

「ほら、笑った」

やっぱり見透かされていた。
こんなときばっかり勘が良いんだから、と美琴は口許を緩める。

「常磐台のエースであるお前も、二人きりのときに甘えるお前も、たくさんのものを大切にしたいお前も、みんな合わせて御坂美琴だろ」

上条の言葉は、一つ一つが胸にじんわりと染み込んでいく。
この安心感に、何度も救われているのだ。

「でも、どんなお前も、笑顔でいる時が一番、魅力的だよ」

…ぎゅ。
自分より少しだけ高いところから抱き締められる。
この感触は久し振りだ。
とくん、と胸が高まる。
やっぱり自分ばかりが良い思いをしている気がして少し気が引ける。
しかし、都合の良い話だと思うのだが、上条の言葉は何の疑いもなく信じることが出来た。
まずは、自分の笑顔から。

「当麻、私、幸せよ」

だから、その喜びを認めることが出来た。

「そうだな。お前は幸せ者だよ。大切だと思える人がいるってことは、幸せなことだ」
「何一人で悟ってるのよ。でも、本当にそうだと思う」
「だろ?だから俺も、すぐ隣にお前がいてくれて幸せなんだよ」

唇が触れ合う。
数日ぶりのくちづけは、ちょっぴり恥ずかしくて、とっても嬉しくて、それから、涙の味がした。

「もう…」

これからも同じ悩みや違う悩みに襲われることがあるだろう。
でも、彼の言葉は自分の悩みなんて、すぐ誤魔化してしまうのだろう。
でも、今はそれをただ認めるのはまだ少し悔しかった。
だから、色んな想いを込めて言葉を贈る。
親愛なる恋人へ。

「…ばか当麻」






とある少女のういういdays5―つづく―

451ほのラブ同盟:2010/04/21(水) 00:03:16 ID:nMkP21yc
以上です。
全然12レスじゃなかったですね…。
久しぶりの投稿で、やり方も忘れてました(汗

今回の始めのコンセプトは、同じセリフで始めて、終える。

…だったのに、そんなの霞んじゃうくらい美琴に辛い思いをさせまくってしまいました。
一応、他のコンセプトもあるのですが。

とにかく美琴さんが可哀相で、書いてる方もなかなか筆が進まず、自分の才能の無さを痛感した次第です。

でも…!
次こそ美琴さんには思いっ切り幸せになってもらいたいと思います。


稚拙で冗長な文章ですが、お楽しみ頂ければ光栄です。
…またどっかで大ポカしてそうだ。

452■■■■:2010/04/21(水) 00:23:53 ID:E5A/WUbs
>>451
GJです!
ミサカさんが切ない…泣けてきます。
そして美琴を励ます上条さんのセリフが素敵です!

453■■■■:2010/04/21(水) 00:25:56 ID:NgQ4CtoA
>>451
・・・おぉう、何というか色々言いたいんですが一つしか言葉にできません。素晴らしい。GJ!


でここからレス返
>>407
そうなんです。なんの捻りも(ry
いやそうじゃなくて、・・・そうですね!この二人のいちゃいちゃシーン何度見てもニヤニヤできそうです。

>>409
こんなのもありですよね!うん。

>>420
ありがとう御座います。またこの様なネタ出来れば投下しますね。

454■■■■:2010/04/21(水) 00:37:18 ID:e1wBd10A
職人のみなさん、おかえりなさい。

455■■■■:2010/04/21(水) 00:51:54 ID:zMnoTJ8w
こんばんわ。2レス程消化します。
タイトルはラブラブ?
5分後に投下します。

456■■■■:2010/04/21(水) 00:55:44 ID:zMnoTJ8w
御坂美琴は上条当麻に恋してる。
アピールを懸命にするが鈍感な上条にあっさりスルーされ、二人きりになっても
美琴から行動にとれない、上条も帰っていいか?とすぐ言うので二人はなかなか
結ばれなかった。
しかし美琴の努力が実り上条と恋人になった。
上条は最初、美琴よりもしどろもどろな雰囲気だったが次第に慣れ、今はお互い
メロメロになっている。
上条と美琴は周りに付き合っているのを誰にも言っていなかったが手をつないで
歩いているのを何回かやじうまに目撃され大きな噂となっていて、二人はインデックス、
白井等の耳に入っていないのを祈るばかりだった。

そんなある日の放課後、二人はいつもの公園で待ち合わせわした。
先に美琴が着いて自販機の隣のベンチに座り、上条が来るのを待つ。それが習慣
のようになっている。
「たまにはアイツが早く来てもいいと思うんだけどな〜。」
独り言を呟いているとメール着信音が鳴った。
遅れるという連絡だったら一発超電磁砲喰らわせてやると思いながら携帯を開いたが
連絡主は佐天涙子だった。
『御坂さん、今暇だったりしますか?よかったら初春と一緒にお茶しに行きましょう!』
『これから用事があるから今日はごめんね。また誘って!』
こう返信をして携帯を閉じるとタイミング良く上条当麻がやってきた。
「悪い!最近待たせてばっかりだな。」
「最近じゃないわよ。最初からじゃない。」
「あれ?そうだっけ?まあ、次からは俺が待てるくらいに頑張るよ。」
「いっつもそのセリフ聞いてるんだけど。」
「大体集合時間の30分前に来てるお前に勝てる訳ねえよ。んで、どこに行こうか?」
「今日は何も決めてないからファミレスでお茶でもしてまったりしない?」
「激しく賛成!毎回美琴の買い物に付き合うのは上条さんの体力は持ちませんからね。」
「もう!!そうやっていじわるばかり言うんだから!」
昔だったら今の言葉ですぐ電撃飛ばしてきたのになあ〜と上条は思いながら美琴の手を握った。
「よし!じゃあ行くか。」
ファミレスへ向けて足を進めたのと同時に美琴の携帯がまた鳴った。
「ごめん友達からメールが来た。」
上条に謝りながらメール内容を見て美琴は驚愕する。

『そうですか〜。男の人と手つないで歩いてますもんね(笑)』
え・・・知っている。じゃない、見られている。
「佐天さん!どこにいるの!?」
大声で佐天の名前を呼んだ。隣の上条は突然の事に驚いて「うわ!」と声を出した。
すると自販機の後ろからひょこっと二つ顔が出た。
佐天と初春がどうも〜と近寄って来た。
「御坂さん水くさいですよ!私達に彼氏ができたこと教えてくれないんですから。」
「そうですよ!いずれは白井さんにもばれる事なんですし。あ、ちなみに今白井さんは
風紀委員支部にいるんですが監視カメラで御坂さんを探してます。ここにいるとバレますよ?」
「だあああ!わかったからちょっと静かにして!当麻、今日はこの子達も一緒でいい?」
「今日は何も予定を決めてなかったからな。構わないぜ。」
「ありがとうございます御坂さんの彼氏さん!!白井さんに絶対見つからない
場所知ってますからそこに行きましょう!」
佐天と初春に連れられて上条は何が何やら訳がわからず、美琴は地雷を踏んだ気がして
ならなかった。

457■■■■:2010/04/21(水) 00:56:03 ID:zMnoTJ8w
「どうぞあがってください。散らかってますが気にしないでくださいね。」
上条と美琴が案内された場所は初春の寮だった。
「あれ、御坂さん。久しぶりなの〜。」
奥から佐天と初春以外の声が聞こえた。初春の同僚、春上がテーブルの前にちょこんと
座っていた。
「春上さん!久しぶりね!もう退院してたんだ?」
「つい先日に退院したの。この前は佐天さんがケーキ持ってきてきれて嬉しかったの。」
「退院してたなら教えてくれてもよかったじゃない。水臭いわね〜春上さん!」
「ごめんなさいなの・・・・・ところでこの方は誰なの?」
春上は一番後ろにいる上条を見て質問する。
「パンパかぱーん!春上さん!この人はレベル5の御坂さんを心も体も骨抜きにした男、
そして御坂さんの彼氏で・・・えっと、お名前は何でしたっけ?」
「俺は上条当麻、ピカピカの高校一年だ。」
「くくく・・初春、ピカピカの高校一年ってあれギャグなのかな?」
「そんなこと私に聞いてもわかりませんよ。大まじめに言ってるようにも見えますが・・」
「上条さん、初めましてなの。私は春上と言います。」
「突然ここに連れてきてすみません。挨拶が遅れました、私は初春飾利です。」
「どうも〜佐天涙子で〜す。よろしくお願いします上条さん!」
「私の名前は御坂美琴です!よろしくね当麻くん!」
「この上条さんを部屋に招待してくれるなんてありがとうございます。」
佐天達は年下である自分たちに丁寧に挨拶する上条と、同時に渾身のギャグをスルーされ
怒っている美琴の鬼の形相に驚いた。

「と、とりあえず座ってください御坂さん、上条さん。お茶とお菓子を持って来ますね。」
初春と佐天は逃げるようにキッチンへ向かった。
「当麻!どうして相変わらず昔みたいなスルーっぷりをここで発揮するのかしら?」
「お前の友達の前で爆笑するというのが上条さん的にはプライドが許せなくてですね。
多分二人でいたら腹かかえてますよ。」
「そ、そう?面白かったんだ。えへへ。」
二人の間にぽわぽわな空気が漂い、二人のやりとりを見ていた春上が突然口を挟んだ。
「御坂さんは上条さんの事が好きなの〜?」
「いいいいきなり何を!!!でも私はす、す、す、す・・・」
「早く好きって言っちゃえなの〜!」
「な、春上さんそんな人だったっけ!?そんな言われたらもう恥ずかしくて言えないわよ!」
ここでお茶とお菓子を持ってきた佐天と初春が茶々を入れる。
「春上さんいい仕事してるよ〜。ほらもっと色んな事聞いちゃえ!」
「こんな顔を真っ赤にしておろおろしてる御坂さん初めて見ます。可愛いすぎです!」
「ちょっと女子三人!私をからかわない!当麻も何か言い返してよ!」
上条に振り返るが腕を組み、じっとしてる。顔もどこか赤い気もする。
「・・・・残念ながら上条さんに反論はございません。顔を真っ赤にしておろおろしてる
美琴たんは可愛すぎます。」
その言葉に美琴はテーブルに顔を伏せた。漏電していないだけ成長している。
「そうだ、上条さん!さっきから気になっていたんですけどどうして自分の事を上条さん
って言うんですか?」
「なんていうか、もうクセになってな。時々ポロっと出てしまうんだよ。」
「そうですか。じゃあ、将来御坂さんも自分の事を上条さんと言える時代が来ますね!」
ここでさすがに我慢できず美琴が漏電した。
「おい!美琴漏電してんぞ!友達の家を焦がすつもりか?」
咄嗟に左肩に手を置いて電撃を止めた。
美琴は恥ずかしさのあまり、動けないが耳はしっかりむけている。
「この抱擁・・・まさにコンビネーションばっちりなの〜。」
「こんなの見せられたら関係ないこっちが嫉妬しちゃうよ初春!」
「そ、そうですね。白井さんが知ったらどうなるか・・・考えたくありません。」
きゃーきゃー騒いで近所迷惑にならないのかと上条は心配した。
(でもそんな美琴に追求してないからまだ大丈夫か。)
しかしそんな予想は見事にぶち壊された。

458■■■■:2010/04/21(水) 00:56:42 ID:mAz4iw96
ほのラブ革命様GJ|
私も、不覚にも御坂妹の健気さに泣きました…
黒子も含め、皆に応援されてるこの二人は幸せ者ですね!

459■■■■:2010/04/21(水) 00:56:43 ID:zMnoTJ8w
「上条さん、確認させてください。お二人は恋人同士で間違いないですね?」
こくんと佐天の質問に頷いた。
「上条さんはこのまま御坂さんと末永くお付き合いをして、いずれは結婚して暖かい家庭
を築きたいですか?」
「決断はまだ早いかもしれないが俺はそのつもりでいる・・・」
再び女の子三人は興奮しだし、テーブルから身を乗り出した。
「ちょっと初春、春上さん!今の聞いた!?プロポーズだよね今の!?キャー!!」
「はい・・・今私達の目の前には夫婦同然の二人がいます。ね、春上さん!」
「素敵なの〜私も運命の人に言われたいの〜。」
「こ、こら!年上の高校生を冷やかす中学生ってどんだけ君たちはマセてるんだ!」
「御坂さんに冷やかされる時だってありますよね?御坂さんもマセた中学生ですよ?」
「それは恋人の戯れって事にしてくださいごめんなさい・・・」
「あ〜もう!上条さんの返す言葉全てが幸せオーラが出てる、羨ましい!
そうだ!一番したい質問を忘れてました。本当は最初にする質問だったんですが。」
「まだあるのか・・・上条さんの精神的にも限界なんですが・・・」
「御坂さんが私達に付き合っているのを教えてくれてなかったので勘弁してくださいね。
でも最後の質問としましょう。
いつから付き合い始めたんですか?」
「え〜っと・・いつからだっけ?もうすぐ三ヶ月たつくらいかな。」
「・・・今日で三ヶ月一週間と一日よ。ちなみに今日が100日目よ。馬鹿。」
「・・・・御坂さんよく覚えてますね。」
ようやく顔をあげた美琴に話を振った佐天。だが美琴はまだ顔を赤くして、どこかご機嫌
斜めのようだ。
ジト目で上条を睨みつけたつもりだが、今までの会話を全部きいてしまい、
トロンとした目になっていた。
「当麻、よく女の子にこんな恥ずかしい事ペラペラ言えるわね。
それだから他の女子にフラグを立てんのよ。」
「思った事をありのままに言っているだけだぞ。ここまで聞かれたら何も隠さず言う
べきだと思うんですが。」
「何も隠さず??じゃあアンタの事この子達に隠さず言ってやろうかしら!
テストで全教科赤点とったのは誰?その影響で休日も補修で大量のプリントもらっている
のは誰?しかもプリントの問題が全くわからないからと言って中学生の彼女に教えて
もらっているのは誰!?」
「ぎゃあああ!!やめろぉぉぉ!それは言うなあああああ!!」
「だったら軽口を減らす事ね。ほんっとに馬鹿なんだから。」
上条は髪をバリバリとかき、美琴は先ほどとは打って変わり腕をくんでふんぞり返っていた。
このやりとりを目を輝かせて見ていた春上がぽつりと言い放つ。
「二人とも、凄くお似合いなの〜」
「・・・・・・・・・・・・バカー!!!」バチバチ
「ぎゃあぁぁ!!何で俺―!?」ビリビリ

460■■■■:2010/04/21(水) 00:57:38 ID:zMnoTJ8w
以上です。
みなさんのSSと被っているかもしれませんごめんなさい

461■■■■:2010/04/21(水) 01:08:34 ID:mAz4iw96
>>460
GJ!レス中断すみません…orz

462■■■■:2010/04/21(水) 02:06:06 ID:5BXj/AAk
>>451
GJです!Σd(・∀・)
続き楽しみにしてました!
なんかちょっと感動してしまった(´;ω;`)
上条さん相変わらず罪な男だな
続き楽しみにしてます!

463かぺら:2010/04/21(水) 04:25:49 ID:DPuI3gJ6
おはようございーますっ!
職人さんお疲れ様ッス!
まだ読んでないので感想は後々。

投下ラッシュに参戦!ってことで、小ネタを。
4:30より2レスほど。

464とある二人の酔っ払い1:2010/04/21(水) 04:30:19 ID:DPuI3gJ6
かぽーん。庭にある鹿威しが鳴る。
上条は学園都市内にあるちょっとした料亭の一室にいる。
向かいには御坂美琴。顔を赤くしつつも『こんなときどんな顔したらいいのか分からない』といった顔をしている。
―――笑えば良いと思うよ、って笑えるかっ!!―――
自分も似たような表情になっているだろうと想像し、上条は小さく溜息をする。
隣にはやけに上機嫌な父・刀夜が座っており、その前には御坂の父親であろう人が座っていた。
―――な、なんなんだよ―――
上条はまだ現状を把握しきれていない。
父親の呼び出しに応じて来てみれば、仲良く軽く出来上がったおっさん2人と顔を赤くしてカチコチしている美琴が座っていたのだ。
おっさん2人に『やっときたか』とか『まってたよー』とか言われて早くも10分が経つ。
いい加減に現状の説明を求めたいのだが、酔っ払い2人はなかなか切り出してくれない。
「あのー、なんで俺はこんな所に呼び出されたんですか?」
いきなり絡まれたり機嫌を損ねたりしないだろうか、と内心ではヒヤヒヤドキドキしながら、上条は楽しそうな2人組に声をかける。
ゆっくりと上条に顔をむけた2人のおっさんは『そういえば、こいつの事忘れてた。わはははは』という様な顔だ。
―――ったく、なんなんですか、これは―――
上条は敢えて大きな溜息をついてみる。用が無いなら帰してもらいたいところだ。
「いや、ほったらかしにして悪かったね、当麻くん」
「あ、いや。貴方は御坂のお父さんで良いんですか?」
ようやく話が出来そうな展開になり、上条は話しかけてきた旅掛に問いかける。
この状況で『赤の他人です』なんて事を言われたらそれはそれでビックリなのだが、一応確認しておく。
「わはははは。いやいや、上条さん、もう『お義父さん』って言われてしまいましたよ」
「いやいや、当麻は誰にでもフラグを立てる子なんですが、まさか父親にも有効だとは。わはははは」
だめだ、こりゃ。
上条はお手上げだとばかりに肩を落とす。
この右手でも完全に出来あがっちまった父親2人の酔いは砕けそうにない。
上条は横目で美琴を見る。心なしかさっきよりも赤くなっているが気のせいだろうか。
というか、もしかしてコイツも酒を飲んだんじゃないか。激しく嫌な予感を感じながらも、父親たちの会話に感じた違和感を思いだす。
―――あれ……父親にもフラグ?お義父さん?………1文字多くねぇか?―――
口に出された言葉がどうして感じでイメージ出来るんだろうかとか、それはSSだから脳内補完でOKなんだよとか。
上条は脳内で暴れだす『良く分からん疑問』達を追い出すべく、ブンブンと首を振る。
「いや、だから、俺はなんで呼び出されたんだって聞いてるんだけど……」
上条はもう一度赤くなっている美琴を見る。話を聞いてるのかもわからないくらい、それこそ死んだように固まっていた。
「父親2人が仲良く飲んでる所に、なんで俺や御坂が呼ばれてんだよ」
上条は刀夜の肩に手をかけようとするが、『まぁまぁ落ち着け』といって動きを制される。
「当麻くん。御坂じゃ他人行儀すぎるだろう?美琴、と呼んでやってくれないか?」
旅掛の言葉に、美琴の方がビクンッと跳ねる。なんだ聞いてんじゃねぇか、と上条は美琴が死んでなかった事に安堵する。
―――いやいやいやいや、違う!そこじゃない!他人行儀も何も、俺と御坂は他人だろ!?―――
上条はどんどん混乱していくこの空気に飲まれそうになりながらも、なんとか踏みとどまった。
「なぁ、御坂………自体が飲み込めてないんですが、どういう事になってんだ?」
「み……」
「はい?」
妙に小さい美琴の声は上条の脳まで到達せずに霧散する。
美琴は上条が『?』という顔をしているのを見ると、その頬をより赤く染めてモゴモゴと口を動かし、意を決したように俯けていた顔をあげた。
「美琴、って呼んで」
「…………みこと?」
「うん。えへへへへ」
途端に美琴の顔が蕩ける。
やっぱり現状を把握しきれない上条は、美琴の前にあるグラスを見る。
湿ってはいないところをみると、酒を飲んだわけではなさそうだ。

465とある二人の酔っ払い2:2010/04/21(水) 04:30:38 ID:DPuI3gJ6
「ほほう。親の前でやってくれるね」
「孫の顔も早く見れそうですなぁ」
「はいっ!?まごっ!?」
上条が驚き、バッと音が鳴るような速度で父親2人を見ても、当人たちは気にした素振りもない。
「マゴってどういうことでせうか?馬の子ですか?」
あたふたとする上条の様子がおかしいのか、酔っ払いは大笑い。残された上条には何が可笑しいのかすら分からない。
レベル5に助けて欲しいところではあるが、口を半開きにして『えへへー』と言っているお嬢様には期待できそうもない。
―――コイツ……御坂妹もこんな顔するときあるよな。そっくり姉妹じゃねぇか―――
そっくりじゃなくて遺伝子レベルで一緒なんです、というツッコミはさておき、上条は一度死因呼吸をする。
ここまでの流れを整理してみる。
ひとつ、旅掛は『お義父さん』を気にしていた。
ひとつ、刀夜は『孫の顔』を気にしていた。
上条は恐る恐る父親2人を見る。いつの間にか2人ともこっちを見ていた。
「あのー、もしかしてこれは……」
「そうだ、君たち二人は結婚するんだ!」
上条はガックリと肩を落とす。あまりにも突然過ぎる。横暴だ。
美琴とは仲の良い友達のような関係だとは思っていたし、可愛いとも思っていたが。
恋人のステップを介さずにいきなり夫婦になれとはどういうことだろうか。
「そんないきなり――」
「異論は認めん!『許嫁』として御坂親類にも紹介済みだ」
「上条親類も紹介しておいたぞ」
そしてまた『わははははは』と笑う。
―――て、手遅れだ―――
上条は涙目になりながら、美琴を見る。美琴は不安そうな顔で上条を見ていた。
「……当麻は、私じゃ、いや?」
「うぁぁあああぁっっ!?」
上条は勢いよく後ずさる。正座したままなのに器用なものだ。
―――御坂が、御坂が御坂じゃないみたいだけど御坂であって。というか、目の前のは御坂じゃなくて美琴であってぇぇぇえぇぇ―――
うだぁぁぁぁっ、と頭を抱えてみる。何も解決しそうにない。
「………当麻は、嫌なのかな」
「嫌じゃねぇぇっ!!」
上条はその場に立つと力の限り叫んでみた。奥の襖が驚いたようにガタンと揺れる。
「嫌じゃねぇけど、なんか……色々と飛ばし過ぎだろ?」
「………どういう、こと?」
上条は美琴の隣まで行くと、その細い肩に手を置く。
「えっとだな、とりあえずは、恋人から始めませんか?」
「……………うん」
上条はふぅと息を吐く。いつの間にか親父2人はいなくなっていた。
「よろしくね、当麻」
「あぁ、こちらこそな、美琴」
上条は恋人になった美琴を抱きしめた。『許嫁』ではなく『恋人』としてのステップを踏み出した。


「あらあら。これは良いものが撮れましたね」
「うふふー。美琴ちゃん幸せそうねー」
不自然に隙間の開いた襖の奥に、ビデオカメラを持った女性2人がいたとかいなかったとか。

466かぺら:2010/04/21(水) 04:31:15 ID:DPuI3gJ6
以上です。
以前リクいただいた「許嫁」ねたから。
無理矢理すぎた……スイマセン。

禁書SSスレに突撃してきます。
突撃前にハチの巣になるかもですが。

ではでは。

467■■■■:2010/04/21(水) 07:35:46 ID:uRuteYWI
>>451
GJです!
人生山あり谷ありで、ラブラブが深まるんですねw

>>460
GJです!
春上さんがいるのが新鮮でした
天然な質問をしそうですよね

>>466
GJです!
実際にありそうで怖いw
外堀が埋まりつつありますからね

468■■■■:2010/04/21(水) 08:03:53 ID:lWLee5Ys
>>466
GJ!
電車の中で読むものじゃないな
2828が止まらない

469コッカラ:2010/04/21(水) 09:07:42 ID:51T3jRag
>>466
GJです!!
しかしこの夫婦達ノリノリであるwww

代わりまして小ネタを投下したいと思います
今書いているやつとは違いますが思いついたので速攻で書き上げました
誰もいなければすぐに投下したいと思います

470小ネタ  野球デートの際の注意点:2010/04/21(水) 09:10:21 ID:51T3jRag

当麻「おーい、美琴!!」
美琴「あー、あんたか。何か用?」
当麻「素っ気ないな―。せっかく面白いもの持ってきたのに…」
美琴「え!まままままさか、劇場版ゲコ太のプレミアム試写会のチケット!?」
当麻「いや…チケットなのは合ってるけど、誰誘っても興味ないっていうから…」
美琴「…!これってプロ野球の試合のチケット!しかも巨人×横浜戦!!何であんたが!?」
当麻「いや〜上条さんの数少ない幸運の一つでして、くじ引きを引いて当たったんだよ。
   外野席だけど初の学園都市でのシリーズって言うし好きな球団だからすっげー楽しみなんだ〜」
美琴「へーそうなんだ(私はあんまり野球とか知らないけどこれは野球デートのチャンス!!
   しかも巨人だったら大体は知ってるし盛り上がりそうだし上手くいったらその後は…うへっへっへっ…)」ニヤリ
当麻「(なんか変なこと考えてそうだけどまいいか)それでペアチケットなんだけどお前一緒に―――」
美琴「行く!!絶対行く!!私も興味ある球団だったから楽しみだな〜♪」
当麻「そうか!ならよかった〜。一人で行くんじゃ寂しすぎるからな!ただ、最近嫌な負け方とかしてるから大丈夫かな?」
美琴「(そういえば最近大きくリードしてても逆転負けとか目立ってるし)まあ抑えがしっかりしていれば大丈夫でしょう」
当麻「でもクルーンとかいなくなって守護神がいないしなー」
美琴「(怪我して戦線離脱だっけ)まあでも山口が抑えに回ったから何とかなるでしょ。それに打線がつながれば点差で逃げ切れるでしょ」
当麻「そうだよな。それに尾花さんが育てた先発だったらそんなに点は取られないし」
美琴「(あれ?尾花さんって去年まで巨人だったわよね?まいっかー)そうよねー。後は4番がしっかり打てれば…」
当麻「余裕で勝てるよなー。ホームランも打てるし大丈夫だよな!」
美琴「うん!じゃあ期待しましょう!」
当麻「村田に」 美琴「ラミレスに」
二人「「………………あれ?」」
美琴「………あんたって横浜ファン?」
当麻「……ああ、そうだけど地元だし?お前も確か近くに住んでんだろ?」
美琴「いや…確かにそうだけど……!まさか外野席って…!」
当麻「うん、レフトの横浜側」
二人「「…………………」」


初春「まぁ白井さん、そんなにイジイジしないでくださいよ」
白井「フン!イジイジせずにはおられませんわ!あのお姉さまが、類人猿なんかと、デートだなんて!!」
佐天「まあ白井さん、サルのぬいぐるみに当たってもしょうがないですよ。ほらテレビつけて盛り上がりましょう!」ピッ
初春「あ、ちょうど野球中継ですか。そういえば御坂さん、ナイター見に行ったんですって?」
白井「あの類人猿に誘われて、いつもは見せないような笑顔でお出かけになられて…あー!!もうむしゃくしゃしますわ!!
   この辺で一発どっか〜んと―――」カキーン
初春「うはっ!白井さんの予言どおりにホームラン!!そのままレフトスタンドへ…あれ、今の人って?」
佐天「ん?どうしたの初春?」
初春「今、ホームランボールが観客の頭に当たったんですが、その人が上条さんに似ていたような…」
佐天「きっと白井さんの念が届いたんじゃない?あっ、リプレイだ。…確かにこのツンツン頭は上条さんだけど…」
白井「…それに隣に座っているのはお姉さまのようですが、なんでこの二人」

「「「巨人のユニホーム着て、YGマークの帽子かぶってんだろう(ですの)??」」」

471コッカラ:2010/04/21(水) 09:16:45 ID:51T3jRag
以上です!!
お互い好きな球団とか知らないとイタイ目に遭いますよねww
ちなみに俺は美琴派
野球とか知らない人はごめんなさい…批評や忠告とか素直に受け入れますorz
忙しいですが他のssも頑張って書いてみます!

472アミノ酸:2010/04/21(水) 11:31:15 ID:pungsl32
皆様、こんにちは(*'-')ノ
今日は、雨が上がりました!雨上がりっていいですよね。
そして私は、今日は仕事休みでひゃっほいー!これはニヤニヤしないと!
こほん…返信させていただきます。

>>434 >>435  >>436
  
なるほど…後者の方がいいのかぁ、参考になります。
上条さん視点にすると、やはりフラグ体質にしてブレイカーなので
どうもあのような書き方というかそういう風にしか動かせてないというのか…。

上条さんで、イチャイチャがもっとできるように精進します。

>>437
 新鮮かぁ、ああ、たしかに上条さんが美琴を追いかけるってそうないですよね!
自分で書いたのに全然気付いてなかったですw

auauさん>>
 幼馴染シリーズ楽しみしていただけてるなんて光栄です!
書くきっかけが、もし幼馴染だったらっていう妄想から入ってしまって出してしまったいうのか。
追いかけっこは、美琴さんに関して言うと、勝手に動いてくれちゃったんですね。
書いてて、ああ美琴にげてっちゃったーって感じです。
あの!とある未来シリーズ、ガチで読んでまして、この発想もすばらしいなーと常々思っておりました。
続きすっごく楽しみにしてます!

皆様、感想ありがとうございます、参考になるのでこれからも宜しくお願いします

投稿ラッシュが続いてる!書き手の皆様GJです!盛り上げていきましょう!
書くのが楽しくて仕方ありません。
読むのはニヤニヤして仕方ありません。
頑張ります!

あらかじめ説明させていただきます。
今から投稿する作品は幼馴染シリーズではなく
TVで、アニメとある科学の第四巻の宣伝をみて思わず書いてしまいました!的な感じなものになります。
また28日までに完結させるを目標に、続き物になります。
被らなさそうなら5分後に2〜3レスですむかな?投下します。
宜しくお願いします。

473とある宣伝の超電磁砲<レールガン>①:2010/04/21(水) 11:35:43 ID:pungsl32


「皆さんお疲れ様でしたー!」

 とあるスタジオで、とある撮影がようやく終わったところだ。

この物語の主役である御坂美琴は撮影が終わり、その開放感でいっぱいだった。そこへ「御坂さーん」と二人の少女が合流する。

「ほんっっとすごかったですよね〜!」
 目をキラキラさせ、もぉ〜御坂さんカッコよすぎですよー!と熱く語るのは佐天涙子。
波動、プラズマ、超常現象、そういったものに目がない彼女は、今回の撮影はかなりシビレたらしい。
「お、落ち着いてください、佐天さん!」
 とわたわた慌てて熱くなりすぎた佐天さんを静めているのは、花飾りが特徴的な少女、初春飾利である。

 美琴はなんだか忙しないなーと思いながら、二人の後輩を見つめる。
不意にそんな二人の様子が、とある少年と自分の姿に重なり切なくなる。

(あいつ、何してんのかしら…ったく連絡ぐらいくれたっていいのに)

 禁書目録<インデックス>の時は、よく会ったのに今は自分が主役を務める物語のため
向こうの出番が少ない、考えたところでどうしようもないのだが、それでも寂しいという思いは消せない。
 それなら自分から会いに行けばいいだけのこと、と思うがどうしてもできない。
それに用も無いのに連絡も取りずらい。以前は用がなくても連絡できたし、会いに行けたはずだ…。

 何だろう?このもやもやした気持ち…掴めない感情が、ぐるぐると思考を支配する。

「はぁ…」
「御坂さん、もしかして上条さんの事考えてました?」
 と佐天さんはそれはもうズバっと美琴の物思いを言い当てた。

「えっ?ってか…な、なんであたしがあいつの事を考えなきゃならないのよ!」
 
 佐天と初春は顔を見合わせると

「「皆知ってますよ?」」 

「ふぇ?なっ何を?」

「御坂さんと上条さんって付き合ってるんですよね?」
 
「………………つ、付き合ってないわよ」
 そもそも、彼氏彼女の関係、いわゆる恋人とかそういうのではない。  
一体、何をどうしたら二人の少女の口から「付き合ってる」との言葉出るのか美琴には理解できなかった。

「「えっ、えええええ…付き合ってないんですか!!!!」」

 あんなに仲がいいのにですか?!うそです、あれはどう見ても付き合ってる雰囲気ですよ!?と捲くし立てる。
それほどまでに美琴の発言は、佐天と初春に衝撃を与えた。

「…その、あたしとあいつって、つっ付き合ってる様に見えるの?」
 
 この際だから、美琴は聞いてみる事にした。

474とある宣伝の超電磁砲<レールガン>②:2010/04/21(水) 11:38:45 ID:pungsl32

「そりゃもう!」
 と初春は力強く、力の限り頷いて答えた。
「えっと…「御坂さん!」」
「さ、佐天さん?」
「御坂さんは、上条さんのこと嫌いですか?」
「きっ…嫌いなわけないじゃない」
「じゃあ、御坂さんは、上条さんのこと好きですか?」
「…………………わからないの」
「………御坂さん?」
「その、わからないの……いっぱい、ごちゃごちゃしちゃって…」

 ぽつりぽつりと、美琴は感じたままに話しだす。
それはたった一つの思いを掬い上げる作業だった。

 あいつといると何だかとても楽しい、時間があっという間に過ぎる。
けれど禁書目録から超電磁砲に物語が移ってから、会う機会が少なくなった。
最初は、ただ禁書目録の物語が終わったことに、寂しさを感じているだけだと思っていた。
でも、違った…あたしは超電磁砲にあいつが出る話があると、嬉しくなった。寂しくなくなった。

「あいつの事をさ…考えると、自分が自分じゃなくなるっていうのかな…もやもやして」

 苦しい。

 自分自身のことなのに制御できない感情は、理屈では説明できなくて。
この感情をどうしていいかわからなくて、ただ会いたいと思うようになった…でもどんな顔をして会えばいい?
 
 出会った頃のように接するなんて無理だ。
会いたい、けれど会いたくない。矛盾する思考回路。

「あたしは…どうすればいいかな?」

ふるふるふるふる…ガシっ!思わず二人の少女は美琴の手を取った。

「「御坂さん、それって、それって!!」」

――ヒュン

遅れあそばせながら、ツインテールの少女、白井黒子が三人の前に現れた。

「そこまでですの!」

「本日の黒子は、出番が少ない上に、あの猿人類のお話で気が立っておりますの、それに時間もありませんことですし」


さてそろそろ時間ですわよ、準備はよろしくて?

「それじゃあ、宣伝行くわよー!」
「はいですの!」
「行きましょう!」
「行っくよ〜!」
『せーーーーーのっ!』
 
「みんなお待たせ!今回は電撃ビリビリアクションでお届けします!」
「はっ!お姉さまのお御髪が乱れて…しかもぐちょぐちょの濡れ「なに、言ってんのよ!」」
ゴン!
「とある科学の超電磁砲<レールガン>第4巻、4月28日、DVD&ブルーレイで発売よ!」
「もちろん初回限定版は豪華特典付ですの!買わなきゃ損ですわよ?」
「笑いあり、涙ありの感動スペクタルです!皆さん、スポーツタオルを用意してくださいね!」
「…本当に大切なものに気付かされます、ねっ初春!」「はい、佐天さん!」

「ってまだ発売まで一週間もあるわよ!」
「待ち遠しいですの!」


つづく!

475アミノ酸:2010/04/21(水) 11:42:03 ID:pungsl32
以上になります。
 
お楽しみいただけたでしょうか?

私は勿論、予約済みです!(えっ何を?)

ご感想など頂けたら参考になるのでこれからも宜しくお願いします!



それではご感想

476アミノ酸:2010/04/21(水) 11:43:12 ID:pungsl32
ぐは、なんか違うのがはいってしまった。

すいませんです!それではまた続きは楽しみに待っていてください!

477■■■■:2010/04/21(水) 17:18:21 ID:RQBAqGww
>>476
GJ!
OK、続きを楽しみに待ってる。

478■■■■:2010/04/22(木) 00:40:09 ID:VJNZ4eSk
・・・静かだ・・・これはもしや・・・?

479■■■■:2010/04/22(木) 00:49:10 ID:ZJJWQWzs
投下するチャンスだぜ?

480アミノ酸:2010/04/22(木) 05:21:10 ID:5QbuzaPA
皆様、おはようございます!(*'-')ノ
今日は早めに寝てしまって早起きしました!
本当は日付変わったときに投下するつもりだったのに寝ちゃったのはヒミツです。
続きを待っている方もいらっしゃるようなので投下します!
宜しくお願いします<(_ _)>

481とある宣伝の超電磁砲<レールガン>③:2010/04/22(木) 05:24:31 ID:5QbuzaPA
とある宣伝の超電磁砲<レールガン>③


「あたしは…どうすればいいかな?」
 この気持ちを…と顔を真っ赤にして、困ったように問いかける少女。
それが恋心だとは微塵にも思っていない初々しさに、思わず拳を震わせ。
御坂さん、それって!と二人の少女は、戸惑うその手をぎゅっと握り。

「その気持ちが、『好き』って事ですよ」
 と告げて、佐天と初春は微笑んだ。
 
 美琴の中に生まれた『好き』という気持ち。
それは少年と出会ったときから、時間をかけて少しずつ育っていた、たった一つの想い。

「そっか、あたし…あいつの事、好き…なんだ」 
 声に出すと、今まで何を悩んでたんだろうというぐらい、美琴はスッキリしていた。
と同時に物凄く恥ずかしくなってきて、その場にうずくまる。

「「みっ御坂さん?!」」

「なっ、なんでもない!ちょっと色々気持ちの整理をさせてー!」
 そこはかとなく、美琴の状態に気付いた佐天と初春は、あー…と納得した。

 
 しばらくして正常な状態を取り戻した美琴は、二人にお礼を兼ねてお茶に誘った。
勿論、喜んで!という具合に三人は現在、とあるファミレスで話しに花を咲かせていた。
話題は、自然と美琴の好きな人つまり上条当麻についてへと移る。

「で、告白はいつするんですか?御坂さん」
 開口一番、佐天さんはどストライクな直球を投げかけた。
「ブーッ!…げほっげほっ」
 いきなりの直球で、思わず美琴は飲んでいたものを吹きだし、むせ返る。
「ちょっ、そ、そんないきなり…こっこここ、告白なんて!」
「そっそうですよ、佐天さん!」
  気が早すぎですよ!と初春も驚いて、突っ込む。
そうかなぁ…うーんと唸って、佐天は美琴の方を見ると、どうやら先ほどの衝撃が抜け気っておらず
テーブルに突っ伏して何やらぶつぶつと呟いている。
「あいつに、こ、告白…告白して…そっそれから、あっOKだったら付き合い…こ、恋人?!」
 
「「…………」」
 違う世界に飛んでいる美琴を、どうしよう佐天さん?どうしよっか初春?と二人で
目配せ、とりあえずこのままではあまりよろしくないので、戻すための行動を起こすことにする。
「あの!御坂さん、最近上条さんと電話とかしてないんですか?」
 と初春は、なるべく大きな声で質問した。
「!」
 いきなり話を振られ現実に戻った美琴は、電話なんて最近は全然してないわよ…とちょっと不貞腐れて答える。
じゃあ!と言わんばかりに、電話で話してみたらどうですか?と二人に進められ、確かに告白はまだ無理かもしれない
けど電話越しなら姿は見えなし、大丈夫よねっと美琴は前向きに思えてきた。それに…何より声が聞きたい。

482とある宣伝の超電磁砲<レールガン>④:2010/04/22(木) 05:26:51 ID:5QbuzaPA


 二人の後輩にがんばれーと応援され、美琴は携帯を開き電話を掛けた。
とその瞬間、近くで着信音が鳴り響き、あれ?と思って音の方を見ると見覚えのあるツンツン頭と目が合う。
さらにその後ろには、どうしたのー?当麻と、これまた見覚えのあるシスターがいる。

 ビシィィィと空気が凍りつき、何やら不穏な空気が流れる。

――キキキィィィイ、ガチャ

「思ったより早く着いたな」

 青い高級感の漂うスポーツカーから、颯爽と姿を現したのは、目の下にクマができた気だるい感じのする女性。

「今日は宣伝というようなものを任されていてね」
 
 台本を取り出し、開けた。

「とある科学の超電磁砲<レールガン>第4巻は、4月28日、DVD&ブルーレイで発売だ」
「ほう…初回限定版は、豪華特典付らしい。買ってみる価値はありそうだ」

 ペラペラとめくり、面倒だな…と台本は閉じられた。

「オープニングでも見かける私の車は、ランボルギーニ・ムルシエラゴといって、ファンの間では
ムルシー、ムルシェと呼ばれている。そもそもムルシエラゴというのは、スペイン語でコウモリを指す。
 その名の通り、従来の車体左右外側に向かって開くドアと異なり、ルーフとドアを接点に地面に対して
水平に展開する形で開く、ガルウィング式ドアが採用されている。さらに言えば、通常のドアよりも開閉に
必要な横方向の…「あの!」」

「…どうした?」
「あの…全然台本と違うこと言ってませんか?」
「そんな怖い顔しないでくれ、ちゃんと要点は抑えてあるのだから…」

「「…………」」

「違うと思うかい?」
 頭の花飾りが特徴的な少女は、キっとこちらを向いて黙ったままだ。

「……この台本は君に渡しておくのも面白いかもしれないな」
「?」
「あとで、読んでみたまえ」

「ふぅ、それにしても暑いな…」
 
 ネクタイを緩め、襟元のボタンに手を掛けて、脱ぎ…

「ふぇぇぇぇ!」

「…一つ忘れていたよ、発売まであと6日だ」


つづく!

483アミノ酸:2010/04/22(木) 05:29:35 ID:5QbuzaPA
以上になります<(_ _)>

これからどうなっていくのでしょうか!楽しんでいただければ幸いです。

感想など頂けると参考になるので宜しくお願いします!でわでわ!

484■■■■:2010/04/22(木) 15:38:12 ID:43AbQQ5M
>>483
GJです
今更ながらひとつだけ気になるところが…
美琴の一人称「あたし」ではなく「私」とすべきかな、と思います
細かくてすみません…

485:2010/04/22(木) 15:38:36 ID:yfaj5vOM
今から小ネタを投下しようかなと思います。
最近小ネタばっかだな……。

1レス消費で、会話オンリーです。しかも10行以内という。
では、被らなければすぐ投下します。

486:2010/04/22(木) 15:39:28 ID:yfaj5vOM
上条さんが狼にっ!?


美琴「や、やめて! それ以上は…………」
上条「どうした美琴。もうギブアップですか〜?」
美琴「あああっ!!」




















美琴「当麻ってゲーム上手いのね。全然勝てないわよ」
上条「まあな。というか美琴。そんな声出されると上条さんとしては困るのですが」
美琴「なんで困るのよ?」
上条「……………ナニモコマリマセンデス。ハイ」

487:2010/04/22(木) 15:40:57 ID:yfaj5vOM
以上です。
続きは脳内補完でお願いします。
会話文だけで書いてみたかったんだ……。

488■■■■:2010/04/22(木) 15:43:00 ID:43AbQQ5M
>>487
そして土御門を中心に妙な態度をとりはじめる友人達…という絵が浮かびましたw

489アミノ酸:2010/04/22(木) 16:05:15 ID:5QbuzaPA
皆様、こんにちは(*'-')ノ

 まず、最初に脱字を発見してしまったのでお詫びと訂正を…。
1レス目、とある宣伝の超電磁砲<レールガン>③の、最後の行の文章で

けど電話越しなら姿は見えな『い』し、の『い』が抜けておりました。

 うーん、最終的な調整のところで詰めが甘かったです;
編集の際に、付け加えていただけると…どうかお願いします!<(_ _)>
しかもコピペする際に題名も上にくっついたまま…ぐわぁぁぁ。
あっ!他にもここがおかしいよ!とのご指摘下さると嬉しいです!

ということで返信させていただきます。

>>474
楽しみにして下さって嬉しい限りです!頑張ります!
>>484
なるほどつまり「私は…どうすればいいかな?」とこうすると良いって事ですよね。
一人称の時に、『私』だと個性出せないかなーと思ってましたが、なかなかむずかしいですね;
他でその本人を補えているから、あたしじゃなくても問題ないって事でしょうか?
ありがとうございます、次に向けての参考になります<(_ _)>

 とある宣伝の超電磁砲<レールガン>続き!…は現在進行中で書いてます!
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、発売日に向けカウントダウンしていきますので。
一日一回話が進めれるよう、頑張ります!ええ!
最初はそのつもりじゃなかったのですが、いろいろ途中で脱線して思いついたが最後、挑戦します!
皆様、最後までお付き合い下さい。宜しくお願いします。でわでわ!

490ぴんた:2010/04/22(木) 16:29:27 ID:rI4fahpU
皆さんGJす!
自分も投下いたしますー(´ω`)
今回のテーマは『脇役』なんだよー。
注意点としてオリキャラ…ではないけど、オリキャラっぽい人がいるんだよーヽ(゜ω゜)ノ

てなわけで5分後くらいに投下いたします。

491逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:35:19 ID:rI4fahpU

 とある日の深夜。学園都市第七学区のとあるファミレスにて群れている不良達たちがいた。
 角にある大人数のファミリー席を7人で陣取りながら話し込んでいる。
 その内容とは、今テレビで人気になっている女優や歌手の話ではなく、面白いドラマや学校であったムカつく話でもない。
 見ると全員が全員まだ息が切れきれで、2,3人は頭を擦っている奴さえいる。
 そんな彼等の話のネタは――

「だぁーっ! くそっ! また逃げられたぜ! あのツンツン頭の逃げ足大王によぉ!!」
「はぁ…、はぁ…、あ、あいつを追いかけるのもう止めにしねぇか? あの逃げっぷりは常人の遥か上を行ってるぜ」
「おいおい待てよ。せっかく今日は可愛い子ちゃんとよろしく出来るチャンスだったんだぜ?」
「だな。でもあの大王が割り込んだせいで結局女には逃げられるは、大王も逃がすはで…、やってらんねぇよ」
「はぁ、んで。その大王なんだがよ?」
「な、なんだ? まさか見つけたのか!?」
「いや、違ぇ。ネットで流れてる噂なんだが、どうやらその大王に手下がいるらしいんだわ」
「て、手下ぁ!? つーと大王はどっかのグループの頭って事になんのかよ?」
「にしては逃げ腰だな。まぁ一対七じゃ逃げたくなる気も分からないわけじゃねぇけど…」
「でも女を助けるとか正直かっけぇな。女からしたら不良から救ってくれた王子様になるわけだからよ」
「…」
「…」
「…」
「…羨ましい」
「で、でだ! その大王の部下ってどんな奴なんだよ?」
「まず一人目は常盤台の超電磁砲」
「ぶぅぅぅぅぅ!!! オイオイッ! 一人目からぶっ飛んでんじゃねぇかよ! 第三位が手下とか大王どんだけだよ!?」
「しかもその超電磁砲、超可愛いらしいぞ」
「…」
「…」
「…」
「…羨ましい」
「で二人目は瞬間移動の美少女。他にも太刀を持った美女に、槍を持った美女、他にも一万人くらいのいる組織らしいぜ」
「おいおいちょっと待てよ! 何でそんな美女ばっかりなんだよ! 何か嘘臭くねぇか!?」
「てか一万!? 学園都市内部に一万の組員!? こ、これは手ぇ出したら確実に殺られるんじゃねぇの!?」
「いや待て。もしかすると今日みたいな事を繰り返し繰り返ししているうちに女から好かれて仲間になっていくとかじゃねぇのか!?」
「も、もしそうなら俺らが組織拡大に貢献してるって事だよな?」
「そ、そうだな…」

 不良達は同時に「はぁ…」と溜息を吐くと、ウエイトレスが持ってきた水に口をつけ一息入れる。
 さっきまでツンツン頭の逃げ足大王を追いかけて走り回っていたのでとてもうまかった。
 不良達はまだ同時に「はぁ…」と溜息と吐くと、走り回って体力を使ったのか、お腹がぐぅと鳴り、食事を取ることにした。
 不良と言ってもまだ学生でお金はあまり持ち合わせていないらしく、クーポンある? とか、こっちの方が安くて多いなとか話し合っていた。

492逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:36:49 ID:rI4fahpU

「あー、彼女欲しいなぁー」
「なんだよ急に」
「おまえら欲しくないの? 花の学生生活に女は付きもんじゃねぇ?」
「女ねぇ…、まぁいたらいたで面倒そうだけどな」
「つか俺ら彼女欲しくてナンパしてるんじゃなかったっけ?」
「あ? そ、そういやそうだな」
「……ちょっと待て」
「あ? なんだよ?」
「俺らは彼女が欲しい」
「あぁ」
「で、ナンパをする」
「するね」
「で、大王が邪魔をする」
「…するな」
「で、大王の組織がまた大きくなる…の無限ループになってねぇか!?」
「…」
「…」
「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!???????」」」」」」
「た、確かに言われてみればそうだな!」
「だろ!? 俺等が彼女を欲すれば欲するほど大王の組織拡大に一役かってんだよ!」
「じゃ、じゃあよ! 俺等が彼女をゲットするには…、どうすりゃいいんだ?」
「大王をとっ捕まえたところで後々一万の組員が押しかけてくるし…」
「捕まえるといっても、何でも大王には超電磁砲が側近として付いてるらしいぜ?」
「はぁ!? くそっ! 大王の野郎ぉ! 美女ばっかの組織の上、美少女を側に使わすとはっ!!!」
「こ、これじゃもう打つ手ねぇじゃねぇかよ…、どうすんだ?」
「…」
「…」
「…」
「……俺に、いい考えがある」
「え?」

 そう言い出したのは今までただの一言も話さなかったスキンヘッドの男だ。ダボダボのパンツに大きめのパーカー姿のがっちりした男。
 仲間内からはその男は哲と呼ばれ、寡黙だがやる時はやる男だし、とても情深い奴として人気がある。
 哲は、話の途中で運ばれてきたハンバーグステーキを一口サイズに切ると、猫舌なのか十回程ふーふーして口に運んだ。
 口の中に広がる肉汁を感じつつライスを一緒にかっ込む。
 そして哲は「うめぇ…」と言うと、他の男達に目を向けた。

「要するに、俺等も同じ事をすればいいだけだ」
「は? 同じ事? なんだよ、哲。同じ事って」
「いつも大王がしている事だ。俺らはナンパ側だったが、今度はナンパを止める側に回ればいい」
「な、なるほど! さすが哲だぜ! さすがにナンパを止めてる奴には大王も何も言ってこねぇだろうしな!」
「そんでもって大王の組織も拡大する事なく!」
「助けた美少女が俺らの為に色々とやってくれるってわけだな!!!」
「ふっ…、そういうこった。何故今まで気付かなかったのかと自分を殴りたくなるぜ」
「よっしゃ! じゃ、じゃあ早速明日から作戦開始と行こうぜ!」
「だな! もう夜遅いし早く帰らないと明日の作戦に支障をきたす!」
「じゃあ時間と場所は明日学校で決めようぜ!」
「ああ! よっしゃー! 何か燃えてきたーっ!!!」

 こうして不良達は明日への希望へと走っていくのであった。

493逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:38:28 ID:rI4fahpU

 そんな事があった翌日。その不良達の話題とされていたツンツン頭の逃げ足大王こと上条当麻は、眠気眼を擦り登校していた。
 昨日深夜近くまで追いまわされてたせいか、足取りは重く、フラフラと欠伸をしながら歩いている。
 上条当麻はどこにでもいるごく普通の高校生で、ちょっと不思議な力があるが、別に手から電気が出るわけでもなく、太刀や槍を持っている
 わけでも無く、瞬間移動できるわけでもなかった。増してや一万の組員の頭なんか最初からやっていない。
 昨日不良達が言っていたのはあくまでも噂で、上条は今日もなんにもないちょっと不幸な一日を送っているだけだった。
 まぁ噂が全部嘘と言ったらそうでもなく、確かに上条の周りにはちょっと過激な美女がいるし、考えようによっては一万の組員がいる。
 それはあくまで考えようなのだが、その噂で確実な事が一つあった。それは―――

「おっそい! まったく毎日毎日! どれだけ待たせれば気が済むのよ、当麻はっ!」

 そう言って顔を膨らませているのは常盤台の超電磁砲こと御坂美琴。
 彼女は今や上条当麻の恋人であり、登下校を共にして休日には上条とデートなどと学生生活をエンジョイしていた。
 つまりはあの噂の大王の側近が超電磁砲と言うのは強ち間違ってはいない。恋人として常に隣にいるのだから。
 上条は美琴の目の前までフラフラと歩いて行くと、力尽きたようにぽふっと美琴の体に倒れ掛かった。

「なっ…、ちょっちょちょちょ! そ、その…あの…あわわ」
「すみません美琴さんー…、上条さん昨日あまり寝てなくてー…ぐぅ」
「ど、どうしたの? 何かあったの?」
「ちょっと…、過激なお兄さん達に追いかけられてたんですよー」
「追いかけられてた? …アンタまさか、また不良達から女の子庇ってたんじゃないでしょうね?」
「ん? ……そうです、けど」
「あ、アンタね! 庇うのが悪い事とは言わないけど、追いかけられたら私に連絡してよ! 一瞬で終わらせてあげるから!」
「あのですねー、お兄さん達にも命というものがあって…」
「そ・れ・で・も! 当麻に何かあったら、私…」
「ははは、大丈夫ですってー、逃げ足には自信があるんですからー」
「それは嫌ってほど知ってるけど…、あまり無理しないでね?」
「おうよ。優しいなー、美琴さんはー」
「あ…」

 上条は美琴から離れ、美琴の頭を優しく撫でる。
 美琴からすれば大好きな上条に頭を撫でられた上に、笑顔を見せられたのでこの上なく幸せな気分になり、先程まで沈んでいた表情を一気に赤く染め上げた。
 目はトロンと座ってしまい、体を子猫のように一回り小さくさせた。
 上条も美琴の頭が撫でやすいのか笑顔で撫で続けていると、その笑顔につられて美琴も笑顔になる。

494逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:39:34 ID:rI4fahpU

「えへへ」
「でも待たせて悪かったな。ごめん」
「い、いいよ。当麻が無事なら…、そ、それに…、頭撫でてもらったし…」
「うんうん。素直な美琴ちゃんも可愛いですな」
「ふにゅ…」
「じゃあそろそろ行きますか。途中までだけどさ」
「う、うん。…あ、ちょっと待って、当麻」
「ん?」
「ほら…、ボタンの穴ずれてるよ。しっかりしてよね」
「あー、寝ぼけてたもんで…。すみませんねぇ、美琴さん…」
「ま、まったくもう! 当麻は私がいないとダメなんだから! ほら、もういいわよ」
「ありがとな。じゃあお詫びに――」
「へっ!?」

 上条は美琴の右頬に手を添えると、鼻の頭に優しくキスをした。
 美琴は上条と付き合うようになって気付いた癖をいうか、習慣みたいのを見抜いており、上条がキスをする時には決まって自分の左頬に手を添えてくるのだ。
 もちろん今回も例外では無いだろうと思った美琴は、いきなりのキスに頭からポンっと湯気を出すが、慣れもあってか漏電はしない。 
 まぁ漏電がないだけで、上条からのキスはいつだって美琴の心をときめかせる事に変わりはないのだが。
 そんな事があった美琴は、頭を撫でてもらった時に真っ赤にした顔をさらに染め上げ、かするような小さな声で俯きながら上条に言う。

「と、当麻…こんな所で恥ずかしいよ……」
「嫌だったの?」
「い、嫌じゃない…けど」
「美琴さんが可愛くて、上条さん我慢出来なかったんですよー」
「うぅ…」
「はは、ほら。早く行かないとホントに遅刻するぞ」
「あ! ま、待ってよ!」

 美琴は上条に走り寄ると、腕を絡めて歩きだした。
 上条はこっちの方が恥ずかしい気がすると思ったが、美琴が楽しそうにしていたのでそのまま登校する事にした。
 ここ学園都市は学生が大多数を占める街であるためカップルも学生しか見ないと言っても過言ではないが、常盤台の制服を身に纏っている女の子を連れて
 歩くのは上条としては幸せな事だが不幸な事でもあった。
 上条が通っている高校と美琴が通っている常盤台中学の丁度分かれ道、二人はここでいつも放課後どこで落ち合うか話し合う。
 今日は上条の補習もないし、昨日のうちに特売品を買い占めたので食材の心配もしなくていい。
 そう言って二人は今日はファミレスでも行ってゆっくり過ごそうって事で別れた。
 美琴は今日の放課後が待ちきれないのか足取り軽く走って行き、その後ろ姿を見送った上条は、たまたま近くにいた土御門と青ピにボコボコにされた。

495逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:41:26 ID:rI4fahpU

 そして放課後。
 昨日の深夜に彼女ゲットと意志高らかに掲げた不良達は、昨日と一緒のファミレスに入り獲物を待っていた。
 普段の彼等ならこの獲物は女子中高生なのだが、今日はそうではなく、その中高生を狙うナンパを獲物として待っているのだ。
 ファミリー席を陣取り、仕切りの隙間や影から今か今かと周囲に視線を向ける。
 現在店内に客足は少なく、いても男子やカップル達ばっかりだった。
 不良達は、つまらなそうにドリンクバー用のコップを持つとズズッと一気にジュースを飲み込み溜息を吐く。
 するとそんな中カランカランという鈴の音が鳴り響き、入り口のドアが開いた。

「ん? お、おい見ろよ! 女だ! しかも一人!」
「おぉぉぉ!!! しかも可愛いじゃねぇか!」
「くぅぅぅ! お近づきになりてぇ…! はぁ…はぁ…」
「お、落ち着けお前ら! ここで出て行ったら計画が水の泡だぞ!」
「あ、あぁ…」

 そんな彼等の注目の的になってる女の子は、店員に「いらっしゃいませー」と招かれ、テーブルに着いた。
 店内は空いていたため待ち時間は無く、水を持ってきた店員に何やら注文したのかメニューは受け取らなかった。
 女の子は長い黒髪にセーラー服姿で、その胸元には女性の象徴とも言える膨らみが自分を主張しているようにセーラー服を盛り上げている。
 年はハッキリとは分からないが、中学にあがったばかりか高校生には見えない幼い顔立ちをしており、その少女は鞄からノートを
 取り出すとカリカリとペンと走らせていった。

「…いい子ちゃんじゃねぇか」
「…」
「て、哲ちょっと落ち着け。スキンで凝視はかなり怖い」
「つかまだかよナンパは? あんな可愛い子俺だったら席に座った瞬間に声かけるぜ」
「ん? いやちょっと待て! 何か近づいていってるぞ! いかにもガラ悪そうだ!」
「おおおおおお! ほんとだ! しかも一人! へっへっへっ! さあ、早くいけっ! そこだ! 声かけろっ!」
「…」
「て、哲すまん。さっきのは謝る」

 そんな彼等の願いが通じたのか、そのガラの悪い男は黒髪の少女の向かいに座り、何やら話し込んでるようだ。
 しかしこれだけだとただ単に彼氏という可能性もあるわけだが、どうやら少女は嫌がってるらしく「やめてくださいっ!」という言葉も聞こえてきた。
 その言葉を聞いて彼等は立ち上がる。来たぜ…ぬるりと……。

「おい。おまえ」
「あぁ? 何だおめーら?」
「彼女嫌がってんだろ? 離してやんなよ」
「はぁ? 何? 俺の邪魔しようっての? 上等じゃねぇかよ」
「ははは。おまえ馬鹿なの? 見て分からない? 俺等七人。おまえ一人。ぶち殺し確定じゃん?」
「馬鹿はおめーらだよ。後ろ見てみな」
「はっ! そんな事言ってその隙に逃げ出そうと―――」

 何やら人の気配を感じ後ろを振り返ると、そこには自分達よりもがたいがいい青年達が十人くらいいて睨みを効かせている。
 指の骨をポキポキッと鳴らす奴もいれば顔中傷だらけの奴もいるし、何が面白いのかヘラヘラ笑ってる奴さえもいる。

「――してるんじゃ? ないですよね。はい」
「逃げないからよ。ちょーっと面かせや。うん?」

 そんな青年達を見て、哲たちは一瞬にして顔を真っ青にした。

496逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:43:42 ID:rI4fahpU

「痛ててて…、まだあちこち痛ぇ…。不幸だ…」

 上条当麻は朝の美琴とのラブラブ登校を土御門達に見つかりまずその場でボコボコにされ、それでも収まらないのかクラスで常盤台の女の子と
 いちゃいちゃしながら登校して来たと言いふらし、嫉妬の念を持った男子生徒と、絶望に追いやられた女子生徒に追い回されて現在に至っている。
 毎日不良やクラスメイトに追い回されている上条にとっては、大人数を撒くのはもはや慣れてしまっており、放課後もそんなクラスメイトから
 難なく逃れる事が出来た。

「さて、美琴はもう来てるかな…って。ん? なんだあいつら?」

 上条が見るその先には人だかりが出来ていて、その集団はいかにも怪しい感じでファミレスの前にたまっていた。
 その道を通る他の学生は目を合わせないし、ちょっとでも目が合うと二人三人と迫られる。
 その集団の足元には倒れてる人影が見え、男の一人が黒髪の少女を押さえつけてるように見える。
 上条当麻の特性として不幸に会う条件がどんどんと立っていくが、見てみぬ振りも出来ない彼は今や記憶にないあの方法で脱出を図る。

「いや〜、こんな所にいたのか。探したぞ? あ、どうもどうも。連れがお世話になりました〜」
 
 そう言って上条は爽やかに女の子の手を取ると足早にその場を後にしようと思ったが、倒れている男達を見て足と止めた。
 見れば倒れている男達は昨日深夜まで自分の事を追い回した連中で、何やら腹を抱えてうずくまっている。
 もちろんそんな状態にしたのは青年達で、その集団の中に単身乗り込んだ上条の不幸数値は極限まで跳ね上がっていった。

「何だてめぇは? こいつらのダチか?」
「え? いや、そういうわけじゃ…」
「じゃあ何だっつーんだ? あぁ!?」
「なめてんのか? コラ?」
「…不幸だ」
「あぁ? 何だって?」

 上条は逃げるに逃げれなくなったためはぁっと溜息を吐き、この先に起こるであろう不幸を嘆いた。
 しかしまぁこのままでいるわけにもいかないので「仕方ねぇ」と一言言って女の子を後ろに隠し、一歩前に出て言い放つ。

「あぁそうだよ。恥ずかしくないのかお前ら。こんな大勢で女の子一人囲んでなっさけねぇ!」

 その一言を受けて青年達は目を見開き、少女にいたっては何かを感じたようだ。

497逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:47:45 ID:rI4fahpU

 そんなファミレス前から時間と場所を変えて、こちらは御坂美琴。
 時は少し遡り美琴はファミレスへ向け走っていた。
 美琴は学校が終わったらすぐにでも上条の待つファミレスへ行くつもりだったが、放課後同じ学校の一年生に相談に乗って欲しいと言われたので、
 教室でその少女の話を聞くことにした。
 相談事を言うのは、美琴自身の能力でもある発電のことで彼女もその系統のレベル3のようだ。
 大能力者や超能力者なら誰もが経験するであろうレベル3から4への壁は飛び越えるのはあまりにも高く、その少女もその事で悩んでいた。
 御坂美琴はレベル1から5まで上り詰めた事で有名であり、発電能力としてその頂点に君臨する美琴に相談に来たというわけだ。
 美琴はその少女の話を聞き、自分が今までやってきた事を話したが、その事に少女は大変驚いた。
 それはそんな血の滲むような事をしてきたのかとかそういう事ではなくて、自分は変に焦りすぎて自分を見失っていたという事だった。
 美琴は満足のいくアドバイスじゃないかもしれないけどと言ったが、少女には全然そんな事は無く、笑顔でお礼を言って帰っていった。
 
 そしてそんな事があってか、美琴はファミレスに行く時間が遅くなり現在絶賛全速力中なのだ。
 美琴も上条の事をその昔夜通し追い掛け回していたので足の速さと体力には自信がある。

「遅れちゃった遅れちゃった遅れちゃったーーー! 待っててね当麻っ! 今行くからねっ! えへ、えへへ」

 まぁ何と言うか色々切羽詰っている美琴なのだが、そんな心境を変える出来事が目の前で起きていた。
 それは遠くからでも分かる上条当麻の特徴でもあるツンツン頭が何やら集団の中に割って入って行ったこと。
 美琴はツンツンが目に入った瞬間に胸を高鳴らせたが、その後の事から、また上条は女の子を守りに行ったのだと直感的に感じる。
 昨日の夜もそれで追い掛け回されていたらしいし、どうしてそんなに無茶をするのかと美琴は思う。
 しかし怒りはしない。そんな上条当麻を自分は好きになったのだから。
 美琴がそんな事を考えてその集団に近づくと、案の定上条は女の子の盾になっており、周囲の男達からその少女を守っていた。
 ココだけの話だが、その時の美琴ビジョンでその女の子が頬を染めてるように見えたのはきっと幻覚だろう。
 そして現在に至り上条が青年達に向かって言い放つ。

「あぁそうだよ。恥ずかしくないのかお前ら。こんな大勢で女の子一人囲んでなっさけねぇ!」
「(はぁ…、アイツったらあんな事言ったらボコボコにされるのがオチじゃない…)」
「大体おまえら声をかけた相手を良く見てみろよ!?」
「(そうね。私の時もそうやって言っ―――)」
「…まぁお前らの目に狂いがないのは認める! でもこんな美少女でも大勢で寄ってたかって迫ってくるってのはどうなんだよ!」
「なんでじゃコラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!?????」

 美琴は上条の言葉に我を忘れ、彼女である事を忘れ、数億ボルトの電撃を上条目掛けてぶっ放した。
 上条も最近美琴と一緒にいる事が多いせいか、空気中の僅かな電気の流れから電撃が飛んでくる事を察知し、その方向へと右手を差し出す。
 きっとその時だけ某パイロットのように頭のあたりに電気みたいのが走ったのだろう。
 周囲は一瞬だけ青白く光ると、その後静けさと取り戻し煙が舞い上がった。

498逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:49:51 ID:rI4fahpU

 しばらくして煙が風に流せていくと上条は周りを見渡す。
 すると、そこにはさっきまで対立していた青年達が全員その場に崩れ落ちており、ピクピクと痙攣している。
 上条はこれは絶対に美琴だと思って溜息を吐こうとするが、それよりも先にその本人である御坂美琴に制服の首元をがっしり掴まれてしまった。

「ア・ン・タ・はーーーーーーーーーーッ!!!! 何なの一体!? 私の時はガキだの態度が悪いだの反抗期だの言ってたくせにっ!!」
「み、みみみ美琴…やっぱりおまえか! てか、ちょっと落ち着いて…」
「うっさいうっさい! もう頭にきた! 最近は目の前でこういう事なかったから安心していたけど、やっぱりアンタはアンタなのに変わりはないみたいね!」
「な、何をわけのわからん事を言って…」
「可愛い女の子の前だと見境なく飛び出していくその性格を一度徹底的に調教してあげるって事よ!」
「あー…」

 どうやら美琴姫は相当ご立腹のようだ。
 その理由を記憶を失っている上条は知る由もないが、今やその美琴の彼氏をしている。
 こういう時が過去に無かったと言えばそんな事はなく、付き合って最初の頃には部屋にいるインデックスの件で一波乱あり、それが済んだと思ったら
 今度は太刀を持つ美女や二重瞼の美女と一波乱あり、やっとそれも収まったと思ったら妹達の件で大波乱があった。
 その波乱の原因は元を言ってしまえば上条なのだが、大体は美琴が上条と他の女の子が仲良くしているのが見てられなくて騒ぎを起こして
 いるというのが一番の原因なのである。
 そんな事を積み重ねていくうちに上条はそういう状態の美琴の扱いには慣れ、上条は美琴が喜ぶ頭なでなでをしてあげた。

「あ…」
「ったくおまえは。何をそんなに怒ってるのか知らないけど、そんなに荒くなるなって」
「だ、だって…と、当麻は今は私の彼氏なんだよ? そ、それなのに…、その…、他の女の子に目を向けるから…」
「あのな美琴よ。前にも言ったけどそんなに心配しなくったって上条さんは美琴さんにメロメロなんですってば」
「ホントに…?」
「ああ、ホントだ」
「じゃ、じゃあさ…ん!」
「え!? あ、いや…その、ここではちょっと…」
「なによー、やっぱり私とは出来ないって言うの!? そうなのね! そういう事なのね!? うぅ…」
「いやそういうわけじゃないけど…とりあえず周りを見てみようか?」
「ふぇ?」

 そう言われて美琴が周りを見渡すと、風紀委員の面々が揃っており、騒ぎを起こしていた青年達を捕まえてるところだった。
 もちろん美琴もその騒ぎの一員なのだが、一部始終見ていた人が風紀委員に言ってくれたらしく大事にならずに済んだ。
 美琴は上条とのやりとりを見られていた事に恥ずかしくなり、頭からボボボボと煙を出すと俯いてモジモジし始めた。
 そんな美琴を見た上条は、こういう状態になったらしばらくは帰ってこないなと思い、少女に安否の声をかける。

499逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:51:27 ID:rI4fahpU

「えっと…、大丈夫か? 怪我とかないか?」
「は、はい! その…、助けていただいてありがとうございます!」
「礼なら俺じゃなくてそこのふにゃふにゃしてる奴と、あいつらに言ってくれ」
「へ?」

 上条が目で指す先には青年達から少女を守ろうとした男達がいて、フラフラになりながらも立ち上がっていた。

「理由は知らないけど、君の事庇ってくれたんだろ?」
「はい…」
「俺は結局何もやってないからさ。お礼を言うならあいつらに言ってくれ」
「は、はい」

 そう言って上条と少女は男達に近づいていった。
 その男達の顔は殴られたのか腫れており、鼻や口からは血が滲み出ており痛々しい有様だ。
 そんな状態の男達を見て上条は溜息を吐いた。

「おまえらな。勝てないと分かってる相手にはまず逃げようぜ。そんなボロボロじゃ助けられた方も心配で仕方ねぇよ」
「う、うっせんだよ大王がっ! 俺らはテメェみたいな腰抜けじゃねぇんだ! 大体女を守るのが男の役目だろうがっ!!」
「えっと…、昨日ナンパしてたのはどこの誰でしたっけ?」
「…うっせぇ! それを言うんじゃねぇよ!」
「でもよ、確かにそうだよな。今日のお前らは昨日と違ってかっこいいぜ」
「なっ…!」
「ほら、君も」
「は、はい。あ、ああああの! 助けてもらって…ありがとうございましたっ!!」
「……気にすんなよ」
「素直じゃねぇな。ひょっとして照れてます?」
「だああああああっ! うっせぇうっせぇ! おまえらもう行こうぜ! 今日は疲れちまったよ」

 男の言葉を受け、他の奴らものろのろとその場を後にした。哲だけは上条に対して深々とお辞儀をして行く。律儀なり。スキンの哲。
 上条はそんな男達の後姿を見送ると、風紀委員に少女を任せ美琴を連れてファミレスへ向かう。

「ほら美琴行くぞ。しっかり歩けよ?」
「ふにゃー」

 未だ美琴は帰ってこないらしい。

500逃げ足大王とその手下:2010/04/22(木) 16:53:39 ID:rI4fahpU

 夕日に染まる学園都市をバックに、川原の土手に腰掛ける七人の男達がいた。
 その男達の顔は夕日で真っ赤に染まっており、何やら昨日までの締りがない顔ではなく、引き締まった表情をしている。
 男達は沈んでいく太陽を見送っていたが、そんな中唐突にスキンヘッドの男が話し始めた。

「大王が何で人助けをするのか、分かった気がするな」
「…あぁ」
「つかあんな馬鹿みてぇに強い電撃女を丸め込める所からすると大王も相当の力の持ち主だぞ」
「強い奴は馬鹿みてぇに突っかかっていかないって事か…」
「あぁ…、でもさ、何か嬉しかったよな。人から感謝されるのってさ」
「…」
「…」
「お前らホント素直じゃねぇのな」
「…はぁー、でもよ。結局彼女ゲットならずじゃねぇかよ。ここまで痛めつけられて」
「別にいいんじゃね? 今は何か晴れ晴れとした気分だぜ」
「…あぁ。そうだな」
「…」
「…さて、と」
「あ? 何だよ哲。もう帰んのか? 今日は駄弁らないの?」
「今日は疲れたから帰る。珍しくいい気分だしな」
「そっか。じゃあ俺も帰るかな」
「俺もー」

 そう言って男達は立ち上がると街頭で照らされている学園都市へと消えていった。
 そしてその日からその男達が上条へ突っかかって行くことはなくなった。
 そしてその日から第七学区にいた不良が七人消え、変わりに風紀委員希望者が七人増えたのは、また別のおはなし。
 そしてその男達の中で、逃げ足大王とその手下が目指すべき目標となったのも、また別のおはなしだ。

501ぴんた:2010/04/22(木) 16:58:51 ID:rI4fahpU
以上になったり。
今回は上条さんのフラグが男に立ったとしたらどうなるのかを考えて書いてみたりしました(*´ω`*)
それではー♪

P.S.
自分は上琴いちゃスレが大好きです。これからもいいネタが浮かんだら書いていこうと思いますー。

502■■■■:2010/04/22(木) 17:00:25 ID:1bTIOJj.
>>501
GJ!!
イイハナシダナーと思いつつ、
>「…まぁお前らの目に狂いがないのは認める! でもこんな美少女でも大勢で寄ってたかって迫ってくるってのはどうなんだよ!」
>「なんでじゃコラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
で死ぬほど笑ったww
こんな台詞聞いたら、美琴なら絶対こういう反応するww

503■■■■:2010/04/22(木) 17:13:35 ID:hrpcsy5E
まとめを見てみようと思ったらどれを選んでもループしちゃって見れなくなってるな

504上琴患者A:2010/04/22(木) 20:03:30 ID:GThvWSzU
どもー、誰も居ないようなので投下したいと思います。
注意点は、世界観合わないよ〜とか、キャラ崩壊ダメって人はスルー推奨です。
投下は五分後くらいから11くらい使います。
タイトルは『最恐と最強』です。

505上琴患者A:2010/04/22(木) 20:07:59 ID:GThvWSzU
とある休日、御坂美琴は暇を持て余し、いつもの公園を散歩していた。

「うーん、なんとなくここまで来ちゃったけど、流石にアイツはいないか…
 ったくあの馬鹿、こういうときに限って見つからないんだから…。はぁ…自販機蹴って帰ろっと」

もしかしたらという期待を抱きここまで来たのはいいが、結局お目当ての人物は見つからずに、ジュースを手に入れて帰ろうとする。
いつものようにトントンっと予備動作に入った所で突然声を掛けられた。

「おーっす、御坂じゃねーか。何やってんだ?こんな所で」
「わ!ちょっといきなり声掛けないでよ!びっくりするじゃない」
「わりーわりー、んで?何してたんだ?」
「見てわかんないの?自販機蹴ろうとしてんのよ」
「は?何でまたそんな事を?」
「え?何でって…いつものようにジュースを飲もうと思ったのよ」
「おいおい、ジュースくらい普通に買ったらいいじゃねーか、お前お嬢様なんだろ?」
「べ、別にいいでしょ!それに、誰かさんみたいにお金飲まれたら嫌だから!」
「はは!そんな間抜けな奴がいるのか」
「…?アンタ、自分の事でしょ?それにさっきからなんか会話がおかしいような気がするんだけど、どこかに頭でもぶつけた?」
「そういえばそうだったな!あはは…ははは…」
「?」

会話の違和感を感じ首を傾げる美琴。当麻は一瞬ドキッとしたした動きを見せたが、美琴はその動きを見ていなかった。

「んで?アンタはここで何してんのかしら?」
「あ〜実はお前を探してたんだよ」
「え!?な、なんで!?」
「ああ、ちょっと大事な話があってな、すぐ済むからちょっとだけ時間いいか?」
「………」
(え!?ちょ、何?私を探してたって!?それに大事な話って!?この真剣な表情といい、ま、まさか…
こ、こ、告白とか!?いやいやでもこいつの場合はまたなんか厄介事に巻き込まれて…えーでもでも!もしかしたら本当に!! )

当麻の真剣な顔を見て、顔を真っ赤にし、あれやこれやと想像を膨らます美琴。そんな彼女をつまらなそうな顔で見る当麻。
チッ、っと軽く舌打ちをしてから、立ち尽くす美琴に声を掛ける。

「おーい、御坂さーん、聞いてますか〜?」
「ひゃ!!な、なによ!大事な話って」
「ああ、実は俺、お前の事が――――――――――」

当麻の言葉に辺りが静まり返る錯覚を覚えた。まるで自分以外の全てがどこか遠くへ行ってしまったかのように。
そんなの嘘だ。そう考える彼女の動悸は先ほどまでとは違う意味で速くなり、真っ赤だった顔は一瞬にして真っ青に染まった。
体は小刻みに震え出し、視界がぼやけていく。

506上琴患者A:2010/04/22(木) 20:08:32 ID:GThvWSzU
「え…?今…なんて…言った…の…?」

先ほど言われた言葉がどうか嘘であって欲しいと思い、口に出した縋る様な美琴の言葉。震えたその声には力が無く、とても弱々しいものだった。
それに対して当麻は特に表情も変えずに美琴の僅かな希望を打ち砕く。

「なんだ、聞こえなかったのか、仕方ねえな。もう一回言うぞ、俺はお前の事が大嫌いだ」
「――――――――嘘…でしょ?」
「嘘じゃねーよ」
「どう…して…?」
「どうしても何も、鬱陶しいんだよ。会うたびに電撃飛ばしてくる、口は悪い、弱者を見下したその態度、本当うんざりするわ」
「…」
「わかったらもう二度と俺に近づくなよ、用はそれだけだ」
「…」

当麻の容赦ない言葉が美琴の心を切り刻んでいく、絶対の存在である当麻からの明確な拒絶。それは美琴にとって死刑にも等しいものだった。
全身の力が抜け、膝から崩れ落ち、両手で顔を押さえる美琴。そんな彼女を見て満足そうにその場を立ち去ろうとする当麻。

―――――その時

「――――――――――!!!」

聞き覚えのある声に顔を覆っていた両手をどけて、声の聞こえてきた方向を見る。
ぼやけた視界が捉えた人物は、いつも自分のピンチに駆けつけてくれる、強さと優しさを持ったヒーローだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「くそ!御坂…、間に合ってくれ!」

少年は公園に向かって走っていた。全力疾走をする少年の左腕は大きく皮膚が剥がれている。
先ほど突然何者かに襲われ、気絶している間に剥がされたのだ。
少年は自分の皮膚を剥がした人物が誰だか知っていた。そしてその人物がその皮膚を使って何をしているのかも。
少年は痛みも気にせずに、ひたすら発電機のプロペラが回る方向へ走る。恐らくそこにいるであろう人物を守る為に。

「あの野郎、御坂に何かしたら絶対に許さねぇ!とにかく無事でいてくれ!」

程なくして目的地の公園にたどり着く。しかし、探している人物は見つからない。

(何処だ御坂!何処にいる!?)

キョロキョロと辺りを見回しながら走る。そして、彼女とよく会うあの自販機の前でその姿を見つけた。
そこで少年は見た。探していたその彼女が膝を付き、両手で顔を押さえる姿を。
そして、その前に立ち笑みを浮かべている自分とそっくりな顔を持つ男を。

507上琴患者A:2010/04/22(木) 20:09:00 ID:GThvWSzU
「―――!!!」

ザワリ、と全身の血が沸騰するような感覚を覚える。鼓動は強く激しくなり、体中の熱が武器である右手に集中されていく。
今まで全速力で走っていたが、更に加速し、目の前の男に真っ直ぐ突っ込む。

「――――ンの野郎おォォおおおおおお!!」

その叫び声に気付き少年の方を向く男。黒いナイフを取り出し構えを取るが、少年は気にすることなく突き進む。

「御坂を!!泣かしてんじゃねえぇぇぇ――――――――ッ!!!」

叫びと共に渾身の右を放つ、その拳は黒いナイフを砕き、男の顎を捉える!
あまりの衝撃に男が吹き飛ぶ。同時にパキィンと男の仮面が砕かれた。

「御坂!大丈夫か!?アイツになんかされたのか!?」
「…」
「おい!どうした!?どっか痛いところでもあるのか!?」
「…アンタが…二人…?」

吹っ飛んだ男はピクリとも動かないが、そんな男には目もくれず、美琴の心配をする少年。
美琴の方は目の前で起きた事が理解できずにいたが、辛うじて疑問を口にする。

「ああ、あの野郎は偽者だ、以前海原の偽者がいただろ?そいつだよ」
「偽…者…?」
「ああ、そうだ」
「そうなんだ…」
「それで?お前は一体アイツに何されたんだ?なんか酷い事でもされたのか?」

顔の砕けた男が何者か説明する当麻、しかし、美琴はどこか上の空でぼーっと当麻を見つめ、生返事をしている。
こんな状態になるという事は余程酷い目にあったのだろうと当麻は感じた。
どのように声を掛けていいか迷っていた当麻だが、「ねえ…」と美琴が口を開いた。

「アンタは…、アンタも私の事…嫌い…なの…?」
「は?なんだいきなり?」
「さっきそいつに言われたの、『大嫌いだ』って…アンタの顔で、アンタの声で…、それで私……」

先ほどの言葉を思い出し美琴は遂に泣き出してしまった。先ほどまでのように両手で顔を覆い、泣き顔を見られないようにして。
そんな美琴を見て、当麻は頭を掻く。そして、小さくため息をつくと、美琴の頭に手を乗せ、撫でながら話しかける。

508上琴患者A:2010/04/22(木) 20:09:24 ID:GThvWSzU

「んなわけねーだろ、そりゃ確かに顔を合わせばすぐビリビリするし、毎度のように追いかけてくるし」
「や、やっぱりアンタも」「でもな」
「俺はお前の事その…好きだぞ?お前といると退屈しないし、根が良い奴なのは知ってるしな。
 ただまあ、いっつも突っかかって来るから、お前に嫌われてるのかと思ってた」
「…ぇ?」
「だから、あいつの言った事なんか忘れちまえ。俺はお前の事好きだ」
「――――好き?え?」
「えぇぇぇえええ――――!!!!!!!!」
(ええ!?何これ何なのどうなってんのー!?コイツがわ、私の事好き!?でもでもさっきの事もあるしこいつが偽者って可能性が――――!!!
 ああでもこれは嘘であって欲しくない、というかもう今の言葉脳に刻みつけた、えへ、えへへ…ふにゃ)
「ど、どうした?み、御坂?」

当然当麻にしてみれば『友達』として好きというつもりで言った言葉だったのだが、美琴には特別な意味として伝わった。
真剣な顔で好きと言われ、盛大に勘違いをした(させられた)美琴はふにゃふにゃになりながらも行動を起こす。
頭を撫でられていた美琴は、当麻の胸に寄りかかり腰に手を回し抱きつく、抱きつかれた当麻は突然の状況に脳がパンクし固まっている。
そんな当麻を上目遣いにやや潤んだ瞳で見つめ、自らの想いを口にする。

「わ、私も…アンタの事が…好き…いつからかなんてわかんない、気がついたら好きになってどうしようもなかった。
 さっきコイツに大嫌いって言われた時、凄く辛くて、悲しくて、このまま消えたいと思ったの。それくらいアンタが好き」
「御坂…」
「だから…、アンタが迷惑じゃなければ、ずっと一緒にいて欲しい…」
「…」

今まで嫌われていると思っていた美琴からの告白に当麻は目を閉じ考える。気の知れた友達として見てきた美琴を自分はどう思っているのか。
夜通し追いかけっこした時は―――疲れはしたが、不思議と充実感があった。
街や公園でばったり会った時は―――そっけない態度を取りながらも、あの憎まれ口を聞けるのが嬉しかった。
怪我で入院した時は―――必ずお見舞いに現れ、安らぎを与えてもらった。
他にも美琴との思い出は沢山ある。その一つ一つが自分にとって大切なものだと気付く。
――――そうか、俺
再び目を開けると、そこには顔半分を自分の胸に埋め、涙をこぼしながらじぃーっと自分を見つめる美琴がいた。
当麻はふっと美琴に笑顔を見せると、そのまま彼女を抱きしめた。

「俺の方こそ、こんな不幸で超鈍感な奴だけど、ずっと一緒にいてくれないか?」
「…うん、うん!」
「ありがとな」

想いが通じ合い、抱きしめあう二人。
美琴の方は、うれし涙を流し、涙でぐしゃぐしゃになった笑顔で当麻を見つめる。
当麻は、そんな美琴を見て「ほら、泣くなよ」といいながら優しく抱きしめて背中をポンポンと叩いている。
二人の抱擁は美琴が泣き止むまで続いた。

509上琴患者A:2010/04/22(木) 20:09:51 ID:GThvWSzU
「落ち着いたか?じゃあとりあえず顔洗って来い」
「うん、じゃあちょっと行ってくるわね」

涙で真っ赤になった顔を洗うように促す当麻、美琴もこのままでは恥ずかしいので、顔を洗いに行く事にする。
暫く時間が掛かると予想した当麻は、未だに大の字で倒れている偽者に視線を向ける。

「さーて、こいつをどうするかが問題だ、というか生きてるのか?こいつ」

つんつんと突っついてみるが反応は無い。一応脈はあるので生きているようではある。
暫くその伸びた物体で遊んでいると、顔を洗い終えた美琴が戻ってきた。その目は少し腫れ、充血している。
しかし、おかしな点が1つある。それはバチバチという音と共に、彼女が帯電していた事だ。

「戻って…きたわよ…」
(うぅ…やっぱ恥ずかしい…どんな顔すればいいのよ…)
「み、御坂?ど、どうした!?なんかバチバチいってるぞ!!?」
「ふ、ふぇ!?」
(うわー!やっぱ無理無理!まともに顔見れない――)

先ほどの出来事を思い出し、恥ずかしさのあまり漏電していた美琴。心配した当麻は心配し駆け寄る…が!

(うわー!!こっち来た!?どうしよどうしよう!?あいつの顔が――――――)
「ふにゃー」
「どわあぁぁぁああああああ!!!」
「――――――」

限界を迎えた美琴はバチバチバチィィ!っと制御効いていない電撃を撒き散らす!
それは辺りの草木を焦がし、街灯を割り、目の前の少年…は無傷だが、少し離れた場所にいた人物には容赦なく襲い掛かった。
突然の出来事に慌てる当麻だが、右手が美琴に触れたことで、放たれる電撃は消え去った。

「お、おい!お前いきなり何すんだ!俺を殺す気か!?」
「わ――!!う――わ――!!」
「いいから落ち着けっつーの!」

暴れる美琴をぐっと抱き寄せる当麻。すると美琴は途端に大人しくなり、当麻の胸に自分の体を預ける。しかし、その力は完全に抜けている。

「ん?おい、御坂?」
「―――――」
「気絶…してる?」

美琴の意識は、抱きしめられた瞬間に無くなった。

510上琴患者A:2010/04/22(木) 20:10:14 ID:GThvWSzU
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「う…ん…?」
「お?ようやく目が覚めましたか?姫」
「あれ…?私どうしたんだっけ?」
「なんか良く分からんが突然気を失って倒れたんだよ、大丈夫か?」
「そう…な!??ななな!?」
「どうし…」「何やってんのよアンタ―――!??」

あれから暫くして目を覚ました美琴は驚く。心配そうに見つめる当麻の顔がすぐ近く、いや真上にあった。
膝枕をされていた彼女は状況を飲み込むと、突然顔を上げる。当然そこには当麻の顔があるわけで…
『ゴッ!』

「ぐあぁぁああああ!!!」「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

鈍い音と共に痛みに耐え切れず悶絶する二人。

「て、テメエ!いきなり顔上げんな!」
「な、なによ!アンタがあー、あんなことするからいけないんでしょーが!!」
「いやいや!?俺は悪い事はしていませんよ!?ってそれにしても痛ぇ…お前どんだけ石頭なんだよ…」
「ちょっとあんた!乙女に向かって石頭はいくらなんでも酷いんじゃ…〜〜〜〜〜〜!!」
「ほら、頭痛いんだったら大声出すなよ」
「何よぉ…あんたの所為でしょーがぁ…」

涙目になりながら言い合う二人、流石に悪い事をしたのか?と思った当麻は、美琴の額を撫でる。

「なんか、悪いな。気絶するくらい体調悪いのに気付いてやれなくて」
「ち、違うわよ、あれはアンタに抱きしめられたのが…その…嬉くて…それで、あの…ごめんね?いきなり起き上がって迷惑かけちゃって…」

美琴の様子がおかしいのは、体調の所為だと思っていた当麻だが、美琴は違うという。
先ほどの出来事についてごにょごにょと話す美琴は顔を真っ赤にしているが、その表情からはうっすらと不安が見える。

「気にすんな、それにあれぐらいで嫌いになったりしないからそんな顔すんなよ」
「本当に?」
「ああ、んな事で嘘ついてどうすんだよ」
「よ、よかったぁ〜」
「あれれ?という事はもしかしてさっきの電撃は嬉くて…出ちゃったとか?」
「んな!?」
「図星ですか御坂サン!?これは上条さんもびっくりですよ!」
「しょ、しょーがないじゃない!ていうか忘れなさいよ!!」
「それに、その時の御坂ときたら、真っ赤になって、手をモジモジさせ」「うわー!!お願いだからこれ以上何も言わないで―――!!」
「へいへい、わーったよ。それで?もう落ち着いたか?」
「へ?うん、もう大丈夫よ?」
「そんじゃあ、そろそろそこで伸びてる奴をどうするか考えようぜ」
「へ?」

511上琴患者A:2010/04/22(木) 20:10:37 ID:GThvWSzU

当麻が指差す方向を見る美琴。そこには未だに沈黙している元凶が仰向けに倒れていた。
それを見た瞬間先程された事に対する怒りが生まれ、彼女はバチバチィ!と辺りの空気を鳴らし始める。

「コイツ…よくもこの私を…!」
「ちょーっとストーップ御坂ー!ダメだぞ?電撃は絶対ダメだぞ!?」
「何でよ!?コイツは絶対に許さない!!」
「まあ待て、俺もコイツのした事は許せないが、まずは意識を取り戻させる事が」「ふん!」

バチィ!!制止を振り切って雷撃を放つ美琴。放たれた電撃は偽当麻だった人物(今はボロボロになったエツァリ?)に直撃する。
ビクン!と大きく体が跳ねる。それを見た当麻は慌てて声を出す。

「お、おい!何やってんだお前!?」
「何って、電気ショックで意識を取り戻させてんのよ」
「お前なぁ…流石にそれは酷すぎねぇか?」
「加減はしたから大丈夫よ、…死なない程度に」
「…ん…私は一体…」
「げ、本当に目覚めたし…効果抜群の心臓マッサージだな…」
「何ならアンタが入院した時にやってあげよーか?」
「激しく遠慮します…」
「冗談よ」
「冗談に聞こえないのですが…」
「だったら今後は大怪我して入院しない事ね」(全く、いつもどれだけ心配してると思ってんのよ、この馬鹿)
「善処します…」

電撃を浴びせて強引に偽当麻の意識を取り戻す事に成功し、目の前に正座させる。

「それで、アンタは何の為にコイツに成りすましてあんな事をしたのかしら」
「…」
「あ、そう、そっちが何も喋る気がないなら無理やり吐かせるだけよ?」

バチバチィ!っと怒りに任せ空気を鳴らす美琴。当麻はその様子を黙って見ている。
というか美琴の目が据わっているので、手を出せずにいるというのが表現として妥当だろう。
そして尋問を受ける偽当麻はどうにかこの状況を打破するか考える。

512上琴患者A:2010/04/22(木) 20:11:01 ID:GThvWSzU
(思ったより早く上条当麻が目を覚ましてしまいましたか、私とした事がとんだ失態です。
とにかく今はこの状況を何とかしないと…このまま殺されてしまいそうな勢いですね…さて…)
「あくまで何も喋らないっての?ふーん、わかったわ、そっちがその気なら…」
「上条当麻!貴方が悪いんだ!貴方が御坂さんを悲しませるから!私には届かない領域にいるくせに、彼女を守ると誓ったくせに!」
「どういう意味だ?」
「貴方は本当に何も分かっていない…!!御坂さんの好意を全て無視し続け、彼女の想いを踏みにじって悲しい顔をさせてきた!
 私にはそれが許せなかった!だから」
「だからコイツに成りすまして私にあんな事したっての?私の心を踏みにじったっての?」
「そ、それは違う!私はただ、御坂さんの気持ちを上条当麻に気付いて欲しかった!だからここに来れるように意識を軽めに落としておいたんだ!」

偽当麻は本物がここに来て自分を倒し、彼女への気持ちを認識させる事が目的だと必死に訴える。
当麻はその訴えを聞く。よく考えれば、自分が邪魔ならそのまま殺してしまえばよたっかた筈では?とも思う。

「なあ御坂、コイツ本当」「―――嘘ね」

当麻が偽当麻の言葉を信じ、口にした言葉を遮る美琴。その瞳には嘘である絶対の自信と怒りに満ち溢れている。

「わ、私は嘘など言ってない!私は本当に…」
「アンタ、あんまり人前で素顔を見せないんじゃない?感情がモロ出てるわよ」
「!?」
「まあ私も鬼じゃないしー?コイツとの仲が進展したのも『一応』アンタのおかげでもあるわけから〜?
 素直に言えば軽ーいお仕置きで済まそうと思ってたんだけど…気が変わったわ、この期に及んで嘘を付いて逃げようなんて…死ぬ覚悟はできたかしら?」

チュィィィィ―――ン、っという甲高い音と共に辺りの空気が張り詰める、美琴の髪の毛は逆立ち、今までとは桁の違う放電を始める。
バチバチィ!という音が聞こえ始め、彼女の周りの空間が陽炎のように揺らいでいる。

「ま、待ってください御坂さん!話を、話を聞いてください!!」
「問答…無用ぉおおお―――――ッ!!」
「はいはい、そこまでにしておけ、御坂」

完全に切れた美琴は全力の電撃を放とうとした―――瞬間当麻の右手が彼女の頭に乗せられ、その電撃は目標に向かうことなく霧散した。

「ッ!!ちょっと!邪魔しないでよ!私はコイツを許せないのよ!」
「いいから落ち着け、まあここは俺に任せてくれ」
「おい偽海原、お前がどういうつもりでこんな事をしたのかはわからねぇ、でもな、お前のおかげで御坂と恋人になれたことは事実だ。
 それには感謝してる。だがお前は俺の顔を使って御坂を傷つけた。それは許せない。そしてテメエがこれから先、また御坂を傷つけようってんなら…
 ―――――まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」

右の拳を握り、偽当麻の頬を狙って渾身の力を―――放たない。
当たる寸前で勢いを殺し、強く握り締めた拳でぐっと押し付ける程度の一撃だ。

513上琴患者A:2010/04/22(木) 20:11:21 ID:GThvWSzU

「…何故本気で殴らないのですか?」
「怪我人相手にこれ以上追い討ちかけれるかよ、それに全力で殴らなくても、俺のこの右手に乗せた想いは変わらねぇんだ」
「とことん甘いですね…貴方って人は……もう一度聞かせてもらえますか?貴方の答えを…」
「ああ、何度でも言ってやるよ。俺は―――――――――――」
「ふん、相変わらず最低な答えだ…ですが、これで私もようやく諦める事ができそうですね」
「もう御坂の事は諦めろ、俺がこれからもずっ…と?」

唐突に背中にドンという感触があり、振り返ると耳まで真っ赤にした美琴が抱きついていた。
背中に顔を押し付けてグリグリすると当麻の顔を見る。その顔は先ほどとは打って変わって喜びの感情が溢れている。

「うわわ!いきなり抱きつくな!」
「えへ、えへへ…」
「…やれやれ、見せ付けてくれますね。ではお邪魔虫の私は退散します」

目の前でいちゃつく二人に呆れた偽当麻は見てられないといった様子で立ち上がろうとする…が!

