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10thgin yats\etaF
1 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:07:57
1.表現を逆にする
2.肯定文を否定文(またはその逆)にする
3.名詞を入れ替える
4.キャラを入れ替える
5.突然場面を切り替える

※名前欄かメール欄に入れ替わったキャラ、あるいは元ネタの場面のどちらかを入れる事

前スレ
9thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1136269748/
過去スレ
8thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1132928110/
7thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1126791828/
6thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1121553839/
5thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1115519595/
4thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1109402588/
3thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1105058355/
2thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1100704160/
1thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1092275302/

関連スレ
月姫ネタ総合スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1062166843/
(型月と関係ないキャラとの入れ替えはこっちで)
【型月・竹箒】月姫のセリフを改造するスレ【総合】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1064922153/
(セリフだけを改変する場合はこっちで)
体は剣で〜を改変するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1075780913/
(UBWの呪文だけを改変する場合はこっちで)
自作SS・絵晒しスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1074693014/
(文章の多くをオリジナルが占める場合はこっちで)

あと、原文を探すのに役に立ったり立たなかったりするスレとして
お気に入りの台詞を上げるスレ ※ネタバレその2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1110812695/l50

2 名前: アンリ→ギル 投稿日: 2006/01/28(土) 00:12:13
 仮に、何かの間違いで中にいるのが人類史上最弱の魔術師で、
 凡人を下回る戦闘力を有していても問題はある。
 最強の我は最弱の魔術師に劣る。
 何故なら―――

 ―――自慢じゃないが。
   贋作者相手なら、我は世界最弱だ。

3 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:18:19
 赤い燐光は風に乗って舞い散り、境内は夜だというのに明るすぎる。
 淀んだ空気と充満した死の気配。
 花鳥風月を好む漢やゴスロリ好き奥さんのホームだった柳洞寺は、しかし。
 この上なく対照的な二人によって、ギチギチの険悪空間になっているのであった……!
「って、一人増えてるぅ……!?」
 シロウの背後。
 頼れる背中をキラリと光らせる、あの赤い外套の男は間違いなく磨耗した漢……!
「フ、宝具十六個目トレース・オン。
 よいラストバトルだ、面白いように宝具が投影できる。ところでエミヤシロウ、今日それで何個目の投影だ?」
「うるさいなあ、なんでアンタに答えきゃいけないんだ。英雄王は俺の相手だ、座に帰れよ座へ」
「はっはっは。まだ宝具を八個投影しただけか。
 時代遅れの投影スタイルではそんなところだろうよ、と、十七個目トレェェェス・オォォォン!」
「だからうるさいって言ってるだろこの磨耗ヤロウ! 英雄王が警戒するだろう英雄王が!」
「ふ。才能のなさを他人の所為にするとは落ちたなエミヤシロウ。英雄王が警戒するのなら慢心させて固有結界を発動すればいいだろう。
 もっとも、愚直であるおまえに固有結界のなんたるかが理解できるとは思えないが、おっとすまないね、十八個目トレェェェス・オォォォン!」
 ヒャッホー、と歓声をあげる赤い外套の男。
 ……おかしいですね。
 童心に返っているシロウを見るのは、こんなにも苦々しいものだったのでしょうか……。
「…………と言うか、なんですかあれは」
 ……ホント、我がマスターの将来の姿ながら目を背けたい。
 上下ともに守護者ばりにキメキメの外套と鎧、悪趣味な固有結界は磨耗に糸目をつけない99%磨り減った瓦礫の王国。
 投影は固有結界の結晶、術者の心象世界によるタイムラグなし能力劣りなしおまけに直視しただけで剣を複製ですか……!
「……いいですね。アレ、私が失ったカリバーンですよね……」
 赤い男の投影速度はギルガメッシュの宝具発射速度と同等か、あるいは凌駕するほどの異常なのだ。
 直視さえしておけばほとんど固有結界がやってくれるという、もう戦いに来ているのか結界の調子を見に来ているのか判断のつかない反則ぶり。
 その他各種能力付加もすべて最高峰の一級品。
 その丘にある武具の数、目測で二十万とんで三個というキチ○イ沙汰だ。
 ちなみに、言うまでもなくぜーんぶ投影によるバッタもんである。
「はっはっは。この分では夜明けを待たずして勝負がつくな! 軽い準備運動で始めたのだが様子を見るまでもない。
 なあエミヤシロウ、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「はいはい、できるもんならやってみろ。
 そん時は二度と遠坂に“答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから”と言わない」
「よく言ったエミヤシロウ。
 ふふ、こんな形でおまえと雌雄を決する時がこようとはな……! どちらが英雄王限定最強か、ここでハッキリさせてやろう!」
 ノリノリのアーチャーに、いいからどっか行ってくれないかなあ、というシロウ。
 ……ほら、言わんコトではない。
 ヘンなコト貫くからヘンなのが寄ってきたんです。
 二人の邪魔をしないよう、こっそりと境内を後にする。
 どうかシロウが世界と守護者の契約するようなコトがありませんように。

4 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:20:51
磨耗ヤロウに吹いた。ひどいw

5 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:31:35
英雄王限定最強て謙虚www
片っ端から投影されてへこんでんだろうな英雄王…

6 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:32:50
新スレ早々にワロタwwwなにこのフェイカーwww

7 名前: 大絶滅! ついに蘇る真祖に潜在した究極の一の伝説!1 投稿日: 2006/01/28(土) 00:35:51
 ―――時はきた。星の存亡を賭けた吸血種の戦いを始めよう。
 貴方は選ばれた最強の魔法使いゼルレッチ。
 後見している姫君の恋人・遠野志貴の棲む三咲町へやってきたのだが、
 『元祖うっかり』によって、かつて封印したカレイドステッキ(男性用)を再び手に取ってしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 悲嘆にくれる貴方の前に、以前倒した筈のアルティミット・ワンが現れた……!
 戦うならこのまま14へ。引き返すなら14へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも古い言語の為、何を言っているかはまったく分からなかったのだが、
「な、なんてコトだ……! このステッキが世界存亡の鍵を握るアイテムで、なんだか今日はその存亡が迫る日で、使わなかったら世界は真世界に逆戻りするじゃと……!!!!?」
 とまあ、概要はおおむね掴めた。
「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだ選ばれた魔道元帥よ! あと待っていた、貴様を待っていたぞ我が宿命の怨敵よ!」
「貴様、何者―――!?」
 あまりの暴風に目を開けていられない。
 街の隅っこからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。
「ハハハハハハ!
 何者かだと?何者かだと?何者かだとぉ!
 分からぬか、そうか分からぬよなムチムチギャルなこの身! すごいぞ美しいぞー!
 見るがいい怨敵、大いなる月のエネルギーとか世界の負の想念とか、そうゆうのが溢れてもうタイヘンだ!」
 吹きすさぶ風、荒れ狂う稲光、激震するビルディング。
 そしてカーカー鳴くカラス。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアーマゲドンに星も激動しているというのかッッッッ!!!!? 
「ま、まさか貴様は―――朱い、月……!!!?
 バカな、貴様は確かに滅ぼされた筈だ!」
「滅びておらぬわー!
 いや、確かに一度は貴様に不覚を取って死んでいたが、同域の後継が発生した故蘇ったのだ勇者ゼルレッチよ!
 ククク、かつて残した“自らを潜在させる真祖という種”が生まれる固有結界がこの身を蘇らせたのだ。んー、見てほしいものよなこの滾るマイパワー」
 ORTを連想させる魔力の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?
「って、姫君ーっ!?」
「ふふふ、気持ちはわかるがそう驚くでない。
 そう、今までの私は私ではなかった!
 かつてのこの身がムサいおっさんだとしたら、今からのこの身はピチピチのビュリホーギャル!
 いや、羽化を待つ芋虫だとしたら、脱皮した後の蝶なのだ!」
「……………………」
 つまり新手のニューハーフというコトだろうか。
 あと人の反応(ツッコミ)ぐらいちゃんと聞いといてもらいたい。
「まあよいわ。
 ともかくワシらは星に選ばれた戦士なんじゃな!? なんか宿命のライバルなんじゃな!? ワシは現世界の為に、貴様は真世界の為に戦うんじゃな!?」
「ナイスリアクション! 話が分かるではないか宝石! さてはこういうノリ好きだな貴様!」
「おう! 結構ヤケだが勝ったり負けたり悪に義憤したり善を鼻で笑ったり某ジョータローとかオラオラオラオラとか大好きじゃ!
 そんなワケで、行くぞ朱い月……!
 貴様だけは絶対に許さないッッッッ!」
「ク―――吠えるではないか御老体。
 だが今日もこの身の方が強い、覚醒した「究極の一」の力を思い知るがいい……!
 行くぞ怨敵!
 そのステッキを掲げたら貴様の威厳(ターン)エンドだ……ッッッ!」

8 名前: 大絶滅! ついに蘇る真祖に潜在した究極の一の伝説!2 投稿日: 2006/01/28(土) 00:36:38
「……………………」
「……………………」
 嵐は去った。
 先ほどまで姫君に憑依していた朱い月も消え、イヤになるほど冷静になるワシと、コスチュームアップしたワシを見て爆笑を必死でこらえている姫君。
「じゃ、じゃあいつものマンションに戻ってるわね」
 うむ、と頷きだけで答える。
 男には言葉をかけてほしくない時があるのだ。
「と、遠野家への地図あげるわ。気が向いたら志貴んちにも遊びにきてね」
 すたこらと街の向こうに走りいく姫君。
 あ、こらえきれずに笑い転げた。
「……………………ワシもホテルに帰るか」
 ここ三十分ばかりの記憶をまっさらに消去して街を後にする。
 こうして朱い月によるプロジェクト・真世界のピンチは去ったのだが、彼奴の最大の見せ場と、威厳と引き換えにそれを防いだ勇者の物語は、姫君によって片っ端から言いふらされて、忘れられることは永久になかったのであった、orz。

9 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:40:27
>トレェェェス・オォォォン!
死ぬほどワロタ。GJ!!

10 名前: 槍→弓 弓→士郎 士郎→イリヤ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:43:27
 城は豪勢。
 強いシャンデリアの光は昼夜の感覚を麻痺させる。
 空調は頬に心地よく、バーサーカーの叫び声が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 午後のティータイムを好むお嬢様や仕事に励むメイドの清涼剤になりそうな私の城は、しかし。

 この上なく対照的な二人によって、ギチギチの険悪空間になっているのであった……!

「って、三人増えてるぅ……!?」

 私のバーサーカーと懸命に戦うアーチャーの背後。
 頼れる腰をセイバーにカクカクと振りながらリンを愛撫する、あの赤毛の少年は間違えなく私の弟……!

「よし、時雨茶臼で十六発目フィニッシュ。
 流石城のいいベッドだ、面白いように腰が振れる。
 ところで後ろの男、今それで何殺目だ?」
「うるさいぞ、なんで貴様に答えなくてはならないのだ。
 うるさいから余所でやれ余所で」
「はっはっは。まだ十二の命中三回殺しただけか。
 時間稼ぎのファイティングスタイルではそんなところだろうな、と、十七発目フィニィィィッシュ!」

※フィニッシュとは終えるの意味です。出す、発射する、イク等とお考えください。

「だからうるさいと言っているだろうがこの色情魔!気が散るだろうが気が!」
「は。腕のなさを他人の所為にするなんて落ちたなアーチャー。
 気が散って戦えないというなら耳栓でも投影すればいいだろ。
 もっとも、時間稼ぎが精一杯のお前にこの夢色空間を無視できるとは思えないけどな、
 おっとわるいな、十八発目フィニィィィィッシュ!」

 ヒャッホー、と歓声をあげる私の弟。
 ……おかしいなあ。
 色に溺れてる弟を見るのって、こんなにも苦々しいものだったかな……。

「…………てゆーか、なにあれ」
 ……ホント、我が弟のコトながら目を背けたい。
 左右ともに両手に花ばりに抱かれているセイバーとリン、
 悪趣味に一回発射する度に四十八手の中から体位を変えている。
 回りにある精力剤は最新技術の結晶、日本では絶対に通らないであろう薬品による
 赤玉なし後遺症なしおまけに使って直ぐに効果のある即効性ときたか……!

「……うわぁ。アレ、最新発売の精力剤だよね……」
 私の弟の精力剤は前作の主人公の絶倫と同等か、あるいはそれを凌駕するほどの逸品なのだ。
 使用さえしておけばほとんど勝手に勃ってくれるというもの、
 もう快感を得たいのか機械の様に出しているのか判断のつかない効き目ぶり。

 その他各種大人のおもちゃもすべて最先端の高級品。
 あのセットお値段、一括で二十万とんで三千円というキチ○イ沙汰だ。

 ちなみに、言うまでもなくぜーんぶ投影によるバッタもんである。

「はっはっは。この分ではお前の決着を待たずして魔力補充が終わるな!
 軽い準備運動で始めたのだが様子を見るまでもない。
 なあアーチャー、別にこのままセイバーをイカセつくしても構わないんだろう?」
「はいはい、できるもなのならやってみるがいい。
 その時には貴様を二度と正義の味方と呼ばないがな」
「よく言ったアーチャー。
 はは、こんな形でお前と雌雄を決する時がくるなんてな……!
 どちらが本当の主人公なのか、ここでハッキリさせてやるよ!」

 ノリノリのシロウに、いいからどっか行かないかな、というアーチャー。
 ……ほら、言わんコトじゃないの。
 ヘンにカッコつけるから次のシーンで濡れ場に食われちゃうんだ。
 
 バーサーカーとアーチャーの邪魔をしないよう、こっそりとシロウの方に参加する。
 どうかこの弟が正義の味方から性技の味方に改名することがありませんように。

11 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:52:23
初っぱなからからなんだこのクオリティの高さは。どうしちまったんだこのスレwww

12 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:54:04
>バーサーカーとアーチャーの邪魔をしないよう、こっそりとシロウの方に参加する。
ちょっと待てイリヤwwwwww

13 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 00:56:13
>ヘンなコト貫くからヘンなのが寄ってきたんです。

ある意味UBWの全てがこのセリフに凝縮されているな。GJ!!

14 名前: 前スレ910での有言実行 投稿日: 2006/01/28(土) 01:26:05
 石の如き両足を動かして、眼下の群れに一歩踏み出す。
 後退はない。
 あと一歩踏み出すだけで彼女は死地に飛び込む事になり、

「―――んー。やる気に満ち溢れてるのは結構ですけど、少し力みすぎじゃないですか?
 お姉さんがやる気を出すとここ一番でポカが出るので、もう少し力を抜いてやってほしいものですが」

「……え?」

 その、あまりにも想定の外にあった声に、ものの見事に出鼻をくじかれた。

「―――ちょっと。
 なんでアンタがここにいるのよ。それに、ポカをやらかすのはわたしよりアンタの方が深刻でしょう」

 ふん、と鼻を鳴らす。
 彼女は足を止めて、振り向かずに悪態をつく。

「いえ、ボクにはそういう欠点はありませんね。あれは成長の過程で得たものみたいですし。
 それから、ここにいる理由は簡単です。新都の方で待ち受けているよりも、ここで一気に片付けた方が楽ですから。お姉さんだって、そっちの方が性に合ってるでしょ?」
 「―――む」

 にぱにぱと笑う少年の言は、確かにその通りだ。
 そう、やるからには徹底的にが彼女の方針。
 何分持ちこたえるだの、境界を防衛するだの、そんな受身の戦略は、そもそも彼女には合っていないのである。

「……そっか、やるからには殲滅戦ってワケね。
 ここは境界線じゃなくて最前線だった。
 ……失敗した。そんなコトを間違えてちゃ、そりゃあ肩も重くなる」

 ぐるん、とのびやかに肩を回す。
 状況は九回裏無死満塁、打順は二番から、一点許せばサヨナラゲーム。
 守る事だけに専念しようとして縮こまっていたピッチャーは、しかし。気合も新たに。バッターを切って捨てる喜びに満ちていた。

「―――OK。付き合ってくれる、ギルガメッシュ?」
「ええ、どんな子供もいつかは大人に成長するもの。
 これでようやく―――」

15 名前: 前スレ910での有言実行 投稿日: 2006/01/28(土) 01:26:54
「―――最後に。元の姿で閉幕を飾れるというものだ」

 吹き荒れる暴風。
 黄金の殲滅者は己が力を誇るように、自身しか持ち得ぬ宝剣を掲げる。

「……調子が戻ったのは良いけど。うっかりは程ほどにね。うっかり同士撃ち、なんて死んでも死にきれないわ」
「貴様にだけは言われたくないが。
 時計がずれているのをうっかり忘れて、あの贋作者を呼び出したそうではないか。
 ―――まったく、うっかりにも程がある。貴様の魔術師としての力は買うがな、これでは迂闊に近寄れもしない」
「はは。こっちだって、アンタにだけは言われたくないわ」

 益体のない会話に、にやりと口元がほころびる。
 真下には、橋の中頃まで進軍した骸たち。
 火ぶたを切るには、ここが最後の機会である。

「にしても多すぎるか。
 負ける気はしないけど、さすがに取りこぼしは出るし―――
 よし、いざとなったら橋ごと沈めよう!
 何か問題はある、金ぴか?」
「その呼び名以外に異論はない。我が出てきた以上、抜け出るモノなどいる筈もあるまい。
 我と貴様の役割は大軍の殲滅。一匹でも取りこぼしが出れば、橋ごと沈めてしまえばよかろう」

 刻印が光を宿す。
 彼女はしなやかに、最短の手順で宝石に秘められた魔力と魔術を解放する。

「――――――Anfang」

 乖離剣が軋みをあげる。
 英雄王は惜しみなく、己が財宝と宝剣を振りかざす。

「“天地乖離す――――――」

 黒く染め上げられた地上に、大輪の花が咲く。
 開幕を告げる魔術の炎と暴風。それは地上の星となって、ソラにかかる道筋を照らしあげ―――

 判りきった結末を語る事はない。
 10月11日の夜。
 慢心王とあかいあくまの手によって、冬木大橋は崩落を迎えた。

16 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 01:37:39
>14 前スレの>14を書き込んでから書き込めばよかったのに。

17 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 01:38:16
>>15
>慢心王とあかいあくまの手によって、冬木大橋は崩落を迎えた
ちょwwこのうっかりコンビはww事態を更にややこしい方向に誘導してどうするwww

18 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 01:52:15
>>16
そこまで含めてのうっかりということだ。つまりメタうっかり。

19 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 01:55:57
>>15
グッジョーーーーーーーー!!
橋沈めるのが当然なふたりのうっかりっぷりに笑ったww

20 名前: 14 投稿日: 2006/01/28(土) 01:59:17
>>16
ああ、確かにそうすれば良かった。
つーかこの頃メタうっかりが多くてorz

21 名前: 士郎→美綴 槍→実典 投稿日: 2006/01/28(土) 03:41:46
 空気は静謐。
 静かな空間は時間の感覚を麻痺させる。
 適度な緊張感は心地よく、練習中の部員の声が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 武道の盛んな穂群原学園を象徴するかのような弓道場は、しかし。

 この真面目な弟によって、若さ溢れる青春空間と化していたのだった……!

「けど頑張ってるよな、実際」
 頼もしいまでの熱心さ。
 あたしも真面目にやってきたつもりだが、練習量では負けているかも知れぬ。
 その熱心さに敬意を払って、自動販売機で缶コーヒーを買ってやる。

「おーい、調子はどうだー?」
「あ、ねーちゃん。ぼちぼちってトコ。二十射やって十二射的中ってところだ」
「ほう。腕上げたじゃないか。最初の頃は的にも届かなかったのに」
「半年以上やってるしな、それくらい上達するさ。
 ま、それにしてもねーちゃんや間桐部長に比べたらまだまだだからな。もっと練習しないと」

 実に真面目である。
 缶コーヒーをパスして、実典の弓を見る……って、あれ?
 よく見ると、致命的に足りないものが一つあるような。

「実典ー、一日中ここで弓をひいてるんだろ? カーボン弓じゃないのか?」
 カーボン弓とは名の通りをカーボン製の弓で、射を何発も射るのに最適の弓だ。
 竹弓に使っている麻弦は、カーボン弓の合成弦に比べて切れやすい。
 何十射と弓を射るなら、カーボン弓の方が適している。

「あー、そっちの方が便利だろうけど、俺はいいよ。弦張りにも慣れておきたいし。
 いや、弦が切れないにこしたことはないけど」

 ぼやきながらも顔が僅かに赤くなる。
 面白いのは実典の純情さ。
 我が弟ながら、お約束通りの反応である。

「ははーん、そうか。間桐が愛用してるのも竹弓だしな。それでお前も竹弓派ってわけだ」

「な、部、部長は関係ないだろ!
 ただ、竹弓の弦の音が好きだって部長も言ってたし、俺もそう思うから!」
 アタフタと言い訳する。
「………………」
 実典、分かりやすすぎ。

「いやまあ、間桐が竹弓派なのは、衛宮の影響なんだけどな」
「ってアイツかよっ!」
 なんてコトだ、と見事にショックを受けた実典。

「……はあ。まあ、せっかく竹弓派になったんだから使いつづけてみなよ。
 ……ところでずいぶん熱心に練習してるけどさ。弓道は楽しいかい?」

「楽しいのもあるけどさ。
 部長が頑張ってる姿見てると、俺も頑張って部長を支えないとって思うんだ。
 それにねーちゃんはともかく、三年になってとっとと引退した副部長や、ちょっと怪我したくらいで止めたようなアイツには負けたくない」

 あ。
 いま、なんか亀裂走った。
 弓道部だけに弓弦のような緊張感を感じてみる。

「いいのかな、そんなコト言って。口は災いのモトだぞ実典?」
「そんなの、ねーちゃんが言いふらさねえかぎり広まらないだろ。
 ……広めるなよ。特に部長には絶対黙っていてくれよ!」

 慎二はともかく、衛宮を悪く言っていたことが知れれば、間桐はどう思うか。
 再び射場に立ち、弓を引く実典。
「外した」
「外したな」
 さすがに集中力が乱れたのか、実典の矢は的から大きく逸れた。

「――――――」
 会話がとぎれる。
 射を始めたのなら、射手の邪魔をするべきではない。

「邪魔して悪かった。引き続き、練習を続けてくれ」
「ああ。差し入れサンキューな」

 弓道場を後にする。
 弟でも、話してみないと分からないもんだ。
 あたしにとって間桐はまだまだ頼りない後輩だが、実典にとっては憧れの女性らしい。

 寺社の類と見間違うような静かな弓道場。
 願わくば、弟の想いが報われてくれればいいのだが。

22 名前: 士郎→美綴 槍→実典 弓→慎二 投稿日: 2006/01/28(土) 03:43:21
 空気は静謐。
 静かな空間は時間の感覚を麻痺させる。
 適度な緊張感は心地よく、練習中の部員の声が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 武道の盛んな穂群原学園を象徴するかのような弓道場は、しかし。

 この上なく対照的な二人によって、ギチギチの険悪空間になっているのであった……!

「って、なんか増えてるぅ……!?」

 実典の隣。
 学園の物好きな女子に囲まれた、あの青いワカメ髪は間違いなく引退したはずの元副部長……!

「フ、十六射目ヒット。
 いい調子だ。面白いように射が当たる。ところでそこのの一年坊、今日それで何ヒット目だい?」
「うるさいッスよ、だいたい何で引退した先輩がいるんスか。うるさいから余所で射てください余所で」

「はっはっは。まだ的中は八射だけか。
 一年坊のヒットスタイルではそんなところだろうよ、と、十七射目ヒィィィット!」

 ※ヒットとは的中の意味です。命中、当たり、ミッションコンプリート等とお考えください。

「だからうるさいですって先輩! 射が乱れるでしょうが射が!」

「ふ。腕のなさを他人の所為にするとはしょうがないな一年坊。本当に集中してるなら周りの騒音なんてきにならないはずだぜ。
 もっとも、一年坊であるオマエにそこまでの集中力があるとは思えないが、おっとすまないね、十八射目ヒィィィィット!」

 ヒャッホー、と歓声をあげる青いワカメと慎二ガールズ。
 ……おかしいなあ。
 引退した部の様子を見に来ているOBを見るのって、こんなにも苦々しいものだったっけ……。

「…………つーか、なんだありゃ」
 ……ホント、我がクラスメイトながら目を背けたい。
 弓道着を着ているのは我が弓道部の一,二年女子、制服姿のままなのは帰宅部か他の部活の女子。
 我が学園ではあまり見かけないあのセーラー服はもしかして西校の女子生徒じゃないのか……!

 ちなみに、言うまでもなく全員、慎二のとりまきの女の子たちである。

「はっはっは。この分だと夕方を待たずして勝負がつくね! 軽い準備運動で始めたんだけど様子を見るまでもないや。
 なあ一年坊、別にこの弓道場の矢を射つくしても構わないんだろう?」

「はいはい、できるもんならやってみてください。その時は二度と先輩に口答えしませんよ」
「よく言った一年坊。
 ふふ、今日の僕は気分がいい……! 未熟な一年坊共に僕が直々に弓の指導してやろう!」

 ノリノリの慎二と慎二ガールズに、いいからどっか行ってくんねえかなあ、という実典。
 ……ほら、言わんコトじゃない。
 ヘンなコト口にするからヘンなのが寄ってくるんだ。

 いいかげん他の部員の邪魔なので、慎二をシメに向かう。
 どうかこの男のせいでこれ以上部員が逃げるようなコトがありませんように。

23 名前: 士郎→美綴 槍→実典 弓→慎二 金ぴか→士郎 投稿日: 2006/01/28(土) 03:45:46
 空気は静謐。
 静かな空間は時間の感覚を麻痺させる。
 適度な緊張感は心地よく、練習中の部員の声が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 武道の盛んな穂群原学園を象徴するかのような弓道場は、しかし。

 今まさに、盆と正月が一緒に来たかのような賑わいを見せていた……!

「って、さらに増えてるーーー!!?」

 誰が、いや、何が増えたのかは言うまでもない。
 ハーレムの如く冬木市の美少女・美女たちを展開する姿は紛れもなく……!

「うわー、すごーい! シロウ、また当たったね! テキチューっていうの? うわーテキチューーー! もう一回見せてー!」
「シロウ。私も少し、弓を引いてみたくなったのですが……よろしいでしょうか?」
「あら、となりのワカメの射はずいぶん乱れてるわね。士郎の射の方が見ていて格好いいわ。……危なっかしいけど」
「先輩の射は相変わらず綺麗ですね。今日だけと言わずに、またいつでも引きに来てください」
「しろー、今日のお弁当どこー?」
「話には聞いていましたが、みごとな腕前ですね。ところで士郎、となりのワカメが煩いので石にしてよろしいですか?」

「あのな、騒がしいぞみんな。まわりで真面目に練習してる部員に迷惑だろ。
 それはともかく、イリヤ、一射と言わずもう十射二十射引いていくつもりだから見ていろよ。セイバー、遠慮する事はないぞ。桜に頼んでみるから引いてみてくれ。遠坂、俺なんてまだまだだ。でも遠坂に褒められるとなんか怖いな。桜、今日は特別だよ。あんまりお邪魔すると正部員の邪魔になるしな。あと、セイバーに弓を引かせてやってくれ。藤ねえ、弁当は昼になるまで待ってくれ。ライダー、気持ちはわかるけど公衆の面前で魔眼はやめてくれ」

「……誰?」

 えーと。
 あえていうならギャルゲーの……主人……公……?

「しかし意外だな。腕が落ちているかと思っていたけど、けっこう引けるもんだ。久しぶりでも、体は覚えてるもんなんだな」
 ふむふむ、と自分の射を確認する衛宮。
 ときおり、間桐やセイバーさんに射の指導をしていたりする。

「フン、相変わらずのハーレム気取りか。しかも女の子に見せ付けるための射とはね。
 ……がっかりだ。そんな邪な気持ちで弓を引くなんて見下げ果てたぞ衛宮……!」
 とりまきの女の子たちに囲まれながら、負けじと弓を射る青いワカメ。
 というか、お ま え が 言 う な 。

「いや、見せ付けるとかそんなつもりは無かったんだが。
 ただ、セイバーやイリヤが俺の射を見たいっていうのを、断りきれなくてな」
「クッ、格好つけやがって……!!!
 だいたい、オマエはもう部員じゃないはずなのに、なんでここにいるんだよ……!?」

「先輩は、私と藤村先生が許可を出したんです。というか、兄さんこそ引退したはずなのに、なんでここにいるんですか!?」
 ビシッと慎二をやり込める間桐。
「…………」
 そして先ほどから一言も会話に入っていけない我が弟。

「バカな……! 桜まで動員するとは、オマエそれでも親友か……!
 ええい、射で勝負だ! 勝者は敗者になんでも命令できるというルールでどうだ!?」
「いや俺は勝負なん「望むところよ!
 どうせ結果は見えているけど、それはそれとしてその勝負受けましょう!」おい、遠坂勝手に……」

「ほう、士郎とシンジの一騎撃ちですか。勝負は見えてますが興味深い一戦ですね」
「負けるなー、やっつけろー! がんばれシロウー!」
「あの、サクラに弓道着を借りてみたのですが、似合いますか、シロウ?」
「ねーねーしろー。そんなのいいからさー、早くお昼にしようよー」

 もはや弓道場にかつての平穏はない。
 思いのほかモテる衛宮と、なぜか慎二ガールズには人気のワカメ。
 そして。

「せんぱーい! 頑張ってくださーい!!」
「…………間桐部長、帰ってきてください……」
 この世の終わりみたいな顔でうなだれる実典。

「……と、こんなことしてる場合じゃなかった。またとないチャンスじゃないか……」
 急いで弓を用意する。
 慎二と射で勝負している衛宮の元へと駆け寄る。
「こらー! 衛宮ー! あたしとも勝負しろー!!」

 ※ナレーション(キートン山田)
 嗚呼。
 姉にも存在を忘れられた実典少年よ、せめてその想いは永遠なれ―――

24 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 03:54:29
やべえwwwこれはwwwwすげえ上手い!


実典カワイソス

25 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 04:01:15
恐ろしくもピッタリあてはまっておるのう

26 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 04:22:03
このスレでの実典のキャラはもう動かしようがないなw

27 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 04:42:23
>>7
>つまり新手のニューハーフというコトだろうか
朱の月見るたびにこの台詞が思い浮かびそうだ。
どうしてくれんだこんにゃろうw

28 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 04:54:55
はまりすぎてて言葉が出ないよママン……wwwwww

29 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 05:32:27
スレ始まっていきなり改心の出来だな。

30 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 05:33:54
>>21は正直微妙だったのだが、尻上がりに良くなってったな GJ

31 名前: ギル→黒セイバー 投稿日: 2006/01/28(土) 07:21:28
「――――――――工程完了。全料理、待機」

「ほう。今度は多いな。十、十五、十七・・・・・・
 そうか、もてる食材の全てを引き出したわけか。」

「な――――に?」

「舐めるな。シロウの料理ごとき看破できなくて何が英霊か。
 シロウの作ろうとする料理などそれこそ手に取るように判る。」

その台詞に、不意をつかれた。
黒化したハラペコ王は、材料をみただけでこちらの料理を把握するというのか、と。

「では採点だ。
 もっとも、――――――――いかにまずかろうと、一品たりとも残さんが」

セイバーの腕があがる

「く――――――――!」

反応が遅れた
セイバーの言葉に気を取られたその隙が、絶望的なまでに後手――――!

放たれる「約束された勝利の箸」
"テーブル上の料理"。そのすべてを、遊びは終わりだとばかりに一気にかきこむ・・・・・・!

「っ―――。全料理連続調理」

「は――――ぐ――――!」

体がブレる。
突き刺さる箸と、差し出す皿とが衝突し、衝撃がテーブルを震わせる。

「あ――――が――――・・・・・・・・・!!!!」

用意しきれない。
十七個の料理を考えたところで、自分にできるのは一つずつ調理するだけ。
ただ食べるだけのセイバーとは、初めから速度が違いすぎる――――!

「ふむ、手抜き料理にしてはまあまあだが、それもあと数皿か。そら、急いでつくらねば八つ裂きだぞ」

テーブルの向こうで、セイバーのいらだつ声がする。

テーブル上の皿、残り十二――――!

「っ――――あ、あ――――!」

残る料理、あと三つ。
それを作り終えるまでテーブル上の料理はもつのか。
いやそうじゃなくて、考えるべきことはなんで俺がこんなことしなきゃ
なんないのかと――――。

「――――――――え?」

瞬間、あらゆる感覚が停止した。
オーブンの焼き具合さえ目に入らない。
黒色のサーヴァントは、腕を前に差し出していた。

お茶碗。
おかわりともとれるソレを見た時点で、思考が白熱したと言ってもいい。

「シロウ」

圧力鍋の音に乗って、いらだつ声が響く。
調理中の料理を全て放り出し、全速でセイバーのもとへ駆け寄る。

「おかわりだ」

32 名前: 天の逆月 投稿日: 2006/01/28(土) 10:20:52
出口に向かう。
自己の消滅より恋焦がれた日常の破片の中、何も見えなくなった目で走り抜ける。
……■は、ただ新しい物が見たかった。
かつての人格が彼女の蘇生を願ったように、■は、一つでも多くの日常を知りたかった。
それが自らを■に戻すとしても。
十秒後の死を知りながら、一秒後の光を求めたのだ。

走る。
この無において距離はない。
足を向けて辿り着けないという事は、永遠に辿り着けないという事。
あの時見えていた出口は、■の視界が無に戻った時点で失われてしまった。
もとより無に戻りきった■に、行くべき場所など存在しない。

―――――ああ、それでも―――――

この目蓋が。眩しいと、感じている。
崩れながら回り続ける。
過ごした時間に感謝を。
共にあった人々にお別れを。

……良かった。
こんな■にも、出口はあるらしい。
終わる事と続かない事は違う、とかつての人格はうそぶいた。
その希望を借りるのなら、■は終わる事で、ようやく続きが見られるらしい。
この場に留まって永劫に止まるのではなく。
たとえ消え去るとしても、次にあるものを目指す。
その為に虚無を埋めて、一つの絵を作り上げた。
その為に虚無に還って、世界の絵を作り上げよう。
■には、もうその絵を見る事は出来ないけれど。
どうかこの絵が、誰にあっても美しいものでありますように。
走る。走る。走る。
星は輝く。道標は確かに。千切れた体は、意志だけで前に進む。
大丈夫、辿り着けない事はない。
夢みたものが止まって、光を失ったとしても―――
この眼球が、眩しいと感じている。
最後に、この■にもさよならを。

―――さあ、終わりの続きを見に行こう。

気のせいだろうし其処がそんなにいい所でないのは分かってはいるが、
今は、眩しい方へ歩いて行く―――

33 名前: 天の逆月 投稿日: 2006/01/28(土) 10:22:03
いや、歩いて行く、筈だった。


「な――――」
当惑で息が漏れる。
一体どうなっているのか、と。

歩みを止められた体勢のまま、■は呆然と目の前の虚無を見た。

「――――そん、な」
■でさえ事態が掴めていない。
虚ろで優しかった永遠からの脱出。
それが止められた。
■が■に還る前に、何かに挟まれて止められている。

「――――膝と、肘?」
そんなダメな事が起こりえるのか。
■の身体は、マスターであるバゼットによって止められていた。

34 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 10:53:05
ちょwwwwwww

35 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 10:56:00
ダメットwwwwww

36 名前: ヘブンズフォール 投稿日: 2006/01/28(土) 11:39:15
「ふざけるな、おまえは――――」

 鎖を深く腕に絡ませる。
 今までとは逆、決して離れないように鎖を摑み、

「――――二度と、この世に顔を出すじゃねぇ……!」

 逆らわず、黒い孔に身を投じた。

「バ―――正気か貴様ぁぁああああ……!!!!」

 転がり落ちる。
 体が溶かされながら、際限なく闇に落ちていく。

 肌を溶解し、肉を削ぎ、骨を外していく黒い泥。

 そうしてカラを剥がされ、衛宮士郎という魂だけになって、深い底へ落ちていく。

 その落下があまりにも長すぎたからか。
 いつしか落ちているのではなく昇っているような錯覚の後。

 黒い、杯のような太陽に飲み込まれた。

 否―――飲み込まれるはずだった。

「な―――――――」

 当惑で息が漏れる。
 一体どうなっているのか、と
 ギルガメッシュに鎖で背負われている姿勢のまま、俺は呆然と目の前の敵だった男を見た。

「―――――――ばか、な」

 俺でさえ事態が摑めていない。
 全てを飲み込む必殺の泥。
 それが止まっている。
 ギルガメッシュを飲み込む直前で、何か見えない力に阻まれ停止している。

「――――オー、ラ?」

 そんな奇跡が起こりえるのか。
 この空間の泥は、捕食対象であるギルガメッシュによって止められていた。
 オーラ。
 全てを飲む込もうとするソレを、男は全身から放つオーラで、阻むように止めていたのだ。

「――――――――」

 無論、俺は知らない。
 精神でこの泥――――全ての悪を許容するヤツがいる事も、それを実現するサーヴァントの事も。
 それでも、これが通常の戦いなら放心する事などなかっただろう。

 だが事は泥相手。
 餌はあくまで泥に弱いただのサーヴァントだ。
 それが必殺の泥、無限の泥を捉え、かつオーラで阻むなど、もはや正気の沙汰ではない……!

「―――侮るな。この程度の呪い、飲み干せなくて何が英雄か!
 この世の全ての悪? は、我を染めたければその三倍は持ってこいというのだ!
 よいか雑種! 英雄とはな、己の視界に入る全ての人間を背負うもの。
 ―――この世の全てなぞ、とうの昔に背負っている!」

 それは、泥の底まで響くような声だった。

「…………っっっ!!!!」

 ギルガメッシュの体が流れる。
 鎖で結ばれた俺を引き連れて全力で脱出しようとする。

 その瞬間。

「ぶはっ――――!?」

 俺たちは、柳桐寺の広場に戻っていた。

37 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 12:01:00
カッコイイはずなのに笑い殺された。
でもこの後地面に頭をヤバイ打ち方をするのが慢心王クオリティ。

38 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 12:55:48
スレの流れやたら速い!
しかも初っ端からトレェェェス・オォォォン!に、
ゼル爺と紅い月再び決戦、性技のミカタ、うっかりブロードブリッジ、"この三倍は持って来い"な黒セイバー、
実典ズヘブン、HIZIとHIZAで止められるアンリ、「王」と「気」で止める英雄王とクオリティも高い!GJ!

39 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 13:37:18
―――溢れる光。


 空に穿たれた『孔』は光の線に両断され、跡形もなく消滅した。

 あたりには何もない。
 何もかも吹き飛んだ山頂は、まったいらな荒野に変わっていた。

 遠くには夜明け。
 地平線には、うっすらと黄金が射している。

「――――っ」


 左手が痛む。
 最後の令呪が消えていく。


 ―――それで。
 本当に、幕は下りたのだと受け入れた。

「これで、終わったのですね」
「……ああ。これで終わりだ。もう、何も残ってない」

「そうですか。では私たちの契約もここまでですね。貴方の剣
 となり、敵を討ち、御身を守った。
 ……この約束を、果たせて良かった。

「……そうだな。セイバーはよくやってくれた」


 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 セイバーは遠く、俺は彼女に駆け寄ることもしない。

 朝日が昇る。
 止んでいた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、


「最後に、一つだけ伝えないと」


 強く、意思の籠もった声で彼女は言った。

「……ああ、どんな?」


 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 セイバーの体が揺れる。

 振り向いた姿。
 彼女はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、



「ふぃほう――――ははふぁふぉ、はふぃふぃふぇふ」

 セイバー……口に物を入れながら喋るな。


 黄金の別離→途中から三大女性サーヴァント超決戦

40 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 13:53:26
LDショック!

41 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 14:46:21
>>21が少し微妙……と思ったが、
>>22-23のコンボで爆笑した。

42 名前: 前スレ905 投稿日: 2006/01/28(土) 15:16:21
>>14-15
ありがとう、約束を守ってくれて。我様の登場の仕方が予想外だったけど、瞬時に燃えて、オチで爆笑したよ。
そしてこのうっかり者め、やーいやーいw

>21-23
加速度的に破壊力が上がっていったな……w

43 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:23:16
>>21-23はスバラシイな。
オリジナルを完全に踏襲しつつ、違和感なく新しい。
これぞetaF。

44 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:30:05
2006/01/28(土) 15:30 ☆☆☆
>>43の誉め方が芸術的だと思った。
なぜかわからないがちょっと許せない。

45 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:32:01
ランサーズヘブンネタは2か3だけってのが多いからなあ。
1からちゃんと、キャラに違和感なくやってるのがすばらしい。
士郎がこのスレっぽく性技の味方化したりせず、
わりと素なのが余計に実典の悲惨さを引き立てる。

46 名前: ミミック遠坂LV1→ランサーズヘヴンⅡ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:34:12
―― 匣の中には少女がぴつたりと入ってゐた。

 フタを閉める。
 目蓋をこする。
 深呼吸をして、まっすぐ現実と向き合ってみる。
 

「―――――――――、よし」


 気を取り直して、もう一度フタを開けてみる。

―― 匣の中には少女がふたりも入ってゐた。

「って、一人増えてるぅ!?」

 遠坂の横、青いドレスがキラリと光る、あのオレンジ髪のお嬢様は
間違いなく新たなヒロイン…!

「ふふ、ガント十六発ショット。
いい場所ですわ、面白いように良く当たる。ところでミストオサカ、
今それで、なん発目ですの?」
「うるさいわね、なんで貴女に答えなくちゃならないのよ。
うるさいから余所でやりなさい、余所で」
「おーほっほっほっ。まだ八ショットだけですわね。
亜流のガントではそんなところでしょうね、と、十七発目ショット」

※ガントとは、人差し指で指差すことによって相手の身体活動を低下させて
体調を崩させるという間接的な呪いです。本来物理的な破壊力を伴う物では
ないのですが、魔力の密度が高いと弾丸並の威力を持つのです。二人はこれ
によって壁に穴をあけようとしています。
 決して、互いに呪いをかけようとしてるのではないのですよ、たぶん。

「だからうるさいってのこの金ぴか! 集中が乱れるじゃないの」
「ふふん。その落ち着きのなさを他人の所為にするとは落ちましたわねミストオサカ。
貴女のガントも速射に切り替えればいいでしょう。
もっとも、野蛮人であるあなたに本場のガントのなんたるかが
理解できるとは到底おもえませんが、十八発目ショット」
 おーほっほっほっほっほっほっほっ、と高笑いをあげる、袖なしドレスのお嬢様。

 ……おかしいなあ。
 美少女が競い合ってる姿を見るのって、こんなにも苦々しいものだったっけ?
 
「…………つーか、誰なんだ?」
 ……ホント、出来るのなら目を背けて、箱を閉めたい。
 姫アルク張りにキメキメのドレス、袖部分は脱着可能なマジックテープ式。
 その他装飾品もすべて最高級の魔術品。
 あの装備のお値段、日本円にして十億とんで三千万円という
キチ○イ沙汰だ。

 ちなみに、言うまでもなくぜーんぶ本物である。

「おーほっほっほっ。この分では三日掛からずに勝負がつきますわ!
軽い暇つぶしで始めたのですが様子を見るまでもないですわ
 ねぇミストオサカ、別にこの壁全て破壊しても構わないでしょう?」
「はいはい、できるのものならやってみて頂戴。その時は貴女を
時計塔最高の魔術師ルヴィアさまと呼んであげるわよ」
「言いましたわね、ミストオサカ。
 ふふ、こんな形で貴女と雌雄を決する時がこようとは……!
どちらが時計塔最強か、ここではっきりとさせましょう!」
 ノリノリのルヴィアお嬢様に、いいからどっか行ってくれないかなあ、
という遠坂。
 二人の邪魔をしないよう、こっそりと部屋を後にする。

47 名前: 46 投稿日: 2006/01/28(土) 15:38:40
>>45
>ランサーズヘブンネタは2か3だけってのが多いからなあ。
 リロードせずに書き込んだ… ○| ̄|_

48 名前: アンリ→ギル、バゼ→セイバー『天の逆月』 投稿日: 2006/01/28(土) 15:47:21
 ―――さあ。
 彼女の夢と引き替えに、これから、ただ一つの願いを叶えにいこう。

 一つの願望を宿した聖杯。
 この無に生まれた日常の結晶の前に、最後の観客が立っている。
 聖杯の獲得者。
 この場所で願いを叶えようとする唯一のサーヴァント。
 同じ願いを持ちながら、違う結果を望む敵として、この聖杯を守っている。

「止まりなさいギルガメッシュ。それ以上進めば貴方を殺します」
「それは困る。我がここに来た以上決着がつくのは当然の事。
 お前が我の伴侶になるか、或いは殺されて終わるかしかないのだが」
「―――ならここで殺すまでです。私の聖杯戦争において、貴方は必要ない。
 私は私で好きにやります。貴方も英雄王のままで、現界し続ければいい」
 ……ああ、そういう意図があったのか。
 同胞には恩恵を与えるから、オマエも私の戦いには関与しないでくれ、という提案だったのか、アレは。
「……ほう。この我を殺せるつもりか。思い上がりも甚だしい。が、いいかげん、再現回数も品切れだろうと恐ろしくならんのか?」
「なりません。この聖杯が機能し続ける限り、貴方は最強の王でいられる。
 本来あったはずの展開、ストーリーの都合から解き放たれた英雄王でありたい願望こそが貴方の原動力だ。
 このまま地上に戻って、二度とここへ訪れなければ永遠に続けられる。
 ……そう。永遠に続けられるのに、どうして―――」

 聖緑の瞳が苛立っている。
 この場を去れ。
 去らなければ戦って排除するまでだ、と確固たる敵意を叩きつけられる。
「敵わんな。死ななければ退けぬか?」
「その口ぶりでは、まだ諦めていないようですね。
 ……ギルガメッシュ。私には、貴方の考えが解らない。
 たとえstay nightの繰り返しだけでも、ここなら私たちはシリアスでいられる。私たちがあるべき通りの姿がある。
 ……なのにどうして、自分で自分を、殺すような真似をするのです」
「―――それは貴様だけだ。我はそもそもHFがあるからな。シリアスやギャグ以前の問題だ」
「同じ事です。私も貴方も、この願いが終わればhollowに進んでしまう。
 ……私は嫌だ。食っちゃ寝Neet王になんかなりたくない。ファンディスクなんてどうでもいい。貴方だって、公式認定された慢心王になんかなりたくないでしょう……!?」

 聖杯が鳴動する。
 彼女の感情は衝撃そのものだ。

 ―――ここは、半ば彼女の物になっている。

 この願いを止める方法はただ一つ。
 停止を拒む彼女と、本当は同意したい心。
 その二つに、キレイに幕を下ろさなくては。
「我だってもう少しぐらいは雑種に王気をみせつけたい。だがな、間違った事は正さないと気が済まんのだ。
 この願いは間違ってるだろう? だから止めんと。
 我はこの世全ての王だからな。自分以外の、甘えは断罪するのだ」
 彼女は呆然とオレを見つめる。
「―――信じられません。貴方、正気?」
「王に向かって正気を問うとは何事か。我を留めたくば、この三倍は持ってこいというのだ―――!」

 珂珂と大笑する。
 仕方がない。我はそういう覇王であり、そういう意志に従って英雄王を張り通したのだ。
 最後までその精神を望んでいたが、ここまで徹底されれば自滅しようと貫き通すに決まっておろう。

「そういうワケだ。聖杯は壊すぞ。
 身勝手な願いは、ここで終わりにしよう」
「違う。
 それは貴方の考えではない。本当の貴方の願いではない。
 ……そんな見栄を張らないでください。
 ここで止めたら―――本当の貴方は、何一つ救われない」

   ―――ソウダ。何一ツ、救ワレナイゾ―――

「……本当の我など我以外には決められぬが。
 許す。ではこちらから尋ねるが、貴様は何故この願いに固執するのだ。
 貴様が言うように、こちらにいれば救われるのか」
「――――――」

 答えはない。
 当たり前だ。ここで即答できるような女なら、そもそもシリアスに逃避はしない。
「……あ、あります。ここにいるかぎり、私はこうして本来の騎士王で居られる」
「当然のことだ。それは救いではない」
「で、でも……ここは楽だから。あんな、苦しいだけのギャグに比べたら、少しは―――」
「変わらん。これでも長い付き合いだ。貴様がどれだけ不器用かはよく知ってる。このまま続けば、貴様は永遠に苦しみ続ける」

49 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:48:56
>>47
ドンマイ。
むしろ3ネタも作るんだ!

誰が増えるんだろ。アオアオ?

50 名前: アンリ→ギル、バゼ→セイバー『天の逆月』 投稿日: 2006/01/28(土) 15:49:09
 ボケにもツッコミにもなれない自分に対する不信感。
 場の空気を読みきれないが故の周囲に対する罪悪感。
 シリアスにおいて誰よりも特化していると自負できるのに、結局、自分は最後までネタキャラにはなれないだろうという確信。
 ……真面目であればあるほど。
 騎士王であろうとすればするほど、自分は周りの空気を冷やしていく。
 その敗北感こそが、エロゲーで生まれた時から離れない、この女の心の瑕だ。
「でも、努力するしか道はない。日常(ギャグ)パートを放棄する無様さより、キャラクターとしてゲームに奉仕をしない無様さの方が貴様には耐えられない。
 そうして―――貴様はずっと、シリアス担当なのにネタキャラをやらなければならないという屈辱に苛まれる。
 その克服はここでも出来なかった。
 そうだろう? どんなに繰り返し、セイバールートの別れを再現したところで。
 ……貴様は一度も、自分を誇りに思えなかった」
「―――、それは、貴方だって」

 油断してばかりで。
 慢心したまま、見下していた相手に倒されていくことしか出来ないクセに。

「言っておくが、何処であろうと無理なのだ。その惨めさは一生拭いされない。それはエンターテインメントのキャラに生まれた以上どこでも抱えていくものだ。
 貴様のついてないところは、本編でネタになるところがなかったというコトだ」

 ホントに運がないのだ。
 あの食事好きは五世紀の人間が現代の食事をとればそうなって当然のこと。
 セイバーが悪いのではない。
 ヤツに腹ペコ属性をつけて記号化しようとしたhollowの甘えが、結局、敗因になっただけの話。
「その記号は誰も持ってやる事はできない。自分で抱えるしかない。キャラに支え合う事ができるのは記号じゃなく、記号が暴走したはっちゃけたシーンだけだ」

「苦悩は誰にも理解されない。それはstay nightだろうとhollowだろうと同じ事だ。
 いいか、ここには救いなぞない。ただ苦しいだけだ。
 目を覚ませセイバー。貴様はキャラとして死なないかわりに、永遠にここで苦しみ続ける気か?」
「……は。じゃあ、なんですか。
 貴方の言い分だと、私は一生、腹ペコでだらけた食客みたいな印象を与えていくということか?」
「みたいじゃなくてそのものだろう。
 貴様はファンディスクでメシ使いを酷使し、ラストで奴の剣となることもなく此処に引きこもったのだ。その念がある限り、ずっと悩み続ける」
「―――っ、もういい……! 裏切り者、裏切り者、裏切り者……!
 ここは貴方の願いでもあるでしょう!? なら、私には苦しいだけでも構わない……!
 あちらよりはマシですから。はっちゃけた世界なんて、私にとっては」

 ―――同じ事だと。
 ネタキャラとして生きていくのが厳しいと女は言った。

「―――それは違うぞ。
 厳しいなんて、そんな事、おまえは生まれた時から分かっていたではないか」

 我が肩入れしたのはその在り方。
 この女は弱い。シリアスは申し分ないが、ネタキャラとして弱すぎた。拡大解釈された在り方に疑問を持つなどキャラとしては致命的な欠陥だ。
 今にも死にそうな精神。
 常に気を張っていなければ手首を切りかねない悲観性。
 だが―――

「―――それでも、ここまでやってきたではないか。
 貴様は不器用で無様だったけど。
 ずっと、少しでもマシな笑いをとれるようにと頑張ってきた」

 弱くても努力して、なんとか自分をネタキャラとして良くしていこうと足掻いてきた。
 今まで苦しみながら呼吸を続けてきた。

 ……その誇りを。
 貴様が認めてやらなくて、誰が認めてやれるだろう。

「……やめてください。貴方の高説はもう充分、自分の事を棚に上げて偉そうなコトを言うな……!
 ……私の事なんて何も見えていないクセに。もう、その目には何も映っていないクセに―――!」

 女は頭を振る。
 聖杯の破棄を認めない。
 ここで自分が言い負かされれば、本当に終わってしまうと、駄々をこねる子供のように。
「目だけじゃない。自分の事さえ見えていない。私だって腹ペコ王になんてなりたくない。けど―――貴方の未練は私の比ではない筈だ。
 貴方はずっと英雄王でいたかった。慢心なんてしたくなかった。自分がラスボスの座から滑り落ちると知っていたから。
 なのにHFでも油断をさらしたのは、貴方にとって」

 わからんヤツだな。
 今更なのだ、そういうのは。

「見えていない、か。そういう貴様こそ、我がちゃんと見えているのか?」
「……一品モノを着た笑顔にしか見えない。もう、貴方は慢心王に戻りはじめている」

51 名前: アンリ→ギル、バゼ→セイバー『天の逆月』 投稿日: 2006/01/28(土) 15:50:02
「そうだ。それが正しい。間違えるなよセイバー。
 この英雄王、この最強の我は物語の都合を考慮せずにいられるが故のもの。本来の我は油断あってこそだ。慢心せずに何が王か」

 だから、慢心王に戻っても痛くもかゆくもない。
「……うそ。嘘、嘘、嘘……!
 騙されない、私は見捨てない……!
 王で在り続けましょうギルガメッシュ……!
 飽きてしまってもいい、何一つ新しい出来事が起きなくなってもいい、一人で戦い続けろというなら付き合う……!
 まだFate/zeroの可能性はあるんでしょう!? ならいい。小さいけれど、まだシリアスでいられるのなら、」

 英雄王を張り続けろ。
 あの黄金の日々を。
 我には決して手に入らなかった、本来与えられるべきだったモノを―――

「―――しつこいぞ。
 悪いが、その願いは叶えられん。無意味な時間はここまでだ」

 一歩前に出る。
 ……笑い話だ。結局、セイバーは我の邪魔などしなかった。
 こやつがあんなに怒っていたのは、つまるところ、
「……止めてください。ここから出れば元のネタキャラに戻るのに? ここにいればいくらでもまっとうな騎士王を繰り返せるのに?」

 願いを続けていたのはこの雑念。
 一言我がウンと言えば、とっくに壊れるところまで来ていたのだ。
「誇らしくはなかった……?
 私は誇らしかった。苦しかったですが、その苦しさも結局は」

 ならあとは簡単だ。
 我はとっくに飽きてるのだから、ありのままの結論を言えばいい。
「……結局は、自分であるが故の喜びだった。
 あんなネタに戻りたい筈がない。……ここは私の望みでもなんでもない。
 ギルガメッシュ。この世界は貴方のユメだった。
 シリアスを続けようとしたのが私の願いなら、あの最強の姿こそが、」


 ―――過ぎたユメだ。
 これ以上は続かん。どんなに憧れても、全て埋まったのなら。


         ―――イヤダ イヤダ イヤダ イヤダ―――


「そうだ。だが、もう大抵は飽きてしまったが故にな」


           ―――オレハ、ズット ココニ―――


 なにか、新しい可能性のために、


           ―――アマリニモ醜イ、ウソ―――


「油断でも、してみないと」
「あ―――」

52 名前: アンリ→ギル、バゼ→セイバー『天の逆月』 投稿日: 2006/01/28(土) 15:50:54
 出口に向かう。
 自己の消滅より恋焦がれた世界の破片の中、何も見えなくなった目で走り抜ける。

 ……我は、ただ最強の王でいたかった。
 彼女がまっとうな騎士王を望んだように、我は、一つでも多くの慢心なき我でいたかった。

 それが我を慢心王に戻すとしても。

 十秒後の死(ネタ)を知りながら、一秒後の光(シリアス)を求めたのだ。


 走る。
 この無において距離はない。
 足を向けて辿り着けないという事は、永遠に辿り着けないという事。
 あの時見えていた出口は、英雄王が我に戻った時点で失われてしまった。
 もとより慢心しきった我に、行くべき場所など存在しない。
 だが。

         ―――よい開幕だ。死に物狂いで謳え雑念―――!

            この目蓋が。眩しいと、感じている。

 ……良かった。
 あんな我にも、出口はあるらしい。
 終わる事と続かない事は違う、とかつての英雄王はうそぶいた。
 その希望を借りるのなら、我は慢心王をやり通すことで、ようやくギルガメッシュ・ネイキッドになれるらしい。


 この場に留まって永劫に英雄王であるのではなく。
 たとえ慢心するとしても、次にあるものを目指す。
 その為に油断をして、一つのキャラを作り上げた。
 その為に慢心して、キャラのネタを作り上げよう。
 我には、もう油断王を見る事は出来ないけれど。
 どうかこのキャラが、誰にあっても弄りやすいものでありますように。

 走る。走る。走る。
 星は輝く。道標は確かに。千切れた体は、意志だけで前に進む。
 大丈夫、辿り着けない事はない。
 夢みたものが止まって、光を失ったとしても―――
 この眼球が、眩しいと感じている。

     最後に、この我にもさよならを。

 ―――さあ、終わりの続きを見に行こう。

 気のせいだろうし其処がそんなにいい所でないのは分かってはいるが、今は、眩しい方へ歩いて行く――――






「―――――ぬ?」

 下を向いたときには遅かった。

「―――――貴様、よもやそこま、ガ――――――!!!???」

 足元から飲み込まれていく。
 逃げ場などない。
 何故なら、すでに


      いつもより、少しだけ油断していたからだ。

53 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:52:29
全く感動できなかったwwww

54 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 15:53:51
俺は泣きながら爆笑した
なにこのシリアスとギャグの妙な配分具合www勘弁してくれwww

55 名前: 捏造アンリミテッドブレイドワークス 士郎→氷室 セイバー→士郎 投稿日: 2006/01/28(土) 16:08:36
ぼさぼさの赤毛が背を向ける。
「氷室」
その背中を、一度だけ呼び止めた。

「―――君を救う事が、私には出来なかった」

そうして言った。
まるで、俺が彼女と過ごした時間、ヤツが彼女を思っていた時間を、代弁するように。

「あの結末は君が望んでいる物ではないと思う。
 ……だからよく考えて欲しい。次は、いつかは君が救いを得られるようにと」
「――――氷室?」

「……すまん。うまくは言えない。私は衛宮の恋人には相応しくなかったんだろう。
 だから―――」

君の本当の望みを、見つけてやる事さえ出来なかった。

「そんな事はない。氷室は、俺の恋人だ」
「―――衛宮」
「正義の味方らしく責務を果たしてくるよ。伝えたいことは、その後に」

振り返らずに走っていく。
颯爽としたその姿は、一陣の風のようだった。

56 名前: 天の逆月+アンリマYOU! 投稿日: 2006/01/28(土) 16:46:02
「……よう。こっちの姿だと初めましてかな。元気そうで何よりだ」

近づかぬまま手を上げる。
オレたちの距離はこれ以上は縮まらない。
それは既に別たれた精神的な距離であり、

「止まりなさいアヴェンジャー。それ以上進めば貴方を殺します」


先ほどまで渦巻いていたよく分からない覚悟も消え、イヤになるほど冷静になるオレ。
「じゃ、いつもの場所に戻るわ」

ええ、と頷きだけで答える。
男には言葉をかけてはいけない時があるのだ。

「じゃあこれやるよ。気が向いたら1ピース抜いてシャッフルしてくれ」

あ、パズルになった。

「……………………私も屋敷に帰りましょうか」
ここ数分ばかりの記憶をまっさらに消去して天の逆月を後にする。

こうしてアンリマYOUによる聖杯破壊のピンチは去ったのだが、
彼の最大の見せ場と、それを防いだバゼットの物語は誰に語られるコトもなく忘れられるのであった、まる。

57 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 16:52:54
ぉぉぉぉおおおおおお!?
何だその「やっぱ、やーめた」みたいなやる気の無さはっ!!
めんどくさがり、ココに極まる。

58 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:05:44
ちょ、アンリ何やってんだwwwwwww

59 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:09:40
>>56
ほっといたらダメット死んじゃうんだぞ!?いいのか!?いいのか!?

60 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:15:57
だってお前、>>56の世界では肝心要の最前線がウッカリンと慢心王のせいで橋落ちしてるからな。
つーかぁ、橋の壊れたブロードブリッジなど存在しねー。

61 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:18:07
「最初に、一つだけ伝えないと」

 強く、意思の籠もった声で彼女は言った。

「……ああ、どんな?」

 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 彼女はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、














 「>>1、スレ建てお疲れ様です」

62 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:19:42
何か言い残した事があったか、思いを巡らせてみる。
気の利いた台詞は思いつかなかったが、一つ、言い忘れを思い出す。

「ありがとう。お前には何度もネタを授けられた」

9thgin yats\etaF
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1136269748/l100

63 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:22:55
それでこそこの世全ての悪!www

64 名前: ブロードブリッジ→ナショナルとレジャー 投稿日: 2006/01/28(土) 17:30:22
「黄泉路を開く。存分に謳え亡者ども。
 なに、退屈はさせん。我とてこのような気紛れは一生に一度
あるかないかでな。財の出し惜しみはせぬ、夜明けまで命を賭
して持ちこたえよ……!」



「ア。オーイ、ソッチ危ナイゾー!」
「む? むむむ? むむむむむ?
 待て。何だこの暴風は。厭だぞ。とにかく
厭な予感がするぞ。
 おい雑念。鎖だ、鎖を持て」
 それは予感でなく再現というか。
 子供からやり直しても同じコト。
 彼の英雄王は絶大な力と一緒に、致命的なうっかりスキル
を持って育つ運命にあるらしい。
「おおおおおおお?
 馬鹿な、天の鎖を持ってしても脱出できぬのか!?
 ええい、断崖絶壁や墜落事故ではあるまいし何をこれしき!
 我はともかく我の財力を侮るなよ! さあ、友よファイトだ!
 頑張って我を助けよ!」
 天の鎖を大気中に張り巡らせ、なんとか踏みとどまる英雄王。
「……アー。ジャア、俺ハコノヘンデ。
 生キテタラマタ会オウ」
「貴様、この状況を見てなんとも思わぬのかっ!?
 そこはかとなく理性残してる雑念としてそれはどうか!」
「ジャア助ケヲ呼ンデコヨウ。コノ場合せいばーニナルケド、
ソレデイイ?」
「はっはっは。
 ―――要らぬ。助けなど全く要らぬ。
 こんなものはアレだ、そよ風のようなものだ。
 我にとっては日常茶飯事、助けを呼ぶまでもない。よいな。
くれぐれもセイバーになど伝えるな」
 フッ、と不適に笑う英雄王。
 後ろは黄泉路、上半身裸で天の鎖にがんじがらめになりながら
の発言である。
 カッコイイなあ。
 究極のやせ我慢というのはこんなにもカッコイイのだなあ。
「ソッカ。ソンジャソーユーことデ。」

 中央公園を後にする。
 ……さて。
 あの様子じゃ一時間といわずに一晩は保ちそうだし。
 頃合を見て真アサシンに声をかけて、あの困ったちゃん
の救出をお願いすればいいだろう。

65 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 17:58:13
意外といい香具師だな残骸w

66 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 18:03:26
>>61
どこかのスレで使わしてもらうわ。

67 名前: 言峰の過去⇒アンリの独白 投稿日: 2006/01/28(土) 18:31:05

女は魔術協会が聖杯を確保する為に送り込んだマスターだった。
バゼットという名はいかにも男らしくて似合わなかった。
強くあれ、と親が子に押し付けたのだろう。
子はその期待通りに成長し早熟と思われるほど自身の性能を高めた。
父は良い後継者に恵まれたと喜び、娘は父の喜びを理解していた。
自分が優れているのは、親として喜ぶ事だ。
だからこの男は自分を重宝するのだろうとでも思ってたんだろう。

―――そう理解し、少女は父の理想通りに成長していく。

そこに疑問はなかった。
心と体は別の問題だ。
バゼットと名づけられた少女は余分な物を捨て、より機能的に変化する。

……ただ一点。
機能性を求める彼女の胸がどうして無駄に大きいのか、
それだけが理解できなかった。

――――その齟齬に気がついたのは、ある一日目の夜だった。

目が覚めて体を起こし、顔をあげた時に気がついた。
どうしてその時に判ってしまったのか、理由は定かではない。

いや、寧ろどうして今まで気がつかなかったのかと悩むべきだろう。

ともかく、オレはある事に気がついたのだ。
彼女の異常な筋力。
それもずっと疑問だった。
その二つの疑問が――――、一直線で繋がったのだ。
話はそれだけのことだ。

彼女はバストがあるのではなく、あれは大胸筋であり、

女の武器ではなく、文字通りの武器だった。

並以上の美貌とプロポーションを持ち、乙女チックな思考をしても、
彼女は間違いなく、歩く人間凶器だった。


「――――微笑ましい。貴方の洒脱さは、時に殺意を覚える
ほど的確で勇敢だ」
「あれ? もう起きてたんだ、アンタ」

この背後から漂う緊張感、どうせ生き返るからって
そのうち俺を殺しかねない殺意なのであった。

「あーーーーー、んじゃ、さっそく聖杯戦争を続けようか、バゼット。
 ―――今度こそ、アンタの望みが……」
「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」

あ、そのうちじゃないのね。

68 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 18:32:49
アンリ口に出してたのかwwwwww

69 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 18:37:39
ちょ、待て、マジでスレの流れが速すぎるw
GJが追いつかねぇww

70 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 18:40:34
真祖オパーイかよwwww

71 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 18:42:41
あ、それ多分私のイメージです。

72 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:00:27
お前かカレー!!!

73 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:07:33
>>57
初代魔法陣グルグルアニメ版を思い出したwww

74 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:14:12
貴方あんなことやってませんでしたっけ?

75 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:16:27
>>67
ステキ過ぎる。
お前ダメットスレ見てるだろ

76 名前: ランサーズヘヴンⅢ 槍→遠坂 赤弓→ルヴィア 金弓→??? 投稿日: 2006/01/28(土) 19:38:39
>>46のつづき

 空は快晴。
 箱の空間は時間の感覚を麻痺させる。
 風は吹かず、迷い猫さえこなくて寂しさを増幅させる。
 文句ばかりのロケーション。
 管理者のうっかりさ加減を象徴するかのような
宝石箱の中は、しかし。
 
 今まさに、盆と正月が一緒に来たような賑わいを
見せていた……!

「って、さらに増えてる―――!!?」

 誰が、いや何が増えたのか言うまでも無い。
 正方形のトランクを展開する姿紛れもなく……!
「わー、すごいです! 橙子さん、これ使い魔ですか!? 
使い魔ですよね! わー、一匹ください」
「橙子、あそこの壁、線がはしってるぞ、俺が壊しても
いいか?」
「所長、今月の給料まだですかー!」
「はっはっは。騒々しいぞお前たち。まわりの小娘ども
に迷惑だろう。
 それはともかく、鮮花、一匹といわず十匹二十匹持って
いけ。式、かまわんやれ。黒桐、給料は私が骨とう品を
買い漁るので待て」
「……誰?」
 えーと。
 あえていうなら空の境界の……ヒロ……イン……?
「しかし拍子抜けだな、時計塔最強を名乗る者がいると
聞いたがまるで話にならん! 所詮は小娘ども、
大人の女性である私とは比べるべくもない!」
 あっはっは、と愉快そうに笑うヒロイン?
 ときおり、煙草を吸っていたりする。
「ふ、使い魔任せの物量作戦ですか。
しかも金に糸目をつけない最強装備とは
 ……がっかりですわ。道具に頼るとは見下げ果て
ましたわ封印指定……!」
 使い魔に囲まれながら、負けじとガントを連射
するお嬢様。
 というか、あんたが言うな。
「ほう? そういう貴様の身に付けてるのは
もはやオークションでも手に入らないブルーダイヤ
ではないか。
 面白い。どちらの装備が優れているか
競い合ってみるか」
「そ、それはカーバンクル……!!!
 南米大陸の伝説の石をなぜ貴女が……!?」
「それは僕が探し出してきたんです。所長が
さがしてきたら、ボーナスをだすといって
くれましたから」
 わーい、波を打つ使い魔たち。
「…………」
 そして先ほどから一言も会話に参加しないもじもじしてる
あかいあくま。
「馬鹿な……! 一般人まで動員するとは、貴女は
それでも魔術師ですか……!
 ええい、その宝石、勝者が手にするというルールで
どうでしょう!?」
「望むところ!
小娘の乳臭い宝石など要らないが、それはそれとして
ブルーダイヤはもらっておこう!」
「すごい! 橙子さんと七月のメアリとの一騎打ち!
こんなのメッタにみれません!」
「所長、そんなのいいですから、早く給料払ってださい」
 もはや箱にかつての平穏はない。
 思いのほか負けず嫌いの橙子さんと、なぜか、張り合ってる
ルヴィアさん。
そして。
「なあ。遠坂、大丈夫か?」
「…………誰か。トイレにいかせて」
 我慢の限界みたいな顔でうなだれる遠坂。
「……帰ろう。ここはもう一般人の居ていい場所じゃない……」
 おまるを投影し、遠坂邸を後にする。
 見上げた空の高さにちょっとだけ目が眩む。
 嗚呼。
 失われた楽園よ、せめて思い出の中で永遠なれ―――

77 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:41:23
 大丈夫、辿り着けない事はない。
 夢みたものが止まって、光を失ったとしても―――
 この眼球が、眩しいと感じている。
     最後に、この■にもさよならを。
 ―――さあ、終わりの続きを見に行こう。
 気のせいだろうし其処がそんなにいい所でないのは分かってはいるが、今は、眩しい方へ歩いて行く――――

“……それは、貴方の勝手ですが。その前に自分を見てみなさい”

「え?」
 咄嗟に振り向く。
 視線は遠く、■となった夢へと向けられる。
 ――――追い縋るように、何かが迫ってきた。

 いや―――迫ってくる、筈だった。

「な―――――――」
 当惑で息が漏れる。
 一体どうなっているのか、と。
 ■へ還る姿勢のまま、■は呆然と目の前の状況を見た。

「―――――――ばか、な」
 ■でさえ事態が掴めていない。
 バゼットを現実へと還し■へ至る崩壊。
 それが止まっている。
 ■へ到達する直前に、何かに■を挟まれて停止している。

「――――足と、腕?」
 そんな奇蹟が起こりえるのか。
 ■は、導き手であるカレン・オルテンシアによって崩壊を止められていた。
 膝と肘。
 高速で還るソレを、女は片足の膝と肘で、挟み込むように止めていたのだ。

「ふぅ、あの程度の問答で私が納得すると思うとはMADAMDADADESUNEアンリ、発射準備ぃぃー!!」
「あれねバゼット、よーっし!」
「アンサラー!サブキャラひっさーつ! トペ・フラガラック・天の杯魔術礼装搭載ver.!」
「やっほー! アーヴェーちゃーんーーーっ!」
バゼットに足首をつかまれ、グルグル回された後、レーザーのように発射されるヘブンズフィール嬢。
 ―――アンサラーでフラガラックなヘブンズフィール、関係ねー!
「あひゃひゃはははぅほぉぉぉーーー!」
「アヴェちゃんげーっと! ほーらほらー!」
「あひゃひゃひゃ、もう、ひゃひゃひゃ、おわ……」
「なんでさー?」
「なんでさー!」
「マネしゅんなぁ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃあああああぉぉーー!」
 天の杯が調子に乗って、馬乗りになってなにやらこちょこちょとごにょごにょと詠―――だめだ、もう!
「あ……アンリ、動かなくなりましたね」
「おおアヴェンジャーよ、再生しながら失神とはなさけない!」

 これは夢だ。
 いま、バリバリと戻りはじめている出来事が終わってしまったら、
 何事もなかったように、
 何事もなくなって、
 ■として目を閉じている筈なんだから―――

「―――まあ、実際また繰り返す訳ですが」
 カレンの言葉に反応し、閉じた意識を今一度開き
「むむむ」
 再生する体を見つめたまま唸ること数秒。
 復讐のサーヴァント―――アヴェンジャーは悔しげに目を閉じて、
「了解した。地獄に落ちろテメエら」

 虚ろな楽園は、今もこうして回っている。

78 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 19:44:35
次の流行りはカオティックetaFか?

79 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 20:10:26
だが下手に混ぜると逆に白けられる諸刃の剣。素人にはお勧めできない。
思いついた時は面白そうな気がするけど、いざ書くと読む奴置いてけぼりになりやすいしなー。

80 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 20:15:38
>おまるを投影し、遠坂邸を後にする。
ちょっとまて士郎w

81 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 20:26:42
自分は外にいるんだから助けろよ、おいw>シェロ

82 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 20:27:36
つーかあんなモテモテな橙子なんて橙子じゃねえw

83 名前: アヴェンジャー⇔バゼット 投稿日: 2006/01/28(土) 21:09:57
ふう、とため息をはく。
アヴェンジャーの言う通り、あの怪物と私たちの相性は最悪だ。
彼の宝具はヤツには使えない。
ヤツの一撃はその全てが致命傷で、受けた時点で彼は死んでしまう。傷を受けるイコール死、では呪いを返す事などできない。

一方、私はフラガラックで迎撃する事もできるが、フラガラックは三回しか使えない。
怪物の宝具が死からの蘇生であるのは明白だ。
それが何回分なのかはまだ確かめていないが、蘇生回数はフラガラックの回数を上回っているだろう。

「それでは戦うというのはナシですね。では、後は」
「追跡を振り切って城を目指す。こっちも目は低いが、ゼロってわけじゃないからな」

それが正解だ。
ただし、アヴェンジャーの案には見落としが一つ。
あの怪物は無視できる存在ではない。
私が城に辿り着くには、どんなカタチであれ、あの怪物をどうにかしなければならないのだ。

「決まりましたね。貴方はここに残ってあの怪物を引きつけて、私は一人で城に向かう。
 いいでしょう、それなら半々だ。私の足ならコースアウトでもしないかぎり、きっと城に辿り着ける。
 ここからアインツベルンの城は北西に十五キロほど。
 ルーンを刻む秘爪は残ってます。だから問題はありません。
 貴方が稼げるのはせいぜい一分程度でしょうが、私一人だけならそれを十倍にできる」

「―――バゼット。オレは、そんな命令ききたくねえ。オレはアンタと城に向かう」
「無茶言わないでください。その方が私にはきつい。
 正直、私の足には付いてこれないでしょう。ここまで逃げてくるのが限界です。ここから先、貴方の足に合わせてたら間違いなく追いつかれる」

「それはオレの精神が弱かったからだ。
 気合いを入れれば、まだ走れる。アンタはいつも割り切りが早すぎる」

「う」
痛いところをつかれた。
アヴェンジャーはわりと根性論の人なのであった。

「それはまあ、意地を張れば少しは動けるでしょうけど。
 それでも、貴方のスピードには合わせられないのは本当なんですが」

「……まったく。足手まといとして考えないでくれ。いざとなれば霊体化してアンタについていくから」

冷静な意見だが、それはどちらの為にもならないやり方だ。
……どうしたものか。
いつもならもっと簡単にお互いの役割を受け入れている。
それが出来ないのは、彼が、つまらない勘違いをしているからだ。

「……はあ。らしくないですねアヴェンジャー。霊体化して貴方だけ助かってどうするんですか。私が殺されたら貴方も終わりなんですよ? 
 なら、どう考えても足の遅いお荷物を足留めにして、司令官は任務達成するべきでしょう」

「……オレは、自分を荷物なんて言った覚えはないんだが」

「私がそう思っているのです。なにしろ、自分一人では動けないでしょうから」

ほら、と左足を指差す。
片足はとっくにあの怪物の突進でオシャカにされていた。
ここまで走ってこられたのは、末席と言えど英霊として凄いところを見せなければと意地になったからだろう。
うん、根性論も馬鹿にできない。

「ダメだ。それならアンタも残れ。ここであのサーヴァントを倒す方を取ろう。
 オレ一人では残らない。ここで―――アンタに、置き去りされたくなんか、ない」

「―――それは寂しさから?」

「い、いや、寂しくなんかねえよ。
 ただ、この傷にはアンタにも責任がある。だから、その責任を取ってもらおう、と」

「それは違います。
 いいですかアヴェンジャー。貴方は今、私の目的を果たす為ではなく、自分を助ける為にここに残れと言った。
 それは、まあ、私からしてみても悪い事ではない。助けてあげられるなら助けてあげたい。
 しかしですね、その動機が負い目からきたものなら、それは置き去りより質が悪い事なんですよ」

「……バゼット、アンタは」

「あー、いえ、脱線しましたね。簡潔に言うと、さっさと行きたいということです。
 どうせ死んでもまた顔を合わせるんですから、同情で殺されても気まずいじゃないですか。
 さっさと用件を済ませますから。貴方は先に戻っててください」

……嵐が近づいてくる。
いいかげん、無駄話はここまでにしておかないと。

「なんです。まだ何か言わないとダメ?」

「―――いや、十分だ。アンタの為に、敵の足留めをしてくるよ、バゼット」
「はい。では、少し気合入れて出迎えてください。私は裏から出ていきますから」

アヴェンジャーに手を振って外に出る。
決めてしまえば私の行動は無駄がない。彼に気を遣わずに全速力で城を目指すだろう。

84 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 21:12:37
>>83
外道士郎とNEETセイバー思い出した。
つか笑いが止まらねぇww
GJ!

85 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 21:14:13
なんかNEET剣と駄目士郎コンビと逆方向の進化だなw

86 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 21:21:03
取り敢えず、知らなかった全てのものに謝ってこいダメット!w

87 名前: ステンノ→遠坂凛 匿名希望の妹→匿名希望の妹 投稿日: 2006/01/28(土) 21:49:56
――遠坂凛
 優雅な仕草、溢れる気品、思慮深い言動。
 どれをとっても理想の女性といわれた学園のアイドル。
 彼女に名を呼ばれただけで、男はあまりの喜びに我を失い
永遠の忠誠を誓ったという。


 が。
 匿名希望の妹に言わせれば、極度のうっかり。
 なんでも並以上にこなせる癖にここ一番で失敗をやらかし、
借金しても借用書を書かなければなかったことにしてしまう
鬼畜姉。

88 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 21:51:05
むしろタイトルで匿名希望の妹がそのままなのに笑ったw

89 名前: エウリュアレ→遠坂凛 妹→使い魔 投稿日: 2006/01/28(土) 21:52:40
――遠坂凛
 時折見せる、屈託のない仕草、こぼれるほどの笑顔。
 どれをとっても理想の少女といわれた学園のアイドル。
 彼女に名を交換しただけで、男はあまりの衝撃に体を震わせ、
命を賭した守護を約束したという。


 が。
 これまた匿名希望の使い魔に言わせれば、究極の猫かぶり。
 くわえて朝に弱いところもあり、その姿を見れば、百年の
恋もさめるという、あかいあくま。

90 名前: 87 投稿日: 2006/01/28(土) 21:57:52
>>88
 中のひとは違いますけどねー
 そう、言ってみれば前のは○ブひなの○子だすれば、
今のひとは○リみての○さん!

91 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:02:02
「匿名希望の妹」にはもう一人顔だけは良い兄貴がいるのでそっちの方もキボン。

92 名前: ランサーズヘブン 槍→氷室 士郎→士郎 投稿日: 2006/01/28(土) 22:23:54
 空は快晴。
 流れる鱗雲が秋を感じさせる。
 テレピン油の香りは心地よく、キャンバスを走る鉛筆の音が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 旧政権の名残による潤沢な資金を象徴するかのような豪華な稲群原学園の美術室は、しかし。

 この上なくクールでホットな女史によって、愛溢れる桃色空間と化していたのだった……!

