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クロスオーバー・モンスター闘技場
1 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:28:45 ID:CQJ55KV.0
【概要】
様々なゲームのモンスター同士を戦わせる、バトロワリレー小説企画です。


【参加者名簿】

8/8【ドラゴンクエストシリーズ】
〇スライム/〇ホイミスライム/〇はぐれメタル/〇キングスライム/〇プチヒーロー/〇ドラゴン/〇キラーパンサー/〇バトルレックス

7/7【ファイナルファンタジーシリーズ】
〇チョコボ/〇トンベリ/〇サボテンダー/〇モルボル/〇ベヒーモス/〇ギルガメッシュ/〇オルトロス

7/7【ポケットモンスターシリーズ】
〇ピカチュウ/〇メタモン/〇ソーナンス/〇キノガッサ/〇ルカリオ/〇ガブリアス/〇タブンネ

7/7【真・女神転生シリーズ】
〇妖精ジャックフロスト/〇魔獣ケルベロス/〇妖精クーフーリン/〇天使エンジェル/〇堕天使デカラビア/〇外道バックベアード/〇魔人アリス

6/6【モンスターファームシリーズ】
〇スエゾー/〇モッチー/〇ライガー/〇ピクシー/〇ゲル/〇ゴーレム

5/5【デジタルモンスターシリーズ】
〇アグモン/〇ガブモン/〇ブイモン/〇ワームモン/〇レナモン

10/10【書き手枠】
〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇

合計50体

まとめwiki : ttp://www57.atwiki.jp/monsterbr/pages/1.html

2 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:29:30 ID:CQJ55KV.0
「レディース・エーン・ジェントルメーン!! 一世一代の大舞台に集いし老若男女の皆々様!!
 ついに来ましたこの瞬間! 世界を、いや次元を超えて集められたモンスターたちの!!
 肉体を、魂を削って生き残りをかけるデスマッチ! その中で最後まで大地に立ち、栄光を手にするのはいったいどいつだ!?
 魔物たちによる魔物たちの大いなる祭典、スペシャルモンスター闘技場がいよいよ開幕だーっ!!」

実況の声に応答して、わぁっと沢山の人々の歓声があがる。
そう、誰もが待ちわびた前代未聞の大祭りがついに始まるのだ。


 ◆


……おっと、キミは『モンスター闘技場』が何なのか知りたいのかい?
簡単に説明すれば、まず世界中から集められた魔物たちが互いに戦うんだ。
キミの仕事は、あらかじめ誰が生き残るのかを予想して、あとは勝利を祈りながら戦いを見るだけさ。
鋭い牙が、重い拳が、強力な魔法が飛び交うその壮絶な光景は、誰もが息を飲んで魅入ってしまうだろうよ。
見事に的中すれば一攫千金! 外せば残念、それならまた次の戦いに賭けるまでよ。
代わり映えの無い日常の中に、大いなる刺激と興奮を! 最高のエンターテイメントを!
それがモンスター闘技場なのさ!

だがな、今回行われる祭典は一味違うんだぜ。
どこに生息しているかもわからない……それこそ、誰も見たことの無いような貴重な魔物たちが大量投入されているらしい。
戦いの舞台だって、普段の狭苦しい堀の中なんかじゃあ無いぜ。
島を丸一つ! 無人の島を丸ごと使って、50体くらいの魔物を一斉に放すという、とんでもないスケールで行われるんだってよ!

戦いの行方は常にテレビモニターから確認出来るらしい。
金持ちの連中なら、あるいは飛行船に乗って特等席から直接見に行くかも知れねぇな。
とにかく、かつて無い程に迫力のある魔物たちの殺し合いが見れるらしいぞ!
どうだい? お前さんも興味が湧いてきたんじゃないのか?

おおっと、こうしちゃいられない!
ほら、お前も早くどいつが勝つのか賭けに行こうじゃないか!




―――   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――
   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――




僕はいつものように目を覚ますと、そこはいつもと全く違った景色があった。
やけに薄暗く、回りは石で作られた壁に囲まれて、目の前には鉄格子が嵌められている。
そして次に気付いたのは、自分の手足が鎖で繋がれていること。
最初、自分の身に何が起こっているのかわからなかった。
どうにか自分を縛る鎖を壊そうと、何度も電撃を放った。でも、鎖はビクともしない。

……やがて僕は痛感する。自分は何者かに……多分"悪い人間"に、捕われてしまったのだと。
それが脳裏に浮かんだ瞬間、体の芯から冷えきるような感覚が走った。
いったい自分は何をされるんだろうか。きっととても危険な実験に使われる。
間違いなくモルモットにされる。そして殺される。もう二度とうちに帰れない……。

僕は叫んだ。嫌だ、助けてくれ、森に返して欲しい、と。
僕は普通のピカチュウとして、ごく普通に過ごしてきた。何も悪いことなんてやってない。
それなのに、どうして僕はこんな運命を迎えなくてはならないんだ! そんなの、信じたくない!
周囲からも同じ様に叫び声があがっている。咆哮が、悲鳴が、泣き声が、合唱のように牢獄に満ち溢れていた。
ジャラジャラとした耳障りな、鎖を引き千切ろうと暴れる音も仕切りに聞こえる。
他にも、僕らの仲間が捕られてるんだ。少なくとも僕だけじゃなかった。
そう考えると僕は少しだけ冷静になれた。そして、どうにかしてここから抜け出す方法を考えようとした。
その時……

「シャーラーーーップ!!!」

みんなの声をかき消すように、人間の男の怒号が響き渡った。
あまりに覇気を帯びていたためか、誰もが閉口した。静寂が訪れる。
その静寂の中を、コツン、コツンと靴を鳴らす音が響いた。

3 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:30:06 ID:CQJ55KV.0
「うむ、物わかりの良いいい子達だ。……さて、愛すべきモンスターの諸君よ。
 わしはこの度、支配人を努めさせていただくモリーというものだ。まぁ、覚えてくれなくても結構だ。
 ……さて、今からユーたちには、ある島の中でサバイバルを行なってもらう!!」

そう言いながら歩くモリーの姿が、格子の隙間から見えた。
中年の人間。赤と緑の派手な衣装。登頂部を除いてふさふさと豊かな髭と髪の毛。
そして、風もないのに何故だかパタパタとはためいているマフラー……。
その奇抜な印象の中には、どこか狂気のようなものが漂っているように思えた。

「サバイバル……何をするのかさっぱりわからない、という顔をしているな?
 では、諸君にわかりやすいように簡潔に一言で説明しようではないか。
 ……自分以外の他のモンスターを全て倒せ! そして最後まで生き延びるのだ!!」

……な、なんでそんな……動物実験じゃ無くて、戦い……?
よくわからない、どうしてそんなことさせるんだろう?

僕は唖然として次の言葉を待っていると、向かい側の牢の中から暴れる音が聞こえた。
ふざけるんじゃねぇ! 誰がてめぇみたいな野郎に従うか、と。
あいにく薄暗くてハッキリとは姿が見えない。ただ、その言葉には強い怒気が込められていた。
ガシャリガシャリと乱暴に鎖が揺らされる。

「無駄だ! その鎖を簡単に壊せると思うな。大人しくしろ!」

モリーの言葉を聞かず、そのモンスターは鎖を揺らし続け、何度も雄叫びをあげる。
彼の抗議はしばらく続いた。きっと彼はもう何も聞こうとしないだろう。その拘束が外されるまで、何者にも耳を貸すことは無い。

「……言うことを聞けないボーイにはお仕置きをしてやらねばな……」

しかし、その様子を見かねたモリーはため息を交えながらそう言った。
彼は懐から何か杖のような物を取り出す。
そしてそれを檻の中で喚き続ける彼に向けて振るった。



……放たれた光弾は彼に当たると、つんざくような爆音と、目を開けられない程の閃光を走らせた。



それが止み、うっすらと目を開けると、モンスターが居たであろう檻は半壊しており、真っ黒な物体が置かれていた。
……真っ黒な物体……?
少し注意してそれを観察して僕は衝撃を受けた。
それは炭化した死体だった。彼の肉体だったものは、ただの燃えカスに変わっていた。

「わしに刃向かえると思うな。今の音でわかっただろう? こちらには諸君を一撃で葬るだけ手段はあるのだ。
 ……おっと、別にこの杖だけが手段では無いぞ。他にもわしの意思一つでユーたちの息の根を止める呪いをかけておいた。
 無駄死にしたくなければ大人しくしたまえ。もちろん、わしとしても戦い以外で諸君を殺すのは嫌なのでな。これ以上わし困らせるでないぞ?」

モリーは淡々とそう告げる。
僕は目の前で見せつけられた惨状にただただ恐怖していた。
もはや、まともに思考など出来るはずがなかった。
叫びだしたくても、声を上げられない。

4 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:30:18 ID:CQJ55KV.0
モリーは「オホン」と咳払いをすると、また歩き出しながら説明を再開した。

「このサバイバルではモンスター同士の力の差を少しでも埋め、より戦いを予測不可能とするために、諸君に各自『ふくろ』を支給する。
 中にはランダムに一つだけ、道具や武器が入っている。己の弱さを自覚している者も、そうでない者も、上手く活用していただきたい。
 ……なお、島での行動は自由にして構わないが、島を抜けて逃げ出そうとすれば悪いが殺処分させてもらうぞ。
 また、お前たちがあまりにものんびり戦い、3日以上かかった場合はタイムアップとして適当に殺処分して優勝を決める。後にはパレードが控えているからな……。
 ……なぁ諸君、簡単には死にたくは無いだろう? ならばその力を振るい、最後まで勝ち残るがいい!さすればわしから大いなる栄光と与えよう!
 戦いを乗り越えて栄光を手にするのと、むやみに反抗して無駄死にするのか……どちらの道を選ぶかは諸君の判断に任せようではないか」

その言葉に対して、何体かの魔物が吼える。
それは恐怖なのか、怒りなのか、はたまた賛同なのかは判断出来ない。
モリーはそれには意に返さず、指をパチリと鳴らした。
するとその瞬間、背中に何かが刺さったような痛覚が走った。
次に抗えぬ程に強い眠気が襲い掛かってくる。おそらく麻酔針という道具を刺されたのだろう。
僕の意識がどんどん遠ざかっていく……。その間もモリーはずっと何かを喋っていた。

「多くの者たちがユーたちの活躍に期待を寄せている……。
 言わば、ユーたちは舞台の主役だ! メインキャストだ! ヒーローなのだ!
 是非とも、最後までその地に立ち、空へ向けて雄叫びをあげる英雄の姿を、我々に見せてくれ!」

その先の言葉は、もう僕の頭には入らなかった。


   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――
―――   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――


皆様、モニターをご覧下さい。
会場のあちこちに運ばれたモンスターたちが一斉に目を覚ましました。
いよいよ、かつて誰も見たことのないようなドラマが始まるのです。
かけふだのご購入はお済でしょうか? まだの貴方はお早めにどうぞ。
皆様の応援が、祈りが、モンスターに勝利の女神を微笑ませるかもしれません。

さぁさぁ、ついに祭典の幕が開かれました……!
戦いの火蓋が切って落とされました!!



【主催者:モリー@ドラゴンクエスト】
【見せしめ:レオモン@デジタルモンスター】


―――クロスオーバー・モンスター闘技場 ここに開幕―――

5 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:30:44 ID:CQJ55KV.0
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一体が勝者となる。
参加モンスター間でのやりとりに反則はない。ただし、島から脱出を図った場合、主催者によって殺処分される。
ゲーム開始時、麻酔で眠らされたモンスター達が会場のランダムな位置に運ばれ、配置される。
モンスターが全滅した場合は勝者無しとして扱われる。


【スタート時の持ち物】
モンスターが装備している武器、持ち物を没収。(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
衣服や鎧の類は基本的にそのままだが、あまりにも重装備の場合は一部没収される。
また、各モンスターの開始位置のすぐそばには、ふくろに収納された「ランダム支給品」が置かれている。
ランダム支給品とは、武器や持ち物がランダムに "一つ" 配られるシステムであり、戦いに予測不可能性を取り入れる為の裁量である。
なお、水や食料、地図などは支給されない。


【「首輪」について】
首輪が嵌められない体格の参加者が多いため、首輪は無い。その代わり、主催者の意志で息の根が止まる呪いがかけられている。
呪いは、能力や耐性に関係なく即死する。また、主催者側はモンスターの生死を判断出来る。
正確な位置の把握や、盗聴などは出来ないが、代わりに会場に多数設置された隠しカメラ、空中からの遠距離カメラ等によってモンスターの行動が常に撮られている。
隠しカメラは頑丈に作られており、簡単には壊れない。狙って壊した場合は主催者から警告が飛ぶ。それを無視して破壊を続けたモンスターは殺処分される。


【放送について】
死亡者を発表しても特に効果がないと判断されるため、定時放送は無い。
モンスターの多くが戦闘を放棄する、海を渡って逃げようとする、極度に反抗の意思を示す……といった姿が見られた場合に、主催者が放送で警告を呼びかけたりする。
本ロワにおいての『放送』は、モンスターたちにロワの正常な進行を促すために存在する。


【地図について】
ttp://www57.atwiki.jp/monsterbr/pages/15.html
無人となった小さな島が舞台。
自然の産物や、かつての住民が残した道具などの現地調達が可能。
B-3 廃城
C-5 大樹
D-4 祠
D-5 山頂
E-7 洞窟
F-2 廃村
G-1 灯台


【作中での時間表記】
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

なお、ゲームは昼12時から開始される。

6 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:31:03 ID:CQJ55KV.0
【能力制限について】
主催者側の手に負える程度の戦闘能力に留められる。(ラスボスや隠しボスレベルで無ければ大抵問題無い)
また、瞬間移動などの能力では容易に脱出出来てしまうため、封印する。


【このロワで書きたい! と言う人へ】
リレー方式のため、参加したい方は誰でも大歓迎です。初心者、経験者は問いません。
トリップは必須でお願いします。また、ルールが若干独特なので、説明は一度目を通してください。

このロワの方針としては「把握の手間を最大限容易にする」というのを掲げております。
なので『キャラの背景として原作のストーリーを持ち込まないでください』。
例えばピカチュウやアグモン、モッチーなど。彼らはアニメで主人公たちと冒険をしていますが、その経歴を語ってしまうと、そのキャラを書く為に一定の把握が必要となってしまいます。
キラーパンサーやオルトロス、デカラビアなどゲームのキャラでも同じです。なので、原作のキャラと関わった個体とは別個体にしてください。
それさえ大丈夫ならば、登場話を書く方がご自由に、好きなように性格を決めてください。ロワ内での言動、行動、思考で把握出来るようにしたいと思っております。
上記の決まりごとは『モンスターの経歴』に限定しています。技や容姿、モンスター自体の設定は原作標準です。

また、書き手枠ですが、既存の7作品からの出典に限ります。人間、亜人間、敵キャラではない人外、ラスボス、隠しボスは禁止します。
普通に『モンスター』『ポケモン』『悪魔』『デジモン』に区分されるキャラであれば大丈夫です。もちろん、メジャー、マイナーは一切問いません。

予約期間は一週間、延長で+3日に致します。予約が入っていなければ、ゲリラ投下も構いません。
自己リレーは許可致します。ただし、投下してすぐ同じキャラを予約、などは控えましょう。
予約場所は本スレでお願いします。書き方は「〇〇、●●を予約します」という感じです。

その他不備な点、疑問などがあれば、質問して頂ければ返答、対応致します。

多少堅苦しく説明致しましたが、要は「書くハードルをめっちゃ低くしたい」というだけです。
実際はかなりゆるくにやっていきたいと思います。私自身は遊ぶつもりです。
リラックスしながら読んで頂ければ、あわよくば誰か書きに来てもらえれば嬉しいなぁ、と思っております。

7 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:31:15 ID:CQJ55KV.0
それでは続けて第一話行きます。
キングスライム、ギルガメッシュ、タブンネ投下致します。
タイトルは「邪智暴虐の王」です。

8 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:31:39 ID:CQJ55KV.0
目覚めて早々、キングスライムは激おこぷんぷん丸状態だった。

「なんて無礼な男なんだ! ぼくは王様なんだぞ! こんな戦いに乗るもんか!」

彼は『キング』である。だからエラい。別に何もしてないけど、キングならエラいのだ。
生まれた時からエラかったので、自分は常に上の立場にいて当然だと考えていた。
そんな自分に対して上から目線で「戦い合え」などと言われて、黙っていられるわけがない。
粛正だ! モリーは自らの手で粛正を下してやる! 彼はスタンスを決定した。

「あの野郎、ぶっ殺してやる!」

知性の欠片もない悪態をつきながら、ボヨンボヨンと跳ねて歩く。

……すると、道中の橋の上で鎧に身を包んだ大男と鉢合わせた。
ちょうどいい。この男を家来に引き入れよう。

「おい、そこの侍! 王様であるぼくの部下になれっ!」
「誰に向かって口を利いている? 雑種が……」
「はぁ!?」

鎧の大男の名前はギルガメッシュ。
数多くの名高い武器を求めて旅をする剣豪の魔物である。
強力な武器、すなわち強さこそが彼の求める物であり、強さが無いものは見下す性格だった。
よって、目の前の弱そうなデブなんて、完全に格下だと見なしたのだった。

「おい、貴様の支給品をここに置け。我はせっかく集めた7つの武器を主催者に奪われ、機嫌が悪いのでな」
「お前こそ誰に向かって口を利いてるんだ! 僕は王様なんだぞ!」
「フン、戯言を……。いいだろう、ならば貴様に"格の違い"という物を教えてやろうではないか」
「うるさいぞ! 格も何も、ぼくは王様だって言ってるだろ! 聞けよバカちん!」

憤慨したキングスライムはメラゾーマを唱えた。
巨大な火の玉がキングスライムの頭上に浮かび、それはギルガメッシュ目掛けて放たれる。

ぶわっと火柱が舞い上がり、強い熱風が大地を焦がす。
ギルガメッシュが立っていた位置には、大きな焼け跡だけが残っていた。

「わーっはっはっは!」

それを見てキングスライムは高笑いをした。

「たわけが……」
「へっ?」

刹那、頭上から聞こえた嘲るような声……。
驚いたのも束の間、強烈なかかと落としがキングスライムを頭上から思い切り叩き潰した。

「ピギーッ!」

キングスライムは情けない悲鳴をあげて、肉体を維持できずたちまち液状化していった。

「今のは竜騎士の初歩中の初歩の技、ジャンプだ。
 そのような一撃で力尽きるような貴様如きが王を名乗るなど、呆れを通り越してもはや滑稽だとは思わぬか?」

そう呟いて彼は、キングスライム液の中から戦利品を拾い上げる。
それは細長い長方形の布、いわゆるハチマキだった。
ギルガメッシュはそれを頭に巻くと、その場から立ち去る。

「この程度の相手ばかりであれば、我の優勝など容易いもの……
 最後までこの大地に立つのはただ一人、このギルガメッシュをおいて他にない」

彼はモリーの思惑に従い、他者をなぎ倒して最後まで生き残るつもりでいた。
前述したとおり、彼にとっての格は強さによって決められる。
……つまり、あれほどの力を持つ主催者に対して、多少なりとも畏怖の念を抱いていた。
無論、だからと言って武器を奪われた怒りが収まったわけではない。いずれは主催者に挑みかかるつもりだ。
あくまで、現時点では歯向かわない方が得策だと、そう考えているだけだ。ヘタレではない。決してヘタレではない。

ギルガメッシュは自分の支給品であるくさりがまをくるくると振り回す。
普段使う武器とは全く違うが、武器の扱いに長けている自分ならこれでも十分使っていけるはずだ。
彼は特に根拠も無く、そんな強い自信を抱いた。……はたして、その慢心が今後どう響くのかはまだわからない。

9 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:31:52 ID:CQJ55KV.0
【D-7/橋付近/一日目/昼】

【ギルガメッシュ@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:くさりがま@DQ、気合のハチマキ@ポケモン
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:勝ち残り狙い
 1:他者に戦いを挑みつつ、支給品を集める
 2:現状じゃ主催者に勝てないと判断

[備考]
オス。強さこそが格だと信条している。高飛車な性格。一人称は「我」。



ドロドロにとろけた状態でキングスライムは泣いていた。
彼に支給された『気合いのハチマキ』で辛うじて死なずに済んだものの、ほぼ瀕死である。
こんな状態じゃ、他の者に止めを刺されて終わってしまうだろう。詰みだ。悔しい。

その時、唐突に優しい光が降り注いだかと思うと、不思議なことに彼の体力はみるみる回復していった。

「な、な、なんだこれ」
「コレデ、モウ大丈夫ダヨ」

そう話しかけたのはタブンネ。ヒーリングポケモンだ。
彼女は得意の癒しの波動で、キングスライムの傷を癒したのだ。
力を取り戻したキングスライムは、形状を整えてタブンネの方を見た。

「き、きみはいったい……?」
「ワタシ、戦イナンテイヤナノ。アナタモ一緒ニ助カル術ヲ探ソウヨ!」

タブンネはニッコリと微笑みかけた。









「はいドーン!!」

キングスライムはタブンネに向かって回転をかけたタックルを放つ。
巨体を思いっきり叩きつけられたタブンネは、全身の骨を砕かれて息絶えた。

「コノ野郎! 王様であるボクに向かってタメ口とか有り得ない! あの世で反省しろっ!」

キングスライムはもう動かないタブンネに向けてそう吐き捨てた。
そして彼はちゃっかり彼女のふくろから支給品である拡声器を拾った。
もはや死体には一瞥もくれずに橋をポヨンポヨンと渡る。
言うまでもなく、彼の心には罪悪感なんてものは一片たりとも無かった


【D-7/橋付近/一日目/昼】

【キングスライム@ドラゴンクエスト】
[状態]:健康、肉体損傷(小)魔力消費(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(拡声器@現実)
[思考・状況]
基本:主催者を粛正する
 1:モリーをたおすために下僕を集める
 2:王様であるボクに無礼は許さない

[備考]
オス。キングに生まれたというだけで偉そうにしている。頭が悪い。一人称は「ボク」。



【タブンネ@ポケットモンスター 死亡】



《支給品紹介》
【気合のハチマキ@ポケモン】
頭に巻くと、致命傷を受けても気合で持ちこたえる事がある不思議な道具。

【くさりがま@ドラゴンクエスト】
戦闘用の鎌に、鎖で繋がれた分銅がついた遠近両用の画期的な武器。

【拡声器@現実】
遠くまで容易に声を届かせることが出来る機械。バトロワでは死亡フラグの代名詞。

10 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 22:32:02 ID:CQJ55KV.0
以上で投下終了です。
キャラの性格設定や話のノリは、このくらいフリーダムにやっていくつもりです。

11 ◆Z9iNYeY9a2:2013/04/27(土) 22:39:26 ID:zKXqR76E0
投下乙です
レオモンwwお前またそんな役柄かwwww

このギルガメッシュ別のギル入ってるだろwww
てかタブンネーーーーー!!!


