■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■

上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part4
1■■■■:2010/02/06(土) 17:21:28 ID:E81D.6xE
上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!
別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。
上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、
ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!

◇このスレの心得
・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。
・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。
・次スレは>>970ぐらいの人にお願いします。

◇投稿時の注意
・フラゲネタはもちろんNG。
・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。
・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。
・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。
・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。

◇その他の注意・参考
・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。
・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。
・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。
・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

◇初心者(書き手)大歓迎!◇

前スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part3
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/

※ 参 考 ※
禁書風味SSの書き方
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/1682.html
※当スレはSSの形式に基本的に制限はなく台本型等なんでも歓迎です。

まとめページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.html

スレのテンプレ
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html

2■■■■:2010/02/06(土) 18:59:36 ID:3qMkae4Y
2週間で1スレか…

3■■■■:2010/02/06(土) 19:03:41 ID:K75I4GUo
1乙

41-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/02/06(土) 19:33:29 ID:4yWknNh.
>>1

5■■■■:2010/02/06(土) 19:34:37 ID:Jivqohs6
              ____
            /⌒ :ヽ:く: : : : :`丶
            //: :/: : : ヽ : : : : : :\
          (ヽ/ ): :./: : : : : : :}_: : \ : : : 、
       (こ ⌒)/: : : : : : : :| ㍉: : ヽ: : :ヽ
.         /:.し'´: :|: :./| : : : :│  \ミ: : : ∧
       |:/|: l: : :|: /│: : :j: j/   >'⌒Y: ヽ
       |, :|: |: : :l`ト∧: :/∨x仟心  f^: ハ: : :、
          |: |: :.:.爪心∨   弋.ン ,、_ノ: : : : : :\
          |八.: :小 Vソ      ///人 : : : : | ̄ ̄
          |: : \/ゝ_// t _⌒)イ_フ ∨\| >>1
          |: /\: :/ `ア_)Ⅵ 〈 ∨
          レ'  ∨  厶{_」__/ 厂
                く::人ノ_:::∨
               \ト-}:::::〉
                ヒj ̄

6■■■■:2010/02/06(土) 19:42:33 ID:34MLewDs
>>1
                        ヘ    -―─-
                      /:/\\( ( `⌒\_>
                       | |   ー‐′       \
          /◯             _ | | -―─-            \/\
       | /       -─-、 "´>ヘー:、: : : : : : \  (\       \
     -匕____    /  { /:/ : : : : 〉: :\ : : : : : :ヽ (ヽ〃⌒ヽ
       /^7 /    ∨ : : : : /: : : : : : : : : : :ヽ : : : ∨    `丶、
        /l l   ,ィ  / /: : :/ : : : | : : : : i-=ミヘ : : : '  / \   丶、      ,、
            ノ/ `ー∧ :|: : : |: : : /:|.: :│: ト、:ミヽi : : i: V     \    \    {ヽ'::::ヘ
      /    /    :ト、>|: : /| : :/ |.: :∧: | \ミ:i: : :|: :i      >    〉   Z::::::::::Z
.   /  -‐く      |: :i:|: / T: :ト |: / ∨-─ ㍉.: :|: i|   /{/   /   ァ==くxヘ
    \      丶、rヘ  V八iY⌒N、 ∨  ,.ィi⌒ヽ ^ヽ|:八_/   \  /    j「 [::::襾:::]
     \.     /  \_ 从:ハヾ_{:}_ヽ   "_{:}__ノ/_,ノj: ン′     ゙く\   /j  L二二」
       丶、 /      {`ー人  ̄        ̄ 厶i: /           ∨    「{{    リ
.           ∨       ∨ レ介 ,  r‐、    ィく¨丁  /  /     /    `厂  〈
         /   丶.    \ | { >` -</ ノi│  /    /       {__  ,〉
            \    \.     | i、  `>r<  / :i│ /´     /         |:::::: ̄|
              `丶、   ヽ    | i ヽ_ノ│ ヽノ  i│    _/             j:::::j:::::|
                 ー-\  | i:  V |  //   :i│   /                |::::j|:::::|
                       ヽ| j:   ∨|i //    i: ∨:/                  j :::||:::::|
                       | i:   Ⅵi'/  { †i} V}             :::::,':|:::::
                       | i    ∨     :i   |             /:::/│:::}
                       | i           :i   |             /:_/, |:::::{
                      | i            :i:  |              └=、_) 辷ヒ)
                      | i            :i:  |
                      | i            :i:   |
                   /| i            :i:   |       上条当麻と御坂美琴が交差するとき、
                     /│ j:          i:   |          二人のイチャイチャ物語は始まる!!



■ついでに関連スレ

上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1256470292/
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1262324574/

【とある科学の超電磁砲】御坂美琴はSpark!!38
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1265102938/
【とある魔術の禁書目録】上条当麻 右ストレート6発目
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1263296331/
とある魔術の禁書目録 23フラグ目 (R-18はこちらなど)
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1262184828/

7■■■■:2010/02/06(土) 21:44:10 ID:f.u3Pud6


8 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/06(土) 23:41:38 ID:JXY2PgLU
美琴「えーっと、あと2日以内に準備してれば……」
上条「何やってんだ?」
美琴「え、こうして、次スレの準備をしてんだけども」
上条「は?いやいやいやいや、 …はぁ」
美琴「ん、何よ。私だって祝いにお菓子くらい作るわよ」
上条「いや、そこじゃなくてだな…ほら、ちゃんと見ろ」
美琴「……… …!!?」
上条「もはや、Part4だ」
美琴「う…そ……」
上条「遅かったな」
美琴「…いや、早くなってるのっておかしくない?」
上条「現実だ。これは幻想なんかじゃない。本当の現在だ」
美琴「…はぁ。なんなのよ…終いに1週間埋め〜とかなったら、最大電力で吹っ飛ばすわよ」
上条「あー、照れ隠しなのでお構いなく」
美琴「余計な事言うなっ!」
上条「のわっ!あ、あぶねぇじゃねえか!」
美琴「ほら、ちゃっちゃとスコーン持って行きなさい!」
上条「俺かよ!」
美琴「私が作ったんだから、アンタが配るのよ!」
上条「へいへい…  あ、んじゃまたこっちでもよろしく頼むぜ」

9 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/06(土) 23:46:04 ID:JXY2PgLU
なんとなく前もやったのでやらせていただきました
お目汚しになってしまったらすいません。
近い内に投下予定です。とだけ言い残しておやすみなさい

10スピッツ ◆Oamxnad08k:2010/02/07(日) 00:08:59 ID:039Nu8Lc
どうも、マイペーススピッツですw
4スレ目おめでとうございます。
僕もこれからもマイペースに書いていきますw

シャナたん見てきたけどインデックスたんよりカオス・・・

11ミーナ ◆zfqD0wujwA:2010/02/07(日) 00:46:05 ID:hTWlirX.
職人さんGJです。
テストで読めないのが残念。
いつの間にか4スレ突入か。
俺には支援しかできない・・・。

12■■■■:2010/02/07(日) 00:50:05 ID:oDj4oEWs
前スレでGJ書き込めなかった;

とにかくGJ!

13:2010/02/07(日) 01:06:40 ID:3xoGHHXY
様々な職人さんGJですー。

4スレ目にもう突入ですかw
早すぎですw
自分ものんびり書いてのんびり投下していこうかなと思ってます。

5日目はまだまだかかりそうです。10レスは多分いかないぐらいの長さの予定なのに。
それじゃあ、頑張っていきますかねー。
のんびりだけどw

14■■■■:2010/02/07(日) 01:08:44 ID:RHGMVUwg
前スレ>>1000

          \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          >.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
       ,...:´::::::::/.:::::::::::::::::::::::::::::/ |:::::ハ::::::::::::::::::::::::::/ !::/.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::>
          ̄ ̄/.::::::::::::::::::::::::::::/l/ >|:/ |:iハ:::::i:::::::::/ j/ハ::::/!::::::::::::::::::::::::<
        /.:::::::::::::.イ:::::::::::::/<でうラ'ヘ`}:ト::∧:l::::/厶イ´.::::∨::|:::::::::::::\ー―一
          ー‐ァ.:::::::::{ 厶イ:::ハ/  `ニ ノ.:::jノ.::::::八/.:::'でうラヽ/.:::|:::::::::::::::::::\
         /___::∧ (|/   〈::::::::::::::::::::::://.:::::::::::::ー一'.:::::::j/!::::::::::\ ̄
           /.:::::ハ ∧    \::::::::::::::/  {::::/ ̄ ̄\::::::::::/ }:::::::「 ̄
          ∠::::::::::::八 :.       \:::::/   }::j\    /.::::::/ ∧ハ|
           厶イ:::::::::ーヘ            ´/ノ.::::::\_/.::::::/イ  }      いいですとも(キリッ
            ノイ::/i:::ハ         {:::::::::::::::::::::::::::∧丿  
                |/  |::::::|\     , -‐='::、::::::::::::::::::::/
                  x≦ハ| ::\     ー‐.:::::::::::::::::::/
                 / ∨//|  ::::\    `7.::::::::::::.イ\
              /   ∨/j   \:::\  ;::::. .<:::::'///\
             /     ∨′   \:::::: ̄::::::::::::::::'/////⌒ヽ、
            /         >x:::.、   \::::::::::::::::::::{'/////////\

15豚遅:2010/02/07(日) 01:20:14 ID:9qAjuoC2
読んでくださった方、ありがとうございました。
そして
>>1乙です

前スレ>>939〜954ですが
またスレの最後のほうに投げつけることが出来るようにがんばります

これからもこのペースだとさすがにあせりますけどね!

16ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/07(日) 01:53:20 ID:SxDHBXrY
もう新スレですか〜早いですねw
前スレの作品はこれを貼り終わったら読むことにします。

ちなみに名前については843を勝手に変換しましたw

>>1お疲れ様です!


前スレ>>935の続きです。
前作を読んで頂いた方、そしてネタを提供して頂いた方には感謝します!

2レス消費です。1:50分〜投稿させて頂きます。

17ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/07(日) 01:53:39 ID:SxDHBXrY
 結局…美琴の食事は上条の分を分けてもらい済ませたのだった。
 上条は気遣いとして“手で持って食べても自然な物をチョイス”
 米を手で食べるのはさすがに違和感があると判断し食事はパン
 作り方は至って簡単、食パンにピザソースとチーズをかけただけ。
 
「で、どうだった?」
「お、美味しかったに決まってるじゃにゃい!
「そりゃ良かった」
「とーま! あいさの所行ってくる」
「あんまり迷惑かけんなよ」
「うん、分かってる」

 インデックスはスフィンクスを持ち「じゃ行ってくる〜」と一言、上条宅から飛び出して行った。
「(一〇万三千冊の中にあの現象を治す方法がある…だけど今の二人に教えても意味ないもん)」

 インデックスとスフィンクスが出掛けたので、上条宅には御坂美琴と上条当麻が二人きりである。
 ほんのり暖かい日差しが差し込む窓辺に美琴は座り込んでいた、上条に背を向けて。
「(ア、アイツと二人きり…どうしよう、まともに顔すら見れないわよ…)
「おい、御坂。そんな所に座ってても退屈じゃねぇか? そうだ…ちょっと待ってろ!」

 何か閃いたような顔をした上条は「すぐ戻ってくる」と言い残し家を飛び出して行ってしまった。
「(な、なによアイツ…人がこんな気持ちで居るのも知らないで…)」
 しかし意識し始めた美琴は止まらない、まるで思い起こす必要のない事まで思い起こしてしまう
「(こ、今夜はここに泊まるのよね…あんな事言ってたけど、アイツだって意識しないワケない…ハズ)」
 一人で意識して一人で赤くなっている美琴だったが、その想像が限界に達する前に“そげぶ”された…。

「よーし、御坂。ちょっとこっちへ来てくれ」
「(い、いつの間に…)う、うん…」
「どうしたんだ? 借りてきたネコみたいに大人しくなっちまって……ま、そんな事はどうでもいい」
 次の瞬間上条が取り出したのは“ネコじゃらし”これには美琴も言葉が出ない。
「ほれほれ〜♪美琴ちゃ〜ん」
「(美琴ちゃん!? 今…み、美琴って)や、やめにゃさいよ!」
「ん〜どこまでがネコなのか試したかったんだけど…」
「(し、仕方ないわね。乗ってやろうじゃない…べ、別にコイツのためじゃなくてネコの気持ちを知るためなんだからっ)」
「おっ!? いいぜ御坂…そっちがその気ならこっちも」
 
 上条は御坂美琴と扱っていると同時に“ネコとしても見ている”それ故の“ネコじゃらし”だったのだけれども…。
「(ちょ、ど、どこ触ってんのよ!)」
 
 言葉に出来ない悲鳴(?)を上げるも、当然言葉にしてないので上条の耳には届くわけがない。
 こんな状態がしばらく続き…結局は上条がギブアップ、美琴は最後まで意地でも弱音を吐かなかった。
「ど、どうよ!」
「参った参った…ネコになっても御坂は御坂だな…」

18ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/07(日) 01:53:59 ID:SxDHBXrY
 今の戯れで気持ちが大分楽になった美琴は上条へと近付く
「ちょっとアンタ、さっきみたいに上に乗せなさいよ…」
「へ!? 落としたら死ぬんでしょ…俺」
「だ、大丈夫よ。私がちゃんと髪にゃり服にゃり掴んでれば良いんだから」
「言っとくけど“何が起こるかわからねぇんだぞ”」
「何か起こったってアンタにゃら私を守ってくれるだろうし…心配してにゃいわよ」
「……わかりました!」

 上条は美琴を抱き肩へ乗せる
 (僅かな時間ながらも美琴は爆発しそうになってたのは言うまでもない)
「これでご満足ですか姫?」
「……じゃ、出発」
「んと…出発と言いますと?」
「出掛けるって言ってんのよ!」
「肩に乗せたまんまじゃ出掛けられないと思うぜ…見られたらマズイだろうよ」
「……そ、それもそうね」
「どうしてもっていうならこれしかねぇな」
 
 上条は美琴を再び抱き(この時美(ry)今度は自分の首元に美琴を入れる。
「しっかり捕まっとけば落ちないだろ、それにこれならすぐ隠せるし、オマエも隠れられる」
「う、うん……」
「どこ行きゃ良いのか知らねぇけど、取り敢えず出発!」
「(鼓動までしっかり聞こえる……このバカ)」

 行くアテもなく取り敢えず家を飛び出す上条と美琴。
 そして美琴は上条の“不幸”を身を持って体験する事になるとは思っていなかったのである…。

次回へ続く

19■■■■:2010/02/07(日) 01:55:01 ID:fCwIskO2
>>1乙!

>>15
GJでしたよ!
ずっと待っているので、自分のペースで無理をしないで
投稿してくださいね

20ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/07(日) 01:55:42 ID:SxDHBXrY
今回はここまでです。

ちなみに投稿時間についてですが
放送中の超電磁砲に集中しちゃいまして…書き込み&修正を忘れてしまいました
本当に申し訳ないです!

21■■■■:2010/02/07(日) 01:57:58 ID:BQNCvJPw
GJ。
でもどうしてかな?どう考えても上条さんが前に倒れて某平べったいカエルという展開を思い浮かべてしまうw

22■■■■:2010/02/07(日) 02:00:44 ID:fCwIskO2
>>20
GJです!
すみません、リロードしてなかったので割り込んでしまいました。

23ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/07(日) 02:02:56 ID:SxDHBXrY
>>21
あ〜そっちは考えてませんでしたw

>>22
こちらがしっかり修正しておけば大丈夫だったと思うので…。

お二方読んで頂き感謝します。


では、眠いので失礼させてもらいます。

24■■■■:2010/02/07(日) 02:10:26 ID:e.1Idq.Q
くっそ、伸びすぎだろ
勉強できない。マジで勘弁しt、もっとやれ。

それと、この豚野郎

25■■■■:2010/02/07(日) 07:02:17 ID:0NswOSRM
驚愕のスピードだなwこのスレ

ところで、まだ、「二人の子供が未来からやって来た」ネタってないよね?
両家やら友人・知人巻き込んで壮大なラブコメが期待できるし・・・
誰かに書いて欲しいと思うのは、やはりわがままだろうか・・・

26■■■■:2010/02/07(日) 09:42:51 ID:jPIsDRIo
>>25 おいそれ・・・最高じゃねーか

27妹が歩けないし、目が見えないさん:2010/02/07(日) 09:47:15 ID:jPIsDRIo
ならばそのss私が貰おう

28■■■■:2010/02/07(日) 10:04:01 ID:htAHN0kw
ありとあらゆるヒロインとの子供がパラレルワールドから飛んできて困る話ならあるけど
美琴との子供だけが来たのはどうだったっけな

29■■■■:2010/02/07(日) 11:14:38 ID:p3tfUJe2
4スレ目突入!職人さんGJ!GJ!
スレの進みを気にする職人さんもいるけど、気にしないで良いと思うんだ。
何せ10人以上いるみたいだし、職人はマイペースで投稿すりゃいいんじゃね?

30■■■■:2010/02/07(日) 12:23:20 ID:jPIsDRIo
>>25の要望で上条と美琴の子供のssかいているのですが、量が多くなりそうです。
たぶん今日には投稿できると思うのですが、まぁ期待せずに待っていてくださいまし。

ムハハハッハハハハハハハ
(てるるるっるっるるっるる てっる てっる てっる てっる でーん)
ネタ分からなかったらスマソ

31■■■■:2010/02/07(日) 12:25:15 ID:jPIsDRIo
>>30を名前を妹が歩けないし、目が見えないさんに変更 スマン

32■■■■:2010/02/07(日) 12:32:01 ID:peIC6nYY
ヤシの実さんGJです!
続きまってます!

33■■■■:2010/02/07(日) 12:47:11 ID:k9M82ZXQ
>>28
それ知ってる
確か美琴とインデックスの子どもだけ全然現れないんだよな
黒子や初春の子どもすら現れたのに

34:2010/02/07(日) 12:58:16 ID:3xoGHHXY
GJ!

なんか一つできたので投下しようかなと。

いつもの留意点
・1レス程消費予定
・早すぎ?気にしてはいけない
・ああ、きっと前を書け的な感想でもくるんだろうなぁ……
・いちゃいちゃ要素0%
・投下スピード遅いかもなんだよ

35:2010/02/07(日) 12:59:47 ID:3xoGHHXY
本当と嘘


珍しく、上条当麻の方から遊びに誘われた。
それだけで美琴は嬉しかったし、心臓が破裂しそうだった。
だけど何故誘ってくれたのかがわからなかった。
理由を聞いてみても適当にはぐらかされた。
なんだか、今日の上条はおかしいところが多い気がする。
いつもなら午後6時を過ぎたあたりで門限のことを気にしてくれるはずなのに、何故か門限のことを聞いてくることはなかった。
それどころか、「もうそろそろ帰ったほうがいいんじゃないか?」と心配もしてこなかった。
他にも、いきなり手を繋いできたりもした。(当然美琴はその時顔を真っ赤にした)
何故だか、あまり帰ろうとはしていない様にも感じられた。
そのおかげで時間は遅くなってしまった。
そして今、2人はいつも分かれる道のところで立ち止まっていた。

「いやぁ。今日は楽しかった。悪いな、付き合わせちまって」
「ううん。私も楽しかったし。大丈夫よ。それよりアンタ、今日はどこかおかしくない?」
「そうか? 俺は別にいつも通りだけどな。っと、それより御坂。大事な話があるんだ」

なんだか、軽くごまかされたような気がするが、それよりも大事な話というものに興味を引かれる。
上条は一度大きく深呼吸をして、告げた。

「好きだ。美琴」
「……ぇ? え?」

突然告げられた言葉に美琴は驚いて、その言葉の意味を理解するのに凄く時間がかかった。
ただ、何故か上条はそれを告げたあと美琴からダッシュでかなり離れて、大きな声で言った。
それも走りながら。

「なあ、今日が何日か知ってるかー!?」
「え? 今日は4月1日ーーーッ!!??」
「まあ、そういうことだ。それじゃあ上条さんは退散させてもらいますっ!!!!」

美琴が今日の日付とその日の恒例行事のようなものを思い出した時には上条は角を曲がってしまっていた。
思い切り弄ばれたことに腹が立ったが、相手が逃げてしまって怒りの矛先をぶつけられない。
さすがにこの距離では追いかけても逃げられるだろう。
美琴は、『後で覚えとけ』というメールを送ろうと携帯を開く。

「………あれ?」

だけど美琴は携帯のディスプレイを見て固まってしまった。
ディスプレイには、日付と時間がかかれているだけだ。
ただ、その日付と時間はこうなっていた。



4月2日 00:14



美琴はコレを見て悩んでしまう。
今日の上条がおかしかったのは、エイプリルフールだったからなのか。違うのか。
それともおかしかったことも嘘だったのか。
今日の出来事は全て、上条にとっては嘘だったのか。
日付が変わった時にされたあの告白は、本当だったのか、嘘だったのか。
美琴にはどっちが正解なのかわからない。
とりあえず、あまり期待はしないでおく。
ただ、悩みの種がまた一つ追加されただけだった。
美琴は悩みの種を作った張本人に様々な怒りを込めて『後で覚えときなさい』とメールを送った。

美琴は、寮に向かって歩き出す。
なんだか、今日は眠れない日になりそうだと予感した。


終わり。

36:2010/02/07(日) 13:03:40 ID:3xoGHHXY
以上です。
エイプリルフールネタです。
まだ2月だというのに……。

上条さんは結局どっちだったのかは、きっとわかるかと思います。
だって、このスレだしねw

37■■■■:2010/02/07(日) 13:13:23 ID:8ARXogks
>>28
なにそれ詳しく

38■■■■:2010/02/07(日) 13:22:14 ID:VePJx/36
GJです。日付が変わるまで待つというのがいじらしくさらにはいたずらですなあ。
ある意味すごく四月バカらしいと思います。

さて入浴剤作者ですが続き作成中です。
改行した方が読みやすいのか、しない方がいいのかわからなくなってきたんだよ!
というわけでどなたか意見を下せえ。

39■■■■:2010/02/07(日) 13:38:19 ID:tJI5I6wg
改行は好きなようにやればいいんじゃない?
っていうのが俺の考えだが。

書き手其々に好きな行間ってあるんでそ?
それを何の見返りも用意せずに読ませてもらってる俺らが何か言うべきじゃないと思うんだが
どうも気になるやつには気になっちゃうのか?

明らかに読ませる気がないとかいう悪意がこめられているわけでもなし
そんなこと気にして筆が遅くなってしまうほうが俺としては残念だ

40■■■■:2010/02/07(日) 13:44:29 ID:cSy73tGg
答えは自己流で、としか。
作風が似てる職人さんのマネでいいんじゃない?

自分的には行間が開くタイミングは息継ぎと同じと考えてるから、
逆に言うと、ここまでは一気に読んでね、という意味で使ってますね。
場面転換で行間2つ、みたいな。

41■■■■:2010/02/07(日) 13:50:13 ID:fCwIskO2
>>36
GJ!
上条さんかわいいw

>>37
エロパロ板に書かれていたSSだと思う
保管庫に行けばあるよ

42妹が歩けないし、目が見えないさん:2010/02/07(日) 14:03:22 ID:jPIsDRIo
ちょっと聞きたいんですが、上条ってラストオーダーのこと知ってますね?なんてよんでましたっけ?

43■■■■:2010/02/07(日) 14:07:05 ID:VePJx/36
>>39
>>40
意見サンクスです。まあ、確かにその通りなんですよね。

ただ改行は楽に違和感なく読んでもらうためにやってるので、
読み手準拠なところがあって。

段落分けや空白を使うのは俺の気分で決められるんだけど、
改行はなんかそんな感じでは決められんのよね。

ワードの設定とスレの一行の文字数が違うからいつも投稿直前で適当なところで一行ずつ改行するんだけど、
小説のページで次の行に移る時にいちいち意識なんてしないのと同じで、書いてる時も文の行が変わることなんて
あんま意識しないんだよね。
で、そうなると、いざ自分の手で文章を改行しようとする時なんか違和感が残ってしまうんですよ。
本来切れ目のなかったものに切れ目を入れてるわけですから。
まあ違和感を覚えるのは、正確には投稿した後になんですけども。



しかし、特に何も言われないっていうことは問題ないってことかもしれないっすね。
単純に気にしているからそこに目がいくだけで。
皆様が普通に読めるのならそれで良い。

ご意見感謝します。ありがとうございました。

44■■■■:2010/02/07(日) 14:19:08 ID:VePJx/36
>>42
会ったのは12巻で、それ以降はなかったよね?
昨日読んでたら特に名前は読んでいなく、基本的に「お前」と呼んでいました。

いま見てみると、一度だけ「御坂上位個体」という名称を使っています。「小泣き爺」とか
その辺もじってみるのもよいかも。まあこれは「ビリビリ中学生」的な呼び名だけども。

基本はラストオーダーって呼んでて良い気がします。名乗ってないということはないでしょうし

45■■■■:2010/02/07(日) 14:21:55 ID:C5H.cFdY
13巻でも保護に行ってる

46妹が歩けないし、目が見えないさん:2010/02/07(日) 14:23:09 ID:jPIsDRIo
>>44ありがとうございます

47スピッツ ◆Oamxnad08k:2010/02/07(日) 14:25:47 ID:039Nu8Lc
皆さんおはようございます、もう50行きそう…だと…!?
皆さんGJです。スレの流れ早いから自分の作品ができるときには300くらい行ってそうw

インデックス猫化のネタで何故か予定がくるって猫空気に…
状況 美琴がとぼとぼ帰宅中→捨て猫発見→抱きしめてたら上条に見つかる
→あれこれ2人で育てることにする→上条の部屋の合鍵get
ここまで出来てるんですけどなんか猫関係なくね?的な感じになったったんですけど
別にいいよね… (設定上一応上条がインデックスに触れれば喋るようになります)

48■■■■:2010/02/07(日) 14:26:05 ID:peIC6nYY
上条さんがまた学園都市から一時外にだされて、旅館で温泉(混浴)にはいったら美琴がいました。


ってのを誰か書いてくれませんか?

49■■■■:2010/02/07(日) 14:40:19 ID:i/uacpj6
>>42
13巻で打ち止めって呼んでたよ

50■■■■:2010/02/07(日) 14:59:24 ID:DCNv3Fl2
>>48
前スレでたしか、御坂の『自分だけの現実』の再構築の為1泊2日で
冬の時期に行った話があったよ

51■■■■:2010/02/07(日) 15:37:48 ID:p3tfUJe2
>>50
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/256.html
だけど、これだと>>48の「混浴で美琴」っていう要望とは違うね。
チャレンジャーな職人に頼んだら書いてくれそうじゃね?

52■■■■:2010/02/07(日) 15:50:33 ID:DCNv3Fl2
>>51
たしかに「混浴で美琴」って項目が違ってましたな
>>48氏にも申し訳ないっす
お詫びにこちらで書いてみようかと思ったのですが、
ここのハイレベルな職人の方が良いかと思い自重します

53■■■■:2010/02/07(日) 16:55:57 ID:jHyJ3hww
ヤリマンがハメ取りうpしてんぞwww
ttp://tr.im/KPSz

54■■■■:2010/02/07(日) 17:23:25 ID:0NswOSRM
>>30 25リクした者です。大感謝です!!
小生には具現化する力が皆無ですし。

ずうずうしいついでに、
俺の中では、子供はやはり「上条麻琴」(娘)。
そして、ラブコメオンリー編とシリアス編をイメージ。
ラブコメオンリー編はいわずもがな。
シリアス編は、麻琴が魔術・科学両方にとって重要な存在で、あらゆる勢力から
命を狙われ、それを当麻と美琴と3人を中心として上条勢力で乗り切っていく、みたいな。
その中で、上条さんが美琴を意識し始め、カップル成立とか。

もちろん、これは私の妄想なので、好きに書いちゃってくださいませ!!

55■■■■:2010/02/07(日) 17:53:00 ID:eXJ9Ijso
そこまでできてるならユーも書いちゃいなYO

56■■■■:2010/02/07(日) 17:59:46 ID:p3tfUJe2
>>54
そこまでプロット上がってるなら自分で書いた方が早くね?

57■■■■:2010/02/07(日) 19:34:12 ID:r22wxdzA
>>46そのコテどういう意味なのか分からんが変更してもらえませんか?激しく気分が悪いので

58桜並木:2010/02/07(日) 20:10:24 ID:jPIsDRIo
>>57スマソ んじゃあ桜並木に変更

あと>>54もうある程度話がまとまっていて、あんまりバトルとかは入れられなさそう。
それと名前なのですが麻琴だとなんか男みたいじゃね?とかなんか不気味じゃねとか思ったので
独自に命名しております。ご了承を

59桜並木:2010/02/07(日) 21:05:18 ID:jPIsDRIo
投稿は十時くらいになる予定です。結構書いたつもりだけどあんまり進んでませんのでまったりと見守ってやってください。

60■■■■:2010/02/07(日) 21:11:23 ID:zDThGkrQ
>>59楽しみにしてます。気負わずに。

61■■■■:2010/02/07(日) 21:52:59 ID:peIC6nYY
52の人是非書いてください!お願いします。

62桜並木:2010/02/07(日) 22:03:27 ID:jPIsDRIo
今から投下しますたぶん5〜8スレくらい消費かと

タイトルは 未来からやってきたうちの子 でおねがいします

63未来からやってきたうちの子1:2010/02/07(日) 22:05:36 ID:jPIsDRIo
「はぁ・・・不幸だ・・・」

時は二月。いつもの自動販売機の横にあるベンチで上条当麻が呟いていた。上条はいつものごとく口癖を呟いているわけだが、口癖と言えばただなんとな
く言っているようなニュアンスがあるかもしれない。しかし決してそんなことはなく、これまた不幸なことがいつも通りに起こり、その結果、不幸だ・・・と呟いてい
るので、意味もなく言っているわけではない。何がどう不幸かと言うと、一年生も残りわずかとなり、いよいよ進級が危ないと悟った上条は彼の担任(合法
ロリ)に補習をしてもらいなんとか単位を稼ごうとしていたわけだが、いつの間にか担任がロリッ子からロリドジっ子にクラスチェンジしていたらしく、補習に
使うはずのプリントが行方不明になったとかで3時間ほど教室で放置プレイ。その後何とか補習を終え、「今日くらいうまいもんでも食いたいなぁ」と思い、
ATMでお金を下ろそうとしたところ、故障か何かは知らないがカードを認識してもらえず、そればかりかカードが戻ってこなく危うく警察沙汰
になりかけた。結局カードは再発行で、なけなしのお金でヤシの実サイダーでも飲もうかとボタンを押したら、イチゴおでん(アツアツ)が出てきたのだ。
どうやら、ヤシの実サイダーの場所にイチゴおでんがはいっていたらしい。ならばそのイチゴおでんをいただくまで!と飲んでみたら大の甘党もびっくりな甘さで
とても飲めたもんじゃなかった。そして今に至るというわけだ。

「・・・あ〜・・・・」

ベンチにだらしなく座り、これまただらしない声を出す。時刻は6:30。そろそろ完全下校時刻なわけだが、このまま家に帰ったら今日一日なにもいいことが
なかったのを受け入れているようで、納得がいかない。何かいいことないかなぁー、とぼけーとしていたところに

「あ、いたいた!」

と幼い声が聞こえた。上条は声の発せられただろう方向にだるい様子で顔を向けた。すると上条の4,5メートル後ろの草むらに少し茶髪で、頭のてっぺんに
ピョコっと妙な髪が生えている男勝りな少女が嬉しそうに飛び跳ねていた。服装は可愛らしいカエルのイラストがプリントアウトされているいわゆるお子様ブラ
ンドである。上条の知る限り、その少女はシスターズの上位固体であるラストオーダーのはずだ。
だが上条の知っているラストオーダーより髪がわずかに黒く、髪型も違う・・・気がする。
それにどこか妙な気持ちだ。まるで懐かしいや久しいの反対のような・・・

「あれ??ラストオーダー・・・だよな?どうした?こんなところで」

とりあえずこの少女は自分に何か用があるようなので、手短に聞くことにした。自分の違和感は杞憂に終わるだろう。

「らすとおーだー?なにそれー?それよりママとパパのはつデートって2しゅうかんごでいいんだよねー?」

少女は少し舌足らずな口調で切り返してきた。ついでに上条との微妙な位置関係を修正するかのごとくザッザッと草むらから出てきて、いったん上条の前
にピタッと止まったと思ったら、いきなりとびついてきた。

「うおっ!?」

「きゃははは」

上条はその少女に飛びつかれ危うく、ベンチから転げ落ちそうになった。

(あれ?ラストオーダーじゃないのか?)

体勢を立て直しつつ、やはり自分の違和感が正しいのだと確信した。

64未来からやってきたうちの子2:2010/02/07(日) 22:06:23 ID:jPIsDRIo
「あれ?ラストオーダーじゃねーの?わりぃわりぃ。じゃあお前の名前は?」

「なまえー?いいけどなんでー?えーと、ミエ(美栄)!うつくしいのウツクってかいて、えいようのエイってかくんだー!すごいでしょーっ!ちなみに5さいです!
えっへん!」

美栄という少女は右手を力いっぱい広げ、可愛らしく笑い自分の年を言った。なんとも微笑ましい仕草だ。髪の毛をワシャーってしてあげたくなる。しかし
ラストオーダーじゃないとすると単純に他人の空似ということになる。確かに、シスターズのように完全に同じ顔というわけでなく、ラストオーダーとは似ても似つ
かない。そして、用件はパパとママ。おそらく迷子か何かだろう。しかし・・・

「へぇー 美栄ちゃんっていうのかぁ かわいいね それでパパとママは?」

少し甘やかすような口調で聞いた。正直、この子は放っておけない感じがした。なぜかはわからないが、自然と口調が変わるくらい上条の中の何かを動か
すものを感じた。

「ママはわかんない・・・」

少し悲しげに少女は言った。
学園都市では10〜20歳くらいの若者が、能力開発のため一人で移住してくることは多々あるが、それに親が同行してくるのは稀なケースだ。
まぁそれは、珍しいスタイルではあるが気に留める様なことではない。それよりもこんなに可愛らしい少女を
こんな時間に野放しにしていることに上条は感心ならなかった。一体どんな親だ。顔を見てみたいものだけしからん、と少し不機嫌になった。

(とりあえずさっきの物言いからして父親の所在は知ってるみたいだな。その場所までこの子を連れて行って、その帰りに焼き肉でも食べよう、あっ金ねーんだ
った)
と簡単に今日の残りのスケジュールを組んだ。

「じゃあパパはどこかな?」

「なにいってんの?パパは“アナタ”だよ?」

どうやら父親はアナタというところにいるらしい。学園都市広しといえどさすがにアナタというところは聞いたことが―――――――――

「え?今何と言ったのでせうか?」

「だ・か・らアナタがパパだってば!」

「え!?はあああああああああ!?」

どうやら上条の不幸はまだまだ続くらしい。

65未来からやってきたうちの子3:2010/02/07(日) 22:07:11 ID:jPIsDRIo
現在、上条当麻は自分の寮でとある少女と二人でレトルトのご飯を食べていた。二人でというよりは、少女のほうが一人で食べているような感じだが。
上条はその少女にいくつか質問をしていた。少女は質問されるたびに不快そうな表情をする。なんでそんな当たり前のこと聞くの?、ついでに今ご飯食べ
ているから後にしてくれよ、と言いたげに。

「それじゃあ、美栄ちゃんは未来から来たってことでいいのか?」

「そうだってさっきからいってんじゃん!!」

ガツガツとものすごい勢いでレトルト食品を平らげながらいう。だいたい少女のおかれた状況が呑み込めた。

少女の話をまとめるとこうだ。

少女が来たのは10年後の学園都市で、その未来では能力開発が現在よりさらに発展しており、実際、この少女(仮に自分の娘だとするなら上条美栄)
は、時間捜査(タイムエラー)とかいう能力で、あらゆる時空を行き来できるぶっとんだものらしい。かなりの制限、制約、規制があるようだが。それでわざわざ未
来から来た理由が、「パパとママのはつデートをみる」ためらしい。なんでも母親から初デートの惚気話を聞いてしまって、気になってきてしまったとか。なんと
もハタ迷惑な母親だ。

「ねーママは?なんでいっしょじゃないのー?ラヴラヴなんでしょー?」

「・・・えーっと・・・一応聞くけどママの名前って・・・?」

「うそー!?そんなこともおぼえてないのー?いつも みこと愛してるよっていってるじゃん!ほらぁーこれー!それよりママはー?」

と少女は一枚の写真をよこしてきた。

「・・・」

(・・・まぁある程度予想はしてたが・・・)

少女こと上条美栄に手渡された写真を見て上条は唖然としていた。自分と少しお腹が大きくなったあの御坂美琴が何やら幸せそうに笑っている。
この写真は本当に家族写真のようだ・・・。未来では能力開発もさることながら、合成技術も発展しているのだろうか と中途半端な現実逃避
をしていた。とりあえず写真はしまった。ズボンの右ポケットに半分に折り、中途半端に。

時刻は7:30。インデックスはどこへ行ったのかまだ帰ってこない。

(このまま匿ってもインデックスにばれてめんどーなことになる。かといって小萌先生に預けようものなら、“若いっていいですねー上条ちゃん”と言われるに決まって
る けどそれが一番被害を最小限に抑えられるか・・・?)

上条はポケットから携帯を取り出し、小萌先生に電話をかけた。しかし待てど暮らせど電話に出てくる気配がない。10回目のコールではっと自分の成績の
ことが頭をよぎった。
たぶん先生は今、自分の成績の尻拭いをしてくれているのだろう。くっ・・・かたじけないことこの上ない、こぶしを握り締める上条。

「・・・ねぇーはやくママにあいたいよー・・・」

「あーちょっとまってねー」

(・・・)

正直、どうすることもできない。今自分の中では何かないかと脳みそをフル回転させている。台所にいき何かないかと探索していると、まだ何個か入っているだ
ろうドロップを見つけた。ラッキーと思ったら

「・・・ぐすん・・・はやくあいたいよー・・・」

「!?」

上条美栄は涙目になっていた。

66未来からやってきたうちの子4:2010/02/07(日) 22:08:06 ID:jPIsDRIo
「うわーーーーーーーーーん!!!!うえーーーん!!!!!」

急におお泣きし始めた。かなりの声量だ。まるで自分が電車の通る橋の下にいるみたいだ。

(やべえ!!)

上条はカランカランと鳴るドロップの缶を右手に大慌てで、美栄に近づいた。このまま泣き続かれては、隣の腐れシスコン野郎に

「(こっちの世界に)ウェルカムだニャーカミやん とうとうロリが数ある属性の中で最たるものだと気がついたかーいやー長かったにゃーでもいきなり監禁なんて
さすがの俺もちょっと引くぜお?」

とか何とかいわれる羽目になる。それだけは絶対に避けたい。ドロップの飴を数個強引に取り出し、

「わ、わわ、えーと、とりあえずもう泣かないで ほ、ほらーキャンディーあるよーおいしいよー」

「うえーーーーーん!!!あいたいよ!!!」

「う、わわ、どうすれば・・・?」

何をすればいいのか分からない上条は自分の両手を宙に浮かせていた。

(なにがいけなかったんだ!?このアメちゃんがドロップのあの白いあまりもんだったのがまずかったかぁーーー!!??)

わけも分からず、あたふたする上条。苦肉の策だが、この事態を収拾するにはとりあえずその母親を連れてくるしかないと判断し、藁にも縋る思いで携帯を
再び開き、着信履歴が最新の番号に電話をかけたのだった。

プルルルルルルル・・・・

「も、もしもし?こんな時間にな、なにか用かしら?」

わりとすぐ御坂美琴は電話に出てきてくれた。とにかく今は問題はこの娘の処理だ。上条は携帯を肩と右耳で押さえつけながら、美栄をあやしていた。

「わりぃ!御坂!今すぐ俺んちに来てくれ!!お前にしかできないことがあるんだ!!」

ことは性急なのでなるべく早く来ていただきたいと上条。

「っっ!???わ、わかったわ・・・ちょ、ちょうど私もアンタに用があったし・・・い、今から30分くらいはかかるけどいいかしら?」

「いいから!いいからはやくきてくれ!!」

プツンと潔く携帯を切り、美栄をあやすことに専念した。ちなみに美琴は一端祭の時にひと悶着ありすでに上条の住所を知っている。

「うわ―ん!はやくママにあいたいよーーー!!」

上条はどうしていいかわからなく、美栄の頭をただただ高速で撫でまくっていた。

「大丈夫だから!あと30分でママくるってさー!!だからもう泣かないでーお願いーー!!」

と上条の悲鳴は天高く響いていた。

67未来からやってきたうちの子5:2010/02/07(日) 22:09:56 ID:jPIsDRIo
8:15

結局、あの後美栄は泣き疲れたのか、眠ってしまった。いまは上条のベットの上ですやすやと寝ている。土御門は現在不在なのか、少女(とそれより大きかっ
た上条)の悲鳴に対して言及してこない。そして件の御坂美琴はまだ来ていない。というかもう来ないでほしい・・・。

外は雲ひとつなく、満月だ。何事もなければただの不幸な一日になっていたかもしれない。これから美琴に何を話そう、と悶々している上条なのだった。

(はぁーーなに話せばいいんだよ・・・)

上条はすやすやと寝ている我が子(?)を内心小突きつつ、目下の泣き跡をぬぐってあげた。ついでに髪を2,3回撫でてあげた。不思議なことに自然と心が
落ち着いた。
 上条は、客が来るので部屋を整理し始めた。別に美琴だからではない。誰が来たってそうするさ、と本当はちょっと意識している上条当麻16歳の冬なの
だった。


ここで一つ、どうでもいい話をしておこう。上条宅のドアは急にあけるとリビングまで響くくらいブオンッ!と恐ろしい音を出し、閉まる時はふわっと閉じるようにな
っている。ガチャン、ガチャなんてベタな音は出さない、流行の最先端のおしゃれなドア(の音)なのだった。

話を戻そう。上条がリビング、自室、台所と大体片付けが終えたところ、玄関にノータッチだということに気付いた。いくら中がキレイでも第一印象が悪かった
ら台無しじゃねーか、と思い靴を日本のマナーに沿って並べて――――

ブオンッ!

「ふわあああ!??」

ふわっ(微妙にシンクロ)

御坂美琴がインターホンも押さずにいきなり上条宅にあがりこんできた。何かに追われているのかと思うくらい慌てふためいたご様子だ。

「はぁ・・・はぁ・・・き、来たわよ・・・」

「ば、ばかやろ!!いきなり人のうちに上がってくるやつがあるか!?って上条さんは上条さんは御坂さんの道徳的マナーに疑問を投げかけます!!」

「・・・な、なによ・・・こっちは15分も遅れちゃったから走ってきたのよ・・・す、少しくらいいじゃない・・・そそそ、それで私にしかできないことって・・・?」

美琴は少し頬を赤く染め、質問してきた。まぁそれが本題なわけだが・・・なんとも説明しにくい。上条は少し戸惑った風体で、

「・・・あ・・・いや・・・それなんだけどな、御坂。とりあえず上がってくれ。寒かっただろ?か、簡単にお茶でも用意するぞ」

「えっ!?あ・・・うん・・・ア、アンタにしては気が利いてるじゃない・・・」

と美琴は上条に背を向け、丁寧に靴を脱ぎ始めた。その終始を上条はじーっと見ていた。そんな上条の視線に気づいたのか

「・・・な、何見てんのよ・・・」

とじとっとにらみ返してきた。

「え!?い、いや別に!?」

なんとも初々しいお二人さんなのだった。
上条は美琴をリビングに連れていくため、美琴より少し前方を歩いている。美琴はそれにおとなしくついていく。リビングに到達する直前にふと、とある上条
は思いだす。上条は前を見ながら、御坂に少女のことを簡単に説明することした。

68未来からやってきたうちの子6:2010/02/07(日) 22:10:31 ID:jPIsDRIo
「あ、そういえば御坂。忘れてたけどさ 」

「・・・な、なによ」

上条はすぅと息を吸ってためらいなく

「今、女の子が一人俺のベッドで寝てんだけど気にしないでくれ」


「死ね」

上条はキュイーーーーーンと甲高い音が自分の後ろからなっていることに気がつき、半ば本能的に右手を美琴の方にかざした。

「だああああはあああああ!!!!」


キューーーーーーーーーンと雷が虚しそうにおとなしくなっていく。なんとか打ち消せたみたいだ。

(い、今のはマジで死ぬところだった・・・)

バチバチバチっと美琴が出している電気は、まだ血が足りぬとでも言いたげに美琴の体に余波を帯電している。

「あ・・・あぶねぇーじゃねーか!!いきなり何すんだ!?今のは上条さん的生命の危機ランクでも三本指に入るくらい危なかったですよ!!??」

美琴はだるそうに

「うっさいわねー アンタがいくらなんでもそこまで女たらしだとは思ってなかったわ。今日という今日は絶対に殺す。」

「うぇええええ!?美琴さん!??ちょっちょっとまって!!今回は違うの!!違います!!その子迷子だったみたいだからとりあえず匿ってあげてる
んです!!!これ本当!!信じてください!!!お願いします神様ああ!!!」

何気に嘘をついている上条なのだった。いつもより電撃が強烈だったのか、少し右手が焦げている。別に痛いわけではないのだが、気にかかりズボンの右側
のポケットらへんでゴシゴシと擦り始めた。そして何の因果か先程ポケットに入れた例の写真がひらりひらりとゆっくり床に落ちた。

「あ」

「ふぅー・・・まぁ分かったわよ。アンタのことだからいつものごとくやっかいなことに・・・ん?」

上条は死神の大鎌に今にも首を切られそうな罪人のごとくピクリとも動けなかった。心は体に動け動けー!!と命令しているのに。いくらなんでもあの写真は
見られたらまずい。なのに。


美琴が 何気なく その写真を 拾ってしまった


「アンタ写真なんて持ち歩いて・・・ぇ?」

時が止まった。本当に息すらできない。苦しい。そして今日が自分の命日だと悟った。




「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・あの・・・・・御坂さん・・・・・・?」

「・・・・・・ふ・・・・・・」

「ふ?」

「ふ・・・・ふにゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

「不幸だあああああああああああああああああああああ!!!!」

その後上条家の電化製品がほとんど天に召したことは言うまでもない。

69桜並木:2010/02/07(日) 22:12:32 ID:jPIsDRIo
以上です。まだまだいちゃいちゃしてませんが、この後デレます。感想や指摘
などは今後の参考となるのでどんな意見でもしていただけると嬉しいです

70■■■■:2010/02/07(日) 22:17:45 ID:KGC7XEnE
グッジョブすぎるぅぅうううううう!

71腹黒タヌキ:2010/02/07(日) 22:17:54 ID:C1zkYI/k
皆さんGJ
現在構想中なのが…
お嬢様の冬のスポーツといえばやっぱりスキー。超電磁砲4人娘が学園都市の
スキーリゾートにお出かけ。そこで、バイト中の上条さん、とある高校のメンバー
プラス土御門舞夏とであって一悶着というストーリー考えてるのですが…
インデックスの扱いが…自分の今まででの駄作ではインデックスまったく絡ませなかった
というかわざと出てこない場面ばっかり考えてましたが彼女本当に難しいですね;
まじに、学園都市でお留守番というのが一番なのかと;

このスレの終わりまでに投下できたらうれしいなっと;;

72■■■■:2010/02/07(日) 22:22:03 ID:p3tfUJe2
>>71
禁書小説6巻P31より。
「例えばインデックスが聖ジョージ大聖堂から召喚命令を受けたとして、暇だから、と言う理由で上条当麻が後を追ってきたとしたら。
それはちょっと嬉しいけど、困る。
魔術の専門家であるインデックスとしては、そういう仕事場での顔はあまり見られたくない。」

とあるので、インデックスが単独でイギリスに呼び戻される可能性は十分にあるっぽい。

73桜並木:2010/02/07(日) 22:33:01 ID:jPIsDRIo
あと一つ質問なのですが、1スレあたりの文字数の制限ってどのくらいでしょうか
今回無制限を前提として、自分の感覚で話を区切ろうとしたら、文字数が多いとか何とかでところどころ
中途半端な区切りになってしまったのですが・・・

74腹黒タヌキ:2010/02/07(日) 22:33:43 ID:C1zkYI/k
桜並木さんの投稿に割り込まなくてよかったとほっと、
レス投下前の確認の必要性を再認識したしだいです。
で、桜並木さんGJ!!初デートまで2週間と宣告された美琴の運命はいかに、、
ってとこですなwつづきを〜〜〜^^
>>72
おお〜^原作でもそういうくだりが^^。非常にありがたい設定ですな。
ヤレヤレ、これで、インデックス抹殺計画を発動せずに、、エッ!あなた、誰、いつの間に俺の部屋に入っt……

75■■■■:2010/02/07(日) 22:39:31 ID:p3tfUJe2
>>73
バイト数なら4096bytes。
単純計算で全角二〇〇〇文字程度?

76桜並木:2010/02/07(日) 22:43:03 ID:jPIsDRIo
>>75さん ありがとうございます

77■■■■:2010/02/07(日) 22:50:42 ID:w8LaHRjQ
続きを宜しくお願いします!
桜並木さんGJ!!!

なんかニヤケルぜ〜

78■■■■:2010/02/07(日) 23:03:57 ID:4yOYK5kM
皆様乙です

文字数はテンプレに入れておきますね
行数制限に引っかかったことある人居たら教えて下さい
私としては過去引っかかったことありません 90行くらいは多分余裕で行けるはず

79wikiで3-351とか言われてるなにか:2010/02/07(日) 23:09:03 ID:kyF34tMk
>>69
GJです。これからがとても気にn(ry

それで例の続きは大体2スレ後に完成しそうな気がする。あれ?

80■■■■:2010/02/07(日) 23:19:47 ID:9H51.Dw2
>>69
GJ!
武装錬金のゲームでもあったが、まだ付き合ってない二人の子供が未来から来るっていうシチュがツボ過ぎる
ニヤニヤが止まらねえ

81豚遅:2010/02/07(日) 23:27:51 ID:9qAjuoC2
子供物は考えたことあるんだけど
子供大活躍する話しか出来なかったよ!しかもバトルしてた!
肝心の上条さんと美琴がまったく話に出てこないくらい!
だからこそぐっじょぶ!

バレンタイン特別編を23:30から投げます
7レスほどです。

今回の注意事項!
・今までの話はまったく関係ありません。完全に別物です。
 けどインなんたらさんはいません。いないったらいません。
・気をつけておりますが誤字脱字ありだと思います。申し訳ない
・いちゃ分が私にしてはがんばりました。でも用量用法妄想をよく守ってお読みください。
・よんでくださった方はこの豚野郎!と一言お願いします

82豚遅:2010/02/07(日) 23:31:16 ID:9qAjuoC2
とある乙女の菓子聖戦


「つ、作ってしまった……」
常盤台中学の調理実習室を許可を貰い、一人で借り切っていた御坂美琴は
目の前の物を見つめながら呟いた。
なぜ借り切っていたのか、それは目の前のチョコレートを作成するために他ならない。
つまり、目の前にあるものとは完全無欠の手作りチョコレート。
「うう、こんなのあげられるわけ無いじゃない。」
百歩、いや、一万歩くらい譲ってただの手作りチョコならばいい。
しかし目の前にあるのはチョコはある特殊な形していた。
これを使うのはとても勇気がいる、というか
「使えるかーっ!」
思わず握り締め、壁にぶつけようと振りかぶる、が出来ない。
「ううっ、これは無し、これは無し……」
舞夏に買ってと頼まれた漫画など読むのではなかった。
そうすればこんな悪乗り以外の何者でもないチョコを作ることなんて無かったのに。
後悔しつつ、とりあえずもう一つ普通の手作りチョコレートを作り始める、
がそこで
「おねーさま!まあまあまあおねーさま!」
黒子が乱入してきた。
とっさに目の前にある例のチョコを隠す。
まさに電光の動きだった。。
そのため、黒子はその動作には気づかなかった。
まあ目の前には湯煎中のチョコレートがあり、そっちを凝視していたせいもあるだろうが。
「おねえさまったら、わたくしの為に手作りチョコを作るためにこのような……ああ、黒子は感激ですの。」
「……」
感涙の涙を滝のように流す黒子を見てどうしようかと思案する。
というか、とりあえずチョコをあげれば明日の邪魔はされないのではないか?と考え、
「まあ、楽しみにしていなさい。」
「!く、黒子は、黒子はもう!」
失神した。とりあえず放置。
「さあ。ちゃんとつくろう!」

83豚遅:2010/02/07(日) 23:31:59 ID:9qAjuoC2
翌日、バレンタインデー。
休日のまだ朝早くだというのに学園都市は男女で溢れ返っていた。
何せここは学生の街。つまりバレンタインデーの商品の格好のターゲットなのだ。
よって、メーカーの威信をかけたようなさまざまなチョコがいたるところで売っている。
それを買い求める女の子。期待に胸を膨らませている男の子。
甘いひと時とつらい現実が交差する街の中に
ものすごいげっそりとした美琴がいた。

「何で失敗するの……」
あの後、チョコを作ってみたものの、なぜか成功したのは一つ。
それは黒子に上げないと何をされるかわからない。
(うう、材料もうちょっとかっとけばよかった)
美琴はお菓子はあまり作らないが、やろうと思えばつくることくらいできる。
実際、最初のチョコは一発で成功したのだ。
だから材料をあまり買わなかった。
しかし、結果は見ての通り、最初の一つ以外ぜんぜん成功しなかった。
(うう、やっぱりこれしかないの……?)
ポケットの中の物に軽く触れる。
(いや、やっぱりむりっ!)
とりあえずデパ地下にいってそこそこ高いチョコレートを買う。
「ラッピングはどういたしましょう?」
笑顔で店員が聞いてきた。どうも本命用ラッピングというものがあるらしい。
御坂美琴は見た目は可愛らしい女子中学生だ。
その中学生がこの高級なチョコを買うということは本命だろう、と予想したらしく
大量のハートマークが印刷されているラッピングを用意してきた。
その真ん中にはひときわ大きなハートマークがあり、そこにLOVEという印字がされている。
「……いえ、普通ので……」
レベル5だってひよる時はある。

一度寮に戻り、着替えをする。
気合を入れて私服を着る。今日はバレンタインデー。乙女の決戦の日なのだ。
あの寮監ですら私服で出かける生徒を見てみぬ振りしていた。
可愛らしい服、では無くがんばって大人っぽい服を着た。
自分の趣味は自分でもわかっているのでお店の人にいろいろ質問しながらそろえた一式だ。
鏡に自分を映すと
(うん、大丈夫)
後は、アイツに渡すだけだ。
黒子にはあの手作りチョコを上げて
「手作りはこれだけよ」
と言ったら失神した。これは好都合だ。
携帯を取り出し、アイツの電話番号を画面に表示する。
(コールボタンが押せない……)
深呼吸を3回する。
根性を決めて押す。
お嬢様っぽいしぐさで携帯を当てる。
1コール、2コール、3コール……
コール音が続くたび、心臓の音が大きくなる。
ぷっと短くコール音が切れた。
「!えっと、アンタ!」
「現在、電話に出ることが出来ません。」
機会音声が聞こえた。とりあえず一回携帯を壁に向かって投げつけた。

84豚遅:2010/02/07(日) 23:32:53 ID:9qAjuoC2
「不幸だー。」
上条当麻は学校にいた。休みなのに。
「まあまあ、カミやんは今日は学校にいるほうがいいぜよ」
なぜか土御門と
「バレンタインに小萌せんせーに会えるなんてぼかー幸せやでー。」
青髪ピアスも一緒だ。
今日は補習なのだ。しかも3人だけ。
ほかに校内に生徒はいない。
「まあ、確かに今日はバレンタインデーだもんな。外にいていちゃつくカップルを見るくらいなら補習もありか。」
と、言ったところ青髪と土御門の友情ツープラトン、クロスボンバーが炸裂した。
「はいはーい、そこまでですよー」
小萌先生が入ってきた。手にはチョコレートが三つ。
「今日はバレンタインデーですからねー。補習がんばったらプレゼントしちゃいますよー。」
補習が始まる。
内容はすけすけみるみるだった。
ものすごいがんばった青髪が三つとも奪取していった。
小萌先生は泣きそうだった。

「だー、終わったー。」
補習が終わったころには夕方になっていた。
街には男がうろついていた。まだあきらめ切れていない野郎共だろうか。
「まあ、カミジョーさんには関係ないですけどねー。」
と、時間を確認しようと携帯を見ると
「……なんだこれ」
御坂美琴からの着信がものすごいことになっていた。

「なんででないのよ……」
ベットに寝転がりながら御坂美琴は落ち込んでいた。横には携帯電話が投げ出されていた。
お昼前から何度もコールしたのにアイツはぜんぜんでない。
また何かに巻き込まれているのか。それとも
「今日がバレンタインだから私からの電話に出れないの……?」
恋人達の日に自分以外の女の子と楽しそうにしているアイツが思い浮かび、目が潤む。
もう夕方だ、だめなのかな。
そのとき、電話が鳴った。
心臓が飛び出そうだった。ゆっくりと携帯に手を伸ばす。
着信は本当に心から待ちわびていた相手からだった。

85豚遅:2010/02/07(日) 23:34:42 ID:9qAjuoC2
「すまん、補習でさ。電話しまっちゃってたからぜんぜん気づかなかった。」
上条はとりあえず謝ってみた。あの数の着信だ。きっと大事な用事があったんだろう。
いまから雷のような音量で発せられるであろう美琴の罵声に耐える心構えをしていたのだが
電話から聞こえるのは嗚咽だった。
「!御坂、何かあったのか!」
一気に背筋が凍る。本当はあの電話は自分に助けを求める電話だったのではないか、
ものすごい後悔の念が体中を駆け巡る。
しかし、美琴の嗚咽はすぐに収まった。少し安堵したところで美琴からの声が聞こえた。
「ううん、なんでもない。ねえ、アンタ今暇?」
「ああ、暇だ。」
とりあえず答えた。まだ安心できない。だから
「そっちも暇なら今会おうぜ。場所は…」
「あ、場所はあの橋のそばがいい。ほら、私があの日アンタと会った」
向こうが場所をしてきた。あの橋、といわれてすぐ思いついたのは妹達を救うためにあったあの橋だ。
異論は無いのでOKし、
上条当麻は電話を切ると一目散にそこへと走り出した。

夜の帳が落ちた。
御坂美琴が橋に着くともう上条はそこにいた。あの日自分がいた場所に。
まるであの日の自分と上条の位置が入れ替わったようだった。
「御坂、どうしたんだよ。」
「心配した?」
ちょっと意地悪に声をかける。答えはすぐ帰ってきた。
「心配したに、決まってんだろ……あんなに電話かけてきてて、俺本当に取り返しのつかないことをしたんじゃないかって。」
アイツはそういうとうなだれていた。
あわてて取り繕う
「ち、違うの。ごめん。ちょっと……そう!あの時は漫画読んでてね!ちょっと感情移入しすぎちゃったって言うか!」
あはは、とごまかしてみる。
それを聞いて、アイツはちょっと安堵したようだった。
「で、なんでしょーか美琴先生。上条さんは今日は補習でくたくたですよ?。」
今度は軽口を聞いてくる。でも、その軽口のおかげで少しこちらも落ち着いた。
「ん、今日何の日だか……知ってるわよね?」
「煮干の日ですよね?」
雷撃を放つ。しっかりと打ち消された。
「バレンタインでしょ!ほんとにもう!」
といって、朝に買ったチョコレートを突き出す。
「えっと……これは?」
なんか心底おかしなものを見るような目でチョコレートを見つめるアイツがいた。
「だ、だからチョコレートよ!な、なんだかんだで世話になってるし!義理よ義理!」
自分で言って、しまったと思った。だけどアイツは
「ああ、なるほど。いや、義理でもうれしいぜ御坂。結局一個も貰ってないしな。」
意外な答えだ。
「へ?あ、ああそうなんだ。もてない男ってのは辛いわねー。」
実際、今日家に帰ると山ほどチョコがあったりするのだが、この時点では上条はそれを知らない。

86豚遅:2010/02/07(日) 23:35:31 ID:9qAjuoC2
「ありがたく受け取るぜ。サンキューな。御坂。」
「デパ地下でなんか高そうなチョコレート選んできたから、そこそこ美味しいんじゃないかしら?後で感想聞かせなさいよ。」
いつかのやり取りと似たようなやりとりだ。だから上条はこういった。
「む、バレンタインデーのチョコレートなら手作りがベストですなー。」
「……アンタ、私にどんなキャラ期待してるのよ。」
「いやいや、あえて不器用なキャラが不器用なりにがんばってみたボロボロチョコレートってのがね。わかんねーかな?」
笑みを浮かべながら言ってみた。美琴はきっとどんなキャラを期待してるのよ!って言いながら雷撃を放ってくると思っていた
しかし、その幻想は木っ端微塵に打ち砕かれた。
「……手作り、ほしい……?」
顔が真っ赤の美琴を見てむしろ上条は顔が真っ青になった。

(……どうしよう)
例のチョコレートを使うのか?決心がつかない。
(でもっ!)
覚悟をきめた。

「えっと……御坂さん?」
真っ赤になったまま動かない美琴に恐る恐る声をかける。
「返品絶対不可。」
美琴がぼそっと呟いた。
もしかして、本当にボロボロなのだろうか。だから出したくなかっただけ?
「ああ、もちろん返品なんてしねーよ。お前が作ってくれたんだろ?ならどんなのでも俺は嬉しいよ。」
といったのだが、美琴は続けてきた。
「差し出したら、絶対に受け取ること。」
どんだけボロボロなんだよ、と正直ちょっと笑いをこらえながら
「ああ、もちろん受け取る。男に二言は無いぜ!」
胸をたたきながら答える。
「……絶対よ……」
と、美琴は呟くと深呼吸を始めた。

御坂美琴はポケットに手を突っ込んだ。
最初につくったチョコレート。それがポケット入っている。
それは小さな筒の形をしている。
意を決し、それを手に取った。

87豚遅:2010/02/07(日) 23:36:39 ID:9qAjuoC2
(美琴は何をするつもりなんだ?)
ポケットに手を突っ込んで小さな丸い筒を取り出した。
(リップクリーム?)
筒を開けると、暗いのでよくわからないが色のついている棒が見えた。
口紅?と思うと御坂はそれを唇に塗り始めた。
「御坂、何で口紅なんて……」
美琴は聞こえていないように、口紅をまだ塗っている。
そして、塗り終えたようで、こういった

「は、ハッピーバレンタイン……」

目を瞑り、唇を差し出してきた。

さっきの口紅はチョコレートだったのだ。

(え?え?えー!!!!!!!!!!!?)
上条当麻は目の前の出来事に硬直した。
自分はさっきどんなものでも嬉しいといった。
差し出したらもちろん受け取ると答えた。
つまり、受け取らなければならない。このチョコを
指で唇をつついて受け取りました!とかやったらたぶん殺される。
(てか、指で唇をつつくのだって十分恥ずかしい!)
美琴がうっすらと目をあけた気がした。
早くして、といっているようだ。
その美琴の顔はもう真っ赤だ。チョコが溶けそうなくらいだ。
「……」
覚悟を決めた。
上条当麻は御坂美琴を抱き寄せて
唇でチョコレートを受け取った。

88豚遅:2010/02/07(日) 23:37:28 ID:9qAjuoC2
そのまま、時間がたった。
どのくらいかはわからない。
どちらが先に唇を離したのかもわからない。
夜の静寂が二人を包んでいた。

先に口を開いたのは上条当麻だった。
「えっと……御坂さん。さすがに今のは……」
というと、美琴はうなずいて
「うん、本命チョコレート……」
いつもの元気な御坂美琴からはちょっと想像できないようなか細い声だった。
また静寂。今度は美琴が口を開いた。
「ねえ……返事は?」
若干目が潤んでる。そして答えた。
「あのチョコを受け取った時点でわかるだろっ!」
そういうが早いか、上条当麻は全力で走って逃げた。

御坂美琴は走って逃げる上条当麻を追いかけなかった。
受け取った時点、つまり
「OKでいいのかな」
人生で一番勇気を振り絞った気がする。あの日ここで死のうと覚悟したあのときよりも振り絞った気がした。
だから追いかけなかった。明日からは探す必要もない。
(う、嬉しい!)
一人感動に浸っていると視界から消えようとしているアイツが大声で叫んだ。
「来月、おぼえておけっ!」
というとまた走りだし、夜の闇へと消えた。
「楽しみにしててやるっ!」
そう叫び返した。

二人は夜の闇の中でもわかるくらい顔が真っ赤だった。
そして、お互いの顔が見えないところで笑っていた。

89豚遅:2010/02/07(日) 23:39:05 ID:9qAjuoC2
以上です。お疲れ様でした。

最初に書きましたが、今回のはあくまで書きたかったから書きました。
一応私は続き物で書いていましたが今回は違います。

もし、今までの続編を期待してる方がいらっしゃった場合
お待ちください。

それでは今回はこの辺で。

90■■■■:2010/02/07(日) 23:40:03 ID:F5N8UqEA
GJ

91■■■■:2010/02/07(日) 23:45:45 ID:oIiBsb3U
>>89
この豚野郎!

寝ようと思ったのに寝れなくなってしまったじゃまいか
けしからん!もっとやr(

92■■■■:2010/02/07(日) 23:47:55 ID:jPIsDRIo
はなじでてきてあたいへんあSJふぁW

93■■■■:2010/02/07(日) 23:53:53 ID:wmRh.AuY
GJだこの豚野郎!

ニヤニヤが止まらなくて寝れないじゃん

94■■■■:2010/02/07(日) 23:53:55 ID:CnEOuw/.
し・・しんでしまう

GJ

95■■■■:2010/02/07(日) 23:55:20 ID:3xoGHHXY
こ……こ……ぷぎゃー!

やばい、寝れない。

96■■■■:2010/02/07(日) 23:59:30 ID:ghA1hYcU
>子供物
途中で終了したエロパレの『チャイルドパニック』がある。
たしか全部エロなし。皆で書きたい放題やってたと思うので、こっちで上琴のものを
続ける……というのはまずいでしょうか?

内容は平行世界から上条の娘(女の子限定)が学園都市を中心に現れるというもの。
上条と結ばれる可能性があったヒロインとの子供が平行世界から娘限定で次々と現れる。
その娘達の保護のために派遣されるのは、その娘の母親(各ヒロイン)。
次々に専用シェルターに集合する娘達と母親に取り囲まれ、「パパ」と呼ばれる上条。
そして、美琴の娘だけ何故か現れない。さらに、黒子や一方通行の娘まで……

そして美琴の怒りが募り続け……で終了しているので美琴だけ完全自由に書けると思うんですが。
まずそうならネタなど参考にでも。
下のエロパレ保管庫の『チャイルドパニック』及びそこから下の娘ネタ(それ以外21禁のものも多いので注意)
ttp://green.ribbon.to/~eroparo/contents/lightnovel-toarumajutu.html

97D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/08(月) 00:01:34 ID:QMBApPEA
 こんばんは。
今から10分ほど後にネタを1つ投下します。
「Ti_Amo.」18レス消費予定。
今日前半の8レスを投下し、後日10レスを投下します。

98■■■■:2010/02/08(月) 00:03:50 ID:kCBhweKk
>>96
あれ?
確か美琴の娘も最終的にでてきてた記憶があるんだけど……?

99■■■■:2010/02/08(月) 00:05:15 ID:ZNExakvc
ふ、ふにゃーーーーーーーー!

100■■■■:2010/02/08(月) 00:08:36 ID:9pVzBuYo
>>82
美琴、がんばったね。
思いが報われて本当に良かった。やっぱり告白&受け入れられるシーンは最高に萌えます。
ニヤニヤできるいい話でした

101Ti_Amo.(1):2010/02/08(月) 00:11:32 ID:QMBApPEA
 美琴の腕の中で横たわる上条は、こめかみから一筋血を流していた。
 その顔色は青く、唇は震え、異物が喉に流れ込んでいるのか呼吸には雑音が混じっている。
 傷つき倒れた上条を抱きしめて、美琴は涙を流し叫ぶように神に冀う。
「お願い……誰よりも大事にするから私にコイツをください……!」


「……あ」
 何の夢を見ていたのだろう。
 美琴は起き上がり、掛け布団の中から両手を出す。闇に慣れた目の中で小刻みに一〇本の指が震えている。
 良くは思い出せないが、ひどい夢だったような気がする。むしろ思い出せない方が幸せなのかも知れない。
 美琴は喉が渇いたなと思い、同室の人間の目を覚まさぬようそっとベッドを抜け出し台所に向かう。冷蔵庫の中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと手近なグラスに注ぎ、一息に飲み干す。喉を滑る軟水の冷たさが、自分が現実に戻った事を実感させた。
 グラスをシンクに置き、ペットボトルを元に戻すと、足音を殺してベッドのそばまで美琴は歩く。美琴はいくつものパイプを組み合わせて作られたシングルサイズのベッドに乗ることなく、その場でゆっくりとしゃがみ込んだ。
 カーペットの上にはベッドに背を向け、頭から布団をかぶって眠る上条当麻がいた。
 ここは美琴の住む寮の二〇八号室ではない。
 美琴は昨夜『彼氏』上条の部屋に泊まった、と言うより無理矢理泊まり込んだ。
「お前寮生活があるんだから無断外泊なんてダメに決まってんだろ!」
「私はアンタの彼女なんだからここに泊まったって良いじゃない」
 上条の言葉には一理ある。対して、美琴の言葉には無理があった。そしてその無理を美琴は押し通した。押し通した結果
「お前はベッドで寝ろ。俺は風呂場で寝るから」
 上条は過去日常的に風呂場で寝ていた事があったのか実にスムーズな手つきで布団をバスタブに敷き詰め始めたので、美琴は上条の手を強引に引っ張りベッドの隣に布団を敷かせた。
「私はアンタの彼女なんでしょ? 『間違い』なんて一つもないじゃない」
「自分の歳を知っててその台詞言ってんのか中学生?」
 おやすみ、電気は消しておいてくれよと言って上条は美琴に背を向け、さっさと布団をかぶった上条はぐっすりと眠っている。
 美琴は音を立てずに上条の枕元にぺたんと座り、そして呟く。
「ねぇ。私はアンタの……彼女なのよね?」
 確かめるように、問いかけるように、哀しい音楽を奏でるように。

102Ti_Amo.(2):2010/02/08(月) 00:11:58 ID:QMBApPEA
「……か、……さか、御坂、おい起きろよ。そろそろ起きねーとまずいんじゃないのか?」
 誰かが美琴の頬をつついている。
 黒子ならもっと不愉快な目覚めを提供してくれるし、誰よアンタムカつくわねとその手を払いのけようとして美琴は目を開けた。
 そこには、怯えたような目をした上条が美琴を上からのぞき込んでいた。
「…………う、うわ、あ、あああアンタ何してんのよ!」
 美琴はとっさに掛け布団を胸元にかき集めて跳ね起きる。
「何してるの、って朝からずいぶんご挨拶だな。それが人の布団に潜り込んで上掛け奪った人間の言う事か?」
「…………ふぇ? 布団?」
 飛び退った美琴の背中に金属の固い感触が当たる。美琴が振り返ると、そこには横たわるべき主を失って空っぽのシングルベッドが置かれていた。昨夜美琴は上条のベッドを借りて寝ていたので、やけに床に近い視点のこの状態は確かにおかしい。
「…………あれ?」
「あれ? じゃねーぞ」
 憤然とした面持ちに変わった上条が
「テメェその分だと夕べ自分が何したかぜんっぜん覚えてねーな?」
 腕を組んで美琴を睨む。
「ゆうべ? ……夕べはアンタの部屋に泊まる事になって、アンタのベッドを借りて、夜中に喉が渇いたから水をもらって…………?」
 そこからの記憶がない。何かいやな夢を見ていたような気もする。
 美琴は胸元を掛け布団で隠しつつ、上条から借りたYシャツの中をのぞき込む。美琴お気に入りの水色の下着には特に異変が見られなかったので、そこで美琴はほっと息を吐いた。
「……まあいいや。歯ブラシ新しいの出しといたから、歯磨いて顔洗えよ。ほらタオル」
 上条がその背中越しに白いフェイスタオルを放って寄こすのをキャッチして
「……私、夕べ何かしたの?」
「……、覚えてねーんだろ? だったら気にすんなよ。時間ないんだからさっさと支度しろって」
 美琴が見上げると、白い壁に掛かったアナログ時計は六時三〇分を示している。寮則では七時三〇分までに見苦しくないよう身なりを整えて『その場にいなければならない』事を考えると、上条の部屋から常盤台の寮に戻る時間までを逆算しても、あまり猶予はない。

103Ti_Amo.(3):2010/02/08(月) 00:12:20 ID:QMBApPEA
「……ありがと」
 上条から借りたYシャツといつもの短パン姿のまま、ややぼんやりした頭のまま美琴は洗面台へと向かう。常盤台の二人部屋に備え付けられたものとは違う、いかにも安物の鏡の中に映った自分の頬に涙の跡を見つけて
「? 私泣いたっけ?」
 と首をひねりながら歯磨き粉を手にする。
「……………………………………………………!」
 美琴が今いるここは上条の部屋で、当然全ての持ち物は上条のものだ。つまり美琴が握っているのも当然上条の歯磨き粉で、それは日常的に上条が使っているもので
「………………………………どうしよう」
 間接キスの可能性にたどり着いた美琴は鏡の中と自分と一緒に百面相を始める。とりあえず上条が用意してくれた真新しい歯ブラシに歯磨き粉を落として
「…………ホントにどうしよう」
 手が動かない。いつものように豪快にわっしゃわっしゃと美琴の歯を磨くはずの手が動いてくれない。
「こっ、こんなのただの歯磨きじゃない。私がいつも使う歯磨き粉と違うだけで、そうよ、大したことないじゃないこんなの……」
 大したことないはずなのに、歯ブラシを握りしめた美琴の右手が震える。昨夜は勇気を出して上条に向かってもっと大胆な事だってねだったのに。
「…………!」
 昨夜の上条とのあれこれを思い出した美琴は固く目を閉じ、歯ブラシを白い歯に押し付けわしゃわしゃわしゃーっと威勢良く磨き始めた。思い切って目を開けると、水しぶきが飛び散った鏡に映る美琴の頬は火事の現場で炎の余波にさらされたように赤く染まっている。
 初めてのお泊まり。無断外泊。彼の家から朝帰り。なのに何かが足りない。
『覚えてねーんだろ?』
 美琴の脳裏につい先ほどの上条とのやりとりが蘇る。
「……私、夕べ何したのよ?」
 一枚の鏡を挟んで、美琴と美琴が見つめ合う。

104Ti_Amo.(4):2010/02/08(月) 00:12:41 ID:QMBApPEA
「うあー、眠みぃ……」
 制服姿の上条が、美琴の隣で鞄を担いだまま大きく伸びをする。
 美琴を送って部屋まで戻ると学校に遅刻しかねないので、上条は身支度を調えて外へ出た。食べ損ねた朝食は途中でコンビニにでも寄ってパンか何かを調達するつもりでいる。
「眠いってアンタ……私より先にさっさと寝といてどういうことよ?」
「…………」
 美琴が横目で睨むと、同じく上条が目だけで睨み返す。
 上条が着ているYシャツは、今朝まで美琴が身につけていたものだ。『クリーニングに出すから貸しなさいよ』と言う美琴に『洗ってないのはもうこれしかねーんだよ』と美琴の手からひったくって何事もなかったように羽織る上条に『女の着てた服をそのまま着るなんてそれじゃまるで……』と呟いた言葉は上条の耳に届いていない。
「……『忘却なくして幸福はありえない』だっけか。昔の人は良い事言ったな」
「アンドレ・モロワ、ね。アンタがそんな事を知ってるとは思わなかったわよ」
 夕べの出来事について今すぐこの場で穴を掘って叫びたいと言いたげな上条の顔を見て、美琴はその頬に手を伸ばし、軽くつねる。
「言いたい事があるならちゃんと言いなさいよ」
「……何でもねーよ」
 上条はぷいと美琴から視線を背け、鞄を肩に担ぎ直す。
 自分の顔を見るたびにやたらと逃げようとする上条の認識を改めさせてなるべく電撃も使わないようにして良い雰囲気に持ち込んでやっとの思いで『私と付き合って』と言ったら返ってきたのが『良いけど遠くは勘弁な。上条さんこれから晩飯のお米研がなくちゃいけないから』というあんまりな告白の結末を思い出すたび頭が痛くなる美琴としては、もう少し彼氏彼女として進展したいのだがどうにもうまく行かなくて毎度の事ながら地団駄を踏みたくなる、と言うかすでに踏んでいる。
 隣を歩く上条との間に開けられた一〇センチのすき間にため息をついて、無造作にポケットに突っ込まれた上条の左手に触れようか触れまいか、美琴は迷う。いつだって手を伸ばすのは美琴からで、上条からは一度として何らかの行動を起こす事はない。
 ……キスはおろか、腕さえまともに組んだ事がない。気づいてみれば名前も呼んでくれない。美琴にしてみれば長い間片思いを抱えて勇気を振り絞って恋人同士になったのに、実情はケンカ相手だった頃のまま。
(だーちくしょう。何で毎回毎回毎回毎回私が追っかけてばかりなのよ! たまにはアンタからアクション起こしたらどうなのよ?)
 やけになって鞄を小さく振り回す美琴の動作も上条にはどこ吹く風だ。

105Ti_Amo.(5):2010/02/08(月) 00:13:03 ID:QMBApPEA
「お前の寮見えてきたけど、この辺で良いか? 見つかっちゃまずいだろ?」
「……へ? あ、ああもうこんなところまで来てたんだ」
 二人の前方五〇メートルほど先に、常盤台中学『学外』学生寮が見えた。後はここから白井に空間移動を頼んで二〇八号室へ戻れば完了だ。その前に美琴にはかんかんになっているだろうルームメイトに昨夜の事をぼかして説明という気の重い作業が残っている。
「じゃあな」
 あっけなくくるりと背中を向けて美琴を置き去りにする上条に
「ちょっと! 恋人に対してアンタは何か言う事ないわけ?」
 抑え気味の怒声で美琴が呼び止める。上条は小さく嘆息して
「……無断外泊は止めような、御坂。こう言うのはこれっきりにしてくれ。心臓に悪い」
「ねぇ。……私はアンタの彼女じゃないの?」
 美琴は髪を逆立てて上条に詰め寄る。
「……あのな」
「何よ?」
「そんなに何度も『彼女』って言わなくたってわかってるから」
 上条は鞄を持ち替えて、右手で美琴の髪をポンポンと撫でる。
「……うー」
「じゃ。お前も学校、遅れんじゃねーぞ?」
 意味不明の唸り声を上げる美琴を置き去りに、今度こそ上条は一人とある高校へ向かった。
「……私は、アンタの……恋人なのよね?」
 届かぬ疑問を風に乗せ、美琴は徐々に小さくなる上条の背中を見送った。

106Ti_Amo.(6):2010/02/08(月) 00:13:25 ID:QMBApPEA
「お姉様! 昨夜はどこへ行ってらしたんですの? わたくし何度もお電話差し上げましたのに留守電はおろかケータイの電源が入っていらっしゃらないとはどういうことですの!」
「や、あはは、ちょっと訳ありでね……ごめん黒子。連絡も入れないで心配かけたわね」
 美琴は無断外出をする時の手はず通り寮の裏手に回り、ルームメイトの白井黒子に電話をかける。一コールで電話に応じた白井は、細い口紅のような携帯電話を持ったまま空間移動で美琴の前に現れた。
 とにかく、こんなところにいつまでもいるのはまずいですわと白井は美琴の手を取り空間移動を実行。
「ところでお姉様。昨日はどなたとご一緒だったんですの? まさかあの類人猿と……?」
 ブン! という羽音のような音色が美琴の耳をかすめ、直後美琴と白井は二〇八号室の室内に着地する。現在時刻は七時二八分と、規則と時間に厳しい寮生活としてはきわどいところだ。
「そ、そんなことないわよ。私があの馬鹿とつるんでるなんて、ないない」
 空間移動ありがとう黒子、と取ってつけたようなお礼を言って美琴は白井から距離を取り、自分のベッドに腰掛ける。
「そうですわね。お姉様に限ってそのようなことあるわけがありませんわね。それにしても……」
 白井が一度言葉を溜め、美琴を上から下まで舐めるようにねめつける。
「……それにしても?」
「最近、お姉様の下着の趣味が以前のパステル色調からフリルなどのついた物にランクアップしているのはどういうことなんでしょう?」
「黒子……どこで人の下着をチェックしてんのよアンタっ! わっ、私は別にちょっと大人っぽいのにチャレンジしてみようかなとかそんなことはこれっぽっちも考えてないわよ?」
「お姉様……」
 それでは考えてることが丸わかりだと、白井は自分の頭に手をやる。痛い子を間近で見てしまったとでも言いたげなジェスチャーを交えて、
「お姉様の下着の趣味が以前よりましになったことにつきましては、黒子は賛成ですの。でも、あれだけ頑なに拒んでいたのを、今になってどうして方針変更されましたの?」
 まさか上条との万が一の時に備えて、などとは口が裂けても言えない。
 美琴は慌てて
「い、いや、私もね? 黒子が言ってる意味がようやくわかってきたというかね? やっぱりそろそろキャラクター物は卒業した方が良いかなとかね?」
「怪しいですの……怪しさ全開ですの」
 あまりにも挙動不審な美琴の言い訳を、白井は二秒で看破する。
「お姉様がそうおっしゃるのでしたらそう言うことにしておきましょう。ですがお姉様? どうせならもっとインナー全体に気を遣った方がよろしいのでは? ……よろしければ黒子おすすめの殿方向けコーディネートなどご紹介差し上げますのよ?」
「そ、そうね黒子おねが……じゃなくて黒子! とっ、とっ、とのっ、殿方向けとか変なこと言うんじゃないわよ!!」
 たわいない誘導でボロを出す美琴に
(お姉様の下着の趣味が以前より大人っぽくなっていると言うことは、誰かに見せることが前提ですの……? まさかあの類人猿がお姉様のお相手? ……おのれあの若造がァあああああああああああッ!!)
 黒子は上条に対して背中に阿修羅の炎を背負うがごとく敵愾心をと燃やし、美琴は美琴で『何かよけい面倒な事になったような気がするわね』と小さくため息をついた。

107Ti_Amo.(7):2010/02/08(月) 00:13:56 ID:QMBApPEA
 放課後の通学路では美琴が一方的に話し上条がそれに相槌を打つ。これは以前からの二人の会話のパターンだ。
「ねぇ……これってちょっと恋人同士の会話と違わない?」
 夏にも上条に同じ事を言ったような気がする。
「そうか?」
 そんなの俺にはわかんねーよと上条は聞き流す。
 ―――恋人ごっこの頃と何も変わらない。
 付き合いだして最初の頃は心が浮き足立って気がつかなかったが、冷静になってみると二人が付き合う前と付き合いだした後で状況にさほどの変化はない。違いを挙げるなら美琴が上条の住所を知ってそこに足繁く通うようになったぐらいだが、目的の大半は遅れがちな上条の学業を見てやる事であり、美琴の寮の門限が近くなれば体よく追い返される。
 御坂美琴という少女の目から見ると、上条当麻という少年は好意を向けられる事に対して非常に疎い。というより、好意を向けられる事をどこかで恐れているように見える。
 だから会話が一方的で、だから二人の間に何の進展もなくて、美琴にはそれがじれったい。二人が付き合ってる事をおおっぴらにするのはまだ恥ずかしいが、それでももう少し親密な雰囲気があっても良いんじゃないの? と美琴は思う。
 文字で表現するなら、美琴は上条とコンサートホール前で待ち合わせるカップルのようにいちゃいちゃしてみたい。恋人つなぎで手をつないで街を歩いたり、腕を組んで散歩をしてみたい。食べさせっこのような高度な見せつけはとても恥ずかしくてできないが、二人きりでいる時くらいはもう少し触れあっていたい。
 これじゃまるで独り相撲だ。上条が気のないそぶりがポーズなのか本気なのか美琴には見分けがつかない。
 彼女ができたら周囲に言いふらすまではともかくとしても、上条はもう少し喜んでくれたり自分をかまってくれたりすると思っていたのに、何にも変わらない。こんなのはあんまりだ。
 上条には特大の仕置きが必要だ、と美琴は思う。
 馬鹿につける薬は古今東西存在しないが、だったら作って見せよう。
 自分の存在の重さを上条に今一度思い知らせるべきだと考えて
「ねぇ。私達……別れよっか?」
 美琴は苦い薬を口にした。
「お前がそうしたいんならそれで良いぞ、俺は」
 まるで今日の晩飯は何にするかと考えるような気軽な口調で返す上条の口ぶりに瞬時、美琴の心が煮えたぎるほどの怒りで揺らいだ。
「……アンタ、それ本気で言ってるの?」
「だから、最初に聞いたじゃねえか。『俺で良いのか』って。お前が俺に愛想を尽かしても俺は止めねえぞ。お前の気持ちを……」
 上条の言葉が美琴の心に油を注ぐ。
「馬鹿ッ!」

 スパン! と。
 大きく振り抜いた美琴の右手が上条の頬を水平に打ち鳴らした。

「……痛え」
「痛くて当然よ、この鈍感唐変木! 何で、何でこんな時まで私の気持ちをスルーすんのよっ! アンタなんか、アンタなんか……もう知らないわよっ!! 馬鹿ッ! 大嫌い!!」 どこへ向かってかはわからない。どうだっていい。どこでもいい。ここから一刻も早く離れたい。美琴はその一念で上条を置き去りに、全力で走り出した。

108Ti_Amo.(8):2010/02/08(月) 00:14:20 ID:QMBApPEA
 走って、走って、走って。
 気がついたら常盤台中学の寮の前に来ていた。そこで美琴はポケットに手を入れ、カエル型の携帯電話を取り出す。二つ折りのそれを開いて、待ち受け画面を確認する。着信はゼロ。メールは一件、白井黒子からのものだった。
 美琴があそこまで行動に出れば、上条も何か言ってくれるだろうと思っていた。追い掛けては来なくても、ごめんの電話やメールくらいあると期待していた。しかし、蓋を開けてみれば現実はこうだ。
 結局上条は美琴の事など好きでも何でもなかったのだ。美琴が付き合ってと告白したから、上条はそれに合わせただけに過ぎない。上条はいつだって受け身で、美琴の行動を見ているだけの不甲斐ない男だった。好意を向けられる事に消極的な少年の行動のツケが、最終的に美琴に回ってきただけなのだ。
(あんな奴の番号ゲットしようとして必死になって策を練ったあの頃の自分をビンタしてやりたいわよ、まったく)
 美琴はボタンを操作して登録番号のリストを開き、『上条当麻』を表示する。
 画面に『削除しますか? Yes/No』の文字が表示されて、逡巡した後美琴はYesにカーソルを合わせ、実行ボタンを押した。
「……アイツの番号はメモ取ってないし、後は通話履歴と送信履歴を全部消せばおしまい、か。はは……何やってんだろな、私」
 美琴は乾いた笑いを頬に浮かべて片手でボタンを操作し画面を切り替え、全ての履歴を消去する。
「バイバイ」
 ―――全部終わった。
 何となく肩の荷が下りたような、心の中で張り詰めていた糸が切れたような底なしの開放感を味わって、美琴はカエル型の携帯電話を二つに折り畳むとポケットにしまい、寮の玄関を開けた。
「そういや、最近黒子と遊んでなかったなー。何か面白いイベントでもないか探して誘ってみようかな」
 美琴はどこか楽しそうに企てを唇に乗せ、寮のエントランスをくぐり抜けると階段を登った。

109D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/08(月) 00:14:50 ID:QMBApPEA
 以上になります。
お邪魔しました。

110■■■■:2010/02/08(月) 00:16:47 ID:73BCzL9E
GJ!!
たまには苦いのもよし!

上条さん本命が別にいるのかな?

111■■■■:2010/02/08(月) 00:21:57 ID:ZNExakvc
後半10レスに期待。

112D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/08(月) 00:29:54 ID:QMBApPEA
ぐふ。
(7)で改行ミスったorz

113ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:36:45 ID:ZIwE2iqQ
やっぱ日曜夜はラッシュですねえ。皆さんGJです!

かなり間が空きましたが、長編【とある両家の元旦物語】の続き投げときます。
エピローグがまだ綺麗にまとまってないんで、投げ損なってたんですが、
混浴ネタ使ってるのでタイミングいいかなとw
作ったのは随分前なんですが、ほんと進まなくってorz

0:45頃。6レス予定。

114■■■■:2010/02/08(月) 00:39:22 ID:QMBApPEA
>>113
漏れの心をいちゃいちゃでぶち壊す破壊神キター!

115■■■■:2010/02/08(月) 00:41:50 ID:G0VlotZM
>>109
GJです 後半に期待!
>>113
遂に・・・ 遂に・・・ 遂にキター!!!
ずっと待ってた元旦物語の続きが!!!

116ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:46:01 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語17】

<後編7>

「あとは美琴が中学生じゃなけりゃなあ。歳の差はいいとして、倫理観として…うーん」
上条は食事部屋に戻りながらボヤく。
「そんな事言われたって。そもそも、その倫理観って何よ」
「中学生に手を出すロリコン扱い、というのはカミジョーさんは耐えられません」
「…あのね、中学生のファーストキス奪っておいて、何言ってんのよ」

上条の足がピタッと止まる。
「良く考えたら…俺、お前のファーストキス奪っちゃったのか」
「そうよ!こっちには一大イベントだってのに、あっさり終わらせてくれちゃって!」
美琴は真っ赤になって、そっぽを向く。
「それはそれは、勿体無いものを頂きまして…」
「極上の逸品よ!まったく!」
足の止まった上条を美琴が引っ張る。

「中学生との噂ってのは、もう事実なんだからあきらめなさいよ」
「そっちはしょうがないけどな。まあ一番の問題は…だな」
「え?」
「まあいわゆる…俺の理性が1年以上持つかな、という…」
「な、なに考えてんのよバカ!」
「…聞かなかった事にして下さい…」
純情な高校生と中学生は、真っ赤になりながら部屋に向かう。


部屋に入ると、4人の大人たちは酒盛りモードに入っていた。
「あらあら〜、主役が帰ってきたわね〜」
「なんだー当麻。美琴ちゃんとお楽しみか?若いモンはいいねえ〜」
「美琴、当麻くんを手放すな!ソイツは重要人物だぞ、ハッハッハー」
なにかもう入り込めない雰囲気である。

美鈴がスッと近づいてくる。
「あれ、美鈴さんはあまり飲んで…ない?」
「ま、一応幹事だしね。詩菜さんもダンナ見てると酔うわけにはいかないと思ってるみたい。ところでアンタ達…」
2人をジロジロ見る。
「…やっちゃった?」

美琴の顔がボンッ!と赤くなる。
上条がかろうじて体勢を立て直し、「…何を?」
「ま、1時間あればできるわよね」
「…だから何を?」
「まあ親の前では言えないわね。中学生相手に奪っちゃったかー」
「そんなベタベタなネタに引っかかるかっ!絶対おしえねー」
「ちぇ。でも美琴ちゃんなら教えてくれるもーん。ハイ美琴ちゃんガッツポーズ!」

え?と上条は美琴の方を向くと。
美琴は可愛らしくガッツポーズをとり、そして人差し指を唇に指し示して、微笑んだ。
「なんだそのジェスチャーゲームは…」
この親娘、仲が良すぎる。
「なるほど、可愛い一人娘の唇は奪われたか。パパにどう報告しようかしら…」
「ごめんなさい、ユルシテクダサイ」

美鈴はクスッと笑うと、
「やっぱりヤルときゃヤルね、当麻くん。美琴ちゃんを改めて、よろしくね」

117ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:46:20 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語18】

<後編8>

「美琴ちゃん、パパさんの相手しといで。アンタいつでも会える当麻くんとばっかり居るじゃない」
「う…わかったわよ」
頬を赤くして、美琴は刀夜の隣に座り、2人のお酌をし始めた。

逆に上条は、ママさんズに捕まった。
「さてと、あらいざらい吐いて貰おうかナ。あれだけ素直じゃない子を、完全に落としちゃったとなるとね」
「あらあら〜、どこでそんな女の子を凋落するテクニックを覚えたのか、母さん的にも聞いておかないとね〜」
「何もしてねー!恥ずかしながら、女の子から告白させちまったし…」
「確認するけど、美琴ちゃんを公明正大に彼女と言い切れる状態まで行ってるのかしら?」
「それは言い切れます。美琴は俺の彼女であり、恋人です。」
「…母さん的には、あの銀髪のシスターちゃんが気になるんだけど」
美鈴も頷く。「あの子にも、言えるのかしら」

「…言います。でも俺はあの子も守る。俺がやるべきことだから。」

「あの懐き方からすると、ショックでしょうねえ…」
「宣言しておきますけど…、もし、美琴とインデックスが同時に窮地に立ったとしたら」
上条は、言葉を切って、はっきり言い切った。
「俺はインデックスを助けます。」
母親たちは息を飲んだ。

「美鈴さんだって、旅掛さんと美琴が、そういう状況になったらどちらを助けますか?」
「…なるほどね。美琴ちゃんだわね、その話だと。あの子は娘みたいなものなのね…」
「うまく言えませんが、そういうことです。」
「…オーケー。親としては納得しちゃいけないんだろうけど、…当麻くんが真剣に考えてることは分かったわ」
(ま、普通の高校生に、本来背負わす話じゃないわよね、コレ。)

「あらあら、ちょっと堅苦しい話になっちゃったわね。当麻さん的には、今後美琴さんとどうしていくつもりなのかしら?」
「どうしていくと言われてもな…まあ健全なお付き合いをさせて頂きますよ、としか」
「健全ねえ…。もうリミッター外れた美琴ちゃんは、どんどん色気づいていくわよ。私のコだもん」
「母親が煽ってどーする!まだ中学生ですよ!?」
「まだ孫は困るからね?どうしても、なら女の子よろしくね」
美鈴は品の無いニヤニヤ笑いを浮かべる。
「オイタはダメですよ?」
詩菜もにっこり微笑む。
「…だめだこの母親たち…」
上条は頭を抱えた。

興味が美琴に移ったのか、母親たちは父親たちのテーブルに移動した。
美琴からも情報を引き出すつもりだろう。
上条は少し離れたソファーに体を沈み込ませる。
(恋人…か)
母親たちの前で口に出して、改めて実感が湧いてきた。


――先刻。眠る美琴を見ながら、熟考の末、この少女と歩む道を選んだ。
それは、インデックスとの選択ではない。これからも一人で歩むか、との選択だ。
インデックスが仮に自分を好きだとしても、それは過去の自分に対してだ。
…その事実がある以上、偽りの道を歩む訳には、いかない。
一人で歩めば、一番平等な世界。誰をも平等に救える世界。

でも、自分が求めているものを、
他の誰もが持っておらず、美琴は持っているような気がした。
…そう考えた時、結論は出た。

118ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:46:40 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語19】

<後編9>


色々と考え込んでいると、美琴が戻ってきた。
「逃げてきた…詮索しつこいっ!」
「相手してやれよ…そうそう会えないんだからさ」
「いいのっ!私は当麻と話すのっ!」
どっかと美琴はソファーに座り込む。

「何考えてたの?」
「まあ色々とな。『一体何をやれば恋人っぽく見える訳?』なーんてやってたな、とかな」
「あの恋人ごっこかあ。現実になっちゃうなんて…」
「だなー。…ちなみにその頃、俺のこと、は?」
「んっと…もう意識はしてたわよ。当麻が『海原で何の問題があるんだ』的な事言ったとき、傷ついたもん」
「うっ…」
「ああ、私のこと何とも思ってないんだ、って」

「ぐ…じゃあ、ついでに。あの大覇星祭罰ゲーム、は、実のところ…?」
「ええ、私としてはデートそのもの。なのに、あの子がペンダント買って貰う展開とか、ありえないわよねー」
「俺、最悪じゃねえか…」
「でも結局は、私が素直じゃなかったから、だし。携帯番号ゲットのためにペア契約とか、ホント馬鹿よね、我ながら」
「…外であれだけビリビリしてて、携帯番号も聞けないとか!ツンデレにも程があるだろ!」
「だって番号聞いて、もし『なんで知る必要あんだよ』とか言われたらどうすんのよ…」
「どうすんのよ…って」
なんだこの可愛い生物は。


「まーたイチャイチャしてる!」
美鈴がニヤニヤしながらやってくる。手にはカメラ。
「そのままそのまま。写真とるわよー」
上条と美琴は慌てて自分をチェックする。
美琴は上条のネクタイが歪んでいるのを見つけ、直そうとする…
パシャッ!
「ん〜、いい絵♪」
「もう!」

その後は、ソファーを舞台に父親たちも入り乱れて、再び撮影会となった。
さっきの外での撮影会とは違い、距離感のない両家の仲の良い姿が―――
特に美琴の、ぎごちなさが完全に消えた心からの笑顔が、総てのフィルムに、写っていた。

119ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:47:01 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語20】

<後編10>


午後三時。
上条刀夜と御坂旅掛はソファーで2人ともいい気分で寝ている。
「アンタたち、初詣行ってきたら?近くに神社あったでしょ」
「母さんたち行かないの?」
「ダンナ共がアレだからね…」

上条は美琴にどうする?と声をかける。
「うーん、行きたいけど、今日はちょっと知り合いに会いたくないなー、ってのもあるかなあ」
「お前目立つもんなあ。男連れて歩いてたら…」
「そ、そんなことないと思うけど。でも、ジャッジメントが警備していると思うとね…」
なるほど、白井か、と上条は思う。白井黒子が居たら、何が起こるか分からない。
「ま、明日明後日あたりで、いいとこ探して行くか。ちょっと色々ケリつけてから、だな」
「…うん、それがいいと思う」

「あらあら、何か複雑な理由があるのねえ」
「人間関係が色々と、ややこしいんでござんすよ」
上条は詩菜に苦笑いしながら答える。
「じゃあ…、コレに2人でいってきなさいな」
詩菜は旅館のパンフの一部を差して、美琴に差し出す。
「! こ、これは…!」
「上条の名前で昨日から取ってあるの。というか昨晩使わせて貰ったんですけどね〜。うふふふ」
「ちょ、ちょっと詩菜さん!」
「チェックアウトの夕方5時まで予約は効いてるはずよ。どーんと行ってらっしゃいな」
「で、でもこれ…!」

何を泡食ってるんだと、上条は美琴の手に持ったパンフを覗き込む。
『プライベートバス<完全予約制> 眺望抜群の露天風呂をお楽しみ下さい! 限定3組』
「…何だこれ?」
「あらあら、当麻さんったら。家族用のお風呂じゃない。十分広いし、乳白色のお湯でね、気持ち良かったわよ〜」
「…それは何か?風呂入ってこいと?…美琴と?」
「よし、嫁入り前だけど、許可するわ当麻くん!いってこーい!」
「待てーい!これは流石にやりすぎだろっ!」
「あらあら、こんなチャンス滅多にないわよ〜。恥ずかしいのは分かるけど、これも思い出の一つ!」

こ、こんな母親たち有り得るのか?
上条は追い詰められた気分で、美琴を窺う。
美琴は予想通り真っ赤になっているが…上条を見て目をそらさない。
(その「意気地なし!」となじるような目はなんだーっ!まさか、行くと俺が言えば、行く気、か…?)
「よし、じゃあ詩菜さん、フロントに連絡して。使用する連絡とタオルセットの準備お願いしますね。
 こちらはもうお風呂から出たら、美琴ちゃん制服に着替えさせたいから、準備してくるわ」
「は〜い、じゃあ2人はここで待っててね〜」
「ま、待て…」

ぽつねんと2人残される。
「あの…」
「もう今日はね、夢だと思って何でもやっちゃえって気分なのよね」
「へ?」
上条は何か吹っ切れたような顔をしている美琴を見つめる。
「あまりにあり得ない事が続きすぎてさ…今当麻の右手で私を叩いたら、現実に戻るんじゃないかな、って」
「…やってみっか?」
「やめて!せめて夢なら最後まで見させてよ。ああでも、」
言葉を切って上条をいたずらっぽく睨む。
「美琴サンのハダカを安々とは拝めさせませんからね?」

120ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:47:15 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語21】

<後編11>

プライベートバスゆえに、更衣室も男女兼用である。
開き直った美琴も、まな板の鯉な上条も、タオルセットを持ちながら固まっている。
「…とりあえず、俺から着替えるから、外で待っててくれるか? ノックするから1分後に入ってくれ」
「うん…そうね。わかった」
そう言って美琴は一旦、入り口に戻って外に出た。

(しかし、えらい事になった…)
スーツを脱ぎつつ、半ば呆然としながら身軽になっていく。
(じょ、女子中学生と風呂とか…絶対に反動の不幸が来る。慎重に行動しねえと…)
タオル一枚で前を隠しつつ、戻って扉をノックする。「じゃあ1分後にな」
返事のようなものが聞こえたので、急いで浴場に向かう。

(ほー、結構思ったより大きい)
美琴は振袖から着替えるから、当分入ってこないだろう。
色々シミュレーションしてみるに…今のうちに頭と体を洗っておこうと決めた。
…最悪の場合、風呂から上がれない恥ずかしい状態が続く可能性がある。
浴室の入口から一番離れた場所で、体を石鹸で洗い始めた。目の前の鏡で、入り口は確認できる。

カラカラ…と扉の開く音がし、にゅっと、美琴が顔だけ出してきた。
(き、きた…)
鏡は湯気で曇りだしているが、姿はまだ確認できる。
美琴の美脚がそろそろと入って、…!
(ちょっと美琴さん!大胆すぎです!)
てっきり上条はバスタオルを巻いた、よくあるTVのレポーター状態をイメージしていたが。
巻きたくても巻けなかったのかもしれないが、バスタオルは胸と太股を隠すのみで、
背中から腰のライン、かわいいお尻は横からとはいえ丸見えだった。
(ぐああっ!煩悩退散!煩悩退散!)
すぐさま頭にシャワーをぶっかけ、見てませんよアピールをすると共に、頭をわしゃわしゃとシャンプーで洗う。
(やっぱヤベエってコレ!)


『……お湯にタオルは入れない!』
美琴は、あの銀髪碧眼シスターの声を思い浮かべていた。
(うーん…)
恥ずかしいが、バスタオルは前を隠すだけにしようと決め、そろそろと浴室を窺う。
上条は先に体を洗っているらしい。
(じゃあ先に浸かってよっと)
そそくさと乳白色の世界に向かう。
昼間とはいえ1月だ。まだまだ寒い。バスタオルを畳み、桶でお湯をすくって体にかける。やや熱いが適温のようだ。
湯船に足の先をつけ、ゆっくりと肩まで浸かると、そのまま奥の方へ移動する。
(うっわー、男の人が同じ世界にいる…)
背中を壁にもたれかかせ、上条を視界に入れながら、ふーっとため息をつく。
(キンチョーするけど、なんか、幸せ…)
まどろんでいたが、上条が動きそうな気配を感じ、慌てて後ろを向く。


上条の頭は、シャンプーごときでは倒されず、むしろ細かいツンツン頭、すなわちヤマアラシみたいになっている。
前を隠し、美琴の死角からそろそろと湯船につかり、そのまま動かない。タオルはヤマアラシ頭に乗せてある。
「…もういい?」
「ああ、浸かった」
2人の距離は7〜8メートルといったところか。
「こっちきたら?話できないじゃない」
「…ハイ」
上条は、理性の鎖が解き放たれぬよう祈りつつ、美琴に近づいていった。

121ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 00:47:37 ID:ZIwE2iqQ
【とある両家の元旦物語22】

<後編12>

美琴は肩まで浸かっていたので、上条としても視線は合わせやすかった。
50センチほどの間をあけて、隣に座る。
「なんか緊張するね」
「そりゃそうだ。お前今、…素っ裸だよな?」
「そうね。早速見たいのかしら?」
「じゃなくて!バスタオルとか巻かないのか?」
「お湯にタオルは入れない!といった師匠がいてですね」
「…立派な師匠です」

美琴は上条の頭をじっと見つめ、
「ちょっと触らせてね…うはー、固いのね」
手を伸ばしたがゆえに美琴の腋と胸のラインが微かに見えた上条は、落ち着きを失う。
「お前な、一挙手一投足気を使え!これじゃ生殺しだ!」
「なにそんなに意識してんのよー。えいっ!」
右足をざばっと斜め上に上げる。スラッとした美脚は濡れてキラキラと輝いている。
「お、お前…はー!」
「あははははは」
マズイ、完全にペースを握られている。何か、話題はないか、話題は…


「そうだ!そういや一番知りたいこと、お前に聞いてなかった」
「な、なによ」
「どうして俺の記憶喪失見破れたんだ?どっかでボロ出したか?俺」
「…ま、そういう意味じゃ、当麻ほんと凄いわ。よく隠しきれるもんだわ、って」
「親にすら見破られてねえのに…」
「! ちょっと待ってよ! あのご両親も知らないの!?」
「…知らねえはずだ。知ってたらもう少し態度も違うと思う。色々カマかけて試そうとするだろう」
「あっきれた…」
「だからこそ、何でお前が見破れたのか知りたいんですが…」
美琴はちょっと口元をお湯に沈め、ブクブクと泡を立てながら少し考え込んだ。

「見破ったんじゃなくて、知ったのよ」
美琴は上条がアビニョンから問い合わせてきたとき、携帯がずっとつながっていたことを話した。
「びっくりしたわよもう。急に黙り込んだと思ったら、激しい戦いの音の嵐で。気が気じゃ無かったわよ」
「あの状態で壊れてなかった…か」
「で、相手の記憶喪失の指摘に、当麻否定しないんだもん。」
「…そうか、それで。…サンキュ、わかった。」
「どうでもいいけど、ペア契約の無料通話で良かったわね。してなかったら、国際電話の長時間通話で、チーン」
上条は、美琴のペア契約大作戦を、心から感謝した。


「さてと、ちょっとのぼせそうだから、一旦体洗ってくるね」
「あいよ」
「…ちょっと!後ろ向いててよ!」
「さっき、あれだけからかっておいて…」
「いいわよ!じゃあじっくり見てなさい」
「…ゴメンナサイ」
上条は後ろを向く。ちょっと間をおいてちらっと後ろを見ると、ちょうど湯船から美琴が出ようとした所であり…
「こらーーーーっ!」
目が合って怒られ、慌てて後ろを向き直す上条の脳裏には、一糸まとわぬ美琴の後ろ姿が焼き付いていた。



<(混浴の)続きはありますが一旦ここまで。後半編長いですが、次こそ終わります。エピローグにケリつけたら投稿します>

122■■■■:2010/02/08(月) 00:52:45 ID:QMBApPEA
>>121
GJ! 漏れ死んだ……。

123■■■■:2010/02/08(月) 01:06:47 ID:9pVzBuYo
>>101
結構あり得そうな話ですね、上条さんの性格を考えると。
実際原作も周りの女性陣ばっかり騒いでるけど当の上条さん本人はそういうのにあんまり興味ないっぽいし。
「恋愛」というモノには憧れててもいざ実際自分がそういう物語の主役になることは想定してない、と言うか。
美琴のお泊まりなどの恋人的行動に本当に迷惑そうにしてる、この点が上条さんの一連の美琴に対しての冷たさの原因でしょうか?
後半も楽しみにしています。

>>116
山場を越え、もうくっついた後なんで安心してニヤニヤできます。
付き合い始めてすぐだからこそこの状態でも上条さんは我慢できるんでしょうね、これがもう少し付き合いが深くなっていれば上条さんがルパンダイブするのは確実。
そっちはそっちで見てみたい気も。
こちらも後半楽しみです。

んにしてもお二人の文章読みながら自分の文章を読み返すとなんとまあ読みにくいことよ。
主語述語、時制しか気にしてないからどこの論文やねん、見たいな。
精進が必要です、同時にお二人の読みやすい文章に嫉妬します

124■■■■:2010/02/08(月) 01:12:32 ID:LInIqWtQ
もうみなさんGJ過ぎるぜ…
ニヤニヤと切なさのダブルパンチは強烈過ぎる…

125豚遅:2010/02/08(月) 01:13:07 ID:kgScdam.
読んでくださった方々、ありがとうございました。
反響は素直に嬉しいです。

そして次回は未定よくある話よね

そしてD2さんとぐちゅ玉さんお疲れ様です。
続き期待してます。

126■■■■:2010/02/08(月) 01:13:18 ID:LInIqWtQ
上げてしまった。失礼。

127■■■■:2010/02/08(月) 01:28:46 ID:G0VlotZM
>>121
・・・俺死亡確認
インデックスちゃんありがとう

128■■■■:2010/02/08(月) 01:32:15 ID:.F6l/3KE
>ぐちゅ玉氏
>「ちょっと触らせてね…うはー、固いのね」
前文読んでなかったら蒸発するところだった。
とにかくGJとしかいいようがない。

129■■■■:2010/02/08(月) 07:47:59 ID:YZ/z8hZc
二日で100スレ越えワロス そして質が半端ないなwぐちゅ玉さんやDLさん本当にGJですw

130ぐちゅ玉:2010/02/08(月) 09:11:37 ID:sSnF.ctY
多大なご評価ありがとうございますー!

実際、この辺りのデレ美琴書きすぎて、自分の中で「美琴」がキャラ崩壊を起こし、
他の作品が書けなくなってしまったんですけどね(苦笑)

しばらくまた名無しに戻り、リハビリいたします。ではまたです〜

131■■■■:2010/02/08(月) 12:09:33 ID:i3g1v2Io
四日かけてよっと追いつきました…
GJ過ぎる職人さんと作品に2828が止まりませんw

空気的にいけそうなら投稿してみたいと思います

132メリー:2010/02/08(月) 12:18:32 ID:i3g1v2Io
投下させていただきます
ちなみに二次創作ssは初めてなので、キャラがおかしかったらすいません

ドゾ

133メリー:2010/02/08(月) 12:19:09 ID:i3g1v2Io
【とある笑顔の守り方】



「上条当麻、なにか弁明があるのなら聞いてあげるわ」

 十二月もそろそろ中旬に差し掛かったとある放課後。上条当麻の『不幸』は、級友のそんな一言から始まった。

「えーと、吹寄さん? それは一体どういった意味でしょうか…?」

 やっと授業が終わったかーそーだ今日はスーパーの特売日だったじゃーん、なんて晩飯の事を気楽に考えて立ち上がっていた上条は、放課後になるや否や突然自分の前に現れたオデコMAXな女子に冷や汗を流しながら問うてみた。
 オデコな級友こと吹寄制理は、じりじりと後ずさる上条をジロリとひと睨みすると、どっかの刑事ドラマの取調室みたいに机をバシンッ! と手を叩きつけた。

「貴様は、心当たりがない。そう言いたいわけね?」
「そ、そもそもですよ吹寄さん? わたくし上条当麻はそんな後ろめたい人生を送っているワケがありませんのことよ?」
「そう……残念ね。自首なら少しは罪が軽くなったものを」

 ぜんぜん残念そうじゃない表情を浮かべる吹寄は、なにやら周りに向かって目で合図を送る。そんな様子を? な顔で眺めていた上条だったが、教室に残るクラスメイト全員が突然動き出した事で焦りはじめた。

「こ、これは何事でありますか!?」
「にゃー。カミやんここは大人しく吐いた方が身のためだぜー?」

 なにやら机を動かしているらしい級友たちの中から土御門元春が顔を出し、上条の肩に手をおいて忠告してきた。
 上条からしてみれば笑って聞き逃したいところなのだが、この土御門という男の立場を考えてみると、いかんせん冗談に聞こえなくもない。

「捕まった捕虜への拷問──もとい尋問は厳しいぜぃ?」
「止めて! そんな生々しく言わないで!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ上条と土御門を尻目に、無表情で作業をこなしていく級友たち。しばらくガタガタやっていると、吹寄から終了の号令が出る。

「こんなもんかしらね。上条!」
「は、はい!?」

 土御門とじゃれて(?)いた上条は、吹寄の怒声に肩をビクリと震わせ、彼女に向き直る。
 基本街の不良なんかにはあまりビビらない上条だが、どうもこのオデコな級友には苦手意識があるらしく、ビクビクしながら返事をしている。
 上条さん、カッコ悪い。

134メリー:2010/02/08(月) 12:20:30 ID:i3g1v2Io
「ちょっとそこに座りなさい」
「そこ…と言われましても吹寄さん? 床なんですが」
「正座!」
「はいッ!」

 残ったプライドを殴り捨て、ピョンとジャンピング正座を華麗に決める上条。
 そこでふと周りを見渡してみると、何故か自分が皆に囲まれていることに今更気付く。机や椅子は教室の隅に追いやられ、とっくに帰りのチャイムが鳴ったにも関わらず未だに誰一人帰っていないクラスメイト。


(ま、まさかこれは予想以上にヤバイ状況なんでせうか?)

 内心やっとこの殺伐とした空気を理解し、滝のように冷や汗を流し始める。
 神の右席? この空気に比べたら全然怖くないですよ、はい。

「さて」

 と、

「準備も整ったようだし、早速始めるわよ上条。土御門」
「任せるにゃー」

 吹寄に呼ばれたシスコンサングラスがうきうきしながら姿を現す。

「ではこれより──『カミやん×常盤台異端尋問会』開催するぜぃ!」
「は!?」

 いえーいと盛り上がる男子と、静かに睨む女子、そして未だに状況を理解しない上条とで、三者三様な反応を起こす生徒s

「ちょ、ちょっと待てよ! 異端尋問!? なにそれ意味わかりませんのことよ!?」
「被告人は静粛に。貴方に発言権は認めません」

 上条の必死の抵抗も、ばっさりと吹寄切り捨てられる。どうやらこれはちょっとした議事裁判らしく、裁判長は吹寄、検事は土御門、その他のクラスメイトは傍観者、そして被告人は上条という風になっているらしい。

135メリー:2010/02/08(月) 12:21:14 ID:i3g1v2Io
「なお、被告人には弁護人を付けるので彼に発言してもらうように。以上」

 吹寄が上条の後ろを指差して言い放つ。文句を言わさない勢いの彼女にビクリとしつつも、一応弁護士がいることにホッと胸を撫で下ろす上条。
 だが、その安心は一瞬にて不安へとチェンジした。

「僕に任せるんや、カミやん!」

 上条、土御門を含める三馬鹿の一角にして、委員長を務める人類の最底辺・青髪ピアスがそこにいた。

「なんだこりゃ! 明らかにやらせの裁判じゃねえか!!」

 瞬間、上条が吼えた。確かに自分の命運をこの男が握っているのだとしたら、それかなり不安に違いない。

「ちょ、いきなりカミやん酷くない!?」

 青髪ピアスが後ろで騒いでいるが無視を決め込む。いない方が有利に決まっているからだ。

「じゃあ俺から始めるぜぃ」

 無視ですかー! という上条&馬鹿の叫びをスルーしつつ、裁判を再開する。
 土御門は手に持った紙の束を広げながら、キラリとサングラスを光らせる。

「まずひとつめの証拠だにゃー。カミやん、カミやんはさっき、自分に心当たりはなーい、みたいなこと言ってたよにゃー?」
「え、あ、はい」
「ならば…これを見てみろー!!!」

 そう言って土御門は盛大に何かをばら撒く。皆がそれを拾う中、上条もひとつ手に取る。どうやら写真らしい。
 と、それを見た瞬間上条は思い切り吹き出した。

「ぶッ! な、なんだよこれ!?」

 写真を見てワナワナと震える上条。
 そこには、なにやら仲が良さそうに並んで歩く男女の姿があった。しかも男の方は買い物袋を片手に下げており、それはまるで夕飯の事を楽しく語り合うカップルに見えなくもないわけで。もちろん、男はツンツン頭の上条当麻その人であり、女は上条が良く知る常盤台の電撃姫である。
 上条は思わず喉から悲鳴をあげた。

136■■■■:2010/02/08(月) 12:22:05 ID:i3g1v2Io
「さぁカミやん。どう切り抜けるつもりかにゃー?」

 どうしたと言わんばかり攻めてくる土御門。

(いや確かにこの前買い物に付き合っていただいたけれども! でもあれはたまたま通りかかったビリビリにスーパーの『お一人様○個限り』の特売品に付き合ってもらっただけですよ!? それだけなんですよ!?)

 心の中で言い訳を繰り返す上条。更にニヤリと笑ったサングラスは、次なる追い討ちをかけてくる。

「続いていくぜぃ!」

 そして更にばら撒かれる赤裸々な嵐。上条は必死にそれを回収しようと手を伸ばすが、いかんせん相手が悪すぎた。敵は三〇人以上なうえに、皆何かしら能力を持っているのだ。いくら上条の右腕があらゆる異能を打ち消す『幻想殺し<イマジンブレイカー>』だったとしても、これをすべて受け流すのは不可能だった。
 ましてや……

「「「またカミジョー属性のフラグかァァァ!!!」」」

 なーんて鬼気迫るクラスメイトに太刀打ちできるわけもないのだ。というかできるかァ!
 上条はなんとか写真を奪取するも、確認する間もなくまたしても土御門が叫んだ。

「以上が俺からの証拠提出だにゃー」
「おいこら土御門! さっきからばら撒いてるこれ、犯罪じゃないのか!」
「おいおいカミやん。人聞きの悪いこと言うなよ。そもそも撮影したのは俺じゃないぜぃ?」

 土御門の言葉に、え? 一瞬首を傾げる。だがその疑問はすぐに解決した。

「どや、カミやん! 僕の撮影技術なかなかイケて…」
「テメエかぁぁぁ!」
「げるぶぁ!?」

 上条はすぐさま、後ろでどや顔をする盗撮魔を殴り飛ばした。

「盗撮は犯罪ですよ!? っつか弁護人役に立たないどころかむしろ追い詰めてますよね!?」
「何を言うねん! 萌えのあるところに常に我ありやで!」

 なにかかっこ良いことを熱弁する青髪ピアス。一瞬上条も尊敬しかけたが、今の状況を思い出して頭を振る。
 しかしそこで、忘れかけていた存在が口を開く。

「これより判決に移るわよ!」
「まだ続いていたんですか吹寄サン!?」

 今まで裁判長みたいに静かに聞いていた吹寄が、静かに口を開いた。
 それに対し、約一名がボソリと小さくつぶやいた。

「………死刑に一票」

 さすがにこれは、教室中がシン─…と静まり返った。

「え、ええっとですね姫神さん? 今の裁判制度は多数決とではなくてですね?」

 滅多に冗談を言いそうにない姫神秋沙に対し、上条は顔を引きつらせながら弁明をしようと必死に頭を巡らせたが、無駄だった。

「じゃあそれで」

 なんとも投げやりな吹寄の一言により、上条は言い訳もままならないままもみくちゃに囲まれる。

「吹寄サン!? いえ吹寄大裁判長様! これでは裁判の意味が! だあぁぁぁ不幸だぁぁぁ!!!」

 教室でクラスメイト達にもみくちゃにされながら、上条当麻は本日何度目かの声をあげた。

137メリー:2010/02/08(月) 12:23:12 ID:i3g1v2Io
「はぁぁぁ……酷い目にあった」

 それから約一時間後。上条当麻はやっとの思いで悪魔たちから開放され、トボトボと家路についていた。
 空を見上げれば、雲はすでに赤く染まっており、学園都市も茜色に包まれていた。当然、スーパーの特売にも出遅れている。家に一匹暴食魔獣を飼っている身の上条としては、なんとも痛い失敗だった。

「にしても」

 学ランのポケットに突っ込んでおいたブツを引っ張り出し、上条はハァとため息を吐く。
 まさか撮られているとは思わなかった。一枚目をよくよく見直してみれば、客観的に見て完全に恋人同士に見える。
 この時ビリビリってこんなに笑っていたっけ? と首を捻ってみたが、当時貴重なタンパク源である卵を二つも手に入れてホクホク状態だったせいかよく覚えていない。
 そういえばもう一枚あったっけ、なんて思い出してポケットを探っていると、突然声をかけられた。

「あ、ねえアンタ」
「うん?」

 振り向けば、さっきまで会話の渦中にいた少女が立っていた。

「おー御坂じゃんか。どうしたんだ?」

 名門・常盤台中学のエースにして、学園都市が誇るレベル5の電気使い(エレクトロマスター)、『超電磁砲<レールガン>』こと御坂美琴。
 上条は、そんな少女に続けて声をかける。

「今帰りか? っつってもこっちお前の寮と別方向だよな。なんか用事か?」
「べ、別に。用が無かったらこっちに来ちゃいけないわけじゃないでしょ」
「ま、そりゃそーだ」

 ツンツンした頭をガリガリと掻くと、上条は美琴の様子がいつもと違うことに気付く。
 いつもなら出会い頭に電撃の一発も飛んできそうなものだが、そんな様子は見当たらなかった。

「アンタこそ遅かったじゃない。高校ってもっと早く終わるんでしょ?」
「ん? いやまぁ少しいろいろありまして…」

 ハハハ、と力なく笑う上条の態度に美琴は少し引っかかって、詳しく突っ込んで聞いてみる。

138メリー:2010/02/08(月) 12:23:46 ID:i3g1v2Io
「なに? またアンタは厄介ごとに首突っ込んでるワケ?」
「その言い方だと、まるで上条さんが好きで問題に巻き込まれてるみたいな感じですね。まぁ良いけど。って言っても今回は違げーよ。どっちかっつーと俺とお前の問題、かな」
「私?」

 うん、とうなずく上条。そこでまぁ話しといた方が良いかななんて考えた上条は、放課後のことをかいつまんで話すことにした。一応写真は見せない方向で。
 
 で、五分後。

「わ、私とアンタがかかかかかかカップル!?」

 頭からバチバチと火花を散らせる電撃姫が出来上がっていた。

「落ち着け御坂。誤解は解いた…多分」

 一応説明はしたのだが、あの騒ぎの中で一体何人が正確に聞いていたのかとても不安ではある。
 それを思い出して、上条は頭を抱えた。

「………ねえ、アンタさ」
「うん?」

 少し暗い美琴の声を聞き、上条は頭を上げる。そこには、レベル5でも『超電磁砲』でもない、一人の少女の寂しそうな顔があった。

「アンタは…私がいると、迷惑?」

 美琴は、何かを考える前に言葉を吐き出していた。
 それは、彼女がずっと考えてきたこと。夏休み終盤に、自分と妹達を救われてからずっと。心の片隅に小さく眠っていたソレは、上条と日常を過ごしていくうちにどんどん膨らんで、今では美琴を押し潰そうとすまでに成長していた。
 自分は上条当麻のお荷物なのでないだろうか? コイツは多分、私の知らないところでたくさん戦い、たくさん傷ついている。それを誰にも言わず、誰にも助けを求めないのは何故だろうか?

 何故、上条当麻は御坂美琴に助けを求めないのだろうか。

 それを考えた時、美琴は一番最悪な答えを想像してしまったのだ。
 即ち、上条当麻は自分のせいで事件に巻き込まれ、それなのに美琴本人は足手まといになっているのではないか、と。今回もそうだ。規模は違えど、自分と居ただけで彼に迷惑をかけたではないか。

 そう考えた途端、美琴は何故だか泣きたくなった。前が滲んで見えてくる。喉がかすれて声が出ない。

 やっぱり、私は……

139メリー:2010/02/08(月) 12:24:10 ID:i3g1v2Io
 そう思いかけた瞬間──

「ばーか」

 美琴の頭に、暖かい何かが乗っかった。

「お前…様子がおかしいと思ったらそんなことかよ」

 それはとても暖かで、

「あのなぁ御坂。前にも言ったと思うけどさ」

 いつも私の願い(げんそう)を守ってくれる、

「お前は笑ってて良いんだよ。もう俺はお前の絶望した時の顔なんて見たくねーよ」

 大好きな人の大きな右手。

「だから安心しろ。お前から笑顔を奪うことはしねえ。迷惑なんかじゃねえし、むしろ退屈しないで済むくらいなんだよ」
「……うん」

 今感じた感想が恥ずかしいやら嬉しいやらで、ドギマギしながらうなずく美琴。

「つっても、俺にできることなんてたかがしれてるかもしんねーけどさ」

(ううん。アンタがいてくれるだけで──傍に立っていてくれるだけで私は幸せ)

 そして美琴は静かに決意する。

(見てなさいよ。絶対に気付かせてやるんだから)

 夕日が放つ、綺麗な茜色が二人を包み込んでいた。
 いつの間にか、美琴の内にあった負の感情は綺麗さっぱり無くなっていた。




「そう言えばさ」

 少し涙ぐんでいた瞳を隠しつつ、美琴は思い出したように切り出した。

「私、まだ写真見てないんだけど?」
「ぐっ、いえいえアレは見せるもんじゃありませんですから…」
「良いから見せなさいよ。私だけ見てないなんて不公平じゃない!」
「バカ言え! あんな恥ずかしいもん、そうほいほい見せられるかっ!」
「なら泣くわよ!」
「御坂センセーはそんなにも汚いお方なのですか!?」

 上条が着る学ランのポケットには、まだ上条が確認していない写真がある。
 それは、一端覧祭の時に撮られたものだった。無理に約束までこぎつけて、半強制的に連れまわした写真。
 それでも、二人はどうしようもないくらい明るい笑顔だった。


  Fin

140メリー:2010/02/08(月) 12:32:43 ID:i3g1v2Io
というわけで以上です
全然イチャイチャしてないうえに、前半丸々クラスメイトに持っていかれましたorz

ぱっぱっとストーリーを進めたかったため、なるべく地の文少なくしたんですがやはり難しいですね…
というか吹寄とか三馬鹿を調子に乗って暴走させたら収拾がつかないことに…
以後気をつけないと

ちなみに一端覧祭のイベントは架空です
妄想でカバーしてくださいw

というわけで、終始鈍感を貫いた上条さんでした

141■■■■:2010/02/08(月) 14:16:28 ID:.rm9vx4.
メリーさんグッジョブです
また面白いの書けたら投稿してくださいな!
心待ちにしてます

142■■■■:2010/02/08(月) 14:18:46 ID:bUY8sUUY
>>140
GJだがsageてくれ
>>1は読んだよな?

143メリー:2010/02/08(月) 15:24:15 ID:i3g1v2Io
>>142
すいません
忘れてました…

以後気を付けます

144■■■■:2010/02/08(月) 15:33:34 ID:QxJFvVN.
>>143
だからsageてくれって…
E-mail(省略可)に sage って入力ね。

145メリー:2010/02/08(月) 15:50:40 ID:tly479i.
把握しました

146■■■■:2010/02/08(月) 16:00:07 ID:.rm9vx4.
メリーさんどんまい!
気落ちしないでくださいね

147■■■■:2010/02/08(月) 16:16:07 ID:bdDHnY0c
メリーさんGJ!
美琴の揺れ動く心情がいいですのう

148■■■■:2010/02/08(月) 16:32:10 ID:gEd.FtEA
職人さん達GJです!

毎日ここに来るのが楽しみです!

149メリー:2010/02/08(月) 16:35:51 ID:h7UWTydU
>>142
>>146
>>147
GJありがとうございます!
作品の感想を言ってもらえるのは嬉しいものですね

作品が出来たらまた投下したいと思います
高三で時間だけはありあまっているのでw

150■■■■:2010/02/08(月) 16:53:59 ID:QmIJ7./6
>>133
あれ? 静かに淡々と嫉妬の炎を燃やして当麻を死刑にしようとする姫神に萌えてしまった。
なぜだろう…。
まあ一番かわいいのは当麻の迷惑かも、と思い悩んで涙ぐむ美琴なんですが

151■■■■:2010/02/08(月) 17:03:28 ID:vr2R.bIY
こちらで初めて投稿しようと思います。
時間は17:10頃。
問題なければ時間になり次第投稿します。

P.S.前スレで書き方やなんかを聞いていた者です、その節は皆さんありがとうございました。

152目覚め(1):2010/02/08(月) 17:10:42 ID:vr2R.bIY
 いつもと変わらない景色。
 右を見ても左を見ても、そして天井を見上げても、そこには上条当麻が普段から見慣れたとある病院の、とある一室があるだけだった。
 大きな戦いで彼が大怪我を負って入院するたびに使用する場所。
 特にここ数ヶ月はあまりにも頻繁に使用するので、上条にとっては馴染みになってしまっている病室だった。
 どこも代わり映えはしない。
 たった一つの違いを除いては。
 それは、ベッドで眠る患者が上条ではなく御坂美琴で、ベッドの横で彼女を心配そうに見つめるのが美琴ではなく上条であるという点だった。
「どうしてこんなことになっちまったんだ」
 上条はベッドで静かに眠る美琴を見ながら辛そうに顔を歪ませた。

 事の起こりは一週間前にさかのぼる。

153目覚め(2):2010/02/08(月) 17:11:14 ID:vr2R.bIY
 その日上条当麻は、ある目的を持って学園都市に侵入してきた敵と戦った。
 上条には理解できない目的を持っている者だったが、とにかく彼と彼の大切な人たちの幸せをその敵が壊そうとしていたことだけは確かだった。
 そしてこれはいつものように上条がたった一人で死にもの狂いで行う戦いのはずだった。
 自分以外の誰も傷つかないために。
 だがその戦いはいつもとほんの少し、いや大きく違っていた。
 上条の側には学園都市第三位の能力者、超電磁砲、御坂美琴の姿があったからだ。
 上条の本音からすれば美琴を妹達の件以降、二度と危険なことに巻き込みたくはなかった。
 特に今回の敵は魔術側に属する敵、美琴のためにも本当は絶対に関わらせてはいけない敵だった。
 逆に美琴からすれば上条の記憶喪失を知った以上、彼への恋心を自覚した以上、彼一人を危険な目に遭わせるわけにはいかなかった。
 好きな人と一緒にいたい、その人の力になりたい、美琴は純粋にそう願った。
 そんな彼女からすれば、半ば強引であろうとも上条の戦いに参戦するのは至極当然のことであった。
 少しの口論の後、結局二人は互いが互いをかばい合うように敵に相対した。
 激しい戦いの末、上条達は敵を追い払うことに成功した。
 だが負けを悟った敵は立ち去る寸前、不意打ち気味に上条に対して最後の攻撃を放った。
 虚を突かれた上条には絶対にかわせない攻撃だった。
 もうダメだ、と上条が思った瞬間、激しい爆発音が響いた。
 しかし上条は全く痛みを感じることはなかった。
 不思議に思った上条が爆発のあった方を向くと、そこには超電磁砲を放つ姿勢のまま立ちつくす美琴の姿があった。
 上条が美琴に近づくと傷だらけの彼女の体はグラリと傾きゆっくりと倒れはじめた。
 慌てて美琴を抱き留めた上条だったが、彼女の顔に全く生気がないことに気づいた。
「ちょ、御坂、どうしたんだ?」
 表情を険しくした上条は美琴の体を揺すったが、彼女が反応する様子は全く見られなかった。
「おい御坂、御坂、しっかりしろ。しっかりしろおい、返事しろよおい!」
 だがどれだけ上条が声をかけても美琴が目を覚ますことはなかった。
「起きろよ御坂、起きろてくれよ。起きてくれよ御坂、御坂、み坂……みさか――!!」

154目覚め(3):2010/02/08(月) 17:12:24 ID:vr2R.bIY
 一週間前の戦いを思い出しながら、上条は悔しそうに唇をかんだ。
「どうして、こんなことになってるんだろうな」
 上条はこの一週間、何度となく繰り返した言葉を呟いた。
「俺は、お前に、二度と傷ついて欲しくなんて、なかった……のに」
 しかし美琴からの返事はない。
 彼女はただ静かにベッドの上で眠り続けるのみだった。
 ベッドで眠る美琴、椅子に座りその様子を辛そうな表情でじっと見つめ続ける上条。
 二人が病院に来てから一週間、毎日続いている光景だった。
 美琴より怪我の程度が軽いとはいえ上条も入院患者だったため、病院のスタッフも入院当初は上条の行動を諫めようとした。
 しかし美琴を純粋に心配する上条の態度にやがてどのスタッフも上条の行動に干渉しなくなった。
 もっともこれには病院の常連であり、かつ異常なまでの回復力を持つ上条だからこそ許された行為ではある、という事情もあるのだが。

 とにかく入院が始まってからの上条の生活は美琴を中心に回っていた。
 朝、朝食が済むとそのまま上条は美琴の部屋を訪れた。
 部屋に入った上条はベッド脇の椅子に腰掛けると、心配そうにただひたすらじっと美琴を見つめていた。
 昼になってもずっと上条は美琴の側にいた。
 そんな上条が部屋を出て行くのは美琴の友達が見舞いに来るときだけであった。
 特に美琴のルームメイトである白井黒子は毎日必ず見舞いに来ていた。
 彼女たちが美琴の部屋を訪れる時はじめて、上条は自室に戻るのだ。
 そして美琴の友達が退室すると再び上条は美琴の部屋に。
 就寝時間になるまでずっと上条は美琴を見つめ続けた。
 ロマンス好きの病院スタッフに言わせると、「まるで眠り姫の目覚めを待つ王子様みたい」ということになるのだが、そう言われても否定できないほどのひたむきさで上条は待ち続けていた。
 入院してから今まで、決して目覚めない美琴が目を覚ますのを。
 そして今日もまた、そんな一日が終わろうとしていた。

155目覚め(4):2010/02/08(月) 17:13:55 ID:vr2R.bIY
 夕方、医者による検査を終えた上条は自分の部屋に戻ることもなく美琴の部屋に入ると、まるでそこが自分の定位置だと言わんばかりに、自然な動作でベッド脇の椅子に腰掛けた。
「御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな……」
 上条は美琴が目を覚ましていないことを確認すると小さくため息をついた。
「カエル医者は、お前はもう治ってる、いつ目を覚ましてもおかしくないって言ってたんだけどな。やっぱり、俺がお前の変わりになってれば……」
 上条は思わず口をついて出た自分の言葉にはっと息をのむと、頭をぶんぶんと振った。
「違う違う違う、そうじゃない、そうじゃない! そうじゃないんだ、これじゃダメなんだ!」
 上条は一度大きく深呼吸をしてから美琴をじっと見つめた。
「なあ御坂。俺、さっきカエル医者に怒鳴りつけられたんだ『君はこの一週間、ずっと彼女を見舞っているのにまだ気づかないのかい?』って。ほんと、情けない話だ。言われて初めて気づいた。お前を助けるために俺が傷ついたら、いや、誰かが傷ついたら、それだけで悲しむ人はいるんだって、そんな単純なことに俺は気づいてなかったんだ」
 がばっと上条は頭を下げた。
「本当にごめん。カエル医者から聞いた。インデックスが来てたのは知ってたけど、俺が怪我して寝てる時ってお前はいっつも俺の見舞いに来てくれてたんだってな。心配かけてごめん、それから、ありがとう」
 その瞬間、かたっと言う物音がしたが話に夢中になっていた上条はまったく気がついていなかった。
「んにしてもこういうことに全然気づかないって、本当俺って頭悪いよな。まあ、よくよく考えりゃ中学生のお前に勉強教えてもらうくらいだし、補習の常連だし、これじゃ高度な演算ができないレベル0なのも当然か。いや、こんなこと言って努力しないから吹寄から『私は不幸を理由に努力をしないあなたが嫌い』って言われるのか。ああもう、何言ってるんだ俺、今こんなこと関係ないだろ」
 イライラしたように頭をかきながら、上条は話し続けた。
「段々自分でも何言ってるか訳わかんなくなってきた。くそう、もうなんでお前がこんな大怪我しなきゃいけないんだよ。だいたい華奢な体してるくせにあんな戦いに飛び込んできやがって。自分が戦闘訓練受けたわけでもない普通の女の子だってこと忘れてんのかよ――って違う! これも違う、こんなこと言いたいんじゃない! お前にお礼が言いたいんだよ、俺は!」
 ここでいったん言葉を句切り、上条は自分にできる一番優しい表情を浮かべた
「助けに来てくれて、一緒に戦ってくれて、俺をかばってくれて、本当にありがとう。あの時、お前が来てくれて本当に嬉しかった」
 美琴の顔にほんのり赤みが差した。
 だがやはり上条が気づくことはなかった。

156目覚め(5):2010/02/08(月) 17:14:34 ID:vr2R.bIY
「そういやお前とこんな感じで話すのって初めてなのかな、いつもけんか腰だったから、お互い」
 ここまで一気に思いを吐露した上条は目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
 息を吐きながら今日はやたらと冗長な自分に気づいた。
 普段の自分なら言わないようなことまで言っていた。
 理由はわかっていた、さっき自分と美琴の主治医である冥土帰しに注意をされて以降、やたらとテンションが上がっていたためだ。
 でもそれは嫌な気分ではない、むしろ逆だった。
 冥土帰しの言葉をきっかけに思い返しはじめた過去の戦いや過去の出来事。
 それらを一つ一つ思い返すたびに、以前から感じていた胸の奥のむず痒さがぶり返してくるのだ。
 そのむず痒さはいつ始まったのかはもうわからない。
 一週間前、一ヶ月前、いや、御使堕しの事件の頃には既に始まっていたような気がする。
 それは上条当麻の中にある不定形でむずむずとした気持ちの悪い感情。
 だが今、上条にはハッキリと確信が持てていた。
 今のむず痒さは嫌なモノではない、と。
あとはむず痒さが嫌なものでなくなった原因がわかり不定型なモノが形を持てれば、とても嬉しいことが起こる、そんな予感がしたのだ。
 だからこそテンションはいやがうえにも上がり、普段言わないような言葉が口をついているのだった。
「正直記憶がない俺にはお前とどれくらいの付き合いなのかわからない、俺が覚えてるのって妹達の時からだからな。でも、それからでも結構いろいろあったよな。御達のこともそうだし、偽のデートもやったし、地下街で会ったこともあった。大覇星際の借り物競走に、そのあと一緒に写メ取って……そうか。そうか!」
 原因がわかった。
 思い出、美琴との思い出だ。
 口にして、言葉にしてようやくわかった。
 美琴との思い出が頭に浮かぶたびにむず痒さが激しくなり、嫌なものでなくなっていくのだ。
 それと同時に上条はもう一つの事実にも気づいた。
「なんでこんなに調子狂ってばっかりなのかやっとわかった。お前が寝てるからだ。お前と全然話してないからなんだよ」
 上条は毛布から出ていた美琴の手をやさしく包み込むように握った。
 本当ならば眠り続けている美琴が動くわけもないのに、テンションが上がりすぎている上条がその異変に気づけるはずもなかった。
 何しろ今の上条の心は今まで感じたことのない想いでいっぱいになり始めていたのだ。
 胸のむず痒さが嫌なものでなくなり、更には胸の奥がほんのりと暖かくなってきていた。
 もう少し、もう少し時間をかければ不定形も形を持てそうだった。
 今までにない感情の中、上条は素直な気持ちで美琴に声をかけていた。
「お前って、もう俺の側にいて当たり前なんだ。ビリビリやって、大声でわめき合って、泣いて、怒って、笑って、お前とワイワイやって、やっと俺、日常に戻れるんだ。あんな化け物みたいな連中とめちゃくちゃな戦いやったあと、お前がいるから日常に戻れるんだよ。お前がいてくれないと、俺もう全然ダメなんだ、普通じゃいられない」
 不意に、上条の目に涙が浮かびはじめた。
 テンションが上がりすぎて、心が素直になりすぎて、感情の抑えが効かなくなっていたのだ。
 美琴に元気になって欲しい、その想いで心があふれかえりそうだった。
「本当に、目、覚ましてくれ。お前に話したいこと、聞いてもらいたいこと、たくさんあるんだ。一緒にやってみたいことも。それから、あれももうちょっとでなんとかわかりそうなんだ。でも、お前がいないと、起きてないと、なんにもできないし、始まらない。だから、だから……。起きてくれよ、美琴。美琴、美琴、みことぉ……!」
 美琴の手を握りしめながら涙で声を詰まらせた上条は、それ以上声を出すことができなかった。

157目覚め(6):2010/02/08(月) 17:16:23 ID:vr2R.bIY
「今起きたら、私の言うことなんでも聞いてくれる?」
「……ああ」
「なんでもって、一回じゃないわよ。二回でも三回でも、ううん、私の気が済むまで聞いてもらうわよ。覚悟できてる?」
「任せとけ、上条さんは男の子だ、男に二言はない」
「気が済むまでなんだから、何日でも何年でもなんだからね」
「ちょ、おま、さすがに何年は――ん?」
 ここに来てようやく違和感を覚えた上条は声のした方を見た。
 そこにあったのは、寝たままではあったが瞳を潤ませ、穏やかな笑みを浮かべて自分を見つめる美琴の姿だった。
 美琴は上条に握られていない方の手で目尻をぬぐい、ぱちぱちと瞬きをした。
 次の瞬間上条の目の前には、頬を赤く染め瞳を潤ませてはいたものの、いつもの、上条が会いたがった美琴の笑顔があった。
「まずは私のことはきちんと名前で呼びなさい、ビリビリ禁止、名字もダメ」
「え……えと、みさ……みこ――美琴!? お前、いつから起きてたんだ!?」
「今さっき。具体的には『御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな』のあたりから」
「それって一部始終! あれ? え、えと、えと――」
 美琴から手を離した上条はしゃがみ込んでしばらくうんうんとうなると、申し訳なさそうに先ほどとは別の意味の涙目で美琴を見上げた。
「すいません御坂さん。上条さんは一体何を言っていたんでしょうか! 全く記憶にないんですが!」
「記憶喪失ネタはもういいわよ。それとも何? この眠ってた美少女中学生のあまりの可憐さに我を忘れて無意識であんなことやこんなこと言ってたの? あーあ、美しいって罪ね。それからもう一度言うわよ、私のことは名前で呼びなさい」
 上条はさーっと顔を真っ青にした。
 さっきはテンションが上がりすぎていて自分が何を言ったのかはまったく覚えていなかったが、美琴の様子からかなり恥ずかしい、まずいことを言ったのだけは間違いなかったからだ。
「あんなことやこんなことって? 本当に上条さんはさっき自分が何を口走ったのか、ほとんど覚えていないんです!」
「ふーん」
「で、ですから、なんでも言うことを聞くというのは」
「却下」
「即答ですか? 一刀両断ですか? ですからさっきから言ってる通り上条さんは」
「その控訴は棄却されました。上条当麻は御坂美琴の言うことをなんでも、いくらでも、私が満足するまで一生聞くという法案は満場一致で可決されました」
「横暴だ! て言うかさっきより項目増えてるだろう! さっきまで昏睡状態だったのに口だけはえらく元気だな、おい!」
「ずっと寝てたんだから体力ありあまってるに決まってるじゃない。さ、まずは私の質問にきっちり答えてもらいましょうか。アンタには聞きたいことがたくさんあるのよね。まずはアンタとインデックスって子の関係よね。それにさっき言ってた吹寄って人は誰? どうも女の人っぽいんだけど」
 指折り数えながらジト目でこちらをにらみつける美琴だが、当の上条は先ほどの自分の発言内容を思い出そうと必死でそれどころではなかった。
「それにしても俺は一体何を口走ったんだ……ん?」
 上条は目をごしごしとこすった。
「錯覚?」
「こら、無視しないでさっさと答えなさい! インデックスって何者? それから五和って子は? あと黒髪の巫女さんにやたら胸が大きくて露出狂の侍! ロリ教師に巨乳の眼鏡! まったく、アンタは一体何人の女を口説いてるのよ! それにどうして胸の大きな子が多いの!」
「まさか、な」
 先ほど一瞬だけ上条に見えた物。
 それは真っ赤な鎖とそれに結びつけられた真っ赤な首輪。
 首輪は上条の首にがっちりとはめられ、鎖の端は美琴にしっかりと握られていた。
「錯覚か? 錯覚、いや幻想だ。幻想に違いない」
 青ざめた顔でうんうんとうなずく上条だが、その間も美琴の話は続いていた。
「まあその辺はおいおい白状してもらうとして、他行きましょうか。じゃあねえ……こ、ここ今度の日曜、セブンスミストに行くわよ! ゲコ太のショーやってるの。あ、朝からゆ夕方まで都合五回、全部の講演見るからね!! 一日中付き合ってもらうわよ!!!」
「……結局言うこと聞くってのは決まりな訳ね。あー、ふこ――でもないのか、結構」
 いつもの口癖を呟きかけた上条だったが、笑顔で日曜の予定を語る美琴の顔を見ているとそんな気はあっさりと霧散していった。
 上条は右手をそっと胸に手を当てた。
「でもあれは、なんだったんだろう?」
 上条の心に浮かんだ不定形のモノ、結局それは不定形のまま。
 形になるまではまだもう少し時間がかかりそうだった。
「ちょっと、話聞いてるの? 日曜日はいつもの公園で朝九時に待ち合わせ、いいわね! 来週以降もきっちりスケジュールは空けてもらうわよ!」

158目覚め(7):2010/02/08(月) 17:17:10 ID:vr2R.bIY
――こ、この大バカ! 人が寝てると思ってなんてこと口走ってるのよ! あんな恥ずかしい、頭ぐちゃぐちゃになること! しかも言うに事欠いて覚えてないですって!? もう、もう、もう!!

――覚えててなくても、いいよ、今回だけは許してあげる。だから、いつか起きてる私に、ちゃんと言ってくれる? それまでは、私が、覚えててあげるから。



終わり

159■■■■:2010/02/08(月) 17:20:04 ID:vr2R.bIY
以上です。
読んでいただいた方には最大限の感謝を。

自分のサイトで文章書いたりはするけどこういうところに書くのは初めてなので読みにくい点があれば指摘していただけるとありがたいです。
SS自体書くのは5年ぶりくらいなんで単純に面白くない、文章おかしい、等言っていただいても一行構いません

160■■■■:2010/02/08(月) 17:21:30 ID:Cny/BOho
GJですよー

161■■■■:2010/02/08(月) 17:29:40 ID:hyN8xUs.
GJです。
こういうの好きだわー

162■■■■:2010/02/08(月) 17:36:32 ID:Qj.jEIpA
GJ

163■■■■:2010/02/08(月) 17:40:10 ID:Ib89wg6E
>>159
自分はそんなに気にしないけどもうちょっと改行あったほうが読みやすいかも。
他は特に問題ないと思うのでじゃんじゃん投下しちゃってくださいー

164■■■■:2010/02/08(月) 17:57:36 ID:JP/1KmPs
GJです。

美琴と上条さんが結託して戦うシーンを見たいけど、原作でなかなかやらないんっすよね。
っていうか原作って美琴が戦うシーン自体ほとんどないんですけども。
なんだかんだで美琴は強いので出してもあれなんでしょうねえ。だいたい役不足な位置に割り当てられる。

さて、俺もそろそろ投稿しようかな……あ、これは別に投下宣言じゃないよ!
今日中にはだすかと。

165■■■■:2010/02/08(月) 18:24:28 ID:JE.YGQks
俺は最終決戦らへんで共闘する気がするな

166■■■■:2010/02/08(月) 18:27:27 ID:GvzEID0s
上条さんが敵に傷つけられて美琴のリミッターがプチっと…。

167■■■■:2010/02/08(月) 18:33:34 ID:CqSjdS0s
164さん
確かに美琴ならもっと強い奴らとでも互角に戦えそうですね。
ただ絶対的に経験不足ですので持久戦になったらヤバそうですが・・・。

168■■■■:2010/02/08(月) 18:43:49 ID:.rm9vx4.
>>164さん
個人としては物凄く同意ですね
戦うにしろ戦う以外にしろ、役に立つ汎用能力者なのに、
上条の役に立つっていうよりは、インデックス同様厄介事を引き起こしてる
気がしないでもないっすな
何だか分不相応な役回りっすね

169■■■■:2010/02/08(月) 18:59:23 ID:YZ/z8hZc
今のおれたちの生活を言ったらこのss風にいったら


とにかくこのスレが始まってからの俺たちの生活はこのスレを中心に回っていた。
 朝、朝食が済むとそのまま俺たちはこのスレを訪れた。
 スレにアクセスした俺たちは椅子に腰掛けると、新たに更新がないか念入りにチェックした。
 昼になってもずっと俺たちはスレの側にいた。
 そんな俺たちがスレを出て行くのは、風呂、トイレ、寝る時だけだった。
 スレ主に言わせると、「まるでssの目覚めを待つ廃人みたい」ということになるのだが、そう言われても否定できないほどのひたむきさで俺たちはスレを見続けていた。
 そして今日もまた、そんな一日が終わろうとしていた。

てな感じだと思うんだ 反論は認めるが、スレだけは死守する。

170■■■■:2010/02/08(月) 19:05:25 ID:5ft7ynQM
>>160>>161>>162>>163>>164

感想ありがとうございます。
個人的にはもう少しラノベっぽく書きたいなと思ってるんですが、一度付いた癖はなかなか
治りませんね…。
後改行の件も了解です、確かに読みにくいw

今回書きたかったのはぶっちゃけ(6)(7)だけなんで(それでもイチャイチャにはほど遠い)
もっと精進してイチャイチャラブラブな話が書ければな、と思っております。てかそういう話が
書いてみたいー!

171■■■■:2010/02/08(月) 19:33:33 ID:.rm9vx4.
>>169
ちょwそれ俺じゃないですか! 
まぁライターの仕事しながらなんで廃人ではない
物書きする時は欲求が無いとダメだから、
ここのSSで妄想と欲求を満たさせて貰ってます。

172■■■■:2010/02/08(月) 19:51:28 ID:a/ycX4tk
学校から帰ったら、メールのチェックより先にこのスレを見る。
俺も結構入り浸ってるな。
pixivの「とある乙女の直接接吻(ベーゼ)」のせいで授業中でも妄想が止まらん。
「さそいかた」を買おうとしたら店員に止められた。
だからこのスレに来る
本編と関わりの少ないサイドストーリーアニメがあんまり面白くな(ry

173:2010/02/08(月) 19:51:53 ID:kCBhweKk
何この良作いっぱいの流れ………。
こ、こんな時に投下しようとは愚かな奴だぜ、俺。

というわけで、5日目できたので投下します。
いつもの留意点
・いちゃいちゃ分?知りません
・け、決して∀のファッションセンスが0だったからという理由じゃないんだからね!
・9レスほど消費予定
・被らないならすぐ投下しようかな
・本当は5日目で終わらせる予定だったけど(ry

以前の。
0日目 2-617
1日目 2-618-624
2日目 2-992,994-999
3日目 3-147,157,148-154
4日目 3-297-306

174:2010/02/08(月) 19:52:41 ID:kCBhweKk
バイト生活 5日目

PM12:50

御坂美琴は自販機の前にいた。
その姿はいつもの制服姿である。
私服にしようかと散々迷ったのだが、私服を見てもしセンスが悪いなどと言われたら立ち直ることができなくなりそうだったのでやめておいた。
上条がそんなこと言わないことはわかっていたが、言わないだけで思われる可能性もあったからだ。

(や、やっぱり初春さん達に相談しておくべきだったかな………)

美琴は服装の事に関しては相談していなかった。
いや、実際には初春達は聞いてきたのだが、それを断ったのだった。
ちなみに何故自販機の前なのかというと、(記憶喪失後の)上条が美琴に初めて会った場所だからである。

(遊園地に行くのはいいんだけど、どうしよう……?)

実をいうと無計画だった。
素直になる努力をしていたせいで、計画なんてたてていなかった。
それに、その努力も完全か?と聞かれたらいいえと答えるしかない。
とにかく、全てが行き当たりばったりなのだった。
美琴がどうしようかと悩んでいると、ツンツン頭の少年が学ランでやってきているのが見えた。
上条の場合は、不幸なことに私服がなかったからである。
上条は美琴の姿を見つけると手を軽くあげながら小走りで近づきながら言う。

「あ、御坂。もしかして待たせたか?」
「う、ううん。全然待ってない」

以外と努力は成功しているのかも知れない。
罵声を浴びせるわけでもなく言えている。
むしろその言葉を聞いた上条の動きが止まるぐらいだった。
少しして自分を取り戻した上条は恐る恐る尋ねる。

「ぇ、ええと、御坂さん?」
「ん、何?」
「あまりにもいつもと違いすぎて何か罠があるんじゃないかと思ったんですが、いかがでございませう?」
「そんなのないわよ」
「そ、そうですか」

実を言うと上条は最初のあの反応でドキリともしてしまったのだが、上手く隠せたらしい。
美琴は少し緊張しながら本題を出す。

「えっと、今日なんで呼んだかというと、……ここに行きたいからよ」

そう言いながらチケットを取り出して上条に見せる。
さすがに美琴は素直にデートしたいとは言えなかった。
ただ、ツンとした所がかなりないので努力の成果がないというわけではないが。

「遊園地? なんでまた俺に?」
「ぅ……ぇ、と。い、いいから行くわよ!!」

さすがに好きだからなんて言えないし、他の理由は思いつかなかったし、他の理由を適当に作ると上条は信じてしまうと思ったので、強引にごまかすことにした。
美琴は上条の手を掴んでさっさと歩き始めてしまう。
実は上条は上条で先程の質問でどこか期待している自分に気づいて脳内で混乱が発生していた。
そしてさらに手を掴まれているという事実に気づいて、それが妙に心地良いと思っている自分に気がついてさらに混乱していた。

(うがーっ!! なんで期待したりとか心地良いとか思ってんの俺はーっ!!??)

美琴は前を歩いていて、ごまかすことに必死だったせいか、手を繋いでいる状態であることも、上条が混乱していることにも、幸か不幸か気づかなかった。

175:2010/02/08(月) 19:52:58 ID:kCBhweKk
PM13:35

二人は遊園地にやって来た。
つい先程入場を終えたところだ。
ちなみにその時まで手を繋ぎっぱなしであることに気づいていなかった美琴は今は慌てて外して顔を赤くさせていた。

(だっ、だからなんで俺は残念だなぁとか思ってんのーっ!!??)