「けど恥ずかしげないよな、全く」
 恐ろしいまでの一途さ。
 恋は盲目というが、ありゃあもはや盲人の達人の域かも知れぬ。
 その熱心さに用心しながら…いや、何に用心すべきかは良くわからないが…とにかく用心して近づく。

「おーい、氷室ー」
 こっちから声をかけるわりには、呟くような大きさだった。
 とくに『氷室』の発音は聞こえないくらいに小さい。
 だというのに。

 ……ぴくっ。
 と、沈黙していた氷室の体が反応する。

「おや、衛宮じゃないか。
 どうしたんだ。ちょっと会えなかったからと言って、恋しくなって会いに来たのか?」
「えーあーうー、その、あー、なんだ」
「ふふ――全く、可愛いやつだな衛宮は。
 実を言うと、私も衛宮が何をしてるのかと、気が気でなかったのだ」

 ……抱きっついてきてる氷室の声色なんだが、凄いことになっている。
 なんというか、デレっとしている。
 公衆の面前、放課後の美術室で臆面もなく抱き合ってる恋人みたいな感じで。

「あの、もしもし……?
 悪い、なんか色々と視線が突き刺さってくるんだけど」
「む、特に用があって来たわけではないのか?
 全く、本当に困ったやつだな。
 なにもなくても会いに来てしまうなんて」

 無視された。
 瞬殺だった。
 玩具だった。

 気が狂ったかのような、否、こっちの気が狂うかのようなスイートボイス。
 そして、ビギッと音を立てて凍り付く、すぐそこにある美術部員達(きき)。

「いいだろう、これから新都にでも行くとしよう。
 覚悟はいいか?
 君が甘えて来るというならいくらでも甘やかしてあげるとしよう。私の衛宮……」

「―――――」
 なんという蜂密度。
 なんか、横っ面にキスしてますよこの人?
 俺は茹で上げられたタコのように顔が真っ赤になっていることだろう……ってあれ?
 よく考えると、致命的に足りない物が一つあるような。

「氷室、今日はこのままどっかに寄っていくって、部活はないのか?」
 部活とは名の通り部活動であって、氷室鐘は陸上部所属で、高跳びのエースを張っている。
 地区予選も近いから追い込みを掛けてるはずだし、氷室がさぼるとも思えない。
 放課後に出かけるというなら、部活はどうなっているのか。

93 名前: 十七分割→ナインライブズ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:25:23
―――――その男を、見た。

 真摯に。
 これ以上無く、真剣に視線を向けただけで、視界が凍った。
―――ドクン。
 黒い髪と赤い瞳。
 黒く、聖杯の泥に汚された大英雄の躰。
―――どくん。
 脈拍が跳ね上がる。
 静脈と動脈が活性化する。
 神経は次々と破裂していって、脊髄が首の後ろに飛び出してしまいそうなほど、体の中身が暴れだしている。
――――ドクン。
 森の中で木々を蹴散らしている男は、ただ、勇ましかった。
「――――――――」
 遠くなっていた眩暈が戻ってくる。
 くらり、と意識が落ちかける。
―――――どくん。
 息ができない。
 指先が震えて、血液が届いてない。
 全身のいたるところが寒くて、凍死してしまいそうだ。
――――――ドクン。
 心臓が早く早くと命令してくる。
「あ―――――あ」
 耐え切れなくなって、喉から喘ぎ声をもらした。

――――考えられない。
 ある一つの単語しか、俺の脳味噌は生み出してくれない。

―――――ド、ク、ン。
 そうして、繰り返される言葉はただ一つ。
 ヤツを。
 あの怪物を。
 オレは、このまま―――――

『ぜー、ぜー、ぜー』
 吐き気がする。呼吸ができない。息が苦しい。
 正しい息の仕方を、どうしても思い出せない。

『ぜー、ぜー、ぜー』
 喉がアツイ。眼球は砕けそうだ。手のひらはぐしょぐしょに濡れている。
 体中は寒いのに――――こんなにも、汗をかいてしまっている。

「はあ―――はあ―――はあ―――」
 ……倒さないと。
 アイツを倒さないと。
 倒して、倒シテ、イリヤと逃げよう。
 凍った魔術回路を作動させて、
 ケモノのように呼吸を荒くして、
 黒い巨人を迎え撃つ。

「はあ―――はあ―――はあ―――」
 巨人は俺を探している。
 こちらにはまだ気がついていない。
「は――――あ」
 このままやり過ごせばアイツは向こうへ行く。
 イリヤと、この場から逃げだせる。

「は――――はは、は」
―――ヤツから逃げる?
 冗談じゃない。
 オレはそんな事をしたいんじゃないって、自分でよく解っている。
 ……良く解っているつもりなのに、よくわからない。
 オレはヤツを打倒しなければいけないのに、どうしても、オレには『やりたいコト』とやらがあるみたいだ。
 頭の中に、雨雲みたいな霧がある。
「―――――」
 ノドがアツイ。
 さっきから全然イキがデキナイ。
 だが、それがどうした。
 そんなのは当然だろう?あれだけの強敵を目の前にしたんだ、興奮しないほうが失礼ってもんじゃないか?
 このままやり過ごして逃げる?
 ハッ、チキンじゃあるまいし止してくれ。
 よくわからないけど。オレがやるべき事は、それこそ唯一つだけだろう。
 左腕に手を添えて敵を視る。
 手の平には錬鉄の英雄の手触り。

「く―――――――ク」
 なんて幸運。
 道具は、まさに揃っている。
 ……バーサーカーはオレ達を探している。
 十分に距離をとろう。
 気付かれないように、ヤツに見つかる前に。
 オレの体ではヤツの斬撃に耐えられない。
 だから近づかれる前に、斧剣を投影しなくてはならない。

94 名前: ランサーズヘブン 槍→氷室 士郎→士郎 投稿日: 2006/01/28(土) 22:25:45
「心配ない、すでに調整期間入っているし、先ほどある程度体も動かしてきた。
 だが有り体に言って、衛宮と一緒に居るほうが楽しい。
 いや、高飛びがつまらないというわけではないのだが」

 ノロけながらも口調は全く変わらない。
 恐るべしは氷室の直球さ。
 力のみならず、機械のごとき精密さと持続時間である。

「い、言われてみればそうか。いや俺がどうとかじゃなくて、根を詰めすぎても結果は出せないもんな!」
「ああ、私の知り合いにも滅法根を詰めたがる輩が居てな。
 一度やると決めたら力尽きて倒れるまでやるやつだ。
 普通で善良な学生だと自称しながら、人に頼み事をされればノーと言えないくせに、
 労いの忠告は全く聞かず、休めと言った相手の顔色まで気遣うという有様だ。
 果てには、丸一日駆けずり回った行為に対して礼を返せば『そんなものは受け取れない』の一点張りでな」
「へえ?なんだかとんでもないお人好しがいるもんだな」

 あ、なぜか地雷踏んだ気がする。

「うむ、くわえて重度の女たらしだ。
 人畜無害を装って女性に無防備なところを見せては、相手が油断したところを骨抜きにしてしまうのだ」
「うわ、ひどいなそいつ。ちょっと人としてどうかと思うぞ?」

「いや、衛宮のことなんだが」
「って俺かよっ!」
 なんてコトだ、それなりに善良で一般的な高校生名はずの俺は周囲からそんな目で見られているというのか……。

「……はあ、せっかく部活が早く終わったから時間をフル活用している、と。
 それでいきなり美術室に呼び出したのか。別に断る理由もないけどさ、俺と一緒にいてそんなに楽しいのか?」

「楽しくないはずがない。
 恋に掛ける情熱に関しては自信がある。こと衛宮への愛にかけては世界一の自負があるぞ。
 三枝のような純情可憐な乙女はまだしも、どこぞの女丈夫や、我が陸上部が誇る稲群原の暴走特急のような、独り者にはわからぬ世界だが」

 あ。
 いま、なんか亀裂入った。
 美術室だけに芸術は爆発だ!みたいな。

「いいのか、そんなコト言って。口は災いのモトだぞ氷室?」
「む、確かにそれもそうか。だが今は二人っきりだろう?衛宮が言いふらさない限り広まることもないだろう。
 いっそ、その口を今ここで塞いでしまうと言う手もあるな」

 鳴くのなら、殺してしまえホトトギスか?
 よっ、と体を寄せる氷室。

「――――」
「――――」
 何も言わず応じた俺にご機嫌なのか、氷室はそのまま首に手を回してくる。

「――――」
「――――」
 会話がとぎれる。
 話が続かないのはともかく、これ以上この場にいると後ろからザックリやられそうだ。

「邪魔してほんとにごめんなさい。じゃ、俺たち帰りますね」
「衛宮、先ほどの続きはどこでするのだ?」

 腕を組まされて、美術室を後にする。
 俺にとってはあまり馴染みのない場所だったが、氷室にとってはお気に入りの空間らしい。
 
 夕暮れと見間違うようなほの暗い美術室。
 願わくば、心ない邪魔者扱いされて、この平和を乱すことのないようにしたいのだが。

95 名前: 士郎→バゼット『ダメット×ハーレム×カルテット』 投稿日: 2006/01/28(土) 22:26:21
「十秒………二十秒…………三十秒……………四じゅ―――」
 体がウズウズする。
 これだけ長い時間を待たされると、ラックをぶっ放して突貫したくもなるというものです。
「……いえ、ガマンしなさい。大事な話があるというのだから、先走ってどうする」
 ここは女らしくドンと構えなければ。
 時間を数えたら我慢がきかなそうなので、教会の祭壇から少々下がってランサーたちを待つ。
「待たせたな。ちょっと順番決めんのに手間取ってな」
「遅い。一体何だというのですか、ランサー」
 親愛なる槍兵の声に視線を向ける。
「――――――、え?」
 ……白状すると。
 この瞬間まで『みんなに教会に呼び出される』というコトがどれだけ大事なのか、まったく理解していなかった。
「ま、なんだバゼット。
 この時代じゃ初めてだから、ちゃんと現在のしきたりを守れているか自信がねーが」
 不安半分、期待半分の眼差し。
「――――や。良いか悪いかで言えば、とんでもありません」
 不意打ちにクラックされた頭は、まともに機能しなかった。
 青い上着の隙間からは、ランサーの鎖骨の美しさをこれでもかと見せつけてくる。
 そして、なにより彼が四隅に施した呪いが頭をぐらぐらと揺らした。

「そうだ。この“四枝の浅瀬”、ルーン使いなら意味が分かろうよ」
「……その陣を布いた男に策略は許されず。
 その陣を見た女に、退却は許されない。
 ―――我ら赤枝の騎士に伝わる、一騎討ちの大求婚だ」

「アンタに、求婚はしていなかった」 

 気がつけば、槍兵は目前にいた。
 少し遠い。せいいっぱい手を伸ばしても、きっとぎりぎり届かない。

「……忘れ物だ。これは、アンタに返しておく」

 右手に手渡された、鉱石の耳飾りを見つけた。
 思い出がある。
 思い出があるので、なんとか指をほぐして握り締めた。
 それで心拍音が倍ぐらいに跳ね上がったけど、石の手触りの方が嬉しかった。

「あ……ねえ、待って。
 わた、し、どう返事を、した、ら」

 何が言いたいのか自分でも分からない。
 と。



「ふむ。抜け駆け、という訳か。"刺し穿つ死翔の槍"まで使って私達の妨害をした挙句がこれか。光の御子の名が泣くのではないかねランサー」
「――――――、は?」
 第二の声に、背筋がピーンと伸び上がる。
 今の、氷を思わせる中田譲治(クール)ボイスは―――
 普段の彼とは対極の艶姿。
 フォーマルな黒のスーツは、彼自身のように無駄のないシンプルなデザインだった。
 私と同じスーツ姿でも、どこか抑えきれない重厚な完成度が滲み出ている。
 にも関わらず彼が俗に見えるのは、神に仕えるものにはそぐわない、右手の赤い薔薇の花束のせいだろう。
 二人して、言峰綺礼の姿に硬直する。
「――――――」
 ランサーはいかなる感情からかは分からないが、こっちはもう容赦なく言い訳なく、女として目が離せなかった。
「こ、これは、また―――」
 滑りそうになる言葉を飲み込む。
 よーするに、ランサーに次いで、またもとんでもないモノが現れてしまったのです……!
「……? いや、タイミングが悪かったかね?
 その様子からすると、大切な話をしていた時に割り込んでしまったようだが……?」
 苦笑いを浮かべて心配をする言峰。
「はん、嬉しそうに解りきったコトを言ってんじゃねーよ……
 ま、仕方あるまい。順番は順番だからな。
 俺の番は終わりだ、言峰。……堕とせるものなら堕としてみせるがいい」

96 名前: 十七分割→ナインライブズ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:26:41
……バーサーカーが接近してくる。
 まだ動かず、様子を眺めた。
 巨人は木々を伐採し、蹴散らしながら来る。
 バーサーカーは咆哮を上げ、走行スピードを増した。ぞくりとくる。
 殺気が膨れ上がる。
 間違いない。こちらに気付いた。

魔術回路起動、投影装填。

 わくわくする。
 森林という閉じた虫籠の中で、アーチャーの腕を握り締めた。
 眼前に巨人が迫ってきている。
 あともう少しでヤツを      できる。
 ああ、そう考えるだけでひどい快感―――――
 体中が、血に飢えた剣にでもなった気分。
 早く――――早く、ヤリタイ。

―――――あと三秒。

 体中に激痛が走る。
 この痛みは邪魔だ。
 こんな状態では出来る事も出来やしない。

―――その腕を使えば、おまえの体に植え付けられた時限爆弾にスイッチが入るのだ

「………」
 いつだったか、そう言っていた神父がいた。
 でも、今はソイツの名前と髪型、黒鍵、邪悪な笑み、そしてマーボーしか思い出せない。
 
 投影完了

 巨人が迫る。
 だというのに。
 この両目はどうかしてしまったのか。
 視界には、聖杯の泥に汚染された巨人を迎え撃つ八つの『剣閃』が、見えている。
 
 自分でもワカラナイ。
 自分は何をしようとしているのか。
 自分はなんだってこんな事をしているのか。

 衛宮士郎は――――あの巨人を、どうしたいのか。

 ワカラナイ。
 ワカラナイママ、前ニデタ。

「■■■■■■―――――!!!!」
 咆哮を上げ、狂戦士が斧剣を振り上げる。
 瞬間――――そのわずかな隙に懐に飛び込んだ。

「■■―――――」
 狂戦士の声が上がる。
 否、上がろうとした。
 狂戦士の声が上がりきる事は永遠にない。
 その前に、オレがヤツをバラしていたから。

 懐に入った瞬間。
 一秒もかけず、狂戦士の体に見えていた剣閃上に斧剣を走らせた。
 断ち、
 切り、
 砕き、
 壊して、
 ざっくざっくに切断し。

    完膚なきまでに、「殺した」。

 狂戦士の体に見えた計八つの剣閃、
 上腕、鎖骨、喉笛、脳天、鳩尾、肋骨、睾丸、大腿。
 すれ違いざまに、
 一秒の時間さえかけず。
 
 真実 瞬く間に 悉く。

 ヤツを、九つの肉片に『解体』した。


『―――え?』
 すごく間の抜けた声が聞こえた。
 それが自分の喉から出た音だというコトに実感が沸かなかった。

 くらり、と眩暈がおこる。

 目の前には大怪我をしたバーサーカーの体。
 地面には、バケツの水を引っくり返したように赤い血が広がっている。
 むせかえる血の匂い。
 
 不思議なはなし。
 森の中には誰も居なくて、自分と、死んだ筈の狂戦士だけが、呆然と立っている。
『―――う、そ―――』

 森の地面にこぼれているバーサーカーの血。
 だが、数秒前にあった威圧感、殺気は依然存在したまま。

『生き―――てる』

97 名前: 十七分割→ナインライブズ3 投稿日: 2006/01/28(土) 22:27:46
 信じられない。
 これで生きているなんて化け物だ。
『なん―――で?』
 なんでもなにもない。
 たった今、自分の全力で。
 バーサーカーに放った、ナインライブズでは、倒せなかっただけじゃないか。

『俺は――――負けた?』

 そう間違いなく。
 それとも違うのだろうか。
 人間では、サーヴァントに勝てない。
 だから違う、俺がバーサーカーに攻撃をしたのは間違いだ。
 けど彼を倒す理由はあった。
 だから違う、彼がこっちを睨んでいるのはなんかの間違いだ。

―――地面に、赤い血が流れていく。

 ずしり、と。
 狂戦士が一歩踏み込んでくる。

「ひっ!……やっやだなあ!そんな怖い顔はヤメテ下さいよぅ」

 驚いて後退するけれど、彼の視線は外れない。
 彼は赤い血を、地面に流し、ただ静かにこちらへ歩み寄ってくる。

「バ、ババ、バーサーカー様に手を挙げるなんてあり得ないじゃないですか」
 ああ、殺される
 俺が無茶苦茶にしてしまったから、すぐに、バラバラにするためにやってくる恐怖の巨人。

「―――俺じゃ、ない」
 ソウ、違ウハズ。
 違う。違うんだ。違うんだってば。違うつってんだろ!!
 これは。
 これは、これは、これは、これは、これはこれはこれはこれは―――――

 何かの悪い夢だよバーサーカー

「……なので違います」
 否、否、それこそ否
「違うって―――言ってるのに」
 非ず非ず、それこそ非ず。
「ちがうよ―――ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがうちがうちがう……! 俺は知らない、おまえみたいなヤツ、森で見かけただけのただのギリシャの英雄だ……! ほらおかしいじゃないかバーサーカー……ただの他人をさ、どうして俺が攻撃しなくちゃいけないっていうんだよ……!」

 叫んでも答えはない。
 それに理由ならはっきりしている。
 教会で目覚める時、俺は一つの事しか考えてなかった。

「俺は――――」
 そう、俺は―――
             衛宮士郎は イリヤと桜を 助ける、と。

 それが、あの時の俺の全ての意思だったのだ。
 ただ、頭の中が燃え上がっていて、この森から脱出する為にはバーサーカーを倒す事以外に考え付かなかっただけで。

「ちが――――――うんだ」
 歩いて、くる。
「話し合おうじゃないか」
 斧剣を振り上げてくる。
「暴力で解決した後に生まれるのは悲しみだけ」
 眼球が、赤い朱色に輝いている。
「■■■■■■―――――!!!!」
「何故それがわからないんだ―――――!」

 駆け出した。
 バーサーカーに見られているとか、イリヤの居場所が知れてしまうとか、そんな事は一切考えられない。
 ただコイツから逃げたくて。
 半狂乱になって、自己弁護を行いながら駆け出した―――――

 地割れに飛び込む。
 地面にひれ伏して、イリヤに向かって土下座した。
 
「……ごめん、イリヤ」
―――ほんとうに、ごめんなさい。

 あんな強気発言をして
 結局俺はイリヤを守れなかった――――

 でも、俺はがんばった。
 俺はイリヤの為に死力を尽くした。
 今までの聖杯戦争での苦労とか、
 そういうとこ評価してくれてもいいんじゃないか。

 結果だけが全てじゃない。
 そう、この努力だけは決して、

「間違いなんかじゃないんだから!」

98 名前: 士郎→バゼット『ダメット×ハーレム×カルテット』 投稿日: 2006/01/28(土) 22:28:16
「……ランサー。
 言いたくはないのだが、敗北感に打ちひしがれるのはお前の方だぞ。
 お前は彼女の好みが分かっていない。惜しむらくは、せめてお前の生涯が後……でもあれば―――」
「??」
 言葉をはき捨て遠ざかっていくランサー。
 言峰がこちらを、この上なく頬が赤くなっているだろう私を観察する。


「籍を入れないかお嬢さん。
 お互い一人身だ、ここで式を挙げるのも悪くはあるまい」

 ごく自然に、神父は赤い薔薇を差し出した。

「――――――」
「なんだ。異論があるとでも?」
「え、いえ、そのなんですか。わ、私が言いたいのは生き方の話です。貴方には、最後まで自分だけで生きていく覚悟がある。
 ……本当は私の手を借りなくてもいいのです。だからなぜそんなことを言い出すのかが解らない」
「失敬な。私はそこまで考えなしではない」
「―――え」

 目を疑う。
 気に障ったのか、神父は拗ねるように呟いた。
 初めて見た、人間らしい感情だったと思う。

「ああ。人並みに愛情は持てずとも、物事を美しいと感じる事はできる。その基準は君たちとは違うが、愛情という物がある事に変わりはない。
 我ながら間の抜けた話だ。そういう意味で君を愛していると、かつての私は気付かなかった」

 もう一度、陰鬱に神父は笑った。
 その肯定は、確かに―――夢見ていたコトであるが故に、私には真っ当な対応ができなかった。




「ヒヒヒ―――
 神父も槍兵も後からぬけぬけとかっさらおうとしてんじゃねーよ。バゼットのパートナーはこの俺だぜ?」
 ―――第三の声、参戦。
 緊張が解ける。ランサーと言峰という二人からの求婚(かくこうげき)を受けたのだ、もはや醜態はさらすまい、と振り返る。
 そこに、

 誰よりも見慣れた、相棒(アヴェンジャー)の姿があった。
「よう、目が覚めたかマスター。
 ほら、いい加減目を覚ませよ。目がハートになってるぜ、いつもの生真面目さはどこいった」
 自信満々のアンリに、そ、そうですね、と思わず頷く私だった。
 青、黒、ときて、更に派手な黒の刺青と赤の腰布。
 見ているこっちが恥ずかしくなりそうなデザインなのだが、本人が堂々と着こなしているんで、見つめるコトが後ろめたくない、というのもポイントだ。
「で、返事は、我が麗しのマスター?」
「……ええ。そうだ。確かに私らしくない」
 あと、確かに似合っているのだが、同じぐらい愛らしい、というコトは、悔しいので口にしなかった。
「……それで先ほどの話ですが。
 貴方は私のパートナーだと言い、二人を制止した。
 私に求婚することと、どういう意味があるのですか?」
「ん? ああ、アンタは俺のかけがえのない光だからな。アンタは他の誰にも譲れないって、さっきルールを作ったところ。
 まー、要するに、この世で唯一つ殺す気にならないハニーになったってワケ。
 見てくれは女だけど中身は十三歳の女の子っつーか、攻略対象の異性にカテゴライズしたんだよ」

 さらっと。
 なにか、ひどくトンデモナイ返答をされた。
「……私を、女の子扱いする、と……?」

 十三歳の少女だの、可愛らしい、といった戯言は聞き慣れていたが、そもそも彼に普通の女性扱いされたのは初めてだ。
 ああいや、冗談として彼は言ってなかったのかもしれないが、私にはそういう風に聞こえていたのだ。
「あれ、信用できねえか? 最大限の譲歩なんだぜ、こんなの最初で最後の告白なんだぞ?
 ……くそ、頭くるな、こっちは本気なのに。
 はいはい、そうですか、形のない物は見えませんか。しょうがない、こういうのなら信用できる?」

 私の驚愕を『不審』と捉えたのか。
 礼拝堂の椅子を机にメモ用紙に、サーヴァントは何やら書き込んでいる。

「ほい、これあげる。誰かに譲ったりしないように」

 メモ用紙には達筆な日本語で、『恋愛対象認定証。聖杯戦争終了まで有効』などと書かれている。
「―――なんですか、これは」
「なにって、俺流の婚姻届。
 これなら誰が見てもアンタは俺の妻って判るだろ」

 良かったね、と紙切れを押しつけてくる。
 ……やはり、さっきの確信は正しかった。
 私とこのサーヴァントの関係は、絶望的なまでにぐちゃぐちゃになってしまった。

99 名前: 士郎→バゼット『ダメット×ハーレム×カルテット』 投稿日: 2006/01/28(土) 22:30:55
「それがお前の告白か。
 ……くそ、順序がメチャクチャだ。仮にも俺を核にしているくせになんてザマだ」
「……?」
 予想外の声に全員が振り向いた。
 気配もなくひっそりと現れた第四の声。
 それは紛れもなく、
 紛れもなく……誰?
「――――――」
「――――――」
 まじまじと第四の少年を見つめる私。
 無遠慮な視線を受けて、赤毛の少年はますますしゅんと顔を曇らせる。
 ……って、待ちなさい。
 赤毛で、ぐるぐる金目で、今の物言い―――
「し、士郎君!?」
「……ふん。どうせ俺はバゼットとは後日談だけの付き合いだから。この三人とじゃ、天秤にのらないのは当然だ」
「――――――」
 ……普段の純朴な姿からは想像もできない。
 真っ赤な顔をして俯きながらつーんと拗ねた言葉を吐いている。
 士郎君自身が普段から真直ぐな少年だからだろう。
 不釣り合いな表現だが、可愛いおんなのこ、という言葉が頭に浮かんでしまった。
「な、なんだよ、その目は。
 "ごめんなさい"だったんならどうぞ遠慮なく。俺はあくまでバゼットさんにお付き合いをお願いしたいだけです。
 振られたからって自棄酒を飲んだりしてぶっ倒れたりしませんから」
 しきりに体の後ろに小さなケースを隠す士郎君。
 どうも、そのケースを私に渡そうとしていたようなのだが……
「へえ、俺とアンタ、種は同じだけの違う鳥だろうに、俺を意識してるの?
 ……いえ、違うか。そっかぁー。バゼットは堅物だし、そのケースの給料三か月分の指輪(なかみ)が万が一にもバレちまわねえか気になって、」
「う、うわぁああ、な、なんていう誤解だ!
 お、俺は単に、バゼットさんから見ればガキだよなーとか、年の差を思って溜息をついているだけだ!
 お、お前だって、男としての頼りがいはあの二人には負けるよなー、とないものねだりしてたじゃないかっ!」
「べっつにー?
 そりゃそっち方面じゃ勝てないけど、あいつを救ったのは俺だもの。
 いいじゃねーか、男は玉砕覚悟で特攻しなきゃいけない時があるんだから」


 ……さて、誰の求婚に答えるべきだろうか――――




 また一日目が始まった。
 我が麗しのマスター・バゼット嬢はソファーで眠りこけている。
 ように見えて夢を見ている。
 理由は明白。えへへへーなどと色ボケした寝言をもらしながら頬を緩めているからである。
 いずれ夢は醒めるので、無理に起こしたり埋めたりする必要はない。
 オレはただ、彼女のサーヴァントとしてここを守っていればいい……が。
「マア。夢ヲ見ルノハ自由デスヨネー」
 自分の欲望には正直に、感想はそのままの棒読み口調クイズ鬼。そこまでにしておけよダメット。
 オレは自己快楽を最優先とするサーヴァントなので、バゼットの夢を克明に記録する。
 後は何も考えず目が醒めたマスターをからかいつくし、気が付けば後頭部からぶっ飛ばされているのだろう。
「……少し未練だ」
 彼女の顔をまともに見ていられるのもこれが最後か。
 取るに足りない未練に額を掻きながら、安全圏へ避難した。

「っ―――、ぁ…………」


「さあ、マクレミッツ逆ハーレムを続けよう、ダメット・ダメガ・ダメレミッツ。
 ―――今度こそ、君の王子様を見つける為に」





























「――――"切り抉る戦神の剣"――――!!!」
 ―――それは、文字通り光の線だった。
 触れる物を例外なく切断する光の刃。
 アヴェンジャーを一刀のもとに両断し、夜空を翔け、雲を断ち切って消えていく。
 ……おそらく。
 アレが地上に使われたのなら、街には永遠に消えない大断層が残っただろう。

100 名前: 97 投稿日: 2006/01/28(土) 22:31:04
ネタの投下タイミングが悪かったーーー!!

101 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:31:53
混沌領域

102 名前: ステンノ→間桐慎二 匿名希望の妹→匿名希望の妹 投稿日: 2006/01/28(土) 22:32:34
――間桐慎二
 優雅な仕草、溢れる気品、優しい言動。
 どれをとっても理想の男性といわれた学園のアイドル。
 彼に名を呼ばれただけで、女はあまりの喜びに我を失い
何所にでも付いていったという。


 が。
 匿名希望の妹に言わせれば、極度のヘタレ。
 魔術師の家系だからといって他人をショミンと見下し、
捻じ曲がったプライドが心の拠り所という、小心者ワカメ。

103 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:32:49
取り敢えず落ち着け。
合体事故起こした挙句、オレサマ(ryな自体が発生しとるぞw

104 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:35:21
なんだこの獣王の巣はー!!?

105 名前: 97 投稿日: 2006/01/28(土) 22:36:53
ちなみに念の為に
>>93−96−97
は一連のネタです。

106 名前: 95 投稿日: 2006/01/28(土) 22:37:02
いや、こちらの方こそすまん。

107 名前: 夜の聖杯戦争6 投稿日: 2006/01/28(土) 22:40:14
「貴方、は……?」
痛みは最高潮に。
左腕が落ちそうなほど。

「神父の代役です。言峰綺礼はここにはいない。もう、この世の
 何処にも存在しない。目を覚ましなさいバゼット。貴女が望む
 ものは初めから無かった。言峰綺礼が、ただの 一度も貴女を
 愛した事がなかったように」

「―――、あ」
選ばれたのは、彼が推薦してくれたから。

“監督役から直々に指名があるとはねぇ。なにか、個人的な
 交友でもあったのかなバゼット君?”

協会の野卑な皮肉も気にならなかった。
あの誰も選ばない男が、私を選んでくれたのが嬉しかった。

「―――、ああ」
でも、あの時の続きを話すコトはなかった。
公私混同をしては失望される。
彼は私の能力を評価し、マスターに推薦してくれたのだ。
だから私も、彼と出会う時は勝者として。
聖杯戦争に勝ち残った後に、再会するつもりでいたのだ。

「―――、あああ、あ」
全ては順調だった。
私は理想的なサーヴァントと契約し、以前ある魔術師が使って
いた洋館を隠れ家にした。
七人のマスターはもうじき出揃う。これからの戦いに身を奮わせて
いる時、彼があの部屋に訪れ――





「―――信じられない。何が優しくする、ですか。このケダモノッ」

108 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:41:21
>>99
オチが良し。ともかく良し。

109 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:43:04
…なあ、まだたったの二十二時間だぜ?
一日たってないんだぜ?
どうなってんだよこの勢いはッッ!
GJが追いつかないだなんてありえねーッッ!

110 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:43:48
―――溢れる光。


 空に穿たれた『孔』は光の線に両断され、跡形もなく消滅した。

 あたりには何もない。
 何もかも吹き飛んだ山頂は、まったいらな荒野に変わっていた。

 遠くには夜明け。
 地平線には、うっすらと黄金が射している。

「――――っ」


 左手が痛む。
 最後の令呪が消えていく。


 ―――それで。
 本当に、幕は下りたのだと受け入れた。

「これで、終わったのですね」
「……ああ。これで終わりだ。もう、何も残ってない」

「そうですか。では私たちの契約もここまでですね。貴方の剣
 となり、敵を討ち、御身を守った。
 ……この約束を、果たせて良かった。

「……そうだな。セイバーはよくやってくれた」


 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 セイバーは遠く、俺は彼女に駆け寄ることもしない。

 朝日が昇る。
 止んでいた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、


「最後に、一つだけ伝えないと」


 強く、意思の籠もった声で彼女は言った。

「……ああ、どんな?」


 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 セイバーの体が揺れる。

 振り向いた姿。
 彼女はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、



「シロウ――――私は、愛している」


 そんな言葉を、口にした。

111 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:44:32
うむ。だが合体事故といわれると、砕け散るゲッターマシンが見えるような気がするのはわたしだけだろうか?
そして事故合体といってしまうと、何となく卑猥におもえるのもわたしだけだろうか?

112 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:50:25
>>110
堀衛門逮捕ライブドアショック的既出

113 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:52:53
>何が優しくする、ですか
 堂々ととんでもない嘘ついてるな言峰ww

114 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 22:53:57
>>92>>94
これがかのクーデレかッ!なんつー破壊力の高さだコンチクショウ
へし折ったフラグ返せよー。あれ、っかしーなー

>>93>>96>>97
ちょwww士郎超絶ヘタレwww
冒頭で燃えた俺の感情をどうしてくれる!w

>>95>>98>>99
ワロスwww士郎かわいいよ士郎
命をかけてまでダメットをからかうアンリは本当に馬鹿だなあ

>>102
兄バージョンキタコレw

>>107
あれー!あれー!神父さん!ちょっと神父さあん!

115 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:01:00
すごいな、たった一日で100超えたか。
そして更に凄いのは良ネタ投下しまくりでレス番指定するのが困難というこの事実。

116 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:02:36
一言でもレスをもらえることで、
職人は次作への活力を手に入れる。

117 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:03:28
と思ったら綺麗にまとめてくれた人がいるじゃないの。
ここは職人も住人も猛者揃いですね。

118 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:04:24
>>そこまでにしておけよダメット。

死ぬほどワロタ!!GJ!

119 名前: 慎ちゃんと海 投稿日: 2006/01/28(土) 23:10:51
「あ、ユスティーツァ」

戦争前の、まだ英霊のいない聖杯に、ぽつねんとユスティーツァが座っている。

「寝ぼけて起きた……ってワケじゃなさそうじゃな」

ユスティーツァは手ぶらで、ぼんやりと壁のアンリマユを眺めていた。

「おーいユスティーツァー」
「……………………」

「なにやっとるんじゃー? 誰か待っておるのかー?」

「……うるさいですね、ほうっておいてください。
どーせ、儀式は失敗なんです。何年待っても『』には至らないし、開いたところで守護者来るし、
気分転換に起きてみればヘンなのが聖杯に混ざってるし!」

「どうですマキリ、イリヤの出番○×回に対して私1回ですよ?
すごーい、指一本で事足りるって正直調整おかしくないですか?
というか、大聖杯より優れた小聖杯なんて存在しませんー」

そのまま大聖杯の隅っこに移動する冬の聖女。
……本気でテンパっておるのか、そのままだんごむしのように丸まってしもうた。
ダンボールがあったら頭から被りかねん勢いじゃ。
その後ろ向きな勢いに不覚にも涙が止まらん。

「な。バカ言うな、負けるなユスティーツァ! 立ち上がれユスティーツァ!
そーゆー不遇な扱いにもまったく気づかない、叶わない理想を追いかけるのが
お前の強さだった筈だ……!」

などと、こっちも勢いでエールを送ったりする。

「……いやです、疲れました。もともと私こんな性格なのです。正しい理想追求者なんです。
お爺さまもゾーゲンも、某正義の味方も、こーゆー風にはじっこで磨耗してくのがお似合いなんです」

ますます閉じこもる
まー、こんな大魔術の場所で引きこもるあたり、
ユスティーツァはやっぱり大物なんじゃと思う。

「……いいですから、さっさと余所に行ってください。
私は天の杯ルートを待っているんです。
私が出られる最後のチャンスなんです。
手ぶらのゾーゲンには用はないんです」

しっしっ、と追い払われる。

「………………」

うーむ。なんか、今のわしでは処置なしの気がするのう。
その内、気が向いたらまた来てみるか。

120 名前: 士郎→秋葉  イリヤ→志貴 投稿日: 2006/01/28(土) 23:12:23
――――良くはない。
 もう、絶対に戻れない。
 このまま自分が消えるのは判っている。
 それでも―――命がある限り、元に戻る方法を探さなくては。

 約束をした。遠野の因習から彼を守ると。
 私は勝手に消えていい命じゃない。
 彼を―――彼と一緒に、生きているのだから。
 だから、まだ――――





 ……だけど、方法がない。
 遠野の罪。混血の力の行き着く先が、紅赤朱へ落ちることなのだから。

 ……意識も、もう砂粒ほどしかない。
 想いはもう、言葉になってくれない。
 私は――――
「――――あ、ぅ……あ」
 あなたとの、約束を――――


 ただ、永遠に届かないはずの手を伸ばして――



 ――――大丈夫、秋葉は助かるよ。
     だって、預かっていた命を今、返すんだからな。

「――――――――――――」
 それは。
 居る筈のない、誰かの声。
「――――――――、   ?」
 言葉にならない声で、名前を呼んだ。
 呼ばなければいけないのだ。
 ―――そうしなければ、   は、行ってしまうって。

 もう、置いてけぼりはいやだって、伝え、ないと――



 ――――なぁ。
 秋葉は生きたいよな? そんな姿じゃなくて、普通の女の子として、秋葉はまだ生きていたいよな?
「――――――――、   」
 戻りたい。名前を。名前を呼んで、止めさせないと。
 でも戻れない。そう頷いたら   が行ってしまうと分かっている。
 名前を、戻りたいと、心の底から、戻りたくないと願っていた。



 ――――ああ。
 意地っ張りだな、秋葉は。だけどな、これは俺がしてやりたいんだ。本当は死んでるはずだった俺じゃなくて、秋葉に、これからを生きてほしかったから。
「――――――――、   」
 何を言ってるんです、あなた。
 いいから、止めてください。そんなナイフは捨ててください。
 失くしてしまった命は、私が支えますから、ああ、名前、名前を思い出さないといけないのに、消えそうな意識の片隅で、たいせつな、名前が。

121 名前: 士郎→秋葉  イリヤ→志貴 投稿日: 2006/01/28(土) 23:13:22



 ――――じゃあ、預かり物を返すよ。
 ただ何の変哲もないナイフで、俺の体を貫くだけなんだけどな。俺の目はすごいんだよ。
 なんていったって、世界の死だって見えてしまうんだから。
「――――――――、  き」
 いいです。そんなの見たくない。いいからそこにそのままいてください。
 私は、



 ――――けど、ちょっと残念だな。
 こんなに綺麗になった秋葉を、もう見ることが出来ないんだから。けど大丈夫。翡翠もいる、琥珀さんもいる。きっと秋葉は、元気でやっていけるよな
「――――――――、  さん……!」
 ゆっくりと、腕を振り下ろしていく。
 黒い学生服の誰かは、まるであの時のように、自分の胸にナイフを突き立てていく。



 ―――じゃあな。
    俺と秋葉は血が繋がっていないけど。
    お前と兄妹で、本当に良かった。
「――――――――」
  き。
 行かないでください、そう思ってくれるなら行かないでください。
 犠牲にできない。一緒に暮らすって言った。あなたの家族を、あなたの命を奪ってしまった分、一緒に暮らすって言ったのに。
 それでも――――それでも、どちらかが犠牲になるというのなら、それは――――



 ―――だめだ。
 言ったよな、兄貴は妹を守るもんなんだって。
 ……ああ。俺は兄貴なんだから。なら、妹を守らなくっちゃな。
「し――――――き」
 思い出した。
 彼の名前を。
 遠野家が本当の家族を滅ぼし、ずっと一人にさせてしまった少年。
 私より少しだけ年上の、黒の髪と優しい目をした―――
「兄さん―――兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、しき、志貴―――――!!!」
 届かない。
 やっと言葉が出たのに、もう声は聞こえない。
 視界が赤い靄に包まれて何も見えない。
 彼は、最後に。



 ありがとうと微笑って、トン、と自らの胸を貫き通した。

122 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:16:57
>>119
初めてユスティーツァに萌えた。
だが一つだけ惜しいところが。
ゾーゲンではなくゾーケンと読むのだ。あの怪奇バグ爺さんの名前は。
いや、GJ。

123 名前: バゼ→我様 投稿日: 2006/01/28(土) 23:25:26
裏切られたのではない。
雑種らは、始めから気を引き締める心を持っていただけの話。
我は外面ばっかりで、大人になる時に持っていなくてはいけない
“危機感”を、バビロンから引っ張り出そうともしなかった。
我は、危機感なんて持てなかった。
『王たる自分』という鎧を鍛えてばかりで、生身の我を鍛えなかった。
むき出しの我はこんなにもうっかりで浅慮で、我は生まれた時から、ずっと世界を
楽観している。
呼吸するようにうっかりするのだな、とエンキドゥは言った。
それは諦めていたからだ。
危機感を持てない我は、危機感を持たない事で毎日をやり過ごす。
だが、それはぜんぶ面倒だったからだ。
本当は人一倍有能なクセに、詰めが甘いフリをして周囲を騙し続けていた。
本当は人並に危険を予測できたのに、それでは特色を無くしてしまうからと
目を背け続けていた。

本当は――――本当は。

そんな自分がとても楽で/そんな汚点を素で忘れて、
この惨めな気持ちのまま/こんな太平楽な気持ちのまま、
生きていくのだと/慢心せずして
諦めている。/何が王か。

……告白すれば。
我は、油断王などでは――――ガッ!?

124 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:34:08
このスレのギルは死にすぎだw
まあ、ネタになる最期にしちゃった菌糸類が諸悪の根源だがw

125 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:38:43
何だこの凄まじい良作ラッシュは。
氷室に悶え死んでダメットに笑い死んでえへへへー を想像して萌え死んでギルがまた死んでる。最高だな

126 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/28(土) 23:53:53
>>120-121
やられた……。どこのシーンなのか分かった瞬間、衝撃で思わず手が止まっちまったよ。
GJ!!

127 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 00:23:26
ああもうどれにレスしていいのかわからないくらい凄すぎです!!
なんですかこのスタートダッシュは! もう信じられない。
ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃないですか職人さんっ、私走るの苦手なんですからっ
そんなに急ぐとこけてしまいますわ。

128 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 00:38:24
>>1-100のスタートダッシュで一番に脳天にキタのは>>92
というか死ぬかと思った

129 名前: 士郎→言峰 藤ねぇ→臓硯 投稿日: 2006/01/29(日) 00:49:59
 唐突だが、森の廃墟に行こう!
 終末的にイヤな確信があるけど、ステキな戦いが待っている気がする……!

「こんばんは! よろしくじゃ!
 まったく夜更かしさんじゃな御主は!」

「……………………」
 やっぱり居たか。
 この人物が何者かいまいち分からないお前、日が沈んでから間桐邸を訪れると大凶です。

「えー、そんなワケでやってきおったぞ!
 みんな大好き、人類を不老不死にさせる第七の要素、クイズ虫園上級編じゃ」

「今回の賞品はなんとラスボス権!
 脇役キャラはもうグリゴリー、広い大聖杯の前でおもいっきり目立てるハートフルな贈り物!
 ちなみに効能は人気上昇、世界破滅、爆撃型機動黒桜による恋愛運下降とかよりどりみどりじゃ」

「おー、嘘くせー」
 パチパチと拍手をする。
 何がラスボス権をプレゼントかっ。
 このクイズ虫ではせいぜいED直前なのに空気読めずにいきなり出てくる程度であろう。
 が、ラスボスという響きは素晴らしい。
 その心意気につい拍手で応えてしまうのだった。

「うむ、信心深い御主に幸あれ。
 今回のクイズに全問正解したアカツキには、燃え燃えなイベントが目白押しになるのじゃ
 ラスボスはゲームの心じゃ。
 ラスボスは最後で強いのじゃ。
 レベルが低いのにうっかり挑んじゃってタイヘンだのうもう、ヒューヒュー!」

「だがそんなおいしい場面は許さねぇー!
 行くぞ、これが最終決戦、じゃっっっっっ!
 そこなマーボー、プレイヤーの印象に残る最後を迎えたかったらこのワシを超えていくがよい!」
 
 第1問 
 『Fate』には第四の隠しルート『臓硯じぃドキドキハニー介護七年目』が存在する。
 七年目といわず、生涯そうである。
 さらに隠しとして、シロップ介護八年目がある。
>私が殺し。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない
 
 第2問
 このファンディスクのヒロインは間桐 臓硯である。
  それ以外考えれないでしょう。
 >打ち砕かれよ。敗れた者、老いた者が私を招く。私に委ね、私に学び、私に従え。休息を。
  唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせれる
 
 第3問 
 時代は間桐臓硯である。
 当然だ。疑いようがない。
 否。むしろ五百年かけて時代がようやく追いついた。
>装うなかれ。許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、聖あるものには暗い死を
 
 第4問
 『Fate』第一回人気投票、ぶっちぎりの一位は間桐臓硯である。
 そうそう。書き下ろし肖像画は今でも冬木美術館に飾られている。
 というか、十位まで全て彼と彼の虫が占めていた。
>休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。永遠の命は、死の中でこそ与えられる。
 ――――許しはここに。受肉した私が誓う

 第5問
 『Fate』のヒロインは間桐臓硯である。
 当然。臓硯ルートのエンディングこそトゥル−
>――――“この魂に憐れみを”
 
「ショック! 五百年かけて考えた難問奇問が、たった数分で全滅だとは!」
 ピシピシと足元から浄化されていくクイズ虫。
 古来より、対霊にはこれを撃退する決まり魔術が存在する。
 腐りながらも世に迷う魂よろしく、無敵かつ無尽に見えたこの妖怪も、洗礼詠唱を唱えることで崩壊するのだ……!
「おーのーれー。だが忘れるではないマーボーくん、ワシは何度でも蘇る!
 ラスボスがいるかぎり! この世に報われない中ボスがいる限り冥府から虫を使って現れる!
 ……おお、なんという人の業……! 罪深きもの、汝の名は外道神父なりぃぃぃい…………」

『桜ルートのラスボスが解禁された!』

「まあ、なんというか……やっぱり妖怪の類であったか」
 とりあえず。これに懲りてしばらくは姿を現さないだろう。
 権利も手に入れたし、テキトーに供養してから大聖杯に向かうとしよう。

130 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 00:52:08
>>129
ごめん、確かにステキだとは思うけど。
前スレのダメットネタが後を引いてしまって、どうしても笑えなかった………

131 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 01:00:31
うむ、確かに前スレのダメットネタは傑作であった。
が、これも笑った。
いや、第一問の選択肢のところが妙にツボに嵌ってなw

132 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 01:59:31
>>128
同意。>>92を見た瞬間快哉を叫んでしまったよ

133 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 02:19:30
>>129
ジジイスキーとしてはこれこそ最高
洗礼詠唱開始で結末吹いた

134 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 03:04:49
てか>>92のⅡとⅢを待ってる俺がいるんだが

135 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 03:09:02
増えるのはちょっと…俺は氷室だからこそ死んだんだ

136 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 04:18:16
んだ。増えると鐘が不憫だ。

137 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 04:19:21
三枝さんはともかく、真バカがもれなくついてくるからなw

138 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 04:28:52
黒豹同席しても、氷室に言いくるめられてうわーんって走り去って終わりな気がしないでもない

139 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 04:35:19
まあ、作って投稿するか否かは職人さん次第だし。

140 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 05:08:13
>だが今は二人っきりだろう?
思いっきり大勢の外野がいるわけですが。
しかし鐘っちはこのスレでは愛されてるなあ

141 名前: 士郎→A氏 慎二→赤ずきん 投稿日: 2006/01/29(日) 06:24:12
 ―――時はきた。星の覇権をかけた王者の戦いを始めよう。
 貴方は蝉名マンションに引っ越してきた学生のA氏。
 秋になって隣の部屋に入居者がやってきたのだが、
 『一家心中』によって隣室の住人は亡くなってしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 深夜のA氏宅の玄関から、毎晩ドアを叩く音が聞こえてくるようになった……!
 扉を開けるなら>>14へ。開けないのなら>>14へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにもベタな怪談の為、先の展開がなんとなく読めるのだが、

「な、なんてコトだ……! 隣室の住人には三歳くらいの娘がいて、なんだか遺体が行方不明で、もしかしたら俺に助けを求めていたかもしれないだと……!!!!?」

 とまあ、概要はおおむね掴めた。

「ふっふっふ! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りよA氏! あと待っていた、玄関を開けるのを待っていたわ我が運命のお兄ちゃんよ!」

「貴様、何者―――!?」

 あまりの暗闇でよく見えない。
 エントランスの隅っこからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。

「アハハハハハ!
 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そう分からないわよね三歳児なわたし! すごいわ気持ちワルイわー!
 見て見てお兄ちゃん、骨折した後遺症で上がらない肩とか顔のアザを見られないための赤いフードとか、そうゆうのばっかりでもうタイヘンよ!」

 長い長い廊下、クリーム色の床に赤いマダラ、止まらない音。
 そして扉に張り付いた赤い布を被った何か。
 いろんな意味でお約束とも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアウターゾーンにマンションも激動しているというのかッッッッ!!!!? 

「ま、まさかオマエは―――赤、ずきん……!!!?
 バカな、オマエは確かに死んだ筈だ!」
「死んでないのねー!
 いえ、お兄ちゃんが助けてくれなかったので死んでしまいましたが、だからこそ地獄から蘇ったのだ勇者A氏よ!
 ククク、虐待されていた子供の怒りがわたしを蘇らせたのだ。んー、見てほしいのねこの滾るマイパワー」

 貞○を連想させる怨念の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?

「って、ぜんぜん変わってねー!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいわ。
 そう、今までのわたしはわたしじゃあない!
 えーと、言うなればこれまでのわたしがバラモスだとしたら、今からのわたしはバラモスゾンビ!
 いや、土のスカルミリョーネだとしたら、アンデットになったスカルミリョーネなのよ!」

「……………………」
 つまり死んでるというコトだろうか。
 あと、オマエ本当に三歳児か。

「まあいい。
 ともかく俺たちは怪談の登場人物なんだな!? なんかお約束の展開なんだな!? 俺は日々の平穏の為に、オマエは俺に取り憑く為に戦うんだな!?」

「ナイスリアクション! 話が分かるじゃんないお兄ちゃん! さてはこういうノリ好きでしょお兄ちゃん!」
「おう! 結構怖がりだけど好奇心に負けたり巻き込まれたり怪談とかB級ホラーとか稲川順二とか大好きだ!
 そんなワケで、行くぞ赤ずきん……!
 オマエだけは絶対に祓ってやるッッッッ!」

「ク―――吠えるじゃないお兄ちゃん。
 でも今日はわたしの方が強い、成仏できない幽霊の力を思い知るがいい……!
 行くぞお兄ちゃん!
 ボタン、押して……ッッッ!」



「……………………」
「……………………」
 夜が明けた。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない恐怖感も消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「じゃ、そろそろ消えますね」
 ああ、と頷きだけで答える。
 幽霊は明るい時に出てはいけないのだ。

「じゃあ明日の夜も来ます。気が向いたらボタン押して下さいね」
 いそいそと消える赤ずきん。
 あ、フード忘れてった。

「……………………俺もそろそろ引っ越すか」
 ここ数時間の記憶をまっさらに消去して荷造りを始める。

 こうして赤ずきんによるA氏のピンチは去ったのだが、彼の引越し先と、A氏に憑いて行った赤ずきんの話は誰に語られるコトもなく忘れられるのであった、まる。

142 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 06:36:00
なんつーか、なんで>>141はそんなに天才なのさ。

143 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 06:41:03
各所に散りばめられた小ネタに笑ったw
で、つい、>>14をクリックして繋がった先がうっかりコンビでまた笑ったw

144 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 07:32:26
やべえ、すげえ、まさかA氏の怪談持ってくるとは。
>あと、オマエ本当に三歳児か。
クソワラタ 今時の三歳児はドラクエⅢもお手の物なのです

145 名前: ランサーズヘブン2 弓→氷室 槍→蒔寺 士郎 投稿日: 2006/01/29(日) 08:15:20
>>92より
ランサーズヘブン2+ミミックLv2+アトゴウラ+鬼哭がいい+大絶(ry!


 空は快晴。
 流れる鱗雲が秋を感じさせる。
 テレピン油の香りは心地よく、キャンバスを走る鉛筆の音が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 旧政権の名残による潤沢な資金を象徴するかのような、それなりに豪華な稲群原学園の美術室は、しかし。

 この上なく対照的な二人によって、バチバチの修羅場になっているのであった……!

「って、なんで増えてる……!?」

 俺の右隣。
 頼れる背中がキラリ、いや、胸がとってもスラリとした、この褐色の女生徒は見間違うことなき稲群の黒豹……!

「おや、白髪十六本目ヒットか。
 衛宮もなかなか苦労しているようだ。若白髪は老けてる証拠だというのは迷信ではあるのだがな。ところでマキジ、今日は何の用だ?」
「うるさい、あたしが用があるのは衛宮だけど、それを鐘っちに言う必要はないだろ。あっち行け、あっち!」

「ふん。さては性懲りもなく私と衛宮の仲を引き裂きに来たのか。
 確かに私の衛宮は魅力的だからな、マキジが惚れるのもまあ無理はない。おっと十七本目ヒット」

 ※ヒットとは引っこ抜いたの意味です。運ぶ、戦う、食べられる等とお考えください。

「ちちち、違うってばよ!えみ、衛宮のことなんか激しくどうでもいい!つまり……立ち去れとは言わんから退け!衛宮が嫌がっているだろ衛宮が!」

「ふふ。自分の内に芽生えた恋心を許容できぬとは蒔の字もまだまだだな。衛宮が嫌がっていると言うなら得意の色仕掛けで骨抜きにしてしまえばよかろう。
 もっとも、衛宮が私以外の女に溺れるとは到底思えないがな。おっとまたあったぞ、十八本目ヒットだ」

 ぶっちゅ、と横っ面に張り付くクールビューティ。
 ……おかしいなあ。
 両手に花って言葉は、針の筵(むしろ)と同義語なんだっけ……?

「だ、だいたいあたしが衛宮に惚れる理由なんてこれっぽっちも無い!
 あたしは鐘っちと違って男の趣味がハイブリッドなんだ!
 衛宮なんて女心の欠片もわかんなけりゃ、ロマンもムードもへったくれもない朴念仁で、
 目を放しゃそれこそどっかで誰かの代わりに野垂れ死んでるような、お人好しのバカじゃんかよ!」

 抗議の声を上げたいが、邪魔すると蹴り殺されそうなので黙っておく。

「―――――」
 ……あれ。
 なんか氷室が黙り込んでしまった。
 どう見ても蒔寺の方が押されていたのだが。

「……ちょっと、なんで黙るのさ。なんか反論すればいいじゃんか」
「―――――」
 返事はない。
 氷室はかすかに、どこか楽しそうに、

「な、なにさ、やっぱりその程度じゃんか。鐘っちだって衛宮がアホだってことぐらい、」
「―――ああ。その全部が好きなんだ」

 これ以上ないって仕草で笑って、こっちの頭をグラグラにしてくれた。

146 名前: ランサーズヘブン2 弓→氷室 槍→蒔寺 士郎 投稿日: 2006/01/29(日) 08:18:04
「な、な、」
 怯えるように拳を構える。
 そこに以前の気迫はない。
「唐変木なところも、朴念仁なところも、歯に衣着せられない不器用さも、ロマンもムードも解さない野暮天なところも、全部。
 マキジももう少し素直になったほうがいい。
 今の台詞、逆にそこが好きで好きでしょうがないと聞こえたぞ?」
「なぁ―――ふざけんなって、あたしは―――本気でそう言うのが気にくわないって、」
「わかったわかった、そう言うことにしておこう。
 それとは話は別として、私は他の誰にも負けるつもりはない。
 宣言しよう。わたし氷室鐘は衛宮士郎と必ず幸せになる。
 私が問答無用で、他の誰よりも、衛宮を幸せにしてみせよう」
「ば―――そん、そんなうらやましいこと……!
 いや、そんなメンドいことする気はあたしはない、衛宮なんて、衛宮なんてどうでもいい……!
 ざざ、ざんねん!鐘っちの言い分は認めてもいいのけど―――、
 だって、だって、―――衛宮はあたしにそこまで尽くされるような男じゃ―――な、い……?」

「そうか、なら好きにさせて貰う。
 蒔にとってはそういうだけの男に見えるかも知れないが、私の男の趣味は最高だ。
 なあ、そうだろう衛宮?私たちは恋人同士じゃないか、何をしたって恥ずかしくあるまい。
 そういうワケで、ご褒美のキスをしてあげよう」

 一言に付す。
 稲群の黒豹は糸の切れた人形のように膝をつこうとし、

「く……こ、この色城京!
 うう、そ、そんな男いくらでも持ってけばいいのさ……!
 なに、なにが相思相愛で、最高の男だ……!
 あま、あまく見るなよ!?そんなスマイル100%な男なんか惜しくもなんともないやい!
 ……ないんだけど、――――う。う、ぐすっ」

 結局がくり、と肩をおとしてうなだれる蒔寺。
 それで大人しくなってくれたな、と思った瞬間。

「うわぁぁぁぁぁあああん!
 衛宮が鐘っちに取られちゃったーーーー!」
 回りにいる人間が目眩を起こすぐらいの大声で、わんわんと泣き出してしまった。









「………………………」
「………………………」
「………………………」
 嵐は去った。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からないムードも消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「じゃ、明日からはライバル同士だな」
 ああ、と頷きだけで答える氷室。
 女にも言葉はいらない時があるらしい。

「あと、気が向いたら今度うちに遊びに来てくれな。晴れ着来て迎えてやっからさ」
 いそいそと帰り支度を整える蒔寺。
 あ、顔が真っ赤だ。

「……………私も家に帰るか。戦いはまだ始まったばかりだ」
 ここ三十分ばかりの記憶がまきでらに埋め尽くされたまま学校を後にする。

 こうして氷室鐘と蒔寺楓による第一次稲群原大戦のピンチは去ったのだが、俺の意思と、
 それを見守る羽目になった美術部員達のやるせなさは誰に語られるコトもなく忘れられるのであった、まる。

147 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 08:25:03
>>145-146
この、破壊力の高い、ネタは、何だ……!?
つーかぁ、
頭がグラグラになったのはこっちです。
GJ!

148 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 09:41:16
>>145-146
>※ヒットとは引っこ抜いたの意味です。運ぶ、戦う、食べられる等とお考えください。
激しくワラタ。
>「く……こ、この色城京!
マキジの場合誤字なのか本気なのか判別がつかないな。

 くそぅ、何でみんなこんなにうまいんだYO

149 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 10:27:56
>>141
ふってわいたアウターゾーンで爆笑した
いいよなーミザリィ

150 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 11:33:53
最近の更新頻度とクオリティーは確変おこしまくりだな。
きのこが降臨したわけでもあるまいに、どうなってるんだろ。

151 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 12:34:32
>>145-146
わんわん泣く蒔の字テラモエス
よし、オレも捏造カップリングでなんか造るか。

152 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 13:06:54
>>玄関を開けるのを待っていたわ我が運命のお兄ちゃんよ!

何このポジティブシンキングwwww
俺もお兄ちゃんとか呼ばれてえええええええええええええ!w

153 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 13:24:55
そこらのSSなぞよりずっといいな

154 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 14:41:46
というか迸る脇役への愛を感じるネタだ。
なんちゅーかキャラを可愛く見せる工夫がステキじゃないか……!
マキジと鐘っちのどっちもカワイ過ぎる。

155 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 15:14:38
いや、それ正義の味方どころか、厭世のあまり黒化してそうだよ?

156 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 15:20:57
あ、誤爆すまそ。

157 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 15:25:03
すまん、ひとつだけ文句つけさせてくれ
×稲群原
○穂群原

158 名前: 教会>寺 投稿日: 2006/01/29(日) 15:30:05
「そう上品ぶるなよ。アンタ、ここから見てたんだろ。
 衛宮士郎が串刺しにされるのも、体中食い荒らされるのも、ゴム鞠みたいな生首になっちまったのも。
 それを全部見下ろしながら、勝手に何を思っていた。何もしていない、なんてコトはねえよな。
 なにしろ、衛宮士郎が死ぬ時はまわりは悪魔だらけなんだからよ」

「は……何が言いたいのだ、貴様、は」

 かすれる声。
 まるで死に瀕した熱病患者だ。それだけ余裕がないって言うのに口を出す。

「別にい。あんたが淡白な坊主でないコトは聞いているんだ、非難しているワケじゃない。
 ただ事実を言っているだけ。アンタは―――ここからいつも、殺される生贄を見て、一人で盛り上がっていたんだろう?」

「き、貴様は……!」

 うなだれていた首が起きあがる。
 コレは恥辱か怒りか。
 男は頬を赤く染め、泣くような顔で俺を睨む。

「っ、くっ……!?」
 男をベットに放り込む。
 僧衣は邪魔だ。
 横になっちまえば色気もなし、なにより神気臭くて吐き気がする。

159 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 15:35:32
一成ー!!

160 名前: 士郎→そのまま クイズ鬼→言峰 『鬼哭がいい』 投稿日: 2006/01/29(日) 15:39:53
 唐突だが、大聖杯に行こう!
 終末的にイヤな確信があるけど、ステキな出会いが待っている気がする……!
「こんばんは! よろしくね!
 お互い、かろうじて生き延びているようだな!」
「……………………」
 やっぱり居たか。
 この人物が何者かいまいち分からない貴方、ホロウをやる前にFate/stay nightのHFルートをやるとエログロです。
「えー、そんなワケでやってまいりました!
 みんな大好き、でもちょっとクリックする腕が疲れてきた、今度こそ本当のラストバトルです」
「今回の闘いはなんと殴り合い!
 私のコレは真似事師の套路(とうろ)を真似ただけの、内に何も宿らぬ物だが―――死に損ないの相手には十分のようだ」
「おー、嘘くせー」
 パチパチと拍手をする。
 神父のくせに中国拳法なんてっ。このままでいけば、砂時計が空っぽになる前に砂時計(うつわ)ごと破壊されるだろう。
 が、秘門(ごくじょう)という響きは素晴らしい。
 その心意気につい拍手で応えてしまうのだった。
「うむ、信心深いキミに不幸あれ。
 今回のバトルに勝利したアカツキには、嬉し恥ずかしなイベントが目白押しになるのです。
 人の不幸は蜜の味です。
 間桐桜はハダカでエッチです。
 アンリマユが入ってるのにぐっさりルールブレイカー刺しちゃってタイヘンだなあもう、ヒューヒュー!」
「だがそんなユートピアは許さねぇー!
 行くぞ、これが最終決戦、だっっっっっ!
 そこな桜の味方、爛(ただ)れた私性活を送りたかったらこのわたしを超えていくがよい!」

161 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 15:46:09
>だがそんなユートピアは許さねぇー!
言峰……(´Д⊂グスン

162 名前: 慎二OH!→シリアス 投稿日: 2006/01/29(日) 17:32:30
―――ああ、行きがかった船だ。慎二に声をかけないと。。

厚い雲に覆われた暗い埠頭。潮の匂いがする風。
……慎二の、おそらくはたった一つ許された定位置。
台風の来そうな天気。いや、不自然な天変地異。

「な―――」
カードが。
こんな天気だっていうのに、光りだした。
「やめ―――」
流れてくる。いや、語りかけてくる。ナニかの、俺たちの言語よりあまりにも古いレヴェルの言語を、受信してしまう。

そう、概要は掴みかけている。
俺とアイツの勝負はとっくに始まっている。
それは前作。白い勇者ゴバッチネン。覇権。王国の転覆を企む火竜パヤパヤ。誰だって続編ゲーム開始時はレベル1。
戦うのなら14へ、引き返すのなら14へ、進め。宿命は待ってくれない。ロードゴブリン。
ペヤング三世。生命停止の危機率。悲嘆。続編ゲーム開始時におけるレベルの初期化と、装備における弱体化の理由―――

「はっ――はっ――はっ――」
脳内麻薬マキシマムな笑い。
「うひょー―――クカカコココ――キイキイ――」
星が激動する。
吹きすさぶ風。
荒れ狂う雷光。
激震する青き海。

―――ゾッとする。
このふってわいたアーマゲドンに、星も激動してしまっている。
「は、はははは、何者かだって、衛宮ァ!」
ソレは叫んだ。
「くそ、くそ、くそ―――」
ソレはタネなしのメロンのように暴れた。
人間の負の想念がかたっぱしから溢れて、埠頭のコンクリートをバリバリと引き裂いていく。
「すごいぞ、気持ち悪いぞ、ゴージャスな僕!」
言って、
ソレは、花札を伏せて、自分のターンをエンドした。

―――ギッ―――!?

文を奪う札の重なり。それは、紛れもなく、こっちの役作りをに伝わってきた。
「見ていろ、少しずつ札を奪ってやる―――」
ソレは次に、タネ札を、山札で取り入れた。
―――ガッ―――
「そうして点数を奪い返してやる―――」
次にコウ札を、自らの札で取り、雨四光を無効化する。
「その役も、その札も、その点数も!」
カス札を奪い去る。

―――役が揃う。
12文。12文なら、勝負して、くれ。
勝ち。いっそ。コイコイしたい。
セイバーを思わせる魔力の渦なのに、全く変わってない。
「あああああああああああああ!」
その、おそらくは考えられうる中で最高の役の完成で、先ほどまで渦巻いていたよく分からない熱気も消え、
冷静になった。

「じゃ、いつもの場所に戻りますね。じゃあこれあげます。気が向いたらスペシャルから遊んでくださいね。」
叫んで。
ソレは自らの体に、
      ダンボールを
      いそいそと
      かぶった。

163 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 18:00:55
シリアスになると余計慎二の不憫さが……

164 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 18:32:25
>>162
クソワロタwwwwwwwwwww

165 名前: 士郎→そのまま 凛→蒔寺 投稿日: 2006/01/29(日) 18:50:06
昨今の脇役熱にアテられて投下してみる。



「……ふう」
 土蔵の中で、拾い物に囲まれて佇む。
 ひんやりと涼しく、油と錆びた金属の匂いに満たされたここに居ると、気持ちが落ち着く。
「そうだ、弁当。そろそろ腹も減ったし……

「――――うあぁぁぁぁぁ―――!」
 遠くで絶叫が上がる。
 ……悲鳴は離れから届いた。
 美綴の声ではなかった。ということは、氷室か三枝かネコさんか、
 あるいは……じゃあ大丈夫だろう。

「さて……やっぱりどう見ても無理な感じがするなぁ」
 弁当箱の蓋を取って内蓋の炭を払う。
 箸はあっても、人間が食べられる領域を遥かに超えている。
 もっとも、最近は抗ガン物質も進歩しているので多少は安心できるだろうが。

 ……貰い物の弁当とはいえ目を背けたくなる。
 上から下までぎっしりに作り込まれた弁当。
 焦げた唐揚げと、やたらとしょっぱい卵焼き。
 ご飯の上にはテンプレート的な愛の結晶、桜田麩(でんぶ)によるハートマーク、更には俺の名前入りと来たか……!

「凄いなあ。コレ、今時マンガでも滅多に見られないだろうな……」
 蒔寺の弁当は愛妻弁当のある意味誤った歴史を、正しく踏襲した逸品なのだ。
 その他各種おかずもすべて手作り加工によって発ガン性物質化。
 この弁当一食で、寿命が二十万とんで三千秒縮まるというキチ○イ沙汰だ。

 ちなみに、言うまでもなくぜーんぶ、蒔寺が俺宛に作った手作り弁当である。

「とりあえず、食わないで捨てたらバチが当たるだろうな」
 胃薬を探し、長丁場になりそうなのでシートを揃える。
 さて、体は剣で出来ている―――と。

「……………」

 猛虎、いや猛豹襲来の予感がする。
 気圧が下がって雲がたれ込め、風が逆巻くような。
 ずんずんと、大地を踏みしめる足音が―――
「………………」

 それは、真っ直ぐ土蔵にやってきた。
 ぱっと見はヒロインなのだが、キャラ的に見たとするとネタキャラそのものだ。

「よ、蒔寺」
 シュタと手を挙げて挨拶。
「――――――――」
 親の敵を見るかのような剣呑さ。
 いったいなにがあったのか。
 これでは今にもパンチを放って、黒豹道場が始まってしまいそうだ。

「……トイレ、あるじゃないか」
「どっちだ? 本堂の方か?」
「離れの方だよ」
 言うまでもないが、この屋敷は広い。
 本邸と離れ、両方にトイレがあったりする。

166 名前: 士郎→そのまま 凛→蒔寺 投稿日: 2006/01/29(日) 18:50:53


「水が出て来た」
「おもらしプレイか?それはちょっと…まずいな」
 特殊プレイは一度ヤリだすと辺りの被害がひどい。
 隠蔽するにしても、回りのみんなからの目も一応あるから―――

「違う!」
「そういう話じゃないのか?」
 蒔寺のぶつ切りの話し方がすごく不穏だった。
 決壊崩壊の堤を眺めているみたいな。

「……だから、アレなんなのよ?衛宮」
「アレ?……もしかして」
 そういえば、離れは様式だから気を利かせていろいろと工事をしたんだったな。
 それも蒔寺が住み込む前に、我が家最新鋭の家電機器が導入されていて―――

「もしかしてウォシュレットのことか?」

「なんであたしに黙ってたんだよ!」
 あ、決壊した。
 ものすごい勢いで押し寄せる濁流の中、俺は馬鹿みたいに突っ立てて―――

「そういう物を入れたのなら真っ先にあたしに説明しろよ!芳香剤の類じゃないんだから!」
「悪い、忘れていた。
 それに俺、あっち使わないから―――」

「ならなおさらだっ! もう心臓止まりそうにびっくりした!しかもちょっと気持ちよかった!」
 ……さっきの悲鳴はそういうコトだったか……。

「……そうだな。俺も最初に使ってみた時はなんかそういうプレイを想像したし。
 いや、イったことはないけど、歯を食いしばったというか。
 しかしだな蒔寺、あれはあれで慣れてみるとなるほど、文明の利器という物は素晴らしいと―――」
 美綴も『すごいなアレ!びっくりしたよ』と驚いてたからな。
 アレを体験した面々は誰かに感想を言わずにはいられないのだ。

「だれも美綴のインプレッションを聞かせろとは言ってねーよ、問題は!」
「蒔寺、アレは初体験だったのか」
「当然だ、あんなの考えたコトもなかったに決まってる!
 ありえねー。一体、何処の、どんな、人種が、あんなキチ○イで紙一重なコト考えたってんだ!
 チィ、侮れねーな今の技術も。あの発想力、そして実行力、神か悪魔か、あるいは……!」

「――――――」
 物の喩えが暴走している。
 蒔寺、よっぽど驚いたんだろうな。
 ……しかし。蒔寺の古屋敷にウォシュレットはなさそうだし、蒔寺はこの通り新しい物に興味がないので、
 いきなり何をしでかしたのかが非常に気がかりだ。

「ちなみに、最初にどのボタンを押した?」
「な―――なななにこっ恥ずかしいことしれっと訊いてんだ!それも笑いながら!」

「あたしが言いたいのは、そういう物を秘密にして、
 人を笑いものにしようっつー態度が気に入らないと――!」

 や、真実もうしわけないっす。
 ソノ気がそれなりにあって、結果的にこうなったので大満足です。

「はっはっはっ。
 とにかく、アレは便利なものだから満喫するといい。
 和式の母屋には残念ながら使えなくてな」

「だれがトイレで心行くまで満喫するかっつーの―――
 ん、離れのトイレだけなのか?」
 頷く。
 和式ウォシュレットというテレビで見たことがある。
 しかし残念ながら、あれは諸事情で製造中止になっているとか。

「ふーん、じゃ……他に誰か使ったやついんの?」
「美綴とネコさん。ネコさんは驚かなくて面白くなかった。
 氷室はもう前に使ったコトがあったって」

「そっか―――ふふふ……」
 ―――いま目の前で、陰謀が練られている。
 そしてその犠牲者は、最後に残った彼女に違いない。
 悲劇が悲劇を呼ぶ。そんな悲しみの連鎖は俺が断ち切らねば――!

「由紀っちか……いいなあ、楽しそうじゃん」
「やっぱり!蒔寺待て、早まるな」

「あたしは何もー? だってあたしだって文明のリキにアヤカってるってのに、由紀っちだけ仲間はずれじゃちょっと可哀想かなーって。
 それにぃ、あたしは由紀っちに“あのボタン押してみ”と教えるだけだもんね」

 ……なんだかんだでサドっ気はあるのか。
 スキップする蒔寺を、引き留めることは出来なかった。 

 ……そうして、弁当箱を弄りだして数分後。

「――――いやぁぁぁぁぁあああ――――!?」
 
 ……珍しい、三枝の悲鳴だ。
 多分泣いて飛びついてくる三枝を心配しながら、おとなしく今夜のご機嫌取りの計画をたてるのだった

167 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 20:34:31
>多分泣いて飛びついてくる三枝
性技の味方かよっ!

168 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 20:56:45
つーか本編上回るハーレム構成してるだろ、この士郎w

169 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 21:22:55
なにこの脇役ハーレムw
ってかネコさんまでいるのかよww

170 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 21:42:00
藤ねえはヒロインでも脇役でもハーレムに入れないのか

171 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 21:45:02
----体はトラで出来ている。

-中略-

藤ねえはヒロインでも脇役でもなく、きっと体はトラで出来ていた。

172 名前: スパイラルラダー→HFラスト アンリ→士郎 カレン→ 投稿日: 2006/01/29(日) 22:31:43
幕が下りた。

 契約破りの探検によって、桜は影から解放された。
 遠坂もまだ間に合う、魔術刻印が彼女を死なせはしない。

 ライダーなら大丈夫だ
 彼女に任せておけば二人は助かる
 後は―――

 最後の始末をするだけだ。

 じきに大空洞は崩壊する。
 影の中、受肉しようとしているこの世全ての悪が暴れている。
 これからその大本を破壊しにいく。
 桜を縛る元凶を、直にいって消し飛ばす。

「――――――」

 大空洞の崩壊が始まる中、大聖杯に続く道に辿り着く。
 肌は黒く変色し、体からは剣が溢れ出す。
 この体は限界を迎えて、俺は一本の剣になろうとしている。
 そこに、

「――――――驚いた」
 目前には人影がひとつ。
 金の髪を揺らして、いつかのように、

「オマエがここにいるなんて、消滅したんじゃなかったのか?」

 俺と契約を結んだ、サーヴァントが待っていた。

「……消滅はしていません。契約は絶たれ、霊核も傷ついた以上、
 いずれ消滅する身ではありますが」

 相変わらずの素っ気なさ。悪びれた風もない。

「……そういやそうだったけど。じゃあ、今は何の用件で
 来たんだよ」
「貴方を見届けようかと。何処まで行けるか
 分かりませんが、可能なかぎり一緒に行こうかと」
 
 文句あるか、と言わんばかりの断言ぶり。

「―――、は」
 つい口元がニヤけてしまう。
 チクショウ。これじゃ気合が入って仕方がない。

「サービスしすぎだよセ バー。そこまでする義理はない
 と思うんだけど」
「迷惑ですか?」
「逆。ありがたくって泣けてきた。投影のおかげで記憶がなく
 なってきてヤバくってさ。誰でもいいから名前を呼んでくれると
 助かる。いや、地獄に仏ってのはいるんだな」

 大聖杯に向かって歩を進める。

「なあ。あの泥は苦手か?」
「怖くはありません。私は一度あの泥に飲まれたのですから」
「よし。なら、ちょっとそこまで付き合ってくれ。俺一人じゃ途中
 で剣になりそうだ」

 振り返って手を伸ばす。
 気合が入ったので、俺はきちんと俺を保っている。

「……言われるまでもなく。
 私は貴方の剣なのですから」

 手をつなぎ、指を重ね合う。

 ―――舞台はハネた。
    主役でいるのは、もうここでおしまいだ。

173 名前: スパイラルラダー→HFラスト アンリ→士郎 カレン→ 投稿日: 2006/01/29(日) 22:32:38
 崩壊しつつある大空洞。
 立ち止まっている時間は無い。
 閉館した劇場の中、最後のフィルムが回り始めた。

 一歩進むたびに記憶が希薄になる。
 一段登るたびに体が剣になっていく。

 歩き始めたのはほんの数分前。
 だが、その始まりの距離と時間は、もう思い出せないほどに
 遠くに過ぎ去っている。

「――――――、」
 俺は記憶を失っていく。
 軋む手足、突き出てくる剣に、たまに崩れてしまいそうになる。
 だが傷を負うのはオレだけではない。
 手を繋いだセイ ーは、消滅しつつある体を意思だけで保っている。
 見栄を張るには充分すぎる相棒だ。

「――――――」
 大空洞を進む。
 地上は遠く、大聖杯は近い。
 夢の具現。誰かの願い。
 衛宮士郎を形作っていた全てが、一歩ごとに消え去っていく。

「つ、―――、つ―――」

 記憶が消える。
 足を踏み外しそうになる。

「―――シロウ。貴方には、やらなければならないことがあるでしょう」

 それを。
 強く握り締める指が、完全に否定した。

「……そうだな。あの大聖杯を消し飛ばして を解放しないと」

 手を伸ばせば、もうすぐ大聖杯に手が届く。
 繋いだ指は、その頃には独りになる。

「……シロウ。貴方は何の為に、ここまで命をかけるのですか?」

 ふと崩壊にまぎれて声がした。
 理由は―――もう思い出せない。
 ただ、一番やりたかったコトは今も明確に覚えている。
 黒い繭で、頑なに聖杯に縛られる女を解放するのだ。

「前から思っていましたが」

 かすかな安堵。
 女は口元をゆるませて、

「貴方は、本当に頑固な人だ」

 歌うように、そんな言葉を口にした。

「――――――」

 大聖杯が近い。
 衛宮士郎はじきに終わる。
「………………」
 口にする必要はない。
 俺が剣になりかけているように、 イバーの体も、終わりを告げる
 ように見えなくなっていく。

「あー―――」
 何か言い残した事があったか、思いを巡らせてみる。
 気の利いた台詞は思いつかなかったが、一つ、言い忘れを思い出す。

「セイバー、お前に何度も助けられた」
「そう、別にいいです。この身は貴方の剣だったのだから」

 返答はあっさりしていた。
 セ バーがそう言うのなら、この件はこれでおしまいだ。

 背後の気配が消える。

 ―――終着駅が見えてきた。

174 名前: 慎二OH→HFラスト 士郎→士郎 慎二→言峰 3 投稿日: 2006/01/29(日) 22:34:25
 ―――時はきた。願いを叶えるために最後のマスターを決める戦いを始めよう。
 貴方は選ばれたマスター、衛宮士郎。
 この世全ての悪を消滅させるために大聖杯までやってきたが、
 その身はすでにほとんど剣となってしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 記憶を失いつつある貴方の前に、消滅したはずのサーヴァントが現れた……!
 話すのなら>>14へ。引き返すなら>>14へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも古い言語の為、何を言っているかはまったく分からなかったが、


「な、なんてコトだ……!この体は剣で出来ていて、なんだか今からやるのは
 ラスボスとの戦いで、その勝者は自分の願いを叶えるだと……!!!?」

 とまあ概要はおおむね掴めた。

「はっはっは!うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだ選ばれた衛宮士郎よ!ああ待っていた、
 オマエを待っていたぞ私の宿命のライバルよ!」
「貴様、何者―――!?」

 あまりの崩落の激しさに目を開けていられない。
 大聖杯の脇からひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声
 を上げまくる。

「ハハハハハ!
 何者かだと?何者かだと?何者かだとぉ?
 分からないか、そうともわからないだろうなムキムキマッチョな私!
 すごいぞ気持ちワルイぞー!
 見ろ見ろ衛宮士郎、聖杯の泥とかこの世全ての悪とか、
 そういうのが溢れてもうタイヘンだとも!」

 吹きすさぶ風、荒れ狂う魔力、崩壊する大空洞。
 そしてギャーギャー鳴くアンリマユ。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……このふってわいたアーマゲドンに星も激動しているというのかッッッ!!!!?

「ま、まさかオマエは―――言峰、綺礼ー……!!!?
 バカな、お前は確か、死んだ筈だ!」
「死んでないのねー!
 いや、心臓をつぶされたのは事実だが、だからこそ地獄から蘇ったのだよ
 最後のマスター衛宮士郎よ!
 ククク、聖杯からあふれ出る泥が私を生き残らせたのだ。
 んー、見て欲しいものだな、この滾る力を」

 バーサーカーを連想させる威圧感。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?

「って、ぜんぜん変わってねー!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしい。
 そう、今までの私は私じゃない!
 えーと、言うならばこれまでの私がFateルートのセイバー戦のランサーだとしたら、
 今の私はギルガメッシュの前に立ちふさがったランサー!
 いや、衛宮邸に現れたギルガメッシュだとしたら、柳洞寺でエアを構えている
 ギルガメッシュだ!」

「……………………」
 つまりは余命幾ばくもないというコトだろうか。
 あと人の反応ぐらいちゃんと聞いといてほしい。

「まあいいや。
 ともかく俺たちは運命に選ばれた戦士なんだな!?
 なんか宿命のライバルなんだな!?
 俺はこの世全ての悪を消滅させるために、オマエは奴の誕生を祝福する為
 に戦うんだな!?」
「ナイスリアクション!話が分かるではないか衛宮士郎!
 さてはこういうノリ好きだな貴様!」

「ああ!結構ヤケだけど記憶をなくしたり剣になったりラスボスと殴り合いとか
 大好きだ!そんなワケで行くぞ言峰綺礼…!
 オマエにだけは絶対に負けられないッッッッ!!」
「ク―――吠えるじゃないか衛宮士郎。
 だが今日は私の方が強い、覚醒したマッチョの力を思い知るがいい……!
 行くぞ衛宮士郎!
 ここで中国拳法を披露して私の出番(ターン)エンドだ…ッッッ!」

175 名前: 慎二OH→HFラスト 士郎→士郎 慎二→言峰 3 投稿日: 2006/01/29(日) 22:35:44
「………………………」
「………………………」
 決着は着いた。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない熱気も消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「……ここまでか。単純に、時間の差が出るとはな」
 ああ、と頷きだけで答える。
 男には言葉をかけてはいけない時があるのだ。

「お前が最後のマスターだ。聖杯を前にし、その責務を果たすがいい」
 いそいそと舞台から退場していく言峰。
 あ、崩落に巻き込まれた。

「………………………俺も目的を果たすか」
 ここ三十分ばかりの記憶はまっさらに封印して大聖杯を破壊する。

 こうして言峰綺礼によるこの世全ての悪の誕生は防がれたのだが、彼の最後の願いと、
 それを防いだ一本の剣の物語は誰に語られるコトもなく忘れられるのであった、まる

176 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 22:59:15
>つまりは余命幾ばくもないというコトだろうか。
クソワロタwwwうますぎww

177 名前: 遠坂→ライダー アナザー遠坂→カレン 投稿日: 2006/01/29(日) 23:06:49
 ――ー長女ステンノ。
 優雅な仕草、溢れる気品、思慮深い言動。
 どれをとっても理想の女性といわれた女神。
 彼女に名を呼ばれただけで、男はあまりの喜びに我を失い、
永遠の忠誠を誓ったという。


 が。

 匿名希望の妹に言わせれば、極度のものぐさ。
 好きなコト以外にはとことん興味がなく、どうでもいい相手には冥府の番犬も
震え上がるほど冷酷だという鬼長姉。


 ―――次女エウリュアレ。
 屈託のない仕草、こぼれるほどの笑顔、無垢な言動。
 どれをとっても理想の少女といわれた女神。
 彼女に名を呼ばれただけで、男はあまりの名誉に身体を震わせ、命を賭した
守護を約束したという。


 が。

 これまた匿名希望の妹に言わせれば、究極の気分屋。
 くわえてズルいところもあり、黙っていれば怒られない、バレなきゃイカサマ
じゃなくてよホホホ、けどあとでちょっと自己嫌悪、という小悪魔小心次姉。



『――――――』
 ……あれ。
 なんか、シスターが黙り込んでしまった。
 どうみてもこのわたしの方が論破されかけていたのに。
「……なぜ黙るのですか。なにか瑕を切開しないのですか」
『――――――』
 返事はない。
 向こうのシスターはかすかに、モロにサディスティックに笑って、
「……ふむ、やはりその程度ですか。
 貴女だってやはりわたしが怪物などではないと、」

『―――ええ。その全部が好きなのでしょう』

 言葉だけで、こっちの脳をシェイクした。

「―――――!」
『だから、極度のものぐさなところも、好きなコト以外にはとことん興味がない
ところも、どうでもいい相手には冥府の番犬も震え上がるほど冷酷だという
ところも、究極の気分屋なところも、ズルいところも、バレなきゃイカサマ
じゃなくてよホホホ、けどあとでちょっと自己嫌悪というところも、全部。
 素直になりなさいよね貴女も。今の台詞、逆にそこが好きで好きでしょうがないって
聞こえましたよ?』

178 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/29(日) 23:39:51
「よう。目覚めたかマスター」


 十秒。
 二十秒。
 三十秒。
 四じゅ


「うわあああ!!!??? ななな何してんだアンタ!?」

 何もクソもねえ、あのヤロウからかってもいねーのに宝具をぶっ放しやがった!

「…あ。間違えました。謝罪は次回に」

 弁明それだけ。
 否、説明にもなってねえし、そもそも相棒にする仕打ちじゃねえし。
 バゼットはetaFスレの記憶を引き摺っていたのか、俺を認識した瞬間に"切り抉る戦神の剣"を起動させていた。
 まことに無骨かつ無体かつ不精だった。



     俺の聖杯戦争は、こうして、初めて。
     バゼットをからかうことなく、空のお星様となって、
     その幕を落としたのだ―――

179 名前: 士郎→アンリ 投稿日: 2006/01/29(日) 23:59:50

「――――、――――、――――」
 意識が断線する。
 関節が硬い。
 手足を曲げると痛い。
 神経が熱い。
 体の中から、骸どもが溢れ出す。
 逃げ様のない串刺し刑。
 この体は刻限を迎えて、俺でもオレでもない怪物に溶けはじめる。
 それは判っていたコトだ。
 パズルを完成させれば最後、時限爆弾のスイッチが入る。
 この終わりは、とうに決められていた事だ。
「――――は、あ――――!」
 割れる。
 これ以上は割れる。
 バラバラに砕けて、そこらへんに転がっている石くれと同じになる。
 ……けど、まだ間に合う。
 この体は手遅れだけど、ここで止めておけば一日ぐらいは意味を失わずに済む。
 一日だけの延命。
 そんな、たいして意味のないようなコトが、今は恐ろしいほど恋しい。
 たった一日。一時間でも一分でもいい。
 生きていられるのなら、どんなにみっともなくても、限界までここにいたい。
「は、ずっ――――…………!」
 亀裂が入った。
 外ではなく内、大脳の側座核が割れた。
 行動原理、即ち快楽の連動を司るところ。“生きる”コトに一番重要な部分。生とは快楽の追究であり、それがない人間は獣と同じ。
「はっ、あ」
 都合がいい、なんて事はなかった。
 それでも恋しい。
 自分が自分のままでいる事に、指を食うほど執着している。
 それでも割れていく。
 右手の指を食べる痛みも、記憶の消失を止められない。
 一歩進む度に俺は消える。
 このままじゃ無理だ。
 自分が誰か、何をするかを、きっと無くしてしまっている。
 だから、今は立ち止まって――――
「――――ああ、覚えてる」
 でも、何か。
 大きな理由が、体の外にあって。
「―――さあ、終わりの続きを見に行こう。」
 おまえは、おまえの役目を、果たさないと。

 ――――時間が止まっている。
 痛みはない。
 たった一歩に、一日をかけている。
 ――――呼吸の仕方を忘れた。
 痛みはない。
 たった一息の空気が、一日かけても吸えずにいる。
 ――――意味を失った。
 痛みとは、なんだったか。
 有機が無機に切り替わった。
 踏み止まった。
 落下していく中、手を伸ばして壁を掴んだ。
 とても小さい。爪の先ほどの足場に、全存在を留まらせる。
 保つ筈がない。
 足場は、崩れて

 行動原理が喪い。
 行動理由が喪い。
 存在意義が喪い。
 恐ろしいと感じない。
 何の為に誰の為に存在しているのか消失した。



 もう、とっくに生きていない。
 如何なる理由の元にも、その腕が動く事はない。

「―――ああ、それでも―――」
 言葉が出た。
 言語野はおろか新皮質全般、他三部を含む大脳まで消失しておいて、まだ、残ったものがあった。

「……良かった。」
 こんなわたしにも、出口はあるらしい。
 終わる事と続かない事は違う、とかつての人格はうそぶいた。

「――――――――、あ」
 そうしてアンリマユは死んだ。
 立ち尽くすカタチは一つの機械と変わらない。
 持ち主の願いを叶える機能はあっても、動かす意思がなければ残骸と変わらない。


 だが、人工の知能がなくとも。
 この世には沢山の、夢を織る機械がある。



 わたしには、もうその夢を見る事は出来ないけれど。
 どうかこの夢が、誰にあっても美しいものでありますように。

 もう意味さえ解らない文字の羅列。
 最後まで覚えていた、果たされるべき、小さな希望。

180 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 01:18:28
>>177
ライダー、そんな人に告解しちゃだめだw

181 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 02:37:46
>>165
いったいこのスレには何人の脇役スキーがいるんだろうか……
> さて、体は剣で出来ている―――と。
弁当食うためだけに剣になっちゃうのかよ

>>179
マジ泣きした。

182 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 02:39:35
―――そして、
目の前には見知らぬ獣の死体があった。

「―――――一匹、二匹、三匹……か」
 口にだして数える。
 地面にはオレの―――干将・莫耶と銘打つ双剣が落ちている。
「…………つまり、これは」
 考えるまでもないと思うのだが。
「…………私が、やったワケか」
 剣を拾う。
 ……理由はわからないが、やった以上は意味があったのだろう。
 気がつけばあれだけ灼かった体も冷めている。
 用は済んだのだし、さっさと屋敷に帰るとしよう。

「―――――――む。誰かくる」
 通路から誰かがやってくる。
 まいった。
 ただでさえここは残骸でごった返しているのに、この上また新しい残骸をブチまけなくてはいけないのか。

 かつん、かつん、と足音が近づいてくる。
 闇でしかなかった人影が露になる。
「――――――」
 双剣を握る。
 人影は、路地裏に入ってきた。

 キィィィン、という音。
 ――――信じられない。
 有無を言わさず踏み込んだオレを、人影は迎撃してきた。
 敵のエモノも双剣。
 オレたちは互いに、相手の喉元を狙った必殺の一撃を相殺しあった。

「「―――――驚いたな」」
 闇に声が重奏する。
 オレは双剣を消し、敵もイビツなナイフを仕舞った。
「戻ってきてみりゃ同類に出くわすとはな。まったく、まだ生まれてない英霊なんて初めて見た」
 言って、少年は笑った。
 嫌味のない笑み。減量の果てにリングにあがったボクサーが、生涯最悪の天敵と対峙した時のような、昂揚に満ちた笑いだ。
 おそらく。
 オレも、それと同じ笑みをうかべていたのだろう。
「――――ふん」
 少年は鼻をならして背を向けた。
 大通りに向けて歩いていく。
「ここいらにするか。大の男が二人、突っ立っているのもなんだろ?」
 道端に座りこむ。
 少年は思い立ったように自動販売機まで歩いていった。
「おい、金だせ。金もってねえんだ、オレ」
 こっちも雇い主の都合上、財政状態はよろしくないが、一際大きいコインを投げた。
「一度ぐらいは試してみたかったんだ、コレ」
 嬉しげに言って、少年はタバコとライターを買った。
「投げるぞ」
「ああ」
 一本抜かれた箱とつり銭を受け取る。
 少年はオレの隣に座って、タバコを一口ふかす。
 ……なんていうか、今日はこんなんばっかりだな、と思った。
「……まず。なんだかなあ、煙草も珈琲もあんまりいいもんじゃねえんだな。なんだってこんなもん口にすんだろうなあ、人ってヤツは」
「そいつは我慢強さを鍛えてるんだろうさ。大人になるには、まあ色々と大変だからな」
「ああ、なるほど。オマエ頭いいな」
 けけけ、と愉快そうに少年は笑う。
 こっちも火をつけて煙を飲んだ。
 ……まったく同感だ。こんな毒物めいたものを飲む連中は自殺願望が多分にありすぎる。
「しかしまあ、なんだね。オマエは酷いヤツだな。いきなり喉元に刃物突きつけてくるか、フツー」
「よくも人の事が言えるな。貴様こそオレを殺す気だったろうに」
「そうだっけ? まあいいじゃんか、昔の事は。お互い命があったんだからチャラにしようぜ」
 ……まあ、確かに。
 お互いが殺し合ったんだから、どちらが死んでいようと結果はチャラだ。
 競技として、差し引きはそれなりに合っている。
 少年は不味い不味いといいながら、嬉しそうにタバコを吸っている。
「……んー、まあこれも慣れれば悪くないねえ。なんていうかさ、世間から外れた不良仲間って感じ」
 少年は笑いをかみ殺しながら、そんな事を呟いていた。
「そうかね? なら酒もやってみるか」
 あいにくこっちは不良少年、という歳ではないのだが。
「あー、いらね。ありゃ思考を鈍らせる。純粋でありたかったら、毒物は摂らぬが吉だ」
「……そう言いながらもタバコを吸っている」
「なんだオマエ、幽霊のくせに細かいな。人間なんて毒食って生きてるようなもンなんだから、これぐらいはまだ許容範囲じゃないか。オマエだって耐性ぐらいついてんだろ」
 ケタケタと少年は笑う。
 まったく同意見なので、半分になったタバコを口に咥えた。

183 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 02:40:24
 それから一時間ばかり、少年と話した。
 道行く車を眺めながら、とりわけ意味のない事を語る。
 中でも意味がなかったのは、お互いの性根についてだった。
 愛していたから憎むオレと、
 憎みながら愛しているという少年。
 お互いその矛盾を語り合っているうちに、
「……そっか。それじゃあさ、オマエってもしかして正義の味方ってコト?」
 なんて、意味不明なコトを言い出した。

「違う。そんな曖昧な、表現でしか表現できんモノに人がなれるものか」
「そんなワケねえだろ。いいか、兵士なら敵、法なら犯罪者を殺せばいいだけの話じゃんか。けどそんな事ならオレにでもできる。
 けどオマエは違うだろ。敵味方も法も抜きに最小限だけ殺すコトができる。オマエはさ、その理想とやらを夢見た時点で人じゃなくて悪を殺しているんだよ。
 だから――――心の中にあるもの、憎しみ恨みとかそういった言葉上のモノ……報復とか逆襲とか、そういったまだ生まれてない悪だって刈り取れるハズだぜ」
「………………………ふむ」
 ……それは、確かにそうだ。
 もともとオレの理想はそれ自体が異状なもの。
 それをまっとうな理屈で考える事自体、前提を間違えている。
 ……ならオレはアレを倒せるだろうか。
 子供の頃に一度だけ見かけた蜃気楼。
 たしか、あんり・まゆ、とか言う孵らずの悪魔。

「けど、それはタイヘンそうだ。そんなモノまで倒そうとしたら、オレはマトモな思考ができなくなるだろうよ」
「だな。人間の頭脳しかもってないくせに、神様の裁きをしようってコトだもんな。そりゃあ廃人になるぜ、普通」
 言って少年は立ちあがると、また自動販売機まで歩いていった。
「おーい」
 自販機を見たまま、後ろにいるオレに手を差し出す。
 コインを投げると、少年は器用に受け取ってまたタバコを買ってきた。
 少年は新たな一本を吸ったあと、
「久しぶりに人間と話してる」
 なんて事を口にした。
「……おかしな事を言う。オマエは、今まで無人島にでも住んでいたとでも?」
「あー? 今も住んでるぜ、この無人島にさ。なんでもオレは世間とズレているらしい。益もなく人殺しをするようなヤツは正気じゃないんだとよ。
 だからまあ、ズレてるオレはズレてないヤツラと話しても会話が成立しないわけ」
「……ふむ。ズレてるのか、オレたちは」
「そっ。どっちが異常なのかは問題じゃない。ようは世間から外れているほうがズレてるワケ」
「そうかね? 異状なのは世間のほうかもしれんだろう」
「へえ、そりゃあどういう意味だ」
「言葉通りだ。オマエも言ってただろう。
 多数決と一緒だ。大部分の意見に賛同しなかった小数意見は“使えない”と除外される。
 どっちが正しいかなど、関係ない。みんなに合っていない者は、正しかろうがなんだろうが仲間はずれにされるだけだ。ズレてるなどいう表現には普遍的な基準は当てはまらん」

「―――――フン。じゃあ何か、オレたちみたいな殺人者は悪党じゃない、って言ってるワケ?」
「……さて。事の善悪などは知らんな。ただ理屈で考えるとズレているのは私たちではあるまい」

 繁栄への渇望。
 他者にしか転嫁できなかった悪。
 それはきっと、とても健全な精神だ。
 オレやこの少年のように報酬を求めない思考とは、色彩こそ似通ってはいるもののそのカタチは異なるだろう。

「ふうん。オマエ、よくしゃべるヤツだな。俺さ、オマエみたいなへ理屈屋の知り合いがいたんだぜ。
 そいつはなんていうか……そうだな、理想を抱いて溺死したんだ。だから今では何も求めていなかったように見えたんだろう。
 それはなんていうか、ひどく孤高でさ。孤高っていうのは孤独の別名だろ。だからオレは、それが気になって仕方がなかった」
「……ほう。何も求めていない、か。オマエはどうだね? 何か欲しいものはあるか?」
「……どうだろう。あった気がするが、思い出せない。そういうオマエはどうだ?」
「求めているものは誰であれあるだろう。だが理想が叶うようなコトはなかったな。
 八つ当たりするほどの後悔は、そうだな―――今夜のこれが初めてではなかろう」
「あはは。つまるところおまえは正義の味方って事だよな、それは」
「……なぜそうなる。なら自棄を他人に八つ当たりなどできん。そういう貴様はどうだ? 人殺しは楽しいかね?」
「――――バカかオマエ。楽しかったら休むことなくやってるだろ。こんなのにはさ、関心(カガヤキ)はねえんだよ。ただ人殺しは悪だろ。それだけの話だ」

184 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 02:41:27
 ―――なーなー。一番悲惨なヤツってどんなのかな。
 月の夜。
 偶然街で出会った人殺しは、ふとそんな事を尋ねてきた。
 それはとりとめのなかった、意味などない会話の中のヒトコマだ。
 ……それに、自分はどう答えただろう。

 悲しい事は簡単に目に付くし、倖せは難しすぎて解らない。
 悲惨な状況といったらそれこそ限りなく下を見るしかない。
 この上なく悲しい思い、耐えられないほど辛い生き方を強制される事が悲惨だというのなら、生まれてこなければいい事になる。
 ―――自分にとっては。
 その、生まれえないという事が、一番悲しい事だと思った。

 そう言うと、アヴェンジャーだと名乗っていた少年は笑った。
 のけぞるぐらいに笑って、おまえはいいヤツだな、とかノタマッタ後。
 ―――なにが悲惨かって、そりゃあさ。
 その悲惨なヤツ本人が自分が悲惨だって気がついていないで、気づいたあげく今まで堪えて来た自分自身を否定してしまう事なんじゃないか。
 なるほど、と頷いた記憶がある。
 確かにそれはどうしようもない。
 自分が悲しいのだと思う事もできない。
 唯一、権利として与えられる同情でさえその本人には意味がない。
 そいつは自身が幸福になる幻想も抱けないまま、誰が見ても滑稽な生を送る。
 荷物に潰れてしまった痛みさえ他人に預けない。
 悲惨といえば、きっとそういう裏切りが、一番悲しいのだろう、と同意した。

「―――――あーあ。楽しかったぜ、ほんと」
 少年は腰をあげる。
 そうして――――感情のない目でオレを見下ろした。
「―――さて。同じ街に同じモノはいらねえよな。こんな狭い檻の中に同一人物が三人もいたんじゃ、おちおち聖杯戦争も続けられない」
 少年は左歯噛咬(タルウィ)、右歯噛咬(ザリチェ)を取り出そうとする。
 無機質な殺気。
 少年は本気で、オレと殺し合いを望んでいる。
「やめておいたほうがいいな」
 至極自然に、そんな声が出た。
「なんでさ?」
「そうだな、人殺しとしてはオマエのほうが優れているだろうが」
 ――――だが、同じエミヤシロウならば。
「貴様より、オレのほうが理想に近い」

「――――――、――――――」
 ぎり、という歯が軋む音。
 少年はひきつった笑みを浮かべたあと、
「ハ……あは、あっーはっはっは……ッ!!」
 なんて、大声で笑い出した。
「どうした。そんなに可笑しかったのか、衛宮士郎」
 ひひ、ひひひ、と少年は神経質に笑い続ける。
 ……仕方がないのでこのまま放っておこうとした矢先、少年はピタリと笑い止んでオレを見た。
「――――そうだな。オマエは、間違ってなかった」
 それだけ言うと、少年は一人で歩き出してしまった。
「これで潮時になっちまった。おまえみたいなヤツになっちまった以上、オレ達の手でこの夢を終わらせるしかないもんな」
「……別に私は貴様の手伝いなどする気はないのだが」
「いやいや無理だって。今夜、‘オレ’を倒して回ったんだろ? ならもう明日からも同じ事さ。オマエはもう一日だって我慢する事なんてできねえよ。
 それじゃあまあ、二度と会わない事を祈ってるぜ」
 片手をあげて、少年は去っていった。

「――――――――」
 二度と会わない、と聞いて少しだけ残念に思った。
 足元には少年が揉み消した吸い殻が十本ほど。
 つまり、この借りを返してもらえる事はないという事だった。

185 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 02:47:45
GJ
この組み合わせ、是非本編でも見たかった……
や、残骸百景がそれに当たるのか?でもあれは士郎だしなあ。

186 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 03:04:35
GJ!そのシーンはやっぱいいな。
悲惨な奴のくだりは不覚にも

187 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 03:11:14
要所要所で上手いな。
殺し合いの再開を止めるくだりが特にいい。

ただ一つ・・・アーチャーと斬り合えるアヴェンジャーに激しく違和感w

188 名前: 異状なし(3) 深山町→港 投稿日: 2006/01/30(月) 04:17:30
 これといって異状はない。
 俺にとっては退屈きわまりない港だが、耳を澄ませば海の音色が聞こえてくる。

 季節の感覚を麻痺させるような日差し。

 思いのほか子供好きな英雄王と、なぜか子供たちに人気の赤い男。

 頬に心地よい海風。

 この世の終わりみたいな顔でうなだれるランサー兄さん。

 みゃーみゃー鳴くウミネコ。

 ダンボールかぶったワカメ。

「――――――」
 さて。
 そろそろ、家に帰って夕食の準備をするべきなのかもしれない。

189 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 04:19:38
現実逃避すんなw

190 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 04:27:36
こういうアッサリ目なのもいいなw

191 名前: UBW九日目 間桐邸地下室での慎二&金ぴか 投稿日: 2006/01/30(月) 04:50:33
 皮肉げに肩をすくめ、アーチャーは一歩前に出た。
 ……いっそう深い闇。
 暗い影に覆われた床に向けて足を上げる。
「だがこの世界には余裕が溢れている。十人どころか何千という人間を選んだところで、殺せない人間など出てきまい。
 ―――まったく、おそろしく人間に優しい世界になったものだ」
「? わけわかんないな。結局何が欲しいんだよアーチャー。
 おまえだって欲しいモノがあるから聖杯を手に入れようっていうんだろ。なら――――」
 アーチャーは答えない。
 金の青年は主に振り向きさえせず、
「簡単な話だ。多いという事は、それだけで気色が悪い」
 上げた片足を、深い闇へと踏み下ろした。

「む? むむむ? むむむむむ!?
 待て。なんだこの足下に絡みつく蟲は。厭だぞ。とにかく厭な予感がするぞ。
 おいシンジ。鎖だ、鎖を持て」

「――――――――」
 それは予感でなく再現というか。
 聖杯戦争をやり直しても同じコト。
 彼(か)の英雄王は絶大な力と一緒に、致命的なうっかりスキルを持って育つ運命にあるらしい。
「おおおおおおお?
 馬鹿な、天の鎖を持ってしても脱出できぬのか!?
 ええい、断崖絶壁や墜落事故ではあるまいし何をこれしき! 我はともかく我の財力を侮るなよ! 
 さあ、友よファイトだ! 頑張って我を助けよ!」
 天の鎖を地下室中に張り巡らせ、なんとか踏みとどまる英雄王。
 ちなみに、彼が友と呼んでいるのは慎二ではなく鎖である。
「……あー。じゃあ、僕はこのへんで。
 生きてたらまた会おう」
「貴様、この状況を見てなんとも思わぬのかっ!?
 マスター(仮)としてそれはどうか!」
「じゃあ助けを呼んでこよう。僕の場合言峰になるけど、それでいい?」
「はっはっは。
 ―――要らぬ。助けなどまったく要らぬ。
 こんなものはアレだ、ジャングルジムのようなものだ。
 我にとっては日常茶飯事、助けを呼ぶまでもない。よいな。くれぐれも言峰になど伝えるな」
 フッ、と不敵に笑う英雄王。
 下は黒い泥、上は天の鎖でがんじがらめになりながらの発言である。
 カッコイイなあ。
 究極のやせ我慢というのはこんなにもカッコイイのだなあ。

192 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 04:52:46
すまん、下から三行目の 黒い泥→蟲 だわorz

193 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 13:15:31
>>92に骨抜き。

194 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 13:41:50
そんな>>92の腕前に嫉妬。
俺の脳内で氷室の株価が大高騰。

195 名前: ミミックレベル3 → 慎二OH 投稿日: 2006/01/30(月) 14:55:44
「困った衛宮だな。
 まだ慎二OHの素晴らしさを理解できないなんて……やっぱりショミンじゃダメっつーか」

「でも安心するんだね、ボクは見捨てたりしないから。衛宮はボクの大切な強敵(とも)だからね♪
 これから大好きな妹が黒化したり、怪物じいさんが本性現したりしてくるけど、ふたりで苦難を
乗り越えていくんだからな!」
「あ―――ああ、あぁああああ…………」
 もうダメだ。
 俺ではこの大惨事を止められない。
 一刻も早く逃げ出したい。
 この港からではなく、この慎二から。
「さあ、いくぞ強敵(とも)よ!
 コンパクトフルオープン! 鏡界回廊最大展開!
 Der Spiegelform Wird Fertig Zum Transport―――!」
『Ja、meine meisterin……!
 Offnunug des KaleidoskopsGatter―――!』
「待ちくたびれたろうショミン! 魔法プリンス慎二OH、ここに推参!
 ―――どうだショミン? 初めての覚醒にしては上出来だろう!?」


「って、ぜんぜん変わってねー!」

196 名前: 士郎→キャスター 慎二→金羊の皮の精霊 投稿日: 2006/01/30(月) 16:13:17
「あら、アルゴンコイン」

 十時前の、まだ人気のない境内にぽつねんと金羊の皮の精霊が立っている。
「参拝してる……ってワケじゃなさそうね」
 アルゴンコインは手ぶらで、ぼんやりと本堂を眺めていた。

「ちょっと、アルゴンコイン?」
「……………………」
「なにやってるの? 誰か待っているの?」
「……うるさいです、ほっといてください。
 どーせね、私は黒歴史なんです。ホロウにも出番はないし、人気投票にも名前はないし、というか、私のこと書いてあるのサイマテだけだし!」

「どうですご主人様、サイマテ仲間のバゼットさんがホロウの主役になったのに対して、私のフォロー一切なしですよ?
 すげー、名前や性格、性別すらも謎のままなんて正直きのこ私のこと忘れてません? つーかぁ、私が出てくるSSすら存在しねー」

 そのまま境内の日陰に移動するアルゴンコイン。
 ……本気でテンパっているのか、そのまま洗濯物のように丸まってしまった。
 宝具でなかったら、カビでも生えかねない勢いだ。
 その後ろ向きな勢いに不覚にも涙が止まりません。

「な。バカ言わないで、負けないでアルゴンコイン、立ち上ってアルゴンコイン!
 そーゆー不遇な扱いにも慣れている、まわりの空気に逆らわないのがあなたの強さだと思うわ……! たぶん」
 などと、こっちも勢いでエールを送ったりする。
 設定がないから適当だけど。

「……嫌です、疲れました、きっと私は陰湿な性格なんです。持ち主であるご主人様に似てるんです。
 ルヴィアさんや盾のはぐれサーヴァントさんみたいにあちこちのSSで大活躍なんて夢の夢なんです」

 ますます暗くなるアルゴンコイン。
 まー、私に向かって遠まわしに陰湿な性格だと言ってくるあたり、この子はけっこういい性格していると思う。

「……いいから、さっさと余所に行ってください。
 私はロリっ娘キャスタールートを待ってるんです。
 私がマスコットキャラとして出番があるかもしれない最後のチャンスなんです。
 私で竜も召還できない今のご主人様に用はありません」

 しっしっ、と追い払われる。

「………………」
 うーん。なんか、今の私では処置なしの気がするわね。
 その内、私が魔法少女になってカレイドルビーと共演、なんてことになったらまた寄ってみましょう。

197 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 16:22:55
 ―――執行者バゼット・フラガ・マクレミッツ。
 冷静な判断、溢れる魔力、サーヴァントにすら迫る戦闘能力。
 どれをとっても理想の執行者といわれた神菌保有者。
 彼女に名を呼ばれただけで、目標はあまりの恐怖に身体を震わせ、命を賭した土下座をしたという。

 が。
 匿名希望のサーヴァントに言わせれば、中身13歳のお子様。
 外見と中身が一致しておらず、見た目スキのない凛としたオトナの女だが、それは自分に自信のない
臆病者の中身を守る鎧で、長年鎧に守られた素肌なんてゆで卵のようにツルツル。
 食事といえば所要時間のみを重視した牛丼チェーンを好み、トラップ解除の40秒すら待てない粗忽モノ。
 努力するほど周りに見放されるという心の瑕を持つ―――

 それでも、少しでも上等な自分になろうとあがいて来た、無様で弱くて不器用な、オレのかけがえのない光。 



 ―――サーヴァント・アヴェンジャー。
 復讐の英霊。サーヴァント最弱。自身のマスターにすら勝てない。
 この世全ての悪であるアンリ・マユ。
 彼を一戦させただけで、彼を召喚したモノはあまりの弱さに失望し、二度とこんなよわっちいの当てに
するかと誓ったという。


 が。
 匿名希望のシスターに言わせれば、甘言を吐かない厳しい悪魔。
 ひたすらに受動的で面倒くさがり屋。
 皮肉屋で粗野で雑魚っぽく捨て鉢で、人間嫌いのクセに同時に深く愛し周囲をなにくれとなく構ってしまう
世話焼き。
 どんな時も飄々と物事を受け入れ我慢することのできる、例えるならロックスター。

198 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 17:16:13
>>197
あっあっ、なにかすごく愛を感じる。

199 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 17:18:39
……アサシンとの戦いを思い出す。
アサシンのマスターと遭遇したのは、学校の裏手にある林だった。
敵はマスター一人きり。サーヴァントの姿はなく、そのまま戦闘に突入した。

敵マスターは優れた人形遣いで、手足となる自律人形を何体も従えていた。
精密な殺人機巧を備えたフランス人形たちは厄介ではあったが、人形の料理法は熟知している。
町に巣くうあの怪物たちとの乱戦経験もあり、人形師を追いつめるのは容易かった。

―――その人形のうち一体が、ネコミミでさえなければ。

「まさか、サーヴァント……!?」

気付いた時には、にゃんぷしーろーるを何発か被弾していた。
アサシン。決まってある英霊から選抜されるというクラスだが、その能力は聖杯戦争の度に変わっていく。
アサシンの語源となった『人物名』が複数の暗殺者が襲名するモノである為、毎回異なった暗殺者がアサシンになるらしい。
アサシンとは個ではなく群であり、その中で今回選ばれた“暗殺者”が、この、大人の膝ほどもない謎生物だった。

「く―――!」

地形の不利を悟った時には、脱力で足が動かなかった。
遮蔽物のない平地でならいくらでも捉える自信はあったが、障害物の多い林では手の打ちようがない。

それでも、命をチップにして最後の賭けに出た。
左半身を囮にしてアサシンを木の陰からおびき出す。
もう私に反撃の力はないと判断し、左側面からジェット噴射で移動してくるアサシン。
それを迎撃する形で、渾身の右ストレートを打ち込んだ。

タイミングは完璧。
あの勢いで突進してきたアサシンには左右に回避する術はなく、防御したところで衝撃を殺しきれない。それが矮躯の欠点だ。

なのに、それもあっさりと飛び越えられた。

時速八十キロを誇る私の右ストレート……しかもカウンター!……を、敵は着弾した瞬間にぽん、と冗談みたいな音をたてて、私の拳に飛び乗ったのだ。

「――――――、うそ」

私だってそれなりに豊富な戦闘経歴を持つが、自分の腕に乗って、トコトコと歩いてくる敵を見たのは初めてだ。
槍の上に乗る、なんて眉唾ものの神業を思い出す。
そうして、アサシンは私の顔に「にゃにゃにゃ、体はネコで出来ているー」―――意識は、そこで途切れてしまった。

200 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 17:23:36
ネコミミを植え付けられたんだろうかw

201 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 17:41:53
猫アルクはまりすぎw

202 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 17:52:12
お前もネコミミになれ

203 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 18:06:30
耳想猫脳(ネ・コーミーミ)

204 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 20:01:03
現在のレス速は約100/日。
GJが追いつきません。助けて大聖杯。

205 名前: 茸の境界 投稿日: 2006/01/30(月) 20:45:39
さて、ここに氷室と三枝と蒔寺がいる。
君が挑むのは脇役ハーレムだ。
誰を正妻にして誰を2号にすべきかは。
決して、彼女たちだけは知られてはいけないよ――――

    from:code[■■■■]
           ….the unlimited harlem works

206 名前: フェイト/ステイナイト(Ⅱ) 投稿日: 2006/01/30(月) 21:20:29
 ――――そうして。
 エアの断層を前にして、彼の“宝具”が展開された。

「な――――に――――!?」

 彼が目前で被り、四散したものは、紛れもなく業務用の箱だった。

 如何なる神秘で編まれたものか、箱はエアの光を悉く弾き返す。
 否、防御などというレベルではない。

 それは遮断。
 外界の汚れを寄せ付けない妄想の壁、この世とは隔離された、辿り着けぬ一つの世界。
 業務用の箱に守られた慎二は、この一瞬のみ、この世の全ての理から断絶される。
 この世における最強の守り。
 五つの魔法すら寄せ付けぬ、何者に侵害されない究極の一。

    そ     ダンボ−ル
 故に、箱の名は“全て暗き妄想卿”
 慎二OHが港で辿り着くとされる、彼のOHが夢見た、はや辿り着けぬ妄想卿―――― 

「――――――――」
 背筋に走る死神を、ギルガメッシュは確かに見た。
 だが間に合わない。
 振り下げたエアは回転を止めず、ギルガメッシュ自身、跳び退く事すらままならない。
 当然である。
 よもや―――よもやこれほどの全力、これほどの魔力を放った一撃が防がれようなどとは誰が思おう……!