とりあえずガブリアス、レナモンで予約します

12 ◆193R5b5IKU:2013/04/27(土) 22:41:13 ID:/BLHHoN20
投下乙です!
ピカチュウ予約します。

13 ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/27(土) 22:45:33 ID:n7FGQ/cg0
メタモン、書き手枠でグレイシア@ポケットモンスターシリーズ
を予約します。

そして質問なのですが、元々は人間に飼われており、それから何らかのきっかけで野生に放たれたというある程度の設定を付けることは可能でしょうか?
勿論原作のキャラクターは出しませんし、直接その人物が絡むこともありません。

14 ◆7NiTLrWgSs:2013/04/27(土) 22:49:09 ID:n0ZrTvSM0
投下乙です。
はぐれメタル、メタモンを予約します

15 ◆j1Wv59wPk2:2013/04/27(土) 22:49:10 ID:IbqyXpUI0
新ロワ、クオリティ高そうですねぇ。乙です!
OPは……人間サイドは華やかである反面、モンスターにしてはたまったもんじゃないという悲しさですねぇ
何というか、人間の愚かさなんていうと薄っぺらいですが、そういう感傷に浸らざるをえない

そして第一話…激おこぷんぷん丸wwww
いやキングスライムのゲスっぷりが素晴らしい。あとギルガメッシュっていうかそれ英雄お(ry

では私はオルトロスと、書き手枠でサーナイト@ポケットモンスターシリーズで予約します

16 ◆7NiTLrWgSs:2013/04/27(土) 22:52:35 ID:n0ZrTvSM0
あれ……メタモン被ってる……
代わりに書き手枠でコイキング@ポケットモンスターシリーズ予約します

17 ◆LjiZJZbziM:2013/04/27(土) 22:52:53 ID:uN9VY3FA0
ホイミスライム、クーフーリン、書き手枠でボナコン@FF予約します

18 ◆BotyFm3mMY:2013/04/27(土) 22:53:25 ID:uN9VY3FA0
トリップ間違えました

19 ◆Z9iNYeY9a2:2013/04/27(土) 22:54:20 ID:35.VbQXI0
>>11に追加で、凶鳥モーショボー@女神転生予約します

20 ◆9n1Os0Si9I:2013/04/27(土) 22:54:38 ID:d66ChYXY0
ルカリオ、妖精ジャックフロストで予約しまーす

21 ◆1eZNmJGbgM:2013/04/27(土) 22:57:45 ID:joaVfb5U0
ホイミスライム、書き手枠でギリメカラ@メガテンシリーズ予約します

22 ◆BotyFm3mMY:2013/04/27(土) 23:02:37 ID:uN9VY3FA0
ホイミスライムをスエゾーに変更します

23 ◆uBeWzhDvqI:2013/04/27(土) 23:03:17 ID:r39Tpuuo0
スライム、枠でハム@モンスターファームシリーズで予約します

24名無しさん:2013/04/27(土) 23:03:58 ID:vYSbxbxoO
レオモンが早速死んだ!

25 ◆Fool.LCG9A:2013/04/27(土) 23:07:54 ID:HkrhSFJ.0
キノガッサ、書き手枠でヒンバス@ポケモン 予約します

26名無しさん:2013/04/27(土) 23:11:21 ID:joaVfb5U0
>>25までの予約状況

5/8【ドラゴンクエストシリーズ】
〇はぐれメタル/〇プチヒーロー/〇ドラゴン/〇キラーパンサー/〇バトルレックス

5/7【ファイナルファンタジーシリーズ】
〇チョコボ/〇トンベリ/〇サボテンダー/〇モルボル/〇ベヒーモス/

4/7【ポケットモンスターシリーズ】
〇ソーナンス/〇ルカリオ/〇タブンネ

5/7【真・女神転生シリーズ】
〇魔獣ケルベロス/〇天使エンジェル/〇堕天使デカラビア/〇外道バックベアード/〇魔人アリス

5/6【モンスターファームシリーズ】
〇モッチー/〇ライガー/〇ピクシー/〇ゲル/〇ゴーレム

4/5【デジタルモンスターシリーズ】
〇アグモン/〇ガブモン/〇ブイモン/〇ワームモン

2/10【書き手枠】
〇グレイシア@ポケットモンスターシリーズ/〇サーナイト@ポケットモンスターシリーズ/〇コイキング@ポケットモンスターシリーズ/
〇ボナコン@FF/〇、凶鳥モーショボー@女神転生/〇ギリメカラ@メガテンシリーズ/〇ハム@モンスターファームシリーズ/
〇ヒンバス@ポケモン/〇/〇

合計50体

大正義ポケモン

27 ◆GOn9rNo1ts:2013/04/27(土) 23:14:49 ID:NlVCBaUM0
ライガー、ソーナンスで予約します

28 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 23:15:08 ID:CQJ55KV.0
ポケモン人気すぎぃ!!
あと序盤ですごい勢いがあってうれしい限りです。みなさん、予約ありがとうございます!

>>13
もちろん大丈夫です。オリジナル設定であれば全く問題ありません。

では私もブイモン、そして書き手枠からマンイーター@真・女神転生を予約いたします

29 ◆j1Wv59wPk2:2013/04/27(土) 23:15:52 ID:IbqyXpUI0
まとめ乙です。

……えー、まとめてもらって非常にありがたいのですが、
やはり書き手枠のサーナイトの方は破棄でお願いします
考えを見直して、書き手枠を消費するほどの話では無いと判断しましたので。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません

30 ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/27(土) 23:17:47 ID:n7FGQ/cg0
ああ、すみません。予約にドラゴンを追加します

31 ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/27(土) 23:26:23 ID:uG9dAv520
プチヒーロー、書き手枠でジュペッタ@ポケモンを予約させて頂きます

32 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 23:32:21 ID:CQJ55KV.0
明記し忘れましたが、モンスターファーム勢は派生種、限定種などで出していただいてもOKです

33 ◆5omSWLaE/2:2013/04/27(土) 23:47:18 ID:CQJ55KV.0
予約状況をまとめました。
◆Z9iNYeY9a2 ガブリアス、レナモン、凶鳥モーショボー
◆193R5b5IKU ピカチュウ
◆9eFMlaiqFQ メタモン、ドラゴン、グレイシア
◆7NiTLrWgSs はぐれメタル、コイキング
◆j1Wv59wPk2 オルトロス
◆BotyFm3mMY スエゾー、クーフーリン、ボナコン
◆9n1Os0Si9I ルカリオ、妖精ジャックフロスト
◆1eZNmJGbgM ホイミスライム、ギリメカラ
◆uBeWzhDvqI スライム、ハム
◆Fool.LCG9A キノガッサ、ヒンバス
◆GOn9rNo1ts ライガー、ソーナンス
◆5omSWLaE/2 ブイモン、マンイーター
◆/wOAw.sZ6U プチヒーロー、ジュペッタ

34 ◆Bu4r51EP82:2013/04/27(土) 23:56:35 ID:ZZVC9xXY0
アグモン、書き手枠でエアドラモン@デジタルモンスターシリーズを予約します

35 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/28(日) 00:20:38 ID:drC0cEa.0
ライガー、トンベリ予約いたします

36 ◆5omSWLaE/2:2013/04/28(日) 00:24:24 ID:0qqx3IWU0
>>35
どうやらライガーが被ってしまってます

37 ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 00:26:03 ID:1Jw6vREw0
ライガーをピクシーに変更します

38 ◆2VuKLsNfm.:2013/04/28(日) 00:42:04 ID:mEFK47W20
キラーパンサー、ガブモンを予約します

39 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/28(日) 00:42:38 ID:drC0cEa.0
>>36
しまった、確認漏れてました。ごめんなさい。

>>37
当方の確認漏れですので、こちらが訂正すべきところを申し訳ありません。
ありがとうございます。頑張って書かせていただきます。

40 ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 03:52:39 ID:1Jw6vREw0
>>39
お気になさらず。私の方はピクシーでも大丈夫でしたので。

それでは、投下します

41本当に逃がしますか? →はい  ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 03:53:33 ID:1Jw6vREw0
火炎が、鮮やかに燃え盛る。
雷撃が、身体の芯まで痺れさせる。
光線が、華麗に的を撃ち貫く。
爆発が、ド派手な音を立てる。
沸き立つ場内。満員御礼。沢山のニンゲンの視線を浴びつつ、アタシは舞う。
でっかい技を放つと挙がる一見さんの驚きの声。気持ちいい。
反撃を避けるたびに挙がるファンの皆の喜びの叫び。心地いい。
試合が終わる一秒前まで、その戦い(ステージ)はアタシの独壇場だった。

「それでも、負けちゃったのよ」

「ソーナンス?」

「終わる寸前に調子乗って観客席に手ぇ振ってさ、その結果がKO負けよ」

「ソーナンス」

対戦相手が最後の一瞬に見せた悪あがき。
たったそれだけでも、か弱いアタシをノックダウンするには十分で。
今までに体験したことがない痛みと衝撃。
言うことを聞かずに崩れ落ちる身体。
意識を失う直前に聞こえた、お客さんの嘆きの声。
あの日から一度だって、悪夢としてうなされないことはない。

「でもまあ、アタシが悪いのよね」

体力のなさ、耐久力のなさをマスターのせいにする気はない。
攻撃を見極め、回避する力を重点的に鍛えられてきたことは理解している。
乙女の柔肌を気遣ってくれたのか、ただ単に種族特性を活かそうと考えたのかは分からないけれど。
彼の回避訓練は完璧だった。事実、アタシはその試合までは一度さえ相手の攻撃を受けたことがなかった。
また、マスターは素晴らしいブリーダーであると同時に優れた戦略家でもあったようで。
対戦相手を分析した彼の的確な指示を受けていると、誰にだって勝てる気がした。
だから、悪いのはどう考えたってアタシだ。
慢心し、油断し、付け上がり、彼の指示も効かず余裕ぶっこいたアタシに落ち度がある。
だから今の状態もしょうがないのかな、なんて思っちゃって。

「アタシはそのあと、病院に担ぎ込まれてさ」

「ソーナンス」

「ホントーに大変だった。リハビリはきついし薬はまずいし注射なんて今だって大キライ」

「ソーナンス?」

「うん。知らない方がきっとシアワセだよ」

そう。知らない方がシアワセなことって、あるんだよ。

……アタシだって知りたくなかった。でも、そうとしか考えられなかった。
自慢じゃないけどアタシってけっこー頭良いからさ。気付いちゃった。
きびしーリハビリを終えてさ、彼の元にまさしく飛んで帰ったら家の前でブラックアウト。気付いたら檻の中。
最初は驚いたけど、少し考えたらすぐに分かることだもん。

「アタシは……捨てられたんだね。売られたって言ってもいいのかな」

「…………」

42本当に逃がしますか? →はい  ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 03:53:56 ID:1Jw6vREw0

彼はきっと、言うことをきかずに無様を晒した私に愛想を尽かしたのだろう。
今までのおねだりも、いたずらも、わがままも、私が勝ち続けていたからこそ許されてた。
逆に言えば、負けて、挙句の果てに何か月も病院生活を送るようなモンスターなんていらないんだ。
入院中に捨てられなかったのは世間体ってやつのためかな。それとも少しでもアタシを万全な状態で「ここ」に叩き込みたかったのかな。
これは、罰みたいなものなのかな。
今まで溺愛されてきて、そんな立場に胡坐をかいて敗北したアタシへの、彼からの罰。
「せめて沢山のニンゲンを喜ばせて死ね」っていう、彼からの遠回しな死刑宣告。
でも。

「死にたく、ないなあ」

「ソーナンス」

不思議と彼への、ニンゲンへの怒りは湧いてこなかった。
ニンゲンがいないとそもそも私は円盤石から生まれることも出来なかったわけだし……彼が私を愛してくれていたのは嘘じゃないと思うから。
ただ、彼ともう会えないって思うと悲しくて、辛くて、胸が痛くて。ごめんなさいって謝ることが出来ないのが申し訳なくて。
彼からの罰なんだって思ってはいても、だからって死ぬという選択肢を選べそうになくて。
頭の中が、ごちゃごちゃだ。

「もう、どうしていいかわかんないよぉ……」

思わず土の上にへたりこんでしまう。
どうせ殺し合って最後の一人になっても彼の元へ帰れるわけでもない。
だからといってここから脱出するのも、あのオッサンの話を聞く限りは土台無理な話だって思う。
当然、死ぬのは嫌だ。痛いのは嫌だ。いっそ何も感じないまま冬眠できたらいいのに。
何も感じない、永遠の冷たさの中に閉じこもっていられたらいいのに。

ふっと頭上に影が差す。私の目の前まで近づいてきたのは、さっきから相槌を打ってくれてた水色のモンスターだった。
はじめはおっかなびっくり、慣れてきたのか途中からはすいすいと私の頭を撫でてくれる。
無言で。だけど優しい表情のままで。

「慰めてくれてんの?」

「ソーナンス!」

そういってヘラヘラと笑うこいつの顔を見ると、少しほっとする。
たまたま出会って、こっちの身の上話を一方的に聞かされて、そんなジコチューなアタシを気遣ってくれて。
ヨイモンってこういうヤツのことなんだろうなって漠然と思う。

「ごめん、もう少しだけこのままでも、良いかな」

「ソーナンス」

よりかかる、あたたかい。少しだけ、シアワセな気分になる。
これからどう動くか、全然決まらないけど。
この、何もない時間が。トレーニングも修行も大会も何も考えずに済む空っぽの時間が。
永遠に続けばいいのに、なんて馬鹿なことを、少しだけ考えた。

43本当に逃がしますか? →はい  ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 03:54:22 ID:1Jw6vREw0



【C-6/森/一日目/昼】

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。
 1:今だけは、このままで。

[備考]
メス。数か月前まではブリーダーに飼われていた。



彼の存在意義は、攻撃を受けることだった。

こうげきをカウンターで返し。
とくしゅをミラーコートで返し。
受けたダメージを、二倍にして返す。
死に際には相手をみちずれにして。
状況によっては相手の攻撃をアンコールする。

それらの前提条件として、彼はありとあらゆる攻撃を受け続けた。

彼は本当は、戦いが何よりも嫌いだった。
自分が痛ければ、相手はその二倍痛いのだ。それはとっても、かわいそうだ。
だから彼はバトルのたびに相手の身を案じ、身を削る思いで攻撃を返し続けた。
捨てられたのは、そんな性格がバレてしまったからかもしれない。
ただ単純に、弱いと思われたからかもしれない。
もしかしたら、カネのために売り払われたのかもしれない。
いずれにせよ、主人のモンスターボールの中にいたはずの彼は、いつの間にか檻の中に閉じ込められていた。

はっきりと分かることは一つ。
卵から孵り、時にバトルに参加し時に飴をもらいレベルを上げ、進化し。
その後も自分と共にあり続けてくれた主。
彼との繋がりが、なくなってしまったのだということ。
もっと正確に、言ってしまえば。
自分は、もう主に必要とされなくなったのだということ。

彼女に親身になったのは、そんな空虚さを埋めるためだった。
戦い。殺し合い。バトル。
この地のルールで彼が出来ることと言ったら、死ぬまで悪意を二倍にして返すだけ。死んでから相手を道ずれにすることだけ。
そんな相手を殺す力、殺し返す力だけに長けている自分でも。
空も飛べず、穴も掘れず、岩を動かす怪力もなければ、木を伐れる居合切りの技術も持ち合わせていない自分でも。
誰かに必要とされていると、勘違いでも良いから感じたかった。
彼が望むものは、争いではなく繋がりだった。
彼が欲しいものは、勝利ではなく温もりだった。

「アンタ、良いヤツね」

「ソーナンス!」

「自分で言うもんじゃないっての、まったく」

「ソーナンス!」

「……あったかい」

「ソーナンス!」

ただ。
傲慢だろうと、偽善だろうと。
彼女のそばにいてあげたいと。
彼女にも温かくなってほしいと。
感じた気持ちは、嘘ではなかった。


【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。

【備考】
オス。連れてこられる以前はポケモントレーナーに育てられていた。

44 ◆GOn9rNo1ts:2013/04/28(日) 03:54:39 ID:1Jw6vREw0
投下終了します

45 ◆5omSWLaE/2:2013/04/28(日) 10:30:12 ID:0qqx3IWU0
投下お疲れ様です
戦いが好きな魔物と、戦いが嫌いな魔物
考え方の違う二体だけども、互いに主に捨てられた悲しみを共有出来る……
残酷で冷たい空間の中に、僅かな暖かさがある感じで素晴らしい
彼らがどのようなこれから、どのような道を辿るのか期待が持てますね

46 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 11:10:29 ID:KhTuTwmw0
サボテンダーで予約します

47 ◆5omSWLaE/2:2013/04/28(日) 12:29:22 ID:0qqx3IWU0
ブイモン、幽鬼マンイーターに、外道バックベアードを追加で予約します

48 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 12:32:32 ID:KhTuTwmw0
短めですが、サボテンダー投下致します。

49 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 12:36:02 ID:KhTuTwmw0



――ザザン、と波音が聞こえてくる。
目の前に広がるは海。塩っぱい潮の臭いが漂う。
砂漠では見たことも感じたことも無い、新鮮な光景と感覚だ。
澄み渡るような美しい蒼さ、世界を覆い尽くすかのような広大さ。
そこにはある種の神秘さえも感じる。普段だったら、彼は呑気に見惚れていただろう。
この場が「殺し合い」の場でなければ――――



「………………」


森の近辺の浜辺で海を見ているのは、小型のサボテンのような外見をした一匹のモンスター。
彼はサボテンダー。この闘技場に無理矢理呼び込まれた、『参加者』の一人。
―そう、彼は広大な海に見惚れているのではない。
この場における方針を考えていたのだ。
異常な状況における、自分自身の方針を。



◆◆◆◆◆



何でこんな所に呼び出されてしまったんだ?


剣を持った旅人からも常に逃げ延び、此処まで生き続けて来た僕が。


何でこんな理不尽な場所に呼び出されてしまったんだ?


祭典?ふざけないでくれ。


殺し合いの娯楽の為に僕達は呼び出されたって言うのか?冗談じゃない。


祭典なんてクソ喰らえだ。


だけど―――――――


『あいつ』はヤバい。今まで見てきたどんな奴よりもヤバい。


現に、逆らおうとしたあの獣は一瞬で塵の如く殺されてしまった。


そう、あの『主催者』はヤバい。


逆らえるわけがない。


逆らった瞬間、虫を捻り潰すのと同じように簡単に殺されるだろう。


…………なら、僕はどうする?



◆◆◆◆◆

50 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 12:45:11 ID:KhTuTwmw0



殺し合いはしたくない。だが、それは命の奪い合いへの嫌悪感からではない。
ただ単に『死にたくない』からだ。
しかし彼自身、決して『弱い』わけではない。
その動きは獣のように素早く、体表は鎧のように固い。装甲を貫通する無数の針を放てる。
今まで何人もの旅人を撒いてきたという実績すらある。
だが、彼を真に恐怖させるのはこの未知の環境!
あいつらはどうやって自分をこの場に放り込んだんだ?
いや、そもそもそれ以前の問題。
何で自分は『あいつら』に『捕まって』いるんだ?
そう、『奴らに捕まった』という記憶が全くない!
得体が知れない。例え眠っている時であろうと、普段ならすぐに気配に気付いて逃げられるというのに!
そして、この場において周りは全て敵。モンスター同士を競わせる殺し合いなんだ。
主催へ反抗すれば待つのは死のみ。自分達の生殺与奪が完全に握られている。
――――逆らうことなんて無理に決まってる。
それこそ自殺行為と言うんだ。


そう。
彼を恐怖させているのは、この状況そのもの。



◆◆◆◆◆



死にたくない。なら生き残る為に動くしかない。
だが、もし自分よりも強い相手がいたら?


…そうなったら、とにかく逃げよう。いや、そもそも正面から戦うこと自体がダメだ。
基本は「逃げ回って隠れつつ」、遭遇してしまった時は「撤退」を前提とした体勢を取る。
それがベストだ。正面対決で自分の体力を無駄に消耗するよりはよっぽどいい。
潰し合いなんて他の奴らに勝手にして貰おう。
自分は気付かれないように、戦いで傷付いた連中を仕留めればいい。
あわよくば、弱そうな奴らも始末したい。戦闘は避けつつも、一応数は減らしておきたい…。
とにかく、僕がわざわざ強い奴と正面から戦う必要なんてないんだ!
そうすればきっと生き残れる!僕だって弱くはないんだ。
あらゆる旅人から逃げ延びてきた僕ならば、生き残れるんだ。



………とりあえず、まずはどこか…隠れる場所が欲しいかな。
こんな開けた砂浜にいて、遠くから狙われたらたまったもんじゃない。



◆◆◆◆◆

51 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 12:49:18 ID:KhTuTwmw0
◆◆◆◆◆



彼は臆病だった。しかし同時に、狡賢かった。
直接戦闘は避けつつ、他の参加者同士で潰し合いをしてもらうことにした。
弱い参加者、傷付いた参加者がいたら仕留めつつ。
強敵と当たったとしても、この逃げ足さえあればそう簡単に死ぬことはない。…はずだ。
彼には一応、自信があった。異常な状況と主催者のことを除けば、だが。
この戦法なら「生き残ること」は出来るかもしれない、という自信があったのだ。
『異常な状況』と『主催者』、そして『死』への恐怖は確かにある。
だが「生き残れるかもしれない」という自信が、少しだけそれを抑え込んでいた。
強敵への不安もあるが、潰し合って傷付いていればきっと仕留められる…と。
彼は狡猾に立ち回るという生き残るプランを考えたことで、恐怖を少しだけ抑え込めたのだ。
とはいえ…ほんの少しだけ、だが。死への恐怖感はあくまで消えない。
特に、あの主催者への恐怖は抑え込めても一向に消えることは無い。
彼には、絶対に抗うことは出来ないだろう。





――――一先ず、隠れられる場所を探すこと決めた彼は、素早く森へと駆け抜けていく。



もはや呑気に海を眺めている場合ではない。
まずは適当に逃げ隠れしつつ、強い奴らに潰し合ってもらおう…。
雑魚の始末もある程度はそいつらが頑張ってくれる。
そして、僕はそいつらが弱っている所を『狙い撃つ』。雑魚共も適当に始末する。
…案外何とかなるかもしれないな。





砂浜に、か細く笑うような鳴き声がほんの少しだけ響いた。




【G-4/森/一日目/昼】

【サボテンダー@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康、この状況への恐怖(生き残れそうな自信で少しだけ抑え込めている)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:逃げ隠れしつつ、生き残る。死にたくはない。
 1:直接対決は避ける。他のモンスター同士で潰し合ってほしい。
 2:その中で弱そうな奴、傷を負ってる奴は仕留める。
 3:危ない橋は極力渡りたくない。基本は逃げ腰。
 4:あいつ(主催)には絶対に逆らえない……

【備考】
オス。割と狡賢いが根は臆病。

52 ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 12:52:27 ID:KhTuTwmw0
拙い文章ですが、投下終了です。
タイトルは「チキン・ラン」で。

53 ◆5omSWLaE/2:2013/04/28(日) 13:03:08 ID:0qqx3IWU0
投下お疲れ様です
サボテンダーのこういう考え方、ある意味では最も賢明ですよね
ただ、不測の事態はいくらでも起こりうる故に、ある意味では最も危険な思考
戦闘能力こそ高い方ではあるけど、彼の画策は果たして上手くいくんでしょうか……

54 ◆193R5b5IKU:2013/04/28(日) 15:59:43 ID:f9YrKAtI0
皆様投下乙です。
ピカチュウ投下します。

55 ◆193R5b5IKU:2013/04/28(日) 16:00:37 ID:f9YrKAtI0



皆さんはピカチュウというポケモンをご存じであろうか?