「ちょっと待ちなさい、私からもしておきたい事があるんだけど」
「「!?」」
「み、御坂?さっきのじゃ駄目か?」
「そういうわけじゃ…あるわね。でも多分大丈夫よコイツが『アンタ』なら」
「「???」」
「さて、偽者さん、アンタはコイツに化けてたのよね?」
「は、はい…それが何か…」
「コイツってさー、なんでか知らないけど私の能力効かないのよねー」

そこまで言うとゴソゴソとポケットからコインを取り出す。そのコインを見た瞬間二人は凍りつく。
偽当麻の様子を見てニヤリと口端を吊り上げる美琴。そして告げる。

「でさー、アンタがコイツなら私の超電磁砲でも余裕で止めれちゃうわよね?」

美琴の死刑宣告を再度受けた偽当麻はガクガクと震える。
当麻は美琴を止めようとするも、サッと離れられ右手が届かない位置にいる。そして美琴は罪人に告げる。

「乙女の!純情を!弄んだ報いを受けろやゴルァァアアアア―――――――――――!!!!!」

叫びと共にコインが弾かれる!ドゴン!!という爆音が響き地面が揺れる。土煙が上り、衝撃波が周りの草木を揺らす。
乙女の心を傷つけた不貞の輩は傷つけた相手の本気の報復を受けるのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

514上琴患者A:2010/04/22(木) 20:11:44 ID:GThvWSzU

「〜〜〜♪」
「えらくご機嫌ですね、御坂さん…」
「ふぇ!?そ、そう?」
「それはもう…鼻歌混じりにスキップしてればそれぐらい分かりますよ…」
「そ、そりゃあアンタと…その…やっと……なれたから…嬉しくて…だから…」
「もしもーし、ちゃんと言えてませんよ〜?」
「う、うっさい!っていうか何でアンタはそんなにテンション低いのよ!?」
「お前…あの惨状を見たら誰でもこうなるだろ…」
「あ〜、あ〜〜、あはは…テヘ☆」
「テヘ☆じゃねぇよ!全く…ヒヤヒヤしたぜ…」
「馬鹿ねー、この私が本気で殺っちゃうと思ったわけ?私はレベル5なのよ?」
「レベル関係ないから!あの時の目はマジでしたよ!?」

そう話す彼らは今、公園を離れ川沿いの堤防を歩いている。スキップで当麻の少し前を行く美琴はえらく上機嫌だ。
それとは対照的に当麻の方はげんなりとしていた。それはそうだろう、目の前で自分の彼女が殺人を犯す所を目撃しそうだったのだから。
…あの時、超電磁砲は発射寸前に美琴が方向をずらし、偽当麻から少し離れた場所に着弾する。
着弾時の余波と土埃が偽当麻を襲った程度で命を刈り取る事は無かった。

「あのまま放っておいて良かったのか?」
「まああれだけ脅しておけばもう二度とあんな事しないでしょ?」
「いや、そうじゃなくて、病院に連れて行かなくても良かったのかと…」
「はぁ…、アンタは優しすぎるのよ、まぁ…アンタらしいといえばらしいけど…
 まあ、あれだけ派手にやっとけば誰か気付くでしょ?心配なし!」
「そういう問題じゃ…」
「いいの!そ・れ・よ・り、時間もあるしこれからその…デ、デートにいくわよ!」

自分で言ったデートという言葉に真っ赤になり『ガシィ』っと両手で右手を掴み、引っ張る美琴。
それに対して当麻は困ったような顔を浮べてこう言った。

「あ〜、大変魅力的なお誘いなのですが、俺、行かなきゃならない所があるからデートはまた今度な」
「んな!?ちょっとアンタ!こーんなかわいい〜〜彼女ほったらかして何処行こうってのよ!?」
「病院だよ、病院。左腕の皮剥がされちまってな、ずっとズキズキしてたんだ」
「わ!ほ、本当だ!?ね、ねぇ?これ大丈夫なの?」
「まあ激痛って訳でもないからな、ってな訳でデートはまた今度。そんじゃあ俺行くわ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私も行くってば!」

左腕の手当てもらう為に病院に向かおうとする当麻。背を向けてひらひらと右手を振る当麻を呼び止める美琴。

「はぁ?別にちょっと見てもらうだけだから心配ないぞ?それに付いてきても待ってるだけで退屈なだけだぞ?」
「も、もう!何でアンタはそんなんなのよ!?い、一緒に居たいのよ!それくらい分かれこの馬鹿!!」

515上琴患者A:2010/04/22(木) 20:12:08 ID:GThvWSzU
バチィ!相変わらずの鈍感さに思わず電撃を放つ美琴。だがそれはいつものように右手によってかき消される。

「うお!?お、お前なぁ!俺だって一応怪我人だぞ!?」
「あ…うぅ…ごめん…いつもの癖で…」
「はぁ…そんじゃあ行くぞ。早くしないと日が暮れちまう」
「う、うん」

電撃を打ち消した当麻は再び歩き出す。その背中を追いかける美琴。前を歩く彼に追いつき、右隣に並んだ時――

「そうだ、御坂に大事な事言ってなかったな」
「え…?」

真剣な目で美琴を見つめる当麻。突然の事に目を点にして当麻を見つめる美琴。

「御坂…いや、美琴、俺はお前の事が好きだ。友達としてじゃなく、一人の女の子として」
「―――――――――――――」
「これから色々大変な事に巻き込んだりするかもしれない、けど、絶対に俺が守るからずっと隣にいて欲しい」

そう言って右手を差し出す当麻、目を見開き、少し口を開いてぼーっと見つめていた美琴はのろのろと当麻に近づくと、
差し出された手を両手で包み込むように掴み、一言――

「…うん」

短く返事をした。

「そっか、ありがとな。さっきはああいう形になっちまったからな、ちゃんと言っておきたかったんだ」
「…ん」
「ん?どうした?御さ…美琴?」
「えへ…えへへ…―――――――――――――」
「おい!美琴!?しっかりしろー!?」
「――――」

当麻の真剣な告白。それは美琴にとって不意打ちだった。
心の準備が出来ていなかった彼女は、愛の告白&名前で呼ばれるという最強コンボにあっさりKOされる。
そのまま意識を失い、当麻に倒れ掛かる。しかし、その表情は幸せそうに微笑んでいた。

516上琴患者A:2010/04/22(木) 20:17:29 ID:GThvWSzU
以上になります。
今回はあの人に頑張ってもらおうと思ったんですが…
どうしてこうなったって感じですねwエツァリファンの方、すいませんでした。
こんな文でもニヤニヤしていただければ幸いです。

ではでは〜

517■■■■:2010/04/22(木) 20:18:43 ID:D/U7M9IE
(・∀・)ニヤニヤ

518■■■■:2010/04/22(木) 20:46:40 ID:Fvn3Z0ng
>>501
GJです!
やきもちを焼いた美琴がかわいいw
不良視点というのも面白かったです

>>516
GJです!
キレた美琴が怖いですね
上条さんも、怒らせないように気をつけなくてはw

519ほのラブ同盟:2010/04/22(木) 21:37:15 ID:Ivxe48sg
コメントを下さった方、目を通して下さった方、ありがとうございます。
かなり産みの苦しみを味わったので、とっっっっても嬉しいです。
力が湧いてきます。
それでは、返事をさせていただきます。

>>452
自分も、こんなにミサカを苦しい目に合わせて胸が痛かった…。
次の出番では良い思いをさせてやりたいです!

>>453
ありがとうございます!
どんな内容であれ、色々言いたい、そんな気持ちを喚起させられたことが嬉しくてたまりません。

>>458
この健気さは、きっと美琴さんも持っているものだから、妹にも遺伝してるのかな…という脳内予測だったり。
そして、だからこそ、その健気な姿を見て、美琴さんも苦しい気持ちになるのです…たぶん。

>>462
応援ありがとうございます!
ちょっと苦しい時期を抜けたので、次回は早めにお送りできそうです。
上条さんが罪な男ってことだけは原作通りですwww

>>467
まったくその通りだと思います。
苦も楽も一緒に味わっていくことが、本当のらぶらぶなのかな…なんて。

520かぺら:2010/04/22(木) 21:57:36 ID:U6WxlbCQ
お久しぶりです。お返事置いてきます。
>>467
ありがとうございます
外堀から埋めるにあたって、御坂父をどうするか困りましたw
『酒の力』でごまかしてみましたよー(爆)
>>468
あざーっす!
ニヤニヤが目撃されてないことを祈っておりますよー
>>469コッカラさん
少なくとも母親2人はノリノリになるはずかと
なし崩し的に父親も…と思っております

さて、禁書SSスレに投下してきました。
暫くココに落とせないかもですが、ひょっこり帰ってきたいと思います。
でわでわ

521■■■■:2010/04/23(金) 01:48:28 ID:1rOG8ObM
静かなので愚作でも投下してみます。
読みにくいと思いますが…自分の技量ではどうしようもありませんでした。
七レスほど使います。

522■■■■:2010/04/23(金) 01:48:57 ID:1rOG8ObM
上条当麻は考えていた。
一人、考えていた。
それはとある、一人の少女のことだ。
その少女は、つい最近まで一緒に同居して、苦楽を共にしていた少女ではない。
インデックスという名の少女は、ほんの少し前イギリスに帰ってしまった。
「あなたが好き」という言葉を残して。
そして、その少女に宿題を与えられてしまった。
今まで、解こうとしなかった。考えもしなかった。思いつきもしなかったとても困難な宿題を。

別れの際、上条が告げられた想いは彼にとってあまりに重く、大きく、そして意外なものだった。
自分が誰かから好かれるはずがない、誰かから告白されるわけがない。
だから…自分も誰かを好きになるはずがない。
そう思っていた。
そう思っていたのだ。
だが蓋を開けてみればどうだ。
自分は確かに誰かから告白され…そして碌な返事も気のきいた答えも返せないでいる。
なんたることか。
なんたることか!
なんて不甲斐なく情けないことなのか!
愕然として、自噴する上条当麻に、インデックスはひとつだけ聞いた。
「とーまは。私のこと。どう思ってるのかな?」
上条当麻は、答えることができずただただうつむくのみだった。
そして宿題を出され…今に至る。

そして話は冒頭に戻る。
宿題の内容をシンプルに表そう。
上条当麻は、一体、誰が好きなのか?
これだけ。ただこれだけである。
普通に考えれば簡単な話である。
しかし、当麻にとっては事情が違った。
普通に考えれば誰もが一度はあるであろう恋の記憶。
その記憶がすっぽりないからである。
あの夏の日、あの少女を助けてから…
だが今そんな話はどうでもいい。
今問題なのは記憶がないから自分の中の心の答えあわせができない、ということである。
また、新しく人を好きになっていかなければならない。
恋とは、人を好きになるというのは、一体どういうことなのだろうか?
土御門や青髪ピアスを好きというのと、異性を好きというのはまるで違うことなのだろう。
だが、それはどこがどう違うのだろうか?何がどう違うのだろうか?
上条当麻は、さらに己の思考の渦の中に巻き込まれていくことになる。

523■■■■:2010/04/23(金) 01:49:22 ID:1rOG8ObM
しかし、と当麻は考える。インデックスからこの宿題を出されてから、頭から離れない少女の顔がある。
…御坂美琴。である。
なぜこの少女のことばかりが頭から浮かんでは消え、消えては浮かんで離れてくれないのだろうか?
宿題を出したのはインデックスなのに考えるのは御坂美琴のことばかり。
理解できない。自分の思考に納得できない。何故、何故、何故…
 
現在、上条当麻の思考のほぼ全てを埋め尽くしている少女はどちらかというと、
今まで追いかけ回されて理不尽に責められて苦労をかけられていたほうだ。
だけど楽しかった。嬉しかった。心の底から自然体でいられたと思う。決してMというわけではない。
ただ、純粋にそう思う。ただし、純粋にそうとしか思っていなかった。
何故今までそうとしか考えなかったのだろうと不思議に思うくらいだ。
とりあえずいっそのこと、「お前の事が頭から離れないんだ。」と本人に相談でもしてみるか?
とも考えたが確実に電撃の矢が飛んできて変態と思われるので却下した。
それに、宿題を出されたのは自分だ。ならばなおさら他人に聞くわけにもいくまい。
…ちょっと、顔が熱くなってきたな、と当麻は思った。
いや、顔だけではない。体が、頭が、心が熱くなってきていた。
それは、苦しい熱さではなくて、なんとなく気持ちよくて、ずっと味わっていたい熱さだった。
しかし同時に、どこかすっきりしない熱さでもあった。
このなんとももどかしい熱さ、これが異性を特別に好きになること…恋なのだろうか?
わからない…わからないが、これが恋なのだとするとなぜか納得できた。
そして同時に嬉しくもなってきた。
自分は、御坂美琴が好きなのだ…!
上条当麻、初めての感情である。
自覚すると思考は更に止まらなくなってきた。
どうしようもなく、この気持ちを伝えたい。
だが今は夜だ。日付も変わろうかという時間帯。
流石にこんな時間には呼び出せないし、色々と迷惑だろう。
もしこの気持ちを伝えるとするならば、明日だ…
とりあえずメールで明日の放課後いつもの公園で会いたい旨を送信する。
おそらく寝ているであろうが明日の朝には気がつくであろう。
だから、落ち着け、と自分に言い聞かす。
先ほどから異常に心臓が高鳴る。まるで自分の心臓ではないかのようだ。
脈々と全身に血を送るのはいいことだが、ちょっとがんばりすぎだろうと。
今日はなかなか眠れないかな…と興奮しながら床につき明日のことを考える上条当麻であった。

そして、朝がきた。
幸いにして、少しは眠れた。目に変なクマはできていない。
この時間に行動しだせば学校にも遅刻しないだろう。
ふと、携帯電話を見る。
メールの着信有。御坂美琴からだ。
どうやら、放課後は会えるとの事。時間も明記されてある。
よかった…と上条当麻は思った。一刻も早くこの気持ちを伝えたい、伝えたくて仕方がないのである。
もちろん、メールや電話で伝えるなんて無粋な真似はしない。
会いたいのだ。
会って、直接言いたいのだ。
言葉を尽くして自分の気持ちを余すことなく相手に伝えたいのだ。
今の今まで自分の気持ちに気がつかなかった、
相手の気持ちも考えなかった盆暗は、
異常なまでに燃え上がっていた。

524■■■■:2010/04/23(金) 01:49:56 ID:1rOG8ObM
今の時刻は放課後。そして、御坂美琴との待ち合わせの時間まではまだかなりの余裕がある。
上条当麻は学校で一日中うわの空であった。
それもそのはず、どうやって告白しようか?ということで頭が一杯だったのである。
しかし、行動は不審人物そのものであった。
ぼーっと窓の外を見ていたと思ったら、おもむろに頭を抱えて机に突っ伏し、そして正面を虚ろな瞳で見つめ続ける…
を延々と繰り返すのである。授業中休憩中問わず。
傍から見ていると、ちょっと関わりたくない人物である。
土御門やあの青髪ピアスですら、「あ、今日はちょっとヤバイネー」と思い接触を避けていたほどだ。
知らず知らずの内にそんな致命的な醜態を晒し続けていたにも関わらず、いいアイデアは一向に浮かんでこない。
正直、言葉が足りないのだ。相手に伝えたい言葉が。
好きだ、大好きなんだ。というのは今の上条当麻からすれば簡単だろう。
だが、違うのだ。それだけではない。
もうとにかくすごいのだ。気持ちがあふれかえってしまいそうなのだ。
しかし、それを表現するだけの言葉が見つからない。
相手がエスパーであるならばそんな苦労はしないだろうが…残念なことに御坂美琴はビリビリ系だ。
言葉にしなくても思いは伝わる、なんて都合のいいことは起こりはしないだろう。
ならば、やはり口から、言葉にして、気持ちを相手に伝えなくては…
そこまで考えて、上条当麻は考えるのを止めた。
どうせもう呼び出してしまっているのだ。
やっぱ今日は無理ーとか言うと今後が怖い。
何を口走ってしまうかわからないが後は会って、なるようになるしかない。
振られてしまう、ということも考えていなかったわけではないが、それはそれ、これはこれである。
いつも不幸に見舞われている少年は、いい意味で諦めがよかった。
そろそろ時間も待ち合わせ時刻に近づいている。今からいけば十分に間に合うであろう。
薄い学生かばんをよっ、肩に担ぎ、上条当麻は教室を後にした。
そういえば今日は誰とも話してないなー、などと今更な事を考えながら。

525■■■■:2010/04/23(金) 01:50:24 ID:1rOG8ObM
上条当麻は、のんびりと待ち合わせ場所である公園に向かっていた。
それはもうのんびりと。
考えることを止めてから、本当に何も考えなくなってしまったのである。
今心にあるのは、御坂美琴と会って自分の言いたいことを正直に言うこと。
これだけである。
あれだけ散々悩んでのた打ち回っていたのがあほらしく思えるほどの開き直りっぷりである。
こんな性格だからアホだのバカだの言われるのだが…当人は全く知らないし気にもしていない。
とにかく、上条当麻は今とても自然体である。

そして待ち合わせ場所が見えてきた…と思ったら、すぐに本日の目的とも言える人物が見えた。
おやま、遅刻か?と思い携帯電話を見る。
待ち合わせ時刻からまだ10分ほど余裕がある…
なんだ、早く来てくれたのか、と思うととても嬉しくなる。
そういえば、この少女が遅刻したことは一度もないな、と考えると途端に胸が熱くなる。
しかし、少女の様子が少しおかしい。
なにやら落ち着かない感じでうろうろして、携帯をちらちらと見ている。
あー、暇なんかな?と上条当麻は見当違いな憶測を立てる。
実はこの御坂美琴という少女、上条当麻のことが大好きなのである。
もうめちゃくちゃ好きなのである。
どれくらい好きかというと、ゲコ太よりも好きなのである。…ちょっと悩むが。
とりあえず、彼女の心の中の一番であり、
これからも一番であり続けるんだろうなぁと漠然と思ってしまうくらい好きなのである。
そんな人からメールでいきなり「会いたい」といわれればそれはもう舞い上がってしまうのも無理はない。
しかも、その人からの初めての「お誘い」である。
落ち着くなというのが土台無理なのである。
実はもう30分も前からここにいて、不安と期待のごちゃ混ぜで堪らなくなっているのだが、
しかし、そんなことは露とも知らない上条当麻。
至って普通に、いつも通りに話しかける。

526■■■■:2010/04/23(金) 01:50:52 ID:1rOG8ObM
上条当麻はとりあえず、いきなりメールをしたこと。少し待たせたことを詫び
いつものベンチに座らないか?と持ちかけた。
対する御坂尊は、特に気にしていないこと。アンタが遅刻しなかっただけマシ。等々いつもの憎まれ口を叩きながら
ベンチに座ることを了承した。
そこから…会話が続かない。繋がらない。発展しない。
上条当麻は上条当麻で、「どうやって話を切り出せばいいのやら…」と思案いているし、
御坂美琴は御坂美琴で、「なんで難しい顔して黙っているのかしら…」と上条当麻を観察、もとい見惚れているしで
両者とも違うことに気が行っているわけだから話が生まれるわけがないのである。
沈黙、沈黙、沈黙…
だが、決して居心地が悪いわけではない。
むしろ、普段よりゆったりと時が流れている気がするなぁ、と上条当麻は思った。

嗚呼…そうか。と上条当麻は唐突に閃いた。
別に無理する必要なんかないんじゃないかと。
素直にいつも通り話の話をする感じで言ってしまえば万事解決じゃあないかと。
うんうん、と一人頷く上条当麻。
いきなり頷きだして、ちょっとびっくりする御坂美琴。
どうしたの…?と聞く前に、向こうからいきなり言葉が飛んできた。
御坂、好きだ。と。






すこし思考が止まる。
今、なんと言った?
あー、聞き間違いか何かの冗談か。
なんとなく今 好き といわれた気がする。
まるで普段からそう言い慣れてるような、いつもの会話のような感じで。
あー、これは確認せねばなるまい。一体どういうことなのかと。
自分の勘違いだった場合は少し、いやとても恥ずかしい。恥ずかしい、が。確認しないといけない。
主に自分自身の精神の安定のために。
実際、この御坂美琴という少女、ここ最近精神的に荒れていた。俗に言う恋の病というやつである。
自分が好きな相手は何をしても暖簾に腕押し柳に風米糠に釘…ふざけるなと。
しかも肝心の相手はいつもいろんな女の子と楽しそうに町をデート…なめんなと。
そういった理由から、数週間ほど前から症状が悪化していた。
もう感情の制御が出来るかできないかくらいまで。
そこにこの告白?である。
あぁ、その勝負。受けてたってやるわ。
何が勝負かわからない。もうやけくそであった。
そして聞き返す。今、なんて言ったの?よく聞こえなかったわもう一度大きな声ではっきり言いなさい!と。

527■■■■:2010/04/23(金) 01:51:25 ID:1rOG8ObM
今、なんて言ったの?よく聞こえなかったわもう一度大きな声ではっきり言いなさい!

と聞いて、上条当麻は少ししまった、と思った。
やはり普通に言うのはよくなかったのか?と。
いや、この少女はある程度聞こえていたのだが、やはり恋する乙女。
その実もう一度同じ言葉をはっきり聴きたかっただけである。
しかしそこはやはり上条当麻。盛大に思いっきり間違えた方向に勘違いする。
もっと刻々と鮮明に好きなことを堂々と語らねばならないのか?と。
そして覚悟を決める。盛大に思いっきり間違えた方向に。

まず、今横にいる少女の肩を ガッ! と掴んで体をこちらに向けさせる。
いきなりの出来事に固まる少女。
次に顔を近づけて目と目を強引にあわせる。
急に顔が近づいてきたことにびっくりした少女は、思わずその目を魅入ってしまう。
そして最後に口を開き、延々と好きだと言う単語を連発する。
それはもう、恥ずかしいくらいに。
ここのこういうところが好きだ。ああしてくれたことが嬉しかった。あの時のあれは本当に感謝している。
だから、好きだ。大好きなのだと。
心の底から、大好きなのだと。
そして聞く。俺と付き合ってくれないか?と。
返事は…なかった。
少女は
体を固定され目を合せ続けその愛の告白を延々と聞き続けた少女は
ぽけーっとしたまま、意識だけが違う世界を飛び跳ねていた。

もう、御坂美琴の頭の中はパニック状態だった。
肩を掴まれて目を合せられただけでも心臓が破裂しそうなほどに高鳴って意識を保つのがきつかったのだ。
そこに、愛の言葉の雨を浴びせられたらどうなるだろうか。
決まっている。幸せの世界へとひとっとびである。
止めてほしくないが止めてほしい。止めて欲しいなんて死んでも言えない。
でも言われ続けるのもこれはこれで精神がもたない。一種の地獄のような体験である。

御坂?御坂?
呼ばれる声がする…
そこでようやく、意識が戻る。
数瞬後、何を言われたかを瞬く間に理解し、
頭の先からつま先までが真っ赤になったんじゃないだろうかというほどの熱さを感じた。
もう顔は真っ赤であろう。そう解るほどに体中が火照っているのを感じる。
相変わらずこのばかは…加減というものを知らないのか?!と思う。
あれだけ散々スルーしてきたのに、告白はこんなに激しいとは、極端にも程があるんじゃない?!と理不尽に思う。
だが今はそんな事を考えている場合ではない。
自分は告白されたのだ。
ならば、速やかに返事をしなければならない。
元々答えなど決まっているようなものなのだから。
そして、少女は答えを出す。

528■■■■:2010/04/23(金) 01:51:49 ID:1rOG8ObM
結論から言うと、上条当麻と御坂美琴は付き合うこととなった。
周囲があきれるほどのバカップルとして。
朝、昼、晩、所構わず、暇さえあれば、いちゃつきまくるのだ。
鈍感な上条当麻、我慢し続けた御坂美琴。
まるで今までの分を取り戻すかのようないちゃつきっぷりを
周囲は怒り、悲しみ、笑い、呆れ、そして最後にはうんざりしながら祝福していた。

答えは出た。
上条当麻は一時の休暇を利用して戻ってきたインデックスに対し、宿題の答えを言わなければならない。
そう、恋とは誰かには幸福をもたらすが誰かには不幸をもたらすのである。
誰しもが、平等にはいかないのである。
しかし、上条当麻は戻ってくる少女に告げなければならない。
答えは出たのだ。
自分が選んだのは、好きだったのは、御坂美琴という少女であったことを…。

529■■■■:2010/04/23(金) 01:53:39 ID:1rOG8ObM
以上になります。
重ね重ね申し上げますが、相当読みにくいと思います。
そして変な部分も多いと思います。
一重に自分の技量不足です。
批評、お待ちしております。

530■■■■:2010/04/23(金) 05:28:43 ID:LqY/vP/I
gj 
感想というかアドバイスを一言
この作品に限ったことじゃないけど 地の文では!を使うのは避けた方がいいかと。読んでいるといつもそこに違和感を覚える

531■■■■:2010/04/23(金) 07:41:41 ID:wejIJdrA
GJ!

地の文だけっていうのも新しいな。誰視点でもないのが面白かった
ただ、最初のほうに
〜〜だ
〜〜なのだ
みたいな表現が多くてくどい感じがした

532アミノ酸:2010/04/23(金) 08:21:31 ID:aW4DTuBU
皆様、おはようごさいます(*'-')ノ

書き手の皆様GJです!あとで読まなきゃ!


「あたし」、「私」についてですが一つの結論に出ました。
単に私がアニメから入った人間の為、音で、表現してたんですね、「あたし」と(⊃д⊂)
なので、今後は「私」で統一します。文字数的にも短いですしね!
出来れば、本当に出来れば、投稿したとある宣伝の超電磁砲<レールガン>
編集の際、美琴の一人称「あたし」から「私」と変えて下さると…ってすいません。
宜しくお願いします。
長々と失礼いたしました。

 カウントダウンと宣言した通り、とある宣伝の超電磁砲<レールガン>を被らなさそうなら5分後に投下します。
よく考えたら登場人物が5人とかかなり悩み、限界を感じさせられた出来になりました。
でも投下しちゃいます。ご指摘はいろいろと本当に参考になるのでお願いします!

533とある宣伝の超電磁砲<レールガン>⑤:2010/04/23(金) 08:25:31 ID:aW4DTuBU
 

 携帯を持つ手は微かに震えて、心臓は早鐘のように高鳴り。
震える指先で少女は、意を決して一人の少年のダイヤルを押した。

 何を話そう、話したいことはたくさんある。
止め処目ない想いが溢れて、考えはまとまらない。

と瞬間、鳴り響く音、驚いて振り返った先には少年がいた。
 
「…………」

 久しぶりだな、元気してたか?といつもと変わらない少年。
会いたかった人、聞きたかった声…でもそれよりも美琴の視線は、少年の後ろにいる少女へと向けられる。
どうしたのー?当麻ーとその声の主であるインデックスは、何やら鋭い視線を感じ、二人は相見えた。

 ビシィィィィと効果音を放つかのごとく、その場の空気は凍りつく。

「なんでいんのよ」
「当麻とご飯食べに来たんだよ」
 ご飯デートだよとでも言うかのようにインデックスは立ち上がって、美琴をけん制する。
以前の美琴ならクールに交わせたはずだが、恋する乙女は引くわけにはいかない。
美琴も負けじと立ち上がり、対峙する。たった今、まさしく二人は恋敵(ライバル)となった。
 
 互いに睨み合う二人の少女の間に挟まれた少年、上条当麻は無論、自分が原因であるということは
知るわけもなく、え?どうしちゃったの、お二人さん?と何やら只ならぬ不穏な空気を感じ、これはまずい
すごくまずい、何故だか分からないが非常にまずいと、二人に何が起きたのか聞いてみる事にした。

 「あの〜お二人とも、どうされたのでせうか?」
 「「アンタ(当麻)は黙ってて!!」」
と見事に二人はシンクロし、ダブルキックを食らったかのような衝撃を受けた上条は解決の糸口を失う。
どうしたものかと考えを巡らせていると…美琴の他に二人、困ったようにたたずんでいる少女が視界に入る。

 あれは、確か超電磁砲<レールガン>の収録で何度か見かけた佐天さんと初春さんではないだろうか?
間接的にしか話に関わってない為、ほとんど話した事がない。ほぼ初対面に等しいが渡りに船、この機会を逃す手はない。

 二人に協力を仰ごうと目で合図を送る。思ってもみなかった事態に、佐天と初春も同様、今の状況をどうにか
できないかと考えていた。二人は上条の合図に気付き、ここは三人で一致団結して問題を解決しようと試みる。


「はっ、はいはーい!」
 と佐天さんは睨み合う二人の少女の間に割って入り、あのもしよかったら皆でお茶しませんか?と強引に流れを切り替える。
「いいですね、それ!」
 とこれは初春。
私達、超電磁砲からなので、是非上条さんと、インデックスさんとお話したいですーと付け加え、御坂さんも行きましょー
と、佐天と初春は二人でガッと美琴の腕を両サイドから掴み、上条とインデックスのいる席へと無理やり連行した。

佐天と初春にほとんど助けられたような上条は、ほっと一息ついた。
 
しかしそれは束の間の休息…
 
 禁書目録組、超電磁砲組が一つのテーブルを挟み、第二次上条さんを巡る乙女の戦いが勃発しようとしていた。
つまるところ事態は何も変わっていないどころか、睨み合いから一転、場を設けた事で交戦できる状態に移行したのだ。

534とある宣伝の超電磁砲<レールガン>⑥:2010/04/23(金) 08:28:04 ID:aW4DTuBU

「で、何で日本にいるのよ?」
 故郷のイギリスに帰ったんじゃなかったの?と美琴は先制攻撃をしかけた。

「出番があるんだよー!」
 ふっふーんと、先制取られちゃったけど痛くも痒くもないよーと言った風にインデックスは答える。

「なっなんですってー!」
 美琴は思わず、今ある台本を鞄から取り出し、探し始める。
しばらくして、なーんだオープニングとちょい役で出てくるだけじゃないとちょっと安心した。
ということは、日本にいるっていっても短い期間だろう。 

「なんだ出るって言っても、ほんのちょい役じゃない」
「む〜それでも、出るのは出るんだよー」
  
 じゃれ合う二人の様子を見ていた三人は

「仲直りできたみたいでよかったですね」
 本当によかったーと初春はほっと胸を撫で下ろし
「まぁ、何だかんだ言って二人とも禁書目録の頃からの長い付き合いだしな…」
 と上条は言った。
「じゃあ、上条さんは、御坂さんとインデックスさんとだと付き合いが長いのはどっちなんですか?」
 と佐天の質問に、うーんと上条は思い出す、一番最初のワンシーンを。
「御坂との方が長いかもな…」 
「「へー」」 

「ってまた居候してるの?!」
「そうだよー」
  どうやら、話は別の展開を向かえたらしい。
 インデックスはどうだー参ったかーと、勝ち誇っている様に見える。
「ねぇ、あんたは、なんでまた住まわせてんのよー!」
  
 今度の話題はこちらにも関係があったようだ。戦地は二人の間だけではなく上条の領地まで飛び火した。

「はぁ?何でお前にいちいち断り入れなきゃいけないんだ?」
 それは別に俺の勝手だろと告げる。大体、前の撮影の時も、そうだったのだから何も問題ないはずだ。

「…っそ、それは」
「それは?」
「あっあんたが、好きだからよ!」
  悪い?とでも言うように美琴はついうっかり本音を滑らした。

「………えっ?」
 
 その場の空気は、さきほどとは違った意味で凍りついて、数秒後…自分の発言に気付いた美琴は
かぁぁぁぁぁぁと真っ赤になり、いっ今のは無しだからーーーーーーーーーーーーと脱兎のごとく走り去った。

「「御坂さん?!」」

 あまりに突然の出来事、残された4人、真相を聞くにも当の本人はこの場にいない。
 
一方、走り去る美琴をただ一人、見ていた少女がいた。
 
「お姉さま?」

――ふふーん、ふふーん、ふーんふーんふーん…ん?

「何だこりゃ?」 
 
 鼻歌交じりにこちらへ歩いてきたのは、ツンツン頭が特徴のとある少年だ。途中で何か拾ったらしい。

「えーなになに、とある科学の超電磁砲<レールガン>第4巻、DVD&ブルーレイ、発売のお知らせ」

 へぇ、初回限定版は豪華特典付か…一通り目を通すともう一枚ある事に気付く、紙には見覚えのある字。

 当麻へ 
   
   話があるから、28日の放課後
 
   いつもの場所で待ってるから
   
   ぜぇぇぇぇったい、来なさいよ!
   
   来なかったら、覚悟は出来てるわよね?

          美琴より

「これは……まさか果たし合い状か?!」

 指を折って執行猶予を数える。

「えーと…今日が23日だから、あと5日だな…」

 選択肢は一つしか残されていない。
 不幸だーーーーーー!と少年の叫びは虚しく空へ響き渡った。 

つづく!

535とある宣伝の超電磁砲<レールガン>⑥:2010/04/23(金) 08:32:03 ID:aW4DTuBU
以上になります<(_ _)>

逃げる美琴が好評だったのでこういう展開に持っていきました。
お楽しみいただければ幸いです。

早ければ日付が変わった時に投稿できるかな…たぶん。
それでわーーーーーーーー

536■■■■:2010/04/23(金) 14:35:25 ID:HpbQ7Mpc
小説12からしかもってないから審議が知りたいんだけど
上条さんの口調の「せう」って何巻くらいから使われなくなってるんだろう?

537■■■■:2010/04/23(金) 18:50:49 ID:NoMTXFS2
pixivにあった上条さん抱き枕ネタ書こうとしたが、途中でどうすればいいか
わからなくなって悔しいビクンビクン

538■■■■:2010/04/23(金) 18:55:28 ID:XPD.7zSI
>>537
上条さん抱き枕の中に忍び込む黒子というのがオチ?

539■■■■:2010/04/23(金) 18:56:47 ID:ryZkuEuM
>>538
「ふにゃー」
ビリビリ
デスノォォォォォ

540gekoko:2010/04/23(金) 18:58:55 ID:uYL3lPJ.
みなさんGJっす。いろんな当麻さんや美琴さんがいて嬉しくて身もだえてますwww
別に黒子ではないです。おねぇさまああああん。




さて本題。
電波を受信した模様です。
この前のやつの続編です。あんまイチャイチャしてないです、すいません。今度からは気をつけます。だが後悔は(ry

というわけで、19時に投下します。2レスほどに小物です、温かく見守ってくださいね。

541gekoko:2010/04/23(金) 19:01:00 ID:uYL3lPJ.
上条の意識が戻ってからおよそ二週間、上条は無事退院することができた。
なんだかんだ言っても一週間以上眠り続けたわけである。
体もうまく動かせない状態からの回復だったので、二週間といっても最速記録である。
そこには、上条の必死のリハビリとそれを支える誰かさんの努力があったわけだが。



「またいろいろとお世話になりました」
「いいよ、これが僕の仕事だからね。もっとも、これからは僕の仕事を増やさないようにしてくれると嬉しいかな」
カエル医者は飄々とした答えを返す。やはり、頼りになる人だ、顔はアレだが。

「そういえば、毎日お見舞いに来ていたあの女の子にはちゃんとお礼するんだよ」
「はい……って、なんでわざわざ?」
「知らないのかい?君たちのことは話題になってるんだよ。まあ、『お似合い』じゃないかな?余計な御世話だけど」
「よっ、余計なお世話ですよ!!」
面と向かって言われると照れずにはいられない。赤面しながら強い口調で照れ隠し。純情少年である。
「ともかく、『彼女』はそんなに待たせたらいけないよ?」
「だから……!って、やべっ、御坂!すいません、失礼します」
あせったように走っていく。
「若いっていいね……」






「わりい、御坂。待たせたな」
息を切らせて美琴に走り寄る。
「まあ、別にいいわよ。一応聞くけど、何があったの?」
「いやぁ、あのカエル医者にな、俺と御坂のこと話題になってるって聞いてさ。なんでも『お似合い』だってさ」
言い終わった瞬間、上条は「しまった」と思ったが、後の祭りである。目の前には頭から湯気を出すお嬢様が一人。
「あ、アンタと私が……えへ、えへへへへ」
なんだか、うつむいたまま何かをつぶやいている。そんな美琴をよそに、上条はあのカエル医者の言葉を思い出す。

「あの女の子にはちゃんとお礼するんだよ」

そうだよな、忘れないうちに……っと。
「なあ御坂、いろいろとありがとな」



今度は、美琴の意識が闇に落ちた。

542gekoko:2010/04/23(金) 19:01:29 ID:uYL3lPJ.
「あれ、ここは……?」
「病院だよ、まさかこんなに早く戻ってくるとはな、あの医者も驚いてたぞ。まあ、病室が空いてるみたいで助かったな。
だいたいお前な、なんでいきなり気絶するんだ?体調が良くないなら休んでいろよ」
「それはアンタが……まあ、いいわよ」
気絶した理由がわからないあたり、上条は成長していないのだろう。
「今さっきはお前が気絶したおかげでちゃんと言えなかったからもう一度言うぞ、御坂、いろいろと……」
「ちょっと待って!!」
美琴は上条の言葉をさえぎる。「?」と首をかしげる上条をよそに、美琴は二回、三回と深呼吸をする。
「いいわ、続けて」
「じゃあ、行くか。御坂、いろいろとありがとうな。毎日見舞いに来てくれたし、リハビリだってすっげえ助けてくれた。
お前がいなかったらどうなってたんだろうな?まあ、もしいなかったら入院してなかっ……って、嘘だよ!!だからそんな顔すんなって!」
美琴は今にも泣き出しそうな顔になってしまった。紳士上条、女の子を泣かせることがあっては大変である。だからと言ってオロオロするしか能のない上条は無能なのだろう。
「やっぱさ、いろんな奴が見舞いに来てくれたのはわかったんだけど、お前がいるときが一番……なんていうか、心地よかったんだ。ありがとな、御坂」
言い終わっても彼女はまだ泣き出しそうな顔である。今度はうれし涙なのだが、その違いを見分けろなどというのは紳士上条には少しハードルが高いようである。


ここまでで、あの医者が言っていた「お礼」は終わったわけである。でも、上条にとっては、ここからが本番である。
「なあ御坂、俺とお前って『お似合い』だと思うか?俺はそうは思わないんだ」
「えっ……」
美琴はとても切なげな顔になっている。だが、上条は続ける。
「だって、お前は学園都市第三位、おれは無能力の落ちこぼれ、補習ばっか受けてるアホだからな、釣り合ってないっての。
でもな、御坂、お前は俺が好きだと言ってくれた。それを聞いた時、俺、うれしかったし、ほっとした。それまで嫌われてるんじゃないかって思ってたからな。
だってお前も嫌だろ、自分の好きな人に嫌われてるなんて」
その言葉を聞いた時、美琴は驚きを隠せなかった。なんだか夢のようである。
「だから、お前のために、俺のために、お前と俺が『お似合い』になるように努力する。だから、俺のそばにいてくれないか?」

「ダメなわけないじゃない、バカぁ……」

病室での抱擁、今度は上条と美琴の位置は逆になっていたが、この前と同じように、美琴は上条の胸の中で上条の優しさに包まれていた。



さて、二人はお似合いになれるのか。二人にとって、上条にとって、ここからが本番である。

543gekoko:2010/04/23(金) 19:09:59 ID:uYL3lPJ.
終わりです。

>>437の「本番」ってワードからいってみました。
文字どおりです、ここから本番が書ければいいなぁ。



じゃあ、この辺で・・・とおもいきや、タイトル忘れてました。
タイトル…『お似合い』目指して


『』まで含めてくださいね(^O^)

544■■■■:2010/04/23(金) 19:15:08 ID:a4K5ItdA
>>543


>>537
抱き枕の存在をしる美琴
誰にもバレずに手に入れるミッション ← 1話

買うことは出来た
しかし本当の死地はこれからだ、帰宅ミッション ← 2話

寮に帰宅・・・が黒子と同じ部屋で使う訳にいかないじゃん!?
今更気付く美琴が途方にくれて抱き枕を抱えて学園都市を徘徊する ← 3話

「何してんだ、ビリビリー?」
今、一番出会ってはいけないアイツがソコにいる
死に物狂いでアイツを遠ざけろ!! ← 4話

バレた・・・アハハハハ・・・バレちゃったよアイツに
しかも抱き枕巻き込んでボロボロ・・・もうヤダ、泣きたい・・・
そんな美琴を思ってか、優しく声を掛けるアイツ
「そんなモノなくったっていーじゃねーか・・・俺はココに居るんだし」「え?(///」 ← 5話

呼び込まれるままアイツのうちまで来ちゃった・・・ヤダ、私、このまま・・・?(///
でもやっぱり二人に似合うのは壮絶なオチだよねー ← 最終話

こんなんで一つ

545■■■■:2010/04/23(金) 19:19:47 ID:1gEl8r76
>>543
GJです!
「甘い生活」を思い出したw
続きを待ってます

>>544
ぜひ読みたいw

546■■■■:2010/04/23(金) 19:26:42 ID:NoMTXFS2
>>544
そんな長編書けねえよwwww
文章がすさまじく初心者な小ネタが限界
今書いてるが書き切れるか微妙

547■■■■:2010/04/23(金) 19:34:42 ID:ryZkuEuM
>>544
オチはミサカ10032号が大量の枕を買い付けて「これは海外のミサカたちのぶんです、とミサカは報告します」とか
そんなのでもいいかもしれぬw

548■■■■:2010/04/23(金) 19:41:30 ID:ryZkuEuM
>>543
いきなり倒れるか美琴w 楽しいお話をどうもです。

でもベッドがある場所だからって病室でいきなり本番はまずいと思うんだ(違

549537:2010/04/23(金) 20:29:09 ID:NoMTXFS2
お待ちかね抱き枕ネタです
短い上に駄文ですがよろしくお願いします

550抱き枕:2010/04/23(金) 20:30:54 ID:NoMTXFS2
常盤台のエース、御坂美琴はかつてないほどの笑顔だった。
だがしかし、すれ違う人々は彼女を避けている。無論、彼女が電撃を放っているわけでは無い。
彼女が人一人が入りそうな紙袋を抱きしめながらブツブツと独り言を言っているので、近寄りがたいのだ。

なぜこうなったのか――――原因は数分前のある出来事

美琴はその日はとてつもなく暇だった。
黒子と初春さんはジャッジメントの仕事、佐天さんは補修で会えない。
あのツンツン頭の少年は電話にも出ない。
特に目的も無く街を歩いていた矢先、視界の端にありえないものが映った。
「ソレ」は一般人には需要は無いであろう物だ。(一万人程度の女性達を除いて)
だがしかし、美琴にとって「ソレ」は大好きなゲコ太ぬいぐるみよりもほしいものだった。

「あ、あの…アレください!」

――――店先に置かれていた、「上条さん抱き枕〜お前の理性ぶち殺しver〜」は。

「えへへ…買っちゃった…これからは毎晩一緒だね♪」

無事に寮まで抱き枕を持ち帰った彼女はやはり上機嫌だった。
抱きしめたり、いたる所にキスしたりと、少々暴走気味である。
しかしこういう時はいつもいつも邪魔が入るものだ。

「お姉さまっ!今帰りまし――――ってなんですのそれは!」

お邪魔虫その1、白井黒子が帰ってきた。

「黒子?うん…いいでしょこれ…これから毎晩当麻といっしょなんだよ…ふふふふふふ」

(お、お姉さま…なんということに…いいえ、まだですわ。あの類人猿には負けられませんの!)

「お姉さま!そんなものより黒子を!黒子を愛してくださいましぃぃぃぃぃぃ!!!」

テレポートからの飛びかかり。普段の美琴なら意表を突かれていたはずだった。

――――しかし、今日の彼女は違っていた。

バチバチィ!

「せ、正確にわたくしだけを…お姉さま、腕をあげましたわ、ね…」

そのままツインテールの少女は突っ伏した。
たしかに、いつもの美琴なら抱き枕を巻き込んでいただろう。
しかしこの抱き枕は美琴が想いを寄せる少年があられもない姿でプリントされている。
これが傷つくのは美琴にとっては上条当麻が傷つくことを意味する。
つまり上条当麻への想いが、抱き枕を守ったのである。

「うふふ…とうまぁ…わたしが守ってあげるからね…」


数日後、ツンツン頭の少年にいきなり抱きつく少女が目撃されたらしいが、詳細は不明である。

551■■■■:2010/04/23(金) 20:33:35 ID:NoMTXFS2
はい、初心者丸出しの駄文でしたー
感想、批評など頂ければうれしいです
あと、誰かもっといい抱き枕ネタを書いてくれ…!

552■■■■:2010/04/23(金) 20:33:48 ID:zow57oOU
>>536
◆ジャンプ読者であると思われる。「せう?」という口調がこのごろ聞かれないのは、彼なりのはやりすたりでもあるのか。(そもそも記憶喪失の際にジャンプの愛読を辞めたのではないかと?)

wikiだと↑の情報はあったけど
本当かどうかは不明w

553■■■■:2010/04/23(金) 20:49:16 ID:wuWxxo3U
お前の理性ぶち殺しver・・・だと!?いぃイカン鼻血がぁ!!?

554■■■■:2010/04/23(金) 21:10:52 ID:1rOG8ObM
>>530さんアドバイスありがとうございます。気をつけてみます。強調するのは難しいですね。

>>531さん感想ありがとうございます。やはりくどい文章ですよね。
もっとマイルドになればいいんですが。
台詞が挟まるといろいろ細かい描写をグダグダと書き連ねてしまいそうで地の文だけに…テンポが難しいですね。
こんな駄作でも楽しんで頂けて幸いです。

555■■■■:2010/04/23(金) 21:22:21 ID:LqY/vP/I
ダッチ上条 


あとは任せた

556■■■■:2010/04/23(金) 21:22:34 ID:pNxg19d.
>>536
>>237
無くなった というか たまたまの可能性もある
かまちーの気分的な問題じゃないかな

557■■■■:2010/04/23(金) 21:37:32 ID:u0tHLWTE
失礼します。
もしもどなたも書くつもりがないのでしたら、ちょっとした小ネタを書いてもよろしいでしょうか?
40分までにどなたもお書きにならないのでしたら、超絶☆初心者ですが、書かせて頂きます。

558■■■■:2010/04/23(金) 21:40:26 ID:u0tHLWTE
では、書かせて頂きます。

タイトルは特にありませんが、宿題ネタのような物です。

559■■■■:2010/04/23(金) 21:41:33 ID:u0tHLWTE
上条「よっしゃーー!!終わったーーー!!」

美琴「はい。お疲れ様でした〜。」

上条「ほんといつもありがとうな!ビリビリ!上条さんはもう、感謝の気持ちでいっぱいですよ!夕飯まで作ってくれるし!」

美琴「ビリビリ言うな!…別に、いいのよ。私が好きでやってるんだから。」

上条「こんだけの事を無償でやっておいて、いいのよ、なんて!うう…上条さんは涙が…」

美琴「お、大袈裟よ。馬鹿。」




上条「しかしだなー。」

美琴「何よ?」

上条「これだけの事をしてもらいっぱなしってのはなー」

美琴「それについてはさっき言ったじゃない。私が好きでやってるんだから、別にいいのよ。ていうかアンタは私の命の恩人なんだから、これは恩返しとして、とってもらっていいのよ?」

上条「それとあれとは話が違うだろー。…なんかなー。お前に悪い気がしてなー…。」

美琴「だから、別にいいんだってば。」

上条「いや、やっぱり良くない!してもらいっぱなしで悪い!」

上条「と言う訳で、上条さんは恩返しをする事を決定致しました!ハイこれについてはお前何も意見できません!決定事項です!」

美琴「…ハァ…。分かったわよ。そこまでアンタが言うんだったら。」

上条「よし!と言う訳で!……」

美琴「…」

上条「………何をして欲しいよ?ビリビリ?」

美琴「ビリビリ言うなってば!…アンタ…普通自分で考えない?そういうこと…」

上条「だって、何も思いつかないんですもん…それに、せっかくした恩返しが、あまり喜ばれなかったらショックじゃん!」

美琴「わ、私はアンタがしてくれる事なら何にだって…」

上条「と言う訳で、ビリビリがしてもらいたい事決めちゃってくれよ。」

美琴「人の話を聞けー!!それとビリビリ言うなっていってんでしょうが!…そうねー…アンタにしてもらいたい事ねー…」

上条「おう。何でもいいぞ。お金が掛かりすぎない事なら、なんだって上条さんは実行してみせるからな。」

美琴「お金払わせる気なんて毛頭ないわよ。それにしても…お願いかー…。」

560■■■■:2010/04/23(金) 21:43:34 ID:u0tHLWTE
美琴「(毎朝、モーニングコールをさせる…とか…?
    上条「おはよう。ねぼすけさん。しっかり起きれたか?」
    美琴「ヤダー。当麻ったら!キャハ☆」
    あ、これやばい。超してもらいたい。
    いやまてまて、もっとよく考えてみよう。さらにすばらしい事があるかもしれないわ!)

上条「(やばい。御坂の顔がやばい。何かすごい事考えてる顔になってる。)」

美琴「(一週間、私専属の執事になってもらうとか!
    上条「美琴お嬢様。お荷物をお持ちします。」
    キャーッ!!これもすごくいいわ!!
    …?あれ…?
    何か違和感を感じるわ…?)」

美琴「何でだろ…こいつが執事だから…?いやいや違うわね……?

上条「(俺が…執事!?)」

美琴「一週間だけだから?永遠にやってもらえばいい話だわ…これも違和感の正体じゃないわね…」

上条「(永遠に…執事…!?……期間ちゃんと決めとけばよかった…)」

美琴「何で?……美琴お嬢様。お荷物をお持ちします。
   美琴お嬢様。…美琴?」

美琴「ああああああああああああっ!!!」

上条「うおおおおおおおおおおおっ!??」

561■■■■:2010/04/23(金) 21:45:55 ID:u0tHLWTE
美琴「そうよ!」

上条「何だよ!」

美琴「決まったわ!」

上条「そ、そうか…(あれに決まってしまったのか…)」

美琴「アンタの恩返しは…」

上条「ううう…」



美琴「私の事を下の名前で呼ぶ!これに決定だから!」


上条「……………………え?」

美琴「何よ。何でもしてくれるんでしょー?」

上条「いや、難しいとかそういうんじゃなくて…永遠に執事になるとばっかり思ってたから。」

美琴「そっちの方がいいのー?」

上条「喜んで名前をお呼びさせて頂きます」

562■■■■:2010/04/23(金) 21:48:11 ID:u0tHLWTE
美琴「じゃあ早速…どうぞ!」

上条「ああ…ええっと…み、美琴?」

美琴「!!!………………ふみゅぅ……ってぇぇ!!??危かったわ!!」

上条「何が!?」

美琴「(自分からお願いしといて何だけど…これは……破壊力のケタが…)」

上条「おい…大丈夫か?みs…み、美琴…(これは恥ずかしいな…名前で呼んでるだけなのに…)」

美琴「…ふny…っととおお!!意識を強く持つのよ!!私!!」

上条「何で雪山で遭難した時みたいになってんの!?」

美琴「似たようなものよ!本当にやばいんだからね!?」

上条「だから何がやばいんだよ!……っていうか、一つ提案していいか?」

美琴「何よ?名前で呼ぶの嫌だとか言う提案なら却下よ?」

上条「いや、違うけどさ…俺がいいたいのは、お前の事についてだよ」

美琴「何よ?」

上条「いや、これもいい機会だしさ。お前も俺の事、名前で呼ばないか?」

美琴「ぶっ!!ア、アンタは一体何を…!」

上条「ほら、それだよ。おま…ゴホン美琴はいつも俺を呼ぶ時、「アンタ」か「バカ」って言ってるだろ?この際、それもまとめて直さないか?

上条「別に下の名前じゃなくてもいいけどさ。アンタはちょっとな…」

美琴「(何よそれ〜!?それだったら、下の名前呼ぶしかないじゃない!今更苗字で呼ぶなんて、今より距離が開いてるみたいじゃないの!)」

上条「何だよ……そんなに俺の名前呼ぶのが嫌なら、無理にとは言わないけど……」

美琴「いや…嫌なわけじゃ…ないんだけど…」

美琴「(あーもう!!美琴ちゃん!!腹をくくるのよ!!)」

563■■■■:2010/04/23(金) 21:50:37 ID:u0tHLWTE
美琴「と、とうま…君」

上条「お…おう…?(君?)」

美琴「と、とうま…」

上条「おう」

美琴「…とう、ま」

上条「…おう?」

美琴「とうま」

上条「美琴…?」

美琴「とうま!当麻!」

上条「ああ…?」

美琴「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

上条「(美琴が壊れた)」







美琴「とにかく!これがお願いだから!これからどんな時でも、私を「美琴」って呼ぶ事!分かった?当麻?」

上条「分かったよ…ms…美琴」

美琴「ふふん。それでいいのよん♪」

上条「ったく…名前で呼んでるだけなのに……何でそんなにうれしそうなんだ?」

美琴「決まってるじゃない!
   


   私、御坂美琴が、アンタ、上条当麻の事が好きだからよ。」

564■■■■:2010/04/23(金) 21:53:07 ID:u0tHLWTE
以上になります。

初心者っぷりMAXですね。
今更思いますけど、ちょっと急展開すぎたかなぁ・・・

自分は今回初めてSSと言うものを書かせていただきました。
なので、辛口でも甘口でも、何でもいいのでアドバイスを頂けるととても助かります。
コメントお願いします!

565■■■■:2010/04/23(金) 21:55:37 ID:BGF9JeCw
>>564
GJ
なんだかすごくにやけてしまったwww

566■■■■:2010/04/23(金) 21:56:42 ID:CmNMT87s
>>564
GJ! なんだよ!

567■■■■:2010/04/23(金) 22:05:13 ID:aW4DTuBU
>>564
GJです!
ニヤニヤしちゃいましたー!あ、一つ気になった事が
会話文では末尾の「。」はなくていいですよー。
例)

「どうした?美琴」

「とうま…大好き」  

「美琴…俺も、大好きだー!」

 こんな感じ?

568>>564:2010/04/23(金) 22:07:44 ID:u0tHLWTE
>>567
確かに読み返すと「。」はいらなかったかなぁ・・・と思いました・・・
アドバイスありがとうございます!

569■■■■:2010/04/23(金) 22:14:05 ID:nfsLPpAY
>>564
GJ!やばい、すごくいい。

アドバイス?
>上条「ほら、それだよ。おま…ゴホン美琴はいつも俺を呼ぶ時、「アンタ」か「バカ」って言ってるだろ?この際、それもまとめて直さないか?
 上条「別に下の名前じゃなくてもいいけどさ。アンタはちょっとな…」

かぎカッコ忘れてるような気が・・・

570>>564:2010/04/23(金) 22:25:17 ID:u0tHLWTE
>>569
あら・・・;;
スイマセン;ミスです・・・;

571:2010/04/23(金) 22:35:08 ID:PnAr5o5I
再び現れました。最近小ネタばっか投下してる、∀です。
で、今回も小ネタです。また会話オンリーです。1レス消費です。
被らなければすぐに投下しようと思います。

572:2010/04/23(金) 22:35:31 ID:PnAr5o5I
二人が何かしています。


美琴「んっ……あっ……」
上条「気持ちいいのか?」
美琴「………………」
上条「気持ちいいのか?」
美琴「きっ……気持ちいいわよ…! だから……もっとして?」
上条「お、おう……」




















美琴「アンタって肩揉むの上手いのね。見直しちゃったわよ」
上条「はっはっは、まあな。でも上条さんとしてはいろいろと危なかったですよ」
美琴「……何が危なかったっていうのよ」
上条「……イイエ、ナニモアブナクアリマセン」

573:2010/04/23(金) 22:37:39 ID:PnAr5o5I
以上です。構成とオチがほぼ一緒っていうね。
最近こんな感じに想像させる系が好きなのかもしれない。
続きは脳内補完でお願いしますねー。

>488
少し考えてみたら、上条さんが不幸な目に遭ってましたw

574ION:2010/04/24(土) 00:39:12 ID:Zqxcqfww
書き手さんGJです。
SSの魅力はみんなが自分の上琴像を表現できるということですからね。

というわけで、

「上条さんがちっちゃくなりました。ReWrited」

「8月15日 Begins Night」の続きになる、
「8月16日 見たことのない人間_I want to know His Name」
を投稿させていただきます。
5分後(0:43以降)に6スレ消費いたします。

5758月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:46:42 ID:Zqxcqfww
ジリリリリリリリリリッ――上条の部屋には暴食シスターもいなければ、超能力者(レベル5)のお嬢様もいない、ひとりの暮らしに逆戻りした上条の部屋。
彼の髪質なのだろうか、完全にツンツン頭が出来上がっている。天井に届きそうなくらいに腕を上に伸ばし、ふぁぁぁぁぁ。と、だらしのない欠伸をした。
今日は、どこをどう見ても子どもにしか見えない担任の補講が入っていないので2度寝することも考えたのだが、寝ている間に不幸が降りかかってくることもあったためにそれはやめることにした。
いつも通り、不幸に気をつけながらベッドから身を起こす。上条は思った――とうとう足が短くなってしまうという魔術をかけられたんでせうか?と。
そんなことを思いながら、寝ぼけ眼を覚ますために洗面所に向かった。 ベッドから降りて洗面所のあるユニットバスのほうへ向かう。
テーブルの脚に左足の小指をぶつけるなどスタンダードとも言えるような小さな不幸も2、3回あった。
その痛みもあって、上条はとてもすぐ眠れるような体制からどこからでも”魔女狩りの王(イノケンティウス)”がやってきても大丈夫な気分になっている。
洗面所の明りをつけて、鏡の前に向かおうとする。そんなときに上条は――

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁ!」隣人に迷惑がかかるくらいの声量で叫んだ。

そのあとは、身体をくねらせたり、鏡に写っている人間に顔をしかめてみたり、と。そこが、もし大通りのショーウィンドウの前だったら完全に不審者である。
その動作に加えひとりごとを裏返ったような声で言っている。若干、いつもの声のトーンとは違ったもの。

「こんな俺って、ガキだったけ?これじゃあ、御坂をガキって言えないよな。
パジャマもなんだかでかいし、声もなんだかトーンが高い気がするし、あ…あ…あ…私、上条当麻ですよ、ですね、でございますよの3段活用!
ギリギリ、声だけならごまかせそうだな。今日は、何も用事がないのが不幸だ。打ち止め(ラストオーダー)と並んだらどっちが高いんだろうか。」
そんな事言いながら、心の中はダム決壊なみのパニックに巻き込まれていた。さすがに今回の“不幸”は上条にも未知の領域であった。

この“不幸”というのは、いきなり部屋のドアをぶっ壊されたとか、窓から侵入者が入るとかそういうものではない。
1日前の上条は175cmの身長。つまり、2年前からおおよそ6cm身長が伸びたのだ。なんとなく子供っぽかった顔も、いつの間にか父・刀夜の顔にも似てきた。
ただ、相変わらず髪型はツンツンしたものであった。それが、寝ている間に20cmも縮まり、顔も幼くなった。パジャマ代わりのジャージとTシャツは少しぶかぶかである。
こんなにも変化するのは現実には起こらないだろうと思っていた。今日までは。
こんな出来事が起こるまでは、上条の過去の愛読書、いや、贔屓にしていた週間コミックの一つに似ているとか、似ていないとか。
どうしようもできないこんな状態を打破しようと上条は必死だった。現在、5:30くらいで、カーテンのしまっている窓から少しだけ光が差してくる。
とりあえず、顔を洗ってベッドの脇にもたれかかっている上条は、携帯電話を片手に持っている。
日の出の光が照らす少々薄暗い部屋の中に携帯の画面を見ている少年は第3者からみれば、とてもかわいそうな子どもに見えてしまう。
自分を落ち着かせようといろいろなことをやって今の状態があるのだが、それと平行に自分がこのような目にあってしまった原因を部屋の中で探していた。怪しいのは、ステイルからの“プレゼント”だ。
その中のものを昨日、箱から取り出して、手紙の通りに“儀式”を執り行った。
あまり宗教的なものを信じないという信条の持ち主である彼であったが、久しぶりの戦友と出会えたことに懐かしさと、嬉しさと、なんとなく感じてしまう違和感と、残念な気持ちが均等に入り混じって形を変えながら上条を支配していた。
 上条は、インデックスがいなければステイル達もいない現在の日本の中で一番信頼が置ける人間を探す。――隣人や、青い髪にピアスをしている大柄な男、3年間の担任、魔法使いの少女…と知り合いは多いのだが…。
――今、一番に頼りになりそうな人間の名前をアドレス帳から探して、電話番号のところにカーソルを合わせて電話をかけた。
上条は、最終選択を迫られた人間。頭の中で思考を巡らせてみても、最終的な答えが一つしかない。呼び出し音が鳴って、5コールしないうちに受話器の向こう側の相手とつながった。

5768月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:50:15 ID:Zqxcqfww
「もしもーし。あんた!こんなに早くどうしたのよ。同じ部屋の人起きちゃうじゃない!」
「悪いっ!それは申し訳ない…。でもさ…、」
「私だって、色々と忙しいんだから要件早く言ってよね。」
「あのさ…、」
「あんたってさ、死に目に会わないと言いたいことがいえないタチなの?」

受話器からぱちぱちと音がなっているのを上条は聞いている。あのお嬢様は扱いが大変だと思って、話を切り出した。
「今日さ、お前大丈夫か?」
美琴はこの一言により、乙女心が織りなす無限な妄想の世界に取り込まれるのである。

(だいじょうぶ?ってなんなのよぉ。今日もあいつに会えるのはうれしいけど…あったら何も言えなくなるのよね。
あいつの家に行くのって1週間ぶりかしら?付き合ってもいないのに家に上がり込むって…えへへ♪もぉ♪何にも考えられないよぉ。)

「おいおいおいおい!どうしたんだよ。そっちがせかすから話切り出したのにさ。」
「え?あ。うん?んで、今日大丈夫かってことでしょ?あんた私を誰だと思ってんのよ。今日は大丈夫よ。特別用事という用事はないし…。」
「あ。それは良かった。今日さ、家に来てほしいんだ。…いんだ。」
なんだって?と美琴は、口調を変えた上条の心の状態が良くないと感じた。そして、美琴は今できる最高の優しさで答えようとした。
「うん。用意ができたら行くよ。あんた…不安なんでしょ?」
「あぁ。・・・自分が怖いんだ。何が何だかわからねえんだよ。」
「大丈夫だから。あんたは、私が来るまで待っててよ。」
「・・・わかった。」

現在、上条の部屋の時計は6:40過ぎを示している。上条は冷蔵庫のほうへ足を運ぶ。
冷蔵庫にはミネラルウォーターがあるのを思い出して、冷蔵庫の扉を開いて、2リットルのペットボトルを取り出して、コップに水を注いだ。ゆっくり水を口の中に入れる。
上条はいつもとは違う不幸に体が思うようにコントロールできなくなっている。自分自身を落ち着かせようと無我夢中で手段を選ばない。
ひとりでいるときにはあまりつけないテレビをつけて、不安から目をそらしたり、水を飲んだり、立ち上がってふらふらしたりと。

ドアをノックする音が聞こえる。早くあけなさいよ。という声が聞こえる。
しかし、上条はこの状況を信じてもらえるのか――今、もっとも信用がおける人間に今の姿を見て信じてくれるのか。という消極的な気持ちが上条を抑え込んでいた。
ドアの外では、イライラしている姿が目に浮かぶ。上条は覚悟を決めてドアを開けた。

「いつまでこの美琴センセーを待たせる気なのよ…。こっちの身にもなってみなさいよ。…ってあんたがめずらしく困ってるのよね。入るわよ。こんな朝から廊下で騒いだら迷惑だものね。」

美琴は、いつになく世話焼きモードに切り替わっていた。ちなみに、今まで上条の姿の変化に気が付いていない。鈍感なところは似ている2人。
美琴が部屋に入ってきて、しっかり靴を揃えて入ってくる仕草はさすがお嬢様という感じだ。彼女は目線を上条のほうへ目線をやった。

5778月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:53:43 ID:Zqxcqfww
「あんた…って、っちょっちょちょちょちょ…ちょっとぉ!あんただれなのよ!」
「俺だー!上条さんですよ。よくわからんうちに子供になってしまったんですよ。幸い、記憶喪失にはならなかったわけですし。」
「あははははははは・・・・ってちょっと待ちなさいよぉ。」

ここで、上条の話の趣旨がつかめた。
「なんであんたこんなにちいさいわけ?」
俺に聞くなよ。と突っ込む上条。ここから5分間は痴話喧嘩である。最近になってやっと、感情的になるとビリビリすることがなくなり、家電を心配する必要がなくなった分上条の不幸は少しばかり減ったともいえる。
油断していると危ないのだが…。

「今のは、あんたが悪いの!」
「御坂のせいじゃないと言っているのに、そっちが勘違いするからだろ?」
「あ・ん・た・は!!」と言いながら美琴の体表には青白い角がバチバチと言いながら発生しているように見える。それを感じた上条は急いで右手を御坂の身体の一部に触れさせようと近づく。
…近づくといえども、二人の距離はかなり近く、右手を差し出せば触れる距離である。いよいよ、御坂はかなり高電圧な電気を発した。誰にもやったことのない致死量に近い量の電圧の放出。

「ぎゃああああああああ!やめ…、ろ…」上条はその場に前から倒れてしまった。部屋の中は黒こげ。家電も全て駄目にしてしまった。

「!!!」美琴はいつもの上条とは違うと完全に確認した。しかし、目の前で自分を頼りにしてくれた人をこんなにも傷をつけてしまった。気を失わせるまでとは。
いつもの上条だと自分の放った電撃はきれいさっぱり彼の右手のなかに吸収されるように消化されてしまう。
幻想殺し(イマジンブレイカー)なる力で、自分の能力を打ち消しやがる彼が小さくなってしまい、その能力も失ってしまっている。
彼女は、初めて勝利したことに喜ぶ瞬間にこのような不安要素が見えてしまったのだから、現在は上条に罪悪感しか残らない。
美琴は、自分が何をやってしまったのか、信じられなかった。すでに、上条は2分以上気絶している。
しかし、幸いなことに行きはかすかにしているようだ。それを見た美琴は最愛の人のそばに座り、そのツンツン頭を静かに自分の膝の上に乗っけた。
そして、電気ショックを与えて心臓マッサージをする。

「なんで、あんただけ…」
「なんで。なんでなの?ねぇ、教えてよ。なんであんたはこんな不幸なのよ。」
「あんたの不幸は、その右手で殺せないの?不幸って名前の幻想は殺せないの?」
だんだん、想いが膨らんでいく。それと同時に言葉も喉をつっかえ始めている。すでに、ツンツン頭の少年の顔は、ぐしゃぐしゃに濡れている。
上条は目を開けてくれない。言葉が詰まりながらも美琴は想い(ひとりごと)を言う。
「ねぇ。あ…んたは…わがっ…でるの?わだじがっ!どんなに…グスッ…大好きなのかって」
「どうなのよ?へん…じ…くらい…してよ。」
「わかってるわよ。…あんたにどれほど嫌な思いをさせたのかも…」
「…でも、あんたがあのとき言ってくれたことはほんとなんでしょ?」
「どうなのよ…わたっ…しがぁ!…未練たらたらの悲しい女になってもいいわけ?」

『…ぇだろ?ったく。』

「え?…気が…ついたの…グジュッ…」

上条は、少しずつ目を開ける。声の主のほうへ目線を遣るが俯いていて、なかなか顔の表情がわからない。
「んなわけないだろ?ったく。悲しい顔なんてさせたくないからな。」といつもより笑ってみせる。
美琴はそれを聞いて安心したのか、自分の膝の上に頭を遣る少年の頭を撫でる。そして、優しく微笑む。そして、一瞬にやりとする。
膝枕をしたり、頭を撫でたり、顔を触ったりしているため、上条の顔は赤みを帯びて恥ずかしそうにしている。だが、次の瞬間…
バチィィィィン!っと爽快な音が鳴り響く。上条は、言葉を出せなくなるくらい驚いている。口元では不幸だと言っているようだ。
彼女は、頭を撫でるフェイントをかけて、いきなり上条の額にでこピンをかましたのであった。

5788月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:56:51 ID:Zqxcqfww
「びっくりした?ねぇねぇ?あんたって結構こう言うのは弱いのよね。」
「うるさいな!ってなんで、上条さんのおでこにでこピンをかましてくれんですか。」
「あんたが気持ちよさそうに寝ちゃってたからでしょ?」
「それは、あなたがやったことですのよ?この黒こげになってしまった部屋をどうするというのですか?」
ぶー。と言わんばかりに美琴は自分のやったことを棚に上げようとしている。それを見た上条は、今回はあなたのせいですよね?と言わんばかりの顔で美琴を見つめる。

「…ごめんなさい。」美琴は自分の過失に正直になった。しばらくして、美琴は落ち着きを取り戻して目の下がまだ真っ赤になっているのだが、ツンツン頭をよけてたちあがる。
「あんたさ、ご飯まだでしょ?冷蔵庫のもの勝手に使わせてもらうから。」
「って、みみみみっみみみ御坂さん?このかわいそうな上条さんにご飯を作っていただけるのでございますか?」
「そ、そうよ。あんたがそんな風になったんじゃ、料理も十分作れないんだろうなって。ってアンタ!ちょっとは私を信用しなさいよっての!」

「そっか。悪いな。ありがとな。」と上条が言おうとした瞬間、自分の部屋の状態が大変なことを再確認した。黒こげになってしまった部屋と、駄目になってしまった家電その他。
上条がいたのはリビング、美琴がいたのは玄関とキッチンコーナーがあるところ。美琴は上条の方向へ電撃の槍を寄こしたのでその方向にあったものは完全に駄目になっていた。
つまり、上条が使っていたベッドや、ベランダに続く大きな窓は完全に駄目になっている。テーブルも、電気の生じる高熱によって少しばかり変形している。
携帯電話も使い物にならない。幸い、冷蔵庫とキッチン、ユニットバス・洗濯機には被害が及ばなかった。上条は、それを見て安心した。そして、改めて美琴のほうを向いて言う。
「ありがとな。」

一部が黒く焦げてしまった部屋の中で仲良く並んで食べている姉と弟。姉は常盤台中学に通うお嬢様である。弟は無能力者で頭がツンツンしている。
よその目にはそういう風に写るのだろう。本来この場面で映らなければならない風景には、恋人同士が並んで朝ごはんを食べる…というなんともかわいらしい風景がある。
なんとも初々しいカップルが二人並んでどぎまぎしている。そんな風景が本来では存在しているのだが。今ではきょうだいそろってご飯を食べているというものに変換されている。
二人とも何もしゃべらない。静かに箸を進めている。ただ、時間だけが過ぎていく。

「「…」」
「「あのさ…」」
「「…」」
「「なにかしゃべってよ。(しゃべってくれないのか?)」」
「「…」」
「なんだよ。お前が先に言ってくれよ。上条さんは後で言うから、レディーファーストってので御坂さんに権限が移りまーす。」
「わかったわよ。いえばいいんでしょ?いえばぁ!」


沈黙をどうにか破ろうと考えていたのは二人とも同じである。似た者同士だからか、言うタイミングも天然の高シンクロ率で放たれ、黙るタイミングも同じだった。
二人とも話せば話すほどドつぼにはまってくると思ったので、上条はそれをぶち殺すように先攻を切った。そして、美琴に先に話してもらうようにした。

「あんたさ、なんでこんな身体になったのかわからないの?」
「んま、大体の見当は付いているのだが。この体じゃ、何もできない無能力者だな。」
「確かに、今のあんたじゃちょっと頼りないわね。つか、いつもより駄目になってるわ。」
「それは、ちょっと言いすぎですよ。…でも、あながち間違っちゃいねえし。…ハハっ」

目の奥が少し暗い上条の顔はとてもその身体では抑えきれないくらいの感情で満たしている。自分の情けなさに今でも泣きたいくらいに。
わけのわからない感情に振り回されている自分に。大切に思ってくれる人の前なのに何もしてやれないことに、心配させないように。
美琴の作ったご飯を食べることでそれを忘れようとしている。それを見た美琴は、そんなに急いで食べたら喉詰まるわよ。と優しく言う。

5798月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:58:19 ID:Zqxcqfww
「「ごちそうさまでした!」」
「こんなおいしいもの食べさせてくれるとは幸せですな。こんな人を嫁にもらった旦那はどんなにしあわせなんだろうな?」

ギクッ!っと音が鳴るくらい食器を洗ってくれている御坂の背中が反応する。
「もちろんよ!私をだれだとおもってんのよ。ったく。」と、言っている心のうちではすでに妄想ワールドが展開されている。
(およめさん?あいつが旦那?やだぁ!何考えてるんだろ。ないないないない!絶対にそんなこと期待してな…えへへ♪)
食器を洗いながら美琴の顔はその整った顔がゆるみ始めていた。そして、顔が赤くなっていく。

「ところで、あんた!ききききっきき今日はどうすんのよ。家もこんなだし。…私のせいだけどさ。」
「お前のところにでも行こうかな。…んま、冗談だけどな。でも、入れてくれると嬉しいかもですよ。」
「あんたねえ。ずかずかと女の子の家に遊びに来るもんじゃないわよ。とりあえず、壊れちゃったのはこっちで負担するわ。」
「そんなことさせねえから大丈夫だよ。おまえは別に気にすんなよ?」
「それであんた、これからどうするのよ。」
「わからんな。」
「わからんって…今日は何もせずにこのままいるつもり?」
「俺はそれでもいいかなと思って。」
「私が気が済まないのよ。ってか、このままだったら落ち着かないの!」


美琴は、言っちゃった。とひとりであわあわしている。いつもの彼女では見ることができない表情だ。
自分のせいで半壊してしまった上条の家、学生寮の1室を破壊してしまった現実から目をそらそうとしている。
今朝早くに上条から電話をもらったことから始まった1日は、美琴の身体をがちがちに緊張させる。電話をもらって彼の家に着くと、彼の面影がある子どもが目の前に現れた。
その子どもが自分は上条当麻だと言い張り、しゃべり口調や、仕草が全く同じだったこと、そして、いつものように受け止めてくれる電撃が彼の心臓を打ち抜かんばかりであったこと。
全てにおいて、美琴は、自分を失いかけている。ふにゃー。という言葉とともに。

「ここで、漏電はないだろうがぁぁぁぁぁぁぁ!」と上条は傍若無人に叫ぶ。しかも声変わり途中のような声で。
しかし、上条の不安は斜め上を行く幸運に見舞われる。というのも美琴は漏電をコントロールできるようになっていたため、気絶する前に能力を抑制していた。
そのため、彼女の身体から力が抜けたときに軽くだけ静電気のようなものが見えた。ただ、それだけだった。つまり、漏電で高電圧の電気が放電されることはなかった。
不幸続きの上条にとって、ほんのわずかなしあわせ?な日々が続くことはこのとき誰も思いはしなかっただろう。
起きたときからずっと騒ぎっぱなしの彼にはかなりの疲れがたまっていて、いつの間にかリビングのテーブルの横で寝息を立てて寝てしまっていた。
その横で、その寝顔をみていた美琴もこの騒動に巻き込まれてしまった一人で温存すべき体力を無駄に使ってしまったため眠気が襲っていた。
幸い、今日は夏休みに入って数日。夏期講習というものも学校の待遇により自由参加の形になっている。彼女は決心をする。

――今回は、いつもの借りを返そう。そして、それ以上の借りをこいつに作ってしまおう。と。

なかなかの策士だと満足そうにその場に横になる。そして、瞼が重くなっていくのを感じる。上条宅は、一時の静けさを取り戻した。
上条の部屋にはこの夏真っ最中の中珍しい心地よい風が入ってくる。カーテンが小さく風になびいている。時計は8:30を指している。

5808月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 00:59:21 ID:Zqxcqfww
―――――――――――――――――――――――――――
上条は、花畑にいる。周りには何も建物がない。

「ここは、天国ですか?あのぉ、まだ上条さんは死んだわけではないですよ。」
「・・・・わよ。」
「・・・・え?今何て?誰かいるんですか?」
「ここは・・・よ?あ・・・わ・・・のせかい。」
上条は、すこしずつ声のするほうへ足を進める。
「こっち、こっち!」
上条は、声のするほうへ顔を向ける。いつも見慣れた顔がそこにあった。
その顔を見て、上条は息をのむ。2年前の美琴が白いワンピースを着て花畑の真ん中でひとりで遊んでいる。
ちょうど、上条は彼女の眼の前にたどりつく。自分がどこにいるかがわからないが行動をすることにした。
目の前にいる少女に声をかけた。
「なんで、お前がここにいるんだ?」
「え?なんであんたもいるのよ?」
「しらねえよ。」
「へぇー。・・・でも、あんたがいるってことは私の願いがかなったのかしら。」
「しらねえよ。」
「やっぱり、あんたは美琴様のものね。」
「知らねえよ。てか、いつからお前のものになったんだぁ?」
「えへへ。ありがとう。私の当麻ぁ。ありがとうのキスでもしよっか?」
「知らねえから知らねぇと上条さんは言っているのですよ?え?いきなりですか?」
一方的に美琴は話を進める。しかも、いつもは何にでも突っ込んでくるにもかかわらず何もしてこない。
上条は少し、恐怖を感じた。まして、自分を彼氏?下僕?と指定が入っている。
2人だけの空間。それも、絵本にしか出てこないような花畑が永遠に広がっている。
茫然と立ち尽くす上条の右腕にやわらかいものが当たる。そして、あまいにおいもする。そして、

「――――っ!」

上条は顔を赤くする。体温が急激に上がっていくのを感じた。右ほほにとても気持ちのいい熱が触れる。
そして、暖かいものが頬を離れていく。それと同時に熱のこもった吐息が掛かってくる。
いつも電撃を放ってくる中学生は、少し大人の階段を上っている。いつものつんつんした感じはさらさらない。
美琴は、上条の体に自らの体を預けている。そして、絡めてくる。上条の体はバランスを崩してしまった。
ばさっと二人はその場に倒れる。上条は美琴にその身を押されつけられている状態にある。美琴は、すでに大人の色気を感じさせる顔になっている。
そして、熱のこもった声で美琴は甘えてくる。
「ねえ、とぉまぁ。もうどっかにいかないで。私の目の前からいなくならないで。」
「…」
「当麻は何も言わずにどこかに行っちゃうんだから。私の気持ちも知らないでさ。」
「…」
「あんたがいないと私ダメダメになっちゃうの。こんな超能力者(レベル5)なんてこの世界には用無いわよね。」
「・・・・いいんだよ。それで。全然だめじゃねえ。お前はレベル5の前にひとりの女の子なんだよ。」
「えへへ。私女の子って言われたぁ。うれしい。」
「わかってるぞ。お前のその顔見てたいから。」
「あのさ、自分が何言ってるか…わかってんのぉ?」
「しらないですなぁ。」
「・・・・ばかぁ♪」

そういって、美琴は上条の唇に静かに自分の唇を乗っけた。

――――――――――――――――――――――――――――――――
上条は、夢から覚めた。だが、体が重い。というより、自分の体に別の重さの物がのしかかっていることに気付く。
夢から覚めたところで彼の体が元の大きさに変わることはなかった。夢の中では彼は元の高校生の体であったので、元に戻る希望も持っていたのだが。
彼は絶望した。心の中で不幸だとつぶやく。しかし、自分の右手にくっついている物体はいまだに眠りから覚めていない。それどころか恥ずかしい寝言のオンパレードである。
右腕はすでに暖かいものにくるまれた状態で動かそうにも動かせない状態である。そして、耳元には暖かい息が吹きかけられている。
つまり、寝言がダイレクトに上条の耳に伝わる。そして、その茶色の髪からかすかに甘いにおいがしてくる。というより、上条は2年間の成長結果にドキドキしている。
今では、上条の知っている女教皇や高校の警備員(アンチスキル)教師には及ばないが膨らんできた母性に上条は鋼鉄の理性を失いかけていた。
上条がひとりでドキドキしていると、その夢にまで出てきた少女が目を覚ます。

「今、何時かわかるかしら?」
「そうだな。うーんと・・・11:37分くらいだな。それにしても良く寝たな。」
「そうね。あんたの寝顔もみれたしな。・・・えへへ。かわいかったわよ。それにしても・・・」
「それにしても?どうしたんだ?熱でも出したか?」
「う・・・ううん。でも、あんたって結構強引だったのね。えへへ。」

5818月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 01:00:25 ID:Zqxcqfww
美琴は、顔を真っ赤にしてあうあうしている。上条はなぜそういうことになったのかわからない。彼が敏感であったならこんなことないのに。
それにしても、ひとりで顔を真っ赤にして口をちいさく動かしているところをみるととてもかわいらしい。なんだかかわいいなと上条は思ってしまう。
二人とも隣り合ってお座り状態である。しかも向かい合って。二人とも下を向いている。2年間も一緒にいることがただでさえ多い二人は、それぞれ違う意味合いで触れ合っている。
いまは、ツンツン頭はさっき見た夢のことを思い出して、顔を真っ赤にしている。その迎えにいる茶髪少女は自分の大好きな人の寝顔と“強引“な行動に顔を赤くしていたのだった。
二人は、顔をあげると相手の顔が真っ赤なことにおかしさを感じて笑ってしまった。というかお互いさまなところがある。似た者同士、笑うつぼも同じなのかというくらい。
彼らのやり取りは彼氏彼女の関係では見えなさそうなことばかりやっているのである。むしろ、仲のいいきょうだいだと思われることが多かった。
それがに日常であるくらい彼らが2人でいる機会が多かった。

「あのさ、アンタ。お昼どうするの?さすがに冷蔵庫の中何も入ってないわよ?」
「そうだな。今日はスーパーの特売りがあるからその時に買っておこうかな。って思っていたんだよ。」
「あんたさ、私の聞いてること意味わかってる?お昼どうするの?」
「昼はいつも抜いているんですよ?お嬢様のあなたとは違うお財布事情とにらめっこなのですよ。」
「あ・ん・た・はぁ。最近は、あんたの貧乏スキルのおかげで金銭感覚が庶民化したわよ。ったく。あんたのせいよ。」
「それは、失礼しやした。上条さん的には、この体で外には出たくないのですよ。」
「あんたの気持ちもわかるんだけどさ、ここにだけいるのも体に良くないわよ?今日はずっと晴れるんだから。」
「わかった。そのかわり、服のサイズがでかすぎんだよな。とりあえず、どこかで服でも見に行きたいのですが。それとも、美琴たんが行ってくれますか?」
「わ、わわわ私だけだと変に思われるじゃない?ばかじゃないの?あんたは。」
「わかった。とりあえず、準備するから。でさ、たぶん下が歩いているうちにずり落ちそうなのですが。」
「…しょうがないわね。ちょっと待ってなさいよ。のぞくなよ?」
少し、顔が赤いが美琴がにやにやしてそんなことを言っているのだから、上条はいやな予感、または変な予感がすると思った。
美琴は、上条をユニットバスのほうに押しやって、たんすの中にこっそり隠しておいた私服に着替えてデカフレームのメガネをかけた。
今回は少し違って鉄壁のガードをつけていなかった。そして、自分のポーチの中にあったメイクセットで軽く化粧を直した。
風呂場のほうに追いやった上条を呼びに行った。そして、風呂場のドアをノックした。

「あけてくれる?」
「ああ。」
「とりあえず、今は応急処置としてこれはいててくれない?何も言わないでよ。こっちだっと恥ずかしいんだから。」
「わかった。ありがとうな。」

しばらくして、上条は風呂場から出てきた。

5828月16日 見たことのない人間_I want to know His Name:2010/04/24(土) 01:03:16 ID:Zqxcqfww
みなさん申し訳ないです。
予想消費スレを大きくオーバーしてしまいました。

今回のストックがたまったので投稿させていただきました。

えと、最近改行のやり方等で論議が醸されていたようですが
読みづらいとか提案とかありましたらお願いします。

それでわ。

583■■■■:2010/04/24(土) 01:24:34 ID:xsx6yBn.
IONさんGJ!
前作の説明不足と思われた部分が丁寧に補完されてる感じがいいですね。
今後も期待してます!
あと、美琴の言う「強引」て何のことだったんでしょう?気になります…

584■■■■:2010/04/24(土) 01:28:24 ID:VSiDhmKw
>>∀さん
GJなんだぜ!
上条さんそこはもっt(ry

>>IONさん
GJなのよ!
いちゃパワー充電させてもらいました!

書き方については二点ほど。
・ちょっと前のレスにもありましたが、「とうまぁ。」の 。 は書かなくて大丈夫ですよ!
・地の文の頭は1スペース空けると読みやすくなるかもしれません。

 美琴は上条を追って走りだした。
「ちょっと待ってよ。私も一緒に行くー」

…みたいな。それなら一文が長くて下の行に行った時でも簡単に目で追えますからね。あくまで自分の意見ですが^^;
改行については問題ないと思いますよ。続き(ありますよね?)に期待ですっ!

585■■■■:2010/04/24(土) 04:31:09 ID:RiTnR.jI
>>574
過剰なツッコミだけど
電撃→死にかける→泣く→デコピンって
美琴がツンデレって言うより、情緒不安定っていうか
意味不明な性格になってない?

586ION:2010/04/24(土) 08:14:36 ID:Zqxcqfww
>>583,>>584, >>585 の返答をいたします。

「強引」の説明もしなきゃな…。そういえば。続編は今作っていますよ。
期待していただけて光栄です。

書き方も気をつけますね。
元の文書にはしっかり半角スペース2回降ってあるのに何でだろう…。
とりあえず、試行してみますね。

皆さんありがとうございます。

587■■■■:2010/04/24(土) 08:15:04 ID:1x1xmMXU
こんにちは。
10分後にネタ投下します。5レス消費。

588不自然なガール(1):2010/04/24(土) 08:25:52 ID:1x1xmMXU
 雨が降っていた。
 分厚い雨雲が空を覆い、細かい水滴が絶え間なく降り注ぐ。
 御坂美琴は学舎の園から徒歩で自分が暮らす寮まで帰る途中だった。
 学園都市の各校はバス通学を推奨していたが、決められたバス停を往復するだけの毎日など性に合わないと、美琴はいつも徒歩で通学していた。
 大体、その方が健康にだって良い。
 サラサラにとかされた茶色の髪をくすぐる風も、四季によって変わる陽射しの色も、日々形を変えていく白い雲も、四角い鉄の箱の中からでは何一つ感じ取る事ができない。
 でも雨の日は別だ。
 道路を叩く雨粒が跳ね返って靴や靴下が濡れてしまう。傘という荷物が一つ余計に増える。それに傘を差すのは面倒だ。
(失敗したなぁ。今日くらいはバスに乗れば良かったかしら)
 そう思っていても日頃の習慣のせいか、つい徒歩を選んでしまう。
 こんな日はどこに行く当てがあるわけでもない。
 美琴は雨の街を一人、薄っぺらなカバンを片手にぶら下げ、黄色い花柄の傘を差して歩いていた。いつもなら大股に風を切って歩く彼女も、今日だけは頭上に広がる傘の範囲内に収まるよう挙動を小さくしている。
 ふと、美琴は対向二車線の車道の向こう側、反対側の歩道に目を向けた。
 ただ何となくつられるようにして美琴はそちらを見ると、
「!」
 ツンツン頭の少年だった。
 彼は手にした学生鞄を傘の代わりに頭上に掲げ、もう片手にはコンビニ袋をぶら下げて美琴とは反対方向に走っている。いくつもの傘の花が咲く反対側の歩道で、彼は一人雨に濡れていた。
 美琴はその姿に違和感を覚えた。
 彼の手に本来あるはずの傘がない。
 この雨は今朝から降っていたのだから、登校する時点で彼も傘を持っているはずだった。
『不幸な人』(オカルト)で何もかもが片付けられてしまう彼の事だ。おそらく途中で傘が壊れたか、立ち寄った先で傘がすり替わってしまったのだろう。
 少年はとある店頭の屋根の下に入り、一息つくと辺りをキョロキョロと見回した。どうやら次に雨宿りができる屋根まで後何メートル走るのか距離を測っているらしい。
 美琴は足を止め、じっと少年を見つめる。
 少年は屋根の下から出るそぶりを見せない。
 雨宿りできる次の屋根までは結構距離がある。あるいはこの雨が止むのを待つつもりなのだろうか。
 そんな少年の動きを見つめていた美琴は、

 歩道の真ん中で、自分が差していた黄色い花柄の傘を閉じた。

 行き交う人々の中で一つだけ不自然に傘が閉じられたら、もしかしたら向かいの歩道に佇んでいる彼は気がつくかも知れない。
 美琴は手にした傘を閉じて、ツンツン頭の少年の挙動を目で追いかける。
 美琴の頭上で容赦なく雨は降り続き、美琴の茶色の髪や細い肩を包むように丸い水滴が付く。
 そんな美琴の思いに気づく事もなく、少年は頭上の雲行きや自分の走る先だけを気にして視線をキョロキョロと動かしていた。
(……気づくわけないか)
 美琴は小さくため息をついてから、通り過ぎる人々の邪魔にならぬよう歩道の端に寄って、傘を開いた。美琴を狙い撃ちにしていた雨粒が傘によって行き場をなくし、丸く大きな粒となって傘の表面を伝い地面にポトリと落ちる。
 美琴は左手に持った鞄を小脇に抱え、ポケットから携帯電話を取り出すと、
『そこで何やってんの?』
 向かい側の歩道で雨宿り中のツンツン頭にメールを打った。
 本当に聞きたいのはそんな話ではないけれど。
 屋根の下で雨をよけていたツンツン頭の少年がポケットから携帯電話を取りだし、待ち受け画面を見て首をひねっているのが見える。
 携帯電話を握りしめた彼の手がちょこちょこと動く。程なくして、反対側の歩道からメールが返ってきた。
『お前こそどこにいんの?』
 美琴が反対側の歩道でツンツン頭の少年の姿を見ている事には気がついていないらしい。これでは美琴が傘を閉じてみたところで彼が気づく訳もない。
 きっと彼にとって美琴は雨の街に咲くたくさんの花の傘のうちの一つにしか見えないのだろう。彼にとって美琴は取り立ててどうという事もない、彼の横を通り過ぎていくたくさんの人のうちの一人。
 美琴は液晶画面に表示された文字を見つめて、何と返事しようか思案する。さんざん悩んだあげくたわいもない言葉を選んでメールで送る。
 向かい側の歩道で雨宿りをしていた少年は視線を手元に落とした。メールを確認し終えたらしいツンツン頭の少年は顔を上げ、車道をはさんで立つ美琴に向かってコンビニ袋と学生鞄をぶら下げた両手をぶんぶんと振り回す。
 美琴はもう一度小さくため息をつくとポケットに携帯電話をしまい、来た道を逆戻りして横断歩道を渡った。

589不自然なガール(2):2010/04/24(土) 08:26:27 ID:1x1xmMXU
 美琴はとある屋根の下で雨宿り中の、ややしょぼくれた顔の少年に向かって、
「……アンタ、傘はどうしたのよ?」
「……、大変不幸な事故によってお亡くなりになりまして」
 ここへ来るまでに風もないのに傘の骨が全部折れたんだ、とツンツン頭の少年―――上条当麻はため息混じりに告げた。骨が折れた傘は荷物になるから途中で捨てた、とも。
 まぁ大体予想通りね、と美琴は呟いてから、
「コンビニで傘を買うなり、バスに乗れば良かったじゃない」
「貧乏学生にそんな余裕はねーんだよ」
 部屋に帰ればビニール傘のストックはあるしな、と答える上条。
 美琴は自分が差していた花柄の傘を上条の目の前にずい、と差しだし、
「……入れてあげる。その代わり私を寮まで送って。アンタはそこからこの傘差して自分の部屋まで帰りなさい」
 常盤台の寮の場所は知ってるでしょ? と上条に尋ねる。
「お前、どっか行く予定があったんじゃねーの?」
 上条は怒鳴りもせず傘を差しだした美琴に怪訝そうな表情を向けて、
「向こう側から逆方向の横断歩道を渡ったって事は、お前と俺が行く方向は逆じゃねえのか?」
 良いよそんなの悪いから、と頭を横に振る。
 美琴は再び鞄を小脇に抱え、ポケットから今度はハンカチを取り出してツンツン頭の先から落ちる滴を丁寧に拭うと、
「……知り合いがずぶ濡れになってて放っておけるわけないでしょうが」
 アンタに風邪引かれちゃ困るのよ、と告げる。
「……何で俺が風邪引くとお前が困るの?」
 何だその意味不明なバタフライ効果は、と最近覚えたばかりの言葉でツッコむ上条に、
「なっ、なっ、ななな、何だって良いでしょ! 知り合いが風邪引いたら良い気はしないって事よ。ましてや目の前でずぶ濡れになってたらなおさらじゃない。ほら良いから行くわよ!!」
 少しだけ顔を赤くしつつ、『知り合い』という単語をことさらに強調して傘のハンドルを持ったまま上条の腕を引く美琴。
「……良いって。ご覧の通りもうずぶ濡れだしさ。今だって雨の中を走るのに疲れたからちっと休憩してただけで」
 ハンカチさんきゅー、と上条は少しだけ笑い、屋根の下から飛び出すべく一歩を踏み出すと、
「大体な、お前の言う通り傘に入れてもらったとして……俺と相合い傘になるけど、お前はそれで良いの?」
「!! ……あっ、あっ、相合い傘とか小学生みたいな事言ってんじゃないわよ!! 単に一本の傘をシェアしようって言ってるだけじゃない。そうよ別にアンタと一緒に歩いてるところを誰かに見られたってどうって事ないわよ恋人同士って訳でもないんだから!!」
「もしもし。たかが相合い傘に何でそこまで重くなってんの?」
「うっさい! つべこべ言わずに傘持ちなさいよほら!!」
 美琴は開いたままの傘をぐいぐいと上条に押しつけると、振動で傘布についた雨粒がまとまってボタボタと伝い落ち、美琴がハンカチで先ほど拭いたばかりのツンツン頭を濡らしていく。
「…………、」
「……、あの」
 先に口を開いたのは上条だった。
「お前はさっき俺の頭を拭いてくれたと思ったんだけど。もう一回俺の頭を濡らして一体何がしたいんだ?」
 これじゃ傘差す意味ねーぞとムッとしながら髪の先から水滴を垂らす上条に、
「……もういい! アンタこの傘差して帰りなさい!!」
「お前はどうすんの?」
「アンタの知ったこっちゃないわよ!」
 美琴は一声叫ぶと上条に黄色い花柄の傘を押しつけ、通りを流していたタクシーに向かって手を挙げて勢い良く振る。
 黒塗りのタクシーがキキーッ、とブレーキをかけて停車し美琴の目の前でガバッ、と行儀良くドアが開く。美琴は後部座席に飛び乗るように乗り込むと『常盤台中学学生寮まで』と告げた。
「あ、おい! 傘! 傘どうすんだよ! おい御坂!!」
 上条の呼び止める声を振り切るようにバタン、とドアが閉まってタクシーは発車する。

590不自然なガール(3):2010/04/24(土) 08:26:54 ID:1x1xmMXU
 窓の外は相変わらず雨模様だった。
 雨雲に覆われた空は黒く、晴天時なら太陽が沈んでいる時間である事を告げる。
 美琴は寮の自室の窓から外を眺めつつ、もう何度目になるか分からないため息をついて、窓ガラスにおでこを押しつけた。
 火照った顔に雨で冷やされたガラスの温度が心地良い。
 窓に吹きかけた吐息がガラスを曇らせて、外の景色を一瞬だけ遮断する。その曇った部分に美琴は細い指できゅっ、きゅっ、と傘の絵を描いた。
 美琴は何本か傘を持っているが、上条に渡した傘はその中でも特にお気に入りの傘だった。
 女物の黄色い花柄を男子高校生が差すのは少々厳しいかも知れないが、傘の出来もハンドルの造りもそんなに悪くないと思う。それをあんな形で上条に渡してしまっては、今さら『返してくれ』と言いづらい。
 たまたま雨が降っていて、たまたま上条は美琴の住む寮の場所を知っていた。美琴は上条がどこに住んでいるかを知らないから『傘に入れてあげるから送ってくれ』と頼んだだけで、
「あ、相合い傘なんて別にどうって事ないわよ。そんな事よりたまには少しくらい人の話をちゃんと聞きなさいっての」
 もう少し上条と話をしてみたい。ただ漠然と思った。
 確かに上条の事は何となく気になるが、
「べっ、べっ、別に愛とか恋とかそう言うんじゃなくて毎回毎回人の話をちゃんとスルーするわ妹にちょっかい出すわで見てられないからこの機会に一発ガツンと言っておこうと思っただけよ」
 そのつもりが上条の頭を盛大に濡らしてしまった事は脇に置いて、美琴は誰も聞いていない言い訳を口にする。
「……い、今考えんのはあの馬鹿の事じゃなくてあの馬鹿からどうやってスムーズに傘を取り戻すかよ! アイツが言う通りアイツが風邪を引こうがどっかに飛ばされようがそんなの私の知った事じゃないわよ」
 この何日か後に上条が本当に時速七〇〇〇キロオーバーでフランスまで飛ばされるとは思いもしない美琴である。
 不意に、部屋の壁に取り付けられたインターホンが鳴った。
 門限までは若干余裕があるが、こんな時間に来客とは珍しい。
 白井がまた怪しげな薬でも通信販売で取り寄せて、宅配便が配達に来たのだろうか。
 ひとまず品物が何なのか確認するのが先よね、と考えながら美琴はインターホンの通話ボタンを押して形式通りに、
「……はい、どちら様ですか?」
「上条だけど。その声は御坂か?」
「ぶっ!!」
 このタイミングでまさか上条が寮に来るとは思わず盛大に吹き出す美琴。
 ななな、何よ何の用なのよとインターホンに向かって動揺する美琴に、
「ああ、いたいた。悪りぃんだけど、ちっと外へ出てきてくんねーか?」
「……用があるなら鍵開けてあげるから上がってきたら? 私の部屋がどこかは知ってんでしょ?」
「そこまでするほどじゃねーんだよ。さっき借りた傘を返しに来ただけだから」
 こっちが借りといて呼び出すのも何だけど、と上条が告げる。
 美琴と上条が別れてから一時間以上経っていた。
 美琴はほんの少しだけ迷う。
 玄関のロックを解除するのは簡単だ。受け取りに行くのが面倒だから上がってこいと言って上条にここまで来させる。そのまま、美琴があの時したかった話の続きをすればいい。
 しかし、
 知らない間柄ではないとはいえ、まかりなりにも乙女の部屋に男子高校生の上条を招き入れてしまうのはためらわれる。
 しかも、同室の後輩・白井黒子が今ここにいないのだ。
 それではまるで白井がいない事をこれ幸いに男を引っ張り込んでいるようで、
「…………………………………………………………!」
 上条が二〇八号室に上がった後の光景を想像した美琴の顔が一瞬で真っ赤になる。
(何馬鹿な事考えてんのよ私! アイツは傘を返しに来ただけなんだからぱぱっと下に降りて受け取って追い返せばいいでしょ!! 大事な傘を返せって連絡しないで済んだんだからラッキーじゃない!! そうよ、今一番大事なのは傘を受け取る事よ)
「……あの、御坂?」
 俺はいつまでここにいればいいんだとインターホン越しに聞こえてくる上条の戸惑う声に、
「今すぐ行くからそこで待ってなさい」
 とにかく外に出りゃいいんでしょ、と切り返して美琴は会話を打ち切った。
 大事なのは傘だ。貸した傘を取り返すのだ。
 自室を出ると、美琴は寮の長い廊下を心持ち早足で歩く。
 本人はさっぱり自覚していないが、まるでスキップでもするようにエントランスに向かう。

591不自然なガール(4):2010/04/24(土) 08:27:48 ID:1x1xmMXU
 美琴が玄関の大きな扉を開けてエントランスに出ると、そこには上条が所在なげに突っ立っていた。
 通常、来客はこのエントランスにあるインターホンで中の人間を呼び出す。その際、場合によっては部屋から寮生が扉のロックを開けて客を招き入れることもある。
 と言っても、それは来客が学園都市のIDを持つ女性や事前に許可を得た保護者に限られる。
 ここは女子寮だ。
 世界有数のお嬢様学校・常盤台中学の寮だった。
 許可なき者はたとえ誰であれ寮内に足を踏み入れる事は許されない。
 そんな訳で美琴の傘を返しに来ただけの『招かれざる客』上条はインターホンの前で美琴を待っていた。
 美琴は上条の姿を良く見てみた。
 やや濡れたツンツン頭。制服に湿っぽさは感じられない。右手にはきれいに畳まれた美琴の黄色い傘、もう片方の手には滴のついた安っぽいビニール傘がぶら下がっている。
 何だか居心地が悪そうにキョロキョロと辺りを見回していた上条が、
「御坂、傘さんきゅーな。っつー事で返しに来た」
 ありがとよ、とほっとした表情で美琴に黄色い傘を差し出す。
 美琴はどういたしまして、と傘を受け取りながら、
「アンタ、傘一本返しにわざわざここまで来たの? 明日にはこの雨も止むって言ってたし、こっちは別に急いでなかったんだけど」
「でもこれ、大事な傘なんじゃねーの?」
「……何でそう思うのよ?」
 上条は美琴が手にした傘のハンドルを指差して、
「それ、持ち手のところにゲコ太のマークが入ってたから。たぶんお前のお気に入りの傘だったんじゃねーかなって」
 そんな傘を借りておいて万が一ぶっ壊しでもしたら後が怖いぜ、と上条が息を吐く。
 美琴は上条をへぇ、と感心した顔で見やって、
「……良く気づいたわね」
「持った時妙な感触がしたんで良く見てみたらたまたまそれを見つけてな」
 それは美琴しか知らない傘の秘密だった。
 この傘はハンドルの部分に目立たぬようにゲコ太の焼き印が刻まれている。ハンドルを握り込むと他人からはゲコ太が見えなくなるので、美琴はこの傘を気に入っていたのだ。
「それにしても、人に大事な傘押しつけて自分はタクシーに乗って帰るとか、かなりムチャクチャだぞ?」
 つかそれって変じゃねえか? と上条が告げると、
「……へ、変じゃないわよ。アンタには傘がなくて、私には選択肢があった。その選択肢を有効に使っただけでしょうが」
 美琴の選択は庶民を自称する上条からすれば十分不自然なものだろうが、上条がわざわざ傘を返しに来た事で舞い上がり気味の美琴はそれどころではなかった。
「んじゃ、俺これで帰るからさ」
「あ、待ちなさいよ。そこまで送っていくから」
 いいってそんなの、と美琴を片手で制しエントランスを出た上条が手にしたビニール傘をぐっと開くと、

 美琴の目の前で上条が差したビニール傘の受骨がピキパキビシッ!! と連続で親骨から外れた。

「………………、」
「………………不幸だ」
 なす術もなかった。
 目の前で『不幸な人』(オカルト)を見てしまった美琴には何もできなかった。
 重力に従ってろくろからだらりとぶら下がる受骨、細い二等辺三角形になって用をなさなくなったビニール製の傘布、何の役にも立たないビニールと金属とプラスチックの複合物体を空に向かって差している上条。
 無情に降る雨が生乾きのツンツン頭を濡らしていく。

592不自然なガール(5):2010/04/24(土) 08:28:44 ID:1x1xmMXU
 上条は美琴と共に雨に濡れまいと常盤台中学学生寮の屋根の下に飛び込んで、
「…………俺はこれからどうすれば?」
 かつては傘だったオブジェを手にしたままがっくりと肩を落とす。
「……この傘使う?」
 上条の不幸を目の当たりにし、気の毒を通り越してかわいそうに思えてきた美琴が黄色い花柄の傘を差し出す。
 上条は『それはお前の傘だろうが』と頭を横に振ると寮の向かいの建物を指差し、
「……、仕方がないからそこのコンビニで傘を調達して帰るよ」
 常盤台中学学生寮の向かいには車道をはさんでコンビニがある。そこで売っているビニール傘を買って雨をしのごうというのだ。
 ああそれなら、と美琴はコンビニの方向を向いて、
「売り切れてたわよ? さっき用があってちらっとのぞいただけだけどね」
 それを聞いた上条はもう一度『不幸だ』と呟いてその場にしゃがみ込む。
「……雨、今すぐ止む訳じゃなさそうだからあきらめてこの傘使えば?」
 上条は美琴の手の中にある傘と美琴の顔を何度も見比べて、
「俺が開いたらその瞬間にお前の傘が壊れそうだし、そんな事になったらこんな高そうな傘弁償できねーから良いって」
 貧乏人はおとなしく濡れて帰ります、と肩を落として歩き出す上条に美琴は手元の黄色い傘を開き、差し掛けた。
「……アンタが風邪を引く不幸を傘が引き受けるなら安いもんでしょ。壊れても弁償しろとか言わないからさ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 上条が傘のハンドルを握る美琴の手の上から自分の手を重ねた。

「……ちょ! あ、あ、あああアンタ何やってんのよ!!」
 上条に手を握られて瞬時に限界まで顔が真っ赤になる美琴。
「いや、お前が直前で持ち手をずらすと思ってたんだけど」
 お前が手を離してくんねーと俺が傘を差して帰れねーだろ、と告げる上条。
 美琴は手を握られたまま傘を上下にぶんぶん振って、
「はっ、離しなさいよ! 傘渡せないでしょ!!」
「あ、ああ。悪りぃ」
 ばつが悪そうに上条は美琴の手を離す。
 美琴は重ねられた手のぬくもりが名残惜しく思えて
(……! な、何で余韻を感じてんのよ私!! ここは断りなく手を握られて怒る場面じゃない!!)
 上条は改めて美琴の傘の中軸をつかむと神妙な顔で、
「……借りてくぞ?」
「へ? ……あ、ああ、うん、使って」
 美琴は怒る事も忘れて傘のハンドルから手を離すと、
「……急いで返さなくて良いからさ。その代わり、なくしたりしないでよね。……その、気が向いた時にでも返してくれれば良いから」
「……気をつける。そ、それじゃーなー」
 上条は美琴に手を振って雨の中を歩き出す。
 美琴は上条の後ろ姿を見送りながら一連のやりとりを思い返して、
(……っつーかこれって、傘をわざわざ返しに来たあの馬鹿が馬鹿を見たってことなのかしら? それより傘を返してもらうんだったら今から私がアイツと一緒にアイツの寮まで行って、そこから引き返せば良かったんじゃない? そうすればあの馬鹿がどこに住んでるかも調べられて……ってアイツがどこに住んでいようとそんなの関係ないじゃない!! 大体男の部屋にのこのこついて行ってそのまま何かされでもしたら……ああ、やだもうさっきから何考えてんのよ! 傘よか・さ! ここで一番大事なのは私のゲコ太マーク入り傘であって……)
 美琴はそこで小さく息を吐いた。
 雨が降り続く空を見上げる。
 この雨は明日には止むと言う。
 次に雨が降るのはいつだろう。
 雨が降れば、きっとまた上条に会える。晴れたなら、それを口実にあの黄色い花柄の傘を返してもらえばいい。
 そんな事を思いながら美琴は大きな扉を開けて寮の中へ。
 美琴には、一本の黄色い傘を巡って二人の距離がほんの少しだけ近づいたような気がして、
 雨が降るのも悪くないわね、と自分でも気づかないほど淡い笑みを浮かべた。


終。
失礼しました。

593■■■■:2010/04/24(土) 08:42:57 ID:.k/HjnlA
ちょっとテスト
>>575

594■■■■:2010/04/24(土) 08:44:49 ID:.k/HjnlA
すいません、もう少しテストさせてください。




 あ

595■■■■:2010/04/24(土) 08:45:01 ID:.k/HjnlA
>>594

596■■■■:2010/04/24(土) 08:46:02 ID:xsx6yBn.
>>592
何だろう、読んだあとのこの甘酸っぱい感じは…
二人の微妙な関係が丁寧に描かれてて良かったです。
あと、上条さんの不幸属性乙!

