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藤井厳喜氏の新刊と総会での議論
1 名前: ナニワのだるま 投稿日: 2003/11/24(月) 14:12
国際政治評論家の藤井厳喜(昇)が新刊「戦略思考ナビゲーション・世界地図の切り取り方」光文社ペーパーバックスという本を出されました。

内容は専門の国際政治と地政学に基づいてわかり易く説明されています。特に地図と用語を用いて政治を力学を展開しているところは彼独特だと思うが相変わらず考え方に偏りを感じせずにはいられないところも目立ちます。私はこの本をベースにしてしばらく議論を展開してみようかなと思っております。

ちょうど先日の総会の議論といろいろかぶりますので。

2 名前: シナジー 投稿日: 2003/11/24(月) 14:57
藤井厳喜(昇)氏は、最近石原慎太郎を評価したり、政治的スタンスが右寄りに
なってきてますね。
私自身は、まだ自分の政治に関する見方というものが、しっかり確立していない
有り様なのですが「国益をどう捉えるか」というところで変わってきてしまうものなのでしょうか?
それは近代国家を1つのホロンと捉えた場合、その自己保存傾向を重視するのか、全体従属の面を強調
するのかといった違いでしょうか?
文明論であれば、梅棹忠夫(生態史観)、川勝平太(海洋史観)、伊東俊太郎氏などに影響を受けましたが。

3 名前: 大久保利剣 投稿日: 2003/11/24(月) 15:18
藤井さんは何冊か読んだことがあります。
同世代で、期待してましたがここの所なんか迷い道に入ってしまったという
感がしています。
最近はどこからの情報源か、国際金融資本が明治維新を指導したという論評が
出回っていますが、この図式を当てはめると当節の改革派もこの種の指導下に
あると見たほうがいいように見えてきます。威勢がいい石原さんなどはこの種の
人たちには担ぎがいがあるのでしょう。
藤井さんもさしずめ「維新パターン」にはまってしまったように思えます。
欧米コントロール的な皇国史観ぶりなどを超えたところでの愛国心を発揮して
いただきたいものです。

4 名前: シナジー 投稿日: 2003/11/24(月) 15:44
>国際金融資本が明治維新を指導したという論評

副島隆彦氏も『属国・日本論』などでそういう議論を展開していましたね。
坂本龍馬の背後にはグラバーがいたとか。
特定の外国に基準をおいて日本を批判するか、日本には日本独自の基準がある
とするか、どうもどちらかに一方的に偏りすぎた議論が多いような気がしま
す。
藤原肇さんもフランスを基準にされているから、正直違和感を感じる部分も
あります。エネルギー史観(ウェットウェア・ハードウェア・ソフトウェア)
の部分はすんなり入るのですが。

5 名前: ONE-ZERO 投稿日: 2003/11/24(月) 22:08
藤井「昇」さんの意見にはなるほどと思う点が多かったのですが・・・。

6 名前: 野田隼人 投稿日: 2003/11/25(火) 08:43
藤井昇氏が思想的に変わったのは坂口三郎の民族主義に染まってしまったが故ですが、そのあたりの経緯は藤原博士が本掲示板でも述べています。

http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/fujiwara/speakup/board/ongaeshi.htm

私も嘗ては藤井氏に注目し、著書も6冊ほど拙宅に揃ってあります。しかし、“転向”以降の藤井氏の著作は残念ながら目を通したことがありません。『石油危機と日本の運命』の出版以降、“野ごころ”を基底に置きつつ、首尾一貫した立場を貫いて来られた藤原博士と対照的に、大きく転向した藤井昇氏の違いは何処から出たのか興味があります。

7 名前: シナジー 投稿日: 2003/12/22(月) 10:43
ナニワのだるまさん、気になさらずに議論を展開してみてください。
私も先日『戦略思考ナビゲーション』を購入しました。
同じ光文社ペーパーバックスから浜田和幸氏の『ウォーター・マネー』も
出ているので、これも購入してみようかと思います。
水素エネルギー関連の内容だと思われます。