ピカチュウ。
頬っぺたの 両側に 小さい 電気袋を もつ。ピンチの時に 放電する。

ピカチュウ。
何匹かが 集まっていると そこに 猛烈な 電気が 溜まり 稲妻が 落ちることがあるという。

ピカチュウ。
尻尾を立てて 周りの気配を 感じ取っている。 だから 無暗に 尻尾を 引っ張ると 噛みつくよよ。

ピカチュウ。
固い 木の実も 電撃で 焼いて 柔らかくしてから 食べる 知恵を 持ち合わせている。

ピカチュウ。
尻尾を 立てて 周りの 様子を 探っていると 時々 雷が 尻尾に 落ちてくる。

ピカチュウ。
両頬 には 電気を 溜め込む 袋がある。怒ると 溜め込んだ 電気を 一気に 放ってくる。

ピカチュウ。
初めて 見る 者には 電撃を 当てる。黒焦げの 木の実が 落ちていたら それは 電撃の 強さを 間違えた 証拠だよ。

ピカチュウ。
頬っぺの 電気袋の 電気は 真夜中 寝ている 間に 溜められている らしいよ。寝ぼけて 放電してしまう 事が ある。

ピカチュウ。
森の 中で 仲間と 暮らす。 頬っぺたの 両側にある 電気袋に 電気を 溜める。

ピカチュウ。
頬っぺたの 電気袋から 電気を ピリピリ 出している時は 相手を 警戒している 合図。

ピカチュウ。
弱った 仲間の ピカチュウに 電気を流し ショックを与えて 元気を 分けることも ある。


と、長々と説明したが、そういうポケモンである。
そんなとある一個体のピカチュウがこの催しに参加しているわけだが……

「マジか……」

ここはA-1。MAPの端っこである。
空には太陽。周りは一面に水、水、水。
そう、海の上がこのピカチュウのスタート地点だったのだ!!

「……陸地遠すぎだろ……」

体長、約40?!!!
その小さな体にはこの海は広いなッ! 大きいなッ!

56 ◆193R5b5IKU:2013/04/28(日) 16:01:11 ID:f9YrKAtI0
溺れかけたが、偶々、ふくろの中に入っていたデッカイ笹カマみたいな板で水の上に浮いた。
森暮らしが長かった彼にとってそれは未知の体験だった。初体験だった。
ちなみに彼はそのデッカイ笹カマみたいな板を食べ物だと思っていたらしい。

「僕はただ……森で仲間と静かに暮らしたかっただけなのに……」

デッカイ笹カマみたいな板の上で寝転び一匹嘆く。
波は穏やかだが、このままでは確実に餓死する。
『木の実が食べたい』、『海水以外の水が飲みたい』。

「陸地に向かって行くにも……うーん」

泳げない。
多分、泳ごうとしたところで溺れ死ぬ。
彼が半ば諦めかけた時、後ろから波が来た。

本当に偶然だったかもしれない。

「んっ、今のいい感じじゃないか?」

波に乗り、前に少しだけ進んだ。
本当に陸地に少しだけ近づいた。

また少し波が来た。
また前に少しだけ進んだ。
また陸地に少しだけ近づいた。

「これって、まさか……?」

完全に波を捉え始めてきた。
デッカイ笹カマみたいな板の上で上手くバランスを保ち立つことが出来るようになった。

「この調子で行けば……!」

その時である。
先程より少し大きな波が押し寄せてきた。
しかし、体長40?の彼にとってはまさに―――

「乗るしかない! このビッグウェーブに!
 うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

そして―――


                      _
                    ,.ィ'":/
           、‐┬-、_r―''"  'y'
            `ヽ        Oヽ 
             /  О .-┴ィ ゚ ト、  「これがッ! これがッ! これがッ! 『波乗り』って奴かぁぁぁ!!」
      __  ┌┴  ゚  `ー'  /_ノ
    <  _, `!_ ヽ、          ´|     _
       ̄ L......:|  .ト、_          ,.レ‐''" ̄  ノ
         |:::::: ̄::ヽ'、   ,. -'''"     ,. '
           ̄ ̄レ ̄|,  '"     _.. '"
             /     , ‐''"
            ∠  r―''"
             し'
※イメージ図です。

▽ピカチュウは秘伝技を自力で覚えた。

「イヤッッホォォォオオォオウ!!!」

しかし、このピカチュウ、ノリノリである。
そんな彼が陸地にたどり着いたのは……まだ先のお話。



【A-1/海上/一日目/昼】
【ピカチュウ@ポケットモンスター】
[状態]:健康、少し空腹
[装備]:サーフボード@現実
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:仲間の下に帰る(方法は考えていない)。
 1:陸地を目指す。
 2:木の実が食べたい。
[備考]
オス。森暮らしが長い。仲間思い。一人称「僕」
『波乗り』を覚えましたが、バトルで効果があるかどうかは不明です。


《支給品紹介》
【サーフボード@現実】
デッカイ笹カマみたいな板。波に乗るスポーツ『サーフィン』に必要な道具。

57 ◆193R5b5IKU:2013/04/28(日) 16:02:10 ID:f9YrKAtI0
投下終了です。
タイトルは『海物語』で。

58 ◆5omSWLaE/2:2013/04/28(日) 16:30:16 ID:w7cjg56wO
投下お疲れ様です
盛大に笑いました。秘伝技は編み出すものなのだーっ!!
それよりピカチュウを海に放り出した主催者組は何を考えていたのか……!?

59名無しさん:2013/04/28(日) 17:08:09 ID:wtx3gA7k0
投下乙
波乗りピカチュウなつかしいwww初代のピカ版でミニゲームあったような思い出

60 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/28(日) 19:03:07 ID:DoUPpEIQ0
バトルレックス、魔人アリス、天使エンジェルを予約します

61名無しさん:2013/04/28(日) 19:31:27 ID:stifWfGIO
投下乙です

波乗りピカチュウとかまた懐かしいものをw

62 ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/29(月) 00:44:20 ID:tcIRJ2pQ0
波乗りピカチュウかわいいなあw
そして皆様投下乙です、ジュペッタとプチヒーロー投下します

63モンスターだって何にでもなれる ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/29(月) 00:45:46 ID:tcIRJ2pQ0
南に山岳地帯、西に森林、北側には川が流れる、見事なまでに隔離された場所。
こんな辺鄙な場所で、何を祭ると言うのか、総じて祭られるような神様は人が訪れぬ程の秘境を愛する者なのか。

「俺にゃあ、理解でっきないね!っとォ!」

暗い色をしたぬいぐるみが、ほこらの屋根によじ登る。
ふわふわとした柔らかそうな体つき、しゃべるたんびにチャックが閉じたり開いたりするどこか不気味で、愛らしい?見た目。
彼はジュペッタ、捨てられたぬいぐるみに怨念のエネルギーが入り込み動き出した、と語られているポケモンである。
徘徊して自分を捨てた子供を探している恐ろしいポケモン!なんて世の中で語られているが、そんなことはない。
このジュペッタに関しては。

「ああー何にも見えねえ!誰もいねえ!殺しあいをしろだあ?
 あんな頭のてっぺんがハゲて目立ちまくるよっくわっかんねえおっさんの言うこと聞いてぇ?はっ、やだやだ」

あいつったら、ご主人サマよりダセぇや。毒づいて、ひとしきり喚いて、こうべを垂れた。

「俺は、みんなに愛されるアイドルポケモンよ?よ?アイドルが殺しあいとか
 殺すとか物騒なコトいっちゃあダメよ、呪うとか恨むとか祟るとかオブラートに包まねえと」

このセリフを世間の皆様が聞いたら、ホラー映画も真っ青なほど首を傾げて一回転させるだろう。
しかしこの言葉に偽りはない(アイドルポケモンというのは嘘だが)。
彼は、いわゆるコンテストポケモンとして育てられていたジュペッタなのだ。

「いつもどーりにご主人サマの布団で俺ぁグースカ寝てたはずだよなあ、夢かよ全く、はぁーさっさとご主人サマんとこ帰りてぇなあ
 あんな暇さえあれば自転車乗り回して卵孵しまくってるご主人サマでも愛らしい俺に会えねえと寂しいだろ、うんうん」

そしてついでに、彼はびっくりするぐらいのナルシストに生まれついていた。
ため息をつくと、幸せと恨みのエネルギーが抜けていく。
このままでは埒があかないと、思考を変えてみることにした。

「そうだ、祠になんかあったりしねえかな、家に帰れるマシーンとか」

楽観的に過ぎる調子で屋根から飛び降り、祠を覗く。
石の扉を開いた先は、思っていたよりなかは広いかもしれない、キョロキョロと闇に慣れない目で様子を伺う。

「神サマ仏サマ、おじゃましまーす……っと?」

じいっと目を凝らすと、何かが震えている。
小さな小さな背中。光の乏しい世界できらきら輝く青白い盾。

「おおっ!誰かいたじゃねーか、ちーっす、俺アイドルポケモンのジュペッタ!」

「ひぃ!?やめて、僕は悪いプチヒーローじゃないよ!やめて!」

がばっと顔を上げたかと思うと、盾を構えて、というか隠れて涙混じりの声で叫んだ。

「はあん?どったのどったの……俺も悪いジュペッタなんかじゃねえよ、落ち着けって」

64モンスターだって何にでもなれる ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/29(月) 00:47:05 ID:tcIRJ2pQ0
小刻みに軽快な音を鳴らしながら、プチヒーローと名乗ったそいつは盾からちょっぴり顔を出した。
緑色を基調とした、妖精のような顔をしている。
どうやら、軽快な音の正体は合わない歯の根がカチカチ騒いでいる音らしい。

「よ、よ、よかった……僕はプチヒーロー、プチット族の勇者……一応」

蚊の鳴くような尻すぼみの声。プチット族の……あたりからはこの場が静寂に包まれていなかったらまず聞こえない。

「勇者?何だか知らないが、すげえじゃないの!やったねえ俺ったら幸先がいい!
一緒になんとか五体満足で家に帰る方法を考えようじゃねえの!」

にっこり、チャックの両端があがる。いい笑顔なのだが若干恐ろしい。

「帰る……帰りたく、ない……」

笑顔で差し出された手を見て、プチヒーローはうつむき、目に涙を溜めた。

「帰りたくない?なんだよ……んじゃあここでガタガタ震えて、殺したり殺されたりしたいってのかよ、頭だいじょーぶか?」

半分しか見えないプチヒーローの顔の前でひらひらと握手しそこねた腕を回す。それにすら、びくっと怯えるプチヒーロー。
その反応にまるで自分が悪者のように感じて、ジュペッタはほんのりと自分の口の悪さを反省する。

「……ワケアリ、ってやつ?よかったら話してくんねえかな」

暫し沈黙が落ちて、ゆっくりとプチヒーローが口を開く。

「僕は、さっき言ったとおり、プチット族の勇者として生まれた……みんな、最初は勇者が生まれた!って大喜びで
 ……けど僕はどうしようもない泣き虫で、臆病者だった……だから、他のプチット族のみんなから期待外れだって毎日怒られてて……」

ぼろぼろと、話ながら涙がこぼれていく。

「一人前のプチヒーローになれるために試練を用意してやるって言われてたけど
 それがこれなのかな、い、いやだよ、僕は……僕は……」

完全に盾に隠れて蹲ってしまった。
話を聞いたジュペッタは、居心地が悪そうにあーだのうーだの唸ってあちらこちらに目線をやる。
深いため息。プチヒーローの肩が跳ねる。
いつもいつも、散々怒鳴られたあとに、この音が聞こえて、みんないなくなった。
コンコン。
次いで耳に転がったノックの音。盾を退けてほしいのだろうか。
先ほどと同じように顔を出すと、ジュペッタがにっこり、笑っていた。
両手を広げて、そのどちらにも影の塊がボールの形をとって揺らめいた。
攻撃されるのか、と青ざめたが、影のボールはジュペッタの頭上に放り投げられ、ジャグリングでもするように回りだした。

「すごい……」

影のボールは二つから三つ、三つから四つに増えた。
不意に、ジュペッタのチャックでできた口がジーッと開いて青白い炎がほの暗い祠のなかに舞う。
青白い炎は影のボールとぶつかり、さらにあざやかなボールに変わった。
気付けばプチヒーローは泣くのをやめて、それに見入っていた。
ぽーんと、いっぺんにボールは天井すれすれまで飛び上がり、ジュペッタに急降下してくる。
かぱあっと開いたジュペッタの口がそれを全て受け止め飲み込んだとき、プチヒーローは拍手をしていた。

「あんがとさん、あとさっきはごめんな、きついこと言っちまって」

「う、ううん、いいんだ、慣れてるから……それよりジュペッタはすごいんだね!とっても綺麗だったよ!」

盾からすっかり体を出したプチヒーローは笑顔でジュペッタを褒め称えた。
ジュペッタもふふんと満足そうに。

「俺はアイドルポケモンだからなぁ!これぐらい朝飯前よ!」

ひとしきりほくほくと頷いて、ジュペッタは改めてプチヒーローに手を差し出した。

「やっぱり一緒に帰ろうぜ、お前んとこの連中ががなってきたら、こんな危ないとこから
 帰ってきたんだぜ!って自慢してやりゃあいいし、もしそれでまだなんか言ってくるようなら
 俺んとこのご主人サマにお前のことを頼んでみるさ」

惚けた様子で、プチヒーローはジュペッタの手と顔を交互に見つめる。

「僕は……役に立てない、と思う、けど」

おずおずと、緑色の小さな手が伸びる。

「一緒にいってもいい、かな?」

「おうよ!」

がっしりと握手がかわされる。
それはすこし痛かったけど、プチヒーローが初めて感じた暖かい痛みだった。

65モンスターだって何にでもなれる ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/29(月) 00:47:40 ID:tcIRJ2pQ0
【D-4/祠/一日目/昼】

【ジュペッタ@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺しあいとかアイドルのやることじゃねえ!無事に家に帰るぞ!
   1プチヒーローと一緒にいく
 
【備考】
オス。自称アイドルポケモン。ここにつれられてくる前はコンテストポケモンとして育てられていた。一人称は「俺」

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:健康
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いはしたくない、家には……
 1:ジュペッタと一緒に行く

【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」

《支給品紹介》
【水鏡の盾@ドラゴンクエスト】
青白い盾。読み方は「みかがみのたて」で、ドラゴンクエストシリーズ内では勇者の装備の次に強いことが多い盾。

66 ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/29(月) 00:48:33 ID:tcIRJ2pQ0
投下終了です。

67名無しさん:2013/04/29(月) 01:48:26 ID:VpOjx7x.0
投下乙です。
ジュペッタはコンテストポケモンというキャラ付けになったか!アイドルとして厳しい状況の中でも諦めず、輝いて欲しい!
プチヒーロー君はまだまだヘタレっぽいけど、ここから真のヒーローになることが出来るのかな

68 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:07:22 ID:nS3VUQa20
投下お疲れ様でした。
ジュペッタいい奴だなぁ。一芸をみせているシーンがとても素敵で、情景が浮かぶ!
ちょっと怖いのもご愛嬌な気がしてくる素敵な描写でした。
そしてプチヒーロー、可愛かったです。応援したくなりましたよー。

さて、それではライガーとトンベリを投下します。

69さみしさの共振 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:08:32 ID:nS3VUQa20
 目が覚めれば、最高の一週間がやってくるはずだった。
 大きなあくびをして、あったかい小屋から外に出て、きれいなおひさまの光を浴びて。
 眠たさが吹き飛ぶくらいの爽やかな空気をいっぱいに吸いこんで、おいしい朝ごはんをおなかいっぱいに食べる。
 それからの予定は、ずっと前から決まっていた。
 大好物のおやつをごちそうしてもらって、ブリーダーさんと一緒に、一日中遊ぶのだ。
 トレーニングも、修行も、大会の予定もない。
 今日は、ボクのやりたいことを、好きなようにやってもいい、ステキな一週間のはじまり。
 やさしくてだいすきなブリーダーさんが、ボクとずっと遊んでくれる、ワクワクする一週間のはじまり。
 昨日の夜は、胸がドキドキしてなかなか寝付けなかった。明日、お昼寝をしたくなっちゃったらどうしようって心配しちゃうくらいに、眠たさがやってくるのは遅かった。
 それくらい、楽しみにしていた日だった。
 だって今日は、とくべつな日。
 
 ブリーダーさんがワガママを叶えてくれる――ボクの、誕生日なんだ。
 
 目が覚めれば、最高の一週間がやってくるはずだったんだ。
 なのに。
 実際に目が覚めたとき。
 硬くて冷たい床に放り出され、両足は痛いくらいにキツく縛られ、鉄色をした部屋に閉じ込められていて。
 そうして――もう一度眠って、気がついた時、ボクは川の音が聞こえる森の中にいたのだった。
 見たことがない場所だった。
 耳に届くのは穏やかなせせらぎのはずなのに、なんだかとてもぞわぞわした。
 悪いユメの中にいるのかと、ちょっとだけ思う。
 ユメならばいつか目が覚める。
 だけれど、足にくっきりと残るクサリの跡と、そこに感じるじんじんとした痺れに似た痛みが、ユメなんかじゃないと教えてくれていた。
 だったら。
 だから。
 あれは。
 動いて喋って怒っていたモンスターが、あっという間に動かない真っ黒なカタマリになってしまった、あの光景は。
 間違いなく、ユメではなくゲンジツなんだ。
 ゲンジツだったら、戦わなければいけない。
 あのよく分からない男は、ボクらに戦うように命令してきたのだ。
 言うことを聞かないと、真っ黒なカタマリにしてやるぞって、脅し付けて。
 それでもボクは、全然気が進まなかった。
 戦いがイヤなわけじゃない。大会で好成績を出したことだってあるし、修行先でノラモンと出会って戦うこともあった。
 けれどそのときと今では、違う。全然、違う。
 どうしてかは分からなくて、上手に言葉にできないけれど、なんだか違う気がした。

70さみしさの共振 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:09:26 ID:nS3VUQa20
 わからない。
 わからないから、胸の奥がもやもやする。もやもやはとても気持ちがわるくて、答えを知りたくて。
 なんでも相談に乗ってくれるブリーダーさんに、お話をしたくて。
 ボクは、鼻をひくつかせた。
 色んな香りがする。
 いい匂いがする。イヤな臭いがする。知っているにおいがする。知らないニオイがする。 
 そんな入り混じった香りの中を、ボクは必死で嗅ぎ分ける。
 どんなに、そうしても。
 ボクが欲しい匂い――ブリーダーさんの匂いを、見つけることは出来なかった。
 そのことを意味しているのは。
 ボクが独りぼっちであるという、そういうことだった。
 そう思った瞬間。
 イヤな寒さが、全身を駆け抜けた。その寒さは血に乗って体中に広がっていってしまう。
 内側から来るその強い寒気には、毛皮なんてなんの意味もないようだった。
 全身が、ガクガクする。
 からだじゅうが、ヘンな震えを繰り返してしまっていて、壊れてしまったみたいだった。
 寒くて。心細くて。寂しくて。
 けれど、温めてくれるヒトはいてくれない。抱き締めてくれるヒトはいてくれない。
 そのゲンジツが、余計に震えを強くさせる。
 ただ、苦しかった。今まで感じたことのない苦しさが、おなかの底からせり上がってくるようだった。
 それに突き動かされるように、口を開けて――。

「――……」

 そうして。

「――…………」

 そうして、ボクは。

「――――…………」

 あったかいものがほしくて。
 
「――――――――――…………………………ッ」
 
 抑えきれない気持ちに任せて、遠吠えを上げていたのだった。 

「――――――――――――………………………………ッ!」 
 
 喉が枯れ果てそうなほどに、遠吠えを上げていたのだった。

71さみしさの共振 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:10:20 ID:nS3VUQa20
 ◆◆
 
 寂しそうな呼び声が、細木の枝葉を震わせる。
 まるで木々がもらい泣きをしているような音を聞きながら、わたしは歩いていた。
 声が聞こえるたびに、一歩ずつ。
 声の先へ向かうべく、一歩ずつ。
 ひたり。
 ひたり。
 そうして歩くたびに、呼び声は鮮明に耳に届いてくる。
 ひたり。
 ひたり。
 鮮明さを増すが故に、その声に乗せられた苦しみが、よく伝わってくる。
 ひたり。
 ひたり。
 声に宿る感情は寂しさであり悲しさであり苦しさであり心細さであり恐怖であった。
 ひたり。
 ひたり。
 それは、とても心に響く感情であり、強く共感できる感情だった。
 ひたり。
 ひたり。   
 やがて、呼び主の姿が、目に見える。
 鳴いているのは、こげ茶色と白の毛並みをした、鋭い角の生えた狼のようなモンスターだった。
 だが狼と呼ぶには、その目はあまりにもつぶらで可愛らしい。
 彼から感じられるのは、狩猟者の持つ凄みではなく、愛らしさだった。
 
「……誰を、呼んでいるの?」

 尋ねると、彼は驚いたようにびくついて遠吠えを中断し、けほり、と咽返った。
 彼は慌てて、威嚇するようにわたしを睨みつけてくる。
 唸り声を上げるその様さえも妙に愛らしく、あまり威嚇にはならないとは思うけれど、その感想は胸の奥に封印し、わたしは首を横に振った。
「……いきなり声を掛けて御免なさいね。貴方を傷つけるつもりはないわ」

 可愛らしい狼さんを前にしても、自分の声は、やはり平坦でしかなかった。
 あの日から。
 家族が、友人が、焦がれた相手が、目の前で皆殺しにされたその瞬間から、わたしの表情と声色は完全に壊れてしまった。
 愛想よくできればとは思っても。心に感じることがあったとしても。
 表情は一切変わらず、声色に起伏を持たせられなくなっていた。
 今のわたしは、感情を外に出せないのだ。
 そんなザマで傷つけるつもりはないと嘯いても、説得力は感じられないではないだろうか。
 そう思い、わたしは首を傾げてみる。
 すると、可愛らしい狼さんも同じように首を傾げ、鼻をひくひくと動かしてみせた。
 しばらくそうしてから、彼は、ふーっ、と長く息を吐き、ぺたりと地面に座り込んだ。

「よかったぁ……」

 安堵に満ちた一言に、わたしは内心で同意する。
 どうやら、疑われずに済んだようだった。

72さみしさの共振 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:11:04 ID:nS3VUQa20
「……誰を、呼んでいるの?」
 
 落ち着いたところで、もう一度同じ問いを投げかける。
 そうしたら、可愛らしい狼さんはきょとんとして、でもすぐに、少しだけ恥ずかしそうにして、口を開いてくれた。

「だいすきな――ブリーダーさんだよ。逢いたく、なっちゃって」

 とても素直で、裏表のない答えだった。
 それを聞いて、わたしは、くっと胸を詰まらせずにはいられなかった。
“ブリーダー”さんというのが誰なのか、わたしは知らない。
 だけれど、可愛らしい狼さんのとろけるような微笑みと、やさしさに溢れた声色が、“ブリーダー”さんへの愛情を、何よりも明朗に物語っていた。
 逢いたいと思える相手がいるのは、幸せだ。
 わたしが逢いたいと願う相手は、もういない。
 みんな、みんな、残虐なまでに容赦なく虐殺されてしまった。
 ニンゲンが享楽に耽るために、殺されてしまった。
 残されたわたしは、殺されたみんなのうらみを、ニンゲンどもに叩きつけるために生きている。
 そう。
 わたしは、憎しみ支えられて立っているのだ。