597■■■■:2010/04/24(土) 08:47:24 ID:.k/HjnlA
>>594の書き込みですが、

あ 行頭に空白なし
あ 行頭に半角空白1つ
あ 行頭に半角空白2つ
 あ 行頭に全角空白1つ

となっています。
>>594だと最初の3行は全部揃って見えますよね。
そういうことでは。>>586さん

598■■■■:2010/04/24(土) 08:50:36 ID:Q8mqthyg
>>592  いいねこの感じ!

599■■■■:2010/04/24(土) 08:52:22 ID:.k/HjnlA
>>592
GJ。なんかほんわりした感じでよかったです。

でも傘がおもいっきりゲコ太傘でなくてよかったw

600アミノ酸:2010/04/24(土) 09:26:30 ID:iv6ZhV22
 皆様、おはようございます(*'-')ノ

 気が付いたら朝でした。
いろいろセリフで悩んでるうちに寝てしまったようです(⊃д⊂)
黒子って油断すると暴走してしまって怖い…。

 書き手の皆々様GJです。読んでてにやにやが止まりません!
えーでは早速、投下を…被らなさそうなら30分頃に。
とある宣伝の超電磁砲<レールガン>続きになります。
ここから折り返し地点というところでしょうか…。
誤字・脱字など、そのほかご感想頂けると参考になるので宜しくお願いします。

601とある宣伝の超電磁砲<レールガン>& ◆f6qD5s1Ao.:2010/04/24(土) 09:29:56 ID:iv6ZhV22


「まったく、何なんですの…」
 
 空は真っ赤な夕焼けに染まり、伸びた影の先、少女は一人帰路についていた。
別撮りの収録が長引いた為、この時間まで拘束されていたのだ。心なしかその足取りは重く、沈んでいるように見える。
 それもそのはず、撮影が長引いた事で、愛しのお姉さまと合流しそびれ、しかも居場所を掴もうとラブコールを送るも
全く応答なし…踏んだり蹴ったりとはこのことだ。

「今日こそは…今日こそは!お姉さまと親睦(愛)を深めようと思っておりましたのにぃぃぃー!」
 
 うがぁーと頭をかきむしり叫ぶ。欲望がだだ漏れなのはご愛嬌。
ねぇ、ママあの人どうしたの?しっ、見ちゃダメよと周りにどう思われようが知ったこっちゃない。
愛しのお姉さま―御坂美琴を愛し求めてやまない少女、白井黒子であった。

―そう、だから、向こうから猛然と走り迫ってくる人はお姉さまだと見間違うはずがなかった。

黒子の脳内ビジョンは、走り迫ってくるお姉さまが…
 
おっ、お姉さまがわたくしに向かってきて下さっている、ほぉっねえさばがわたくしを『求めて』向かってきて下さっている!

と映り、今日の仕打ちは、この瞬間のための、神様のささやかな悪戯だったのだと解釈した。

「今、参りますのお姉さまっ!くっ黒子は、黒子はこの時を待っておりましたの!」
  
 今までの苦労(アピール)が報われたのだと確信し、そして愛しのお姉さまに向かって手を伸ばす。

「お・ね・え・さ・まーーーーーーーーーー!」

 予期した瞬間は来ず、一陣の風が黒子の横を駆け抜けた。
伸ばした手は、空を切り、何もつかめないまま。ここはあれがこうなって、これがああなってお姉さま
と結ばれると考えていただけに、あれ?と黒子は一瞬呆けたように、走り去っていくお姉さまを見つめる。

「お姉さま?」

 はっとして、お姉さまを追いかけなければと黒子は結論を出す。
先ほどの瞬間を脳内リピートした結果、様子がおかしい事に気付いたのだ。
真っ赤に上気し、何やら悲しそうな表情、涙目だったこと、お姉さまに何があったのか確かめなければならない。

「ど、どうなさったんですのーお姉さまー!」

 黒子は、慌てて追いかける。
愛しのお姉さまを傷つけたのはどこのどいつだと心に宿して。

 徐々に夜へと移り変わる頃、ようやく黒子は追いついた。
とある公園に入っていくのを見掛け、そこで立ちつくしているお姉さまを発見、現在に至る。

「「…………」」

「お姉さま…どうかなさいましたか?」
 慎重に言葉を選び、声を掛ける。

「なっ、なんでもない…」
 その表情は、辛そうに歪んでいて、今にも泣き出しそうにも見える。

「お姉さま、そのようなお顔でなんでもないと仰られても、黒子は誤魔化されませんですのよ?」
 はぁ、とため息をつく。

「わたくしは、お姉さまのお役に立ちたいのですの」
 ですから、相談して下さいましと告げた。

「そっか…ありがとう、黒子」
 と微笑むその顔にお姉さまー抱きつきそうになるがここは我慢、話を聞くことに専念した。

602とある宣伝の超電磁砲<レールガン>& ◆f6qD5s1Ao.:2010/04/24(土) 09:32:21 ID:iv6ZhV22

 上条当麻の事を好きだと気付いたのは今日、きっかけは佐天さんと初春さんの一言。
二人が話を聞いてくれたから、気持ちの正体を知る事が出来た。その後、寄ったファミレスで偶然出会った。
けれど、一人ではなくインデックスと二人。乙女の戦い、それから紆余曲折を経て最終的に好きだと叫んで
恥ずかしくて逃げてきてしまったと。

「――お姉さまらしいというか…」
 何ともまぁ…と事の顛末を聞いて半端呆れつつもどうしたものかと思案する。
それにしても…佐天さんと初春は余計な事をしてくれたと、不穏な考えも横切るがそれはおくびにも出さない。

「わっ悪かったわねぇ…」
 その時の光景を思い出したのか顔を赤くし俯く。
はぁ、と二度目のため息をつくと黒子はまず確認しないといけない絶対事項を聞くことにする。

「お姉さま、これからどういたします?」
「えっ、なにを?」
「…お姉さまは上条様に『告白』なさったのでしょう?」
「こっこここ告白・・!?」
 ますます顔を赤くし、ど、どうしようと視線は宙を彷徨う。
ですから、と黒子は一呼吸置き、言い放った。
「上条様から、お返事を頂きませんことには!」
 話は何も進みませんのよ、お姉さまと告げる。
甚だ不本意で仕方がないが、このままではお姉さまの為にもならない。

「へ、返事は聞きたくないっていうか…聞けない」
「お姉さま、何を仰ってますの…」
 意外な言葉に戸惑う。

「だ、だって…あんな言い方しちゃったのよ…うぅ」
 しかも逃げてきちゃったし、もうどう顔を合わせていいか分からないのと。
はぁ、と黒子は三度目になるため息をつく、でもここは言わなければならない。

「では、お姉さまのお気持ちは、その程度のものだったと?」
「…そ、そんなわけないじゃない!」
「そんな心外だなんて顔しないで下さいまし、わたくしもこのような事を言うのは心苦しいですの」
「ご、ごめん…そのもしも、もしもだよ?聞いたとして、好きじゃないって言われたら…そう考えるだけで」
 人を好きなるってこういうことだったんだと俯いて呟くその姿に、ズキっと黒子の心も痛む。
それだけ上条当麻の事を思う証拠であり、そしてそれは決してこちらに向けてもらえない思い。

「お姉さまは、傷つく事を恐れているのですね…ですがわたくし敢えて言わせて頂きますの。
このまま逃げるおつもりですの?ご自身のお気持ちから、なによりお姉さまが思いを寄せる
上条当麻という殿方から!…わたくしの大好きなお姉さまはっ、どこにいきましたの!」
 複雑な思いで、黒子は大好きなお姉さまに向けて背中を一押しする言葉を投げかけた。
「!」
 はっとしたように顔上げ、ああそっかと呟いたのが聞こえた。 
「私、この気持ちは確かなものなのに…臆病になって、傷つくのが怖くて逃げようとしてたんだ
 …、あーもうほんっと私らしくないよね、いつも前を向いてるのに、そんな大切な事も忘れてた」
「…………、」
「気付かせてくれて…ありがとう、黒子」
 私はもう大丈夫よと、笑う。
「それでこそ、わたくしの大好きなお姉さまですわ」
 と、黒子はつられて笑った。 
ちゃんと笑えてるだろうか、気付かれたくない、ちょっぴり涙が出たなんて。
 
 それでは、お姉さまは先に行って下さいまし、上条様を呼んできますと告げ、とあるファミレスへ向かう。
愛しのお姉さまの為とはいえ複雑な乙女の心情、このやるせなさをあの猿人類にぶつける事は既に決まっていた。

603とある宣伝の超電磁砲<レールガン>:2010/04/24(土) 09:34:18 ID:iv6ZhV22
――っちぇいさーー!!

 大気を震わす、少女の叫び声。
常盤台中学内伝おばーちゃん式、ナナメ四十五度からの打撃による故障機械再生法が、とある自販機に炸裂する。
いつもなら、ガタゴトと落下する音が響いて缶ジュースが出るはずなのだが、出てきたのはヒラリと紙切れ一枚。

「ん、何よこれ?」
 予想外なものに驚くが、とりあえず何が書いてあるのか気になるので拾う。
「宣伝せよ?」
 げっ、もしかして、アレをやらなきゃいけないの…と一つの可能性に思い至る。
えぇー今ここでないとダメなの?とか色々頭にぐるぐるよぎるが、一人でやらなきゃいけないってどういうことよ。

やるしかないのか…ええい、女は度胸よ!

「み、みんなお待たせにゃん、とある科学の超電磁砲<レールガン>第四巻は4月28日、DVD&ブルーレイで発売にゃん」
 誰も見てはいないといえ恥ずかしすぎるわよ これ…。
「しょ、初回限定版は、豪華特典付だにゃん!」
 あ、あとは…。
「発売まであと4日だにゃん!」
 
「なっ何やってんだ、ビリビリ…」
「…………見たわね?」
「上条さんは何も見てないです!ええ、語尾ににゃんつけてるのが可愛いくて不覚にトキめいたりなんて思ってませんから!」
「えっ?かっ可愛い…可愛いって私のこと!?ふにゃぁ〜」

つづく!

以上になります。今回はタイトルの番号ミスりました;

604アミノ酸:2010/04/24(土) 10:15:35 ID:iv6ZhV22
ぐわっしまった。また脱字が…(⊃д⊂)訂正とお詫びを…。
1レス目、とある宣伝の超電磁砲<レールガン>〜の、最後の行の文章で

と微笑むその顔にお姉さまー『と』抱きつきそうになるが〜 

『と』がないんだよ!
編集の際に、付け加えていただけると…どうかお願いします!<(_ _)>

605■■■■:2010/04/24(土) 12:58:14 ID:Q8mqthyg
ぶっちゃけた話誤字とかはそんなに気にしなくていいんじゃないかな。気になる人もいるみたいだけど意味が伝わればいいし

606■■■■:2010/04/24(土) 13:03:48 ID:gqO5laXQ
まとめwikiのほうで適当に修正しておけば問題ないでしょうしね。

607アミノ酸:2010/04/24(土) 20:42:23 ID:iv6ZhV22
皆様、こんばんばです(*'-')ノ

>>605 >>606
  
 原則、投下ログ時は、誤字、脱字など編集はNGで…ページに保存されてからなら修正してもOK。
ルール確認して来ました。以前、人狼をしていた時に、wikiは多少使った事はあるけれど同じかな?
本当は、誤字・脱字その他もろもろ出さないことが一番いいのでしょうがヽ(;´Д`)ノ
助言、ありがとうございました。

 とある宣伝〜次の投稿にむけて…現在進行形で軌道修正を行いつつ、
間に合うのかっこれとか、道筋はある程度決まっているのに思うよう進んでませんが、私自身の技量不足だなと痛感します;
とにかく完結させれるよう頑張りますので、あともう少しお付き合い下さい。順調に行けば、発売前日までの三回かな?
でわでわー失礼いたしました。

608Silver:2010/04/24(土) 22:11:58 ID:b..Rznds
これから、ショートストーリー「片翼の鳥」です。
、楽しんでくれたら幸いです!!
前回、予告した、「片翼の鳥」です。予告したので、聴いてくれていた人はありがとうございます!!聴いていない人は、読む前に聴いてくれると、ありがたいです
では、「片翼の鳥」(背中合わせで戦う騎士と姫)をどうぞ!!

609片翼の鳥:2010/04/24(土) 22:13:14 ID:b..Rznds


   最後の戦いはどうしても避けては通れない

       体をに刻まれた運命からは 誰も逃れることはできない


風鳴りが鳴り響き 黒雲は空へ集う
嵐を呼ぶ風は高らかに
謎めく言葉に 敵は含み笑う
明けない暗闇の宴は繰り返す


「諦めない」
希望は堕ちた
「諦めたくない」
絶望の中でも
それでも あなたは諦めずに 立ち上がるの?


囚われないで
悲しき 幻想を壊し
一度きりの 悪夢を終わらせよう
果たせない誓いは 胸の奥に焼き付いて
赤く赤く 染めてくよ ねぇ


敵は 休みなく強力な攻撃を仕掛けてくる

少女の前に敵の攻撃が来るが なにも恐はしない

何の躊躇することもなく前に進む 決して当たる事がないから

不安はない かならず 少年が消し去ってくれるから

610片翼の鳥:2010/04/24(土) 22:14:23 ID:b..Rznds

消ない絆は 紅い薔薇のように
希望の宿る心に 花開く


「美琴、好きだ!!」
まっすぐな告白
「私も、好き!!」
そのまっすぐな答えは
最後の瞬間に 誰の答えが聞きたい?


逃げないで
恐れも 悲しみも 絶望も
全て打ち消す幻想へと変えよう
遅すぎた希望さえ 愛しくて 哀しくて
強く強く 握り締めれば ほら


眩い光溢れ 希望の扉は開かれる

悲しい運命に 奇跡が降り注ぎ

絡み合う悪夢は 崩れ落ちてゆく


言わないで 永遠の別れの言葉を
聞かせてよ 本当の願いを


諦めないで
忌まわしい 幻想を壊し
一度きりの 終焉を迎えよう
果たす事の約束は 胸の奥に焦げ付き
赤く赤く 燃えてくよ ねぇ


     片翼(一人)では飛べ(勝て)なくても、対になる翼(パートナー)がいれば、飛ぶ(勝つ)ことができる

.

611Silver:2010/04/24(土) 22:15:48 ID:b..Rznds
以上です!!
どうでしょうか?
今回は、歌の方を強く意識したので、聴いていない人は、不満がありますが、聴いてくれたら合格点は行くと思います
前回、おすすめな歌を聞いたら、たくさんの歌の紹介ありがとうございます!!
特に気に入ったのは、「恋の抑止力 」「君の知らない物語」「 memory of snow」の三曲です!!あと、2〜30回聴いてから書きたいので次の次ぐらいだと思います(すでに10回以上は聴いています) 365さん、366さんどうもありがとうございます
まとめてくださる方、「YOU」は、3〜4行あけてくればいいので、わざわざ、分けなくても一つにまとめていいです。
次回は、「ヒカリ」です!!

※参考 アニメ「うみねこのなく頃に」よりop「片翼の鳥」を元に作りました。

612■■■■:2010/04/24(土) 23:50:38 ID:uDfppvFo
なにこれ










なにこれ

613■■■■:2010/04/24(土) 23:56:38 ID:M5G1CxRI
ここSSスレ
換え歌はいらない
てか気持ち悪い

614■■■■:2010/04/25(日) 00:28:37 ID:4IwG79.s
100歩譲って
替え歌がいいとしても
上条さんと美琴のいちゃいちゃがないと・・・?

615■■■■:2010/04/25(日) 00:46:23 ID:Ywsv.sxY
>>613
SSスレだが気持ち悪い言うなよ
上琴ss投げて
感情移入できないとかキャラ崩壊きもいとか言われるの嫌だろ?

あれ?なんか違うなw
けどそういう発言は控えてほしい

616■■■■:2010/04/25(日) 00:47:04 ID:/YiYzmqg
ちょっとこれはないかな……冷たいようだが、少しスレの趣向と違う。ここはあくまで物語を投下する場所であって、詩を見るところではない。

617■■■■:2010/04/25(日) 01:02:35 ID:bhvxpICE
気持ち悪いとしか言えねえ
しかもアニソンとか•••
チラシの裏でやってろ

618■■■■:2010/04/25(日) 01:06:12 ID:C61gG7j2
頼むから発言には気をつけてくれよ

619■■■■:2010/04/25(日) 01:12:20 ID:uybTZdog
さすがに>>617までいくと便乗荒らしだろ。わざわざageたし

620■■■■:2010/04/25(日) 01:18:05 ID:/YiYzmqg
確かに言い過ぎかもしれませんが間違ってることは事実です。それをそのまま放っておくのが一番いけないことなのです、とミサカは少し大人ぶってみます。

621■■■■:2010/04/25(日) 01:24:16 ID:DNszEEoI
>>618>>617に言っているのでは?

622■■■■:2010/04/25(日) 02:06:24 ID:RVx8J8ro
まぁまぁ、落ち着きましょう。皆さん。

623■■■■:2010/04/25(日) 02:06:30 ID:3PZwNIZc
>>592
GJです!
情景描写が凄く上手ですね!
美琴と上条さんの淡い感じの甘い雰囲気が素敵です。

>>603
GJです!
照れながらも、「にゃん」って語尾を律儀につける美琴が
とても可愛いです。続きを楽しみにしています!

>>611
個人的には、歌詞から詩に近づけて欲しいかなと思います。
歌を聞かなくても、作品として完成するという意味で。
上琴の雰囲気をもっとプラスして下さると嬉しいです。色々と偉そうですみません。

長文失礼致しました

624■■■■:2010/04/25(日) 02:08:49 ID:4IwG79.s
「森のくまさん」の替え歌で

とある自販機で 上条さんに 出会った
常盤台の超電磁砲が 上条さんに 出会った

上条さんの 言うことにゃ 二千円札 のまれた
アハハハ アッハハッハ アハハハ アッハハッハ

笑った お詫びに 取り返して あげるから
ビリビリ ビリビリと ビリビリ ビリビリと

上条さん お待ちなさい アンタの 取り分
きなこ練乳に いちごの おでん缶

あら 御坂さん ありがとう お礼に 撫でましょう
エヘヘ ヘヘヘヘ エヘヘ へへへへ

―――――――――――――――――――――――――
この流れであえて思いついたので投げてみる
記憶喪失後の始めての対面を森のくまさんで
そして最後無理やりデレさせる感じで〆てみた

625■■■■:2010/04/25(日) 02:11:57 ID:3PZwNIZc
>>624
GJです!
凄く面白いです。そしてかなり和みます。

626■■■■:2010/04/25(日) 02:13:28 ID:tFOBG7PQ
雑談スレなら歓迎だよ

627■■■■:2010/04/25(日) 02:15:39 ID:RVx8J8ro
>>624さんGJです。どうやら自分と同じ気持ちのようですね。
即興で書きました。替え歌ではありませんが…

今は放課後。アイツが寝ている。いつもの自販機のベンチで。
何故わざわざこんなところで寝ているんだろうか?
よくわからないけど会えて嬉しい。
いつからだろうか?会えるだけで嬉しいと感じるようになったのは。
妹達を救ってもらった時から?夏休みの彼氏騒ぎの時から?
その時からのような気もするし、もっと前からのような気もする。
でもこの気持ちはわかる。これは、きっと、恋。
私はコイツが、上条当麻が好きなのだ。きっと。
コイツはどうかな?私のことどう思っているのかな?少しは好きでいてくれてるのかな?
少しの不安。少しの期待。少しの苛立ち。
この行き場のない気持ちを、今もなお気持ちよさそうに寝ているコイツにぶつけてみる。
具体的には、いつも電撃をかき消す忌々しい右手を取って、強く握って、意外な大きさにびっくりして…軽く抓る。
イッ!?っと言いながら跳ね起きた。少し気持ちが落ち着く。いい気味だ。
何でこんなところで寝てるのよ?野宿するにはまだ寒いわよ?と少し呆れて言う。
間抜けな声が返事が返ってくる。あぁ、お前を待ってたんだよ、と。
言われ、焦る。返事を出来ずに黙っていると、何やらもごもごしならが言葉の続きがきた。
また勉強を教えて欲しいと。
なんだ、その程度か。と思いそして呆れる。中学生に教わって恥ずかしくないわけ?と聞いてみる。
背に腹は変えられない。それにお前は教えるのがうまいし気楽だ。という返事。
何やら釈然としない言い草だが、それでも少女に、御坂美琴に是非はない。
せっかく二人っきりになれる時間。もたもたしてる時間が惜しい。すぐに宣言する。
なら、すぐにアンタの家に行きましょ!いいわね?と。
そして二人で並んで同じ目的地に向かって歩く。二人の影は、仲良く手を繋いでいるようだった。

少女は知らない。
この上条当麻という少年が、わざわざ御坂美琴という少女を待っていた本当の理由を。
少年は知らない。
この御坂美琴という少女が、ここまで上条当麻という少年に気にかけてくれる理由を。
二人とも気持ちは一緒なのだが、本当に一緒になるのはまた、先のお話…

駄作ですが話のタネにでもなれば幸いです。ではおやすみなさい。

628■■■■:2010/04/25(日) 02:16:27 ID:HQhZNZSM
SS投下汁

629■■■■:2010/04/25(日) 02:21:52 ID:DNszEEoI
>>624
GJです!
和みましたw

>>627
GJです!
こういうほのかに甘い青春っていいですね

>>628
頑張って書いて投下してくださいねw

630アミノ酸:2010/04/25(日) 03:12:56 ID:f1KqUgj2
小ネタ 一度はやってみたいアレ

 

 美琴「はい、あーんして」
 上条「…………」
 美琴「口あけてくれないと困るんだけど」
 上条「…って恥ずかしいだろ」
 美琴「あーんしてくれないの?」
 上条「……ぐっ(その上目遣いは卑怯だ)」
 

 美琴「よくできました♪」
 上条「もぐもぐ…お、この玉子焼き旨いな」
 美琴「えへ、えへへ」
 上条「ん?」
 美琴「今度は当麻の番だからね」
 上条「お、俺もやるのか…」
 美琴「だめ?」
 上条「…うっ(だからその上目遣いは以下略)」

 
 
とある昼下がりの公園でお弁当を仲良く食べるカップルがいましたとさ。

 さぁ寝よう!おやすみなさい<(_ _)>

631Silver:2010/04/25(日) 09:29:07 ID:waTshdYQ
すいませんでした!!
まず、この作品につきましては、削除してもらいます。
歌、事態には落ち度はありません。私のミスが原因です
ここで、謝罪と、言い訳をします。
初めに、この歌は、「いちゃいちゃ」というよりは、「戦いの中で絆を深める」「不幸に抗う」「どんなに辛いことでも、最後まで諦めない」という感じで作りました。
なので、この結果は致し方のないことです。
本当に、すいませんでした
次回の予告「ヒカリ」ではなく「恋の抑止力 」に変えます
次の失敗した場合には、「YOU」の方も削除してもらう覚悟です。

632■■■■:2010/04/25(日) 10:54:11 ID:/YiYzmqg
ま、次からは気をつけてくれ

633■■■■:2010/04/25(日) 11:29:46 ID:xlh6aNDc
歌自体には落ち度は無いって当たり前だろ
つーか「なので、この結果は致し方のないことです。」ってとんでもねえな
替え歌ネタっていうのは別に構わないと思うけど
いくら初心者でも自分の投げた作品に責任持てないなら一生ROMってろ

634■■■■:2010/04/25(日) 12:13:42 ID:7J9.Vv8A
>>633
たしかにその発言はとんでもねぇな。
なんか根本的なトコがずれてる。

635■■■■:2010/04/25(日) 12:18:57 ID:950MQgg6
    < ○<
      ll
     <<
この流れは俺が抑えておく!
だから誰かSSを投下していつもの流れに戻してくれ

636■■■■:2010/04/25(日) 12:19:23 ID:Cg.lSaPo
何だが空気を汚す人たちが多いんで、ムカついたんでまたまた空気清浄機を。
言葉遣いには気よつけましょうね?
ちなみに、Wikiにも載せないでいいですし、間隔とかも考えなくていいです。あと今回ぐーぐる先生に手伝ってもらいました。

美琴「アンタってやつはー!?」
上条「うわあ!!」
美琴「なんで、いつもいつも! そうなのよ!!」
上条「言っている意味がわからんのですが!?」
美琴「……アンタが悪いのよ……」
上条「? 良くわからんが、まずその言葉遣いはどうにかならんのかね」
美琴「……アンタがき…気づいて………くれない…………から」
上条「?? 全く持って分からん」
美琴「ああもう!! これでどうだーー!! Σ 'αγαπώーーーー!!」
上条「何言ってんのーーーー!!??」

637■■■■:2010/04/25(日) 12:44:51 ID:tFOBG7PQ
>>616
詩は良いと思うけど?
キャラの心情的なノリで 書ける人居るか謎だけど

>>633
その文章のどこら辺が「責任持ってない」のか理解できない


まあ歌詞はJASRAC的にNG

638■■■■:2010/04/25(日) 13:01:44 ID:Ywsv.sxY
>>631
誰にでも失敗はあるから気にするなw
雑談のほうでやってくれれば俺が喜ぶぞw

それと言葉遣いには気をつけてくれよ
流れ戻すような事してスマソ

639■■■■:2010/04/25(日) 13:59:30 ID:Zc53F31E
さっき松下優也のTrust Me聴いてて思ったけど・・・・・・
何か上条の御坂に対する想いみたいだなと思った

640■■■■:2010/04/25(日) 14:08:37 ID:Zc53F31E
だれかTrust Me的なSS書いてくれませんか?

641■■■■:2010/04/25(日) 14:10:06 ID:4IwG79.s
>>625,627,629
GJコメありがとです
和んで貰えてよかったです。っとミサカは素直に喜んでみる

642:2010/04/25(日) 14:19:38 ID:0bK2OKj2


この流れをぶち壊す!
というわけで【side by side】を5分後に投下します。
消費レスは6の予定。

643【side by side】―分岐点―(18):2010/04/25(日) 14:27:46 ID:0bK2OKj2
3月31日10時頃、上条宅

この時、上条はいつもの目覚ましで目を覚ました。
始め目にしたのはいつも通りの時計、指されていたのはいつも起きる時間だ。
次にいつも通りの天井。
そこで上条は体を起こす。
自分の部屋に特に異変は見られない。
いつも通りの家具、台所、美琴の姿、台所から漂ういい香り。
間違いない、ここは自分の部屋だ。
今日も平和な一日の始まりだ…

「……ってちょっと待て!2つ程おかしいところがあるぞ!!」
「あ、起きた?ったく一体何時寝てるつもりよ」

朝から何やら戸惑っている上条に対して、美琴はいたって平然と答える。

「あ、あれ…?」
「当麻、昨日のこと覚えてないの?」
「昨日……あぁ、そいや今日イギリスに行くからってやつか。うん、今思い出した」
「……アンタ、そんな重要なこと普通忘れる?ってかいつまで経っても起きないから勝手にそこにあった書類読ませてもらったけど、飛行機でるのは今日の13時くらいでしょ?そんなゆっくりしてる暇はないんじゃないの?」

美琴はガラステーブルの上に乱雑に置かれている書類の束を指差し、若干呆れ顔で上条に指摘する。
美琴の言う通り、23学区に着くまでの時間を考慮すると、今の時間はそこまで余裕のある方ではない。
なら昨日目覚ましをセットし直せばよかったのだが、上条はあの体勢のまま寝てしまったので、それはできなかったのだ。

「…おぉ!じゃあ何で起こさなかったんだよ!」
「だ、だって当麻の寝顔があまりに可愛かったから…じゃなくて!当麻があまりに気持ち良さそうに寝てたから起こしにくかったのよ!」
「……まぁ、いいとして。とりあえずなんか良い匂いするけど朝飯作ってあるのか?」
「え?ぅ、ぅん…」
「サンキュ!じゃあ朝飯はいつもは食べないけど久々にいただきます!」
「ちょ、ちょっとアンタ急ぎすぎよ!まずそのテーブル片付けてよ」

テーブルの上には書類が広がっており、食事をするにはあまり適した状態とは言えない。
その惨状を見た上条は急いでそれらを片付け、昨日の内に用意してあった旅行用の大型のカバンに詰め込んだ。
そしてそれと同時に、美琴が昨日の残りのおかずとご飯に味噌汁といういたってスタンダードに思える朝食を盆に乗せて持ってくる。
それは以前から上条が心から食べたかったちゃんとした朝食でもあった。

644【side by side】―分岐点―(19):2010/04/25(日) 14:28:16 ID:0bK2OKj2
「……なんかこうやって朝からちゃんとした飯が食えるって、すっげー幸せだな」
「はぁ?ちゃんとしたって、これくらい普通じゃない。ってかアンタさっき久々とか言ってたけど、もしかしていつもは食べてないの?」
「上条さんの家は貧しいですから毎朝ちゃんとした朝食を食べる余裕はないんです……というかこれはもう食べていいんですか、いいんですね、いいんですよねの三段活用!いただきます!」
「あっ!ちょっと!」

美琴が自分の分を持ってくる前に、上条は美琴の制止の声を得意のスルースキルで無視し、目の前の朝食へとがっつく。

「うぅ…美味い。朝からこんな飯が食える時がくるとは、上条さん夢にも思いませんでしたよ」
「ったく、いちいち反応が大袈裟なのよ。ま、まぁ美味しいって言ってくれるのは素直に嬉しいけどさ……でもせっかく私が朝食は一緒に食べようと当麻を待ってたのに、自分は先に食べちゃうなんて酷くない?」
「………ん?はんはひっはは?(何か言ったか?)」

上条は目の前にあるご馳走に目がいっており、美琴が顔を赤らめながら話していたことに全く気づいていなかった。
先に朝食を食べられたことでもそれなりにご立腹であった美琴がとる行動はもちろん…

「……馬鹿!!」

口いっぱいにご飯を頬張っている上条に対して、美琴は数億ボルトの電撃の槍を放つが、それは上条の右手によってかき消される。

「……っぶねえな!俺今飯食ってるだろうがよ!!」
「うっさい馬鹿!全部アンタが悪いんでしょうが!」
「俺が悪いのかよ!」
「当たり前じゃない!」

何が悪かったのかがさっぱりわからない上条は、何やら彼女の態度にやや理不尽を感じながらも首を傾げる。
時刻は10時半前。

「……ほら、時間無いんだからさっさと食べなさいよ」
「確か食べてるとこを無理やり中断させたのはそっちだよな?」
「いちいちそういうことにつっこむな!」

そう言って美琴はまた電撃を放つ。
そして上条は慣れた手つきでそれを打ち消すのだが、こうしょっちゅう電撃を放ってくる彼女を見て『いつかこれで本当に殺されるかもな』などと考えたりしていた。
毎回彼女の電撃を難なく打ち消しているように見える上条とて、会う度に電撃を放たれてはたまったもんじゃない。
それに表面は涼しく見えても内心はとても冷や汗ものだったりもする。
その想像が現実になることが永遠にくることがないことを祈りながら、上条は目の前にある残りの朝食を口にかっこんだ。

645【side by side】―分岐点―(20):2010/04/25(日) 14:28:43 ID:0bK2OKj2
同日12時前、とある電車

今二人は空港のある23学区に向かう電車の中にいた。
上条は見送りは家の前まででいいと言ったのだが、美琴はそれを断固としてよしとせず、無理やりついてきて今に至る。

「…………」
「…………」

今二人の間に会話はない。
上条の寮からこの電車のとまる駅まではまだ少しご立腹の状態のままだった美琴が話をもちかけたりして会話はあったのだが、電車に乗ってからは全くなかった。
そして空港に近づくにつれ、会話がないだけに留まらず、二人の間の空気が重くなってゆく。
その原因は美琴がそう言う雰囲気を醸し出しているのが主だが、少なからず上条からもそれはあった。
以前上条の部屋に居候していた少女インデックスを救うため、しばらく学園都市から離れることは、昨日土御門から事件の概要を説明された時に覚悟したはずだった。
未練がないように昨日という一日を過ごしたはずだった。
しかしいざ離れることが近づいてくると、離れたくないという気持ちが溢れてくる。
決して彼の中のインデックスを救いたいという気持ちが薄れているわけではない。
彼女を救いたいという気持ちの強さは今も変わらず強い。
だかそれでも、それ以上に美琴と離れたくないという気持ちが強くなってきた。
今美琴が寂しそうな顔をして、そういう雰囲気を醸し出しているのも、それの原因の一つと言える。
ただやはりそれだけでなく、上条のより根源的な部分の訴えもあった。

(別にこれが今生の別れじゃないってのはわかってるんだが……くそっ、なんで今になってこんな気分になるんだよ……これからインデックスを助けに行くんだろうが…!こんな気持ちでいちゃダメだ)

そう自分に言い聞かせるが、今になって何故だか彼の中に引っかかるものがでてきた。
今回のイギリス行きで学園都市に戻れなくなるなんてことは、恐らくない。
上条は美琴とも必ず生きて帰ると約束した。
上条は絶対にその約束を守るつもりでいるし、帰りたいとも思っている。
だから、また戻るのだから、そこまで未練を残す必要はどこにもないはず。
はずなのに…

(今までこんなことはなかったのにな…やっぱりこいつの影響かな…)

上条は自分の隣で、自分の服の端を掴んで俯いている美琴を見る。
そこで思い出されるのは、今まで彼女と過ごした日々。
彼女と本当の意味で初めて出会った時の記憶は無いけれど、初めて出会った時はいきなり自販機に蹴りをかます彼女には驚いた。
妹達の件で彼女が絶望に満ちた顔を見た時には胸が痛んだ。
今になって思えば、彼女の笑顔は自分がずっと守り続けたいという気持ちが生まれたのはこの頃かもしれない。

646【side by side】―分岐点―(21):2010/04/25(日) 14:29:08 ID:0bK2OKj2
夏休みの最終日にした偽デートに大覇星祭の罰ゲーム。
聞けばこの頃には美琴は自分を意識はしてたらしく、ならもっと素直になれよと今思う。
そして一端覧祭、クリスマス、正月と様々なイベントはあったが、何よりも印象的なのはバレンタイン。
嘘でも彼女を遠ざけるようなことを言ってしまったのは今でも後悔してる。
でも彼女の後輩の白井黒子のおかげでなんとか上手くいったし、もらったケーキは本当に美味しかった。
一番最近でインパクトのある日はホワイトデー。
冗談のつもりでもあのシチュエーションはダメだと彼女に言われ、意識を新たにした日。
さらに自分の勘違いからなんだかとんでもないことをしてしまった気がする日でもある。
これ以外にも色々あったが、どれもこれも楽しさには優劣はない。
どの日も一様にとても楽しかった。

(……って、なんで今こんなことを思い出してんだか。これじゃもう会えないみたいじゃねぇか。……もしかしてこれは死亡フラグというやつですか?)

縁起でもないと、上条は自分の考えを否定する。
だが相変わらず昔の記憶が頭の中から溢れ出す。

(……そっか、頭ではわかってるつもりでも、やっぱり離れたくないんだな。俺はコイツを…)

いつの間にか俺はここまで惚れ込んでたんだな、と自分の気持ちを再認識する。
始めの頃はところかまわず電撃を放って、来る日も来る日も追いかけてくる彼女をここまで想うことになるとは、あの日には想像もできなかったことだ。
と同時に

(なんで昨日はあんなにあっさり土御門に返事を言えたんだか、もうちょっと悩めよ俺)

と自嘲的な笑みを浮かべるが、そんなことを今言っても仕方ない。
今はとにかく空港に着くまで、飛行機に乗り込むまでの時間を大切にすることが重要だ。
恐らく第23学区の駅へはあと数分で着くだろう。
勿論駅からの移動もあるので、着いたらすぐお別れというわけではない。
そして空港に着いても美琴の時間管理のおかげで、時間の余裕もそれなりできた。
結局会話と言えるものは電車の中でしなかったが、ぐちゃぐちゃだった考えを色々とまとめられる良い機会だったと思う。

(お前は今までの時間、何を考えていたんだ?俺のことか?だったらいいけど……俺は昨日そんな顔すんなって言ったばっかじゃねぇか。無理かもしれないけど、笑えよ…)

上条は今なお俯いている美琴を見て、ポケッの中にあるものを確かめる。
こんな状態の彼女をどこまで元気づけられるかは甚だ疑問ではあるが、何もしないよりは何倍もマシだ。
そして上条はポケットにあるものを握りしめた。

647【side by side】―分岐点―(22):2010/04/25(日) 14:29:34 ID:0bK2OKj2
同日12時過ぎ、空港への道

(なんで、幸せな時間って長く続かないんだろう……神様はそんなに私から大事なものを取り上げたいのかしら?)

二人が23学区の駅に到着した後、近くに止めてあったタクシーに乗り込み、今日の上条の目的地の空港へと向かっていた。
残りの時間を考えると、徒歩でも行けなくはないのだが、それだと空港でかなりドタバタすることになる。
だからタクシー代はかかっても、ドタバタするよりはいいということで今に至る。
このタクシーでかかる時間はどんなに長くても10分程。
おかげで空港での時間の余裕が結構できた。
そしてやはりここでも会話はない。
美琴は上条の手をかたく握りしめ、上条は真剣な表情でタクシーの窓から外の景色を眺めている。
ここ第23学区は学区全体が航空関係などの施設しかなく、外の景色といってもたかが知れているのだが、それでも上条は外を眺めていた。
美琴は学園都市の風景を目に焼き付けているのかもしれないと思った。
……しばらく学園都市には戻ってこれないらしいから。
そうすると、電車の中でも外ばかりを見ていたのも頷ける。
実際はこういうことには慣れっこの上条に、そういう意図があったわけではない。
だが美琴にはそう考えるのが一番自然だった。

(こいつにもそんなことを考える時あるのね……ちょっと意外かも)

こんな時でも新しい彼を発見できたと、ちょっと嬉しい気分になれたのは秘密だ。
美琴はたったこれだけのことで嬉しくなってしまうとは重症かもしれないと、思わず自分を心の中で笑ってしまった。
でも、そう思ってしまっても気分は決して悪くない。
むしろ、心地よいくらいだ。
それだけ彼が、上条当麻のことが好きだということだから。
この気持ちだけは他の誰にも譲れないし、想いの強さも誰にも負ける気はしない。
思えばどうしてこんなに想うことになったのだろうか。
そんな疑問が脳裏をよぎるが、答えははっきりとは出てこない。
ある日突然自分を不良達から助けようとして、自分の電撃を打ち消した。
またある時は死を覚悟していた自分を文字通り命懸けで救ってくれて、本当にいつの間にか自分の中で彼の存在が大きくなっていた。
確かに初対面の時は嫌な奴だと思っていたのに…
いつからかその嫌な奴は大事な人に変わり、さらにそこから好きな人へと姿を変えた。
そして今では、ずっとそばにいてほしい存在にまでなってしまった。

(にしてもここまで惚れ込むことになるとはね…自分でも流石に呆れるわよ…)

648【side by side】―分岐点―(23):2010/04/25(日) 14:30:01 ID:0bK2OKj2
美琴は上条と出会うまでは恋愛のことについては無関心と言えた。
そんなことに現を抜かしているから強度が上がらないのだと、蔑んだ時さえもあった。
だが実際自分も恋をして、それが叶って、蓋を開けてみれば恋をすることはとても苦しいことだけど、同時に素晴らしいことだと認識を改めた。
自分ももっと早くにこの感情を知ってしまってたら今の地位は有り得なかったかもしれない。
それほど、自分だけの現実を大きく揺るがすほどの、強い感情。

(そんな真剣な顔してアンタは何考えてるの?私のこと考えてるの?だったらいいんだけどな…だけど、だけど今は、今は笑っててほしいな…)

気づけば目的地の空港は既に目と鼻の先にまできていた。
着くのはあと数分といったところか。
上条が乗る飛行機の時間を考慮すると、空港でもそれなりに時間はある。
その時間をどう過ごすか。
話だけにするか、今のまま沈黙のままか、人目もはばからず自分のしたいことをするか、それとも…
美琴は離れてしまうのが一緒なら、別れ際までの過程はどうでもよかった。
楽しく過ごしすぎてしまえば、未練が大きくなるだけだから。
だからと言って、何もせずに別れたいというわけではない。
過程は最悪何もなくても、別れ際だけは笑って過ごしたい。
泣いたまま、暗い気持ちのまま別れるのはあまりに辛い。
そして、彼に一つ言いたいことがある。
2月14日からずっと隠していたこと。
それは話す機会ならいくらでもあっただろうが、あまりに恥ずかしくて言えなかったこと。
きっと彼がそれを聞いたら驚く。
もし彼が勉強ができる人間ならば危なかったが、生憎彼はその方面にはあまり堪能ではない。
それを知らなかったらあの時こんなことはできなかっただろう。
あの時はまだ付き合うのはおろか、告白もしていなかったのだから。
それなのに自分が起こした行動は告白が少し小さく見えてしまうほどの行動。
それは告白よりももっと先の…

(別に全てを了承してくれとは言わない。"コレ"の返事自体はまだ先でもいい。……だけどせめて、せめて離れている間だけでも自分を安心させてくれるような言葉がほしいな…)

つくづく自分はわがままだなと思う。
彼を独り占めできないと知ってなお、まだまだ彼がほしいと思っている。
わがままで、傲慢。
不意に乗っていたタクシーが停止する。
タクシーが空港に着いたのだ。
今の時刻は12時08分。
飛行機が飛び立つのは13時08分。
あと、60分。

649:2010/04/25(日) 14:31:12 ID:0bK2OKj2
以上です。
二人のそれぞれの視点の時の描写や思ってることが似てるのは仕様ですw

では失礼します。
ありがとうございました。
皆さんに少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

650レイン:2010/04/25(日) 14:36:48 ID:Zc53F31E
こんにちわレインです。初投稿なのでよろしくです
もうちょっとしたら投稿します

651■■■■:2010/04/25(日) 14:42:01 ID:DNszEEoI
>>649
GJです!
甘酸っぱい雰囲気っていいですね
続きを待ってます!

>>650
sageてね

652■■■■:2010/04/25(日) 14:57:06 ID:Cg.lSaPo
>>649
GJ!悲しいような温かいような。いい雰囲気です。堪能しました!

>>650
今回はいいですけれど、次からは作品と作品の間を空けてくれれば嬉しいです。
そして期待ぃ!!

653卒業:2010/04/25(日) 15:59:47 ID:Zc53F31E
上条当麻は待っていた。
何を待っていたかと言うと1つは自分の想い人ーーー御坂美琴である。
彼は今常盤台中学の正門にいる。今日は学園都市の全ての中学が卒業式
ということで学園都市には保護者がごったがえしていた。
「なにも一日ですることねぇんじゃねえか?」
そんなことをつぶやいていると門から茶色い髪の御坂美琴が美鈴にあや
されながらやってきた。
「美琴ちゃ〜ん。いい加減なきやんだら?そんな顔じゃあの子に会えな
いわよ?」
そういいながらこっちを指差した。ちなみに美鈴は上条がここにいることを
知らないはずだ。
ーーーーなんでわかったんだ?
そう思いつつも美鈴が手招きしてきたので近寄る。
「あいつがこんな所にいるわけないじゃな・・い・・・」
「よ、よう。卒業おめで・・・・」
言い終わる前にいきなり雷撃が飛んできた。
「あっぶね!いきなりなにを・・・」
「うっさい!なんでこんなとこにいんのよ!」
バチバチいいながらそう問いかけられたので正直に言う。
「なにって・・・・お前に告白しに来たんだよ。」
さらっとそう言う。
「「こっ、告白!?」」
美琴と美鈴がおもわずハモる。
「なっ、何を言って・・・あっ、そ、そうだまた何か
に巻き込まれてんでしょ?その事を告白しに・・・・」
「いや、違う。一回しかいわねぇからよく聞けよ?」
そう言って深呼吸をして言った。
「俺は」
囁くように
「御坂美琴のことが」
しかし力強く
「好きだ」
そして真っ直ぐに伝えた。
「これが俺の答えだ」
そして美琴に手を差し出した。
美琴は驚いていたがすぐに落ち着いて手を握り返してきた。
「やっと言ってくれたわね。その言葉をずっと待ってたわ。あの日から
ずっと・・・・」
美琴は上条に2年の秋に告白していた。しかし上条はそれを断った。
理由は簡単御坂が中学生だったからだ。
その事を言うと御坂は泣きながらいった。
「じゃ、じゃあ私のことはきらい・・・・?」
今にも壊れてしまいそうな御坂を抱き寄せて囁いた。
「そんなえわけねえだろ?」
そしてこう言った
「時期が来たら俺なりの答えを出すからそれまではこのままの関係で
いてくれないか?」
御坂はわかったといって上条の腰に手を回してきた。
「そのかわり、もう少しこのままでいさせて?」
上条は無言で御坂を抱きしめた。
そして今日答えを伝えにきた。
「待たしてすまなかったな。お前の答えは?」
「私はあの時も今も変わらない・・・あんたのことが好きよ?」
そういって抱きついた。
上条も美琴を抱きしめた。
「今まで待たせちまった分これから楽しもうな美琴」
「当たり前よ」
そう言って口付けをした

654卒業:2010/04/25(日) 16:00:11 ID:Zc53F31E
しかしお忘れではないでしょうか?すぐ近くに美鈴がいることを・・・・・






「いや〜上条君大胆だねぇ〜」
そう声を掛けられて上琴は我に返った
「さっすが上条君!私が見込んだだけあるわ!」
「いっ、いや・・・これは、その・・・・」
しかし美鈴はとんでもないことを言った。
「いまのキスシーンは詩菜さんと旅掛・・・ああ美琴ちゃんの
お父さんね。その二人に送ったから。事後承諾で悪いけど」
この親子は・・・なんで事後承諾なんでしょうか?
そのとき美鈴にメールが来た。
あっなんか嫌な予感がする・・・・・・
「上条君・・・・明日家の旦那が来るから、がんばってね☆」
「「がんばってね☆」じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」
横を見るとうれしそうな美琴がいた。
それを見て上条はため息をついた。
「美琴・・・何があっても一緒だぞ?」
聞こえないようにそう言った。
「しかしいきなりかよ・・・・・認められなかったらどうしよう」
しかし上条の不安とは裏腹に旅掛にかなり気に入られるのはまた別の話

655レイン:2010/04/25(日) 16:02:14 ID:Zc53F31E
以上です!
下手ですいませんでした

656:2010/04/25(日) 16:07:41 ID:gL5q23kA
満身創痍の世界を、建て直しませんか。
世界を救う為に、「素(す)の声」で、蔓延している億兆の魔を、世界全体から無くして、
「清々しい素の世界」に、一日も早く戻しましょう。世界の1万ヶ所で、同時に「素の声」
がかけられるようになると、世界が変わり始めるのです。十億いた神も、全て魔にされて
しまって、万いた素の精霊たちも、全て魔にされてしまったのです。「素の声」を、世界
中でかけ続けると、魔にされていた神や、素の精霊が、元の姿に戻れるのです。むたいな
魔王に、されてしまったのです。「素の声」で、世界が救われ、あなたも救われるのです。
「素の声」は、自由にダウンロードしていただけます。(ttp://in-su.jimdo.com/)
万の場所でかけられるように、あなたの力をお貸し下さい。素とは、全ての世界を創りだ
した存在です。

657■■■■:2010/04/25(日) 16:11:12 ID:DNszEEoI
>>655
sageの意味が分からなかったのかな?
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|書き込む| 名前: |            | E-mail(省略可): |sage           |
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                              ( ゚Д゚) / < ここに「sage」(半角)と
                               ⊂ つ    | 入れるとスレがあがらない。
                            | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   \_____________
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                       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

ここはsage進行なので、sageてね
SSはほのぼのとして良かったですよ

658レイン:2010/04/25(日) 16:16:20 ID:Zc53F31E
すみません!
以後気をつけます。
指摘ありがとうございます

659■■■■:2010/04/25(日) 18:09:27 ID:Cg.lSaPo
>>655
GJ!公然いちゃいちゃとはいい度胸だ!罰としてもっといちゃいちゃしろ!!うん。

660コッカラ:2010/04/25(日) 18:50:49 ID:bXbsI/ps
コッカラです。まずは感想を…
>>649蒼さん
GJです!!これからの60分間でどうなるか気になります!

>>655レインさん
GJ!!なぜか美鈴さんがスルーwwwおかげでいい画が撮れました
これからはsageする方がいいですよ。次回に期待


代わりまして投下します
今回から長編の「上条兄妹シリーズ」をしたいと思います
基本的に上条さんと美琴が兄妹という設定で禁書原作をベースに描いていきます
兄妹設定が苦手な人は飛ばしていただいて結構です
それではまず「とある魔術の上条兄妹」から投下し始めたいと思います
なにもなければ3分後に始めます

661とある魔術の上条兄妹 前編 1:2010/04/25(日) 18:52:29 ID:bXbsI/ps

『ただいま〜美琴〜』
『おかえり、お兄ちゃ…ってどうしたのその傷!?シャツまでボロボロじゃない!!』
『ははは…前にぶん殴った奴に因縁つけられてナイフで切り付けられたんだ…まあ俺には慣れたことなん―――』
『慣れたとかの問題じゃないでしょ、バカ兄貴!!警備員に通報しなさいよ!!もう喧嘩とかのレベルじゃないでしょ!』
『いや〜ははは、逃げ込んだ先でケータイが圏外じゃ通報しようにもできないじゃねーか。
 それにこのくらいの傷なら絆創膏貼っとけばすぐに治るよ。シャツを買いなおさなくちゃならない…って美琴?』
『…うっ……ぐすっ、だってお兄ちゃん、幼稚園の時からそうじゃない。ひっぐ…いつも出かけると傷だらけで帰ってきて…
 中学の入学式のときだって新品の学ランが、次の日にはボロ雑巾に変わり果てて…』
『そのボロ雑巾は今でも着ているぞ?いつもお前が仕立て直してくれるから明日も同じように―――』
『だから心配してんのよ!!いつも同じように傷ついて帰ってきて…それでも強がり言って…まるで自分がすべての不幸を吸収するかのように…
 それでも誰かのために動かなきゃ気が済まないし…このままじゃいつか私から離れていっちゃうような気がして……私の大好きなお兄ちゃんが…』
『………………美琴』
『ぐすっ…何よ……』
『こんな兄貴でごめんな。誰かのために本能のままで動いちゃうからな』
『…い、今さらいいわよ…そんなこと…』
『でもな、俺は必ずお前の元に帰ってくるよ。どんなに傷ついても、どれだけ服をダメにしても、どんなに不幸を吸収しても、
 お前の笑顔を見るために必ず帰ってくるよ。だから美琴、お前の大好きなお兄ちゃんにお前の笑顔を見せてくれ。
 やっぱり泣いている顔よりも笑っている顔の方が俺は好きだ』
『……お兄ちゃん…』
『だから約束するよ。どんな状況になっても、どんなにつらいことに巻き込まれたとしても、どれだけ引き離されたとしても、
 俺はお前の笑顔を見るためにここに戻ってくるよ。だから美琴も約束してくれ。
 何が起きても、つらく悲しいことが起こったとしても俺たちの場所を守っていてくれ。美琴ならできるよ』
『…わかった…じゃあお兄ちゃん約束の証としてさ――――』


「……うう〜ん、てっあれ?朝?」
学園都市第三位のレベル5『超電磁砲』こと上条美琴は目を覚ました。
7月20日 午前6時半
隣で寝ている上条当麻と美琴の物語が始まる日の早朝だった。

662とある魔術の上条兄妹 前編 2:2010/04/25(日) 18:54:41 ID:bXbsI/ps

美琴は夢の内容を思い出していた。昔あった記憶と一致していたのだ。
(たしか私が小学6年生でまだお兄ちゃんと一緒に暮らしていた頃だったな。
 私のレベルがそのころだともう5に認定されていて、常盤台への入学もすでに決まっていて、基礎学力を上げているときだったかしら。
 当麻お兄ちゃんはそのころからすでに出席日数が足りなくなっていて夏休みは毎日補習だったな。
 それだけいっぱい怪我して帰ってきて、それでも強がりして笑いかけてくるからつい悲しくなって泣きだしたんだっけ)
美琴は幸せそうに眠る当麻の顔を見ながらさらに思い出していた。
(あんまり怪我して帰ってくるからそのうち帰ってこなくなるんじゃないかって、本気で心配したなー。
 だってそのころだってすでに能力開発に躍起になっていて友達と遊ぶこともなかったし、いつも一緒にいてくれるのはお兄ちゃんだけだったもんなー)
と自分の孤独だったころの記憶を思い出した。
今ではルームメイトである白井黒子のおかげでいろんな友達ができた。学内の人だけでなく他校の初春さんや佐天さん、風紀委員一七七支部の固法先輩などと親しくお喋りしている。
お兄ちゃんの高校の友達ともすでに顔見知りだ。隣で暮らしている土御門兄妹や青髪にピアスを付けている学級委員(名前は知らない)、デコ頭で根っからの委員長気質の吹寄さん、
どこか影の薄い転校生の姫神さんなど多くの仲間ができた。
だが友達や仲間を作らずレベル5になろうと躍起になっていたころは同級生も猫と同じように自分から離れて行った。自分が悪いわけではない。
ただレベルが上がるにつれ同級生が羨んだようなまたは恨めしな視線で見つめるようになった。自分を『上条美琴』ではなく『超電磁砲』として見られ始めたころだった。
(私の事をいつも同じように見ていてくれてレベルが上がって行くたびに自分のことのように喜んでくれたのはお兄ちゃんだけだったな。
 だからあの時も私のお兄ちゃんがどこかに行っちゃうような気がして、逃がさないようにお兄ちゃんを抱きしめて胸の中で泣いたんだ。
 それであの時、絶対に離れたりしないって宣言したから私が約束の印としてキスしようって…)
夢の内容を思い出し美琴は顔を真っ赤にした。昔はよくしていた行動も今から思い出すと恥ずかしい黒歴史の一つだ。
(でででも、さすがにあの時のお兄ちゃんはそういうのに敏感になってたから全力で拒否して、代わりに指切りで済ましたんだっけ……
 てかなんで期待しちゃってんのよ、ワタシ!!べべ別に私はお兄ちゃんの事なんか―――)
と美琴は当麻の寝顔を見て、なぜか胸がときめいてしまった。この顔には女を引きつける何かがあるのだろうか?
そしてわずかに湿っている当麻の唇を見ると急に奪いたくなってしまった。
(―――べべべべ別に将来彼氏ができたときのための練習台として思えばなんでもないわよね…
 私だって上手にできなきゃ彼氏に嫌われちゃうもんね。よ、よし!集中、集中!しっかり距離を測って……)
美琴は唇の形を整えてゆっくり当麻の顔に近づいて行った。
……10cm……5cm…うっすらと目を開けて確認をとる美琴だが、

「……何してんだ、お前?」

目標の当麻は既に目を開けていた。

663とある魔術の上条兄妹 前編 3:2010/04/25(日) 18:56:15 ID:bXbsI/ps

「………………」
「…………おい?」
「……わわわ私は…その…なんていうか…だから、えーと……」
ベッドの中で美琴は至近距離にいる兄に向かって言い訳を必死になって考えたが空回りするばかりだ。
そんな美琴を見て当麻は昔から変わらないなと思いながら言った。
「お前のその堂に入ったツンデレっぷりは相変わらずだな。そんな言い訳考えなくてもお前の考えていることぐらい兄貴なんだからすぐわかるよ」
「!…ツン…デ、ていうか何よ!私の考えている事って!?」
「いやだからさ、お前全然彼氏とかできないじゃん。だから俺に慰めてもらおうと――っぐへぁ!?」
「アンタね〜。いい加減そのデリカシーのない事平気で口走るんじゃないわよ!!」
当麻は妹の鉄拳を鳩尾に直で喰らってベッドから転げ落ちた。彼らにとっていつもとは違う日のいつもと同じ不幸な朝であった。


兄が言う事なんだが、妹の私はしっかり者だそうだ。私が兄のそばにいれば兄の言う『不幸』な事は軽減される。
何故だかは知らないが昔からいつもそうだった。
だからこの日だって、雷で電化製品を全てパーにする事もなければ、カップ焼きそばの中身を湯切りの際にこぼすこともないし、
机に置いといたのだからキャッシュカードを踏み潰すこともないし、担任からの補習の連絡も素直に受け答えできる。全く不幸ではない普通の朝の様子がそこにあった。
二人は朝食を食べ終わるとそれぞれの制服に着替えた。顔を洗い歯を磨き化粧を整えた美琴は兄に洗面台を譲る。
ツンツン頭をぼりぼりとかきむしりながら兄が洗面台に向かって行く間に脱ぎ捨てたパジャマを洗濯機に投げ込みスイッチを押す。
朝の大体の作業が終わり美琴は二人が寝たベッドを見た。
「少し干しておこうかしら?天気もいいし、予報だと雨も降らないようだから」
ふと思いついた美琴は枕と掛け布団をどけて、敷き布団を抱えてベランダへ向かった。カーテンを開けて日差しが差し込んでくると思わず目を瞑ってしまった。
「うーん、夏の日差しは強いなー。今度みんなでプールにでも行きたいなー」
そんなことを呟きながらドアを開け、ベランダに出た。
「……って、あれ?なんで既に布団が?」
美琴はベランダのひさしに引っかかっている先客を見つけて首を傾げた。だが次の瞬間、美琴は予想外の事実に直面した。
「って、これってまさか、修導服!?てことは、シスター!!?なななんで家のベランダに!?」

664とある魔術の上条兄妹 前編 4:2010/04/25(日) 18:57:04 ID:bXbsI/ps

美琴は予想外すぎて思わず布団をどさっと落としてしまった。すると白い修導服を着た幼いシスターは目覚めたようで、顔を上げてきた。
シスターのフードからはみ出ている髪の毛は銀色で顔立ちからしてどう見ても日本人ではなかった。
(どどどうしよう…やっぱり外国人だったら日本語喋れないよね?英語かな?それともイタリア語?はたまた全然知らないような言語だったらどうしよう…)
美琴は常盤台で英語やロシア語などを履修しており高い成績を取っているので外国人ともある程度コミュニケーションをとれるのだが、
こんな状況でしかも身元が全然わからないような人を見かけるとなるとやはりパニックになる。
美琴があせって何もできずいると後ろから当麻がやってきた。
「美琴、そんなところで何固まってるんだ?布団干すんならさっさと……」
当麻も美琴の後ろからベランダの様子を見てしまい固まった。
「え、え、えーーー!!?ななな何なんだよ美琴!?これがまさか盛夏祭の出し物なのか!?」
「んなわけないでしょ!!ベランダに来てみたら引っかかってたのよ!」
「んなばかな!こんなどっきりイベント俺には見に覚えがないぞ!!」

二人で議論しているとそのシスターは口を開き始めた。
「お…………」
「「お?」」

「おなかへった……」

「「…………?」」
「おなかへった」
「「…………」」
「おなかへったって言ってるんだよ?」
いつまでも自分を無視されているそのシスターは少しむっとしながら二人に問いかけた。その言語は日本語以外の言葉には聞こえなかった
仕方がないので兄である当麻が先に口を開いた。
「あー、まさかあなたはこの状況で自分は行き倒れですとかおっしゃりやがるつもりでせう?」
「倒れ死に、とも言う」
「…超日本語ぺらぺらじゃない…」
「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」
「…あんたねそれは少しずうずうし―――」
「あー、わかった。ならこれならどうだ?」

当麻は美琴の文句を遮ると、学生鞄の中からラップに包まれた焼きそばパンを取り出した。この夏の暑さのせいであろう。焼きそばから変なすっぱい匂いがする。
「(ちょっとお兄ちゃん!いくら何でもこれは…)」
「(いや美琴、あの子にはどっか遠いところで幸せになってもらおう。このすっぱい匂いを嗅げば逃げ出すに違いない)」
当麻と美琴が裏でこそこそ話していると、
「ありがとう、そしていただきます」
そのシスターはがっつりラップごと喰った。ついでに言うと当麻の腕ごと。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

幸運の女神である美琴もこればかりは固まってしまった。

665とある魔術の上条兄妹 前編 4:2010/04/25(日) 18:58:32 ID:bXbsI/ps

「まずは自己紹介からしなくちゃいけないね。私の名前はインデックスって言うんだよ?」
「誰がどう聞いても偽名じゃねーか!お前は『目次』か!」
「見ての通り教会の者です。あ、バチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね」
「誰も聞いてないわよそんなこと!それよりどうしてベランダに引っかかっていたのか答えなさいよ!!」
「うーん、禁書目録のことなんだけど?それに追われていたからね」

ベランダに引っかかっていたこの少女は今、ガラステーブルを挟んで美琴と当麻の反対側に座っていた。
腹が減って動けないと言うので冷蔵庫の中にあった野菜を全部中華鍋に放り込んで山盛りの野菜炒めを作ったのだが5分もかからずに平らげてしまった。
恐るべき大食漢である。
皿を片づけて当麻が深呼吸をして事情聴取し始めると、少女はそんなことを言ってきた。

「追われてる?ならなんでベランダなんかに?もしかして空から飛んできたの?」
「隣のビルから飛び降りたんだよ。ああするしか他に逃げ道がなかったもんね」
「ふーん、じゃあ誰に追われてたんだ?どんな能力者に?」
「いや、魔術師だよ」
「「………………はい??」」
上条兄妹は予想外すぎてまたしても唖然とした。
この町は学園都市である。230万人人口を抱え、日々能力開発を進めており実際に数多くの能力を産みだし能力者も増え続けている。
一方でオカルトだのマジックだの非現実すぎるものは一切信じられていなかった。物語や空想でしか語られてないものを美琴や当麻は学園都市に来る前に非現実だと軽くあしらっていた。
「「………………」」
「ところでさ二人は一体どういう関係なのかな?雰囲気は兄妹ってかんじだけど見たところ似てないよね?もしかして恋人同士?」
突然のことで呆気にとられている二人にインデックスと名乗る少女は逆に質問してきた。
はっと、我に返った美琴は突然の質問にあわててしまった。顔を真っ赤にしてあわあわと手を振りながら、
「え、いや、恋人って言うか、なんというか―――」
「俺と美琴はよく言われるけど恋人じゃないんだ。2つ年の離れた兄妹だよ。俺は父さんによく似てるって言われるけど美琴は親戚の御坂叔母さんによく似てるって言われてるんだ」
「ふーん、全然似てないから恋人同士で同棲しているかと思ったんだよ」
「まあな。俺はもてないから恋人と同棲なんてありえないけどな」
美琴は心の中で落ち着きを取り戻し、んなわけねーだろと呟いた。実際こいつの人助けのせいで何人もの女性に対してフラグを立て続けている。
自分もその一人なのだが自他ともに認めるツンデレなので想いを打ち明けられずに悶々としている。

666■■■■:2010/04/25(日) 18:58:33 ID:1m23ekGw
>>655
その旅掛さんに気に入られた話をどうぞどうぞ。

667とある魔術の上条兄妹 前編 6:2010/04/25(日) 18:59:48 ID:bXbsI/ps
「それはさておきとして、魔術師、だっけ?なんでそんな奴らに追われてたんだ?」
「私には10万3千冊の魔道書があるから、それを狙ってたんだと思う。エイボンの書、死者の書、ネームレスに―――」
「まーてまてインデックスさん、あなたは今10万3千冊の魔道書があるって言ったよな?それは主に国語辞典ぐらいの大きさなんだろ?」
「?それは原典によって種類はあるけど大体そんなかんじだよ」
「で、10万冊ってのは一体どこにあんだ?10万冊って言ったら図書館ぐらいの大きさじゃないと収まらねーよな?」
「鍵とか持ってるんじゃない?なんかの倉庫の管理人とか?」
「ううん。ちゃんと10万3千冊、1冊残らず持ってきているよ?」
「「………は??」」
上条兄妹は眉をひそめた。まさかバカには(もしくは天才には)見えない本でも持っているのだろうか?けれども少女の周りにはそれといったものは見当たらなかった。
美琴はわけのわからないことを次々と言ってくるこのシスターの事に腹が立ってきた。
「あーーもう!!一体何なのよアンタは!?突然ベランダに舞い落ちてきて、ご飯をねだるは、自分の名前は『禁書目録』だって言って、
 魔術師に追われてるだの、10万3千冊の魔道書を持っているだと変なことばっかり言って!!
 ここは学園都市よ!最先端の科学が結集する街なのよ!そんなオカルトなことがあるわけないでしょ!!」
「そんなことないもん!魔術はあるもん!!外の世界じゃそれが当然なんだよ!!」
当麻も美琴も学園都市に入ってからあまり外の世界に出たことがない。だからインデックスがそんなこと言っていても頭ごなしに否定することができなかった。
美琴がそんな風に考えていると今度は当麻が口を開けた。
「魔術魔術って言うけど、魔術ってなんだよ?お前にもできるのか?」
「私には魔力がないから私には使えないの」
「「…………」」
「ところでさ、さっき能力者とか言ってたよね?学園都市は科学の力で意図的に生み出してる聞いたことあるけど、ホントにそんなのあるのかな?」
「な…あんたね、私が誰だか知っているの!?この学園都市の第3位の超能力者と言ったら『超電磁砲』である私なのよ!!
 そこらへんの変なインチキ魔術なんかと一緒にしないでよ!!」
「むきー!インチキとはひどいんだよ!!じゃあ言わせてもらうんだけど私の着ているこの修道服、『歩く教会』って呼ばれてるけど、
 トリノ聖骸布を正確にコピーしたものだから強度は法王級なんだよ!物理・魔術を問わず全ての攻撃を受け流して吸収しちゃうんだから」
さっきのベランダに飛び降りたってのはそれでかと当麻は納得したが、美琴は折れなかった。

668とある魔術の上条兄妹 前編 7:2010/04/25(日) 19:00:18 ID:bXbsI/ps

ムキになった美琴はインデックスの横に立ち仁王立ちになった。
「じゃあ私のレールガン喰らって吹き飛んでも文句は言わないでよね」
美琴は頭に青白い火花を散らしながらポケットの中からゲームセンターのコインを取り出した。
「!!美琴よせって!当たったら危なすぎるだろ!」
「だってあいつがむかつくのよ!攻撃が全く効かないって言うんならやってみようじゃない!!」
「だからよせって!部屋をふっ飛ばす気か!!」
当麻は右手で美琴の頭を抑えた。すると頭にたまっていた電撃は嘘のように消えて行った。
「……?いま何の魔術を?」
「いや魔術じゃねーよ。生まれつきのものらしいから正確には超能力でもないけど、俺の唯一の能力で『幻想殺し』って言うんだ。
 人が持たざる異能の力なら原爆級の炎でも超強力な超電磁砲でも神様の奇跡でさえも打ち消せます、はい」
「「……」」
「…ってなんなんだよ!!二人してそのジト目は!!」
「…お兄ちゃん…超電磁砲までは認めるけど、神様の奇跡ってのはないよ」
「神様の名前も知らない人に、神様の奇跡でさえも打ち消せますとか言われてもねー。
それに魔術のことを知らないとか言ってる人がどんな異能の力でも打ち消せるとか言えるわけないんだよ」
確かに当麻は今まで魔術というものを右手で打ち消したことはない。だが当麻が打ち消せなかった超能力は一つもなかった。
だから今まで幻想殺しは異能の力にしか効果がないと思われていた。もし魔術というのが本当にあって幻想殺しが打ち消せなければ、その名を返上しなければならないのだろうか。
すると当麻は立ち上がってインデックスの隣に行った。
「お兄ちゃん?どうしたの?」
「…お前さっき自分の着ている修道服の魔術によってどんな攻撃からも身を守ってきたって言ったよな?」
「?確かにそんなこと言ったけど…何する気?」
「俺がこの幻想殺しでその修道服を掴んだらその魔術が消え失せて効果がなくなるだろ?それで俺はお前の言ってる魔術を信じる。
そしてお前も俺のこの右手の力を信じられるだろうが!」
確かにそうだと美琴は思った。これで両者文句はないはず。だが美琴は女の第六感がなぜか止めるようにと警告を送っていた。
だがインデックスはニヤニヤとしながら余裕たっぷりにこう言った。
「君の力がホ・ン・トならね〜〜〜」
「(ブチッ)上等だゴラァァ!やってやろうじゃねーか!!」
思わずあっと叫んだが、当麻は構わずインデックスの肩を右手で掴んだ。だが全く変化がない。やはり効果がないのだろうか。
「…別に何も起きないんだけど?」
「…あれ?ってことはやっぱりこれはただの修道服何じゃ?」
「違うって言ってんだよ!!」
少女は小さな胸をむんと張り上げて勝者の顔を見せつけてきた。だが次の瞬間、

プレゼントのリボンをほどくようにインデックスの修道服はすとんと落ちた。

インデックスは修道服以外何も着ていなかったのだ。だからインデックスは頭のフードで隠されているところ以外生まれたままの幼い体が丸見えとなった。
「「………」」
「…ん?どうしたの、二人とも?」
「「………いや、その…」」
「?…………!!??」

いやあああああああ
ぎゃあああああああ

朝の学生寮に盛大な悲鳴が轟いた。今日が夏休みの初日でなければ警備員に通報が入り上条兄妹は大恥をかいていただろう。

669とある魔術の上条兄妹 前編 7:2010/04/25(日) 19:01:20 ID:bXbsI/ps

美琴は棚から救急箱と裁縫箱を持ってきた。時刻は既に8時10分前である。
美琴は既に夏休みであるから用事はないのだが、当麻は学校で補習の授業がある。だから家でのんびり過ごす訳には行かないのだが、
布団にくるまって破れた修道服を修復するインデックスを置いていくわけにも行かないのだ。
「痛ててて…ちくしょう、なんなんだよシスターって。いちいち怒るときには人の体に噛みつくんですか?」
当麻は救急箱から痛み止めスプレーとガーゼを取り出すと、未だにくっきりと残る噛まれた跡一つ一つに吹きかけていく。
「……うぅ……ぐすっ…」
インデックスは裁縫箱から安全ピンの箱を取り出し破れた布地一枚一枚を丁寧に繋げていく。
布団にくるまっているのでその表情は見えないが、自慢の修道服が破けてしまったからであろう、ショックで泣き崩れていた。
美琴は自分の能力を使って兄の携帯電話の充電をして見せたときのことを思い出した。あのときは兄が小学校一年生で美琴が幼稚園に通っていた頃だった。
レベルは2であったがそのころでは異例のスピードだともてはやされていた。大好きな兄が学園都市に来たのでこれまでの自分の成果を見てもらおうと兄の携帯電話を使って充電して見せた。
その時の兄はすごいすごいととても喜んでくれた。だが誉めようとして右手で美琴の頭を撫でた瞬間、今まで使っていた能力が使えなくなり充電できなくなってしまった。
いくら集中してもできず、かなりムキになっていた。そんな様子を見た兄は思わず右手を離してしまった。
すると突然能力が回復し許容範囲を大きく超える電圧を流してしまい携帯電話を壊してしまった。
買ったばかりの携帯で新品だったものが一瞬にして使いものにならなくなってしまったが、兄は笑って許してくれた。
その時美琴は自分の能力が簡単に打ち消されてしまい挙げ句の果てにコントロールのすべも忘れてしまい悔しくてぼろぼろと涙をこぼしてしまった。
兄はとても困惑したが美琴を抱き寄せて右手で頭を撫でて慰めてくれた。その優しい撫で方に安らぎを感じ、ぼろぼろと流れていた涙が止まっていくのを今でも忘れてはいなかった。
だから今のインデックスの気持ちも分からなくもなかった。自慢の能力が絶対的な自信があの右手が触れた瞬間にいとも簡単に崩れ去っていくとき、その絶望感は果てしないものだった。
だがその瞬間、素の自分が出てきた様な気がして(インデックスの場合はスッポンポンであるが)なにか束縛から外れて自由になった気がする。
美琴はその時の気持ちが癖になってしまい兄から撫でられるのを楽しみにしていた。そのことが超能力開発を躍起になって進める原動力の一つになったのかもしれない。

670とある魔術の上条兄妹 前編 9:2010/04/25(日) 19:02:06 ID:bXbsI/ps

そんなことを思い出していると不意にインデックスが布団から出てきた。だがすでに裸ではなく修道服を着ていた。
「これでもう大丈夫なんだよ!!」
「……あのインデックスさん?体中に付いている安全ピンはやばくないですか?一応美琴の服を出しておいたんだけど?」
「…………」
「…まるで針のむしろね。私が縫っておいてあげるからこれ着なさいよ」
「……別に無理しなくていいんだよ。私はシスターさんなんだし修道服以外は着れないんだよ。それにいつまでも長居していると追手が来て君たちに迷惑をかけるかもしれないしね」
「…追手って言うとさっき言ってた魔術師だよな?そんなにやばい連中なのか?」
美琴はまたかと思い少しため息をついた。そう、これが上条当麻の人助けスキル発動の瞬間だ。どんな時でも困っている人(主に魅力的な女性)がいるとすかさず助けに行き、
最終的にフラグを立てて去っていく。だからその女性たちは無駄にその気になってしまいどうしようもなくなってしまう。
一番の被害者である美琴がそう思うからこのスキルは非常に危険だ。早くなんとかしないと。
「……お兄ちゃん、まさかその魔術師から守ってやるよとか言うんじゃないでしょうね?」
「ん?いや、今日は補習で忙しいけどこんなか弱いシスターさんを見捨てるわけにはいかないだろ?」
「アンタねぇ、そんなわけもわからない連中相手にできるわけないでしょう!!いくら右手で魔術とかいうものを打ち消したとしても危なすぎるよ!!」
「とうまって言ったかな?君の親切はありがたいんだけど、これは私の問題だし赤の他人を巻き込むわけにもいかないんだよ。
 みことの言った通り君たちには危険すぎるし、第一オカルトなんか信じない学園都市の人間が魔術なんかに関わるのもよくないんだよ」
美琴はインデックスの言ったことが少々胸を痛めた。確かに得体のしれない魔術なんかに関わるべきではないが、確かに自分たちは赤の他人でしかないのかもしれないが、
インデックスは明らかに困っていた。そんな人をただ見捨てたくはなかった。
そんなことを思っている美琴も当麻と同じ血が流れているのだろう。二人は自分たちにできることはないのかと唇を噛んだ。
「それでもよ!見捨てるわけにもいかないだろう!こんなに色んなことしちゃってただ外に追い出すようなことはできねえだろが!!」
当麻は声を荒げながら反論した。だがインデックスは、

「…じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」

とニッコリ笑顔で言った。インデックスは暗についてこないでほしいと言ったのだ。上条兄妹は言葉を失ってしまった。どんな言葉をかければいいのかわからなかったのだ。

671とある魔術の上条兄妹 前編 10:2010/04/25(日) 19:02:41 ID:bXbsI/ps

「大丈夫だよ。私も一人じゃないもん。とりあえず教会まで逃げきれば匿ってもらえるから」
「……教会がどこにあんのかわかるのか?」
「ロンドン」
「遠すぎよ!ここは日本よ。もっと近くにないの?」
「うーん、あ大丈夫だよ。日本にもいくつか支部はあるし」

インデックスは安全ピンまみれの修道服を着てニッコリと答えた。シスターとしての性なのであろう。なんとか心配させまいとしている感じであった。
「英国式の教会までたどり着けるかが勝負だからそろそろ行かないとね」
「え!もう行っちゃうのか!?なんなら風紀委員にでも連絡すれば―――だあああぁぁ!!」
突然立ち上がった当麻は悲鳴を上げて床に転げ回った。どうやら小指をどこかにぶつけてしまったようだ。
「お兄ちゃん!大丈夫!?」
「ううう、不幸だ…」
「不幸というより、ドジなだけかも」
美琴は心配して痛み止めスプレーを吹きかけたが、インデックスはちょっとだけ笑っていた。
「けど、幻想殺しっていうのが本当にあるなら、仕方ないかもしれないね」
「え、どういうことよそれ?」
「うん、こういう魔術の話なんてあまり信じないかもしれないけど、神様のご加護とか、運命の赤い糸とかそういうものをまとめて打ち消してしまっているんだと思うよ?」
「待てよ!幸運だの不幸だのそういうことは確率と統計のお話だぜ?んな訳―――ッ!」
言った瞬間、思わず手を触れたドアノブから強烈な静電気が走り、反射的に体がビクンとふるえた。すると筋肉が変な風に動いたのかいきなり右足のふくらはぎがつり、
そのまま美琴の方へ倒れ込んできた。
「え、ちょっと、きゃあ!!」
「わわ悪い!美琴!今どくから――ッ!?」
当麻は足を美琴のそれと変な風に絡ませてしまい余計ふくらはぎを痛め悶絶した。
5分後じたばたしていた二人がようやく落ち着いた。だが美琴はまだ顔を真っ赤にしていた。
「…すまなかったな美琴。それでえーとシスターさん?」
「なに?」
「この不幸がどういう意味か説明してくれないか?」
「説明って言うか、君の右手の話が本当なら、その右手があるだけで幸運ってチカラもどんどん消していってるんだと思うよ?」
「つまり、それってことは…」
「とうま君の右手が空気に触れているだけで、バンバン不幸になっていくってことだね♪」
「ぎゃああああああ、不幸だああああああああ!!」
オカルトを全く信じていなかった当麻であったが、この奇跡なまでの不幸体質については別だった。自分の右手のせいで不幸になっていたなどと言われてだいぶショックだったに違いない。

672とある魔術の上条兄妹 前編 11:2010/04/25(日) 19:03:13 ID:bXbsI/ps

「それじゃあ、ご飯を食べさせてくれてありがとう。二人とも元気でね」
インデックスは玄関に向かい別れの挨拶をした。
「おい!なんか困ったことがあったら、また来ていいからな」
神様の奇跡でさえも殺せる男は結局こんな事しか言えなかった。学園都市第3位の超能力者でさえ何も言うことができなかった。兄妹にして情けない話だ。
「うん。おなかへったら、またくる」
だからインデックスもこんなことしか言わなかった。助けを求めることはなく冗談のような事しか言わなかった。
ドアを開けて辺りを確認すると足早に去っていってしまった。
「…………」
「………これでよかったんだよ、お兄ちゃん。あんな変なシスターさんなんかと関わって良い事なんてないわよ」
「……そうかもな。でもなんだかやり切れねーよな、美琴?」
確かにそうだと思った。明らかに助けを求めている少女に結局自分たちは何もできなかった。それはとても悔しかった。
でもしょうがないではないか。私たちが関わったところでどうなるのかわかったもんじゃない。結局自分たちが足を引っ張ってあの子に迷惑がかかるのは嫌だった。
美琴がそんな言い訳を考えていると美琴の携帯が突然鳴り出した。
「黒子からだ、何だろう?もしもし?」
『お姉さま?今どちらにおいでで?』
「お兄ちゃんのとこだけどどうしたの?なんかあわててるようね?」
『…まだあのお兄様の家に……まあいいですわ。急いで病院まで来てくださいませ。この前の虚空爆破事件の容疑者の介旅初矢が意識不明になりましたの!』
「え!なんであいつが!?てか私そんなに強く殴ってないと思うんだけど…」
『とにかく急いで来て下さいませ。病院には大脳生理学の専門家も呼んでいるので話を伺いますの。それではお姉様、病院でまた後ほど』
通話を切ると美琴は出かける支度をした。
「お兄ちゃん、悪いけどこれから出かけてくるね。今日は寮に帰るから」
「…お前な、あんまり白井の邪魔ばかりすんなよ。それに変な事件とかに巻き込まれても、俺はあまり助けになんかに行けないぞ」
「大丈夫よ。なんたって私は超電磁砲なのよ。魔術師とかいう訳の分からないような連中はさておきとして、能力者相手だったら負けたことないんだから――ってこれは?」
ふと支度をしている美琴はベッドの上にフードが落ちているのを見つけた。たぶんあのシスターのものだろう。
「あー、インデックスってやつのだろ。あわてて出て行くもんだから忘れちまったんだろうな。置いといてくれ、俺が預かる」
当麻も補習に出かけるのだろう。既に学生鞄を担いでいた。
「インデックスが取りに来たら渡しておくから。…ってもうこんな時間だ。行くぞ、美琴」
「あ、うん、待ってよお兄ちゃん!」
二人は学生寮の部屋を出ると鍵を閉めてエレベーターに乗り込んだ。
「あのシスターさん、無事に教会までたどり着いていればいいね?」
「ああ、魔術師なんかに見つからずにな」
エレベーターの中でそんな風に話し合っていると、ドアが開き二人は出た。
当麻は学校へ、美琴は病院へ向かって走って行った。
そうして二人の日常が始まった。これから壊れていこうとは知らずに。

673コッカラ:2010/04/25(日) 19:07:00 ID:bXbsI/ps
以上です…レスの番号いくつか飛ばしてしまいましたが11レス分でした
ちなみに8-37の続きでした
アドバイス・批判等よろしくお願いします

674コッカラ:2010/04/25(日) 19:30:55 ID:bXbsI/ps
ちなみに書いている途中で本来のルートと異なるものを考えたのですが、
1:通常の原作に沿った上条兄妹
2:当麻の記憶喪失を回避する上条兄妹 ただし美琴が・・・
3:とりあえず全部やれ
のどれがいいですか?もちろんバッドエンドは全てありません
レスの方針で決めたいと思います

675■■■■:2010/04/25(日) 20:01:59 ID:akJ2Xxn6
>>674GJです
個人的には2
やってくれるのであれば3です

676■■■■:2010/04/25(日) 20:04:02 ID:r2Sqv7Fk
>>674
幻想御手もこのタイミングで噛んで来るとなると
今後の絡みが気になる所、続き期待しています。

以降の展開は>>675に同意

677■■■■:2010/04/25(日) 20:15:21 ID:kh0kA0uA
>>674
GJ!
1を希望します
それと一つ疑問があるんですが姫神の名前が普通に出てきてますけどこれは単なるミスってことでよろしいんでしょうか?

678■■■■:2010/04/25(日) 21:16:21 ID:3Ca9gqZY
そういえば既に姫神いるのって変だな

679上琴患者A:2010/04/25(日) 21:17:58 ID:mXKuCtas
>>コッカラさん
妹という単語に心を奪われつつ長編の続に期待してますw
個人的には2ですかね?

改めまして皆さんこんばんわ
この前「まだ解決していない事がありますよ、とミサカは重大な問題があることを告げます」
と声が聞こえたような気がしたので、土日引き篭もって書いていました。

タイトルは「その悲しみを乗り越えて」で前スレの流星の後日談的な感じになります。
ニヤニヤできるかは自信がありませんが、問題なければ5分後くらいから投下します。
レス数は14くらいになります。

あと漫画版超電磁砲4巻読んでない人はスルー推奨です。

680■■■■:2010/04/25(日) 21:19:13 ID:QatyEG4g
美琴が記憶を失った場合、能力に影響はでないのだろうか…?