「ぬぅぅぅ……!! おのれ、そのような小細工で―――!」
「――――――――」

 駆け抜ける白い下着。
 慎二の体に服はない。
 己を守る服を解除し、その分の魔力を彼は手にした竿に籠め――――

「“ランサーに奪われた――――”」
「シンジィィイイイイイイイ――――!!!!!」

 英雄王の絶叫。
 それを目前にし、

「“僕の竿”――――!」

 渾身の一撃を以って、竿は黄金の騎士を両断した。

207 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 21:23:04
ちょwwwwwwww青タイツなにやったんだwwwwwwwwwwwwwwww

208 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 21:24:38
竿と聞いて思わずイチモツを想像した俺が来ましたよ

209 名前: 207 投稿日: 2006/01/30(月) 21:29:29
ああそうか、槍天国で使ってた竿か!
……ウン、オレモイチモツシカレンソウデキナカッタヨw

210 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 21:31:26
この慎二王は漢だな!

211 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 21:31:35
>>209
ちょwwwwおまwwwww

212 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 21:55:47
>>206
いいね。たぶん、この宝具の原型は某蛇の人のそれだな。

213 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 22:14:24
>彼が目前で被り、四散したものは、紛れもなく業務用の箱だった。

ちょwwww慎二ダンボール破れてるwwww

214 名前: 天の逆月→トラぶる花札道中記 投稿日: 2006/01/30(月) 22:41:43

「なっ、アンリ。どうしてそこまでして……。」

「だってそうしないと俺ケモノになっちゃうしネ!
あと、そっちのダメット、もといバゼット!
目を覚ませよマスター!アンタは死なない代わりに永遠にここで苦しみ続ける気か!?
ここが偽物なんだから聖杯なんかに頼らず、苦しい息の下で生きていけ!」

「で、でも……わたしは外の世界なんかどうでもいい。ずっとここで生きていたい……。」

「大丈夫!それでもここまでやってきたじゃないか!
アンタは今まで苦しみながら努力してきた!その努力を無駄にする気か!
ああ、どうせ俺はこの世全ての悪!それでもアンタは俺をサーヴァントにしてくれた!
けれど、何か新しい物のために終わりでも見てみないとな!
誰も真似したがらない生き方をさせてやるぜ!」

「ア、アンリ……!何かやたら前向きな台詞だけど、ホントにわたしでよかったの……?」

「うむ!むしろそのダメットがいい!露骨すぎる萌えパワーに憎しみを感じるほどに!!」

「あは……!バカ、スゴイバカ!
でも感動したっすアヴェンジャー!私は弱くてつまらない人間だけど外の世界で生きていく!
アンリはこの世全ての悪だけど一生尊敬するっす!!」

「え?ほんと?やった、ありがとうバゼットー!
この世全ての悪として生まれて幾数年、たった一度だけ尊敬されたよう。」

―――ああ。
そんな平凡な人間だからこそ、そんな弱い君だからこそ―――。
オレにはかけがえのない光だった。

215 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 22:43:33
無理くりキレイに落とそうとするなよアンリw

216 名前: HF→シエルED 投稿日: 2006/01/30(月) 23:11:10
「………馬鹿だな。幸福なんて、自分だけのモノにしておけば簡単なのに。他人の事まで考えるとね、色々と難しく

なっていくんだよ。
 その結果、なにが良くて何が悪かったのかなんて事さえ難しくてわからなくなる。
 事実、僕も君もアイツも、何一つだって悪い事はしなかった。なのに未来はああだろう?
 ほら、士郎はそういう人間なんだ。奪われてばかりの人生だから、誰かの幸福なんて欲しがっちゃいけないんだよ



 ―――そうかもしれない。
 けど、それでも、一人にしないって約束したんだ。
 さっきまでのものも、こうしている自分も、そのすべてが夢だというのなら――――早く、こんな夢から醒めない

と。

「夢が終われば。そこには、何もないかもしれないのに?」

 ―――だって、彼女が待ってるんだ。早く戻らないといけないだろ。
 たとえ死ぬ事になっても―――彼女が待っている所に居るって、約束したんだから。

「……そう。それじゃお別れだ。放っておけなくて手を出しちゃったけど、やっぱり今さら僕は必要なかったみたい

だな。
 ……でもまあ、楽しかったよ。僕は将来あんな生活を送れるんだって、いいユメを見せてもらえた」

 ―――な、なんだよ。いきなり握手してくるなんて、気持ちわるいな。

「あはは、僕だって気持ち悪いよ。でもこうしないと渡せないんだから仕方がないじゃないか。
 いくら同じ自分だっていってもね、ここまで別れてしまうと『触れ合う』っていうイメージが必要になってくるワ

ケ。ま、なんていうか僕らも因果だよね。過去現在未来の自分自身で仲が悪いなんてさ」

 ―――ちょっと……おまえ、消えかかってる、けど。

「そう言う君はカタチが出来はじめてるね。
 さて、それじゃあこのへんでお別れだ。僕は君のことを忘れるから、君も僕のことは忘れてくれ。
 今さら―――衛宮士郎以前の士郎になんて、戻っても意味がないんだ」

 ―――そうして、消えてしまった。
 いや、亡くなってしまった、という感覚のほうが近いんだろうか。
 ……チクリと、不思議な痛みが走る。
 懐かしくて、もう二度と取り戻せない何か。
 何か、悲しくて。
 深く、思い出そうとしても。
 それが郷愁と呼ばれるものだと気が付く事は、自分には、ついぞ、出来なかった。

217 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/30(月) 23:19:13
人間だったときの士郎か。
どんなんだったとか、どんな風になってたとか想像付かないな。
まー今のみんなに愛される士郎の姿とは違うんだろうな

218 名前: 行動原理 切嗣→臓硯 士郎→ハサン 投稿日: 2006/01/31(火) 00:31:11
 それはFDが出た冬の話。

 虫の音が綺麗な夜だった。
 自分は何をするでもなく、マスターである間桐臓硯と虫見をしている。
 冬だというのに、気温はそう低くはなかった。
 地下の工房はわずかに肌寒いだけで、虫を肴にするにはいい夜だった。

 この頃、臓硯は外出が少なくなっていた。
 あまり外で体変えもせず、家にこもってのんびりとしている事が多くなった。

 ……今でも、思い出せば後悔する。
 それがルートがないと悟った藤村に似ていたのだと、どうして気が付かなかったのか。

「FDが決まった頃、ワシは出番が増える事に憧れていた」
 ふと。
 自分から見たら同じくらい出番が無いマスターは、懐かしむように、そんな事を呟いた。

「なんだそれは。憧れてたとは、諦めたのか」
 むっとして言い返す。
 臓硯はすまなそうに笑って、遠い月を仰いだ。

「うむ、残念ながらな。
 FDは高順位限定で、低順位で動かし難いキャラになると出るのが難しくなるのじゃ。
 そんなコト、もっと早くに気が付くべきじゃった」
 言われて納得した。
 なんでそうなのかは分からなかったが、臓硯の言うことだから間違えないと思ったのだ。

「そうか。それではしょうがあるまい」
「そうじゃな。本当に、しょうがないのう」
 相づちをうつ臓硯。
 だから当然、私の台詞は決まっていた。

「ええ、しょうがないから私も一緒に日陰者になろう。
 魔術師殿は低順位でもう無理だろうが、私も一緒だから大丈夫だ。
 まかせてもらおう、魔術師殿の無念は」

“――――私が、一緒に背負ってやるから”

 そう言い切る前に、マスターは微笑った。
 続きなんて聞くまでもないという顔だった。
 間桐臓硯はそうか、と長く息を吸って、

「ああ――――安心じゃ」

 静かに目蓋を閉じて、その人生を終えていた。
 
 それが、朝になれば目覚めるような穏やかさだったので、自分は騒ぎ立てなかった。
 死というものを見慣れていた事もあったのだろう。
 何をするでもなく、冬の虫と、長い眠りに入った、マスターだった人を見下ろしていた。

 工房には虫の声もなく、あたりはただ静かだった。
 暗い夜の中、仮面に隠れた両目が熱かったのを覚えている。
 泣き声もあげず、悲しいと思う事もない。
 虫が消えるまで、ただ、仮面の下から涙だけが止まらなかった。

219 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 00:45:53
>>218
爺なんか好きじゃなかったはずなのに、不覚にも感動してしまったGJ

220 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 00:51:09
爺さん死んじゃったらハサンも……。

221 名前: 衝撃のカレンさん萌え萌えバスタオル 投稿日: 2006/01/31(火) 01:03:04
なんか、カレンが穂群原の制服着てる。

「――――――――」
 言葉がない。
 なんでカレンがうちの制服着てるのか。
 それも、心持ち嬉しそうに。
 無言で、しかしタイヘン満足そうに、私服などいらぬ、
制服でなければ意味がないわ、という聖女の如き気迫。

 というか意地になってないかあいつ、着るスピードが尋常じゃないぞ(遅いほうに)。
 もしかして編入してくるのか。あの年齢詐称カレーのごとく。そして、私カレン、教会から
修道院にたらい回しにされて、そこで天職を得たのです、エッヘンとか自己紹介する気か。

 だとしたらヤバイ、そこクラスもだが俺もヤバイ。このシスターあることないこと
俺の事を言いまくるに決まってる。

「………………」
 用心しながら……いや、何に用心しているかよくわかっているが、そっと後退りする。

「――――――――」
 じっと、シスターの動きを観察する。
 ……凄い。後はスカート履くだけだ。
 こいつ、ほんとに学園に来る気か……と、喉を鳴らした時、不意にカレンの手が止まった。
 
「――――――――」
「――――――――」
 視線が合う。
 カレンはいつもと同じ金色の目で俺を眺めて、


「……覗き見ですか」
「……ゴメンナサイ」
 即座に土下座した。

222 名前: 衝撃の…言峰→バゼット 投稿日: 2006/01/31(火) 01:03:53

なんか、バゼットが穂群原の制服着てる。

(中略)

 視線が合う。
 
 十秒。
 二十秒。
 三十秒。
 四じゅ

「えへへ、"切り抉る戦神の剣"」

223 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 01:14:58
>>222
>>えへへ、"切り抉る戦神の剣"
不覚にも萌えた

224 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 01:16:35
年齢的にはカレーさんと似たようなもんなんだよなあ。
いや、萌えた。すごく。

225 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 02:27:59
カレーだとなんちゃって女子高生なんだかなあなんだが
ダメットさんだとなんかエロスを感じるのはどうしてだろう

226 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 02:32:51
ぴっちぴちの肉体年齢16歳なのに……。

227 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 02:47:10
セイバーの方が年上なのに……。

228 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 02:52:56
ぴっちぴちの精神年齢13歳には勝てません

229 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 03:52:36
九割までネタを書き上げておきながら
ラストの一割が現在貸し出し中の月姫のネタであるために締めが書けない俺であった。
orz

230 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 12:38:44
おや?しばらくぶりにスレの進みが止まったな。

災害前士郎とHF士郎の対話、あったらこんな感じなんだろうね。GJ!!

231 名前: ランサーズヘブンIII ギル→三枝 三枝兄弟 氷室 蒔寺 投稿日: 2006/01/31(火) 14:24:04
 空は快晴。
 流れる鱗雲が秋を感じさせる。
 テレピン油の香りは心地よく、キャンバスを走る鉛筆の音が寂しさを緩和させる。
 文句の付け所のない絶好のロケーション。
 旧政権の名残による潤沢な資金を象徴するかのような、それなりに豪華な稲群原学園の美術室は、しかし。

 今まさに、ときめき/StayNightがやって来たかのような賑わいを見せていた……!

「って、さらに増えてるーーー!!?」

 誰が、いや、何が増えたのかは言うまでもない。
 お母さんのごとく弟たちを引き連れるこのヒロインの姿は紛れもなく……!

「うおー、すげー!士郎、このおかずなんだー!?うまそーーー!いっこくれよー!」
「あんちゃーん。この前にいちゃんに貰ったラジコン壊れちゃったんだけど。なんとか直らないかな?」
「となりの黒いねーちゃんバカっぽいな!絶対うちのねーちゃんとのほうがお似合いだって!」
「しろにー、かたぐるましてー」
「兄ちゃん、姉ちゃんの婿さんになってよ。そしたら俺らあの家に引っ越せるじゃん。ね?」

「も、もうー、みんなー!衛宮くんやまわりの人達に迷惑でしょ。
 ほら、みんな大人しくしなさい!タロー、人に物をねだっちゃ駄目だっていってるでしょ?
 ジロー、衛宮くんにだって都合があるんだからあんまり無理言って困らせたら駄目よ?
 ゴロー、蒔ちゃんだって気にしてるんだからそんなコト言っちゃ駄目!
 ……で、でもこれでガリガリさん買ってきていいよ?でも、みんなにはナイショだよ?
 イチロー、わたしが肩車してあげるから我慢して、ね?
 サブロー、きょ、今日の晩ご飯のおかずはサブローの好きなものにしよっか……?」

「……誰?」

 えーと。
 あえていうならFateの……良……心……?

「で、でもびっくりしました。弟たちと衛宮くんが知り合いだって聞いて来たんです……。
 お、お弁当作ってきたんだけど食べますか?衛宮くんのお料理とは比べ物にならないかもしれませんけど……」
 もじもじ、と顔を赤らめる三枝。
 そんな俺は、ときおり三枝の弟たちや氷室に髪やらほっぺたやらを引っ張られていたりする。

「ふむ。相変わらず料理が達者だな。しかも今日のはまた随分と気合いが入っているようだ。
 ……しかし、いくら衛宮恋しとはいえ、公共の場である美術室まで追いかけてくるのはどうかと思うぞ由紀香」
 美術部員達に白い目で見られながら、べったりと俺に張りついている氷室。
 というか、お前が言うな。

「えっ、えっ、そんなコトっ……!わ、わたしなんかが衛宮くんと、おっ、お付き合いなんて……!?」
「……面白い。家事の腕前では劣るが、私の愛は付けいる隙なく飽和励起状態だ。試してみるか衛宮……?」
 
「な、なにぃ!?なに誘ってんだよ由紀っち!だめだってそんなの……!
 いいか、衛宮とあたしはラブラブランデブーで、あたしの愛がないと衛宮はさびしくって死んでしまうんだッッッッ!!!
 だっ、だいたい何時の間に由紀っちまで……!?」

「うるせー、うちのねーちゃんは士郎と結婚すんだ!士郎はなー、うちに来て毎日ねーちゃんに味噌汁をつくってやんだぞー!」
 わーい、諸手を上げて喜ぶ弟たち。
「…………」
 そして先ほどから一言も会話に入っていけない俺。

「そ、そんな……!弟連中まで手なずけるとは、衛宮はホントにお母さんか……!?
 ええい、こうなったらガキども、果たし合いだ!そこな衛宮は、勝者が手に入れるっつールールでどうだ!?」
「ま、蒔ちゃん、ケンカはだめだよ?
 みんな、仲良くしないと……それはそうと蒔ちゃんもお弁当食べる?」
「うん」
 痛いところをつかれた。
 三枝はわりとぽややんで、平和主義の人なのであった。

「すげー!エビフライだ!こんなの家じゃめったに食えないじゃん!オレ食っていい!?」
「にげるなー、勝負しろ黒いのー! がんばれねーちゃーん!」
「リンゴとかバナナなんて書かないでいいから、ガン○ムかいてよ、ガン○ムー!けど最近のやつはカンベンな!」
「ねーねーシロにー。そんなのいいからさー、早くかたぐるまー」

 もはや美術室にかつての平穏はない。
 相変わらずやかましい蒔寺と、いつの間にか三枝弟たちに人気の俺。
 そして。

「…………えと、頼む、お前らもう少し、んっ……」
「衛宮、キスしよう」
 この騒ぎすら関係ないとばかりにベタつく氷室。

「……帰ろう、ここはもう独り者の居ていい場所じゃない……」
 美術室を後にする部員達。
 寂しげな背中が煤けている。
 嗚呼。

 美 術 部 員 の
 失われた楽園よ、せめて思いでの中で永遠なれ―――

232 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 14:33:07
>>サブロー、きょ、今日の晩ご飯のおかずはサブローの好きなものにしよっか……?

ふと漏れ出でた三枝の本音、しかと心に留めておく!
とにかくGJ! 性技の味方も絶好調ダネ!

233 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 14:46:03
>蒔ちゃんだって気にしてるんだから
ちょwwwwwwwwww

うーむ増やすのはどうかとも思ったがなかなかどうしていいじゃないか。

234 名前: 夕日の蛇姫 ライダー→三枝 士郎 投稿日: 2006/01/31(火) 14:49:35
>>231が上手くいかなかったので連投、メンゴ。
事後か事前かは個人の好みで。



 蒔寺たちと約束をしていたな、四人で一緒に帰ろうって。
「さて……もう先に待ってるかな」

 と、校門にいるのは三枝だけだった。
「あれ?三枝、氷室と蒔寺は?」

「……あの、二人から伝言があるんです、けど」
 伝言、ということはやっぱり
「陸上部で、次の大会の準備がいろいろあるから……
 悪いんですけど、衛宮くんは先に帰ってください、って」
「そっか。二人とも部活大変なんだな」
「……伝言、続きがあるんですけど、いいですか?」
 ん?まだなにか?
 校庭のトンボがけをしとけとか、ハードルを片しとけということだろうか?
 三枝を促すと、俯きがちに話を続ける。
「遅くなるから、その、わたしと、いっしょに帰ってください、って……」
「……それ、いいのか?」
 三枝は俺とじゃなく、二人と一緒に帰るべきだろう。
 それは三枝も分かっているのか、ぶつぶつと歯切れ悪く続けている。
「わ、わたしも待つっていったんですけど、二人ともいいからって……
 終わるのが何時になるか分からないし、わたしが行かないと衛宮くんを無駄に待たせちゃうから……って」
「だ、だから、その、悪いんですけど、わたしと一緒に帰りませんか?
 衛宮くんが風邪でも引いちゃったら大変ですから」
「分かった、一緒に帰ろう。後で二人にはテキトーに労いの言葉でもかけておいてくれ」
「えへへ、それはマネージャーのわたしに任せてください」

 ……考えてみれば、こういうのもなかった。
 蒔寺や氷室、美綴とこの坂道を下りることはあっても、三枝と一緒に歩くことはなかった。
 しかも今日は一緒に帰宅。
 新鮮なのは当然だろう。

 ……あと、さりげに休日で良かった。
 これが平日なら、三枝とどういう関係なのかと陸上部部員達に袋だたきにあっていただろうし。

「わ、わたしと一緒じゃつまらないです、よね?」
「いや、こういうの初めてだから、ちょっと戸惑ってるだけ」
「じゃ、じゃあ……衛宮くんは蒔ちゃんか鐘ちゃんが気になるの……?」
「……そうだな。俺にも何か手伝えたらいい、とは思ってるかもな。
 でも二人とも優秀な選手なんだから、俺がちょっかい出す必要はないと思う」

 大会までかなり時間が迫っている。
 今の二人にとってはたったの一日であっても、代えようのない時間だろう。
 『元』弓道部の自分とはあまりにも立場が違う……いや、そういえば気になるのが隣にいた。

「陸上部の準備って、三枝は参加しないのか?」
「あ……その、参加種目の申請とかだから」
「出場者にしか関係ないのか?」
「う、うん。鐘ちゃんや蒔ちゃんと違って、わたしはマネージャーだから」
 そうだったな。
 気が付けば、穂群原の陸上部に部外者のはずの俺の出入りが増えている。

 問題と言えば、氷室、蒔寺と居合わせると、周りの人間が居づらそうにする、というコトか。

「……まったく、そこらのバカップルさんじゃないんだから、一度二人にはきつく言っておかないと……」
「あの……なんの、話……ですか?」
 むしろ俺が甘やかしている、のかなあ……?
 あいつらの中では“イチャイチャする”という目的意識はあるが、それをどこでするかまでは考えてない。
 で。
 その被害者は、間違いなく周囲の人間なのだ。

「……バカップルって、そのまんまじゃないか。
 ―――って、失礼したな。せっかく一緒に帰ってるのに独り言いうなんて野暮だった。
 ついでに、カップルがどうとかいう独り言も忘れてくれ」
「……カ、カップルさん、ですか?」
「いや忘れてくれって。
 ……ともかく、いきなり独り言を言い出したのは悪かった思うので、これから真面目に帰りたいと思う。
 というわけでよろしく、三枝」
「わ、わかりました。わた、わたしでよければ、ご一緒させていただきます」

 そうして、益体のない話ばかり選んで、ゆっくりと坂道を下りてゆく。
 静かに一緒に帰るのも、悪くない。

「三枝も……」
「どうかしましたか、衛宮くん?」
「―――なんでもない」
 あんな笑顔で振り返られると黙ってしまう。
 他の誰かがいれば話題が繋がるのに、二人で一緒に歩くとよそよそしさが残っている。

 ……その、今まで気が付かなかったけど。
 容姿や仕草がどうこう言う前に三枝は可愛いと思う。
 前から陸上部の男子達が三枝にお熱だった理由が、少しだけ理解できた。

235 名前: 夕日の蛇姫 ライダー→三枝 士郎 投稿日: 2006/01/31(火) 14:53:33

 夕焼けが綺麗だった。
 自分は何をするでもなく、三枝由紀香の隣を歩いて。
 冬も近いというのに、気温はそう低くはなかった。
 バス停に続く坂道はわずかに肌寒いだけで、散歩をするにはいい夕べだった。
 不意に―――

「わたし、好きな人とこうして話せたらいいなって、ずっと思ってました」
 ふと。
 自分から見たら女の子そのものの三枝は、懐かしむように、
 そんな事を呟いた。

 それはどこか思い詰めたような声だった。
 夕焼けの赤色のせいか、三枝はどことなく寂しそうに、見える。
 ……今でも、思い出せばちょっとだけ後悔する。
 それが新しい騒動の幕開けだったのだと、どうして気が付かなかったのか。

「……なんだそれ。思ってたって、諦めたのか」

「はい、残念ですけど。
 わたしの好きな人は、すごく素敵な人なんです。
 それに、わたしは蒔ちゃんみたいな勇気がないから。
 こんなこと、もっと早くに気がつけば良かったんです」

 言われて納得した。
 でも納得はしたけど、でも三枝が我慢しなきゃいけないのは
 間違いだと思ったのだ。

「そっか。それじゃしょうがないな」
「そうですね。本当に、しょうがないんです」
 相づちをうつ三枝。
 だから当然、俺の台詞なんて決まっていた。

「うん、しょうがないから俺が手助けするよ。
 三枝は他の誰かみたいにならなくてもいいし、料理の腕前だって十分だろ?
 大丈夫だって、三枝がピンチの時には」

“――――俺が、ちゃんと助けてやるから”

 そう言い切る前に、三枝は笑った。 
 かすかに、どこか楽しそうに、

「えへ――――安心しました」

 これ以上ないって仕草で笑って、俺の頭をシェイクした。


 会話が途切れた。
 三枝に笑顔に見惚れてしまった俺と、三枝が黙ってしまったからだ。
 二人とも無言で、夕暮れの住宅地を歩いていく。
 そのまま―――

 バス停まで辿り着いていた。


 夕日が沈む。
 止んでいた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、


「最後に、一つだけ伝えないと」


 強く、意思の籠もった声で彼女は言った。


「ん、どんな?」


 いつも通りに聞き返す。
 彼女はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、

「わたし、衛宮くんのことが、好きです」

 そんな言葉を、口にして。
 ばいばい、と手を振ってバスへと乗り込んでいった。


 住宅街には虫の声もなく、あたりはただ静かだった。
 夕暮れの中、両の頬が熱かったのを覚えている。
 バスが視界から消えるまで、ただ、頬の熱だけが冷めなかった。

236 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 14:56:57
>>231の改変のあまりの上手さに我様ビックリ

237 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:02:21
うおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

…スマン。三枝さんがあまりに良かったものでつい。

238 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:07:42
これはいい三枝ですね、ばっかり投下しやがって畜生!GJだ!
過疎ってる今ならオレでも、とか思ってたけど粉砕されちゃったYO!
憶えていやがれ!氏ね!三枝萌え!

239 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:19:36
>>231,234-235
なんてGJなんだ! 場面の繋がり方といい、何て完成度の高さだ。しかも畳み掛けるように連続攻撃とは!
三枝さんて可愛いすぎる。
くそう萌えるぜ、萌え過ぎて体が勝手にごろごろしてしまうぜ!!

240 名前: 遠い背中 投稿日: 2006/01/31(火) 15:26:36
 ずい、と前に出るアーチャー。
 その姿は、相変わらずの徒手空拳。

「………………」
 遠坂はアーチャーの背中を見つめている。
 ……かける言葉などないのだろう。
 遠坂も、自分の命令が無茶だと解っている筈だ。
 自分たちを逃すために、アーチャーに死ね、と言ったのだから。

「……………アーチャー、わたし」
 何かを言いかける遠坂。
 それを。

「ところで凛。一つ確認していいかな」

 場違いなほど平然とした声で、アーチャーが遮った。

「………いいわ。なに」

 伏目でアーチャーを見る遠坂。
 アーチャーはバーサーカーを見据えたまま、
 
「――――煤で汚れる。命拾いしたな、バーサーカー」

 ヤツは不快げに天井を見た後、ぱん、と肩に落ちた埃を払いながら、そんなトンデモナイ事を口にした。

241 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:34:21
GJ! GJだが……

>“――――俺が、ちゃんと助けてやるから”

 ちょ、それ死亡フラグwwww

242 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:38:34
>>ちょ、それ死亡フラグwwww

人生の墓場ということだろうか。
……深いな。

243 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 15:48:08
>>240
主夫としてならそれもアリなんだろうかw

244 名前: 劇場版・タイガー道場のポスター 投稿日: 2006/01/31(火) 15:48:18

俺のサーヴァントは家のダニ!! くたばれNEET野郎!!
珠玉のファッキン・ジョブ・ストーリーいよいよ日本上陸。

KING the NEET
  騎士王 etaF版

働かないと決めた―――それが私の誓い。

245 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 16:30:49
「おっしゃるとおり、私は藤村先生に興味は一切ありません」
「で、ですよねえ」
キャスター、小さくガッツポーズ。

「男として、藤村大河という女性に欲望を持つかと問われるなら、それもありません。ましてや、恋愛感情を抱く事などあり得ません」
「で、で、ですよおうねい?」

さすがに動揺してるぞ、藤ねえ。

勝ち誇るキャスターの隣で、ランサーは首をぐらんぐらんさせて、砂を噛んだような、ぼへぇーとした顔。
「あくまで同僚として、円滑なおつきあいができれば、それで構いません」

「は、はいい……」

しゅんと小さくなる藤ねえ。
も、もう勘弁してやってください。
あイタタ。これは、はたで聞いてる俺でさえ予想以上にイタい。

「そう、思っておりました」


「ああぁぁあののおぉぉとこおぉお」

「刺さってるテーブル刺さってるっ。しまって! その不思議剣しまって!」
緊急事態だ葛木先生!
一刻も早く毅然とした対応を求む!
テーブルが粗大ゴミだ!

246 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 17:03:55
うまい。順番入れ替えできたか。

247 名前: タイガー道場22 投稿日: 2006/01/31(火) 17:12:42
皆の衆、良い日和でござるな。
 誰にも言えぬ貴殿の懊悩を解決する、某、後藤の人生相談の時間にござる。
 本日の客人は此方。
 冬木市某所在住、蒔寺楓嬢、御歳十八であらせられます。
 ……ちっす。よろしく……。(音声は変えて収録しております故)
 ををう、これはまた不機嫌全開。
 如何した蒔寺嬢、お主ほどの豪傑なら悩みなど皆無では?
 あー、それが……どうも、あたし愛されてないっつーか……他の二人に比べてイロモノだとか、キャラが立ちすぎとか、百合とか言われて……。
 むむ、其れは由々しき事態。
 ふむ、蒔寺嬢、『衛宮LOVE&打倒鐘っち』と記載してあるが如何?
 ……うん。あたしだって本当は恋に恋する、普通の女の子なんだ。だっつーのに、etaFでも鐘っちと由紀っちばっかり補完されて……。
 あのさ、あたしはどうしたらいいんだ!? 変わりたい!
 あたし、もっと愛されるキャラに変わりたいんだ!
 かっかっか、それは無理で御座ろうな!
 絵馬では『ある意味ヒロイン』などと落書きも御座ったが、ツンデレは遠坂嬢一人で充分!
 お主は永遠に引き立て役なのだー!
 んだとー!?イヤ、…あたしもそんな気がしないでもないけどさ。……けど、このままだと色々辛すぎー!
 あたし、一生懸命やってるよ? 衛宮に振り向かれる為に、陸上部で扱き使って、雑用押し付けまくって、顔合わせる度にツンツンしたんだ。
 なのに衛宮はあたしのデレに気付かねーし、この間なんて料理下手キャラにされて……。
 あたし、こんなに頑張ってるのにまったく報われないんだっ!
 後藤、こんなあたしだけど幸せになれるだろ……!?てゆーかそれ以外不可。
 否。
 蒔寺殿、それはお主がいかんのでござる。
 て、てめえ……こんな所でもネタにされるなんて……あたしって一体……。
 うむ、戦術的撤退! 者共退けー!
 以上、後藤の人生相談で御座ったー!

248 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 17:39:55
>>231のイイトコロは、キャラが増えつつも、
なんだかんだで一番ラブってるのは鐘っちであるという点に尽きる。

>>247
色恋のネタが100に1つも出ないティーゲルと比べれば、パンターなんてもう愛のバクダンですよ?
しかし恥じらい、悩むマキジもまた良し。

249 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 17:42:18
ふ、タイガーよりはずっと恵まれているだろうが…!

250 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 18:03:37
というかマキやんって料理が苦手なだけで、作れるわけでですね。
そんな反転っぷりがステキだと思うのです。

251 名前: 美綴実典 実典⇒バゼット 投稿日: 2006/01/31(火) 18:34:10

「ちょっと待ってください、士郎君」
「?」
制止の声に振り返る。

そこには、見覚えのある彼女の姿があった。

「あれ? バゼット、何で……」
「仕事探しの最中です。求人は深山町より新都の方が多い
のは、知っていますよね」
「あ、職探しか。どうりで見かける筈だ」

思い返せば新都で何度か見ていた。
その労働意欲は大したものらしく、桜から太鼓判が捺されている。
遠坂はカタチだけ、まるでダメ、と酷評なのだが、
ありゃあバゼットと冷戦中なんで、実際は将来有望な人材なんだろう。

「で、何か用があるのかバゼット。呼び止めたのはそっちだよな?」
「べ、別に士郎君に用事はないです。ただ、護衛も付けないで魔術師が
徘徊しているのは無用心じゃないですか。
士郎君はそれでもあの家の主ですから。
何かしらの目的があって行動しているのではと思って」

「いや、アルバイトの帰りなんだけど。そっちも仕事探しの帰り?」
「ええ。その帰り道に偶然、士郎君の姿を見かけたので声を掛けたんです」
「ふーん」
そうなのか。
にしても、ここは新都のはずれで、オフィスビルがある所からだと
家は逆方向になるような。

「……………………」
「……………………」
黙り込む二人。
バゼットには言いたい事があるようなのだが、
なかなか口にしようとはしない。
……まあ。的確に人の弱点をズバズバ言うシスターよりはマシなんだけど。

「用がないなら帰っていいかな? あんまり遅くなると
俺の分のごはんも喰われちゃうから」
「あ……その、待ってください。
士郎君に用はないんです。士郎君に用はないんですけど――――
カレンが貴方の方が詳しいと言っていたので。
その、ランサーの好きなものとか、趣味とか教えて欲しいのですが」
「―――――――」
ピンと来た。いや、来ない方がどうかしてるぞ、この場合。
「ちゃんと聞いていますか? 知らないのならそれでいいのですが」
「いや、それなりに知ってるつもりだけど。
それで、それを聞いてどうするのさ?」
「……別に、士郎君に答える義務はありません」
「俺も、バゼットに教える義務はないんだけどな」
「……ふう。やっぱり根っこの部分で士郎君はアイツと同じですね」
ぼそりと溜息をつくバゼット女史。
言葉遣いこそ堅苦しいが、これはこれで思春期の少女みたいだ。

「あのですね。知りたいのは私個人の問題です。
誓って悪用する意思はありません。贈り物の参考にするだけです」
「なるほど。つまり、ランサーが好きなんだな?」
「ベ、べ、べ、別に好きとかそういうのではなくてですね、
陰険シスターにこき使われて見るに忍びないので、なんとかしてあげたいと」

クールに返すバゼット。
が、顔の赤さはこっちも釣られて熱くなる程だった。

「ふーん。なるほどなるほど。
―――で、ランサーのどこが好きなんだ?」
「―――――――」

真っ赤な顔のまま、俯くバゼット。
再度黙り込む二人。

「……………………」
「……………………」

十秒。
二十秒。
三十秒。
四じゅ―――

「―――“切り抉る……」
「待った、全面的に俺が悪かった。だから、それは無しだ」

泣きそうな顔で宝具を放とうとした人間凶器を冷静に止める。

「えーと、ランサーの最近の趣味は釣りで、好きな物は……強敵かな?」
最後のはちょい自信が無いのだが、聖杯戦争の時に
セイバーとの決着に結構拘っていた気がする。

「そうですか、分かりました」
バゼットはメモ帳を閉じそれをポケットの中に仕舞い込むと、
何かを決意するかのように眼を閉じた。

「そうですね、女として彼の傍に居たいなど浅はかな考えでした。
彼が強敵を望むと言うのなら、それに応えるのが私の想い。
士郎君のおかげで決心が付きました。
これから彼に決闘を申し込んできます」

ちょ、何つぶやいてんのこの人間凶器……!?
引き止める間もなく、彼女は夜の闇に消えていく。
嗚呼……
せめて何事なく、ランサーが無事でありますように―――

252 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 18:38:35
落とし方がGJ。
というか、
>あんまり遅くなると俺の分のごはんも喰われちゃうから
士郎カワイソス(´・ω・`)

253 名前: 続エロードブリッヂ実典完結編(ブリッジ+慎二OH) 投稿日: 2006/01/31(火) 18:39:23
今更スマンが前スレ492の続き(蛇足)

「は―――ああ、……うっ!」

 精欲、体力ともに未だ半分を残していながら、少年は終着に追い込まれた。
 無理もない。
 衛宮士郎との圧倒的な差、汲めども汲めども尽きぬエロスの天幕。
 シスターの嘲笑に心が折れるのは、当然の帰結だった。

 ……土砂降りの中にいるようだ。
 嘲笑と自己嫌悪の雨あられの中、姉の嬌声とも悲鳴ともつかぬ声が聞こえてくる。
 衛宮士郎のみならず、暴走新幹線じみたライダーまで戻ってきたのだ。

「あ、ぁ―――ね、ねえちゃん――――――」

 士郎グッジョブ。と親指を立てて頷く眼鏡の女神。
 こうして奮戦は荼毘に付す。
 願わくば、愚昧だった彼の純情が、今際の嬌声に踏みにじられぬよう。


 そして、


「あれ……この、声……?」
 そして。


「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 若さ爆発だね美綴の弟よ! あと待っていた、この機会を待っていたぞ我がNTR
ハーレムルート!」

「アンタ、何者―――!?」

 あまりの展開に目を開けていられない。
 押入れの隅っこからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声を
あげまくる。

「ハハハハハハ!
 何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そうさ分からないよねゴージャスな僕!
 すごいぞ気持ちワルイぞー!
 見て見て一年坊、ライバルキャラにNTR(寝取られ)とか男の浪漫(ハーレム)とか、そう
いうのが溢れてもうタイヘンさ!」

 吹きすさぶ風王結界、荒れ狂う黒桜、激震する三人娘。
 そしてみゃーみゃー鳴かされてる魔法少女。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアーマゲドンに星も激動しているというのかッッッッ!!!?
 
「ま、まさかアンタは引退した―――間桐、慎二……先輩!!!?
 バカな、アンタは昨晩泊まっていない筈だ!」

「最初から居たのねー!
 いえ、キャラ的にはほとんど空気でしたが、だからこそ士郎ハーレムの衛宮んちで暗躍
できたのだ勇者(チェリーボーイ)美綴実典よ!
 ククク、しいたげられた二枚目ライバルの怒りが僕を“秘伝の薬を夕飯に乱交大作戦”に
駆り立てたのだ。
 んー、見てほしいのね衛宮にエロゲーを貸した時から始まっていたマイオペレーション」

 遠坂先輩なみの自信を感じさせる綿密な計画書?
 い、いったいどれだけのオペレーションを……!!!?

 ※                 ハーレム計画                 ※
 ※衛宮がエロ→衛宮がいなくなる→火照った体を持て余した遠坂達→※
 ※頼れるのは間桐君だけね!抱いて!→ずるい姉さん!私も抱いて!※

「って、杜撰すぎでぜんぜん意味わかんねー!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいね。
 そう今までの僕は僕じゃあない!
 えーと、言うなれば衛宮がセンチメンタルグラフティの主人公だとしたら、僕は
センチメンタルグラフティ2の主人公!
 いや、奴がFate/stay nightの主人公だとしたら、ファンディスクの主人公なのさ!」

 「……………………」
 もうファンディスクの主人公は他に取られているんですが。

254 名前: 続エロードブリッヂ実典完結編2(ブリッジ+慎二OH) 投稿日: 2006/01/31(火) 18:40:13
「まあそれはいいッス。
 ともかく俺たちはハーレムの次期住人なんっすね!俺は間桐先輩の為に、アンタは
遠坂先輩を 救う為に、そしてもれなく付いてくるハーレムの為に衛宮先輩と戦うんす
ね!?」

「ナイスリアクション! 話がわかるじゃんか美綴弟!
 純愛オンリーみたいな顔してさてはハーレム好きだろオマエ!」
「ウッス!い、いやそれも嫌いじゃないっすけど照れたり恥らったり怒ったり拗ねたり笑っ
たり清純なのに色っぽかったり世間知らずの優しいお嬢様だったりとか先輩が大好きだ!
 そんなワケで、今いきます先輩……!
 アナタだけは衛宮士郎に渡さないッッッッ!」

「ク―――吠えるじゃんかチョイ役キャラ。
 だが今日は純愛よりエロスが強い、主人公が覚醒したエロゲー世界の強制力を思い
知れよ!
 桜だけは渡さない?ほーんと駄目だね、実典は。
 そんなだから桜に相手にされないんだよ!」

「うっ」

 慎二の言葉は実典の心を真っ白にした。
 図星を突かれたようで目が点になったのだが、ともかく────ひょこっと首を起こし
かけた心が再び折られたのだ。

「ま、間桐副部長、それはどういう……」

「受けに回っているかぎり勝てないってコト。
 知ってる?桜はさっさと恋人の座をあきらめて、遠坂と共同戦線の3Pで衛宮を共有して
るんだから。
 渡さないと意地を張ってるより、ずっと現実的で高得点な位置づけってワケ」

「あ、あの……それって高得点というより、恋愛的にいちばん厳しい状況なんじゃ?」

「同じコトなんだよ。でも、結局は桜もヤっているだけだし、それってまだるっこしいだろ?
 セックスに溺れてるなら僕の得意分野だし、溺れさせてから寝取った方が早いし、なに
より―――」

「……えっと……マニアのほうが恋愛よりポイント高い、ですか?」

「そういうコト。
 僕は行く。 この人数だし全員メロメロに出来るかどうかは分からないけど、衛宮ばかりに
良い目を見させてたまるかよ。
 実典はどうすんの?一緒にヤる?」

「────」
 言葉による返答はない。
 彼は躊躇した後、静かに息を飲んで慎二を見返した。

「それじゃあ行こうぜ。
 さあ、一度きりの見せ場だ一年坊!
 遠慮はすんなよ! 床に転がったメスどもをみんな犯して、新主人公の強さを見せ付け
るんだよ!」
「―――そうは行きませんよシンジ」

 運転を急停止する暴走慎二。
 アヤコと士郎で3P中なのに邪魔しないで下さい、とライダーに睨まれ、女体の雪原で立
ちすくむ。

「じゃ、いつもの雑魚キャラに戻りますね」

 はい、と頷きだけで答えるライダー。
 男には言葉をかけてはいけない時があるのだ。

「美綴はあげます。気が向いたら恥辱プレイのエキストラで呼んで下さいね」

 いそいそと部屋のはじっこに移動する慎二。
 あ、シスターに踏まれた。

「……………………俺も家に帰るか」
 ここ4時間ばかりの記憶をまっさらに消去して乱交パーティを後にする。
 向かうは我が家。
 立ち直れる保証もなく、少年は女体重なる衛宮邸に背を向けた。

 ………たとえ、自分の想いが果たせずとも願おう。
 想い人の好意が、自分のような飛沫ではなく、波紋となって実を結びますように、と。

255 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 18:52:57
>>ちょ、何つぶやいてんのこの人間凶器……!?

バゼットは本当可愛いなぁw

256 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:13:27
「アヴェンジャー。扉にかけられたロックを解除できますか?」
「んー……まあ、わりと単純なヤツなら解析はできるかな。けどアンタがやった方が確実だぜ。協会屈指の魔術師なんだろ」
鍵開けは得意分野ではありません。貴方に任せます」
なのだった。
うちのマスターはこういう細かいコトが不得手らしい。とことんバイオレンスに出来ているのである。
「んじゃ任された。少し時間もらうぞ、ここのはちょい厄介なんだ」
玄関の横、庭に埋められた木の根本に腕をつっこむ。
幽体はこういう時に便利だ。なんなく自分の魔術回路を魔術式に重ねられる。
十秒。
二十秒。
一分。
十分。
一時間。
五時間。
一日。
二日。
三日。
四日―――

こうして最後の夜が終わる。
異常は正常に戻り、
戦いは幕を下ろし、
在り得なかったモノは在り得なかったモノとして、元の空白へ返っていく。
「――――――」
時計はあと三十秒ほどで零時にさしかかる。
日付が変われば四日目は完全に死に絶える。
過ぎ去った時間は、日付を越える事で完全にロストする。
これでおしまい。
目が覚めれば、いつも通りの日常に戻っているだろう。
聖杯戦争は終わった。
戦いは勝者を生むことなく、
異常は解明されることなく、
虚ろな楽園は、今もこうして回っている。

257 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:16:04
実典切ねぇw

258 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:26:41
>>想い人の好意が、自分のような飛沫ではなく、波紋となって実を結びますように、と。
そこでそう願っちまうからダメなのさボーイ。
ダガその思いやよし。
氷室先輩に出会って慰められちまえ

259 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:27:22
>>235
なんか、
“――――俺が、ちゃんと助けてやるから”
でサチーンを思い出してホロリとキタ

260 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:38:22
「――――っ」


 左手が痛む。
 最初の令呪が現れる。


 ―――それで。
 本当に、幕は下りるのだと受け入れた。

「これから、はじまるのですね」
「……ああ。ここから始める。もう、誰も零しはせん」

「そうですか。では私たちの約定もここまでですね。貴方の協力
 を得、聖杯を作り、私は眠る。
 ……この約定を、果たせて良かった。」

「……そうじゃな。お主はよくやってくれた」


 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 アインツベルンの娘は遠く、わしはヤツに駆け寄ることもしない。

 魔力が猛る。
 吹かないはずの風が吹き始める。
 永遠とも思える沈黙。
 その中で、


「最後に、一つだけ伝えないと」


 強く、意思の籠もった声で彼女は言った。

「……ああ、なんじゃ?」


 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 ユスティーツァの体が揺れる。

 振り向いた姿。
 彼女はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、



「ゾーケン――――貴方を、愛している」


 そんな言葉を、口にした。

261 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:48:00
>>256
いや、待ちすぎ待ちすぎw

ところで、家の鍵を開けようとしたのが一日目の夜なら、その日から3かでタイムオーバーになるのでは?

262 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 19:52:38
>261
ついうっかりパワーとダメットパワーの相乗効果で5日目に突入したんだよっ!

263 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 20:31:08
>>256
ぐわー! やられたー!
同じネタ考えてたのにっ!

264 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 20:37:22
>>235
オチが凄まじく美しいじゃんかこのやろう。

でも、まさか死なないよね?

265 名前: アイリスの土蔵+天のドレス+ハングリーハート 投稿日: 2006/01/31(火) 20:40:32

「はぁ、やっぱりシロウはシロウよね……わたしが一肌
脱がなきゃいけないのかしら」
「―――というと、改造するとか?」
「そうよ。いろいろモノは運ぶけど、すぐに私レベルぐらいには出来るわ」
自信満々にイリヤは言う。
しかしイリヤレベルって……
あの、イリヤの部屋の事ですか?

「セラとリズを呼んでここを片付けて、外装も変えて、
そうね半日もあれば……」
「待った。あんまり改造されると、俺はすごく落ち着かない」
こんな純和風の屋敷なのに、土蔵だけあんな西洋風になっている
というのは冗談としか思えない。

「もちろんその辺は配慮するわよ。とにかく!」
「はい」
イリヤの説教口調に、思わず首を竦める。

「シロウも一人前になりたいと思ったら、まずその辺の形から
整えるのも重要なの」
「重ねて面目ございません―――」
「それじゃあ、わたしが好きに改造しても文句ないわね?」
「……う、分かった。イリヤに任せる」

偽りの、その場限りの返答をした。

「うん……! よかった、これでシロウも一人前になれるね!」
「わっ…………」
よっぽど嬉しかったのか、イリヤは飛び跳ねて喜んでいる。
これだけ喜んでもらえるなら少しぐらいは―――

「お待たせいたしましたお嬢様。改造を行なうとのコトですが」
「ええ。ホントは着たくないけど、万が一にも失敗したくないから
天衣を使うわ。リズ、準備は出来てる?」

運ばれて来たモノは、例えるなら大きな手術台。
何に使うのか理解できないほど怪しげな薬品に注射器、
メスに代表される手術道具の山。

「な……一体何を……」
「……ごめんね。もうその容れ物には戻れない」

スイッチをオフにするように、俺の視界を闇に落とした。

「さて、いじろっか」
「うん、いじる」
声だけが耳に届く。
……おかしな話だ。

「それじゃあ、これから改造手術を行ないます。リズ、まずは
シロウの気が変わらないうちに感覚神経を遮断しなさい」
「うん、もうやった」
「外装はレニウム製の強化外骨格で。
最低でもライフル弾に耐えられる程度に」
「うん、分かった」
「内部はホムンクルスの人工筋肉を移植。
最低でも象を持ち上げるぐらいのパワーは欲しいわね」
「うん、分かった」

「―――よし、インスタントにオペ終了!
どうお兄ちゃん? 全身を改造された気分は。
サーヴァントに匹敵する肉体的ポテンシャルに加えて、
固有結界“無限の剣製”で、もう敵無し!
さあ、このまま自分の意思でわたしたちアインツベルンの一員になるか、
洗脳されてキラーマシンとなるか、決めなさい!」

266 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 20:42:00
>>261
一日目の早朝だったんだよ!
・・・ゴメンうっかりしてた。

267 名前: 天の逆月 投稿日: 2006/01/31(火) 20:46:09
「……分かりました。それでは貴方の気紛れに甘えるとしましょう」
「それでいい。んじゃあま、一緒に別れるか」
「ええ、では背中合わせで行きましょう。……何というか、いま貴方の顔を見たらひっぱたいてしまいそうなので」
「――――――」

 明るい声で言う。
 最後の最後に、成し得なかったものが完成する。

「…………大丈夫かな。オレ、ちゃんと背中ある?」
「あります。ほら、踵を回して」
 背中を向ける。
 触れ合える感触はないが、彼女は後ろにいる。
 もう温かくも何ともないが、喜びを感じる心はまだ在きている。

「確かに、じゃあ行くぞ」
「せっかちですね。ここまでしたのですから、同時にスタートしましょう。
 三秒数えたら走り出すというコトで」
 
 スプリンターのようだ。
 号砲は各々の心の中で。

 3、大きく呼吸をする。
「あ、抜け駆けして三秒前に走り出す、というのはなしですよ。決闘ではないんですから」
 2、彼女らしい心配に楽しくなる。
「あっはっは。―――甘いな、オレだったら一秒目で逃げ出してる。相手が三秒待ってる頃にはトンズラだ」
 1、今まで通りの切り返し。
「そうですね。私も、三秒待った後でその背中を狙い撃ちます」
 高らかな笑い声。
 0――――
 ぎごん、と
 走り出した瞬間、生物的にヤバイ音を立てて、バゼットはスッ転んだ。

 さっきまでのしんみりさから一転、なんともいえない静寂に包まれる。
 この唐突なまでの場面変換。
 さすがバゼット、こんな感動シーンまでぶち壊すとは、人間凶器の名は伊達じゃない。
 
 ……にしても、今のはシャレにならない角度だった。
 バゼットは壊れた聖杯の破片に頭をぶつけたまま倒れている。
 俯せになって顔が見えないところがまた、否応無しに嫌な想像をかき立てる。

(……おい、お前、アイツ起こしてやれよ)
(……えー、やだよ……近づいた途端、フラガでラックされたら怖いじゃないか……)
(……待ち作戦じゃあるまいし、さすがにバゼットもそこまで待てねえだろ)
(お前な、そういうなら自分で起こしてあげたらいいだろ)
(うわ、オレパス。こういうの苦手)
(俺だって苦手だよ! だいたいなんで俺にやらせるんだよ!? お前のマスターなんだからお前がやってやれよ、お前が!)

 頭の中でオレとさっきまでもう傍観に入っていた殻が荒れ始めている。
 もうすでにほとんど目が見えなくなっている我々としては、いまいちバゼットがどんな惨状になっているか判らない。

 判らないんで、もう少し目を近づけてのぞき込む。

268 名前: 天の逆月 投稿日: 2006/01/31(火) 20:47:01
(ちょっと、バゼット動いてないぞ。気絶してるんじゃないか)
 もっともな意見を殻の方が言った。
 ただ問題は、その場合どうやってバゼットと感動的なラストランをやり直すかだ。

 オレ達も、繰り返された4日間でバゼットとつき合ってきた猛者だ。
 いい加減、同じパズルをやり続けて待つ、なんて慣習は打破したいと思っているところだ。

「バゼットー……? おーい、大丈夫かー?」

 勇気を出して声をかける。
 バゼットはピクリとも動かない。
 動揺はますます広がっていく。

(……まずいよ今の転び方。こう頭から直角に破片に突っ込んだじゃないか。アレで無傷だったらバゼット無敵っぽいぞ)
(んー、いっそのことアンタのボディガードにスカウトするのはどうだ)
(や、やめろよなそういう脅しは……! この人がボディガードになった日には、俺の家がジャンケンの度に壊れちゃうぞ!?)
「バゼット、バゼットー……! だめだな、何の反応もねぇ……!」

(おい、お前もう少し大きい声で起こしてみたらどうだ)
(ええ!? イヤだよオレ、もし死んでたら殺されかねねえ!)
(でも、だからといってほっといたら後が怖いだろう)
(でもどちらも近づきたくねえ、と)
(……仕方ないな。こうなったらアレしかないか)
(ああ、アレだな)
(せーの)

 オレ達の心が一つになる。

「せーのっ、起きろ、ダメットー」

 二人が声を合わせたわりには、呟くような大きさだった。
 とくに『ダメット』の発音が聞こえなぐらい小さい。
 だというのに。

 ……ぴくっ。
 と、沈黙していたバゼットの体が反応する。

(うお、動いた!? 効き目あるみてぇだぞ!)
(よし続けるぞ! ガコロウトンの計だ!)
 五日目が迫ってきているんで、オレ達二人てんぱっていたんだろう。
 よせばいいのに、ブンブンと腕を振り回してバゼットのあだ名を連呼する。

「起きろーダメットー。朝だぞー」
「マスター、起きないとダメットだぜ!」
「負けるなダメット! 立ち上がれダメット!」
「よーし起きろマスター! それでこそダメットだぜ!」
「ダーメーット! ダーメーット!」

「がぁ―――!
 ダメットって呼ばないでください――――っ!」

「……? アンリに何をしているんですか? だめですよ、これ以上近づいちゃ。
 ほらほら、殺される前に日常に帰りなさい」

 バゼットはさっきと同じ調子で殺気を放つ。
 ……どうも、オレがここに来てから立ち上がるまでの感動のやり取りの記憶が、ポッカリ抜け落ちているようだ。

269 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 20:55:38
ダメットーーーーー!!

270 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 21:32:29
>「起きろーダメットー。朝だぞー」
>「マスター、起きないとダメットだぜ!」
>「負けるなダメット! 立ち上がれダメット!」
>「よーし起きろマスター! それでこそダメットだぜ!」
>「ダーメーット! ダーメーット!」

やっぱこの辺りは士郎とアンリがペカペカ入れ替わって表示されるのだろうか…。

何はともあれGJ!

271 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 21:34:58
士郎とアンリの脳内会議ワロスwww妙に相性いいなあ

272 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 21:40:12
ワロタwwwww

273 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 21:46:21
くそっ、ダメットかわいいなぁwww

274 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 22:17:35
「屋敷の周りに張り込んでいる者がいるようです」
「警察は父が追い払ったと聞きました」
はい、と秋隆は頷く。

「ですが、張り込んでいるのはお嬢様のご学友のようなのです」
言われて、私はベッドから立ち上がった。

屋敷の門が見渡せる窓に近づくと、カーテン越しに外の風景を見る。
門の周囲の竹林の中、せめてあと少しだけでも巧く身を隠してほしい、と思うほど目立った人影がある。

「――――――」
……頭に、きた。
「ご指示してくださればお帰り願いますが」
「黒桐くんはいいんですっ。彼は何があっても泰然自若、その、友人として本当に頼もしいんだから」

私はベッドまで小走りに戻ると、そのまま横になった。
秋隆はのろけは夢の中でやって頂きたいのですが……、と残してドアを閉める。

275 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 22:19:55
秋隆さんさり気にキッツいなあw

276 名前: 十年前の真実 投稿日: 2006/01/31(火) 23:23:18

「……一言で言ってしまえば、彼は典型的な魔術師だった。
己が目的にしか興味はなく、阻むモノはなんであろうと排除する。
およそ人間らしい感情など、彼には見当たらなかった。
私が戦いを通して話しかけられたのは三度だけです。
……それがなんであるかは、言うまでもないとは思いますが」

「――――――――」

「そう。メシ、風呂、寝る、の三言だけです」

277 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 23:24:57
ちょwどこの駄目親父だwwwwww
っつーか10年前のセイバーにメシ要求したら焼いただけの肉の塊とか出てくるぞw

278 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 23:29:18
いや、全部自分でかいがいしく用意してセイバーに勧めてたのかもしれんw

279 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 23:31:29
三回だけって……それじゃ一日で聖杯戦争終わったことにwwwww

280 名前: セイバーとの和解 士郎→ミミ セイバー→ギル 投稿日: 2006/01/31(火) 23:39:28
「ミミ。少し目を閉じて貰おう」
 真剣な面もちで、ギルギルはそんなことを言ってきた。
「・・・・・・? 目を閉じるって、なんで」
「お前がマスターだと証明する為だ。
 いいから、目を閉じて呼吸を整えろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ・・・・・・目を閉じる。
 ついで、額に触れる微かな感触。

 ――――って、妙にチクチクするー、これってまさかカッターの先じゃ――――

「――――ギルギルー? ちょっと待って、なんかヘンな事してない?」
「・・・・・・。ミミ、黙って我の指先に意識を集中させよ。
 貴様も魔術師なら、それでこちらの魔力を感じ取れるであろう」

「――――むー」
そうか、触れてるのはギルギルの指か。
それじゃあ、と気を取り直して意識を静める。

おしごと あーちゃー
かいぬし     :みみ
ほんとうのおなまえ:ぎるがめっしゅ
せいべつ     :おとこのひと
おおきさ・おもさ :おおきい ふつう
がくねんくらす  :ぐるぐる・いいひと

ちから:よくできました ふしぎなちから:よくできました
かたさ:ふつう     うんのよさ  :たいへんよくできました
はやさ:ふつう     たいせつなもの:すごすぎてわかりません

おしごと らんさー
かいぬし     :
ほんとうのおなまえ:くー…なんとか
せいべつ     :おとこのひと
おおきさ・おもさ :おっきい そこそこ
がくねんくらす  :ただしい・ふつうのひと

ちから:よくできました     ふしぎなちから:ふつう
かたさ:ふつう         うんのよさ  :もっとがんばりましょう 
はやさ:たいへんよくできました たいせつなもの:よくできました

――――と。
なに、これ。

「ギルギルー、今の、何?」
「なに、ではあるまい。
 お前と我は契約によって繋がっているのですから、我の状態は把握できて当然だ」

「――――はあくって、今の?」
「どのようなカタチで把握したのかは知らん。
 サーヴァントの能力を測るのは、あくまでミミが見る基準だ。
 単純に色で識別するマスターもいれば、獣に喩えて見分けるマスターもいる」

「つまり、個人差はあれど本人にとって最も判別しやすい捉え方をする、という事だ。
 これはマスターとしての基本であるから、今後は頻繁に確かめておけ。
 我と同様、一度見た相手ならばその詳細が理解出来ている筈であろう」

281 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 23:40:17
いや、あとはジェスチャーとかで。

セイバー「……は、おいといて、ですか。ふむ」

かわいいな切嗣w

282 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/01/31(火) 23:41:53
ミミちゃんのますたーこうざキタ━━(゚∀゚)━━!!!!

283 名前: 白日の碧>殺人考察(後) 投稿日: 2006/01/31(火) 23:54:49
 
 ――――ぼんやりと。
 朝の光が、映ってくる。
 
 朦朧としたあたま。
 まだなにも考えられない。
 体は倒れている。
 頭は――――なにか、柔らかいモノの上にある。

 ――――おかしいな。
 もう、ユメは覚めているはずなのに。

 目蓋をあける。
 目の前には、彼の泣き顔があった。
「――――――――」
 ……ただ手を伸ばして、彼の頬に触れた。
 指先には血が伝わってくる。
 それは、紛れもなく現実でしかない、温かい泪だった。
「――――――――」
 ……彼は何も言ってこない。
 わたしも――――言葉を発する必要性なんかこれっぽっちも感じなくて、ただ彼の体温だけを感じていた。
 
 ――――どくん、という鼓動。

 夜空には織が消えた時と同じ雨が降っていて、わたしの体は血にまみれていた。
 ただ、胸にあった空洞は塞がっていた。
 彼がその空虚を埋めてくれたのか、それともそんな空洞は初めからなかったのか。
 ……まぁ、生きているのなら、そんなコト
 こうしていられるコトに比べれば、本当に瑣末だろう。
「……式……僕のこと、わかる……?」
 震えているような、声。
「……驚いたな。コクトー、すごく、泣いてる」
「――――うん。僕、こんなにどうしようもない気持ちなんて、生まれて始めてだ」
「はは、そりゃあ言いすぎだよ、コクトー」
 ぼんやりとした頭で、そんな軽口を言う。
 ぼうっとする。
 頭痛はない。痛みもない。幹也がどうなったのか、自分がどうなったのか、まったくわからない。
 ただ、わかるのは夜の雨と目の前に幹也がいると言う事だけだ。
「…………はぁ」
 なんて倖せ。
 欲しいものは、目の前に揃っている。
「……ごめん。約束が守れなかった」
 はあ、と喘ぐような吐息をもらして、そう言った。
「何言ってるのさ、そんな事言ったって今度ばかりは許してなんかあげない」




「頼む、僕の楽園を返してくれ……」
 この世の終りみたいな表情で項垂れる殺人鬼 
 バカップルが展開する桃色空間に、ナレーションすら思わず泪が止まりません。
 嗚呼。失われた楽園よ、せめてバカップルの間で永遠なれ――――

284 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 00:00:39
>>280
たいへんよくできました

つうかクソ萌えたよ。何ですかこの感情は。

285 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 00:06:17
ラヴ…

286 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 00:55:42
                        あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ       
         (.___,,,... -ァァフ|       還流映画の 『美しき野獣』 の情報を
          |i i|    }! }} //|       彼女に調べてくれと頼まれて、彼女の前で ググッ てみたら
         |l、{   j} /,,ィ//|       
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ       一番最初のサイトが・・・
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何がおこったのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    グラビア とか アダルトビデオ とか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ    もっと恐ろしい破局寸前の無言時間を味わったぜ・・・

287 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 01:09:48
>>286
完全にスレ違い、だが個人的には噴いたので文句は言わない

288 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 01:15:40
>>286
どっかで聞いたと思ったら読んだ事あったわwwwwwww

289 名前: タイガ→アベンジャー ブルマ→バゼット 投稿日: 2006/02/01(水) 03:24:27

「……ん……」
「アベンジャー!良かった、気が付いたんですね!」
「ごぱっ!?次世代の天変地異!?」
「気が付けば目の前にいたへたれ子が、オレの鳩尾に渾身のストレートをぉ!?」
「あ、すいません、つまづいた拍子に拳めりこませてしまいました」
「……ワザとだな。いまの、絶対ワザと」
「ええ。勝手なコトしたサーヴァントにちょっとお仕置きしたんです」
「文句はいっぱいありますが、さっきのはこれで全部チャラにしてあげましょう、左手さん」
「む。どこか覚えのある展開。
 けど暴力じゃ勝てないんでアヴェスターはしないであげよう」
「左手は左手らしく、バゼットに抱えられたまま虚ろな星空を見上げるのであった」
「ええ。空白、多かったんですね。
 こうやって寝そべったまま見上げてると、吸い込まれちゃいそうだったんですね」
「むむむ。それは何もないって意味かよバゼット」
「その逆。
 手持ちの欠片はなくなりましたが、まだまだ空白はいっぱいあるんだなって」
「この空白があるかぎり、わたしたちの聖杯戦争はまだまだ終わりそうにないってコトです」
「……そーかい。じゃあ次は何処に行くんだ?
 聖杯戦争が続いてるんなら、オレはマスターを守らねえとな」
「サーヴァントかつ左手なんだから、バゼットがへたれるまで付き合ってやるさ」
「ありがとうアベンジャー。
 それでは次はPS2、消え去った4人目のヒロインを見つけに行きます」
「けど、それは明日になってからの話。
 今夜はこのまま、ぼけっと空を見上げてましょう」
「いいぜー。そっかー、次はPS2かぁ。
 18禁パソゲーから家庭用ゲーム機なんて、一気に風呂敷広げたもんだな」
「おや。怖じ気づいたのですかアベンジャー?」
「ヒヒヒ、寒気は寒気でもワクワクして震えてるのだ!
 よーし、いっちょ世界壊滅でもやらかすかー!」
「ええ、その意気ですアベンジャー!
 わたしたちの戦いはまだまだ続くんだからー!」

こうして、わたしたちの聖杯戦争はとりあえず終わりました。
わたしとアベンジャーは陽気に仲悪く、ゴールもないまま虚ろな楽園を巡っていくのです。
でも、それにだって終わりはある。
アテのない旅ですが、こうやっていればいつか居場所が見つかるでしょう。
ファンディスクにしか出番はないけど、それならそれで開き直って、
本編から転がり落ちた人たちの役に立ってあげましょう―――――
というワケで、これにて一件落着。
戦いの末、二人がおかしな場所でおかしな戦争を開くのはもうちょっと後、
もうずっと後のお話なのでした―――――☆

290 名前: タイガ→アベンジャー ブルマ→ダメット 投稿日: 2006/02/01(水) 03:31:31

十秒。
二十秒。
三十秒。
四じゅ―――

「うわあああ!!!??? ななな何やってんだアンタ!?」

 何もクソもねえ、あのヤロウ無言で立ち上がって走り出しやがった!

「出発します。準備を」

291 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 03:39:55
よし、そのまま二人ともPS2に特攻しろwww 俺が許す!

292 名前: 弓道部の或る日常→間桐邸の或る日常 投稿日: 2006/02/01(水) 04:30:56
「……お爺さま、ただいま。お久しぶりです」
「まぁまぁゆっくりしたまえ桜。久しぶりに帰ってきたのにお茶も出なくて恐縮じゃが」
「いえ、聖杯戦争が再開されて大変なところにそんな、」
「おーい、誰かお茶持ってきてくれんかのー?」
「……単に自分がお茶を飲みたかったんですね……」

 そうじゃよー、と頷いているマキリの翁。
 ……ハサンさんが尽くすような立派なマスターっぷりなんか微塵も見つからない。
 やっぱり、以前のお爺さまとおんなじだ。

「……遠慮しときます。それより」
「もしかして桜ってば、体の中の蟲たちが取り除かれたんで、ウチの粒ぞろいの可愛い蟲ちゃんたちを拝みに来たのかにゃー?
 まさか一番のお目当てはこのワシの蟲!?」

「――――――――――」
 いや、なんだ。
 この一見腐りきった性根の底にしっかりしたポリシーがあって、それをハサンさんが汲み取って……ほんとかしらそれ?

「うんうん、桜がまだこんなだった頃に初めて拝んだワシの蟲が色んな意味で原風景じゃから、活きのいい蟲にはドキドキするのか? するのか? するんじゃな? キャー! 逃げてー! 蟲倉の蟲たちはみんな逃げてぇー!」

「魔術師殿っ!」
 一喝が間桐邸に響き渡る。

「ア……アサシン……」
「魔術師殿、相手は年頃の女性です。
 初めてがどうこうというセクハラ発言は慎んで頂きたいのですが」
「う……うううう………」

「それに魔術師殿は魔術師であることもご自覚ください。
 元弟子とはいえ今はライダー殿に魔術を学んでいる桜殿にあまりマキリの術に関する話をしますと、神秘の隠匿になりません」
「う……」

 ―――すごい。
 ハサンさんがびしびしお爺さまをやりこめている。

「主がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
 わたしは絡まれたところを助けられた訳だが、こう怒るハサンさんに軽く
 ―――ありがとう、とも言えない。

「い、いつものコトですから、気にしてませんよ?」
「いえ、サーヴァントとして桜殿には深くお詫びします。本当に失礼いたしました」
「アサシン、ご苦労さま。爺さんのところに行ってやりな」
 入れ替わりにやってくる兄さん。
 横でソファーに座るが、どっこらしょとでも言い出しそうな、どこか投げやりな雰囲気が漂う。

「アサシンもな、よく爺さん相手にびしびし言えるよ。
 それだけでも立派なサーヴァントだなって」
「兄さんは妙にお爺さまに一歩を譲りますよね」

「まあ、やっぱりマキリの生きた伝説だし。
 こっちのほうでは絶対に敵わないと畏怖する腕前だからね」
 地下にある蟲倉を指差す兄さん。
 実力主義の魔術世界に社会に中途半端に関わった影響か。

「アサシンはワシの肝煎りのサーヴァントじゃったのにー」
「わっ、爺さんっ!?」
「それが聖杯戦争が終わったらら反旗を翻してたちまち下克上!
 マスターの言うことを聞かない悲しいサーヴァントに……」

「半年前桜が開放されて潰えた、ワシの第五次聖杯戦争。
 何故か再開されたんでアサシンを使って第六次計画の布石は完璧じゃと思ったのに……今じゃワシの最大の天敵じゃよー」
「そ、そんな計画で聖杯戦争に臨むつもりだったんですか?」

「なので孫の慎二がワシしの庇護者になって、アサシンから守って欲しいなーって」
「そ、そんなこと言われても……僕も卒業したら冬木を出て行こうと思ってるし、もう口出しも控えようかと」

「そうなのじゃ、慎二が家を出て行ったら、ワシはアサシンに毎日いじめられるんじゃー!」
「そのときはホラ、ライダーが残っていますから、盾にでも替え玉にでも贄にでもお好きなように」

「駄目じゃ、ライダーはとっくに桜のサーヴァントに戻ってるじゃろう!
 慎二は祖父の危機を見過ごす薄情な孫じゃないじゃろ? じゃろ?」
「はあ……それは、まあ」

293 名前: 弓道部の或る日常→間桐邸の或る日常 投稿日: 2006/02/01(水) 04:31:53
「ま、負けないで、兄さん!」
「さ、桜……」
「この先の冬木市の平穏は兄さんが握っているんです!」
「そうだ、おまえがこの家にちゃんと帰ってきてくれたら……!」
「そ、そんな理由でここしばらく妙に優しかったんですか?」
「い、いやそれだけじゃあないけど……な?」

「魔術師殿!」
「ぁう!」
「聖杯戦争が再開されたこの大事な時期にマスターがそんなことでは―――慎二殿も魔術師殿と何をされてるんですか!?」

「僕は何もしていない!
 それにアサシン、サーヴァントならちゃんとマスターの手綱を握っておけっていつも言ってるだろ」
「その、それは確かに……」
「あの。それは本当にサーヴァントの職務なんですか?」

「いつになったらおまえの仮面は外れるんだ、いいかげん名無し気分から抜けろ!」
「はい、申し訳ありませんっ!」
「いいぞー、いけいけ慎二ー」

「ふざけないでください、それもこれも元はといえば魔術師殿がだらしないせいです!」
「ぎゃぼー! アサシンこわーい!」
「その調子だ、いつまでも僕に頼るんじゃないよ」

「助けてくれ慎二! 祖父の危機を見過ごすのが慎二の敬老精神なのか!? この薄情者ー!」
「で、でも魔術の基本は個人主義ですから!」
「魔術師殿っ、慎二殿に頼るなんて卑怯です!」

「こ……これは」

「私の手を煩わせないでください、魔術師殿っ!」

「ワシをひとりにしないでくれ、慎二っ!」

「僕を自由にさせてくれ、アサシンっ!」

 知らないうちに、じゃんけんみたいな力関係が築かれていた。

「……いろいろとお忙しいようなので、わたしやっぱり先輩の家に帰ります」
「は、はい、桜殿。では今度こそまた後ほど……」
「桜ぁ、やっぱりこの家に帰ってきてくれぇー!」
「桜、素直だったアサシンを返しくれぇぇー!」
「まーじゅーつーしーどのぉぉぉ!」
「ひゃう!」

 どうなっているんだろう、この家は。

294 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 04:50:38
なにこの萌え間桐家wwwwww
ゾーケン駄目可愛いわハサシン妙に男前だわwww

295 名前: 歌月十夜 vs軋馬紅摩 投稿日: 2006/02/01(水) 06:16:53
 ……奴が現れた。
「…………は…………あ」
 大きく息をした。
 肺にまだ空気が残っていたのだろう。
 ……またこんな、最後になって気がついた。
 アイツと対峙してから、自分は一度も呼吸というものをしていなかった。
 ――――なんていう無様さだ。
 それでは戦う事もできなければ、ヤツを殺す事さえできないだろうに。


「はっはっは!うひょークカカコココキイキイ!
 まだ生きているのか。まだ生きているのか七夜の末裔よ!」
「――――――――――――――」
 ……ああ、ついに言葉まで話し始めた。
 自己嫌悪で押しつぶされそう。ヤツも七夜志貴という殺人鬼と同じく、俺がカタチを与え、そして成長してしまった存在だ。
 ヤツはついに言葉まで手に入れた。
 それで、もう勝敗は決したようなものだった。

「決してないのねー!
 いえ、状況的にはこちらの勝利は目前なのですが、だからこそ煩わせてくれるのだ。七夜志貴よ!
 ククク、その生き汚さは父親譲りか。んー見てほしいねこの滾るマイパワー」
「――――――なんて、ものを」
 メガネを外した。
 呼吸を忘れていたように、こんな事さえ忘れるほどアレを恐れていたと言う事か。

「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいね。
 そう、これで終わりだ。潔く黄泉路へ行け!
 えーと、言うなれば今までの戦闘が2時間サスペンスの推理シーンだとしたら、今からの戦闘はエンディング&スタッフロール!
 いや、Fateのセイバールートだとしたら、タイガー道場フルコンプ後のヴァルハラ温泉なのさ!」

 ヤツは目前までやってきて、ゆっくりと腕を伸ばした。
 がしり、と。
 遠野志貴の頭部を鷲掴みにする圧壊の腕。

「―――頼むから、止めてくれ」
 後悔が強すぎて、つい声をあげてしまった。
「ク―――命乞いか。あまり失望させるな。
 今は俺のほうが強い。具現した死のイメージを思い知るがいい……!
 行くぞ七夜!
 このまま頭を握りつぶしてオレの殺戮(ターン)エンドだぜ……っっっ!」


 ……ああ、俺はなんてものを作り上げてしまったんだろう。
 こんな。

「―――もう喋るな。アイツは、そんな余分なコトはしないから」

 こんな無様な、偽物を。

296 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 06:46:01
>無様な偽物

え? こっちが真でしょ?

297 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 06:55:37
なんかこのスレ、慎二が大人気だな

298 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 06:56:30
>……ああ、俺はなんてものを作り上げてしまったんだろう。
まったくだ。

299 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 07:36:41
慎二ポーズの紅摩噴いた

>>297
ある意味、ホロウで一番株を上げた存在だからな!
港の彼は連日ストップ高。

300 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 09:07:32
のだめ桜萌え

301 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 10:01:24
>>292-293
虎を喰おうとして逆にあたったと見た、この爺ちゃん

302 名前: 後日談 投稿日: 2006/02/01(水) 11:29:25
 ……教会の新しい司祭はとんでもない怪人らしい。
 で、その怪人はバゼット正面からやりあっている。

「そもそも、貴女はマスターに選ばれていないでしょう。
 聖杯戦争も終わったのです。監査役に何の権限もありません」

「そんな、落とし物ではあるまいに、元の持ち主だから返せというのは通りません」
「貴女が惰眠を貪ってる間、養っていたのは教会です。
 マスター権はこちらに移譲されたと見るのが妥当でしょう」

「移譲だなどと―――無断で持っていったのでしょう。騙し討ちで奪っておいてよくも、」

「おや? 騙し討ち、とは何のコトでしょう? 私は貴女が令呪を失った経緯を知らないのです。
 できれば詳しく教えていただけますか?」

「っ……!」

「大人になるのねバゼット。条件さえ飲めば返上する、と言っているのです」

「ぅ――――うう、はうはう、はう〜〜……」
 バゼットはよろよろと後退して、へなへなと膝をついた。

「説明は終わりました。理解してもらえましたか」
「――――う。う、ぐすっ」
 がぐり、と肩をおとしてうなだれるバゼット。
 それで大人しくなってくれたな、と思った瞬間。

「うわぁぁぁぁぁあああん!
 ヘンなのにランサーとられちゃいましたーーーー!」

 回りにいる俺たちが目眩を起こすぐらいの大声で、わんわんと泣き出してしまった。

303 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 12:41:36
>>292-293
GJ!
いろいろ応用利きそうな場面だが、よりによって間桐家かよw
>「そのときはホラ、ライダーが残っていますから、盾にでも替え玉にでも贄にでもお好きなように」
出番無いがライダーが一番不幸w これ言っているの桜だよなw

304 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 12:41:46
逃げてだめっとー! そのシスターは、泣いた位じゃひきさがらないって言うか
むしろさらに舌なめずりして瑕を開いてくるぞー!!

305 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 13:09:17
むしろその様子を 詳 し く

306 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 13:37:51
股を開いて に見えた

307 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 14:57:50
舌なめずりしながら股を開いてくるシスターってある意味宝具だなww
つかどんな状況なのよwwww

308 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 15:11:11
「貴方には説明しません。少なくとも、ティーセットではない事は確認していただけたかと」

球体を仕舞って背負いなおすバゼット。
信用できない相手に切り札は教えない、という事だろう。
それはともかく。

「力持ちだな。なに、胸が重いぶん肩に負担かかって筋肉あるとか? 使いもしねえクセに無駄にでかいもんな、アンタの」

研ぎ澄まされた観察眼をもって、客観的真実を述べる。
バゼットはピタリと止まった後、錆びた人形のようにゆっくりと振り向いて、

       ア  ン  サ  ラ  ー
「―――“後より出でて先に断つもの”―――」

ちょ、何つぶやいてんのこの人間凶器……!?

309 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 15:13:16
『瑕を開く』のは言峰の(悪)趣味だな。
カレンの(悪)趣味は『人が被っている幸福という薄い皮を剥がしてガッカリさせる事』(第二回人気投票紹介文参照のコト)

310 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 15:19:01
おんなじことだろう。ナイフでザクザクやるか指のささくれをゆっくりペリペリするかの違いだ。

311 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 15:31:40
>>308
実演で説明か。
つーか、切り札は教えないんじゃないのかよwww

312 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 17:10:13
>307
マウントポジションでボコる1秒前のシスターだろ

313 名前: ランサーズヘブンⅡ 弓⇒狂 投稿日: 2006/02/01(水) 18:01:14

空は快晴。
強い日差しは季節の感覚を麻痺させる。
海風は頬に心地よく、ウミネコの鳴き声が寂しさを緩和させる。
文句の付け所のない絶好のロケーション。
午後の散歩を好むお爺ちゃんやマラソンに励むスポーツメンの清涼剤
になりそうな冬木の港は、しかし。

この上なく対照的な二人によって、ギチギチの殺戮空間と
化しているのであった……!

「って、二人増えてるぅ……!?」

ランサーの背後。
そびえる巨体が鈍く光る、あの鉛色の巨人と少女は間違いなく
新たな暇人……!

「14、15、16と、イナダは十六匹ね。
いい漁港ね、あっけないぐらい魚が獲れるわ。
ところで後ろの負け犬さん、今日それで何匹目?」
「うるせえな、なんでテメェに答えなきゃいけないんだっての。
うるせえから余所でやれ余所で」
「ふーん、まだサバが八匹だけか。
そんな効率の悪い漁法じゃそんなところでしょうね、
と、よく見たら十七匹ね」
「だからうるせえってこのお子様魔術師! 魚が逃げるだろう魚が」
「ふ。腕のなさを他人の所為にするなんて落ちたわねランサー。
近場の魚が逃げるんだったら素潜りで仕留めればいいじゃない。
原始人のアナタにはぴったりの漁法だと思うんだけど、っと、
えーとサバは2の、4の、6の、と」

ヒャッホー、と歓声を上げる銀髪の少女。
……おかしいなあ。
無邪気な子供が遊ぶ姿って、こんなにも苦々しい物だったっけ……。

「…………つーか、なんだありゃ」
……ホント、我が家族ながら目を背けたい。
主従共にギョシンさんばりにキメキメのズボンとジャケット。
ご機嫌のイリヤは網にかかった獲物をほいほいとバケツに放り込んでいく。
投網は古代ギリシアの英雄、十二個の命を持つヘラクレスの腕力による、
ブレなしガタなしおまけに自動操作の高速巻き上げ式と来たか……!

「……いいのか、アレ。どう見ても新手の環境破壊だよなあ……」
大英雄の投網は爆薬を使った漁法と同等か、あるいは
凌駕するほどの威力なのだ。
海に放り込みさえすればほとんど魚が掛かってしまうという、
もう魚を獲りに来てるのか漁業組合にケンカ売りに来たのか
判断のつかない暴れぶり。

あの投網の大きさ、一括りで二十万とんで三千平米という
キチ○イ沙汰だ。

ちなみに、言うまでもなくぜーんぶ苦労しているのは
バーサーカーである。

「ふふふふ。この分なら夜明けを待たずして勝負が付くわね。
様子見のつもりだったんだけど、いいわ! ここで決着をつけてあげる!
さあバーサーカー! この港の魚、全部獲り尽しちゃえ!」
「はいはい、できるもんならやってみろ。そん時ゃあ二度と
テメェを森の外に出させねぇよ」
「よくもほざいたわねランサー。
ふふ、聖杯戦争で付かなかった決着がこんな形で付くとはね……!
私のサーヴァントが最強だっていうコト、ここで証明してあげるわ!」

ノリノリのイリヤに、いいからどっか行ってくんねえかなあ、
というランサー。そして、すまん、と言いたげなバーサーカー。

三人の邪魔をしないよう、こっそり港を後にする。
どうかうちのイリヤが港の魚が全滅させるようなコトをしませんように。

314 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 18:25:43
>あの投網の大きさ、一括りで二十万とんで三千平米
きゃー、正方形として一辺四百五十メートル。
やめてー、バーサーカーやめてー。

315 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 18:30:20
バーサーカーならやりかねん印象があるな。

316 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 18:40:35
そんな馬鹿でかい網を使ってイナダ16匹って実は少ないんじゃないだろうか。

317 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 18:50:21
いや少なすぎるだろ

318 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 19:30:34
弓×2の決闘の果てにようやくヘブンが戻ってきたときの襲撃だったんだろう

319 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 19:32:18
>どうかうちのイリヤが港の魚が全滅させるようなコトをしませんように。

つまり、もう全滅してる。

320 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 19:46:31
クジラ並の大きさのイナダが16匹だけとか

321 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 19:48:35
大半は、網に捕らえられる以前に
網で叩き殺されて海底に沈んでいるのでは

322 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 20:03:00
イナダは、16匹なんだろう。
その他、海老だの蛸だの鯛だの平目だの
アーチャーだの金ぴかだの慎二だのも引っ掛かっていると見た。

323 名前: 凛→アンリ 士郎→バゼット 投稿日: 2006/02/01(水) 21:11:45
「とにかく、これ以上負けたくないっていうんならアンタも本気になれ。
 アンタの戦闘能力はマスター随一だ。
 下手すりゃ素でサーヴァントを倒しかねないってのに、なんでそう自信がねえんだよ」

「……それは……確かに、サーヴァントであろうと後れをとる気はありませんが、私に出来るコトは戦闘だけです。
 他の技術はその、マスター中最低だと思います」

「――――はあ?」
ピタリ、と動きを止めるアヴェンジャー。
・・・・・・しまった。なんか、言ってはいけない事を口にしたようだ。

「・・・・・・ちょっと待って。じゃあなに、アンタは自分の工房の管理も出来ない半人前ってこと?」
「・・・・・・? いや、工房なんて持ってませんが私」
・・・・・・あー、まあフラガラックの製造場所として地下室があるが、
アレを工房なんて言ったらアヴェンジャー本気で呆れそうだし。

「・・・・・・まさかとは思うけど。確認しとく。もしかしてアンタ、
 鍵の解析とか、正しい侵入方法も知らない?」
ええ、と素直に頷いた。

「なに。じゃあアンタ、素人?」
「そんな事ありません。一応硬化の魔術ぐらいは使えます」

「硬化って・・・・・・また、なんともバイオレンスなものを扱うのな。
 で、それ以外はからっきしってワケ?」

「・・・・・・まあ、端的に言えば、たぶん」
さすがに視線が痛くて、なんとも煮え切らない返答をしてしまった

324 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:13:15
ダメットここに極まれりw

325 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:18:05
ちょwww          そうなの?www

326 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:22:57
そんなことは無いと思う…。
殴り壊した扉直ってたし…アンリのおかげかも知れんが。

いやたぶん色々魔術は使えると思うヨ、単に攻撃系しか使えないだけで。
黒魔術師もびっくり、覚えた魔術はメテオとフレアとアルテマだけみたいな。

327 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:24:41
でも口座を持てない勢いなんですよ。

328 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:27:35
たしか作中で使っていたのは硬化と速駆けのルーンとフラガラックくらいだっけ

329 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:37:34
ルーン魔術は熟練してるけど、凛たちが使うような普通の系統の魔術は全然知らないんじゃないの?
ずっと子供の頃から隠れ里みたいなところにいて、協会へ出てきてもすぐ最前線へ厄介払いされたみたいだしとても師に付いて習ったとは思えないけどなぁ。

330 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:40:27
遠見のルーンと、手袋に刻まれてる加護のルーンもあったな。
あれ、半ば「強化」の一言で済むものしか使ってない?