「……そう。ほんとうに、だいすきなのね」

 そんなわたしにとって、目の前の幸福はひたすらに眩かった。
 えへへ、と笑って肯定する可愛らしい狼さんの幸福を、羨ましくないと言えば嘘になる。
 けれど、彼が溢れさせる純粋さと素直さの前では、そんな羨望などあっさりと霞んでいく。
 羨みよりも、彼が握り締める幸福を守りたい気持ちが先に立つのだった。
 幸福が不当に喪われてはならない。
 わたしのような想いをするモンスターがいないのが、最良なのだ。

「……わたしは、トンベリっていうの。貴方は?」
「ハムライガー、だよ。お父さんがライガーで、お母さんがハムなんだ」

 可愛らしい狼さん――ハムライガーくんが、素敵な笑顔を向けてくれる。
 その笑顔と、共に在りたいと思った。この幸せを、翳らせたくはないと望んだ。
 これは、みんなのうらみだけを抱いて往くわたしが、久々に抱いた温かな気持ちだった。

 だから、懐に潜ませた重みを強く意識する。
 そこにあるのは、『ふくろ』に入っていた鋭い刃物。愛用の包丁ではないけれど、充分な殺傷力を持つ刃。
 名を、こおりのやいば。
 ニンゲンの手によって用意されたものであるのは癪だが、これでニンゲンを刺し殺してやる瞬間を夢想すれば多少なりとも気分は晴れる。
 わたしは、あまねくニンゲンに憎しみを抱いている。
 わたしのたいせつな同胞を殺した輩は、数多いニンゲンのうちの一握りでしかないと、理解はしていたとしても。
 けれど、あらゆる感情を吸い尽くして肥大化した、水底でわだかまる汚泥のような憎悪は、わずかなニンゲンを怨むだけでは飽き足らない。
 そう。
 この武器は、憎きニンゲンを殺すために使うべきだ。みんなのうらみを晴らすために使うべきだ。

73さみしさの共振 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:12:07 ID:nS3VUQa20
 けれど、もし。
 ハムライガーくんを傷つけるモンスターが現れるのならば、この武器を容赦なく振るっても構わないだろう。

 だって、そんなことをする奴というのは。

 わたしたちモンスターを檻に閉じ込めて殺し合わせようとする、腐り切った屑ニンゲンに従う唾棄すべきカスだということなのだから。

 わたしは、想うのだ。
 ニンゲンなどに心を奪われた輩は。
 ニンゲンなどに同調する外道は。
 あまつさえ、ニンゲンの存在を肯定する愚図どもは。

 それらは須らく、ニンゲンに心を毒された汚物でしかないと。

 故に。
 故に、そんな穢れた存在は死ぬべきであろうと、わたしは、想うのだ。
 
「トンベリ、さん? どうしたの? ボクの声、聞こえてる?」
 
 心配そうなハムライガーくんの声に、ハッとする。
 どうやら、心の底から這い上がる憎悪に、意識を奪われていたらしい。

「……大丈夫、聞こえてる。御免なさい。少し考え事をしてしまっていたわ」

 それでもやはり、わたしの声は平坦だった。きっと、表情も変わっていやしないのだろう。
 
「……考えていたのは、これからのこと。ねえ、ハムライガーくん」

 嘘をつくのには便利だ。
 けれどそんなこと、少しも嬉しくなんてないから、ほんとうの気持ちを告げることにする。
 
「……よかったら、わたしと一緒に、行動しない?」

 ハムライガーくんが抱く純粋な幸福を守り、共に在りたいのは紛れもない本心だ。
 なのに、嘘と変わらない様子で言えるわたしは、やっぱり壊れてしまっているんだろうなと、改めて実感するのだった。

【F-5/森/一日目/昼】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ブリーダーさんに逢いたい。殺し合いはしたくない。
 1:トンベリと話をして、トンベリの提案をどうするか考える
 
[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」

【トンベリ@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:こおりのやいば@ドラゴンクエストシリーズ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:ニンゲンを殺す。殺し合いに乗る気はないが、ニンゲンを肯定するモンスターは殺す
 1:ライガー(ハムライガー)の幸福を守り、共にありたい

【備考】
メス。目の前でニンゲンに仲間を皆殺しにされた経験があるため、ニンゲンを激しく憎んでおり、感情表出ができなくなっている。一人称は「わたし」
“ブリーダー”をモンスターの名称だと思っており、人間であるとは思っていない。

《支給品紹介》
【こおりのやいば@ドラゴンクエストシリーズ】
永久に溶けない氷を刃として加工した短剣。道具として使うとヒャド系の呪文が発動する。

74 ◆6XQgLQ9rNg:2013/04/29(月) 02:13:18 ID:nS3VUQa20
以上、投下終了です。
派生種でもOKということでしたので、ハムライガーとさせていただきました。
問題や指摘などありましたら、お願い致します。

75 ◆5omSWLaE/2:2013/04/29(月) 04:41:27 ID:R.pAK8SIO
お二方投下お疲れ様です
>モンスターだって何にでもなれる
アイドルなジュペッタと臆病なプチヒーロー……なかなか面白い組み合わせですね
ジュペッタの芸の描写が素晴らしかったです! 輝いてました!
小さな勇者も、今後良いところ見せられるでしょうか
>さみしさの共振
ハムライガーとトンベリがなんとも可愛らしい!
人間を愛するモンスターと、人間を憎むモンスター
この二体はかなりギリギリの関係……いつ途切れてしまうのか怖いところですね……

76 ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:44:07 ID:X4n8H9p60
皆さん投下乙です。
自分も、メタモン、グレイシア、ドラゴンを投下します

77Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:45:03 ID:X4n8H9p60
 ――――どうして、こんなことになってしまったのだろうか。
 流動体の身体を小さく震わせて、わたしは一人考える。
 つい先日までは確かに幸せだった、その筈なのに。
 たくさんのポケモンの『タマゴ』を作るお手伝いをしてあげると、トレーナーさんは喜んでくれた。
 無邪気に笑って、これでまた強くなれると褒めてくれた。
 その顔を見たいがために何度も寂しい思いもした。
 自分はあの日溜まりの中でずっと暮らしていけるんだと思っていた。
 それが崩れてしまったのは――はたしてどうしてだろうか。
 トレーナーさんは言っていた。
 もっと良い個体が見つかったから、もうお前に使い道はないと。
 その時わたしは初めて気付いたのだ。
 あの人が見ていたのはわたしじゃなく、わたしと一緒に育て屋さんに預けられたポケモンでもない。
 ……全部、生まれる子供のことだった。
 強いポケモンが欲しい、それだけの為にわたしを飼っていたにすぎなかった。
 わたしは確かに、自分ではよく分からないけれど、メタモンとしては優秀な個体だったのかもしれない。
 でもそれも、もっと上の個体が見つければ無用になる。
 使えない殻潰しを傍に置いていたって、いいことなんて何一つないからだ。
 だからわたしは逃がされて、新しいメタモンがわたしの居た座を奪い取った。
 
 ――いや、そんな言い方はよくない。
 あの子もきっと、わたしと同じく使われるだけなのだから。
 偽物の幸せを素晴らしいものと誤解したまま、いつか裏切られる時まで生きていく。
 もしかすると優秀なあの子は、ずっと傍に居させて貰えるかもしれないけれど。

 ……ああ、なんて馬鹿な話だろう。
 どことも知れない洞窟に離されたにも関わらず、わたしはまだ求めている。
 あの人がまたあの優しい笑顔で自分を迎えに来てくれることを。
 そんな日が二度と来ないと分かっていても、希望を捨てきれない。
 ”わたし”であり、”ぼく”でもあるこの不透明な存在を、彼なら認めてくれると思った。
 ただ相手の猿真似をする以外に能の無いポケモン――
 所詮は強い子孫を生むための礎でしかないポケモン――
 
 普通の幸せなど、決して望むべくではないポケモン。
 何にもなれるけれど何にもなれない、それがわたしなのだ。

 「――……へんしん」

 一言。
 それだけで自分の姿は、桃色の頭髪が可憐な十歳くらいの少女のものに変容を遂げる。
 あの人は殆どの時間、わたしを育て屋さんに預けていた。
 そこでわたしや他のポケモンと遊んでくれたのが、この可愛い女の子だった。
 メタモンである自分や、凶暴なポケモンまで分け隔てなく接してくれた。
 ――もしも彼女のポケモンに生まれられたなら、今頃は幸せに生きられていたのかもしれない。
 そんな未練が、わたしをこの姿に変容させた。
 人間に変身したことで得られる利益は皆無だ。
 特にこの殺し合いで、そんな真似をする理由は何処にもないだろう。

 けれども、理屈では説明できない感情というものがある。
 何故だか、こうしなければいけない気がした。
 戦うことを放棄して、あの女の子のように優しく生きるためには、猿真似から始める必要があると思えた。
 「……やだよ」
 小さな声でぽつりとつぶやく。
 きっと誰の耳にも入らないその声は、もう一度はっきりと聞こえる声量で再び反復される。

78Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:45:52 ID:X4n8H9p60
 「いたいのとか、だれかをきずつけるのとか……そんなの、やだよ。そうまでして、いきていたくなんてないよ」

 甘いと言われるかもしれない。
 僅かな間とはいえあの洞窟で、『野性』を垣間見た自分には、それが甘い理屈であることが分かる。
 誰もが生きる為に必死だった。
 戦って、奪い合って、虐げて、裏切って、そうでもしないと生きられない世界を見てきた。
 それでもわたしは、それが嫌だ。
 何かの真似しか出来ないわたしでも、それだけははっきりと言うことができる。
 ―――『誰にも悲しんでほしくない』。
 ―――『誰かを助けたい』。
 ―――『誰かの笑顔を守りたい』。
 みんなで笑っていられるあの日溜まりのような世界の為になら、わたしは自分が死ぬことだって――
 「…………あ、それはちょっとこわいかな……」
 いざその光景を想像して、わたしは背筋に寒い物が走るのを感じた。
 洞窟に逃がされて生きる為に必死だった短い時間で、死ぬかもしれない危険を味わったこともあった。
 ゴルバットの群れに襲われた時は、命からがらズバットにへんしんすることで事なきを得た。
 洞窟の一部が地面タイプのポケモンの小競り合いで崩れてきたとき。
 間違って洞窟の深部に入ってしまって、大きなポケモンたちに遭遇してしまったとき。
 そんなときは決まって、死にたくないと思った。
 
 死にたくなんてない。
 死んでなんかやるもんか、わたしも絶対に生きてやる。
 けれど誰だってそれは同じ。
 それなら、わたしだけの都合を通そうなんて――それはちょっと勝手なはなしだ。
 「わたしが、みんなをふわふわさせてあげる」
 ふわふわ――
 それは、今わたしが象っている女の子の口癖だった。
 あったかい幸せに満たされていると、まるで宙に浮くような感覚を感じることがある。
 それが幸せだということ。
 猿真似の第一段階だ。

 ――――その時、わたしは気付いていなかった。
 わたしの後ろから迫ってくる一匹の竜(ドラゴン)が、大きな咢を開けていることを。
 


  ◇


 「――――ガァァ!!??」
 ドラゴンは生き残る事しか考えていなかった。
 何故か。そんなものは簡単だ、他のモンスターより強い牙と火を持った自分こそ、食物連鎖の上位者だからである。
 食物連鎖――それは絶対のルールであり、何者にも覆せない絶対のルール。
 自分はこの牙で、たくさんのモンスターを喰らってきた。
 一度火を噴けば、冒険者など簡単にのしてしまえる。
 俺は強い。
 ドラゴンは心の底から微塵も疑ることなくそう信じていた。
 だから彼の取った最初の行動は、無防備に突っ立っている少女を手始めに食い千切ってやること。
 人間がどうして混じっているのかは分からないが、人間など殺すのは実に容易い。
 ウォーミングアップには丁度いい相手だろうと思い、わざわざ決闘の模式を取ることもなくその首を狙ったのだ。
 
 しかしドラゴンの矜持は、それを上回る冷気の奔流の前に成すすべなく飲み込まれた。

79Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:47:31 ID:X4n8H9p60
 
 

 「……まったく、最低の下劣です」
 凍てついた地面、冷気を浴びせられた箇所が猛烈な勢いで痺れを訴えてくる。
 ドラゴンは驚愕に満ちた表情で冷気が飛来した方角を見る――するとそこには、一匹のモンスターがいた。
 正確に言えばドラゴンの世界のモンスターではない。
 彼が狙った少女に変身しているメタモンの同族である。
 ツインテールのように靡く二本の房は、漂う冷気も相俟って何処か凛とした雰囲気を醸していた。
 「え、えーと……?」
 「ちょっと黙ってるといいです。危ないから、出てきちゃダメですよ――”メタモン”」
 突然の展開に困惑を隠せないメタモンを制して、氷のポケモンはドラゴンへ向き直る。
 その立ち振る舞いは気品に溢れ、恐怖を克服した覚悟の色がありありと見えていた。
 
 「………ハン、やってくれるじゃねえかよ」
 ドラゴンの憤怒に満ちた声が漏れる。
 メタモンはこれまで見てきたどんなポケモンよりも獰猛な声色に、思わず逃げ出しそうになった。
 それを堪えられたのは、助けてくれたポケモンの存在。
 彼女を置いて逃げるなんて、あの子は絶対にしないだろうから。
 「テメェが何なのかは知らねぇが、嫌いじゃあねえぜ、そういうのはよォ――――」
 ドラゴンは激怒しているが、必ずしもそれが憎悪に直結されているのではない。
 むしろ、彼は喜んでさえいた。このモンスター相手になら、久々に本気の戦いを愉しめるかもしれない。
 激戦の末に鬱憤を晴らせば、戦えてすっきりもできる、まさしく一石二鳥。
 撤退なんて下らない選択肢を選ぶ余地など欠片もない。
 尻尾をブン、と引き、ドラゴンは吼えた。
 「―――つーわけで、一丁死んでくれや、雌戌ッッ!!」
 ドラゴンの肉体がしなる。
 先程負ったダメージは少なくないが、行動不能に陥らせるものかと言われれば否だ。
 あの攻撃……”れいとうビーム”の一発では、ドラゴンを撃破するには足りない。
 
 「っ」
 ポケモンは振るわれた尻尾を跳躍することで避けたが、予想以上にその威力が高そうなことに気付く。
 彼女の知るドラゴンタイプのポケモンに当てはめるなら、その技は『ドラゴンテール』というところだろうか。
 しかし単純な威力で言えば、ポケモンのどの種類よりも強烈かもしれない。
 これで更に早い速度があったなら、本当に手が付けられなかったろう。
 「ちょこまかとウゼェぞ、オラ、反撃して来いよォ!!」
 ポケモンは考える。
 自分は体力にそこまで優れているわけではない。
 喰らえる限界数は精々二発……三度目を貰えば、間違いなく厳しいことになる。
 強い。このドラゴンは、野性的な強さと、それだけでは説明できないような強さを秘めている。
 「……あなた、最初から野性だったんじゃありませんね」
 「ホォ、よく見抜いたもんだ。褒めてやるよ……俺ァ、元は闘技場で働いてたんだ」
 対話に応じながらもドラゴンの攻める手は弛むことが無い。
 容赦も躊躇もほんのわずかにさえ存在しない、殺すための戦いを理解している動きだ。
 対するポケモンは、ここまで露骨な殺し合いをした経験には乏しかった。 
 戦場の理屈を知っているという点でなら、ドラゴンの方が数段勝っているだろう。
 「尤も、負けちまって大損させて、追放されたけどな。
  ヘッ、腹いせに俺の専属だった野郎には、一発キツイのをくれてやったよ」
 この尾で人間がやられたなら、死なずとも全治にかなりの時間は掛かりそうだ。
 ポケモンは僅かにそこで動きを止める。
 動揺した様子が明らかに窺えるが、それはまるで何かに気付いたかのようなそれだった。
 
 「ああ、そういやテメェは氷の魔物みてぇだな」
 ドラゴンの口元が獰猛に引き裂かれる。
 注視すれば、そこから僅かな湯気が出ていることに気付けたかもしれない。

80Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:48:23 ID:X4n8H9p60
 ドラゴンは闘技場で使われていた頃、沢山の経験を積んできた。
 そうでなくとも常識だろう、氷を溶かすには強い熱を浴びせてやればいいことくらい。
 「安心しろや、キッチリ全部焼き尽くしてやるよ」
 ドラゴンの口に火炎が集まる。
 ポケモンは止まっていた動きを、それを見てはっとなったように再び動かした。
 しかし遅い。反応がもう少し早ければ良かったものの、これではあまりに遅すぎる。
 会心の笑みを浮かべるドラゴンは、火炎を迷うことなく放出した。
 「”はげしいほのお”――――ッ!!!!」
 その威力を見て、ポケモンは過去に見た炎タイプの技能『かえんほうしゃ』を思い出した。
 それよりも威力は上だろうか、とにかく相手の目論んでいるだろう通り、氷タイプの自分がこれを喰らえば恐らく一撃必殺だ。
 負ける。……いいや、まだだ。避けることが出来なくたって、やりようはある。
 

 ”――――いいかい”


 頭の中に、愛したトレーナー(ひと)の声が響く。
 彼は言っていた。ポケモンバトルとは、単なる力比べでは勝てないと。
 あの時確か自分は、道具『パワフルハーブ』を持ったポケモンに勝てないでいた。
 氷タイプの自分が、一撃でも『きあいパンチ』を受けるとそれだけで瀕死にされてしまうのだ。
 一時期はそれで自信を喪失しかけたこともある。
 

 ”誇りを喪わないのは大切だ。けれど、誇りを貫くことと、死力を尽くさないことは違うんだ”


 そんなとき彼は、当時真剣勝負に固執していた自分に言った。
 

 ”勝ちたいなら、死力を尽くすコト。それこそが最大の誇りになって、相手の誇りも踏み躙らないからね”


 ――そうだ。
 こういう局面の為に、私は。


 「―――― ”まもる” っ!!」

 
 この、絶対防御を習得していたんじゃないか。
 


 「なッ……にィィッ!? アストロン、だと……!!」
 ドラゴンの知る限り、それはアストロンという呪文に酷似していた。
 あれもまた、此方がどんな攻撃をしようと防いでしまうものだった。
 それを、あろうことかこの魔物も習得していたのだ。
 炎は障壁に阻まれ、彼女へダメージを通すことを許さない。

81Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:49:01 ID:X4n8H9p60
 だが、怯んでいては恰好の的になる。
 ドラゴンは気付けば走っていた。表情は歓喜に満ちている。
 コレは、俺を満足させてくれる。
 コレに勝てたなら、俺は乗り越えられる。
 あの忌まわしい『思い出』を踏み越えて、最強の竜になれるんだ。

 「……ハハ」

 笑いが零れる。
 どうして、笑顔を見せずにいられるだろう。
 自分をここまで追い詰めた輩など、闘技場で自分を負かしたあの一体以来だ。
 あれから経験を積んだ。何度も何度も戦って、何度も何度も敵を倒した。
 俺は強くなった。今の俺なら勝てる。いや、勝たなくてはならない。
 飢えて、飢えて飢えて飢えて飢えて――そうしてここまで生きてきた。
 それを、誰かに否定などさせてやるものか。

 「ハハハハハハァァ――――ッ!! 最高だぞ、てめぇぇぇぇえぇえぇえええええええ――――――――!!!!」

 ドラゴンの哄笑を聞きながら、氷のポケモンはただ悲しそうに瞳(め)を細める。
 気付いてしまった。事情こそ違えど、自分とこの獰猛な火竜は同じなのだ。
 

 ――ポケモン・グレイシアは、ポケモンリーグを制覇したとあるトレーナーの相棒だった。
 タマゴの頃から彼の、無精髭の似合う少しくたびれた男の愛情を受けて育った。
 勝負に勝てば褒めてくれたし、負けたら慰めてくれた。
 喧嘩をしたこともあった、逆に二人で悪戯をして、二人して彼の娘さんに怒られたこともあった。
 楽しかった。とても、とても楽しくて尊い日々だった。
 ポケモンリーグの最終戦で、自分は彼のエースとして、一対一の勝負をした。
 互いに激戦で手持ちは一匹ずつとなり、相手の繰り出した最後の一匹は――”マルチスケイル”と恐れられたカイリュー。
 激戦だった。けれど最後は、自分の繰り出した一撃がカイリューの急所を捉え、幕引きとなった。
 ……それから間もなくだった。
 
 今でもはっきりと覚えている。 
 巻き付くような猛毒の煙が、業火に満ちている。
 自分はポケモンリーグでの消耗で動けず、業火にまかれるだけだった。
 ――”彼”は自分を助け出した。
 その代わり人間である彼はガスを大量に吸って、最期まで微笑みながら、炎の中に消えていった。
 それから後の事は、よく覚えていない。
 気付けば氷に満ちた雪原にいた。
 喪失感に支配されたままで、ずっとずっと――暮らしてきた。


 自分には愛があった。
 でもドラゴンには、愛はなかった。
 しかし彼もまた、過去の呪縛を振り払えずにいる。
 だから乗り越えようとしているのだ。
 踏み潰して、支配して、喰らうことで、強くなろうとしているのだ。


 「終わりにしましょう」


 グレイシアの眼前で、冷気が発生する。

82Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:49:39 ID:X4n8H9p60
 迫るドラゴン。しかし怯むなんてことはしない。
 幕引きは一撃で。あの時のように鋭く速く、正確に。



 「 ―――――――― ” ふぶき ” ――――――――」



 グレイシアの最強の技が、ドラゴンを呑み込んだ。
 



    ◇


 「……どうやら、勝ったみたいですね」
 グレイシアは冷気の余波を浴びながら、横たわるドラゴンを見て呟く。
 しかし、死んではいない。負っているダメージは大きいが、戦闘不能でもない。
 彼はふぶきの一撃が吹き抜ける寸前に、火炎を吐いていた。
 それはグレイシアのふぶきを打ち破るには至らなかったが、自身への被害を少し和らげていた。
 「――殺せ」
 ドラゴンは哂ってそう促す。
 敗北は野生の世界において紛れもない死を意味する。
 それに彼にとって、もう生きる理由はなくなった。
 あれほど心地よく負けられたなら、一体何を悔いればいいのか。
 不思議と心地よい爽快感が、ドラゴンの心を満たしていた。
 さながらそよ風のように、穏やかな気持ちにさせてくれる。
 「………分かりました」
 グレイシアにはそれが出来る。
 至近距離から無抵抗の相手を殺すなど、とても気が乗るものではないが、これはそういうルールだ。
 グレイシアは殺し合いに乗る気などない。
 己の誇りに懸けて、打破してやる気でいる。
 だが不殺を誓うことは出来ないだろうと、覚悟をしていた。
 これはポケモンバトルじゃない。生死を賭けた殺し合いで、ルールなど存在しない。
 そこでどうしようもない外道を生かしたりしては、いずれ自分の首を絞めることになる。
 ――こんな形となるのは想像もしていなかったが、彼の願いを踏みにじるなど出来るものか。
 「テメェに負けられて、満足だ」
 「えぇ――あなたは強かったです、掛け値なしに」
 スポーツマンのように互いを称賛し合うと、再びグレイシアの元に冷気が集約する。
 今度はこの間合いだ、殺害することも不可能ではあるまい。
 