681上琴患者A:2010/04/25(日) 21:23:53 ID:mXKuCtas
「それで?何でアンタはいつもいつもいつもいつも当然のように遅れてくんのよ?」
「すまん美琴!この通りだ!」
「こんな所で土下座すんじゃない!全く…言い訳は後で聞くから、とりあえず行くわよ」

時刻は午前9:10分、待ち合わせの時間を10分オーバーして現れた当麻は土下座をする。
美琴の方はいつもの事なので既に諦め顔だ。当麻を立たせると、右手を掴み引っ張るようにしてその場を後にする。
少し歩いた場所にある喫茶店へと入り、店の奥のテーブルに座ると遅刻についての尋問が始まる。

「それで?今日は何で遅れたのかしら?」
「それが…実はですね、目覚まし時計が壊れてしまいまして…、起きたら既に時間ギリギリだったんですよ」
「何よそれ!?今までで一番酷い言い訳じゃない!」
「すまん!申し訳ない!!」
「そっかー、当麻は私とデートするの楽しみじゃないんだ…、私は毎回早く起きて、準備して、当麻が来るの楽しみに待ってるのに…」
「そんな顔しないで!?本当にごめん!」
「それに電話一つしてこないんだもん…、こっちは待ってる間心配してるってのに」
「それもすまん。携帯が壊れたっぽくて、電源が入らなかったんだ」
「寝坊はともかく、当麻の不幸は相変わらずね。はぁ〜まあいいわ、いつもので許してあげる」
「不幸だ…」
「ほほぉ〜ぅ、当麻は不服だと?そういうわけね?」
「いえいえ!滅相も御座いません!いつもいつも寛大な措置に感謝してますよ!?」
「だったら私の前で不幸とか言わない!!」
「はい…」
「それじゃ、今日は10分だから2回私の言う事を何でも聞くように。わかったわね?」
「はい…」
「ん、よろしい。んじゃ今日は何しよっか?」

遅れてきた理由は酷かったが、いつもに比べれば早く来た方なので、早々に尋問を終え、罰が確定する。
そして本日のデートの行き先を考える事にする。

「そうだな、とりあえず携帯を直したいな。美琴は何処行きたい?」
「へ?うーん、あんまり考えて無かったわね。当麻の携帯直してる間にその辺フラフラして、午後から当麻の部屋でのんびりでいいわよ?」
「それでいいのか?」
「うん。他に行きたい所出来たらその時に決めればいいでしょ」
「了解っと、んじゃ早速行きますか?」

そう言うと喫茶店を後にする二人。仲良く手を繋いで携帯ショップへ向かう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

682上琴患者A:2010/04/25(日) 21:24:18 ID:mXKuCtas
「――――――――――充電切れですか?」

以前ペア契約した携帯ショップに到着し早速壊れた携帯を見てもらうと思いもしない答えが返ってきた。

「そのよう…ですね、こちらのバッテリーでは正常に動きますので、恐らくは…」
「ちょっとー!アンタ本当に何やってんのよ!?わざわざ恥をかきに来ただけじゃない!」
「まてまて!確かに昨日充電器に挿しておいたんだ!そんな筈は…」
「それでしたら充電器の方に問題があるかもしれませんね。もしくはバッテリーパックの寿命か」
「それなら両方買っていけばいいでしょ?」
「美琴サン?私は苦学生なのですよ?そんなお金はありません」
「そのくらい私が出してあげるから安心なさい」
「まてまて、女の子にお金を出させるのは気が引ける。買うのは壊れてるかどうか調べてからにしようぜ」
「じゃあ手っ取り早く調べる?」
「は?どうやって?」
「こうやって」

当麻の携帯からバッテリーパックを取り出すと、パチっと電気を発生させて流し込む。

「ちょ、おま、何やってるんだよ!?」
「何って充電よ、充電。お〜こりゃ駄目ね、バッテリーパック死んでるわ。画面真っ暗」
「っておい!それ絶対今ので死んだよな!?」
「こりゃ新品買わなきゃ駄目ね」
「聞いてますか!?ふ、不幸だ…」
「こら当麻!不幸って言うな!」

結局壊れた(壊した?)バッテリーパックを買う事にした当麻。
「仲が良いですね」と店員に冷やかされつつ店を出た二人に見知った顔が話しかけてきた。

「よォ、三下と超電磁砲じゃねェか、何やってンだァ?こンな所で」
「こんにちわー!ってミサカはミサカは元気良く挨拶してみたりー」

買い物袋をぶら下げた一方通行と、アホ毛をひょこひょこ動かしながら手をぶんぶん振る打ち止めだ。

「おー、一方通行に打ち止めじゃねぇか、お前等こそ何やってるんだ?」
「見て分かンねェのかァ?コーヒー買いに行ってたンだよ」
「ふーん、アンタと会う時っていつもその子連れてるけど…そういう事?」
「ンだァ?どういう事だァ?」
「デートだよ、ってミサカはミサカはデートって事をアピールてみたり!」

高らかに宣言した打ち止めは一方通行に抱きつく。「離れろクソガキィ!」という一方通行は若干嬉しそうだ。
それを見た当麻は薄く笑い、美琴はニヤニヤしながら言葉をかける。

683上琴患者A:2010/04/25(日) 21:24:45 ID:mXKuCtas

「やっぱりデートなの!?あの子達が言ってたロリコンて本当だったのね!」
「誰がロリコンだってンだァ!?テメエ、喧嘩売ってンのかァ?」
「学園都市第一位が実はロリコンなんて…学園都市ももう駄目かもね」
「ハッ!レベル0の三下と付き合ってるテメエに言われたくねェなァ」
「…今のは聞き捨てならないわね、私の彼氏を馬鹿にするなんて…覚悟はいいかしら?」
「ヒャハ!第三位のテメエじゃ俺には何回挑んでも勝てねェンだよ」

クスクスと笑う美琴に噛み付く一方通行、売り言葉に買い言葉と言った感じでどんどん会話がエスカレートしていく。

「言ってくれるわね、アンタが第一位を名乗ってられるのもここまでよ!」
「ヒャハ、無力なテメエは三下に泣きついてればいいンだよ」
「この…、私を舐めんなぁ―――!!」

バチバチィ!一方通行より沸点の低かった美琴が電撃を放つが、ベクトル操作によってその方向を逸らされる。
反射して自分に攻撃しない余裕の一方通行に対して美琴の怒りは更に加速する。

「この!なんで当たらないのよ!?本当にむかつくわねその能力!」
「テメエの攻撃なンてなァ、寝てても当たンねェンだよ」
「この!この!」
「お前等街中で能力使うのやめろ――――!!」
「ストーップ!ってミサカはミサカは戦う二人を止めに入ってみたり―――!!」
「「うっさい!(うっせェ!)」」

二人を制止しようとした二人に怒鳴る。当麻はやれやれと肩をすくめ、打ち止めはビクッとすると涙目になった。

「あ〜よしよし、あんなのはもう無視してクレープでも食うか?」

涙目になりアホ毛がしおしおになった打ち止めに声を掛ける当麻。
するとしおれていたアホ毛が途端に元気になり、目をキラキラと輝かせる。

「食べる食べる!ってミサカはミサカは突然の提案に喜んでみる!」
「おま、復活早いな…」
「だって魅力的なお誘いなんだものー、ってミサカはミサカは食べ物に釣られてみる!
 あ、いちごクレープ1つ、ってミサカはミサカは既に注文してみたり!!」
「早っ!!えーっとチョコバナナも1つお願いします」

言うが早いか、打ち止めはダッシュでクレープ屋まで走り既に注文をしていた。
注文を済ませクレープを受け取ると近くのベンチに座る二人、少し離れたところでは相変わらず第一位と第三位がどっかんどっかんやっている。

684上琴患者A:2010/04/25(日) 21:25:09 ID:mXKuCtas
「ったくあいつ等は…もうちょっと他人の迷惑を考えられないのか?」
「あの人が上手い事電撃を…ムグムグ…逸らしてるから大丈夫、ってミヒャカはミヒャカ…ムグムグ…ってみたりー」
「そういう問題じゃないけどな…」
「いざとなったら代理演算切っちゃうから安心して、ってミサカはミサカは最終兵器について口に出してみたり!
 それよりそっちのも美味しそう…ってミサカはミサカは他人のものに興味を示してみる!」
「なんだ?こっちのが食べたいのか?ほれ」

差し出されたチョコバナナクレープをぱくりと食べる打ち止め。『おいし〜』と言うその表情は綻び、癒しのオーラを出している。

「それじゃあお礼にこっちのもどーぞ、ってミサカはミサカはいちごクレープをお義兄様に差し出してみる」
「いいのか?それじゃ遠慮なく」
「あ〜ん、ってミサカはミサカは一度やってみたかった事をしてみたり!」

今度は当麻が差し出されたクレープを一口、あ〜んという言葉にちょっと照れる。
そんな反応を見て打ち止めもなんだか嬉しい気分になり、心なしかアホ毛が楽しそうに揺らいでいる。
第一位VS第三位という珍しいバトルを見ながらクレープを頬張る二人。
当麻のほうをちらりと見た打ち止めはある物に気付き目を光らせる。

「口元にクリームが付いてるよ、ってミサカはミサカは指摘してみる」
「ん?どこだ?」
「ダメー!取ってあげるね、ってミサカはミサカはミサカネットワークで仕入れた知識を試してみたり!」

そう言うと、当麻の口元に付いたクリームを指で掬い、そのままペロッと舐める。
えへへーと笑う打ち止めにややドキドキした当麻。そこは既にほのぼの空間が出来上がっていた。
その光景は、端から見れば仲のよい兄妹がクレープを食べている様に見える。
…あの二人以外は。

「当麻、アンタ一体何やってるわけ?」
「三下ァ…テメエ死にてェらしいなァ…」
「ちょろっと目を離した隙に目の前でいちゃいちゃいちゃいちゃ…」
「覚悟はいいなァ?三下ァ」

バチバチと帯電する美琴にゆらゆらと近づいてくる一方通行。
当麻はそんな二人を見て死を覚悟する。そこに助けを出す小さい天使が現れる。というか隣にいた。

「お義兄様とミサカを無視してた二人が一体今更何の用?ってミサカはミサカは邪魔された事に憤慨してみる!」
「なン…だとォ…?」
「ちょっと!邪魔ってどういうことよ!?それにそこは私の席なのよ!?」

685上琴患者A:2010/04/25(日) 21:25:31 ID:mXKuCtas
打ち止めの冷たい声にたじろぐ一方通行。美琴のほうは指定席(当麻の隣)を指差し抗議する。
そんな二人の事を無視して打ち止めは更に続ける。

「大体あなたたちは他人に迷惑をかけたんだから、まずはその人たちに頭を下げてきなさい!
 ってミサカはミサカはあそこで迷惑そうな顔をしている人たちを指差してみる!」

ビシィ!と打ち止めが指差すとズバァ!と視線を逸らす人々。

「ンだァ?誰もこっち見てねェじゃねェか?」
「そうね、別に迷惑は掛けてないみたいよ?」
「あれれ?なんで向こう向いちゃうの?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
「そりゃああんなの見た後で視線なんか合わせられないだろ…」
「ンじゃ死ンどけ、三下ァ」

その言葉と共に当麻に襲い掛かる一方通行、だがあと一歩というところでガクンっと体が崩れ落ちる。
代理演算の停止、それだけで彼の体は自由を無くす。

「アナタはそこでミサカがいいって言うまで反省しててね、ってミサカはミサカは冷たく言ってみる。
 お姉様も!この人が電撃を逃がしてなかったら街はどうなってたの?ってミサカはミサカは真剣な顔で問い詰めてみる」
「う…それは…」
「分かっているなら早く皆に謝ってきてね、ってミサカはミサカはにっこり微笑んでみる」
「…わかったわよぅ…なんで私が…」

強制的に無力化され目の前で当麻にあ〜んされる打ち止めを見るという拷問を受ける第一位、
正論に負け渋々通行人に謝りに行く第三位。…学園都市の最強が誕生した瞬間だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「むー」
「お〜い、美琴さーん何時まで拗ねてるんですかね?」

あの後、通行人に謝り終えた美琴に「意地悪してごめんなさい」と丁寧に謝った打ち止めは、拷問を受けて、
憔悴しきった一方通行と共に帰っていった。その場に残された二人だが、美琴は少しむくれていた。

686上琴患者A:2010/04/25(日) 21:25:55 ID:mXKuCtas
「何よ、アンタは私よりあの子の方が可愛いんでしょ」
「妹、しかもまだ子供の打ち止めに嫉妬すんなよ…」
「む!その言い方はあの子が傷つくわよ!それに、食べ比べなんて…私だって…あんまりした事ないのに…」
「なんだ?羨ましかったのか?」
「…そーよ、悪い?」
「そっか、悪かったな、ちょっと配慮が足りなかった」
「…今回はあの子だったから許すけど、もうあんなことしないでよ?当麻は私のなんだから…」
「ああ、分かった」
「よし、ならお詫びとして一緒にクレープ食べなさい!」
「えーと、私は先ほど既に食べていますのでもういいです…はい」
「アンタねぇ…空気読みなさいよ…わかった、朝の罰一回目はこれで…」

相手が打ち止めということもあり、今回は特別に許しを出す。そして自分も同じ事がしたくて提案をするが断られてしまう。
遅刻の罰を使おうとした美琴だが突然横から声を掛けられ、その言葉は遮られる。

「こんにちわ、とミサカは唐突に会話に割り込みつつ挨拶します」
「ちょっといきなり割り込んでこないでよ!」
「お〜す、御坂妹、こないだは世話になったな…ん?ネックレスが無い?」
「このミサカは10039号です、とミサカは固体番号を告げあのミサカではない事を説明します」
「…なんか用?私達デート中なんだけど」
「何をそんなに苛立っているのですか?とミサカは理由を知りつつも問いかけます」
「アンタ、おちょくってんの?」
「その短気な性格は早めに直したほうがいいですよ、とミサカはカルシウム不足であろうお姉さまにアドバイスを送ります」
「御坂妹、あんまりからかわないでやってくれるか?美琴の奴今苛立ってるから」
「お義兄様がそれを言いますか、とミサカは苛立たせた張本人の言葉に呆れ果てます。
 それはいいとして、本題なのですが、ここに映画と水族館のチケットがあります、とミサカはポケットから三枚のチケットを取り出します」
「なになに?『とあるゲコ太の日常』だって?なんじゃそりゃ?」
「ゲコ太!?」

ゲコ太という単語に敏感に反応する美琴。目をキラキラさせチケットを見る。すると…

「流石はお姉様、とミサカは予想通りの反応にほくそ笑みます。しかし映画のチケットは一枚しかありません、とミサカは報告します。
 どちらも今日までですので、お二人に譲ろうと思ったのですが、どうしますか?とミサカは問いかけます」

その言葉に美琴は気付く、自分がゲコ太を選べば当麻と妹は水族館、水族館を選べば公開最終日のゲコ太は見れない。
当麻かゲコ太。どちらか選べという事だ。当然選ばないという手段もある。

「クッ!卑怯よアンタ!こんな残酷な選択を迫るなんて!!」
「はて?何のことですか?とミサカは内心ニヤニヤしつつ、しれっと言ってのけます」

687上琴患者A:2010/04/25(日) 21:26:17 ID:mXKuCtas
当麻と一緒に居たい、でもゲコ太見たい一緒に居たい見たい居たい見たい居たい…
そんな風にブツブツと呟く彼女を見た当麻はため息を付く。

「はぁ…俺はゲコ太と同列なのか…不幸だ…」
「!?」

その言葉にハッと我に返る美琴。その瞳から迷いは消えていた。

「わかったわ、水族館のチケット貰っていい?」
「…勿論ですよ、とミサカはお義兄様の言葉を恨みつつ了承します」
「え?俺ですか!?」

美琴が手を伸ばし、10039号からチケットを取ろうとした瞬間、スッと動かされ映画のチケットを掴まされる。

「ちょっと!何すんのよ!?」
「これでお姉様は映画ですね、とミサカは己の策士っぷりを自画自賛してみます。
 ちなみに返品は受け付けません、とミサカは暗に行ってこいと告げます。
 ではお義兄様、あまり時間も無いのでミサカと一緒に水族館へ行きましょう、とミサカは急かします」
「まてまて、わりーけど美琴を置いては行けねーよ、だからなんだ、すまん」
「当麻…」
「即答かよ!とミサカはツッコミを入れつつも内心で喜びます」

10039号のお誘いを即断る当麻、10039号は表情を少しだけ緩めると、もう一度ポケットに手を入れ、紙切れを出すと当麻に渡す。

「これは?」
「おっと、これはうっかりしていました、とミサカはわざとらしく二枚目のチケットを渡します」
「アンタ…どういうことよ?」
「実は初めから二枚持っていました。更に水族館のチケットはただの紙切れです、とミサカはぶっちゃけます
 お二人がどのような反応をするか見たかっただけです、とミサカは悪戯の全容を語ります。
 お義兄様は完璧ですがお姉様は…まだまだですね、とミサカはお姉様の愛の足りなさに嘆息します」
「人の愛を試すような事すんな!いいじゃない!ゲコ太好きなんだから!!」

ため息を付き、首を左右に振る10039号。その仕草を見た美琴は顔を少し赤くして10039号に噛み付く。
それをしれっとした顔で受け流す10039号は近くの時計を見ると言葉を発する。

「そんな事はいいですから、早く移動した方が良いですよ、とミサカは映画館に行くように促します」
「いいのか?タダで貰っちまって?」
「構いませんよ、とミサカは先ほどのお姉様の迷いっぷりをミサカネットワークに流しつつ頷きます」
「ちょ、こら!勝手に人の様子を広めないでよ!?」
「これが代金だと思ってくれれば良いです、とミサカはプライスレスの秘蔵映像の入手に満足します…フフ、フフフ…」

688上琴患者A:2010/04/25(日) 21:26:45 ID:mXKuCtas
美琴の言葉を無視して、では、と軽くお辞儀をして歩き去る10039号。あの思い出したかのように浮かべる笑みは健在だ。

「…なんだかあの子の将来がすごく心配だわ…」
「ん、ん〜、そう…だな?」
「ふー、まあ折角だし行きましょ?多分あの子の事だから世話を焼きに来たと思うの」
「お?もうそんな風に考えれるようになったのか?感心感心」
「このチケットをあの子が私達に用意してくれたなら、思いっきり楽しんでこそあの子の為なのよ!」
「とか言いつつ本当はゲコ太」「うっさい!早く行くわよ!」

当麻の的を射た発言に思わず声を上げる美琴。腕を掴み、引きずるようにして映画館に向かって歩いていく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あ〜!面白かったわね!」
「あ、ああ…良いんじゃないか?たまにはこういうのんびりした映画も」
「なんか引っかかる言い方だけどまあいいわ。さてさてゲコ太グッズを見てきましょうかね、あの子のお土産も見たいし」
(美琴の一喜一憂する姿に見とれてて全く見てなかったなんて言えねぇな…)

そう言うと売店に向かっていく美琴。その瞳は既に獲物を狙う狩人のようになっていた。
『ふんふんふ〜ん♪』っと鼻歌混じりにグッズを見て回る美琴。暫く見た所でその動きがピタリと止まる。

「…」
「ん?どうした美琴?」
「…」

突然黙り込んだ美琴が心配になり声を掛ける当麻。しかし、考え込むようにしてる彼女からの為返事はない。
難しいような、それでいてどこか悲しそうな表情を浮かべる美琴は、手を伸ばしては引っ込める、という事を繰り返している。
当麻が美琴の左手を何も言わずに握ると、一瞬ビクッとする。そして少しの間を置き、それを手に取る。

「ごめん、この後あの子の所に行きたいんだけど、一緒に来てくれないかな?」
「ああ、いいぜ」
「ありがと」

彼女の問いかけに頷き、繋いだ手を少しだけ強く握る。美琴は少しだけ安心したようにその表情を緩めると、お土産を買う。
映画館を後にした二人は病院に向かって歩いているが、会話はない。美琴は少し俯き、紙袋を大事そうに右手で抱え込むようにしている。
当麻はそんな彼女の左手をしっかりと握り、言葉を待つ。

「…当麻、聞いて欲しいことがあるの」

病院が見えてきた所で急に立ち止まり声を発する美琴。当麻はああ、っと短く返事をすると美琴は語り出す。
過去の事、そして今から自分がやろうとしている事を。当麻は黙ってその言葉を聞く。そして全てを聞き終えると口を開く。

689上琴患者A:2010/04/25(日) 21:27:22 ID:mXKuCtas

「大丈夫なのか?」
「…わかんない、もしこれを付き返されたらと思うと…でも私はあの日の言葉を信じたから…あの子達は私の心の闇に立ち向かってくれた。
 だから私も自分の過去に向き合う」
「そっか、…力になれないかもしれないけど、俺は美琴の側にずっといるからな」
「うん、ありがとう。じゃあ行きましょ」

しっかりと繋がれた手から感じる僅かな震えを払うように強く握られた手。その温もりを感じながら病院へと入っていく。
そして例の医師にミサカ10039号に会いたい事を告げると、彼女の部屋に案内される。

「…」
「おい、本当に大丈夫か?」
「…当麻はここで待ってて、当麻がいると甘えが出てしまうかもしれないから。大丈夫、ちゃんと伝える事を伝えてくるから」
「…分かった、頑張れよ」

心配する当麻の手を一度だけぎゅっと握った美琴は顔を上げ、10039号のいる部屋へと入る。
部屋の中には常盤台の制服を着て椅子に座り、のんびりとお茶を飲んでいる10039号がいた。
誰かが入室した事に気付き振り向く10039号。美琴だと分かると持っていた湯飲みを置いて、立ち上がる。

「お姉様ではありませんか、とミサカは突然の訪問に驚きます。
 …?お義兄様はどうされたのですか?とミサカはお義兄様の姿が見えないことを疑問に思ってみます」

おかしいですね?と首を傾げる10039号。デートをしている事は知っているので、一緒にいない事を疑問に思っている様だ。

「当麻は部屋の外で待ってるわ、それよりアンタに話があるんだけど…」
「なんでしょうか?とミサカはお姉様の様子がおかしいと思いつつ頷きます。
 もしや映画が楽しくなかったとかでしょうか?とミサカは少々不安になりながら問いかけます」
「ううん、映画は楽しかったわよ。ありがとね、わざわざチケットを取ってくれて」
「礼には及びません、あれはミサカが勝手にやった事ですので、とミサカは不安が解消され胸を撫で下ろします」
「それでね、アンタに渡したい物があるの」
 
真剣な眼差しで10039号を見つめる美琴。顔は強張り、全身に力が入っている。
一度だけ深呼吸をすると両手で大事そうに抱えていた紙袋を10039号の前に差し出す。

「これ、映画のお礼。喜んでくれるか分からないけど…」
「!?わざわざその為に来てくれたのですか!?とミサカはお姉様の心遣いに感激しつつ紙袋を受け取ります。
 早速開けても良いですか?とミサカは今すぐ開けたい衝動を抑えつつお姉様に確認を取ります」
「うん…」

10039号は紙袋を受け取るとそわそわと落ち着かない様子で美琴と紙袋を交互に見つめ、開けて良いのかを聞く。
許可が下りると、待ってましたと言わんばかりに袋を開け、中身を取り出すとそれを手の平に乗せる。
それは…ゲコ太のイラストが描かれたバッジだった。
美琴は10039号の動きを見つめたまま動かない。いや、動けないでいた。

690上琴患者A:2010/04/25(日) 21:27:54 ID:mXKuCtas

「そういうことでしたか、とミサカはお姉様の様子がおかしい理由を悟ります
 …何故ミサカにこれを?とミサカはお姉様に問いかけます」
「…映画館でアンタにお土産を選んでた時にそれを見つけたの。そしたらあの子の事を思い出しちゃってね…。
 ごめん、アンタがあの子じゃないのは分かってるけど、それを見たときアンタにそれを渡したいと思ったの…」
「お姉様はあのミサカの事をどう思っているのですか?とミサカは心を鬼にしながら質問を続けます」

質問を続ける10039号、過去の記憶に立ち向かっていると感じた彼女は「気にしなくて良い」という言葉を飲み込む。
ここで無用な優しさを掛けてしまっては彼女の為にならないと思ったからだ。

「あの子は私が初めて出会った妹達だった、最初は戸惑ったけど、一緒に街を歩いたりアイスを食べたりお茶を飲んだり…
 バッジを取り合ったり…本当の姉妹みたいだなと思った。でもあの子は…」
「では、あのミサカとの思い出は辛いものですか?とミサカはお姉様の言葉を遮りつつ次の質問をします」
「…辛いし悲しいけど、でもそれだけじゃない、一緒に過ごした時間はとても楽しい時間だった…」
「ミサカもですよ、とミサカはお姉様と同じ気持ちだという事を伝えます」
「え…」
「ミサカはあのミサカではありませんが、あのミサカの記憶は共有しています、とミサカは説明します
 あの時のミサカはまだ感情が希薄だった為、曖昧ではありますが、
 お姉様に初めて会ったあの日は楽しい出来事として今も尚、ミサカに残っています、とミサカは当時を思い出しながら目を細めます。
 それにお姉様があのミサカの事を忘れずに、またその死を悼んでくれた事を嬉しく思います。とミサカは率直な感想を述べます。」
「アンタはそんな風に思ってくれてたんだ…ありがとね。…私はあの日の事は忘れないわよ…」

悲しい記憶はそう簡単に癒える事はない。一週間前の流星の日に伝えた妹達の想い。それでも美琴の心には未だに大きな傷が残ってしまっている。
辛そうに歪む顔を10039号は見ていられなかった。そしてこの状況で自分にできる事を考える。そして

「お姉様があのミサカの事を覚えててくれるのは嬉しいのですが、
 それがお姉様の足枷になってしまうのはあのミサカ…死んでいった妹達は誰一人望まないでしょう、とミサカは記憶を受け継いだ者として述べてみます」
「…アンタは、本当に優しいわね」
「お姉様の妹ですから。それに妹達の事でこれ以上辛い思いをさせてしまうのは、妹達にとって、とても耐え難い事なのです、
 とミサカは辛そうなお姉様の顔を見て心を痛めます」
「…」
「…お姉様はこのバッジにどんな想いを込めましたか?とミサカは真剣な眼差しでお姉様を見つめます」
「…あの出会いをただの悲しい記憶のままにしておきたくなかった。あの子の死を乗り越えて、前に進みたいと思った。
 だからそのバッジには死んでいった妹達の分まで幸せになるっていう想いと、今いる妹達を幸せに…今度は絶対に守るっていう想いを込めたの」
「そうですか、とミサカはお姉様の言葉を深く胸に刻み込みます」

691上琴患者A:2010/04/25(日) 21:28:22 ID:mXKuCtas

美琴のバッジに込めた想いを聞いた10039号は目を瞑ると手の平に乗せていたバッジを両手で胸に抱き寄せる。
そして目を開くと右手の手の平に乗せたバッジをスッっと美琴の前に差し出しす。
美琴は付き返されたのかと思い一瞬ビクッとするが、そのまま10039号の言葉を待つ。すると…

「では、このバッジをミサカに付けてください、とミサカはお姉様に催促します」
「…私が付けていいの?それを受け取ってくれるの?」
「勿論です、とミサカは即答します。その上でお姉様に付けていただきたいのですよ、とミサカは再度お姉様に催促します」
「うん、わかった」

少しだけ震える手で10039号の手の平からバッジを取り、しゃがみ込んでバッジを付ける。…あの時と同じ場所に。
立ち上がり10039号を見る美琴。そこには左手でバッジを撫でながら、その表情を綻ばせている10039号の姿があった。
―――瞬間、美琴はその姿に9982号を見た。そして息を詰まらせ10039号に抱きつく。

「ごめん!ごめんね!守ってあげられなくて!辛い目に遭ってるのに気付いてあげられなくて!
 アンタ達の分まで幸せになるから!この子達を幸せにするから!だから、だから…ずっと見守っててね…」

堪えきれなくなった感情が堰を切ったように溢れ出す。頬を伝う涙が10039号の制服を濡らしていく。
そんな美琴の姿にやれやれと肩をすくめる10039号。そのまま美琴を抱きしめてよしよしと頭を撫でる。

「全く、これではどちらが姉なのか分かりませんね、とミサカはお姉様の泣き虫っぷりに思わず頭を撫でてみます。
 …ではミサカもこのバッジに想いを込めましょう、とミサカは今だ泣き続けるお姉さまに宣言します」

そう言うと抱きしめる力を少し強める10039号。美琴は泣きながらも妹の言葉に耳を傾ける。

「妹達はいつでも、何処でもお姉様の幸せの為にあり続け、死んでいった10031人の妹達の分まで幸せになります、
 とミサカはゲコ太のバッジに妹達の想いを込めます」
「…ありがとう、本当にありがとう!」
「さ、もういい加減泣き止んでください、とミサカは制服が濡れてきた事を隠しつつお姉様に告げます」
「もうちょっとだけこのままでいさせて…」
「それは構いませんが、ミサカネットワーク内で重大な問題が発生しました、とミサカは非常事態であることを告げます」
「…え?」

10039号の言葉に顔を上る美琴。どうしたのだろうと思っていると、バァン!!と扉が勢い良く開けられ二人の妹達が入ってきた。
御坂妹(10032号)と19090号だ。彼女達は部屋の扉を閉めるとつかつかと歩み寄り、抱き合っている二人を引き剥がす。
その顔は少し怒っているように見える。突然の事態に目を白黒させる美琴だが、彼女を無視して二人は10039号に詰め寄る。

692上琴患者A:2010/04/25(日) 21:28:46 ID:mXKuCtas

「抜け駆けとはいい度胸です、とミサカはお姉様のプレゼントを受け取った10039号に詰め寄ります」
「あのチケットは皆でお金を出して買ったものなので、ミサカにも所有する権利があります!とミサカ19090号はバッジを見つめつつ所有権の主張をします」
「これはお姉様がこのミサカの為に買ってきてくれた物です、それにこのバッジにはお姉様の『特別な想い』が込められていますので渡すわけにはいきません、
 とミサカ10039号は鉄壁の構えでバッジを死守します。
 それにあなた(10032号)にはお義兄様から貰ったネックレスがあるではないですか、とミサカ10039号は先に抜け駆けをした事を指摘します」
「ミサカは何も貰ってません!とミサカ19090号は二人の身に付けたプレゼントを羨望の眼差しで見つめながら憤慨します!」
「「汚い真似(ダイエット)をして抜け駆けしたお前は黙れ!とミサカ10032(10039)号は裏切り者を睨み付けます!」」
「ちょ、ちょっとアンタ達、喧嘩はやめなさいって!アンタ達にも何か買ってあげるから!」

ぎゃあぎゃあとバッジの奪い合いを始める三人の妹達の姿に驚き戸惑う美琴。
代わりに何か買うという言葉に10032号と19090号が振り返る。

「そういう問題ではありません!このバッジでなければ意味がないのです!
 とミサカ10032号はお姉様の想いと妹達の想いが込められたバッジを指差しながら訴えます!」
「で、ではミサカはお義兄様から指輪をいただきたいです!とミサカ19090号はさり気なくとんでもない要求をしてみます」

想いの詰まった世界に1つのこのバッジが欲しいという10032号。
対して自らの要求に頬を少し赤らめ、モジモジとする19090号。そのさり気ないお願いに三人は敏感に反応する。
中でも美琴の反応は異常なまでに早く、他の二人が口を開く前に叫ぶ。

「それは絶対駄目!当麻から指輪を貰っていいのは私だけなんだから!!」
「「「………」」」

美琴の叫びにピタリと動きを止める妹達。そのまま美琴の方を見ると大きくため息を付く。

「はいはいご馳走様、とミサカ10039号はお姉様の主張に嘆息します」
「心配しなくてもお姉様からお義兄様を取ったりしませんよ、とミサカ10032号はお姉様の必死の訴えに呆れ果てます」
「冗談も通じないとは、とミサカ19090号はお姉様の慌てぶりを笑ってみます」
「冗談に聞こえなかったんだけど!?っていうかアンタ達のその呆れたような反応は何!?」
「まあそれはそれとして、お義兄様を待たせたままで良いのですか?とミサカ10039号はずっと待っているであろうお義兄様の事を心配します」
「…あ」
「完全に忘れていたようですね、とミサカ10032号はお姉様の間抜けっぷりをせせら笑います」
「今回ばかりは妹達への愛が上回ったようですね、とミサカ19090号は満足げに微笑みます」
「さ、早くお義兄様の所へ行ってあげてください、とミサカ10032号は促します」
「あ、うん。それじゃあまたね」

693上琴患者A:2010/04/25(日) 21:29:13 ID:mXKuCtas

そう言って部屋を出ようとする美琴。扉に手をかけた所で妹達が声を掛ける。

「お姉様、来てくれてありがとうございました。このバッジは大切にしますね、とミサカ10039号はバッジを撫でながら別れの挨拶をします」
「それと妹達関連で何か不安になることがありましたらいつでもミサカの所へ来てください、
 とミサカ10032号はもう少し話したかったのを我慢しつつ述べます」
「まあ、いつでも、何処でも、どのミサカに不安をぶつけても返ってくる答えは今までも、そしてこれからも変わりませんが、
 とミサカ19090号はちょっぴり格好良い決め台詞を言ってみます」

振り返って妹達の言葉を聞く美琴。その優しさに触れた美琴はその言葉を噛み締めるように目を瞑る。
そして再び目を開けると妹達を真っ直ぐ見つめ、言葉を返す。

「ありがと、…妹達は最高の妹よ」

悪戯好きで、人の話を聞かなくて、何を考えているのか全く読めない妹。
でも確かに自分の幸せを望み、影から支えてくれる、そんな優しい心を持った妹。そんな彼女達だから―――

「私はあんた達の事が大好きだからね」

一番伝えたかった事。今まで言いたくて、でも怖くて言えなかった事を口にした美琴。
妹達に笑顔を見せると『またね』と言って部屋を後にする。そして部屋には思わぬ言葉に固まった妹達が残された。

「まさかお姉様からあのような事を言っていただけるとは思いませんでした、とミサカ10039号は相変わらずバッジを撫でながら先ほどの言葉を思い出します」
「…」
「…そうですね、とミサカ19090号は完全にフリーズした10032号を見つつ頷きます」
「このバッジは妹達にとっての宝物ですね、とミサカ10039号はこのバッジを守り抜く事を誓います」
「そのバッジを死守するのは良いですが、命を投げ出すような事はしないように、とミサカ19090号は10039号に釘を刺しておきます。
 バッジを守ってあなたが命を落とすような事があればきっとお姉様は悲しみますので、
 とミサカ19090号はバッジを再度羨望の眼差しで見つめながらも補足します」
「分かっていますよ、とミサカ10039号は他の妹達に優越感を覚えつつ返答します」

美琴の言葉に完全に思考停止した10032号を余所に会話を続ける二人。
バッジと共に受け取った想いをしっかりと胸に刻み、これからも受けた恩を返していこうと心に誓うのだった。

694上琴患者A:2010/04/25(日) 21:29:43 ID:mXKuCtas
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

病院を後にした美琴と当麻は堤防沿いの道を歩いていた。辺りはもう夕焼けに染まっている。
そんな中、二人は手を繋ぎ、先ほどの出来事を話していた。嬉々として語る美琴の言葉に当麻は相槌を打ちながら聞いていた。

「それでね、あの子達が目の前でバッジの取り合いを始めちゃって」
「なんか御坂妹が慌てて部屋に入っていったのはそういうことだったのか、部屋に入った方がいいのか迷ったけど外で待ってて良かったぜ」
「ごめんね、心配ばかりかけて」
「気にすんな、それよりその様子だとちゃんと乗り越えれたみたいだな」
「完全に乗り越えられたかは正直分からないけど、多分もう大丈夫よ。私の進む道は決まったから」
「そっか」
「でも、それには当麻が居てくれないと駄目だからずっと側に居てね?」
「ああ、勿論そのつもりだ。美琴の歩く道が俺の歩く道だからな」
「…なになに?それってもしかしてプロポーズ?」
「へ!?いやいやそこまで深い意味は持ってなかったんですよ!?」
「そんな…そんな軽い気持ちで言ったの…?ぐすん…」

当麻の言葉に俯きしょんぼりとする美琴。その仕草を見た当麻は慌てる。

「いやいや、本気ですよ!?ですがプロポーズはちゃんとしたいというか…あ」
「へ!?」
「まてまて!今の無し!!聞かなかったことにしてください!!」
「仕方ないなぁー、もう聞いちゃったけど、その時を楽しみに待っててあげるわよ」

むふふっと笑うと繋いだ手を外して右腕に抱き付き擦り寄るように体を密着させる美琴。

「さ!罰も二回残ってることだし、デートの続きに行きましょ!」
「げぇ、まだ覚えてたんですか…、何とかなりません?」
「もう!しょうがないなぁ〜、今日は気分が良いから許してあげるわよ」
「本当ですか美琴サン!?その優しさに感謝ですよ!」
「感謝ならあの子達にしなさい、ほら行くわよ」

そう言ってグイグイと当麻を引きずりながら歩く美琴。妹達との絆をより一層強くした彼女は、
この先新たな問題が起きたとしても、乗り越えていけるだろう。側に居てくれる大切な人達と支え合いながら。

695上琴患者A:2010/04/25(日) 21:33:20 ID:mXKuCtas
以上になります。
相変わらずのぶっ飛んだ内容ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
妹達分が多いのは本当に申し訳ないような気もしますが…

それでは失礼しました

696■■■■:2010/04/25(日) 21:45:23 ID:XYa5n5Hw
>>695
やばい…
こう、なんていうか涙腺が…
GJだ!

697■■■■:2010/04/25(日) 21:48:48 ID:3PZwNIZc
>>695
GJです!
美琴と妹達のやり取りに感動し、
9982号のミサカの事を思い出して泣けてきてしまいました。
良い作品ありがとうございます!

698■■■■:2010/04/25(日) 21:50:43 ID:1m23ekGw
>>673
この後どうなっていくのかにわくわくしますね。
>>695
それは貴方の愛です!問題ありませんよ。

699■■■■:2010/04/25(日) 22:39:52 ID:GbJtOwbo
>>695
GJです。
正直「死」を使って感動を呼ぶ手法は好きではないので原作コミックにおける9982号の
描写は嫌いなのですが(一方通行の非情さ、および実験の非道を描写するには最適
ではありましたが)この話に於いては彼女の使い方が非常に効果的だったと思います。

9982号は死んだけどその死が美琴の行動に繋がり、引いては上条さんの活躍を呼び、
今の彼女達の笑顔に繋がっている。9982号の死は決して無駄ではなかったんだ、ラスト
まで読んでそう思ったのですが深読みしすぎでしょうか?いい話だったと思います。

700アミノ酸:2010/04/25(日) 22:44:22 ID:f1KqUgj2
皆様、こんばんはです(*'-')ノ

間に合ったー。ということでまず返信させていただきます。

>>603
 続きを楽しみにして下さってありがとうございます<(_ _)>
にゃんの破壊力は凄まじいですね!美琴につけたらこれは
やばいー!とキーボード打つ手が震えてしまいました。

すごい投稿ラッシュ!きゃー書き手の皆様GJです!
よし!あとで読もう、まず投下してから…。どなたとも被らなさそうなら
50分後ろに「とある宣伝の超電磁砲<レールガン>」続きを投稿したいと思います。
えーおそらく4,5レスほどお借りします。宜しくお願いします。

701とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(1):2010/04/25(日) 22:49:51 ID:f1KqUgj2


「…っそ、それは」
「それは?」
「あっあんたが、『好き』だからよ!」
 と爆弾をうっかり投下してしまった少女と、その爆弾の衝撃でフリーズする一同。
「………えっ?」
 数秒のタイムラグの後、衝撃から立ち直った少年の発した言葉は、ものすごく間の抜けたものとなった。

――舞台は、少女が飛び出した直後に遡る。

「「御坂さん?!」」
 驚いて、佐天と初春は同時に叫んだ。
思わず立ち上がったため、ガタっとテーブルに振動が伝わり、
二人の驚きを表すかのよう、飲みかけのジュースに波紋が広がる。

「どっどうしましょう、佐天さん!」
「と、とりあえず…御坂さんを追いかけよう!」
 それぞれの代金を伝票から素早く確認。勿論、いなくなった美琴の分も含め必要な金額をテーブルに置く。
「あ、あの、すいません!お先、失礼しま…」
 とそこで二人は気が付いた、なんだか様子がおかしい上条さんに。

「あの、上条さん…?」
 もしもーしと佐天は呼びかける。
よく見るとその視線はどこか遠くへ行っていて、心なしか顔も赤い気がする。
もしかしてこれって…脈アリなのでは?と思い切って尋ねてみる。
「上条さん、御坂さんのことどう思ってますか?」

「……………」
 どこか上の空で相変わらず反応がない。
これはもう単刀直入に聞くしかないと考え直し、佐天はズバリ言った。
「上条さん!御坂さんのこと好きですか?」
 『好き』という言葉に過剰なまでに反応した上条は、一気に現実に戻った。
真剣そのもの表情で尋ねる佐天と目が合い、慌てて目をそらす。

「上条さん、答えて下さい!」
 と佐天の剣幕に、初春はあわあわしているのだが成り行きを見守る事にした。
「……分からない」
  上条は回答できないと告げる。
「それは御坂さんに対する気持ちがですか?」
「いや、そもそも俺には好きっていう気持ちが分からない」
「…えぇ〜とそれって」
 あれ?どこかで聞いた話だなと佐天はデジャヴを感じた。今日の御坂さんの話がそれに近い。 
これはどう切り出したものかと考えていると、初春がここは助け舟を出した。

「上条さんにとって御坂さんはどんな人ですか?」
 初春からの質問に、ああ、それなら答えられそうだなと上条は言った。
「俺にとって御坂は…」
 と一人の少女―御坂美琴に対してのありのままの気持ちを上条は語る。

「初めて会ったときは、ちょい生意気なお嬢様って感じでな。
人をあんたかバカしか言わねぇ、タメ口で年上に敬意を払わねぇ…。
でもな、気付いたんだ、何でもない様に装ってるけど、影ではすっげぇ努力し
ていて、実は意外と熱いハートの持ち主で、困った人を放って置けないお人好
しで、いい奴なんだよな…それから」
 
 陽だまりの中にいるかの様なやさしさに満ちた口調で上条は告げる。

「いつも明るくて、元気をくれる、かけがえのない存在だ」
 だから何よりあいつが悲しむ顔はみたくない―出来ることならその笑顔を守りたいと。
俺にとって御坂はそういう奴なんだよと話を括った。

702とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(2):2010/04/25(日) 22:51:50 ID:f1KqUgj2
 
 その内容は、佐天と初春を更に困惑させるようなものであった。
上条は『かけがえのない』『守りたい』と、聞いてるこちらが赤面しそうなワードをいくつも出している。
 そもそも好きという気持ちが根底にあって、そこから徐々にステップアップして、至る心境ではないのかと
つっこみどころは満載なのだが、当の本人は全くわかってないらしい。

 なんてこった…上条さんは、御坂さん以上に鈍感だ。
御坂さんの話の方がまだ簡単だ、気持ちの正体が分からないただそれだけのこと。
けれど上条さんの場合は、かけがえのない存在だということを理解していても、好きという気持ちは分からないという。

「上条さんは、御坂さんの事嫌いですか?」
  佐天は諦めず言葉を換え問い直す。
「御坂の事は、嫌いじゃないぞ」
「じゃあ、好きなんですか?」
  とすかさず初春が問い返す。
「いやだからそうじゃなくてだな…」
  と上条は一呼吸おき
「ただ大切なんだ」
  と答えた。
答えは振り出しに戻り、つまるところ堂々巡りである。

「…とうま」

 事の成り行きを静観し、黙々とご飯を食べ続けていたインデックスが口を開く。
今まで、静かだっただけにその一声は三人の間に響き渡る。

「何だ、おかわりか?」
 てっきりご飯が足りないのかと思って、そう返した。

「ち・が・う・んだよ」
 むぅ〜とインデックスは顔を膨らませて怒るが、あまり説得力はない。
「おかわりじゃないなら、何だ?」
 はぁ〜とため息をつく。
「ねぇとうま」
「?」
「何で、みことが怒ったのか分かるよね?」
「…そりゃ、まぁ。俺があいつに黙ってからだろ?」
「半分、正解かも…でも半分は間違ってるんだよ」
「ああ、そりゃさっき言ってた発言になるよな…怒った理由には」
 先ほどの光景を思い出してすこし頬を赤くする。
「それも違うんだよ」
 インデックスは全然分かってないねと告げる。
「私に嫉妬したから、とうまに怒ったんだよ」
「えっ?上条さんは意味がよくわかりませんのですけども?」
「とうまは私の事なんとも思わないの?」
 とのインデクッスの問いかけに、えぇーいきなり何言ってやがるんですかこの子はー状態であるが、冷静に考えてみる。
居候のインデクッスに対して、そりゃ状況によってはトキめいちゃったりなんて事はする。けれど…それだけだ。
「上条さんも、男ですから、不覚にもトキめいちゃったりすることはありますよ!」

703とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(3):2010/04/25(日) 22:53:41 ID:f1KqUgj2

 やっぱり、とインデックスはどこか寂しそうに笑い。
「みことだったら?」
「何をだ?」
 インデックスが何を言おうとしてるのか、さっぱり見当がつかない。
「とうまは…みことを泊められる?」
「はぁ?!なっ何言ってるんだお前…そっそりゃ、ダメにきまって…」
「私はよくて、みことがダメなのは何でかな?」 
 
 インデックスはよくて、美琴がダメな理由。

「…………」
「とうまは、もう本当はわかってるんだよ」 
 インデックスは、何でもお見通しですよとでも言うかのように。
「とうまは、みことの事…好きなんだね」
「いやだから…「とうま!!」」 
「私、さっきから聞いてたんだよ、全部覚えてるんだよ、とうまの言った事」
 インデックスは捲くし立てる。
「とうまは、そうやって言葉で囲って本当の気持ちを隠してるんだよ!」 
 インデックスの放った言葉は、今日二度目の衝撃となってヒットした。
「!」
 大切に思うその気持ちの根底にあるもの。
「わりぃ…インデックス、俺…」
 インデックスの目は充血していた。
今にも涙腺が崩壊しそうな表情で、上条はこのまま放って追いかけていいのか躊躇する。
「………早く行け」
 聞き間違いかと思うほど物凄い声音で発せられたその言葉に、一瞬ビクッとなる。
「いや、でもな…」
「インデックスさんは私達に任せて下さい!」
 佐天と初春からの背中を押す言葉。
「「上条さん、行って下さい!!」」
 だから御坂さんを宜しくお願いしますと二人は言った。
数分後、とあるファミレスに三人の少女が残された。
 
 ぽつりぽつりと、インデックスは話しだす。
本当は、美琴があんな風に突然思いを告げて、驚いて。
「みことは、急に何を言ったかと思えば、逃げるなんて失礼かも!」
 と茶化して言うつもりだった。
 
 当麻の顔を見るまではそう言うつもりだった。
でも言えなかった…分かってしまったから、言えなかった、何も言えなくなってしまった。
 
「そっか…」
 うんうん、と少々もらい泣きしながら、二人の少女は、一人の少女を慰める。 
恋って難しい…思うように行く事もあれば、望まぬ結果もある。でもそれが恋なのだ。
次の恋がうまく行きますようにと願って、今はいっぱい泣けばいい。

「よーし、じゃあこれから、やけ食いだー!」
「そーですね!」
「!」 
 
二人は知らない。この小動物の様に愛くるしい少女は、四次元ポケット並の胃袋を持ってる事を…。

704とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(4):2010/04/25(日) 22:55:58 ID:f1KqUgj2

一方、夕闇が迫る街中を走る、少年が一人。

「御坂、どこだ?!」
 電話を掛けてみても応答しない。電話に出たくないのか、或いは電源が切れてるのか。
ただ宛もなく闇雲に走ってもしょうがないので立ち止まり、息を着いた。落ち着いて、向かいそうな場所を考える。

 影は闇に紛れていき、時間だけ過ぎていく。
タイミングというのは、重なるもの。だから、ある意味二人の出会いは運命だったのかもしれない。

「あら?」
 声の先には見知った少女がいた。
その少女はとてつもない笑みを浮かべ。
「そちらから、来て頂けるとは…向かう手間が省けましたわ」
 何やら意味深な発言に、もしかして御坂の事で何か知ってるかもしれないと思い至る。

「御坂の居場所知ってるのか?!」

「お答えしても宜しいですが…そうですわね」
 と少女は鈴とした声で続ける。


―−じゃーいってみようか 

カチンコがなりツインテールの少女が颯爽と登場。 
 
「ジャッジメントですの!」
 
 何もない空間から現れた少女は、風紀委員の腕章をぐぃと袖を引っ張り、見せつける。

「とある科学の超電磁砲<レールガン>第四巻、4月28日、DVD&ブルーレイで発売ですの!」

 悪党どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ

「初回限定版には、豪華特典がついてきますのよ!」

 空間移動とコンボで場を収め

「発売まで、あと3日ですわ!」

 決めポーズ。

「わたくし、今日は急いでおりますの。ですから色々と早送りしていただけると助かりますわ」

 既に、撮影が始まってから2時間は経つ、お姉さまのほうが先に終わっているかもしれない。
何回、撮り直せば気が済むのだ。いい加減にしてほしい。が、どこか気に食わなかったらしく、もう一度との声。

 ようやく終わった頃には、お姉さまの姿はなく、一人寂しく帰路につく。

結局、今日も計画は実行できなかった。

黒子のマル秘予定帳
***************************** 

その1 お姉様と合流し、ファミレスで親睦を深める。
 ※佐天、初春が着いてきた場合、プランBへと移行する。

その2 お姉さまを買い物に誘う。
 ※これも佐天、初春が着いてきた場合、プランCへと移行する。

その3 お姉さまに似合う下着と、わたくしの勝負下着を購入。
 ※もちろん、佐天、初春が着いてきた場合、プランDへと移行する。

その4 お姉さまとのプライベートタイム。
 ※最終段階、大詰め、失敗は許されませんの!
  佐天と初春はプランB〜Dのいずれかで駆除する事。

******************************

つづく!

705アミノ酸:2010/04/25(日) 22:58:52 ID:f1KqUgj2
以上になります<(_ _)>

お楽しみいただけましたでしょうか?
インデックスファンの皆様にはすいません。かわいそうなことに;
でも佐天さんと初春さんがついてるから大丈夫!

えーあと二回お付き合い下さい。それでわ!

706コッカラ:2010/04/26(月) 01:20:09 ID:Cb1S1Fmk
コッカラです。レスのお返しをします
>>675 >>676 >>679上琴患者Aさん
幻想御手は時系列的にこのタイミングで入ってきますが、
上琴中心でしかも禁書寄りで書きたいのであまり触れないと思います。期待させちゃったらすいません。
2は大体の方針は決まりましたが、1のほうが書きやすいと思うので先に1を書きあげてみます。問題がなければその後に2を…

>>677 >>678
設定とか説明不足ですいませんorz
今回の話では上条兄妹中心で禁書再構成をやっていきたいのですが、
上手く原作2巻とマッチさせられる上琴ができなかったので漫画版に倣って三沢塾編はパスいたしました
よって姫神の出番を失くしてしまったわけですが、その償いの意味を込めてああいう形で出してみました
すでに何らかとの接触によりケルト十字を取得したということにしていますが、やっぱり不味かったかな…
上でも説明した通り先に1を書いてから2に移りたいと思います

>>680
おっと、記憶喪失が美琴に移ったなんて誰も言っていませんよ
ネタばれはしませんが2のルートでも必ずハッピーエンドにして見せます

>>698
ありがとうございます
考えはまとまってきていますが続きがまだ全然書けてない状況なのでしばしのお待ちを…

ちょっとここで設定について
基本的な人間関係は変わりません
ただ御坂夫妻は父方の親戚という設定で行きます。美琴が変わらないのは美鈴さんに似ているからということで…
二人の幼いころの話もちょくちょく入れますが原作の範囲内での私の勝手な妄想なのであしからず

続いて感想です
>>695上琴患者Aさん
超GJ!!
「超電磁砲」4巻は泣けましたからこれは素晴らしい!
美琴の妹達に対する気持ちがすごく伝わってきますね!

>>705アミノ酸さん
GJです!!あと2日頑張ってください!!
幼馴染シリーズも楽しみにしています

707■■■■:2010/04/26(月) 02:21:43 ID:x5BrMC5A
>>695
GJ過ぎます
レールガンっぽい話で本編でもそのまま使えそうな
クオリティなのがすごいです

708上琴患者A:2010/04/26(月) 15:16:03 ID:MtQqHzYY
あの物語を読んでくれた方、GJくれた方、本当にありがとうございます。
ってことで返信をすこしばかり。

>>696
>>697
実は所々泣きながら書いてました!おかげで画面にモザイクがかかってカオスでしたよw

>>698
妹達を好きになって貰おうという巧妙な罠があったりなかったり(ぇ)

>>699
あの作品から自分の想いを感じ取ってもらえてとっても嬉しいです。
本編でも上琴妹にああいう悲しい出来事を支え合って乗り越えて幸せになってもらいたいものですねぇ…。

>>760コッカラさん
前回は妹達側の想いを描いたので、今回は美琴側を意識して書きました。
まあ妹達登場で私の抑えがきかなくなり視点が崩壊してしいましたが

>>707
今の自分の全力を注ぎました!もぅ抜け殻です…
本編ではプロの方がもっと感動できる話を書いてくれるはずです…多分。
(9982号についてはあのまま終わってしまいそうな気が…)

ではまた次回作(?)で会いましょう。ではでは失礼します。

709ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 16:58:14 ID:hzLMvff.
5分後に7レス。

元ネタはSS2の美容室ネタでござんす。

尚、「アチラ」の方はオチが超絶に気に入っておらず、再度練り直し中。決して止めてはいません…

710ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:02:19 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を1】

 店主・坂島道端は、その少年の顔にシェービングクリームを塗りたくりながら、軽い口調で話しかけた。
「上条クンは彼女いるの?この顔だとモテるんじゃないの?」
 上条当麻はクリームを気にしながらくぐもった声で、
「こんな顔がどうやったらモテるんすか……出会いが無くって彼女なんてとてもとても」

 隣にもカットスペースがあり――保健室にあるような布の衝立で隔てられた、そのスペースには少女が椅子に座っていた。
 ストレートパーマ用のアイロンを使って、スタッフに髪の毛を伸ばして貰っているその少女は、白井黒子。――そして。

 待合室でまずコートを掛け、マフラーを取り外してハンガーに掛けようとしていた御坂美琴の動きがピタッと止まる。
(え?あの馬鹿そこにいるの!?)


 ◇ ◇ ◇

 10:00AM。
 白井黒子は行きつけの美容室に、予約時間通りに到着した。
 ふざけた店主であるが、腕は確かだし、カット30分パーマ1時間30分の2時間で済ませてくれる。
 また、この店は学舎の園の外にあるので、中の美容室より情報収集の幅が広い。
 そして、店主の道端とはくだけた会話ができるので、結構気晴らしになっており、これが最大の利点だったりする。

「ストパだっつってんだろ!!」
 と毎度お約束のツッコミも済ませ、ちゃちゃっとカットしてもらいつつ。
「それにしても、椅子2つで回すのはよろしいんですけど、スタッフ3人は多すぎでないですの?」
 座席は実際4つあるのだが、2つは大きなヌイグルミが占拠しており、全く使っていないと前に聞いていた。
「今日はフルメンバーだけどね。まあ固定給だから懐の傷み具合は変わらないよ」
「貴方の懐はどうでもよろしいんですけどね」
「いや信用できるスタッフしか雇えない環境だからね。補充に頭悩ませるよりマシだよ。補助金もあるし」
 等と他愛なく話し、ストレートパーマ用の薬剤を頭から洗い流して一息ついている時に、その客はやってきた。


 ピヨピヨ、ピヨピヨ♪
 電子音と共に、自動ドアから少年が入ってきた。
「スミマセン、11時半に予約してた上条、ですけど……」
「ああ、いらっしゃい」
 道端が黒子の髪に2段階目の薬剤を塗りながら声だけで対応する。
 黒子は目を見開いて固まった。
(……! あの類人猿がっっ!?)

 マフラー預かりますね、とスタッフの声が聞こえる。
 スタッフは、上条をそのまま黒子の隣の椅子に案内した。衝立でお互いが視界に入ることはない。
「上条様は初めてですね?」
「ええ。学校から指定されたもので……このチケットは今渡した方がいいですか?」
「無料チケットですね。いえ、お帰りになられる時で結構です」
 上条とスタッフのやり取りが聞こえる。
(つまり、学園はあの殿方のヘンな力もDNA保護に入ったという事ですの……?)
 坂島道端は、さっきまで軽口を叩いていた白井黒子が、急に一言も話さなくなったので、不思議そうな顔をしている。
 黒子は自分の声で存在が一発でバレるのが分かっているため、道端には人差し指を使ってしーっ、と合図した。
(12時にはわたくしの後ということで予約した、お姉様も来てしまいますのに……)

711ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:02:31 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を2】

 このあたり、客商売のプロである道端は、どうやらワケありだなと判断し、黒子担当をスタッフに任せ、
手を拭きながら上条への対応に切り替えた。
「初めまして、店主の坂島です。よ・ろ・し・く」
「あ、よろしくおねがいします」

「こりゃあ、いい髪型だ。やりがいがあるねぇ」
 顎ヒゲを片手で擦りながら、道端は上条をどうカットするか思案気だ。
「ははは、ちょっとヤマアラシみたいになって収拾がつかなくなってですね……」
「まぁ、まかせときんさい。髪型はこのままでいいんだよね」
 手際よく上条にエプロンを取り付けながら、ちゃちゃっと準備をはじめ出した。

 店のドア側の座席に座っている白井黒子は、自分の髪の毛はスタッフに任せっきりになり、横の会話に集中している。

 濡れタオルで頭を濡らしても、上条の髪の毛は倒れず、相当の剛毛のようである。
「しかし学校からウチを指定されるとは、相当な能力者なのかな?上条クンは」
「いや〜、無能力者ですよ。なんで学校が指定するか分かんないんですけどね…まあタダ券貰ったし、で」
「ほほう……」
 道端の手によってハサミが踊り、リズミカルに上条の髪の毛をサイドから切りそろえてゆく。

「上のカメラ、なんだか分かる?」
 大小無数のカメラ群が、上条当麻を見下ろしている。
「い、いや、最初からビビってたんですけど、…なんすかコレ?」
「これねー、常盤台中学が取り付けてるんだけどね。要は監視されてるんだよね。髪の毛採取されないように」
「……なるほど、DNAサンプルですか…」
「そそ、飲み込み早いね。ウチは常盤台中学をはじめ、能力者のカットを任せられてるの。おかげで……」
 道端は肩をすくめた。
「一般のお客様は、このカメラ見たら二度と来ないね。能力者の人は逆に信用してくれて常連化するけど」

 上条はちらっと横を見た。
「この保健室みたいな衝立もそのせいですか?普通美容室って外から丸見えなくらいオープンじゃないですか」
「これは僕のやり方ってだけ。能力者の子ってさ、好奇の目で見られるケースも少なからずあると思うんだよね」
 道端は手を休めず上条の髪の毛と格闘する。
「だから、個室みたいにしてリラックスさせてあげよう、とね」

「そこまで能力者の子の事を意識して営業してるなら……学舎の園の中に店構えないんですか?」
「男いないじゃない」
「……」
 上条は一瞬ひきつった表情を見せる。

「……何か勘違いしてない?客が女の子ばかりだとセンス偏るし、スタッフも男雇いにくくなっちゃうしね」
「あ、ああそうですね」
 上条は道端の細い滑らかな指先を見て、ソッチ系かと思っていたりしてたのだが。

「常盤台中のカメラてことは、結構常盤台の子、来るんですか?」
 話題を変える様に上条は聞いてみた。
「それなりにねぇ。知り合いいるの?」
「ええ、いますよ」
「へぇ。あそこの子たちと知り合える機会ってそうそうなさそうだけど? 夜遊びする子も少ないし」
「まあ色々ありまして……」

 じゃあ、ちょっと洗髪しようか、と道端はイスをゆっくりと倒す。
「顔剃りもやる?理容免許あるから出来るけど」
「あ、お願いしまっす」
 道端はスタッフに仰向け洗髪を指示し、一旦黒子の方に戻る。

712ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:02:42 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を3】

 白井黒子は携帯を取り出し何やら打ち込むと、ニヤニヤ笑っている道端に画面を見せた。
『察しの通り知り合いですの。次に来る御坂お姉様も。その常盤台の知り合いとやらが、どういう子か聞き出す事。』
 道端は指でマルを作り、頷いた、その時……

 ピヨピヨ、ピヨピヨ♪
 電子音と共に、自動ドアから少女が入ってきた。
 御坂美琴である。

「こん……」
 美琴は挨拶しようと口を開こうとした瞬間、道端が飛び出してきて人差し指を使ってしーっ、と合図され、口をつぐんだ。
 頭にハテナマークをくっつけたまま誘導され、待合室に案内される。
「洗髪おわりましたー」
 スタッフの声に道端は、もう一度美琴にしーっ、とゼスチャーをし、
「それじゃー、顔剃りの準備ね」
 とスタッフに返しつつ、上条の方のカットスペースに入った。


 ◇ ◇ ◇

「こんな顔がどうやったらモテるんすか……出会いが無くって彼女なんてとてもとても」
 ここで冒頭の会話に戻るわけだが、美琴はそこに上条がいるという事実に動揺を隠せない。
(え、黙って聞いちゃってていいのかしら!? 散髪が終わって、聞いてたの知られたら……ど、どうしよう)

 シャッシャッと上条の顔の上を走るカミソリの音が、小気味良い。
「そうかねぇ……さっき言ってた常盤台の子はどうなの?出会いが無いなんて言って」
「いやあ……さすがに中学生はマズイっしょ」
「上条クンが大学生とかならともかく、2、3歳年下なだけでしょ?……ちなみになんて子?ウチのお客さんかもしれない」
「んーっと……まあいいか。御坂って子と、白井って子ですけどね」
「こりゃまた有名人だね。二人ともウチでカットしてるよ」
「うげ、そうなんですか!」
「二人とも可愛いじゃない」
「……俺は、いつも怒ってるかあきれてるか、そーゆー顔しか思い浮かびませんが……二人とも」

 好奇心の方が優って、聞いてしまっていた美琴は……がくーっと落ち込んだ。
 しかしよくよく考えれば、出会えばいつも照れ隠しで怒鳴ってばかりである……

 道端は上条の眉毛を丁寧にカミソリで整えつつ、ピンポイントで聞き始めた。
「じゃあまず、白井ちゃんはどうなの?好み?」
「いやだから、そういう目では……まーでも、イイ奴ですね、アイツは」
「お、結構高評価?」
「幾分変態気味だけど、それを除けば……しっかりしてるし、頭も良さそうだし」
「ジャッジメントやってるしねえ。たいしたもんだよねぇ」
「ですね。しかしあのテレポートドロップキックだけは、本気で受身取れないので、止めて欲しいですけどね……」
「それはそれは気合入った愛情表現だね」
「何故か俺には攻撃的なんですよね……何かした記憶もないんだけどなあ」

(あの殿方、見る目はありますのね)
 黒子は意外な高評価にムズ痒く感じていた。
 上条には、愛するお姉様を守るため、攻撃的に突っかかってるのは自覚している。
 なので悪口をさんざ聞かされるかと思っていたのだが。
(もしくは、私の攻撃など戯れに過ぎず、相手にされていない……かもしれませんわね)

713ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:02:55 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を4】

 道端は熱いタオルで上条の顔を拭き取りつつ、剃り残しがないかチェックしている。
「御坂ちゃんはどう?」
「御坂をちゃん付けにした人初めて見ましたよ……うーん、アイツですか……」
 上条は一旦目を閉じて考え込む様子を見せる。
 美琴はドキドキしながら、黒子はハラハラしながら、上条が口を開くのを待った。
「わがままで、短気で、怒りっぽくて、泣き虫で、人の話きかねーわ振り回すわで騒がしい奴ですけど……」

 美琴が本気で落ち込む中、上条は続ける。
「でも、何て言うんですかね、それが御坂らしいっていうのかな。そうじゃない御坂だと心配になる」
「……何だかイメージが違うねぇ。快活な子だけど、そんな変に騒がしいトコなんて見たことないなあ」
「マンガでよくある、外面のいいよくできた妹とバカ兄貴みたいな関係? 家の中ではボロクソ言われてる、みたいな」
「はっはっは、上条クンは、お兄ちゃんなんだ」
「宿題教えてもらってたりするバカ兄貴っすよ……妹に頭が上がりませんわー、はっはっはー」

(妹……か。なんだろう、この嬉しさと残念無念な気分が入り交じった感じは……)
 美琴はちょっと落ち着きつつも、内心は相当複雑である。

 上条は道端のジェスチャーに従ってうつ伏せになる。
 襟剃りの準備をしながら、道端はちょっと思った疑問を口に出す。
「そういやさっき、聞き間違いかな?泣き虫って言った?」
「あ……、いや、まずったな。アイツそれ言うと本気で怒るんで、オフレコってことで……」
「じゃあ、泣いたの見たことあるんだ……あんな強気そうな子が、ねえ……上条クンが泣かせたんだ?」
「え、いや、そうなるかな……ボロボロ泣かせちまったけど、ああいう姿見ちまうと、普段の気の強さも許せるっつーか……」

(あんの馬鹿!何ペラペラしゃべってんのよ!しかも黒子聞いてるのに!)
 美琴がワナワナしている、その数メートル先で、黒子は黒いオーラを出し始めていた。
(泣かしただと……? ボロボロ泣かせただとうっ!?) 
 美琴が泣く、それもボロボロ泣くというレベルがいかほどの話か、黒子は想像もつかない。
 泣く暇があったら行動するタイプの美琴が、その場で行動できず崩れ落ちたことを意味する。
(さらに問題は、その後……お二人はナニしたんですの!? 泣いているお姉様をどうしたんですの、あの類人猿は!)
 実際のところ、その類人猿は気絶していたわけであるが……


 首筋全体にシェービングクリームを塗りたくられ、そのまま熱いタオルを被せられる。剃りやすくするためだ。
「でもさー、上条クン結構スゴいこと言ってるの自覚してる?」
「え?」
「たぶん身近にいるから意識してないんだろうけど、外から見たら、最強のLV5を妹扱いなんて、とんでもないよ?」
「ん〜、言ってることは分かりますけど、……アイツは普通の女の子だけどなあ?」

 美琴はカーッと熱くなる。
 何でもかんでも特別視される美琴にとっては、この手の「対等に見てもらう、普通として扱ってもらう」体験が乏しい。
 そこを突かれると、――そう言う資格のある者から突かれると、本当に弱いのである。
(あーもう落ち着け!アイツは別にたいした事言ってるわけじゃない!)

 道端はカミソリを当てながら、前の夏休み終盤で一瞬だけ流れた噂を思い出す。
『聞きました?学園最強、LV5の第一位が倒されたって噂!』
『へえ、スゴイね。ランキング変わるのかねえ?」
『それが倒したのが無能力者って話で。だから嘘くさいってのもあるんですよねー。でも上条当麻、っていう具体的な名前が』
 その噂は、1週間もしないうちに消えた。不自然に消えた。
 学生が少ない中でも、営業していたゆえに掴めた、あやふやな噂。

(レールガン御坂美琴を普通だと言い切る、無能力者か……あの噂は本当だったということかね)

714ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:03:08 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を5】

『店長、ちょっとすみません。ネット発注するもの、追加でありますか?』
「んー、入力しているものだけで……あ、パーマ液とシャンプーを1ロット追加しとこうか。それでいいよ」
『分かりましたー。失礼しました』
 襟剃りをしながらの道端とスタッフの会話を聞きながら、上条は思い出した。

「そういえば、御坂のシャンプーかコンディショナーって此処で買ってるんですかね?」
「いや?ウチも色々取り扱ってはいるけど、御坂ちゃんは買ってないから市販品じゃない?」
「そーですか。アイツふとしたことで一気に接近してくる事あるんですけどね、髪の毛がいい香りするんですよ」
 美琴はそれを聞いて一気に真っ赤になる。
「あれ何の香りなんだろう、と思っただけなんですけどね」
「僕としては、その接近ていう話が聞きたいところだけど」

(わたくしも、首根っこ掴んででも聞きたいですわその話)
 黒子はもうさっきから黒いオーラを出したままである。

「えーと、宿題教えてもらったりする時とか、一緒に勉強する際に肩寄せあったりするじゃないですか?そういう接近です」
「……いや、そこで肩寄せ合う友達、って余程だと思うけど?僕が時代遅れなんだろうか」
「まあ確かに最初は近いっ!と思ってましたけど、御坂は不思議とそういうもんだと思ってる感じですね」
「女の子同士なら分かるけどねえ。異性なら意識しちゃってそんなにくっつかないよねえ」
「だからまだアイツはまだガキなんですってば。みなアイツの能力に誤魔化されすぎですね」

 え、おかしいの?と美琴は驚いていた。
 だってくっつかないと教えられないじゃない、それにまたガキ扱いして……と心のなかで口をとんがらせる。

 襟剃りを終え、また熱いタオルで跡をぬぐいながら、道端は冗談めかして話を振る。
「そーするとアレだね、御坂ちゃんが大学生になったりして家庭教師などしようものなら」
「ああ、さすがにその頃になると御坂も色気が出てるでしょうしね。男子高校生とかなら、接近されてメロメロかもしんない」
「落ち着いて勉強どころじゃないだろねえ」
「まあ、御坂は電撃殺虫器みたいなものですから、手を出したら焼き尽くされていくでしょうけど……」

(あのヤロ、私を何だと…!)
 しかし、言外に将来は魅力アップと言われたような気がして、内心は嬉しい美琴である。

 椅子が正常モードになるに合わせて、上条も椅子の上で場所を調整する。
「家庭教師といや、先生モードの御坂はブツブツとは文句いいますが、基本的に優しいな」
「へ〜。どんなブツブツ言ってるの?」
「『なんで分かんないのよ〜』『さっきやったじゃない』みたいな事を口とんがらせて言う感じで、嫌な感じの文句じゃないです」
「いい子じゃないの〜」
「はい、少なくともこの辺についてはすっげえイイ奴です。外に出ると急に攻撃的になるのが不可解ですけど」
 道端は、おおよその上条と美琴の関係が分かると共に、美琴の報われなさに心から同情していた。


 スタッフが美琴を手招きしている。白井黒子のいるエリアからだ。黒子のパーマが終わったらしい。
 美琴は立ち上がり、向かいつつ……上条のいる方を見るが、やはり姿は衝立で見えない。
 椅子の上には、せっかく整った髪をしながら、ぶすっとした黒子が座っており、……そのままジト目で美琴を見る。

 美琴にしてみても、こう口に出されると、色々上条に数多く接しているのだな、と改めて気恥ずかしくなっていた。
 黒子にしてみると、なに知らないとこでいちゃいちゃしてるんですのお姉様と、即問いただしたい処である。
 しかし、口を開くわけにもいかず、ひとまず黒子は椅子を降り、美琴は代わって座った。


 ◇ ◇ ◇

715ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:03:23 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を6】

 さて、上条エリアでは、サッパリとした顔をしている上条の髪の毛を、プロである坂島道端が整えている。
 上条はテクニックが盗めないものかと、鏡越しに上目遣いで見つめている。

「しかし何だねえ、聞いてると御坂ちゃんは上条クンのこと気に入ってるんだろうねえ……」
 美琴も黒子もぐはあっ!と口を開けて固まる。
 言わずもがな、美琴は図星、黒子は何寝言言ってますの、という背景だ。

「いや、そりゃないでしょう。……実を言えば、御坂は俺の特殊能力のせいで、俺に勝てません。
何年も、電極や薬物を使い、催眠暗示でしたっけ、あらゆることを行って、人であることをも捨てるぐらいの努力をしてきて、
……それなのに、無能力者の俺に完全に押さえ込まれる。俺を許せるはずが、ないんです」
「……」
 道端の手が止まる。……衝立を挟んだ少女2人の表情も、固まっている。

「だから……御坂も、白井も、一定のラインから超えてこないと思いますよ。俺の存在は、自己否定に繋がりますから」
(違う!そんなこと思わない!)
 美琴はそう言って飛び出したかった。しかしそれより早く、黒子が美琴の腕を掴んでいた。
 黒子は信じている、ここの店主はちゃらんぽらんだが、『分かっている』。

 道端は手の動きを再開しながら、上条にニヤッと笑いかける。
「上条クンは髪の毛硬いけど、頭の中身も硬いねえ」
「はい?」
「彼女たちがそんなこと思うわけないじゃない。自己否定なんてナイナイ」
「……」
「仮に上条クンの存在が、能力開発前の彼女たちに知れていたら?だったら能力開発なんてやーめた、なんて思うかな?」
「いや……」
「そう、関係ないよね。彼女たちは他人と関係の無いところで自己を鍛えている」

 上条は道端の手の動きを追うのをやめ、考え込む風だ。
「面白くない、という感情は持つだろうね。でも一時的だよ、そんなものは」
 道端はちらりと衝立の向こうに視線を飛ばす。
「さっきの御坂ちゃんの話を聞く限り、もうそんな感情のレベルは終わってるね。白井ちゃんはまだ分からないけど」

「むしろ上条クンの事をもっと深く知りたいと思って、近づいてるとしか思えないよ?」
「いや、それにしたって、ないでしょそれは」
「じゃあ、これからね。これから。これから会うごとに、御坂ちゃんの瞳をじっと見つめてみればいいよ。
上条クンの思う通り、存在を認めないような相手なら目をそらさないから。負けまい、とね」
 道端は更にニヤニヤッと笑う。
「目をそらしたら、存在を認める認めないなんて感情はないと思う。更に真っ赤になってたら、ホの字だね」

 道端の行っているのは、思考誘導である。
 要は上条に「美琴をじっくり見てあげなさい」美琴に「想いを知って欲しければ真っ赤になるだけでいい」と振っている。

 そして案の定、ちょっと待てー!と美琴は心の中で叫んでいた。
 現状、上条にまともにみつめられたら、視線など合わせられるはずもなく、顔色も普通でいられるわけがない。
(つ、次アイツと会ったら、私、終わっちゃう……)


 ◇ ◇ ◇

716ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 17:03:36 ID:hzLMvff.
【美容院にて世間話と本心を7】

「よしっ、終わり!」
 最後は考え事をしていて浮かない顔をしていた上条だったが、バッチリとツンツン頭が再現して顔がほころぶ。
「おおスゲエ。あとで写真とっとこ……」
「まあセットならいつでもやったげるよ。気軽に来るといい」
 そう言って、イスから降りた上条の体を、ハタキのようなものではたいて髪の毛を落とす。
 上条はチケットを渡しつつ、頭を下げる。
「今日はありがとうございました。また次回もよろしくです」
「うん、またね。御坂ちゃんとどうなったか、報告楽しみにしてるよ」
「はは……」

 そうして上条は帰っていった。とある少女について、思いを馳せつつ。


「ふう〜。だいたい聞き出せたと思ったけど、どうかな白井ちゃん?」
「やりすぎだこのボケ店主!なに煽っとんじゃああ!」
 もはや白井黒子はブチ切れていた。
 横ではもう、御坂美琴がカットどころではなく、挙動不審になっている。
「御坂ちゃん、ごめんね。やりすぎたかな?」
「い、いえ……」
「お姉様!あの類人猿の言っていたことは、逐一ホントなんですの!?その、お泣きになったとか!」
「…………………うん」
 美琴は頷くと、これ以上の追及はたまらないと思ったのか、椅子からおりてしまい。
 店主の坂島道端にぺこりと頭を下げ、
「きょ、今日は、その……で、出直してきますっ!ごめんなさい!」

 そう言うと、つかつかと待合室に戻り、コートとマフラーを引っ掴んだ。
「ま、また来ます。じゃあ……」
 と、自動ドアの前まで歩んだ、その時。


 ピヨピヨ、ピヨピヨ♪
「すみません、マフラー忘れてまし……た?」

 頭を掻きながら自動ドアをまたいで立ち尽くす上条当麻と。
 コートとマフラーを胸に掻き込んで、今にも店を飛び出そうとした御坂美琴が。

 見つめ合う。

 二人の脳裏には。
――「更に真っ赤になってたら、ホの字だね」

「………ッ!」
 美琴は無言で上条にドゴオ!と胴タックルし、たまらず上条は尻餅をついた。
 すぐさま美琴は上条の顔に自分のマフラーを押し付けると、そのままぐるぐる巻きにしてしまい。
 取り落としたコートを引っ掴むと、走り去った。


「いやあ……半信半疑なトコもあったけど、本当に上条クンの前じゃ、クールな御坂ちゃんじゃあ、なくなるんだねえ……」
「……お姉様……」
「マフラーで視線を封じるなんて……見られなきゃいいって問題じゃないのに、…いっやあ可愛いなあー!」
「こんのボケ店主!間違いなく今日はお姉様、布団から出てきませんわ!どーしてくれますの!」

 店主と少女がギャーギャーやり合っている、その先で……
 せっかく整えた髪の毛をマフラーで無茶苦茶にされ、尻餅をついたまま呆然としていた上条当麻は。
 美琴の香りのするマフラーを心地よく感じつつ、視線を塞がれる前に一瞬見えた、美琴の赤らんだ表情を思い出す。

「まさか、なあ……?」


fin.

<ふにゃーオチか迷いましたが、まあ力技にて。今回のテーマは『会話ゼロでいちゃつけるか』っつーことで>

717■■■■:2010/04/26(月) 17:14:51 ID:vjNmjwMk
>>716
リアルタイムktkr GJですた。
店長さすが。客商売慣れているなぁwww
しかしあの会話を聞いていると、いつか黒子も上条さんに興味を抱く可能性に言及しているけど
今の美琴の耳には入ってないでしょうねw

718■■■■:2010/04/26(月) 17:35:32 ID:0VXvlccY
>>ぐちゅ玉さん
いやー、おもしろかった! 美琴の報われなさっぷりと黒子の反応にニヤニヤではなく
普通に笑いました。
なんて言うかこの二人の関係を見てると本当にこの時点の上条さんにとって美琴は
恋愛対象ではないんだな、という気がしてなりません。ここまでいちゃついて恋愛に発展
しないのは鈍いんではなく対象外だからなんだろうな、と。LOVEとLIKEの違いって奴ですか。
だからこそ私は美琴を応援したくなるのですが。

それだけに坂島店長グッジョブ!上条さん、後はロリコンの壁を越えるだけだ!
こう思います。
恋人未満のこの二人ってほんといいなぁ、これぞ青春!みたいで。

719■■■■:2010/04/26(月) 18:20:22 ID:n5t5GWMg
>>716
GJです!
店主がいい仕事してますね
上条さん、いいかげんに気付けw

720■■■■:2010/04/26(月) 18:58:56 ID:vdX18i3M
ぐちゅ玉さんが帰ってきた!
ほとんど会話だけなのにここまで引き込まれるとは、文章力ハンパないっす。
最後に上条さんに出くわした時の美琴の行動に吹きました…

721つばさ:2010/04/26(月) 19:30:09 ID:HxArbMLM
ぐちゅ玉さんの後に書くのは正直気が引けるんですが。
五分後くらいに短い話ですが投稿しようと思います。
今書いてる話が完全に煮詰まってしまったので気晴らしに書いてみたんですが、これはこれで
一週間くらいかかりました。……ダメじゃん、俺!

ちょっと変わった形式なので読みにくいかもしれませんが、そこは広い心でご容赦いただけると。
(どうも書き方の参考になる小説が見つかりませんで)

722電話の相手は(1):2010/04/26(月) 19:36:02 ID:HxArbMLM
「あれ、電話。こんな夜遅くに誰かしら? 黒子はもう寝てるし、初春さんか佐天さん?
 えーと、はいはいはいあなたはいったい誰です、か……え、これってアイツ!? どして! なんで! え! ……あ、ああごめんね黒子、騒いじゃって。ちょっとお母さんから電話なの。うん、別に大した用事じゃないと思うから。うんうん、じゃあちょっと席外すから。うん、おやすみ、また明日ね」



「さあ、洗面所に場所も変えたしこれでゆっくりと……あ、切れてる。そりゃそうよね、あれだけ待たせたんだもの。でももうちょっと頑張ってくれたっていいじゃない、あの馬鹿! また、電話してきてくれないかな?」

「あ、またかけてくれた! さ、さあ今度こそちゃんと出るわよ。でで、でもその前に第一声はなんて言えばいいのかしら? 緊張して失敗しないようにちょっと練習しとこう、うん」
「えっと『アンタが電話してくるなんて珍しいわね、こんな遅くに何の用なの? つまらない用事なら承知しないわよ』……ダメダメ、こんな事ばっかり言ってるから嫌われてるって勘違いされるのよ」
「もっとかわいく『なーに、当麻? 嬉しい! あなたがこんな夜遅くに私に電話してくれるなんて!』……ちょっとキャラ違いすぎるわね。それにいかにもアイツからの電話を待ちこがれてたみたいだし、そう思われるのも何か癪に障るわ……アイツが電話してくれたことは、本当嬉しいんだけど」
「理想としては、アイツの電話を素直に喜んで私のかわいさをアピールしつつ、主導権はあくまでこちらにある、そんな答えよね」
「それじゃあ『あら、どうしたのよ、こんな夜遅くに電話だなんて? 違う違う、怒ってるんじゃないの。そりゃ、消灯時間過ぎてるんだから本当はちょっと困るんだけどさ。で、も! アンタからの電話だから、特別に大目に見てあげる。で、何の用なの?』……これよ! 夜遅くに電話をかけてくることの失礼をやんわりとたしなめてこちらのペースに乗せつつ、アイツだから許してあげるという乙女心でさりげなくアピール。これでいくわよ、美琴!」

「……あ、また切れてる。練習に夢中になりすぎたかしら、やっぱり。さすがに、もう電話してきてくれない、わよねぇ」

「嘘、またかけてくれた! どうしたのよ、今日に限ってコイツが気の利いたことするなんて? ……そんなこと言ってる場合じゃないわね。さ、さあ出るわよ! 頑張れ、私!」

723電話の相手は(2):2010/04/26(月) 19:36:31 ID:HxArbMLM
「あ、ありゅりゃぁあ! ど、どしたにょよ、きょ、こきょんな夜おしょくにで、電話だなんてぇ!」
「……え、変な声出してどうしたのかって? そ、その、緊張のあまり、声が裏返ったのよ……。あーもう、うるさいうるさい! 黙りなさい! で、でいったい何の用なのよ! 早く言いなさいよ!」
「……へ? 宿題やり過ぎで目がさえてしまって眠れなくて暇になった? で、なぜか寂しくなって、人の声が聞きたくなった? そ、それで、ど、どうせならむさ苦しい男連中なんかより、女の子の声がき、聞きたいから、とりあえず、私に電話した、ですってぇぇええ――!!」
「わ、た、し、は、アンタにとってとりあえずの女なのか!! 女なら誰でもいいってのアンタは!!」
「は? 違うって、何が違うのよ? ふうん、とりあえずっていうのは女の子の声を聞くために電話という手段を選んだことであって、その相手が私だっていうのはとりあえずで決めたとかじゃない? どういう事よ?」

「はあ、それ本当なの? 何よ、疑うに決まってるでしょ。だいたいね、青春真っ盛りの男子高校生の携帯がそんな寂しい状況だって言われてもそう簡単に信じられるわけないでしょう? それに相手はアンタ、伝説のフラグ男、上条当麻なのよ?」
「それでも本当だって言うの? 本当にアンタの携帯に登録されてる女の子は私しかいないから、私にしか電話しようがなかったって言うの?」 
「……ふん、やっぱり怪しいわね。だって、それじゃおかしいじゃない。何よ、気づかないの? あのね、アンタの言うことが本当なんだったら、アンタは女の子じゃなくて、わ、た、し、の、声が聞きたかったって事になるのよ。は? まだわからないの? つまりね、アンタの電話が繋がる女の子は私しかいないんだから、女の子の声が聞きたいから電話したって事は、イコール私の声が聞きたいから電話したって事になるでしょう。違う?」

「……ちょっと、なんで何も言わないのよ。何か言いなさいよ。それとも何? あ、アンタ、本当に寂しくなったから私の声が聞きたかったとでも言うの? ち、違うわよね、どうせアンタはそんなこと考えてないでしょ。そうよ、アンタがそんなこと考えるわけないのよ! ほら、やっぱりおかしいじゃない。適当なこと言ってごまかさないでよ!」
「は? それについてはひとまずおいといてくれ? それでもアンタの携帯に登録されてる女の子が私だけっていうのは本当の本当? 信じてくれ? 嘘だったら一生愛玩奴隷にでもなんでもなるから? じゃあ本当なの? 本当に誰もいないの? 一人も? クラスメートは? 誰にも教えてもらってないの? 女の子の知り合いいっぱいいるのに? そう、本当の本当の本当に、私だけなんだ……」
「フフ、そ、そうよね、アンタに携帯の番号を教えてくれるような心の広い女の子なんて、わ、私くらいのものだものね! ちゃんと考えればわかるわよね。そうよ、アンタは私の慈悲深さに感謝するべきなのよ! 仕方ないわね、失礼な電話をかけてきたことも特別に許してあげるわ。だから感謝の印にこれからは毎日私に電話をかけてきて、アンタの声を聞かせること、いいわね!」
「……ちょ、ちょっと、なんで切るのよ! 待ちなさいよ! せっかくかけてきたのにすぐ切ることないでしょ、もう少しだけなら相手してあげるから、何か話しなさいよ。え? 消灯時間が過ぎてるだろうって? そ、そりゃもう時間だけどそれくらいなんとかごまかせるし、私はアンタと話してる方が……ダメ? これ以上迷惑かけたくない? そ、そう、わかったわ。じゃあ、明日はもう少し早い時間に電話してきてよね、うん、待ってるから。それじゃ」

「通話時間、約十分、か。あーあ、結局少ししか話できなかったな。それにしても、ふふ、アイツのアドレス帳、女の子は私しかいないんだ。そうかそうか、そうなんだ。うん、いい傾向ね」
「ふぁーあ、それはそうとして、もう本当に結構遅い時間なんだ。寝よっかな」



「黒子に聞こえないように布団被って、と。着信履歴着信履歴っと。あは、ちゃんと三件ある。へへへ、アイツ、本当に私に電話かけてくれたんだよね。それになんかごまかそうとしてたけど、わ、私の声、きき聞きたかったん、だよねアイツ、へへへ」
「けどいい? わかってる? 上条当麻、アンタはこれからも私以外の女の子と連絡を取るようなことは一切ダメなんだからね。アンタが電話していいのは私だけ、いいわね。そ、その代わり、私の携帯にだって、アンタ以外の男なんて絶対登録しないんだから。絶対、絶対だからね! だからアンタもちゃんと私だけを見ててよね!」

「それから、明日、ちゃんと待ってるからね」



おしまい

724■■■■:2010/04/26(月) 19:36:55 ID:qWobRBb6
流石ぐちゅ玉氏いい仕事しますね

725つばさ:2010/04/26(月) 19:40:13 ID:HxArbMLM
以上になります。
本当は小ネタとして書いていたんですが、ドラマCDなんかを意識して美琴のセリフオンリーで
書けないかな、と思い直して書き直してみました、が。わかりにくいかな?

こんなのでも感想いただけると飛び上がるほど嬉しいです。

726■■■■:2010/04/26(月) 20:16:50 ID:vdX18i3M
つばささんGJ!
電話に出る前にいろいろとシミュレーションしたのに、
いざとなるとテンパる美琴がかわいくて良かったです!
「なんで緊張すんだよ」と上条さんが言ってそうですね。

727ION:2010/04/26(月) 20:47:56 ID:7foOmMvo
今晩はです。

ぐちゅ玉さんいい仕事してますね。相変わらず。電車の中でにやにやしてしまった。

今回は、「小さな恋のうた」を投稿させていただきますね。
この先誰も投稿する方がいらっしゃらない場合、5分後に4スレほどいただきます。

728■■■■:2010/04/26(月) 20:53:43 ID:ZKR2fXl6
なんだ今日はーっ!?おらは幸せだー!!

729小さな恋のうた:2010/04/26(月) 20:55:55 ID:7foOmMvo
――――――――

 これはひとりの少女が人生でたった一人の愛する人のために歌った恋の歌。君に捧ぐこの歌は私にしか歌えない。たった一度だけ。
同じような歌はもう二度と書くことはできない。そして、歌うことはない。一度きりの愛の歌。

――――――――

「ねえねえ、おばあちゃん。いっつもきれいだね」
「そういってくれるのかい。ありがとうね」
「ところで、おばあちゃんって昔すごかったんでしょ?」
「すごいどころじゃないわよ。話したらお前たちがおもらしするもの」
「ええー?私そんなんじゃおもらししないもん!おばあちゃんの意地悪!」
「私もあなた方と同じ学園都市にいたの。しかも、常盤台中学校というところに」
「へえー。お嬢様だったんだね。んで、何だっけ。超電磁砲(レールガン)て言われてたんでしょ?」
「そうよ。いまでは、なつかしいわね・・・」
「おーい、お前たち!ちょっくら買い物でもいこうか!?」
「「うん!おじいちゃん!まってぇ。」」
「ママー!おじいちゃんとお買いものしてくるー!」
「きをつけてね。おじいちゃんにあまりものねだらないようにね。」

 時は、とある時代からすでに40年くらいたってしまった。学園都市から離れた湘南のとある街。おばあちゃんと呼ばれた女性は今も若々しい。
むしろ、若すぎる。48歳で5歳と3歳の孫を持っているのだから。その結婚相手は2歳離れた男性である。彼女は幸せであった。かつての男らしい性格も今では丸くなっている。
彼女の旦那は、今、孫を連れて近くのショッピングセンターに出かけた。今は帰省中の娘と2人、庭にある椅子に座っている。

「ねぇねぇ、母さん。父さんと結ばれたのってすごく早かったんだって?」
「そうよ。麻美。あんたも私の早婚スキルとアンタのお父さんのフラグ体質をもらってすぐに子供できたじゃない。」
「でも、龍はフラグ体質すら受け継いでないわ。かわいそうに。」
「あんた、フラグ体質の本当の力をわかってないようね。ったく。久々に昔話でも話してやるか。」
「待ってました。美琴ママのスィートラブストーリー!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 御坂美琴14歳。私は、恋をしました。あんな馬鹿にひかれるとは思っていませんでした。でも、あの時確実に私はわかったんです。

「大好きです。アンタがとても大好きなの。」

 でも、その彼が自分に見向きしてくれないからついつい電撃の槍を飛ばしてしまうんです。恥ずかしいからついつい色々やってしまったり。
ほかの女の子と一緒にいると嫉妬しちゃうんです。あいつなんかに・・・そんなこと思われたってなんとも思わないもん。
いつもいつも大げさな彼は「不幸だ」と必ず私の前で言って去ってしまうんです。だから、それも腹立たしかったりもします。
今日もあいつは補習帰りです。私のほうが勉強できるってどういうことですか?私が頭良すぎたのでしょうかね。と言ってるうちにその彼がやってきました。

 「だーーーー。暑い。どうしてくれんだよ。そうだ、ここに自動販売機が・・・あれ?2000円札しかないな。しょうがない。」
彼は自販機に 2000円札を入れました。今更2000円札とかどんだけレアなのでしょうか。かなり面白いです。でも、今となってはそんなところも大好きなんです。
っと、そこで私登場。私が出てきて存在に気づくまで彼は頭を抱えてくねくねしていました。とても面白かったんですよ。んで、そこで私の存在がわかってしまう。

「だーーーーーーーー!ビリビリ!」
「ビリビリじゃない!御坂美琴って名前があるの!」
「あーーーーあいさつ代わりのビリビリはやめてくだせえ・・・上条さんはいま最悪な出来事に巻き込まれました。」
「あれ?もしかして飲まれた?」
「うん。」
「何円?」
「2000円」
「え?もしかして、2000円札とか持ってました?そんなわけ…ってマジですか?すごいすごいすごい!」
「余り、上条さんを傷つけないで下さいよ。」

730小さな恋のうた:2010/04/26(月) 20:58:45 ID:7foOmMvo
 とてもじゃないけど、彼と会うときってかなりドキドキしてるんですよ。ほんとですって。彼は、無意識のうちに私を虜にしてるんだから電撃の一発くらい入ってくれればいいのに。
そうすれば私の膝枕直行便が出るのに。なんで?あの右手をふさげばなんとかなると思ったけど、むしろドキドキが増しちゃって自分が嫌になっちゃうくらいです。
この人はバカなんですよ。ほんとに。でも、馬鹿すぎて全力過ぎて、それが私を抱きしめてくれると思うと・・・今は言いたくないです。女子の特権です♪
なんで、私は休みなのに制服なの?ですって?私の通ってる常盤台中学校は日常的に制服着用が義務になっていますから。学園都市以外の方々はわからないですよね。
ちなみに、私の発言で傷を負った彼も制服なんですけど、毎日補習だからです。というわけで、ちょっとしたデートです。彼は、顔がすでにひきつってます。っていうかあわてて逃げて行きました。
私は発電能力者なので、自動販売機を操ることができるのですが、捕まったら大変だというのでしょうかね。というわけで出てきた缶ジュースをかき集めて彼のもとに急ぎます。

「あっつ!」
「あ!あんたさ、自分の取り分なんだから自分で何とかしなさいよね。人が助けてやったってのにさ。」
「ああ。ありがと。」
「私の取り分としてヤシの実サイダー頂戴?それで今回のはチャラってことで」
「ほらよ」
「ありがと」
「でも、なんでこんなに俺とつるんでるんだ?そっちだって忙しいんだろ?」
「ああ!こっちなんか宿題なんてないのよ。」
「じゃあ、暇か。でも、上条さんは宿題が大量に出されているからコレをなんとかしなければ。というわけでじゃあな!」
「あーあ。行っちゃった。」

 なんで私ってこういうときになると勇気が出ないんでしょうかね。だれかおしえてくれませんか?あの人を振り向かせる勇気を誰かっ!自分のプライドが許せないとか、情けないです。
いつもだと笑ってごまかせることがあいつの目の前だと恥ずかしすぎて…。

――――だれか!お願い!あの馬鹿をこの私に!お願いします!あの馬鹿が大好きなんです。あの馬鹿が私の生きている理由なんです。お願いだから。――――

 そう思ってたら、いつの間にか走っていました。必死でした。全力で走って追いかけっこ。夜通しやった日もあったけど、今は、意味が違うんです。今は、あの馬鹿に気付いてほしくて。
私はすでにあいつの存在がないと生きていけないのです。誰にも言ってないけど。黒子にも、初春さんにも、佐天さんにも、まして、あの馬鹿にも。はずかしいよぉ。だけど伝えたいんです。
「私はあんたが好き」だということを。「あんたがいないと生きていけない」ということも。だけど、不安もあるんです。あいつには、いつもビリビリしているし、あった時にはいつも迷惑かけてるし。
でも、あんたが私を受け止めてくれるなら、私はあんたの言うこと聞くから。ビリビリもいらない!だから!
 私は最近あいつの家に行ったことがあったので、その記憶を頼りに走りました。信号はちゃんと赤では止まってますから。気付いたらあいつの学生寮の前の公園にたどり着いてました。
人生の一大決心です!あんたの家まであともう少し!少しずつだけど、緊張してきたぁぁぁぁ。一歩ずつ一歩ずつ、近づいてますよ。ヤバい!インターホン押せない!どうしよう。
やば!なんであいつに会うだけなのにこんなにドキドキしなきゃいけないのよ。手が震えてきました。てか、泣けてきました。これは重症ですよね。目を瞑って思い切ってボタンを押しました。

731小さな恋のうた:2010/04/26(月) 21:00:52 ID:7foOmMvo
「おー!びりびり!何か用か?って、おい!どうしたんだよ」
「…」
「まあ、いいや、今はインデックスいないから入ってくれ」
「…いいの?」
「とりあえず、入れよ。そこにずっといられるのも上条さんとしては避けたいのですよ」

 彼の部屋は意外にもさっぱりしていました。もう少しきたなかったら掃除しに来たとか理由つけれたのに。でも、あいつの匂いで埋め尽くされたこの部屋から出て行きたくありません。
そのつもりです。とりあえず、心の準備すらできていません。何も言えない私をやさしく包んでくれます。あいつはやさしすぎるんです。どんな奴にも。だから私が独り占めしたい。
そんなこと言えないのに。そんなことできないのに。でも、彼はさりげなくやってくるので私はどうにもならなくなって漏電しちゃったり。今だって、抱きしめてくれてる。彼氏でもなく、友達でもなく、彼の「天敵」に。

「お前がそんな顔してたら妹たちに失礼だろ?ただでさえ、かわいい顔が台無しだろうがよ」
「え?・・・私ってそんな風に?」
「だからさ、ここで泣きたいだけ泣けよ。おれは何も言わないから。」
「・・・・うわあああああああああああああああん!」

 とても恥ずかしいんですけど隣の部屋の人の耳までこの声が聞こえていたらしいです。後日言ってました。あいつ曰く、1時間は泣いていたらしいです。あんなに目が赤くなってたんじゃそれもそうよね。
んで、泣きやんだからそのお返しにこいつに晩御飯でも作ってやろうと思って。美琴センセーに任せなさい。とか言っちゃって、キッチン借りちゃった。あいつの愛用ボロボロエプロンも借りて。
思ったんです。あいつの笑顔が見れるのってめったに来ない幸せな時が来るときだって。その時を私が作ってやろうって思ってしまってこんなことになりました。

「う!」
「もしかして、・・・・まずい?」
「いや、・・・そんな上目づかいで見られたら何も言えねえ」
「何もいえねえってどういうことよ。」
「お前は俺がいないと会話すらできないのかよ」ポフッ
「うん。・・・バカ当麻」
「お前はそのほうがいいな。それでこそ俺が生きてる実感わいてくるんだよな」
「え?今のって、告白?」
「いや、・・・今のは何でしょうね。天の声だな。天の声。」
「ごまかしたって無駄。・・・」

少しだけ二人ともだまっちゃいました。どうしよう・・・。

「「お前(アンタ)いいたいことあんだろ(でしょ)?先に言えよ(ってよ)」」
「んじゃ、私からでいい?あとからじゃ何も言えなくなるかもしれないから。」
「いいぞ。」

 今から、目の前のこいつに小さな歌を贈ります。だけど、受け取ってくれますかね。本心は泣きたいくなるくらいなんですよ。でも、言わないといけないから言ってしまおう。
あなたがいてくれたから私はこんなに幸せになれたんだよ。私だってふつーの女の子だって言ってくれたのも、わがまま聞いてくれるのも、全てを受け止めてくれたのも、
全部、全部、あなたでした。だから、もう苦しい想いなんかしたくない。彼の苦しそうな顔も見たくない。だから想いは伝えます。何度もシミュレーションはしたんだから。

「あのさ、私はあんたが大好きなの。だから、お願い。」

732小さな恋のうた:2010/04/26(月) 21:01:28 ID:7foOmMvo
 その彼は無言で私を抱きしめてくれました。そして、静かに優しく、囁いてくれました。私はとてもドキドキしています。こんな私でもいいんでしょうか。私の片思いだけだったら何もなく済んだはずなのに。
私だけが傷ついて終わらせようとも思ってたのに。何でよ。いつもの逆。あんたの返事はいつも心に残っているから・・・・・・あんたにはウソってものがないの?涙腺崩壊しそう。さっき決壊したのに。

「やれやれ・・・悪いな。まだまだ、俺の理性が許さないんだ。今の俺たちじゃなんとなく釣りあわねーしさ。あと、御坂の事もっと知りたいし…な。…今度は俺の番だな。」
「あれ?私、きらわれてない…。」
「こんなことで嫌いになったら上条さんはすでに御坂さんに縁を切られてますよ。・・・はは」
「私、あんたのためだったら何でもやれるの。アンタ好みの女の子にだってなれるの」
「・・・御坂は御坂でいいと思うんだ。俺を追いかけまわして、話しかけたら怒りだすし、勉強は俺よりできるし、倒れた時看病してくれるし、あと・・・」
「あと・・・は?」
「以外に泣き虫なとこ・・・とかな。そんなところ含めてお前って感じが好きなんだよ。」
「・・・そしたら、明日、デートしよっか?」
「・・・そうだな。明日は・・・確か・・・補習ですよ。朝から晩まで。だからそれ以降ならいいぞ?」
「ありがとう。・・・ぐすっ!・・・それじゃ、また明日ね。当麻!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「これが、最初の告白だったかな?どうだったかな。忘れちゃったわよ。」
「でも、お父さんって若い時すごかったって言うけど、この話は娘の私でもビックリだわ。」
「そんなお父さんも今じゃ、50歳でバリバリのサラリーマンだもんね。仕事人間って感じじゃなくてよかったわ。」
「確かに、あんたもいろいろと見てるもんね。麻美。スイカ割りの時もお父さんの頭叩いちゃったりね。あんときは面白かったわよ?」

 やっと、孫二人と買い物から帰ってきた旦那は、今も私の中では最高です。学園都市から離れてもこの人がいるから元気にやれる。
今日は、家族勢ぞろいでバーベキューパーティーをしようかと思っています。

「美琴ぉー!!冷蔵庫に入ってるもの出してきていいかぁ?っていうか、よくわからんから見に来てくれ。」
「いいわよ?まってて」

 私の名前は上条美琴。旦那は上条当麻。
もちろん、娘の名前は二人の名前から取った麻美。このこの14歳の時は、私より背は小さかったけど胸は在ったような・・・。
14歳だった私があのうたを聞かせた唯一の相手、当麻と一緒になれたこと。何よりも、それが幸せの歌のイントロでした。

Endless Love Song ・・・死ぬまで一緒なんだから。いいでしょ?とーまぁ♪
Everlasting Lovers ・・・いいぜ!おまえと一緒ならどこまでも・・・な?