上条は心の中で叫びながら、気まずい空気になりつつあるのを防ぐためにきく。

「えっと、まずはどこに行くんだ?」
「え? ぇ、ぇっと………」
「ん? もしかして考えてn―――――」
「かっ、考えてあるわよ! っそ、そうだ。アレに乗りましょアレに!」

美琴が指差した方を見て、上条は言う。

「……観覧車?」
「なんでそっちになるのよ!? その下のジェットコースターよ!!」
「あー。さいですか」
「ん? アンタもしかして絶叫系苦手?」
「……いや。そんなことはないけど」

初めてだ、とは言えなかった。
美琴は上条の言葉に違和感を感じた。
どこかはわからなかったが。

「なら行くわよ」

二人はジェットコースターの方へと向かって行く。
上条は何故か悩んでいた。

「ん〜。あれってなんかで見たような……?」
「? あのジェットコースターってなんかあんの?」
「…あった、気がする」

近づくにつれて、入口前に人が結構並んでいるのが見えてくる。
同時に、入口の横に大きな看板があるのが見えてきた。
そこには、こう書かれていた。

『このジェットコースターは電気に滅法弱い作りとなっておりますので、レベル4以上の発電系能力者の方のご利用はお控え下さい』

それを読んだ美琴の表情は固まった。
よく見ると、入口のところにはゲートがあり、恐らくそれで発電系能力者をチェックしているのだろう。

「ああ。思い出した。そうそう、あの看板のことだ」

上条は悩みの種が解消されて少しすっきりしている。
美琴は少し俯きながらポツリと呟いた。

「……乗りたかったのに」
「え? あ〜………んじゃあ、こうするか」
「ぇ? うええええ!?」

上条は少し悩んだあと、美琴の左手を掴んだ。
突然掴まれたことに驚いて美琴は思わず一歩離れようとするが、離れすぎて手と手が引っ張りあってしまい、結局上条に近づくことになる。
上条は結果近づいてきた美琴にドキリとする。
美琴はされたことを理解して、顔を赤くさせた。

(お、俺はいきなり何やってんですかーっ!!?? や、ヤバイビリビリ確定ーっ!!??)

上条も顔が赤くなっていたが、美琴は気づけない。
ただ、上条の手の感触がどこか心地良くて心臓がバクバクといっているだけだった。
上条は電撃がこないことに疑問を抱くが、右手で美琴の左手を握っていることを思い出して少し安堵する。

(や、ヤバイ。今手を離したらビリビリが飛んでくるだろうから手を離せない!! というか離したくな―――って何を考えているんだ俺はーっ!!!! こ、ここはとりあえず手を離して謝るべきだっ!!)

上条は手を離せと命令を送る。
だけど、右手は離すどころか握る力を僅かに強めた。
上条は謝れと口へ命令を送る。
だけど、口から出たのは全く違う言葉だった。

「し、仕方ないだろ。お前がジェットコースター乗るためにはこうするしかないんだから」
「ぇ、ぅ、ぅん……。そう、よね。仕方ない、わよね」

どこか上条に期待していた美琴は今の言葉を聞いて少し落胆する。
上条の顔はみていない。
見れば自分の顔が赤いことがバレるから。
2人は繋がれた手を意識しすぎてこれ以上話すことができなかった。
そうこうしている内に2人の番がやってきた。

176:2010/02/08(月) 19:53:19 ID:kCBhweKk
PM14:14

「た、楽しかったー」
「そ、そうだなー」

ジェットコースターを乗り終えた2人は次の目的地を探していた。
さすがに今は手を繋いではいない。
2人は乗っている最中は手の方に意識が集中してしまい実はそんなに楽しめなかったのだが、そのことはお互い言えない。

「よ、よーし! 次はここへ行くわよーっ」
「ん? ああ、ここか。じゃあ行くか」

美琴は行き先を決めた。
それは、自動で移動しながら射的をするようなアトラクションだった。
並んだが、すぐに2人の番が回ってきた。

「……なんか、狭くないか?」
「……狭いわね」

2人1組で乗って行くものなのだが、なんとか2人が乗れる程度のスペースしかなかった。
乗ればどこかが触れ合うだろう。

「…仕方ない。乗るぞ」
「…そ、そうね」

2人は諦めて乗る。
やっぱり、肩とかが触れ合ってしまう。
触れ合う箇所を気にしながらも、2人は銃を構えた。
銃といっても、本物ではなく、プラスチックでできた軽いものだ。
赤外線を的に当てて、得点が加算されるタイプのもので、お互いの得点は分けて表示されるので対戦することもできる。
ただ、最終的には合計得点でこのアトラクション内で順位づけがされる。
だが、今の2人には得点がどうだとか言ってられる状況ではなかったりする。

「ひゃっ!? ど、どこ触ってんのよ!!??」
「うおっ!? ううう動くないろんなとこが当たるだろーっ!!」

的を見やすくするために、2人が乗っている場所は暗くなっていてよく見えない。
その暗さのおかげか、2人の顔が赤かったのはお互い見られることはなかった。(というか近すぎて顔を見ようと思えなかった)
ちなみに今のは偶然上条の肘が美琴の腰にあたってしまい、美琴がそのことで上条の方を向こうとしたら肩とかが余計に当たったというだけである。
だが、暗いので美琴は腰に手で触られたと思ってしまったのだ。
ちなみに、背中合わせになればこの危機はほぼ回避できるのだが(というかそういう風に作られた)2人はそこまで頭が回らない。
結局、アトラクションが終わるまでずぅっと肩とかが触れ合った状態のままだった。
当然、得点は散々な結果だった。

177:2010/02/08(月) 19:53:47 ID:kCBhweKk
PM14:46

「ぅ……なんだか疲れたわ……」
「同じく……。どっかで休憩するか?」
「そうね、そうしよっか」

アトラクションが終わったとき、係の人から『背中合わせにならなかったんですか?』と聞かれたので2人は顔を真っ赤にしながら逃げてきた。
体力的にではなく精神的にいろいろと疲れた2人はちょうど近くに置いてあったベンチに腰掛けることにした。
2人の間は、15cm程度。

(あれ? この前よりも近い? …………もっと近づこうかな)

美琴は少しだけ上条の方へ近づく。
間は12cm程度に縮まった。
上条は気づいてないみたいだった。

(……もう少し近づいても大丈夫かな)

美琴はもう少し近づこうとした時、上条は不意に立ち上がった。

「あ、俺なんか飲み物買ってくる。御坂は何かいるか?」
「ぁ、そ、そうね。なんか適当に買ってきて」
「あいよ」

上条は少し周りを見回した後、目当ての場所を見つけて向かっていった。

(いつもよりかは素直になれてるかな……?)

美琴が今までの自分の行動を振り返っているとすぐに上条は戻ってきた。

「ほい、買ってきたぞ」
「あ、うん。ありがと」

素直にドリンクを受けとる。
上条はベンチに座って自分の分を飲み始めた。
特に意識せず座ったのか、2人の間は5cmくらいしかなかった。

(え!? ち、近い!! 近づこうとは思ってたけど、い、いきなりすぎてなんかいろいろと心の準備がーっ!!??)

美琴の脳内はパニックに陥る。
同時に顔が赤くなっていく。
それを見た上条は美琴の顔を覗き込んで額に右手をあてた。

「どうしたんだ、美琴? 風邪か?」
(って、俺は一体何をやってるんですかーっ!!?? なんか名前で呼んじゃってるしーっ!!!!)

自分の言動を何故だか全然制御できていない上条も脳内でパニックに陥った。
ただ、額に手をあてられた美琴はそれどころではなかった。

「ふぇえ!!?? だっ、だだだ大丈夫よ!!」
(ぎゃああああ!!?? ま、またおでこに手がーっ!!??)

美琴の顔は更に赤くなっていく。
突然額に手をあてられたせいか、名前で呼ばれたことには気づかなかった。

「そうか? なんか、さっきよりも顔が赤いぞ?」
(だ、大丈夫って言ってんだから手を離せばいいのに何故離そうとしないんだ俺はーっ!!!!)

美琴はもう応えることもできない。
なんだか目が虚ろになって来ていた。
そして、ポツリと。

「ふ」
「…ふ?」
「ふにゃー」
「へ? お、おい!? 美琴!?」

美琴は気を失った。
右手で額を触っていたおかげで漏電することはなかったのが幸いか。

178:2010/02/08(月) 19:54:05 ID:kCBhweKk
PM15:38

「ぅ……ん?」
「お。目、覚めたか」
「ぁ、ぅん……」

美琴は目を覚まして最初に視界に入ったのは、上条の顔だった。
その後ろには空が見える。
触覚が戻ってきたのか、後頭部が柔らかいことがわかった。
ん? やわらかい??

「ぎゃあああああ!!??」

美琴はとても常盤台中学に通うお嬢様が言うとは思えない言葉で跳ね起きた。
どうやら膝枕をされていたらしい。
膝枕をされていたという衝撃が強かったからか、顔が近かったことなどすっかり忘れていた。
少し顔も赤くなる。
上条は美琴の突然の行動に驚きながらもきく。

「ぇ、えっと、もう大丈夫なのか?」
「あ、うん。もう大丈夫」

美琴は残っていたドリンクを飲む。
上条も残っていたのでドリンクを飲んで、聞く。

「それで? 大丈夫なら次はどこに行くんだ?」
「ん………空中ブランコ」
「あ〜、アレね。じゃあ、もう少ししたら行きますかね」

少しして、2人は空中ブランコの列に並ぶ。
看板などは置いてなかったので、能力のことで気にすることはない。
空中ブランコはそれなりに人気が高いのか結構な人が並んでいた。

「ぇ、えっとさ」
「ん?」

美琴は顔を赤らめて少し逡巡してから続きを言った。

「また、手、繋いでくれない?」
「……へ?」
「あ、いや、ほら! 万が一私の能力で壊しちゃったりしたらいけないからというだけで………別に深い意味は………」

終わりのほうは小声になって少し聞き取りにくくなっていた。
気絶して膝枕というコンボのせいか、素直さはどこかへいってしまったのかもしれない。
上条は美琴の言葉で僅かに落胆する。
さすがに断っておこうと、上条は口を開く。

「あ、ああ。いいぞ」
(ってだからなんで俺は思考と行動がさっきから真逆なんですかーっ!!!!!!)

上条は心の中で叫ぶが、既に上条の右手は美琴の左手を握っていた。
まさかOKが来るとは思っていなかった美琴は握られたことで驚きながらも顔を赤くする。
上条は心の中で叫びを上げまくりつつ、美琴の手の感触でドキドキしてしまい顔が赤くなる。
周りからしてみたら、『なんか初々しいカップルだなあいつら』という感じである。
というか、まだ回ってくるまで20分はあった。
その間、2人はドキドキしながらも喋ることも目線を合わすこともお互いの顔を見ることもなかった。
20分程度が経過して、2人は列の先頭に立つ。
本当は1つ前に後1人は乗れたのだが、手を繋いでいるのをみてやめておいたという、係員のささやかな心遣いがあったりしたが、そのことを2人は知らない。

179:2010/02/08(月) 19:54:22 ID:kCBhweKk
PM17:39

「つ、次はどこに行くんだ?」
「そ、そうね〜………」

結局、2人は手の方ばかり意識が集中してしまい楽しむことなどできなかった。
それに、あの後再びジェットコースターにも乗ったのだが、やはり手に意識が集中して楽しめなかった。
まだ顔が赤いのがなくならないのか、2人は顔を見れない。

「お化け屋敷、とか?」
「ん。わかった。っと、そういや今何時だ?」

上条は周りを見回すが、時計が見当たらない。
諦めて携帯を取り出して開く。

「あー。大体よぶごあぁ!!??」

突然上条が吹っ飛んだ。
上条は綺麗に頭から滑っていき、少し進んだ所で止まった。
上条の手から離れた携帯が地面に落ちる前に美琴はなんとか手でキャッチして、上条が吹っ飛んだのとは逆の方向をみる。

「く、黒子!!??」
「お、お姉様!! こんなところでこの殿方と何をしていらしたんですの!? ま、まさかデート!!?? おのれ類人猿わたくしを差し置いてお姉様とデートするだなんて許しませんわよーっ!!!!」
「ええい、やめんかぁ!!!!」

どうやら上条をドロップキックで吹っ飛ばしたのは黒子らしい。
ジャッジメントの腕章をつけているので巡回か何かだろう。
美琴はダンッ!と地面に足をたたきつけることで黒子のテレポートを妨害する。
同時に、上条の携帯を持ったままということに気づいたので、ブレザーのポケットに放り込んだ。
デートという単語には触れないでおく。
上条はどうやら最初のドロップキックで気絶してしまったらしい。

「さすがお姉様。わたくしの行動パターンを完全に把握しておられますわね。……おや? そ、そそそ、その猫はっ!!!!」
「え? ああっ!!」

ブレザーのポケットから猫のストラップが顔を覗かせていた。
どうやら入りそびれたらしい。
美琴はそのことに気づくと慌ててポケットの中へと入れる。
だが、その行動は黒子にある確信を抱かせた。

「お姉様が最近毎日抱きしめて寝ている猫のぬいぐるみと同じ!? それに今のお姉様の慌て様………。おのれあの腐れ類人猿がァァァァァァァァ!!!!」
「ちょっ!!?? 黒子待ちなさい!!!!」

黒子は携帯まで見えてはいなかったので、美琴がプレゼントされたと思い込んだようだ。
美琴は黒子が駆け出す前に腕を掴むと、すぐに近づいて黒子のこめかみに握り拳をおいてグリグリし始めた。

「い、いたいいたいいたいですの!! はっ、これに耐えることがわたくしへの今回の課題なのでいだだだっ!!!!」
「アンタのその変態ぶりはどうにかならないのかしらぁ?」
「あいだだだだ!! しゃ、シャレにならない痛さになってきてますわよお姉様! このままでは黒子は新たな境地を開はーーーおうぅっ!!??」

美琴は黒子が変な境地へ達する前に電撃で意識を落とすことに成功した。
もしかしたら、新たな可能性が生まれてしまったかもしれないが。

180:2010/02/08(月) 19:54:38 ID:kCBhweKk
PM18:02

上条当麻は目を覚ます。
最初に視界に入ったのは、見知らぬ天井だった。
次に何があったのかを思い出して、ここが救護室か何かなのだと判断する。

(気、失ってたのか)

「あ、気づいた? もう大丈夫?」

美琴が上条が起きたことに気づいて話し掛けてきた。

「ああ、大丈夫。というか、誰がやったのか知らないんですが」
「あー。アレね、黒子がドロップキックしたの」
「白井か……なるほど」
「今隣で寝てるけどね」
「え?」

よくよく見てみると隣にもベッドがあり、そこには白井黒子が寝ていた。
なんとなく、理由を把握する。

「……一応聞きますが、なんで?」
「私の電撃でちょっと寝てもらったの」
「罪悪感もなしでさらっと言われると上条さんは戦慄を隠しきれません」
「あははー、いつものことだし。…で、もう大丈夫なら行きたいところがあるんだけど」
「白井はいいのか? ほっといても」
「大丈夫よ。他のジャッジメントの人が引き取るから」

いつものことというのが凄まじく気になったが触れてはいけないことのような気がするので触れないでおく。
上条の半分はやさしさでできているのだ。
とりあえずもう体は大丈夫なので、美琴が行きたいという場所に行くことに決めて、救護室から2人は出た。

「それで? 行きたいとこってのはどこなんだ?」
「アレよ」

美琴がビシッと指を指した方を見て、上条はいう。

「………ジェットコースター? もうこれで3度目じゃねえか」
「そっちじゃない! その上よ上! 観覧車!!」
「あー。そうですか」
「ん? アンタもしかして高いところ苦手?」
「いや。全然」

かつて観覧車よりも高いところから金髪グラサンに突き落とされたとは言えない。
ついでに初めてだとも言えない。
微妙にこの会話にデジャヴを感じつつ、2人は観覧車へと向かった。


並んでから30分かけてようやく列の真ん中ぐらいにきた。
やはりというべきか、並んでいるのはカップルが多い。

「あ。アンタの携帯持ってたの忘れてた。返すわよ」
「ん、おお。サンキュな」

美琴はブレザーのポケットから携帯を出すと上条に手渡す。
その際に僅かに手が触れ合ってしまい、お互い少し顔が赤くなった。

「そ、それにしても……カップルが多いよな。いいのか御坂、俺で?」
「だ、大丈夫よ。わ、私はただ景色がいいらしいから見るってだけで、他に意味なんてないんだから……」
「ん。そっか」
(だーかーらーっ!!!! なんで俺はスゲェ残念だとか思ってんだって!!!! 別に関係な………いだろーがー!!!!)

上条は心の中で叫び声を上げて否定する。
最後の方で一度やめかけた自分の気持ちに少し疑問を覚えたが、気にしない。
美琴は美琴で素直になれない自分を心の中で叱っていた。

(なんで私はここで素直になれないのよーっ!!?? これじゃあ何のために遊園地にきて、何のために観覧車に乗るのかわかんないじゃない!!!!)

そんなことを2人はずっとしていたから、観覧車に乗るまで結局会話はこれ以降なかった。

181:2010/02/08(月) 19:54:53 ID:kCBhweKk
PM18:32

ようやく観覧車は2人を乗せて動きはじめた。
ただ、今度は2人きりという状況に緊張して二人は全然喋ることができない。
結局、喋らないままにてっぺんまでやってきてしまった。
美琴はそこから見える景色に身を乗り出しながら言う。

「わあ……綺麗」
「………ああ。綺麗だな」

上条は思わず美琴に見とれてつい言ってしまっていた。
美琴が声の向けられた方向に少し疑問を持って上条の方を向く。
だが、その前に上条は外の景色の方へと音速で顔を向けたので美琴は気づけなかった。
むしろ、それどころではなかった。

(今なら、言えるかも。私の気持ち)

美琴は、この雰囲気と、気持ちの高揚に身を任せて言ってみようと思った。
言えば、もう後戻りはできなくなる。
けれど、言おうと思った。

「あの、さ。話、が、ある、んだけど………」

緊張して、前置きでさえ言いにくかった。
上条は、何も言わないで先を促す。
美琴は大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。
そして、いざ言おうとしたその時。



美琴の携帯が鳴った。



美琴は突然鳴り響いた音に驚いて心臓が飛び出るかと思ったが、せっかくの雰囲気を見事なまでにぶち壊してくれた電話の主に怒りを覚えて、相手が誰なのかも見ずに携帯にでる。
だがこちらが怒りをぶつけるよりも前に、電話の主の言葉の方が早かった。

『お姉様!!?? い、今いったいどちらへ行ってらっしゃるんですの!!?? ま、まさかあの類人猿めお姉さ―――ブツッ』

美琴は全てを聞く前に電話を切った。
黒子、後でシメる。と怖いことを考えながら携帯の電源を切っておいた。

「………話ってのは?」

上条はなんとなく話し掛けにくい雰囲気なのを察知していたが、意を決して聞い
てみることにした。

「………なんでもない」

雰囲気を壊されても言えるようなことではなかったので、はぐらかす。
それどころか、なんだか変な雰囲気になってしまった。
結局、その変な雰囲気のまま観覧車の時間は終了する。

182:2010/02/08(月) 19:55:09 ID:kCBhweKk
PM19:46

2人は遊園地を出ていた。
美琴としては、観覧車は最後に乗ることだけは決めていて、それが終わったら遊園地ですることもなくなってしまったからだ。
なので今はどこかで夕飯を食べるために、帰り道で店を探していた。

「またあの高いレストランはやめてくれな」
「わかってるわよ。それとも、今度は私が全部払ってあげよっか?」
「そんなことされたら上条さんのプライドはズタズタに引き裂かれてしまいます」
「おっ、それならそうしようかしら」
「ひでえ! この人ひでえ!!」
「あはは。冗談よジョーダン。あ、この店ならいいんじゃない?」

美琴がちょうど良さそうな店を見つけたので、2人はその店へと入っていく。
上条としても我慢できる値段で、尚且つおいしいお店だった。
2人は食べ終えて店からでると、寮に向かうことにした。

「そういや結局、なんで遊園地に俺と来たんだ? なんかはぐらかされちまったけど」
「うっ!!?? じ、自分で考えなさいよ!! 馬鹿!!」
「な、なんで怒られなきゃいけないんだ……理不尽だ」
「う、うるさい!! と、とにかく。きょ、今日は楽しかったの!?」
「あ? 楽しかったに決まってるじゃねえか。何せ初めて―――ぁ」
「ッ!? そ、そっか。そういやそうだったわね」

美琴は理解する。ジェットコースターの時も、観覧車のときも。
違和感を感じたのは、上条自身が大丈夫なのか『知らない』ことだったから。
そんな時まで相手に気を使う上条に、美琴は少し呆れてしまった。

「はー。アンタって奴は、それならそうと言えばよかったじゃない。私も大体は知ってるんだし」
「……そうだな」

ただ、上条としては言えるわけがなかった。
美琴は、上条の記憶喪失がどの程度のものなのかは知らないはずだからだ。
ある日からある日までなのか、ある日よりも以前なのか。
その記憶喪失のレベルを知らないはずの美琴に、幼い頃の記憶もないなんて勘繰られるわけにはいかなかった。
だがまあ、今のでほとんどバレてしまったも同然なのだが。

「あ、もうすぐ分かれ道ね」
「おお、そうだな」

だけど美琴は何も言ってはこなかった。
気づかなかったのかもしれない。
そうとは思えなかったが、そう思うことにした。

「私も、今日はとても楽しかった。アンタと遊園地に行けて」
「………俺もだ」

上条が同意すると、美琴は驚いた顔をして、すぐにそれを笑顔へと変えて。

「ありがと」

美琴はそういうと、寮の方へ走って行ってしまった。
上条は止めることも、「ありがと」に対しての言葉も言えずに、美琴の後ろ姿を
見送るだけだった。



6日目へ続いちゃう。

183:2010/02/08(月) 19:59:53 ID:kCBhweKk
以上です。
なんかまだ続いちゃいます。

2人のキャラがおかしいかもしれないことを書いておくことを忘れていたorz

>2人の共闘のお話
自分も最終決戦ぐらいにならないとないんじゃないかな?という気はしてますねー。
あと、美琴の強さが微妙なのもあるのかも?
強い敵だと、第一位、第二位、聖人とかになるだろうし、それ以外はレベル5の人以外ではそう強い人がいない気がする。

184■■■■:2010/02/08(月) 20:41:43 ID:YZ/z8hZc
何このスレおいしすぎくぁわせdcfghjkl;k@@、gfvg

185メリー:2010/02/08(月) 20:51:01 ID:l1nCJIeY
>>183
GJです!
黒子のタイミングの良さに思わず2828してしまいましたw

確かに一方さんとていとくん以外はあんまり『最強』とかってイメージありませんね
まぁ今現在、一方さんは制限ついて、ていとくんに至っては人型じゃありませんが…
しかもむぎのんは半怪物化、軍覇は魔神に敗退

なんかレベル5陣、結構ガタガタですね

186 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 20:55:01 ID:4zw3slZw
ここまで作者方々乙です。1日いないと読む時間が酷いことになりますね
20分くらいに投下したいと思います。

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/785
から
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/805
まで
『豆撒きの日に』
注:上条さん記憶なくしてない設定でお願いします。

187 ◆t9BahZgHoU:2010/02/08(月) 21:01:39 ID:YVBduogI
みなさんGJです…って流れ速ァァあああ!
スレ加速しすぎですのお姉様ッ!!

どうしようどうしよう…
4スレのうちに第五章投下できるかな…

>>186
期待してます〜

188 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:15:35 ID:4zw3slZw
行きますー『豆撒きの日に』後編(投稿分割したという意味で)
独白しちゃいますが、
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1262324574/912
(X-DATEアフターの一部)の10,11行目の黒子の言った内容の元ネタ理解できた人がいるのでしょうか…
と、今更ながら尋ねてみたりしつつ投下

―――――――――


横になったはいいが、直前に寝てるのと腹が活性化してるので流石に寝れはしなかった。
「あったけーなー」と独り言を言いつつ、ぽちぽちとケータイをずっといじっていた。
適度に日が傾いて来たトコロで、俺は起き上がり背筋を伸ばし、大きな欠伸をして出て行く事にした。
御坂にメールを送ると、すぐさま返信が。アイツ暇してんのか?
御坂が出入りした扉とは反対側に裏口用の扉がある。
俺はそこから外に顔を出す。誰もいない、静かな空間があった。
御坂からのメールによると、インデックスをそこに連れて行くらしい。
俺はそこで少し待ちぼうけ、寒いながらも日光が木の葉の間から差し込む光景に見惚れていた。
2,3分しない内に、インデックスと御坂がやって来た。
インデックスは御坂の背にいたのだが。
「…一瞬起きたんだけど、また寝ちゃって……」
御坂からインデックスを受け取り、俺の背に移す。
「ふぅ……んじゃ、悪いけどそっちからね。子供達が騒ぐのもアレだから」
「おう。昼飯ありがとうな。また作ってくれよ」
そう言うと、御坂が少し戸惑いながら、少し声を大きくする。
「わ、分かってるわよ!ちゃんと早めに行く日言ってよねっ?あと何が食べたいかとかっ!」
「お、おう。…じゃあ、次もサンドイッチが食いたいな」
「え…また?」
「ああ。あんまり多く作らせるのも御坂に悪いし」
「別にそんなの気にしなくても……」
「それに、山の上で綺麗な景色見ながら食った方がさっきより美味いのを証明してやりたいしさ」
御坂は何か言いたそうに、「分かった」とだけ言う。

189 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:17:59 ID:4zw3slZw
「ああ、御坂の料理が食いたくないわけじゃないからな。今度、晩飯でも作ってくれよ」
後から付け加えるように、そういう意味ではないのを言う。
御坂はそれを分かってくれたようで、さっきよりちょっとテンションを上げて「うん」と言ってくれた。
「じゃ、私はこれからまだ子供達と構わないといけないから」
「そうか、頑張ってな。楽しかったよ。またな」
「―――うん、今日はありがとう」
「どーいたしまして。こんなので良ければいつでもいいぜ」
インデックスを支える手を片方だけ外し、ひらひらと御坂に振ってみせる。
「補習がなければいいのにねぇ?」
「ぐっ…。お、俺だって頑張ってるんだよ!」
鉄格子の扉を片手で開ける。
「ふぅん?まぁ能力テスト以外の勉学なら教えてあげるから、いつでも御坂さんに聞きなさい」
「……年下に教えられるのは屈辱だが…背に腹は変えられない状況になったら頼むよ」
「うん、まっかせなさい」
会話も一区切りした所で、お互いに別れを告げて俺は幼稚園から出て行った。

190 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:19:30 ID:4zw3slZw

帰路を渡る間、インデックスは終始俺の肩で小さく寝息を立てていた。
静かだととても楽なので俺はなるべく静かな道を選び、揺らさないように運ぶ。
行きより少し遅くなったが、まだ空が橙色より濃く、赤く黒くなりかけの内に家に着いた。
インデックスをそっとベッドに寝かせ、買い物に行くつもりもなかったのでありあわせの野菜炒めを作る。
匂いがリビングにいったのか、音が意識を戻した脳に伝わったのか、がばっと彼女は起きた。
「トーマ!大丈夫なの!?」
何が、と言おうとした手前で口を紡ぐ。
こいつにも御坂は子供達を同じ事を言っていたのだろう、とすぐに察しはついた。
頭の中ですぐさま言い訳をでっち上げる。
「あ、ああ…鬼は連れて帰ろうと捕まえただけで、何とか無傷だ」
インデックスはどたばたと救急セットと十字架を手に台所にいる俺の元へ来る。
「ほんとっ?あの鬼、凄い牙だったけど、首とか腕とか噛まれてない!?」
俺の腕を強制的に押さえ込み、袖を捲くったり、後ろからよじ登って首元を確認してくる。
だが、幸いにも俺のどこにも牙の痕なんてない。吸血鬼ではないからな。
ましてや、鬼なんて存在しないし。怪我すらねぇよ。
…とは言わないわけだがな。
「ああ、安心しろ。この通り、飯が作れるほど、大丈夫だ」
わざと調理箸で野菜をかき混ぜて、ジューと香ばしそうな音をさせる。
すると、インデックスの腹が鳴る。
「ご、ご飯ご飯!トーマが無事ならご飯だねっ!お腹空いたよ!」
「へいへい」
インデックスに皿を持ち出させるよう促すと、従順に動いてくれた。
それだけすると、インデックスはリビングに行きテーブルの横に座って待機する。

191 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:20:31 ID:4zw3slZw
「もう出来るから、うだうだ言うなよ」
「はーいっ」
安価だった豚肉も投入して、赤い部分を無くすように焼いていく。
塩胡椒を振ると、なんといい匂いだ。俺も腹が減ってきたぞ。
飯は冷や飯があるので、それを電子レンジで温めておいた。
2つの皿に盛り分けて、俺はインデックスの待つテーブルにそれを持って向かう。
「ごっはんー!そういえばトーマにぶつければいいと思ってたのに、あんな化物が来ると思ってなくて怖かったんだよ?」
ああ、こいつは完全に洗脳されてたんだな。御坂の迫真の演技でもあったのかね。
「悪かった。俺も不意打ち過ぎて反応出来なかったんだよ」
「トーマが動けないってよっぽどだねぇ、あの吸血鬼。豆が弱点だからこれからは持っておかないと!」
今後あの鬼が出るのは一年後なんですよ。
これもまた俺は言う事無く、「とっとと食おうぜ。無事だったんだからいいだろ」と言う。
インデックスも頷いて、箸を置いて両手を合わす。
「いっただっきまーすっ」
インデックスの嬉しそうな挨拶を迎え、2人とも飯に手をつけた。
「ふぁ、そーだ。トーマ、ケータイ光ってたよ」
インデックスがベッドに置いてあったケータイを取って、俺に渡してくれた。
「ん、サンキュー」
行儀が悪いが、咥え箸の状態で俺はケータイを開く。
御坂からのメールだった。

192 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:21:02 ID:4zw3slZw

『今日はお疲れ様。ほんと、早くしてよね?楽しみにしてるから、ピクニック』

あいつはどんだけ楽しみなんだよ、と思い笑みが零れる。
微かに、朝の笑顔が見れたらアイツへの印象も変わるだろう。と期待する俺もいるが。
「ねぇトーマ、誰からのメール?」
御坂だよ、と言って改めて飯に手をつける。
インデックスも珍しく、楽しかったからお礼言っておいて、と言う。
それを了解すると、インデックスも再びがっつき始めた。
喉を詰まらせる動作を見て笑いつつ、お茶を渡す。
コップ一杯のお茶を飲み干して、安堵の笑みを浮かべてまた食べ始めた。
俺はその様子を見届けてから、御坂にメールを返した。
『了解。俺も楽しみにしてるよ』と。

193 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:22:16 ID:4zw3slZw
以上です。お粗末さまでした
これなら前の区切りをもうちょい早めても良かったなー、とか思った人すいませんでした
特に続ける気もないですが、何かひらめいたら続けるかもしれません
これも本来短編の予定でした。長すぎた
では、ありがとうございました

194■■■■:2010/02/08(月) 21:26:17 ID:NIks9TrE
>>188
GJ!

元ネタはルビサファのレジアイスかな?

あ、でもあれは二分だったっけか・・・

195■■■■:2010/02/08(月) 21:51:41 ID:OfZlwSig
>>193
GJ!
一つだけ難をいうとしたら「トーマ」じゃなくて「とうま」だね>インデックスの発言

196 ◆pAn3AKtpUw:2010/02/08(月) 21:55:02 ID:4zw3slZw
読んでくださった方ありがとうございます

元ネタ:MOTHER2-ギーグの逆襲-(ゲーム)の中での設定
そういえばルビーサファイアでもそんなのがあったような…

呼称についてはごめんなさいwちゃんと調べればよかった…以後気をつけます

197■■■■:2010/02/08(月) 23:03:57 ID:bpdXf572
はじめまして^^お初のものです

今まで読んでばかりでしたが、今日は投下してみたいと思います

よろしくおねがいします

198逝去告白:2010/02/08(月) 23:14:05 ID:bpdXf572
とあるファミレスの中での出来事・・・

現在、美琴・初春・佐天が中にいる

佐・初「「御坂さん!!!」」

美「な、なに?」

いきなりのテンションにさすがにびびるレベル5

佐・初「「告白してください!!」」

美「ぶはっ!」

吹いた、そりゃ仕方ない気もする。なぜなら・・・

美「なななななんのこと?ツンツン頭とかは関係ないわよ!?」

このツンデレっぷり。自分で首を絞めてるのにも気づかない

佐(やっぱりこうなるか〜・・・初春?)

初春の眼が語る「任せてください」と・・・

初「御坂さん!」

美「な、なに!?」

〜〜〜10分後〜〜〜

美「アイツはねぇ、すっごくかっこよくてやさしくてぇそれからねぇ・・」

レベル5、完全に堕ちた・・・

佐「・・・・口だけなら超能力レベルじゃない?これ・・・」

美「で・・・私はどうすればいいの?」

初・佐「「ズバリ!ですねぇー・・・」」

美「ズバリ・・・?」

初・佐「「御坂さんが死ぬんです!!!」」

美「・・・・・・ええええぇぇぇぇえええ!!???」

199逝去告白2:2010/02/08(月) 23:27:18 ID:bpdXf572
舞台は変わって、いつもの公園

美琴は「アイツ」をさがしていた

美(・・・・いたっ!)

なんかキョロキョロしてるが気のせいだと美琴は考える

美「やっと見つけたわよ〜」

上「おう、ちょうどいいところに・・・「危ないっ!」・・・え?」

パァッン!!銃声(体育祭とかのあれっぽいことには上条気づかない

上「・・・?なんなんだ?なぁ?みさ・・・か・・・?」

上条は見た。胸を真っ赤な血(という名のトマトジュース)で濡らしている美琴を

上「・・・み、御坂ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

美「ケガ・・・なかった・・・?」

微笑みながら静かに言う美琴

上「バカ!しゃべんじゃねえ!」

美「・・・私ね、気づいたんだ・・・」

少しの沈黙・・・そして・・・





美「やっぱり・・・私はアンタの事が・・・好き・・・なんだ・・・って・・」

上「・・・おい・・・嘘だろ・・・?なあ、目を開けろよ!いつもみたいに俺にビリビリしてこいよ!?」

返事はない・・・

美(近い近い近い近い顔が近いっつーーーの!!!!)

心はしっかり返事をしてるのだが・・・


〜風紀委員支部〜

初「ふふふ・・・面白くなってきましたね・・・」

佐「・・・初春、盗撮って・・・・」

すべては初春の手によって始まったのだった・・・

200■■■■:2010/02/08(月) 23:32:01 ID:bUY8sUUY
>>197
sageろ
ながら投稿はやめろ

201■■■■:2010/02/08(月) 23:38:42 ID:Qj.jEIpA
いいんじゃない?

202■■■■:2010/02/08(月) 23:42:09 ID:22E7/T1I
言い方はきついけど間違ったこと言ってないかと

203■■■■:2010/02/08(月) 23:43:36 ID:YVBduogI
>>199 >>201
書き手・読み手共にルールを守って下さい。
・必ず>>1を読む
・必ずsageる
・投下する際は必ずメモ帳などに書き溜め、確認してから一気に投稿する。

204■■■■:2010/02/08(月) 23:43:54 ID:JP/1KmPs
sageるのはスレのルールだし、しなくて良いってことはないんじゃないと思う。

あと、これだといつ投下したらいいかわからないんだぜ……。

205逝去告白3:2010/02/08(月) 23:45:32 ID:bpdXf572
ここで説明しよう。初春の「逝去告白PLAN」とは
1、美琴死亡
2、その勢いで告白
3、上条の気持ちを探る
4、種明かし

という作戦であり、4つ目の項目については美琴の好きなタイミングでやることになっていた
それと、美琴は紅潮防止薬(入手ルート不明)のおかげで顔が赤くならない
一見すると穴だらけの作戦(息してるし)・・・だが鈍感マスターをなめてはいけない

上「うっ・・・うっ・・・御坂ぁ・・・」

見事にだまされてる。しかもマジ泣き

美(やばい!泣いてる!うれしい!そして萌える!)

ちょっと壊れてる美琴サン

上「・・・!そうか!人工呼吸だ!!!」

美・初・佐(((ええええええええ!!!????)))

上「・・・だ、駄目だ・・・死因が違うだろ・・・」

思考をとりもどしたらしい。とりあえず一安心

美(なんでよぉぉぉ!!!!)

・・・一人を除く

上「コイツ・・・俺の事、好きだったんだよな・・・」

美(そうよ・・・・)

上「・・・・よし・・・・ごめんな、おそくて」

上条の唇が御坂の唇を奪う

美(・・・・・・・)

初・佐・美(((きゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!/////////)))

上「・・・生きてる間にしてやりたかったなぁ・・・ちくしょぅ・・・」

美(生きてます!超生きてますから!)

上「・・・結局、告白できなかったし・・・・さき越されて、お別れなんて・・・!」

美(・・・コイツいま・・・え?もしかして・・・・え?)

上「ちっくしょぉぉ!!好きだった!ずっと好きだった!なのに、なのに・・・!」

美(・・・うれしすぎるっ!・・けど・・・)

じゃじゃーんドッキリでしたぁ→歯ぁ食いしばれよ超能力者・・・
になるのは目に見えている(いやたぶんないけど・・・)

美(・・・こ、こうなったら意地でもネタバレしない!!)

わりと残念な結論に至った・・・

上「・・・せっかくゲコ太の指輪買ったのにな・・・・ははは・・・・」

美「ゲコ太ぁぁぁぁぁ!?!?どこどこ!?」

上「・・・・・はい?」

美「・・・・・あ・・・・」




初・佐((御坂さあああああああん!!!!!!!!))

206■■■■:2010/02/08(月) 23:47:25 ID:bpdXf572
すみませんでした・・・

次からきちんとやります

207■■■■:2010/02/08(月) 23:47:36 ID:bpdXf572
すみませんでした・・・

次からきちんとやります

208■■■■:2010/02/08(月) 23:49:45 ID:nEYTvl2s
乙ー

荒れないようにsageするのにage sageで荒れてどうするよw

209■■■■:2010/02/08(月) 23:50:30 ID:bpdXf572
一回まとめてから今度もう一回投下します

お騒がせしてすみませんでした

210■■■■:2010/02/08(月) 23:55:17 ID:JP/1KmPs
ということは続きがあるのか。GJだ。

>>「・・・だ、駄目だ・・・死因が違うだろ・・・」
冷静すぎて笑ったw

211■■■■:2010/02/08(月) 23:58:53 ID:bpdXf572
中途半端で終わらせるのも失礼ですので何とか仕上げて投下します

212■■■■:2010/02/09(火) 00:29:55 ID:ZgHUgsag
さきほどは申し訳ありませんでした
完成しましたので投下します(一応もういちど1から投下します

213■■■■:2010/02/09(火) 00:30:42 ID:dp83DZ92
まあ、今度からは気をつけて下さい、でいいんじゃないでしょうか
あまりギスギスしても仕方ないですし。

>>174
黒子ウゼェw
黒子さんは空気読める良い子だと思ってたのに…。
6日目は妨害に負けずイチャイチャして欲しいです、はい

214逝去告白:2010/02/09(火) 00:30:43 ID:ZgHUgsag
とあるファミレスの中での出来事・・・

現在、美琴・初春・佐天が中にいる

佐・初「「御坂さん!!!」」

美「な、なに?」

いきなりのテンションにさすがにびびるレベル5

佐・初「「告白してください!!」」

美「ぶはっ!」

吹いた、そりゃ仕方ない気もする。なぜなら・・・

美「なななななんのこと?ツンツン頭とかは関係ないわよ!?」

このツンデレっぷり。自分で首を絞めてるのにも気づかない

佐(やっぱりこうなるか〜・・・初春?)

初春の眼が語る「任せてください」と・・・

初「御坂さん!」

美「な、なに!?」

〜〜〜10分後〜〜〜

美「アイツはねぇ、すっごくかっこよくてやさしくてぇそれからねぇ・・」

レベル5、完全に堕ちた・・・

佐「・・・・口だけなら超能力レベルじゃない?これ・・・」

美「で・・・私はどうすればいいの?」

初・佐「「ズバリ!ですねぇー・・・」」

美「ズバリ・・・?」

初・佐「「御坂さんが死ぬんです!!!」」

美「・・・・・・ええええぇぇぇぇえええ!!???」

215■■■■:2010/02/09(火) 00:31:21 ID:Nc7PgruA
ミスしたところは直して
次頑張ってください
gjでした。

216逝去告白:2010/02/09(火) 00:32:58 ID:ZgHUgsag
すみません、かぶっちゃったんで40分頃に投下します

何度もすみません

217逝去告白:2010/02/09(火) 00:40:52 ID:ZgHUgsag
先ほど1はあげたので2から再開します

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



舞台は変わって、いつもの公園

美琴は「アイツ」をさがしていた

美(・・・・いたっ!)

なんかキョロキョロしてるが気のせいだと美琴は考える

美「やっと見つけたわよ〜」

上「おう、ちょうどいいところに・・・「危ないっ!」・・・え?」

パァッン!!銃声(体育祭とかのあれっぽいことには上条気づかない

上「・・・?なんなんだ?なぁ?みさ・・・か・・・?」

上条は見た。胸を真っ赤な血(という名のトマトジュース)で濡らしている美琴を

上「・・・み、御坂ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

美「ケガ・・・なかった・・・?」

微笑みながら静かに言う美琴

上「バカ!しゃべんじゃねえ!」

美「・・・私ね、気づいたんだ・・・」

少しの沈黙・・・そして・・・





美「やっぱり・・・私はアンタの事が・・・好き・・・なんだ・・・って・・」

上「・・・おい・・・嘘だろ・・・?なあ、目を開けろよ!いつもみたいに俺にビリビリしてこいよ!?」

返事はない・・・

美(近い近い近い近い顔が近いっつーーーの!!!!)

心はしっかり返事をしてるのだが・・・


〜風紀委員支部〜

初「ふふふ・・・面白くなってきましたね・・・」

佐「・・・初春、盗撮って・・・・」

すべては初春の手によって始まったのだった・・・

218逝去告白3:2010/02/09(火) 00:41:52 ID:ZgHUgsag
ここで説明しよう。初春の「逝去告白PLAN」とは
1、美琴死亡
2、その勢いで告白
3、上条の気持ちを探る
4、種明かし

という作戦であり、4つ目の項目については美琴の好きなタイミングでやることになっていた
それと、美琴は紅潮防止薬(入手ルート不明)のおかげで顔が赤くならない
一見すると穴だらけの作戦(息してるし)・・・だが鈍感マスターをなめてはいけない

上「うっ・・・うっ・・・御坂ぁ・・・」

見事にだまされてる。しかもマジ泣き

美(やばい!泣いてる!うれしい!そして萌える!)

ちょっと壊れてる美琴サン

上「・・・!そうか!人工呼吸だ!!!」

美・初・佐(((ええええええええ!!!????)))

上「・・・だ、駄目だ・・・死因が違うだろ・・・」

思考をとりもどしたらしい。とりあえず一安心

美(なんでよぉぉぉ!!!!)

・・・一人を除く

上「コイツ・・・俺の事、好きだったんだよな・・・」

美(そうよ・・・・)

上「・・・・よし・・・・ごめんな、おそくて」

上条の唇が御坂の唇を奪う

美(・・・・・・・)

初・佐・美(((きゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!/////////)))

上「・・・生きてる間にしてやりたかったなぁ・・・ちくしょぅ・・・」

美(生きてます!超生きてますから!)

上「・・・結局、告白できなかったし・・・・さき越されて、お別れなんて・・・!」

美(・・・コイツいま・・・え?もしかして・・・・え?)

上「ちっくしょぉぉ!!好きだった!ずっと好きだった!なのに、なのに・・・!」

美(・・・うれしすぎるっ!・・けど・・・)

じゃじゃーんドッキリでしたぁ→歯ぁ食いしばれよ超能力者・・・
になるのは目に見えている(いやたぶんないけど・・・)

美(・・・こ、こうなったら意地でもネタバレしない!!)

わりと残念な結論に至った・・・

上「・・・せっかくゲコ太の指輪買ったのにな・・・・ははは・・・・」

美「ゲコ太ぁぁぁぁぁ!?!?どこどこ!?」

上「・・・・・はい?」

美「・・・・・あ・・・・」




初・佐((御坂さあああああああん!!!!!!!!))

219逝去告白4:2010/02/09(火) 00:42:49 ID:ZgHUgsag
上「・・・・さてと・・・これはどういうことなんですか?御坂さん」

美「えと、その、えー・・・・あははははは・・・は」

上「目ぇつぶれ・・・」

美「え?・・・・」

上「いいからっ!」

美「は、はいっ!」

きちんと目をつぶるあたりが偉い(まぁ目の前に夜叉が立ってたら・・・ねぇ?)

初・佐((あわわわわわわわわ))

その時・・・


美「・・・・え?」

上条は美琴を抱きしめていた・・・・

美「ちょ、ちょちょっと、なななななにをしてんのよ!」

上「・・・・・った」

美「え・・・?」

上「生きててくれて・・・良かった・・・!」

美琴の耳に嗚咽・・・までとはいかないが確かな泣き声が聞こえる

美(・・・・泣いてるの?)

上「・・・なぁ、お前の一言・・・本気にしていいのか?」

美「・・・ええ、いいわよ別に」

少し強がって見せる。・・・目には涙が浮かんでいるのをお互いは相手に見せない

美「ねえ・・・当麻」

名前で呼んでみる。

上「どうした美琴?」

呼ばれてもみる。

抱き合ったまま、二人は会話し続ける

美「もし本当に私が死んだら・・・どうする?」

上「?何言ってんだ?・・・一度俺は泣いたんだ・・・それが俺を・・・強くしたんだ・・・だから・・・」

上条は力強く、けれども優しく言い放った

上「お前が死ぬなんて幻想は、俺がぶち殺してやるよ」

上条は笑った。美琴も笑う

美「どちらか先に死んじゃうじゃない」

上「一緒に死ねばいいさ」

美「じゃあ全部分かち合うのよ?」

上「全部って?」

美「優しさも喜びも苦しさも辛さも二人で分かち合っていきましょ・・・笑う時はバカ笑いして、泣く時は大泣きして、壁には二人でぶつかっていって・・・」







美「一緒に歩き始めよっ、新しい道を!」

上「・・・・そうだな」



この二人の道はまだつながったばかり、彼らはいまその道を歩き始める・・・

220逝去告白after:2010/02/09(火) 00:43:40 ID:ZgHUgsag
佐「うっ、初春ぅ〜っ!涙がっ、涙がぁぁ〜!」

初「ぐじゅん・・・だ、駄目でしゅよ佐天しゃん!今からDVDに入れるんですから!

佐「まじでっ!?初春、ぜったい頂戴ねっ!」

初「もちろんですよ〜」

佐「・・・じゃああのキッ、キスシーンは・・・?」

初「撮れてますよそりゃあぁ」

黒「誰と誰のキスシーンですの?」

初「そりゃあ御坂さんと上条さんに決まってるじゃないですかぁ、なにいってるんですか佐天さん〜」

初春、佐天の方を向く

佐天、泣きながら首を振る

初(・・・アレ?ですの、ですの、DESUNO・・・・・・で・・・す・・・の・・・?)

黒子、殺人鬼の目に変化

初「きゃぁぁあああああああああぁぁぁぁ!!!!?????」

黒子「ふ・・・・ふふふふ・・・・あの・・・・類人猿がああぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!!!!!」

初・佐「「二人とも、逃げてええええええええええええええええええ!!!!!」」




美琴と上条の二人の道は、現段階をもって最大のピンチをむかえるのであった・・・・

221■■■■:2010/02/09(火) 00:45:07 ID:ZgHUgsag
いろいろとお騒がせしましたがなんとか投下できました

少しでも多くの方に楽しんでいただけたらうれしいです^^

222■■■■:2010/02/09(火) 00:47:12 ID:wZOCWuzc
>>221
GJです!
次の投稿も楽しみにしています

223■■■■:2010/02/09(火) 00:51:02 ID:66U/squM
>>221
オチ担当をこの二人にするとひとまず上条さんと美琴は平和なんだなあ……。
ともあれGJでした。

投下準備完了したので、1時になったら始めるよ!
約5日ぶりの続きだよ!

224■■■■:2010/02/09(火) 00:55:04 ID:ohQo2aHA
イイハナシダー

225:2010/02/09(火) 00:57:31 ID:yWTpD1ww
>>221
GJ!
っというか、指輪買うの早っw

>>213
6日目は繋ぎっぽい話になる予感がしてるのでそんなにいちゃいちゃしないかも。
というか、今でもできてる……のか?

>>223
ま、まさか寝させない気か……っw
期待して待っちゃいます。

226■■■■:2010/02/09(火) 01:00:20 ID:66U/squM
午前1時をお知らせします。
こんばんは。>>223こと、『とある実家の入浴剤』の作者です。
先日はご迷惑をおかけしました。

投下の前にちょびっとレスを。

>>170
ちょっと遅いけど「目覚め」の作者さんへ。
自分も普段はSSとかラノベタイプの文章を書かない人間だけど、
文を饒舌にしたり口語体を混ぜてみると書いててそれっぽい気がしないでもない。
まあ、文体の質にもよるし俺が書いてるのがラノベやSSっぽくできてるかと言われたら
それも違う気がするけど。
ある種の軽薄さや爽快感や派手さ、あるいは道化っぽさを出したらラノベっぽいのかもしれない。
抽象的なまとめで、すまないけども。

>>171
つか、ライターの人とかいたのかこのスレ。
すげー、文章系の仕事の人はなんか尊敬してしまう……。



さて、本編。3‐>>328 >>421 >>759 の続きで、 
消費予定は8レス。ドタバタといちゃいちゃ両方あるでよ。

書いてるうちにテーマ性みたいなものが出てきて焦りました。
そのせいで一瞬書くペースが遅くなったりとかね、ふう。そんなん考えるつもりなかったのになあ。
原作よりも上条さんの精神がちょっぴり弱めかも。あまりお気になさらず……。


ではでは、以下よりどうぞ。

227とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:01:04 ID:66U/squM
 上条は、不安だった。もちろんそれは今台所に立っている、多少酔っ払って
いるらしい御坂美琴についての不安である。
 断っておくが彼女の手付きが怪しいわけではない。美琴はいつにも増して
迅速な動きで酒の肴を準備している。では何が不安なのかというと、その
合間に幾度と傾けられているビール缶である。
ナイフを取ってはビールを飲み。ビールを飲んではチーズをつまみ。チーズ
をつまんではビールを飲み……。ぱきょりと缶が潰れる音を聞いて、上条は
二本目が空いたことを知る。背後を通り過ぎ、美琴がベランダへと歩いていく。
水でも汲みにいくみたいになめらかな挙動だ。

美琴としても仕方のない部分はあるのである。

(わ、わわ私ったらなんてことしてんのよっ! いくらお酒を飲んだからって
あんな、あんな……。でもあの時のアイツ、ホントにちょっとかわいかったかも
――っていやいやニヤつくんじゃない私の顔。あーもう、こんな顔見られちゃったら
どうすんのよ? ……飲むしかない。飲んで、酔って、それでごまかすしかない。
それであわよくば――あああ・あわよくばって何よ何を期待してんのよ私は
馬鹿じゃないの!?)

 そんなことを思いながらビリビリ漏電していて、それも上条の不安の種だった
のだが、とにかく彼には預かり知れぬそんな事情が美琴にはあって、ちょっぴり
ヤケ酒気味に杯を空けているのだった。

 上条は頭をかいて、天井を見上げる。彼もすでに二杯目に突入していた。
なんだかビールは美琴が大量に消費しそうだったので缶チューハイの方である。
美琴が機敏な動作で冷凍庫の氷を容器に移し替え、数本の酒をテーブルに準備
した辺りで、上条はいろいろ諦めたのだった。どうにでもなーあれ、と唱えて
見えない何かに向けて乾杯する。それはいつか制裁を受ける未来の自分に対して
なのか、それとも今を祝福してのことなのか、上条にはわからない。

(不幸……か)

 上条は思って、何とはなしに右手を見る。幻想殺し。異能の力を殺す代わりに、
幸運や神の加護までをも打ち消してしまうという力。だが上条は呪いと言って
良いようなこの右手で、いくつもの活路を見出してきた。ともすればありえなかった
かもしれない未来をも守ってきた。それが不幸であるはずは、ない。大体いざ
そんな瀬戸際に立って、自分の運が良いや悪いやといった瑣末な事柄を思い
浮かべたことなどなかった。

 もしかすると、と思い至ったのはふいなことである。そして浮かんだそばから、
それは蟻のように上条の思考に群がる。

 自分の目にあった事件は、そこに関わった人たちの背負った悲劇や不運は、
全て自分が原因で起こったことではないのか? いずれ上条当麻と関わるから、
誰かにその悲劇が「与えられる」。上条当麻という「不幸」に、触れるから。

 馬鹿馬鹿しい。そう上条は笑う。

(んなことあるわけねえっての。いくら不幸体質だからってありえねーよ、
そんなオカルト。だいたい、「幻想を殺す」イマジンブレイカーがそんなわけの
わからない効果を及ぼすこと自体、つじつまが合わねーんだ。うん、過去に
向き合ってがんばってる奴らに対して不謹慎だよな、こんな考え)

 けれども上条は、考える。否定を信じ切れずにいる。自分を茶化せず不合理
と言うしかできないのが、その良い証拠だった。ちょうど遠い国の戦争がお前
と無関係でないと言われた時のように、どうにも無視できない黒い考えは上条
の心を掴み、離さずにいる。

228とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:01:40 ID:66U/squM
少し、酔っているのかもしれなかった。もともと台所で気絶していたことも
あり、冷えた身体がまだ芯まで温まっていないから、余計に後ろ向きなことを
考えてしまうのかもしれない。上条は一度身震いをして、腕をさすった。
まとわりついた悪い考えを払うように、じっと目をつぶって。

「どうしたの? とうま」

 だから声が聞こえるまで、インデックスには気が付かなかった。下からこちら
を覗きこんで、怪訝に眉根を寄せている。

「なんだか苦しそうな顔してるよ、とうま。具合が悪いの?」

 上条は驚いてしばらく表情を動かせないでいて、再びインデックスが首を
傾げた頃にやっと顔を綻ばし、首を振った。

「なんでもねえよ、ちょっと酔っただけだ。ていうかお前いつ起きたんだ?」
「ついさっきだよ。なんだか良い匂いがしたから目が覚めて、それでとうまに
噛み付こうと思ったら様子が変だったから……」
「おいインデックス。どうして俺はいきなり噛み付かれそうになってんだ?」
「だってとうまが私に内緒で美味しいものを食べてると思って、というかその
ジュースは何なんだよ? やっぱりとうまは私に隠れて……」
「おわあ! 待て待てインデックス! これは単にお前が寝てたから誘わなかっただけで……そもそもお前酒なんて飲めんのかよ!?」
「問答無用というやつかも! 聞く耳持たないんだよ!」

 ぎらりと牙をのぞかせたかと思うと、次の瞬間インデックスが飛びかかって
くる。いくらウニ頭とはいえそのまま酒の肴にされてはたまらない上条はなんとか
インデックスの肩を掴み、奇襲を阻止した。だがなおも猛攻は続いており、しかも
床に倒れて覆いかぶさられるような体勢で防御しているから、上条はかなり不利だ。

(このままじゃやられる!?)

 直感した上条は状況を打開するため、身体を捻り、インデックスごと床の上
を回転した。彼女の体重は軽めだし男女の力の差もあるので、難しいことでは
ない。マウントポジションで腕を取り、形成は逆転する。手を噛んで脱出しよう
とするインデックスはさながら怒り狂った猛犬のごとくであり、正直言って
まだまだだいぶ怖かったが、上条はひとまず息をついた。

(か、噛みつき回避成功! でもとりあえずは安心だけどこっからどうしよう?
今手を離したら骨まで持っていかれかねないし、となると疲れるまで暴れさせて
から解放するのが得策なのか? 魚釣りみたいなやり方だが俺とこいつの体力差
ならできないことはっていうか、あれ? この状態なんかヤバいぞ? なんだか
俺が女の子を押し倒しているみたいな……あ、気のせいかなインデックスの目が
違う気がする。噛みちぎってやるって感じじゃなくなってる気がする。
え? え? ええ?? 何これなんだろ何なんだろすごい罪悪感がでてきた
心なしかインデックスの顔が赤く――ゲフゥッ!!)
 
 痛いというよりはむしろ「熱い」衝撃が、上条の後頭部を襲った。

「ア・ン・タはあああ! ちょっと私が目を離してる隙にいったい何をおっぱ
じめようとしてんのよこのケダモノ!」
「ち、ち、ちがう御坂誤解だ! 俺はただおのが身を守ろうとしただけで全く
下心なんて! って、いや、あの御坂さん? その右手に持っている今にも
ジュージュー言いそうなフライパンはいったい何なんでせう? まさかさっき
もそれで殴って――ちょ、タンマ! なんで振り上げるんですか使い方とか
間違ってますってマジでそれは痛いとかそんなレベルじゃすまなあ、あっ、あっ、
ごめんなさいごめんなさいごめんなさ――痛え!!」

 完全に美琴に目を奪われてガードを下ろしていた上条の皮膚に、ついにイン
デックスの牙が届く。喰い込んでくる痛みに身をよじり、上条はカーペットを
転げ回った。そうしてがら空きになる背中にフライパンが――。

「熱い! 痛い! 熱い! 痛い! 熱い! ふ、ふっ、不幸だァァあああ!!」

 夜のアパート、絶叫はどこまでも木霊したが、当然救いの手は差し伸べられない。
世界中のどんな神さまにだって、上条を助けてやることなどできないのだ。
……それを否定してくれる誰かは、もしかするといるかもしれないのだが。

229とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:02:33 ID:66U/squM
窓から射す光で起き上がってみると、ちょっと身体がだるかった。たぶん
二日酔いとは違うものなのだろうと、自分の知るその症状と今を照らして
みて、美琴は思う。

寝ぼけ眼で辺りを見回せばそこは上条当麻の部屋のベッドで。隣に眠るイン
デックスの、小鳥のような寝息が聞こえていた。
午前6時過ぎ。休日の朝は、穏やかな陽射しと共に幕を開けている。そんな中
美琴はいつもより早起きで、そこはいつも寝起きするベッドとは違っていて、
なんだかもどかしい気持ちになって布団を身体に引き寄せた。ゆうべと同じ光景
が今朝にも広がっているという事実は、存外に少女の胸を高鳴らせる。

(そ、そっか。私、アイツの家に泊まっちゃったんだ。それも酔っ払って
無理やり……。やっぱり迷惑だった、かな?)

 今さらになってそんなことを思う美琴である。当初は気にしていなかったが、
一夜明けて振り返ってみるとけっこう面倒をかけた気がした。

(黒子に心配かけちゃったかな。電話した方が良いんだろうけど、たぶんまだ
寝てるわよね)

 酔って動けなくなりつつも、記憶の方はしっかりしていた美琴である。イン
デックスが美琴の友人、上条がその兄と偽って白井黒子に連絡したのも、きちんと
憶えていた。それはもちろん上条に説教したことも憶えているということで、
自分がしたことも口にしたことも同様である。そういう記憶を取り出すにつけ、
美琴は奥歯がむず痒くなるのを感じ、布団の中に顔を隠してしまう。いっそ
忘れたい過去だったが、それはそれでもったいないのよね、と真面目に思い
直してしまって一人きりで照れたりしている。

 袋小路のようだった「思い出しはにかみ」からようやく抜け出すと、時計の
長針は十五分を指していた。美琴はまだ眠っているインデックスを起こさぬよう
そっとベッドを抜け出すと、顔を洗いに、洗面所に向かう。

 バスルームのドアを見つめて警戒するように身体をこわばらせつつ、洗面台
の前に立つ。湯を出し三回ほどすすいで洗顔を終えると、下の棚からタオルを
取り出す。顔を拭いて脇のタオル掛けにそれをかけると、鏡の横の戸棚に目を
向けた。

(戸棚の、二段目っと)

 ちょっと背伸び気味になって覗くと、あるのは予備の歯ブラシだ。いつのまにか
上条家の日用品の配置をすっかり把握しているわけだが、そこに意識は至らない。
記憶通りの場所にあったことをちょっぴり喜びつつ、美琴はゲコ太と同じ緑色の
柄のそれを取り出して、歯磨きを始める。

230とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:03:06 ID:66U/squM
 二分後、口をすすぎ、なんとなくもう一度顔を流して、タオルで水気を拭き
取る。少し乱れた髪を手ぐしで整えたら、後はもう洗面所に用事はなかった
はずだが、美琴は立ち去らない。盗み見るように横目で、浴槽に続くドアを
見つめてみる。

 別に、やましい気持ちがあるわけではなく。なんとなく、本当にただなんとなく
なのだと、自分に言い訳してみる。いつのまにか美琴は、バスルームのドアを
開けていた。
 そっと浴槽を覗きこめば、場違いに敷かれている布団がある。

(今さらだけど、ホントにここで寝てんのねー)

 上条は足を曲げ身体を丸めてうずくまっていて、どう見ても窮屈そうだ。
夏場は暑く冬には寒そうな印象を与えるのだが、この先どうするのだろう。
いや、もしかしたらかまくらと同じでふたを閉めれば案外温かいのかもしれ
ないし、一見するよりも平気なのだろうか。
 つらつら考えに耽りながら、やっぱり美琴が眺めるのは上条の寝顔だった。
身体を丸めているため必然的にそれは横顔であり、鼻のあたりまでは毛布を
かぶって隠れていた。浴槽が狭いだけ、という見方もあるが、布団の乱れが
少ないのを見ると意外に寝相は良いのかもしれない。

(無防備な顔は相変わらずだけど、やっぱり寝顔って雰囲気違うなあ。見たとこ
寝てる時は大人しいみたいだし、なんだか普段とのギャップが……)

 そして、なんとなく背後を見る。左右に視線をやって、当然なことながら
そこにはタイル状の壁しかないのであるが、美琴は頷いて深呼吸する。

 触ってみたくなったのだ。

 主にほっぺたとか耳を、つついたりとか。

(こいつはぐっすり寝てるし、誰も見てない! 絶対にバレない! 行ける!)

 何が行けると言うのか。誰も美琴にはツッコめないので、軌道が修正される
ことはない。縁に左手を置いて支えて、潜り込むように美琴は浴槽に身を乗り
出す。恐る恐る人指し指は伸び、上条の頬に――触れた。

(はー。体温けっこう高いんだ、こいつ。骨が張って固いところはあるけど、
ほっぺたはけっこう柔らかい……ていうかそれなりに触り心地良くてなんだか
愛くるしいような錯覚までしてきたわ。鼻とかつまんだらどうなるんだろ?)

 気付けばいたずら心まで芽生えてきた美琴である。通常、ラブコメには「お約束」
というものがあって、この場合でいうと美琴が触れるか触れないかというところで
上条が目を覚ましたりするわけだが、果たして今回それは発動しない。なぜなら、

「んあ、……あれ、御坂? 何でお前が」

 まったく別の「お約束」が、この場を支配していたからだ。

231とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:03:48 ID:66U/squM
 上条の頬に指を突っ込んだまま、美琴は固まる。全身総毛立ち汗が噴き出して
いたが、すくんだように身動きが取れずにいる。

「なんていうか、起こしにきてくれたのか?」
「いや、えと、ええと、その。そう! なんか早くに目が覚めちゃって、アンタ
まだ起きてるかなあーって! あははは!」
「上条さんとしてはそろそろその指を離して欲しいのですが。ちょっと話し
にくい」

 と言いつつ彼は何気なく、美琴と見つめ合っている視線を下に外す。すると
何を見つけたのか驚愕した様子で目を見開き、すぐさま後ずさった。美琴の指
から頬が離れ、上条は、両目を隠そうとするように顔に手をやる。

「ちょ、おま、御坂! 起きがけにそれはちょっと刺激が!」

 もともとデリカシーがないと言われている男である。言わない方が良いこと
まで、つい、慌てると口にしてしまう。
 解説すると、美琴自身あまり気にしていなかったのだが、ワイシャツは第二
ボタンまで解放されていた。さらには浴槽に潜り込んでいたわけで、美琴は
かなりの前傾姿勢を保っている。となると胸元がどのような状態になるかは
推して測るべしである。
眼前の動揺っぷりに眉根を寄せつつ美琴は上条の視線を追ってみて、そして
悲鳴を上げた。むろんはだけた胸は隠される。
 
 残念ながら左手で。

 小学生でもわかることだが、一定以上乗り出した身体が左手という唯一の
支えを失った場合どうなるか。いや、背筋や腹筋や反射神経によってどうにか
なることもあるだろうが、そこは咄嗟のことである。成すすべなく浴槽に落ちる
というのが普通だろう。
 すなわち上条の上に。

232とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:04:35 ID:66U/squM
「それよりも御坂、俺の身動きが取れないんだが」
「それよりって何よアンタ。いくらなんでも失礼でしょ」
「確かにその通りだ。悪かったと思う。謝ろうとも思う。でもな、上条さんは
思うんだ。ひとまずこの謎の密着状態を解除しないことには色々とダメなんじゃ
ないかと」

 言われて、美琴は改めて今の惨状を省みてみる。交錯する足、毛布一枚を
隔てて接する身体、目と鼻の先にあるとある少年の瞳。
 ……昨日の映像がフラッシュバックしてきてみるみる耳まで赤くなるレベル5
である。ぶっちゃけ意味不明な光景だった。窓はゆるやかな光をたたえ、バス
ルームの匂いはわずかに湿り、やや肌寒い空気に触れる中で、絡み合う温度は
生々しい。多分にマニアックなシチュエーションに美琴の頭は着いていけて
おらず、上条を上目遣いに睨んだまま固まってしまう。

 他方、いっこうに好転しない事態に上条は狼狽するばかりだ。

「ええと、御坂。今した会話は理解してる?」
「ば、ば、馬鹿。当たり前でしょ。アンタ私を何だと思ってるのよ」
「早くどいてくれ……。なんだかだいぶ息苦しい」

 いろいろ釈然としない御坂ではあったが、どうも真面目にぐったりしている
ようだったので起き上がる。身体を踏まぬようにそろりそろりと浴槽から抜け
出して、まだ布団にうずくまる上条を見下ろした。

「つーかアンタ。本気で眠そうね」
「まあ……けっこう、遅くまで起きてたし」
「私が寝たのって12時半ぐらいだったわよね? そっからまだ起きてたの?」
「そう。だいたい、2時前ぐらいかな、寝る準備に入ったの。いやあ……色々、
あったのですよ、ははは」
「色々って、アンタがそう言うのってなーんか疑わしいのよねえ。ま、いいわ。
ひとまず寝ときなさい」

 自分の寝ている隙に、今度はインデックスとどんな馬鹿をやったのかと呆れ
ながら、美琴は言う。

「もう一時間ぐらいしたら。朝ごはん、作ってあげるから。何食べたい?」
「うーん。あんまり、食欲がないです」
「なーに、二日酔いとか? なんにしても食べないことには元気なんて出ないわよ。
ま、心配しなくてもインデックスの食いっ気に当てられたら嫌でも食べたくなるかな。
なにより私が作った朝ごはんなんだから……って、もう寝てる?」

 相当眠かったのかな、と美琴は首を傾げる。怒りはまだ残っていたはずだが、
いつもと違う上条の様子にすっかり消沈してしまっていた。低血圧なのかしら
と考えてみて、自分の知らなかった彼の一面を知ったようでちょっぴり嬉しい。
その感情に合わせて美琴の頬はゆるみ、微笑んで、上条に言う。

「――おやすみなさい」

 むにゃむにゃと動かした上条の口が「おやすみ」と、なんだか自分に返事を
しているように見えて、美琴は満足げな面持ちでバスルームを出た。

233とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:05:39 ID:66U/squM
 それからテレビを見たり漫画を読んだりして、しばらく時間を潰す。
 空腹を感じ始めたのと、予約セットしておいた炊飯器が音を鳴らしたのは、
同時だった。何とはなしに手に取っていた洋書から顔を上げ、美琴は時間を
確認する。夢の中でも炊飯器の音に反応したのか、「ごっはん、ごっはん……」
とインデックスは寝言を言っていた。

「八時か……。アイツもこの子も全然起きてくる兆候ないけど、そろそろ何か
作ろうかな」

呟いて、美琴は冷蔵庫を覗く。リクエストもなかったことだし、夕食の作り
置きでも良いと思っていたが、昨日おつまみ代わりに出したのもあって、二人
とインデックス分には明らかに足りない気がした。どうもイチから作る必要が
あるようだ。

「アイツ朝弱いみたいだし、食べやすいものの方が良いかな。となると固形食
よりは流動食系で、ご飯と食べ合わせの良いもの……」

 始業式の日のんびりと登校していた上条の姿を、美琴は思い浮かべる。

「オーソドックスに行くならおみそ汁だけど、あれって、朝で食欲ない時って
なんか気が進まないのよねえ……ていうか、豆腐がないんじゃ駄目だわ。乾燥
わかめはあるけど、おみそ汁はやっぱり豆腐。ジャガイモも悪くないけど」

 ついでに言うなら、朝食にみそ汁を作るということにはなんだか妙なメッセージ性が
あるように思えたのも、気が引ける一因だった。

「卵は残り二個かあ、玉子焼きにしようと思ったけどこっちも微妙だなあ。
でもそろそろ使っちゃいたいし、うーん。昨日のでだいぶ計画崩れてる気がする」

 もっとも気付いた時には冷蔵庫をインデックスが完食していたりするので、
食材が計画通りに消費された試しなどないのだが。基本的に参加するのは夕食
だけなのでいちいち食事計画を立てることにあまり意味はなく、それでもなん
となく余りものを何に使うかまで考えて買い物してしまう美琴である。
 結局、にらなど微妙な食材が余っていたり、中華ダシの素なんかがあったので、
中華風あっさり卵スープを作ることにした。一品ではさみしいので、昨日の作り
置きも加えることにする。

 で、だいたいそれが完成しかけた8時15分、インデックスが起きだしてくる。
匂いにつられたらしい。

「あれー朝なのになんだかすごく良い匂いがするんだよ? トーストの匂いが
しないんだよ?」
「おはよ、インデックス。そういやこの家ってパン派なんだっけ」
「おはようみこと。朝ごはんは大抵トースト一枚だけど、一カ月周期で変わって
いくんだよ。スティックパンが一つの時とかもあるし、仕送りの時期と関係が
あるのかも」
「大食らいの割にひもじい生活送ってんのね、アンタ。寄生する相手によっちゃ
もっと満足させてもらえそうなもんだけど」
「それはそうだけど、私がとうまと一緒にいるのはご飯の問題じゃないから、
その想定にはあまり意味がないかも」

 あっさりライバル宣言ともとれる発言をするインデックスだった。実際、
こんな厄介なシスターが学園都市で身を置く場所など、内外の事情を含めて
上条当麻のもとぐらいしか存在しないのが現状であり現実なのだが、それでも
美琴はどぎまぎしてしまう。こんなふうに理屈もなく上条当麻のそばにいよう
とする彼女を見ていると、あいまって美琴も、彼のことを強く意識してしまう
のである。物事の重要性は希少性をもって示されることが多い、ということだ。
失って初めて気付くと言い換えても良い。

234とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:06:11 ID:66U/squM
 美琴は、インデックスに言う。

「朝ごはん、もうできてるから。準備する間にアイツ、起こしてきてくれない?」
「わかったー」

 と言って洗面所に続くドアを開けようとしたインデックスを、美琴は引きとめる。

「そういやさ、昨日私が寝た後って何があったの? アイツ、けっこう遅くまで
起きてたみたいだけど」

 探りも含めての問い掛けだった。美琴ともそうであったように、仮にゆうべ
上条とインデックスの間に秘め事があったとすれば、彼女は何らかの兆候を
見せるのではないかと。
 思ってはいたのだが、返答はあっさりしたものである。

「んー、何もなかったと思うけど。私はみことが寝ちゃってからはそんなに長く
起きてなかったし、とうまが何時に寝たのかも知らないよ」
「あら、そうなの? じゃあアイツ、一人で何やってたんだろ」
「それも知らない。でもみことはとうまにお礼を言った方が良いかも。憶えて
ないかもしれないけど、酔い潰れてたみことにお水を飲ませたり、介抱したのは
とうまなんだよ」
「……それはまあ、憶えてるわ。あとで謝って、うん、ちゃんとお礼も言う」

 インデックスはにっこりと頬笑み、それから首を傾げた。もう良いのか、と
訊ねているのだろう。美琴は頷き、朝食の準備に戻る。洗面所のドアが開いて、
閉まり、「とうまーとうまー」と唄うように言うインデックスの声が聞こえた。

(一人で晩酌して、遅くまで起きてたのかしら?)

 普通に考えるならばその線だろうが、「美琴を介抱したのが上条」という事実
を鑑みると話は変わってくる気がする。若干やけ気味に飲んでいた美琴に対し、
最後の方ではずいぶん心配をかけてくれていたようだったし、もしかしたら
美琴とインデックスが眠った後にも、看病してくれていたのではないか、と。

 そしてその可能性に思い至った途端、きゅんと美琴の胸はすぼまるのである。

(え、ちょっと待って。じゃあアイツが寝不足なのってもしかして、私のことを
看ててくれたから……? ちゃんと言わなかったのも、余計な気を遣わせない
ように、ってこと?)

 きちんと説明しなかったのは疲れていたから、という解釈ももちろんありえた
はずだが、このような推測をしてしまってはもう止まらない。美琴はエプロン姿
でお玉を持ったまましゃがみこみ、赤面した頬を両手で抑えた。唇が閉じよう
もなさそうにわなわな震えていて、映像でお見せできないのが惜しまれるほどの
超絶可愛いポーズである。

「みこと! ちょっと来て! とうまが……」

 そんな折、聞こえたのはインデックスの声だった。悲鳴に近い、切迫した叫びだ。

「とうまが倒れた!」
「――ええ!?」

 弾かれたように美琴は台所を飛び出し、二人のもとへ向かう。バスルームを
覗けば、浴槽に背を持たせてぐったりとしている上条がいた。転んだ時に打った
のだろう、ツンツン頭の額に血が滲んでいる。気絶しているというわけではなく、
ため息のように深い呼吸を繰り返していた。

 ひとまず頭を打って失神したというわけではないことがわかって、美琴は安堵
する。だが、それは逆に外傷以外の症状が現われているということでもあった。

 インデックスは彼の額に触れて、言う。

「とうま、すごい熱」

 その報告に、美琴はショックを受ける。先ほどまで舞い上がっていた自分が
硝子のように砕かれるのを感じた。彼に駆けよらねばと、それだけ思うのだが
動揺は身体を動かさない。空っぽのはずの胃がずんと重くなった気がして、肘が
震えた。

「とにかくベッドまで運ばなきゃ! 手伝って、みこと。……みこと?」

 いまだ立ち尽くしているのを怪訝に思ったらしく、インデックスが呼びかけて
くる。はっと顔を上げて、美琴は上条に駆け寄った。頬に手を寄せ、どうして
気が付かなかったのかと歯ぎしりする。その一連の動作をインデックスは眺めて
いて、やがて言った。

「早く運ぼう。とうま、苦しそう」

 美琴は頷き、二人で上条の肩を担ぐ。力の抜けた身体はひどく重く、背中に
伝わってくる体温は熱かった。負担をかけぬようにと注意を払って歩くのだが、
一歩足を動かすごとによろめいて、それは美琴の心境を表わすようだった。

 上条当麻が風邪を引いた。
 ともすれば、自分のせいで。

235とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:13:38 ID:66U/squM
以上です。お粗末さまでした。

いやー、さっさと終わるつもりだったのに3万字を突破しそうです。
本来はこれぐらいで終了するつもりだったのですがまだまだ続きそう。
けっこう自由にネタを盛り込んでいる弊害ですね、これは。

ちなみに>>164のレスも僕なんですが、
そんなふうに「美琴を戦わせてみよう」という趣向を盛り込んだ作品を
二つ構想中だったりします。書くかわかりませんけども。
もしも書いたらこのスレに投下したいけど、いちゃいちゃなのか微妙で悩みどころだったり。
心はしっかり上琴なんですがねえ。


ちなみにかまちー的には美琴とねーちんが同格だそうです。経験値的に美琴が負けそうですが。
では長々と失礼いたしました。続きはそのうちに。

236とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 01:28:04 ID:66U/squM
ぐわああああ! みすったああああああ!

美琴が浴槽に落ちた部分、修正です。1レス分です。






 上条の頬に指を突っ込んだまま、美琴は固まる。全身総毛立ち汗が噴き出して
いたが、すくんだように身動きが取れずにいる。

「なんていうか、起こしにきてくれたのか?」
「いや、えと、ええと、その。そう! なんか早くに目が覚めちゃって、アンタ
まだ起きてるかなあーって! あははは!」
「上条さんとしてはそろそろその指を離して欲しいのですが。ちょっと話し
にくい」

 と言いつつ彼は何気なく、美琴と見つめ合っている視線を下に外す。すると
何を見つけたのか驚愕した様子で目を見開き、すぐさま後ずさった。美琴の指
から頬が離れ、上条は、両目を隠そうとするように顔に手をやる。

「ちょ、おま、御坂! 起きがけにそれはちょっと刺激が!」

 もともとデリカシーがないと言われている男である。言わない方が良いこと
まで、つい、慌てると口にしてしまう。
 解説すると、美琴自身あまり気にしていなかったのだが、ワイシャツは第二
ボタンまで解放されていた。さらには浴槽に潜り込んでいたわけで、美琴は
かなりの前傾姿勢を保っている。となると胸元がどのような状態になるかは
推して測るべしである。
眼前の動揺っぷりに眉根を寄せつつ美琴は上条の視線を追ってみて、そして
悲鳴を上げた。むろんはだけた胸は隠される。
 
 残念ながら左手で。

 小学生でもわかることだが、一定以上乗り出した身体が左手という唯一の
支えを失った場合どうなるか。いや、背筋や腹筋や反射神経によってどうにか
なることもあるだろうが、そこは咄嗟のことである。成すすべなく浴槽に落ちる
というのが普通だろう。
 すなわち上条の上に。

 ぎゃああ!と美琴があまりのことに暴れて、上条は大物の魚を釣り上げた時
のような格闘を強いられた。ようやく身体の自由を取り戻して美琴が落ち着く
と、ぐいっと上条の頭は掴まれる。

「……見たわね?」
「さ、さあ? 見たって何のことでしょう? 上条ちゃんは馬鹿だからわから
ないのですー」
「わ・た・し・に・言・わ・せ・る・気!?」
「いや、あのその。そりゃあちょっとはね、見えてしまったと言うべきか」
「どこまで見えたの?」
「あ、あははー、どこまでってそんな」

 美琴だって別に、ワイシャツ一枚でいたわけではない。下着代わりに半袖の
Tシャツを身につけていて、ただそれは下着ゆえに襟元があまりぴっちりして
いるものでもなかった。ついでに言うと、多くの女性は就寝時にブラジャーなど
着けない。血行に悪いし型崩れの原因にもなるからだ。
 まとめると、上条の瞳が「どこまで」捉えたのかは全くの未知数である。
乙女の沽券に関わることと言っても過言でなく、美琴は真赤になって詰め
寄っている。

237■■■■:2010/02/09(火) 01:42:48 ID:33WF9a1s
>>235
GJだ
ミスなんて気にならないくらいに面白いよ!

238■■■■:2010/02/09(火) 01:58:26 ID:wZOCWuzc
>>236
GJです!
今度は看病編かな?

239 ◆t9BahZgHoU:2010/02/09(火) 02:32:50 ID:NP8azg.c
>>236
GJ!ですの。
次回も期待!!

とりあえず小ネタを1個投下します。
相変わらずいちゃついてないのはご愛嬌…

240 ◆t9BahZgHoU:2010/02/09(火) 02:34:06 ID:NP8azg.c
    小ネタ 「籍」


『159番の番号札をお持ちの方 3番の窓口へ お越し下さい』

機械的な放送が、利用者に順番を告げる。
ここは学園都市第七学区総合庁舎。一般的な街で言う市役所に相当する行政施設だ。
ここに、かつて超能力者の第三位だった少女――超電磁砲こと美琴がいる。

能力開発はもちろんのこと学業成績も非常に優秀である彼女は、高校に進学後、
その能力や学力が改めて高く評価され、一人の研究者として活躍することとなった。

そんな彼女がここにいる理由は単純で、住民票と戸籍の写しを取りに来たという訳だ。

「こちらが戸籍一部事項証明書の写しになります。今一度身分証明書の提示をお願いします」

指示の通りに、美琴は学生証を職員に渡す。

「内容の確認をお願いいたします」

美琴が手にした戸籍抄本には美琴と、とある人物の情報が記載されていた。

「はい。これで大丈夫です」
「それでは、手数料は315円です。封筒が必要でしたらこちらをご利用下さい」

役所での用事が済み、美琴は来月から勤務する病院へと向かう。
そこは、カエル顔の医者や妹達がいるあの病院で、彼女は高校に通いつつ、
学業の合間を縫うようにして勤めることとなっている。

「うーん……。この後どうしよっかな。ほんと困ったわ……」

今日は2月14日、バレンタインデーだ。とは言うものの、美琴は学業に研究にと大忙しで、
このイベントに向けた準備は一切していないため、今になって悩む羽目になっている。
本当ならとある人物に手作りチョコでも渡したかったのだが、それを用意する時間がなかった。

悩みながら街を歩く。頭の中にはいろいろと危険な思考も現れてくる。
そんな彼女はとても幸せそうな表情を浮かべ、というかちょっとばっかしニヤけていた。

「この美琴センセーが用意するものなら何でも喜びそうよね、アイツ……。
 でもそれじゃダメなのよね。今までにないほどの喜びを味わせてやるんだから。
 いっそのこと身体中に生チョコでも塗ったくっちゃう?」

思考が漏れ、つい独り言を呟いてしまう。

彼女には想い人がいる。
とある人物――彼女から当麻と呼ばれている、いつも不幸そうな表情をしている少年だ。
しかしそんな彼だが、度重なる不幸にも打ち勝てるほどの幸せを掴み取った。
その幸せこそが美琴であり、彼にとって何よりも大切なかけがえのない女性である。

「あれ? いつのまにか着いちゃったわね……」

いろいろと予定を組み立てつつ歩いていた彼女は、自分でも気づかないうちに病院へたどり着いた。
とりあえず、いつも妹達に会うときと同じように正面玄関から入ると、貴重な逸材である彼女を
待ちかねていたかのように、職員数名が美琴に近づいてくる。

「お待ちしておりました、上条さんですね」
「はい。来月より研究職としてお世話になります、上条美琴です。よろしくお願い致します」

美琴は笑顔でそう答え、職員と共に歩き出す。
若くして一人の男性のもとへ嫁入りした彼女の人生は、まだ始まったばかりだ。



「――――っていう夢を見た訳よ……。責任取りなさいよね」
「そ、それはプロポーズとして受け取っていいのですか御坂サン?」
「ばっ、バカ! そ、そんなんじゃないわよ!? な、にゃんで私がアンタにゃんかと……」


挿絵もとい挿ネタ? → ttp://loda.jp/nanakuni_yama/?id=8.png

これは酷いオチですね…orz 寝るまで反省します。

241■■■■:2010/02/09(火) 02:35:42 ID:yWTpD1ww
なんだか、風呂とか一気に関係なくなってるような気がしないこともないけど、そんなことなどどうでもいいくらいにGJ!!
というかむしろもっとや(ry
続きがとても気になる終わり方ですね〜

242D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/09(火) 07:07:12 ID:t5vs4Rlc
こんにちは。
一日で100レスオーバーとか読み手が書き手に変身とか何この魔スレ。
みなさんGJ!

 それでは10分後に「Ti_Amo.」全18レス消費予定中残り10レスを投下します。
前半8レスは>>101-108です。

243Ti_Amo.(9):2010/02/09(火) 07:20:35 ID:t5vs4Rlc
 美琴が上条と別れて二週間が経った。
 美琴が意識して通学時間や行動時間をずらした結果、この二週間一度として上条に会う事はなかった。それが美琴の努力の結果ならそれで済ませることもできたが、
 何か違和感を感じる。
 強いて言うなら学園都市から『上条当麻』という人物の気配そのものがまるごと消えているような。
(……別れた奴の事なんて気にしたって意味ないじゃない。あー馬鹿らしい)
 放課後、美琴は白井達とファミレスでお茶を飲んでいた。美琴の左隣である通路側に白井、その白井の向かいに白井と同じく風紀委員活動第一七七支部に所属する初春飾利が腰掛けている。最後に初春の隣で窓際奥の席を占めるのが初春の友人、佐天涙子だ。週末は何をして過ごそうかと四人は雑誌を広げ、ああでもないこうでもないとそれぞれの意見を繰り広げる。
 上条と付き合い始める前の、女の子同士の和気藹々とした楽しい時間が戻ってきた。
 大口を開けて気兼ねなくわははと笑い、人目を気にせず噂話に没頭し、くだらないジョークに一斉にツッコむ。打てば響くように弾む会話の空間は美琴にとって最も生き生きと輝く場所である。
 それなのに、何かが足りない。
 上条当麻というパーツが抜け落ちて、御坂美琴という完成品は壊れてしまったのか。
「お姉様? 渋い顔をしてどうされましたの?」
 隣でシフォンケーキをつついていた白井が美琴に怪訝な表情を向ける。
「へっ? あ、いや、何でもない何でもない。ところでみんな、週末セブンスミストの屋上でやるイベントって行ってみたくない?」
 夏のあのショーがもう一度行われるという発見で、胸のときめきを抑えきれず言葉の後半がややうわずりがちな美琴に
「お姉様……初春も佐天さんもお姉様がゲコ太好きというのは知っているのですから素直に『ゲコ太のイベントに行きたい』とそうおっしゃればよろしいのに。……誰も行くとは言わないでしょうけれど」
 白井が白い目を向けて一刀両断する。
「え? わ、私はね? そうじゃなくてこういう子供達とのふれあいってのもたまには必要じゃないかってね?」
「ふれあい、ですか……そうですね。そう言うのもたまには良いかもしれませんね」
 追い詰められる美琴を気の毒に思ったのか、佐天が横合いから助け船を出した。夏休みに四人で行ったあすなろ園での一件を、佐天は思い出しているのかもしれない。
「そ、そうでしょ? 佐天さんもそう思うでしょ?」
「ええ、でも御坂さん。こう言うのって私達より彼氏にお願いした方が良いんじゃないですか? どうせ行くなら彼氏とふれあう方が楽しいと思いますよ?」
 助け船に見えたのは逃亡者を高速で追跡する巡視船だった。

244Ti_Amo.(10):2010/02/09(火) 07:21:12 ID:t5vs4Rlc
「は、はい? 彼氏? 彼氏って何? 何のことかしら?」
「もう、とぼけても無駄ですよ御坂さん。御坂さんと御坂さんよりちょっと背の高い男の人が二人で歩いてたのを、うちのクラスの子が見てたんですよー?」
 うわー、今さら何の関係もないけどアイツと歩いてるところを見られたかと心の中で苦虫を噛みつぶしつつ『何を言ってるのか分からないわね』とシラを切る美琴を、佐天が獰猛な獣の如くニヤリと笑って追い詰める。
 恋バナは女の子の特権。しかも年上でレベル5で学園都市第三位の超電磁砲をネタにできるなら、こんなに面白い(おいしい)話を放っておく手はないと佐天は両手をわきわきさせて『さあ知っていることを洗いざらい離してもらおうか』と尋問する刑事よろしく美琴に向かってずいと顔を近づける。
「佐天さん、それっていつの話ですか? 学園都市の全監視カメラの記録データをチェックしますからくわしい日時を教えてくださいっ!」
 いつになく素早い動作で鞄から黒いノートパソコンを取り出した初春が通信データカードをスロットに差し込んで回線を接続した。獲物を目の前にした狩人・初春の目は爛々と輝き、キーボードを叩く指先は愛用の銃の引き金を絞るがごとき閃きを見せる。
「そう言えばお姉様は、三週間近く前に無断外泊されてますよね……まさかその時!」
 白井の咎めるような言葉に『三週間前ですね、了解ですっ!』と初春がキーボードをカチャカチャ叩きどこかへアクセスを開始した。初春の持つ書庫へのアクセス権限と処理速度なら学園都市全ての監視カメラの記録からいつの何時に美琴がカメラに映っているか探しだすのは時間の問題だ。
 そこに美琴と誰が一緒に映っているのかも。
「ちょ、ちょっと待ってよみんな落ち着いてってば! 私彼氏なんていない、いないからっ! ほら私のケータイ見てよ、彼氏とかいるならそれっぽいアドレスとか履歴とか残ってるでしょ!?」
 美琴は慌ててポケットからカエル型の携帯電話を取りだし、その場にいた三人の前で登録番号のリストを表示した。白井は美琴の手から携帯電話を取り上げるとピコピコとボタンを操作して
「……あらホントですわ。初春に、私に、佐天さんに……あとは全員学内のご学友か、教員の方々ばかりですわね」
 同時に自分の携帯電話の登録番号リストを表示させ、一つ一つを丹念に検分する。
「履歴も白井さんばっかり……あ、こっちはこの間私にかけてきた時のですねー」
 今度は白井の手から美琴の携帯電話を受け取った初春が通話履歴とメールの送受信履歴をチェックする。佐天も写真データのフォルダをくまなくのぞきこんであれおっかしいなーと呟き
「うーん? でも確かに見たってむーちゃんが言ってたんだけどなぁ……」
「き、きっとあれじゃない? 私が誰かに道案内してあげた時とかそう言うのを見かけたんじゃないかな? あは、あはは、あははは……」
 上条のアドレスと履歴を消した時は後悔したけれど、今になって思えば良い判断だったと美琴は思い、ついでに胸の奥に走る痛みを笑顔でこっそり打ち消した。

245Ti_Amo.(11):2010/02/09(火) 07:21:46 ID:t5vs4Rlc
 白井と初春は定時の巡回、佐天は美琴とは帰る方向が逆のため、四人はファミレスの前で手を振って別れた。一人取り残された美琴は自分に無意味な言い訳をしつつ、上条の住む寮へ足を向ける。
 上条が学園都市にいようがいまいがどうでもいいが、どうもいやな感覚が美琴の心にまとわりついて離れない。例えるならそれは、美琴がロンドンにいる上条から電話を受け取った時と同じ。
 ―――あんな事がそうそう何度もあってたまるものか。
 一瞬、不吉な予感に囚われた美琴だが、慌てて首を振って否定する。
(だっ、だいたい、アイツが今どこにいようが何をしてようが、私には関係ないっ! そうよ、アイツとは別れたんだから。もう何の関係も繋がりもないんだから……)
 あれは過去、もう終わったと本当にそう言い切れるか。美琴には自信がない。
 恋人から破局したら友達にも戻れないと何かの話で良く聞くけれど、果たして美琴と上条はそんなに薄っぺらな間柄なのだろうか。
 美琴は二人が歩んだ時間を振り返る。
 絶対能力進化実験では美琴も上条もそれぞれの窮地をくぐり抜け、自分の気持ちに気づかなかった頃とはいえ大覇星祭では共に競い、戦い、応援しあった。フランスからかかってきた電話で偶然とはいえ上条の記憶喪失の事を知り、そしてその事は少なくとも上条を担当した医者を除けば美琴以外誰も知らない、二人だけの秘密という事実は変わらない。
 恋人には戻れなくても、二人しか持ちえない確かな絆がそこにはある。美琴は上条と別れたから、離れたからといってそこで何が起きても知らんぷりをするような薄情な人間に育ったつもりはない。
(……絆がどうとか未練がましいわよね。案外私って女々しい奴だったんだな)
 美琴は防犯の役に立ってるのか怪しい寮の入り口をくぐり、横綱が一人乗ったらワイヤーが千切れそうなオンボロエレベーターに乗って七階を目指し、上条の部屋の前に着くとドアポストに薄っぺらな紙が二枚差し込まれているのに気がついた。上条には悪いと思いつつ白い紙切れを引き抜くと、二枚とも荷物の不在通知届だった。二枚とも荷物の差出人は同じだが、日付が大きく違う。これを見る限り、宅配業者は二度上条のところに同じ荷物を運んで二度とも持ち帰ったという事になる。上条が日常的に部屋へ出入りしてるなら、この不在届がドアポストに差しっぱなしという事はない。上条が宅配業者に電話して自分が部屋にいる時間に再配達させるか、あるいは自分から最寄りのサービススポットへ荷物を取りに出向くはずだ。それが差しっぱなしという事は部屋の主は数日不在のまま、という事になる。
 美琴はもう一度二枚の不在通知届を確認する。荷物の差出人は手書きの文字がこすれて判別しづらいが『上条』と書いてあるように見えた。

246Ti_Amo.(12):2010/02/09(火) 07:22:31 ID:t5vs4Rlc
「……アイツ、どこに行ったのよ?」
 不在で持ち帰られた荷物が上条の両親から送られた物なら、上条の両親は上条の不在を知らない。となると上条の行き先は上条の実家ではないという解が導き出される。学園都市の学生が都市の外へ出るには、広域社会見学でも面倒な手続きが必要になる。そして上条はその面倒な手続きを飛ばして『外』へ出た事が、美琴の知りうる範囲で少なくとも二度はある。
「……どこへ行ったの?……まさか」
 心にわだかまるいやな予感が美琴に重くのしかかる。美琴は杞憂であって欲しいと願い、階段を駆け下りて一階を目指し、集合ポストの中から上条の名前を探し、鍵の付いていないポストのドアを引っ張って開ける。
 ポストの中には何日も手つかずの上条宛の郵便物がたまっていた。美琴は最新のダイレクトメールに押されたスタンプの日付が昨日のものであることを確認し、郵便物を全てポストに押し込むともう一度エレベーターに乗り込んだ。七階でドアが開くのももどかしくエレベーターを飛び降り、全速力で走って上条の部屋の前に着くと拳を握りしめてドアを何度も叩く。かなり大きい音が周囲に響くが隣人は留守にしているのか誰も顔を出さない。次に美琴はドアに耳を当てて中の様子を伺うが、人がいる気配は感じられなかった。電撃使いの能力でドアを開けようとしたが、上条の部屋は古いシリンダー錠を使っているため、美琴では開けられない。
 こんな事なら上条から合鍵をもらっておけば良かったと思い、携帯電話を取りだして電話をかける可能性にたどり着いて、そこで美琴は気づく。
「私、アイツと別れたんだった。……はは、何やってんだろ。何もここまで心配しなくったって良いじゃない。私はアイツの彼女でも何でもないんだからさ。ねぇ?」
 上条に連絡を取る手段は自分から捨てた。別れも自分から告げた。今美琴がやっている事は明らかに友達の範疇を超えていると悟って、美琴はドアにすがるように頭を押し付けて寄りかかった。ドアを殴りつけた拳より愚かすぎる選択をした自分への後悔で心が締め上げられるように痛む。
 上条が美琴を好きなのかが問題なのではない。
 ―――美琴が上条を好きでいる事が、美琴にとっての最重要事項。
 今頃こんな単純な事に気がつくなんて。
「馬鹿……私、馬鹿だ。あの馬鹿の事、言えないじゃない」
 元々上条が美琴に良い印象を持っていないのは、美琴もうすうす気づいていた。だから告白の時も上条から明後日の方向へそれたような答えが返ってきた。自分が上条を本気で好きだという事実を理解させるのにどれだけの言葉を尽くしたかを思い出せば、恋人になってからの上条の行動の一つ一つも理解できる。
 自分の感情に振り回されて、上条の事を何一つ思いやっていない。
 『恋人である事』にこだわって、何も見えていなかった。
(馬鹿だ私。こんなに好きなのに簡単に『別れる』だなんて。そんなこと、できっこない)
 巻き戻らない時間と開かないドアの前で、美琴はくだらない意地が産んだ結末に一人立ちすくんだまま声を上げることもできず唇をかみしめる。
 上条は学園都市にいない。連絡は取れない。美琴の手の届かない場所に上条がいることはこんなにも不安でたまらないのか。
 絶望的な何かに足元を掴まれてこれから何をどうしたらいいのか一つも思いつかず、美琴は無言でその場を立ち去るしかなかった。

247Ti_Amo.(13):2010/02/09(火) 07:23:12 ID:t5vs4Rlc
(やっぱこの方法しか……ないわよね)
 美琴が白井に不審者を見るような目を向けられながら一晩枕を抱えてベッドの中でうんうん唸って悩んで思いついた方法は、上条の学校まで行って誰でも良いから上条の知り合いをつかまえて上条が今どこにいるのかを聞いてみるという、きわめて原始的な手段だった。もしかしたら上条はクラスの誰かにそれとなく自分の行動を知らせているかも知れない。何しろ年がら年中補習だ補習だと騒いでいるあの馬鹿の事だ、誰か一人には居場所を伝えて、そこから授業の進行状況を聞いているという事も考えられる。
 せめて上条が無事なのかどうかだけでも知りたい。
 白井や初春と言った風紀委員にそれとなく不審人物のゲート突破記録について聞いてみるという手もあったが、その場合上条が『外』に出た事の裏付けは取れてもどこに行ったかまではわからない。だいたい、その後で白井に何を根掘り葉掘り聞かれるかわかったものではない。
 上条の高校の前までやってきたものの、美琴はこの学校に上条以外の知り合いはいない。美琴は校門から校内の様子を伺い、当てずっぽうで上条のクラスの一年七組まで(忍び込んで)行ってみようかと思いかけたところで、前方から長い黒髪をなびかせて胸を――美琴では太刀打ちできないサイズのそれを張って歩く、上条と同い年くらいの少女を見かけた。そう言えば彼女は大覇星祭の時に上条と親しく話していた運営委員だったような気がする。
 美琴は自分の胸元に視線を落とし、それから彼方のおでこ少女と見比べて一瞬敗北感でひるみそうになったが、意を決して彼女の元に駆け寄った。
「あっ、あのっ! かっかっかっ、上条当麻さんを……探してるんですが」
「? 貴女はどこかで会った事があるわね。……ああ、思い出した。大覇星祭の借り物競走で上条当麻の犠牲者になった女の子よね? えーと確か常盤台中学の……み、みさ、みさかさん……?」
 クラスのしきり役として抜群の記憶力と頭脳を遺憾なく発揮する吹寄制理が自慢のおでこに人差し指の先をつけうーんと唸りながら記憶を掘り返す。犠牲者、と言う言葉に冷や汗をかきながら次の言葉を待つ美琴に
「貴女、上条当麻に用があるの? あのデルタフォース一のバカなら一週間近く前から欠席中よ。理由は聞いてないわね。どうせ後日どっかの病院に入院した辺りで連絡が入るでしょうけど。どうしたの? 貴女、あの日の件でついに上条当麻に慰謝料を要求するべく立ち上がったとか?」
 吹寄は立て板に水を体現するような身も蓋もない言葉で美琴に切り込む。
 美琴は両手をわたわたわたわたと振って、
「い、いえ違うんです。そう言うんじゃなくて……ええっとごめんなさいお邪魔しましたっ!」
 日頃からあまり接触することのない『年長者』という生物に慌てて深々とお辞儀すると、ダッシュでその場を逃げ出した。吹寄は革靴で走るにはあり得ない速度で遠ざかっていく美琴を見ながら
「上条当麻……貴様、不在の身でありながらうら若きいたいけな少女と騒動を起こすとは良い度胸ね。出席した時が貴様の最後と覚えておきなさい」
 キラリ、夕映えを浴びて整えられたおでこがまぶしく光る。

248Ti_Amo.(14):2010/02/09(火) 07:23:50 ID:t5vs4Rlc
 もう間違いない。上条は美琴に何の連絡もなく『外』へ出たのだ。
 外に出たのなら、アビニョンやロンドンの時のように電話をかけてきてくれればいいのに、と美琴は思う。あの時だって上条は美琴を頼りにして電話をかけてきたのだから、今回だって手助けできる事があるなら力になってやれるのに。
「まぁ、無理ないか。アイツの横っ面思いっきり張り飛ばしちゃったもん」
 美琴は自分の掌を見つめてあはは、と笑う。あれは我ながらジャストミートの感触だった。ちゃんと確認していないが、上条の頬には三日は消えない真っ赤な紅葉模様が刻まれていただろう。
 何となく真っ直ぐ寮に帰りたくなくて、美琴は足を地下街へ向けた。ゲームセンターで気晴らしに何かゲームをして帰ろう。それとも久々に一人でケーキ屋でも廻ろうか。まだ見ぬゲコ太グッズを求めてファンシーショップを行脚するのも良いかもしれない。
 それにしても一人で歩く道はつまらない。
 一方的なおしゃべりでも良い。誰か聞いていてくれる人が欲しい。
 ……上条はいつも美琴の隣で美琴の話を聞いていた。
 話を止めてくれとも言わずに、口を挟む事もなく、時には相槌を打って。
 ほんの二週間前なのに、そんな些細なやりとりが今ではたまらなく懐かしい。
 黙って隣でじっと話を聞いてくれる上条が好きだった。
 時々美琴に見せる上条の笑顔が好きだった。
 履歴を捨てれば忘れられると思った。別れてしまえば何もかも終わると思ってた。その後は新しい誰かと出会い、きっとその人は美琴を誰よりも大切にしてくれて、いつでも美琴のことを一番に思ってくれる。
 ―――そんなのはうそだ。
 忘れられない。忘れられるわけがない。一時の気の迷いを本気にするなど子供時代の淡い夢想と馬鹿にされてもこれだけは譲れない。美琴にとって上条へ向けた想いは一生一度の恋だ。
 その恋を自分の手で終わらせてしまったのだから恋人に戻るのはもう無理だろう。でも、友達からならまだやり直せるかも知れない。
 この手がまだ届くなら、きっとこの先ずっと続く片思いでも、想い続けることはできるから。
 次に会った時は素直に頭を下げて謝ろう。
 罰ゲームの時はできなかったけれど、今はできる。あの時とは違う。
 美琴は薄っぺらな学生鞄を手にしたまま大きく伸びをして空を仰ぎ、ようやく気持ちの整理をつけると、不意にカエルの鳴き声のような着信音を耳にして首をひねる。
 誰だろうこんな中途半端な時間に黒子かしらと怪訝そうな表情で携帯電話を取り出して開き、小さな画面に表示された番号と名前を見てひっくり返りそうになった。
(なっ、なっ、何で? あの馬鹿の番号もアドレスも全部きれいに消したはず!……何でアイツの名前がちゃんと表示されてんのよ?)
 そこで思い出した。
 美琴は先日、携帯電話の不意の故障に備え、一部の友人のアドレスデータを携帯電話内の個体識別用ICチップに移し替えていたのだ。当然『一部の友人』の中には上条の番号も入っていて、着信があった場合そこからもデータが照合されるからこそ、画面に上条の名前がそのまま表示されるのだ。
(私とした事が抜かったわ。こんな初歩的なミスをするなんて。……まぁいいわ。別れた男に対しても美琴さんは寛大ってところを見せてやろうじゃない)
 さっきまでの上条への心配はどこか遠くへ放り投げ、美琴は震える親指を着信ボタンに伸ばし、深呼吸して携帯電話を耳に当てる。
 あっちからよりを戻したいというのなら話は別だ。
「もしもーし、上条さんですよー。……御坂、頭は冷えたか?」
「ひ、ひ、冷えたって何がよ! 私はいつだって冷静よ!! それより、私達別れたんでしょ? アンタどの面下げて電話して来てんのよ!? 図々しいにもほどが……」
 別れた男に対しても寛大な美琴の沸点は意外と低かった。いつも通りな上条の声を耳にして、美琴は腹の底に力を込めて思い切り叫ぶ。
「じゃあ聞くけどよ、優秀なお前なら俺のアドレス消した後着信拒否くらいしたっておかしくねーのにさ、何でお前はこの電話に出たんだ? ……御坂、そこで回れ右してみろ」

249Ti_Amo.(15):2010/02/09(火) 07:24:49 ID:t5vs4Rlc
 美琴がおそるおそる後ろを振り返ると、ツンツン頭の少年が携帯電話を耳に当てて立っていた。何よこの少女漫画みたいな展開はと思っても、美琴の瞳は上条に釘付けのまま動かせない。
 会いたかった人が、誰よりも愛しい人がいつもと変わらぬ姿でそこにいる。それだけで美琴の両頬は何よりも赤く染まっていく。
 上条は片手で終話ボタンを押し、携帯電話をパチンと畳んでポケットにしまうと
「久しぶりだな」
 よう、と手を挙げてニカッと笑う。よく見るとその手には包帯が巻かれていた。
「ちっと用があって学園都市の外に出てたんだ。ついさっきまで入院してたんだけどやっと退院して久々に外に出てみたらお前の姿を見かけたんでな。いきなり声をかけても逃げられそうだったから電話でカマをかけてみたんだが、正解だった。怪我は完全に治ってねーから電撃も超電磁砲も今は勘弁してくれよ?」
「けっ、怪我!? アンタ私に黙って外にって、どこに行ってたのよ! 心配したんだからね! 連絡もよこさないし部屋に行ってもアンタいないし、ホントに心配……したんだから」
 意気込んだ美琴の言葉尻が徐々に細くなり聞き取れないほどの音量まで下がって、上条は耳をそばだてるのは面倒だと美琴のすぐそばに並んだ。
「へーへー。ま、その話は後でするとしてだ。ただいま、御坂」
「お、お、おか……お帰り。……あの、さ」
「何だ?」
 上条のいつもと何も変わらない、何の遠慮もない笑顔に負けた。
 上条の反応の薄さに美琴は救われた気になった。きっと上条は、美琴が別れを切り出した事もさして気にも止めていないのだろう。
 彼にとっては、いつもの美琴のわがままが始まったかと、ほんの少し肩をすくめる程度で。
 上条当麻はこういう少年だから、御坂美琴はごめんもありがとうも素直に言える。
 向かい合っているのに心が楽になる。
 美琴はプライドを捨てて、今伝えたい言葉だけを選ぶ。
「『別れよっか』って話。……撤回しても良い?」
 美琴は小さな声でそれだけを絞り出す。
「お前がそうしたいんならそれで良いぞ、俺は」
「アンタはそれで良いの?」
「……って言われてもな。お前はお前のやりたい事をやってる時がいちばんいい顔してるからな。俺はそう言うお前が良いから付き合うのをオッケーしたんだ。お前だって『俺で良いのか?』って聞いた時、良いって言ったじゃねえか。それに何の問題があるんだよ? それって別れる必要あんのか?」
 わかったか? と上条は美琴を軽く小突いた。
 美琴は小突かれた頭を『痛いじゃない』と両手で押さえながら、小さくため息をつく。
 上条は美琴の理想とは程遠い、最低の恋人だ。
 下の名前で美琴を呼んでくれない。シャンプーを変えても気がつかない。愛想はないし人前で手をつないでくれないしゲコ太とケロヨンを一括りで『カエル』扱いする。メールを送れば三行以上の文章で返ってくることはないし長電話にも付き合ってくれない。
 それでも結局は惚れたもの負け。
 御坂美琴は、そんな上条当麻に恋しているから。
 上条の反応が薄いのは仕方ない。それについてはもうあきらめた。
 美琴がやりたい事をやっている時が好きだというなら、美琴がどれだけ上条を好きなのか教えよう。そうすればこの少年はもっともっと美琴を好きになってくれるだろうから。
 もう一度上条に、真っ直ぐなこの想いを伝えよう。
 それは二人で笑って明日も一緒に歩くための、小さくてとても大事な。

250Ti_Amo.(16):2010/02/09(火) 07:25:42 ID:t5vs4Rlc
「ねぇ。……私と付き合って」
「良いけど遠くは勘弁な。上条さんこれから晩飯のお米研がなくちゃなんないから」
「そんなの私がやったげるわよ。私はアンタの彼女なんだから」
「門限までには帰れよ?」
「わかってるわよそんなの」
 何かを言いかけてはは口ごもる美琴を『もう何も言わなくて良いから』と、上条がおずおずと抱きしめる。ようやく恋人らしく抱きしめてもらえたような、心がはちきれそうに苦しくなる思いで美琴は上条の胸元に顔を埋めた。ここが美琴の居場所だと上条にもはっきりわかるように、美琴は上条をきつく抱きしめて離さない。
 強く押し当てた美琴の耳に、上条の確かな心音が聞こえる。美琴にはそれが、美琴の心のドアを叩く運命の音に思えた。
 何よりも愛しい音。上条以外には、自分だけが一番近くで聞いてもいい音。
(神様。誰よりも大事にします。だからコイツを、私にください)
 美琴は心の中でこっそり誰かに願うと上条を見上げ、顎を心持ち突き出した姿勢で目を閉じた。
 美琴の頬に、途惑うように上条の掌が触れる。そこから太い指先がこめかみの方にずり上がり
(あれ? ……私何か間違えた? この場合普通キスが……)
 前髪をぎこちない手つきでかきわけられて、冷えた夕暮れ時の空気と熱を持った上条の唇が美琴の額に軽く触れた。
「……テメェ、思わせぶりな態度取りやがって。危うく人前でとんでもないことするとこだったぞ?」
 美琴がそっと目を開けると、滅多に見ることのない真っ赤な顔をした上条がいた。
「お前ここをどこだと思ってんだ。白井にバレても知らねえからな?」
 美琴は上条の腕の中から顔を上げ、左右を見回す。
 ここは上条と罰ゲームの時にやってきたあの地下街の近辺だ。周囲には美琴達と同じくらいの年格好の学生やもう少し上の世代の若者、つまり学園都市の平均的な年齢層が五メートルくらい引いて円を作るように取り巻いている。それはすなわちつまり衆人環視のど真ん中で今のバカップルっぽく抱き合う美琴と上条の一部始終を今ここにいる全ての人に見られたというより見せつけて
「あ、あはは」
 上条の腕の中で美琴の顔の筋肉が不自然に引きつっていく。
「…………あはは、あははは……お騒がせしましたーっ!」
 美琴はヤケクソ気味に泣き笑いしながら上条の手を掴んでその場を逃れるように走り出した。

251Ti_Amo.(17):2010/02/09(火) 07:26:28 ID:t5vs4Rlc
 美琴は上条の手を掴んだまま、上条の寮へ続く道をてくてくと歩いていた。
 上条の空いた手にはスーパーの袋が握られている。中身は野菜、卵などの食材が二人分。寮に戻っても夕食の時間に間に合わない美琴は
「お米研ぐついでにご飯も作ったげる。一人分も二人分も同じだから良いわよね?」
 上条にとある条件を持ちかけた。
 彼の部屋でご飯作るなんて、何かこれって彼女っぽくって良いわねとこっそり笑いながら、美琴は思う。
 美琴が思う『恋人らしさ』を上条に期待するのはもう止めよう。自分から上条を引っ張り回そう。
 美琴はこれからもずっと上条に恋をする。し続ける。
 限りなく片思いに近い、それは美琴一人だけが胸に抱き続ける極上の愉悦。
 恋人の手を握りしめて
「アンタにはいっぱい聞きたい事があんのよ。したい話もね。そう言う事で今夜はアンタんちに泊まるわよ?」
 美琴はこのとてつもなく反応の薄い男に宣戦布告した。
「この間の今日なんだからダメに決まってんだろが」
「私はアンタの彼女なんだから良いじゃない! 二週間ぶりに会えたんだから一緒にいたいっていう私の気持ちくらい理解しなさいよっ!」
「俺達その間別れてませんでしたっけ? しかもお前の宣言で」
「だーっ、その話はさっき撤回したんだからもう良いでしょ!」
 美琴はピタリと足を止め、
「……たくさん心配、したんだからさ。良いでしょ、それくらいは」
 白旗を揚げるべくぽつりと呟いた。
 上条は頭をガリガリとかいて
「まあ、『彼女』への説明責任ってのはあるだろうからな」
「あれ? ……『彼女』って」
 自分の顔と上条の顔を交互に指差す美琴に、上条はばつの悪そうな顔で応える。
「あのさ。お前が俺に特大ビンタかました事は覚えてるよな? ……頬に痣がくっきり残っちまったんで、次の日クラスのみんなに大笑いされてさ。そん時に話したんだよ。『彼女にぶたれた』って」
「…………つまり?」
「クラスのみんなは、俺に『彼女』がいるのを知ってる。何かフラグがどうのこうのとかワケのわかんない事を言ってた奴もいるけど、今度誰かに会ったらお前を『俺の彼女』って紹介して良いんだよな?」
 良いよな? と念押しする上条に
「うん」
 美琴は上条とつないだ手をギュッと強く握りしめた。
「でも俺んちに泊まるのはこれっきりだぞ? 完全寄宿制の寮生活で無断外泊はまずいって。しかも男の部屋に泊まるだなんて何考えてんだよ?」
「だ・か・ら! 私は彼女なんだから『彼氏』の部屋に泊まったって良いじゃない!」
「テメェ自分の歳考えろ歳! 俺を犯罪者にしたいのか!?」
 ……上条の反応が薄い理由が見えたような気がする。
 上条は中学生だ歳が何だと振りかざしては美琴を遠ざけたがるけれど、彼は少々わかりにくい方法で『彼』なりに美琴を思いやってくれる。そんな上条が美琴を『彼女』と認めて、友達に話してくれた事が何よりも嬉しい。
 美琴は緩む頬をうつむき気味に隠して上条の手のぬくもりを確認する。
(こうやって手をつないで一緒の部屋に帰れんだから幸せよね。こんなので喜んじゃうんだから安いなぁ、私)
 二人は恋人同士。それでいい。

252Ti_Amo.(18):2010/02/09(火) 07:27:30 ID:t5vs4Rlc
「えーっとさ、その、あれ……痛かったわよね?」
 食事も終わってTVでもつけようかと上条がリモコンに手を伸ばしたところで、美琴は上条の向かいにしおらしく正座し、上条の左頬を労るように手を添えた。頭に血が上っての行動とはいえ、水平に振り抜いた美琴の手には衝撃がほとんど残らなかった。ピンポイントで正確に振り抜いた打撃はインパクトの瞬間手応えを感じないと言うが、あれは美琴の経験でも一度か二度あるかないかと言うくらいのクリーンヒットだ。
 その数えるほどしかない美琴のクリーンヒットを過去未来に渡り全弾受け止めた上条は
「……痛かったのは殴られた事よりむしろ手跡の方だな。三日間は消えなかったぞ、あの手形」
 自分の左頬を人差し指一本で指差し、ジト目で美琴を睨んだ。
 上条の非難するような視線に見つめられて美琴はうっ、と言葉に詰まる。
「わ……悪かったわね」
 美琴はようやく小声で答えると、誰も見ていないのに左右をキョロキョロと見渡した後、両手を上条の肩について体を上条の方にもたれかけると、上条の左頬から痛みを優しく吸い取るように口づけた。たっぷり一〇秒間はそうしてから上条の首に両腕を巻き付け
「……ごめん」
 上条の耳元で、上条にだけ聞こえるように小さくささやいた。
「いろいろと、馬鹿だった。私」
「馬鹿っつーか、単に先走りすぎなんじゃねーの? お前が言う『恋人の会話』とか『彼氏彼女』ってのが何なのか俺にはわからないけど、俺達は俺達で良いだろ? がちがちのテンプレートみたいな真似しなくったってさ」
「うん」
「初めてできた彼女が中学生っていうのにはちっと抵抗あったけど、よく考えりゃお前とはそれ以前から付き合いあったしな。そう考えたら気が楽になったぜ」
「私なんか年上の彼氏よ? 流行についていけない彼氏なんてカッコ悪いわよ」
「テメェの流行ってのはあれか、あのカエルか?」
「カエルじゃないわよゲコ太よ! 何遍言ったらわかんのよ! いい加減覚えろこのド馬鹿!!」
「はいはいわーったよ。……ああそうだ、泊まんのはいいけど、人の布団に潜り込んで背中にしがみついて泣くのは止めてくれな。あれホントに心臓に悪りぃから」
「うん……へっ?」
 上条の言葉に、美琴がキョトンとして顔を上げる。
「前にお前がうちに泊まった時な。たぶん、お前が水飲むのに夜起きた後だと思うんだけどさ、いきなり俺の布団に潜り込んで、俺の後ろでびーびー泣きながら寝てたんだよ。最初、『男の布団に忍び込んでくるなんて何考えてやがる』と思ってすげーびっくりした」
 寝ぼけてるとはいえあれはひでえよ、と上条は肩をすくめる。
「……あれ?」
 頬に涙の跡が残ってたのはそういう事だったのか。
「そ、それも悪かったわね……って、だったらその場で起こしなさいよ! 泣きながら寝てるなんて私まるで子供みたいじゃないのよっ!」
「いやお前子供だろ?」
 違うわよっ! と子供のように両手を振って上条をポカポカと叩く美琴を、上条は苦笑しながら抱きしめてその動きを止める。
 上条の腕の中で動きを封じられて、美琴は思う。
 誕生日は大きな花束とサプライズイベントで祝福して欲しいし、クリスマスには白い雪が降る中を二人で手をつないで歩きたい。一緒にゲコ太のイベントにも行きたい。頑張っておしゃれした時には『似合う』と褒めて欲しいし、こっそりリップの色を変えた時には誰よりも真っ先に気づいてくれたら嬉しい。恥ずかしい思いをしてお膳立てしたのだからごまかさずにキスして欲しい。
 気の利いた台詞なんて何一つ上条には期待できないけれど、美琴は上条を好きなのだから、今日よりも明日、明日よりも明後日。上条にはもっと美琴の事を好きになって欲しい。
「……愛してる」
 自分一人にだけ聞こえる小さい声ではっきりと。
 御坂美琴の誰よりも大事な世界でたった一人の恋人は、愛する人はここにいる。

253D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/09(火) 07:28:10 ID:t5vs4Rlc
 以上で終了です。
お邪魔しました。

254■■■■:2010/02/09(火) 07:31:10 ID:g1F9vNus
リアルタイムktkr!
D2氏GJです!

255■■■■:2010/02/09(火) 07:45:30 ID:2dKG4lcI
D2氏GJ。
しかしこの後は当然監視カメラを見ていた初春と佐天さんにひやかされる展開へと続くんですよね?

256■■■■:2010/02/09(火) 07:50:22 ID:zASp0.cY
なにこれ素晴らしい
最高でした

257桜並木:2010/02/09(火) 08:00:20 ID:WogEAyS6
DLさんおつです!時間がないのに、投稿が多くて読むほうも大変ですw
もう俺の生活を返してくれ パート4は10日で1000行きそうですねw

ps今私が書いている 未来からうちの子がやってきた なのですがちょっと時間がないので
  投稿時間の予約をしたいのですが、よろしいでしょうか?
  よろしければ木曜日の23:00から投稿したいと思います。結構な量になりそうなので、30分ほどは
  あけていただけると有難いです。それでは。

258■■■■:2010/02/09(火) 09:11:04 ID:d5jBeJ0w
>>253
GJ!です。D2氏の文章にはいつも引き込まれてしまって、時間を忘れるんだ。

>>257
祝日あけの仕事を控えて寝れないと・・・そうですか・・・期待

259■■■■:2010/02/09(火) 10:09:16 ID:wZOCWuzc
>>253
GJです!
いつも楽しみにしています。
ラブラブなその後も読んでみたいです!

260■■■■:2010/02/09(火) 10:44:05 ID:CMS84eKY
さすがのGJ!
ぐちゅな人としては、D2氏の作品をみると自分がいかに邪道か思い知らされるw

261■■■■:2010/02/09(火) 13:26:35 ID:H90HA4vQ
GJ!
もうダメっす。思春期頃の淡い想いに当てられて;
2828というよりも心がむずがゆいw

262■■■■:2010/02/09(火) 13:47:56 ID:bmgqgyLo
D2氏GJ
泣いた
泣きすぎて死んだ

263黒丸:2010/02/09(火) 15:20:23 ID:42YAwoTk
はじめましてー
3時半ぐらいから投下したいと思いますー

ではでは『Week』をどうぞよろしくー

264Week(1):2010/02/09(火) 15:30:31 ID:42YAwoTk
1日目


 とある日の朝、2人は走っていた。

「ちょっと待ちなさいよ!昨日のことで話が……」

「上条さんは遅刻しそうで、あなたと話をする暇はありません」

 今日はいつも通りの不幸があいまって、遅刻の一歩手前だった。
 そんな中御坂にでもかまっていたら絶対に遅刻してしまう。

「待ってって……、」

 御坂美琴の方はなぜ追ってくるのか、そんなことを考えようとしたとき、後ろのほうで地面を強く蹴ったような音がして……

「言ってんでしょうが無視すんなやこらーーーー!!!!」

 2ヶ月前のデジャヴだな、思いながら、後ろからタックルされた。

「なんでいきなりタックルするんですか!?私は遅刻寸前だとわかってこんなことをするんですか!!?」

「アンタはもう昨日のことを忘れたのか!!」

 そこで立ち上がりながら昨日のことを思い出す。昨日、御坂と何を話したのか。

265Week(2):2010/02/09(火) 15:32:47 ID:42YAwoTk
〜〜〜〜〜〜昨日の夕方〜〜〜〜〜〜

「なぁ御坂、おまえ電撃抑えるってことできないのか?」
「アンタが私をムカつかせるのが悪いんでしょ」
「おまえさぁ、子供じゃないんだから、ちょっとムカついただけで電撃ぶっ放すのやめろよ」
「人を子ども扱いすんな!!」ビリビリ
「おわぁああ!!だからそれが子供みたいなんだろ!」
「だったらどうすりゃいいのよ」
「そうだな……1週間ぐらい俺に電撃を使わないように頑張ってみたらどうだ?」
「なんか一方的なんだけど……」
「これならどうだ?『明日から一週間、俺に電撃を使わなかったら1日中なんでも言うこと聞く』ってのは、9月30日も有耶無耶になってることだし」
「あんたがうやむやにしたんでしょ。まぁいいわそれで、1日だけで我慢してあげる寛大な私に感謝しなさい」
「まぁ明日からだから今日は電撃使っても……ハッ!」
「そうね。明日から使えないんじゃ今日のうちに1週間分撃っとかなきゃね」
「しまったーーーー!!!不幸だーーーーーー!!!」バリバリドーン

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

266Week(3):2010/02/09(火) 15:33:57 ID:42YAwoTk
「そういえばそんなこともあったな、すまんあの後の電撃のせいで思い出せなかった」

 まさか覚えていてさらに守ってくれているとは、とは言えないが

「フン!まぁアンタも私も遅刻しそうだし、あとでメールで細かいルール決めるから」

 じゃあなんで追いかけてたんだよ、と言葉を出そうとする前に

「カミジョーちゃん!?なにをしているんですかー!!?」

 これもデジャヴですか。と2人同時に思った。横の車をみると、学園都市製合法ロリの子萌先生がいた。

「遅刻しそうなのに常盤台の人とラブラブしてる場合じゃないですよ!!??」

 勘違いも甚だしい。別にそんなことしてません。

「な、なにを言ってるんですか!!こんな馬鹿なんかとつ、付き合ってるだなんて……」

 勘違いもはなはだしい。そんなことも言ってません。

「それにしても、そちらの常盤台の方も急がなくて大丈夫なんですか?」

「そうだった!アンタ!約束忘れるんじゃないわよーーー!!」

 と言って走り去っていった。なぜだか隣の先生の光が鈍く光っていた気がした。

267Week(4):2010/02/09(火) 15:36:02 ID:42YAwoTk
 結局授業には遅れた。遅刻することは当たり前なのだが、子萌先生の車に乗ってきてしまったので、土御門と青髪ピアスあたりにボコボコにされた。
 それ以前に、子萌先生の車の中での説教の所為で精神的にも肉体的にも萎えた。(もっとも説教だと思っているのは上条の一方的な解釈なのだが)

〜〜〜〜〜〜車の中〜〜〜〜〜〜

「カミジョーちゃんが女たらしなのはわかっていましたが、まさか常盤台の人ともそんな風になってたとは……」
「あの〜、わたくし上条当麻はそんなやましい関係は一切持っていませんが」
「カミジョーちゃんはまったくわかってません!!女の子の気持ちにまったく気づかずに、どんどん新しい女の人を増やしていくからダメなんです!」
「そういわれましても、けっこう考えているのに、失敗してしまうんです」
「ならカミジョーちゃん、彼女はどういう人か教えてくれませんか?先生ならいろいろとアドバイスできますよ」
「え〜と、先生もよく知っていると思いますが、あれでもレベル5の第3位で常盤台のエース、超電磁砲の御坂美琴です」

「え?…………え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?」

「本当のことですハイ」
「え?本当なんですか!?凄いですよカミジョーちゃん!!まさか御坂美琴さんと仲がいいだなんて!!!」
「実際そんなに仲が良くありません。逆に嫌われ気味だと思うんですが……」
「あ〜〜。なるほどなるほど。カミジョーちゃん、もしかしてカミジョーちゃんは結構厳しい言葉を投げかけられているんじゃないですか?」
「なんで分かるんですか?」
「やっぱりですね。先生から言わせてもらうとですね。年頃の女の子は好きな男の子の前では素直になれずに厳しい言葉を投げかけるのが多いのです!だから御坂美琴さんも上条さんのことが好きだから厳しい態度をとるのです」
「御坂が俺のことを好き?いやいやそれはないですよ子萌先生」
(やっぱりカミジョーちゃんは鈍感なのですね。御坂さん、カミジョーちゃんのこと大変ですが頑張ってください。先生はどんな恋でも応援します!)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

268Week(5):2010/02/09(火) 15:36:56 ID:42YAwoTk
 その後のメールで決められたことをまとめると、

・1週間上条当麻に対して電撃を使わないこと
・もしそれができたなら1日中御坂美琴の言うことを聞くこと
・さらにその日、9月30日のようにいろいろな邪魔が入った場合はいくら言うことを聞いていてもまた別の日に1日中言うことを聞かなくてはならない
・明らかに上条以外に敵意がある電撃をした場合(例:黒子に対して)近くに上条当麻がいても約束を破ったことにならない
・漏電はアリらしい
・上条から『電気を出せ』などの挑発や命令をした場合はこの約束の範囲外であるとする
・これ以外のことはその場で話し合うこととする

ということになった。

269黒丸:2010/02/09(火) 15:39:35 ID:42YAwoTk
以上ですー

更新速度はめちゃくちゃ遅いですががんばってみますー

『Week』という名のとおり7日間ありますから結構長くなりますー

今のところいちゃいちゃしてませんが、これからすると思いますー

私の意図も大体2〜3日目ぐらいわかるとおもいますー

270とある実家の入浴剤:2010/02/09(火) 15:50:52 ID:66U/squM
GJ。
7日間ということはもしや上条さんの美琴のイベントが七回はあるということなのか……ゴクリ。


そして「Ti_Amo.」にもGJです。D2さんは文の雰囲気作りが上手いよなあ、といつも感心しております。
「夢色の幻想 It_couldn't_happen_here.」なんかが好きですw



さて、レス返。しかしいちいち返事をするのはウザかったりとかそんなことはないよね?
それと投下ミスすまんかったです。

>>237

>>ミスなんて気にならないくらいに面白いよ!

そう言っていただけるのは、嬉しいし気が楽だし励みにもなります。ありがとう。

>>238
その通り、看病編です。
始めの場面から打っておいた布石がようやく展開しました。
まあ、上条さんを倒れさすの決めたのはそれよりもうちょい後だけど。

>>239
こちらこそGJですぜ。
それにしてもこの婚姻届……美琴が絶対能力者になっていやがる……!

>>241
流れが速いし、忘れられないために。というのは建前で、
後への引きを作るのはなんだか快感なのですよ。

風呂についてはきちんと布石を打っておるさ……。
まあ美琴の心理描写を進ませすぎちゃって、そこまで差し障りなくいけるか
怪しいんですがね。ふう。

271■■■■:2010/02/09(火) 15:50:56 ID:Nc7PgruA
スパーgjでしたD2氏
次回作にも期待大です

272■■■■:2010/02/09(火) 15:54:36 ID:Y2OeeFVs
>>269
GJです これからも期待してます
しかし一つだけGJじゃないとこが・・・「小」萌先生ですからねっ!

273■■■■:2010/02/09(火) 17:17:13 ID:ExPXmWns
お久しぶりです。
私情により執筆が進まず、かれこれ2週間も間が空いてしまったのですが、
15分後ぐらいに「少女の奏でる旋律は」の続きを投稿させて頂きたいと思います。
消費は4レスを予定しております。

「遅すぎて忘れちゃったけど仕方ないから見てやんよ!」という方はお手数ですが、
2スレ目>>632-633および>>772-775
もしくは保管庫の投稿者別作品一覧より「2-631」に目を通して頂けると幸いです。

274少女の奏でる旋律は――(7):2010/02/09(火) 17:38:07 ID:ExPXmWns
「はぁ・・・」

上条当麻は木陰に一人、佇んでいた。
ぼーっと眺めるその視線の先には常盤台の学生寮。
なるべく意識しないようにしてここまで連れてきた当のお嬢様は今頃、部屋にケースを置いてきていることだろう。
さすがにあんなところを他の子に見られるのはまずかったようだ。
そしてもう一度、ため息をつく。

(――やれやれ、中学生相手に何をいちいち慌ててるんだか)

などと考えていると、

「ごめんね〜、お待たせ!」

言いながら美琴がこっちに走ってくるのに気づいた上条はハッとする。

「あ、ああ。おかえり」
「ん?どうかしたの?」
「な、なんでもありませんことよ!」
「・・・? ――まぁいいわ。早くご飯食べましょ!もうお腹ペコペコ〜」

いっくわよ〜 と美琴は手を挙げている。なんだかすごく楽しそうだ。
そんな彼女を見てるとなんだか上条は悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなった。

(ま、いっか)

自然と、笑みがこぼれる。

「――な〜にニヤけてんのよ?」
「なんでもね〜よ。 よっしいくぜ!上条さんももう腹が限界でしてよ〜」
「ちょ、ちょっと待ってってば!」

さっさと歩いていく上条の背中を美琴は慌てて追いかける。




「ま、お嬢様を食事に誘うのにこんな場所でいいのかなとは思ったんだけどさ」

二人が居るのはどこにでもある普通のファミリーレストランだった。

「よく考えたら御坂は普通に外でホットドッグ食ったりファーストフード店に入っていったりしてるから問題ないんだよな」

ビクッ! と美琴の肩が震えた。

「ホ、ホットドッグ・・・」
「ん、どうかしたか?」
「〜〜〜ッ! な、なんでもないわよ!」

あんなものは黒歴史だ、思い出すもんじゃないと美琴は一瞬脳裏に浮かんだあの失態を無理やり振り払い取り繕う。

「だ、だいたいそんなの偏見よ?黒子や初春さん――さっきの花飾りの子ね、あの子達とだってよくこういう所に来るもの。外でクレープ食べたりもするし」
「それもそうだよな、わりぃわりぃ」
「気にしてないわよ」

「――失礼致します。ご注文はお決まりでしょうか?」

気がつくとすぐ傍にウェイターが立っていた。上条はさっとメニューに目を通して、

「えーっと、じゃあハンバーグ定食で。 御坂は何食べたい?」
「うーんとそうね、それじゃナポリタンにしようかしら」
「かしこまりました」

ウェイターはもう一度確認を取ると、ごゆっくりどうぞ。 と言って下がっていった。

275少女の奏でる旋律は――(8):2010/02/09(火) 17:43:14 ID:ExPXmWns
二人はそのまましばらくウェイターを眺めていたが、ふと上条が思い出した風に、

「そ〜いや、御坂と二人で飯なんていつぞやの恋人ごっこ以来だっけ?」
「ッ?!そ、そそそんなこっぱずしいこと思い出さなくていいから!」

お冷を飲んでいるところだった美琴は危うく噴き出しそうになるが、無論上条に他意はない。

「いやぁ、タックルしてきたあとのお前のうろたえっぷりはなかなかお目に掛かれないものだったな」
「しょ、しょうがないじゃない!あのときはああするしか思いつかなかったんだから!」
「はいはい、まぁ今日はのんびりできそうじゃん」
「そりゃあ、あんなこと何度もあっちゃたまんないわよ。気づいたらケンカはじめてるのもいるし」
「はっはっは、男には拳と拳で語り合わなければいけないときがあるのだよ御坂さん」

そう言ってとぼける上条を美琴が睨みつける。

(――わけもわからず追いかけてたこっちの身にもなって欲しいもんだわ…)

そんな美琴の様子を見て上条は小さく笑い、

「冗談だよ、あんとき降ってくる鉄骨をずらしてくれたのはお前だろ? ありがとな」
「――アンタ、気づいてたの?」
「ああ、なにせ不幸だからな」

またコイツは笑えないことを、と突っ込みたくなる気持ちを美琴はなんとか抑える。
それに、詳しいことはわからないがあのケンカの原因は自分が関係していることは気づいていた。
しかも極め付けは思い出すだけで赤面してしまいそうなあの台詞。

「どうかしたのか?」
「なんでもないわよ」
「? まぁいいけど。そういやなんであのあと何も言わずに帰っちまったんだよ?」
「だ、だってアンタが――ッ」

アンタがあんなこと言うからでしょー! と言いそうになったのを美琴はかろうじて飲み込んだ。
上条は若干たじろいながらも、

「お、俺がなに?」
「〜〜〜ッ!!」

ボフッ と美琴が真っ赤になって固まる。

「あれ…?おーい、御坂さ〜ん」

上条は動かなくなってしまった美琴の目の前で手を振ったりしてみる。そのとき、

「お待たせいたしました〜」

すぐ横にウェイトレスの女の子が立っていた。どうやら料理をもってきたらしい。
丁寧な仕草でテーブルの上に料理を並べていく。

「あ、どうも〜。ほら御坂、冷めないうちに食べるぞ」
「はっ! そそそそそうね、いただきまーす!」

よくわからないが復活したらしいお嬢様は目の前の料理に取り掛かった。

276少女の奏でる旋律は――(9):2010/02/09(火) 17:48:15 ID:ExPXmWns

「でさ、そしたら黒子ったらね――」
「ハッ、そりゃアイツらしい――」

昼食を食べながら、二人は適当に雑談をしている。
性格上、問題を頻繁に振っているのは美琴の方で、上条は相づちを打っている。
一見、美琴ばかり喋っているようにも見えるがそんなこともなく、二人とも楽しそうである。

(ほんと、一時は悩んだりもしたけど全然コイツと喋れてるのよねー)

少年が記憶喪失であること。そして自分がそれに気づいてしまったこと。
そしてある事件がきっかけとなりそのことを少年に打ち明けたこと。
あのとき感情のままにぶつけた言葉のせいで、当時の美琴は今まで通りこの少年と付き合っていけるのかとても悩んでいたのだ。
思えばずいぶんと前の出来事なのだが、美琴としてはまだ最近のことのように感じられた。

(まぁ肝心なことは相変わらず教えてくれないんだけど。変に隠す素振りとかはなくなった気がするし、ちょっとはコイツとの距離が縮んだってことなのかなー)

そんなことを考えていると、上条がふいに顔をあげた。どうやら食事が済んだらしい。
美琴はぽけーっと上条を眺めていたため、思いっきり目が合ってしまった。

「なんだ?人の顔じーっと見て」
「へ?!あ、や、ぼーっとしてただけよ!あははは」

素早い動作でフォークを掴み、自分の皿に残っていた最後の一口をぱくっと食べる。
そして手をバチン!と大げさに合わせて、

「ごちそうさま〜!」
「ん、ごちそうさま」

上条も軽い調子で手を合わせる。どうやらごまかせたようだ。
美琴がホッと胸を降ろしていると、上条が話し掛けてきた。

「そういや御坂さ」
「うん?」
「なんか最近、ビリビリしてこなくなったよな」
「え?――ああ、そういえばそうかもね」
(・・・?)

一瞬、気になる表情を美琴が浮かべたように見えたが、上条は気のせいだろうと思いは特に追求しなかった。

「まぁ上条さんとしましてはその方がありがたいと言いますか、電撃撃たなきゃお前も可愛い女の子だしな」
「かッ、かわ?!」

不意に可愛いと言われ、美琴は思わず赤面してしまう。

「御坂、なんか顔が赤いけど熱でもあるのか?」
「ふぇ?!ぜぜぜ全然!超健康体よ!」

美琴は笑ってごまかすが、さっきの言葉が何度も蘇る。

(そっか。コイツから見て、私は可愛い部類に入るんだ。ふふっ)

などとこっそり喜んでいると、

「えーっと、御坂さん。大変申し上げにくいのですが…」
「な、なによ?」

上条は美琴の周りを指差して、

「また、バチバチいってます」
「へ? ――うわわわわわ!み、右手!右手貸して!」

言うが早いか、ちょうど前に出されていた上条の右手を両手で掴み取る。
瞬間、周囲に跳ね回っていた電気が消滅する。
対能力仕様なのかはわからないが、奇跡的にレストランの備品が焦げたりはしなくて済んだようだ。

277少女の奏でる旋律は――(10):2010/02/09(火) 17:52:55 ID:ExPXmWns
「あ、危なかった・・・」
「ビリビリしなくなったのはいいけど、なんかよく漏電するようになったよな」
「うう・・・」
「まぁ気にすんなよ、そのうち元に戻るだろ」
「そう、ね。ごめん、ちょっとこの体勢じゃしんどいからそっち行くね」

そう言って、右手を掴んだままちょこんと上条の隣に腰掛ける。
ふと美琴が顔を上げると至近距離に上条の顔があった。
美琴は勢いよく下を向き、深呼吸をする。顔も真っ赤になっていた。

(ち、近すぎ!自分で行くって言っといてなんだけど近すぎ!!)

もう一度そーっと顔を上げると上条と目が合った。

「あん?」
「な、なんでもない・・・」
「? 変なヤツ」

少年はそんなことを言ってガラス越しに外の景色をぼけーっと眺めている。
年頃の女の子がすぐ近くにいるというのに全く気にしていない彼のそんな様子に、美琴は心中でため息をつき、

(いくらなんでも、もう少し意識してくれたっていいと思うんだけどなー)

なんとなくジロりと睨んでみるが、気づく様子はない。

(あーあ、なんか一人であたふたしてるのもアホらしくなってきたわ)

ストン、と美琴の体が脱力し、そのまま上条の肩にもたれかかる。
正直、漏電騒ぎなどのドタバタもあって少し疲労していた。この鈍感男にはこれぐらいしてもらっても罰は当たるまい。

(ここ、あったかいな・・・。なん――か、安心――す――――・・・・・)

一方で、いきなりもたれかかられた上条は面食らっていた。慌てて美琴に声をかける。

「な、みみ、御坂さん?!」

しかし返事はなく、返ってきたのはスゥー という可愛らしい寝息のみである。
眠ってしまった彼女を見て、上条は深くため息をついた。

「全くコイツは・・・。もうちょっと警戒心を持って欲しいもんですよ」

実際のところ、意識していないなどと言うのは美琴の思い込みだ。上条だって年頃の男の子である。
外の景色を見ていたことにしても、女の子が間近にいるという状況に対応できなかった故の、ただの照れ隠しである。
それに美琴自身は自覚していないが、いくら中学生とはいえ、はたから見て彼女はなかなかの美少女なのだからなおさらだ。

(まぁこうして無防備に眠れる程度には信頼されてるってことなんだろうけど、男としては複雑だな)

そんなことを考えていると、食器を下げに来たのか、こちらに向かって歩いてくる中年のウェイターと目が合った。
上条は苦笑いを浮かべたが、ウェイターは眠っている美琴を見て少し目を丸くしつつも、特に気にした様子はなかった。

「もうピークの時間は過ぎてるから、まだゆっくりしていってくれて構わないよ。君の彼女を起こすのも忍びない」
「すみません、ありがとうございます」

中年のウェイターは優しく微笑み、静かに食器を回収して戻っていった。長くこの店で働いているのだろうか。

(彼女、か・・・。はたから見ればそんな風に見えたりするんだろうな・・・って何考えてるんだ、変だぞ今日の俺!)

妙な思考をした頭を抱えつつ、主な原因である隣の少女の方をチラっと見る。
美琴は相変わらずぐっすり眠っている。それにしても本当に気持ちよさそうだ。

「まったく、困ったお姫様だよ」

上条は小さく笑う。今日はなんだかこんなことばかりだ。

278■■■■:2010/02/09(火) 17:55:48 ID:ExPXmWns
以上、キリがよいので今回はここまでになります。大変遅くなってしまい申し訳ないです。
次回は早めに投稿できると思います。少し、毛色の変わった話になる予定です。

読んでくださってありがとうございました。

279■■■■:2010/02/09(火) 18:11:24 ID:d5jBeJ0w
>>278
GJ!!!
今後の展開が気になります。

280桜並木:2010/02/09(火) 18:38:14 ID:WogEAyS6
GJ!!!乙です!!!!読んでいて表現のしかたとかが参考になります!!

それと確認なのですが、木曜の23:00から23:30明けてもらっておいでしょうか?
だめならなるべく早めに言っていただけるとありがたいです。

281■■■■:2010/02/09(火) 18:57:14 ID:3FTf9cA2
>>280さん
事前に誰も宣言してなければ、良いと想いますが
あまり先の予約すると投稿しにくい環境になるので
前日か前々日に宣言してはどうでしょう?

282■■■■:2010/02/09(火) 19:47:44 ID:t5vs4Rlc
>>280
投稿時間の管理とかは誰もしていないと思うので、時間を長めにとって投下宣言するより
できたら一呼吸置いて、それから投下するのが良いんじゃないかなと思います。
その前後に誰かが落とさないと限ったわけでもないですしね。

何はともあれ、SSの完成を待っているんだよ!

そしてすべての職人さんにGJ!

283■■■■:2010/02/09(火) 19:50:59 ID:hWaFnehs
桜並木氏、>>281
投下宣言は、実際に投下する10分くらい前のほうが良いかと。
私を含め皆さんそうされてますし、あまりに早く予告されると他の方が困るので。
(投下し難くなったり、予約を知らずに別の人が投下する可能性があります)

内容としては、
---------------

  「タイトル」

・注意事項 (キャラ崩壊注意 など)
・投下時間 (12時35分より投下 など)
・消費予定 (4レスほど消費 など。わかる場合のみ推薦)

--------------
のような感じで、投下後には必ず投下終了宣言ですね。

284桜並木:2010/02/09(火) 20:07:52 ID:WogEAyS6
アドバイス有難いのですが、まだ完成していなくその日を逃すと5,6日投稿できなくなってしまいそうなのです・・・。できれば時間の予約をしたいと思っていったしだいなのですが・・・。わかりました
皆様の言うとおりに投稿したいと思います。

285■■■■:2010/02/09(火) 20:27:55 ID:3FTf9cA2
>>283
3スレか2スレでも同様の質問を見かけて答えてしまい申し訳ない

286■■■■:2010/02/09(火) 20:29:18 ID:isfexXf.
みなさんGJです。もうそろそろ300とか早すぎw

最近勉強優先にしてて全然書けません>< 
時間作ってちょくちょく書いていきます。でもここ人多いし別に(ry

287■■■■:2010/02/09(火) 20:52:42 ID:3FTf9cA2
>>286
勉強は大事ですからね
その勉強も創作等にも生かされますので、そういうポジティプに考えると
自ずと勉学も覚えやすくなりますよ〜

人が多くて書き手が多いのは良いですよね、作品投稿楽しみにしておりますよ〜

288■■■■:2010/02/09(火) 21:00:17 ID:Q3sbHLQM
と言うか投下時刻なんて予約する必要無いし自分の都合に合わせてやればいいでしょ
それ以前にこのスレは馴れ合いと言うか自己主張の激しい人が多いみたいで見ていて気分が良いものじゃ無いね
100レスぐらいしか読んでないからはっきりとは言えないけど投下時以外にコテ付けてる人が居るからなのかな
今は纏める時に便利だって言う付加もあるけど元々コテやらトリップやらは複数同時投下の時に見分けることが出来る様に付けてた節があるし
>作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
この辺りも原因なのかなと
>読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
馬鹿みたいにGJGJと連呼しても何も向上しないしそれなら若干キツくても意見を言った方が良いんじゃないかな
後はスレと何の関係も無い事を書き込んでレス数を奪ったりとかは止めた方が良いと思う
宣言とかも「半日後に投下します」「一時間後に投下します」「済みませんもう少し掛かりそうです」「できました今から投下します」みたいに何度もするのはスマートじゃ無いでしょ
期待してるよみたいなレスが欲しいのかも知れないけど本当に直前だけで充分だと思う
まだまだ言いたい事はあるんだけどこれ以上続けると荒らし認定されそうだしと言うか今の時点で充分認定されそうだねおぉこわいこわい
このスレの進行速度を考えれば既に10レスぐらいは進んでいておかしくないし実にその通りだったから最後に小ネタでも投下して逃げるようにしよう
と言うか小ネタすらも投下しないでこんな事を書いていたらスレ違いで立派な荒らしだし纏めないでねお願いだから行数制限調べるためだし

「……ねぇ当麻、今どんな気持ち?」
 美琴は自分の膝の上で気持ち良さそうに眠っている上条に話しかける。
 勿論、眠っている人間に話しかけた所で返事などある訳が無く、返ってくるのは規則正しい寝息と偶に出る大きないびきだけ。
 上条と美琴が交際を始めて早半年が経過した。季節は始まりの春。付き合い始めた当初は顔を合わせただけで能力が暴発していた美琴だったが、今では随分と落ち着いた。
 とは言え、それでも恥ずかしいものは恥ずかしく、手を繋いだりすると再び能力が暴走してしまう。しかし、それは上条の右手を握る事で簡単に解決した。
 羞恥心もある一定のラインを超えると無くなると言う悟りのようなもの。……では無く、単純に彼の右手に宿る能力のおかげである。
 幻想殺し。異能の力を打ち消す異能。美琴の電撃はおろかレールガンまでもを無効化し、彼自身の言葉を信じるならば神の奇跡までもを打ち消す事が出来るらしい。
 そして、美琴は一度だけこの右手に救われた。忘れもしないあの夏。死を覚悟した美琴を上条は救い出したのだ。さながらヒーローの様に。
 否、美琴一人だけでは無い。10000人近くの『妹達』。その全ての命を彼は右手一本で助け出したのだ。あの出来事があったからこそ美琴は今こうして上条の隣に居られる。
 それから幾ヶ月もの時間が過ぎた。
 その間にも上条は誰かを助けるために大きな争いに首を突っ込んで、そして毎回大怪我をして病院に運び込まれるのだ。美琴としては気が気じゃ無いのだが、上条自身の意思を尊重し、幸いにも学園都市には優秀な医者が居るため無理に止める事は無かった。
 止められる訳が無い。自身の恋愛感情を自覚した日、あの日に語られた言葉を覚えているから。だから美琴は上条の隣に立つ事を決心し、上条が帰って来る事が出来る場所を用意しているのだ。そうやって作り上げた日常に、美琴は割合満足していた。
 だが、しかし。
(未だにキスもしてないのよね……)
 付き合ってから気付いたことなのだが、上条は日常的にラッキースケベな体験をする癖に、自分から動くことを滅多にしないのだ。精々手を差し出したり腕を組んだりが限度で、見た目とは裏腹にかなり奥手なのである。しかも行動の節々に美琴を傷付けないようにと言う意思が見られるため怒る事も出来ない。
 勿論美琴も上条以上に恥ずかしがりで奥手なので、指摘する事も行動に起こす事も出来ない。結果、昨今の若者に有るまじきプラトニックな交際が続いているのである。親からすると安心するもののどこか物足りない感じで、応援すれば良いのか胸を撫で下ろせば良いのかさっぱり判らな(バイト数の関係により中略。突発的にやるもんじゃないね)


 ブチッと言う、何かを突き破ったような嫌な音が聞こえた。
 直後、
「――ぎゃァァああああああああああああああああああああああああああァァああああああああああああ!!!!!?」
 先程まで眠っていたはずの上条が目を見開き、いびきを掻いていた喉から獣の断末魔の様な叫び声を上げた。

289■■■■:2010/02/09(火) 21:29:06 ID:PpNpoQlQ
GJ!!2828がとまらない

290■■■■:2010/02/09(火) 21:34:40 ID:7vSFBwdg
>>288
ツンデレ投下乙

さぁ中略部分と続きを投下するんだ

291■■■■:2010/02/09(火) 21:44:31 ID:VfomH1LU
>>288
そんなに真剣にならなくてもいいと思います。基本マターリ進行なので。
あとこのスレは向上は目的ではないですよ。上条と美琴のイチャイチャが真の目的なのでそこは間違えてほしくないかと。
まあ、そんなことより続きを・・・ってあれ?この話はもしかしてR-、ゲフンゲフン!!
いや、もう色々とごめんない。

しかし、このスレ稼動し始めて3日しかたってないのにもう300レス間近だと・・・!?
皆さんGJです。

292■■■■:2010/02/09(火) 21:51:20 ID:z.UpZ3N6
>>288
美琴……一体ナニをした……?

293■■■■:2010/02/09(火) 22:26:17 ID:DYjsF5ZE
GJ!!!

2941-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/02/09(火) 23:15:38 ID:i8xlzByg
>>288
行数制限無いみたい
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1263558108/6

295■■■■:2010/02/09(火) 23:35:34 ID:/LXEHBo.
乙ー
テンプレ書いときますね

296■■■■:2010/02/10(水) 00:00:00 ID:j.OcydF6
>>288
どうせなら「100レス」を「100スレ」って言っとけばすごいツンデレに慣れたというのに……。
自己主張云々は耳に痛いなあ……気を付けよっと。

ともあれGJです。間に何があったか気になります。



せっかくだから「意見言いたがり―」な俺は釣られて意見をしてみるぜ!!

さらっと読んだところ、語っていることの時間関係が把握しづらいです。
これは冒頭で半年と書いておきながらすぐに過去の話に飛んで、「それから幾ヶ月」に
繋げているところに問題がありそう。
「もう半年が過ぎて、今から4か月前の話だけどそこから3か月過ぎて」と話されたら
ちょっと理解が遅くなってしまう、ということっすな。

解決策としては、話の構造を大まかに変えること。
あるいは過去の情報を抑える。そうすれば「ある話題の時点」を
大きく転換することなしに話を進めることも可能だと思います。

もひとつ。上にもちょっと挙げましたが、過去の情報が多い。
付け加えて言うなら、そこに美琴の感慨が少ない。
ラノベを読んでてもおさらい的に一巻の内容を語ったりすることがあるけども
あくまでそれはおさらいということを念頭に書いた方がすっきりすると思う。


まあ、突発的に書いたものにそんなん言ってもしゃあないかも。
失礼いたしました〜。

297■■■■:2010/02/10(水) 00:45:16 ID:wgB87Xdw
>>288
意見云々のお話は、過度でなければ言うこと自体はきっといいんだと思います。
というわけで、じゃんじゃん言っちゃってもいいかと。
まあ、いきなり言われても意見はないんですけど。
多分、そのくらいでは荒らし呼ばわりはされないと思います。
とりあえず間と美琴が何をしたのかが気になっちゃうぜ。

>>296
と、投下した時間がジャストだと……!

298ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/10(水) 01:35:59 ID:ogutFeQ2
人が居ないようなので>>18の続きです。

タイトルは「とある子猫な超電磁砲(レールガン)」でお願いします。
注意事項
・体質はネコです
(見える範囲はネコ耳に尻尾が生えてるだけという設定)
・超電磁砲は使いません。というより使えません

その他目立つ誤字等ががありましたら遠慮せずにご指摘お願いします。
今回もこの案を提供してくれた方と読んでくれる方に感謝します

2レス消費です。投稿開始は1:40〜

299ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/10(水) 01:42:07 ID:ogutFeQ2
「外に出たのは良いけど、どこ行くんだ?」
 無計画中の無計画でなんとなく家を飛び出した、そんな二人に目的も計画もあったもんではない。
 上条に至ってはこの姿の美琴を他の誰かに目撃されたらどう説明しようか考えている。どうやら見つかる事前提で考えているらしい。
 しかし上条が全くの無計画だったせいか、天候は悪くならない、引き続き心地いい日差しが降り注いでいる。

「どこ行きましょっか? この姿でしか体験出来にゃい場所に行ってみたいわね」
 美琴はというと姿以外はいつもの調子である、気持ちを切り替えて“今の姿”で楽しむ事を考えている。

「んじゃ、ペットショップとか、ペット同伴でしか入れない喫茶店とか? でも姿見られちゃマズイってのに…」
「ペットって何よ! 私だってにゃりたくてにゃったわけじゃないんだからねっ!」
「耳が生えてるからある程度ならごまかせるかも…髪の色もそれっぽいし。仕方ねぇ、ブラブラしてるくらいなら行ってみっか」

 行きたい場所が決まっていると気持ちに余裕が出来るので少し遠回りし散歩をしながら進むことにした。
 だがこれが不幸へのルート、気持ちに余裕は持っても緩めてはダメなのだ。しかし上条は緩めていた、というより癒されていた。
 そしてちょっとだけ自然の多いルートを選び進む。

「♪〜♪〜」
「随分とご機嫌ね」
「いや〜オマエと居ると癒されるわ、多分ネコ効果だと思うけどな」
「にゃ、にゃによそれ!」
「それだよそれ!」
「にゃ?」

 美琴は首をかしげる、正直意識していないと自分でも気付けない。時々「にゃ」という言葉が入ってしまうのだ。
 上条はそれが良いらしく、もっとやれと言わんばかりに笑っている。心からリラックスしている雰囲気。だがそれをぶち壊したのは…。

「カミや〜〜〜〜〜ん!」
「ゲ…」

 誰かが走ってくる、というにはもう人物がハッキリしすぎている「青髪ピアス」と「土御門」
 これを見て上条がヤバイと思ったのは言うまでもない、特にこの二人は…と思っていた人物が二人一緒に登場するという最悪のパターン

「(み、御坂、オマエはネコだもし見つかっても「にゃ〜」以外は喋らなくて良い、取り敢えずここは乗り切らないとマズイ)」
「(わ、分かったわ…「にゃ〜」よね「にゃ〜」)」
 上条は小声で美琴にここはやり過ごす意思を伝えた、ハナから演技力なんざ期待しちゃいないというのが本音なのだが。

「奇遇やな〜カミやん」
「にゃ、にゃ〜」
「ん? 今“何か”の鳴き声がしたぜよ」
 フライングにも程がある、存在を知られずにやり過ごす方法が一番だと考えていた上条は心の中で頭を抱える。
「あ、ああちょっとな〜ネコを預かってる」
「でもネコにしちゃハッキリと「にゃ〜」って言いすぎじゃなかったかにゃー?」
「他に何の生き物が居るってんだよ!」
「人間がネコに変身した!という可能性も考えられるでぇ〜」
「(こいつら無駄に鋭い…)あ〜もう何だって良いだろ! じゃ急いでるからこの辺で…」
 そうはさせん!と言わんばかりに青髪ピアスが上条の肩を後ろからガッチリ掴む、少しでも“前”を見られたら存在がバレる。

「え、えーっと…」
「カミやん……」
「(や、ヤバイ!)」
「……小萌ちゃんをあんまり泣かせんといてな〜」
「へ…? は、はい」
 緊張の糸が切れたせいで一気に上条の表情が緩む、この顔を誰かが見たらきっと誘われて笑ってしまうに違いない。
 しかしその顔を下からではあるがしっかりと見ていた“モノ”が居た。そう美琴である。
「にゃは…っ!?」
「…今笑い声が確かに聞こえたぜい」
「…明らかに人の声やったなぁ」
「……、ふ、不幸だぁーーーーーー!!!!」
「胸に何が居てるのか確認しまっせ〜」
「待てい!カミやん!」
「(ふ、不幸ね…)」

 その後一時間に及ぶ追いかけっこの末、上条は向こうを諦めさせる事に成功…決して逃げ切ったワケではない。
 そう…あの二人には嫌でも会う事になる、言葉通り本当にその場しのぎでしかなかったのだ。

300ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/10(水) 01:43:19 ID:ogutFeQ2
「ハァ…ハァ…アイツら…」
「あ、アンタは大丈夫にゃの!?」
「……これくらいならどうってことないぜ」
 そして一息置いた後、上条は美琴に謝らなければならないことに気付いた。
 気温関係なく人間ある程度の時間を動き続ければ当然汗もかいてしまう。
 そう…今学園都市のとある場所でヌレヌレムレムレの男女二人が密着しているのだ。
「……オマエも大丈夫か? 長い時間揺られてたんだから気分が悪いなら言えよ」
 
 この一言で美琴もとある事に気付いた、ネコは性質上汗はかかない。だが自分はヌレヌレのムレムレである事。
 そして自分以外の汗であることも同時に明らかになった、そうなると相手は一人しかいなくなるという事。

「(こ、これがコイツの匂い…じゃにゃくて!! は、早くどうにかしないと…そ、そうだわ!)」
 美琴は自分が小さくなってしまった時に、携帯と財布、そしてレールガンを撃つのに利用するコインは小さくならずにその場に…
 という事は運が良ければまだ残っているはず。そうすればこの場はもちろん、心配している人間に連絡することも可能。

「今すぐダッシュ!」
「え・・・どういう事でしょうか?」
「こんくらいにゃらどうってことにゃいんでしょ? じゃ今すぐ走りにゃさい!」
「……俺から体力をとったら何も残らないってのに…不幸だ」

 上条はひたすらに走る、美琴はちょこっと顔を出しルートを指示する。
 日が暮れる前までに終わらせたいので精々持って二時間だろう、それ以降の捜索は困難。
 こうして二人の美琴のオ・ト・シ・モ・ノ探しが始まった―――

その頃
「あいさ!今日はここに泊まる!」
「え?」
「(二人の邪魔は絶対にしないんだよ)」
 インデックスがここまでするのには理由があった、美琴を元の姿に戻すには一つ簡単な行為をすればいいだけ。
 だけどそれは非常に重い事を知っている、なのでその環境を作り上げる為に最低限の協力をしている。今夜インデックスは家に戻らない―――

301ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/10(水) 01:44:29 ID:ogutFeQ2
今回は少し間隔を開けて投稿したので忘れてしまった方もいるかもしれません。
というより他作者様のSSを読むのに時間が掛かり書けなかったというのもあるんですが…。

今後はキャラの心境やその他周りの風景を出来るだけ文字で伝えられるように努力したいと思います。
ここまで読んで頂きありがとうございます、次回もよろしくお願いします。

(とあるアニメのコメンタリーの方はこちらが完結してから書き進めたいと思います)
最後にwiki編集者様、自分の名前を作者別一覧の中に入れていただき感謝します。

302■■■■:2010/02/10(水) 02:02:53 ID:opfnUPXY
ヤシの実さんGJ!!

ですが、もう少し溜めたほうが読み手としてはうれしいです!

303Ж:2010/02/10(水) 03:17:16 ID:xqlnTHLQ
えっと、初投稿です。
なにかと、おかしいところがあると思いますが
どうぞよろしくお願いします。

304Ж:2010/02/10(水) 03:18:25 ID:xqlnTHLQ
―ビリビリチョコレートアタック―

2月10日
PM3:47

「う〜ん。」

御坂美琴は悩んでいた。
それもこれもアイツが悪い。昨日いきなりあんなこと言われるなんて…

「お〜い!ビリビリ〜!」
「だ〜か〜ら〜アンタは私にケンカ売ってんのか!!」

ガッシャーンと電撃が上条にむけて放たれる。
そして難なく無効化される。

「だからお前、街中でビリビリはやめろって。」
「フンッ。私の事をビリビリって言うからでしょうが!
それに電撃どうせ喰らってないから良いじゃない。」
「お前…そういう問題か?」

といつものように話していたらいきなりアイツが…

「なぁビリビリ?」
「…(バチバチ)」
「スイマセン!御坂美琴お嬢様!」
「よろしい。で、なによ?」
「は?」
「は?じゃなくて。アンタが私に声かけるなんて、何かあるとしか思えないわ。宿題?それともまた食料がないの?少しくらいなら貸せるわよ。」
「いや、とくに用は無いんだが。急にお前に会いたくなってな。」
「なっ!?ななななななななななななななっな、なんですって!?」
「え!?おい、どうした御坂!?顔が真赤だぞっ!」
「な、何でもないわよっ。ちょ、ちょっと風邪気味…そう!風邪気味で。あははは。」
「そ、そうか。それならいいんだが。」

落ち着け〜落ち着け〜私。コイツは普段からこういう事を平気で言うのよ。
私だけってわけじゃないのよ。落ち着け〜落ち着け〜。

「なぁ御坂。」
「ひゃ、ひゃい」

しまった。盛大に舌を噛んだ…

「お前、本当に大丈夫か?」
「だ、だいひょうぶ。」

あーもぉぉぉ。また噛んひゃんらった…

「ちょっと、動くなよ。」
「え?」

いきなり、私の額に手を当てて顔を近づけてきた。

「熱は無いな。ホントに風邪か?あれ御坂?おーい?」

(ボンッ!!)という音をたてて美琴は

「にゃああああああああああああああああああああああああ」

と叫びながら走った。というより走って行ってしまった。

「どうしたんだ?アイツ?」

という事があったせいで結局、昨日はたいして眠れず、
さらに聞く事があったことも忘れてしまっていた。

「アイツ…手作りの方がいいのかな?」

聞く事というのはバレンタインチョコの事であった。
昨日はアイツを待っていたら、アイツの方から声を掛けてくるし…
それに…それに…あ、あんなに近くにあいつの顔が…
と考えれば考えるほど、顔が赤くなっていくのに気付いた美琴はブンブンと首を振り、雑念を消した。

「っと、そろそろアイツが来るころね。」

と思っていたところに聞き覚えのある声がした。

305Ж:2010/02/10(水) 03:25:50 ID:xqlnTHLQ
2月10日編から2月14日当日編まで少しづつ投稿していきたいと思います。

若干のタイムラグがあるとは思いますが頑張ります。

306■■■■:2010/02/10(水) 03:46:35 ID:qkBkpMlI
>>305
GJだが、小ネタじゃないならある程度出来てからまとめて投稿してくれ

307Aサイド ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:43:40 ID:4Qp7a2u.
おはようございます。
>>305 氏の投下の余韻も醒めていないとは思いますが、ちょっと投下させて下さい。
以下4レスお付き合いの程。
でわ。

308『たまには立ち位置を変えて』1/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:44:29 ID:1N8ydbbc
『たまには立ち位置を変えて』



 今日の美琴は新刊の発売日だからコンビニ寄って立ち読みをなどと考えながら歩いていた。
 するとその背後から、
「よっ、御坂」
 上条に声を掛けられた瞬間美琴はぴょんと飛び上がってから上条を振り返る。
「な、なによ。アンタから声かけてくるなんて珍しいじゃない?」
「そうか?」
「そうよ」
 そう言ってふんと鼻を鳴らした美琴は
(その通りいっつも私から声掛けてるのにコイツったらデフォで私をスルーすんのよね。こっちはちゃんと立ち止まって振り返って返事までしてるってのに――)
「不公平だわ」
「何が?」
(え?)
 思わず零れた本音を上条に聞かれて慌てた美琴は、取り合えず自分に平常心を言い聞かせつつ、
「で、な、何の用?」
「何警戒してんだお前?」
「アアア、アンタから声かけて来た時は対外厄介事が多いからよ!」
「え、そうか?」
「そうよ! 軍隊の相手をしろとか白いチビシスターに指示を出せとか鍵の開け方を教えろとか……」
「そ、そんな事無いんじゃないかしら?」
 そう言ってとぼける上条に、美琴の視線がバシバシと突き刺さる。
「御坂さん何ですかその白い目は?」
「いいから何? 美琴さんこれでも忙しいの」
「あ、急いでんのか? 悪かったな呼びとめちまって」
 そう言って慌てて鞄を漁り始めた上条に、美琴も本人は認めたくないながらも上条との貴重な逢瀬が短縮されると慌ててフォローを開始するが、
「あ!? そ、そんな訳じゃないの! べ、別によよよ、用なんか大した事無いんだからゆっくり急がないでもいいかなぁ……あははははは……」
「……変な奴」
 上条の痛々しい子を見る目に、美琴は内心撃沈されてうな垂れた。
 そんな美琴の目の前に、
「ほら」
 上条は金色に輝くちょこんとかわいらしい六枚の羽根に頭に輪っかをあしらった蛙のストラップ――、
「ちょ、超レア天使のゲコ太ストラップ!?」
「昨日迷子の女の子を助けた時にもらったんだ。お前好きだったろこーいうやつ」
「うん!」
「やるよ」
「うん!」
 そこまで返事をしてからキョトンとした顔で上条を見つめて、
「私に?」

309『たまには立ち位置を変えて』2/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:45:36 ID:4Qp7a2u.
「あ? ああ……」
「これを?」
 美琴はゲコ太ストラップを指さす。
「他に何か見えるのかお前?」
 上条にそう言われた途端、美琴はふるふると首を横に振る。
 そんな美琴に、
「手」
 上条に言われて右手を差し出す美琴。
「ほら」
 その掌にゲコ太ストラップが無造作にぽとりと載せられると、美琴の髪がふわりと浮かんでパリパリっと火花が飛んだ次の瞬間、何故か上条に向けて電撃が放たれた。
「うぉわッ!? 危ねぇ! 何ビリビリいってんだお前は!!」
 叫ぶ上条に、美琴も訳が判らず、
「う、うん。ごめん」
 素直に自分の非を認める美琴。
(ちょ、素直だと調子狂うな)
 上条はそんな美琴にちょっと驚いてしまう。
「じゃ、俺は行くから」
 急いでいるとの話もあったから、用事も済んだ事だしと立ち去ろうとした上条だったが、その腰の辺りを美琴の手が掴む。
「何?」
「お礼」
「いいって。やるって言ったろ?」
「やだ」
(う、上目遣い……)
 美琴の何時もと違う雰囲気に上条は意識してしまうのを止められない。
 そんなドキドキ気分を誤魔化すために、上条はひとつ悪戯を思いついた。
「じゃ、じゃあ、よし、判った」
 そう言って美琴の方を向いた上条は、
「俺の事を名前で呼んでみてくれ」
「え?」
 意味が判らないと目を丸くする美琴を尻目に、
「はい、上条当麻。はい」
 上条はそう言って美琴の番だとばかりに手を差し出して復唱――名前を呼べと暗に示した。
 すると美琴は、顔を真っ赤にして口をパクパクと動かすのだが、声の方は一向に出てこない。
「何だお前?」
 そう上条に言われると生来の負けん気で努力するのだが、やっぱり口がパクパクするだけで声が出ない。
「ちょ、ほ、他、他には無いの?」
「何だお前? 俺の名前は呼べないってか?」
「そ、そんな訳無いじゃない。な、名前くらいちゃんと呼べるわよ」
「あそ。じゃ、名前」

310『たまには立ち位置を変えて』3/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:46:10 ID:1N8ydbbc
「(……御坂美琴)」
「そりゃお前の名前だろうが!?」
 上条の突っ込みに美琴の肩がぴょんと跳ねた。
「何だお前。男の名前は呼んじゃいけないとかそういう家訓とかあんのか?」
「ば、馬鹿!? そんな家訓なる訳無いじゃない!」
「じゃ校則か?」
「そんな校則あってたまるかっっての! どんな校則よ一体」
「御坂ぁー、じゃあ何でお前は俺の名前を呼べないんですかねー」
「そ、それは……」
 思わぬところで万事休すとなった美琴は、しゅんとして下を向いてしまう。
 一方思わぬ展開に上条も少なからずショックを受けていた。
「俺やっぱりお前に嫌われてんのかなぁー。そこまでとは思ってなかったんだけど……はぁ……不幸だ……」
「何でアンタが落ち込んでんのよ!? な、名前呼ばない事がそんなにおかしい訳!」
「おかしいだろ普通」
 チラリとこちらを見た上条の視線が、思った以上に美琴の心をえぐる。
 さらに追い打ちを掛ける様に、
「名前だぞ名前。呼ぶなっつうならまだしも、呼びたくないって俺どれだけ嫌われてるんですかって感じじゃね? これを落ち込まずに何時落ち込むんだよ全く」
 嗚呼、普段は自信が服を着て歩いている様な美琴が、あんなに小さくなってしまうとは。
 それには流石の上条も美琴の事がかわいそうになった。
 そもそもこんなやり取りをする為にお互い顔を合わせた訳ではない。
「あーいーよいーよ。何かそんな顔されると俺がお前の事虐めてるみたいだから。何かショックだったけど気にすんな。ま、悪ふざけだと思って忘れてくれ」
 そう言って踵を返して美琴に背中を向けると、
「じゃ、ストラップ無くすなよ。またな御坂」
 ひらひらと美琴に手を振って離れて行く。
 去って行く上条の背中をじっと眺める美琴は、掌にチクリとした感触を感じてその手を開く。
(天使ゲコ太……)
 強く握りしめたせいで痛みを感じたのだろう。
 しかし美琴には、天使ゲコ太が美琴に頑張れと言っている様に感じた。
 ゲコ太に向かって頷く美琴。
(天使ゲコ太、私に力を貸してッ!!)
 心の中でそう呟いてストラップを握りしめると、上条の背中を追って行き……。
「と……、とうまッ!!」
 すぐ背後から名前を呼ばれてビクッと首をすくめた上条が振り返ると、すぐ真後ろに美琴が立っていた。
「御坂……」
 驚いて目を丸くする上条に、美琴は緊張で涙目になりながらも不敵な笑みを浮かべると、
「ほ、ほら! 何度でも呼んであげるわよ! とうまとうまとうまとうまとうまとうむぐぅ――――!?」
「こらこら何かインデックスが2人に増えた気分になるからカミジョーさんの名前を連呼しないで下さいまし」
「むー! むー!」
 上条に口を手でふさがれて顔を真っ赤にして声にならない不服を述べる美琴。

311『たまには立ち位置を変えて』4/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:46:35 ID:1N8ydbbc
「悪かった悪かった。御坂は御坂だよな。インデックスと一緒にして悪かったって」
「ぷはッ! ゼーゼーゼー。な、何人の心呼んでるのよアンタは……」
「そんな気がしただけだったんだが……。当ってたとはカミジョーさんもびっくりですよー。これって以心伝心?」
 そう言って茶化す上条だったが、美琴の様子がおかしい事に気付く。
 さっきから顔が真っ赤だったのは変わらないが、ちょっと目の焦点が怪しい。
「大丈夫か御坂?」
 心配して声を掛けるが返事は無い。
 それもその筈――、
(私とアンタの心が繋がってるって? じゃ、もしかしてアンタも私の事……事……す、す、す……)
 自分の属性に従って素直にデレている真っ最中で忙しいのだ。
 だから、ちょっと漏電して、ちょっと上条に電撃が飛んでもおちゃめと思って許せないだろうか?
「だから何でそこで電撃何なんだよ!! って御坂?」
 電撃を払いのけて叫んだ上条は、目の前で膝を追って崩れる美琴を慌てて支えると、
「大丈夫かお前!?」
「のぼひた」
 そう言って緩みきった顔でにこにこと笑う美琴は、何だか憎めなくてかわいいなんて上条は思ってしまう。
「ったく……。能力使いすぎっからそう言う事になんだよ。もうちょっとセーブしろセーブ」
「あんらにいわれらくたってわらひできるんらろ……」
「ヘイヘイ無能力者(レベル0)には言われたくないですよね、超能力者(レベル5)の御坂さん」
「ひにゅくゆーにゃー」
 そう言って上条の肩をぽずぽずと叩く仕草なんて、そこいらの美少女が束になっても敵わないだろう。
 だからつい上条が、
「悪ぃ悪ぃ。お前の反応がミョーにかわいかったからつい……」
 などと美琴にとどめの一撃を加えたとしても笑って許してもらえるのではないだろうか。
(かわいい? かわいいってアイツが? 私の事かわいいって……)
 美琴も限界なのに――それでもここはテンションを上げずにはいられない。
 よって、
「ふにゃー」
「お、おい御坂ッ!? 御坂おいッ!!」
 止めを刺された美琴の顔は何処までも幸せそうだった。



END

312Aサイド ◆kxkZl9D8TU:2010/02/10(水) 07:47:07 ID:4Qp7a2u.
以上でした。
でわ。

313■■■■:2010/02/10(水) 08:00:17 ID:2lNDEeWY
一夜明けたら投稿ラッシュで職人のみなさんGJ!

んで、住人から一言。気になる人はスルーよろ。

最近やたらとスレの進み方を気にしたり投稿を焦ったりする職人さんを見かけるけど
スレに作品投下すんのは職人の権利であり自由であって義務じゃない。
だから読み手としては最低限投下宣言と終了宣言は欲しいけれど、
まだ区切りがついていないものをあわてて落としたり、投下予約をする必要はないと思う。
そんなことするくらいなら自分の書いたものが納得行くまで十分校正した方がいい。
時節柄に合わせたSSってのもスタイルとしてはあるけどさ、
やっぱ読み手としてはある程度完成したものにGJを送りたい。
それを書き上げるまでに使った時間や苦労もあわせて。

SSの評価について批判がないのはおかしいって言う意見も見るけど
ここはいちゃいちゃなSSを落とす&読む場所であって
そういうのはスレのローカルルールと違うような気がすんだけど、どうなんだろ?
それこそ前向きな評価や文字ミス、表記の指摘なんかはあったって職人は困んないよな?

長くなったしこの書き込みこそがスレ違いなんだけどどうも最近スレの空気が変なんで。
いろんな意見が出ることこそスレが活気づいている証拠ではあるんだけどね。
では。

314■■■■:2010/02/10(水) 11:55:05 ID:YCEnhpt2
>>312
<(^o^)> とうまとうまー  
( )
 \\

..三    <(^o^)> とうまー
 三    ( )
三    //

.    <(^o^)>   三  ねーとうまー
     ( )    三
     \\   三

 \    
 (/o^)  とうま聞いてるの!?
 ( /
 / く

  ..三<(^o^)> <(^o^)>  <(^o^)>  <(^o^)> <(^o^)>  三
 ..三   ( )    ( )    ( )    ( )   ( )  三
..三   //   //   //   //  // 三
とうまー おなかすいたよー とうまー   とうまー
..三    <(^o^)> <(^o^)>  <(^o^)>  <(^o^)> <(^o^)> 三
 .三    ( )    ( )    ( )    ( )    ( )    三 
  ..三   \\   \\   \\   \\    \\    三
とうまー     とうまー とうまが首まで埋めたー   とうまー
  ..三<(^o^)> <(^o^)>  <(^o^)>  <(^o^)> <(^o^)>  三
 ..三   ( )    ( )    ( )    ( )   ( )  三
..三   //   //   //   //  // 三
とうまが首絞めたー とうまー GJ!

315■■■■:2010/02/10(水) 17:55:20 ID:/RU/NIBQ
いろいろな話し合いがなされていたようなのですが、
私は難しい話はよくわからないので…。

単純かもしれないですけど、言っちゃいます。

職人さんたち皆様GJです!!

316ネタ:2010/02/10(水) 20:09:35 ID:opfnUPXY
誰もいないなら、ネタだけでも^^:

・美琴と当麻が入れ替わる。
・美琴と当麻が無人島で遭難。
・美琴と当麻が一緒に海外旅行。
・当麻が美琴の執事(美琴の夢オチ(笑))

317■■■■:2010/02/10(水) 20:22:31 ID:uZeYEpXc
今日はマジで朝の投稿から書き込みも含めてレスが増えてないね

318■■■■:2010/02/10(水) 20:22:42 ID:YSsSsCdI
>>316
ネタができているなら自分で書いた方が早いですよ

319■■■■:2010/02/10(水) 20:31:23 ID:u8xIQYT.
ネタといえばついに20巻の表紙が出ましたね
また新しいフラグが

320■■■■:2010/02/10(水) 20:36:14 ID:vt8z2CMc
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up430716.jpg
ヒロインが昏倒しているときに上条さんは他の方といちゃいちゃしているわけですねわかります
誰か来るとは思ってたけどフロリスではなかったのか
そして美琴はどうなるんだい

321■■■■:2010/02/10(水) 21:04:38 ID:LRp1Aylw
新しいThinkPadが届いたんでやっと製作再開できる…

>>316
とりあえずキーボードを叩いてみよう! チャレンジだ。


入れ替わりはやってみたいなぁ…
でもまだ続編仕上げてないし、うーん…

322■■■■:2010/02/10(水) 21:24:25 ID:IpF0RxHM
こうなるんですね楽しみです。

ttp://beebee2see.appspot.com/i/agpiZWViZWUyc2VlchQLEgxJbWFnZUFuZFRleHQYgrobDA.jpg

323■■■■:2010/02/10(水) 21:29:40 ID:ObF/kv2o
今日、もしくは明日の深夜あたりに投稿しようと思うんだがいいだろうか?
上琴なのは間違いないが、かなり長いうえ、ぜんぜんいちゃいちゃしてないのだが…

誰か、駄目なら駄目と言ってくれ
そしたら別のとこに行くから^^

324■■■■:2010/02/10(水) 21:31:16 ID:vt8z2CMc
sageない
時刻予約

他所へ行け

325■■■■:2010/02/10(水) 21:31:49 ID:rqfM8FIk
まずはどんな話なのか簡単に説明をするだよー

326■■■■:2010/02/10(水) 21:35:07 ID:uZeYEpXc
>>323
良いのじゃない?
自分が思う時に投稿しちゃえば、(ほかの人がその時投稿してなければ)
結果上琴で、美琴にツンデレ表現が有ればokだと思うよ?
・手を繋ぐ。
・告白する。
・結果付き合い、二人っきりの時間がある。
上記のどれかがあれば、もうイチャイチャしてると想います。
最終的には読み手がイチャイチャしてると思ったら書き手が違うと思っても
イチャイチャなので大丈夫かと

327■■■■:2010/02/10(水) 21:37:10 ID:PD4KSoOY
>>323さん宜しくお願いしますね〜
あとここではメール欄にsageって入力するんで気を付けてくださいね〜

328■■■■:2010/02/10(水) 22:48:17 ID:6NLp1H..
sageないやつとかは正直書く以前の問題だからまずスレを眺めててほしい
半年ROMってろじゃないけど、少なくとも過去ログ読むとか空気読むとか常識的なことはしてほしい
最近のこのスレの書き手以外の惨状を見ると本当にそう思う

329■■■■:2010/02/10(水) 22:58:33 ID:zoRNsqRs
最近変なの沸いてるね
自治厨っつうのか
美琴スレにまで特攻するし 一体どうなってるのやら
2chでもあるまいし

ちなみにsage防止には専ブラに入れるのが良いよ
google → 「したらば jane」
この勢いで上がったからといって今更な気もするけどね

330■■■■:2010/02/10(水) 23:01:10 ID:vt8z2CMc
>・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
ルール無視は論外じゃね

そろそろバレンタインだし期待しとくか

331■■■■:2010/02/10(水) 23:10:39 ID:cLHkpVVA
原作上条さんは一体誰を選ぶんだか

332■■■■:2010/02/10(水) 23:15:01 ID:zoRNsqRs
>>330
2スレ目でやんわり決めたルールだからそう頑なにならなくていいよ
提案レベルで決めたテンプレにそこまで反応されても正直困惑する

333■■■■:2010/02/10(水) 23:20:42 ID:D6NUwGGU
>>331
誰も選ばんだろ
むしろモテないなーとか言ってリンチされるような人だよ

334■■■■:2010/02/10(水) 23:26:19 ID:0hu071Ig
>>331
物語としては完結するけど、ラブコメとしては「俺たちの戦いはこれからだ」で終わるんじゃない?
そりゃこのスレにいるんだから個人的には美琴と結ばれて欲しいけど

335■■■■:2010/02/10(水) 23:39:33 ID:LW0PNRsA
しばらく離れてるうちに置いてかれてしまった…
職人さんGJ!もっと!もっと俺を置いてってくれええええええ

336■■■■:2010/02/10(水) 23:47:11 ID:ObF/kv2o
先ほどはsageを知らず、やってしまいすいません。
教えてくれた人、ありがとうございます。

では、とりあえず投稿させていただきます。

337■■■■:2010/02/10(水) 23:48:15 ID:ObF/kv2o
熾烈を極めた魔術サイドと科学サイド、両方を巻き込んだ戦争はようやく終わった。
最終決戦に参加した者たちの歓声が、そこかしこに響いている。
ついさっきまで戦場だった場所なのだが、みなそんなことはお構いなしに騒いでいる。
みな疲れきってはいるが、その瞳には喜びがあふれていた。
―まったく、今にもぶっ倒れそうなのに、元気だよな、みんな―
そんな中、この大戦を終結へと導いた主要人物の一人である少年、上条当麻は、安堵の息をつきながら、彼自身も、この大戦がようやく終わったことに喜びを感じていた。
…まあ、彼の場合は、いつものことながら、負傷してボロボロなので騒いでいるみんなを眺めているだけであるが。
見渡せば、いろんな人たちがいる。
神裂火織は、白かったTシャツを自身の血で赤く染めながらも、他の天草式のメンバーに治療してもらいながら笑いあっている。
ステイル・マグヌスは、意識はあるようだが、魔力の使いすぎで動けないようだ。
他にも、イギリス正教の者たちが、ロシアの撲滅白書の者たちが、アニョーゼたちが皆それぞれ喜んでいる。
さらにその中には、科学サイド…つまりは学園都市の者たちの姿もあった。
そんな皆を眺めていると、その中に御坂御琴の姿が見えた。

むこうも、こちらの姿を見つけたのだろう。
彼女自身、限界以上まで体を酷使し、電撃を放ったはずなのに、こちらに、息を切らせながらも駆け寄ってくる。
その懸命な姿に苦笑し、さすがに座ったままで彼女と話すのは申し訳ないと思い、上条当麻は、痛む体だろうと関係なく気合を入れ、立ち上がる。
彼女に、言わなければならない、伝えなければならないことがある。
果たして自分は、彼女を前にしたとき、しっかりと言葉を紡ぐことが出来るのだろうか。
この大戦の中で気づいた、自分の正直な気持ち。
それを彼女に言おうと思う。
―まったく、そんなに急がなくっても上条さんは逃げませんよ―
そんなことを思いながら、近寄ってくる御坂に視線を向けると、自然に笑顔が出てくる。
「っ!!」
そして見つけてしまった…いや、見つけることができた、の間違いだろうか。
ともかく、それを見てしまった当麻の体は、知らぬ間に動き出していた。
―まったく、最後の最後まで不幸…いや、この場合は幸運だった、かね―
不思議と思考は穏やかであった。
いや、このさきの展開を考えるのを拒否しているからなのかも知れない。

急に、自分に全速力で走ってくる当麻に、驚きの表情を隠せない御琴。
なにか言っている気がするが、当麻の耳には入らない、いや、理解するほど余裕がなかった。

そして、訳のわからない顔をしている御琴を、当麻は突き飛ばす。
驚いた顔をしている御琴を見ながら、最後に当麻は笑った。

そして、その瞬間、御琴を突き飛ばしたことで、がら空きになっていた胸部へと、激しい光を伴う魔術が吸い込まれ、上条当麻の心臓は……停止した。

338■■■■:2010/02/10(水) 23:56:23 ID:ObF/kv2o
上条当麻が、地面に倒れ付して、周囲はまるで水を打ったように静かになる。
いきなりのことで、理解が追いつかない。
そして、倒れ付してから実に数秒後、どこからか悲鳴が上がった。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
誰の悲鳴だったのか、それは定かではないが、その声を皮切りに、一斉に周囲が動き出した。
「上条ーーーーー!!」
「カミやん!!」
「少年!!」
「とうまーーー!!」
皆、それぞれに当麻の名前を呼びながら、大半のものは近づいて、残りのものは、今しがた魔術を放ったやつを探す。
近づいてきた人で、あっという間に当麻の周りには人垣ができた。
皆、顔を青くしながら、しかし、この少年は今までのように、こちらの予想を裏切って、何食わぬ顔で、立ってくると。先ほどの魔術も、その右手で打ち消しているはずだろうと、心の底で思っている。
「……心臓がとまってる。 残念ながら――もう無理なのよ」
だが、皆の予想は、最悪の形で裏切られることになる。
当麻の容態を見ていた建宮斎字が、苦痛にの表情で、搾り出すように言う。

339■■■■:2010/02/11(木) 00:01:24 ID:sQnBHrsc
>>328ROMってもsageの仕方わかんない人いるからね。                        とりあえずsageの仕方を説明するとメール欄に半角でsageだぜい。名前欄にsageいれるなよww

340■■■■:2010/02/11(木) 00:04:36 ID:j.Bwz.eI
すいません
なぜかNGワードに引っかかるので少し直してきます

341■■■■:2010/02/11(木) 00:08:21 ID:RKPcHMTE
>>339
いや、ROMらなくても>>1を読めばわかるだろじょしこうせい

>>340
NGワード?
そんなのあったっけ

342■■■■:2010/02/11(木) 00:11:54 ID:j.Bwz.eI
>>341
なぜか引っかかるのです
一応、放送禁止関係なんかはつかってないんですが…

343■■■■:2010/02/11(木) 00:13:38 ID:pkOfXfD6
…えっ?
バットエンド?
しかもいちゃいちゃしていないと思うのは俺だけか…?

344■■■■:2010/02/11(木) 00:15:07 ID:TqYpQoKM
NGワードはともかく、
×御琴
○美琴
これを間違えてる時点で大NGだわさw

345■■■■:2010/02/11(木) 00:19:18 ID:CxWYMISs
文字数が多すぎるとかではなく?
あと、タイトルはなんでしょう?

346■■■■:2010/02/11(木) 00:19:22 ID:SCubCk9M
名前間違いはないわ

347■■■■:2010/02/11(木) 00:24:35 ID:j.Bwz.eI
すみません
名前はまさかw

とりあえず修正&NGの部分は何とか飛ばして書いたのですが、つづきいいでしょうか?
今度はタイトルもつけときます

いろいろ忘れてすんません

348■■■■:2010/02/11(木) 00:27:20 ID:HAgDDMck
一書き手としましては、どんな理由にせよ投稿の途中であまりあれこれきつく言いすぎるのはいかがなものかと思います
脊髄反射もいいですが、スレの雰囲気に影響も出ますし、今後他の人も投稿しづらくなりかねないので抑えるべきかと

349幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:27:34 ID:j.Bwz.eI
インデックスの泣き声が周囲に響く。
周囲から、泣き声しか聞こえなくなったところで、それ以外の音が生まれた。

「どきなさい!! どけって言ってんのよ!!」

周囲の人垣を掻き分け、当麻に覆いかぶさるようにして泣き出したインデックスを突き飛ばし、鬼のような形相を浮かべた御坂美琴が、当麻のよこへと膝をつく。

皆は何事かと、御琴を見る中で、彼女は当麻の服…いつもの制服であったため、カッターシャツのボタンを力任せに引きちぎると、泣いているインデックスへ質問を投げかける。

「こいつが受けたのはなんなのかわかる!?」

鬼気迫る様子で言われたことに対し、インデックスは思わず泣いているのも忘れて答える。

「えっと、術式をチラッと見ただけだから「簡潔に言いなさい!!」」

言いよどむインデックスに対し、美琴の一喝が入る。
その様は、1秒が惜しいと言っているように見え、インデックスは短くそれに答える。
「致死性の呪い。 生命の息吹を否定する効果だと思う。 きっと生きる力を否定することで、外傷なく相手を死なせることが出来るものだよ」

「わかった。危ないから、あんたは離れてなさい」

それだけ言うと、美琴はもう何も言わず、はだけさせた当麻の胸へと手を当てる。

「アンタ、私があんなことされて喜ぶと思ってんの? だとしたらゆるさない。 絶対に許さないんだから!」

そう言って目を瞑る美琴。
と、同時に当麻の体がビクンと、まるでなにかに叩かれたかのように跳ねた。

350幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:28:37 ID:j.Bwz.eI
全てがようやく終わったと思っていた。
最終的に、魔術だのとかいう、訳のわかんない連中とも手を組んで戦うことになってはいたが、この終わりかたは悪くない、そう思える結末に満足しながら、美琴は当麻を探がす。
―まったく、敵の親玉を倒すことが出来たそばから騒ぎ出すんだから、何がどうなってるか訳わかんないじゃない―
そんなことを考えていると、美琴の視界に目的の人物が映る。
あいつはいつものことながら、ボロボロになったっていうのに、苦笑しながら周りを見渡していた。
その顔には、傷が2,3ついてはいたが、穏やかで、それを見た美琴の表情も自然と穏やかなものになる。
そうこうしていると、当麻が美琴のことに気がつく。
―まったく、気づくのが遅いのよ。 
  …でもまあ、アンタから気がついたんだし、許してあげますか―
そんなことを思いながら、当麻へと走り出す。
別に、走っていこうとは考えてなかったのだが、体が勝手に動いてしまった。
―あ〜、私も重症ね、これは―
そんなことを考えはするものの、体のほうは正直で、一直線に向かっていく。
―アンタはどうせ気づいてないだろうから、私から気づかせてやる。覚悟しなさいよ―
美琴は、ずっといえなかった思いを、今なら言えそうな気がしていた。
いや、伝えてやらなければいけない。
これからもあのバカは、危ないことに首を突っ込むに決まっている。
そんな危険な中で、アイツは他人を守ることしか考えていない。
ならば、アイツの身は誰が守ってやるのか。誰がアイツが帰る場所として、共に歩む仲間としていられるのか。
私しかいないじゃない、それは。
自惚れかもしれない。 ほかにもっとふさわしい人がいるのかもしれない。
しかし、例えそんな人がいたとしても
―勝負する前から諦めて、何もしないなんて私らしくないじゃない!―
そう思い、決心をした少女はとても美しかった。
周りはさっきまで戦場だった荒地で、肌などは土や泥で汚れているし、服だってボロボロだ。
なのに、彼女はその瞬間、どの宝石より輝いて見えた。

そんな美琴に向かって当麻が走り出す。
それは、満身創痍の身からは考えられないような速度の疾走だった。
―えっ?―
そんな当麻の行動の意図がわからずに、美琴は一瞬立ち止まる。

もし、さきほどまでの戦闘が続いていたならば、美琴も咄嗟の行動が取れたかもしれない。
しかし、どんなに強力であろうとも、彼女は一人の学生であり、女の子である。
一度気が抜けた思考を、瞬時に切り替えることなどできようはずがあろうか。

そして、とまった美琴の体を、当麻が右腕で突き飛ばす。

そのときの当麻の顔は、笑っていたように美琴には見えた。

351幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:29:27 ID:j.Bwz.eI
次の瞬間、まばゆい光が当麻の胸部を直撃し、当麻はまるで糸の切れた人形のように力なく地面へと崩れ落ちる。

何が起こったのか理解できず、地面に座ったまま美琴は動けない。

周りで悲鳴が上がるも、それは彼女の耳には届かず、他の人が駆け寄るのも、美琴は黙って見ているだけ。

思考が状況に追いつかない…否。

結論はすでに出来ているのだろう。なぜだかはわからないが、美琴は当麻が最後に浮かべていた笑顔が、すべてを物語っている気がした。

しかし、理性がその結論を受け入れたくなくて、思考することを拒否している。

思考してしまえば、状況を把握してしまう。

状況を把握すれば、認めたくない結論が出てしまう。

自分を守った…庇って身代わりになったせいで当麻は―――

それが嫌で、受け入れるのが嫌で、美琴は現実を拒絶しようとする。

しかし、それも許されない。

「心臓が止まってる。 残念ながら、もう手遅れなのよ」

それを聞いて、美琴の止めようとしていた時が動かされる。

―許さない!―

思い出されるのは、最後にアイツが浮かべた顔。
御坂美琴は、そんな守られるだけの存在では満足しない。
彼女はなにより、ただ救いを待つだけの女では、自分自身を許せない。
レベルなど関係ない。
ただひとりの人間として、上条当麻が好きな一人の女の子として、出来ることをやらずに状況に流されることだけはできるはずもない。

―アンタは、私を守って満足してるのかもしれない。 
  でもそんな勘違いを持たれてもこまるのよ!
  アンタは死なせない。
  不幸だなんて、もう言わせてたまるか!―

限界まで電気を放出した体から、さらに放てる電気はほとんどない。
しかし、そんなことは、彼女を止める理由にはならない。
身に貼り付けるのは、ほとんど最後の強がりにも見える虚勢。
しかし、それでもこの身を動かしてくれるのならば、十分だ。

「どきなさい!!」 

当麻の周囲を囲んでいる人垣を、半ば投げ捨てるように掻き分ける。

「どけっていってんのよ!!!」

それでもなかなか開かない人垣にたいし、叫ぶ。
感情が高ぶり、美琴の周囲にはスパークが起こる。

近くで電気がはじける音に驚き、わずかに人垣が割れる。
その隙を見逃さず、美琴はそこへ突っ込む。
当麻の体に覆いかぶさっていたインデックスを、吹き飛ばすようにどかし、美琴は準備を整える。

「こいつが受けたのはなんなのかわかる!?」

成功の可能性を上げるため、確認するのも忘れない。
帰ってきた返事に満足し、美琴は当麻の胸に手をあて…電気ショックをおこなった。

352幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:30:20 ID:j.Bwz.eI
1回では蘇生しなかったのを、少し時間を置いて確認する。
次の電気ショックを与えるまでの間に、少しでも当麻へと語りかける。
聞こえているのかは、わからない。
しかし、少しでも…僅かでもいいから、可能性が高まることを彼女は選択する。

「アンタは死なせない。 
 私を守って死ぬことなんて許さないわよ。
 私はまだ、アンタに受けた借りを少しも返してないのよ。
 そんな状態でどっかに行くことなんて、私が止めてやる。
 アンタが不幸だって言うなら、私がアンタを幸福に変えてやる。」
 
そして、電撃が放たれ2回目の電気ショックが当麻へと与えられる。
すでに限界をこえ電気を放っているために、美琴の体から力が抜けていく。
すでに体には、放電する余裕など残っていない。
経験したことのない脱力感に、美琴の意識が飛びそうになり、体は崩れ落ちようとする。
しかし、彼女は崩れ落ちることを選ばない。
歯を食いしばって耐え、語りかけ続ける。
いや、すでにその“語りかける”という行為自体を続けていないと、美琴の心は折れてしまいそうだった。

「アンタは言ったわね。
 私は笑って良いって。
 私が笑うのは……私が笑っていられる世界には、もう―――アンタがいなければ意味ないの!」

そう言った美琴の目には、すでに溢れんばかりの涙がたまっていた。
体内の電気は、次電気ショックで枯渇する。
御琴は直感的に、自分の状態を悟る。
どんなに無理をしようが、4回目は無い。
そのことに多大な不安が御琴に襲い掛かる。
その不安に負けそうになりながら、途中で諦めそうになりながら、彼女は続ける。

「私はアンタに助けられたことを忘れて…あんた一人が全部背負って、それで助かったことを喜べ   
 るような、そんなちっぽけな人間に見える?
 私は、そんなのは嫌よ。
 ――だから……だから!」

そこで当麻の体が跳ねる。3回目の電気ショックが行われたのだ。
これでもう後は無い。

「―――かえって…かえってきてよぉ」

最後まで我慢していた涙が、その言葉と共に流れ落ちる。
彼女には、もう貼り付けた虚勢はない。
それでも当麻は動かない。
体の中の電気が一時的に枯渇している虚空感と、そのことがあわさり、ついに美琴に絶望が覆いかぶさる。
美琴は…当麻を好きでいた女の子は、泣き崩れた。

353幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:31:06 ID:j.Bwz.eI
当麻は、心臓は確かに止まったのに不思議と周りの状況は“聞こえていた”
それが死に至るもの全てが同じような状況になるのか、魔術によって葬られようとしたためにそうなったのかはわからないが、そんなことはどうでも良かった。
美琴が泣いている。
それだけが気に掛かることだった。

あいつに絶望に染まったような顔はさせない。
そう誓ったはずなのに、ほかならぬ自分が、その表情を作り出してしまっている。
そんなことは嫌だった。
自分が望んでした行動だったが、その結果に当麻は怒りを覚える。

―うごけ!―
停止した自分の体に向かって、心で叫ぶ。
―俺は、こんなとこで何してる?―
こんなことをしたかったわけじゃない。
ただ、美琴に笑っていてほしかっただけ。
―好きな女の子一人、笑顔に出来ないようで何が幸せだ!―
自分の右手は、幻想に対し最強だ。
ならば、その最強でこの最悪な現実(げんそう)を打ち砕いて見せろ。
―うごけーーー!!―

354幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:32:15 ID:j.Bwz.eI
「かってに  ころすな よ」

「ーーーっ!!」

美琴はいきなり聞こえた声に驚きをあらわにする。
しかし、直にその驚きをうれしさが上回った。

「ばかっ…じゃないの」

流れる涙は、悲しいさから、喜びの涙へと変わり、泣き笑いの表情を浮かべる。
こんなときに…いや、こんなときだからこそ、当麻は、美琴のそんな表情をきれいだ、と思う。

体はまだほとんど動かない。
それでもなんとか腕をあげ、彼女を抱き寄せる。
あがらう力は、もう残っていなかったのか、美琴は簡単に当麻の腕の中へと収まる。

「なにをっ」
驚きの声を上げる美琴の言葉を遮り、当麻は口を開く。
「ありがとうな。
 もう死んだと思ったときに、おまえの声が聞こえたんだ。」

そこで一旦当麻は口を紡ぎ、息を吸い込む。
美琴も、当麻の顔を見るために顔を上げる。

「俺は、お前が好きだ」 

その言葉で、美琴の目から、よりいっそうの涙が溢れる。

「ーっ! こんなときに―――ばか…じゃないの。」

当麻は笑って答える。

「それはおまえが一番良く知ってるだろ」

「後悔…しても知らないわよ?」

「ああ」

「他の女のとこに行ったら、電撃どころじゃすまないわよ?」

「わかってる」

「アンタが離れようとしても、私ははなさないんだからね」

「上条さんは、どこにも行きませんよ」

「私も、あんたのことが…当麻が好き」

そう言うと、お互いがお互いの顔を見て笑い、当麻が再び美琴を抱きしめる。
今度は美琴も、自分から当麻の胸へ抱きつく。

「もう当麻には、不幸だなんて言わせない。
 アンタの側に私がいて、幸せだってこと以外考えられなくしてあげるから、覚悟しなさい」

「楽しみだな」

そう言って二人はお互いを、よりいっそう強く抱きしめる。

「美琴の…いい匂いがする」

「………ばか」

355幸せへと至る道:2010/02/11(木) 00:35:51 ID:j.Bwz.eI
続…かないどろうな


これにて終了です。

まず一言、皆さんに申し上げたいことが…
すいませんでしたーーーーー

いやね、ほんと無知故にいろいろご迷惑おかけしました
いろいろ教えてくださった方、ありがとうございます

356■■■■:2010/02/11(木) 00:40:46 ID:L/fcM3lo
思ってたより、すんなり終わってしまったけども
GJです。 後日談or次回作を期待してます。

357■■■■:2010/02/11(木) 01:00:59 ID:0fFVrfYo
>>355
GJ! 乙でした。

358■■■■:2010/02/11(木) 01:01:40 ID:lOFWHcRc
とりあえずGJ
次に注意点
・急な視点変更を入れるのはやめた方が良いかも
明らかに変更タイミングと開始時点がズレを起して進みにくいかな
今回視点変更するなら2レス目の内容が内容なので2レス目終わってでも良いけど
予定外の問題が生じたようなので、実際は繋がってるかもしれませんが
死亡シーンからほぼ情景と美琴主体の視点なので、
そこからイキナリ冒頭に戻り、美琴視点になるのもどうなのかなと・・・

楽しかったので次書き物する際の参考になれば幸いです
(ラストをイメージしたら周囲の人に囲まれてラブシーンしてる二人が浮かび
ニヤニヤしてしまったw)

359■■■■:2010/02/11(木) 01:14:34 ID:dXiIpgr2
GJ
この後、インデックスに噛まれてそうだなww

360■■■■:2010/02/11(木) 01:28:27 ID:Ozd2BWQ.
>>349
6行目左から8文字目

361■■■■:2010/02/11(木) 01:35:24 ID:j.Bwz.eI
皆さんの暖かい感想に、感激中です

>>358
ありがとうございます。
非常に勉強になりますので、参考にさせていただきます。

ところで、さっき友人と話したところ、この流れだったらパーティー開いてバカ騒ぎしそうじゃね?
ということになったので、次わそんな感じでいこうかと思います。

実力不足な作者ですが、陸に上がった魚を見るよな目で見守ってくれたら…うれしいな〜、と思います

362■■■■:2010/02/11(木) 01:41:51 ID:CxWYMISs
GJです!!

誤字と思われるものを見つけたので報告をば。
>>354
あがらう→抗う(あらがう)
だと思います。

363■■■■:2010/02/11(木) 01:53:07 ID:ZCOUg7pc
祝日フィーバーフォー
受験生の唯一の癒しです

364寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:10:12 ID:kz2Ax.NU
うわ、推敲やってたらいつの間にか朝だワロス


題名 : 当麻と美琴の恋愛サイド ―帰省編(仮)―
消費 : 12レス
番号 : 全体78〜89 帰省編(仮)21〜32
前  :
part3>>370あたりから
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/370
まとめの方
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/323.html

コメント : 今回もずーっと日常的な感じです 登場キャラ増やしたら話が進まなくなりましたw
        セリフの所、「上条」が「当麻」に一時的に変わっています

朝だし誰も居ないだろうけど一応10分後くらいからいきます 7:20くらい

365寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:20:25 ID:kz2Ax.NU
【78/2−21】


【帰省1日目 二つの再会】


 1月2日 PM10:55 晴れ


刀夜「おお当麻、よく来たな」

 学園都市から外へと繋がる特別列車を降り、改札から出た上条当麻はすぐ刀夜に発見された。
 帰省ラッシュのピークは過ぎたとは言え駅は酷く混雑していたが、その中からでもすぐに見つけられるのはさすが父親といった
ところだろうか。
 その駅の記憶が全く無く若干不安だった上条はそのことに安堵する。

当麻「あれ、父さん帰ってたのか?」
刀夜「ああ、正月にせっかく息子が帰ってくるというのに仕事なんかするわけないだろう。 車はあっちだ。 歩きながら話そう」

 人混みをかき分けるように刀夜は歩き出した。 上条当麻はそれに着いていく。

刀夜「しかし当麻、たった二泊なのに随分と荷物を持ってきたんだな」

 上条はカバンを後ろ手に持っていた。 仕事などで旅慣れた人から見れば、それは二泊用にしては一回り大きいと感じる
かもしれない。

当麻「え? えーっと、まあ。 遠出とかあまりしないからそこら辺の加減が分からなくてさ。 あと冬休みの宿題とかがあって
    かさばっちまって」
刀夜「ああ確かにそれはあるな。 父さんも初めての海外出張の時なんかは勝手が分からず大変だった」
当麻「へえー」

 というのはもちろん盛大に嘘である。 上条当麻ほど頻繁に世界中を飛び回っている高校一年生はそうそう居ないだろう。
 実はカバンの中には何故か美琴から借りた大きなゲコ太のぬいぐるみが入っていて、それがかなりの体積を占めていた。
 自分でそれを詰めたはずなのに、そのことに対し上条は正直困惑している。

当麻(妙に寝付けないと思って何となくアレを抱いて寝てみたら快眠できた……って何がどうなってんだ意味分からねえ。 俺は
    一体いくつのお子様なんだよ。 そして何で持ってきたんだよ。 実家でアレ抱いて寝る気かよ、本気かよ上条当麻嘘だろ
    嘘だと言えハイ嘘ですー!!)

 脳内は酷く混乱していたが、理由は分かっていた。
 あのぬいぐるみを抱くと美琴を抱いているようにやけに落ち着くのだ。 確か美琴はアレを『先代』と呼んでいた。 もしか
したら夜アレを抱いて寝ていたのかもしれない。
 『先代』がアレなら『当代』は何だろうという疑問があるが、それ以上の問題がある。

当麻(てことは何か? 俺は美琴を抱いて寝たら快眠できるってことですか? アイツは俺にとって快眠グッズなんですか??)

 だから俺は幼稚園児かよ、と記憶ではなく知識の方で自分にツッコミを入れてみる。
 付き合っているからといってここまで依存しきってしまって良いのだろうか?

刀夜「……聞いてるか?」
当麻「え、ああわりい聞こえなかった。 何?」
刀夜「乙姫ちゃんも来てるぞって。 前回は色々ありすぎて結局まともに話してなかっただろ?」
当麻「………そうだな」

 上条は夏休み後半、海での出来事を思い出す。
 結局、御坂美琴の姿になっていた乙姫が元に戻る前に上条は病院へ担ぎ込まれたわけで、乙姫の実際の姿はあの時見ていない。
 一応刀夜に携帯で写真を送ってもらったため顔は把握しているが、きちんとした姿で会うのはこれが初めてである。

当麻「他の親戚の人も来てるの?」
刀夜「いや、今は乙姫ちゃんだけだ。そう心配するな」
当麻「そっか」

 帰る日取りを決めるにあたって上条はあからさまに親戚と会うのを避けたわけだが、刀夜はそのことについて特別何も言及して
こなかった。
 後になってその理由を推測してみたのだが、記憶喪失であることがばれていないとすると、恐らく親戚の中に上条当麻の不幸
体質を快く思っていない人でも居るのだろう。 海で聞いた上条当麻のこれまでの話を聞けば大体想像は付く。
 その人も、上条家を根っから嫌っているわけではないかもしれないが、もしかしたら上条当麻自身が過去に萎縮してしまった
出来事でもあるのではないだろうか。 例えば相手方に多大な迷惑を掛けたとか、色々と要らぬ心配を掛けすぎているとか――――
 それが当たっているかどうかは分からないが、いずれにせよ今の上条としては好都合である

366寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:20:38 ID:kz2Ax.NU
【79/2−22】


刀夜「まあせっかく帰ってきたんだ。 ゆっくり羽根を伸ばすと良い」
当麻「そうさせてもらうよ」

 その後数分歩いてようやく混雑した駅を抜ける。
 この間、二人は当然の如く数えるのも面倒なほどのフラグを立てまくったわけだが、その話はここでは割愛する。
 ちなみに両者の感想はというと、

刀夜(はは…は。 母さんを連れてこなくて良かった)
当麻(はは…は。 美琴がそばに居なくて良かった)

 何とも親子らしい同じ思考である。
 二人は少し体を震わせつつ、実家へ向かうため駐車場に停めてあった刀夜の車へと乗り込んだ。




 ところで、上条当麻は丈の短い厚手のジャケットを羽織っている。
 寒さに我慢出来なかったからとか、たまたま立ち寄った店に安くて気に入ったのがあったからとか、大体はそう言う理由
なのだが、決してお年玉を見越して買った訳ではないと上条は心の中で弁明する。
 それよりも大きな理由に、寒そうな格好で帰省すれば恐らくコートを買い与えられるのではないかという心配があった。
 入院や家の爆破など、上条が原因できっと実家の家計を圧迫しているであろうことは想像に難くない。 だから上条としては
そういう贅沢面で気を使われるのは息子ながら心苦しいのである。
 とは言っても、お年玉を期待していないと言ったらもちろん嘘であるのだが。

当麻(つうわけで一週間……いやできれば一ヶ月くらい持ってくれねえかな)

 と考えてみて、直後それが既に後ろ向きすぎる願いであることに気付いて憂鬱になる。
 いっそ美琴が直せる範疇の物を、とも考えたが、どんな趣向のコートやジャケットが仕上がるか想像するだけで冷や汗が出て
くるので脳内会議の結果、反対派過半数で却下された。 ついでに微妙に賛成派が居た事にショックを受けた。
 というかマフラーについているTOMA(はぁと)は巻き方で隠したから良いが、猫の刺繍が付いた手袋にいつツッコミが入るか
が怖い上条当麻である。 今はポケットに無理矢理突っ込んでいるので大丈夫だが、自分の体質を鑑みれば持ってこなかった方が
無難だったかもしれない。

当麻(ん、ここか?)

 刀夜といかにも父子的な当たり障り無い話をしているうちに、車は一軒の民家の前に止まった。 そしてその駐車スペースへ
とゆっくりバックしていく。 たぶんそこが上条の実家なのだろう。

当麻(なんつうか…………予想以上に普通だな)

 家は敢えて特筆する気も起きないようなやや古い二階建ての一軒家であった。
 冬であるためか若干寒々しい小さい庭の横、日本の住宅事情を端的に表しているような駐車スペースへと乗用車が収まる。
 二人が降りると早速その音を聞きつけたのか、玄関から暗い赤系のストールを身につけお嬢様然とした詩菜が近づいてきた。

詩菜「あらあら。 お帰りなさい当麻さん。 待ってたわ」
当麻「ただいま母さん」

 上条は記憶にないはずのその家と微笑む家族を改めて眺める。
 普通の、何の思い出もない人からすれば何の感慨も湧かないであろうその景色は、しかし全ての思い出を失ったはずの上条
当麻の心には安らぎを与えるのだった。

当麻(心のどこかで覚えてんのかもな………、まあ気のせいかもしれねえけど)

 と、しんみり感傷に浸る上条だったが、それはすぐに後ろから発せられた黄色い声と共に一気に潰される。

367寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:20:50 ID:kz2Ax.NU
【80/2−23】


乙姫「おッ兄ちゃん久しぶりー!!」
当麻「ッぐああああああああああ!! てぇ、乙姫かぁ!?」

 ついでに体も潰される。
 乙姫は上条に気付かれないように背後から忍び寄り、いきなりほぼ真上と言って良いほどの高さから上条の背中に抱き付いた。
 不意を突かれた上条は一瞬重力が倍増したのかと錯覚したが、その黄色い声とテンションの高さ、それに『お兄ちゃん』ワード
で乙姫であると気付く。

当麻「お、降りろーーーーー!! 重たいーーーーー!!」
当麻(そしてわずかな膨らみがあたるー!!)

 リアル乙姫は美琴よりもっと幼いと踏んでいた上条は、そのわずかばかりの膨らみに動揺を隠せず思わず叫んでしまう。
この程度のぶら下がりならインデックスで慣れているため上条には大したダメージではないはずなのであるが。

乙姫「ぶー!お兄ちゃん女に対してそのワードは禁句ー!」
当麻「分かった、分かったから首を絞めるなそして背中から降りろー!!」
乙姫「んや? 何これ………TOMAはぁとー?」
当麻「(やべっ)」

 上条は全力で乙姫の首絞めぶら下がり攻撃を振り払うとマフラーを結び直す。

乙姫「んー??」

 小豆色のマフラーを巻いた小さな竜神乙姫は、クリクリとした瞳で訝しげに上条を見つめた。
 彼女は本当に自分の従妹かと疑ってしまう程愛嬌のある可愛い女の子であったが、そのベリーショートの髪は上条に少し似た癖っ毛
であり、そんなところに上条は妙な親近感を覚えてしまう。 もっとも、上条の髪の毛は彼女のものよりずっと固いのだが。

乙姫「お兄ちゃん、そのマフラー」
当麻「さぁ寒いし中に入ろうぜー」

 上条はとりあえず観察はほどほどにして乙姫の鋭い視線をのらりくらりと避け、皆を家へ入るよう促した。
 しかしどうにか誤魔化そうとする上条は、乙姫よりやや低い声と共にまたしても一気に潰される。

??「お兄ちゃんひっさしぶりー♪♪♪」
当麻「ッぐえええあああああああ!!?? 誰?? え、誰???」

 さっきの乙姫より高く飛んだのか、上条はその衝撃に本気で地面に倒れかかる。
 どこかで聞いたことがある声が耳に入り、どこかで見たことあるような茶髪が上条の肩へ掛かる。 だが顔を見ようとすると
ヒョイヒョイッと右へ左へと避けてしまうので一向に誰か分からない。

当麻「誰か分からないけどとりあえず降りろ、って酒臭っ!? え、本気で誰ですか酒飲むような御方に上条さんがお兄ちゃん
    呼ばわりされるわけねーだろ!??」

 全力で振り払ってみるが、相手はそこそこ腕力もあるらしく一向に離れる気配がない。

当麻「つか今度はマジで重いんですが!! ……ッぐあ! いってー!!」

 試しに心情を正直に吐露してみたところ、思い切り頭突きされてしまい涙目になる。

??「このプロポーションでまらふまんがあるというのかーっ!!」
当麻「だから見えねーってば!! しかもベロベロじゃねーか誰だよもー!!」

 しかしそれよりも何よりも一番問題だったのが――――――

当麻(む、胸……胸が、胸があたるんですけど! 胸があたるデカイ、デカイ胸、バスト、おっぱい!)

 相手は相当巨乳なのか、体を少し離すように負ぶさっていたにも関わらず、時より上条の背中に二つの柔らかいものが
ムニュッムニュッと押しつけられるのを感じる。
 上条の脳内では痛みとか焦りとかが徐々に片隅に追いやられ、そのほとんどが『デカイおっぱい』というイメージで満た
されていく。 一瞬『まぁいいやこのままで』とか不埒なことを思いかけてしまいそうになる。

当麻「た、助け……」

 頼みの綱である家族の方を見やると、母親は「あらあら。 誰に似たのかしらデジャビュだわ」とか言いつつ恐ろしい笑顔で
刀夜を見ているだけだし、父親はその母に若干脅えて何やら言い訳しつつ、どうしたものかとこちらをチラチラ窺っているだけ
だし、いつも元気な乙姫は何故かジト目で上条を観察しているだけだった。

当麻(ま、マズイ。 このままじゃ、このままじゃ……………………顔がニヤケるぅーッ!)

 これから数日共に過ごす家族の前でその失態だけは避けなければならない。
 上条は奥歯を噛みしめる。

368寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:01 ID:kz2Ax.NU
【81/2−24】


当麻(よし、奥の手だ……………たすけて御坂美琴大センセー!!)

 説明しよう! 上条当麻は日頃から超電磁砲の異名を持つ御坂美琴大センセーから致死レベルの攻撃を受けているため、彼女を
想像する事により己の内から恐怖《トラウマ》を呼び起こし、それによってどれだけリビドーが抑えきれない状況でも賢者に戻る
事が可能なのだ!!(今発明)
 つまり本人が聞いたら確実に怒り出しそうな方法であるのだが、現状上条当麻の息子としての尊厳がどうしようもなくピンチ
なのでしょうがない。
 上条は目を閉じ精神を集中させると、目の前にぼんやりと御坂美琴の姿を作り出した。
 一瞬その姿を見て穏やかな気持ちになりかけるが、想像の中の彼女は上条の姿を発見すると怒りに震え始めた。 そして体の
周りをバッチンバッチンと青白い電撃が舞う。

当麻(こ、こえぇ!! 殺される死ぬこえぇ!!)

 想像の中の美琴は唸りだす。

美琴「ア〜〜〜ン〜〜〜タ〜〜〜は〜〜〜!!!」
当麻(まるで本物みてえだ、幻聴まで聞こえてきた。 いけるんじゃないかこの方法!?)

 美琴の怒りに合わせて空からゴロゴロと雷雲の音まで聞こえ出す。

当麻「…………………は!? ちょっと待て、ゴロゴロ??」

 慌てて上条は目を開ける。
 そこには想像通りの美琴の姿があった。 しかし上条が想像した物ではない。 上条が想像しようとしたのは雷撃の槍を放とう
とする御坂美琴であるが、何やらいつもと様子が違う。

当麻「…………………えーっと」

 再び空がゴロゴロと言う。
 上条はチラッと上空を見ると、さっきまで晴れていたはずの空に真っ黒な雷雲が不自然に出来ていた。
 上条の全身から気持ちの悪い汗がダラダラと流れ出す。

美琴「ひとの母親と、何イチャイチャ抱き合ってんのよ………」

 上条はその言葉でようやく後ろの人物が誰か理解する。

当麻「チョットマッテ、ミコトサン。 オチツイテ。 オチツイテ。 ミコトサン。 ハハオヤ、カミナリ、ヨクナイ!!」
美琴「うっさい黙りなさい!!!」

 恐怖で片言になった上条の言葉を美琴が一蹴する。
 その時、上条の体がフッと軽くなった。
 思わず後ろを振り返る。

美鈴「まっずー退散」

 美鈴はそそくさといった感じで上条宅の方に居る乙姫のもとへと向かい、上条のことなどどうでもいいとばかりに何やら
こそこそと話し始めた。

当麻「そこー!! 何だよ、何ハイタッチしてんだよ!! アンタの娘のやり場の無い怒りはどーすんだよ!?」
美鈴「うーん、そうね、やっぱ大きい方が好きらのかしらねえ」
乙姫「じゃないかなあ、美鈴お姉ちゃんの時はお兄ちゃん完全にデレデレしてたし、目ー瞑って感じ入ってたし」
当麻「聞けよ! つーかいつ知り合ったんだよ二人とも! んで何の話してんだ俺を放っといて、ってわーこっち睨んでるお願い
    します後生ですから助けて下さいほんと頼むからさー!!」

 美琴にツッコミを入れるのが怖くて事の元凶へと矛先を向けてみたが何もかも無意味なようだった。

美琴「ア・ン・タはこんな時にでも私だけスルーかそんなに巨乳が好きかニヤケ面してんじゃないわよこのエロ馬鹿当麻ー!!」
当麻「ちょっまっ!」

 美琴は挙げていた腕を振り下ろした。
 次の瞬間、

 ビリビリドカーン!!! ――――――――とはならない。

 一応名誉のために言っておくと、そもそも美琴は雷を落すつもりなど無かった。
 いくら上条が自分の母親とイチャ付いているところを目撃したところで、そして上条がそれにニヤニヤしていたところで、
さすがに落雷は行きすぎである。
 せいぜい『雷撃の槍十発の刑』程度で十分だろう。
 しかし上条の家族の目があるのでそれも厳しい。 普段からこんな調子で喧嘩してますよとばかりに一発食らえば即死しかねない
『ように見える』雷撃を上条に向けて飛ばしまくるのは心象が最悪であるし、それを見られることに妙な気恥ずかしさもあった。
 なのでこの雷雲は上条を精神的に殺るためのハッタリなのだ。 上条がビビればそれでオーケーである。
 そしてそれは実際に効いた。 いや、効きすぎたようだった。

当麻「…………………」
美琴「…………………」

369寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:12 ID:kz2Ax.NU
【82/2−25】


 場がシーンとする。
 落雷という恐ろしい攻撃を前にも、普段の上条なら超反応で対処できたであろう。
 でもこのとき周りには善良な(?)一般市民が居たのだ。
 美琴を信頼していないわけではなかったが、さすがに落雷は危ない。 これは雷を落される前に止めなければならない。
などと思った上条はやや錯乱気味に思い切って前に踏み出したのだった。
 その結果が今の状態である。
 二人は色んなことが頭を巡って体が固まってしまっていた。

詩菜「あらあら。 私ったら息子の育て方を間違ったかしら。 いくら衝撃的な再会だったからと言って年端もいかない女の子の
    怒りをなだめるのに往来でいきなり抱きしめるという行為に及ぶのはいかがなものかしら。 ねえ刀夜さん? あらあら。
    あらいやだ、私ったら今ので似た状況を少なくとも4シーン分は思い出しちゃったわ、これは遺伝なのかしら刀夜さん?」
刀夜「母さんお願いだからその思いだし怒りは勘弁して頂けないだろうかいえ何でもないですごめんなさいでしたー!!」
乙姫「お兄ちゃん……」
美鈴「あらーん? いつまで抱かれたまんまでいるつもりなの美琴ちゃぁん♪ 実はあまりの嬉しさに意識飛びそうなのーん?」

 ひとしきり皆の意見を聞いたところで、ようやく二人の頭は正常な思考を取り戻しズバァァッ!! と勢いよく離れる。
 そして家族の方へ向いて仲良く金魚のように口をパクパクとさせてどうにか言い訳し始めた。

当麻「………ちちちちが、違うんですほんと皆様これは違うんです誤解です!」
美琴「そそそそうそう違うのよ勘違いなのよそういうのじゃないのよ!」
当麻「つまり雷が危ないので俺の幻想殺しが咄嗟に右手で頭へゴーなのです。 詳しく話すと長くなるのですがとにかく信じて
    下さいお願いします!」
美琴「別に嬉しくて固まってたとかとかじゃないわよ? だだだ、大体コイツとは何もないわけで………」
当麻「(あ、おい違うぞ御坂怒れ、抱き付いたんだからここは怒るところだ!)」
美琴「(え? ……あ、ああそうねそうよね)」
美琴「えと………、ていうかアンタは何いきなり抱き付いてきてんのよ馬鹿〜」
当麻「ぎゃーあぶないー。 マイリマシター」

 美琴のおでこあたりからピリピリパチパチ〜と弱いスタンガン並の電気が放たれ、それが上条の右手に吸い込まれて消える。
 自分達でも笑えないほど酷い演技であった。

当麻「ということです。 いつも会うたびビリビリしてくるコイツへの対処方という訳です」
美琴「ん? ちょっと待ちなさい。 アンタがいつもいつもムカツク状況になってんのが悪いんでしょ?」
当麻「うぐ……いやそれでも『とりあえず』でいつも電撃浴びせられる身にもなってみろよ! 実際恐怖なんだぞ? 右手以外に
    当たったら死ぬっつの!」
美琴「うっさい! そんなこと言ってアンタ結局いつも避けるじゃないのよ。 一回くらい当たれ! そしたら考え直すわよ!!」
当麻「当たったら病院かあの世行き決定だっつの。 今まで当たらなかったからって今度も当たらないとは限らないんだからな!!」

 ぎゃーぎゃーと何やら二人にしか分からない痴話喧嘩を始める。

美鈴「まあ……、よく分からないけど何というか大変仲が良いわね。 当てつけられちゃった感じ?」

 約四名はその様子に呆れつつも、何やらこれで一段落付いたのだろうとばかりに二人を無視して各々勝手に話しつつ上条宅へと
入っていくことにした。

詩菜「それにしても随分と早く来たんですね御坂さん。 あ、乙姫ちゃんお餅食べるかしら」
乙姫「食べる食べるー!」
美鈴「いやまぁ、こちらも色々ありまして」
刀夜「おーい二人ともー、先に入ってるぞー………って聞いてないな。 まぁ飽きたら入ってくるか」

 バタン、と扉が閉まった。

当麻「っつーかそもそも根本的な疑問があんだけど!」
美琴「何よ!」
当麻「何でお前がここにいるんだよ?」
美琴「……………………………さぁ?」
当麻「さぁあ??」
美琴「なに、私じゃ不満だった? 悪かったわね大きくなくて!」
当麻「何の話だよ!?」

 二人が既に家の前には自分達しか居ないことに気付くのは、さらにこの三分程後である。

370寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:24 ID:kz2Ax.NU
【83/2−26】


当麻「(それじゃ、とりあえず関係は隠すってことで)」
美琴「(分かってるわよ。 ていうか実のところそっちの方がやりやすい気がする美琴さんなのよねー。 要はアンタへの対応を
    秋くらいまでのリアクションに戻せばいいって事でしょ?)」
当麻「(………ビリビリはすんなよな)」
美琴「(さあてね、アンタ次第じゃないの?)」
当麻「(問答無用でやる気満々かよ! 外での能力使用はそもそも厳禁だろ!?)」
美琴「(その程度私なら誤魔化せるわよーだ。 ってリビングどっち?)」
当麻「(さあ、こっち……じゃないな和室だ。こっちかな)」

 二人でこそこそ話すのを止めて一室のドアを開く。 リビングの暖かな空気が二人を包んだ。
 先に入っていた四人は中央に設えられた長方形のローテーブルの周りに座っていた。 近くにある薄型テレビには正月の
特別番組が映し出されている。
 リビングは和洋折衷。 上条の寮のリビングよりはもちろん広く、倍以上あった。 特徴と言えばそこかしこに刀夜が買って
きたらしいお土産といくつかの観葉植物が置いてあることくらいだろうか。 上条は部屋に入るや思わず美琴と一緒になって
キョロキョロと部屋を見回してしまう。

刀夜「心配か? お土産はただ適当に並べてるだけだ。 前みたいなことはない」
当麻「へっ!? あー、………そっかなら安心だなーははは」

 どうやら都合良く勘違いしてくれたらしい。
 二人は詩菜が用意してくれた座布団に座ろうとする。

美鈴「ああっ、ごめんごめん。 私こっち行くわね。 はいどうぞ」

 何故か美鈴がよく分からない気を回してくれた結果位置は隣同士にさせられた。 美琴は数秒何か言いたそうな顔をしていたが、
酔っぱらいを相手にするのは諦めたのか大人しく座る。
 テーブルには既に詩菜が作ったのであろう正月らしい料理が並んでいた。

刀夜「とりあえず改めて、明けましておめでとう。 皆今年もよろしく頼む」

 刀夜が口火を切ると皆もそれにつづいて新年の挨拶をする。

詩菜「この中で面識がないのは、乙姫ちゃんと美琴さんだけかしら?」
乙姫「え、そうなの?」

 乙姫と美琴が目を合わせる。

乙姫「……えっと、竜神乙姫って言います。 当麻お兄ちゃんの妹です。 どうぞよろしくおねがいします美琴さん」
当麻「だから従妹だろ?」
乙姫「心の中では妹なのー!」
美琴「はじめまして乙姫ちゃん。 私の名前は御坂美琴。で、えっと…………」

 美琴はチラッと上条の方を窺うが、別に上条との関係を敢えて紹介する必要もないだろうと思いスルーしようとする。

乙姫「美琴さんってお兄ちゃんのかの―――ンー!ンー!」

 何か言いかけた乙姫の口を何故か美鈴がガシッと掴み、さらに自分の口に人差し指を当てシーッ! と言って制した。

乙姫「ぷはっ」
美琴「………で、乙姫ちゃんは何でうちの母と知り合いなのかしら?」

 美琴は先程から色々と怪しい美鈴をジロッと横目で見つつ乙姫に尋ねる。

乙姫「ん? 母って、誰?」
美琴「………コイツ」
乙姫「美鈴お姉ちゃん?」
美鈴「そうよ? お姉ちゃんは美琴ちゃんのママよ?」
乙姫「………えー!? ウソ見えなーい!! ……で、でも詩菜さんもおばさんって呼びにくい感じだし、有り……なのかな?」

 上条家の男性メンバーは『その反応は正しい』とばかりにウンウンと頷く。

美鈴「乙姫ちゃんとはこの前知り合ったのよねー」
刀夜「そういえば私が海外出張から帰ってくる前日あたりだったか」
詩菜「丁度乙姫ちゃんが泊まりに来た時に美鈴さんが遊びにいらして、二人で意気投合したんだったわね」
乙姫「そんな感じそんな感じ。 アレ………もしかして美鈴さんって呼んだ方が良かったのかな?」
美鈴「え〜、お姉ちゃんの方がいーいー」

 年甲斐も無く()変に甘えた声を出しながら体を揺する。
 相当酔ってるらしいことはそれだけでも分かった。
 上条はその姿を見て小さく溜息を付いた。 正直酔っている美鈴が苦手である。

371寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:34 ID:kz2Ax.NU
【84/2−27】


当麻「ていうか一体どれだけ家近いんだよ。 そんでいつの間に母親同士で仲良くなってんだよ」
詩菜「通ってるプールで偶然会っちゃってねえ」
美鈴「実はそれ以前にそもそも詩菜さんってちょっとした有名人だから近いってのは知ってたわけだけど」
詩菜「あらあら。 そんなこと言ったら美鈴さんだってちょっとした有名人ですよ?」
当麻「んじゃあ結局今日も遊びに来たってことで良いのか? 全くどれだけ自然にサプライズするんだよ………」

 世の中狭すぎにも程があるだろうと今度は大きな溜息を漏らした。

詩菜「あら違うわ。 言ってなかったかしら」
当麻「ん?」
美鈴「今日はお泊まりに来たのよ」

 その言葉に息子と娘は凍り付く。

当琴「「はあ!?」」
当麻「……、って何でお前まで驚くんだ?」
美琴「だ、だって私は………父が帰ってこない帰ってこないって嘆いて飲んだくれてたコイツが『暇だから上条さんちまで新年
    の御挨拶に行きましょう』って言うから付いてきただけで………」
美鈴「あらーん? 美琴ちゃんそういうこと言っちゃっていいのかなーん? ここがうちと余り距離がないと知った時の美琴ちゃん
    と言ったらん♪ ぶっちゃけこっちが恥ずかしくなるような感じだったわよーん? 隠そう隠そうと必死になってるのに
    嬉しさが滲み出て来るみたいな感じ? そわそわしちゃって『ねえママまだ行かないの? ねえママあと何秒? ねえママ
    ところでこの香水どう思う? ねえママ…』」
美琴「わーわーわーバカバカうっさい! 変な誤解を招くようなこと言うなこの酔っぱらい!!」
美鈴「んふーん♪ 無理しなくていいって。 大丈夫大丈夫。 ママは分かってる。 本当は美琴ちゃん死ぬほど嬉しくて今にも誰か
    さんに抱き付いてしまいそうなほど舞い上がってるんでしょーん?」
美琴「だ、だだだ誰が、べべ別に私は今冷静よ。 何で私がコイツに抱き付かなきゃならないってのよ……」
美鈴「あらーん? 私は誰とは言ってないわよーん? 美琴ちゃんったら一体誰に抱き付きたいのかなーん?」
美琴「ッ!? は、はめたわね!?」
美鈴「この程度ではめたなんて言わないわよ。 美琴ちゃんがテンパってるだ・け」

 美琴は悔しそうに赤くなる。 頭や肩から微量の電気が漏れた。

当麻「どわっ!! な、なんか知らないけどこちらに被害がー!」
美琴「ってか泊まるっていきなり何よ!? 何で言わないわけ??」
美鈴「言ったら怖じ気づくでしょーん? 本心は別でも」
美琴「おじ…………って、まあそりゃ、当たり前じゃん! 泊まるって………」

 美琴は思わず上条の方をチラッと見てしまい目が合う。 そのおかげで抑えていたものが臨界点を超えたのかボシュッ!
と音が出そうなほど一気に顔が赤くなり、遂には大人しくなってしまった。

詩菜「確か旦那さんが帰ってこなかったら遊びに行きたいって、前回来た時に。 あ、乙姫ちゃん今お餅持ってくるわね」
乙姫「私自分で持ってくるよ。 もう覚えたし」
詩菜「あらそう?」

 乙姫はタタターと台所のある方へ小走りで駆けてゆく。

刀夜「そういえば旦那さんは何されてるんですか? あ、どうぞ召し上がって下さい」
美鈴「ん、ああすいません頂きます。 実はお腹空いてて………うちのパパの仕事ですか? うーん……何かしらねぇ美琴ちゃん?
    …………うわ、美味しー」
詩菜「お口に合います?」
美鈴「全然バッチリですよ。 うちの味付けとはちょっと違いますけど」
美琴「………総合コンサルタントでしょ。 アンタ娘に聞いてどうすんのよ。 御坂旅掛って言えばその筋の人には有名だって
    自慢してたことあったけど、仕事の内容をいくら聞いても一貫性無くて理解しがたいのよね。 ほんと今どこで何やって
    んのかしら」

372寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:46 ID:kz2Ax.NU
【85/2−28】


 刀夜はその名前にピクリと眉を数ミリほど動かした。
 もちろんその程度の変化に周りの者は気付かない――――

美鈴「お金は通帳に入ってくるけどねー。 あ、今度うちのおせちも持ってきますね。 そのパパのせいで余っちゃって」
刀夜「ほう。 しかし私の仕事からすると何となく分からないでもない内容ですね」
美鈴「へえ、そうなんですか?」
詩菜「あらあら。 あらあらあらあら。 刀夜さんは旅掛さんとお知り合いなのかしら。 ほんとに世の中って狭いのね」

 ――――ただし詩菜を除く。
 浮気(本人は全力で否定)を速攻で見抜くために鍛えられた観察眼の前には、刀夜に隠し事は不可能であった。

刀夜「…………母さん、表情を読んでネタバレはしないでくれ」
美鈴「ん、旅掛と知り合いなんですか?」
刀夜「ま、まあちょっとロンドンの酒場で偶然出会っただけですよ。 その時は苗字が御坂なのは偶然だと思ってたけど」
詩菜「あーらあらあら。 随分と大きな事件に巻き込まれたようねえ。 後でその話はじっくり聞こうかしら」
刀夜「………………」

 刀夜はダラダラと汗を流しながらそれをスルーして「さぁおせち食べるかー」と言いつつ箸を伸ばした。

美琴「(……ねえ、アンタの母親って読心能力者かなんか?)」
当麻「(さあ?)」

 二人ももはや早すぎる展開に付いていくのを諦め、「いただきます」と言って刀夜と同じようにおせち料理をつつき始める。
 上条の記憶としては初めて食べる母親お手製のおせち料理であり、なかなか感慨深い。
 美琴もその味を気に入ったようだが、何故か素直には喜んではいないようだった。 対抗意識でも芽生えたのだろうか。

美鈴「あ、お二人とも飲みます?」

 美鈴は持参した瓶を持ち上げる。

刀夜「私は遠慮しておきます。 緊急の仕事が入るかもしれないので。 まあ大体は断るつもりですが」
詩菜「あらあら。 じゃぁ私が少しだけ頂きましょうかしら」

 詩菜は台所へコップを取りに行く。

当琴((真っ昼間から片手に酒瓶って……))
美鈴「ん〜? 美琴ちゃんも飲む?」
当麻「うッ!?」
美琴「お願いだから人様の前で14歳の娘にお酒勧めないでもらえるかしら」
当麻「そ、そうそうそうだよ駄目だよな未成年がお酒飲むのは。 ナイス判断!特にお前は飲むべきじゃないと思うぞ永遠に!!」
美琴「……いきなり何? どういう意味それ」

 上条はこの展開に少し焦る。
 美琴が酒を飲んで悪酔いし、電撃を(主に上条に向けて)撒き散らす様子がありありと想像できるからだ。
 一滴も飲ますわけにはいかない。

美鈴「何で当麻君まで?? つーか美琴ちゃん、ママのお酒が飲めないっていうの?」
美琴「はいはい飲めないし飲まないわよ、だからオヤジみたいな発言は自重しなさい。 そもそも中身何よ、いつものワイン?」
美鈴「御・神・酒☆」
美琴「………………あっそ」

 美鈴はウインクしてみたが、娘はそれをシッシッと手で払う。

刀夜「ん? どうした当麻、正月は子供のお酒解禁デーだー! とか言っていつも積極的に飲んでなかったか?」
当麻「へっ!? えーっと、いやその、……うん。 まぁ俺は飲むよ飲めば良いんだろ…………はあ」
刀夜「いや勧めてるわけではないんだが。 褒められたことでもないしな」

 記憶喪失である上条は極度に以前の自分と違う点があることを嫌う。
 というわけでどうやら飲まざるを得ないらしい。

詩菜「あら、当麻さんはジュースじゃなくて良いの?」
当麻「や、それで良いよ。 御神酒(?)は少しだけ」
乙姫「あー私も飲むー!!」

 焼いて柔らかくなった餅を持ってきた乙姫は帰ってくるや否や叫んだ。

美鈴「えっと、乙姫ちゃんはさすがに……」
乙姫「えー!! お兄ちゃんも飲むのにー? 私も飲みたいー、少しなら良いでしょお姉ちゃん」

 座り直し上目遣いに甘えてきた乙姫に美鈴はやや困って詩菜と刀夜を見やる。

373寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:21:56 ID:kz2Ax.NU
【86/2−29】


刀夜「まぁ少しだけなら………ってほんとに中身は何ですか?」
美鈴「白ワインです」
詩菜「あらあら。 乙姫ちゃんには多分苦いと思うわ。 甘酒もあるわよ?」
乙姫「そんなこと無いよー。 だから少しだけっ、ね?」

 大人達はまあ少しなら良いだろうという結論に至り、乙姫には大体小さい御猪口一杯くらい、上条にはその二倍くらいを注ぐ。
上条のコップに注ぐ時に美鈴が「おっと」とか言いつつ注ぎすぎたのは十中八九わざとに違い無い。 その時美鈴の顔がニヤッ
としていたのを上条は見逃さなかった。

乙姫「おー。 お酒の匂い」

 乙姫は少しだけ匂いを嗅ぐと、早速それをジュース感覚でグイッと一気に飲み干す。

乙姫「ん〜……」
刀夜「大丈夫か?」
乙姫「美味しいけど、やっぱ甘酒の方が好きかも」
美鈴「あらら、それでも飲めるんだ。 将来は酒飲みかしら」

 美鈴がケタケタと笑った。
 乙姫は再びタタッと台所へ行くと、缶の甘酒を持ってきて今度はそれをチビチビ飲み出す。

詩菜「美琴さんはオレンジジュースでいいかしら?」
美琴「あっ、はい。 あ、自分でやるんで大丈夫です」
当麻(……………美琴がうちの親に丁寧語を使っている)

 何だか右から聞こえてくる違和感にムズムズしながらも上条は仕方なしにワインに口を付ける。
 どの程度飲んだらどの程度酔うのか分からないので正直かなり怖かったりする上条当麻であるのだが、

当麻「あれ、美味しい」

 ワインは随分と飲みやすく、簡単に全て飲めてしまった。

詩菜「あら本当」
美鈴「皆いい飲みっぷりねえ。 一応そこそこ良いの持ってきた甲斐があったわー」
刀夜「ほう。 年代物ですか?」

 大人達は子供達にはイマイチよく分らないお酒談義に花を咲かせ始めた。
 子供達は子供達で話せばいいのかもしれないが、上条と美琴の会話は本音トーク厳禁なので盛り上がる要素がない。 自ずと
乙姫が会話の中心になる。

乙姫「ふあ、何か変な気分」
当麻「さすがに飲み過ぎじゃないのか、っていつの間に甘酒三本目!?」
乙姫「おにーちゃん!!」
当麻「な、何だ?」
乙姫「これ美味しい。 はい、あーん」
当麻「………ちょい、あの、さすがにそれは何と言いますか恥ずいんですけど」
当麻(そして右側から無言のプレッシャーを受けるんですけど)
乙姫「あれ? このくらい妹として普通じゃないの? おっかしいなー、良いから食べなよ。 つか食べろ、うりゃー!!」

 乙姫が上条に擦り寄りつつ箸を危なげに顔へと近づける。

当麻「あぐ……う、美味い美味い。 つかお前完全に酔ってるだろ?」
乙姫「あによー。 全然酔ってなんからいわよー」

 と言いつつ上条の胸へグデーともたれ掛かる。 少し堅めの髪の毛が胸のあたりでモゾモゾしてくすぐったい。

当麻「うっ……」

 上条は右側から刺すような視線を感じた。

美琴「アンタって、親族に対してもそうなわけ?」
当麻「……………盛大な誤解ですから蔑むような目をやめてください」
乙姫「おにーいちゃん!!!」
当麻「あーはいはい今度は何でせうか?」
乙姫「そう言えば何で美琴さん中学生なのに知り合いなの? しかも常盤台中学って外の私でも知ってるくらいの超超ちょーう
    お嬢様学校じゃん? 正直お兄ちゃんと接点無い気がするんだけど」
当麻「……………えーっと」

 上条は美琴と目を合わせる。 お互いの顔はまるで『マズイ』とでも書いているかのように分かりやすい表情であった。 その
部分の設定くらいは打ち合わせしておくべきだったかもしれない。
 しかも最悪なことにその発言に大人達まで反応し出す。

374寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:22:09 ID:kz2Ax.NU
【87/2−30】


刀夜「そうだぞ当麻。 散々はぐらかされてきた気がするが、何で常盤台のお嬢さんと知り合いなんだ? きっちり教えなさい」
美鈴「んふ♪ 私も興味あるわねえ。 美琴ちゃんは全く話してくれないし」
詩菜「あらあら。 私は大体予想できるけど、そう言えば大覇星祭の時には既に仲が良さそうだったかしら?」
乙姫「そーだよお兄ちゃん。 大覇星祭の借り物競走の時二人がテレビに映ってたよ!? 私見たモン! 美琴さんが飲みかけの
    スポーツドリンクをお兄ちゃんにあげるの!!」
美琴「ウ゛ッ!!」
詩菜「あらあら。 そんなこともあったのね」
美鈴「そういえば大覇星祭の少し後、当麻君とメールアドレスを交換した時に美琴ちゃんのアドレスは既にあったわよねえ。
    一体どういう経緯で交換したのかしらーん?」
詩菜「あらあら。 実は想像以上に親密なのかしら。 余り追及することじゃないかもしれないけど、母さんちょっと心配だわ」
刀夜「ん? というかあの後また美鈴さんと会ったのか当麻?」

 四人の質問と視線が突き刺さり、二人は逃げ場のない状況に本気で焦る。 しかし打ち合わせをしていないので適当なことは
言えない。 こう言う場合は本当のことを柔らかく表現するしかないだろう。
 そこら辺の息を合わせるためチラチラと視線を合わせつつ話し出す。

当麻「いや、なんつーか皆様が考えておられるような楽しげなイベントは全くもって皆無でしてほんと大変申し訳ありませんが。
    夏前に色々あっただけで、な!」

 実は詳細は覚えていないので美琴に振る。

美琴「そうそう、夏前に、ちょっと不良数人に絡まれてるところを助けてもらったってだけで」
美鈴「レベル5の美琴ちゃんがー??」
美琴「そ、そう言うことにしておいてよ! それで、何やかんやあって、学校がどちらも第七学区ってこともあって会う機会が
    多かったというか」
当麻「腐れ縁というか、一方的な攻撃対象…痛っつ! ………じゃなくて友人というか」

 途中でテーブルの下で足に小さい電撃を食らう。 『攻撃対象』はNGだったらしい。

美琴「まぁそんな感じ……」
美鈴「………あらーん?? 美琴ちゃん、何かそこリアクション間違えてるんじゃなーい?」
美琴「へっ? 何が?」
美鈴(『腐れ縁』や『友人』と言われて全く落ち込んでない?? んーさては何かあったわね)
美鈴「まーいいわ」
美琴「??」
乙姫「あれ〜? なんだじゃぁ当麻お兄ちゃんの彼女じゃないの?」
美琴「ち、違う違う違う違う! 誰がこんなヘッポ……えっと、もとい……乙姫ちゃん? 一応この誰にでも女とあらばイチャ付き
    まくる当麻お兄ちゃんでも色々都合が…」
当麻「っふぐあああああああああああああああああ!!!」
美琴「って、アンタはいきなり何よ!?」
当麻「…………イエ、ナンデモゴザイマセン」
美琴「?? ……そ、そうそう。 そうなのよ。 というわけで何でもないのよ」

 四人はどうにも納得できないという表情だったが二人が否定してる以上追及しても仕方ないと思い諦める。
 まああと二日あるのだからいくらでも聞き出す機会はあるだろう。

乙姫「何だ〜、じゃあこのままでいいやー。 ちょっと眠い」
当麻「お、おい。 重い」

 乙姫はさらに上条に密着する。 あぐらを掻いた上条の上で猫のように丸まって寝る気満々である。

美鈴「美琴ちゃん、気持ちが顔に出ててるわよーん?」
美琴「ッ!?」

 美琴は右手で自分の顔をムギュッ!と掴む。

美鈴「ふふ、なーんちゃって」
美琴「ぐッ!」

 母にツッコミを入れようと手を振ってみたのだが、美鈴はヒョイッと避けてしまう。
 位置的に斜め前なのでそれ以上追うことはできなくて、我慢して座り直した。
 改めて酔っぱらいは相手にするべきじゃないと自分に言い聞かせ、美琴は無理矢理話題を変える。

375寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:22:21 ID:kz2Ax.NU
【88/2−31】


美琴「あ、あの。 詩菜さんって料理お上手ですね」
詩菜「あらあら。 常盤台の女の子にお世辞でもそう言ってもらえると何だか嬉しくなっちゃうわ。 ありがと」

 と言いつつ本当に嬉しそうな顔で微笑む。

美琴「いえいえお世辞なんかじゃないです。 それで、良かったら後で味付けを教えて欲しいなーなんて思いまして」
美鈴「ぶふふっ。 ちょっ、ねえねえ当麻君、美琴ちゃんが遂に親御さんへアタック開始したわよ!?」
当麻「へ? って乙姫ちょっと、その年で寝酒はやめろよ」
美琴「……………そこ、私の視界の隅でゴチャゴチャしないでもらえる?」
美鈴「さーて何のことかしらーん」

 美鈴は今にも爆笑しそうな顔を背ける。 笑い上戸なのだろうか。

詩菜「私は全然構わないけど、でも常盤台って家庭科も凄いんでしょう? 教えられる箇所ってあるかしら。 大体いつも目分量で
    作ってしまうし。 ちょっと心配だわ……」
美琴「そんなこと無いですよ。 うちの家庭科なんて所詮教科書通りで基本しか教えないですから。 それに私って基本的に何でも
    食べるんで、是非参考にしたくて」
美鈴「『美琴ちゃんが』じゃないでしょーん? い、一体誰に、誰に食べさせてあげたくて……お袋の味を……ブフーッアッハハ!!
    も、もうだめ。 美琴ちゃん可愛すぎ!! アッハハハ、ウッゲホゲホッ!!」
当麻「うわ、何だこの人いきなり! てか乙姫寝るんならここで寝るな風邪引くぞ」
乙姫「んー、もう駄目食べらんないし飲めない」
詩菜「あらあら、大丈夫ですか美鈴さん」
美琴「あー、うちのバカは放っておいて良いんで」
刀夜「当麻、乙姫ちゃん寝ちゃったなら二階のいつもの和室に布団敷いてあげなさい」
当麻「ああ。 分かった。 だってさ乙姫、行くぞ」
乙姫「んやーだー。 お兄ちゃんと寝るー」
美鈴「ゲッホゲホ。 き、気管に……ゲホゲホ」

 ガタン! と美鈴がテーブルに肘をぶつける。
 その揺れで美琴の前にあったコップが倒れた。
 美琴が気付いてそれを押さえた頃には数瞬遅く、バチャッと少しだけ入っていたオレンジジュースが制服のスカートに掛かる。

美琴「ってうわ! ……あーあー」
詩菜「あら大変! 替えは持ってきてるかしら?」
美琴「泊まるなんて聞いてなかったから持ってきてません。 悪いですけど洗濯機貸してもらえますか?」
詩菜「それは良いけど、今乾燥機が丁度故障中なのよ。 冬だから明日まででも乾くかどうか……」
美琴「乾かすのは自分でやるので」
詩菜「自分で??」
美琴「能力使って」
詩菜「あら、なるほど便利なのね。 でもその間どうしましょう。 私の服合うかしら」
美鈴「ゴホン。 ッアーアー。 苦しかった。 ごめんね美琴ちゃん」
美琴「良いわよもう。 あ、私下に短パン穿いてるんで………ってすいません、短パンもちょっと濡れてるみたいです」
詩菜「あらあら。 風邪引いちゃうわ」
美鈴「服なら、丁度良いのがあるわよ」
美琴「持ってきたの?」
美鈴「うん、振り袖だけど」
美琴「………………はい?」
美鈴「初詣、行くでしょ」
美琴「ああ……でも乙姫ちゃんが起きてからでしょ? 何時になるか分からないわよ」
美鈴「そっか、それもそうね」
詩菜「どうしましょう。 フリーサイズの方が良いわよね」
刀夜「パジャマで良いんじゃないか? 何なら当麻のでも」
詩菜「そうね、とにかく早く洗わないとシミになっちゃうかもしれないし」
刀夜「おい当麻まだ行くな!」
当麻「んえ?」

 刀夜はどうにか乙姫をおんぶした上条当麻を止める。

刀夜「ついでに二階の隣の部屋もエアコン付けて、美琴さんを案内してやってくれ。 あとパジャマの下の方貸してやりなさい」
当麻「母さんのがいいんじゃ……ってまあ良いか、了解ー」
美鈴「んじゃ私はちょっくら美琴ちゃんの制服の替え取ってこようかしら。 どうせ一旦戻るつもりだったし。 えっとすいません
    がちょっと娘をよろしくお願いしますね」
詩菜「あらそうですか、それじゃぁ私はその間に洗濯機を準備しようかしら。 うちのお洗濯がまだ途中で……。 ところで刀夜
    さんはどうします?」
刀夜「私は、部下とちょっと電話のようだ」

 刀夜は携帯を振った。

376寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 07:24:14 ID:kz2Ax.NU
【89/2−32】


当麻「よいしょっと。 んじゃ行くぞ」
美琴「うん」
美鈴「あ、美琴ちゃん何か持ってきて欲しいものある?」
美琴「えーっと………」
当麻「美琴ー?」
美琴「やっぱいい、適当に持ってきて」
美鈴「おっけー」
当麻「あ、悪い。 カバン持ってきてくんねえか。 アレ」
美琴「はいはい」
乙姫「わーいお兄ちゃんの背中〜」
当麻「おい引っ付くな!」
美琴「……………………」
当麻「痛い痛いカバンでブツな!」

 そして六人はそれぞれバラバラと移動し始める。


___________



FAQ??

乙姫って地の文だと竜神じゃね? → ノリです
乙姫って上条さんにべた惚れっぽくなかった? → それアニメ
乙姫なんか違うくね? → マジむずいっす
上条さん何で叫んだの? → 前回参照
美琴って美鈴を母とか呼んでるんじゃないの? → 二人きりの時はどうだろう?レールガンではママというセリフもあった気が
美琴って香水付けるんだっけ? → 3巻参照
帰省ってそんな簡単にできないんじゃないの? → かもしれない
ずーっとこの調子の話なの? → シリアスりたいんですがキャラ多いとほんと進まないというか書いてて面白いw
つかなげーよ → 次の次の次の章まで構想してるので多分この数倍続くお

ではまた1スレ後?w
マジ速いよびっくりだよw

377■■■■:2010/02/11(木) 07:43:36 ID:bKw6RmV2
リアルタイムktkr
寝てた人氏の帰省編まってましたw
GJです!

378■■■■:2010/02/11(木) 08:22:48 ID:kIGOCZRk
寝てた人GJすぎますぜ!

「去年のお正月の写真」があったから(アニメ版のみ)
年末年始くらいは帰省できるのでは?

379■■■■:2010/02/11(木) 10:41:44 ID:06YGZlPo
>>376
GJです!
続きを楽しみにしています!

380■■■■:2010/02/11(木) 12:16:14 ID:oj2aBKNE
> あらいやだ、私ったら今ので似た状況を少なくとも4シーン分は思い出しちゃったわ、これは遺伝なのかしら刀夜さん?
ぷふ、マジで茶吹いた。
さすが上条の親父…

381■■■■:2010/02/11(木) 12:54:30 ID:LdlYDJjc
寝てた人が起きた〜〜!
Good Job !
>美琴のおでこあたりからピリピリパチパチ〜と弱いスタンガン並の電気が放たれ、それが上条の右手に吸い込まれて消える。
 自分達でも笑えないほど酷い演技であった。
スタンガン程度って…一般人気絶しますぜ;これが恋人たちの甘いいちゃつきに思えるところが
上琴フリークなんでしょうな^^。
自分も今書いてるSS…登場人物3人ほど増やしたらあら不思議、プロローグだけで10レスぐらいになちゃった;;
いくら何でもということで現在書き直し中です;
登場人物増やしたらセリフだけで文章の埋まること埋まること。
続き待ってます!

382■■■■:2010/02/11(木) 13:17:12 ID:kfgWfiQg
寝てた人氏GJ。やばいよアンタ、いい意味で。


時に質問なんだけど、上条さんと美琴って味の好みとかって出たことあったっけ? 辛党とか甘党とか。
俺の記憶の限りでは出て無いと思うんだけどお願い教えてエ○い人。

383スピッツ ◆Oamxnad08k:2010/02/11(木) 13:54:47 ID:jMg7kEV2
寝てた人さんktkr GJです。
それも踏まえて今まで投稿した方GJです。

最近勉強忙しいから書けないぬ。ガチで中学真面目に国語受けとけば…
と今頃後悔してますw 前書いてたやつがキリのいいとこまで書きますか・

384■■■■:2010/02/11(木) 14:02:02 ID:vBNZMais
寝てた人が起きるとやばい地球がやばい

385■■■■:2010/02/11(木) 14:07:45 ID:CxWYMISs
寝てた人GJ!!
職人さんGJ!!

>>382
エ○い人じゃないけど答えてみる。
美琴の方はレールガン見る(読む)感じ、クレープとか普通に食ってるので甘い方が好きなのではないかという予想ならたつ。
あとはチーズフォンデュ?
上条さんはさっぱり。
強いて言うなら人間が食べれるもんなら食べれるとか言いそう(いちゃレー参考で)
あとはボロボロクッキー?
まあ、普通の味覚なのではないかなーと予想。

そういえば、もしかして2月10日の話から書いてた人って、リアルの日付にあわせて投下するつもりだったのか?
それなら、演出(?)GJ!と送ってみる。

もうすぐバレンタインか………やっぱり何か書いた方がいいのかなぁ…?
思い付いてないけど。

386wikiで3-351とか言われてるなにか:2010/02/11(木) 14:12:17 ID:gqKZiEVY
皆さんGJすぎです。はい!

で、投下ぁ!!します。
前スレの、誰も覚えちゃいない>>929の続きのようなもの。
途中なのですが、区切りをつけたいので。いちゃいちゃしてるような気がするから・・いい・・よね?
あと、大したものでもない上に、落ちなしの、ストーリー性なし、下手糞ですが、ご容赦ください。
大体4レス消費。

387とある美琴の突撃訪問:2010/02/11(木) 14:12:56 ID:gqKZiEVY

「よしっ!!」

「お姉様、なにが”よし!!”なんですの?」
「わ!、く、黒子!?。な、なんでもないわよ!」
「明らかに動揺してますわね。また、”ゲコ太”グッツを大量に寮に持ち込むのは止めてほしいんですの。
いきなり子供っぽい趣味を止めろとはいいませんが、限度はわきまえてくださいまし」
「わ、悪かったわねっ!」
ここは常盤台中学学生寮のとある1室。この部屋には今、御坂美琴と白井黒子がいる。
時刻は大体、夜11時くらい。この学生寮ではその時間だともう消灯の時間なのだが、美琴の方はあることがあって寝付けなかったからまだ起きている。
ジャッチメントの仕事で仕方なく起きている白井に、早く寝た方が良いですわよといわれてしまった。
でも、そう言われても寝付けないものは寝付けない。美琴は未だに頭が冴えてしまっている。もちろん、あることによって。

美琴に敏感な白井はそれを怪しむ。
「・・・もしかしてお姉様、何かあるんではないですの?」
「・・・・・・・・・な、何にもないわよっ・・・」
美琴はそういいながら内心ドキドキであるが、白井には絶対あんなことがあって寝付けないなどとは、ばれたくなかった。
ただ自分以外に知られたくないこと、というのもあるが、特に白井の方はかなり”特殊”な人間であるからだ。
どの辺りが特殊と言われると、美琴のことをお姉様と慕いその延長線上でシャワールームに飛び込んでくるくらいである。
寝付けない理由が、あること、つまり”アイツとの約束”のことあってはなおさらに。
もしあの”アイツとの約束”のことを話してしまったら、白井はどのような行動を取るだろうか。美琴ですら予測がつかない。
だから、絶対にバレてはいけない。これは美琴にとって死守すべき事柄なのだ。
美琴はなにがなんでも邪魔されたくなかった。

顔を枕に心の声が誰にも聞こえないよう、埋める。息苦しかったが、口が勝手に喋るとなれば我慢しなくてはならない。
寝付けないので、埋まりながら美琴は今日のことを思い出す。
(危なかったわ、思わず本音がでちゃう癖は治さないとなー。・・・でも、本当にアイツと約束しちゃったのよね!)
と、一人で何度も思い出す。実は寝付けない理由はこれにあるのだが、美琴はたとえわかっていても止められなかっただろう。

今は夜であるが、美琴の頭の中、その約束をした時間は数時間前に遡っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

388とある美琴の突撃訪問:2010/02/11(木) 14:14:30 ID:gqKZiEVY
美琴とアイツ、上条当麻はゲームセンターにいた。
とある罰ゲームで二人はゲーセン巡りをしていて、上条は美琴の鞄をもっている。
そろそろ帰宅時間がせまってきたので、最後に一つだけやって帰ろうということになっていた。
「あ!あれなんかどうかしら」
「ん?あれってパンチングマシーン?」
美琴が指したパンチングマシーンは以前、友達の佐天涙子に点数を越されっぱなしのもの。
美琴も悔しくて後で何回かやってみたのだが”パンチ”では彼女の記録を越すことはできなかった。いろいろと美琴にとって因縁深いものである。
美琴と上条はそのパンチングマシーンの前に行くと、スコアボートにいくつか点数が表示されていた。最高得点は100点だった。
実は、キックだと、どうかなーとやってみたら100点が出てしまったので、こういう結果になっている。

美琴は得点を確認した後、上条の顔を覗き込みながら、挑発してみる。
「ねえ、ねえ。アンタはこれで最高記録の100点出せる?」
「うーん、パンチングゲームか。やったことないけど100点ってものすごくないか?」
上条は基本食いつきが悪いようだ。でも、このままでは終わらせない。美琴は追い討ちをかける。
「あーら、怖気づいちゃったのかなー。アンタはこの点数が越せないって言うのかなー?」
「む!いつも上条さんは目の前の敵はなるべく避けて通りますが、いいだろう。その挑戦のったー!」
とても子供っぽい挑発だったのだが、上条はまんまと美琴の挑発にのる。
準備運動なのか、右腕を回しながら「ああした方がいいかな?いや、こうかな?」などと言い始めた。

美琴はうまく上条を乗せられたので、小さく「よし!」といってみる。
が、ここで不思議に思うことが一つ浮かんだ。
美琴はあの点数はかなりのものなので、誰も越せないと思っていた。実際未だに最高得点は100点のままだったし。
じゃあ、なぜ自分は上条にやらせようと思ったのだろう。
美琴は上条の顔を見る。なんだか心が安心するような気がした。
(・・・もしかして私、期待してる!?)
いつの日だったか、上条は自分を助けてくれた。もちろん、その時はかっこよかったが、今はただの上条である。
美琴が上条のことが好きなのを気づかない鈍感男である。
だから、ない、ないと美琴は頭をブンブンと振る。しかし、頭を振るたびに心の中の期待は高まってしまうのだった。
それで、美琴は無意識の内にポーっと上条を見てしまう。

「なあ御坂、俺の顔になんか付いてるか?」
「いい、いや、なな、なんでもないわよ!」
傍から見れば、美琴が上条に見とれていたのがわかるのだが、鈍感な上条は気づかない。
美琴としては、ばれなくて良かったと思う反面、なぜ気づいてくれないのかと不満にも思う。
「・・・御坂、もしこのゲームで俺が最高得点を出したら罰ゲームは帳消しってことでいいか?」
「な、なに言ってんの!?アンタの寮に連れてっていう約束そんな嫌だったの?」
「いや、いや!なにをそんなに怒っているのかわかりかねますがそんなわけではないです!!」
自分がなぜ上条の寮に行きたいのかも、わかっていない。もう慣れたが、これは美琴も一方的な片思いだと思う。
(ま、アイツなら当たり前か・・・)
なんだか美琴は期待している自分が馬鹿らしくなってきた。こんなことさっさと終わらせるために上条を催促する。
「とにかく!なんでもないから、早くやんなさい!。時間も少なくなってきてんだから」
「わ、わかったから、ビリビリするのはやめて!」
「さ、さっさとやんなさい!」
少し強引な催促されて、上条は美琴を警戒しながら、パンチングマシーンに一撃を入れる体制を取る。

389とある美琴の突撃訪問:2010/02/11(木) 14:15:06 ID:gqKZiEVY
そして、
「よし、じゃあ御坂、力を借りるぞ」
「え?・・・私が何て?」
と、美琴に意味が分からないことを言ってきた。
実は上条は美琴ならわかるかもしれないと思って言った言葉なのだが、上条の隣に居るだけで頭が一杯の美琴がわかるわけはなかった。
美琴は頭の中の整理を始めるが、それが終わる前に、上条は助走をつけパンチングマシーンに突っ込んでいく。
美琴が忘れられないあの言葉を叫びながら。

「―っ、俺の拳はちっとばっか響くぞ!!」

ズドーン!と大きな音が、ゲームセンターに響く。ゲームセンターにいた誰も彼もがその音に反応する。
一方の美琴はそんなことよりも、上条の言ったセリフが頭の中を駆け巡って、オーバーヒートしていた。
上条としては気合のつもりで発した言葉なのだろうが、美琴には大いに意味がある言葉である。
(な、なにを言ってんのよアイツ!そ、そんなセリフ言われたら・・・・・・意識しちゃう・・・・・・じゃない!)
心のどこかで期待していたせいもあって、美琴はどんどん感情が高ぶっていく。
もう、自分でも顔が真っ赤になって、どんどん俯いていくのがわかる。点数とか帰宅時間とかどうでもよくなってきた。
とりあえず、この状況から回復しなくてはいけないと思うが、そんなことできない。そうやって美琴が慌ててたら、上条が震える声で話しかけてきた。
「み、御坂。この場合どうすればいいんだ?」
上条を見てみると、顔が青い。美琴はなんだろうと思って、上条の目線を追ってみると、

そこには壊れたパンチングマシーンが、静かにたたずんでいた。

「逃げるぞ!!御坂!」
「ちょっ!?待ちなさいよアンタ!」
「―っ!ほら手ぇ貸せ!」
「わ、待って!まだ、心の準備が・・・」
その美琴の声を上条は聞こえなかったのか、強引に美琴の手を引っ張ってゲームセンターを離れていった。





「はあ、はあ、不幸だ」
「ああ、アンタ、ど、どうやったらああ、あんな力だせるのよ」
美琴は上条に手を繋がれていたことで頭の大半が使用不能状態だったので、言葉の機能がおかしくなっていた。
もちろん、上条はそんなことには気づいていない。美琴にとっては幸いというべきか、不幸というべきか。
「そんなこと聞かれても・・・。で、お前まさか今日俺の寮に来るつもりか?」
上条に言われて気づいたがそういえば何にも考えていない。
「ふえ?」
「いや、だから時間だっていってるの」
いつの間にか時刻はもうそろそろ帰宅時間を過ぎてしまう頃だった。さすがに何の準備も無しに門限破りをするのは危険だ。
それに、美琴としては上条の家に行くのにある思いを秘めているので、まだいける状態ではなかった。
「え?いや、まだ準備ができてないというか・・・。そう確認しとくけどアンタ、カレーが好きなのよね」
「なんの確認かわかりかねますが、確かにそういいましたが・・・御坂さん!?」
「(い、い、いきなりアイツの寮ってのは、我ながらと、とんでも無い発想だったわ。で、で、で、で、でも!!アイツの寮に行けるのよね!
アイツやっぱり、家庭的な子が好きなのかな?だ、だったら、カレーを作る練習をしなくちゃ!)」
「御坂さーん。なにをブツブツ言ってるんですかー?」
「え!?わ、わ、!!なんでもないわよ!じ、じゃあ準備ができたら連絡するから!そのときはよろしくね!!」
「御坂さん!?なにをよろしくなのですかー!?」
美琴はそんな上条の声を後に、一瞬にして駆け抜けていった。だって、上条にこんなこと考えているなんて死んでも知られたくなかったから。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(ぎゃー!?なに思い出してんのよ私!!別にアイツのことかっこいいとか、早くアイツの寮に行きたいとか考えてないわ!うん!!)
美琴はあの時のことを思い出して、ベットの上でバタバタする。そして、それはとても純情乙女的な仕草であるのだが、絶賛舞い上がり中の美琴は気づいていない。
そんな美琴を見て、白井は目を細くする。しかし、仕事の方を優先しなくてはいけないので、前に向きなおして自分の仕事に戻った。
もちろん美琴はその白井のことなど気にしておらず、頭の中は約束のことで一杯だった。
(うーん、練習した方がいいわよね。で、美味しく作れたら喜んでくれるかなアイツ。・・・な、なんかはは、恥ずかしい!!)
そんなこんなで美琴は一人で悶々として、白井は変な美琴に何かを感じながら、夜は更けていった。

390とある美琴の突撃訪問:2010/02/11(木) 14:15:36 ID:gqKZiEVY
1週間後。美琴はある修行をして準備万端で、上条をいつもの公園に呼び出した。しかし
「だー!!なんでいつもの道なのに道間違えんのよ私ぃ!!」
美琴は緊張しすぎて、いつも使っている道を間違えてしまい、あっち行ったり、こっち行ったりしてかなりの遅刻をしてしまっていた。
携帯の地図機能を使ってみたのだか、余計に道を間違える始末。もう、美琴がいる場所は知っているところではなかった。
上条からは『まだー?』と電話が来ていていたが、道を間違ってしまってなんて恥ずかしいことはいえなかった。もうちょっと待ってといったが、
その電話をした時間も、もう遠く彼方である。

「えーっと!こっち行って、あれ?いや、こうだ!だめだ!違う!!」
と、美琴はオロオロとするが、一向に目的地にたどり着ける気配は無かった。
なんだかわからないが、泣きたくなってきた。おもわず涙目になる。
しかし、
「なにをしてるんですか、御坂さん?」
一体どうやってここに自分が居ると分かったのだろうか、何故か公園で待っているはずの上条が美琴の後ろにいた。
ある意味、目的は達成したのだが、美琴としてはオロオロしていたり涙目になっていた自分を見られたのが恥ずかしい。
美琴は顔を真っ赤にしながら、ただただ慌てる。
「わ!いい、いつからそこに!?」
「いやー、あまりに来ないもんだから探しましたよ。で今やっと御坂さんを見つけましてね」
「な、なんでここにいるってわかったのよ!」
「勘?」
「・・・・・勘・・・」
どういう意味だろうと考える。すると美琴の頭の中には赤い色をした糸が現れた。
(勘ってもしかして赤い糸が、ってなな、なに考えてるの私!!・・・でも、いやいや!!)
止まらない妄想に美琴自身歯止めが利かない。これが恋の病というものだろうか。
なんだか顔が熱くなってきているのが美琴でもわかったが、どうやっても抑えることは出来なかった。
「おい、なんか顔が赤いぞ」
「あ、赤くなってなんかないってば!だ!だから!!」
その原因の上条は美琴を無視して顔を覗き込んでくる。熱があるかどうか心配してくれているらしいが、むしろ逆効果である。
どんどん美琴の顔は真っ赤になっていく。それにつれて上条はさらに顔の距離を縮めてくる。
距離にしてわずか数センチ。
(ち、ちち近いぃーー!!)
「なんか赤い気がするが、大丈夫みたいだな」
しかし、そんな気持ちを知らない上条は美琴が熱をだしてないか確認したのか、さっさと美琴から離れてしまった。
なんだか美琴は上条に振り回されて、悔しかった。それと、もうちょっとさっきの状態でいたかった。
「―っ!バカ!!」
「なにが!?」
美琴は上条のすねを蹴ってそっぽを向く。なんだか理不尽な気がするが、上条が悪いのだ。
「で、アンタの寮に行く前にスーパーに寄りたいんだけど?」
「急に蹴られたと思ったら、今度はスーパーですか。・・・なぜ?」
「う、うるさい!アンタはそんなこと疑問に思わなくてもいいの!」
知ってのとおり、どうして美琴がスーパーに、行きたいのかは、上条の寮でカレーを作るつもりであるからだ。
もちろんそれは上条がカレーが好きと言ったからであり、美琴自身家庭的なところを見せ付けるためである。
練習などは知り合いの舞夏に手伝ってもらった、というより叩き込まれている。なので、それなりの腕はあると美琴は思っていた。
「ならいくぞ、って御坂?」
「・・・・・・・・・」
しかし、まだちょっと不安が残っていたりもする。それというのも最後に舞夏が「料理の本当の極意は自分で学べ」と意味のわからないことを言ってきたからだ。
美琴は隣に上条がいるのを忘れて考え込んでしまう。
(あれはどういうことなんだろう・・・食材のことかな、いやそんなんではない気が・・・)
「・・・さーん・・・・御坂・・・・・・御坂さーん、聞こえてますか!」
「え!?いや、なんだっけ?」
「いや、ブツブツ喋ってこっちには反応してくれないから。大丈夫か御坂」
「だだ、だいじょーぶ!!」
美琴自身大丈夫でない気がするが、もう帰れなんて言われたら元もこもない。とりあえず見栄をはる。
「そう?ならいいが。じゃあ行くか、スーパー」
「そ、そうねさっさと行きましょう!」
なんだか、上条の隣にいるだけでテンパッテいる気がする。
美琴は落ち着こうと頑張ってみるものの、心臓の鼓動は早くなるばっかりで、収まってくれることはなかった。



スーパー、上条の寮編に続くのかもしれない。

391wikiで3-351とか言われてるなにか:2010/02/11(木) 14:18:25 ID:gqKZiEVY
とりあえず、終わり。
ああ、そんな目で見ないで!これが全力なんです・・・・
色々とすみませんでした!!

392■■■■:2010/02/11(木) 14:23:13 ID:xoiiK.tA
>>376 寝てた人さん GJです。毎回楽しみにしてます。
原作SSでプール一緒だったので近所なのは原作準拠ですよね。
今回はツンツンな美琴でしたね。
デレ分を減らして元の性格が出てて良かったです。
マジ遠近接での美琴のデレバランスの配分が神がかってるんですが^^
美琴の「お兄ちゃん」発言で思い出し悶絶する上条さんで吹きました。
美琴は常盤台授業で料理出来るという設定なので家庭的な一面が出ててぐはぁ。
そしてさり気に親御さん達の位置づけもしっかりしてるのが凄いです。
会話が実際全部ありそう。
美鈴は原作SSで命助けて貰って
「あの子が居れば美琴を学園に預けても大丈夫かなと」
いう感じに書かれてたと思うので肯定的だと思うんですが旅掛さんはどうなるのか、
両親にはバレる(バレてるけどw)のか、と今後の展開が今から気になります。
帰省編、寝てた人さん流の展開楽しみです。

F&Qレス
つかなげーよ>長いほうが嬉しいです。読者としては(寝てた人氏の負担にならない程度に)ずっと続いて欲しい。
乙姫>ほとんど出てないキャラは半分創造で良いと思いますよ。
原作にない場合アニメ寄りとかでも良いと思います。


シリーズ全部読ませて貰いましたのでその分の感想も含めてレスさせていただきます。
短編のしりとりは「巧い」と思いました(笑)
最初、皆さんが「寝てた人さんキター」という書き込みされたのを見て、それで作品を見て見事にはまりました。
ツボった所まとめます。
・私を頼れという美琴の強さ、不幸なのを全部受け止めてくれるという包容力(?表現が出てこない)男前、イケメン、さばさばした所が残っていること、デレデレとのギャップになっててぐはぁ。
・ゲーセンのプリクラのAIのシーン、初々しさの表現、12巻のラブ定額の写真で美琴もさりげに腰に手を回してた所を思い出しました。
・肩車(太もも!)でこける時にフレーム掴んで無事というさりげに運動神経良い所(キャットファイトも強いとかハイキックとか追いかけっことかアニメの動きから推測)の再現と抜かりない所
・レストランでの心の動きでニヤニヤ→ここからの展開の上手さ。
・当麻を救うために雷へ特攻する美琴とか熱い展開も入ってて緩急がある(ラスト感動)
・>美琴の行動原理が一部理解できた上条さん
視聴者側は分かってることですが改めて上条さんが気付くと余計に美琴が可愛く・・・。
読む側まで溺れる所でしたwwwむしろ溺れてますが上条さんとは幸せになって貰いたいものです。
あんまりこういう板で長文は見ないですが感動したので書かせていただきました。テンプれにないけど長文感想てどうなんだろう?

393■■■■:2010/02/11(木) 14:57:44 ID:CxWYMISs
>>391
GJです!!
続きが気になりますね〜。待ってます!

>>376
そういえば美鈴さん、飲酒運転とかになるんじゃ………?

394桜並木:2010/02/11(木) 15:04:29 ID:GqopHcO6
まず自分の時間予約の件、すみませんでしたー!別に皆さんの気を悪くしようとした
わけではないのです!ホントーにごめんなさいー!

それで投下のほうなのですが量がかなり多くなってしまったので、多少区切りが悪いですが
今から投下しようと思います。異論が明ければ5分後くらいから投下します。

395未来からうちの子がやってきた7:2010/02/11(木) 15:09:05 ID:GqopHcO6
8:35

学園都市のレベル5、その中でも第3位の電撃姫の強烈な漏電からなんとか生き延びることができた無能力者上条当麻は、まずその気絶している電撃姫こ
と御坂美琴を自分の部屋の(美栄が寝ている)ベッドにつれていき、寝かせることにした。しかし不幸なことにその制服姿の電撃姫の漏電のせいで上条宅
の電化製品はほぼ全滅、もちろん廊下の明りやリビングの照明も例外ではなく、作業は暗闇の中での困難なものになると思われた。だが不幸中の幸いなこ
とに、月の光が全開のカーテンから入射していたおかげで、上条はなんとか事なきを得たわけである。とはいっても気絶している人間を運ぶことは、
例えそれが女子中学生でも骨の折れる作業だったわけだが。
ちなみに作業をしている途中、

『ハァハァ・・・美栄が来たのが10年後、今の御坂タンが14か15歳、そして美栄が5才・・・。・・・・ということはっハァハアァ!?』

なんてことは美琴を運んでいた上条に考える余裕は・・・まぁあったわけで、なおかつその乏しい頭で足し算、引き算、掛け算、割り算、因数分解してしまっ
たわけだが、心の中だけに留めておいたようだ。

「・・・ぁ〜・・・」

疲れたと上条。現在は特にやることもなく、二人の寝ているベッドを背にしてTVの方を向きあぐらをかいて座っている。窓の外を見ると月がキレイな円を描い
て浮かんでいた。しばらくは、キレイな月だなぁーと古典よろしく風流に浸っていたわけだが、やっぱり後ろの二人が気になってきて、あぐら座りから正座にフォ
ルムチェンジ、回れ右をし、二人の寝顔を見ることにした。上条に近い方から美琴、美栄となっており、美栄は美琴の左腕をギュッと抱きしめ眠っており、
美琴は顔を上条の方に向け仰向けで規則正しく呼吸をし心地よさそうに眠っている。つまり今現在、上条の座っているポジションは観覧車のてっぺんも
顔負けの絶景スポットとなっているわけだ。付け加えて言うなら、月光が二人の少女を幻想的に、神秘的に、美しく照らしており思わずゴクリと生唾を飲む
上条なのだった。

(美栄の話が本当なら、俺と御坂は・・・だああああ!考え出したらとまんねぇぇぇぇ!)

396未来からうちの子がやってきた8:2010/02/11(木) 15:10:01 ID:GqopHcO6
妄想に走ろうとした上条はその妄想をとめるべく、自分の髪をワシャーーとかきまくろうとした。しかし上条の右手がベッドにガタンッと思いっきりあたってしまい、
その行為は失敗に終わったのだった。

「・・・ん・・・」

「あ」

どうやら今の衝撃で美琴が目を覚ましたらしい。
すでに上条は頭の悪い自分が下手に嘘をついても無駄だと悟った(というより実感した)わけなので、ありのままを話すことにしていた。最初は信じてもらえない
かもしれないが、根気強く説明するしかない。言うまでもなく電撃防止のため自分の右手で美琴の右手を握り締めるのも抜かりなく。
上条は意を決し、

「よう 起きたか」

と眠り姫に言い放ってやった。

「・・・ぁ・・・あれ・・・?・・・私・・・何してたん・・・だっけ・・・?」

「今から説明してやっから早く目ぇ覚ませ」

「うわっ!?ちょっちょっとな、な、なんでアンタ私の手握ってんのよ!!??」

「それも含めて説明してやっからあんま暴れないでくれると上条さんはひじょ――に助かるのですが・・・」

「?」

美琴は上半身だけ起こすと、まずじたばたしていたが、美琴の左隣で眠っているラストオーダー似、つまりは美琴似の少女を見て何か思うところがあったのか、
優しく微笑み、美栄の頭を何度か撫で、

「んで?話ってなによ?」

と真剣な風体で、素直に話を聞くことにしたようだ。正直そんなに真剣でも困るのだが・・・。おそらく美琴はまたシスターズがらみの話だと思っているのだろう、
と上条は推測する。実際はシスターズの話ではなく美琴と上条の話なのだが・・・。まぁ、そんな美琴の真剣な表情もすぐに羞恥の色に染まるだろう、とすで
に羞恥の色に染まっている上条は一人思うのだった。

397未来かうちの子がやってきた9:2010/02/11(木) 15:10:54 ID:GqopHcO6
現在、美琴は起きてベッドに腰掛けており、上条は正座でそんな美琴を正面から見上げている。上条と美琴の位置の関係上、上条の右手で美琴の
右手を握るには距離を要する格好になるので、いったん上条は右手を放し、自分の右手で美琴の左手を握りなおした。

「なぁ御坂。落ち着いて聞いてくれよ?ついでに俺の右手を絶対に放すなよ。いいか絶対だぞ?」

「・・・・暗に放せって言ってないアンタ?まぁいいわ。もったいぶんないでさっさと言いなさい」

「あ、ああ」

意外と冷静な美琴に、逆にあわてる上条なのだった。

「えーっとだな御坂。まずさっき見せた写真は覚えてっか?」

「え?写真?どんなのだっけ?なんか記憶が飛んでて・・・」

上条はさっき回収した写真を左手(右手は美琴に使っている)でズボンの右ポケットから表が上条、裏が美琴に向くように出した。

「・・・・・・これなんだけどな・・・・。まず注意事項から言っておきます」

「はぁ?なんでそんなこ」

「一つ!さっきもいったが俺の右手を放さない!これ絶対!!」

「ちょっとアンタ!人の話はさい」

しかし上条は間髪いれず

「二つ!この写真を見せたら上条さんが事の成りを洗いざらい話すので、その間御坂さんは私語および言及禁止!!」

「はぁ!?なんで私がそんなことし」

「みぃぃぃつ!!これが最後だが御坂!!!」

と上条はいつになく真剣な表情で美琴の顔をキリッと見つめる。急なことだったから美琴は頬を赤く染め、目を左右に泳がせ始めた。

398未来かうちの子がやってきた10:2010/02/11(木) 15:11:45 ID:GqopHcO6
「・・・な・・・なによ・・・」

と力なく美琴。この時右手から美琴が震えているのを感じた上条は美琴の手を優しく握り締めてあげていた。
上条はすぅっと大きく息を吸った。そして意を決し、肝を据え、最後の御触書を美琴に良く聞こえるようにはっきりと喉からはき出した。


「こんな俺なんかですまんかった。」


と上条には似合わない華麗なる指捌きで写真をくるりと翻した。

「はぁ?アンタさっきからなにいって・・・え・・・?」

美琴は上条を意味不明な難解な数式でも見るような目から、その目を変えた。

「・・・・!?」

「・・・・っ(右手だけは!右手だけは死守するっ!!)」

美琴は上条に握られている手とは、逆の手で上条から上条とお腹の大きくなっている美琴が幸せそうに笑っている写真を奪い取り凝視して・・・・

後はお決まりのアレだ。

「ふ・・・ふにゃああああああああああああ!!!!」

と美琴は電撃こそ出ていないもののベッドにドサッと仰向けに倒れ悶々し始めた。気絶はしていない。しかしそうなると上条は美琴の左手をきつく握っている
わけなので、つられてベッドにダイブしてしまうのだった。

「ふ・・・ふにゅああああああ!?!?!?」

「うわっ!!ご、ご、ごめん御坂!!」

結果、上条が美琴を押し倒しているような構図になるわけだ。というより、上条は右手が使えないのでうまくバランスがとれず、上条の体と美琴の体が重なっ
ている、といった方がより正確な感じだ。

「ふにゃああ!!!ふにゃあああああ!!!」

と美琴はとにかく暴れまくっている。そうなると上条も体勢を立て直しにくいわけでこの状況から抜け出せない。そうとなれば口で説明するしかないの
だが・・・

「落ち着け!違うぞ御坂!!これは上条さんの邪な私的目的とかそういうのじゃなくてだな!!・・・じゃなくてだなっっ!!」

結局土壇場で、どう説明していいかわからなくなり、上条までパニックになってしまいそうになる。上条はもう泣きそうになっていた。
上条がみっともなく鼻水をズズーッとすすったら、

「あ!ママだー!やっとあえたーーー!!」

と美琴がベッドに勢いよく仰向きになったため、美琴の背中が美栄の足にあたっていたらしくもう一人の眠り姫が目を覚ましていた。しかしそれで事態は余計
面倒なことになり、すでに美琴と上条がじたばたしていたところに更に乱入者が加わったわけでもう意味がわからないことになっていた。傍から見れば少年と
小さいほうの少女が大きいほうの少女を貪っているようにも見えた。

「ふにゃあ!?(ママ!?)」

「あ〜!ママ、またパパとラヴラヴしてるーーー!!いつも夜になったらあたしだけ仲間外れにしてー!!!」

「ふにゃあああ!?!?!?」




「・・・・・・・・・・・・・御坂・・・・・タイミング悪いけど、紹介する・・・・・・・この子、上条美栄っていってな・・・・・俺とお前の・・・・・・・・・・・娘らしい・・・」

「ふにゃわああああああああああああああああああああああああああああん!?!?!?!?!?」

399未来かうちの子がやってきた11:2010/02/11(木) 15:13:01 ID:GqopHcO6
9:45

上条と美琴はリビングで互いに向き合い正座し、手をつないでいた。見つめあいながら・・・というわけではなく、二人とも下を見てもじもじしている。
ちなみに電気はリビングの光だけ上条が取り換えた。

すでに上条は事の成りを説明し終わった。大方、先程上条が美栄から聞いた内容と同じだが、途中美栄が「べつにみらいからきた人がかことかみらいをかえて
も大丈夫だよ」と足して説明し、自分の能力タイムエラーと未来の学者(美栄の能力を生みだし、開発した者)が述べた特殊相対性絶対時間理論(なん
だその新聞の文字を適当に張り付けたような名前は、と上条は思った)とやらをぺちゃくちゃしゃべりまくった。

なんでもその美栄の口から出てきた学者いわく、時間とは常に人間より優れた機関であり、例え人間が時を超え、過去や未来の事象を捻じ曲げたとしても、
それは過去a、未来aの話で、時を超える者が事象を変えること自体がそれより大きな過去A、未来Aによって定められた運命でありそれが無限に絡み合
っているらしい。しかしその実、その過去も未来も一筋なものでパラレルワールドの可能性はもうなくなっているとのこと。そして美栄の能力はあらゆる時空に干
渉できる一種のテレポートのようなものなのだが、計算の量が膨大で一回時を飛ぶのに半月も時間がかかってしまうばかりか、感情の波や、体調なども大き
く関係してくるようで、しようと思っても簡単に実行に移せる代物ではないらしい。実際、未来での美栄は学園都市から密かに重宝されているが、肩書きは
レベル0の無能力者となっているらしい。この説明をしている時だけ美栄はマジモンの学者だった。途中から、上条が眠くなったのがその証拠だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

まだ信じられないのか、だんまりな美琴。上条と美栄が説明している時から現在まで、ずっと黙ったまま正座しているので、ゆうに一時間近くその状態を維持して
いることになる。もっとも話の内容によっては、黙しながら赤くなったり、ふにゃー(電撃防止に欠陥なし)とかしていたわけだが。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

説明し終わってからというものの長い沈黙が二人を支配する。

400未来かうちの子がやってきた12:2010/02/11(木) 15:13:44 ID:GqopHcO6



「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

(・・・沈黙は美徳なりとほざいた偉人はどこのどいつだ!?そいつにこの状況をみせてやりたいっ・・・!)

そう上条が考えている時に、ごろごろしていた美栄がそのままの状態で正座をしている美琴の腰辺りを突きながら


「ねーねーママ?パパったらママのナマエわすれてたんだよ?しんじられる?いつもあーーんなに、みことあいしてるっていってるのにねー?」


とか言ってきやがった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「?そういえばパパとママのはつデートって2しゅうかんごであってるよね?どっちからあぷろーちしたの?やっぱりママー?」

「・・・・・・・・・・・」

「?」

美栄は美琴が黙する生者なので矛先を上条に変更したようだ。

「・・・あのねパパ?ママったらね、パパがいない時パパのはなしばっかでね?こういうのオトナのことばでぞっこんっていうんだよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

だが上条もひよった兵士みたいに何にも言えない。美栄は不思議そうな顔からその表情を切なそうなものに一変した。

「・・・なんでパパもママもなんにもいってくれないの・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・(なにこの空気おもっ!つうか、はずっ!!)」

と上条は一人思った。しかし、いい加減痺れを切らしたのか、美栄が5歳児らしい行為を繰り出してきた。


「・・・ぐすん・・・」


美栄は涙目になって鼻水をすすっていた。


「!?」

「!?」

下を見ていた上条と美琴は目をかっと見開き、驚いた様子で美栄を見た。


「いやだよ・・・パパもママもなんでなんにもいってくれないの・・・?」


うわーん、と美栄は本日二度目の涙を流す。

「うわっわ・・・す・・・すみません・・・」

上条は美琴から手を離し、半立ちになり、こともあろうに娘だろう少女に敬語を使った。美琴はそんな上条を呆れてみていた。

401未来かうちの子がやってきた13:2010/02/11(木) 15:14:17 ID:GqopHcO6
「・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・もういいわよ。ホント情けないわねアンタ。いい?子供っていうのはこういう風になだめんのよ」


美琴は戦慄的な事実はとりあえず後にしたらしく美栄を引き寄せ優しく抱きしめた。


「大丈夫よ。私はここにいるからね?なんでもいってごらん?私が聞いてあげるから」

美琴はまるで本物の母親のように優しく微笑み、美栄の背中をポンポンと撫でて始めた。美栄は自然に泣きやんでいき、美琴のお腹を両腕でギュッと逃がさないよ
うにかたく抱きしめた。美琴はそんな美栄を受け入れ、頭を丁寧に撫でた。そして美栄はか細い声で、返事をした。

「・・・うん・・・」

「よしよし」

再び微笑む美琴。上条は正座をし、その終始を食い入るように、驚いた様子で、見ていた。

「・・・お前・・・凄いな・・・俺なんてアメちゃんつかっても泣きやまなかったのに・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、ね・・・・」

再びもじもじする美琴。その様子を見ていると上条まで恥ずかしくなてきた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

また気まずくなる二人。正直無理もないと、上条は思い、何か話題になるものはないかと探していると、美琴が美栄の髪や背中を撫でつつ真面目
そうな風景気で上条に尋ねてきた。顔は赤かったが。

「アンタ、この子どうすんのよ・・・。いっとくけど私の寮は無理だからね」

「うーん・・・このままうちにいても色々まずいし、第一俺らが学校の時はどうすっか?留守番かどっかの養護施設に・・・」

と上条が養護施設と言った瞬間、美栄が美琴からバッと離れ、立ち上がり、今迄見たことのない5歳児らしからぬ表情で慟哭した。

「やだ!もうヨウゴシセツはやだ!なんどもいったことじゃん!?なんでまたそうなるの?ずっとパパとママがいっしょじゃなきゃやだ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(なにやら重い感じなのですが、「何度も」と言われましても、それは未来の俺らであって今の俺らじゃないのですが・・・)

と上条はとてもそうはいえそうな空気ではないので心の中だけにしまっておいた。しかし、良く考えてみれば、いくら未来の学園都市が能力開発に優れていたと
しても、所詮はたかが10年後だ。そんな短い期間に、時空を超えられるような能力が普通のプロセスで生み出されるはずもない。おそらく美栄は、壮絶な
実験や、たび重なる薬品投与の末、ようやくその能力を手にしたのだろう。仮にそれが美栄の任意ではなく、研究者による強制的な押し付けだとしたら・・・
と上条は考えをそこで止めた。

402未来かうちの子がやってきた14:2010/02/11(木) 15:14:44 ID:GqopHcO6
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それじゃあ休んで一緒にいましょうか・・・」

と美琴が口にする。ちなみに今日は日曜日であり、上条も美琴も明日から普通に学校がある。しかし事が事なので、美栄を休んで面倒をみるか
保育園に預けるかしか手段がなかったのだが・・・・。

「・・・つっても、美栄のタイムエラーってのも再計算すんのに3週間くらいかかんだろ?仮に休んでいっしょにいたとしても、そんなに休んだら周りの連中に悟られん
だろ?少し無理のある策じゃねーか?というより上条さんは多分出席日数が足りないから休めないのですが・・・」

上条が普通に無理という。こうして見てみれば上条は、周りに恵まれてないだけでかなりの常識人なのだった。


「・・・・・・・・・・・・じゃ、じゃあ、ア、ア、アンタはこの子が泣いてても放っておくっていうの?わわわ、わ、わ、私と・・・・・・ア、アア、ア、アンタの・・・・・娘なの
に・・・・」

美琴が顔を真っ赤にして上条に聞いた。そんなことを言われると変に意識しちまうじゃねーか、と上条はうっとなった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・い、いやでも・・・」

と、上条は食い下がらない。留年だけは〜って感じなのだ。しかし美琴はそんな上条にとどめを刺すかのようには、もうやけくそだ!!きぃえええ!!、とでもいいそうな
勢いで上条の胸倉を掴みにかかった。


「わわわわ私とアアアアンタの子供なのにいいいい!!!!」


上条の中の何かがプツン、ブワアアアアアンとなった。


「・・・・・・・・・だあああああああ!!!!!わかったわかった!そこまで言うなら世話してやろうじゃねーか!!!上条さんの家庭スキルを括目し、驚愕し
、そして畏怖するがいいい!!!きえええええええ!!!」


今後の方針があらかた決まった。しかし上条は心の中で神様に、願わくばその運命とやらが自分の留年を定めていないことを密かに哀願していたのだった。

403未来かうちの子がやってきた15:2010/02/11(木) 15:15:09 ID:GqopHcO6
「はい。事情は明日直接お伺いして説明しますのでその方向でお願いします・・・。はい失礼します・・・。」

美琴は、お嬢様流電話の仕方(そうとしか表現できない)で電話をし、先生から許可を得たらしく、意味ありげな視線で上条を見て、

「一応許可はもらったけど説明するにはアンタと美栄も一緒じゃないと信じてくれないでしょうね・・・」

「・・・・・やっぱそうか・・・」

まぁいきなり 未来からうちの子が来たので学校休みまーす なんていったらちょっと残念な電波野郎と思われるだけで、休ませてくれないだろう。

「後は俺か・・・大丈夫だろうか・・・」


携帯を取り出し、合法ロリドジっ子に電話をかける。

ピポパポ・・・

プルルルルル プルルルルル


上条は一瞬また連絡がつかないと思ったが、もう終わっているだろうと推測した。そして上条の予想はあたりだったようだ。


『はいはーい。何でしょうかー?』

「あ、先生?ちょっと連絡したことがありまして・・・」

『はーい なんでしょうー?』

「実はですね・・・今日から3週間ほどや」

『無理ですねー』

「うぇえええええ!?まだ最後までいってませんよ!?」

『どうせ休むとかいいやがるんでしょー』

「違いますよ!あ、いや、そうなんですけど今回は結構マジでやばいことなんです!ケガはしてないけど!」

はぁ〜、と小萌がさっきまでの舌足らずなふざけた様子から少し声の高さを下げ、呆れた調子で深刻そうに切り返してきた。

『あのね、カミジョーちゃん。今のカミジョーちゃんはあと一日休むとめでたく100日も休んだことになるのですー。そうなると進級はおろか、学校にいることすらで
きなくなってしますのでーす』

「ぶぇえええええええええええ!?ま、マジでせうかっ!!??」

『マジでーす』

(神様留年なんてとんでもない学校に通わせてくださいお願いしますううううう)

と考えを改める高校一年生上条当麻だった。

「いや、でも今回はホントのホントにまずいんです!なんとかなりませんか!?」

『う〜ん・・・公欠扱いならなんとかなるかもしれませんが、その場合その手の書類に記載しないとならないのでまともな理由にしてくださいねー』

「・・・書類に載せられるような・・・・理由ですか・・・」

『そうでーす』

404未来かうちの子がやってきた16:2010/02/11(木) 15:15:36 ID:GqopHcO6
(仮にありのままを話して先生を説得できたとしても、未来から子供が来たのでなんて理由にならない!!)

「・・・と・・・とりあえず明日の朝、俺のおかれた状況を説明しに行きます。口では何とも説明しにくいし、したくないというか・・・・・」

『分かりましたー じゃ明日の7時に私のうちにきてくださーい』

「・・・はい、分かりました・・・ホントいつもすみません・・・」

プツンとベタな音がなり、小萌との連絡が終わった。上条は折りたたんだ携帯をベッドに投げ、申し訳なさそうに美琴と美栄を見た。

「・・・・・・・・・・うん・・・・俺も同じような感じかな・・・・・アハハ・・・・」

「アンタ、一体どんだけ休んでんのよ・・・」

美琴はあきれ果てていい、

「パパ、昔はこういう人だったんだー・・・」

と、美栄が意外そうにいった。上条は、その美栄のセリフに半ば最後の望みを託して、グダ―ッとベッドに寝っ転がった。

405未来かうちの子がやってきた17:2010/02/11(木) 15:16:10 ID:GqopHcO6
10:15


「・・・・んじゃお前今日はもう泊っていけ・・・もう遅いし、美栄は俺の手に負えないし・・・・・」

枕に顔を埋めていた上条が唐突に立ち上がり、恥ずかしそうにそういった。

「わわわ、わかったわ・・・そうよね・・・・私しか手に負えないもんね・・・・」

かぁと赤くなる美琴。上条はその反応を大体予想してたので自分の意見だけいったら再び枕にダイブした。目は二人を見ているが。


8


現在、未来の上条家になるはずの3人は、夫がベッドで、妻が正座(ただし礼儀正しくはない)、娘にあたる美栄は床でごろごろして、美栄はその二人に色
々質問したり、お願いしたり、未来の話をしてたりしていた。先程上条と美琴は、美栄を無視(恥ずかしくて何も言えないため)し続けていたら、
泣いてしまったので、それを学習しチャンと美栄に対応している。そう、チャンと。

「それでねーママったら、おしごとからかえってきたパパにいきなりキスしてねー ごきんじょさんもあーーんなにラヴラヴなフウフはみたことないってねー」

「「ヘェエエエソウナンダーーー」」

「でもねーーあたしはもうすこしパパとママにあそんでほしんだー いつもどようび とか にちようび にあそびにいこーっていっても いそがしいいそがしいでねー」

「アンタ、ちゃんと美栄の面倒見なさいよ」

と、美栄の教育とか世話とかになるといきなり真顔になる美琴に、だってそれ俺じゃないもんー!、と上条は困っていた。

「・・・いや忙しいんだろ・・・」

上条がショボーンとしていると、美栄がローリングサンダアアアとでも言いたげな勢いで、正座している美琴に突進アンド抱きつき攻撃を繰り出した。

「けどねーいつもいそがしい いそがしいっていってるわりには まいばん二人でベッドのなかで、なんかジタバタしてるんだよーあれなにしてんだろうねー」

「「サーナンデショーネ」」

結局、二人ともミスエボリューション(退化と言いたい)するわけだが。

「そういえばデート2しゅうかんごだよねー」

「「サーイツデショウーネ」」

「・・・う〜ん、あのねイロイロかんがえたんだけどあたしもパパとママのデートにいきたい!」

美栄が急に話題を変えてきた。というかそれが本来の目的であって、満足したらさっさと帰ってほしい上条なのだった。別に美栄のことが嫌いとか面倒とかでは
なく、単純に恥ずかしく、周りの連中に見られたらひとたまりもないからだ。

「え?あ、あぁ、いいんじゃね?3人で遊園地でも行くか?ベッタベタだけど」

「・・・・・・・・・・・私は別にそれでもいいわよ」

「やったーーーー!じゃあきまりねー!!」

よほどうれしいのか、小躍りする美栄だった。

(そんなうれしいのか・・・とりあえず・・・・なんとかなった・・・・つうか今日はいろいろあって疲れたなー)

上条は自分のマインドキャパシティーが底をついたと悟り、激しい眠気に襲われた。


「・・・・・・・・・・ふわあああ とりあえずもう寝ようぜ。ベッドは貸してやっから二人で寝ろよ・・・上条さんはバスルームで寝るからさ・・・」


と上条は抑えられない欠伸を噛みしめながら、美栄と美琴に言った。しかし美栄の切り返し方はタイムエラーとかよりもぶっ飛んだものだった。

「え!?さんにんでねようよ!!というかそのまえにさんにんでおふろ入ろうよー!」

・・・・・・正直、そんな展開に淡い待っていたっっっ!!!、後悔はしないし、反省もしない。期待はしてる。そう上条は内心思っていた。

406桜並木:2010/02/11(木) 15:18:31 ID:GqopHcO6
以上です。ご意見やご感想、指摘などあれば嬉しいです。指摘はできれば具体的な方が
今後のためになるので厳しくいっていただいてかまいません。お邪魔しました〜

407桜並木:2010/02/11(木) 15:41:18 ID:GqopHcO6
三つ訂正があります。まずタイトルなのですが途中から「ら」が抜けてしまっています。
それと17で「8」と意味不明な数字がありますが気にしないでください。単なる区切りです。
それと最後なのですが、最後の行です。

「淡い」を文から削除してください。まさか最後の落ちでこんな初歩的なミスをしてしますとは・・・
すみません興奮して語彙力が低下したみたいです。以上です。

408桜並木:2010/02/11(木) 15:44:16 ID:GqopHcO6
すみません 「淡い」を消すのではなく、待っていったを期待していたっと脳内変換してください。
ホント誤字多くて寸ません・・・・では今度こそお邪魔しました。

409■■■■:2010/02/11(木) 15:53:36 ID:lOFWHcRc
お疲れ様。
ちょっと納期2時間前なので最後の3レスだけ流し読みしたけど
とりあえず誤変換っぽい物がいくつか見えたので投稿前に推敲はしておきましょう
後ここで投稿する際の基準が不明なのでどうなのはか判らないけど
文章法は特に気にしなくてもおk?なのかな?そこが気になる所です

語り口は程好い感じに少なく、結構早く読めます。

410■■■■:2010/02/11(木) 15:55:29 ID:FONeva8M
ここまでみなさんGJです
地の文でも台本でも大丈夫かと思いますね
台本といっても、情景とかはわかりやすくするために多少文入れるのがいいと思いますが
特に気にすることないでしょう

411■■■■:2010/02/11(木) 15:55:56 ID:xoiiK.tA
>>407 桜並木さん
GJです。
上条さんの3つの警告は黒子の警告とかけていて面白いです。
保母さんモード美琴もなかなか良いですね。超電磁砲と上手く混ぜてるなぁと思いました。
SFになると設定が難しく、ほとんど想像しないとで大変そうですね。
>実験や、たび重なる薬品投与の末、ようやくその能力を手にしたのだろう。仮にそれが美栄の任意ではなく、研究者による強制的な押し付けだとしたら・・・
と上条は考えをそこで止めた
これが何かの伏線ならきちんと回収しといて欲しいなぁと思います。ただの上条さんの思い込みかもですが・・・。
お約束のふにゃあああは吹きましたwww
二人とも壊れてますがありえない事態でのことなのでありだと思います。
続き期待してます。

412■■■■:2010/02/11(木) 16:06:35 ID:Gjg7Q/36
GJです!続き期待して待ってます
美栄ちゃんはしっかりとした子ですね

413■■■■:2010/02/11(木) 16:40:57 ID:28GodI9o
GJです!こういう展開は本当に2828が止まりません
続き楽しみにしています

414■■■■:2010/02/11(木) 17:14:36 ID:fUF1qQmE
22♀がガチでセフレを募集中wwwwww
ttp://short.ie/znw90r

415■■■■:2010/02/11(木) 17:24:59 ID:mt1LQvCg
GJ!
続き待っています

416■■■■:2010/02/11(木) 17:42:37 ID:TqYpQoKM
10分後くらいに投稿します。

黒子メインで話を作れるか、でやってみた作品となります。

417【白井黒子は動かない1】:2010/02/11(木) 17:51:50 ID:TqYpQoKM

<設定>
原作7巻の「美琴が何故かブツブツ言いながら何時間も付き合ってくれた」日の午前中のお話です。
逆に8巻との繋がりが悪くなりますが、その辺はご容赦を。

□□□

「護身術のテスト、ですの?」
白井黒子は、髪をくしけずりながら、机の上でふにゃっている御坂美琴に問いかける。

夏休みが終わり、始業式を過ぎた最初の土曜日。
朝食を取り、部屋で分厚い護身術のテキスト…イラストが多いので分厚いだけだが、
それを御坂美琴が早速にらめっこしている状況である。
週明けに実技テストがあるのだが、覚える気がまるで起きない様子だ。
興味があったり必要であったりする事ならば、大学クラスの難問であろうと挑戦する美琴であるが、
興味がなければあっさり切り捨てる。この辺りがLV5の資質とも言えるだろう。

「そう。あーもうユウウツ‥」
美琴は無敵の電撃技を持っているせいか、護身術に身が入らない。
「とはいえお姉様、実際にその電撃が通じない殿方が存在するわけですから…」
「あの馬鹿みたいのが他にいてたまるもんですか!」
「なるほど、お姉様はその殿方には無抵抗で抗わない、と」
「な、何の話してんのよアンタ!」
朝からぎゃあぎゃあと、御坂美琴は元気いっぱいだ。

「というわけで黒子、今から実技練習にいくわよ」
「へ?今からですの?」
「そう。アンタ護身術のスペシャリストなんだから、実際に教えてよ。テキストより何倍も早いわ」
「お姉様ったら…確かに空いてはいますけど、午前中ぐらい優雅に過ごしませんこと?」
「午後から間違いなく暑くなるでしょ。涼しいうちに!さあ行くわよ!」
しょうがないですわね、と黒子は席を立つ。何にせよ美琴と一緒に行動するのは、至高のひとときだ。

制服以外での外出は、届出も面倒なため、2人はランニングと短パンの上に制服を着る事にした。
美琴には慣れた格好だが、黒子は不満な様子だ。
「わたくしの美意識ではとてもとても、耐えられないですの…」
「アンタ、ケンカ売ってんの?」
橋の下なら日影もあるし、広いから気兼ねなくできる、と土手に向かって歩いている。

コンビニの前で、美琴は「ちょっと飲み物買ってくるね」とコンビニに入ろうとする。
「あらお姉様。特製ドリンクならありますわよ」
「誰が飲むかっ!」
ずかずかとドリンクコーナーに向かう美琴。
(涼しいですわね〜)
と、黒子はコンビニの冷気にあたりつつ、ふと人の気配を感じ、横を見ると。

上条当麻が顔を背けるように週刊誌を立ち読みしていた。明らかに気付いている。
どう見ても、「君子危うきに近寄らず」を実行している風情である。


黒子が上条に会うのは、始業式の日の、地下街テロリスト事件で会って以来だ。
謎の土人形が元だと思われる瓦礫の傍で、真剣な顔でその瓦礫を見つめる上条当麻。
その横で、御坂美琴は、その少年を見ていた。…いや、見惚れていた。
――お姉様があのような眼差しをされるなんて。
割って入り、テレポートで連れ去ったが…


近いうちに、この少年と真正面から向き合う時が来るような、そんな予感がする。
今日は、その前哨戦と参りましょうかしら。
「あらあら、これはこれは。カミジョーさん、おひさしぶりですの」
「おう。ひさしぶり、って、まだあの騒ぎから数日しか経ってねーだろ…」
「朝から立ち読みとは、優雅な生活でいらっしゃいますのね」
「ほっとけ!…御坂も来そうだし、帰」
「来て悪かったわね」
当然ながら、美琴も合流してきた。手にドリンクを持って。

418【白井黒子は動かない2】:2010/02/11(木) 17:52:17 ID:TqYpQoKM

御坂美琴がドリンクを手に取って、振り向いたとき…ツンツン頭が眼に入った。
もうその瞬間から心臓の鼓動が早くなる。
(もう!なに浮き足立ってんのよ私!)
回りこむようにして近づくと、予想通り黒子と話していた。
「来て悪かったわね」
美琴は、口をへの字にして、動揺を押し隠しつつ話しかける。

「ところでカミジョーさん。おヒマでしたら私たちに付き合っていただけません?」
(く、黒子!?)
「ほほう、女子中学生からデートのお誘いですか」
「いいお話でしょう?」
「だが断る」
「何で即答ですの!美人女子中学生たちからのお誘いですのよ!?」
「深窓の令嬢なら喜んでいくけどな!お前らは真逆だろーが!」
「…本来なら金属矢をブチ込むところですけども、お願いする立場ですから我慢致しますわ…」
「そうまでして、何に付き合わせる気だ」
「護身術の練習、ですわ。やはり現実は殿方から身を守るモノですから、是非ご協力願えませんか、と」
「…おおかた、俺を関節技でボコボコにする気だろ?」
「(ギクッ)なんですのその被害妄想。いいじゃありませんの、女子中学生の体を触れるんですのよ?」
「んなもんメリットになるかっ!俺に残るのは中学生にベタベタ触ってた変態という評判しか残らんわ!」

黒子は少し意外に思っていた。何だかんだ言って、下心もあってOKするのではないかと思っていたのだ。
上条は全く興味ないようだ。
(軽い男だと思ってましたが、意外に硬派…ふーむ)
その時、黙っていた美琴が口を出した。

「まあ無理にとは言わないけどさ…逆にそっちが、例えば前みたいに宿題に困ってるとかあれば、その交換」
「御坂」
「ん?」
「困ってる」
「はい?」
「…宿題に困ってます。今日ほとんどを片付けないと、やばい」

諸々の事情があって、夏休みの宿題を完遂できなかった上条は、
オリジナルの『宿題の宿題』を小萌先生から渡されていた。今日は、帰ったらそれをやる予定だったのだ。

それを聞いた美琴はにんまりと笑う。
「んじゃあ決まりね。午前中は私たちの護身術に付き合う。午後はアンタの宿題に私が付き合う」
「ぐ…」
上条が唸りながら悩んでいる。
黒子としても、午後の話は余計だ。

「…わかった。ただし!その護身術とやらで…その、不可抗力な事が起こっても、金属矢・電撃はナシだぞ?」
「…例えばどのような事ですの?」
「取り押さえるときの関節技とか、体密着するだろーが。俺だって抵抗するし、どこに触っちまうかわかんねーよ」
「その辺は勿論何も言いませんわ。胸を揉みしだくとかは一発で制裁させていただきますけど」
「…どこにそんなボリュームあんだよ(ぼそっ)」
「何かおっしゃいまして?」
「いや別に」

419【白井黒子は動かない3】:2010/02/11(木) 17:52:43 ID:TqYpQoKM

「カミジョーさんは、そのカッコ、汚れても構いませんの?」
河原、といっても橋の下に着いた御坂美琴と白井黒子は、制服を脱いで陸上用ランニングと短パンになっている。
上条当麻はTシャツにチノパンとラフな格好だ。
「破けるのは困るけど、洗濯すりゃ済む話なら、まあ大丈夫」
上条はキョロキョロしながら、
「護身術なら、こんなとこまで来なくてもできねーか?広くなくてもできるだろ」

「…お姉様のプライドを考えてあげて下さいな。試験前日にあがいている姿は見せられませんですの」
「ち、違うわよ!どうせやるなら、広い場所の方がいいじゃない!」
「ま、何でもいーけどさ。どーすんだ?」
上条は相変わらずのスルースキルを発動させ、美琴は言い訳している自分がバカらしくなってくる。

「え、えっと試験自体は課題は決まってて、ただ本番がどれを指定されるかが分からない、の」
「んじゃ一通りやるしかねーか」
「そうなりますわね。じゃあお姉様、テキストお借りしますわ」


「ではフェーズ1。『手を掴まれたとき』ですの。ではカミジョーさん、わたくしの手を」
上条は黒子の右手の甲を掴む。次の瞬間!
「ぐああっ!」
上条が目をおさえてうずくまる。
「…ジャッジメントでは、このように空いている手の甲で、相手の目を叩きますの。
 でも、テキストでは違いますのね。ではカミジョーさん、手をもう一度…」
「ザケんなテメエ!ったく…」
上条はもう一度黒子の手を取る。

黒子は、上条の親指側に自分の手を押し込むようにねじって、あっさり振りほどいた。
「お、スゲエ。しっかり掴んでたぞ今。」
「ではお姉様。どうぞ」
上条は美琴の手を握る。
(…やっぱりですわね……) 美琴は顔を真っ赤にしている。

美琴は赤くなりながらも、これはあっさりクリアした。

「続いてフェーズ2。『両手を掴まれたとき』ですの。ではカミジョーさん、わたくしの両手を、そうそう」
その瞬間、黒子は上条の金的に向かって右足を蹴り上げた!