 「…………まってっ!」

 そこに、割って入る者がいなければ。
 
 「あなたは……」
 グレイシアは彼女の正体を一目でメタモンだろうと看破した。
 人間の姿を模しているところを見るに、きっと彼女も自分たちと同じなのだと直感で分かった。
 恐らくは、自分の周りにいた人を模した変身をしたというところか。
 「……退いてください。分からないんですか、あなたの行為は、彼の誇りを侮辱して――」
 「――しんじゃったら、ほこりもなにもないよっ!」

83Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:50:29 ID:X4n8H9p60
 メタモンはこの中できっと一番弱いだろうことを自負している。
 猿真似以外に取り柄のない自分が、二人のように気高く戦えるとは思えない。
 そしてメタモンもまた、不殺こそが正義だなどとは思っていなかった。
 メタモンなりに割り切っていたのだ。
 考えたくないが、誰かを殺すことでしか喜べないような輩がいたなら、それは仕方のない事だと思う。
 ……けれど、メタモンには認められなかった。
 いくらそれが名誉あるものであろうと、”誇りを守る”なんて理由で命が失われることが、認められなかった。
 「あなたは、なにも解っていない」
 「わかんなくてもいいよ。わたしは、わたしのやりたいようにやる……だれかのまねなんて、まっぴらだもん」
 グレイシアは深く溜め息をついた。
 無理だ。このメタモンは本当に、自分の命に代えてもここを通すまい。
 どんな説得を試みても、グレイシアにはメタモンを納得させられるヴィジョンが浮かばなかった。
 「……だそうですよ」
 ドラゴンは信じられない、という目でメタモンを見ていた。
 彼の常識では、誰かを守ることがまず考えられないことだったのだ。
 野生の世界でそんなことをしようものなら、待っているのは死だけである。
 ――あまりにも幼稚な考え。けれども、幼稚で真っ直ぐなその意志は、決して揺らぐことが無い。
 幼児にためになる講義をしても、理解が出来ないように。
 
 「どうしろってんだよ、俺に」
 苦笑するドラゴン。
 グレイシアもそれは同じだった。
 これでは八方塞がりだ。
 かといってメタモンとドラゴンを置いて去るのも不安だ、言うまでもなくメタモンがである。
 「まあ……そうですね。それじゃあその命、このゲームが終わるまでお預けにしておきましょうか。
  全部終わったその時には、私があなたを殺しましょう。
  もちろん、あなたがそれを拒めば、話は別ですけど」
 グレイシアの声色は何処か意地が悪い。
 まるでドラゴンが、生きることを選ぶのを確信しているかのようなものだ。
 「そうだ、ふたりともっ」
 メタモンは事態が落ち着いたことを何となく把握したのか、二人から顔が見える位置まで歩いていく。
 そして子供らしい笑顔で、なんとも場違いなことをのたまった。
 「よかったら、わたしのおともだちになってください」
 どうしましょうかねえ、とグレイシアはまたも意地悪気に笑う。
 ドラゴンは「俺ァ子守りの経験なんざねぇな」と、馬鹿にしたように笑う。
 それに唇を尖らせてメタモンは反論しながらも、自分に支給された”すごいキズぐすり”を迷わずドラゴンへ使用していた。

84Fantastic Future ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:51:05 ID:X4n8H9p60
【B-6/草原/一日目/昼】

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:健康、少女の姿に変身中
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:みんなを笑顔にして、幸せにする
 1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する
 2:”ともだち”をつくる

[備考]
性別不明、しかし思考などは女性寄り。
一人称は「わたし」、性格は幼い。
少女の姿に変身中。身長は130センチほどで、桃色のショートヘアー。
トレーナーに、強いポケモンを作るためだけに利用されていた。


【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:メタモンと一緒にいる。

[備考]
性別はメス。一人称は「私」、性格は真面目で、口調はですます調。
その昔ポケモンリーグという大きなポケモンバトルを制覇している一匹で、トレーナーとの死別が原因で一人生きることを決めた。
判明している技は『れいとうビーム』『まもる』『ふぶき』、他にもあると思われる。


【ドラゴン@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身不明)
[思考・状況]
基本:ゲームが終わるまでは生きてみる
 1:メタモン、グレイシアに当分の事はゆだねる

[備考]
性別はオス、粗暴で喧嘩好き。一人称は「俺」。
昔闘技場にて働いていたことがあるが、敗北が原因で追放され、それからは孤高に生きてきた。


《支給品説明》
【すごいキズぐすり@ポケットモンスターシリーズ】
メタモンに支給。
HPを大きく回復するキズぐすりで、基本的にストーリー中盤から終盤でお世話になる。

85 ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/29(月) 11:51:43 ID:X4n8H9p60
投下終了です。
なにか問題などあれば、お願いします

86名無しさん:2013/04/29(月) 12:16:29 ID:nS3VUQa20
投下お疲れ様でした。
グレイシアカッコいいな。クールビューティという言葉がよく似合う。
形は違えど、彼女とドラゴン、互いの誇りを賭けた戦いは手に汗握るものでした。
グレイシア、ドラゴン、メタモン。いいトリオになりそうな予感!

87名無しさん:2013/04/29(月) 12:57:05 ID:VpOjx7x.0
投下乙です!
ドラゴンもグレイシアも格好いい!お互いのとくぎやわざを活かしてのクロスオーバーバトルに手に汗握りました!
メタモンは可愛いなあ。でも過去が悲惨で、少し思い当るところもあり胸がズキズキ。人間にへんしんしてるのが今後どうなるか……

88 ◆5omSWLaE/2:2013/04/29(月) 14:33:38 ID:RR7Ybzkk0
投下お疲れ様です
ふおおぉぉ、これぞまさにクロスオーバーの戦い……! 胸が震える思いです!!
三者三様に語られた物語も、モンスターたちの思いが匠に描写されていて素晴らしかったです!
そして私もメタモンの過去に思い当たるフシが……。だからこそ、メタモン目線での感情を見て、話に引き込まれました

89 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/29(月) 23:55:54 ID:KHFXiCs20
魔人アリス抜きで、
バトルレックス、天使エンジェル投下します

90怪物騙 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/29(月) 23:57:51 ID:KHFXiCs20



戦い──その行為自体に何一つとして思うことはない。
己にとって戦いとはただの狩り、食事にすぎない。
くだらない人文主義も嗜虐嗜好も持ちあわせてはいない、食事はただの食事だ。
獲物に対して何を思うことがあるか、何一つとして有りはしない。
生きることは喰らうこと、ならば何の遠慮も有りはしない。

だから、この様な場所に連れて来られたとしてもバトルレックスは──いや、彼は自分の種族名すら認識してはいなかった。

彼は言葉という概念は知っていた。
言葉が文明を造ることを知っていた。
だが、興味など有りはしなかった。
己が龍であること、そして生きること、彼の興味はそれ以外には無かった。

ただただ、殺し、喰らった。
それ以上を求めないことが己の生であると、
それを続けることで、幸不幸のくだらない思想と離れ、ただ生きることだけに集中できると考えていた。

ただ偶に、飢えても肥えてもいない時に、
彼は己が持つ斧について思いを馳せることがあった。

彼は生きることのその内でも、喰うことと寝ることだけに敢えて集中していた節があったが、
それでも己が持つ斧について、考えずにはいられなかった。

きっとただ生きるだけでは退屈なのだと、心の奥底では気づいてはいたのだろう。
龍族の高い知能は、気高い魂は、強靭なる肉体は、
名も無き龍が、ただの畜生であることを拒否していたのだろう。

彼は斧という言葉を知らなかったが、それが人間の爪や牙であることを知っていた。
か弱い人間は、武装しなければ狩りにいけないことを知っていた。

武器や防具を装備すれば、貧弱な人間ですら龍をも殺す。
人間は爪や牙を己の手で創りだした。

恐ろしいことだと、彼は考えない。
無駄な努力をと、嘲ることもしない。

ただ、人間からより強くなった斧を奪い取り、装備する度に、
より食事がしやすくなるな、とだけ考えた。

それ以上を考えるのは、生きることの邪魔になるだろう。

そう彼は思っていた。

飢えても肥えてもいない時に、再び彼は考える。
何故、己は斧を持っているのだろうか。

物心ついた時から、斧を持っていた。
母を抱きしめ、母乳を得ていた記憶は無いが、小さい己の全身で斧を抱きしめていた記憶はあった。

鎧をも斬り裂く爪、兜ごと頭蓋骨を噛み砕く牙、そして全てを炭と化す灼熱の息吹。
己に斧は不要なはずだった、それでも己は斧を持っていた。

ある日、人間ぶっているのか?とある魔物が問いかけてきた。
名前も姿も覚えていない、存在を確認した時点で喰らったからだ。


彼の生き方に反さなければ、
彼はその魔物に対して「捕食者を前に嘲りなど、お前のほうがよっぽど人間に毒されている」と言ってやっただろう。
だが、彼はそれを口にだすことは決してしなかったし、よぎったその思考をすぐに頭から消すことに努めた。
己の人生に言葉は不要であると、彼は彼の生のためにそう考えていた。

ただ──人間ぶっている、というその魔物の言葉だけは、どうにも心に突き刺さるものがあった。

爪、牙、での殺しは手段であるが、武器での殺しは目的だ。
人間を観察して、己はそれを知っていた。

生きるということは他者を殺し、喰らうこと。
だが、人間は殺すが、喰らわないこともある。

不可解だとは、不思議と考えなかった。
何故なのだろうか、ただ納得だけがあった。

ある満月の夜、己を殺しに来た青い戦士を返り討ちにし、
そして殺傷力の増した最新の斧を手にし、彼は数百年にも及ぶ生の中で初めての笑みを浮かべた。

殺すという意志のもと、武器は進化する。
否、武器を進化させるために人間は殺したがるのだ、きっと。
確信にも似た思いがあった。

そして何故、己は武器を持っていたのか、ようやく理解できた。

「人間を──」

91怪物騙 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/29(月) 23:58:06 ID:KHFXiCs20



◇◇◇

「──裁かなければならないのか?」

天使エンジェルはボソリと呟いた。
自分がこのような場所にいる理由が彼には理解できなかった、
いやもちろん表面的な理由、つまり悪趣味なショウのために連れて来られたということは理解できる。

だが、彼が思考を巡らさねばならないのはモリーという人間のためではない、
神聖なる四文字の神が、何故己をこの場に遣わせたか。
考えなければならないのはそれだ。
人間が神を欺いて、天の使いをこの様な遊戯に参加させることなど出来るはずがない、確信に近い祈りがあった。

「何故、神は我を…………」
彼に考えられる理由は2つ、
1つ目はこの様な愚かな遊戯を破壊し、人間を裁くため。
2つ目はこの愚かな遊戯にて全ての敵を滅ぼすこと。

だが、人間を裁くのならばこの遊戯の内部にいる必要はない。
天の軍勢と共に、直接人間共を裁けば良い。

では、2つ目か?

しかし、人間の手に負えない怪物を殺すのならばともかく、
人間が捕獲できる程度の怪物をわざわざ天より下りて、殺す必要があるのだろうか。
それに天の使いをこのような見世物にする必要もない、
いや必要があったとしても、それは許されることではない。

いや、存在するはずのない。
すなわち畜生に神の存在を説け、という選択肢かもしれない。

愚かな行動を取ってはならない、と天使は考える。

「ああ…………しかし、それこそが愚かな事だ。
神の考えが我のような者に理解できるはずがない、我の取る行動……それこそが神の思惑なのだろう」

そして天使は気づく、つまりはそういうことであると。

「……ならば、我は畜生共を殺そう。鎖無き家畜をふさわしい場所に送ることを我は誓おう。
全知全能の神よ、照覧あれ。我が雷が全てを裁きましょう」

決意は決まった。
神に己を委ねてしまえば、行動の如何に楽なことか。
だが、誰がそれを責められるというのだ。

彼は本来ならば、怪物として闘技場に呼ばれるような存在ではない。
人間を監視し、過ちがあればそれを正し、そして天国へと先導する、文字通りの天使だ。

だが、それを怪物として呼んだのはお前だ。
天使を血まみれの道化としてお前たちは扱おうというのだ。


天の雷を以て裁かれよ人間、最後に裁かれるべきはお前達だ。







「我はお前たちを信じたかった」

これだけは神の意思ではなく、きっと自分の祈りなのだろう。


天使の祈りは風に溶けて、消えていく。


「お前たちは素晴らしいものであると──」

92怪物騙 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/29(月) 23:58:24 ID:KHFXiCs20


◇◇◇

「愛したかったのだ」

殺意という己が永遠に抱かぬであろう感情、そのための進化。
武器とはそれだ、殺意によって振るわれる生の象徴でありながら、己の全く知らぬ生のそれ。

永遠に欠く、いや元々存在しないであろう心の一部分を武器で補いたかった。
武器の進化は不思議と己の心の奥底を震わせていた。胸が熱くなった。
きっと子がいれば同じ感情を抱くのだろう。

人間になりたいわけではない、確信をもって言える。
獣のままでいい、畜生のままでいい、確信をもって言える。

だが、ただほんの少しだけ、人間の殺すための殺しに憧れたのだ。
獣よりも余程、獣らしい法を以てしても縛りきれぬ、人間の混沌とした闇を、
己の身に抱きたかったのだ。

きっと、それは生を楽しむという行為なのだろう。
己が遠ざけていた、食と眠以外のそれなのだろう。

ふくろには斧が、神をも殺さんとした人間の創りだした最強の斧が眠っている。
人間の殺意の果てが眠っている。

「ありがとう」
彼は己の生の中で最後となるであろう言葉を発した。

くだらないショウのために、己は呼ばれた。
本当に本当にくだらない、人間らしいショウのために。
そして己は、殺意の果てを見せてもらった。

ありがとう、人間よ。
心の底から、ありがとうとただ伝えたかった。

人間の邪悪さ、存分に堪能させてもらった。

ならば、礼をせねばなるまい。

装備されたゴッドアックスが、目にも留まらぬ速さで振るわれる。

怪物として呼んだのだろう、己を。
ならば、見せてやろう怪物を。

全てを斬り裂く爪、全てを噛み砕く牙、全てを溶かす灼熱。
そして己の持つもう一つの爪であり、牙であり、息である斧技を。

己は獣だ。

喰らい、寝る。
それを繰り返し、何時しか果てる。
それまでは生きる、時間の概念すら認識せん愚かなる獣だ。







我は捕食者の王、龍である。
腸まで喰らい尽くしてくれるぞ、獲物共よ。











.

93怪物騙 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/29(月) 23:59:30 ID:KHFXiCs20
◇◇◇

これは怪物の物語、

人間に憧れた龍が怪物になった物語。
人間に失望した天使が怪物になった物語。


今は未だ、交わることはない。
だが、いつか交わる時が来るだろう。

此処は、

 クロスオーバー  モンスター
  交差する  怪物達の 闘技場 なのだから。





【E-3/森林/一日目/昼】

【バトルレックス@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ゴッドアックス@DQ9
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:生きる
 1:腹が膨れるまで喰らう
 2:膨れれば寝る

[備考]
オス。獣。


【D-2/草原/一日目/昼】

【天使 エンジェル@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:全員裁く

[備考]
両性具有、一人称我。

94怪物騙 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 00:00:23 ID:8qnhkEqc0
投下終了します

95 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 00:02:48 ID:8qnhkEqc0
アリス、チョコボを改めて予約させていただきます

96 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 00:05:50 ID:Sv7EBROI0
投下乙です。
自分も投下します

97 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 00:06:10 ID:Sv7EBROI0
彼らは、使命を持って生まれてくる。
彼らは、高みを目指す人間の壁である。
彼らは、ヒトにより生み出された生命体である。
彼らは、己に疑問を持たない。
彼らは、ただ短き命を全うするだけ。



                 _,,,,,,,,,_         .オッス! オラボナコン!
          _,-‐'''゙` .,i´   `'''-,,、      えっ、俺が誰かって? そりゃあお前……。
       ._,,-'"゛ |、   .|      .,,,ノ=、    .FFDQ板において長らく単独専用スレッドを持ち。
    .,,イ'^ ゙l、  .ヽ    ゙i、    /`  `'i、 .....なおかつ、数多いFFキャラクターの中でも
   ,/` ゙l、  \__ ._/'r---‐゙l、  .,,←-. │  唯一の一文字AA「@」を持つ超有名ザコモンスター
   ,|   .゙ヽ、 _,,/~・  ,|、・│`'ーV'''''''ヽ,゙l''、,!  ...人呼んで「ファイガ(で一発)のボナコン」とは俺のことよ!!(自称)
  l゙.ヽ   ,,/^・`-,,,/` ,,フ`ヽ  .| Ο  | 丿   んでまあ、何ですか? モンスターロワじゃないですか?
  .l゙  `""` |、,,-‐" ゙lr‐'′ ,i´`'',,,,《  ,,,r'"    .そりゃあ、FINAL FANTASY6影の主役と名高い俺が出ないわけには行かないっしょ
  │   .,,lヘ,---''{、    ヽ,l゙ .,゙l/'゚\,\,  ......だってほら、先輩方はともかくサボテンダーとオルトロスは同期よ? 同期。
  ゙l,  /  .ヽ._,,,,ス,、   ,ノ`'ヘi、゙l   'ヽ)    .同じFINAL FANTASY6のヤツらが出てるんだったら俺に話し通すのがスジっしょ。
   ゙l./    ゙l,,,_  ゙:  .,/`   |/    |    .こちとら何年も単独スレ構えてる重鎮だっつの、そんじょそこらのザコとは違うの。
   .ヽ、   .,i´ ゙l ̄ ゙̄ー.        │   .でさぁー話変わるけど、ねんえきでペロペロしたい女子達はいないのよぉねー
  _,,/ `'-,_  l゙   ゙l,    ゙i、 ,/゙'-、,、  .,i´  ....でも折角の大舞台だしぃー、うちらもファイガで即死する芸人ならぬ芸モンじゃないって言うかー。
   \_,,. `|ヽ,_  l゙ _,,-ー'"'{、   `'''(、    .FINAL FANTASYってカンバン背負ってるからここらでいっちょ大暴れしときたいですよねー。
  ,ィi"` ,,,,、 |   ゙゙゙゙̄ヽ,, ゙ュ_  ゙'ヽ  ,,,,l゙゙''ト  ....いやホラ、大人のジジョーで出れなかったアダマンキャリー君のこともあるやん?
   `"` .゙l,-冖'''''"""-" ‘` ゙ー、,!゙''で″     ...彼は大きい図体してるけど、ああ見えて繊細な子でね……



(中略)



で、今目の前にクッソでかい目玉が居ます。
うわー、これが噂に聞くアーリマンってモンスターかー、すごいなー。
でも羽根がないなー、死の宣告とかも打ちそうにないし。
「汝……高みを目指す者か」
んなこと言ってたらアーリマン兄貴(仮称)が喋り始めましたよ。
やったら堅物っぽい喋り方ですけど、まあいいでしょう。
「そらそうよ」
短く、返事を返していく。
すると、ほぼノータイムでさらに返事が返ってくる。
「打ち破れ、我と言う壁を」
ドMか何か……? と思いながらも。
折角の機会なのでそれに乗ることにした。

98 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 00:07:21 ID:Sv7EBROI0



(中略)



 か た い 
ありえないっしょ? いやいやちょっとまってよ。
頭にオートボウガン載せてんの? いやあれは超回避だったっけ。
目の前のアーリマンもどき(仮称)は、攻撃こそは避けてこないものの、硬い硬い。
自慢の消化液にビクともしないくらいには、すげー硬いわけよ。
いやー、参っちゃったね。ドMさんはドMさんでピクリとも動かないし。
「はー、めんどくさ」
数分前の宣言をいろいろ無視して、とりあえず地面に寝そべってみる事にした。



「師匠は言っていた――――」
落ち着いた声が聞こえたのは、その時。
「力を集中し、一点を衝き抜けろと!!」
現れた男が手に持つ槍を掲げ、大きく振りかぶって目玉に投げた。
「見事……」
えっ、マジ? と驚いていたのもつかの間。
男が投げた槍は見事に激かたアーリマン君(仮称)の目玉の中心を貫いていた。
ぽかーん、とその光景を見ながら、ぼそりと呟いた。
「あんた、何者だ?」
ふぅ、と溜息をつきながら現れた男は告げる。
「全の路を往き、万を司る者……」
その一言だけを残し、そそくさと立ち去って言った。
自分の姿を二度見ることもなく、そのまま背を向けて。
「ちょ、待てよ!」
木村○哉のモノマネ的な声を出しながら、自分はその背を追いかけていった。

【スエゾー@モンスターファームシリーズ 死亡】
※種族はすえきすえぞーでした。

【F-2/廃村/一日目/昼】
【妖精クーフーリン@真・女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:メタルキングの槍@DQ8
[所持]:ふくろ、不明支給品*1(すえぞーの)
[思考・状況]
基本:全の路を往き、万を司る
[備考]
※男
※師匠とは女神スカアハのことです(原典神話通り)

【E-3/森林/一日目/昼】

【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ、不明支給品*1
[思考・状況]
基本:目立つ
1:男を追う
[備考]
※オス
※最新のボナコンスレは↓
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/

99 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 00:07:31 ID:Sv7EBROI0
投下終了です

100 ◆5omSWLaE/2:2013/04/30(火) 07:42:58 ID:zBVHfO8QO
お二方投下お疲れ様です
>怪物騙
二体の怪物がここに参戦。その気高さとかっこよさに鳥肌が立ちました……!
魔物や悪魔にとっての、人間という存在の大きさが推し量れます
能天気な観客たちが望むような怪物の姿を、彼らは見せてくれそうです

>@
ははっボナコンって誰だよwwwwwwと思っていたら、スゴイやつだった!!
威厳溢るるすえきすえぞーに、どっかで見たことあるクーフーリン……
なんとまぁ濃いキャラの持ち主でしょう!

この五体の高い誇り、非常に見応えがありました!

101 ◆/wOAw.sZ6U:2013/04/30(火) 15:32:02 ID:l9npOH6Y0
投下乙です、バトルレックスとエンジェルかっこいいなー!って痺れてたところにボナコンww
十人十色なモンスター達が交差していきますね!