733小さな恋のうた:2010/04/26(月) 21:04:31 ID:7foOmMvo
何だか、意味不明な終わり方で申し訳ありません。

とりあえず、しっかりもう一度本編読みなおさなきゃって思いましたね。

734ぐちゅ玉:2010/04/26(月) 22:14:21 ID:hzLMvff.
たくさんのご感想、ありがとうです〜
相変わらずの変化球的な作品ですが、楽しんで頂けましたら幸いです。
取り急ぎ、御礼まで。(まだしごとちう><)

735■■■■:2010/04/26(月) 22:34:54 ID:/yqGimxo
いやぁ〜ほんと職人さんたちGJGJですなぁ。
最近スレの空気が悪かったから悲しかったけど、
前みたいにみんなでたのしみたいなぁ。
自分も何か貢献出来ればと思い大学の課題の合間に執筆中です!

736■■■■:2010/04/26(月) 22:42:20 ID:ej28Z28o
>>728
おちつけ

寝てた人まだー?

737■■■■:2010/04/26(月) 22:51:44 ID:DQ7m.ULw
とりあえず落ち着くのは>>736じゃないか?
sageてないよ
寝てた人氏は忙しいみたいだから、催促せずゆっくり待ちましょう

738■■■■:2010/04/26(月) 23:16:07 ID:nyVCCqVo
ぐちゅ玉の作品が一番好きなんだぜ
出来るだけ急がせたいけどグッとこらえて・・・

自分のペースで頑張ってください!

739■■■■:2010/04/26(月) 23:27:44 ID:4J6eHdIc
>>736
ごめん何か酷く進んでない まだお風呂(ry おっぱい(ry
とか言いつつ最近画像コラばっかしてるけどw
いやきっと全てリーマンショックが悪いに違いない 俺は悪くない
GWの加速に便乗したいなー
あ、催促は"私は"嫌いじゃないですよw

最近他の人の読めてなくて、何だかスレが伸びる程に申し訳ない気分になる
ナンナノこの気持ち? もっと感想書きたい
でも、逆に後で楽しめる分、貯まるほどにニヤニヤするんだけどw

スレ汚しサーセン

740:2010/04/26(月) 23:28:58 ID:qL3pHUro
やっほう。(また)小ネタを投稿しにきたよ。
また1レス消費で、やっぱり短め。
被らなさそうなら3分後ぐらいに投下させていただきますそしてg(ry

741:2010/04/26(月) 23:32:24 ID:qL3pHUro
※これは肩揉みの話です。



柔らかい。上条当麻が最初に抱いた感想はそれだった。
現在触れている美琴の肌は女性特有の柔らかさがあり、いつまでも触っていたくなる。
今まで意識して柔肌を触ったことなどなかったからか、手の動きがぎこちない。

「んっ……あっ……」

美琴が吐息と共に声を漏らした。
ぎこちない動きになっていて自信がない上条は、美琴が本当に気持ちいいのかわからない。
だから、訊いてみることにした。

「気持ちいいのか?」
「………………」

だが、美琴は答えない。
後ろから揉んでいるため、美琴の表情がわからないのだが、もし前から見ていれば美琴の顔が赤く染まっていたのを見ることができただろう。
上条は聞こえていなかったのだろうかと思って、もう一度訊ねる。

「気持ちいいのか?」

すると美琴の肩が跳ね上がった。
偶然にも耳元で囁くように訊いていることに気づかなかった上条にはなぜ美琴が跳ね上がったのかわからなかった。

「きっ……気持ちいいわよ…! だから……もっとして?」

美琴は赤い顔のまま上目遣いで頼んできた。
そんなことをされて断れる人なんていないだろう。上条はそう思う。
ドキッとした心を抑えるように、敢えて美琴の方は向かないで、上条は答えた。

「お、おう……」


(以下略)

742:2010/04/26(月) 23:36:34 ID:qL3pHUro
以上です。
読めばおそらく分かるとおり、この前投下した『二人が何かしています』を描写つけてみただけというものです。
ある意味手抜k(ry
ただ最後の会話は描写する必要がない気がしたのでしてません。

タイトルですが、※がまとめで使えないのかわからないですが、使えないなら無くても構いません。

743■■■■:2010/04/26(月) 23:39:46 ID:4J6eHdIc
ふぅ…
肩もみで果てる美琴を想(ry

GJですw
ところで一番下の行に不可思議な物が見えます

744■■■■:2010/04/27(火) 00:09:52 ID:htmYAiis
GJすぎます!
もし誰も投下しないなら5分後に投下します。
タイトルは
結婚式での誓い

745■■■■:2010/04/27(火) 00:13:27 ID:htmYAiis
本日は上条当麻と御坂美琴の結婚披露宴。
美琴の要望により、自分が愛する人との神聖な儀式をたくさんの人に見てもらいたいとの
事で学園都市の最大級のホールでの披露宴、全世界で生中継を行う事になった。
上条は反対していたが美琴の意見は覆らせず、学園都市第3位の権力に従うしかなかった。
そして今、美琴は控え室にてウエディングドレスを身にまとっている。
母親の美鈴が着替えを手伝っている。
「わぁ〜美琴ちゃん!可愛すぎよ!父さんが見たらやっぱり嫁には行かせないって
怒っちゃうわよ〜。」
「どんだけ親バカなのよ。お父さんはもう着いたの?」
「まだだけど式までには必ず間に合うって連絡が来たから大丈夫よ。」
「間に合ってもらわないと私が困るわよ。バージンロードを一緒に歩く大切な仕事があるんだから。」
「くす、美琴ちゃん、とっくにバージンは捨ててるのに♪」
「んな、な、なんて事言ってんのよ!母親が言うセリフじゃないわよ確実に!」
顔を真っ赤にして両手をグルグル回して母親に怒る美琴。
「あなたが大人になって体も私に負けず劣らずのナイスバディになったのに
心はいつまでも中学生のままね。よし、もう動いていいわよ。」
「う、うるさい!アイツだって高校生の頃から変わってないんだから。」
「それは私も知っているわよ。会う度に当麻君の話を聞かされてる母親だからね。」
「あーもう!いつまでも私を子供扱いするなー!」
そう言ってじたばたする美琴。美鈴ははいはいと言いながらドレスの紐を結んでいく。
これがこの親子のいつものやりとり。決して仲が悪いわけではなく、お互い凄く好きなのだ。
もうこのようにやりとりするのが滅法減るのかなと美琴が考えていると、突然ドアが開いた。
上条刀夜と詩菜がいた。
「これは失礼、着替え中でしたか。」
「あらあら刀夜さん、美琴さんが着替えているのわかっていてノックもせずいきなり開けたのでしょ?」
「か、母さん、怖い顔で睨まないでくれ。こっちだって急いでいるんだから。」
「どうしたんですか上条さん?急ぎとは?」
「いや、急ぎというか・・・・当麻がこちらに来ていないかと思いまして。」
「来てないですけど・・・当麻君がどうしたんですか?」
「・・・・・・・・まだ来てないんです。」
「「ええ――!?」」

746■■■■:2010/04/27(火) 00:14:09 ID:htmYAiis
「もう不幸だ――!」
上条当麻はホテルの自室にいた。
結婚式前日、部屋に土御門元春と青髪ピアスが遊びに来て久しぶりのデルタフォース結成
ということで夜まで飲んでしまった。
上条は明日が式のため酒はほどほどにしていたが土御門と青髪はガンガン飲みまくり、
結局上条の部屋に泊まった。
「なんで明日結婚式をひかえてる俺が酔っぱらいのお前らの面倒見なきゃいけねえんだ!」
「サンキューだぜいカミやん、ひっく、俺はソファを借りて寝るぜよ。」
「わては床で充分やで。心配なさらず・・・うぷ・・」
そう言葉を交わして就寝した。
はずだったのだが二人の影はどこにも見えない。
あの野郎どこ行ったんだ?いや、それどころではない。急いで会場に向かわなければ間に合わない。
式の時に着るタキシードは会場にあるため上条は急いでシャツを着て、ズボンを掃き、
財布、携帯を持った。
その時一つのあるものに気づいた。
土御門が寝ていたはずのソファに紙切れが落ちていた。何だろう?と紙切れを開いて読んだ。

『カミやん、久しぶりに会えて嬉しかったぜい。あんなに綺麗になった超電磁砲と結婚するなんて
考えられないぜよ。今日は結婚式だったにゃー。残ったデルタフォースはカミやんだけ幸せに
なるなんて許せないからカミやんの酒にちょっと強力な薬を入れさせてもらったぜい。
もちろん俺たちの酔っぱらいは演技だにゃー。
いつカミやんが起きるかわからないが結婚式に間に合うよう幸運を祈るぜよ。
会場で待ってるぜい。土御門&青ピより♪』

ここで最初の言葉を上条は叫ぶ。




結婚式が始まるまであと一時間。上条当麻は走り出した

747■■■■:2010/04/27(火) 00:14:50 ID:htmYAiis
「そういえばここから会場まで走ったらどのくらいかかるんだ?」
ふと思った上条は携帯で調べ始める。
検索結果、100メートル金メダリストの足で走り続けて約50分と出た。
「不幸だ・・・美琴に連絡しないと・・・どう怒られるんだろう・・・」
電話をかけようとしたその時、背後から気配を感じた。
「ったくよォ。あのチビがここに行けと言うから来てみたら三下のお迎えとはなァ。」
「あ、一方通行!どうしてここにいるってわかったんだ?」
「ミサカネットワークには驚いた。超電磁砲の声かけ一つで俺を奴隷みたいに扱うんだからよォ。
お前を連れて来ないと普通に生きられないと脅されてっからなァ。」
「???」
突然現れて妹達がうんぬんと言い出すから訳がわからない。
「そうだ三下ァ。ここに来る前にいいモン見つけたんだが。」
一方通行が取り出したのは大きい袋。サンタクロースが担ぐくらいのサイズ。
「三下ァ、こン中に入れ。」
「はい?俺を拉致して殺すとでも言いやがるのですか?」
「人の話聞いてンのかァ?お前を連れていかねェと俺が死んだも同然だ。
その右手に触れられたら能力も意味ねェしよ。お前を殺すのは多分お前の嫁になるだろォけどな。」
カカカと笑い飛ばす一方通行。鈍い上条はここでやっと一方通行が会場まで連れて行って
くれるのだと理解した。
「ありがとうな、一方通行。」
お礼を言って袋に頭まで入れた。
「礼を言われる人間じゃないンだよ俺は。あと、嫁に部屋の窓を開けろと連絡しろ。」
「・・・わかった」
上条は今美琴に電話すると雷を落とされそうだと思い、メールで一方通行の言った通りに
送信した。
「一応今連絡したけど?」
袋の中でもぞもぞ伝える。
「ンじゃ、死ぬなよ?」
「え?」
チョーカーにスイッチが入る。
一方通行は上条が入った袋をハンマー投げのように振り回し、遙か遠くへ投げとばした。
「うわああぁぁぁ!!なんだあぁぁぁぁ!!!!?」
「最っ高だねェ!ギネス級の飛距離誕生ってか?」
飛んで行った上条が入った袋を見ながら一方通行は大笑いした。

748■■■■:2010/04/27(火) 00:15:26 ID:htmYAiis
美琴が部屋の窓を開けてから数分が経ち、遠くから何かが接近する音が聞こえてきた。
窓に目をやった瞬間、白い物体が美琴目掛けて飛んできていたのだ。それは一方通行に
よってここまで飛んできた上条だとすぐわかった。
ひょいと避けると袋は壁に激しくぶつかり、中から「ぐへ」と情けない声が漏れたのが聞こえた。
袋を開けると中にはあははと少し壊れたように笑っている上条がいる。
「当麻、理由を教えてくれないかしら?」
髪の毛が逆立ちいつでも電撃発射できるわよと上条にアピールする。
「いや、これはですね、土御門たちに薬を飲まされてですね、「問答無用!!」」
言い訳を言っても話を途中で切られ、ガミガミと美琴にたっぷり説教を喰らった。
「無事に着いたみたいだけど、美琴ちゃんと当麻君の立ち位置は既に決まっているようね。」
「あらあら、当麻さんは尻に惹かれるタイプなのね。そう思わない刀夜さん?」
「母さんそこで私に振らないでくれ。目が怖い・・・」

そして長い説教が終わった。
「まだまだ言い足りないけど今はこのくらいにしとくわ。結婚式が終わったら覚悟してなさい!ほら、さっさと着替えに行って!」
「・・・・はい。」
上条の両親がこっちへ来いと促し、それについて行く上条。ドアから出る前にくるっと振り返り、
「美琴、ドレス凄く似合ってるぞ。こっそり俺が頼んだドレスは間違いなかったな。
やはり美琴を見る目は上条さんが一番正確だぜ。んじゃ、着替えてくるから〜。」
じゃあなーと言って上条は去って行った。
「お、お母さん、今アイツ、俺が頼んだドレスって・・・」
美琴は驚きを隠せなかった。以前電話で上条と話した時に、
「ドレスの質の違いがわからなかったから一番安いのをレンタルさせてもらうことになった」
と言われた事があった。もちろん美琴はその時激怒したが激安スーパーでいつも食材と
にらめっこしていた上条なら当然の判断なのかなと思い、ドレスの事は諦めていた。
しかし今日ドレスに着替えた時、安物にしてはとてつもなく上等な生地だなと思っていた。
「お母さん、アイツから何か聞いてなかった?」
「私も何も聞いてないわよ。昨日当麻君にドレスを渡してもらっただけ。」
「・・・あの馬鹿」
美琴は廊下に出た。何も教えてくれない上条にまた説教ネタが増えたと思い、
真相を問い詰めてやろうと上条がいるであろう部屋の前に立ち、バンとドアを開けた。

749■■■■:2010/04/27(火) 00:16:01 ID:htmYAiis
上条当麻はいた。だが着替えの真っ最中でパンツ一枚になっておりズボンを履こうとしていた。
「どうした美琴。レディなんだからノックくらいしろよ?」
「きゃあ!!ごめんなさいぃ!」
パンツ一枚の姿に慌ててドアを閉めた。部屋の中から
「なんだ当麻、この年になって美琴ちゃんはまだお前の裸を見慣れてないのか?」
「あらあら刀夜さん、娘になる美琴さんで変な妄想していたら許しませんよ?」
「だああぁぁうるさい!これくらい自分で着替えれるから早く出て行けー!」
そんなやりとりが聞こえたかと思うと同時に刀夜と詩菜がため息を吐きながら出てきた。
この両親ならドレスの事について知っているかもしれないと思ってとっさに質問した。
「あの、このドレスはどうされたんですか?」
「あらあら美琴さん、そのドレス改めて見ると凄く綺麗ね。あなたが着ているからかしら。
それに一つ一つ丁寧すぎる程縫ってあるわ。」
「いや、ドレスは?」
「どこでどう調達したかはわからないがさすが学園都市。当麻のタキシード姿が目立たなくなるな。」
「・・・・・」
どうやら上条の両親も知らないみたいだ。こうなったら上条本人に聞くしかない。
タイミング良く上条が着替え終わって出てきた。
「おまたせ〜って美琴、さっきからどうしたんだ?」
「このウエディングドレスどうしt・・・・ムグ」
上条に手で口をふさがれた。
「父さん、母さん。最後の打ち合わせがあるからもう中に入っていいよ。
待っていても俺が遅れたからすぐ式始まってしまうぜ?」
「そうか。では母さん一番乗りに会場に入るとするか。」
「はい刀夜さん。美鈴さんも一緒に連れて行きましょうか。」
「当麻、美琴ちゃんに恥ずかしい思いさせるなよ!頑張れ!」
そう言い残して二人は去っていった。二人が完全に見えなくなったところで
「ごめん美琴、隠すつもりはなかったんだけど隠してしまった形になってしまったな。」
「何よ、このドレス、絶対ここで借りたヤツじゃないでしょ?」
「ああ。借りるつもりだったんだけどケタを見てびっくりしてさ。ダメもとで舞夏に頼んだら快く引き受けてくれたんだよ。
色々注文したのに一晩で作り上げたとか言ってたぞ。」
「一晩でこのレベル・・・凄すぎるわよ。」
「さすがメイド学校と言ったとこか。てかお前・・・・・可愛すぎ」
「やめて――!は、恥ずかしい事言うなこらー!!」ビリビリ

750■■■■:2010/04/27(火) 00:16:39 ID:htmYAiis
開始まであと数分、会場にはたくさんの人で埋め尽くされている。
もちろん二人の親交が深い友人達、かつて(?)のライバルもいる。
「初春また頭の花増えてない?」
「何の事ですか?それより佐天さん、白井さんはまだですか?」
「つい先程合流したことをお忘れですの?頭のお花だけ瞬間移動させてあげましょうか?」
「冗談ですごめんなさい白井さ〜ん!」

「あ〜やっと会えた!お疲れ様!てミサカはミサカはあなたの腕に抱きついてみたり!」
「チッ、クソガキが」
「もうクソガキじゃない!てミサカはミサカは体も著しく成長したとこをアピールするために胸を強く腕に押し当ててみたり!」
「やめろこンな場所で!てめェは妹達に何を吹き込まれてンだ!」
「妹達じゃないもん、お姉様だもん!てミサカはミサカは真実を告げる!」

「建宮、五和はまだ来ていないのですか?」
「女教皇様、それがさっきからずっとトイレに引きこもっているのよ。」
「そうですか。あの方があの女性を選んでからずっと五和はこの調子ですからね。」
「お、噂をすれば戻ってきたよ。」
「女教皇様。いらしていたんですね。」
「五和、心配してたのですよ・・・ってこんなところで何故槍を装備しているのですか!」
「女教皇様、私が変な行動をとろうとしたら力ずくで止めてくださいね」
「まずい、五和の目がマジになってる・・・」

「小萌センセー、まさかあの上条が常盤台の超電磁砲と結婚するなんて考えられないじゃん?」
「今まで上条ちゃんが立てた女性フラグは星の数です。その中の御坂さんを選ぶとは
上条ちゃんも相当やり手だと見えるのですー。やはり隅におけないですねー。」
「でも悔しいと思わないじゃん?」
「悔しくないと言えば嘘になりますが、もう誰もあの二人を引き離すことはできないですー」
「やれやれ・・上条は小萌センセーにもフラグを立てていたとは。凄い男じゃん」

そして結婚式が始まった。

751■■■■:2010/04/27(火) 00:18:18 ID:htmYAiis
先に上条一人入場した。祭壇の前まで進むとステイルが立っていた。
「あれ?何でステイルがここに立ってんだ?インデックスにお願いしてたのに。」
「誓いの言葉はシスターではなく神父が問いかけるものだ。それにあの子は君のお願いなら断らない。
だが、愛する人に他の女性と永遠の愛を誓いますか?とは聞けないだろ?」
「え?インデックスの奴俺の事を・・・」
「今頃気づくのかい。ここまで鈍いとはもはや病気だね。とにかく今は私語は慎んでくれたまえ。
僕は彼女の代役を真っ当するためにここに立っているのだから。」
「・・・・」

上条は思い返した。美琴と結婚すると決めた時、噛み付かれるかと怖かったが一番にインデックスに報告した。
報告した時のインデックスは「あの短髪と?」と驚いていたがおめでとうと祝福の言葉を
もらった。だが悲しい表情をしていた事にはこの上条は気づいていなかったのだ。
『続きまして新婦の入場です』
アナウンスが流れ入り口から美琴は旅掛と腕を組んで入場した。
二人が上条の隣に立ち、旅掛は神父のステイル、次に上条にお辞儀をして席に座った。
式が進み、いよいよ誓いの言葉を言う時がやってきた。
「上条当麻、汝は御坂美琴を永遠に愛する事を誓うか」
ステイルが棒読みで質問してきた。
しかし上条は口を開けない。

(どうしたのよコイツ。もしかして誓いますって言うのが恥ずかしいのかしら。
私だって大勢の前で言うの恥ずかしいからここで漏電しないようにかなり予行練習して
きたんだから。アンタが緊張したら私も余計緊張するじゃない)
美琴は隣にいる上条を不安そうに見ていたが上条の本心は違っていた。
(・・・インデックスが俺の事を好きでいたなんて考えもしなかったぜ。今までずっと
一緒に暮らしていたのによ。もしかしたら美琴より多く同じ時間を過ごしていたかもしれねえ。
ステイルが俺たちの前にいるって事はインデックスは会場のどこかで見てくれてるはず。
俺は一生美琴を愛するって決めたんだ。でもインデックスの気持ちに気づいてやれなかっ
た俺はホントに馬鹿だな。何も考えずいつも目先の事だけ見ていた俺はとんでもないな。
遅いかもしれないがインデックスに言う事がたくさんある!)
上条はくるっと会場の方を振り向き、生中継されている事をすっかり忘れ会場に向かって
語り始めた。会場にいる女性全員にフラグを立てる事も知らずに。

752■■■■:2010/04/27(火) 00:20:42 ID:htmYAiis
「俺は神に宣言はしねえ。ここにいるみんなに宣言する。美琴を一生愛する事を!
妻として、そして恋人として一生愛する。昔から俺は決めていた事がある。
御坂美琴と周りの世界を守ると。美琴の周りの世界はみんながいる。美琴は俺をヒーロー
だと言ってくれた。だから俺はみんなを守りたい!美琴を守れたらみんなが喜んでくれる、
みんなを守れたら美琴が喜んでくれる。そうだと俺は信じてる。
臭いセリフかもしれないが愛する美琴のために俺は動く!
美琴の笑顔が見たいから!泣き顔なんて見たくねえ!この言葉に嘘はない!
だから俺は美琴を愛すると誓う!まだ文句があるなら頭にでも噛み付いて来やがれ!」

一瞬静まり返る会場。そしてじわじわと拍手がなり始め、最後にはスタンディングオペーションとなった。
「コホン、上条当麻、一応式だからこっちを向いて言ってくれないかい?」
ステイルがイライラしたように訪ねた。
「はっ!俺は何をしたんだ?美琴、俺は?」
美琴は嬉しすぎて今にも倒れそうだったが何とか立て直せた。
「・・・生中継を録画してるから後で自分が言った恥ずかしい内容を確認して。
私があ、あんな事言える訳ないじゃない!」
「しまった、興奮しすぎて何を口に出したか全く覚えてない・・・不幸だ」
上条は泣きそうな声でステイルに誓いますと宣言した。
「では御坂美琴、汝は上条当麻を愛する事を誓うか?」
「も、もちろんよ!誰に言われても気持ちは変わらないわ・・・・じゃなくて
・・・ち、ち、ちちちちちちちち誓います!」
会場から少し笑い声が聞こえ、それに美琴は顔を一段と赤くした。
「それでは、誓いの証として口吻をしなさい。」
「き、キス!?こんな大勢の前で?」
「何を今更驚いてんだ?そういうのが普通じゃないのかステイル?」
「事前に夫婦に聞いておくものなんだが僕は代役なので。ま、君は何て事なさそうだからやっちゃえよ。」
「お前、俺をおちょくってないか?」
「ちょっと!私を忘れるな!するなら早くして!私からする勇気なんてないんだから!」
「やれやれ、相変わらずツンデレですな姫は。そんな美琴が大好きだぞ。」
「・・・私も。これからもよろしくね。」
二人は口吻を交わした。再び拍手が鳴り響いた。

そして歓声の中悲鳴にも似た声もちらほらと聞こえた。

753■■■■:2010/04/27(火) 00:21:50 ID:htmYAiis
式も一通り終わり、上条と美琴以外の全員は会場を出た。これから女性達の待っていた
イベント、ブーケトスが始まる。
「ちょっと当麻!これブーケと言うより花束じゃない!」
「お前みたいに器が大きい感じでいいだろ?これも舞夏が協力して準備してくれたんだよ」
上条が美琴に渡したブーケは確かにお祝いで送る時に見るような大きさの花束だった。
舞夏のセンスで白い薔薇をメインにしたブーケである。

会場の外は新たな夫婦が早く出てこないかと待っている。ただブーケを手に入れるために
残っている女性が先頭を占めているのだが。
「お姉様の投げたブーケは必ず黒子が手にしてみせますの!ウヘへへへ」
「私だってほしいです白井さん!御坂さんが投げるブーケには絶対ご利益がありますから。」
「非科学的な発想だね初春。でも、確かにあのブーケは欲しい・・・」
この三人を良い例に他の女性達も「あの御坂美琴の投げるブーケはどうしても手に入れたい」と思っているのだ。

入り口に上条夫妻が登場した。二人は大きな歓声に包まれ笑顔で声援に応える。
「お姉様!早くそのブーケを黒子にお渡しくださいまし!」
「あげる物じゃないのよ?能力使わないで自力で手に入れなさい!」
美琴は観衆に背を向けてブーケを空高く投げた。
宙に舞うと同時に白井、初春、佐天、御坂妹、打ち止め、神裂、五和、小萌、黄美川などの女性がブーケに向かって一斉に飛びかかった。
しかしこの中の女性陣で誰もブーケを手にする事はなかった。
小さな三毛猫が猫には大きすぎるブーケをジャンプして口で掴みとった。
地面に着地するとブーケを引きずらないように持ち運んで行った。三毛猫がブーケを運んだ
先には白い修道服を着た銀髪の少女、昔と比べると大人に成長したインデックスが立っていた。
「わあ、スフィンクスこのブーケ私にくれるの?ありがとう!」
このような出来事をみんなより少し上の位置で見ていた上条と美琴は驚いていた。
「当麻、インデックスに渡って嬉しいんじゃない?」
「ん?まあな。まさか能力でインデックスに行くようにしたのか?」
「私にそんな能力ないわよ。普通に投げたらあの猫が捕ってインデックスに渡しただけ。
黒子が瞬間移動で奪うと思っていたんだけど、これって運命よね。」
「ああ。それにしても美琴、やけに嬉しそうだな?」
「当麻が嬉しい事は私も嬉しいんだよ。」
「はは・・口調がインデックスみたいになってるぞ」

754■■■■:2010/04/27(火) 00:22:41 ID:htmYAiis
翌日、新聞やテレビのニュースでは上条と美琴の話題で持ちきりでいた。
どの新聞も上条と美琴のキスをでかでかと一面に載せ、テレビでは上条の宣誓からキスまでの一連の出来事を何度も流していた。
新婚の二人はソファで隣同士に座り、美琴は片手に新聞、テレビのリモコンを持っている。

「どう?当麻はこんな事言ってたのよ。改めて聞いてるとホントにこっちが恥ずかしいわ。」
「もうテレビは消してくださいお願いします〜!」
「何言ってんのよ。どのテレビ局がどのように放送したのか全てチェックしないと。
もちろん全部録画の予約はしてるからね。」
「やめろおぉ!もういっそのこと殺してくれ!俺はもう外を歩けない!」
上条は恥ずかしさのあまりに顔を伏せた。そこに美琴が体を近づけた。
「アンタはまだ死んだらダ〜メ。私とその周りを守るんでしょ?」
「その言葉に嘘はありませんが今は言わないでください。恥ずかしすぎます・・・」
「クス、でも愛するための行動ってそれだけじゃ物足りないかも・・・」
「一体どうすればよろしいでせうか・・・」
「いつまで経っても当麻は鈍感なのね。子供が欲しいと思わない?」
「っ――――!!」
「まだ夫婦として始まったばかりよ。新しい家族を築かないとね。よろしくね、あ・な・た☆」
「お、お、お、お前には敵わないよ・・・何ていうか、幸せだ。」

755■■■■:2010/04/27(火) 00:23:19 ID:htmYAiis
以上になります。何かあったらお願いします。

756■■■■:2010/04/27(火) 00:26:49 ID:WqNz4HlI
>>755
GJ!
つかどのSSも共通して、五和…お前怖すぎだろ…

757■■■■:2010/04/27(火) 00:35:34 ID:Fc.3ZxyU
>>742
GJです!
お約束ということで面白かったですw

>>755
GJです!
一方さんも尻に敷かれてますかw

758アミノ酸:2010/04/27(火) 02:36:03 ID:MD.92gy.
皆様、こんばんはです(*'-')ノ

 うっかり寝てしまい、気付いたら日付けが変わっていました…。
うん、もう本当は今日ラストだけど、とりあえず投下しよう。
「とある宣伝の超電磁砲」続きになります。カウントダウンし損ねてますが…(⊃д⊂)
うーん、ラストにちゃんと繋げてるかなこれとか色々、足りない分もあると思います。
長々失礼しました。

返信させていただきます。

>>706 コッカラさん
はい!頑張ります!
幼馴染シリーズ、楽しみにして頂いて光栄です!
上琴兄妹1と2どっちも書くなんて!
実は1と2どっちも捨てがたいと考えてたもので(笑)
楽しみにしてます!

 すごい、寝ている間に、沢山増えてるぅぅ!
書き手の皆様ほんとGJGJです!ああ、癒されます。

よし、ではどなたもいらっしゃらないようなら40分から3〜4レスお借りします。
宜しくお願いします<(_ _)>

759とある宣伝の超電磁砲<レールガン>:2010/04/27(火) 02:39:59 ID:MD.92gy.


 夕闇が迫る街中で、少女―白井黒子は一人の少年を見つけた。

少年は、少し肩を上下させ息をついていた、先ほどまで走っていたであろうことが窺い知れる。

――面白くない、と黒子はそう思った。
 どうしてここにいるのか、予想範囲内ではあるが…やはり面白くない。
 何故、肩で息をしているのか、何の為かわかるからこそ、余計に面白くない。

(…まったくもって、やるせないですの)
 
 少年は、成すべき事をわかっている。
だからこそ、黒子は少年と向き合う必要があった。

「あら?」
 わざとらしいぐらい大きな声で呼びかけた。
「そちらから、来て頂けるとは…向かう手間が省けましたわ」
 と含みのある言い方で、挑発し、笑みを浮かべる。
用があって向かっていたのだから、手間が省けたのは事実だ。

「御坂の居場所を知っているのか?!」
 あまりに必死なその様子に、そんなに慌てなくても
お姉さまはお待ちしておりますわと心の中で嘆息する。

(わたくしが簡単にお答えするとでも?)
 
 これは取引だ、こちらのカードはお姉さまの居場所。
最初からこの機会を作るために、そう仕向け、計画通りに事は運んでいる。
 あの時、ファミレスに戻ろうとするお姉さまを引き止め、とある提案をした。
きっと、お姉さまは疑いもしてないだろう――いや、そうでなくては困る。

 こちらで舞台は整えたのだから、あとは相手の出方次第。
この少年からの明確な答えを聞くまでは、その口から聞くまでは
納得はできない、諦めもつかない。つまり黒子の個人的な事情によるものだ。

「お答えしても宜しいですが…そうですわね」
  と凛とした声で告げる。
「少しわたくしに付き合って頂けません?」
 暗に用があるから、拒否権はないとその目は語り、
有無を言わさぬその迫力に、少年―上条当麻はただ頷くしかなかった。

760とある宣伝の超電磁砲<レールガン>:2010/04/27(火) 02:41:20 ID:MD.92gy.


 歩きながらで構いませんからと、白井は話を続ける。
「お姉さまは…上条様の事で悩んでいらっしゃいました」 
「………ああ」
「お分かりでしょう?」
 つまり、白井は全て知っていて答えを聞かせろと、そう言っている。
「それを知って…どうするんだ?」
 何をされるのか内心ビクビクしながら尋ねる。
「もちろん回答次第にもよりますが…わたくしにも理由がありますの」
 少し悲しそうに笑い、白井は続ける。 
「わたくし諦めが悪いですから、上条様から直接聞きませんことには…」
 ああ、そうかと、唐突に理解した。  
白井は、想いを断ち切るために来たのだと。
「俺は…御坂の事が好きだ」
 立ち止まり、そして同じ御坂美琴を想う白井に向けて嘘偽りない気持ちを告げる。
そうですか、と白井は沈黙し俯く、やがて意を決したようにおもむろに方角を指した。

「お姉さまなら、あちらにいらっしゃいますわ」
 と告げて
「上条様なら、これで分かるでしょう?」
 指を差した方向にあるのは、鉄橋。
二人が最初に撮ったワンシーンの場所だった。

「一つ、約束して下さいませ、お姉さまを悲しませるような事は決してしないと」
 もちろん破ったら、どうなるか分かってらっしゃいますよね?と白井は付け加えた。
「ああ、約束する」
「ささ、お姉さまがお待ちしておりますから、早く行ってあげて下さいませ」
「ありがとうな、白井」
 礼を言い、御坂の待つ鉄橋へと向かう。  
 
 これでよかったのだと、お姉さまの幸せはわたくしの幸せと言い聞かせて、黒子はしばらく
そこに立ち尽くしていた。頭では分かっていても、心は言う事をきかない。ほろりと涙が頬伝う。
これが失恋ですのねと悲しい気持ちに浸っていると、それをぶち壊すかのように携帯の着信音が鳴り響く。
 
「助けて下さいー白井さんー!」
 電話に出ると、いきなり助けを呼ばれ、思わず聞き返す。
「初春、どうしましたの?」
「ファミレスに来て下さい、お願いしますー!」
 
 何やら問題が発生していることだけは分かり、慌てて向かう。

「で、これは一体何事ですの?」
 白井さ〜ん、助けてと二人の少女が出迎え、何故助けを呼ばれたのか理解した。
テーブルには食べつくされた食器が積み重なり、そしてそれは現在進行形で増えつつある。

「……あ」
 食器の積み重なった先、その山に埋もれるようにして、一人の少女が黙々と食べ続けていた。
その少女が何者かわかった黒子は、お二人ともご存じなかったんですの?と佐天と初春に問いかけた。
 知らないですよーと二人は口々に言う、そもそも超電磁砲からの二人に、この少女の異名が分かる
はずもないかと思い直し、今日何度目になるか分からないため息をついた。

761とある宣伝の超電磁砲<レールガン>:2010/04/27(火) 02:43:24 ID:MD.92gy.

さてこの現状をどうしたものかと考えを巡らせていると、一つのいいアイデアが思い浮かぶ。
今日は本当にいい事一つないが、ある意味これは神様からのプレゼントなのだと。

「持ち合わせがありますから、ここはわたくしが立て替えておきますの」
 とビックイーターことインデックスさんの分は任せて下さいと佐天と初春に伝える。
「白井さん、ありがとうございます」
「助かったー」
 と佐天と初春はそれはもうほっとして、白井の真の目的に気付くはずもない。
 
(これであとは、あの猿人類宛に領収書を頂いておけば完璧ですわ、ケケケ)
 
 そうしてふと、今頃お姉さまはどうしているだろうかと、思いを馳せる。
 
――「と・あ・る…宣伝の『超電磁砲<レールガン>』!」

「はーい、皆さんこんにちは〜佐天涙子でーす!」
「ジャッジメントですの!こんにちは、初春飾利です!」
「って初春、ますます白井さんの真似に磨きがかかってますなー」
「そうですか!では、もう一度!」
「ジャッジ…「はいはーい、話進まないから…それでは本日のゲストお呼びしま〜す!」」
「えっ、来てるんですか?」
「来てます!」
「どうぞー!」

「ぱんだぱんだ〜皆さん、元気ですか〜?インデックスだよ」
 
 わー、パチパチパチ…

「今日はゲストがインデックスさんということで…早速、質問コーナに行ってみまーす!」

「上琴大好きさんから頂きましたー!佐天さん、初春さん、そしてゲストのインデックスさん、こんにちは!」
『こんにちはー!』
「いつも楽しく見させて頂いてます」
『ありがとうございますー!』
「えー…上条さんと美琴さんの恋の行方が気になります!ところで今回のお話、皆さんの一番印象に残るシーンは何でしょうか?」

 ―回想―

「インデックスさん…かなり食べましたよね〜」
「そこ?!そこじゃないんだよ!」
「いや〜でもあの食べっぷりには…ねぇ初春?」
「ですよね〜佐天さん」
「む〜〜〜!」 
「まっ、まぁまぁ…インデックスさん、落ち着いて下さい〜」
「ねっ…とある宣伝の超電磁砲いよいよ!」
「ですね!クライマックス!」
『お楽しみに!』
 
「はい、ここで…皆さんにお知らせでーす!」

『とある科学の超電磁砲<レールガン>』
「第4巻は4月28日、DVD&ブルーレイで発売です!」
「初回限定版、豪華特典付なんだよー!でも、私の出番がないんだよー」

 あー…。 

「つ、次の収録では出てきますよ〜」
「みんな、次の巻も買って欲しいかも!」
「発売まで、あと2日です!」

つづく!

762アミノ酸:2010/04/27(火) 02:47:56 ID:MD.92gy.
以上になります<(_ _)>

残すところあと一回になりました。
黒子さんが不幸な立ち回りに…ファンの皆様すいません。
でもちゃんと仕返しの機会はあります!
つぎはいよいよ最終告白シーンです!
最後までお付き合いください。宜しくお願いします。

76320気圧:2010/04/27(火) 13:51:10 ID:hccnUl5k
休みだから話の続き考えてたけど全く進まないので妄想垂れ流しにきましたよっと。
5分後ぐらいに1レスで行きます。内容は21巻?の妄想です。

76421巻?妄想:2010/04/27(火) 13:59:01 ID:hccnUl5k
 間近まで迫る学園都市からの追撃部隊、第三次製造計画の妹達
「お前一人で残るつもりか!?」
「そうよ、これは私の役目。おいたをした『妹』をしかるのは『姉』の役割よ。こればっかりはアンタに譲ってやらないわ」
「だからって、一人であれだけの数を相手にできる訳ないだろ!」
「大丈夫、絶対に此処から先は通さないから」
「そういう事を言ってるんじゃ「ねえ、ちょっと目を瞑ってくれない?」こんな時に何を「いいから!」……ったくなんだって」
 上条が目を閉じた瞬間、二人の影が重なった。
「……アンタには貸しがあったわよね?」
「みさ、か……おまえ……」
「あの子を助けてきて、その上で私に返事をしなさい。それでチャラにしてあげるわ。アンタならそれぐらい簡単でしょ?」
「……勝手なこと言いやがって。ああ、やってやるよ!けどそれにはテメエが必要なんだ!絶対に死ぬなよ!!」
「分かってる、私もアンタに伝えたいことが沢山あるんだから。だから、行きなさい!」
「……わりぃ!」


「さあ、『姉』の恋路を邪魔した悪ーい『妹』にはきっついお灸を据えてやるんだから。覚悟してかかってきなさい!」

76520気圧:2010/04/27(火) 14:01:24 ID:hccnUl5k
以上です。
ああ21巻まだかなー、禁書2期はまだかなー、待ち遠しくて生きてるのが辛いなー。

766■■■■:2010/04/27(火) 17:30:29 ID:mqn0scdY
GJです!!

ところで上条さんが美琴をお持ち帰りするSSと上条さんが美琴を看病するSSってどこにあるか教えていただけないでしょうか?

767ヴァヴァーン:2010/04/27(火) 17:55:57 ID:xSo1OrGA
初投稿です。
はたしてうまく投下できるか…あわわわ

問題なければ5分後行きます。

768ツンデレカルタ(美琴ver):2010/04/27(火) 18:00:19 ID:CxB4vIxQ
美琴さんが罰ゲームを受けることになりました。

美琴「…で? い、家に連れ込んでまで、わたしに一体何させる気よっ」ドキドキ
上条「ふっふっふ…美琴センセーには、コレと同じセリフを上条さんに向けて言ってもらいます!」バーン
美琴「…へ?『ツンデレカルタ』?なによコレ?」
上条「まぁ、とりあえず聞いてみてくれ。再生するから」
美琴「う、うん」

美琴「………………っ!?…………はぁ!?……………………ちょ…………!!!!」カアアー

上条「どうだ?」
美琴「…む、むりむりむり!!!こんなの言えない!し、しかもアンタになんてっ…ぜ、絶対無理!!!」ボッ
上条「え〜。なんでもするって約束だったじゃん」
美琴「ぅぐっ!…ってかなんでよ!?アンタ、私みたいな中学生のガキには興味ないんじゃなかったの!?」
上条「いやさ、お前いつも俺に突然怒り出したり、わけのわからんいちゃもんつけたり、挙句ビリビリしたりしてくるだろ?」
美琴「うっ、…そ、それはアンタが悪くて…」
上条「それで、初めてこれを聞いたとき思ったんだよ!…もし、もしもあの御坂がツンデレだったとしたら?」
美琴「…へ?」
上条「いままでの意味不明だったあれやこれやの行動が、全てこの上条さんを愛するがゆえの単なるテレ隠しだったとしたら!?」
美琴「!?ちょっ…!」


上条「…めっちゃくちゃ可愛いじゃねぇかってな!!!」

美琴「ふっ!?ふっ、ふにゃぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ビリビリビリビリ

769ツンデレカルタ(美琴ver):2010/04/27(火) 18:01:11 ID:xSo1OrGA
30分後

美琴「…はっ!」パチッ
上条「お、起きたか、ビリビリ」
美琴「わたし、一体何を…?それに、ここはどこ…?」キョロキョロ
上条「俺のベッド」
美琴「…うへぇっ!?なっ、なななんでなんでぇ!?っぐえ!」ドスン
上条「うお!大丈夫か?…すげえキレーに落っこちたな、コントみたいだぞ」
美琴「感心すんな!………あれ、あれ?どうして私がアンタん家に?えぇ?」
上条「いやーしかしツンデレってすごいよな。お前が気絶してる間も、上条さん自らの妄想に悶絶しきりでしたよ!」
美琴「?ツンデレ?妄想?」
上条「さっきのことだってな?御坂が俺のことを好きで好きでたまらなくて、『可愛い』って言われた恥ずかしさのあまり漏電したって考えたら……………くぅ〜っ!たまらんっ!」
美琴「…………ぜ、全部思い出したわ…」ボシュゥゥゥ
上条「で?どうなんだ御坂」
美琴「え」
上条「さっきはかなり嫌そうにしてたけど…やっぱ無理か?」
美琴「…」
美琴「…………ったの?」ボソッ
上条「ん?」
美琴「アンタの想像したツンデレの私を、アンタはか、かわいいって思ったの?」
上条「御坂たんをかき抱いてモフモフしたくなる欲求を抑えられたのは、この上条さんの一生に1度の奇蹟ですな」
美琴「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!…わ、わかったわよ!やるわよやってやろうじゃないの!で、でもこれは罰ゲームだから仕方なくやるんであって、べっ、別にアンタのためにするわけじゃないんだからね!」ツンツン
上条「マジ!?ぃやっほーーう!!美琴たん愛してるーーー!!!」ダキッ
美琴「ちょお!?や、やめっ、モ、モフモフすんなぁーーーー!」

770『あ』:2010/04/27(火) 18:02:10 ID:xSo1OrGA
美琴「…あああんたなんて、とととうふのかどで頭ぶちけて、しし死んじゃいやよ!!!」

上条「…噛みまくりなうえに、セリフ間違ってるんですが」
美琴「だ、だって!なんでアンタの膝の上に横座りして言わなきゃいけないのよ!は、恥ずかしいじゃないっ…」カアーッ
上条「ほら、俺なんかが相手じゃこれくらいしないと恥じらってくれないだろ?ツンデレに恥じらいは必須!これ絶対!」
美琴「っ〜〜〜!!ア、アンタって奴は、一体どこまでバ…」
美琴「…!」キュピーン
美琴「…そっ、そうねっ!別に私は、アンタのことなんて全然ちっとも何とも思ってないけどっ!こ、ここまでされるとちょ〜っと恥ずかしいわね!シチュエーション的にっ」
上条「だろ?じゃあ次行きますよー」
美琴(…と、とりあえず体裁は繕えたわ…で、でも顔近っ!に、匂いもする…!?……………ふ、ふにゃあ……)ドキドキ

771『い』:2010/04/27(火) 18:03:14 ID:xSo1OrGA
美琴「い、いい加減目覚まし時計で起きなさいよね!なんでいつも私が起こさなきゃなんないのよ!」

上条「…うーん!いいないいなぁ!男のロマンだなぁ!」
美琴「な、なに?こんなトゲトゲしい言い方でも嬉しいもんなの?」
上条「いやー、こんなこと言っても結局毎日起こしに来てくれる女の子の心理を考えたら、もう萌え萌えですよ!ホント、照れてつい本心とは逆のことを言ってしまう女の子って可愛いよな〜」
美琴「ふ、ふ〜ん…」
美琴「…!」キュピーン
美琴「…べ、別に私はアンタのこと好きでもなんでもないんだから!か、勘違いしないでよね!」ドキドキ
上条「あ〜はいはい、上条さんは妄想と現実の区別くらいついてますよー」
美琴「なんでじゃゴラァーーーー!!!!」ゴツン(頭突き)

772『う』:2010/04/27(火) 18:04:27 ID:xSo1OrGA
美琴「うるさいうるさいうるさい、うるさーい!!」

上条「うおぉ!み、耳元で思いっきり叫ぶな!」
美琴「ふぅー、なんだかちょっとすっきりしたわね」
上条「…!!!」ゾクゾク
美琴「ん?どしたの?」
上条「み、耳元に息を吹きかけないでくださいますか」
美琴「っ!?な、わ、わざとじゃないわよ!…へ、へへん。そんなことでドキッとしちゃうなんて、アンタもまだまだお子様ねっ。いい気味よ!」
上条「…ほほ〜う?」
美琴「…な、なによ」
上条「……………っふぅー」
美琴「ぴゅへぇ!?ふっ、ふにゃにゃにゃにゃーーー!!!!!」ゾクゾクズッキューン

773『え』:2010/04/27(火) 18:05:06 ID:xSo1OrGA
美琴「えっ、ええ選んだのは私で、アンタじゃないんだからねっ」

美琴「ま、まだ耳がちょっと変…」ドキドキ
上条「んー、これはなかなか想像が膨らむセリフだな」
美琴「どういう状況なのかしら」
上条「付き合ってる2人のどっちが先に惚れたか、みたいな話ですかね?いやーこんなこと言われる男は羨ましいですな〜」
美琴「………あとはアンタが選んでくれるだけなんだけどね」ボソッ
上条「ん?なんか言ったか?」
美琴「ふ〜んだ。知らないわよ。この馬鹿」プイッ

774『お』:2010/04/27(火) 18:05:42 ID:xSo1OrGA
美琴「『おはよう』じゃなくて、『おはようございます』でしょ!」

上条「おー、なんかお前の言いそうなセリフだな」
美琴「なんでよ」
上条「いやお嬢様だし、ガサツでガキで偉そうだし」
美琴「アンタねぇ!…でも私、こんなこと絶対言わないわよ」
上条「そうかぁ?」
美琴「…レベル5になってからは、同い年の子にも敬語使われたりするのよ。そうでなくてもちょっとよそよそしかったりとかさ…」
上条「…」
美琴「だから、せっかく気軽に『おはよう』なんて言ってくれる人に、それを止めろなんて、言えないわよ…」
上条「…御坂」ギュッ
美琴「っふぇ?」
上条「もう朝じゃないけど…おはよう」ナデナデ
美琴「……うん。おはよ…」ギュッ

775ヴァヴァーン:2010/04/27(火) 18:07:15 ID:xSo1OrGA
ぎゃあ!『7レス消費』って言うの忘れた!ごめんなさい…
とりあえずあ行まで。
書いてみて、初めてその難しさを知りました。職人さん達凄すぎ…
需要がある様なら頑張って続き書きます。

批評やアドバイス的なものを頂けると凄く助かります。
感想はもらえるとすごく嬉しいです。では。

776■■■■:2010/04/27(火) 20:46:02 ID:ZuVQurbg
ただひたすらGJ
さあ、残りの音もやってみようか

777■■■■:2010/04/27(火) 20:59:29 ID:MarRW7Kk
すごいツボです。GJ!
さぁ残りを書く作業に・・・!

778ゆりかご:2010/04/27(火) 21:57:29 ID:BBPu02ms
はじめまして。
ssが一つ出来ました。
上琴のいちゃいちゃ(?)もありますが、欝展開です。
ここに投下すべきが、禁書ssに投下するか迷っています。
どうすればいいでしょうか?
皆さんの意見を聞かせて(見せて)ください。
お願いします。

779■■■■:2010/04/27(火) 22:03:05 ID:wsfUkMfQ
どう鬱なのかが問題だな

780ゆりかご:2010/04/27(火) 22:07:03 ID:BBPu02ms
とある魔術を読んで、未来展開予想ものの短編です。
こんな展開もあるかも…という妄想で書きました。
いま漂っているいちゃいちゃSSの甘い雰囲気が一気に壊れそうです。
でも上琴に間違いないです。

781■■■■:2010/04/27(火) 22:20:48 ID:IpL92rck
んー? 例えば最後に上条さんが植物人間end的な?

782ゆりかご:2010/04/27(火) 22:22:44 ID:BBPu02ms
雰囲気としては、いちゃSSのBADENDに似てますね…

783■■■■:2010/04/27(火) 22:25:27 ID:Wp/bhnZM
いちゃいちゃ=不幸でもいいと思うなら投稿してみたら?
私の感覚だとありえないけど

784■■■■:2010/04/27(火) 22:26:04 ID:nZ5nR0E2
一つの提案としては↓に投稿するという手も
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1269574273/

ぐちゅ玉氏もここでは雰囲気が合わないと判断されたのか
上琴であっても21巻予想ネタを投稿されてます

禁書SSも上琴を禁止されてるわけでもないですしどこでもいいと思いますが
雰囲気を壊すと分かっていて投稿するのは引っ掛かりは感じますね

785ゆりかご:2010/04/27(火) 22:27:42 ID:BBPu02ms
了解しました

786■■■■:2010/04/27(火) 22:27:43 ID:Fc.3ZxyU
鬱エンドだと、やめた方がいいのでは?
BADENDも投下されたときに、スレが微妙な雰囲気になったから

787つばさ:2010/04/27(火) 23:17:30 ID:E1v5CwDk
>>726
感想ありがとうございます。
まあ美琴って普通にやってれば優等生なのに、上条さん絡むと愛すべきおバカになってくれますから。
私も彼女のそういうところがかわいく思えて仕方ないのです。
上条さんもあきれかえってるでしょうね。でも(この話では)美琴の声が聞きたくて堪らなかったんで、
実は上条さんも相当テンパってたりします。

788小ネタ 膝枕:2010/04/27(火) 23:18:40 ID:HBvjJJf.
美琴「で、これはどういう状況なの?」

上条「いつもの自動販売機の前にいたお前に上条さんが声をかけると、
   上条さんは特に何もしていないのに、真っ赤になるほど怒りながらお前は電撃を撃ってきた。
   上条さんは黒焦げにはなりたくないので、お前の電撃を打ち消す為に、お前の手を握った。
   そして気づいたらお前が原因不明の貧血を起こして気絶してたから、仕方なくお前をベンチまで運んで、寝かせている事数十分。
   ようやくお前が起きました。と、ここまでだ。何か質問はあるか?」

美琴「そっちじゃなくて!私の目線が何で少し高いのかについて聞いてるのよ!」

上条「そりゃそうだろ」

上条「だって膝枕してんだもん」

美琴「え…?…………………………………ぎゃああああああああああああああ!!??ガバァッ!!」

上条「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?」

美琴「アアアアアアアアアアアアアンタッ!!い、いったいなんてことを……プルプル」

上条「お前の方こそ何なんだよ!心臓に悪いわ!」

美琴「アアアアアアアアアアンタのやってた事の方が心臓に悪いわよっ!ひ、ひざまくらって……」

上条「膝枕ってビックリするようなもんじゃないだろ!?逆になんでそんなにビックリしてるのか知りたいね!」

美琴「いや…誰だってすきなひとにひざまくらされたら……ゴニョゴョ」

上条「良く聞こえないんだけど?」

美琴「うるさいわねっ!どうだっていいじゃない!それより責任とってよね!」

上条「責任っ!?女の子がそんな事言うんじゃありませんっ?!」

美琴「アアアアンタは何の勘違いしてんのよバカァァァァァ!!それに、どうせそっちの責任だって、とってくれないんでしょ!」

上条「は?!今の言い方だと、とってくれって言ってるように聞こえるぞ!?」

美琴「ばっ!?ななななななななななななななにをいってっ!!??」

上条「はぁ…言葉の言い方には気をつけるようにしろよ?お前、かわいいんだから、変な男に付きまとわれるぞ?」

美琴「ななななななななななななななな!!!??か…かわいいって!?」

上条「え?お前は普通にかわいい方だろ?」

美琴「かっ…かっ…かわ…っ…!!」

上条「まぁ良く考えたら、上条さんもこんなにかわいい友達がいて、案外幸せなのかもしれないですねぇ」

美琴「……ブシュー」

789ほのラブ同盟:2010/04/27(火) 23:18:42 ID:sMWBPklA
新しい方々も多くいらして嬉しい限りです!
まぁ、自分も超新人素人ですが(汗

とある少女のういういdaysのパート6前編ができました。
どなたもいらっしゃらないようなら、5分後に3レスお借りいたします。

790ほのラブ同盟:2010/04/27(火) 23:22:27 ID:sMWBPklA
すみません!
どなたかのSSとぶつかってしまいました><

投稿者の方申し訳ありません、大丈夫でしたか?

791ほのラブ同盟:2010/04/27(火) 23:24:49 ID:sMWBPklA
連レスで申し訳ありませんが、投下させて頂きます。
タイミングの悪さに気が重いのですが…。

792とある少女のういういdays(6)前編:2010/04/27(火) 23:25:50 ID:sMWBPklA
―――とある公園



「悪い美琴!待ったか?」

ツンツン頭の少年がベンチに向かって駆け寄ってくる。
いや、正確に言えば、そのベンチに腰掛ける少女に向かって、である。

「ううん、私も今来たところよ」

美琴と呼ばれた少女は、すっと立ち上がり少年に微笑みを向ける。
それは決して社交辞令では見せない、心からの特別な想いを込めた笑顔だ。
しかし、返した言葉にはやや偽りがあった。
彼女は30分以上前からそこで少年を待っていたのだ。
決して彼が定刻に遅れたわけではない。
美琴には、それよりもずっとずっと早く、待ち合わせ場所にいたい気持ちがあったのだ。

つまる話―――

抜けるような青空。
暑すぎない陽気。
緩やかな風。
今日は、格好のデート日和なのだ。



「じゃあ、早速行きますか?」

ウニ頭の少年―上条当麻―が美琴の手をとって歩き出す。

「え?え?当麻!?」
「どうした?」
「あ、あの…手…」

美琴は、普段とは異なる上条の積極的な態度に、顔を赤らめる。
さり気ない行為だったが、彼が外で自分から手をとるなど初めてのことだ。

「あ、あぁ…この間は寂しい想いさせちゃったからな…。落ち着いて二人で出かけるのも久し振りだし。…嫌か?」

上条も決して平常心での行いではない。
積極的にモーションをかけつつも、美琴の顔から目を逸らしており、さらにそこからは明らかに照れが見て取れる。

「嫌じゃない!あ、あのね、当麻…」
「うん?」
「………好き、だよ」

正真正銘、自分のことだけを考えてくれた上条の行為に、美琴は幸福感で満たされた。
自分の正直な想いをまっすぐ伝えるのは、やっぱりまだ恥ずかしい。
だけど、どうしたって今の気持ちを言葉にしたかった。
そんな強い意志のこもった言葉に、上条の胸も喜びに溢れる。

「俺もだよ、美琴。大好きだ」

上条の手が美琴の頭をなでる。
その優しくて、暖かい、自分よりちょっとだけ大きい手から、美琴は深い愛情を感じる。
そして、いつの間にか急接近して、いつの間にか両想いだったと知ったあの頃を思い出しながら上条の胸に自分の身を預けた。
周りには誰もいないが、屋外で抱き合う形となることに上条は焦りを覚える。

「み、美琴?」
「ちょっとだけ…」

ぽかぽか陽気よりも暖かな熱で、二人が繋がる。

「ねぇ」
「何だ?」
「安心するの」

上条は返事の代わりに、美琴の頭に手を回し、ぽすっ、と彼女を抱き寄せた。

(ちょっとくらい、いいか…)

5分ほどして、ありがと、と美琴が言うまで、二人の抱擁は続いた。
美琴の表情がなんだかスッキリしているのを見て、きっと彼女の中で何か引っ掛かっていたものがあったのだろうと上条は推測した。
深く追及はしない。
つい先日、自分たちは離れ合っていた時期があったし、その間に美琴は自分の後輩や妹と大切な話を交わした。
今それらのピースがカチリとはまり合ったのではないかな、と思う。



「当麻、あのね…私、誘いたい人がいるの」

ぎゅータイムの後、さぁ行こうかという時に美琴が言い出した。
美琴がそんな提案をするのは珍しい。
二人きりの時間をとても大切にしている彼女だ、言うからには深い理由があるのだろう。

「美琴がいいなら、俺は構わないぞ」
「うん、ありがと」

そう言うと美琴は、空に向けて人差し指を向けた。

「何してんだ、美琴?」

意外すぎる彼女の行動に、まさか落下型ヒロインが実在したのか、なんて考えが一瞬よぎったが、指差す先の上空にはそんな影はない。
はてな、と首をかしげる上条は、続く美琴の言葉でさらに疑問符を増やす。

「ん〜?そうね〜、釣り?」

楽しそうに軽やかに言うと、美琴は指先から細く細く雷撃を打ち上げた。

793とある少女のういういdays(6)前編:2010/04/27(火) 23:26:18 ID:sMWBPklA



2、3分ほど続けていただろうか、タタタ…と軽い足音と共に少女が現れた。

「お姉様の波長を感じて参りましたが、何か事件でしょうか、とミサカは状況をよく把握できずに困惑します」

走ってきたのか、はぁはぁと軽く肩で呼吸をする彼女は、美琴と同じ服装で、胸には小さなハートのネックレスが揺れている。
以前常備していた暗視ゴーグルは、最近はほとんど見ることがない。

「ね♪釣れたでしょ」
「お前な…」

自慢げに胸を張る美琴に、上条はため息をつく。
緊急事態かと思い駆け付けてくれた御坂妹が不憫である。



「…とりあえず緊急性はないということは分かりました、とミサカは不満を飲み込む大人な対応をします」
「あはは、ごめんね、そんなに急がせるつもりは無かったんだ」

御坂妹は、明らかに不機嫌ですよーというオーラを発していた。
相変わらず表情はほとんど変わらないが、それでも眉が少しだけ吊り上がってる気がする。

「でもさ、これって私たちだけの特別な繋がりじゃない。こういうの、なんだか嬉しくない?」
「なるほど、物は言い様、考え様ですね、とミサカは上手く誤魔化された気がします」
「でしょ!だからたまにはこういうの、良くない?」
「………なんだか雑用のあるたびに呼び出される気がする、とミサカは予測を立てます」
「大丈夫よ、そういうときは当麻に頼むから」
「おいっ、本人の了解はナシですか!?」

二人のやりとりを見ていた上条は、突然の奴隷宣言に異を唱える。

「それでお姉様、何か御用があったのでは、とミサカは流れをぶった切って問い掛けます」
「あれ、またですか?また上条さんはスルーってやつですか!?」
「あぁ、実はね、アンタと一緒に行きたい所があるのよ」
「お姉様と一緒に、ですか、とミサカは期待に胸を膨らませます…まぁ、オリジナル同様に無い胸ですが」
「―――!?アンタ、何言ってんの!!」
「あの…俺のことは…」
「事実を述べたまでですが、とミサカは実はここ2週間で特定部位が育ちつつあるという驚愕の事実を表明します」
「ウソ!?そ、そんな…妹に越されるなんてイヤ!!」
「あ、あの………はぁ…俺、一応主人公なんだよな」

不幸だ、とお決まりのセリフを呟き、しょげる上条であるが、姉妹は突如始まった超重要な言い争いのため、全く意に介さないでいた。

794とある少女のういういdays(6)前編:2010/04/27(火) 23:27:29 ID:sMWBPklA



―――とあるゲームセンター

「さすが第六学区のゲームセンターにある最新型の超立体3Dプリクラ。3人が浮かび上がって見えますね、とミサカは突然の場面転換にも分かりやすい説明をする『出来る女』をアピールします」
「アンタ、誰に話してるの?」
「ちょっとしたファンサービスです、とミサカは似合わないウィンクを飛ばします」

御坂妹の謎セリフの通り、上条たち3人組は第六学区のゲームセンターに来ていた。
もともと、今日はゲーセンに来て新しく入荷されたばかりのゲームで遊ぼうという約束をしていたのだが、目的のゲームよりも先にプリクラを撮ろうと美琴が言い出した。

「…アンタの言うことは時々よく分からないわ…。でも、このプリクラはすごいでしょ!この間佐天さんに聞いたんだけど、結構話題になってるみたいよ」

言いながら、美琴は印刷されたプリクラを手に取り、備え付けのハサミでチョキチョキと切り始めた。
ちなみに、プリクラのフレームイラストはもちろんゲコ太である。(有無を言わさず美琴が決めた)

「当麻、携帯貸して」
「ん?いいけど何するんだ?」
「プリクラと携帯って言えばこれでしょ!」

上条から携帯を受け取ると、電池カバーを取り、その裏にプリクラを貼り付けた。

「なんだか恥ずかしくないか?」
「これくらいみんなやってるわよ」

上条に携帯を返すと、美琴は自分の携帯にも同じようにプリクラを貼り付けた。
よしっ、と呟き、満足気な表情を浮かべる。
そしてもう一人の同行者の方へ顔を向けると、御坂妹は羨ましそうな寂しそうな目で、行為の一部始終を見ていた。

「何そんな顔してるのよ。アンタのだってちゃんとあるわよ」

その言葉を聞いて、御坂妹はさらに悲しそうな表情を浮かべる。

「ミサカは…携帯電話という物を所持していません、とミサカは悲しい事実を」
「んなこと分かってるわよ!」

妹の言葉を遮り、美琴は持っていた鞄から小さな箱を取り出す。

「だから、『アンタのもある』って言ってんの」

小さな箱を開けると、そこには薄いピンク色をした、シンプルな形状の携帯電話があった。
それを取り出し、自分たちと同様にプリクラを貼り、妹に手渡した。

「はい。これで私たちはいつも一緒よ」

優しく声をかける美琴に対して、御坂妹は訳が分からないと言わんばかりの真ん丸な目を向ける。

「どうして…?とミサカは生じた疑問をそのままお姉様にぶつけます」
「だってアンタ、携帯持ってないんでしょ。連絡とりたいときに不便じゃない」

当たり前のことだと言わんばかりの美琴。
決して悪い思いはしないのに、御坂妹は自分でも不思議と強情な態度をとってしまう。

「しかし、呼び出すだけならば先ほどの『釣り』で事が足りるのではありませんか、とミサカは追及します」
「まったく、アンタらしいわ。でもね…さっきは『私たちだけの特別な繋がり』って言ったけど、こういう『普通の繋がり』ってのも、やっぱり大切じゃない?」

どこまでも優しい声。
包まれるような暖かい目。
自分のお姉様は、どうしてこんなにも、自分のことを想ってくれるのだろう。

ぽたっ

気が付いたときには、雫がこぼれていた。
嬉しいとも、楽しいとも、なんだか違う、胸の奥がじんわりと熱くなる気持ちで満ちていく。
ここのところ、自分の中にある何かが自分の思惑を外れることが多い気がする。
あの少年のことを考えるときだって、心臓のあたりに異変が起きる。
そして今回の変化は、それとはまた異なる。

「ありがとうございます、とミサカは新しい感情に困惑しながら感謝の気持ちを伝えます」
「そんな特別なことはしてないわよ…アンタは、大切な…か、家族なんだから、これくらい当たり前でしょ」

姉が妹にハンカチを差し出す。
そんな光景を見て、家族っていいなぁ…なんて上条は思う。
思うと同時に、記憶はなくとも、そういった感情が無くなっていないことに安心感を覚える。

795とある少女のういういdays(6)前編:2010/04/27(火) 23:27:47 ID:sMWBPklA

「ありがとうな、二人とも」

気付いたときには、感謝の気持ちを言葉にして二人の頭をなでていた。
家族の有り難みという、恐らくは普通の感情を思い出させてくれたことが上条は嬉しかったのだ。
頭をなでられた二人は、突然の少年の行為に顔を真っ赤にして俯く。
さすが姉妹、その動きはぴたりと揃っていた。
そしてお互いに同じ表情を浮かべていることに気付き、はっと思考を切り替える。

…なるほど。

…これが歩く自動フラグメイカー。

帯電する空気。

文字通り空気が変わったことに硬直する上条。

「あ、あれ、ここって感動的なシーンじゃありませんこと?ってゆーかダブルビリビリなんてしたら上条さんは防ぎきれない、ってゆーか周り電気製品ばっかり!壊したら弁償間違いなしですよ!最新型プリクラとか絶対高いし!ストップ!ストップ!ストォォォォォォップ!!」

制止の甲斐あってか、少女たちは雷撃を放つことはやめた。
しかし結局のところ、お姉様あれを使うわと、スーパーイナズマキックをお見舞いされるのは、彼の彼たる所以か。

796ほのラブ同盟:2010/04/27(火) 23:31:54 ID:sMWBPklA
以上です。計算間違いの結果、4レス消費してしまいました。

前回ちょっと不憫な思いをさせた御坂妹になんとか良い想いをさせてやろうと、がんばってハッピーをお届けしています。
いかがでしたでしょうか。
今回は自分の中でもいくらか書き方にニューチャレンジがあるので、読みやすさ読みにくさ等コメントいただければ、次回に生かしていこうと思っています。

一応、明後日の休日までには後編をお届けするつもりです!
今回も稚拙な作品ですが、お楽しみいただければ光栄です!

797■■■■:2010/04/27(火) 23:45:02 ID:YP5oyGX2
>>796
乙ですた。
御坂妹もかわいいなぁ。
19090号のような、学園都市にいる他のミサカたちは……今回の
携帯電話を持ち回りという事だろうでしょうかね。

798桜並木:2010/04/27(火) 23:54:18 ID:itfVH6Po
_| ̄|○

・・・誰もいなければ5分後に投下します

799未来からうちの子がry):2010/04/27(火) 23:56:42 ID:itfVH6Po
第九章 生まれたばかりのこの気持ちは her_voice_like_my_dream

2/2 23:50

目に食い込むような洗面台の強い光。夜特有の洗濯機や冷蔵庫のブーン……と鬱陶しい音。強すぎる光はまだ光に慣れていない上条には痛いほど眩しく、目の前の光景は恐ろしいほど白い。

―――――それはキスだった。

思うは謎の衝動と抱擁感。そして驚愕。
美琴の唇から伝わる熱は人肌の温度だがそれだけで上条は焼き焦がれそうになる。体は石化したように硬くなり、何をしていいのかが分からなくなる。
親が子供にする、挨拶のような唇と唇が触れるだけのキスなのに美琴から流れてくる何かが上条の体を優しく包み込んだ。
御坂?と口にしようとするが声にならず嬉しいのか悲しいのか、美琴のことが好きなのか嫌いなのかの判断さえ曖昧になる。
混乱。
そんな風に上条が何も出来ずにいると美琴が彼の首に回している腕を、今度はゆっくりと彼の胸を引き寄せるように背中に回す。
やがて、美琴は唇を離した。
そして美琴はさっと上条の胸に顔を埋める。恥ずかしさからか、顔を見られたくないらしい。
上条の体を包んでいた何かの源である美琴の唇が離れると口が、喉元が、そして最後に美琴の顔が埋めっている胸が螺旋するようにドクンドクンと鼓動し、激情を通り越して単なる頭痛が彼を襲う。
魂を抜かれたようにポカーンとしている上条は震える声で、
「……お前……今何した?」
その問いに美琴は彼の胸に顔を埋めたまま、
「……キス」
とだけ言った。
彼女の声は、胸にドンと響くような声に聞こえた。頭の中が真っ白な上条は驚いて首だけ美琴から少し後ずさりする。
やがて、美琴はやはり顔を埋めたまま何気なしに語り始める。
「私さ、アンタに好きって言ってもらった……と言うか言わせただけど……まぁ言われた時にね、私この人じゃないとダメだーって思ったのよ。だから私、」
言うね、と少しの間を空けて美琴は言った。
そして上条の胸に顔を埋めていた美琴は彼の顔を決心したような表情で見据える。
「この胸の中の気持ちはアンタの力になりたい、ううん、もっと単純な、アンタの支えになりたいって気持ちなんだと思う」
―――思えば美琴は散々あれ言えこれ言えと言ってきたが彼女自身はこちらに何も言っていない。
だから聞いてみたくなった。その先の言葉を。
御坂美琴が上条当麻をどう思っているのかを。
―――お前は俺が好きなのか?
きっと、そんな事を美琴に言ったらまた彼女をひどく傷つける事になるだろう。
それにもう、上条にはだいたい分かっていた。
美琴の目。仕草。態度。あの時の涙。そしてこの唇。
導き出される答えは一つ。
上条が目の前の美琴との帰り道が心地よかったように。
いつしか美琴も、上条との時間が温かいものになっていたのだろう。
そうして、彼女は言う。

「私はアンタが好き」

耳からではなく胸から心に直接響くような、夢のような音色。
迷いのないその言葉は上条に自分と彼女の境界線を曖昧にし、混乱を感動に変え、『心地が良い』を『はっきりとした感情』にした。
美琴は上条の心臓の音を聞くように右耳を彼の胸に押し付ける。
そして微笑む。まるで彼の生を感じられるだけで幸せとでも言いたげに。
「私はアンタの隣を歩いていきたい」

――――でもね。

そんな言葉を美琴は呟いた。

「……アンタが私のことを本当はどう思っているか、だいたい分かってる。アンタはまだ戸惑ってる。私のこと、本当は好きじゃない。……そうでしょ?」
クスクスと苦しげに美琴は笑う。
違う、と上条は思う。
でも本当は。好き、とははっきり言えないのかもしてない。
あの時言った言葉は身も蓋もなく言えば限りなく嘘に近い。美琴を泣き止ませるためとりあえず言った、上条はその事がバレてギクッと体を跳ねさせる。
彼女は「ほら、やっぱり嘘だ」と分かりきっていたような、でもほんの少し期待していたような声で笑う。
上条は違うと言いたかった。だけど何故か言えなかった。
声が出ない彼は思う。美琴に伝わってくれと願いながら。
確かにあの時は嘘だったかもしれない。中途半端な気持ちだったのかもしれない。
―――けれど今は違う。離れたくない。キスから始まる恋だってある。

800未来からry):2010/04/27(火) 23:57:17 ID:itfVH6Po
上条の気持ちとは裏腹にまるで遠ざかって行くように美琴が独白を続ける。
やっと声が出そうになった彼の言葉を遮るように美琴は続けて、
「あーあ、どうしていつもこうなるかな私って。このまま黙ってれば、アンタを難なく捕まえられたのに」
けど、と。
「私はこんな形でアンタと結ばれたくない。決められた道をそのまま歩いていく恋なんて本当の恋じゃない……と思うし、何よりアンタの意思を曲げてアンタを手に入れたくない」
上条の背中に回している腕が後悔するような動きで緩んでいく。
美琴は苦く笑う。
「だから私たち、最初からやり直してみない?美栄が帰ったら全部元通り」
彼女は吹っ切れたような顔で上条の背中から腕を完全に離す。結局、上条は美琴を抱きしめる事は出来ない。
美琴は右手の人差し指で彼の唇を、汚れを拭く母親のように優しく撫でた。
「私はいつか、アンタに『幸せ』って言われるような、そんな人になりたい」
ねぇ?教えて、と彼女は甘く呟いた。美琴の手は上条の両頬を擦り、また唇を重ねる。
すぐにその唇は離れ、
「アンタはどんな女の子が好みなの?優しい子?料理がうまい子?胸が大きい子?強い子?可愛い子?」
どんな人が好きなの?と美琴は言う。
「……、」
その言葉に『元通り』と言われて軽く傷心だった上条にちょっと意地悪な考えが浮かんだ。
思わず、上条は笑う。
『その先』を想像して彼は笑う。
そう言ったらコイツはなんて思うだろうか。
そう聞いた後どんな風に笑ってくれるだろうか。
それを知った後でもそんな事が、果たして言えるだろうか。
夜が明け、朝が来て、それが何回も続いて、いつか美栄が帰って。その後、それでも元通りなんて言えるだろうか。
きっと言えないだろうな、と上条は口を歪め鼻で笑う。
上条当麻は口を開く。嘘なんてもういらない。
―――生まれたばかりのこの確かな感情を携えて。
「……うーん。どんな女の子ねー、そうだな。胸のことは置いといて、料理がうまくて、可愛くて、強い奴。近くで見ると……」彼は視線を落とし、「目が大きくて、鼻も眉毛も唇も整ってて、今まで見てきたどの女の子よりも可愛い。髪は茶色で少し自分勝手な女の子」
それを聞いた美琴は一瞬ピクッとなり、震える小さな声で、
「…………………他には……?」
上条は笑う。
「本当は涙もろいくせに強がって攻撃的。けど、優しいところも俺は知ってる」
「…………他には?」
「お嬢様なのにギャーギャーうるさくて、でも一緒にいてて全然飽きない。困った時はいつでも助けてくれて、今まで何度も助けてくれた」
「…………………………他、には?」
上条は、祈るように彼の言葉に耳を傾けている美琴にゆっくり近づき、出来る限り最大限に優しく笑って

「お前だよ」

シンプルにそう一言。

上条は離れていこうとする美琴を抱き寄せ、少し荒っぽく唇を重ねた。

801未来からry):2010/04/27(火) 23:58:36 ID:itfVH6Po



それは昨日の記憶。
昨夜、上条は超電磁砲こと御坂美琴とかなり『いい感じ』になった。未来から自分たちの娘、美栄(みえ)が来てから、上条は美琴に好きとか何とか言った(言わされたが正確。)が、正直なところどう彼女を意識していいか分からなくなっており、それはつまり混乱であってこの感情は『好き』という感情に当てはまるものなのか甚だ疑問だった。

そう、『だった』。

―――噛み砕いた話、上条当麻は御坂美琴のことが好きになってしまった。

高慢無礼。
それが普段の美琴の性格であり、彼女を表す最も簡潔な言葉だろう。
実際は優しいや責任感が強いところなども上条は知っているのだがとりあえずそれは置いておいて、ぶっちゃけると。
―――昨日の美琴は死ぬほど可愛かった。
それはギャップと容姿の話。
普段ツンツンしている美琴があれほど潮らしくなると逆に恐ろしくなるというか死の前兆さえ感じる上条だが、蓋を開けてみれば何て事のない、ただの可愛い女の子だった。
着ていた服はピンクのヒラヒラが施されている、肩の部分が大きく開いた、真っ白な砂漠のようにどこまでも白いワンピースで。
上条当麻は小さな声で言う。
一人、ベッドの中で静かに呟く。
「……………美琴」
もう起きている、ベッドにはいない彼女の名に焦がれる。
例えるならそれは花火。
キスという炎をきっかけに導火線についてしまった火は勢いよく縄を燃やしていき、やがて空に花を咲かす。撃ち上がり弾けたそれは一瞬で消えてなくなるはずなのだが、消えることなく咲き続け、上条の心を殺風景から色鮮やかな絶景に変える。

―――気付いてしまったこの感情はたった一夜で、もう止められないところまで進んでいた。

まるで『美琴のことが好き』という感情が『上条当麻』を完成させる最後のピースであったかのように。
それは間違えなく自分を支えている。
しかし同時に、自分はこの恋に振り回されているという矛盾。恋は体が宙に浮くような奇妙なもの。男も女もそれに変わりはない。
(……アイツもこんな気持ちなのかな)
上条は胸の部分の服をキュッと右手で握り締める。当然この気持ちに変わりは、ない。それどころか刻一刻と強くなっている。
それにしても、と口で言い、美琴もひどい事を言うものだ、と心の中で思う。好きと言った後にじゃあいつかまたいつか会いましょバイバイ、なんていくらなんでも無理がある。それほど上条はうまく出来ていないし、恋愛に関して達観もしていない。
「……、」
結果として振り出し案は消えてなくなった。上条が美琴を繋ぎ止めるという形で。
補足しておくと上条からのキスの後、美琴は『嫉妬深い、私以外もう見ないで、ビリビリ、大好き』などのキーワードを使った告白を改めてした。要約すると『私嫉妬深いよ?アンタが他の女と話してたら多分ビリビリするし……だからもう私以外見ないでね……と、当麻、だ、だだ大好きふにゃー』ってな感じである。もちろんこれはあくまで補足であり、かなりハイになっていた上条には断片的なところしか思い出せない。
それ故、上条当麻はベッドで悶々していた。
(……………………、何だかなぁ)
なぜなら今、彼は超恥ずかしいのだ。
(……き、キスしたのか、俺は、あ、アイツと……)
上条は自分の唇をそっとなぞった。さらに舌でそれを舐めると胸が押しつぶされそうな切ない気持ちになり、何考えてんですか僕ぅーっ!?と枕に顔を押し付ける。

―――もう一度

(はわーっ!俺は変態か!?あんなもんぶちゅぶちゅ何度もするもんじゃねぇだろーが!忘れろ忘れろ!上条さんは硬派こうはコーハ!)
と上条は自分に言い聞かせるが気付けば昨日の事ばかり考えており、ベッドの中で急に無表情になったり逆に赤くなってそわそわしたりしてかれこれ一時間悶々悶々。初心&乙女チックなその仕草は友人に見られたら間違えなく黒歴史決定だ。
一方の美琴はもう起きておりどうやら台所で朝食を作っているようだ。美栄もついさっきベッドを出て、そろそろ自分も起きるべきころなのだが、
(うぅ……もう起きないといけないのですか……。はぁー、あんな事した後だと妙に……)
顔を合わせづらいな、と上条は頭を悩ませた。
本来なら朝ごはんを作っているだろう美琴を手伝ってやるのが真に彼女を想う表現の一つだろうが残念な事にそんな高機能は上条には搭載されていなかった。そもそもそれ以前に、『おはよう』の一言が言えるかどうか、この口は何を口走ってしまうかどうかが分からない。

―――もう一度キスしてみたい

802未来からry):2010/04/27(火) 23:59:20 ID:itfVH6Po
しかしそれは怖いことだ。
気を紛らわせるため別のことを考えようとすると10秒後にはまたキスのことが頭の中を埋め尽くす。それは壁からペンキを落とすためにペンキまみれの雑巾で壁を拭いていることに同義である。
だー!キリがねーっ!と優にこのループを100回近く繰り返した上条は勢いよくベッドを出た。
そこにはさっきまで聞こえなかったキュン、キュンと鳥の鳴き声。二月にしては温かい空気は爽やかで温かい朝。窓からの朝日がまぶしい。まるで何かを祝福するようなそれは上条に羞恥を与え、

臭い。

「ん?何か臭いな……」
匂いではなく、臭い。臭いという限りはそれ相応に臭いわけがあり上条の鼻をキツイ臭いが襲う。
(なんだこの臭い?屁かなんかか?)
そう推測すると何だか変に悲しくなってきた。今、上条宅にいるのは上条を除けば美琴と美栄だけであり、この臭いは上条のしてしまったわけではないため自動的に彼女らのどちらかがしてしまったと推測できたりする。美琴は過去に『女の子に対して夢見んなよー』と言ったがもしこの推測が正しければ、そんな生々しい現実は超シビアすぎると上条は心から叫ぶ。というかよく嗅いでみると、オナラとか生易しいものではない。これは目に染みるタイプの、例えれば玉ねぎのアレをこうしてあーしてピーチクパーチクエヴォリューションさせたような臭いだ。美琴が何かを焦がしたのだろうと上条は推測しなおす。というか願う。
彼は犬のようにクンクンと鼻を利かせ、臭いの発生源であろう台所に足を運ぶ。途中、テーブルの角に足の小指をぶつけ涙目になるが彼は気にしない。
そして上条が見た風景。
――暗黒。
まず清潔さをイメージさせるため白をベースとして作られた台所は半端なく黒かった。
「な、なんじゃこりゃ?」
思わず、声になる。
そこにはエプロン姿の美琴、カエルのパジャマを身に纏う美栄がいた。
「……あ」
美琴はそう声を洩らし、
「パパおはよー」
その娘美栄は母親の腰辺りをキューッと可愛らしく抱きしめている。
「あ、あぁ、お、おはよ」
だから当然ここは我が家の台所であり、それ故家の主たる上条の隠されたステータス『綺麗好き』を証明するために必要な大事な場所であり。
そこはもう台所でなかった。
なぜなら台所はプチ文化祭状態だからだ。更に言えば非常に遺憾な事に、それはお化け屋敷にカテゴライズされる。壁や床は何かが飛び散ったような、黒い液体の跡があり、皿やら何やらからデローンとだらしなく細い血管のような物が垂れ下がっている。蛇口からポツンポツンと舞い落ちる水滴は何故か黒く、飲めば間違えなく体に毒だ。美琴が能力を暴走させたのだろうと上条は推測する。
肉が食べたいと思っていた上条だがその黒い、生々しいその風景は肉を急激に食べたくなくならせる。臭いの原因はここだったようだ。彼は心の隅の冷静な部分で内心ホッと安堵する。
そしてあわわわと慌てている美琴が『人一人分くらいはある黄色いゴミ袋(所々赤い)』をさっと隠して、
――何となく、上条はそれに激しく嫌な予感がした。
キーワードが列を成す。
私嫉妬深い。不自然に大きいゴミ袋。知ってしまったお互いの気持ち。
――そして同棲をしているインデックス。
今の美琴が彼女を見れば間違いなくいい気はしないだろう。
最後に目の前のブチ文化祭。よく見れば壁や床に付着しているのは固まり始めている血のようにも見える。
かつて、上条は『御坂美琴』が死体となって路上に倒れていたのを見た事がある。正確にいうと彼女のDNAを元に作られたクローンの事だが、それは彼が助けられなかった命の一つ、もう少し早くあの異常事態に気付いていれば助かっていた命。美琴のクローン、シスターズは血液を逆流させられたように体をズタズタにされており、目の前の光景は彼にそんな険悪なヴィジョンを思い出させ、
そして無能力者は凍結した。
(これはつまりあれですか御坂さんの言う嫉妬深いとは某ヤンデレ的なものであってわたくしが万が一浮気とかしちゃったら浮気相手をクスクス笑いながら包丁でブスブス穴ぼこだらけにするどころかザクザク愉快に解体して血塗れの顔でコレねぇ当麻を誘惑した雌豚だよでもこんなにバラバラじゃもう誰かわからないよねでも悪いのはこいつだよ当麻を守るのは私だけの仕事なんだからずっと私が当麻を守ってあげるね大好きだよ私だけのと・う・まとか何とか物騒なこと言っちゃたりしてそれはそれで嬉しいような悲しいようなーっ!?)
ガガーンとピアノの一番低い音が鳴るように、ヤンデレといえば『中に誰もいませんよ』的なものしか知らない上条は衝撃を受け、頭を抱える。
彼は震える手でゴミ袋に入っている何かを指差す。

803未来からry):2010/04/28(水) 00:00:19 ID:NTnKpVc6
「みみみ御坂さん!?何そのゴミ袋!?ままま、まさかインデックスが入っているわけじゃねーよなぱぴぷぺぺぺ!?」
さっきまで見られたくないものを見つけられてしまった子供のように固まっていた美琴は、
「……はい?」
何言ってんのアンタ、と上条を不審者を見るような目で見つめる。
その反応に上条は少し冷静に考える。
――普通に。美琴が人を殺すなんてするわけない。
上条の中には、少々美琴に対して図々しい考えだが『美琴がする行動』=『どこかしらで上条に関係あること』という式が無意識のうちに出来上がっていたりする。
要するに彼的には『そうあって欲しい』という声に出さない小さな願望なのだが、美琴の昨日の告白がそれをさらに拍車させ、そういう思考回路になっているわけである。
何を舞い上がっているんだ俺は、と上条は己の早とちりを悔い、こめかみを軽く掻いた。
「……え?あ、そうですよね御坂さんがそんなミスフォーチュンな事するわけありませんよねええ信じてましたよわたくし上条当麻は。あーびっくりした。でもそしたらそのゴミ袋は何なのでしょうか?」
あはは、と上条はやや無理やり自己完結する。ちなみにミスフォーチュンは不幸という意味であり、さらに言っておくと上条はhappinessのスペルをhappilessと思っている。別に彼の覚えが悪いわけではなく、たまたま上条に渡った教科書だけ印刷ミスをし、たまたま友人や教師がそれを見逃し指摘できず、たまたま今に至るのである。
そしてあたふた慌てている美琴は人差し指をどこに向けるわけでもなくクルクル回し、目を右下に向け、
「あ、え、が、えと、き、昨日あれ、りょ、料理がうまい女の子がどうのこうのってあった、じゃない?」
その、ものすごく途切れが悪い言葉、さらに限定すると『昨日』という単語に上条はポッと頬を染め、あの時の唇の感触を思い出した。

上条はそれなしげに美琴の唇を見る。

―――もう一度―――

(バッッキャロォォォォオオオおおおおおッ!!俺のバカヤロおおォォォおおォォォォおおおおォォォォッッ!!耐えろォォォオオ耐えるんだァァァァァああああああァァァッッッ!!!)
何だか自分のキャラに残念なものを本能的に感じとった彼は内心ドキドキ見た目そんなこともあったなーと興味なさげなポーカーフェイス。
「ぱッ…………あ、あぁ、それが?」
「う、うん、それでね、頑張って作ってたらこんなことに……」
指を人差し指同士でくねくねさせ、俯く美琴。柔らかそうな頬は朱色に染まっている。
―――そして、許しを請うような上目遣い。とどめに唇を舌でペロリと一舐め。明らかに『何か』を思い出している仕草だった。
瞬間、その仕草に耐え切れなくなった上条の心の中の『花火』はバババババッバババババッッッ!!と物凄い数と勢いで撃ち上がった。花火が上がっていく時のヒューという音がまるで祝福の歓声のように彼の心の中で反響する。
(ギャああああああァァァァあああああッッッッッッ!!!みいいィィさあああカァァァあァァァあああああッッ!!お前それ無自覚なのかァァああァァああああッッッ!?!?俺はァァァァァあァァァああァアお前はああァァァァあァあああァッッッ!?!?!?)
理性が壊れた上条は『ちょちょちょっと待っででぇぇぇえ!』と『気持ちの整理』のためトイレに向かう。
……ちなみこの時、彼、上条当麻は元気いっぱいの男子高校生であった。
3分後、何やら汗まみれな彼(ちなみにこの時。汗ばんで色っぽいオーラを醸し出している彼に美琴はキュン……となるが上条の知るところではない)は、
「どんだけ張り切ってたんだよ!」
ベベン!と何もなかったように会話を続行する。
美琴は美琴で3分間そこから一歩も動かなかったようでさっきと位置が変わっておらず、
「ご、ごめんなさい……」
などとらしくない、らしくなさ過ぎる言葉を口にしつつ目に涙を浮かばせ謝る。上条は一瞬信じられないものを見るような目で美琴を見つめた。
「え、ご、ごめんなさい?はは、冗談きついぜ美琴さん。お前はそんな従属系奉仕型メイド族とは一番遠いところで戦国武将のように高笑いしてでもそんな所が結構可愛くて何故そんな顔を赤くし唇を押さえてクネクネするのですかお前らしくねー!!……………………て、てか、えぇと、あれだよ。そ、そう!こ、こんなに台所汚しやがってー、でも美琴たんが一生懸命作ってくれた料理かー、た、楽しみだなー(棒)」
しかし彼の気の利かせたその言葉に美琴はうっ!と一歩下がる。

804未来からry):2010/04/28(水) 00:01:21 ID:NTnKpVc6
上条としては流石にコレだけ食材を使用したのだから一つくらい食べられる物があると踏んでそう聞いたのだが、

直後、チーンとトースターが鳴る音。

トースターはもちろんトースターだ。『Q何をする機械ですか?』という質問には『Aパンです。パン焼きます』という答えが返ってくるように。
それはパンを焼く機械。決して豪華な物ではない。
そして、御坂美琴は昨日、観覧車でのキスが失敗してその腹いせから来る衝動買いをしている(実際は上条に見放されたくないという美琴の防衛本能が働いた買い物だった)。
その額、食材だけで9万円。
上条が知るところではないが、美琴は今日の朝ごはん、メチャクチャ張り切っていたのだ。
しかし、彼女が10万近い金額と台所を犠牲にして召喚した料理の名は、パン。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、」
流石に、上条は黙り込んでしまった。
やがて彼は言う。
「…………え、えーとつまり?御坂美琴さん14歳。あなたは昨日料理をうまくなる的なこと言って、今日2月3日午前7時、ろくな睡眠もとらず、料理を作るためさっそく張り切って朝早く起きました。しかしながら気恥ずかしさから集中できず、ことごとく料理は失敗、現在10時05分の今でも何一つ成果を出せず、もう時間もないから昼で挽回案を計画、あーその前にこの台所どうしよう、と?」
淡々と上条は言う。彼は7時にはまだ起きておらず美琴がいつ起きたか知らないため適当に言ったのだが、黙っている辺りどうやら正解らしい。
ぐす、と鼻を啜る音。美琴は半べそだった。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
何だか、美琴が急に女の子らしくなったような気がする。
それはきっと、激しくいいことなのだろうが上条としてはそんな風に何かに焦るような、ビクビクしながら行動する美琴は見たくない。いつも通り元気に明るく笑っていて欲しい。
極端すぎるんだよお前は、と心の中でひそかに思い、ため息交じり、
「……お前な、そんな律儀にならなくたっていいんだよ。俺はお前の作るモンなら何だっていいからさ。ほら、台所掃除するぞ」
ポンポン……と優しく彼女の頭を撫でた。
「……ふぇぇ、ひっく、あ、ありがとぉぉ……」
はぁーやれやれ、と洗面台から雑巾を何枚か持ってきて床を拭き始める。真剣な表情になった美琴と何か納得している美栄も後に続き、掃除は2時間ほどで終わった。


掃除の時間は意外と楽しいものだった。
自然な流れで『友達がさー』とか『そういえばあの時はさー』とか話すことが出来る。美栄の未来話もちょくちょく挿み、かなり有意義な時間だったと上条は思う。次第に美琴もいつもの活発さを取り戻したようで彼としても満足の一言だ。『きっとこういうのが幸せなんだなうんうん』と目にほんのり涙を浮かばせながら彼は今を噛み締める。
結果として10万近い金額と2時間のただ働き、そして掃除中、よく分からない液体を頭からブッ零されるという悲惨な出費になったが安いもんだと少し苦しく思う。
今は掃除に疲れて三人とも半お昼寝タイム。グテーとだらしなく寝そべっていた。美栄は美琴の太ももの上ですやすやと猫のように眠っている。
そして上条は笑い、いつもの活発で自分勝手な美琴を期待して皮肉をこめて、
「んで?今日はどうしますかね。昨日お前が言ってたように動物園にでも行きますか?パン工場も悪くねーな」
「……そういえばさっきアンタがお風呂に入っている時にアンタの携帯ちょろーと調べたんだけど変なファイルが山のようにあったわね。金髪巨乳ツインテールスク水碧眼ナースお花屋さんケーキ屋さん。この辺までは10の一億乗歩譲っていいとして、美栄と同じくらいの子のがあったのには流石に引いたわ……しかも二次元だったし。あと何あれ?丼ぶり?」
やっぱりアンタ、私たちをそういう目で見てたの?と美琴。
「お、おめぇ!あれ見たのか!?つか、勝手に人の携帯見んじゃねーよ!!……あ、あれはあれだよ!ダチから貰った物で決して上条さんの物ではありません!」

805未来からry):2010/04/28(水) 00:01:54 ID:NTnKpVc6
見事上条の『美琴元気出せよー誰だって失敗くらいするってー』計画は成功したのだが、それだと今度はこちらの格好がつかない。彼が想像していた(つまり一番おいしい)展開は、
『パン工場も悪くねーな』
『…………いじわる』
『あっはっは、しかし慈悲深い上条さんは御坂さんに行きたい場所を選ばせてあげましょう!感謝するがいい!さぁどこに行きたいっ!』
『…………………………………………じゃ、じゃあ、あ、アンタの胸の中……行ってみたい、かな……』
『……え、み、美琴さん?それは、えぇと……つまり……』
『……バカ///』
『///』
ってな感じだったので、
「どうだか。このドスケベ!」
理想とあまり離れすぎた現実に一瞬ガチで泣きたくなった。
美琴がいつもの美琴であることはまぁ嬉しい事なのだがもう少し謙虚で可愛い女の子でいて欲しい。……できれば昨日のような。とは言いつつも美琴が大人しくなったらなったで今度は元気で騒がしい美琴でいて欲しいと願うだろう上条は自分自身の未来を漠然と予測し、騒がしくても謙虚な美琴たんは何処かなりやーと心の中で唱える。
しばらくして、目を細めまるで刑務所の面会室にある自由と拘束を隔てているガラスの壁のような障壁を展開している美琴に気付いた上条は思わず、うっ!となる。
事実、携帯のフォルダに入っているそれは紛れもなく自分でそういうサイトに赴き、自分であれこれやって入手した物だった。昨日あんなに格好つけた告白をしておいて、その翌日携帯には5歳児の○×△□写真。
これは実に格好悪い。
上条は、
「し、仕方ねーだろーが!俺だって高校生です!そらちょっとエッチな画像くらい(←ここ強調)持ってらぁあ!!」
逆ギレ。そもそもこの手の話は誰が悪いとか正しいとかの概念ではないし、大人になれば自然と受け入れられていくのだが上条には記憶と経験が大きく欠落している。となれば、彼の思考回路は少し大人びた小学生のそれに近い。
しかし、善悪はないのだがやはり昨日の今日という言葉がある。美栄を隠すようにして美琴は少し意地悪そうな顔で、
「料理がうまくて、可愛くて、強い奴」
「うっ!」
「目が大きくて、鼻も眉毛も唇も整ってて、今まで見てきたどの女の子よりも可愛い。髪は茶色でいつも元気な女の子」
「うぐっ!」
「お嬢様なのにギャーギャーうるさくて、でも一緒にいてて全然飽きない」
「ううぅぅぅぅぅっ!!」
「お前だよ」
「うぅぅぅううううううううううううぅぅぅぅ!!分かりましたよ消せばいいんでしょ消せばはいコレ携帯ピピピピ!!ピピピピピピ!!!はい消しましたよ鬼!!」
素早い動きで上条は本当にデータを削除する。実は画像とは別に、動くタイプのエロ画像(それを俗にAVと言うが彼は認めない)もあったのだがそれも律儀にきちんと消す。電源を切らないでください、と無表情な言葉に上条は本気でがっかりする。
(確かに俺が悪いんだけど、悪いんだけどさぁ……その辺察してくれよ)
じゃあお前がそういうことしてくれんのか、とは口が裂けても言えないがそこはやはり男子高校生。ちらりとそういうことを考えてしまう。しかし彼はその反面『コイツを傷つけたくない』という感情(理性ではないと上条自身、何となく思う)があるので、美琴を大切にしよう、と心の中で小さく誓う。
(……はぁー、恋愛って難しいなぁ)
カエル、つまり美琴の言うところのゲコ太は彼のオンボロ携帯にずっとついていたわけで、上条の血走った瞳を全て知っているのだがそのカエルが『オメーも大変だなおい』みたいな表情で彼を見つめる。
しばらく(3分くらい。携帯のスペックでは1ギガのデータを消すのには少々時間が掛かる)沈黙になり、ピコンと無事に作業を終えた携帯。それに満足したのか美琴は「ふ、ふん。も、もう、そういうこと、あんまりしないでよね」と言う。
「……あー」
美琴の忠告に対する返事なのか、今までお世話になった友人たちへの名残惜しさなのか、分からない声で上条は返事をした。
美琴はそれを名残惜しさだと捕らえたらしい。
「……アンタね、じゃあ逆に聞くけど、私がメチャクチャかっこいいイケメンの画像を待ち受けにしてたらどう思う?それと同じよ。……結構苦しくなるんだからやめてよね、そういうの」
プイっと彼女は顔を背ける。
美琴が向いた方向には窓があり、光があった。二月の少し寒い、でもからっとした気温。雲は薄く、天は高い。
太陽の光が美琴と眠っている美栄を西洋の肖像画のように美しく照らす。
(………………………………………………………………………………………………、平和だなぁ)
少し、感慨(現実逃避ともいう)に浸る。
上条当麻が命を懸けて守りたかったものはこういう時間なのかもしれない。
今日は外に行こうと思う。外に行って、たくさん遊んで、美琴と美栄と笑って過ごしたい。

806未来からry):2010/04/28(水) 00:03:15 ID:NTnKpVc6
上条は美琴を見る。自分は恋愛に関してそんなに口が回る方じゃないし、いきなり気の利いたことを言える人間でもない。ここで恋愛の熟練者は『分かった、もうお前しか見ない』的なことを言うのかもしれないが、「はぁー」と上条はダルそうに、「わーったよもうしない」とだけ、素直に反省した。
まぁ考えてみればそりゃそーだよな、と彼はぼんやり思う。美琴が言ったとおり、彼女が自分以外の男を思うところなんて見たくない。そんなところを見たら、絶対苦しくなる。
そしてそれは美琴も同じだと言った。
そうなると。やはり御坂美琴は上条当麻が好きだからそういう苦しみを享受しているわけであって、それが今まさに立証されたようで。
幸せ、というよりもっと単純な感情。
――そこにふと、素朴な疑問。
(……ん?待てよ。コイツはいつから俺のことがその……、す、好きだったんだ?美栄が来てからか?少なくとも美栄っていう存在がいる時点で俺と美琴はけ、結婚するわけだからどっちかが確実に俺か美琴のことを好きだったって事だろ……考えてみるとシスターズの時白井が、美琴は俺のことをいつも楽しそうにしゃべってたとか何とか言ってたような……まさか)
……まさか、そんな前から?と上条は心臓がゾクゾクと高鳴るのを感じた。
(み、美琴がそんなに前から俺のことを想ってたとして……、そうするといつものビリビリとかやけにちょっかいだしてきたのはじゃあ……)
彼はプルプル震える口を押さえ推測する。プイッと目を瞑っている美琴を上条は食い入るように見た。
(……ヤバ……なんか変な気持ちになってきた)
落ち着け俺、と上条は自分に言い聞かせる。
大前提として、美琴は以前から上条が好きだったとする。少なくとも結婚する愛柄なのだ。シスターズ事件前後でも好きではなかったとしても嫌いではなかったに違いない。
その時点でかなり嬉しいのだが、彼の推測は止まらない。
美琴が8月らへんでも上条のことを意識していたとして、となると、彼女が今まで上条にしてきた攻撃的な行動の数々は全て『好きと言えない(もしくは自分の感情がよく分からず、そわそわする)=何だか苦しい=思わず攻撃してしまう=上条が好き』という気持ちの表れであったと判断できる。
上条は美琴に嫌われているとつい最近まで思っていた。やれ電撃、ビリビリ、タックル、罰ゲーム。他にもたくさん。
しかし、この証明が正しいとするとそれが全て逆になる。
今までの、彼女の執拗な嫌がらせと思われていた行動は全て『逆』だったと結論が出せることになる。
(……………………………………………………………………………………………………………………………………………………、)
と、すると。
美琴は偽海原の時どんな気持ちで擬似恋人になってくれと言ったのだろうか。
大覇星祭、押し倒された時どんな気持ちで上条の言葉を待ったのだろうか。
罰ゲームの時どんな気持ちで待ち合わせの場所にいたのだろうか。
冬に入ったころからやたら漏電しまくっていたのは何故か。
いつもの攻撃的な行動には、一体どんな気持ちが込められていたのだろうか。
(……………………………………………………………………………………………………………………………………………………、)
上条は美琴の顔を見据える。
そして言う。
「そっち行ってもいいか美琴たん?」
「……………………………………………………………………………………………………………………へ、変なことしたらビリビリだから」
遠回りに許可を得た上条は低い体勢でのろりと立ち上がり、ゆっくりと美琴の後ろに座った。
やがて、抱きしめる。

807未来からry):2010/04/28(水) 00:03:45 ID:NTnKpVc6
温かい。
愛している美琴は確かにここにいて、心臓が動いていて、生きている。たったそれだけのことなのに神経が解れたように体が緩み、満たされる。
何だかご機嫌になってきた上条は美琴の肩に顎をのせ、『いやーこれ幸せだなー。何かいい匂いするし……ってあれ!?こんな所に幸せがあると思ったら美琴かよ!マジで幸せだと思ったわー!』とバカ面。
そう言ってみたくなったのだ。昨日、美琴は『幸せと呼ばれたい』と言っていた。だからそう言えば美琴は喜び、側にいてくれると思ったから。御坂美琴の一番近くにいるのは上条当麻で、上条当麻の一番近くにいるのは御坂美琴でいて欲しいから。
美琴がいつ俺のことを好きになったかなんてどうでもいいな、と上条はさっきまでの考えを打ち消す。
過去なんてどうでもいい、と彼は色々なものを切り捨てる。死んでいった者、忘れ去られた者、壊された記憶。それを踏み越え、思う。

―――もう、一番大切なのは、美琴だった。それが最も大事で、欲しくて、続いて欲しくて、愛しいもの。

それは婉曲的に彼の信念を歪める考えだったのだが、上条は満たされすぎてそれに気付けない。
モジモジし始めた美琴は自分自身に言い聞かせるように、
「………あ、アンタ、そんなアホな口説き方じゃ、ぜ、絶対ダメなんだから……わ、私、そ、そんな単純な女じゃ、ないんだから……この変態」
上条とは目を合わせず、美栄の頭を撫でるのに夢中。しかし、チラチラと上条を見ているのがバレバレ。
(…………………………………………………………………………………………………………………………、こんにゃろーが)
―――美琴でよかった。上条はそう思う。
「……なぁ、キスしていい?」
自分の中の何かが変わり始めている、と上条は実感する。結構積極的な自分の一面に恐らく美琴より驚いている。
美琴で良かった。漠然と彼はもう一度そう思う。
きっと上条は尽くしすぎる女だと変に気を遣ってしまい、うまくやっていけなかった。
逆に自分勝手すぎる女だったら、こんな風に夢中にはなれなかった。
美琴だからこんなに好きになって、彼女の笑顔ばかり考えてしまう。
そうして、彼の胸の中にいる少女はゆっくり頷く。
計画通りだなと、上条は笑い、唇を重ねた。

808桜並木:2010/04/28(水) 00:07:49 ID:NTnKpVc6
以上です。あざーす。


パトラッシュ・・・僕はつkらあおy

809■■■■:2010/04/28(水) 00:16:07 ID:hZL8aYfk
>>807
GJ!!
読みやすいな
続きを早く!
>>796
俺は基本的に甘すぎる話は読んでてなんかしつこく感じるのだが、これに限っては読んでてつらくないし、すごく読みやすい
この甘さはかなりGJ!!だっ

810■■■■:2010/04/28(水) 00:21:09 ID:SlQ2gCdU
ミサカミコトを見た後だと、マジで癒されるわ…
桜並木さんGJです!!
なにこのラブラブ…
暖か過ぎてなんか泣けてきた

離婚してどっかにいった母さんも、昔は親父とこういうふうにラブラブだったのかなぁと思うとなんか切なくなるな
俺みたいに母さんが3回も変わる経験を、美栄ちゃんにはしてほしくないと願うばかりです

ってこれ、ssだったか…

811アミノ酸:2010/04/28(水) 00:50:40 ID:olbgWK.Y
皆様こんばんは(*'-')ノ

いろいろ調整してたら過ぎてましたー(>_<)
「とある宣伝の超電磁砲」ラストを投稿します。
えー描写が、難しいとつくづく思いました。
それでは被らないようなら、55分頃に3〜4レス借ります
宜しくお願いします。

812■■■■:2010/04/28(水) 00:55:15 ID:Wvq9Gdao
>>796
ほのぼのGJです!
美琴の御坂妹を呼ぶ方法が面白かったです


>>808
GJです!
ラブラブすぎて部屋の中でのたうちまわる、怪しい人になってしまいましたw
でも勉強は大丈夫?
無理しないでくださいね

813とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(1):2010/04/28(水) 00:56:19 ID:olbgWK.Y

  
「「えっ、えええええ…白井さん!!!!」」

 とあるファミレスに二人の少女の叫び声が響き渡る。
あまりの声に周りのお客が、なんだなんだとその一角を見やる。

「――いっ今なんて…」
「そっそうですよ、今のは」
 もう少し声のボリュームを落としてくださいませと、周りの視線を気にしながら、二人に注意する。

 うっかり口を滑らせたのが原因だった。ちょっとお姉さまに思いを馳せたら、先ほどの事を思い出して
何とも切なくなって、ぽろりと涙が溢れて零れて止まらなくり、二人に慰められる形でぽろっと出てしまったのだ。
そして二人の少女の叫びへと至るわけである。

 (黙っておくつもりでしたのに…佐天さんと初春にはしてやられましたわ)

「で、白井さん…御坂さんと上条さんはどこに?!」
 と、佐天は白井に迫る。
「それを、聞いてどうするつもりですの?」
 答えは、予想がついているのでおざなりに返す。
「も・ち・ろ・ん、見に行くんですよ!」 
 ああ、やっぱりかと…もっと捻った回答が欲しかったような気がしないでもない。
「そんな野暮な真似は…わたくしのプライドが許しませんわ」
 そうかなぁ〜と佐天は続ける
「二人の恋の行方は気にならないんですか?」
「それこそ…野暮じゃありませんの」
 大体、あのお二方は既に両想いであるということがわかっている。これ以上、何を気にしろと言うのだ。

「え〜二人が両想いなら尚更じゃないですかー」
 続く佐天の言葉には白井にとって妙に説得力があった。

「御坂さんも上条さんも出会ってから気付かないうちに愛を育んできたんですよーだからもしかしたら
そのまま一足飛びでステップアップってことも、早すぎる大人への階段、これはまずいと思うんです、白井さん!」
 佐天は、危険ですよと主張し、告げる。
「様子を見に行くべきだと思うんです!」
 佐天さん、その理論はむちゃくちゃですよと初春は突っ込んでたりするのだが、その声も既に白井には届かない。

 ま、まさか、お姉さまに限ってそんな事あるわけがない、いやでもあの猿人類はどうだ…あの猿人類は
信用ならないかもしれない、不安だ。そんなお姉さまを無理やり…あらぬ方向へ妄想は膨らみ、止まらない。

「佐天さん、初春…それにインデックスさん」
 まんまと乗せられた白井は、立ち上がる。
「行きますわよ、鉄橋に!」
 
 やったーと佐天はガッツポーズ、白井に何が起きたのか分からず、ただ困惑する初春。
まだ食べたりないのにと、一人食べ続けていたインデックスはちょっぴり不満そうにした。

 かくして四人の少女は、鉄橋へと向かう。
勿論、そんなとあるファミレスでの一幕を知るはずもない、上条と美琴。四人と二人が交差するとき、物語は始まる。

814とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(2):2010/04/28(水) 00:57:28 ID:olbgWK.Y

 
 一人の少女がぽつんと夜の鉄橋に立っていた。
街の中心部から離れたこの場所は、少女にとって思い出の場所だ。
ここで、最初の収録が行われ、そこで二人は出会ったのだから。

(あいつ、来てくれるかな…)
 はぁ〜とため息をつく。待つ間、特にすると事がない美琴は、とりとめない考えを巡らす。

 美琴の予定では、こんなはずではなかった。もっと段階を踏んでから、きちんと告白するつもりでいた。
あの時、あんな風に偶然出会わなければ、あの様な恥ずかしい告白の仕方は回避できたかもしれない。
いやでもインデックスといたから、居候を許しているから、全部あいつが悪いと責任転化しそこに落ちつく。
 
(それにしても、黒子のやつ…)
 と美琴は先ほどのやり取りを思い出す。

 もう逃げないと、ファミレスへ戻ろうとしたところを黒子に止められて
「お姉さま、せっかくですから、この際告白をし直すという手もありますの」
 と提案され、あの告白の仕方は…と思うところがあった美琴は、思わず賛成してしまった。

 黒子の提案の内容はこうだ、お姉さまの一大イベント、こんなムードもへったくれもない公園や、ファミレスに戻ってなんか
するよりは二人のワンシーン、鉄橋での一幕、つまりここで告白すれば、それはもう思い出に残る素敵な物となるはずであると。
ちなみに、振られないことを前提としているわけであり、振られたらそれこそ立ち直れないのではと、その時は気付かなかった。
 
 お姉さまは大船に乗った気持ちでお待ちくださいませ、全ては黒子に任せてくださいと、別れてから
少々時間が経ち、既に辺りは真っ暗な夜なのだ。大船どころか泥舟って事はないだろうかと心配になってくる。

(大丈夫だろうか…)
 心配なのはあいつではなく、黒子のほうだ。美琴は、黒子が泣いていた事に気付いていた。
迎えに行きますと申し出たのは、黒子なりに決着を着けるためかもしれないと美琴は思う。
 誰よりも美琴を想い慕う後輩であり、相棒である黒子にありがとう…と心の中で感謝する。

 様々な要素が重なり、美琴はここにいる。
だから、ちゃんとあいつに想いをぶつけよう、どんな結果でも私は後悔しない。


「御坂っ!」
 聞き覚えのある声、間違えようもない。
唐突に名を呼ばれた美琴は、来てくれたんだとそれだけで胸がいっぱいになった。

 待ち続けた人―上条当麻がそこにいた。

「「……………」」 

 いざ、その時となると、中々言い出せないものだ。
お互いに顔を見合わせては二人して意識し、顔を赤くして俯くを何回か繰り返して、
初々しいこと既にカップルじゃないですかと、外野がいたら突っ込まれそうな雰囲気を醸し出している。

 いい加減この状態を、ぶち壊さなければと上条は思い。
対する美琴も、言わなきゃと自分を叱咤し、二人は同時に口を開いた。

「「……あの!」」

815とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(3):2010/04/28(水) 00:58:34 ID:olbgWK.Y


(だぁぁあータイミング悪すぎだー!)
(あぁもう、なんでうまくいかないのー!) 