「うぎゃあああああ、あ、あ?」
「ジャッジメントではこうやって蹴り上げるよう教育されておりますが、まあ今回は寸止めにしておきましたわ」
「御坂!コイツ何とかしてくれ!俺いつか死ぬ!」
「く、黒子、アンタ…」
「他愛ないジョークですの。ではテキスト通りに」

上条はげっそりしながら、もう一度黒子の両手を掴む。
すると黒子は軽く腕を引き、それに対抗しようと上条が腕を引き戻した瞬間!
そのまま黒子は上条に引かれるままに体当たりし、頭が上条の顔にあたるようにぶつかった。
たまらず上条は転がり、あっさり黒子は脱出した。
「あっぶねえ!後頭部打ちそうだったじゃねーか!」
「テキスト通りですの。では…」

美琴は上条の前に立ち、両手を差し出す。上条はその両手を掴む。

420【白井黒子は動かない4】:2010/02/11(木) 17:53:08 ID:TqYpQoKM

(両手握られちゃってる…)
美琴はこれだけで舞い上がっている。上条はいつ美琴が動くかとじっと見つめている。
「お・ね・え・さ・ま?」 ハッ!
(え、えーと、腕を引いて、相手が引き戻したら、体当たりしつつ、頭で顔を攻撃、だっけ…)
美琴は息を吸い込むと、軽く腕を引き、上条の動きに合わせて体当たりした!
…頭を上条の顔にぶつけるのを忘れていた。故に。

ただ押されて尻餅をついた上条の膝の上に、美琴はちょこんと横座りしながら、抱きしめられていた。


美琴は、ゆっくりと左を向く。わずか5センチほどの距離に引きつった上条の顔がある。
上条は、ランニング姿の美琴の腕ごと肩口から、支えるように抱きしめていたのだが、
さすがにこの距離での抱擁と、柔らかい感触に、完全に硬直していた。

お互い、パニック状態で身動き取れずに居る所へ、怒り心頭モードの黒子が飛んできた。
「な・に・を・やってるんですの!!!」
黒子は美琴に触れるやいなや、テレポートで5メートル離れた箇所に飛ぶ。
美琴はその座った状態で、どさっと地面に落ちた。
「あたっ!」
「あたっ、じゃないですわよお姉様!なに殿方といちゃついておりますの!?」

上条はまだ腕を前に出して固まっていた。


――1時間半が過ぎた。
フェーズ9を終え、最後のフェーズ10を行って終了という所だが…
珍しく、白井黒子は、御坂美琴にあきれ返っていた。
「お姉様…」
「…云わないで、お願い…」
美琴は、ずどーんと落ち込んでいる。

ことごとく、失敗していた。
それもこれも、上条当麻が原因である。
なにしろ触れられた瞬間、頭が真っ白になり、覚えたことが全く出てこない。

『羽交い締めにされた時』では、上条に抱きすくめられただけで全活動が停止。
『肩に手を回された時』では、手をひねり上げるつもりが、上条とダンスを踊り。
次こそは、と思えば思う程空回り、滅多に見せない涙目で毎度挑むのだが…

上条は、黒子の完璧な護身術の『ムチ』によってボロボロではあったが、
その後の美琴の『アメ』、すなわち…結果として、抱きつかれたり押し倒されたりしているうちに、
恋とは異なるが、美琴に対して愛しい気分になっていた。
子どもが一生懸命頑張っているのを応援するのに近いが、美琴がそれを知ったら相当複雑な顔をしそうである。


「…御坂って、もっと器用だと思ってたがなー」
上条は黒子にヒソヒソと話しかける。
「さすがにその感想を聞くと、お姉様が気の毒になってきますわね」
「?」
「まあ、失敗は逆にそこさえ気をつければ、試験レベルはクリアできるでしょう。では、最後と参りますの」

美琴もフラフラしながら近づいてきた。
「それ、やるの…?」
「は?……うっ」
「これはダメだろ」

課題最後には。
『車内などで臀部を触られた時』、とあった。

421【白井黒子は動かない5】:2010/02/11(木) 17:53:36 ID:TqYpQoKM

白井黒子は上条当麻に背を向けている。
「…本気で、やんのか?」
「気乗りはしませんが、ここまでやってきて最後だけ省略って、負けた気がしません?」
「誰と戦ってるんだオマエは」
御坂美琴は、少し顔を赤らめて見つめている。

上条は黒子のお尻に手を伸ばす…完全に変態である。
「なあ、次の瞬間に痴漢現行犯で手錠掛けられる、っつーオチはねーよな?」
「…少なくとも、手錠掛けるなら、お姉様に抱きついた時点でやっておりますの」
「さいですか…じゃあ、いくぞ」

まあ触れた瞬間に極められるんだろうな、と思いつつ、黒子のお尻に右手を当てる。

……
白井黒子は動かない。
「…おい?」
「それは当ててるだけですわ。触っていただかないと」
「…はい?」
「撫でまわしていただかないと、気分が出ませんわ」

「ちょっと待ちなさいよ黒子!それって私にも…!」
「お姉様はすぐに対処すればよろしいですわ。というよりそれはわたくしが許しませんの」
「オマエ無茶苦茶言ってるぞ…」
「まあ、正直申しまして、わたくし痴漢された経験がございませんので、一度どのようなものか、と」
「…俺、オマエのこと前に変態さんですか?と言ったことあるが、…本当だったんだな」
「この程度で変態などと。…撫でるのに夢中になっておられると、極められた時逃げられませんですことよ?」

(撫でる、か。さすがにシャレなんねーけど…まあ数秒の話だよな…)
さわ…
さわさわ…

……
白井黒子は動かない。
「あの…白井…?」
「…。」
上条も妙な気分になりつつあった。黒子はTバックのせいもあり、感触が、…なのである。
(手、手を止めたいのに、止まらねえ…)

美琴は気付いた。上条と黒子の間に謎のピンク空気が漂い始めている。
(! 黒子!?)
白井黒子の頬が赤らみ始めている…?
それを確認した瞬間、微かな嫉妬心と共に、スタンガンクラスの電撃を2人に向かって撃ち込んだ!
「はあぁぁぁぁ…」「ぬああああああ!」
上条の右手は黒子に触れていたため、イマジンブレーカーは発動せず、2人は崩れ落ちた。


頬をペチペチと叩く感触があり、上条は目を覚ました。美琴が心配そうにのぞき込んでいる。
「え、えーと、大丈夫?」
「あ、ああ…そうか。…すまん、変な空気を止めてくれたんだな。」
「なによデレデレして!みっともないったら!」
「何か引きずり込まれるような…な。で、白井は?」
起き上がりながら、上条はキョロキョロしつつ姿を探す。

「…気分がすぐれない、って帰っちゃった。 わ、私は午後からのアンタとの約束もあるし!」
「そうか。お前の尻の課題はどーするんだ?」
「やんないわよ!っつーか尻の課題て言うな!…試験に出たら、まあやってみるしかないわね」


上条と美琴がそうして午後に向けての打合せも兼ねて、話し込んでいる、その頃。
白井黒子は、自分の感情に戸惑いながら帰途についていた。
(お遊びでしたのに。…触れられている間に、湧き上がってきた、あれは…)

――数週間後、白井黒子はその男に生命を救われる。それはまた、別の話。


おしまい。

422■■■■:2010/02/11(木) 18:15:52 ID:XzJvjtJQ
GJ!
元ネタは「岸辺露伴は動かない」か?

423■■■■:2010/02/11(木) 19:27:31 ID:06IZiOrU
>>421
読みやすかったです。GJ!

>>422
俺は「ポニーテールは振り向かない」を思い出したw

424■■■■:2010/02/11(木) 20:00:12 ID:28GodI9o
文章うまいですねえ…面白かったです!

425■■■■:2010/02/11(木) 20:05:41 ID:pkOfXfD6
>>395-405
桜並木さんGJ!!!
マジでおもしろかったですよ〜
美栄ちゃんはホント可愛かったですし、上条と美琴のあの雰囲気がなんとも言えませんね〜
一体上条と美琴に何が起こるのか…。

次回を楽しみに待ってます。

426■■■■:2010/02/11(木) 20:09:52 ID:pkOfXfD6
うう…
まさか美琴と上条の関係を出すため、黒子にしかけさせるとは
…なかなかやるな

文章もちゃんとできてるし才能はあるんじゃない?
次も書いてくださいね

427寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/11(木) 20:29:07 ID:kz2Ax.NU
亀ですが反応ありがとうです

>>377>>379>>385
ありです 続きまたいつになるか分かりませんが、全体の流れを決める今回ほどはキツくないかも?
>>378
そういえばアニメではそう言う事になっちゃってますね
>>380
当麻-不幸=刀夜 最強ですよね奴は
>>381
ちなみに、何で美鈴ちんは右手の力を不思議に思わなかったんでしょうね、謎ですね
登場人物増えるとほんと分量が増えますねw ただほとんど二人の話でずーっとやってきたので、これはこれで楽しい
けど、イチャイチャに中々向かってくれないw そしてキャラの特徴を掴むのにさらに時間が・・・
>>382
あんま無いですね 美琴は他にヤシの実サイダーとかストロベリーは食べてた気が
>>383
私は作文は超嫌いでしたw 読書感想文もレポートも嫌いですw やっぱ書かされるってのは駄目ですね・・・
>>392
御感想ありがとうございます 素直にうれしいですw
ネタを思いついて書くのはいいですが、何十回も読み返してると果たして面白いのか分からなくなるので・・・
>デレ分を減らして元の性格が出てて良かったです。
秋までのリアクションに戻す ってのは確かにそう言う意図です
長く続けてるとだんだん禁書ではなく自分の話になってきそうで怖いw
>>393
車は使わない方向でいきたいと思います 「プールが同じ」って無茶苦茶近いですよね?w

__

>>421
gj 尻の課題ww

428■■■■:2010/02/11(木) 20:47:13 ID:kz2Ax.NU
どわ、言い忘れたー

>>392
>短編のしりとりは「巧い」と思いました(笑)

しりとりネタは半分程度美琴スレのレスを参考にしています
まとめの方にも書いておきますね

429■■■■:2010/02/11(木) 21:40:03 ID:kfgWfiQg
>>385氏、寝てた人氏

ふむ、なるほど。ならほとんど自分のイメージでも構わないってことですかね。
いや、もし上条さんが甘党だったりしたら今書いてる分全部没になるから助かりましたわー。
答えていただいてどうもありがとうです。

430■■■■:2010/02/11(木) 21:46:45 ID:kfgWfiQg
しまった、書き忘れてた。
すみませんがまとめます。今まで書いた職人さん達GJ!
いやはやこのスレはいいですね。萌えること萌えること。
では、連投失礼。

431■■■■:2010/02/11(木) 21:46:54 ID:DBku2l9U
>>421
GJ!
でも尻の課題も見たかった・・・

432■■■■:2010/02/11(木) 22:00:34 ID:pkOfXfD6
えー桜並木さん
なんか自分がふてぶてしいような感じがしますが
「未来かうちの子がやってきた」で、どっかの科学者が美栄ちゃんをさらって美琴と当麻がそいつと戦うとか
魔術師が来て、戦闘になるとか大波乱要素を入れると面白いんじゃないでしょうか?

桜並木さん応援してますよー

433■■■■:2010/02/11(木) 22:02:16 ID:pkOfXfD6
あ…、メール欄にsage入れるの忘れてしまいました
お詫び申し上げます

434■■■■:2010/02/11(木) 22:15:23 ID:eaKARuXo
>>432
そうなったらこのスレじゃなく、SSスレ向きだな。

>>416
GJ!
微エロものが増えてませんか?www

435288:2010/02/11(木) 23:01:51 ID:TkO0KH8I
>>294


>>296
確かに時間軸解り難いかもね自分で書いてる分には頭の中で纏まってるから大丈夫なんだけど初見の人には解らんかも
この辺りは日を置いて見直しすれば気付くんだけど面倒くさいから基本的にしないしそもそも一気に書いた奴だから気が回らんかった
意見言ってくれるのはありがたいね解決策とかは参考にしますん

これだけじゃ生産性無さ杉だし誰かの感想とか言うのも面倒だし勢いでパロってみましたの巻でSS投下するぜよそれと纏めるなよ昨日だったか一昨日だったかの奴もまとめるなって言ったのに纏められてるしもう災難ですたい
感覚だけで書いたから突っ込みどころ満載で逆に荒らしになってるっぽいけど堪忍

「……ぅ、んん」
 カーテンから射す朝日に、御坂美琴は目を覚ました。
 ベッドから起き上がるよりも先に脳裏に浮かんだのは一人の少年の顔だった。
(アイツ、まだ寝てるのかしら……ってどうしてそんなこと考えてんのよ私は!?)
 美琴はブンブンと頭を振り、雑念を振り払った。寝起きから赤面した顔を冷ますために洗面所で顔を洗う。五分ほど冷水を顔に浴びせると頬の熱も冷め、寝惚けていた頭も機能するようになってきた。
 目覚めはスッキリ。昨日は中々寝付けなかったため、寝不足を懸念していたのだがそれは杞憂に終わったようだった。
 何故寝付けなかったかと言うと、とある高校生のことを考えていたからなのだが……。
「!」
 再び顔を思い浮かべそうになり、美琴は慌てて頭を振り回した。その際にゴキンと言う嫌な音が聞こえたのだが気にしない。
 どうせ三時間もしない内に実物を見ることができるのだからわざわざ記憶から引き出す必要は無いのに、と美琴はいつもと違う自分の様子に疑問を覚える。そんなにアイツと会いたいのか、と。
 まぁいいや、と美琴は思考を打ち切り、何気なく前髪に触れてみた。イメチェンと称して昨日知り合いに切ってもらったものだ。今日のデートで相手に気付いてもらい、あわよくば「どうかしたのか」と聞かれたい。そう思ってしまう美琴は紛れも無く純情乙女だった。

「……さて、と」
 美琴は時計を確認して立ち上がった。約束の三十分前。着替えはとっくに済ませてある。誘った方が遅れてしまっては話にならないためそろそろ出かけるとする。
 校則で私服を禁じられている美琴であったが、今回に限り同僚の後輩に協力してもらい私服デートに臨むこととなった。こういうときには部屋から瞬間移動できるテレポーターが身内に居ると便利である。
 上は長いキャミソールで下はピンク色のシンプルなスカート。センスが子供っぽいと言われる美琴の精一杯なファッションである。ちなみに、普段から愛用しているヘアピンは外して、花柄の髪飾りを挿している。
「お姉様、準備はできましたの?」
「あー、うん、もうちょっとだけ待って」
 少しの猶予をもらうと、美琴は再び洗面所へと向かった。そこで現在の自分の容姿を最終確認。おかしな所が無いかチェックする。
「……よし、おっけー。今日の美琴さんはめちゃくちゃ可愛いわよ!」
 場合によってはナルシストとも取れる台詞を残し、美琴は洗面所を出た。

 待ち合わせ場所まで送っていきますのにと言う後輩の言葉を丁寧に断り、美琴は道を歩いていた。
 心臓がバクバクと速いリズムを刻む。二人で出掛けるのは初めてでは無いのだが、初めて私服を見せると言うことで今までに無い緊張感を味わうことになった。
 正直、今日の内にチャンスがあれば告白ぐらいはしておこうと考えていたのだが……。
(無理、無理よ! 告白なんて出来っこない! それどころか目も合わせられない! 恥ずかしい、恥ずかしくて死ぬ! 死んじゃう!!)
 恋に恋する純情乙女学園都市産十四歳は早くも逃げ出しそうな勢いであった。否、彼女が好きなのはとある少年なのだから「恋に恋する」というキャッチフレーズはおかしいかもしれない。
(どうすればいいのよーッ!!)
 乙女の苦悩は続く。

 天気予報が嘘を吐いた。土砂降りの雨が降る。確かに週間天気予報では「今週はずっと晴れ、晴れ、晴れのオンパレードです!」と言っていたはずなのだが、見事に騙されてしまった。
 もしものことを考えて鞄に入れてきた折り畳み傘の存在を思い出し、美琴は陰鬱そうにため息を吐く。
 無事合流できて、さっきまでショッピングを楽しんでいたせいで恨み言が倍に増えてしまう。
(こういう形で予防が当たっても嬉しくないわよ。……全く、ツリーダイアグラムは何してんのかしら)
 怒りの矛先を人工の機械に向けた、そのとき。
「しょうがないから入ってやるよ」と、隣に居る少年が笑う。
 その笑顔を見て、美琴は恋に落ちる音を聞いた。

436288:2010/02/11(木) 23:02:16 ID:TkO0KH8I
(何よこれ、何よこれ、何よこれーッ!)
 すぐ近くで想い人の人肌を感じ、美琴は息が詰まりそうになる。
 少年の左手と触れ合う右手が震え、胸が高鳴る。
 相合傘。はんぶんこの傘。すぐ隣に想い人。
 手を伸ばせば届く距離に、美琴はどうすればいいか解らなくなる。自分の想いが届いて欲しいとは思うが、彼は鈍感なので気付いてくれない。そして、実際に行動する勇気も無かった。

(……あーあ、この時間が永遠だったらいいのに)
 神様、お願いします、時間を止めてください。
 思わず泣いてしまいそうになるほどの切なさに、美琴は願わずにはいられない。こんな状況。
 嬉し過ぎて死んでしまう、と美琴は思った。

 楽しい時間と言うものはあっという間に過ぎてしまうものである。
 気が付けば日も暮れ、少年と美琴の家への道が分かれる交差点が見えていた。
 もう会えない。近くて遠い想い人。だから、
「……な、おい、ちょっと」
「いいでしょ最後なんだし」
 美琴は少年の手を握って、子供のように上下に振り回した。
 ゆっくり歩いても三分も経たない内に交差点に到着してしまう。
(……もうお別れ、か)
 分岐点で美琴と上条は見詰め合う。
 そして、
「それじゃ「今すぐ私を抱きしめて!」
「……は?」
 ポカンと口を開く上条を見ると、おかしさがこみ上げてきて、
「なんてね! 冗談よ冗談! まさか本気にしてんじゃないわよね?」
「あ、当たり前だろ? 上条さんは右手の名の通り幻想を抱かないんですからね!」
 そして二人は別々の道に歩き出す。

(……まぁまぁ上出来よね。最後に口が滑っちゃったけどアイツが気にするわけないし)
(……なんか今日の御坂は変だったよな。最後の言葉も変だったし、風邪でも引いてたのか?)



おわれ

437■■■■:2010/02/11(木) 23:09:12 ID:aWKh.qKk
supercellの名曲を思い出したww

438■■■■:2010/02/11(木) 23:10:28 ID:64Hcy.Aw
>>436
これなんてワールドイズマイン?w
ともあれGJ

439■■■■:2010/02/11(木) 23:13:57 ID:cgFBpHTg
乙!㍍⊃
美琴かわいいよ美琴

440sage:2010/02/11(木) 23:17:21 ID:xqT1vZrA
あ、あれ?これってあれだよな…

441桜並木:2010/02/11(木) 23:17:44 ID:GqopHcO6
ちと割り込み失礼。

>>432そう言うコメントは有難いのですが、自分に時間がないし、仮に時間があったとしても、
今回の投稿を見てもらえば分かる通り、自分に文才がなく(それ以前に>>409,>>410の言うとおり文自体に違和感が残る)、バトルものとなると原作のパクリがかなり多くなってしまったり、
さまざまな問題が浮上します。もちろんこれから改善していくつもりですが・・・。作文は得意分野なのですが、セリフが入ってくると文章がワンパターンになってしまうみたいです(〜と思った、〜
といった、〜な様子だ etc)。それに描写を細かくしすぎた結果、逆に風景が伝わらなくなってしまったようで、自分の力の無さを痛感するばかりです。なのであまり期待しないで、のんびりと投稿を待っていただけるとありがたいです。

長文になりましたが、失礼します〜。

442■■■■:2010/02/11(木) 23:42:45 ID:DTCIZhPw
>>438
それを言うなら「メルト」だw
ワールドイズマインは「世界で一番お姫様」ではじまる歌

443■■■■:2010/02/11(木) 23:59:56 ID:TqYpQoKM
>>421にご評価いただきありがとうございますー。

タイトルネタはJOJOですね。ま、思いつきですw
某課題は美琴バージョンも作ってましたが、
ちょっと嫌悪感を抱く人も出そうだったので、削りました。
微エロっぽい傾向は、ネタ切れのためですorz

>まとめWikiの方
掲載&見抜き早すぎですw 今後ともよろしくですー

444■■■■:2010/02/12(金) 00:04:49 ID:2Y/Ub9aM
>>436
違和感なく上条さんと美琴にあってますね
GJです

>>438
あなたがワールドイズマインで書いてくれると思ってOKですか?w

445■■■■:2010/02/12(金) 00:07:51 ID:L91POOrc
職人さんたちGJです!

今日投下が多いと思ったら、祝日だったんですね。
仕事があったので忘れてたw

446■■■■:2010/02/12(金) 00:15:54 ID:qKG3ekD.
>>427
> 車は使わない方向でいきたいと思います 「プールが同じ」って無茶苦茶近いですよね?
お互い車使わないで通ってるならそら近いだろうけど、車ありなら隣町くらいなら
平気で通うと思いますよー
学園都市でいえば、同じ学区もしくは隣接学区くらいの距離なんじゃないかなーと
勝手に思ってます。

この辺細かい設定わからんので、この話の設定でどうとでもすりゃーいいでそ
とは思うもののなんとなく。

447■■■■:2010/02/12(金) 00:31:59 ID:Dks5N9mc
438だが・・・なんてこった。素で間違えたorz
ネタだと思って許してくれw
そしてこれで何か書いて流してくれる職人希望

448琴子:2010/02/12(金) 00:59:23 ID:vtDHYDcA
みなさん素晴らしい作品ばかりです!!
原作読んで、美琴がとにかく好きになって…
この掲示板見つけてからはニヤニヤしっ放しですw

で、SSも初心者かつ掲示板も初心者なんですが、
私も何か書いてみたい!と思って勢いで1つ書いてみました。。
ホントに『妄想と勢いで』って感じです。。。

バレンタインもので6000字ほどなんですが、投下しちゃってもいいでしょうか??

449琴子:2010/02/12(金) 01:08:51 ID:vtDHYDcA
連続ですみません…
睡魔に負けそうなので、また夜が明けてからきます。。
ホント初心者ですみません。。。

みなさんの作品、楽しみにしています♪

450■■■■:2010/02/12(金) 01:13:09 ID:weG/bhKs
今5分後くらいにから作品投下して良いでしょか?

ちなみに、こないだ書いた幸せへと至る道 後日談です。

451■■■■:2010/02/12(金) 01:15:27 ID:LHu6yR/g
>>450
キタコレ!
リアルタイムで待機!

452■■■■:2010/02/12(金) 01:16:05 ID:weG/bhKs
すいません、琴子さんのあとにします

453■■■■:2010/02/12(金) 01:17:30 ID:weG/bhKs
あれ?よく読めば琴子さんいない?

ではいきます

…NGワードが怖いw

454■■■■:2010/02/12(金) 01:17:33 ID:LHu6yR/g
残念、夜明けっぽいので寝ますかね

455幸せへと至る道〜後日談〜:2010/02/12(金) 01:18:46 ID:weG/bhKs
上条当麻は困っていた。
それはもう、どこかのブラウニーと呼ばれるお人よしが現れてくれと、本気で思うくらいに困っていた。
なぜか?それは―――
「両手がギブスで固定されてて……生活できるかーーーー!!!
 …あぁ、不幸だ」


時間は少し前に遡る。

上条当麻は、いつものカエル顔の医者に診察を受けていた。
というのも、皆でがんばってラスボスっぽいやつは倒したが、各々怪我が酷かったので、そのまま病院に運ばれるという流れになったのだ。
……そこにいたるまでの経緯は、各自ご想像願いたい。なぜならば――

―あぁ、なんであいつらは、あんなとこで空気を読んだんでしょう。
  おかげで、上条さんは恥ずかしすぎます―

こうなるからである。
恥ずかしいことを思い出し、悶える当麻にカエル顔の医者が注意をいれる。

「女の子とのラブシーンを、皆に一歩引いて眺められていたのが恥ずかしいからって、動かないでね。 治療できないから」

「ぐはっ!」

…注意じゃなく、トドメだった。
そうなのである。
あの後、蘇生した当麻が、美琴とくっついていたとき、他の人々は、それまでのシリアスな雰囲気は一体どこへ行ったのやら、完全なチームワークを発揮し、当麻たちの邪魔にならず、且つ、会話も完璧に聞こえる距離へと退避し、眺め…もとい、観察していたのである。
ちなみに、二人がくっついているのが我慢ならない連中もいたことにはいたのだが、そこは民主主義万歳。
完全に、大多数の者たちによって無力化されていた。
二人が状況に気づいたときには、もう手遅れであった。

456幸せへと至る道〜後日談〜:2010/02/12(金) 01:19:50 ID:weG/bhKs
そこからいろいろあり、現在の病院へと直行してきたのだが、すでに治療が終わった者たちは帰ってしまっている。
残っているのは、入院するような傷を負ったもの立ちばかりだ。
そしてもちろん、当麻も入院すると思っていたのだが

「はい、終わり。
 君は帰っても良いよ」

「あれ?入院じゃないんですか?」

いつもと違う対応に、拍子抜けする。
それに対し、カエル顔の医者は、すでに治療の後片付けを始めながら言った。

「ああ、今回は入院すべきものが多くてね。
 病院のベットが足りないんだ。
 だから、傷は多いけど、どれも軽傷の君は今回入院は無し」

それだけ言うと、あれよあれよという間に、当麻は病院の外に放り出されたのだが、そこで気づく。
彼の両腕は、しっかりとギブスで固定されていたのである。
それも肘の間接までしっかりと。
というか、ギブスが必要なだけの怪我をしていた気がしないのだが。
ギブスをつけたことを悟らせないほどの手際の良さ…ヘブンキャンセラー恐るべし。
とはいえ、つけられた本人はたまったものではない。
そして、冒頭の叫びがあがるのである。

「両手がギブスで固定されてて……生活できるかーーーー!!!
 …あぁ、不幸だ」

しかしこのとき、当麻は一つ忘れていた。
先に治療を終え、当麻を待っていた美琴のことを。

背後から当麻の後頭部へと打撃が打ち込まれる。

「あだっ」

さほど強くは無かったが、完全に不意打ちであったため、当麻の口から声が漏れる。

「アンタは!約束したのに、まーた不幸だ〜、とか言って」

そこには、ご立腹で少し頬を膨らませた美琴が立っていた。
ところどころに巻かれた包帯が痛々しいが、それ以外はいたって元気なようだ。
治療に入る前に、先に終わった方が待っていると約束し、お互い分かれたため、彼女の姿を改めて確認した当麻は、ホッと肩の荷が下りる感じがした。

「悪かったな。
 上条さんは、今までの癖で条件反射ですよ」

なんだかんだで、大丈夫とはわかっていたが、当麻も美琴のことが心配で仕方なかったのだ。

「というか、あれは約束だったのか?
 お前の宣誓っぽかったんですが」

「あ、当たり前でしょ!
 私が約束だって言ったら、約束なのよ!
 男でしょ!そんなこと気にするの、小さいわよ」

当麻が思ったことを質問するが、その質問により美琴は、あの場面を思い出したのか顔が赤くなっている。
しかし当麻の方は、先ほどの医者相手の会話で、それ以上のことを鮮明に思いだすことになったため、動じない。

「…アンタに向かって言った、“私の中の”約束なの」

「なにか言ったか?」

「な、なんでもない! なんでもないわよ」

小声で呟いた言葉は、当麻には聞こえない。
そしてこの男は思うのだ。
相手の様子に気づくことも無く――理不尽だ――と。

457幸せへと至る道〜後日談〜:2010/02/12(金) 01:20:36 ID:weG/bhKs
そして少しして、回復した美琴が話を切り出す。

「ねぇ、いつまでもこんなとこにいるのもなんだし、帰りましょうよ」

「ああ、そうだな。 はええとこ着替えたいし」

「…あんた、そんなんでどうやって着替えなんかするわけ?」

当麻の言葉に、美琴が眉をひそめながら聞く。
それに対し、当麻は軽く苦笑いを浮かべ答える。

「まあ、なんとかがんばってみますよ」

その答えを聞いた美琴は、何故か赤くなって下を向く。
そんな彼女の態度に、当麻は疑問を覚える。
いつもならここで、何かすぐ反応があるはずなのだが、当の美琴は下を向いたまま、
―大丈夫よね、うん、大丈夫―などと呟いている。
不審に思った当麻が問いかけようとしたところで、美琴が勢いよく顔を上げる。

「あのさ…もし良かったらなんだけど……その、私が手伝ってあげよっかなって思ってるんだけど」

赤い顔で、最後のほうにいくにしたがい、声が小さくなっていく。

「へっ? いや、だってお前「これっ!!」」

当麻の言葉を、美琴が遮り、ポケットからすごい勢いで何かが書かれた紙を取り出す。

「アンタを待ってる間に、こんなの貰ったんだけど…」

顔を赤くしたまま、当麻と視線を合わせようとしない美琴の手から紙を受け取り、内容に目を通す。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
常盤台中学に在籍する御坂美琴の無断外泊を、第三者の生活補助を行うという理由においてのみ許可する。
この書類が効力をやどしている間、御坂美琴が使用していた部屋は、人員の増加により不足した場所を確保するため、他の人間に使用させる。
なお、この書類の期限は、生活補助を受ける第三者本人が、自身の判断で、肉体的、精神的に必要ないと断言できるときまでとする。
                                      学園都市統括理事 親船最中
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

458幸せへと至る道〜後日談〜:2010/02/12(金) 01:21:31 ID:weG/bhKs
「……上条さんは、ついに幻覚が見えるようになったみたいです」

そう言って、当麻は眉間を揉もうとして、手が届かないことに気づいた。
つまりは、美琴に当麻の部屋行ってこい!と書いてあるのである。
なぜこんな書類が出たのかというと、二人のあのシーンを見ていた者達が面白がって、無駄な権力を使いまくった、ということである。
…もちろん職権乱用もいいところである。
ちなみに、当麻の両腕にギブスをしたカエル顔にも、すでに息が掛かっていたりする。
…大丈夫か、学園都市。

「私も帰るとこがないの、だから…その…えっと…」

美琴は、なかなか次の言葉が告げれないのか、体の前で、自分の手をいじりながら、視線がいろいろなところへ動いている。
やっと顔を上げたと思ったら、今までも十分赤かった顔が、耳まで赤くなっていた。
当麻を見るのだが、恥ずかしいのか、いつものように堂々とは顔を合わせずに、見上げる形となる。
となれば、二人の身長差から上目使いになった状態になる。
そんな状態で、彼女は言葉を紡いだ。

「と…当麻の部屋に、行っていい?」

―やばい。 とてつもなくかわいいんですが―

「お、おう。 それならしゃーねーしな。」

結論から言うと、そんな美琴の態度が、当麻にどストライクで入った。
動揺を隠すために、当麻は視線をそらす。

「ーーっ!アンタがそんなんだから、手伝いに行ってあげるのよ。
 感謝してよ…ね」

そのいつも通り…でもないが、若干普段に近い態度を見て、当麻に少し余裕が生まれる。
…いや、確実に美琴の照れ隠しだとは、わかっていないだろうが。
そして、当麻は笑みを浮かべながら言う。

「ああ、上条さんは、優しい御坂センセーに感謝でいっぱいですよ…ありがとな」

「ーっ! ほら行くわよ」

「はいはい」

そして二人は、当麻のアパートへと歩き出した。

459幸せへと至る道〜後日談〜:2010/02/12(金) 01:24:29 ID:weG/bhKs
続く

>>454のかた、ややこしい書き込みをしてすいません

いかがでしたでしょうか?
今回はちゃんと確認したので“御琴”のような間違いはない…はず

460■■■■:2010/02/12(金) 01:27:10 ID:E2SS4ReI
GJ!!
美琴はそのままお持ち帰りと…
可愛い子の卒業は早いって言うけど…リアルでも二次元でもそうなのね…

461■■■■:2010/02/12(金) 01:38:04 ID:LHu6yR/g
GJ
危うくスレ閉じる所だったぜ!

感想書いたら
軽く批判と受け取られそうな文面になってしまったので心の内に留めて
統括理事に突っ込んで来る!

462■■■■:2010/02/12(金) 02:39:00 ID:v9TDYs1A
>>435(288)
とりあえずGJと残しておく。
まさかまた来るとは。来ないと思っていたんだけれども。いや期待はしていたので全く構わないのだが。
意見はまあ参考にしてもらえたなら良かった。
というわけで今回も言うよー。SS作るのにこんだけ狙う必要があるかは知らんけど。


ツッコミどころ満載というのはそうかも。髪切るんなら美容院に行けよとか。
まあそんなこと指摘しても身にならんので、仕組みや構成の面から言っていこうと思う。
どういう構成が良いものと呼べるのかは俺が聞きたいぐらいだからその点については考えないけどね。


いきなり少し高度な話をするけど、ある楽曲というか歌詞をモチーフに作品を書く場合、
いま思いついた限りで3つの切り口があると思う。

①歌詞の内容に忠実に書く。
②ポイントポイントで印象的に使う。
③全く使わない。これは描写をせずに感情を表現するのと似た方向やね。長くなるので極力説明は省くが。

で、本題。今回のは①のパターン。これは一番お手軽で、なおかつ一番面白くしにくい。柔軟な展開に対応できないから。
実際、最初に見た時は場面場面がガタついている印象だった。歌詞を見る限りそれは仕方がないけどね。

個人的には②にちょこっと近付けるやり方をお勧めする。
なぜか。そもそも歌詞には物語性がある。今回のはその典型で、小説のモチーフにする場合だと、
「コマ送りの歌詞のシチューエーションをひとつなぎに再生する」ような作業が必要になる。フィルムと映像を思い浮かべると良い。
この上短いお話を成立させるのはどう考えたってシーンが多すぎる。

だから、すこし忠実さから離れてみる。最初の準備の場面を適当に組み替えて、美琴の細かな動きで繋ぎ合わせるのが良いと思う。
(「起床→前髪→ファッション→超可愛いですけど〜」を「ファッション→前髪→超可愛いんですけど〜」で始めて、起床を後の回想に回すとか)
同じノリで他のも変えてやったり。まあ、この短さでこの歌詞全部を再現することがすでに無茶なことだけど。


ところで、②のやり方は本来シーン性を生かすための手法と見て良いと思う。だから歌詞との親和性は基本的に高い。
これを踏まえて今回の悪いところを挙げると、この作品は歌詞を区切りに場面を一つ一つ再現する点で
本質的には②的な面が強いが、ここに①の忠実さを加えることによってその良さを潰しているんだと思う。

しかし最後まで忠実に書ききったその根気には感服。俺だったらまず投げだすね。


さて、長々とすまなかった。意見はこんなところ。実は自分でも一度考えたかったことだからそういう点でも感謝。
ていうか、ここまで書くと自分が意見言いたがりなのよくわかるわ〜。短くまとめんのも楽じゃないね。

余談だが、名前欄に「まとめないで」とかかいときゃ気付いてもらえるんじゃね。編集は半自動でやってるってどっかで
見た気もするし。まあ管理人に報告するのが一番ややこしい面がなさそうだけども。

あと「感想めんどい」というのはなんだか「有言不実行」な匂いがするんだぜ。どうでもいいんだがね。
「面白かった」と言われるのが端的にうれしいように「GJ」とか書かれるのは少なくとも読まれたということなんだから
個人的には嬉しいことだしねえ。そんだけで十分なところはある。打たれ弱いだけでもあるけど。

最後に。住人の皆様、長過ぎなレスになってしまってスンマセンでした。

463ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:00:29 ID:ORoy6aiI
他職人様お疲れ様です!
2828と同時に勉強させてもらってます

「とある子猫が超電磁砲」前回>>300

前回意見があったように、少しまとめて投稿させてもらいます。
今回も至らぬ点の方が多いと思いますが、よろしくお願いします!

消費レスは6を予定しています。投稿開始は4時5分〜

464ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:06:15 ID:ORoy6aiI
「ここら辺で良いんだよな?」
 右手にシーソーと鉄棒、そして精々小学1.2年生までだろうと思われるサイズの滑り台。
 簡単に表現するなら団地の敷地内によくある公園と言った所か、その場だけを見てしまうと学園都市らしからぬ光景だった。

 公園は上条の寮から徒歩数分の場所にある、同じ学区ではあるが、本来なら美琴の行動範囲ではないはず。
 との疑問を抱きながらもこの場では触れない事にした。
 でもこの理由については聞いた所で美琴の口から話せる内容とは思えないのだが……。

「パッと見た感じ何もねぇけど、場所合ってんのか?」
「場所は間違いにゃいわ、でも何もにゃいってのはオカシイわね…」
「……ってことは誰かが拾ったとか?」
「……!?(いや…でも可能性があるとしたらそれしか…)」
「…どうした?」
「にゃ、にゃんでもないわよ!」
「じゃ、一通り探してみっか」

 上条はそう言って、公園を右手の隅から探し始めた。
 まずは目視、そして手探り…終いには木の枝で色んな所を突っついたりもしてみたが…捜し物は見つからなかった。
 隅から隅まで探したが、結局"物"と呼べるのは割れたスコップとペットボトルのキャップのみだった。

「これだけ探してないんじゃ諦めるしかないんじゃねぇか? それに誰かが拾ったなら届けてくれているかも?」
「…心当たりがあるわ、あと一つだけ…これでにゃかったら諦めるわ」
「御坂さん……そういうのは早く言って下さいっ!」
「私を拾ってきたシスターよ、インデックスとか言うんだっけ?」
 その後に本名ではにゃいでしょうけど、と付け足し上条に告げる。
「そういや、オマエを拾ってきたから…その場に落ちていた物を回収していても不思議じゃねぇな」
 家で待ってりゃ腹が減ったと同時に帰ってくるだろうしな、と美琴に告げる。

 辺りが徐々に朱に染まって行く中、上条は家路に付く…その様子を見る限り慌ててる様子はない。
 寮の入口でお決まりの服装の土御門舞夏が清掃ロボットに乗って登場したが、ここは華麗にスルー。

「ただぁいま〜…ってまだ帰ってないみたいだな」
 ポケットに入っている携帯を取り出しインデックスに連絡する
 呼び出し音が3回程鳴った所で応答があった。
「あーあーあーあー、……とーま?」
 他にも何かガチャガチャ聞こえるが一応繋がってはいる。
「…そーだよって、それ以外にかかってくる相手いんのかよ?」
「いない……そうだそうだ!今日は小萌の家に泊まってくからご飯は気にしなくていいんだよ!」
「(何でこういう時にそうなるかなぁ…)今日は帰ってきなさい、それにちょっと御坂がオマエを探してんだよ」
「短髪が…? どういうよーけんなのか説明して欲しいかも」
「オマエ、御坂を拾ってくるとき一緒に何か拾わなかったか? 携帯とか…財布とか…コインとか」
「……それってもしかしてカエルのとか?」
「あ〜多分それだ、で、それはオマエが持ってんだよな?」
「う〜ん、いきなり鳴き始めたから放り投げちゃった…」
「……財布は?」
「それは持ってる!」
「そろそろ暗くなるだろうし、迎えに行くから!」
 上条の方から電話を切り「ふぅ」と一息つく。

465ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:06:46 ID:ORoy6aiI
「どうだった…?」
「財布はあるってさ、携帯についてはご愁傷様です…」
「にゃにがどうにゃったらご愁傷様にゃのかよくわからにゃいけど…」
「放り投げちゃったとさ……」
「……連絡はどうすんのよ」

 その後はいかにもらしい間が開いた、だが沈黙に耐えられなかった上条は……。

「……オマエ、濡れてたんじゃ風邪引くかもしんねぇし気分もワリィだろ?」
「そ、そんなことにゃいわよ、あ、アンタのにゃらだ、大丈夫っていうかにゃんというか…って聞け!!」
 パチパチと怒りを表に出す美琴だが、現時点の最大出力はチクッとする程度。幻想殺しも必要がない。
 
 上条は美琴を居間に降ろし、風呂場へ向かった。洗面器で美琴専用の風呂を作ろう等と考えているようだ。

「にゃによあの馬鹿…少しくらい聞いてくれたっていいじゃにゃい…」
 美琴の方はというと肝心な事を聞いていない上条への不満を漏らしている。

 その頃、風呂場では上条が必死に洗面器を洗っていた。シャッシャッという音が静かな家の中で響く。
「洗面器洗うのも楽じゃねぇな…」
 
 その後も頑固な水アカに手こずりながらも、一〇分足らずで掃除は終了した。
 
「御坂、ちょっといいか!」
 シーンとしている家の中では少し大きすぎる声で、居間の美琴を呼ぶ。

「にゃによ…?」
「風呂を用意したから、俺がインデックスを迎えに行ってる間入っとけよ」
 美琴を軽く持ち上げ、洗面器横にちょこんと置く。
「洗濯物はこのカゴ、タオルはそこに置いておくから…」
 アンタに洗濯物を任せられるハズないでしょ!と思った美琴であったが、ここは上条に甘えることにした。
「じゃ、行ってくるからな。何かあったらどっか狭いとこ隠れとけ」
「う、うん…」

 上条が出発してすぐ、美琴は洗面器の簡易風呂に入る。そして入ってからとある事に気付いた…。
「(こ、これどうやって降りるのかしら…)」
 
 美琴をネコとしても見ていた上条はこのくらいひとっ飛びだろうと考えていたのだろう。
 だが美琴は降りれるワケがないと考えている、それもそうだ「体」のほとんどは人なのだから。
 カゴという名の小物入れは目の前にあるのに、何故かタオルは低い位置に置いてある。

「(あの馬鹿が帰ってきたらどうすればいいのよ、今の状態の裸は見られたくない…)」
 今の今まで美琴は自分がどうやったら元の大きさに戻れるのか…実は考えていなかった。
 ただ今は元の体に戻りたいとしか考えていない、これは御坂美琴の悩みというより一女性としての悩みだ。
「(どうやったら…)」
 考えるだけで時間は過ぎて行く……。
 美琴は今、自分がどうやってここから降りるかということよりも"どうやったら元に戻れる"のかを考えていた。

1・最大出力の電撃を放ってみる
2・“あの時”のように考えてみる
3・あの馬鹿の右手でダメだったから素直に諦める

 今ある選択肢はこの3ツのようだ、ちなみに“あの時”とは美琴がネコに変わってしまった時の事。
 悩みに悩んだ彼女は自力で上条宅を調べ上げ、取り敢えず押しかけてみよう…という計画を立てた。
 だがいざ近くに来ると……色々な事を考えてしまい、年頃の男女が二人きり…(ry なシーンを想像し勝手に漏電していた。
 そこから少しの間の記憶が失われており、気付いたらネコになっていたというワケなのである。
 事態を把握出来ずに慌てていると白いシスターが現れた、見覚えがあったので自分から直ぐ様SOSを出した。
 しかしそのシスターは“全く驚くことなく”美琴を受け入れたのだ、今考えてみるとおかしい話でしかない。

466ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:07:20 ID:ORoy6aiI
「(……あのシスターなんか知ってるんじゃない?)」

 そう「あのシスター」ことインデックスは全てを知っている。
 ただそれを上条にも美琴にも告げていないだけであって、彼女は知っているのだ。
 ここで美琴に決定的な選択肢が一つ出来た、その4「あのシスターに聞く」

 そうこうしていると解錠される音がし、ドアが開く音が聞こえた。そして咄嗟に自分の状況に気付く……。

「(ヤバッ!)」

 美琴は恐怖を全て捨て、洗面器からタオル(フェイスタオル)に向かい飛び降りた……。
 しかしと言うべきか、それともやっぱりと言うべきか…痛かったのである。
 タオルというクッションが無かったらという事を考えるだけで恐ろしい。
 
 そこで美琴は上条の言葉を思い出す―――何かあったらどっか狭いとこ隠れとけ
 タオルを巻きつけたまま、洗面器と壁の僅かな隙間に飛び込む…その時「我ながら馬鹿よね」と心で囁く。

「帰ったぞー、おーい御坂〜!」

 上条は真っ先に風呂場にある洗面器を確認するが、そこに美琴の姿はない……
 しかし水面が揺れている事から上がってすぐというのは把握出来た。

「……どこ隠れてんだ?てか何で隠れてんだ? こんな事したから嫌われたとか…?」

 上条は洗面器の前で腕を組み、勝手に分析を始めていた。インデックスは既に居間でスフィンクスと遊んでいる。

「(嫌ってないから嫌ってないから嫌ってないから!)」
「この洗濯物は…手洗い以外出来ねぇよな」
「(えっ? 洗濯物!?)ちょっと待ちにゃさいよアンタ!!」
「ん? 今御坂の声が…気のせいか?」
「…待てっつてんでしょ!!」
 
 洗面器横の隙間から、タオル一枚に包まれた御坂美琴が飛び出してきた。
 そりゃ、当然使えと言った物を使ってるのだから不思議でも何でもないはずなのだが
 ……その光景は上条にとっては異様である。

「んなとこで何してたんだオマエ…」
「入ってる時にアンタが帰ってきたから…」
「そんな長い時間浸かってられるほど気持ちイイもんなのか?洗面器風呂」
「……それにアンタに見られたくにゃいし」
「安心しろ御坂、万が一何かを見てしまっても上条さんは何も感じませんから」
「……それってどういう事よ」
「どういう事って?そのままの意味だぞ、それ以外に何があるってんだ?」
「こういう場合ってね、にゃにも感じないとか言われる方がショックにゃのよね…」
 
 美琴がパチパチし始めた、当然超能力者と言われる程の威力はないであろう。
 だがさっきまでの静電気級とはワケが違った、電撃と呼べる物を放とうとしていたのだ。

「ちょ、ちょっと待ってください御坂さん!! 今、上条さんは水で作業をしようとしているんですよ?」
「んにゃの関係にゃい……」
「本当に困るから許して!!」

 そう言って上条は美琴の頭の上に右手を置く、これだけでスッと大人しくなった。
 その理由として幻想殺しの効果に+αが加わっている、これは美琴限定なのだが…。

「ほれほれ…アナタは今可愛い子猫ちゃんですよぉ〜」
「……」
「(た、助かった〜)と、取り敢えずですね。この制服を洗濯しなきゃいけないのでそれまで……」
「私がやるから、あ、アンタは向こうに行ってなさいよ……」
「ま、まだご乱心な美琴様…お、桶をここに置いておきますから……」

 と言って風呂場を後にする上条、ネコになっても御坂は御坂だと心で思うのであった…。
 美琴の方は何故この桶を風呂に使わなかったのか疑問だったが、言葉には出さず心に閉まった。

 そして居間に戻った上条だが、インデックスがさっさとご飯を出せと言わんばかりにジト目で見つめてくる。
「不幸だ…」

467ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:09:48 ID:ORoy6aiI
 いつもの一言を残しキッチンへ向かう、インデックスの食料は基本的に何でも良いのだ。
 美琴の食べれる物について真剣に考えている上条は取り敢えず野菜を刻んでみる事にした。
 イメージとしては肉団子的な物を想像、一人暮らし歴が長いのでそれなりに料理は出来るのである。
 
「…筍の水煮、椎茸、ニラ…取り敢えずこんなもんでいいか」

 刻んだ材料を鶏ひき肉に投入し、軽く味付け…そしてつなぎの片栗粉を加えよく練り上げる。
 
「ふぅ、これで後は茹でるだけっと…」

 その時、風呂場の方からタオルを見に纏った美琴が出てきた。
 どうやら洗濯物は終わったらしい、両手に服を抱えて現れた。
「ドライヤーあるから、インデックスに頼んで乾かしてもらってくれ」
「うん…分かった」
 しかしその横顔は心なしか思いつめているように感じた。上条にとっては出来るだけ見たくない表情だった……。

「これ乾かして欲しいんだけど…」
「お安いごようなんだよ!」

 ドライヤーのスイッチを入れた次の瞬間、制服が一気に吹っ飛んでいった。
 下着は美琴が譲れないとばかりに抱えてるので幸い無事だったが…。

「飛びすぎかも…」
「ちゃんと押さえてやらにゃいからでしょうが!」
「おなかがへってると頭が働かないんだよ!」 

 結局、乾かし終わる前に上条が夕食を持って居間に来てしまった。

「ちゃんと乾かせたか?」
「あ、当たり前じゃない!」
「何で短髪は意地を張ってるの?」
「うっ……」
「……飯食う前にやっちゃうから、さっさと服をよこせ!」

 上条は下着以外の服(短パン含む)を全て完璧に乾かして美琴に渡した。
 
「じゃ、俺は一旦出てくから御坂は着替えちゃえよ」
 終わったら呼べよ、と一言残し上条は何故か外まで出て行った。

 美琴は仕方なく下着は取り敢えず放っておいて、服を見に纏う。
 やはり短パンだけじゃ落ち着かないというのが正直な所らしいが当然言葉には出さない。

「あの馬鹿が外に居る間に聞いて起きたいことがあるんだけど…」
「?」
 インデックスはクエスチョンマークを顔にしたような表情をする。
「アンタは何か知ってるんじゃにゃいかって思ったのよ、私が小さくにゃった事に関して…」
「……バレたんなら仕方ないかも、聞かれたら隠す理由もないから話すけど―――
―――実はその現象を治すのはとっても簡単な事なんだよ、でもとっても重い行為をする必要がある」
「簡単で重い行為…?」
「そうなんだよ、その行為はやっちゃえば一瞬、だけど本人達の気持ちが一番大事。誓の意味もある行為だからね」
「そ、それってまさか―――」
「―――キスをすれば短髪は元に戻れるんだよ」
「にゃ、にゃに馬鹿な事言ってるのよ! あ、あ、アイツ何かとキスにゃんか出来るわけにゃい!!!」
「その調子じゃ短髪は一生そのままの姿で過ごす事になるだろうねぇ〜」
「そ、それが困るから相談してるんじゃにゃい!」
「だからね、それしか解決の方法はないんだよ。“そっち”の人間にこんなことを言っても無駄と思うけど
それ以外の可能性はゼロなんだよ、とーまの右手が効かなかった時点でこれは絶対、神様でも変えられない事」
「……少し考えさせてちょうだい」
「とーまが寝てる時に勝手にしても姿は元に戻る、これが一番簡単だと思うんだよ。短髪にそれを実行出来る勇気があれば…の話だけど」

 美琴は自分が元に戻る方法を聞かされた、しかも方法はたったひとつ…“上条当麻”とキスをする。
 これは想像以上に重く、簡単なようで簡単ではない……美琴からしたら当然嫌な事じゃない。
 でもその行為を面と向かってする場合は相手の気持ちも聞く必要がある、
 無理やりするくらいなら元に戻れなくて良い。
 美琴はそう考えていた。
 そして自分が元に戻る事……それは上条当麻とのこれから先にも影響する事だということを意味していた。

「(重すぎるわよね〜全く)」

468ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:11:32 ID:ORoy6aiI
 美琴が一人で考え悩む中、インデックスはどうやら上条を呼びに行くようだ。
 席を立ち、僅かな時間ではあるがスフィンクスと二人きりの空間が作られた。
 実は美琴、ネコが大好きなのである。ただ体から発せられる微量な電磁波をネコが嫌って寄り付かない。
 しかし今回はワケが違う、自分もネコなのだからどうにかなるだろう…
 という事でこの際思う存分ネコと戯れたい気持ちなのである。

「ちょっと失礼するわよ…」

 美琴はスフィンクスのお腹の辺りに腰を落とす、普通の人間がやっては
 ネコを下敷きにしてしまう恐れがあるが、今の美琴なら問題はない。
 それに今回は電磁波も出てない様子でスフィンクスは快く美琴をお腹の前に置いている
 というよりご飯の問題で元気が無いとも言えるのだが…。

「ったく、どんだけ人を外で待たせるんですか〜?」
「おなかへったから早くいただきますをするんだよ!って短髪!?」
「少し冷めてっから温めてくるぞ…って御坂…オマエ何やってんだ?」

 二人から驚きの声が飛ぶのも無理はない、あの御坂美琴がネコ撫で声でスフィンクスと二人だけの世界に入り込んでいるのだから……。
「可愛い…可愛すぎるわ…ホレホレ〜いい子いい子、夢だったのよね〜ネコとこうして遊ぶというか戯れるのが」
「あの〜御坂さん?」
「にゃによ〜用があるなら後…で……あ、アンタいつからそこに……」
「えーっと……ついさっきから」

 不穏な空気を感じたインデックスとスフィンクスは共に首をかしげながらやれやれと言った感じで席をはずす。

「……忘れにゃさい、今すぐに!」
「い、今見たものだけは…む、無理ですっ!」
「私が元に戻ったら覚えときにゃさい……」

 取り敢えずこの場はやり過ごした上条だったが、美琴が元に戻ったらの事を考えてゾッとした……。

「とーま!」

 争いの空気が通りすぎるとインデックスが睨んでくる、目的はただ一つ……。

「よし!少し遅くなったけど、ご飯の時間だぞ〜」
「ごはん♪ごはん♪ごはーん♪」
「御坂にはこれを作ったから、食べてくれ」

 そこには小さい器に入った肉団子のスープがあった、団子は一口サイズにカットされており。
 何故か小さいスプーンまでもが用意されていたのだ。

「ここに居る間はこんなもんしか出せないけど……。おかわりだけは自由だからな!」

 美琴は無言でスプーンを進める、隣で騒ぐインデックスの横でただ静かに……。
 上条はお口に合いませんでしたか?と言いたかった所なのだが、美琴のスープはすでに無くなっている。

「……」
 そっぽを向いて器だけを差し出す美琴、その頬はほんのり赤くなっている。
 上条がイマイチ状況が理解出来なかったが、すぐにおかわりを用意し美琴の元へ届ける。
「ほらよっ」
「あ、ありがと……」

 上条と美琴が向かい合う形の右側に、インデックスが家の食料を全て食べ尽くす勢いで箸を進める左側。
 食事をしているのに変わりはないのだが、テーブルの右側と左側では雰囲気が全く異なっていた。
 結局はインデックスが全て食べ尽くし、お腹いっぱいで食事を終えたというよりは料理が無くなったから食事を終えただけと言った感じだ。

 美琴が何やらそっぽを向きながら横目でチラチラと上条を見る
「あの…その…美味しかった」
「光栄です、ハイ」
 ギコチないやり取りではあったが、二人は正直な気持ちをお互いにぶつけた。

 食事が終わり、インデックスがテレビに噛り付く中、上条は直ぐに寝る態勢に入ろうとしていた。

「インデックス、寝る時はテレビ消せよ。あ、後…御坂はベッドの上でもスフィンクスの横でも好きな所で寝て良いぞ」
「ちょっとアンタはどこ行くのよ、そっちはお風呂場よ…?」
「あ…俺は風呂場で寝てんだよ。カギかけちゃうから用があんなら今のうちに…」
「アンタと一緒じゃダメにゃの……?」
「……んとよく聞こえなかったんですけど…」
「だから…アンタと一緒に寝ちゃダメにゃのって聞いてるのよ」

 インデックスはテレビを見ているから聞こえないフリをしているのか?
 それとも事情を知っているから聞こえないフリをしているのか?
 どっちかは定かでないがこの二人の会話を聞いて口を出していないのは事実である。

469ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:11:44 ID:ORoy6aiI
「つまり御坂美琴さんは、この上条当麻と一緒に寝るとおっしゃっているわけ…ですか?」
「好きな所で寝て良いって言ったじゃにゃい……」

 ネコはネコと言えど、御坂美琴である事も確かだ。元の姿を思い出してしまい上条はドキドキしている。
 つまり無理矢理ネコと決めつけて、理性を働かせる以外に方法はない……上条が美琴に返す言葉はもう決まっている。

「わ、分かった……今日だけだからな、今日だけ」
「……う、うん。ありがと」

 いつの間にかインデックスはベッドの上で横になっていた。上条が心配になるくらいこっちの事に干渉してこない。
 でもそれに越したことはない、と自分の中で納得し寝床(風呂場)へ向かう。

「んで、御坂さんはどちらでご就寝に?」

 上条は浴槽の中で寝るのか、外で寝るのかを美琴に尋ねた……のだが。
 
「アンタと一緒だって言ったじゃにゃい…」

 潤んだ瞳を見て上条は首を縦に振らざるを得なかった……。

「免責一、スペースがスペースなのでナニがあっても上条さんは一切の責任を負いません…以上!おやすみなさい!!」

 当然寝れるワケがない、息遣いまで聞こえるし耳を澄ませば胸の鼓動まで聞こえそうな至近距離
 少し動いた際に唇と唇が触れてしまう可能性もある。
 相手はネコなのだが御坂美琴でもある、これを頭の中でかき消そうとしても簡単に消える物ではないし
 相手がネコだと最初から思っているならばここまで意識はしないだろう。

 美琴は夕食前にインデックスに言われた言葉を思い出していた――寝てる時に勝手にしても姿は元に戻る。
「(これじゃ、コイツの気持ちもわかんないし、意味ないわよね…私がコイツを勝手に利用して勝手に元に戻るだけ…)」

 二人とも目を閉じて数時間経過するが、実は眠れていないのだ。というより眠れない。
 上条にしても美琴にしても今日は色々な事があり肉体的にも、精神的にも
 疲れているというのに……お互いが意識し合ってしまい最悪の結果をもたらしている。

「(さ、さすがにソロソロ寝たわよね……)」
「(あ〜OK出すんじゃなかった…不幸だ……)

 上条が寝るのを待っていた美琴は、胸元まで移動し体を預ける……上条が腕さえおろせば抱き抱える形になる。
 しかし上条も寝てはいない、目を開けて確認は出来ないが美琴が移動したのは嫌でも分かった。

「(よりにもよってそんな所に…腕がおろせないぞこれじゃ……いや、でも寝ちゃってるなら……)」

 様々な事を考えた結果、上条は腕をおろすことにした。その結果がどうなろうと知らないくらいの気持ちで……。

「(……!? こ、これって、だ、抱かれてる……?)」

 思わず声が漏れそうになったが、必死に耐えている。

「(抱き心地が物凄くいい…って相手はネコだ、相手はネコ……いや、ネコだから良いのか)」
「(なん・・・で? なんでこんなに強く抱きしめるのよコイツ…ズルいっ)」

 二人はお互いが起きている事も知らずに…そして夜は更け二人は眠りに吸い込まれる……。

とある子猫な超電磁砲 一日目終了

470ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/12(金) 04:12:21 ID:ORoy6aiI
一日目終了です。
二日目は主役の二人、上条さんと美琴
今回のキーキャラクターインデックス
はもちろん、黒子を出しちゃおうかなと思ってます。

ここまで読んで頂き感謝します
意見や感想、誤字の指摘や悪い所がありましたら遠慮なく言って下さい。
基本的に寝る前に投稿するのですぐに返信は無理だと思いますが
後日作品を投稿する際必ずお返しさせてもらいます。

それでは失礼します!

471■■■■:2010/02/12(金) 05:06:48 ID:f44HOq7o
gj

472琴子:2010/02/12(金) 09:30:16 ID:T.5bk9n2
起きたらまた新しいお話が…!!
本当に朝から楽しませていただきましたw
お二方ともありがとうございますw

ヤシの実さんの二日目まで時間があるようなので、
昨夜言ってみたのを思い切って投下してみたいと思います!

消費レスは10…

初心者ですがヨロシクお願いします。

473とある乙女の手製菓子1:2010/02/12(金) 09:33:45 ID:T.5bk9n2
 二月になり、学園都市を含む日本女子の大半が浮足立っていた。全てはバレンタインデーのためである。
そして、それは常盤台中学の生徒も例外ではなかった。女子校のバレンタインデーをなめてはいけない。たとえ男子がいなくとも、女子はバレンタインデーを楽しむ術を持っているのだから。

 そんな二月のある夕方、御坂美琴は大きな紙袋を二つ抱えて部屋に帰ってきた。

「ただいまー」
「お帰りなさいませ。……お姉様、一体いくつお買いになりましたの?」
「とりあえず五十個かな」

即答した美琴は、紙袋ごとベッドの上に倒れ込んだ。

「あー…みんな何であんなに頑張れるのかしら?選んで買うだけでも疲れるってのに」
「何度も申しておりますように、お姉様には自覚というものが足りないですの。お姉様は学園都市第三位の超能力者であり、常盤台中学のエースですのよ」
「だけど……」
「だからこそ、皆がお慕いするお姉様にチョコレートを渡したがるのは当然ですの。むしろ全ての方にお返しを用意されるお姉様に驚きですわ。お姉様の貰う量が多いことは分かり切ったことですし、お返しがないからと言って恨むような方はいませんのに」
「でも悪いじゃない。せっかく作ってきてくれるのに。せめて市販でもいいからお返ししないとさ」

そんな悩ましげな美琴を見て、白井は少し嬉しそうに微笑む。そんな優しい美琴だからこそ、皆が慕って手作りチョコを渡したがるのだということを、本人は全く自覚していない。

(お姉様らしい悩みですわね)

474とある乙女の手製菓子2:2010/02/12(金) 09:35:32 ID:T.5bk9n2
 ふと、ベッドに倒れ込んだ美琴が体を起こした。

「ねえ、黒子」
「どうかなさいましたの?」
「どうして皆わざわざ作るのかな?買った方がずっと楽じゃない」

 大勢にあげること前提ならば経済的な事情で手作りの方が安上がりという考えも世間にはあるのだが、お返しとして高級ブランドのチョコ五十箱を購入した美琴の脳にそんな考え方はない。面倒か否か、それだけだ。
対して金銭感覚にあまり差はないものの、美琴よりは圧倒的に乙女チック(?)な白井はすらすらと答える。

「それは気持ちの問題ですわね。好意や感謝の気持ちを込めた贈り物をするのであれば、手作りの方が遥かにいいに決まっていますもの。自ら心を込めて作った物ならば、相手にも気持ちが通じやすくなるというものですわ」
「感謝―――――」
「もちろん、お姉様のように大勢へのお返しを用意する場合は市販の物でよろしいと思いますわ。先程も申しました通り、全ての方にお返ししようとお考えになる時点でお姉様は十分過ぎるくらいですの。わたくしは黒子の愛を込めたお姉様だけの為の手作りチョコをお渡しするつもりですが、お姉様は何も気になさらず受け取ってくださいな」

ちなみに現在、白井はお姉様の為に作るチョコに必要な『調味料』を取り寄せ中であったりするが、それに気付いた美琴が怒るのは数日後のことである。

「ふーん。そういうものかしら……」

 心ここにあらずの返事をした美琴は、とある少年のことを思い浮かべて再びベッドに寝転んだ。

475とある乙女の手製菓子3:2010/02/12(金) 09:37:15 ID:T.5bk9n2
 美琴にとってバレンタインデーとは嬉しくも悩ましいイベントである。白井の言う通り、御坂美琴は学園都市第三位の超能力者であり、名門常盤台中学のエースなのだ。それらを驕らず誰にでも平等に接する美琴の人となりを考えれば、お嬢様校ばかりの学舎の園で彼女がちょっとした人気者になるのはごく自然なことであった。その結果―――――

「はぁー……」

 バレンタイン当日、第七学区にて盛大な溜息をつく乙女がここに一名。

美琴は薄っぺらい学生鞄と大きな紙袋を一つ持ったまま街をさ迷っていた。紙袋の中身はもちろんチョコ―――――受け取ったチョコの数を聞けば、嫉妬のあまり思わずのた打ち回る男子もいるに違いない。厳密な数はわからないが、とりあえずお返し五十箱では足りない数だったとだけ補足しておこう。

本当は他にも紙袋があったのだが、美琴が持ち切れない分は白井が空間移動で持ち帰ってくれた。数少ない『美琴の手作り』を受け取った今朝から、白井黒子は異常なまでに機嫌がいいのだ。そんな白井は現在、風紀委員の仕事で街の巡回を行っているらしい。

ところで。先程盛大な溜息をついた美琴だが、それは決して先輩同級生後輩その他諸々の女子から貰ったチョコぎっしり紙袋のせいではない。かれこれ一時間近く歩き回っているというのに、お目当ての人物が全く見つからないせいである。

疲れ果てた美琴はいつもの自販機前に辿り着いた。が、今日はもう上段蹴りする気力すら出てこない。
 はぁー、と再び盛大な溜息をついたその次の瞬間。顔をあげた美琴の目に、見慣れた顔が飛び込んできた。黒くてツンツンした髪の少年―――――美琴が探し回っていた人、その人だ。

「おっすー。……なんか疲れてんな?」

476とある乙女の手製菓子4:2010/02/12(金) 09:39:21 ID:T.5bk9n2
 美琴が顔をあげたその先に、何やら疲れた顔をした上条当麻が立っていた。こちらも小さな紙袋を一つ下げていたが、今にも穴が開きそうなほどボロボロだった。これは青髪ピアスを筆頭としたクラスの男子から奪われそうになったものを死守した結果だったりする。

「……、荷物が重かっただけよ」
「その紙袋……もしかしてチョコか?」
「……、アンタのも?」
「あぁ、うん、まぁ、一応」
「何よ、その歯切れの悪さは?」
「……、『上条くん、あげるよ。いつも不幸だもんね』『私が幸運なのって上条くんのおかげな気もするし、お礼に受け取って?』……そんな同情チョコを自慢できる男に、わたくし上条当麻はなれませんなりませんなりたくありません」

 そう言って何だかどんよりと重い空気を漂わせ始めた上条を見て、美琴は少し引きつった笑みを浮かべる。

「それは…ご愁傷様、かしら」
「どうもー。お前の方は友チョコってやつか?お嬢様のチョコって言えば高そうだな」

そんなに貰ったらお返しが大変だろうな、と上条は庶民らしい感想をこっそり抱いてみた。

「じ、じゃあ、アンタはその……」
「あん?」
「ほ、本命らしいのは貰ってないわけね?」
「……、ないです。だから傷をえぐらないでくださいませ」

 本当は素直になりきれなかった女子からの本命チョコが複数混じっていたが、鈍感大魔王が気付けるはずもない。本当にご愁傷様なのは間違いなく彼女達の方だ。

「そ、そうなんだ」
 何故か安堵しているような美琴に、上条は嫌な予感がした。
(まさかコイツ、貰ったチョコの数で勝負よ!とか言い出すんじゃ……?!)

477とある乙女の手製菓子5:2010/02/12(金) 09:41:01 ID:T.5bk9n2
 が、上条の予想は大きく裏切られた。
 何やら鞄をあさり始めたなと思っていた矢先、美琴が突然右手をつきだしてきたからだ。

「……、え?」
「あげる」

 美琴の右手がつまんでいるものは可愛らしいカエル柄の小さなギフトバッグ―――――たった今、美琴が自分の学生鞄から取り出したばかりのものだ。

「あ、あのー御坂サン、これは……?」
「み、見てわかんないの?! チョコに決まってんでしょっ!」

バチン、と美琴の前髪から雷撃の槍が発射された。反射的に右手でそれを防ぎ、上条は慌ててギフトバッグをひったくる。

「な、何てことすんだ! せっかくのチョコに当たったらどうするつもりですか! 食べ物は粗末にしてはいけませんって習いませんでしたかッ?!」
「なっ?! わ、私が作ったんだから、どうしようと私の勝手じゃない!」
「え? ということは……これ、手作りなのか?」
「……!! そ、そうだけど?」
「開けてもいいか?」
「……、開けていいわよ?」

 なんで疑問形なんだよ?と思いつつ、上条はギフトバッグのリボンを解いた。現れたのは小さな箱、その中には―――――。

478とある乙女の手製菓子6:2010/02/12(金) 09:44:25 ID:T.5bk9n2

「マフィン?」
「違うわよ! フォンダンショコラ!」
「ふぉん……?」
「フォンダンショコラ!! もしかしてアンタ、食べるの初めてとか?」
「……、何だか高級そうな名前で。た、食べていいんですよね?」
「い、いいわよ?」
「それじゃ遠慮なく―――――」

パクっと一気に半分、上条は美琴の手作りを食べてしまった。さらにフォンダンショコラの性質上、中からとろりと甘いチョコレートが零れ落ちそうになったため、残りの半分も慌てて口に放り込んでしまう。

(うまッ?!)
「ちょ、ちょっとアンタ! もうちょっと味わって食べなさいよ?!」
(美味しいですぞ!! これはもしや不幸じゃない?!)

 何故だか少し涙目で笑う上条を目の前にして、美琴はとりあえず喜んでもらえたのだろうと推測した。
一方の上条は、改めて美琴から貰ったギフトバッグの中身を確認し出した。フォンダンショコラとやらはあと二つ残っているが、今すぐ続けて食べるのは勿体ない気がする。

どうしたものかと悩み始めた上条に、美琴はおそるおそる声を掛けてみる。

「お、美味しかった?」
「ああ、美味しかったぞ。ありがとな」

 満面の笑みを浮かべる上条の言葉に嘘はなかった。
 上条の想像を大きく裏切って、それは最高に美味しかった。
 
 見た目マフィンのような焼菓子の中は、とろーり美味しいチョコレートだった。
 これがフォンダンショコラ、覚えておこう。

479とある乙女の手製菓子7:2010/02/12(金) 09:46:45 ID:T.5bk9n2
「お嬢様はお料理出来ないと思ってたけど、とんだ勘違いだったな。すまん」
「え? あー……『不器用なキャラが不器用なりに頑張ってみたボロボロクッキー』ってやつ? 気にしなくていいわよ。私も料理は得意な方じゃないし、下手すればそうなってたかもね」

 ちなみに常盤台中学の方針上、美琴は『淑女の嗜み』程度に和・中・仏のフルコース料理を一通り作れたりする。彼女の言う『料理を得意とする人』は、常盤台中学には結構いる一流の料理人並みの腕前を持つ人のことだ。

「そうなのか? じゃあ成功してくれて良かったよ。…よし、残りは家で食べるとするか。今ここで全部食べちまうのは勿体ない」

 禁書目録に盗られないよう気をつけなければ、と心に固く決めて美琴からの贈り物を自分の鞄に入れる。

(も、勿体ない?! そんなに喜んでくれてるの?! どうしよう、すんごく嬉しいんだけどッ!!)

「にしてもさ」
「うん?」
「このふぉ…なんとかってやつ、結構作るの大変そうだよな」
「別にそんなことないわよ?」
「ほんとに、ありがとう御坂」

 いつになくいい雰囲気だと、美琴は感じた。今なら素直になれるかも? 告白すれば成功しちゃうかも? なんて美琴が考えていた、その瞬間。

「義理なのに」

 右手に『幻想殺し』を宿す鈍感大魔王が、美琴の幻想を、瞬殺した。

480とある乙女の手製菓子8:2010/02/12(金) 09:48:45 ID:T.5bk9n2
「義理じゃないわよッ!」

 バチン、と美琴が髪の毛から火花を散らしながら反射的に叫ぶ。

「……、へ?」
「……、あ」

 自分が何を口走ったのか気付いたところで、すでに後の祭りだ。
 美琴は顔の前で両手をバタバタさせ、慌てて言い訳を始めた。

「だ、だ、だから! これはその、そう、あれよあれ! 感謝のつもりで作ったものであるわけで……」
「感謝と?」
「そうよそう! アンタには何かと助けてもらったりしてるから、黒子の分作るついでにアンタにもって思ってみたりしたわけよッ!」

 ちなみに白井にあげたのは簡単なトリュフであって、上条へ渡したフォンダンショコラとは手間の掛け方がかなり違うのだが、上条がそんなこと知る由もない。

「感謝か……そうか……」
「そうよ、感謝よ。も、文句ある?」(や、やっぱり本命って言うべき?! 言わなきゃだめ?!)
「いや、ない。当たり前だろ? お前の気持ち、ちゃんと受け取った。ありがとう御坂」
「ふぇ?!」

(お、お前の気持ちって…私の気持ち? え? もしかして好きってバレた?!)

 ボンッ、と美琴の顔が一気に紅く染まり、電気が少しずつ漏れてゆく。
 自分で『感謝の気持ち』だと言い訳したことさえ忘れるほどに、美琴は気が動転してしまっていた。

「ちょ?! なぜにここでビリビリ?!」

 慌てて右手で美琴の頭を押さえる。
 が、それが美琴にとっては致命的となった。

(あ、アイツの手が! 手が、私の頭に!! な、な、撫で、撫でられて―――――?!)

「ふ、ふにゃー…」
「お、おい、御坂?!」

 ぷつん。バタッ。
 幸せの絶頂を迎えてしまった美琴の意識は呆気なく途切れて、その場に崩れ落ちた。

481とある乙女の手製菓子9:2010/02/12(金) 09:51:24 ID:T.5bk9n2
 これはきっと夢なのだろう。

(アイツ、喜んでくれて良かったなぁ…。やっぱり手作りにして良かった……)

 上条に背負われながら、美琴はぼんやりと考えた。

 実は当初の美琴は上条に市販の高級チョコを渡すつもりでいた。
 本当は男子にも『友チョコ』は通用するのだが、相手が上条という時点で美琴にとっては『本命』になってしまうため、恥ずかしさのあまり手作りなんて案は考えられなかったのだ。

 だが、とある後輩が何気なく言った『感謝』という言葉で、美琴は上条に手作りチョコを渡すことを決意した。
 『感謝』という形でなら素直に心を込めて作って渡せるかもしれない、そう思って。

(型チョコもトリュフもありきたりかと思って結局あれにしたけど、正解だったかしら?)

 まさか自分の一言がきっかけで愛しのお姉様と憎き類人猿がいい雰囲気になっているなど、知らぬ間に美琴のキューピッドとなってしまっていた白井黒子は全く考えていないことだろう。
 さらに言えば、まさか自分や初春がもらったトリュフが当初『アイツ用』に作られたものだったと気付くことは多分おそらくきっとないであろう。

(アイツに背負われてるなんて…夢でも幸せかも。今ならちゃんと言える気がする。)

 夢の中の美琴は、いつもよりも自分の気持ちに対して素直であった。

(わたし…アンタが好き……)

 夢の中で、美琴は上条をぎゅっと抱きしめた。

482とある乙女の手製菓子10:2010/02/12(金) 09:57:10 ID:T.5bk9n2
 見た目通り、御坂美琴は軽かった。
 何だか背中に柔らかい感触、耳には生温かい吐息がかかっているように思うが、己の理性を総動員させてそれらの全てを気のせいだと思い込む。

(コイツ、最近漏電とか多くないか? まさか、また一人で悩みごと抱えてるとかじゃねえだろうな?)

 美琴は苦悩を一人で抱え込む癖がある。
 後輩の白井に頼れないのはともかく、自分にくらい無遠慮で頼ってくればいいのにと上条は思う。
 ビリビリ攻撃は無遠慮のくせに、こういう重要なことに限って遠慮深いのが美琴の困った所だ。

 そんな事をつらつら考えていると。

「……、アン…好き……」

 耳元で美琴の微かな呟きが聞こえた。どうやら寝言らしい。にしても、と上条は思う。

(あん…すき……『あんちすきる』か? 警備員が出てくる夢って……。なんつー物騒な夢見てるんだ、コイツ)

 と、力なく垂れ下がっていた美琴の両手が、いきなり上条の胴に力強く回された。

(な、な、な……?!)

 慌てる上条だが、美琴が起きる気配は未だない。
 ドキっとしたのは嘘ではない。背中や耳に現在進行形で感じているものと合わさり、この不意打ち攻撃は上条の心臓に悪すぎた。
 
 それでも上条当麻が誇る鉄壁の理性は一応崩れない。崩さない。崩してはならない。崩してなるものか。
 何せ相手はまだ中学生なのだ。

(警備員にプロレス技でもかけてんのか?!)

 結局その日、どこまでも鈍感な上条が美琴の幸せな夢の内容を正しく理解することはなかった。

483とある乙女の手製菓子11:2010/02/12(金) 10:00:04 ID:T.5bk9n2
 その後、なかなか目覚めない美琴を背負って常盤台中学の学生寮まで送り届けようとしていた上条を巡回中の白井黒子と初春飾利らが見つけて騒ぎ始め、完全に目覚めた美琴が照れ隠しに電撃を巻き散らすのは別のお話だったりする。

 ちなみに。
 美琴は知る由もないが、騒ぎ出した白井からの逃走でボロボロになって帰宅した上条が悪戦苦闘した結果、上条が何とか最後まで死守しきった美琴からのチョコ以外は、見事に暴食シスターの餌食となってしまう。

 口周りにチョコをつけて満足げなシスターの後ろで、守りきった美琴のチョコを抱えていた上条が思わず呟いた言葉は意外にも不幸と反対の言葉だったのだが、その頃白井の質問攻めにあっていた美琴が知るはずもない。

 
 
 こうして、とある乙女のバレンタインデーは今年も幕を下ろしたのであった。

484琴子:2010/02/12(金) 10:07:32 ID:T.5bk9n2
以上!
「とある乙女の手製菓子」おわります。。

思ったより消費してしまいました…
SSも掲示板も初心者ですが、勢いで書いちゃいました。

女子校&美琴のお嬢様像ですが、
これは琴子のリアル実体験に基づく想像です。
女子校のバレンタインデーはすごいんですよ、ほんと…

お粗末さまでした!

485■■■■:2010/02/12(金) 10:10:28 ID:KRnmdZPk
>>484
内容、投稿マナー共にGJ!
新人さんとは思えないですねーw

486■■■■:2010/02/12(金) 10:10:59 ID:zzWITm4M
GJっしたー
面白かったですよ

487■■■■:2010/02/12(金) 10:12:04 ID:gvcyaHUU
>>484
リアルタイムGJ!
ああ、女子校はすごいよね……うん。

488琴子:2010/02/12(金) 10:32:03 ID:PaUIX5jc
!!!
みなさん早速ありがとうございます!!
こんなに早く反応いただけて嬉しいですw

>>485さん
投稿はもちろん書き込み自体初めてなので
sageの大切さとかもよくわからず不安いっぱいでしたが…
思い切って投下してよかったです♪

>>486
美琴達らしい面白味とか伝わってれば嬉しいですw
口調とか考えながら書いてると結構難しいものですね。

>>487
女子校のバレンタインデーは
鞄も紙袋もお菓子だらけですよーw
運動部の人気者とかホントに美琴状態…
上条の『庶民派意見』は琴子のリアル感想ですw

ちなみに私は『渡す側』…
ノリは黒子的でしたw(変態さんじゃないですけど!)

489■■■■:2010/02/12(金) 11:01:50 ID:7OleBilY
>>484
GJ
これからも是非いっぱい書いて下さいな

490■■■■:2010/02/12(金) 12:04:53 ID:j/WbYp7Y
>>470
GJです

意見としては流れをもう少しスムーズに出来ると良いかな
過去の作品から比較しても、投下される度に腕を上げてますね
2日目以降も、期待させてもらいます。

>>484
GJ!

初心者様とは思えないですw
今後の作品にも期待します

491Aサイド ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:48:22 ID:tULsKIdI
こんにちは。
>>484 氏の投下から時間も立たない内に投下して申し訳ありません。
『美琴の不幸な初体験』4レスで投下します。
でわ。

492『美琴の不幸な初体験』1/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:48:58 ID:KKX050XE
『美琴の不幸な初体験』



 ここは公園の一角。
 ベンチに座って話をしていた上条と美琴だったが、話はひょんな事から携帯ゲームの話題に。
「御坂、お前って携帯ゲームとかやんねえの?」
「私ああ言うチマチマしたのって駄目なのよね。イラっと来て携帯電話何個か壊した事あるし」
「……大変だなお前」
「な、何でアンタにそんな憐みの眼差しで見られなくちゃいけないのよ!?」
「ははは、冗談冗談」
「大体ゲームなんてのはお子様がやるもんでしょ!? 高校生にもなって恥ずかしく無いの?」
「そ、そこまで言わんでも……。悪い悪い。お前にゲームの話振った俺が悪かったよ。ちょっと頼みたい事もあったんだけど他当るわ。じゃ、俺行くから」
 そう言って上条は携帯をポケットに仕舞い込んで立ち上がる。
 すると美琴は慌てて上条のシャツを掴むと、
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」
「ん?」
「何でそこで食い下がんないのよアンタは? 私に頼みがあるんでしょ? そこまで話したんだから最後まで言いなさい」
「まだ何にも話してねえぞ俺?」
「いいから話せって言ってんでしょ!? もぉ、そ、こ、に、す、わ、ん、な、さ、い、よぉぉぉ!」
 上条はどうだか知らないが、美琴(こっち)はこの憩いの時間が一分一秒でも長く続けばと思っているのだから必死だ。
 それは上条にも――美琴の気持ちが正確に伝わったかどうかは不明だがとにかく必死さは伝わって、
「ひ、引っ張んなよ御坂!? コラ、ビリビリも止めろって! ちょ、判った判ったから……」
 泣く子とビリビリには敵わないと言った体で上条は仕方なく元の位置に座る。
 すると美琴は、少し上条の方を向いて座りなおすと身を乗り出して、
「で何? 頼みって?」
「ああ。今やってる携帯ゲームなんだけどさ。モンスターを育てる奴なんだよ」
「モンスター? 育ててどうすんのよ?」
「あ? 何か全部集めると景品がもらえるんだよ――言っとくがゲコ太じゃねえからな」
 景品と言った所で美琴の瞳が輝きを増したので上条はそれとなく釘をさす。
「あ、そ、そうなの?」
「ま、いいやそれは。それでここからが厄介なんだけど、このモンスターってのが携帯の機種に依存するみたいなんだよ」
「携帯の機種?」
「そうなんだよ。で他のモンスターは何とかなったんだけど後一匹が手に入んなくてさ」
「で私に手伝えって?」
「そうそう! さっすが常盤台のお嬢様は呑み込みが早くていらっしゃる。いやマジで尊敬。」
 そう言って上条はにこにこと笑って見せる。
 笑顔と言葉はいくら振舞っても懐が痛まないから上条は惜しげもない。
 ただしその効果は相手がこちらに注意を示している時に限ると言う訳で、
「ふぅーん……」

493『美琴の不幸な初体験』2/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:49:31 ID:F.qe5Noo
 美琴は顎に手を当てて何かを思案している様子で上条の事など上の空だ。
 その事に何か悪い予感を感じて上条は笑顔を引きつらせていると、
「『貸し』よねこれって?」
「ん? ま、まあそうだけど……あ、何? また何かそんな悪そうな笑いして……」
「ふっふっふっ……。楽しみにしといて」
 美琴の言葉に上条はずんと肩を落として、「不幸だ……」と自ら掘った墓穴に落ちた事を嘆いた。
「で、どうすんのよ? ほら」
「あ? 待て待て今俺が見せるから……ん、う、え……と……」
 そう言って上条は自分の携帯電話のボタンの上に指を滑らせる。
 すると程なくして携帯の画面に赤青黄色の目に痛い配色のマーブル模様が現れた。
「な、何これ気持ち悪い……」
「ちょ、ちょっと待てすぐ始まるから」
 不快感を露わにする美琴をなだめながら上条はじっと画面を見つめる。
 するとすぐに画面に変化が現れた。
 先ほどのマーブル模様が水に垂らした絵の具の動きを逆回転した様に形を変えて行き、やがてそれは『怪獣牧場』と言う文字になった。
 そして画面も今までのおどろおどろしい感じから一変、草原をイメージした2Dの映像に、同じく2Dのかわいらしくディフォルメされた犬か猫か良く判らない生き物がチョウを追いかけてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「か、かわいい!」
 当然の様に美琴の琴線を刺激するキャラクターたちに、上条は内心グッジョブを送りながら携帯電話を操作して行く。
「お! ほらこれ」
「うん?」
 そう言って画面に表示されたのは、黄色に虎縞模様の猫の様な姿。
 尻尾は雷をイメージしたのかギザギザの形をしたものが2本ゆらゆらと揺れている。
「ふええ……。こっれもかわいいわね。『電気ネコ』ってのがちょっと気に入らないけど」
 そう言って画面に食い入る美琴。
 中々のかわいらしい姿にさらに興味が増していたその時、美琴は知力、体力と書かれたパラメーターの上にカタカナで『ミコト』と書かれている事に気付いた。
「こ、これ私の名前……」
「あ? 悪ぃ悪ぃ……電気ったらお前の名前が浮かんでつい……」
 上条は咄嗟に言い訳にもならない言い訳を口にするが、美琴の耳には届かない。
(私の名前キャラクターに付けて大事に育てたりしてんだコイツ……)
『美琴、ほらご飯だぞ』
『美琴、今日は天気が良いから散歩でも行くか』
『美琴、でんげき攻撃だ』
『美琴、もう寝るぞ。早くこっちに来い』
 詳細は本人の自主規制のプライバシーの為にも控えさせていただきます、と言いたくなる様な怪しげな妄想が美琴の頭の中でぐるぐると渦を巻く。
「御坂?」
 妄想に没頭して急に黙ってしまった美琴に何が起きたのかと顔を覗き込むと既にその顔は真っ赤。
「大丈夫か御坂?」
「…………」
 改めて名前を呼ぶとぎこちなくもやっとこちらを向く。

494『美琴の不幸な初体験』3/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:50:00 ID:KKX050XE
 上条はその頭にうっすらと帯電の兆候を見つけて――、
「すとぉぉぉおおおおおおおっっっぷ!!」
「あたッ!?」
 右手で美琴の頭をぺしっと叩いた。
「ビリビリは止めろビリビリは。携帯が壊れる」
「あ、え、そ、そうね。ははは、そうよね……あはははははははは……」
 そう言って乾いた笑いを浮かべる美琴に、
(あれ? ビリビリって言われても怒らない? そんなにモンスターに自分の名前付けられてショックだったかのか……?)
 上条はいつもと違う様子に自分の思慮深さの無さを反省した。
 実はとんでもない妄想をしていた事が恥ずかしくて、とにかく全部無かった事にしたいなどと美琴が思っているなどつゆ知らず、
「悪かったな御坂、俺こいつ消して作り直すわ」
「ふえ?」
「ちょっと待ってろ。直ぐに作り直しちま――」
 そう言いながら画面には『削除しますか?』の文字。
(私が消されちゃう!?)
 怪しげな妄想はともかく、折角上条が自分の名前を付けた何かを持っているのが嬉しかったのに、それを消されてなどなるものか。
 美琴の瞳にきらりと決意の光が輝いた次の瞬間、
「消しちゃ駄目ぇぇぇぇぇえええええええええええええええッ!!」
「ゴフッ!?」
 ほぼゼロ距離からのタックル、そして瞬時にマウントポジションを確保すると、
「消したらその子が可哀そうでしょ!! アンタ大事に今まで育ててたんじゃないの!?」
「あ? ま、まあそうだけど……」
「わ、私は全然気にしてないからッ! そ、そうよゲームのキャラクターに名前使われたくらいでこの美琴さんがショックを受けるとでも!? ほほ、ほほほほほ。甘く見ないでよねッ!」
「キャラ変わってんぞお前?」
「ッ!? い、いいから早く続きを教えなさいよアンタは!」
「わ、判ったから取り合えず俺の上から降りて下さいよ。流石にマウントポジションではお話が出来ませんから……」
 上条の言葉にふと我に返ると、
「!!」
 男のお腹の上に馬乗りになって、お尻をお腹に押しつけて太ももで胴を挟み込んだ格好は、流石の美琴と言えども――いや相手が上条なだけに赤面ものである。
「あ……、ご、ごめん……」
 そう言ってそっと上条の上から退くとしおらしくベンチに座る。
 上条も腹をさすりながら立ち上がると、美琴の隣に座りなおす。
「じゃ設定すっから携帯貸してくれよ」
 上条は美琴から携帯を預かると、割と慣れた感じで携帯を操作してソフトをインストールしてから起動する。
「よし、出来た」
 上条は美琴に携帯電話を返すと画面を指さしながら、
「御坂、こいつに名前付けてくれ」
 指さされている奇妙で憎めない――鼠にイガグリを半分に切って被せた様な姿に、
「何これ?」
「ウニネズミ型モンスターだな。それとさっきの電気ネコ型モンスターを掛け合わせる訳だ――どうした?」

495『美琴の不幸な初体験』4/4 ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:50:36 ID:F.qe5Noo
「え?」
「俺の顔に何かついてる?」
「なッ!? ななな、何でもないわよ! 名前付けりゃいいんでしょ名前……え……名前名前……」
「?」
 言葉には出さないが変な奴と言いたげな上条の視線が美琴には痛かったが、そんな事より今は目の前のウニネズミである。
 このツンツンした感じは美琴にとってまさにアレである。
(いいわよね。これしか思いつかないし……。ア、アイツだって私の名前付けてんだし。おかしく無いわよね。全然平気よね。突っ込まないでお願い……)
 そう言って美琴が付けた名前は『トウマ』。
 このすぐ後にとんでもない事になるなど美琴には未来を予知するスキルなど無い。
「お、終わったわよ」
「よし。じゃ通信してっと……」
 携帯電話の赤外線端末部分を突き合わせてデータを送り合う上条と美琴。
(ちょ、ちょっと何でトウマって名前付けたのに突っ込まないのよ!? 馬鹿じゃない!? 馬ッ鹿じゃ無いいいい!??)
 乙女心は何やら複雑の様だ。
 と、1人怒り心頭していた美琴の手の中で鈴の様な電子音が鳴った。
「?」
 時を同じく上条の携帯でも電子音。
「終わったな」
 その言葉に美琴は携帯電話の画面を覗き込んだ。
 するとそこにはこう書かれていた。
『トウマとミコトのあいだにこどもができました。』
 その文字を呼んだ瞬間、頭の中が真っ白になった。
 画面をぴょんぴょん跳ねる棘付きヘルメットを被った猫も、
「よしッ! よし来た針ネコちゃんゲットォォォ!!」
 隣でガッツポーズする上条の事もどーでも良かった。
 何だか判らないが、
(アイツとの間に子供が出来ちゃったああああああああああああああああああああああああああああああ!!!)
 これはゲームです美琴さん、と言う言葉は暫くは彼女の心には届かないだろう。
(何これ? 学校で習った事とか土御門の怪しげな雑誌でチラ見した事とか嘘で、実は電脳コウノトリが赤ちゃん運んでくるとかそう言うカラクリがあって、実はこの世界はコンピューターが作った電脳世界がああああああああああああ!?)
 もう支離滅裂である。
 そうして混乱したまま画面に表示された文字を凝視していると、
「ありがとな御坂! じゃ俺はちょっと用事があっから行くわ!」
「う、うん」
 そう言って上条の背中が小さくなるまで見送った美琴は、
「(私、一生懸命この子の事育てるから……)」
 消え入りそうなほど小さく呟いて、ぎゅっと携帯電話を抱きしめた。
 その後子供の名前に『クロコ』と付けてひと悶着起きるのだが、それはまた別のお話。



END

496Aサイド ◆kxkZl9D8TU:2010/02/12(金) 12:52:05 ID:tULsKIdI
以上です。
上条をデレさせられなかった自分が不甲斐ない。
ごめんな美琴。
ごめんなさい皆さん。
でわ。

4971-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/02/12(金) 13:17:16 ID:nGtt.0YU
> 各作者様
乙&GJです!

>>435
「㌧」とか言われてもねぇw
このスレでチェックとかするな、という皮肉は通じなかったようですw

> 纏めるなよ
不許可である。黒歴史は、残してこそ黒歴史。
SSの形していれば、とりあえず保管しますw

498■■■■:2010/02/12(金) 15:49:15 ID:EWuOta92
皆様GJですの・・・

499■■■■:2010/02/12(金) 17:34:12 ID:gvcyaHUU
>>496
GJ!
パラメータ?みたいなので追いかけてみると
上条さんは原作に近づければ近づけるほどデレなくなるから
ある意味リアリズムの追求でいいかも知んない。
書き手の一人としてどうすりゃ上条さんがデレるのか悪戦苦闘中。

500■■■■:2010/02/12(金) 18:32:10 ID:0Coe3POU
みなさんGJです。
職人さんもまた随分増えてるみたいで驚きですw

>>499
自分はいちゃレーの上条さんを参考にしてます。
ご存知の方が多いので受け入れられる方も多いでしょうし、なにより
普段はデレないけど、たまにデレる(積極的になる)のが上条さんらしいかなぁと。

501D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/12(金) 19:30:34 ID:gvcyaHUU
 お邪魔します。
どなたもいらっしゃらないようでしたら10分後にネタを一つ投下します。
「Once_in_a_lifetime.」11レス消費予定。
話としては「Ti_Amo.」の続きになります。

Ti_Amoは
>>101-108
>>243-252
になります。

502Once_in_a_lifetime.(1):2010/02/12(金) 19:40:46 ID:gvcyaHUU
「ご飯できたわよ。今日はアンタの好きなロールキャベツ」
「お、おう」
 常盤台中学の制服の上にリボンの付いたエプロンをまとった御坂美琴が、上条当麻の部屋に備え付けられた小さな台所からお盆に二人分の白飯と味噌汁と小松菜のおひたしとロールキャベツを載せて運んできた。ガラステーブルの前で美琴は腰を落とすと、片手でお盆を支えもう片手で上の皿を一つ一つ丁寧な所作で移しかえる。
「ん? どしたのアンタ?」
「あ、い、いや。何でもねえ」
 美琴のプリーツスカートは、校則で指定されているものより丈が短い。その美琴が上条の部屋でエプロンなぞつけたりすると正面からは身につけてなくてはいけないものを着ていないように見えるので何かと危険な妄想をかきたてられて心臓が変に痛い。じゃあ後ろから見てれば良いだろうと思うと、その後ろ姿でもグッと来てしまい直視できない。ようするに目のやり場に困る。制服姿でエプロンとは卑怯なり。
 そんな上条の救いは、美琴のスカートの奥でちらりと見える短パンだ。それが視界の隅に入る度に上条はほっと安心した気分になる。
 地下街での再会以来門限は守ると約束して、美琴は週二回上条の部屋に夕食を作るために訪れるようになった。美琴はもう少し回数を増やしたいと文句を言ったが、上条はこれを封殺した。美琴に今までの友達付き合いや生活もある以上、自分のせいで美琴の生活リズムを崩させたくないしましてや相手が彼氏でも男の部屋にのこのこやってくるのは非常識にもほどがある。
 ―――非常識。
 なまじ美琴が平均点以上に容姿も背もスタイルも整っている分中学生であることを忘れそうになるが実際のところ美琴はまだ一四歳、義務教育中の身であることを念頭に置かなくてはならない。どれだけ学識が高くとも彼女の中にある常識は年相応の分でしかないのだ。
 上条はエプロンを取って自分の対面に女の子座りする美琴を何となしに眺めながら、スーパーからの帰り道に『彼女』とやりあった時のことを思い返す。
『テメェ自分の歳考えろこの中学生! 男の部屋に泊まりたいとかどの面下げて言ってんだ馬鹿! あれはもうあれっきりって言っただろ?』
『アンタはさ、やたらと私のことを中学生中学生って言うけど。じゃあ私が本気で飛び級に挑んで卒業して、明日から私が高校生になったとしたらそれでも同じ事が言えるわけ?』
『……』
 言い返せなかった。
 中学生と高校生の差は義務教育と選択教育によって生まれるものだ。前者は保護者の庇護の元全員が強制的に修めるものだが、後者には選択肢がある。選択肢があると言うことはそこに責任が伴うと言うことでもある。そしてその責任が負えない『中学生』の美琴がそれ以上の領域に踏み込むことは危険すぎた。
 美琴が踏み込むのではない。このままでは上条のせいで踏み込ませてしまう。
 だからこれまで上条は年齢を盾に美琴に必要以上触れないようにしてきた。意識もしないように努めてきた。
 美琴が大人顔負けの学識を披露しても内包する常識は年齢を超えない。話してる時や趣味は年相応の子供っぽさを見せるのに、アンバランスな外見と能力が中身を裏切る。
『……お前が本当に飛び級して高校生になったら、この話の続きをしような』
 その場から逃げるように上条は話を打ち切った。
 御坂美琴は上条当麻にとって、いまだ友達以上恋人未満の存在だ。上条も美琴に宣言した以上『彼女』であることは認めているが、美琴がいくらそれを望もうとも彼女が求めるような世間一般の恋人のテンプレートを二人に当てはめようとは思わない。
 たった二年の差が、上条の両手には重い。
 美琴の申し出を受け入れるには早すぎたのだろうかと考え、刹那その意識を上条は打ち消した。これは責任を持てる『高校生』上条が選択したのだ。安易な判断で受けたとはいえその責は上条が負わねばならない。
 重いものは年齢ではなく選択の結末だとの結論に達し、上条は顔をしかめた。
 難しいことを考えるのは学校だけでたくさんだ。

503Once_in_a_lifetime.(2):2010/02/12(金) 19:41:24 ID:gvcyaHUU
「お前さ」
 上条は目の前のロールキャベツに意識を戻し、大盛りの白飯をかきこみながら
「何がそんなに楽しいんだ?」
 箸で小さな笑みを浮かべる美琴を指し示したら対面から『お箸はそうやって使うんじゃないわよ』とお小言が飛んだ。
「……楽しい?」
 美琴は上条の言葉を聞いて、心当たりがありませんと言いたげに首をかしげる。
 二人でスーパーへ買い物に行った時も、何が楽しいのか時折美琴は小さく微笑んでいた。遠くから見ても気品爆発間違いなしの制服を着用した美琴が男連れでスーパーで買い物なんてあまりに目立つしいつか学校に一報行くんじゃないかと上条は常々思っているが、美琴の方に何の変化も見られないので案外みんな無視してくれてるんかねと内心で小さく安堵の息を吐く。
「いや、だからさ。お前時々そうやって笑ってっから何がそんなに楽しいんだろうって」
「……ああ」
 美琴は得心がいったようにまじりっけなしの笑顔を上条に向ける。
「楽しい、かもしんないけど。……嬉しいのよ」
「嬉しい?」
「そ。好きな人のそばにいられてご飯作ってあげられんだもん。そりゃ嬉しいわよ。これって彼女だけの特権でしょ?」
 アンタ残さず食べてくれるしね、と付け加えることも忘れない。
 上条は二個目のロールキャベツにかじりついて
「ふーん、そっか。……コンソメ変えたか?」
「うん。よく気づいたわね」
「そりゃ俺の味付けと違うからな。こんくらいはすぐわかるって」
 上条は奨学金の少なさで自炊を余儀なくされる貧乏学生だ。それゆえにちょっとした料理なら大雑把だが大抵のものは作れる。ロールキャベツを引き合いに出せば、美琴が作ったもののように丁寧ではないが真ん中にひき肉と刻んだ玉ねぎを入れてキャベツの葉っぱでくるんだものくらいは時間さえあればできる。とはいえ同じ時間でロールキャベツの大きさと形を一つ一つ綺麗に整えて仕上げにローリエを加えたりドライパセリを用意するといった美琴の手際の良さと細かさにはとてもかなわない。
「アンタと同じ味が出せれば良いんだけどね」
「気にしなくていいんじゃねーの? お前の味付け好きだし」
 対面で味噌汁に口を付けていた美琴の動きが止まった。
「? 喉に何か詰まったか?」
 何で味噌汁でむせるのかわかんねーけど苦しいなら茶でも飲むか? と腰を浮かし湯を沸かそうとする上条に
「い、いや! そうじゃないの、そうじゃなくって」
 美琴が箸を持ったまま右手をわたわたわたわたと振る。
「……アンタからそう言ってもらえると思わなかっただけ。いきなりだったからびっくりした」
 美琴は左手のお椀を持ち替え、その後に言いかけた言葉と一緒に白飯を小さく飲み込んだ。
「……、そうか?」
 俺そんなのわかんねーよと思いながら上条は美琴を見る。
 喉に味噌汁が詰まったのとは別の理由で頬をうっすらと赤らめた美琴が上条を見る。
 ガラステーブルを挟んで上条と美琴が向かい合い、一瞬後に同じタイミングで顔を伏せてそれぞれのロールキャベツを口にした。

504Once_in_a_lifetime.(4):2010/02/12(金) 19:42:02 ID:gvcyaHUU
「はあ……」
 美琴を常盤台中学の寮まで送った帰り道、上条の口からやるせないため息が後から後からついて出る。
 いったいどうすりゃいいんだよ。
 美琴をはっきりと意識するようになったのは、地下街での『おでこにキス』からだ。
 あの時はしょげる美琴が妙にかわいく見えて、ついうっかり抱きしめてしまったら美琴がぎゅっとしがみついてきて、キスして欲しいと彼女が暗黙の内にねだっているのを知りつつ周囲の目が気になっておでこに逃げてしまった。
 最近の美琴は以前より愛おしく見えるし、あの時は上条もキスしたいとは思った。美琴に対して自分がそんな思いを抱くなど、以前の二人からは想像もできなかった。でもそれは何かが違うと上条は思う。お膳立てされて、しても良いからキスするのは何か違うんじゃないだろうか。
「……俺はアイツを好きなのかな」
 美琴の住む寮へ向かう途中で、上条は一方的にしゃべり続ける美琴を見ていた。
 上条は無駄なおしゃべりは嫌いだが、美琴のようになまじ学識が高いとその言葉にも耳を傾けるべきものがあったりするので、話の腰を折ることもできず結果上条は聞き役に徹することが多い。そうやって一緒にいる時間は何の苦にもならないが、最後に美琴は上条の手を引き、いつだって決断を迫る。
「なあインデックス。俺はどうすりゃいいのかな」
 上条はほんの少し前まで一緒に同居していた銀髪碧眼の少女を思い出す。上条が今でも彼女の『管理人』であることに変わりはないが、とある事情により二人は今別々の場所で暮らしている。彼女が今ここにいれば、もっと冴えたやり方が見つけられたかもしれない。それとも神の前で不埒な思いを懺悔すれば、上条と美琴はケンカ友達だった頃の友情を交えた時代に戻れるのか。
 美琴は全ての手札を晒した上でベット(告白)し、上条はコールした(受けとめた)。このまま美琴のレイズ(恋)について行くのか、彼女を泣かせてでもフォールドする(別れる)か。
 上条の持つ手札は残り少ない。
「いったいどうすりゃいいんだよ……」
 上条当麻は自分の気持ちを読みきれない。

505Once_in_a_lifetime.(4):2010/02/12(金) 19:42:54 ID:gvcyaHUU
「……御坂? お前さ……」
 放課後の通学路で上条は美琴の背中付近をしげしげと眺めると、美琴の顔をじっと見つめて
「髪伸びたか?」
「え? あ、うん。伸びてると言うか、伸ばしてる……かな。ちょっといろいろな髪型に挑戦してみたくなって」
 隣の美琴からやっと気づいてくれたんだ、と言う声が聞こえる。ややうつむき気味に視線をさまよわせる美琴は心なしか頬が赤く見えた。
「何で気づいたの?」
 答え合わせを待つ小学生のように何かを期待する美琴に
「何で、って……お前の髪って肩先ぎりぎりくらいだったじゃん。その毛先が前から見てわからなくなってたら誰だって普通に気づくって」
 上条は種明かしをしてみせた。
「アンタは今までその些細な違いさえ気づいてくれなかったんだけどね」
 上条の回答には不満があったらしい。美琴はむーと唸って頬をふくらませた。
「……まあ何にでも挑戦するのは良いことだと思うぜ」
 何事にも先達はあらまほしきことなりって昔の人と古文の教師が言ってたような気がするがこの場合用法が違うかもしれない。
 二人の間に開いた一〇センチのすき間を北風が吹き抜ける。冷たい風は美琴を振り向かせて、思い出したように
「ああ、今アンタのセーターとマフラー編んでるんだ。できあがったらプレゼントすっから」
「ん? クリスマスか? だったら急がなくってもいいんじゃねーの?」
「馬鹿。クリスマスまで待たせたらアンタ風邪引いちゃうでしょ?」
 そう言って美琴は、また楽しそうに笑う。例の嬉しい時の笑顔かと上条は不思議に思いながら美琴を見やり、その笑顔につられるように
「あー……お前クリスマスプレゼントで何か欲しいものってある?」
「いらない」
 即答だった。

506Once_in_a_lifetime.(5):2010/02/12(金) 19:43:29 ID:gvcyaHUU
「もう一生分のプレゼントもらっちゃったから他には何もいらないんだ。アンタがくれるって言うなら別だけど」
 いらないと言う言葉に重ねるように、上条とつないだ美琴の手に少しだけ力が入る。
 上条は思う。
 そういえば上条と付き合う前の美琴の男関係については聞いていなかった。これまで特に興味もなかったので頭の中からさっぱり消えていたが、海原の件を思い返してみても美琴が同性のみならず異性にもモテるだろうと言うのは容易に想像がつく。コイツに一生分のプレゼント送った奴ってのはやっぱそれなりの金持ちなんかねと考えが至り、同時に上条の心の中に何かもやもやとした理解しがたい感覚が浮かび上がった。
 上条は九五パーセントの好奇心と、残り五パーセントの自分でも説明できないもやもやとした気持ちを抱えて
「そのプレゼントくれた奴って、誰?」
「神様」
 今度は見当違いの答えが返ってきた。
 俺は質問の仕方を間違えたのかそれとも俺の耳がいよいよおかしくなったかと、美琴のあんまりな答えに上条は目を点にする。
「……お前十字教徒だったっけ?」
「違うわよ。そうじゃないけど……神様に約束したから」
 ―――神様。
 上条には不幸体質と幻想殺しをプレゼントしてくれた、おそらくは上条がこの世で最も嫌う存在。時には神様と書いてバカとルビを振る。美琴はその神様からいったい何をもらったと言うのだろう。能力か、知性か、才能か。
「ふーん。……で、何をもらったんだ?」
「……教えない。そこは乙女の秘密」
 美琴の答えはあっさりしていた。
「……、そっか」
「あれ?」
 上条がすごすごと追求の手を引くと、美琴は体を少しかがめて下からわざと上条の顔をのぞき込むように、
「アンタ今、もしかしてプレゼントの相手が誰とかって、やきもち焼いた?」
『ふっふーん。私は全部お見通しよ』とでも言いたげなしたり顔を上条に向けた。
「んなもん焼いてねーよ。神様相手にどうしろってんだ」
「そう? アンタさっき、今まで見たことない顔してたから」
「どんな顔だよ?」
「どうって聞かれても……うまく言えないわよ。だけどアンタのことはずっと見てたから、アンタが何を考えてるかだいたい分かるようになってきた」
「そうか。俺もお前が何考えているか目を見りゃわかるぞ」
 たまに上条が見知らぬ女の人に道を聞かれて説明している時に美琴と出くわして、そこで目を吊り上げて上条を追い掛けてくれば言いたいことは『くたばれこの馬鹿浮気者』だし、視線をそらしてキョロキョロしている時はたいがい『ゲコ太のイベントに行きたい』などと上条がしらふではとてもお付き合いしたくない提案がうまく切り出せなくて迷う時に決まっている。
「じゃあ」
 美琴は上条の前に立ち、少しだけかかとを浮かせると視線を上条と同じ高さに合わせて
「私が今何を考えてるか当ててみて。……できるんでしょ?」
 常に勝ち気な茶色の瞳が、上条をその場に縫いとめるように真っ直ぐ見据えられる。その眼差しは熱を持ち、上条が視線をそらすことを許さない。
「えーっと……」
 上条が交わす視線の先にいる美琴は少し怒っているように見えた。泣いているようにも、戸惑っているようにも、上条の浅はかな選択を責めているようにも。
 美琴にこんな目をされて、自分は何を言えばいいのだろう。何を言ってやればいいのだろう。都合の良い言葉も美琴が喜びそうな歯の浮く台詞も上条の持つ無駄知識の中にはない。
 上条は大きく息を吸って胸の中で明確な形を持ちそうなそれを否定するように
「…………ゲコ太三万尺?」
「アンタの口からゲコ太って単語が出てきたのはほめてあげるけど最後の『三万尺』って何なのよ! 何と関連性があるのかもはや意味不明じゃない!!」
 美琴はぎゃあああっ! と両手を振り回して吼えた後、はぁと小さくため息をついた。
「まぁ、良いわよ。私のことがわかんなくても。神様から贈り物をもらった交換条件みたいなもんだしね」
 その時上条の目には美琴の口が『良いんだ、ずっと片思いでも』と動いたように見えた。
「……悪りぃ」
 聞き取れなかった言葉に返す台詞は他に見つからなかった。

507Once_in_a_lifetime.(6):2010/02/12(金) 19:44:22 ID:gvcyaHUU
 上条はぼんやりと一人、あてもなくショッピングモールの中を歩いていた。
 別段、ここで特売があるわけでもセールが行われるわけでもない。今日は美琴が上条の部屋に来る日でもない。ただ何となく、彼氏らしくそろそろ美琴へのクリスマスプレゼントの目星をつけておこうかと思っただけで、特に目当てなどなく気の向くままにあちらこちらの店頭をのぞいては顔を引っ込める。
 昨日までくたばれとか死ねとか殺すとか言って電撃を数知れぬほど浴びせてきた相手から突然頬を染めて『アンタのことが好きなの』と言われて、上条は最初派手に担がれてるのかと疑った。だから『私と付き合って』と言われたときに素で『米研がなきゃいけないからあんまり時間は取れないぞ』と正直に理由を返したらその後ものすごい勢いで街中を追い掛け回された。相手から死に物狂いで追い掛けられながら聞く愛の告白なんて奇態な経験は世界広しといえども上条しか体験したことがないだろう。
 その後誤解とわかったのはいいが、今度は美琴が上条を好きだというのが誤解なのかどうなのかを確認するのに三〇分くらいかかった。それでも上条は最終的に年下の少女からの申し込みを受け入れた。ケンカをしていない時の美琴は明るく笑う上条の友達であり、サバサバとした性格は異性で年下ということを差し引いても気兼ねすることもなく、一緒にいて楽しかった。だからつい友達の延長くらいのつもりで『俺で良いのかと』わざわざ確認までとって美琴との交際をオッケーしてしまった。
 それが今になって美琴のことを異性としてここまで意識してしまっているのはどうなんだろう。
 上条は美琴の事をこれまで面倒な奴だとかわがままでうるさいと思っていても嫌うほどではなかった。その見方が変わったのは少なくとも美琴と恋人として付き合うようになってから、いや、もっと具体的に言えばあの地下街での一件からだ。
 上条が『外』に出るはめになった何日か前に突然美琴から別れを切り出されああやっぱりお嬢様の罰ゲームじみた嫌がらせだったんですかと思いながら返事をしたら切れ味鋭いビンタを食らわされて、日本に帰ってその後ちょっと入院して退院してみたら美琴が何故か一人でテンパってて『別れたくない』というので何だゲーム続行ですかまあいいやお前の好きにしろよと思っていたら、あれだ。
 手をつないだり腕を組むくらいだったら友達でもできる。けれどキスは別だ。
 美琴は上条の微妙な表情の変化を見分けることができるくらい、上条をずっと見ていたと言う。だったら上条が何を思って美琴を自分から離そうとしているかわかって欲しい。
「人前でキスとか要求すんじゃねーよ、あの馬鹿。まだガキのくせに」
 クリスマス需要を見越して、一軒のジュエリーショップには下品なほどにたくさんの広告が張り出されていた。日頃の上条とは何の縁もない店だが冷やかすくらいはいいだろうと思い、よれボロのバッシュと共に店内へ足を踏み入れる。
 店内では上条のような貧乏学生でもそこそこ見栄を張れるくらいの贈り物ができそうな品揃えが、ブースを仕切って陳列されていた。一つ一つを細かく見ていると目がチカチカしてきそうなので、上条はやや引き気味にショーケースを眺めて回る。
 その中にネックレス、とでも言えばいいのだろうか。カエルのデザインではないが、美琴の好きそうな花模様をあしらった銀色の細工付きの細い鎖に目が行って、上条は自分の不幸体質を心に止めつつゆっくりと手を伸ばす。価格も手頃そうなのでこれにしようかと思ったところ、ネックレスには値札と一緒に何かの説明書きがついていたので、上条はその小さな札を何の気なしにひっくり返した。
 ―――『対象年齢八歳以上』。
 いくらなんでもこれはない。
 よく見るとタグには何かのキャラクターシンボルが描かれている。どうやらこれはただ今子どもたちの間で絶賛人気上昇中の国民的美少女アニメーションとのタイアップ商品らしい。こんな紛らわしいもの一緒に陳列すんなよと愚痴りつつ、上条はネックレスをショーケースに戻す。それとも今時の小学生はこのような店に足を運んで彼女にプレゼントしちゃったりなんかするのか?
 あのネックレスは、美琴には似あうかもしれないがこんなものを贈ったら『人をいつまでも子供扱いすんじゃないわよっ!』とお返しにイルミネーション付き地獄への片道切符がいただけるかもしれない。そんな悲しい未来予想図は嫌だと上条は全力でぶち壊し、ショップを後にした。
 服ではセンスを問われるし第一美琴のサイズがわからない。花は喜ぶかもしんねーけどありゃ添え物だし無難なところでやっぱ食べ物にしておこうかねと頭をかいて、上条は戦略的撤退を決め込んだ。

508Once_in_a_lifetime.(7):2010/02/12(金) 19:45:01 ID:gvcyaHUU
 ガラステーブルの上においた上条の携帯電話が着信音と定期的な振動を繰り返す。折りたたんだそれをパカッと開いて着信画面を確認すると、電話の相手は美琴だった。ついでに時間を確認すると、現在時刻は午後一〇時三〇分。美琴の寮の消灯時刻をとっくに過ぎている。
 上条はうはあー、と大きくため息をついて通話ボタンを押すと
『遅いわよっ! 私がかけてるってわかってんのに何ですぐ出ないのよ?』
 いきなり電話越しに怒鳴られた。
「遅いってお前ね……それは俺の台詞だろ。今何時だと思ってんだ? もう消灯時刻過ぎたんだからさっさと寝ような?」
『……この時間じゃないとアンタに電話できないんだもん。部屋は黒子いるし、談話室は誰かしら使ってるしね』
 では美琴はどこから電話をかけていると言うのだろう。美琴が寮監に内緒で野良猫に餌を与えている裏庭からだろうか。受話器越しにパタパタと言う足音のような響きが聞こえて、室外にいる美琴が寒さで足をジタバタさせていることは容易に想像できた。
「お前寒くねーの?」
『それは平気。でさ、明日だけど何食べたい?』
 やっぱり部屋の外か。早く部屋に戻らせないとコイツ風邪引いちまうなと上条は少しだけ良心を発揮して
「……メールじゃだめなのかその質問?」
『メールで聞くとアンタ決まって「何でも良い」で返してくんじゃない。あれは何? アンタの携帯にはああいうテンプレでも入ってんの?』
「……」
 まさか毎回メールを使い回しているなどとは言えない上条はしばらくうーんと唸った後
「……じゃあお前で」
『ぶっ!?』
 吹き出すにはかなりの大音量だったが寮監や白井にはバレないのだろうか?
「いや、冗談ですよジョーダン。そうだな、だったらお前の得意料理にしてくれ。……あれ? 御坂? どうした、レパートリーのネタが尽きたんなら素直にそう言ってくれりゃ……」
 受話器の向こうの美琴からは応答なし。
「御坂? 聞こえるか? もしもーし? おーい、回線切れたか?」
『……ごめん。明日はパス』
 ややあって、美琴のやけに平坦な音声が返ってきた。
 もしかすると少し怒ってるかもしれない。
「ああ、別に気にすんな。んじゃ御坂、おやすみ。さっさと寝ろよ?」
 美琴が最後に何かを早口で言っていたようにも聞こえたが、上条はそれを振りきって終話ボタンを押した。美琴が自分で来ないことを決めたのならそれでいい。その方が気が楽だ。
 気が楽だ、と考えて同時に胸の中がもやもやする。
 上条はつながりの途切れた携帯電話を忌々しげに見つめると、ベッドに向かって放り投げた。
 今夜は寝付きも寝覚めも悪そうだ。きっと夢見もろくなもんじゃない。

509Once_in_a_lifetime.(8):2010/02/12(金) 19:46:37 ID:gvcyaHUU
 あの後美琴とは三日、顔を合わせなかった。
 珍しいこともあるもんだと思いつつ、上条は薄っぺらな学生鞄を担いだまま大きく伸びをした。両手を左右に広げても、誰ともぶつからない左側が少し寂しい。
「ここで御坂がビリビリしながら走ってきて『アンタっ!』とか叫んだら昔どおりなのにな」
 言って、上条は後ろを振り返る。
 やっぱりそこには誰もいなくて、上条は安堵と失意を胸の内にのぼらせた。
 美琴には美琴の生活があるのだから上条の都合でそれを妨げるつもりも振り回すつもりもなかったが、
「……一度くらいなら、良いかな……」
 上条はポケットの中からボロボロの携帯電話を取り出し、画面を開いて登録番号のリストを呼び出すと、最新の登録番号にカーソルを合わせ通話ボタンを押した。五コール鳴らしても相手が出なかったら今日はあきらめよう。
『もっ、もしもし?』
 上条からの電話をずっと待っていたように、美琴の上ずった声が一コール後に受話器越しに響く。
「あ、ああ。その。上条だけど。……元気か?」
『う、……うん。元気』
「もしかして今、友達とだべってたりするか? だったら俺かけ直……」
『う、ううん! ひっ、一人! 一人だから! 学校から真っ直ぐ帰って来て、今寮の中に入ろうとしてたとこ。……ちょうどアンタのこと考えてた』
「そ……そっか。じゃあ御坂、カバン置いたらちっと外に出られるか? 話を……大事な話をしたいんだ」
 上条の手持ちのチップは残り少ない。このまま美琴のレイズにコールするにしても、フォールドするにしても条件ははっきりさせよう。それが美琴に対して友達以上恋人未満であやふやな上条が見せられる唯一の誠意。
「俺がそっちに行くから、お前は寮の前で待っててくれ」
『わかった。うん、待ってる』
 何かを覚悟したような美琴の声を最後まで聞いてから、上条は終話ボタンを押し、携帯電話を折りたたんでポケットに戻した。
 いつになくしおらしい美琴をあまり待たせていると進む話もできねえやと思い、上条は薄っぺらな学生鞄を肩に担ぎ直して常盤台中学の寮へトボトボと歩き始めた。

510Once_in_a_lifetime.(9):2010/02/12(金) 19:47:22 ID:gvcyaHUU
「おっす」
 上条は左手を上げて、寮の門に寄りかかってぼんやりしていた美琴に声をかけた。
「待たせたか?」
「そんなことない。思ったより早かった」
 美琴は軽く頭を振って駆け寄ると、上条の左隣に並ぶ。上条の肩先一〇センチ先の空間が埋まって、何故か上条はほっとした。
「話は……歩きながらすっけど」
「うん。アンタカバン持ってるってことはまだ帰ってないのよね? じゃこのままアンタんちまで行こっか?」
 たまには私が送ってあげるわよと美琴が告げて、直後この後に続く『話』を思ってか表情を曇らせる。二人の間に一〇センチのすき間を空けて上条は左手をポケットに突っ込み、美琴は両手を後ろ手に組んでそわそわと落ち着きなく動かす。
「あのさ」
「……うん」
「俺、お前のこと好きかどうかよくわかんねーんだ」
 隣を歩いていた美琴の足がピタ、と止まって
「…………何だ、そんなこと?」
 大げさすぎなのよアンタは、と口を動かしながら美琴が再び上条の隣で歩き始める。
「そんなのとっくに知ってるわよ」
「え?」
 驚くのは上条の方だった。
「アンタと会えなかった二週間の間に、私いろいろ考えた。アンタが何を思って私と付き合ってくれてるのかまではわかんないけど」
 美琴は一度言葉を切って上条の前に回り込むと
「アンタと別れる前の私は、アンタのことを好きではいてもアンタのことをこれっぽっちも思いやってなかった。よくよく考えてみればアンタの反応が薄いのも恋人にしては冷たいのもすぐわかることなんだけどね」
 探偵が真犯人に解き明かした謎を突きつけるように人差し指をピンと立てた。
「だから今更そんなこと気にしなくて良いわよ。私はアンタが好き。良いんだ、一生私の片思いでも。アンタが私を好きじゃなくても、今は私の隣にいてくれる……私はそれだけで幸せ」
 そこまで言い切って、美琴は切なそうな笑顔を見せた。
「そうか……」
 美琴が上条に向けている感情、それはもはや恋ではなく愛だ。失ってなお悔やまないと言えるならそのひたむきな思いは誰に対しても胸を張って誇れる。

511Once_in_a_lifetime.(10):2010/02/12(金) 19:48:22 ID:gvcyaHUU
 かつて上条の目の前で、美琴とよく似た言葉を口にした人間がいた。
 海原光貴を名乗るアステカの魔術師は上条の前で美琴を好きだと告白し、思いが届かなくても構わない、何よりも美琴自身の幸せを一番に願っていると告げた。
 こういう馬鹿は嫌いじゃない。むしろ上条はいっぺんで好きになるタイプだ。
 中学生と高校生の差は何だろう。それは中学生が親の庇護のもとで育つのに対し、自分の人生を自分で選ぶ第一歩を踏み出すのが高校生だと上条は乏しい知識の中で考える。それでも以前美琴自身が指摘したように、中学生と高校生の垣根を突破する方法は存在する。そして美琴はそんな手段さえ採らずに思い一つで上条の中にある垣根を突破し、自分の選択に誇りと責任を持って進む。
 きっと誰よりも、この少女は強い。御坂美琴は一人の人間としてしっかりと自分の両足で立っている。高校生だ年上だと偉そうにしてその実まごまごしていたのは上条の方だ。一四歳だとか中学生とか異性だとか常識だとか気持ちがもやもやするとか好きだ嫌いだと言うちっさい理由などどうでも良い。『年相応の良識あるお付き合い』以前の問題に
(勝てねえよ、こんなヤツには。かなわねーや)
「御坂、お前の勝ちだよ。そんで俺の負けだ。……今度こそな」
 ゲームの勝者には惜しみない賛辞を贈ろう。
 上条は自分から美琴の手を取って握りしめ、
「お前、俺が何考えてるか顔見りゃわかるって言ってたよな? ちっと今ここでやってみろ」
 ここから先はエキシビジョンマッチ。上条は勝者のための舞台を用意する。
「い、い、いいいいいきなり何? どうしちゃったわけ?」
 ファンファーレと喝采に気づかない美琴は上条の隣で目を白黒させた。
「当たったらお前の言う事何でも聞いてやる」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「ふうん、へぇ……何でも、ね。じゃあちょっと本気出してやるわよ」
 報酬が美琴の闘争心に火をつけたらしく、美琴は自分を鼓舞するように両肩をブンブンと回しそのまま上条の両肩をガシッと鷲掴みして、占い師が水晶玉を覗き込むように上条の瞳をじっと見つめる。
「……どうだ?」
「…………」
 美琴の顔に五秒間隔で顎から上に向かって重力に逆らい血が登っていく。
 上条は頭突きをするように美琴の額にゴツンと自分のそれを重ねて
「ほれ」
「!」
 対面の美琴の唇が震えながらあう、とかふぇ、と擬音の形に動き、茶色の瞳の焦点は不安定に揺れる。
「で、分かったのか?」
「……うう」
「……分かったか?」
 半分涙目の美琴が上条から視線を外すと赤くなった顔を隠すように
「…………ごめん。やっぱ無理」
 上条の右肩に自分の額をペタンと押し付け、その肩を握りしめて吐息を漏らす。
 美琴は上条の目を見ているうちに胸がいっぱいになって何も言えなくなってしまったのだが上条には通じなかったらしい。所詮は惚れたもの負けだ。
「……………………ねぇ。一つ質問」
「何だ?」
「……………………?」
 上条の両肩を掴んでいた美琴ががっくりと細い肩と視線を下に落とし、風に吹き消されないよう上条にだけ聞こえる声で問いかける。
 上条はそれに笑ってうなずくと地下街の時のようにおずおずと、それでも恋人らしく美琴を抱きしめた。美琴は北風を避けるように上条の胸に顔を埋め、ここが自分のたった一つの居場所だと宣言するべく上条をぎゅっと抱きしめる。
 今は一二月初旬。
 厚い雲が冬枯れた空を覆い世界に吹く風は冷たくとも、二人の火照る頬は真夏のように熱を帯びている。

512Once_in_a_lifetime.(11):2010/02/12(金) 19:49:52 ID:gvcyaHUU
「御坂、俺ハンバーグ食いたい」
「…………はい?」
「ハンバーグだよハンバーグ。ひき肉とタマネギをこねて丸めて平たくして焼いた奴だ。知ってんだろ?」
「うん。知ってるけど……?」
「この間出しそびれた晩飯のリクエストな。今度うちにくる時に作ってくれ」
 上条は寒かったら鍋も良いよな、と歩きながら隣にいる美琴にあえてねだる。
「これが彼氏の特権なんだろ?」
「そ。アンタが私の隣にいる限り有効の特権よ」
 美琴が大きく頷く。
「お前の特権は? お前ばっか飯作ったりしてたらつまんねえだろ?」
「良いわよ。他の誰よりも長くアンタと一緒にいられるし」
 それにね、と美琴は言葉を続けて
「アンタは私が神様からもらった贈り物だから。約束したんだ。『誰よりも大事にします』って」
 俺の人権はいつの間に売り飛ばされてたんだろうと首をひねりながら上条は美琴を見て
「……お前確か一生分の贈り物って言ったよな?」
「うん」
「お前も御坂妹みたいに調整しないと寿命短いのか?」
「違うわよっ! ……一生は一生。そのくらい長くアンタと一緒にいたいだけ。それだけの時間があればアンタを振り向かせることもできんでしょ?」
 遠大かつ壮大な計画を聞かされた。
「……はあ、さいですか」
 美琴との付き合いは長くなりそうだなと、何となく上条は予感して
「あれ……一生?」
「そう、一生。何か文句ある?」
「……………………………………………………………………………………不幸だ」
「どこが不幸なのよ!?」
 脱力しうなだれる上条に美琴が激怒し、雷撃の槍を発射する直前で上条が鞄を投げ捨てて美琴の額にすかさず右手を当てた。
「お前さっき俺の事一生大事にするって言わなかったっけ?」
 間一髪電撃を防ぎながら半分涙目で『これが彼氏にする仕打ちかっ!』と上条が抗議して
「甘やかすのと大事にするのは違うわよ?」
 対する美琴は空いた手で握り拳を作って腰に当て『私は厳しいのよ?』と肩を聳やかす。それでも二人の一〇センチの間には、互いに握った手が揺れている。
「……ああ言えばこう言うだな。ま、いっか。御坂、ここまで送ってくれたんだからうち寄って茶でも飲んでけよ。お前の寮の晩飯の時間までには送ってくからさ」
 上条はアスファルトの上に落ちた鞄を拾い上げると『寒いだろ?』と親指で上条が暮らす寮の建物を指差す。
「お茶なら私が入れたげるわよ?」
「良いんだよ。たまには俺にやらせろ。お前に甘えてばかりじゃいけねえんだろ?」
 上条は少しだけ照れくさそうに美琴を見つめる。
「そうだろ、『彼女』?」
 美琴は上条に嬉しそうに微笑んで
「よろしくね、『彼氏』」
 つないだ手を少しだけ強く握りしめた。
 らしくなくても、ままごとみたいでも、とてもそんな風には見えなくても。
 二人は恋人同士。……それでいい。

513D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/12(金) 19:52:19 ID:gvcyaHUU
以上になります。
投稿ミスって(4)が2つありますが適宜(3)に読み直していただけるとありがたいです。

>>500
アドバイスありがとうございます。
いちゃレーの方は有名なので、逆に私はその方を避けてます。
参考にすると自分の書いたものが三次創作みたいで何となく……すみません。

それではお邪魔しました。

514■■■■:2010/02/12(金) 20:36:00 ID:jY75V.Nw
>>513
高校生と中学生でなんつー恋愛してやがるんだ
甘々も好きだけど、こういう切なさが少し残るのもイイ!

続編期待してます

515■■■■:2010/02/12(金) 21:03:02 ID:f1LGb6uU
>>513
むむ、このスレ的には少し異色なような?
いや、でもいちゃついてるようにも見えるな…?
ラブラブじゃないいちゃいちゃといったモノを感じた。GJだ。

516■■■■:2010/02/12(金) 21:08:54 ID:jNkTOeg6
>>513
GJです!
不器用ながらも少しずつ距離を縮めていく感じがたまらんです
二人のこれからが気になるところ…

517■■■■:2010/02/12(金) 21:42:38 ID:XkiAn5EY
GJ
なんというか甘酸っぱくてイイ

518■■■■:2010/02/12(金) 22:09:22 ID:L91POOrc
>>513
GJです!
続きが読みたいです!

519■■■■:2010/02/12(金) 22:24:02 ID:Qm93BUsM
>>513
付き合ってるのに微妙な距離感、ってのがいいです。
上条さんの微妙な心理描写が丁寧に書かれてて、やきもきしましたw
この上条さんが、ゆっくり少しずつ想いを深めていく過程を読みたいなぁ。
GJです!

520■■■■:2010/02/12(金) 22:58:59 ID:cYph0/fg
流石ですD2氏超gjです。
文章読んでて久しぶりに感動できました。
続編にも期待大です。

521■■■■:2010/02/12(金) 23:15:38 ID:AS1iCH1s
皆様、GJです。 読んでると、どの作品もレベル5認定のような。
ところで、ここのスレは上条さんと美琴の絡みさえあれば、どのような作品でもいいのですか?

522■■■■:2010/02/12(金) 23:31:48 ID:R.ckVvmU
>>521
個人的には鬱とかよっぽどキャラ崩壊がなければOKだけど…
ちなみにどんなんやろうとしてんの?

523■■■■:2010/02/12(金) 23:35:07 ID:qoBQBwGM
>>513
GJです。しかし、美琴をこんなんまで一途にさせる上条さんマジぱねぇっす。
>>521
やっぱり、いちゃいちゃしてれば良いんではないかと。あと、過去の作品を参考にしてみるといいかも。
よし、期待してまって(ry

最後に。全部読ませてもらってます。皆さんGJです。・・・俺を除いて、がはっ!!

524■■■■:2010/02/12(金) 23:50:17 ID:AS1iCH1s
>>522
キャラ崩壊はほとんどないのですが、原作の細かい設定などはある程度スルーしてます。
第3者視点での物語(ラブコメディっぽいもの)です。

525■■■■:2010/02/12(金) 23:58:09 ID:CNnN8L82
>>524
程度によるけど、原作設定に沿わないと嫌がられることもあると思う。
なんにせよ上条さんと美琴出ていれば問題ないだろうし、
試しに投下してみることをお勧めしておきます。

526■■■■:2010/02/12(金) 23:59:51 ID:AS1iCH1s
こんにちは、みなさん。
それでは、日付が変わってから作品を投稿したいと思います。
消費スレは10前後の予定ですが、まずは序盤から中盤までを載せます。

他の作品を読んで、なんとなく自分も書いてみたいな、とおもいました。
初めての作品です。
どうぞ、ヨロシク!

527■■■■:2010/02/13(土) 00:03:24 ID:F1E7UChk
―――舞台は学園都市、第7学区―――
どこにでもある普通の場所、普通の日常。でもその日はちょっと、いや、随分変わった1日だったと感じましたとさ。(完)
 いや、始まって速攻終わるなよ、とかツッコミ入れたい人は心の中にしまっておくれ。
 この話は、あくまでコメディラブを目指したものだ。コメディのほうが多いかもしれないけど、それでもいいか?
 あと、原作の細かい設定と違っててもスルーしてください。

――とあるコンビニ、『近視の極楽(きんしのごくらく)』――
 コンビニ名に特に意味は無い。「禁書目録」は関係してないし、近視の人だけが入店できるぞ、の意味合いも全然含んでない。
 ちなみに今回の地の分を読み上げてるのは、ここのコンビニアルバイト店員(24歳、独身男性)で一人称、俺(おれ)です。ヨロシク。
 たった今、時間は夜11時を回ったところだ。今、店内には俺一人しかいない。まあ学生の割合が多い学園都市のコンビニだから一人でも十分できるんだけどさ。
 ふと思った、彼女欲しいなぁ〜〜、と。
『ウィーーーン♪♪♪』
 おっと、どなたか客が来たようだ、営業スマイル、営業スマイルっと。

528とあるコンビニ(上記タイトル忘れてた):2010/02/13(土) 00:12:36 ID:F1E7UChk
「いらっしゃいませー」(スマイル)
「はあ……不幸だ」
 入ってきて早々、気分暗くなるようなこと言うんじゃねえよ、とツッコんでやりたかった。中肉中背のツンツン頭の高校生みたいだ。
「な、なによアンタ、私と買い物に来たことがそんなに不満なわけ?(////)」
 もう一人いた。女の子だ、しかも服装見る限りあれは常盤台中学っぽいぞ、こんな時間にいいのか、まあいいや。
 とりあえず時間あるし、適当に品出しでもしとこう。
「いやいや、そういう事ではなくてですね……」
「じゃあ、なんなのよ?」
「こんな時間に常盤台中学のお嬢様である御坂センセーと一緒にいる所を土御門や青ピ、(その他大勢)にでも見られようものなら、学校行った際に何をされるか分かったもんじゃありません、というより想像したくもないので上条さんとしては非常に心配なわけですよ」
「想像したくもない、ってアンタ何されるわけ?」
「たぶん、つーか間違いなく男の嫉妬だ。『カミやん、また常盤台のお嬢様とイチャイチャしやがってー』、『カミやん、フラグ立てすぎやでー』とか言って、クラス中から恨み憎しみという名の攻撃を受ける。でもまっ、俺はなんとなく慣れたから良いんだけどさ、お前のほうが嫌だろ?」
「えっ、どうして?」
「だって常盤台が誇る超能力者(レベル5)の第三位、『超電磁砲(レールガン)』の御坂美琴のお相手が俺、なんて噂が広がったらお前が迷惑だろ?」
「なっ、いやあの、その……、わ、わわ私は別に迷惑なんかじゃ、(むしろ噂が広がって欲しいというか、実現してほしいというか、もう将来を誓い合いたいと………か)、ふっ(////)」
「ふっ?」
「ふにゃーーーっ(//////)」ビリビリ
「またかーーー!?」イマジンブレイカー
 ビックリしてしまった。いきなり常盤台の女の子から光が発せられたら誰だって驚くよ。まあ瞬間に隣にいた高校生(カミジョウくんというらしい)が女の子の左手を掴むと、すぐに収まったので店内は無事だ、よかったよかった。俺は品出しをしつつもチラチラと見ながら二人の会話をなんとなく聞いていた(聞こえていた、決して盗み聞きでは無いぞ)。どうやら二人は別に、恋人同士、という関係ではなさそうだ。しかも、女の子はこの学園都市の第三位の超能力者らしい。こんな平凡なコンビニにスゲェお客様が来たもんだ、この店もまだまだ捨てたモンじゃない。まあそれはさておき、女の子の方はカミジョウくんをかなり意識しているようだが、肝心のカミジョウくんはあんまり……。
「わ、悪りぃ、急な事態だったとはいえ、手握っちまったりして、すぐ……(み、御坂の手や、やわらけぇ〜、ダメだ意識するな、意識してはイカン)(//////)」
「あっ、ま、待って(/////)」
「……?」
「……その、手、このまま……握ってて…………お願い(/////)」
「あ、ああ……わ、わかった(/////)」
「ま、また電気が垂れ流しになったらいけないから、……し、仕方なくよ、仕方なく(/////)」
「そ、そうだな……仕方ないよな、ははっ(相手は中学生、相手は中学生…)(/////)」
 なんてこった、べらんべい!? カミジョウくんも意識しちまってるじゃねえかよ。俺は別に読心能力なんて無い、だがなんとなく分かる。二人は恋人ではない、が水面下ではたぶん、両想い、だ。どっちかが一歩踏み出せば一気に関係が進むだろう。まあもっと簡単な解釈をすれば、女の子の手を握って緊張してるだけかもしれないが。
「あ、このミルクティー美味しそうね」
「あまり買いすぎるなよ、貧乏学生であるカミジョーさんはそんなにお金なんてありませんよ」
「え、大丈夫よ? ここは私が全部払ってあげるから」
「いやいや、そういう訳にはいかねえよ。可愛い女の子に全額払ってもらうなんて上条さんのプライドが許せません、だからここは俺が払う」(美琴視点、イケメン上条さん)
「か、かかか可愛い……って、ちょっと、そんな急に、ゴニョゴニョ(/////)」
 なんとなく二人の様子を見ていただけだが、俺の心中は荒れている。なんだこのあま〜い空間は、付き合い始めたばかりの恋人っぽい雰囲気は。俺自身に恋人がいないから余計にイラッとくるな、おい。コンビニでラブコメかましてんじゃねえよ。おっと、いかん平常心、平常心。

529とあるコンビニ(上記タイトル忘れてた):2010/02/13(土) 00:18:38 ID:F1E7UChk
「見て見て、この漫画のこのシーン結構面白いわよ」
「ん、どれのことだ?」(美琴に近づいて覗き込む)
「ほら、ここよ、このシー………(か、顔が、ち、ちち近っ/////)」
「お、ほんとだ確かにおもしれえな」(漫画でニコッ)
「……………(/////////////////)」
 俺は最近、とある電○文庫を読んだがその物語の主人公の決め台詞が好きだ。「その幻想をぶち殺す」。使ってみたい、今すぐに、幻想(店内の二人が醸し出す甘い空間)をぶち殺してやりたい。これは嫉妬ではないと思いたい。せめて女の子だけが片想い中なら恋のキューピット役にでもなってやろうかと考えたが、今は(恋の)切り裂きジャックにでもなりたい気分だ。かといって、タイムスリップしてイギリスに行こうとか考えているわけじゃない。
 というか、もう誰でも良い。俺にこの空気は耐えられん、もう無理、お客さんカモーーーン!!
『ウィーーーン♪♪♪』
 おお、俺の願いが通じた、よっしゃーーー!
「いらっしゃいま………」
「まったく、もう少しタバコを買い溜めしとけばよかったな、やれやれ」
「………せ」
 で、デカイ、190cmは超えてるぞ。ってか、なんだ黒服の神父が赤毛で目元にバーコード、咥えタバコってどこの変人だ、………ちょーまて、タバコって!?
「あ、あのーお客様申し訳ございませんが店内では禁煙となっていますので、タバコは控えていただけますか」
「ん、ああ、そうか、そうだったね。ついクセでね、悪かった、すぐ捨てるよ」
 普段からタバコ吸いながら店利用してんのかよ、この野郎。と、文句は心に。営業スマイルな俺。
「じゃあキミ、え〜と、タバコのセブ○スター、マ○ボロ、ラ○ク、マイルド○ブン、ケン○、を売ってくれないか、ああもちろん全部カートン(10箱入り)で」
「か、かしこまりました……」
 なに、どんだけヘビースモーカーなの、コイツ買いすぎだろ!と文句は心に。
「げっ、ステイル。どうしてここに!?」
「やあイマジンブレイカー、その台詞そっくりそのまま返すよ」
 知り合いかよお前ら!?
「ねえアンタ、この人知り合い?」
「わたくし上条当麻としては、できれば知り合いたくなかったが。詳しく詮索しないでくれるとこっちも助かる」
「奇遇だね、僕もキミみたいなのと知り合いたくはなかったよ、……ところで」(チラッ)
「どうした?」
「仲良く手なんか繋いで、デートでもしているのかい?」
「なぁっ、で、ででデートなんて、そん、そんにゃ……(/////)」
「お、おい誤解を招くような事言うんじゃねえよ、御坂が困ってるだろうが!?」
 むしろ、喜んでるよカミジョウくん。
「その誤解を招くような真似をしてるのはキミ達だろう」
「う、うるせえぞ、この腐れエセ神父!」
 おっ、いいぞ二人を茶化したおかげで店内の空気が和らいだ。ナイス、エセ神父。そのままいけーーっ!
 よし、この間にタバコの準備完了っと。
「まあ僕としてはあの子に危険が及ばなければ、キミがどうなろうと別にいいんだけどね」
「いちいちムカつく野郎だな、……まあいいや、で、なんでこんな所にいるんだ? …まさか」
「安心しろ、別にキミが考えているようなことじゃない本当にただの野暮用だよ」
「野暮用ってなんだよ?」
「ただタバコを買いに来ただけさ」
「待てよ、待ちな、つーか待ちやがれこの野郎、の三段活用。お前14歳だよな、なに普通にコンビニでタバコ買おうとしてんだよ!?」
「えっ、14歳、これで!?」
 ぶっ、と俺も吹きそうになった。マジで、アレ14歳、190cm以上もありますよ、けど俺より10歳も年下。つまりタバコ売れねえじゃん。その前に店入ったとき吸ってたよな。あれぇ〜?

530とあるコンビニ:2010/02/13(土) 00:20:48 ID:F1E7UChk
「いいかステイル、日本には20歳未満の人は『禁酒禁煙』って法律があってだな」
「そんなこと僕には関係ないね」(スタスタ)
 げっ、こっち(レジ)来る。
「キミ、全部でいくらだい?」
「え、え〜とお客様、申し訳ありませんが20歳未満の方にタバコの販売は致しておりませんゆえ…(ビクビク)」
「なんだって?」(ギロッ)
「で、ですから………(やめて、睨むのやめて〜〜!?)」
「やめろよステイル、店員さんも困ってんじゃねえか!」
 おお、カミジョウくん。俺はキミを誤解していた、なんていい奴、まるでどこかの主人公みたいだ。
「……はぁ、まあいいや。じゃあサンドウィッチとコーヒーで」
『ピッ』
「375円になります」(営業スマイル)
「じゃあね上条当麻、僕は帰る。タバコはまた別の場所で買うことにするよ」
「結局買うんかい!?」
 結局買うんかい、ついカミジョウくんとハモってしまった。
「ありがとうございましたー(できればタバコは買わないでね、無理かもしれないけど)」
 エセ神父、赤毛バーコードとか色々疑問に思ったけど、まあまだ良識有りそうな客だったな、とまた次のお客さんが来たよ、営業スマイル。
『ウィーーーン♪♪♪』
「いらっしゃいませー」(スマイル)
「(はぁ、お腹すいた……シャケ弁あるかな?)」
 おっと来られたお客さんはロングヘアの似合う結構綺麗な女の子、いや女性? まあどっちでもいいや。少し見とれてしまいそうだ、いいじゃないか、だって男だもん。まだ本棚のコーナーにいる常盤台の子は『かわいい』でこっちは『美しい』の単語が似合いそうだ。でも何故だろう、このお嬢さんは怒らせたらいけない気がする、なんとなく……、うん、きっとダメだ、俺の本能が告げてる。いや、常盤台の子もダメだけど、こちらはいろんな意味で危険だと思う。
「やっぱり、コンビニじゃあまりいいの置いてないのね」
 コンビニの商品に過度な期待するなよ。どうやら、このお客さんはカミジョウくんたちの知り合いではないらしい。まあ連続で知り合いが来る訳ないか、というかお二人さんさっきよりイイ雰囲気になってますよ。コラコラ、指を絡めて手を握り合うな、顔赤くするんじゃない、同時に目を逸らすな、ああもう初々しいなあコンチクショーーーッ!!
 俺は品出しの最中で掴んでいた手に自然と力が入り、商品を少し握りつぶした。いかんいかん、大事な商品が。
 ん、綺麗なお嬢さんがこっちにやって来る、はてさて?

531とあるコンビニ:2010/02/13(土) 00:22:18 ID:F1E7UChk
「ねえ、シャケ弁ないの?」
「えっと、申し訳ありません。お弁当はこちらに置いてあるので全部で在庫は残っていないんです。あと1時間もすれば新しい商品が納品される予定ですけど」
「私、そんな事聞いてないんだけど、……もう一回聞くわ、シャケ弁はあ・る・の?」
「い、あの、だから………(こえぇ〜〜〜!?)」
「ねえ、店員さん……学園都市の第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』って……知ってる?」
 え、なにシャケ弁どうかだよな? あれ第四位、めるとだうなー、ヤンデレ、チョットマッテこれって脅しってやつでは、あっれぇ〜〜? もしかして、もしかしなくても俺大ピンチ!?『激録!夜のコンビニ店員に迫る危機』の目前ですよ、ぎゃーー!?
「ねえ、あなた」(ガシッ)
「あぁっ? なによ、っつか誰?」(ギロリ)
「私が誰かなんてどうだっていいでしょ、ところで何してんのよ?」
「何してようが、テメェには関係ないよね。邪魔だからどっかいってなー」
「ええ確かに私には関係ないわ。でもね、関係ないからって理由で黙って見過ごせる性格も生憎と持ち合わせてないのよね」
「ハハッ、なに正義の味方気取り? 善人ぶってんじゃねえよクソ野郎」
「別に善人ぶるつもりは無いわ、私はただ、アンタみたいなのがむかつくだけだから」
「……学園都市の超能力者(レベル5)第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』の使い手、麦野沈利(むぎのしずり)っていうらしいんだけど………知ってるかしら?」
「聞いたことはあるけど、別にどうだっていいわよ……そんな事」
「「……………………………………………………」」
 俺完全にスルーされてね? そんな事より、うおぁっ、自分の事を「そんな」扱いした自分が情けない。でも落ち着こう、はい深呼吸、スーハー。じゃなくて今まさに学園都市レベル5の第三位と第四位が睨み合ってピリピリしてるんだよね、一触即発ってやつだ、またしても俺ヤバクネ? ここら一帯もヤバイね。………たすけて、かーみー(じょう)さーまー!!!!
「おい、ちょっと待てよ二人とも」
「あぁっ?」
「えーと、ほらこれお前にやるよ」
「ちょっと、どうしてアンタがそんな?」
「シャケ弁……と、お茶? なんで?」(ヤンデレ解除)
「実は最後の1つだけあった戦利品だから、上条さん的には非常にラッキーとか思ったんだけど、まあ目の前で店員さんに喰らい付いてまであんなにシャケ弁食べたがってる綺麗(だった)な女の子がいたら、この紳士たる上条さんの良心が痛んでしまいましてね。……それに、お前それ(シャケ弁)欲しいんだろ、だったらやるよ」(上条スマイル炸裂)
「……………(//////////)」(ドキッ)←麦野
「……………(ブチッ!!??)」←美琴
 あれ、今なんか乙女チックな音となんかが切れる音が聞こえたような、幻聴か?疲れてんのかな俺。
「あ、ついでにそのお茶はこの貧乏学生たる上条さんお勧めの商品だ、安くて・美味い、お弁当のお供に是非どうぞ、ってことで」
『ピッ』
「会計、478円になります」(営業スマイル)
 どんなことがあっても基本は笑顔、ヤンデレだって恐くないぜ、よく頑張った俺、でもお嬢さんはそっけない。
「あの……わたし、麦野沈利。よろしくね(/////)」
「あ、ああ……え〜と、上条とぉぉうっつ!?」(美琴に背中つねられた)
「………(ジーーーッ)」
「ありがとうございましたー」
 これからは毎日シャケ弁の在庫は確保しておくように店長に伝えておくよ、麦のん。シャケ弁ないだけで店潰されたら俺も困る。でもまあ、カミジョウくん(たち)と知り合いになれて良かったじゃないか、麦のん。コンビニは色々な人が来るんだから多少のアクシデントが起こるくらいが丁度いい。ところで、あの二人は何話してるんだ?

532とあるコンビニ:2010/02/13(土) 00:24:58 ID:F1E7UChk
「御坂、お前なんで自分から揉め事に首突っ込んだりするんだよ?」
「なっ、べ、別にいいじゃないああいうのほっとけない性格だし(////)」
「まったく、何にでもすぐ首を突っ込みたがる電撃ビリビリお姫様はいったい誰の影響を受けたんだか?」
「ほんと、……いったい誰の影響を受けたのかしらね?(クスッ)」
「あん、なに笑ってんだよ?」
「私だってなにも最初から厄介事に突入したくなる性分なんてなかったわよ。自分の目の前に置かれたハードルは絶対に飛び越えよう、って努力しようとは思うけどそれとは話が別ってこと……」
「すいません上条さんは、おつむがあまりよろしくないので理解できないんでせうが?」
「要するに、人生において、個人の人格を形成していくのはその人の近くにいる人物の在り方、生き方、考え方が大きく影響される、ってことよ」
「……つまり、お前の場合は家族や後輩の白井による影響が大きい、ってことか?」
「半分正解、――――でもないわね、その答えだと良くても、正解率10〜30%、ってとこかしら」
「げっ、それでたったの10〜30%かよ、おいおい偉大なる御坂センセーはいったい全体どれだけ多くの人と関わってるんだ。いや、この場合はどんなレベルの能力者たちと、かな? まさか学園都市にとどまることなく、世界中の人々と…、うがー、そんなの上条さんの頭脳では想像もつかねぇええええええ!?」
「ち、違うってば、そんな壮大なスケールじゃないわよ」
「……と、言いますと?」
「世界とか能力者たちとか、全然関係なくて、残り全部の正解率を占めるのはもっと単純な答えだってこと」
「……で、その答えは結局、何なんでせうか?」
「だーかーらー………(スーハー)」←深呼吸
「…………………???????…………………」


「残りの正解率を占める答えはアンタ、上条当麻。わたし、御坂美琴に一番の影響力を与えてくれる、原動力とも呼べる存在が上条当麻、ってことよ!」(とびっきりの笑顔)


「………………………………………………………………」
「………………………………(あれ???)……………」
「………………(///////////)」
「……………(え、ち、ちょちょ、ちょっと待って)(///////)」
「……………(//////)」
「…………(わ、わわ、わた、私なに言っちゃって)(/////)」
「………あー……その(/////)」
「………(い、いい今の実質的に、あ、ああ、愛の告白、なん、にゃんじゃ〜)(/////)」
「なんというか、俺としてはすごく嬉しい……けど、こうやって面と向かって言われると、その………正直、恥ずかしい、つーか照れるんだけど(////)」
「ご、ごめん……い、い、今のナシ。…う、うう、ウソよ(////)」
「あのー、今のを冗談と言われると喜んでしまった上条さんとしても結構落ち込むんですが」
「あ、ああ……そ、そそ、そうじゃなくてウソや冗談じゃにゃく、なくてさっきの話は正真正銘、わ、わわた、私の本心であって、………でも、その、あの、えーっと………(/////)」
「御坂、呂律が回ってないぞ。とりあえず落ち着け、いやお願いだから落ち着いてくださいませ美琴お嬢様」
「!?…………ふ、ふにゃ……」
「……これはもしかして?」
「にゃにゃにゃ〜〜〜〜(//////)」ビリビリ
「やっぱりかチクショーーーッ!? おまけになんで猫風だーーー!?」イマジンブレイカー
 あー、俺はただのコンビニ店員(24歳、独身)だ。ところで皆様は、空気主人公、空気ヒロイン、空気王などという単語を聞いたことはあるか? 物語に登場はしているものの、ストーリー上においてほとんど関連性がなく、目立った見せ場などのない、いわば影の薄い人物たちのことだ。
 端的に言わせてもらう、俺の今の立場がまさにソレだ。向こうは気づいていない(そもそも、気にする余裕がない)かもしれないが、さっきのカミジョウくんたちのやり取りの一部始終を俺は見ている(だってコンビニエンスストア店内だもん)。ここはコンビニ店員としてではなく俺個人の感想として言ってやりたい。「テメェらいい加減にヤメレ」、さっきの台詞、確かに言った本人と言われた当人はかなり恥ずかしいだろう、けど、目の前でそんなやり取りを目撃してしまった全く赤の他人である俺がいっちばん恥ずかしいんだよ、クソッたれーーーーーッ!!
 まずい、かなりマズイよ。またしても店内に甘い空気が充満しつつある。『私たちの愛しい時間を盗み見てんじゃないわよ』的な雰囲気に耐えられん、もうこの際、通行人A、Bでも酔っ払いオヤジでも誰でもいいから、お客様ヘルプミー!!
『ウィーーーン♪♪♪』
「いらっしゃいませー」(営業スマイル)
 よっしゃきたー、天は俺を見放さなかった。ありがとう神様、ありがとうお客様。さてさて、いったい誰なのやら?

533■■■■:2010/02/13(土) 00:47:54 ID:F1E7UChk
>>527->>532
失礼します。
とりあえず序盤から中盤まで出しました。一度に書き込める分量が意外に少なかったので手惑いました。
これじゃ、どうやっても10スレ前後では終わりません。
もしかすれば、15スレはいくかもしれませんが飽きずに見てくれたら嬉しいなと思います、では続きはまた後ほど。

534■■■■:2010/02/13(土) 00:54:41 ID:iqw2gkpY
お疲れ様です!
第三者からの目ですかぁ 新鮮な感じです。

にしても相当書きましたね〜。結構時間掛ったんじゃないですか?
これからもお付き合いよろしくお願いします。

535七国山の栗鼠 ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:18:05 ID:qAhv.il2
みなさんGJ!ですの

約1時間経ってるし、投下しても大丈夫…ですかね?