そしてゲル、モッチー、モルボルを予約させて頂きます。

102 ◆j1Wv59wPk2:2013/04/30(火) 17:36:38 ID:qJTurGm60
皆様、投下乙です!
のっけから飛ばしてますね…!流石です。
モンスター故の意思、哀しみや怒りや、心情がひしひしと伝わってくる。
笑いあり涙ありとはこの事ですねぇ。まさにバラエティに富んだロワですわ。

では、私も予約分を短いですが投下させていただきます。

103まるっきりタコじゃん! ◆j1Wv59wPk2:2013/04/30(火) 17:37:49 ID:qJTurGm60


「ここ どこ……」

目が覚めた時には、見知らぬ水の中にいた。
水の中での違い、人にはわからない違いだったが、彼(?)には長く水と親しんだ事実がある。
なぜなら彼(?)――オルトロスはタコだから。周りの水には敏感なのだ。
なのでここが自分の知らないところであるという事を、改めて理解できた。

改めて、というのは。要するにそうなることを知っていたわけで。
つい先ほど、知らないおっさんにわけのわからぬ事を言われ、わけのわからぬうちに連れてこられた。
いくらタコ頭といえど、この状況がやばい事は分かる。
むさい男に、無理矢理連れてこられて、こんな事をされる。たまったものではない。

「かわいこ おらんやん……」

いきなりの事すぎてあまり周りを見れなかったが、おそらく女の子がいるような和やかな雰囲気ではない。
所謂『ガチ』のやつだ。ちょっと頭のネジが足りないオルトロスには荷が重いタイプだ。
特に深く考える事なく、ただ川をゆったりと流れていて、たまーに遠くからみる人間の女性を見て眼福していただけのタコである。
こんな生死の境にダイレクトに触れるようなサバイバルとは無縁だった。

「ううう… むさい筋肉はきらいやー」

こんな事になってしまった原因がにくい。
元々筋肉ムキムキな男に良い印象は無かったが、今回ので決定的になった。
筋肉のおっさんはきらい。彼の中で決定的になった。

「お、なんかある」

ふと、視界の隅に何かが移る。
この水の中に自分以外の何かが浮いているようだ。
そう認識して、そういえばあのおっさんは何か支給するとかなんとか言っていたような。と思い出す。
触手で器用に引き寄せ、中身を確認し………

「ダメじゃん!」

そう叫んだ。
オルトロスがが水の中に配置されたので、もちろん袋も水の中。
中には何やらディスクのようなものが入っている。しかし水没してしまっては使い物にならないのではないだろうか。
機械にはあまり詳しいとはいえないオルトロスであったがさすがに水没した機械がまともに動くとは思えなかった。
そもそも使い方が分からない。一体あのおっさんは何を思ってこんなものを支給したのか。
オルトロスは誰にも聞こえない愚痴をぶつぶつとこぼしていた。

104まるっきりタコじゃん! ◆j1Wv59wPk2:2013/04/30(火) 17:38:27 ID:qJTurGm60
「はぁ……」

とりあえず彼は大きく溜息(のようなもの)をついて、今後の方針をそれとなく決めた。
その方針に従って、彼は―――

「やってられんわー」

更に深く潜っていった。

この場所に、いったいどんなモンスターがいるのかは分からない。
だが、水の中というのは少なからず多くの相手に対しアドバンテージになるはずだ。
故に水の中に入るモンスターは限られるだろうから、下手に動くより安全といえる。

彼は、サバイバルなんてできるような性格でも器でもない。
しかし脱出の手段が無いであろう事も、しっかりと理解していた。
だから、できるだけ面倒を避ける手段をとった。
この湖の奥深くでしばらく事が進むのを待つ、というチキンプレイだ。

観客にとっては失望されるようなスタンスかもしれない。
だが、自分の命が一番かわいいのは当たり前だ。悪いか。
誰に言うでもなく、オルトロスは心の中で悪態をつく。

文句ならあのむさい筋肉おっさんに言え。無理矢理連れてこられて、バカ正直に争いなんてしません。する方がアホなんです。

「タコ野郎はタコらしくタコ壷に引きこもってやるー」

興味の無い危険な事はしない主義。
そうしてオルトロスは自虐しながら湖の深い底に潜っていった。


【F-6/湖の中/一日目/昼】

【オルトロス@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:
[所持]:ふくろ(わざマシン)
[思考・状況]
基本:戦いをできるだけ避ける
 1:湖の底で時がすぎるのを待つ。

※わざマシンが水没しても使用可能かどうかは後続の人に任せます
 また、中身も後続の人に任せます

【備考】
当然オス。 特に主人公一行との戦闘経験はない、川に住むタコ。関西弁で、女の子が好き。

105 ◆j1Wv59wPk2:2013/04/30(火) 17:38:49 ID:qJTurGm60
投下終了です

106 ◆5omSWLaE/2:2013/04/30(火) 18:31:00 ID:zBVHfO8QO
投下お疲れ様です
判断としては賢明だけど、ズルいぞタコ!
そんで支給品は以外にも技マシンか……
種類が豊富な分、色んな可能性が期待出来ますねぇ(水で壊れてない場合に限る)

107 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 21:00:31 ID:Sv7EBROI0
はぐれメタル、ベヒーモス、デカラビア、ゴーレム予約します。
このレスの予約を含めた残り未予約メンバーです。

1/7【ポケットモンスターシリーズ】
〇ルカリオ

1/7【真・女神転生シリーズ】
〇魔獣ケルベロス

1/5【デジタルモンスターシリーズ】
〇ワームモン

完売
【モンスターファームシリーズ】
【ドラゴンクエストシリーズ】
【ファイナルファンタジーシリーズ】

0/10【書き手枠】(完売、☆は未投下)
〇グレイシア@ポケットモンスターシリーズ/☆コイキング@ポケットモンスターシリーズ
〇ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ/☆凶鳥モーショボー@真・女神転生シリーズ
☆ギリメカラ@メガテンシリーズ/☆ハム@モンスターファームシリーズ
☆ヒンバス@ポケットモンスターシリーズ/☆幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ
〇ジュペッタ@ポケットモンスターシリーズ/☆エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ

108 ◆BotyFm3mMY:2013/04/30(火) 21:39:10 ID:Sv7EBROI0
あっ、良く見たらはぐれメタル予約されてるェェー……
確認不足で申し訳ない。

ベヒーモス、デカラビア、ゴーレムの三人で予約させていただきます。

109 ◆9eFMlaiqFQ:2013/04/30(火) 23:24:03 ID:Sjy94kj20
ルカリオ 予約します

110human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:48:01 ID:8qnhkEqc0
チョコボ、アリス 投下します

111human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:48:25 ID:8qnhkEqc0
【生】

僕は怖くなって、森の中をただただ走っていた。
自分で踏んだ枝が折れるミシリという音ですら、僕は胸がキリキリとなっている。
立ち止まって、辺りを見回して、誰もいないことを確認したい、
でも、立ち止まったら、誰かに殺されてしまう。
走り続けないといけない、じゃないと僕は逃げられない。
枝がミシリと折れる度に、僕は小さい小さい悲鳴を漏らす。
ミシリミシリと、僕の心も軋んでいく。

森は僕の故郷だった。
お父さんがいて、お母さんがいて、兄弟がいて、とっても幸せだった。
この森はそうじゃない。
誰がいるかわからないことが、とても怖かった。

人間は僕のご主人様で、そして友達だった。
僕よりも小さい男の子を乗せて、僕は草原を駆け巡った。

彼は、モリーは違う。僕が見たことのない人間だ。
彼にとって僕達は者ではなく、物だ。
名前も知らない彼が命を奪われてしまったように、
僕の命だって、用が尽きたら奪ってしまうのだろう。

そして何よりも、こんなにも走るのが苦しいことが僕は嫌だった。
あのどこまでも自由な大地も、心地良い風が草によって奏でる耳に心地良いあのオーケストラも、
一歩一歩を進む度に、めまぐるしく変わるあの美しい花畑もここには無い。

ここは牢獄で、悲鳴が響き渡り、そして鈍い赤色で描かれた死の光景が視界一杯に拡がる。
戦争……そう、戦争だ。
男の子のお爺さんが語るお伽話の世界の物語、僕の周りにあるのはそれなんだ。

病気でも事故でもなく、隣にいる誰かが死神となる暗黒の夢。
怖い、本当に怖い。
だから、走って走って…………森を抜けだして、閉塞感のある木の牢獄を抜け出して、
周りいっぱいに拡がる草原の中で僕は安心したんだ。

見慣れた光景。
ああ、人間がいる。

草原を撫ぜる優しい風に、目の前の女の子の金髪がたなびく。
青いワンピースから伸びた透き通るような白い肌は、太陽の光に負けないぐらいに僕には眩しく映った。

ゆっくりと彼女は僕に近づく、
だから僕もゆっくりと彼女の元に歩いて行ったんだ。

人間がいることは僕にとって、本当に嬉しかったんだ。

「クエッ!!」

彼女を……人間を乗せていれば、
僕はきっと、死よりももっともっと早く走ることが出来るんだから。

112human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:48:55 ID:8qnhkEqc0





そして僕は彼女の目を見て、見てしまった。

燃えたぎる炎の様な紅い瞳には、
氷の様に透き通った蒼い瞳には、
全てを射抜く雷のようなその金の瞳には、

生きた僕、いや世界自体が映っていない。
映っているのは虚無だ、死をも超えた闇だ。

輝きと共に、その瞳には暗黒が映っている。



「ねぇ……トリさん、鬼ごっこしようよ」
水蜜の様に甘い声が僕を遊びに誘う前に、僕は一目散に駆け出した。

「じゃあアリスが鬼ねー、い〜ち……」

目の前にあったのは死だ。


愛すべきモンスター……モリーの言葉がぐるぐると頭を駆け巡る。
人間のように笑えるのならば、僕は狂ったように笑っていただろう。


「さぁ〜ん……」


彼女がそんなものであってたまるか。


「ろぉ〜く……」


ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

聞きなれぬ音に僕は振り返りたくなる、
でも振り返ったならば……僕はきっと後悔するだろう。

何よりも優先して、生きるために走り続けなければならない。

「きゅ〜〜う……」

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ






「じゅう!!」

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ




「じゃあ……行くよ!!」
彼女の声と共に、足元にカサリという感覚を感じた。
さっきまで、何もなかった草が枯れている。



死が近づいてきている。

113human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:50:04 ID:8qnhkEqc0
【死】

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

「トリさんはどこにいったのかなー」
無邪気な笑みを浮かべて、逃げたチョコボを探す少女。
彼女を見て、誰が闘技場に放り込まれた怪物だと思うだろうか、いや誰も思いはしない。
誰もが彼女を見れば、モリーは怪物だらけの闘技場に少女を放り込む性的倒錯者と思うに違いない。
名簿を見た時点で、誘拐罪で官憲も動くってそれ一番言われているから。
大体、あのハゲとかヒゲとかまさしく変態の象徴だし、バニーを侍らかしているところとか性的異常者の象徴だよね、ステハゲは死んで、どうぞ。

閑話休題。

では何故、彼女に対しモリーは怪物と呼んだか、誰よりも人間らしい彼女を怪物と呼んだか。

簡単なことだ、神話の時代から続く人間の根源のそれだ。
死んだことのある人間はいる、だが死ねばどうなるか知っている人間はいない。
生きる限り決して知ることの出来ない究極の未知、それが死。

人間は古くから、未知に対し悪魔や神という種を与えてきた。
洪水から八岐の大蛇という怪物が生まれたように、
人間は永遠の未知たる彼女に、怪物という種を与えたのだ。



だが、怪物という安寧の既知であることを拒むのならば、真の名前を教えよう。

死んだままに動き、死を友とし、悪魔の愛を受けたあらゆる世界に在る少女。
彼女の名はアリス。
敢えて言うのならば、彼女もまた人間。
魔人アリスである。






【B-7/草原/一日目/昼】

【チョコボ@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康、恐怖
[装備]:不明
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:逃


    げ
         ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

114human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:50:14 ID:8qnhkEqc0

















「トリさん み ぃ つ け た」

115human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:50:38 ID:8qnhkEqc0

【生/死】

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
チェーンソーが唸りを上げて、チョコボの脚を切り刻む。

「ク"ク"ク"ク"ク"ク"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"ッッッ!!!!!!!!!!!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

笑いながら魔人アリスは切り刻む。
アリスはチョコボに対して何の恨みも無い、この殺し合いに優勝するつもりすら無い。
ただ、楽しいから切り刻んでいる。

「捕まったトリさんはーーーひょうほんの刑だー!!」

チョコボの脳裏を過るのは、
一番楽しかったこ痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛

いや、あまりの激痛に思考すらも、塗り潰される。
思い出に現在の苦痛を忘れることも許されずに、ただチェーンソーが唸りを上げ続ける。

彼は気づいていただろうか、切り刻まれる以前からあった生命力の低下に。

エナジードレイン、生命力と魔力を相手から奪い取り自分の物とする魔法。
彼は遭遇の時点で、死なない程度に調節してそれを掛けられていた。

10秒の猶予をもらったチョコボの脚でも逃げられなかったのは、そのためである。

最も、全てを苦痛で塗り潰された彼にそんなことを言ってもしょうがない。
ただ、夢幻の住人からは逃げられなかった、それだけだ。

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

「あしをきったらーくしざしだー」

地べたに這い蹲ったチョコボの羽根に、魔人の腕力で振るわれた樹の枝が2本ずつ突き刺さる。

「グエ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙ッ゙!!!!」

地面に突き刺さった状態では、暴れることすら出来ない。
ただただ、涙を浮かべ、思い出に逃げることも出来ず、苦痛だけを味わい続ける。

アリスへと抱いていた恐怖、痛みへの憎悪。
感情は全て、苦痛の中に消えていく。


「……あきちゃった」
バタバタとわめくチョコボをしばらく眺めていたアリスは突然に行為の中止を宣言した。
樹の枝を抜き、チョコボの目を見据え、天使のほほえみを浮かべる。

「グェ……?」
痛みは未だ続く、だがアリスが動きを止めるのを見て……
彼は抱いてしまった、助かるのではないかという思いを。

脚は切られている、羽根の力だけで体全身をズルズルと引き摺って、アリスから逃げようとする。

アリスは……一歩も動かなかった。



「トリさんは……」

水蜜の声は

「い〜らないっ!」

死刑を告げた。



ジハードがチョコボを飲み込み、そして死んだ。

【チョコボ@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】

116human in the box ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:51:09 ID:8qnhkEqc0



【死死】

「アリスの友だちはねーみんな、死んでるの」
チョコボの亡骸、いや最高威力の万能攻撃は亡骸が残ることすら許さなかった。
ただ抉られた大地の前で、アリスは独り言をただ呟く。

「でもねー、友だちにはねーどうぶつはいらないんだーやっぱりにんげんのほうがいいのー」

「だから、いらない」

氷のような身勝手な言葉。
だが、それこそが……それこそが、彼女という怪物が他の怪物と一線を画する証左。

本能にない欲望。
その身勝手さ。


嗚呼、人間のそれだ。


「あのねー……」


だから彼女という怪物はここにいる。


「アリス、友だちが欲しいの……だから…………」


君達もよく知る人間という怪物が一番恐ろしいのだから。





「 死 ん で く れ る ?」

【B-7/草原/一日目/昼】

【アリス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:チェーンソー
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:遊ぶ

[備考]
チョコボのふくろはジハードで消えました。

117 ◆3g7ttdMh3Q:2013/04/30(火) 23:51:55 ID:8qnhkEqc0
投下終了です。
キングスライム、ルカリオを予約します。

118名無しさん:2013/05/01(水) 00:02:13 ID:qpF3ifbU0
投下おギギギギギギギギギギ
死にます(アリス信者並の感想

あと、ルカリオは予約されてますよ

119 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 00:04:00 ID:tsgpDGnA0
失礼しました、魔獣ケルベロスとキングスライムで改めて予約します。

120名無しさん:2013/05/01(水) 00:13:49 ID:pk/aICj.0
投下乙です
魔“人”アリスこええええギギギギギギギギギギ
チョコボの独白やら死亡→死死とかどこまでも恐ろしい…

121 ◆5omSWLaE/2:2013/05/01(水) 00:17:55 ID:.zMxOQO60
投下お疲れ様です
こ、怖い……!! 怖い!!
白昼の草原というのどかな場所で、まさかこれほどの恐怖を見ることが出来るとは……
読んでいて無性に不安になる文章……いやぁ、凄すぎます……!

122 ◆BotyFm3mMY:2013/05/01(水) 00:23:45 ID:fEFqtZSA0
重ね重ねすいません。
>>107の未予約まとめですが、◆9n氏のルカリオ予約が抜けていました。

誤情報を流してしまい、スレ主さんおよび◆9e氏に多大な迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
大変申し訳ありませんでした。

123 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/01(水) 00:34:31 ID:QG9d2d1o0
ギギギギギギ……アリスちゃん本当恐ろしいよアリスちゃん……!!
アリスちゃんにびびりながらも、ゲル、モルボル、モッチーを投下させて頂きます。

124ハートとカタチは重ならない ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/01(水) 00:36:40 ID:QG9d2d1o0
唸りぶつかり払い合う触手。血に餓えた獣の争いでもなく、恐怖に飲み込まれた暴走でもなく、両者は冷静に、平素の状態で命の奪い合いを行っていた。

「どなたか存じませぬが、きっと名のある王なのでしょう。こんな状況でお目にかかるのは無念でなりませぬが」

感情の籠もらぬ声で、白く濁った半透明な鞭が声を投げた相手が居た場所に振り落ちる。

「ワシも、久方ぶりに礼儀を弁えた魔物に会えて嬉しいぞ」

ぬめりと透けた陽光を受けててらてら光る緑色の触手。束ねて破壊力を増したそれが横凪ぎに迫る。
踏張る足も持たぬはずの魔物は、緑色の触手が体を打ち付けるすんでのところで跳躍し、また平然と佇んだ。
白と金で構成された、ゼリーのような体。胸の部分に黄金の命がゆらめく以外、僅かながら人型を取っているだけの不定形な魔物。

「惜しい、実に惜しいぞ……なあ、このワシ、モルボルキングの下に仕えぬか」

モルボルキングと名乗った魔物の声は、実に残念そうに彩られていた。

「然らばこの狼藉も水に流そう。貴様のようなワシを恐れずそれでいて畏れる勇士、是非とも我が臣として招き入れたい」

食虫植物の口から四方八方に触手が伸びた、恐ろしい風体の魔物は似付かわしくない威厳を持って白と金の魔物へ不遜に打診する。頭上に掲げられた王冠と口振りを見るに、彼は王らしい。

「私ごときにはもったいないお褒めの言葉を賜るとは……」

黄金の胸に手をあてこうべを垂れ、敬服を示す。

「しかし、王よ、モルボルキングよ、残念ながら私が契約する主人はただ一人ゆえ、やはり首を縦に振る訳には行きませぬ」

かぶりをふって拒絶を示す。仕草こそ、高貴なニンゲンのそれなのだが、モルボルキングと違い声には一貫して何の色も混ぜられてはいない。

「では、問答といこうではないか」

ふしゅるるる……毒の吐息を漏らして、モルボルキングは再び攻撃を始めた。魔物もまた、驚きもせず応戦する。
二本の触手が絡みあい、拮抗状態を生み出した。魔物の右腕にあたる部分と、モルボルキングの触手の一本。

「貴様の主人は、どのような者なのだ?」

ゲルの腕はおそらく二本、対するモルボルキングは腕は持たぬが無数の触手を操る。

「金に汚い女にございます。我らモンスターを道具と呼び、毎日金を稼ぐことに執心している者です」

空いた左の腕は、触手が捉えにかかるのをのらりくらりと躱し、ゲルに攻撃が届くことを防いでいる。

「なんと!そのような矮小な女が貴様の主人だと!?悪いことは言わぬ、ワシの下へくるがいい、貴様に相応しき待遇でもって迎え入れてやろう!」

つばぜり合いの様相で絡みあっていた触手がにわかに震える。

「確かにどうしようもないニンゲンです、だが、私を円盤石でこの世に呼び出し、死するそのときまで金を稼ぐ道具と契約をした者なのです」

125ハートとカタチは重ならない ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/01(水) 00:37:26 ID:QG9d2d1o0
ジリジリと迫る、立て板に水が流れるような淀みのない台詞。

「それまでは決して、不慮の事故では死なさぬと、固く誓った者なのです」

とうとう左腕も王の触手に拘束され、その半透明の体は虚空に固定される。

「では、その者に売られてしまったのであろう。こんな浅ましいニンゲンの催しに招かれているのが何よりの証拠だ」

顔のない顔が、モルボルキングをじっと見据えた。

「それは有り得ないことです」

ぬるり、真白の体が脱力し戒めを抜け出し、逆にモルボルキングの体を包み込まんと広がる。

「……あれは、あの女は『契約違反』を蛇蝎のごとく嫌っておりました。多分『契約違反』で今の矮小なニンゲンに身を落としたのでしょうね」

以前彼女は、魔物が修行地で負傷して帰ってきたとき、泣きながら、「道具のくせに、ここで勝手に死んだら契約違反だ!死ぬな!」と喚いて病院にまで付き添っていた。
そこに無味乾燥とした声しかなくとも、思い返した彼なりの苦笑が見えた。

「同情も、信頼もありませぬが、今の『契約違反』の状態、王はどう御覧になるでしょうか」

ドーム状に広がった粘度の高い液体のなかで、モルボルキングは考察する。

「分からぬな、ニンゲンのことなんぞ」

が、一瞬で思考放棄した。彼はさしてニンゲンを憎んではいなかった。だからと言って、興味もなかった。
ニンゲンなど、彼が一息ふるえば正体を失い勝手に自滅する馬鹿な生きものでしかなかったのだ。
――1人、例外はいたが。

「私は、あれが捕らえられたか、殺されたのではないかと、考えているのです」

心が見えない声で語られたそれこそが、彼を突き動かす理由であった。

「捕らえられていたならば、契約のために助けねばなりません」

それが契約だから。

「殺されていたならば、死体を確認して契約を終了させねばなりません」

契約は最後まで。

モルボルキングの触手が、体を内側から無数に貫くが、声は変わらない。

「我らを招いた男を問いたださねばすまない。さすれば私のすることは一つ、皆殺しにして生き残りあの男と面会する、これだけです」

「難儀というか……回りくどい男よの。あいわかった!貴様を臣に迎えるのは諦めよう!」

大きな声で宣言し、モルボルキングが触手を蠢かせドームを打ち破り、白い体が破片となって飛び散った。バラバラの体は、雨のように大地に降り注ぐ。

「下賎なニンゲンの忠臣よ、貴様の問いと使命、王を志すワシが直々に引き受けてやろうではないか」

一際遠くに落ちた黄金の命、心を見つめて、王はひとりごちる。
モルボルキングと名乗ったこの魔物は、実のところただのモルボルである。王というものに憧れ、目指していた最中にここに呼ばれた。
頭頂に乗った王冠も、偶々ふくろの中に入っていただけ。
モルボルはそれを見て、王と名乗る男が自身を手ずから討伐しにきた時のことを再度思い出し、この殺し合いの中でも変わらず王を目指そうと決意したのだ。
それを思うと、先刻の魔物を失ったのは惜しかった。初めて、召し抱えられる臣下になり得ただろう魔物。
惜しむべきその亡骸に背を向けて、せめて意志は継いでやろうと歩き出す。

126ハートとカタチは重ならない ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/01(水) 00:38:58 ID:QG9d2d1o0

「――いえ、それには及びませんよ」

「な!?」

無色透明の声に振り向けば、きらきらと、どこよりも輝いていたそれを覆い尽くして、四散していた白い破片が集っていた。
人型をしていないそれに呆気に取られた王に隙が生まれる。

「おさらばです、王よ!」

その形はガトリング、ニンゲンが使う武器の一つ。砲身は己、弾丸も己。
彼の、ゲル族の形は本来人型をなしていない。ただ人を真似ているだけ。
体内のコアさえ健在であれば、如何様にでも姿形を変えられるのだ。




「――ハァーイ!!オニーサン達ィ!戦イナンテヤメテワタシト一緒ニえくささいず致シマ、ショォー!!」


「「は?」」


今まさに静かな戦いに決着が!というその時、警戒な音楽とともに第三者が割り込んできた。
余りにも能天気で突拍子もなくて、両者とも戦いや使命を忘れて呆然としている。

「ハァーイ、わんつーわんつーー!!はむノわんつーニモ負ケズニィ!両手両足ヲパンパン!ハイッ!強ク!正シク!美シクゥ!!」

両手両足を持たぬモルボルの王を目指すものとガトリングは、言葉も出せずに音楽を掻き鳴らし歌って踊る奇妙なモンスターをぽかんと眺めていた。







【F-7/草原中央/一日目/昼】

【ゲル(ゲルキゾク)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:唖然
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:自身のブリーダーの安否確認のため全員を殺しモリーと面会する
 1:エクササイズ……?

