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希「うちの初恋」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2014/08/05(火) 11:02:37 34SWr856
うちの初恋はね、この競り場で始まったんよ。五歳の頃やったかなぁ。
お相手は、二歳の男の子でヨシオ君っていう子でな、おめめがくりくりしててとっても可愛らしい子やったわ。

うちはその日、親戚のおじさんに「のんちゃん!牛、牛見に行こうや!」って言われて手を引かれてここにきたんよ。
うちは、動物園に来たみたいな気持ちになって、キャーキャーさわいどったらしいわ。ほんで、その日競り落とされる牛さんがいるスペースをおじさんと一緒に見にいくとな。

そこに、ヨシオ君はおったんよ。

うち、ヨシオ君を一目見るなり大好きになってもうてな!ヨシオ君にかけよって、ギューッて抱きついてしまったんよ!驚いたおじさんがうちをひきはがそうとしたんやけど、ヨシオ君は意外にも嫌がらなくてな。競りが始まるまでうちはヨシオ君に抱きついとったんよ。
競りが始まって、三十分ぐらいやった。おじさんが急に「のんちゃん、おじさんトイレ行きたいわ。さみしいから一緒に来てくれんか?」って言い出してな。しょーがないから、一緒に行ってあげたんよ。
競り場に戻ってくると、ヨシオ君がおらんかった。

うちは、おじさんの手を振りほどいてヨシオ君を探しに、はしりだしたんよ。
もう、必死になって、いろんな所を探してな。ようやっと、トラックに乗ったヨシオ君を見つけたんよ。うちはどうしてもヨシオ君と一緒にいたくて、トラックの荷台によじ登って潜り込んだんよ。
そこにおったヨシオ君にまた抱きついていたら、なんだか眠くなってきてもうて寝てしまったんよ。

そして目をさましたときには、またヨシオ君はいなくなっとった。トラックから降りると、おっきな建物があってな。そこにヨシオ君がおる!って確信したうちはその建物の中に飛び込んでいった。
気もちわるくなりそうなにおいのするそのたてもののなかをすすんでいくとな。

そこに、ヨシオくんはおったんよ。

よしおくんは、まっかになってて、つるされててな、いろんなひとたちがよしおくんをずたずたにして、よしおくんのおなかのなかみを、ばけつにいれて、よしおくんのあたまがばけつからのぞいてて…………。

えりち、ないてくれとるん?
ありがとうな、えりちはやさしいな。

……そんで、そんでな、うちはもう、わーっ!!!って大きな声を出してヨシオ君に抱きついとったんよ。
そこにいた人たちにすぐに引き剥がされて、叩かれて、怒鳴られて、引きずられて事務所へつれていかれてしまったんよ。うちのつけてた迷子カードを見たそこのおばちゃんが、お母さんに連絡してくれてな。うちは、迎えに来たお母さんに手を引かれておうちに帰ったんよ。
帰るときに、バケツに入ったヨシオ君のお顔がちらっと見えてまた、うちは泣き出してもうてな。血と涙でぐちゃぐちゃになったかおをお母さんがタオルでふいてくれたんよ。

…うちはその日から思ったんよ。大好きな人ができたらな、絶対に離さんようにして、自分のもんにするんやって。
だからな、えりち、うちはえりちのこと絶対に離さん。誰がなんと言おうと、えりちはうちのもんや。だからねえりち、うちと一緒にいてくれる?
…うん!えりち、ずーっと一緒やで!


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