8 名前: ナニワのだるま 投稿日: 2003/12/30(火) 20:01
藤井厳喜氏は本の中で「中国艦隊はマゼランより先に世界一周をしていた?」という項目があります。明朝の時代に鄭和がマゼランより先に世界一周を果たし米カリフォル二ア沖まで達していたという新たな研究成果を紹介されていますがその研究者はギャビン・メンジースという中国系英国人で最近その著書「1421」ソニーマガジン社が発売されています。高校の世界史の教科書では鄭和は大艦隊を率いて海外遠征をしたというところまでは脚注か何かベタ記事的に載っていた記憶がありますが、実は「1421」によるとアメリカ大陸がコロンブスによって発見される1492年よりすでに約70年前には中国人(鄭和はトルコ系のイスラム教徒)、一部の朝鮮人、日本人(主に琉球系)らとともに大航海the Great Navigation Ageを成し遂げていたことになるという。藤井氏はもしそれが真実なら我々が習った世界史はヨーロッパのローカル史に過ぎなくなると説明し、帰すが刀で明朝がシーパワーになる技術力を有していながらシーパワーたらんとする国家意志を欠き鄭和の大事業を簡単に忘れてしまったという事実は中国人がどうしようもなく大陸の民でしかない、民族性を証明していると結ばれています。

私見では今の国際政治つまりグローバリゼーションは15世紀のこの時期あたりから形成されていったものでヨーロッパの植民地拡大、帝国主義の始まりを意味するターニングポイントであるから上のような研究は興味深いです。

 http://www.1421.tv/index.htm

9 名前: 田中 投稿日: 2004/03/26(金) 22:34
藤井さんですが、日本国内で食べていくためには
多少右翼的なスタンスが必要なんでしょうね。

10 名前: 高田保雄 投稿日: 2004/03/27(土) 08:46
なかなかいける「世界地図の切り取り方」

書店で本書を手に取った(潜在的)読者に、著者は問いかける:『なぜ、(あなたの、あるいはあなたの会社の)ビジネスがうまくいかないのか?なぜ、(あなたは)世界の動きが理解できないのか?なぜ、日本人は世界から相手にされないのか?それは、私たちが学校で習った地図が時代遅れだからだ。(内は投稿者)』そして、背表紙で続けて言う:『いまの日本人が国際社会international communityのなかで、戦略性のない間違った行動、間違ったビジネスを展開してしまうことが多いのは、自分たちの頭の中にある「地図」だけで行動し、他国の人たちの頭の中には「別の地図」があるということを忘れてしまっているからである。本書で提示するのは「別の視点からの地図」である。こういう地図があることを知り、ひるがえって私たち自身の位置our positionが確認できれば、この混沌chaosとした時代を自信と戦略をもって生きていくことができる、と筆者は確信している。』
(藤井厳喜 著 『世界地図の切り取り方』光文社 刊

「世界地図の切り取り方」非常に興味深く読みました。著者が民族主義に染まって
いるとか、日本で飯食っていくために右翼的なスタンスであるとか、まあ色々言えると
思いますが、名前を「昇(のぼる)」から敢えて「厳喜(厳しく、喜ぶ、喜び)」に改め、日本をベースに評論活動を続ける筆者のこの本は、今の日本の中学生や高校生、大学生が読むには至極まっとうな内容(教科書として使える)ではないか、と思っています。自分の現在位置を知り、ゴールにたどり着くために地図が必要なことは、誰もが経験的にもわかっていることです。だがしかし、もしあなたの持っている地図が、古かったり、現実に合わなかったらどうなる?どうする?困るでしょ?不安でしょ?著者はきわめて単純、しかし重要とも言える切り口で日本をとりまく世界の政治・経済の課題の「見方」をわかりやすく解説していると思います。
(以下 次の投稿に続きます)

11 名前: ナローバンド 投稿日: 2004/03/27(土) 08:57
藤原肇の本は難しくていかん。あれじゃ在庫と返品の山、出版社・書店・編集者泣かせだ。

12 名前: 高田保雄 投稿日: 2004/03/28(日) 19:30
ナニワのだるま さん からの引用:
私見では今の国際政治つまりグローバリゼーションは15世紀のこの時期あたりから形成されていったものでヨーロッパの植民地拡大、帝国主義の始まりを意味するターニングポイントであるから上のような研究は興味深いです。(引用おわり)

ナニワのだるまさん、ご存知かもしれませんが、以下の本をご紹介したいと思います:

The Measure of Reality: Quantification of Western Society, 1250-1600
By Alfred W. Crosby
『数量化革命』ヨーロッパ覇権をもたらした世界観の誕生 紀伊国屋書店

ヨーロッパ帝国主義が比類なき成功をおさめたのはなぜか?
理由のひとつは、科学革命に先立つ中性・ルネッサンス期に、人々の世界観や思考様式が、宗教的なものから普遍的・効率的なものに変化していたことだと著者は言う。
数字、機械時計から楽譜、遠近法まで、幅広い分野に目配りしながら、そうした変化をもたらした数量化・視覚化という革命を跡付けてゆく西欧精神史。
(腰帯から引用)