では、前スレ>>692-702の続編を投下します。
時刻は25時22分予定


       『とある恋人の日常風景』
  第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日


 <このSSについて>
 ・美琴×上条さん(+黒子)
 ・多少キャラ崩壊や設定の独自解釈があります
 ・超電磁砲連載に伴う原作設定の変更が適用されています(美琴と初春・佐天の関係、一七七支部など)
 ・禁書目録・超電磁砲の原作・アニメ・CDにおける要素を含みます
 ・(〜〜)表記はルビの場合があります。なお、2度目以降は表示していません
 ・“〜〜”表記は傍点(圏点)を意味します

 <この章について>
 ・今回の投下分は第五章の前半です。(長くなったので後半は次回に分けています)
 ・急展開過ぎてワロタの可能性があります
 ・12月09日(水)の彼女たち

10レスほど?消費します。

536第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:22:07 ID:qAhv.il2
             第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日

                    

 朝、白井黒子はベッドの中で悩んでいた。
 自分の心を支配していた“何か”が一人の少年への恋であることをはっきりと理解したのも、上条
当麻と御坂美琴へすべての想いをぶつけ、そして泣きじゃくったのも昨日のことだ。あれから寮へ
戻ってからもずっと美琴の胸で泣いた。そして、泣き疲れていつの間にか眠っていたらしく、気づいた
ら朝になっていたのだ。
 そんな彼女が悩んでいること――、それは“上条への想い”と“美琴への想い”の二点だ。二人は
自分たちの隣が白井の居場所だと言ってくれた。しかし、それは恋愛的な意味で白井を受け入れる
ことではなく、大切な仲間として、ということだろう。それに白井の想いは複雑だ。美琴に対する想い
は誰にも譲れない。だが上条を想う気持ちも誰にも譲れないのだ。誰よりも身勝手な想いだとは
重々承知している。それでも、その気持ちを捻じ曲げることなどできない。

 どうすればよいのか。
 これから先、二人とどう接して、どういう感情をぶつければよいのか。
 
 隣のベッドで眠る美琴を見いる。
「……ぇぅ、と…ぅま」
 枕を抱きしめ、幸せそうな表情を浮かべる美琴。
 そんな彼女に対し、白井の心には二つの感情が同時に湧き出る。それは、大好きなお姉様にそこ
まで想わせる“上条への嫉妬”であり、そして同時に、大好きな上条を想う“美琴への嫉妬”だ。どう
すればよいのかわからない。この感情は一体どこにぶつければよいのか……。
 そう思考が泥沼にはまり始めたその時、美琴が目を覚ました。

「ぅう、ん……。あ……、黒子おはよう」
「おはようございますわ、お姉様」
「ふあぁ……。なんだ、もう六時半じゃない。シャワー浴びてくるわね」
 美琴は、昨晩のことなどなかったかのように、いつもと同じ様子だった。
 よかった……と、素直に思う。嫌われてしまったのではないか? そう心配していたからだ。

 いつもの朝だった。
 身だしなみを整え、朝食を摂り、そして寮を出る。
 愛しのお姉様へちょっかいを出し、軽口を叩きあいながら歩く。普段と何も変わらない、そんな朝
だった。

 そして、放課後のことである。昨晩のことで気を遣っているのかはわからないが、白井は珍しく美琴
から遊びに誘われた。
 「お姉様とデートですの!?」と眼を輝かせるも、どうも初春飾利や佐天涙子も一緒らしい。こういっ
た場合、白井や佐天が美琴に声をかけることが多く、“自分から輪に加われない性格”の美琴が自
ら遊びに誘うことなど多くはないのだ。

537第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:22:42 ID:qAhv.il2
 待ち合わせ場所は第七学区センター駅。
 学園都市南部を横断する並行した二つの私鉄と、学園都市を南北に縦断する学園都市モノレー
ルが交差する、第七学区の中心的な駅だ。付近の道路は全体的に幅員が広く、整然と並んだ学生
寮を中心とした団地群など、さながら大規模なニュータウンのようだ。
 そんな喧騒とした駅前の広いデッキに白井と御坂は立っていた。二人の前を過ぎ行く様々な制服
を着た学生たちは、揃って二人へと目を向ける。ベージュのシングルブレザーに、紺色タータン
チェックのプリーツミニスカート。気品溢れると賞されるその制服に身を包んだ二人はどこまでも美し
く、そして可愛らしく、とにかく目立っていた。
「まったく……。慣れてるとはいえ、ジロジロ見られるのはあんまり嬉しいことじゃないわね」
「お姉様、見られているという自覚がおありなら普段の態度は自重して、もう少し気品の満ちた態度
 をお願いしますわ」
 美琴に対する愚痴がこぼれてしまう。
 決して美琴を嫌な気分にさせたい訳ではない。彼女を想う一人の人間として、そして信頼するお姉
様の親友として、ついつい漏らしてしまうのだ。
「気品の満ちた態度のどこが御坂美琴なのよ」
「お姉様は常盤台のエースであり学園都市の頂点。皆の手本となるべきお方ですのよ」
「エースエースってねぇ……」
 皆の手本と言われ美琴は呆れ顔で呟くが、そんな彼女の反応が可愛らしく思わず顔が綻びそうに
なる。
 そんな白井の気分を邪魔するように、二人の後方から聞きなれた声が響く。
「御坂さーん、白井さーん!」
「遅いですわよ初春、佐天さんも」
「ごめんなさい。初春が学校に忘れ物したもので」
「全然いいわよ。じゃあ買い物は後で行くとして、とりあえずファミレスか喫茶店でも行こっか?」

 そして、四人は歩き出す。
 そこである人物と遭遇してしまうとも知らずに。

538第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:23:00 ID:qAhv.il2
                    *


 ここは駅近くにあるオープンカフェである。かつて美琴が自身に挑もうとする後輩とちょっとした“戦
闘”を繰り広げた場所だ。
 そんな場所で、彼女たちは年頃の女の子らしいことに『恋愛について』という話題を中心に盛り上
がっていた。

「やっぱり、彼氏は欲しいと思うんですけど、ね……」
「じゃあチャンスじゃない」
「いやー、でも全然面識なかったんで」
 どうも佐天が学校で先輩から告白をされたらしいのだ。
 本人の話ではカッコいい人らしいのだが、それでも“知らない人”であることには変わりないからと
断ったらしい。
「やっぱり大切にしたいじゃないですか、そういうの」
「でも、告白されるなんてすごいと思いますよ」
 初春は目を輝かせてそう言う。
 彼女は恋愛や“お嬢様”に並々ならぬ憧れを持っており、こういった話や常盤台などの話になると
必ずこういった反応をする。
「わたくしは人から告白される気持ちは解りませんわね。なんと言っても学舎の園。そういったイベン
 トは全くありませんから」
「いや、同性からの告白があるじゃない……」
「それはお姉様が憧れの的だからですわよ」
 学舎の園――そこは五つの超名門お嬢様学校が集まる場所。そこに“殿方”という存在はなく、
“淑女”同士での恋愛もごく一般的な光景である。美琴も隣に居るツインテール風紀委員を含め、結
構な回数の告白を受けている。
「や、やっぱりお嬢様学校って、百合百合な関係があるんですか??」
「百合百合ってねぇ……」
 さらに目の輝きを増す。
 そこに憧れるのは何かズレているとは思うが。
「これがそれそのものじゃない」
 呆れたように美琴は黒子を指差す。
 しかし、
「白井さんは百合じゃありません! ただの変態です!!」
 言い切った。はっきりと。それも即答である。
 それを聞いた白井の顔が一瞬引きつったように見えた。そして鬼も逃げ出すような冷めたく威圧感
ある声で告げる。
「初春? あなた最近調子乗りすぎですわよ。頭のお花だけ空間移動(テレポート)して差し上げま
 しょうか?」
「ひいっ!」
 その声からは、初春が未だ体験したことのないほどの恐ろしさが伝わってくる。
「そ、そういえば御坂さんって好きな人とかいるんですか?」
 言葉だけでなく大胆にもスカートをめくり上げ、太股のベルトから『金属の矢』を取り出しチラつかせ
る白井と、蛇に睨まれた蛙どころではない初春を見て、佐天はとりあえず話題を変えようとしたの
か、たまたま視線が合ってしまった美琴に“美琴的禁止ワード”を言い放ってしまった。
「え!? わた、私? べ、別にいないわよそんなの……」
 明らかに怪しい美琴の反応を見てニンマリと目元が綻ぶ佐天。白井は美琴の言葉に反応し、金属
の矢の照準から外された初春は一息つくと、美琴の様子を観察するように眺め始める。
 美琴はマズった!と正直思ったが、もう時は既に遅い。
「あら。ではお姉様、あの殿方は黒子が頂いてもよろしいですのね?」
「な、何言ってんのよアンタは!?」
 追い討ちをかけるように、白井の言葉が響いた。
 それは美琴の“好きな人”の存在を示唆する内容であり、そんな意味ありげな言葉を聞いてしまっ
ては、初春も佐天も気になって気になって仕方がないであろう。
「あの殿方!? それって誰ですか!? 誰なんですか??」
「御坂さんの好きな人ですか!?」
 始まってしまった。始まってしまったのだ。
 美琴的には『恥ずかしい』という地獄になるであろう時間の始まりである。
「どんな人なんですか?」
「やっぱり年上ですか??」
「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!」
 とりあえず声を上げて二人の質問を制止し、話を逸らすか誤魔化すかと思慮しようとした。
 が、
「お姉様、素直に白状されたほうがよろしいですわよ?」
「い、いや、だって……」
「わたくしのことを気にされているのでしたら、お姉様の考えは間違いですわ。黒子はあんな事くらい
 ではくじけませんの」
 白井の発言に少々“?”を浮かべながらも、それでも興味津々といった表情で美琴を見つめる二人
の少女。
 そして、ありのままの関係を受け入れた(らしい?)ルームメイト。
「す、好きな人っていうか、彼氏なんだけど……」
 素直に、彼氏の存在を肯定してみた。
「「……、」」
 わずかな沈黙。
 そして、

539第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:23:19 ID:qAhv.il2
「「ええ―――っ!!」」
 二人の少女の、驚きの絶叫。
「み、御坂さんって彼氏いたんですか!?」
「相手はどんな人ですか!? やっぱりカッコいい人ですか?? イケメンですか!?」
「えーっと……、顔は普通」
 あまりの二人の勢いに押されながら、おずおずと答え始める。
「じゃあどんなタイプですか? スポーツ系!? それとも優秀な学生さん??」
「いや、体力は人並み以上だけど、スポーツはやってないはず。それに、勉強も無理」
 思い浮かべると、自分と一晩中全速力で追いかけっこしてもぶっ倒れないほどの体力はあるの
に、何かスポーツやっているといったことは聞いたことがない。
 ちなみに、一晩中全速力で上条と追いかけっこを繰り広げたり、女子中学生とは思えないほどの
体力や格闘技術がある美琴も、スポーツは特に何もやっていないのだが。
「じゃあ……」
「えっと……、期待してるみたいだけど何もないわよ? ただの高校生だし」
「それでもお姉様を骨抜きにするほどの方ですの」
「そ、そんなにすごい人なんですか?」
「何か特徴とかはないんですか?」
 二人は白井の言葉に驚いたようで、さらに“美琴の彼氏”の事を聞こうとする。
「そうね……。うーん。いっつも幸薄そうな顔してて、頭はウニみたいでかわいい」
 美琴にとって、上条はムラサキウニかガンガゼか何かなのだろうか? 確かに似てはいるが。
 “かわいい”ところがポイントだったりするのかもしれない。
「む。すごく見たいですね、御坂さんの彼氏さん」
「プリとかないんですか?」
「え? あ、あるにはあるんだけど……」
「「見せてください!!」」
 もはや瞳に星が浮かぶほどの輝きを放つ二人。勢いに負けた美琴はおずおずとケロヨン携帯を取
り出し、
「ほ、ほんとに見るの?」
「「はい!!」」
 顔を赤くしながらケロヨン携帯を差し出す。
 そして、それを受け取った佐天が画面を開くと、そこには――
「「うわぁ――――!!」」
 プリクラ――それもあっついキスをするツンツン頭の少年と美琴が、待受に表示されていた。
「す、すごいです御坂さん!」
「さすが御坂さん! やっぱり大人!!」
「おおお、お姉様に、わたくしのお姉様にッ! おのれ上条当麻ぁぁあ!!」
 一人嫉妬が混ざっているがたぶん気のせいである。
「は、恥ずかしい……」
 ちなみに、上条ほどではないが美琴もかなり不幸な人種である。

 ふいに、
「もう上条さん死んじゃいます……」
 という、すごく聞きなれた声が、耳に入ってきてしまったような気がした。

 気のせいだと、頭をぶんぶんと振るい、現実を取り戻そうとするが、

「う、初春、あの人ってもしかして……」
「御坂さんの彼氏さん、ですよね?」

 美琴がおそる恐る振り返ると、“ウニっぽい頭で不幸そうな顔をした高校生”が、ちょうどカフェに向
かって歩いて来るところだった。

「な、ななな、何でア――」
 ――ンタがここにいんのよ!
 そう美琴が叫ぶ前に、誰もが予想だにしない事態が起こる。
「おっにいっさま――――ん!!」
「「お、お兄様!?」」
 瞬間、二人の少女が驚きの声を上げ、二人の少年が凍りついた。
「うがぁあっ!! 一体なんだナンデスカー!?」
 いきなり身体にまとわり付いた“生暖かい物体”に、上条の全身にゾワァァッ!とした寒気が走り回
り、そんな上条と“その物体”の突然すぎる行動を目にした美琴は、驚きのあまり凍りついてしまう。
 そして“その物体”は、美琴や上条が驚きでパニックに陥っている隙を狙って、自らの欲望のままに
次の行動を開始する。
「あぁん! お兄様の匂い! お兄様の温もり!! ん゙んっ、最高ですわァァッ!!」
「か、カミやんが常盤台のお嬢様に絡み付かれとる!!」
「ちょ、黒子! アンタ何してんのよ!!」
 ようやく状況を飲み込めた美琴が、“その物体”――つまり白井黒子を怒鳴りつける。
「常盤台の超電磁砲もいるにゃー!!」
「なになに何なの初春!?」
「わ、わからないですよ!」
「お兄様ぁぁん! はぁ、はぁ」
「し、白井かお前! 一体何なんだ!!」
「うひひ、黒子は気づきましたの。わたくしはお姉様のこともお兄様のことも諦められませんの! な
 らば恋人丼!! お二人ともセットで食べてしまえば全て解決ですわ――っ!!」
「黒子ッ!!」
 ゴンッ! という鈍い音。
 暴走風紀委員を止められるのは美琴しかいないのだ。

540第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:23:34 ID:qAhv.il2
 ――放課後のことだった。いつものように授業を終えた上条は、舞夏と何かあったらしく機嫌が良
かった土御門から、めずらしいことにコーラ一杯とホットドッグ一個を奢ってくれると誘われ、青髪と共
にこのオープンカフェへと向かっていたところだった。
 しかしなぜかいきなり常盤台のお嬢様に抱きつかれた上条を見て、青いほうは『カミやんは最初か
ら僕らに見せ付けるつもりやったんやー』とか泣きながら走り去り、黄色いほうは『男の熱き友情を裏
切るとは! 夜道は背後に気をつけろと忠告しておくぜよ』などと言いながら立ち去って行った。
 そして、結局この場に取り残されてしまった上条は、美琴・白井と初対面の少女二人(と上条は
思っている)がいる机に着いて、向かいの見知らぬ少女からの謎の視線に耐えるはめになってし
まったのである。


「ご紹介しますわ。こちら、右から佐天涙子さんと、わたくしと同じ一七七支部で風紀委員をしている
 初春飾利さんですわ。お二人とも第七学区立柵川中学校の一年生でいらっしゃいます」
 謎の奇妙な沈黙を打ち破るように、白井が少女二人を上条に紹介する。
「そしてこちらが、お姉様の彼氏、つまりわたくしのお兄様、上条当麻さんですの」
「な、なんでアンタのお兄様なのよ!」
「お姉様もお兄様も黒子の大切な恋人ですのよ」
 すかさず美琴からのツッコミが入り、黒子が反論する。
 一方の佐天と初春は、
(御坂さんの彼氏ってぐらいだからやっぱ高位能力者?)
(やっぱりそうじゃないですかねー。なにせ御坂さんは学園都市の頂点ですし)
 互いの意見が一致したらしい。
 そして、
「初めまして、初春飾利です」
「初めまして。佐天涙子です。強度(レベル)は無能力者(レベル0)でーす。ちなみにこの初春は低
 能力者(レベル1)」
「あ、佐天さん……」
「ふうん。俺は上条当麻っつーただのしがない高校生。強度は完全無欠の無能力者だ」
 上条の自己紹介を聞いて、『え?』と何かを疑問に思ったように顔を見合わせる二人。
 ちなみに上条の脇で美琴と黒子が何やら暴れている(正確には美琴に絡み付こうとする白井を押
しのけようとしている)が、色々と恐いので三人とも関わらないことにしている。
「えっと……、無能力者なんですか?」
「ああ。頭の血管ぶち切れるまで踏ん張っても何もおきない本当の『無能力』ってやつだな」
 あくまで事実をありのままに伝えただけなのだが、なぜかその上条を雷撃の槍が襲う。
「うおぁあ! 何!?」
「何が無能力者よド馬鹿! 二三〇万分の一じゃないアンタの幻想ぶち殺し能力!」
 初春と佐天は信じられない光景を見た。
 あの御坂美琴が撃ち出した雷撃の槍を、上条はなんと右手を闇雲に振るっただけで“掻き消した”
のだ。
「お、お、お姉……、様……」
「あ、く、黒子!」
 どうやら可愛そうなことに白井が巻き添え食ったようだ。そりゃそうだ。白井に絡み付かれているの
に電撃ぶっ放したのだから。
「う、うへへ、お姉様の電撃、良いですわぁ……」
 前言撤回。
 身もだえする危険な香り漂う少女は放置して話を進めるとしよう。
「コイツは都市伝説の『どんな能力も聞かない能力を持つ男』よ。私が生まれて初めて本気の雷撃
 の槍をぶっ放した時も、コイツには全然効かなかったんだから。あれ普通だったら死ぬどころか近
 辺数キロは焼け野原よ」
 さらっと殺人未遂どころか街を一個消滅させるだけの能力を使ったことを言う。
「わたくしの能力も通用しませんの」
 正常な思考を取り戻したらしい白井も、そのチカラの存在を肯定する。
「そ、それってどんな能力なんですか? 書庫(バンク)にも載ってない、噂だけの架空能力だったよ
 うな……」
「ん? ああ、『能力』じゃねーし、実際無能力者だから当然だろうな」
 初春はその能力に興味を持ったようだが、すぐさま上条は“能力開発による能力であること”を否
定する。

541第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:24:00 ID:qAhv.il2
 上条は右手をグー、パー、と握ったり開いたりしながら、
「幻想殺し(イマジンブレイカー)っつってな、すべての異能のチカラを、例え神の力でもそれが異能
 なものであるならば、全て打ち消すことができる。らしい……」
「コイツの右手に触れると、その瞬間“すべての能力の効果”が失われるって訳。だから、こいつの前
 では例え学園都市最強の能力者だって、無能力者以下でしかなくなるのよ。まあ私はコイツの弱
 点知ってるけどね」
 ちょっぴり勝ち誇ったように美琴は言う。
 そう。美琴は知っているのだ。何らかの理由により電撃を浴びせる必要がある場合、右手先以外
の場所を掴めば打ち消されないことを知っている。
 美琴の電撃に対して、上条の幻想殺しは右手首より先しか効力がない。つまり、右手のヒジと手首
の間を掴んでしまえば、上条の右手先は美琴の体に触れることも、能力を搔き消すこともできなくな
るため、美琴の電撃を掻き消すことができなくなるのだ。
 いや、単に最近肩腰こり過ぎの上条へ電撃を使ってマッサージしたり、生体電気をコントロールし
て血行を良くしてあげているだけであって、決して鬼畜な行為を行っている訳では(たぶん)ない。能
力の有効活用だ。
「も、もしかして、学園都市第一位を倒した無能力者って言う噂って、上条さんのことなんですか?」
 佐天が興味津々といった面持ちで聞いてくる。
「そうね。コイツよ、その無能力者って」
「じゃあ、学園都市第三位に付きまとわれる無能力者っていう都市伝説も、上条さんのことだったん
 ですね」
 初春の発言に、ぶっと噴出す美琴。
「な、何なのよその噂は!?」
「結構有名な都市伝説というか噂ですよ? 他にもたくさんあります」
 にこにこと笑顔の初春が、いつのまにか立ち上げていたノートパソコンの画面を見せた。
 そこには、
『学園都市第三位から貞操を狙われる少年!!』
『衝撃! 常盤台の超電磁砲を骨抜きにした無能力者!!』
『学園都市第一位はロリコンか!?』
『風力発電の真実! 風車は第三位の電磁波で回っている!!』
『学園都市最下位の無能力者が学園都市最強を倒した!?』
 など、学園都市にまつわる都市伝説や噂話が書かれていた。
「ふにゃああぁぁぁあああ!」
 突然美琴の全身からバチバチと放電される。どうやら自分と上条の関係が噂話として学園都市中
に知れ渡り始めていることを知り、ついふにゃーしてしまったらしい。危うく初春ご愛用のパソコンが
お亡くなりになるところだった。
「やめろぉぉおお!!」
 闇雲に上条が右手を振り、左隣に座る美琴の体を掴もうとする。
 むにゅ、と柔らかな感触。
「わぁ……」
 目を丸くする初春。そして度肝を抜かれ口をあんぐりと開ける佐天。
「お、おお、お兄様! 公衆の面前でお姉様に何をしているんですのッ!! 許しませんわぁぁ!!」
 絶叫しながら金属の矢をごっそりと大量に掴みだす白井。
 上条は見てしまった。自分の右手が掴む、なにやらとてもやわらかい、最近なんかよく揉んでいる
ような気がする感触の“それ”を。
 上条の掴んでいた“それ”は――、

 顔を真っ赤に染め上げた美琴の、控えめな胸のふくらみだった。

「……え、ええと、これは事故であって決してわざとではないんですよ白井サン!!」
 慌てて美琴の胸から手を“放す”が、すると当然のごとく、再び美琴の身体から激しい漏電が起き
た。
「何放しているんですの避雷針!! 殿方(あなた)が触れていないと漏電が止まりませんの
 よ!!」
「お兄様から避雷針に格下げ!?」
 急いで美琴の左手を掴みなおす。
「はうぅ……」
 どうやら触れていないと漏電が収まることがないらしい。
 茹で上げた蛸のようにますます顔を赤くした美琴だが、心地がよいのか上条に身を預けてしまっ
た。
 仕方がなく美琴を後ろから抱きしめるようにした上条だが、それを見た白井は今にも襲い掛からん
ばかり勢いでぎゃあぎゃあと騒ぎ出し、初春と佐天の目からは謎の輝きがあふれ出している。
「ふ、ふふふ……」
 上条は突然笑い出し、

「不幸だ……」

 ついその言葉を口にしてしまった。

542第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:24:17 ID:qAhv.il2
                    *


 案外美琴の回復は早く、あの後五分ほどで上条は恥ずかし空間から解放されたのだが、その代
わりに今度は目が星のように輝いた二人の少女による、美琴と上条への質問タイムが始まってし
まった。
「いつ頃にどうやって知り合ったんですか?」
「六月の中頃よ。不良に絡まれてたところを助けようとしてくれたのよ」
「上条さんがですか?」
「ああ。『知り合いの振りして自然にその場から連れ出す作戦』を実行しようとしたんだが、美琴が
 『誰アンタ』なんてバラしてくれたもんだから失敗して、逆に不良に絡まれた上に、コイツにまで電撃
 浴び去られた」
「そ、それはアンタが私のことガキだなんだって言ったからでしょ!」
 確かに初対面の女子中学生相手にガキだの反抗期だの言った上条は、電撃浴びせられても仕方
がなかったかもしれない。
 顔を赤くして怒り出す美琴の様子を見て、初春と佐天の表情がさらにニヤつく。
「告白はどちらがされたんですか?」
「んー美琴だな。一端覧祭の最後で」
「御坂さんがですか!? 意外!」
 絶対にありえないとでも言いたげな驚き方だ。
「どうして御坂さんは上条さんのことを好きになったんですか?」
 初春からすれば、超能力者でありお嬢様である美琴が、一見ただの無能力者の高校生でしかない
上条当麻という男に惚れた理由がわからないのだ。
「え、えっとね、今思うと逢ったばっかりの頃から気になってはいたんだと思う。はっきり意識するよう
 になったのって夏休みの終わり頃なんだけど……」
 美琴は一旦区切って、
「八月一〇日頃からだったかな……、私その頃、あることで独りで思い詰めてたのよ。それは絶対に
 誰も、黒子だって巻き込む訳にはいかないことだったから、誰にも相談できる訳がなかったし、自分
 の命を投げうつ覚悟もしてた。だけど当麻は、頼んでもいないのに私が思いつめてたことを勝手に
 調べて、勝手に解決してくれた。私の命も、私の大切な“家族”も助けてくれた」
「御坂さんの命……、ですか?」
 そう佐天が訊く。
 “命”という言葉が出るほど、それは深刻な状況だったということだ。しかし、超能力者である美琴
がそんな状況に陥ってしまうなんてことなど、佐天や初春には想像できない。
「うん。あの時当麻が助けてくれなかったら、私はここにはいない。私が死んだって状況が変わるか
 なんてわからないのに、私は自分の考えを押し通そうとしてたのよね。その私の間違った考えを当
 麻は直してくれた。それからかな、私がコイツのことをはっきりと恋愛対象として意識するようになっ
 たのは。その頃は自分の気持ちを否定してたんだけどね……」
「ヒーロー、ですね」
 初春がぽそりと呟く。
「全然ヒーローっぽくないけどね。コイツ」
「悪かったなおい」
 美琴の皮肉交じりの台詞に上条が突っかかるが、
「本当に仲良いんですね」
 佐天からすれば、それはとても幸せそうな関係に見えた。
「そ、そうかな……? ありがと」
「それで、自分の気持ちを認めたのはいつ頃なんですか?」
「……それって、言わなきゃダメ?」
「「ぜひ」」

543第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:24:45 ID:qAhv.il2
「ずいぶんいきなりな話なんだけど……。ある時当麻がね、死にかけてたのよ。体中ボロボロで、包
 帯だらけで、点滴の管とか心電図とかの電極までつけっぱなしで、足元もふらふらだった。それで
 も当麻は何かと“戦おうとしていた”。誰にも助けを求めないで、全てを背負い込んで。それを見た
 とき、自分の心の中にあったことかな……、全部言っちゃったのよ。勢いでね。それで、はっきり気
 づいたの。私にとって上条当麻は自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を崩壊させるほど大きな
 存在になってたんだってね。やっぱり、好きなんだって。でも、それでも好きだとは言えなかったん
 だけど」
 美琴の目は、過去を見つめなおすかのような、そんなどこまでも遠く澄んだ瞳だった。
「ずっと好きだって言いたかったのにね、言えなかった。コイツは全然気づいてくんないし、気づくと
 どっか遠くに行っちゃってるし。やっとの思いで一端覧祭で一緒に回るのを約束したのに、別の女
 の子に囲まれてたし。でも、最終日だけは何とか約束できた。その時にやっと好きだって伝えられ
 てね」
「まさか美琴が俺のこと好きだなんて思ってなかったから、最初は何かの間違えかと思ってな……」
 上条は誤魔化すように笑うが、
「気づかないアンタが鈍感すぎるのよ」
「いや、人の顔見るなりいきなり電撃ぶっ放してくるビリビリ女から好かれてると思える人間のほうが
 おかしいだろ」
「そ、それはアンタがスルーするからでしょ!」
 さっきまでの雰囲気はどこへやら。
 軌道が変な方向に分岐して行っているようだ。
「スルーって何のことだよ。お前いつも挨拶なしにいきなり後ろから『雷撃の槍』撃ってくるじゃねえ
 か! あれ気づかなかったら本当に死ぬぞ!!」
「ちゃんと挨拶してるじゃない! 何回も何回も何っ回も呼んでるのに無視すんのはアンタよアン
 タ!!」
「ちゃんと挨拶されたら気づいてるっつうの。つうかお前にとっての挨拶ってのは一〇億ボルトの電
 撃を所構わずぶっ放すことか?」
「とっ、所構わずな訳ないでしょ!? アンタ以外には絶対当たんないようにしてるわよ!」
「俺に向かってなら撃っていいのか!? 上条さんだって人間ですよ人間!!」
「アンタどうせ電撃かき消すじゃない!! 私は学園都市第三位の超電磁砲よ? 御坂美琴よ?? 
 この私の雷撃の槍まともに喰らって死んでないとか異常よ異常! 一回くらいまともに当たんなさ
 いよ!!」
「当たったら死んでる!」
「あ、あの! 御坂さん上条さん……」
「だいたいお前は常盤台のお嬢様だろ!? もっと自覚持ってお嬢様らしい行動しろっつうの!!」
「常盤台のお嬢様? はっ、笑わせないでよ! お嬢様のどこが私らしいってのよ! あー、そう。
 やーっぱりアンタはお嬢様がいい訳このウニ頭!! だったらどっかそこらへんのお嬢様でもとっ
 捕まえて遊んでればいいじゃない!!」
「お姉様お兄様お止めくださいませ!!」
 この場を静めたのは白井だった。
 白井に怒鳴りつけられて冷静になったのか、上条と美琴はケンカをやめ、途端に俯く。
「お姉様もお兄様ももう少しお互いを尊重できませんの? だいたいお二人だけでケンカをお楽しみ
 になるなんて……。黒子もっ! わたくしも混ぜてくださいませっ!!」
 いや、白井はケンカを止めたかったのではなかったっぽい。
「……あら? も、もうお終いですの?? 黒子も混ぜて欲しかったんですのに……」
 なぜか本当に残念そうに、いや寂しそうに白井は言う。
「あ、アンタは一体何がしたいのよ」
 美琴のツッコミに対し、白井は高らかに宣言する。
「わたくしはお姉様やお兄様と痴話ゲンカしたいんですの! さあお兄様お姉様、今からわたくしを含
 めて三人でケンカを始めますわよ!!」
「「しねえよ《しないわよ》!!」」

 美しいほど、二人の声が完璧に重なる。

544第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:25:03 ID:qAhv.il2
 結局その後、事態に追いつけず困り果てていた初春と佐天には、騒いでしまったことを上条と美琴
が陳謝し、それはいつものことだから気にしないで欲しいという旨の説明をした。初春や佐天からす
れば、ケンカするほど仲が良いという言葉を具現化したような二人が羨ましく見えたので、別に良
かったのだが。まあ、それは二人が支え合っているからこそだろうが。
 なお、最後まで白井は美琴に抱きつきながら『三人でケンカしたい』という主張を続けていたが、内
心では美琴と上条が付き合い始める前とさほど変らない、あいも変わらずケンカや言い合いをする
二人の関係を見てほっと胸を撫で下ろしていた。美琴が本気でケンカできる相手は白井自身を除く
と上条以外におらず、その点で白井は上条を信頼しているからだ。二人が仲が良いのもいいが、ケ
ンカできる関係はこれからも変わらないでほしい。そう切に願っていた。

 美琴に文字通り絡みつき騒いでいた白井がようやく落ち着いたのを見計らってか、佐天が新しい
話題を振る。
「それで、やっぱり上条さんと御坂さんは二十四日の予定決まってるんですよね?」
「「二十四日?」」
 上条と美琴はそう疑問で答える。
「あー、そういえばまだ何も考えてなかったわね……。あぶないあぶない」
「そうか、クリスマスイヴか……。どうする?」
 期待した佐天だが、向かいに座る一組の男女の反応は鈍い。
 それもそのはずで、上条と美琴は今の状況をすでに満足しきっているからだ。実際行くところまで
行ってしまっているし、週に五回はデート(かどうかは微妙だが)しているベタベタな二人にとって、ク
リスマスもバレンタインデーもちっぽけな飾りに過ぎない。何も考えていなかったというより、忘れて
いたというべきだろう。
「うーん、やっぱクリスマスって言ったら特別な日よね……、でも特に何かあるわけでもないし、適当
 にデートで良いと思うのよね……」
 その美琴の言葉を聞いた初春と佐天は、顔を見合わせ、
(あ、あの少女趣味な御坂さんがクリスマスを適当って言ってますよ!?)
(御坂さんのことだから少女的素敵イベントを期待してると思ってたのにー!)
 予想外の反応に驚きをぶつけ合っていた。
 二人の予想では、尾根のような高台か高層ビルで、クリスマスイルミネーションで美しく色づいた街
の夜景を背に……的な、そういった感じだったのだ。
「ねえ当麻、二十四日の予定、私が考えといていい?」
「ん? ああ、上条さんが死なない程度でお願いします」
「何言ってんのよバカ。……って、そっか。アンタお金ないんだっけ」
 昨日、上条は十二月分の生活費全てを落としている。主な収入源である奨学金は、その学生の能
力の有効性や強度・学校・学業成績などを元に額が決められているため、従って無能力者で底辺校
に通い成績も悪い上条には、学生一人が生活をする上で不自由しない最低限の金額しか支払われ
ていない。貯蓄するほどの額は余らないし、しかも生活を圧迫する居候の存在は大きい。
 つまり一銭も持たず、美琴からの生活援助を受けることになった上条には、何かを買って美琴にプ
レゼントすることはできないはずだ。
「あ、ああ……。けどプレゼントは絶対何か用意するから、期待しててくれ」
「いいわよ。アンタ生活費削りそうだし。……そうね、私がお金渡すから、それで買ってきてよ。アンタ
 のお金じゃないけど、アンタが選んでくれた物ならそれで良いから」
「……悪い。俺がドジなばかりに」
「アンタが不幸体質なのは仕方がないでしょ。だったら私がアンタを少しでも幸せにするだけよ。この
 美琴センセーがついてるんだから、安心なさい」
 それは黒子や“妹達”、そして後輩たちに向ける優しさと同じものだった。かつては素直になれず、
上条に強く当たることもあった美琴だが、今の彼女はそんなかつての彼女とは違う。まだ美琴が上
条に告白した日から数週間しか経っていないが、それでも、素直になると自分に強く誓った彼女は、
その胸に秘めた誓いを守って行動している。
「そうだ御坂さん上条さん。二十三日か二十五日ってあいてますか? どうせならみんなでパー
 ティーしましょうよ」
「佐天さん名案……じゃなくて、いいですねー! やりましょう御坂さん、上条さん!」
 上条と美琴は気づいていないが、初春と佐天は何かを企てているのかのように口元がニヤけてい
 た。

545第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:25:20 ID:qAhv.il2
「二十三日は天皇誕生日だから休みよね。二十五日って何曜日だったっけ?」
「たしか金曜だったな。俺んとこは終業式。何も問題なければ、な……」
 上条の頭の中をよぎる“補習”の二文字。
 そんな上条の心配を見抜いたかのように、美琴が言う。
「じゃあ二十五日の放課後なんてどうかしら? 常盤台も終業式で午後は丸々開いてるし。当麻、ア
 ンタは補習にならないよう努力すること」
「お、お姉様!? ま、まさか二十三日は、この黒子のために空けていてくださるとそういうことです
 のね!!」
「何言ってんのよアンタは。佐天さん初春さんは大丈夫?」
 このままでは白井に引きずられて競合脱線しそうだったので、向かいに座る二人に振った。
「あたしはそれで全然大丈夫ですよ。初春も良いでしょ?」
「そうですね、では二十五日で。詳しいことはおいおい決めましょう」
 何とか問題なく話がまとまり胸を撫で下ろす。白井のことは好きだが、美琴にそっちの趣味はない
 ので絡み付かれても嬉しくない。
「さてと。そろそろ良い時間だし、初春、セブンスミスト行くよ!」
「はい。……御坂さんと上条さんはどうされますか?」
 二人は当初の予定通り買い物へ行くようだ。
「うーん、アンタどうすんの? 私はセブンスミスト行きたいんだけど」
 とりあえず上条に訊く。
 美琴はその第三位という立場や、“自ら輪に加われない”という性格上友人が少ない。だからこそ、
いくら彼氏が隣にいようと友人との約束は重要だと思っているし、一緒にセブンスミストに行きたい。
「俺? 男が一緒だと面白くないだろ。それに……、後々のことを考えるとあの馬鹿共を追いかけた
 ほうがいいような気がしてきたしな」
 上条の言っている事とその意図はわからないが、本人がそういうのだからそうすべきなのだろう。
「そう、じゃあ私たちはセブンスミストね。って黒子は何してんのよ?」
 何を考えているのか、先ほどから白井がそわそわとしている。
「い、いえ、わたくしはお姉様とお兄様をセットで頂くことを選んだ身、お二人が別々に行動されるとど
 ちらについて行けば良いものか……」
「黒子、アンタはこっちに来なさい。なんか男同士で語らうみたいだし? 邪魔しちゃだめよ。ていうか
 セットって何よ」
「セットはセットですの。恋人丼最高ですわ」
 白井が原因でまたも話が脱線し始める。
 そんな二人の謎の掛け合いを見た初春が、
「ただの冗談だと思っていたんですけど、さっきから白井さんは何なんですか? もしかして白井さん
 の好きな男の人って上条さんなんですか?」
 冷静に疑問をぶつける。
「わたくしが上条さんを好きになることに何か問題でもありますの? 今の黒子にとって上条さんは
 お姉様と比べられないほどの大切なお人ですのよ」
 白井は何かを決意したような力強い眼差しで、美琴に絡み付きながらはっきりと言い切る。
 美琴も上条もその言葉に対しては何も言わない。美琴にとって白井が大切な人であることは何ら
変わりないし、上条にとっても似たようなものだろう。それだけでなく、白井の本当の気持ちを知って
いるからこそ、それを受け入れることだってできるだろう。
 しかし、いまいち状況を掴めない初春と佐天からすれば、一体白井は何なのか理解できなくて当
然かもしれない。
「つーか、あの、俺はどうすれば……?」
 尤も当の上条としては、これからどう行動すればよいのか、そのことが最優先すべき事項なのだ
が。
「あ、ごめん忘れてた……。じゃあ、私たちはセブンスミスト行くわね。あとで連絡するから」
「りょーかい。んじゃまた後でな」
 美琴は予定通り遊びに向かう。
 一方の上条は、今後の平安な生活のため、誤解(?)して去って行った友人二人を探しに向かう。

 二人はそれぞれの目的へと歩みだす。
 そんな今日の放課後は、まだまだ始まったばかりだ。

546第五章 御坂さんの彼氏さん 〜 十二月九日 (前) ◆t9BahZgHoU:2010/02/13(土) 01:27:11 ID:qAhv.il2
以下後日

なんか話が進むごとに一章あたりが長くなって行っている気がしなくもないですが…

※第七学区センター駅
  勝手に名前付けてますが、史実の多摩センター駅です。禁書世界ではおなじみですね。


>>533
新しい視点ですね。GJ!です。
続編も期待しています。


では、超電磁砲を……。

547■■■■:2010/02/13(土) 01:30:21 ID:e9b30U4U
>>533>>546
GJですの

548■■■■:2010/02/13(土) 01:32:18 ID:2XGJwUSM
長い文章お疲れ様
いろいろと気になる点が見受けられました。
・根本的に一人称か三人称定めて欲しい
一人称なのに上条や美琴の気持ちを描写している(心の声等)
本来一人称視点なのに、所々に他人の心の中身なんて書いたら本末転倒ではないでしょうか?
俺さんが目で見ている事、耳で聞いてる事、内の声で文章を構成しないと
一人称では無くなりますので、その変を注意した方がいいかと

>今は(恋の)切り裂きジャックにでもなりたい気分だ。かといって、タイムスリップしてイギリスに行こうとか考えているわけじゃない。
切り裂きジャックはイギリスではなくロンドンですよ・・・・
これは揚げ足取りのような気もしますが、一応・・・

549■■■■:2010/02/13(土) 01:33:56 ID:2XGJwUSM
ごめんなさい、↑の548はとあるコンビニさんです・・・・
レス番つければよかった・・・

550■■■■:2010/02/13(土) 01:53:27 ID:hN5Oe6h2
GJです!
皆さん素晴らしい!
>>548
首都がロンドンだから良い気もしますが・・・

551■■■■:2010/02/13(土) 02:06:19 ID:IG4whjQQ
おお、1スレ目から読み進めていってついに追いついちまった
不幸だ・・・が、このスレのスピードなら俺はまだ生きていける気がする

俺は幸せだー!

552■■■■:2010/02/13(土) 02:08:31 ID:IG4whjQQ
興奮のあまりageてしまい誠に申し訳ないです。
このスレのますますの繁栄に心から期待して私はROM専に移りたいと思います。

書き手の方々、これからも頑張ってください。それでは。

553■■■■:2010/02/13(土) 02:15:59 ID:2XGJwUSM
>>550氏へ
申し訳ない、切り裂きジャックネタが使われる際
イギリスのロンドン〜、又はロンドン〜と記載が多い為、端的にイギリスと書かれた際
物凄く違和感を感じて書いてしまいました・・・
禁書的にはロンドンと記載するよりはイギリスの単語の方が関連性が強い為かな

こちらも言葉足らずに記載してしまい申し訳ないです

554■■■■:2010/02/13(土) 10:13:18 ID:py/bjgXU
久しぶりに見たら
7日で500越えとか…いいぞ!もっt(ry
というわけでみなさんGJです!

555■■■■:2010/02/13(土) 15:40:44 ID:dm0w1jC6
>>553
こだわりかなとは思ったのですが書いてしまいました。
今更ですが気分を害したようでしたらすみませんでした。

後、切り裂きジャックについて勉強になりました。ありがとうございます。

556■■■■:2010/02/13(土) 18:11:02 ID:g1fdhj6M
美琴:よく言った!!クリスマスイヴ何て宗教関連で
恋人がいちゃつくイベントじゃないんだよ!!!
嫉妬じゃないぞ!!ただ自分がイヴ生まれでムカついているだけだからな!!
まあ魔術師サイドにとって大切なイベントあるが・・・。
キリスト教ですよね、魔術師サイドって?
しかし黒子が物凄く弾けてしまいましたね。でも良いですね。
此処で質問ですが、当麻達は黒子にシスターズの存在を教える予定はあるんですか?
原作ではまだ教えていない見たいですが・・・。
それとクリスマスパティーはシスターズ達のみでやるのですか?
質問ばかりしてしまいスイマセン<謝罪!!

557■■■■:2010/02/13(土) 19:37:51 ID:w.OlnrmM
はは、やっと全部読み終わった・・・
テストで2週間読んでなかっただけでまさかあんなに溜まってるとは・・・
いぱーい2828できました 皆さんありがとう

558琴子:2010/02/13(土) 21:30:35 ID:BEul3h3k
皆様GJです!!
確認する度に色々な作品が増えてて、
ホントにずっとにやけっぱなしですw
皆様の続編、楽しみにしてます♪

そしてすごく遅くなってしまいましたが…

>>489
ありがとうございます♪
また挑戦してみたいですw

>>490
そう思っていただけて嬉しいですw
今度書くとすれば他の人物達も登場させてみたいです♪

559スピッツ ◆Oamxnad08k:2010/02/13(土) 22:21:44 ID:DlNHdHqo
こんばんは。久々(?)に来たらもう500越え・・・
のんきにゲームしてないで僕も書こうかな。

これからpart4全部読みますw書き手のひとGJです。

560■■■■:2010/02/13(土) 23:26:40 ID:3OQA9.as
土曜日にほとんど投稿がないのは明日への布石だと思うんだ。だから俺はその皮切りになるぜ!
でも、老舗っぽい人たちはちょっと前に投稿したような……いやそんなことはない。


『とある実家の入浴剤』続き投下します。
前回まで 3‐>>328 >>421 >>759  4->>227

看病編なのと、前の回の展開が激しかったことから、今回はちょいと大人しめに。
しかしそこには重要な変化が……と盛り上げてみたり。なんだか五和に睨まれそうです。
大人しいのは丁寧に書き始めているせいもあるんでしょうがねえ。

消費予定レスは7。文量も前よりけっこう少ないです。心配めさるな、入浴はしない。
では、以下よりどうぞ〜。

561とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:27:50 ID:3OQA9.as

やつだね? 季節の変わり目だし、湯冷めして身体を冷やしたんだろう。頭を
打っているのも気になるから、落ち着いたら一度病院に連れてくると良い。市販
の薬でも効かないことはないけど、こちらできちんと処方した方が治りも早い
からね?』

 第7学区の病院に勤務するカエル顔の医者は、電話口の向こうでそう言った。

「あの子――インデックスが、『薬草を探してくるんだよ!』とか言って飛び出
して行ってしまったんですけど」
『……彼女のことだからたぶん東洋医学的な手法で治そうとしているんだろう
けどね? 確かに理に適った処置はするだろうけど、あくまでそれは素人判断
だからね? 下手なことはせずに僕に診せることをお勧めするよ』
「ですよね」

 呆れ交じりに話す声に、美琴は苦笑する。

『ただ、東洋医学や民間療法が悪いわけでもない。君も知っているだろうけど、
漢方治療や食事療法なんかはどこの病院でも行われていることだからね? 
つまり今の君にもできることはあるということだ。引き始めの症状からして
身体を温めてやることが重要だから、冷えないように汗を拭いたり、生姜や
ニラなんかを使ったものを食べさせてやると良い。ネットで検索するとすぐ
出てくるだろう。あとはぬるま湯に入れて上げたりとか、そんなところだね?
風呂に入れるくらいならまずは病院に連れてきて欲しいところだけど』

 生き埋めの洞窟に光が射したようだった。迷惑をかけたと自分を責めたまま、
震えて動かなかった背中を押された。ただそれだけのことだったが、なんだか
美琴は救われた気分になる。

「あの、今朝、中華風のスープを作ったんです! ニラだったらそれに入れて
るし、生姜をおろしてご飯を入れて、お粥っぽくしたら……!」

 しおれていたはずの美琴の声が、今は水を得たみたいに高い。希望に触れた
ようなその声音に、カエル顔の医者はいっそう穏やかな調子になって、言う。

『良いんじゃないかな。とにかく体力を戻してやることが大切だからね? 
美味しいものや滋養があるものを少しでも食べさせてやると良い。幸い、君は
料理が上手なようだからね? あの子たちにも何か作ってあげて欲しいぐらいだ。
病院食ばかりでは舌も退屈だろうし、お菓子なんて作ったら喜ぶだろうね?』

『あの子たち』と言われて、美琴は自分とまったく同じ姿の、妹達(シスターズ)
について思いを巡らせる。そういえば「お姉様」とは呼ばれているのに、姉らしい
ことなどほとんどしたことがないと、美琴は気が付いた。

562とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:28:50 ID:3OQA9.as
ゴメンちょいミスったみたい

やりなおします。

563とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:29:45 ID:3OQA9.as
修正されたのは一文目のみでーす。



『直接診ないことにはきちんとしたことは言えないけど、俗に言う青風邪という
やつだね? 季節の変わり目だし、湯冷めして身体を冷やしたんだろう。頭を
打っているのも気になるから、落ち着いたら一度病院に連れてくると良い。市販
の薬でも効かないことはないけど、こちらできちんと処方した方が治りも早い
からね?』

 第7学区の病院に勤務するカエル顔の医者は、電話口の向こうでそう言った。

「あの子――インデックスが、『薬草を探してくるんだよ!』とか言って飛び出
して行ってしまったんですけど」
『……彼女のことだからたぶん東洋医学的な手法で治そうとしているんだろう
けどね? 確かに理に適った処置はするだろうけど、あくまでそれは素人判断
だからね? 下手なことはせずに僕に診せることをお勧めするよ』
「ですよね」

 呆れ交じりに話す声に、美琴は苦笑する。

『ただ、東洋医学や民間療法が悪いわけでもない。君も知っているだろうけど、
漢方治療や食事療法なんかはどこの病院でも行われていることだからね? 
つまり今の君にもできることはあるということだ。引き始めの症状からして
身体を温めてやることが重要だから、冷えないように汗を拭いたり、生姜や
ニラなんかを使ったものを食べさせてやると良い。ネットで検索するとすぐ
出てくるだろう。あとはぬるま湯に入れて上げたりとか、そんなところだね?
風呂に入れるくらいならまずは病院に連れてきて欲しいところだけど』

 生き埋めの洞窟に光が射したようだった。迷惑をかけたと自分を責めたまま、
震えて動かなかった背中を押された。ただそれだけのことだったが、なんだか
美琴は救われた気分になる。

「あの、今朝、中華風のスープを作ったんです! ニラだったらそれに入れて
るし、生姜をおろしてご飯を入れて、お粥っぽくしたら……!」

 しおれていたはずの美琴の声が、今は水を得たみたいに高い。希望に触れた
ようなその声音に、カエル顔の医者はいっそう穏やかな調子になって、言う。

『良いんじゃないかな。とにかく体力を戻してやることが大切だからね? 
美味しいものや滋養があるものを少しでも食べさせてやると良い。幸い、君は
料理が上手なようだからね? あの子たちにも何か作ってあげて欲しいぐらいだ。
病院食ばかりでは舌も退屈だろうし、お菓子なんて作ったら喜ぶだろうね?』

『あの子たち』と言われて、美琴は自分とまったく同じ姿の、妹達(シスターズ)
について思いを巡らせる。そういえば「お姉様」とは呼ばれているのに、姉らしい
ことなどほとんどしたことがないと、美琴は気が付いた。

564とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:30:20 ID:3OQA9.as
 しかし、とにかく今は上条のこと、である。

「ありがとうございます、先生。起きて、病院に行く時、またお電話します」
『正しい判断だ。だけどもう一つ、言っておきたいことがあるね?』

 そこで一拍を置いて、カエル顔の医者は言う。

『未成年飲酒というのは、あまり関心ができないね? 興味のある年頃だろうし、
僕にも経験はあるからわかるけれど、医師として放っておくことはできない。
急性アルコール中毒を発症すれば死に至ることもあるし、君たちの場合は依存
症のリスクも高い。今回彼が風邪を引いたのだって無関係ではないんだよ? 
ビールやサワーは身体を冷やすからね?』
「……ごめんなさい」

 叱咤の声は、先ほどまで聞いていたものよりずっと厳しい音をしていて、美琴は
しゅんとしてしまう。気持ちの後ろめたかった部分をまっすぐに指されて、反省する
以外に仕様がなかった。
 それを慰めるように、美琴を許すように、電話の声は元に戻る。

『君という人間は正直で、素直なんだね? そういう姿勢はなくさない方が
良い。男はそういう女の子を好きになるものだからね?』

 それはちょっと偏った話ではないかと、美琴は曖昧に笑う。携帯電話を握る
右手が妙に落ち着かなくて、左手で抑えた。

「私は別に……まだ、そんなのは良いです」
『とぼけるなよ。ならどうして君は今彼の部屋にいるんだい――と、こんなことを
言うのは医師の仕事から外れているかな。そろそろ失礼するよ? お大事にね?』
「は、はあ。ありがとうございました」

 来たる美琴の反論から逃れるように、電話は切られてしまう。ツーツー、と
通話の終了を知らせる電子音を聞きながら、美琴は瞳を泳がせる。むろんその
漂着先は少年の寝顔の上で、心臓が一度鐘を打った。思わずさっきの言葉を
反芻する。どうして君は今彼の部屋にいるんだい。どうして。その答えを一つ
一つ取り上げるみたいに、美琴の視線が上条に落ちる。ツンツンしている頭、
ガーゼを貼った額、意外に長いまつげ、意思を示すように伸びる鼻先、そして、
その下の――
 パンッ、と静かな部屋に軽い音が鳴る。両頬がじんと痛んで、それから熱を
持つ。叩いた頬の感触で雑念を埋めると、美琴は深い息をついた。

 今は何より、上条当麻なのだ。彼の身体が第一なのだ。美琴は台所に掛けた
エプロンを取って、背中のひもを結ぶ。
 できることからやっていこう。それが全てで、それが始まりだ。

565とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:30:49 ID:3OQA9.as



 ふいに触れた外気の冷たさに、上条当麻は覚醒する。ただ、いまだ目はつぶっ
たままで、まずは違和感のようなものがあった。どこか温かい場所にいたはずで、
そこから引きずり出されたような感覚。そう、これは朝、布団をはぎとられる
感じに似ている。けれどもどういうわけか右手だけには温もりがあって……。
 射してくる眩しさにこらえながら、上条はまぶたを開く。

「……」

 そして、美琴と目があった。ほとんど真正面に瞳を据えて、美琴は面食らった
ように目を見開いている。おぼろげな記憶を参照するなら上条は自分のベッド
まで運ばれたはずで(実にそれは数カ月ぶりのことだ)、仰向けに寝ているらしい
この状態で美琴とまっすぐ向き合う体勢というと、それはかなり限られたものに
なるだろう。

「……」

 さて、上条の着ているワイシャツは上から三つめまでボタンが外されており、
胸板が半分ほど露出している。美琴が上条の上で四つん這いになっているので、
おそらく彼女が外したのだろう。思わず暴れかけて、何気に右手が拘束されて
いることを知る。いや、拘束というよりはぎゅっと握り込まれており、どうも
それは美琴の左手と繋がれているようだ。
 ここまで状況を確認して、ようやく上条はわかった。美琴は自分の服を脱が
そうとしている。片手でボタンをはずし、もう一方の手はなぜか上条の手を握って
いる。嬉し恥ずかしの事態であるのは間違いなかったが、どうにも上条は理解
できずに戸惑う。

「良かった、起きたんだ」

 だからそう言って美琴が微笑んだことも、上条にしてみれば掴めないことだった。

「ごめんちょっとじっとしてて。身体の汗、拭くところだから」
「え、うええぇぇ!?」
「な、なによ。変な声出して。その、身体を冷やしちゃダメってことだし、
仕方なく私は……」

 美琴がぶつぶつ言っているのは置いておいて、大体の事情を把握する。見ると、
ちゃぶ台には絞ったタオルが置かれている。おそらく電子レンジで温めたのだろう、
白い皿の上で湯気を立てていた。
 美琴の指が四つ目のボタンに伸びて、上条はその動きを止めた。図らずも
両手を握った状態で、二人は静止する。

「どうしたの? は、早く済ませないと逆に身体が冷えちゃうわよ?」
「い、いや。身体を拭くぐらいなら自分できるかなあ、と。ていうかなんで
右手握ってんの?」
「これは、なんていうかその……ろうでんたいさく」
「え?」
「だああぁ、もう! とにかく大人しくしてなさいよ。自分でできるたって
背中に手ぇ届かないでしょうが。私だって恥ずかしいんだしさっさと済ませるわよ!」

 剣幕に押されて、仕方なく上条は従うことにする。ただし背中だけだとあら
かじめ念を押して、服は起き上がって自分で脱いだ。その間に、慌てたように
美琴はベッドを降り、いそいそとおしぼりの準備をする。

566とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:31:38 ID:3OQA9.as
「タオル熱すぎない? 大丈夫?」
「うん、や、大丈夫だ。気持ち良くて天にも昇る気持ちですよーっと」
「き、気持ち良いってアンタ……」

 背中で動いていた美琴の手が止まって、上条は怪訝に思う。どうしたのかと
訊ねようとすると、パンッ、と背後で軽い音が鳴って遮られた。何事もなかった
ように汗拭きの作業は再開される。

「どうかしたのか?」
「な、なんでもないっ」

 実際にはそんなことは全然なく、美琴の口の中では、「平常心、平常心」と
上条にも聞こえないぐらいの声音の呪文が唱えられていたわけだが、もちろん
聞こえないので上条は気が付かない。なぜかまた焦り始めた美琴に首を傾げる
ばかりである。
 
 背中を拭き終わり、美琴はタオルをこちらに渡すと台所の奥へ消える。

「食欲ある? つか、なくてもちょっとは食べておいて欲しいところなんだけど」
「ぶっちゃけ腹は減ってるんだけど、なんというか、かったるいかな」
「中華スープにご飯ぶち込んでお粥にしたけど、食べられる?」
「うーん。実際目にしてみないことには何とも……」
「そっか。それにしても予想より元気そうねアンタ。倒れた時はどうなること
かと思ったけど、安心したわ」
「いや、実際けっこう辛いんだけど、なんというか」
「?」

 きょとんとした顔つきをして、美琴はオープンキッチンのカウンターから
こちらを覗いてくる。対して上条はあくまで首を捻った。

「うーん、辛いはずなんだけどな。でも気分が楽というか、何なんだろう?」
「いや、訊かれても。知るわけないでしょアンタの身体のことなんだし。
……まあ何にせよ余裕はあるみたいだし、それで十分ね」

 台所に引っ込んで、美琴はまた食事の準備にかかる。上条が身体を拭き終わ
ってワイシャツのボタンを止めた頃に、美琴は温め直したらしいお粥を盆に
載せてリビングまで運んできた。ほくほくと白い湯気をたたえており、胃袋が
きゅっと縮まるのを上条は感じる。

「なんだか俄然食欲が増してきた上条さんですよ」
「あはは。かわいいもんね。でも、セーター出したからまずはこれを着なさい」

 美琴はちゃぶ台に盆を置いて、上条がおしぼりを返すのと引き換えにセーター
を渡してくる。袖を通し、頭にかぶって襟口から顔を出すと、見えたのは粥を
スプーンに一すくいしている美琴だった。強張った頬を膨らませてその一すくい
に息を吹きかけており、まだ上条にはその意図を掴めない。というよりは、
掴みたくなかった。

567とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:32:11 ID:3OQA9.as
「は、はい! あーん!」
「やっぱりかい!! しかもなんだか気合の入った声だし! あーんとかする
時の声じゃねえし!」
「な、なによ。確かに気恥ずかしいのもそりゃそうだろうけどウチで風邪ひいた
時はいつもしてもらってたし、普通じゃないのよ!?」
「そりゃお前がまだ幼稚園児とかそういう時代の話だろうが! 重病人じゃ
あるめえし高校生にもなってそんなことしねえよむしろご褒美じゃねえかそれ!!」

 錯乱し過ぎてうっかり本音を漏らしている上条である。幸いその部分に深い
言及はなされず、美琴はしばらく無言で俯いて、やがてぱくりと行き場をなく
したスプーンを口に入れた。

「言われてみれば、アンタの言う通りかもしれない。……ちょっと気合を入れ
過ぎてたのかな、私」

 もそもそと声を漏らす美琴だったが、上条はといえば彼女の行いにびっくり
して声の内容など全く聞き入れてはいなかった。

「お、おま。かゆ、食べて」
「え? だって味見するのまだだったし、アンタが食べたら私これに口付け
られないし……って、うん?」

 やっと何かに思い至ったらしい美琴は手のスプーンを見下ろし、それから
上条を見て(具体的にはもっとピンポイントに「どこか」を見ていたような
気がするが、考えないことにする)、またスプーンに視線を戻す。体温計の
ごとく、みるみる赤くなっていく美琴の顔があって、

「な、なななぁああ!?」

 それは叫び声になって爆発した。起床してから見てなかった紫電が、ばちばちと
スプーンの銀を巡る。
 
「い・い・いやいや何言ってんのよアンタ馬鹿じゃないのこの年になって
カ、か・間接キスなんて意識してんじゃないわよ! ほら何も気にすること
なんてないんだからこれさっさと食べるのよ食べなさい食べろってのよ!」
「明らか帯電してるスプーンを押しつけんのはやめろ殺す気かテメエ!?
つーかちょっとは気にしやがれ中学生!」
「ちゅ、ちゅ中学生なのは別に関係ないじゃない! だいたい最初に気にしな
かったのはアンタでしょうが!」
「何の話だよいったい!?」

 渾身の叫びを訊き返されてしまって、「うっ」と美琴は詰まる。まあ、ホット
ドックの一件を気にしていたのは美琴だけだったのだし、無理のないことでは
あった。
 で、そんなふうに微妙に認識を異にしている上条だから、美琴が言葉を持て
余して唇をぱくぱくと開閉したり、瞳をそわそわさせて俯いたりするのを不可解
にしか感じない。一悶着はあったものの上条の右手にスプーンを握らせ、でも
それから背を向けてしまって、やがてぽつりと言う。

「……めしあがれ」
「ん? ああ、いただきます」

 ぎゃあぎゃあ騒いだり水を打ったように静かになったり、目まぐるしい場の
テンションの移り変わりにいい加減に慣れてしまっている上条なので、美琴の
態度の変容を素直に受け入れて中華お粥に取り掛かることにする。

568とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:32:59 ID:3OQA9.as
 湯気立つ粥にスプーンを差して、空虚な胃に流し込まれていくその味は、
なんだかとろけるようだった。

「どう? 食べられそう?」
 
 背を向けながらもちらちらと横目に上条を観察して、美琴は言った。

「いやあ、むしろおかわりしたいぐらいです」
「そ、そっか。そっか」

なぜだか美琴の方が噛みしめるような調子でそう言って、落ち着かないふう
にゆらゆら背中を前後に揺らした。あぐらをかいているせいで身体の全体像が
丸く、どことなく倒れても起き上がるダルマ人形を思わせた。

「ごめん、インデックスがほとんど食べちゃって。今あんたが食べてる分で
終わりなのよ」
「まあ、いつものことか。つーかインデックスはいずこに?」
「薬草採ってくるとかで飛び出したっきりだけど」
「へー。へー……そうなのかあ」

 いつかの記憶が呼び覚まされる。まあその種の災厄はもう一度パンドラの箱
に詰め込むことにして、上条は目下の粥に意識を集中することにする。不幸と
いう言葉は呑み込んで、今は目の前の幸せを享受しよう。
 しかし上条当麻とは人が知るより厄介な性格の持ち主で、不幸体質の自分が
わけなく幸福を拾うとどこか悪い気がしてくるのである。大金を拾うと何とな
く交番に届けたくなるのと同じで、だが幸せを届け出る場所などどこにも存在
しないし、結局は持て余すことになる。
もしこれが他人の幸不幸にまで関わってくるとすればたまったものじゃない
なと、上条は神裂火織のことを思い出した。自分も彼女もそうだが、幸運や不運
といった運命的なものを恒常的に考えるのはあまり身体に良いことではないの
かもしれない。自分のどうにもならないところで立場が決定されるというのは、
たいてい悲劇の部類に当てはまりそうなことだった。
てか、やっぱまた不幸だの考えてるんじゃねーか、と気が付く。しみついた
思考法というのはなかなか変えられないものらしい。上条は気を取り直すよう
に首を振って、止まっていたスプーンを動かそうとして、

「ねえ、大丈夫?」

 それで、美琴が問い掛けている。不安げに瞳に影を落として、横から上条を
覗きこんでいる。昨夜と同じパターンで、今度は美琴だった。

「突然顔を青くしたり、と思ったら俯いて固まってるし、気分が悪いの? 
やっぱり食欲ない?」

 訊かれて、上条は戸惑う。同時に首も捻る。何を戸惑うことがあったのかと
思ったのだ。自分は気を遣われているのであり、心配されているのであり、
それは別にうろたえたりすべきものではないはずだった。

569とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:33:50 ID:3OQA9.as
 答えない上条にますます不安を募らせたようで、美琴は眉根を寄せる。

「本当に辛いなら無理しない方が……。お粥なんてすぐに作れるし、無理して
食べる必要なんてないのよ?」
「い、いや」

 そういうわけではないので、上条は首を振る。空腹は感じているし、ちゃんと
食欲もあった。食べたくないということは、まずない。

「いや……」

 しかし上条は、腑に落ちない。自分の否定が指しているのは本当にそれだけ
だろうか? 食欲とか、そんなうわっつらな身体の調子以上に、もっと先に
否定すべきことがあったのではないか?
 美琴を見る。何かに答えあぐねている上条のことを、まぶたにわずかな怪訝
を乗せつつも、彼女はじっと待っている。献身に努めようとするように、じっと。
そうして少年は、心に動きがあるのを自覚する。彼のためにと五感をそばだてて
いる彼女を見つける。自分は今までそういう視線に気が付かなかったのだと、
気が付く。それはたいそう不幸なことだったろうと。

 上条は頭を振り、美琴は首を傾げた。

「たぶん、嬉しかったんだよ。それだけだ」

 眼前にはきょとんと口を半開きにした美琴の顔があって、それはみるみる
うちに紅潮していく。だが美琴は今度こそその理路がわからなかったらしく、
混乱した様子で頬に手を包んだ。正体不明な身体の反応に瞳は精いっぱい疑問符
を浮かべていて、口許は「それ」を言語化しようと何度も開きかけるのだが、
言葉にはならない。命名できない感情がそこにあった。

「……あ、アンタは」

 美琴はやっと声を出して、だがそれは本来言葉にしようとしたものとは違う。

「変なこと言ってないで、ほら、さっさとそれを食べる! 食べたら病院に
行くんだからね。私、電話してくるから」

 美琴は逃げるように立ち上がると、ついでに身支度も整えるつもりなのか、
自分の衣服を部屋からかき集めて、洗面所へと向かった。

「なあ、御坂」

 洗面所のドアを開いた美琴に向けて、上条は呼びかける。

「あのさ、あんまり無理はしなくていいからな」
「? どういうことよ?」
「いや、さっきもそわそわしていたしさ。もしも寮のことが気になるなら」
「そんなこと!」

 美琴は目をむいて叫ぶ。距離が離れているはずなのに、詰め寄るようだった。
その剣幕にちょっと驚きつつも、上条は言う。

「御坂のお粥が美味くてさ、なんだか元気が出てきたんだよ。病院ぐらいなら
一人でも行けそうだし、それにこのまま部屋で大人しくしてるだけで治りそう
な気もするし」
「そ、そんなこと。……そんなの、困る」
「え?」
「う、えあ――。もう、うるさい! 病人は黙って看病されてれば良いのよ! 寝ぼけたこと言ってないでさっさと食え!」

 バタンと強い力でドアが閉じられて、上条はため息をつく。黙って看病され
てれば。全くその通りだと思う。逆の立場ならば彼だって、きっとそう言った
だろうから。
 では、どうして美琴にあんなことを言ってしまったのか。上条はがしがしと
頭を掻いて、再びため息をついた。

「ったく、素直じゃねえよなあ。何をガキみたいなことしてるんだか」

 今日はじめて気が付いたのだが、自分はけっこう不器用な性格らしい。
 扉の向こうにいる美琴を、今どんな顔をしているだろうかと思いを馳せる。
舌の上、彼女の味を転がしながら。一噛みごとに仕草を浮かべて。粥を食べる。

570とある実家の入浴剤:2010/02/13(土) 23:38:50 ID:3OQA9.as
以上です。お粗末さまでした。

うん、やっぱり展開が地味かなと思ったり。
まあ振り返ってみるとほとんど急展開一本でやってきたシリーズですけども……。

まあ、あれだ。クライマックスに至る前の小休止ぐらいに考えれば良いかと。


たぶん次か、長くてもその次で終わりでしょう。今スレ中に終われたら良いと思います。
そろそろ入浴剤にも役に立ってもらわんといかんのう……。混浴などしないだろうが。

ではでは、続きは気長にお待ちくださいませ。

571288:2010/02/14(日) 00:06:25 ID:/GuJut/.
>>570
GJ


今日は200レス以上進むと予想してみる

572■■■■:2010/02/14(日) 00:08:05 ID:sSdwVzNA
GJです。


受験全部終わったんでもう読み放題だぁw
ようやく2828できるw

573■■■■:2010/02/14(日) 00:10:17 ID:5GHBPqDU
sage

574■■■■:2010/02/14(日) 00:13:06 ID:sSdwVzNA
あ、すみませんw

575■■■■:2010/02/14(日) 01:28:33 ID:aswiKxGA
>>570
GJです!
すごくいいところで終わっているようなので、
気長に続きを待ってます!

576■■■■:2010/02/14(日) 01:47:13 ID:k2/E4QeY
GJです。


続き期待してまってます!

577■■■■:2010/02/14(日) 02:39:43 ID:844bcVr2
最近編集者の作業量が心配になってきたw

578■■■■:2010/02/14(日) 03:44:15 ID:fzbx58pY
>>426上から目線さすがっすwwwwwwwwwwww

579ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:15:17 ID:IwLAYBK.
5分後に投稿します。

今回は続編なのでぐちゅ名義で。

内容は恒例のアニメレールガン連携と、バレンタインミックス系。
他の人のネタと被らないように、「チョコ」の文字を使わない制限でやってみましたw

580ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:20:53 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先1】

<あらすじ>
ゲームセンターで上条にコツを教えて貰った美琴。
お礼に日曜日遊びに行かないかと誘うと、上条はあっさりOK。
しかし、その日曜とは、2月14日バレンタインデーであった…
→【想いを乗せた拳の向かう先(3-431)】の続編となります。

□□□□

『第四学区の催しに行きたいと思ってます。11:00に駅前待ち合わせで。  御坂美琴』

上条当麻は、了承のメールを返しつつ、第四学区のイベントを調べる。
第四学区は、食品関連の施設が多く並び、この学区だけでほぼ世界中の料理を楽しめる学区であるが、
2月14日の日曜、『カップルで楽しむバレンタインイベント』として、協賛店を巻き込んで色々行うらしい。
ひとまず、次の日曜遊ぼう、という話は、バレンタインデーと知っての事だろう、とは分かった。

(御坂は…何を考えているんだろうか)
割りきってカップルになりきって遊ぼう、なら上条も気楽に、問題なく遊べる。
とはいえ、なんといってもバレンタインデーである。
『あの可能性』も考えておかないといけない、と思う。
(でも、俺が御坂に何かしたっけなあ…?)

シスターズの件や、白井黒子を助けた件ぐらいしか、御坂美琴にプラスになるような事はしていない、と思う。
宿題などを年下に聞く情けない高校生、理由は不明だがしょっちゅう電撃を落とされ、その他遅刻や諸々…
マイナス要因ならいくらでも挙がってくる。
(うーん、やっぱそっちの話はねえよな。バレンタインにソロ活動は恥ずかしい、とかだろうな)

とりあえずは、インデックスから、その日どう逃げるかという点が、一番の問題だ。
TVっ子のインデックスもその日がバレンタインだというのは分かっている。
まだ言わないだけで、何か画策している可能性だってある。
…考えた末、上条は1本の電話をある所にかける。


「インデックス、俺今週の日曜、病院で検査してくっから。悪いが留守番な」
「えっ、とうまどうしたの!どこか悪いの?」
純粋無垢に心配するシスターに、上条は心を痛める。嘘ではないが…
「いや、経過検査だから。先生に近いうちに来いと言われてたんだ。」
「…そっか。遊びたかったけど、しょうがないね」

――ゲコ太先生にアリバイ工作を頼むと、ノリよくOKは出してもらえたが、条件を出された。
本当に9:00、検査に来ること。それは1時間で終わるからと。そしていつか、シスターズのリハビリに付き合うこと。
検査を本当にやる以上、ちょっと罪の意識も軽くなった上条である。
リハビリの方はまた考えればいい、と安直に考えていた。


御坂美琴も来るべき日に備えて、考え込んでいた。
こちらも最難関は白井黒子である。
黒子は14日、美琴の動きをサーチし、近づく者をデストロイするはずだ。
(やっぱり、正攻法で逃げるのが一番かな…)
ホテルを取り、着替え、地下からタクシーで逃げる。今回は、私服で動きたいという思惑にも合う。
これなら、探偵でもない黒子は追いかけられないだろう。


2人は準備を着々と進め、Xデーを待つ。

581ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:21:11 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先2】

当日11:00。天気は快晴。
病院での検査に手間取り、タクシーで駆けつけた上条当麻は、御坂美琴の姿を探す。
常盤台中学の制服らしき人物がいない。
ありゃ、駅の向こう側かなと思った時、大きな柱の影から手をふる少女を確認する。
(げっ…!)
白いプリントシャツに黒のファー付きジャケット、紫系のミニスカートの…
恥ずかしそうに小さくなっている御坂美琴が、そこにいた。

「き、着替えたのか御坂。制服は?」
「制服でさすがに動きたくなくってさ、今回は」
美琴は何か窺うように上条を見つめている。こんな時、言うべき言葉は一つ。
「あー、うん、似合ってるぞ。ちょっと目のやり場に…困るぐらい」
「あ、アンタがそういう台詞言うなんてね。…ありがと」
「さすがに短パン履いてない…よな」
「みりゃわかるでしょ!ちょっとスースーするけど…」
これは本当に目のやり場に困る。

「よし、とりあえず行こうぜ。ここに長居は無用だ」
「そうね。色々と電車の中で話しましょ」
ここでは知り合いと遭遇する率が高すぎる。
2人は早々に切符売り場に向かった。


モノレールの中は、結構混んでいた。
逆側の扉のスペースを確保し、美琴を守るように上条は立つ。
「んーと、第四学区ってことは、食いまくるつもりなのか、今日は?」
「そう言っちゃうと身も蓋もないけど、そんな感じ。いくつか予約しといたわ」
「手回しいいな」
「混んでそうだったし。アンタは甘いもの苦手じゃないよね」
「ああ。でも胸焼けするほどは食いたくねーぞ。」
「大丈夫、量より質って感じで選んだし」

上条は車内を見回す。
第四学区イベント狙いのせいか、カップルが多い…が、どう贔屓目に見ても、
御坂美琴が際立っている。目移りしている男どもが、相方に睨まれている姿もある。
「どうしたの?」
「帽子でも買わねえと、こりゃ目立ちすぎだな…」
「?」

「いや何でもない…ところで、手を繋ぐぐらい、かまわねえよな?」
「え」
「これ相当混みそうだしさ。はぐれちまう」
それを聞いた美琴は、上条の左手の甲を、右手で掴んだ。
「う、うん、掴んどく」
(い、いや電車降りてから、…まあいいか)
…一気に照れくさい状況になり、2人は無言になった。


(浮き足だってるなあ、私。でもコイツも何かアガってるような…)
ちょっとは意識してくれてるのかしら、と美琴は思う。
実際、上条はアガっていた。
「…今日は化粧してんだな」
「常盤台じゃ校則違反だから…今日もちょっとだけよ。香水もつけたけど、匂いきついかな?」
「いや、それは全然問題ねえ、けど…」
「けど…?」
「いや、何でもねー」
良く分からないが、化粧していることについては認識してくれているようだ、と分かって美琴はちょっと嬉しかった。

上条は電車から降りたら、ある提案をしようと心に決めていた。

582ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:21:27 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先3】

第四学区の駅に到着し、改札を出ようとする美琴を、上条が引っ張る。
「ん?どこ行くの?」
「ちょっとそこのカドに」
上条は人の流れに逆らうように歩き、人のいないコーナーに歩を進める。
普通に乗降するルートから完全に外れているので、無人だ。
「どうしたのよ?」
「えーっと、相談なんだけどな」
上条は、ちょっと照れたような顔をして、言いよどんでいる。

「実はさ…俺、今日のお前にとても接しにくくてさ」
「え…」 美琴に軽く衝撃が走る。
「いや、悪い意味じゃなくてだな、お前がなんか変わりすぎて、どう対処していいものか掴みかねてるんだ」
「ふ、普通にしてくれればいいじゃない」
「例えるなら、精巧なガラス細工を手渡されて、これを数時間守りきるように、って言われてる気分なんだよ!」
「そ、そう言われても。普通に接してよ」
「それができねえから困ってるんだ。だから、その改札を境目に」
上条は息を継ぐ。
「恋人みたいに動かないか?というお願いなんですけど!」

美琴は動揺しつつも、
「ぐ、具体的には?」
「手は勿論、腕を組んだり肩組んだり。もちろん一線を超える気もねえし、嫌なら振りほどいてくれ。」
「カップルごっこてこと?」
「ああ、そういうこと。下の名前で呼び合ってさ、冗談言いまくって。」
「…」
「頼む。今の距離感のまま、歩きまわると胃に穴が開きそーだ」


「…イヤ。」
美琴は小さくつぶやいた。
「う…ダメか」
「もう…ごっこはイヤ。」
「え?」
思わず上条は聞き返す。

「もう…罰ゲームとか、ごっことか、そういうのは、イヤ。」
「御坂…?」
「私にとって今日は…ごまかしのない、本当のデートのつもり」
美琴はぐっと唇を噛み締める。
ダメだ!今はダメだ!美琴の頭の中でアラートが鳴る。
しかし、もう止まらなかった。

「あーもうっ!! …私はアンタが好きだからもう偽デートは嫌ッ!いい加減気付け、このド馬鹿ッッ!」


総ての電撃を防いできた上条だが、ついに言葉の落雷に撃ち抜かれた。
「最後に言うつもりだったのに、今言わされちゃ、今日はもう台無しじゃない!
 ホントにもう、アンタってば…」
言葉が次第に小さくなり、美琴はうつむく。

「数日前から、夜も眠れないぐらい楽しみにしてて…
 どこに行こう、何を着ようって…なのに…」
涙声になり、肩を震わせだした美琴を見て、固まっていた上条の足がようやく動く。

583ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:21:45 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先4】

この状況になっては、さすがに優しく抱きしめる他、方法はなかった。
「いや、その…すまん。」
御坂ってこんなに華奢だったのか、と、改めて思う。

「いつも『出会いが欲しい』なんて言ってたのが馬鹿みてーだな。ここにいたんじゃねーか」

「…え?」
「中学生ってのがネックだけど、それは俺がしっかりしてりゃいい話だしなー」
「ええ?ちょ、ちょっと!?」

美琴は上条の想定外な態度に慌てつつ、上条を見上げる。
「な、悩むとか何かないの? あ、あのシスターとか、何かあるでしょ」
「カミジョーさんはいつだって恋人募集中ですけどね」
上条は美琴に口をわずかにゆがめた苦笑いを見せた。

「そう…インデックスの話はしなくちゃなんねーな。
 …俺は、過酷な運命を背負っているアイツを守ると誓った。御坂、お前も。
 俺はさ、救いを求める声があれば、飛び込んで行く。俺にしかできない事なら。
 例え、恋人が止めようとも、俺は、俺の信念で動く。」
美琴を抱きしめる腕が、少し強まる。
「だから、例えばインデックスがまた海外で助けを求めたなら、
 全てをおいて、俺は助けに行く。
 守るという誓いは、何よりも優先する。…恋人がいようとも、だ。」

「なんでお前が俺なんかを好きになったか分かんねーけど。
 …でも俺はそういう、恋人を省みないヒドイ奴になる、と思う。」
上条は一息いれて、美琴に問いかけた。

「そんな、俺でいいのか?」

――美琴の答は決まっていた。
「…うん。そんな時が来たら怒るとは思うけど、さ」

美琴は腕を伸ばし、上条に腕を回してしがみつく。
「でも、そんな怒るという行為一つすら、…電撃を止められるアンタ以外には本気でできないのよ、私」
「…」
「恋人なのに、心の底からケンカもできない関係なんて…本物じゃないよね。」
美琴は上条の胸に深く顔を押し付けた。
「私は…アンタしかいない。絶対に、離したくない…ううん、離れられない…」
「御坂…」

「でもカミジョーさんも、お前が本気で怒ったら、ケンカする前に土下座すると思いますが」

「アンタは…何でこんな空気でそんなボケたことしか言えないのよ!」
さすがに電撃は出さなかったが、ベアハッグでもするように美琴は上条を思いっきり締めた。
「お、落ち着け御坂!冗談だ冗談! いてえってば!」
「交際OKって言えー!言ったら離す!」
「ああ、OKOK!だから離せっ!」

ピタッと美琴の動きが止まり、腕が緩まる。
「ホント…に?嫌々じゃなく?」
告白してから、初めて上条の顔を見る。
上条は同居人の顔を思い浮かべながら、美琴に頷く。
「OKだよ。まだちっと話すべきことはあるけど、ま、それは後々。じゃ、…」
体を入れ替えて美琴の肩を抱いた体勢になった上条は、美琴に笑いかける。
「参りましょうか、恋人の世界へ」
「う、うん!」


上条は、美琴の告白を聞いた瞬間から、『救いを求めるものを助けるモード』にスイッチが切り替わっていた。
そこにはもう、浮き足立った先程の姿はなく、自分を心の底から愛してくれている女の子を守る姿、となっていた。
(大切に…しなきゃな)
腰に手を回してしがみつく美琴の温もりを感じつつ、上条は心に誓う。

584ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:22:03 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先5】

2人は改札を過ぎた後は、手を握って目的のベーカリーレストランに向かっていた。
「と、当麻って呼んでいいよね…?」
「はー、アンタからすげーランクアップですねー…そーいや、俺苗字すら呼ばれた事ないんじゃね?」
「…うん。私、『アンタ』か『馬鹿』としか呼んでないと思う…」
「…それで好きだと気付け、とか無茶苦茶言ってません…?」
「うるさいっ!言うなあー!」
美琴は照れてつないだ手をブンブン振り回す。
「はいはいっと。じゃあ美琴さん、今後は当麻でよろしくですよー」
「…もう!」
美琴は口を尖らせながら、それでも嬉しそうに身体を上条に寄せた。


「こりゃウマイな。焼きたてはやっぱウメエ」
「おいしーね。有名店の名に恥じないわねえ」
2人はベーカリーレストランのペア席で、並んで仲良くクロワッサン等を頬張っていた。
入り口には長蛇の列だったが、予約で何の苦労もなく入れた。
「あと何店予約してるんだ?」
「2箇所ね。両方ケーキのお店だけど」
「そっか。ウマイからといって食い過ぎちゃマズイな」
「うん、適度にね」
店ではヴァイオリンの生演奏を行っている。
イベントデーでは毎回行っているらしい。

「そういや、美琴もヴァイオリン弾けるんだよな?」
「嗜む程度ですけどね。この演奏はやっぱプロねえ…私にはとてもとても」
「前にお前の女子寮のナントカ祭で聞いて以来だな、ヴァイオリンは…あの子には悪いことしたなあ」
美琴の手が止まる。
「あの子?」
「綺麗な子だった記憶はあるんだけどな。演奏前に邪魔しちまった…あれ?」
上条は眉をひそめる。まじまじと美琴の顔を見つめ直す。
「アンタまさか…私と気づいてなかったの!?」
「お、お前か!い、いや、そういやそうだ!制服のせいか、今の今まで一致してなかったぞ!?」
「ありえないでしょ…って」
美琴は一つの可能性に思い当たる。上条は美琴の表情の変化を見て、頷く。

「…俺が持つ、お前との記憶はその辺から、だ」

美琴は息を飲む。
「御坂妹との件からは全部記憶にある。…でもそれより前はな。忘れちまってすまない」
「ご、ごめん!その話はまた今度にしましょ!せっかくのデートだし!」
「そうだな。…まあでも、あの時のあの子が、美琴だと分かったのは収穫だ。いつか謝りたいと思ってたから」
「アレね、私にとっては逆に緊張がほぐれて助かったのよ。…でも引っかかるわね」
「なにがだよ」

「初対面に近かったわけよね。そんな相手に『すごく綺麗』とか…他の子にもいつもそうやって声かけてるのかしら?」
「ちげーよ!至近距離であんな肩の開いたドレスなんて初めてで、目が奪われ…って何言わせんだテメーは!」
「じゃあ綺麗って顔じゃなくドレスだったの?」
「はいはい、美琴さんが可愛すぎて、ドレスしか正視できませんでした!これでいいだろ?」
「ふざけんなーー!」
美琴はプッとふくれてジト目で上条を睨みつける。内心、記憶喪失というシビアな話から離れられてホッとしていたが。
実際のところ、記憶を失ったばかりのその頃の上条は、出会う人が知り合いかそうでないかで神経をすり減らしており、
知り合いでないと判定されたドレス姿美琴は、記憶の片隅に追いやられていた、のである。


昔話に花を咲かせて、しばし楽しい時を過ごす。
「そろそろ次いくか?」
「そーね。ちょっと色んな店冷やかしながらいけば、ちょうどいい感じかも」
そう言いながらカバンの携帯をチェックする。
「うげ…黒子から鬼のように着信が…」
「…相手して貰えなくて怒り狂ってそうだな。おっと、俺病院で携帯の電源切ったままだった…」
「あれ?舞夏からも…珍しい、ちょっと掛けさせてね」
「ああ」

585ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:22:18 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先6】

『おーみさかみさか〜。ラブラブらしいなー』
土御門舞夏の第一声はこれだった。
「な、なに?カマかけようったって、そーはいかないわよ!」
『いやもうすごい勢いで噂が広まってるぞー。第四学区の駅でLV5が抱き合ってたって』
「ぶっ!」
『女子寮の方も、みさかが男といるということで、嘆き悲しんでいる女の子がいっぱいだそうだぞー』
「えええっ!」
『兄貴が言うには、上条当麻に色々と渡したい連中が第四学区に向かってるそうだしー」
「ちょ、ちょっと…」
『兄貴の携帯にクラスメイトやら外国人やらが上条当麻の居場所の問い合わせしてきて、兄貴キレかけだー』
「ど、どうしたらいいのよ…」
『…上条当麻はモテるんだぞー。油断すんなよー。あ、兄貴呼んでるから、これでー。』
「え、ちょっと、舞夏!?…切れちゃった」

美琴は青ざめながら、首をかしげている上条に概要を話す。
「何だよそれ…今の場所までバレてそうな勢いじゃねーか」
「まあ私がその、噂になっちゃのはともかく、当麻ってそんなにモテてるの?」
「いや、そんなハズねえ。クラスでもバカ扱いだしな。」
この鈍感男のことだ。…本人の感想などアテにならない。
「い、いきましょ。落ち着かないし」
「あ、ああ…」


上条は外に出ると、タクシーを止め、乗り込んだ。
「え?」
「まず、ちょっと離れよう。邪魔されたく、ねーだろ」
美琴は戸惑った顔をしていたが、にっこり笑うと、運転手に次の店の場所を伝えた。

「こりゃ、明日から大変な気がするぞ」
「あははは〜…」
「お客さん、後ろ付いて来てるみたいだけど、どうするかね?」
「「え?」」
2人は後ろを見ると、確かにタクシーが後ろに付いている。
運転手がそう言うなら、間違いなく付けてきているのだろう。
「なんだこのやりすぎな奴は…単なる追っかけじゃないかもだな」
美琴は不敵な笑みを浮かべる。
「やっちゃう?」
「物騒な彼女デスネ…ま、きっちり話つけてさっさと終わらせるか。運転手さん、近くの公園に変更ねがいます」
攻の美琴、守の上条。この2人で負けることはほぼありえない。


2人は公園中央で待ち構える。

公園の入口から現れたのは、4つの影。
深くフードを被ったコート姿の4人組だ。上条と美琴の姿を認めると、まっすぐ向かってきた。
(4人…いやな数字だ。その人数で動くヤバイ奴らは思い当たりすぎる。判断ミスったか)

上条と美琴から5メートルのほどの所で、4人組は足を止めた。

「「え?」」
2人は思わず声を上げた。

586ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 07:22:37 ID:IwLAYBK.
【想いを乗せたココロの向かう先7】


緊張感が一気に抜ける。
「お前ら…」
「アンタたち、何やってんのよ!」

4人がフードを取る。シスターズの顔が現れた。

「先ほどぶりです、とミサカ一〇〇三二号は挨拶の言葉を述べます」
「どうやって付けてきたんだ?俺先生にも言ってねーぞ!」

「発信機を飲み込んで頂きました、とミサカ一〇〇三九号は種明かしを語ります」
「発信機…? まさか、あのカプセルか!?」
朝の検査の際、先生が離席した際に、御坂妹がスッと入ってきて、カプセルを飲む様、勧められたのだ。
上条は先生の指示で、と思い込んでいたが…
「排出物と共に体外に出るまでは、位置情報は常に押さえられます、とミサカ一三五七七号は答えます」
「ふざけんなテメエ!なんつーことしやがる」
「バレンタインデーはミサカにとっても大事な日です。お姉様の抜け駆けは許しません、とミサカ一九〇九〇号は反論します」

「ふん、遅かったわね。私はもうコイツに告白して、恋人として認めて貰ったわよ!」

シスターズに明らかに動揺が走った。
『き、緊急事態ですと、ネットワークに…』
『お姉様が素直になるという事を、今回計算に入れておらず…』
『…これはもう亡き者に…』
『…いえ、それは我々の存在意義が…』

「ちょっとアンタたち、何考えてんのよ!」
物騒なことを口走り始めているシスターズに対して、美琴が喚く。
「さあ、もう姉の恋人になった人に、ちょっかい出すつもり? 妹なら姉を2人っきりにさせる気遣いぐらいしなさいよ!」

シスターズは聞いていない。
『…では、2号作戦を…』
『ゴーグルを外せば見分けが…』
『…まだ告白だけなら、先に襲って既成事実…』
『…4人同時に…』

「こらーっ!帰んなさい!」
美琴は手をブンブン振り回してシスターズを引っ張ったりしている。
上条は、何だか良く分からないながらも、自分を取り合いしてるようなのは分かっていた。
(イチかバチかやってみっか…)
美琴を手前に引っ張って、そっと耳打ちする。
『えーっ、ダメ!』『そんな、私もまだ…』『なんであの子ばっかり…』
なんとかなだめすかし、上条は歩を進める。

「えーと、御坂妹、ちょっといいか?」
上条が手招きすると、ミサカ一〇〇三二号こと御坂妹は近くに寄ってきた。
首には前にあげたネックレスが光る。
「わたくし上条当麻は本来こういうキャラじゃないんですが…」
そう言うやいなや、御坂妹の左の頬に、そっと口づけをした。

「わりい!今日はこれで戻ってくれ!いくぞ美琴!」
上条は美琴の手を掴むと、大通りに向かって走り出す。

「……ミサカはミサカの純潔が奪われ愛の証がミサカの頬にミサカがミサカに…」
シスターズのミサカネットワークは、御坂妹の暴走によって統制不能となった。


美琴はブンむくれ状態でガンガン歩く。
「なんであの子ばっかり!ネックレスとか、キ、キスとか!」
「しょーがねーだろ。実際追跡はあきらめたようだぞ。さすが同じDNA、あーいう攻撃に弱いな」
上条は後ろを振り返る。
「こんな男だったなんて…妹たちの心をもてあそんで…」
「こっちは発信機いれられてんだぞ!おあいこだ!」

上条は美琴の髪の毛をくしゃくしゃっと撫でながら、
「まあ後で病院寄って謝ってくるよ。さあ、予約の店いこーぜ!」
「あ、…やばーい!時間過ぎてる!いこっ!」


――駆け出す初々しい恋人たちの時間は始まったばかり。来たる障害もまた彼らを愛する者たち…幸せな2人である。


fin.

<その後の甘い話は胸焼けしそうなのでこの辺でw 尚、伏線で出した「シスターズリハビリ」編を、また後日に。>

587ヤシの実 ◆sz6.BeWto2:2010/02/14(日) 08:16:06 ID:x8iOB9Og
ぐちゅ玉さんGJです!


書きたくなったので一レス完結の小ネタを投稿させてもらいますw

元ネタ:盛夏祭でのワンシーンについて
作品の時系列:一方通行戦後
場所:カエル顔の医者の病院
注意事項:とある科学の超電磁砲 第十九話「盛夏祭」を元にしております
まだ本編をご覧になっていない方は申し訳ございませんが、飛ばして頂けるとありがたいです。

※一応『盛夏祭』は自分の中で上条さんが記憶喪失後
美琴と自販機前で会う前の話だという事にしてあります。
それを踏まえた上でご覧頂けるとありがたいです。

8時20分〜投稿開始です。

588■■■■:2010/02/14(日) 08:21:01 ID:x8iOB9Og
「……そういえばアンタ、『盛夏祭』来てたわよね?」
「ああ、行ったぞ。一応招待されたからな」
「誰に?」
「土御門舞夏」
「へぇ〜アンタも面識あったんだ」
「まぁな、うちの男子寮によく現れんだよ。兄貴が居るからだと思うんだけど」
「ふ〜ん、でなきゃアンタみたいな奴が来れるワケないわよね〜」
「その言い方はねぇだろ…ってオマエは何で俺が行ってた事を知ってるんだ? 一度も会った記憶がねぇんだけど」
「……アンタ、今さ一度も会った記憶がないって言った?」
「ああ…うん、オマエの露払い役を見かけたくらいだな。それ以外はインデックスを探したり…本当にそれだけ」
「色々あったから、今の今まで触れないでおいたけど……アンタは記憶喪失にでもなったワケ?」
「(ぎくぅうう!?)ちょ、そ、そんなワケないじゃないですか、御坂さん!」
「…嫌でも思い出せさせてやるから、ちょっと待ってなさい」
「ちょっとどこ行くんだよ!……って行っちまった」

――五〇分後
(だ、誰もいないわよね……)
 上条当麻の病室の前に『盛夏祭』にてヴァイオリンを独奏した時の衣装を纏った御坂美琴がそこに居た。

―――病室の扉が開く
「よぉ、御坂! 急に出てったからしん…」
 上条の言葉は途切れた、御坂美琴の服装に見覚えがあったのだ。
 自分がインデックスを探す時に尋ねた『綺麗な人』がそこに居た。

「ま、まだ思い出せないとか言ったら、こ、ここ吹っ飛ばすからね…」
「……」
「…何とか言いなさいよ!」
「あ…ゴメン…。な、なんか…ゴメン」
「…ちょっと大丈夫!?」
「あ〜大丈夫、大丈夫! 今、ハッキリと思い出したから――」
「そ、そりゃ…ここまでしたんだから、思い出して貰わないと割りに合わないわよ
 って別にアンタに見て欲しいとかそういうんじゃないから勘違い――」
「――綺麗だぞ御坂、本当に綺麗だ」
「――しな…。 い、い、今…き、き、綺麗って…」
「嘘じゃない。目の前のオマエを見て言ってんだから」
「……バカ、大体アンタはいつもズルいのよ!」
「勿体ねぇ、体が動けば……」
「体が動けば…?」
「抱きしめてた」
「ば、バカ!!こんなとこで何言ってんのよ!病院よ病院!
 でもアンタがどうしてもって言うんなら…」
「zzz…」
「って寝てる!?」
(いつも言いたい事だけ言って、人の言う事聞いてくれないんだから…)

――終了――

色々と省いたつくりで申し訳ございません。お粗末さまでした。

589Ж:2010/02/14(日) 10:56:17 ID:z.Q3uJc2
ヤシの実さんGJです!
盛夏祭の時の美琴はほんと綺麗でした!

>>306さんに言われたので書き溜めてきました。
5分後から投下予定です。

590Ж:2010/02/14(日) 11:01:42 ID:z.Q3uJc2
―ビリビリチョコレートアタック―

PM 3:53

「だ〜か〜ら〜離せって言ってんだろ!!」
「い〜や、離さないにゃ〜」
「は〜な〜せ〜」
「いやや〜絶対に離さないんよ」

(えと…あれは確か…アイツの友達?だっけ?)
美琴が見たのは上条が青髪&土御門に拘束されている姿だった。

「だからなぁカミやん…質問に答えてくれさえすればいいんよ。」
「い・や・だー!!またそうやって聞いた変な質問の答えを吹寄に言ったりするんだ〜!」
「そんな事しないにゃ〜」
「くっ(絶対に言いそうだ…)」
「はいはい質問!カミやん、カミやんはチョコ貰う予定あるん?」
「は?」
「とぼけても無駄だぜい、カミやん。もう裏はとれてるんだぜよ。」
「そうそう、どうせまた、たくさんの女性から貰うんやろ?」
「いや、何の話?」

「「これだからカミやんは…」」

「?」
「カミやん、わいが聞いた情報やと姫神はんと吹寄はんは用意してるらしいで?」
「?」
「くっ(殺してやりたいわ〜)」
「にゃ〜カミやん。嘘はいかんぜよ。俺が聞いた話によると五和やねーちんも用意してるらしいぜい。」
「?」
「にゃ〜(殺したいにゃ〜)」
「だから何の話?」
「「バレンタインのチョコに決まってる(にゃ〜)だろ!!」」
「は?俺が?あはははははははははははは。貰えるわけないだろ。吹寄や姫神だって義理だろうし。」

(プチッ)
何かが切れる音がした…

「「殺す…」」
「!?」
「「カミやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」
「おおおおおおおお!?」

上条が逃げる。青髪、土御門が追う。


「不幸だああああああああああああ!!」


(何やってんのよ。あのバカ…)
またも上条に聞く事が出来なかった美琴は帰路に着いた。

591Ж:2010/02/14(日) 11:02:47 ID:z.Q3uJc2
PM 9:26

「はぁ…(またアイツに聞けなかったなぁ。どうしよう…
14日には渡すから、あと3日かぁ…)」
「なんですの?お姉さま…その溜息は?」
「えっ、いや、な、何でもないわよ!」
「ならよろしいんですが…(何でしょうこの悪寒は…)」

(黒子にはバレれないようにしないと…)

「(ゲコゲコゲコゲコ)」

(あれ?メールだ。誰からだろう?まさかアイツから!?ないない!でも今日アイツと会ってないし…アイツが気になってメールしてくれた…とか?な、なにを考えてるのよ、私は!?え、でもアイツだったらどうしよう。わ、私の事がき、気になるとか!?ないない!)
顔を真っ赤にしつつ黒子に顔が赤いのを気づかれぬよう、意を決して携帯を開く…

2/10/21:30
Flom 土御門 舞花
件名 やっほ〜

(・・・・・・だよね。アイツが私にメールくれるはずないか。)

土御門には悪いがテンションが下がった状態で内容を確認する。

2/10/21:30
Flom 土御門 舞花
件名 やっほ〜
――――――――
なあなあ、みさか。
みさかはチョコあげるヤ
ツに手作りがいいのか、
市販品がいいのかちゃん
と聞いたのか〜?


(ビクッ!?)

美琴が肩を震わせる。
(な、何故そのことを舞花が!?と、とと、とりあえず返信、返信しないと!?)


   2/10/21:35
Flom 御坂 美琴
件名 Reやっほ〜
――――――――
何の事?


「(ゲコゲコゲコゲコ)」
(き、きた…)


  2/10/21:36
Flom 土御門 舞花
件名 Re2やっほ〜
――――――――
とぼけるなよ〜
みさかは気づいてないか
も知れないけど、今日の
16時ちょっと前くらいに
声かけたんだぞ〜

みさか気づいてくれなか
ったけどブツブツ言って
たのは聞こえたぞ〜

※添付ファイル有り


(ん?添付ファイル?なんだろ?)
とメールの内容も気になったが、とりあえず添付ファイルを開いてみることにした。

『マナーモードですが再生しますか』
『はい』『いいえ』

と表示がでたが迷わず『はい』を選択する。

『ザ…てづく…ザザ…アイツ手作りの方がいいのかな。それとも市販品のも買ってどっちが美味しいか聞こうかな。そ、それでアイツが【お前のヤツの方が美味しい】って言ってくれたりし』

「(!?)」

ファイルの危険性に気付いた美琴は慌てて再生を止めた。
(き、気がつかなかった!てか録音10分弱って何!?まだあるの!?)

が、美琴は背後に不穏な気配を感じて後ろを振り向く…
そこには鬼の形相をしている黒子の姿があった…


その後、土御門に返信が来ることはなかった。

592Ж:2010/02/14(日) 11:04:15 ID:z.Q3uJc2
2月11日
AM6:47

あの後、黒子による尋問が行われたが
突如、寮監による制裁を加えられ戦闘不能に陥った黒子…
その恐怖で美琴はメールを返信する事などすっかり忘れていた。

「ん。ん〜〜」
「お目覚めですか?お姉様?」
「あふ。あ、おはよう黒子…」
「おはようございます、お姉様…お目覚めのところ突然なんですが昨日の事覚えてらっしゃいます?」
「昨日の事?……(ビクッ!?)」

と言われ記憶が戻った美琴…
(昨日…ヤバい、電撃食らわして逃げるか?いや黒子の事だからどうせ瞬間移動するだろうし…)

「やはり…覚えてらっしゃるのですね?」

(まずい…これはまずい…どうやって説明しよう…とりあえず電撃を手を繋いで直接流すしか…よし!)

「黒子!ゴメン!」

と言いながら電撃を流そうと手を繋ごうとする…

「あ〜いいんですの。やっぱりお姉様はわたくしを守ってくれてたんですのね…」
「へ?」
「いや〜実は昨日の夜の記憶が一切ないんですの…唯一、覚えてるのが誰かの腕がわたくしの首に掛けられている感覚と目の前にお姉様がいる場面なんですの。」

白井黒子は寮監の攻撃で記憶の一部を失っていた。
(覚えてない…?昨日の夜の事を…)

「え〜と?昨日の夜の事を全部?」
「ええ、お姉様…キレイさっぱり覚えてないんですの…でもお姉様がゴメンというからにはあれは寮監様の腕でしたのね…」

(よっしゃーーーーー!!これで昨日の事は解決…してない!?土御門にメールしないと!!)


AM7:37

2/11/7:37
Flom 御坂 美琴
件名 ゴメン
――――――――
昨日はゴメン!
あの後、色々あって返信
するの忘れちゃって…

送信っと…

「(ゲコゲコゲコ)」

(早っ!?もう返事返ってきた…)

2/11/7:38
Flom 土御門 舞花
件名 Reゴメン
――――――――
ん〜別に気にしてないか
らいいぞ〜
それよりみさか。どうな
ったんだ〜チョコ?


(…どうしよう。ていうより、どう返信しようかな…」

「(ゲコゲコゲコ)」

(あれ?またメール?誰からだろう?)

2/11/7:40
Flom 土御門 舞花
件名 さぷらいず
――――――――
どうせ、みさかには無理
だと思うから、
代わりに私が聞いておい
てやったぞ〜
感謝しろ〜

手作りがいいそうだぞ〜


(・・・・・・・)


2/11/7:45
Flom 御坂 美琴
件名 Reさぷらいず
――――――――
あ、ありがとう


2/11/7:40
Flom 土御門 舞花
件名 Re2さぷらいず
――――――――
困ってる人を助けるのが
メイドの仕事だからな〜
ま〜がんばれよ〜


携帯を閉じて少し落ち着く。

(手作り…か。)

593Ж:2010/02/14(日) 11:05:10 ID:z.Q3uJc2
PM4:37

(とりあえずチョコ買わないと…作ろうにも作れないし…)

と学校帰りに黒子をまいて近所のスーパーへ向かう。

(こういう時になんかアイツに会う気がする…)

「よう!ビっ…いや御坂!」

「(ドキッ!!)」

とりあえず予想通りに遭遇した。
(ホントに会うとは…)

「なんでアンタがここにいるのよ!」
「それはこっちのセリフだよ。なんでお嬢様がこんなスーパーにいるんでせう?」
「ぐ(正論かも…)あ、あれよ、黒子に頼まれてチョコ買いに来たのよ!」
「へ〜お嬢様も甘いものには目が無い女の子ってか?」
「そ、そんなところよ!(コイツにはバレンタインチョコっていう発想はないのか!?)で、あんたはなんでここにいるの?」
「え?俺?だって今日特売日だし。」
「あ…そう。」

(そういえばなんか人が多い…かな?)
いつも来てる訳ではないのでわからない美琴さん。

「お前、場所わかるか?」
「へ?」
「だから、チョコの場所だよ。」
「え、いや、わかんない…」
「お前こんなところ来てなさそうだもんな。こっちだぞ。」
「え?え!?」

手を引っ張られお菓子売り場へと連れて行かれる。
(手!?繋がれてる!!私アイツと手繋いでるよ〜)

「とりあえず、チョコ買うならここだな。あっちの新商品コーナーには近づかないように…意味がわからない【これで彼氏もイチコロ!媚薬入りチョコ】なんて物が売ってるので…ってあれ?御坂?おーい?」
「ふぁ!?はい…」
「お前、一昨日といい今日といい本格的に風邪か?」
「大丈夫…」
「そうか…ならいいんだが。」

正直、顔が会わせられないくらい顔が紅潮していた。
「あ、ありがと…」
「おう!じゃ、またな。」

と顔を赤くさせた本人はそそくさと他の売り場へ行ってしまった。

「ばか…」

594Ж:2010/02/14(日) 11:09:17 ID:z.Q3uJc2
以上です。
頑張って書いたんですが…
バレンタインの話なのに今日という日まで時間軸が進みませんでした。
もうちょっと早く書けるように努力します。
失礼しました。

595■■■■:2010/02/14(日) 11:09:44 ID:vEez8i76
舞夏、ね
細かいけど

596■■■■:2010/02/14(日) 11:11:41 ID:/QaWdAr2
みなさんGJですー
バレンタイン関係期待してましたw

597■■■■:2010/02/14(日) 11:58:15 ID:GZOOlT9I
結局、バレンタイン関係の話なんて思い浮かばなかった野郎がここにいますが、スルーしてね。

盛夏祭は原作と矛盾が発生しかねない話なので、その点はあまり好きじゃないですが、
久々に上条さんが出てくれて、美琴の制服以外の姿見れたし、展開は好きだったので結果的にやっほいな回でした。
特に上条さんの「綺麗だ」発言は、何かに使いたいなぁ………。
美琴さんが反応してなかったのが残念だけど。
ってあれ?完全にスレ違いな感想を言っている!?

と、とにかく今日は色々期待大にして待ってます!
職人さんGJでした!!
早速盛夏祭のネタ(?)も見れて良かったです。

598■■■■:2010/02/14(日) 12:14:35 ID:cMaNX.Rw
今日のスレ見て思ったけど舞夏って色々なとこに使えるよね。
特に美琴を追い詰めるのに一番適しているのが舞夏だと思う

まさか舞夏って万能キャラ!?

599■■■■:2010/02/14(日) 12:19:45 ID:sSdwVzNA
美琴と対等に渡り合える数すくないキャラだからねw

600■■■■:2010/02/14(日) 12:26:06 ID:k2/E4QeY
こんにちわ
バレンタインネタ書いたのですが
投下してもいいでしょうか?
ちなみにこういう物は初めて書きました

とくに問題なければ30分に投下しますね
予定消費スレは5くらいです

601■■■■:2010/02/14(日) 12:30:45 ID:k2/E4QeY
では投下させていただきます。



バレンタインデーそれは女の子にとっては年に数回あるかないかの想いを伝えるタイミングの日。

バレンタインデーそれは男の子にとって好きな女の子からチョコ&告白を(貰える)されるかもしれないイベントの日。

そんなイベントは科学技術が外の世界よりも2、30年進んでいる学園都市でも行われる。

まぁ不順異性交遊に繋がる可能性があるため基本的には禁止なのだが。


常盤台中学の寮に、とあるツンツン頭の少年に恋焦がれる乙女がいる。

御坂美琴、超電磁砲(レールガン)の異名をもつ中学2年生にして、7人のレベル5のうちの第3位。

そんな近寄りがたい肩書きを持っていてもやっぱり年頃の少女には変わりない。

美琴は明日のバレンタインデーの為にチョコレートを作っていた。

そのチョコレートも、もうあとは文字をホワイトチョコで書いてラッピングして完成という段階までできていた。

美琴「アイツ、甘いの好きかな…」

美琴「気に入って貰えるかなぁ」

美琴「もし、渡すのと一緒に告白なんてできたらなぁ……えへ、えへへへ」

黒子「お、お姉さま?そ、そそ、それは、わたくしへのチョ、チョコでございますか!?」

美琴「!!」(黒子!?いつのまに後ろに…てかさっきの聞かれた!?)

美琴「く、黒子…ど、どうしたのよ、今日はジャッジメントの集会じゃなかった?」

黒子「いえ、お姉さまへ渡すチョコの中に媚や……いえ、隠し味を入れようと」

美琴「……黒子…あのパソコン部品なら昨日のうちにゴミに出しておいたわよ?」

黒子「………(汗)」(あらら、ばれてましたの)

美琴「………(電)」(ったく、こいつはいつもいつも!一回〝真っ黒子げ〟にしてあげようかしら)

美琴は弱めの電撃の槍を放った。しかし黒子は美琴の雷撃をテレポートで冷静に交わし、逃げた。

黒子「お姉さまの攻撃パターンは何回も見たり当てられたりすれば身体が覚えますわ」とテレポート。

黒子「まぁ手加減してくれているのでしょうけど、さて黒子はジャッジメントの集会がありますの」

黒子「今日、明日は泊りがけで行ってくるので」とテレポート。

黒子「お姉さまへのチョコはバレンタインデーが終わってからになりますけど、申し訳ありませんの」

美琴「ん?まぁいいわよ、ただ変な物入れたりしたらアンタをこの部屋から追い出すからね!」

黒子「うっ、しょ、承知しましたの。では」

どうやらテレポートでジャッジメント本部に向かったみたいだ。

美琴「ふぅ、さてチョコレートの続きを……あれ?」

さっきまでの作りかけのチョコレートが無くなっていた。

602■■■■:2010/02/14(日) 12:35:20 ID:k2/E4QeY
ごめんなさい。
NGワード引っかかるみたいなのでやっぱり止めさせていただきます。

荒しみたいになって申し訳ありません
今度からはもっと慎重に行動したいと思います。

本当に皆さんすいませんでした。

603腹黒タヌキ:2010/02/14(日) 13:32:49 ID:05aRteM6
>>602
いったいどんな言葉を言わせたのやら;→NGワード
けど、この後どうなるか非常に気になる。NGワード改変しての投稿を希望します!

604■■■■:2010/02/14(日) 13:34:05 ID:05aRteM6
あちゃ;またコテつけちゃった;

605■■■■:2010/02/14(日) 13:38:36 ID:FOsX7vrg
訂正して再投下希望と言いたいところですw
書き手さん第一なので無理は言えないですけどね

しかし、今日はスレがいっぱい進んでて幸せだ
書き手さん方、住人の皆、ハッピーバレンタイン!

606■■■■:2010/02/14(日) 13:51:46 ID:k2/E4QeY
申し訳ないです…
自分でもどこがNGなのか分からないので直しようがないんで…

でも原因が分かったら投下するかもしれないので
その時がきたら温かい目で見てくれると幸いです。

607■■■■:2010/02/14(日) 13:56:26 ID:oIkRxTak
何だこの桃源郷は。バレンタインデー万歳!
職人さんGJ!

>>606
NGワードの基準とか何がだめなのか全くわかりませんが
気の向く範囲で再チャレンジを希望します。
いつまでも待ってるぜ。

608■■■■:2010/02/14(日) 15:01:59 ID:S8lzWgow
皆さんGJです!
バレンタインデーひゃっほおおおおおお


>>586(ぐちゅ玉氏)
その後の甘い話も気になるww

シスターズ編でその後二人がなにやってたかとかでも良いの
書いてくれると嬉しいです

609qp:2010/02/14(日) 15:11:09 ID:pXNez50I
初めましてーいつも楽しく2828読んでます。
初投稿なので至らないトコロだらけかと思いますが...
よろしくお願いします。
(改行とかは気を使ってるつもりではあります...)
ワタクシの実体験に基づいてるんで
凄く個人的な趣向になってます。
てかこれイチャイチャじゃないかも…
約2年後設定。上条さんは18~19歳、美琴は15~16歳です。
付き合ってません。けど2年もあんな感じだったんで上条さん的にも友達以上?
くらいのつもりで読んで頂けると幸いです。
地の文以外は
「台詞」
『心の声』になってます。

15分から投下予定

610qp:2010/02/14(日) 15:11:32 ID:pXNez50I
初めましてーいつも楽しく2828読んでます。
初投稿なので至らないトコロだらけかと思いますが...
よろしくお願いします。
(改行とかは気を使ってるつもりではあります...)
ワタクシの実体験に基づいてるんで
凄く個人的な趣向になってます。
てかこれイチャイチャじゃないかも…
約2年後設定。上条さんは18~19歳、美琴は15~16歳です。
付き合ってません。けど2年もあんな感じだったんで上条さん的にも友達以上?
くらいのつもりで読んで頂けると幸いです。
地の文以外は
「台詞」
『心の声』になってます。

15分から投下予定

611qp:2010/02/14(日) 15:13:28 ID:pXNez50I
[寿命が]

「♪♪♪」
ビリビリこと御坂美琴が勝手に弄ったため彼女専用となった
けたたましい着信音が早朝の上条宅を襲った…
「もしもし?どうした?」
「もしもし?アンタ今日の放課後は暇?ちょっとお願いがあるんだけど」
「あー今日は夜ならいいぞ」
「夜?まぁいいわ。じゃあ第2学区のターミナル駅に
 7時待ち合わせにしましょ」
『第2学区なんかに何の用があるんだ?』
「りょーかい」
上条当麻は急いでいた事もあり特にそれ以上話を進めず電話を切った。
彼はこれからとある試験に行かなければならない。


『はぁー結局今日もボロボロ…不幸だ…』
今日一日への妬みを反芻しながら上条当麻は現在第2学区の中心部に向かっている。

「アンタにしては早かったじゃない。」
時刻はPM7:05。上条当麻の不幸イベント=遅刻という方程式を知る御坂美琴にとって
してみれば5分の遅刻はオンタイムといってもいい。
「あーまぁ5分とはいえ悪かった。しかしなんでまた第2学区なんだ?
 まさか研究用のデカイフィールドで心置きなく電撃をぶちまけようとかでは…」
「ちょっと?アンタん中で私はどういう認識なのよ?まぁ当たらずとも遠からずね。
 でもご期待に沿うのはちょっと難しい用件かもね。」
『イヤイヤよっぽどのM男でもない限りそんな事は期待しないと思いますが…』

612qp:2010/02/14(日) 15:15:21 ID:pXNez50I
2人は現在とある試作自動車用のサーキットにいる。
発電系能力者を集め電気自動車の利便性向上のカンファレンスが開かれていたのだ。
御坂美琴はもちろん運転は出来ないのだがエレクトロ系の頂点に立っている以上は
お呼びが掛っても当然である。
「であたしは半自律運転制御AIの実地評価テストってのをやるのよ
 生体電気の流れを読んで行きたい方向を捉えたりしながら走ってくれるっていう
 なんだかモラトリアムなドライブに使うための装置なんだけどさ
 まだ一般化する程電気信号の流れが正確じゃないみたいなのと
 異様に電池を消費するみたいで私が車内で充電しながらテストする。って訳」
「それオレまったく必要ないじゃん…」
「うっさいわねぇ!実地評価って言ってんでしょ、要するにドライブよ、ドライブ
 この美琴センセーとドライブなんて~」
「お決まりの台詞ドウモ。上条当麻はウレシクテタマリマセン」
「なんだその棒読みはー!!!!」
「ゴフッ!?」
流石に研究所の中である電撃は不味いと思ったのか全力の右ハイキックが炸裂した。


『万が一に備え能力暴走時のためAIMジャマー?あの下心丸出しそうなおっさんと
 テストとはいえドライブ?はぁいくら学校から直接依頼された実験とはいえ気が滅入るわ…』
『[※機密保持を条件に運転免許を取得済みの学生さんの運転は許可します。]
 あれ?あの馬鹿って確か…』
学園都市内では公共インフラは整っているがやはり18になると学生は運転免許試験を
受験する風習がある。しかし法の下での試験であるため試験は公務員の皆様が
わざわざ出張して学園都市で行われる。そのためもあってか外とは違い17~18歳の人間が
一斉に受けられる様に試験日程が調整されている。
上条当麻は大学入学後初めての今回の一斉テストを受けに行くというのは
御坂美琴は本人から聞いていた。
『だったら実験を口実にあいつとドライブ。ってのもありね…』
夜の第7学区でガッツポーズをとる美少女がそこにはいた。

613qp:2010/02/14(日) 15:16:36 ID:pXNez50I
こうして上条当麻は騒音を伴う様な実験施設が集中している第2学区に来る事となった訳だ。

「御坂美琴さん。よろしくお願いします実地試験は人通りの多い学区を1時間、
 高速での走行を1時間程よろしくお願いします。運転はほぼAIが行いますが
 緊急時や狭い路地などは同乗の〜」
「ああ、大丈夫です。この人私の手伝いに呼んだドライバーなんで。」
「そうですか。でしたらこちらで登録をお願いいたします。」
などというやり取りを傍目に上条当麻は今日取り立ての免許で運転をする事に不安を隠せない。しかもなんだか大事な実験器具とこれまた大事なお嬢様を隣に乗せて、である。
「不幸だ…」

「あー見てーアソコあんたが昔、女の子の胸に飛び込んでたトコロよ〜」
そう言って車外に向けられた美しい指がちょうど運転席の視界を遮る。
「ぎゃー!!わー!!御坂!!前!!前見えないから!!」
「え!え!?ちょ、ちょ!!」
腕を払おうとした上条当麻の腕がもつれたりと当然の如く襲いかかる不幸に
AIが反応したのか路肩に車が止まる。
「何ケロッとした顔してんだよ?寿命が10年は縮みましたよ!!」
「うっさいわねぇ、AIが止めてくれると思ったし。それに…」
「それになんだよ?」
「あ、あんたの事はし、信頼して…」
「あーありがとよ。上条さんもお前と心中なら本望ですよ。」
「ちょ、アンタ…何て事言ってんのよー!!!!!
 だいたい落雷でもまったく縮まない寿命がこの程度で縮むかー!!」

「はまづら。いつまでも無免許運転じゃなくて免許とって。あたしもああいうのがいい」
「ああいうの?」
「それ」
『車内でイチャイチャしやがって!くそー!!!』
歩道で充てられているカップルがいたのだがそれはまた別のお話。

「あのぅ...御坂さん?さっきからどんな場所考えてますか?」
「そりゃーアンタがなんかやらかしてんを見たトコロを考えてんのよ。」
「あ!!ここは….」ボンッ。なんだか車内がほんわかとした空気に包まれる。
『ここは海原を倒した辺りか。そういえば御坂とが一番学園都市内で思い出あるかもな』
しかし思い出すと電撃の槍やら砂鉄の剣、挙げ句の果てには雷が落ちた事もあった。
『ふこ…うでもねぇーか。こいつといる時がなんだかんだ一番落ち着くしな』
『なんか嬉しそうな顔してるなぁ。こいつもこういう顔する時結構あるのよね』
実は上条当麻が人を助けた、何かを為したといった事以外に幸福そうな顔をするのは
大概が御坂美琴の前なのだが本人達はその辺りを意識した事はない。

614qp:2010/02/14(日) 15:18:26 ID:pXNez50I
「次は高速運転での自律制御テストか」
『あたしが行きたいトコロってどこなんだろう?』
脳から発せられる電気信号であれば本能的に隣に座るこの男と行きたい場所を
指し示してくれのではないかと考えていると車が発信した。
『え!??えぇええ!?まだなんもインプットしてないわよ!?』


御坂美琴が落雷停電沙汰を引き起こし、妹達の事に悩んだあの鉄橋の真上を走る
高速道路の上をテストカーが疾走していると不意に車が高速を降り鉄橋の近くで止まる。
御坂美琴の意思なのか上条当麻の運転なのかどちらも口には出そうとしない。
お互いの意思が共鳴した様な感覚なのだろう。
「ここって…」
「うん。アンタが私のために駆けつけてくれたあの橋の上」
「そうだよな。なんかあの時さ、風車をヒントにお前を探してたんだ。でもこの辺りでここに
 お前がいる様な気がしたんだ。なんつーかさ記憶がないのに、わかったんだ。」
「そうでしょうね。アンタはここでその1月位前に死にかけたんだから」
御坂美琴が屈託のない笑顔で笑う。なにより愛おしい顔に上条当麻には映った。
「あたしの全力の落雷をアンタが受け止めて、大規模停電騒ぎ。後にも先にもあんたにしか
 使ってない大技よ。」
「落雷でも縮まない。ベクトル反転でも縮まない。金星だかなんだかの光でも縮まない
 そんなオレの寿命って…最早、人としてどうなんでしょう?」
「アタシが助手席に座ってふざけて縮んだんでしょ?」
「ん?あーそりゃ能力じゃねーからな、でもお前を助手席に座らせてもいい男ってのが
 なんだか幻想っぽい聞こえだな。それもいつかブッ壊れちまうのかな…」
『え?こいつ何言って??ちょ??これこ、こくはく??ちゃんす??』
上条当麻はおもむろに右手を見てなんだか遠い所を見つめている。
「壊れないわよ。あんたの唯一壊れない幻想はこうやってここにあるの。」
細く美しいそれが左側の助手席から右側の運転席に向かって伸ばされる。
「あんたの右手はこの幻想を守るために寿命分きっちり働いてもらわないとね。」
「電撃女王の癖に守ってもらう気かよ?」
「あんたが言ったんじゃない。御坂美琴とその周りの〜」
「だーだーわかりましたよ!!オレは御坂美琴とその周りの世界をこれからも守り続けて行く」

おしまい。お粗末様でした。

615qp:2010/02/14(日) 15:21:57 ID:pXNez50I
すいません612の最後の部分は
前日の夜って事です。読み返すまで気づきませんでした...

616■■■■:2010/02/14(日) 17:59:52 ID:iH2Q9Hy2
この子すさまじいヤリマンだな
ttp://tr.im/KPSz

617:2010/02/14(日) 19:13:32 ID:GZOOlT9I
3巻読んで思いついたのを投下しようかとおもいます。
強引にバレンタインに繋げてやったぜ。

いつもの留意点
・思いついて速攻投下、という形なので文章だとかおかしいところが多々あるかも。
・1〜2レス消費かな。
・被らなければ即投下予定。
・いちゃいちゃ度は不明。もう、最近はどんなのがいちゃいちゃなのかよくわからんとですたい。

618:2010/02/14(日) 19:15:24 ID:GZOOlT9I
バレンタインでの不幸(?)



御坂美琴に呼ばれて、上条当麻は自販機の前にきていた。
目の前には美琴は少し顔を赤くしながら上条を見つめている。
その視線が少し照れくさくって、上条は視線を合わせられない。
実をいうと、上条は美琴のことが好きだった。
それも、友達ではなく、異性として。
だから、この日に呼ばれたことに上条は少なからず期待していた。
だけど美琴の気持ちには一切気づいていない。
どころか、上条は美琴に嫌われているとさえ思っていた。

「は、ははは、はいっ! こ、こここれあげるわよ。せ、世話になってるし」

そういって、上条にチョコを差し出す。
その手は緊張で震えているのだが、上条はそれを勘違いして。

(震えるくらいに嫌なのなら、渡さなきゃいいのに)
「………ありがとな」

勘違いで勝手に傷ついているだけなのだが、上条は期待をした分落ち込んでいた。
ただ、気になることがあった。
でも、それは恐らく聞けば上条は傷つく。
けれど、聞いておこうと思った。
いつぞやの魔術師ではないけれど、美琴が幸せになるのならそれでいいと思って。

「なあ、支えになってるっていう奴にはあげたのか?」
「は?」

美琴がキョトンとした顔になる。
どうやらイマイチ伝わっていないらしい。

「いや、あの時寮に入った時に白井から聞いたんだけどな」

寮に入ったという言葉を言った時に美琴の眉がピクリと動いたが見なかったことにする。
嫌われてるなぁと自嘲して。

「食事の際に入浴の際に就寝の際に嬉しそうに話してるっていう男のことだよ」

そう言った時、美琴は口を開けたまま止まってしまった。
少しして、口をパクパクと開閉させた後、「黒子……後で覚えときなさい」などと言っていたが、上条は続きを言う。

「好きなんだろ? そいつのこと」

美琴の動きが再び止まった。
すぐに顔が赤くなっていく。
実はわかっていないことに対する怒りで赤くなっていっているのだが、上条は照れなのかと勘違いした。

「だから、もうチョコを渡して想いを告げたのかなぁと。ちょっと気になっただけだ。気にすんな」

これ以上聞くべきではないと判断して、上条は引く。
美琴は顔が赤いのを収めると、俯いて考えているようだった。
上条はじゃあなと言って帰ろうかと思って口をじゃの形にした時、美琴が口を開いた。

「……まだ、告げてないわよ」

それは、好きな人がいるという肯定で、その事実は上条の心に突き刺さった。
美琴は深呼吸をしているのだが、上条はその衝撃で気づけない。

619:2010/02/14(日) 19:15:54 ID:GZOOlT9I
「私は、アンタが好き」
「……………へ?」

今度は違う意味で衝撃が襲ってきた。
すぐにその言葉の意味を理解することができない。
いつまで経っても、告げたのことに対する反応がなかったので、美琴は電撃をバチバチいわせながら怒りだした。

「好きだっつってんのにここでもアンタは私をスルーすんのかぁ!!!」
「え? い、いやいや!! あまりの衝撃の事実に頭が追いついていないというか、まさか両想いだったという事実が余計頭を混乱させているというか!!」
「……………え?」

今度は美琴が止まる。
どうやら上条の言葉に対して理解が追いついていないようだ。
しばらくして、ようやく言葉を搾り出す。

「両、想、い……?」
「あ、う、そ、そうだよ! 俺は、上条当麻は御坂美琴のことが好きです!! これで文句あっかコラァ!!」

半ばヤケになった上条はもう意味のわからない告白になってしまう。
だけど、その事実だけはしっかりと美琴に届いていて。

「う……そ……?」

信じられない。というような顔をして美琴は上条の方を見ていた。
そのすぐ後に、美琴の瞳から涙が零れだす。
それを見た上条は大慌てになる。

「え? お、おい? な、なんで泣いちゃうんですか美琴さーん!? う、や、やっぱりヤケになった告白の仕方が悪かったのか!? な、ならば! ………好きだ。付き合ってください」

その言葉を聞いて美琴は告白は紛れも無い真実なのだと再確認して、余計に涙が零れてしまう。
それを見た上条はもう訳がわからない。

「えぇえ!? な、なんでさらに泣いちゃうんですか美琴さん!!?? い、一体どうすれば!? そ、そうだ!!」

混乱して訳のわからなくなった上条は美琴を抱きしめた。
美琴はもう嬉しくて涙が止まる気配を見せない。
でも、とりあえず誤解を解くことにする。

「………バカ。嬉し泣きよ」
「……ぇ? う、嬉し泣き?」
「……うん」
「よ、よかったぁ〜。あまりにもアホな告白だったから泣いたのかと思いましたよ」

心から安堵している様子の上条を、ちょっとからかってみる。
半分くらいはからかいではなく本気だが。

「あー。確かに酷い告白だったわね」
「うっ!?」
「最初のなんて特に」
「………すいません。許してください」
「どうしよっかな〜」

涙が止まった美琴は悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。
だが、どうにかして許しを得ないとヤバイと勘違いした上条は考えた末突拍子もない行動にでた。

「なーんて―――んぐッ!!??」

嘘よ、と続けようとした唇が何かに塞がれる。
キスされたのだということには唇が塞がれていたのが離れてようやく気づいた。
当然、美琴は顔を瞬時に真っ赤にする。
上条の方も美琴程ではないが赤かった。
顔の赤いのがとれる前に、上条が言う。

「これで許してくれないか?」
「わ、わかったわよ。………馬鹿」

美琴は本当のことなんて言えずに、目を背ける。
上条は再び安堵した。
だが、それは次の言葉で粉々に砕かれる。

「でも、条件が一つだけ」
「え? ナ、ナンデゴザイマショウカミコトサン!!」

緊張で完全に片言になってしまった。
美琴は言いづらそうに少し手をモジモジさせる。
やがて意を決したのか、美琴はそこに爆弾を落とした。

「もう一度してくれたら、許してあげる」
「ッ!!!???」

さっきのはもう完全に勢いでやってしまったので、少し冷静になった今そんなことなどできるはずがない。
だが、美琴はすでに目をつむって準備万端いつでもOK状態でスタンバっている。
もう、選択肢など一つしか用意されていないことを悟る。
今の上条に頬やおでこに逃れるなどということは思い付かなかった。

(うわあああああああああ!!!???)





10分後、心底嬉しそうに寮に走っていく美琴と、その場に呆然と立ち尽くした
上条が発見されることになる。


終わり。

620■■■■:2010/02/14(日) 19:20:03 ID:DMYqvwWU
>>619
GJですよー

621:2010/02/14(日) 19:21:35 ID:GZOOlT9I
以上でした。

今日は日曜な上にバレンタインで投下数が多くてここが天国のようです。
職人さんたちGJです!!
投下前にし忘れていたことは内緒。

思いついたもの、という感じで他にも書いてるものはあったりするんです(未完成)。
が、∀はシリアス大好きらしく、シリアスばっかです。
6日目は、途中で止まってます。

恐らく、次に投下するとしたら6日目じゃない気がしてます。
次に現れるとしたらパート5かなぁ………

では、お邪魔しました。

622■■■■:2010/02/14(日) 19:21:52 ID:xM09qX5k
ニヤニヤしてる俺キモチワルイ。
みなさんGJです!!

623■■■■:2010/02/14(日) 19:39:40 ID:oIkRxTak
チョコ食ってないのに鼻血が出そう……
みなさんGJ!

624■■■■:2010/02/14(日) 20:30:48 ID:cMaNX.Rw
皆さんGJすぎ
俺がもらったチョコは、刺激が強いゼ
職人さんの疲れ。

625■■■■:2010/02/14(日) 20:43:49 ID:L.vIHUW2
みなさんGJです!

自分も無い文才を必死にかき集めて書いてみました
2レス消費予定、何もなければ5分後に投下したいと思います。

626■■■■:2010/02/14(日) 20:44:08 ID:1I7AEt4I
書き手の方GJっす
もらったチョコ食べながらイチャイチャSS読めて
今年は良い年になりそうです

627「Was yea ra melenas yor.」 1/2:2010/02/14(日) 20:49:10 ID:L.vIHUW2
   今日はバレンタイン。街中が浮かれムード全開だが、とある2人には関係なかった。

美琴「だから人の話を聞けー!!」ズバァン

上条「おわぁっ!ビリビリ!?いきなり電撃はやめろっつっただろ!」

美琴「アンタが人の話を聞かないから…どうしたのアンタ、今日は元気ないわね」

上条「あぁ、朝飯食い損ねたんだ…財布も忘れてきたし」

美琴「家に何もなかったの?」

上条「そういうわけじゃないんだが…(いきなりインデックスに追い出された、とは言えないよなぁ)」

美琴「あ、じゃあ私が奢ったげよっか? …な、何よその『胡散臭ーい』って目は!?いいから行くわよ!」

上条「わっとと!いいって、また2000円のホットドックとかだろ?…あれ?コンビニ?」

美琴「じゃあ、ちょっと待ってなさい。買ってくるから」

上条「え?あ、ああ…」

   …………………

美琴「お、お待たせ〜」

上条「やっときたか…上条さんお腹と背中が入れ替わりそうですよ…」

美琴「遅くて悪かったわね、選ぶのに手間取ったのよ!」

上条「御坂…んなことどうでもいい、早くくれ!」ガサッ

   ふくろ:チョコパン チョコデニッシュ チョコクロワッサン ちょこっとチョコ餅パンetc...

上条「…なぁ、何で全部チョコ系なんだ?」

美琴「た、たまたまいいおにぎりもなかったしパンはそれしか残ってなかったしどうせチョコもらってないんだろうしかわいそうだなっ
   て思って…他意なんかないわよ!(どれにするか選べなかったなんて…言えないッ)」

上条(?棚にはおにぎりがいっぱい…あぁ、そういえば今日は…えぇ!?)

上条「お、俺に!?チョコを!?」

美琴「だから!あーもう、いいから受け取りなさい!」

上条「あ…ありがとな、美琴。義理でも嬉しいよ」ニコッ

美琴「み、みこと……!? うぅぅ、ホ、ホワイトデーは10倍返しだからね!!」

上条「あ、おい!? …行っちまった。 真っ赤だったな、あいつの顔」

   その後、方や美琴と呼ばれたことやありがとうと微笑みかけられたり、来年は本命をと考えたりしたことで悶えた挙句ふにゃー
  と気絶してしまったり、

   方やこれだけのことで幸せになっている反面義理ということに落ち込んでいる自分に気づいてその日ずっと顔が真っ赤だったり
  したのですわ。

628「Was yea ra melenas yor.」 2/2:2010/02/14(日) 20:49:50 ID:L.vIHUW2
  「…とまあ、これがお二方の初めてのバレンタインで、これ以降お姉様とあの類…殿方は急接近するのですわ。ホワイトデーの日
   にはお姉様はニヤニヤしながらお帰りになられただけなのですが、その後度々無断外泊を繰り返すようになりましたの。そして
   ついにあの日…そう、忘れもしないあの類…殿方の誕生日、ついにお姉様は…!!」タターン!(BGM:変態のテーマ)

  「く、黒子ー! そ、それ以上言ったら怒るわよー!!」

  「それはレールガンぶっ放してから言うもんじゃねーだろ!あああやめろ美琴!その姿で走り回るなー!」

   今日はとある結婚式。出席者は浮かれムード全開だが、当の2人には関係なかった。

   純白のドレスを着た美琴と黒のタキシードを着た上条が、チャペルを走り回る。黒子と呼ばれた少女を追いかけているはずが、
  いつの間にか少女がいなくなり、しかも外に出て、上条が美琴を追うだけとなっていた。

   徐々に差が詰まり、そして黒と白が触れ合う。もつれ合って転がって、やがて止まった。

上条「ハァ…ハァ…馬っ鹿、てめェ…疲れさせんな…」

美琴「はぁ…歳取ったん…じゃない?」

   すぐ上にある想い人の顔を見つめながら、くすくすと笑う。

上条「お前も…いや、」言いかけて、やめる。
  「美琴は、やっぱりいつ見ても可愛いな」

   にこっと、愛しい者を見る慈しみの笑顔を見せる。

美琴「か…っ!? あ…アンタこそ、似合ってるじゃない、それ」

   こちらはぷいと顔を背ける。

上条「こーら、こういう時は相手の顔を見なさい」

   無理矢理自分の方を向かせる。そして、こう告げた。


 上条当麻「愛してるぞ。上条美琴」


 上条美琴「……私もよ。 あなた」


   ゆっくりと二人の顔が近付き、そしてしばしの間、1つになった。

629■■■■:2010/02/14(日) 20:52:28 ID:L.vIHUW2
以上で終わりです。下手くそですんません。
ただこの2人ならこんなバレンタインもあると思ったのです。チロルでもよかったのですが
ビンボー上条さんに合わせたらいつの間にかチョコパンに…

では他の職人さん、頑張って下さい!

630■■■■:2010/02/14(日) 21:01:27 ID:Qfm8/Vmw
バレンタイン+日曜日=投下ラッシュ
そして今年は平年つまり
ホワイトデーも日曜日ということで来月も期待できるということですね。

この時間に一人PCに向かっている俺は勝ち組?負け組?

631■■■■:2010/02/14(日) 21:14:23 ID:AZA/Upx2
>>630
間違いなく勝ちだな
職人を間近に感じられる時間だ

632■■■■:2010/02/14(日) 21:27:58 ID:cwk50rvQ
頬がどうしても緩んでしまうwwwGJです!

633■■■■:2010/02/14(日) 21:56:34 ID:r6AnvYAU
>>484
GJ
これからも是非いっぱい書いて下さいな

634■■■■:2010/02/14(日) 22:50:26 ID:aswiKxGA
職人さんたちGJです!

今日もいい一日でした!

635■■■■:2010/02/14(日) 23:09:43 ID:FOsX7vrg
最後に見たアニメがこどものじかんな僕もこのスレのおかげで
インデックスとレールガンを観る気が出ました。本当にありがとうございます。

636■■■■:2010/02/14(日) 23:13:45 ID:844bcVr2
ついに逆流現象がw

637ぐちゅ玉:2010/02/14(日) 23:34:38 ID:IwLAYBK.
今回もご評価ありがとうございました〜。

そろそろ逆さに振ってもネタが出てこない状況になってきましたw

>>608さん
続編で、その後の話は2レスぐらい費やす予定です。
ただし甘い話ではなく、ドタバタの方になりますが…
気長にお待ちくださいな〜

638■■■■:2010/02/14(日) 23:35:17 ID:lPyoPMmk
インデックスとレールガンを観ないでなんでこのスレたどりつくんだよw

639■■■■:2010/02/15(月) 00:10:38 ID:ydvZkb8I
>>638
ヒントは「初春の能力」

640 ◆t9BahZgHoU:2010/02/15(月) 00:26:53 ID:AnzIvrao
投下主の皆様GJですの!
バレンタインデーネタ楽しませていただきました。心より感謝です。

…季節はずれもいいことに今更クリスマスネタやってる私は駄目な奴ですねわかりますorz

>>556
私に対するレスでよろしかったですかね…?
お読みいただきありがとうございます。

クリスマス云々ですが、本当は思いっきり美琴の目を輝かせたかったんですが、
“学園都市”で十字教に関連するイベントが大々的に行われるのか考えた上で、
ちょっと控えめにしたほうが良いのではないかと思い、こうしました。季節はずれですしね。

黒子は実際でもこうかなと。
某作品の杉崎健じゃないですが、みんな幸せに笑っていてほしいので…。

妹達は未定です。
一応プロットのようなものは作ってから書いているのですが、まだそこは悩み中です。すみません。

641■■■■:2010/02/15(月) 00:36:33 ID:XzN3ILfQ
なんだァ!!このスレはァァ!?
最高におもしれェぞォォォォォ!!

642■■■■:2010/02/15(月) 01:21:45 ID:HBsh7bg6
2828させてもらってます
それとまったく関係ない悩みを......
さっきおやのせくろすみちゃったんだ.....
ここにかくのがまちがってるのはわかってる....
でもほんとうにこわいんだ.....
かていほうかいとかしないかな?????
ちなみに14さいです.....
ああ、明日どうすれば......

643■■■■:2010/02/15(月) 01:22:02 ID:HBsh7bg6
2828させてもらってます
それとまったく関係ない悩みを......
さっきおやのせくろすみちゃったんだ.....
ここにかくのがまちがってるのはわかってる....
でもほんとうにこわいんだ.....
かていほうかいとかしないかな?????
ちなみに14さいです.....
ああ、明日どうすれば......

644■■■■:2010/02/15(月) 01:30:31 ID:HBsh7bg6
ごめんなさい、こんないいスレを汚してしまって....
ついこのスレ開いてたから吐き出したかったんだ.....
よし.頭きりかえます!
職人さん!もしよかったら、こんなことでもネタにしてください!
たとえば、未来のかみことがいちゃいちゃしてるところを娘か息子にみられたふたりがあたふたしてるとことか......

645■■■■:2010/02/15(月) 01:40:30 ID:0mZawkUM
>>642-644
ショックだったのはわかるのだけど、とりあえずsageるのを忘れないように
自分はあんまり気にしないけど、叩く人も多いから

しかし、小説って書くのって難しいですねえ…今まで小説なんて一度も書いたことない自分が
このスレに触発されてSS書いてみてるんですが、進まないこと進まないこと
このペースだと禁書の新刊出るのが先か、自分のSS書き終わるのが先か、って状態です
なんかコツとかってないものでしょうか…

646■■■■:2010/02/15(月) 01:58:41 ID:Iz1jGBaw
>>644
何でもネタに昇華しようとするその意気や良し
早く文章に書き起こす作業に移るんだ

647■■■■:2010/02/15(月) 01:59:12 ID:ecYU6ga6
>>641
一方さん乙

648■■■■:2010/02/15(月) 02:05:27 ID:ydvZkb8I
>>645
ものすごく分かる
俺このスレ見てから7本書いたけど完成したの2本だけだものwww
「後で書こう」ってなったらもう二度と書かないね、苦しくてもとりあえず完成させるといいよ
修正はいくらでもできるから

649■■■■:2010/02/15(月) 02:17:16 ID:HRajKufQ
>>645
初めて小説っていうか読み物を作ろうとすると、とりあえず文章作ったりして
楽しかったイメージが強いですね〜(遠い目
文章書いてお金貰う人間としては、コツって言う物は多分無いかも
言い方を変えれば、人によってはコツになったりならなかったりします
それこそラノベ読めばスラスラ書ける書き手が居れば、
ただ読んだと言って作品の内容が全く頭に入ってない人も居ますので^^;
構成なら、どんな上条×美琴にしたのか。
文章なら、人称決めた後それに合わせて書き込む。(三人称をオススメします)
映画を文章で伝えるイメージを持ったりするのも良いかもです
細かいアドバイスも出来ずに申し訳ない……
そして長文ごめん

650■■■■:2010/02/15(月) 02:28:00 ID:J0mNfl7w
>>645
俺は文の人じゃないのでアレだけど
とりあえず作文の基本でいってみては? 学校で習ったような

・徐々に作っていく(テーマ→ストーリー→文章→推敲×いっぱい)
・一部真似してみる
・まずは分かりやすさ重視

俺ももっと速く書きたいわー
そしたらもっと推敲できるのに(?)

651■■■■:2010/02/15(月) 06:48:44 ID:QKsAJs4A
全ての職人さんにGJ!

>>645
コツって言うか、原作小説をどれでも良いので用意して、
上条さんとか美琴が「どう」しゃべってるかを真似ると、自分の頭の中で
書こうとしてることが見えやすくなる、と思う。
書いてるうちに勝手に二人がしゃべってくれるようになる……とでも言えば良いのかな。

前にここの住人さんが
上条さんと美琴の会話の語尾の○×集用意してくれたんだけど
自分はそれを見ながら書いてたら、結構スムーズに書けるようになった。
あの時の住人さん、ありがとう。

652■■■■:2010/02/15(月) 06:50:10 ID:HRajKufQ
朝っぱらながら投稿します
オリジナルネタです
・イチャイチャは無い(多分)
・3レス消費
・二人の子供登場

653未来の娘の訪問:2010/02/15(月) 06:51:23 ID:HRajKufQ
「ちょっと! この子は渡さないって言ってんでしょ!」
御坂美琴は街中を走る、小さな少女を抱えて。
その後ろを追う猟犬部隊≪バウンドドッグ≫を含む多数の暗部残党達だ。
人込みの多い大通りを走り、追っ手の追跡を撒こうとしている、
超電磁砲≪レールガン≫の異名を持ち強度≪レベル≫5の彼女が戦わず逃げているのは、
彼女の腰に両腕を巻き付け、茶色の短髪に一房の癖毛、体格は小学生といった少女の為である。
「ママ〜なんでカミナリ出さないの?」
(……私だって出したいけど、引っ付かれているとこの子にも電気が走っちゃうし……こんな時にあの馬鹿何所に居んのよ)

「ったく! 何でゾロゾロ湧いてくんだよ! 数が多すぎだっての!」
上条当麻も走っている、後ろには美琴ほどでは無いが残党達が追いかけ、更に手には銃器らしき物を所持している。
こちらは幸いなのか人が居ない通りの為、彼らを見て騒ぎ立てる人が居ない。
(……御坂の方は大丈夫なのか? さっさと撒かないと合流場所にいけねぇ!)


「ハァハァ……もうダメ……もう走れない」
上条と良く出会ういつもの公園のベンチに、美琴は座り膝の上に少女を乗せる。
混雑している人込みや、電車、バスなどを乗った振りをして降り、追ってを減らし、ようやくこの場所まで辿り着いたのだ。
「どうしてあの人達追いかけてきたの?」
息を乱して上半身全体で呼吸している美琴に少女は首を傾げながら問いかけてくる、その動作は愛らしくいとおしい。
まだ会話出来る程呼吸が整っていない美琴は笑みを見せ、これまでの事を振り返った。

654未来の娘の訪問:2010/02/15(月) 06:52:44 ID:HRajKufQ
大元は一週間ほど前になるだろうか、

「私、美零≪みれい≫。パパとママの娘だよ〜」
数日前に突然現れ、上条当麻と御坂美琴の娘と告げる少女『上条美零』と奇妙な共同生活をしている。
主な生活場所は上条当麻のアパート、しかし欠席日数が多い当麻は学業面での問題により休む事が出来ず、
朝から夕方までは学校、夕方からは美琴、美零と共に買い物に夕食といった生活を。

美琴は、当麻と美零を引き連れ常盤台中学と寮監に事情を説明しに行くも、すぐに『ハイ、判りました』とは行かず、
「許可を得られないのなら、私は!」と啖呵を切ろうとした事で真意を悟って貰えて、美零が未来に戻るまでの共同生活と休学許可が下りた。
それからは当麻のアパートで寝泊りし、朝は当麻達と朝食を取り、当麻を送り出し、午前と午後は掃除やら洗濯等を行いながら美零の相手をし、
夕方当麻が帰る頃に二人で迎えに行く。

言って見れば新婚生活に近い、数日程はお互い照れも有り不自然だった対応も、慣れると正に夫婦のような日々を過ごしていた。
そして今日、日曜日にいつもお世話になっている、通称『カエル顔の医者』と呼ばれる医者の元へ当麻の検診と美零の健康診断を行う為に向かっていた。
「ママとパパと美零でお出かけ〜」
その道中、車道を通っていた車が当麻達の傍で爆発しその騒ぎの際、三人に学園都市の暗部残党が現れ美零を奪おうとした為、
美琴は電撃を、当麻は素手で挑むが数が多く美零の身を案じて、美琴は『電撃の槍』や『超電磁砲』の類が使えず、軽い放電の類を駆使するも、
他所しき切れず、当麻も数を武器にした相手にジリ貧になり、美琴と美零を先に逃がし、その後自らも美琴との追いかけっこで鍛えた持久力を使い逃走した。

美零が来た頃に、何かあったらいつもの自動販売機がある公園で合流する事を決めて、正解だったと呼吸が整ってきた美琴は安堵している。
「ママ〜? 何所か辛いの?」
「ううん走りすぎて、ちょっと疲れただけ、ありがとう……美零」
心配そうに美琴の膝元で体勢を変え、向かい合う形で顔を覗き込んできた美零を、優しく抱きしめながら撫でてやる美琴の傍で、
草むらが動き美琴は咄嗟に美零をベンチに座らせ、ポケットに右手を突っ込み『超電磁砲』を放つ体勢を取る――だが、
「……待った待った! 俺だ、俺!」
現れたのは全身ボロボロの当麻だった、至る所に生傷を作っており右腕からは大量に出血している。
「……当麻! その傷! 右腕の出血も!」
「パパ! 大丈夫?! 死んじゃやだよ!」
当麻の格好を見て、二人は思い思いを口に出すと駆け寄り、美零は泣き叫ぶようにシャツを掴み、
美琴は傷口を確認し、手持ちのハンカチで出血の多い右腕を止血するも、涙を瞳に溜めている
「バカ! 当麻が居なくなったら私達どうすれば良いのよ! もう少し考えなさいよ……」
止血し終えると涙を流しながら、当麻を叱るように叫ぶが、最後の言葉は消え入るような悲しみが込められている。
二人の反応に当麻も顔を曇らせ左手で美琴を抱き寄せ、美零が二人の間に抱き付き「ごめん」と当麻は二人に囁いた。

655未来の娘の訪問:2010/02/15(月) 06:56:26 ID:HRajKufQ

三人は病院に辿り付き、院内に入ると到着が遅い事に心配して、カエル顔の医者がロビーで待っていた。
「やぁ、遅かっ――上条クン?!」
驚きを隠さず診察室へ連れて行き、傷の消毒、ガーゼによる止血等を美琴も手伝い、流れるような作業は短時間で終わった。
「ふぅ……もう大丈夫だね? 右腕の傷は酷い有様だからしばらくは無茶はしちゃいけないよ?」
「ハイ、いつもすみません先生」
左手で後頭部を掻く当麻に美琴は安堵したのか、診断用のベットで横になって眠ってしまった。
心配と疲れを押さえていた緊張が解けたのだろう。
美零はカエル顔の医者の裾を掴み、「パパを助けてくれてありがとうカエルさん」と満面の笑顔でお礼を言うと、頭を撫でてもらっていた。
「この子が連絡にあった、未来から来た娘さんだね? たしかにお母さんソックリだね?」
当麻の顔を見た後、美零の顔を見て笑みを表した後、ナースを呼び、美零とカエル顔の医者は一緒に別室での診察に向かった。
もちろん「パパとママと離れるは嫌ァァァ」と美零が泣き叫ぶので、当麻が頭を撫で「パパ達は待ってるからちゃんとお医者さんの言う事聞いて、終わったらご飯食べような」とあやし付ける。
渋々納得し「早く戻ってくるからね〜」と告げた後、カエル顔の医者と出て行った。

扉が閉まった後、当麻は美琴が寝ている診察用ベットの前にある椅子に座り直し、スヤスヤ安心して眠っている眠り姫の頭を撫でながら「ごめんな」と呟く、
いつもの事とはいえ、二人に心配させてしまったことには変わりない、当麻の中にある自責の念が強くなっていると、
「……また深く自分追い込んでんじゃないわよ」
そっと瞼を半分だけ開け、上半身を起した後、美琴は当麻の背中に腕を回し抱きしめた。
「当麻は心配させたけど、私達を"守った"これだけは間違いないわ、だから深く自分を責めなくてもいいの」
優しい声色が耳元で囁かれ重荷が軽くなって行くと思ったら、涙を流している事に気づく当麻に、美琴は涙を拭ってあげている。
「公園の事は少し言いすぎたわ、当麻の心を傷つけちゃった……」
今度は美琴の方が涙を流し始め、当麻が涙を拭き取り強く美琴を抱き締める。
「バカだな、俺に悪い所があったのと、叱るほど心配してくれた証拠じゃねぇか」
そっと抱き締めていた体を放すとお互いの顔がゆっくりだが、近づて行き唇と唇が触れ合う――瞬間だった。
「終わったよ!パパ〜ママ!」
診察室の扉が勢いよく開かれ、カエル顔の医者とナース数名と、
二人が来た事を知らされ挨拶来た御坂妹、診察を終えハイテンションで戻ってきた美零が、二人の衝撃的シーンに立ち会っていた。

656未来の娘の訪問:2010/02/15(月) 06:58:58 ID:HRajKufQ
以上です

即興で書いたので出来はアレですが、
元は432氏のネタを貰い、バトル前に眠気が来たので
出来上がった分だけ投稿させて頂きました、
……とりあえず続き書いた方がいいでせうか?

657■■■■:2010/02/15(月) 07:21:41 ID:rOdv6Aas
GJ!!
やっぱり同じネタでも書き手さんによって変わるものだな
続き期待してます!

658■■■■:2010/02/15(月) 07:48:10 ID:xD/.VMcA
いちゃなしだとここの趣旨からはずれる気がする
即興ってことなので、個人的には完成が楽しみなのですが・・・
展開的に難しいようなら

659■■■■:2010/02/15(月) 09:53:49 ID:HRajKufQ
コメントありがとです
最近の不安定生活で脳みそは眠いと悲鳴を上げるのに寝付けませんでした……
>>657
あまり同じネタっていうのは歓迎されないのですが、
今回は気にしていた事があったので^^;
>>658
いちゃいちゃ……うーん一般的に戯れる方向かなと思うのですが
今にして思えば、これらのネタが使われないのもイチャイチャしたとしても
子供が大体セットになるので家族仲良くな方向になっちゃいそうですね
バトル何て入れたら遠くか……
しかし、明らかにイチャイチャさせても否定的な評価を受けたので
今回の路線で進めてみたのですが、単純にツンデレと鈍感男を主体にして
イチャイチャさせれば良いのかなとか考えますが
この作品続けて納得してもらう作品は出来そうに無いですね……

660■■■■:2010/02/15(月) 12:57:41 ID:viibvW8g
最近、「書いていいですか」的な、誰にともなく聞く質問が多いですが、
権利が無いので誰も答えようがないって、分かります?
「あの人が書いていいって言ったから、書いた」とでも言うつもりですか?

職人は自分の責任で書くものです。それでの批判は甘んじて受けるべきです。
その覚悟が無いなら、書かないで下さい。
新人とか関係ない話です。

661■■■■:2010/02/15(月) 13:16:25 ID:AFe3HcNo
皆様GJ!たしかにネタは同じでも書き手が変わって切り口が変わると楽しいですね。

>>660
まあまあ、儀礼的なものと受け止めましょうよ。
このスレは上手な人が多いしはじめて投稿するとなったら、これでいいのかな?とか不安なこともあることは理解できるしね。
ただ、最初に>>1のテンプレぐらいはしっかりと目を通しましょうね。
それと投稿する前にもう一度読み直して誤字、脱字の類がないか最終チェックをしてから投稿すればいいと思います。

このスレの趣旨からして初心者大歓迎を名乗ってる以上「投稿してもいいですか?」ぐらいのことは問題ないと思いますが。
それから、基本的にこのスレはやさしい反応が多いですが、それでも批判されたり指摘されたりするのはかなりの事と思ってもらったほうがいいですので
次からは直すように努力されたほうがいいことだと思ってくださいね。

662■■■■:2010/02/15(月) 15:54:29 ID:/zNO05ug
イチャイチャの基準がよくわからない。と言うか書けない。
ここの職人さん達の作品は好きなんだけど実際自分が書くとなるとどうにも上手く
絡ませられないって言うか。
こちらにも一つ投稿したけど、それも二人は付き合ってない前提で最後まで想いを
告げずじまいな話。
ラブコメとしては一応の体をなしてたけどイチャイチャはしてない。
その時はスレ違いだろって批判を覚悟して投稿しました。幸い皆さん温かい心で
スルーしてくれましたが。
ラブコメとイチャイチャの違いって? ちなみに私のラブコメのバイブルは「らんま」
なんで永遠に二人はくっつかな――

以下感想
>>656
やっぱり途中だったのですか。どうりで後半の展開が駆け足気味だなと思いました。
ただ上記の理由もあって個人的には当麻と美琴の心が何らかの形で通じていれば
イチャイチャにこだわる必要はないんじゃないかなと思ってます。
話面白いし

663■■■■:2010/02/15(月) 16:04:00 ID:d9cEflWA
美琴・上条さん主体のSS限定、ラブコメやいちゃいちゃがあればなお良し。
っていう流れではなかったかと思うのですが。

いちゃいちゃしてるかどうかとかではなく、両者の恋愛心情などが
書かれているものであればこのスレの範囲内だと思いますよ。
1スレ目から見返してもいちゃついてないSSは結構投下されていますし。

664■■■■:2010/02/15(月) 16:18:18 ID:d9cEflWA
連レス失礼

>>660
批判は甘んじて受けるべきとのことですが、それは確かなことでしょう。
しかし、その批判が一方的なアンチとなってしまってはならないと思います。

例えば「〜〜はいいと思うが、〜〜は変えたほうが良い」などといった批評や意見など、
書き手さんやこれから書こうと思っている人のためになる内容なら良いでしょうが、
アンチとも受け取れるような一方的な批判レスを許してしまえば言いたい放題になりますし、
書き手のためにも読み手のためにもならないです。

良い内容のSSが投下されても何も言わないのに、気に入らない内容が投下されたときだけは
先陣きってアンチを始めるような読み手が出てきてしまうのも問題だと思います。
某スレのように、投下しにくい雰囲気が出来て過疎るのも皆さん嫌でしょうし、
このスレは作品の出来が良いか悪いかではなく、上琴メインのSSを楽しむ流れでやってきてますから。

665■■■■:2010/02/15(月) 17:04:02 ID:HRajKufQ
再びコメント返させて貰います
先に断っておきますが、批判なら批判で受け付けてますので
むしろあるなら言ってもらう方が矯めになりますしね。
良いとも悪いとも取れる言葉で流されると
どちらにしてもモチベーション落とされるだけですから

>>662
自分も正直言うとイチャイチャ基準ってかなり曖昧です
ぶっちゃけると恋人になった後はイチャイチャは
ラブラブって言葉に変るのがネックですね、
自分が以前投稿した時は、二人が結ばれスーパーで買い物したり
イチャイチャよりラブラブが強かったけど、
私もスルー気味でしたね、さすがにスレ違いとまでは考えてませんでしたけど
一言『GJ』とだけコメントされたり、30分後位に投下された話で
沢山レスされてるのを見るとやはりモチベーションが下がりました、温度差が激しいのかなと

今回の投稿内容は1時間で書き上げた分ですね
後半は……スミマセン脳が眠いと叫び出した頃です、
まぁ前回の経験から強引なれどああいう展開にするべきかと思ったのも理由ですね
とりあえずここの投稿条件が真面目に判らなくなりそうなので、
ある程度固まるか、時間が出来た時にチマチマ書いて投稿しようかなと想います
面白いありがとです。

666■■■■:2010/02/15(月) 20:45:57 ID:ubiP8PXU
皆さんGJです!!2828が止まりません、ありがとうございます!!