[備考]
オス。金にがめついブリーダーに『道具』として飼われていた。冷徹だが冷血ではない。種族はゲルキゾク(ゲル×ガリ)丁寧な口調で一人称は「私」

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:呆然
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いの中でも王になることを目指す。忠臣がほしい。
 1:どうなってるんだこいつは

[備考]
オス。ただのモルボルであったが自分を討伐しにきた王を名乗る男に憧れて王を目指している。王らしい尊大な喋り方を心がけていて一人称は「ワシ」

【モッチー(カロリーナ)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:スーパーハイテンション
[装備]:ラジカセ@現実(エクササイズなCDが入っている)
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:いいからエクササイズだ!!
 

[備考]
メス。よくわからないがエクササイズに並々ならぬ情熱を抱いている。種族はカロリーナ(特典CDでのみ再生されるモンスター)で片言で喋る。一人称は「ワタシ」


《支給品説明》
【スライムのかんむり@ドラゴンクエスト】
モルボルに支給されたもの。キングスライムがかぶってるアレとおそろい。

【ラジカセ@現実】
エクササイズの番組なんかで出てくるあのラジカセ。アメリカっぽいテンションの音楽が流れる。

127 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/01(水) 00:41:01 ID:QG9d2d1o0
投下終了です
問題等ありましたらご指摘いただければ幸いです。

128 ◆5omSWLaE/2:2013/05/01(水) 01:10:47 ID:.zMxOQO60
投下お疲れ様です
『どうしようもないニンゲン』に高い忠誠を持つゲルキゾク
モルボルとの問答で、彼がブリーダーに抱く愛を感じられました
モルボルとカロリーナもいいキャラしてます! 特の後者の存在感が高すぎて吹き出しました。

129I Wanna Be Your Dog/Emilie Simon ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 09:23:02 ID:tsgpDGnA0
投下乙です。
しっかりとした描写がされているからこそ、
カロリーナ姉貴の乱入が効果的になされていますね、
くっそ笑いました。

自分もキングスライムと魔獣ケルベロスを投下します。

130I Wanna Be Your Dog ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 09:24:11 ID:tsgpDGnA0
/Emilie Simonは不要です、失礼しました。

タブンネを殺すことで、キングスライムの溜飲は若干下がっていた。
殺害、命を踏みにじる行為こそ王たる者の至上の贅沢であろう。
だからといって、先程からの王に対する非礼全てを発散できたわけではない。
先程殺したタブンネを再度踏み潰す。
命への暴虐こそが王の特権だ。

「ちょっと、やめないか」
そんな暴虐の王を戒める狼が一匹。
種族名をケルベロスといった。
その鋭い眼光は心臓の弱い人間ならば、ひと睨みで全身から体液を垂れ流し死亡したことだろう。
だが、キングスライムはその狼の眼光を真正面から受け止める。
自称王は伊達ではないのだ。

「…………命令だと、ボクは王様だぞ!!」
全身を怒りに震わせ、いやスライムだから震えている可能性も存在するが、
とにかくキングスライムは激怒した。改めて、激怒した。
でもタブンネとキンスラはズッ友だょ……!!

「王か…………」
キングスライムの怒りに対し、ケルベロスはただ嘲りの笑みを浮かべるだけ。

「ふん、鎖に繋がれた王がいるものか。俺もお前もただの悪魔に過ぎん」
ケルベロスの挑発に対し、キングスライムは更に怒りを深める。
だが、ケルベロス自身もまた、心の底から煮えたぎる様な憎悪を抑えきれずにいた。

過去に彼に何があったのか、それは今の彼にとって重要なことではない。
目の前に敵がいる、戦う理由はそれだけで十分だ。


「グオオオオオオオオオオオッ!!!」
獣の咆哮と共に、ケルベロスは跳んだ。

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」
キングスライムもまた、跳んだ。
向けられた憎悪など意に介すことはない、
王が庶民の感情に付き合うことがあるか、いや無い。
如何なる感情を抱かれようが、王は我を通すのだ。

131I Wanna Be Your Dog ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 09:24:37 ID:tsgpDGnA0


ケルベロスのアイアンクロウごと、その巨体でキングスライムは押しつぶす。
爪は肉体を抉り取り、血の代わりに中身の体液が漏れていく。
だが、それを意に介しはしない。

「王様ナメんなバーーーーーカ!!」

痛みも全て、敵ごと押しつぶしてしまうのだ。
事実、ケルベロスはキングスライムの巨体に潰されている。
やはり、調子が悪かっただけだ。

ケルベロスを下敷きにしながら、キングスライムはほくそ笑む。

が、その二秒後にキングスライムの笑みは消えることとなる。
「通常攻撃では……駄目か」
潰されながらも、ケルベロスの声色は平常なものだった。

下から冠を突き抜けて天まで届くような業火が立ち昇った。
キングスライムに耐性が無ければ即死だっただろう、
だが、幸いにも彼はその耐性のお陰で狼の上から立ち退くだけで済んだ。
だが、ケルベロスに自由を与えたのがいけなかった。
虚空爪激、虚無すらも斬り裂くケルベロスの爪がキングスライムを襲う。
だが、キングスライムはその攻撃を平然と受け止めていた。

「……レベルアップだ!!」
歓喜の雄叫びは、ケルベロスの耳にも障る程の大声だった。
そう、キングスライムも無意識の内に、生きたいという願いがタブンネ殺しのレベルアップで覚えたスクルトを全積みさせていた。
悪魔と補助魔法との相性は悪いのだから、そりゃ攻撃を受け止められるよ、たまげたなぁ。

「王様によりふさわしいスーパーパワー!!」
キングスライムの脳内でファンファーレが鳴り渡る、耳障りな程に鳴り渡る。
ファンファーレの音色は己が新しく覚えた特技の使い方を教えてくれる。

「ア ギ ダ イ ン!!」
「メ ラ ゾ ー マ!!」

物理攻撃が効かぬと見たケルベロスは再度炎を放つ、それに対し、キングスライムもまた、炎で応戦する。
もちろん、己の耐性ならば受け止めることが出来るだろう。
だが、王が煤で汚れるなどあってはならない。
傲慢でなければ、スライムの王ではなれないのだ。

炎は衝突し爆発四散。
閃光が周囲一帯に広がった、ケルベロスもキングスライムもその輝きに目を背けざるをえない。

視力を取り戻したのは、キングスライムが先だった。
「王様をバカにした者は…………死刑!!」
死刑執行は己の手で行わなければならない、キングスライムの巨体が宙を舞った。

132I Wanna Be Your Dog ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 09:24:56 ID:tsgpDGnA0
「…………ああ、死刑だ」
この瞬間を待っていたとでも言いたげに、ケルベロスは袋から石を取り出す。

デカジャの効果が込められた石が、キングスライムの鉄壁の守護を打ち消していく。

「お前がな」

キングスライムの巨体が再度宙を舞った。
カウンター……いや、猛反撃だ。

「ピギーッ!」
悲鳴と共に、キングスライムの肉体は再度液状化する。
だが、もうきあいのハチマキは存在しない。

しかしキングスライムは未だ死んではいなかった、レベルアップによって最大HPが上昇していたのだ。
彼は液状化した状態のまま再び動き出す。
そして、河の中へ飛び込んだ。

それは下賤の者に命を取らせない王としてのプライドか、あるいは、生き残るために体がはじき出した計算か。
どちらにせよ、ケルベロスは彼の命を奪うことはできなかった。
最も、河の流れがキングスライムを殺すかもしれないが。

【D-7/河/一日目/日中】

【キングスライム@ドラゴンクエスト】
[状態]:肉体損傷(大)魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(拡声器@現実)
[思考・状況]
基本:主催者を粛正する
 1:モリーをたおすために下僕を集める
 2:王様であるボクに無礼は許さない

[備考]
オス。キングに生まれたというだけで偉そうにしている。頭が悪い。一人称は「ボク」。



昔、彼は飼い犬だった。
ただの何の変哲もないシベリアンハスキーだった。
だが、ある日悪魔によって彼の飼い主が殺され、彼もまた重症をおった。

彼の命を救ったのもまた、悪魔の力だった。
邪教の館の主に実験台として拾われた彼は、悪魔と合体することで、魔獣ケルベロスの力を手に入れた。

それ以来彼は、「デビルバスター」──悪魔を破壊する者として、日夜悪魔と戦い続けている。
何年、何十年戦ったか、そんなこと彼は意に介さない。
彼が死ぬその日まで、彼は悪魔を殺し続けるのだ。
何故ならば、彼は自分を飼っていた飼い主家族のことが大好きだったのだから。
憎悪が彼の心を埋め尽くす。

だからこそ、

「ゆっくりと、眠れ」
ケルベロスはタブンネの為に地面に穴を掘り、その中に彼を埋めた。
タブンネもまた、ケルベロスにとっては破壊の対象であっただろう。
それでも、彼はタブンネがキングスライムを治療する様子を見てしまったのだ。
憎悪の炎を荒れ狂わせるほどに、彼は元々愛を持っていたのだ。
だから、裏切られた彼を野ざらしにしておくのは躊躇われた。

「満足だったか、これで?」
タブンネ……という声は、きっとケルベロスだけに聞こえたのだろう。

「悪魔殺すべし、慈悲はない」
言い聞かせるように、何度も呟く。
モリーなど関係ない、むしろ感謝するべきだろう。
この狩場に連れてきてもらったのだから。

「俺もお前も……ただの悪魔だ」

【D-7/橋付近/一日目/昼】

【魔獣 ケルベロス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康 肉体損傷(小) 魔力消費(小)
[装備]:無し
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:悪魔を殺して回る、慈悲はない。

[備考]
雄、一人称俺。
元はただのシベリアンハスキーだったが、飼い主一家が殺され、
その後、謎のアクマソウルと合体して、デビルバスターとなり、悪魔を殺して回るようになった。

133I Wanna Be Your Dog ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 09:25:41 ID:tsgpDGnA0
投下終了します。
ワームモンを予約します。

134 ◆5omSWLaE/2:2013/05/01(水) 10:06:28 ID:F3nksEWsO
投下お疲れ様です
デビルバスターのケルベロス! こいつぁカッコいいですねぇ……
そしてちゃっかりレベルアップしてるキングスライムがしぶとい!
まだまだ引っ掻き回してくれそうな予感……!

135ワームモン「俺の体には全進化の秘法をつぎ込んだ」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 11:26:16 ID:tsgpDGnA0
ワームモンを投下します

136ワームモン「俺の体には全進化の秘法をつぎ込んだ」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 11:26:58 ID:tsgpDGnA0






カシャ




カシャ








             ,ゝ-‐-.、
            ,ィ:" '"_ゝヘヽ
           i r"~~)^^r''l
           | `ー"へ`リ      スティングモンに進化したンゴwwwwwwwwww
           ゝr" ヾ賛シ
           / `ー-1'
     ,r''" ̄~`r'"~::`ー--‐^ー-、_
    i!     ,!   ~~`i: i"    `:、
    !、-―-、/      i: i    i:  ヽ
    //:::::::::::/ゞ、  __,,.j i、_   !ー'T
   f-'::::::::,'^!'''"~`T;:;:;::;;:;:| |;:;:::::_ィ:::::::::ヽ
  r"~~`ヾ/ ヾ' ( ( ;:三三三ミヾi`、::::::::ゝ
  | _ ,/   i!;彡-''"i~ r⌒i、`y! Y''" 」
  ,i!~ ミ;i!    |--―''ゝ-ゝ-'-Y |  t''"_,!
  | |:::::::ノ    /~ ̄ ̄`ー―-‐'''ヽ  `{~::::::ヽ
  !,,.... `!   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!  ヾ,.:::::ヽ
  ゞ,r-J   i::_;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!    ヾr‐ヽ
  |_|:/    ,.ゝ  ~`ヾ、:::::::::::;:r'"`|     `lJヾ!
  ヽ⊃    i!       i::::;/   |       ヾJl
        |      /-r     |

【ワームモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:???

[備考]
オス。スティングモンに進化しました。
進化は永続かも知れませんし、一定の時間で効果が切れてしまうかもわかりません。

137ワームモン「俺の体には全進化の秘法をつぎ込んだ」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 11:28:04 ID:tsgpDGnA0
投下終了します、
問題が有りましたら、対応させていただきます。

138ワームモン「俺の体には全進化の秘法をつぎ込んだ」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/01(水) 11:30:09 ID:tsgpDGnA0
現在位置は【D-3/森林/一日目/昼】です、失礼しました。

139 ◆5omSWLaE/2:2013/05/01(水) 12:36:03 ID:F3nksEWsO
投下お疲れ様です
クッソワロタwwwwwwwwwwwww

タイトルから察するに、支給品は『進化の秘宝』だと思われます
なのでまったく問題ありません

140 ◆1eZNmJGbgM:2013/05/01(水) 20:48:37 ID:pbeRmam.0
皆様投下お疲れ様です!自分も遅くなりましたが投下します。

141天の邪鬼:2013/05/01(水) 20:49:20 ID:pbeRmam.0
「知らねえよ、連中に勝てるかどうかなんて。
俺はただな、神や悪魔『ごとき』が人間サマの生き方を決めちまうのが我慢ならねえだけだ。
勝つにしろ負けるにしろ、アイツラにゃせめて一泡吹かせてやる」


あの男は、そんなことを言っていた。


こんな場所に呼び出される前の最後の記憶は、試験管の中だった。
あのサマナーがワシを邪教の館にて合体材料に回し、今まさに儀式が始まろうとしている所だった。
先に断っておくが、合体材料にされることに対して特に怒りはない。良い気分がしないのは当然ではあるが、
ワシを元にして召喚されるのが我が主、魔王マーラ様であらせれるのなら断る理由などあるはずもない。
これも定めと思い意を決して所定の場所へ移動し、悪魔合体が始まるのを待つ。
まずは前方にある左右の仲魔が共に分解され、吸い込まれて行く。そして最後にワシの番が来る。

だがその時に異変が起こった。ワシもそれほど多く悪魔合体の現場を見てはいないが、
明らかに今までの合体とは異なる事態というのが読み取れた。
普段は泰然とした館の主が狼狽なのか興奮なのかは分からんがせわしなく器具を操作し始め、あの男も困惑した顔をしている。
周囲からは奇妙な発光が起こり、ワシの入っている容器が異常な振動を起こし不気味な音が響く。
これから何が起こるのかを見届けたくはあったが、ワシの意識があったのもそこまでであった。
心残りがあるとすれば、この体をマーラ様の依り代に捧げられなかった事である。

次に意識を取り戻した時には、ワシの四肢(と鼻)は鎖に繋がれており妙な格好をしたハゲでヒゲの人間が何やら喋っておった。
内容は特別におかしな事を言ってはいない。自分以外のモンスターを倒し、生き残れというものだ。
そんなこと魔界では一般常識であり、属性がCHAOS側ではないワシにとっても当たり前な話である。

142天の邪鬼:2013/05/01(水) 20:50:36 ID:pbeRmam.0
 
問題は、それをあのニンゲンに押し付けられ、強いられている事なのだ。

これがこの世界のコトワリであるならば納得もしよう。
あるいは天界と魔界の最終戦争であるならば、喜んで先陣を任されよう。
我が主、マーラ様の戦車となりて、憎き魔神や破壊神へ向かって進軍もしよう。

だがこのニンゲンは、ワシらに殺し合いを強制させようとしている。
それが本当に必要ならば、わざわざこんな鎖で縛り付けたり、
魔物の一人を見せしめにして警告したりなどしなくても良いではないか。
いまワシらのいる世界が「そういう」コトワリでないから、策を弄して脅迫して無理やり戦わせようとしているのではないか。

と、ここまで考えてふと以前にあのサマナーに問いかけた内容を思い出す。
なぜお前は戦っているのだと。戦うにしても、どうしてメシア教徒とガイア教徒の両陣営を敵に回すのだと。
どちらかの陣営と協力しておけばお前の戦いもそれほど苦労はしないのでないかと。そもそも勝算はあるのかと。
その時のアヤツの顔と答えを思い出し、このような状況におかれてようやくその理由が多少分かった気もする。

◆ ◆ ◆

143天の邪鬼:2013/05/01(水) 20:51:13 ID:pbeRmam.0
「フム、するとおヌシはこの殺し合いで勝ち残ることを諦めたのか?」
「う、うん……元々ボクは他のモンスターの回復役としてパーティーに参加していることが多いから
攻撃力はあまりないし……それに、今みたいにオジさんにボクの攻撃が効かない以上、ボクが生き残るなんて無理だよ……」

場所はE-6、森の中。
ギリメカラが最初に飛ばされた場所から適当に移動していると、いきなり何者かからの不意打ちを受けた。
襲撃者は風による木々のざわめきに紛れて、木の上からギリメカラ目掛けて落下。
しかも彼の者の装備武器はどくばり、一撃必殺の武器。
通常ならば確実に奇襲成功、トラトラトラ!になる筈である。

だがしかしあまりにも相手が悪すぎた。このギリメカラという魔物、非常に特殊な能力を持っている。
その特性は物理反射。読んで字のごとく、敵の物理攻撃をそのまま相手に100%の威力で反射するのだ。
つまりこの不意打ちに対してもいかんなく能力は発揮され、アンブッシュは失敗し、
哀れにもギリメカラの単眼で睨みつけられただけであえなく戦意喪失してしまったのだ。
襲撃者の名前はホイミスライム。幸か不幸か、どくばりの反射攻撃は急所を突かなかった様である。

一方ギリメカラにしても、この襲撃者をいきなり殺すことはなかった。
普段から持っている曲剣はどうやら没収されたらしく、多少心もとない。
無論この程度の魔物なら無手でも倒せるだろうが、他の魔物はそうも行きそうにない。
なにより、こんなスライムのような魔物は見たことがないのだ。
どう見ても悪霊や外道ではなく、どちらかと言うと妖魔・妖精の類に見える。
ならばまずはTALK、対話から始めるべきであろう。このスライムが一体何者なのか、
何処から来たのか、何をしていたのかなどを聞き出す。
その後、冒頭の会話へと繋がるのだ。

「よかろう、おヌシの奇襲は不問にしてやる。その代わりにワシの条件を一つ呑んでもらうぞ」
「もう好きにすればイイよ……どうせボクなんて生き残れるはずもないしさ……」
「まぁそうヤケになるな。コトは簡単な話だ、ワシに付いて来て補佐をせい。あのハゲに一泡吹かせる為にな」
「はいはい、どうぞ……ってええええっ!?」

半ば惰性で返事をしていたホイミスライムが一気に目を剥き、大声を上げる。
あれだけのデモンストレーションを見せられてなお、
あのニンゲンに立ち向かう魔物がいるとは彼は思っていなかったようだ。
事実、思わなかったからこそこのホイミスライムはギリメカラを襲ったというのに。

144天の邪鬼:2013/05/01(水) 20:51:55 ID:pbeRmam.0
「お、オジさんアイツに歯向かうの!?どうしてさ!」
「フン、逆におヌシに問うぞ。なぜニンゲン『ごとき』に我々悪魔や神のあり方を決められなければならんのじゃ。
それほどにワシらを殺しあわせたいならば、まずはあのハゲが自分の力を持ってして全員を屈服させれば良かろう。
それならばワシのような考えも持たずに皆必死になって殺しあうだろうが」

ギリメカラは思い出す。アヤツも、要は気に入らなかったのだと。誰かに、何かを強制されることが好かなかったのだと。
たったそれだけのことで天界と魔界の最高実力者を大向こうに回して張りあうなど、およそ常人の発想ではない。
あるいはあれほどの実力があるニンゲンだからこそ、そんな思考を持てるのかもしれない。
そしてギリメカラも、どうやらあの男に多少感化されたようだ。

「すごいや!じゃあオジさんには何か良い作戦があるんだね!」
「は?何を言っているのだ、そんなものはない」
「そうかー、オジさんはすご…………ってええええっ!?無いの!?」
「小僧、そう喚くな。ワシのこの立派な耳でおヌシの返事が聞こえない訳がなかろう」
「だってそれだけ自信がありそうなら何か良い考えがあると思うじゃないか!」

そう、彼には作戦や考えなどはない。しかし。

「よく聞け、小僧。どれだけ力を持っていようともあのハゲはニンゲンだ。
悪魔や神でもないニンゲンのやる事に完璧という事はあり得ない。
たとえ王(キング)や英雄(ヒーロー)や救世主(メシア)であろうとも、例外は無いのだ」

ニンゲンが神や悪魔に立ち向かう事例を見てきた悪魔が、ニンゲンに立ち向かう事の何が不自然だというのか。

「でもさ……そう簡単には行かないんじゃないのかな……あのヒゲの人も色々考えてるだろうし……」
「それはそうであろう。ここまで大掛かりな事をしでかしているのだからな。だがな、必ず何処かに何らかの綻びはあるはずだ。
その確率が100分の1だろうが256分の1だろうが65536分の1だろうが知ったことか。
ワシはワシの悪魔としての矜持を持ってあのハゲには従わん」

それにな、とギリメカラはホイミスライムの方を見て目を細める。

「小僧、おヌシに拒否権は無いぞ。ワシがこれだけ説得してもまだ嫌がるなら、
その柔っこい体を押しつぶしてマグネタイトの足しにするだけだ」
「えぇ………」

ホイミスライムから不服とも諦めとも取れる溜息が漏れるが、ギリメカラは気にしない。悪魔だからだ。

「おお、納得してくれたか。やはり誠心誠意、言葉を尽くせば悪魔は分かり合えるものだのう。
よし、契約の証にコレをやろう。ワシには小さすぎるが、おヌシの体格とその触手を使えば装備できるだろう」

145天の邪鬼:2013/05/01(水) 20:52:33 ID:pbeRmam.0
そうしてギリメカラがふくろから白いきぐるみを出した所で、
ふと何かを思い出したように手を止め、ホイミスライムに向き直る。

「そうそう、こうして穏便に仲魔が増えたのだから恒例の行事をやっておかんとな」




我ガ名ハ 邪鬼 ギリメカラ コンゴトモヨロシク




【E-6/森林/一日目/昼】

【ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:みてろよあのハゲ

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。


【ホイミスライム@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:モーグリスーツ@FFシリーズ
[所持]:どくばり@ドラゴンクエストシリーズ
[思考・状況]
基本:とりあえずギリメカラに付いて行く
 1:今はこのオジさんに付いて行くしか無いよなあ

[備考]
オス。若い。

146名無しさん:2013/05/01(水) 20:52:55 ID:pbeRmam.0
以上です。

147 ◆5omSWLaE/2:2013/05/01(水) 21:35:34 ID:.zMxOQO60
投下お疲れ様です
ギリメカラの交渉、なかなか見ものでした!
割と強制的な部分はあるけど、ホイミスライムとはいいコンビになっていきそうですねぇ
でもホイミスライムのほうは着ぐるみ装着で、見た目がモーグリに……!