13 名前: 尾崎清之輔 投稿日: 2004/03/28(日) 22:45
高田さんの御紹介にございます「数量化革命」は私も読んだことがございまして、
「簿記」の項にはルカ・パチョーリについて触れられておりました。
中東へ旅して学んだパチョーリが複式簿記の成果に繋がったことにつきましては
この掲示板を訪れる方々にとっては周知のことと思いますが、この本には直接的な
表現は無かったものの次の内容がございましたのでここに転載させて頂きます。

****************************** 引用開始 ******************************
ルカ・パチョーリは、しばしば複式簿記の父であると称される。だが、複式簿記が
考案されたのは彼が生まれる100年以上も前のことだったので、彼が発明したの
でないことは明白である。けれども、複式簿記の知識とヨハネス・グーテンベルクが
開発した技術を結びつけて、初めて印刷物の形で複式簿記を解説したのがパチョーリ
であったことはたしかである。

(中略)

当時のヴェネツィアは、ヨーロッパにおける商業技術と簿記の革新の中心地だった。
公教育に代数を最初に採り入れた自治体は、ヴェネツィアとみなされている。
このように数学を学ぶには最適の都市の一つで、パチョーリは教え、かつ学んだ。
その合間に、生徒の父親の代理として外国に出張したと推測されている。
その旅によって、彼は新しい商習慣を直接見聞する機会に恵まれたことだろう。
****************************** 引用終了 ******************************

14 名前: ナニワのだるま 投稿日: 2004/03/29(月) 15:30
高田さん、本の紹介有難う御座います。私はまだその本を手にしておらず、確か大型書店の現代思想のコーナーの辺りで見かけた記憶があり本の表紙は西洋画が描かれていたと思うのですが定かではありません。腰帯の引用部分に「数字、機械時計から楽譜、遠近法まで幅広い分野に目配りしながら、そうした変化をもたらした数量化・視覚化という革命を跡付けていく西欧精神史。」とありますがこれは脱藩道場総会で時々話題になる・・・「スタンダードを作る者が明日の支配者(ルーラー)になる。」に繋がり非常に興味深い視座であると考えます。一年前の総会においてはちょうどイラク戦争が始まった時期でしたがこの時に藤原博士が我々にある質問をされたことを皆さん覚えておられますか。大量破壊兵器疑惑を巡って米英側と欧州側の攻防が繰り広げられていましたが、その時メディアが展開する西洋対イスラムとか正義対テロリズムとかいう報道とは一線異なるスタンダードによる覇権争いについて話し合われました。そのキーワードは「虚妄からの脱出」に登場するSIについてでした。これについては後日投稿したいと思います。

15 名前: 高田保雄 投稿日: 2004/03/30(火) 06:22
どうも。日々仕事に追われるわれら中堅サラリーマンはとにかく寝る間をおしみ乏しい時間をやりくりして投稿せざるを得ず。
さて、

日本に複式簿記が導入されたのは、明治になって、福沢諭吉が米国の簿記教科書『帳合之法』として公刊したのが最初、とされている。しかしこれは単式簿記。複式簿記は、アレキサンダー・アラン・シャンドの『銀行簿記精法』が日本で最初の複式簿記の書物、とされている。
しかしこれに対し、ルネッサンス時代のイタリアで発展した複式簿記→安土桃山時代の日本に宣教師を通じて伝わる→各藩の経営や、鴻池、三井 ほか 豪商の経営の下敷きとなった。家康も、徳川幕府の経営に応用。といった面白い説を展開するのが「複式簿記の黙示録」岩辺晃三 徳間書店 1994年。

自分にできる範囲で、楽しく投稿を通じたコミュニケーションを図りましょう。でないと続かないよ〜ん。(笑)
an old veteran.

16 名前: 高田保雄 投稿日: 2004/03/30(火) 06:33
中世ヨーロッパの地図では、東を地上の楽園エデンの園のある方角として、またエルサレムのある東が上になっていた(いわゆるOT地図)。で、(地図上などで自分の位置を確かめることを)オリエンテーション、自己の立場を見定める、to orient oneself  という(以上 数量化革命 より)。
「地図の切り取り方」もこの部分をもう少し突っ込んで書いたら、面白かった(深みが出た)のに、と思った次第。

ナニワ〜さん、SIの投稿、お待ちしています。尾崎さん、日本に簿記がどのように伝わったか云々ほか、後日 あらためて書きます。
気楽にいきましょ〜

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