>>658,>>660
理由はどうあれ投稿しにくい雰囲気を作るのはどうかと思います。
やっぱり読み手の時には、職人さんに感謝の気持ちをもってほしいです。
あと、批評ではなく提案という形の指摘の方がいいんではないでしょうか。
今回の場合だと、
いちゃいちゃしていない→もっといちゃいちゃしてみてはどうですか?
書いていいですかはやめろ→誰も返事できませんから、ご自分で判断なされたらどうでしょう?
って感じでしょうか。
皆でもっといい雰囲気を作っていきましょうよ。ここはいちゃいちゃスレなんですから。

・・・うーん、こういう返事ってもうやんない方がいいでしょうか?変にレス消費してしまいますし。

667■■■■:2010/02/15(月) 21:20:34 ID:baHZq3Zc
ここって互いに切磋琢磨して文章力を鍛え上げようって場じゃないし。
単純に上条x美琴が好きな人たちが集まって思い思いのSSを書いてニヤニヤしようって場。
多分に馴れ合いの要素が多いところだと思う。

だから>>660さんの言うことは少しずれてるんじゃないかな?
好きな人たちが集まって戯れてる場に妙な倫理観持ち込んでもナンセンス。
責任? 受けるべき? 覚悟? どうしてそう上から目線になっちゃうかな。
アドバイスはあった方がいいとは思うけどね、俺も。やっぱり他人の感想、意見は参考になる。
でも聞く聞かないはその人次第。切れて暴れる人がいないだけで俺は十分だと思う。

結局>>666さんの言うことが全て。
投稿しやすい良い雰囲気作ろうよ。
結局今日>>656さんだけしか投稿してない。これじゃ悲しいよ…

感想
>>618さん
お約束のベタな話でおもしろかったです。
天然ニブチン男とツンデレはやっぱり良いですなー。人類の宝です

668■■■■:2010/02/15(月) 21:45:07 ID:8sP9XgCQ
みなさん初めまして!part1から見ています!職人のみなさん本当にGJです!

>>438さんの発言から妄想が膨らみ、ワールドイズマインの歌詞を使ったよくわからないものが出来上がったので、投稿させていただこうと思います。
掲示板に書き込むのも初めてだし、こういうものを書くのも初めてなので、
おかしな点などたくさんあると思いますが、どうか大目に見てください…

※注意点
・歌詞の一部を使っただけで、歌のストーリーに沿ってないです
・いちゃいちゃしてません。心の動きが多いです。
・初めてなもので、何レス使うかわかりません。そんなに長くはないと思いますが…

心の中は()に書いて、前後の行をあけてます。
それでは行きます!タイトルは「世界で一番の」です。

669■■■■:2010/02/15(月) 21:45:59 ID:8sP9XgCQ
とある日曜日…

「ほとんど寝れなかった…」
美琴の寝起きは最悪だった。理由はわかっている。あの馬鹿こと、上条のことを考えていたら、眠れなくなってしまったからだ。

(どうしてアイツは私の気持ちに気付いてくれないんだろう…やっぱり私みたいなのじゃダメなのかな…)

「あーなんかイライラする。」
機嫌も最悪のようだ。そこにルームメイトの白井が起きてきた。
「おはようございま…お姉様、なぜ朝からイライラされているんですの?」
「ちょっと考え事してたら寝れなくなっちゃってねー。」イライラ
「んまあ、寝不足はお肌の大敵ですわよ。…悩み事があるのなら、相談していただければ」
「ん、ありがと。でも大丈夫よ。」

(黒子の気持ちは嬉しいけど、アイツのことで悩んでる、なんて言えないわよ…)

朝食を食べても美琴のイライラは治まらなかった。白井は美琴を心配しつつ、風紀委員の仕事があるらしく、先程出掛けていった。

(よし、なんとかして気分を変えよう!)

そう思った美琴は、ゴムで自分の髪を後ろでひとつにまとめた。今まで一度もやったことはなかったが、なかなかうまくしばれたようだ。ただ髪型をかえただけなのに、それだけですこし気分が良くなった気がした。

(この髪型を黒子が見たらどう思うかしらね)

なんて考えつつ、美琴は気晴らしに散歩をしようと外へ出た。

670■■■■:2010/02/15(月) 21:47:27 ID:8sP9XgCQ

30分ほどぶらぶらしただろうか。気付けばあの自販機の近くまで来ていた。

(あぁ、アイツに会いたいな…って何考えてるのよ私はぁぁ!!)

美琴はひとりで勝手に赤くなり、ブンブンと首を振った。とその時、声が聞こえた。
「おーい!」

(この声は…アイツだ!)

目を輝かせ、辺りを見渡す美琴。しかし目的の姿を見つけ、次の言葉を聞いた途端、目の輝きは無くなった。
「そこのおねえさん!ハンカチ落としましたよー!」ニッコリ
「え?あ、ありがとうございます。」ポッ///
どうやら声の主であり、美琴の言うアイツ、つまり上条当麻は、落し物を渡しただけで軽くフラグを立ててしまったようだ。

(アイツはそうやって何人もの女を…)

美琴は朝からのイライラを雷撃の槍に込めて、迷うことなく上条へと放った。

一方、そんなこととは知らない上条。
「それじゃ、俺はこれで…」
と、振り返った瞬間、目の前に電撃が飛んできた。
「うおぅ!?」
間一髪で防ぐ上条。
「だ、大丈夫ですか?(か、かっこよかった///)」
「え、えぇ、なんとか…」

(こんな事するやつはアイツしかいねぇ…)

と、(女の人そっちのけで)周りをみると、案の定すぐに見つかった。
「いた!おい、ビリビリ!」

「なによ!」
美琴のイライラは、朝からどんどん悪化し、たった今上条に電撃を消されピークに達していた。

(あぁぁ!ムカツク!)

「お前、今のはホントに危なかったぞ!下手したら死んで…あれ?」
そこで上条は気が付いた。

「お前いつもと髪型が違うな。」
「え?」
「後ろでまとめるのもなかなかいいな。」
その瞬間、美琴のイライラは嘘のように消えた。

(あ、アイツがい、いいって言ってくれた!)

みるみる顔が赤くなる。
「御坂?なんか顔が赤いぞ?」
「!なんでもないわよ!」
そういって美琴は、(照れ隠しで)自販機を蹴り、出てきた黄粉練乳を飲みだす。
上条は、いきなり美琴が自販機を蹴ったので

(なんでこいつは怒ってるんだ?なんにせよ相当怒ってるな…はぁ、不幸だ…)

といつもの鈍感っぷりを発揮している。しかし今日の上条は妙なところで鋭かった。
「御坂、お前靴新しくなったのか?」
「ぶっ!?」
思わず噴出す美琴。そう、美琴は靴がボロボロになってきたので、新しいものを買ったのだ。ボロボロになった原因は、その上段回し蹴りにあるのだが、美琴は気づいていない。

(アイツ、靴までちゃんと見てるのね…意外だわ。…!?それって、わた、私の事よく見てくれてるってこと!?)

実際は上段回し蹴りの時に見えた靴が、妙にキレイだったから気づいただけなのだが、今の美琴にはそんなことを考える余裕などない。

(うわー、御坂さんなんかぶつぶつ言ってますよー!?もしかして怒ってるのは俺のせいですか?)

その後1分ほど二人は唸っていた。その様子を見ていたさっきの女の人は

(最初はどうなるかと思ったけど、仲がいいのね。うらやましい…)

と、少し悔しそうにその場を立ち去ったのだった。

671■■■■:2010/02/15(月) 21:48:18 ID:8sP9XgCQ
(アイツに心から、か、かわいいって思われたい…)
(と、とりあえず機嫌を直してもらわないと、上条さんの命が危ない!)

「な、なぁ御坂、お前これから暇か?」
「ふぇ!?あ、う、うん。散歩してただけだから…」
「そ、そうか、俺も散歩の途中だったんだ。…あのさ、一人じゃつまんないからさ、一緒に散歩しないか?なんかおごるからさ。」

(なんかおごって、機嫌直してもらわないと…正直なところ、今財布は空に近いから、なにもおごらないで済むのがいいんだが・・・背に腹はかえられないか…)

(こここ、これってデデ、デートの誘い!?)

美琴はさっきまでの考えなど忘れて、顔を真っ赤にしてなにやらぶつぶつ言っている。

(…これ、完全に嫌がってるよな…)

「…嫌ならムリして行かなくてもいいんだぞ?」
「!?い、嫌じゃないわよ!」
「じゃあなんでそんなに怒ってんだよ!?嘘はつかなくてもいいですよー。」
「アンタとのデートが嫌なわけないじゃない!あ…」
言ってから美琴は恥ずかしくなった。耳まで真っ赤だ。

(なに言ってんのよ私はぁぁぁぁ!)

しかしその思いを、上条は見事に裏切った。

「…はぁ?いつ上条さんがお前をデートに誘ったんだ?つーかデートって好きな奴同士でやるんじゃねーの?」
「…え?」
そこで美琴は、ようやく自分のとんでもない勘違いに気がついた。

(そうよ…こいつが私のこと、好きなわけ、ないじゃない…)

心の中で大きな溜息をつくと同時に、どっと疲れが出てきた。顔の赤みは驚くほど早く引いた。
「ふっ、今のはジョークよ、ジョーク…」
「だよなぁ、あぁビックリした。それで、どうする?一緒に散歩するか?」
「あぁ、やっぱやめと…」
そこでひらめく美琴。

(ちょっと待って、だとするとこれはチャンスじゃない?この機会にアイツとの距離を縮めれば…!)

「い、行くわ!」
「ん、そうか。じゃ適当にそこらへんぶらぶらしますかな。」
そう言って歩き出す二人。美琴はある思いを燃やしていた。

(よーし!二度とフラグ立てられないように、私がコイツにとっての世界で一番のお姫様になってやる!ほかの人には渡さないわ!)

672■■■■:2010/02/15(月) 21:49:08 ID:8sP9XgCQ
あれから二人は、楽しくおしゃべりをしながら、どこに行くわけでもなくぶらぶらしていた。大抵は美琴から話すことが多く、上条は聞き役だった。
「でさー、黒子ったら…」
「ふーん。そうなのか…」
こんな具合だ。ちなみに心の中は…

(コイツといるとやっぱり楽しい…よし、もっと話をしてもっとコイツに近づこう!)

(うわー、御坂の髪型がいつもと違うから、うなじが、うなじがぁぁ!だめだ、気にしちゃダメだ…)

こんなことになっていた。

少し疲れた二人は、今は小さな公園のベンチで休んでいる。公園では子供が元気に遊んでいる。
「いいわねー、子供は元気があって。」
「お前もまだ子供じゃねーか。」
「アンタまた私を子供扱いして…」ビリビリ
「…そうやってすぐビリビリするのがお前の欠点だよなー。」
「な…それはかわ、かわいいの間違いじゃない、の?」

(だー!もうさっきからなに言ってるのよ私はー!)

だがそんな思いにも全く気づかないのが上条。
「はいはいそうですねー。」←棒読み
「あ、あのね!私の話ちゃんと聞いてる!?」ビリビリビリビリ
「うわ!悪かった、俺が悪かったからそのビリビリいってるのをしまって!」
「わ、わかったわよ。…ビリビリしないかわりにこれでも食らえ!」
と、美琴はビリビリをしまい、お遊び程度の軽いパンチをした。しかし上条は本気でパンチしてきたと勘違いしたらしい。とっさにその拳を右手で受け止め、強く握り締めた。
「こ、怖いですよ御坂さん!?」
「あ…」

(今私、コイツに手、握られてる!?)

少し顔の赤くなる美琴。その美琴に追い討ちをかけるように、遊んでいた男の子が二人をみて言った。

「うわー、かっぷるだー。らぶらぶだー。」

「「んな!?」」
上条はあわてて手を離して男の子に向かって言った。
「な、なにをいってるのかな?コイツはただの友達で…ほら、御坂もなんか言え!」
「……(こ、こいつと私が、か、カップル///)」
しかし美琴はそれどころではないようだ。
「み、御坂さん?」
「……(周りからは、か、カップルに見えるのかな。)」
「おねーちゃん、かおまっかだぞー。」
「おいお前、もしかして調子悪いのか?」
「……(カップルってことは、こ、恋人ってことよね。)」
「このおねーちゃん、だいじょうぶ?」
「あ、ああ。多分大丈夫だよ。心配しなくてもいいから、君は遊んできなさい。」
「うん!」
男の子は元気に返事をすると、たたたっと駆けていった。

673■■■■:2010/02/15(月) 21:49:53 ID:8sP9XgCQ
「……(恋人ってことは、あ、あんなことや、こ、こんな)」
「おい、ビリビリ中学生。」
「!?だ、誰がビリビリよ!」
条件反射で『ビリビリ中学生』と聞けば電撃が出るようになってしまった美琴は、その一言で妄想から戻ってくると同時に上条に電撃を放った。
「うおっ!っとようやく元に戻ったか。ってか調子悪いなら言ってくれよ。」
「べ、別に大丈夫よ。」
「ホントか?顔赤いぞ。」
「だ、大丈夫だって言ってるでしょ!」ビリビリ
「危ねっ!まぁそんだけ元気なら大丈夫だろうけど…ムリはするなよ。」

(あ、危なかった…危うく大変な妄想をするところだったわ…コイツと恋人なんて、あり得るわけ無いじゃない…)

はぁ、と美琴は小さく溜息をつくのだった。

上条は考えていた。

(さっきあの子に言い訳した時…ホントにそうなのかって心のどこかで思ってた。それに御坂のうなじ見てドキッとしちまったし…今日の俺、なんか変だな。)

上条は心がモヤモヤとしたまま、美琴に質問した。

「ところでさぁ、お前って好きな奴とかいるのか?」
「!!!!な、なんでそんなこと聞くのよ。」

(平常心平常心…そうよ、コイツはこういうことを無自覚で言うのよ…)

「いやー、お前ってモテそうじゃん?誰か好きな奴とかいたりするのかなー、なんて。」

(どうして俺はこんなことを聞いてるんだろう…)

「わ、私にだって好きな人ぐらいいるわよ。」
美琴は上条を上目遣いで見つめる。

(私が好きなのはアンタよ!!)

しかしそんなことには気づかないのが上条クオリティー。
「そうか…」

(やっぱりいるのか…ってなんで残念がってるんだ、俺。)

「ちなみにどんなやつなんだ?」

(やっぱり気づかないか…)

美琴はうなだれ、小さな溜息をつき、意を決して話し始めた。
「そいつはね…頭がツンツンしてて、私より年上で、私よりも強いんだけど、馬鹿で、鈍感で、でも細かいところまでちゃんと見てて、困ってる人がいたら誰だろうと助けて…私も助けられたのよ。」

(さすがにここまで言ったら、アンタでも気づくでしょ…)

話をしている美琴の顔は赤くなりつつも、どこか楽しそうだった。

(何でコイツはそんな楽しそうに話してんだよ…って、もしかして俺、嫉妬してる?)

「そして…」


(私だけの王子様なのよ。)


「ん?」
「…なんでもない。」
美琴は今の言葉を口には出さず、そっと胸にしまった。そして上条の方を見る。

674■■■■:2010/02/15(月) 21:50:35 ID:8sP9XgCQ
(気づいた…よね?)

美琴の期待は高まる。しかしその期待はもろくも崩れ去った。

「へぇ、すごい奴なんだな。いいなぁ、大切にされてて。そいつは幸せだな、俺なんかと違って。」
「…へ?」

(まさか…気づいてないの!どこまで鈍感なのよ!!もう、どうして?早く気がついてよ、この馬鹿!!)
美琴は大きな溜息をついて、小さな声で言った。
「絶対アンタはわかってない、わかってないわ…」
「え?」
「ふふふ…」
「み、御坂さーん?」

あれからしばらくして、美琴は先程のショックから立ち直ったのか、今度は上条に質問した。
「それじゃあ、あ、アンタはす、好きな人とかいるわけ?」
「え?」

上条はさっきからずっと考えていた。

(俺は…御坂のことが…好きなんだろうか。会うたびにビリビリしてきて、でも一緒にいると楽しくて…あぁ、もうわかんねぇ!)

自分の心の整理ができなくなった上条は、わしゃわしゃと頭を掻いたあとに言った。
「好きな人っていうか…気になる奴はいるな。」
「そ、そうなんだ。」

(やっぱりいるんだ…そりゃそうよね。…でもその人には負けないわ!)

少しショックを受けた美琴だったが、すぐに気を取り直し、さっきのお返しをすることにした。

「ねぇ、その人ってどんな人なの?」
「え?いやぁ、それは…」

(目の前にいるのに言えるわけねーだろ!)

上条は少し顔を赤くして言った。
「ひ、秘密だよ!」
「えー!なんで!私はちゃんと、その…言ったのに!」
「秘密は秘密だ!教えられないもんは教えられないの!」
「ちょっと、それって不公平じゃない!?」
わーわー言い争う二人。周りからみればどうみてもカップルだ。

675■■■■:2010/02/15(月) 21:51:24 ID:8sP9XgCQ
「ゼェゼェ…今回は見逃してあげるわ…」
「あ、ありがとよ…ゼェゼェ」
言い争いもどうやら幕を閉じたようだ。ふと時計を見ると、そろそろお昼時だった。
「そろそろ昼か…よし、御坂。約束は約束だ。昼飯おごるぞ。」
「え?そんな約束したっけ?」
「!?」

(御坂さん覚えてなかったんですかー!これはなかったことにしないと財布の中身が!)

「いえ、そんな約束はしてま」
「あー、お昼ご飯楽しみー!」
「…不幸だ。」
彼は財布がもうすぐただの革製品になってしまうことを悟った。

とりあえず歩きだした二人。
「あー、御坂?実は所持金が残り少ないから、ちょっと安っぽい昼飯になっちまうけどいいか?」
「え?だったらムリしておごらなくてもいいわよ。私払ってもいいし。」
「いや、でもそれじゃあ約束が…」
「いいのよ。私はあ、アンタと一緒にいるだけで楽しいから。」

(い、勢いで言っちゃったー!!)

「え?」

(いつもビリビリしてくるもんだから、てっきり俺のこと嫌いなのかと思ってたが…こいつも俺と同じこと考えてやがる…)

「お、俺もお前と一緒にいると楽しいぞ。」
「!?」

(い、今のって…え?え?)

美琴は自分の顔が赤くなるのがわかる。上条の方をみると、なんと上条まで少し顔が赤い。

(も、もしかして…りょ、りょうおもっ!)

途端に美琴の頭の中はグルグルしてしまい、しっかり歩けなくなっていた。
しかし上条はまた心の整理がつかなくなっており、そんなことには気づかない。

(こんなに意識しちまうなんて…しかもあんなこと言って…やっぱり俺は…でも…うっがぁぁぁ!わかんねぇ!)

頭を両手でわっしゃわっしゃと掻く上条。ふと隣をみると、そこにいるはずの美琴の姿が見当たらない。前を見ると、千鳥足になっている彼女がいた。
「お、おい御坂、だいじょ…!」
声をかけたそのとき、美琴はよろけて車道の方へ出てしまった。しかも運悪く車が来ている。
「危ない!」
その声で美琴は我に返った。すぐそこに車が迫っている。しかし車をよける余裕は無く、思わず目をつぶる。

676■■■■:2010/02/15(月) 21:52:23 ID:8sP9XgCQ
ふいに美琴の腕が引っ張られ、そのままなにかにぶつかった。そのなにかはとてもあたたかく、不思議と安心感が広がった。
「そんなにふらふらしてたら轢かれるぞ?ったく危ねぇな。」
美琴が目を開けると、そこは上条の腕の中だった。上条の方を見上げると、彼はそっぽを向いていた。

(え?私、コイツに、だだ、抱きしめられた!?急に、そんな!えっ?)

あまりの出来事に、美琴はただただ、混乱していた。

そのとき、後ろから悲鳴に近い声が聞こえた。
「か、か、カミやんが、常盤台の女の子といちゃついとるー!!!」
「…どういうことか説明してもらうぜよ、カミやん!」
そこにはなにやら怪しげなオーラを発している、青髪と土御門がいた。

(ま、マズイ!)

これから二人に追いかけられるであろうことを感じた上条は、美琴を自分から離し、
「すまん御坂!また今度な!」
と言い、一目散に逃げていった。
「「待てーカミやん!!」」
「不幸だー!!」

上条が走り去って数秒後に我に返った美琴は、さっきの出来事を思い出し、一気に顔を赤くした。そしてもう見えなくなってしまった上条に、叫ぶようにして言った。
「こっちのが危ないわよ!」

677■■■■:2010/02/15(月) 21:52:49 ID:8sP9XgCQ
(さっき御坂が轢かれそうになったとき、絶対にアイツを守るんだって思った。)

上条は二人に追いかけられながら思う。

(やっぱり俺は、アイツのことが好きなんだ。)

自分の気持ちを理解した上条は、とても幸せそうな顔をしていた。


(アイツは、俺にとって世界で一番のお姫様だ。)


結局美琴はその後、適当に昼食をとり、寮へと戻った。寮に帰ってからは、午前中にあった出来事を思い出し、ベッドで一人、顔を赤くして悶えていた。

(アイツから抱きしめてくるなんて…それってやっぱりアイツが私のことを…いやでもそれはない…こともない?)

美琴の悩みがまた増えてしまったようだ。

夕方になり、白井が風紀委員の仕事から帰ってきた。美琴はどうやら眠っているようだ。
「ただいまーですの…って!?お姉様の髪型が!ど、どうしたのでしょう…でもこの髪型のお姉様もなかなか…うなじが…うふふ…」
その直後に美琴が起きて、いろいろと大変なことになるのだが、それはまた別の話である。

678■■■■:2010/02/15(月) 21:55:32 ID:8sP9XgCQ
以上です!なんか展開とか急だったかも。自分じゃよくわからないですね。
これからはまた読むだけにします。一応受験生ですので(汗)
それでは、失礼しましたー。

679■■■■:2010/02/15(月) 22:02:02 ID:WfWM4IwU
>>678
GJです!
受験が終わってからでいいので、また書いてくださいね

680645:2010/02/15(月) 22:39:03 ID:0mZawkUM
>>648 >>649 >>650 >>651
ご意見ありがとうございます。どこまで自分の中でできそうかはわかりませんが
色々と参考にしてみたいと思います。

ちなみに今のところ考えてるSSは、実はいちゃいちゃ分がかなり少なかったりします。
自分の中ではいちゃいちゃ系を書くつもりが、プロットが二転三転して、
最終的にはなぜかややシリアス系に………。このスレに受け入れてもらえそうか
わからない内容になりそうですが、頑張って完成させたいと思います。

681■■■■:2010/02/15(月) 23:00:09 ID:mhGxXu4A
>>678
GJ
ワールドイズマインの相手の男って鈍感さが上条さんに通じるよね
ちゃんと勉強して受験後にまた書いていただきたいです

682■■■■:2010/02/15(月) 23:24:55 ID:1GIXeZJw
>>638
SSスレ→wiki→ここ

683■■■■:2010/02/16(火) 00:05:34 ID:MFDQQrMY
おじゃまします
バレンタインネタでNG引っかかって諦めた者ですが
NGの原因が解決したので投下させていただきます
ちょっと遅れたバレンタインネタになり申し訳ありません

では5分後に最初から投下します。
予定消費レスは5くらいです

684■■■■:2010/02/16(火) 00:10:08 ID:MFDQQrMY

バレンタインデーそれは女の子にとっては年に数回あるかないかの想いを伝えるタイミングの日。

バレンタインデーそれは男の子にとって好きな女の子からチョコ&告白を(貰える)されるかもしれないイベントの日。

そんなイベントは科学技術が外の世界よりも2、30年進んでいる学園都市でも行われる。

まぁ不順異性交遊に繋がる可能性があるため基本的には禁止なのだが。


常盤台中学の寮に、とあるツンツン頭の少年に恋焦がれる乙女がいる。

御坂美琴、超電磁砲(レールガン)の異名をもつ中学2年生にして、7人のレベル5のうちの第3位。

そんな近寄りがたい肩書きを持っていてもやっぱり年頃の少女には変わりない。

美琴は明日のバレンタインデーの為にチョコレートを作っていた。

そのチョコレートも、もうあとは文字をホワイトチョコで書いてラッピングして完成という段階までできていた。

美琴「アイツ、甘いの好きかな…」

美琴「気に入って貰えるかなぁ」

美琴「もし、渡すのと一緒に告白なんてできたらなぁ……えへ、えへへへ」

黒子「お、お姉さま?そ、そそ、それは、わたくしへのチョ、チョコでございますか!?」

美琴「!!」(黒子!?いつのまに後ろに…てかさっきの聞かれた!?)

美琴「く、黒子…ど、どうしたのよ、今日はジャッジメントの集会じゃなかった?」

黒子「いえ、お姉さまへ渡すチョコの中に媚や……いえ、隠し味を入れようと」

美琴「……黒子…あのパソコン部品なら昨日のうちにゴミに出しておいたわよ?」

黒子「………(汗)」(あらら、ばれてましたの)

美琴「………(電)」(ったく、こいつはいつもいつも!一回〝真っ黒子げ〟にしてあげようかしら)

美琴は弱めの電撃の槍を放った。しかし黒子は美琴の雷撃をテレポートで冷静に交わし、逃げた。

黒子「お姉さまの攻撃パターンは何回も見たり当てられたりすれば身体が覚えますわ」とテレポート。

黒子「まぁ手加減してくれているのでしょうけど、さて黒子はジャッジメントの集会がありますの」

黒子「今日、明日は泊りがけで行ってくるので」とテレポート。

黒子「お姉さまへのチョコはバレンタインデーが終わってからになりますけど、申し訳ありませんの」

美琴「ん?まぁいいわよ、ただ変な物入れたりしたらアンタをこの部屋から追い出すからね!」

黒子「うっ、しょ、承知しましたの。では」

どうやらテレポートでジャッジメント本部に向かったみたいだ。

美琴「ふぅ、さてチョコレートの続きを……あれ?」

さっきまでの作りかけのチョコレートが無くなっていた。

685■■■■:2010/02/16(火) 00:11:19 ID:MFDQQrMY

美琴の脳内で三つの仮説が生まれた。

①、黒子とのバトルで間違って吹っ飛ばしてしまった。

②、黒子が隙を見て盗んだか。

③、その他の理由で紛失したか。

美琴「………②だな」

美琴は途方にくれた。今日は13日、町中の女の子がチョコを作るためたくさんの市販のチョコを求めて買いに走るであろう事は知っていた。

だから美琴は使う分のチョコを3日前に買っておいたのだ。しかし、そのチョコもさっきの作っていたのに全部使ってしまいもう残っていない。

今の時間は夜の9時、黒子がいればテレポートで送り迎えができた。いやそれはもう無い可能性だから考えないようにしよう。

どうする。寮の電子ロックや防犯カメラはいじくれる。考え込んでいてもしょうがないしコンビニでも見に行ってみよう。と決めた。

30分後、「ありがとうございましたー。」

美琴「はぁ…板チョコ1枚しか売ってないって……わたし、不幸かも」

と嘆いていた時、後ろから声がかかってきた。

??「あれ?御坂?こんな時間にコンビニ寄ってなにしてんだ?」

美琴はビクっとして恐る恐る振り返る。そこには今、会ってはいけない人物がいた。ツンツン頭の少年、上条当麻だ。

美琴「あ、アンタこそ、こんな時間に何うろついてるのよ」

当麻「ん?あーうちの寮な風呂ぶっ壊れちまってよーシャワー使えんだけどたまにはお湯に浸かりたいんで近くの銭湯まで行ってきたんだ」

当麻「そういうお前は、何買ったんだ?」

美琴「な、なんでもいいでしょ……お、お菓子よ、お菓子!。……そうだ、アンタ明日は時間ある?」

当麻「明日か?まぁ日曜だしな。それにインデックスもイギリスに帰っちまったし、時間ならいくらでもあるぞ」

美琴「そっか、明日は日曜だったわね。」(黒子は部屋にいない。明日は休み。あのシスターはイギリス)ぶつぶつぶつ……

当麻「どうした御坂?さっきからぶつぶつ言って」

美琴「決めた!今日アンタの寮に泊めて」

当麻「……は?」(な、なんだって?寮に泊まる?部屋は?ん、この場合俺の部屋になるのか?)

美琴「だから!アンタの部屋にあたしを泊めてって言ってんの!おわかり?」

当麻「お前、本気で言ってんのか?」

美琴「こんなこと冗談じゃ言わないわよ」といいながら身をぶるぶる震わせる。

当麻「わかった。こんなとこにいると寒くて風邪引くからはやく行くぞ」

美琴「やった♪」

そういいながら上条の右腕に抱きついた。

当麻「おい…これじゃまるで……」

美琴「なによ?まるでカップルみたい?いいじゃない別に寒いんだし」

当麻「俺は構わないけど、他の人に見られて困るのお前だろ?」

美琴「か・ま・わ・な・い・わよ♪」(ちょっと大胆かな?恥ずかしくて顔上げれないや)

当麻「はぁなんか今日は最後の最後に御坂に振り回されてんな」

美琴「文句あるわけ?」

当麻「いや、たまにはこんな幸せ桃色空間も悪くないかな?っと」

美琴「??よくわからないけど早く行きましょ」

当麻「そうだな」

そうして上条の寮について少しすると御坂美琴と上条当麻の2月13日は終わりを告げた。

686■■■■:2010/02/16(火) 00:12:31 ID:MFDQQrMY

2月14日、午前0時27分



上条当麻と御坂美琴は上条の部屋のこたつの中にいた。

美琴「当麻の寮ってちょっと遠いわね」

当麻「ん?今名前で呼ばなかった?」

美琴「あ、ダメ……だったかな…」(そうよね、いきなりはダメよね)

当麻「う〜ん、かまわねぇよ、むしろアンタとか呼ばれるより名前の方が気付きやすいかもな」

美琴「ほんと?え…っと、とぅ…とぉま?」(うっ意識すると言えなくなる……)

当麻「なんか、お前の言い方…ちょっと可愛くて照れるんだが……」

美琴「え?可愛い?あたしが?」

当麻「うー、なんだ…ほら、あ、そうだ!みかん食べようぜみかん、ちょっと持ってくる」

上条はそう言うと台所にあるダンボールの中のみかんを取りに行った。

美琴「……うまく話し逸らしたつもりかしら…」

当麻「ほらよっ、このみかんすっげぇ甘いんだぜ。結構オススメ」

美琴「ふーん。それよりさ、と、当麻って呼ぶから、わたしのこと美琴って呼んでよ」

当麻「……はい?」

美琴「ビリビリしないと理解できないのかな?そうかぁ…なら仕方ない。手加減してあげるから左手だしなさい」

当麻「ひぃ!いいです!理解できました。ごめんなさい!美琴!」

美琴「そうそう。ちゃんと言えるじゃな……ぃ…」(こ、これは予想以上に恥ずかしい……)

当麻「どうした?おーい?大丈夫かぁ?美琴?」

美琴「だ、大丈夫よ!」

そのあと、テレビを見たりして二人でぎゃあぎゃあ騒いでいた。


美琴「ふぁ…眠くなってきちゃった……」

時刻はもう深夜の1時を過ぎていた。

当麻「そうか、ベッド使っていいけど、美琴は風呂入ってきたのか?」

美琴「うん…今日はご飯たべて……すぐ…お風呂入ったから大丈夫ぅ」

当麻「わかった。じゃあ寝るとしますか」

美琴「……ねぇ」

上条はコタツを端によせて布団を敷いていた。

当麻「どうした?明かりなら今消すからちょっと待ってくれ」

美琴「そうじゃなくて……ベッドでさ…一緒に寝ない?」

当麻「……上条さんに拒否する権利は?」

美琴「当然…なぃ…一緒に寝てくれないと…夜中電気ショックで起こすかも……」

当麻「仕方ないな。添い寝くらいならしてやる」

美琴「じゃあ、手…握っててくれる?」

上条はこのお姫様の言う事をきかないと後が大変そうだと思い、しぶしぶ美琴の申し出を受け入れた。

当麻「かしこまりました。姫」

そう言うと、上条は部屋の明かりを消し、美琴の寝ているベッドに入りこみ、美琴の手をギュッと握った。

美琴「えへへ〜……幸せ……むにゃむにゃ」(zzz)

当麻「………」(ったく、手握るなり直ぐに夢ん中入ってやがる)

当麻「………」(はぁ、こっちは緊張して、手握ってるからか全然眠くならないし)

当麻「………」(あれ?手離れねぇ…うわぁ、寝たらベッド出ようと思ってたのに…)

美琴「…もぅ…」

当麻「……?」(もう?)

美琴「…はにゃさにゃぃんだかりゃ〜……うんん…むにゃむにゃ」(zzz)

当麻「………」(……可愛い…あれ?手離れてるじゃん……)

当麻「…仕方ないな」

上条は少し離れてしまった少女の手を捕まえてまた握った。

当麻「………」(今日だけ特別だからな)

美琴「………」(ぁりがと、当麻)


その夜少年が自分の精神との格闘に見事打ち勝ち、寝れたのは3時間後のことだった。

687■■■■:2010/02/16(火) 00:13:35 ID:MFDQQrMY
  
  2月14日、午前8時5分


美琴「…ぅま……ねぇ…おきて、当麻」

当麻「んぁ?……あれ?御坂?」

バコッ!

上条は美琴に頭を叩かれた。

当麻「痛ッ…起きたばかりの上条さんになにすんだ!」

美琴「昨日言った言葉、もう忘れちゃったの?」

美琴はジーっと上条を見つめて涙目になっていた。

当麻「…昨日って?……あ」

美琴「思い出した?だったら許してあげる」

当麻「わりぃ美琴、まだ名前で呼ぶの慣れないし、ちょい恥ずかしいんだ」

美琴「そりゃわたしだって……まぁいいわ。ご飯作ってくるから待ってて」

当麻「え?いいの?あ、でも俺もなんか手伝うよ」

美琴「手伝わなくていいわよ。その代わりに後でご飯の感想聞かせて頂戴?」

当麻「あ、ああ。わかったよ」

美琴「じゃあ作ってくるわね」

当麻「……」(昨日の今日だから妙に美琴を意識しちまうなー)

美琴「ふん♪ふん♪ふーん♪」

688■■■■:2010/02/16(火) 00:16:01 ID:MFDQQrMY
 

                  朝食後


当麻「ごちそうさまっした」

美琴「お粗末さま」

当麻「美味しかったぞ、美琴。こんな美味いなら毎日にでも食いたいな」

美琴「ま、毎日って…そ、そこまで言うならたまに作りに来てあげてもいいわよ?」

当麻「本当ですか?美琴センセー……あ、でも朝はいつも時間ないから諦めるよ…」

美琴「あ〜そっか…夕飯ならどうかな?」

当麻「そうだな、じゃあたまにだけどお願いな」

美琴「ねぇ当麻?その、代わりと言っちゃなんだけど、ご飯作ってあげるからその分泊まりに来ちゃダメかな?」

当麻「なっ!美琴…自分が何言ってるかわかってるのか?」

美琴「あ、あたりまえでしょ!こんなこと当麻にしか言わないわよッ!」

当麻「え?それは…つまり……え?…そういうこと?」

美琴「あれ?あたし…なんか言っ……」(これって…こ、告白と思われても不思議じゃない?あーもうダメ!考えてもダメ!行動しなくちゃ!)

美琴「…もう、がまんできない!言うわよ!わたしはね、アンタが、当麻が好き。もう自分の気持ちをごまかしきれない、当麻が大好きなの!」

美琴「今日が何の日か知ってる?バレンタインデーよ、女の子が勇気を出す日なの。本当はチョコあればよかったんだけど、黒子に持ってかれちゃったの。でもねチョコなんかなくても気持ちを伝えることはできる。当麻はちゃんと言葉で言わないと気付かないと思ったから…」

当麻「…………」

美琴「…………」

当麻「……美琴」

美琴「………迷惑…だったかな…あはは…」

美琴の声は今にも泣きだしそうな声だった。

美琴「…ごめ…んね…朝から……わたし、帰るわね」

そう言って、立とうとしたとき、上条の口が開いた。

当麻「待ってくれ。ちゃんと返事させてくれ、美琴」

美琴「…うん」

当麻「まさか、お前が俺のこと好きなんて思わなかった。せいぜい仲の良い異性かな、くらいで終わりだと思われてると勝手に勘違いしてた」

当麻「でも、こうしてお前、美琴が伝えてくれたから。まぁこんな話は言い訳にしかならないな」

当麻「…結論から言うと、俺は……お前とは付き合えない」



その言葉を言われた時美琴を激しい後悔が襲った。告白なんてするんじゃなかった。そうすれば上条の日常の中に自分の居場所があったのに。もう戻れないと思うと涙が出てくる。この気持ちも止められないものだった。

689■■■■:2010/02/16(火) 00:16:50 ID:MFDQQrMY
当麻「…でも」

美琴は泣きながらも上条のその言葉を聞いていた。


当麻「付き合えない理由ってのが美琴がまだ中学生ってことなんだよ」

当麻「俺自身は美琴のことが好きだ。昨日、今日でお前に俺の気持ちを気付かされたよ」

当麻「だからな、美琴さえよければ、待っててくれると上条さんは嬉しいわけで…」

上条のその言葉を聞いてさっきまで美琴が抱いていた後悔は綺麗に消え、今は安心という感情が心の中で一杯になっていた。



美琴「えぐっ……それ…って…グスッ…」

当麻「ああ、美琴が高校生になったらって」

美琴「うっ…嬉しい……けど……」

当麻「ダメ…か?」

美琴「ダメ……今抱きしめてくれないと」

美琴のその一言で上条は力いっぱい抱きしめた。もう離さないという感じの強さだった。

美琴「と、当麻、ちょっと苦しい…」

当麻「あ、ごめんな」(1年も耐えられるかなぁ)

美琴「当麻……」

美琴は目を瞑ってちょっと上を向いて上条を待っていた。

当麻「美琴…」(上条さんはやっぱり美琴が高校生になるまで待てそうにないみたいです)

上条は


そっと


美琴の唇に




キスをした










チュッと











美琴「当麻…さっきわたしが高校生になるまで待つって言ってたよね?」

当麻「…………」

美琴「今はまだ友達ってことなのよね?」

当麻「…………」

美琴「当麻は女の子の友達にキス迫られたらしちゃうんだ?」

当麻「そんなことはない!」

美琴「わかってるわよ。ありがとう。キス…嬉しかった…」

当麻「なぁ美琴、上条さんはなんか言ってること間違ったのかな……」(もう心が揺らぎそう…)

美琴「さぁ?当麻が決めたことだし、でもあたしは1年間当麻にアタックしまくるつもりよ?」

当麻「…………」

美琴「そうだ、お風呂壊れてるけどシャワーは使えるのよね、ちょっと借りるわね」

当麻「いや、ちょっと」

美琴「当麻、覗いたらタダじゃすまないわよ?」

当麻「…ふ、ふこ……あー!しあわせだぁぁぁああぁぁ!」



                                 〜fin〜

690■■■■:2010/02/16(火) 00:19:22 ID:MFDQQrMY
以上になります。

自分としては初めて書いた物なので
皆さんからの指摘や意見などが聞きたいところです。

こんな駄文にお付き合いいただき
ありがとうございました。

691■■■■:2010/02/16(火) 00:22:48 ID:kL4g2k4E
>>690 乙
GJ!

692■■■■:2010/02/16(火) 00:31:26 ID:u4bQz2Zc
>>690
GJ!
やっぱりこういう書き方もいいですね。ぜひ続けてください、、お願いします!
あと、間違った指摘かもしれませんが
状況説明文が少ない分、キスする場面でそういうのを多く入れてみるとインパクトがでて、いい気がする。
き、気がするだけなんだからねっ!!

693■■■■:2010/02/16(火) 00:32:30 ID:QnpB84zU
>>690
GJ
ところでNGの理由って何だったんだ?

694■■■■:2010/02/16(火) 00:38:18 ID:MFDQQrMY
あーNGは、美琴の台詞の「おわかり?」の後に
どぅーゆうあんだすたんど?(英語で)が入ってたんですけど
それが駄目だったみたいです。

書き込みじたい普段しないんで分からないことだらけです……

695■■■■:2010/02/16(火) 05:51:12 ID:QN9Sjx7U
職人さん真夜中にもGJ!

>>694
>どぅーゆうあんだすたんど?(英語で)が入ってたんですけど
>それが駄目だったみたいです
あれ? だめ?
文末が英文で締められるとダメなのかな。
自分前に文中に英文入れたけどNG食らわなかったから、何が違うんだろ。
ともかくNGワード情報thx。

696■■■■:2010/02/16(火) 11:07:51 ID:gx.F/CTw
英語の「すたんど」がNGらしい。
どういう基準なんだw

697■■■■:2010/02/16(火) 12:02:37 ID:QN9Sjx7U
>>696
情報thx。
すたんどがだめって、どんな言葉狩りだよしたらば。

698腹黒タヌキ:2010/02/16(火) 14:15:34 ID:BzzoMivM
だ〜れもいないみたいだから今のうちにコソコソっと投稿。
2レス消費します。

699腹黒タヌキ:2010/02/16(火) 14:19:33 ID:BzzoMivM
〜私の居場所〜

ー結局、また巻き込んじゃったのよね。「妹達」に、アイツにそして今度はただの後輩までー

自分を慕ってくれるただの後輩にあそこまでの怪我を負わせて、私は何をやってるんだろう。

昨日の夜、寮の部屋のドアを開けたときの衝撃、いつもきれいに整頓されてる部屋がめちゃめちゃに荒らされていた。
しかもすぐ取り出せるようになっている救急セットがいつもの場所から消えていた。
そして、バスルームから漏れる光…

身体が震えた。

その震えを声に出すまいとバスルームで怪我の手当てをしているらしい後輩に声をかけた。
ドア越しの彼女の声は明るく振舞ってはいるが痛みを隠し切れず、ひどい怪我をしていることは明白だった。

…なぜ自分に隠れて傷の手当てをしているのか、
そのことを考えれば答えはすぐにわかる。

自分の怪我に「御坂美琴」が関わっていることを彼女は知ってしまったのだ。

その後、ドアをはさんで背中合わせの会話で私はわかってしまった。
彼女がまだ諦めていないこと、傷つき痛みに耐えながら…その戦う意思は少しも曇りを帯びていないことを、
そして、そんなになってまでまだ自分を気遣ってくれているということを。

ドアを無理やり開け病院に連れて行くことは簡単なことだった。そうすればこれ以上彼女を巻き込まなくてもすむ。
でも、彼女はそれを望まない。

ならば自分の手で、この手で全てをもう一度終わらせる。彼女がこれ以上関わってしまう前に…

そう誓ったのに…

わかっていた。アイツで身にしみてわかっていたはずだった。

また、「絶望」を相手に私が動いていることを知ればアイツはなにもためらわずに突っ込んでくる。
たとえ、どれほど傷つこうが…たとえ、そこに死の罠が待ち受けていることを知っていようが…
そんなことは関係無しに突っ込んでくる…

わかっていた。

私の大事な人たち。この命をかけても守りたい人たち。

自分の回りにいる大事な人たちが、こんなにもお節介でばか者ぞろいだということを。

どうして私は、私の「絶望」は…彼らを、本当に大事な彼らを巻き込み傷つけてしまうのだろう…



足は自然とあの場所に向かっていた。




そう…あの鉄橋に…

700腹黒タヌキ:2010/02/16(火) 14:22:41 ID:BzzoMivM
あの時と同じように、私は一人、川面に映る夜の町並みを眺めていた。
ただ、後悔だけが心を満たしていた。

一人悔やんでいれば落ち着くはずだった…そうしなければいけないはずだった…

それなのに……

「よッ。彼女ひとり?隣は空いてるのでしょうか?」

なんで…なんで…

「…ご愁傷様、わたしの隣は予約でいっぱいよ…」
声がかすれていた。強がりをはくのが精一杯だった。

こいつは…

「それは、残念だな。まっ予約してる奴が来るまでちょっとお邪魔するとしますか。」

私が苦しい時、辛いとき、悲しい時…

「…許可なんて出すと思う?」

いつも勝手に現われて…

「許可されなくても俺がそうしたいからそうするだけさ。」

そうやって、私を甘やかす。

「なんで…ここにあんたがいるのよ。」

答えを聞きたい。なぜ、、あなたはここにいる…

「いや、なんとなくお前がいそうな気がしてな…」

抑えていたものが暴れだす。抑えきらなくっちゃいけないものが暴れて飛び出そうとする。

「あ、あたしは!あ、あんたに頼らなくたって!!一人で、、一人でやれるのよ…」

ウソだ。一人で何一つできない。傷ついた後輩さえ一人では救うこともできなかった。

「あたしを誰だと思ってるの!学園都市で7人しかいないレベル5なのよ!!それなのに、
それなのに…あんたは……」

「しゃあないだろうが…オレはお前を守るって決めてるんだから。」

夏休み最後の日の言葉を思い出す。

勘違いしちゃあダメだ…勘違いしちゃあダメだ…かんちがいしちゃあ……

「…かんちがい、しちゃうかもよ…」

「ん?」

「私が勘違いしちゃうかもよ!責任とってくれるの!!」
お願い…神様……どうか…どうか……




こいつが突き放す言葉を言ってくれますように…




「ん〜〜俺が勝手に決めてることだしナ。責任とってと言われても、もともと責任はオレにある気がするからいくらでもとるけど?」

「なんで、なんで、、私にそんな価値なんかない!アンタに命を懸けて守ってもらえるようなそんな価値なんかない!」

心が…闇に飲み込まれる…

「私が、私さえ存在しなければ……あんただって傷つかないし、黒子だって傷つかなかった。「妹達」だって…」

心の闇が、正直な心と裏腹な言葉を紡ぎだす。

「は〜〜〜」
頭をガジガジとかきながら、アイツは思いっきりため息をついた。

「な、なによ…本当のことじゃない…アンタだって本当はこんなことに巻き込まれて不幸だって思ってるんでしょ!」

違う、違う、、こんなことを言いたいんじゃない!言いたいんじゃない!!言いたいんじゃない!!!

「お前な、、そんなに泣きながら強がっても強がりにもならんぞ…」

「泣いてない!」
私は泣かない!泣くわけがない!!泣く資格なんかあるわけがない!!!

いきなり視界がふさがれた。
抱きしめられてることに気がついた時、全ての思考が停止した。

「泣けばいいさ。おれに見られるのがいやなら、こうすりゃあオレからは見えないぜ。思いっきり泣けよ。」

「ば…ばか……」

「俺が人の事言えるわけはないけどな…前にも言ったよな。なんでもかんでも抱え込もうとするなよ。
すくなくても俺はお前と同じ場所に立ってるつもりだぞ。悩んでたら相談にのるし、泣きたい時に胸ぐらいいくらでも貸すさ。」

「……責任取ってよね……」

「あ〜いくらでも取ってやるさ。おまえがわらってくれるのならな…」

責任とってよね。アンタはあたしが泣き顔を見せたただ一人の男なんだから…

そして、私はその胸にすがって、少しだけ泣いた…。

勘違いでもいい。

アンタはいつでも信じられないタイミングで現われる。
私が苦しい時、辛いとき、悲しい時にいつも現われてくれる。
そして救ってくれる。闇にとらわれそうになる私の心を…
それがとても悔しくて、敵わないと思い知らされて…
私の心を満たしていく…光が、やさしさが、あたたかいなにかが…

そのあたたかいなにかの名前を今はまだ私は知らない。今はまだ知りたくない。

ただ、今、このとき、この腕に抱かれて、この胸の中で…私はしあわせだ……しあわせだ。

それで充分だ。

けれど、幸せすぎて不安になる。だから祈る。

自分勝手だと思う。けれど祈ることをやめられない。

神様、神様、どうかお願いです。この人を、このひとを…この場所を……私から奪わないでください。

私の居場所は……ここにしかないのですから……

私が素直に泣けるところは…

701腹黒タヌキ:2010/02/16(火) 14:27:07 ID:BzzoMivM
終わりです。

場面は8巻、黒子へのお見舞いの後のシーンだと思ってください。
前回の「・・だからお前は笑っていて良いんだよ・・」に続いての鉄橋シーン妄想です。
これのシリーズで書いていきたいと思ってます。
前回手をつなぐから、一応抱擁までステップアップ。
だんだんいちゃいちゃ度を増して、、いけるのだろうか、、

702■■■■:2010/02/16(火) 16:47:14 ID:IPl1sMrM
>>701
GJ!
美琴かわいいですのお

703■■■■:2010/02/16(火) 17:20:23 ID:j.pLbFIY
バカヤローー
どんだけ楽しませてくれるんだ!!

704■■■■:2010/02/16(火) 19:02:27 ID:fYJJlv5M
GJ!!2828がとまらない

705■■■■:2010/02/16(火) 19:08:22 ID:M4Lzb0qk
ネタ投下

美琴「珈琲いれたけど、佐天さんと初春さんは砂糖いくつ?」

佐天「私は二つで」

初春「私は一つでいいですよー」

美琴「はい、どうぞ」

佐天「どうも」

初春「ありがとうございます」

美琴「アンタは一つで良いんだったわね」

上条「ああ、サンキューな」

初春「? どうして上条さんの好みを御坂さんがご存知なんですか?」

上条「え?」

美琴「あ…」


何気ない仕草から二人の関係がばれる、あるいは勘繰られるなんてのを妄想してみた。
もちろん続かないし続けない。

706■■■■:2010/02/16(火) 19:51:16 ID:GEdy52yo
男前が一人もいないwwwwww
ttp://tr.im/KPSz

707■■■■:2010/02/16(火) 23:27:41 ID:DW0JIVqY
>>701
こういういちゃいちゃと言うより心にジーンとする作品もいいですね〜
当麻が美琴の止まり木になっているようでGJです。

>>705
GJ! 美琴迂闊ww

708ミーナ ◆zfqD0wujwA:2010/02/17(水) 02:01:00 ID:PrhIOtGw
職人GJです。なんか皆のレベルが高くなってる。
受験が無事?に終わったので顔をだしみたり。
明日には投下する模様。
ネタ考えとかないとな・・・

709■■■■:2010/02/17(水) 02:13:11 ID:6k7Ek6F2
テストテスト
「・・・」といった。

しかし上条さん

知らないですよ。。


二行あけるとどうなる\\\
こんな感じ。



あああああ
テスト終了。

710■■■■:2010/02/17(水) 02:30:23 ID:JxmuH6uc
ネタ

一枚のディスクがある
ラベルには『学園都市』とだけ書かれている

再生された映像はひどいノイズまみれ、まるでダビングを重ねたビデオテープのように
映し出された映像は辛うじて女性と見てとれる
音声も何とか聴き取れるようで、画面に向かってその女性が語り始める



まずは何からお話するべきかしら…、やっぱりあの人の事からかしら
そうね、あの人が居なかったら今の学園都市は勿論、世の中すらも変わってしまってたかも知れませんからね
あら?誇張じゃないかって?
フフフ、それはアナタがあの人の事を知らないからそう思うのよ?
そう、凄い人だったの、私の運命すら変えてしまったんですから
私だけじゃないわ、あの人に救われた人、道を示された人、未来を守って貰った人…それはもう数え切れないくらい
会ってみたかったですって?
それは………お勧め出来ない、わね…
だってアナタ女の子じゃない?
ダメよ、ダメダメ!
アナタ自分を大事になさい!?
いや、その危険て訳じゃなくて、ってダメったらダメなの!!

……
ごめんなさい、少し取り乱してしまったわね
違うの、あの人が手が早いとかそういう事じゃないのよ?
女性しか助けない訳じゃないし、下心があって行動する訳じゃないし
でもアイツが関わる事件は女性絡みが多いのも事実なのよね…
この前も見知らぬ迷った女の子を家に連れて来たりして何考えてんのよ、アイツは!?
そりゃアイツの性格からして困ってる人を見過ごせないのは分かるけど、
よりにもよって私が居る家に連れて来る事はないでしょ!?
あーもう、イライラする!!

……
ご、ごめんなさい、また取り乱して…ええ、大丈夫
どうもあの人に関わる事となると感情的になってしまうのよね
え、そ、そうね、あの人の事は置いときましょう
学園都市の「おーい、帰ったぞー」
ちょっ、声入っちゃったじゃないの!!何考えてるのよ!!
あ、ごめんなさい途中だったのに、って!
あぁぁ、そんな興味を示さないで!お願いだから!
ちょっと待ちなさいっていってんでしょーがゴラァ!!!バチバチッ、ブツンッ

───ココで映像は途切れている

最終回連想モノでした

711■■■■:2010/02/17(水) 02:32:46 ID:JxmuH6uc
とりあえずNGワード情報
「い え で し ょ う じ ょ」(勿論漢字)
迷った女の子に変えて何とか投下でけたorz

712■■■■:2010/02/17(水) 02:56:25 ID:Or7.t6DM
>>711
この出だしはコミケ77のマブラヴCD?

713寝てた人 ◆msxLT4LFwc:2010/02/17(水) 04:35:47 ID:H2R/N7eM
ぬるぽ

714■■■■:2010/02/17(水) 04:39:45 ID:NwHFr98c
>>713
ガッ

715未来の娘の訪問:2010/02/17(水) 05:42:50 ID:SPoDkxKc
この間の続きを投下します。
注意点は相変わらずながら
・イチャイチャは無いでしょう。
・レールガンでの友人(白井、初春、佐天登場)
・とりあえずプロット作り、ラストまでの構成は終わってます

消費は2レスほど

716■■■■:2010/02/17(水) 05:43:29 ID:SPoDkxKc
いっただきまーす!」
「「いただきます……」」
美零は嬉しそうな一切れのハンバーグをフォークを使い、大きく開けた口に放り込む。
一方隣に座る美琴と向かいに座る当麻は、脱力しきっており料理に手をつけてない……
それもそのはずだ、良い雰囲気で美琴と当麻がキスをしようとした寸前で美零達が現れ、恥ずかしさの余り漏電した美琴に電撃を浴びせられ、
御坂妹は驚愕し何やら叫びながら走って行き、カエル顔の医者とナース達は『やれやれ』といった表情で扉を閉めようとし、
美零は「パパとママがラブラブだぁ〜」と抱き付いてきて、先ほどまでの空気はもはや何所にも無かった。

その後本来は入院した方が良いのだが、美零の件や暗部残党の強襲を懸念し帰宅する事に、
帰宅途中に昼食としてファミレスに入り、こうして家族三人で食事をしている所だ。
「アレ〜?二人共食べないの?オイシイよ!」
美零は二人の空気等気にせず笑みを振りまいており、二人はそんな美零を見て気を良くしたのか、沈んだ顔が明るくなり料理に手をつけ始める。
「ん、当麻は食べないの? ……あっごめん、右腕固定させてたっけ? ……ハイ、あーん?」
右腕固定はしなくても良かったのだが"念のため"と言う名目でカエル顔の医者に処置され、上手く食べられない当麻の料理を美琴が箸で掴み口元へ持ってゆく。
「いやいや、自分で食べますって! さすがに……その……」
当麻の顔が若干赤みが現れると美琴も、今ファミレスで周囲の目がチラチラとこちらを見ている事に気づき、赤らめる。
「ええぃ! ケガ人は大人しく言う事聞けぇ!」
その様子を見ていた美零は、自分の分の一切れのハンバーグを美琴のように当麻へ差し出した。
「……ええぃ! こうなりゃなるようになれだ!」
自棄気味に美琴が差し出している箸と料理を口に含み、美零が差し出すハンバーグも食べる当麻だった。


「ふぅ、上手かったな」
「そうねぇ〜何だかいつも以上に、美味しかった気がするわ」
「美零もお腹一杯〜」
口元にハンバーグのソースを付けている美零に気づき、口元を拭いてやる美琴を見てると(本当に夫婦みたいだよな)と考える当麻だったが、
「お姉様〜ぁぁぁぁ」とファミレス入り口から聞えた声に美琴と当麻は一瞬にして凍りつく、
物凄い勢いで走り寄ってきたのは、美琴と同じ常盤台中学で"風紀委員≪ジャッジメント≫"の白井黒子だ、
「待ってくださいよ白井さーん」
「御坂さん居たんですか〜?」
と更に続く声に美琴の顔は青くなる一方だ、白井の後に現れたのは初春飾利、彼女も白井同様、風紀委員であり、
初春の同級生で友人の佐天涙子が後に続いている。
存在その物が危険分子となった美零は、青ざめてる美琴の頬を掴み心配そうに覗き込む。
「……あらあら! 可愛いですわね、お姉様の姪っ子でしょうか?」
「あ、本当だ。御坂さんソックリ」
「姪っ子って言うより姉妹に近いですよね〜」
美零を見つけると白井は両手で抱えて、後ろに居た佐天と初春に向け、頭を撫でたりするが、美零の顔は今にも泣きそうに涙を瞳に溜めてる。
突然現れた、見知らぬ彼女達に母親である美琴の顔が青ざめ、いきなり抱えられた為だ。
青ざめていた美琴はすぐさま美零を白井から奪還すると、頭を撫でてやると穏やかな顔になり涙は止まった。
「ふぅ、良し良し。……ちょっとパパと一緒に居てね〜」
と美琴は美零を抱え、反対側に居る当麻に預けると白井達に振り返る、どうしたものかと脳の演算をフル回転させている。
ルームメイトの白井には、寮長が"とある事情≪美零≫の為休学し外泊する"と告げられているはずだ。
詳細は混乱と無用な問題を回避する為知らせないでいたのが……
「今その子にパパって言いませんでした? 御坂さん」
最初に切り込んできたのは佐天だった、彼女は事こういった事には素早く勘も鋭い。
その『パパ』という言葉に白井は美琴の後ろに居る、当麻を見ると顔が一気に青ざめてゆく。
「お、お姉様!? まさか、そこの類人猿……もとい殿方と、ふ、不純異性交……」
そこまで言うが精一杯か、白井はショックで気を失い、後ろに居た佐天、初春が支える形となり、美琴は片手で顔を覆い溜め息をついた。

717■■■■:2010/02/17(水) 05:43:43 ID:SPoDkxKc
「――という訳なのよ」
美琴と美零が座っていた席に窓際から、白井、初春、佐天の順に座り、向かいに当麻、美零、美琴の順で座っており、
白井はすぐに目を覚ますが酷く沈んでおり、美琴の説明を聞き終わる頃には、テーブルに顔を付けている。
「じゃその子は御坂さんと、と、当麻さ――」
佐天の頬が赤みを増しながら、歯切れが悪くなった途端、美琴の威圧的な視線を感じる。
「……上条さんの子供なんですよね!?」
(御坂さん何だか怖い、それほど上条さんの事好きだったのかな?)と美琴の視線を脇から見ていた初春は生唾を飲み、佐天は冷や汗を掻いている。
「まぁ、美零の言葉を全部信じるならな、何年後から何しに来たのかは、まだ教えてくれねぇし」
白井以外の視線が美零に集まり、当の本人は急に見つめられ、照れて顔を真っ赤にし、当麻の腰に顔を埋めてた。
「とりあえずそういう事だから、この子が未来に変えるまでは世話をする事したから、それまで一人だけど我慢してね黒子」
「え? 御坂さんは何所で寝泊りしてるんですか?」
「そうそう、話の中でも上手く抜かれてましたけど?」
二人の追及に心臓が高鳴り、(しまったー!)と頭の中で悔やんでいると横から、
「あー俺んちで美零と三人で寝泊りしてるけど?」
当麻の何気ない告白に、美琴は顔を真っ赤にし、佐天と初春も顔を赤らめ、白井は鬼の様な形相になり当麻を睨みつける。
(やべぇ、俺変な事言ったのか? ……不幸だ)
初春と佐天は当麻の発現に二人で小声で何やら相談していた――その時だ、
ファミレスの外の車道から車が歩道を挟んで当麻達が居る窓へと突っ込んで来た。

718■■■■:2010/02/17(水) 05:51:07 ID:SPoDkxKc
こちらも仕事と読書勉強の合間に書いた物です
イチャイチャもないしこんな駄作の続編作る必要ないと思ってたましたが
途中放棄もアレなのでプロットを考えましたが、いろいろとアレなので
もう一つ48氏へのお詫びの為に書こうとしていた、混浴ネタも混ぜて構成してみました。
がしかし、現在続きの執筆意欲が湧かない為、しばらく時間をもらう事にします
多分次スレ位かなと思うので、よろしく

719■■■■:2010/02/17(水) 06:13:41 ID:SPoDkxKc
あー、よく見ると誤字が多い
見直しはしてたのにな……

・「この子が未来に変えるまでは」→「この子が未来に返るまでは」

・「初春と佐天は当麻の発現に」→「初春と佐天は当麻の発言に」

申し訳ない修正よろしくです

720■■■■:2010/02/17(水) 06:24:26 ID:H2R/N7eM
うおーっと誰も居ないかと思って適当レスしてごめんなさい

>>717
読みましたGJです
学園都市ってあのまま行くとタイムトラベルくらいやってのけそうですよね

721■■■■:2010/02/17(水) 06:50:05 ID:H2R/N7eM
連投すんません

>>651
これ、増えたから上げときますね
ttp://kissho.xii.jp/1/src/1jyou105178.txt

あとタイミング悪いので私は寝て起きてから投げますねー

722■■■■:2010/02/17(水) 08:26:42 ID:8zfqsbvs
>>721
>これ、増えたから上げときますね
うお、あの時の住人さんが! 超thx!

723■■■■:2010/02/17(水) 09:19:56 ID:/hOItOQM
>>721
「ちくしょう」ですが、

美琴は16巻で、
(だーちくしょう……。結局、寮のユニットバスを使う羽目になるのか)
と思ってますね。

黒子も意外に10巻で使ってますねえ。
「…お姉様オーラの大インフレは!? ち、ちくしょう。こうなったらわたくしも覚悟を決めますわ。」
上条さんはしょっちゅう使ってるw

724■■■■:2010/02/17(水) 09:25:07 ID:/hOItOQM
補足。
「ちっ、空間移動なんぞ使いやがって。変なウワサ流したら承知しないわよちくしょう!」
3巻で普通に言ってるやw

725■■■■:2010/02/17(水) 12:24:20 ID:z.tRsDWw
書きためてから投下してほしい

726■■■■:2010/02/17(水) 12:49:19 ID:dK8FPQPs
>>721
ついでに、黒子はSSで「ストパだっつってんだろ!!」って言ってます。
口調がww

あとついでに初春は原作で返事が「あい」になってる時もあったかな。
漫画やアニメとは微妙に性格が違う気がする………

727■■■■:2010/02/17(水) 12:59:07 ID:dK8FPQPs
連投スイマセン

>>721
自販機のある場所(上条と美琴が最初にあった場所)ですが、
3巻に「路上にポツンと立つジュースの自販機の前で呆然と立ち尽くしている。」とあるので
公園じゃないっぽい。

ついでにいうとその後は繁華街のバスの停留所のベンチに行ってる。
だから多分自販機の近くにはベンチがない。

こ、これじゃあ今までの俺の作品は一体……orz

728■■■■:2010/02/17(水) 13:21:25 ID:Or7.t6DM
>>727
美琴は特定な自動販売機にあれやってるわけじゃないっぽいな
14巻の49ページでは駅前だし、美琴のセリフでも
「ここの自販機はダメなのか。あれー…?」ってあるから
どこでもやってんじゃねぇ?

729■■■■:2010/02/17(水) 13:59:24 ID:LzAb9BAk
>>721
寝てた人氏が起きた時が楽しみです!ww

730D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/17(水) 14:23:39 ID:Vh/fZ4t6
 お邪魔します。
どなたもいらっしゃらないようでしたら
職人さんが起きられるまでの間にネタを1つ、10分後に投下します。
「永遠 If_tomorrow_comes.」17レス消費予定。
話としては「Ti_Amo.」「Once_in_a_lifetime.」の続きに当たります。
本日前半9レス、明日以降に残りを投下します。


Ti_Amo.は
>>101-108
>>243-252

Once_in_a_lifetime.は
>>502-512

になります。

731■■■■:2010/02/17(水) 14:24:27 ID:w1PL4zrU
>>719
GJです!
続きは気長に待ちますね。

もしかして、
「この子が未来に帰るまでは」
ではないかな?とちょっと思いまいた


>>721
寝てた人氏そろそろですかw

732永遠 If_tomorrow_comes.(1):2010/02/17(水) 14:37:17 ID:Vh/fZ4t6
 さんざんな一日だった。
『白井さんには内緒で』と初春飾利と佐天涙子に呼び出されてファミレスに来てみれば監視カメラによる記録映像と思しき『上条からおでこにキスされる美琴』の姿をネタにあれやこれやを聞き出されたのでマニカーニのケーキをおごると約束して口止めした後二人と別れてゲームセンターにでも行って気晴らししようと思ったら命知らずの男達に絡まれたので面倒だから雷撃の槍を連発して追い払ったら逆に警備ロボに追い駆けられて、何かもうあんまりなので上条にメールでもしてみようかなと携帯電話をポケットから取り出したところで黒髪ポニーテールの長身で美琴では到底太刀打ちできない母性の塊を持った女性と上条が仲良く歩いているところを見かけて『グラマラスな女隣に侍らせて鼻の下伸ばしてんじゃないわよアンタはーっ!』とバッチンバッチン言わせて上条を追い回し問い詰めるつもりが逃げられた。
「はぁ、いろいろゴロゴロと面倒ばっかり……もうどうなってんのよ」
 クリスマスが近づき浮き足立つ街角で、御坂美琴は薄っぺらなカバンを肩に担いでお嬢様らしからぬため息を一つ。
「でもアイツ、マフラーちゃんと着けてたな……」
 先日、美琴は上条当麻にお手製のセーターとマフラーを一揃いプレゼントした。
 美琴の前で上条がそれを初めて身につけて、嬉しそうに笑って『似あうか?』と聞かれたときはさすがの美琴も卒倒しそうになった。改めて私ってコイツの彼女なんだなあとこみ上げるものを実感してから早三日でもう『あれ』だ。上条のフラグ体質は理解していないわけではないけれど、いい加減落ち着いて欲しいと美琴は思う。上条の母・詩菜も夫・刀夜に対してほぼ同じ感想を持っているがこちらは年季が入っている上に美琴と詩菜はこの件について話しあうほど深い付き合いもない。
 美琴の視界の先で、走って逃げる上条の首元に『ここまでおいで』と手招きするがごとく風になびくマフラーを見て、上条の浮気疑惑に怒りで頭が沸騰しそうになりながら同時に緩む口元を抑えきれず、それが邪魔して上条を追いきれなかったのだがそのあたりは脇に置く。

733永遠 If_tomorrow_comes.(2):2010/02/17(水) 14:37:40 ID:Vh/fZ4t6
 ガラス張りの何処かの店頭で美琴はもう一度はぁ、とため息をつく。私今どんな顔してるんだろとぐったりしながら振り返って
「わぁ……新作かな、これ…………」
 そこに展示されていたのは一着のウェディングドレスだった。
 美しく着飾ったマネキンの足元にはとあるデザイナーの名前が刻んだプレートが置かれている。美琴がショーウィンドウに顔を近づけてのぞきこむと、やはり美琴の好きな有名デザイナーの手による逸品だ。純白のウェディングドレスはいつの時代も女の子の憧れだが、美琴は特にプリンセスラインという豪奢なドレープのついたデザインが好きだ。どんなものかわかりやすく一言で言うとフリフリのひらひら、である。
「良いなぁ。私もいつかこういうのを……いやいやいやそうじゃなくって!」
 美琴は首をぶんぶん横に振り、ここ数日立て続けに美琴を見舞った腹立たしさの原因を思い出す。
 何度ああいった光景を目にしただろう。
 上条の隣に最初は霧が丘女学院の制服を来た眼鏡で巨乳の女の子、その三日後には二重まぶたがぱっちりとした巨乳の女の子、さらには金髪年上セクシー系でどう見ても上条のストライクゾーンな女性、そこから行って緑のジャージを来た巨乳の……あれは警備員だったから大方上条は叱られていたのだろう。そして最後に黒髪ポニーテールで―――いくつなんだあの女は。
「次から次へと巨乳、しかも全員私より、いや下手するとあの馬鹿より年上ばっかり……アンタは姐さん女房系巨乳マニアかっつーの」
 私だってちょっとはその……とぶつぶつ何事かを呟いてから美琴はうつむき視線を胸元へ。
 日頃から上条に中学生だのガキだのと言われては何故か無性に腹が立つ美琴としては、後輩・白井黒子の指摘通り心の奥底に早く大人なボディになりたいといった密かな願望を持っている。故に母・美鈴の言うとおりいっぱい食べればいっぱい育つのかとハンバーグをぱくついてみたり風紀委員の固法美偉を見習ってムサシノ牛乳を白井と二人でがぶ飲みしたこともある。上条が自分の外見ではなく年齢を気遣うあまり『本気で』相手にしないように意図しているのもわかっているが
「……何でアイツの知り合いは次から次へと……揃いも揃って……よりによって」
 ―――気になる。
 やっぱり大きさは正義なのだろうか。

734永遠 If_tomorrow_comes.(3):2010/02/17(水) 14:38:04 ID:Vh/fZ4t6
 心の中で上条に変な設定のレッテルをベタりと貼りつけてから、美琴は呟く。
「アイツに『本命』がちゃんといればこんなに騒がないで済むんだけどさ……」
 美琴と上条は恋人同士だが、今の状態は限りなく美琴の片思いに近い。美琴が告白し、上条がそれを受け入れて、晴れて二人は彼女彼氏となったのだがまだまだ上条を『彼氏』と言って周囲に紹介できるほどの段階ではないと美琴は考えている。
 まず上条の反応が薄い。それでも最近は改善の余地が見えてきたが、恋人っぽいイベントにはあまり関心を示さないし自分から動くこともない。普通の恋人同士なら彼女の誕生日と血液型くらい知ってそうなものだが、美琴は上条からそれを聞かれたことはない。聞かれない事に腹が立って美琴から教えた事もない。美琴は以前上条の能力を調べるため書庫に侵入を試みて、その時上条の誕生日と血液型を『偶然』知ったのだが、あとになって占い雑誌で調べてみたら星座別でも血液型別でも二人の相性は最悪だった。上条が美琴をスルーし続ける源はここにあるのかもしれない。
 反応が薄いことよりもっと問題なのは、当の上条から美琴のことを『好きかどうかわからない』と言われている事だ。これについて美琴は上条に『一生片思いで構わない』と宣言しているが、上条に誰か特定の人がいるのではなくあっちへふらふらこっちへふらふらしている(ように見える)のがとにかく気に食わない。
 目下上条の『本命』に一番近いはずの『彼女』でありながら、美琴の心は落ち着かない。こんな調子で一生かかって上条を振り向かせることなんてできるのだろうか?
 あの馬鹿どこに行ったのよと周囲をキョロキョロしてみると、美琴のポケットの中で携帯電話がカエルの鳴き声に似た着信音を響かせる。美琴はスカートの脇に手を突っ込んで二つ折りのそれを取り出し、パカッと開いて着信画面を確認した。
 噂をすればあの馬鹿だ。
 美琴は心を鎮めて二回大きく深呼吸すると、通話ボタンを押しながら受話器を耳に当て腹の底に力を込めて
「こ」
『おいこら、出会い頭に電撃は止めろって。大事なマフラーが焦げちまうだろが』
 上条の大げさなほどにため息混じりの声が、美琴の『こらーっ! アンタ今どこにいんのよ!?』と続く叫びを遮る。
『っつーかさ、俺に説明する間も与えずいきなりビリビリしながら追いかけてくんじゃねーよ。……お前、今どこにいる? GPS認証用のコードメールよこせ。そっちに迎えに行くから』
 受話器の向こうでガリガリと頭をかく音が聞こえる。どうせ『しょうがねえなあ』とか『面倒臭えなあ』って思ってんでしょとぼやきながら美琴は携帯電話のボタンをポチポチと操作して画面を切り替えると内蔵アプリを呼び出し、次にメール送信ボタンを力いっぱい押し込んで
「……送ったわよ」
『…………ん。今届いた。えーっと……』
 上条はメール受信画面に切り替えたらしく、声がしばらく途切れた。
『こっからだとちっと遠いな。五分……いや、一〇分くらいかかるけど待てるか?』
 美琴は『アンタどんだけ遠くに逃げたのよっ!?』と怒鳴りつけたくなるのをこらえて
「わかった。待ってる」
『勝手にどっか行くなよ? じゃあな』
 プツッと言う音と共に、回線は途切れた。
「……こんなところにいたらナンパされちゃうじゃない。さっさと来なさいよ、あの馬鹿」
 携帯電話を折りたたんでポケットにしまい、上条が迎えに来てくれると言う嬉しさを先程の腹立たしさでごまかして、美琴は手近な壁に寄りかかって背中を預けると両手で薄っぺらなカバンの取っ手を持ってブラブラさせた。
「早く来ないかな……」
 ジングルベルが絶え間なく流れる街角で、美琴は彼氏のお迎えを待っている。

735永遠 If_tomorrow_comes.(4):2010/02/17(水) 14:38:26 ID:Vh/fZ4t6
「うす。待ったか?」
 眠そうな目の端に、無用な運動の結果による疲労を浮かべた上条が美琴の前に現れた。
「……遅いわよ」
「あーはいはい悪うござんしたね」
 必死にいら立ちの表情を作っていかにも『私怒ってるんだけど』と演技する美琴に、上条は悪びれない素振りで明後日の方向を向いて美琴の右手を取った。
「お前、今から時間あるか?」
「寮に帰ってもすることないから時間はあるわよ。何か用?」
 平静を装い横目で上条を見ながら声の震えを抑えつつ、美琴は『やっとデートに誘ってくれる気になったのかしら』と上条の次の言葉を待つ。期待することはあきらめたつもりだが、いざとなるとドキドキしてしまう。
「あれこれ考えてみたんだけど思いつかねーからもうこの際お前に聞いちまおうと思って」
「何を?」
「お前のサイズ」
 なっ……!? と美琴は言葉に詰まり、続いて手に持った薄っぺらなカバンで慌てて胸元をガードして
「何考えてんのよ!?」
「何って……だって俺お前のサイズ知らねーし。こないだセーターとマフラーもらったしさ。だからってわけじゃないけどクリスマスプレゼントは服あたりがいいのかなって。ああ、俺のセンスには期待すんなよ? そのためにお前に一緒に来てもらおうと思ってっから」
 女もフライドポテトみたいにSサイズとかMサイズなのか? と上条が無頓着に問いかける。美琴は両手で頭を抱えたかったがあいにく両手がふさがっていたので代わりに盛大なため息をついた。
「……アンタね、女に服贈る意味って知ってんの?」
「知らねーけど。何か意味あんの?」
「じゃ、そこの店員にでも聞いてきたら?」
 美琴が少し離れたところでガラス越しに二人の様子を伺うブランドショップの店員をしれっと指差すと、
「わかった、ちょっくら行ってくる」
 美琴とつないでいた手を離し、素でその場を離れようとした上条の首根っこをとっさに美琴が掴んだ。
「ばっ、馬鹿! んな事人に聞くんじゃないわよっ!」
「人に聞けって言ったり聞くなって言ったりどっちなんだよ?」
「いっ、いっ、いっ、良いでしょそんなのどっちでも!」
 相手に服を贈る意味は諸説あるが、男性が女性に衣類を贈る場合はその服を『脱がせる』下心が含まれるという都市伝説が存在する。美琴は遠まわしにそれを指摘したのだが、上条は知らなかったらしい。
「……服じゃダメなのか? じゃあ下着とか」
「もっとダメに決まってんでしょ!」
 下着の場合はさらに危険だ。詳しくは白井黒子を参照されたい。白井の場合は美琴に防御力の低いものを着せて恥じらう様を楽しむ事も含まれているのでもっともっとまずいと思う。
 美琴は羞恥に染まる頬を隠すべくその場で自分の腰を軸に体を右回転。左手に持った薄っぺらなカバンに遠心力によって発生した運動エネルギーをすべて乗せて型崩れしないよう革で補強された細い側面を力いっぱい上条の顔面に向かって叩き込む。美琴に襟足をつかまれた上条は逃げることもできず美琴の体重と遠心力が余す所なくかかった常盤台中学指定学生鞄の一撃に
「ぷげぼばっ!?」
 細く長く続く職人芸の縫い目跡をくっきりと頬に刻んで為す術も無くその場に崩れ落ちた。

736永遠 If_tomorrow_comes.(5):2010/02/17(水) 14:38:59 ID:Vh/fZ4t6
 右手は鞄、左手は美琴の手を握っているため細長に腫れ上がった頬をさすることもできない。美琴の隣を歩く上条は『不幸だ……』とうなだれながら自分の何が悪かったのか理由を探し続けている。
「なんで俺は彼女からカバンでひっぱたかれなくちゃならないんでしょうか……?」
「アンタが無神経なのが悪いんでしょ。自業自得よ」
「無神経ってそんな……意味わかんねーぞ」
 上条の目には冗談でも何でもなく大粒の涙が浮かんでいる。よっぽど痛かったらしい。
 鈍い男への制裁は終わった。仕方ないからクリスマスの予定について自分から水を向けてみようと美琴は思い直して
「そうだ。二四日、もちろんアンタ空けてあるわよね?」
「……いや、もう先約が入ってる」
「はぁ?」
「と言うより、二四日込みでその前一週間びっしり埋まってる。だからその週はお前、うち来なくて良いぞ」
「ちょっとそれってどういう……まさかアンタ、また『外』に行くわけ?」
 美琴はこれなら納得できる、という答えを即座に取り出す。以前にも上条が美琴に黙って外へ出て、連絡が取れなくなった事態を身を持って体験していることもあり、美琴の表情が不安で曇っていく。
「そうじゃねえって。……ちっと用事があってその間は抜けられそうにねーんだ。帰りもたぶん遅くなるし。お前、その日何か俺に用事でもあんの?」
 クリスマスは救世主誕生前夜の二四日にお祝いのごちそうを食べ、生誕当日は質素に過ごすのが一般的な十字教徒の過ごし方だ。クリスマスプレゼント、というのも一二月六日の聖ニコラウス生誕日にオランダ系十字教徒がプレゼントを贈り合ったのが、いつの間にかクリスマス合わせにずれ込んだだけに過ぎない。ましてや日本ではレストラン業界やホテル業界その他もろもろによる奇妙な圧力のおかげでクリスマスと言えばデートの日と歪んだ風習が広まり、真の意味で一二月二四日が何のために存在するのかを知らない人間のほうが圧倒的だ。赤髪の神父ステイル=マグヌスも自らの破戒ぶりを棚に上げて日本の堕落さ加減を罵っていたが、ローマ教皇以下お歴々がこの街の景色を見たら揃ってひっくり返って腰を抜かすかもしれない。
 上条は『竜王の殺息』の余波を頭に受けて七月二八日以前のエピソード記憶を失っている。つまり今年のクリスマスは上条にとって『初めて』迎えるクリスマスである。加えて以前同居していた銀髪碧眼の敬虔なるシスターによるありがたい薫陶もあって、一二月二四日はちょっと奮発したご飯を食べて親しい人にプレゼントを贈る日という知識だけを持っており、美琴とデートすると言う意識はほとんどない。
「あ、あ、あ、アンタねぇ………………」
 美琴は上条の記憶喪失を知ってはいるが、何をどう失っているのかまでは上条の懇願により深く把握していない。だから上条の答えは上条自身にとって当たり前のことでも、美琴にしてみればあまりにも酷な一撃だった。
「ん? どうした? 何かあったのか?」
「……何でもない。アンタがそういう奴だって言うの忘れてただけ」
「ああ、あと冬休みはほぼ全部補習が入ってっから。今年は実家に帰れそうにねーな」
 上条はうわー俺って改めて不幸だと嘆息するが、むしろそれ以上に悲しい思いをしているのは帰省の日程を全面的に書き換えてローテーションで上条の補習を受け持つ担当教諭月詠小萌以下不幸な教師の面々だ。中には親がセッティングしてくれたお見合いを蹴って人生のチャンスを棒に振った教師の鑑もいる。
「そう。……私は二八日に実家帰って、四日こっちに戻るから」
 美琴は心の中で密かに立てた年末年始の上条との予定を丸めてゴミ箱に叩き込んだ。
「ふーん。……じゃあ駅までの送り迎えはしてやんよ。時間が決まったら後で教えてくれ」
「うん。ありがと」
 一生片思いで構わないと言った手前、顔をひきつらせながら物分かりのいい彼女を演じる美琴はきっと、世界で一番不幸な『彼女』だろう。

737永遠 If_tomorrow_comes.(6):2010/02/17(水) 14:39:24 ID:Vh/fZ4t6
 せっかくアイツが気に入るかと思って髪を伸ばしてみたけれど、あの馬鹿クリスマスにも気づかないしアッタマきたからこの際バッサリ切ってやる。
 美琴の今の心境を文字にして表現するならこんな感じだろうか。
 美琴は携帯電話の登録番号リストを開いてとある美容院の番号を呼び出し、通話の準備を始める。空いているなら予約を入れてさっさと切ってしまいたい。
「黒子ー、坂島さんっていつごろ空いてるかアンタ聞いてる?」
 坂島道端は常盤台中学指定美容院の店主だ。髪と血液、そして唾液は能力者のDNAマップを回収する格好のサンプルとなるため、入学条件は強能力者以上と基準を設けている常盤台中学では特定の『身体』に関係する業者について徹底的なチェックを行い、条件を通過した相手のみと提携し生徒への利用を徹底させている。美琴から見ると坂島はやる気はおろかファッションセンスも欠けているように思えるが腕は確かだ。そして何故か白井と馬が合うように見える。学校指定の美容院は他にも存在するが、白井と同じく美琴も坂島の美容院で定期的に髪を整えてもらっている。
「二四日は予約でいっぱいだそうですけれど、その前まではガラッガラで閑古鳥が鳴いてるっていじけてましたわ。お姉様、御髪に手を入れられるおつもりですの?」
「そうそう、『おつもり』ですのよー。ここらでバサッとイメチェンでも図ろうかなーってね」
 厭わしげに髪を手で払う美琴のおちゃらけたような言葉に顔をしかめて
「お姉様、乙女が長く伸ばした髪を切り落とすときは失恋の時と申しますけれど、まさかお姉様を振るような馬鹿な殿方がこの世に存在しますの?」
 白井は太股に巻きつけたホルダーから一本の金属矢を引き抜き、目の高さに持ち上げると美琴の前で『そんな命知らずがいるならこの金属矢をお見舞いしますの』と構えて見せる。美琴はその言葉をそっくりそのまま上条に叩きつけてやりたいと言う思いを口の中で噛み砕いて
「そそそ、そんな奴いないわよ。だいたい私誰とも付き合ってないし? ただね、伸ばすの飽きちゃったから思い切って切りに行こうかなってね?」
「そう言えば、近頃お姉様は週二回寮の夕食をキャンセルされてらっしゃると土御門から聞いてますけれど、それは何か……夕食の時間に定期的に戻って来れない理由でもございますの? ……殿方がらみで」

738永遠 If_tomorrow_comes.(7):2010/02/17(水) 14:39:56 ID:Vh/fZ4t6
 近頃、常盤台中学ではとある噂話が校内を賑わせている。
 生徒達の声を拾い上げてみると『以前から御坂様はお美しかったですけれども最近はその美しさに磨きがかかられて』『御坂様の心を射止めた素敵な殿方がいらっしゃるようですのよ』『もしかしてその方は夏休みに御坂様が逢引されたお方かしら』『御坂様があのように頬を染めてらっしゃるなんてその殿方はどんな方なのでしょう』『御坂様、瞳が潤んで何だか可愛らしいですわ』以下略。
 男性であれば見逃しがちな女性のわずかな変化を同性は見逃さない。それが本人が希望しないにも関わらずファンと言う名の信奉者が山ほどついてくる御坂美琴相手であればなおさらだ。美琴がヘアピンを変えたときには学内が蜂の巣をつつくほどの大騒ぎになったものだが、美琴いわくほんのちょっと髪型を変えてほんのちょっとリップを変えてほんのちょっと下着の趣味を変えただけで、美琴を遠巻きに囲むように噂が波紋を作って広がっていく。
 小倉百人一首に詠まれる平兼盛の『忍ぶれど色に出でにけり我が恋は』を地で行く今の美琴は、以前にも増して校内の注目の的なのだ。
 自称美琴のスポークスマンである白井のところにも美琴本人に直接質問をぶつけられない上級生同級生下級生が連日わんさと押しかけて噂の真相を尋ねに来ても、当の美琴から何も聞かされてない上に人のプライベートをペラペラ喋ることについて白眼視している白井としては『そのような噂など』と一蹴しているが、誰よりも何よりも真っ先に美琴に問い質したいのも他ならぬ白井自身である。
「あ? え? ちっ、違うわよ黒子! 殿方とかは関係なくて……だ、だ、ダイエット! そうダイエットしてんのよ私。アンタほどじゃないけど私もちょっとはスタイルに気を遣って……」
「お姉様のスレンダーなスタイルでダイエットなどされたら……即! 胸にダメージが行くのでは?」
 美琴の次の反応を大胆に予測した白井がぷぷぷと笑う。
 初春も佐天も何か情報を握っているらしいのだが、いくら買収しようとしても頑として首を縦に振らない事に業を煮やした白井は直接行動に出ることにした。すなわちそれは、わかりやすいほどに反応を返す美琴への挑発。
 白井をどつき回す態度に出れば白、初心な反応を見せれば黒だ。
「黒子……」
 美琴の声色は聖母の慈悲のように柔らかく変化する。
(来た! やっぱり食いついて来ましたのねお姉様! 近頃のお姉様はすっかり色や艶が出てきましたし、誰かしら特定の殿方がお姉様のお相手を務めていることは間違いありませんの!! ここで相手があの類人猿である裏取りをしたらそのまま風紀委員権限であの類人猿を拘束してあの類人猿にこの金属矢を予備も含めて全弾叩きつけて再起不能にしてやりますの!! そして黒子はこの手にお姉様を取り戻し傷心のお姉様をお慰めしてその後はお姉様とうっへっへっあっはっはーっ!!)
 美琴にくるりと背を向けノーガードの姿を晒し、その影で邪な笑みを浮かべて後の手はずを整えるべく算段にまで気を回す白井。
 美琴は白井を傷つけないよう小さな声で語りかける。
「そろそろお互い胸の話題からは卒業しよっか。言うだけ虚しくなるからさ」
 答えは限りなくグレーだった。ブルーかもしれない。
 ……地雷を踏んでしまった。踏み抜いてしまった。
 言うだけ言って顔に変な陰影を浮かび上がらせて妙に落ち込む美琴の姿に
「お、おおお、お姉様? 髪をお切りになるのでしたら黒子が付き添いますし何でしたら荷物持ちも使い走りもどんどん申し付けてくださって構いませんからお姉様? 元気を出してくださいませお姉様! お姉様? おーねーえーさーまーっ!?」
 ああどうしようこんなお姉様は見たことがないと慌てふためきカメラを構えるかどうしようかいやここは素直にケーキ屋でも誘って自分の非礼を詫びた方が早いのか落ち着かないくせっ毛をぶんぶん上下に揺らしながら白井黒子は今まで使ったことのない種類の悲鳴を上げた。

739永遠 If_tomorrow_comes.(8):2010/02/17(水) 14:40:21 ID:Vh/fZ4t6
 美容室の外へ出ると、以前と同じように肩先で揃えられた美琴の髪を北風があおるように通り抜ける。ピンクのマフラーを首に巻いているので襟足はそれほどでもないが、髪が短くなった分寒さのようなものを感じる。
 バッサリ切ろうと意気込んで来たけれど、大きな鏡の中に自分一人だけにはっきりわかる『私落ち込んでます』という姿を認めてうつむく美琴に坂島は
「ああ、御坂ちゃんいらっしゃい。結構伸びてきた事だしここらで一つドカンとドレッドヘア行ってみない? エクステばんばん追加してさー。御坂ちゃん髪が天然で茶色だから結構軽い感じに仕上がると思うんだよねぇ。それとも白井ちゃんには毎回断られるんだけどアフロどう、アフロ? サッカーやるにも隠し芸やるにもお勧めだよ。そう言えば常盤台中学にサッカー部ってあったっけ?」
 アフロもドレッドも趣味じゃないからナチュラルに勧めないで欲しい。本当にこの美容室は常盤台中学の指定認可を受けているのだろうか?
 賑わう街へ重い足を向けると、楽しそうに笑うカップルが何組も一人ぼっちの美琴を追い越して行く。
 行き過ぎる彼らの背中に上条と自分の姿を重ね合わせて、どこでボタンを掛け違えてしまったのだろうと美琴は遠い目で世界を追い駆ける。
 一体何をどうすれば上条は自分を本当に好きになってくれるのか。
 レベル1からレベル5までの道のりを、美琴は振り向かず真っ直ぐに歩いてきた。正しい手段、正しい方法、正しい努力が今の美琴を作り上げ、それは誰にも恥ずべきところはないと美琴は自信を持って言える。
 美琴は胸の内を正直に明かし、震える自分を叱咤して上条に対峙し、そして上条の彼女になった。それでもまだ上条は美琴を受け入れてはくれない。年齢ではなく、身体ではなく、もっと根本的な何かが足りない。恋に正しい道筋があるのなら教えて欲しいと美琴は願う。自分の何が間違っていると言うのだろう。
 わからない。学園都市第三位の頭脳をもってしても答えが導き出せない。
 切り落とした髪のようには振り払えない憂鬱と肩を並べてトボトボと街の中を歩いていると、一軒の花屋が美琴の視界に入った。店頭には溢れんばかりのポインセチアの鉢植えが置かれ、敷き詰められた赤と緑のクリスマスカラーが今の美琴の目には苦しいほどにまぶしく映る。数を数えるのも嫌になるほどたくさんの鉢植えの中で一つだけ異質な赤を見つけて
「あれ?」
 大ぶりのポインセチアと同じくらいの高さに揃えられたそれは、南天の木だった。冬の寒さに負けないよう強く身を守った樹皮と、鈴なりの赤い実が目を引く。植木にしては小さいけれどこんな形でもちゃんと育つんだと感心し、美琴は身をかがめて南天の実にそっと左手を伸ばす。
「いらっしゃい」
 初老の男の声が頭上から優しく響き、美琴はひくっと動きを止めて、そこからゆっくりと顔を上げた。店名らしいロゴが刺繍された、デニム地のエプロンを付けた男はもう一度美琴にいらっしゃい、と声をかけ
「南天が気に入ったのかな?」
「あ……えっと、気に入ったと言うか珍しいなって」
 この季節に飛ぶように売れるポインセチアに比べれば、南天が学生の歓心を買うことはないだろう。売れないものを仕入れる不思議さに美琴が首を傾げていると
「南天の名前の由来はご存知かな、お嬢さん?」
「……はい。『難を転ずる』ですよね」
 かつて美琴が自力で解決できなかった『難』は上条が転じてくれた。今はその上条がらみの『難』で美琴は懊悩する。
「さすが学園都市の学生さんだ。よく勉強していらっしゃる」
 花屋の店主らしき男は美琴の答えに相好を崩した。

740永遠 If_tomorrow_comes.(9):2010/02/17(水) 14:40:44 ID:Vh/fZ4t6
「今の季節、ポインセチアに比べたら南天なんて地味で売り物にはならないんだけど、私はこれが好きで毎年一つは仕入れてるんだ。難を転ずるようにと願ってね。お嬢さんは南天の花言葉をご存知かな?」
「いえ……何て言うんですか?」
「『私の愛は増すばかり』だよ」
「そうなんですか……。ありがとうございました」
 美琴は丁寧に頭を下げると花屋を辞し、また人ごみの中へ戻った。
 ぼんやりと北風に吹かれながら美琴は思う。
 上条への思いは増すばかり、けれど上条の気持ちはわからない。
 だんだん自分が欲張りでわがままになって行く。
 上条の反応が薄い理由も、冷たいのもわかってて上条の反応ばかりを求めているような気がする。片思いでも良いと言いながら、やっぱり上条の心が欲しいと願ってしまう。
 上条に恋を告げる前も、告げた後も、胸がこんなにも苦しい。
 美琴はいつぞやのショーウィンドウに行き当たると、美しく魅せるようにライトアップされたウェディングドレスを見て感嘆のため息をつく。
「……やっぱりきれいよね……」
 学園都市第三位だ超電磁砲だと言われても、蓋を開ければ美琴も一四歳の女の子だ。人並みに結婚、というよりウェディングドレスを着てみたいと言う漠然とした憧れはある。そこで上条が隣に並ぶ光景を想像して――――すぐに首を横に振った。
 上条と美琴が二人並んでその日を迎える景色が心にうまく浮かばない。
 美琴にとって上条への思いは生涯ただ一度のものだ。それを疑ったことはないが、何故か上条と肩を並べる未来の風景がどうしても美琴の心の中で像を結んでくれない。
「私達、ダメなのかな……片思いじゃやっぱ無理かな。アイツの気持ちを求めるのは……」
 時間をかけて上条を振り向かせようと誓った決意が美琴の中でわずかに揺らぐ。
「何であんなの好きになっちゃったんだろ。……ねぇ?」
 美琴はどこか悲しげな笑みを浮かべて。
 瞳のないマネキンが美琴にこの上なく幸せな笑顔を向けた。

741D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/17(水) 14:41:39 ID:Vh/fZ4t6
 以上になります。

GJくださる皆さんありがとうございます。
そして投稿される全ての職人さんにGJ!
お邪魔しました。

742■■■■:2010/02/17(水) 14:59:36 ID:w1PL4zrU
>>741
GJです!
美琴が切なすぎますね。
明日意向も楽しみです!

上条さんが並んで歩いていたのは、
風斬、五和、オリアナ、黄泉川、神裂でいいのかな?

743■■■■:2010/02/17(水) 15:10:26 ID:dK8FPQPs
>>717
GJです!
ある意味未来は確約されたようなものなので、ちょっと安心して読めますねw

>>741
GJです!
上条さんの予定が少し気になるw
美琴頑張れ〜!って応援したくなりますね。

744ミーナ ◆zfqD0wujwA:2010/02/17(水) 16:23:34 ID:OVE3FM4.
職人様GJです。
ちょっと、書き溜めていた文章が詰ったのでかなり前に書いたやつを。
16:25頃に投下します。

745とある上琴の日常生活?:2010/02/17(水) 16:26:48 ID:OVE3FM4.


「あぁ、すまん御坂。で、今日は何の御用でせうか?」

「何って、勝負よ!勝負!。そこっ、げんなりした顔しない!」
ビシッとゆびをさした
「勝負、勝負ってなぁ、お前。少しは女の子らしくしろよな。普通にしてたら可愛いんだから。」

「なななな、何よ。話を誤魔化されたってそうはいかないんだから。」
(こ、こいつ。今私のこと。か、かわいいって・・・・。)
御坂は、顔を真っ赤にしながらブツブツ言い出した。
お〜い、もしも〜し?と上条は、御坂に近づいて目の前で手を振った。
「そこで、トリップしてるところ悪いんですけど上条さん朝からご飯食べてなくて死にそうなんです、はい。だから、帰ってもいいよね?よし、帰ろう。」
自己完了?したのか上条は、御坂の横を通り過ぎようとしたが・・・・・。
「だ、か、ら!、アンタ私のこと無視すんなーーー!」
バチバチっと上条の近くに電撃が落ちる。
うわっと右手で瞬間的に電撃を止めたからいいものをあたっていたら即死級のものだった。
「こっちもさっき言ったろう?なんも食ってないんだ。早く行かないとタイムサービス終わっちまうんだ。お前の相手してる暇ないんだよ。」
上条は、鞄を片手にその場で足踏みをしている。
「アンタ、朝からご飯食べてないの?じゃじゃあ、私がアンタの家に行ってお昼ごはん作ってあげようか?」
「は?何言ってんだお前・・・・・。まさか、これだけじゃ懲りず。家の電化製品も壊すとおっしゃいますか?」
わなわなと上条は突然震えだした。
「アンタ!私をなんだと思っているの!いいから一緒に行く!まだ文句言うようならホントにやってもいいんだけど?さぁ、YESか'はい'どっち?」
それって、どっちも同じ意味じゃ・・・・。やめて、バチバチしないで。ぎゃ〜〜〜!わかった、わかったから〜〜〜〜〜。





一通りの戦闘を終え、御坂と上条はベンチに座っている。
「はぁはぁはぁ、わかったよ。じゃあ、御坂に頼むよ。」
「はぁはぁはぁ、わかったんならよろしい。それで、さっきアンタタイムセール云々かんぬん言ってたけど大丈夫?」
御坂に言われて、上条はポケットから携帯を取り出し時間を確認しだした。
そして突然、立ち上がり。
「ははははは・・・・・へって、タイムセールぎりぎりじゃねえか!。急がないと。ほら御坂?作ってくれるんだろ急ぐぞ!」
上条は、右手で御坂の手を引いて走り出した。
(は、手、手を、握ってる。ふふふふ、ふにゃ〜〜〜〜あ。)
御坂は、上条に成すがままに連れて行かれた。





to be continued?

746ミーナ ◆zfqD0wujwA:2010/02/17(水) 16:30:56 ID:OVE3FM4.
ちょっと間隔あければ良かったかな?
周りの職人のレベルが高くて・・・恥ずかしい。
感想待ってみたり。
みなさん、職人さんありがとうございます。
お邪魔しました。

747■■■■:2010/02/17(水) 17:20:08 ID:ksde7xJY
GJです
お約束の展開ですねw
照れながらもつっかかってばっかで可愛いです

この後はなんとなーく予想つきますが・・・
もう美琴ガンバレとしかいえませんね・・・

748■■■■:2010/02/17(水) 18:52:17 ID:H2R/N7eM
>>723>>726
確認どもです
かまちーって「クソ」とか「ちくしょー」とか「馬鹿」とか「〜ねえ」とか「つって」とか好きよねw
アニメではそう言うのあまり使ってない印象あるので多用すると違和感に繋がったり……
(ちなみにこのファイルはあくまで自分用なので、あまり使ってない黒子とかはまとまってないです)

>>727
まあアニメの印象し漫画もアレなんで脳内補完可能かとw
どっちに依存するかで変わるので
俺も「打ち負かした」のあたりでポカしましたしw
(小説では「上条さんは記憶喪失前に美琴を殴ってない」とちゃんと伝わってる、アニメは伝わってない)

>>728
んでも「この自販機」って書いてるから特定のはあるんじゃ?



投稿ですが
タイミングがアレなのでもう30分くらい空けますね
適当にブラッシュアップしてまーす
ちなみに予定:14レス

749■■■■:2010/02/17(水) 19:31:08 ID:H2R/N7eM
あれ、俺レスしにくくした?
すいません何か空気の流れってムズイですね
とりあえずささーっと投げます

_____

題名決めました → 帰省/家族(かぞくぶんのきせい)
(まとめページも自分で変えておきます)

題名:当麻と美琴の恋愛サイド ―帰省/家族―
副題:3章 【帰省1日目 思い出の無いアルバム】
    4章 【帰省1日目 天使】
消費:14レスの予定
前:
>>364から
またはここの2章 ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/323.html


注意
・世間はバレンタイン終わったような感じですがこっちはまだ正月です
・相変わらずグダグダかつイチャイチャです
 起承転結で言えば承の途中…
・今回も勝手な推測設定が一部混ざってます
・上条ちゃんが一部ぶっ壊れてます
・長い


5分ちょいしたら投げます

750■■■■:2010/02/17(水) 19:37:52 ID:H2R/N7eM
【90/2−33】


【帰省1日目 思い出の無いアルバム】


 二階には四つの部屋があり、階段を上がってすぐ目の前の所が寝室、右側が和室と洋室、左側が書斎となっているようだ。
 二人は古めかしい階段をギシギシと音を鳴らしつつ上ると、ほんの少し迷って各々自分の目的地へと入っていく。
 美琴は上条から借りたパジャマのズボンを穿き、汚れたスカートと短パンを二階に来た詩菜へ預けると、洗濯が終わるまで
する事もないのでとりあえず上条が居る和室へと向かった。
 立て付けが悪いせいで少し抵抗がある木目調のドアを開ける。

美琴「………………………」
当麻「(あの…………謝るのでとりあえず無言でビリビリさせるのやめて頂けませんでせうか)」

 何故か上条は乙姫と一緒に布団に入り抱き合って横になっていた。
 美琴はそのあまりにもいつも通りな展開に呆れ、溜息の代わりに電撃を体から吐きだしてみる。

当麻「(だー違う! 多分今お前が考えてる事はきっと誤解です。 乙姫が離さないだけで、上条さんとしては添い寝させられてる
    状態であってですねえ…………………つまり何が言いたいかというと、ご、ごめんなさいー!)」

 とりあえず言い訳はするが確実に謝っておく。
 美琴は乙姫に当たるかもしれないのでいつもみたいにビリビリ攻撃するわけにもいかないし、乙姫を起こすのも可哀想だから
怒鳴り散らすわけにもいかない。 結果どうにもこうにもできずイライラしてしまい、仕方ないので上条を思いっきり睨んでその
気持ちを態度に表してみる。

当麻「(ひっ……………あ、あの、御坂さん、僭越ながらお願いが)」
美琴「(あん?)」
当麻「(す、すいません何でもありません!!)」
美琴「(何よ、言いなさいよ。 怒ってあげるから)」
当麻「(怒るのかよ!? ………えっと、俺のカバンからゲコ太さんを取っては頂けないでしょうか)」
美琴「(へ? ゲコ太?)」

 美琴は言われたとおり上条のカバンを漁ると、中から美琴が預けたゲコ太のぬいぐるみが出てきた。
 条件反射的に抱きしめてしまったが、そのおかげでイライラ指数が半減する。

美琴「(あ、アンタ。 可愛いもので私の怒りを抑えようだなんて、随分狡い真似するじゃないの。 悔しいけど効果絶大よ!)」
当麻「(はい? いやそうじゃなくて。 そいつを俺と取り換えてもらえねえか? さっきからコイツ離れようとすると目覚まして
    怒るんだよ。悪酔いしすぎ)」
美琴「(へ?? あ、ああ。ってそういうことは先に言いなさいよ)」

 照れ隠しに上条の頭を強めに突く。
 美琴は溜息を付きつつ面倒くさそうに二人に掛かっている上掛け布団をそっとめくった。

美琴「…………………」

 乙姫は腕と脚を使い上条の体をガッチリとホールドしていた。その頭は上条の首の部分に収まり、腹も胸もくっつけられ、脚は
一本ずつ絡まるように交互に挟められている。
 一応恋人であるはずの美琴ですらここまでくっ付いた事はない。
 それによく見ると上条の顔は赤くなっていて、どことなく嬉しそうにも見える。
 美琴のイライラ指数が見事に回復、というかさっきの値を優に超えてしまった。

美琴「(あのさ、私ってエレクトロマスターのレベル5な訳じゃん?)」

 美琴は小さく平坦な声で話し出す。

当麻「(な、何ですかいきなり)」
美琴「(能力《ちから》の手加減にも自信がある訳よ。 どんな能力者でも後遺症が残らない程度に気絶させられるくらいには)」
当麻「(…………………)」
美琴「(つまりね、例えアンタが乙姫ちゃんにくっついていたとしても、さすがにこの距離ならアンタにだけ害が及ぶように調節
    くらい出来るのよね……)」
当麻「(ちょっと待って下さい!)」
美琴「(アンタ、今動けないのよね。一発くらいデカイの食らっても罰はあたらないんじゃないかしら?)」
当麻「(待てって! 俺不可抗力じゃんどうしようもないじゃん! ……ってオイバカ! そのビリビリの規模はほんとにコイツに
    害無いのかお前自分を見失ってるだろ、冗談で済まねえからそれ!!)」

 上条はどうにか右手を出そうとしたが、思い切り力強く抱きしめられているせいで上手く抜けなくモゾモゾと動くだけだった。
 美琴は目元以外に薄い笑顔を浮かべると軽く上条の肩に触れる。 どうやら直接体内に電気を流す気らしい。

美琴「(大丈夫。 アンタは気絶するだけよ。 半日くらい)」
当麻「(ひ、ひいいぃぃぃ!?)」

751■■■■:2010/02/17(水) 19:38:14 ID:H2R/N7eM
【91/2−34】


 しかし美琴が電気を流そうとする寸前、和室のドアがガチャリと音を立てた。

刀夜「当麻、居るか?」
美琴「ッ!? うわわっ!」

 殺害現場(上条の感想)を見られそうになった美琴は驚き、ビクッ! と体を震わせ立ち上がろうとする。しかしだぼだぼの
ズボンの裾を踏んでいたせいでバランスを崩しそのまま布団へとダイブしてしまった。
 つまり簡単に言うと、『女の子二人に揉みくちゃにされている上条当麻』という構図のできあがりである。

刀夜「当麻……………」
当麻「ご、誤解だ父さん! 話せばまた長くなるんだけど清廉です潔白です無実ですぅ! だからホント家族会議に掛けるとか蔑んだ
    目で息子を見るとかそういう心を抉るようなのだけは勘弁して下さいー!」
刀夜「当麻!!」
当麻「は、はい! ごめんなさい!!」

 一瞬厳しくなった刀夜の表情が、次の瞬間には優しげなものに変わる。

刀夜「何を言ってるんだ。 私はこの程度の事で誤解するような頭の固い父親ではない。 きちんと理解している。 そう、これは
    よくあるアクシデントだ。 父さんだって、たまたま偶然複数の女性に揉みくちゃにされて要らぬトラブルを招いたこと
    なんて十回や二十回普通に経験がある。 そしていつも思う。 私ならばそう言うシーンで誤解なんかしてやらないぞってな。
    だから息子よ。 父にだけはそう脅えなくて良いんだ、いくらでも言い訳して良いんだぞ。 父は何だって信じてやる!!」
当麻「と、父さんっ……!!」

 上条当麻は、今回のような女性絡みのアクシデントを目撃した人で、これほど正しく理解し耳を傾けてくれた人間を知らない。
 思わず真の理解者を発見した喜びに涙が出そうになってしまう。
 ちなみに美琴は既に立ち上がっており、女難に塗れた二人の親子をジトーッと湿った目で見続けていた。

詩菜「あらあら。 良かったわね父と子で仲良く共感できて。 じゃあとりあえずその十回や二十回について寝室で詳しく聞きま
    しょうか」

 いつの間にか刀夜の後ろに立っていた詩菜が、気味が悪いくらい優しげに言った。
 刀夜の優しげな笑顔が引きつったものに変わる。

刀夜「…………しかしだ当麻! 理解者というものはいつだって少ない。 出来ればアクシデントというのは未然に回避するべきだ。
    じゃないとこうなるからな! はは、あはははは…………母さん先程のは一種の誇張表現という奴でして」

 詩菜に引きずられ刀夜は寝室へと消えていき、バタンとドアが閉じた。

当麻「と、父さんんんーっ!! ………って、あれ?」

 美琴がすぐに立ち上がったのは良いとして、いつの間にか乙姫による戒めも解けていた。
 隣を見やると乙姫がゲコ太のぬいぐるみを抱いて布団を被っている。 恐らく皆の話し声がうるさかったのだろう。
 上条が起き上がると、寝室のドアがそっと開かれ、詩菜だけが小走りで戻ってきた。

詩菜「(いけないいけない忘れてたわ。美琴さん、これで良いのかしら?)」

 詩菜の手には洗濯が済んだ美琴のスカートと短パンが握られていた。
 軽く脱水しただけなので濡れたままである。

美琴「(あ、はい。 ありがとうございます)」

 美琴がそれを受け取ると詩菜は再び寝室に戻っていった。
 上条は心の中で偉大なる父親に敬礼する。
 しかしそちらを心配してる余裕は息子にも無いようだった。

美琴「(さて…)」

 美琴が再び上条を睨む。

当麻「(ま、まだ何か?)」
美琴「(とりあえず隣行きましょか)」
当麻「(……はい)」

 詩菜に負けず劣らず怖い笑顔を見せた美琴に戦きつつ、乙姫を起こさないようにそっと部屋を出る。

752■■■■:2010/02/17(水) 19:38:26 ID:H2R/N7eM
【92/2−35】


 二人は部屋の三割くらいが雑多な物置スペースと化している洋室に入る。
 美琴はスカートと短パンをハンガーで吊るすと、それをカーテンレールの部分に掛け、リラックスした休めのようなポーズを
してただそれをボーッと眺め始めた。
 たまにパチッパチッとかジューとか音がするため恐らく電気と空気の摩擦熱でも利用して水分を蒸発させているのだろう、全く
器用なものだと上条は適当に関心する。
 幸運なことに、美琴がそれにかかり切りであったためどうにか折檻的なものは受けないで済みそうである。上条はさらに身の
安全を確実なものにするため別の話題を振って気を逸らす作戦に出ることにした。
 ただし隣が寝室であり、刀夜と詩菜の声が少し聞こえる程度の壁の薄さであるため声は抑え気味に。

当麻「しっかし驚きましたなー」
美琴「ん。 どれが?」
当麻「全部だよ全部。 再会した事、家が近い事、親同士が仲良くなってる事、さらには外泊? これがドッキリだとしたら完全に
    大成功だよ、っつかドッキリと言われた方が納得できそう」
美琴「はは、そうね。 私もアンタを見るまで半信半疑だったけど、実際ここまでは本当に歩いてこれるくらいの距離だったわよ。
    寒かったから途中までタクシーだったけど」

 ちなみにタクシーを降りたのは美鈴が「こっそり行って驚かせるわよん」と提案したせいである。

当麻「半信半疑ぃ〜? 美鈴さんが言ってたアレは何だったんだ?」
美琴「あ、あんなのデタラメに決まってんじゃない! た、確かに少しは舞い上がって………、その、ドライヤーとか壊しちゃった
    りしたけどさ…………ってそうじゃなくて! 私はどちらかというと相も変わらずアンタに節操がないことの方がよっぽど
    びっくりしたわよ!」

 上条の方を見ずに控えめに叫ぶ。
 どうやら上条の話題振りは失敗したようだ。 話が元に戻っている。

当麻「そりゃこっちのセリフだ。 俺もお前が相変わらず攻撃的すぎてびっくりしたよ。 心臓が止るかと思ったよ。 しかも二度!!」
美琴「原因はアンタでしょうが! 人の母親に欲情するとかヤバイんじゃないの? 見た目はアレでも結構いい年よ?」
当麻「よ、よよよよ欲情なんかしてねーよ」

 見られている訳じゃないのに美琴の方から目を逸らす。

美琴「ニヤニヤしてたじゃないのよ。 それに目瞑って感じ入っちゃって。 さすがにアレはちょっと引いたわ」
当麻「い、言いがかりだ。 目瞑ったのは別の理由があったんだよ!」
美琴「何よ別の理由って」
当麻「………………言えませんごめんなさい」
美琴「………………」
当麻「はぁぁー」

 どうして自分達はいつもこうなんだろうかと呆れてしまい、上条は肩まで使い大きく溜息を付いた。

当麻「でもさ……」
美琴「まだなんか文句あんの」
当麻「違うから怒んなって。 なんつか、驚かされることばっかだけど、その大半は幸福の方だなって思ってさ。 上条さんの人生
    では激レアなことに」

 上条は窓際に居る美琴の隣まで来ると、目線より少しだけ低いところにある茶色の頭を右手でグリグリとなでた。

当麻「だろ?」
美琴「…………うん」

 二人は去年のクリスマスイブの出来事を思い出す。
 あの時、美琴は上条の不幸を取り除いて幸福にしたいと言った。
 あの時、上条は美琴が不幸になっては意味がないと言った。
 つまり二人は互いに相手を幸せにしたいと誓ったのだ。 そう考えれば、今日の出来事や、今日知った事は喜ぶべき物である。
 上条は少しだけ恐ろしく思う。 もしあの日あの出来事が無くて今日を迎えていたら、きっと自分はまたいつものように「不幸だ」
というセリフを吐いただろう。 その時それを聞いた美琴は何を思っただろうか――――

753■■■■:2010/02/17(水) 19:38:37 ID:H2R/N7eM
【93/2−36】


当麻「っとわりい、能力止まっちまうか」
美琴「いい。 いいから、そのまま………」

 美琴は仔猫が母猫に擦り寄るかのように、頭を上条の手へと押しつけてきた。
 子供扱いするなー!! とか言って怒られるかと思っていた上条はその意外な反応に鼓動を速くする。
 時間は正午をそこそこ過ぎた頃だろうか、最近ではあまり見ていなかった太陽の日差しが、南東を向いた部屋の窓から差し込み、
その前に居る二人を包み込むように優しく温める。
 二人の間にはもはや言葉は要らない。
 上条の右手は美琴の細く柔らかな髪をなでる。
 美琴は目を細め、頭と体を傾げて上条に少しだけ体重を預けた。
 ただそれだけの事が本当に心地よくて、体の中がピリピリと痺れるくらいに幸福感を感じる。

当麻(ん……あれ、シャンプーの匂いじゃねえな)

 近づいた美琴からはほんのりわずかに香水の匂いがした。 そう言えばさっき美鈴の話でそんな事を言っていた気がする。 学生寮
の美琴の部屋にあった『きるぐまー』の中の品でも持ってきたのかもしれない。
 上条は香水の知識には疎いが、その香りは美琴に合っていて良い香りだと素直に感じた。 誘われるように香りの元へと顔が引き
寄せられる。 頭、顔、首筋………いやもっと下だろうか。
 上条が身じろぎしたことに気付いた美琴は、勘違いしたのか完全に目を瞑って上条の顔の方へ自分の顔を近づけてきた。 上条は
ドキッ!として数秒固まったが、やがて香りの探求をやめてそれに応じ、目を瞑る。
 二人の顔が互いの唇を探して擦り寄るように近づく―――――が、

詩菜「美琴さん、入るわね」

 そう上手く行かないのはいつも通りのようだ。
 ドン! バラバラバラ!! と何かがぶつかる音と物が崩れる音が洋室内に響く。
 ドアを開けた詩菜は何事かと思い部屋の中を覗くと、窓際では美琴が「ぬうううん!!」などと唸り、いかにも『今、超能力
使ってます』といった風に両手をスカートと短パンの方へ突きだしていた。 そして左下では、棚の前で息子が雑多な物の下敷き
になって涙目で倒れている。 棚にぶつかって中の物が上から落ちてきたのだろう。

詩菜「あらあら。 当麻さんも居たの? お邪魔だったかしら」
美琴「な、なーんのことですか? 全然これっぽっちも問題なしですよ」
当麻「ふぐ……………、痛い。 地味に痛い」
詩菜「ごめんなさいね、ちょっとお洗濯物干させてもらいたくて……」

 詩菜は丁度太陽がでてきたので日当たりの良いこの部屋に洗濯物を干しに来たのだった。 乾燥機がまだ直っていないうえに業者
が正月休みなので暫定的措置である。
 美琴のスカートや短パンの隣りに上条家の洗濯物が吊るされ、カーテンレールが少し歪む。

詩菜「そうそう美琴さん。 下それで良いかしら? 別の物用意しましょうか? スカートとかサイズ合いそうなのを」

 美琴の穿いている薄い緑色をしたパジャマは見るからにだぼだぼでサイズが合っていなかった。 ウエストのあたりは元々ゴムが入って
いるし、紐も付いていたのでどうにかなったが、裾の当たりは何重にも折り返している。 実は元々上条にも若干大きめであるのだ。
 それに上が常盤台中学の制服であるのでミスマッチも甚だしくダサダサな状態である。 もし黒子が居たら小言の一つでも言われそうだ。

美琴「ありがとうございます。 でも、どちみちすぐに母が戻ってくると思うんで大丈夫です。 それに暖かいですしこれ」

 しかし美琴はそれを丁重に断る。
 理由は色々あるが、とりあえず今スカートを穿くのは嫌な予感しかしない。

詩菜「あらそう? あ、当麻さん、私はちょっと用事を片付けてくるわね。 刀夜さんが会社に行かなきゃならないらしくて。 もし
    お昼足りなかったらまだ下にあるから」
当麻「ん、分かったけど、父さんは仕事?」
詩菜「さあ。 すぐ戻ってくるとか言ってるけど、あまり信用ならないわね。 っと、それじゃあお邪魔虫はさっさと退散しよう
    かしら。 当麻さんそれ元に戻しておいて頂戴ね」

 詩菜は妙な笑みを浮かべ二人を見つめつつドアをパタンと閉じた。

美琴「(………ねえ。 ひょっとして、ばれてる?)」
当麻「(………かもな)」

 そもそもあの母親に隠し事などそうそうできないのではないだろうか。
 上条は別の意味でも気を引き締める。

754■■■■:2010/02/17(水) 19:38:50 ID:H2R/N7eM
【94/2−37】


当麻「よーいせっと………あーあーもう滅茶苦茶じゃねえか。 元通り入るのかこれ?」

 上条は立ち上がると、自分に降り注いだ品々を一つずつ適当に棚に詰めていく。
 料理の本、百科事典二冊、よく分からない海外のお土産、小物が入った紙箱、中身が入っていない貯金箱、ビジネス入門書、
漫画数冊、安物の写真立て、数年前の年賀状の束――――

当麻「あそだ、年賀状サンキュな。 返事は言われた通り出してねえけど」
美琴「うん」
当麻「ケロヨン年賀状」
美琴「あれをちゃんとケロヨンって言えるとはアンタも成長したわね。 偉い!」
当麻「………カエル年じゃねえけどな」
美琴「細かい事言ってんじゃないわよ。 ていうか何でカエル年って無いのかしら、あの年賀はがき実はまだ相当余ってんのよねー」
当麻「………元旦に届いたって事は、出したのはクリスマスよりも前だよなあ」
美琴「そうだけど………あ、文面にツッコミ入れたら怒るから。 あの時は………まだああだったのよ」
当麻「へい」

 美琴が赤くなるのを見て、何だか上条まで照れてしまう。 恐らく相当悩んだであろう文面は、今の段階で見ると確かに心が
見え透いていてかなり恥ずかしい。

当麻(あれ、そういややっぱり美琴の奴ってば俺の家の住所知ってたんじゃん………)

 深読みすると色々考えてしまいそうである。
 気を紛らわすために作業を続けた。
 月刊パラグライダー10月号、電池、砂時計、CD、ラジオ、猫のぬいぐるみに恐竜のぬいぐるみ、古いパソコンのOSソフトと
オフィス系ソフト、ヘッドフォン、『当麻』と書かれたクッキーの缶箱―――――

当麻「ん、何だこれ?」

 缶箱の蓋を開けると、中には現像された写真とネガが大量に詰まっていた。
 試しに上にあった袋から一枚だけ写真を抜くと、それは上条当麻がグラウンドを全力疾走している場面の写真であった。
手ぶれのせいか少しピンぼけしているが、姿と様子からして恐らくは大覇星祭の時だろうか?

美琴「なになに、大覇星祭の時の写真? アンタ走るの速………ってあれ、アンタ白組だったわよね?」

 上条がボケーッと写真を眺めていると、美琴が乾燥作業を止めて覗き込んできた。
 美琴の言うとおり、確かに去年の大覇星祭では上条は白組だったはずだ。 しかし写真の上条は赤いハチマキをしている。

美琴「それに若干幼い感じがするし、これってもしかして………」
当麻「だな。 そもそも今年……じゃなくて去年か、俺はこんな競技に出てないし」

 写真は恐らく記憶を失う前の物であり、つまり缶の中身は上条当麻の昔の写真なのだろう。
 数は優に百枚以上はありそうなので、もしかしたらアルバムから漏れた写真かもしれない。
 普通の彼氏彼女ならここで「見せて見せてー」「えーやだよー」なんて軽い会話になっただろうが、残念ながら二人は普通
ではないのだ。

当麻「………………」
美琴「………………」

 上条はその一枚目の写真を見つめたまま動かない。 写真を精査しているようにも見えるが、恐らく何か考え事をしているのだろう。
 上条の瞳が小さく揺れ動き、瞼が何度も瞬きをしている様子を美琴はじっと見つめる。 その気持ちを読み解こうとするように。
 次に自分はどう行動するべきなのだろうか。
 写真は見たいのだろうか、見たくないのだろうか。
 美琴に見て欲しいのだろうか、見せたくないのだろうか。

美琴(…………ううん違う。 そんな単純なものじゃないよね)

 美琴はおもむろに右手を高く上げると、さっきのお返しとばかりに上条のツンツン頭を掴みわしゃわしゃわしゃー!!とかなり
乱暴になで回した。 力が強すぎて上条の首までつられて動く。

美琴「ったく、だらしがないわね。 見たいなら見る。 見たくないなら見ないでハッキリしなさいよ! 例えどっちでも私が傍に
    居てあげるから。 アンタは一人じゃないでしょ?」
当麻「っていきなり何すんだよ、むちうちになるじゃねえか!? あと誰も見ねーなんて言ってないだろ。 見るべきだよ俺は。
    まだ会ってない知り合いとか写ってそうだし…………、それに寮にも似たようなものが少しだけあったしな」
美琴「ふーん。 んで、私は見て良いわけ?」
当麻「……良いよ」

 ほんの一瞬躊躇ってから肯定する。

当麻「約束だからな。 隠し事はしねー」
美琴「うむ。 よろしい」

755■■■■:2010/02/17(水) 19:39:00 ID:H2R/N7eM
【95/2−38】


 二人は壁に背中を預け、フローリングの床に隣り合って座った。
 少しお尻が冷たかったが、目の前の事に比べたら些末な問題でしかない。

当麻「……いいか?」
美琴「いつでもいいわよ」

 確認してから上条は一枚一枚、数秒から数十秒かけて見ていき、見終わった物は缶に戻していく。

美琴「これが卒業式、こっちが入学式かしら」
当麻「みたいだな。 って俺どこだよ? 失敗写真が多いなさすがに」

 中学校卒業式の写真、一端覧祭での写真、修学旅行での写真―――――
 どうやら写真の中には学校で撮影して両親に受け渡した物も入っているらしい。 友人同士でふざけ合い、ピースをしている
ようなものもある。 とは言っても、その中に見知った顔は少ないのだが。

 6枚目――――卒業式の後か、クラスの仲間十数人で学校を背に写っている。 その中に今のクラスメイトらしき人物を二人発見
することができた。 ただ学舎には見覚えがない。
 7枚目――――上条が緊張した面持ちで卒業証書を受け取っている。 校長の顔には見覚えがない……のはそもそも普通だろうか?

美琴「普通よ普通。 校長多すぎんのよね学園都市って」
当麻「……多いつっても一つの学校には一人だろ」

 12枚目――――布団を敷き詰めた十畳程度の部屋で、宿泊施設にあるような浴衣に身を包んだ男子中学生数人が、流行りの
一発ギャグのポーズをして写っている。 上条も楽しそうで、馬鹿みたいな笑顔をしているが、周りに居る人間に知った顔はない。

美琴「既に廃れた一発ギャクって後から見ると黒歴史よね」
当麻「ん、ああこれ一発ギャグなのか。 何やってんのかと思った。 まあ男子中学生なんてほとんどアホだよなー。 分かって
    やってる感じもあるだろうけどさ」

 18枚目――――文化遺産をバックに学生服の中学生数人が写っている。 何故か周りに居る女子と男子に上条は叱られている
ようで、上条は愛想笑いを浮かべて一歩引いていた。 一体どんなシーンか、と考えてみたが、多分上条の高校での日常と似たよう
な感じなのだろう。 だがその数人の男子と女子の中にも知った顔はない。
 33枚目――――一端覧祭だろうか。 上条当麻と両親、それに二人の女子が文化祭用にデコレートされた教室の前で写っている。
上条は何故か苦笑いであった。 もちろんその二人の女子中学生に見覚えはない。
 39枚目――――二十代半ばくらいの美人教師(巨乳)とのツーショット。 上条の顔は微妙にではあるが明らかにデレデレして
いる。 その教師に見覚えはないが。

美琴「アンタって何も変わってない訳ね。 悪い意味で」
当麻「何故だろう。 とてつもない理不尽さを感じる」

 57枚目――――半袖短パンで疲れ切っている中学生らしき上条当麻と詩菜がベンチに座っている。 撮っているのは刀夜だろうか。
ハチマキの色は白。 しかし明らかに容姿は今のものより幼い。
 71枚目――――上条父子《おやこ》が二人三脚で一生懸命走っているところへ、別の父子が何やら能力を使い妨害しようとしている。
 72枚目――――上条父子が別の母娘《おやこ》に突っ込んで揉みくちゃになっている。 かなり遠いところで詩菜が凄い形相になって
いるのが写真からでも感じ取れる。

当麻「………次次!」

 95枚目――――どこかの病室。 その上条は小学6年か中学1年かというくらいの幼さに見えた。 どうやら右腕を骨折でもしたらしい。
しかし当の本人と、一緒に写る刀夜はどちらも笑っている。 その意味は計りかねない。

美琴「…………」

 102枚目――――今度は中学生に見えた。 刀夜も写っているので夏休みの帰省だろうか。 室内プールで上条は同年代くらいの
男子学生とはしゃいでいる。 というか半分溺れているようにも見える。
 104枚目――――本気で溺れかけたのか、上条がプールサイドでぐったりしている。

上条「誰だよこの写真撮ったの。 つかプールって写真撮って良いのか??」
美琴「ん? …………あれ、これってうちの母じゃない?」
上条「へ? どこどこ?」
美琴「ここ、これ」
上条「んー? そうか? 小さい上にボケてて分からねえ」
美琴「私が言うんだからきっとそうよ。 本当に昔から家近かったのね……、実は知らず知らずに会ってたりして」
上条「…………かもな」

 上条は微妙な笑顔を浮かべて答えた。

756■■■■:2010/02/17(水) 19:39:11 ID:H2R/N7eM
【96/2−39】


 120枚目――――どこかの病室。 薄い青緑色の患者衣を着た上条は随分幼く、頭を包帯で巻かれネットを被せられていた。
何がどうなったのか全く理解していないかのようにポカーンとした顔で恰幅の良い中年医師と写っている。
 121枚目――――ほとんど同じ構図だが、上条はカメラに向かってぎこちなく笑っていた。
 140枚目――――別の病室。 今度は脚。 一緒に写る看護婦は優しい笑顔で幼い上条へ微笑みかけている。
 150枚目――――さらに別の病室。 目立った外傷は見あたらないので病気か何かかもしれない。 上条は元気そうにピース
してはにかんでいる。 どうやら退院の時らしい。

当麻「ん、どした?」

 美琴の手が上条の袖を掴んでいることに気付く。
 そちらを向くと、美琴の表情はホラー映画を見た後の子供のように不安そうなものになっていた。

当麻「あー、でもほら、俺は今ピンピンしてるしさ………だからそんな顔しなくても大丈夫だって」
美琴「う、うん」
当麻「大体にしてお前の電撃食らった方が絶対重症間違いなしだぜ? たぶんお前が不安になるなんて、お化けが鏡見て絶叫する
    くらいに変な話だぞきっと」
美琴「うん…………」
当麻「…………あ、あれ? ええっと………、次」

 161枚目――――小学校の学芸会だろうか。 何故か木の格好をした上条が舞台の真ん中にいる。 ぶっ飛んだ脚本なのか、
アクシデントなのかは分からない。
 170枚目――――次は合唱会のようだ。 小学校高学年風の上条は目が半開きで眠そうである。 隣の女の子がどうにもそれ
を気にしているようで向きが一人だけおかしい。
 192枚目――――再び学芸会。 今度は良い役なのか、『西洋風』を最大限安っぽくしたような格好であった。 具体的に
はハットを被りベルトを巻いて、玩具の剣を携えている。 しかし写真が捉えてきたのは丁度何かに躓いて転ぶ瞬間であった。
 193枚目――――かなりブレているが、どうやら転んだ上条の上にベニヤで作ったセットが倒れたようだった。

美琴「………不幸ね」
当麻「はははは……はあ。 まあベニヤならたんこぶ程度だろ」

 ちなみに小学校のイベントまで来ると本当に知っている人は皆無である。
 徐々に『自分に似た誰かのアルバム』を見ている感じがしてくる。

 204枚目――――授業参観の中の一枚のようだった。 もちろん機密事項である能力にはあまり関係しない授業であろうが、
何故か当てられて立たされている上条は物凄くテンパっているようだ。 お勉強は昔から得意じゃなかったのだろうか。
 210枚目――――この家のリビングの写真であった。 親戚と思しき人も何人か写っている。 服装から見て恐らく今と似た
ような時期だろう。 上条は小学校低学年くらいだろうか。 さすがに刀夜と詩菜も今より見た目が若い。
 214枚目――――同じ服装で今度は台所。 上条は楽しそうに話をしながら母のお手伝いをしているようだ。
 219枚目――――同じ時期に家の前で撮ったものらしい。 知らない親戚に知らない男の子と女の子。 車が今のと違い一回り
小さい物だ。

美琴「アンタにもこういう良い子な時期があったのねえ」
当麻「悪かったなこんなのに育っちまって」
美琴「…………………」
当麻「ん、何? 顔に何か付いてる? てか顔赤いぞ?」
美琴「べっつにー」
当麻「?」

 232枚目――――神社の写真だろうか。 先程写っていた知らない子供と上条が出店で買ったらしいたこ焼きをほおばっている。
 237枚目――――幼い上条が巫女さん(巨乳)に抱っこされて写っている。 上条は耳まで顔を真っ赤にして巫女さんの方を
ジーッと見つめていた。

美琴「ねえ」
当麻「………はい」
美琴「思い出したことがあるんだけど」
当麻「何でございませう」
美琴「アンタが助けた娘の中に、確か巫女さんが居たわよねえ」
当麻「………巫女属性なんてありません」
美琴「私まだ何も言ってないんだけど?」
当麻「美琴属性ならあるけどな」
美琴「ッ!? ばっ、ななな何言ってんのよ馬鹿じゃないのどういう意味よ!?」
当麻「えーっと、さあ続き続き。 お、小学校の入学式かー」
美琴「……………何かはぐらかされた気がするんだけど」

757■■■■:2010/02/17(水) 19:39:21 ID:H2R/N7eM
【97/2−40】


 238枚目――――小学校の門の前で親子三人が写っている。 両親はまだ青年と少女といった感じだ。 微笑んでいる刀夜の
顔が若干やつれて見えるのは、夏の終わりに過去の話を聞いたからかもしれない。

美琴「さすがにここまで来ると可愛いわね」
当麻「そうかぁ?」
美琴「そうよ」

 242枚目――――再び家族三人の写真。 撮っているのは小学校の職員だろうか? 上条は目にいっぱい涙を浮かべ今にも
大泣きしそうなのを唇を噛んで必死に堪えている。 それを両親が慰めている様子だった。

美琴「アンタって小学校からなんだ。 大体私と同じね」
当麻「美琴は泣いたか?」
美琴「ぜーんぜん。 ………と言いたいところだけど、私の場合は時間差だったかな。 入って少ししてからホームシックになっ
    ちゃってさ。 まあほら、学園都市に来る子なら必ず一度は掛かる麻疹みたいな物よ」
当麻「そっか」
美琴「と言っても、いっつも隠れて泣いてたから私が泣いてるところ見た人なんて滅多に居ないけどね」

 その滅多に居ない内の一人が上条当麻であるらしい。
 しかしそれを言ったらまた怒りそうなので触れないでおく。

当麻「なんつかお前らしいな。 けど、まあもう隠れる必要は無いんじゃねえの?」
美琴「え……………それって、『泣く時は俺の胸で泣けー』、とか?」
当麻「………せっかくぼかしたのに、お前は俺を赤面させて楽しいですか?」
美琴「んー、そこそこ?」
当麻「はぁ。 まー胸でも右手でも膝でも貸して差し上げますよ意外と泣き虫なお姫様」
美琴「う、うん………」

 251枚目――――この家での、何の変哲もない家族団欒のひととき。 何のシーンかはよく分からない。 ただ食卓がやや
豪華で上条の好きな食べ物が並んでいるのに、その表情は浮かばないようだ。
 254枚目――――先程と同様の部屋で、上条が園児の格好をして卒園証書を持って写っている。 しかし顔には泣きはら
したような痕があった。 恐らくこれらは学園都市に行く直前の写真なのだろう。
 260枚目――――最後の写真。 上条かどうかは分からないが、赤ん坊の写真だった。 畳の上に敷かれた小さな布団で、
どう考えても赤ん坊のお姉さんにしか見えない詩菜に寄り添われ、スヤスヤと眠っている。

美琴「あれ、幼稚園の頃の写真はあまりないのね」
当麻「んー、そうだな。 何か色々大変だったらしいからな」
美琴「色々って?」
当麻「………まあその話は今度にしようぜ。 結構重たい話だしさ」

 美琴は迷ったが、話さないと言っているわけでは無いので追及するのはやめた。
 それに端からは見えない、というか上条の性格からしてどうせ見せないだろうが、今上条の内心は様々な物がグチャグチャ
と混ざり合っていて、きっと更なる刺激を与えられるような状況ではないように思える。
 だから美琴はそれに合わせて言葉を選ぶ。

758■■■■:2010/02/17(水) 19:39:41 ID:H2R/N7eM
【98/2−41】


美琴「そう、じゃあアンタが話したい時で良いわよ。 それにしてもさ、結局アンタって昔から大して変わって無いんじゃないの?
    実はもっと、例のアレ前後で別人っぽいのかなって思ってたけど」
当麻「うーん。 そうか? 俺は何だか別人のアルバム見てる感じだったぞ」
美琴「そりゃまあそうでしょうけど。 でも第三者からの視点で見れば何も変わってないわよ。 トラブル体質で女ったらしで
    ツンツン頭だし」
当麻「え、ちょっと、俺の特徴ってそんだけですか? 他に無いのか?」
美琴「うん」
当麻「…………………泣きたいので美琴の胸を貸し…ふぐあ!!」
美琴「急に近づくな馬鹿!! 殴られたいわけ!?」
当麻「殴ってから言うなよ……、軽いジョークじゃねえか」
美琴「こっちもジョークよ!」
当麻「それじゃ俺の特徴は?」
美琴「え……?」

 美琴は三秒ほど考える素振りを見せた後、俯いて両手の指を絡めつつモジモジし始めた。

美琴「さ、さあね」
当麻「なんじゃそりゃ」
美琴「うっさいわね。 じゃあ聞くけど、アンタは私の特徴言えるわけ?」
当麻「短髪ビリビリゲコ太」

 即答。

美琴「……………………」
当麻「ってだからジョークだってお互い様だろ!? 無言で放電はこえーから止めなさい! 特徴だろ特徴、えーっと」
美琴「どうせだから良い点挙げてよ」
当麻「良いところ〜? うーん………」

 考える振りをして美琴から視線を逸らす。

当麻「た、例えば、思い出のないアルバムを………見ようか躊躇ってる奴に、傍に居るとか恥ずかしいセリフを平気で言う、
    ような、意外と優しかったりする…………ところとかは、俺は…………」
美琴「…………俺は?」
当麻「な、何でもねえよ」
美琴「…………………」

 二人が沈黙した時、丁度車の音と玄関のドアが開く音が聞こえた。
 会社へ出かける予定だった刀夜はさっき既に出て行ったようだから、彼ではないだろう。

当麻「美鈴さんかな」
美琴「……たぶんね」
当麻「マズイな。 こんなとこに二人で居るところを見られたら何て言われるか」

 二人の脳裏に体をクネクネさせながらからかう美鈴のニヤニヤ笑顔が浮かんだ。

美琴「どうしよ。 私先に降りよっか。 アンタまだそれ片付けなきゃならないでしょ?」

 棚の前はまだ物が散乱している状態だった。
 美琴の洗濯物もまだ乾いてはいないが、そんな部屋の状態で乾かしているのも妙だろう。

当麻「わりいけど頼む。 終わったら呼びに行くよ」
美琴「オッケー」

 二人は立ち上がり、床や壁に奪われた体温を取り戻すかのように少しだけ伸びをする。

美鈴「美琴ちゃーん?」

 階段下から美鈴の呼ぶ声がする。

美琴「んじゃ先行くわね」
当麻「おう」

 美琴はそっとドアを開けた。

759■■■■:2010/02/17(水) 19:39:59 ID:H2R/N7eM
【99/2−42】


【帰省1日目 天使】


美琴「あっれー? ママ、短パンは持ってきてくれなかったの?」

 リビングの隣にある和室で、美鈴が持ってきた荷物を適当にチェックしていた美琴は母に向かって不満そうに尋ねた。

美鈴「持って来なかったけど。 ていうか美琴ちゃんったらいつまであんな物穿くつもりなのよ。 さすがにもう十四歳でしょ?」
美琴「い、いいじゃん別に勝手でしょ! 暖かいし動きやすいんだモン」
美鈴「せっかく常盤台の制服はスカートが短いんだから、『もうちょっとでパンツ見えちゃいそうかも〜!?』って辺りを攻めた
    方が色気が出て彼もグッと来ると思うんだけどなーん」
美琴「だから何の話よ! 誰に何を見せるってのよ頭おかしいんじゃないの!?」
美鈴「まあ美琴ちゃんの場合はその下着の方がまた問題なんだけど。 ……あ、そういえばその彼はどこに居るの?」
美琴「え、アイツならまだ二階……………ってだーから違うっつーの!! もー!!」

 美琴は先程想像した通りのニヤニヤ美鈴を無視して荷物のチェックを再開する。
 ややあってリビングと和室を繋ぐ襖がスッと開かれた。

詩菜「あらあら。 何だか楽しそうですね」
美鈴「あはは、大体うちはいつもこんな感じです」
詩菜「ふふ。 私も今度息子をからかってみようかしら。 ちょっと反応が見てみたい気もするわ」
美琴「………………」

 それを聞いた美琴が半分無意識にその場面を想像する。


詩菜『あらあら。 当麻さんは美琴さんのことが好きで好きでたまらないのかしら?』
当麻『ち、違う違います違うんです!! み、美琴はあくまでよく喧嘩する友達であって、別に好きとかとかそういう対象じゃ
    決してないというか、そもそもアイツまだガキじゃねえか!』
詩菜『あら、嫌いなの?』
当麻『き、…………嫌いでは、ない、けど』
詩菜『顔が真っ赤よ?』
当麻『ぐッ……』
詩菜『それに喧嘩するほど仲が良いとも言うし、あなた達の年なんて一歳半くらいの違いしか無いわ。 全然根拠になってない
    じゃないの。 母さん怒らないから正直に話してみなさいな。 好きなのよね? 美鈴さんと仲良くしてるのもそのためなの
    よね?』
当麻『だ、だから違うんだってばーーーーーー!!!』


美琴(これは………………、かなり見てみたいかも)
美鈴「美琴ちゃん、何ニヤケてんの?」
美琴「ふぇぇっ!!? に、ニヤケてなんかないわよそれアンタでしょアンタ!」
詩菜「あらあら。 何か楽しい事でもあったのかしら」
美琴「い、いえ。 全然、そんな……何も……」

 美琴はゴニョゴニョ言いながら既にほとんどチェックしてしまった荷物を再び漁り始める。

美鈴「乙女は大変ね〜」

 美鈴は手を頬に当てウンウンと頷く。 何を納得しているのかは不明。

詩菜「ん? あらいやだもうこんな時間なのね。 乙姫ちゃんは起きたかしら?」
美琴「あ、わた、私見てきます!」

 容赦ない美鈴のからかい攻撃を上条当麻の母親に見られるという状況に居たたまれなくなった美琴は、素速く立ち上がり部屋
を出て行こうとする。
 しかしそれを詩菜が呼び止めた。

詩菜「あ、美琴さん待って。 時間も時間だし、お昼寝が長くなっても夜眠れなくなるだけだから、もし眠っていても起こして
    もらえないかしら」
美琴「分かりました」
詩菜「悪いわね、お願いします」

 美琴は頷くと小走りで出て行き廊下の反対側に位置する折返し階段を駆け上がる。

当麻「どわっ!!」
美琴「うわっ!!」

 しかしそれを半分上ったところで、上から降りてきた上条と出会い頭にぶつかってしまった。
 体格差があるので自ずと美琴がよろける。

760■■■■:2010/02/17(水) 19:40:18 ID:H2R/N7eM
【100/2−43】


当麻「あぶねっ!」

 咄嗟に上条は美琴の体を両手で掴む、というか抱きしめるという行為に出る。

美琴「うひゃっ!!」

 美琴は突然上条に抱きしめられ、さらに上条の顔が自分の顔の僅か数センチ先まで迫った事で一気に慌て、顔が強張る。
そして体の方は逆に力が抜けてしまった。 いつもの症状が出そうになる。
 上条が腕を解くとすぐに幻想殺しである右手を両手でガッシリ掴んだ。

当麻「(お、おいマジか、ふにゃーなのか?)」

 美琴はコクコクと頷く。

美鈴「美琴ちゃーん? どうかしたー?」

 美琴の短い叫び声に気付いた美鈴は大きな声で尋ねながら徐々に階段へと近づいてくる。

当麻(ヤバイヤバイヤバイ!!)

 右手で美琴のどこかに触れておかなければならないという状況で他の人に見られるのは非常によろしくない。
 これは隠れるしかないだろう。

当麻「な、何でもないデース!!」
美鈴「あや? 当麻君?」

 上条は左腕で美琴のウエストを抱くと階段を駆け上がり、洋室へと突進しドアを閉める。

当麻「(み、御坂さん早く、早く落ち着いてください!! 深呼吸でも瞑想でも何でも良いから!!)」
美琴「(わーバカ!! 顔近い顔近いから顔近いってば!! あと腰の腕も離してよ!!)」

 両者テンパってお互い訳の分からない事になっていた。
 今美鈴が階段を上ってきたらほとんどゲームオーバーだろう。
 それを想像して二人はより一層慌てる――――

 結局美琴が落ち着くのに八分以上も掛かってしまった。
 美鈴はどうやら階段を上ってこなかったようだが、いつ「遅いわねー、二人とも何やってんの?」とか言いつつドアを
開けられるか気が気じゃなくて、二人は心労で疲れ果ててしまう。
 とは言っても早く乙姫を起こさないと怪しまれるので休む間もなく隣の和室へと入る。
 乙姫はゲコ太のぬいぐるみを抱きしめたまま嬉しそうな表情で眠っていた。 顔をゲコ太に押しつけているのでお互いの
頬がムニュッと潰れている。
 疲れていたはずの美琴は、しかしそれを見て顔を綻ばせてしまう。

美琴「うんうん。 そうよね、普通ゲコ太を前にしたらこうなっちゃうわよね」
当麻「そうだよな。 こうなるよな。 抱き心地良いからなコレ」
美琴「ん?」
当麻「え?」

 美琴は隣からおかしな同意の言葉が聞こえてきたのを不審に思いそちらを見ると、さらに不審な事に上条の顔も綻んでいた。
 上条がゲコ太好きだなんていうのは聞いた覚えがない。

美琴「そういえば、アンタ何でこれ持ってきたの?」
当麻「何でって…………お前の策略にはまったんですけど見事に」
美琴「策略?」
当麻「え、あれ?」
美琴「私が預けたのは、部屋に置いておくとこの子が黒子に襲われるからよ? 私の匂いがどーとか言ってさ、どんな変態行為に
    使われるか分かったもんじゃないし。 それに持って帰るにはぬいぐるみ二つはかさばるしね」
当麻「………………………」
美琴「で、策略って何の事?」

 上条はゆっくりと視線を前に戻すと、布団へと一歩踏み出した。

当麻「………乙姫ー。 おい起きろー。 お兄ちゃんが起こしに来てやったぞー」
美琴「まーたスルー? まあ後でも良いけどさ……」
当麻「起きろーおーきーろー。 起きないとほっぺたプニプニするぞー。 うお、やらけぇ!」
乙姫「んーあと二時間ー」
当麻「日が暮れるぞそれ。 初詣行くんじゃないのかー?」
乙姫「いーくー」
当麻「んじゃさっさと起きて下で着替えなさい。 それにあんま寝ると夜寝れなくなるぞ」
乙姫「んーだっこー」
当麻「幼稚園児かお前は! ………美琴さん、だっこだそうですお願いします」

 上条は後ろで棒立ちしている美琴を拝む。

美琴「へっ、何で私よ?」
当麻「お前…………いや、んじゃあ俺がやるか」
美琴「う、や、やるわよ。 って起きたじゃん」
当麻「お、」

 上条が振り返ると乙姫は布団の上でペタンとアヒル座りをしながら目を擦っていた。

乙姫「ふわーあ。 お兄ちゃん着替えるって何? 別にこのままでも良いけど」
美琴「うちの母が乙姫ちゃんに着物あげるって。 あれ、聞いてない?」
乙姫「あ! 今思い出した」
当麻「下で待ってるってよ」

 三人は階下で談笑しながら待っている母親達の元へ向かった。

761■■■■:2010/02/17(水) 19:40:30 ID:H2R/N7eM
【101/2−44】


 約四十分後。

当麻(それで、俺はいつまで正座してれば良いんでせうか)

 上条はリビングの和室へと繋がる襖の前で正座をしていた。
 「着付けしてくるから、当麻さんは少し待っていて下さいね」「そうそう、可愛くてびっくりしちゃうかもしれないから正座
でもして精神を落ち着けておくことをお勧めするわよ」などと母親連中に言われたからであるのだが、

当麻(いやまあ、律儀に正座する必要はねえんだけど)

 しかし先程から襖の向こうでは女性四人のかしましくも楽しげで、かつ妄想を掻き立てられるかのような会話が聞こえてきて、
どうにもそわそわと落ち着かない。 結局自然に正座してしまうのだった。
 例えば、

美鈴「んー、美琴ちゃんはまだまだねえ。 栄養は足りてるだろうし遺伝子的にも悪くないはずなのに何がいけないのかしら」
美琴「ど、どこ触ってんのよ、余計なお世話!」
乙姫「美鈴お姉ちゃんはすっごくおっきーよね。 いーなー。 うわっ、柔らかい、それに何このボリューム。 お、重い!」
美鈴「ふふ。 そーでしょー。 って言ってもあまり大っきいと着物は似合わないけどね」
美琴「嫌みにしか聞こえないんだけど……」

 とか、

美鈴「じゃーん」
乙姫「おおー、どっちもすごい可愛い!!」
美琴「また買ったの? 前のでも良かったのに」
美鈴「(しーっ!! 静かに。 後でたっぷり驚かせましょ)」
乙姫「(う、うん)」
詩菜「あらあら。 美鈴さんこんな高そうなの本当にもらっちゃって良いんですか? さすがに悪い気がするわ」
美鈴「いーんですいーんです。 美琴ちゃんのお下がりで申し訳ないけど、どうせもうこの子は着られないですから」
美琴「ん、ところで着るのは私達だけ?」
美鈴「うん。 面倒だしね」
美琴「………ああ、あのヤローが居ないからか」
美鈴「そーよあのバカヤローが居ないからよ。 全くちくしょー」

 とか、

美鈴「まーた我が娘はそんな下着を………。 乙姫ちゃんの方が遥かに大人じゃない…………」
美琴「悪かったわね……」
乙姫「えっと私はそんな………趣味は人それぞれだと、思うし………えっと。 ね、ねえ詩菜さん?」
詩菜「独特な感性を持ってるのね美琴さんは。 さすが高位能力者だわ」
美琴「自覚はしてるからお願いみんな放っておいて頂戴。 大体にして人に見せるもんじゃないし自由でいいじゃん」
美鈴「………? …………、………!!」
美琴「なな、何よそのジェスチャー!? 見せないってば。 わー馬鹿開けようとすんな!!」

 とか、

詩菜「あらあら。 さすが若いとお化粧のノリが良いわね」
美琴「へ、そうなの?」
乙姫「私もよく分かんない」
美鈴「そーよ二人とも。 そりゃもう腹立たしい程にピチピチお肌よ。 努力もせずに良い物持ってるってのに何て無自覚なの
    かしら。 一度もったいないお化けにでも祟られるべきじゃない?」
詩菜「ふふ、そうですね。 美琴さん、お化粧はあまりしない?」
美琴「一応校則ですから……」
美鈴「美琴ちゃん、校則っていうのは破るためにあるのよ?」
美琴「うちの学校はばれるとペナルティが面倒なのよ。 前に話したでしょ」
乙姫「破るってとこは否定しないんだ……。それにしても美琴さん凄い、さらに可愛くなってる」
美琴「ありがと。 でも乙姫ちゃんだって可愛いわよ?」
詩菜「あらあら。 二人とも若いから簡単にしかしてないんだけど、やっぱり元が良いと映えるわね」

 などなど、たまに隣に上条当麻が居る事なんか忘れてるんじゃないだろうか? と思えるような際どい会話も飛び出して
きて、心を思い切り翻弄されている次第だ。
 サウンドオンリーなところがまた煮え切らず、かえって煩悩を刺激されてしまったりする。
 そんな悶々とした長い長い時間が過ぎ、時計の長針が一回転するかどうかというくらいでようやく「よっし完成ー」という
声が聞こえた。

当麻「はあ、やっと終わったのか。 女の身支度ってのはほんとなげーな」

 実は二人分の着付けと考えるとこれでも早い方だったが、上条の感覚からはそうは思えない。
 一応座布団に座っていたのに、普段からよく正座するわけでもない上条の足はもう痺れきっていて、感覚が半分以上無く
なっていた。

美鈴「んふふ。 おまたせー、ってずっと正座してたの?」

 美鈴は襖を少しだけ開けて上条に微笑む。
 そして二枚ある襖の内、上条から見てまず左側を開けた。

762■■■■:2010/02/17(水) 19:40:42 ID:H2R/N7eM
【102/2−45】


当麻「おお……」

 上条は思わず感嘆の声をあげる。
 そこには落ち着いた赤を基本色にした振袖を纏い、ベリーショートの癖っ毛をきちんと整え、大きな白い花飾りを付けた乙姫が
はにかみつつ立っていた。

乙姫「どうかな? お兄ちゃん」

 そのセリフと上目遣い攻撃に、自分には妹属性なんて無いと信じてる上条でも一瞬クラッとする。
 土御門なら上着を破り雄叫びを上げて喜びそうなレベルであろう。

当麻「わ、私は兄としてあなたを誇りに思います」

 思わず英語の直訳文みたいなセリフになってしまう。

乙姫「何それ? えへへ」
詩菜「本当に可愛いわよ乙姫ちゃん。 ほら、こっち向いてー」
乙姫「いえーい!」

 いつの間にかデジタルカメラを構えていた詩菜がピースでポーズを決める乙姫の写真を三枚程度撮る。

美鈴「さて……んふ、んふふふふふ。 当麻くーん、こっち見て見てーん♪」
当麻「ん?」
美鈴「はーい、んふ、開けまーす♪」

 美鈴は上条から見て右側の襖をズバッ!と勢いよく開けた。

当麻「……………………………………」

 何とも恐ろしい事に、上条当麻は、これまでの人生において幾度目かの『天使の発見』をしてしまう。

美琴「コラ母、別にそんな仰々しい振りは要らないっつの! …………って、な、ななな何よ?」
当麻「……………………………………」
美鈴「さあ当麻君♪ これ、ここ見てここ。 裾の所、コスモスよこれ。 しかも赤! そしてここ、袖の所、この柄はライラックね、
    しかも何と紫!! 極めつけはここ、帯の所!!」
美琴「え、これもしかして花水木?」
美鈴「正解♪」
美琴「あああ、あ、アンタは一体私に何てものを着せてるのよー!!?」
美鈴「あっははははは、だってだって、今の美琴ちゃんにピッタリすぎなの見つけたんだもの。 大丈夫よ大丈夫、多分当麻君
    分からないから」
美琴「そう言う問題じゃ………ってちょっとアンタ、まじまじと見過ぎでしょ!!」
当麻「……………………………………」
美琴「えっと、あれ? も、もしかして、やっぱ変、かな? 私がこういうきちんとしたもの着るの」
当麻「……………………………………」
美琴「何とか言いなさいよ!!」
当麻「……………………………………」
美琴「おーーーい?? 起きてる??」

 ここで上条が邂逅してしまった天使、『御坂美琴』について、彼の視点から簡単にではあるが説明しておきたいと思う。
 ソレは髪に似合った明るいオレンジを基本色にした振袖を着ていた。 振袖やその帯にはふんだんに可憐な花柄が取り入れ
られ、場所によっては薄い青や赤、ピンクや白や紫などとも言えるかもしれない。 袖は地面に付きそうなほど長く、ソレが
体の前で手を絡めモジモジする度にゆらゆらと動く。 その動きは上条の心をリズミカルに鷲掴みにした。
 ソレは元々短かった髪をきちんと結い、薄桃色の小さな花がたくさん付いた簪《かんざし》を付けていた。 いつもと髪型
が違うため新鮮で、ソレが誰であるか気付くのに一拍必要である。 ただし、気付く前より気付いた後の方が自分の鼓動は
高まるだろう。
 ソレは言われなければ分からない程度の薄化粧をしていた。 元から整った若々しい顔が更に整えられ、まるで生きた人形
に思えるようなゾッとする程の美しさに仕上がっている。 しかし、普段より眉や睫毛がハッキリ見え、唇には紅を注している
ため表情の変化が読み取りやすく、ソレに魂が存在していることを認識させられる。 ちなみに頬が朱くなっているのは単に
照れているだけのようだ。
 ソレは足にはきちんと足袋を穿き、爪には薄くマニキュアをしていて、もう全身完全装備である。
 ソレの表情は、始めはムスッと怒ったように頬を膨らませていて、その後絶叫し、次に恥ずかしそうにモジモジしつつ頬を
染め、かと思えば眉を下げて困ったような、哀しそうな顔をし、もう一度怒った感じに変わってから最後には心配そうな様子
をした。 表情を変える度にいつもより若干紅い唇が踊り、思わずその感触を思い出して全身を身震いさせてしまう。
 ソレは――――

763■■■■:2010/02/17(水) 19:41:48 ID:H2R/N7eM
【103/2−46】


詩菜「あらあら。 当麻さんったら」
乙姫「お兄ちゃーんどうしちゃったの?」
美鈴「うおっし私ってばグッジョブ!! ………と言ってもここまで効くとは思わなかったけど」
美琴「え、何?? どういうこと??」

 未だによく分かっていない美琴は試しに軽くビリビリを放ってみる。

美琴「うわ、無意識で防がれた!?」

 上条はボーッとしたまま右手を前に出し、再び何事もなかったかのようにそれを下ろす。

当麻(つまり美しいとか可愛いとかそう言う次元ではなく………人間より上位の世界に………今まで見たどの天使よりも………、
    いや、これ以上はもっと近づいて見てみないと分からねえな)
美琴「え、何?」

 上条はおもむろに立ち上がろうとした。
 だが、

当麻「う、わっ足がッ!?」

 足が限界まで痺れていたので感覚もなく、思うように動いてくれない。

当麻「とっ、ととアブッ!」
美琴「な、わ、ちょっと何、ぐぇ!?」

 前屈みのままよろけて前方へ突っ込む。 立ち上がる前に上条は美琴を凝視していたわけで、もちろん行き着く先もそちらである。
 上条は、着物のおかげでいつもの瞬発力を生かせない美琴の腰へと見事にタックルしてしまった。
 幸い美琴が倒れた場所には座布団が合ったので怪我はなかったが、体勢としてはこの状況において最悪なものの一つに違い無い。

美琴「ど、どどどき、どきなさいよ!!」
当麻「あ、も、申し訳ありません天使さん………………………」

 上条は畳に手と膝を付いて、倒れた美琴に覆い被さっていた。
 その上まだ『天使を魅ている』ようである。

美鈴「うはー、当麻君ってば何気に大胆なのね。 しかもこの期に及んでまだ観察するって………」
詩菜「はあ、誰に似たのかしら。 お恥ずかしい限りだわ」

 とか何とか言いつつ詩菜はパシャリと記念写真を撮った。 アルバム行き決定である。

乙姫「お兄ちゃんそれはさすがにマズイって」

 上条は口では目の前の天使に謝ったが全く動こうとする様子はなく、ジィーーッと穴が開くほど美琴を凝視している。
 仕方なく乙姫が上条の体を後ろから引っぱる。

美琴「だだ、だからそんな真面目な目で見んなってのよ馬鹿ー!!」

 美琴は徐々にふにゃふにゃになりそうになる体からどうにか最後の力を振り絞り上条にアッパーを放つ。

当麻「ぐえ!!」

 そしてそれが綺麗に上条の顎に入った。 美琴は狙っていなかったが、乙姫との見事な連携プレイで上条当麻を打ち倒した。
 結果、腕の力も抜けてしまった上条は体ごと美琴に覆い被さってしまう。

美琴「ちょっ、ちょちょちょちょちょっ、え? だ、駄目、駄目ぇぇええ!!」
当麻「ふにゃー」
乙姫「もーおにーちゃーん!!」
詩菜「はぁぁー。 本当に誰に似たのかしら」

 詩菜の大きな溜息が部屋に響いた。

_____

ここまで


ど忘れ
番号:通し=90〜103 ・ 帰省/家族編=33〜46


美琴の振袖姿描きてー
そういえばアニメ20話の浴衣もオレンジっぽいですね

ところで気付いたんですが、話全体が5日半で、今2日半です
進んでないw
それなのに次回で美琴サンタに分量が追いつきます
なにこれこわい きもい

初詣である程度イチャイチャしたらようやく本筋
不本意ながらオリキャラが出しますが、ただのおっさんなので許して下さい。
全てはイチャイチャのために……

764■■■■:2010/02/17(水) 20:10:49 ID:Vh/fZ4t6
>>763
GJ!
美琴の「ぬううううん!!」シーン想像してフイタw

765■■■■:2010/02/17(水) 20:19:19 ID:Ea9Jy6G2
GJ!!美琴属性で2828がとまらない

766■■■■:2010/02/17(水) 20:22:37 ID:vMSYlcEg
>>763
GJ

767■■■■:2010/02/17(水) 20:46:32 ID:w1PL4zrU
>>763
GJです!
萌え死にそうですw
花水木、思わず検索しちゃいました
私の想いを受けてください
美琴はよく花言葉を知っていましたね

768■■■■:2010/02/17(水) 21:01:41 ID:D9B80Ej6
>>763
GJです!!美琴カワえぇ
上条さんも何やら色々戻れないレベルまで来てますねw

769■■■■:2010/02/17(水) 21:14:45 ID:SPoDkxKc
>>763
お疲れ様です
コーヒー補充しながらマターリ堪能させてもらいました〜
振袖か〜
過去に一番綺麗に描けた絵も振袖だった自分としては
ちょっと自己満足に描いてニヤニヤしてきますね!