 タイミングが重なり、何とも言えない空気が流れる。

(まずい、何かきっかけを作らないと…)
(どっどうしよう…何かきっかけがあれば…)

 数分後、意を決して言葉を紡ぎだしたのは美琴だった。

「ね、ねぇ」
「なっ、なんだ?」
「あ、あのさ…今日、あんたに言った事、覚えてる?」
「…お、おう、覚えてるぞ」
「ど、どうなのよ…」
「ど、どうって…」
「だから、私が…「まっ待て!美琴、それ以上は言うな!」
 あまりの歯切れの悪さにじれったくなった美琴は言おうとするが、止められてしまった。

(えっ、言うなってつまり…もしかして、私振られた…の?)
 どんな結果でも後悔しないと思っていたのに…やっぱり無理だ。
途端に泣けてきて、その顔を見られまいと美琴は俯き、逃げるように走り出そうとする。

「って、御坂!どうしたんだ、いきなり?!」
 様子がおかしい事に気付き、逃げようとする美琴の腕を掴む。
「は、離して…」
「嫌だ」
 と言ってその腕をぐぃっと引っ張り抱き寄せる。
突然の事で、何の抵抗もできずに美琴は腕の中に納まった。
「えっ、ちょっと…なっなにしてんのよ!」
「お前、何か誤解してるだろ」 
「そ、それは…だって…」
「だって?」
「さっき言うなって…だから私」
「いや、それは…そのだな…」
「…………うん」
「…御坂に先に言われたくなかったんだよ」
 観念したように告げ、美琴を抱きしめる腕をほどくとその肩に手を置き、少しだけ離す。
ちょうど、美琴が見上げる形になり、二人の視線は交差して、互いの瞳に相手を映し出した。


「俺は…お前の事が好きだ!」
「……………っ!」
 
 一瞬、何を言われたのか分からなかった。
言葉は、心に響いて、気持ちは溢れて涙になった。

「まっ紛らわしいのよ、このばか…」
 勝手に一人で勘違いして、恥ずかしさ半分、嬉しさ半分、どうしていいか分からない。
頬を伝う涙は止まらなくて、泣くなよとその雫を拭う手が不意に添えられる。

「なぁ…お前の気持ち、もう一度ちゃんと聞きたいんだけど?」
 
(ずるい…そんなのもう分かってるじゃない)

 添えられた手、徐々に縮まる距離、『好き』という気持ちは言葉になる前に塞がれた。

816とある宣伝の超電磁砲<レールガン>(4):2010/04/28(水) 00:59:46 ID:olbgWK.Y

 
 しばらく二人は黙って寄り添っていた。
永遠に続けばいいと思う時間は、唐突に終わりを告げる。

「お姉さまーーーーー!」
「とうまーーーーーー!」 
「「御坂さーん!」」

 えっと思って声のする方向には、見知った四人の少女達。
いやな予感が駆け巡る、もしかして…一部始終見られた?

「ばっちり見ましたよ!」
 と佐天は言う。
「遠くから見てたんで、何を喋ってるのかは分かりませんでしたけど!」
「でもドラマみたいでした!」
 とこれは初春。
「あの猿人類ぃぃいぃ、お姉さまのベーゼをあっさり奪っていくとはぁぁあ」
 と言うまでもなく、白井。
「だぁっはー痛い!こら噛むな、インデックス!」
 
 皆が祝福してくれてるのは分かる、分かるけど。

「なんというかこれって、不幸だぁぁぁぁぁぁあー」

 満天の星空に、一人の少女の叫び声が木霊した。


――ザッ
 
 川原にツンツン頭の少年とパチっと放電させている少女がいた。

緊迫した空気の中、ツンツン頭の少年はうんざりした面持ちで、口を開いた。

「で…何の用だ、ビリビリ」
「ビリビリじゃない!いい加減、名前で呼びなさいよゴラァァ」

 ビリビリと呼ばれた少女はちょっと顔を赤くしながら  

「今日は、あっあんたに…えっとその」
「はぁ?…てか一日早く呼び出しておいて何も考えてないとかはないよな?」
「明日は、そう都合が悪くなったから、今日呼び出して何が悪いのよ!」 
「俺の都合は無視かよ…で、改めて聞くが何の用だ?」
「あ、あの、私のあんたの事が好…『ピピピピピピピ』」
「あ、わりぃ…メールだ、で何か言ったか?」

 ふるふるふる…

「…っ好きだって言ってんだよゴラァァァァ」
「ぐふぅ!」

『とある科学の超電磁砲<レールガン>第4巻いよいよ発売!』


おまけ

 帰り道、二人の少女は話に花を咲かせていた。

「ねえ…初春」
「何ですか、佐天さん?」
「私たちもさ、いつかあんな恋がしたいね!」
「…そうですね!」
「あ〜もうほんとっお似合いだなぁ〜」
「上条さんは、幸せ者ですよね!」
「ね、二人の結婚式とか楽しみじゃない?」
「って気が早すぎですよ!」



終わり

817アミノ酸:2010/04/28(水) 01:04:15 ID:olbgWK.Y
とある宣伝の超電磁砲<レールガン>以上になります<(_ _)>

お楽しみいただけたら幸いです。
白状します、実はとある宣伝と言うように、下の宣伝がメインでした!
でした…というのはまぁ宣伝だけじゃ面白くないよなと、上に違う話
くっつけたら面白いかなと始めて…最初は三回分ぐらいだったのが
やっぱ一週間でやってしまえーと、首を絞める結果になりました。

それでは次は「とある幼馴染」で宜しくお願いします。

あっ、一応五月も発売があるので、このあとの続きという形で書こうかなと
思ったり。まぁ続きが読んで見たいという方がいらっしゃればですが…。

長文失礼いたしました。それでわーーーー!

818■■■■:2010/04/28(水) 01:05:33 ID:NTnKpVc6
なにこれ神すぎ・・・

819■■■■:2010/04/28(水) 03:09:46 ID:W64SdYZY
なにこれ胸がキュンキュンして寝られない。
責任とって続き書いてください。

820■■■■:2010/04/28(水) 06:26:05 ID:NTnKpVc6
>>808 なんか美琴のデレより上条さんのデレの方が可愛く見えてしまったwww
続き激しく希望 
さぁ 落ちるとこまで落ちようぜ?

821■■■■:2010/04/28(水) 06:47:16 ID:6Yx6Vkzg
オフ会でレ○プ
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10378486

822ION:2010/04/28(水) 07:30:57 ID:6Zd163Qo
職人さん、読者のみなさん。おはようございます。
5分後からおおよそ、5から7スレを使わせていただきます。

「上条さんがちっちゃくなりました。」の
8月16日 見たことのない人間 I want to know His Name

の続きを書きます。

8238月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:36:33 ID:6Zd163Qo
 イギリス、とある教会。只今、深夜1:30過ぎ。4人の人物が輪を作って何かを話している。

「すているはちゃんとあの手紙とうまに渡してくれたかな。ね、かおり?」
「そうですね。私はちゃんと読んでくれてると思いますよ?」
「でも、今頃は不幸に見舞われてその手紙も送れないでいるのかにゃー?」
「そんなこといわないでくださいよぉ」
「んー?そんな五和はあのフラグ男に恋してるんかにゃー?でも、そんなに消極的じゃ何もおきないんだぜい!」
「つちみかどはとうまのこと、そう思ってたんだね。いつわもいつわなんだよ」
「ハハッ!かみやんはかみやんだしな。いつもあいつはフラグ立ててるからにゃー」
「私は…その一人だというのですか?土御門」
「ねーちんは助けてもらっているのにもかかわらず、あんなことやってしまったからな」

 土御門はイギリスに飛んでいた。天草式のメンバーもイギリスにいる。学園都市ではすでに任務もないため、帰ってきている。
とある教会の中で話している4人は、あの不幸男のことで話の花を咲かせている。インデックスの仕事上、本部に行くことになったのがちょうど4か月前。
23学区の国際空港から超音速旅客機で上条が一人で手を振る中別れたのである。その際に、神裂やステイルも同伴して帰国の途についた。
イギリスについてインデックスは数週間眠れないことが続いた。よく眠りよく食べるという印象から遠くかけ離れた彼女の様子に周りが騒然となった。
ある時、インデックスの所属する協会あてに手紙が送られてきた。送り主は、空港で手を振ってくれた人物であった。宛先は『インデックスはじめ、周りの皆さま』。
その手紙には、外国へのメールが規制されているため、手紙で出したと旨が書いてあった。便箋は少しくたびれていて、デザインもいまいちのものであった。
送り主を知るものであればこのような手紙をほほえましく見ているだろう。それ以外の人間では失礼なくらいよれよれで、小汚いものになっていたのだから。
その手紙を読んだインデックスは驚異の食欲を発揮して今はイギリス清教の財政を圧迫している。

 話の中に出てきた不良神父ことステイルはいま、飛行機のなかでお休み中だ。彼がヒースロー空港に着くのは後、13時間後。この時点で上条の変化に知っているのは誰もいない。
ただ、強いて言えば、最大主教(アークビショップ)ローラ=スチュアートと、学園都市の中心アレイスター=クロウリーの2人だけである。

 ほぼ同時刻…学園都市、第7学区。窓のないビル。
「あぁ。始まったようだな。上条当麻。お前の幻想を殺す時が来たようだな」
老若男女聖人囚人何ににも見える風体を持つ逆さになっている人間は口だけに頬笑みを浮かべている。
「あの右手によって魔術と科学のバランスが崩れたのだ。あいつには面白いものを見せてもらった半面、少しがっかりだが――」
静かに、そのビルの中でたたずんでいる。

8248月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:37:40 ID:6Zd163Qo
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 上条が美琴の鉄壁の防御を授かり、風呂場から戻ってきた。上条が美琴を見たときに変化が起こっていたことに気づく。
美琴は朝、急いで上条の家に来たため、常盤台のときの癖がそのまま高校生になっても抜けていなかった。つまり、ずっと制服でいたのだ。
お嬢様に似合わず髪型はぼさぼさで少し制服も少し崩れた感じ。いつもの美琴だとこういうことはないのだが。
上条のこの一件のおかげで彼女はいま、上条の家のたんすにこっそりとかくしておいた私服に着替えていた。
その彼は美琴の私服を見て驚いたが、その前に自分の体の異変のほうがインパクトが大きいためか冷静にいられた。
上条と入れ替わりに美琴は洗面所に入って鏡を見る。そして、鏡の中の自分に今の思いをぶつけながら髪を整える。


「私って、なんでこんなにいやな奴なんだろう。もう少しやさしくできないの?」
「アンタのためならなんでもしようって決めてたのに。素直になろうと思ってたのに」
「すべてアンタのせい。アンタのせいよ。素直になれないのも、全部全部」
「私はっ!アンタのために、アンタに好きになってもらえるように努力してるのに。なんでわかってくれないのよ」
「確かに、…びりびりしてるのは私。八つ当たりしてるのも私。正直になれないのも全部私なの」
「ねぇ?貴女はわかってくれるでしょ?私があの人を好きな理由を…」


 美琴は、せっかくメイクした顔をぐちゃぐちゃにした。自分に対する悲しみ、不満、かなえられない思いに。
鏡の中の自分に触れようと鏡に左手の中指を近づける。そして、顔を近付ける。自分だけの世界を構築していた。
悲しみの世界…彼女のあこがれた人、守りたい大切な人、傷つけたくない、傷ついてほしくないという思いが詰まった。
一通り自分の言いたいことを言いきった美琴は崩れたメイクを直して、もう一度”一人の女性”に戻って行った。
今の自分にマイナスになるものはそこですべて水に流してしまおうと。 鏡の前でもう一度笑顔を作る。
御坂美琴は一人の女性として、上条当麻という人間に接しようとしていた。決心をして洗面所から出た。


「おっ。遅かったな。どうしたんだ?」
「少しね…考え事してたの」
「珍しいな、お前にしては。相談事なら上条さんにつべこべ考えずに相談しろよ。聞いてやるよ。理由も聞かない。それを俺は聞くだけだからさ」
「考え事ったって大したことないのよ。だから、気にしないでよ」
「だからよ、気になるんだっつの」


 上条は美琴の額を指で軽くつつくとその体を抱き寄せる。といっても上条の体は美琴よりも少し小さい。そのため、彼女の頭だけを自分の体に寄せる形になった。
それでも、精一杯抱き寄せる。その胸の中では、安心しきったような顔で泣いている。上条は美琴が泣き虫であることは知っていた。案外、もろいことも知っている。
何も言わないでおこう。上条はそう思って黙って受け入れる彼女の要求。自分のことを嫌っているような人間にこんなことをやってくるのかと疑問もわいている。
高校生になった彼女の変わらないところ、つまり、彼女の本当の部分は上条しかみたことない。似た者同士が引き合った結果。上条は優しすぎた。そのつけがこのような結果を招いている。
悲しみのラプソディ。二人の間には静かな時の流れしかない。上条は、自分の胸の中に埋もれているお姫様を起こそうとする。ただ普通に起こそうとしても反応はしないだろうと思いながら。

8258月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:40:06 ID:6Zd163Qo
「おーい。」
「…」
「おーい。」
「…」ピクッ。
「起きませんねぇ、これは王子様がキスして起こすパターンですかね」
「…」コクッ。
「しょうがないな…それはないけどな」
「…」ムッ!
「てか、お前もう起きてるんだろ?」
「…」ピクッ!
「もういいや、上条さんは限界ですよ。…おーい。朝だぞ。起きろよ」
「・・・うん。おきる。ありがとね」
「やっと起きたか・・・上条さんのTシャツはぐしょぐしょですよ。どうするんですかね、」
「別にいいじゃない。どうせあんたの部屋にいるんだし。あんた、ほかにTシャツあるんでしょ?」
「ありますけど、上条さんはあまり洗いものを増やしたくないのですが。」
「いいわよ。私が何でもあんたの世話するんだから。」
「え?みこ・・・とさん?あなた何かいいました?」
「あんたの面倒みてやる!っつってんのよ。ばか。」
「さいですか。それなら遠慮なく頼むわ。」
「あたりまえでしょ?そしたらあんたのそのTシャツ取り替えておいで。今からファミレスと Seventh Mistいくから。」
「わかった。わかった。そんなにせかさんでくれよ。受験生はただでさえ疲れるというのに。(笑)」
「じじくさいこというなぁ!」

 上条は美琴のいう通りタンスから新しいTシャツを取り出し取り替えて選択かごの中に入れる。そして、外に出る用意をした。
私服でいる彼女が、今日はホテルでもとって泊まりますかと言い出したため、高級じゃなくてもいいと上条は返す。
今日は家がとんでもない状況のため、家を修理してもらう用に業者を呼んで直してもらうことにして、上条はそのためにものを片付けることにした。
これから待ちに待った昼ご飯の時間である。上条は少しだけ心を躍らせた。そして、財布と携帯電話を持って外に出る。鍵をかけることも忘れない。

――――――――――――――――――――――――――――――
 とあるファミレスにて。

「あっついねーー。初春ぅ。」
「そうですね。佐天さん。なんか最近うちにくる確率高くないですか?」
「だって、家にずっといたくないしさ。つまんないじゃん。」
「それでも、こっちにもいろいろとやんなきゃならないことがあるんですから、ジャッジメントとかジャッジメントとかジャッジメントとか。」
「いいじゃん。最近滅多に仕事こないんでしょ?それにしても、御坂さんとは最近連絡とってないですね。白井さん?ねぇ、白井さん?」
「え?あ?何か呼びましたでしょうか?」
「白井さん大丈夫ですか?最近ちょっと変ですよ?いつも変ですけど。」
「うーいーはーるぅ?あなた、何か仰いました?」
「いいえ、なにもないですよ。えへへへへへへへへへ。」
「なんか、すごい変な空気だなぁ。」

 佐天は窓側の席でその隣に初春、その迎えに白井黒子がいる。白井と初春はなんだかんだで口喧嘩をしている。その空気から逃げようと窓の外を眺めている。
そこに初春が注文していたジャンボ抹茶小倉スペシャルが運ばれてきた。その上についているウエハースをこっそり盗み食いしている。
それがばれてしまった佐天は初春にいろいろいわれているがそんなことに耳を向けることはない。そんなところに久々に懐かしいものをみることができた。

「あれれれれぇー?白井さん!あれって御坂さんじゃないですか?」
「ぼ?ぼねえざまがぁ(お、お姉様がぁ)?」
「あ、こっちにきますよ?」
「そうですね。って隣にいるのは誰なんでしょうかね。白井さん。」
「どうせ、いつもの殿方とご一緒なのでしょ?」
「なんだか、今回は違いますね。ね、初春?」
「そうですね…。それよりも、これを片づけなければ…。」

8268月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:41:51 ID:6Zd163Qo
 一方、ファミレスの外では外から見ると高校生のお嬢様につれられた黒いつんつん頭のガキが手を連れられて歩いているという構図がある。まるできょうだいである。
しかもそのお嬢様はレベル5の超電磁砲である。その彼女の肩にはSeventh Mistの紙袋が提げられている。隣の子どもも少なからずものを持っている。

「あんたさ、いまはいいけど人前では私のことを呼び捨てにするのはやめてよ。恥ずかしいんだから。」
「とりあえず、お前の弟とか、いとことかそういう感じでいけばいいのか?」
「わかればいいのよ、わかれば。でも、これだけ買ってれば困ることはないでしょ?」
「ああ。助かりましたよ。御坂さんは神様ですか?」
「美琴センセーにとっては昼飯前よ。」
「それでさ、ファミレス入ったら私のことをお姉ちゃんっていいなさいよ。いいわね。」
「わかったよ。美琴。」
「いま、呼び捨てにしたでしょ?」
「はいはい。わかりましたですよ。美琴お姉さま。」
「…なんだか黒子みたいな呼び方だと背中がむずむずするわ。」

 とりあえず昼ごはんがまだだった二人は足を速める。いつものファミレスに直行する。ファミレスについたころにはすでに13:30を過ぎていた。
二人は、仲良く店の中に入った。そして、ウェイトレスに禁煙席まで案内された。二人は、仲良く同じサイドに座ることはなかった。
二人は向かい合って座っている。美琴は完全にお姉さま然としている。上条はそれにのっかっている。完全に弟のふりをしている。
ウェイトレスに水をもらってメニューに目を落として一生懸命食べたいものを絞っている上条がかわいいと思ってしまった美琴。
今は、上条の一つ一つの仕草に夢中になっている。美琴はそれを見てとてもホッとしている。知らずに笑顔がこぼれる。

「アンタ、決まったの?」
「ああ。俺はこれにする。」
「そう。そしたらよぶわよ?」
「いいぞ。上条さんはとても腹ペコなのですから」

 その様子を覗いている人間の姿があった。ちょうど上条たちの座る席の2つ奥にその姿があった。ひとりは校則で制服着用を義務付けられているので身分はばればれである。
残り二人も私服であったが、つるんでいるメンバーから想定はできた。しかし、この時点では二人は何も気づいていない。ちょうど良く、美琴の背後に彼女たちのボックスがある。
つまり、美琴からは死角になっていた。上条はメニューに夢中になっていてあちらのほうには気づいていない。そういうことなので美琴の後輩たちは偵察を続けている。

「やっぱり、あんな御坂さんなんてレアですよね。」
「おねえさぁ。おねえざばぁぁぁぁぁぁ。」
「白井さぁーん!しっかりしてください。」
「しらいさぁーん?だーいじょぶですかぁ?」
「初春!白井さんはもうダメみたい。私たちだけで見守ってよ?ね?」
「わかりました。今日の私は本気ですから。そんなこと朝飯前です!」

 上条たちは、何も知らずにウェイトレスを呼んで注文をするのであった。これから起こることも知らずに。上条が少しだけ幸福な日々を送る…きっかけになるものがそこにはある。

8278月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:43:53 ID:6Zd163Qo
「ご注文をどうぞ」
「えーと、このマーボハンバーグセット一つ。それと、このぺペロンチーノ一つ。あと、アンタなんか頼む?」
「ん・・・そうだな。いらないかな。」
「わかった。…これで以上です」
「かしこまりました。マーボのほうにはライスかパンが付きますがどちらにいたしますか?」
「んー。ライスお願いします」
「両方にドリンクバーが付きますが、どうなされますか?」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました」

 手際の悪いウェイトレスは注文をした美琴にもう一度確認して、カウンターのほうに歩いて行った。すると、美琴は周囲を見渡した。
自分の知り合いがここにいると気まずいと思ったらしいが、すでに注文したばかりである。今になって後悔している美琴。ひとりで頭を抱えてゆらゆらしている。
それを見た上条は大丈夫かと気にはしたが持ち前のスルースキルを発揮して、見ないふりをしていた。そして、スタイルのいいウェイトレスに見とれていった。
上条の鼻の下が伸びる瞬間を見てしまった美琴は『あんたって私というものがありながらよくもそんなことできるわよね?』とジト目で上条を見る。つまり、上条の不戦敗。
 そんなこんなしているうちに、新入りらしきウェイトレスがやってきてドリンクバーのグラスとフォーク・ナイフ・スプーンが入った箱をよこしてきた。彼女は淡々と業務をこなしていた。
美琴は、上条がウェイトレスに見とれているときにたまにこっちの様子を見てくることに気づく。それを利用する手はないと思い、ある作戦に出た。
おもむろにテーブルに肘を乗っけて手を組み、上条のほうに上目づかいでしかも少し頬を膨らませて、いかにも『不満です。かまってよ。』というオーラを出す。
上条はこういう設置系トラップには弱いと分析していたため、勝負は美琴のほうに軍配が上がった。しばらくして、上条がドリンクバーに行こうと美琴を誘った。
美琴は、反対する意味はない。むしろ歓迎されるべき答えだと思っている。そして、カウンターのほうにあるドリンクバーに向かった。

「―――――っ!」

 美琴は絶句する。ドリンクバーに行く途中に少し茶色がかった癖のついた髪をツインテールにした少女の姿が見えた。その少女はしっかりと美琴を目でとらえる。
全て目に入るものを除外してだが、あるひとりだけをフォーカスして。しかし、白井の視界の中に黒いツンツン少年がどうしても消えてくれない。
白井は“お姉さま”に向かって全力で近づくというより、能力でその場にテレポートしようとした。しかし、ターゲットに見られている間は我慢している。
 ターゲットにされている方はとりあえず自分たちのやることを優先した。だが、ドリンクバーには3,4人の列ができている。そこに並ぶ。二人仲良く並んでとはいかない。
距離が若干離れている。二人ともウブである。2年もあっているのに。2年も知っているのに、お世話しているのに。2年も電撃を打ち消してきているのに。
こういうときだけは二人とも黙ってしまう。片方は相手の思っていることに興味があるのだが、なかなか聞き出せない。
もう一方は相手が自分に八つ当たりしてくるとか、電撃をやってくるとか追いかけまわしてくるとかで自分が嫌いなのではないかと思っている。
上条は、今困っている。自分の嫌いな相手なのに彼女はよく世話を焼いてくれて、それに自分のために何でもやってくれるとか言ってくれて。
自分は相手に何かしてやったろうか。と上条は最近思うようになってきた。ちょうど今年のバレンタインデーの時に起きたことからこの思いは強くなった。
二人とも自分の気持ちには素直じゃないのは公認である。ひとりは自認しているが、ひとりは鈍感過ぎて周りに呆れられている。
そんなことしている間に二人はドリンクバーのサーバーの前にやってきた。美琴がグラスをサーバーに近づけようとした時に誰かが割って入ってくる。

「ちょっと!あんた何すんのよ。」
「・・・」
「何か答えなさいよ。」
「・・・」
「ねえってば!」

8288月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:45:01 ID:6Zd163Qo
 割り込んできた客に怒りを向ける美琴であったが、相手が自分の出た学校の制服であると気づく。それと同時に懐かしい感じがする。
だが、それは危険を感知した。その相手はかつてのルームメイトである白井黒子。変態淑女である。美琴は思わず叫んでしまった。
「くっ!黒子ぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「まあまあ!お姉さま!そんなに騒いでは追い出されてしまいますわよ?」
「そうだったわ。わるかったわね。」
「そ・れ・よ・り・も!この黒子に運命を感じませんこと?」
「運命も何も感じないわよ。なんであんたがここにいるのよ。もしかして、佐天さんも初春さんもいるの?」
「えぇ。」

 白井の後ろから花飾りの少女と黒いロングの少女がやってきた。

「「こんにちは」」
「久しぶりよね。げんきしてた?」
「はい!んでも、御坂さんがこんな男の子を連れてここに来るなんてどうしたんですか?」
「あっ!こいつね。私のいとこなの。」
(((こいつ?・・・・・いとこ?・・・・・えぇ!?)))
 白井は完全にしらけていた。お姉さまとの感動の再会が一気に中止の方向へ。美琴の隣のツンツン頭をにらむ。それを見た美琴は彼をかばうようにした。
佐天と初春は不穏な空気を感じ取り、この空気をなんとかしなければと口を開いた。

「とりあえず、みなさん。ドリンク入れたら席戻りません?」
「さあさあさあさあ!さっさとやってくださいね。白井さーん!」

 ちょうど、店内にはすこし人が減っていたので、白井たちは、美琴たちのボックスに移る。テーブルを囲むようにコの字型ソファに座る。
美琴と上条は同じ側に座り、向かい側に佐天、初春。黒子はその間に入る形で、ちょうど美琴は上条いや、下條と黒子に挟まれていた。

「あの御坂さん…その子の名前なんて言うんですか?」
「そうね、名前いってなかったわね、この子の名前はね…『真登(まと)』っていうの」
「あ、下條真登っていいます。いま、お姉ちゃんの寮に泊めてもらってるんだ」
「よろしくね。真登くん!そのツンツン頭いかしてるよ?」
「ありがとう」ニコッ!
「あんたはこんな風にいろんな女の子を手玉にしてんでしょー?」
「え?そんなことないってば。お姉ちゃんは意地悪ですね。と下條さんはつぶやきます」
「なに妹たちみたいな話かたしてんのよ」
「その、真登さんでしたっけ、あの2年前のお姉さまの事件をご存じで?」
「しってるもなにm…ゴフッ!」
「こいつはテレビとか何かで知ってるのよ。ね―?」
「むうhktrdんkmzgx・・・・(何口ふさいでんだよ。苦しいじゃねえか!)」
「結構うっかりサンだったりするから変なこと言ったらぶん殴ってもいいから。あはははははは…」
(こいつ、いつかぶっ殺してやる。お前の幻想がぶっ壊れるくらい上条さんはカンカンですよ!!)
(てか、こいつの唇さわっちゃった!キャハっ♪このままずっといたいな☆)
(ねえ、初春ぅ?ジャンボパフェ食べてるひまないよ?あの二人なんだか変じゃない?御坂さんとても顔真っ赤じゃん?)
(あ!今は邪魔しないでくださいよ。もしかして、佐天さんはうらやましいんですか!)
(そんなわけないけどさ、そういうならさっさとそれ片づけてよね)
(いいじゃないですか。私だってゆっくり食べたいんですから)
(でも、仲いいきょうだいみたいじゃん!・・・・・・弟元気かなぁ。最近なんも連絡してないなぁ)
(なんか、自分に投影してませんか?佐天さん?)
(・・・うん。うちにも弟がいるから…最近会ってないけどね・・・って白井さんの様子がすごくない?)
(おねえざばぁぁぁぁっぁああぁ!私ととても情熱的なベーゼがしたくてここに来たわけじゃないのですね。ううううううううううう!)
(私との愛を育んではもらえないのですか?黒子は!黒子はぁ!あああああああああああああああああああああん!)

 黒子は完全に自分の世界に入り込んでいた。テーブルに頭突きを何度もしている。その音はかなりうるさい。近所迷惑だ。美琴は仕方なく軽くショックを与える。
下條に気づかれないようにこっそり。いまは、黒子の頭から湯気が立っている。彼女は完全にKOされた。想いを寄せるお姉さまに。その顔はとても幸せそう。
変態だから仕方ないのかもしれないが。そんなことも知らずに黒子を除いた4人は話を続ける。その途中に美琴と下條(上条)の頼んでいたものが来て伝票がおかれる。

8298月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:45:59 ID:6Zd163Qo
「「いただきまーす」」
「やっぱりうめぇな。ここの料理は!マーボハンバーグって高いからなかなか食えねえんですよ。か・・・下條さんはとても感動してるんですよ」
「あんたはテレビの見すぎじゃないの?そんな口調誰から教わったのよ」
「生まれつきだし。」
「そうだそうだ。真登くんはこの4人のお姉ちゃんの中で誰が好き?この涙子おねえちゃんかな?それとも、初春かな?それとも・・・」
「私でしょ?アンタは!」
「わたしですか?」
「・・・うーん。あまり、順序とか決めたくないんだよな。みんな優しいし大好きです」
「わ!わたしはドジだし、いっつもあわあわしてるけどそれでも大丈夫ですか?」
「それでもですよ!」
「うれしいな。そしたら、明日も遊ぼっか?ねえ?御坂さん!」
「あんたはどうなの?私はいいけど」
「うん。いいぜ!お姉さんたち!」
「あははっ!実際にお姉さんとか言われたら照れちゃうっていうか・・・ね?初春?」
「えっ!?えええ、はい!そうですね」
「ずるいわよ!アンタは!そんな答えかたするから。・・・・今頃黒子も目覚ましてるんじゃない?おーい!おーきろー」
「あの殿方もこんな風に色々な女性に接してこられたのでしょうねぇ…」
「「「え?」」」

 会話が弾む。しかし、下條の目の前のハンバーグはすでに無くなっている。話に参加しても結局は女子4人で成立している。
その間に、ご飯をしっかり口に流し込む。たまに振られる話にしっかりと答えるようにたまに話のほうに耳を傾けて。でも、意識は目の前の皿に。
その隣のカルボナーラは半分くらい残っている。しかし、佐天が気を利かせてくれたおかげで美琴はその皿を空けることができた。
なんだかんだで2時間はいるだろう。店員は邪魔だというオーラを出している。そんなとき、黒子の携帯電話が鳴り、店の外に出て応対した。
数分後、彼女は戻ってきて風紀委員(ジャッジメント)の仕事が入ったと言って初春の首をつかんで出て行った。
現在、美琴、佐天、上条・・・今は下條がテーブルを囲む。

「なんか、いきなり静かになりましたね。」
「そうね。この後、何も予定入れてなかったんだけどさ、佐天さんもこのガキんちょと遊ばない?」
「ガキんちょって言うな!俺はれっきとしたkブホッ!」
 美琴の鉄拳制裁が上条の頭に下される。それと同時に美琴は何かを隠すように笑う。
「あははははははは!こいつ、暑いと変なこと言い出すのよね。あはは。あははははは」
「いいですよ。ちょうど私もこの後暇ですから。それより、真登くんって面白い子ですね」
「そしたら、ゲーセンでも行っちゃおうか!」

8308月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:47:19 ID:6Zd163Qo
 美琴の言葉で全員席を発ち、ファミレスをでて、とあるゲーセンに向かった。真ん中に美琴がいて、それを挟むように無能力者が並んで歩く。
なんともほのぼのした雰囲気がその3人を包んでいる。途中で佐天の提案で真ん中に下條(上条)を置き、両手に華という状態である。
お姉さま2人はうれしそうな顔でツンツン頭を見ている。その後、美琴と佐天は見合って笑顔になる。そろそろゲーセンに着くころだ。

「そろそろだね。佐天さん。私、化粧直してきていい?」
「いいですよ。この辺で待ってますから」
「ありがとう。なるべく早く戻ってくる」

・・・・・・下條と佐天は近くにあったベンチに座る。

「真登くんのそのツンツン頭ってそれって地毛?」
「カツラもなんも、地毛ですよ?」
「へぇ−。そうなんだ。私にもさ、弟いるんだけどね。君と同じくらいなんだよね。」
「そうなんですか。(俺はもう18歳になるんですが。年越してからだけど)」
「それでさ、どんどんこの涙子お姉さまに頼っちゃっていいから。まかせて!」
「あ・・・はい。(その言葉は俺が言うのに。言わなくても助けるのに。)」
「そんじゃ、御坂さん遅いから様子でも見に行こうかな。」
「・・・確かにおそいなぁ。俺も一緒に行ってもいいですか?(あいつまた泣いてるんじゃないのか…?)」
「男の子が女子の変身は覗かなーい!」
「じょ、じょ、冗談ですよ。ね?ほら。」

そうやり取りしているうちに、美琴は戻ってきた。待っていた2人は心配そうに見ていたが、御坂はなんでそんな顔してるの?といったような顔している。
だが、そんなことを気にしてたら『いつもあいつを想っている私はどうなんだよ?』となるのでゲーセンに向かうことにした。なお、そのゲーセンはよく、美琴たちが行くところだ。
彼女たちのブームはパンチングマシンでハイスコアを出すというものだ。なんだかそういうことを聞くと逆らうことができないと下條は思った。だが、上条は幸せだと思った。
下條もとい、小さくなってしまった上条は歩く時も何か行動する時も自らの不幸体質を考えておかなければならない。だが、2年前からの記憶しかなくとも体が知っていた。
幻想を壊す右手を宿した男の人生は不幸に満ち溢れていた・・・だが、上条はふと思う――今日は全くと言っていいほど不幸なことが起きていないことに。
上条は指を折って今日起こった不幸を数えだす。しかし、不幸という不幸が起こっていない。指を折るほど不幸は起こっていなかった。不幸といえるのは今朝の美琴の電撃制裁くらいだ。

8318月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:48:03 ID:6Zd163Qo
 午後3:47、とある大型アミューズメントパーク内ゲームセンターにて。

 この第7学区の中に大きなゲームセンターができた。ちょうど半年前に大通りの一角にできたのである。アミューズメントパークとは名ばかりで半分以上は研究機関が入っている。
カラオケという名の音声分析が行われる部屋、バッティングセンターという名の力学研究所、とさまざまなものがある。ここは能力制限は行われていなかった。
そのため美琴も遠慮なく入ることができた。その中にあるパンチングマシンは目玉商品の一つである。その隣にキックバージョンも新しく設置されたようだ。
いま、そのパンチングマシンの前にいる3人の男女。というより、女友達とどちらかのきょうだいが一緒に遊んでいるように見える。
その機械のハイスコアを叩き出すたびにティロリロリンと効果音が流れる。その音が妙に安っぽいと思う。だが、それがいいと佐天はいう。天真爛漫な女の子、それが彼女。

 「今度は私の番ですね!真登くんのためにやっちゃうんだから!」とその研究教材の前に立つと佐天は身構える。そして、思いっきりターゲットに向かって右手を打ち出す。
そして、そのインパクトはその機械を少しだけ揺らす。それと同時に力量計算が始まり、スコアが発表される。おしくもハイスコアに2点ほど及ばなかった。

「うーーーー。くやしいなぁ。真登くんもやってみない?」
「うん。やります!」
「こんなアンタじゃ、これを超えるなんて無理よ。」
「ちょっくらやってやりますか。」
「ってアンタは人の話全く聞いてないでしょ。」
「いいじゃないですか。楽しそうですよ?」

 下條をからかった美琴は見事にスルーされてしまったことに腹を立てているが、佐天の一言にそれもどこにやら。今では、楽しそうに遊んでいる弟を見守る姉の顔になっている。
その二人を後ろに、上条…いや、下條は指定されている立ち位置から数メートル離れて身構える。右手を軽く握る。そして、息を整える。いつかの最強との戦いの時みたいに。
そして、ターゲットに向かって目線を合わせる。足はすでにその方向に向かっている。ここで、美琴は何かを思い出してひとりで顔を真っ赤にしているのは誰も知らない。

「―――歯をくいしばれ!最強!!俺の最弱はちっとばっか響くぞっ!そのふざけた幻想をぶっ殺す!」

 今ではきけなくなった言葉が出てきた。しかも、あの小さなツンツン頭から。その言葉と同時に繰り出された拳はものすごく2人の女子を魅了している。
重心を全て右手にかけて体を使って繰り出されるパンチはまさにヘビー級のものであった。美琴はその姿に昨日の夜まであった上条の姿を重ねた。
美琴が生まれて初めて父親以外にもっとも長く接してきた男子に。生まれて初めて自分を心の奥から愛したいと思った人に。昔の思い出が膨らんでくる。
おのずと涙があふれてくる。ただ、ここでは泣いてはいけないと思ったためそのぎりぎりで抑えた。だが、その時に下條のスコアが出たときに佐天が驚いた。
それに驚いた美琴はひとりで泣くことはやめた。

「すごいよ!ちょっとちょっとちょっと!なにこれぇ?ハイスコアじゃん!真登くんなにやったの?ちょっと、まってよ」
「え?これあんたが!?」
「やっちまった。昔のこと思い出して打ってしまった」
「昔って何やってたの?教えてよ。涙子お姉さんに内緒でおしえてくれない?ねぇねぇ」
「それは…ここに来る前にボクシング習ってたんですよ。ははは・・・」
「そうだったんだ」
「・・・はぁ。(よかった、こいつ自分がどうなってるのか忘れてるかと思った)」
「あ!御坂さん!次!」
「わかった。ちょっと、アンタこれ持っててよ?よっしゃ!」

美琴は高校生らしからぬはしゃぎっぷりで腕をぶんぶん振り回す。そして所定の位置に立つ。そして呼吸を整えて拳に力を込める。
勢いよく飛び出してパンチを打ち出す。そして、スコアが出るも下條には及ばなかった。
最後にプリクラをとって、ゲーセンを後にした。

8328月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:48:41 ID:6Zd163Qo
「楽しかったわ。ありがとう、佐天さん」
「いいんですよ。私も楽しめたし、なにより、真登くんが楽しそうだったから」
「それじゃ、私はこっちなので失礼します。それじゃあ」
「じゃあね。佐天さん!」

 佐天はここから変える方向が違うため美琴と小さくなった上条の二人きりになった。ここから二人で上条の家に戻ることになるのだが、美琴は忘れ物を思い出す。
上条の家を直さなければいけないと業者に電話を入れるのを忘れてしまっていた。そのことを小さくなってしまった上条に言うと、文句は言わずにお前を信じると言った。
そこで、美琴はホテルをとることにした。美琴はここで部屋を一つだけとることにした。ツインで予約。2年もたてば少しは強引に行くことを覚えたのであろう。電話を取り出す。
美琴はこっそり手をつないでいる。鈍感な彼はいま、小さくなっている。本物だとは分かっているが姿かたちが幼い分緊張はない。むしろ自分の世話焼きスイッチが入る。
上条も小さくなってしまって不安なのか美琴の左手を強く握る。顔は大丈夫にしていてもそれは隠しきれなかった。心のよりどころは隣にいるひとりの少女に。
それを見た美琴は少しからかってやる。

「アンタって意外と今の状況怖いんでしょ?」
「んな・・・わけねーだろ。上条さんはいつでも不幸と戦っているんですよ?」
「そう・・・それじゃ、このアンタの右手はなに?」
「え・・・と・・・そうですね・・・あはははっはははは・・・言い返せねえ」
「よっしゃぁ☆こいつに初めて勝った!やりぃ!」
「お前ここまで勝負事持ってくるなんてすごい度胸だな」
「いいじゃないの。アンタにいつも負けてるんだから。一回くらいは勝たせてよ」
「わかった。わかったから。もう少し上条さんの純情ハートを大事に取り扱ってくださいの事よ」
「それじゃ、目を瞑って?いいから!これがアンタに向ける罰ゲーム!」
「え?いやな予感しかないぞ!」
「だから、目を瞑るの!は・や・く!」
「わかったから!瞑りゃいいんだろ?瞑りゃ!」

 美琴は心の準備をしている。上条は完全に覚悟を決めているようだった。その顔はとてもドキドキしているのは丸見えだ。美琴とは違うドキドキ感が襲う。
上条は感じる。美琴は自分を亡き者にするのかと。上条の心臓はだんだんと波を打っている。心臓の高鳴りと甘いにおいが合わさってくる。
別なところからもドクンドクンと音が聞こえてくる。

「――――ッ!おまえなにすんだよ!!上条さんをバカにするのはやめろー!」
「その上条さんはどこにいるのかしら?アンタは下條真登じゃなかったけ?」
「でも、俺はおれなんだよ。上条当麻なんだよ。なんですよ。なんでございますことよの三段活用!」
「あら、そうでしたか。アンタの名前は上条当麻って言うんだ。そしたら、うその嫌いな上条さんは大うそつきになったわよ?」
「う・・・そう言われてしまうと・・・」
「へぇー・・・だから、上条さんはバカだからバカって言ってるだけじゃない。あるがままを言ったまでよ♪ばかぁ・・・でも真登くんにはバカって言ってないわよ?」
「自分でもバカだって思うけどさ、さすがに誰かから言われると上条さんでも傷がつきますよ」
「だって、あんたはいつも傷ついてばっかり。私はアンタに傷ついてほしくないの」
「おれは、誰かの笑顔を守りたいから。それしかねえんだよ。今日がだめだったら明日を。明日がダメだったら明後日を素晴らしくすればいいじゃねえか。」
「あんたは私が守ってやらないと死んじゃうんだから」
「俺は、俺の意思で傷ついてる。自業自得なんだよ」
「お願い!私を傷つけたくないんでしょ?だったら・・・私のためにそんなことはやめてよ」
「でも!おれは、誰かを守るのに躊躇なんかいらないと思ってる。お前の笑顔を守るならどんな手段でも守ってやる。それは約束した」
「いらないわよ!そんな約束なんか!私はただ…ただ…アンタに…」
「俺にどうしてほしんだよ。お前がそんなに弱かったら俺が守るしかないだろ?」
「だって、あんたが好きなんだもん。しょうがないじゃん。アンタは何も返してくれないんだもん。」
「そうだったのか・・・悪い。熱くなっちまったな」
「わかればいいのよ。わかれば・・・というわけでホテル行くわよ?今日はアンタの家に帰ったところでどこで寝るのよ。美琴センセーに任せなさいよ!」
「そんじゃ、お言葉に甘えて。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ここは、第7学区有数のホテルである。美琴の予約で満室にならないうちに部屋が取れた。なんとも見晴らしがよい場所である。思い出の橋も見える。
下條は疲れ切ったのかベッドに座りこんだ。その後ろから美琴は抱きついた。ぬいぐるみを抱くように。

8338月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:49:32 ID:6Zd163Qo

「むぎゅぅ!」
「何すんだよ。恥ずかしいじゃねえか」
「間違えなくアンタなんだけど、アンタじゃないからいいの」
「俺は俺ですよ?」
「アンタって結構あったかいのね。このままでいてもいい?私最近冷え症になっちゃってさ」
「お前は、自分の能力で体温調節できんじゃねえのかよ」
「いいじゃないの。へるもんじゃなし!」
「わかったよ。好きにしろ」
「わーい。ありがと。真登っ!」
「・・・・」
「うわぁ。照れてる照れてる☆」
「・・・・やめろーーーーーーーーーーーーー!」
「やめなぁーい!」
「わかったよ。下條さんはくたくただというのに・・・」
「むぎゅっ!・・・ずっとこのままでいい?」
「あのさ、美琴お姉ちゃん!いや、美琴っ!今から下條真登ではなく上条当麻としてお前に言う・・・」

「こんな素晴らしい世界がお前によって俺に与えてくれるなら――俺は、この上条当麻は、その幻想を愛でてやる!!」

「・・・え?」
「元の姿になったらお前に面と向かって言えなくなるだろうしな。へへっ!」
「えへへ。とうまぁ。私どうすればいいの?どうしよう。にゃぁーーー。」

 時は、すでに7:30になる。ホテルのディナータイムは始まった。バイキング形式であったので、二人は一緒にレストランに入る。
バイキング形式であるのでトレイに皿を載せ、それぞれが食べたいものを載せていく。二人は全く正反対な乗せ方をしている。
上条は自分の食べたいものを食べたいだけの量を盛り付けている。対象に美琴はほとんど自分の食べたいものを少しずつ配置している。
二人が席について、相手のとったものを見ている。

「あんた、ちょっとすごい汚い盛り方してるわよ。どうしたらそんなになるわけ?」
「しょうがねえだろ?食いたいものを食えるんですから。貧乏学生上条さんはここぞという時を逃しません!」
「あんたってほんとにバカね。あとさ、今は下條さんじゃなかったかしら」
「そうでした。・・・ておまえ人の取ったもの食ってんじゃねえよ」
「それぐらい大丈夫でしょ?あんたってそういうところはよく見てるのね」
「そういうところってどこですかね。御坂さん?」
「自分で考えなさいよ。あ!これ貰うわね」
「また取ってくなよ。ええい!こうなったら上条さんの秘伝技使いますよ」
「どんなものが見れるか楽しみだわ。せいぜいこの美琴センセーを楽しませてくれないと」

8348月16日 彼は幻想を愛でる _Sweet Nightmare Prologue:2010/04/28(水) 07:50:11 ID:6Zd163Qo
 「そんじゃ、行きますかね。」と言いながらバイキングのほうに行ってしまった。美琴は、こいつの行動パターンはわかってる。と見破る自信は満々である。
ちなみにここのホテルのバイキングは皿は何枚でも使っていいということもあって下條(上条)は手ぶらで歩いて行った。・・・ふりをして美琴の後ろから抱きついてやる。
美琴はひゃんっ!とか言って顔が赤くなってきた。彼女はいつも電磁波センサーを稼働させて死角がない状態なのだが、今日はそれをしなかった。ホテルには想い慕う人と一緒だから。
彼女はそのせいで、下條の思惑にはまってしまう。周りの人間からしてみれば迷惑極まりない行動をしている下條と美琴。そして、美琴は肩をびくっとさせてそのあとさらに顔を赤くした。

 「・・・上条さんはへとへとなんですよ。だから、なんか食わせてくれー美琴タン」と棒読みで美琴の耳元で言う。上条はいたずらでやっているのだがそのターゲットは本気の言葉として受け止める。
上条は美琴の反応を見て面白がって鉄壁の理性を以ってしてさらにエスカレート?した攻撃を与える。さらに、美琴は俯いてしまった。下條は後悔してしまう。美琴を抱いていた身体を起こしてた。
「悪いな。御坂。悪ふざけ過ぎた。大丈夫か?こんなうまい飯さっさと冷めないうちに食べようぜ?」とにこやかに話してくる。自分が何をやったか知らん顔で。

「・・・ずるい・・・ずるいよ」
「え?俺なんかしましたっけ。」
「・・・あんたはいつも鈍感なのに、なんでこんな時に決め玉持ってくるのよ。卑怯じゃない。」
「んま、いいや。もうくっちまおうぜ?話の続きは部屋でな。」
「わかったわよ。」

 というわけで、晩御飯を食べ終わった二人は部屋に戻り、シャワーに入った。そのあと、寝る前に話をする。ツインベッドでしかも近いので話がしやすかった。
最初は無言だった美琴は少しずつ心を開き始めた。

「あんたさ、なんであんなこと言えちゃうわけ?しかも人前で・・・」
「俺もあんな事言えるなんてびっくりしたよ。自分で。」
「あんたも意外とうぶよね。というより、ウブ。」
「ウブって言うな。」
「だから、そういうふうにムキになるのがウブなのよ。」
「悪かったな。ったく。俺寝るからな。」

 美琴は自分のベッドからこっそり抜け出す。そして、そっぽを向いて寝ている小さな上条、下條の後ろから抱きついて彼を抱き枕のように抱く。
自分の抱いた抱き枕は暖かく、そして、アイツこと上条のにおいがする。ツンツン頭がたまに顔に触れてくすぐったい。安心しきってしまい彼氏じゃない男子の名前を言う。

「とぉまぁー。えへへ。とーまはわたしのもの!えへへ。もう逃がさないもん!」
「って、苦しいっての・・・何すんだよてめえは!」
「だって、…グスッ…手ぇ離したらどこかに行っちゃうかと思って。」
「泣き虫だな。お前って結構。泣いてていいぞ。気が済むまで。」
「ありがとう・・・グスッ…おやすみ。」
「ああ。」

下條、もとい小さくなってしまった上条にとってはとてもうれしい悪夢が襲っている。時計はすでに11:30を過ぎた。

835ION:2010/04/28(水) 07:56:15 ID:6Zd163Qo
みなさん、本当に申し訳ないです。5から7スレとか言っておきながら
2倍くらい消費してしまったです。

これからは気をつけます。

836■■■■:2010/04/28(水) 22:30:21 ID:jPqY8DG2
GJです。
続き待ってます。

837かぺら:2010/04/28(水) 23:58:54 ID:EXCITRIQ
やっほう。久しぶりです。
急に美琴1人称を書きたくなりまして。
そんな小ネタ。誰もいなさそうなので即投下しますよー

838■■■■:2010/04/28(水) 23:58:56 ID:6c/fpLdc
こんばんは。
誰もいないようなので5分後に投下します。
タイトルは『願いを叶える魔法の箱』

839少しだけ:2010/04/28(水) 23:59:35 ID:EXCITRIQ
「おーい、御坂」

ぼーっと道を歩いていたときに、アイツに呼ばれた。
ドキドキと高鳴る心をどうにか抑えて、動揺が顔に出ないようにゆっくりと振り向く。

「な、なによ?」

これだけ注意しても、どもってしまう。鼓動の高鳴りも抑えがききそうにない。
情けないな、と自分でも思う。でも、この想いは理屈じゃない。

「いや、別に用があったわけじゃねぇんだけどな。歩いてるの見かけたからよ」

鼻の頭をポリポリと掻き、『迷惑だったか』とまで言う。
これだからコイツは…………ワザとらしく溜息をついてやる。
人の気持ちなんか全然気付かない癖に、やたらと気にかけてくる。
こっちの身にもなって欲しい。

「で、お嬢様に気易く話しかけて来て、ナンパのつもり?」

仕返しがてら、ちょっとだけ悪戯してみる。
コイツが困るのも、仕返しって言うのが言い訳である事も知ってるけど。
素直に、なれない。
変にお嬢様ぶったりしてない分、素直な私は出せてるとは思うんだけど……まだ、何かが違う気がする。

「ナンパって……うーん。そんな下心があったわけじゃねぇんだけどな」

予想通り、すっかり困り顔のアイツ。
ここで『そうだ、ナンパだ。付き合え!』なんて言ってくれれば楽になるのに。
気付かれないくらい小さく、口を尖らせる。アイツに期待するのが馬鹿なのかもしれないけど。
もう一度、溜息をつく。

「まぁいいわ。せっかくだし、お茶でも付き合いなさいよ」
「あれ?いつの間にか、上条さんがナンパされてますよ?」

アイツの言葉に、顔が熱くなるのを感じる。
いつもなら調子にのんなと電撃を飛ばすところだけど、ぐっと我慢して。
今日は少しだけ、ほんの少しだけ、素直になってみる。

「ほら、行くわよ」
「ちょ、ちょっと、御坂さん!?」

アイツの右手を掴んでカフェを目指す。
私よりも大きい、暖かい手を握って。
砂鉄の剣も、渾身の落雷も、私の不幸さえも消し去る右手は、こうしていると普通の手にしか見えない。
しぶしぶといった表情をしながらも付き合ってくれるアイツの顔を見て、頬が緩む。
見られない様に少しだけ顔をうつむけて。
今はこんな状態だけど、いつかは素直に微笑みあえるように。
そんな淡い想いをのせて、繋いだ手に少しだけ力を込める。

「早く行くわよ」
「はいはい。分かりました。お付き合いしますよー」

そっと握り返してくれた右手が、堪らなく愛おしく思えた。

840かぺら:2010/04/29(木) 00:00:50 ID:8o9VDb9Y
以上!!

>>838
気にせず投下して下さい!

841■■■■:2010/04/29(木) 00:02:37 ID:iK4BBk8w
本日は雨。昼休み中、インデックスによる財政難で昼飯抜きの上条にデルタフォースが声をかけた。
「カミやん、今朝面白いものを見つけたにゃー。」
「面白いものって?・・・ただの箱じゃないか。」
「驚くなかれ、これを見るぜよ!!」
土御門は箱のフタを見せた。『願いを叶える魔法の箱』と書いてあった。
「・・・なんだこれ、女の子が書いたような字じゃないか。胡散臭いにも程があるぞ。」
「せやろ胡散臭いやろ?これを不幸体質のカミやんで試そうと思って拾ってきたんや。」
「拾ってきた?どこで拾ったんだよ」
「学校に行く途中の公園のベンチだにゃー。普通に置いてあったから興味本位で持ってきた
わけだぜい。」
「興味本位と言ってもどう見たって科学とは無関係みたいだし魔術とかでもなさそうだな。」
「だからカミやんの力が必要やねん。何かお願いしてみいや!」
「そうだな〜、女の子にモテモテになりますように・・・」
この瞬間、上条は土御門と青髪にパンチを喰らった。


一方常盤台中学のとある教室。学園都市第3位の御坂美琴は自分の席で絶望な顔をして大変困った顔をしていた。
(どうしよう・・・まさかアレをなくすとは・・・たまたま持ち運んでどこかに置き忘れたなんて・・・
アイツの手にいっていたら私死んじゃう・・・その可能性は低いと思うけど
この嫌な感じは何なのかしら・・・これがアイツの言っていた不幸指数ってヤツかしら・・
あー!もうどうすればいいのよ!)
思い悩んでも仕方がないと考えた美琴はとりあえず居眠りして今は忘れようと机に顔を伏せた。

しかしやはり居眠りできる精神状態ではなく、何か行動をとらないと落ち着かなくなった。
(そうだ!アイツにアレが渡らないように先手を打っておかないと・・・)
携帯電話を取り出しカーソルを上条に合わせ、メールを打ち始めた。

『今日の放課後、持ち物全て持って公園で待っていなさい。約束を破ったら死ぬわよ?』
・・これでよし、万が一アイツが持っていたとしても取り返せるし持ってなければそれだけで良し。
中身を見られてもアイツ以外の人は私だとわからないハズだから・・・多分・・・
でも誰であろう中身を見られたら・・・・・
結局放課後になるまで美琴は一日落ち着きがなかった。

842■■■■:2010/04/29(木) 00:04:23 ID:iK4BBk8w
話は戻って上条の高校の教室。
「カミやん、既に叶えられてる願いやなくて他にもあるやろ〜?」
「そうだぜい、これ以上ふざけたらもう一発鉄拳をお見舞いだにゃー。」
「意味わかんねえよ。じゃあお前らが願い事言えばいいじゃないか。」
「だからカミやんが最初じゃないとダメなんだぜい。願いが叶った後死ぬハメになったら
シャレにならないにゃー。」
「それで俺に願いをってか・・・友達を好きに扱ってくれるね君たちは。それにしても、願いね〜・・・」

今の上条に得に願いはない。あるとしたら生活費がもう少し豊かになるくらいだ。
贅沢言えば美琴からの電撃をやめてほしいとか。
無能力からレベル1へ上がりたいとも願ってないし、不幸体質がなくなってほしいとも願ってない。
むしろもう自分の不幸体質に慣れてしまったとこもあるのだが。

う〜んと考えていた上条はふと外に目をやる。雨が降っていてとても止みそうにない。
「じゃあ、早く雨が止んで晴れてほしい。」
「なんだカミやん、そんなくだらない・・・・・・・・・・・・・・」
暗かった外がみるみる明るくなっていくのを感じてデルタフォース三人はバッと外を見た。
先程までザーザー降りだった雨はどこへやら、太陽まで出ていた。
太陽が出たのを見た三人は今度は『願いを叶える魔法の箱』をバッと見た。
「・・・青髪、今のはカミやんが言ってから晴れた。ということで間違いないにゃ?」
「間違ってないで土御門。さっきまで横殴り土砂降りやった!」
「おい!これが本当に願いを叶えたっていうのかよ?」
「試す価値は大アリぜよ!!目の前にフリフリゴスロリメイド出てこいにゃー!!」
「「・・・・」」
当然フリフリゴスロリメイドは現れなかった。
「にせものぜよ、これ。」
「その願いはどうかと思うで土御門・・・」
「そういえばこの箱の中身は何が入っているんだ?」
「まだ見てへんねん。もしかしたらおっそろしい御札とかビッシリ入っとるかも・・」
「そうだったら恐ろしいな。まあ、晴れたのは偶然って事で・・・」
「カミやん青髪、俺は真実を突きとめるぜよ!!」
土御門は箱を奪い、フタを開けてしまった。
「んな!何やってんだ馬鹿!!」
「・・・んにゃ〜開けてがっかり中身は空っぽではないぜい。紙切れ一枚入ってるぜよ。」
どれどれと三人は綺麗に折りたたまれた紙切れを手にとって書いてある文章を読んだ。

843■■■■:2010/04/29(木) 00:04:46 ID:iK4BBk8w
『願いを叶える魔法の箱に願いをすると願いが叶う
但し地獄の使者が願い事相応のリスクをいただきに参上するであろう』

三人同時に固まった。土御門と青髪は上条を見る。
「「カミやん・・・・」」
「ど、どうしよう、俺、願い事した・・・・」
「お、落ち着け、こんなの非科学的で魔術関連でもないにゃー」
「じ、地獄から使者が来て、お、俺の魂を持って行くんだ・・・」
「いや、そこまで書いてないぜよ・・・」
「ど、どどどうしよう青髪!」
「心配すなカミやん。確かに少し気持ち悪いけどただの箱やって」
「けど、今にも扉が開いて地獄の使者が・・・・」

ガラッ!!

「「「うわあああ!!!出たあぁぁ!地獄からの使者!!!!」」」
「はーい、午後の授業始めるですよー。ところで地獄からの使者とは誰ですか上条ちゃん?」
地獄の使者は小萌先生の授業だった。
「いや、決して小萌先生だとは俺も土御門も青髪も言ってないです、はい・・・」
「・・・・ひっく、教え子に地獄からの使者扱いされるなんて私は教師失格です」

泣かせた。泣かせた。お前が小萌先生を泣かせた。
クラス全員が何故か上条だけを冷たい視線で睨みつけた。

「何で俺だけ・・・不幸だ。」
その後学校が終わるまでクラス中から批難を浴びた上条だった。

844■■■■:2010/04/29(木) 00:06:27 ID:iK4BBk8w
放課後
「とりあえず魂を奪われる事はなかったにゃーカミやん。だがこの気持ち悪い箱はカミやんにあげるぜい。」
「俺たちは充分楽しめたからその箱は持って帰ってくれていいで〜。」
「はあ、飽きたからって俺に突きつけるのはやめろよ。」
無理矢理箱を渡され土御門と青髪はさっさと帰って行った。

上条は箱をもう一度開けてみた。地獄の使者の手紙だけが入っている。
ように見える。
入っているように見えるとは底に何かを見つけたからだ。見つけたというのはおかしいが、
何か変なのだ。底の角を触ってみるとなんと箱の底からまた底が出てきた。
どうやら二重底になっていた。二重底にもまた紙が入っていた。今度は何枚も。
上条は恐る恐る紙を開いて読んだ。
『目指せレベル5!!』
「何だ可愛らしい目標じゃないか・・・」
安心した上条は次々と紙を読み上げた。
『生意気な研究者全員虐殺』
・・おいおい凄い事書いた人間がいたもんだ。
『同僚の変態行動が収まりますように』
こいつは寮生で同僚に困ってんのか。かわいそうに・・・
『自分の能力が効かないあの馬鹿に勝てますように』
あれ?能力が効かないあの馬鹿ってもしかして・・・・
『あの馬鹿が早く私の気持ちに気づいてくれますように』
変態の同僚、能力が効かない馬鹿。本当にもしかして・・・
『上条当麻と付き合えますように』
ビンゴ。俺だ・・・・
俺をあの馬鹿と呼ぶ相手は・・・・
「御坂・・・?」
誰もいない教室で一人ドキドキしてきた上条。
「マジかよ・・御坂が俺の事。嫌われてると思っていたのに・・・うわあ、どうしよう・・」
焦った上条はおもむろに携帯を手にとった。
「あれ?御坂からメールだ」
『今日の放課後、持ち物全て持って公園で待っていなさい。約束を破ったら死ぬわよ?』
(ということは土御門たちが拾ったこれは御坂のものだったのか?俺に渡ってないか確認って事か?)
鈍感な上条にしては珍しく頭が冴えていた推理である。
「メールは朝送っているな。やべっ、もしかしたら御坂もう待っているのか?どっちみち
ビリビリは確定か・・・不幸だ」

845■■■■:2010/04/29(木) 00:06:53 ID:iK4BBk8w
上条の予想通り、美琴は公園にいる。かれこれ30分程上条が来るのを待っている。
(早く来なさいよあの馬鹿!一日気になって担任にまで心配されたんだから!)
さすがに30分待つのも疲れ、自販機に蹴りでも入れるかと思い自販機の前に立ち、回し蹴りを放った。
ガコン・・
「相変わらず自販機に蹴り入れるのはやめねえんだな。その自販機、上条さんの次に不幸かもしれませんよ?」
「な!アンタいつの間に来たのよ!」
「ちぇいさー!って叫んで自販機を蹴ったくらい?」
「・・・・・・」
「あっ、悪い悪い!それでわざわざ上条さんを呼び出してどうしたんだ?」
「・・・アンタの鞄の中身見せなさい」
「そんな鞄の中まで見せなくてもな、御坂が探しているのはこれじゃないか?」
そう言って上条は鞄から箱を取り出した。美琴は箱を見て一気に顔を赤らめた。
美琴の顔を見て上条は全部見たと告げたら電撃だけでは済みそうにないと思い、話を大きくしないように心がけた。
「ななななん、何でアンタが持ってるのよ!?」
「クラスメイトが拾ったらしく俺に押し渡したんだ。」
「うぅ・・・・」
美琴はヘナヘナと座り込んだ。
「まさか中身を見てないでしょうね?」
「地獄の使者の手紙か?」
「ホッ・・・そ、そうよ!それは私が作ったヤツなんだから!」
「また何故お嬢様のお前がこんなガキみたいな事やってんだ?」
「その中には私の願い事が入っていて、もし見つかっても地獄の使者の手紙を見たら脅しに
なるでしょ?」
「お前さあ、自分で墓穴掘ってるの気づいてるか?願い事入れてるって頭に言っちまったぞ。「・・・・・・・」ボン!
美琴は絶望な顔をした。好きな人に自分の恥ずかしい所を見られているような感覚で。
「アンタ・・・・・まさか・・・・」
「・・・・ごめん、見てしまった。」
「死ねええええええ!!!」
「うわあああああ!!!」
過去上条にもあまり放ったことのない全力の電撃を上条に向けて放った。もちろん上条は
右手で塞いだのだが。

846■■■■:2010/04/29(木) 00:08:00 ID:iK4BBk8w
「お前!俺を殺す気か!?」
「殺す気よ!よくも見やがったわね!!」
「やめろ!!やめてくれ!!やめてください!!」
「アンタが死ぬまでやめないわよ――!!」
「俺が死んでしまったら付き合えないんだぞ!?」
「!!!」ピク
上条は攻撃をやめた美琴にゆっくりと近づいた。
「箱の中にあるもの見てわかったんだよ。御坂が俺に強く当たったり電撃飛ばして来るのは
愛情の裏返しってヤツだとな。どんだけツンデレなんだよと突っ込みたいとこだが、そんなお前が可愛く思えてきた。」
「わ、私が可愛い?」カアァァ
「だけど今まで俺は御坂に嫌われていると思っていたから御坂の気持ちには気づかなかったよ。そこは俺が謝るとこだな。」
「そんな、謝るなんて・・・」
「もし、御坂が謝ってほしくないなら箱の中にあった御坂の願いを叶えてあげたい」
「え・・・?」
「もれなく地獄の使者という不幸な上条さんがついてきますが?」
「ぐす、ふええぇん・・・」
美琴は大きな声で泣き始めた。
「え?ちょっと御坂さん?これはもしかして俺のとんでもない勘違いだったのでせうか?
こんなダサイ台詞吐いた俺が大馬鹿野郎って事ですか?」
「ホント、大馬鹿野郎よアンタは。私の今日一日を返してよ!」
「そこは俺に言われてもな・・・そもそもお前がこれを忘れたからだろ?」
「うぅ・・それを言われると痛い・・」
「まあ、お互いの願いが叶ったということでハッピーエンドじゃないか。」
「何よお互いって。アンタが何を願ったのか知りたいわね。」
「やれやれ、鈍感とみんなに言われている俺だが、御坂も結構鈍いんだな。」
上条は箱のフタを開けて一枚の紙を取り出し、美琴に見えるように折りたたまれた紙を広げた。

『御坂美琴と付き合えますように』

「・・・・・・アンタ、もれなく地獄の使者という私がついてくるけど?」
「上条さんからすれば天の使者ですけどね。」
「ホント、ホントに馬鹿。」
美琴は上条の胸に顔を埋めた。上条は優しく美琴の頭を撫で、包み込むように抱きしめてあげた。
その後、この箱は二人の宝物として大切に保管された。

一方、この出来事を木に隠れて目撃していた人物が二人いた。
「青髪、どうやらあの箱は本物だったみたいだにゃー。」
「せやな、しかしカミやんは何でいっつも可愛い女の子とあんななるんや?」

「「ブチ殺し確定だにゃー(やで)」」

847■■■■:2010/04/29(木) 00:09:04 ID:iK4BBk8w
以上になります。
お気づきのとこがありましたらおねがいします。

848auau:2010/04/29(木) 00:17:10 ID:dQiP1xmQ
こんばんは〜
もう少しでこのスレもpart9ですね〜
このままもっと賑わうといいですね!
んで、五分後SS投下しますね!

849■■■■:2010/04/29(木) 00:22:06 ID:KmW4ie9U
>>847
GJです!
美琴がかなり可愛いです!意外に少女趣味の美琴なら、
実際にしてそうですね!

850とある未来の・・・第四章(1):2010/04/29(木) 00:22:09 ID:dQiP1xmQ
4.頼み事

「不幸だ・・・・・・」

上条当麻は朝の日差しを浴びながらがっくりとうなだれている。
彼が『不幸』と言う時は大抵彼の同居人であるシスターに噛まれていたり
現在彼の想い人であるとある少女に追い掛け回されたりする時に言うのだが
今回は別の意味でよくある『不幸』であった。

「どうしたんだ親父?」

朝食を食べ終えた当瑠がキョトンとした表情で聞いてくる。
自分と似た顔立ちの彼がのんきな表情をしていると、何故か
ムカムカしてぶん殴りたくなってくるが、彼に罪は無い。

「ふっ、息子よ・・・・・・良くぞ聞いてくれた」

ふふふ・・・・・・と上条をよく知らない人間が見たら
「ママあれなにー?」「こら見ちゃいけません」と言われる表情をしている。
だがしかし当瑠は上条が手の端に握っている物に気づいたようだ。

「・・・・・・親父・・・・・・それ・・・・・・」

なんてこった、そう言って当瑠も頭を抱える。
上条が握っているものはそれほどまでに頭を悩ませるものなのだ。

「あぁ・・・・・・長期休暇ももう少しで終盤だってのに・・・・・・これだ」

そう、長期休暇もすでに終盤。
上条の長期休暇は充実したものだった。
好きだと思える人ができ、そしてその人とデートをした
恋する純情少年となった上条にとってこれは大きな収穫であり
さらに新たな一歩を踏み出す土台となる休暇となった。

「こんな大きな壁が残っていたなんて・・・・・・」

しかし、そんな幸福を、簡単に神様がくれるわけがなかった。
幸福の代償として支払わされるのは『不幸』。
なぜこんなことに気づかなかったのか・・・・・・。
いや気づかなかったのではない、気づくことを忘れるくらい幸せだった。
運命は残酷である。
本当は想い人と今日だって会いたかった。
もう一度言おう、運命は残酷だ。
せっかく積極的になろうと思ったのにこれだ。

(くそ!なんて俺は馬鹿だったんだ!)

自分を叱咤する。
それは過去に自分に対する怒り。
どうしてもっと日常を大切に出来なかったのか。
学生として一番大事な事はなんだった。
そう、答えはすでに出ていた。

「課題を終らせるのすっかり忘れてた」

気分は夏休み最終日のようだった。

851■■■■:2010/04/29(木) 00:22:34 ID:QuyIsRqg
>>847
gj!

852とある未来の・・・(2):2010/04/29(木) 00:22:41 ID:dQiP1xmQ
「親父・・・・・・どうしてもっと早くに終らせなかったんだ」

遊んでる場合じゃなかっただろ、と息子に言われかなりしょげる上条。
すでに部屋の片隅で膝を抱えて震えている。

「う゛・・・・・・みざがぁ・・・・・・」

課題よりも逢えない事の方が大事だ。
今日も彼は想い人のビリビリ(つまり御坂美琴の事であるが)と会う気満々で
そのための計画までめったに使わない携帯のネット機能でデートスポットを 
探したのにその結果がこの様だ。
会うどころか上条の進級すら危うい。

「・・・・・・親父・・・・・・母さんに会いたい気持ちは分かる。
だけど、これから先のことも考えれば、親父のやるべき事は決まってるんじゃないか?」

ずいっと大量の課題を押し付けられる上条。
その課題をもう一度見直す。
数学、物理、生物、化学、英語などなどとても一人の力では一日で終らすなど無理だ。

「待てよ・・・・・・一人?」

チラッと横目で息子を見る。

「おい・・・・・・まさか俺にやらせようってのか?」

「息子よ・・・・・・お前は住む場所を与えられている、いわば居候だ」

居候だろうが家の手伝いなど全くしないシスターもいるのだが
そんな事は気にしないし、今の居候は立場が弱いはずだ。

「お前には、手伝う義務がある・・・・・・」

ユラァと幽霊のように立ち上がる上条を見て
当瑠が慌てたように後ずさる。

「待て!親父!宿題は自身の力でやるから意味があるんだ!
他人の力を借りて終らすなど言語道断!卑怯者する行為だぞ!!」

言っている事は正論で全く間違いではない。
だが、今の上条に一般常識は通用しない。

「俺が・・・・・・俺が・・・・・・寝る間も惜しんで立てた計画が・・・・・・」

ふらふらと当瑠との距離を詰めていく上条。

「み゛ざがをさそう計画が・・・・・・」

黒いオーラを充満させ息子を取り込もうとする。
オーラが当瑠の体を包み込み、身動きが取れなくなっていく(ような気がする)
ひっと小さな悲鳴が聞こえる。

「おや・・・・・・じ・・・・・・まて・・・・・・」

もはやこれまで、という顔をした当瑠に上条はニヤッとする。
捉えた獲物同然、後は彼の前に課題を押し付けるだけだ。
そして自分はそのままハッピーライフへと赴く。
上条の頭の中はすでに美琴と遊びに出かける妄想が開始されていた。

「ちょっと、落ち着きなさいよ」

突然頭部に軽い衝撃が加わった。

853とある未来の・・・(3):2010/04/29(木) 00:23:19 ID:dQiP1xmQ
後ろを向いてみるとそこにいたのは美詠だ。
課題を丸めて片手に持って腕を組んでいる。
そして、一度溜息をついて上条をテーブルに座らせた。

「お母さんに逢いたいのは分かるから、やっちゃいなさいよ」

ほら、ペンも持つ、と母親みたいにあれこれやられる。
それはいいのだが美琴と似た顔の少女に手を握られたり
背後に回られたり、顔が近付くといかに黒オーラ上条でもドキッとしてしまう。

「う゛う゛・・・・・・やりたくない・・・・・・」

ペンを握ってもやりたくないのはどうせ問題が分からないからで
数学や物理であれば式を見ただけでイヤになってしまうし
英語なんて単語を見るだけでも気分が悪くなる。

「・・・・・・・・・・・・そんなに嫌なわけ?」

こくこくと首の動きだけで伝えると、美詠は課題を上条からひったくると
問題をすらすらと解き始めた。
物凄い速さで数式が書かれていき瞬く間に一ページ分の問題が解き終わる。

「ほら簡単じゃない。
・・・・・・教えてあげるから、次のページから解説聞いときなさいよ」

なんだか以前もこんなことがあった気がする上条だが
中学生に勉強を教えられることに情けなさを感じながら
美詠が分かりやすく解説する問題を解く。

「・・・・・・」

美詠が何を言っているかさっぱり分からないときがあるが
例えや表現は上条にもしっかり伝わるし、質問すれば即座に答えてくれる。

「さっすが常盤台のお嬢様だな・・・・・・」

美詠ほどの速さではないにしろ上条の数学の課題はどんどん終っていく。
数学ってこんなに簡単だったっけ?と疑問が浮かんでくるくらいだった。
美詠に聞こえるように上条は呟いていた。

「ふふん、伊達に学園都市第三位じゃないわよ?どんな問題でもどーんとこいよ!」

そう言って薄い胸を張る。
自然と上条の視線はそこに行ってしまうわけだが、今度は重い衝撃が上条を襲う。

「なにすんだ!当瑠!」

面白くなさそうな表情で当瑠が上条の頭部に鉄拳を喰らわしていた。

「なーに、イヤらしい目で見てんだよ親父」

多少見下した言い方をする当瑠。
なんだか本気で起こっている気がしないでもないが上条はあえて何も言わない。

「美詠、この問題なんだけど――――ぐぇ!」

当瑠を無視して分からない問題を美詠に聞こうとすると
腕を首に回されて美詠から遠ざけられた。
そして、入れ替わるように当瑠が美詠の隣になる。

「美詠、俺にも教えてくれよ」

そう言う当瑠に美詠は首を傾げた。

「なんで私があんたに教えないといけないのよ?」

「この後のために決まってんだろ?俺もこれと同じ事するんだから。
それにいつも教えてくれるじゃねぇか」

尤もなような事を言って、上条の課題を奪い取り、勝手に問題を進めていく。
先ほど自身でやるのが宿題だといっていた人物とは別人のようだった。
美詠も別にいやという訳では無いらしく、顔を少し赤らめながら当瑠から少し離れて
専属の家庭教師を始めた。

854とある未来の・・・(4):2010/04/29(木) 00:23:44 ID:dQiP1xmQ
数学の課題が奪われてしまい、さてどうしようと思う。
そこで視界に入ったのは英語の課題だった。
単語を見ただけで気分が悪くなるのは変わらないが、他の教科よりは楽だ。
それもそのはず上条はとある携帯アプリで英会話には心得がついているのだ。
発音は駄目でも意味や文法は少しは分かる。

「・・・・・・えっとこれは・・・・・・」

初めの問題は解けた。
二問目もなんとなくだが理解でき自身を持って答える。
他の問題も結構すらすらと解けていき、俺って結構やるじゃんなんて思ったりする。

(・・・・・・そういや英語の方も御坂に教えてもらったような)

つい先日のことをいつの間には思い出していた。
美琴のことを思うと顔が少しだけ熱を持ったが
だから解けたのか・・・・・・アプリ意味ねぇと落胆もする。

(・・・・・・この前の物理もあいつに教えてもらったな・・・・・)

思い返してみると上条は事あるごとに美琴に課題を手伝ってもらっていた。
英語では綺麗な発音でプロっぽく得意げに解説したり
物理や数学なんかではこれまた得意そうにわざわざ自分で作ったという
自主作成の問題解説プリントを作ってきて上条に渡してきたりしてくれた。

「べ、別に、アンタのためじゃないわよ!
私が口で教えるのめんどくさいから作ってきてるんだから!」

美琴が顔を真っ赤にしてそう言ったのを思い出す。
結局プリントを渡してもそれを見ながら口出しするので
プリントを作った意味がなくなってしまったが。

ぴたり、と手の動きが止まってしまった。

(・・・・・・御坂)

今は彼女のことを考えている場合ではない。
頭で分かっていて、手を動かせ、問題に集中しろ、と脳に命令しても中々動かない。
それどころか美琴の顔の方がどんどん浮かんできてしまい課題に集中できない。
そうだ、彼女がいつも隣にいた。
めんどくさい、わざわざ呼ぶな、こっちも忙しい、いい加減覚えろ
そんなふうに何度も怒られたが、最後には「しょうがない」と言って
問題を解いていってくれる優しい女の子。
自分は甘えている、どうせ彼女が解いてくれる、一緒にいてくれる。

――――――俺、もしかして・・・・・・

わざと課題貰って美琴との時間をつくっていた?
一緒にいたかったから?少しでも多く逢いたかったから?
その事に気づいて一気に顔が熱くなっていく。

―――――前からあいつの事好きだったのか?

やっぱり自分の気持ちに気づかないフリをしていただけだった。

855とある未来の・・・(5):2010/04/29(木) 00:24:14 ID:dQiP1xmQ








御坂美琴は寮のベッドの上でボウッとしていた。
何も考えていないわけではない、むしろ考えすぎていてそう見えるだけだ。

(・・・・・・楽しかったなぁ)

最終的にその言葉が自身の考えの中で結論が行く。
終着点がそこで、始まりの位置もそこなのだ。

(あいつも笑ってくれたし・・・・・・)

カァッと頬から熱を帯びていくのが分かる。
いやいやするように顔を振るが熱は冷めてくれない。
むしろ『アイツ』の顔が浮かんできてしまい熱は強くなっていく。

(・・・・・・うぅ、逢いたい)

のろのろと手を伸ばして手元にあるぬいぐるみを抱きしめる。
ぬいぐるみの胸辺りに顔をうずめて目をキュッとつむる。
浮かんできたのは昨日の出来事の数々だ。
昨日、というのは『アイツ』とのデートのことだ。
一緒に遊園地に行って、色んな乗り物に乗って、はぐれそうになって、
それがイヤで手を繋いで、お弁当を食べて、食べさせてあげて
・・・・・・最後に乗った観覧車では押し倒されて抱きしめられた。

(・・・・・・私のこと、好きになってくれたのかな?)

多分だが少しだけ自信が持てた。
嫌われてはいないと思う、今までよりは。
美琴は『アイツ』が自分に少しでも振り向いてくれた事に喜ぶ。
抱きしめたぬいぐるみに力が加わる。

(好き)

自分の方が『アイツ』の事が好きだ。
根拠もないが絶対そうだといえる。
きっと好きになったのは自分の方が先だから。
想いが伝えられなくて悩んでいるのは自分の方だから。

(好き)

言いたい。
『アイツ』と面と向かって、自分に素直になって言いたい。
まっすぐに顔を見て、目を逸らされたらこっちを向かせて。
・・・・・・抱きしめながらでもいい。

(私はアンタのことが好き・・・・・・)

誰よりも、何よりも。
『アイツ』が、『上条当麻』が好きだ。

(アンタ以外の人なんて好きになれない)

とても素敵な人だから。
誰よりも鈍感で、誰よりもぶっきらぼうで、めんどくさがりで
でも、誰よりも優しい、そんな人だから。

――――御坂美琴は上条当麻のことが誰よりも好きだと言える。

856とある未来の・・・(6):2010/04/29(木) 00:24:46 ID:dQiP1xmQ
「あー!なーに物思いにふけってんだか!」

ぬいぐるみを体から離してベッドから立ち上がる。
時計を見るとそろそろお昼時で、食堂に人が集まり始める時間だった。

「着替えなくっちゃね」

今日は朝から寝巻きな事を思い出してクローゼットを開ける。
そこには着慣れた制服がかけられていて美琴は素早くそれに着替えた。
ものの数分で『常盤台のお嬢様』が完成する。

「・・・・・・」

彼、上条は自分の制服の姿をどう思っているだろうか。
自慢をするわけではないが常盤台の制服はそこらの学校よりも可愛いと思うし
着ていてもイヤだと思うことは少ない。

「私服の私だと、どう思うかな?」

可愛い?と聞けばどう答えるか。
多分正直に「子供っぽい」と言う。
実際に昨日、自分の私服を見て、一気に自信がなくなったし
上条も自分に幻滅・・・・・・とまでいかないが一緒に歩きたがらないかもしれない。

「どうしよう」

別に今日着るわけではないが、急に気になり始めた。
もっと自分を見て欲しい、そんな欲求に駆られる。
それにして欲しいこともまだまだたくさんある。

「黒子に聞いてみようかな・・・・・・?」

おしゃれかどうかは分からないが自分よりもそういうことに興味がありそうな
ルームメイトが思い浮かんだが、いやいやとすぐに思い直す。
・・・・・・何を言われるか分かったものじゃないからだ。

(当分この問題は置いておこう・・・・・・)

少なくとも中学校にいる間は制服でいても何も不思議に思われない。
せいぜい回りから視線が少し集中するくらいだ。
それに上条と自分がいるところは見られても全くイヤではない。
私服はこの前決めたように雑誌でも持って買いに行けばすむ話しだ。

(それよりも・・・・・・)

今度は彼女にとってかなり重要な問題に直面する。
それは美琴がずっと言いたい事で、最近の出来事でその欲求が更に強くなったことだ。

(い、言わなきゃ・・・・・・今度あったら絶対いわないと!)

美琴は一人心に決める。
上条に一つの頼みごと、お願いをすることだ。

「よし!言うぞ!」

そのためにも今日はたくさん食べよう。
戦、といえば大げさだが、それくらい美琴は言いたかった事なのだ。
美琴はグッと拳を握り締めて気合を入れて、食堂に向かった。
ほんの些細で小さな願いを込めて。

857とある未来の・・・(7):2010/04/29(木) 00:25:12 ID:dQiP1xmQ






「よし、この問題を解けば・・・・・・」

上条当麻は相も変わらずテーブルに向かっていた。
しかし、いつもと状況が違うのは明白だ。
彼はたった一人の力で英語の課題を終らせたのだ。
最後の問題は長文の翻訳。
意味の分からないものは辞書を引いたが英語の下に日本語が書き込まれる。

「できたー!」

思わず右手を上げてガッツポーズをする。
かかった時間はおよそ三時間、すでに昼時は越えてしまっている。

「他の課題は・・・・・・と?」

この調子でやってやるぜと勢いづいて隣を確認するが
上条の隣に積まれていた課題の数々がなくなっていた。

「ない!!?」

ここでまさかの上条の不幸属性がその効果を発揮したのだろうか。
アレを提出できなければ留年は確実となり進級は絶望的になる。

「――――――なんでこうなんの?」

ふと、隣で声が聞こえる。
声の正体は当瑠であり美詠とまだ上条の課題をやっていた。

(・・・・・・なんであいつの隣に移動してんだよ)

課題は当瑠の隣に置いてあった。
つまれている課題を良く見てみると何回かめくった後があるように見える。

「まさか!!」

嫌な予感はしなかった。
積まれている課題を自分の目の前に引っ張り出し一ページずつ確認する。

(ほ、ほとんど埋めてある・・・・・・)

ほぼ全ての課題が完璧に終っていた。
残っているのは国語の課題で、読書感想文だか少年の主張だかそんな感じの作文のプリントだけだ。
この分であれば上条でも残り二、三時間かければ終るだろう。
本当は喜ぶべきなのだろうが上条としては少しへこむ。

(なんでこいつ等こんなに解くのはやいんだ!!?)

自分は三時間近くかけて一つの課題を終らせたのに当瑠と美詠は
その時間内にほとんどの課題を終らせてしまっているのだから、かなり悔しい。

「だからぁ、ここはこうなって・・・・・・こうなるからよ」

「ふーん・・・・・・なるほどなるほど」

「でさ、ここなんだけど・・・・・・ここがこうでさちょっと面白くない?」

「なんだこりゃ!?なんでこんな事になってんだよ」

なんかとてつもなく楽しそうに問題を解いていっている。
当瑠も美詠も同じように顔を見合わせて笑顔を見せていた。
初めは距離を少しとっていた美詠も教えにくかったのか近付いていて
肩がぶつかりそうなくらいになっている。
距離が近い事に当瑠の方は何か思うことがあるのか笑顔を見せながらも
少しだけ照れていて、ペンを持っていない片方の腕は所在無さげだが
何度もわきわきと動いて美詠の肩のあたりを行ったりきたりだ。

(・・・・・・め、目の前でいちゃつきやがって!)