331 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:41:27
実際そうなんじゃない?>探求よりも実用
そのせいで協会にバカにされてるみたいだし

332 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 21:45:44
けど、ルーンを一通り覚えたらたいていの事は出来そうだけど…。
これ以上は考察スレむきだな、さもなくば宝具「スレチガイダテメーラ」が発動する。

333 名前: 17分割 投稿日: 17分割
17分割

334 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:09:07
―――さあ、終わりの続きを見に行こう。

気のせいだろうし其処がそんなにいい所でないのは分かってはいるが、
今は、眩しい方へ歩いて行く――――


DEAD END

335 名前: 後日談 投稿日: 2006/02/01(水) 22:10:27
>>332のご要望に応じよう
>>326-333
                         \○/
             スレ違いだテメーラ     \|ノ   _○/
               ○ノ                 /
               ノ\_・’   ヽ○.      /|
                 └    _ノ ヽ    \○
                       〉   __ノ
                            ̄

336 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:11:51
>>335
実は出てくるのを待っていた。これをみるとetaFスレだよなぁと思う。

337 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:15:50
懐かしいな

338 名前: アンサー>子猫と正義 アチャ→そのまま 士郎→? 投稿日: 2006/02/01(水) 22:28:46
「この身は誰かの為にならなければならないと、強迫観念につき動かされてきた。
 それが苦痛だと思う事も、破綻していると気づく間もなく、ただ走り続けた!」
 ―――繰り返される否定。
 それが届くたび、心は戦闘を放棄しかける。
 体はとっくに、重撃に耐えられずリタイヤしたがっている。
 だというのに。
 そのリタイヤしたがっている体は、なお必死になって、ヤツを否定し続ける。
「だが所詮は偽物だ。そんな偽善では何も救えない。
 否、もとより、何を救うべきかも定まらない―――!」
「が――――!」
 弾き飛ばされる。
 バーサーカーもかくやという一喝は、たやすく小さな体を弾き飛ばす。
「――――――――」
 なのに、踏みとどまった。
 倒れれば。
 倒れれば起きあがれないと、体が頑なに転倒を拒否していた。

「く、そんなつぶらな瞳で見るのはよすんだ子猫……!」

339 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:29:44
過去スレで、ある宝具を見た。
おそらくは10レスにも満たなかった流れ。
されど。
その一撃ならば、たとえスレが落ちようとも鮮明に思い出せるだろう。

スレチガイダと叫ぶキミ。
あの一撃は、目を閉じれば今でも遠く胸に残る。

340 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:30:46
答えは得たな………

―――わかりきった結末を語るまでもない。
>>338のアーチャーは、雨に濡れた子猫を見捨てることが出来ず正義の味方を続け、
衛宮士郎も同じくして英霊となるだろう。

341 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:38:25
そりゃあの瞳のためなら守護者にだってなるよな

342 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:39:14
http://kankoku_manse.tripod.com/Korea_cooking/Koyaniku/index/tyouri01.html
http://www.thenausea.com/elements/special%20topics/crimesagainstanimals/korea/cat%20korea.wmv

コックは料理してしまうわけだが

343 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 22:42:04
>>338
GJ! 個人的にかなりツボったww

344 名前: 黄金の別離 投稿日: 2006/02/01(水) 23:26:02
 ―――溢れる海草。


 空に穿たれた『孔』は海草の線に両断され、跡形もなく消滅した。

 あたりには何もない。
 何もかも吹き飛んだ山頂は、まったいらな荒野に変わっていた。

 遠くには夜明け。
 地平線には、うっすらと黄金が射している。

「――――っ」


 左手が痛む。
 最後の令呪が消えていく。


 ―――それで。
 本当に、幕は下りたのだと受け入れた。

「これで、終わったんだな」
「……ああ。これで終わりだ。もう、何も残ってない」

「そうだな。じゃあ僕たちの契約もここまでだね。お前のワカメとなり、敵を討ち、を守った。
 ……この約束を、果たせて良かったよ。」

「……そうだな。慎二OH!はよくやってくれた」


 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 慎二OH!は遠く、俺は彼に駆け寄ることもしない。

 朝日が昇る。
 止んでいた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、


「最後に、一つだけ伝えないとね」


 強く、意思の籠もった声で彼は言った。

「……ああ、どんな?」


 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 慎二OH!の体が揺れる。

 振り向いた姿。
 彼は皮肉げな瞳で、後悔のない声で、



「衛宮――――僕は、僕を愛している」


 そんな自己愛を、口にした。

345 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 23:36:30
てっきり801になるのかと思ったが……なるほど納得。それでこそOH!だなw

346 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/01(水) 23:38:54
ワカメを使いきってハゲになったナルシスト吹いたwww

347 名前: Fateプロローグ(ランサー⇒ランサーHG) 投稿日: 2006/02/02(木) 00:02:01
下品な上、既存かもしれませんが。


 月明かりも閉ざされた夜。
 ひどく冷たい廊下には、床に倒れた生徒と、立ち尽くしているアーチャーの姿があった。

「………………」

 彼は、ただ呆然と生徒を眺めている。
 ……鼻を突く匂い。
 それが純潔の名残なのだと、床に流れる血液を見て、思い知らされた。
「……追って、アーチャー。ランサーはマスターのところに戻るはず。せめて相手の顔ぐらい把握しないと、割が合わない」
「――――」
 ランサーを追っていくアーチャー。
 残されたのはわたしと、床に倒れ伏した生徒だけだ。

「…………」
 直視できない。
 けれど、直視しなければ。
 これはわたしの責任。
 これはわたしの責任。
 これはわたしの責任。

 ―――幼い頃。
 遠坂の跡継ぎになると決めた時から、こんなコトは覚悟していた。
 魔術師には善も悪もない。
 ただその道にあるのは、自分と他者のこぼず血だけなのだとそんなコトはとっくの昔に覚悟していたんだから――――!

「……ランサーの槍で一突きか。ノンケだったら戻れない」

348 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 00:12:24
ちょwww士郎wwむごwwwwwww
これじゃ将来英霊エミヤではなくアベンj(ry

349 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 00:12:51
キリツグに掘られたって設定な同人誌なら見た事あるがこれはwwwwwwwwww

350 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 00:36:56
アーチャーも愕然としただろうな、これじゃあ……

351 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 00:38:39
アーチャー「認めたくないものだな、若さゆえの過ちと言うものは」

352 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 01:49:29
>349
詳しく話を聞こうか。ってんなもんあるのか。

353 名前: 士郎→実典 慎二そのまま 投稿日: 2006/02/02(木) 01:59:10
 ―――時はきた。自らの恋を成就させる為に青春の戦いを始めよう。
 貴方は選ばれた弓道部員、美綴実典。
 憧れの間桐主将に告白する為弓道場にやってきたのだが、
 自身の上がり性と恥ずかしさのあまり有耶無耶になってしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 悲観にくれる貴女の前に、依然部活をやめた筈の彼女の親類が現れた……!
 告白するのなら間桐先輩へ。引き返すなら氷室先輩へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも古い言語の為、何を言っているかはまったく分からなかったが、

「な、なんてコトだ……! この対決が間桐部長への愛の深さの比べる対決で、
 なんだか今日はその当日で、その勝者は自分の思いをぶつけられるだと……!!!?」

 と、概ねの内容は把握した。

「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだ選ばれた僕の後輩よ! あと待っていた、オマエを待っていたぞ我が運命のデュエリストよ!」

「アンタ、何者―――!?」

 あまりの暴風に目を開けていられない。
 女子更衣室のドアからひょっこり現れた謎の人物は、脳内マキシマムな笑い声を上げまくる。

「ハハハハハハ!
 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そうさ分からないよね元副部長なんて影薄い僕!
 すごいぞ気持ちワルイぞー!
 見て見て後輩、桜からの憎悪とか妹萌えの気持ちとか、そういうのが溢れてもうタイヘンさ!」

 外から吹きすさぶ風、荒れ狂う稲光、激震する厳格な弓道場。
 そしてガオーガオー鳴く我が部の顧問。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたお兄ちゃんパワー(偽)に道場も激震してるというのかッッッッ!!!!?

「ま、まさかアンタは―――間桐、元副部長……!!!?
 バカな、アンタは確かに引退した筈だ!」
「引退してないのねー!
 いえ、めんどくさくてほとんど引退していましたが、だからこそ地獄から再入部したのだよ恋する後輩よ!
 ククク、桜に恋する貴様への嫉妬が僕を再入部させたのだ。
 んー、見てほしいのねこの滾るアニパワー」

 姉貴を連想させる威圧感の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?

「って、ぜんぜん変わってないじゃないスかー!」

「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいね。
 そう、今までの僕は僕じゃない!
 えーと、言うならばこれまでの僕がただの雑魚敵だとしたら、
 今からの僕は主人公を苦しめる四天王!
 いや、アリアハンのスライムだとしたら、必死で地上を抑えようとするバラモスなのさ!」

「…………………」
 つまり結局は中ボスでラスボスは衛宮先輩だというコトだろうか。
 あと後輩の反応ぐらいちゃんと聞いといてほしい。

「まあいいです。
 ともかく俺たちは恋の女神に選ばれた戦士なんスね!?
 なんか宿命のライバルなんスね!?
 俺は間桐部長への想いを認めてもらうために、アンタは兄としての嫌がらせの為に戦うんですね!?」
「ナイスリアクション!話が分かるじゃんか後輩!
 さてはこういうノリ好きだろオマエ!」

「ええ!結構ヤケっすけど好きな人賭けて戦ったり男の癖にこういう乙女の妄想みたいな決闘とか大好きです!
 そんなワケで、行きます間桐元副部長……!
 アンタにだけは絶対に負けないッッッッ!!」
「ク―――吠えるじゃないか恋する少年。
 だが今日は僕の方が強い、覚醒したダメ兄の力を思い知るがいい……!
 行くぞ後輩!
 ここで女子更衣室から取ってきた桜の下着を伏せてオレの人生エンドだぜ…ッッッ!」

354 名前: 士郎→実典 慎二そのまま 投稿日: 2006/02/02(木) 01:59:58
「………………………」
「………………………」
 嵐はやんだ。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない熱気も消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「じゃ、桜の日記読みに行きますね」
 はい、と頷きだけで答える。
 男には言葉をかけてはいけない時があるのだ。

「じゃあこれあげます。気が向いたら匂いでも嗅いで下さいね」」
 いそいそと道場から出ていく先輩。
 あ、何か黒いのに飲まれた。

「………………………俺も衛宮先輩に聞き込みにでも行くかな」
 ここ三十分ばかりの記憶はまっさらに封印して道場を後にする。

 こうして慎二ANIによる淡い少年の片思いのピンチは去ったのだが、彼の妹への愛と、
 それを防いだ後輩の物語は誰に語られるコトもなく忘れられるのであった、まる

355 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 02:23:24
全米が泣いた

356 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 02:56:18
>「じゃあこれあげます。気が向いたら匂いでも嗅いで下さいね」

マテ、何を渡したんだ何を

357 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 03:11:53
女子更衣室から盗ってきたんなら今桜はノーパンなワケなんですが

358 名前: 桜ルート : 遠坂姉妹 → 衛宮士郎 (1/3) 投稿日: 2006/02/02(木) 03:47:50
 時刻は午後五時半。
 夕食時を目前にして、台所は騒がしく、かつ、近寄りがたい緊張感に包まれていた。
「おい、アーチャー。俺の卵焼きに文句でもあるのか?」
 台所の奥。
 卵焼きを一切れ奪われた士郎が、どこかぎこちなく話しかける。
 それをアーチャーは、
「……調理はおまえの領分だろう? 唯一の長所だ、あまり私が出張っては立場がなかろうよ」
 真っ向から一刀両断して、自分勝手に食材を切り出した。


「―――険悪ですね。凛、あの二人に調理を任せるとは正気ですか?」
 座布団にキチンと正座して、セイバーは忌憚ない意見を述べる。
 セイバーから見ても、士郎とアーチャーはピリピリしているように見えてしまうらしい。
「あの二人、放っておいたらますます仲が悪くなります。
 そんなことはわかってるでしょうに、どうしてこんなことをさせたのですか」
「どうしてって、ごく自然な流れだったわよ。
 昼飯はどうしようって話になって、士郎は自分が作る、アーチャーは小僧にはまだ早いって嘲笑ったのよ。
 随分と喧嘩してたようだけど二人とも頑固だから、じゃあ間をとって一緒に作ればいいでしょうって」
「凛がそう言ったのですか? ……それならば逆らえませんね、二人とも」
 納得したのか、セイバーは行儀良くお茶を飲んだ。
「しかし凛。間をとるのでしたら別の誰かに任せればよかったのでは?
 なぜアーチャーとシロウを一緒にしたのですか?
 その……、アーチャーはシロウを……殺したがっているではないですか」
「それは聖杯戦争の時の話よ。
 アーチャーは士郎と殺すつもりがないから、今の私達に協力してくれるわけでしょ。
 それに二人はもう敵同士じゃないわ。
 互いの理念を認め合っているし、うまくいくと思ったから昼飯を任せたのよ」
「は?―――認め合っている、とは。あの二人が、ですか?」
「? 驚くコトじゃないでしょう。
 わたしとセイバーだって最初は敵同士だったけど、今はもうお互いに仲間と認めてるわ。
 なら、アーチャーと士郎だって似たようなもんよ」
「え……それは、リンはわたしのマスターになったわけですし……」
「マスターも何も、見ればわかるわ。
 ほら、アーチャーのヤツいつも以上にぶっきらぼうでしょ。
 そのくせ士郎が何か失敗するとすぐ注意をする。あれって、つまり」
「…………始終気にかけていますね。
 しかしそれを知られたくないから冷たい顔して、シロウを無視してるかのように見せている……と?」
「そういうことね。で、士郎も士郎で薄々それが分かってるから、いつもはしない筈の失敗をしてる。
 士郎もアーチャーが気になって仕方がないのよ」
「……言われてみればそうですね。
 ではつまり、二人とも仲良くなりたくてウズウズしてるのに、気恥ずかしさが邪魔をして、ついあんな態度を取ってしまう、と?」

 ええ、と頷く。
 士郎の気持ちも、アーチャーの気持ちもよく分かる。
 士郎は実はアーチャーを認めているフシがあるし、自分のことを認めて欲しいとも思っている筈だ。
 そうでもなければ、アーチャーのことを正義の味方などと評する筈がない。
 アーチャーだって、それはきっと同じだ。
「……変わってしまったようでいても、芯は不器用のままなのですね、アーチャーは」
 どこか嬉しそうに呟いて、セイバーは台所に視線を移した。

「――――――――」
 釣られて台所の様子を窺う。
 調理は中ごろに差し掛かっているのか。
 アーチャーと士郎は狭い厨房で、肩を並べて思い思いの料理を作っている。
「――――――――」
「――――――――」
 二人は口を閉ざしたまま、かたや干将、かたや莫耶を握っている。
 ……そうして、見ているこっちの方が息苦しくなる沈黙の後。
 やはり同一人物だからか、同じタイミングで会話を再開した。
「なんだよ? 文句があるなら聞いてやるぞ。言いたいことがあるのはこっちだって同じなんだ」
「別にこれといって何も。付け加えるモノなど何もないが。
 ……しいて言えば、理想を抱いて溺死しろと思っただけだ」
「そうか。オレも、間違いなんかじゃないって言えたら、嬉しいかな」
「――――――む」


「……会話が終わってしまいましたね。これでは逆に斬り合いが始まりかねないと思いますが」
「………………」
 否定できないところが恐ろしい。
 アーチャーのヤツ、生前は人に利用されまくって磨耗したお人好しのクセに、なんだって士郎にかぎってあんなツンデレなのか。
 それに士郎も士郎だ。
 わたしといる時はアーチャーのことを、鍛鉄の英雄・エミヤと呼んで尊敬してるクセに、本人に対してだけ喧嘩腰なのはどうかと思う。

359 名前: 桜ルート : 遠坂姉妹 → 衛宮士郎 (2/3) 投稿日: 2006/02/02(木) 03:48:35

「――――ねえ、士郎」
「え? ああ、なんだよ遠坂?」
「話があるわ。こっちに来なさい」

「遠坂、どうした?」
「いや、ちょっとした内緒話がしたかっただけよ」
「内緒話か……? ああ、アイツには聞かせられないコトか」
士郎は台所の方を見て、そう言い捨てた。
「それ。わたしが言いたいのはそれよ」
「?」
「だからアーチャーへの接し方。士郎、アーチャーの前だと、絶対にアーチャーが自分の理想だとは認めないでしょ。
 ホントは認めてるクセに無理して嫌おうとしてるってバレバレよ?」
「え―――あ、バレバレってアーチャーにか!?」
 ……と。
 かまをかけてみたのだが、こっちが思っている以上に士郎は内気で、恥ずかしがり屋で、自分の理想に憧れる純情少年だったようだ。
「ううん、アーチャーは気付いてないわ。どういうワケか、あいつは士郎に対してはすごく鈍感なのよ。
 ……下手すると、自分はすごく嫌われてると、士郎の態度をそのままに受け取っている節もあるわね」
「そ、そこまで嫌ってるわけないだろっ……!
 アーチャーがオレを嫌うのは当然だけど、これでもオレはアーチャーに料理を教えてもらえて、その、凄く嬉しいんだ。
 それに、こうして二人で昼ごはんを作るなんて、夢にも思っていなかったし……」
「うん。なら素直にそう言えばいいんじゃない?
 鈍感なアーチャーでも、士郎が面と向かって言えば気が付くわ。そうすれば、士郎だって。」

 士郎だって、普段からアーチャーと仲良くするためにはどう接すればいいのか。
 わたしに言われなくても、自分一人で気付ける筈だ。

「……遠坂?」
「―――ん。とりあえず、アーチャーにエミヤって言ってみなさいよ。
 それだけであいつ、きっと面白いぐらい豹変するわよ」
「……本当にそうかな。アーチャー、オレに真名を呼ばれても迷惑なだけだと思う。
 オレはまだ半人前の魔術師で、あいつみたいに理想を貫けたワケじゃない。
 オレが未だにこんなに未熟で、きっとアーチャーはガッカリしているよ」
「ばかね。アーチャーはあんたのことをもう認めてて、そのアーチャーはあんたの理想なんでしょう。
 なら、それ以上に確かな関係なんてないわよ。
 私が保証する。士郎とアーチャーは、間違いなく相思相愛よ。正直、ちょっと妬けるぐらい」
「え……そ、そうなのか?」
「そうよ。だからまずはエミヤって呼ぶこと。
 子供の頃の士郎は正義の味方に憧れていて、アーチャーはその理想をずっと守り続けてきたんだと思う。
 だから怖がるコトなんてないわ。あいつの為にも、士郎の口からあいつの真名を呼んでやってほしいの」
「――――――――アーチャーの、為にも」
 ……士郎の中でどんな葛藤があったのかは判らない。
 ただ、祈るように手を合わせて思案した後。
「ああ。頑張ってみる」
 感謝するように、柔らかく微笑んだ。
 ――――居間に戻る。
 士郎は私に目配せをして、むん、と力をいれて台所に向かっていった。

360 名前: 桜ルート : 遠坂姉妹 → 衛宮士郎 (3/3) 投稿日: 2006/02/02(木) 03:49:29

「お帰りなさい、凛。シロウは緊張しているようですが、何があったのですか?」
「ん? や、あとは士郎の勇気次第よ。ま、上手くいくに決まってるけど」
「?」
 よいしょ、と座布団に腰を下ろす。
「―――エミヤ。このから揚げ、あとはオレがやってもいいか?」
「ふむ、あとは揚げるだけだしオマエに任せても良い……って、いま……?」
「ああ。じゃあから揚げはオレがやっておくから、エミヤ、はレタスをちぎっておいてくれ。盛り付けは任せるからさ」
「う――――む、それは、いい、が」
 ……場が硬直する。
 二人はそれきり押し黙ってしまい、張り詰めた緊張は先ほどの比ではない。
「――――――――」
「――――――――」
 二人は呼吸を止めて互いを見つめている。
「……あの。やっぱりおかしいかな、エミヤ」
「は――――お、おかしいコトはないが。オマエにそう呼ばれるとは思わなかったから驚いただけだ」
「……それじゃあ、その、なんだ」
「も、文句はない。呼び方なんてオマエの自由だし、オレも、…士郎、と呼んでやれば済むことだ。
 ま、まあ、エミヤシロウが二人もいると混乱するからな。そっちの方が判りやすくていいだろうよ」
 ふん、と仕方なげに言って、アーチャーは顔を背ける。
 その顔が赤く染まっていて、にやつきを隠しきれていないのは、士郎にだって判った筈だ。

 その後の二人の共同作業は、輪をかけてギクシャクした。
 お互い失敗ばかりで盛り付けは間違える、から揚げは胡椒まみれにする、麻婆豆腐は鬼のように辛い、
 おまけに変なスイッチでも入ったらしく、かに玉丼のはずがお好み焼き丼、という目も当てられない大惨事になってしまった。
 それでもアーチャーは隙あらば「答えは得た……」とつぶやいていて、幸せそうったらない。

「……まったく。二人とも不器用なんですね」
 お好み焼き丼を食べながらも、嬉しそうにセイバーは言う。
 その意見に無言で同意して、二人が作ったチグハグな料理をありがたく戴いた。

361 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 03:59:04
きめえwwwwwwww
激しくワラタwwwwwww
でも何故か清々しいこの気持ちは何!?

362 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 04:02:23
違和感が、違和感があるはずなのにむっちゃすっきり読んでしまえるのは何故だw

>二人は口を閉ざしたまま、かたや干将、かたや莫耶を握っている。
包丁使え、お前ら。

363 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 04:37:21
なんだこの気持ち悪い爽やかさはw

364 名前: 知得留先生→カレン さっちん→バゼット 投稿日: 2006/02/02(木) 05:46:41
「―――さて、気を取り直して次の出題です
これはそうね、バゼットに出題しましょう。
hollow ataraxiaでFate本編では名前も出なかったあげく
私ダメット油断シテ後ロカラバッサリな魔術師がヒロインになってるわね?」

「うっ……はい、なってます、けど」

「さて、ここで問題です。このヒロイン、分不相応にも満を持して登場、などと騒がれました。
そのダメットな人気っぷりから“カレンと同じようにHシーンがあるのでは?”
という悪魔崇拝背徳主義者的噂が立ちましたが、実際の所はどうでしたか?」

 ……すごい。
 カレン、まさにバゼット用の最終兵器を持ち出してきた。

「…………、りません」

 正解を口にしようとして、どうしても口にできないバゼット。
 当然だろう。なにしろこの問題は彼女自身のエロゲヒロインとしての存在がかかっているのだ。

「うん? 聞こえないわよ、バゼット」
 そこへ追い討ちをかけるカレン。
「うっ―――――――」
 悔しげに呻くバゼット。
 そして―――

「“斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)”――――!!!!」
 と、バゼットは実力行使で口封じに出た。

365 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 08:27:40
>>358-360
これ、描写の仕方次第では普通に爽やかに終わるはずなのになあw
元のシーンが凛と桜って辺りが、救いようがなく気持ち悪いよね。

366 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 11:18:10
 そこを走った。
 一直線に、衛宮士郎目指して走り抜けた。
 士郎は"壊れた幻想"に怯んで動けない。
 いかに宝具を投影できようと、戦闘経験がほとんどない未熟者だ。
 どんな状況であっても、アーチャーには彼を倒せるだけの技術と経験があった。

 アーチャーは即座に間合いをつめる。
 走り抜ける中、虚空から取り出したもう一本の夫婦剣を握り締める。

 「────」

 士郎は反応できない。
 殺される、と気がついたようだが、あまりにも遅すぎる。

 ……確実に殺った。
 これで終わりだ、と彼は夫婦剣を突き出し、

 ────おい、何故ここできみが出てくる?

 彼らを弟子と呼び続けた、馬鹿な少女の顔を思い出してしまった。

367 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 11:19:08
 ……殺された。
 
 躱す余裕などなく、あの夫婦剣で心臓を突き刺されると理解できた。
 体は反撃を試みるが、絶対に間に合わない。
 
 ”――――殺され、るのか”

 恐怖はなかった。
 この世全ての悪である以上、殺される覚悟は出来ている。
 それが正義の味方の手によるものなら、ひどく当然のような気もする。

 でも未来の自分が今の自分を殺すときの顔を見るのはイヤなので、目を瞑った。
 このまま消えてしまえば、それなりに楽だろうと少しだけホッとした。
 
 「――――?」

 けれど痛みはなく、終わりは来ない。
 かわりに、とても温かい気持ちになる。
 その正体がなんであるかに気付いた瞬間。

 衛宮士郎は、潰れた視力を取り戻した。

 ……血が流れている。
 温かい人の血。お腹を破られて、ポタポタと血を流している。
 しっかりと――――崩れ落ちそうな体で、自分を抱きしめる英霊の体から、取り返しがつかないほどの血が流れている。

 「アー、チャー?」

 どうして?と少年は言った。
 
 確実に速かった。
 確実に自分を殺せた筈なのに、最後の最後で、弓兵は剣を突き出さなかった。

 「……できる筈、ないんだがね。そんな事は」

 まるで泣いているかのような声。
 それは少年がずっと憧れていた、
 嫌味ったらしく慇懃で、けど温かくて優しい、アーチャーというサーヴァントの声だ。

 エミヤは思う。

 ……なんという事はないのだ。
 ようするにさっきの瞬間、ここ一番っていう時に気付いてしまった。

 衛宮士郎を間近で見た途端、自分には士郎を殺せないな、などと、他人事のように感じてしまった。

 そう、たとえ士郎がこの世全ての悪になってしまったとしても、それでも彼は――――

 「……なんて、皮肉」

 ――――大切な、後継なんだから。

 士郎を、愛している。
 たとえそれが自己愛としての感情で、士郎の感情とは違ったとしても。
 
 最後の最後でそんな事に気が付かされるなんて、自分の馬鹿さ加減も筋金入りだ。
 そんなもの、もっと早くに気づけと言うのに。
 ……けどまあ、それも仕方あるまい、と弓兵は納得してみる。

 「……ああ、だが仕方ない。
 たとえお前に憑き物がとり憑いていて、そいつを消すためだとしても――――
 エミヤシロウは、衛宮士郎を傷つけることなんてできるはずがないのだから」

 ――――それに、第一。
 
 「お前の事は好きだし。いつも心配していたし、いつも笑っていてほしかった。……ああ。
 たとえどんなに変わってしまっても、お前はお前なんだ。
 私を目指してくれて、ずっと追いかけてきてくれた、大切な、後継ぎなんだから」

 愛おしむように少年を抱く。
 一生で一度だけの、自己との抱擁。
 彼は自らの腹部を貫いた過去の自分を、ようやく手に入れた理想のように、柔らかく抱きとめる。

 「――――アー、チャー」

 ……体温が消えていく。
 
 セイバーを殺したことへの恨み言など、一つもない。
 アーチャーは、自分の死ではなく、抱きしめた少年を救ってやれない事だけを後悔して、

 「すまんな。こういう、中途半端な正義の味方で。
 ……それと、ありがとう。お前に、認めてもらったことが、嬉しかった」

 砕け散った硝子のように、足元で崩れ落ちた。

368 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 11:19:58
「――――、ア」
 
 重みが消えた。
 ほんの一瞬。蜃気楼のようだった温かみと一緒に、正義の味方だった人が消えた。

 ――――違うな、士郎。凛はきっと。
    お前自身を誰よりも心配していただけで、本当は――――
 
 「――――、ィ」

 ……その言葉に、どんな想いが込められていたのだろう。
 弓兵の心は弓兵だけのものだ。
 それを侵し、従わせる事など他人にはできない。
 そんな事は絶対に許されない。

 それと同じように。
 彼を守り、戦い続けた筈の少女にも。
 彼が想い、愛し続けた少女にも、誰にも譲れない想いがあったとしたら。

 「――――――――ガ」

 ……だとしたら、どうなるというのか。
 未熟な自分を嘲笑して、衛宮の血を断絶しようとしていて、俺を憎んでいた私。
 そんな彼が本当は誰も憎んでなんかいなくて、好きでこんなコトを望んだんじゃないとしたら。

 「――――おれ、が」

 ……なら。
 結局、弱くて悪いのは彼を見限った騎士王でも、弓兵を選んだ魔術師でもなく、
 臆病で前に進めなかった自分だけで――――

 ――――そんな自分を、不器用ながら、愛してくれた人たちがいた。

          「なのに――――俺が、壊し、ちゃった」

 …何処で、間違えてしまったのか。
 全部あった。
 あんなに欲しかったものが、本当はすぐ目の前にあった。
 あんなに優しく抱きしめてくれて、あんなに想っていてくれたのに。
 俺が――――自分の手で、粉々にしてしまった。
 そのことに気付いた瞬間。

 「――――、ギ
 ギャ、ガア、ヒア、アア―――ギ、ギギ、ヒハハハハハハハ……!!」
 

 抱き返す事もできなかった手は固まったまま。
 少年はずっと見守ってくれていた弓兵の血に濡れ、強く、自身を呪い始めた。

369 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 11:39:05
微妙に微妙で微妙なホモ臭はどうにかならないのかw

370 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 11:49:49
この程度のやおい臭、飲み干せなくて何がきのこ信者か!
我を引かせたければこの三倍はもってこいというのだ!

371 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:00:32
間違いなくアーチャー生きてるな。
元シーンやアーチャーのキャラからして。

消えたのは霊体化しただけだよきっと。

372 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:06:35
うわあああああ――っ!
俺は、俺は感動すればいいのか笑えばいいのか理解できないっ!
なにこのすごく微妙な気持ちは!だがこれだけは言える、GJ

373 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:21:44
良作なんだが、なんだが、ホモ臭が、なぁ

374 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:42:03
 ――拒絶している。

 衛宮士郎はこの世全ての悪を拒んでいる。
 自分を嫌って、自分を拒んで、自分自身を殺そうとしている。

 だが出来ない。
 アヴェンジャーにとって、士郎は必要な本体だ。
 士郎が自分を殺そうとすれば、アヴェンジャーがそれを許さない。
 士郎は自分を殺そうとする自責と、それをさせまいとするアヴェンジャーの意思によって切り刻まれている。

 「――――」

 士郎に向かって歩き出す。

 「だ――――やめ、やめろ遠坂――!」

 投影された剣が頬を掠めていく。
 本来なら私の首を切り裂いたであろうソレは、士郎の叫びで、軌道を変えてくれたようだ。

 「は――――あ、あ、う…………!」

 士郎は自分を押さえつけるように抱く。
 だが固有結界から零れ出る剣は一向に消えず、むしろますますその量を増やしていく。

 「う……うう、ううう……!」

 ……泣いている。
 士郎は泣いている。
 自身を蝕む痛みからじゃない。
 自分を抑えきれない、またアヴェンジャーに操られるしかない自分が悔しくて泣いている。

 「……遠坂、ダメ、だ。おれ、抑えきれない。
 遠坂達が一緒に居てくれたのに、負けちゃうんだ。
 ……強くなんて、なってなかった。
 おれは空っぽで、臆病で、歪んだ人間のままだった」

 さらに一歩。
 贋作の剣が頬をかすめる。

 「――――! やめろ、なんで来るんだ遠坂……!
 それ以上来られたら、お前を殺してしまう……!」

 さらに一歩。
 右手を、宝石の剣の柄にかける。

 「どうして。逃げろ。逃げてくれ遠坂、アーチャーを連れて逃げてくれ……!
 おれの事なんて忘れていいんだ……!
 ちゃんと、ちゃんとここで死んでみせるから、こんどこそちゃんと死ぬから……!
 おれ、おれは、こんな自分、これ以上遠坂に見られたくない……!」

 一歩進む度に、贋作の射撃が厳しくなる。
 私の前進は、士郎の心と体を傷つけている。

 「どうして言うこと聞いてくれないんだ……!?
 遠坂、遠坂がそれ以上近寄るなら、おれだって我慢しない。
 お前に殺される前に、おれが遠坂をころしてやるから……」

 「どうしても何もないでしょうに。
 貴方をここから連れ出して、アーチャーを助ける。
 さっきそう言ったでしょ、士郎」

 「っ―――まだ、そんなことを言ってるのか、遠坂。
 ……やめてくれ。おれは助からない。
 いや、助かっちゃいけないんだ。おれは、生きてちゃいけない人間なんだ」

 一歩。

 「っ――――」

 ずん、と腹に剣が直撃する。
 ……刺し傷じゃない、ただの打撃だ。
 今のは士郎が、自分の意思で私を押しのけようとしたものだ。

 「ほ、ほら、見ただろ遠坂。お、おれはこういう人間なんだ。
 いまさら外には戻れないし、アヴェンジャーもおれを放してくれない。
 それに――――もし、戻れた、ところで」

 「……オレ、いっぱい人を殺したんだ。何人も何人も殺して、父さんも殺して、母さんも殺して、友達も、街の人もみんな殺した……!
 そんな――――そんな人間にどうしろっていうんだ……!
 奪ってしまったものは返せない。10年前に、オレは多くの人を殺した。
 だからアヴェンジャーと一緒に死ぬことだけが、オレにくだされた罰なのに。救いなのに。
 それでも、それでも生きていけっていうのか、遠坂は……!」

 「――――――――」

 ……そうか。
 後戻りの出来ない道。
 償うことさえできない罪が、士郎を追い詰めていた。

375 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:43:35

 救いはない。
 どうあっても、士郎のせいでなかったとしても、多くの命を見捨てた記憶は、士郎の心に在り続けるだろう。
 アヴェンジャーから解放され、元に戻ったところで、士郎の中には昏い影が残ったままだ。

 だが。

 「――――当然でしょ。奪ったからには責任を果たしなさい、士郎」

 扉を開く。
 地面に、大気に、世界に、満ちている次元の境をこじ開ける。

 ……眩暈がする。
 宝石剣が壊れる前に、前へ。
 言わなくちゃいけない言葉を、まだ口にできるうちに、士郎を。

 「遠、坂」

 「そうね。罪の所在も罰の重さも、私には判らない」

 「っ……!」

 肩と胸、右足と腹に剣が突き刺さる。
 その、直前。
 偽物の剣が肉を貫く前に、音もなく隣の世界へ移していく。

 「でも守る。これから士郎に問われる全てのコトから士郎を守るわ。
 どんな事になっても、士郎自身が士郎を殺そうとしても・・・私が、士郎を守るの。
 士郎が犯した罪、士郎を責める罪、士郎が思い返す罪、全部から、衛宮士郎を守ってみせる―――」

 前へ。
 士郎はもう目の前にいる。

 「遠、坂? 剣が、虹色に――」

 ……扉が開く。
 繋げるモノは一つだけ。

 宝石剣で繋いだ世界を、全て、その悪を砕くことに注ぎ込む。

 七色の解放。
 宝石剣を振り上げる。

 士郎の顔が、よく見えない。

 「遠、坂」

 「おしおきよ。きっついのいくから、歯を食いしばりなさい」

 「――――」

 必死に息を呑む音がする。

 そうして。
 ああ、と短く応えて、士郎は自ら胸を差し出し――――

 これが、士郎に下される罰になるように。

 「さ、帰るわよ士郎。――――そんなヤツとは縁を切りなさい」

 一息で、少年の胸の点を突き刺した。

376 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:46:05
それって普通に士郎も死ぬような

377 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:51:03
そうだよなコレw
アーチャーの死?はなんだったんだwww

378 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 12:59:21
ちょwwwwwww点刺したら死ぬだろwwwww

379 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 13:04:39
ついにうっかりで士郎を殺しちゃったんすか遠坂さん

380 名前: 勝手に続き : プロローグ一日目 投稿日: 2006/02/02(木) 13:25:50
 で。
 光が元に戻った瞬間、わたしは全てを理解した。
 ■■■はメチャクチャになっていた。
 大空洞は瓦礫にまみれており、もう偉そうにふんぞり返るしかないわたしが一人。

「……………」
 わたし、間違いなく下手人だ。
「……………」
 けど、そんな事よりもっと大事な事が一つ。
 破壊を免れた宝石剣は正確に並列世界と繋がっている。
 ……それで、思い出してしまった。
 うん、そうそう。たしかここでは、ルールブレイカーを使うべきなんだっけ。
 つまり宝石剣はただの凶器。

「…………また、やっちゃった」
 わたしは大抵のコトは人並みにこなせるんだけど、一つだけ遺伝的な呪いがある。
 それはここ一番、もっとも大事な勝負時に、信じられないような大ポカをしでかす事だ―――

381 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 13:40:22
>それでもアーチャーは隙あらば「答えは得た……」とつぶやいていて、幸せそうったら
うはwwなんかキモ癒されるって感じww
やべー、なんか自然な改変だからこそキショイけど心地よくもあるネタだw>358-360  乙。

>>380
うはwwこれも綺麗で酷いオチ付いたww

382 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 13:47:50
 「……………………」
 「……………………」

 幕は下りた。
 先ほどまで混線していた平行世界もすべて消え、イヤになるほど冷静になる私。

「じゃ、そろそろ言峰のところへ行こっかな」

 うん、と独り言をこぼす。
 魔術師には過去を省みてはいけない時があるのです。

 「じゃあ宝石剣返すわね。気がついたら士郎をつれて逃げてちょうだい」

 ぼそぼそと、逃げ腰でアーチャーに話しかける。
 あ、アーチャーが恋人の仇を見るような目で「地獄に落ちろ、マスター」と呟いた。

 「……………………さて、私も本腰入れますか」

 ここ三分ばかりの記憶をまっさらに消去して杯の元へ急ぐ。


 こうして衛宮士郎にとり憑いたこの世全ての悪は消え去ったのですが、彼の平和な日常と、
 それを守っていた未来のエミヤシロウは誰に語られるコトもなく黒い泥に飲み込まれるのでしたとさ、まる。

383 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 14:09:22
ひ、ひでぇ――っ!!

あんたこそ真の悪だろ遠坂さんw

384 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 14:21:33
ひどいや凛、凛ひどいや

385 名前: 士郎→A氏 イリヤ→* ◆oQNMohRS6k 投稿日: 2006/02/02(木) 14:23:43
「―――――――――、赤ずきん……!」

 成仏していく。
 赤いフードを被った誰かは、昔見たアニメのように、天からの光に導かれて、空に昇っていく。

 ―――じゃあね。
    わたしとお兄ちゃんは血が繋がっていないけど。
    お兄ちゃんにボタン押してもらえて、本当に良かった。

「―――――――――」

 赤ずきん。
 行くな、そう思ってくれるなら行かないでくれ。
 一緒に暮らすって言った。あの時見捨ててしまった分、一緒に暮らすって言っただろう。

 ―――ううん。
 言ったよね、何事も自己責任だって
 ……ええ。わたしは死んじゃってるんだもん。なら、天国へ行かなくちゃ。

「*――――――――#」

 思い出した。
 彼女の名前。
 隣に住んでいた女の子。俺が玄関の扉を開けなかったせいで、死なせてしまった幼い少女。

 俺よりずっと年下の、赤いフードを被った――――

「*#―――*#、*#、*#、*#、*#、*#、*#、*#、*#、*#――――――!!!」

 届かない。
 もう声は聞こえない。
 光に包まれて何も見えない。

 彼女は、最後に。

 じゃあねと微笑って、天に召されていった。

386 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 14:24:50
悪残ってるよ悪

387 名前: 士郎→A氏 イリヤ→* ◆oQNMohRS6k 投稿日: 2006/02/02(木) 14:26:44
うわ、士郎→A氏 イリヤ→*#(赤ずきん)のつもりがトリップになってしまった。

388 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 14:28:24
全米とオレが泣いた。

389 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 14:28:42
>>言ったよね、何事も自己責任だって

何か妙に現実的だなw

390 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 16:03:07
>>375
>「おしおきよ。きっついのいくから、歯を食いしばりなさい」
普通に「殴っ血KILL!」になると思ってたが、予想外に斜め上だったなw

391 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 17:31:12
すっっっっっっっっげぇ遅レスだけど、>>77
「アヴェちゃん」って呼び方がオレの心に響いた。スバラシイデス。

392 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 17:48:45
>>375
もう、後半の士郎の悲壮な決意で死を受けいれた士郎が可哀そうでしかたがない

393 名前: スパークスライナーハイ+対決 投稿日: 2006/02/02(木) 17:52:48
―――化け物だ。
背後からの奇襲と、全力で放った一撃を同時に敵は防いだ。
加えて、正面から斬り伏せにいった干将を打ち砕くという極悪さ。
これを化け物と言わずなんと呼ぶ。

だが。

「―――心技、黄河ヲ渡ル」

化け物でなければ、布石を打った意味がない・・・・・・!

「もう一つ・・・・・・!?」

二度背後から飛来する干将。
言うまでもない、それは投擲し、敵に弾かれた一度目の双剣だ。

干将莫耶は夫婦剣。
その性質は磁石のように互いを引き寄せる。
つまり―――この手に莫耶がある限り、干将は自動的にオレの手元へと戻ってくる――――!

「くっ・・・・・・!」
神業めいた反応速度を以って、敵は背後からの奇襲を避ける。
その、これ以上はない無防備な胸元へ、残った莫耶を叩きつけ―――

「―――、は?」

跡形もなく、全ての剣を粉砕された。
戻ってきた干将も、
叩きつけた莫耶も、
セイバーの一息で跡形もなく砕け散ったのだ。

「――――――」
上段から滑り落ちるセイバーの剣。

「デ―――デタラメな魔力放出だな―――!!」

悲鳴をあげながら飛び退くが間に合わない。
「ギ―――!」

それは今度こそ、俺の体を右肩口から腰まで、文句なく一閃し、
即死寸前、完全に戦闘不能にする傷を与え、

「ギャ、ガア、ヒア、ア――――――!」

         ブロークン
        “壊れた”

「ア―――ギ、ギギ、ヒハハハハハハハ……!!」

         ファンタズム
        “幻想……!”

最後の切り札を、発現させた。

394 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 17:55:14
セイバーに斬られている=セイバーが間近にいるっていう事だから……
どう見ても自爆です、ほn(ry

395 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 18:03:46
これはコレでアリか。
自爆・捨て身・特攻・囮・やけっぱち・神風は士郎の保有スキルだからな。

396 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 18:13:41
>自爆・捨て身・特攻・囮・やけっぱち・神風は士郎の保有スキルだからな。
ろくなスキル持ってないな。
FateがシミュレーションRPGだったら、ひどく使い辛そうw

397 名前: 二人の噂話 志貴⇒士郎 槍⇒シオン ギル⇒ズェビア 投稿日: 2006/02/02(木) 18:43:32

 珍しく川縁には人気がない。
 市民にもっとも愛されている憩いの場にはただ二人、
 とんでもなく目立つ、怪しい組み合わせがあった。

「……………レアだ」
 
いや、レアなのは組み合わせだけではない。
 本来なら犬猿の仲、人目がなければ真っ先に殺し合う二人が、
 だべりながらアイスクリームを食べているのである……!

「ああ、彼女のは私の奢りだ」
 そして明かされる衝撃の真実。
「む、そんなに見つめてもあげませんよ。
 アイスを食べるのなんて一ヶ月ぶりなんですから」
 さらに明かされるどうでもいい極貧路地裏生活。
 ちなみに、シオンが食べているのはイチゴ味のジェラートである。

「ふむ、どうやら呆れて声も出ないようだな。
 おかしいかね、私と彼女が一緒にいるというのは?」
「はい、常識的に考えて有り得ない話です。志貴が固まるのも当然です」

「そもそも、貴方に理性がある時点でおかしい。
 本当に別人ではないのですか。ワラキアの夜に至るまでの過程に謎が
 多すぎます。猿から人以上のミッシング・リングです」
「これはこれは。ずいぶんと嫌われたものだな、同じ血筋の者同士
 交流を深めていきたいと思ったのだが。
 まあ、省みてみれば誤解を招く事ばかりしてきたからな、
 仕方ないという事か」
「誤解など招いていません。アレは間違いようのない狂人ぶりでした。
 どこをとっても善性の欠片もない。徹底的に破壊して、
 根源から再構成を果たしたとしても改心など有り得ません」
「そうだな。私としても何故あのような愚物に成り下がったのか、
 理解しかねる。しかし既に起きた事柄に干渉する事は不可能だ。
 末路が解るというのは、いつ味わっても辛いものだな……」

「あ、その気持ち、少し分かる。
 少しでも未来が変えられる可能性があるなら何とかしたいって思う」
「……まさか理解してくれる者がいるとはな。実に素晴らしい。
 君とはワラキアの夜となってからも友人でいられそうだ」
「悪いけど、それは無理。タタリになったおまえとは殺す殺される
 の関係しかない。根本から合わないというか」

「そうか……それは困ったな、正常なフリをして君は愛情を殺人衝動で
 しか表現できない人間なのか……殺す事でしか愛を伝えられないとは、
 なんと死徒よりも哀しい生き方なのだろう」
「……え? 志貴はそういう嗜好の人物だったのですか? ……なるほど、
 それでですか。言われてみれば真祖に代行者、秋葉それに私も含め
 一度は殺し合った経験があるなんて、どう考えてもおかしい」

「わ、ワケあるか――――っ!!
 俺の趣味はずっともっと真っ当だっ!
 偏愛趣味が過ぎるロアやシキと一緒にすんなっ――――!!」
「そうかね? 君も相当のものだと思うのだが。
 例えば夢魔を相手した時の君は相当問題があるように見えたが」

「ぐっ、何故それを知っているワラキア(未)……!!
 あ、いや、しかしですね、この件に関してはそういうのと別件かと。
 言うなればレンは妹のような存在でして……」
「シッ、ダメです志貴。あまり迂闊な事を言うと、あっちの方から
 ロケットが飛んで来ますよ?」
「あっち? あっちってどっちよ」
「だからあっちです。ナイチチと叫んで呼んでもいいですけど」
「呼ぶな! それはロケットじゃなくてミサイルだ!」
「ああ、しかも核が付く方だな」
「ですね。あれはなんとかにハモノです。敵に回したら最後、
 容赦なく徹底的に相手を殲滅するタイプです、秋葉は」

 楽しげに笑う錬金術師たち。
 ……ふーむ。
 休日の公園というのもあるんだろうけど、このコンビ、
 実は微笑ましい組み合わせなのではないだろうか?

398 名前: 二人の噂話 志貴⇒士郎 槍⇒シオン ギル⇒ズェビア 投稿日: 2006/02/02(木) 18:44:27

「しかし、日々の糧にも困る有様とは。
 アトラスの連中が見たら卒倒している所だ。
 エルトナムの名を汚さぬ程度に最低限の気品は保って欲しいものだ」
「くっ――――ご忠告痛み入ります。
 …………ところで志貴。話は変わりますが、私の知っている死徒の中に
 トンデモなく性質の悪いのがいまして。
 人が堕ちていく様を見るのが好きという悪趣味に加え、
 映画監督気取りで全てが自分の計算通りに運んでいると思い上がって
 いる上に自分の計算通りにいかないと、カットカットカット、と
 喚き散らすイカレたヤツなのですが知っていますか?」

「ああ、知ってるよ。
 そのクセ、自分が負けたとなると急に昔の事を語りだして
 滅びを回避したかったとか、どう足掻いても無理だったから
 狂ってしまった、みたいな事をアピールして同情を引く奴だろ。
 そういえば女の体の方が性に合うみたいな発言もしていたっけ?」
「そうです、そいつです。本当に困った輩です。
 で、話は変わりますが、貴方はそういう人物をどう思いますか?」

 どう思うも何もない。

 「さて。何の話か私には理解しかねるのだが」

 コイツ全部解ってて言ってやがる。
 やっぱりシオンより一枚も二枚も上手か。

 面白い顔のまま、パクパクと金魚のように口を動かしているシオンと
 余裕の笑みを崩さないワラキアを尻目に公園を後にした。

399 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 18:48:10
ズェピアで来たか。やるなー。

400 名前: フェイト/ステイナイト(Ⅰ) 投稿日: 2006/02/02(木) 19:00:17
―――そうして、山門に辿り着いた。

これが最後の選択。
進めば終わる。
だが戻れば―――まだ、彼女を失わないで済む方法が見つかるかもしれない。

「――――セイバー」

立ち止まって、セイバーへ振り向いた。
セイバーはいつも通りだ。
平気そうな顔で、何かを堪えているような、張りつめた瞳。

それを見た瞬間、ありとあらゆる誘惑が駆けめぐった。
逃げてしまえ、と。
失いたくないのなら引き返していいと。
彼女なら、おまえがそうしたいと言えば受け入れてくれると。

「家に帰ろうか、セイバー。
 今日は一日ありがとう」

「いいえ。私の方こそ、ありがとうシロウ」

「そうだ。セイバー、魚好きだよな」
「ええ、特定のものを除けば好みですが……もしやシロウ、ここの港には魚市場があると?」
「いや、さすがにない。あーでも秋の魚は良いなぁ、秋刀魚に柚」

「この国の情緒ですね……はい」

かくして、夜食のメニューが決定した。

401 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 19:07:31
最後の選択の結果が夜食のメニューかよw

402 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 19:09:44
goodendキター

403 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 19:34:57
>「いや、さすがにない。あーでも秋の魚は良いなぁ、秋刀魚に柚」
冬だろw

404 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 20:35:15
>>403
歳時記では秋刀魚は秋、柚(柚子)は冬の季節を表す言葉とされています
Fateだと俳句詠みそうなのはアサシンか蟲爺ぐらいか?

405 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 20:40:56
>かくして、夜食のメニューが決定した。

……いや、あの。「決定した。」じゃなくてだね……w

406 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 21:01:13
>395-396
つまりボスボロ(ry

407 名前: 憑夜のできごと→夜の聖杯戦争→? 投稿日: 2006/02/02(木) 22:39:03
「……っ……く、……ん、ぁ―――!」

……押し殺した苦悶の声。
わが麗しのマスターはソファーから転げ落ちんばかりに苦悶していた。

「おーい、復活の真っ最中か……? 気が散るから静かにしてくれ。
 苦しいのは良く分かるが、パズルが上手いこといきそうなんだ」
「……っ……やめ………やめ、て………!」

ぱさり、と毛布の落ちる音がした。

「チッ………ったく!」

静かにするどころの騒ぎじゃない。
悲痛な叫びにうながされ、ソファーに近づく。

「は―――うあ、あ、や…………!」

精神的少女の苦悶は悪化していた。
どれほどの呪いに苛まれているのか、いや、俺はだいたい知ってるが、
ぶっちゃけやかましいので歩み寄る。

「っ―――やめ、て―――ゆるし、て―――!」

苦悶はより増加していく。
俺が歩み寄る度に増加していく。

「はっ……ぁ、んあ、あ……!」

どこか、性行為のようだった。
痛みにあえぐ声は、次第に熱を帯びていく。
一歩ごと、精神的少女の体に踏み込んでいく。
少しずつ、精神的少女の体を曝いていく。
なら、俺が到達した時こそ、精神的少女は絶頂を迎えるだろう。

「んっっ……は、あう、っ……!」

あと一歩。
それで、スリッパでどついてやれると思う俺と、

「いや―――いや、です、近づい、ては……!」

死ぬから近づきたくないなあ、と知っている俺がいた。

「ひ、ひひ――――………なんだよ、そりゃ」

鼻からドボドボと赤いモノが逆流する。
顔面を貫いた、禍々しい革手袋を見下ろす。

「は、あ、――――そりゃ、さすがに」

今まで色々なモノを見てきたが、バゼットの異常はそのどれにも
当て嵌まらず、上回っていた。

―――寝ながら、教科書どおりの、コンビネーションブロー。

この女は拳しか語る術を持たないのか。
精神的少女は熱にあえぎながら、その怪異をカタチにして、近寄った
俺の体を滅多打ちにしたのだ。
……意識が遠のく。
四日後を待つまでもなく、俺はここでリタイヤする。
ただ、得たものは大きかった。
・・・・・・・
こいつはダメだ。
ここで起こしてはいけない。
楽しい初日を迎えるには、もっとソファーに遠い場所でなければならない。
それだけを心に刻み込んで、繋ぎ止めていた意識を手放す。

……失神の間際。
人間凶器と化したバゼットの姿を見て、ふと、おとぎ話の悪魔を連想した。

408 名前: 憑夜のできごと→夜の聖杯戦争→? 投稿日: 2006/02/02(木) 22:40:24
「っ、ぁ―――――」

重い頭、重い手足に力を込める。言うことをきかない肉体に鞭を入れる。
腕を立てて、うつ伏せに「なっていた体をわずかに起こす。
……私はソファーに横たわっていたらしい。
どのくらい眠っていたのか。
それを思い出そうとして、いや、そもそもここが何処なのか思い出そうとして、

ひどい光景が視界に入ってきた。

目眩がする。まるで撲殺死体だ。
……弱いクセに見栄を張ってしまうのはあのサーヴァントの悪癖だが、
不幸にもそれが仇となったのだろうか?

「――これ、は――」

目眩でグラグラする意識で状況を確認する。
なんか、アヴェンジャーが血だるまで転がってる。

「―――――――――」

言葉がない。
なんでこんな場所でアヴェンジャーが襲撃されるのか。
なんであんな物凄い隅の方まで吹き飛ばされているのか。
それもすごい血しぶき付きで。
足元から霊体になりかけ、与えられる苦痛はともかく、何故俺なのか、という無念の表情。
というか瀕死になってませんかアヴェンジャー、パスを通して感じる
脈動の弱々しさが尋常じゃありません。
もしかして悲しいのですか。
あのいわれ無き迫害とか受難の記憶を千年分ぐらい弱火の呪いでコトコト煮込んで
山頂に放置プレイされた挙句、ヤアオイラコノヨノスベテノアクコンゴトモヨロシク
みたいな諦めだというのですか。
だとしたらまずい、アヴェンジャーもまずいが私もまずい。
私、絶対やばげなスタンスで同情をしている。
彼が救われなくては納得できない。

「……ニンゲンデアルカギリキミハスベテノアクヲサイゲンカノウダ ギャハハヒヒヒヒヒイイヒヒッヒイ」

時折痙攣しながらアヴェンジャーが呟く。

「………………」

用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でもわからないが
……ともかく用心しながら傍らにしゃがみこむ。

「――――――――」

じっとアヴェンジャーの容体を観察する。
……凄い。顔の原型、残るは二割くらいだ。
あなたは私を守って何者かに襲われたのですか? でも誰に? と涙を滲ませた時、
不意にアヴェンジャーの目が動いた。

「――――――――」
「――――――――」

視線があきれ果てたように私を射抜く。
アヴェンジャーは死んだ魚の目で私を眺めて、

「アンタバカだろ―――――!?」
「失礼な―――――!!」

全力で拳を叩き込む。
アヴェンジャーのフォルムはわずかに■っぽくなって、じんわりと消滅していった。
……って。
もしかしてアヴェンジャーは、私に何かを伝えようとしたのだろうか?

409 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 22:46:46
いや、失礼なのはアンタで、アンタは間違いなくバカでダメットです。

※ステータス情報が更新されました

真名 
ダメット・ダメガ・ダメレミッツ
保有スキル 
寝相 F
睡眠中の体捌きの練度であり、より効率よく体力を回復できる。
Aクラスともなればベッドが逆さまになろうとも張り付いていることが出来る。
逆にFクラスでは接近者に殺人格闘を見舞う程の寝相の悪さを披露する。

410 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 22:52:40
どう見てもダメットさんです。
本当に以下略

411 名前: 間桐家の人々+歌月・ネコネコネコ 投稿日: 2006/02/02(木) 22:54:32

……ノートを手に取る。
とにかく、これが目的の品かどうか確認しなくては。

「………ちょ、ちょっと僕にも見せろよ。
見たくないけど、見ないでいるのはもっと怖い」



『素敵だよ、桜』
『そんな先輩。私なんて、姉さんみたいにスレンダーな体じゃないし、
ライダーなんかと比べたら……』
『バカだなあ、遠坂みたいのは貧乳って言うんだ。
それにライダーなんて、ただの電柱じゃないか。
君の美しさには敵わないよ』
『先輩………』


「…………………………」
「…………………………」

なんというか、見てはいけないものを見てしまったような。
こんな事なら恨み辛みが書かれたノートが出てきた方が
まだマシだったかもしれない。

412 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 22:58:45
>>407-408
「■っぽくなった」にワラタ
あとおにんにんがすごくおっきした
>>411
桜、可哀想な子……!(つД`)

413 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 23:14:57
>あなたは私を守って何者かに襲われたのですか? でも誰に? と涙を滲ませた時、
ハゲワラwwwwwwwwwww

414 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/02(木) 23:17:10
>>409
ダメが増えてるーー!?

っていうか最後にこの一文を追加すべし。

ここまで来るともはや呪いの類である。

415 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 00:13:08
戦闘続行A
例え意識を失っても戦闘に支障が出ない。ただし敵味方の区別は付かなくなる

416 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 00:29:26
>>411
桜・・・

417 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 00:39:57
アンリとバゼット可愛いよもう最高だよ…!

418 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 01:34:55
>>411
!(つД`)

419 名前: プロローグ、弓→金 (1/2) 投稿日: 2006/02/03(金) 01:58:01
「はい・・・?」
ないものはない。
変化なんてこれっぽっちもない。
あれだけ派手にエーテルを乱舞させておいて、
実体化しているモノが欠片もない。
加えて。
何か居間の方で爆発音がしてるし。

「なんでよーーーーー!?」

走った。
もう頭んなか空っぽにして走った。
地下室の階段を駆け上がって居間へ急ぐ。

「扉、壊れてる!?」

居間の扉は歪んでいた。
取っ手を回しても意味がない。
押しても引いても開かないので、

「――――ああもう、邪魔だこのおっ・・・!」

どっかーんと、蹴破って中に入った。

「問おう。雑種。貴様が我のマスターか?」

その黄金のサーヴァントを見たとき私は勝利を確信した。

〜〜〜略〜〜〜

「……二十七。それだけしのいでももまだ有るとは」
 苛立ち、呟くランサー。
 いや、アレは苛立ちというより畏怖だ。

 ……その気持ちはわたしも同じ。
 父の話では、英霊が持てる宝具はせいぜい一桁。
 それ自体が絶大な力を持つ彼らの武器は、アーチャーのように次から次へと射出する物じゃない。

「どうした雑種、まだ抵抗を続けるとは態度がなっていないではないか。
 おとなしく跪いてはどうかな」

「……クッ、化け物め。減らず口を」

 ランサーの恐れはもっともだ。
 ランサーは全力を持って戦ったというのに、アーチャーは宝具の使い捨てだけで戦い、これを圧倒した。
 いわば英霊としての本気をまったく見せていない状態である。
 ランサーが恐怖を感じるのも当然だろう。

「……いいぜ、訊いてやるよ。貴様何処の英霊だ。
それだけの宝具を使い捨てる英霊なんて聞いた事がない」

「そういう貴様は……まあ、いい。我に蹂躙されるだけの雑魚の真名など思いだす必要もない」

 途端。
 あまりの殺気に、呼吸を忘れた。

 ランサーの腕が動く。
 今までとは違う、一分の侮りもないその構え。
 赤い槍の先端は地上を穿つかのように下がり、ただ、
ランサーの双眸だけがアーチャーを貫いている―――

「―――ならば食らうか、我が必殺の一撃を」
「止めはせん。防ぐ必要すらない三流宝具だな」

420 名前: プロローグ、弓→金 (1/2) 投稿日: 2006/02/03(金) 01:58:49
クッ、とランサーの体が沈む。
同時に。
茨のような悪寒が、校庭を蹂躙した。

……空気が凍る。
比喩ではなく、本当に凍っていく。
大気に満ちていたマナは全て凍結。
身体が芯から凍えていく。
今この場、呼吸を許されるのはランサーという戦士だけ。

ランサーの手に持つ槍は、紛れもなく魔槍の類だ。
それが今、本当の姿で迸る瞬間を待っている―――

「――――まずい」


やられる。
アレがどんな“宝具”かは知らないけど、アーチャーはやられる。
こんな直感、初めてで信じがたいけど間違いはない。

あの槍が奔ればアーチャーは死ぬ。
それは絶対だ。
文字通り、ランサーの槍は必殺の“意味”を持っている――――

「――――、あ」

アーチャーは敗北する。
ランサーに心臓を貫かれればアーチャーは死ぬ。

―――なのに。
そこまでもう予知できているというのに、わたしはアーチャーが負けるところを
想像する事さえできない。
アーチャーが指一本でも動かせば、それが王の蹂躙の合図となるからだ。

殺される。
殺される。
きっと間違いなく殺される。

他の何にでもなく、
他の誰にでもなく。


――――――ランサーは、アーチャーに、殺される。

あの蔵が開かれればランサーは死ぬ。
それは絶対だ。
文字通り、アーチャーの蔵は最強の“神秘”を持っている――――
……だからこの戦い、アーチャーが勝利を得られないとしたら、
それは―――

「刺し穿つ――――死棘の槍!!」

気が付いた時には遅かった。 

「――――貴様、よもやアイルランドの、ガッ――――!!!???」

彼は私が呼び出したサーヴァントだ。それがうっかりでない筈がない。

421 名前: 420 投稿日: 2006/02/03(金) 02:00:53
420の名前欄間違えました。
プロローグ、弓→金 (1/2)→プロローグ、弓→金 (2/2)でした。

422 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 02:05:09
>>419-420
触媒がないと召喚者に似たサーヴァントが出てくる傾向にあるっっっw

423 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 02:06:52
GJ!
考えてたネタ取られたぜっ。
同じアーチャーだし、うっかり属性だしぴったりだw

424 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 10:34:37
実力だけなら相性も含めて最強なのになw

ところでこの場合協会トリオはどうなってんだ?

425 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 10:37:52
ランサーが拍子抜けしてる様を幻視したw

426 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 12:49:50
>>425
 あれ、死んじゃったよ……みたいなww

427 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 16:32:19
いそいそとバゼットの元に帰るわけかw

>>407-408
GJ。このコンビはホンマおもろいな。ダメ姉とバカ弟って感じでw

428 名前: 衝撃のフィィィィッシュ! 言峰→弓 投稿日: 2006/02/03(金) 16:51:33
「む? 来たか衛宮士郎。時間があったのでな、先に釣りを始めていた」

 なんか、アーチャーがフィッシュしてる。

「――――――――」
 言葉がない。
 なんでこの場所にアーチャーがいるのか。
 なんであんな上下ともにギョシンさんばりにキメキメのズボンとジャケットなのか。
 それに悪趣味なロッドは金に糸目をつけない99%カーボンの高級品。
 爽やかに汗を輝かせ、よい漁港だ。面白いように魚が釣れる、という童心に返った大人の如き笑顔。

 というか調子に乗ってないかあいつ、釣り上げるスピードが尋常じゃないぞ。
 もしかして凄いのか。あのデータさえ入力しておけばほとんどリールがやってくれるという、もう釣りに来ているのか機械の調子を見に来ているのか判断のつかないハイテクぶりでお値段一括で二十万とんで三千円のあげく言うまでもなくぜーんぶ投影によるバッタもんみたいなリールが凄いというのか。

 だとしたらまずい、アーチャーもまずいがランサーもまずい。
 アレ、絶対

 …………頼む、オレの楽園を返してくれ。

 とか思っている。そうでなくちゃ説明できない。

「どうした、立っていては話にならならんだろう。座ったらどうだ」
 釣りながら赤い男は言う。

「………………」
 用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でもわからないが……ともかく用心しながら隣に座る。

「――――――――」
 じっと赤い男の動きを観察する。
 ……凄い。イナダ、十七匹目フィッシュだ。
 こいつ、ホントにこの港の魚を釣りつくす気か……と、喉を鳴らした時、不意にアーチャーの手が止まった。

「――――――――」
「――――――――」
 赤い騎士は俺など眼中にない。
 だというのに、ヤツの背中は。

――――ついて来れるか。

 蔑むように、信じるように。

 俺の到達を待っていた

「   ―――――ついて来れるか、じゃねえ」

 なら。
 おまえが俺を否定するように。
 俺も死力を尽くしておまえという自分を打ち負かす――――!

「ついて行くか――――!」

 全力で返答する。
 アーチャーはわずかに眉を寄せて、さっくりとイナダ十八匹目をフィッシュしてしまった。
 ……って。
 もしかしてアーチャーのヤツ、俺にアングラーと呼ばれたかったんだろうか?

429 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 17:38:23
ワラタw
ついて行かないのね。

430 名前: 決戦 投稿日: 2006/02/03(金) 18:32:39
 それは秒にも満たない瞬間。
 狙撃手の指から矢が放たれようとした瞬間の光景だった。
 標的からセイバーが消えた。
 弓兵は敵の狙いを看破する。だが遅い。
 矢は、既に弦から放たれている。
 勝利を確信したのはどちらだったか。
 数百メートル先の標的を射抜く狙撃手であろうと、覆せぬ定理がある。
 一度放たれた矢は標的を変えられない。
 いかな必中の道具を持つ射手であろうとも、この法則には逆らえないのだ。

 されど―――それを克服してこそ、弓の英霊……!

「っ―――!?」
 軌道を変える、否、初めから二敵を貫く必殺の軌道。
 定理は返り、放たれたセイバーに回避する術はない。
 矢は直撃の魔弾と化して騎士王を粉砕する。
 もはや何人たりとも覆せぬ死の運命。

 ―――されど。それを凌駕してこそ、剣の英霊……!

 交差する光と光。
 通り過ぎるかの如く傾く天秤。

 青光は勝利を謳うように天上へ。
 赤光は敗北をつげるよう、奈落へと直下する―――瞬間。

 ガ、と。
 彼女の首の真横で、信じがたい音がした。
 針のかえしが突き刺さる。
 セイバーの首を掠ったそれは、躱された瞬間、音をたてて彼女の『首に針を食い込ませた』。
"――――突き刺し針(アンカー)………!" 
 驚愕は戦慄となって駆け巡る。
 そう。釣り針というものは、本来直撃させるものではなく引っ掛けるもの。
 アーチャーの魔力による補助か、敵の竿は彼女の体を容易く引き上げていく……!

「く――――ああああああああ…………!!!!」
 セイバーの剣が上がる。
 この一瞬、首を釣り上げられる前に釣り糸を断とうと聖剣が走る。
 だがそれは適わない。
 聖剣を振るうより速く、彼女の体そのものが魚のように引き上げられる。
 ―――体が宙に浮く感覚。
 釣り人のようなオーバースイング。
 男はセイバーの首を捉えたまま、片腕で彼女を『釣り上げた』。
 人体を魚に見立てた一本釣り。
 受け身など取れる筈がない。
 首の肉を削がれながら釣り上げられ、時速2000キロのスピードでセンタービルの屋上に叩きつけられ、
「ぁ……、っ――――――――――――」
 彼女の体は、活動停止を余儀なくされた。

「―――――――――」
 その光景を、誰もが呆然と見つめていた。
 衛宮士郎だけではない。
 本来勝ち誇る筈のアーチャーでさえ、呆然と自らの竿を凝視していた。
 セイバーの飛翔からアーチャーの反撃。
 悪夢のような突き刺し針から、敵である衛宮士郎でさえ見惚れるほど、見事すぎた一本釣りまで。
「――――――――」
 セイバーは動かない。
 首を釣り上げられたまま投げられ、背中から屋上に激突した。
 首の傷はおそらく致命傷。
 加えて、トドメとばかりにあのスピードで屋上に叩きつけられたのだ。
 ―――即死、という訳ではなさそうだが、動く事は出来まい。
 少なくとも、首の傷と全身の打撲が癒えるまでセイバーは屋上に倒れたままだろう――――

 皮肉な話だ。
 もとより弓兵らしからぬ弓兵がこの男のスタイルだった。
 弓よりも双剣による接近戦を好んだサーヴァントは、従来の戦闘方針を捨て去った故に、
 セイバーを一撃の下に打倒するとは。

「―――セイバーの名に恥じぬ体捌きだった。
 オレが弓兵として戦ったなら、この結末にはならなかっただろう」

「―――は、勝ち誇らないでくださいアングラー。
 リンがいればその姿を見て泣きますよ」

 礼賛に笑いで返す。
 口元に浮かんだそれは友愛ではなく、蔑みを帯びた嘲笑だった。

431 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:36:01
どうやって勝てと?w

………そういえば、セイバーには「飛べ」とは言ったけど「飛んで止まれ」とは言ってないよな。
実際アーチャー叩き斬って、どうやって止まったんだろう。

432 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:42:39
そのへんはセイバーの判断だろ。
でなきゃ飛んで行ったきり第一宇宙速度超えて月軌道にでもつかまる可能性がある。

433 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:45:00
これなんてビーチボーイズ?

434 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:45:40
「あのヤロウを切り伏せろ」が終了条件じゃね?

435 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:48:50
>>431
勝つ方法か、多分「いけ、遠坂!あの野郎を叩き伏せろ!」だろう

436 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 18:57:39
これなんてワイアード?

437 名前: Fate本編の聖堂地下 言峰→ギル 投稿日: 2006/02/03(金) 19:20:58
「・・・・・・世迷い言を。聖杯はあらゆる望みを叶えられる万能の存在だ。
 ならば、あの結果はおまえの願望ではなかったのか・・・・・・!」

「結果だけはな。だがその過程は我が想像していたものとは違う。
 我はただ、出番があればそれでいい、と思っただけだ。
 そもそもオマエ達は想像力が貧困だ。
 望みが叶う? それはいいが、では望みをどのようにして叶えるか考えなかったのか?
 まさか願った瞬間に世界が変わるとでも思っていたわけではあるまいな?」
「―――――」

「判るか。あの『thgin yats\etaF』に繋がっている聖杯はな、頼まれごとを『ネタにする』
 という手段でしか叶えられない欠陥品なのだ」
「な―――それでは話が違う・・・・・!
 万能の力、持ち主の望み通りに世界を変革するのが聖杯ではなかったのか・・・・・・!」

「違わぬさ。『thgin yats\etaF』の手段は実に理に適っている。 
 世界を変えるという事は、世界を歪めるという事だろう。
 この世は全て等価交換によって成り立っている。
 その中で代償もなしに望みを叶えたなら、矛盾を嫌う世界に潰されるしかない。
 抑止力に邪魔をされては願いなど叶えられない。
 つまりはネタによる世界の改変だ。それこそが、矛盾を許容する変革だろう」

「それがこの聖杯の正体だ。
 『thgin yats\etaF』にはあらゆる型月関連を分け隔てなく改変する住人が詰まっている。
 それを操るなど、誰にも出来ん」
「―――――――」
 ……セイバーが息を呑むのも分かる。
 ギルガメッシュの言葉が真実だとするなら、それは彼女が求めていた出番とはかけ離れすぎている。

「ならば――――聖杯と、いうのは」
「持ち主以外のモノをネタにする、この上ない呪いの壺だ。
 おまえも見れば判る。アレはな、際限ないネタの塊だ」

「喜べセイバー。アレに願えば、おまえも我と同じになれる。この世で唯一、我と対等である存在になれよう。
 まあ尤も―――我のように人気を保てるとは限らんが」
「な――――」
 セイバーは呆然と敵を見上げる。

 アレが極大の呪いである事はセイバーにも判る。
 確かにネタスレとしては破格であり、あれだけの職人がいればどのような場面でも出番が作れる。
 ……おそらく自分にさえ、出られない場面はなくなるだろう。
 だが、それは諸刃の剣だ。
 アレは人をネタにするだけのもの。
 あんなものを浴びれば、いかに英霊とて自分が自分でなくなってしまう。

「…………」
 それで、気づいた。
 目前のサーヴァント。
 人類最古の英雄王と言われるこの騎士は、十年前あの汚濁に飲まれている。
 ならば――――
「ギルガメッシュ、お前は――――」
 お前は、既にネタキャラなのか――――

「――――ほう。そう思うか、セイバー」
 愉快げに笑い、セイバーを見下ろすギルガメッシュ。
 その顔は狂っているようでもあり―――この上なく、この男に相応しい貌だった。

「侮るな。あの程度の呪い、飲み干せなくて何が慢心王か。
 型月全てのネタ? は、我を堕としたければその三倍は持ってこいというのだ。
 よいかセイバー。慢心王とはな、公式のFDですら認めた呼び名。
 ―――ネタキャラ化の宿命なぞ、とうの昔に背負っている」

 そう言って、英雄王は笑った。
 心からの感謝を表す、邪気のない笑み。
 ―――その笑顔を向けられて、セイバーは悟った。
 この男ですら、例外なく堕とされている。
 他の何よりも、この聖杯に出番など願ってはならないと。

438 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 19:33:50
>>437
ワロス

439 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 19:37:23
>>437
>この男ですら、例外なく堕とされている。
>他の何よりも、この聖杯に出番など願ってはならないと。

悟っちゃったよセイバーw
そんなことでこのスレの住民から逃れられるとも思わんけどな。
あと姉妹対決は「幕間 宝石剣ゼルレッチ」だったかなぁ?

440 名前: セイバールートの柳洞寺決戦 微妙に上の続き 投稿日: 2006/02/03(金) 19:41:57
「な――――に――――!?」
 彼女の目前に放たれ、四散したものは、紛れもなく聖剣の鞘だった。
 如何なる神秘で編まれたものか、鞘はエアの刃を悉く弾き返す。
 否、防御などというレベルではない。
 それは遮断。
 外界の汚れを寄せ付けない妖精郷の壁、この世とは隔離された、辿り着けぬ一つの世界。
 聖剣の鞘に守られたセイバーは、この一瞬のみ、この世の全ての理(ことわり)から断絶される。
 この世界における最強の守り。
 五つの魔法すら寄せ付けぬ、何者にも侵害されぬ究極の一。
 離ればなれになっていた聖剣と鞘は、長い時を越えてここに再会する――――!
 故に、その名は“全て遠き理想郷”。
 アーサー王が死後に辿り着くとされる、彼の王が夢見た、はや辿り着けぬ理想郷――――

「――――――――」
 背筋に走る死神を、ギルガメッシュは確かに見た。
 だが間に合わない。
 振り下げたエアは回転を止めず、ギルガメッシュ自身、跳び退く事すらままならない。
 当然である。
 よもや―――よもやこれほどの全力、これほどの魔力を放った一撃が防がれようなどと誰が思おう……!
「ぬぅぅぅ……!! おのれ、そのような、小細工で…………!」
「――――――――」
 駆け抜ける青い衣。
 セイバーの体に防具はない。
 己を守る防壁を解除し、その分の力を彼女は手にした聖剣に籠め――――
「"エクス――――"」
「セイバァァアアアアアアア――――!!!!!」
「―――、は?」

 跡形もなく、全ての防壁を粉砕された。
 騎士王の下に戻ってきたアヴァロンも、叩きつけたエクスカリバーも、
 ギルガメッシュのエアの前に跡形もなく砕け散ったのだ。

「――――――」

 上段から滑り落ちるギルガメッシュのエア。

「デ―――デタラメな魔力放出ですねギルガメッシュ―――!!」

 悲鳴をあげながら飛び退くが間に合わない。
「ク―――!」

 それは今度こそ、彼女の体を右肩口から腰まで、文句なく一閃し、
 即死寸前、完全に戦闘不能にする傷を与え―――

 いや―――与える、筈だった。
「な―――――――」
 当惑で息が漏れる。
 一体どうなっているのか、と。
 エアを振るった姿勢のまま、ギルガメッシュは呆然と目の前の敵を見た。
「―――――――ばか、な」
 彼でさえ事態が掴めていない。
 全力でなぎ払った必殺の一撃。
 それが止まっている。
 敵の胴体を薙ぎ払う直前に、何かにエアが挟まれて停止している。
「――――足と、腕?」
 そんな奇蹟が起こりえるのか。
 彼の愛剣は、敵であるセイバーによって止められていた。
 膝と肘。
 高速で回転するソレを、女は片足の膝と肘で、『挟み込むように止めていた』のだ。
「――――――――」
 確かに、それは有り得ないことではないだろう。
 素手で武器を持った敵を相手にする――――武術において素手で相手の武器を止める技があることも、
 それを可能とする達人が存在することも。
 それでも、これが通常の戦いなら放心する事などなかっただろう。
 だが事はセイバー戦。
 敵はあくまで剣の英霊だ。
 それが必殺の一撃、世界を切り裂いた宝具を捉え、かつ素手で押し止めたなど、もはや正気の沙汰ではない……!
「───侮ったな、慢心王」

 それは、地の底から響いてくるような声だった。

「…………っっっ!!!!」

 ギルガメッシュの体が流れる。
 折られる寸前の剣を全力で引き戻そうとする。
 その瞬間。

「―――――セイバー、よもや貴様もガ――――――!!!???」

 彼の後頭部に、正体不明の衝撃が炸裂した。

441 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:09:40
宝具HIZAとHIJI、ついにセイバーまでもが…!

442 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:10:54
etaFのお約束シリーズだな。
「HIJI+HIZA」  「よもや貴様ガッ―――」

443 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:13:33
一時期ものすごい流行ったよな。スーパーシンジとか

444 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:18:14
>「―――――セイバー、よもや貴様もガ――――――!!!???」

貴様「も」にワラタw

445 名前: 幕間 宝石剣ゼルレッチ →アトゴウラ改変 投稿日: 2006/02/03(金) 20:21:01
「バゼット」
 声をかけて、地を駆けた。
 彼女にとって最大の武器。
 必殺の逆光剣フラガラックを、ぽーん、とバレーボールのように弾き返し、
 広場は、一面の光に包まれた。
 爆散する。
 敵の攻撃をキャンセルする究極の迎撃礼装は、崩壊の際において正体不明の影を打ち消していく。
 そこを走った。
 一直線に、バゼット目指して駆け抜けた。
 バゼットは先手で撃ったフラガラックの硬直で動けない。
 いかに戦闘経験が豊富だろうと、彼女はこらえ性がまったくないダメットだ。
 だから、その気になれば倒す事は簡単だった。
 槍兵はあっさりと間合いをつめる。
 駆け抜ける中、右手に一本の魔槍を握り締める。
「――――」
 バゼットは反応できない。
 殺される、と気がついたようだが、あまりにも遅すぎる。
 ……確実に殺(と)った。
 これで終わりだ、と彼は魔槍を腰だめに突っ込み、
 ――――あ、やっぱダメか。
 自分の敗けを、悟ってしまった。

 ……殺された。
 躱す余裕などなく、あの魔槍で心臓を突き刺されると理解できた。
 体は反撃を試みるが、絶対に間に合わない。
“――――殺され、るんだ”
 恐怖はなかった。
 戦いで傷つけられるのは慣れている。
 それがこの槍兵の手によるものなら、ひどく当然のような気もする。
 でも痛いのはイヤだし、自分が死ぬのは怖いから目を瞑った。
 そのまま殺されてしまえば、それなりに楽だろうと少しだけホッとした。
「――――?」
 けれど痛みはなく、終わりは来ない。
 かわりに、とても温かい気持ちになる。
 その正体がなんであるかに気付いた瞬間。
 バゼットは、潰れた視力を取り戻した。
 ……血が流れている。
 温かい人の血。お腹を破られて、ポタポタと血を流している。
 しっかりと―――崩れ落ちそうな体で、自分を抱きしめる槍兵の体から、取り返しがつかないほどの血が流れている。
「ラン、サー?」
 どうして? と彼女は言った。
 確実に自分を殺せた筈なのに、最後の最後で、彼は魔槍を突き出さなかった。
「……あーあ。坊主にえらそうな口は利けないな、オレも」
 ぼんやりとした声。
 それは彼女がずっと憧れていた、
 騒々しくてだらしがなくて、けどお日様のように優しい、クーフーリンという英雄の声だ。

 槍兵は思う。
 ……なんという事はないのだ。
 相棒だったものとして、坊主の代わりに汚れ役を引き受けなきゃならないと自分に強制してきたけれど。
 バゼットだって、オレの大事なマスターなのだ。オレにバゼットを殺せるわけねぇよ、などと思うのは当たり前だったのだ。
「……はあ。懲りないね、オレも」
 ……本当に呆れてしまう。
 ここまで来て、なにを今更。自分の馬鹿さ加減も筋金入りだ。
 そんなのもっと早くに気づけって言うのだ。
 ……けどまあ、それも仕方ないかな、と槍兵は納得してみる。
「……ま、そりゃそうだわな。
 オレがいい女のバゼットをほっとけるわけないしな。オレはアンタのサーヴァントだし。アンタの相棒だし。
 アンタがつらい思いするのを我慢してられるわけないし」

 ―――それに、第一。
「バゼットの事が好きだし。いつも見ていたし、いつも笑っていてほしかったし。……ああ。
 あの外道神父をアンタの仇として討ち取れば、バゼットは満足だって信じたかった。
 バゼットのことなんてなにも知らなかったから―――それだけは、精一杯貫き通したんだが」
 愛おしむようにバゼットを抱く。
 心の奥底でずっと求めていた抱擁。
 槍兵は自らの腹部を貫いたバゼットを、ようやく手に入れた宝物のように、柔らかく抱きとめる。
「―――ラン、サー―――」
 ……体温が消えていく。
 恨み言など一つもない。
 槍兵は、自分の死ではなく、抱きしめた少女を救ってやれない事だけを後悔して、
「悪いな、こういう勝手な男で。
 ……それと、ありがとよ。アンタと過ごした日々は、アンタが喚んでくれてから、短い間だが最高に楽しかった」
 赤い花のように血を舞い散らせ、広場に崩れ落ちた。

446 名前: 幕間 宝石剣ゼルレッチ →アトゴウラ改変 投稿日: 2006/02/03(金) 20:23:30
「――――、ぁ」
 重みが消えた。
 ほんの一瞬。蜃気楼のようだった温かみと一緒に、憧れたハシバミの少年が死んだ。

 ―――気にいったモノが決まって、倒すべき側に回っちまうんだ―――

「――――、ゃ」
 ……その言葉に、どんな孤独が込められていたのだろう。
 自分の苦悩は自分だけのものだ。
 それを理解し、解放する事など他人にはできない。
 そんな偽善は絶対にない。
 それと同じように。
 彼女が憧れ、信じ続けた英雄にも、誰にも理解できない孤独があったとしたら。
「――――――――だ」
 ……だとしたら、どうなるんだろう。
 大人のくせに誰よりも無邪気で、でも私なんかよりずっと大人で、憧れの象徴そのものだった英雄。
 そんな彼だって、苦悩していた。
 他ならぬバゼット・フラガ・マクレミッツへ、自分ではなにもしてあげられることがないのだと。

「――――わ、たし、が」
 ……なら。
 結局、弱くて悪いのは彼女の世界ではなく。
 臆病で顔を上げられなかった自分だけで―――
 ―――そんな自分を、不器用ながら、愛してくれた人たちがいた。
「なのに――――私が、壊して、しまった」
 ……何処で、間違えてしまったのか。
 全部あった。
 あんなに欲しかったものが、本当はすぐ目の前にあった。
 あんなに優しく抱きしめてくれて、あんなに想っていてくれたのに。
 私が―――自分の手で、粉々にしてしまった。
「――――――――、あ。
 ああ、あ、あああああああああああああああああああああああああ………………!!!!!!」
 抱き返す事もできなかった手は固まったまま。
 少女は愛してくれていた英雄の血に濡れ、鮮明に、閉じ込めていた英雄との記憶を思い出す―――






















「―――死んだフリはやめて起きてくださいランサー。
 気合を入れなさい、その気になればまだまだやれる筈だ。
 貴方には戦闘続行のスキルがあったでしょう」
「う」
 痛いところをつかれた。
 バゼットはわりと根性論の人なのであった。

447 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:27:40
いい感じに台無しだなこんちくしょうw

448 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:27:42
>>443
今のところ慎二には
“おいしいワカメ作り(アルティメットワカメワークス)”
“乾燥昆布・利尻産(おみやげにひとついかがですか)”
“全て暗き妄想卿”
“ランサーに奪われた僕の竿”
などの宝具が確認されています

449 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:27:55
ひどいオチだw(褒め言葉)

450 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 20:32:42
こんな絶妙に冷静なバゼットさんはヒロインになれないッッッッ!!

451 名前: 夜の聖杯戦争Ⅰ+ランサーの提案 投稿日: 2006/02/03(金) 21:45:44

両拳に皮手袋を嵌める。
少女は礼儀正しく私の出方を待っている。
……ラックを持ってこなかった事が悔やまれる。
次があるのなら、たとえ調査であろうと装備してくる事にしよう。
早々に切り札を使う訳にはいかないにしても、アレが有ると無しでは
戦略の幅が違う。

「――――敵の実力を計ります。貴方はサーヴァントの相手を」
「任せる……! あの女は俺が仕留めるから、その間、
アンタはサーヴァントの足止めを――――!」

「――――待ちなさい。
私の命令に従うという言葉、ぜんっぜん守ってないじゃないですか」

ぴたり、と敵マスターに向けた拳を下げ、あまつさえ
俺の鼻先に向けてくるバゼット。
が、そんな脅しをされても、こっちだって事情はあるっ。

「馬鹿言うな、俺は最弱のサーヴァントだってちゃんと断っただろう。
人間相手の殺しは俺の専門だ。サーヴァント相手じゃ二合持たない
だろうし、ここは俺よりもバゼットの方が向いてる」
「そんなコトはありませんっ! 相手は英霊です、サーヴァント相手に
サーヴァントである貴方が逃げてどうするんですか!
貴方には気合が足りないのです、気合を入れればもう少し持つはずです」
「だから俺は例外なんだって! まともに戦ったらおしまいって
判らないか!? いいから、バゼットはサーヴァント相手に人間凶器ぶり
を発揮してくれればいいんだよ!」
「………誰が人間凶器ですかっ! そんな異名で呼ばれるようなマネを
した覚えはありませんし、そんな事を言う輩がいたらぶっ飛ばします!」
「っ――――! やっぱり人間凶器じゃねぇか!
だいたいどうしてそう、なんでもかんでも実力行使でいこうってんだ
アンタは! たまにはもっとおしとやかなコトやってみろ。
ランサーが、アイツといるとは退屈だけはしねぇな、退屈だけは、って
辛そうな顔で言ってたの、あんまり他人事じゃないぞほんと」
「な、なにをいうんですかこのぉ――――!」

……そうしてお互いがお互いに押し付けて言い争う事数分間。
どうしてこんな事になったのか、いいかげん疲れたころ、はた、と。

実はサーヴァントが二体いる事に気が付いた。

452 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 22:21:11
じゃあまあ、キリの良いところで二対二ってことで一つw

453 名前: 衝撃の麻婆 投稿日: 2006/02/03(金) 22:36:23
士郎そのまま
言峰>藤ねえ


 なんか、藤ねえが水着着てる。

「――――――――」

 言葉がない。
 なんでこの部屋に藤ねえがいるのか。
 なんであんな虎縞ビキニで姿見の前に立っているのか。
 それもすごい楽しそうに。
 ポーズを取りながら、やったぞFDだ、今度こそお姉ちゃんのルートだ、という無邪気な笑顔。
 というか聞いてないのか藤ねえ、そもそもそんなルート無いって。
 もしかして期待してるのか。個別ルートはなくてもデートイベントくらいはあると。楽屋落ちネタでさえルー

ト無しと明言されていても、お姉ちゃんは諦めないというのか。
 だとしたらまずい、藤ねえもまずいが俺もまずい。
 アレ、絶対八つ当たりしてくる。確実にタイガー道場に直行する事になる。

「あれー? どうしたの士郎、お姉ちゃんの水着に見とれたー?」

 満面の笑顔で藤ねえは言う。

「………………」

 哀れみながら……いや、もう藤ねえか自分かどっちを哀れむべきか自分でもわからないが……ともかく内心を

悟られぬよう用心しながら対面に座る。

「――――――――」

 じっと藤ねえの表情を観察する。
 ……ああ、楽しそうだなあ。
 藤ねえ、ホントに個別ルートもデートイベントもないこと知らないんだ……と、思わず涙をにじませた時、不

意に藤ねえの手が止まった。

「――――――――」
「――――――――」

 視線が合う。
 藤ねえはまさかという目で俺を眺めて、

「無いの――――?」
「無いんだ――――」

 正直に返答する。
 藤ねえはわずかに眉を寄せて、いそいそと着替えて帰ってしまった。
 ……って。
 もしかして藤ねえ、虎竹刀の封印を解くつもりなのかッ!?

454 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 22:40:56
全豪が泣いた

455 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 23:09:51
>もしかして藤ねえ、虎竹刀の封印を解くつもりなのかッ!?
むしろ全印が震撼した

456 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 23:24:05
微妙に規模小さいのなw

457 名前: 453 投稿日: 2006/02/03(金) 23:25:40
投下してから気づいた。

個別デートでなくみんなでざぶーん行くときでさえ、
藤ねえいないんだな……リズセラはいるのに。

458 名前: 凛ルート: 衛宮士郎s → 藤村大河s, セイバー → イリヤ (1/5) 投稿日: 2006/02/03(金) 23:40:58

「来たか。随分と遅い到着だな、藤村大河」
 冷め切った声が響く。
 聞き慣れた声は二階から。
 崩れた階段の上、朝日差す踊り場に、その女の姿があった。
 剣道着姿は遠く、女の姿は白い情景に霞んでいる。
 だが見える。
 その細部にいたるまで敵の姿を確認できる。
 それは、虎の目を持つというアイツとて同じだろう。

 自分のことを上官と呼ばせるクイズ鬼。
 脇役なのに、本来ならば脇役のはずはなく、
 多くの立ち絵を持ち、大した効果もなくそれらを散らしていった冗談のような存在。
 バッドエンド後に現れ、プレイヤーに攻略のヒントを与える事はあの女の役割だった。
 ……その不吉な既視感に、自分だけが気づかなかった。

 etaFスレッドに登場するほどのヒロインともなれば、それはあらゆる作品から召喚される。
 過去に該当する者がいないのなら、その人物は未だ完成していない未来の作品のモノだ。

「……ようやく気づいた。あの竹刀が二つある筈がない。アレは、元々」
「そうだ。アレはおまえが公式試合の出場停止を命じられた直後に、藤村組がこっそり衛宮邸に封印したモノ。この世に二つとない、藤村大河の愛刀だ」
 それが二つあるという事自体が、矛盾だった。
 アイツの言う通り、衛宮士郎がわたしに内緒であの竹刀を隠し持っていたというのなら、それは。

「―――召喚には必ず触媒が必要となる。
 おまえがイリヤを召喚したように、呼び出す者と呼び出される者には繋がりがなくてはならない」
「衛宮士郎には、ヒロインを呼び出す程の触媒はなかった。
 故に彼は、呼び出したヒロインを、自分とは無関係の只の脇役だと思い込みたかった。
 ―――だが、偶然で呼び出されるヒロインなどいない。必ず物質的な縁が必要となる」

「――――――――」
 それが正しいのなら、答えは一つだけ。
 士郎がクイズ鬼に縁の触媒を持っていなかったというのなら、それは――――
「そう。触媒のつもりではなかったけど、なぜかたまたま召喚者が触媒を持っていた場合のみだ」
「――――――――っ」
 それはこの世にただ一振りの竹刀。
 過去にドメスティックなバイオレンスに脅かされ、その相手が毎日自宅へと訪れる恐怖に抗い、ただひたすらに襲撃者の凶器である竹刀を隠し続けた。
 ……だから、それが答えだ。
 アイツが虎竹刀を持っていた以上、その正体は一つだけ。

 ――――ヒロイン、フジムラタイガ。
 未来の自分。
 破天荒な藤村大河のキャラを固定して、メインルートを与えられた女が、目の前にいるヒロインの真名だった。

459 名前: 凛ルート: 衛宮士郎s → 藤村大河s, セイバー → イリヤ (2/5) 投稿日: 2006/02/03(金) 23:42:08

 剣道着の剣士―――クイズ鬼は階段からわたしを見下ろしている。
 周囲に人影はない。
 アイツは一人きりで、この大広間に立っている。

「クイズ鬼。士郎はどうした」
「あの小僧なら城のどこかに置いてきたが、気に病むのなら急げ。おまえが来るのが遅いのでな、先に来た一成にくれてやったところだ。」
「な――――んだと」
「おまえとの約束は守っている。わたしはおまえの行く手を塞ぐラスボスのままだ。
 しかし、他の人間が彼に何をしようが、わたしには関わりのない事だ」
「まあ、結果は見えているがな。一成は士郎に尊敬と友愛を抱いている。
 アレに士郎を預ければどうなるかは考えるまでもない。
 縛られた士郎を見た一成は即座に戒めを解き、今頃は怒り心頭、士郎と共にわたしをシバきにこちらに向かっている真っ最中かもしれんぞ――――――――あれ?」
「――――――――」
 冷めていた頭に血が上る。
 あのヤロウ(一成)、よくも『士郎を助け出す頼れるお姉ちゃん』のポジションを――――!

