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希「幸福の赤色」
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すこし肌寒い、夏の終わりの夜。
うちはじいっとその色をみてた。
目の前にひろがる真っ赤な色をみてた。
赤色ってええなぁ、だってお腹が空いてくるんやもん。
一点の曇りなく輝く赤色は、希望も絶望もないまぜにして、うちのお腹をくうくう哭かせた。
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夏休み明けの試験が翌日に控えているのもあって、その日の部活動はお休みってことになったんよ。
一年生組も二年生組も、部室で勉強会を始めとった。凛ちゃんと穂乃果ちゃんは顔を青くして、必死になってノートや教科書やらとにらめっこしとる。
三年生は受験が控えとるから夏休み明けの試験はなしやったんやけど、これやとお手伝いせんといかんなぁ…。
そんなことを考えとると海未ちゃんが「希たちは自主トレをしていて下さい。穂乃果と凛は私たちでなんとかします」って言ったんよ。
まぁ、確かに全員ならともかく、凛ちゃんと穂乃果ちゃんのふたりだけなら大丈夫やねってことになって、三年生組は屋上で軽い自主トレをして帰ったんよ。
家に帰って、トマトとツナで冷製パスタを作って食べている時にぱぁっとええアイデアが浮かんできた。
明日試験を終えて疲れとる後輩のみんなの為に、美味しいもんでも作って喜ばせたろ!
そうと、決めたらうちの行動はすばやくなる。
半分残っていたパスタをずずっと平らげて、てきぱきと片付ける。
自然とうちの顔は笑っているように思えた。
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冷蔵庫の扉を開けて、材料を取りだす。こないだ「これ」をお取り寄せしといてよかった。流石に9人ぶんやと結構な量を用意せんといかんからね。
ほんまはそのまま食べても美味しいんやけど、もう夏も終わりやしこっちの方がきっと美味しいやろうから、ちょっともったいないけどええか。
それを適当な大きさに切り分けて、綺麗な木綿のふきんにくるんでぎゅっと絞っていく。
力をこめてぎゅっとしぼるとボウルの中に真っ赤な絞り汁がひろがっていく。
綺麗やなぁ…やっぱり、生きている赤色ってほんまに綺麗や。うち、この色をみてるだけで幸福な気持ちになれるんよ。嬉しいときも、悲しいときもこの色をみてさえいればうちは平気。うちの幸福はこの色につまっているような気にさえなってくる。
…あかんあかん、みとれてたら絞り汁が痛んでまう。あわてて、残りも同じようにして絞って、ちょうど3kgの絞り汁がとれた。
この絞り汁を大鍋にうつして火にかける。
さらにハーブティーに使う乾燥ジャスミンを15個に砂糖700g、コーンスターチ270g、シナモンスティックを3本いれて沸騰させる。
沸騰したら、軽く煮詰めてあら熱をとる。
煮詰めたそれは、赤色もさらに深まってる。どろどろの溶岩みたいなそれを、使い捨てのゼリー容器に流し込んでいって冷蔵庫で冷やしたら完成やね!
ふふっ、明日がたのしみやねぇ♪
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一体なんですかね…
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次の日、綺麗に固まったそれを部室の冷蔵庫に隠しておいたんよ。
部活の時間になって、みんなが部室に集まるとみんな完全に疲れきった顔をしとった。一年生組と二年生組はわかるけど、えりちとにこっちはなんでなんやろ?
話を聞くと、うちが帰ってからもふたりして自主トレをしとったらしいんやけど、いつのまにかダンスの持久力競争になってたらしくて体力を使い果たしてもうたんやと。…もう、あんまり無理したらあかんやんか!
ま、ちょうどええかな?みんなの曇りかけている顔をぱぁっと明るくするとっときのもんを冷蔵庫から取りだす。
宝石のように真っ赤に輝くそのゼリーはジェロ・ディ・メローネ(gelo di melone)。
季節外れの入善すいかで作ったゼリーをみた皆は、顔を期待感でわくわくさせとる。
じゃ、みんなで食べよか!
うちの幸福の赤色のゼリーは、食べた皆の顔をにっこにこにしたんよ。その皆の顔みてたらうちとっても幸せな気持ちになってな、すっごく嬉しかった!
やっぱり、赤色はうちの幸福の色やね!
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今日はカーニバルなのかな?(壊)
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1個数千円する高級スイカをゼリーにするとはたまげたなぁ
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クッソおいしそう
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スイカが丸ごと入る冷蔵庫持ってるとかさすがやな
しかも3kgの果汁とか幾つ必要なんやろ
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