今までの行動から見れば上条にも当てはまるし
当瑠と美詠は兄妹と言っている事も忘れて若干の嫉妬が浮かんでいるが気にしない。
しばらくして美詠の方が距離が近付いた事に気づいたのか当瑠と合った目をいきなり逸らし当瑠の体から離れる。
当瑠の方は一瞬残念そうな、ホッとしたような表情をして問題をまた解き始め
美詠は美詠で指をもじもじとさせて小声で遠目にぶつぶつと何か言う。

(あー!これ以上見てらんねぇ!)

嫉妬の炎が湧き上がるのが止められないので当瑠と美詠から視線を逸らし
作文のプリントを引っ張り出す。
他の課題もまだ少しだけ残っているが気分転換に作業を変えた方が集中しやすそうだった。

858とある未来の・・・(8):2010/04/29(木) 00:25:49 ID:dQiP1xmQ
プリントを引っ張り出して出だしの文章を考えていると
前方でチャックを開ける音がする。
何事かと思って顔を上げると一人で絵本を読んでいた美春が彼女の鞄からプリントと本を出して鉛筆を握っていた。
鉛筆の握り方も基本通りで綺麗な形で持っているので教育をしっかり受けたのが分かる。

「・・・・・・何してんだ?美春?」

声をかけると特徴的な前髪(俗に言うアホ毛だ)がぴょこぴょこと動いて
それに連動するように美春の顔が上がっていく。

「みはるもおべんきょーするの!」

――――ほぅ・・・・・・なかなか可面白い事をいうじゃないか。

「よしよし、お父さんに見せてみなさい」

美春の年齢は五歳だ。
五歳と言えば小学校の低学年にも入っていない幼稚園児、きっと勉強といったって
ひらがなの書き順だとかカタカナの『ソ』と『ン』の違いくらいだろう。

「パパにとけるかなぁ?むずかしいんだよ?」

馬鹿にするでもなく可愛らしく小首を傾げて笑顔で上条にそのお勉強を渡してくる。

「ふっふっふ、大人を舐めるんじゃありません」

上条は愛する娘に褒められるべく(かなり低レベルな願望だが)目を通す。
だがしかし、そのお勉強に驚愕する事になる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」

プリントに書かれている言葉は見たことも無い記号だが文字だかが綴られ絵も載っている。
そして記号か分からない文字のような物が説明していると思われる絵にはどこぞの国の壁画のようだった。

「美春ちゃーん、お勉強してたんだよねー」

子供特有の暗号化と思って聞いてみる。

「うん!お勉強してたよ!」

えらいでしょ、とエヘヘと笑いながら返してくる。
どうやら秘密基地の設計図だとか暗号では無いらしい。
だとすればこれは何なのか?上条は首をひねって更に聞く事にする。

「これってどこの国言葉なのかな?お父さんに分かるよう説明しなさい」

「『えじぷと』ってくにのもじだよ?」

――――なんでそんな国のお言葉を勉強なさってらっしゃるんですか?

「えーっと?美春は一体どんなところに通ってるんだ?」

そういえば聞いていなかった事だった。
美詠は常盤台の中学校と言う事は分かるし、当瑠の制服は上条の通っている高校の制服に
酷似しているから多分上条の通っていた高校だと予想はつく。
では美春はどこに通っているのだろうか?

「ときわだいちゅうがく ふぞく ときわだいようちえん!」

おじょうさまだよえっへんと美詠よりも薄い胸を張る美春。
『常盤台中学 付属 常盤台幼稚園』それが美春の通う幼稚園らしい。

「こんなちっちゃな子に何を教えてるんだ・・・・・・」

大学でも『えじぷと』語なんて勉強する人間はそうそういないだろう。
むしろ世界史とかの史学で考古学者を志す人間がするはずだ。
間違っても幼稚園児がやるものではない、と上条は思う。

「みはるのようちえんって『えりーと』をめざしてるんだって。
ママはあんまりうれしそうじゃないけどね?みはるはこれすごくたのしいよ!
マーちゃんはよころんでくれるし、ユーくんはそんなことせずにあそぼっていうんだけど・・・・・・」

なんか五歳児が勉強について語りだしたが
とりあえずマーちゃんはいい子だと言う事とユーくんは美春のことが好きだろう
ということくらいしか分からなかった。

859とある未来の・・・(9):2010/04/29(木) 00:26:16 ID:dQiP1xmQ
結局その後も美春と話していて作文は少ししか進まなかった。
頭に残っているのは作文の文字でなく美春の友達の話だ。
美春がユーくんという子といるとあっちゃんという男の子がユーくんと良く喧嘩して困るとか
マーちゃんはユーくんのことが好きで美春に相談してくるとかだ。
上条の結論としては「未来の幼稚園児はませてますなー」と「三角関係どころじゃない」だ。
情景はほのぼのとしているが状況はどろどろだ。
上条は一応「あっちゃんに素直になれといっておけと」アドバイスをして話を切った。

(・・・・・・なんで幼稚園児の悩みでこんなに疲れてんの?)

多分幼稚園児が語る悩みじゃないからだ。
おかげで集中も切れてしまい休憩を取ることにしようと上条は決めた。
美春は話し終わると眠くなったのか寝てしまっている
時計は午後二時で、天気もよくて暖かい、昼寝するにはちょうどいい感じだ。
スースーと寝息を立てる美春をベッドまで運んであげてタオルケットをかける。
美春の体はタオルケットを半分にしても十分に埋まるくらい小さかった。

(エリート幼稚園児も蓋をあけりゃただの子供だもんな)

気持ちよさそうに寝ている美春を見て頬が緩むが、そこで少し異変に気づく。

(そういや、やけに静かだな?)

当瑠と美詠の話し声が聞こえなくなっていた。
そういえば美春と話している途中で二人の声はだんだんなくなっていった気がする。
課題をやっていたはずの当瑠と美詠を見ると

(やっぱりか―――)

案の定二人は寝ていた。
爆睡状態で恋人のように寄り添ってだ。
当瑠の腕が美詠を抱きしめるように肩に回っている。

(これがラッキースケベというやつですかね)

自分にも当てはまるが上条はそんなことには気づかない。

(しっかし・・・・・・兄妹とは思えないよなぁ)

二人で仲良く寝ている姿はとても兄妹には見えず、どちらかと言えばやはり恋人に見える。

(と、なに考えてんだか・・・・・・)

恋人だったらお似合いだなぁと考えてしまいその考えをすぐ打ち消し
休憩中に何をしようかと自分で考えることを切り替える。
部屋を見回して目に入ったのは携帯電話だ。

(いい暇つぶしじゃん)

携帯のゲームでもしようかと考え携帯を開く。
待ち受けの画面は何も設定されていないデフォルトもままで味気なかった。
ゲームよりもそれのことがなぜか気になってしまい
フォトフォルダを開いて何かないかと探す。
クラスの友人との写真とかどこかも分からない風景まで様々だったが
不思議とある人物の写真はなかった。
いや、あるにはあった。
上条がドロップキックを喰らっていて倒れこむ姿と端に写る美琴が驚いた表情をしている写真だ。
しかしドロップキックの主のパンツの方が真ん中にあるせいでそっちの方がメインに見えてしまう。
早い話まともなツーショットとか人物写真は無いわけだ。

(――――な、なに御坂の写真を待ち受けにしようとしてんだ!いくら好きだからってそこまでするかい!)

イヤ待て、とそこまで考えて思い直す。
好きな人の待ち受けってそんなに変か?と
好きとは違うかもしれないがアイドルの画像を待ち受けにしている人間もいる
これは憧れとかに近いが、好きと言う意味では間違っていない、はずだ。

(写真・・・・・・・・・)

単純に欲しい。
たった一枚でもいいから彼女が写っているものが欲しいと思う。
なんで昨日のデートで撮らなかったんだと後悔する。
だが、チャンスはいくらでもある。

(これから作っていけば良いじゃねぇか、焦らなくてもいい)

そうだ自分たちには時間がまだまだたっぷりある。
これから先いくらでも彼女と過ごす日はあるじゃないか。
・・・・・・上条は発信経歴を開いていた。

(御坂・・・・・・)

気づけばベランダに出て通話のボタンを押していた。

860とある未来の・・・(10):2010/04/29(木) 00:26:55 ID:dQiP1xmQ
プルルルル、プルルルルと電話の音が数回鳴る。
だが待ち人は中々電話に出ない。

(出かけたりしてんのかな?)

友人と話したりしてるのかもしれない、そうであれば気づかない可能性も高い。
出ないのであればそれは残念だ。
七回ほど音がなったところで切ろうかと迷っているとブツッと雑音が耳に入った。

『も、もしもし!みみ、みさかですが』

緊張した声で待ち人が出てきた。

「お、おう御坂!なかなかでないからどうしたかと思ったぞ」

電話が繋がって上条はしまったと思う。
話す内容を全く考えていなかった、逢えないなら電話でも
繋がったらいいなーくらいにしか思っていなかったのだ。

『ちょ、ちょっとね・・・・・・そ、それで?何か用?』

うっと上条は声に出してしまう。
一番今聞かれたくないことだった。
用なんかないと言えば怒るだろうか、それとも呆れられるか。

『どうしたのよ?用無いの?』

「えぇっと・・・・・・用というか・・・・・・何と言いますか・・・・・・」

どうしよう何も浮かんでこない、昨日まで考えていたはずの計画とかは全部飛んでしまっていた。
上条はひたすら考えた。

(どうすんだよ!このままじゃ切られちまう・・・・・・何をしたいか考えろ
俺は御坂に何を伝えたいんだよ!御坂に何を望んでんだ!?)

考えていくうちに今日の自分の姿が思い浮かんでくる。
今日は課題のせいで美琴と逢えなかった、顔が見れなかった。
いつでも顔がみたいと思った、だから写真も欲しいと思った。
・・・・・・ならばせめて?

「・・・・・・用は無いんだけど」

『?』

「声が聞きたかった」

せめて、美琴の声だけでも聞きたかった。
元気なのか、それとも何か悩んでいるのか声を聞けば分かるから。
話しているだけで心地よくて幸せになれる。

『な、ななな、に・・・・・・言って?』

「呆れるか?でも本当だ、今日お前に逢えそうにないから
それなら声だけでもって思って電話かけたんだよ」

美琴からの返事は無い。
やっぱり呆れられてしまったのだろうかと不安になる。

「・・・・・・迷惑だったよな?声聞けてよかったよ、切るぞ」

会話はあまりできそうにない。
一言でも聞けてよかったと思い通話を切るボタンに指を動かす。

『ま・・・・・・待って!!』

美琴が急に大声を出して上条を制止させた。

861とある未来の・・・(11):2010/04/29(木) 00:27:25 ID:dQiP1xmQ





いきなり大声を出したので上条は驚いたようだ。

『ど、どうした?』

少し慌てた声を出して聞き返してきた。
声が少し遠かったので通話が切られる直前だったのだろう。
切られなくてよかったと思う、切られたら折り返しの電話も代えそうになかったからだ。

「あのさ・・・・・・私は用があるのよ」

『そ、そうなのか?』

「うん。直接じゃ恥ずかしいんだけど」

実際かなり恥ずかしい。
今までの自分を壊すのと同じくらいにだ。

『あ、逢ってじゃ駄目なのか?』

逢って話したいに決まってんじゃない、その言葉が喉からでかかったが
それを飲み込んで話を続ける。

「逢ったら多分言えない、と思う」

『そっか・・・・・・』

落胆した声を出す上条。
その声がさびしげで美琴は心が締め付けられたが、自分の『頼み』は今の自分では逢って言うのは無理だ。

(私も十分意気地なしじゃない)

昨日上条に言った言葉が自分にも当てはまってしまい、少しだけ落胆する。
だがこれ以上引っ張るわけにもいかない。
まずは自分の頼みを上条に言わなければならない。

「うん・・・・・用って言うのは頼み事っていうかお願いなんだけど」

『お、おう、なんだ?』

電話越しの上条も緊張しているようで声は上ずっている。
美琴は一度つばを飲み込み深呼吸した。

「い、いうけど良い?」

『上条さんに出来ることならば、なんでもどうぞ』

―――――ならお言葉に甘えるとしよう。








「――――――当麻って呼んで良い?」

862とある未来の・・・(12):2010/04/29(木) 00:28:01 ID:dQiP1xmQ






――――今なんと言ったでしょうか?

そう聞き返したと思うがちゃんと伝わったかどうか分からない。
電話越しの美琴からは返事が返ってこない。

「み・・・・・・御坂さん?あの、なんと?」

『・・・・・・当麻』

名前で呼ばれて一気に体が熱くなる。
胸が締め付けられ、手はわけも分からないまま動いている。

「は、はい!」

『名前で呼んじゃダメ、かな・・・・・・』

―――――嬉しすぎるんですが喜びをうまく表現できません

「い、いいですとも」

『ほ、ホントに?』

少し不安げな声で聞き返してくるが、上条は嬉しくて
どちらかといえば舞い上がってしまっているので答えはどうしても単調になってしまう。
美琴も美琴で言ってからだいぶテンパッているようで二人の間で
しばらく「本当に?」「はいどうぞ」「ホントのホントに?」「はい、どうぞどうぞ」という
問答と呼べない会話が続いた。

「み、御坂・・・・・・じゃぁ、俺からもいいか?」

上条はもうこの問答はしたくないと思い、自分も美琴に頼みをすることにした。

『な、なに?』

緊張した美琴の声が返ってくる。

――――――お返しだこの野郎

「お前が名前で呼ぶなら『美琴』ってお前の事呼ぶことにする」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

長い沈黙が続く。
上条はダメか?と思ったがそうではないらしい。

『ふにゃぁ・・・・・・』

「み、御坂!?」

電話越しなので状況は分からないが、気絶一歩手前まで来たらしい。
ビリビリといった電撃の音は聞こえないので漏電の心配は無いようだが
その後何度か呼んでやっと美琴は現実に帰ってきた。

「・・・・・・で?いいのか?」

『いい、呼んで』

―――――――――よっしゃああああああああああ!

喧嘩で勝った時にもした事のないような本日二度目のガッツポーズをかます上条。
姿が見られたら間違いなくむちゃくちゃ恥ずかしい格好だが
上条の不幸属性はそこで発生する事はなく、誰も近くを通りかかったりはしなかった。

『・・・・・・ねぇ当麻』

喜びの舞をしていると不意に声をかけられた。
美琴の声なので喜びの舞は更に身振りが大きくなっていく。

「なんだ?」

『呼んでみただけ』

イタズラっぽい声を美琴はだす。
喜びの舞が嬉々とした異様な動きへと変わりだす。

「・・・・・・み、美琴」

動いているせいか、それとも緊張のせいかは分からないが
美琴と違ってすこしどもってしまう上条。

『な、何?』

緊張が伝染したため、美琴も落ち着きは無い。

「よん、呼んでみただけだ」

『そっか・・・・・・エヘヘ』

――――――――むちゃくちゃ可愛いんですけどぉ!

今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが今目の前に美琴はいない。
それが残念で仕方なく嬉々とした異様な動きは終息した。

863とある未来の・・・(13):2010/04/29(木) 00:28:32 ID:dQiP1xmQ
その後他愛のない話をしたりして時間を過ごし
電話を切ったのときには時刻は三時半になっていた。

(美琴・・・・・・か)

すでに電話はしていなかったが切ってからも何度も彼女の名前を繰り返していた。

「美琴・・・・・・」

今ここに美琴がいたら迷うことなく美琴を抱きしめていただろう。
だが、美琴はここにいない・・・・・・それだけで上条は心が苦しかった。

「・・・・・・さて、そろそろ部屋に―――――て、うぉおおおお!!?」

上条が叫び声を挙げた理由は簡単だ。
ベランダから落ちたとかそんな命に関わる事ではない。
部屋に戻ろうとしたら窓に息子と娘が張り付いていたからだ。

「ふっふっふ・・・・・・親父見てたぞ?」

当瑠がガラララと窓を開けて上条を部屋の中に引っ張った。
体は難なく動いてしまい、抵抗もあまり出来ないまま部屋に入れられた。
窓に張り付いていたもう一人、美春はニヤニヤと上条を見下ろしている。

「パパ?だれとおはなししてたの?」

無邪気そうに見える笑顔だが実際はそんな事は全くない悪魔の笑顔だ。
どうしてそんな顔が五歳児の美春に出来るかは謎だが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
美琴と話している事が知れれば何を言われるか・・・・・・想像するのは簡単だ。

「と、友達とだ」

差し当たりのない関係の人間と話している事にする。
だが、当瑠にはそんな嘘は通用しないらしく、ニヤニヤと笑う表情は一層歪んだ。

「へぇ・・・・・・母さんは『友達』かぁ・・・・・・」

「――――違う!美琴は・・・・・・ぁ!」

勢いで鎌をかけられたのにも気づかないで言ってしまい、嘘はすぐにばれる。
当瑠は上条が名前で呼んだ事も見逃さなかった。

「ほう、名前で呼びましたな・・・・・・なるほどなるほど」

「うぐっ!く・・・・・・」

言われるとかなり恥ずかしいが否定もする事が出来ない。
誰かに助けを求めようと思うと(全員が敵みたいなものだが)美詠がいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

美詠はもじもじとして顔も真っ赤なまま宙を見ていた。
ぶつぶつと小声で「うれしくなんかない、うれしくなんかない」と呪文のように唱えている。
上条にそれは途切れ途切れにしか聞こえなかったが、仕草から見て助けにならないのは明らかだ。
上条は徐々に当瑠と美春に詰め寄られていく。

「さぁ、何を話していたのか?」

当瑠が一歩上条を壁際に追いやっていく。

「ぜーんぶきかせてね」

ニコッとこれが笑顔だ、みんなこういう風に笑えと言われるくらいの笑顔を美春はする。
上条はそんな模範的な笑顔(ただ悪意しかその奥には秘められていないが)を見て
ただ顔を引き攣らせ

「ふ・・・・・・不幸だーーーーーーー!」

いつものように口癖を言ってしまった。

864とある未来の・・・(14):2010/04/29(木) 00:29:03 ID:dQiP1xmQ






美琴はベッドの上で一人悶えていた。
――――別にいかがわしいことをしているわけではなく
自分の身長ほどもあるぬいぐるみを抱きしめてベッドの上でもじもじとしていた。

(ちゃんと言えた・・・・・・お願いできた!)

自分を本当に褒めてあげたいぐらいだ。
今まで素直にお願いだとか頼みごとをした事のない美琴は言えた事の嬉しさで
満足げな顔をしている。

(名前で呼んでくれたし・・・・・・嬉しい)

それもかなり嬉しくあった。
電話で名前を呼ばれたときは意識が本当に飛びそうになったが
しっかり意識を持つ事が出来、踏みとどまれた。

(あー、もう!何にやけてんのよ!名前で呼んだだけだじゃない!)

恥ずかしくてやっぱり何度も通話中に意識が飛びそうになったりしたし
今は落ち着いたが、終って話した事を思い出すと意識しなくても
口元が上がっていってしまい自然と笑顔になってしまっていた。

(――――当麻)

心の中で好きな人の名前を呟く。
やっと言えた名前、とても小さいけど大事な一歩だ。

(―――当麻、好きだよ)

ただ、通話では想いを伝える事は出来なかった。
そこだけが今日は残念だった。

(当麻・・・・・・)

もう一度心の中で呟く。
顔が少しずつ赤くなっていくのがわかる。

(――――私も声が聞けて嬉しかったよ?)

逢えなくてもどかしかった。
美琴は上条にそう言えなくてそれも残念だった。
通話を切ったときには隣人や寮監が何事かと部屋に様子を見に来るくらい叫んでしまった。
凄く恥ずかしかったし、その後の寮監の説教などは耳に入らなかった。

(明日、逢えるかな?)

電話では約束しなかったが、明日は逢えるだろうかと考える。
ギュッとぬいぐるみを抱きしめなおし、またもじもじとし始める。

明日は逢いたい、逢わなければいけない、そんな予感がしていた。

865とある未来の・・・(15):2010/04/29(木) 00:29:26 ID:dQiP1xmQ




日はもう完全に沈んでおり夕飯時となっている。
そんな中で上条と子供たちは美詠の作った料理を食べていた。
料理はカレーで、大きめに切られたジャガイモやそのほかの野菜類が
おいしそうに湯気を立てている。

「・・・・・・本当なのか?」

そんな中で上条の表情は険しかった。
場の雰囲気、というよりは食事中にする表情ではない。
別に味が合わないとか、猫舌だからでもない。
カレーはおいしいし料理に関しては全く文句は無い。
だが上条の表情が優れないのはある事実を告げられたからだ。

「あぁ、本当だよ」

当瑠がカチャカチャと音を立て、カレーを食べながら答える。
当瑠の表情はいつもどおりだが、ふざけた様子はなく真剣だった。

「―――――明日、未来に帰る」

上条は少し悲しそうに表情を崩す。
改めて彼等が未来の人間である事を思い出す。

「確かなんだよな・・・・・・」

上条に元気は無い、もしかしたら間違いでは無いか?と淡い期待を抱いている。
だが当瑠はポケットから携帯のようなものをとりだし画面を数秒見る。
それは、時空の歪みを計算する機械らしく、ほとんど計算に間違いは無いということだった。

「あぁ、明日は確実に時空の歪みが出る日だな」

「―――そうか・・・・・・」

事実は変わることなく、上条は肩を落とす。
もともと今の学園都市には時間移動のできる能力者は存在しない。
だからこそ、計算の間違いを期待したわけだが、未来では希少とはいえ
すでに存在している能力だ、学園都市がそんな能力を放り出すわけがないし
むしろかなり力を入れて研究をするだろう。
ほぼ100パーセント当瑠の言っている事は正確だ。

「・・・・・・だからさ」

「――――?」

何かあるのだろうか。
当瑠は無邪気にカレーを食べている美春を見たまま続ける。

「明日は、あの子と・・・・・・美春と母さんと親父の三人で一緒にいて欲しいんだ」

「それは――――」

上条が迷った声を出したせいか当瑠は申し訳なさそうに上条のほうを向く。

「母さんと一緒にいたいってのは分かる。
親父は俺たちよりも母さんの事が好きだってのは俺もよく分かってんだ。
だけど、美春も親父たちと一緒にいたいんだよ」

頼む、手を合わせて当瑠は言う。
その姿がごちそうさまに見えたのか話を聞いていなかった美春は「おにーちゃんもういいの?」と
キョトンとした表情となっていた。
この少年は分かった上で言っている。

「分かった・・・・・・明日は美春と一緒にいる」

上条自身は美春といても別に嫌な事は無い。
むしろ自分の娘の事はとても愛らしく思っているしその子が望んでいるのなら
自分と美琴が一緒にいただけで笑ってくれるなら自分のわがままなんてどうでもよかった。

「すまねぇ」

「あやまんなよ、みこ・・・・・・御坂もきっと美春と一緒なら嬉しいと思う」

「ありがとな、親父」

当瑠はその後上条とは話さずに美詠におかわりを頼み三杯も食べた。

(一緒にいたい、か)

それは小さな子なら当然親に望むことだ。
その気持ちは尊重するべきで大切な事でもある。

(親として・・・・・・か)

何をすればいいのだろう、考えはまとまりそうになかった。

866とある未来の・・・(16):2010/04/29(木) 00:29:49 ID:dQiP1xmQ






深夜、当瑠と美詠はテーブルに向かい合って座っていた。
ベッドには父である上条と娘の美春が仲良く眠っている。

「本当に明日帰っちゃうの?」

残念そうに言ったのは美詠だ。
当瑠は何度目か分からない溜息をつく。

「何度いや分かるんだよ?仕方ないだろ?これを逃したらいつになるか分からないんだ」

このやり取りも幾度となくしてきた。
美詠としてはまだこの時代にいたいのだろう。
理由は分からないがこの場所を気に入ったのか、それとも今の自分の『立ち位置』を離れたくないのかの
どちらかだと当瑠は推測している。

「美春ちゃんもさ、もっといたいと思うんだけど?」

「んな事は分かってんだよ・・・・・・けどいつまでも迷惑をかけるわけにはいかねぇ
これ以上ここにいると『時間の流れ』を捻じ曲げちまうんだよ」

『時間の流れ』、捻じ曲がることがあれば未来が変わってしまう。
当瑠たちがこの時代にいる時点でかなりの捩れが生じているが
必要以上に関わらなければ捩れは修復される。

「捩れが自然に修復されるのは最高で一週間まで・・・・・・それを超えたら
捩れは捩れのまま進んでいって、未来は変わっちまう」

未来が変われば当瑠たちの存在が消える可能性もある。
存在が消えるという事は上条と美琴が結ばれない未来が出来てしまうことになる。

「どうして好き合ってる二人が俺たちのわがままで引き離されなきゃいけないんだよ。
ここに来た時に決めたことじゃねぇか、親父と母さんを幸せなままにする
離れることなく、一緒に入れる未来のまま帰るって、決めただろ?」

「・・・・・・そうだったわね。ごめん、勝手なこといって」

美詠が頭を下げる。
当瑠はそんな風に素直に頭を下げる姿が珍しくて慌ててしまう。

「あ、あやまんなよ。俺も無理言ってお前を連れてきちまったし
わがままの一つや二つ聞いてやんねぇといけないしさ・・・・・・」

その言葉で少し楽になったのか美詠は顔を上げたが表情は不安げだった。

「当麻さんと美琴さん・・・・・・ちゃんと面倒見れるかな?」

面倒を見るというのは勿論美春のことだ。
当瑠と美詠は多少慣れているが、まだ親になっていない上条と美琴はきちんと見れるのか
まさか事故にあわせたりはしないだろうが心配は心配だった。

「大丈夫だと思う、二人ともしっかり見てくれるさ」

そうだといいけどね、と美詠は言って、今度は顔を少し俯けた。

「つーかさ、私今日どこで寝れば良いわけ?」

昨日まで美春と一緒に寝ていたのは美詠だったので
今日は上条にそのポジションを取られてしまい寝る場所がない。
いや、あるにはあるのだが・・・・・・

「・・・・・・俺の布団で寝る?」

聞いた途端美詠の顔は一気に真っ赤になる。

「な・・・・・・ななななな!何言ってんの!?」

「や、やっぱ無理だよな?嫌だよなぁ」

じゃぁ俺は風呂場で寝るかと上条が寝ていた寝ていた場所まで移動しようとすると
突然服の裾を掴まれた。

「い・・・・・・嫌とはいってないでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

かぁっとさらに顔を赤くした美詠がここから離すまいと力強く握っていた。

「ね、寝てもいいって言ってんのよ!馬鹿!」

「お前・・・・・・自分で何言ってるか分かってんのかよ」

当瑠は曲がりなりにも男性だ。
しかも思春期の真っ最中の高校生であるので一緒に女の子と寝ると言うのは
精神的にも肉体的にもかなり負担がかかってしまうのだ。
――――ただ、親からはなにも不自然な目で見られる事は今は無いが。

「ほ、ほら!入んなさいよ!」

当瑠が考えているうちに美詠は布団の中にはいって当瑠を引っ張っている。

「え・・・・・・本気?」

「ただし!へんな事したら承知しないわよ!
マ、マァアンタニナラベツニナニサレテモ・・・・・・ア、デモチョットハヤスギカナ?」

「あのー、大丈夫ですかー?私めの意見は無視ですか?そうですか」

結局当瑠は美詠と同じ布団で寝ることになり暫く全く寝れない状況が
続いてしまったが、お互いがお互いを意識しすぎたため石の様に固まったまま夜明け来ることになる。

―――――未来からの訪問者によって動き出した物語は
                 終着点を迎えようとしていた――――――

867auau:2010/04/29(木) 00:31:54 ID:dQiP1xmQ
今回は短めに素早く。
というわけで第四章はこれでおわりです。
次は最終章になるのか?つーところで
ちまちまと進めていきたいと思います。
では〜

868ION:2010/04/29(木) 00:39:53 ID:vFZWI5nU
auauさん、GJ!!

上条さんはやっぱりいいですね。世代を超えてカッコよさが伝わる。
美琴のツンデレ体質もいいですね。かわいいです。ニヤニヤしてます

869■■■■:2010/04/29(木) 00:50:33 ID:NSHGdWtE
>>840
GJです!
素直じゃない美琴が、美琴らしいですw

>>847
GJです!
箱に願い事なんてかわいいですね
上条さんも、願い事を入れるなんて素敵w

>>867
美琴に逢いたがっている上条さんが良かったです
萌え死ぬかと思いました、GJです!
子供たちにも、何か悩みがありそうですね

870■■■■:2010/04/29(木) 01:07:18 ID:FHsWRVgc
>>867
GJです
ところで当瑠と美詠は本当に兄弟なんですかね?

871■■■■:2010/04/29(木) 01:07:29 ID:FHsWRVgc
>>867
GJです
ところで当瑠と美詠は本当に兄弟なんですかね?

872■■■■:2010/04/29(木) 01:43:42 ID:mKixJI5A
近親相姦だとっ・・・

873■■■■:2010/04/29(木) 01:53:28 ID:NSHGdWtE
>>871
それは職人さんが最終章を書けばわかるかと
個人的には○○は××××の△△だと妄想していますw

874■■■■:2010/04/29(木) 08:50:16 ID:XCvzxjW.
>>873
ああそうか、あっちの可能性もあるんだよなwwww

875■■■■:2010/04/29(木) 12:24:36 ID:o6IHWlv2
あっちの可能性って?

876■■■■:2010/04/29(木) 12:27:11 ID:5LY4zgQA
二人 は 別の次元 の 住人 ですね分かります

877コッカラ:2010/04/29(木) 17:06:52 ID:1qgJ0Xns
どうもコッカラです。
禁書再構成って最初の方は上琴分全然ないんだなーって今になって気付きましたorz
けど頑張って書き上げてみたいと思います!

>>847
GJ!
願い事を箱に詰めるなんて可愛すぎです!
だけど研究員全員虐殺って……コワスギルヨミコト…

>>867
GJ!!桜並木さんのもいいですがこちらの未来ネタも素晴らしい!!
いよいよクライマックスですか。楽しみにしています!!


小ネタ一つ投下します。誰もいなければすぐに始めます

878小ネタ そんなことは当然です:2010/04/29(木) 17:10:02 ID:1qgJ0Xns

美琴「ねえ、当麻?」
当麻「なんだ、美琴?やけにニヤついて?」
美琴「当麻は私と結婚するのよね?」
当麻「当たり前だろ?告白して、デートして、キスも20回ぐらいして。
あとは美琴が大きくなって、俺がプロポーズすれば俺たちは晴れて同姓になるわけだ」
美琴「じゃあさ、子供のこととか考えたことある?」
当麻「ぶっふぉ!?こ、子供って気が早すぎるんじゃねえか!?まだゴムの準備もしてないし…」
美琴「一体何の準備よ!そういうんじゃなくて、将来生まれる子供の名前とか性格とかのことよ!」
当麻「あー、そういうこと…でもいきなり言われても思いつかないぞ。美琴はどういう風に考えたんだ?」
美琴「ふぇっ、私!?そーねえ…やっぱり女の子でしょ!名前は当麻と美琴から漢字一文字ずつとって『麻琴』ちゃん!!」
当麻「安直な考えだけどセンスはいいな。で、それで?」
美琴「性格は私に似て明るくて素直でそれでいてお淑やかな感じで」
当麻「素直とお淑やかさは余計だけどな。で、それで?」
美琴「…成績は優秀で運動神経もよくて、なにより他の子よりも可愛い子であったらなぁー」
当麻「そうだよなぁー。で、それで?」
美琴「………アンタさ、まじめに考えてるの?さっきから同じように返事してるだけじゃない?」
当麻「え……あ、あー、子供のことだろ?俺も今思いついたぜ」
美琴「ホント?じゃあどんな子ならいいの?」
当麻「そりゃあ、幸せになってもらえればそれで十分だろ?やっぱり親は子供のことが一番心配だからなー」
美琴「………………」
当麻「……あれ、美琴?なんで急に黙ってしまうんでせうか?しかもなんで頭に青白い電撃をビリビリいわせてるんでせうか!?」
美琴「アンタって奴は〜〜〜!!アンタがそんなこと言うとツッコミ辛くなるでしょうが!!もっとまじめに考えなさいよ、この馬鹿ぁ〜〜!!!」
当麻「ぎゃああぁぁぁ〜〜!!なんでまじめに考えたのにー!?もう、不幸だああぁぁぁ〜〜〜!!!」


その頃職員室―――
小萌「だから上条ちゃん、進路希望の欄に『しあわせになれればなんでもいいです』なんて書かないでください…
…先生の授業が楽しくないのかと思うと悲しくなっちゃいますよ……」

879コッカラ:2010/04/29(木) 17:15:28 ID:1qgJ0Xns
以上になります
上条さんはどういう基準で幸せだと感じるようになるんですかね?
私なんか原作と同じ境遇なら十分幸せだと思うのですが…

880:2010/04/29(木) 18:47:26 ID:nyR.9Yzw
GWの初日を飾るぞー!
というわけで【side by side】を五分後に投下します。
消費レスは10の予定。

今回はシリアス!だけどいちゃいちゃ!

881【side by side】ー分岐点ー(24):2010/04/29(木) 18:53:56 ID:nyR.9Yzw
同日12時21分、空港の売店

「だから、私は気にしないからこんな時くらいは素直に奢られなさい!貧乏なら貧乏らしくしてなさいよ!!」
「だからって乗る前の飯で一食でこの値段の弁当はねぇだろ!こんな高いもん食ったら俺がダメになっちまうじゃねぇか!」

今空港の搭乗口に近くにある弁当を売っている店で、二人は大声で言い争いをしていた。
二人の周りを通る通行人は、空港の辺り一帯に響くほどの声量で言い争いをしている二人をチラチラ見ていたりするのだが、今の二人にとってはそんなことは些細なこと。
その言い争いの原因は昼食に何を食べるか。
一般常識に考えれば平日であること、学生の帰省をするにしても微妙な時期であることがあってか、利用客は少なく、搭乗手続きは思いの外スムーズに済んだ。
上条はあとは飛行機に乗り込めばいいだけ。
そして乗る飛行機は土御門達が用意した超音速旅客機に乗るため、機内では恐らく食事はできない。
だが時間も時間なため、美琴は空き時間を利用してお昼を食べようと提案したのだが…

「たかが五千円で何言ってんのよ。ホットドックより少し高いだけじゃない。ってか私が出すんだからアンタには関係ないでしょ?」
「お前の金銭感覚と一般市民の金銭感覚を一緒にすんな!それとお前の言うホットドックを比較対象にするな!最近やっと直ってきたと思ってたが、全然だな!!」

上条の言うとおり、度重なるデートによって、最近は彼女の金銭感覚は庶民のそれになってきたかに思っていた。
しかし、それは上条の金銭感覚に美琴が合わせていただけで、根本的に直っていたわけではなかった。
ならここでもそれに合わせてもいいのではと思うかもしれないが、しばらく会えなくなるのだから最後で貧相な食事は嫌、が彼女の言い分だ。

「埒があかないわね。時間もあるんだから、いちいち反論してこないでよ」
「……全面的にお前に問題があると思うのは俺の気のせいなのか!?……じゃあせめて!せめて、あれくらいにしてくれませんか?」
「あれって……二千円?だから…」
「ホットドックと一緒なんて言うなよ?一般市民にはこれでもか高いのですよ!」
「うっ…わかったわよ、じゃああれでいいわよ。……すいませーん、これ二つください」

本心を言うと、美琴は二千円では全然納得はしていないのだが、ここで反論をしても同じやりとりが延々と続くだけ。
仕方ないと、美琴は渋々その店の店主に注文をした。
そして今まで二人の会話を一部始終聞いていたその店の店主としては、店の前で口喧嘩をされては他の客が寄り付かないと早く決めてくれと願っており、『やっとですか、やれやれ』とボソッと呟いた後に返事をして、注文された弁当を取り出した。

882【side by side】ー分岐点ー(25):2010/04/29(木) 18:54:39 ID:nyR.9Yzw
同日12時48分、空港ロビー

二人は長い長い口論の末に購入した弁当を食べ終えて、ロビーの壁際で時間が過ぎるのを立ちながら待っていた。
空港の中を散策して時間をつぶすという手もあったが、流石にそこまでしている時間はない。
弁当を食べ終えてすぐは、その弁当についての話で盛り上がっていたのだが、それについて一通り話終えると、二人の間にまた沈黙の時間が訪れていた。
時間まであと20分。
乗り込む時間を考慮するとあと15分といったところか。
とにかく残された時間は着々と少なくなってゆく。
だが、二人にはお互いにやりたいことがある
上条が飛行機に乗り込む前に。
やるなら早くした方がいいことはわかっているのだが、お互いになかなか口が開かない。
この雰囲気が、空気が、二人をそうさせている。
片方が黙れば片方も黙ってしまう。
悪循環。

(どうしよう…)
(どうするか…)
(なんでそんな顔して黙ってるのよ…)
(なんでいつもみたいに話さないんだよ…)
((もういっそ自分から…))
「ねぇ…」「なぁ…」
「「えっ?」」

二人にはわからないが、彼らは今までほぼ同じことを考えていた。
同様にやりたいことがあり、時間が無いことを焦っていた。
そして同様に機会をうかがっていた。
だから話が進まず、会話が滞っていたのだ。
二人は枝葉の部分は全く異なるように見えても、根の部分は本当に似ている。
似ているからこそここまで仲良くなれたし、今回のイギリス行きの件に関しても理解し合える。
しかし、似すぎることが逆に裏目にでることだってある。
普段は気にすることは全く無いことでも、こういう時は少し、困る。

「先、言えよ」
「いや、アンタが先言いなさいよ」
「お前の方が少し早かった、だから言えよ」
「いいや、アンタの方が早かった!だから早く言いなさいよ!」

お互いがお互いを睨みあう。
端から見れば馬鹿馬鹿しく、子どもみたいな言い争いだ。
だけどそんな子どもみたいな言い争いでも、この二人はそんなことは気にしない。
似ているからこそ、こういう時だってある。

883【side by side】ー分岐点ー(26):2010/04/29(木) 18:55:10 ID:nyR.9Yzw
「はぁ……時間無いのにこんなことで言い争ってる場合じゃねぇな。仕方ないから俺から言うぞ」

いつもならもっと長い間いがみ合いが続いたかもしれない。
だが結局時間が迫っていることもあってか、早々に上条が折れ、口を開いた。

「ぅ、ぅん…おねがぃ…」
「時間ももうそんなにないから手短に言うぞ。俺からの話ってのはこれだ」

そう言って上条は、自分のポケットからあるものを二つ取り出した。
それはバレンタインの日に買ったネックレスについている板状ものと同じくらいのサイズのもので、色も材質もそれと同じのものだ。

「ぇっと…何これ?」
「ほらよく見てみろよ。なんか書いてあるだろ?」

言われるがままに美琴は上条の手に乗っている二つの板状のものをまじましと見る。
するとそこには『touma kamijo』と彫られたものと『mikoto misaka』と彫られたものの二種類があった。

「これって…名前、よね?私達の…」
「あぁ、これは昨日美琴が家に来る前に、このネックレスを買ったアクセサリーショップで作ってもらったものなんだよ。色と材質を揃えたかったからな」

美琴はよくよく思い出してみると、そういえばあの店はそういうサービスをやっていた。
あの時はネックレスの方に気が行き過ぎて、そっちは別にいいと思っていたのだ。
また機会があればとも考えてもいたが、それは上条との幸せすぎる日々のおかげで今の今まですっかり忘れていた。
しかしなんでまた彼がわざわざこんなことを?
美琴はそれについての疑問に尽きなかったが、彼女がその答えにたどり着く前に、上条の口が開く。

「まぁ色とサイズと材質を揃えたのはわかると思うけど、このネックレスにつけれるようにするためだ」

上条の持つネームプレートは先端部に取ってのようなものがついており、二人がもつネックレスにつけれる仕組みになっている。
それを狙っていることは美琴もなんとなくわかっていた。
だがもしそうするなら二人個人の名前をそれぞれに彫るのではなく、それぞれに二人の名前を彫ればいい。
それこそ『mikoto touma』とかの方がよっぽどそれらしい。
美琴はそこを不思議に思っていた。
まさか彼がそれを思いつかなかったなんてことはないと思いたい。

「んで、なんでこの二つに俺らのそれぞれの名前を彫ったかと言うとだな……俺がイギリスに行って、俺らが互いに離れていても互いを思いだすことができるからだ」
「……?」

884【side by side】ー分岐点ー(27):2010/04/29(木) 18:55:35 ID:nyR.9Yzw
なんで?と美琴は思った。
どうして自分の名前が刻まれたネームプレートを持っていたら互いを想うことができるのか。
彼からのプレゼントという風に見ればできなくはないが、やはり無理がある気がする。

「というわけで…ほい、お前の分」
「ぁ、ありがとう……ってこれ私の名前じゃないわよ」

上条が美琴に渡したネームプレートは美琴の名前が彫られている方ではなく、上条の名前が彫られている方だった。

「いや、これで合ってるよ。俺がお前の名前のを、お前が俺の名前のを持ってりゃ、互いのことをこれを見る度に思いだせるだろ?始めは俺らの名前を彫ってもらうことを考えてたんだが、こっちの方がいいような気がしてな。こういう形にしてもらったんだ」
「あ…」

つまりは、そういうことだった。
互いを思い出すとはそういうこと。
上条は言葉を選べずに言えなかったのか、それとも恥ずかしいから言えなかったのかはわからないが、つまり恐らく上条はこれを自分と思って持っておけ、みたいなことを言いたいのだろう。
確かにそう考えるなら、こっちの方がいいかもしれない。
彼も自分の名前が刻まれたものを身につければ、悪い虫に変にアプローチされない。
言うなればペットにつける首輪のようなものだ。
首輪をつけておけば、誰かに持っていかれることはない。
……少なからずフラグは建てるかもしれないが。

「じゃ、じゃあコレ、当麻が私のにつけてよ。私も当麻のにつけるから」
「ん、わかった」

二人は身に付けていたネックレスを外して、互いにそれを交換する。
ネームプレートの取ってにネックレスの鎖を通すだけなので、交換してすぐに二人とも付け終えた。
そして、美琴がそれを上条に手渡ししようとすると、

「……ほら、付けてやるから後ろ向け?」
「えっ?」
「だから、付けてやるから後ろ向けって言ってんの」
「えっ、あっ、その……いいの?」
「いいも悪いも、お前はこういうこと好きじゃなかったか?だから言ってみたんだけど……ダメだったか?」
「だ、ダメじゃない…!」

そう言って美琴はすぐに後ろを向いた。
上条の発言は美琴にとってはとても意外なもの。
いつもの彼はそんな乙女心もわからずに、無神経な言葉を言ったりする。
だから彼に少しの違和感を感じ、戸惑ってしまった。
無論、こんな乙女心のわかる彼の方がいいに決まっているのだが、美琴にはとにかく意外だったのだ。
そして美琴の後ろの方から手がまわされ、新たに上条の名が刻まれたネームプレートをつけたネックレスは、美琴の首に掛けられた。

885【side by side】ー分岐点ー(28):2010/04/29(木) 18:56:07 ID:nyR.9Yzw
「ほい、付けたからもうこっち向いていいぞ」
「ぅ、ぅん…じゃあ私も、当麻に付けてあげる」
「ん、サンキュ」

彼もそう言ってすぐに後ろを向いた。
そして美琴も上条がしたのと同じようにネックレスをかけようとしたが、首に手を伸ばそうとしたところで手は止まる。
あまり近くでまじまじと見たことのない彼の背中に意識がそれたのだ。
上条の背中は、美琴が見慣れている常盤台中学の子や女友達のそれとは異なり、大きく、ガッチリしていた。
もちろん男と女の差が大きいというのはある。
しかしそれはいつも様々な不幸や厄介事に見舞われ、かつては自分も追いかけまわした背中。
彼の今まで歩んできたものを物語っているようで、見えている以上に大きく、重たく感じた。

「美琴…?」
「っ!?」

後ろを向いていたはずの上条が、いつの間にか振り返り、美琴の顔を覗き込んでいた。

「あ、あれ…?」
「あれ?じゃねぇだろ。お前がいつまで経っても動かないから声かけたんだよ」
「そ、そっか…」
「まぁ大丈夫ならいいんだけどさ。いいのか?」
「……いいに決まってるでしょ…さっさと後ろ向きなさいよ」
「元はと言えばお前が…」

上条はそこからさらに何かを言おうと口を開いたが、美琴の視線を感じて言葉が紡がれることはなかった。
そして改めて後ろを向いた上条に美琴は首に手をまわし、自分の名前の刻まれたネームプレートをつけたネックレスを首にかけた。

「はい、つけたわよ」
「……あの、さ」
「何?」
「俺はあと10分くらいしたら此処を発つ。だからとは言わないけど、それまでは笑っててくれないか?そんな顔のお前を最後に出発したくない」

上条からお願いされたことは美琴もそうしたいと考えていたことだ。
彼女も別れ際には笑っていたいと思っていた。
彼女が考えるように、彼も同じことを考えているのかもしれない。

「ぅん…わかった…」

だから、その要望に応えようと、美琴は上条の目をしっかりと見据えて力強く微笑んだ。
彼もそれに応えようとしたのか、返事をするかのようにいつもの笑顔を美琴に向ける。
その笑顔を見たら美琴は明るくなれた気がした。
彼の笑顔は美琴にとっては太陽のようなものだ。
彼が笑ってくれれば、美琴も明るくなれるしいつもみたいに振る舞える。
あまり笑わない時は、何故だか気分は暗くなるし思考もどこか前向きにはなれない。

886【side by side】ー分岐点ー(29):2010/04/29(木) 18:56:42 ID:nyR.9Yzw
(でも、太陽がなかったら人は生きていけないわよね)

ほぼ全ての生命にとって必要不可欠と言える太陽の光。
それが無くなった場合、どうなるか。
結果は目に見えている。
美琴にとっての上条は決してそれと同義というわけではない。
そんな極端な結果にはまずならないだろう。
だが今まで通りに振る舞えるかどうかを問われると、答えは否だろう。
もう全てが彼がいなかった頃のようにいかない。
彼の温かさに触れてしまったが故に、知ってしまったが故に。
美琴はロビーの時計を横目でチラッと確認する。
今の時間は12時58分。
残りの時間は少ない。
気づけば美琴の体は勝手に動いていた。
美琴は彼女の隣に立っている上条の体に手をまわし、強く、強く抱きしめた。

「ちょ、おま!」
「ちょっと黙って」

今彼らがいる場所は先ほどから変わらず空港のロビー。
もちろん彼らがいるのはロビーの壁際でしかも空いているとは言え、人通りはそれなりにあり、同じく飛行機の出発を待っているし人もいる。
そんな中、突然の美琴の行動に上条は戸惑っていた。
だが今戸惑う上条とは対照的に、いつも戸惑うはずの美琴は珍しく落ち着いていた。
この行動は美琴自身の意思は関与していない。
正確に言えば本能的な行動と言える。
それなのに彼女が落ち着いていられたのは、やりたいこととやらなければならないことが明確だったからかもしれない。

「さっきさ、私何か言おうとしたじゃない?」
「あ、あぁ…そういやあれなんだったんだ?」
「私ね、当麻に一つ言ってないことって言うか、隠してたことがあったの。それを言おうと思って」
「隠してたこと?……まさか何か事件が!?」
「ううん、違うの、そんな大事じゃないから心配しないで」

大事ではない、というのは上条にとってであり、これから美琴が言おうとしていることは彼女にとっては十分大事だ。
それを物語るように美琴は抱きしめる力をさらに強くし、顔を彼の胸に埋める。

「……2月14日、バレンタインに買ったさっきのネックレスのことなんだけど…ほら、これに書かれてる文字の意味をまだ言ってないじゃない?だから、それを今言おうかなと…」
「……?なんでまた今そんなことを?確かにまだ聞いてないし、調べようにも何語かもわからなくて、調べることもできなかったから困ってたけど…そんなに重要なことなのか?」
「ぅん…」

887【side by side】ー分岐点ー(30):2010/04/29(木) 18:57:32 ID:nyR.9Yzw
今の上条からは美琴の顔は見えない。
だが彼からもチラリと見える彼女の耳はすでに真っ赤で、彼女の顔も今どんな状態にあるかはなんとなく伺えた。
美琴自身も今はかつてないほどとはいかないかもしれないが、これまででも一、二を争えるほどに緊張していた。
顔が燃えるようにあつい。
潤っていたはずの唇はやたら乾く。
賑やかだったはずのロビーは何故だか静かに感じれて、まるで二人しかいないように錯覚する。
そのせいか心臓の鼓動はバクバクうるさい。
密着している彼にも聞こえるのではないかとさえ思う。
でも、密着している分、彼から伝わる彼の温もりは心地よい。
緊張の具合はひどいが不快ではない。

「……『Te amo todo el tiempo』これはポルトガル語よ、覚えときなさい」
「ほぉー、ポルトガル語かぁ。流石美琴センセーだな。んで意味はなんなんだ?」
「い、意味は…」

心なしか、また抱きしめる力はまた強まった。
これだけすると少し痛いくらいなんじゃないかとも美琴は思ったが、今の彼女にとってはそんなことは些細なこと。
こうでもしていないと、美琴は決意が鈍って言えなくなってしまいそうなのだ。
別に今無理して言う必要はどこにもない。
上条が帰って来てから、機をみて言うのも一つの手だ。
だが、美琴の中にその選択肢はなかった。
不思議と、今言うしかないように思えてならなかった。
チャンスは今しかないと…

「意味は……『あなたを一生愛し続けます』よ」
「…………へ?」
「……それだけじゃない、そのネックレスの色の白にも意味はあるわ」
「え…?えっ??」

立て続けに明かされる事実。
上条とて、美琴からの愛の言葉に全くの耐性がないわけではない。
それでも彼女から聞かされることは、上条の予想はるか斜め上をいっている。
そのせいか、彼は戸惑いの色を隠せない。

「純白はなんの混じり気もない色、そして何色にも染まらないことから、心変わりは絶対しませんっていう誓いを意味するの。ウェディングドレスの色が白いのはここからきてるのよ、知ってた?」
「いや…けど、それって…」

言い終えると、美琴は顔を少しあげて真上にある上条の顔を見る。
彼の顔は心なしか赤い。
恐らく彼もこれのこれらの意味が意味することに気づいたのだろう。

「つまりこれは全部ひっくるめると『あなたを一生愛し続け、心変わりは絶対しないという誓い』を意味するの……多分、当麻も思ってるかもしれないけど、これはもう、プロポーズと言えるレベルよね?」

上条は何も答えない。
軽く顔を赤く染め、美琴からの視線から目を逸らすだけ。

「でもね…」

『13時08分のイギリス行きの便にお乗りのお客様。まもなく出発いたしますので、まだ搭乗手続きを済ませていない方は急ぎ済ませ、○番ゲートから当便に乗車してください。繰り返します、……』

888【side by side】ー分岐点ー(31):2010/04/29(木) 18:58:06 ID:nyR.9Yzw
美琴の声を遮るかのように放送がロビー一帯に響いている。
それを聞いてか、少し前までゆったりと過ごして人も、ついさっきここに着いたであろう人も告げられたロビーへと駆けてゆく。

「でもね、私は中途半端な気持ちでこれを買うことを勧めたわけじゃない!」

しかし美琴はそれを聞いても意識はそちらにそらさず、上条を抱きしめる力は弱めない。
それどころか逆にまだ離さないと言わんばかりに力を強め、今なお続いている放送に負けぬように、美琴は声を張り上げて上条に語りかける。

「多分これを買った時は当麻の中にそんな考えはなかったと思う!その時は私、告白すらしてなかったしね…」

だけど、と美琴は続ける。
しっかりと、上条の目を見据えて

「今は…?今は、どう思ってるの?意味をちゃんと知っても、それをつけてくれる…?」

真剣で、迷いと不安も少なからずある目で、美琴は上条をの答えを待つ。
とても重い選択を上条に強いていると美琴は思う。
だがその答えは今後の生活にも影響を与えるだろう。
だからとは言わないけれど、真摯な答えは欲しかった。
それで今後の将来全てが決められるというわけではないが、つけるの一言があるととても安心できる。

「……あぁ、つけてやるよ。そして誓ってやる。俺は、上条当麻は御坂美琴を一生かけて愛し続けるって、心変わりはしないって」
「…………本当に?」
「もしその誓いを破ったら俺がお前の本気の超電磁砲をノーガードで受けてやるさ。…その代わり、美琴もだぞ?もし破って他の男がいいって言うようなら俺が…」
「そんなつまんねー幻想ぶち殺してやる、でしょ?もう聞き飽きたわよ…」

美琴がそこでようやく抱擁を解き、悪戯っぽく微笑む。
口調こそ呆れているが、本心は決してそんなことはない。
実際美琴はあまりの嬉しさで泣きそうだった。
人が見ているとかそんなのは関係なく、とにかく彼にこの喜びを伝えたくて、抑え難い感情を彼に見せたくて。
今の彼女はその衝動を抑えるのに必死だった。
さっき言った言葉も、声が震えないかとても心配だった。
だが美琴は約束した。
別れ際までは笑うと。
それは彼女にとっては必ず守らなければならない約束。
今は例えどんな事情があろうとも、彼に泣き顔なんて見せてはいけない。

「じゃあそろそろゲートに行かなきゃ。いい加減遅れるわよ?」
「お前がこんな時間まで離さなかったから…」
「何か言った?」
「いえ、何も?」

二人はまた笑う。
別におかしいことなど何も起きていない。
二人のそれは今感じる幸せ故のもの…
上条は美琴の手を取りゲートへと向かう。
美琴はその彼の振り向きざまに、首に掛かる彼のネックレスを見た。

889【side by side】ー分岐点ー(32):2010/04/29(木) 18:58:39 ID:nyR.9Yzw
同日13時03分、○番ゲート

「じゃあ、またな」
「ぅん…絶対、帰ってきてね?怪我ならまだ許すけど、動かなくなって戻ってきたら承知しないんだから」
「善処します…」
「善処するだけじゃダメよ。ちゃんとやるべきことをやり遂げ、かつ無事に帰ることに全てを出しなさい」

美琴はペシっと上条のトレードマークであるツンツン頭を軽くぶつ。
そして上条は多少げっそりしたような顔を見せ、下を向く。

(―――ったく、何が私が約束を破ったらよ)

「美琴も、変に厄介事に首つっこみまくって怪我すんなよ?」
「私はアンタじゃないんだから限度はわきまえてるわよ。というか、何度も言うけど私は超能力者よ?そんな目になんてめったにないわよ」
「それくらいわかってるって。だから危なっかしいんだよ」

(―――何がわかってる、よ…全然わかってないじゃない)

「はぁ…とにかく本当の、ホンットに無茶だけはしないでよ」
「へぃへぃ」

上条は目を逸らし、気だるそうに美琴を軽くあしらう。
どうやら無茶をする気は満々のようだ。
その反応に美琴は軽い怒りを示し、彼女の体のまわりに軽くバチバチと電気をまとう。

(―――私がこうやって怒りたい時に本気で怒れるのも、素の私で接することができるのも)

「はいはい、ここには人がいっぱいいるんだから、ビリビリは止めような?もっと女の子らしくお淑やかにしてれば美琴はもっと可愛いんだから」

上条は最早マニュアル化している動作で、美琴の頭に右手をのせ、放電していた電気をかき消した。

「う、うっさい!アンタが怒らせるような態度をするから悪いんでしょうが!!」

(―――ちゃんと、能力の強度なんか関係なく普通の女の子として見てくれるのは…)

「悪かったって、謝るから機嫌直せよ。ほら、笑顔笑顔!」
「むーっ!!ひょっとあんひゃやめなひゃい(ちょっとアンタ止めなさい)!!」

上条は笑顔にするという名目で美琴の頬をつねって、遊んでいる。
美琴がこんな風に遊ばれたのは今までで初めてかもしれない

(―――アンタだけなんだから…)

「ぷははっ!なんだ意外に面白いなこれ。帰ったらまたしてやるよ…ククッ」
「ぷはっ…に、二度とすんじゃないわよ!!」

(―――だから、私は他の男のとこなんか絶対いかない。それに、私は…)

それだけ言うと、美琴は明らかに不機嫌な顔で、ぷいっとそっぽを向いた。

890【side by side】ー分岐点ー(33):2010/04/29(木) 18:59:20 ID:nyR.9Yzw
「そんな不機嫌になんなよ、というかさっきの顔、なかなかに面白い顔してたぞ?」
「っ!!ば、馬鹿!!アンタなんかもう知らないわよ!!さっさと行っちゃいなさい!!」

そう言って美琴は上条を軽く突き飛ばし、後ろを向いた。
そして心にもないことを言ってしまったと、美琴は言った直後に後悔する。
だが、上条はそんなことが本心ではないことなんてお見通し、と言わんばかりに怒って背を向けている美琴に向かって微笑み、

「なぁ、美琴…」
「な、なにy…っ!?」

(―――ずっと、)

上条は名前を呼ばれて振り向いた美琴に、キスをした。
何度も言うが、周りにはもちろん大勢の人がいる。
だがそんなことはお構いなしに、最後の別れを惜しむように、10秒にも満たない程の間彼が彼女を求めた後、上条の唇は美琴から離れた。
そして上条は名残惜しそうに、先ほどまで触れ合っていた唇をなぞり、

「まぁさっき公衆の面前で抱きついてきたお返しってことで……それじゃあまたな!俺が帰るまで、達者で暮らせよ!!」

美琴が今まででもあまり見たことのないような満面の笑みを、しかし少し悪戯っぽい笑みを見せると、顔だけ美琴に向け、振り返って大声を出しながら走ってゲートを抜けた。

(―――ずっと、)

「こ、こんなとこであんなことするやつがあるかこの、馬鹿ぁ!!!!」

最後に一撃だけ美琴は電撃の槍を放つが、上条がそれを難なく打ち消すと、その姿は見えなくなった。

「はぁはぁ……本当に、馬鹿…結局、別れ際は笑えなかったじゃない…」

急に目の前から上条がいなくなり、寂寥感に駆られるが、長くは続かない。
彼はちゃんと別れる前に、自分の願った以上の最高の答えをくれた。
自分の願った以上のことをしてくれた。
それだけしてくれたのだから、満足感の方が大きい。
もちろん寂しくないなんてことはない。
だが今は、少なくとも今は満足なのだ。
美琴は首に掛けられた、彼に掛けられた彼のネームプレート付きの"誓い"を握りしめ、

「またね、当麻…」

誰に言うでもなく、そう呟いた。
上条はもう美琴の目の前にはいない。
しかし上条は"ここ"にちゃんといる。
だから寂しいけど、寂しくはない。
場所という制約があっても、この想いは、彼の想いは、常に彼の場所にあり、"ここ"にもあるから。
だけどそのうち場所だって一緒になれると信じてる。
きっといつまでもこんな状態は続きはしないと信じてる。
だって―――



「―――当麻が、約束したもんね」
(―――当麻が、大好きなんだから!!)

今彼らを挟む距離はとても広がった。
しかし、彼らの"距離"はとても狭まった。

891:2010/04/29(木) 19:00:32 ID:nyR.9Yzw
以上です。
一応これで―分岐点―は完結です。
やっとネックレスの件を回収できた…
その件については大変長らくお待たせしました。
ちなみに次が【side by side】の最終章です。

では失礼します。
ありがとうございました。
少しでも皆様に楽しんでもらえたら幸いです。
感想等あれば私が喜びますw

892■■■■:2010/04/29(木) 19:10:30 ID:TCSSozyU
>>891
いいね、あなたロマンチストだね

893■■■■:2010/04/29(木) 19:11:49 ID:jYTgq3vY
>>891
bad endだと許しませんとのことよ!期待しています。

894■■■■:2010/04/29(木) 19:17:24 ID:/Jpoa0cc
蒼さんGJ!
搭乗時刻が迫る中での二人のやり取りに、
手に汗握る気持ちで読み入ってしまいました。
この二人には幸せになって欲しい!と切に思います。

895■■■■:2010/04/29(木) 19:44:34 ID:KmW4ie9U
>>891
ネックレスの伏線が最高です!GJ!
美琴がかなり可愛いですね。続きを楽しみにしています!

896■■■■:2010/04/29(木) 20:25:50 ID:iIcSM6/k
<<891
素直にGJを送りたい

最終章期待しています

897■■■■:2010/04/29(木) 21:04:18 ID:NSHGdWtE
>>891
GJです!
続きを期待しています!

898auau:2010/04/29(木) 21:41:24 ID:dQiP1xmQ
どーもー感想ありがとうございます!
感想返しをしていこうと思います。

>>IONさん
当瑠は上条さんの血を直で受けているキャラですんで
似せるのが大変ですww
美琴の魅力にはツンデレもありますよね、今回はそれも出せてよかったです

>>869
萌え死に!!?ありがとうございます。
子供たちにはまだまだ活躍してもらいますよ!

>>871
GJありがとうございます。
その質問にはノーコメントで〜ww

>>872
落ち着くんだ!

>>873->>876
おちつけええええ!

>>コッカラさん
素晴らしい!!?滅相もないです!
クライマックス、頑張ります!

色々予想されてますけどあんまり凄いネタは容易出来てないですよ
だけど、力の限り頑張りますね!
感想ありがとうございました!

899ほのラブ同盟:2010/04/29(木) 23:30:39 ID:c8YmvsQE
感想返しです!

>>796
御坂妹の魅力に共感していただけて嬉しいです!
他のミサカと共有するか、それとも御坂妹が独占するか…それはまた別のお話ということで。

>>809
そんな…なんだかベタ褒めされている気が…!!
ありがとうございます!今後もそのご期待に応えられるように精進します!

>>812
ビリビリ呼び出し法は、なんだかピキーンと来ました。
実際に出来たら便利なのですが、学園都市全体では広すぎて無理ですね(汗


アミノ酸さん、IONさん、かぺらさん、auauさん、コッカラさん、蒼さん、
皆さま本当に読みやすくて情景が浮かぶ文章力、尊敬の限りです。
自分も皆さまに憧れて書き始めたので、まだまだSSが読めて幸せです。

そんなことを書き連ねながらお詫びを…。
今日中に続きを書くという話でしたが、すみません、まだ7割といったところです。
連休中には何とか!!お待ちいただければとお思います。

900■■■■:2010/04/30(金) 00:11:05 ID:wxt73fJo
>>桜並木さん
待ってましたマジ書いてくれてありがとう!!!!!!!
続きお願いします!

901■■■■:2010/04/30(金) 00:36:18 ID:2rxoeHGE
さすが学園都市
5千円の弁当が売ってるなんて・・・

902■■■■:2010/04/30(金) 00:50:04 ID:ZXDMlvHg
>>901
こんなのもあるし、探せばあるんじゃね?
ttp://news.walkerplus.com/2009/1012/2/

他にも、それなりの店に行って包んでもらうとかいう方法もあったり。

903■■■■:2010/04/30(金) 03:06:45 ID:4qZ0jBrk
>>891
GJΣd(・∀・)
すごいロマンチックで素晴らしかったですよ!
次回を楽しみにしてます!

904アミノ酸:2010/04/30(金) 09:11:39 ID:9mmlH.Vk

 皆様、おはようございます(*'-')ノ 

 感想という名のエールを!(もとい催促とも…)
いやーレスが900行きましたね!沢山SS見れて幸せです(*´Д`*)
※全部のを書くと、とんでもないレス消費になりそうなので続き物の作品
で最近読んだ物のみとなります。

>>808 桜並木さん
 甘い、甘すぎです!上条さんが押せ押せなのが
攻め攻めなのが…いいです!どちらかと言うと上条さんって
恋愛に対して、どこかこう無関心?というのかなんだろう
清い、そう清い印象なんですよ。ところがそれを見事に覆す。
その印象をぶち壊すと言えばいいのか本当、読んでて上条さん
積極的過ぎですw私にはまず書けない一面です。
「……なぁ、キスしていい?」とかもうね美琴はノックアウトですよ!
続き楽しみにしてます。

>>835 IONさん
 上条さんがちっちゃくなりましたシリーズ。
この発想はなかった!上条さんはちっちゃくなっても
上条さんなんですね。見た目は子供、頭脳は大人(高校生)
って話を戻します。普段は面と向かって美琴に言えないよう
な事も、ちっちゃくなったからかペロっと言っちゃうしニヤニヤしてしまいます。
にしても何やら不穏な空気も、狙われてるよ、上条さん逃げてー!
今後の展開どうなっていくのか、続き楽しみにしてます!

>>848 auauさん
 まず最初に[4.頼み事]と冒頭にあったものですから
何だろう?と、読み進めていくと「ぶっ」と思わず画面の前で
お茶を吹きました。宿題かよ!って突っ込んでしまったw
それにしても、上条さんは美琴と一緒にいたいがために
課題を無意識にもらってきてたなんて…可愛い奴。
遂に、最終章ですか!って皆さんも口々に言ってたように
当瑠と美詠の関係もすごく気になります!二人は兄弟で
はないしどういう事?展開が読めないよ〜続きが楽しみです!
 
>>891 蒼さん
 ネックレスの伏線ここで来るんだー!とやられました。
舞台は、飛行場搭乗前、二人のドラマチックなワンシーン。
上条さん行くな!と、引き止めたくなったのは私だけでしょうか。
そう考えると、美琴は強い!『信じて待つ』と言うのは絆があるから
出来る事と私は思ってまして、その一連の表現が半端ないです。
続き楽しみに待ってます!

>>899 ほのラブ同盟さん
 ほのラブ同盟さんの作風、すっごくツボなんです。
書こうと思ったきっかけが、ういういdaysです!読んだ途端に
ビビっときたんです。幼馴染は、ほのラブさんの作品に触発されて
生まれたと言っても過言ではありません!前回の話では黒子と美琴
のやり取り、御坂妹の行動に対する美琴の気持ち、その描写に感動しました。
それを踏まえて今回(前編は既にチェック済み)はどうなるか目が離せないです。
続き楽しみに待ってますよー!

長々と失礼いたしました。
と感想だけ置いて去っていくのもあれなので。
今から、どなたもいらっしゃらないようなら5分後におそらく1〜3レスお借りして
「とある幼馴染シリーズ」を投稿させて頂きます。
宜しくお願いします。

905とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とイヤホン(1):2010/04/30(金) 09:14:56 ID:9mmlH.Vk

 
「だぁぁぁあ!補習が長引いた〜」
 
 急ぎ足で待ち合わせ場所に向かう。
そう、今日は絶対に外せない約束があるのだ。

 普段の授業に+補習というのは、いつもの事だ。
いつもの事ではあるが、今日は予想以上に長引いた。
 勿論、とっくに待ち合わせの時間は過ぎている。
これはまずいと思って、メールを送ったが返事は来ない。

(こりゃ、相当怒ってるよなぁ……)
 
 正直、補習も常にあるような身で放課後に時間を作るというのは厳しい、だから部活動も行ってない。

 それでも幼馴染に付き合う理由。

「いや〜悪い、遅くなった!」
 ベンチに掛けているのを見つけ、慌てて駆け寄り
すまんと手を合わせて、内心ビクビクしながら様子を窺う。 
「おーい、美琴……もしもーし?」
 しばらくしても反応が返ってこない。
不思議に思って、目の前で手を振ってみる。

「あっ当麻…」
 今、気付きましたよといった具合で目をぱちくりさせ
「ごめん、聴き入っちゃってて…思いっきりスルーしちゃった」
 と言いながら美琴は音楽プレイヤーの停止ボタンを押して、イヤホンを外す。
その軽薄な態度に少しだけムッときて余計な一言をぽろりと出してしまう。

「上条さんは、補習でへとへとなのですよ〜。それでも来た事に、ねぎらいの一つも掛けてくれてもいいと思うのですよ〜」
 遅れた事を棚に上げ、自ら墓穴を掘りにいっている事に気付いた時は後の祭り。

「どの口が言うのよ、遅れたくせに…」
 とジト目で突っ込まれ
「しょうがないじゃない、大体あんたがい・つ・も待ち合わせの時間に、来ないから悪いのよ!」
 待つのも疲れるんだと美琴は主張する。
「うっ!いや、それは……」
「それは?」
 美琴にじーと見られること数秒――いよいよ降参、白旗を上げた。
「悪い、悪かった、だから…!」
 と許しを請う。その様子に美琴は、はぁ〜とため息をつき
「まっ、でもいつも当麻に付き合ってもらってるし、いいわよ、別にもう…」
 と少し照れた口調で、今回だけだからねと付け加えた。
「ところでさ、何を聴いてたんだ?」 
 機嫌が直った事に、ほっと胸を撫で下ろし――先ほどから気になってた事を口にした。
「ん、ああこれ?」
 と美琴は、膝に置いてある音楽プレイヤーを持ち上げる。
「そそ、いや…珍しいなと思ってな」
「ちょっと、それどういう意味よ!」
 またもや暗雲が立ち込めそうな流れに、待て待て続きを言わせてと、美琴をけん制し告げる。
「その…美琴が曲聴いルテル何か新鮮でな。ほら、普段聴かないだろ?だからどうしたのかと思ってな」
 思わぬ返答に、美琴は少しだけ思案し理由を話す。
「えっと、佐天さんに勧められて…ちょっと気になったから」
「佐天さんつーと、この間話してた後輩だよな?」
「うん、中学は違うけど、何回か遊んで…これもその一つかな」 
 そう言って、音楽プレイヤーを指す美琴。
「なるほどな」  
 
 どことなく嬉しそうに話す美琴の様子を見て、友達が出来たんだなと素直に喜ぶ。

906とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とイヤホン(2):2010/04/30(金) 09:16:56 ID:9mmlH.Vk


 上条当麻が幼馴染に付き合う理由。

――それは以前、自分の隣が一番自然でいられると言われたことがあるからだ。
学園都市に7人しかいない、レベル5の第三位、常盤台のエースである幼馴染はその能力の
高さ故、輪の中心に立つことはできても、輪の中には入っていけない。それでもそれが当然の
事だと分かっている。いやむしろそう思うことで、友達というものを諦めてきていた様にも感じる。

 クラスでデルタフォースと呼ばれる内の一人で、バカばっかりやってる自分からすると、
それってどうなのと心配していたが、ただ話を聞く限りでは、最近は変わってきたようだなと思う。

今は、一度しかない。いくらレベル5と言ってもまだ14歳の少女なのだ。普通の女の子として過ごして欲しいと願う。
その願い通り、幼馴染の少女の周りに新しく場所が出来つつあり、そろそろそのお役はご免だろうかとふっと考える。
その時、脳裏によぎったのは寂しいという言葉、きっとそれは、自分も例外なく隣にいるのが当たり前だからかもしれない。
喜ばしい事なのに、どこか腑に落ちない感情の渦に入ったような――そこで名を呼ばれてる事に気付き、思考は中断した。


「ねぇ、ねぇってば!」
 いつの間にか、どこか遠くへ行ってしまった幼馴染に向けて呼びかける。 
「………お、おう?」
 ようやっと戻ってきたかこのバカと、こつんとでこピンをかます。
「ちった〜人の話を聞けやぁぁ!」
「いってぇ、いきなり何をする!?」
「はぁ…あのねぇ勝手に話を振っておいて、無視すんじゃないわよ!」
「……はて、どこか飛んでました?」
「思いっきりよ!とぼけるフリして話をそらそうとするなっ!」
 当麻の何か言いたげなその目を無視して、無理矢理話を進める。

(そりゃ、飛んでたのはお互い様かもしれないケド…でもそれとこれとは話が別!) 

「それでさ、聴く?」
「聴くって?」
 だからこれよこれ、と音楽プレイヤーを当麻に見せる。
「何を聴いてるの?って言ってたじゃない」
「そうだったか…な?」
「そっ、だから…はい」
 と片方だけイヤホンを当麻に渡し、もう片方は自分の耳に付ける。
並んでベンチに座っていても、少し距離がある為、イヤホンは引っ張られる。

「当麻、もう少し近寄ってくれないと届かないから…」
 改善のため、もっとこっちに来いと隣の位置を手でパンパンと叩く。

(一緒に聴かなきゃ意味がないんだから…)

 好きな人と何かを共有したいという思いは誰にだってあるもの。
美琴の場合、同じ曲を一緒に聴く時間を共有するというものだった。
 待つ間、どうやって切り出そうかとずっと考えていた。
もともと佐天さんから勧められた曲、それをどうしても当麻にも聴いて欲しくなった。

こういうのが好きなのも、御坂美琴っていう幼馴染の女の子なのだと、当麻に知って欲しいただそれだけ。

 今、その計画は着実に実行されようとしている。

「あの…みっ美琴さん?」
「………あ、えっとその」

 密着する肩、触れ合う手、そこから感じる体温。

「「…………」」
 
 勿論、再生された曲は二人の耳には全く流れてこない。
互いに奏でる、ハートビート、そんな二人の幼馴染の放課後。

907アミノ酸:2010/04/30(金) 09:19:35 ID:9mmlH.Vk
以上になります<(_ _)>

今回は、LEVEL5-judgelight-のジャケットをCDショップで見掛けて思いつきました。
持ってる方は、是非とも黒子の所を上条さんに置き換えて想像してもらえるといいかもしれません。

楽しんでいただければ幸いです。

あ、ちなみに短編的なものは時系列的な事はめちゃくちゃなので一連の話になるということはないです!

――今後の予定(おそらく)
 
 現在進行中で、幼馴染シリーズは短編ものと長編(少し原作寄り)
 とある宣伝の続編は、告白の翌日から始まる話を書けたらいいなと。
 
 ※イチャつき度成分は 幼馴染<とある宣伝 になります。
 
 最後に、カウントダウンは色々やってしまった感があり、挑戦はした
ものの守れてなかった事もあり、次はやりません!とりあえず完結できて
良かったに尽きます!なので「とある宣伝〜」の続編は書きあがったら投稿します。

書きたい物を書く!をモットーに!今後も宜しくお願いします。

908アミノ酸:2010/04/30(金) 09:26:08 ID:9mmlH.Vk
またやってしまった。今回のはひどい;
誤字が…なぜあのような変換で残っていたのかはともかく。

曲聴いルテル何か新鮮でな「×」→曲聴いているのって、何か新鮮でな「〇」
 
脳内変換して読んでください。すみません…連レス失礼しました。

909上琴患者A:2010/04/30(金) 20:49:38 ID:eLoDlO.o
こんばんわ皆さんGWいかがお過ごしでしょうか?

私は思いついたので前回の後日談を書いてました。
…いっその事妹達の人って言われるように方向性を固めようかしらと思ったり無かったり(ぇ

では何もなければ5分後くらいから14くらい消費します
タイトルは『そして始まるドタバタな日常』です

910上琴患者A:2010/04/30(金) 20:53:46 ID:eLoDlO.o
「んー!今日は時間に間に合いそうだな、…いやまだ油断はできねぇ…いつもこの辺で…」

そう呟くのは上条当麻。今日は彼女である御坂美琴とデートの為、公園に向かって歩いていた。
軽く一伸びすると腕時計に目をやる、時刻は8:45分。待ち合わせ15分前。
いつも待ち合わせに遅れてしまう彼は、早く出かけるなど努力はしているものの、
不幸体質が災いし、何かトラブルに巻き込まれてしまい遅刻を繰り返していた。
今日は特に何事もなく真っ直ぐ公園に向かうことが出来ている。このまま行けば時間通りに付くはずだ。
しかし、そんなに上手く行くはずもなく、彼に近づく人影が現れる。

「お義兄様ではありませんか、おはようございます、とミサカはお義兄様に朝の挨拶をします」
「…御坂妹…」
「なんですかその反応は、とミサカはお義兄様の対応に不機嫌になります」
「すまん!今日は美琴とデートなんだ!遅れたくないからまた今度!」
「…そういうことでしたら仕方ありません、とミサカは…!!」

適当に会話を済ませ場を去ろうとする当麻。右手を軽く上げると公園に向かって歩き出す。
丁度その時、横を通過しようとした車から投げ捨てられた空き缶が当麻の後頭部に向かって飛んでいく。
それを見た御坂妹はバチィ!!と咄嗟に電撃を放ち、空き缶の軌道を逸らす。
弾かれた空き缶は当麻の横を通過し、カン、カンっと音を立てて、当麻の前に転がった。

「危ない所でした、とミサカは己の迎撃能力の高さを猛アピールしてみます。
 怪我はありませんか?とミサカは無事だと思いつつも問いかけます」
「さんきゅーな御坂妹、おかげで無傷で済んだよ」
「礼には及びません、ですがこのまま行かせるとまたトラブルが起こりそうなので近くまでご一緒します、とミサカは護衛役を買って出ます」
「そうか?ならお言葉に甘えてお願いしようかな」
「任せてください、とミサカは決死の覚悟で護衛を勤める事を決意します」
「んな大げさな…」

待ち合わせ場所まで何が起こるか分からないので遅刻を回避する為にも護衛を雇うことにした当麻。
二人は並んで歩いていく。その間も御坂妹は電磁波の反射によって当麻に近づくものに警戒しながら歩いている。
しかし、思いのほか何も起こらずに、無事公園の入り口に辿り着く事に成功する。

「ではミサカはここで失礼します、とミサカは護衛の任務終了を告げます」
「そっか、わざわざありがとな」
「それと、ここで少し待ってから待ち合わせ場所に行く事と、ミサカと来た事はお姉様に内緒にしておいた方がいいですよ、とミサカは助言を与えます」
「…?なんでだ?」
「はぁ…、とミサカはお義兄様の鈍感さに頭を痛めます」
「?」

頭に?マークを浮べ、首を傾げる当麻にぺこりと頭を下げ「では」と言い残し立ち去る御坂妹。
残された当麻は疑問に思いつつも待ち合わせ場所に向かっていく。
いつもの自販機の前には既に美琴が待っていた。常盤台の制服に身を包み、まだかな?といった様子で空を見上げていた。

911上琴患者A:2010/04/30(金) 20:54:12 ID:eLoDlO.o
「悪ぃ、待たせたな美琴」
「…今日は雪でも降るのかしら…?」

当麻の声に振り向き、驚く美琴。信じられないといった様子で快晴の空を見上げる。

「何気に酷いですね美琴サン」
「だって、当麻が時間前に来るなんてありえないもん」
「俺だってやる時はやるんですよ!」
「…でも罰は与えるからね、一回分」
「な!?何故ですか姫!?何故そのような仕打ちを!?」
「時間前に来れたのってあの子のおかげでしょ?」
「………えーと、…はい」
「…やっぱりか、あのねぇ…彼女とのデート前に他の女と歩いてくるってどうなのよ?」
「…」

当麻がバラさずともバレていた。それはそうだろう、空き缶の迎撃、電磁波センサーなど能力を使用してた御坂妹。
それが遠くから徐々に近づき、手前で遠ざかったと思ったら当麻の到着。これでバレないはずがない。
あっさり白状した彼に溜息を付くと、美琴は腕を組み当麻を睨み付ける。
そんな威圧感に晒されている当麻はいつの間にか土下座をしていた。

「ま、あの子の事だからアンタが時間通りに来れるように気を効かせただけだと思うけどね。
 だから今回は一回で許してあげるわ。でも、次はないわよ?」
「はい…」
「私はこれでも当麻が自分の力で時間通りに来る日を楽しみにしてるんだからね?そうじゃなかったら寮まで迎えに行ってるわよ」
「…努力します」
「よろしい、んじゃ行きましょうか」

当麻を立たせ、手を繋ぎ歩き出す。なんだかんだ言って時間前に合流できたことに満足しているようだ。
そしていつもの喫茶店に入ると奥の席(ほぼ指定席)へ座る。
二人がここに来る時はデートの目的地が決まっていない時だ。遠出する時は前日までに決めるが、
そういった予定がないときはここでのんびりとした後、何処に行くのか決めるという事をしている。

「美琴はどっか行きたい所あるか?」
「う〜ん、この間はあの子の事で振り回しちゃったし当麻が決めていいわよ?」
「俺自体は特にないぞ?一緒にいられればそれでいいし」
「んな!?ば、馬鹿!何言ってんのよ!こんな所で…」

突然の言葉に赤くなる美琴。昔に比べて耐性が付いたとはいえ、こういった不意打ちにはまだまだ弱い。
それを知ってか知らずか当麻はニヤニヤしながら追撃に入る。

「あれれ?美琴サン、どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ!?」
「赤くなってなんかない!それとニヤニヤすんな!」
「そんなに照れなくても…まあ可愛いから見てて楽しいけどな」
「も、もう!知らない!」

912上琴患者A:2010/04/30(金) 20:54:33 ID:eLoDlO.o
当麻の攻撃に耐えかねた美琴はテーブルに突っ伏すと『うー』と唸りだした。
そんな彼女を見てくすくすと笑うと右手を頭の上に乗せそのまま撫でる。
すると、美琴は顔を少しだけ上げ恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうに目を細めている。
その顔を見た当麻は

(――――――――なんですか、この可愛い生き物は)

と心の中で呟くのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あの後、恥ずかしさであれ以上顔を上げられなくなった美琴と完全に思考停止し、
頭を撫でたまま固まってしまった当麻はその様子を心配した店員によって復帰させられる。
そして二人は慌てて頭を下げるとそそくさと喫茶店を後にした。

「全く、アンタのせいでまた恥かいちゃったじゃない」
「ちょっと調子に乗りすぎちまったな、すまん」
「…でもあの言葉は嬉しかったわよ。それで結局この後どうしようか?」
「あ〜そうだなぁ、たまには部屋でのんびりすっか?」
「そうね、それでいいわよ。それじゃあお昼と夕飯作ってあげるから、買い物行きましょうか」
「うい〜」
「何食べたい?この美琴様がリクエストに答えてあげるわよ」
「ん〜、それじゃハンバーグ」
「いいわよ、それじゃー商店街へ行きましょー」

することが決まり、早速動き出す二人。テンションも高く、繋いだ手を前後に振りながら商店街を目指して歩いていく。
1時間程で買い物を済ませ、当麻の部屋へと到着する二人。美琴は早速昼ご飯の準備に取り掛かる。

「お昼は何でもいいの?」
「ああ、任せる」
「そうね〜、って当麻、冷蔵にご飯が入ってるんだけど」
「あ」
「あ、じゃないわよ。これ何時の?」
「昨日の夜炊いたやつ」
「それなら大丈夫ね、炒飯でいい?」
「おう、なんか手伝う事あるか?」
「ん〜?それじゃあ買ってきた物の片付けお願い」
「了解〜」

美琴は冷蔵庫を開け、残った食材を取り出し作るものを決めるとカエル柄のエプロン(部屋に置いてある)を付け、調理を始める。
当麻は台所から聞こえるトントントントンという小気味良い音を聞きながら冷蔵庫に食材を入れていく。

913上琴患者A:2010/04/30(金) 20:54:57 ID:eLoDlO.o
「当麻ー卵ちょうだーい」
「卵は〜っと、ほれ」
「ありがと」
「どういたしまして」
「ふんふんふ〜ん♪」

鼻歌混じりに炒飯を作る美琴。テキパキと動く彼女は、必要なものがあると当麻に指示を飛ばす。
当麻も片付けをしつつ美琴の指示通り動く。そうこうするうちに炒飯は出来上がり、食卓に着く。

「それではいただきま〜す」
「いただきます」
「モグモグ…」
「どうかな?」
「相変わらず美琴の作るものは美味いな〜このご飯のパラパラ具合といい、味付けも丁度いいな」
「ま、当然よね。この私が作ったんだから」
「こんなのが食べれるなんて…上条さんは嬉しいのですよ…」
「大げさね…、これくらいならいつでも作ってあげるわよ」
「本当ですか!?あ〜なんか幸せだなぁ〜」
「ふふ」

そう言って顔を緩める当麻を見る美琴も思わず顔が綻ぶ。その笑顔は二人が食事を終えるまで続いていた。
片付けを終え手持ち無沙汰になった二人はベッドを背もたれにして並んでいた。

「ん、ん〜…眠くなってきちゃった」
「ふぁ〜、俺もさっきから眠気が…寝るならベッド使っていいぞ」
「ん、うん…でも熟睡しちゃうと夜寝れなくなっちゃうからここでいい」
「そうか?なら俺がベッド使う」「ダメ」
「当麻もそこで寝るの、これが今日のば…つ……」
「…寝ちまったか、ったく風邪引いても知らねぇぞ」

当麻の肩にもたれかかり、スースーと安らかな寝息を立て始めた美琴。

(相変わらずこの寝顔はヤバイな…えい)
「んにゅ」
(―――――つんつん)
「ん、ん〜」
(やばい、可愛い過ぎ、それそれ)
「んにゃ、ん〜」
(癖になりそうだなこれ…)

美琴の頬をつんつんと突く当麻はそのたびに反応する美琴が堪らないらしく、暫く続ける。
やがて満足すると寄りかかる美琴を支えるようにして眠りに付くのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

914上琴患者A:2010/04/30(金) 20:55:33 ID:eLoDlO.o

ピンポーン
あれからどれほど時間がたっただろう?インターホンの鳴る音を聞き当麻は目を覚ます。
ピンポーン
もう一度インターホンが鳴る。

「はいはい、今出ますよ〜っと」
「ん…とぉま…」

スッと立ち上がり玄関に向かう当麻。美琴の方は隣の気配が無くなった為か寝言を言う。

「どちら様ですか〜?」

そう言いながら玄関のドアを開ける当麻。するとそこにいたのは…
何やら大きな袋を担いでいる御坂妹だった。

「こんにちわ、とミサカはお義兄様に挨拶をします」
「御坂妹?どうした?」
「ミサカは検体番号10039号です、とミサカはバッジを受け取ったミサカであることを説明します」
「お〜、あの時はチケットサンキューな」
「礼には及びません、所でこれを置きたいのですが、とミサカは肩に乗せたものがいい加減重たくなってきたのをアピールします」
「ああ、悪い。んでそれ何だ?」
「米です、とミサカは袋の中身の正体を明かします」

ドスンっと音を立てて置きながらミサカ10039号は説明する。

「米?…どうしたんだこれ?」
「商店街の福引で当てました、とミサカは己の運の良さを誇示します。
 しかし、ミサカは病院で食事が支給されていますのでこの米は必要ありません、とミサカは説明します」
「…もしかして?」
「はい、お察しの通り苦学生であるお義兄様に差し上げる為に持ってきました、とミサカはここに持ってきた理由を説明します」
「…御坂妹ぉ…」
「なんでしょうか?とミサカは半泣きのお義兄様に若干引きつつも返事をします」
「あ、ありがとぉおお―――――っ!!!」

ガバッ!米(20kg)を手に入れた当麻は涙を流しながらミサカ10039号に抱きつく。
突然の事態に驚き、暫く固まっていた10039号だったが、ある人物を見てしまったので落ち着いて対処を始める。

「お義兄様、嬉しいのは分かりますが、少し離れていただけませんか、とミサカは少し残念ながらも後ろが怖いので離れるように言います」
「あ、ああ、そうだった、悪ぃ、つい嬉しくなっちまってな」
「ではミサカはこの辺で失礼します、とミサカは」「待ちなさい」
「!?」

ミサカ10039号は当麻から開放されると即座に撤退を開始しようとする…が
その言葉は途中で遮られ、あまりに低い声色に思わず当麻が振り返る。そこにいたのは…

915上琴患者A:2010/04/30(金) 20:55:56 ID:eLoDlO.o
「…アンタ達そこで何してるのかしら」

先ほどまで幸せそうに寝ていたはずの―――――

「大声が聞こえたから慌てて来てみれば…」

あれほど可愛らしかった寝顔の持ち主が―――――

「こんなところでいちゃいちゃすんなやこら――――!」

バチバチィ!と電撃を発生させる美琴。そんな彼女を見た二人はそれぞれ瞬間的に動く。
当麻は右手を構え、ミサカ10039号は…ドアの外へ逃げた。
――次の瞬間、玄関が青白い閃光に包まれる。当麻は放たれた電撃を打ち消し、10039号はその様子を扉から顔を少し覗かして見ていた。
バチィ!バチィ!と何度か音がした後、ようやく辺りは静かになる。

「全く、油断も隙もあったもんじゃないわ!」
「頼むから室内で電撃はやめてください…家電製品が死んでしまいます…」
「相変わらず過激ですね、とミサカは怒りんぼうのお姉様に思わずため息を付きます」
「誰のせいだと思ってんのよ!?」
「ミサカはお米を持ってきただけです、抱き付かれていたのはお義兄様がお米の入手に喜んだためです、とミサカは先ほどの状況を説明します」

腕を組み、仁王立ちする美琴は土下座をする当麻を睨んでいる。
扉から顔を半分だけ出している10039号はため息を付きながら先ほどの経緯を説明する。

「嫉妬するのは構いませんが、すぐに電撃を放つ癖は直したほうが良いですよ、とミサカは冷静さの足りないお姉様に助言を与えます」
「むぅ…でも何も目の前であんなことしなくても…」
「わー、すまん!俺が悪かったからそんな顔しないでー!?」

先ほどの怒りは何処へやら、状況を飲み込んだ美琴は、10039号に追い討ちをかけられしょんぼりとする。
そんな彼女を見て当麻は慌てて立ち上がり美琴に近づきながら声を掛ける。

「やれやれ、すっかり邪魔をしてしまいましたね、とミサカはお二人の邪魔者であることを改めて認識します」
「いやいや、何もそこまで卑屈にならなくても…」
「ではミサカの用は済みましたので失礼します、とミサカはお二人に頭を下げつつ別れの挨拶をします」
「あ!ちょっと待って!折角来たんだしお米のお礼も兼ねて晩御飯くらい食べていってよ」
「いえ、お気持ちはありがたいのですがお二人の邪魔をするのは気が引けます、とミサカは違う意味で空気を読んでみます」
「いや、それは空気が読めてるとは言わないのでは?いいから上がっていけよ」
「そうよ、それにアンタには個人的に聞きたいこともあるし。っていうか普段から空気の読めない当麻にそんな事言われたくないわね」
「何気に容赦ないですね美琴サン…んでどうする?」
「…分かりました、とミサカは渋々了承すると見せかけて内心で喜んでみます」
「それじゃあいつまでもこんな所で立ち話もなんだし汚い部屋だけど上がってよ」
「ちょっと!?家主の目の前で汚いとか言わないで!?ちゃんと片付けてますよ!?」
「主に私がね」
「……酷い…でも言い返せない…」
「ぶふぃー、とミサカは肩を落として落ち込むお義兄様に思わず噴出します」

916上琴患者A:2010/04/30(金) 20:56:24 ID:eLoDlO.o
そんなやり取りを終え、中に入って行く三人。部屋の中央に置かれたテーブルを挟むように当麻、10039号が座る。
美琴は台所でおもてなしの準備をしている。

「妹ー、お茶とコーヒーとジュースがあるけど何飲む?」
「ではお茶をいただきます、とミサカはお姉様に要求します」
「当麻はー?」
「んじゃコーヒーで」
「砂糖は1つでいいわよね?」
「おう」
「…なんだかこの空間に居心地の悪さを感じます、とミサカはお二人の何気ない会話でむず痒い気分になります」

二人にとっては普通の会話なのだが端から見れば…10039号はなんともいえない気分になるのだった。
暫くするとお茶とコーヒーを入れ終えた美琴が当麻の隣に座る。
彼女もコーヒーを選択したようだが、10039号はある事に気付き目をキラーンと光らせる。

「おや、お二人のカップはセット物なのですね、とミサカはカエルのプリントが施されているマグカップを見つめます」
「ああ、これか…前に美琴がどうしてもって言うから買ったんだ」
「えへへ〜、いいでしょ?」
「…からかい甲斐のない反応ですね、とミサカは熱々の二人を見てもうどうでもいいやと投げます」

当麻のカップにはゲコ太、美琴のカップにはピョン子がそれぞれ描かれている。
少し恥ずかしそうにする当麻とニコニコと笑みを浮かべながら羨ましいかと言わんばかりに自慢をする美琴。
10039号はからかおうとしたのだが、平然…どころか嬉々として語る美琴を見て、何を言っても無駄だと悟る。

「話は変わるのですが、ミサカはお姉様に謝らなければならない事があります、とミサカは唐突にシリアスな雰囲気を漂わせます」
「え?な、何?」

先ほどまでの空気を一変させる10039号。
その顔つきは打って変わって真剣なものとなり、それを感じ取った二人にも僅かに緊張が走る。

「…あのバッジを普段付ける事が出来なくなりました、とミサカは重大な事実を告げます」
「?」

10039号は語りだす。それは先日の事。街を歩いていた彼女は走ってきた通行人とぶつかってしまい、その際にバッジが服から外れてしまった。
慌ててバッジの行方を見ると側溝に向かって飛んでいくのが見え、咄嗟に飛びつきバッジは守ったが、そのまま勢いよく壁に激突してしまう。
幸いにも怪我はなかったのだが、彼女のゴーグルはその衝撃で割れてしまった。

「…ということがあったのです、とミサカは少し割れてしまったゴーグルを指差しつつ正直に告白します」
「馬鹿!!そんなのでもし怪我したらどうするつもりだったのよ!?」
「申し訳ありません、とミサカは心底反省します」
「妹達を危険な目に遭わせる為にそれを渡したわけじゃないのよ!?それを大切にしてくれるのは嬉しいけど、無茶な事はしないでよ…」

泣きそうな表情を見て10039号は自分の先日の失態を後悔する。
この話を黙っている事は出来た、でも10039号はそれをしなかった。このバッジに嘘は付きたくなかったから。

917上琴患者A:2010/04/30(金) 20:56:43 ID:eLoDlO.o
「まあまあ美琴、こうして御坂妹が無事だったんだし反省もしてるんだからそれくらいにしといてやれ」
「でも…!」
「いいから、それで今は何処にあるんだ?」
「…ニットベストに細工を施して持ち歩いています、とミサカはバッジを取り出します」

悲痛な表情を浮かべる美琴の頭を撫でる当麻。
10039号は当麻の言葉を受け、手を加工(内側にファスナー付きポケット)したニットベストの左下側に入れるとごそごそとバッジを取り出し始める。
暫くして出てきたものは、卵を平らにつぶしたような形をした小型のクリアケースだった。
それはキーホルダーのようになっており、先端には止め具が付いている。ケースの中にはバッジが収められ、傷がつかない様にスポンジが敷き詰められていた。

「先の失敗を繰り返さないようにあの医師(冥土返し)に作ってもらいました、とミサカは特注品の入れ物について説明します」
「アンタ!持ち歩いててまた今回みたいなことがあったらどうすんのよ!?」
「…他の妹達にも同じ事を言われました、とミサカはミサカネットワーク内でボコボコにされた事を思い出します。
 それでもミサカは常に側に持っておきたいのです、とミサカはこのミサカの我侭である事を承知で言ってみます」

10039号も大事に保管しておけば安全な事も、バッジを持っていなくてもその想いが揺るがない事も分かっている。
それでも、大切なものだからこそいつも持っていたいと打ち明ける。真っ直ぐ見つめ合う姉妹。
暫く見つめ合っていたが、美琴は大きくため息を付くと言葉を発する。

「はぁ〜〜、わかった、でも1つだけ約束して。もし今度同じような事があったらまずは自分の身を守る事。いい?」
「…分かりました、とミサカは返答します」

無駄だろうな、と美琴は思う。咄嗟に出てしまう行動はその想いが強ければ変わる事がないのは自分や当麻を見ているから分かる。
でも同時に嬉しく思う。あの想いを大切に思ってくれていることに。

「…よし、じゃあこの話はおしまいね」
「ところで、見ていたら付けたくなりましたので今から付けます、とミサカはケースからバッジを取り出します」
「あんたねぇ…まあいいわ」

10039号は我慢できずにバッジを取り出すといそいそと取り付ける。
その行動に半ば呆れていた美琴だったが、表情を緩める10039号を見てくすっと薄く笑う。
当麻もハラハラしながら会話を聞いていたが、丸く収まったようなので胸を撫で下ろすのだった。

「じゃあ次は私の話ね。その前に当麻には悪いけど暫く外で時間を潰してきて欲しいんだけど」
「え!?何故ですか!?」
「結構重要な話だから、後、夕飯だけど予定を変更してカレーにするから外行くついでにルゥを買ってきて」
「えー…なんだか凄く切ないですよ…」
「ごめんね、でもこの話はちょっと聞かれたくないから、お願い」
「仕方ない…ちょっと行ってくるか…」

美琴のお願いにガックリと肩を落としトボトボと玄関に向かう当麻。その背中は哀愁が漂い、不幸だオーラを発している。
当麻が外に出ると美琴は10039号と会話を始める。

918上琴患者A:2010/04/30(金) 20:57:03 ID:eLoDlO.o
「よろしいのですか?とミサカはお義兄様の落ち込みようが半端ないのを心配しつつ問いかけます」
「いいのいいの、聞かれるわけにもいかないし。それよりちょっといいかな?」
「なんでしょう?とミサカは急にモジモジしだしたお姉様を不審に思います」
「あんた達ってネットワークで繋がってるのよね?それってあの19090号って子とも繋がってるのよね?」
「なるほど、そういうことですか、とミサカはお姉様の目的に気付きます」
「話が早くて助かるわ。お願い!ダイエットのテクニックを教えて!」
「少々お待ちください、とミサカは19090号に交渉する時間が欲しいことを伝えます」
「う、うん。よろしく」

頬を染めながらダイエットのテクの伝授を懇願する美琴。
10039号はこんなに面白いチャンスを逃す手はないと19090号と交渉を開始する。
19090号は渋っていたが、美琴の様子をネット上に配信することを条件に了承した。

「お待たせしました、交渉は成立しましたので何なりとお聞きください、とミサカは内心わくわくしながらお姉様を促します。
 ですが質問の前に水とタオルが欲しいのですが、とミサカはこの話に必要なものを要求します」
「?いいけど」

首を傾げつつも言われた通り水とフェイスタオルを準備した美琴。
座ろうとした所で10039号が立ち上がり美琴に近づくと親指でウエストの『測定』を始める。

「ひゃ!アンタ一体何してんのよ!?」
「身体測定です、とミサカはお姉様の問いに答えます」
(スペック通りですね、とミサカは意外な結果に驚愕します)

身体測定を終えた10039号は元の場所に座ると『どうぞ』と言い、乙女の秘密の会話を始める。

「えっと、どうやったらうまく痩せれるの?」
「バランスの良い食事、適度な運動です、とミサカはあの野郎(19090号)の痩身テクを伝授します」
「…それだけ?」
「はい、とミサカは返答します。
 食事はミサカ達と同じものを食べた上で、毎日ジョギングを30分程度しているそうです、とミサカは詳しい内容を述べます」

元々のスタイルが優秀な為、特別な事はしなくても良いという情報を受けた10039号は自分も実践しようと思いつつ説明を続ける。

「でも、それだったら私も運動はしてるし、食事もそれなりに気をつけてるわよ?」
「お姉様の場合は間食や糖分の多い飲料水が原因ですね、とミサカは決定的な事実を述べます」
「!!」
「ミサカとしてはその状況であってもスタイルを維持できているのが不思議です、とミサカは先程の身体検査の結果を思い出します」
「じゃあそれを無くせば私も!?」
「恐らくは、とミサカは返答します」
「よし、じゃあ今日から早速頑張って痩せるわよ!」

立ち上がり、小さく拳を握る美琴。その瞳は燃えているように見える。
そんな様子を見て小さくため息を付く10039号。そして忠告を始める。

919上琴患者A:2010/04/30(金) 20:57:42 ID:eLoDlO.o

「頑張るのは構いませんが、無理はしないように、とミサカは忠告をします。
 体調を崩してしまってはお義兄様が心配しますし、デート等で我慢をすればストレスになってしまいます、とミサカは続けます」
「じゃあどうしたらいいのよ?」
「間食については少しずつ量を減らすのが良いでしょう、とミサカは解決策を述べます。
 デート中ならお義兄様にあーんをするなどして少し多めに食べてもらうと良いでしょう、とミサカはさり気無くいちゃつく方法を教えます」
「…そんな方法が…っていうか良くそんな事思いつくわね」

10039号は親指をぐっと立て、楽しみつつダイエットにも繋がる方法を教えていく。
美琴は10039号のずる賢さに驚愕しながらもフムフムと聞いていく。

「普段の食事について参考が欲しければ病院で支給される食事の内容を教えます、とミサカは割と重要なことをサラッと言います」
「でも当麻とご飯を食べる時はどうしよう?当麻は結構食べるし、別々のものを食べるのは私が嫌だし」
「…そこはいつも通りでいいのでは?とミサカは返答します。
 結局お義兄様との過ごす時間が重要なのですから、自然体で行くのが良いと思います、とミサカは答えます」

同じ女性として、好きな人の前で美しくありたいという気持ちは理解できる。
でもその人と過ごす時間の方が何より大切なのだということを美琴に教える10039号。

「それにお義兄様の事ですから『そんなことしなくても俺はいつも通りの美琴が好きだぜ』とか言いますよ、とミサカはお義兄様の声色を真似をしてみます」
「んな!?あんた何言って…」

10039号の不意打ちに思わず赤くなる美琴。10039号は待ってましたと言わんばかりに顔をニヤつかせる。
そしてこのタイミングで核心に迫るべく動く。

「ダイエットで気をつけなくてはならない事と言えばこの薄い胸ですね、とミサカは一番気にしているであろう事に迫ります」
「!?」
「ですがお姉様にはお義兄様がいるので心配ありません、とミサカは前途有望なお姉様に嫉妬しつつ述べます」
「…?なんでそこで当麻が出てくるのよ?」
「…揉んでもらえば大きくなります、とミサカは驚愕の事実を告げます」
「も、揉んでもらう!?」
「揉まれる事で女性ホルモンの分泌が活発化し大きくなるのです、とミサカは仕入れた知識を元に簡潔に述べます」
「で、でもそんなの分からないじゃない」
「はい、ですのでお姉様が実践してくれれば良いのです、とミサカは恥ずかしがるお姉様をニヤニヤしつつ真相の究明に期待します」
「ぁぅ…」
(あいつに胸を揉まれる!?そんなの恥ずかしいよぅ…でも付き合ってるんだからいつかは―――じゃなくて、何考えてんのよ私! 
 まだまだ早いって!でも本当に大きくなるなら試してみたい気が…やっぱり当麻は胸の大きい方がいいのかな?
 こんなんじゃ満足してくれないかも知れないしそれならいっその事試してみて―――ってやっぱり駄目―――!!)