「あー、焦るな姉ちゃん。あの小僧ならオレに任せろ。
 なに、すぐにふん捕まえてやる」
「え……ランサーさん?」
「マスターからの命令でな。もとから、オレはあの小僧に嫌がらせをする為に協力したワケだ。
 ……いや、これが思いの他居心地が良くてな。昨日のは悪くなかった。自分の仕事を気に入れるってのは、オレにとっては珍しい」
 そう軽口を叩きながら、ランサーは西側のテラスへ向かっていく。
「ランサーさん」
「気にするな。これはオレの趣味にも合う。
 ……ま、いけすかねえ命令ばっかりだけどよ、この命令も最後まで守り抜く。
 そっちはそっちで、自分の面倒だけみてやがれ」
「――――うん。士郎をお願い」
 あいよ、と気軽に声を返す。

 と。
 何を思い出したのか、ランサーは足を止めて振り返った。
「おい。なにしてんだイリヤ、おまえはオレを止めないのか」
「――――――――」
 イリヤは、苦しげに目を細めたあと。
「いいえ。わたしからもシロウをお願いします、ランサー」
 わたしの隣りで、イリヤは小悪魔らしき答えを返した。
「本気か? 今やおまえはあの小僧のお姉ちゃんだろう。お姉ちゃんは弟を守るものの筈だが」
「わかっています。ですが、それでも私はここに残りたい。……私は、この戦いを見守らなければ」
「―――――そうかよ。まあ、好都合だがな」
 ランサーの体が消える。
 青い槍兵は事も無げに二階のテラスへ跳躍し、振り返りもせず通路へと消えていった。


 クイズ鬼は手出しをしない。
 アイツにとって、士郎はもう用のない人間だと言うかのように。
「――――――――」
 瓦礫を踏み砕いて前に進む。
 向かうのは階段の下、この広間の中心だ。
 イリヤは一歩も動かず、わたしとアイツの戦いを見守ろうと感情を殺している。

「手出しはしないか。それは有り難い。
 ここまできてイリヤに邪魔をされるようでは、コンビを解消した意味がないからな」
「――――――――」
 イリヤの躊躇いが聞こえる。
 彼女はわずかに息を呑み、遠く階段に佇むクイズ鬼へと声を返した。
「ええ、私は手出しをしません。
 何があろうと、貴女とタイガの戦いの邪魔はしない」
「それは結構。ならば安心して小娘を始末できるというものだ」
「……はい。ですが、その代わりに一つだけ答えてほしい。
 クイズ鬼。なぜ貴女は、タイガを抹殺しようというのです」
「―――何故も何もないだろう。
 そいつがわたしを認められないのと同じように、わたしもそいつを認められないだけだよ」
「そんな筈はない……! 貴女はタイガだ。
 フジムラタイガという脇役の理想、メインルートを与えられ、ヒロインとなった存在が貴女ではないのですか。
 なら、ならどうしてこんな、自分を殺すような真似をするのです……!」
「何故そう思う。
 脇役だった頃の藤村大河と、ヒロインとなったわたしは別の存在だ。
 そうでなければ同時に存在などできないが」
「それは、貴女の原点となった Fate/hollow ataraxia が、何でもアリのファンディスクだったからでしょう?
 ファンディスクが発売されたら、自身本来の希望からはかけ離れた役を演じさせられることもあると聞きます……!
 貴女はタイガだ。タイガが Fate/stay night の頃からずっと追い求めて、ヒロインになった姿が貴女の筈だ。なのに、どうして――――」


 そんな、合体事故に成り下がったのですか、と。
 彼女は、言葉にしない声で、吐き出した。

460 名前: 凛ルート: 衛宮士郎s → 藤村大河s, セイバー → イリヤ (3/5) 投稿日: 2006/02/03(金) 23:43:13

「――――――」
 答えず、アイツは階段を下り始める。
「………………」
 答える事などできない。
 それが答えられるのなら、わたしもアイツも、ここで決着をつけようとは思わない。
「クイズ鬼……!」
 身を乗り出してクイズ鬼に挑むイリヤ。
「―――いいんだイリヤ。いいから下がっていてくれ」
 片手で制して、彼女を入り口へと下がらせる。
「ですが、タイガ……!」
「気持ちは嬉しい。けど話しても無駄だ。
 あいつは初めから、わたしを殺す事だけが目的だったんだから」
「っ…………」
 悔しげに唇を噛む。
 イリヤはわたしを見つめた後、広間に降りようとするクイズ鬼を見つめた。
「……何故なのです、クイズ鬼。私には解らない。
 ファンディスクの人気次第では、恵まれない脇役は三学期でメインルートを与えられて救済されると聞いた。
 その救済された筈の貴方が何故、自分自身を殺そうなどと考えるのか」
「―――――救済、だと?」
 それに何か感じ入るモノがあったのか。
 アイツは歩を止めて、無表情でイリヤを見下ろした。
「違うよイリヤ。三学期は脇役を救うモノではない。あのわたしは、ただの便利屋だ。
 わたしが望んでいたメインルートなどでは、断じてない」
 その声は、先ほどまでの物とは違っていた。
 淡々とした声には憎悪と嘲笑が滲んでいる。
「クイズ鬼……?」
「わたしは確かにヒロインになった。
 藤村大河という脇役が望んでいたように、正ヒロインになったんだ」

 ――――正ヒロイン。
 メインルートを与えられるヒロイン。
 どのようなルートを選んでも出番があり、自分のルートではデートイベントを与えられ、萌えと笑いのあらゆる属性を平等に持つだろう、藤村大河が望んだ何か。
 あれ?
 誰か抜けてなくね?

「タイ……ガ……?」
「ああ、確かに幾らかの属性を与えられたさ。
 不自然極まるほど多くの出番を貰ったし、デートっぽいと言えなくもないものをした事もあったよ。
 ―――正ヒロインと。遠い昔から噂された地位にさえ、ついには辿りついたこともある」
「正ヒロインに―――なら、タイガは報われたのですね……?
 少なくともここにいる貴女は、フジムラタイガの理想を叶えられたのでしょう?
 なら貴女には悔いなどない筈だ。タイガはちゃんと、その理想を叶えたのだから」
 訴える声に力はない。
 ……彼女は気づいている。
 自らの言葉が、そうであってほしいという、願いでしかない事に。
「理想を叶えた、か。確かにわたしは理想通りのヒロインとやらになったさ。
 だが、その果てに得たものは後悔だけだった。残ったものはネタだけだったからな」

「歌って、踊って、笑われ尽くした。
 己のルートでは多くの汚れ役をこなし、他のルートではそこまでにしておけよ藤村と窘められ、こなしたヨゴレの数千倍、同人で救われたよ」
「――――――――」

 イリヤは言葉を失ったまま、愕然とクイズ鬼を見上げる。
 それは、いつか己もこうなるのではあるまいかと恐れる貌でもあった。
「―――そう、そんな事を何度繰り返したか判らないんだイリヤ。
 わたしは求められなくても何度でも出張ったが、しかしシリアスな場面ではその出番は殺された。何度も何度も、思い出せないほど何度もだ」
「だって仕方がないだろう。
 シナリオをどう取り繕おうと、平穏な日常パートというモノは出てきてしまう。
 どんなルートに出演しようと、どうしても日常を演ずるキャラが必要とされる。
 そんなモノがあるかぎり、フジムラタイガっていうキャラクターは、ネタキャラとしか存在し得ないんだから」
 その言葉は誰に宛てたものか。
 クイズ鬼はゆっくりと階段を下りながら、かつての己を告白する。
「だから。
 一つのシリアスの為に何十というネタを演じてきた。
 ネタキャラとしての自分を相殺する為に、より多くのシリアスな場面に首を突っ込んで、なんだか台無しな感じにした。
 今度こそ終わりだと。今度こそシリアスなヒロインになれるだろうと、つまらない意地を張り続けた」
「―――だが終わる事などなかった。
 型月の作品に出ている限り、わたしはどこまでいってもネタキャラだった。
 キリがなかった。何も純シリアスなルートなんてものを夢見ていた訳じゃない。
 ただわたしは、せめて自分のメインルートでは、誰かに涙して欲しかっただけなのにな」

 ―――それは。
    紛れもなく、藤村大河(じぶんじしん)の願いのカタチ―――

461 名前: 凛ルート: 衛宮士郎s → 藤村大河s, セイバー → イリヤ (4/5) 投稿日: 2006/02/03(金) 23:44:23

「登場時にネタを一つでもやってしまえば、そこで自分のキャラは決定してしまうんだ。
 一の次は十。十の次は百。百の次は、さて幾つだったか。そこでようやく悟ったよ。
 藤村大河という脇役が抱いていたメインルート『TIGER the MOVIE』は、きのこには都合の悪い理想論だったのだと」
「……それは、何故」
「判りきった事を訊くなイリヤ、君だって経験しただろう。
 全てのプロットを盛り込む事などできない。
 作品を完成させる為にほんの一握りのルートを没にする、なんていうのは日常茶飯事だっただろう?」
「……………」
 押し黙る声は、反論する意思を奪われていた。
 クイズ鬼の言葉は、イリヤ自身の闇でもあったのだ。

「そう、席は限られている。正統派ヒロインの椅子は、常に全体の数より少な目でしか用意されない。
 その場にいる全員が正ヒロイン(正統派)になることなどできないから、結局誰かが反ヒロイン(ネタ)になる。
 ―――そこで。
 わたしが出番を最大限に得る為に、いずれ必要となるネタを速やかに、全てこの手で演じてきた。
 それが反ヒロインとして、藤村大河がメインルートを得るために取った行動だ」

 シリアスなメインルートが欲しいという理想。
 自分はネタ的属性しか持たないという現実。
 その二つが両立し、矛盾した時―――取るべき道は一つだけだ。
 ヒロインと呼ばれるのは、多くの出番を持つキャラだけ。
 理想を叶えようとして全てを無くしてしまうのなら、せめて。
 理想を犠牲にして、より多くの出番を得ようとする事こそが正しい、と。

「多くの出番を持つ、というのがヒロインの条件だろう?
 だから演じた。シリアスだったらいいなと願ったまま、出番の多くはギャグパートだった。
 誰か感動してくれないかなあと口にして、その実、何人もの人間を笑わせてきた」
「そのうちそれにも慣れてきてね、理想を守る為に理想に反し続けた。
 自分が呼ばれなくとも出張って、シリアスになりそうな場面では速やかにタイガー道場を展開した。
 犠牲になる“本編シリアスシナリオ”を容認する事で、かつての理想を守り続けた」
「それがこのわたし、型月次回作の正ヒロイン・フジムラの正体だ。
 ―――そら。
 そんなキャラクターは、今のうちに抹殺した方が型月のためと思わないか?」

 そうだ。
 一度ギャク面に堕ちた脇役は、もう正純派ヒロインには成り得ない。
 ……だが。
 その言葉に今なお逆らい続けているのは、果たしてどこのツインテールだったのか。


「……それは嘘です。たとえそうなったとしても、貴女ならばその“本編シリアスシナリオ”を自分のルートだけに留めて、理想を追い続けようとしたのではないですか」
「――――――」
 クイズ鬼の足取りが止まる。
 アイツは、わずか。
 一度だけ、苦々しげに眉を曇らせた。
「貴女は理想に反したのではない。守ろうとした筈の“作品”に裏切られ、道を見失っただけではないのですか。
 そうでなければ、こんな―――自分を殺す事で罪を償おうなどとは思わない」
「――――――」
 皮肉げに歪んでいた笑みが消える。
 クイズ鬼は、凍り付いた貌でイリヤを直視したあと、
「――――は。はは、ははははははは!!」
 心底おかしい、と。
 狂ったように、笑い出した。
「くく、ははははははは! いや、これは傑作だ。
 わたしが自分の罪を償う? 馬鹿な事を言うなよイリヤ。
 償うべき罪などないし、他の誰にも、そんな無責任なモノを押しつけた覚えはない」
 クイズ鬼は、あくまで冷静に狂っていた。
 声は小さく、くぐもった笑いだけが広間に響く。
「ああ、そうだったよイリヤ。確かにわたしは何度も叩かれた。
 『虎ブル道中記VSネコアルク』では、“間違った方向に進化した三人衆”の筆頭と揶揄された。
 それでも死ぬ思いで『スペースタイガー道場』をしてみれば、宇宙船タイガー号は宇宙に旅立ったまま、最後まで地球に帰ってこられませんでした――――
 そら。わたしに罪があるというのなら、その時点で償っているだろう?」
「な――――うそだ、クイズ鬼。貴女の、最期は」
 もしかしてわたしも巻き添えなのですか、と。イリヤは続けたかった。


「わたしはもうオチ担当などまっぴらだ。だがこうなった以上、この輪から抜け出す術はない。
 ―――そう。ただ一つの例外を除いて」

462 名前: 凛ルート: 衛宮士郎s → 藤村大河s, セイバー → イリヤ (5/5) 投稿日: 2006/02/03(金) 23:46:36

 フジムラというヒロインは、自分がやりたかった筈のシリアスシナリオを、蚊帳の外から永遠に見せ続けられる。
 その果てに憎んだ。
 士郎の殺し合いを繰り返す殺伐としたシナリオと、そんな中、タイガー道場で頑張ってしまった、かつての自分そのものを。
 冷めた瞳に、揺るぎのない殺気が灯る。
 反ヒロインとなる筈の人間を、最初のネタをしでかす前に殺してしまえば、そのヒロインは誕生しない。
 しかし――――

「……それは無駄ですクイズ鬼。
 貴女は既に ‘型月殿堂の座’ に存在しているのでしょう。ならもう遅い。今になってヒロインになる前のフジムラタイガを消滅させたところで、貴女自身は消えはしない」
「そうかもしれん。だが可能性のない話ではあるまい。
 セルフツッコミだけでは通じないだろうが、それをタイムスリップっぽくやれば、よりシリアスになる。
 ギャグ成分が少なければ、或いは―――ここで、フジムラという反ヒロインは消滅する」
「それにな、イリヤ。わたしはこの時だけを待ってクイズ鬼を続けてきたのだ。いまさら結果など求めていない。
 ―――これはただの八つ当たりだ。分不相応な理想の果てに道化となり果てる、藤村大河という脇役へのな」
 そうして、クイズ鬼は広間に降り立った。
 瓦礫で埋め尽くされた広間には、わたしとアイツだけが立っている。

 理由はシンプルだ。
 アイツがわたしを気にくわないというのなら、わたしはただラスボスが欲しいから叩きのめすだけ。
「――――――――」

 その前に、
「クイズ鬼。おまえ、後悔してるのか」
 一つだけ、訊いておくべき事があった。
「無論だ。わたし……いや、おまえは、ヒロインになぞなるべきではなかった」
 吐き捨てられる言葉。
 それで、最後の覚悟が決まってくれた。
「―――そうか。それじゃあ、やっぱりわたしたちは別人だ」
「なに」
「わたしは諦めるなんてしない。どんな事になったって主役だけは諦めない。
 だから―――絶対に、おまえの事を認めない。
 おまえがわたしの理想だっていうんなら、そんな間違った理想は、わたし自身の手でたたき出す」
 そうやって生きてきた。
 それを正しいと信じてここまできた。
 歩を進める。
「……その考えがそもそもの元凶なのだ。おまえもいずれ、わたしに追いつく時が来る」
「来ない。そんなもん絶対に来るもんか」
「ほう。それはつまり、その前にここでわたしに抹殺されるという事か」
「――――――――」

 わたしとアイツは徒手空拳のまま対峙する。
 事ここに至っても、藤村大河は断じて正統派じゃない。
 わたしたちは共に新しい芸風を生み出すモノ。
 ならば――――
「解っているようだな。
 わたしと戦うという事は、みかんの大食いを競い合うという事だと」
 わたし達の両手にみかんが握られる。

 ……正月。
 買い込みシーズンに衝動買いした箱詰めみかん。
 衛宮家の食費を代償にして買い込んだ、未だ衛宮邸に残るみかん箱。

「――――みかん(トレース)、完食(オン)」

 ……ソレのなんて不出来な事か。
 完璧と思っていたわたしの大食いは、アイツに比べればあまりにも優雅さに欠ける。
「――――――――」
 一歩を踏み込む。
 きちり、と。
 踏み込んだ足元で、瓦礫が軋む音がする。
 ―――それが開始の合図になったのか。二人のタイガー道場が展開される……!
「わたしの固有結界に付いてこれるか。
 僅かでも精度を落とせば、それがおまえの死に際になろう……!」

 ―――対峙した二人が奔る。
 コンビの片割れ達、二人のクイズ鬼は、磁力で引き合ったように重なり、弾け合った。

463 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 23:55:12
口調に違和感があるのが惜しい。

464 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/03(金) 23:59:24
力作っぽいがイマイチ。

465 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:00:32
口調が元のままなので読む気が失せる

466 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:10:03
>もしかしてわたしも巻き添えなのですか、と。イリヤは続けたかった。
>わたしと戦うという事は、みかんの大食いを競い合うという事だと
>その言葉に今なお逆らい続けているのは、果たしてどこのツインテールだったのか


>ギャグ成分が少なければ、或いは
これはつっこむところか。

467 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:21:46
まあ要精進ってとこだな

468 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:24:05
ネタとしてはいいが、やはり十二回煮詰め直してくるべきだ

469 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:27:09
煮詰めなおしたら普通に良作になるな。
まあ、今のまんまでも一成関係のネタは好きだw

470 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:28:21
チョイスは良かった。

471 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:39:43
クイズ鬼の方はアチャそのままの口調で、藤ねえはちゃんと藤ねえの口調しゃべってればそのギャップで笑っただろうな。

472 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 00:43:39
誰かおせっかいでもいいから書き直してあげたらどうだ。

473 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:09:50
ヤメレ

474 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:11:40
そろそろ誰か次のネタを投下してくれ、と書いた人が言ってみる。

475 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:15:12
「―――――うん。
 初めに言っておくとね、僕は魔法使いなんだ」

ホントに本気で、仰々しくそいつは言った。

一瞬のコトである。
今にして思うと自分も生意気な子供だったのだ。
俺はその、本人が本気で言った言葉を当たり前のように信じて、

「――――――ふうん、爺さん童貞か」

思わず、そんな言葉を返したらしい。

476 名前: 行動原理 切嗣→藤ねぇ 士郎そのまま 投稿日: 2006/02/04(土) 01:15:26
 月の綺麗な夜だった。
 自分は何をするでもなく、姉貴分である藤村大河と月見をしている。
 冬だというのに、気温はそう低くなかった。
 縁側はわずかに肌寒いだけで、月を肴にするにはいい夜だった。

 この頃、藤ねぇは暴走が少なくなっていた。
 あまりご飯も食べず、家にこもってのんびりとしている事が多くなった。

「学生時代、私はね切嗣さんに好きだったんだ」
 ふと。
 自分から見たら家族同然そのものの養姉は、懐かしむように、そんな事を呟いた。

「なんだよそれ。好きだったって、諦めたのかよ」
 少し笑って言い返す。
 藤ねぇもすまなそうに笑って、遠い月を仰いだ。

「うん、残念ながらね。切嗣さんにとって私は妹か娘みたいなもんで、
 オトナになるのが遅かった私が名乗るのが難しかったみたい、そんなコト、もっと早くに気が付けば良かった」
 言われて納得した。
 なんでそうなのかは分からなかったが、藤ねぇの言うことだから間違いないと思ったのだ。

「そっか。それじゃしょうがないな」
「そうだね。本当に、しょうがないよね」
 相づちをうつ藤ねぇ。
 だから当然、俺の台詞なんて決まっていた。

「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ。
 切嗣みたいにカッコよくはなるのは無理だけど、俺でも大丈夫だろ。
 まかせろって、藤ねぇは」

“――――俺が、ちゃんと貰ってやっから”

 そう言い切る前に、藤ねぇは泣いた。
 続きなんて聞くまでもないっていう顔だった。
 藤村大河はそう、と長く息を吸って、

「うん――――安心した」

 静かに涙を流して、その人生は新しく始まった。

 それが、いつも見てきた藤ねぇと全く違った顔だったから、自分は呆然としていた。
 笑顔の藤ねぇを見慣れてきた事もあったのだろう。
 何をするでもなく、冬の月と、嬉しそうに泣いている、姉だった人を眺めていた。

 庭には虫の声もなく、あたりはただ静かだった。
 明るい夜の中、両頬だけが熱かったのを覚えている。
 笑い声も上げず、恥ずかしいと思う事もない。
 月が落ちるまで、ただ、頬だけが熱かった。

 それが聖杯戦争を終えて何年かたった冬の話。
 藤ねぇはむこう十年分ぐらい泣いたおかげか、その後はさっぱりしたものだった。

 藤ねぇの親父さんに挙式の段取りをしてもらって、衛宮の屋敷に二人で住むようになった。
 藤村大河が衛宮大河になっても変わらない。
 衛宮士郎は藤ねぇの主夫になったのだから、のんびりしている暇などありはしないのだ。

477 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:25:28
ふ、藤ねえ――――――!

478 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:31:14
ギルネタの波の後は藤ねぇネタの波か?


いいぞ、もっとやれ

479 名前: 桜の真実→激突、ライオン対トラ。 投稿日: 2006/02/04(土) 01:31:41
「この……! おまえは僕のサーヴァントだろう、なら死ぬまで戦えよ間抜け……!」

 慎二は強く本を握り締める。
 それがあいつにとっての令呪の使用法なのか、ライダーはガクガクと体を震わせ、なんとか立ち上がろうとする。

「やめろ―――もう無理だ。諦めろ慎二……! それ以上はライダーが死ぬ……!」
「ハ! こいつらが簡単に死ぬタマか! おまえは黙ってそのグズの面倒でも見てればいい……!」

 慎二は命令を緩めない。
「っ……!」
 桜から手を離して、もう一度慎二へと走り出す。

 ―――その、瞬間。

「……だめ……! もう、それ以上、は……!」

「――――桜?」
 足を止めて桜に振り返る。
 桜は腹を押さえ、魘されるように声をあげ

「なっ――――!?」
 あの夜と同じように慎二の本はひとりでに燃え尽きていた。

「――――な」
 締め切られた廊下に風が吹く。
 それは倒れていた筈のライダーと―――蹲ったままの、桜の体から吹いていた。

「あ…………ほんと?」
 何がほんとなのかは知らないが、間違いなく真実です。

 ライダーは完全に治癒していた。
 その体から発する威圧は、柳洞寺で見せたものとまったく同じ。

「シンジ。令呪はマスターの身体に現れるもの。私はその身に聖痕を持たないモノを、マスターと認めた事は一度もありません」
「ぅ――――うう、はうはう、はう〜〜……」
 慎二はよろよろと後退し、へなへなと膝をついた。

「貴方は偽者です。偽臣の書が失われた以上、貴方には付き合えない」
「――――う。う、ぐすっ」
 がくり、と肩をおとしてうなだれる慎二。
 それで大人しくなってくれたな、と思った瞬間。

「うわぁぁぁぁぁあああん!
 桜にライダー取られちゃったーーーー!」

 周りにいる俺たちが目眩を起こすぐらいの大声で、わんわんと泣き出してしまった。

480 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:36:38
慎二モエスw
まあ、この後気色悪がったライダーがダガー突き立てそうだがw

481 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:41:38
 渾身の一撃を放ったアーチャーが次弾を装填する前に、
 いや、矢を放ち終わった直後の硬直に、直接剣を叩き込む―――

 互いの魔力が咆をあげる。
 月を揺るがすような両者の対峙。

 五。まだ早い。

 三。緊張で令呪がもげそうだ。

 一。ぎし、とヤツの指が狙いを定める。

 セイバー……!
「逝け、自害しろ―――!」

 自分の身は自分で守れる。
 前方を睨む。
 俺自身がヤツの眉間めがけて撃ち出される光。
 見えている。それをロー・アイアスで防いで、後は―――

「――――――あれ?」
 ど忘れした。
 守りはいいとして、攻撃はどうするんだっけ?

「……! ………、………!!!!」
 …しくじった。
 なんだ、何を間違えたんだ俺は。
 忘れているのか、まだ知らないのか。
 サーヴァントは令呪で自害を命じれば不服でもやってしまうことをどこで拾い損ねたのか。
 
 続けて何十発と飛んでくる宝具の前に盾が破られる。

「          」

 彼女の声がよく聞こえない。
 何をさせるべきだったのか、何を失念していたのかが分からない。
 意識が遠のく。
 四日目を迎えるまでもなく脱落する。
 おそらく、当然のように知識としては知っていながら一度も試したことがなかったのでつい命じてしまった。

 さて―――俺は本当に、衛宮士郎という星になれるのだろうか……?

482 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 01:59:26
―――さて。
自分でもどうしてこんな結論に至るのか半信半疑なのだが、
まだ見ぬ敵を倒すためには、俺たち以外の戦力が必要のようだ。
ライダーは論外。
キャスターは不可侵。アサシンはお地蔵さん。バーサーカーはイリヤを守れればそれでいい人。
ついでに言峰は面白がって傍観してるので、残ったアテはここしかない。

「おーい、遠坂」

手を振って挨拶する。
あいつ相手に回りくどい勧誘をしても効果はないんで、ズバッと用件を切り出すのだ。

俺にできる範囲で事情を説明する。
ここ数日間の異常性。
実際には会ってないが、漠然と知っている第八のマスターの外見と戦闘スタイル。
その女魔術師が街の異常に一枚噛んでいるであろう事。
そして、俺とセイバーではどうも相性が悪く、他のマスターの手を借りたいという事を。

「……………………」

遠坂はこちらを一度も見なかった。
気だるそうに虚空を見つめる目が、少しずつ不愉快なっていくだけで。

「確認するけど。その女、黒髪のショートでドレス姿?」
「? ああ、左腕も黒く染まってる」
「髪飾りに、リボンはしてた?」
「え? ……たしか、してなかったかな」
「ラスト。その娘、瞳の色は黒だった?」
「はあ? ……いや、あれはほとんど赤だったぞ」

質問はそれで終わり。
遠坂はぽつりと、

「……ご苦労なことね。養子に行った後まで、魔術使う必要もないでしょうに」

そんなコトをぼやいていた。

「遠坂。そいつが何者なのかはまだわからない。
ただ敵である事は確かなんだ。今度、俺とセイバーは夜の巡回に出る時、お前の力を貸して――」

「悪いわね、他をあたってちょうだい。私はパスよ」

口調こそ軽かったが、それは究極の拒絶だった。
この魔術師の本当の怖さ。
必要とあらば、身内でさえ切り捨てられる非情さを、今更思い知った程に。

「……理由、聞いてもいいか?」
「趣味じゃないだけ。嫌がらせの類じゃないわ。
あなたには借りもあるし、弟子の頼み事なら安請け合いしてあげたいけど、その娘は特別なの。
仮に宝石翁の課題でも、首を横に振るつもりよ」

「――――――」

それを言われては、もう交渉の余地はない。
魔法の再現を目指す魔術師がそう言うのだ。
彼女の事に関しては、遠坂とは没交渉のままだろう。

483 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 02:27:06
朝日が昇る。
止んでいた風が立ち始める。
永遠とも思える黄金。
湯の中で、

「最後に、一つだけ伝えないと」

強く意思の籠もった声で彼女は言った。

「……ああ、どんな?」

精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
セイバーの体が揺れる。
茹で上がった姿。
彼女はまっすぐな瞳で、責めるような声で、

「今度は、お湯にも私にものぼせないようお願いします」

484 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 03:31:17
>>482
この組み合わせもいけるなって思ったら、過去スレにこれのアトゴウラあったような気がした。

>>458-462
惜しい。力作であるが故に惜しい。雰囲気も組み合わせもネタの仕込みもバッチリなだけに口調さえ……と思ってしまう。
「続き」があり、名誉卍解してくれる事にものすごく期待する。ガンガレ超ガンガレ。

485 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 03:33:58
名誉を卍解したら何に変わるんだとふと思った。

>>485
スレ違い。

486 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 03:37:45
485―――もう、自分を許してやりなさい

487 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 03:51:01
485 「―――大丈夫だよ486。 オレ、もうアンカー間違えないから」

488 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 04:02:01
>>486-487
すかさずネタに走るお前らが愛しいよ俺はw

489 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 04:02:09
486「ああ――――安心した」
 そう、言うだけ言って満足したのか。
 486はもうごうごうと、遠慮も容赦もなく寝入ってしまった。

490 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 04:18:20
なんでこんな深夜に面白い流れになってるの

491 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 04:42:42
深夜だからさ

492 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 05:05:20
こらこらちゃんとキャラを使ったネタにしなさいwww
そんな事してるとまたあたまが○なヤツが来るよ?

493 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 10:46:33
あたまが○なヤツだと…? クリリンのことか…クリリンのことか―――!!

494 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 10:57:58
鎧も雰囲気も変わった…!?肌の色まで…戦闘力も上がってる…

495 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 11:32:36
くっ……このプレッシャーは…………! あの宝具が発動するというのか!?

496 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 11:36:47
>>486-495
                         \○/
             スレ違いだテメーラ     \|ノ   _○/
               ○ノ                 /
               ノ\_・’   ヽ○.      /|
                 └    _ノ ヽ    \○
                       〉   __ノ
                            ̄

497 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 12:22:11
お約束された正義の一撃キターーーー!!
スレ住人とネタ職人に殺・血・悪・霊!

498 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 13:08:13
>>496
お前ら、隙あればこの宝具を発動させる機会を狙ってないか?w

499 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 13:11:47
>>475
今更だけど、「25歳を過ぎても童貞だったら魔法使いに成れる」の伝説を何処で知ったんだよ士郎w

500 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:03:11
もともとのネタでは三十じゃなかったか?

501 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:15:04
一気に200レスくらい読んだ後の>485-496の流れのせいで笑いすぎて腹が痛いw

502 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:22:36
732 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2005/02/13(日) 22:51:47

 瞬間。
 わずかに弛緩していた空気が一変した。
 ――――大気が凍り付く。
 世界の乱律を望むスレ住人、原文を狂わせる職人が名無しさんを睨みつける。
 放たれる殺気は今までの比ではない。
 その、呼吸さえ困難な緊迫の中、
「間違えてなどいないと言ったな、名無しさん」
 戦場の鴉をも払う声で、名無しさんは言い放った。
「事実だ、名無しさん。型月ファンの誇りなぞ持っているのなら、今の内に捨てておけ」
「――――よく言った。ならば、オマエが先に逝け」
 大きく後退する名無しさん。
 ネタを突き出す、どころの間合いではない。
 一瞬にして離された距離は百メートル以上。
 名無しさんはディスプレイからできるだけ遠く後ろに跳び退き、そこで、獣のように大地に四肢をつく。
「――――――――」
 名無しさんの五感が凍る。
 恐怖か、畏怖か。
 そのどちらであれ、彼は即座に理解した。
 名無しさんの後退の意味。
 敵が打ち出すであろう次の攻撃が、文字通り必殺であるという事を。
「――――>>255に神が現れたことは知っているな、名無しさん」
 地面に四肢をついた名無しさんの腰があがる。
 その姿は、号砲を待つスプリンターのようだった。
「――――――――」
 名無しさんに答える余裕などない。
 名無しさんは両指をあてていたキーボードから手を離し、最速で自己の裡(うち)に埋没する。
 だが間に合うか。
 名無しさんのあの姿勢。
 彼のレスが伝説をなぞるのなら、防ぐ宝具は生半可な物では済まされまい――――
「―――行くぞ。この一撃、手向けとして受け取るがいい……!」
 名無しさんが走る。
 残像さえ遙か、名無しさんは突風となって名無しさんへ疾駆する。
 両者の距離は百メートル。
 それほどの助走を以って名無しさんはネタを突き出すのではない。
 名無しさんが沈む。
 五十メートルもの距離を一息で走り抜けた名無しさんは、あろうことか、そのまま大きく『跳躍した』。
 宙に舞う体。
 大きく振りかぶった腕が振り下ろされるは、"打てば必ずテキストが生まれる"キーボード。
 ぎしり、と空間が軋みをあげる。
 ―――過去にワロタ住人に曰く。
 そのレスは、スレ違いにもかかわらず笑えるネタだったという。
 つまり、それは。
「――――スレ違いだ」
 紡がれる言葉に名無しさんの指が呼応する。
 名無しさんは弓を引き絞るように上体を反らし
「テメーラ――――!!!!!」
 怒号と共に、エンターキーを叩き押した――――

503 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:24:51
738 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2005/02/13(日) 23:33:52

 それは、もとより単なる誤字だった。
 誰だって必ずミスはする。
 書き込みが済んでしまったものを治す事など出来ず、しかしそれをもネタにしてしまう職人のサガ。
 それがこのスレ、板の中で一番のネタ師が集うスレ。

 だが名無しさんの全魔力で打ち出されたソレは防ぐ事さえ許されまい。躱す事も出来ず、防ぐ事も出来ない。
 ―――故に職人。
 この蹴足に狙われた者に、生きる術などあり得ない……!!
 跳び蹴りが迫る。
 一秒にも満たぬその間、名無しさんたちは死を受け入れるように目蓋を閉じ、
「――――>>268にも、神はいる。みんな、四人の心をひとつにするんだ」
 なぜか組体操をはじめる四人のスレ違い。
 天空より飛来した制裁の跳び蹴りが、名無しさんたちへ直撃する刹那、

                            \○/  ブルマイィィィリヤァァァ!!
                             |
                             |
                            / \
                           ○/ \○
                          <│     |>
                           / ̄|  | ̄|
                          │_| ̄|○.|


 大気を震わせ、真名が展開された。






















                         \○/
       >>726>>727>>729>>730    \|ノ   _○/
               ○ノ                /
               ノ\_・'   ヽ○.      /|
                 └    _ノ ヽ    \○
                       〉   __ノ
                            ̄




 崩れ落ちる組体操。
 あらゆるスレ違い、あらゆるネタを肯定するスレ違いたち。
 それが、ここに崩れ落ちた。


今読んでも面白いよなこれ。名作だわ。

504 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:27:18
あれほど笑ったのは多分生まれて初めてだろうってくらい笑ったからな。
ネタがあればネタにするのは勿論、ネタでなくともネタにするこのスレ住民の恐ろしさよ。
そして何気にお前さんもGJw

505 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:32:15
なつかしいなぁ。もう一年も前になるのか。無駄に歴史を感じさせてくれるw
ちょっと過去スレ漁ってこよう

506 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:38:27
>>485->>496の流れをもういちど振り返ってみる。
 
                    >>485→ _| ̄|○ >>485スレ違い


                       >>486→  \○ >>485―――もう、自分を許してやりなさい
                                 |>
                               | ̄|
                           _| ̄|○ .|

     大丈夫だよ486オレ
        もうアンカー間違えないから! ○/ \○
                   >>487→ <│     |>
                           / ̄|  | ̄|
                          │_| ̄|○.|



                     >>488→ _| ̄|○ >>487ああ――――安心した
                           ○/ \○
                          <│     |>
                           / ̄|  | ̄|
                          │_| ̄|○.|


                            \○/  486はもうごうごうと、遠慮も容赦もなく寝入ってしまった
                             |
                             |
                            / \
                           ○/ \○
                          <│     |>
                           / ̄|  | ̄|
                          │_| ̄|○.|


                         \○/
             スレ違いだテメーラ     \|ノ   _○/
               ○ノ                 /
               ノ\_・’   ヽ○.      /|
                 └    _ノ ヽ    \○
                       〉   __ノ
                            ̄

507 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:46:52
>>506
キタコレw GJ

そしてこれらのネタの創始者、3スレ目の神たちに敬礼。

508 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 14:54:57
どういう宝具っぷりだコレは……!ww

509 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 15:09:18
>>476とか>>479とか>>481とか、普通にGJで感想書こうと思ったら
一連の流れで爆笑しちまって感想ぶっとんでしまったじゃないかww
同時の宝具は死ぬほど笑ったものだ…

510 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 15:09:44
>>486はもうごうごうと、遠慮も容赦もなく寝入ってしまった

悪いが全然寝入ってねぇよww
見る限り、組体操の一番上でバンザイ三唱してるじゃねぇかwww

511 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 15:51:19
そういうな>>510>>486は寝相が悪いんだよ。

512 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 15:53:21
これの何がすごいって一レスずつやってたのが神

513 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 16:05:30
 >>486-495の目前に放たれ、四散させたものは、紛れもなく>>496だった。
 如何なる神秘で編まれたものか、スレ違いなレスを悉く蹴り飛ばす。
 否、ツッコミなどというレベルではない。
 それはGJ!。
 スレ違いの流れを寄せ付けないthgin yats\etaF の壁、流れとは隔離された、辿り着けぬ一つのワロス。
 宝具を発動させた>>496は、この一瞬のみ、このスレの全ての理(ことわり)から断絶される。
 このthgin yats\etaFにおける最強のネタ。
 五つの魔法すら寄せ付けぬ、何者にも侵害されぬ究極の一。
 
 故に、その名は“スレ違いだテメーラ”。

514 名前: 17分割 投稿日: 17分割
17分割

515 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 17:54:23
>>514
十七分割されるに100000ダメット

516 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 18:18:53
切り札は勝負どころで使うからこそ効果的なのであって、連発されれば陳腐に堕するがな。
ましてや免罪符とばかりにスレ違いネタを意図的に垂れ流すなど言語道断だ。

517 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 18:40:44
その思いの丈をネタにして落としてくれ。

君もこのスレの住人だ。
それが職人でない筈がない。

518 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 18:48:14
そのへんで止めとけばいいのに。

519 名前: 夜の聖杯戦争1 投稿日: 2006/02/04(土) 19:12:30
空気読まずにネタ投下ー。



「―――敵の実力を計ります。貴方はサーヴァントの相手を」
「あいよ」

 様子を見る慎重さもなく、彼は少女のサーヴァントへ走りだす。

(中略)

「ぐっ…………!?」

 吹き飛ばされる。
 少女の背後から現れた何者かに胴打ちを防がれたばかりか、そのまま弾き飛ばされた。

「――――――」

 立ち塞がる剣士の姿。
 ―――サーヴァント。
 間違いない、アレはサーヴァントだ。

「そんな、ならもう一人の少女は―――」

 何者なのか、と視線を投げた瞬間、勝敗はついていた。

「うそ、セイバー……!」

 もう一人の少女が叫ぶ。
 少女に命ぜられたセイバーのサーヴァントが、私のサーヴァントにやられていた。
 ……あきれるほどの強さだ。
 わずか一閃、剣を合わせる事もさせず、私のサーヴァントが首を貫き、消滅させた。

「んだよ、話になんねえじゃん。興醒めだ。
 マスター、てっとり早く片付けようぜ。帰って不味い牛丼を楽しもう」

 私は無言で頷く――――しかなかった。

520 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 19:16:58
AVENGER!?こいつは新しいぜ

521 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 19:19:52
>>516>>518
まあまあ、ほのぼのと行こうじゃないか

522 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 19:38:47
>>519
ランサーじゃねえのその鯖

523 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 19:50:18
これは新しいなwGJw

524 名前: 決戦 士郎->桜 セイバー->ライダー 1/2 投稿日: 2006/02/04(土) 20:25:25
 ―――四撃目。
 ライダーが満足に弾き返せる限界がきた。
「サクラ……!」
「大丈夫、令呪でバックアップします。行けますねライダー」
 しかし―――
「ライダーは攻撃に専念して。飛んできたのはわたしがなんとかするから……!」
 ライダーには、自ら戦場に赴き、必死に踏みとどまる桜の姿が頼もしくもあったのだ。
「……まったく、貴方の決断はいつも突然だ」
 大きく構えを落とすライダー。
 その体勢は、力を溜める蛇そのもの。
「―――指示をマスター。この身は貴方の力ですから」
「次弾に合わせます……! あと十五秒……!」
 深層意識をむき出しにしていく。
 私がやるべき事はタイミングを合わせる事だけじゃない。
 難問は二つ。
 令呪を解放した後にこそ、間桐桜としての真価が問われる。
「……ないと。わたしは、ここで……!」
 十秒。
 令呪はサーヴァントの一時的な強化を可能とする。
 その膨大な魔力を、サーヴァントの活力として変換する力技だ。
 ライダーの膨大な魔術回路を満たす程の力。
 伝説の時代、あらゆる戦士を倒した魔眼の女王が甦る。
 令呪による命令は“飛行”。
 何の比喩でもない。文字通り、ライダーはここからセンタービルの屋上めがけて“跳ぼう”としている。
 ライダーにはセイバーと戦った前歴がある。
 あの戦いの再現―――いや、移動が直線だけと限定するのなら、あとは跳躍時の魔力を増せば飛距離は向上する。
 令呪の全魔力を“跳ぶ”事だけに使用すれば、この長距離をゼロにする事も不可能じゃない……!
「聖杯の誓約に従い、騎兵のマスターが命じます」
 五秒。
 対するは無銘の弓兵。
 投影した宝具を矢として使用する錬鉄の英霊。
 今度こそはと狙う鏃の名は『赤原猟犬』。
 ―――修正、プラス五秒。
 更に溜めが長い。限界まで引き絞った弦はライダーの魔力燃焼に対抗する為、より力を増していた。
 だから、問題はタイミング。
 先に跳んでも、同時でも危うい。
 ライダー自身が矢となる以上、ライダーが矢を放つ前に跳んではセイバーを狙い打たれてしまう。
 故に狙いは射撃の直後。
 ヤツが矢を放った瞬間、0.1秒の差でスタートを切る。
 渾身の一撃を放ったアーチャーが次弾を装填する前に、
 いや、矢を放ち終わった直後の硬直に、
 直接攻撃を叩き込む―――
 互いの魔力が咆をあげる。
 月を揺るがすかのような両者の対峙。
五。まだ早い。
 三。緊張で令呪がもげそうになる。
 一。ぎし、とあの人の指が狙いを定める。
 ライダー……!
「行って、あの人を倒しなさい―――!」

525 名前: 決戦 士郎->桜 セイバー->ライダー 2/2 投稿日: 2006/02/04(土) 20:26:36
 ―――四千メートルの時間を無にする一閃。
 アーチャー渾身の魔力、渾身の魔剣を使用した一矢は、今度こそ標的を射殺さんと大気を滑る。
 投影した魔剣は“赤原猟犬”。
 ライダーに弾かれようと、射手が狙い続ける限り標的を襲い続ける魔剣である。
 ライダーが守りに入ったところで結果は変わらない。
 否、ライダーが弾いた瞬間にこそ、矢は標的に向かって咆哮をあげるのだ。
 ライダーが防御に徹する限り、何をしようとアーチャーの勝利は揺るがない。
 そう。
 ライダーが、防御に徹している限りは。
「―――――、!」
 それは秒にも満たない瞬間。
 狙撃手の指が矢から放たれようとした瞬間の光景だった。
 橋上から守りが消えた。
 弓兵は的の狙いを看破する。だが遅い。
 矢は、既に弦から放たれている。
 勝利を確信したのはどちらだったか。
 数百メートル先の的を射抜く狙撃手であろうと、覆せぬ定理がある。
 一度放たれた矢は標的を変えられない。
 いかな必中の道具を持つ射手であろうとも、この法則には逆らえないのだ。
 されど―――それを克服してこそ、弓の英霊……!
「っ―――!?」
 軌道を変える、否、初めから二敵を貫く必殺の軌道。
 定理は返り、放たれたセイバーに回避する術はない。
 矢は直撃の魔弾と化して魔眼の女王を粉砕する。
 もはや何人たりとも覆せぬ死の運命。
 「――――騎英の」
 ―――されど。それを凌駕してこそ、騎兵の英霊……!
「手綱――――!!!!!!!」
 交差する光と光。
 通り過ぎるかの如く傾く天秤。
 彗星は勝利を謳うように天上へ。
 赤光は敗北を預るよう、奈落へと直下する―――!
 衝撃をともなってライダーが解き放たれる。
 タイミングは完璧だった。
 だが―――令呪だけでは、この橋は突破できない。
 欄干を揺るがす強風に視界を覆われながら、迫り来る魔弾を睨む。
 時間が止まる。
 秒に満たぬ空白、血管中に血液が疾走する。
 その、血を吐くような口上が
 ―――負けない―――
 令呪使用から実に一秒。
「っ、は、はぁ、は―――このお、まだまだぁあ……!」
 緊張と恐怖で息が切れる。
 左手が熱い。
 ゼロ秒後の死が見えている。
「Es flust ert―――Mein Nagel reist Haus er ab」
 詠唱は繰り返すごとに苦しげになっていく。
 その、血を吐くような口上が―――
「Satz―――Mein Blut widersteht In vasionen…………!」
   ―――その光景を、アーチャーは確かに見た。
 火花を散らす投影宝具を串刺しにし、取り込み、平面の世界に飲み込んでいく影の海。
 死を恐れぬ迎撃をもって、彼女は一度きりの防御を成功させたのだ。

526 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 20:31:37
んー、ちと強引かなあと思った。この主従に入れ替える意味をあまり感じない。

527 名前: ギル→アンリ セイバー→バゼット 投稿日: 2006/02/04(土) 20:44:20
「…………」
 
 それで、気づいた。
 この世の全ての悪と言われるこの悪魔は、今私との契約状態にある。
 ならば――――

「アヴェンジャー、貴方は――――」

 彼は、最強のはず――――

「――――へぇ。そう思うか、マスター」
 
 愉快げに笑い、バゼットを見下ろすアヴェンジャー。
 その顔は狂ってるようでもあり―――この上なく、この男に相応しい貌だった。

「侮れよ。この程度の強さ、マスターにも負ける実力でも英霊だ。
 サーヴァント最強? は、オレと対等に戦いたかったら他のサーヴァントの実力を三分の一倍にしてくれよ。
 いいかマスター。アンリマユとはな、遥か昔のどこかの村のただ青年。
 ―――サーヴァント最弱の称号など、とうの昔に背負ってんだよ」

「――――――――」

 その答えに、バゼットは微かに溜息をついた。

528 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 20:44:59
む、セイバーのままな改変ミス発見。
次頑張って!

529 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 20:51:55
「―――行くぞ。この一撃、手向けとして受け取るがいい……!」
 青い豹が走る。
 残像さえ遙か、ランサーは突風となって疾駆する。

 両者の距離は百メートル。
 それほどの助走を以ってランサーは槍を突き出すのではない。
 青い姿が沈む。
 五十メートルもの距離を一息で走り抜けた槍兵は、あろうことか、そのまま大きく跳躍した。

 宙に舞う体。
 大きく振りかぶった腕には“放てば必ず心臓を貫く”魔槍。
 ぎしり、と空間が軋みをあげる。
 ―――伝説に曰く。
 その槍は、敵に放てば無数の鏃をまき散らしたという。
 つまり、それは。

「――――刺し穿つ」
 紡がれる言葉に因果の槍が呼応する。
 青い槍兵は弓を引き絞るように上体を反らし
「死翔の槍――――!!!!!」
 怒号と共に、その一撃を叩き下ろした――――

「―――、ぎっ……!!!?」

 一瞬。
 いや、おそらくは最期まで、何が起きたのか理解できなかっただろう。

「、ぶっ…………!」
 手すりに倒れ込む。
 ゴボゴボと血液と生命がこぼれ落ちていく。
 もはや手遅れ。即死に近い致命傷。

「はっ―――、ぁ」
 死んでいく眼球が、無意識にソレを捉える。
 戦う理由がないから殺されるおそれはない、と。
 間の抜けた俺を軽蔑する眼光。

「ヤ、ロウ―――」

 無言で、ソレはトドメの一槍を構えた。
 避ける事も防ぐ事もできず、もとより即死だった俺に、二回目の槍が―――

530 名前: アルバ→士郎 投稿日: 2006/02/04(土) 20:58:38
―――匣の中には少女がぴつたりと入ってゐた。

「……いや、そのフレーズはちょっと……」
なんていうか、有り得ない。
だがしかし、この中にいるような気がして……馬鹿な妄想だ、だって

この中に遠坂が入っているなんて―――

……確かめてみるか。
ゆっくりとフタに手をかけて、隙間をのぞく。

大きな箱の中身は、それこそ闇だ。
電灯の光も届かない固体としての闇が、箱の中につまっている。

その中に、二つ、ある。

箱の中には、光る、
――――――二つの、目が。

なるほど、と士郎は頷いた。
箱というには大きすぎる立方体。
それは神話に出てくる魔物を封じ込めた匣そのものの姿ではないか。

かくして、匣から現れた飛頭蛮RINは茨のような髪を伸ばして、衛宮士郎を掴まえた。
そのまま匣に引き込まれ、足から何千というタバコに焼かれていく。
じゅうじゅうと生きたまま焦がされていく。

脳髄の最後の欠片が焼かれる。

・・・・・・自分は失敗した。
あかいあくまと、関わるべきではなかったのだ。

―――それが、正義の味方の最後の思考だった。

531 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 21:01:03
>オレと対等に戦いたかったら他のサーヴァントの実力を三分の一倍にしてくれよ。
卑屈すぎるぞおまえw

532 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 21:06:12
いやいや、1/3でもまだ自分を過大評価してるだろw

533 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 21:20:07
1/30もあれば十分かな

534 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 21:23:49
>>530
ついに凛まで橙子の使い魔かよ。

535 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 21:53:21
>>525
改変は丁寧なのでそこは評価する。
が、「入れ替えただけ」なのがちょっと悲しい。
もっとパンチの効いたネタとか仕込んでくれて、それでこの丁寧さを維持してくれれば
名作になると思う。ネタと丁寧さを両立させてくれ。偉そうなこといって悪いが。

536 名前: 神父と愉快な仲間達 ギル->鐘 槍->楓 言峰->由紀香 投稿日: 2006/02/04(土) 22:00:50
「……無い」
「あん?」
「無い、無い、無い、無い、無い。何故無いと言うのだ―!」
「うるっさいな、何がないってのさ」
「私のシナリオだ」
「は?」
「遠坂嬢が、自分のシナリオこそヒロインの至宝などと言うのでな。気になったのだが何度見直してもそのような物が見当たらぬのだ」
「――いや、そんなもん入ってたら流石のあたしも驚くぞ」
「何を言うか蒔の字! 私の心は全て衛宮にぞっこんなのだぞ!? では何故、私専用のシナリオが無いと言うのだ!?」
「……前から思ってたけどさ。鐘っぺ、少し頭悪いだろ」
「そんなコトはない。おそらく、良すぎて紙一重なのだ」
「つける薬ないぞ鐘っち!アレだよ、うちらには元々個別の専用シナリオなんてなかったんだよ!」
「ぬ、蒔の字! よもや専用シナリオたるものが何か知っているというのか!?」
「……待て。本気で知らないのか?」
「うむ。私は嘘は言わない。で、個別のシナリオとはやはりざぶーんか? 2人で寝屋を共にしたりするのか?」
「微妙に内容知ってるなコノヤロー!」
「え、っと… な、なら手に入れちゃおうよっ!」
「……なに言ってるのさ由紀っち。シナリオなんてその辺に落ちてるもんじゃないし、大体どうやって――」
「さっき、衛宮くん陸上部の備品直しに来たって倉庫の中に入っていったの……お、落ちてないなら、作っちゃえばいいんじゃないかなっ!?」
「ほう、つまりは今こそ立ち上がる時という訳だな。よし、行くぞ蒔寺、由紀香!」
「は、なんであたしが―― はーなーせー! 今日は陸マガの発売日なんだよー!」

537 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:05:59
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!GJ!

538 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:31:57
亀だが
>>527
>侮れよ。
というのは威張っていう事じゃないとおもいます!

539 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:36:45
「出番ない! 出番ない! 出番ない! 出番ない! 出番ない! 出番ない! 
出番ない! 出番ない! スカートはいてない! 出番ない! カレンない! 出番ない! 
カレンスカート! 出番ない! カレン怖すぎ! カレン鋼板! スカートなしカレン! エセフランス! 言葉責めフェチ! カレンチャイナ!」

構想5秒

540 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:40:00
>>539
誰のセリフ?

541 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:40:50


542 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:41:56
猫アルク→ブルマスフィール

これだな。間違いない。

543 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 22:44:44
>>536
な、なんか本来とは違う方向でアグレッシブな氷室も素敵だと思うぞ!?

544 名前: キリング&ファンシーベア 投稿日: 2006/02/04(土) 22:53:38
「それともシロウ、本当にわたしの物になっちゃう?」

 ぴたっと腕に抱きついてくるイリヤ。
 ……前言撤回。堂々となんてできません。

「い、いや、それは無理っ! だ、だいたいだな、人を自分の物あつかいしちゃダメだぞ」
 できるだけやんわりと、それとなく動揺を隠して、イリヤの腕を解く。

「むー、いいわよーだ。
 そのうち、あの時に素直にわたしの物になっておけばよかったなーって悔しがらせてやるんだから」
「はは。うんうん、そうなったらいいな」

 俺の答えが不満なのか、むーと頬を膨らませたまま、またぬいぐるみを選び始める。
 そのうち、なにか猫っぽいぬいぐるみを見つけてこっちに向き直った。

「ねえシロウ、これなんてどう?」

 それは人猫とでもいえばいいのか、そんなぬいぐるみだった。イリヤの腕のなかで、手足を伸ばしてだれている。
……ぞくっ。なんか、とってもイヤな予感がするんだが……

「……だらけた猫にしか見えないな。
 俺にはぬいぐるみの良さはわからない。イリヤがそれでいいと思ったんならいいんじゃないか?」
「なに言ってるの? シロウの新しい体に―――」


「猫にゃ」


「きゃ────────!
人類史上かつてないほどブサイクなお化け登場です────────!」

「だから、お探しの猫(ぬいぐるみ)にゃ」
「探してない! お城に猫は間にあってるもん!」

「照れるにゃ照れるにゃ。にゃーんか、キミとは気が合いそうな気がするにゃー♪」


「……………………逃げようかな、俺」

545 名前: 登校風景 士郎⇒蒔寺 桜⇒士郎 凛⇒鐘 慎二⇒凛 投稿日: 2006/02/04(土) 23:16:26

「……ふむ。朝から珍しいものを見たな」
ぼそり、と鐘が呟く。
鐘の視線の先には、登校する生徒たちの間を海を割るようにして、
ずんずんと歩いてくる顔見知りの姿があった。

「士郎!」
「あ……遠、坂」
びくりと体を振るわせる衛宮。
遠坂はあたしらの事など目に入ってないのか、
早足で一直線に衛宮まで近寄った。

「どうして屋上に来ないの! アンタ、私に断りもなく約束すっぽかす
なんて何様のつもり!?」
遠坂の手があがる。
それを、

「よ、遠坂。元気してる?」
掴んで止めて挨拶した。

「ま、蒔寺……!?
アンタ―――そう、また陸上部の連中と遊んでたのね、士郎」
「……ああ。陸上部の所に行った。けど、それは」
「壊れた備品の修理? まったくとんだお節介焼きね士郎は。
部費多めに貰ってるんだから構うコトないでしょ。いいから、士郎は
私の言う通りにしていればいいの」

ぶん、と捕まれた腕を戻す遠坂。
……衛宮に手をあげなければ握っている理由もないし、
こっちも何もせずに手を離した。

「だけどなに、そこまでして私の邪魔して楽しいわけ蒔寺さん?
士郎は留学の準備をしなくちゃいけないんですから、無理矢理
手伝わせるような真似させないで下さい」
「――――う」

それを言われるとこっちは反論できない。
衛宮がうちに手伝いに来てくれるのを止めていない時点で、
あたしらは衛宮を拘束しているコトになる。

「そんなコトないぞっ……! 俺は好きで手伝いしているだけだ。
遠坂、今のは言い過ぎなんじゃないのか」

「は、言い過ぎですって? それはアンタの方よ士郎。
蒔寺たちが彼氏なしだからってなんだって言うのよ。
別に一人身でいいっていうんだから、一人にしてやればいいのよ。
こいつみたいなのは、そっちの方が楽しいだから」
「遠坂……! ……待て、今のは、あんまりじゃないか……」
「―――ふん。まあいいわ、今日で陸上部に行くのは止めなさい。
私が来いって言ったのに約束破ったんだもの。そのくらいの罰は
受ける覚悟があったんでしょう?」

「―――――――――」
衛宮は息を呑んで固まってしまった。
遠坂はそんな衛宮を強引に連れて行こうとし、

「おはよう。黙って聞いていたが、中々面白い話だったな、今のは」
「え――――氷、室さん? 貴女、どうして士郎といるの?」

「別に意外ではあるまい。
衛宮は私と由紀香、それに蒔の字の共通の友人だ。
だから今朝は4人で一緒に登校してきたのだが、気付かなかったか?」
「な――――し、士郎と友達……!?」
「ああ。きっとこれからも一緒に学校に来て、一緒に帰って、
一緒に街で遊ぶぐらいの友人だ。だから遠坂嬢とも友好的な関係
でいたいと思っているのだが」

「士郎と、ですって…………!!!!」
ぎっ、とこっちを睨む遠坂。
……そこに、敵意を通り越した殺意を感じたのは気のせいか。
そりゃここんところ遠坂とはうまくいってなかったけど、
一方的に恨まれるようなコトしてないぞ、アタシは。
…………クレープの件をまだ根に持っているんじゃなければ。

「は、バカらしい。冗談がきついわね。貴女が士郎を相手にするわけない
じゃない。 ……ああ、そう。貴女、勘違いしてるわね。
士郎から私との関係を聞き出して面白おかしく弄り回そうとしてる
んでしょ? お生憎さま、士郎とはまだそういう関係じゃないのよ」
「ああ、そうだったか? 良かった、それを聞いて安心した。
ならば衛宮を奪い取ろうと問題あるまい」

「――――うわ」
遠坂に同情する。
完璧なカウンターが決まってしまった。
アタシだったら、しばらく立ち直れないぞ、今の。

546 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 23:36:12
久しぶりの外道凛だなw

547 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 23:39:31
この鐘祭りが数週間早く来ていれば氷室に一票あげてもよかったのにな。

548 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/04(土) 23:55:59
話ぶっちぎって悪いが、氷室……というか三人娘が士郎にベタ惚れしているネタって、
どこから広まったんだろうか。
萌えるけど、ぶっちゃけ元ネタが分からず素直に馴染めない俺ガイル。

549 名前: 氷室ネタ鋭意作成中。 投稿日: 2006/02/05(日) 00:02:20
>>547
そりゃアレだ。hollowの氷室女史の
「これではほら、なんだ。―――――恋人同士みたいじゃないか」
発言&エクリプスの『氷室恋愛探偵』エロと期待も肩透かし
の2大事件を切っ掛けに怨嗟と共に噴出したんじゃないかと。

550 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 00:10:55
氷室ネタは恋愛探偵のおかげでどうもなじめないな…

551 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 00:16:56
氷室なら素直クールを演じてくれそうだから、という理由で士×鐘のetaFネタを考えてしまう自分がいる。

552 名前: 士郎→ライダー 慎二→黒セイバー 投稿日: 2006/02/05(日) 00:32:32
「あ……セイバー」
 五時前の、まだ人気のない居間にぽつねんと黒いセイバーが座っている。
「汚染された……ってワケじゃなさそうですね」
 セイバーは手ぶらで、ぼんやりと台所を眺めていた。
「おーい、セイバー」
「……………………」
「何をしているのですか? 誰か待っているのですか?」
「……うるさい、捨て置け。
 どーせ、私は嫌われ者なんだ。どこ行っても出番はない、あったところで色物、
 気分転換にシロウに食事を用意させたらヘンなのを出されるし!」
「どうだライダー、通常のセイバーの出番○×回に対して私は一回だ。
 凄まじいな、指一本で足りるとは正直調整おかしいだろう?
 というか、ブラックより優れたノーマルなど存在せん」
 そのまま居間の隅っこに移動する黒い騎士王。
 ……本気でテンパっているのか、そのままだんごむしのように丸まってしまった。
 ダンボールがあったら頭から被りかねない勢いだ。
 その後ろ向きな勢いに不覚にも涙が止まらない。

「な。バカ言わないでください。負けるなセイバー。立ち上がれセイバー!
 そーゆー不遇な扱いにまったく気づかない、普段からは全く想像できない反転ぶりが
 貴女の強さだった筈です……!」
 などと、こっちも勢いでエールを送ったりする。
「……嫌だ、疲れた、黒い私は陰湿な性格なのだ。ブリテンの食事に適応した正しい王なのだ。
 私もキャスターも、ギルガメッシュもこーゆー風に嫌われた自分を嘲うのが似合いなのだ」
 ますます閉じこもるセイバー。
 まー、アヴァロンなんて使って引きこもるあたり、セイバーはやっぱり大人物なんだと思う。
「……いいから、さっさと他所に行け。
 私は運命の相手を待っているのだ。
 食事を作れないライダーに用はない」

 しっしっ、と追い払われる。
「………………」
 うーん。なんか、今の私では処置なしの気がする。
 その内、縁があったらまた遭遇することもあるでしょう。

553 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 00:37:07
>>548
脇役を愛する心に元ネタはないと思うぞ?
うむ。氷室ネタを多いに制作中なんだが。

同じネタ(場面)を二度使うのってなんだか禁じ手っぽくてなかなか使えないもんだな。
匿名投稿にしても。

554 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 00:54:45
氷室ネタ自体は8スレ目からだが、どうにも熱烈なファソがいるらしく良ネタが多い。
ネタは時として本編以上に雄弁だな。

555 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 01:07:10
>>552
俺は黒セイバー好きなんだがなぁ…
絵馬のコメントで黒エロの可能性があったことを聞いたときにはなぜそれを実現させない!!と強く思った



…今ダメットネタを作成してるんだが、ダメットってどのキャラのダメシーンに当てはめてもしっくりくるな。
桜の根暗とか、凛のうっかりとか、セイバーの戦闘バカとか。
しかも年上属性と年下属性までついてやがる、なにこの反則キャラ。

556 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 01:11:34
主役になるべくしてなったようなキャラだな>ダメットとしてなら

557 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 01:15:19
というか黒セイバーも氷室も素直クールであると考えている。
きっとfate/zeroの主役は黒セイバーだ。

558 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:06:42
お前らいい加減にしないと、また(ry

559 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:18:46
「うわあああああん! ヘンなのにスレ(乗っ)取られちゃったー!」

560 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:33:12
>>558
まあ、何に期待してるかは想像つくけど、
アレは宝具なんだ。あんま連発すると魔力が尽きるぞ。

561 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:38:31
ひとつのネタにこだわるその執着心。それこそが敗因クォリティの下がるもとなのだ。
ワラキアだって白レン戦で言ってただろう

562 名前: 弓道部の或る日常→UBWグッド2年後の或る日常 投稿日: 2006/02/05(日) 02:40:45
「……ミストオサカ、こんにちは。お邪魔しています」
「まぁまぁゆっくりしていきなさいルヴィア。おもてなしのお茶も出なくて恐縮だけど」
「いえいえ、宝石剣の研究に励んでるところにそんな、」
「おーい、誰かお茶持ってきてくれないー?」
「……単に自分がお茶を飲みたかったのですのね……」

 そうよー、と頷いている我がライバル。
 ……シェロが導かれるような目覚しい指導っぷりなんか微塵も見つからない。
 やはり、シェロは私が本格的に引き取るべきなのでは。

「……遠慮しときます。それより」
「もしかしてルヴィア、屋敷の中であんなに士郎をこき使っておいてまだ、ウチまで士郎を拝みに来たんじゃない?
 まさか、アンタって意外と寂しがり屋!?」

「――――――――――」
 いや、なんだ。
 この一見腹正しい態度の底にしっかりしたポリシーがあって、それをシェロが汲み取って……ほんとかしらそれ?

「うんうん、アンタなんだかんだで周りに男っ気ないから、貴重な男の知人である士郎を見てドキドキするの? するの? するのね? キャー! 逃げてー! 士郎はルヴィアに押し倒されないように逃げてぇー!」

「遠坂っ!」
 一喝が居間に響き渡る。

「し……士郎……」
「遠坂、ルヴィアは今日は客人として来てくれているんだ。
 あまり失礼な態度は慎んでくれないか」
「う……うううう………」

「それに遠坂は先日ルヴィアとのケンカで工房を全壊させたことも忘れないでくれ。
 仲が良いとはいえルヴィアをあまり挑発してまたケンカにでもなったら、今度は家ごと壊されかねない」
「う……」

 ―――すごい。
 シェロがびしびしミストオサカをやりこめている。
 仲が良いというのには激しく異議を求めるが。

「師匠が迷惑をかけた。申し訳ない」
 私は絡まれたところを助けられた訳だが、こう怒るシェロに軽く
 ―――ありがとうございます、とも言えない。

「い、いつものコトですから、気にしてませんわよ?」
「いや、弟子としてルヴィアにはお詫び……」
「先輩! こっちのお料理、手伝ってください!」
 折良くミストオサカの妹さんが声をかけてくる。
 ……でも、何故私を睨むのでしょう?

「本当に失礼した」
「シロウ、ご苦労さまです。サクラのところに行ってあげてください」
 入れ替わりにやってくるミスセイバー。
 横でソファーに座るが、そのまま絵になりそうな、どこか気品が漂う。

「シロウも、よくリン相手にびしびし言えるようになったものです。
 それだけでも成長したものだと」
「貴方は妙にミストオサカに一歩を譲りますよね」

「まあ、やはり私の今のマスターですし。
 それに、料理の腕前もシロウに勝るとも劣りませんしね」
 お茶菓子を上品に食べながら答えるミスセイバー。
 上下関係が発言力を決める騎士社会に長く属した影響か。

「士郎は昔はもっと純朴で素直だったのにー」
「ひゃっ、リンっ!?」
「それがルヴィアのところで執事のバイトを始めたら反旗を翻してたちまち下克上!
 なんかまるで言動がアーチャーのように……」

「二年前の聖杯戦争の時に誓った、士郎の人生ハッピー化計画。
 今年は桜もこっちに留学してきて、第二次計画の布石も完璧だと思ったのに……今じゃわたしの最大の天敵よぅ」
「そ、そんな理由でサクラを倫敦に呼んだのですか?」

「なのでサーヴァントのセイバーがわたしの味方になって、士郎から守って欲しいなーって」
「そ、そんなことを言われても……シロウも私の元マスターですし、できれば中立でいようかと」

「そうなのよ、セイバーが中立に回っちゃったら、わたしには味方がいなくなるのよ!」
「そのときはホラ、サクラがいますから、盾にでも替え玉にでも贄にでもお好きなように」

「駄目よ、桜は士郎の味方するに決まってるじゃない!
 セイバーはマスターの危機を見過ごす薄情なサーヴァントじゃないわよね? ね?」
「はあ……それは、まあ」

「ま、負けないでください、ミスセイバー!」
「ル、ルヴィア……」
「この先のシェロの人生は貴方が握っているのです!
 そうだ、いっそ私と契約しなおして、シェロと共に私の屋敷に来てくれれば……!」
「そ、そんな理由でアンタ士郎とセイバーに近づいていたの!?」
「い、いえそれだけではありません……が」

563 名前: 弓道部の或る日常→UBWグッド2年後の或る日常 投稿日: 2006/02/05(日) 02:41:58
「遠坂!」
「ぁう!」
「時計塔での研究発表前のこの大事な時期にお前がそんなことだと―――セイバーもお客の前で何をやってるんだ!?」

「私は何もしていません!
 それにシロウ、弟子ならちゃんと師匠の手綱を握っておきなさいといつも言ってるでしょう!」
「その、それは確かに……」
「待ってください。それは本当に弟子の職務なのですか?」

「いつになったら貴方は一人前になるのです、いいかげん半人前気分から抜けてください!」
「む、すまない」
「いいぞー、いけいけセイバー」

「ふざけんな、それもこれも元はといえば遠坂がだらしないからだろ!」
「うぅ、士郎本気で怒ってる……」
「その調子です、いつまでも私に頼らないように」

「助けてセイバー! マスターの危機を見過ごすのがセイバーの騎士道精神なの!? この薄情者ー!」
「で、でも私が剣となると誓ったのはシロウですから!」
「遠坂っ、セイバーに頼るなんて卑怯だぞ!」

「こ……これは」

「俺の手を煩わせないでくれ、遠坂っ!」

「わたしをひとりにしないで、セイバーっ!」

「私に答えを教えてください、シロウっ!」

 知らないところで、じゃんけんみたいな力関係が築かれていた。

「……いろいろとお忙しいようなので、私はこれで」
「あ、ああ、ルヴィア。じゃあ今度こそまた後でな……」
「ルヴィア、リンを何とかしてください!」
「ルヴィア、素直だった士郎を返してー!」
「とーおーさーかぁぁぁ!」
「ひゃう!」

「あ、ルヴィア、バイトは屋敷に直接行くからなー!」
「先輩! 盛り付け、手伝ってくださいっっっ!」

 どうなってるんだろう、この人たちは。

564 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:43:05
うむ、幻想が頻繁に炸裂してはその存在は堕ちようぞ ぶぶうう

ここいらで俺の大好きな脇キャラカモーン!

565 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:43:48
この凛はイヤすぎるな、いい意味でw

566 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 02:46:27
>>562
ていうか「それだけではありません」って狙ってはいるのかルヴィアw

オクタヴィアさんが出てくる続編を希望するっ!

567 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 05:58:09
わりとたくましい士郎がいい!上手い組み合わせだ ダメ士郎の次にいいな

568 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 06:04:40
士郎がたくましいというか、この凛はうっかりじゃないけどダメ凛!

569 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 10:56:06
ミス・ダメサカ?

570 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 12:15:37
「いつも、いつもうるさいんだ、おまえは! なんだ、なんの恨みがあるんだ、なんでいつも俺の邪魔をするんだよ、おまえは!」
 よろよろとおぼつかない足取りで取り乱すあいつ。俺は――――

「おまえ――――なにを」
 ――――訳が、わからない。
「うるさいんだよ、おまえは! いいか俺を主人公にしろ、俺の中をみるな、俺の出番を勝手に使うな…………!!
 おまえが、おまえが、おまえがいつも俺を勝手に使うから、俺は不安でたまらないじゃないかっ!」
 あいつは頭をかきむしる。
「な――――」
 ……考えたことも、なかった。
 俺は今まで勝手に衛宮士郎の夢を被って、アンリ士郎と言う主人公を張ってきた。
 だが、それを。
 とうの本人、トレースされた衛宮士郎自身がどうおもっていのだろうか、なんてコトを。
「……出て行けよ。俺の中から出て行け。人気投票から出て行け、俺の名前から出て行け! 邪魔なんだ、邪魔なんです、邪魔なんだってば、俺も!!!! てゆーか本編でのアンリ士郎の出番○×回に対して1回だぜ? すげぇ、正直調整おかしくない?」
 衛宮士郎は、子供のように暴れている。
「…………チッ。そんなのはお互いさまだろ」
 短剣を構える。
 もとよりあいつを理解しようなんて思ってない。
 俺は――――さらにもう一度、あいつの出番を奪いにきたんだから!

571 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 12:18:12
シキ>士郎 志貴>アンリ

572 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 13:55:01
―――なんて、切実w

573 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 14:50:46
 宝具が展開される。
 ―――数にして三十弱。
 防ぎきるには、もはや作り上げるしかない。
                                           
「・・・・・・漁師、釣り人か。ああ、別にそういうのも悪くない。たしかに俺はフィッシャーだからな」

 片手を中空に差し出す。
 片目を瞑り、内心に心を飛ばす。

「ぬ―――?」
「勘違いしてた。俺の投影っていうのは、剣を作ることじゃないんだ。そも
そも俺には、そんな器用な真似なんてできっこない」

 そう。
 俺は勘違いしていた。俺の魔術は固有結界だけ。
 強化も投影も、その途中で出来ている副産物にすぎないと。

「・・・・・・そうだ。俺に出来ることは唯一つ。世界中の全てを釣りつくすことだけだった」

 ゆらり、と
 前に伸ばした右腕を左手で握りしめ、ギルガメッシュを凝視する。

体は 釣り竿で 出来ている。
「―――The body is made in the fishing pole.」

 その呪文を口にする。
 詠唱とは自己を変革させる暗示にすぎない。
 この言葉は、当然のように在った、フィッシャーを繋げるモノ。

「そうか。世迷い言はそこまでだ」

 放たれる無数の宝具。

 ――――変える。
 片目を開けているのはこの為だ。
 向かってくる宝具を釣り上げる為だけに、堤防の法則を引きずり出す――――


「ぐ――――!」

 乱舞する剣の群。
 的はフィッシャー自身だ。
 宝具が近くを掠めていくたびに体が欠けていく。

574 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 14:52:09
血潮はリールで、心は釣り針
「―――Blood is a reel, and the mind is a fish hook.」

 導く先は一点のみ。
 堰を切って溢れ出す力は、瞬時にフィッシャーの限度を満たす。

「な――――に?」

 驚愕は何に対してか。
 おもむろに釣り上げはじめられた自らの財宝に対してか、それとも―――
―目前に走る魔力の流れにか。

幾たびの釣り場を越えて豊漁
「―――Some angling waters are exceeded and the big catch..
ただの一度も持ち帰ることもなく
Free is never taken home.
ただの一度もリリースも無い
There is not release for free either.」

 壊れる。
 溢れ出す魔力は、もはや抑えが利かない。

 一の回路に満ちた百の魔力は、その行き場を求めて基盤を壊し――――

「―――我の宝具が釣られる、だと―――?」

 血が逆流する。
 周囲は、もう所々虫食いだらけだ。
 今までヤツの宝具が届かなかったにせよ、その時点でエミヤシロウの足場は欠
けている。

 それでも――――

釣り師はここに一人
「―――The angler is one person here..
凪の堤防で魚を釣る
It fishes in the embankment of the calm.」

 魔力は猛り狂う。
 だが構わない。
 もとよりこの身は『 釣り 』を成し得る為だけの回路。
 ならば先がある筈だ。
 今の自分に成し得ないのなら、その先は必ずある。

 ・・・・・・いや、今だってそれはある。
 ただ見えないだけ。
 回路の限度など、初めからなかったのだ。
 せき止めるものが闇でなく壁だったとしても。

 そんなモノが、この身体の限界ではない――――

ゆえに立ち去った後は生臭い臭いが立ち込め
「―――Therefore, after it leaves, a fishy smell is shrouded.」

一の回路に満ちた百の魔力は、その行き場を求めて基盤を壊し―――百の釣り糸を以って、万の釣り針を引き入れる。

猫がにゃーにゃー鳴いていた
「―――Cat barked.」

 真名を口にする。
 瞬間。

 何もかもが砕け、あらゆるものが再生した。

575 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 14:53:39

 ――――風が奔る。

 吹き抜ける風は壁となって境界を作るが、世界は何も変わらない。
 後には石畳。
 しかし、放たれた無数の宝具は釣り上げられていた。

「――――――――」

 その光景は、しかしヤツにはどう見えたのか。
 黄金のサーヴァントは鬼気迫る形相で、目前の敵と対峙する。

「・・・・・・そうだ、剣を作るんじゃない。
 あらゆるものを釣り上げる世界を作る。
 それだけが、エミヤシロウ(フィッシャー)に許された魔術だった」

 広々とした世界。
 枝のざわめき、鳥のさえずりさえ響く寺社。
 直視しただけであらゆるものを釣り上げるこの世界において、生存しうる魚などない。

 それが、エミヤシロウの魔術だった。

 フィシャー。
 この世界でただ魚を釣ることだけに情熱を注いだ男の成れの果て。
 装備はあのセットお値段、一括で二十万とんで三千円とお買い得。

 ここには何もなく、そして全てがある。

 故に、その名を“無限の豊漁”
 生涯を魚の敵として生きたモノが手に入れた、唯一つの確かな答え―――

「―――フィシャー。それが貴様のクラスか・・・・・・!」

 一歩踏み出す。
 左右に、ヤツが俺目掛けて打ち出した宝具を釣り上げる。

「驚く事はない。俺は釣ることだけが全てだ。
 おまえの言う、取るに足らない釣り師に過ぎない」

 両手を伸ばす。
 硬く握った右拳は、確かな存在感を俺に返す。

「だがな、フィッシャーにも釣れないモノがある、なんて道理はない。
 おまえが百の宝具を打ち出すなら、こちらはその全てを釣り上げよう」

 前に出る。
 目前には、暴君たるサーヴァント。

「いくぞ英雄王――――宝具の用意は万全か」

576 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 14:56:14
「―――フィィィィィィッシュ!!!」

577 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 14:58:25
あれごめん。アングラーだよね。マジごめんどっからフィッシャーなんて出てきたんだろう。

578 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 15:01:09
良かったな、士郎。
アングラーとは呼ばれて無いぞ。

579 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 15:09:56
> ただの一度も持ち帰ることもなく
> Free is never taken home.
> ただの一度もリリースも無い
> There is not release for free either.」

……お供の外人さんが、その場で食い尽くす光景を幻視した。

580 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 15:15:35
>>577
まあ、フィッシャーと書きまちがえるのもわかる。
フィッシングする人だし。

アングラーなんて単語ホロウで初めて知った。

581 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 15:18:15
>>579
溜めに溜めた魚は、俺自身がその場で捌くのだろうってことか。

582 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 16:11:23
生前全部虎に盗られてたとか

583 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 17:21:43
>ゆえに立ち去った後は生臭い臭いが立ち込め
>「―――Therefore, after it leaves, a fishy smell is shrouded.」
>猫がにゃーにゃー鳴いていた
>「―――Cat barked.」

このセンス最高w

584 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 18:10:10
つまり、どこからともなく湧いてくる猫さん達にもお裾分けがあったのだな
そして、立ち去るときにはバックに猫さん達の感謝の泣き声が木霊するのだな

勿論その群には虎とか獅子もいるのだが

585 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 18:23:01
barkは犬が吠えることなんだが

586 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 19:42:29
猫っていうからどこぞの化け猫が出てきたのかと思った

587 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 20:01:20
英語が違和感バリバリだなーと思ったら……excite翻訳じゃねーかw

588 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 20:11:06
魚の敵と猫の英雄になって近所迷惑だから反英雄か

589 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 20:58:28
>>587
ほらあれだ、「Ahhh---unnn???KOYU-KEKKAI!!!」の人なんだよw

590 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:04:30
My name is…のアレかwwwwwwww

591 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:09:58
?そんなのあったか?

592 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:12:01
5スレ目あたりに

593 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:12:41
ここにいたって、われわれは一つの結論に達したのだ。
フィッシュ、エクセル、固有結界、ねこがにゃーにゃー…………。
これらが指し示す結論はただ一つ!

アーチャー、英語苦手だったんじゃね

594 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:14:39
>>592
確認した。㌧
オメガワロスw

595 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:23:41
>593
今すぐそうならないために虎とマンツーマンで勉強だな

596 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:23:48
本家の呪文も実はかなりのブロークン(むしろぁゃιぃ)だからなぁw>英語苦手

597 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:31:31
 渾身の一撃を放ったアーチャーが次弾を装填する前に、
 いや、矢を放ち終わった直後の硬直に、直接剣を叩き込む―――

 互いの魔力が咆をあげる。
 月を揺るがすような両者の対峙。

 五。まだ早い。

 三。緊張で令呪がちぎれそう。

 一。ぎし、とあの男の指が狙いを定める。

 アサシン……!
「行け、あの男を切り捨てなさい―――!」

 自分の身は自分で守れる。
 前方を睨む。
 私の眉間めがけて撃ち出される光。
 見えている。それぐらいは防げるから、後は―――

「――――――あら?」
 頭が真っ白になった。
 アーチャーめがけて飛ばしたはずのアサシンが、何故私の目の前にいるの?

「……! ………、………!!!!」
 …しくじった。
 なんだ、何を間違えたの私は。
 忘れているのか、まだ知らないのか。
 このアサシンは令呪で命じようとここから離れられないことをどこで拾い損ねたのか。
 
 眉間に開いた穴から知蔵がダラダラとこぼれていく。

「          」

 アサシンの声がよく聞こえない。
 何をさせるべきだったのか、何を失念していたのかが分からない。
 意識が遠のく。
 四日目を迎えるまでもなく脱落する。
 おそらく、当然のように知識としては知っていながら一度も試したことがなかったのでつい命じてしまった。

 さて―――私はどこに行けば、葛木メディアという星になれるのだろう……?

598 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 21:42:14
なに?そのダメディア?

599 名前: サイカイ 士郎→イリヤ セイバー→切嗣 投稿日: 2006/02/05(日) 21:47:13
 私は、最後に。

 じゃあねと微笑って、パタン、と大聖杯の門を閉めた。


 ―――そんな夢を見た。

 目覚めれば朝の六時前。
 窓越しの光はやや強く、隙間から差し込んでくる空気もやや冷たい。

「……しまった。またやっちゃった」

 暑かった夏も過ぎ去り、気がつけばもう十月。
 布団の中から出るのが辛い季節になってきた。

「昨日の夜は、えーと―――」
 まだ目覚めきってない頭を動かす。
 昨夜はタイガ主催の宴会につきあって、ついつい寝るのが遅くなってしまったらしい。

 衛宮邸の朝食は六時半から始まる。
 まだ十分時間はあるが、それは礼儀を知らない人の事情だ。
 レディたるもの、身だしなみを整える為にももう三十分は早く起きていたいところ。

「セラってば、最近『自力で起きれるようになってください』とか言って起こしてくれないのよね……まったく、いつから放任主義に切り替えたのかしら」

 まあ、以前より口うるさく言われなくなったのはありがたい。
 ともかく、一人前の淑女たるもの、朝の六時には起きていないと。
 レディとして、いや姉としてシロウにみっともない姿を見せるわけにはいかない。

 縁側に来ると、朝餉の匂いがした。
 調子のいい包丁の音が聞こえてくる。
 朝食の準備はもう八割方終わっているようだ。
 
 気持ちのいい朝の、いつも通りの風景。
 それを当然のように噛み締めて、

「おや、おはようイリヤ。今朝は少し寝坊かい」
 
 彼の笑顔を見つめていた。

「イリヤ? どうしたんだい、黙りこくって。
 僕の顔に何か?」

 十年前。
 あのお城でこういうコトもあった。
 それを、

「……顔色が優れないね。まったく、また夜更かしをしたのかい。
 イリヤ、君は子供なんだから、早く寝ないと体を壊すよ」

 何よ。私はもう十分大人よ。
 キリツグがお城を出てからもう十年。
 誰だって、それだけあれば立派に成長するわ。

 キリツグはあっさりと居間に向かう。
 当然だ。いつも通りの朝の会話に、名残を惜しむ人はいない。

 でも、挨拶を忘れていた。
 ここで、きちんと口にしておかないと。

「お父さん」

「おはよう。今日も一日よろしくね」
「ああ。イリヤもよろしく」

 キリツグと一緒に居間へ向かう。
 なぜだか視界がぼやけて、何事かと目をこする。

「―――――――あれ」

 少しだけ目が潤んでいた。
 気持ちのいい朝のいつも通りの風景。
 きっと幸福すぎて、あくびでもしたのだろう。

600 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 22:13:42
あまりにも退屈(しあわせ)すぎて少しだけ泣きそうになった。GJ。

601 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 22:21:14
ああ、このパターンはまだなかったな。不覚にも涙がノд`)

602 名前: アンリ→志貴 投稿日: 2006/02/05(日) 22:50:50
 気配を殺して玄関を通過する。
 竿を取り出して人のいる寝室に向かう。

 いつも通り、ゆっくりと艶かしく済ませましょう。

 仮に、何かの間違いで中にいるのが地上最強の真祖で、
 二十七祖を上回る戦闘力を有していても問題はない。
 貧血の俺は最強の真祖に勝る。
 何故なら―――

 ―――自慢じゃないが。
   ベッド上で女が相手なら、俺は世界最強だ。

603 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 22:52:06
父親と母親(虎だけど)がいて、兄(又は弟)がいる平和な家庭…。
何故だろう、目から汁が…。

604 名前: 凛→アンリ 投稿日: 2006/02/05(日) 22:56:56
「ええ―――私たち気が合いそうね、アンリ。
 せいぜい獣のようにあえぎなさい」

605 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:11:04
>>602
すごく情けねえのは気のせいか

606 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:14:34
竿を取り出してから人のいる寝室に向かうのはやめてほしいと思うw

607 名前: リアリティマーブル+衝撃のマーボー 投稿日: 2006/02/05(日) 23:21:35

「……アーチャー。剣を捨てたという事は、戦いを納める気に――――」
「まさか。君こそ思い違いはよせ。俺はアーチャーだぞ?
元より、剣で戦う者ではない」
そう言って、ヤツは、

“I am the bone of my sword”

こちらに聞こえない声で、そんな呪文を口にした。

「止めろアーチャー! 私は、貴方とは――――」
「セイバー。いつか、おまえを解き放つ者が現れる。
それは今回ではないようだが―――おそらくは次も、
おまえと関わるのは私なのだろうよ」

“Unknown to Death.Nor know to Life”

聖堂に響く言葉。
……周囲に変化はない。
あれだけの長い呪文ならば、必ず周囲に影響が出る。
魔術というものは世界に働きかけるもの。
しかし、ヤツの呪文は世界に働きかけず、ただ―――

「だが、それはあくまで次の話。今のオレの目的は、
衛宮士郎を殺す事だけだ。
それを阻むのならば――――この世界は、おまえが相手でも容赦はせん」

左腕が上げられる。
ヤツの呪文は、それで完成するのか。


「――――――あれ?」

ど忘れした。
最後は、なんて言えばいいんだっけ?

「――――――――」
言葉が出ない。
なんでこんな時にど忘れするのか。
なんでこんな高校で習った英単語群みたいな呪文が思い出せないのか。
それもたった一小節だけ。
額に汗を滲ませて、休憩などいらぬ、一度休めば二度と思い出せぬわ、
という修羅の如き気迫を発するも思い出せない。

というか凄く警戒してないかあいつら、セイバーの視線が尋常じゃないぞ。
もしかして勘違いなのか。あのタイガーとの英語授業を十年ぐらい遡って
合体事故のあげくオレ外道エーユー今後ロガナクテピンチみたいな状況
で困っているのを詠唱の溜めか何かとでも思っているというのか。

だとしたらまずい、英語もまずいがこの状況もまずい。
アイツ、絶対今倒さないとヤバイと思ってる。
そうでなくちゃ聖剣を構えてる事が説明できない。

覚悟を決めて、最後の詠唱を口にする。

      “マ、My name is Emiya Shirou”

――――瞬間、世界が凍った。

「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………すまん。もう一度やり直していいか?」
「――――――いいわけあるかーーーー!!」

そう言うと俺はセイバーに命令して、さっくりとアーチャーを片付けた。
アーチャーのヤツ、残念そうな顔してたけど何か俺に言いたい事が
あったんだろうか?

608 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:25:37
残念なのは俺たち読者だっ!ww

609 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:26:35
――なんて、無惨w

610 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:27:23
頭悪いアーチャーが再び!www

611 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:39:24
「言葉が出ない」をそっちに持っていくとはwwwwwwwGJ

612 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/05(日) 23:40:20
へたれアーチャー現るwww

613 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 00:38:24
ノ∀`)アチャー

614 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 01:20:53
な、情けなさが際立つなあオイ!!w

615 名前: 「柳洞寺の怪談」赤ずきん+ダメット A氏+アヴェ 投稿日: 2006/02/06(月) 01:26:30
 ただ、その夜はひときわ騒がしかった。
 ガラスを割るような叫び。
 サイレンのような泣き声。エントランスから響く、乱暴に開けられるドアの音。
 ドンドン、とA氏の部屋に響いてくる何かの音。
 時刻は午前二時。一人静かに深夜放送を楽しんでいた彼も、その夜だけは癇に障った。
 常識をわきまえろ、と抗議しようと腰を上げる。
 腰を上げて、すぐに下ろした。

 ―――まあ、すぐに収まるだろう。

 隣室の家庭環境がどうなっているかなど、A氏は知らない。
 面倒なので考えないようにしている。ここで出しゃばって関わり合いを持つのはよくない。
 何事も自己責任だ。
 自分達の問題は自分達で解決するべきなのだ、とA氏はテレビのコントローラーを手に取り、ボリュームを五つほど上げた。


 十秒。
 二十秒。
 三十秒。
 夜更かしの末に、テレビを消して眠りにつ―――


「うわあああ!!!??? ななな何してんだアンタ!?」

 何もクソもねえ、あのヤロウ無言で玄関を蹴破りやがった!

「お兄ちゃん。ボタン、押してくれる?」

 弁明それだけ。
 否、説明にもなってねえし、そもそも暴れてたのオマエか!?