770435:2010/02/17(水) 21:24:06 ID:smIUcZ.k
やれやれやっとネット環境が復活した

>>462
本当に高度な話になっていて何のことやらさっぱり解らんかったぜよ
個人的には③が気になるけどそもそも歌詞から物語を作る事自体あんまりやらないから気にせんことにしよか
①は確かに楽だねその分読み手には伝わり難いのだけど自分の頭の中ではちゃんと繋がってるんだけどその辺りは完全に俺の力量不足じゃん
②は確かに解り易そうだけど俺にはちょい厳しいかね場面場面で書いて最後に繋げるような書き方をしてるからそういう作業は慣れてるはずなんやけどどうにも苦手意識が拭い去れない精進あるのみやね国語力の無さは自覚しているところだし
>最後まで忠実に〜
別に根気とかじゃないんだけどな元々レス返しのために書いた奴だから逆に言えば投げ出すだけの勇気も無かったわけで基本的に時間が無いから書き直すのも面倒だったしな
ちなみに俺が書いてるのはSSであって小説ではないからそれだけは間違えないでほしいかも作品という言い方は間違ってないけど本職の人に失礼でしょうそんなつもりで言ったわけじゃないのは解ってるけど拒絶反応が凄いんで
感想めんどいってのは上記の通り時間が無かったのと関係があるんだがどうでもいいか
レスがつかなかったからといって読まれなかったってことにはならんだろROM専の人だって何人かいるはずだし

>>497
そりゃすまんこ皮肉が通じるほど頭が良くないんで次からはちゃんと言ってくれな次があるか知らんけど
>不許可〜
そもそもアンタに許可取らなきゃいけない話じゃなくてむしろ俺が許可する側なんだってこと解ってるのかね
著作者が嫌がってるのにそれを無視するってのは人間的にどうなんだろうね別に訴えるとかそんな面倒なことはしないけど


亀だけど>>660に賛同してみる
覚悟云々は少しずれてるだろうけど一々質問する必要は無いだろ無駄にレス消費してるわけだし
ここは一応SSスレなんだから馴れ合うならよそでやれと思うのは間違ってるのか?


さすがに今回は空気悪くし過ぎたしまともなの投下するか
偽者っぽいのも居た気がするし何か酉も付けなくちゃならんかな
めんどくせぇ

そいじゃ3分後ぐらいから

771初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:26:56 ID:smIUcZ.k
 まだまだ冬の寒さが残る2月の学園都市。
 100万を超える人々が衣服の上からコートを羽織っている中、気温を無視した熱気が都市内に充満していた。熱の発生源は人口の8割を占める学生達で、更に言うなら男子の方が女子より遥かに熱気が高い。
 何故こうも異様な熱気を発しているかと言うと、理由は単純で、今日が2月の14日だからである。
 バレンタインデー、あるいはセントバレンタインデー。元々は聖ウァレンティヌスが殉教した日と言う事で魔術的に重要な意味を持つのだが、残念ながら魔術を知らない人々には『好きな人に想いを伝える日』と言う程度の認識でしかない。
 それは周囲をオーバーテクノロジーに囲まれた学園都市にも当てはまる事で、なまじ科学サイドの総本山と言う肩書きがあるせいでオカルトを信じない人間ばかりなため、本当に『ただの記念日』に成り下がっている。
 その『記念日』も人によって様々な意味を持つ。
『好きな人に想いを伝える日』『恋人同士で想いを再確認する日』『友達同士でチョコを交換する日』『街中に嫉妬の炎が渦巻く日』『仲の良い男女を引き裂くためにもてない男が奮闘する日』etc...
 十人十色とはよく言ったもので、本当に多種多様な意味がもたらされている。そして常盤台のレールガン、御坂美琴は今日をこう定義付けた。
『素直になる日』
 これだけだとシンプル過ぎて何の事だかさっぱり解らないため、補足説明をしておく。
 いつまで経っても美琴の気持ちに気付かないあの馬鹿こと上条当麻。アイツが鈍感なのが悪いのよと常々考えている美琴だったが、ふと思った。
 ……このまま何もしないで待っているだけだと何も進まない。
 確かに上条は鈍感だ、それは認めよう。だけど、全てをアイツの責任にするのは一種の甘えではないのか。自分が素直になれずにつっけんどんな態度ばかり取っているせいで余計気付かれ難くなっているのではないか、と。
 美琴は否定できなかった。と言うか、その通りだと思った。上条の鈍感さはかなりのものだが、美琴の素直になれなさも折り紙付きだ。このまま今までと同じように接し続けても、この想いが日の目を見る事は絶対に無い。
 だから美琴は決心した。上条に気付いて貰えるのを「待つ」スタイルを止めて、自分から積極的に「動く」スタイルに変更しよう、と。
 今までにも何度か考えていたのに実行できなかったものだが、都市中がお祭りムードで浮かれている状況だからそれに乗っかろう、と意外とすんなり決心できた。これもバレンタインと言う言葉が持っている魔力のせいなのだろう。
 ところで、欧米でのバレンタインは男女両性が花やケーキ、カードなどを恋人や親しい人、お世話になった人などに贈る日である。女性から男性への一方通行で、贈り物がチョコレートに限定されているのは日本独自のものだ。
 それは東京都西部にある学園都市でも同じで、しかし学生であり能力者である者達が独自に改良を加えたため、通常の「日本型バレンタインデー」とは一線を画する。
 特定の能力者が箱を開けると仕掛けが作動したり、あるいは渡す側と渡される側の能力が合わさったときに薔薇が舞ったりと、何でもありだ。企業もこのイベントに乗っかり、試作品を大量生産している。手作りしない女子達はこの試作品に頼る事になる。
 様々な選択肢がある中、美琴が選んだのは何の変哲も無い普通の手作りチョコだった。能力で仕掛けを作っても意味が無いから、もう普通ので良いやと投げやりに決めたのである。
 何故か。それは、美琴がチョコを渡す予定の人間にはあらゆる異能を打ち消す力が具わっているからで、試作品を選ばなかったのは単純に信用できなかったからだ。味も効果も未知数の物に賭けるぐらいなら、効果は無くても味は保障できる物を渡した方がマシだ。
 それなら買って確かめればいいじゃないかと思うが、何故かパッケージに「これは男性専用です。女性の方が食べるとビックバンも吃驚な爆発が起こりますのでお気を付け下さい」とか意味の分からない売り文句が書いてあったため冒険できなかったのだ。
 そんな訳で美琴はとある高校の校門前に居た。
 時刻は午後4時10分。とっくに下校時刻を過ぎているのだが、待ち人は未だに校内から出てこない。ちらほらと校門を抜けていく人波の中には見知ったツンツン頭は発見できなかった。
 もう既に下校している可能性――は、無い。何と言っても一時間以上前からここで張り付いているのだ。わざわざ早退までして。6時限目終了のチャイムをこの耳で聞いたのだから、それは間違い無い。友人の土御門に電話したところ、向こうが何らかの理由で既に帰宅している訳でも無いらしい。
 つまりまだ校内に残っている。

772初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:27:26 ID:smIUcZ.k
 美琴は『普通の』校舎を見上げる。彼があの中に居る事は分かっているのだからいっそ乗り込んでやろうかと思ったのだが、実行には移せなかった。
 良くも悪くも常盤台の制服は人目を引く。それが『普通の』高校の中に入り込んだらどうなるか。結果は火を見るより明らかだった。今だって校門の前で人を待っているだけなのに、出てくる生徒達に凝視されているのだ。校内に入ると全方向からの視線が襲ってくる事になるだろう。居心地が悪いなどと言うレベルではない。
(……いや、私ならそんな視線気にならないし、大きな問題じゃないわよね。結局は勇気が足りないだけで……。何が積極的に動くよ、バカみたい)
 美琴は鞄の中に入れてあるチョコレートを思い出し、大きく息を吐いた。
「ため息を吐くと幸せが逃げるとはよく言ったものだけど」
 と、不意に聞こえた声に顔を上げる。
 そこに立っていたのは、紺色のセーラー服を着ている少女だった。今時の女子高生としては珍しく、膝下ぐらいまであるスカートを穿いている。しかし、上着の方は寸法を間違えたのか丈が短く、細い腰のくびれから小さなへそまで丸見えになっており、そこから妖しい色気を醸し出していた。
 校章を見る限りこの高校の生徒らしい少女は、美琴の姿を無言で見ている。頭の天辺から足の爪先まで、嘗め回すような視線に美琴は寒気を感じた。
「あ、あの、私に何か用ですか?」
「用と言うほどのものがある訳ではないけど。ただ、一時間以上も校門の近くに立っている常盤台の生徒が居ると聞いたから。こんな『普通の』高校にやってくるなんて随分と面白い人間だなと思っただけだけど」
「そ、そうですか……」
 変わった喋り方をする人だなと美琴は思ったが、同時に気圧されている自分を感じていた。この感覚はかつて学園都市最強のレベル5である一方通行と対峙した時のものと似ている。自分では到底立つ事ができない領域に居る者。その、地獄を何度も越えてきたような気配に美琴は身震いした。
 彼女はそんな美琴の内心に気付いているのかいないのか、「これが『あの子達』の姉……いや、むしろ親と言った方が正しいか。中々面白そうな人柄をしているようだけど」などとブツブツ言っている。
「あ、あの」
「ん? あぁ、そうか、自己紹介がまだだったか。私は雲川芹亜、この学校の生徒をやっている者だけど」
「うぇ? あ、はぁ、そうですか。あ、私は」
「超電磁砲の御坂美琴、常盤台が誇るエースだけど。この『普通の』学校にお嬢様がやって来るとはな……何の用だ?」
「え、えぇっと……。人を、待ってるんです」
 答えると、雲川は驚いたように目をパチクリさせ、次の瞬間には面白いものを見つけたと言わんばかりの笑顔になった。
「今日はバレンタインだけど。そんな日に人を待っている。それが示す意味を理解しているのか?」
「はぁ」
「ちなみに待ち人の名前は上条当麻と言うのではないかと推察してみるけど」
「な!? どうしてそれを知っているんですか! い、いや、それよりも何でアイツの事を知ってんのよーッ!」
 驚きのあまり敬語を忘れて怒鳴りつけてしまう美琴。その頬は特定の人物の名前を聞いた事で一気に赤く染まり、頭から蒸気が噴き出ている。
 対する雲川は怒鳴られた事に気を悪くする風でもなく、むしろ美琴の反応が気に入ったようで腕を組んでうんうんと頷いている。
「常盤台のお嬢様が高校生に恋!? ……これは良いスクープになるけど」
「売るなーッ!!」
 ついに美琴は年上に対する敬意をかなぐり捨て、バチバチと帯電させた電撃を前髪から放出した。だが、雲川はそれをあっさりと回避してしまう。
「10億ボルトもの電撃を食らったらいくら私でも死んでしまうのだけど」
「当たってないじゃない!」
「ついでだから教えてやるけど」
「何よ!?」
「どれだけ待っても上条当麻は出てこないのだけど。今日はちょっと面白い事に巻き込まれているからな」
 怒鳴り続けていた美琴は、ピタリと動きを止めた。
「巻き込まれている、って……何? あの馬鹿はまた妙な事件に首を突っ込んでんの?」
「まぁ、首を突っ込んでいると言えない事もないけど。どちらかと言うと今回は騒動の中心に居ると言えるだろう」
 焦るでも怒鳴るでも無く淡々と事実を述べている雲川の様子に、上条が割と日常的に騒動に巻き込まれている事を知る。
(何と言うか……アイツの不幸もここまでくると表彰したくなってくるわね。と言うか、何であんなに不幸なのかしら。よっぽど前世で神様に恨まれたみたいね)
「それで、これからどうするのかだけど」
「はい?」
 脳内で独り言を呟いていた美琴は、その言葉で現実に引き戻された。

773初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:28:03 ID:smIUcZ.k
 雲川はそんな反応を気にする様子も無く、話を続ける。
「さっきも言った通り、上条は出てこない。だから、チョコレートを渡すのなら校舎に入るしかないのだけど」
「ど、どうしてチョコレートを渡すと言う事まで……」
「今重要なのはお前が校舎に入るのか、このままここで待ち続けるのか、それとも今日はもう諦めて家に帰るかの決断なのだけど」
「決断って、そんな大袈裟な……。と言うか、その選択肢だと初めからひとつしか選べないじゃない」
「それなら付いて来ると良いのだけど」
 言うが早いか、雲川は美琴の手を掴み校舎へ向かって歩き出した。
「って、え!? ちょ、ちょっと、どこに行くのよ!」
「分かりきった事を訊くのは感心しないのだけど。心配しなくても退屈はせんよ」
「そういう問題じゃなくて……って言うか、退屈しないってどういう事よ! 何か根拠でもあるの!?」
「もちろんあるけど」
 言うと、雲川は足を止めて振り返った。
 そして、彼女はこう言った。
「この学校は、いろんな刺激に溢れているから」


 校内は戦場だった。
 廊下にはスリッパや教科書が散乱しており、その上に何かが走り過ぎて行った痕跡が残されている。そして手近な教室のドアを開けてみると、その中はまるで台風が通り過ぎた後のような惨状だった。椅子や机がドミノ倒しになっており、掃除用具入れがバタリと倒され、風に舞ったプリント類が火の付いたストーブの近くに落ちていた。
「……って危ないじゃない火事になるわよ!」
 美琴は慌ててストーブの火を消し、周囲に散らかっているプリント類を集め始めた。ある程度集め終わると教卓を起こし、その中にまとめて放り込む。
「一体何があったのよ」
「面白い事になっていると言ったはずだがな。まだまだこれぐらいで驚いてもらっても困るのだけど」
 けらけらと笑い声を忍ばせた口調に、美琴はゆっくりと振り返る。
「まさか、もっと酷い事になってるとか言うんじゃないでしょうね」
「そのまさかだけど。そもそも、どうしてこれだけ教室や廊下が荒らされているのに誰も騒ぎ立てずに放置されていると思う?」
「……まさか、生徒が動けない状態になっているとか? 風紀委員や警備員も来てないみたいだし」
「不正解。今の所この学校の生徒に負傷者は出ていないのだけど。風紀委員と警備員が来ていないのは誰も通報していないから」
「待って、ますます訳が分からなくなってきた。これだけの惨状を見て誰も通報しないなんておかしいでしょ。どう考えても教室に被害が出てるし、教師が黙ってるはずないもの。それ以前に外から見た誰かが通報するんじゃないの?」
「この学校の生徒にとってはこんなのは日常茶飯事なのだけど。教室についても散らかっているだけで損害はないから教師達も目を瞑っているから。窓ガラスが割れたり上から物が降ってきたりと言う分かりやすい騒動じゃないから外から見ても『普通の』高校にしか見えないのだけど」
「……ちょっとこの学校についての認識を改めるわ。こんな台風が通り過ぎたような光景が日常茶飯事だなんて、どう考えても普通じゃないでしょうに……」
「外から見たらそうなのだろうな。だけど毎日毎日何かしらの事件が起きていれば自然とそれが普通に思えてくるのだけど」
「考えたくもないわね……。と言うか、そんなに事件ばっかり起こって大丈夫なのこの学校は。責任問題だとか色々と面倒な事になるんじゃないの?」
「それについては問題無いのだけど。この学校には他人の不幸を肩代わりしてくれる面白い奴が居るから」
 不幸、と言う単語に美琴の肩が跳ねた。
「それって……アイツの事?」
「正解。どういう理屈か分からんが、奴は不幸を引き付ける体質のようでな。一連の事件は全て奴が関わっているものだから責任をまとめて押し付けられるのだけど」
「ちょ、ちょっと! 責任を押し付けるってどういう事よ? アイツに何やらせてるの!?」
「心配はいらんよ。この学校で起こった大小様々な騒動は私の名前を使ってもみ消しているから。ただ、騒動の中心に女の子が居た場合は、少々暴力的な粛清が行われるのだけど」
「……、」
 もはや突っ込み所が多過ぎて言葉も出ない。
(事件をもみ消している? おいおいアンタそれはただの生徒にはできない荒業でしょ。それに暴力的な粛清? むしろアンタらが傷害罪で訴えられるんじゃないのかしら)
 美琴は心中でブツブツと呟く。ちなみに、自分が割と日常的に暴力(電撃とかレールガンとか)をぶつけている事実はすっかり忘れてしまっているらしい。
「……粛清って、例えばどんなのがあるの?」
「口で説明するのは中々難しいのだけど」

774初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:28:22 ID:smIUcZ.k
 雲川はそこで一旦言葉を区切り、窓の外を見た。具体的には渡り廊下を隔てて隣接する教室の中。そこに見知ったツンツン頭を発見すると、面白そうに唇を歪めた。
 彼女は次の言葉を待っている美琴に、当初の予定とは違う言葉を告げる。
「付いて来ると良い。こういう事は第三者より本人に聞いた方がより面白いのだけど」


「相変わらず、お前は面白い事になってるけどなぁ」
 背後からの声に上条の肩は飛び跳ねた。
 しかし、その喋り方や声質から声を掛けてきた人物が誰であるかを特定すると、安心したように肩の力を抜く。
「何だ先輩か。ったく、驚かせないでくださいよ」
 上条はゆっくりと後ろを振り返り、
「よ、よっす」
「ぬわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 片手を挙げて気さくに挨拶をしてくる常盤台のお嬢様を発見すると、猛スピードで後ずさりを始めた。
 その反応に美琴は怒り心頭。前髪で電気が跳ねたと思ったら、次の瞬間には全身から電流を垂れ流していた。
「アンタは……何でいつもそんな反応なのよ!」
「ちょ、止めろ御坂! ここには先輩も居るんだぞ! 教室中にビリビリばら撒いたら先輩死んじゃう! ついでに俺も死ぬんだけど!!」
 慌てて美琴のそばに駆け寄り、頭に右手を置く。すると、バチバチと音を立てていた電気は跡形も無く消え去った。さっきまで青白く、見ようによっては幻想的に光っていた教室も、元通りの殺風景なものに戻る。
 上条はほっと一息吐き、美琴は体に触れられた事で顔を真っ赤に染めた。そんな中、雲川だけがくすくすと笑っている。
「幻想殺し……面白い能力だけど」
「……楽しそうですね先輩。命の危険は感じなかったんですか」
「心配しなくても私はあの程度じゃ死なんよ。それより、お前が大声を出したから敵がまとめてこちらに来ているようだけど」
「は?」
 彼女が言っている事の意味が分からなくて、素っ頓狂な声を上げてしまった。
 雲川が付いて来いと廊下に出たので、上条と美琴はそれに従って教室を出る。
「どうしたんですか先輩。急に廊下に出たりして」
「あれを見るといいのだけど」
 ピシッと左を指差されたので目でそれを追う。
 そこには、
「見つけたわ、上条当麻よ!」「ようやく見つけたか!」「これで粛清ができるな」「いや、待て。何だか旗男の近くに女の子が二人居るぞ」「一人は雲川先輩か」「もう一人は……他校の生徒か?」「いや待て、あれは名門常盤台の制服だ!」「にゃー。あれは確か夏休み最終日にカミやんと逢引してた子だぜい」「カミやんったらまたちゃっかりフラグ立てとったんかい! もう許せへん!」「……死刑」「旗男め」「……旗男め」「旗男」「今度こそ殺す」
 スタンガンや吹き矢、トゲトゲの付いたボールなどを構えて呪詛のように「旗男」を連呼され、上条は背筋に悪寒を感じる。そして美琴は、呪いの言葉を吐き続けている彼らの中に見知った顔を発見して驚いていた。
(あの青いのは確か二次的思考を三次元女子に押し付けてきそうな奴……で、金髪にサングラスのアレは等身大の妹に手を出してるリアルシスコンか)
 まぁこの二人は上条と仲が良さそうだったから納得はできる。
 しかし、
(あのおでこで巨乳な女と巫女装束が似合いそうな女もこの学校の生徒だったの!? と言うかコイツどんだけ恨まれてんのよーッ!)
 心中で叫び、同時に上条に対する粛清の手段も理解できた。各々が構えている武器はおもちゃでも何でもなく、本当に殺傷用の物だったからだ。それでも死なない程度に手加減しているようで、先が尖っている物は石で叩いて皮を突き破らないようにしている。
 巨乳セーラーな女子生徒の号令で、敵は廊下に壁を作り、階段を封鎖した。現在上条たちが居る所は校舎の端に位置するため、廊下と階段を固められれば逃げ道は無い。完璧な詰めだった。
「一応言い訳を聞いてあげるけど、その子は誰?」
 集団の中からある女子が質問を投げかけてくる。
 上条は慌てて口を開くよりも早く、くすくすと笑いながら雲川が答えた。
「見ての通り、カミジョー属性の毒牙に掛かった女の子だけど」
「「「殺せ!!」」」
「――ッ、恨むぞ先輩!」
 集団の攻撃が届く前に上条は美琴を抱き寄せて背中で窓ガラスを割り、脱出に成功した。
 しかし、ここは3階。とてもではないが人が飛び降りられる高さではない。それに気付いたのは窓を割った直後で、
「しまったああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 不運な男の哀れな叫び声が木霊する。

775初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:28:42 ID:smIUcZ.k
 結論から言うと命に別状は無かった。と言うか、普通に歩ける状態だった。
 近くに木が生えていたのが幸いして、木の枝をクッションにする事で多少の擦り傷だけで済んだのだ。ちなみに、美琴は上条の体が盾となっていたため傷ひとつ無かった。
 現在二人はショッピングモールに来ている。上条はさっさと家に帰りたかったのだが、美琴の「あんな面倒な事に巻き込んでおいてそんな事言うの?」と言う言葉に渋々折れた。
 そもそも美琴が学校に侵入しなければ巻き込まれる事も無かったんじゃないのか、と言う基本的な疑問を覚えないお人よしな上条だった。
「で? 美坂さんは不幸な少年上条さんを引き連れてどこに行くつもりなのでしょう? 言っとくけど俺は今金欠だから何も買うものが無いんだが」
「う、うるさいわね! アンタは黙って私に付いて来てりゃ良いのよ!」
 叫んでから、これじゃいつもと変わらないじゃないと後悔する。せっかく二人きりの状況を作れたのに、肝心の自分が前と同じでは何も変わらない。もっと素直にならないと、この鈍感王には伝わらない。
 美琴は決心した。後の事なんてどうでも良い、羞恥心をかなぐり捨てて自分の欲望に任せて行動しよう!
 決断を下してしまえばその後の行動は迅速だった。何せ、夢の中で色々とやっていた事を現実でするだけなのだから。元々理性で抑えつけていた欲望だし、その理性を取っ払ってしまえば何も障害は無い。
 手始めに、隣を歩いている上条の手を握った。万が一能力が暴発しても困らないように、『幻想殺し』が宿っている右手を。幸い、上条は美琴の右側に居たのでわざわざ立ち位置を入れ替える事も無かった。
「なっ! おい、ちょっと、御坂? 何でいきなり手を繋ぎだしたんですか!」
「何でって……、繋ぎたかったから?」
「疑問系!? 質問に返して語尾にクエスチョンマークで返してきましたよこの人! マジありえねぇ!」
「うるさいなぁ。そんなに私に手を握られるのが嫌なの?」
「むしろ嫌じゃないから困ってるんですって!」
 今までにも何度か手を引っ張られた事はあるが、それ以上に関心を引くものがあったから気にする事は無かった。
 しかし今回は違う。何らかの騒動の渦中に居る訳でもないから、その手の柔らかさや暖かさを意識してしまい、心臓が高鳴る。あぁ、やっぱりコイツも女の子なんだな……と、上条は美琴の手の小ささに感心した。
 上条は内心でドキドキしているのだが、それは外面には出ていないため、対応がそっけなく見える。それが面白くないのか、美琴は頬をぶぅっと膨らませると、繋いでいた手を離す。
 しかし、やっと解放されたー、と上条が脱力する間も与えずに今度は全身を使って彼の右腕に抱き付いた。
「なっ……」
 気を抜いた所にさっきより大きな暴挙に出られ、上条の呼吸が止まる。美琴の薄い胸が肘の辺りにぶつかり、何やら『ふにゅ』と擬音で表現できない音を幻聴した。
「な、な、ななな何をしていますかね御坂サン!? こんな公衆の面前で抱き付くなんてどういう神経をしてるんですか! ほ、ほら、早く離れなさい!」
「何よ。こんなに可愛い女の子に抱き付かれて嬉しくないって言うの?」
「いや、確かに嬉しいけどさ。……っつーか自分で可愛いとか言うなよ」
「なら別に良いじゃない」
 後半の言葉を完全に無視して、更に抱き付く力を強めてくる。もはや胸だけでなく体全体の柔らかさが制服を通して伝わってきて気が気では無い。
「当たってる、当たってるから! ささやかながらも自己主張をしている胸が当たってるから!」
「当ててんのよ」
「いやいや、5年前の漫画から台詞引用しなくていいから! っつーかいい加減周りの視線が痛いんで離れて下さいお願いします御坂様!!」
 ややヤケクソ気味に叫ぶと、渋々と言った風にようやく離れてくれた。しかし、まだ腕には柔らかい感触と暖かい体温が残っており、心臓も早鐘を打ち続けている。
 こりゃしばらくは治まらないなぁ、と上条はとりあえず顔の赤みを取るためにぺちぺちと頬を叩く。
 2月とは言え気温は高くて15度もあればいいぐらい。そんな寒さの中、平手で頬を叩き続けるとどうなるか……結果は分かりきっていた。
 美琴はしばらく自傷行為に走る上条を見ていたが、ふと彼の顔に模様が付いているのを発見すると、指を差してげらげらと笑った。
「な、何ですか一体? 上条さんは人に笑われるような事をした覚えは無いんですけど!」
「い、いや、それ見て笑うなって方が無茶よ。ほら、これ見てみなさいって」
 美琴が普段持ち歩いているポシェットから手のひらサイズの鏡を取り出して、上条の顔がよく見えるように突き出してきたので、彼はやや訝しみながらも覗き込んでみた。

776初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:29:06 ID:smIUcZ.k
 そこには、顔面に紅葉のような跡をペタペタと貼り付けているツンツン頭が映っていた。
「ぶほぁっ。な、何ですかこれは! 今の俺はこんな愉快な顔をしていると言うのですかーッ!?」
「だから言ったでしょ、アンタのそれを見て笑うなって方が無茶だって。周りを見てみなさいよ」
 そう言われてやっと、周囲の人間に注目されている事に気付いた。しかも、その内のほとんどがくすくすと笑い声を漏らしている。
 どう考えても自分の顔を笑われているとしか思えない(実際はバカップルの会話が面白くて笑っているのだが)上条はうわーんと叫び、美琴の手を掴んでモールから逃げ出した。


 現在時刻は午後6時30分。あれから、ショッピングモールから逃げ出した上条は美琴を引っ張ってあちこち走り回った。
 しかし、どこへ行っても人が居たため、少々の寒さを我慢して第7学区にある小さな公園のベンチに腰を落ち着ける事にした。
 連続で何度も短距離走を強いられた美琴はぜぇはぁと荒い息を吐く。上条も何度か肩を上下させているが、こちらは自分の意思で走っていたため、それほど疲れている様子は無い。未だに呼吸が整う様子の無い隣人を見てさすがにバツが悪くなったのか、街灯の小さな明かりを頼りに自販機からスポーツ飲料を二本買ってくると(この買い物で上条の財布の中身は本当の意味で空っぽになった)、片方の蓋を開けて美琴に渡した。
「ほれ、ちょっとでいいから飲めよ。口で呼吸してると喉が乾燥して後で痛い目を見るぞ。冬に冷たいジュースってのも嫌だけど、吸収が早いからな」
「ありがと……」
 呟くようにお礼を言うと、受け取った500㎜のペットボトルからごきゅごきゅと水分を補給する。それに合わせて上条もゴクゴクと喉を鳴らせる。
 当然だが、しばらくすると容器は空になる。そうなるとやる事が無くなったため、二人は世間話に興じる事にした。
「しっかし……、アンタの学校って普通の学校に見えたんだけどねー」
「まぁ、常盤台のお嬢様から見たら普通なんだろうな。突出した特長なんてのも無いし」
「いやいや、まさか日常的にあんな騒動が起こってるとは思わなかったわよ。ちょっと認識を改めないとって思ったし」
「俺らからしたらあれが普通なんだけどなぁ。風紀委員や警備員だって駆けつけてこないし、案外餓鬼の遊びみたいに思われてるんじゃねーの?」
「確か、一連の騒動が表に出ないのは雲川って人が事件自体をもみ消してるからって話だったけど」
「あー、先輩か。確かにあの人だったらそれぐらいの事はやってのけそうだよな。一体どんな権限を持っているのやら」
「そう言えばアンタ、今日はどうして追い掛けられてたのよ? 何かやらかした訳? 女子の体操着を盗んだりとか」
「そんな事をしたら俺は公的に裁かれるだろ……」上条は呆れたように言う。「んー、実際俺にもよく分かんねーんだ」
「はぁ? よく分かんないってアンタ、何も知らないで追い掛けられて攻撃されてたって訳?」
「いや、原因っつーかきっかけは分かってるんだよ。だけどそれがどうして原因になるのか、その理由がさっぱり分からん」
 上条は通学用の鞄を美琴に見せると、その中身をベンチの上にばら撒いた。
 本来、教科書や筆記用具などが入れられるべき場所なのだが、今日はそんなつまらないものは入っていなかった。
 出てきたのは綺麗にラッピングされた大小様々の箱だった。箱の形も四角だったりハート型だったりと、レパートリーに富んでいる。
 その外見や今日の日付を考えればその中身が何であるかはすぐに分かった。
「……チョコレート?」
「その通り。6時限目が終わってHRも終了したすぐ後にクラスの女子が渡してくれてさ」
 上条はチョコレートの山からひとつを取り出し、話を続ける。
「不幸の女神に愛されている上条さんにもついに幸運の女神が現れたのかと感動したよ。義理でも嬉しい、ありがとうってお礼を言ったんだけど、その子はいつの間にか居なくなってて、代わりに土御門と青髪ピアスがダブルで正拳突きを放ってきて、そっから3学年まとめた鬼ごっこが開催されたって訳」
「3学年まとめた鬼ごっこ?」
「そ。いや、最初から上級生も混ざってたわけじゃないんだけどな。土御門達から逃げてると何でか知らないけど吹寄と姫神も参加してきて」
 同じくチョコレートの山からふたつを取り出し、続ける。
「その途中で二人ともこれを投げてきたんだよ。投擲武器かと思って避けようと思ったんだが、吹寄が受け取らないと殺すとか物騒な事を言うもんだからさ」
 最近はネット上での犯罪予告だけで捕まる時代だってのに、無茶する奴だよほんと、と上条は遠くを見つめて呟いた。

777初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:29:27 ID:smIUcZ.k
 美琴はそんな上条の様子には目もくれず、ただただチョコレートの山を見ていた。正確にはそのラッピング方法を。
(……コイツは義理チョコだって思ってるみたいだけど、どう考えても本命よね。市販されている物とラッピングの方法が違うのもあるし、超有名ブランド品もちょこちょこ紛れてるし……。冗談抜きで、もたもたしてたら奪われかねないわね)
 ライバルの多さを再確認する。そして、更に思考を沈める。
(私も手作りチョコレートを持ってきてるけど、普通に渡したってこの山の中に入れられるだけでしょうね……。もっとこう、インパクトを与えるように渡さないと。もしくは目の前で食べてもらって感想を訊くとか)
 隣に座っている上条が、声を掛けても反応が返ってこない事に小首を傾げているが、美琴は気付かない。
(インパクト……。そうだ、告白して渡せばそれは物凄い衝撃になるんじゃないかしら? 多分この馬鹿は告白された経験なんて皆無だろうし、『初めて』はそれなりに記憶に残るでしょ)
 問題はそれを口に出すだけの勇気があるのかどうかだったが、今の美琴は既に覚悟を決めていた。
 ――今までの関係が壊れるリスクはあるけど、それを負ってでもコイツに想いを告げたい!
 それは、美琴が今までずっと押し留めていた願い。具体的な時期は知らないが、もう半年以上も胸の内に秘めていた想いだ。それを今まで隠し通してきたのは関係が壊れるかもしれないと言う恐怖のせいだったが、今の美琴はその恐怖を打ち破った。保守的に構えて実を結ぶ事が無いのなら、砕ける覚悟をしてでも当たるしか無い。そう決心したのだ。
 それに、美琴は今日を『素直になる日』と定義付けたのだ。本心を晒さずして何が素直だ。
 周りには人影が見当たらず、公園には上条と美琴の二人きり。バレンタインデーと言うイベント日だからだろうか、街灯同士にパイプのようなものが繋がれ、それがハート型になっており、その中に青白い電流が流れていて、可愛らしくも美しく光っている。告白するには絶好のシチュエーションだ。
 美琴は大きく深呼吸をして、隣の上条に向き直る。
「あのさ」
「ん? 何?」
 いつも通りの何も感じていないような対応に、思わず苦笑する。こんな日に、こんなタイミングで、こんな風に改まって話し掛けられたら普通は何かしらの期待をするだろうに。それがコイツの良い所なんだけどね、と心中で呟く。
 美琴は自分の通学鞄を開けると、中から綺麗にラッピングが施されたハート型の箱を取り出した。
「あのさ、今から私結構凄い事言うんだけど、驚かないで聞いてね」
「あん? あぁ、別にいいけど……それは何だ? 俺にくれるのか?」
「うん、一応あげるつもりだけど」
「マジで? サンキュー御坂、義理でも嬉し「義理じゃないわよ」……へ?」
「だから義理じゃないの。1日掛けて……は、さすがに言い過ぎか。でも、それなりに手間と暇を掛けてアンタのために作ったものなんだから」
「はぁ? 何だお前、そうすっとわざわざ俺なんかのためにチョコレート作ってくれたって言うの? っつーか、義理じゃないなら何なんだよ」
「決まってるでしょ、本命よ」
「……………………はいぃ?」
 美琴はため息を吐いた。本当はもっとちゃんとした場面で一度に言いたかったのに、この馬鹿に釣られて勢いでネタバレしてしまった。
 仕方が無いからそれ以上の勢いで押す事にする。
「そうよ。アンタは気付いてないでしょうけど、私はアンタの事が好き。『あの子達』を助けてくれたと言う借りもあるけど、それとは別にアンタ個人が好き。アンタが毎回大きな事件に巻き込まれて入院しているのを知ったとき、私がどれだけ心配してるか分かる? できる事ならアンタには怪我して欲しくないのよ。アンタにもしもの事があったら私はとても耐えられないから。それだけアンタの事を好きだってのに、何でアンタはちっとも私の気持ちに気付かないのよこの馬鹿ッ!!」

778初恋オワタ ◆/BV3adiQ.o:2010/02/17(水) 21:29:46 ID:smIUcZ.k
「……、」
 上条は次々とぶつけられる言葉に呆然とするしか無かった。美琴が自分の事を好いてくれていると言う新事実に、心配してるとまで言われてはどう反応すれば良いのか分からない。まだまだ美琴の言葉は続いているが、もはや上条はそれを聞き入れるだけの余力が無かった。あまりの衝撃に、脳がパンクを起こしてしまったのである。
 しかし、最後の言葉だけは何故か聞き取る事ができた。
「――だから、私と付き合って! お願いだからアンタの隣に居させて!!」
 想いと共に差し出されたチョコレートを受け取るか否か。
 美琴は頭を下げて腕を伸ばしたまま微動だにしない。まるで、このチョコを受け取ってくれるまで動かないと言っているようだ。
 しばらく逡巡して、彼は口を開いた。
「悪いけど、答えは否だ」
「……っ」
 彼女は動かない。
 気にせずに、口を動かし続ける。
「お前の気持ちはよく分かった。俺の事を本当に好いてくれている事も分かった。今まで心配掛けさせてた事も理解した。でも、悪りぃ。今の俺にはその気持ちを受け取る事はできない」
「どうして……?」
 美琴の声は、さっきまで怒鳴っていたものとは全然違い、随分と弱々しくなっている。恐らく泣いているのだろう、水気を含んだ声色からその様子が簡単に想像できた。
 上条は頭を撫でようと手を伸ばし、――しかし撫でられなかった。今の自分に彼女を慰める資格など無い。それに、まだ話は終わっていないのだ。
「理由その1。お前がまだ中学生だと言う事。16歳と14歳っつったらたったの二つ違いって思うけどさ、高校生と中学生じゃやっぱり駄目なんだよ。別に俺自身が年下趣味だとか言われるのは構わないんだけど、お前の場合は色々と面倒な事になるだろ。もし付き合ったとして、間違いが起こったら責任取れるか? ……取れないだろ。俺はもう社会的には親から自立してるからそう言う意味では自由だけど、お前は不自由って事だな」
「……、」
「理由その2。俺達がまだお互いの事をよく知らないと言う事。何だかんだ言って結構高い頻度で顔を合わせるけどさ、言ってしまえばそれだけだろ。『絶対能力進化計画』とか俺の記憶喪失に関してとか、お互いプライベートな部分に干渉した事もあったけど、あれは色々な意味でイレギュラーだったし。互いの私生活を知らない二人が付き合うと破局する確率が物凄く高いとか何かで聞いた事もあるしな」
「……、」
「理由その3。俺がお前の事を好きになれないかもしれないから。ぶっちゃけ俺は誰かを好きになるなんて感情分からないんだよ。今まで好きになった子も居ないし、あったとしても記憶喪失だから全部忘れちゃってるしな。お前の気持ちは正直嬉しかったけど、せっかく付き合っても想いの一方通行なんて嫌だろ? それなら、誰か別の良い男を見つけた方が良いと思うぞ」
 これ以上理由はありませんと締めくくると、美琴はようやく顔を上げた。予想通り涙を流していたが、それは思っていたよりも少量だった。
 ……やっぱりコイツは強い、きっと俺なんかよりずっと良い男を自力で見つけるだろうな。

779■■■■:2010/02/17(水) 21:34:14 ID:smIUcZ.k
 しかし、結末は上条が思い描いていたものと違った。
「ねぇ、いくつか質問して良い?」
「……俺に答えられる事なら」
 美琴はごしごしと目元を擦ると、キッと勝ち気な瞳で上条を睨み付けた。
「アンタは私の事が嫌いだから拒否した訳じゃないのよね?」
「当たり前だろ。お前の事を嫌いになる訳が無い」
「あくまで理由は私の年齢と、お互いの事をよく知らないから」
「いや、3つ目の理由を無視されても困るんだけど」
「あんなの理由にならないわよ。一生掛けてでもアンタを振り向かせれば良いんだから」
「はぁ?」
 何言ってんだコイツは、と上条が疑問に思っていると、美琴はフフンと誇らしげに胸を張った。
「だったら話は簡単よ。私が中学を卒業するまでにお互いの事を良く知って、高校に入学したら付き合って、それから私の事を好きになってもらえばいいんだから」
「あの……御坂さん?」
 何だかおかしな方向に話が進んでいるようだと上条が止めに入るも、勢い付いた美琴は止まらない。
 彼女は箱から特製手作りチョコレートを取り出すと、それを半分に割って、もきゅもきゅと自分で食べ始めた。
「あ、あれ? それって俺にくれるんじゃなかったの? もしかして振ったからくれないとかそう言うのですか?」
「馬鹿ね、何言ってんのよ。ちゃんとアンタの分もあるわよ」
「あ、そうなの? それは良かった。けど、その行動には一体どんな意味が隠されているんでせう?」
「言っとくけど私はまだ諦めてないわよ」
 会話に合っていない謎の宣言をすると、彼女は立ち上がった。
「まずは『友達』になる。そして私が卒業するまでにお互いの事を知る。これで理由の1と2がまとめて無くなるでしょ?」
「はぁ……」
「私が高校に入学すると同時にアンタと付き合って、それからゆっくりと私の事を好きになってもらう。完璧じゃない。何か文句でもあるの?」
「無いけど……。お前はそれで良いのか? わざわざ俺みたいな奴に固執しなくても良いんじゃねぇの? 下手したら一生好きになれないかもしれないんだぞ?」
「別に良いわよ。一生私の片想いでも良いの。今までだってアンタの背中を追いかけてたようなものだし、大して変わらないわよ」
 そっかと言うと、上条も立ち上がる。
「……後悔しないんだな?」
「当たり前でしょ。私を誰だと思ってるのかしら?」
 断言すると、彼女は右手を差し出した。
「常盤台のお嬢様、御坂美琴さんですよ。分かってるよそれぐらい」
 苦笑しながら、彼も右手を差し出した。
「友達からお願いします……で良いのか?」
「良いのよそれで。……こちらこそよろしく」
 イルミネーションに照らされた二つの手がガッチリと握られ、バギン! と言う、幻想殺しが超能力を打ち消した音が響く。
 こうして、御坂美琴の初恋は終わった。

 ――そして、新たな恋が始まる。



Fin


以上
元々10kbを超えるSSをめったに書かないから途中からの失速具合が素晴らしい手抜き箇所が丸解りおおこわいこわい
ペースト抜けてそうでこわいこわいこんなことならテキストあげするべきだったか
後半の上条さんの理由ラッシュなんだがどっかで見た誰かのと似ている気がするから変えようかと思ったけどこれ以外の理由が考えられないから止めたっつーか面倒くさかったし
というか誰が元なんだ理由ラッシュ気になって眠れないいや寝るけど
長いから推敲もまともにしてないから誤字脱字用法間違いその他もろもろあるだろうけど見逃してね

御目汚し失礼した
それでは

780■■■■:2010/02/17(水) 21:52:40 ID:SPoDkxKc
>>731氏へ
「この子が未来に帰るまで」ですね
ご指摘ありがとです
妙な意味を含めさせずに進ませる為にも"返る"は適当ではなかったかと思います
申し訳ない

781■■■■:2010/02/17(水) 23:11:09 ID:yBnSiQ3U
771-779
GJ!美琴がんがれ!

782762:2010/02/17(水) 23:26:02 ID:H2R/N7eM
>>767
そうですw

一応ネタバレ

赤いコスモス → 花言葉 : 乙女の愛情
紫のライラック → 花言葉 : 「初恋」「初恋の感激」「愛の芽生え」
花水木 → 花言葉 : 私の想いを受けてください

783ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:45:47 ID:MlOCxovM
なんだこの大作ラッシュはー!
まるめてGJていうのが申し訳ない感じ。

で、10分後に投稿します。6レス予定。

「想いを乗せたココロの向かう先(4-580)」の続編となります。

今日は強烈な作品が多いので、投げにくいですね、、、
名無しで投げようにも続編だし。自己矛盾にがっくし。

784ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:55:16 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?1】

<「想いを乗せたココロの向かう先(4-580)」の続編となります。上琴カップル成立後、ということで。>

「不幸だったな…」
「不幸だったね…」
 2人は、久々に会えたのにも関わらず、ため息ばかりついている。


――事の起こりは一週間前、バレンタインデー。
 御坂美琴の告白は上条当麻の心を捕らえ、2人の交際は始まった。
 シスターズの襲撃を、あまりホメられたものではない手法で退け、
 遅れながらも予約していた店に飛び込み、楽しい時を過ごす、はずだった。
 正確には、過ごせたのだが、そこには悲劇――いや、喜劇が待ち構えていた。


 美琴は2人でつつきあって食べているチョコレートケーキを切り分けながら尋ねた。
 量より質と言っていた通り、上品な味で、分量は上条なら一人でペロリと食べられるほどだった。
「当麻は金曜日にチョコ貰えなかったの?」
「机の中にいくつか。あまり話したこともない子ばっかりだったけどな」
「普段よく話す子は無かったってこと?」
 上条は吹寄制理や姫神秋沙の顔を思い浮かべながら、
「無かったなあ。まあ俺がお返しにも苦労する貧乏人だと知ってるせいじゃねーか?」

 そんなわけあるかっ!と美琴は心の中で突っ込む。
 前日に渡すようなレベルではなく、当日渡すことに意味を持つ…ド本命じゃないの!
 つくづく、今日のこの一歩を踏み出せないでいたら、自分の恋は終わっていたかもしれないと思うと、冷や汗が出る。

 ちょうどいいタイミングと思った美琴は、カバンからごそごそと包みを取り出す。
「はい、プレゼント。チョコは今日でお腹一杯だと思ったから、これで。」
「ん、サンキュ。この柔らかさはマフラーか?…開けていいか?」
「当たりー。開けて開けて!黒子の目を盗んで編むの大変だったんだから…」
「彼女の手編みマフラーだなんてカミジョーさん夢のようですよ…ほおー」
 霜降りのグレー色で編み込んだ、柔らかい風合いのマフラーが出てきた。

「ご、ごめんね。もっと凝ったの作りたいとは思ったんだけど」
「何いってんだ。感動で胸が一杯ってこういうことだな……よし!」
 上条はマフラーを広げると、自分と美琴を一緒に巻き込んだ!
「これ一度やってみたかったんだよなー」
「ちょ、ちょっと店の中でマフラーって…恥ずかしいじゃない!」
「気にすんな気にすんな! すっげー柔らかいな、これ」

「こ、このままじゃケーキ食べられないし。右手出せないじゃない」
 美琴は上条に密着した形になって右手を動かせず、頬を赤くしながらつぶやいている。
「ほう、じゃあカミジョーさんが食べさせてあげよう。ホレ」
「…!」
 上条は左手で美琴の肩を抱き、ケーキの欠片を自分のフォークに差し、美琴の口の前に差し出した。
 美琴はますます顔を赤らめ…おずおずと口を開いて、ケーキをほお張った。
 むぐむぐと食べ終わると、美琴は左手で口を押さえながらムクれた口調で、
「は、恥ずかしい…しかも欠片おっきいし!」
「そうか、じゃ次は小さいのな」
「じゃなくってー!恥ずかしくて味わかんないって」
「何照れてんだよ。誰も見てな…い?」

 固まった上条を見て、美琴はその視線をたどる。


――そう、楽しい時間を過ごせていた。問題は。
 マフラーを手渡したあたりから、このシーンが学園都市中に生中継されていたことである。

 テレビカメラがしっかりと2人を捉えていた。

◇ ◇ ◇

785ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:55:31 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?2】

『はいっ、本日はバレンタインデー! と・い・う・こ・と・で!
恒例の第四学区バレンタインイベントをレポートいたしまぁす!』
 学園都市内のローカルTV局はいつでもネタ不足に悩んでいるが、この日に限っては困ることはない。
 この日の14時の特集は、第四学区に集まるカップルにカメラを向け、インタビューしようという、シロモノであった。

『この店は有名な創作チョコレートケーキのお店で…あ、撮影だけならという許可が出ましたので、
ちょっと店内を見せていただきましょう!…おじゃましま〜す』
 本来、店の中をなめるように流して、あとはケーキの紹介を、と考えていたインタビュアーだったが、
 やたら目をひく女の子が、ちょうどプレゼントを渡すシーンを目撃し、カメラマンにサインを送る。
 カメラマンはすぐ意図を察知し、その女の子とその相方にカメラを固定する。
 さほど大きなカメラでなく、大仰でなかったせいか、2人は自分の世界に浸って気づいていない。

 音声は拾えなかったが、2人の笑顔はたっぷり数分間、インタビュアーの声も差し挟まれず、続いた。

 店を出たインタビュアーは、カメラに向かい、
『申し訳ありません。何かドラマの1シーンを見ているようで…声も出せず見惚れてしまいましたっ!
いやー、あれだけ幸せそうなカップルを見ていると、こちらまで暖かい気持ちになってきますね〜。』


 白井黒子は、女子寮の談話室のテレビで。
 吹寄・姫神・クラスメイトは、デパートのエキシビジョンで。
 神裂・五和は、街頭テレビで。
 土御門兄妹は、寮で。
 その他、めいめいの場所で――

 色んな人達が、画面を前に色んな叫び声を、上げた。


「今…のは、テレビカメラだよな?」
 上条はマフラーを畳みながら、美琴以外にも尋ねているかのようにつぶやく。
 美琴は携帯を取り出し、意を決して土御門舞夏に電話を掛けた。
『…』
「も…もしもし」
『みさかってさー、気を許した人にはあんな表情になるんだなー。ビックリしたぞ―』
「あんな、って、どどどどんなよ!どこからみたの!?」
『えーと、マフラーの包みを渡したとこから、カメラ見つけるまで。たっぷり生放送だったぞー』
「マフラー……ぜん、ぶ…」
 美琴もヒマなときはこの番組を結構見ていた。身近な特集をよくやるので、学生はよく見ている。
 すなわち…相当の知り合いに見られた!?

『カメラに気付かず、いつキスするかとドキドキしながら見てたー。あーんしてるみさかは永久保存版だなー』
「…私が…色々と……終わったのは、分かった…」
『みさかみさか、落ち込むことないぞー。むしろ別の一面が見れて好感度アップだぞー。恥ずかしいのは分かるけどなー』
「舞夏、ありがとね…また連絡する…」
 電源を切り、しばし呆然とする。公開処刑、の言葉が頭をよぎる。これからどんな顔して外を歩けるのだろう…

 ふと横を見ると、上条が平然とケーキをたいらげていた。
「さてと、行くか」
「…え?」
「アレ、さ」 上条が顎で入り口を指し示す。

 テレビを見たのだろう、大勢が入り口からこちらを見ている。
「これじゃ晒し者だ。次の店はもう無理だな。またタクシーで逃げよーぜ」
「…う、うん」
 上条は美琴を守りつつ脱出する。
『知ってる、あの子LV5だぜ』『生で見るとめちゃくちゃ可愛いじゃん』『相手、誰だあれ』等といった声をかき分け。

 タクシーに乗り込み、一息ついている上条に美琴はたまらず突っ込む。
「なんでそんな落ち着いてんのよ! た、頼りにはなるけどさ!」
「カミジョーさんにとっては、いつもの不幸か、ってなもんでさ。まあこれで美琴も分かっただろ」
「な…なにが?」
「俺の不幸体質。俺と付き合うってことは、こういうことにも付き合うってことだ」
「初めて、早まったかしらって気分になってきたわ…」

◇ ◇ ◇

786ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:55:46 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?3】

 2人は話しあった結果、今日はもう落ち着いて話もできず、今後はいつでも会えるからと、解散することにした。
 そのまま上条は病院でタクシーを降り、美琴は着替えのためホテルに戻り、日常に戻った…が。

 まず美琴は5日間の学校往復以外の外出自粛が言い渡された。
 私服での行動は基本禁止であり、また常盤台を代表する人間として強めの罰が与えられた。
 美琴にとっては、どの道部屋から出たくない心境だったので、素直に受け入れた。
 …白井黒子との空気が最悪だったが、しょげている美琴に嫌味も言えず、黒子は悶々としていた。

 上条は、凄まじい1週間となった。
 まず、クラス総スカンである。特にチョコを贈ろうと思っていた女性陣の心を粉々に粉砕したのであるから、当然である。
 男性陣は言わずもがな。学園最強才色兼備の年下の女の子との交際が始まって、祝うわけがない。
 そして一歩校舎を出れば、能力者に追いかけられる。
 自分のほうが強いことを証明すればひょっとしてあの美女も、と考える馬鹿者は多く、
 上条が無能力者と知った途端、次から次へと襲いかかってくる始末である。

 ちなみに、意外なことに白井黒子がジャッジメントの権限もあって、助けてくれていた。
 助けられる度に、凄まじい目で睨まれつつ、「貴方の息の根を止めるのは、わたくしですの」とつぶやかれていたが。

 そして、世間に疎いインデックスは美琴の事を知らず、上条もまた話していなかった。
 美琴にもインデックスとの同居の話はしておらず、上条の悩みは尽きなかった。


 そうして、あの日から1週間たった、日曜。
 ゲコ太先生との約束で、上条は病院に来ていた。アリバイ工作の条件、シスターズのリハビリの件である。
 御坂美琴を連れていっていいかと聞くと、むしろ来て欲しいとのことで、病院で美琴と待ち合わせすることにした。

 1週間ぶりに会った美琴は、少しやつれたように見えた。
「不幸だったな…」
「不幸だったね…」
 2人は、久々に会えたのにも関わらず、ため息ばかりついている。
「この1週間、やたら注目されてる気がするし、なんか切ない目でじっと見つめられる日々よ。やんなっちゃう」
「俺はよっぽどお前に相応しくないと思われてるのか、とにかく男女問わず総攻撃されてる」
 上条を取られたからといって、LV5にケンカを売る者はいない。必然的に可愛さ余って憎さ百倍の法則で上条に向かう。

 上条は座っていた長椅子から立ち上がり、
「じゃ、臨床研究エリアだっけか。1時間ほどリハビリに付き合って欲しいってさ。行こう」
「本当に私行っていいのかなあ?」
「むしろ来て欲しいって話だしな」
 そう言って上条は美琴の手を掴んで、歩き始める。

「そういえば、あの子たちは?」
「…分からねえ。謝りに行ったが、会ってもらえなかった。」
 御坂妹の頬へのキスは、どうやら相当の衝撃を与えたらしい。
「でも、今日これから会うってことよね?」
「そうなんだが…今回のリハビリって特殊な感じがするんだよな。この日この時間しかダメ、って感じでな」
「ふーん」


「よく来たね、上条くん?」
 ゲコ太先生がいつもの柔和な表情で声を掛ける。
「こんちわ。先日はありがとうございました。」「こんにちは」
「御坂美琴くんも。来てくれてありがとうだね?」

「今日はね、1時間ほどシスターズの一人と、お話してあげて欲しいんだ。中身は何でもいい」
「はあ…いいっすけど。」
「彼女は、検体番号No.一〇〇三三。…後は、本人に色々聞くといいね?」

「僕はここにいるので、隣の部屋に行っといで。彼女が待っている。」

787ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:56:01 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?4】

 部屋に入った上条はギョッとした。
 自分の高校の女生徒のセーラー服が見えたからである。椅子に座っている。
 遅れて入ってきた美琴は、短く叫んだ。
「えっ!?」

 シスターズ…つまり御坂妹と同じ顔を予想して入ったが、別人が居た。
 別人だが、…見たことがあるような…
「母さんの…若い頃の写真…みたいな」 美琴がつぶやく。
 そうか、美鈴さんか! 美鈴さんのクローン!?ってそんなわけ…
 ミサカ一〇〇三三号はぺこりと頭を下げ、挨拶した。
「こんにちは。このミサカは成長促進技術によって、肉体年齢が18となっているミサカです」

「なにーーーっ!」
「えええっ!」
「念のため言っておきますが、テスタメントはシスターズ共通ですので、肉体以外は他のシスターズと変わりません、
と、ミサカは説明します。」
「んで、何でウチの制服なんだお前は」
「お姉様の夢を叶えました、とミサカは簡潔に答えます」
「な、何よそれ」
「お姉様の思考パターンを推測しますと、同じ高校で肩を寄せ合って通学する妄想をしたことがありますね?
と、ミサカはえぐるように指さします。」
 ミサカ一〇〇三三号はズバッと美琴を指さした。

「な、な、なななな…」
 思いっきり図星の美琴は声が出ない。
「しかし交際が始まってしまった以上、からかい甲斐がありませんね、とミサカはため息をつきます」
「あ、アンタねえ!」
(本当の姉妹みたいだな…)
 上条はじっくりとミサカ一〇〇三三号を見つめる。

 髪の色は変わらないが、ロングが良く似合っていた。
 顔立ちは、見比べてみると美琴が幼いように見えてしまう。すっかり大人びている。
 というより、可愛い女の子から、美しい女性へと進化していた。
 身長は見た目は良く分からない。それほど伸びていないようだ。
 問題の?身体の方は、残念ながら制服と椅子に座る姿で判断しづらい…子供っぽさは感じないが。

 思わず上条はつぶやく。
「18歳の美琴か…これはこれで…」
「遺伝子に従えばですが。暴飲暴食でミコトDXになるかどうかはお姉様次第です、とミサカはお姉様のお腹を見つめます」
「失礼ね!私はまだお腹はポッコリして…」
 横に上条がいることを忘れ、白井黒子と話しているノリで、つい身体の事を喋りかけた美琴は赤面する。
「へー」
 美琴のお腹に目をやった上条は、脳天にチョップを食らった。
「お腹ポッコリ…ですか?とミサカは首をかしげます」
 言うやいなや、ミサカ一〇〇三三号は自分のスカートを思いっきりまくりあげ、下腹部をのぞき込んだ。

「ば、馬鹿!なにやって…んの?」
 上条も思わず目を隠そうとした…が、意外なものが目に入ってしまう。
「な…に…?」
 ミサカ一〇〇三三号は短パンを履いていた。


 上条は衝撃を受けていた。まさか、シスターズに短パン文化到来!?
 縞パンが…いや、美琴と見分けが付かない事態になってしまう!?
「あ、アンタが短パン履くなんて、どういう心境の変化?」
 バカなことを考えている間に、美琴が突っ込む。

「短パンですか?それはこれを着ているからです、とミサカは行動で示します」
 やにわに立ち上がると、長袖のセーラー服を脱ぎ、スカートを脱ぎ…
 あまりの展開に美琴と上条が口をぱくぱくさせて固まっている間に。

 ミサカ一〇〇三三号は体操服+短パン姿に脱皮した。

788ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:56:18 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?5】

「…それはウチの高校の体操服だけどさ、何考えてんだお前は…」
「この格好が、世の中の男性にはタマラナイものらしいので、とミサカはあなたに見せつけてみます」
「んなの見慣れとるわ! …ん、美琴?」
 美琴がミサカ一〇〇三三号をじっと凝視している。
 …身体のラインが明らかになった、ミサカ一〇〇三三号を。

 上条アイが改めて検分する。
 腰からのラインが、もう中学生のソレではない、見事なプロポーションになっていた。
 同級生の美女たちと比べても、遜色ないどころか優っている。
 しかし……
 胸の成長が…体操服のゆるみを考えても…

「…美琴、落ち込んでいる、のか?」
 美琴の顔に、縦線が入っている。
「ど、努力しなきゃ、そうなる、ってこと、ね…」
「おそらく、胸のことを考えておられると思いますが、無理な増強は」
「ミコトDXはもういいわよ!あーもう!」
 上条はノーコメントを貫いた。


「そういえば、なんで1時間限定なんだ?」
 話題を変えるため、上条は強引に話題を振る。
「このミサカは成長しすぎたのです。他のシスターズが成長し、肉体的な同期が取れるその日まで、
これから眠り続けるのです、とミサカは懇切丁寧に説明します」
「な…に?」
「成長促進技術の限界を調べる実験を行っているのです、とミサカは事情を説明します」
「ちょっと待て。寿命は…寿命をまた削ってるんじゃねえだろうなオイ!?」

「今回の実験は、寿命を優先課題としていますので、その辺は大丈夫です、とミサカは解説します。
寿命を無視すれば、数日で18歳は可能でしたが、とミサカは補足します」
 確かに半年以上かけて18歳ならば、それほど無理はしていないだろうとは推測できるが…
「このミサカは、本ラあなたに助けられなければ、次の日に死ぬ運命だったミサカです。
一〇〇三二号は生き残ったシスターズの象徴となるミサカ。必然的に実験体は次のミサカ、
すなわちこのミサカの役割となるのです、とミサカは被験体となった理由を述べます」

「アンタたち…まだ、実験なんて、やってる、の?」
 美琴が震えながら問う。
「助けられた命を、出来る限り伸ばすための実験です、とミサカは告げます。
私たちが、進んで行っている実験ですので、お姉様がお気に病む事はございません、とミサカは心配を解消します」
「…そうか。まあ先生が見てるんだ。美琴、そう背負い込むな…お前は笑うのが努めなんだぞ。」
「うん…」
「今回の実験の目的は18歳になることではなく、逆にここからどれだけ『成長しないように』できるか、
睡眠による成長鈍化を試すのです、とミサカは目的を伝えます」

「そうか…俺たちが次に会うのは4,5年後ってことか。…んじゃあもう時間もあまりなさそうだし、」
上条は少し美琴を一瞥し、
「何かできることあるか?最初に言っとくけど、美琴が怒るような事はダメだけどな」

「ミサカの願いは…あなたにキスしてみたいです。
 一〇〇三二号に行ったように、あなたの頬に、とミサカはお姉様の反応を気にしつつ願いを伝えます」

 美琴は、一瞬固まったが、むんずと上条の腕を掴み、ミサカ一〇〇三三号の前に突き出した。
「お、おい、美琴?」
「後ろ向いてるから、どうぞ!」
「…改まるとスッゲー恥ずかしい話だなこれ……目つぶってるから、いつでも来い!」
「ありがとうございます、とミサカは心から感謝します。
 行為をさせていただきましたら、ミサカはそのまま去ります。お姉様、またお会いできる日を楽しみにしております…」

 上条は、暖かいものが頬に触れた後も、目を開けなかった。
 ドアが開閉した音を確認して、初めて目を開け…主のいなくなった椅子を眺めた。

 美琴が横からしがみついて来た。
 上条はやさしく頭をなでると、肩を抱いてゆっくりと部屋を後にした。

◇ ◇ ◇

789ぐちゅ玉:2010/02/17(水) 23:56:34 ID:MlOCxovM
【向かう先は、ミコトDX?6】

「いま、妹達はどうしているんですか?」
 ゲコ太先生の待機する部屋に戻った2人は雑談しつつ、そういえば、と他の妹達の状況を聞いた。
「あの子たちは、精神的ショックを受けていてね?リラックスカプセルの中にいるよ」
「…カプセル? あの、挨拶は可能ですか?」
「ジェスチャーで挨拶程度ならね?」

 それでもいいから、と、案内するゲコ太先生についていく美琴。
 上条は…そのカプセルルームの前で強く固辞した。想像通りのものなら、間違いなく不幸な目に会う…

 数分後、美琴が足音荒く、真っ赤になって出てきた。
「アンタ…知ってたでしょ!」
「え、いや?その、…」
「いつ見た!あ、あの全裸姿を!」
「え、え〜と、白井の見舞いの、時に…」
 白井黒子が大怪我を負った時、御坂妹も見舞ったのだが…
 あの時、御坂妹は、強化ガラスのカプセルに満たされた透明な液体の中で、ぷかぷか浮いていた。…全裸で。

「アンタは数ヵ月も前に、私のハダカを見てたってこと?」
「い、妹だろが。お前じゃねえ!」
「DNAレベルで一緒なの知ってて、ぬけぬけと…そ、それじゃ、もう大覇星祭の時には…」
「あの、美琴さん…?」
「あの薄着のランニング姿を、狼の目で見ていた、と…」
「たぶん、考えていることは、何一つ当たって無いと思われますが…」
「〜〜〜〜〜!」

 美琴は目に涙を浮かべて上条をボカボカと殴りだした!
「いてえっ!わ、悪かった、悪かったから落ち着いてくれ美琴!」
「〜〜〜!」
 病院で電撃を出さない理性は残っているようだが、結構本気で怒っているらしく、殴り続けている。

「君たち恋人なんだろ?裸なんていつも見ているんじゃないのかい?」

 一部始終を見ていたゲコ太先生の突っ込みに、美琴の動きが止まる。
 すかさず、上条は美琴の腕ごと抱きしめて、囁く。
「そ、そうそう!俺たち恋人なんだから。いつか、その、そういう日が来たら、そんな記憶も…な?」
「あ…う…そんなごまかし方……ずるい…」
 美琴はうつむいてしまったが、うなじまで真っ赤だ。
「それにじっくり見てねえって。気にすんなとは言わないけど、まあ俺を信じて、な?」
「うん……ごめんね。すぐカッとしちゃうの、直さなきゃ…」
「お前はそれでいいんだよ。まあ不幸だーっ、って叫んじまうのが一番だぞ?」
 美琴の肩を叩きつつ、そう言って上条は先生に会釈した。


 仲よき事は美しき哉、だね?
 ゲコ太先生は頷き、若い恋人たちにアテられながらも、優しい眼差しで見つめ続けていた――


fin.


<いつのまにかシリーズものになりましたが、これにて完結です。他の職人さん見ると、地の文がパワー不足だなと実感。>

790■■■■:2010/02/18(木) 00:11:33 ID:S4aDrM3Y
>>789
GJです!
もうちょっと続きが読みたいなぁ

791■■■■:2010/02/18(木) 00:16:51 ID:Se4AUG2E
2828すぎてやばいです GJ!
本編でもそのことを知ったら・・・((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル

792■■■■:2010/02/18(木) 00:22:31 ID:cRFOKlfU
ぐちゅ玉氏へ
お疲れ様です
ちょっとスレの空気がアレだったので、急ぎ小ネタ用意してましたが
良質な物が投下されホッコリです。

793ユミシロ:2010/02/18(木) 02:11:37 ID:.lzciVSE
小ネタというか予告というか。


「―――と、いうわけで教育実習生の方を紹介します。
 野郎共はもうちょっと落ち着いてください。鼻息が荒すぎですよ。静かに静かに。どーどー。
 今回着ているのはあの有名な常盤台中学のお嬢様なんですから、怖い思いとかさせたら先生怒りますからねー」


(教育実習って……研修みたいなもんだっけ?)
 教員免許状を取得するために必要なんだっけかなー、とまったく興味のない上条は一時限目の英語の小テストに
備えて英単語や文法の暗記中である。
「ではではー……入っちゃってください!」
 がらっと音を立てて入り口の引き戸が開いた。
 教壇に向かって歩く革靴の足音が、静まり返った教室に響き渡った。
 まったく目を向けていない上条は口の中で英単語の発音を繰り返している。
(……妙に静かだな)
 ふと、こんなことが思い浮かんだ。
 その教育実習生とやらが年齢不詳の五和だったりとか顔を変えた元錬金術師であったりとか、七三分けの上方に
スーツの上からでもわかる筋肉ムキムキのアックアとか美術の先生とかでシェリーが現れる、なんていうことが。
(はっはっは……そんな冗談みたいな話ある訳ねぇけどありそうだから頼むから冗談でも勘弁してくれ……)
 黒板にチョークで名前が書かれているらしく、硬い音と擦れる音が続く。
 やがて、再び静寂が訪れると月詠小萌が紹介を始めた。


「はいはーい。この方が教育実習生の“御坂美琴先生”です。
 なんと!超能力者(レベル5)が第三位の『超電磁砲(レールガン)』なのですよーっ!!」


「初めまして。御坂―――」
「ありえねぇっ!美琴先生?リアル美琴先生ですか!?何が起こってんだ!さっぱりわからねぇよ!
 鈴科百合子とかエロ教師オリアナ先生とかそんな―――」
「月詠先生。チョークをお借りしますね」
「どーぞどーぞ」
 ドパァァンッ!! という派手な音を立てて、席を立ち上がった上条の額でチョークが炸裂した。
「ほほう。御坂さん、中々やりますね。あれだけ情け容赦なく投げられれば先生の素質がありますよ」
「ど……どんな素質だよ」


『美琴先生』

794ユミシロ:2010/02/18(木) 02:12:55 ID:.lzciVSE

できれば上琴いちゃいちゃネタをこっちに投下したいけど時間的に余裕がない上、
バレンタイン前にチョコパイやらバウンドケーキを作って妹の手伝いもしてたからバレンタインネタが
書き終わってない……けど投下したかったので、去年から考えてたリアル美琴先生ネタの序盤部分を
ちょっと書いてみました。
最後(まで書ければ)は教室(補修)で二人っきり……

795■■■■:2010/02/18(木) 02:57:50 ID:Njf4taHI
>>793
ものすごく面白そうですね。完成を期待してます!

796■■■■:2010/02/18(木) 04:57:44 ID:yd2ryHss
>>794
とても楽しそうですね。続きを期待してます^^

797■■■■:2010/02/18(木) 05:46:24 ID:caPE6at2
いや、書き終わってから投稿しろよ

798■■■■:2010/02/18(木) 06:01:42 ID:caPE6at2
とりあえず次スレから

>・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

削るべきだな、下手糞な奴増えすぎ。しかもその下手糞が上から目線でSSの指導してるとか・・・。
ある程度は読める文書いて欲しいですね。

799■■■■:2010/02/18(木) 06:06:03 ID:UUYhZ5/g
>>799
いたずらに敷居高くしたら過疎るんじゃね?
あと、「下手糞な奴増えすぎ」ってあんまりな書き方じゃね?
書き方気をつけないと荒れのもとになるよ?

800■■■■:2010/02/18(木) 06:06:44 ID:UUYhZ5/g
すまん、799だが>>798だわ。

801■■■■:2010/02/18(木) 06:16:40 ID:zKP7YIdU
>>794
GJ!
チョーク投げのシーンはアニメ超電磁砲のデッキブラシ投げのポーズでお願いしますw

802■■■■:2010/02/18(木) 06:51:02 ID:zKP7YIdU
 お邪魔します。
どなたもいらっしゃらないようでしたら
10分後に「永遠 If_tomorrow_comes.」残り8レス分を投下します。
前の分は
>>732-740
です。

>>742
当たりです。

803永遠 If_tomorrow_comes.(10):2010/02/18(木) 07:02:22 ID:zKP7YIdU
 一二月二四日、クリスマスイブ。
 時刻は午後五時に差し掛かろうとしていた。
 美琴は終業式をつつがなく終えて差し入れがてらクリスマスに付き特別警戒強化中の風紀委員活動第一七七支部をのぞいてみたら、マニカーニのケーキを前にハイテンションな初春と風紀委員でもないのにお邪魔している佐天をのぞき、残る女性陣によるヤケクソな叫びと男性陣による悲哀がそこら中でこだましていた。クリスマスだというのにあれだけどんよりした集合体(パーティ)はそうそうお目にかかれないだろう。待ってくださいお姉様もご一緒にお茶でもいかがですかとすがりついてあまつさえ腰に手を回そうとする白井に蹴りを入れ、寮に戻ってきたのが午後三時すぎ。
 美琴は常盤台中学『学外』学生寮の二〇八号室で一人ぼけーっとベッドに座って枕を抱きしめると、いくつものため息を重ねては酒に酔った場末のサラリーマンのようにぶはーっと吐き出す。いつもなら一人でも街をぶらつく美琴だが、今日だけは外に出る気になれなかった。
「今日はクリスマスイブなんですけどー、何で私は一人で寮の部屋にいるのでしょうかー?、ってね。つか彼氏持ちでこの日を一人で迎えるなんてありえないでしょ普通は」
 上条の反応の薄さは今に始まったことではないし美琴もいい加減それは熟知している。しかし、だけど、それでも今日はクリスマスイブだ。二人にとって特別な日だと上条はわずかでも思わなかったのだろうか?
「こんな日に外に出てもカップルにあてられるだけだし、今からケーキ買ってきてやけ食いってのもねぇ」
 ベッドに背中から勢い良く倒れ込むと、美琴は枕を顔の前に高く掲げる。その表面にツンツン頭を思い浮かべてまず左右に、次は上下に引っ張った。最後に左手だけで枕を支えると右拳を岩よりも固く握り締めボフッ! とど真ん中に叩き込む。
「馬―――――――――――鹿……」
 最低最悪なクリスマスだ。
 彼女をほったらかしにしてあの馬鹿は今ごろどこで鼻の下を伸ばしているのだろう。あの黒髪ポニーテールと一緒なのか、それとも以前出会った二重まぶたの地味なピンクの女の子のところだろうか。はたまたあの小っこいシスターのところに『帰った』のかもしれない。
『とうまは何があっても、絶対に帰ってきてくれるんだから』
 頭の奥で彼女の揺らがぬ言葉を思い出し、美琴は枕をポイっと放り投げ、左手首で視界を覆って完全に塞ぐ。
 あの子はあんなにも上条を信頼している。
 自分の思いに手がつけられない今の美琴が同じ台詞を言えるだろうか。
「片思いって苦しいな……」
 その言葉を打ち消すように、美琴のスカートのポケットに入れた携帯電話が細かく振動する。どうやら誰かからクリスマス祝いのメールが送られてきたらしい。仲の良い友人同士でデコレーションに凝ったグリーティングメールを送ることは珍しくもないが、こんな日にわざわざ送ってくるなんてイヤミかそれともあてつけかと荒んだ心で美琴は携帯電話を引き抜き、カエル型の本体をパカッと開いて送信者を確認する。
 ―――上条当麻。
「……え? な、ちょ、何で今頃アイツから? うそでしょ?」
 美琴はベッドから勢い良く跳ね起き、両手でボタンを操作してメールの本文を開いた。『午後六時までにここへ来て欲しい』という簡素な文章と共にGPS認証用コードが添付されているのを確認し、地図を呼び出して位置を調べる。上条のメールが指し示す先は第七学区のやや外れたエリアで、美琴の寮からは歩いて四〇分以上かかる。
 美琴はハンガーにかけたピンクのマフラーを掴むと部屋のドアを突き破るように廊下へ飛び出し、階段を二段飛ばしで駆け下りてエントランスをくぐり抜け、寮の外へと飛び出した。
 冷たい北風が美琴の背中を押す。手にした携帯電話の画面を横目でちらちら確認しながら、美琴はメールが誘うその先へ。
 上条当麻が待つ場所へと走り出す。

804永遠 If_tomorrow_comes.(11):2010/02/18(木) 07:02:46 ID:zKP7YIdU
 美琴は目の前に立つとんがった屋根のいかにもな建物を見上げる。現在時刻は午後五時五五分。
 雨の少ない地方にありがちな四角形のシルエットばかりが並ぶこの街ではひときわ異色の、黒い屋根の上にピンと背筋を伸ばした十字架が掲げられ、壁は白く、窓は四角い。まるでガイドブックに出てきそうな教会の姿をそのままに。
 美琴は『ここ』には初めて来るので幾度も道に迷った。上条が送ってきたコードと地図を何度も何度も確認して
「やっぱりここって教会よね。……アイツ、何考えてこんなところに人を呼び出したわけ?」
『まさかあの馬鹿と誰かの結婚式? 相手はひょっとしてあの女?』と弱気な幻想にぶんぶんと頭を振って出て行くよう促すと
「おー来た来た。寒みぃ中ご苦労さん。入れよ」
 脚立の上に乗って釘を三本口にくわえ、右手に金槌を持った上条が美琴に手を振った。上条の頭上には装飾された看板があり、流暢な英字の筆記体で『ようこそミサへ 救いの手を求める方に私達は扉を開けて待っています』と書かれている。
「……ここ、教会よね? こんなとこで何やんの?」
「何って……今日はクリスマスイブだから、ミサだけど?」
「ミサ?」
 ミサとは神の目の前で行う一種の儀式である。自らの罪を償い、神に栄光を捧げ、その場に集う人々と共にすべてを分かち合う。といっても内容はそこまでお固いものではない。福音書や黙示録など聖書の一節を朗読し、みんなで賛美歌を歌い、最後に神父様のありがたいお言葉を聞くと言った具合だ。クリスマスと言う時節柄、ミサに参列した幼い子供達にちょっとしたお菓子を配ったりする事もある。残念なことにこの教会では常駐の神父がいないため、現在は銀髪碧眼のシスターが例外的に教会を取り仕切っている。
「お前教会で鏡開きをやるとでも思ってんのか? ほれ、そろそろ始まっからさっさと中に入った入った」
 入り口は行き交う人々で賑わっているが、そこは教会らしく皆静かに微笑みざわめきも少ない。
「で、アンタはここで何やってたのよ?」
「ここの教会に知り合いがいんだよ。教会じゃ日曜ごとにミサ開いてんだけど、大掛かりなもんをやるのは今回が初めてらしくて飾り付けとか作んの手伝ってたんだ」
 天草式の奴も来てくれたんだけどあっちもあっちで忙しいからな、と上条が脚立のてっぺんで頭をポリポリとかく。
 ローマ正教は全世界に二〇億人の信者を抱えている。全世界の約半分近い人口が信者であると言う事実は、すなわち日本にも信者が存在するということである。信者数ではローマ正教に遠く及ばないが、もちろんイギリス清教にも日本人の信者が数多く存在する。宗教色をほぼ完全に払拭した学園都市だが、曾祖の代から十字教信者と言う学生もいるため一部宗派に限って学園都市内には教会の設置が認められている。年末年始に帰りそびれた生徒や教師向けに『初詣ほか日本的イベントのために営業する』神社仏閣が都市内に存在するのと同じ理由だ。上条と美琴がいるこの教会もそのうちの一つで、表向きは迷える子羊を救うために手を差し伸べるイギリス清教の傘、裏は『必要悪の教会』の学園都市内における拠点として活動している。必要悪の教会は魔術師の集団だが、他の魔術結社の横槍を防ぐため表向き全員が『聖職者』として登録されている。美琴が出会った神裂火織もそのうちの一人だ。

805永遠 If_tomorrow_comes.(12):2010/02/18(木) 07:03:17 ID:zKP7YIdU
「アンタが一週間出かけてたのって……これ?」
「ああ。神裂と……えっと、お前がこの間会った長い日本刀持ってた奴な。これの手伝いの件で話してたんだよ。あとさ、お前神様がどうのこうのって言ってただろ? だったらちょうどいいから本格的なミサに誘おうと思ってな。ここなら俺の知り合いだらけだし、十字教徒じゃなくても門戸を広く開けてくれっから心配ねーだろ?」
「…………あの」
 ふと何かに気づいたらしく、上条は金槌を持った手で美琴の頭を指差し
「あれ? お前、髪の毛切っちまったのか? 綺麗だったのに」
「…………えっと」
「でも初めて会った頃みたいでそれもいいな。似合うぞ」
「…………だから私は…………」
 脚立の上で釘を打ち終わった上条が何の屈託もなくニカッと笑う。その笑顔に私のこの連日の苦悩は一体なんだったのよと脱力し『中で待ってるから』と一言だけ告げて、美琴は木製の大きく黒くて重たい扉をくぐり抜けた。
 聖堂の中は美琴が想像していたより広く、三人がけの参列者席が左右に一二基ずつ設置されている。参列者席を挟んで開けられた通路は美琴が両手を広げたよりも幅があり、ここに赤い絨毯を敷けばそのまま結婚式も行えそうだ。
 通路の先の壁にはステンドグラス、その下は二段に重ねられた祭壇のようなものが設えられている。右手には鳴らせるのかどうかはわからないがパイプオルガンらしきものがあった。なるほど、これは規模こそ小さいものの立派な教会だと頷いて美琴は空席を探す。日本人は謙虚なのか目立つことを嫌うのか最前列がポッカリと空いていたので、美琴は周囲を見回し自分のほかに誰も座らなさそうなことを確認すると小さな声で『お邪魔します』と呟いて参列者席の真ん中に腰を落とす。
 十字教徒ではない美琴にとって、ここは敵地(アウェイ)のように感じられる。しかも上条は『ここに知り合いがいる』と言っていた。さっきから教会関係者と思しき人々はシスターさんとかシスターさんとかシスターさんとかやたら女性しか見あたらないのだがまさか全員上条の知り合いなのだろうか?
「……うっす」
 気配を感じて右側を振り向くと、ちょうど上条が美琴の隣に座ろうとしているところだった。そろそろミサが始まることを気遣って、足音を殺して歩いてきたらしい。
「……それで、アンタの知り合いって誰?」
 美琴が上条の耳に手を当てて小さな声で尋ねると
「お前も知ってる奴だよ。まあ見てろ、お前絶対驚くから」
 同じく耳打ちで返ってきた。耳たぶにかかる上条の息が少しくすぐったい。
 午後六時の鐘の音とともに聖堂の中のざわめきがピタリと静まり返る。同時に祭壇の左手から現れた人物を見て美琴は息を飲んだ。純白の布地に金糸の刺繍をあしらい、要所要所に大きな安全ピンをつけた修道服を身に纏う小柄なシスターは、小脇に聖書を抱えて祭壇の中央へちょこちょこと歩いていく。彼女はピタ、と足を止め参列者席に向かって一礼すると
「みなさん、クリスマスのミサへようこそ」
 純白のシスター―――インデックスは野に咲く可憐な花のように微笑んで参列者全員を迎え入れた。

806永遠 If_tomorrow_comes.(13):2010/02/18(木) 07:03:44 ID:zKP7YIdU
 参列客が帰って誰もいなくなった聖堂で一番前の席に並んで座り、美琴は右隣で大きく伸びをしている上条に向かって
「クリスマスミサって初めて参加したけど、十字教徒でもないのに何だか身が引き締まる思いね。それ以前にアンタが信者だとは思わなかったわ」
「あん? 違えよ、単にこっち系の知り合いがいるってだけで俺は宗教関係者でも何でもねえぞ」
 勘違いすんなよ? とどこか拗ねたような目で上条は美琴を見ている。昔何か宗教がらみでひどい目にでもあったのだろうか。
「でも私をミサに呼んだじゃない? ……ちょっと変わってるけど、これってデート……なの?」
「デート? はあ……何言ってんだお前? クリスマスイブはわーっと飯食って、クリスマス当日はおとなしくするのが世界共通みたいなもんじゃねーの?」
 少なくともインデックスはそう言ってたぞ? と上条は口を尖らせる。
「……アンタが鈍いのは今更だけど、イブの日に彼女ほったらかしってどういう事なのよ! ふっ、普通は、デートしたり一緒にいたり……その……だから」
 意志に反して美琴の語尾が濁っていく。一四歳の美琴には、言いたくても口に出せないことは山ほどある。
「御坂……」
 上条当麻は知っている。
 イギリス清教の奇天烈な日本語を使う最大主教だのローマ正教の前や後ろや右や左に所属する神の右席だのロシア成教からやってきた神の力を司る拘束具付き天使だのと知りあってしまったおかげで美琴が口にするクリスマスの過ごし方はイレギュラーなものだと言うことを。
「今からでも遅くない。お前も神様がどうとか口にするならインデックスのところに行って少し勉強した方が良いぞ? 俺も神裂に言われてさ、失礼がないようにこうやって」
 ほらほら見てみろ御坂と上条は得意そうに携帯電話を取り出し、アプリ画面を呼び出すと
「じゃーん。『失礼にならないワンポイントマナー講座・宗教編』をダウンロードしたんだ。今日はたくさんお客が来っから俺もこれでちっとは勉強したんだぜ?」
 美琴はうんうんそうなんだえらいわねと小さな子供の頑張りを優しく見守る母親のように柔らかく微笑んで
「アー、ンー、ター、はー……そんなもん勉強する前に少しは彼女に対するマナーを覚えろこのクソ馬鹿っ!」
「ぐはぁっ!?」
 冷たくスワったままの目で電撃(ビリビリ)入りのグーを上条の頭頂部に向かって垂直に叩き込んだ。

807永遠 If_tomorrow_comes.(14):2010/02/18(木) 07:04:18 ID:zKP7YIdU
 実にバイオレンスなプレゼントだった。
「お前デートに行きたいなら最初っからそう言えよ…………」
 コブができた頭頂部を涙目と共にさすりながら、上条は聖堂の参列者席に腰掛けたままうずくまった。時折痛い痛いと言う呟きも聞こえてくる。
「あ、あ、アンタから誘ってくれたって良いじゃない」
「だって俺、今日がそういう日だなんて知らねーぞ?」
 上条も本当に今日が『そういう日』だと知らないわけではないが、赤髪の神父に日本人は降誕祭を何だと思っているんだなどと差別的に言われたりポニーテールの女教皇様にクリスマスにデートなどとたるんでいます上条当麻と厳しく諭されたり銀髪碧眼のシスターからローマ正教とイギリス清教におけるクリスマスの扱いの違いなどをそれっぽく聞かされたりするともしかして自分の常識は間違ってるんじゃないだろうかと疑ってしまう。
 人間、朱に交われば赤くなるのだ。
「デートの話はまた今度な。どうせこの冬休みは補習ばっかだし。もういっそ補習デートにでもすっか?」
「それのどこがデートなのよっ! 最終的に女ほったらかしで補習なんて中世ヨーロッパ並の……」
「あーはいはいその話は前にも聞いたから。ところで」
 上条は指を伸ばしてシャギーの入った美琴の茶色い毛先をつまみ、軽く弄びながら
「何で髪の毛切っちまったんだ? お前新しい何とかに挑戦するとかって言ってなかったっけ?」
 何とかじゃないわよ、と美琴は苦く笑って
「気分転換って奴? 髪はまた伸ばせばいいし、これはこれですっきりしたわ」
「ふーん? ……ま、お前が良いって言うならそれで良いけどな」
 ―――この髪だってアンタのせいで切ったんだけど。
 美琴は彼氏に一言物申したい気持ちを押しとどめ、ふと思い出したように
「そういやアンタ、この髪型見たとき『初めて会ったときみたい』って言ってたわよね。……私に初めて会ったとき、アンタは私のことどう思ったの?」
「うーん……変な奴、とか口の聞き方も知らない生意気な奴、かな」
「…………やっぱそうよね」
 言われるだろうと思ってみても実際に口にされるとそれなりにきつい。上条の中に美琴への苦手意識が残る限り二人の距離は埋められないのかと唇を少し噛みしめて、美琴は上条に気づかれないよう重い息を吐いた。
 もっと早く、自分の気持ちに気づけばよかった。上条の生死の瀬戸際を突きつけられて、ようやくそこで心の中に埋れていた何かに気づくようでは遅すぎる。物分かりの良い彼女の座は、あの頃の自分が残した過ちの代償なのか。
「上条当麻、そろそろ鍵を閉めますから外へ――――?」
 大きく黒くて重たい聖堂の扉を押し開けて、ウェスタンルックサムライガールこと神裂火織が最後列から最前列に座る二人に向かってよく通る声で退出を促す。
「あ、悪りぃ神裂。ちっと話し込んでたもんだから。もう出るよ」
 美琴はそこにいるのが先日上条の隣にいた女性と気づき、いやー悪りぃ悪りぃと二列に分かれた参列者席の間の通路を歩いて聖堂の外へ出ようとする上条の襟をむんずと掴んで
「……あの人アンタの何?」
 心の中で渦を巻く不機嫌さを抑えきれず上条に詰め寄る。

808永遠 If_tomorrow_comes.(15):2010/02/18(木) 07:05:24 ID:zKP7YIdU
「何って言われても知り合いだけど? 神裂はあんなカッコしてっけど一応シスター、いや女教皇様だからこの場合は違うのか? おーい神裂ー、この場合どうなんだ?」
「……………………えーっと?」
 今日のミサに現れて、壇上で聖書をひもときながらそれっぽくありがたいお話をしていたインデックスについてはまだ認められた。あの子修道服着てたけどホントにシスターだったんだと、認識の中にある食欲旺盛ぶりからは想像もできない敬虔かつ荘厳なインデックスの姿に美琴は少なからず感動を覚えた。
 しかし、しかしだ。
 ちょっと待って欲しい。
 自らの長身を超えるほどの日本刀を腰に差してジーパンの片方の裾を根元近くまでぶった切って美しく流れる黒髪を無造作に縛り上げてヘソ出しルックの大股でつかつかと歩いてくる目の前の巨乳女が聖職者だなんて。
 自分に向けられる割と失礼な視線に気づいた神裂が反論の口を開こうとして
「神裂、片付けの方は手伝わなくていいんだよな? 全く土御門の奴はどこへ行ったんだよ。アイツがいれば俺は今日まで手伝いしなくて済んだんだろうに」
 上条が神裂と美琴の言葉をまとめて遮るように口を挟んだ。神裂は割と申し訳なさそうに謝罪と謝辞を述べつつ
「土御門にも事情がありますから。……ところであなたの後ろにいるそちらの女性はどなたですか? 見たところ科学側の人間のようですがお友達ですか? 確か以前にわだつみでお会いしたような……?」
 わだつみって何だろうと美琴が考えていると、上条が二人の間に割って入り
「わーわーわーその話は良いから! ……えっと、コイツは御坂美琴。俺の彼女だけど?」
「…………………………………………………………え?」
 思考するよりも、検討するよりも、理解するよりも早く。
 驚きの声は美琴からではなく、神裂の口から発せられた。
「あのな、俺に彼女がいんのがそんなに珍しいのかよ?」
 美琴の前に立ちふさがって神裂と向かい合う上条が、『俺の日本語は同じ日本人にも通用しなくなったんでしょうか』とでも言いたげにふてくされた調子で肩をすくめる。
 上条の鈍さは筋金入りと言うことを再確認して、美琴は何だか泣きたくなった。上条の肩ごしに間近で神裂の顔を見る美琴でも、神裂の表情が何を意味しているか読み取れたというのに。
「い、いえ、そんなことはありませんが……そうですかあなたに彼女ですか……」
 神裂は驚愕に開かれた口元を掌で隠しつつ確か前にお会いしたときは従妹君だったような気がするのですがこれは五和に知られないようにしないといけませんねと早口でぶつぶつつぶやきながら
「ごゆっくり……」
「…………………………………………………………え?」
 衝撃のあまり扉の鍵をかけることも忘れいつもなら絶対言わない言葉を残してそそくさと立ち去る神裂の後ろ姿を美琴と上条が見送って、二人揃って最後の発言が理解できずに声を合わせて立ち尽くした。

809永遠 If_tomorrow_comes.(16):2010/02/18(木) 07:07:04 ID:zKP7YIdU
 よくわからないが聖堂の扉の鍵がかかるのは後回しになったらしい。
 美琴は上条と並んで参列者席にもう一度腰を降ろし、話の続きを始めた。
「一つ確認するけど。……アンタ、さっき私のこと『彼女』って紹介してくれたわよね?」
「しちゃいけなかったのか? 前にも聞いたと思うんだが」
「いや……あの……えっと……いけないとかじゃなくて」
 美琴は下を向いて上条の顔を極力見ないように意識してみるが、顔の緩みは止まらない。ここ何日か放ったらかしにされたことを全部帳消しにしてしまうくらい嬉しくてたまらない。
 上条の知り合いと言っても相手は女性。そこで『彼女』と紹介されたら。
(うわー、どうしよう)
 美琴はここに来るまで自分のことを世界で一番不幸な『彼女』だと思っていた。『彼氏』は自分を好きなのかはっきりしないし反応は薄いし鈍いしおまけに上条の隣には次から次へと日替わりで女の子は現れる。
 それでも神様は美琴のところに、最後にクリスマスプレゼントを届けてくれた。
(ホント安いなぁ、私。こんなことくらいで喜んじゃってさ。こんなの恋人同士だったら当たり前じゃない)
 その当たり前のことがたまらなく嬉しい。上条の『本命』に一歩近づいたような気がして、美琴はうつむきながら幸せを噛みしめた。
「ああそうだ。こないだお前が怒ってたから有耶無耶になっちゃったけどクリスマスのプレゼント」
 上条はちょいちょいと美琴をつついて顔を上げさせ、自分のポケットの中に右手を突っ込むと、中からよれよれのリボンがかかった小さな箱を取り出して美琴の目の前にかざす。
「……これ何?」
「ない知恵絞って俺が選んだクリスマスプレゼント。お前はいらないって言ってたけど、セーターとマフラーのお礼を兼ねて、な」
 上条は美琴の右手首をやや強引に掴むと、小さな掌の中に小箱を落とした。
「メリークリスマス」

810永遠 If_tomorrow_comes.(17):2010/02/18(木) 07:07:42 ID:zKP7YIdU
 美琴は掌の中の小箱を凝視し、次にぎこちなく上条の顔を見上げて
「……開けてみても良い?」
「開けねえと中身が何だかわかんねーだろが」
 美琴はポケットの中で押しつぶされてくしゃくしゃになったリボンを解き、包装紙を破かないようにゆっくり広げてリボンと一緒に小さく畳み、携帯電話を開く時のように小箱の蓋を縦に開く。中に入っていたのは皮膚を痛めぬよう丸められたクリップみたいな金具に短い鎖が付き、その鎖の先に小さなオープンハートのついた
「……イヤリングよね? これって」
 全体的に銀色に輝いているが材質は銀ではないだろう。箱の中で二つ揃えてしまわれたそれを見て
「くれるの?」
「何で他人にやるプレゼントをお前にわざわざ見せんだよ。疑り深いな。気に食わなかったんなら……」
「う、ううん! 違う違う違うから! ありがとう。……大事にする」
 箱の蓋をパチンと閉じて両掌の中に包むと小箱を胸の前に引き寄せ、美琴は上条を見た。
「よく考えたらお前校則で私服着れないからそれをつける機会もあんまりないと思うけどよ、彼氏一年生なんで大目に見てくれ。次の機会があったらその時はもう少しましなもんを贈るからさ」
「……これでも上出来だと思うけどな。私は」
 美琴はブレザーのポケットに小箱を納めると恐る恐る両腕を伸ばし、おっかなびっくり上条を抱きしめる。
 ここは美琴の、美琴だけの居場所。
 胸板の向こうにある上条の心臓に向かって
「……メリークリスマス」
「メリークリスマス、御坂」
 小さな子供をあやすように、上条の両腕が美琴の背中に回された。
 雪は降らなかったけれど、今日はクリスマスイブ。上条と手をつないで街を歩くという美琴の『恋人らしい』小さな願いは帰り道でかなえられるだろう。
 美琴の心の中で、二人が肩を並べて歩く遠い未来の姿は浮かばない。美琴と『友達以上恋人未満』の上条との間に永遠はないのかもしれない。美琴が歩こうとする道は苦しくて険しくて一本道ではないし、何度も足がすくんでしまうかもしれない。そして欲張りでわがままな美琴の、恋のゴールはまだ見えない。
 けれど上条の心のドアを叩いて、今日と言う日を何回も重ねて、明日と言う日を手繰り寄せて、いつか永遠にたどり着きたい。
 ―――二人の間に明日があるなら。

811D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/18(木) 07:10:57 ID:zKP7YIdU
 以上になります。

で、スレの皆さん申し訳ないです。
この話、タイトルを変えてもう少しだけ続きます。


それにしても読み手が書き手に回ってSSが増えていくなんて
何て良いスレなんだここは……改めて全ての職人さんにGJGJ!

お邪魔しました。

812■■■■:2010/02/18(木) 08:16:00 ID:S4aDrM3Y
>>811
GJです!
続きをぜひ待ってます!

813■■■■:2010/02/18(木) 10:06:26 ID:bIWflxTM
>>811
とってもおいしくGJです。
そうですよね、書く人が増えることは素晴らしいことですb

814■■■■:2010/02/18(木) 11:35:05 ID:vW2i88K2
GJ!!続きまってます!!

815■■■■:2010/02/18(木) 13:12:08 ID:CQYh5jJU
>>811
最高です…
このスレは過疎ったことがないな

816:2010/02/18(木) 13:24:41 ID:GZ5ZA3oM
初めまして、初心者歓迎と聞きここの職人さん達に感化されたので、かいちゃいました
こういう所での投稿も、SSも初めてなんで何かと妙な所もあるかもしれませんがその時はまた言って下さい

注意点
・シリアスです、そゆのが苦手な方はあまりお薦めできません
・設定は一応上条と美琴は恋人同士で、魔術と科学の戦争の終わりを妄想しました。
・いちゃいちゃ成分はある…とは思いますが薄いかも
・何よりも初投稿、初SSなんでおかしな所はあると思います、それでもいいよという方はどうぞ

では【embrace】、5分後あたりに投下します
消費レスは相場がわからないので詳しくはわかりませんが、文字数は約1万字です

817:2010/02/18(木) 13:28:32 ID:GZ5ZA3oM
「美琴!!危ない!!」
「えっ…?」

御坂美琴は突然彼、上条当麻からのかけ声に驚きながらも、上条の方を向く。
すると美琴は彼から突き飛ばされ、何が起きているのかわけもわからないまま尻餅をつく。

ーーーその刹那、彼のいる方から彼女の視界いっぱいに閃光が広がる。

その閃光の発生源からだろうか、辺り一帯に爆風が吹き荒れ、美琴はその衝撃で意識を失っていた。



美琴は夢をみていた。

彼女が立っている周辺には何もなく、ただただ大地が広がっているだけの平野に、ツンツン頭が特徴でいつも薄幸そうなよく見知った少年が立っているだけだった。
その少年は何やら憂鬱な顔をしていて、未だに状況が理解できずにただ呆然と立ってる美琴に向かって真剣な口調で口を開く。

「俺、行かなくちゃ」
「…?」

ただでさえ状況が理解できない上、それに拍車をかけるように彼の口からまた理解し難い言葉が放たれ、彼女は混乱する。

「本当に世話になった、お前にはどれだけ礼を言っても足りない気がするけど、ありがとな」
「…い、や…行かないで」

混乱していた彼女でも、唯一理解てきたことがあった。
それは自分が想う彼がどこかに行ってしまうということ。

「じゃあな、美琴。こんな俺を今まで好いてくれてありがとう。幸せに暮らせよ」

そう言うと静かに上条は美琴に背を向け、ゆっくりと歩きだす。

「行かないで!!アンタが…当麻がいないのに、幸せになんてなれるわけないじゃない!!」

背を向けた彼に向かい彼女は叫び、遠ざかろうとする彼を追いかけようと走りだす。
しかし、彼はゆっくり歩いてるはずで彼女はほぼ全力で走っているのにもかかわらず、差は次第に広がっていった。

「!!…いや…何で…?」

何故一向に差が縮まらないのか、何故彼は自分の呼び声に応じてくれないのか、そんな考えばかりが彼女の頭の中を支配する。

「行かないで!!お願いだからこっちを向いて!!」

しかし、やはり彼女の必死の叫びも彼には届かない。
美琴は全力で彼を追っているが、それでも次第に彼の背中は小さくなっていった。

「お願い、お願いだからーーー」

818:2010/02/18(木) 13:29:45 ID:GZ5ZA3oM
「ーーー行かないで!!」

美琴は目を覚まし、辺り一帯に彼女の声が響く。

「…ゆ、め?」

夢の影響か、心臓が激しく鼓動しうるさいくらいだった。
更にそれと同時に彼女に嫌な予感がよぎる。

「ここは…」

美琴が呆然と辺りを見回すと、辺り一面焼け野原になっておりさっきまでの場所と同じとは思えず、まるで夢に出てきたような感じの場所だった。
一瞬の出来事であったので、その瞬間に何が起きたかを彼女ははっきりとは覚えてはいない。
実を言うと、敵は終わりに向かっていた戦争が終わるのをよしとせず、終わるくらいなら敵もろとも、と自らを省みない攻撃を放ったのだ。

「そうだ…当麻は…?」

先程の嫌な感じ、それは上条の安否だ。
夢の影響と自分が気絶する前に彼がとった行動、それらが相まって余計に彼女は不安を覚える。
美琴はもう一度よく辺りを見回すと、少し離れた所に倒れている少年がいた。

「当麻!!」

美琴はその少年のいる所に駆け寄り、すぐに彼の名前を呼んだ。
しかし、少年から返事はない。
そんなただただ彼の名前を呼ぶ彼女を襲うのは、例えようのない底なしの恐怖。

「いや…なんで…当麻ぁ、起きてよ…当麻ー!!」

辺りに響くのは美琴の嗚咽まじりの叫び声のみ。



魔術サイドと科学サイドの戦争は、両陣営の疲弊や多大な損害を理由に停戦の方向で終結に向かっていた。


ーーー両陣営の停戦協定の締結から10日。


「ねぇ…知ってる?もうあれから10日も経ったのよ?アンタが私を守ってくれてから…」

美琴は最早とある少年のための部屋になりつつある病室で、未だ目覚めぬその少年に向かって話す。
上条はあの戦いの後、すぐに病院に運ばれカエル顔の医者の手により一命はとりとめた。

ーーだが、上条は目覚めない。
その医者によれば、上条は死んでいてもおかしくない、いや、十中八九死んでいるという程のケガたったという。
つまり、今ここで呼吸していること自体が奇跡なのだ。

「全く、なんで私はアンタをいつもいつも待たないといけないの?たまには待つ方の人の身になれっての」

この病室は個室であり、今この部屋は寝ている上条と彼の隣に座っている美琴しかいないのだが、美琴は返事のないその寝ている彼に向かって愚痴をこぼす。
彼女の言葉には少し怒気も含まれていたが、戦いが終わって10日…最早怒りよりかは諦めの方が強い。
しかし、どれだけ日にちが経とうが彼女の感情で最も強いのは、早く目覚めて欲しい、これに尽きた。

「当麻…約束覚えてる?あの夏休みの最終日にしてくれた約束…」

その約束…
そう、上条が美琴にした約束とは『御坂美琴と、その周りの世界を守る』というものだ。

「アンタはあまり意識してないかもしれないけど、私の周りの世界には当麻も含まれてるのよ?
むしろ、今では当麻ほど大事なものなんて…ないんだから…」

彼女が言葉を紡ぐにつれ、次第にその言葉から力がなくなってゆく。

「まさか、10日も寝といて寝たりないとか言うんじゃないでしょうね?
アンタが時間にルーズなのは知ってるけど、これは度がすぎるんじゃない?」

不意に、寝ている彼に向かい微笑むが、やはりその笑みにはどこか寂しさが漂っており、本当に笑っているというわけではない。

「だから…いい加減、起きなさいよ…」

美琴の声に嗚咽が混じる。
上条を想うが故、彼を誰よりも愛しているが故の涙であるが、彼は今まで同様に答えはない。
彼女がどれだけ泣いても、話しかけても、返事がない、振り向かない。
まるであの時の夢を彷彿させるような光景。
彼女はシーツを掴む手の力を強くし、彼の眠るベッドに突っ伏す。

例え返事がなくても、例え嘗てのように笑ってくれなくても、彼のそばにいたい。
その気持ち故の行動だった。

819:2010/02/18(木) 13:30:37 ID:GZ5ZA3oM
ーーー上条は夢を見ていた。

「あれ?ここは…?」

彼が立つのは、依然美琴が見た夢と同じ場所。
周りにはなにもなく、ただただ大地がまっすぐと広がっている平野。
そこに上条は立っていた。

彼は辺りを見回すと、彼の立っている場所の近くにはよく見知った、肩までかかる茶色の髪に常盤平の制服を着た女の子が背を向けて立っていた。
彼が見間違えるはずがない、間違いなく彼女は御坂美琴だ。

「美琴…?……どうしんだ?」

返事がないのを疑問に思った彼は彼女の所に、いつも待ち合わせの場所に向かうように駆け寄り、彼女の肩を揺らす。
上条はいつものように、少し驚いたような、それでもどこか嬉しそうな感じの表情で彼女は振り向くと思っていた。

ーーーが、予想に反し彼が美琴の肩を揺らすと同時に彼女の体は膝から崩れ落ちる。

「ッ!!おい!美琴!!」

その崩れる体を彼は回り込んで受け止め、彼女の容態を確認する。

「ッ…!!」

上条が美琴を抱え込んで彼女の体をよく見ると、服のあちこちが裂けていで、ところどころ赤い染みがついている。
後ろ姿では分からなかったが、抱え込んでみるとあちこちが傷だらけで生傷も幾つかあった。
上条は美琴が息はしているのは確認できたが、その呼吸も弱々しい。
このままでは危ないと判断し、助けを求めようと辺りを見回すが周りには誰もおらず、おまけに何故か携帯電話もない。

「クソッ!美琴、死ぬな…死ぬなよ…!!」

慌てて彼なりに処置をしようとする。
しかし、所詮は素人。
いくら頑張っても彼女の容態は回復せず、むしろ段々悪くなってゆく。
自分の処置は無駄だとわかっていたが、それでも諦めたくない。
自分が想う者、自分を想ってくれる者を助けたい。
その感情が今の彼を動かす理由だった。

「死ぬな…美琴…ーーー」


「ーーー美琴!!」

時刻は深夜。
月明かりが少し眩しくもある程月は煌々と輝いていた。
そんな中、上条の病室に彼の声が響き渡る。

「夢か…?…あれ?にしてもここって病室?なんでまたこんな…って、そりゃそうか…」

眠りから覚めた上条は状況を把握するべく、とりあえず辺りを見回す。
ここは彼がよく知っている場所なので、比較的理解するのは早く、そうしている内に、そもそも何故自分がここにいるかという疑問の答えとなる出来事を思い出す。
彼は美琴を守った。
あの後の事は全く覚えておらず、ちゃんと守れたかも分からなかったが、それでも彼女の盾となったのは事実。
彼女の安否が気になったが、それはあるものを発見すると、少なくとも彼女は生きているということは判断できた。

「この花…」

上条が手にとったのは、窓際に少し頑張って手を伸ばせば届く距離に置いてある花瓶の入っていて、自分が入院しているときには見かける花。
付き合ってからは美琴がここの病室は殺風景すぎるから、という理由でいつも持ってきてくれる花だ。
今その花は月明かりに照らされ、昼間に見かける美しさとは違った雰囲気を醸し出していた。

「そうか…また迷惑かけちまったな…」

こりゃ次会う時はビリビリ確定だな、と上条はぼやくがそれは嫌だという感じはあまり見られず、むしろそうやって心配してくれている人の存在を感謝しているぐらいだった。

知りたい事は幾つかあった。
自分はどれだけ寝ていたのか。
あの後どうなったのか。
あの戦いはどうなったのか。
しかし、彼にとっては一番守るべき存在であり、一番大切な存在である美琴の無事に比べればそれらはどうでもいいと思えた。

そして上条は花を元に戻し、再び眠りに落ちた。

820:2010/02/18(木) 13:31:35 ID:GZ5ZA3oM
〇月×日日曜日朝6時前。
常盤台女子寮で白井黒子は目を覚ます。
ここ最近、彼女は戦争の事後処理で風紀委員の仕事に追われており、あまり寝てい。
それでも久しぶりの非番の日にこんな時間に目覚めたのは理由がある。
彼女が最も慕う女性、御坂美琴の事であった。
美琴はここ10日間毎日病院に足を運んでおり、それ以前と比べても全く元気がない。
それを忙しいながらも心配に思う彼女は再三にわたり、注意をしているが美琴は聞いてくれない。
今の美琴にとって一番大切な存在はその病院に入院している上条なのは知っている。(無論、認めたくはないが。)
しかし、日に日にやつれてゆく美琴の姿は見るに堪えなかった。

「と、うま…」
「お姉様…」

寂しそうに寝言で彼の名を呼ぶ美琴を見て、胸がチクリと痛む。
美琴の為に自分は何かできないか、美琴を元気づける為に何かできないか。
だが、考えは何も思いつかない。
しかも例え思いついても、そもそも自分の言うことに耳を貸してくれる事さえ怪しい。
その自分の無力さが嫌になった。
自分が最も慕う者に何もしてあげられない無力さが。

同日朝8時頃。
御坂美琴は目を覚まし、彼女の後輩の白井黒子と朝食を済ませ部屋に戻っていた。

「さてと…」
「お姉様、あの方の心配をなされるのは構いませんが、少しは自分の心配もしてくださいな」

今日は日曜日だということで早速病院に行く支度をしようしていた美琴に待ったの声がかけられる。

「大丈夫だって、そんな心配しなくても私は…」
「大丈夫ではありませんの!お姉様はここ最近ずっとそんな調子で…第一、今朝だって朝食にあまり手をつけてなかったではありませんか!」
「……」
「私は、そんなお姉様が心配なんですの…」

黒子の言葉には次第に嗚咽が混じり、ポロポロと彼女の目から涙が零れ落ちた。

「黒子…心配してくれとありがと。でもこればっかりは見逃して、お願い」
「…お姉様にそんな顔してそんな事言われたら、断れるわけありせんの…」
「ありがと」

美琴を本当に心配して泣いている黒子を美琴は優しく抱きしめる。

「でも、本当に無茶はしないでくださいな」
「わかってるって」

本当にわかっているかは別にして、黒子は優しい美琴の一面を見れて安堵する。
美琴は黒子が落ち着くまでそうした後に、支度をし、病院に向かおうと寮を後にした。



美琴は病院へ向かう途中、遠回りにはなるがとある鉄橋に立ち寄った。
そこは美琴にとって思い出の場所。
妹達の件で美琴を上条がを救ってくれた場所。
…そして、一端覧祭最終日の夜、美琴が上条に告白した場所。

821:2010/02/18(木) 13:32:13 ID:GZ5ZA3oM
ーーー一端覧祭の最終日の夜、公園。
なんとか上条との約束をこじつけた美琴は最終日を彼といることで満喫していた。
だが辺りも段々暗くなり、彼女にとって幸せな時間も終わりに近づいていた。

「っと、気付けばもうこんな時間か…御坂は門限大丈夫なんか?」
「へっ?あ、ああ門限は多分、大丈夫…でも、それよりも…私は、アンタと…」
「ん?最後の方がよく聞こえなかったんですが…?」
「ッ!!な、なんでもないわよ!このバカ!」
「…なんで俺はそんなバカバカ言われないといけないんだ?ま、上条さんは確かにバカですけどねー」

やや自虐気味に言葉を吐き捨てる上条に対し、美琴はそれどころではなかった。

(ど、どうしようこのままじゃいつもと同じ…こいつを狙う女はいっぱいいるから早くこ、告白して繋ぎとめておきたいんだけど…)

そう思う美琴の本心とは裏腹に、自身は告白することによる気恥ずかしさともし拒絶された時の事を考えると、行動に移せないでいた。

「…?御坂、お前具合悪いんか?ちょっと休んでくか?」
「え?ええ…わかった…」

実際は勿論そんなことはない。
美琴は告白の様々なシミュレーションを頭でしている内に顔を真っ赤にしたり、真っ青にしたりしていただけである。
それを上条は不審に思った訳だが…
そこで2人はぶらぶらと歩いている内に例の鉄橋を通り、そこで歩をとめた。

(ここは…チャ、チャンス!告白するなら今しかない!)

幸い鉄橋には誰もおらず、人通りもない。
そして、このような時をくるのを待っていた美琴は告白する決心をする。
少しの沈黙があり、2人を妙な雰囲気が包み込む。

(なんだ…?この妙な桃色空間は!御坂はさっきから妙にもじもじして顔赤くしたりしてるけど…
今日はやけに楽しそうにしてたし上条さんも何もしてないからまさか怒ってる、なんてのはない…よな?)

そんな不安を抱く上条を横目に、美琴はそんな事もお構いなしに沈黙を破る。

「あ、あのさ…ちょっといい…?」
「な、なんだ?なんか悩み事か?」

確かに悩み事だがそれは上条関連の事であるということに気づいてないだろう、美琴は思うが気にせず続ける。

「アンタは…私の事、どう思ってる?」
「…は?」
「だから、アンタは私の事どう思ってるかって聞いてんのよ!!」

あまりに予想外の事を聞いてきた美琴に少し動揺する上条。

(な、なんだ?なんでこんな事聞くんだ…?俺が御坂をどう思ってるか、だって?)

「そ、そりゃ嫌いな奴と一端覧祭と回んないし、こんなに話したりしないけどよ…」
「そ、そう…」

よかった、と一先ず嫌われていない事を確認し安堵する。
美琴はこれまで上条に対し、お世辞でも丁寧とは言えない態度で接してきたため、そればかりが心配だった。
彼女は覚悟を決め、少し間をおいて1、2回深呼吸をしてから一気に続ける。

822:2010/02/18(木) 13:32:43 ID:GZ5ZA3oM
「私は、アンタが…上条当麻が好き。
他の誰よりも、誰とも比べようもないくらい…」
「……御坂?」
「私を絶望から救ってくれて、これ以上ないくらい恥ずかしい約束されて、気付けばアンタの事ばかり考えてた。
記憶喪失の事を知ったときは、他の事は何も考えれなかった。
それからも、ずっとアンタの事ばっか考えてて…それぐらい、私は上条当麻が好きなの。
だから…私と…付き、合って…?」
「…」

美琴は顔を真っ赤にし、心臓を激しく鼓動させながら返事を待つ。

辺りを沈黙が支配する。
いつもは気にならないはずの風も今の美琴にはうるさく聞こえた。

(ダメか…)

沈黙が続き上条からの返事がないので、半ば美琴が諦めかけた時だった。
その沈黙を上条がやぶる。

「さっきも言ったけど、俺はお前が好きかどうかと言われれば嫌いじゃない、むしろ好きな部類にはいる。だけど…」
「…だけど?」
「知っての通り、俺は不幸体質でトラブルによく巻き込まれる。
そんな俺じゃお前を幸せにできない、俺には…それが耐えられない。」

上条は自分の不幸体質を悔いるように、顔を歪める。
それを聞いた美琴はどこか安心したように、彼に向かって微笑みながら、

「なんだ、そんなこと?」
「そんなことって…!俺はお前を不幸には…!」
「だったら」

まだ話している途中の上条を美琴は言葉で制し、上条の顔を見つめ、

「だったら、アンタは私と一緒にいないとダメね」
「何言って…」
「私はアンタがどこかで戦っているとき、傷ついて入院しているとき、心配で心配で生きた心地がしないの。
そんな状態でほっとかれる方がよっぽど不幸よ。
だから、私を不幸にしないためにはアンタは私とできるだけ一緒にいてくれないとね」

上条は美琴の言葉を黙って聞き、自らを蔑むするように笑う。
対して美琴は自分の心の内を全て出したせいか、どこかスッキリしたように明るく彼に向かって微笑む

「第一、私は幸せにならなれるわよ。
私はアンタと一緒にいれればそれですごく幸せなんだから…」
「…そっか…んじゃ、御坂、いや美琴…いいんだな?」
「何度も言わせないで。
私はと、当麻さえよければ何でもいいの…私は上条当麻が好きなんだから」
「ありがとな…んじゃ、これからもよろしくな美琴」
「うん、よろしく、当麻…」

2人はお互いに言葉を交わして見つめあう。
そして互いの存在を確かめあうかのように、もう離さないと言わんばかりに2人は抱き合いーーー

ーーー優しく、唇を重ね合わせた。

美琴にとっても上条にとっても初めてのキスは、長くはしていなかったものの、2人に深い深い絆な結ばせるには十分なものだった。

823:2010/02/18(木) 13:33:31 ID:GZ5ZA3oM
過去を思い出していた美琴は、何故いきなりここに足を運んだのか自分でもよくわからないでいたが、今となってはそんなことはどうでもいい。
感慨深い思い出を思い出していた美琴にとって今は、早く彼ーー上条に会いたい、会って話しがしたいの一心であった。
そう思った彼女は走って鉄橋を後にする。

今日は天気もいいし、思い出を思い出していた事もあってそれとなく上機嫌になった美琴は何故だか今日こそ彼が起きてくれそうな、そんな気がしていた。



美琴は走ってきたこともあってか、思いの外時間もかからずに目的地の病院に着いた。
彼女が病院の中に入ってゆくと、ここ最近では毎日に通っているためか、受付の人に顔を覚えられて、なにやら意味あり気な笑顔でこちらを見ていたが、今はあまり深くは考えない。
何よりも早く彼の顔を見たかったからだ。

少し病院の中を歩いて、彼の病室の前にに到着すると彼女はノックもせずに、これが当然とばかりに部屋のドアを開ける。
そして何食わぬ顔でベットに近づく。
すると他の誰かなら誰も気にしないような些細な変化でも、彼女にとっては少し不可解な部屋の変化に気づいた。

(私が持ってきた花が…)

その変化とは美琴が持ってきて、彼女が世話をしてきた花に関するものである。
彼女が用意した花の花瓶は手入れの都合上そんなに大きくはなく、少し背の低い口の小さな花瓶だ。
そこに彼女が持ってきた花を飾っているのだが…

(1本だけ不自然に飛び出てる…?)

美琴が不思議に思ったのは確かに花瓶はそこまで大きくはなく、口は小さい。
だが、自分が持ってきている花の本数的にも普通に入れる分には申し分なく入る。
そして何より、いつも自分は花の高さが揃うように花を入れている。
それでも花1本だけ斜めに飛び出ていた。
まるで斜めから花をとり、そこから強引に花を突っ込んだように…

(!!まさか…)

単に看護士さんがしたことかもしれない。
単に見舞い客がしたことかもしれない。
だが日曜日で時刻はまだ見舞い客としては早いことから後者はない。
それに昨日の最後の見舞い客も言うまでもなく美琴だ。
そして10日経った昨日までの日…いや、それ以前の入院の時でも花がいじられていたことはなかった。
一瞬の思考の後に、それらの思考から導き出された答えは

(当麻が…目を、覚ました……?)

それは美琴が今までずっと待ち望んでいた事だった。

今、上条が寝てることから恐らく夜のことだろうか。
などとあくまで推測の域を脱しないはずのことを次々に膨らませてゆく。
しかし、美琴は妙な確信を持っていた。
どれもこれもが不確かな証拠、それでも美琴には大きな希望の光が見えた。

824:2010/02/18(木) 13:34:21 ID:GZ5ZA3oM
(なんか悪い気もするけど…)

美琴は思い切って上条の体を軽く揺らしてみる。
ケガ人であり、ケガの程度も程度なので思いっきり揺らせないのが彼女は歯がゆかったが、それでも今までとは全く異なる反応が返ってきた。

「ん…」

上条の声を聞きそして、彼の顔を間近に観察していた美琴は彼の瞼が少しだけ開いてゆくのを見た。

「!!」

最早美琴の頭の中でや声にならない莫大な量の言葉、感情、思考が渦巻き自分でもわけがわからなくなっていた。
それは今日という日までずっと待ち焦がれていた瞬間。
今朝の予感は当たっていた。

「みこ、と…?」

寝起きだからかまだ声は弱々しく、若干かすれてもいるがそれでも上条の口からは確かに彼女の名前が紡がれた。

「!!…バカ、どれだけ寝れば気が済むのよ、アンタは…」

美琴には他にも言いたい事は山ほどあった。
今日という日を全て使っても話せるかどうかの量の。

だがそう言った事は全て吹き飛び、今はただ上条が目覚めた事が何よりも嬉しい。
また一緒に話がてきる、一緒にどこかにいける、そんな事ばかりが美琴の頭を駆け巡っていた。

「わ、悪い…って美琴!泣くなって!」
「えっ…?」

美琴が気付いた時にはもう大量の涙が零れ落ちていた。
彼女は慌てて涙を拭うが、その勢いは止まらない。

「だ、大丈夫か…?」
「あ、アンタのせいでしょうが!!」
「俺のせいかよ!……って、やっぱ俺のせいか」

別に上条は美琴の反論に負けた訳ではない、それでも自分に非があると認めた。
それは彼は彼女の一番の理解者だからだ。
その彼は彼女がよく泣くということは知っているが、そんな大した理由も無いのに泣くというのは決してない、というのも知っている。
その涙の理由を考えた結果、原因は自分にしかないと判断した所以だ。

「アンタに…当麻にいきなり呼ばれたと思ったら急に突き飛ばされるし、そしたら急に爆発が起きて私を庇うし、それで気絶した時当麻がどっか行っちゃう夢みるし、極めつけには起きたら当麻倒れてて10日も寝たままだし…医者には死んでもおかしくなかったって言われるし…本当に、本当に心配したんだから!!」

上条は美琴の言い分を黙って聞いていたが、で一つだけ聞き捨てならないことを耳にした。

「は?10日も寝てた…?俺が…?」
「そうよ!自覚しなさい、このバカ!!」

それは上条が10日も寝ていたということ。
確かに彼は晩に起きた時、頭がやたらクラクラするとは感じていたものの、それはケガのせいと勝手に結論づけていた。
だから彼は美琴が泣いている理由はそのことではなく他の自分の行動にあると思っていたが、実際は全く違い本人も驚き唖然としている。

「……当麻が寝てた時にも言ったけど、私の周りの世界には当麻も含まれてるのよ?当麻がいなくなったら約束も破られるし、私はものすごく不幸になるんだから…」
「……悪い」

涙こそ止まったものの、美琴の声に先ほどまでの力はなく、どこか切ない雰囲気を漂わせていた。
少し力を加えれば壊れてしまいそうな彼女の様子から、彼をどれだけ心配していたかが推し量れる。

825:2010/02/18(木) 13:35:09 ID:GZ5ZA3oM
「別に、謝ってほしくて言ってるんじゃない…ただ私は当麻を失いたくないの。当麻、前に言ったよね?私を不幸にさせたくないって」
「あ、ああ…」

「私は当麻が眠っている間、生きた心地しなかった…このまま目覚めないんじゃないかって考えると、とても幸せになんかなれない…もうこんな思いは嫌…だから…」
「もういいよ…美琴が言いたい事はよくわかった」

話の途中でもそこで話を切ってしまいたくなる程、彼女の声は彼の心に深く突き刺さった。
そして、上条はまた決意を新たにする。

「美琴、約束するよ。俺、上条当麻はもう二度と御坂美琴から離れない、ずっと一緒にいよう」
「!!…うん」

面向かってプロポーズとしてもとれてしまうような事を言われ、一瞬の内に美琴は赤面する。
そして上条はガラス細工を扱うかのように優しく、彼女を抱きしめる

「んじゃ改めて…ただいま、美琴」

一瞬美琴は自分の状況がわからなくなったが、頬に暖かいものを感じるとそれが何かすぐに理解できた。
数日振りの彼の抱擁を彼女に戸惑いながらも、自分もゆっくりと彼の背中に手を回し彼の胸に顔を押しつける。
ここは自分の居場所だと言わんばかりに…

「…おかえり、当麻」

そう言うと美琴は上条の方に顔の向きを変え、甘えたような上目遣いで見つめながらゆっくりと瞼を閉じる。
彼はこの行動を見て、やれやれと思いつつもゆっくりと彼女に顔を近づけ、

ーーー唇を重ね合わせた。

まるであの鉄橋の時の再現のように優しく、それでいてあの頃よりもずっと甘く長いキスをした。

この後、診察に来たカエル顔の医者や様々な見舞い客がこの場面に鉢合わせ、上条はその客達から仕置きを受ける事になるが、それはまた別のお話。





826:2010/02/18(木) 13:35:42 ID:GZ5ZA3oM
以上です、ありがとうございましたー
指摘、要望等はあれば遠慮なく書いて下さい
では失礼します

ここの職人達はみんなGJですよ!!

827■■■■:2010/02/18(木) 13:48:56 ID:jHInJOZ.
皆様GJ
ですが…
>>770
お仕事はGJですが、ご自分で言っているように空気を悪くしすぎ。

>>798
敢えて言います。あなたいったい何様のつもり?

上条さんも言ってました。

「いやいや。敢えて不器用なキャラが不器用なりに頑張ってみたボロボロクッキーっていうのがね、
分っかんねーかなぁ」
ここんとこが重要だと思うのは自分だけ?

よく言われるせりふを言いたいですね。つまり「読みたくないのなら読まなかったらいいんじゃないの」

828■■■■:2010/02/18(木) 14:15:56 ID:evQCEQW6
>>770
わざと煽ってるのか知らないが厨二もたいがいにしろよクソガキ
勝手に下らんこと書いといてまとめることに文句言うなら最初から書かなくていいんでお引き取り下さい

829■■■■:2010/02/18(木) 14:20:56 ID:4wDi74PU
誰も作品自体に文句は言ってないだろ
あくまで目立ちたがり屋で自己主張の激しい作家気取りを批判しているだけ
そもそも嫌なら見るなっつーのも論点ずれてるし論破もできてないニコ厨が使ってるだけだろ
それはAAで見たらわかること

830■■■■:2010/02/18(木) 15:43:09 ID:vW2i88K2
817-826
GJ!GJ!!

831■■■■:2010/02/18(木) 16:07:50 ID:rlV6ur/2


832■■■■:2010/02/18(木) 16:35:18 ID:zKP7YIdU
新しい職人さんも古い職人さんもみんなGJ!

>>721
何と寝てた人でしたか! ありがとうございます。
美鈴さんが上条さんから何と呼ばれてるかですが、
禁書目録SSによると「御坂さん」とありました。
美鈴さん単独への呼びかけが『御坂さん』、御坂家関係者がいると『美鈴さん』なのかな?

833■■■■:2010/02/18(木) 17:04:24 ID:OK2rIGzw
>>829
それは仕方ないことだろ?ここにいるのは(たぶん)職業人としての作家じゃなく
あくまで趣味でSS書いてる作家なんだから。職場じゃあるまいし同じ趣味の人がいれば
だべりもするでしょ。っていうかなんで他人の感想書いたり作品投稿するたびにトリップを
入れたり消したりしなきゃいけないのかがまずわからない。あんなもん一度やったらたいてい
自動入力じゃないの?第一そこまでなれ合い見たくないなら直接作品保管庫回ってればいいじゃん、
ここの保管庫更新早いし。

834■■■■:2010/02/18(木) 17:05:46 ID:4kDj82M6
職人の皆さん
お疲れ様&gjです!!
素晴らしい作品と感動をありがとうございます

835■■■■:2010/02/18(木) 17:10:50 ID:zKP7YIdU
>>832
とと、失礼しました。
寝てた人氏、でした。

そしてスレ汚しスマヌ。

836:2010/02/18(木) 18:34:04 ID:NL8gFMrA
GJなものが多くてやっほいです。

そんな中クソシリアスなものを投下します。
被らなければ。

いつもの留意点
・シリアス。とにかくシリアス。どのくらいシリアスかというと以前の「勝手に終わりを想像してみた」並かそれ以上なくらいシリアス。
・消費は15〜20レスの間。
・NGワードに引っかかったりしたらその時点で一旦終了。
・目分量で分けてるので、エラー(文字多い!)がでたりすると、投下に時間がかかることになります。そんなことはないと思いたい。
・原作のことを考えると矛盾が発生するようなことになってる(と思う)ので、パラレルなりIFだと思ってお読みください。
・上条さんがキャラ崩壊してる可能性あり(↑のこと含むから)

少ししたら投下します。

837:2010/02/18(木) 18:34:52 ID:NL8gFMrA
悪夢


「こっち来るな! あっち行け疫病神!!」

そう言って、誰かが石を投げつけてくる。
その石が体のあちこちに当たって痛い。
顔は、霧がかかったように見ることができない。
ただ、体格だけで見るなら大人の男性と子どもの様だった。
叫んでいたのは恐らく男性で、石を投げてきたのは子どもの方だろう。

「さっさとあっち行けよ!」

子どもが無邪気な笑みを浮かべてそう言いながら再び石を投げつけてきた。
その石から逃げるように背を向けて走り出したところで、突然場面が切り替わる。

「こっちに来ないで! 疫病神!! うちの子に不幸が移っちゃう!!」

今度は大人の女性と子どもだった。
大人の女性はヒステリックな叫び声を上げながら、子どもを連れて離れていく。
子どもは訳がわからないといった表情を浮かべたまま、連れられて行った。
再び場面は切り替わる。

「はあ、はあ、もう終わりだ……。こ、こうなったら誰かを道連れにしてやる……!」

血走った眼をした男が追い掛けてくる。
その手には包丁を持って。
走って逃げるも、その差はどんどん縮まっていき、ついには男の持つ包丁が振り降ろされる。
刺される!と思った時にまた場面は切り替わった。

「な、なんと! この子はいつも不幸にあっていて、さらにその不幸を周りに撒き散らしているようです! 恐ろしいですね〜。もしかしたらこの子は人間ではないのかもしれません」

目の前にはカメラがあった。
そしてそれを持った男の人は恐る恐るといった感じでカメラを操作している。
近づくことも怖いようで、脚が震えているのが見える。
その横に立つマイクを持った女性も、僅かに脚が震えている。
その周りには興味本位でやってきたのかギャラリーが大勢いた。
だがそのギャラリーも一定の距離以上近づこうとはしない。

そんな時、突然近くの店の看板が落ちてきた。
それは自分のすぐ横に落ちてその破片を周りに撒き散らす。
そしてそれは近くにいた自分自身はもちろん比較的近くにいたカメラマン達にも当たっていた。
当たった箇所から血が出てくる。
だが駆け寄ってくるものはいない。

「い、今のを見ましたでしょうか!? と、突然看板が落ちてくるというアクシデントが発生しましたが、これは果たして本当にアクシデントなのでしょうか!? 私にはこの少年が作為的に起こしたもののように感じられます!!」

そんな言葉を吐いた張本人は目が合うとすぐに視線を逸らした。
まるで見ただけで不幸が移るとでもいうかのように。
周りにいたギャラリーも、さらに一歩下がって、化け物と対峙したかのように怯えた眼をしていた。
そんな周りの様子を目の当たりにしたところで、自分は意識が落ちた。

838:2010/02/18(木) 18:35:26 ID:NL8gFMrA

「はあっ! はあっ! な、なんだったんだ……」

正確には、目を覚ました。
脂汗が気持ち悪い。

「今のは………昔の、夢?」

最後が疑問形だったのは上条当麻が記憶喪失だからである。
夏休みの途中以前からの記憶はない。

「昔の夢、なんだろうな」

だけど、確信していた。
なぜなら、かつて父である上条刀夜から聞いた数少ない幼い頃の情報と今の夢は完全に一致していたから。
昔の自分はあんな酷い仕打ちを受けていたのか、とどこか他人事の気分だった。
だから、なんとなく再び夢の内容を思い出した。
出来る限り細かく。

「ッ!!!???」

それが、いけなかった。
すぐに動悸が激しくなり、目の焦点が定まらない。
記憶はなくても、体はしっかりと覚えていたらしい。
それは、思い出してはいけないトラウマという形で。

「っくそ……」

悪態をつけるほどまでには落ち着くことに成功する。
インデックスが起きていないことに心から安堵して、近くに置いてある時計を見る。
時間はまだ、午前3時半過ぎだった。
もう一度寝ようかどうか迷ったが、寝て再びあの夢を見てうなされている所でインデックスに起こされて心配される、などということは避けたかったので寝るのを諦める。
というよりも、最初から眠れる気がしなかった。
身体はまだ僅かに震えている。

「はは……俺、怖い。のか? あの夢を見るのが」

自身の状態に半ば信じられないが、それでも身体の震えは収まらないことがそれを証明していた。
だけど、上条はどこか違う、と思った。
あの夢を見ることが怖いのは事実。
それに恐怖して身体が震えているのも、収まらないのも事実。
だけど、それだけではない気がした。
上条が一番恐れていることはそこではない。
それは。

(ダメだダメだ! 考えるな! そんなことなんて有り得ない!! そんな、あいつらが―――ッ!!!!)

結局、考えてしまった。
その答えに辿り着いてしまった。
その答えは、有り得ないと思っていても、完全に否定することができない上条の精神を蝕んでいく。
その速度は、上条が朝を迎えるまでに上条の精神状態をおかしくさせるには十分な程だった。

839:2010/02/18(木) 18:36:01 ID:NL8gFMrA
朝を迎える。
上条はインデックスを起こす事なく寮から出てきていた。

(今はとにかく誰にも会いたくない)

上条はその一心で寮から出てきていた。
外に出れば知り合いに会ってしまう確率は上がってしまうのだが、家にはインデックスがいる。
インデックスにも会うわけにはいかなかった上条は必然的に外に出るしかなかったのだ。
学校だとか補習だとかなどという問題は考えてなどいない。
そもそも、まだ早い時間だ。
上条は出来る限り人に会わないために裏路地を進んでいた。
しかし、上条当麻は不幸な人間だ。
そんな何も起きずに一日を終えるなんてことは滅多にない。

「おうおうにーちゃん。ちょっと金貸してくんねえ?」

そんな声とともに、3人程の不良が現れた。
その手には鉄パイプやバットが握られている。
恐らく脅しのためだろう。

「ぁ……あ……。うあああああああああ!!??」
「なっ……待てコラァ!!」

上条はそれを見るなり背を向けて全速力で走り出した。
思い出してしまった。
夢の内容を。
それと今の不良たちが重なってしまった。
そこまで思い出したら、上条は恐怖に塗り潰されてしまった。
もう、ペース配分だとか、情けない姿を晒しているだとか、そんなことなど関係なかった。
ただただ、その場から逃げ出したかった。

「ぁっ…!?」

だから、足元なんて見えていなかった。
恐怖で空回りした足が縺れて、さらに地面に足を引っ掛けてしまい、上条は盛大にその場に転ぶ。
なにもかも焦っていた上条に受け身だとかそういう類のものをとれるはずもなく、顔面から地面に激突してしまった。

「ハッ。馬鹿みたいに転んだなぁ!?」
「ぅ……ぁ」

顔面の痛みが、夢の痛みと重なったように思えてしまう。
それは、目の前にいる不良に罵られ、迫害を受けているような錯覚さえ覚えてしまう。
上条の顔が恐怖で歪む。
不良達はゆっくりと近づいてくる。
そのゆっくりさが、かえって上条は怖かった。
カウントダウンをされているような気分になる。
やるのならさっさとやってくれと思ってしまう。
こんな時間はさっさと過ぎてくれ、と願った時。

「何やってんのよアンタ達」

救世主は現れた。
前髪から電撃をバチバチといわせながら。
学園都市第3位、超電磁砲の異名を持つ御坂美琴は腰に手をあてて仁王立ちしていた。

「あぁ? んだテメエは!? ガキはすっこんでろ!!」
「ガキ……ね。アンタ達に言われたところでこれっぽっちも怒りが沸かないわね。……でも。すっこんでろはこっちのセリフだってのよっ!!」

美琴はそういうと前髪からの電撃で周りに焦げ跡を残す。
その電撃の威力をみた不良達はひいっ!と怯えた表情になって、すぐにすいませんでしたぁーっ!!と謝りながら走って去っていった。
美琴は不良達がどこかへ去っていくのを見送って、上条の方へと向き直る。

「で? なんでアンタはあんな奴らに―――」

美琴の表情が止まった。
何故なのか、なんて考えている余裕など今の上条にはない。

(かっ、考えるな! 考えるんじゃない!!)

上条は心の中でそんなことを思うが、考えるのを止めることができない。
そして、一つの答えに辿り着いてしまう。

「ぁ……うああああああああああ!!!!????」

上条は美琴に背を向けて走り出した。
背後から追ってくる気配や足音は、ない。

840:2010/02/18(木) 18:36:33 ID:NL8gFMrA
「何やってんのよアンタ達」

御坂美琴がここに来たのは本当に偶然だった。
近くのコンビニでいつも読む週刊誌がなかったので、いつもと違う場所のコンビニに行こうと思い、面倒なのでショートカットをしようと裏路地に入った。
ただそれだけだった。
そうしたら、美琴のよく知る人物が不良達に襲われそうになっていた。
その人物はなんの能力を持っていない不良のような存在に対してはとことん相性が悪いことを知っていたので、助けてあげようと思ったのだ。
まあ、美琴の性格上ここで襲われているのが誰であっても見過ごすなどという選択肢は最初から存在しないのだが。

「あぁ? んだテメエは!? ガキはすっこんでろ!!」

不良達が身の程も知らずに吠えている。
今対峙している人物が誰なのかわかっているのだろうか?などと相手の心配をしてしまうぐらい不良達が憐れだと思った。。
ただ、不思議とガキと言われたことに怒りは沸いてこなかった。
いや、既に怒っていたから、これ以上沸いてこなかっただけだった。

「ガキ……ね。アンタ達に言われたところでこれっぽっちも怒りが沸かないわね。……でも。すっこんでろはこっちのセリフだってのよっ!!」

電撃で威嚇をして、その威力を見せ付けることで警告をする。
もしこれでも歯向かってくる様ならスタンガン程度に弱めて当ててあげないといけない。
今回の不良達はちゃんと去ってくれたので安心する。
面倒なことにこれ以上能力を使わずに済んだのだから。
上条の方を向いて、理由を問う。
どうせまた厄介事でしょ?と思いながら。

「で? なんでアンタはあんな奴らに―――」

だが、そこで美琴は気づいてしまった。
上条の眼が怯えきった眼をしていることに。
そしてその眼は、不良達ではなく自分に向けられているということに。
よくよく考えてみればおかしかった。
上条は美琴と一晩中追いかけっこをしても大丈夫な程体力はあるのだ。
それなのになぜさっきは不良達に追いつかれていたのか。
最初はまた演技か何かで引き付けているのかと思っていたが、上条の眼を見てそれは違うと判断する。
その眼は本当に怯えきった眼をしていた。

「ぁ……うああああああああああ!!!!????」

上条は叫ぶと美琴に背を向けて走り去ってしまった。
美琴は追い掛けることも「待って」ということもできずにその場に立ち尽くすしかなかった。
仮に「待って」と言えていたとしても上条が待つかどうかはわからないが。

(一体何があったっていうの? アイツのあんなに怯えた眼なんて、初めて見た)

しかもそれが美琴自身に向けられたものだった。
美琴の胸にチクリとした痛みが走る。
自分の何かがいけなかったのだろうか?
わからない。
けれど、あの眼はそれだけじゃないような気がした。

(まるで、私以外の何かにも怯えているかのようだった)

それが何なのかはわからない。
けれど、美琴は力になりたかった。
何かあったのなら相談もしてほしかった。
だけどそれは、上条の性格を考えると有り得ない行動だった。
それは、あんなに怯えた眼を見せたことにもいえること。
そこでふと、美琴は少年についてのある事柄について思い出す。
…記憶喪失。
そうなった原因を美琴は知らない。
けれど、その事柄は真実だった。
もしかしたら、それに関係することかもしれない。
身体的にも精神的にも記憶喪失になってもおかしくないと思えるような怪我を、恐らく何度もしているあの少年の身に今何かが起こっていてもおかしくは、ない。

(とにかく、追い掛けよう。そして聞こう。……私が原因ならちゃんと謝ろう。それでどうにかなるかはわからないけど。それでも、私はアイツの力になりたい)

美琴は自分のとるべき行動を再確認すると少年の後を追うために走り出した。
少年の力になるために。

841:2010/02/18(木) 18:37:08 ID:NL8gFMrA
(何を……何をやってんだ俺は!!)

ガンッ!と額を壁にぶつける音が周りに響く。
上条の額からは血が出ていた。
それは、逃げてしまったことに対する後悔と自己嫌悪。

(御坂は助けてくれただけなのに、何で俺は逃げた!? 何であんな眼を向けた!? このばっかヤロウが!!!!)

再びガンッ!という音が周りに響く。
額をぶつけていた壁に血がついた。
痛みなど全く気にならなかった。
上条はその動きを止めると、力が抜けていくようにその場に座り込み、うずくまる。
あの場所からそれなりに離れた裏路地。
人はいない。
上条は世界で自分は一人ぼっちのような、そんな錯覚を覚えた。

(御坂には………嫌われたかな。せっかく助けてくれたのに逃げ出したんだから、当然か)

そう考えると、越えてはいけない一線を越えてしまったような気分になって、全てがどうでもよくなった。
結局、全ては自分のせい。

(自分の行動が招いた結果なんだから、自業自得か)

本当に馬鹿だ、と自分は思う。
救いようのない馬鹿だと。
夢の内容に怯えて現実と混同するなんて、馬鹿以外の何者でもない。
だけど、本当に怖かった。
夢と同じ眼を向けられることが。
夢と同じ態度をとられることが。
身に覚えのないトラウマが。
もし、同じ眼を向けられたら。
もし、同じ態度をとられたら。
想像するだけで逃げ出したくなった。
自身の知らないトラウマに立ち向かうなんて出来なかった。
気づいたら、身体が震えている。

「くそっ! 止まれ! 止まれよ!!」

上条は半ば叫びながら身体を叩く。
少しでも震えを止めるために。

「やっと見つけた……」
「ッ!!??」

突然聞こえた声に身体がビクゥッ!と跳ね上がる。
自身のことに夢中で接近など全く気づいていなかった。
上条は恐る恐る顔を上げて声が聞こえた方を向く。
そこには、肩を上下させて呼吸を整えている御坂美琴が立っていた。
だが、それを見ただけで夢の内容を思い出してしまう。
美琴が化け物を見る眼をしているように錯覚してしまう。
身体の震えが一層激しくなる。

842:2010/02/18(木) 18:37:36 ID:NL8gFMrA
「な、んで………?」

思わず声は出てしまっていた。
美琴の行動が理解できない。
何故追ってきたのか。
助けたのに逃げられて、何故追いかけてきたのか。
もしかして、迫害をしにきたのか。
そんな考えしか思い浮かばない。

「なんでって、心配だからに決まってるじゃない」

美琴は当然のように応えると、上条の方へ一歩踏み出す。
それを見て身体がビクゥッ!!と跳ね上がる。
恐怖が倍増されたかのように溢れ出す。
思わず、言葉は出てしまっていた。

「ぅぁ……来るな……来るなぁ!!」

その言葉を聞いて美琴が動きを止める。
その間に、上条は少しでも離れようと、手と足を動かして距離をとる。
腰は抜けてしまったように、立ち上がることはできない。
美琴は何か意を決したのか、さらに一歩踏み出した。
それを見て上条の身体の震えはさらに激しくなる。
手に力が入らず、地面に肘をついてしまう。
足はただ滑るように動くだけで距離をとることができない。
その間にも美琴はゆっくりと近づいてくる。

「大丈夫……大丈夫だから……」

優しく声をかけながら。
上条はその言葉を聞いて、何故だか少し身体の震えが収まる。
恐らく、優しい声だったからだろう。
そんな声など、夢ではかけられなかったから。
なんとか少し落ち着いた頭でよくよく考えてみると、おかしいところがあることに気づいた。
夢では、上条は避けられていた。
迫害するにしても、夢では近づいてこようとはしてこなかった。
だけれど、美琴は近づいてきている。
つまり、美琴の行動は夢とは違うということ。
その事実を確認しただけで、身体の震えはかなり収まった。
だが、根源的な恐怖だけは途絶えることはない。
身体はその事実を認めようとはしていなかった。
再び、身体の震えが激しくなりはじめた。
夢の内容がフラッシュバックしてきたからだった。

843:2010/02/18(木) 18:38:07 ID:NL8gFMrA
「大丈夫」

いつの間にかすぐ横まで来ていた美琴は上条の傍で座る。
美琴は上条の眼と額を一度見ると、上条の頭を抱き寄せた。

「ッ!!??」

突然された行動に上条は混乱する。
何をされたのか理解しても、いつもの様に離れようと思うだとか、触れている胸の膨らみにドキドキするなどということはなかった。

(なんでだろ、すごい安心できる………)

身体の震えはいつの間にか完全に止まっていた。
こんなことをされた記憶がないからなのだろうか、上条は確かに癒されていた。

「アンタが何に怯えているのかはわからないけれど、私に出来ることなら何でもするから、そんな顔しないで」

美琴の声は震えていた。
それもそうだった。あんな態度をとっておいて、美琴が傷つかないはずがなかったのだ。
どれだけ傷ついても近づいて、優しく声をかけてくれた。
上条はその事実に気がついて、唇を噛む。
だけど、今は離れてほしくなかった。
今離れられると、上条はどうなってしまうかわからない。
人の温もりを出来る限り長く感じていたかった。

「御坂……もう少し、このままでいてくれないか」
「……うん」

美琴は小さく返事をすると、抱きしめる力が少しだけ強くなる。
美琴とその匂いに包まれながら、上条は全てを暴露したい気分になっていた。

「……夢を見たんだ」
「……え?」

驚いた声が聞こえる。
だけど、上条は気にせずに言うことにした。

「その夢では、俺は迫害を受けていたんだ。理由は不幸を撒き散らす疫病神だから。石を投げられ、拒絶され、不幸にも男に包丁で刺されて、テレビに放送されて化け物扱いを受けたんだ」

そこで一度言葉を切る。
自分がこれから語ろうとしていることを考えて、動悸が激しくなる。
だけど美琴の心臓の音が聞こえて、すぐに落ち着いた。

「もしかして……?」
「気づいた、か? そう。それがただの夢ならよかったんだ。けれど、父さんから聞いた数少ない幼い頃の情報と完全にそれは一致してたんだ」

このことは、美琴にしか言えないこと。
ここにいるのが美琴でよかったと思う。
もしインデックスだったら、本当のことなんて言えなかった。
言えば、それは記憶喪失のことを喋るのと同義になる。
バレているからいいやという考え方であることに気づいて、上条は自己嫌悪する。
それでも、美琴に悪いと思いつつも、上条は言うことにした。

「つまり、その夢は俺の昔のことだったんだ。それも、記憶はないのに、身体は覚えているっていうトラウマとして残ってた」

上条はそこまで言うと、また身体が震え出した。
少しでも思い出してしまったから。
気づいた美琴が強めに抱いてくれて、徐々に震えは収まっていく。
上条は美琴に感謝しつつ、続きを言った。

「それは確かに怖かった。けれど、それ以上に怖かったことがあるんだ」

美琴が唾を飲み込んだのがわかった。
予想外だったのだろう。
けれど、上条は意を決して全てを言う。

「俺は、それを現実でもされるんじゃないかと思ったんだ。そして、そう思う自分を止められなかった」

言い切ったら少しだけ気が楽になった。
本当はこんなこと言うべきではないのに。
こんなことは自分一人で解決するべき問題なのに。
記憶喪失のことも、このことも、全ては自分の問題。
他人に言うようなことではない。
言って、わざわざ心配をかけさせるようなことをすることは上条の望むことではない。
でも、誰かに言いたかった。聞いてほしかった。
自分一人で背負うのは耐えられなかった。

844:2010/02/18(木) 18:38:38 ID:NL8gFMrA
「私は、絶対にそんなことはしないわよ」
「……うん」

美琴の優しい言葉が身に刺さる。
例え、そんな言葉をかけられても、それでも信じきることができないのだ。
そんな自分に腹が立つ。自己嫌悪する。
信じきることができないのに、悩みを打ち明けたのだ。
自分勝手にも程がある。
だけど、美琴はそれでも優しく言ってきた。
まるで母が子を優しく包み込むように。

「例え、他の人達がそんな態度をとったとしても、私は絶対にしない。私はアンタの味方で在りつづける」

上条は思わず顔を上げた。
美琴と目線があう。
その瞳は少し涙目になっていた。
他人のことも背負いやすい美琴のことだから、自分の昔の扱いをまるで自分が受けているように感じてくれているのだろう。
酷い扱いだと、思ってくれている。
たったそれだけのことで救われるような気がした。

「全部、吐き出しなさい。私が、全て受け止めるから」

そう言われて、上条の中でせき止めていた何かが壊れた。
美琴の胸に顔を埋めて、

「っぅぁ、ぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」

周りのことなど一切考えず。
まるで子どもの様に泣きじゃくった。
きっと、これだけ泣いたことは記憶喪失になる前の自分でもなかっただろう。
それぐらい長く、声も大にして泣いた。
その間、美琴は優しく包み込んでくれていた。

845:2010/02/18(木) 18:39:17 ID:NL8gFMrA
(どこにいるのよ!)

美琴はずっと走りっぱなしだった。
行き先もわからない。
ただ、少年の身に何かあったらという懸念と焦りで体力はどんどん削られていった。
すでに何人かの不良達を倒していることもあるからだろう。

ガンッ!