耳まで真っ赤になった美琴は心の中であれやこれやと妄想を始める。
そんな様子をしたり顔で見ていた10039号だが、美琴がバチバチと空気を鳴らし始めたので、事態の収拾を図る。

(―――)
「ふ…、わぷ!」

バシャ!思考が限界を迎え、ふにゃー寸前だった美琴に突然水がかけられる。
意識を戻すと、顔が拭かれている事に気づく。タオルがどかされると10039号の姿が見える。

920上琴患者A:2010/04/30(金) 20:58:10 ID:eLoDlO.o
「ちょっと!いきなりなにすんのよ!?」
「お姉様が放電していたので、危険を承知で水をかけました、とミサカは返答します」
「うぅ…服濡れちゃったじゃない…どうすうのよ…」
「お義兄様の服を借りれば良いのでは?とミサカは淡々と述べます」
「…そうするわ…」

水をかけられて制服が濡れてしまった美琴は立ち上がり、タンスから当麻の服を取り出すと着替えを始める。
ニットベストを脱いだ所で、ドアがガチャリと開かれる。

「ただいまー、時間潰して…来た…ぞ」
「「…」」

当麻がこのタイミングで帰ってきた。着替え中だった美琴は勿論、10039号、着替えを目撃してしまった当麻は固まる。そして…
ブン!と美琴は脱いだニットベストを当麻に投げつけるとその場にしゃがみ込む。
そして投げられたニットベストは当麻の顔にヒットする。

「あ、ああ、アンタ!人の着替え中に帰ってくんな!」
「ここは私の部屋ですよ!?それに着替えてるなんて思わないだろ!?」
「いいからこっち見んな馬鹿ぁ―――!」
(これがフラグ体質のお義兄様の力ですか、とミサカは神掛かり的なタイミングに心の中で驚愕します)

ブラウスは着ているのだが、先程の会話もあって真っ赤になる美琴。
生着替えを目撃してしまった当麻はドキドキしながらも反論をする。
そして悪魔はこのチャンスを逃すまいと目を光らせる。

「ではお義兄様も帰ってきたのでミサカは帰りますね、とミサカは立ち上がります」
「待って!お願いだからこの状況で二人っきりにしないで!」

立ち上がって帰ろうとする10039号の腕を掴み涙目になりながら懇願する美琴。

(―――これは、とミサカは意識が飛びそうなのを何とか踏ん張ります)
「…申し訳ありません、少し悪戯が過ぎたようです、とミサカはお姉様の対応にドキドキしつつも謝罪します」
「もしも〜し、今回も状況が全く分からないのですが?」
「だから当麻はこっちに来るな!着替え終わるまで待っててよ!」
「へいへい…」

何で俺がこんな目に…と呟きながら一旦外に出る当麻。
美琴の着替えが終わると中に入り、その隣に座る。だが座った瞬間美琴がビクッと動き、ささっと少し距離を開ける。

「ん?どうした?」
「な、なんでもないわよ…」
「所で少し席を外したいのですが、とミサカはトイレに行きたいのを遠まわしに告げます」
「全然遠まわしじゃねぇし!?トイレはそこだぞ?」

部屋から見えるドアを指差すと10039号は立ち上がってドアの中に入っていった。
そして残された二人は…

921上琴患者A:2010/04/30(金) 20:58:33 ID:eLoDlO.o
「それよりどうした美琴?顔も真っ赤だしなんかあったのか?」
「な、なんでもないってば!」
「どれどれ、ん〜熱は無いな」
「―――」
「あれ?美琴?どうした?」
「おやおや、こんな短時間で気絶してしまったのですか、とミサカは意識を落としたお姉様を見て驚愕を露にします」

当麻が右手を額に当てると美琴はそのまま意識を失うのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ではミサカが替わりにカレーを作ります、とミサカは今回の責任を取ることにします」
「いやいや、俺が作るから御坂妹は美琴についてやっててくれ」
「いえ、その役割はお義兄様の仕事です、とミサカはお義兄様の提案を断ります」
「そうか?それじゃあ悪いけど頼むわ」
「任せてください、とミサカは胸を張って張り切ります」

暫くたっても目を覚まさない美琴に罪悪感を感じた10039号はお詫びにと夕飯を作る事を申し出る。
当麻は迷った後、美琴を見る事にする。10039号が調理を始めて暫くすると、台所からストン!ストン!と不穏な音が聞こえてきた。
気になった当麻が台所を覗くと、手をプルプルと震わせながら危なっかしい手つきでジャガイモに包丁を下ろす10039号の姿があった。
よく見ると皮が所々残っており、剥かれた皮には身がしっかり付いている部分も見られる。

「ストーップ!お前料理できないなら初めからそう言えよ!?」
「む、ミサカはカレーの作り方くらい知っています、とミサカはネットワークで仕入れた知識を元に作っている事を説明します」
「知識あっても手つきが危なすぎるんだよ、ほら、後は俺がやるからお前は美琴を見ててくれ」
「駄目です、これはミサカが作ります、とミサカは断固拒否します」

さすがに危ないと判断した当麻は包丁を10039号から取ろうとするが、10039号に拒否される。
だがこのままにしておくのはまずいと思ったので、共に作る事にする。
包丁の使い方や野菜の切り方を教えていくがどうも上手くいかない。
仕方が無いので10039号の後ろに立ち、抱きかかえるように手を回すと10039号の手に添えてその手を動かして教えていく。
10039号もふむふむと頷きながらそのまま指導を受けていたが、ふと不穏な気配を後ろから感じ、その手を止める。

「ん?どうした御坂妹?」
「何も言わずに離れてください、とミサカは戦慄しながらもお願いをします」
「は?何言って…」「ちょっと!」
「!?まさか…」

聞きなれた声に恐る恐る振り返るとそこには…

「あんた達は懲りるという言葉を知らないのかしら?」
「いや待て!話せば分かる!これは仕方なかったんだー!?」
「問答無用!」

ごつん!と当麻の頭にげんこつ放ち、10039号にはチョップを浴びせる。

922上琴患者A:2010/04/30(金) 20:58:56 ID:eLoDlO.o
「いってぇ!!頼むから手加減位してくれよ」
「酷いです、とミサカはお姉様の理不尽な攻撃に涙目になります」
「文句言わない!それに私の事をほったらかしにして料理してるそっちの方がよっぽど酷いじゃない!」
「だからこれは料理の出来ない10039号の為に仕方なく…」
「む!何ですかその言い草は、それにミサカはきちんと作れます、とミサカは憤慨します!」
「うっさい!後は私が…駄目だ、それだとまたなにしでかすか分からない。後は私とこの子でやるから当麻は大人しく待ってなさい!」
「わーったよ、はぁ…なんでいつもこうなるんだ?」
「自覚が無いのが怖いですね、とミサカは罪作りなお義兄様に嘆息します」
「ほ〜ら、ちゃっちゃと作るわよ!」

当麻を台所から追い出しカレー作りに着手する美琴。改めて台所の状況と10039の手つきを見てため息を付く。

「あんた…不器用ってレベルじゃないわね…」
「仕方ないじゃないですか、実際に作るのは初めてなんですから、とミサカはしょんぼりしつつ言い訳をします」
「全く、これじゃあ当麻が心配になるのも頷けるわ。それにしてもあんたにこんな不器用な一面があるなんて驚いたわ。
 …私も料理できなかった方がああして教えてもらえたのかしら?そう思うと複雑だわ」
「なにを言っているのですか?料理ができる方が男性は喜びます、とミサカは知識を披露します」
「それはそうかもしれないけど、さっきの見てるとなんだか悔しいわ」
「…」

そんな会話をしながら仲良くカレーを作っていく姉妹。
ちょっと嫉妬をしながらも、お互いを知っているからこの関係は成り立っているのかもしれない。
そんなこんなでカレーは完成し、夕飯の時間となる。

「「「いただきます(とミサカは手を合わせながら食事を始めます)」」」
「モグモグ…」
「どうですか?とミサカはやや不安になりながらも尋ねます」
「おお、普通に美味しい!?あの惨劇を見てて不安になってたけど…以外だ」
「そりゃそうでしょ、この子が頑張ったんだから」
「そうですか、とミサカは安堵しつつ賛辞の言葉を喜びます」

本当はルゥを使っているので普通のカレーとそこまで大きな差は無い筈なのだが、
美琴の隠し味等のアドバイスや10039号の苦労を知っているからこその味なのだろう。

「まだまだありますのでどんどん食べてください、とミサカは嬉しさを抑えつつ促します」
「ふふ、なんだかあんた見てるとこっちまで嬉しくなってくるわ」
「そうだな」

子供のようにお代わりを促す10039号の姿を見て笑顔になる二人。
その笑顔は食事が終わるまで続いているのだった。
そして楽しい時間は終わりを告げ、10039号は帰り支度を始める。

923上琴患者A:2010/04/30(金) 20:59:16 ID:eLoDlO.o
 
「ではミサカはそろそろ帰りますね、とミサカすっかり暗くなってしまった外を見ながら帰ることを告げます」
「あ、ちょっと待って、私も一緒に帰るから」

洗い物と片付けを済ませ、乾いた制服に着替えた美琴は10039号を引き止める。

「そうですか、ならミサカは先に下で待っています、とミサカはお二人に気を使ってみます。
 それではお義兄様、おやすみなさい、とミサカは別れの挨拶をします」
「おう、またいつでも遊びに来いよ」
「あ、ちょっと!…もう、気なんて使わなくていいのに。まああの子らしいっていえばらしいけど。それじゃあ私も帰るね」
「何なら送っていくぞ?さすがに暗がりで女の子二人を歩かせるのは…」
「大丈夫よ、あの子は私が守るから」
「ん、ん〜、でもなぁ」
「今日はいいの!姉妹の秘密トークがあるんだから!」
「わかったわかった、気ぃつけて帰れよ?」
「うん、ありがと。それと…」

チュっと軽くキスをする美琴。

「それじゃまたね当麻!」
「おう、またな。美琴」

手を振りながら廊下を走っていく美琴を同じく手を上げて見送る当麻。
こうして二人のバタバタとしたデートは幕を下ろす。
そして寮の入り口で待っていた10039号に合流した美琴はその手を握り、帰り道を歩き始めるのだった。

924上琴患者A:2010/04/30(金) 21:02:16 ID:eLoDlO.o
以上になります。
バッジネタは迷ったんですが、10039号が出したかったので強行しました。
なぜ俺は1039号をこんなに使いたいのかと…

こんな奴が書いたものですが皆さんが少しでも喜んでいただければ嬉しいです。
それでは失礼します。
ではでは〜

925■■■■:2010/04/30(金) 21:21:17 ID:AJ0AOuUM
>>924
乙でした。
10039号いろいろと耳年増なようでw

9261-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/04/30(金) 22:02:45 ID:k23rxj4Y
>>924
GJです。
「長編」として判定されたので、シリーズタイトルを考えてください。

927上琴患者A:2010/04/30(金) 22:47:42 ID:eLoDlO.o
>>925
もうなんだか自分でもこれでいいのかと思ってますw

>>926
いつもお世話になっています。
タイトルですが『例えばこんな三人の関係』という事で…
流星に願う〜 と、その悲しみ〜 と、今回のが一応繋がっています。
タイトルセンスが無いのは相変わらずでごめんなさい!
元々続けるつもりじゃなかったので、完結のほうに放り込んでおいてください。
でももしかしたらまた別の日を書いてしまうかもしれませんが…
その時は投下時にきちんと予告しますので、お手数お掛けしますがよろしくお願いしますm(_ _)m

9281-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/05/01(土) 00:03:22 ID:Xqx8Yq7o
>>927
了解しました。

929ぴんた:2010/05/01(土) 00:06:36 ID:Q0u0XV9k
皆さんGJです!
一週間ぶりに来たら400レス近く増えてる…すげぇ。
という事で自分もラッシュに乗っかります!小ネタですが^^;

一応テーマは『迷子』って事で!
他に誰かやってるネタかもしれませんが…、誰もいないようでしたら5分後に!

930迷子のお知らせ:2010/05/01(土) 00:12:48 ID:Q0u0XV9k


某大型デパート―――


美琴「えへ、えへへ」ニマニマ

ゲコ太(着ぐるみ)「…」ゾクゾク

美琴「えへへへへ」ニマニマ

ゲコ太(着ぐるみ)「…」ドキドキ

美琴「ゲコ太はホント可愛いなぁ。可愛いなぁ。……あ、あれ? そういえばあの馬鹿どこ行ったのかしら? まったく迷子になるなんてっ!」プンプン


  ぴんぽんぱんぽーん♪


美琴「ん?」

アナウンス『迷子のお知らせを致します。第七学区よりお越しの、御坂、美琴様。第七学区よりお越しの、御坂、美琴様』

美琴「…」

アナウンス『お連れ様がお待ちです。至急一階サービスセンターまでお越しくださいませ』


  ぽんぽんぽんぽーん♪


美琴「…」

  ――――――――――――――――――――――――――

受付「これですぐに来ると思いますよ」

上条「いやぁ、すみません。お世話になりまして…ん?」ペコペコ チラッ


  ドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


美琴「ふにゃあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」バリバリバリーン

上条「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

931迷子のお知らせ(別ver):2010/05/01(土) 00:14:29 ID:Q0u0XV9k


某大型デパート―――


美琴「えへ、えへへ」ニマニマ

美琴「このゲコ太のストラップ可愛いなぁ」ポケー

美琴「えへへへへ」ニマニマ

美琴「わっ! こ、このゲコ太のマグカップもっ! えへ、えへへ…迷っちゃうなぁ」アウアウ

美琴「ゲコ太はホント可愛いなぁ。可愛いなぁ。……あ、あれ? そういえばあの馬鹿どこ行ったのかしら? まったく迷子になるなんてっ!」プンプン


  ぴんぽんぱんぽーん♪


美琴「ん?」

アナウンス『迷子のお知らせを致します。第七学区よりお越しの、上条、美琴様。第七学区よりお越しの、上条、美琴様』

美琴「…」

アナウンス『お連れ様がお待ちです。至急一階サービスセンターまでお越しくださいませ』


  ぽんぽんぽんぽーん♪


美琴「…」

  ――――――――――――――――――――――――――

受付「これですぐに来ると思いますよ」

上条「いやぁ、すみません。お世話になりまして…ん?」ペコペコ チラッ

美琴「///」モジモジ

上条「お? おぉ、いたのか御坂。まったく今までどこほっつき歩いてたんだよ、ったく」ハァ

美琴「ご、ごめん…///」カァァ

上条「???」

932ぴんた:2010/05/01(土) 00:16:04 ID:Q0u0XV9k
以上になります。いや、何かすみませんでした。

933アミノ酸:2010/05/01(土) 09:33:01 ID:ENN9Lyxw
 >>932 GJです!
 
 呼び方一つでこうも変わるかといや良かった〜笑いました。
 これを母にやられたことがあります。
 高校の時ぐらいかな…別行動していて、携帯の電池(母)が切れたからって…
 何か思い出してしまった。

934ほのラブ同盟:2010/05/01(土) 13:31:51 ID:GJWiabCw
>>904
なんですかこのベタ褒めは!?
自分の好きな方々に評価してもらえるって、本当に力になりますね。

次回、7割くらい出来てると言いましたが、アミノ酸さんのエール(プレッシャーとも言う)により、加筆修正中です。
なんとか今日中に投下できれば…!

935アミノ酸:2010/05/01(土) 21:26:20 ID:ENN9Lyxw
皆様、こんばんわー(*'-')ノ

小ネタを思いつきました。短いのですいません。
レス消費も勿体無いし、このまま入れちゃいます。

>>934 ほのラブ同盟さん
 加筆修正ですと!うあー期待してしまいますよ!ってプレッシャーになってしまっては!
いつまででも待てますので、もう気の行くまま書いてください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

小ネタ もしも美琴が眼鏡をかけたら


美琴「ねっ、これ似合うかな?」

 赤いハームリムの眼鏡を掛けて、どうかな?と聞いてみる。

上条「ん〜…」
美琴「むっ、似合わない?」

 じゃあこれなら――今度は、ツーポイントの眼鏡を選び、やや上目遣いでアピール。

美琴「これはどう?」
上条「ん〜…そのだな」

 (微妙な反応ね……次はオーソドックスに攻めてみるか)

 縁が淡い赤色の眼鏡を選択、透明な箇所には綺麗なラメが入っていて、これは今日一番の自信作。

 ぐっと顔近づけて似合うでしょ?と様子を窺う。

上条「そのな、やっぱ…」

 不意に眼鏡は奪われて。

――ちゅっ

上条「そのままがいい」

 眼鏡があると、しにくいしなと呟かれた。

美琴「……ばか」

 
 おしゃれ眼鏡の購入はお流れになりましたとさ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

以上になります<(_ _)> それでわー!

936ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:06:35 ID:mpfbQCnQ
>>935
アミノ酸さんの積極的な上条さんがステキです!
うちの上条さんも、もう少ししっかりしてくれたら…w

そんなわけで、応援下さった後編が出来上がりました!
ご期待に添えるか分かりませんが、5分後に投下したいと思います。
3レス消費予定です。

937ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:14:55 ID:mpfbQCnQ
投下します。
ちなみに前編は>>792から>>795です。

938ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:15:14 ID:mpfbQCnQ
「さぁて、これよこれ!これが目当てで来たんだから!」

プリクラを撮り、上条達はあるゲームの筐体の前に立っている。
そこには―――

「大乱闘ストリートファイターズスピリッツ?」

何やら物々しいようで中身のない名前が書いてあった。
画面の中でキャラクター達が素早く動き回り、さらにビシィ!バシィ!という音が聞こえてくる。
物騒なタイトルよろしく、一般的に『格ゲー』と呼ばれるジャンルのものらしい。
しかし、その筐体に描かれているキャラクター達は、そのタイトルに反して人畜無害を絵に描いたようなおとなしいイラストだ。
そして緑色。

「って、またゲコ太かよ!」
「何よ!悪い!?」
「いや、別に上条さんは不満があるわけではないのですがね…」

上条はゲームのタイトルとキャラクターとのあまりのギャップに、どうツッコミを入れていいか迷う。
その迷いを表しているかのように、新作のはずのこの筐体の周りにはほとんど人がいない。

「なぁ、御坂妹。これって製作会社的には採算とれんのか?やりたがるヤツがそんな沢山いるとも思えないし…」
「いや、恐らくこれは、ここにのみ設置された、言わばお姉様専用機…!とミサカはピキーンと脳内に電波を走らせながら予測を立てます」

なるほどな、と上条は呟く。
1回100円のゲームが採算をとるのに1台あたり100回分の収入が必要だとして、それはイコール100人に来てもらわねばならない、というわけではない。
極端な話、1人でも100回プレイしてくれる人がいれば良い。
そしてこの少女は…もしかしたら…やりかねない。

「ねぇねぇ当麻、早速やりましょうよ!お金は私が出すからさ!私ピョン子使おっかな〜」
「強引だなぁ…。ま、いっか。伝説の遊び人、Mr.青ピより伝授された格ゲー戦闘術を見せてやるぜ!」

シュピーンという電子音と共に画面が切り替わる。
キャラ選択を終え、恋人同士二人の戦いが始まった―――!



「な…一応ゲコ太って主人公キャラだよな…?」
「ふふーん、ゲコ太達への愛でアンタが私に勝とうなど、1000年早いのよ!」
「いや、そこは競ってないけどな…」

画面には『88コンボ!』という文字と『1P パーフェクト』という文字が映し出されている。
この1Pとは、もちろん美琴のことである。
初戦で思いっきり敗れた上条は同じゲコ太を使って再戦を申し込み続けた。
主役キャラであるゲコ太ならば、ある程度のバランスがとれたオールマイティキャラであり、慣れれば一定以上の成果を上げることができると踏んだのだ。
しかし、二人の差は近付くどころか上条がボロボロにされるばっかりだった。
試合数も2桁を超えようとする今のバトルでも、美琴の操る『野生ノ本能ヲ取リ戻シタ黒ゲコ太』なるキャラに終始翻弄され続け、ついに一撃も入れることなくKOされてしまった。

「ちくしょー、せめて1回くらいは勝たせてくれたって良いじゃないか」
「甘いわよ当麻、勝負は非情なの。ライオンだって狩りのときウサギ相手でも全力を出すと言うわ」
「いや、なんかスケールがでかい話になってないか!?っていうかライオンの棲む所にウサギって棲息してるのか?」

ムキになって再挑戦をしまくっていた上条であったが、完封負けにより集中力を完全に切らしてしまった。
瞬きも忘れていたらしく、目の疲れを感じる。
ふーっと息をついたところで、自分の真横にすっと動く影を感じた。

「ん?おぅ、御坂妹か。すまん、なんだか放っておいちゃったな…」

筐体のイスから立ち上がり、伸びをする。
一点を見つめ続けるというのは、目だけではなく背中にも負担がかかるようだ。
そんな上条を見ながら、今度は御坂妹が筐体の前に腰を下ろした。

「あれ、お前、ゲームとかできるのか?」
「いえ、ミサカは見るのも初めてです。…しかし、あなたの敵討ちをします、とミサカはお姉様へ挑戦状を叩き付けます」

少女はビシィッと人差し指を姉に向けた。
意外な行動に美琴は一瞬ぽかんとするが、すぐにニヤリとした笑みを返す。

「良い度胸じゃない!悪いけど妹だからって勝負事に手は抜かないわよ!」
「望む所です。負けて吠え面かくなよ、とミサカは最近テレビで覚えた言葉を使ってみます…!」

奇しくも選んだキャラクターは同じ。
画面の中で、外で、同じ容姿の二人が戦いを始める。
戦いの火蓋は、レディー、ファイトという電子音声によって切って落とされた―――!

939ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:16:09 ID:mpfbQCnQ



結論から言うと、美琴は全く手加減しなかった。
初手こそ小手調べだと言わんばかりに威力の低い遠距離攻撃を仕掛けたが、妹の操るキャラクターがそれを軽やかに躱し、その動きのままに反撃を試みると、真剣な顔をしてレバーやボタンをガチャガチャと素早く操作した。
その操作に合わせて、画面内のキャラはフェイントを織り交ぜた圧倒的な攻めを見せる。
地上をダッシュしたかと思えば、すかさず跳び上がって空中から蹴りを放ち、防がれれば、それが目的だと言うかのように投げ動作に入った。
それを見て上条は、自分が手加減されていたのだと気が付く。
それくらい今の美琴は本気なのだ。
しかし、

「―――、なんで!?」

美琴の凄まじい猛攻は、御坂妹の操るキャラクターに全くクリーンヒットしていない。
ある時は防がれ、ある時は捌かれ、ある時は躱され、さらには、カウンターまで受けた。
常に次の思考を読まれている気がする。
徐々に追い込まれていく美琴は、逆転の一手として複雑なコマンドを入力した。
必殺奥義と呼ばれるダメージの大きい特殊コマンドだ。
瞬間、ゲーム画面が暗転し、美琴の操るキャラが光に包まれる。
そしてその光を収束させるようにして相手に放出、叩き付けた。

「いっけぇぇぇぇ!」
「―――!」

思わず声を上げる美琴に対し、御坂妹は静かに素早くレバーとボタンを操作した。
それに応じて中のキャラクターも光に包まれる。
放たれた光線は、美琴側のキャラの必殺奥義とぶつかりあい、相殺された。

「なっ!?」

驚きを隠せない美琴だったが、クールビューティたる御坂妹はそれを見逃さない。
一瞬で懐に潜り込み、連打を叩き込んだ。
美琴側の体力ゲージが一気に減り、それがゼロになると、妹側の画面に『YOU WIN』という文字が表示された。
試合終了である。

940ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:16:27 ID:mpfbQCnQ



「アンタ…本当に初めてなの?」

真剣試合の後、ジュースを片手に美琴が尋ねた。
上条と同様に目に疲労を感じるらしく、冷えた缶を目に軽く当てたりしている。

「先ほども言った通り、見るのも初めてですよ、このミサカは、とミサカは含みのある言い方をします」
「ん?『この』ミサカ?」

不思議な表現に首をかしげる上条。
対して美琴は、心当たりがあるのか険しい表情を浮かべた。

「はい、ミサカはネットワークによって様々な経験値を共有できるのです。実はこのゲームも隠しエンディングまで行った他のミサカがいて…」
「やっぱりね…そんなことかと思ったわよ!インチキじゃない!」

妹の言葉を遮り、美琴は興奮した声を上げた。
だが、妹の表情は冷静さを失わない。

「大人気ないですよお姉様、手加減ナシと言ったのはお姉様じゃありませんか、とミサカは胸を張りつつ、そうですよねと同意を求めます」

御坂妹は反論しながら、上条のへと顔を向けた。
正直、二人のやり取りに着いていけていない上条は、うーん…と呟きを漏らす。

「まぁ…ズルいとかはよく分かんねぇけど、美琴に勝つなんてすごいな」
「ありがとうございます、とミサカはさりげなく腕にむぎゅっと抱き付きます」

全然さりげなくない突然の御坂妹のアタックに、恋人たちはお互いに固まった。
二人とも顔が赤いが、恐らくそれが意味する感情は異なる。
そして、怒りの感情を込めた一人が口を開く。

「何やってんのアンタ!?と、当麻は私の…こ、こ、こいび…」
「お姉様は失恋と言いませんでしたから」

恥ずかしいセリフを言い切れない美琴の言葉を遮り、妹は自分の行いの正当性をさらりと主張してのけた。
瞬間、美琴は先日の公園でのやり取りを思い出す。
確かに美琴は、妹の『これが失恋か』という問いに何も言葉を返すことが出来なかった。
が、だからといって、目の前の行為は許し難い。

「あ、アンタにはさっき携帯とプリクラあげたじゃない!あのときの感謝の気持ちは何だったのよ!?」
「ふふふ、別に頼んだわけじゃありません、あのときはあのとき、今は今、とミサカは口喧嘩の常套句を口にします」
「こ…この恩知らずがー!」

ピクピクと青筋を浮かべた美琴の周囲の空気から、バチバチという破裂音が聞こえてくる。

「きゃー、こわいお姉様がいじめるー、たすけてー、とミサカはどさくさに紛れて隙だらけのボディーに抱き付いてみます」

御坂妹は完全な棒読みでまくし立てながら、相変わらず固まりっ放しの上条の胸にぎゅーっとしがみついた。
エスカレートする妹の行為に、美琴は唖然として口をパクパクさせる。
あまりのショックに雷撃のコントロールを失い、ビリビリが空気中に霧散した。

「あ、あ、あーっ!!アンタ何やってんの!?…って、当麻も何か言いなさいよ!」
「う…まぁまぁ、姉妹仲良くな」

固まり続けていた上条は、この争いを何とか鎮めようとするが、歯切れの悪い物言いに、美琴のボルテージはさらに上昇する。

「な…何よそれ、バカ当麻!………あーもう、それじゃあ…!」

941ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:17:00 ID:mpfbQCnQ

怒りに興奮し、顔を上気させた美琴は、妹の反対側から自分の恋人の胸に腕を回し、思いっきり抱き締めた。
いつもより強く。
上条に自分の僅かばかりの膨らみを押し付けるように。
もちろん上条もそれに気付き、一気に顔を赤らめて体を硬直させる。

「な、何をなさってるんですか、美琴サン!?」
「べ、別に良いじゃない!私たちは、こ、恋人同士なんだから!」

妹に対抗して上条にアプローチをかけるが、恥ずかしさから早口になるのを押さえられない。
と、美琴は妹の表情が僅かだが確実に変化したのに気付いた。
寂しそうで、悲しそうで、羨ましそうな顔。

(―――!)

それで美琴はある考えに至る。
目の前にいる妹は、先ほどから『失恋とは言わなかった』とか、『お姉様が怖い』とか、何かと理由を付けて上条に近付いている。
それはつまり、彼女なりの『言い訳』なのではないだろうか。
自分は特別な存在ではないから、上条には御坂美琴という恋人がいるから、そんな理由に対抗するための口実。
恋人である自分にはある程度自然にできる行為、それが妹には特別な理由なしには出来ない。

(何がさりげなく、よ…)

同じDNAのらせんを持つ身である。
自分の考えが大きく外れているとは思わなかった。
つまり、逆の立場ならきっとそうしていたかもしれない、ということだ。

(何がどさくさに紛れて、よ…)

自分の胸の中で、何かが形になっていく。
苛立ちのようで、深い愛情のような、大きな気持ち。

(いい加減に『その自分自身』の想いを受け入れなさい…!)

深い呼吸を一つ、決心はついた。
美琴は目の前の妹を見やり、自分たちが抱き付いている上条をまっすぐに見つめる。

「ねぇ、当麻、さっき姉妹仲良くしろって言ったでしょ」
「お、おう」

二人の少女から抱き付かれるという状況にカチカチになっていた上条だったが、なんとか返事をする。

「あのね…わ、私もこの子も、姉妹仲良く…アンタのことが好きなのよ」

途切れながらも、美琴は力強く言い放った。
その言葉に上条だけでなく、御坂妹もビクッと反応した。

「お姉、様…?」

恐らく自分の姉は、今まで自分が必要以上に上条に近付くことをあまり快く思っていなかった。
なのに、今、彼女は自分が伝えたくとも秘め続けてきた想いを口にしてしまった。
確かに現実として美琴と上条は恋人同士である。
だが、今の一言で、お姉様は第三者であった自分を一気にライバルの座にまで引き揚げてしまったことになる。

「どうして…、とミサカは生じた疑問を口にします」
「私だって、自分の想いがいつまでも一方通行なのはツラいってよく知ってるもの…だけど…当麻は私のものなんだからね!アンタにだって渡さないから!」

真剣な目。
もう美琴は自分のことを対等なライバルだと見ている。
それが嬉しくて…一瞬だけ微笑みを浮かべられた気がする。

「宣戦布告として受け入れましょう、とミサカは現在の戦況が芳しくないことを理解しながらその闘志を燃やします」

だから、胸を張って堂々と姉の目を見返した。
あらゆる感謝、畏敬の念、それら全てをすっ飛ばして、今自分は彼女と真正面から向き合っている。

「あの…俺の立場は…」

ダブルの愛の告白を受けて嬉しさ半分、困惑半分の上条であるが、状況が特殊すぎてどんな顔をしていいか分からない。
そもそも、二人の少女が自分を抱き締めながらライバル宣言をする状況なんて、どんな恋のハウツー本にも載っていまい。
そんな上条へ、早速姉妹のライバル対決の火の粉がふりかかってきた。

942ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:17:28 ID:mpfbQCnQ

「ねぇ、当麻、前に病院で手作りクッキーが欲しいって言ってたわよね?今度、美味しいクッキー焼くから、ピクニックデートしましょ!私たち恋人同士だもの♪」

抱き締める腕を決して緩めずに、上条を振り向かせる美琴。

「それでは私は怪我や疲労の多いあなたに、能力を使ったビリビリマッサージをプレゼントしましょう、とミサカは積極的にも濃厚な身体接触を目論みます」

対する御坂妹はクールな口調の中に、僅かばかりの恥じらいを含ませる。
本の少し上気する頬が目を引く。
上条はドキッと心臓が高鳴るを感じたが、今の御坂妹の発言には美琴も敏感に反応した。

「は!?身体…接触…って…ちょ、ちょっとアンタ何言って…」
「お姉様、恋愛とは引いた者の負けなのです、とミサカは先日週刊誌から得た知識をひけらかします」
「え…そ、そうなの…?でも…う…じゃ、じゃあ…」

妹の一歩進んだ(?)恋愛知識に、もじもじする美琴。
真っ赤な顔は、自分の中で羞恥心と戦っていることの表れか。
しかし、その争いにも決着がついたらしく、うるうるした瞳で上目遣い気味に上条を見る。

「と、当麻?あのね…わ、私が当麻を気持ち良くしてあげる…」

「「ぶっ!?」」

突然のトンデモ発言に、上条と御坂妹はシンクロして噴き出す。
妹は、これがオリジナルの攻撃力というわけですか…、なんてゴニョゴニョと呟き、上条は全く言葉を失い、真っ赤な顔で口をあんぐりと開いている。

(お、おお、おおおお落ち着け俺!今のはアレだ、言い方はアレだけど、御坂妹のビリビリマッサージに対抗しただけで、他意はない…はずだ!いや、他意があっても全然構わな…って何想像してるんだ、相手はまだ中学生だぞ!でも美琴の目、吸い込まれそうに綺麗だ…じゃなくて!ってゆーかレベル5のビリビリマッサージって俺死ぬんじゃね?)

一瞬で走馬灯のように様々な妄想が自分の中を駆け抜け、その幻想たちを何とか押さえて平常心を取り戻そうとする。
と、目の前の少女たちの変化に気が付いた。
何やら、二人がこちらを見てる。
自分の顔を見ているというか、顔の一部を凝視しているような―――

ぽたっ

上条の右手に赤い点が現れた。
出所は、自分の顔の真ん中あたり。
つまり、鼻血が垂れているのである。
―――と、そこで彼女たちのジトーっとした眼差しの意味するものに気が付く。

「い、いやですね、これはその、別に美琴さんに対して劣情を抱いたとかいうわけではなく、だからといって美琴さんの魅力が不足しているなんて言うわけもなく、何て言いますか、ワタクシの想像力がちょっとだけ豊かだったというか…」
「「不潔…(とミサカは男は狼なのよ、なんて言い古されたフレーズを口にします)」」

しどろもどろで言い訳を口にする上条を、見事なシンクロ率を誇るダブル御坂は、たった一言で真っ二つに切り捨てる。

「………ふ、不幸だ…」

息ぴったりな姉妹の精神攻撃を受けて、なんとか吐き出したセリフは、クラスメイトの耳に入れば大乱闘間違いなしの、お決まりのものであった。



―――とある病院の前


「今日は楽しかったわよ!付き合ってくれてありがとね」

美琴は目の前にいる妹に笑顔を向けた。
日は傾き始め、夕陽が病院の白い壁をオレンジに染めている。
視線の先には、ライバルである御坂妹。
自分の隣りには、恋人である上条当麻。
これが今の自分と妹の差なのかもしれない。
そのことで優越感に浸るつもりはないが、それでも、自分は幸せ者なんだと再確認する。

「お姉様、今日はありがとうございました、とミサカは新しい繋がりに感謝します」

今日プレゼントしたばかりの携帯電話を手にして、妹は大切そうに胸に当てる。
電池カバーの中では3人が笑顔を浮かべている。
妹がその胸に抱き締めているのは誰なのだろうか。
特定の誰かのような気がするし、3人みんなのような気もする。
別に答えが欲しいわけじゃない。
ただ、これからもずっと、上条だけじゃなくて妹も一緒にいたいな、そう思った。
今度はセブンスミストで二人で服を選ぶのもいいかもしれない。
ちょっとお茶でもしながら、女の子の会話を楽しむのもいい。

だから、

「またね」

さよならでも、ばいばいでもない、未来に続く言葉と共に、今日の楽しかった一日を締めくくる。
手を振り返す妹も、いつもより優しい笑顔な気がした。





とある少女のういういdays6―つづく―

943ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 00:18:13 ID:mpfbQCnQ
以上です。
やっぱりオーバーしてしまいました…。

なんだか御坂妹シリーズが続いた気がしますが、次こそ美琴さんにハッピーになってもらおうかなと思っています。
自分でも初期の作品を読み返して、あの頃のういういしさが懐かしくなってきたので。

それでは、今回もお目通し下さった方々、ありがとうございました!
ご感想頂ければ幸いです。

944コタケン:2010/05/02(日) 00:24:52 ID:zjxPIKws
えー、ほのラブ同盟さんに続きまして…。

2度あることはなんとやら。3度目の投稿になります。
今回は3分で終わるショート・ショートです。
挿絵もありますが、最初に見てしまうと本編がまったく面白くなくなってしまうかもしれません。
それではよろしくお願いします。

945コタケン:2010/05/02(日) 00:25:36 ID:zjxPIKws
6月のある晴れた昼下がり。
 歴史の風格を感じさせる教会の壁に据え付けられたステンドグラスは、色とりどりの影を床に描きだしている。
 いずれも見上げるほどの大きさのパイプオルガン、聖母マリア像、そして十字架が、荘厳なオーラをかもし出す。
 信仰心のない者でさえも言葉を発することを躊躇してしまう、神聖な何かがこの空間を永らく支配していた。

 が、ちょうど場の中央に陣取る2人が神秘的な雰囲気をこっぱ微塵にブチ壊した。
「なぁ美琴さんや、この体勢は上条さん的になかなか辛いものがあるのですが」
 一方の少年がぼそっとつぶやくなり、もう片方の少女はさっそくかみついてきた。
「む、なによそれ。まさかひょっとして遠まわしに重いって言ってるの? なめた口きいてんじゃないわよアンタ」
 むすっとしつつも美琴はしなやかな両手を当麻の首にしっかりと絡ませ、当麻は当麻で美琴を横向きに抱きかかえていた。いわゆるお姫様抱っこである。
「さっきまで泣いてたくせに、うちの姫様ときたら。まったくやれやれですな」
「うぅ……もう、お姫様じゃないもん。というかなんであんたはこんな時にもいつもどおりなのよ……って、よく見るとあんただって目元潤ましちゃってるじゃない! うわー、うわーっ!」
「ちっ、ちがいますこれはあれですよホコリが目にはいっちまっただけですから! そんな、にまーっとした意地の悪い笑顔で上条さんを見ないでください!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ彼らの背後ではステイル=マグヌスが渋い顔で紫煙をくゆらしていたりするのだが、2人だけの世界を築き上げている彼らには完全にアウトオブ眼中であった。

「そういえばさ、ここって本当にステキな所よね。すごくロマンチック……」
「はっはっは、上条さんの人脈に恐れ入ったか」
「売り飛ばしたらいくらになるのかしら」
「ちょっとまてや! お嬢様のクセに何言ってんですか?!」
「あんたの庶民感覚がこっちにまで染みついてきた証拠ね。っていうかもうお嬢様じゃないってーの。ついでに言えば超電磁砲<レールガン>も卒業ね」
なんだか妙にすがすがしい少女に当麻は肩をすくめる。

「お姫様でもお嬢様でも超電磁砲<レールガン>でもなけりゃ、いったいなんだってんだよ?」
「はぁ? そんなの決まってるじゃない!」

 腕の中の少女の答えなど訊くまでもないのだが、当麻はあえてしらばっくれてみた。
 開け放たれた扉から外へと一歩を踏み出す。あたたかな陽の光と、群集の歓声が2人を包み込んだ。
 美琴は何を当然と言わんばかりの、それはそれはまぶしい笑顔を浮かべてたったひと言。





「わたしは、当麻のお嫁さんなんだから」


                        END

ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/5d/862bbf429758d84bafd04523609c3f33.jpg

946コタケン:2010/05/02(日) 00:26:56 ID:zjxPIKws
どうもありがとうございました。
あ、タイトルは「その先に遥かな想いを」とでも。
only my railgun の最後の一節より。

伏線にいつ、いくつ気づいたでしょうか?
1000レス間近になると書き手の方は牽制しあうのでしょうかね。

 が、ちょうど場の中央に陣取る2人が神秘的な雰囲気をこっぱ微塵にブチ壊した。
「なぁ美琴さんや、この体勢は上条さん的になかなか辛いものがあるのですが」
 一方の少年がぼそっとつぶやくなり、もう片方の少女はさっそくかみついてきた。
「む、なによそれ。まさかひょっとして遠まわしに重いって言ってるの? なめた口きいてんじゃないわよアンタ」
 むすっとしつつも美琴はしなやかな両手を当麻の首にしっかりと絡ませ、当麻は当麻で美琴を横向きに抱きかかえていた。いわゆるお姫様抱っこである。
「さっきまで泣いてたくせに、うちの姫様ときたら。まったくやれやれですな」
「うぅ……もう、お姫様じゃないもん。というかなんであんたはこんな時にもいつもどおりなのよ……って、よく見るとあんただって目元潤ましちゃってるじゃない! うわー、うわーっ!」
「ちっ、ちがいますこれはあれですよホコリが目にはいっちまっただけですから! そんな、にまーっとした意地の悪い笑顔で上条さんを見ないでください!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ彼らの背後ではステイル=マグヌスが渋い顔で紫煙をくゆらしていたりするのだが、2人だけの世界を築き上げている彼らには完全にアウトオブ眼中であった。

「そういえばさ、ここって本当にステキな所よね。すごくロマンチック……」
「はっはっは、上条さんの人脈に恐れ入ったか」
「売り飛ばしたらいくらになるのかしら」
「ちょっとまてや! お嬢様のクセに何言ってんですか?!」
「あんたの庶民感覚がこっちにまで染みついてきた証拠ね。っていうかもうお嬢様じゃないってーの。ついでに言えば超電磁砲<レールガン>も卒業ね」
なんだか妙にすがすがしい少女に当麻は肩をすくめる。

「お姫様でもお嬢様でも超電磁砲<レールガン>でもなけりゃ、いったいなんだってんだよ?」
「はぁ? そんなの決まってるじゃない!」

 腕の中の少女の答えなど訊くまでもないのだが、当麻はあえてしらばっくれてみた。
 開け放たれた扉から外へと一歩を踏み出す。あたたかな陽の光と、群集の歓声が2人を包み込んだ。
 美琴は何を当然と言わんばかりの、それはそれはまぶしい笑顔を浮かべてたったひと言。





「わたしは、当麻のお嫁さんなんだから」


                        END

ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/5d/862bbf429758d84bafd04523609c3f33.jpg

947コタケン:2010/05/02(日) 00:27:52 ID:zjxPIKws
どうもありがとうございました。
あ、タイトルは「その先に遥かな想いを」とでも。
only my railgun の最後の一節より。

伏線にいつ、いくつ気づいたでしょうか?
1000レス間近になると書き手の方は牽制しあうのでしょうかね。

948ヴァヴァーン:2010/05/02(日) 01:31:46 ID:TI7xBHjo
また来ました。
問題なければ5分後、『ツンデレカルタ(美琴ver)』のか行を投下させていただきます。
上条さんが結構キャラ崩壊しちゃってますが、いちゃ最優先で書いたつもりです。
6レス消費予定です。

949ツンデレカルタ(美琴ver):2010/05/02(日) 01:39:10 ID:TI7xBHjo
ちょっと休憩

上条「ようやくあ行終了か…長かった…」
美琴「…そう?結構あっという間だったんじゃない?」
上条「いや、読書の習慣すらないSS初心者にとってはまさに鬼門だったといいますか…」
美琴「なに訳わかんないこと言ってんのよ…まあいいじゃない。ゆっくりいきましょ。時間はたくさんあるんだし」
上条「そうだなー…ん?お前、始める前はあんだけ嫌がってたのに早く終わらせたいとは言わないんだな」
美琴「うっ!?」ギクゥ
上条「あっ!………はは〜ん。わかったぞわかっちゃったぞわかっちゃいましたぞ三段活用!」
美琴「な、なによ!?」
上条「つまり、今までこの部屋でツンデレを演じ続けていた美琴たんが、ついに本当にこの上条さんの魅力に心奪われてしまったと!」
美琴「は、はぁああ!?ち、ちが…!」ボッ
上条「休憩中にも関わらずなぜか吸いついたように上条さんの膝から離れようとしないのもそのためだと!」
美琴「うっ!?う、ううぅぅぅ…」プシュー
上条「今ではもう、いっそ俺の頭に手をまわしてしがみついてしまいたい程にメロメロだと!」
美琴(うわーーーーー!!!だ、だめっ、もう全部バレちゃってる!…い、いえ、やっと気付いてもらえた…?そ、そうよ!……ならもういっそのこと………!!!)


上条「…そういう設定なんですね!」
美琴「そ、そのっ、実はもっと以前から………………って、は?」


上条「いやいや、まさか御坂がこんなに演技派だったなんてな〜。いくら罰ゲームとはいえ休憩中まで役作りに余念がないなんて、上条さん脱帽ですよ」
美琴「…」
上条「ぐへへ、俺にメロメロな美琴たん萌え〜………はっ!いかんいかん!妄想は妄想、現実は現実、と」
美琴「……」ピキ
上条「あ、でも今はそんな妄想を楽しむのが目的だったんだ。しまった現実回帰しちまった」
美琴「…っこの……!」ピキピキ
上条「よし、じゃあもう1度『上条さんLOVEな美琴たん』という、現実では起こり得ない自分だけの現実の再構築を…」

美琴「ばかぁああああああああーーーーーーーーー!!!!!!!」ビリビリビリ
上条「えぇ!?なんでお怒りなんですぎゃあああああーーーーーーーーー!!!!!!!」

950『か』:2010/05/02(日) 01:40:13 ID:TI7xBHjo
美琴「勘違いしないでよね!…別にアンタのためにやってわけじゃないんだから」

上条「なんだかんだで続けてくれる美琴たん萌えー」
美琴「う、うっさい!仕方ないでしょ罰ゲームなんだからっ」
上条「しかもセリフがまたタイムリーだな」
美琴「…ホントに勘違いしないでよね」
上条「はいはいわかってますよー。罰ゲームだから仕方なくね、仕方なく」
美琴「………やっぱり勘違いしてるじゃない」ボソッ
上条「ん?なんか言ったか?」
美琴「ふん。なんにも言ってないわよーだ」プイッ
上条「…それ、可愛いな」
美琴「へ?」
上条「さっきもやってたけど、その『プイッ』ってやつ。ちょー可愛い」
美琴「な!?なな何言ってんのよ!アンタ本当に馬鹿じゃないの!?」
上条「なあなあ。もっかいやってくれよもっかい、プイッって」
美琴「ア、アホかー!!いいい、いやに決まってんでしょこのド変態!!ふんっ」プイッ!
上条「!!!ぃやっほーう!そっけない美琴たん萌えー!」ダキッ
美琴「しまった!?ふふふにゃーーー!!!」

951『き』:2010/05/02(日) 01:40:55 ID:TI7xBHjo
美琴「き、きききキスなんて、ひゃくねん早いわよ!」

上条「声裏返ってますよー」
美琴「うあーっ!うるさいうるさいうるさい!もうなんなのよこのセリフ!」
上条「そりゃやっぱり、キスを迫られた女の子がホントは嬉しいくせに恥ずかしがって…」
美琴「まともに答えてんじゃないわよ!……うぅぅー。これはちょっと、恥ずかしすぎ…」
上条「んん〜?ふっふっふ。『キス』って単語にここまで反応するとは、美琴ちゃんったらまだまだお子ちゃまでちゅね〜。…はっ、もしかして生理もまだ…」
美琴「それ以上ぬかしてみなさい…!また体中の毛細血管ブチブチに引き裂いて…!」
上条「…なんてことはないですよね!ごめんなさい調子乗りました許してお願い殺さないでー!」
美琴「ラッキーだったわねぇ…私以外だったらセクハラで訴えられてたところを、殺されるだけで済むなんて」
上条「いやいやアンラッキー過ぎるでしょう!?不幸だー!」
美琴「…ふん。なによ。別にアンタだって経験あるわけじゃないんでしょ?」
上条「え?俺か?まあそうだな。うん。ないぞ。妄想の中の美琴たんにさんざんちゅっちゅした分を除けば」
美琴「ふへぇえ!?ちゅっ、ちゅちゅちゅ!?」
上条「…うっ、やばいやばい。思い出したら実行したくなってきた。次行こう次」
美琴「ちゅっ…ちゅちゅちゅちゅ!?!?」

952『く』:2010/05/02(日) 01:41:41 ID:TI7xBHjo
美琴「くぅ……胸のことを…!」

上条「…」チラッ
美琴「…」ジロ
上条「…え、え〜と………なかなか慎ましやかで、和服とか似合いそうだよな!あっ、それにほら、典型的な貧乳ツンデレ…」
美琴「死ねぇ!」ゴンッ
上条「いでぇ!ず、頭突きやめろ!頬骨に当たって地味に効くぞっ」ズキズキ
美琴「うっさい!アンタに私の気持ちが解るか!私だって、なんの努力もしてないってわけじゃないんだから!」
上条「え。努力って………はっ!?まさか自分で自分の胸を、揉ん…」
美琴「たしかもう遺産分配は済んでるのよねぇ…!」バチバチ
上条「いやいやいやいやいくら不幸続きの上条さんでもそこまでの準備は!だから帯電やめてー!」
美琴「………じゃ、じゃあ。ひとつ質問に答えてくれたら、許してあげる」
上条「は、はいっ。答えられることでしたら!」
美琴「……………ア、アンタの。す、好きな胸のサイズって、どのくらい…?」
上条「…!」
上条「………御坂」
美琴「………」ドキドキ
上条「『大きい胸と小さい胸、どっちが好き?』って言い直してく…」
美琴「やっぱり死ねぇえええええーーーーーーー!!!!」ビリビリビリビリ

953『け』:2010/05/02(日) 01:42:29 ID:TI7xBHjo
美琴「怪我でもされたら、私が困るじゃない…」

上条「うっ…本気の視線が痛い…」
美琴「だってアンタの場合シャレになってないじゃない」
上条「ごもっともです」
美琴「…でも、その内の1回は私のせいなのよね………」
上条「…それは違ぇよ。アレだって俺がやりたくてやったことだ。俺の怪我は俺の責任で、お前の気にすることじゃない」
美琴「…でも」
上条「人に散々心配かけて、勝手だなとは思う。でも俺はもう決めたんだ。美琴と、その周りの全ての世界を護るって。だからこれからもそうする。勝手にな」
美琴「…」
上条「だから、俺の怪我のことで美琴が気に病む必要なんて…」
美琴「…ってい!」ゴンッ
上条「いってぇ!…な、なに、なに!?なぜゆえにまた頭突き!?」
美琴「ふんだっ。あんまり勝手なことばっか言ってるんじゃないわよ!今に見てなさい。私は守られてばっかりのお嬢様じゃないんだから!」
上条「み、美琴さん…?」
美琴「だから!…つまり、私が言いたいのはっ」

美琴「今は膝の上だけど…アンタの隣は、ちゃんと空けときなさいってことよ!」

954『こ』:2010/05/02(日) 01:43:22 ID:TI7xBHjo
美琴「このばか!……私の気持ちも知らないで…」

上条「…………………………………………」
美琴「…な、なによ。なんか言いなさいよ」
上条「…ふぅー。いや悪い、さっき少しシリアスモード入っちゃったからさ。いま妄想全開の美琴たんLOVEモードに切り替えてた」
美琴「はっ、はあ!?みっ、みみみっ、美琴たんラヴ!?」
上条「というわけで美琴たん。今のセリフもう1回お願いします」
美琴「な、なに言ってんのよ!だ、だめに決まってるじゃない!1度だってすんごい恥ずかしいのにっ」
上条「え〜…だめ?」
美琴「うっ!……だ、だめじゃな………くないっ!だめよ!その手には乗らないんだからっ」
上条「…絶対?」
美琴「絶対!」
上条「ケチー。いいじゃんか〜美琴〜」ギューッ
美琴「うにゃあっ!?あああ、あんた、なななにし、なにし…!」
上条「ほらほらっ。言ってくれないと、もっと強く抱きしめちゃうぞ〜?」ギュギューッ
美琴「ふわ!?ふっ!………に、にゃぁ…」プシュー
上条「あ、あれ?まだ口を割らないのか……………む、むふふ。な、なら、ちょっと調子乗っちゃうか!?乗っちゃいましょうか余裕がないんで2段活用!それっ、押し倒し!」ドサッギューッ
美琴「ふ、ふやややっ!?ふっ、ふにゃあぁぁ………ぁ…」プシュシューッ

上条「………あ、なんか首筋めっちゃいい匂い」クンクン
美琴「ちょおっ!?ふんにゃにゃにゃにゃきぃゃあああぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!!」ビリビリー!

955『こ』:2010/05/02(日) 01:46:10 ID:TI7xBHjo
以上です。
調子に乗りすぎました。
ウチの上条さんはいつ逮捕されても文句は言えません。

前回投下時に感想を下さったお二方、ありがとうございました。
おかげで再び読み手に回ってしまおうかという誘惑を振り切ることができました。

もうちょっと溜まってからまとめて投下しようとも思ったのですが、セリフのみのSSはあんまり長いと少しクドいかなと思い、か行のみしか出来ていない段階でも投下させていただきました。

感想、批評、アドバイスなど、もちろん随時募集中です。では。

以下感想

>>943
GJです!気持ち良くしてあげるに萌えましたw
>>947
今回はカラーできれいですね!私は上条さんの涙でピンときました!

956■■■■:2010/05/02(日) 07:54:45 ID:Wib8Nk52
>>955
乙!すごく面白かった!終始にやにやが止まらねえw
これがあと8回近くあるということか……ヒーハー!

しっかし上条さん通報されてもおかしくないなw

957■■■■:2010/05/02(日) 10:07:09 ID:sOFrRPMA
>>932
GJ!上条美琴さんがものすごく可愛かったですよ!!

>>936
GJです!っけ。随分と臭いセリフだ。
美琴「で、でも! それがいいのよ!!」
ということですね。わかります。

>>943
GJ!あれですね。美琴は帰った後、自分の大胆発言思い出して、悶えちゃうんですね。わかります。

>>946
ええ、にやにやしっぱなしですよ。このいちゃいちゃ夫婦め!
GJでした!

>>955
GJ!キスは百年早い?100秒くらい待ってのいい間違いなんじゃ(ry

958アミノ酸:2010/05/02(日) 17:35:37 ID:vjceGKoM
皆様、こんばんは(*'-')ノ

また小ネタを思いつきました。いや決して本編放ってるわけじゃないですよ!
レス消費も勿体無いので、そのまま入れちゃいます。
それでは
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

小ネタ とあるお茶のCMから


上条1「リフレッシュ担当です」

 爽やかスマイル、挨拶代わりに軽くほっぺに…。

美琴「……ふぇっ?」

上条2「うるおい担当です」

 熱っぽい瞳で見つめられ、時間を掛けてじっくりと…。

美琴「ちょっ……んっ」

 しばらく放心の後。

美琴「――な、なななな何で?!」

(と、当麻が…当麻が二人いる?!)

上条1.2「「美琴はどちらを選ぶ?」」

 迫り来る二人の当麻。

(え、選べって言われても…うるおい?いやリフレッシュ…待て待てそういうことじゃなくてーー!)

美琴「ふっ…ふにゃあぁぁぁあああーー」

 ビリビリビリビリ、ちゅどーん。
 

――ちゅんちゅん


(…………ゆ、ゆめ?)

 はっ、として隣をみる。

美琴「よ、よかった…」

 安心したら眠くなってきた。
もう一眠りしよう――温もりを確かめるように、そっと寄り添う。

上条「………美琴?」

 当麻の動く気配がして、背中に腕が回される。

(やっぱりこの当麻が一番…) 

 
夢よりも現実の上条さんがいい美琴さんでしたとさ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上になります。次はおそらくPart9でまた!宜しくお願いしますー。

959ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 19:16:22 ID:mpfbQCnQ
パート8のうちに、感想&感想返しです。

>>947
出た!マルチ職人さん!
挿絵も文章描写も丁寧でステキです。

>>955
感想ありがとうございます。
狙いすぎたセリフですけど、ずきゅーんして頂けて嬉しいです。

ヴァヴァーンさんのカルタシリーズ、一度に5種類の話を書きあげてて本当にすごいです。
尊敬です。
これからも楽しみにしています!

>>957
身悶え美琴さんは永遠に不滅です!
しかし…最近この美琴さん、確信的な気がしてきた…。

>>958
アミノ酸さん、新作ラッシュですね!
相変わらずの当麻さん、寝てても積極的www
加筆修正はお気に召しましたでせうか??

960アミノ酸:2010/05/02(日) 22:39:52 ID:vjceGKoM

あら+感想部分がすっぽり抜けてた;
どうも〜(⊃д⊂)

>>959 ほのラブ同盟さん…
 や ら れ ま し た。
「わ、私が当麻を気持ち良くしてあげる…」
 なんて、上目遣い+うるうるした瞳=最強必殺コンボですか!
しかも天然ゲージはMAX?!美琴は御坂妹との試合(マッチ)には
負けたけど、勝負には勝ってる。
そのあとの上条さんと御坂妹が同じリアクションというのがまたね…
より際立たせる効果を発揮して、いい仕事してますよ〜ホントに!
それに彼氏(上条さん)に、実は妹も貴方の事好きなのよって、
言っちゃう所が美琴らしいと感じました。もうほのラブワールド(勝手につけちゃいました)
絶好調ですね。話のもって行き方が、よかったです〜これからも楽しみにしてます!
どこかで止めないと書き連ねってしまうのでこのへんでw

 私の書く上条さんて積極的です?w少しでもニヤっとして頂ける瞬間を書けるように頑張りますよ〜!

>>947 コタケンさん
 何ですかこの絵は!?この描写は?!
うあーすげええええ、想像だけでなくそれを絵にするのって
中々出来ない事をやっている、これってほんと真似できないです。
私、コタケンさんのことは「入れ替わりデートで知る本音」から知りました。
いや〜次は小ネタなのに、完成されていて…ああもう、4度目の投稿待ってますよ〜(叫)

>>955 ヴァヴァーンさんへ
――――――――――――――――――――――――――――――  
 店員「いらっしゃいませ〜」

アミノ酸「すいません、取り寄せの商品が届いたと聞いたので…」

 店員「お名前は〜?」

アミノ酸「アミノ、酸です」

 店員「あ、こちらですね」

『ツンデレカルタ(美琴ver)』を後ろの棚から探し出し、レジに置く。

アミノ酸「そうです!(いやっほー)」
――――――――――――――――――――――――――――――
ごめんなさい、リアルに欲しいと思いましたw
続き楽しみにしてますよーーー。

961■■■■:2010/05/02(日) 22:47:48 ID:nFRFS7rw
あれ?桜の並木さんの未来から〜更新されてないみたいだけどこれって仕様?

962■■■■:2010/05/02(日) 22:49:39 ID:nFRFS7rw
↑すまん 桜並木だった

963■■■■:2010/05/02(日) 22:56:24 ID:nFRFS7rw
まじスンマセン…さん付けするの忘れてました桜並木さんです…

964■■■■:2010/05/02(日) 23:38:26 ID:MuI7yXpE
美琴が美鈴さんにからかわれて照れる成分が最近足りてない・・・
誰か補充してください

965ほのラブ同盟:2010/05/02(日) 23:38:52 ID:mpfbQCnQ
>>960
お楽しみ頂けたようで嬉しいです!
しかも、練った部分(加筆したところ)ピンポイントで読み込んでくださって!感激です!
現在、次回のネタ切れ中で必死に考えておりますorz
またアミノ酸さんに気に入ってもらえそうな作品をお届けできるように頑張ります!!

966■■■■:2010/05/03(月) 03:23:40 ID:nA2NlnEo
うーん、水を差すようですけど、
作品への感想の感想、つまり職人の返答はPart9から無しにしませんか?
(作品への質問の回答、は当然有りです)

何と言うかですね、上琴いちゃいちゃ見に来てるのに、職人いちゃいちゃ見に来ているようで(汗
職人たるもの、次の作品を以て返答す、というノリの方がカッコイイかな、みたいな。

967■■■■:2010/05/03(月) 04:03:45 ID:vBxJWY8w
一回くらいは許容して欲しいところですね〜
読んで感想書いてくれた人への礼儀として

って言うかここんところ投稿少ないから代わりに書いてくれ>>966

968■■■■:2010/05/03(月) 05:17:19 ID:psHDRJdA
パート9から自治厨は無しにしませんか?

969■■■■:2010/05/03(月) 07:46:14 ID:Nm3.mAfM
part9から自治厨はスルーしませんか?

970■■■■:2010/05/03(月) 07:50:47 ID:fnH5qGCU
GW入って加速するかと思ったが、900くらいから減速してるな
遠慮してるのだろうか?

971■■■■:2010/05/03(月) 09:17:15 ID:uGG4GVhU
うめ

9721-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/05/03(月) 09:42:07 ID:e2pmJaR.
>>961
やっぱり抜けがあったかw
更新しました。

>>970
次スレよろ。
駄目なら>>975が立ててね。

973ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:38:18 ID:c.CzUZoc
12:45あたりに6レス。

975踏みそうなので準備しときます。

そして内容はいつもながら、いちゃ成分は以下略です。

974ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:44:27 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!1】

 とある日曜日の昼下がり。
 御坂美琴はやや遅い昼食を食べようとブラブラと歩いていた。
 昼前にベッドに寝転んでいると、そのまま寝入ってしまって寮の昼食を食べそこなったのだ。
(う〜、まだ眠気が……気分的にはソバかウドン食べたいけど……サマにならないわね)
 一人でファミレスに入れる美琴でも、何らかの基準はあるらしい。

「おーい、みさかみさか〜!」
 土御門舞夏の声に、美琴は振り返る。
「おっすー、ってアンタまたソレに乗って……」
「なんでみんな使わないんだろなー?便利なのに」
 清掃ロボを移動手段に使っているのは、広い学園都市といえどもこの少女のみだろう。
「移動速度が歩くより遅いし、第一怒られるわよ全く。んで何してんのよ?」
「今から兄貴のとこへなー。買出しの帰りだー」

 とりあえず方向は同じのようなので、清掃ロボの速度に落として美琴は舞夏と並んで歩く。
「みさかは何してんだー?」
「私は別に。ただどこかで何か食べようと思ってただけ」
「そっかー。……ヒマならちょっとソコまで来ないかー?」
「? いいけど、何?」
「まあまあ。そこの広場までー」
 美琴は首を傾げつつ、舞夏と共に広場に向かった。

「おーい、兄貴〜!」
 向こうで金髪の大男が手を振っている。
(あれ?あの人は……)
 美琴もカジノの件などで面識があったが、同姓でも舞夏と兄妹という事までは考えていなかった。
 その時。

「やっぱり御坂か」
 数メートル先の土御門元春に気を取られていた美琴は、突然後ろからかかった声にビクッとする。
 おそるおそる振り返ると、何やら大きな平べったい箱が入ったビニール袋を手に下げた、上条当麻が立っていた。
 本来、美琴は上条が近づくとAIM拡散力場の乱れで気付くのだが、完全に油断していた。
「な、なな?」
「舞夏、コイツがいるってことは誘ったのか?」
「いや〜、兄貴たちの意見聞いてからかなーと思って、まだー」
「そっか、んじゃまず合流だな」

 何だか良くわからないまま、土御門元春の元に集まった面々の一人として、美琴も加わった。
「ったく青髪のヤツ。アイツが急に来ねーとか言い出すからプレートが余計な出費だぜ」
 上条がブツブツ文句を言っている。
「さて舞夏。常盤台のお嬢さんを連れてきたのはいいが、大丈夫かにゃー?」
「ヒマそうだし、お腹もすいてるそうだぞー。みさかなら大丈夫だと思うー」
「な、何なのよ?」
「確かにコイツならいちごおでんとか飲んでるし、ゲテモノは大丈夫だと思うけどな」
「そっちの話もそうだが、俺たちみたいなバカなノリにお嬢様がついて来れるかが心配なんだぜい」
「ちょっと!話が見えないってば!」
 美琴は強く当たれる上条に、噛み付くように叫ぶ。

「何だ、言ってねえのか。……今から土御門ン家で、たこ焼きパーティーやるんだよ。来るか?」

975ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:44:43 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!2】

「た、たこ焼き……?」
「そうだぜい。ただし中身は……普通のタコだけじゃない。舞夏、見せてやるんだにゃー」
 舞夏はにや〜っと笑うと、持っていた美琴にビニール袋を手渡した。
「何これ……」
 中は、チーズ・キュウリ・ちくわ・こんにゃくといったものから、マーブルチョコや暴君ハバネロなど無国籍状態であった。
「まさか、これを具に……?」
「そう、ロシアンルーレットたこ焼きなのだ〜。お嬢様のみさかに耐えられないなら、ここでサヨウナラ、だー」
 うっ、と美琴は声を詰まらせる。

「さらに御坂。無礼講なパーティーだから、例えばお前にヘッドロックをしながら、無理やりたこ焼きを食わせるとか……」
 上条は美琴に、言外に無理じゃねえの?という口調で話しかける。
「要するにお嬢様扱いしねーぞ、てことなんだが、それでもいいなら来ないか?」

 美琴は。
 このような気軽なバカ騒ぎをずっとやってみたかった。しかし、今の交友関係では難しく、諦めていたのだが。
「い、行くわよ!そもそも常盤台ってだけでお嬢様扱いしないでよ!ヘッドロックでもバックドロップでも何でもどうぞ!」
「ほほう。お前の場合、ビリビリも禁止だぞ?」
「分かってるわよソレくらい!……どさくさ紛れにセクハラしたらぶっ飛ばすからね?」
「俺も命は惜しいからな……」


 そんなこんなで、土御門元春の寮に向かう一行。
「他は誰がいるの?」
「あとはインデックスだけだ。もう部屋にいて留守番してもらってる。留守番つーかネコ番だな」
「ネ……ネコ!」
 食べる系の話でインデックスが外れることはないだろうと思っていたので、美琴的には予想通りである。
 ネコは地下街や大覇星祭で見たインデックスが連れているネコだろう。確かスフィンクスと言っていた気がする。
「そーいやお前、AIMナントカでネコに逃げられるんだっけか」
「そーなのよね。ネコはそういうの敏感らしくって。触りたいんだけどね……」

 不意に上条は、右手で美琴の左手を掴んだ。
 美琴の心臓が跳ね上がる。
「例えばこうすると、お前右手から電撃出せねーのか?」
「え、ええ?ええと……」
 美琴は動揺しながらも、精神を集中してみるが……出せない。
「で、出ないわね……左手が存在しないとか暗示をかけてやれば出来るのかもしんないけど、今は無理みたい」
 上条に手を握られた状態では、アドリブがきく精神状態ではない。
 出せない事とAIMナントカは別なのかねえ、と上条はブツブツ呟きつつ、美琴にニヤッと笑いかける。
「演算する頭触る方がいいのかね……ま、あとで頭とか触ってやるよ。ネコ抱けるかもしんねーな」

 後ろでは、そんな上条と美琴を見てにんまりと笑っている土御門兄妹の姿があった。
(いきなり手をつないで歩くとは想定外だにゃー。……今日は面白くなりそうだぜい)
(こりゃー銀髪シスターとのバトルが楽しみだー。みさかからかうの面白いんだよなー)

「しかし、あのみさかに、あっさり手を繋ぐような相手がいたとはねー。しかもその相手が上条当麻ときたかー」
 早速の舞夏の攻撃に、美琴は大慌てで手を離して振り返り、真っ赤になりながらの弁解が始まった。
「ち、違うのよ!これは実験でね、別にそういうことじゃないんだから!し、真剣に能力の話をしてたの!」
「はいはい。いや〜、セッティングした甲斐があるってもんだなー。私は嬉しいぞー」
「アンタ私の話聞いてる!?あんまり度が過ぎると怒るわよ!」
「きゃー上条当麻ー、奥さんが怒ってるぞー、助けたまえ〜!」
「お前らは小学生か!手ェ繋いだぐらいで騒ぐな!」

 ぎゃーぎゃー騒ぎながら上条の周りを少女たちが走り回る様は、まさに小学生であった。

 ◇ ◇ ◇

976ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:44:58 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!3】

 いかにも死にそうなエレベーターに4人が乗り、目的階に着いた。
 美琴はキョロキョロと周りを見渡す。いわゆる男子寮というものに、初めて立ち入ったのだ。
 土御門の部屋の前で、上条は一言声を掛けた。
「ちょっと上着置いてくるぜ。あと具になるモノあるか見てくる」
「おっけー。んじゃこっちは準備始めとくぜい」

 カギを開けて部屋に入っていった上条を、美琴は呆然と眺めていた。……まさか!?

 我に返って美琴は、ずざざっ!と駆けて上条の部屋の表札を確認する。――ドアに小さく、『上条』とあった。
 こ、こんな所に住んでいたなんて。
 思わず携帯を取り出し、位置情報を確認しようとして……舞夏の視線に気が付いた。
「なんだみさか、知らなかったのかー」
 美琴は真っ赤になって、無言で駆け込むように土御門の部屋に入った。

 美琴はからかわれたと思っていたが、舞夏が考えていたのは別のことである。
(とすると、あの時はやはりみさかじゃなかったんだなー。変なゴーグルしてたし反応なかったしー)
 夏休みに寮の入り口で出会ったのは御坂妹の方なのだが、神ならぬ土御門舞夏に分かろうはずもない。


「短髪がどーしているんだよ!」
 初っ端からインデックスは美琴に(文字通りの意味でなく)噛み付いてきた。
「アンタはなんでいつもそーやって私に噛み付くのよ!?」
「う〜〜」
「チアの衣装直してあげたり、非常食あげたり、色々してあげてると思うんだけど?恩に着せる気は全くないけどさー」
 インデックスの敵意は、ナワバリを侵犯されたという本能によるものだ。だから説明はできない。
 ムスッとして無言になったインデックスを美琴は放っておいた。毎回会えば、こうなのだ。
 そして5分もすれば、不思議とインデックスは普通に接してくる。まるで人見知りする室内犬のようなシスターである。

 それにしても、と美琴は周りを見渡す。
 隅に積まれたトレーニング機材……あの金髪の兄貴の痩身ながらムキムキの体はコレかと納得する。
 そして壁際のメイド漫画コレクションと、その妹の某趣味を思い出して、幾分ゲンナリする美琴であった。
「みさかみさかー。はいこれっ!」
「サンキュー」
 舞夏が投げてよこしたエプロンをキャッチし、美琴は装着して準備万端!である。

 準備といっても、メーカー品の「たこ焼きの素」を使うので、牛乳と混ぜ合せるだけだ。
 あとは具材を小さく切っておけば終了である。
「多すぎない、コレ?」
「あのシスターがいるから、多すぎるに越した事ないんだよー」
「……納得。で、その一番よく食べる子に手伝わせないの?まあやることあまりないけど」
「あのシスターの料理関連スキルはゼロどころかマイナスなのだー……普通なら留守番の間に任せるもんだけどさー」
 美琴と舞夏が台所でわいわいやってる間に、上条が戻ってきた。

「んじゃこれも具材に使ってくれ……お、御坂のエプロン姿初めてだな」
「エプロン一つで印象変わるだろー、上条当麻ー?」
 具材を受け取りながら舞夏は、ちらっと美琴に視線を走らせる。
「そーだな、……若奥さんって単語が浮かんだな、はは。じゃあこっちはプレート用意すっから、油用意しといてくれな」
「はいよー」
 手を止めて赤面している美琴に、舞夏はため息をつく。
「……みさか、反応しすぎだぞー」
「う、うるさい!」

 ◇ ◇ ◇

977ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:45:21 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!4】

「焼くのは兄貴に任せておけばいーよ。ひっくり返すのやってみたければそれでもいいしー」
「たっこやき♪たっこやき♪」
 丸テーブルに5人が囲んでいる状態である。土御門が早速生地を流し込み、天かすや紅生姜をパラパラとかけている。
「す、素直にタコで食べれば美味しいのに……」
 美琴はタコの入ったボウルの横にある、小分けされたゲテモノボウルを見て顔に縦線が入っている。
「いやー、意外に何でも合うんで美味いんだぜい?ヤバイのは、むしろそっち」
 土御門は顎でチューブ類を指す。からし、わさびのチューブだ。
「わさびたこ焼き……タコは入ってないからわさび焼き?これに当たるとのたうち回るんだよなー」
「アンタ私に食べさせよーとしてるでしょ?」
 上条の解説に、美琴はジト目で睨みつける。
「いやいや、公平なロシアンルーレットですよ、っと。ま、でも一巡目は普通にタコでいこう」
 そう言って上条はタコのぶつ切りをぽいぽいと放り込み出した。
 土御門は更に生地を流し込み、プレートの上は生地の池になった。

「ま、やってみ」
 上条は美琴とインデックスに竹串を渡し、2つずつ担当させた。
 美琴の場合、屋台で、しかもたいてい作りおきのものをさっさと買って食べていたので、こういう過程は新鮮だ。
「よし、そろそろ竹串で、窪みの周りにある生地をかき集めて、窪みの中に積み上げるように……そうそう」
 美琴もインデックスも真剣だ。美琴はやはり器用で、担当エリア以外の場所もいじっている。
「土御門の真似して、窪みの端から……そう、手首をまわしてくるん、と」
 美琴の1つ目は半回転で失敗したが、2つ目は綺麗に出来た。
 インデックスは……何だか強引にやっていたが、結果としては丸くなっているようだ。

 無事焼きあがり、皆めいめいトッピングをし、アツアツを頬張った。
「あっっつ〜〜。でもおいしー!」
 美琴は初めて作ったたこ焼きにちょっと感動していた。
「家でこんな簡単にできるんだ……」
「そうだにゃー。まあプロが作るよりは形は悪いが、土御門家直伝の味はどこにも負けないぜい」
「とうまおかわりー!」
「お前は同時に作れる数を、見てワカランのかっ!土御門テメーには突っ込んでやらねー」
「さー、次はロシアンスタートだぞー」

 とりあえず、各自ゲテモノから一つ選んで、やってみることにした。
 結果……。
「うげー、キムチは微妙だにゃー」
「アポロチョコは新しいオヤツ感覚だー。特に変じゃないぞー」
「ポークビッツうめえ。これオカズにできっぞ……」
「うーん、チーズは少なすぎかなこれ。もっと入れたら良かった」
「イカはタコよりおいしいかも!」
 何だ、これなら問題なさそうね、と美琴は胸をなでおろしていた。


 冷蔵庫を物色してペットボトルを手に戻ってきた舞夏は、土御門元春の股の間に座り込み、もたれかかった。
 たこ焼きは今回から、土御門が一人で――つまり本当のロシアンルーレット状態にするために――焼いている。
「ほれほれー、そっちの人間椅子あいてるぞ〜。お二人のどちらか座れば〜?」
 指さされた上条は、2人の少女を見比べる。
 インデックスが腰を浮かしかけたのを見て、上条は慌てて止める。
「待て待て!え〜、いや、2人が俺に恋焦がれて側に座りたいと言う気持ちは分かる。しかしだな」
「誰が恋焦がれてんのよ!」「誰が恋焦がれてるって!?」
 美琴とインデックスが思わずハモる。

「すごいなーカミやん。1秒で2人から振られたぜい」
「さすが上条当麻だー」
 ボケを痛撃に返された上条は沈んでいる。

978ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:45:36 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!5】

 それでも、インデックスは立ち上がり、強引に上条に潜り込んだ。
「えへへ〜」
 美琴は内心穏やかでは無かったが、流石に真似できない。
 かといって、退くように言うのも嫉妬と取られるようで嫌だ。
「およよー。いいのかみさかー。上条椅子とられちまったぞー?」
「いいわよ別に。私は………………後で」
 最後は小さくぼそっとつぶやく美琴だった、が。

「ま、まて御坂。お前いま、後……って言わなかったか?」
「みさか言ったねー。いいぞいいぞー」
「ち、違うわよ!来るときに猫の話してたでしょ!だから右手後で借りるわよって意味!」
「あ、ああ、そういうことですかい」
「猫ってなに?とうま」
「ああ、御坂がな……」

 上条がインデックスに説明している間に、土御門が大きな皿にたこ焼きを並べて机の上に置いた。
 土御門はうちわでたこ焼きを冷ましながら、
「さーて、本番行くぜい。んじゃお嬢サマから……箸でつまんで、誰かの口にねじ込んでやれ!」
「うっ……!」
 美琴は一つつまみ……インデックスの口に近づけた。一瞬プッと頬を膨らませたが、インデックスはぱくっと食いついた。
「ん……ポテチ…う〜〜〜〜〜〜!辛い!」
「それは暴君ハバネロっぽいにゃー」
 少量なので耐え切ったようだが、不意打ちで効いたらしい。
「短髪ユルサナイ!私はコレでいくんだよ!」
「やり返してたら皆に回らないじゃない……まあいいわ。あーん」
 美琴も覚悟してたこ焼きを頬張る。そしてニヤッと笑うと「これは餅ね。ごちそうさまっ!」
 ぶすーっとしているインデックスを尻目に、美琴は舞夏に差し出す。
「ふむふむー、これは……豆腐かー?味もないしリアクションに困るなー」

 そんなこんなで回して行くと、どうやらインデックスが一番不運のようだった。
 最初の暴君ハバネロから、2回目はパイナップル、3回目はフリスクと地雷ばかりを引き、もう嫌だと逃げていった。
 土御門が更なる第4ラウンドの仕込みをしている間に、美琴は上条をちらっと見て。
 飲んでいたペットボトルの水をテーブルの上に置き、美琴はつつつ…と上条の側に寄ると、おずおずと切り出した。

「猫の約束……いいかな?」

「いいけど、どうすんだ?」
「私がアンタの右側行くから、あとは適当に触ってくれれば」
「適当って言われてもな……まあいいや、頭ってさっき言ってたしな。じゃあ真横に座りな」
「うん」
「インデックスー!スフィンクスこっちにくれー!」
 上条が叫ぶと、スフィンクスに皆ひどいんだよ、と愚痴をたれていたインデックスがしぶしぶやってきた。

 美琴の頭に上条の手が触れているのを見て、不満そうな顔をしたインデックスだったが、事情は了承済みである。
 はい、とインデックスは美琴の膝の上にスフィンクスを置いた。
 スフィンクスは……特に違和感を感じていないようで、美琴から逃げる様子はない。
「やった……!」
 美琴はゆっくりスフィンクスを両手で包みこむとそのまま胸に抱きしめた。
「わー……うれしい……」

 もう異常に感動しているらしい美琴を見て、上条はコレのためだけでもこの右手価値があるよなあ、としみじみ思った。
 また、ここまで笑顔全開の美琴を見たのは初めてである。
 上条まで自然に笑みがこぼれてしまう。スフィンクスもゴロゴロいって美琴に懐いている。
――この幸せな空間は、しばし続くと思われた。


 インデックスが差し出した第4ラウンドたこ焼きを、美琴が何の抵抗もなく口に含んで咀嚼する、までは。

979ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 12:45:52 ID:c.CzUZoc
【これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!6】

 それは突然だった。口の中からガツン!という、明らかに大量のわさびの衝撃。
「〜〜〜〜〜!!!」
 美琴はほんの微かに残った理性だけで、猫をできるだけ優しく逃がすと、近くのモノにしがみつき、必死に耐えた。
 鼻の奥がツーンとして、涙が止まらない。
 肩で息をして、ようやく衝撃が治まった美琴に、現実がやってくる。
(イ、インデックス、なんてものを〜〜〜!……って!)

 ようやく、目の前のモノが何か――無我夢中で必死に、涙を押し付けていたモノが何かを理解し。
 潤んだ瞳で見上げると、すぐそこにひきつった口をした上条当麻の顔があった。

「と〜う〜ま〜!」
 胸に顔をうずめた美琴、そしてその肩をを抱く上条に、インデックスの歯が光る。
「待つんだぞシスター!ここで噛みつきは犯則だー!制裁ならコレをー!」
 と、舞夏はたこ焼き――何やら赤色のものが突き出ている?モノをインデックスに差し出した。

 インデックスは怒りの表情で上条の口にたこ焼きを差し出す。上条は嫌な汗がダラダラ出てくるのを感じた。
(絶対ヤバイ。コレは絶対ヤバイシロモノだ。この赤色は高確率で唐辛子でしょーっ!?)
 しかしもう、逃げられない。
 美琴は呆然としているのか腰が抜けたのか、抱きついたまま動こうとしない。つまり動けない。

 覚悟して、たこ焼きを噛んだ。
「痛っ!あだだだ、熱い!ぐはああああああああああああああ」
 美琴は逆に上条に強く抱きしめられた!色気もへったくれもなく、ただただ強く。
「み、水!みずううう!」
 さすがにインデックスもただ事ではないと感じたのか、テーブルのペットボトルを差し出す。
 上条は抱きしめていた右手を離し、ペットボトルを掴むと一気に唐辛子たこ焼きを胃へ流し入れた!
 空のペットボトルをインデックスにトスすると、土御門に噛み付いた。
「なんじゃあこりゃあ!?ただの唐辛子のレベルじゃねーぞこれ!」
「ブート・ジョロキアだにゃー」
「ジョロキアだと……」
「そ、タバスコの200倍以上の辛さらしいぜい。カミやんは明日辺りまで、トイレで地獄を見ることになるにゃー」

 さらに言いつのろうとした上条に、インデックスの冷たい声が被せられる。
「とうま、それ何やってるの?」
「何だよ!何……って……」
 上条は、無意識に右手の下にあったものを撫でていた。――美琴の髪を。
「あ、あれスフィンクスじゃなくて、あれ?み、御坂!? 何脱力してんだ、お前はお前で!」


 美琴は妙な体勢ながらも、もう完全に上条にもたれかかり、左頬を上条の胸に押し付けてまどろんでいた。
「もー立ち上がってもさー、舞夏たちに冷やかされるだけだしさ。もういいわよこのままで」
 ぼそぼそと呟く美琴に、上条は喚く。
「いや、そんな無気力なキャラじゃねえだろお前!」
「いやー、ネコ抱けたし、たこ焼き作れたし、……なんかもー色々満たされすぎちゃったー」

(あれ?これはひょっとして甘えてる……のか?コイツ?)
 上条は、美琴の亜麻色の髪の毛を見つめながら、ちょっと考える。
(いっつも強気だけど、中身はまだ中学2年の親元から離れた女の子、か。冷やかさず、素直にさせとこう……)
「舞夏、毛布あるか?コイツに被せるわ。寝かせとこう」
「みさか調子悪いのかー?」
「いや、眠そうにしてるだけだ。こんな体勢じゃ、起きたら腰痛いって言いそうだな……」

 舞夏が私の毛布だけどー、と毛布を持ってきた。
「ああ、頭から被せてやってくれ」
「いやー、みさかのこんな姿を寮生が見たら卒倒するなー。みさか大人気だからなー」
「そんなに凄いのか?」
「うんー。まさに尊敬一色だぞー。本人からすると気が張って疲れるだろうなーと思ってたー」
「そっか。ここにいる人間には、そういう気張った姿見せなくていいと信用してくれてんだから、このままで」
「そうだねー。じゃあこちらは続きを〜」


(……周りがどうこうじゃ、ない。アンタが、こうしてくれるなら、私は――)
 上条が、自分を好きでこうしてくれている訳ではない事は、分かっている。
 だけど、今は何も考えず、上条の優しさだけを素直に受け入れて――甘えさせてもらおう。
 毛布の中で、美琴は少し身じろぎして、改めて上条の胸に頬を擦り寄せた。
 上条の心臓の鼓動の変化に満足しつつ、美琴はゆっくりと意識を落としていった……


Fin.

<インデックスに「イカおいしいじゃなイカ!」と言わせようとして自重。あと、途中で寝ちゃう子は本来ダメなんですけどねw>

980■■■■:2010/05/03(月) 13:00:40 ID:c.CzUZoc
                /{  . -‐ァ
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      `7: /: {〈/|/|/|/ `ー‐`´从: :、トミ        {___/
      /イ: :/i人丶  U u    `7\|   -‐…‐- .
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           \ \    ハ   i. .∧,     -- 'フ_ノ. .i|
          、}{\,   / ∧ |/|/   ,  二フ/i. . . リ
           ∧ く      、/   .∠二フ´ ∨. |. //′
               ハ  \__,     }    く__,小. ___,ノ\|/l′
           /'∧    、__.ノ  /i  !| 「`77 !   ハ
             /   ,`ー‐く     .〈! i  !| i // ! / ∧
         /  /    \_// | i   .V'/ .__j_ ′'  .
          ,    /           ′j i   V {冗}{/    i
       _/  /{       /  /| i     Y´ i   |お前が言わねえから
          ´ ハ        〈    | i       i  |    |もう9スレまできちまった
           / .ノ}        \__ | i       i  |    |

上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part9
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1272858535/

981■■■■:2010/05/03(月) 13:07:13 ID:U0NpFYSs
>>980
GJ&新スレ乙です!
美琴がかわいいw

982■■■■:2010/05/03(月) 13:40:15 ID:iwxCcqnk
>>980
GJです!そして新スレ乙です!
ぐちゅ玉さんの作品、大好きです。
上条さんにしがみついてる美琴が可愛い!

983■■■■:2010/05/03(月) 14:12:06 ID:fnH5qGCU
970です
すみません!朝書き込んでから出かけたので、新しいスレ立てに気が付きませんでした。申し訳ありませんでした。

>>980
しがみついてるところが凄くよかったです!
インデックスがでるいちゃいちゃは珍しいですね。そして出番があったのにイカ娘という

984■■■■:2010/05/03(月) 14:14:11 ID:kMYH2GYk
>>980
GJ!!
舞夏にからかわれてる美琴最高っす。

985■■■■:2010/05/03(月) 14:58:12 ID:qxr8hHNw
>>980
GJ,乙です!

コメディかつ美琴の可愛さが出てて素晴らしかった。
またこういうノリの作ってくれー。

986■■■■:2010/05/03(月) 15:12:59 ID:LVpGdgdk
>>980
GJ。
あぐらをかいた上条さんの両膝に二人が左右に座って冷戦状態を
期待したのは内緒だw

987■■■■:2010/05/03(月) 16:09:22 ID:KQNjN.js
ありがとう
ぐちゅ玉さんの作品をいつも楽しみに待ってます

988ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 18:18:23 ID:c.CzUZoc
今日は世間ではGWなんだよなあ……ふう。

というわけで、皆さんご感想ありがとうございました!
ほんと毎回薄口なのに、ご声援いただき感謝でございます。

実は>>986さんが指摘されているネタに近いものが初期プロットだったのですが、
お尻の感触が云々と暴走しかけたので、ボツってああいう形になりましたw

某長編ラストもじわりじわりと進めておりますので、その時はまた。では!

989■■■■:2010/05/03(月) 18:22:37 ID:FcD8ehvs
ぐちゅ玉さん、さ、さわやかだ…

990ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 18:36:36 ID:c.CzUZoc
ついでに5分後に2スレの小ネタで埋めを。

>>989
すぐ微エロに走る私がさわやかですとー!?

991ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 18:39:37 ID:c.CzUZoc
【とあるミサカの金色夜叉1】

…打連れてこの河原を逍遙せるは当麻と琴となりけり。

 琴はぽつりと言ふ。
「私はただ胸が一杯で、…何も言ふことが出来ない」

 五歩六歩行きし後、当麻はやうやう言出でつ。
「……堪忍して下さい」

「何も今更謝ることは無いわ。一体今度の事はあンたも得心であるのか、それを聞けば可いのだから」
「…………」
「此処へ来るまでは、私は十分信じてをつた、あンたに限つてそんな了簡のあるべき筈は無いと」


 憤りを抑うる琴の呼吸は漸く乱れたり。

「当麻、あンたは好くも私を欺いたわね」
 当麻は覚えずおののけり。

「そんな悲い事をいはずに、ねえ琴さん。
僕も考へた事があるのだから、それは腹も立たうけれど、どうぞ堪忍して、少し辛抱してゐて下さいな。
僕はお肚の中には言ひたい事が沢山あるのだけれど、余り言難い事ばかりだから、口へは出さないけれど、
唯一言いひたいのは、僕は貴方の事は忘れはしない――僕は生涯忘れはしない」

 途端に、琴の額より電光が躍りて、当麻を襲ひ来ぬ。
 前に翳せる彼の手は、神の手の如くなり。電光は立処に消え失せり。

「聞きたくない! 忘れんくらゐなら何故見棄てた」
「だから、僕は決して見棄てはしない」
「何、見棄てない? 見棄てないものが禁書目録の許にゆくの、馬鹿な! 二人の嫁が有てるかい」
「だから、僕は考へてゐる事があるのだから、も少し辛抱してそれを――僕の心を見て下さい。
きつと貴方の事を忘れない証拠を僕は見せる」

「もう宜い。あンたの心は能く解つた」

 琴の周りに黒煙の如く砂鉄が渦巻けり。やがて一本の禍々しき刃となりて琴の右手に収むる。
 物言はず、力を極めて刃を振降ろせば、当麻は交わしつつ無残に伏まろびぬ。

「えい忌々しい」
「堪忍して下さい…」

992ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 18:40:03 ID:c.CzUZoc
【とあるミサカの金色夜叉2】

 上条当麻と御坂美琴は、御坂妹に手渡された原稿を見ながら、複雑な表情をしている。

「尾崎紅葉の金色夜叉がモチーフね…それはそれでいいとして…何で私たちがモデルなのよ!?」
「ミサカ先生でも、ミサミサ先生と呼んで下さっても構いません、とミサカは文豪になった気分で宣言します」
「人の話を聞けー!」
「…それはともかく、だな…」
 上条は首を傾げる。

「普通、『貫一』が俺で、『宮』が御坂になるんじゃねーの、これ…?名前も琴、だし」
「ミサカも最初はそう考えましたが、足蹴にする方があなた、される方がお姉様となり、
誰にも理解できない作品となるため、逆にしました、とミサカは説明します」
「ちょっと待ちなさいよアンタ!」
 美琴は、そりゃ逆にされるだろうという勢いで喚く。
「逆なら俺の口調も何とかしろ!なんでオネエ言葉なんだ!」
「あなたの口調はこの世界に似あわないので、とミサカは苦心したことを述べます」
「だったら選ぶな、俺を!」

「そ、それにこの話だとつまり?」
 美琴は口ごもりながら、御坂妹に突っ込む。
「私と当…じゃなくてコイツはもう結婚しそうな仲になったのに、コイツはあのシスターを選んで、
その事に私は怒り狂って至近距離から砂鉄剣かましたり、無茶苦茶するってこと!?」
「あくまで架空の話ですよお姉様、とミサカはたしなめます。リアリティは追求しましたが、とミサカは補足します」

 上条もブツブツとつぶやいた。
「どんなに滅茶苦茶にされても、御坂に深い事情があるんだ理解してくれとすがる俺に、リアリティがあるのか…」
(すがるかどうかはともかく、謎の理由の交際や結婚をしてもおかしくないわよアンタなら、とは思うわ…)
 と、美琴は密かに毒づく。


「普通、物語はヒーローとヒロインがくっつきますから、原作もこういうエンドの可能性が高いですよ、
とミサカは爆弾発言をしてみます」
「えっ」
「えっ」


Fin.

<数ヶ月前に作って放置していたネタ。完成しても「ゐちやゐちや」しなさそうなので、小ネタ行き〜>

993ぐちゅ玉:2010/05/03(月) 18:59:52 ID:c.CzUZoc
※書き忘れてた、↑はボケネタなので感想不要です。以下は適当に埋めてもらえば。

994■■■■:2010/05/03(月) 19:10:27 ID:IhB3OGPg
>>966
感想への返答は礼儀としてあっていいと思うけど。
いやまあ、あなたの言いたいことはなんとな〜くわかるのですよ。

でも、感想書いてその感想に返事があったらそれはそれで嬉しかったりするのも事実なのですよ、人情として。
まあとりあえず私は感想の返事は書きますね、書き方は気をつけるようにしますが。

>>979
いちゃいちゃよりも何よりも面白い話であるところが非常にいいと思いました。
少年マンガクラスのほんとにラブコメって感じで。
なんつーか、家でたこ焼き作りたくなってきましたよ。はい、私大阪人です。

995■■■■:2010/05/03(月) 19:17:45 ID:BqklIiew
>>993
最後の妹の発言は一体何を指しているのだろうか?

996■■■■:2010/05/03(月) 19:21:49 ID:WxDsJmu2
>>995
禁書本編の結末のことだろう
まあ人気でメインヒロインが入れ替わることもあるわけで

997■■■■:2010/05/03(月) 19:25:04 ID:uGG4GVhU
GJ

998■■■■:2010/05/03(月) 19:27:11 ID:uGG4GVhU


999■■■■:2010/05/03(月) 19:27:32 ID:uGG4GVhU


1000■■■■:2010/05/03(月) 19:27:53 ID:uGG4GVhU


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