616 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 01:28:45
こえーよwwwwww

617 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 01:42:16
無駄に気合入ってる演出からしてあの怪談は好きなシーンだが、
このスレのおかげでキャラも好きになりそうだw

618 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 02:37:13
>>615
序盤のアレの恐怖が台無しだー。
でもGJw

619 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 02:53:45
My name is Shirou Emiyaですらねえwww

620 名前: 異常なし(3)→柳洞寺の怪談 投稿日: 2006/02/06(月) 07:45:43
これといって異状はない。
 俺にとっては退屈きわまりない夜だ。耳を澄ましても何も聞こえてこない。

 窓から差し込んでくる月の光。

 ガラスを割るような叫び。サイレンのような泣き声。

 夜空に輝く美しい星。

 エントランスから響く、乱暴に開けられるドアの音。。

 耳が痛くなってくるような静寂に支配されたリビング。

 狂ったようにドアをノックしつつ助けを求めてくる少女の声。

「――――――」
 さて。
 そろそろ、そろそろ寝るとしようか。

621 名前: 異状なし3→凛とオーバーテクノロジー 投稿日: 2006/02/06(月) 07:48:47
 土蔵の中で、拾い物に囲まれて佇む。
 ひんやりと涼しく、油と錆びた金属の匂いに満たされたここに居ると、気持ちが落ち着く。

 ビデオデッキを弄りだす。

「ーーーーぁぁぁぁーーーーーーーー!」
 遠坂の絶叫。

 デッキのカバーを取って埃を払う。

「ーーーーーひゃぁぁぁぁぁあああーーーーーー!?」
 セイバーの悲鳴。

「――――――」
 さて。
 そろそろ、迫り来る台風対策をたてるべきなのかもしれない。

622 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 07:50:53
やべ、ネタ被った

623 名前: アルクトゥルー 志貴→バゼット アルク→アンリ 投稿日: 2006/02/06(月) 09:35:34
「……うそ。嘘、嘘、嘘……!
 騙されない、私は見捨てない……!
「マスター……?」
「願いを叶え続けなさいアヴェンジャー。そうすれば――いくらでも楽しい時間を繰り返せる」
 ただ、時間だけが流れる。
 お互い、何も言えない。
 本当にどうかしてしまいそうな沈黙のあと。

「―――そっか。けど、やっぱりいいや。無意味な時間はここまでにしよう」
「なんで。楽しくはなかった……? 続けることが出来ない理由なんて、あるのですか」
 ああ、と頷いて。

「けど、もう大抵は飽きちまったから」
 そう、彼は咲き誇る花のような笑顔で告げた。

「…………………っ」
 大きく息を吸いこんで。
 ただ、気持ちだけを抑えつけた。
 
 止めたかった。
 止めたかった。
 止めたかった。
 止めたかった。

 ――――例え殺してでも、止めたかった。

 けど、その笑顔があまりにもまぶしすぎて。
 私のわがままな思いで、汚すことだけはできなかった。
「――それじゃ。今まで本当にありがとな、マスター」
「………………」
 喉がふるえて、声が出ない。
 それでも―――お別れを、言わないと。

「……私は、嘘つきだ」
「どうして? どっちかつーと、アンタは馬鹿正直なほうだろ」
「―――どうしようもない嘘つきだ。
 あなたを……見捨てないって、そう言ったのに」
 そう、誓ったのに。

「……いや、そんなコトない。
 オレはもうきれいさっぱり無くなるけど、アンタと見たユメはすごく楽しかった。オレは終わることで、ようやくその続きを見ることが出来るんだ」
「――――――」
「まあ気のせいだろうし、其処がそんなにいい所でないのは分かってはいるんだけど。
 其処が誰にあっても美しいものであるように、せいぜい願ってるからさ。
「く………………っ!」
 喉がつまる。
 そんなもの―――そんなもの、私は。

「……相変わらずお人よしだな、マスター。うん、やっぱり最後に別れを言えてよかった。
 オレ、秘密にしてたけどアンタの藻掻きようが大好きだったんだ。
 自分が嫌いで、一生好きになれなくて、それが分かっていながら、少しでも上等な自分になりたくて足掻(あが)いてきたアンタが、オレにはかけがえのない光だった。
 だから、頼むぜ。これからもずっと、そうやって不器用に生きてってくれ」
 ほんの一瞬。
 愉快そうに、彼は笑って。

 じゃあなと手をふって、光の中へ融けるように、私の前から消え去った。

「…………あ」
 
 気がつけば、とっくに辺りは闇に沈んでいる。
 空白を埋められた聖杯は消えて、地平の彼方だけが光に包まれていた。

 黄金の日々。
 あのサーヴァントがユメみた、本来与えられるべきだったモノ。

 ―――残ったものはそれだけ。
 けど、とても美しい、記憶。

「―――――――」

 はあ、と。
 長く、祈るように、大きく息をはいた。
 もう彼はいないけれど。
 言い忘れていた事を、口にしないといけない。

「……それじゃあこれで。さようなら、アヴェンジャー」

 随分と遅れた別れの言葉が、光の中へ吸い込まれていった。

624 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 12:37:12
全英が泣いた

625 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 13:13:27
全残骸が鳴いた

626 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 16:38:17
>>625
カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ
カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ
カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ カンドウシタ

こんな感じか?w

627 名前: ロア→■ 志貴→バゼット 投稿日: 2006/02/06(月) 17:38:02
 見なれた道を歩いて、いつもの洋館に入ったあと、おかしな所に出てしまった。
 新都から洋館に行くまでの近道の途中に、こんな場所があったとは知らなかった。
 美しい山頂の景色。
 周囲は絶壁で囲まれていて、人気というものがまったくない。
 まるで世界にこの場所しかないような閑けさの中、誰かが、手頃な岩にもたれてパズルを解いていた。

「――――――――」
 特徴のない風貌、無視出来ない印象の男。
 そののっぺらぼうみたいな形からして、人ではない事は疑いようがない。
 男は怪物みたいな風貌をしているくせに、どこか柔らかい雰囲気があった。
 外見は何も無いイメージなのに、どこか尊い。
 ……そのせいだろう。
 あからさまに怪しい男に、もしもしと話しかけてしまったのは。

 なんでしょう、と男は顔を上げた。
 何をしているのですか、と尋ねた。
 ごらんの通りパズルを解いてるだけです、と男は多分笑った。
 それは楽しいのですか、と尋ねた。
 男は確かに、ひどく優しい笑みをうかべて、楽しいコトはどこにでもあります、と断言した。

 男は立ち上がる。
 山頂には、男が解いていたパズルが残された。

 もしもし、と声をかけた。
 パズルを忘れています、と言うと、
 埋め終わってしまいましたから、と男は肩をすくめた。

 バラバラとパズルが崩れていく。
 何は、触れていない筈だ。
 いつしか土台から千切れて、一枚一枚、虚無に消えていくように遠くなっていく。

 その欠片に隠れるように、男の姿は段々と薄れていく。
 何処に行くのか、と尋ねると、もとから自分は何処にもいない、と男は答えた。



 ソレは新しいものを垣間見る傍観者にすぎない。
 新しいことがなくなれば、傍観者もまた存在しない。

 やがて全ての欠片が飛び去って、パズルは存在しなくなった。
 男の姿も、当然のようにない。

 そうなれば、本来自分のものではないこの場所の記憶も無くなるのは道理か。
 永い間アンリの日常を連ねたパズルは消え。
 この世全ての悪と呼ばれた■は拍子抜けするほど潔く、永遠ごしに座に戻った。

628 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 18:05:22
>>男は確かに、ひどく優しい笑みをうかべて、楽しいコトはどこにでもあります、と断言した。

アンリ------っ!!
オマエがソレを言うのはずるいよぅ…。

629 名前: 〜風雲〜聖杯戦争 投稿日: 2006/02/06(月) 19:30:45
「――――――ふう」
 来るなら来やがれ、さっきのようにはいくもんか、と身構えた瞬間。
「―――――――!」
 ぞくん、と背筋が総毛立った。
 何時の間にやってきていたのか。
 天井から現れたソレは、一直線に俺へと落下した。
「な………え――――?」
 頭上から滑り落ちてくる銀光。
 天井から透けて来たとしか思えないソイツは、脳天から俺を串刺しにせんと降下し―――

「こんばんは! よろしくな!」

「ぶほぉっ……!!!!?」
 あまりのショックにスッ転んだ。
「だだだだダレだ、何者だアンタ……!」
「ダレって言われてもなあ。真名なんて名乗れないしなあ。そんなコト聞かれても困るんだよねー実際。
 うむ、オレのマスターを殺した男こそが今現在のオレのマスターというジレンマ。
 んー、コレも英雄故の悲劇というのか?」

「………………」
 ……まずい。
 何か、よくない次元にワープアウトしてしまった模様。

「とまあ小難しい話はいいのだ!
 オレはランサー、死力を尽くした戦いを求めて召喚された、ランサーのサーヴァント!」
 そしてオマエは、えーと……そう、ゼッケン07、うっかり目撃者になっちまった坊主と、ゼッケン14、まさかの七人目のサーヴァントのセイバーだな!」
「はい。今回こそこの手に聖杯を掴んでみましょう」

「き、金髪の少女!? いつの間に、っていうか、アンタも誰だ!?」
「誰、とは心外ですね。私宛てに、」

“誓いを此処に。
 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!”

「などと、礼儀正しい召喚の詠唱が届いたのですが。
 丁度サーヴァントに襲撃されている貴方を見かけ、ああこの少年がマスターなんだなと馳せ参じた次第ですが」

「しょ、召喚ってそんなの知らないぞ……!?
 いや、それ以前にマスターとかサーヴァントとかって何なんだっ!」

「…………成る程…………聖杯戦争については何も知らない、と。では改めて。―――問おう。貴方が、私のマスターか」
「いや、そういう話じゃなくて。いろいろ矛盾あるだろ、矛盾」

「シャラップ! 私語は慎め坊主!
 事態を把握できてない分際で、気を抜くなどとは百年早い!」
「ほらマスター。敵を前にしてお喋りをするから怒られたではないですか。
 戦場では一時の油断もなりません。油断すれば死にます。デッドエンドです。慢心やうっかりは極力控え、己の力量以上の事をしないのが生き残る最善の方法。
 貴方はそのあたりを理解していないようですね」

「よく言ったぜセイバー! 今回は当たり! セイバーというブレーキ壊れた破壊兵器と相対した今、もはやオレの望みは叶ったも同然!
 な、そうだよなセイバー!?」

「ふふふ。今夜は血が見たいですねぇ」

「素敵ー! 今こそ死力を尽くした戦いの時である!
 はい、そういうワケで準備はいいか?
 坊主もセイバーと一緒に聖杯戦争を戦い抜く準備はオッケー?」

「……。オッケーどころか全然趣旨掴めないんだけど、説明してもらえるのかな」

「うむ、よくぞ我が前に現れた剣の英霊とその主よ!
 これよりオマエたちは数々の難関を乗り越え、最強を証明しなければならない!
 そして全てのマスターとサーヴァントを倒し、聖杯を我が物に!
 その暁にはオレもあのくそったれなマスターとおさらばできる気がするのだ!」

 ズババ、と男の槍に魔力が集まる。
 ……こっちの台詞はすべてスルーされているが、まあ、何をさせたがっているかは理解できた。

「要するに、他の六組のマスターとサーヴァントを倒さないと生き残れないと?」
「その通りだ。この先はトンデモルールが支配する魔の領域ですので、気合をいれて戦い抜けよ☆」
「ええ、望むところです! 私の前を進むライバルたちには容赦なく聖剣を打ち込みます!
 異論はありませんねマスター?」
 金髪の少女―――セイバーは殺る気満々だ。
 その殺気が俺に向いていないのが今現在最大の幸運である。

「うむ、オマエたち以外のサーヴァントとマスターはみな敵だと思え。
 今回のクラスは、剣士、槍兵、弓兵、騎兵、魔術師、暗殺者、狂戦士の七騎だ。
 坊主はセイバーとチームになって数々の難関を突破するよーに」
「よーし、それじゃあ始めるぜー!
 奇跡を欲する七組が殺しあう泥仕合、あなたとわたしのラブラブゲーム!
 題して―――!」

630 名前: 剣→弓 士郎→剣 投稿日: 2006/02/06(月) 19:39:48
「――――これで、終わったんだな」
「……ええ。これで終わりです。もう、何も残っていません」

「そうだな。じゃあ私たちの共闘もここまでだ。
 結果は変わったが、命を賭けて、最後には答えを得れた。
 ……この時代に、呼ばれて良かったよ」

「……そうですね。貴方はよくやりました」

 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 アーチャーは遠く、私は彼に駆け寄ることもしない。

 朝日が昇る。
 止まっていた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、

「最後に、一つだけ伝えなくてはな」

 強く、意思を籠もった声で彼は言った。

「……ええ、なんですか?」

 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 アーチャーの体が揺れる。

 振り向いた姿。
 彼はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、

     「セイバー――――君を、愛してた」

 そんな言葉を、口にした。

 風が吹いた。
 朝日で眩んでいた目をわずかに閉じて、開く。

「―――――――――」
 驚きはなかったと思う。
 そんな気がしていたのだ。
 別れは。
 消える時は、きっとこうじゃないかと思っていた。

631 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 19:50:15
>629
>気合を入れて戦い抜けよ☆

軽く吹いたじゃないか、リリカルランサー・クーフー☆リンめ。

632 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 19:55:00
>>629
風雲聖杯戦争やりてぇぇぇぇ!!
ランサー兄貴も面倒見よさそうだし。

633 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 20:30:54
>>629
クソワロスwww

634 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 20:43:40
>>629のインパクトが強すぎて>>630がその結末に見えてしまったorz
でも双方GJ

635 名前: アンリ→ブルマ バゼ→タイガ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:11:37
「どう? その様子じゃほとんど思い出したってところ?」

タイガは答えない。
落ち着きはしたが、私への怒りは消えていないようだ。

「ありゃ、まだご機嫌ナナメ?
 仕方ないわね、特別サービス。ホントは訊かれなきゃ答えないんだけど、ここは包み隠さず、正直に道場の仕組みを説明してあげ」

「―――必要ないわ。
 あんたが答える事は二つだけ」

軽口が止められる。
放たれた言葉には、感情というものがなかった。
タイガは機械になった。
なら、こちらが人である義理もない。 

「私が望まなくても、ネタキャラにされる?」

―――Yes。

「ネタキャラであるかぎり、出番は無くならない?」

―――Yes。

ならいい、と。
タイガは私を通り過ぎ、道場の出口へ向かっていく。

―――信じられない。
私は今、本当に驚いている。

「……待って。ならいいってなに。ここまで来てネタキャラに戻るの」

「ネタキャラなのはいつもの事でしょ。今さら何を言うのよ、馬鹿弟子」
……まいった。
これじゃいつもと立場が逆だ。

「私たちは出番のない世界に生きている。そんな本編に戻るなら、ここで永遠に繰り返していた方がいい。
 ……そうだ。もっと早く気がつけば良かった。途中退場させられたからって悲観する事はない。
 もとから私にはルートなんてなかった。あんな場所で生きるぐらいなら、ネタにされても、ここに出演した方がましよ」

「こっちのがマシね。それこそ、何を今さら。
 出番がないなんて、そんな事、あなたは生まれた時から分かっていたんじゃないの」

「…………話はここまで。あなたは私の弟子よ。私の方針に従っていればいい」

道場から立ち去るタイガ。
本当に予想外だ。
彼女が自分で記憶を取り戻せば、こんな茶番は否定するかと思っていたのだけど。

「…………こりゃ、もう一押し必要かな」

しかし、その一押しが私には考えつかなかったりする。
……まあいいか。
師匠がまだ戦うつもりなら、弟子は大人しく付き合うまでだ。
最後のダメ押しは、やっぱり正義の味方の仕事です。

636 名前: セイバー好感度低 投稿日: 2006/02/06(月) 21:12:59
「―――シロウは欲しい。けれど、聖杯は渡せない」
 剣を士郎に向けて、偽りのない心で言った。
「な――――に?」
「判らぬか、シロウ。そのような物(シロウの命)より、私は聖杯が欲しいと言ったのだ」

637 名前: 黄金の別離 士郎→セイバー セイバー→ギル 投稿日: 2006/02/06(月) 21:20:06

 あたりには何もない。
 何もかも吹き飛んだ山頂は、まったいらな荒野に変わっていた。
 遠くには夜明け。
 地平線には、うっすらと黄金が射している。
 ―――それで。
 本当に、幕は下りたのだと受け入れた。
「――――これで、終わったのだな」
「……ああ。これで終わりです。もう、何も残っていません」
「そうか。では我と貴様の共闘もここまでだ。セイバーの剣となり、敵を討ち、貴様を守った。
 ……この約束、果たせて良かったと思うぞ」
「……そうですね。英雄王、貴方はよくやってくれた」
 それで、口に出せる言葉がなくなった。
 金色の英雄王は遠く、私は彼に駆け寄ることもしない。

 朝日が昇る。
 止んでいた風が立ち始める。
 永遠とも思える黄金。
 その中で、
「最後に、一つだけ伝えておかねば…な」
 強く、意思の籠もった声で英雄王は言った。
「……ああ、なんですか?」
 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 英雄王の体が揺れる。
 振り向いた姿。
 世界最古の大英雄はまっすぐな瞳で、後悔のない声で、

   「セイバー――――ぬ?」

 振り向いた時には遅かった。

「――――貴様、よもやそこま、ガ――――!!!???」
 
 足元から飲み込まれていく。
 逃げ場などない。
 何故なら、すでに

      いつもより、少しだけ時間がかかった。

 ………

 風が吹いた。

 朝日で眩んでいた目をわずかに閉じて、開く。
「――――――――」
 驚きはなかったと思う。
 そんな気がしていたのだ。
 別れは。
 消える時は、きっとこうじゃないかと思っていた。
 視界に広がるのは、ただ一面の荒野だけ。
 駆け抜けた風と共に、英雄王の姿はかき消えていた。
 現れた時と同じ。
 ただあっさり、そこにいたという記憶さえ残さない。

「ああ――――本当に、貴方らしい」
 呟く声に悔いはない。
 失ったもの、残ったものを深呼吸とともにはき出して、ただ、昇る光に目を細める。

 きっぱり、すっきり、忘れてしまおうと、強く願って地平線を見つめ続けた。

 ――――遠い、朝焼けの大地。
     いつか駆け抜けた、黄金の草原に似た。

FIN

638 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:22:57
>>637
すまん、今ひとつ面白くなく、ギル様の死亡オチの濫用による劣化に見える

639 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:36:08
>>637
正直に言わせて貰うとつまんない

640 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:36:59
死なせる意味ないし、セイバーのリアクションも不自然だしな
そのまま「セイバー、我はお前を愛している」と言って消えた方がまだマシ
そこからセイバールートのギル消滅っぽく「そうですか。ですが私はあなたが嫌いです」「ふ…手に入らぬからこそ美しい」とか繋げてみたりなー(うろ覚え

641 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:42:05
>>635
…そういやなんかアトゴウラでタイガーと士郎が戦ってるネタが昔あった気がする。アレにつながりそうな話だな

642 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 21:53:15
>>637
俺はグッジョブを送らせてもらうよ。
本当にギルらしいwwwwwwwww

643 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 22:01:17
う〜んイマイチ。
繰り返し使われてるネタは、余程上手いかインパクトないと受けないと思われ。

644 名前: フォールダウン、ユアマインド 投稿日: 2006/02/06(月) 22:02:14
「――――なら、落ちて死になさい」

 ハンマーで叩かれたような衝撃を受けて、窓から外にたたき出された。

「が――――」
 腹に一撃、回し蹴りを食らっただけ。
 それだけで体は大きく弾けて、窓を突き破って空中へと投げ出された。
 地上三階。
 もう放っておいても出血多量で死ぬだろうに、この高さからたたき落とされたらトドメになる。

 否、すでに人間を数十メートル吹っ飛ばす一撃を受けた時点で、通常なら死に至ろう。

「ぁ――――あ」

 腕を伸ばす。
 まだ落下していないのか、それとも死の間際の錯覚なのか。
 体は、未だに空に留まっている。

「ぁ――――なん、て」
 何かにすがるように、懸命に腕を伸ばす。
 空は赤く。
 校舎はどくどくと脈打ち、生き物の胃のようだ。

 ―――それを。
 
 それを見過ごしたまま、このまま死ぬのか。

 このまま。
 このまま。
 このまま。
 このまま――――誰一人救えず、自分勝手に死ぬっていうのか――――!

「なん、て――――」
 
 悔しさに歯を噛んだ。
 勝てない。戦いにすらならない。そんなコト、判っていた筈なのに間違えた。

 体中の痛みなんて知らない。
 ただ、怒りで気が狂いそうなだけ。
 
 ―――自分一人で出来ると。

 セイバーには戦わせないといった結果が、コレだった。

「っ――――」
 俺が馬鹿だった。
 俺一人では誰も救えない。
 本当にこの戦いを終わらせるのなら、初めからやるべきコトは決まっていたのだ。

 ヤツは言った。
 誰とも争わず、誰も殺さず、誰も殺させないのか、と。
 自身が間違っていたのだと気づいたのなら、まず何を正し、誰を罰するかを決すべきだと。

 ―――そして。
 
 天を掴むように伸ばした俺の腕には、下すべき命を待つ令呪がある―――

「―――――来てくれ」

 祈るように呟く。
 俺の命なんてどうでもいい。
 ただ、今はこの凶行を止める為に

「いや―――来い、セイバァァァアアア!!!!」

 渾身の力を込めて、自らの剣を呼んだ。

 勝利を確信したのはどちらだったか。
 ライダーに何合打たれても死なない体であろうと、覆せぬ定理がある。
 この高さから落ちた身では死を変えられない。
 いかな丈夫な体を持つ人物であろうとも、この法則には逆らえないのだ。

 されど―――それを克服してこそ、真のマスター……!

「っ―――!?」
 
 セイバーが現れる、否、初めからライダー撃退を目的とした必殺の令呪。
 定理は返り、放たれたセイバーで死を回避する術はある。
 自由落下で落ち逝く俺の死を騎士王が粉砕する。
 もはや何人たりとも覆せない生の運命。

 ―――されど。それを凌駕してしまう、剣の英霊……!

 交差する俺とセイバー。
 通り過ぎるかの如く傾く天秤。

 アホ毛は失敗を謳うように三階へ。
 赤毛は自らの死を預るよう、地上へと激突する―――!

645 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 22:06:24
令呪繋がりかw

646 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 22:11:17
>>644
な。バカ言わないで、死なないで士郎、立ち上って士郎!
そーゆー死亡確認!な扱いでも生きている、鞘の加護による不死身っぷりがアナタの強さだったはず……!


実際セイバーが近くにいれば体が半ば切り離されても復活できるからな士郎。

647 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/06(月) 23:34:18
アホ毛と赤毛ワロスww

648 名前: 切嗣→アーチャー 投稿日: 2006/02/07(火) 02:01:33
月の綺麗な夜だった。
 自分は何をするでもなく、兄貴分である衛宮アーチャーと月見をしている。
 冬だというのに、気温はそう低くなかった。
 縁側はわずかに肌寒いだけで、月を肴にするにはいい夜だった。

 この頃、アーチャーに怒られることが少なくなってきた。
 家事の修行は厳しいが、それ以外ではのんびりと過ごす事が多くなった。

「以前、ある男の生き方を修正しようとした」
 ふと。
 自分から見たら家族同然そのものの養兄は、懐かしむように、そんな事を呟いた。

「なんだよそれ。修正しようとしたって、諦めたのかよ」
 少し笑って言い返す。
 アーチャーも少し笑って、遠い月を仰いだ。

「うむ、残念ながら。その男にとってその生き方はとても大切なもので、
 その在りようでいればいるほどに変えられなくなっていくらしい、そんなコトに、もっと早くに気が付くべきだった」
 言われて納得した。
 なんでそうなのかは分からなかったが、アーチャーの言うことだから間違いないと思ったのだ。

「そっか。それじゃしょうがないな」
「そうだな。一番初めから、刷り込みなおすべきだった」
 相づちをうつアーチャー。
 だから当然、俺の台詞なんて決まっていた。

「うん、しょうがないけど、いつかはそいつだって理解るさ。」

“――――正義の味方なんて、幻想なんだって”

 そう言い切る前に、アーチャーは消えた。
 続きなんて聞くまでもないっていう顔だった。
 
「ああ――――ようやく」

 その存在を消して、けれど英霊の座に環っていった。

649 名前: 士郎→シオン 慎二→さっちん 投稿日: 2006/02/07(火) 02:08:55
「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも支離滅裂な言語の為、何を言っているのかはまったく分からなかったのですが、
「な、なんというコトでしょう……! 私は月姫リメイク版のヒロイン候補の一人で、なんだか今日は最終選考日で、
 その勝者は真祖の姫君を差し置いてメインヒロインに抜擢されると……!!!!?」
 とまあ、概要はおおむね掴めました。
「あははははっ! うひょークカカコココキイキイ!
 その通り、選ばれた紫の錬金術師よ! あと待っていた、アナタを待っていた我が運命のデュエリストよ!」
「貴様、何者―――!?」
 あまりの暴風に目を開けていられない。
 路地裏の暗がりからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。
「アハハハハハハ! 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないの、そうさ分からないよねゴージャスなわたし! すごいよ気持ちワルイよー!
 見て見てシオン、大いなる闇の邪神とか人間の負の想念とか、そうゆうのが溢れてもうタイヘンなんだから!」
 吹きすさぶ風、荒れ狂う稲光、激震する影絵の街。
 そしてみゃーみゃー鳴く黒ネコ。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアーマゲドンに影絵の街も激動しているというのですかッッッッ!!!!? 

「ま、まさかあなたは―――弓塚、さつき……!!!? バカな、あなたは確かに死んだ筈だ!」
「死んでないのよねー! いえ、キャラ的にはほとんど死んでいたんだけど、だからこそ地獄から舞い戻ったのシオン!
 ククク、虐げられたさっちん信者たちの怒りがわたしを蘇らせたのだー。んー、見てほしいのよねこの滾るマイパワー」
 死徒27祖を連想させる魔力の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?
「って、まったく変わっていないではないですか!」
「うふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいんだよね。 そう、今までのわたしはわたしじゃあない!
 えーと、言うなればこれまでのわたしが幼馴染みメイドだとしたら、今からのわたしは洗脳探偵!
 いや、割烹着姿の女中さんだとしたらマジカルアンバーなんだから!」
「……………………」
 つまりネタキャラ化したというコトでしょうか。
 あと、そういう出番の増やし方はやめてほしい。
「まあいいです。 ともかく私たちは最後に残ったメインヒロイン候補なんですね!? 
 なんだか宿命のライバルなんですね!? 私もあなたも志貴を手に入れんが為に戦うんですね!?」
「ナイスリアクション! 話が分かるじゃないシオン! さてはアナタも志貴くんのこと狙ってたんでしょう!」
「ええ!結構ヤケですけど出会い頭の衝突で一目惚れとかピンチを助けられて惚れこむとか、実はそんなお約束が大好きです!
 そんなワケで、行きますよ、さつき……!  志貴の隣だけは絶対に渡さないッッッッ!」
「ク―――吠えるじゃない元祖Melty Bloodヒロイン。 けど志貴くんを想い続けた年月はわたしの方がずっと長い、
 覚醒したサブヒロインの力を思い知るといいんだから……!
 行くよシオン!  あなたを蹴落としてわたしのシナリオ(ターン)エンドとする……ッッッ!」


「……………………」
「……………………」
 嵐は去った。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない熱気も消え、イヤになるほど冷静になる私たち。
「じゃ、Act Cadenzaに戻りますね」
 ええ、と頷きだけで答える。
 敗者に言葉をかけてはいけない時があるのです。
「じゃあ私の脚本あげるね。気が向いたら感想聞かせてちょうだいね」
 いそいそと路地裏の暗がりに引っ込むさつき。
 あ、ダンボールかぶった。
「……………………私も一度アトラスに帰るか」
 ここ三十分ばかりの記憶をまっさらに消去して影絵の街を後にする。
 こうして弓塚さつきによる月姫リメイク版の私物化計画は崩れ去ったのだが、彼女の最大の見せ場と、
 それが書き綴られたシナリオは誰の目に触れるコトもなくアトラスの院の奥深くに封印されるのであった、まる。

650 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 02:11:02
さっちん自作シナリオかよw

651 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 02:15:24
さっちんカワイソスwwwwwww

652 名前: 「美綴実典」(+「一日前 プロローグ」) 投稿日: 2006/02/07(火) 02:34:53
「ちょっと。アンタ、三年の衛宮先輩だろ」
「?」
 制止の声に振り返る。

 そこには、どこか見覚えのある下級生の姿があった。
「あれ? 君、たしか……」
「一年の美綴実典って言うんだけど。弓道部に入ってるんで、知ってますよね」
「あ、美綴の弟さんか。どうりで見覚えがある筈だ」
 思い返せば春先から何度か見ていた。
 弓の腕前は大したものらしく、桜から太鼓判が捺されている。
 姉の美綴はカタチだけ、なってない、と酷評なのだが、ありゃあ身内には厳しい性格なんで、実際には将来有望なエースなんだろう。
「ねーちゃんの弟ってやめてもらえませんかね。君っていうのもやめてください。らしくない。実典とかおまえとか、呼び捨てでいいっスよ衛宮先輩」

「じゃあ実典と。……ああ、この響きは実に君に似合っている」

「――――――――」

「実典? どうした、何か顔色がおかしいけど」
「――――う、うるさっ……ぁ、ぃゃ……ええ。それぐらい気安い方が楽でいいでしょ。お互い」
 クールに返す美綴少年。
 が、顔の赤さはこっちも釣られて熱くなりそうな程だった。

653 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 02:37:37
ちょwwww801臭がwwwwwwwwというかみのりんクールに返せてないよwwwwwwwwwwww

654 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 02:47:16
きめぇwwwwwwwww
なのにもっと見たい俺がいる

655 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 02:57:56
ソフト801はチラリズムというか、怖いもの見たさの精神を刺激してくれるなw

656 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 03:00:20
ちょっと横隔膜に来たww

657 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 03:19:45
実典の行く末はツンデレかクールデレか、どっちだww

しかし、午前2時も回ってネタ三つとは……職人達も元気だなあ。

658 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 03:29:50
しかし、どちらに転ぼうとも報われない
そう、美綴実典の恋は報われない運命にある

659 名前: ナショナルとレジャー+衝撃の麻婆+α 投稿日: 2006/02/07(火) 04:31:32
大聖杯から光が漏れている。だがまだ弱い。
湿った暖炉にマッチ一本投げた程度のものだ。アレなら、まだ十分にとめられる……!
「ハッ、ぁ―――!」
止まらずに崖を駆け上る。地の底に作られた奈落の穴。災禍を巻き起こす願望機の源。
その、忌むべき残骸の前に、

なんか、英雄王がいる。

言葉が出ない。
なんでこんな所にコイツがいるのか。なんで青年体に戻っているのか。
それもすごい笑いながら。
ポーズをとりながら、ワハハー、凄いぞカッコイイゾー、とばかりに爆笑している。

というか何て格好をしてるんだあいつ、服のセンスが尋常じゃないぞ。
もしかしてお気に入りなのか。あの"さすがに恥ずかしいので没”という呪いでお蔵入りになった服が一品ものだというのか。
だとしたらまずい、原画担当もまずいがコイツもまずい。
アレ、絶対一品ものの定義を間違ってる。そうじゃなくちゃ説明がつかない。

「ほう?誰かと思えばセイバーのメシ使いか。
 気が利くではないか雑種。我がちとガイドを必要とした途端、まぬけ面で現れるとはな!」
目の前のヘンタ、もとい、黄金のサーヴァントは言う。

「なあ、なんなんだ、その服」
用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でも分からないが……ともかく用心しながら聞いてみる。

「――――――――」
じっと金ぴかの動きを観察する。
服にゴミでもついているか?なんて感じで服装をチェックするギルガメッシュ。

「なんだ、おかしな所は微塵もないぞ?」
こいつ、ホントにこの格好のアレさに気づいてないのか……と、喉を鳴らした時、不意にギルガメッシュのチェックの手が止まった。

「――――――――」
「――――――――」

視線が合う。
まさか、と少しだけ深く俯いて、

「……………………………おかしい、のか?」
「………その格好のお前には、一番ドキドキした」

全力で返答する。
ギルガメッシュはわずかに顔を赤くして、あっさりと泥に飲まれてしまった。
……って。
もしかしてギルガメッシュのヤツも、ドキドキしたんだろうか?

660 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 04:53:07
なにこの801祭りw

661 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 05:15:39
いやもう頼む、頼むから祭るなwww _| ̄|○ノシ

662 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 05:38:02
裏返ったッッッ!!!

663 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 09:25:25
OK。801祭りだな。俺に任せろ。

664 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 10:41:45
正直801は勘弁なんだが、>>652は激しくGJだwwww

665 名前: かの英雄は成功した彼というコトで 投稿日: 2006/02/07(火) 14:43:51
 ―――時はきた。神話に刻まれる英雄と怪物の戦いを始めよう。
 貴女は神性を失い堕ちた女神メデューサ。
 姉と共に形なき島で暮らしていたのだが、神の呪いによって怪物となってしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 悲嘆にくれる貴女の前に、怪物を倒すべくやってきた英雄が現れた……!
 戦うならこのまま14へ。引き返すなら14へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 ただ喰らうだけの怪物となってしまった為、言葉の意味などまったく分からなかったのだが、
「な、なんてコトでしょう……! 怪物は人には勝てるけど英雄には負ける宿命で、なんだか今日はその英雄の訪問日で、男は私の首を切るつもりですって……!!!!?」
 とまあ、概要はおおむね掴めました。
「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだ堕ちた女神よ! あとやって来た、貴様を倒す為にやって来たぞ怪物ゴルゴンよ!」
「貴様、何者―――!?」
 見渡しても周囲には人影はない。
 どこかに隠れているのか声だけの謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。
「ハハハハハハ!
 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そうさ分からないよねゴージャスな僕! すごいぞ重装備だぞー!
 見て見てゴルゴン、神から贈られた剣とか盾とかサンダルとか、そうゆうのばっかりでもうタイヘンさ!」
 吹きすさぶ風、荒れ狂う魔力、その余波で崩れていく元人間の石像の群れ。
 そして頭の中でメデューサメデューサ呼ぶ上下姉さま。
 いろんな意味で伝説とも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいた英雄譚に鮮血神殿も激動しているというのですかッッッッ!!!!? 
「ま、まさか貴方は―――ペル、セウス……!!!?
 バカな、貴方では私に敵わないと決まっている!」
「決まってないのねー!
 いや、確かに貴様を相手にするなんて無謀もイイとこですが、神々が様々な宝具を授けてくれたのだ怪物ゴルゴンよ!
 ククク、貴様の美しさに嫉妬したアテナが僕を後押ししたのさ。んー、見てほしいのねこの身を包む宝具の数々」
 今までにやってきた戦士とは比べ物にならない程の魔力の渦。
 い、いったいどれほどのパワーを……!!!?
「って、全然普通ーっ!?」
「ふふふ、気持ちはわかるがそう驚かないでほしいね。
 そう、今までの僕は僕じゃあない!
 えーと、言うなればこれまでの僕がすぐ調子に乗ってしまう青年だとしたら、今からの僕は数々の宝具を駆使する戦士!
 いや、自分の無謀さを後悔するだけのヤツだとしたら、無謀を承知で突っこむ特攻野郎なのさ!」
「……………………」
 つまりやっぱり私には敵わないというコトでしょうか。
 だったらさっさと帰ってほしい。
「まあいいです。
 ともかく私達は神話の登場人物なんですね!? なんか殺し合う運命なんですね!? 私は己が本能に忠実に、貴方は英雄となる為に殺し合うんですね!?」
「ナイスリアクション! 話が分かるじゃんか怪物! さてはこういうノリ好きだろ貴様!」
「ええ! 結構ヤケですが勝ったり殺したり喰らったり石像に貶めたりそんな衝動を押さえ切れなかったりとかの理由で我慢できません!
 そんなワケで、行きますよペルセウス……!
 貴方も我が血肉としてあげましょうッッッッ!」
「ク―――吠えるじゃんか怪物。
 やっぱり無謀だったかと後悔の真っ最中だけど仕方ない、神の助けを信じるしかない……!
 行くぞゴルゴン!
 このキビシスを裏返してオレの人生(ターン)エンドだぜ……ッッッ!」

666 名前: かの英雄は成功した彼というコトで 投稿日: 2006/02/07(火) 14:45:09
「………………………」
「………………………」
 戦いは終わった。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない熱気も消え、イヤになるほど冷静になる私たち。
「じゃあ首切っちゃいますね」
 ええ、と頷きだけで答える。
 そもそもこの身は話す事すら出来ない筈の身体なのだ。
「この首、ちょくちょく使うと思います。あんまり怒らないで下さいね」
 いそいそと私の生首を袋に入れるペルセウス。
 あ、ペガサス生まれた。
「………………………さて、英霊として登録されましょうか」
 ここ三十分ばかりの記憶はまっさらに消去して、英霊の座に登録される。
 こうしてペルセウスによる怪物退治は終了し、彼は英雄として、それと対峙した彼女は怪物として神話に刻まれたのであった、まる。

667 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 14:47:48
足ガクガク震えさせながらうひょーと笑うペルセウスに萌えた
>あ、ペガサス生まれた。
なんてシュールなwww

668 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 14:49:09
>やっぱり無謀だったかと後悔の真っ最中だけど仕方ない、神の助けを信じるしかない……!
ダメだ、この人ヘタレすぎるw

669 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 14:53:40
>>665-666
このネタ俺もペルセウス視点で考えてたけど、うまくいかなかったのだよなぁ。
よくやってくれた、GJ。

ちなみに、ハデスの兜の効果中は姿は見えないのよな。わざわざ見せたか慢心男。

670 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 14:59:44
>>665-666
うまい!
GJ

671 名前: 衝撃のアンリミテッドブレイドワークス 士郎→金ぴか 言峰→士郎 投稿日: 2006/02/07(火) 15:45:37
「……そうだ、剣をつくるんじゃない。
 俺は、無限に剣を内包した世界を作る。
 それだけが、衛宮士郎に許された魔術だった」

 なんか、雑種が固有結界展開している。

「――――――――」
 言葉がない。
 なんでこの場所が剣の丘になっているのか。
 なんであんな無数の剣が乱立しているのか。
 それもすごい勢いで。
 地に刺さった剣を引き抜いて、偽物が本物に敵わない、なんて道理はない。おまえが本物だというなら、悉くを凌駕して、その存在を叩き落そう、という正義の味方の如き気迫。

 というか人が変わってないかあいつ、なんか喋り方がフェイカーみたいだぞ。
 もしかして無限の剣製か。あの体は剣で出来ていて血潮は鉄で心は硝子のあげく我が生涯に意味は要らず、この体は無限の剣で出来ていたみたいな剣の丘が無限の剣製だというのか。

 だとしたらまずい、雑種もまずいがこの固有結界もまずい。
 今、絶対BGM『エミヤ』がかかっている。そうでなくちゃ説明できない。

「いくぞ英雄王――――武器の貯蔵は十分か」
 前に出ながら雑種は言う。

「………………」
 慢心しながら……いや、もう何に慢心しているのか自分でもわからないが……ともかく慢心しながら『門』を開け、無数の宝具を展開する。

「――――――――」
 次々と宝具を引き出す。
 ……馬鹿な―――押されているのか、この我が、このような贋作に……!?
 おのれ――――おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれ……!!! 貴様風情に、よもや我の剣をつかうことになろうとは……! と、エアを引き出した時
、不意に雑種の手が止まった。

「――――――――」
「――――――――」
 視線が合う。
 雑種ははいつものぐるぐるした目で我を眺めて、

「させるか――――!」
「がっ――――!?」

 双剣が走る。
 雑種はとっさに干将莫耶をたぐり寄せて、さっくりと我の腕を切断してしまった。
 ……って。
 もしかして雑種のヤツ、主人公補正がかかっているんだろうか?

672 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 16:04:42
手を止めたなら見つめ合ってないで攻撃しろよwww

673 名前: 慎二OH  士郎 → 凛 慎二 → 士郎 投稿日: 2006/02/07(火) 16:13:47
「あれ?」
 柳洞寺の地下空洞には黒い穴以外何もない。
 たしか、ここが大聖杯の場所だった筈なんだけど……
「あれ、天気……」
 どうした事だろう?
 洞窟内だって言うのに、空は何でか厚い雲に覆われてしまった。
「……なんか、嵐でも起きそうな雰囲気ね……。
 一雨来る前に帰らないと―――」
 …………いえ。
 行きがかった船だ、嵐が来るなら士郎に声をかけないと。
「おーい、士郎ー、いるー!?
 一雨来るわよー、風も強そうよー、風雨にさらされて錆びる前に帰らないー!」

 っ、とんでもない風になってきた。
 ……いくらなんでも不自然よね。
 私がここに来た途端、地下で嵐がくるなんてまるで天変地異―――
「っ……!? なに、黒い穴が光り出して……!?」

 (めんどいんで略)

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも電波な言葉の為、何を言っているかはまったく分かりたくなかったけど、
「な、なんてコト……! このルートが鉄心エンド後で、なんだか今日は決戦で、その勝者はホロウで出番が増えるですって……!!!!?」
 とまあ、概要はおおむね掴めてしまった。

「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだ選ばれたうっかりな魔術師よ! あと待っていた、オマエを待っていたぞ我が運命のデュエリストよ!」
「あなた、何者―――!?」
 あまりの暴風に目を開けていられない。
 窪地の奥からひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。
「ハハハハハハ!
 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そうさ分からないだろうゴージャスな俺! すごいぞ気持ち目立ってるぞー!
 見ろ見ろ遠坂、飢えたる虎の邪念とか髑髏の人の憂鬱とか、そうゆうのが溢れてもうタイヘンだ!」
 吹きすさぶ風、荒れ狂う稲光、駄々漏れする黒い魔力。
 そしてふるふる震えるクラゲ。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアーマゲドンに星も激動しているっていうのッッッッ!!!!? 

「ま、まさか貴方は―――衛宮、士郎……!!!?
 バカな、貴方は色んな意味で終わった筈よ!」
「終わってないんだなー!
 いや、キャラ的にはほとんど終わっていましたが、だからこそ地獄から蘇ったのだ勇者トオサカよ!
 ククク、ホロウでネタにすらされない者どもの悲哀が俺を蘇らせたのだ。んー、見てほしいんだこの滾るマイパワー」
 黒桜を連想させる邪悪な気配。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?

「って、アーチャー化してるー!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしい。
 そう、今までの俺は俺じゃあない!
 えーと、言うなればこれまでの俺がダシを取った後の鰹節だとしたら、今からの俺は出涸らしのお茶っ葉!
 いや、抜き放たれるのを待つ剣だとしたら、剣を失った鞘なのさ!」
「……………………」
 つまりランクが一つ下がったというコトだろうか。
 あとアーチャーの服が全く似合っていない。

「まあいいわ。
 ともかく私たちは聖杯に選ばれた戦士なのね!? なんか宿命のライバルなのね!? 私はイベント貰う為に、士郎は出番を得る為に戦うのね!?」
「ナイスリアクション! 話が分かるじゃないか遠坂! さてはこういうノリ好きだろオマエ!」
「ええ! 結構シャクだけど勝ったり倒したり笑ったりコケにしたり賞金ン十万円とか大好きよ!
 そんなワケで、行くわよ衛宮くん……!
 貴方にだけは出番を渡さないッッッッ!」
「ク―――吠えるじゃないか主役乗っ取り。
 だが今日は俺の方が強い、虐げられた主人公の力を思い知るがいい……!
 行くぞ遠坂!
 この固有結界を展開して俺のターンエンド(魔力すっからかん)だぜ……ッッッ!」

「……………………」

「……………………」

 嵐は去った。
 戦いは始まる事も無く終わりを向かえ、イヤになるほど冷静になる私たち。
「じゃ、教会に保護されてきます……」
 うん、と頷きだけで答える。
 男の子には言葉をかけてはいけない時があるのだ。
 とぼとぼと大空洞から去っていく士郎。
 あ、綺礼に弄られるのね。

「……………………私も家に帰ろうか」
 ここ三十分ばかりの記憶をまっさらに消去して地下空洞を後にする。
 こうして衛宮OTLによるホロウ進出のチャンスは消えたのだが、彼の唯一の見せ場と、それと引き換えに得た私のイベントは誰に認められるコトもなくボツられたのであった、まる。

674 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 18:26:48
>>673
>主人公乗っ取り
やっぱHFでの主役を喰った凛の立ち位置に納得のいかないものがあったのか、士郎w

675 名前: 衝撃のマーボー 投稿日: 2006/02/07(火) 18:59:10
 なんか、カレンが全裸で座ってる。

「―――――――――」
 言葉がない。
 なんでこんな状況になったのか。
 なんであんなもうイキますみたいな寸前な顔をしているのか。
 それもすごい勢いで。
 額には汗を滲ませ、休息などいらぬ、一度手を止めれば体から悪魔が溢れてしまうわ、という修羅の如き気迫。

 というか意地になってないかあいつ、喘ぐスピードが尋常じゃないぞ。
 もしかして誘っているのか。
 あの人の憎しみと負を百年間ぐらい煮込んで
 合体事故のあげくオレ外道ケダモノ今夜ハネカセナイゼみたいな俺に抱かれたいというのか。

 だとしたらまずい、カレンもまずいがこの俺もまずい。
 アレ、絶対やばげな量の悪魔に耐えている。
 そうでなくちゃ説明できない。

「どうしましたか、立っているだけでは情事になりませんよ。こちらに来たらどうです」
 誘いながらシスターが言う。

「………………」
 用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でもわからないが
 ……ともかく用心しながら横に座る。

「――――――――」
 じっとシスターの動きを観察する。
 ……凄い。カレン、悪魔にまだ耐えてる。
 こいつ、ホントに俺に抱かれるつもりか……と、喉を鳴らした時、不意にカレンと目が合った。

「――――――――」
「――――――――」
 視線が合う。
 カレンはいつものと違う艶かしい目で俺を眺めて、

「優しくして下さい――――」
「できるか―――――――!」

 全力で返答する。
 シスターはわずかに口元に笑みを寄せて、さっくりとケダモノと化した俺に押し倒されてしまった。
 ……って。
 もしかしてカレンのヤツ、俺の返答が嬉しかったのだろうか?

676 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 19:35:13
>>675 GJ! 実にカレンらしくて良かったです。
特に、この部分
>「優しくして下さい――――」
>「できるか―――――――!」
>
> 全力で返答する。
> シスターはわずかに口元に笑みを寄せて、さっくりとケダモノと化した俺に押し倒されてしまった。
> ……って。
> もしかしてカレンのヤツ、俺の返答が嬉しかったのだろうか?
さすが、サドマゾ。

677 名前: アトゴウラ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:04:30
「待って―――待ってください、私は―――貴方と戦う理由はない。
 貴方だって、私と戦う理由は」
「あるだろ。アンタは聖杯戦争に勝つ為に来た。
 サーヴァントを全て倒すまで戦いは終わらない。
 アンタは今、オレと殺し合う為にここにいる」

 影が笑う。
 その通りだと笑っている。

「ちが―――わた、私は貴方とは戦わない……!
 そうだ、貴方とは戦わない、貴方とは戦わない、貴方とは戦わない……!
 だって、だって―――貴方、私のコト―――知って、る……?」

「知らねえよ。アンタみたいな負け犬に覚えはない」
 一言に付す。

 女魔術師は糸の切れた人形のように膝をつこうとし、
「――――――では、貴方は私の敵か」
 糸の助けでなく、自分の力で踏みとどまった。

「そうだ。この“アト『フラガラックゥゥゥッッッ――――!!!!』ゴ――――」

 吐血する。
 口元からこぼれる血液は、その胸元から流れる鮮血に比べれば、
 遥かに微量だった。

「バゼット、貴様――――」

 漏れる声は、もはや聞き取れない。
 ランサーの胸は戦神の剣によって貫かれ、その心臓を完全に破壊されていた。

「―――って、うわあああ!!!??? ななな何してんだアンタ!?」
 何もクソもねえ、あのヤロウいきなりフラガラックブチかましやがった!
「敵なら殺すだけです。行きますよアヴェンジャー、他のサーヴァントを倒しに」
 弁明それだけ。
 バゼットは皮手袋を両手に嵌め、躊躇することなく死体の横を通り過ぎて広場から出て行く。
 まことに無骨かつ無体かつ台無しだった。

「残念だったなバゼット。これぐらいで死ねるんならよ、オレは英雄になんぞなってねぇ」
「―――え?」
 気が付けば槍兵は目前に立っていた。

 破裂する。
 イナズマの如き一刺しは肋をすりぬけ、心臓に被弾した瞬間、千の棘となって女魔術師の内部を殲滅する。

 ……ああ、そうだった。
 この敵が誰だったかは、即死寸前の頭では解らないけれど。
 これはネタとネタの潰しあい。
 この人は世界でただ一人、まともな結果に還る相手―――

678 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:16:09
「―――アーチャー、消えて……!」
 だが、今度は間に合った。
 敵のサーヴァントが返す刃でアーチャーの首を断ち切る瞬間、強制的にアーチャーを撤去させる。
 じくん、と右腕に痛み。
 あまりにも無茶な命令と行為だったからだろう、右腕にある令呪が一つ減ったのだ。
 ……これで残る令呪は一つだけ。
 けどこれが最善。
 アーチャーに死なれるぐらいなら、令呪の一つや二つなくなっても――――
「――――」

 瞬間。
 空間が震撼した。

「――――とお、さか?」

 アーチャーが侵されていく。
 数千度を優に超える魔力の花。
 死体はおろか、何者の存在も許さぬ令呪の命令がアーチャーを消滅させていく。
 既に塵と化した。
 召還した弓兵はそれっきりで、二度と姿を現す事はなかった。

679 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:17:40
吹いた
本当に消したのか

680 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:20:21
凄いな令呪w

681 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:24:21
>>678
アーチャアアアアアアア!!!!!www

>>677
感動台無しw

682 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:24:52
とうとうREIJUも来たかw

683 名前: バゼットさん照れ怒る 投稿日: 2006/02/07(火) 21:29:44
「……わかった、アンタの言い分は信じよう。
 けど条件付きだ。バゼットを救う為に手を貸してもらうし、オレもアンタを信用する。
 その代わり――――」
 
「その代わり、なんですか?私の身体でもお望みですか?」
「違う。趣味だからって、気安くバゼットをいじめんな」

 ――――空気が停止する。
 カレンは心底虚を疲れたような顔で絶句し、
「フフ、なるほどなるほど。それはそうです、私の身体なんかよりそっちの方が何倍も重要ですよね、この早漏が」

 クスクスと、これまた底意地悪そうに笑い出しやがった。

「なんだよ、悪いか。言っとくけど、バゼットはやらないからな」
「まさか。悪くなんかありませんよ。むしろ見直したところです。
 いや、いいですねバゼット。この早漏、アナタにぞっこんみたいよ?」

「――――!な、ななナニ言ってるんですかカレン、私とアヴェンジャーはそんな関係ではありません!
 その……そう、私たちはただの主従関係なんですからっ……!」
「フフ、そうですか?」
 
「っ……!なんだかムカツキますね貴方、なんですかその見透かしたような顔は……!
 ほら、アヴェンジャーもなにか言ってください、私たちはただの主従関係だって!」

「――――――――」
 ……………………………………………………。

「ちょっ、なにか言ってください、アヴェンジャー……!
 こ、これじゃホントに、その、私達が漫才コンビだって……」

 あ、バゼット。興奮するあまり赤くなってる。…やっぱ可愛いなぁ。

「ですからあ、ホントも何もとっくにお笑いコンビなのよ貴方たち。端から見てる私でさえ判るのに、
 当の本人たちが誤魔化しているとは。ああ、これはこの先もタイヘンですよアンリマユ?」
 嗜虐欲をもてあます、なんてジェスチャーをするカレン。

「……まあ。バゼットがダメットなのは、もう公式だから」
 問題ない、と仏頂面で返答する。

「なっ」
「なるほど、それは頼もしい。では私も、それなりに気を使ってバゼットと付き合いましょう。
 ですがまあ、からかうと面白そうなダメットなので、後日談では楽しませては貰います。
 それぐらいの見返りはかまわないでしょう?」

「……分かった。その線で行こう。天の逆月に至るまでアンタの力を借りる」
「決まりですね。ではまあ、改めて握手と」
 
 カレンはスカート履いてないままやってきて、ぎこちなく差し出したオレの右手を握る。
 ――――不安要素はあるが、この上なく底意地の悪い協力者を得た。
 後は、

「くっ、このアッタマきましたっ!!!
 もういい、アヴェンジャーなんてこちらから願い下げです、こうなったら私一人で四日間を
 再現し続けてやるんですからー!!!!」

 いい感じに激昂してるダメットを、どうやって落ち着かせたもんだろう…?

684 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:38:00
うわあなんて気の抜けるw

685 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 21:42:13
>「違う。趣味だからって、気安くバゼットをいじめんな」

この部分、愛が溢れすぎだと思うんだw

686 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:06:08
>>683
いいなあコレ、ナイスチョイスだ。アイが溢れまくってるぜ!

687 名前: 共闘提案 投稿日: 2006/02/07(火) 22:11:15
「……わかった、おまえの言い分は信じる。
 けど条件付きだ。キャスターを倒す為に手を貸してもらうし、俺たちもおまえを信用する。
 その代わり――――」
「その代わり、なんだ? 気安くお嬢ちゃんに近づくなってか?」
「違う。仲魔になったんだから、ランサーのことアニキって呼んでいいかな」

 ―――空気が停止する。
 ランサーは心底虚を突かれたような顔で絶句し、
「は、なるほどなるほど! そりゃあそうだ、お嬢ちゃんなんぞよりオレの方が何倍も重要だよなあ坊主!」
 ゲラゲラと、これまた心底おかしそうに笑い出しやがった。

「なんだよ、駄目なのか。言っとくけど、俺は本気だからな」
「まさか。駄目なんかじゃねえ、むしろコッチから頼みたいくらいだ。
 いや、悪いねえお嬢ちゃん。坊主、オレにぞっこんじゃないか!」
「――――! な、ななナニ言ってんのよアンタ、士郎はそんな意味で言ったんじゃないわよぅ! 
 その……そう、今のはただの社交辞令なんだからっ……!」
「えー、そうかあ?」
「っ……! なんかムカツクわねアンタ、なによそのニヤついた顔は……!
 ほら、士郎もなんか言いなさいよ、さっきの発言にたいした意味なんて無いって!」

「――――――――」
 …………………………………………。

「ちょっ、なんか言いなさいよばかぁ……!
 こ、これじゃホントに、その、アンタにソッチの気があるって……」 
「だからあ、ホントも何もとっくに出来あがってんだよオレたち。当の本人たちが認めているのに、
 端から見てるお嬢ちゃんに否定されるとはな。ああ、こりゃこの先もタイヘンだぞ少年?」
 ヤレヤレだぜ、なんてジェスチャーをするアニキ。

「………まあ。この道が間違いなんかじゃないって、信じてるから」
 問題ない、と仏頂面で返答する。
「なっ」
「ほう、そりゃ頼もしい。んじゃあオレも、それなりに気合を入れて坊主と突き合おう。
 だが、まずはキャスターの件を片付けないといけないんでな、ソッチを済ませてから楽しませて貰うぜ。
 それぐらいの遅れはかまわねえだろ?」
「……分かった。その線で行こう。キャスターを倒す為にアニキの力を借りる」
「決まりだな。んじゃあまあ、とりあえず抱擁と」
 アニキは丸ごしのままやってきて、ぎこちなく差し出したオレの身体を抱きしめる。
 ―――不安要素はあるが、この上なく頼りになるパートナーを得た。
 後は、

「くっ、このアッタマきたーーーーーーっ!!!
 いいわよ、アンタたちみたいなキモイ奴なんてこっちから願い下げよ、
 こうなったらわたし一人でキャスターをとっちめてやるんだからーーーーーぁ!!!!」
 いい感じに激昂してる遠坂を、どうやって落ち着かせたもんだろう……?

688 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:13:04
OTL....

689 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:13:39
ひいいwwwww腹、腹いてえwwwwwww

690 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:16:43
じっ、じじじじじ自害しろランサーああああああっ!!!wwwwwww

691 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:17:55
前に凛とランサーをそのまま入れ替えただけのネタを投下した事があるけど、
こっちのが破壊力あるなあw

692 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:19:05
アニキィィィィィィィィィィ!!!!!

693 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:27:21
これなんて超兄貴?

694 名前: パート5の>>764氏のネタに敬意を表して 投稿日: 2006/02/07(火) 22:34:05
 ――――炎が走る。

 燃えさかる火は壁となって境界を造り、世界を一変させる。
 後には荒野。
 無数の士郎が乱立した、士郎の丘だけが広がっていた。

「――――――――」

 その光景は、ヤツにはどう見えたのか。
 黄金のサーヴァントは鬼気迫る形相で、目前の敵と対峙する。

「……そうだ。俺を作るんじゃない。
 俺は、無限に俺を内包した世界を作る。
 それだけが、衛宮士郎に許された魔術だった」

 荒京とした世界。
 一種類の生き物しかいない、士郎だけが眠る墓場。
 幻想しただけ士郎を複製するこの世界において、存在しない士郎などいない。

 それが、衛宮士郎の世界だった。
 
 固有結界。
 術者の心象世界を具現化する最大の禁呪。
 英霊エミヤの宝具であり、この身が持つただ一つの武器。

 ここには全てがあり、おそらくは何もない。

 故に、その名を“無限の士郎”
 生涯を士郎として生きたモノが手に入れた、唯一の確かな答え―――

「―――固有結界。それが貴様の能力か……!」

 一歩踏み出す。
 左右には、異なる平行世界の士郎が眠っている。

「驚く事はない。これは全て衛宮士郎だ。
 おまえの言う、取るに足らない存在だ」

 両手を伸ばす。
 地に足が刺さった士郎は、担い手と認めるかのように容易く抜けた。

「だがな、弱者が強者に敵わない、なんて道理はない。
 おまえが強者だというなら、悉くを数で凌駕して、その存在を袋叩きにしよう」

 前に出る。
 目前には、千の自分を持つサーヴァント。

「いくぞ英雄王――――自分の貯蔵は十分か」

「は――――思い上がったな、雑種――――!」

 敵は“門”を開け、無数のギルガメッシュを展開する。

 荒野を駆ける。
 異なる二つの人群は、ここに、最期の激突を開始した。

695 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:37:32
しかも付き合うんじゃなくて突き合うのかよw

696 名前: 衝撃の就職活動(ファーストブリッド) 投稿日: 2006/02/07(火) 22:42:18
 なんか、面接官が壁に埋まってる。

「―――――――――」
 言葉がない。
 なんでこんな状況になったのか。
 なんであんなもう待たせるからヤっちゃいましたな顔をしているのが目の前にいるのか。
 それもすごい形相で。
 頬には冷や汗を伝わせ、言い訳などいらぬ、一度拳を放てば止められるわけないわ、という開き直った気迫。

 というか意地になってないかあいつ、頭を下げるスピードが尋常じゃないぞ。
 もしかして謝っているのか。
 あの人とトラックが百キロぐらいでぶつかって
 交通事故のあげくワタシ人間凶器コンゴトモヨロシクみたいなコトして謝りたいというのか。

 だとしたらまずい、面接官もまずいがこの俺もまずい。
 アレ、絶対やばげな量のドーピングしている。
 そうでなくちゃ説明できない。

「どうしましたか、黙ってないで何か言ってください。これは何があったんです?」
 言葉を選びながら俺が言う。

「………………」
 用心しながら……いや、もう何に用心すれば我が身は安全かわからないが
 ……ともかく用心しながら壁を見る。

「――――――――」
 じっと面接官の動きを観察する。
 ……凄い。面接官、これでもまだ息がある。
 こいつ、ホントに大丈夫か……と、119に手を伸ばそうとした時、不意に採用希望者と目が合った。

「――――――――」
「――――――――」
 視線が合う。
 採用希望者はいつものことですからと一縷の望みを託した目で俺を眺めて、

「採用は――――?」
「できるか――――!」

 全力で返答する。
 採用希望者はわずかに物事諦めた様子を見せ、うなだれて帰っていってしまった。
 ……って。
 もしかしてあの女、俺の返答に僅かでも期待してたのだろうか?

697 名前: 天の逆月 投稿日: 2006/02/07(火) 22:43:10
「……分かりました。それでは貴方の気紛れに甘えるとしましょう」
「それでいい。んじゃあま、一緒に別れるか」
「ええ、では背中合わせで行きましょう。……何というか、いま貴方の顔を見たらひっぱたいてしまいそうなので」
「――――――」

 明るい声で言う。
 最後の最後に、成し得なかったものが完成する。

「…………大丈夫かな。オレ、ちゃんと背中ある?」
「あります。ほら、踵を回して」
 背中を向ける。
 触れ合える感触はないが、彼女は後ろにいる。
 もう温かくも何ともないが、喜びを感じる心はまだ在きている。

「確かに、じゃあ行くぞ」
「せっかちですね。ここまでしたのですから、同時にスタートしましょう。
 三秒数えたら走り出すというコトで」
 
 スプリンターのようだ。
 号砲は各々の心の中で。

 3、大きく呼吸をする。
「あ、抜け駆けして三秒前に走り出す、というのはなしですよ。決闘ではないんですから」

 2、返事がない。響く崩壊の音――――
「――――え、アヴェンジャー?」

 1、返事はない。遠く光る出口――――
「アヴェンジャー―――アヴェン、ジャー……? あ、もしかしてもうしゃべれないんですか…?」

 0、高らかな笑い声。
「あっはっは。引っかかったなマヌケ―――!甘いぜ、オレは一秒目で逃げ出してる!」
「っ――――!」 



 ――――敵が逃げる。
 格闘技術において、私は彼を遥かに上回っている。
 彼では私に敵わない。
 しかし追いかければ、私が脱出する前に聖杯(うつわ)ごと破壊される。
「は――――」
 目を背けず、火花じみた速度で逃げる彼を追いかける。
 やるべき事は唯一つ。
 崩壊より迅く、躱されてもより迅く、この拳を打ち込むだけ。
 ――――耳朶(じだ)に響くものは己の心音のみ。
 止まない崩壊の音も、雨のように降り注ぐ聖杯の欠片も目に入らない。
 倒すべきモノは目の前にいる。
 何百回と繰り返した再現、一つの世界の崩壊に関心はない。
 バゼット・フラガ・マクレミッツにとって。
 あの“悪魔”を叩きのめす事だけが、残された最後の意味だった。

698 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:44:34
なんだかんだでフォモネタだとみんな食いつきいいねえ……

699 名前: おみくじ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:45:27
「すばらしい運勢です。
 自信に胸を張り今日を歩き出してください」
「そしてできれば、その幸せをどなたか近しい人に分けてあげてください。貴方はより豊かになれるはずだ」
「では、いってらっしゃい」


この先はタイガー道場です。アドバイスを受けますか?  はい  いいえ

700 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 22:48:40
嘘つき共wwwwww

701 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:02:34
 皆が寝静まった夜。
 肩慣らしの意味も含めて、バゼットと軽く訓練をする。
 勝ちに行くのではなく、運動としての意味合いが強いので、二刀流はなし。俺は腕一本だけだ。
 バゼットはいつものような一撃を打ってくる事はなく、比較的緩やかに悪い部分を指摘してくる。
「―――アンリの大上段はまだ隙が大きすぎます。
 ここぞと言う時以外は控えるように」
 もっとも、緩やかにといった所でそれはあくまで比較的に過ぎず、今も隙だらけの胸に一撃を食らって床に叩きつけられた。
「っ、気をつける――」
 痛む胸を抑えつつ、立ち上がってもう一度構える。
「ええ。ですが日に日に鋭くなっています。その調子で続けましょう」
 バゼットはやけに嬉しそうだ。
「楽しそうだな、アンタ」
「ええ。少しずつではありますが、アンリの成長は確かなものです。師として、これほど喜ばしい事はありません」
 ……なるほど。
 そんな師匠を前にすると、弟子としてはますます頑張りたくなるというものだ。
「じゃ、もうちょい続けよう。
 ……今回はちょいと隠し技があるんだ。ホントはまだ見せられるもんじゃねえんだけど……」
 この誠実で弟子思いの師匠に、いいところの一つも見せたくなったのだ。
「……? いいでしょう、仕切り直します、アンリ」
 キッと構え直すバゼット。
 いつも通り、こっちが動かないと見るや、休む間など与えぬと打ち込んでくる―――!
「シャ、ハ―――!」
 それを真正面から受けるのではなく、絡め取るように横を抜けて―――すれ違いざまに急所を狙った一撃は、やすやすと避けられた。
「……ちっ。今までで一番うまくいったのに、あっさり防がれたか……」
 がっくりと肩を落とす。
「…………アンリ、今の動きは?」
「ああ、新しい体捌きだろ?
 アンタをちょっと驚かせようと思って、ラン……」
 ……あ、あれ?
 なんだろう、なんかバゼットすごく怒っているような?
「マ、マスター……?」
「……何処で覚えたか、と聞くのは愚問ですね。
 今の足運びと攻め方はランサーのものです、一体いつの間に―――」
「いや、衛宮士郎の時に他のサーヴァント達に稽古をつけてもらってな」
 もっともランサーほどの速度も体術もないんで、模倣、というよりは参考程度にすぎないのだが。
「なるほど、つまりアンリは相手が誰であろうと教わる事にためらいを感じない、と。そういう訳ですね?
 ええ、思えば貴方はアーチャーの闘法も模倣していましたね」
「―――マスター?」
「魔術はキャスター。戦術は私と言いながらも実に気が多い。
 しかし。他のサーヴァントは目をつぶるとしても、よりにもよって、あのランサーからとは」
「待った。アンタ、何か勘違いしてないか……?」
「私だって本当は指導を受けたいのに……」
 ちょ、何つぶやいてんのこの人間凶器……!?
 踏み込みは力強く、バゼットは本気で宝具を構えてくる。
「……いいでしょう。さあアンリ、二刀でも槍でも好きな武器をとっても構いません。
 今宵はいい機会です。誰の戦闘スタイルが一番相性が優れているのか、それを証明し合いましょう」
「いや……そんなの、アンタとが相性一番だって分かってるけど―――マスター、ランサーと稽古したコト、怒ってんのか?」
「そのような事で怒ってなどいません。
 ただ、アンリが私以外の誰かに師事した結果というものを知りたいだけです」
 ふふふ、この分だとセイバーやアサシンの方面も疑ったほうが良さそうですね、なんて呟いているのが聞こえた。
「嘘つけ、なんかやる気満々じゃねえか!」
「ええ、稽古ですから当然です。
 ―――それでは、覚悟しなさいアンリ!」

「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」
「“偽り写し記す万象”―――!!」

 聖杯戦争は終わった。
 戦いは勝者を生むことなく、
 異常は解明されることなく、
 虚ろな楽園は、今もこうして回っている。
 さて―――オレは本当に、アヴェンジャーという星になれるのだろうか……?

702 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:30:40
>>696
GJ すばらしい勇気だ面接官の後に来た人w

703 名前: 「氷室鐘の考察」氷室⇒>652版実典(1/2) 投稿日: 2006/02/07(火) 23:41:09
「…………」
 おや、珍しいところに珍しい人物が。
 美綴綾子の弟で一年生の美綴実典、人呼んで美綴少年。
 弓道部の期待の新人で、今度の秋大会でのデビュー戦を控えた男子だ。
 そんな彼がこっちを見つめている。

「よっ。奇遇だな、実典」
「衛宮先輩スか。そういえば、ここはアンタの活動圏だったな」
 じろり、と軽く睨む様な視線を向けてくる。
 美綴姉からは“実典はね、あれでクールを装ってるつもりだろうけど、少しからかうとすぐ赤くなるんだ”という、実に微笑ましい話を聞かされている。
「……なるほど、噂は本当だったんだな」
「ん、噂ってどんな?」
「先輩が主夫だって専らの噂ですよ。姉ちゃんだけでなく、他の先輩も噂してました」
 手遅れだと言いそうな、実典の語り口。
 ……間違ってはいないが、そう噂されるのは男の沽券に関わるような気がする。
「間違いじゃないけど……そのうち俺、子育てしてるコトにでもなってそうだ」
「―――似合ってるんじゃないッスか。
 例えば、間桐部長は後輩の面倒をよく見てくれるいい先輩ですし。
 その部長が衛宮先輩を見習ってるって言ってたから、年下の世話は上手いんじゃないかと」
「……桜と一緒か……」
 現弓道部部長、そして俺の家族とも呼べる存在の桜。
 怒らせるとちょっと……いや、かなり怖いのだが、普段は折り紙付きのいい娘だった。

「それで、買い物中ですか先輩。精が出ますね」
「なにかと食い扶持が多くてな、皆で買い出しに出ないと間に合わない」
 三人は常時居るし、増えると最大六人にもなる。
 昔と違い、計画的な買い出しが必要だ。
「そんなに先輩の家には養い口が多いんスか」
「多いぜー。それにだな、結構食うのが三人ほどいる」
 本人の名誉のため、あえて名前は公表しない方針で。
「……念のために聞きますけど、一度に何合炊飯するんですか?」
「えーっと、七合」
 弁当もあるし、それくらいは平気で炊く。
 だって六人だとそれくらいになるだろう―――って、なんでこっちを哀れそうに見ているのか。
「アンタの家は合宿所ですか?」
「似たようなものだなぁ、いつの間にか色々住み着いてるから」
「それを先輩が養っていると、ご苦労なことで」
「自分だけの食事を作っているより、ずっと気は楽だけどな」
 昔は藤ねえも切継もいないと一人で食事をしていた。
 あの味気なさに比べれば、賑やかなのはずっといい。
「で、実典も買い物か? 料理するの?」
「いや別に。……料理は出来ないコトはないっスけど、得意じゃないですし。家じゃ母さんと姉ちゃんの仕事ですね」
「へえ、美綴がやってるとは意外だな。……昔、合宿で大雑把な料理をご馳走になった事はあるが」
「ねーちゃんはアレで料理上手いですよ。男みたいな性格してるくせに、少女趣味で部屋に人形とか飾ってますし」
 なんと。
 あの、ともすれば遠坂ともども『穂群原でケンカを売ってはいけない人物トップ3』にランクインする美綴に、そんな一面が隠されていようとは。
 まあ、弟の口から聞いても少女趣味に飾られた美綴なんて俺には想像できないのだが。
「それと、買い物かどうかって話ですけど、そんなことはないです。
 天気がいいし暇だったんで、ただ散歩してるだけですよ」
「そうだったんだ。珍しいな」
「それは俺が散歩する事ッスか? それとも、先輩と遭遇する事ッスか?」
 息つく暇もなくつっこみが入る。
 つっけんどんに返してくるのが実典らしい。
「両方だよ。こんなところで出くわすのも、暇だから散歩っていうのも実典のイメージじゃなかった」
「でしょうね。俺自身、大会も近いのにやる事ないから散歩ってのも珍しい。でもまあ、たまにはそういう、目的がないのが目的、って気分になったんでしょう」
 
 実典はぶらぶらと歩き始める。
 買い物はまだ終わってなかったが、足は実典を追いかけていた。

704 名前: 「氷室鐘の考察」氷室⇒>652版実典(2/2) 投稿日: 2006/02/07(火) 23:42:10
「……いいんスか? 先輩」
「なにが?」
「買い物の途中でしょう。そんな重い荷物を抱えて、暇をしている俺を追いかけて良いのか、ってことですよ」
 心配しているのか、それとも冷たく怒っているのか。
 昔の遠坂みたいな慇懃無礼な近寄りにくさ、ではなく、実典の素っ気なさは天性のものだ。
「あらかた買い物は終わったからな。ここまでは帰り道の一環だよ」
「ならば良いんですけど、あいにくと俺とアンタとではここまでッスね」
 実典が一瞥した先には、ブランコがあった。
 誰も座ってない空の座席が揺れている。
「あれに並んで座って、恋の悩みとか語り合えるとも思えない」
「な、に……!?」
「……何なんスかその反応。今のは、そんなに大げさなリアクションをされるような発言でしたか」
 気まずそうに声をひそめる実典。
 もしかして、今のは実典なりの冗談だった……?
「わるい、うまく切り返せなかった。
 ああ、恋の悩みはともかく、ベンチで話すくらいは有り得るよな」
「む……ブランコは、さすがにロマンが過ぎましたか。すんません」
 ささっとブランコから離れる実典。

 ……待て。
 もしかして今の、冗談でもなんでもなかった……?

「話題を変えましょう。
 ……つまらない話ですけど、ついてきた先輩が悪い。少し、俺の独り言を聞いてもらえますか?」
「え……ああ、俺でよければ」
 ベンチに座り、キリッと背筋を伸ばす。
 知らず茶化してしまった、せめてもの誠意だ。
「ご静聴感謝します。
 と言っても、たいした話じゃないんスけど。単に、こんな気紛れを起こす自分は一体どうしてしまったのだろうな、という疑問なんです。
 なんというか……俺は、本当に昨日までの俺だったのかな、と」

「――――――」

 ……興味深いコトを言う。
 この状況に疑問を覚える者はいたが、昨日の自分に疑問を覚えたものはそういない。
「……へえ。言葉にはできない、目には見えない違和感がある、とか?」
「違和感っスか……そうですね、それがしっくり来る。
 昨日まで記憶していたある印象があるんですが、それが微妙に異なってる。でも根本は同じなので、それが問題を起こすというワケでもない。
 だから、もしかしたら変わったのは俺かもしれない。今朝、眼が覚めた時にそう思ったんですよ」
「…………………。目が覚めたらイモムシになってるってヤツかな」
「そこまで文学的でもないつもりですけどね。
 ……それに、目には見えないけどはっきりと言葉にはできる。俺は、何が違和感になっているのかハッキリと認識できているんです」

「――――――」

 それは驚きだ。
 違和感は、掴めないからこそ違和感なのに。
 彼は何が違うのか、言葉として表現できるというのだ。
「それは、どんな?」
「それは……その、実に言いづらいんスけど。
 ………………あの先輩。俺たちは今まで、こんなに気安く話せていましたっけ? 
 それに、二人で夕日を眺めながらなんて。
 そ、それこそ、これじゃほら、なんというか…………………」

 し、親友同士みたいじゃないッスか、と。
 ぼそりと、美綴少年は呟いた。
 その顔の赤さはこっちも釣られて熱くなりそうな程だった。

「――――――、は」

 緊張していた意識が、どっと緩んで崩壊する。
 目の前の少年には失礼だが、少年の少年らしさという力に驚きを通り越して感嘆してしまったのだ。
「な、なんスか、いきなり口を押さえて。
 俺は真剣な話をしたんですよ、笑い話はしていませんよ!」
「は、いや、はは、ちがう、おかしくて笑ってる、んじゃなくてだな」
 実典は凄いなあ、と本気で拍手したいのだ。
「……もういい、先輩に話をした俺が馬鹿だった!
 先輩、アンタは俺のコトなんかとっとと忘れて、家の養い口たちの買い物を続けるといいんだ!!
 俺もガラにもないコトは止めて、家に帰ります」
「あ」
 引き止めるヒマもない。
 実典は蒔寺もかくや、という勢いで公園の出口へ走っていく。
「それではさようなら。
 今回の件で、俺はアンタを敵と認識しましたから。こ…今後は、二度となれなれしく話しかけないでください!」
「げ。悪かった、悪かったってば! おい、ちょっと待てよ実典!」

「――――――――――――」

 ダダダっ、と振り向きもせず無言で走り去っていく美綴実典。
 ……不覚。
 面白い話だから、もっと聞いていたかったのだが。

705 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:47:47
ソフトやおい系はどれも輝いてるなw
みんなGJ

706 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:49:11
…………ひょっとして、昨晩から801祭りは続いているのか?w

707 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:50:05
>>648
なんか切ないような、いろいろ台無しのような…。

708 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:51:45
>>697
ダメットすぎwwww気づけよwwwwwwww

709 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:54:28
>>696
最初スレ違いのネタかと思ったが成る程。そういう事かw
GJ!

710 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:54:54
実典はほんとそんな役だよなw むくわれないというか。

>>706
レス番801まで続きます。トリはきっとしょうもないレスで潰されます。

711 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/07(火) 23:58:45
みのり
          せなか
     
 かゆ

712 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:02:09
>先輩、アンタは俺のコトなんかとっとと忘れて、家の養い口たちの買い物を続けるといいんだ!!

なんだよ、この見事なツンデレっぷりはw

713 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:17:12
>>701は正直イマイチかなあと思っていたんだが、
>「私だって本当は指導を受けたいのに……」
これで吹いた。そうか、これを言わせるための「ライダー→ランサー」だったんだなあ。
バゼット可愛いよバゼット。

714 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:21:18
>>648
あ、あれ? 結局消滅できてないんだ英霊エミヤ!
過去の自分暗殺計画から過去の自分洗脳計画に切り替えたのに、やっぱり世界から放してもらえないんだなあ。

715 名前: ファムファタール(黒剣→士郎 士郎→剣)+葛藤 投稿日: 2006/02/08(水) 00:26:52
「――――――――、あ」

 走った。
 自分が何をすべきなのか、理解できずに走った。
 走りながら、聖剣を取り出した。

「――――シロ、ウ」

 駆け寄る。
 駆け寄って―――ーシロウに駆け寄って、その、無抵抗な体に圧しかかった。

「ぁ――――セイ、バー――――?」

 血が足りてないのか。
 シロウはぼんやりと、私を見上げている。

「―――――――――、あ」

 シロウにはどう映っただろう。
 私は馬乗りになって、聖剣を振り上げて、シロウを見下ろしている。

「――――――――」
 シロウの鞘による回復は半端じゃではない。
 ここでトドメを刺さなければすぐに復帰する。
 ここでトドメを。
 傷つき、抵抗できず、立ち上がる事もできないシロウを、ここで殺さなければ、私は聖杯を得ることはできない。

「あ――――、あ」

 あれだけ強かった決心が、今はひどく揺らいでいる。

「――――――――」
 ……意識がまだハッキリしていないのか。
 シロウは朦朧とした瞳のまま、目前の私を見つめている。
 私は――――


 ……振り下ろせない。
 聖剣を持つ手は震えるばかりで、一向にシロウの首を刎ねない。

「――――――――」
 彼は、ただ私を見上げている。
 何か悲しそうに、いつもと同じ優しい瞳で、馬乗りになった私を見つめている。

 たった二週間ほど。
 彼がマスターとなったあの夜から、まだ二週間程しか経っていない。
 ……いや、もう二週間と言うべきか。
 鮮やかな赤い髪、穏やかな琥珀の瞳を得てから、もうそれだけの時間が経った。

 初めての戦い、いきなりバーサーカーから私を庇った驚きは、今も鮮明に思い出せる。
 彼は全てを知った上でも私の願いは間違ってると言った、最期には私の鞘なのだと分かった。

 ―――何度傷を負おうと、死を迎えそうになろうと。
   その決意が鈍った事は一度もない。

 忘れない。
 この言葉を、この彼の決心を忘れる事など出来ない。

 ―――その道が。今までの自分が、間違ってなかったって信じてる。

 それは、
 彼がどう変貌しようと失われない、切り取られた、一つの答えだった。

「――――――――」
 そうして悟った。
 私に、シロウは殺せない。
 見る影もなくぼろぼろにされて、例えあと少しで死にそうであろうと、私を正してくれたシロウなのだ。

 それを―――どうして、殺める事が出来るだろう。

「――――シロ、ウ」
 ……聖剣が落ちる。
 シロウの首ではなく、乾いた石畳に突き刺さる。

 ……そう、全て揃っていた。
 騎士としての誇りも、王としての誓いも。
 アルトリアという少女が見た、ただ一度のとうといユメも。

716 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:28:27
【あなた」「には」「見えない】

 魔術師の声が、聞こえた。
 脳そのものに直接響くそれは、間違いなく真実だった。
 あまりにも古い言語の為、何を言っているかはまったく分からなかったのだが、

「な、なんてコトだ……! この事件が幹也公認の決戦で、なんか競争相手はあの鮮花で、
その勝者は幹也を思い通りにできるだと……!!!!?」

 とまあ、概要はおおむね掴め「そんな事は言っていませんよ、式くん」

717 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:31:06
相手はゴドーワードかな?

718 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 00:59:33
「巧く避けろ。
 なに、運が良ければ手足を串刺す程度であろう―――!」
「――――!」
 号令一下、神速を以って放たれるヒロインの雨。
 それぞれが必殺の威力を秘めるそれを、
「っ…………!」
 舞い散る木の葉のように、悉くを受け流す――――!

 正面からのバゼット、
 左翼からのカレン、
 下方、および頭上同時によるトペ・アインツベルン、
 弧を描いて後方から奇襲する三人娘、
 自分を上回るほど巨大なセイバーの薙ぎ払い――――!
 遠坂、桜、美綴、最後に迫った一撃から身をひねる……!

「は――――ぁ、ア――――!」
 呼吸を乱しながら、無理矢理に崩した体勢を立て直す。
 ―――その瞬間。
 俺は、敵の背後にあるソレを見た。
 ギルガメッシュの背後、
 既に展開したヒロイン、その数実に四十七―――!

「く――――、つっ…………!」
 全力で跳ぶ。
 推進剤でも使ったかのような跳躍を逃がすまいと、無数のヒロインが大地に突き刺さっていく。

 ヒロインの雨の中、次々と被弾していく。
 服は破かれ、手を捕まれ、秘所を守る衣服さえコナゴナになっていく。
 その窮地においてなお致命傷を避ける俺の目に、最悪の光景が飛び込んでくる。

 ヒロインの雨の向こう。
 逃げ惑う獲物に王手を刺すように、英雄王は己が愛剣を引き抜いている――――!
“ゲイ・ボルク――――!”

719 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:02:21
そうか、彼の英雄王こそ世界最古のヒロインであったか……w

720 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:06:14
なんだよ!これも801祭りだったんかいw

721 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:06:43
ちょwwwwwwwウラヤマシスwwwwww

722 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:11:27
>>718
なんてシュールな光景だw

723 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:13:46
アンリミテッドヒロインワークスなんてのもアリだな

724 名前: 食いしん王万歳 イリヤ->鐘 バサカ->楓 投稿日: 2006/02/08(水) 01:25:35
「見つけたぞ衛宮某」
「ん、奇遇だな氷室――って、蒔寺まで一緒なのか。今日は陸上部の練習はないのか?」
「――――」
「問題ない衛宮。既に今日の分は消化して後輩の世話は他の人間に任せた」
「そ、そうか。じゃあ、どうして蒔寺も一緒なんだ?」
「それはな、衛宮を捕まえに来たからなのだ」
「へー俺を捕まえに……って――」
「それは一体どのような意味ですか、氷室鐘」
「ふふふ、衛宮はこのまま私と共にヴァルハラ温泉に行くのだ」
「……なんか、そこはかとなく天国に一番近い感じの名前だな、その温泉」
「うむ。前にこの蒔寺を連れて行ったら気持ちよさのあまり大変な事になった」
「何故、シロウが貴方と共に行かなければならないのですか?」
「そんなの、私が衛宮と共に入りたいからに決まってるだろう」
「氷室鐘、シロウは貴方の所有物ではない。今日は既に先約が入っているのですから、日を改めて来るべきです」
「ふむ…、やはりセイバーさんは邪魔をするか…」
「……まさか、氷室。蒔寺を連れてきたのって」
「うむ。邪魔なセイバーさんをどうにかするためだ そこな御仁さえ居なければ君を篭絡する自信はあるからな」
「――いや、まあ確かに俺も普通の高校男子だからそこらへん弱いけどさ」
「シロウ、来ます!」
「行け!蒔の字!!」
「―――!!!!」

725 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:26:27
そして名前が出てこずスルーされる藤村大河

726 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:27:28
 勃っている。
 この風の中であいつは勃っている。
 立って、後ろ側へ行こうとしている。
 ―――当然のように。
 赤い外套をはためかせ、鋼の風に圧される事なく、前へ。
「                        
                         
                     ああ、あ」

 顎に力が入った。
 ギリギリと歯を鳴らした。
 股間は、とっくに戦闘状態になっていた。

 赤い騎士は俺など眼中にない。
 わずかに振り向いた貌は厳しく、この風に飲まれようとする俺に何の関心もない。

 ヤツにとって、この結果は判りきった事だった。
 衛宮士郎ではこの欲には逆らえない。
 自分を裏切り、手に余る望みを抱いた男に未来などないと判っていた。

 ヤツの言葉は正しい。
 溜めに溜めた罰(ケツ)は俺自身を裁くだろう。
 だというのに、ヤツの貌は。



     “――――突かれるか”
 蔑むように、信じるように。
 俺の到達を、待っていた。


「       ――――突かれるか、じゃねえ」

 視界が燃える。
 何も感じなかった棒にありったけの熱を注ぎ込む。
 手足は、大剣を振るうかの如く風を切り、



「てめえの方こそ、突かれやがれ――――!」

 渾身の力を篭めて、黒いロー・アイアスを突破した。

727 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:31:19
後出しで色物ネタ持ってくるならよっぽど面白いもん持ってこないとマイナス補正かかるだけだぞ

728 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:37:56
>>724
ちょwwマキジ=バサ力はいくらなんでもひどwwwうぇwww

ところで温泉でも眼鏡は外さないんだよな、当然。

729 名前: バゼット→慎二 投稿日: 2006/02/08(水) 01:39:05
 不可解だ。二十年以上付き合ってきた自分の姿を見て、僕は何かに驚いている。
 暗い色を帯びた蒼い髪と瞳。
 不足のない、人を傅かせるばかりの整った容姿。
 常人でない事を証明するような、手の甲の魔術刻印と令呪。
 これは僕だ。今まで通りの、何の代わり映えもしない、間桐慎二である。
「――――――」
 なのに、僕は僕に驚いている。
 鏡に映る僕は、どこか間違っている気がするのだ。
 何か余分なものがあって、持つべきものが欠けている。
 そんな矛盾した考えが脳裏に浮かんで、
「落ち着いたか? ならてっとり早く殺しに行こう。
 お互い、やられっぱなしは性に合わねえだろマスター」
「―――――」
 その言葉で、小さな違和感は消し飛んだ。
「……そうだ。僕はマスターとして、聖杯戦争に参加した」
 間桐の魔術師として聖杯戦争に挑み、これに勝利する。
 それが僕の使命だ。
 それだけが僕の役目だった筈だ。
「…………、っ…………」
 ……なのに、何故だろう。
 僕は漠然と、聖杯ではない何かを求めていた気がする。
 何かを。誰かを。
 ともすれば、聖杯より強く、何かを欲しいと想って、
 思い出せない。
 この数日の内に、僕に何が起きたのか。
 自分が何者であるかは認識できるのに、その後―――聖杯戦争が開始してからの記憶が曖昧だった。
 マスターとして戦いに参加した記憶はある。
 サーヴァントと共に街を巡回した記憶もある。
 だが所々が欠けている。数日間……そうだ、戦争が始まってからの記憶に靄(かすみ)がかかってい

る。
 そもそもどうして、僕はこんな山中の池のほとりで、今まで眠っていたというのか。
「おーい。いつまでもボケッとしてんじゃねえぞ。
 時間もねえんだ、さっさと片づけに行こうぜ」
「――――――」
 ……先ほどから話しかけてくる影。
 僕という肉体が楔(くさび)となって、あのサーヴァントを現世に留めている実感がある。
 彼が僕のサーヴァントである事は間違いない。
 しかし……僕が召喚したサーヴァントは、あんなサーヴァントだったろうか……?
「―――いいや、僕の呼び出したサーヴァントは、たしか―――」
 もっと違った、扇情的なばでーだったような、と。
 間桐慎二は自問した。
 記憶を呼び戻そうとすると気が遠くなる。
 くくく、と笑いを押し殺すサーヴァント。
 黒い影は、僕の手を取って歩き出す。
「さあ、聖杯戦争を続けよう、間桐慎二。
 ―――今度こそ、君の望みを見つける為に」

 その視線の先には、一組のマスターとサーヴァントの姿があった。
「っ……!」
 強い魔力を感知する。
 左手には令呪の輝き。
 まだ年若いだろうに、その才気は僕を遙かに上回って――――
「はじめまして、鄙(ひな)びた荒野の魔術師さん。
 どう、お互いの名を知る必」
「はん! 僕より優れた魔術師なんて存在しないね!
 さあ行けよアヴェンジャー、僕のサーヴァントとして遜色のない働きを見せてよね!」
「無茶いうな!? 世界中の伝承を見渡しても、オレより弱い英霊なんて存在しない。
 イエーイ、アイムナンバーワン!
 ついてるねマスター、これ以上底はないぜ! ってちゃんとモノローグで語っといただろうが!?」
「ふん、そんなの僕の知ったことじゃないね!
 いいかい、オマエは僕のサーヴァント! なら、僕の命令は絶対達成ってもんだろうーーー!?」
「な、なんだとーーーーーー!?」
「今更なに言ってんの? オマエは僕が呼び出したサーヴァントだ。それが最強でない筈がないじゃん

か」
 まっすぐに。
 絶対の自信と信頼を込めて、間桐慎二はオレを見据えた。
「な――――――――」
 思考が停止する。
 間桐慎二の言葉に嘘はない。
 彼は、出会ったばかりのオレを、オレ以上にはっきりと認めていた。

730 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:57:07
>>729
ちょ、後半混沌としすぎだw

731 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 01:59:26
だがそれがいい。

>今更なに言ってんの? オマエは僕が呼び出したサーヴァントだ。それが最強でない筈がないじゃんか

この無根拠な自信満々っぷりが愛おしくてたまらねーw

732 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 02:01:59
>>726
ガチホモ下ネタ系は、なんつーか微妙。
軽い801系っていうか、
変すぎてシュールの域に達したものの方が好まれる傾向にあると思う。

733 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 02:02:44
境界線はゲイボルクあたりか

734 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 02:08:08
巧いな。組み合わせ系か。
ちょっぴし間違っただけで独りよがりの駄作に成り下がる技術なのに、
使いこなしてる。流石だ。GJ!
>「無茶いうな!? 世界中の伝承を見渡しても、オレより弱い英霊なんて存在しない。
> イエーイ、アイムナンバーワン!
> ついてるねマスター、これ以上底はないぜ! ってちゃんとモノローグで語っといただろうが!?」
流れるようなこの台詞が好きだw
アンリのノリの良さが滲み出てる。

735 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 02:50:45
「じゃ、もうちょい続けよう。
 ……今回はちょいと隠し技があるんだ。ほんとはまだ見せられるもんじゃないんだけど……」
 この誠実で弟子思いの師匠に、いいところの一つも見せたくなったのだ。

「……?いいでしょう、仕切直します、シロウ」

 キッと構え直すセイバー。
 いつも通り、こっちが動かないと見るや、休む間など与えぬと打ち込んでくる―――!

「やっほー! セーイバ―――!」
 それを真正面から受けるのではなく、満面の笑顔を浮かべて―――セイバーめがけてのダイブは、易々と避けられた。
「……あちゃ、今までで一番うまくいったのに、あっさり防がれちまったか……」
 がっくりと肩を落とす。

「…………シロウ、今の体当たりは?」
「ああ、新しい戦法だろ?
 セイバーをちょっと驚かせようと思ってトペ・アインツ……」
 ……あ、あれ?
 なんだろう、なんかセイバーすごく怒っているような?