少し遠い場所でそんな何かを打ち付ける音が聞こえた。
もしかしたらあの少年がまた不良に襲われているのかもしれない。
怪しいところは全て探すつもりで、美琴はその場所へと急いだ。

「くそっ! 止まれ! 止まれよ!!」

その場所にたどり着いた時、少年は一人でうずくまっていた。
足や身体を殴るように叩いている。
少年は、孤独感に満ち溢れた淋しい背中をしていた。
その背中を見て美琴は胸が痛くなる思いだった。
どうにかしてあげたい。力になりたい。

「やっと見つけた……」
「ッ!!??」

少年の身体が跳ね上がる。
その反応一つが美琴の心をえぐっていく。
少年が美琴の方を向いた時、美琴は詰まった。
額からは血が流れていたから。
近くの壁にある血痕を見て、美琴は大体の状況を把握する。
恐らく、少年は自分で額を壁に打ち付けたのだろう。
少年は優しすぎるから。
痛々しいその額をみて、美琴はさらに胸が詰まった。

846:2010/02/18(木) 18:39:45 ID:NL8gFMrA
「な、んで………?」

少年は、怯えきった眼をしていた。
理解ができない、というような表情で。
だから美琴は、当たり前のことを言った。
少年からそんな怯えきった眼を取り払いたくて。

「なんでって、心配だからに決まってるじゃない」

とにかく近づいて、話をきこうと、美琴は一歩を踏み出す。
だが、その行動は間違いだったかもしれない。
少年は再び身体を跳ね上がらせると、恐怖に染まった眼を向けた。

「ぅぁ……来るな……来るなぁ!!」

美琴は止まらざるを得なくなる。
それは、完全なる拒絶だった。
その拒絶が、美琴の心を最も大きくえぐった。
でも。それでも。
少年を救いたいと思った。
例え最後には嫌われてでも。
どれだけ拒絶をされてでも。
美琴の心がどれだけえぐられても。
少年の心を救いたいと。
なぜ少年がこうなったのか、原因なんてわからない。
けれど、美琴は決意した。
だからこそ、美琴はさらに一歩を踏み出す。
少年の身体がさらに震え出す。
少年の動きが空回りする。
だけど美琴はゆっくりと、警戒する猫に近づくように、一歩ずつ踏み出す。

「大丈夫……大丈夫だから……」

優しく声をかけて、警戒心を溶くように。
そうやって近づいてみると、少年の震えが少し収まったのがわかった。
効果はあるのかもしれない。
美琴はゆっくりと近づいていく。
だが、すぐ横まで近づいた時に、少年の震えは再び激しくなった。

「大丈夫」

美琴はそういうと少年の横に座る。
少年の怯えた眼と痛々しい額を見たら、美琴は思わず少年を抱いていた。

「ッ!!??」

少年は最初抵抗するかのように手を上げたが、すぐにそれは下ろされる。
少年の血が制服に付着することなど一切気にならなかった。
少年の震えが止まったのがわかったけれど、美琴は態勢を変えない。
今の態勢が上条のためになるのなら。
ただ、そろそろ頃合いかと思って、美琴は話し掛ける。

「アンタが何に怯えているのかはわからないけれど、私に出来ることなら何でもするから、そんな顔しないで」

自分の言葉が震えていることが普通にわかった。
ダメだな、自分。と美琴は自嘲する。
これでは上条は気づいてしまう。
少し自分を取り戻したであろう上条なら離れてくれ、だとか、心配をかけさせないような言葉を言うかもしれない。

847:2010/02/18(木) 18:40:15 ID:NL8gFMrA
「御坂……もう少し、このままでいてくれないか」

予想外の言葉が飛んできた。
上条が自分を頼ってくれた。その事実に美琴は嬉しくなる。

「……うん」

返事をした後美琴は思わず抱きしめる力を少し強くしていた。
それでも、上条から抵抗はない。
そのことに少し安堵する。
上条は突然、ポツリと呟いた。

「……夢を見たんだ」
「……え?」

突然呟かれたことに驚いた。
上条は全てを暴露しようとしてくれているらしい。
そのことに気づいた美琴は心の準備をして、どんなことであっても上条を守ろうと、味方であろうと決める。
夢という単語が気になったが、とにかく聞くことに徹することにした。

「その夢では、俺は迫害を受けていたんだ。理由は不幸を撒き散らす疫病神だから。石を投げられ、拒絶され、不幸にも男に包丁で刺されて、テレビに放送されて化け物扱いを受けたんだ」

酷い扱いだ、と思う。
上条は不幸な目には遭うけど、不幸を撒き散らすなんてことはないのに。
でも、どこか釈然としない。
それがただの夢なら、それだけで上条がここまで怯えるようなことにはならないはずだ。
上条ならそんな夢を見たんだぜといって笑い話にさえしそうな気がする。
だけど、現実には上条は怯えて、精神的に危険な状態にまで陥った。
まるで、トラウマみたいに。
そこまで考えて美琴は気づいた。

「もしかして……?」
「気づいた、か? そう。それがただの夢ならよかったんだ。けれど、父さんから聞いた数少ない幼い頃の情報と完全にそれは一致してたんだ」

それはつまり、その夢は上条の―――
考えが至る前に、上条は言った。

「つまり、その夢は俺の昔のことだったんだ。それも、記憶にはないのに、身体は覚えているっていうトラウマとして残ってた」

上条の身体がまた震え出したのに気づいて、美琴は強めに抱きしめる。
記憶にはない心の傷。
それはどれだけ怖いことだろう。
覚えていないのに、身体は勝手に反応してしまう。
心の傷をどうにかできればいいのだが、記憶がないのだから具体的な方法など思
い浮かばないだろう。
美琴は自分の無力さを嘆いた。
だが、上条の話はまだ終わってはいなかった。

848:2010/02/18(木) 18:40:53 ID:NL8gFMrA
「それは確かに怖かった。けれど、それ以上に怖かったことがあるんだ」

え?
予想外の言葉に美琴は驚いて唾を飲み込んだ。

「俺は、それを現実でもされるんじゃないかと思ったんだ。そして、そう思う自分を止められなかった」

つまりは、そういうこと。
上条は不良達や美琴に夢と同じように迫害されるかもしれない、と思ってしまったのだ。
それは、時間が経てば経つほど否定ができなくなって、最後には全ての出来事を夢と一緒なのではないかと思うようになってしまった。
でも、それならば、私にもできることはある。
美琴はそう思って、上条から一つでも不安を取り除くために言う。

「私は、絶対にそんなことはしないわよ」
「……うん」

力のない声が帰ってきた。
恐らく、上条自身そんなことはわかっている。
そんなことをする奴は彼の近くにはいないということくらい。
けれど、彼は信じられなかった。
彼の友人達が本当にそんなことは絶対にしない。と信じきれなかった。僅かな疑念が残ってしまった。
そして、信じきれない自分に自己嫌悪した。
でも、他人を信じきることなんてそう簡単にはできない。と思う。
ましてや、上条は記憶喪失なのだ。
だから。だったら。信じさせよう。
自分の行動で、信頼をさせよう。
少なくとも自分は、上条当麻を信じているから。

「例え、他の人達がそんな態度をとったとしても、私は絶対にしない。私はアンタの味方で在りつづける」

上条が顔を上げて見てきた。
驚いているようだった。
その瞳は悪夢に怯える子どものようだった。
今まで、上条はそんな自分の弱さを他人に見せたことなどなかっただろう。
周りに心配をかけさせないために。
出来る限り一人で抱え込んで。
だけど、そんなことをする必要なんてない。と思う。
そう教わったから。
他の誰でもない、上条当麻に、教わった。
きっと、これ以上溜め込んだら耐えられなくなる。
記憶喪失になって、周りを騙して、自分を偽って、それだけでも十分重荷になっているはずなのに、そこにトラウマなんてものが加わればどうなるか。
想像なんてつかない。
だから一度、そんな重荷は全部降ろした方がいい。

「全部、吐き出しなさい。私が、全て受け止めるから」
「っぅぁ、ぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」

そう言ったのがきっかけになったのか、上条は美琴の胸のなかで泣きじゃくった。
美琴はそれを優しく包み込む。

849:2010/02/18(木) 18:41:23 ID:NL8gFMrA
泣きじゃくって、美琴の制服を血とそれ以上の涙で濡らして、顔が自身の涙と濡れた制服で冷たいと思いつつ、

(強いな。ホント。本当に御坂は強い。俺じゃ全然敵わねえや)

素朴な感想を抱く。
どれだけ傷つけられても、怯えた眼を向けられても、拒絶されても、それでも優しく包み込んでくれた、何もかも受け入れてくれた。
こんなに心が強い奴なんてそうはいない。
だから、興味が沸いた。
だから、聞いてみることにした。
美琴の胸から顔を離す。
血は止まったようだった。
もう、恐怖は出てこない。
美琴が傍にいてくれるから。

「なあ。なんでそんなに強いんだ?」

少し沈黙する。
突然予想外の質問をされたからかもしれない。

「……別に、強くなんかないわよ。むしろ弱いわよ。アンタよりも、ずっと弱い」

返答は予想外だった。
俺よりも、弱い?
そんなわけがない、だって。

「…そんなわけないだろ。どれだけ傷つけられても、優しく包んでくれたお前が俺より弱いわけ、ない」
「弱いわよ。今でも、折れそうだもの。すぐにでもどこかに行ってしまいたいくらい。今すぐ泣きじゃくりたいくらいに」

その言葉を聞いて、上条は自分を責めた。
そうさせたのは、傷つけたのは、自分。
だけど、理解できなかった。
どうして折れそうな心であるにもかかわらず、自分に優しくしてくれたのか。
その疑問はすぐ口をついて出た。

「なら、なんで俺に優しくしてくれたんだ……?」
「………アンタのことが、好きだから」
「…………………………………え?」

予想なんて全く出来るはずもなかった答えが返ってきた。
御坂が、俺のことを好き?
友達として?
いや、さすがにこの状況でそれは違うだろう。
なら、つまり。

850:2010/02/18(木) 18:41:49 ID:NL8gFMrA

「そう、なのか?」
「そうよ。私は、アンタのことが好き。一番好き」

答えはすごく簡単なことだったようだ。
美琴がどれだけ傷つけられても、怯えた眼を向けられても、拒絶されても、心が折れそうになるくらいになってでも、優しく包むことができたのは。
御坂美琴が、上条当麻のことを好きだから。
たった、それだけの理由。
だけど、それは美琴にとってはすごく大きな理由で。
恐らく、美琴にとってはそれが全てで。
何物にも代えることのできない理由。

「はは………。やっぱり、御坂は強いよ」
「……強くないって言ってるのに」

本当に、感服した。
同時に、自分は馬鹿だと思った。
どうして気づかなかったのか。
今までの自分を思い切りぶん殴ってやりたい。

「……ゴメン」

美琴の身体がビクリと震える。
その様子に気づいてはいるが、上条は続きをいうことにした。

「ゴメン。気づいてやれなくて」

美琴の身体から少しだけ緊張が抜けたのがわかる。
だが、上条は聞かなくてはならない。
それは、確認。

「でも、こんな俺でいいのかよ?」

美琴はその言葉を聞いて、心底安堵した表情になって、優しく微笑みながら当然のように答えた。

「ええ。そんなアンタだからいいのよ」

上条は驚いて目を見開いた。
もう、何度驚いたかわからない。
美琴は本当に何もかも、全てを受け入れようとしてくれている。
上条の弱さでさえ。
本当に、強い。と思った。
自分が不釣り合いだと思うくらい。
それなのに何故俺なんかを好きになったのだろう?
疑問に思った。
だけど、そんなこと今は聞くべきではない。
今言うべきことは他にある。

「……ありがとう。美琴」
「どういたしまして。当麻」

851:2010/02/18(木) 18:42:20 ID:NL8gFMrA

自分一人ではきっとトラウマには立ち向かえない。
だったら、二人で立ち向かえばいい。
美琴にも背負わせてしまうことは嫌だが、美琴は一緒に背負うことを望んでいる。
ならば、もう少しだけ、甘えることにしよう。

「……俺と一緒にトラウマに立ち向かってくれるか?」
「当然。最初からそのつもりよ」

即答されて、上条は半ば呆れた。
強すぎだろ、と。
だけど、美琴がそこまでしてくれるのなら、自分もそれに応えなくてはならない。
上条は覚悟を決める。
美琴の弱さも何もかも全てを受け入れよう。
そうしなければ、美琴に見せる顔がない。
だから、上条は宣言する。

「俺は、絶対にお前を護る。何があっても、お前の味方で在りつづける」

その宣言は、奇しくもあの約束と似ていた。
美琴は少し驚いたようだった。
だけど、すぐに顔は戻り、言う。

「私は護られるだけの女になるつもりはないわよ。逆に当麻を護ってあげるわよ」
「…恐ろしいお嬢様だな」
「何よ」

そう言って2人は笑いあう。
美琴はとても強く、それでいて優しい笑顔していた。

852:2010/02/18(木) 18:42:51 ID:NL8gFMrA

「なあ。なんでそんなに強いんだ?」

突然、質問が飛んできた。
上条にそんなことを聞かれるとは思ってもいなかったので驚く。
正直に言うことにした。

「……別に、強くなんかないわよ。むしろ弱いわよ。アンタよりも、ずっと弱い」

私は、弱い。
上条よりも強いはずがない。
もし私が記憶喪失になったら、全てを抱え込んで周りを騙してまで隠そうだなんて思えない。
私が強いと思えるのは、表面上だけ。

「…そんなわけないだろ。どれだけ傷つけられても、優しく包んでくれたお前が俺より弱いわけ、ない」

だけど、上条はそれを否定した。
そんなに過大評価されても、困ってしまう。

「弱いわよ。今でも、折れそうだもの。すぐにでもどこかに行ってしまいたいくらい。今すぐ泣きじゃくりたいくらいに」

上条の顔が苦虫を潰したような表情になる。
自分を責めているのだろう。
この少年は、優しすぎるから。

「なら、なんで俺に優しくしてくれたんだ……?」

質問されて、何故だか自然と口から言っていた。
本当の、今までずっと言いたかった気持ちを。

「………アンタのことが、好きだから」
「…………………………………え?」

上条はキョトンとした顔になる。
理解できていない顔だった。
もしかしたら、勘違いをしてくるかもしれない。
けれど、別にそれでも良かった。
少年の心を少しでも救えたことが嬉しかったから。

「そう、なのか?」
「そうよ。私は、アンタのことが好き。一番好き」

何故だか、素直に気持ちを伝えることができている。
覚悟をしたからかもしれない。
嫌われても構わないという覚悟を。

853:2010/02/18(木) 18:43:21 ID:NL8gFMrA

「はは………。やっぱり、御坂は強いよ」

まだ言ってきた。
さっきから言っているのに。

「……強くないって言ってるのに」
「……ゴメン」

その言葉に美琴は自分の身体が震えるのがわかった。
それは、何に対しての「ゴメン」なのか。
そして、一つの可能性に思い至る。
告白に対しての言葉であることを考えたのだ。
嫌われても構わないとは決意した。が。
やっぱり、怖いものは怖い。
フラれるのではないかと考えると、その場から逃げ出したくなる。

「ゴメン。気づいてやれなくて」

だから、その言葉を聞いた時、美琴は少しだけ安堵した。
だけど、まだわからない。

「でも、こんな俺でいいのかよ?」

その言葉を聞いて美琴は心底安堵した。
それは、告白を受け入れるという意味で、最後の確認だった。
だけど、そんなことをされなくても、美琴の答えは決まっていた。

「ええ。そんなアンタだからいいのよ」

言ったら、上条が目を見開いていた。
どうやらそこまで驚いてくれたらしい。
だが美琴の言った言葉に偽りはない。
弱いところを見せられても、美琴の想いは微塵も変わらなかった。
むしろ、弱いところ見せてくれたことが嬉しかった。

「……ありがとう。美琴」
「どういたしまして。当麻」

当麻の背負うものはとても大きい。
だけど、美琴は既に覚悟はできていた。
一緒に背負っていく覚悟を。

「俺と一緒にトラウマに立ち向かってくれるか?」

その質問は美琴にとって愚問だった。
最初からそのつもりだったから。
だから、美琴は即答する。

「当然。最初からそのつもりよ」

当麻はどこか呆れているように見えた。
少しして、当麻は何かを決意したようで。

「俺は、絶対にお前を護る。何があっても、お前の味方で在りつづける」

美琴はその言葉に少し驚いた。
あの約束に酷似したことを、改めて面と向かって言われるのは、少し恥ずかしかった。
でも。

「私は護られるだけの女になるつもりはないわよ。逆にアンタを護ってあげるわよ」
「…恐ろしいお嬢様だな」
「何よ」

そう言って、2人は笑いあう。
当麻の顔は恐怖のない、いつも通りの笑顔だった。

854:2010/02/18(木) 18:43:50 ID:NL8gFMrA

「さて、と」

上条は立ち上がる。
もう、力は普通に入る。
歩むことができる。

「頑張りますか。……2人で」

そう言って、当麻は手を差し出してきた。
美琴はそれに従って、立たせてもらう。

「……うん」

返事をして、美琴は手を離さなかった。

「あれ? 美琴さん? 手―――」
「2人で頑張るんでしょ?」
「………ああ、そうだな」

当麻は、少し恥ずかしそうにしながらも、笑いかけてきた。
その手は、離さないまま。
しっかりと握って。

「「………」」

2人は沈黙のまま歩き始める。
少しして、同時に言った。

「「ありがとう」」

2人は同時に笑って。歩いていく。



美琴にとって、上条は支えであり、大切な人。
上条にとって、美琴は支えであり、大切な人。
2人は互いを支えあい、一緒に道を歩んでいく。
背を向けて逃げ出す必要なんてない。
2人だから。





終わり。

855:2010/02/18(木) 18:49:19 ID:NL8gFMrA
以上でした。

最後がグダグダすぎる感があります。
自覚してます。
お、終わらない気がしたんだよ……途中からorz

えっと、視点が変わって一気に場面が戻るのが、ちょっと読みづらかったかも。
区切るタイミングだったり、まだまだ頑張らなくてはと思いました。

いちゃいちゃしてないなぁ………orz

シリアス大好き∀セ(ryと呼ばれかねないくらい(センセーとはいえないレベルですが)シリアスばっかですね、自分orz

では、お邪魔しました。

856■■■■:2010/02/18(木) 18:54:22 ID:9Tb9aB46
GJです
上条さんも美琴も幸せになって欲しいな

857■■■■:2010/02/18(木) 18:56:20 ID:88rlLPe2
gj

858■■■■:2010/02/18(木) 19:23:00 ID:OEu/nxiE
ヤバ過ぎです!!涙腺が崩壊した!!!!!!
疲れや少々の酒の影響かも知れませんがでも感動しました!!!
でも考えると過去の事は兎も角、記憶喪失への恐怖はあっても可笑しくは無いと思うので・・・。
そう考えると美琴の存在は貴重ですよね!!!

859■■■■:2010/02/18(木) 19:32:42 ID:vW2i88K2
シリアス大好き!
gj

860■■■■:2010/02/18(木) 19:46:57 ID:dENM4Wtk
>>826
GJ!これが初SSとは…。美琴がいい女すぎて泣けます。
ふたりには心からお幸せに、と言いたいです!

>>855
GJ!トラウマに怯える上条さんの描写でつい涙ぐんでしまいました。シリアスも良いね。
やっぱり上条さんを支えるのは美琴の役割だよなぁ…と改めて思います。

861■■■■:2010/02/18(木) 19:56:22 ID:jQRbZ.Iw
>>832
>美鈴さん単独への呼びかけが『御坂さん』
あれ、そうでしたか指摘ありがとうございます
御坂家が揃うところでは美琴への呼び方も「美琴」なんですよね

>>855
面白かったです
テーマがハッキリしてるし、自分の考えた物と切り口が違って楽しめました
こう言うのも有りですよね
っていうか、不幸のいう点を突くとどこまでもシリアス鬱展開になりますよねw

862■■■■:2010/02/18(木) 20:24:27 ID:S4aDrM3Y
>>826
GJです!
次回作も期待してます!

>>855
GJです!
やっぱり、上条さんの弱い部分も見せてほしいですね。
このようなシーンが原作にあればいいのにと思いましたw

863:2010/02/18(木) 20:28:03 ID:NL8gFMrA
感想ありがとうございます。

>>858
る、涙腺が崩壊……!?
そ、そこまで影響してしまうとは、驚きです。ありがとうございます。
ただ、記憶喪失への恐怖は原作読んでるとそんなにないんじゃないかなーなんて思ったので、こんな形になりました。

>>859
>シリアス大好き
ありがとうです。次に投下するのが6日目じゃなかったらシリアスなやつになる予感なので、そのときはよろしくですw

>>860
>やっぱり上条さんを支えるのは美琴の役割だよなぁ…と改めて思います。
同感ですw
美琴は上条さんの支えであって欲しいなと思います。

>>861
読んだときに、もしかしてネタ被った……?なんて思ったんですが、どうやら切り口が違うようなので安心しましたw
上条さんは本当にシリアスに持っていきやすいものを背負ってるなあなんて思いましたw


ちなみに、美琴からみた上条が上条→少年→上条→当麻に変わっているのはわざとです。
夢の内容は、トラウマになる(実際これでなるかはわからないけど)ように頑張ってみました。
なので、実際はああなのかは知りません。

それと、原作と矛盾していると思ったのは、トラウマなんてあったらあんな性格になっていないだろうから。というのが理由です。

タイトル、悪夢でよかったのかな……?

864:2010/02/18(木) 20:37:07 ID:NL8gFMrA
連レス失礼します。
まさか書いている間にレスがきていたとは……

>>862
そうですねぇ。弱い部分も見せて……たような?2巻あたりでちょろっと。
もしかしたら、これ以降の巻である可能性もなきにしもあらずなので、期待して待っちゃいましょう。待っちゃいます。待つんだよ三段(ry

865■■■■:2010/02/18(木) 20:44:57 ID:V8IskIXk
凄く良かったです
美琴が正真正銘の女神に見えました

866■■■■:2010/02/18(木) 20:46:27 ID:hKmkMVGY
GJっす。
いちゃいちゃも好物ですけどシリアスもいけるんで大満足です。

867■■■■:2010/02/19(金) 02:21:34 ID:EBcQuDR.
シリアスGJ。
上条さんと美琴、二人とも最高に幸せになって欲しいと思った。

868ユミシロ:2010/02/19(金) 02:41:59 ID:A8zeEgWQ
出来上がった分だけですが、投下しておきます。
小ネタ予告ではなくSSで。

その一。

869ユミシロ:2010/02/19(金) 02:43:06 ID:A8zeEgWQ


 とある高校の教室で、一人の少年が机の前で頭を抱えていた。
 登校して席に着き、一○分ほど経過しているが―――広げた教科書と数冊のノートの頁をめくるばかりである。
(姫神からノートを借りたのはいいけど……よりによって退院翌日の今日が小テストで、授業で当てられるのが俺の列……)
 過去に、携帯アプリの『らくらく英語トレーニング』に挫折している上条である。英語に対する苦手意識が五割増しに
なっているため、その英語の教科書と睨めっこするだけでもかなりの苦痛となっていた。
 しかし、今回の小テストも合格点に達しなければ放課後に補習が待ち受けている。
 補習、補習、補習……と補習を受けることで、今現在は(かろうじて)出席日数や単位をカバーできている(と思われる)が、
それで高校を卒業させてもらえると思えるほど上条も馬鹿ではなかった。この調子だと、進級も怪しいだろう。
仮に今回、二年生に進級できても―――同じように三年生に進級させてくれるほど学校も甘くはないはずだ。
 だが、
「さ……さっぱりわかんねぇ」
 癖毛がはねてツンツン頭になっている髪を両手でぐちゃぐちゃにして、二○秒置きに絶望と再チャレンジを繰り返す。
 一週間に一、二回は入院している上条は、完全に授業に着いていけなくなっていた。
 ノートだけは姫神愛秋沙や吹寄制理からちょくちょく借りて写している。家や病院(入院前提)で少しでも勉強しようと
努力はしているのだが、まったく追いつかないのが現状だった。ちなみに、借りたノートから写した以前の授業内容に
続けてその日の授業の内容を書いてしまったりしているため、混乱を招いているのがその一因である。
(せ、せめて単語だけでも覚えよう……)
 問題の一、二割は英単語やその意味を書くものだ。それで少しでも稼ごうと暗記を試みる。
 ところが、その単語も短いものではなく、数もかなりのものだった。
(お……終わった)
 小学生にしか見えない担任が『おはようなのです!皆ー、さっさと席に着きやがるんですよー!』と元気に声を上げて入室した。
 担任の月詠小萌は『今日の日直は上条ちゃんなのですよー』と微笑むと、上条の元まで歩いてきて日誌を渡した。
 上条は作業を一時中断して号令をかける。
「起立!」
 ホームルームが始まる。

870ユミシロ:2010/02/19(金) 02:45:16 ID:A8zeEgWQ

「―――と、いうわけで教育実習生の方を紹介します。
 野郎共はもうちょっと落ち着いてください。鼻息が荒すぎですよ。静かに静かに。どーどー。
 今回着ているのはあの有名な常盤台中学のお嬢様なんですから、怖い思いとかさせたら先生怒りますからねー」
(教育実習って……研修みたいなもんだっけ?)
 教員免許状を取得するために必要なんだっけかなー、とまったく興味のない上条は一時限目の英語の小テストに備えて
英単語の暗記中である。日誌は机の中に封印中。
「ではではー……入っちゃってください!」
 がらっと音を立てて入り口の引き戸が開いた。
 教壇に向かって歩く革靴の足音が、静まり返った教室に響き渡った。
 まったく目を向けていない上条は口の中で英単語の発音を繰り返している。
(……妙に静かだな)
 ふと、こんなことが思い浮かんだ。
 その教育実習生とやらが年齢不詳の五和先生だったりとか顔を変えた元錬金術師であったりとか、七三分けに髪をセットした
筋肉ムキムキスーツ姿のアックア先生とか、美術の先生とかでシェリーが現れる、なんていうことが。
(はっはっは……そんな冗談みたいな話ある訳ねぇけどありそうだから頼むから冗談でも勘弁してくれよ……)
 と、そこまで考えて常盤台中学出身らしいこといっていたような気がして白井黒子の可能性に恐怖した。
 黒板にチョークで名前が書かれているらしく、硬い音と擦れる音が続く。
 かっかっかっ。
 やがて、再び静寂が訪れると月詠小萌が紹介を始めた。


「はいはーい。この方が教育実習生の“御坂美琴先生”です。
 なんと!超能力者(レベル5)が第三位の『超電磁砲(レールガン)』なのですよーっ!!」


 教壇に紺色のスーツとタイトスカートを纏い、やや緊張したような面持ちの御坂美琴が立っていた。
 薄く口紅が塗られた唇が動く。
「初めまして。御坂―――」
「ありえねぇっ!美琴先生?リアル美琴先生ですか!?何が起こってんだ!さっぱりわからねぇよ!
 鈴科百合子とかエロ教師オリアナ先生とかそんなチャチなもんじゃ―――」
「月詠先生。チョークをお借りしますね」
「どーぞどーぞ」
 ドパァァンッ!! という派手な音を立てて、席を立ち上がった上条の額でチョークが炸裂した。
 白い粉が煙のように広がり、上条の顔と髪を真っ白に染めた。学園都市最強もびっくりの真っ白である。

871ユミシロ:2010/02/19(金) 02:46:09 ID:A8zeEgWQ

 小萌は咳き込む上条を見ながら、
「ほほう。御坂さん、中々やりますね。あれだけ情け容赦なく投げられれば先生の素質がありますよ」 
「けほっ……。ど……どんな素質だよ」
 学園都市最強もびっくりの真っ白になった上条に美琴が歩み寄った。
 上条の首根っこを掴むと、窓を開けて頭を突き出させる。地上十数メートルの風が頬を撫で、上条は真っ青になった。
「待て!教育実習生だろうが先生だろ!?生徒を殺す気かーっ!」
「はいはい、黙って。ちゃっちゃと粉を落としなさい」
 それだけいうと頭から順に粉を払い落とし始める。
 悪かったわよ、という小さな呟きを聞いたような気がして、上条は横目でちらりと見る。心臓がどきっとした。
(ち、近い……!)
 至近距離に美琴の顔がある。
 薄化粧ではあるが、美琴の整った顔立ちを一層に引き立てている。元々女子中学生としては高い背丈もあって、
幼さが抜けた十代後半の女性に見えなくもない。スーツも十分着こなしている。微かに鼻孔をくすぐる香りは香水だろうか。
さらにほとんど密着状態である。服の上からでわかる柔らかい感触に上条の胸が高鳴る。
「……何よ」
 視線に気づいた美琴が目を細めて見返すと、小声で問いかけた。
「……に、似合ってない?その、結構恥ずかしいんだけど。口紅とか。滅多にしないし……ええと」
 口ごもりながらも手を動かす。ある程度払い落とし終わると、頬に赤みを帯びた美琴ははっきり言った。
「似合ってない……?」
 似合ってる、と即答しそうになり思い止める。だが返答に迷った末、結局思ったことをそのまま口にした。
 美琴は赤みの増した顔を引き締めてようとして、ガチガチに固まった表情のまま足早に教壇へ戻ると簡単な挨拶と自己紹介をした。
 話すことで少しずつ冷静を取り戻しかけ―――上条がじっと見ていることに気づくと表情が崩れかけた。
 教室中から敵意、殺意、嫉妬、羨望の眼差しが向けられていることに、上条はまだ気づいていない。
 新しい一日が始まる。


『美琴先生』

872ユミシロ:2010/02/19(金) 02:48:15 ID:A8zeEgWQ
それにしてもこの投下量、読みきるのは大変ですね……
いちゃスレが一年前に出来ていれば……なんてたまに思います。
下のURLはエロなしでエロパロに投下してたものなんで気が向いたらどうぞ。
なんでエロパロに投下したんだよ!みたいなことがいわれたらしいので。
ただ一つ目がアメーバブログでいじられて載せられてた疑いあり(詳細確認できず)
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/t/toarumajutu333.html
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/t/toarumajutu334.html
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/t/toarumajutu336.html

873■■■■:2010/02/19(金) 08:55:33 ID:2QfY5TUY
>>872
GJです!
続きも待ってます!

874■■■■:2010/02/19(金) 08:56:35 ID:.BeSgwVU
うおおおお、職人さんの勢いが止まることなくSSが、SSがー!
みなさんGJです! いいぞもっと(ry

875■■■■:2010/02/19(金) 11:51:20 ID:1or.IhPs
>>872
おお、あの作者さんか。期待してますぜ

876■■■■:2010/02/19(金) 11:57:46 ID:SoJSevVA
>>872
いつもGJ!のユミシロさん

個人的には
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/t/toarumajutu333.html
が気に入ってます。

877■■■■:2010/02/19(金) 13:56:29 ID:B2EHJPe2
おお…
水面、と二人走る、がとても良かったです
次の投稿が楽しみ

878■■■■:2010/02/19(金) 14:28:48 ID:.BeSgwVU
職人さんに今日もGJ!

>>872
「水面」は感銘を受けました。あの境地は真似したくてもできない。
ユミシロさんの才能に超嫉妬。

879キラ:2010/02/19(金) 17:19:31 ID:ub6VEgpE
初めまして。いつも2828させてもらってます。
毎回毎回、楽しみなので皆さん、頑張ってください!

880キラ:2010/02/19(金) 17:29:45 ID:ub6VEgpE
一つ、書いたので投稿させていただきます。

『不幸と書いて……』
 冬の休日の(上条専用)補習も終わり、今日も(望まない)不幸を満喫していた。
「制服が泥だらけになったと思ったらスーパーの特売日であることを忘れ、何か買って帰ろうとしたら財布を忘れた。不幸だ」
 もっとも日常茶飯事のことなので、今更だと思うがこればっかりは一生なれない。いや、慣れないで欲しい。
 泥だらけの制服を脱ぎたいが、不幸なことに今日は今年最低気温を更新したと言っていた。もっとも『樹形図の設計者』(ツリーダイアグラム)がない今、天気予報は嘘っぱちにしか聞こえないが、色々と問題を起こす発言なので黙っておく。
「せめて、ひと時でも不幸を忘れられるイベントがあれば…はぁー」
 鬱だ、と上条は大げさに肩を落とした。
 そして、適当に歩いているとよく見る自販機の前に着いていた。
「何か飲もうにも、ここじゃ買いにくいな」
 商品の中にはホットも含まれている。冷たくなった身体には嬉しいのだが、この自販機ではどうにも買う気になれなかった。
 その理由は……
「ここで買って、いい思いをしたことがない」
 誰に言うでもなく上条は言った。
 なんだかんだでこの自販機には面倒を浴びせられている。大体がお金を飲み込まれたというあまりにも情けないこともあったのだが、彼女の真似をしてみたときは大体、ブザーが鳴ったり一番出て欲しくない『いちごおでん』が出てくる。
 つまり、この自販機にはとことん不幸に見舞われているのだ。
 上条は自販機を睨みつけると、大げさにため息をついた。
「……不幸だ」
 不幸指数が限界突破寸前だと言うのに、不幸になる自販機(上条、命名)の前にやってくると言うことは何かしらの不幸があることだと、上条は予測した。
 そして多分……自販機・上条当麻と来たら、次に来るのは…
「ちょっと、そこの不幸なアンタ。何突っ立ってるのよ」
(……やっぱり、不幸だ)
 御坂美琴がこの場面に登場するのは予測済みだが、こうも綺麗にいくと糸か何かで繋がれているようにすら感じた。その一部である美琴は相変わらずだったことに、上条はまたため息をついた。
「アンタ、またそんな顔して何かあったの?」
「ええ。上条さんは今日も不幸に付きまとわれて自分がどれだけ不幸な男なのか実感して…って!いきなり俺は何を言ってるんだ!!」
 「言ってて悲しい!!!」と上条は自爆して、その場に座り込んだ。
 対する美琴は「今更何言ってるのよ」と上条を横にどかし、いつものポジションに着くと、ちぇいさーっ!と自販機の側面に上段蹴りを叩き込んだ。
 ズドン!と轟音がなると、あとは何食わぬ顔で落ちてきたジュースを取り口から取った。

881キラ:2010/02/19(金) 17:36:58 ID:ub6VEgpE
「それで、なんでアンタがここにいるの?」
「さぁー?上条さんはなんでここにいるのでせう?」
「……まあいいわ。細かいことを気にしてても、不幸がやってくるだけだしね」
 言われて上条は泣き出しそうになったが中学生に泣かされる高校生なんて、笑えないことを後世に残したくないので泣かないように耐えた。もっとも、不幸を指摘されただけで泣き出しそうな高校生というものは残るかもしれないが、あえて上条は見ないふりをしておく。
「それで、アンタは暇?」
「?暇といえば暇ですが、今日も不幸です」
 不幸を強調するあたり、自暴破棄気味になっているような気がしたが気づかないでおく。
(今日の上条さんは、○曜日ではなく不幸曜日という新しい曜日を作りたいほど不幸だ)
 一体、どんな曜日かは察してください(心の中で補足)
「な、ならさ……少しだけ。少しだけでいいから!……話さない?」
「???別にいいけど…顔を真っ赤にしてどうしたんだ?」
 美琴の変化に気づいた上条は(熱でもあんのか?)と美琴の額に右手(電撃防止のため)を伸ばした。
「………んー、熱い気はするんだが熱があるまではわかんねえな」
 人の体温を測ることなんて滅多にないのだから仕方ないか、と上条は思ったが、それでも(本当に熱があったら)と思わずにはいられなかったので
「とりあえず、寮まで送ってやるよ。本当に熱があって倒れられたら困るからな」
 と、上条は美琴の手を掴んで寮の方向へと引っ張っていこうとした。が!
「ふにゃあぁぁー」
 立て続けの上条ワールド(美琴、命名)と気を緩めていたことが原因で美琴の意識は途絶えてしまうのだった。

 その後、気絶した美琴を放置できなかった上条がおぶって寮に送ったことが、しばらく大きな話題になったのは別のお話で。
 そして、これが原因で上条と美琴がさらに接近することになったのもまた別のお話。
 ちなみに、上条はこの日の出来事をこう振り返った。
「不幸と書いて、幸か不幸かわからないと読む」
 何か違う気がするかもしれないが気にしないでおこう。



以上です。余談ですが、二時間で書き終えました。
一応、『投稿時注意』などに気をつけたのですが、もし不愉快にさせることがありましたら、ごめんなさい。
それでは、他の方々も頑張ってください。

882■■■■:2010/02/19(金) 17:41:13 ID:.BeSgwVU
>>881
リアルタイムでGJ!
あとはsageてくれると助かります。

883■■■■:2010/02/19(金) 22:17:07 ID:KUY/LYJY
あれ、もう一週間近(ry
微妙に遅れてあの日ネタで一つ。
あ、初投稿です。

884■■■■:2010/02/19(金) 22:18:18 ID:KUY/LYJY

 両手に持った紙袋の中身は色とりどりの大量のチョコレートなわけで。これらは今日
一日で御坂美琴に贈られた品々であった。恐るべきは女の園、というべきか。それとも
単に美琴がおっとこ前、というだけの話なのか。
 朝、寮内から始まり(その分は部屋に置いてきたにもかかわらず)ついさっき下校時
までひっきりなしに手渡されて今に至る。この分だと帰ってからもまだ続きそうな勢い
だ。
「よいしょっと」
 例の自販機近くのベンチ。結構な重さになっているそれを置き、どかりと座った。蹴
りを放つ元気もない。体力的な疲労よりも精神的に。
 そりゃ美琴だって悪い気はしない。慕ってくれるのは素直に嬉しい。最近では女→男
の概念もずいぶんと薄まってきてはいるし。どっかのツインテールみたいに度が過ぎな
ければ可愛いもんだ。袋の中で一際異彩を放つ巨大で仰々しいラッピングが施された箱
は歪なオーラを放っている。いわく『1/8スケールKUROKOチョコレート(はーと)《ミ
ニマムラバー》』らしいが一体どうやって作ったのだろう。むげに断ると1/1《本人》
が贈られそうなので渋々受け取ったけれども。

「……それはなんかの嫌味ですか、御坂センセー」
「……珍しいじゃない、アンタから声を掛けてくるなんて」

 ぐたりとした声にドキリとして、美琴は反射的に右ポケットの中身を確かめる。顔を
あげれば見慣れた顔があった。心なしげっそりとした様子に見えるがそれも含めてデフ
ォルトの面だ。

「お前な、これ見よがしにそんな大量のチョコレート持ち運びやがって! あれか!?
それはモテない男に対する当てつけかゴルァ!」
「うっさいわねえ。そんなことで怒鳴らないでよみっともない。黒子に運んでもらおう
と思ったけど、あの子、仕事が入っちゃったのよ」

 日が日だ。どうせこの日を幸せに迎えられなった連中があちこちで悶着を起こしてい
るのだろう。そんなのに付き合わされる風紀委員《ジャッジメント》も気の毒だとは思
うが、テロだなんだと殺伐としたものに比べれば微笑ましいもんだ。出動間際の白井黒
子の様子では定例行事だと割り切っている感もある。

「つーか、なーに。もしかして、アンタその様子だと、一個も」
「だー! もーやっかましいわ! どうせ手元にゃ一個も残っちゃねーけども何か問題
があるかありますかぁ!」

 くぷぷぷ、と口元を押さえて嘲笑う美琴に上条は血涙を流さんばかりの勢いで叫ぶ。
「俺だってなあ、何人かからは頂いたのですことよありがたいことに。それがあれよあ
れよという間に……不幸だ」

 がくりと肩を落とす。こんな日でも、いやこんな日だからこそ上条の不幸体質は絶好
調に作用しているらしい。

「そりゃあお気の毒さまなことで。残念だけど分けてあげないわよ」
「へっ、それ全部食って太っちまいやがれってんだ。そしたらビリビリじゃなくてブク
ブクって呼んでや――」
 バチィッ、と電光が上条に迸るが合わせたようなタイミングで右手がそれを防ぐ。

「予告なしは心臓に悪いからやめろよ!」
「乙女に対して言っちゃいけないセリフの五本指にはノミネートされるから、体重に関
することだけはマジで気をつけなさいよね」

 なおもビリビリとそれ以外の何かを纏う美琴に上条はこくこくと無言で首を縦に振った。
美琴が電気を引っ込めると、ふう、と一息入れて、

「手伝うからどっちか貸せよ」
「え?」
「運ぶの疲れたからそんなとこに座ってたんだろ? 寮の中、は無理でも近くまでは行
くから、ほれ」

 と言って、ん、と上条は右手を差し伸べる。
 こいつは、と美琴はその右手をじっと見つめる。なんだかんだいって。相変わらず。
はあ。もうため息も馬鹿らしい。
 これが私に対してだけだったら素直に手を差し出すのに、と子どものような独占欲が
首をもたげるが、そうなってしまったらこいつをこいつたらしめているものがなくなっ
てしまうわけで。と美琴は一人、どうしようもないジレンマに陥る。
 よほどジト目で睨んでいたのだろう。

885■■■■:2010/02/19(金) 22:19:01 ID:KUY/LYJY

「な、なんだよ」
「言っとくけど……あげないわよ?」
「お前な、どういう目で俺を見てやがる? さすがにそこまで落ちてねーよ」
「あっそ」

 二つあるうちの一つを預けて、美琴は立ち上がった。右ポケットからは、手を出して。

「やー、超能力者《レベル5》ともなるとやっぱりこっちの数も段違いだな、おい」
「そうでしょうそうでしょう。でもアンタもなかなかのもんよ? ちゃんと数
字通り《0》じゃない」
「くのやらあ……」

 街中がどこか浮ついた空気に包まれているのは気のせいではあるまい。

「しっかし、大層な浮かれっぷりだよなあ、どこもかしこも」
「いいじゃない。思春期真っただ中なのよ、皆」
「お前は誰かにあげたりしねーのか、思春期真っただ中《中学二年生》?」
「い、」

 ぴくん、と。表情には出なかった自信はある。

「ないわねー。私のお眼鏡に適う男ともなると、そう簡単には見つからないもの」
「確かになあ。まずお前の電撃を防げる奴じゃねーとお話しにならんわな。全身ゴム人
間とか」
「あーそのマンガ知ってるわ、私」

 そういえばお前もマンガ好きだっけな、と上条はけたけたと笑う。そんな上条を美琴
はちろりと横目で伺った。薄い学生鞄と紙袋をさりげなく一つの手に持ち代えて、空い
た右手をスカートのポケットに入れる。そこには常備してある無機質な硬貨とは別の感
触がもう一つ。

「ま、お前にもそんな相手が出来ることを、上条さんはささやかながら祈っててやるよ。
と、この辺にしとくか」

 学生寮が見えてきた。上条はほいよ、と紙袋を差し出す。
 色々と。渡す物から方法からタイミングから考えた。この日に向けて。けれどもどれ
も決定打にはならず今日が来てしまった。もういいや、と諦めていた。しかし幸か不幸
か、きっかけは向こうからやってきた。ろくな準備は出来なかったけれど、どうせなら
コイツにとっての私らしく。
 食堂のパーティ菓子の中から朝、失敬してきたものを右手の中で確かめる。

「ちょろっと」

 あん? と上条が口を開けるのに合わせて、例のあれと同じ要領で親指を弾く。
 いくじなしの、精一杯の強がりを受けてみよと、勢いよく回転しながらその物体は進む。

「ぅぉわ!?」

 悲しいかな条件反射か、その不幸体質の賜物か。飛来する物体を阻もうと上条は手を
伸ばす。けれども手提げ袋と学生鞄を持っていたせいか今回は反応が
ちと遅い。電撃が伴っていないことも理由のひとつだろう。それは上条の伸ばされた手
の横を一直線に走った。
 かこん、と音がしたかどうかまでは上条本人ではないからわからない。けれど美琴は
その音を聴いた気がした。それは確かに上条の口の中へと吸い込まれていった。

「っ痛てーなコラ! 何すんだ……って、これ」

 涙目になりながら、上条はもごもごと口を動かす。

「……チョコ、か?」
「『超電磁砲ver五円チョコ《美琴センセーのお情け》』、ってやつかしらね」

 茫然気味の上条に、ばきゅんと。美琴はウィンクと同時に人差し指から弾丸を発射す
る。仮想の弾丸は上条の右手でも打ち消せない。けれど届いたとしても、たぶん意図は
伝わらないだろう。相手が相手だ。けれどまあ今年はこれでよしとすることにする。

「来年こそは、ね」

 まだ何が起きたかよくわかっていない上条には聞こえないようにくすりと笑って、美
琴は寮へと駆け出す。

886■■■■:2010/02/19(金) 22:23:19 ID:KUY/LYJY
以上。
いちゃいちゃではないか。
ツンデレ、というか上条さん相手に強がってる美琴が大好きです。

887■■■■:2010/02/19(金) 22:26:40 ID:HXP8pv/o
美琴カワユス
GJ!

888びり:2010/02/19(金) 23:56:19 ID:CPLJtiY2
以前大覇星祭を投下したものです。
就活やらなにやらで忙しくここ最近上琴成分が足りなくて干からびそうです。

時間が出来た時にふと思いついたのを書いたので24時に投下します。
4レス消費予定です。



注意書
*四年後のお話なので完全な妄想
*シリアス
*美琴が魔術関係の事を知っています

889:2010/02/20(土) 00:01:48 ID:kuWlNRPw
ずっと見ていると吸い込まれそうな程に黒い空。
その空に浮かぶはその黒き空に飲み込まれそうな程淡く光る三日月。
街から離れた所には今も街灯は無く、その鉄橋と川は空と同じ闇。

その闇に佇む一人の人間。

まるでいつかの場面が再現されたかのように映る。
但しそれは超能力者(レベル5)が主人公(ヒーロー)を求めた時とは違う。

そこに立っているのは無能力者(レベル0)の烙印を押された青年、上条当麻だった。

あの時からもう既に四年が経った上条はトレードマークであるツンツン頭は変わらないものの、その顔は今までの苦労を物語っているかのようにその顔は少し痩せこけ、表面上はわからないが四年前の時より体中に無数の傷がついている。

(誰もが望むハッピーエンド…か…)

四年前の戦争の首謀者である神の右席のリーダー『右方のフィアンマ』を倒す事によってインデックスが助かると同時に戦争が回避される。
そう思い上条は人知れずフィアンマを倒し、戦争が回避され、ハッピーエンドになった。

しかしそのハッピーエンドに上条はいなかった。


首謀者を倒せば全てが終わるというのがそもそも甘かったのだろう、戦争が起きると言う事は少なくとも戦争を支持している人もいるはずである。
つまり、首謀者を倒した上条はその戦争支持者に狙われたというのが簡単な説明なのだが。
相手が魔術や科学に関わっていないただの人ならば当然ここまで酷くなる事なんてなかった。

相手は暗殺術に加え魔術を駆使してくるような云わば暗殺集団。
上条は普段普通に暮らしているだけで生命の危機に瀕する事も多々あるのだがそれだけではない、上条だけ狙われるだけでなくその繋がりも狙われるようになった。

890:2010/02/20(土) 00:02:15 ID:kuWlNRPw
戦争が終わり、何もかもが終わった所に常盤台のお嬢様であり超能力者である御坂美琴から告白を受けた。
記憶上初めての告白に戸惑うものの、いきなり何かが変わるわけじゃないしいいかと安易な気持ちで承諾した。

「例のあの実験も、あの告白もこの鉄橋からだったな」

上条は誰に云うでもなく一人ごちる

「あの時は別に好きってわけじゃなかったんだけど…な…」

鉄橋の柵によりかかりまるで川と空が繋がっているかのような闇を見上げる。
星一つないその空は見ていると時が止まったように感じる。
いや、実際に四年前から時は止まっていたのかもしれない。

(失ってから初めて気づくなんてな、俺は馬鹿だ)

自分のせいで誰かが傷つけられるならと上条は今まで築き上げてきた絆を全て切り捨てた。
守ると誓った人達の為全てを捨てる事を選んだ。

全てを捨てるとは言うも勝手に学園都市から出る事は出来ずその中で狙われ戦いながらも一人で生き延び今までやってきた。
誰かに会わないように動き四年間やってきた。

「どうしてこうなったんだろうな…?」

ぼそりと自分にも聞こえないくらい小さな声で呟く。

(俺が死ねば多分きっと全てが丸く収まる。戦争支持者が腹いせで俺を狙ってるだけなんだし。今更俺を悲しむ奴なんていないだろうし)

全ての繋がりもなく、四年間常に命を削るような生活が続く上条にとってその結論に至るのは簡単だった。
あの時自分が死ねば全て丸く収まると思っていた美琴に間違いだと言った事を上条は思い出す事はなかった。

(今思えば不幸だ不幸だ言ってたあの時が一番不幸(しあわせ)だったな)

ふうと溜息をつき、意を決したのかよりかかっていた柵から離れて鉄橋を渡り始めようとしたその時
向こう岸からカツカツと足音が聞こえる。

今まで人の気配がすると隠れるのが常だった上条なのだが何故か動く事が出来ない。
向こうから段々見えてくるシルエットにどこか懐かしさを感じたからなのかその懐かしい人に会う恐怖からなのか上条は分からない。
そして暗闇の向こうから少しずつ見えてくる人から声がかかる。

「あの時とは逆ね」

四年間聞きたかった声が上条の耳に届く。

891:2010/02/20(土) 00:02:39 ID:kuWlNRPw
「ホント久しぶりね」

声の主は御坂美琴だった。しかし四年前とは違い制服でなく私服で髪は短髪でなくセミロングになっている。
どこか親である御坂美鈴の面立ちに似てきて背もあの時から大分伸びたのだろうか目線があまり変わらなく感じる。
その風貌は十人の男がいたら十人振り返ると言ってもいいくらい美人になっていた。

「ああ…久しぶりだな」
「四年…短いようで長く感じるわね」

美琴はこちらの返答を待つことなく喋りかけてくる。
愛しい人からの声は先程の決意が揺らがせる、そう思いはやめに話を切り上げる為に美琴の話を遮る。

「じゃあ、俺は行くから。元気でな」
「じゃあ、じゃないわよ。アンタと話する為にここまで来たんだから付き合いなさいよ」
「別に話することなんかないだろ。もう別れたんだし」

そう告げ美琴の横を通り過ぎた時、目の前にバチィッと青白い電撃が走り足を止める。

「アンタがなくても私があるの。いいから話するわよ」
「お前…見た目変わったけど中身は全然変わってねーのな」
「アンタは変わったわね」
「そうか?この四年間特に気にした事ないんだけど」

見た目じゃないわよと呟くが上条には聞こえなかった。

「で、何か用あるんだろ?早めに済ませてくれ」
「相変わらず相手を苛つかせるのだけは健在ね」
「良かっただろ?こんな奴と別れられて。で、何だよ話って」
「私ね…あれから色々知ったんだ。アンタの事。戦争の事。それに"魔術"の事」

美琴から思わぬ言葉を聞きぴくっと体を震わせる。

「それに、この四年間戦闘経験積んだの。アンタの足手まといにならないように。四年前別れ話を聞かされた時きっとアンタの事だから自分のせいで周りが傷つくから一人でいる事を選んだんだろうって。でもね知ってる?」
「…何を?」
「切り捨てたと思った繋がりの人達が四年間今までアンタを陰ながら援護してたのを」
「なん、だって?」
「アンタを助ける為にあの子達も世界各地に散らばって敵の事を調べて、アンタを助ける為に陰ながら天草式の人達が援護して、アンタを助ける為にイギリス聖教の人達が隠れている暗殺集団を駆逐して。他にもアンタを助けたいと思ってる人達が一杯いるのを知ってた?絆って切ろうとして切れるもんじゃないってのをアンタは知ってた?」
「今の今までそんな事は…」
「気づかないでしょうね。皆、一人でいる事を決意したアンタの足枷にならないように遠くから眺める事しか出来なかった。それは私も同じ」
「何で俺なんかを…あれだけ、傷つけたのに」

四年前狙われ始め、上条に関わったとされる様々な人が傷ついた。
戦闘に慣れていた人達はそれほど深い傷は負わなかったものの、全く戦闘と関係のない人の一部は下手したら死ぬという所まで傷つけられた。
そして美琴もその一人だった。

「馬鹿にしないで欲しいわね。私が倒れたのはアンタのせいじゃない、私が弱かったから。他の皆だってそう、自分の責任は自分で果たす人達よ。なんでそこでアンタのせいになるわけ?」

いつしか後輩である白井黒子に言われた言葉は同じ立場となった美琴に受け継がれる。
美琴は上条の近くまで歩き正面からそっと抱きついた。

「私ね、まだアンタの事が好きなんだ。あれだけムカついた事されても。自分勝手に別れ話聞かされても嫌いになるなんて出来なかった」

抱きついたまま美琴は話を続ける。

「私はまだ弱いけど、でもそれでも多少なりアンタの力になる事は出来る。アンタ一人で抱え込むような事なんでないのよ。誰かが傷ついたって誰もアンタのせいになんかしたりしない。だから…いつもの場所に戻ろう?」

四年間今の今まで全て自分のせいだと思っていた。
誰かが傷つく度自分への罪が重なっていくように感じた。
でもそれは違うと全てを否定してくれる人がいる。

「あ…」

四年間涙を流す事すら許されないと思っていた。だから今の今まで我慢していたのが今ここで決壊する。
静かに目から温かい水が零れ落ちる。
泣いているという事に気がついたのか

「このまま見ないであげるから。そのまま泣いちゃいなさい」

闇を照らす淡い月の光が二人を包み込む気がした。

892:2010/02/20(土) 00:03:01 ID:kuWlNRPw
「落ち着いた?」
「ああ…なんかみっともないところ見せちまったな」
「これでお互い様じゃない?」
「お前もここで泣いたんだっけ」
「う…あんまり言わないでよ。本当は忘れたい忌まわしい思い出なんだから」

と抱き合ったまま言いあう。

「それで…どうすんのよ」
「そうだな、一人でやってきたと思いこんでた俺が馬鹿だったみたいだ。戻る、いや戻りたい」
「その返事が聞けてここまで来た甲斐があったわ」

抱き合ってて顔は見えないけど笑っているのがわかる。

「まずは皆に謝らないとな…何されるか想像もつかない…」
「皆相当心配してたからね。特にあのシスターに関しては相当お怒りの様子だったし覚悟したほうがいいわよ?」
「不幸だ…」

(久しぶりに言った気がする。でも何故だろう今ではこの感覚が心地よい気がする。)

「じゃあ、戻ろっか皆のとこに」

美琴は上条から離れ右手を取って二人は歩き出す。


「そうだ、お前に今まで言った事なかったんだけどさ」
「なによ?」
「俺も美琴の事が好きだ」

いきなり言われると思わなかったからか少しきょとんとしてすぐ苦笑いになる。

「言うのが遅いわよ」
「そうだな悪い」

美琴は急に足早になり上条はそれに引っ張られるように歩く。

(ハッピーエンドか。こればっかりは神様に感謝しないとな)

四年間止まっていた時がまた動きだした。

893びり:2010/02/20(土) 00:04:49 ID:kuWlNRPw
以上です。

需要あるのかわからないのですけど中途半端なのもあれですしまた時間ある時に大覇星祭投下したいと思います。

あと書くからには上達もしたいのでここがだめみたいな点があれば指摘して欲しいです

894■■■■:2010/02/20(土) 00:23:50 ID:3KpH6dlI
>>893
GJ!!
なんかこういうのも一味ちがくていい!

895■■■■:2010/02/20(土) 00:40:56 ID:WRzGbyhc
GJです!
本気で感動した…
大覇星祭のも方も期待してます。
ゆっくりでいいんで無理しない
程度に続けてください。お願いします。

896D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/20(土) 06:08:44 ID:EFyIDpNE
職人さんGJ!
何この桃源郷。

お邪魔します。
どなたもいらっしゃらないようでしたらネタを1つ投下します。
「とどかぬ思い Welcome_to_the_Edge.」全17レス消費予定。
まず前半9レスを投下し、後日残りを投下します。

話としては「永遠 If_tomorrow_comes.」の続きになります。
永遠 If_tomorrow_comes.は
>>732-740
>>803-810

です。
※一番最初の話が「Ti_Amo.」
>>101-108
>>243-252

その次が「Once_in_a_lifetime.」で
>>502-512
になります。

897とどかぬ思い(1):2010/02/20(土) 06:18:33 ID:EFyIDpNE
 一月二日の夜は上条当麻にとって平和で、そしてほんの少しだけ刺激的だった。
 上条は右腕に『幻想殺し』という能力(ふしぎなちから)を持つ以外はまったく普通―――とは言い難いのだが、どこにでもいる少年だ。彼は小学校入学時にこの学園都市にやってきて、以来この街でずっと暮らしている。と言っても彼は天涯孤独な身の上ではなく両親は学園都市の外で存命中だ。
 学園都市に住む他の生徒に漏れず、彼もこの冬休みは両親の元へ帰省するはずだった。だった、と過去形で語られるのは、現在進行形で彼が『年末年始ぶっ続けで補習』というイベントに見舞われ、帰省する時間の一切を失ってしまったからだ。担当教諭達のお情けにより元旦は補習を免除されたものの、たった一日で何ができると学校の机の上で涙ながらに突っ伏して、上条は教師達と年明け早々顔を合わせて都市内にて絶賛営業中の怪しげな神社へ初詣に行ってきたばかりだ。あの神社は上条同様帰省の機会を逸した学生や教師達を相手に今頃荒稼ぎをしている頃だろう。
 それはともかく。
 上条の部屋の中心を占めるいかにもなコタツのいかにもな天板の上に、手付かずのプリントが広げられていた。その横にはノートパソコンと漫画雑誌の年末年始特大号、あとは食べ散らかしたミカンの皮も無造作に置かれている。
 上条は、今日の補習で出された宿題そっちのけに一人自室でお正月のバラエティ番組にかじり付いていた。この時期にしか放映されないだけあってどの番組も制作費がかかっている……割には出演者の顔ぶれがチープな気がする。
 コタツに両足を突っ込んでTVを指差しながらゲラゲラ笑う上条のかたわらには、見慣れない雑誌があった。大きさはA4変型判相当、厚さは一八〇ページ前後、薄い紙質にカラーモノクロ込みのグラビア印刷で、タイトルは『陰陽道マガジン』。
 あまりにも嘘くさい雑誌名だ。
 これは上条の隣人にして友人かつ多角スパイの土御門元春より、税関を通さない裏技によって持ち込まれた海外の雑誌である。今イギリス清教では日本の陰陽道がブームになって、ついに文化が逆輸入されましたとかそんな理由ではなく、単純に元の表紙が人様にお見せできない写真が掲載されているためわざわざ土御門の手によって隠蔽工作(カムフラージュ)がなされているのだ。
 ページをめくれば登場するのは陰陽師とは何の関係もない金髪栗毛銀髪赤毛の豊かな美しい髪とスタイルを誇る欧米型女性ばかり。身に纏う衣装も平安時代の貴族階級に見られる唐衣裳装束ではない。ぶっちゃけると誰一人服着てない。
 早い話が上条は土御門から、『彼女』御坂美琴には絶対お見せできない雑誌をもらったのだ。
『カミやーん。日頃何かと頑張ってくれてるカミやんにオレから進呈。何とイギリス直輸入のお土産なんだぜい?』
『はあ? そのお土産はひょっとして『霊装』って書いてお土産と読むんじゃねーだろうな? もう御使堕しはこりごり……って、何だこれ? 直輸入なのに「陰陽道マガジン」? これってあれか、最近海外で日本ブームが巻き起こってるっつー話だけど、お前もこれ持ってって海外で親睦深めましょうっていう奴か? 悪りぃけど俺は宗教も魔術も』
『チッチッチッ。これは表紙こそこれなんだけど……中を開けるとほーらこんな感じなんだにゃー』
『ぶふうっ!? ちょ、ちょっと待て土御門!? こ、こ、これはヤバいって! 俺こんなもんいらねーから押し付けんなって!』
『まーまーカミやん遠慮しないでほらほらこっちも見るんだにゃー。カミやんだって何だかんだ言っても興味あるんだろ? 隠すな隠すな。ねーちんのを直に見ちゃったカミやんには刺激が少ないかも知れないが、オレの徹底リサーチの結果、これはカミやんのストライクゾーンをバッチリ捉えた一冊なんだぜい? もちろん表紙はご覧の通り偽装済みで部屋に置いても違和感なし。こっちのブロンドなんかどことなくオリアナに似てないかにゃー?』
『特定の人物の名前を挙げんじゃねえっ! 次に会った時まともに顔見らんねーだろうが!』
 ということで、もらったと言うより押し付けられてしまった。
 純情少年上条当麻としては一人部屋であるにもかかわらず大胆に鑑賞もできず、さりとて捨てるのももったいなく、TVでCMが流れる間に二、三ページめくっては表紙を閉じ、ちらちら横目で見てはパタンと伏せる動作を繰り返している。

898とどかぬ思い(2):2010/02/20(土) 06:19:04 ID:EFyIDpNE
 上条がケンカ友達だった美琴から好きだと告白されてどれくらい経つだろうか。
 彼氏彼女と言うよりは友達以上恋人未満のような感じで付き合いを始めてからというもの、ややせがまれるように手をつないだりおでことはいえキスをしたり、ちょっとずつ進展みたいなものを見せてはいるが、正直上条は心の中でもやもやとした気分を抱えている。
 美琴は大人びて見えても学内では『お姉様、御坂様』と呼ばれて絶大な人気を誇っても、目を引く整った顔立ちとすらりとしたスタイルを兼ね備えていても中学二年生。何かと問題になりがちなお年頃だ。そのお年頃が隣であれやこれやと言ってくる。しかも『常盤台中学のお嬢様』という肩書き(ブランド)を取り除いても、最近の彼女は結構可愛い、と思う。時々彼女の仕草にはドキッとさせられる。中学生と高校生の関係に一寡言持つ上条としてはああもうどうすりゃいいんだよ状態である。美琴がせめて同学年だったら良かったのにと考えてしまう上条にとって、前述の雑誌は図らずも一服の清涼剤となっていた。
「ふわあーっ。……もうこんな時間か。あとは風呂入ってプリントに適当に答え入れて寝っかなー」
 コタツの天板の上に放り出してあった携帯電話の画面で現在時刻を確認してから上条は大きく伸びを一つ。
 よっこらせとコタツから足を抜いて立ち上がり、ユニットバスに向かおうとしたところで、背後から携帯電話に設定した着信音とぶるぶるという小刻みな振動に呼び止められた。
「ん? 御坂……だよな。いつもより遅いけれど何かあったんかな」
 一二月二八日に美琴が実家に帰省してから、上条の携帯電話には毎日メールが届いた。内容はちゃんとご飯食べてるか、補習はサボってないか、浮気はするな寂しくなったら電話しろ。
「お前は俺の奥さんかっつーの」
 きっちり返信しないと翌日のメールで厳しく問い詰められるので、上条は毎日だいたい同じ内容で美琴に必ず返信していた。にしても、今日はいつもよりメールの送信時間が一時間ほど遅い。ともかく内容を確認しようと上条は二つ折りの携帯電話をパカッと開いて受信メールフォルダをチェックする。メールの表題は『明日』と書かれていた。内容は夕方六時過ぎに駅に着くから迎えに来てくれ、というものだった。
「あれ?」
 何かがおかしい。
 上条はもう一度受信フォルダを開いて内容を確認する。
 何度読み直してもメールの表題は『明日』のままだ。明日って言うのは……
「オイ……アイツ、一日間違えてんじゃねーか。紛らわしいったらありゃしねえ」
 美琴は四日に学園都市に戻ってくる。今日は二日で明日は三日。なので美琴は日付を一日間違えていることになる。しょうがねえなと一言こぼして、上条は美琴に『日付間違ってんぞコラ』と指摘のメールを送信した。二分と経たずに美琴から返事が戻ってきて『間違ってない。三日にそっちに帰る』とあった。
「……はあ。何か急な用事でもできたんかな。ま、いーか」
 上条は最後に了解、と入力して美琴にメールを送信するとコタツの上を適当に片付けて陰陽道マガジンを本棚にしまい、明日の時間を忘れないようにしなくちゃなと自分に念を押して、今度こそユニットバスへ向かった。

899とどかぬ思い(3):2010/02/20(土) 06:19:45 ID:EFyIDpNE
 時間を一二月二八日の午後六時一五分に戻す。
 上条は実家へ帰る美琴を見送るために駅まで足を運んでいた。美琴の実家は神奈川県にあり、学園都市からは電車で三時間ちょっとの距離だ。美琴に言わせると『電車ですぐだし帰るって感じじゃないのよね』らしい。
 学園都市の生徒は特殊な事情を持つ一部の者をのぞき、そのほとんどが都市外の出身だ。当然親家族が恋しい年頃の彼らは一定の時期になると帰省する。それでも能力者達ばかりが暮らす学園都市で帰省が『許される』のは条件や背後関係が白、いわゆる『何の問題もない』者達だけだ。
 美琴の場合、母・美鈴が回収運動の保護者代表と言う事情により監視対象に組み込まれていたのだが、美鈴を取り巻く一連の事件ととある少年達の活躍により美鈴自身が代表を辞した事もあって、先日監視を解除された。
 もっとも美琴は自分が監視対象に入っていた事は知らないし知らされてもいない。
 彼女自身は『直接』学園の暗部とは何の関係もない、『普通の』学生なのだ。

「悪りぃな、俺の都合に合わせて帰るの遅くしちまって。大丈夫か?」
 上条がガリガリと頭をかくと、常盤台中学の制服に身を包み首元にピンクのマフラーを巻いた美琴が
「大丈夫よ。それよりアンタは目の前の補習に集中しなさい」
 ペチッと上条のツンツン頭を叩く。
「はは、そう言ってくれっと助かる」
「寂しくなったらいつでも電話してきて良いわよ? それよりアンタホントに大丈夫? 言っとくけど、この一週間学園都市に美琴センセーはいないんだかんね?」
「何で俺の周りはどいつもこいつもこんな感じなんだよ……」
 一日のうち三分の一が不幸に見舞われている顔で上条はぼやく。
 イタリア行きの時も思ったけど、何でこんな事を言われなくちゃならないんだろう。
「ほら、そろそろ電車に乗れって。折り返しの始発ったって乗り過ごしたらかなり間抜けじゃねーか」
「わかった。……行ってくるね」
「行ってくる? 帰るの間違いだろ。しっかりしろよ学園都市第三位、こんな簡単な日本語の間違いで……」
「間違ってないわよ? 私が帰るのはここ」
 美琴は右手の人差し指でちょんと上条の胸板をつつくと
「それ以外は全部『行ってくる』よ。実家だって、いつか親元を離れて本当に一人で生活する日が来るんだから」
「そうか。じゃあ『行ってこい』。親元でのんびりしてこいよ。こっちに『帰ってくる』時間がわかったらメールで知らせてくれ。駅まで迎えに行くから」
「わかってる。じゃ、『行ってくる』ね」
 電車が発車する旨のアナウンスがホームに流れ、美琴はキャリーケースを引っ張って一人乗り込んだ。美琴は空席が見つからないのかドアのそばに立ってホームの方を向き、上条に笑って『バイバイ』と手を振った。上条もそれに合わせて『元気でな』と手を振って、電車がホームから見えなくなるまで見送った。

900とどかぬ思い(4):2010/02/20(土) 06:20:11 ID:EFyIDpNE
「お帰り。あけましておめでとうみ……さか?」
「ただいま。あけましておめでとう。……何で最後が疑問形なのよ?」
 出迎えのホームに降り立った美琴は、古い映画のワンシーンのように上条をぎゅっと抱きしめた。上条の鼻先で華やかな香水と銀色の小さなオープンハートが揺れ、上条はうわ香水の移り香が服についちまうよと少しだけ顔をしかめる。
 上条は何だかこれって数年ぶりに会った従妹が興奮して飛びついてきたみたいだよなと思いながら
「悪りぃ御坂、俺は目がおかしくなったらしい。常盤台の制服ってそんなひらひらのスカートだったか? コートは真っ赤だったっけ?」
 一週間ぶりの美琴は完全無欠に私服姿だった。
 おかしい、実家に帰るときは制服を着ていたはずなのに。
「残念なことに視力はまだ衰えてないみたいね。制服ならキャリーケースの中だけど?」
 上条の疑問に美琴が頬を膨らませる。二人の様子を離れたところで見ると、美琴は上条から贈られたイヤリングに合わせておしゃれしてきたのを上条に無視されて不機嫌になっているのだが、上条はそれに全く気付かない。
「……アンタ、もしかして制服マニア?」
「……あのな」
 美琴に変な分類(カテゴリ)づけられキレた上条が唸りをあげる。
「俺みたいな平凡校の学生でも知ってんだぞ、常盤台中学は休日でも制服着用が原則って。で、何でお前は制服着てないの?」
「何でって、ここにいない生徒が制服着る必要ないじゃない?」
 美琴の答えはぞんざいだ。言葉の中に何を当たり前のことを言ってるんだこの馬鹿と含みを持たせている。
「はあ? だってお前これから寮に戻るんだろうが。寮って私服でも入れんのか?」
「寮には戻らないわよ。帰寮予定は明日だもん」
「? じゃあどっかホテルでも取ったのか? 正月から豪勢だな」
「ううん、アンタんち行くから」
 上条の問い掛けに対し軽く首を横に振る美琴に
「ああ、ホテルの部屋借りないで俺の部屋で着替えるのか。なるほど、だったら貸してやるから」
「……アンタんちに泊まるって遠回しに言ったんだけど通じなかったみたいね」
 ―――これだ。
「男の部屋に泊まるなよ! 何度も言うけど自分の歳を考えろ中学生!」
「私も何度も言うけど私がアンタの彼女ってことを忘れんじゃないわよ!」
 こう言う事を美琴は平然と言ってくるので、最近の上条は彼氏とか恋人とか友達以上恋人未満というよりも、ご近所のおませな女の子を相手にするお兄さん気分である。
「彼女でもダメなもんはダメなんです! 却下! 泊まるの禁止!! だいたい何で狭くて汚い俺の部屋に泊まりたがんだよええっ!? お前の寮の方がよっぽど綺麗だしベッドは高級だし飯だって出てくんだし俺の部屋でわざわざ寝泊まりするメリットゼロじゃねえか! 俺だったら常盤台の寮で寝泊まりする方が……御坂? 何でお前不機嫌になってんの?」
 美琴は泣き出すのか怒り出すのかわからない一歩手前の表情で上条を睨んでいる。インデックスだとここで問答無用の噛み付きが飛んでくるから、この後に待っているのはきっと超電磁砲ですよねーと自らの不幸を呪いつつ、上条は気をつけの姿勢で反論を待っていると
「アンタの部屋が狭いとか汚いとかボロいとかそういう小っさい理由はどうだって良いの。常盤台はさ、アンタの言うとおり何もかも整ってる。でも自由がない」
 自由とは自分の勝手気ままに何もかもを行うことではない。自由にはいつだって行使した際の責任が伴う。そして中学生の美琴にその責任を負う能力はないと学校側が戒めているからこそ、常盤台中学には厳格な規律が存在する。

901とどかぬ思い(5):2010/02/20(土) 06:20:39 ID:EFyIDpNE
「最後に何か俺が言ってないオプションが追加されてるような気がすんだけど」
「今更一つや二つ増えたってどうって事ないでしょ?」
「……それはそうかもしれねーけどよ」
 たしかに美琴の言うとおりだが、そこはあまり指摘しないで欲しいと上条は思う。常盤台のお嬢様専用宿舎と上条の暮らす寮を比べること自体が間違っているのだから。
「それにアンタがいないもの」
「いたら怖えよ! 俺に女装させる気か!?」
「そういう意味じゃなくって」
 美琴は上条の反応を見て苦笑する。
「まあ、実際のところ寮は窮屈。そして私はアンタのそばにいたい。これって理由にはならない?」
「……まあ、どこに行くにしても一回うち来いよ。こんな吹きっさらしのところでつっ立ってても寒みいだろ。そうだ御坂、コタツって知ってるか?」
「知ってるわよ。うちにもあるもの。アンタ人の事馬鹿にしてんの?」
「……いや、何かお前んちって暖炉とかあってそれに薪くべて暖を取ってそうなイメージがあるから」
「……アンタ来年私んち来なさい。うちがどんなもんか見せてあげる」
「え? 良いよそんな、大邸宅になんかお邪魔できねーって」
 日頃の美琴の行動や常盤台のお嬢様と言う看板で勘違いされがちだが、美琴の家は一般のご家庭より『ちょっと』豪華で規模が『少し』大きい程度で、そこに暖炉があったり庭にテニスコートがあったりはしない。
 美琴はふぅ、と小さくため息をついた後
「……それにしてもアンタの年末年始が補習で潰れるってのは想定外だったわよ。いろいろ予定してたのに」
「いろいろ? 予定?」
「二人であちこち出かけたり初詣行ったり。振袖姿見て欲しかったなー。泊まりがけで旅行に行くのもね」
 美琴は心から残念そうな表情を浮かべた。上条は美琴の姿を見て胸の奥で何かが痛むのを感じつつ
「お前って夢いっぱいだな……」
 それってティーン向け雑誌に良く掲載される『彼氏ができたらしたい事ベストテン』そのまんまじゃねーのかと少しだけ嘆息する。
「……初めて好きな人ができてその人の彼女になって、それで夢見て悪い?」
 美琴はむーと頬をふくらませる。怒ったりへこんだりムキになったり、『彼女』はとってもお忙しい。
「え? 初めて? ……お前誰かと付き合ってなかったっけ?」
「いないわよ。何をどうしたらそう見えんのよ?」
「いや。……お前が俺の部屋に初めて泊まった日、やけにスムーズに風呂入ってっから慣れてるなーって」
「ななな、慣れてなんかないわよ! アンタに何されんのかと思ってめちゃめちゃ緊張したんだから!」
 上条の反応がこの上なく薄く肩透かしを食らった結果、美琴は上条の部屋でも自室のようにリラックスできたと言う結果に上条は気付かない。
「……俺はあの日お前に……まあいいか。で、お前何で予定を繰り上げて帰ってきたんだ? お前も実はこれから補習とか?」
「このためよ」
「このためって、どのためだ?」
「かっ、かっ、かっ……彼氏に、早く会いたかったからに決まってんでしょ。四日はみんな帰ってくるし」
 上条の左手が美琴の右手でぎゅっと強く握られる。
「あー、さいですか……」
 上条は心の中で思う。
 ―――お前さ、何で俺の事そんなに好きでいられんの?

902とどかぬ思い(6):2010/02/20(土) 06:21:07 ID:EFyIDpNE
 ホームの端から端までどこにいても内容が聞き取れる口ゲンカと、正々堂々たるジャンケン三本勝ち抜きと言う名の後腐れなき勝負の結果によって、上条は敗者として美琴にベッドを奪われた。その代わり美琴が夕食と翌日の朝食を作るというので、交換条件としては悪くない。
 一〇センチの距離を空けて二人は手をつなぎ、美琴は上条の隣で小さく微笑んでいる。
「そう言えばアンタ初詣は?」
「行った行った。元旦はさすがに補習無かったんで、先生達と一緒だったけどよ」
「なーんだ。こっち帰ってきたら一緒に行こうと思ってたのに」
「あれ? お前行ってねーの?」
「行ったわよ? 元旦に母さんと。振袖もその時に着たんだ。ちょっと帯が窮屈だったけど」
「だったら、初詣に二回行ってどうすんだよ」
「あのさ……説明した方が良い?」
「何をだよ?」
 美琴が何を言いたいのかわからない。初詣に二回行く意味って何かあるのかなと上条が考えていると
「新年早々アンタってあいかわらずそうなのね……」
 美琴は隣でやれやれ、と肩をすくめてみせた。
「あいかわらず?」
「そ。人の気持ちに全然気づかないなーって」
 美琴のあきれたような声が気になって、上条は問いかける。
「お前の気持ち?」
 答えの代わりに、美琴は首を縦に小さく振る。
「……悪りぃ」
 美琴の首が横に振られた。揺れる茶色の髪と共に香水の香りが広がる。
「一生片思いでも良いけど……片思いはやっぱりちょっと苦しいかな。アンタはこんな気持ちになった事ないんでしょ?」
「…………悪りぃ」
 上条の心の中が申し訳ないと言う思いでいっぱいになる。同時に、今の美琴にこれ以上好意を向けてはいけないと言う戒めのような感情が噴き上がり、上条の喉を詰まらせた。
 黙って、美琴の手を少しだけ強く握りしめて。
「……………………悪りぃ」
 繰り返し呟く。

903とどかぬ思い(7):2010/02/20(土) 06:21:33 ID:EFyIDpNE
 食事が終わって、美琴が風呂に入ると言うので上条は少しだけTVのボリュームを上げ、コタツを部屋の壁に向かって押しやり足の踏み場を確保する。美琴が戻ってくるまでに自分の布団を敷いてしまおうとふすまに手をかけると
「ねーえー、イヤリング外してくれる?」
 美琴が自分の耳を人差し指で軽く指差した。
「子供じゃないんだからそんくらい自分でできんだろが」
「……『彼氏』に外して欲しいの。アンタも『彼女』のアクセサリーの付け方外し方は覚えておいて損はないと思うけど?」
「そういうもんか」
 礼儀作法に明るそうな美琴がそう言うなら、きっとそうなのだろう。以前には服を贈る意味がどうのとも言っていたし。
 上条は美琴の耳たぶと自分の目の高さを合わせると、傷をつけないよう慎重に両手の親指と人差指を使ってまず右耳のイヤリングをつまむ。耳たぶの表と裏でイヤリングを固定する金具を前後に引っ張り、そっと引き抜くように美琴の耳から取り外した。一つ外し終わると美琴の掌の上に置き、今度は同じように左耳からも取り外す。外したあとでよく見ると美琴の耳たぶに金具で圧迫された赤い跡が残っていたので、上条は右手の親指と人差指で耳たぶをつまみ、力をかけないようにやわやわと揉みほぐした。
「ちょ、アンタ、何を……」
「馬鹿。跡が残っちまってんだよ。これじゃ痛えだろ?」
 あまり大きくはないが、美琴の耳たぶにはかなりくっきりと圧迫跡が残っている。上条は明日まで残らなければ良いなと考えながらほぐしていると
「そ、そうじゃ……あ、アンタ……やめ……」
 美琴が何だかくすぐったそうに体をよじらせるので、上条はひとまず指を離すことにした。
「あんまり痛むようだったら氷あるから言えよ? 風呂入る前に冷やした方が良いんじゃないのか? どうなってるかちゃんと鏡で見とけよ?」
 上条の問いかけに美琴は何とも言えない複雑な表情を浮かべて
「…………ありがと。お風呂入ってくる」
 ひときわ大きくなったTVのCM音声に隠れるように『馬鹿』と言う美琴の声が重なったような気がした。

904とどかぬ思い(8):2010/02/20(土) 06:21:55 ID:EFyIDpNE
「でさ、ちょろーっと教えて欲しいんだけど」
 上条が風呂からあがると異端尋問が待っていた。床に敷いた布団の上に美琴と向かい合うように正座して
「あの霧が丘の女の子はアンタとどういう関係? 確か始業式の日に地下街で会った子よね?」
 少しきつい口調で緑色のぶかぶかパジャマを着た美琴が問い詰めてくる。何でコイツはこんな怖い顔してるんだろうと思いつつ上条は
「霧が丘? ……ああ風斬か。友達だぞ。ただアイツは俺って言うよりインデックスの友達なんだよ。こないだはインデックスに会いに来たんだけど居場所がよくわからないってんで、教会に案内しようとしただけだって。つかお前、俺が誰かと一緒にいるたびにビリビリすんなよ。こないだも言ったけどあれじゃ説明する暇もありゃしねえしみんなもビックリするだろが」
「ふーん? じゃ、あの金髪の大人っぽい女性(ひと)は? どう考えてもアンタの友達には見えないんだけど?」
「えーと金髪ってーと……オリアナか。ありゃ友達っつーより行きがかり上知り合っただけだ。たまたま用があって来たってんで話をしてたんだよ」
 上条は説明を試みるが、どうも美琴は話を聞いていないらしい。時折巨乳が巨乳がと呪文を唱えているようにも聞こえるが、何か深いお悩みでもあるのだろうか。
「……浮気者」
 美琴が顔を上げ、ジロリと上条をねめつける。
「は? 浮気って何だよ?」
 美琴の言葉の意味が理解できず、上条は首をひねった。
「そもそも浮気ってどうやんだよ。俺そんなの知らねーぞ?」
 今度は対面で正座していた美琴の顔が『は?』の形で固まり、次に肩をがっくり落とし、そこから上条に向かって体当りするように、美琴は上条の胸元に飛び込んだ。突き飛ばされるように美琴を受け止めた上条は布団の上で尻餅をついて
「どうしたんだよ。何かあったのか?」
 上条の腕の中で顔を伏せたまま、美琴は上条の胸板を拳で叩く。
「……アンタが私のことをそれほど好きじゃないってのはわかってる。でもアンタは、私がアンタのことどれくらい好きか知ってるの?」
「……知らねえ。けど、俺のことを好きだと言った物好きがこの世でお前一人しかいないのは知ってんぞ」
「だったら、何でアンタは私の気持ちをわかろうとしてくれないの? どうやったらアンタは私を好きになってくれるの? ……教えて。お願いだから」
「俺には何でお前がそこまで俺のことを好きなのかがわかんねえ。理由が見えないから、……お前のことがわかんねえ」
「理由?」
 美琴の驚き混じりの問いかけに、上条は頷いて
「お前が俺を好きだと言ってくれて最初はすげーびっくりしたけど、嬉しかった。誰からもそんなことを言われたことはなかったし、俺はお前に嫌われてると思ってたしな。その後、お前と付き合うようになって、今まで知らなかったお前のいろんな面を俺は知るようになった」
 けれど、と上条は一度言葉を切ると
「そんなにも俺を思ってくれるのは何故だ? 妹達の件は、一応だけど解決したよな? 他に何がある?」

905とどかぬ思い(9):2010/02/20(土) 06:22:21 ID:EFyIDpNE
 美琴は上条の腕の中からゆっくりと顔を上げた。そこで一度深呼吸して
「きっかけはある、けど理由はない。かな」
「理由がない?」
 美琴は大きく頷いた。
「何て言えばいいんだろ、理屈じゃないんだ。『アンタのそばにいたい。アンタが好き』って言うのは。妹達とか、恋人ごっことか、アンタのことが気になったきっかけならいくらでもあるんだけど……細かい事を取り除いていくと最後に『ずっとアンタのそばにいたい』って思いが残る。誰かを好きになるのに、たぶん理由はいらないのよ」
 うまく説明できないんだけどね、と美琴は苦く笑って
「アンタのことをもっと知りたい。でも、アンタを知りつくしたあとも、ずっと一緒にいたいって思える。私は、誰かをこんなに好きになったのは初めてだから……やっぱり私はアンタの言うとおり子供なのかもね。でもね、誰にも譲れないんだ。この思いだけはどうしても。だからアンタに告白した。アンタに一番近い場所にいたいから、アンタのそばにいたいから。だからさ、そこに他の女の子をヒョコヒョコ連れて来られると私としては困るのよ」
 上条は黙って美琴の話を聞いていた。黙って、美琴の言いたい事を心の中でまとめようとするがうまくいかず、息を詰めたまま美琴に先を促した。
「……今こうしてアンタを抱きしめて、私はアンタに一番近い場所にいる。でもね、こうしててもアンタがものすごく遠い場所にいるように感じんのよ。遠くにいたんじゃ、アンタが私に興味を持つ事も、アンタに私を知ってもらう事もできないじゃない? 今日はアンタがくれたイヤリングに合わせておしゃれしてみたけど、アンタは気づいてくれなかった。アンタと初詣に行って思い出を作りたかったけどそれもできなかった。アンタがかたっぱしからきっかけを潰してるんじゃ、私はどうすれば良いの? どうすればアンタに……好きになってもらえんのよ?」
 美琴の言葉に嗚咽が混じり、細い両肩が少しずつ震えだす。そう言えばコイツは意外と泣き虫だったよなと思い出して、上条は美琴の泣き顔が隠れるように抱きしめた。
 美琴の言葉は納得できるところがある。
(けどよ)
 男が女を好きになるのと、女が男を好きになるのは似ているようで違う。その違いの差で、きっと自分は美琴が望む答えを返してやれない。
『彼女』が抱く思いはこんなにも深いのに。
 上条はただ黙って、美琴が泣き止むまで胸を貸し、両腕で美琴の泣き顔が誰にも見えないよう隠し続けた。

906D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/20(土) 06:22:52 ID:EFyIDpNE
ここまでになります。
お邪魔しました。

907■■■■:2010/02/20(土) 08:52:24 ID:j///UDZQ
>>906
GJだけど、切ねえ
この関係がいつまで続いていくのか

908■■■■:2010/02/20(土) 09:08:24 ID:FfZ7JuCQ
>>906
GJ
早くいちゃいちゃ展開きてほしいですのお
美琴がかわいそう・・・

909■■■■:2010/02/20(土) 10:33:32 ID:bOW/EqZQ
>>906
GJ
続き期待してます!

910■■■■:2010/02/20(土) 10:53:37 ID:Ugb0ww.U
>>906
GJです!
上条さんの心も、少しずつ美琴に近づいていますよね
続きを楽しみにしています!

911■■■■:2010/02/20(土) 11:51:32 ID:4.ABAxMA
みんなGJ!

次で最後って言ったけど、ぜんぜん終わらないんだぜ……。
『とある実家の入浴剤』の続きを投下します。美琴の気持ちを展開させるだけの回なのに、長くなった。
上条さんがほとんど出ないので、いちゃいちゃもないんだ。すまない。
かわりに今回はあの子が出ます。前回話題にのぼったあの子ですね。

ごたくはこれぐらいにして、投下しましょうか。
3‐>>328 >>421 >>759  4->>227 >>563 の続きで、消費予定レスは9。

ではでは以下よりどうぞ〜。

912とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:52:48 ID:4.ABAxMA
 アイツは何もわかってない。
 ふくれっ面になって美琴がまず思い浮かべたのは、そんなことだった。

 第七学区の病院の待合室に、美琴はいる。茶色のソファに腰掛け、両手には紙コップを握っていて、
中身はヤシの実サイダーだった。上条の診察が終わるのを待っているところで、一人きりになってずっと
彼の体調に気をもんでいた緊張から解放されてみると途端に腹立たしく思われてきた、という次第である。

目下の苛立ちの標的は、上条の言葉だ。

――無理しなくて良いからな。

 それはきっと彼なりに気を遣っての言葉だろう。それぐらいは美琴にだってわかっている。けれども自分は
そんなことを言われるために上条の世話をしたわけではないし、言われる筋合いだってない。だいたい美琴の
せいで風邪を引いたようなものなのだから、こうして上条に尽くすのは当たり前と言って良いはずなのだ。
あのままでは、自分はただワガママを言って迷惑をかけただけの子どもだったから。美琴は、そんなのは嫌だった。
美琴は彼の、上条の役に立ちたかったのだから。

(私がどんな気持ちでいるのかなんて、どうせあの馬鹿は知らないんだろうけど。それにしたってあの言葉は
ないじゃない。ちょっとは気付いてくれたっていいじゃない。どうして私がアイツの看病をするのかとか、
気まぐれでそんなことをするわけないんだから。晩ごはんを作ってるのだってきっかけは偶然でも、アイツが
喜んでくれてると思ったからなのに。それなのに、アイツは……)

 くいっと紙コップを傾けて、淡い炭酸が喉を抜けたのを感じると、美琴はため息をつく。

(……で。結局、私は勝手なことを思うのよね)

 思い通りにならないのは上条ではなく、その言葉でもなく、実を言えば自分自身なのだと、美琴は気が
付いている。そもそもそういう下心をまず排除しようと決めたのではなかったか。そういうことを言って
いる傍から、自分は何を期待していたのだろうか。あまりに愚かな決心だと水をかぶせてやりたくなる。
 美琴はしゅんと肩を落とし俯くばかりで、風景を眺めてぼうっとするでもなく、雑誌を手にとって時間を
潰すでもない。休日の病院のざわめきにあって、半分ぐらい残ったヤシの実サイダーを見つめ、またため息をつく。

 本当は、水をかける度胸もないのである。「上条当麻の役に立つ」「上条当麻を助けてやる」そういう
基準点を失えば、美琴は一体どうすれば良いのか全くわからなくなってしまうから。自分は間抜けで、
おまけに腑抜けなのだと、自嘲した。サイダーの液面に彼女の顔は、映らない。賢い振りをしてぐだぐだ
考えても何も生まれないだろうと示唆するみたいに。彼女の悩みすら保身に走ったポーズでしかないと指摘
するみたいに。

 ネガティブな思考の迷路に、美琴はとどまったままでいる。だから、そんなふうに自分に戸惑ってばかり
いるから、隣に誰かが腰掛けてきた気配にだって、気が付かない。

913とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:53:45 ID:4.ABAxMA
「飲まないのですか、とミサカは不条理な思いを抱きつつお姉様に問い掛けます」

 そっくりなはずなのにどうも彼女とは似つかない大人しめの声が、ふいに美琴の耳に届く。顔を上げて
確認すれば、横に座っているのは美琴のクローン集団である妹達(シスターズ)が一人、ミサカ10032号
だった。ハート型のネックレスを胸にぶら下げ、上条からは御坂妹と呼称されている、あの子だ。

「飲まないのですか、とミサカは再度問い掛けます。ミサカよりも一足早くお姉様が手に入れた最後の
ヤシの実サイダーなのですが、とミサカは悔しさに打ち震えつつ紙コップの中身に目を奪われます」

 ずいっと顔を近づけられ、美琴は身を引いた。どうも自分が買った分で売り切れになってしまった
らしい。手に持った紙コップと、一心にそこに目を向けている御坂妹の顔を、見比べる。

「あー。そんなに欲しいんなら、あげるわよ」
「よろしいのですか、とミサカはパンを恵まれた乞食のように瞳を輝かせます」
「まあいつも飲んでるし、そんなにこだわるものでもないし」
「ありがとうございます、とミサカはお姉様の優しさに頭を下げつつヤシの実サイダーを受け取ります。
しかし施しを受けてばかりいるのは悪いので、ミサカもパンを恵むような行為に及ぼうと思います、と
ミサカは謎めいた物言いで隣の座席に置いたビニール袋を手に取ります」

 そう言って御坂妹が取り出したのはサンドイッチで、ランチパックと銘打たれた商品だった。ハーフ
サイズのサンドイッチが8切れ、プラスチックのトレイに載っていて、それが一パックごと美琴に渡される。
もともと二人分購入してきていたらしい。

「え、これ私の分? どうして?」

 いろんな疑問が込められた美琴の言葉に、御坂妹はあくまで表情を崩さぬまま、答える。

「そもそもミサカが来たのは、あの少年の診察が点滴や頭の検査で長引きそうだということをお姉様に
連絡するためです、とミサカは当初の目的を明らかにします。その際あのカエル顔の医者から、『一緒に
ランチでもしてくると良いね』とのアドバイスがあったのでミサカはそれに従いました、とミサカは事と
次第を詳しく説明します」
「ふーん、そうなんだ。じゃ、ありがたく頂くわ」

 パックを開け、美琴は玉子のサンドイッチを頬張った。それはするすると胃の中に収まって、どうも
自分で思っていた以上に空腹だったらしいと気が付く。

(そういえば、朝からろくに何も食べてないわ。朝ごはんの時は食欲湧かなかったし、食べたものといえば
確かあのお粥ぐらい……ってえ!! ナニ変なことをピンポイントで思い出してんのよ私は!?)

「なぜお姉様は唐突に頬を赤らめているのでしょう、とミサカはその精神構造に疑問を抱きます」
「へ? や、そんな、なんでもないわよ。だ、だいたい顔なんて赤らめてないって気のせい気のせい」
「いえ、気のせいとかそういうレベルではなくれっきとして頬が染まっているのですが、とミサカは
眼前の事実を指摘します」
「な、う、ほ、ホントに? な、なんだろー不思議ね。アイツの風邪が伝染ったのかなあー」

914とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:54:34 ID:4.ABAxMA
 不審そうにしている御坂妹の視線から逃れるように、美琴は明後日の方を向いてサンドイッチにぱくつく。

「そうです、とミサカは忘れていた疑問を口にします。どうしてお姉様があの少年の付き添いをしている
のでしょう、とミサカはよこしまな想像をしつつ問い掛けます」
「んぐっ!」

 口いっぱいのサンドイッチを思わず飲み込んでしまって、美琴はあまりの苦しさに悶えた。必死で胸の
辺りを叩いてみるが詰まった食道はいっこうに開通しない。御坂妹から差し出されたヤシの実サイダーを
一息に飲み干して、ようやく事無きを得る。

「はあ、はあ……。あ、アア・アンタ! よこしまって何よよこしまって!? そんなことあるわけない
でしょ!? なんであんなヤツと……」
「ふむ、やはりミサカの想像はそれほど間違ってはいないようですね、とミサカは結局ヤシの実サイダーを
飲めなかったことに落胆しながらも冷静さを保って分析します」
「話をきけ!」
「はい、聞きますとも、とミサカは即答します。ゆうべは一体何があったのでしょう、あの少年が風邪を
引いたのは一体どういう理由があってのことなのでしょう、とミサカは立て続けに質問を仕掛けます」
「え、あ、うう。それは……」

 叫んで上げた訴えを軽々しくカウンターされて、美琴はたじろぐ。気の弱すぎる幼女のようにうろたえて
いたが、御坂妹はそんな哀れな姿など一切気に留めていないようで、ずずいと美琴に顔を近付けた。

「ど、どうでもいいじゃない別に!! たまたまよ、たまたま! 外でアイツがフラフラ歩いているのを
見かけたから、放っておくのも寝覚めが悪いし、それで仕方なく、私は……」
「ふむふむ、あの少年が心配だったのですね、ミサカはお姉様に代わって当時の精神状態を回顧します」
「し、心配って、そんなことは」
「お姉様は相変わらず素直になれないでいるのですか、とミサカはさらに分析します」
「素直って……」
「いい加減に自分の気持ちに正直になられてはいかがでしょう、とミサカは呆れて嘆息しつつお姉様を
諭してみます」
「なによそれ」
 
 弱々しく吐き捨てつつも、美琴は安堵していた。なんだか妙な所に話が飛んでしまったが、事実をはぐら
かすことには成功したらしい。御坂妹は無表情のまま、もそもそとサンドイッチを口に運んでいた。

915とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:55:22 ID:4.ABAxMA
「それでお姉様」
「な、何?」
「そろそろ本当のことを教えて頂きたいのですが……、とミサカは与太話に付き合うのに辟易して真実に
迫ります」
「……。な、何のことかしらー? 本当のこととか与太話だとか、わけが」
「あくまでシラを切るのですね、とミサカはお姉様の言葉を遮ります。仕方がありません、こういうこと
はあまりしたくなかったのですが、とミサカは苦々しく心中を吐露します」

 御坂妹は、美琴の腕を掴んでくる。

「な、何よいきなり。何を企んでるワケ?」
「妹達(シスターズ)は、電気的なネットワークを介して一万の脳を繋ぎ合わせています。そのため
一万人の思考・記憶を共有しています」
「いや、だから」
「このミサカネットワークのキモは同一波形の脳波である、ということですから、ミサカの素体に対しても
同様の結合が可能である、とミサカは結論付けます。つまりお姉様と電気的な回線を繋ぐことができればその
過去の記憶を参照できるはずです、とミサカは換言して説明します」
「そ、そんな馬鹿な話……」

 ありえない、とは言えなかった。実際美琴は他人の記憶を電気的なネットワークを介して覗いてしまったこと
があり、もはやリアリティが云々という水準を超えた話だ。しかも今回に至ってはその相手が自分とほぼ同形の
脳波を持ったクローン体なのである。失敗する可能性の方こそが低いと思われた。
 
(ちょ、ちょっと待って。記憶を参照ってことは昨日のことが全部筒抜けってことよね? あれもこれも今朝
のことだって――それはもう、マズイというかヤバイというかむしろ『恥』死量クラスだわ……)

「ストップ、ストップ!! いくらなんでもそれは悪趣味だし、私だって怒るわよ?」
「脅しに徹するわけですね、とミサカはお姉様の横暴さに失望します」
「横暴なのはどっちよ!? ……はあ。嘘をついたのは悪かったから。別にそこまでしなくたって昨日の
ことぐらい話すわよ」
「遅すぎた提案ですね、とミサカは断言します。だいたいそうしたところでお姉様の話す内容が全てだとも
真実だとも証明することはできません、とミサカは指摘しながらも何かもういい加減めんどくさくなったから
さっさとやっちゃえー」

 反論に再反論するいとまも与えられないまま、ラグナロクもといジハードもといアルマゲドン他呼称多数の
時は間近に迫っていた。ぎゃああ! と、美琴はわたわたと腕を振りつつ叫ぶ。

「待て、待ちなさい! 妹よ!!」
「なんでしょうか。私はどこかの大佐のように3分間も待ちませんが遺言ぐらいは耳に入れてみせます、と
ミサカは己の優勢さに浸りつつ寛大に対応します」
「いや、その、あのね? 電気的なネットワークで繋がるってことは私もアンタの記憶を見ちゃったりできる
わけなんだけどもその辺は良いのかなあ、って。あ、アンタだって誰にも見せたくない思い出やら体験やら
あるんじゃないかと思うんだけど」

 それほど効果のあるやり方とは思えなかった。美琴も接していて思うのだが、彼女たちは羞恥心という
ものについてあまり理解していないきらいがある。往来で素っ裸になったって応えそうにないのだ。

916とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:56:04 ID:4.ABAxMA
「ミサカの思考は9968人に対して常にライブ中継です、とミサカはお姉様を突き放します。今さら
そんなことを気にするのは無意味というものでしょう、とミサカはそもそもそれは恥ずかしいことなのか
と首を傾げます」
「ぐうぅ! やっぱそうなるかああ!! でも、でもね、ちょっと考え直した方が良いと思うなあ! ほら、
アンタ達は生まれた時から見つつ見られつつだから気にしないのかもしれないけどさ、そうなるとネットワーク
と関係ない私に見られるのってそれとはわけが違うことだと思うのね!?」
「と、言いますと? と、ミサカは話を聞くのにも疲れてきたけど律儀に訊き返します」
「え!!? ……ええと、例えば好きな人のこととか考えてみよう! なんだかこんな姿見られたら恥ずかしい
なあとか、こんなとこ見られたら失望されるかも嫌われちゃうかも、とか!」

 もはや自分の喩えが正しい答えを導くかすらわからず混乱中の美琴だが、意外にも御坂妹の動作がピクリと
停止する。

「一般的男性にはそのような心理的傾向が存在するのでしょうか、とミサカは目を見開き驚愕してみせます」
「そ、そうよ! 直接誰かに聞いたわけじゃないけど、血とか! あんまり量が多いと引いちゃうとか聞いた
ことあるし! やっぱ変な幻想持たれてるとこあるし、そういう女の子の秘密とか知っちゃうとショックなこと
もあるんじゃないかなあ!?」

 もはや大声で話すような内容ではないのだが、美琴はそこのところまで構っていられなかった。病院なので
もしかしたらOKなのかもしれない、根拠はないが。

「だから、そこから推測すればわかるように他人に記憶を覗かれるということは色々とリスクがあることで
あって、それに!」
「それに? と、ミサカは次々と知らされる事実に戸惑いを隠しきれません」
「……私が誰かに言わないとも、限らないし」
「!!」

 御坂妹はびくんと身体を震わせ、しばらくのあいだ驚嘆に瞳を揺らしていたが、やがて掴んでいた美琴の
腕を離した。たいそう悔しそうに、膝に置いた両手を握りしめる。

「やはりクローンであるこの身ではオリジナルには勝てないのでしょうか、とミサカは己の敗北に絶望して
歯噛みします」
「た、助かった……」

 激しい攻防の末勝利を得た美琴は、どっと疲れを感じて息をつく。しかし忘れてはならないのは、この世
のどんな争い事だって無傷で切り抜けられるものなど少ないということだ。御坂妹が、美琴のブレザーの袖
を引っ張る。これは痛みある勝利である。

917とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:56:46 ID:4.ABAxMA
「では、昨日の詳細についてお聞きします、とミサカはめげません」
「あん? アンタまだそんなこと言ってんの? もとはといえばアンタが私の提案を反故にしたんだし、今さら
話すなんてどう考えてもイーブンじゃないわ」
「勘違いしてもらっては困るのですが」
「え?」
「ミサカはまだ負けたわけではありません、とミサカは自己の発言を撤回します。あくまで圧倒的有利だった
状況が崩され対等になったに過ぎないのであり、リスクに目をつぶるならばこちらの攻撃手段はいまだ健在
なのです、とミサカはお姉様の不安を煽ります」
「ぐうう」
「さて、どうするのでしょう? と、ミサカはニヤニヤと肉を切らせて骨を断つようなクレイジーな心境で
お姉様に問い掛けます」
 と言いつつどこまでも無表情に喋る御坂妹である。

 それで美琴はといえば、……折れた。これ以上無益な争いを続ければ本当に暴走されかねなかった。もともと
美琴の持ち手はほとんどブラフだったわけだし、本気で攻められれば痛手を負うのはむしろこちらなのである。
今回の事と次第を、話す。とはいえ全てを話したのでは結局変わらないので、それは当たり障りない部分と概要
だけをかいつまんで説明するものに留まったが。
 
「ショックを隠しきれません、とミサカは戦々恐々として震えてみます」
「な、何よ。ショックってそんな大袈裟な」

 とはいうものの、御坂妹が上条に好意らしきものを抱いているという事実は美琴にだってわかっている。
しかし、「好意らしきもの」はどのみち「好意らしきもの」でしかないというのがもともと持っていた考え
だった。ヒーローやアイドルに憧れるようなものである。自分たちを救ってくれたという、ある種のカリスマ的信仰。
 けれどもどうもそれは違うらしいと、美琴は思う。入浴やら夕食やらお泊まりやら、やましい出来事は
何もなかったと言われてなおショックを受けるというのは、あまつさえ「戦々恐々として震える」という
のは、かなり具体的な恋愛感情を伴って起こる反応ではないだろうか。

(インデックスの件もそうだけど、あの巨乳地味女とかこの子とか。なんというかやっぱ競争率が――って
何よその競争率っていうのは!? いいいや、わかってるけど! じ、自覚してるけど!! それでもなんか
こうこっぱずかしいというかムズムズしてくるというか、ぎゃああー)

 誰も何も言っていないのに心の中だけで勝手に悶える美琴である。そんな様子を知ってか知らずか、御坂妹は
青く震える唇を開く。

918とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:57:33 ID:4.ABAxMA
「お姉様にそれほど女性としての魅力が欠けていたなんて……、とミサカは今度こそ絶望に打ちひしがれます」
「……。いや、どういうことよ?」
「翻ってクローンであるミサカも女性的魅力に乏しいということなのですね、とミサカは苦々しく認めることに
します」
「ちょ、あ、アンタは私にケンカ売ってんのかあああ!!」
「失礼な、これはとても深刻な話なのです、とミサカは真剣な眼差しでお姉様を見つめます」

 静かな言葉だったがその気迫は本物で、思わず美琴は口をつぐんでしまう。そこに、御坂妹の無表情が迫る。

「考えてもみてください、とミサカは再考を促します。一つ屋根の下の入浴、夕食、その上お泊まり。酔って
倒れたお姉様の看病までして一つの間違いも起こっていないのはむしろそれこそが間違いでしょう、とミサカは
男は狼なのよと暗にほのめかします」
「ぐうぅ!」

 ずいぶん年代物のネタを挟んでくる御坂妹だったが、密かに気にしていたことを真っすぐ一突きされた美琴
はそこに言及しない。だって、その通りなのである。自分と上条の間にはちょっと不自然なくらいイベントが
発生しているわけだが、そのどれもが踏み込んだ展開に進むことがない。昨日のアレにせよ今日のドタバタに
せよ、その場だけで騒いで結局何事もなく終わるのである(別に何か起こって欲しいというわけではない。
断じて、キスの一つぐらいなどとは考えていない)。まあ、それはそれで安全な人間である証明だと美琴は上条の
ことを見直すのだが、同時に首も捻ってしまう。

(ていうか……なんだかんだであの子は押し倒してたのよね、アイツ)

 この際だから認めてしまうが、インデックスはかわいい。もともとイギリス系の人種だから目鼻立ちは整って
いるし、瞳はまるまると輝いているし、ちみっちゃくてコロコロしている。むろんそれは太っているというわけ
ではなくマスコット的な愛くるしさを伴ったものであり、手乗りサイズにでもなろうものなら頬ずりしたくなる
程である。
 それに、外見の魅力だけではない。ちょっと食いしん坊なところはネックだが、内面の良さはそれを補って余り
ある。彼女には、壁がない。人と接する時に当然あるはずの、相手を恐れるからこそ発生する類の壁が、存在しない。
人の前に素直に立って、素直に笑い、素直に怒ってみせる。博愛の素質とでも言うべきなのか美琴にはよくわからない
が、本当にわけ隔てなく、共に呼吸していることを証明するような自然さでこちらの領域に踏み行ってくる。
 そんなインデックスの性質を理解したから、どうして上条が彼女を守ろうとするのかも、美琴にはよくわかった。
インデックスという少女はある種の神聖さすら見出せるほどに無邪気で、だからこそ危なっかしい。彼女の歩いた
場所が醜い現実の温床でないとは、限らないのである。

 なんか、全然違うな。そう美琴は思う。パーソナルリアリティのままに世界を見て、己の力を担保に困難に
立ち向かう美琴とインデックスは、どこまでも対照的に見えた。誰かに守られるような、守られることによって
守るような正当なヒロインの資格には、彼女こそが相応しいように思われた。

 また知らず知らずにため息を落として、それは何色の吐息だろうか。
 美琴は、嫉妬している。インデックスの魅力を認めたのに、いや認めたからこそ自分にはないものを幾つも
そこに見出してしまって、妬む。彼女のように振る舞えない自分にどうしようもない歯がゆさを感じてしまう。
足りないものばかりを見つけてしまって、それしか目に映らなくて、どんどん自分がつまらない存在だと錯覚
していく。空っぽになったランチパックのトレイに目を落として、言葉にするものが何もないまま。

919とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:58:36 ID:4.ABAxMA
「そんなことでへこたれるのですか、とミサカはお姉様のヘタレっぷりに呆れてみせます」

 御坂妹の声音はいつもと変わらないが、そこには攻撃的で挑発的な響きが隠れていると、言えなくもない。

「私は。別に。へこたれてなんか」
「認めることもできないのですか、とミサカは嘆息するばかりで言葉も出ません」
「み、認めるってなによ。だから私は、ていうかアンタに何の関係があるのよこんなの!」

 御坂妹は、最後に残った一切れをかじって、言う。

「やはりミサカはお姉様とは全く別の道を歩む必要があるようです、とミサカは前方を注視して宣言します」

 御坂妹の言葉につられて美琴が顔を上げると、待合室の奥の廊下、検査を終えた上条がこちらに歩いてくるの
が、見えた。

 御坂妹はランチパックのトレイを両手に支えたまま、上条のもとに駆け寄る。その振る舞いから、彼女の宣言の
意図は明白だ。美琴は負けじと追いかけようと思って、でも、その足は動かない。心に相反して彼女の身体は動か
ない。足も膝も関節も腰も、まるで傷付くのを恐れて巣に留まるみたいに。
 美琴は、怖い。上条に見られるのが怖い。その視線に自分がさらされてしまうことを、恐れている。美琴を
映した上条の瞳が、それが一体どんな思考を伴うものなのか、うまく想像できない。より正確に言うならば悪い
想像をすることしかできない。だから美琴は、見ているだけだ。自分と同じ服装の、自分とそっくりな後ろ姿を、
ただ見つめているだけだ。御坂妹と上条が何か話しているのを、竦んだように眺めている。

 彼女は上向きに首を傾いでいて、彼はわずかばかりの笑みをこぼした。御坂妹が食べかけていたサンドイッチ
を、上条は特に抵抗する様子も見せないまま、食べる。軽い失望のような感触が胸に沁みた。浮かべるのはいつかの
ホットドックと、今日のお粥。

 そうして美琴は気が付く。自分は自分の知る以上にあのシーンを大切にしていたのだと。身もふたもなく言う
ならば、あれは上条との関係がどれほど進展したかを示しているバロメーターなのだ。それを軽々と乗り越え
られて、その喪失感に、美琴は驚いた。

 でも、そんな美琴を置き去りにして、事態は加速する。美琴の視界には常盤台の制服を着た後ろ姿があって、
いまだサンドイッチを頬張る上条の顔を見ることができて、そこに、キスがある。右頬、少し背伸びをして、
彼女の唇が届く。一瞬の出来事で、彼だって最初何が起きたかはわからない。次第にそれを認識して、驚嘆
したふうにごくりと口の中のサンドイッチを飲み込む。

 さっきの美琴のように喉を詰まらせて苦しむ上条をよそに、御坂妹は横顔だけこちらに向けて、美琴に目をやった。
相変わらずの無表情だったが、ほらほらどうだと言わんばかりの瞳が美琴を見ている。カッと頭に血が昇るのを感じた
が、でも美琴はまだ呆然としたままでいて、御坂妹は病院の奥へ駆け出し、その場を去る。

920とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 11:59:23 ID:4.ABAxMA
 残されたのは、やっと苦しみから解放されて喘いだ上条と、ふつふつと腹に怒りをためる美琴だ。上条は御坂妹
の消えた廊下を不思議そうに振り返りつつ、美琴に近寄る。困ったような笑みを浮かべていて、美琴にはそれは
鼻を伸ばしてデレデレしているようにしか見えない。

「何だったんだろうな、今の?」
「……いふ、持ってる?」
「また先生が変なことでも吹きこんだんかね……って、ん? 何か言ったか、御坂?」
「財布は持ってるのかって聞いたのよ」
「へ? あ、いや。悪い、忘れてきた。どうかしたのか?」

 低い声音に、上条は慌てたふうに答える。裏を返せばそれは上条が美琴を頼りきりにしていたということでも
あったが、美琴はそこに気が付かない。据わった表情のまま自分の財布から高額紙幣を取り出し押し付けて、上条は、
わけがわからないままそれを受け取る。
 美琴は腕を下ろすと、強くその手を握り込んだ。視線はさらに下に向いて、とうとう上条にはその表情が見え
なくなる。

「御坂、どうした?」
「……」

 答えず、美琴は深呼吸をする。次に勢いよく顔を上げて上条の瞳を睨むと、腕を振りかぶった。

「ちっちゃくて悪かったわねええぇぇ! この、馬鹿ァあああ!!」

 鋭い破裂音が待合室に響いて、完全に無警戒だった上条はその場を吹っ飛んで倒れる。美琴はじんと熱を
持った手のひらで後ろ髪をかき上げて、そこにバチバチと音が鳴った。上条から背を向けて、つかつかと
病院の外へ歩いて行く。

 素直になれない。
 正直に言えない。
 アイツは全然気づいてくれない。
 だったら。

(いーわよいーわよ上等だわ。そっちがそんだけ鈍感振りかざすってんなら、私にも手の出し様ってもんがある
ことを見せてやろうじゃないの。そうよちまちま考えてちっとも前進しないんだったら、これはもう走り抜ける
以外にしようがないじゃない!)

 ぶっちぎった思考が、レベル5を誇る頭脳が、様々なシミュレートを開始する。冬を匂わせる秋風が美琴の
顔を撫でて、両頬の二筋分だけを執拗に冷たく責めた。美琴は立ち止まり手の甲でそれを拭うと、再び歩道を
闊歩する。

 彼は自分を選ぶだろうか。想いは果たして実るだろうか。
 嫉妬と愛憎が入り混じる時、ヤンデレールガンの物語は始まる――

921とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 12:07:15 ID:4.ABAxMA
以上です。お粗末さまでした。
一行の文字数を変えてみた。読みやすいかはわからんです。

今回はクライマックスに向けて美琴の気持ちを変化させる必要があったので地の文が多めです。
でも、それだけにするとSSっぽく楽しめないかもという危惧もあり、御坂妹とじゃれさせて
解決してみました。
それでも地の文はかなり多いと思いますが、上手く絡まって楽しく読めていれば良いな、と。

余談ですが、御坂妹の美琴に対する呼称は「お姉様」と書いて「オリジナル」とルビを振るのが
正確です。ただSSだと野暮ったいので「お姉様」に統一することにしました。
まあ、レールガンの9982(?)号はお姉様って呼んでたし違和感はそんなにないかと。

ではではこの辺で失礼いたします〜。いちゃスレなのにこんなんですまんね。

922とある実家の入浴剤:2010/02/20(土) 12:29:46 ID:4.ABAxMA
そうそう言い忘れ。ちゃんと続きありますよー。
いつ終わるのかはもう言わないことにする。
またおわらなかったら終わる終わる詐欺みたいだし。

9231-879@まとめ ◆NwQ/2Pw0Fw:2010/02/20(土) 13:21:52 ID:NatXc.6Q
各作者さん乙&GJです。

>>906
長編としてまとめますので、シリーズタイトルを考えてください。

924■■■■:2010/02/20(土) 14:22:02 ID:0khEMEVs
多くの作者さん達乙です
ここは投下が途切れないから、自分が何か書いたとしても何時投下して良いのか分からなくなるw

925■■■■:2010/02/20(土) 14:41:31 ID:1zhmw9UA
ここまでくるのが早すぎるww

926■■■■:2010/02/20(土) 15:11:06 ID:4.kj5SA6
職人さん達GJです!
会社の休み時間に楽しんでいます!

927■■■■:2010/02/20(土) 15:43:40 ID:0khEMEVs
まだ1話も終わっていないという事実

928■■■■:2010/02/20(土) 15:44:08 ID:0khEMEVs
機動戦士ガンダムAGか

929■■■■:2010/02/20(土) 15:44:21 ID:0khEMEVs
誤爆すみません><

930■■■■:2010/02/20(土) 17:04:36 ID:8FzzGHns
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm9766396
職人さん、これのSS化を…

931スピッツ ◆Oamxnad08k:2010/02/20(土) 17:31:38 ID:Z0k1IUvg
久々に参上 多くの書き手さんたちGJです!
3週間連続テストって…勉強しすぎて頭イタイwww

>>930
書こうと思えば書けるけど著作権に引っ掛かりますね。
あれはあのままで楽しむのが一番かと

932■■■■:2010/02/20(土) 19:03:38 ID:BNYiPPIE
倫理的に問題がありますし
書くのも話題もここで打ち切るのが一番です

933■■■■:2010/02/20(土) 19:55:31 ID:LN5lEsfw
最近スレの空気が悪い。正直気分が悪くなる。けど、職人のssや保管庫の
とある未来の上条美琴(ウエディング)のロゴ、
あと、もしとあるのキャラクターがこのスレを見たらと思うと、どうしても心が緩む。そんな俺は勝ち組だと思うんだ。

934■■■■:2010/02/20(土) 20:53:46 ID:dn03dN6M
>>927
ちょっとばかり長いプロローグを(ry

935■■■■:2010/02/20(土) 22:21:41 ID:Z0k1IUvg
こんな状態ですみませんけど、
ネタ持ってるって人がいたら教えてくれませんかね?
久々に書いてみたいので…

936■■■■:2010/02/20(土) 22:36:25 ID:aqr.ANkI
>>935
18禁ではないものの妙に艶かしい(ry

上条と美琴が付き合った後、初体験むかえるけどその前に
ドタバタなコメディがあるようなやつ読みたいw

本番の描写はベッドの上でAくらいまでにして(というかそれ以上、書いて
しまうとアウトでしょうけど)事後のピロートークとかききたいですね

937■■■■:2010/02/20(土) 22:40:53 ID:v5fPFeHA
>>935
友達以上恋人未満のまま高校生になった美琴さんが見たいですね

938■■■■:2010/02/20(土) 22:41:36 ID:o3KROP76
上条さんが美琴の看護をするとか?

939■■■■:2010/02/20(土) 22:45:03 ID:xJQsGJOc
美琴と当麻が幼馴染とか

940とある奇妙な学園都市:2010/02/20(土) 22:48:36 ID:o3KROP76
あとあれだ!
美琴フュギアを手に入れた上条さんとか

941■■■■:2010/02/20(土) 22:50:15 ID:gpMOTWtM
>>935

美琴に淡い恋心を抱いている公園の悪ガキ視点でみる
美琴と上条さん。なんかニヤニヤできそうだな〜って思ったw

942■■■■:2010/02/20(土) 22:52:06 ID:atvmINAg
美琴にメロメロになってる上条さんとか
…そんなの上条さんじゃねえか

943■■■■:2010/02/20(土) 23:29:36 ID:ZEEjov6k
美琴二重人格とかあったっけ?

944■■■■:2010/02/20(土) 23:33:51 ID:xrxNPGwU
>>935
ひょんな事から、美琴の自分に対する気持ちに気づいて、だんだん惹かれていく上条さんとか
美琴は相変わらずなかなか素直になれない感じのママで

945■■■■:2010/02/20(土) 23:54:03 ID:XiPaCL42
>>935
ラブコメの定番人格入れ替わりとか
もしかして既出かな

946■■■■:2010/02/21(日) 00:23:54 ID:m3JrAq6A
>>935
二人とも転生させて、本筋にほどほど絡ませつつ
サイドストーリーメインでラブコメを交えつつとか・・・

947■■■■:2010/02/21(日) 00:27:43 ID:N0EAqCdI
御坂妹一人称視点。
上条さん攻略のために、最大のライバルと思われる美琴について
ストーキングして観察情報を逐次ミサカネットに投稿。
イチャついているとしか思えないケンカとか、人目がないと思ってマジで
イチャつくところとか目撃してじぇらしいようとミサカは歯ぎしりします。

948■■■■:2010/02/21(日) 00:39:18 ID:xQF48rto
>>947
これができると、美琴のミスや失態を全部反映して情報分析の結果
絶対に美琴には引けを取らないというか、美琴の外見でなおかつ上条さん好みの
女の子ができあがる……はずなんだ。

949■■■■:2010/02/21(日) 00:49:50 ID:N0EAqCdI
>>948
だけどだけど、データを集めて計画を立案している間にトンビに
アブラゲを持って行かれるんじゃないかとミサカはミサカは考えてみたり。

950■■■■:2010/02/21(日) 00:51:02 ID:oPv77Rrc
>>948
でも、単純に真似ただけじゃ超えられない「何か」が足りず、結局美琴といい雰囲気になるんですね。

951D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/21(日) 01:00:06 ID:xQF48rto
 お邪魔します。
どなたもいらっしゃらないようでしたら10分後に
「とどかぬ思い Welcome_to_the_Edge.」の残りを投下します。
前半は
>>897-905
になります。

952■■■■:2010/02/21(日) 01:03:49 ID:cZDkhanI
>>942
「美琴ちゅわぁーん!!」
そういって上条は美琴へとルパンダイブする。
「ちょっ!? ちょっとやめなさいってば!!」

こうですか、わかりません。


>>951
早っ!?
いやっほおおおい!

953とどかぬ思い(10):2010/02/21(日) 01:10:37 ID:xQF48rto
 泣き疲れたらしく、いつの間にか美琴は小さな寝息を立てていた。上条は美琴を起こさないように息を殺して美琴の膝裏と背中に腕を回して抱き上げると、ゆっくりとベッドに横たわらせる。寝息が続いているのを確認してから風邪を引かないように掛け布団をそっと美琴の体の上に乗せてやった後、部屋の電気を消して足音を立てないよう布団の上に腰をおろした。
 上条は色彩を失った部屋の中で自分の顔を両手で覆い隠し、呼吸音を殺しながら一人で考える。
 抱き上げた美琴はあまりにも軽かった。自分以外の体温を持つ物体がこんなに軽く感じられるとは思わなかった。
 俺はこんなにもコイツのことを知らなかったのかと上条はまぶたを閉じて、美琴の言葉を反芻する。言葉の意味は興味と、可能性と、好意と……たぶん最後は愛だろう。
 美琴の思いに応えたいという気持ちに反発するように、何かが上条の心の中で警告音を激しく鳴らす。それ以上近づいてはいけないと上条を制止するその音の名は、きっと常識や道徳だ。
 美琴は一四歳で中学生だが彼女の思いと誇りは何よりも強く、それ故に上条は深い尊敬の念を覚えたが、社会通念はそれ以上の思考を許さない。上条が美琴に近づくことを許さない。中学生に手を出したすごい人がどうというのはただの言葉のあやでしかない。それが二人を取り巻く世界の秩序だ。
 上条にとってインデックスを守り続けるのも、妹達を死なせないために学園都市第一位に立ち向かったのも、使徒十字阻止のために学園都市中を走りまわったのも、風斬を元に戻すために美琴に助力を頼んだのも、何もかも最後は自分のためだった。
 誰かが傷つくのを見るのは辛い。自分が戦って誰かが助かるから拳を握る。美琴や神裂のように結果に恩を感じられたりしても、それは上条にとって何もかもが終わった後のおまけのようなものだ。
 美琴の思いに応えたい、と言う気持ちと。
 その思いに応えてはいけない、という気持ちが心の真ん中でぶつかり合う。
 美琴に思いを傾けられるだけの理由が欲しい。この右手が必要と言われるのと、同じように理由が欲しい。
 美琴は、誰かを好きになるのに理由はいらないと言った。だったら、美琴が上条を好きだから上条が美琴を好きになると言うのは、理由ではなく依存だ。美琴のように理由なく誰かを好きになるのは感情のなせるわざで、その感情を美琴に向けてはならないと常識が警告音を鳴らす。男が女に向ける感情は、その逆とは違うから。
 どっちを向いても、上条には行き止まりのように思えた。妹達の時のように新しい道は見つからない。
 夜の闇の中で、遮光カーテン越しの人工の光が上条の心に影を生み出す。
 影の中で、闇よりなお濃い影が新しい道を塗りつぶして隠す。

954とどかぬ思い(11):2010/02/21(日) 01:10:58 ID:xQF48rto
「起ーきーろー、朝だぞー」
 誰かに頭を叩かれた。
 上条当麻は何だよ痛えなと思って叩かれたところに手を当てながら目を開けると、鼻先一〇センチのところに御坂美琴の顔があった。
「ぬぉうわっ! 痛てっ!」
 上条の最初の奇声は目の前に美琴の顔があったことへの驚きで、次は驚いて起き上がった直後美琴の額に向かってヘッドバットをお見舞いした痛みで上げた声だ。痛い痛いと布団の上で仰向けになってのたうち回っていると、上条の足元でも美琴が同じようにおでこを両手で押さえて痛いじゃないのよ馬鹿とうずくまっている。
 上条はガバッと起き上がり、腹の底に力を込めると
「おい御坂、テメェ朝っぱらから何してやがる!」
「朝ごはんがもうすぐできるから起こしに来たのに、頭突きで返すってのは何なのよ!?」
「え? ……朝飯?」
 昨夜のことを考え込んでいるうちにグースカ寝こけて、いつの間にか朝になっていたらしい。
「コタツを部屋の真ん中に持ってくるから、とっとと起きて布団片付けてくれる? あと歯を磨いて顔洗ってきて。アンタは補習があるんでしょ? さっさとしないと遅刻するわよ?」
「……あ、ああ。悪りぃ」
 額の痛みと寝起きの回らない頭を左右に振って意識をはっきりさせると、布団を畳んで押し入れにしまい、そこから着替えを引っ張り出して洗面所で服を脱ぎながら歯を磨いて、最後に顔を洗った。抜け殻になったパジャマを洗濯かごに放り込んで顔をタオルで拭くと、コタツの天板の上にはできたての朝食が二人分用意されていた。
「…………まともな朝飯がある」
「あの、それって何かものすごく引っかかる言い方なんだけど?」
「違う違う! たぶんお前が考えてる意味じゃなくって、朝起きたら誰かが作ってくれた朝飯があるっていいなあって話だよ! 俺夕べの残りでやっつけたりコンビニで買って済ませたりすっから、こういうの見たことないんだって!」
 かつての同居人インデックスは家事能力ゼロの食べる方専門だったので、食事の支度をするのは上条の仕事だった。五和も泊まりこみ護衛に来てくれたことがあったが、第二二学区のお風呂施設に行って、その後アックアとの戦闘に入ってしまったのでご飯を作ってもらえたのは一回きりだった。だから上条にとって女の子の手作り日本の朝ごはんと言うのは、これが初めてだ。
「……と、とりあえず時間あんまりないんだし、いいから食べましょ」
 美琴に背中を押されるようにコタツに足を入れ、お箸を持って両手を合わせていただきますの挨拶をする。美琴が差し出すご飯茶碗を受け取って猛スピードでかきこむと、そんなに急いで食べたら喉に詰まるわよと注意された。
「何もそこまでがっつかなくても誰も取らないわよ?」
 二人暮らしの食卓は何かと戦争状態だったせいか、その頃の習慣が抜けきっていなかったらしい。悪りぃと言って食べるスピードを落とすと、はいお茶と言って緑茶の入った湯のみが差し出された。
 何というか、上条のかゆいところに手が届くようなタイミングだ。
「……うまい」
「よかった」
 上条の対面で正座した美琴がお箸を持ったまま小さく微笑む。
「お前何時から起きてこれ準備したの?」
「全部だと一時間前くらいかな」
「……全部?」
「アンタのお弁当作ってたから」
「……弁当?」
「高校って給食ないんでしょ? 今冬休みだから学食もやってなさそうだし、お弁当箱勝手に引っ張り出しちゃったわよ?」
 大覇星祭で一緒に昼食を摂ったとき、美琴の家事スキルの高さを匂わせる発言を聞いた覚えはあるが、他人の台所で一時間で飯炊いて本格的な和食揃えて弁当まで作れるもんなのか?
「あー、えっと、……サンキュー。助かる」
 上条が頭をガリガリかきながらお礼を言うと、どういたしましてと対面から嬉しそうな美琴の笑顔が返ってきた。

955とどかぬ思い(12):2010/02/21(日) 01:11:20 ID:xQF48rto
 左手で美琴の手を握り、右手で弁当箱が入って厚みが増した学生鞄を持つと上条は部屋を出た。美琴は私服姿のままで、美琴のキャリーケースはいまだ上条の部屋の隅に取り残されている。
「アンタの部屋の鍵貸してくれる?」
「部屋の鍵? ……何すんだよ。まさか玄関のドアに紐で釣った水入りバケツを仕掛けたり」
「私は小学生かっ! ……そうじゃなくて。制服に香水の匂いがつかないようにしてたから、アンタを学校まで送ったら戻って着替えて、これから一回寮に戻ろうと思うのよ。その後は私時間空いてるから、アンタが補習に出ている間にアンタの部屋掃除しといたげる。いろいろ取っ散らかしちゃったしお台所も綺麗にしておきたいしね。で、アンタが帰ってくる頃に合わせて晩ご飯も作っといてあげる。もちろんちゃんと門限は守るわよ。どう?」
 名案でしょ? と得意げに笑う美琴に上条は力いっぱい疑わしげな視線を向けて
「とか何とか言って、俺の部屋の家捜しする気じゃないだろうな?」
「しないしない。約束する。……合鍵作っちゃおうかな」
「家主に断りなくんなもん作んじゃねえっ! ……ったく」
「でもさ、玄関開けたらご飯ができてて『お帰りー』って誰かが迎えてくれるのって何か嬉しくない?」
「御坂……」
 上条は少しだけその光景について考えてみることにした。
 帰宅する上条。ドアを開けて笑顔で迎えてくれる美琴。美琴の背後からは美味しそうな食事の香りが漂い、小さな部屋に暖かな空気が満ちて行く。
 以前の上条だったら『そんなままごとみたいなことはお断りだ』と即座に切って捨てただろう。だが今ならどうだろう。実際に美琴が朝食と弁当まで文句も言わずに作ってくれた、朝の風景を見てどう思う?
 ……そんなに嫌じゃない。
 上条は何だか少し悔しくなって美琴から視線をそらすと、鞄の取っ手を持ったまま学ランのポケットをゴソゴソとあさり
「ほれ、鍵」
 美琴の掌の上にぽん、と鉄の細い棒を落とした。
「預けとく。なくすんじゃねーぞ?」
「大丈夫大丈夫。それに予備作っとけば問題ないわよ?」
「だから俺に黙って合鍵作んなよ! 隣でニヤニヤ笑いやがってお前やっぱりいたずらする気満々じゃねーか! 本当はドアを開けたらバケツじゃなくて火矢とかコインとか濡れた雑巾とかいろいろ飛んでくるんだろ!? それって俺の右手じゃ防げねえからステイルのルーンカードよりタチが悪いだろが!」
 上条と美琴以外誰の姿も見えない朝の通学路で、美琴のあははと言う元気な笑い声と上条のやめろ馬鹿よせと言うわめき声が交差した。

956とどかぬ思い(13):2010/02/21(日) 01:11:40 ID:xQF48rto
 キーンコーンカーンコーンと言うお昼を告げる鐘の音は録音でセットされている。
 放送委員がいなくとも定時になったら校内に流れて、たった一人で教室の机に向かっていた上条はようやく午前中の補習から開放された。
「うあー、お昼お昼お昼ですよっと。それにしても朝飯はうまかったし弁当は御坂が作ってくれたし、これってかなり幸せじゃねーのか俺?」
 ……いや、まだ油断はできない。
 一見普通のお弁当と見せかけておいてその実何を仕込まれているかわからないぞと、上条はまるで白井の『パソコン部品』を受け取った美琴のようなことを考えた。食ったら電気が流れるおかず(ふこう)とかあったら嫌だなー、とおびえながら学生鞄の中から弁当箱を取り出し、包みを開いて蓋をパカッと開ける。
「……あれ? おにぎりと唐揚げと玉子焼きとえーっとこれは……」
 上条がいつも食べる量よりは少なめで、小学生向けのような品揃えだが、見たところ中身は普通のお弁当だ。そして一つとして朝食と同じ品が入っていない。おまけに冷凍食品を使った様子もない。そう言えば昨夜美琴とスーパーに買い物に行った際、美琴はいつも以上にいろいろ買い物をしていたような気がする。
「え? 何だこれ、アイツわざわざ朝飯と別に一人分の弁当のおかず作ったってーのか?」
 本当にそれで一時間で作ったのかよだったらアイツすげーなと感心しながら上条は唐揚げをかじる。
「……うまい」
 それしか言葉が出ない。
 もぐもぐむぐむぐと咀嚼してゴクリと唐揚げを飲み込み、校内の自動販売機で買ったペットボトルのお茶のキャップを空けて口の中に注ぎ込む。
「いくら好きだからっつったって、そこまでできるもんなのか……?」
 今朝の美琴は、上条が知っているいつもの美琴だった。夕べのことがまるで夢だったかのように笑顔で振る舞い、悲痛な叫びをおくびも出さずに上条を学校まで送ってくれた。美琴の事だから言うだけ言ったらすっきりしてあとには引きずらないのかもしれないが。
 ―――昨夜のあれは夢なんかじゃない。現実だ。
 時間が経つのを待って、美琴が成長するのを待って、答えを出すのが一番良い。けれどそれでは『今』の美琴の心に応えたことにはならない。それはきっと逃げだ。
 美琴は自分の心から逃げることなく正直に全てを打ち明けた。上条が今の気持ちを全部打ち明ければ美琴は納得はしてくれるかもしれないが、きっと泣かせるし傷つけるだろう。そんな美琴の姿は見たくない。
 それは結局自分のためであって美琴のためではないと言う考えに行きつくと、上条は午後の授業開始まで残り五分を告げる予鈴を聞きながら、両手におにぎりを握りしめてかぶりついた。

957とどかぬ思い(14):2010/02/21(日) 01:12:03 ID:xQF48rto
「ただいま……」
「お帰り!」
 ―――本当にいた。
 上条が玄関の扉を開けると、エプロン姿の美琴が顔を出して笑顔で上条を迎え入れた。
 ……否、目が笑ってない。
「み、み、御坂? 何でお前そんなにおっかないオーラ放ってんの?」
「……ん? 何か言った?」
 気のせいだったのだろうか。目の前の美琴はニコニコと笑って

 玄関のドアがバシンッ! と目の前で大きな音を立てて閉められた。

「あれ? ……俺もしかして閉め出された?」
 上条の前で玄関のドアがゆっくりと開き、中からベージュ色のブレザーの袖がにゅっと伸びて、手の中に掴まれた本のような物がぽいっと放り出された。本は重力に引かれバサッという音を立てて通路に落ち、フルカラーのペラペラなグラビアページが見開きでパラパラと冬の風に煽られる。
 それはどこかで見た事のある写真。
 それはどこかで見た事のある角度。
 それはどこかで見た事のあるお姉さん方の陰陽道マガジン。
「……え? あのまさか御坂さん、貴女様はこれをもしや……」
 美琴は鉄のドアの向こうで腕を組んでかんかんになっているだろう。
「頭の二、三ページだけね」
 声が聞こえた。
 口調は普通だか怒ってる。とてつもなく怒ってる。
 扉越しに美琴の殺気を感じる。
「アンタが何でこんなもんを持ってるか説明してもらおうかしらね?」
「それは……………………ッ!?」
『それは土御門からもらったもんであって、大体お前は中学生だから俺は』
 ……言えるわけがない。
「まったく、何で私がいるのにこんなの持ってんのよ。信じらんない。それとも何? アンタの好みはやっぱりこういうのなわけ?」
(だったらお前に見せろって言ったら見せてくれんのかこの中学生!)
 ……そんな事もっと言えるわけがない。
 叫ぼうとした文字を頭の中にある黒板消しでガシガシと拭いて、代わりに浮かんで来た映像を詳細な部分まで妄想しないうちに頭をぶんぶんぶんぶんと横に振って追い払い、上条は拾い上げた雑誌をどうやって保護しようか途方に暮れる。このまま学生鞄の中にしまって部屋の中に持ち込んでもアウト、ドアポストにこっそり落としてもたぶんバレる。隣の部屋のドアポストに落として隠してもらおうかとも考えたのだが、舞夏に見つかったら今度は土御門が危険だ。
「御坂、やっぱり家捜ししやがって……不幸だ」
 彼女とは、彼岸の女と書く。男にとって女は、いつの時代もわかりあえない向こう岸の存在だ。
 男が何故こういう本を欲しがるかなんて、女に理解できるはずもない。ましてやそれが……中学生(みこと)では。

958とどかぬ思い(15):2010/02/21(日) 01:12:38 ID:xQF48rto
「ほら、カバン貸して。お弁当箱入ってんでしょ? ……何これ、プリント? もしかして補習って宿題とかもついてんの?」
 上条が泣きたい気分で美琴に学生鞄を差し出すと、美琴はカチャカチャと鞄の留め具を外して蓋を開け、中に手を入れると弁当箱とB4版のプリントを取り出した。さらに鞄の中をのぞき込んで、先ほどの雑誌を持ち込んでないかどうかチェックする。
 ―――お前は背広の中のマッチを探す嫁か?
「ああそうだ。時間余ったから洗濯物干しといた。畳んでベッドの上に置いといたからあとでしまっといて」
「お前は俺の奥さんかっつーの……」
 上条が苦し紛れに一言だけ呟くと、ボフン! という変な音が聞こえた。どうやら美琴は真っ赤になって立ったまま目をぐるぐる回しているらしい。
「い、いいいい、いやあの奥さんって、私はただ時間があったから掃除と洗濯をしておいただけで」
 美琴は取ってつけたような言い訳を始め、両手がなめらかにわたわたわたわたと動いて否定の意を示す。
「……サンキュー、御坂。でもそんなにあれもこれも頑張るとパンクすんぞ? ちったあ手を抜くことを覚えろよ。この先長いんだから」
 赤い顔のまま目をぐるぐる回しわたわたわたわたと掌を振る美琴にお礼と忠告を伝えると
「この先長いって、……………………どういう意味?」
 何かを期待するような美琴の視線が痛い。
「どうって、どこの学校に行くのかはわかんねーけど、お前も中学卒業したら自炊生活するんだろ? 何もかも全力投球してっと疲れちまうから適当に手を抜けよって先輩からのアドバイスだけど?」
「…………ぬか喜びさせんじゃないわよ、馬鹿」
 目に見えて明らかにがっくりと美琴は肩を落とした。何事かをブツブツ呟くと振り切るようにそこからガバッと顔を上げてニッコリ笑い
「ま、いいわ。ご飯の時間まで間があるし、アンタの勉強見てあげる。これ明日提出なんでしょ?」
「そうだけど……じゃあ、頼む」
「ん、よろしい」
 右手にプリントを掲げ、左手に弁当箱の包みと上条の学生鞄を下げる美琴の後に続き、上条は玄関で靴を脱ぐとしゃがみこんで美琴の革靴の隣に自分のバッシュを揃えて置く。常盤台中学指定の革靴は上条のバッシュより数センチ小さく、じっと見つめているとだんだん遠近感が狂っていくような気がした。美琴の手や美琴の肩、美琴の背中と同じくらい小さいその姿に
「……アイツこんなに小さかっんだな」
 上条は背後で何やってんのよーと美琴が呼ぶ声と小さな革靴を見比べて、自分は今まで美琴の何を見ていたんだろうと恥じ入る思いと共に玄関から立ち上がった。

959とどかぬ思い(16):2010/02/21(日) 01:13:04 ID:xQF48rto
「俺ダメ人間になりそう……」
「元からダメ人間だと思ってたけど。今頃気づいたの?」
「そうじゃねーって」
 寒風吹きすさぶ夜の帰り道で、上条は美琴とつないだ手を振り回しながら弁明する。
「夕べの晩飯だろ? 今朝、昼の弁当、んで晩飯とお前に作ってもらってばっかだから堕落しそうだなって言っただけだよ」
「……それくらいじゃ堕落しないでしょ。むしろもっと作ってあげたいくらいよ。それよりお弁当どうだった? 量足りた?」
「もうちっと量があると助かる。味は文句なし」
「そう……じゃあ次があったら反映させるから」
「そうだな、次があったら頼む」
 上条とつないだ美琴の手がぎゅっと強く握られて
「夕べは……その、えっと、カッコ悪いとこ見せたわね」
 美琴がほんの少しだけうつむいた。
「何が?」
「アンタにいろいろ当たっちゃったなって。片思いで構わないって言ったくせにもう弱音吐いてさ。あんなの、カッコ悪いったらありゃしないわよ。大失敗」
 わざと軽く言ってみせるが本当は話をするきっかけが欲しかったのだろう。美琴は肩を落とし、小さな声で自分の言葉を切り崩すように、端的に必要な言葉だけを紡いだ。
「……お前は弱音吐いちゃいけねえのか?」
「え?」
 何でも良い。美琴を元気づけるだけの言葉が欲しい。笑っていて欲しい。美琴が笑ってくれるから上条も嬉しいのではなく、美琴を笑わせて『そんなの気にすんなよ』と美琴の憂鬱を吹き飛ばしてやれる存在になりたい。自分のためではなく、美琴のために。
「誰かにそう言われたのか? 違うだろ。お前が強いのもすげーのも俺は知ってっけど、お前まだ一四歳だろが。弱音吐いたってそんなの当たり前だろ。それの何がいけねえんだよ? 俺はお前のことを何にも知らねえけど、お前がすげー奴なのは知ってるよ。言えよ、弱音も俺に言いたい事も全部」
「…………うん」
「だから、そのだな……」
 上条は隣で肩を落とす美琴を見て、美琴を元気づけてやりたいと思った。喜ばせてやりたいと、笑わせてやりたいと素直に思った。美琴が上条に何くれとなく世話を焼いてそれが嬉しいと思えるように、上条も友情ではなく心から美琴のために何かがしたいと初めて感じた。
 美琴は自分にうそをつかず全てをさらけ出して正面からぶつかって、心が傷ついてもなお前に進もうとする。そんな美琴を上条は素直に尊敬し、何一つ恥じることなく肩を並べて一緒に歩きたいと思った。上条が手を伸ばして美琴を守るのではなく、美琴が上条を保護するのもはなく、この少女と対等に並んで世界の上に自分の足で立ちたいと願った。
 もっと真っ直ぐに、もっと単純に。細かい理由を全て取り払って、ただコイツのそばにいたい、と。
 美琴の芯に眠る本音と弱さを受け止めて、上条の心の中で警告音が鳴り響いたが、上条はそれを振り払った。
 上条の中で、これまでずっと形を取ることを否定してきた何かがようやく顔を出す。

960とどかぬ思い(17):2010/02/21(日) 01:13:46 ID:xQF48rto
「あ、しゃべってたらもうこんなところまで来ちゃったか。早いなぁホント」
 美琴のおどけたような声で我に返ると、上条は美琴が住む寮の手前五〇メートルのところに立っていた。じゃあね、と美琴が離そうとする手を上条は掴んで引き止める。
「あれ? どしたのアンタ? 何か用でもあんの?」
「あとちっとだけ歩かねえか? ……、お前さえ良ければ寮の前までだけど」
「……うん。あとちょっとだけ、だけどね」
 たったの五〇メートルでは大した言葉を交わすこともできず、上条と美琴は寮の入口の前に並んだ。寮の壁を彩るいくつもの窓からいくつもの光がこぼれ落ちて、少女たちのとまり木がしばしのまどろみから目覚めたことを告げていた。きっとあの窓の向こうでは美琴と同じ頃の年の少女達が笑い、悲しみ、泣いて、夢を見て、明日を思い、今日と言う一日を生きているのだろう。
「手、離してくれないと寮に入れないんだけど」
 美琴が上条の目をのぞきこんで苦笑する。
「何ぼんやりしてんの?」
「……え? あ、あれ? い、いや、そのあの……すまねえ」
 上条はああ悪りぃと謝罪をかすかな音に変えて、名残を惜しむように美琴の小さな手を離した。
 さっきまでは一四歳の中学生で、本気で相手にしてはいけない少女で、友達以上恋人未満の存在だった美琴を、初めて出会う誰かのように心の中に焼き付けて。
 この日、上条当麻は知る。
 この世界に『生まれ直して』初めて芽生えた感情を。今まで誰に対しても持ちえなかった思いを。
「アンタ、一体どうしたの? 何でそんな顔してんのよ?」
 一度は寮の玄関をくぐりかけた足を引き戻し、美琴は上条に歩み寄ると上条の両腕に手をかけて何度も揺さぶる。
「アンタがそんな顔して私を見送るんじゃ、アンタをここに置いて帰れないわよ。しっかりしなさいよ、ねぇ?」
 美琴が上条を正気付けるように何度も揺さぶる。
 美琴の存在が上条の心を何度も揺さぶる。
 夜空の黒と人工の光だけが息をする視界の中で、美琴の姿だけが色づいて見えて
「俺、は……」
 その先の言葉が―――――――――――――――出ない。

961D2 ◆6Rr9SkbdCs:2010/02/21(日) 01:16:56 ID:xQF48rto
 以上になります。


えーと、読んでくださる皆様すみません。
とんでもないところで切れてるのではなく、これはここでいったん切れて
別タイトルで続きます。
大きい枠組みとしては、次で終わります。よろしくお願いします。


>>923 管理人様
では、「Equinox」でお願いします。

962■■■■:2010/02/21(日) 01:23:09 ID:q/CUvKnc
>>961
GJです!
続きが待ち遠しいです!
というか待つのがつらいw

963■■■■:2010/02/21(日) 01:33:27 ID:cZDkhanI
>>961
上条さんが覚醒したぁ!?
いやっほいです。
GJ!!


このスレはやっぱり流れが速いなぁw
もうすぐパート5か……

964■■■■:2010/02/21(日) 01:54:48 ID:sfdeG3.I
>>962
GJ!
とうとう上条さんも自覚したのか?!

965■■■■:2010/02/21(日) 01:57:02 ID:sfdeG3.I
安価ミス
>>961ですね

966■■■■:2010/02/21(日) 01:57:07 ID:bBgoLShk
>>961
GJです。
16巻の美琴が上条に対する感情を自覚するとこに似せているところが上手いですね。
感服します。誰も覚えていない前スレの>>890ですが
スレが早すぎて作ってる間にまたスレが終わってしまう。
期待している人は居ないでしょうががんばってみます。

967■■■■:2010/02/21(日) 02:17:43 ID:.YYHu0wc
>>961
GJです!
心の動きが丁寧に書かれていて、読む度に物語に入り込んでしまう…。
もう、続きが気になって仕方ないです。楽しみにしています。

968■■■■:2010/02/21(日) 03:20:04 ID:9ACnVj9E
乙した!
気になったところとしては、適当なところで改行してくれた方が見やすいなぁと思う
画面全体に文がずらーっと並んでいると見にくいし、画面が文で埋まるってのもどうかなーってね

969■■■■:2010/02/21(日) 03:40:28 ID:7Q7r1B.2
ってD2さん書くのはえーw

970■■■■:2010/02/21(日) 03:40:42 ID:7Q7r1B.2
970
立ててきます

971■■■■:2010/02/21(日) 03:48:29 ID:7Q7r1B.2
                    ,. -:―- 、        *
                  /: : : : : : : : :\
    *             /: : : : : : : !:.|^^ヾミヽ,
       _!_           /: : : :/:./|:.ハ!、__ }:!ヽ
        !        /: :元仆七"  ,  リ   _人_       私とアイツの新しい愛の巣レが立ったわよー
                 <: /f穴! '⌒   ⌒ム   `Y´       
               厶: : `ー:.、  r- ァ 八!            上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part5 
     _人_        厶ィZ:_: > 、ー, ィ{:ゝ         *  ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1266691337/
     `Y´            ,xr<:| \_ノ^TTヽ
               / ヽヽ: ! /|゚|\八! ',    *
            r‐―く.   |: |: :\ | ! /: : :!  \__         n__
            |      |/ : : : :ヽソ: r:ォ|    /     /んれ
  ,. ‐‐、       ヽ.    /: : : : : : : : : :ヾ:|   /\   _,ノ  ’ ノ¨
  ムィ  \____/ \,/ |: : : : : : : : : : : : :|\厶    ̄  ,. ‐'
  ` ー - 、 _      /   ',: : : : : : : /: : : :リ   \__, - '´
          ̄ ̄`´    } : : : : : :./: : : : {
                   / : : : : : : : : : : :∧
                /___: : : : : : :.ノ
              /ー――- ミ ー―┤
             /::::::::::::::::::::::::::::::「 ̄ ¨!
              <:::::::::/:::::::::::::::::::::::::|::::::::::∧
            \:/:::::::::::::::|:::::::::::|::::::::::i::::〉
              \:::::::::::|:::::::::::::::::::::::|/
                { ̄⌒ ー ┬―r┘
            f7>、 ',     !  ,'
            ||:{  \',      | /

972■■■■:2010/02/21(日) 03:52:51 ID:9ACnVj9E
>>971
スレ立て乙です〜

973■■■■:2010/02/21(日) 04:05:32 ID:q/CUvKnc
>>971
乙です!

でもなんでこの時間に、みんな起きてるの?

974■■■■:2010/02/21(日) 04:10:48 ID:EE/2fnmc
そりゃあ、あれだ、、
何か来ないかな~~っておもってるんだろw

975■■■■:2010/02/21(日) 04:38:33 ID:ih5h2.sw
>>971
乙かレールガン

>>973
起きてるYO

976■■■■:2010/02/21(日) 04:40:12 ID:eRPHyQT6
2828しながらラージヒルジャンプをみるためさ…

977■■■■:2010/02/21(日) 04:44:42 ID:xQF48rto
>>971
乙です。

>>976
上条さんと美琴のスキージャンプペアとか想像しちゃったじゃないか!w

978■■■■:2010/02/21(日) 05:09:13 ID:eRPHyQT6
>>977
二人がジャンプ台から超電磁砲で射出されるのか…

979■■■■:2010/02/21(日) 05:23:03 ID:7Q7r1B.2
>>977
うわ、俺も想像しちゃったじゃないか!w
ありがとう

「ちょっと、どこ触ってんのよ!」
「しょうがないだろこの方法しかねえんだから!! てか失敗したら脚折るかもしれないから暴れんな!!」
「で、でもそんな、そんなに後ろから強く抱きしめられたら、私……」
「だー! だから動くなってば! 色々当たるから、上条さん耐えられなくなるから!!」
「私は、もう、とっくに駄目」
 滑走が終わり二人の体が宙へ放り出される。 普通ならば恐ろしい状況なのに二人はそれどころじゃない。
「ふにゃー」
「おいいいいいいいいいい!! このタイミングはねーだろおおおおおおおおお!?」
 上条は美琴のフニャフニャになった体を支えるため更に強く抱きしめる。
 それに比例して地上十数メートルの高さに居る美琴の幸福指数はどんどん上昇していく。
 スキーの板が地面に付くと同時に上条はどうにか二人分の体を支えようと踏ん張る。 が、予想を超える
重力が全身にかかり、更に美琴の靴がスキー板からはずれ大きくバランスを崩した。
「御坂ッ!!」
 自分から離れかけた美琴の体を捕まえ直す。 上条の靴もバキッという音と共にスキー板から外れ、二人
の体は柔らかい雪の上を二十メートル以上転がった。
「……」
「……」
 上条が美琴の頭を護るように抱きしめた状態で二人は横たわる。
 真冬の山、しかも雪の上なのに、二人の体は妙に熱い。
「起きれるか?」
 上条は胸の中の美琴に問いかける。
「………足が、痛い…………ような気がする………たぶん」
「……そっか。 じゃあもうちょっとこのままで居るか」
「うん」
 それっきり二人は黙ってしまう。
 美琴は上条の胸へ、静かに顔を押しつける。
 上条は美琴の髪の良い匂いを静かに堪能する。

――――救助隊が来たのは、その二十分後であった。

980■■■■:2010/02/21(日) 11:24:24 ID:q/CUvKnc
>>979
なんですぐ書けるの?
でもGJ!

981■■■■:2010/02/21(日) 11:25:51 ID:xQF48rto
>>979
それがGJというものだから!
すげーすげー!

982■■■■:2010/02/21(日) 19:01:39 ID:KkK1SJM2


983■■■■:2010/02/21(日) 19:02:39 ID:qi02ZqJs


984■■■■:2010/02/21(日) 19:05:07 ID:bBgoLShk


985■■■■:2010/02/21(日) 19:05:48 ID:UK1LrOqE


986■■■■:2010/02/21(日) 19:07:27 ID:Os262q9s


987■■■■:2010/02/21(日) 19:12:17 ID:2YbTy4QY


988■■■■:2010/02/21(日) 19:13:26 ID:2YbTy4QY


989■■■■:2010/02/21(日) 19:15:15 ID:CDVP09QQ


990■■■■:2010/02/21(日) 19:15:45 ID:LuELvKMg


991■■■■:2010/02/21(日) 19:16:53 ID:9waMjsqA


992■■■■:2010/02/21(日) 19:17:45 ID:QQod9TWk


993■■■■:2010/02/21(日) 19:17:59 ID:7Q7r1B.2


994■■■■:2010/02/21(日) 19:18:47 ID:qi02ZqJs


995■■■■:2010/02/21(日) 19:21:01 ID:ih5h2.sw


996■■■■:2010/02/21(日) 19:26:53 ID:5MEO66SI


997■■■■:2010/02/21(日) 19:28:06 ID:19r1i5n.


998■■■■:2010/02/21(日) 19:29:17 ID:aeScI0qc
埋め

999■■■■:2010/02/21(日) 19:30:37 ID:CDVP09QQ
               ( `八/7ヾ´ : : : : : : : : : : : : : : : : : ` -,、
         /´⌒) O<__ノ:. : : :. : : : /: : /: :/ : : : : : : 〈 ` 、
          `>__7ノ_人ア: : : : : : : : /: : /: :/ : : : : : : : : 〉 : . \
.        _ノ乙_jVL_ノ: : : : : :/: : /: : /: :/: : : : : :|: : : :i : : : : : ヽ
      /   〉 O<_ノ: : : : : :/: : /: : /: :/: /: : : :,ノ: : : :|_: : : : : i: :.
       ヽ、 ,ノ7 .i `ヾ':. : :. : :/: : /: : /: :/: / : : /: :ノ: : } ㍉:.: : :|: :i
          乙_,/、人_,イ:. : : :´/ ̄/ ̄/二=-、: /: :/: : ,イ  Yi : |: i|
         i .://// , |: : : : /レ_,x≠ミ、彡'イ: : : : /_:_:/:j    }l : |: i|
          | :ヽ/,{ (. |: : : / Y ,ん芯 `ヽ レ'/ムイ'⌒`ヽ、 从:八:|
          | : :j|/{ ハ |: : : | { rfっリ        ,,x≠ミ、   //:/  i|
.        | : : |/|ヘ 人: : j   ー ´        ,ん心 ヽ ,イ :/   .リ
       ハ: :|/|/|`ーヽ:i               rf:し'リ  j!´: :/   /
.       / : :ヽL;i/| : : : i人            ,    ー ´  /ムイ   /
      / i: : i : : :Y: : : : :i                    /:′
    / ノ| : : : : : |: : : : ∧     、         .:':.i
   / //|: : i : : :i|: : : : i   、         ´      ィ: : |職人さんたちお疲れ様でした
.   / /八: :i : : :i|: : : : |、   ヽ、      _ .. イ: :|: : |
     レ'  ヽ : : :i| : : : i|三=._   >―r‐:'´: : : ,ノ: :八: |
      ,≠´⌒`ヽ、:j、: : i八三三三ツY:.:ノ : : : i: f : : /: /八
    ,:′     V、ヽ:|  ヾ=二三,人|: |: : :人:|: ノ : 〃  ヽ
.   /        ∨Y:ヽ      `j: ノ: :/:人{´/: /
  /          |/|`ヾ `ヽ、 ∠/,イ: :/ノ  ヽ>x
               |/|        ムイ/|l|       ハ
  {          |/|        / / |l|  /     i

1000■■■■:2010/02/21(日) 19:30:41 ID:7Q7r1B.2
    、  \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V:::|  _,
  、__\`ー`::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄:/
   \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::``::....、__
   __>::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,::/::/:::i::::::::::::::::::::::::::::、:::、::::::::::::、:::::::::::::::_::/
    _>::::::::::/:::/::/:::::/:::::i::::::|::|:/::レ'|::::::::::::i:ヽ、!`ヽ::\!ヽ::``:゙`::::::::::ヽ_::>
-=ニ_::::::::://レ'::::::/:|:::/|::|::|::::ヘ/::::::::::::ト、ト、ヾへヽ:::::``ヽ::\ヽ、__:::`ー‐ァ
   _∠ -‐ァ::::::::/:::::::::::::::::://|:::::::::::::::::::::::| ヽ!ヽヽ::::::::\:::\:ヽ::\::::::::::::::::::::/
     /:::::::::/::::::::::/:::::/:::| |:::::::::::∧j::ハ!_i!_ヽ::ト、::ヽ:::ヽ:::::\\::::::::::::::<
   <__/:::::::::/:|::::/|:ハレ!メ:::::::| |厂>‐j!-、ヽ`ヽ:::\!:ヽ::::::\!::::::::::___>  あのースイマセン
     _/::::::/|/|:::|::├V_レ┼|:::::|  レ '´ ,.ィf云ミ≪_ヽト、:::::::::::、::::`:::::::::\
    -'―‐ァ/:::::::::::::|:::レ´,,. ィ斗ミ、:|      _ぅゞ'_,〃   |::::::::ト、ヽ!::::::::::::ヽ`  >>1000取ったら御坂を
     _∠ -‐/::::::::|:ハ 《 、_ぅゞ' ヽ!             |:::::::ヒ_ ヽ::::::::::__\  嫁に貰えるって聞いて来たんですが…
          /イ::::,.ィ::∧      l |               jィ::∧ 〉 ハ`:::::ト、
        _// 从:ハ     り             レ'{,.´ /:::ト、ヽヽ
           / jハ,ヘ      `ヾ `           ,.--<::::::|  |` `
                  ハ.                    ∧::::::::ト、:|  |
                 、     __,. -―- 、       / /:::ハ:|   -'、
                    ヽ.   'ーー――‐'   /  i::::::! !    \
                      ` .、  `こ´    /  i  レヘ! 〈      \
                       >    ,. '    |  |    ヽ       \
                   / ∧ `ー<     / ヽ               \
                  /   ∧       ∠ 、     \               \
                   /      ハ       | 「 i |     `ヽ、              ヽ、
               「rヘ、    | .j     | | | |     / i\               `  、
             / | |  ||    |      | | .| |     ├ 、! `、               ` 、
          ,.  '′/| |  \   |       | |/| |     i  「 ̄ ヽ                  ` 、
      _,... ' ´  /  | | /\\∧___/´  入\   |  !    ,ヘ
    / ! _,.  '′    〃 /  /  | フ´   /   \\ | /   / ∧

■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■