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『藤原肇 宇宙との対話』
1 名前: 野田隼人 投稿日: 2003/11/15(土) 06:28
一昨日、IBDという国際ビジネス・コンサルティング会社のホームページにアップされた拙稿をスレッド[空海の夢]で案内しております。先月はクラシック音楽がテーマでして、その際に中野雄著『丸山真男 音楽との対話』という本を紹介しております。ご参考までに、本投稿の最後に転載致しますので、一読いただければ幸いです。

藤原博士にも『丸山真男 音楽との対話』をプレゼントさせていただいたことがありますが、藤原博士を囲む沢山の集いの一つである脱藩道場の総会のメンバーの中から、『丸山真男 音楽との対話』に匹敵する名著を執筆してくれる人が出現することを期待しております。


【書評】
『丸山真男 音楽の対話』(中野雄著 文春新書)

『丸山真男 音楽の対話』は、下手な音楽のプロも足元に及ばぬほど音楽に造詣が深かった丸山眞男と音楽との関わりについて述べたものであり、丸山眞男の息遣いが伝わってくるような本である。特に以下の丸山の発言は強く筆者の印象に残る。

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音楽という芸術のなかに『意志の力』を持ち込んだのはベートーヴェンです。『理想』と言ってもいい。人間全体、つまり人類の目標、理想を頭に描いて、〈響き〉=〈音響感覚〉でそれを追求し、表現する。凄まじい情熱ですね。これを『ロマンティック』と言わずして、他に何がありますか。『ロマン』は単なる情熱やセンチメンタリズムではない。人間の理想の追求が『ロマン』なのですから――。
『丸山真男 音楽の対話』(p.75)
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「音楽のなかに『意志の力』を持ち込んだベートーヴェン」という丸山の発言を目にした読者は、今までとは違った角度からベートーヴェンを聴くようになるのではないだろうか。まさに、「人間全体、つまり人類の目標、理想」という丸山の発言にあるように、ベートーヴェンは18世紀という時代精神の申し子であり、紛う方なきフリーメーソンであった。

なお、今までに丸山眞男の一連の著書に目を通したことのある読者は既にお気づきの通り、丸山の著書群には〔執拗低音(バッソ・オスティナート)〕という音楽用語がたびたび登場する。この執拗低音(バッソ・オスティナート)は、丸山思想を真に理解するためのキーワードとされており、執拗低音(バッソ・オスティナート)とは何かということについて教えてくれるのが本書だと思う。したがって、本書は丸山の音楽に対する熱い思い、丸山の息遣い、人となりが伝わってくる本というだけではなく、真摯に丸山眞男の思想を追求したいという人にとっては欠かせぬ本なのである。その意味で、本書は生まれながらにして名著の地位を約束されたといっても過言ではない。

2003年10月吉日  野田隼人

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