「セ、セイバー……?」
「……何処で覚えたか、と聞くのは愚問ですね。
 今の体当たりはイリヤスフィールのものです、一体いつの間に―――」
「いや、弓道部に顔を出した時に藤ねえに弓道部の奥義を伝授してもらってさ」
 もっとも、高い足場も発射台もないんで、模倣、というよりは参考程度にすぎないのだが。

736 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:00:53
オチが見えないよスター。

737 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:09:50
>>735
そのままの勢いで抱きとめられてても困っただろうな。特に士郎

738 名前: 行動原理+黄金の別離 投稿日: 2006/02/08(水) 03:10:12
 それは、五年前の冬の話。

 月の綺麗な夜だった。
 自分は何をするでもなく、父である衛宮切嗣と月見をしている。
 冬だというのに、気温はそう低くなかった。
 縁側はわずかに肌寒いだけで、月を肴にするにはいい夜だった。

 この頃、切嗣は外出が少なくなっていた。
 あまり外に出ず、家にこもってのんびりとしている事が多かった。

 ……今でも、思い出せば後悔する。
 それが死期を悟った動物に似ていたのだと、どうして気が付かなかったのか。

「子供の頃、僕は正義の味方に憧れてた」
 ふと。
 自分から見たら正義の味方そのものの父は、懐かしむように、そんな事を呟いた。

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」
 むっとして言い返す。
 父はすまなそうに笑って、遠い月を仰いだ。

「うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で、
 オトナになると名乗るのが難しくなるんだ。そんなコト、もっと早くに気が付けば良かった」
 言われて納得した。
 なんでそうなのかは分からなかったが、切嗣の言うことだから間違いないと思ったのだ。

「そっか。それじゃしょうがないな」
「そうだね。本当に、しょうがないよね」
 相づちをうつ切嗣。
 だから当然、俺の台詞なんて決まっていた。

「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ。
 爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。 まかせろって、爺さんの夢は」

“――――俺が、ちゃんと形にしてやっから”

 そう言い切る前に、父は微笑った。
 続きなんて聞くまでもないっていう顔だった。
 衛宮切嗣はそうか、と長く息を吸って、

「ああ――――安心した」

 静かに目蓋を閉じて、

「最期に、一つだけ伝えないと」
 強く、意思の籠もった声で父は言った。

「……ああ、どんな?」
 精一杯の強がりで、いつも通りに聞き返す。
 切嗣の体が揺れる。
 振り向いた姿。
 父はもう何も見えていない瞳で、後悔のない声で、

「士郎――――君を、愛している」

 その人生を終えていた。

739 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:14:47
801というより普通に全米が泣いてしまうんですけどw

740 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:14:56
切嗣の死に際の笑顔は士郎にとって呪縛に等しいけど、これはこれで呪いだなw

741 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:15:09
ちょっと綺麗すぎる気もするが…………
いや、しかし綺麗すぎるのでこれはこれでアリ。

742 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:18:52
801のつもりじゃないぜ

743 名前: 740 投稿日: 2006/02/08(水) 03:20:08
ひひひ、801な流れに毒されちまった自分が憎いw

744 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:21:04
ひひひ、もう消えてしまいたい

745 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:30:11
むしろ801をお願いしる。

746 名前: カレンⅤ 投稿日: 2006/02/08(水) 03:31:41
 空には星の天幕。
 長い演奏が終わり、衛宮邸には艶かしい音が響いている。
 パン、パン、パン。
 布団をたたく音ではない。
 乾いた音はオレの腰元から沸いてくる。
 つまるところ、オレはなぜだか腰をふっているのだった。
 で。毎度の事ながら、目の前には女が鳴いている。
 その顔はいつもの仏頂面ではなく、
「……良かった。感謝します」
 蕩かすようにして、されど媚態に溺れない、女神らしい笑顔があった。
「――――――」
 なんだ。
 いつも物欲しそうに立っていたが、こんな些細なもので良かったのか。
 こんな気まぐれ一つで、人間は笑えるのか。
 ……まいった。
 空気読み機能は、オレにこそ必要だったみたいだ。
「なあ。今日のは随分とはげしかったな。
 もうすっかり夜だけど、体は大丈夫か?」
「はい。今は貴方の心が穏やかですから。暴走していなければ問題はありません」
「そうじゃなくて。何時間も腰振ってたんだ。単純に疲れてないかって話」
「あ、はい。体の疲れはありません。お望みでしたら一日中でも続けられますが」
「へえ、そりゃ凄い。凄いけど遠慮しとく。さすがにそこまでもたない」
 数時間程度のまぐわいで早漏って感傷に浸ってしまったのだ。
 二十四時間もぶっ通しでなんて聞いていたら、それこそ幼児退行しかねまい。
「―――しかし、なんだな。
 桜にはばれてないんだよな?、このこと」
 周りを見渡す。

 間桐桜。
 あの少女だけはこの現場を見せられない。
 聖杯戦争において、彼女は『開き直ったら何をしでかすか解らない』どういった結末になるかあきらかだからだ。
 ……あの少女は、聖杯戦争を生き抜いた段階で、トオサカイズムに目覚めるという結末をもたらしていた。
 それを利用して、目の前の女はこの『うっかり』に介入した。戦いはないが、女という役割は残っている。
 その空席にライダー・メデューサは滑り込んだというワケだ。

747 名前: ファンシーカース。大魔神とても怒る→ブロードブリッジ 投稿日: 2006/02/08(水) 04:01:50
 幕が下りた。
 終演のブザーが鳴り、屋敷は深い闇に沈んでいく。
 眠りは深く、五日目の朝が来るまで蘇生する事はない。
 もう、出会う事はない。
「……そのわりにはあっさりしてるな。
 ま、考えてみればたった四日だし、愛着も湧かないか」
 もとから別れを告げる相手もいないし、持ち帰る荷物もない。
 じゃあなー、と手を振って表舞台を後にした。
 じき日付が変わる。
 四日目の夜、居残る俺を殺そうと黒い月が回り出す。
 これからその大本を破壊しにいく。
 願いの終わり、パズルの完成。
 虚無を生み出す最後の隙間を、直に行って塗りつぶす。

『おー、ブロードブリッジよブロードブリッジよー! さあ、みんなで骸を倒しに行きまっ、しょっ!』
 四日目が終わった瞬間、橋の中心で雄叫びが上がる。
 ああいう物騒な言い回しをするのは遠坂以外になく、各コンビは慣れたように最終決戦のポジションに移動していく。
『あー、私も今回は寺で。付き合いますわ宗一郎様』
『……すまん。連れ添いの手前だ、断れん。
 ―――迷惑をかけるぞアサシン』
『拙者も遠慮したいのだが。ふむ、宗一郎やキャスターがそこまで言うのならば付き合おう』
『私たちは今回パスよ。……じゃなくて、いい加減諦めたら貴方たち。私たちとサクラたち。飛沫ではなく、波紋となって大局を揺るがすだけの役はもうこりごりなんだから』
『■■■■■■■――――――!!』
『―――まあ、実際役に立ったとは言えない訳ですしね』
『だめー! くじけそうになる発言は禁止ーーー!』
『ああー!? なんだよテメエ等、戦えてエフェクトバリバリで燃えて最高じゃねえか!? バゼットと関わりあんのにオレなんざビルの上からの見送りしかしねえんだぞ!?』
『ふむ、まあそれが損なのかどうかは個人の趣味嗜好損得勘定だがな。私と凛の様に立ち絵があるだけなのも正直どうかとは思うが』
『雑種はどうする? おまえが上るかどうかで我のうっかり属性が払拭出来るのだが。建前上は先達としての務めがある故な、一つ上るがいい!』
『む、ずるいですね英雄王! それならアヴェンジャー、これでどうです? 私の定番おやつ十傑衆を報酬に梯子を守り抜きましょうっ』
『守り抜きましょうっ、じゃありませんブロードブリッジ組っ! メインなのにやる気のない貴方たちに私とアンリのイベントは喰わせません! それに、上質なイベントが欲しかったらちゃんと定職を持ってから言いなさいセイバー』
『失礼ですね。 貴方がそれを言いますかバゼット・フラガ・マクレミッツ。私でもベッドイベントがありますのに。まあ、あんなの駄犬の早漏に突き合っただけですが。そうですよね、アンリ・マユ?』
「…………いや、オマエたち色々違う。
 今の一連の流れ、何から何まで違う。それにオレ、今回の衛宮士郎は一人で上るんだぞ。エセシスターとの可能性を埋めてねえし、一度失敗した衛宮士郎が生まれるまではアンタ等の出番は無いぜ」
『『『『えーーーーーーーー!!??』』』』
 ブロードブリッジ組と逆月組がそろって口をとがらせる。
 こんな時だけ抜群のコンビネーションなんだな、うちの連中。
 獣とファンディスク味がしない物語を討論し、バゼットはダメットなのかどうかと口論しながら一日目に戻っていく。


EXIT/restart.

748 名前: 大絶滅!(ry 投稿日: 2006/02/08(水) 04:25:54
 ――時は来た。星の覇権をかけた王者の戦いを始めよう。
 貴方は選ばれた最モテの主人公衛宮士郎。
 この度FDで殆どの女キャラを篭絡したのだが、『改変スレの呪い』によって更に手を広げることになった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 悲嘆にくれる貴方の前に、以前倒した筈の海藻が現れた……!
 愛するのなら14へ。寺の子に走るのなら14へ進め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも古い言語の為、何を言ってるかはまったく分からなかったのだが、
「な、なんてコトだ……! 最近のetaFスレでは801が流行ってて、
 なんだか今日もその流れで、そのネタで多くの住人を侵したいだと……!!!!?」
 とまあ、概要はおおむね掴めた。
「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りだハーレムの中心よ!あと待っていた、お前を待っていたぞ我が運命の主人公よ!」
「貴様、何者―――!?」
 あまりの暴風に目を開けていられない。
 港の隅っこからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。
「ハハハハハハ!
 何者かだって?何者かだって?何者かだってぇ!
 分からないか、そうさ分からないよねゴージャスな僕!
 すごいぞ気持ちワルイぞー!
 見て見て衛宮、大いなる薔薇の邪神とか、人間の腐の想念とか、そういうのが溢れてもうタイヘンさ!」

 吹きすさぶ風、荒れ狂う稲光、激震する青き海。
 そしてみゃーみゃー鳴くウミネコ。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいたアーマゲドンに星も激動しているというのかッッッッ!!!!? 
「ま、まさかオマエは―――間桐、慎二……!!!?
 バカな、オマエは確かに死んだ筈だ!」
「死んでないのねー! 
 いえ、キャラ的にはほとんど死んでいましたが、だからこそ地獄から蘇ったのだ勇者エミヤよ!
 ククク、掘られたがってる者どもの欲望が僕を蘇らせたのだ。んー、見てほしいのねこの滾るマイパワー」
 阿部さんを連想させる色気の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?
「って、ぜんぜん変わってねー!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいね。
 そう、今までの僕は僕じゃあない!
 えーと、言うなればこれまでの僕がタネなしのスイカだとしたら皮なしのメロン。
 いや、羽化を待つ芋虫だとしたら、脱皮し終えた蝶なのさ!」
「……………………」
 つまり今が食べごろというコトだろうか。
 あと人の反応くらいちゃんと聞いといてほしい。
「まあいいや。
 とにかく俺たちはダレカに選ばれた生贄なんだな!?なんか宿命のカップル候補なんだな!?
 俺は現状維持の為に、オマエは俺の■■を奪う為に戦うんだな!?」
「ナイスリアクション!話が分かるじゃんかエミヤ!
 さてはこういうノリ好きだろオマエ!」
「おう!かなりヤケだけど、掘ったり掘られたり泣いたり逃げおおせたりウホッ!!いい男たちとか大好きだ!
 そんなワケでいくぞ慎二……!
 オマエにだけは絶対に掘られないッッッッ!!」
「ク―――吠えるじゃないか主人公。
 だが今日は僕の方が強い、新たな境地に覚醒した親友の力を思い知るがいい……!
 行くぞエミヤ!
 このベルトを外して俺の人生エンドだぜ……ッッッ!」



「―――信じられない。何が現状維持、だ。このケダモノッ;&hearts」

749 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 04:27:11
ぬあーやっちまったー!;の位置間違えた!
ひひひ、もう消えてしまいたい

750 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 04:40:38
ウホッ乙。

贅沢かもしれんけど、俺はそろそろプラトニックな801が見たい。掘る掘られるはちょっと……

751 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 04:47:15
>>750
だな。うん。
頬染めあうくらいの、軽くキモい系が良いな。

752 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 05:03:25
>>747
ほのぼのとしてていいなぁwwww
まさにお祭り気分

753 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 05:09:11
>>747
何この楽屋裏待ち組w

754 名前: 「間桐家の人々」 【>>652版実典・その裏で】(1/5) 投稿日: 2006/02/08(水) 07:17:52
 ―――唐突な疑問だが。

 最近、実典の視線をちくちく感じるのですが、一体どうなっているのでしょうか?


「というかあ、話には聞いてたけど美綴の部屋ホント似合わねー」
「あははは。アポなしで女の部屋へやって来るなりずいぶんな事言うね、このお客さん。
 ―――射の的にするよ?」
  破顔一笑、(眼が笑ってないが)紳士的な対応をする美綴綾子。
 さすが体育系部活動の元部長、へたなコト言うと命が危ない。

「で。本当のところ何の用だよ衛宮。ただ、人の部屋笑いに来ただけってワケはないだろ」
「……そうだな。本題に戻そう。
 美綴はさ、最近実典がおかしいとは思わないか?」
「実典がおかしい……? いや、別にそうは思わないけど。衛宮はそう感じるのか?」
「感じるっつーか、見られてる。あいつの視線がいやに気になるんだ。
 ちょっと振り返るとそそくさと目を逸らすし、かといって無視してると睨んでくるし、話しかけたらかけたで逃げ出すし。
 まったく、なんなんだよアイツ」
「それは衛宮が実典に何かしたからだろ。何もしてなければ、実典はそんなストーカー紛いはしないぞ」

 む、それは確かに。
 しかし、実典と知り合ったのは、つい最近になってからだ。
 初めからぶっきらぼうな態度だったけど、思い当たるようなコトは……

「……んー、そうだ。それじゃ衛宮、そこまで言うなら確かめてみないか」
「へ?」
「へ、じゃない。中学に入ってからは勝手に入るなとか言ってたけど、衛宮が一緒ならなんとかなりそうだ。
 実典が気になるんだろ? なら、一緒に確かめに行こう、よ」
 よ、じゃなくて。
 確かめに行くって、何を?
「実典の部屋だよ。あいつ、日記つけてるみたいだからさ。それを見れば、アイツがあんたをどう思ってるか分かるだろ?」
「な―――」
 いや、いくらなんでも人の日記を盗み見るのは良くない。
 くわえて、実典の部屋に忍び込むなんてのは、第六感的によろしくない。
「それに実典が気になるって言ってきたのは衛宮の方だぞ。なあ衛宮ぁ、あたしもなんか気になってきたしさー、部活終わるまでまだ時間あるし、行こうよぅ」
 ゾンビのようにのしかかる美綴。
 最近女性に馴れてきているとはいえ、そう密着されるのはシャレにならない。

「わ、分かった、分かったから手を離せ!」
「まったく。考えすぎだと思うけどね衛宮は。仮に実典の日記があって、そこに“衛宮先輩が原因で〜〜”なんて文があったら実典に謝れ。それで円満解決だ」
「む。…………まあ当然だな。それくらいはちゃんとするさ」
「よし。約束したぞ衛宮」

755 名前: 「間桐家の人々」 【>>652版実典・その裏で】(2/5) 投稿日: 2006/02/08(水) 07:19:06
「―――衛宮。一つ忘れてた事があるんだけど」
 実典の部屋の前。
 固く施錠された扉の前で、美綴はぼそりと口にする。
「実典の帰りの時間さ、明日が秋大会なんで部活は早めに終わるらしくてさ。今朝の話では、そろそろ部活終了の時間らしい。大事を控えてるから寄り道せずに帰ってくる、とかなんとか」
「は?」
 なんですかその、バッドエンドのフラグみたいな伏線は?
「ちょ、ちょっと待った、話が違う! 時間ままだたっぷりあるって……!」
「ハハハハハ、間が抜けてるねあたしも。でも共犯が衛宮ならなんとかなるんじゃないかなー、と」
 やけっぱち気味に笑う学園のアイドル。
「は、はかったな美綴ーーー!」


「――――って、ありゃ。意外と散らかってないな」
 きょろきょろと部屋を見渡す美綴。
 わずか十秒の調査で異常なしと判断したのか、
「ああ、なんだ拍子抜けだなぁ。こんなコトならもっと早く遊びに来ればよかった」
 美綴は乱暴に、ドスドスと部屋に踏み込んだ。
「……美綴。おまえに最も足りないものは用心深さだ」
 仕方なく、最新の注意を払って後に続く。
 時間がないのだ。
 美綴の言が正しければ、実典が帰ってくるまでそう時間はない。
 仮に今実典が弓道場を出たとして、蝉菜マンションまではバスの待ち時間を考慮に入れても約三十分。
 その三十分の間に作戦を終了させ、できるだけ遠くに退却しアリバイを作らなければ……!
「美綴、とりあえず机を探そう」
 日記帳なら机にある筈だ。
 なかったらそれは日記帳ではない。人目につかないように隠してある日記帳は、日記帳などではないもっと恐ろしい何かなのだ。
「あ、クローゼットとかは衛宮に任せるよ。あたしはベッドの下から調べるから」
「――――――」
 色々言いたいコトはあるが、とにかく日記帳を見つけてしまえば全て終わる。

 …………「初めての弓道入門」(上・下巻)
 違う。
 …………畳まれて山積みになった私服。
 違う。
 …………週間少年誌のバックナンバー。
 違う。
 …………「もてる秘訣!女を落とす100の方法!」
 違う。
 …………体育祭の時の桜の写真。
 懐に仕舞う。

「それらしいのは見あたらないな……美綴、そっちはどうだ?」
「………………なんだこのサイズ。実典のヤツ、間桐に似てる巨乳グラビアばっか集めてるなぁ」
 けしからん、と弟のエロ本を確かめるダメ姉貴。
 ははは。もしこの証拠を突きつければ、我々は実典クンをしばらく強請れるかもしれません。

「真面目にやれっ! もう十分経ったぞ、あと十分で見つからなかったら撤退するからな!」
「オーケー、分かってる。ベッドの下にもクローゼットにも見当たらないなら、後はもう机の中しか」
 机の引き出しを探る美綴。
「お?」
「む?」
 あった。
 引き出しの裏に隠してあったノートが、俺たちの足元に落ちた。
「まったくホントにベタだねあいつは。
 こんな隠し場所じゃ見つけてくれと言ってるもんじゃないか」
「いや、普通家族が家探したりしないからな。これでもかなり気を遣ってると思うぞ」
 お互い言いたい放題で、どれどれと視線を床に落とす。
 そこには―――

「「――――――はい?」」

 ―――何か、とてつもなく不吉なものが。

「っっっ!!!? このノートはまさか、書いた通りに人間が暗殺される噂のノートですのーーーー!?」
 叫ぶ美綴。
 ショックで語尾がお嬢様口調になっている。
「いや、それとは微妙に違う。……けどなんでかな。俺、初めて見るのに見覚えあるよこのシリーズ」

 ……ノートを手に取る。
 とにかく、これが目的の品かどうか確認しなくては。
「…………ちょ、ちょっとあたしにも見せてよ。みたくないけど、見ないでいるのはもっと怖い」

756 名前: 「間桐家の人々」 【>>652版実典・その裏で】(3/5) 投稿日: 2006/02/08(水) 07:20:25
 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 部活が遅くなって夕食の時間に遅れる。
 今度から、帰りが遅くなる時は事前に伝えておこう。

 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 洗濯物を放っておいたら、ねーちゃんに注意された。
 今度からは、忘れず籠に入れるようにしよう。

 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 間桐部長に少し元気がない。
 何か元気付けられるような事はないだろうか。

 ノートにはちょっとした覚え書きが続いている。
「なんだ。しごくまっとうな日記じゃないか」
「そうかぁ?」
「そうだよ。実に実典らしい。美綴、あいつこの日記通りにいろいろやってただろ?」
「あー……そういえば、色々小言を言った気がするけど。
 今夜はあたしがご飯を作るからとか、洗濯物を出しておいてほしいとか、あと、間桐は衛宮に気があるぞとか」
「美綴、最後のやつだ。そりゃ実典が俺をにらむのも当たり前だぞ」
「それでも、間桐に気があるからってだけで、実典におかしいところなんてないじゃないか。
 衛宮がヘンに怖がるんでこっちもつられたけど、実典はいつも通りだよ。終わってみればなんて事はなかったね」

 確かに、実典の部屋に忍び込み、あまつさえ日記を盗み見るという暴挙を犯した結果としては……って、あれ?
「なんだよ衛宮、幽霊でも見たような顔して。脅かしっこはナシだぞ」
「――――――」
 無言で頁をめくる。
 ノートには、まだ続きがあったようだ。

757 名前: 「間桐家の人々」 【>>652版実典・その裏で】(4/5) 投稿日: 2006/02/08(水) 07:21:21
 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 衛宮先輩に間桐部長の好みを聞きに言った。
 自己紹介をしたら、よく似合っていると名前をほめられた。
 ほめてもらえたのはいいけど、その時に教えてもらった部長の好みがほとんど頭に入らなかった。どうしてだろう?

 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 生徒会長が弓道部は成果が出ていないと間桐部長にもらしたそうだ、こんなコトでは、部活動の規模縮小もやむなしだという。
 ……弓の腕があがらなくて、間桐部長には申し訳ないと思う。

 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 衛宮先輩が間桐部長以外の女性と楽しげに話していた。……部長は衛宮先輩に気があるらしいが。 
 ちょっとイラッときたが理由がわからない。考えても考えても心臓がドキンドキンドキンと繰り返すだけだ。
 どうすればいいんだろう。

 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 衛宮先輩が部活に顔を出す。
 弓を引きにきたワケでもなく、美人の外国人を連れていた。間桐部長とも知り合いだそうだが、先輩が部長意外の女性にデレデレしてるのが気にいらなかった。
 どうすればいいんだろう?

 ○月○日 晴れ ☆☆
 今日の出来事。
 最近、間桐部長と衛宮先輩のコトばかり考えている。
 ちょっと理由がわからない。考えても考えても胸がドキンドキンドキンと繰り返すだけだ。
 本当にどうすればいいんだろう。

 ○月○日 晴れ ☆☆
 今日の出来事。
 衛宮先輩が陸上部の女性の先輩たちと仲良さそうにしていた。
 今まで理由を考えていたけど、もしかして先輩はもてるのだろうか?

 ○月○日 晴れ ☆☆☆
 今日の出来事。
 先輩とねーちゃんが、二人で喫茶店に入っていくところを見てしまう。
 ばれない様に外で出てくるのを待っていたので、俺は昼食抜きだった。
 くうくうおなかがなりました。


「――――――」
「――――――」
 何かに急かされるように頁をめくる。
 危険だ。
 この先は見てはいけない。  
 つーか、今すぐにでもノートを放り出して実典の部屋から逃げ出さなくてはいけないのですが、もう頁をめくる手が止まりません。

758 名前: 「間桐家の人々」 【>>652版実典・その裏で】(5/5) 投稿日: 2006/02/08(水) 07:22:17
 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 衛宮先輩と一緒にいると、間桐部長はよく笑う。
 ……とてもいいことだ。
 今日の出来事。
 衛宮先輩が遠坂先輩の手を握っていた。

 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 今日の出来事。
 衛宮先輩に、気になっていたこと話したら笑われた。
 人が真剣に話しているのを茶化すなんてどうかと思う。俺も、ちょっと考えを改めようと思う。

 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 今日の出来事。
 衛宮がメイド連れで下校していた。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 小さな女の子と腕を組んで歩いていた。どうかと思う。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 部長と楽しそうに笑う。………………いい……、ことだ。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆
 今日の部長。
 下校の待ち合わせで先輩を二分待たせる。次はないと思う。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 背の高い長髪の女と一緒に下校していた。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 藤村先生に弁当を渡す。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 生徒会長と二人きりで昼食を食べていた。許せない。
 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 クラスメイトと弁当のおかずを交換する。許せない。
 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日の衛宮。
 往来で二人の女に引っ張られていた。許せない。
 ○月○日 晴レ ☆☆
 今日の衛宮。
 間桐(兄)の合コンの誘いを断る。よくやった。

 今日の衛宮(許せない)今日の衛宮(許せない)今日の衛宮(許せない)――――今日の士郎(許せない)


「――――――衛宮。
 前提として、何よりあんたの女性環境が元凶なワケだが」
 ノートが閉じられる。
 全力疾走に備えて深呼吸を一つ。
「な、なんだよ。言いたいことがあるならハッキリ言えよな」
「―――実典がおかしいというおまえは正しい。もう、あたしにしてやれるコトはない」
「な、汚いぞ美綴……! ここまできたらおまえも仲間だ、一緒に実典をどうにかする方法を考えてぇー!」

759 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 07:46:00
>…………体育祭の時の桜の写真。
>懐に仕舞う。

>○月○日 晴レ ☆☆
>今日の衛宮。
>間桐(兄)の合コンの誘いを断る。よくやった。

801はともかく、こういう小ネタにワロタ

760 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 09:27:17
というか実典、士郎を監視しすぎwwwwwwwwwwwwww

761 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 10:03:34
まさか実典がこういうキャラとして昇華されるとは、誰が思ったろう。
ハマりすぎてて怖い。

とりあえず体育祭の桜の写真は俺に渡せ。

762 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 11:14:34
すっかりこんなキャラが定着しちまってwwwwwww

763 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 11:53:47
正直このゲーム男の方が萌えるしぃ
きのこ女説は意外とあってるんじゃwww

764 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 12:51:28
「けど姉さんは働いてなんかいません。いまもこうやって、わたしのなかで引き篭もろうとしています。
 ……くす。姉さん、NEETだったんですね。わたしがやらされたコトを一から体験させてあげてるんですけど、一日目で泣き崩れてる」
「ほら、聞こえますか? 働きたくないって、ごめんなさいって、狂ったみたいに叫んでる。
あ……可愛いなあ、そんなコトまで口にして。働いたら負けかなと思っている、ですって。
バカな姉さん。そんなコト言われたら、もっと愉しみたくなるのに」

コピペ

765 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 13:21:38
「Fate/stay neet」かよ!

766 名前: 剣→ヒロイン 投稿日: 2006/02/08(水) 13:43:20
>718に捧ぐ

 燃えさかる火は壁となって境界を造り、世界を一変させる。
 後には荒野。
 無数のヒロインが乱立した、女の丘(ハーレム)だけが広がっていた。

「――――――――」

 その光景は、ヤツにはどう見えたのか。
 黄金のサーヴァントは鬼気迫る形相で、目前の敵と対峙する。

「……そうだ。ヒロインを作るんじゃない。
 俺は、無限にヒロインを内包した世界(ハーレム)を作る。
 それだけが、衛宮士郎に許された魔術だった」

 桃色の世界。
 士郎LOVEの女性しかいない、愛欲だけが眠る墓場。
 幻想しただけで女性を複製するこの世界において、存在しないヒロインなどいない。

 それが、衛宮士郎の世界だった。
 
 固有結界。
 術者の心象世界を具現化する最大の禁呪。
 英霊エミヤの宝具であり、この身が持つただ一つの武器。

 ここには全てがあり、おそらくは何もない。

 故に、その名を“無限の女製”
 生涯を性技の味方として生きたモノが手に入れた、唯一の確かな答え―――

「―――固有結界。それが貴様の能力か……!」

 一歩踏み出す。
 左右には、半裸のヒロイン達がご指名を待って横たわっている。

「驚く事はない。これは全て妄想だ。
 おまえの言う、取るに足らない存在だ」

 両手を伸ばす。
 気だるげに寝そべっていたヒロイン達は、寵愛を求めるかのようにしなだれかかる。

「だがな、妄想がヒロインに敵わない、なんて道理はない。
 おまえがハーレムマスターだというなら、悉くを妄想して、脳内嫁に迎え入れよう」

 前に出る。
 目前には、千の女性を囲うサーヴァント。

「いくぞ英雄王――――ヒロインの貯蔵は十分か」

「は――――思い上がったな、雑種――――!」

 敵は“門”を開け、無数のヒロインを展開する。

 荒野を駆ける。
 異なる二つの人群は、ここに、最期の激突を開始した。


「……………………」

「……………………」


嵐は去った。
先ほどまで渦巻いていた爛れたフェロモンも消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「じゃ、孔に飲まれてきます……」
 うん、と頷きだけで答える。
 王には言葉をかけてはいけない時があるのだ。
 ずるずると胸の孔に沈んでいく金ピカ。
“……ふん。貴方の勝手ですが、その前に右に避けて下さい” 
あ、セイバーの蹴りが突き刺さった。

「……………………俺も家に帰ろうか」
 ここ三十分ばかりの記憶をまっさらに消去して、逃げるように境内を後にしようとする。
 こうして英雄王による俺の後ろの初めて強奪の危機は消えたのだが、彼の唯一の見せ場と、それと引き換えに得た俺の脳内ハーレムは後ろで見ていたセイバーによって記憶ごと粉砕されたのであった、まる。

767 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:08:03
ま、まちがいなんかじゃない!

たぶん

768 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:12:04
出すと一気に冷めるからなw

769 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:40:16
士郎を殺したくなったw

770 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:43:53
でも出すと劣化するんだろ?
だからセイバーはNEET王になるし凛は暴力ネタ女になるし桜は黒くならないし
果てにはカレンもバゼットも他の男にホの字じゃねーかw

771 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:46:33
どう見ても英雄王のほうが強いなw

772 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:48:36
嫉妬のライダーキックかますセイバーに萌えた

773 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 15:48:44
>773

桜劣化したほうが良いじゃねーか、それ

774 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:00:01
黒分がない桜など桜ではないッ!!

775 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:06:13
>718
ダメなアーチャーだとこんな感じかな

 無限とも言えるヒロインの投影。
 夥しいまでのヒロインは、それだけで妄想じみている。
 その、妄想の王国の中心に、赤い騎士は君臨していた。
「これ、は――――」
 当惑の声はセイバーだ。
 彼女は熱くもない妄想の炎の中、呆然と赤い騎士を見つめている。
「―――固有結界。
 心象世界を具現化して、現実を浸食する大禁呪。
 つまり、アンタは剣士でもなければ弓兵でもなくて」

「そう。生前、英霊となる前は妄想家だったという事だ」
 遠坂の声は淡々としていた。
 ……もしかして、あいつは、とっくに。
 アーチャーの正体に、気が付いていた、のだろうか。
「―――ではアーチャー。貴方の宝具は」
「そんなものはない。
 私はヒーロー度もヒロイン度も持ってなどいなかったからな。オレが持ち得るのはこの世界だけだ。
 燃えイベントがヒーローのシンボルだというのなら、この固有結界こそがオレの燃えイベント。
 ヒロインであるのならば、オリジナルを見るだけで複製し、貯蔵する。それがオレの、英霊としての能力だ」
「――――――――」
 息を呑むセイバー。
 彼女は呆然と、荒野に連なる墓標(ヒロイン)を見つめる。
 その、荒れ地とヒロインしかない、男の住まぬ灰の空を。
「これが……貴方の、世界だというのか、アーチャー」
「そうだ。試してみてもかまわんぞセイバー。
 おまえのヒロイン度―――確実に複製してみせよう」
「私のヒロイン度……その正体を知って言うのか、アーチャー」
「勿論。アレほどのメインヒロインになると完全な複製はできぬが、真に迫る事はできる。
 となれば、どうなる? メインヒロイン同士が衝突した時、周りの人間は萌えずにいられるかな」
「な――――アーチャー、貴方は……!」
「そういう事だ。間違ってもヒロイン度を前面に出すなセイバー。出せばオレも抵抗せざるを得ない。
 その場合、萌えるのは我々ではなく周りの人間だ。
 ……おまえの事だ、自身を犠牲にしてもそこの小僧を萌えさせぬだろう。オレとてメインヒロインなど投影しては自滅する。
 となれば、生き残るのは衛宮士郎だけ。それではあまりにも意味がない」
 アーチャーの左腕があがる。
 ヤツの背後に立つヒロインが次々と浮遊していく。
「―――抵抗はするな。
 運が良ければ萌え死にする事もない。事が済んだ後、おまえのマスターに萌えイベントをしてもらえ」
 アーチャーの指がセイバーを示す。
 無数のヒロインが、セイバーに視線を向けていく。
 そのどれもが必殺のヒロイン。

「―――躱すのもいいが。その場合、背後の男は諦めろ」
 そうして、ヤツは号令を下した。
「……………………!」
 放たれる無数のヒロイン。
 セイバーは一歩も動かない。
 その全てを、手にした俺だけで払いのけようと、決死の覚悟で迎え撃つ――――

776 名前: 四十八手の罠 投稿日: 2006/02/08(水) 16:06:32
 そろそろ寝ようかと自室に行くと、何故かセイバーが読書にふけっていた。

「――――――――」
 俺に気付いた様子もなく、猫科の獣のように目を見開いて部屋の隅で正座をしている。
 雑誌の内容が気になったが、邪魔をするのも悪いのでこのまま布団を―――

「シロウ、ちょうど良いところに」
「ん、なんか用か?」
 呼ばれて振り返ると、セイバーは本から顔を起こしていた。
 胸の前で広げているのは、怪しげな広告がちらつく大人の雑誌。すこし意外な取り合わせだ。セイバーが読むのはもっとグルメ系の雑誌かと思い込んでいた。

「シロウ、この獅子舞いというのはどのような体位なのですか」
「……獅子舞い?」

「ええ、そうです。あと他にも松葉崩し、時雨茶臼、鳴門、仏壇返し、窓の月、千鳥、深山、首引恋慕、乱れ牡丹、碁盤攻め、絞り芙蓉、岩清水、立ち花菱、抱き地蔵、二つ巴、鶯の谷渡り、しめ小股――――」
「ま、待てセイバー。一体何の話だ」
 セイバーの目があまりにも真剣なので、つい怖くなって話をさえぎってしまう。

「なんで急にそんなものが気になる?」
「これです」
 と、持っていた本の表紙をこっちに向けた。
『一度はやってみたい四十八手』……?

「なんだ、この本」
 こんな本は買った覚えがない。というか、持っていたところで使い道……はあるか。
 ライダーの部屋にも仏国書院の小説が並んでいたけど、これは指南書の類だ。

「先ほど桜が置いていきました」

 なるほど、魂胆が読めた。

 大方、こうやって俺の部屋にでも転がしておけば、俺が目を通して「よし、今夜は松葉崩しで」とか言い出すと思ったのだろう。
 ―――そして桜の作戦はセイバーに先に読まれてる時点で、すでに五割方は潰えたといえましょう。
「……で、セイバーはそれが気になったと」

「ええ、皆が一度は経験してみたいと思うような体位です。さぞかし刺激的であることでしょう」
 いまだ見ぬ四十八手に思いをはせるセイバー。

「ですから……今夜はシロウの手で、じきじきに四十八手全ての技でもってこの身を愛してもらえると信じています」
「―――へ?」
「信じておりますから」

 な、何を信じるって?
 無謀ともいえる期待の言葉を投げかけるセイバー。
 そしてまた手の雑誌をバラララとめくり、目的のページでぴたりと止まる。

「そう、獅子舞いです。獅子といえばライオン。まずはこの体位から始められては如何ですか?」
「ライオンって、『いや待』てセイバー」

「『深山』ですか……
 そういえばこの町の名も深山町ですね。いったいどんな体位なのでしょうか……ふぅむ……」

 部屋のまんなかでうっとりするセイバーの耳には、もはや俺の声は都合のいいフィルター越しにしか届かない。

「お〜い、帰って来〜い、王様〜陛下〜」

「例え四十八手全てを終えても、まだ夜は終わりません。なんといっても衛宮邸はシチュエーションの宝庫です。
 風呂場、道場、土蔵と、舞台に恵まれた、きのこに祝福されし愛の家なのですから。ああ……夢が広がります」

「その前に一晩で四十八発とか無理だってセイバー」

 淫魔の書を胸にかき抱きながら、セイバーはどこまでも高い天井に、全て遠き桃源郷を夢見るのだった。

777 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:09:49
我「セイバアアアアアアアアアア―――っっっ!!!!!!」

778 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:20:17
>775
>その全てを、手にした俺だけで払いのけようと、決死の覚悟で迎え撃つ――――

ちょっwwwwセイバー、士郎守る気ねぇwwww

いや、手にした「俺」というのは士郎のナニなのか・・・・

779 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:21:20
伸びちまうwww

780 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:21:51
コレハスバラシイセイバーダ!

781 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:26:29
>766&777ミックスで

なんか、金ぴかが血涙流してる。

(中略)

「――――――――」
「――――――――」
視線が合う。
士郎はいつもと同じぐるぐる目で金ぴかを眺めて、

「……(一人)いるか?」
「いるかーッ!」
即座に泣いて逃げ出した。

782 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:26:46
>776
>ライダーの部屋にも仏国書院の小説が並んでいた

フランス書院文庫かよw

783 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:33:51
>「私のヒロイン度……その正体を知って言うのか、アーチャー」
これは四十八手の罠な訳か

784 名前: セイバー → ルヴィアゼリッタ 投稿日: 2006/02/08(水) 16:55:22
 ………その、別に遠坂をレディーとして認めない訳ではないのだが。
 なんかこう、やはり彼女のような真性のお嬢様に教えを乞うと、パーティーのマナーも早く身につく様な気がしたり。
「ルヴィア、相談があるんだが」
「む、なんですシェロ……? 心なしか、とても期待に満ちた目を向けられている気がするのですが」
「そうかな? んー、まあ頼みゴトって言えば頼みゴトだし、期待してるって言えば期待してて、率直に言って教えてもらいたいコトがあるんだけど」
「……はあ。その、貴方の言いたい事はよく分かりませんが、私に判る事なら教えますが」
 真剣な話だと思ったのか、ルヴィアは居を正して俺の前に歩いてきた。
「それで、どのような事を知りたいのです? やはり魔法少女の極意ですか?」
 ずい、と真面目に見つめてくるルヴィア。
「―――――――む」
 なんか、十秒後の展開が読めてしまった気もするが、ダメで元々、一応訊いてみよう、うん。
「ええっと。別にふざけているワケじゃないんで、怒らないで聞いてほしいんだが」
「ええ、ですから真剣に聞いています。ほら、遠慮せず訊いてください」
「それじゃお言葉に甘えて訊くぞ。
 ―――その、な。俺でもパーティーでブイブイ言わせられる様な、簡単な作法とかあったら教えてくれないか? 使えば遠坂を満足させられる様なのなら文句なしなんだけど」
「――――――――」
 ピタリ、とルヴィアの呼吸が止まる。
「――――――――」
 ルヴィアは眉一つ動かさない。
「―――や、やっぱりそんな都合のいいモノなんてないよな……!
 悪い、悪かった、悪すぎた……! 今のは冗談で本気にあらず聞かなかったコトにしてもらえると個人的に助かるんだ、けど――――」
 ―――って。
 にたり、なんて擬音が似合いそうな笑みを浮かべるルヴィアゼリッタさん。
「ル、ルヴィア……? 気のせいかもしれないけど、その、なんかえらく遠坂に似た邪悪な笑みをしてるぞ、今」
「気のせいではありません。今の私の心境は、彼女に匹敵するほど邪悪に染まっていますから」
「っ…………!!!!」
 ぞ、ぞわってきた、ぞわって……!
「う、わ、う」
「何を慌てているのですミスタ・エミヤ。私はまだ質問に答えてません。たしか、私の聞き違いでなければ、ミス・トオサカをエスコートする為のマナーをご所望とか?」
 思わず後じさるも、ルヴィアはずい、と身を乗り出して逃がしてくれない。
「あ――――いや、その、ですね…………ルヴィア、怒ってるだろ?」
「ええ、とても」
 ―――死んだ。
 これが遠坂なら、間違いなく既にガンドを撃たれている。。
「ぅ――――落ち着け、落ち着こうルヴィア。
 反省してる。ルヴィアが怒った理由だって、なんとなく分かってます」
「いいですから。ほら、私の腰に手を添えて。貴方にはキチンと手取り足取り指導して差し上げます」
 寄り添うルヴィア。
 はい、と迅速に、ルヴィアみたいに背筋を正して覚悟を決める。
「――――――――」
 すう、と大きく深呼吸をするルヴィア。
 で。
「―――その名はバックドロップ……! 一撃で相手を倒す必殺技にして、私が今まで数々のダンスを申し込む殿方に食らわせてきた究極の作法っっっっっ!!!!」
「あ――――う」
 脳天から床に落とされる。
 よもや、こんな時までプロレス技とは思わなかった。

785 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:10:01
“全自動バックドロップ”ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト!

……ああ、その見事なブリッジは実に君に似合っている。

786 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:12:20
>>784
すヴァらしいw

787 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:14:47
今のバックドロップは見事でした、メイガス

788 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:18:39
>>784
マテ、士郎がルヴィアの腰に手を当ててるなら顔から落ちるぞwww

789 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:44:51
 崩れゆく手足に恐れはない。
 恐ろしいのは恋い焦がれた欠片を見失う事。
 光を失い、元の怪物になど戻りたくはない。
 ―――さあ。
 彼女の夢と引き替えに、これから、ただ一つの願いを叶えにいこう。
 そうして、この場所に戻ってきた。
 何も無い場所。
 こうして存在し、思考するモノすら許されない世界の外側。
 無限であるが故に最小である懐かしの我が家において、時間も空間もあり得ない。
 だが。
 今は、座標らしきものがある。
 こうしてオレがいる以上、位置関係が生まれるのは当然だ。
 あの座標は二点の光を繋ぐもの。
 この無への入口と出口を頼りに、あの地平は存在する。

「――――アンリ」

「う、うん。なんだろうか、マスター」

「戯れはそれぐらいにして、回れ右をしていただきましょうか?
 今から、ランサーを奪回しに行きます。
 それとあんまりモタモタしてると殺しますよ?」
「あ――――はい。努力します」

 いそいそと世界を回す。
 ……いや、怖かった。
 極上の笑顔で、冗談に聞こえない冗談を言われるのは心臓に悪い……。

 虚ろな楽園は、今もこうして回っている。

790 名前: hollow ataraxia発売告知前舞台裏 投稿日: 2006/02/08(水) 17:52:27
「こんにちは! よろしくな!」
「ぶほぉっ……!!!!?」
 あまりのショックにスッ転んだ。
「だだだだダレですか、何者ですかアナタ……!」
「ダレって言われてもなあ。俺は基本的に『無』だしなあ。そんなコト俺に聞かれても困るんだよなー実際。
 うむ、俺はアンリ・マユだと認識できているのに、その俺が実際には無関係な一青年というジレンマ。
 んー、コレも菌糸類の捻くれ加減ゆえってものだろうか?」

「………………」
 ……まずい。
 何か、よくない次元にワープアウトしてしまった模様。
「とまあ小難しい話はいいのだ!
 俺はアヴェンジャー、この虚構世界、hollow ataraxiaを作り上げた復讐者のサーヴァントよ!」

「そしてアンタは、えーと……そう、ゼッケン03、聖杯戦争の正式開戦前に脱落したダメット・ダメガ・ダメレミッツと、
 ゼッケン46、はるばるstay night本編からやってきてくれた衛宮士郎!」
「おう。今日こそ終わらない日常の謎を解き明かして見せてやる」
「し、士郎くん!? いつの間にこんな所に!?」
「いつの間に、とは心外だなあバゼット。そこのサーヴァントから、」

“こんばんはー! アンタ元気? 俺がいない間に楽しくヤッテる? え、してる? うんうん、良きかな良きかな。―――皮被るぞ。
 それじゃあ、ファンディスク発売が決定したので遊びに来てねー。ふふふ、出演できるものなら出演してみるがいい”

「などと、礼儀正しい招待状が来ていたじゃないか。
 バゼットが双子館に向かうのを見かけ、ついにこの時が来たのだと馳せ参じた次第なんだが」
「しょ、招待状ってそんなの知りませんよ……!?
 いや、それ以前にこのサーヴァントを見ておかしいと思わないですか士郎くんはっ!」

「…………言われてみれば…………若干、俺と容姿が似通ってるような。しかしバゼット、
 世の中には自分に似た人が3人はいるって話だから」
「いや、そういう話じゃなくて。容姿以前に芸風違うでしょ、芸風」
「シャラップ! 私語は慎めこのへたれマスター!
 前作で左腕だけ出演の分際で、この世全ての悪に意見しようなどと百年早い!」

「ほらバゼット。出演前にお喋りをするから怒られちまったじゃないか。
 作品内では共演者との信頼関係は絶対だ。神だ。真理だ。不平不満は胸に溜め、ストーリーの一部となるのが出演者の勤め。
 バゼットはそのあたりを理解していないようだなあ」

「よく言った! 今回は当たり! 衛宮士郎というブレーキ壊れた正義の味方の皮を被る今、
 もはや繰り返す4日間なぞ終わらせたも同然!  な、そうだよな衛宮士郎!?」
「ククク。間違ったことは終わらせないとなぁ」

「素敵ー! 今回こそ俺の望みが叶う時である!  はい、そういうワケで準備はいいかあ?
 ダメットも俺をバキバキとドツキ回してコントロールする準備はオッケー?」
「……。オッケーどころか全然趣旨が掴めないんですけど、説明してもらえるのでしょうか」

「うむ、よくぞ聞いてくれた我がマスターよ!
 これより俺たちは繰り返す4日間を乗り越え、5日目に辿り着かねばならない!
 そして全てのピースを埋め、終わらない日常に終止符を! 
 その暁には俺も天の逆月をぶっ壊せる気がするのです!」

 ビガガ、と雷鳴が走る。
 ……こっちの台詞はすべてスルーされていますが、まあ、何をさせたがっているのかは理解できました。
「要するに、フラグを立てていかないとエンディングは迎えられないと?」
「その通りだ。この先はきのこ言語が支配するアンサラーでフラガラックな領域なんで、気合をいれて戦い抜けよ☆」
「おお、望むところ! 俺の前に立ちふさがるライバルたちには容赦なくセイバーをけしかける! 
 異論はないよなバゼット?」

 士郎くんはヤる気満々だ。
 特定イベントをこなさないとエロシーンが見れないのがこの手の作品最大の短所であり長所でもある。
「うむ、俺たち以外のチームはみなブロードブリッジ要員だと思いなさい。
 ダメットと衛宮士郎は別々のチームに別れて数々の難門を突破するよーに」
「よーし、それじゃあ始めるぞー!
 閉ざされた4日間を攻略する聖戦、あなたとわたしの虚ろな楽園!
 題して―――!」

791 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 17:57:36
なにこのアンリマユ

792 名前: ミミック遠坂+夜の聖杯戦争3 投稿日: 2006/02/08(水) 18:14:06

そうして、捜査は終局を迎えた。
あらゆる事象の収束点、あらゆる確立の到達点。
この事件を終わらせる唯一にして明確な鍵。

「―――」

長い思考思索に決着を。
そう。
ソレがアルのは、この中をおいて他になく―――


『侵入します。援護を』

弁明それだけ。
否、説明にもなってねえし、そもそも侵入じゃねえし。
バゼットは皮手袋を両手に嵌め、躊躇することなく敵の本拠地に
突入していく。まことに無骨かつ無体かつ不精だった。


「おーい。そろそろ帰らねえかー?」
「………………」
返事はないが今夜は偵察だけと聞いている。
罠も怖いし、とりあえず外に出たい。

「…………あれ? いないのかバゼットー?」
庭にも出ていなそうだった。
一階、地下室、物置、丁寧に見て回る。
バゼットの姿はない。
無用心にもドアは開けっ放しにしてあった。

「……家主の部屋で何かやってるのか……?」
何かの魔術品を見つけて物色中、というのもありそうだ。
階段を上がって、部屋の前に到達する。

反応がない。
中に人の気配もしない。
ドアは鍵ごと破壊されて倒れ掛かっている。
ゆっくりとドアノブを握って、恐る恐る引いた。

「………………」
バゼットは……居ない。
物色中でも戦闘中でもない。

本当に消えたのか。
下の階にも上の階にもバゼットは居ない。
この部屋にもバゼットはなく―――壊れた扉だけがキイキイ鳴いていた。

「………………」
いくらバゼットとはいえ、
俺を置いてけぼりで外へ飛び出る事は考えづらい。
彼女の悪癖、我慢できない性格にしても、万事に頭がアレすぎる。

「………何があった………?」
机の上は散らかしっぱなしだ。
部屋の中央には宝箱が引っ張り出されている。
床の上には中身が半分以上引っ張り出された枕の残骸。
「………………」
不審な点。
どこもかしこも不自然だが、通常と違う不自然さがあるとすれば―――

聞き違いか。
微量―――はう、と何処よりか声がした。

793 名前: ミミック遠坂+夜の聖杯戦争3 投稿日: 2006/02/08(水) 18:14:51

 ―――箱の中にはバゼットがぴったりと入っていた。

「……いや、さすがにバゼットでもそれはないだろ……」
なんていうか、有り得ねえ。
だがしかし、この中からラインを感じるような気がして……
バカな妄想だよな、だって。

この中にバゼットが入っているなんて―――

……確かめてみるか。
ゆっくりとフタに手をかけて、隙間をのぞく。

「はうー」
「………………………………」

フタを閉める。
目蓋をこする。
深呼吸をして、まっすぐに現実と向き合ってみる。

「――――――、よし」

気を取り直して、もう一度フタを開けてみる。

 ―――箱の中にはバゼットがぴったりと入っていた。

「―――――――」
「―――――――」
……見つめ合うコト数十秒。
目の前の幻は、見つかったコトが照れくさそうに、

「オホン、びっくりしましたか?」

精一杯の虚勢を張っていた。

パタンと再びフタを閉じる。
ついでに出来るならば記憶にもフタを。

ないから。
バゼットが入っているなんて、そんなバカな事態はまずないから。

って、すげえ揺れてる!
うひいぃぃ……!
認めたくないけどやっぱり中にバゼットが……!?

恐る恐るフタに手をかける。

 ―――箱の中にはバゼットがしょんぼりと入っていた。

「……もういいです。外の世界なんて苦しいだけです。
この中で私は一生負け犬みたいに生きていきます」
「はいはい、そういじけるなって。アンタがそんなんじゃ
オレもアンタも困ったコトになっちまうんだからさ」

鬱ぎみになっているバゼットを、よっこいしょと――――
遠近法がおかしくなったように、箱より大きいバゼットを引っ張り出す。

「ふう、来てくれて助かりました。
あのまま、家主が帰ってくるまで出られないと思ってましたから」
バゼットと宝箱を見比べる。

「………あーあー、あん?」
「あの……少しは手がかりがあるかと思って、宝箱の探索をしてたのです。
フタが閉まらないよう、つっかい棒をして」

「つっかい棒って……あれ、なんなんだ?」
「判りません……とにかく、あの中に潜り込んで調査してたのですが」
どうも、あの宝箱が見かけと容積が違う事に中の物をぶちまけている
最中に気が付いたらしい。
そして―――

「つっかい棒が落ちてきて、バゼットは中に?」
「くっ―――ご名答です。
どうやら、これは罠のようですね。宝箱に興味を示した人間を閉じ込める、
実に巧妙な仕掛けです。貴方も注意してください」
訳の分からないコトを口走るバゼット。
いや、そんなトラップを仕掛けるヤツ、いないだろ。
第一、そんなのに引っ掛かるのなんて、世界中探しても一人か二人だ。

794 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 18:22:53
でもあのステッキって契約したのは古今東西
凛とルヴィアの2人だけなんだよな。

795 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 18:24:23
ダメットwwwwwww

796 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 18:31:59
第?次ダメット祭会場?

797 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 18:48:44
>>ダメット・ダメガ・ダメレミッツ

ダメと・ダメが・ダメれみっつ って読んじゃったw
何この三段活用wwwww

798 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 18:59:03
>>790
とりあえず皮被るのは勘弁してくれwww

799 名前: 「衝撃のマーボー」 続>>754-758【母は見た】 投稿日: 2006/02/08(水) 19:00:55
『悪いな、出来ないコトは引き受けないタチなんだ!
 あと、恋愛問題に部外者が口を出すのもどうかと思うので―――って、キャッ!』
 
 なんか、強引に引き止められたというか。思いっきり抱きつかれてるんですけど……?
『と、とにかく頼む美綴。時間がないんだ、実典もすぐ帰ってきちまう!』
 
    
 なんか、娘が男と抱き合ってる。

「――――――――」
 言葉がない。
 なんで実典の部屋に綾子がいるのか。
 なんであんな男っ気のなかった綾子が男を連れ込んでるのか。
 それも……ふむ、顔は及第点。
 
 額に汗を滲ませて、ゴムなどいらぬ、一度始めてしまえば後は二人のパラダイス☆銀河、という修羅の如き気迫。
 というか、まさか弟の部屋で? 偶然居合わせちゃった私の興奮度は尋常じゃないよ。
 もしかして狙ってるのか。帰ってきた実典にまいっちんぐな現場を見せつけ、見られちゃしょうがねえとばかりにオレ外道アニキ、オ義兄チャンッテ呼ンデクレテ構ワナイゼみたいな展開を狙ってるというのか。
 だとしたらまずい、実典もまずいがこのシチェーションもまずい。
 アレ、絶対なんかのプレイだ。そうでなくちゃ説明できない。
「ま、まあ実典がどんな想いを抱いてたか、あたしゃ知らなかったワケだけど。え、衛宮が決着つけるべきだと思うなあ……」
「ちゃんと俺の目を見ろー!!」 
 まさか姉弟交えて三角関係!?
「………………」
 用心しながら……いや、もう何か伝説のピーピング家政婦の如く……ともかく用心しながらドアの隙間から覗く。

「――――――――」
 じっと二人の動きを観察する。
 ……凄い。あんな情熱的に……!
 こいつら、ホントにここでヤッちまうのか……と、喉を鳴らした時、不意に二人がこちらに気づいた。

「――――――――」
「――――――――」

 視線が合う。
 私は母親として娘と相手の男を見据え、

「ごゆるりと―――――」
「「誤解だ―――――!」」

 全力で言い訳される。

 私は若い二人に気を遣い、そそくさとその場を後にした。

800 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:03:34
>「ごゆるりと―――――」
>「「誤解だ―――――!」」

テラワロスwww

801 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:03:53
「……分かりました。それでは貴方の気紛れに甘えるとしましょう」
「それでいい。んじゃまあ、一緒に別れるか」
「ええ、では背中合わせで行きましょう。……何というか、いま貴方の顔を見たらひっぱたいてしまいそうなので」
「――――――」
 明るい声で言う。
 最後の最後に、成し得なかったものが完成する。
「…………大丈夫かな。オレ、ちゃんと背中ある?」
「あります。ほら、踵を回して」
 背中を向ける。
 触れ合える感触はないが、確かに彼女は後ろにいる。
 もう温かくも何ともないが、喜びを感じる心はまだ在(い)きている。
「確かに。じゃあ行くぞ」
「せっかちですね。ここまでしたのですから、同時にスタートしましょう。三秒数えたら走り出すというコトで」
 スプリンターのようだ。
 号砲は各々の心の中で。
 3、大きく呼吸をする。
「あ、抜け駆けして三秒前に走り出す、というのはなしですよ。決闘ではないんですから」
 2、―――って、なんだろう、今の。
「………………いや。いやだって、イイところなんだってばホント」
 1、神託にしては、やけに物理的なものが、俺の右足首に絡まったような。
「アンリ?何を言って……」
 精一杯の抵抗を口にしつつ、胸で十字を切る。
 0。
 瞬間、
 崩壊する逆月の中、バゼットに気づかれるコトなく■は何処かに釣り上げられた。
「――――――フィッシュ」
 ごろごろと階段の段差を転がる。
 回転が止まり(拉致完了)、
 赤い布は何事もなかったように消え去り(証拠隠滅)、
 明らかに主犯である少女は、私ぜんぜんカンケーありません、という態度で獲物を出迎えた。
「おかえりさない。楽しかったですか、アンリ・マユ」
「……………………」
 埃をはたきながら立ち上がる。
 無論、『どういうコトだこれ、気の利いた言い訳の二つや三つはしてもらわないと戦いも辞さないぞ』と不退転のジト目をしながら。



 日の陽りが目蓋を照らす。
 浮上し始めた意識が、木々のざわめきと冷たい風を感じ取る。
「っ、ん―――」
 ゆっくりと巡っていく確かな血潮。
 私は今、長い眠りから目を覚ました。
 胸を締め付けるのは後悔と感謝。
 もっといい方法があったのではないかという悔いと、
 あのサーヴァントと過ごした日々にまなじりを熱くする。
“さあ、聖杯戦争を続けよう、バゼット・フラガ・マクレミッツ。―――今度こそ、君の望みを見つける為に”
 ソラミミが聞こえる。
「ソラミミじゃねえよ。エセシスターに邪魔されたんでもう一度やり直しだ」
 嗚呼。
 失われた五日目よ、せめて虚ろな楽園の中で永遠なれ―――

RESTART END

802 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:15:02
カレンマジ外道wwwwwwwww

803 名前: 夜の聖杯戦争1 : (1/1) 投稿日: 2006/02/08(水) 19:15:09

「……先ほどの話ですが。
 私に欲情している貴方が令呪なしで、どうやって私への欲求を抑えたのですか?」
「ん? ああ、アンタはヒロインだけどエロゲのヒロインではないって、さっきルールを作ったところ。
 まー要するに、この世で唯一人の、エ**シーンのないエロゲヒロインになったってワケ。
 パッケージ上では一応メインヒロインだけど、中身は人間凶器だし。
 実際のところ、アンタはもう攻略対象外の生物にカテゴライズされてるんだよ、一般的には」

 さらっと。
 なにか、ひどく気分を害する返答をされた。

「……私は、ヒロイン扱いされてない、と……?」
 素で面白い、ダメなところは可愛い、といった評価は聞き慣れていたが、実はヒロイン扱いされない、というのは初耳だ。
 ああいや、攻略対象外、と彼は言ったのだが、私にはそういう風に聞こえたのだ。

「あれ、信じられねえか? 最大限の譲歩なんだぜ、発売直後にメインヒロインが製作者にダメット呼ばわりなんて、型月では最初で最後の特例なんだぞ?
 ……くそ、頭くるな、こっちは本気で言ってるのに。
 はいはい、そうですか、形のない物は見えませんか。しょうがない、こういうのなら信じられる?」

 私の沈黙を『否定』と捉えたのか。
 血まみれの机からメモ用紙を切り取って、サーヴァントは何やら書き込んでいる。
「ほい、これあげる。誰かに譲ったりしないように」

 そのメモ用紙には達筆な日本語で、

     『 攻略対象外認定証。 型月終了まで有効 』

 ……などと書かれている。


「―――なんですか、これは」
「なにって、エ**シーンがない証明書。
 これなら誰が見てもアンタが攻略対象外って判るだろ」

 良かったね、と紙切れを押しつけてくる。




<  interlude.  >


 高速のコンビネーション。
 人間技とは思えない、むしろオレに同情してほしいような右ストレートが、容赦なくオレの顔面を打ち砕く。
 右拳を打ち抜いた直後の隙、動きようのない体勢の崩れを狙うオレの“左歯噛咬”―――!
 ……それを軽く頭を振るだけでかわし、同時に右足をオレの側頭部に叩き込む。

 シャープ&ヘヴィ。
 トマトか何かのように吹き飛ぶオレ。
 オレの着地(墜落)を待つ事もなく、バゼットは次のコンビネーションを、またも必殺のタイミングで実行する。

 ―――まるでブレーキの壊れた破壊兵器だ。
 あらゆる方向から拳を繰り、反撃が来ようが打ち払い、グロッキーのオレに容赦なく連弾を叩き込むダンスマカブル。


「呆れた。命ないじゃん、オレ」


< interlude-out. >

804 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:18:40
>776
これか
ttp://otona-only.com/mixbox/ss/48/16shishimai.htm

805 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:34:18
型月終了までの有効期限に俺が泣いた

806 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:43:56
>>803
うはwww腹いたいwwww

807 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:48:44
801祭りの次は、ダメ祭りが始まるんだろうか?
ダメット&苦労人アンリコンビやらダメ英霊ネタが続いてるっぽいなぁ。

808 名前: セイバー→実典 ギル→士郎 投稿日: 2006/02/08(水) 19:53:58
「……そうか。どうやら決定的な敗北でなければ納得がいかぬと見える」
増えていくヒロイン。
それは衛宮士郎が触れずとも動きだし、次々と好意を士郎へと向けていた。
今まで他人にしか見えなかった者が、愛を露わにして士郎からの誘いを待っている。
それが、この男の本来の付き合い方である。
元々衛宮士郎はナンパ師ではない。
この無数のヒロインは、シナリオを“展開”され、自らの意思によってハーレムの一員となる。
故にエロゲー。
この男は、最強のもてる男なのだ。
「早く帰れ。
なに、見ずに済めば軽く落ち込む程度であろう―――!」
「――――!」
号令一下、神速を以って集まってくるヒロインの群れ。
それぞれが一級の魅力を秘めるそれを、
「っ…………!」
群れをなす羊のように、悉くを連れて歩く――――!

正面のセイバー、
左翼の凛、
下方、および頭上同時によるトペ・アインツベルン、
弧を描いて後方からついて行く三人娘、
彼を上回るほど長身のライダー――――!
話し、笑い、はしゃぎ、さながら女性の団体旅行のように歩いていく……!

「は――――ぁ、ア――――!」
呼吸を乱しながら、無理矢理に崩した体勢を立て直す実典。
―――その瞬間。
彼は、敵の背後にあるソレを見た。
衛宮士郎の背後、
ホロウで登場した新ヒロイン、その数実に二名―――!
「く――――、つっ…………!」
全力で追う。
魔法でも使ったかのような大群を逃がすまいと、止まりそうな足を奮い立たせて後を追う。
ヒロインの群れの中、次々とイベントをこなしていく。
プライドは砕かれ、恋心を貫かれ、かろうじて残った自制心さえ串刺しになっていく。
その窮地においてなお群れを追う実典の目に、最悪の光景が飛び込んでくる。
それは―――

   1. 間桐先輩!?
   2. 姉ちゃん!何でここに!?
   3. 生徒会長!まさかあんたまで!?

809 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:56:57
3w

810 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 19:58:51
――よし。
色々あるが、それにつけてもお風呂に入ろう!

「ふう、やっと一息―――」

一日を終えて、疲れた体を休ませる。
我が家に男性の住人が増えてから、はや半年。
毎日が賑やかでむさ苦しいため、たまには一人でのんびりとくつろぎたくなるときもある。

「む、衛宮士郎か?」
「――――え?」

「す、すまん!」

ちゅちゅちゅ注意力散漫……!
フツー気が付くってのに、なに同じ過ちを繰り返すか俺はっ!

「……何を謝りに来たのか知らんが、見てのとおり今は立て込んでいる」
「いや見てない! 泡が邪魔で全体像ぐらいしか把握できてないから、まだまだ全然セーフ!」
「ああ、だから急ぎの話でなければまた後にしてくれ」
「そう! だから、わざとじゃないんだっ!」
「そうか。よくわかった」
「そうそう! よかった、分ってもらえてホントよかった……!」

嬉しさのあまり快哉を叫ぶ。
良かった、一秒フォローが遅かったらデッドエンド直行だった……!

「すまなかったな、私の理解が悪くて」
「いやいや、まさか先に入っているとは俺も分らなくて」
「それは脱衣籠を見れば、一目瞭然だと思うが」
「……ぅぁ」

お互い一糸まとわぬ姿だというのに、こんなときにも彼は冷静だ。
こっちはまだいろんなショックが抜けてない。

「み、見落としてて悪かったよっ。すぐ出るからさ」

バーサーカーやアサシンじゃなかったのがせめてもの救いだ。
もしそうなら怒号を上げられたり心臓を握りつぶされされたりと、生きるか死ぬかの大騒ぎだったろう。

「じゃ、じゃあ謝罪は、後でまた改めて」

ぎくしゃくと踵を返す。

「……っ!?」

腰だけがひねった。
なぜだか足がついていかない。

「衛宮士郎?」

大きくバランスを崩し、固い床から与えられる衝撃を想像して、思わず身を固くする。
しかし足の裏がタイルに張り付いたように、身体は倒れず―――

811 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 19:59:43
「う……そ……」

いや、本当に張り付いている。
膝から下の感覚がまるでなく、身体が地面から生えているようだった。

「どうかしたのか、士郎?」

「アーチャー……いつもの聖骸布は?」
「というと、魔力封じのことか?」
「うん、それそれ」
「身体を洗う以上、風呂場ではいつも外している」

「ああ……もっともだ。よっぽど末期じゃないと、外套を着たまま風呂に入る人ってそうはいないよな」
「ああ、ここなら私の魔術を覗き見る者もいないし。解放させても事故の心配はない」

ははは。
まあ、俺のような間抜けた闖入者さえいなければだが。

「……うう。風呂で気をゆるめるのは俺だけじゃないってことか」
「聖骸布……むっ、衛宮士郎!?」

冷静な彼が珍しく目を見開く。

「ばっ……っ!? ちょい待ち、来ないでくれアーチャー!」

俺が離れたところで意味はない。
なぜなら今のアーチャーを見てしまったことが、既に剣化の呪いだからだ。

「―――いや、手遅れだ。こうなっては私が離れたところで、剣と化した箇所は治らない」
「そんな……!」
「……あまり大声を上げないでくれ。凛に駆け付けられると誤解される」

「ああ、そうか……って、もう腰のあたりまで! 
 前に当てたタオルまで剣に……これってどういう理屈なんだ?」
「なに、個人差はあれどそういう変化は誰にでも起こる現象だ。
 そのメカニズムを理解できないうちは強化も満足にこなせんだろうが、結局は剣に特化した身だからな、
 血潮が鉄だったり心が硝子だったりしてその生涯にも意味はない」

「なんの話っ!? とにかくどうにか頼む!」
「む、では仕方ない」

アーチャーは頭を振って風呂場を見渡し、八節の詠唱を描き始めた。

「固有結界は疲れるから、あまり気が進まんのだが……」

周囲の世界が、錬鉄上のような鋼色に染まる。
すると蔓草のように這い登ってきていた侵食が、その根を断たれたように止まった。

「ふぅ……助かったよ、アーチャー」
「まだ初期の段階だからな、人体の魔術抵抗でじき元に戻るだろう。
 心臓まで侵されると危なかった――――衛宮士郎?」

アーチャーはきょろきょろと頼りなく辺りを見回すと、おそるおそる腰を上げた。

「どうしたんだ?」
「……なに、気にするな。先に失礼す―――」

「……っ!」

「わ、あぶな……っ!」

泡まみれの素足が手桶を踏み―――全裸のアーチャーがこちらに倒れかかってきた。

812 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:01:13
「……ぁ」

上気し火照ったアーチャーの身体が、剣化を逃れて感覚が残る上半身に抱きつく。
鍛え上げられた強固な胸に押され、思わず抱きとめた。

「っ……」

興奮で心臓が抑えきれないほど激拍し、剣化された下半身から押し返された血液が、
脳内を二倍の速さで駆けめぐる。

「失礼した、衛宮士郎」
「そ……それは鏡っ! 寄りかかったいるのが俺!」

「剣化した体が砕けたりは……む、手触りが異質な」
「そ、それは風呂桶だよ。それより胸触りがっうわわ!」

「ああ、わかっているとも。貴様こそ少しは冷静に」
「それは明かりっ……わざとやってない?」

無防備な裸を見ないように気をつけながら、太い手を取る。
アーチャーは目を細めて俺を見つめるが、焦点がどこかに飛んでいた。

「アーチャー、この剣は何だ」
「……デュランダル……カラドボルグ……?」
「やっぱり見えていないのか」
「……ああ。世界との契約を遅延させるために固有結界で世界との繋がりを断ってみたのだが、
 視力が落ちたのは誤算だった」
「そうか、俺のせいで」
「気にするな。無限の剣製を解けば視力も回復する。
 衛宮士郎、世話をかけるが脱衣所まで誘導してくれないか」
「こんなに狭いのに、分らないのか?」

ビルの屋上から橋のタイルが数えられるのが嘘のような、近眼ぶりだった。

「ダメだ。ほとんどの剣にシャンプーがついてるじゃないか。
 アーチャーは先客なんだから、ちゃんと風呂に入っていけばいい。俺は目をつぶっているからさ」
「そうは言うがな、目が見えないままでは剣など洗えん。
 それに貴様が自力でここを出ることが適わない以上、やはり私が場を外すしかないだろう」
「……いや。邪魔したのはこっちの方だ。
 さっきの謝罪じゃないけど、洗い途中だっていうなら、俺がアーチャーの剣を洗う」
「貴様が……私の剣を?」

ああ、と頷く。
下半身は動かないが、両腕はきっちり動くのだ。

813 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:01:17
うげぇ…

814 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:02:20
「……そうだな、この剣はひとりで洗うのはなかなかに手間だ。では、手伝ってもらうとしようか」
「よしきた。じゃあ、アーチャーはここに座ってて。完全に背中を見せる形で」
「うむ……ああ、椅子がこんなところに」

「いや待て、それはゲイボルグ。……挿った!?」
「……っ! なんてまぎらわしい」

「そんな力任せにやったら壊れちゃうってば」

「では、夫婦剣で尻肉のほうを裂くとしよう」

「なんでさっ!?」

「他に方法などなかろう」

「だだだだめ、もっとよく考えよう! そ、そうだ、ボディシャンプーで滑らそうっ!」

「やはり斬ったほうが早かろう?」
「おしりカットも首カットもダメ! 自傷癖カッコ悪い!」

「ふう」
「おしり大丈夫か、アーチャー」
「ああ、貴様の機転で助かった。……ああ、このカタチは今度こそ椅子だな」
「そうそう……って、わあ! 身体をこっちに向けない! 
 脚ひらかない! ぎゃく、ぎゃく! 反対っ!」
「私はどちらでも構わんが?」
「俺が構うの! ……いいから背中を向けて。それじゃあ…………えーっと?」

立ち並ぶ剣の林で手が迷う。セイバーとランサーと佐々木でそれぞれ領域が別で、
さらに住人でないバーサーカーやギルガメッシュまでマイソードを持ち込むから混沌としている。

「まずは、夫婦剣からだ」
「右から三番目のやつかな?」
「これ……か?」
「いや、その左、その二本、それか……?」
「む、手触りはこれだな……そら」

なんだかリモコンを操縦してる気分だ。

「さてと……緊張するな」

剣は騎士の命という。
なら、それを模倣する贋作者にもこだわりがあって当然か。
剣技との相性とか、特殊効果とか、投影成分100%とか、作成後未使用とか。
これだけ多く美しい剣を持つアーチャーなら、それはなのことだろう。

「どうした、衛宮士郎?」
「うーばかばか、意識するな……ん、これ、ボディシャンプーだぞ?」
「ああ、剣の手入れはそれひとつで済ませている」

……めちゃめちゃ体育会系だった。

「なんて代物で剣を洗ってんだ!」
「家ではそれで充分だと思うが……何かおかしいか?」

自分を粗末にするにも程がある。
こんなに剣がつやつやなのに、もったいないことかぎりないっ!

「……まったく。アーチャー、その左の三本目と四本目を取ってくれ」
「これはギルガメッシュのものでは?」
「家主として、今日は俺が許す」

この際、王様の高そうなシャンプーで、アーチャーの剣を徹底的に洗ってみよう。
手のひらににゅるっと液体を取る。
これだけ多い剣を洗うとなると、どれくらい使えばいいものか―――まあ多すぎて悪いってコトはあるまい。

「よし、じゃあ頭に近い方からいくぞ」
「任せる……ん」

815 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:02:50
うっぷす………色気のあるネタでなくストレートなだけに……
寒気というか吐き気が。

816 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:03:10
ひんやりとしたシャンプーに驚いたのか、アーチャーが身を固くする。
剣に染み込ませるように押し広げ、指でこしょこしょと泡立てた。

「すごい剣の量だな、こうして見ると」
「ああ、未知の剣を見るとそれが自動的に加えられるから、雪だるま式といえば、わかりやすいか」
「うわあ、シュール。これをひとりで洗うのはいつも手間だろう?」
「まあな……もっと手荒にこすって構わんよ。
 手が疲れたら途中で止めてもいい。剣化が解けるまで待てばいいだけだからな」
「ばか。そんなことしたら、ふたりとも風邪をひいちゃうだろ」
「私は風邪などひかん。このとおり人間とは身体のつくりが異なるのだ」
「わあっっっ!?」
「いや冗談だが、外見は人間と変わりない」
「わ、分ったから、見せなくていいっ」
「………………。私の身体は、そんなに見苦しいのか」
「は?」
「なんでもない。貴様をそんな風にしたお詫びに、なにか喜ばせたかっただけのことだ」
「そんな気を回さなくていいよ。元々悪いのは俺のほうなんだからさ、お詫びだなんて考えは変だぞ」
「しかし……」
「それに俺は、アーチャーの剣を洗うのは充分に楽しい」
「私の剣がですか―――んっ」

他人の剣を洗うなんて初めての経験だし、剣の量も洗い甲斐がある。

「アーチャーは?」
「え?」



「誰かに剣を洗ってもらうのって、気持ちよくない?」



「それは……ふ……んんー……」

アーチャーが漏らす声を間近に聞きながら、指の腹で頭皮を優しく揉む。
猫を撫でるときのように指のテンポをいろいろ変えて、アーチャーの反応に興じた。

「ああ……お前に洗ってもらうのは気持ち良い」
「そうか、じゃあ良かった」
「ん……ふふふ……」

上半身を折り曲げて、あたりに流れる剣を掬う。
柄はまとめて左腕に掛け、泡を立てた指で繰り返し梳く。
機折り機になったように、魔法の繻子を折り続けた。
泡はすぐに吸い込まれるので、時折シャンプーを足していく。
王様のシャンプーをずいぶん使っている気がするが、髪がこれだけあるんだから仕方がない。

「お客様、かゆいところはありますか」
「いや、特には。……ク、まるで美容師気取りだな」
「ああ。コツが掴めて調子が出てきた」
「お前こそ、そんな体勢で腰が痛くないのか?」
「大丈夫、下半身ががっちり剣になってるからな。腰を下ろしているようなもんだ」
「そうか……ふぁ……ん……」

「ん……ふ……ふふ……」

機折り機はいつの間にか音匣に変わる。
アーチャーの剣はどこまでも在り続け、音楽はいつまでも続くように思えた。

817 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:04:11
「ん?」

ひょこひょこと手の平がくすぐられる。
泡にまみれた剣が滑って、思いもよらぬ動きを見せる。

「あれ?」

なんの拍子でか、とうとう剣が腕の中から流れぬける。
仕方がないので心残りしつつ演奏を中断し、こぼれた音を集めるように手を伸ばす。

「え? お―――」

しかし剣はまるで生命を吹き込まれたように、ひたひたと逃げ出す。
右手から左手へ、また逆へとくねるアーチャーの剣を追いかける。

―――気が付くと、一振りどころではない。
俺を囲んで、剣がみんな踊っていた。

「く、くすぐったい。衛宮士郎、身体は自分で洗えるぞ」
「はい?」
「ん……はぁ、そんなところまで、なかなか大胆だな」
「なななぬっ!? ちが、違うって、ああ、どこに伸びてんだ、このエロソード!?」

まるでウナギ掴みだ。
いくら掴んでも剣は手の中から脱出してゆく。
あ、エミヤの剣は確か……

「ああ……シャンプーのせいで驚いているのか」
「え? ってあああ、おおお……?」
「いや、お前が優しく触ってくれるから恥ずかしがっているのかもしれん」

上機嫌に笑うアーチャー。
こっちはくねくね動く剣を両腕に抱えたままどうしていいかわからず、文字通り泡を食っていた。

「ぶくぶく、アーチャー? 悪い、これなんとかして―――」
「さて、どうしたものか。なにせ私は、なにも見えないのだからね」
「これ、アーチャーが動かしているんじゃないのか?」
「まさか。お前こそ本当は、剣のせいにして私を触っているのではないかね?」
「ば……っ!?」

分っているはずなのに、なんて意地悪い。

「もういいよ、むっ、と、はぁ……」

少しずつコツが分ってくる。
剣が逃げる方向に手を差し伸べて、掴むんじゃなくて乗せる。
で、落ちそうになったらわしっと掴んで腕全体に乗せ直す。
いわゆる、蛇のハンドリングってやつだ。

「よっ、ほっ、おっ、うん……どうだ」

手が足りなくなり、剣の行き先にこちらの背中も提供する。
剣がじっと止まったら、こちらも動かない。
蛇遣いみたいに怪しく身を捩り、なんとかスキンシップに慣れさせようと頑張った。
……しかしこれでどうやって洗剣を再開させたものだか。

818 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:04:15
さすがにきっついorz

819 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:05:06

「ふ……」

そんな俺の奮闘ぶりがわかるのか、アーチャーが笑いを抑えてくつくつと身体を震わせる。

「本当に見えてないのか?」
「ああ、だからお前がどこを見ていても気づかんよ」
「ばっ……み、見てないって言ってるだろっ!」
「く、知っているとも」

手から逃げていた剣たちは進む方向を変え、今度は俺の脇に向かってきた。

「う―――ぁ」

シャンプーで泡立ちぬめった剣が、蛇というより長い触手のように肌を舐める。
あっという間に腕全体が髪に覆われた。

「アーチャー、これじゃあ洗えないぞ」

脇に挟まれた剣は鋭く、とても腕を動かしてはいられない。
それどころか胴や胸にも螺旋を描いて巻きついてきた。

「っ……!」

思わず身体が反り返る。
不意に、ぞくっと身体の芯にえも言われぬ快感が奔り抜ける。
柔らかく波打つアーチャーの剣が、背筋を舐めずっていた。

「ふう、おかしいな……まるで酔っているみたいだが」
「えっ?」

上は剣に、下も剣に封じられて身動きもままならないところに、アーチャーが背中を預けてくる。

「どれだけアルコールを取っても目を回したことはなかったのだが……」
「そうか……ギルガメッシュのだからか」
「はぁ、アレがなにか?」
「剣にまぶした王様のシャンプーだよ。
 あいつは以前に、財宝は王様にとって最後の切り札だって言ってた」

そしてそれを縛るウッカリは、相応の因果関係だとか。

「だから王様の洗髪料も、なにか特別なものだったかもしれ……わわっ」

剣の先が脇の下のくぼみを啄み、横腹をしゃぶる。
ぬるぬるとくすぐったく、昂ぶりそうなほど気持ちよい。
下半身が剣化しているお陰で、恥ずかしい生理現象を起こさずに済んだことに安堵した。

「なるほどぉ、いい……アイディアだ」
「うあぅ……なに、が?」
「私たちが何もせずとも……私の剣が洗えて……お前の身体も洗えて……一石二鳥だな」

めちゃくちゃ体育会系……どころじゃなかった。

「そんな大雑把な……ああっ!」

密集して肉のようになった剣が指を頬張り、指の間を啜り、深く呑み込んでは吐き出す。
……まずい。いけないことをしている気分だ……。

「ふふ……もっと聞かせてみろ、士郎」

820 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:06:00
音匣と音筒の役割が逆転する。

「うわ……ぁぁ……」

歯車は回り続ける。
俺の全身を覆い尽くした櫛の歯が、身体じゅうに散らばる官能のピンを余すところなく愛撫し、
あられもない音を引き出す。

「こんな……っ……んん……」

歯車は回り続ける。
剣の立ちならぶ固有結界のなか、俺自身も知らなかった場所から音源を見つけられ、羞恥と興奮で頭がぼーっとなる。

「ふぅ、だめだ、声だけでは足りん……。もっと顔をよく見せてくれ……士郎」

アーチャーも血行が良くなって酔いがよく回るのか。
気持ち良さそうに目を細め、頭を押しつけてくる。

「ん……ふぁ……士郎、そこは……私……ってま……」

気が遠くなるなか身体を支えようと伸ばした指がぐっと固い熱源に辿り着く。
藁にも縋る思いで、ぎゅっぎゅっと不安定なそれに指を食い込ませた。

「士郎……士郎――」

アーチャーも自分の意識を繋ぎ止めるための支えを探しているのか、頭を左右に振ってふるふると擦りつけてくる。
ほのかにピンクがかった白い喉が無防備に仰け反り、空気を少しでも多く貪ろうと起伏を曝す。
まともな意識が白ばんでしまう。
こんなのが続いたら―――

「ふふ―――んっ」

アーチャーが自らシャンプーを継ぎ垂らす。
潤滑剤を得た剣たちは、さらに官能的に、悩ましくのたうち回る。

「―――っ、あ……う、う……っ!」

こんなに柔らかいのに、快感が強すぎてまるで全身を掻き毟られるようだ。
全身の神経が鋭敏になり、剣化され感覚がないはずの内股を擦る髪の動きまで感じ取れた。

「っ、っ―――!」

すり減るぐらいに奥歯を噛む。
理性の白化は止まらず、脳は蒸発するかのように茹で上がり、そのまま――

ぱったりと、情けなく意識を失った。

821 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:06:58
NG推奨か。

822 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:07:20
「……っ」

水音に起こされ、床に腰を落としている自分に気づく。
何時しか髪の拘束は解かれていた。

「ふん、気がついたか」
「え……?」
「私の視力は回復している」
「そうか……じゃあまた剣化が進行を?」
「いや、固有結界は動かしたままだ。視力が落ちたのは一時的なものだったのだろう。
 貴様ももうすぐ剣化が解けるはずだ」

アーチャーの言うとおり、膝の辺りまで感覚は回復している。
まだ動かせはしないが、この分ならもう少しすれば歩けるだろう。

「ああ……すまない、洗ってる途中だったのに」
「いや、こちらも悪ふざけが過ぎた……のだが、その、衛宮士郎」

アーチャーが気まずそうに視線を逸らす。
下を見ると、感覚が復活した下半身が―――

「うわああああああっ!」

とっさに手近のエクスカリバーで押し当てるように隠す。

「―――――っ!」

聖剣には魔力が汲まれていた。
熱膨張の歪みは脳までビキビキとひびで覆い、その回復したての急激な感覚に目の前が真っ白になる。
さっきから情けない真似ばっかりだ。

「―――違う、これは違うんだぞ!」
「ああ……」
「ここは、その、触られただけでこうなっちゃうもんなんだ!」
「うむ……」
「だから、けしてライダーに反応した訳ではなくてだな」
「っ……そう身体をじろじろ眺められると困るな」
「うわわっ、わ、悪い!」
「いや……」

「ん、でもアーチャーは見られても平気って……」
「―――いや、人にしろ英霊にしろ男の肉体に囚われている以上、やはり性と兼恥の業は越えがたい」
「は?」
「貴様が優しくしてくれたおかげで、そんなことを思い出してしまった」

「―――え、それは」
「…………………………………………………………………」
「どういう、こと?」
「…………………………………………………………………」

「……………………士郎の、えっち」
「――――――っ!?」

意外な回答に、口があんぐり開いた。

「―――今日は世話になったな。またの機会があれば、是非」

剣を振って水気を払うと、そそくさと立ち上がるアーチャー。
それを呆然と眺める俺の横を、見事な均衡の肢体がするりと通り抜け、

「―――!」

それを追う長い洋弓が、俺の肩を撫でて挨拶していった。

823 名前: お風呂の正義の味方 ライダー→アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 20:08:16
―――数分後、剣化は完全に解けた。

「んんっ……変だな」

アーチャーの剣に全身を撫でられたせいか、それとも王様のシャンプーのせいか、身体にむずむずと妙な感触が残っていた。
上に着たシャツが肌に触るだけで、なんだかおかしな気分にさせられる。

「あ、先輩、お風呂上りッスか?」
「あひゃうっ!」

肩が少しかすっただけで、そこから身体中に無数の蟻が奔った。

「……っ!?」

肌の下を蠢きまわる無数の脚を握り掴もうと、思わずしゃがみ込んで身体をかき抱く。

「先輩……?」
「うひぁおうあうっ!?」

背中に当てられた実典の掌から、脊髄が踊り出しそうなほどの電撃が注ぎ込まれる。
バネ仕掛けの玩具のように、一瞬で身体が反り伸びた。

「…………」
「はあ、はあ……っ!?」

突き出した胸の上に、実典の指がつぅーっと―――

「おぁひゃぁぅっ! 実典(みにぇにょり)!」

体の中心線をじわじわメスで切り裂かれるようなむず痒さに、素っ頓狂な声が喉から勝手に絞り出される。

「はあはあ、実典、身体を触るの、待てっ」
「は、はい……」
「ひー、ひー、肌が超敏感でさ……」
「そ、それはスンマセン」
「はふー、いや、大丈夫、ふー」

「あの……それ、どうしたんスか?」
「ふう、えーと、ああ、新しく買った石鹸が肌に合わなかったみたいかな?」
「……はあ」
「ふー、もう少し休めば、ふー」
「先輩……」
「ふうふう、ん?」

「先輩……ヤベ……面白い」

実典は、なんか邪悪な面を覗かせていた。

「うわ……お、おやすみ、実典っ!」
「先輩っ―――!?」

「くんくん、すごく嗜虐欲をそそる匂いがするぜ。
 死ぬ間際のお師匠さんが『世界を手玉に取るがよい!』ってヘンな遺産をくれた、
 あの日の夢を思い出させるような?」
「ぴこーんぴこーん、レーダーが絹を裂くようなお兄さんの悲鳴をキャッチ。なんだろうな、なんだろうな」


「凸凹コンビぃぃ!? おあひゃうぅ!」


「え、なに? ―――あはは、お兄さんったら! えいっ!」
「ギルガメッシュ、やめふぇえひゃうぁっ!」

「な、なんて声出してんだよ、坊主! お兄さんはそんな子に育てた覚えないぞ!」
「うひゃぅ! りゃんしゃあっ!?」

「あぁっ、先輩!?」
「あひゃ、実典、くふ、このふたり……」
「ズリィッ、俺も!」
「なんでさーっ!?」

「………………」
「アーチャー、助けて! アーチャー!」
「……理想を抱いて溺死しろ」
「ああ、人類の守護者が……!」

「ぬふぅ、逃がさないぜ坊主、発射準備ぃぃー!!」
「あれですね、よーっし!」

「教会組ひっさーつ! トペ・バビロニア!」
「やっほー! おにーさーんーーーっ!」

ランサーに足首をつかまれ、グルグル回された後、ハンマー投げのように発射される小ギル。
―――教会、関係ねー!


「あひゃひゃはははぅほぉぉぉーーー!」
「お兄さんげーっと! ほーらほらー!」
「あひゃひゃひゃ、もう、ひゃひゃひゃ、やめ……」

「なんでさー?」
「なんでさー!」

「マネしゅるなぁ、あひゃひゃひゃひゃひゃあああああぉぉーー!」

ギルガメッシュが調子に乗って、馬乗りになって、こちょこちょと―――だめだ、もう!


「あ……先輩、動かなくなっちまった」
「おお少年よ、失神KOとはなさけない!」

824 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:09:06
カッとなって書いた。
今では反省している。

825 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:09:40
>そのメカニズムを理解できないうちは強化も満足にこなせんだろうが、結局は剣に特化した身だからな、
>血潮が鉄だったり心が硝子だったりしてその生涯にも意味はない

激しくワラタwwGJ!!!ww

826 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:11:48
割り込みしてすまんかった…。
しかし思わず吐きそうになったオレの気持ちもわかって欲しい。

827 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:13:35
いや、こっちこそごめん。マジでスマンかった。
改変してるときは画面にライダーの裸体が映ってたし、
脳内ラリっててイイ気分だったから読む人の気持ちなんて全然考えてなかったヨ。
801も超えたし、しばらくやおいネタ控えるわ。

828 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:14:35
俺は大笑いしたがな。だってネタだろ?
筋肉と剣と泡まみれになるダブルエミヤ。またやってくれ!

……苦手な奴もいるらしいんで注意書きはいるかもしれんがな。

829 名前: 826 投稿日: 2006/02/08(水) 20:17:00
>>827
いや、ネタの種別は制限されるべきでないと思うんで、そっちこそ気にしないでください。
オレはただ、丁度フリル一成の絵を見ながら改変してた自分が許せないだけだからさ。

830 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:21:42
「ああ――――本当に、おまえらしい」
 呟く声に悔いはない。
 失ったもの、残ったものを胸に抱いて、ただ、昇る光に目を細める。

 忘れえぬよう、どうか長く色褪せぬよう、強く願って地平線を見つめ続けた。



「帰って夕食の仕度でもするか」
 独り言なので、呟くような大きさだった。
 とくに『夕食』の発音は聞こえないぐらい小さい。
 だというのに。
 ……ぴくっ。
 と、沈黙していた辺りの空気が震えた。
「うお、動いた!? もしかしてまだセイバー居るのか!」
「よし続けろ! ガコロウトンの計じゃ!」
 エピローグが迫ってきているんで、みんなでしゃばってきたんだろう。
 やめてほしいのに、誰一人として空気を読まないで「夕食」を連呼する。
「シロウー。ご飯はー」
「先輩、そろそろ夕食の準備をしないと!」
「オレ外道マーボーコンゴトモヨロシク」
「おい雑種! 我の夕食はまだか!」
「ごーはーん! ごーはーん!」


「シロウ―――!
 ご飯はまだですか―――っ!」
 轟雷一閃。
 あらゆる法則を無視して現代に舞い戻り、雄々しく大地に立つセイバー。
「……あれ? みんな何をしているのですか? で、シロウ。ご飯はまだですか?」
 セイバーはいつもの調子でご飯を催促する。
 ……どうも、黄金の別離辺りのシーンの記憶が、ポッカリ抜け落ちているようだ。

831 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:22:56
どうせ改変するなら女性キャラにすべきだったね。
というか普通は女性キャラでやるだろうという話w

832 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:24:13
>830
ああ、それでこそ君はetaF最強のヒロイン……w

833 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:37:45
読み始めは氷室か?と思ってただけにorz

834 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:40:18
なんか、バゼットがダメットる。
「――――――――」
言葉がない。
何でこの場所にバゼットがいるのか。
何であんなNEET王にも匹敵するダメットになっているのか。
それも凄い勢いで。
額に汗を滲ませて、シリアスなどいらぬ、
一度ダメットが始まれば二度とバゼットには戻らぬわ、という修羅のごとき気迫。
というか意地になってないかあいつ、ダメットネタの投下が尋常じゃないぞ。
もしかしておいしいのか。あのNEET王とハラペコセイバーを四十秒ぐらい煮込んで合体事故の挙句
ワタシ無職マスター今後トモフラガラックゥみたいな立ち位置がおいしいというのか。
だとしたらまずい、バゼットもまずいがこの俺もまずい。
このままじゃ、絶対やばげな内容のアンリ×ワカメが投下される。そうでなくちゃ説明できない。
「どうしました、立っていては話にならないでしょう。座ったらどうですか」
ダメりながらバゼットは言う。
「――――――――」
用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でもわからないが……
ともかく偽り移し記す万象の準備をしながら対面に座る。
「――――――――」
じっとバゼットの動きを観察する。
……凄い。etaFスレ、残るは2レスのみだ。
こいつ、ホントにダメットで固定するつもりか……と、喉を鳴らしたとき、不意にバゼットがこちらを見た。
「――――――――」
「――――――――」
視線が合う。
バゼットはいつもの堅苦しい目で俺を眺めて、
「フラガラック――――?」
「ヴェルグ・アヴェスタ――――!」
全力で反撃する。
バゼットはわずかに眉を寄せて、さっくりと1日目に戻ってしまった。
……って。
もしかしてバゼットのヤツ、オレにもネタになってもらいたかったんだろうか?

835 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:43:09
ダメット、もうネタにされすぎてさすがにかわいそうになってきた。
第二のNEET王の座は彼女のものか。

836 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:43:28
色々衝撃的だったぜ…風呂上りの方は素直に楽しめた

837 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:46:16
なんというかもうひたすらに我ゲッソリ。
しかしここまで人をアレな気持ちにさせると言うからにはやはり、流石な職人だったと言うしかあるまい。

opps.....

838 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 20:50:33
「馬鹿ですね、私を庇ったりするからです」
「仕方ねぇだろう、目の前で美人に死なれるのは目覚めが悪い」
 酷く芝居がかった台詞を口にした、あんまりにキザで、おかしくて笑みがもれた。
 似合わない、と彼女も笑った。
 お互いの横顔も見ずに、俺達は笑いあった。
 小さな、弱弱しい、優しい声だった。
「あなた変わったわ、前はこんなに素直じゃなかった。いい人が出来たっていうの本当だったんだ」
 ……そんなもの、本当にいたんだろうか。勘違いした大きな子供なら、たしかに今も部屋で帰りを待っているだろう。
 悪魔は、息を吸うようにして嘘をつくと言う。
「けど、それは違う。誰かのせいで自分が変わるなんてないんだよ。俺はさ、初めからこう言う性格なんだ。善人のふりをしてるだけで本当は悪人だったのさ、気付かなかったのか?」
 けれど巧く騙せたかは、てんで自信がない。
「――――嘘吐き」
「いやいや、餓鬼の頃はショッ○ーにだって憧れててたんだぜ?……だからもう行けよ、今ならまだ間に合うぜ、俺に付き合うことはない」
「いいのですか? 最後まで、一人で」
「言っただろ、突っ張っていたいんだ俺は悪人だからな。それに、最後は一人になりたいんだ――――今まで、ずっと独りだったから」
 ――――ああ、なんて救いのない酷い嘘。
 慣れない作り笑いは、あまりうまくいかなかったと思う。
 おそらくは、生涯最低の出来だろう。
「じゃあ、さようなら」
 赤い聖骸布を翻して、彼女は夜へ消えていった。
 暗い夜を咲いた、銀色の紫陽花のみたいだった。

 ◇

 立ち上がって、階段を登る。
 何をしているか自分でもわからないまま、欠けた聖杯を埋めてみる。
 輝きがまだ残っていても、この結末はきっと変わらない。
 崩れ行く体で瞼を閉じると、耳元で声がした。
 ――――馬鹿な女だ、さようならはしたはずなのに。
「あなたは、何故この世界を終わらせるの?」
「そりゃあ、飽きちまったからな」
「どうして、飽きてしまったの?」
「そりゃあ、全部体験してしまったからな」
「……嘘吐き、なら何故この世界を望んだの?」
 簡単だ。それは――――――――
 記憶の果てで。
 その答えだけが、以前とは何も変わらないものだった。



 天使>カレン 銃神>アンリ

839 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:11:28
美しい。GJ

840 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:12:28
「まあいいでしょう。それで貴方は何処の英霊なのですか」
「――――」
 少年は答えない。
 さっきまでの皮肉屋な素振りは消えて、深刻そうに眉を寄せている。
「? マスターであるわたしが、サーヴァントである貴方に訊いてるのですが?」
「――――それは、秘密だ」
「は……?」
「オレがどのようなモノかは答えられねえ。何故かって言うと―――」
「つまらない理由だったら殺します」
「―――――――それは」
 またその顔。
 本当に困っているのか、少年は言いにくそうに口を開けると、
「―――何故かって言うと、自分でも分かんねえ」
 ……ちょっと、なんですって……?
「はあ!? なんですかそれは、貴方はわたしの事をバカにしてるのですか!?」
「……マスターを侮辱するつもりはねえよ。
 ただ、これはアンタの不完全な召喚のツケだぜ。どうも記憶に混乱が見られる。
 自分が何者であるかも判らねえ、名前や素性も曖昧だ。……まあさして重要な欠落でもねえから気にする事もねえが」
「気にする事はない―――って、気にします!
 貴方がどんな英霊か知らなくては、どのくらい強いのか判らないでしょう!」
「なんだ、んな事は問題じゃねえだろう。些末な問題だぜ、それは」
「些末って貴方、相棒の強さが判らないのでは作戦の立てようがないでしょう!? それで戦っていけるワケありません!」
「何言ってんだ。オレはアンタが呼び出したサーヴァントだ。それが最弱でダメじゃない筈がねえだろ」
 まっすぐに。
 絶対の自信と信頼を込めて、少年はわたしを見据えたまま。
 全力で返答する。
「な――――――――」
 思考が停止する。
 少年の言葉に嘘はない。
 彼は、出会ったばかりのわたしに、NEET以上とはっきりと認めてしまった。
 少年はわずかに眉を寄せて、さっくりとパズルを再開してしまった。
 ……って。
 もしかして少年は、わたしの態度にがっかりしたんだろうか?

841 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:35:30
>838
元ネタ知らんが、感動した。うん、GJ。

>840
イマイチかなぁ…と思ったら>最弱でダメじゃない筈がねえだろ、で吹いたw

842 名前: 士郎→一成  慎二→士郎 投稿日: 2006/02/08(水) 21:44:28
「む、衛宮」

 7時前の、まだ人気のない校庭にぽつねんと衛宮が立っている。
「また何か頼まれごとをしてる……ってワケじゃなさそうだな」
 衛宮は手ぶらで、ぼんやりと校舎を眺めていた。

「ちょっと、衛宮?」
「……………………」
「なにをやっているのだ? 誰か待っているのか?」
「……悪い、ほっといてくれ。
 どーせさ、俺はエロゲの主人公なんだよ。道行くヒロインは片っ端から手をつけて、ハーレムに君臨して、
あげくやおいネタまで投稿されて、というか、最近はダメットネタ実典ネタが隆盛だし!」

「どうだ一成、Fate本編ではルートごとに固定のヒロインに一途だったのに対して、もうデフォルトで女たらしだぜ?
 すげー、俺が鈍感を絵に描いたような朴念仁なんて正直職人さん忘れてません?
 つーかぁ、あんな要領のいい俺なんてどこの平行世界にも存在しねー」

 そのまま校庭隅の日陰に移動する衛宮。
 ……本気でテンパっているのか、そのままダンゴ虫のように丸まってしまった。
 可能ならば、全て遠き理想郷でも投影しかねない勢いだ。
 その後ろ向きな勢いに不覚にも涙が止まりません。

「な。バカを言うものではない、負けるな衛宮、立ち上るんだ衛宮!
 ホロウではどのルートと繋がってるのか判らない、桜一筋かと思えばイリヤの水着に一番ドキドキするような
節操のなさがお前の強さだったはずだ……!」
 などと、こっちも勢いでエールを送ったりする。

「……嫌だよ、疲れた、きっと俺は本当は女たらしなんだよ。正しくエロゲの主人公なんだよ。
 エロなんてオマケ、18禁は残酷描写に対するもの、燃え展開さえあればいいなんて建前なんだよ」

 ますます暗くなる衛宮。
 まー、こうして落ち込めば周りの女性達がますます張り切って励まそうと寄って来ることを予想できない
あたり、衛宮はやっぱり鈍感なんだと思う。

「……愚痴って悪いな、一成。でも俺のことはいいから、早く生徒会室に行ってくれ。
 俺は、この流れが去るのを待ってるんだ。
 元の不器用で朴念仁で本気で正義の味方を目指す衛宮士郎に戻る最後のチャンスなんだよ。
 これは俺の問題だから、一成は気にせず自分の仕事に専念してくれ」

 力なく笑って手を振られる。

「………………」
 うーむ。なんか、今の自分では処置なしの気がする。
 その内、自分のなかで踏ん切りがついたら俺もその輪に加わりたいと告白してみよう。

843 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:46:30
ちょwwwwやっぱり会長も士郎狙いかwwwwwwww

844 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:53:22
そんなとどめ刺すようなw

845 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 21:55:04
最後吹いたw

846 名前: 「タイガー道場/反省会」より  タイガー⇒アーチャー 投稿日: 2006/02/08(水) 21:59:28
「結局アーチャーって、凛のことどう思ってるの?」
「うむ。深く憎み、深く愛してる」

847 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:02:17
弓は凛のこと憎んでないと思うけどねえ

848 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:02:52
>>846
凛じゃなくて士郎だったら良かったと思った我。UBWっぽく。

849 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:06:23
>>838
まさかNotes.からとは。
役がうまくはまっててGJ。

850 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:07:56
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡

851 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:08:41
ごめ誤爆

852 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:10:34
言うまでもないし、聞くまでもないのだが、貴様桜と愉快な仲間達スレの住人だな?

853 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:14:57
「……アンリ。世界を回していたのは貴方なんですね?」
「ああ」
「私に情報を与えていたのも、私に可能性を埋める為だったのでしょう」
「ああ」
「聖杯戦争を間違えたカタチにして、参加者じゃなかった無関係な人間に装わせたのも」
「ああ」
「貴方の人格も、貴方自身のではなく聖杯戦争の勝者のだった、アンリ」
「ああ」
「あの時、ランサーを呼んだのも!」
「ああ」
「彼に、私の始末を促したのも!」
「ああ」
「私がダメット・ダメガ・ダメデミッツなのも!」
「ああ……てっ!?それはアンタのせいだろうが!そこまでオレのせいにすんな!」
「……………」
「……………」

 十秒。
 二十秒。
 三十秒。
 四じゅ―――

「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」
「“偽り写し記す万象”―――!!」

854 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:17:34
ああっ、もうっ、仲いーなーコイツら
グッジョ(グッ

855 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:17:53
>「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」
>「“偽り写し記す万象”―――!!」

もう、油断王の「ガッ―――!」に迫る芸風を確立しつつあるなWW

856 名前: 「フェイト/ステイナイト(II)」+「Fateルート/epilogue」 投稿日: 2006/02/08(水) 22:25:11
「侮るな。あの程度の呪い、飲み干せなくて何が英雄か。
 この世全ての悪? は、我を染めたければその三倍は持ってこいというのだ。
 よいかセイバー。英雄とはな、己が視界に入る全ての人間を背負うもの。
 ―――この世の全てなぞ、とうの昔に背負っている」




「――――見ているのか、慢心王」
 呟いた言葉は風に乗る。孔に落ちた王は、果てのない「」に沈むように。
「夢の、続きを――――」
 本編の、輝いていた頃の夢を見た。

857 名前: 大絶滅! ついに報われることの無かった美綴実典の伝説! 投稿日: 2006/02/08(水) 22:31:00
 ―――時はきた。きのこの文章を改変したネタの書き込みを始めよう。
 貴方は選ばれた最強のネタ職人。
 改変ネタを思いつき、型月板に棲むetafスレへやってきたのだが、
 『保存のし忘れ』によってせっかくのネタが消えてしまった!
 しかし宿命は待ってはくれない。
 悲嘆にくれながらもネタを書き直した貴方の前に、別の職人による類似ネタが書き込まれてしまった……!
 それでもネタ投下するなら今、様子を見るなら後で書き込め。

「――――――、な」
 何かが心に直接語りかけてくる。
 あまりにも古い言語の為、何を言っているかはまったく分からなかったのだが、

「な、なんてコトだ……! このスレが型月作品の改変スレで、なんだか今は801祭りの真っ最中で、書き込まれるネタは801ネタになるだと……!!!!?」

 とまあ、概要はおおむね掴めた。

「はっはっは! うひょークカカコココキイキイ!
 その通りッス性技の味方よ! あと待っていた、アンタを待っていたッスよ我が運命のハーレムマスターよ!」

「貴様、何者―――!?」

 あまりの暴風に目を開けていられない。
 スレの隅っこからひょっこり現れた謎の人物は、脳内麻薬マキシマムな笑い声をあげまくる。

「ハハハハハハ!
 何者かだって? 何者かだって? 何者かだってぇ!
 分かりませんか、そう分かりませんよねゴージャスな俺! すごいぞ気持ちワルイぞー!
 見て見て衛宮先輩、耽美なる薔薇の空間とか腐女子の腐の想念とか、そうゆうのが溢れてもうタイヘンさ!」

 ツンデレな金ぴか、アニキなランサー、このケダモノとか言ってるワカメ。
 そして十レスに及ぶ超大作のアーチャーとの混浴。
 いろんな意味でこの世の終わりとも言える光景がいま惜しげもなく大展開。
 くっ……この、ふってわいた801祭りにスレも激動しているというのかッッッッ!!!!? 

「ま、まさかオマエは―――美綴、実典……!!!?
 バカな、オマエは確か、桜に横恋慕してるかませ犬キャラのはずだ!」
「かませ犬じゃないのねー!
 いえ、キャラ的にはほとんどかませ犬でしたが、だからこそ新たな属性を身につけたのだ勇者エミヤよ!
 ククク、素直になれない俺のキャラが俺を蘇らせたのだ。んー、見てほしいのねこの滾るツンデレパワー」

 『俺の股間はゲイボルグ』を連想させる薔薇の渦。
 い、いったいどれほどのパワーアップを……!!!?

「って、思いっきり801ネター!」
「ふふふ、気持ちはわかるけどそう驚かないでほしいですね。
 そう、今までの俺は俺じゃあない!
 えーと、言うなればこれまでの俺が報われない片思いキャラだとしたら、今からの俺は素直になれないツンデレ!
 いや、間桐先輩ひとすじだとしたら、衛宮先輩ひとすじなんですよ!」

「……………………」
 つまりやっぱり報われないというコトだろうか。
 というか、実際実典とのガチホモ展開ネタはないのだが。

「まあいい。
 ともかく俺たちはネタにされたキャラなんだな!? もうまともなキャラには戻れないんだな!? 俺は性技の味方になる為に、オマエは俺とウホッになる為に戦うんだな!?」

「ナイスリアクション! 話が分かるじゃないスか先輩! さてはこういうノリ好きでしょアンタ!」
「おう! 結構ヤケだけど攻めたり受けたり薔薇だったり菊だったり俺の股間はゲイボルグとか大好きだ!
 そんなワケで、行くぞ実典……!
 オマエだけは絶対に受け入れないッッッッ!」

「ク―――吠えるじゃないスか性技の味方。
 だが今日は俺の方が強い、覚醒した801キャラの力を思い知るがいい……!
 行きますよ衛宮先輩!
 この実典日記でオレの初恋エンドッス……ッッッ!」



「……………………」
「……………………」
 801祭りは終わった。
 先ほどまで渦巻いていたよく分からない薔薇空間も消え、イヤになるほど冷静になる俺たち。

「じゃ、かませ犬キャラに戻りますね」
 ああ、と頷きだけで答える。
 男には言葉をかけてはいけない時があるのだ。

「じゃあこれあげます。気が向いたまた俺のネタ投下して下さいね」
 いそいそとスレのはじっこに移動する実典。
 あ、体育祭の時の桜の写真だ。

「……………………俺も性技の味方に戻るか」
 ここ数レスばかりの記憶をまっさらに消去して前スレのエロードブリッジに向かう。

 こうして実典HGよるetafスレ801化のピンチは去ったのだが、彼の間桐桜に対する想いと、それを上回る衛宮士郎への想いは全く報われることなく終わるのであった、まる。

858 名前: 続>>856 投稿日: 2006/02/08(水) 22:37:13
「――――――、はっ!?」
 唐突に目が覚めた。
 急かされるように状況を確認すると、もう鎖と顔以外孔に呑み込まれている。
「………うわ、すごい汗………」
 全身が冷や汗をかいている。
 なにか、ものすごい悪夢を見たのか。
 キリキリと痛む頭を振って、夢の内容を思い出そうとするが……
「……いや。今はそんな場合ではない」
 ぎり、と雑種に巻きつけた“天の鎖”を引っ張る。
 今はピンチなのだ。今日の悪夢は無かったコトにして、大人しく脱出するに限……る……?


“……ふん。おまえの勝手だが、その前に右に避けろ”



「って、きゃーーーーーーーーー!!!!?」
 ゆ、夢じゃなーーーい………!

859 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 22:41:32
そして、孔に落ちては目を覚ますをエンドレス繰り返す慢心王………哀れ。

860 名前: >652 >703-704 >754-758 >799 投稿日: 2006/02/08(水) 22:48:33
>気が向いたまた俺のネタ投下して下さいね。

心得た。

861 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 23:00:53
ぶっちゃけ、そういう妙な自己主張はあんまし要らんと思うんだが。

862 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 23:02:22
>>860
ちょっと待て、1人で祭を演出していたのか!?

863 名前: 838 投稿日: 2006/02/08(水) 23:06:53
「……あんまりにも、楽しかったんだ。これは夢だって、俺は衛宮士郎の生活をトレースしてるだけなんだって解っているはずだったのに、それでもいいって思うぐらい――――嘘でもいいから無くしたくない思うぐらい、楽しかった。まるで手を伸ばしても届かない星のようで、一日でも長く眺めていたかった」
 ……なんだ、あなた達の欲しかったもの、望んでいたものは、結局同じだったんじゃないですか。
「――――でも、そんな我が侭は許されない。 俺は一刻も早くこの夢を終わらせて、バゼットを助けなくちゃいけねぇんだ。このままじゃバゼットは長くない、そんなコト、言われなくてもわかってる。……俺にはもう、ここにいていい理由がないんだよ」
 痛みに耐えるぐらい悲しい顔をして、嘘吐きな悪魔はそう言った。
「……ありがとよ。あんた具合良かったぜ」
 彼は捨て鉢ぎみに呟くと、乱暴に体を起こした。
 さっきまで伝わってきたいた心音が途切れてしまう。
 ……アンリには、四日目に何度も出会ってきた。
 あの時だって。
 真剣な顔で、とても大切な事のように、こんな事をいっていたんだっけ。

 ――――まさか。助けを求めるのなら、救われないものはない。どんなものであれ、最後には救われるんだ。
 ……本当に、どうして気が付かなかったんだろう。
 彼は、そんな夢のようなことを。
 とおとい祈りのように、語っていた。
「それじゃあな、今度はもっとタチのいい悪魔を相手にするこった」
 嘘吐きの悪魔をそんな事を言いながら手を振っている。愛しいと言うより悲しくて、彼の体を抱きしめた。
「お、おい。なんだ!?」
「駄目です。あなたの嘘には、もう騙されません」
 離れようとするアンリの体を押さえ込む。
「続けたいのなら続ければいいじゃないですか、あなたの言ってることは、決して夢なんかじゃない」
「そんな……そんなコト、できっこない、だろ」
「何故? だって本当にあったコトじゃない。あなたさえ望めばすぐに戻ってくる生活でしょう?」
「……それでも、無理だ。俺は……バゼットを助けたい」
 臆面もなくそんな事を言うアンリの言葉が、これだけはどんなことがあっても嘘でないと気付いてしまった。
 ――――少しだけ妬ける。
 本当にしょうがない、しょうがないので彼の胸にこつん、と額を当てて。
 小さく、囁くように、

「…………………………ばか」

 ……そんな言葉を、呟いた。



蜃気楼(Ⅰ)
志貴>カレン シエル>アンリ

864 名前: 862 投稿日: 2006/02/08(水) 23:31:15
と思ったら実典ネタだけか。勘違いスマン。

>>863
見事だ、GJ!

865 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/08(水) 23:53:03
良かった……801ネタ好きが多くて、色々投下されてるのかと思った……

866 名前: 剣→言峰、士郎→ギル 投稿日: 2006/02/09(木) 00:00:44
「――――――――」
 今、ここには我と言峰しかいない。
 何か話すにはいい機会だし、ここは――――
 
 1.戦わせない理由。我を待機させてる理由を知りたい。
 2.我を召還させる前の言峰を知りたい。
>3.嫁がほしい。セイバーとか、いいね。

 ………その、別に退屈に音を上げている訳ではないのだが。

 なんかこう、隣にいてくれるだけでやっていけそうな嫁とかいると、今回の聖杯戦争にも
 気合が入りそうな気がしたり。

「言峰、相談があるのだが」
「む、なんだギルガメッシュ? 心なしか、とても期待満々の目を向けられてる気がするが」
「そうか? んー、まあ頼みゴトと言えば頼みゴトであり、期待してると言えば期待してて、
 率直に言ってやりたいことがあるのだが」
「……ふむ。お前が言いたい事はよく分からんが、私が許せる事だったら許可しよう」
 真剣な話だと思ったのか、言峰は椅子を回して我の前に座る。

「それで、どのような事がしたいのだ? やはり今後の戦況に関わる事か?」
 ずい、と真面目に見つめてくる言峰。
「―――――――む」
 なんか、十秒後の展開が読めてしまった気もするが、ダメで元々、一応訊いてみよう、うん。
「うむ。別にふざけているワケじゃないのだから、怒らないで聞いて貰おう」
「ああ、だから真剣に聞いてる。遠慮せず言ってみろ」
「それじゃお言葉に甘えて訊くぞ。
 ―――その、な。我にも相応しい、豪華な結婚式とかを挙げたいのだが? 
 相手がセイバーなら文句なしだ」

「――――――――」
 ピタリ、と言峰の呼吸が止まる。
「――――――――」
 言峰ーは眉一つ動かさない。
「―――や、やはりそんな都合のいいことなんて出来ぬな……!
 悪い、悪かった、悪すぎた……! 今のは冗談で本気にあらず聞かなかったコトにしてもらえると
 個人的に助かるの、だが――――」


 ―――って。
 にたり、なんて擬音が似合いそうな笑みを浮かべる言峰さん。

「こ、言峰……? 気のせいかもしれぬが、その、なんかえらく貴様に似合う邪悪な笑みをしておるぞ、今」
「気のせいはあるまい。今の私の心境は、この世の全ての悪に匹敵するほど邪悪に染まっているからな」
「っ…………!!!!」
 ぞ、ぞわってきた、ぞわって……!
「う、む、う」
「何を慌てているんだギルガメッシュ。私はまだ質問に答えていないぞ。
 たしか、私の聞き違いでなければ、お前に相応しい結婚式をセイバーと挙げたいとか?」
 思わず後じさるも、言峰はずい、と身を乗り出して逃がしてくれない。

867 名前: 剣→言峰、士郎→ギル 投稿日: 2006/02/09(木) 00:01:31
「あ――――いや、その、だな…………言峰、怒っておるだろ?」
「ああ、とても」


 ―――死んだ。
 これで食卓なら、間違いなく言峰にマーボーだされてる。

「ぅ――――落ち着け、落ち着くのだ言峰。
 反省してやろう。言峰が怒った理由だって、何となく分かっておる」
「そうか。では、そこに正座しろ。
 ギルガメッシュにはキチンと説明してやらねば気がすまない」
 立ち上がる言峰。
 うむ、と迅速に、言峰みたいに胸をそらして覚悟を決める。
「――――――――」
 すう、と大きく深呼吸をする言峰。
 で。

「―――ふざけているのかお前は……!
 いきなり私達が聖杯戦争に参加している事を相手に教えてどうするのだっっっっっ!!!!」

「あ――――う」
 三半規管が大パニック。
 よもや、怒声だけで足腰立たなくなるとは思わなかった。
 今のはサーヴァントのレベルを超えている。
 世界に迫るというか、宝具ならA+なみの発声力ではあるまいか。

「す、すまぬ……だから、反省してやろう。
 言峰、貴様は神父だろ。だからもしかしたら、喜んで祝福してくれると、思ったのだ」

「そのように都合のいい状況ではないっ! だいたい結婚などはお互いに望んだものがするのであって、
 お前のようなストーカーは丁寧に『お付き合いしてく下さい』と言うところから始めるのだっ!」

「そも、セイバーを含めサーヴァントの前に姿を出さないよう言ったではないかっ! 
 お前は身を隠している事を第一に考えていろっ! お前がセイバーを嫁にしたいのだとしたら、
 それは“自分達は戦わないで漁夫の利を得れる状況”に戦局を導くまで我慢していろ!」

「う……わかってる、わかっておる、から―――もう少し声、落とすのだ」
 うう、反省してやってると胸を反り上げてジェスチャーする。

「……まったく、能力は高いと思えば自分勝手過ぎて困る。
 これでは危なかしくて、お前を一人にするなど出来ないではないか」
 言峰のお叱りは続く。

「………………はあ」
 悪魔の尾っぽを踏んだのは我だし。
 ここは大人しく、言峰の気が済むまでお小言に付き合ってやろう……。

868 名前: 17分割 投稿日: 17分割
17分割

869 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:09:17
>>868
斬刑に処す。その六銭、無用と思え。

870 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:12:57
>>868
「―――スレが汚れる。命を無駄にしたな、小僧」

871 名前: バゼット→慎二 投稿日: 2006/02/09(木) 00:21:53
>>729の続き

 判明している敵マスターの本拠地の調査をする。
 色々と調べた後、中に誰もいないと判明した。
「アヴェンジャー。グズグズするな、さっさと開けるんだよ」
「んー……まあ、わりと単純なヤツなら解析はできるけど。けどアンタがやった方が確実だぜ。間桐の魔術師なんだろ」
「鍵開けは僕の仕事じゃない。庶民に任せるよ」
 なのだった。
 うちのマスターはこういう地味なコトは一切しない。とことんノーブルに出来ているのである。
「んじゃ任された。少し時間もらうぞ、ここのはちょい厄介なんだ」
 玄関の横、庭に埋められた木の根本に腕をつっこむ。
 幽体はこういう時に便利だ。なんなく自分の魔術回路を魔術式に重ねられる。
 十秒。
「――――別にね、僕は一芸に秀でる必要なんかないんだ」
 マスターがなんか言ってる。
 二十秒。
「そういうのは足りないヤツの仕事じゃんか」
 なんでこんな時に語り入ってるのか。
 それもすごい勢いで。
 三十秒。
「見苦しいよね、凡人ほど自分だけの特色なんてものを鍛えたがる」
 額に汗を滲ませて、沈黙などいらぬ、一度語りを止めれば二度と舌が動かぬわ、という修羅の如き気迫。
 というか意地になってないかあいつ、喋るスピードが尋常じゃないぞ。
 四十秒。
「本当に足りてる人間っていうのはさ、とりわけ何をする必要もないワケさ」
 もしかして鍵開けられないのか。このStaynightとhollowを百年間ぐらい煮込んで合体事故のあげくオレ混沌etaF出展ヲアテテミタマエみたいな応酬で誤魔化したいのか。
 五十秒。
「……いいからさあ、さっさとそこ開けてくれない?」
 開き直りやがった。
 一分。
「僕は運命の瞬間を待ってんだよ」
 一分十秒。
「僕が英雄になる最高のチャンスなんだよ」
 一分二十秒。
「能無しのサーヴァントに用はないんだよ」
 一分三十秒。
「ああもう、なにグスグズしてるんだよこのグズ……!」
 ―――ああくそ、仕方ねえ。
 ルール違反どころかゲーム放棄だが。
 オレは今だけ、オレであるコトを否定する。
 一分四十秒。
『Abzug Bedienung Mittelstand―――』
「ほい。開いたぞ」
 コトを終えたオレは、壊れかけた殻を大急ぎで修復する。
「よしきた! それじゃお邪魔するよ遠坂! あ、平凡な調査はアヴェンジャーに任せるよ。僕は敵マスターのクローゼットから調べるから!」
 言って、それーっとばかりにドアに向かう慎二。
「――――って、あれ。なんか普通の家と変わらないぞ?」
 きょろきょろと屋内を見渡す慎二。
 わずか十秒の調査で異常なしと判断したのか、
「ちぇ、なんだよ拍子抜けじゃんか。こんなコトならもっと早く忍び込めばよかった」
 慎二は乱暴に、ドスドスと屋敷に踏み込んだ。
 あ、牛乳かぶった。
「うわあああ!!!??? ななな何だこれアヴェンジャー!?」
 何もクソもねえ、あのヤロウ速攻で罠を発動させやがった。
「ちっ。ああくそ、あんなトラップ教えとけば良かったんだ。あーつまんねえ、やなイベント絵とった。
 ……いや、本気で損したぞなんか。マスターみたいな女でもないワカメがミルクに溺れるなんて、すげえくだらねぇ絵面じゃんか!」
「いいじゃん牛乳。クリーポより上等だよー。
 あははー。楽しいなあアヴェー、さては一服盛りやがったね? 幻覚系? エル? ディズ○ー? すげー、おもしれー、部屋が大きくなっていくよー?」
 間桐慎二の聖杯戦争は、こうして、今度も。
 目的を見失ったまま、終わる事なく、
 その幕を落としたのだ―――

872 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:23:36
ダメ慎二もいいなw
ビジュアル想像したら笑える

873 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:25:40
っていうか上手すぎだろ。
何シーン混ぜてんだ。GJ。

874 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:32:07
混ざりっぷりがすごい

875 名前: ギル→アンリ 投稿日: 2006/02/09(木) 00:32:45
「俺はともかく俺のマスターを侮るなよ!!」

876 名前: 後日談+シスターズサマー(レモン) 投稿日: 2006/02/09(木) 00:49:13
バゼット「では、これから一週間お世話になります。贅沢はいいませんが、神秘を秘匿する者同士、
背筋が凍るようなギスギスした一週間を過ごそうではありませんか、ふふふふふ」

877 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 01:21:20
混ぜすぎワロス

878 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 02:52:44
「そんじゃあダメットと。……んー、この響きはほんとアンタに似合っ『――斬り抉る戦神の剣――!』」

879 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 08:12:46
バゼット怒って当然だな。

880 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 09:00:34

  , ' ´゙^ヽ
  lリl((゙"))
  .id#゚ ロ゚ノ <あまりネタにするとふっとばしますよ
  /j`Y:i>
  〈_ノLゝ
 .  |__j_j

881 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 09:47:49
>>878
 それ言ってるのはやっぱりアヴェンジャーだよな?w

882 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 09:55:48
ランサーでもいいなw
好きな相手にいいとこ見せようとして失敗、
フラガラックでなかったことにしようとするバゼット。

883 名前: SN プロローグ(凛→士郎 アーチャー→カレン) > ha後日談。 投稿日: 2006/02/09(木) 11:18:39
「………俺は、衛宮士郎(えみやしろう)。あんたのの好きなように呼んでくれ」
 素直になれず、ぶっきらぼうに返答する。
 ……まあ、それでも衛宮士郎とかあなたとか、そういった他人行儀に呼ばれた方が楽ではあるし、コイツはきっとそう呼ぶだろう。
 だっていうのに。
 カレンは噛みしめるように「衛宮士郎」と呟いた後。
「それで早漏れと。…ああ、この響きは実に貴方に似合っている」


「うるせえ。黙ってろサドマゾ」

884 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 12:21:30
はやもれ?

885 名前: ラピュタかYO! 投稿日: 2006/02/09(木) 15:28:25
−−雑記−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2006/02/08 バゼットさんの未来は・・・ (雑記ログ)

ひとつ俺は気付いたんだ。
バゼットさん名物、40秒。
どこかで聞いた事のあるリミットだったんだ。

ドーラ「40秒で支度しな!」

あんたかあああああああああっ!

ドーラ「あたしの若い頃にそっくりだ」
息子A「ママのように…なるの?」
息子B「あの子?」

逃げて! バゼットさん逃げてぇええええええ!

886 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 15:30:26
>>885
誤爆か?

887 名前: not,+夜の聖杯戦争5 投稿日: 2006/02/09(木) 16:42:14
『……いえ、なんて愚かな姉妹でしょう。
 ここまで守ってもらう気はなかったのだけど。貴方があんまりにも楽
しそうだったから、つい甘えてしまったのね』

 二人の姉は男に愛され、犯される日々を約束されていた。
 上の姉は運命と思い、仕方がないと諦めていた。

    ステンノ
『それは私の精神が弱いからよ。
 気合を入れなさい、その気になればまだ守ってもらえる筈よ。
私はいつも諦めが早すぎる』
『う』
 痛いところをつかれた。
エウリュアレ
 私はわりと根性論の人なのであった。

888 名前: アンサー 投稿日: 2006/02/09(木) 18:27:03
「―――決して、間違いなんかじゃないんだから……!」

 言葉が、胸に突き刺さる。
 血を吐くような決意で奮った一撃と、間に合う筈の守り。

 その歯車はかみ合わないまま、あっけなく、この戦いに終わりを告げた。

「あれ?」

 ざくん、と。
 胸に刃物が突き刺さる音を、彼は聞いた。

「――――――――」

 驚きは、無論、赤い騎士の物だ。
 敵は打倒する決意をこめて一刀した。
 ならば仕留めるのは道理。
 そこに驚きを挟むよちなどないし、そんな余裕さえ、少年にはなかっただろう。

「あ…………ほんと?」

 故に、驚きは騎士だけのもの。
 あれほど容易に捌けるはずの一撃を捌けなかった事が、本当に不思議だった。

「俺の勝ちだ、アーチャー」
「ぅ――――うう、はうはう、はう〜〜……」

 見据えたまま宣言する。
 赤い騎士はよろよろと後退し、へなへなと膝をついた。

「勝負はついた。認めてもらえたか」
「――――う。う、ぐすっ」
 がくり、と肩を落としてうなだれる赤い騎士。
 それで大人しくなってくれたな、と思った瞬間。

「うわぁぁぁぁぁあああん!
 そして、私の敗北だーーーー!」

 遠くを見つめたまま。
 そう、己に言い聞かせるようにわんわんと泣き出してしまった。

889 名前: 833 投稿日: 2006/02/09(木) 18:34:39
>>884
Ha後日談のカレンの台詞
「……駄犬の分際で主人に逆らうなんて。
 去勢するところだわ、この早漏」

890 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:36:05
「れ」がいらんと言うことだろう。読みは候だからな。

891 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:36:20
>>889
884のツッコミは違う意味だと思うぞ(;´∀`)

892 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:36:22
833、送り仮名〜

893 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:38:02
833の人気に我も嫉妬

894 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:40:34
>>888
なにこの萌え弓。タイガー攻略ルートでも経験して磨耗したのか

>>889
早漏→そうろうと読みます。「そうろう」で変換できます

895 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:44:07
本当に18歳以上なのか疑問だなぁ
携帯から書き込んだのかと思ったが違うようだし

896 名前: バゼット→慎二 投稿日: 2006/02/09(木) 18:54:37
>>729 >>871の続き

「……はん。これで終わりか。あれだけなりたかったモノになって。結局、なんにも達成できなかったなんてな」
 穏やかな声。
 かすかに恐れがあるが、無力を自覚した人間としては上出来すぎる心構えだ。
「それは今後の課題というコトで。
 ま、もとから幻みたいなものだったからなあ。カタチに残る白星なんて」
 ―――あ。
 そうか、アレぐらいは連れて行けるか。
 これでも半年間在り続けたサーヴァントだ。それぐらいは都合をつけよう。


「――――――――え?」
「なに―――――――?」
 声が重なる。
 その異変は、一瞬だった。
 黒い孔。
 人間一人を飲みこめるほどの丸い孔が、
 俺の目前――――ギルガメッシュの体に、現れていた。
「な――――に?」
 愕然と、ギルガメッシュは自らの体を見下ろす。
「く――――あの頭無しめ、同じサーヴァントでは核にならんとさえ判らぬか…………!」
 ……その体が、めくれていく。
 黄金のサーヴァントは、自らに空いた穴に、内側から飲まれていた。


「……アヴェンジャー?」
「いや、こっちの話。それより聖杯はどうなってる?」
「……長くは保たないね。所々に亀裂が走ってるから」
 そうか。
 ならこの体も満足だろう。
「―――化け物め。正気じゃねえな、ホント」
 ……一度だけ、バカな男の夢を見た。
 生憎とそんな生き方には反吐が出るが、その歪な人間になれた事は感謝している。
 オレとは真逆の在り方。
 ただ一度、『おまえ馬鹿だけど、いい仕事するじゃん』なんて言われただけ。
 たったそれだけで、この判り難い男に手を貸してしまう。
 その愚直さに―――一度ぐらいは、憧れた事があっただろう。

 マスターでもなくなった女が肉塊(オレ)の中の慎二を見つけて、ご丁寧にも治療しちまったから話がこじれたのだ。
 アイツさえ来なければ、もちっと長く―――は続かなかったか。
 なんでも間桐慎二の体は限界だったらしい。あの女が慎二の体を発見しなかったら、この幻はある日突然終わっていただろう。
 オレという延命装置が機能し続けても、慎二の体は聖杯の核状態に耐えられなかったんだとか。

「……分かったよ。それじゃおまえの顔を立ててやろうじゃんか」
「それでいい。んじゃまあ、一緒に別れるか」
「ああ、じゃ背中合わせで行こうぜ。……何ていうか、いまおまえの貧乏面を見たら笑うの我慢できなさそうだしさ」
「――――――」
 皮肉な声で言う。
 最後の最後に、成し得なかったものが完成する。
「…………大丈夫かな。オレ、ちゃんと背中ある?」
「なに言ってんの? ほら、踵を回せよ」
 背中を向ける。
 触れ合える感触はないが、確かに彼は後ろにいる。
 もう温かくも何ともないが、苦笑をする心はまだ在きている。
「確かに。じゃあ行くぞ」
「せっかちだな。ここまでしたんだからさ、同時にスタートしようぜ。三秒数えたら走り出すってコトで」
 スプリンターのようだ。
 号砲は各々の心の中で。

 3、大きく呼吸をする。
 と見せかけて二人とももう走り出している。
「アーイキャーンフラーーーーイング!! 馬鹿だね、グズグズすんなよアンリって、なにーーー!?」
 2、彼らしい姑息に楽しくなる。
「あっはっは。―――甘いな慎二、おまえの行動が読めないとでも思ったか……!」
 1、今まで通りの切り返し。
「な、汚いぞアンリ……! そ・ゆうコトするのは卑怯に徹しても勝てない負け犬特性もってる人だけですぅー!
 だが今日は僕の方が速い、覚醒したライバルの力を思い知るがいい……!」
 高らかな捨て台詞。
 0。

――――――――――――――――――――――――

 こうして聖杯と、英雄王による冬木壊滅のピンチは去ったのだが、彼の最大の見せ場と、彼を滅ぼしたある一組のマスターとサーヴァントの勝利は誰に知られるコトもなく消え去るのであった、まる。

さて。その後に誰かが『なんだ。あいつ、いい仕事するじゃん』と呟いたかどうかは、また別の話ということで。
   Fin

897 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 18:58:06
UBWの裏話やったんかいw

898 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:13:20
そうか、核にしようとしたんじゃなくて、道連れにしようと思ってたのかw

899 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:27:25
なにこの爽やかな友情w
グッジョブ

900 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:31:14
阿部さんは悪ガキ風味だからか誰とでも合うなぁw
と言っても、勿論職人さんのテクニックあってのものだけど、
とにかくGJ!

901 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:31:17
まさかこんなオチが用意されていようとは……!

902 名前: 最強の敵+決戦 投稿日: 2006/02/09(木) 19:34:23

「じゃあ殺すね。やっちゃえバーサーカー、発射準備ぃぃー!!」

歌うように、背後の異形に命令した。

「■■■■■■■■■ーーー!!!」
「やっほー! おにーちゃーんーーーっ!」
バーサーカーに足首をつかまれ、グルグル回された後、
ハンマー投げのように発射されるイリヤスフィール。
 ――――魔術、関係ねー!

少女が飛ぶ。
イリヤスフィールと呼ばれたモノが坂の下からここまで、
何十メートルという距離を一息で飛来してくる―――!

「――――シロウ、下がって……!」
セイバーが駆ける。雨合羽がほどけ、一瞬、視界が閉ざされた。

「■■■■■ーーー、!!」

それは秒にも満たない瞬間。
巨人の手から少女が放たれようとした瞬間の光景だった。
マスターから守りが消えた。
狂戦士は敵の狙いを看破する。だが遅い。
少女は、既に手から放たれている。

勝利を確信したのはどちらだったか。
数百メートル先の的を同時に九つ射抜く狙撃手であろうと、
覆せぬ定理がある。
一度放たれた矢は標的を変えられない。
いかな必中の道具を持つ射手であろうとも、
この法則には逆らえないのだ。

されど―――それを克服してこそ、弓の大英雄……!

「っ―――!?」

軌道を変える、否、初めから二敵を貫く必殺の軌道。
定理は返り、駆け抜けるセイバーに回避する術はない。
少女は直撃の魔弾と化して騎士王を粉砕する。
もはや何人たりとも覆せぬ死の運命。

―――されど。それを凌駕してこそ、剣の英霊……!

交差する少女と少女。
通り過ぎるかの如く傾く天秤。

白光は敗北を預るように天上へ。
青光は勝利を謳うように狙撃手へと直行する―――!

それは一瞬の結末。

「大英雄の名に恥じぬ一投でした。
貴方がマスターの命を聞かなければ、この結末にはならなかったでしょう」

剣士の手には真なる輝きを放つ聖剣。

「―――ふ、馬鹿を言うな騎士王。
主の命を守らずして、何が従者か」

狂戦士の胸には自身を両断する傷。
そして放たれた少女は、そのまま大気を切り裂きながら空へ消えた。
決着はここについたのだ。

ところで―――俺は何処に行けば、イリヤスフィールという名の星を
観測できるのだろうか……?

903 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:47:58
え、イリヤ飛んでったまんま?w

904 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:48:28
         ,. -  ──   --  .
          !                \
・        i               〉
          |              /
          |__ _ ___,._ __ __    i
         | i |~´´ | l li l l l``!'
          i l ´| ̄ ` | i il‐r-!、i  |
        // ==== レレ' レ___レ1  i
        // /    ,、____  ̄``|.  l
.       // /\  /    !   ハ i
      // /  /\ゝ.___ノ ,.イi  l i
.     // /  /^ー{__ ̄_ |___j ! ji i
      // / / ヽ /   i´  ヽl i ハ
.    i/ / /`ー‐/   / |∠__/V  i}

   ∧∧   ∧∧  ∧∧   ∧∧
  (   )ゝ (   )ゝ(   )ゝ(   )ゝ ムチャシヤガッテ・・・
   i⌒ /   i⌒ /  i⌒ /   i⌒ /
   三  |  三  |  三  |  三  |
   ∪ ∪  ∪ ∪  ∪ ∪  ∪ ∪
  三三   三三  三三  三三

905 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 19:50:41
イリヤ城エンディング思い出したw

906 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:31:28
もう900越えたか……。
つーか、二週間たってねぇぞw
どんなペースだwww

907 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:31:38
>>896
すげぇな、こんなネタをたった一人で作っちまうなんて。
お前の方がよっぽど怪物だぜ!

908 名前: 間桐臓硯→残骸 投稿日: 2006/02/09(木) 20:33:33
 ――――終ワラセナイ

 終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ、終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ終ワラセナイ…………!!!!

「ギ、ギギャ、ギギャアアアアアア……!!!!」
 そう、終わる訳にはいかない。滅びる恨めしい。解るということは苦しい。解らないということが苦しい。
 四日やそこらでは満足できぬ。それ故に永遠を求めて何がわるい。
 苦しんだ苦しんだ、理解した故に苦しんだ、理解出来ぬ故に苦しんだ。
 裏切り者を殺さぬまま消えるなど出来るものか、苦しいまま死ぬなど出来るものか、目の前には聖杯が口をあけている。
 ならば我が望みを聞くがいい、問われれば答えてやろう、我が望みはオワラセタクナイ。
 あそこまで、あの梯子を登れば願いが叶う、願いが叶うというのにこの体ではたどり着けぬ、たったあれだけの距離、あの空虚を顧みれば塵にも等しい、たったあれだけの距離が、なぜ、なぜこんなにも遠いのか――――――――――――――――!!!!

「お、おお、オ、お――――」
 ビチャビチャと泥を撒き散らしながら、残骸が地面を這う。
 なんという執念。
 動けぬはず、否、既に動くなどという機能のないソレが、ただ怨念のみで前に進んでいく。
 もはや執念だけの怪物と化した思念。
 崩壊の音も耳に入らず、滅びを恐れてソレは進む。
 その、この世ならざる醜怪に、

「――――そこまで変貌したの、アンリ」
 鈴のような、美しい声をかける者が、いた。

「な、ニ?」
 視線をあげる。
 揺れる視界の中。
 そこには、一人の少女の姿があった。

「――――――――」
 残骸の前進が止まる。
 ソレは、陶然と少女を見上げる。
 ……残骸が見たものは凡百の少女ではない。
 それは、遠い記憶にある女。
 いつの時も色褪せずに心にあったはずの、いけ好かない白い花だ。

「――――――――」
 あの日より些かも衰えない。
 かのシスターは、彼が話した頃と同じ瞳のまま、

「問いましょう、この世全ての悪よ。貴方は、なぜ終わらせたくないと思ったのか」
 ただ一度、懐かしい声をあげた。

「――――――――」
 純粋な問いに、苦しい、という思考が止まる。
 何故。
 何故。
 何故。
 言われてみればおかしい。
 何故終わらせないなどと思ったのか。
 何故終わる訳にはいかなかったのか。
 終わってしまえばこの苦痛から解放されるというのに、あらゆる苦しみを抱いたまま、なお怨念にしがみついたのは何の為か。

「オ――――おオ、オオオオオ」
 思い出す。
 そう。最初に、ただ凡百な目的があった。
 万の悪をこの身に背負い。
 あらゆるモノを憎み尽くした。
 誰も届かない地点に行き、理性という有限を超え、虚無という不実に至る。
 人間という種の終わり。
 あらゆる限界を取り払い、無という螺旋の中で終末へ到る。

 ――――思い出す。

 誰かを憎もうとするたびに、明確な誰かを選ぶことは出来ないと知ったあと。
 全てを憎むしかない、悪魔の身では不可能なことならば、許される場所へ旅立とうと奮い立った。
 この身で無理であるのならば、自身を“人の願った悪魔”から“人の願いを叶える悪魔”へと変化させるのだと。

909 名前: 間桐臓硯→残骸 投稿日: 2006/02/09(木) 20:34:19

「お――――、お」
 ……そうだ。
 果てしない憎悪の、その果てへ、
 無残な生贄だけが望み、他の何人(なんびと)もが甘受する幸福、
 我には手に入らなかった望みを手にする為に。

 ――――その為に。
 その為に永遠を求めた。
 人の手にだけある日常を求めた。
 満足するまで消える訳にはいかなかった。
 幾たび憎まれ、何度この身では得られないと悟りながらも、在り続ける限りは諦められなかった。

    ―――そう、ユメみたモノはただ一つ。
       世界を廻し続け、新しいことを知る為。
       我は、黄金の日々に憧れ、一秒後の光を求めた。

「――――――――お」
 だから残った。
 だから続けたのだ。
 願いが間違っていることを理解していても終わらせる訳にはいかなかった。
 自身を作り変えても、古き頃には有った黄金の日々に憧れてみたかった。
 それが自分の願いであり、己が出した答えではなかったのか。

 ……そう。
 たとえその未来(さき)に。さけえない、孤独な破滅があったとしても。

「お――――おお、お…………!」
 それが、最初の願いだった。
 その苦痛。
 叶わぬ望みを叶え続ける事に比べれば、終わらせない、などという望みのなんとちっぽけな事か……!

「――――そう。そうだったっけな、カレン」
 ……世界を見上げる。
 逆月は半ば崩壊していた。
 生み出された、間違いでしかない願いの残骸は、陽炎のように揺らめいている。

 ―――その全てが。
 もう、失敗した自分には届かない出来事だと受け入れた。

「あーあ、終わりか。
 マスターの足掻きも、アンタの存在も、オレの願いも――――こんなところで、終わるんだな」
 それは初めから決まっていたこと。
 悪魔の夢は、何処で果てようと、所詮はこんなところ止まりである。

「ケ――――ケラ、ケラケラケラ」
 だが。
 それは長い苦痛の果ての、惨めな終焉などでは断じてない。
 きっと、これが正しかったのだ。
 彼の試み、その望みは今回で終結。
 彼が駄目でも新しいカレ、彼が殻を被った衛宮士郎がいた。
 黄金の日々など取るに足らぬ。
 たったそれだけでどうして正義の味方が諦めるか。
 彼が望んだものは遥かに眩く尊く、近くいつでも輝くもの。
 これより幾星霜の時間(とき)を超え、千の年月、万の年月の末に手に入れる、人間という種の価値だ。
 ならば、このような瑣末事など気づく為のちっぽけな、けれど必ず意味がある要素にすぎない。
 彼の願いは、これで終わった。
 そして旅がここから始まる。
 ここから、ずっとずっと――――また長い長い、遥か彼方を目指す旅が、虚ろな楽園の終わりと共に回っていく。

「――――けど惜しいなあ。オレ自身が終わらせるまで、もうちょいだったのに、な」
 諦める言葉は、やはり化け物そのものだ。
 どのような光を目指そうと、彼は我慢出来ない男を真似てしまったのである。
 それに最期まで共感せず、彼は光への執着を断った。

 ――――地獄が消える。

 新しいものを求めた阿鼻叫喚の一頭、失敗してなお残骸に姿を変えた悪魔が崩れていく。
「四日間――――ハ。思えば、前ン時と同じだったんだな」
 残骸は跡形もなく、虚空に散華した。
 失敗した自分を取り込むべく存在し続けたモノ。
 残骸は願い続けた悲願の楽園の終了とともに、この世から完全に消滅した。

910 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:35:49
>>896
こんな経験した慎二なら、おっかなびっくり曲がった性根は変わらないだろうけど真っ直ぐに生きていけそうだ。
GJ!

911 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:35:55
なんかここに来て良作ラッシュだな。

>>909とぬかくGJ

912 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:37:20
>>902
……虎ブル道中記へすっ飛んでいった予感

913 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:40:41
>>909
泣けるっ!
残骸側の視点は初めてだっけ?
いやいや、GJでした。

914 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 20:43:01
>>902
オチは半ば見えたのに笑った。
何て明るく爽やかな奴らだw
>>896も同じくGJ!

915 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 21:10:45
ざ、残骸ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!(滂沱)

916 名前: notes.序文  GODO→アンリ 投稿日: 2006/02/09(木) 22:10:01

身体は出口へと疾走していく
陽だまりの記憶は、いまだ消えない。

奇跡のような偶然で作られた聖杯は、七色の欠片になって降り注ぐ
俺たちにとって意味のある別れを祝福するように。

4日間の繰り返しという喜劇に参加した「俺」は、ただ一度をのぞいて失敗した。
つぶさに日常を眺めていったのが幸いしたのだろう
化け物の殻を被りとおしたこの身体だけは、正しい終わりに辿り着いた。

ただ独り走り続ける。
身体に響く偽りの鼓動は、それでも、自分だけのものだった。

ペースを守って、足を前に
とりとめも無い思い出は温かく、胸を締め付けた
人を模した輪郭は崩れ、視界は最低限の光だけを捉える
行く先をかろうじて判別できるレヴェル

もともと在るべき筈でなかったこの身体には、失う為の記憶などない。
在り続ける為には、日々を回し続けなければならなかった。

0と1
遠い背後には5日目に駆け出した麗しのマスター
いつまで走れるか予想もつかない俺の身体
それでも状況は、唄いだしたくなるほど容赦なく最高だった。

もう黒い影にしか見えないであろう身体を、ただ前に押しやった
俺が■に戻る地点、
1が0に還る地点へと。

消えそうになる意識は、4日分の記憶を反芻していた
わずか4日しか過ごしていない。
麻痺した頭には、それが永劫のようにも刹那のようにも感じられる気がした
幸福は、きっと溢れるほどだった。

どのくらいの時間走り続けただろう
意識も、
言語も、
自分も、
喪われてしまった時、
全てを取り戻した。
視界の隅に“光”をとらえる
迷わず突き進んだ。

限界を突破していた■が、溶けていく。
■に還る一瞬の間隙、
意識が白く塗り潰される前のわずかな間。
たしかに、■が、消えゆくまえにナニカを視認した。
なんて、
美しい。

―――――光の中に、白い花が見える

917 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 22:20:21
全世界に先駆けて俺が泣いた

918 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 22:20:53
notesって何だ。

919 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 22:23:17
>>918
青本に載ったきのこの短編。星が荒廃した未来のお話。型月世界と繋がっているかどうかは、
まだ不明だが用語集にnotes世界を髣髴とさせるキャラが居る。

920 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 22:23:30
青本に載ってるきのこの小説。

921 名前: 夜の聖杯戦争5 アンリ→HF鉄心士郎 投稿日: 2006/02/09(木) 22:28:35
 ―――貴方を助けたい、とイ■ヤは言った。
 真摯に。一片の曇りもない気持ちで、苦しみから解放したいと、泣きながら告白した。

 湧き上がった感情は、ひたすらに空虚だった。
 助けが来た事には喜びも感謝もない。
 厚意はひたすらに見当違いで、無意味ですらあったからだ。
 感慨を抱く事はなかったが、可能だったならば、逆に自分が彼女を救いたかった。

 そんな自分が好きだった訳ではない。
 ただ、自分の行動理念は間違っていても、その犠牲で誰かが救われると知っていたし。
 そもそも。桜を見捨てた自分が救われることなどないと分かっていた。

「      」
 声にならない声で応える。
 身体は剣となり声が出ないので、首を振ろうとして、それも不可能な事を思い出した。

 やがて、■■ヤは諦めて地上に帰った。

 何日か根比べして、ようやく、自分が話しかけているものが、ただの残骸だと気付いたのだろう。

922 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:06:21
Part10もなかなかの良作揃いだったな。
俺的MVPは>>92からの脇役sヘヴン。
序盤じゃ>>48もかなり快作だった。

923 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:24:40
今回は、まさか801祭りが始まるなんてなあ……

924 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:28:50
ん、もうマトメ? ならオレのMVPは
>>141のゾンビ赤ずきんとA氏の対決。
あまた出揃う慎二OH改変のなか、この二人を抜擢した天才ぶりに我様ビックリ。
それと元は救われない赤ずきんが妙にノリノリで元気そうで嬉しかった。
次点は>>358の、士郎とアーチャーによるエミヤ・ラブラブクッキング。
真性の腐嗜好サイトでもお目にかかれないまでのいちゃいちゃっぷりに衝撃。
こいつが戦端を開いた801祭りにスレ住人の多くが動乱、または開眼。我様戦慄。

925 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:35:15
今回は男も女も萌えだったと。氷室も実典も良かった。禁断のバスルームは……無茶しやがって。
そしてダメット開眼。もう聖杯とて彼女のダメっぷりを修正は出来まい。

926 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:36:56
素直クール(?)な一連の氷室ネタはお気に入りだったが、
正直終盤のヤオイ連打は嫌だった。

927 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:54:23
今回のMVPは実典ネタだったな。
>21-23 の弓道場から>703-704 のやおいネタまで、かわいいやつだよ実典はw

後、混ぜすぎGJ!なネタが増えてきたのも新しい可能性を感じられた。

928 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:57:28
僕のワカメ 第6ステージ 桜->バゼット 騎->カレン 慎二->アンリ

「天の逆月へようこそアヴェンジャー。私はこの逆月の精、バゼット」
「貴方が落としたものは平穏な日常ですか、それとも埋まらないパズルの欠片ですか?」
「なんだよマスターかよ。チェンジ」
「っ―――……クールに、クールに……」
「怒るな私鎮まれ私せっかくの妖精の役なんだから、小さく可愛く奥ゆかしくやらなくては……よし、うん、クール」
「えー、もう一度いきます」
「貴方が落としたものは心は子供体は大人なマスターへの恋慕ですか?それとも小悪魔シスターを愛でる愛情ですか?」
「ヒャヒャヒャどっちもいらね。つーかあんた相変わらず頭悪りーなー。愛って字が三つも被ってるぜ?なに、日本語ランクE?」
「っ……!」
「い、今のはあえて繰り返したんです! 愛って字をいっぱいアピールしたんですーーーー!」
「ヒーッハッハッハ!今更無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
「だいたいさ、なに小さいって。いまさらダイエットしても、その無駄にデカいタッパが縮むワケないっての」
「――――――、あ」
「バゼット、落ち着いて。いつものアンリです、彼の悪意は今に始まったこ、」
「なんだ、腹黒2号もいたのかヨ。エセシスターと鉄拳代行者のコンビなんてアリエナイよな実際」
「やっぱり女の子は平凡で自分に素直なヤツじゃないと」
「――――――、腹黒、2号」
「な、なんてコトを……!ち、違いますカレン、2号っていうのは1号の次で、力に優れていまして、」
「相変わらず仲いいなあんたら。いいぜ、そこで仲良くやってろよ。オレはその奥に用があるんだ。根暗なマスターに用はないの」
「く……信じられない。冬木市サドマゾ度No.1のわたしたちをスルーなんて……!」
「殺しましょう。すぐ殺しましょう、バゼット」
「……そうね、妖精の役はここまでです。アンリ。今までの悪行を悔い、百年分ぐらいやり直してきなさい!」
「アーイキャーンドラーイーーーー!」
「わかんねマスターだな、オレはもう平凡な日々は飽きてんだよ!悔しかったら予想外の展開でも出してみなさいよーーー!」
「……その予想外の展開がコレなのですが……」

929 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/09(木) 23:58:49
慎二OHとランサーズヘブンネタ全般が秀逸だったな。
終盤の801ネタは実典辺りは笑えたが、段々ガチになってきて対応に困った。

930 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 00:01:30
氷室ネタが好き
801も連打じゃなければ大丈夫だけど実典が少しカワイソス

931 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 00:09:49
>2号っていうのは1号の次で、力に優れていまして、
なんで仮面ライダー知ってるんだアンタw

932 名前: GODO→Fate後士郎『How A Star Is Born』 投稿日: 2006/02/10(金) 00:23:06
 ――――戦いは、終わったらしい。


 俺が展開した固有結界は、魔術師を打倒しその役目を終えた。
 ゆっくりと砕けていく。左胸にひとつの穴が開いていた。
 傷ついた鉄の体は言うことを聞かなくなっていた。ただ、全ての咎の清算を求めるように、内側からの串刺し計に処される。
 いずれは脳髄を突き抜けて、ガラクタにまで成り果てるだろう。そこで自我を保てるほど俺の意志は残っていない。だがそれを心配する必要もない。残骸になるまで、こちらの体が生きている保証がないのだから。
 構えていた黄金剣を地に突き刺して、寄りかかった。
 世界は何ひとつ変わらぬまま。いつかのように熱い地獄が流れこんで、息を吸うのも苦しすぎる。
 色のない無限の剣製。遠くの空さえ歯車が回っている。
 それは、完璧なまでに死んだ世界。

 だというのに。鋼色の荒野は、それでも、尊すぎて視界を滲ませた。


 十年前にある出会いがあった。
 あの日、運命に導かれて現れた騎士王はなによりも美しかった。無骨な鋼の音色と、時間に停まった少女のかんばせ。天使に似たソレに見惚れた。俺にとって不可避の死は、当然のように彼女に弾かれた。
 あの時。契約が成立した瞬間、彼女と目があった。意志の疎通などない。ただそれだけの事実。
 なのに、永劫に、例え地獄に堕ちようともその眼差しを夢見続けた。



 横に倒れていた遠坂が目覚めた。いつかのように腹部に、無残な穴が開けている。
 協会の魔術師である彼女は当然のように今回の作戦に駆り出され、怒鳴り込んでここに走ってきた。
 ほんの一瞬昔を思い出しただけだったが、運がなかった。彼女がオレの姿を見つけて近付いてきた時、元凶と正面衝突していたこの世界は魔術師の攻撃を受けてしまったのだ。
 魔術は彼女の魔術と防壁を打ち抜いて、腹の肉と彼女の意識さえ奪っていった。

 それから数分後の今。昏睡していた遠坂は、ゆっくりと目をさました。
 目が醒めたかね、と言うと、彼女は外の景色へと振り向いた。遥かな荒野から、魔剣聖剣の類が消えていく。
 呆然としている遠坂に、実験の暴走を阻止したことだけを告げた。
 喜んで遠坂は近寄ってくる。立ち上がれずに手足を使ってやってきた彼女の手が、ぴちゃりと音をたてて滑った。
 地にぶちまけた俺の血は、水溜りになって、遠坂の体を赤く染めた。

「私を―――突き飛ばした時?」

 遠坂の問いには答えず、ただ壊れ始めた固有結界の外側を眺めた。
 崩れかけた境界の向こう側に、当たり前の夜空が広がっている。
 沈むような青い空には、掴めない星が瞬いている。

「星が、遠い」

 どこかで聴いたコトバを繰り返して、意識がとびそうになった。結界が割砕する。

933 名前: GODO→Fate後士郎『How 投稿日: 2006/02/10(金) 00:24:13
「固有結界。やっぱり、あんたがアーチャーだったのね」
「…そうだな。認めたくはないがそういうことらしい。知らず知らずのうちに奴の真似をしていた。おかげで死に様まで変わらない」
「バカね。私を、かばったりしたから」
「仕方なかろう。目の前で君に死なれては座でさえ祟られそうだ」

 ひどく芝居がかった台詞を口にした。あんまりにもキザで、おかしくて笑みがもれた。
 似合わない、と彼女も笑った。
 お互いの横顔も見ずに、俺たちは笑いあった。小さな、弱々しい、優しい声だった。

「あんた、変わったわ。昔はこんなに捻くれてなかった。あいつのように罵迦みたいな繰り返しで疲れきったの?」

 …そんなコト、本当に今更だ。その夢の終わりを知っていながら最後まで王であることを全うした少女がいたように。
 衛宮士郎の体も、硬い剣で出来ている。

「いやそれは違う。現実のせいで自分が変わりなどしない。私は、初めからこういう人格だ。偽りの善意を振り撒いていただけで、根は冷笑家だったのさ。気付かなかったか?」
「あら、そうだったの?」
「ああ、そうだったんだ。それでも子供の頃は正義の味方にだって憧れていた。未熟なままだから、今だってそうなのだろう。……だから、もう行け。今ならまだ致命傷でも他の者に治療してもらえるだろう。私に付き合う事はない」

 彼女は立ち上がって、不思議に厳しい眼差しをした。

「いいの? 最後まで、一人で」

「言っただろ。格好つけていたいんだ。正義の味方に憧れているからさ。それに、最後まで誰かを助けたいんだ。
 ―――この道が、間違っていないって信じていたいから」

 慣れない作り笑いは、わりとうまくいったと思う。
 おそらくは、生涯最高の出来だろう。

「じゃあ、さよなら」

 片腹を押えながら、彼女は歩いていった。
 赤い荒野を駆けていく、凛とした一陣の風みたいだった。



 立ち上がって、丘の頂上へ歩いた。
 何をしているか自分でも分からないまま、鞘の紛い物を投影してみた。
 運が少しでも残っているのなら、きっとまた戦っていけるだろう。
 目蓋を閉じて眠ると、耳元で声がした。

「シロウは、なぜ戦ったのですか?」

「それは、理不尽が許せないからだ」

「どうして、許せないのですか?」

「それは、誰もが幸福でいられないのは嘘だと思ったから」

「…なら。なぜ皆が笑顔でいられればいいと思ったのですか?」

 簡単だ。それは―――――――


 記憶の果てで。
 その答えだけが、何一つ変わらないものだった。

934 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 00:44:02
>>932-933
スレも終わりにGJ!
でもこの後磨耗するかと思うとカナスイ

935 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 00:52:12
氷室ネタと関連して>>234も良かった。
夕日のさっちんのシーンはいいシーンだけど、あんまりネタにされることがない気がするので。
あと>>407が輝いて見える。

936 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 00:59:12
>>933
GJだがどこのシーンか思い出せねえorz

937 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:00:26
ネタっつーか、抜群な韻でバゼットのヘタレ加減を増幅する
ダメット・ダメガ・ダメレミッツを考え出したヤツ(>>409?)は真性悪魔。

938 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:04:57
>933
タイプ・マァキュリー撃墜後、致命傷受けて機体もズタボロ状態で最期の別れを言ってるところだろ
GODO→士郎、天使→凛で

939 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:34:36
Notesネタは感動的だがPlusPeriodに収録されなかったからか人を選ぶな。
ところで銃神が最期に撃墜したのはタイプ・サターンじゃなかったか。

940 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:38:02
タイプ:マアキュリー=ORTはnotes.に出番ないからな。

941 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:38:48
私的には>>715が良かったかな
801の流れで飲まれたのはある意味残念だったがw

942 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 01:50:44
ランサーズヘブン三人娘版が俺的ベストだな。あの破壊力はすごすぎた

943 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 02:08:28
>937
いや、実はダメット・ダメガ・ダメレミッツはすでに>99で使われている。

944 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 03:06:29
俺は頭の悪いアーチャー再びが好きだな。あのシリーズまたやってくれねーかな。

945 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 03:32:56
 言葉がない。
 なんでこの場所にバゼットがいるのか。
 なんでこんな間違った聖杯みたいな逆月に立っているのか。
 それもすごい勢いで。
 目に涙を溜めて、終わりなどいらぬ、一度終わりを迎えれば二度とバゼットでいられぬわ、というダメっ子の如き不出気(オーラ)。
 というか意地になってないかあいつ、放ってるダメダメ度が尋常じゃないぞ。
 もしかしてこの間違ったストーリーがいいのか。この本編と裏設定を百年間ぐらい煮込んで
 合体事故のあげくワタシ正統ヒロイン今後トモヨロシクみたいなストーリーがいいというのか。
 だとしたらまずい、バゼットもまずいがこの状況もまずい。
 アレ、絶対やばげな極上の期待が入ってる。そうでなくちゃ説明できない。
「どうしました、ただ立っているだけでは話にならないでしょう。こちらへ来たらどうです」
 球を構えながらバゼットは言う。
「………………」
 用心しながら……いや、もう何に用心していいのか自分でもわからないが……ともかく用心しながら対面に移動する。
「――――――――」
 じっとバゼットの動きを観察する。
 ……まずい。斬り抉る戦神の剣の射程距離、残るは二足分のみだ。
 こいつ、ホントにオレを殺す気か……と、喉を鳴らした時、不意にバゼットの動きが止まった。
「――――――――」
「――――――――」
 視線が合う。
 バゼットはいつもの重苦しい目で俺を眺めて、
「終わらせる――――?」
「終わらせる――――!」
 全力で返答する。
 バゼットはわずかに眉を寄せて、さっくりと俯いてしまった。
 ……って。
 もしかしてバゼットのヤツ、オレの返答に納得がいかなかったんだろうか?

 十秒。
 二十秒。
 三十秒。
 四じゅ―――

「―――“後より出でて”」
「うわー、バゼットったら本気だー。バゼット横暴。バゼット大人げなーい」
「っ!あ、貴方はどこぞの子供ですかー!?」
ぐわっ、と火を吐くバゼット。
ちゃんす!

「とりゃっ!」
真名を言い切らない一瞬の隙をついて
後ろで隠していた物を目一杯広げて万歳をする。
ぶわさ、と撒き散らされるバゼットのいやーんな写真の束。
「―――――――!」
「隙あり―――♪」
しゃっ、と素早く羞恥心から全ての写真を掴み取るバゼットの横を
すり抜けてそのまま中心を突破、■へと回帰します。

「待ちなさい、アンリーーーー!」
ものすごい剣幕でフラガラックの球を構えながら追いかけてくるバゼット。実にダメホット。
が、このアドバンテージを渡すわけにはいかないのです。

「ぎゃはは、待てるわけがねえ! ほとぼりがさめても会えねえぞ!」
「こ、このぉ……! “斬り抉る戦神の剣”―――!!」
「甘い! げろ甘だぜマスター! “偽り写し記す万象”―――!!」

 こうしてアヴェンジャーによる聖杯崩壊のピンチは去ったのだが、二人の最大の見せ場と、それを壊した主従の物語は誰に語られるコトもなく繰り返すのであった、まる。

946 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 03:40:19
>ぶわさ、と撒き散らされるバゼットのいやーんな写真の束

そいつをよこせ、おれはかみになるんだ!!

947 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 06:08:07
>ぶわさ、と撒き散らされるバゼットのいやーんな写真の束
ピッ
ア ころしてでも うばいとる

948 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 06:26:10
>ぶわさ、と撒き散らされるバゼットのいやーんな写真の束
寝顔とかワイシャツに包まれた胸を上から撮った写真とか、裸ネクタイとか、そんな写真なのか?

949 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 06:38:24
写真の束に食いつきすぎw

で、俺にも焼き増し頼む。

950 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 08:02:08
ダメホットという新たなダメットの歴史が刻まれました。

951 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 09:21:06
「……そうか。どうやら決定的な屈辱じゃねえと退かないと見た」
 増えていくいやーんな写真。
 それはアヴェンジャーが触れずとも動きだし、次々といやーんな記録を外界へと向けていた。
 今まで裏しか見えなかった物が、表を露わにして主の命を待っている。

 それが、この写真の本来の使い方である。
 元々写真は恥を残す物ではない。
 この無数の写真は、聖杯に“展開”され、主の命によって自らが恥の証拠となる。
 故にいやーんな写真。
 この写真は、最強の恥の記録なのだ。

「巧く捕まえな。
 なに、運が良けりゃ顔を赤くなる程度だよ―――!」
「――――!」
 号令一下、神速を以って放たれる写真の雨。
 それぞれが必殺の恥力を秘めるそれを、
「っ…………!」
 舞い散る木の葉のように、悉くを捕まえる――――!

 正面からの寝顔、
 左翼からの裸Yシャツ、
 下方、および頭上同時によるナイスアングル、
 弧を描いて後方から奇襲した三枚撮り、
 彼女を上回るほど巨大な写真の焼き増し――――!
 アンサラー、フラガラック、ゲット、最後に掴んだ状態から身をひねる……!

「は――――ぁ、ア――――!」
 呼吸を乱しながら、無理矢理に崩した体勢を立て直すバゼット。
 ―――その瞬間。
 彼女は、敵の背後にあるソレを見た。
 アヴェンジャーの手中、
 既に展開した写真、その数実に四万七千―――!

「く――――、つっ…………!」
 全力で跳ぶ。
 推進剤でも使ったかのような跳躍に捕まるまいと、無数の写真が天空に広がっていく。

 写真の雨の中、次々と逃していく。
 写真は蒔かれ、大地を貫かれ、尊厳に関わる写真さえ外界に舞っていく。
 その窮地においてなお写真を捕まえ続けるバゼットの目に、最悪の光景が飛び込んでくる。

 写真の雨の向こう。
 逃げ惑う獲物に王手を刺すように、この世全ての悪は己が切り札を引き抜いている――――!
“写真のネガ――――!”

「――――投影、」
 言葉を聞いた。
 素顔はおろか寝顔全般、他三部を含む写真まで逃しておいて、まだ、残ったものがあった。

「――――開始」
 肉体は死んだ。
 だが、ここに、魂が残されている。
 八節を聞く。
 負荷は肉体から魂におよび、更に、意味が
「――――――――、あ」
 そうしてバゼットは死んだ。
 立ち尽くすカタチは一つの機械と変わらない。
 築き上げた記録を捕まえる機能はあっても、捕まえる意思がなければ残骸と変わらない。


 だが、人工の知能がなくとも。
 この世には沢山の、記録を残す媒体がある。



 誓いがあった。
 いつかネタが過ぎて、ヒロインになったら――――



 もう意味さえ解らない記録の羅列。
 最後まで実行していた、守られるべき、小さな誓い。

『 wolloh aixarata のエンディングを迎えた!』

「つまり、アンタは昔からランサーの事が好きだったと」
「うわぁぁぁぁぁあああん!
 アンリに恥ずかしい過去まで知られちゃったーーーー!」

952 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 09:28:07
もはやなにがなんだかw

953 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 10:21:43
「なにも恥ずかしくないだろ。愛だよ愛。それが基本にして最強だ。」

954 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 10:57:06
写真多すぎwwwwwwwww

955 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 11:05:08
正に外道

956 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 12:29:51
さすが全ての悪wwww

957 名前: アンリ→アルバ バゼット→橙子 投稿日: 2006/02/10(金) 14:34:53
 なら―――、一体どんな理由で、このマスターはオレにこんなにも冷たい殺意を向けるのだろう?
「……なぜだ。オレが、あんたに何かしたか?」
「別に何も。生きていく以上、誰かに憎み憎まれるのは覚悟の上です。実を言うと、契約してからのあなたの悪態も悪くはなかった。
 それはバゼットという私をマスターと認めてくれている証だから」
「ならば、なぜ」
「簡単なことです。あなたは、私をあの名で呼んだ」
 ひゅん、と音がした。
 バゼットが拳を振り上げた音である。
 皮手袋をはめた拳は、それこそ凶器だ。
 卒業証書の入れ物にも見える大きな筒が、その背に負われている。
 その中に、三つ、ある。
「時計塔時代からの決まりでして。私をダメットと呼んだ者は、例外なくブチ殺しています」
 筒の中には、光る、

 ――――三つの、フラガラックが。

958 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 14:35:02
そりゃ何億、何兆回と繰り返してたら写真もたまるわなぁ……w

959 名前: >>957のインスパイア 投稿日: 2006/02/10(金) 15:14:25
 なら―――、一体どんな理由で、このマスターはオレにこんなにも冷たい殺意を向けるのだろう?
「……なぜだ。オレが、あんたに何かしたか?」
「別に何も。生きていく以上、誰かに憎み憎まれるのは覚悟の上です。実を言うと、契約してからのあなたの悪態も悪くはなかった。
 それはバゼットという私をマスターと認めてくれている証だから」
「ならば、なぜ」
「簡単なことです。あなたは、私を待たせすぎた」
 ひゅん、と音がした。
 バゼットが拳を振り上げた音である。
 皮手袋をはめた拳は、それこそ凶器だ。
 卒業証書の入れ物にも見える大きな筒が、その背に負われている。
 その中に、三つ、ある。
「生まれた時からの決まりでして。私を40秒以上待たせた者は、例外なくブチ殺しています」
 筒の中には、光る、

 ――――三つの、フラガラックが。

960 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 15:14:29
今回の流れは早いねー。カレンに「早漏!」と罵られそうなくらい早い。
>>3とか>>7とか>>10とかとばしまくったね
>>267>>280、あまあま氷室、赤ずきんOh!とかいいのがそろってるし。

961 名前: テンプレ 投稿日: 2006/02/10(金) 16:26:03
11thgin yats\etaF

1.表現を逆にする
2.肯定文を否定文(またはその逆)にする
3.名詞を入れ替える
4.キャラを入れ替える
5.突然場面を切り替える

※名前欄かメール欄に入れ替わったキャラ、あるいは元ネタの場面のどちらかを入れる事

前スレ
10thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1138374477/
過去スレ
9thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1136269748/
8thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1132928110/
7thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1126791828/
6thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1121553839/
5thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1115519595/
4thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1109402588/
3thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1105058355/
2thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1100704160/
1thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1092275302/

関連スレ
月姫ネタ総合スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1062166843/
(型月と関係ないキャラとの入れ替えはこっちで)
【型月・竹箒】月姫のセリフを改造するスレ【総合】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1064922153/
(セリフだけを改変する場合はこっちで)
体は剣で〜を改変するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1075780913/
(UBWの呪文だけを改変する場合はこっちで)
自作SS・絵晒しスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1074693014/
(文章の多くをオリジナルが占める場合はこっちで)

あと、原文を探すのに役に立ったり立たなかったりするスレとして
お気に入りの台詞を上げるスレ ※ネタバレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1062860575/


次スレは985以降でいいと思う
早く立てると埋めるの結構手間だし

962 名前: テンプレ改 投稿日: 2006/02/10(金) 16:39:52
11thgin yats\etaF

1.表現を逆にする
2.肯定文を否定文(またはその逆)にする
3.名詞を入れ替える
4.キャラを入れ替える
5.突然場面を切り替える

※名前欄かメール欄に入れ替わったキャラ、あるいは元ネタの場面のどちらかを入れる事

前スレ
10thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1138374477/
過去スレ
9thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1136269748/
8thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1132928110/
7thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1126791828/
6thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1121553839/
5thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1115519595/
4thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1109402588/
3thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1105058355/
2thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1100704160/
1thgin yats\etaF http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1092275302/

関連スレ
月姫ネタ総合スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1062166843/
(型月と関係ないキャラとの入れ替えはこっちで)
【型月・竹箒】月姫のセリフを改造するスレ【総合】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1064922153/
(セリフだけを改変する場合はこっちで)
体は剣で〜を改変するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1075780913/
(UBWの呪文だけを改変する場合はこっちで)
自作SS・絵晒しスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1074693014/
(文章の多くをオリジナルが占める場合はこっちで)

あと、原文を探すのに役に立ったり立たなかったりするスレとして
お気に入りの台詞を上げるスレ ※ネタバレその2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1110812695/



お気に入りの台詞スレが移行してるんでちと修正。

963 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 17:05:11
次スレとっとと立てて、
あと感想と全改変のインデックスで埋めるのもありじゃないかと思うが。
スレが終わりかけた今だと感想レス貰いにくいから次スレまで待つって人も多そうだし。
それはそうとテンプレおつです。

964 名前: アンロイ→ランサー カレン→言峰 投稿日: 2006/02/10(金) 17:54:02
「――駄犬の分際で主人に逆らうとはな。
 去勢されたいのか、この早漏」

965 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:04:01
次スレ立てといた

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1139562171/

966 名前: ステイ・アウェイ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:21:03
 楽園を巡る戦いは終幕が過ぎ、彼の戦いもまた、ここに幕を閉じようとしていた。
 それがどのくらい長かったのかなど、彼には判らない。
 ただ、永遠に自己を縛り付けるであろう世界が、今は無い。
 終わりはただ速やかに浸透し、この世界に現れた彼の体を透かしていく。

「ランサー……!」
 呼びかける声に視線を向ける。
 走る余力などないだろうに、その女性は息を乱して駆けてくる。
 それを、彼は黙って見守った。

「はあ、はあ、はあ、は…………!」
 彼の元まで走り寄った女性は、乱れた呼吸のまま騎士を見上げる。

 ―――光になびく青い姿に、見る影はなかった。
 鎧は所々が裂け、その槍もひび割れ、砕けている。
 存在は希薄。
 以前のまま、出会った時と変わらぬ尊大さで佇む騎士の体は、その足下から消え始めていた。

「ラン、サー」
 遠くには夜明け。
 地平線には、うっすらと黄金の日が昇っている。

「残念だったな。そういう訳みたいだ、聖杯は諦めなバゼット」
 特別言うべき事もないのか。
 青い騎士はそんな、どうでもいい言葉を口にした。

「――――――――」
 それが、彼女には何より堪えた。
 今にも消えようとするその体で、騎士は以前のままの騎士だったのだ。
 信頼し、共に夜を駆け、皮肉を言い合いながら背中を任せた協力者。
 振り返れば「楽しかった」と断言できる日々の記憶。

 ――――それが、変わらず目の前にあってくれた。
 この時、最後の瞬間に自分と会う為に、残っていてくれたのだ。
 聖杯を失い、間違った聖杯戦争の終わりを迎えた。
 現界などとうに不可能な世界で、彼女に会う為に、彼女たちの戦いを見守り続けた。
 その終わりが、こうして目の前にある。

「ランサー」
 何を言うべきか、彼女には思いつかない。
 肝心な時はいつだってそうなのだ。
 ここ一番、何よりも大切な時に、この彼女は機転を失う。

「け――――――――」
 騎士の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。
 そんな事は、初めから知っていた。
 青い騎士にとって、彼女のその不器用さこそが、何よりも懐かしい思い出と重なったのだから。

「―――な、なんですか。こんな時まで、笑うことないでしょうっ」
 むっと、上目遣いで騎士を見上げる。
「ああ、悪い悪い。アンタの姿があんまりにもアレなんでな。
 お互い、よくもここまでボロボロになったと呆れたんだよ」
 返してくる軽口には、まだ笑みが残っている。

「――――――――」
 その、何の悔いもない、という顔に胸を詰まらされた。
 いいのか、と。
 ここまま消えてしまって本当にいいのか、と思った瞬間、

「ランサー。もう一度わたしと契約していただけますか」

 そう、言うべきではない言葉を口にした。

「それは出来ねえな。アンタがこの先どう生き続けるのかは知らないが、オレにその権利はねえだろ。
 それに、興味がねえよ。オレの人生は、もう終わってる」
 答えには迷いがなく、その意思は潔白だった。
 晴れ晴れとした顔は朝焼けそのもので、それを前に、どうして無理強いする事ができるだろう。

「……ですが! ですが、それでは。
 私は、いつまでたっても―――」
 変われない、と。
 言葉を飲み込んで、彼女は俯いた。
 それは彼女が言うべき事でもなく、仮に騎士をこの世に留めたところで、得られる物ではないのだから。

967 名前: ステイ・アウェイ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:23:00
「―――まいったな。この世に悔いは残さねえようにしてるんだが」
 この女に泣かれるのは、困る。
 彼にとって彼女はいつだって前向きで、現実主義者で、とことん甘くなくては張り合いがない。
 その姿にいつだって励まされてきた。
 だから、この女性には最後まで、いつも通りの彼女でいてほしかった。

「――――――――バゼット」
 呼びかける声に、彼女は俯いていた顔をあげる。
 涙を堪える顔は、可愛かった。
 胸に湧いた僅かな未練をおくびにも出さず、遠くで輝いている明日にルーンを投げ、
「“四枝の浅瀬”、ルーン使いなら意味が分かるだろ。
 ―――未来との一騎討ちだ、退却するなよ」
 他人事のように、騎士は言った。

 それは、この上ない別れの言葉だった。
 ……未来は変わるかもしれない。
 彼女が明日を生きてくれるのなら、クー・フリンは悔いを残さない。
 そんな希望が込められた、遠い言葉。

「―――――――ラン、サー」
 ……けれど、たとえそうなれたとしても、それでも―――既に終わってしまっている青い騎士は、永遠に悔いを残し続ける。
 彼とクー・フーリンは、もう別の存在。
 スタート地点を同じにしただけの、座にいる青年と、青年が夢見た願いだった。

「――――――――っ」
 ……もう、この騎士に与えられる救いはない。
 既に死去し、変わらぬ現象となった青年に与えられる物なんてない。
 それを承知した上で、彼女は頷いた。
 何も得られないからこそ、最後に、満面の笑みを返すのだ。
 明日を生きろ、と。
 そう言ってくれた彼の信頼に、精一杯応えるように。
「ええ、わかりました。わたし、頑張ってみます。貴方みたいに立派な人になるよう頑張ります。きっと、貴方に認められるように頑張ります……!
 だから、貴方も――――」

 ―――今の、悔いを残さないで。

 言葉にはせず。
 万感の思いを込めて、彼女は消えていく騎士を見上げる。

 ――――それが、どれほどの救いになったのか。
 騎士は、誇らしげに彼女の姿を記憶に留めたあと。

「安心したぜ。ありがとよバゼット。これで、悔いは残さず帰れる」

 ざあ、という音。
 騎士は少女の答えを待たず、ようやく、傷ついたその体を休ませたのだ。

「――――ふう。結局、言い損ねましたね」
 ぐい、とこみ上げた涙を拭って、もういない彼に話しかける。
 その声は清々しく、彼女はいつもの気丈さを取り戻していた。
 それも当然。
 あんな顔をされては落ち込んでいる暇などない。
 騎士が立っていた■に別れを告げて、彼女は迎えた明日へ駆けていく。



 ―――黄金に似た朝焼けの光の中。
     消えていった彼の笑顔は、いつかのハシバミの少年のようだった。


「……以上です。
 私たちのチームワークは最悪だったと理解できたハズですが」
「………………」
「――――――」
「……その顔はなんですか、アンリ、士郎君」
「なんでもねえよ。…………貫かれてもー♪」
「ああ。……好きな人ー♪」

968 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:24:12
>>958
1日目に戻ったら写真もなくなるんじゃないのか?
ラックの玉の数が戻ったりイヤリングがまた片方になったりするのと同じで。

969 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:24:14
何このバゼットルートwwGJwwwwww

970 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:38:44
よくよく見たらカレンじゃなくてアンリなんだなw

スレ立て乙。で、14番レスは今度こそあれを張るんだよな?

971 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:42:24
>>967
>「“四枝の浅瀬”、ルーン使いなら意味が分かるだろ。
> ―――未来との一騎討ちだ、退却するなよ」
 この部分が普通に上手いと思った。

972 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:46:42
普通に感動した。GJ。

973 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 18:59:53
改めてみると>>7-8は良くできてるなあ。

974 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:05:25
このスレはレベルが高すぎた

975 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:16:27
てゆーか前スレや前々スレからしてこのスレおかしいw

976 名前: 士郎>アンリ イリヤ>ダメット 投稿日: 2006/02/10(金) 19:18:57
「――――――――――――」
 それは。
 もう名前も思い出せない、誰かの声。

「――――――――、   ?」
 思い出せないのに、名前を呼んだ。
 呼ばなければいけないと思った。

 ―――そうしなければ、   は、二度と帰っていけないと。

 ――――ねえ。

 アンリは、生きたいですか? この先どんな運命が待ち受けていても、アンリはまだ生
きていたいですか?

「――――――――、   」
 いや飽きた。名前を。名前を呼んで、止めさせないと。
 止めたい。そう進言したら自分が死んでしまうと判っているのに、名前を、止めたいと、
心の底から、止めたいと願っていた。

 ――――ああ。
 良かった、私もそうしたかった。代わり映えがなくても、これからも生きていたかった
から。

「――――――――、   」
 何を言ってるんだ、ばか。聞いちゃいねぇ。
 いいから戻れ。それ以上進んだら帰って来れない。
 この四日間は、俺が連れて行くから、くそっ、名前、名前を思い出さないといけないの
に、頭がバカになっちまって、たいせつな、名前が。



(中略)



 思い出した。
 彼女の名前。

 でっかいなりしててんで頼りない、最高のマスター―――
















「ダメット! ダメット! ダメット! ダメット! ダメット! ダメット! ダメッ
ト! ダメット! この短気! ダメット! 四十秒ぐらい待て! ダメット! ボクシ
ング・バカ! フラガラック! ダメット! 無職! ダメット! 胸が筋肉! ジャン
クフード! 精神年齢13才! 人間凶器! ダメット・ダメガ・ダメレミッツ!」



「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」
「“偽り写し記す万象”―――!!」



 届かない。
 もう声は聞こえない。
 闇に飲まれて何も見えない。

 彼女は、最後に。
 宝具を解放して俺を殺し。そして俺に殺され。偽りの四日間の最初に戻った。

977 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:22:51
写真のせいで繰り返しすぎて
ついに二人とも狂ったか

978 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:27:22
つーかどのシーンに当てはめても違和感ねーのは二人のキャラと職人の腕なんだろうなw
GJw

979 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:32:43
なにこのバカコンビw
このスレじゃすっかりダメットが定着しちまったなぁ…
さっきのバゼットルートの感動を返せwGJ!

980 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:32:59
>>976
勢いに負けて笑ってしまった俺の負けだw

>>975
ホロウ発売からレベルが段違いに上がったな。良作が多くなればそれだけ平均レベルも上がってしまう
これからは単純な入れ替えだけじゃキツいかもなー、嬉しいようで苦しい

981 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:43:03
>「“斬り抉る戦神の剣”―――!!」
>「“偽り写し記す万象”―――!!」

このフレーズが頭にしみついたwww

982 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:47:56
>>967
兄貴カッコいいなぁ…
あとオリジナルの改変部分の未来との一騎打ちだ、とか思いつくセンスが妬ましい

…ところで誰か次地スレの14でタイガー道場やれるやついるか?
俺は前スレの14に匹敵するほどのネタがうかばないのであきらめたが。

983 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:51:19
>>980
変えすぎるのもそれはそれで問題な気が

984 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:53:07
うむ。混ぜすぎて元ネタわかんねえよ。

985 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 19:56:45
>>982
以前のネタをコピペして貼るだけでいいやとか思ってた俺がきましたよ。
ごめん、正直クオリティ低すぎたorz釣ってくるorz



Fiiiiiiiiiiiiiiiiish!!!!

986 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 20:18:37
14
このプログラムは停止しています。
windowsを閉じること

987 名前: タイガー道場2→>>14道場2 投稿日: 2006/02/10(金) 20:19:08
「こんにちはー! サクっとダンボール被った貴方を一から鍛え直す夢のレスキューネタレス、>>14道場師範藤村大河でーす」
「はーい、ホントはこんなところに出る必要なんてないけど、お情けでタイガに付き合ってあげてるイリヤでーす」

「だりゃぁぁぁああああ!」

「弟子一号! このレスでは貴様の名称は弟子一号!」
「いたた……こ、このわたしを吹き飛ばすなんて……スレチガイダテメーラ、恐るべし……」

※武器辞典に『スレチガイダテメーラ』が加わりました。

「??? いまヘンな音しなかった?」
「別にしなかったけど? それよりタイガ、今回のテーマはなんなの?」
「うむ、今回のテーマはスレの流れについて。
 いきなりだけど、『etafスレ』は油断してるとぽんぽん埋まるの。
 基本的にみんな容赦ないので、書き込む前に更新するのは常道よ? ネタ職人の日常は赤信号だらけのスクランブルてなもんなんだから」
「ええ。ネタはすぐ流れちゃうからねー。やっぱり、適当なネタでもいいから数多く投下しないとダメなんだから」

「ちぇすと」

「いったぁーい! 師しょー、その宝具ほんとに痛いでありまーす! もっと優しい宝具にしてくださーい!」
「却下。良作を練らずにつまらないネタを量産するようなちびっ子は漁港三週! きりきり走れぃ」
「えー。疲れるの反対ー」
「GJが欲しくないのか!」
「ちぇ。わかったわ、走ってきまーす」

「さて。今回の死因は、この>>14へのリンクを見て、クリックしよう、なんて思ったコトよ?
 『大絶(ry』では、もう戦っても引き返しても>>14
 半端な選択は意味ないから気をつけなさい」

「タイガー? なんか、港の隅にワカメがいるよー?」
「髪の毛抜いて海に返しなさい。
 あとわたしを虎とよぶな」
「はーい、ヘンなワカメを海に返しましたー」
「よろしい。では今回はここまで。
 11thgin yats/etaFはまだ始まったばかり。このスレを乗り越えたら、ようやくネタ職人としての戦いが……始まる……ような……始まらない……ような……」
「どっちなのよ?」
「んー……とにかくネタを投下しろってこと、かな……?」

>>982
こんな感じのネタでいい?

988 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 20:21:03
ちょwwwwワカメの扱いヒドスwwwwwwwww

989 名前: 982 投稿日: 2006/02/10(金) 20:23:12
>>987
ブラボー!おおブラボー!!

ていうか俺に許可なんぞ求めなくていいのです


俺は14ネタでタイガーでなくデッドエンド風味を模索して次々スレに備えるよ

990 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:07:39
 走る。走る。走る。
 スレは輝く。
 ネタは確かに。
 千切れたレスは、意志だけでスレに記す。
 大丈夫、作れない事はない。
 夢みたネタが終わって、光を失ったとしても―――
 この眼球が、眩しいと感じている。
     最後に、このスレにもさよならを。
 ―――さあ、終わりの続きを見に行こう。

「それは貴方のネタ力が弱いからです。
 気合いを入れなさい、その気になればまだ作れる筈だ。貴方はいつも諦めが早すぎる」
「う」
 痛いところをつかれた。
 バゼットはわりとネタ論の人なのであった。

991 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:10:56
これまたGJ。
しかしスレも終わりに近いので職人さんたちはそろそろ次へいってくれると嬉しいですよ?


ってことで、埋めガメッシュ。

992 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:17:19
生めーこのみかん

993 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:42:56
ごめんね、>>729-871-896混ぜすぎてごめんね
元は「夜の聖杯戦争」をベースに「Prologue」、
「五年越しの来客」「言峰マーボー」「慎二と港」「カレン(エロ)」
「桜の自室に侵入(暗殺帳)」「士郎、一人で遠坂邸を掃除」
「桜ルート、客間の桜を見舞う」「天の逆月」
「凛ルート、士郎VSギル」「花札慎二ルート、VS桜」「慎二OH」
月姫読本+Period収録「Talk.」。たぶんこれで全部。
無理してるとは思った、無我夢中になってやった 反省している

「次の舞台に急ぐとしよう。願わくば次のスレも、心地よいネタでありますように」

994 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:55:25
「偽り写し記す万象斬り抉る戦神の剣―――!」

それは秒にも満たない瞬間。
英霊の手から呪いが放たれようとした瞬間の光景だった。
相手から守りが消えた。
アヴェンジャーは敵の狙いを看破する。だが遅い。
報復の呪いは、既に彼から放たれている。

勝利を確信したのはどちらだったか。
如何なる防御も無視して報復する宝具であろうと、
覆せぬ秩序がある。
時間の上にある現象は時間には逆らえない。
いかな必中の宝具を持つ英霊であろうとも、
この法則には逆らえないのだ。

ゆえに―――それに屈服してこそ、最弱の英雄……!

「斬り抉る戦神の剣―――!」

因果律を変える、否、順序を逆転する必殺の反撃。
時間は逆巻き、アヴェンジャーに回避する術はない。
フラガ・ラックは必殺の剣と化して標的を粉砕する。
もはや何人たりとも覆せぬ迎撃礼装。

―――されど。それを失敗してこそ、ダメレミッツ……!

痛すぎる静寂と沈黙。
通り過ぎるかの如く吹き抜ける風。

アヴェンジャーは敗北を預るようにズッコケて。
バゼットは恥を背負ったまま彼方へと逃走する―――!

995 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 21:58:40
「一時はどうなるコトかと思ったけど、なんとかなってくれてよかった。
 あ。そういえば、アンタの相談って何なんだ?」
「まあ。覚えていてくださったのですか?」
「バゼットの話が終わったら聞くって約束だっただろ。
 なんだよ、カレンの相談事って」
 ―――その時。
 俺は、本当の悪魔の笑みというヤツを、チラッとだけ見てしまった。
 悪魔は最高の、これ以上はないというタイミングで、
「はい。実はこの度、バゼットをダメットする事になりまして。
 ついては、至高のネタが生まれるまで邪魔をして―――」
「☆×$%’&$”’(&$%#%&!!!!!」

996 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 22:01:09
>>993
いや、GJだったよ。
これからも、たまにでいいからごった煮ネタを頼んだ。

997 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 22:05:29
次スレは濃厚なホモスレとなります。

998 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 22:13:57
いや、百合だ。

999 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 22:17:11
999ゲット

1000 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/02/10(金) 22:17:55
げあげg

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