そして◆3g7ttdMh3Qさんの「ワームモン「俺の体には全進化の秘法をつぎ込んだ」」に関してですが、
私が勝手な解釈をしてOKを出したのですが、流石に事情が不明瞭だと思われるので、支給品紹介を明記していただけますか?

148 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:52:02 ID:Hnvb3jnw0
みなさん投下乙です!
私もさせていただきます

149価値観 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:53:37 ID:Hnvb3jnw0

「そんなこんな突然……」

茂みに身を寄せながら震えるモンスター。
彼はスライム、この世で最もメジャーなモンスターと言っても過言ではない。
だが知名と強さが比例するとは限らずその強さはよく序盤で狩られまくる。
彼の一族は代々伝説の勇者の幕開けとしてその体を伝説の礎に捧げる。

このスライムが生息していた森近辺の村は比較的静かな村だった。
特に争いが起きることもなく港はあれど異国の襲来も無く日々平和の世界。
そんな近くに住んでいたスライムは他所と比べると比較的、特に子供とは仲が良かった。
森で村人達と、ドラキーなどの仲間を誘って毎日を楽しく過ごしていた。

そんな彼の平穏が突然崩される。
殺し合い等と言う野蛮な行為を強要しそれを見世物にするなどモンスターのスライムでも腐っていると理解できる。
こんな事があってはならない。必ず戻ってまたみんなと遊んで楽しく過ごす。

そんなことを胸に秘めスライムは決意する
こんな野蛮な殺し合い何てあってはならない。
屍を築くぐらいなら――主催にだって牙を剥く。


「でも僕じゃ力になれることなんて……」


無力とは残酷であり簡単には飛び越えれない奈落である。
いくら硬い決心が魂の内に存在していたとしても力がなくては無意味。
ましてや殺し合いを止めるというならば嫌でも戦いに参加し無くてはならない。

スライムが連戦連勝するだろうか?マダンテ?ねえよ。

袋の中身はコンバットナイフであり口で銜えれば武器になるがリーチが短すぎる。
そもそも戦いを止めるために戦いを起こすのは矛盾している。
僕達には言葉がある。たとえ話すことができなくても通じ合う心が在れば互いに惹かれ合い哀しみは無くなる。
笑顔の似合わない生物なんてこの世に存在しない。
あの村の人達のように、あの森の仲間達のように――

「なんてね!かっこいい事思っても僕は所詮スライム……勇者の登竜門なんだよ……」

スライムの目には自然と涙が零れそうになっており上を向いて必死に食い止めていた。
何も出来ない己の無力、殺し合いが恐ろしく臆病になる、あの場所へ帰りたい。
様々な思いが交差し彼の精神を不安定にさせていた。
しかしこの恐怖に狼狽える光景もまた見世物としては最高のショーとなりえる。
どう転ぼうが全ては主催の、人間の手のひらの上で踊らされているに過ぎない現実。


「……ん?だ、誰かいるの?」


風では無く不思議に揺れる茂みにスライムは思考もせずに言葉を出す。
この時点で積極的な、危険なモンスターなら即アウトだが『誰かに会いたい』と言う小独心が思考を凌駕する。
声に乗せられて出てきたのは茶色い魔物。
二本の足で立ち耳があってとてももふもふしたくなるような姿――通称ハムが現れた。

150価値観 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:54:14 ID:Hnvb3jnw0



初めて出会う他人、初めて見るモンスター、初めて会話する相手。
何もかもが初めて尽くしで不安に満ちあふれていて黙っていると泣きそうになってくる。
相手の魔物が口を開いてくれた。


「俺はハム!よろしくな――えっと」


「ス、スライムって言うの!よろしく!」


やった初めて会ったのは仲良くなれそうだ!
先ほどまでの不安は嘘のように晴れ今のスライムの顔は満面の笑みで輝いている。
涙も乾きその瞳はハムの瞳を吸い込むようにずっと見つめていた。
対するハムは少し戸惑いながらもよろしくの意味を込めて握手をしようとするがスライムには腕がない。
どうしようもないのでこちらも笑顔でスライムに返す。
するとスライムは嬉しかったらしく飛び跳ね始めハムは再度困惑する。


(元気良すぎだろ……おい)


やがてスライムは疲れたのか息を切らし徐々に飛び跳ねる回数が減っていきやがて木に凭れ掛かる。
体には光で輝く程の汗、そしてその顔はとても嬉しそうに笑っていた。
スライムは肩(?)で呼吸し息を整え終わったらハムに話しかける。


「ねぇ君はどんな所から来たの?僕はね――」


質問したにもかかわらず答えを聞かずに自分の事を語り始めるスライム。
ハムも答えようとしたため声が一瞬出てしまうがそれを殺し仕方がないのでスライムの話を聴きこむ。
聞いてもいないの必要以上に語るスライムに若干嫌気が差し始めてきた。
そしてその話しは終わること無く続きどれくらいの時が経っただろうか。
(なんだこいつ……)


「僕の住んでる森はね!みんな仲良しなの!
それに近くにある村の人達とも仲が良くてたくさん遊ぶんだ!もう毎日がハッピーなの!」


マシンガントークはまだ終らない。


「それでね!それでね!あの時ドラキーがうるさいからさ、僕は言ってやったんだ!」


「「お前は少し大人しくしてろ」ってね!……え?」

151価値観 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:54:46 ID:Hnvb3jnw0


自分のトークタイムに重なる不穏な声の正体は一人しかいない。
こんな状況で出会えたんだ、仲良くなりたい、お話したい、一緒に居たい、協力してこの状況をなんとかしたい。
そんなことを頭の隅に置いて話していたがいつの間にかその思考は消え去り地元の話や自分の自慢になっていた。
これは申し訳ないと思いハムに謝罪しようと口を開こうとするが先に口を開かれる。


「お前うざいわー、何そんな見てくれでどうしたの?足は?腕は?」


――――――――――え?
突然どうしたの?さっきまで話しを聞いてくれていたのに……
どうして?何でそんな酷い言葉を僕に浴びさせるの?僕何か悪いことしちゃったの……?
ただ、話しを聞いて貰いたいだけだったのにどうしてこんな……


「ねぇよなそんなゲルの下位互換みたいな奴にはよぉ!
ちょっとお前のせいで鬱憤MAXだわ。こりゃ殴らなきゃ気が済まねー」


ハム。
比較的人間に対して憎悪を抱いていないが逆も然り。
自分に危害を加えなきゃ何でもいい、捕まえられるのは勘弁だが。
その性格は普段は好青年で特に問題も起こさない様な社会の見本になる程の礼儀さを持つ。
その裏に潜むのは自分以外はどうでもよく常に自分を魅せる方法を考えていた。
こうすれば屑に見られ、こうしたら屑に見えずに体裁を良い状態で維持できる……
こうしたスタイルで彼は上の者達からは大変気に入られそれなりの地位を持っていた。
逆に自分より低い立場の者には容赦なんて存在しなく罵倒や暴力など日常茶飯事。
そうした生き方は常に敵を作り常に安定の地位を得て社会の流れに沿ってきた。
しかしそれもこの状況に巻き込まれては意味が無いのだ。死ねばそこで終わり、地位も自由も何もかもが無に帰す。
此処に来てからハムはずっと苛ついており良さそうな別のモンスターを探していた。

そうして出会ったのがこのスライムである。
見た目からハムはスライムを劣化版ゲルと判断したが見た目だけでは危険が生じるためわざと動いた。
自分から声を掛けないようなるべくリスクを減らしたかった。
案の定スライムは話しかけてきくれた。だから定石通りに受け答えする。
ポンポン話題を出してくるスライムにハムは真面目に聞いている風にしていた。
実際には軽く聞き流す程度で全てが頭に入っているわけではないがこれは話しすぎたスライムにも非があるかもしれない。
それを踏まえても終わることのない話に痺れを切らしハムは本性を曝け出した。
スライムが自分よりも圧倒的格下が確定したので強気に出たのであった。


「そんな急に――い、痛い!や、やめて!!」


スライムの叫びも虚しくハムは鬱憤を晴らすべくスライムを殴り始めた。

152価値観 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:55:37 ID:Hnvb3jnw0


一発。

「だいたいよーどうしてこんな変な事によぉッ!巻き込まれなきゃいけねえんだ!」

更に殴りつける。
スライムのマウンドポジションを取りながら一発、そしてまた一発と重ねていく。
もちろん殺す気などないので十分を手を抜いているがスライムの耐性では大変危険である。
口が切れそこから血が流れ始め青い体には紫色の痣も出来始めている。

「自由にさーせろっ!あの人間マジ気に喰わないわー死なないかな―」

その暴力は止むこと無くスライムに一方的に降り注ぎハムの気分転換に繋がる。
スライムの瞳からは涙が溢れ血と涙で軽い水たまりが出来ようとしている。
ハムも一応は気遣っているのか、スライムのあの体でも瞳を狙わないように配慮しているらしい。

「お前が何かするまで殴るのマジやめねーから!いつすんの!?いま!?いまなのか!?」

拳の往復は振り子の様に機械的に何度もスライムを殴りつける。
どれくらい殴っただろうか――そろそろ手が痛くなってきた。
スライムは抵抗をやめたらしく素直に暴力を受け入れていた。
何の反応も示さないのでハムは罪悪感に襲われるがヤッてしまったことには変わりはないのでスルー。
最後に唾を吐きその行動に終止符を討つ。

「今から10秒数えるからそれまでに消えてくっださーい」

その言葉を聞いたスライムの頭に電流が走る。
ここで逃げなきゃまた何をされるか、自分の安全を保証できるかなんてわからない。
傷も増えダメージも疲労も残っているがここは逃げなきゃ――


「10、9、8、ぜろ〜」


「うわあああああああああああああああああ!!!」


音を上げる体に鞭を派手に打ちスライムはその場を飛び跳ねながら逃げる。
後ろなんて振り向かないし振り向けない。
もう嫌だ、帰る、帰りたい、あの村に、みんなの所に、帰りたい帰りたい帰りたい。





「あーつまんねぇーわ!殺すとかありえねーし!誰か良い奴はいねーのかよ!」



そしてハムは新たな宿り木を探しにその足を進める――――――――――



【G-5/森/一日目/日中】

【ハム@モンスターファーム】
[状態]:イライラ
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身未確認)
[思考・状況]
基本:帰りたい
 1:リーダーシップ取れる奴の近くにいたい
 2:殺すとかありえねー

[備考]
オス。野生で人間に対しては特に何も思っていません。
表は良い人振るが内心は黒い。自分より格下は力でねじ伏せ下僕にする。
格上には媚を売り自分の安全を確保する。基本自分からは行動せずリーダー格に付いて行く。

153価値観 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:56:17 ID:Hnvb3jnw0


「ハム……覚えたよその名前……!」


スライムは決して逃げたわけではない、退却したのだ。
自分がどんな悪いことをしたのか、ただ話しただけなのにたくさん殴りつけやがって。
目は充血しその瞳は茂みの奥からハムの背中をただ一点見つめている。
そして口にはコンバットナイフが加えられている。


「隙を見せてみな……それが君の最後だよ……」


口から涎を垂らしながらスライムは静かに告げる。
もう許さない、ハムも、主催も、モンスターも、人間も。
たかがスライムと侮るな、いくらでも殺してやる殺してやる殺してやる。


モンスター、怪物、魔物……


それが凶暴じゃない理由何て必要無い――――――――――




【G-5/河/一日目/日中】

【スライム@ドラゴンクエスト】
[状態]:ダメージ(中)、流血、痣
[装備]:コンバットナイフ
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:もう何もかも許さない
 1:ハムを殺す
 2:仕方がないんだよ、だから殺す

[備考]
オス。人間とは共存していて毎日村の子供達と遊んでいた。基本は大人しい。
話し始めると中々止まらないので一部の仲間にはあまり評判は良くない。
キレたら面倒臭いタイプで泣くと力が強くなる気質。

154 ◆uBeWzhDvqI:2013/05/02(木) 02:58:42 ID:Hnvb3jnw0
以上で投下終了です

155 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/02(木) 06:08:39 ID:CBg3rXfE0
>>147

失礼しました。

《支給品説明》
【進化の秘法@ドラゴンクエスト?】
錬金術探求の中で発見された進化の秘術、
動物に人間の言葉を話せるだけの発声機能や知性を与えたり、
人間や魔物に対し、原型を留めぬほどの強靭な肉体を与える。

その性質的に、デジモンとの相性は良いと判断し、
(そもそも、それ以外に単体でワームモンを進化させる道具が思い浮かばなったため)
ワームモンに支給。

156 ◆5omSWLaE/2:2013/05/02(木) 09:13:09 ID:sL405LdMO
投下お疲れ様です
ハムさんド畜生やで! こういう清々しい外道には注目してしまいます
そんなハムにコテンパンにされ、怒りと怨みを抱いたお喋りなスライム
そのコンバットナイフの刃は、果たして急所を切り裂けるのか……これは気になる展開ですねぇ

>>155
ありがとうございます! これで大丈夫です
Wikiにて状態表の下に収録しておきます

157 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/02(木) 12:59:18 ID:CBg3rXfE0
ハムライガー、トンベリ、ハム、スライムを予約します。

158 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:49:38 ID:WGbPY8r20
投下します

159力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:50:41 ID:WGbPY8r20
力というものはそれを持つものによって意味合いが異なるものである。
相手に勝つもの、相手に負けないもの、相手に屈しないもの、生き残るもの。

それはなぜ力を求めるのか。その理由によって変わってくるものだ。
己の力を誇示するため。
何かを守るため。
強いものとして頂点に立つため。
己の身を守るため。

どれもが正解であり、故に答えなど存在しない。

そしてここ、モンスター闘技場の中。
二つの力の形が今まさにぶつかり合っていた。

そこにそれぞれ異なる意味の力を求めて。




鬱蒼とした森の中。
向かい合っているのは2体の、モンスターと形容できるだろう生き物。

黄色い体毛を持った2足歩行のキツネのようなモンスター。
サメをイメージする鰭を備えた、ドラゴンのようなモンスター。

互いに面識などない。初対面、そして種族としても初見。

「フッ!」

その狐の方のモンスターが、ドラゴン型モンスターに回し蹴りを放つ。
風を切る音はまさに超高速回転であることの証。
それを、ドラゴン型モンスター――ガブリアスは腕の鰭で受け止める。

160力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:52:53 ID:WGbPY8r20

「やるじゃねえか、黄色いの」
「クッ…強いな」

その様子を見て、狐型モンスター――レナモンは呟く。



この2匹に特に何かあったというわけでもない。
ただ、出会って、相手の目の闘争本能を嗅ぎ取ったことで互いの闘志に火がついただけにすぎない。
ガブリアスにとって、戦いとは己を磨き、求めるものをくれるものであり。
レナモンにとって、力を求め、ただ強くあるためには強き相手との戦いは必要なのだから。

しかし、そんな2匹の戦いは、ほぼガブリアスの優勢にあった。
卵時代のトレーナーの厳選に適い、的確な育成を受け、多くの強者を打ち倒してきたガブリアスにとっては、
成長期のデジモンでは役者不足だった。

それはレナモン自身、誰よりも分かっていた。
だからこそ、この相手には勝たねばならないと感じ取った。ゆえに引くことはできなかった。

ガブリアスの尻尾による反撃をかわし、木の枝に逆さまのまま足のみでぶら下がる。
そのまま枝を蹴りつけ、その細身の体に掌打を打ち込む。

胸部に打ち込まれたそれの威力に、ガブリアスの体が後ろに後退する。
さらに空中に飛び上がり、その周囲に輝く木の葉が舞い始める。
そしてそれは、動きを止めたガブリアスの元に一斉に射出された。

「狐葉楔!!!」

レナモンの必殺技、狐葉楔。
鋭い木の葉がガブリアスに襲い掛かる。
刺されば大ダメージは避けられない。

その木の葉を前に、ガブリアスは。

「Gaaaaaaa!!!!」

その口から大の字の火炎を吐き出す。
炎タイプでも高ランクの威力を誇る大文字。その熱は木の葉を残らず焼き落とした。

161力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:54:45 ID:WGbPY8r20
すみません、>>160はこっちに修正でお願いします

「やるじゃねえか、黄色いの」
「クッ…強いな」

その様子を見て、狐型モンスター――レナモンは呟く。



この2匹に特に何かあったというわけでもない。
ただ、出会って、相手の目の闘争本能を嗅ぎ取ったことで互いの闘志に火がついただけにすぎない。
ガブリアスにとって、戦いとは己を磨き、求めるものをくれるものであり。
レナモンにとって、力を求め、ただ強くあるためには強き相手との戦いは必要なのだから。

しかし、そんな2匹の戦いは、ほぼガブリアスの優勢にあった。
ベテランのトレーナーの目に適い、的確な育成を受け、多くの強者を打ち倒してきたガブリアスにとっては、
成長期のデジモンでは役者不足だった。

それはレナモン自身、誰よりも分かっていた。
だからこそ、この相手には勝たねばならないと感じ取った。ゆえに引くことはできなかった。

ガブリアスの尻尾による反撃をかわし、木の枝に逆さまのまま足のみでぶら下がる。
そのまま枝を蹴りつけ、その細身の体に掌打を打ち込む。

胸部に打ち込まれたそれの威力に、ガブリアスの体が後ろに後退する。
さらに空中に飛び上がり、その周囲に輝く木の葉が舞い始める。
そしてそれは、動きを止めたガブリアスの元に一斉に射出された。

「狐葉楔!!!」

レナモンの必殺技、狐葉楔。
鋭い木の葉がガブリアスに襲い掛かる。
刺されば大ダメージは避けられない。

その木の葉を前に、ガブリアスは。

「Gaaaaaaa!!!!」

その口から大の字の火炎を吐き出す。
炎タイプでも高ランクの威力を誇る大文字。その熱は木の葉を残らず焼き落とした。

162力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:55:15 ID:WGbPY8r20
「どうした、俺に戦いを仕掛けておきながらこの程度か?」
「なるほど、強いな。だが、私にも勝たねばならない理由がある。
 止むを得ないが、奥の手を使わせてもらおう!」

と、再度空中に飛び上がり、体に力を入れて大きな声で叫ぶ。

「レナモン、進化ッ!!」

次の瞬間、レナモンの体が崩れ、解れ始める。
まるで毛糸を解くかのように表面が分解され始める。
その中にはまるでワイヤー、針金のような骨子が見えた途端、肉体が再構成。
4足の一回り大きな肉体に、9本の尻尾が現れ始める。

そして炎が周囲を舞ったところで、その体がはっきりと見えた。

「キュウビモン!」

九本の尻尾を持つ妖獣型デジモン、キュウビモンへと進化を遂げた。

「進化だと?強そうになったじゃねえか。
 だが、俺は負けんぞ!!」

再度ガブリアスはその顎から大文字を噴出す。
しかし、キュウビモンは九つの尻尾の先から狐面の青い炎を作り出し、
それを一斉に、かつ一箇所に固めて放出。

「鬼火玉!」

一箇所に纏められた九つの炎は巨大な壁となって大文字の進行を阻む。
そして、その中で炎の壁が作った輪に飛び込む。

「弧電撃!!」

その身に電撃を纏い、ガブリアスに頭突きを仕掛ける。
大文字の中から現れたキュウビモンに虚を突かれたガブリアスは反応できず、その一撃をまともに受けてしまう。

ガブリアスの体を電撃が襲う。
地面タイプであるガブリアスには、電撃は効かない。しかし電撃を纏った頭突きとなれば頭突き分のダメージは食らってしまう。

163力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:57:47 ID:WGbPY8r20


一瞬の怯み。
そこへキュウビモンは畳み掛けるように攻めこむ。

ガブリアスに向かって突撃をかけると同時、尻尾の炎を全身に纏わせる。
青い炎はキュウビモンを包み込み、巨大な龍を象りガブリアスを目指す。

「狐炎龍!!」

そして、己が必殺技をもって攻撃を仕掛けてくるキュウビモンに対し、態勢を整えたガブリアスは。

「ゴァァァァァァ!!!!!」

己の闘志を最大限まで高めた。
それは理性と引き換えに己の闘争本能を最大限まで引き出す、ドラゴンの奥義。
さながら逆鱗に触れられた巨竜のごとき咆哮を上げ、赤き闘気をまとってキュウビモンに突撃をかける。

炎を纏った妖狐。竜の血を滾らせた鮫竜。
大気が震え、木々がざわめく中。
2つの龍は激突した。




私はなぜ力を欲したのだったか。

私の住む区域は、多くの勢力が争う激戦区だった。
クワガーモンが飛び交い、ケンタルモンが翔ける森を、メガドラモンやメタルティラノモンが焼き尽くす。
侵攻するメタル・エンパイアと防衛するジャングル・トルーパーの戦いは長期にわたるものだった。
なぜそうなったのかは分からない。
しかし長きに渡る戦いは、森の秩序を確実に乱し、壊していった。

自然と共存しあうことで生きてきた森の住人達は、皆激しい縄張り争いに身を費やし己の領土を広げることばかりに躍起になっていた。
それはメタルエンパイアの侵攻が落ち着いた後も変わらず。
グランクワガーモンやヘラクルカブテリモン、サーベルレオモンといった強者の下につかねば明日をもしれぬ世界となっていった。
では、そんな場所に誕生した幼きデジモン達はどうすればいいのか。

私は、そんな場所で彼らを守って過ごしていた。
どうしてそうしたのか。もう覚えていない。
幼年期デジモンに乞われたのか、それとも自分の意志でそうしたのか。
ただ、私は森の成熟期デジモンにも一目置かれる存在。彼らを守るという役割にはうってつけだった。

164力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 00:58:48 ID:WGbPY8r20

それでも、全てを守りきれたわけではない。
完全体や強き成熟期クラスのデジモンがくれば逃げるしかない。そこに逃げ遅れた者は少しずつ数を減らしていった。
一匹、また一匹。
そんな中でも、私は一人でも多く守れるように戦ってきた。

守るには力が必要だった。
しかし、いくら戦えども成熟期と戦うのが限界。
気がつけば、いつしか進化することができるようになっていた。

しかし、その姿で戻ったとき皆は怯え、私がレナモンであることにも気付かない。
だから可能な限りレナモンとしての姿を保ち続けた。

そんなある日、メタルエンパイアの本格侵攻が始まった日があった。
森の守護デジモン達とハイアンドロモン、ムゲンドラモン達の率いる部隊との戦いの最中、どさくさに紛れて縄張りを広げようとするならず者まで現れ始めた。
私は戦った。どちらが敵か味方かなど関係ない。襲い来るもの全てと。
もう右も左も分からぬまま、進化して己の姿を失ってまで。

そして、全てが終わったとき。
守るべきデジモン達は皆死んでいた。

その後何が起こったのかはもう思い出せない。

ただ、その日から私は力を求めるようになった。
ただひたすらに。守るべきものを失った心で。
そうしなければいけないと、心の何処かが叫んでいたから。

とにかく強いデジモンに挑み、幾度となく傷付き、多くのデジモンを打ち倒してきた。
そして、ある日ふと思った。
私は、何のために戦っているのだろう、と。
しかし、その答えはもう自分でも分からなかった。





目を覚ますと、体はレナモンの姿に戻っていた。
あの一撃はこちらの肉体を吹き飛ばしたが、一方で相手も弾き飛ばされ大木に体をぶつけていた。
見ると、あのドラゴンはフラフラとまるで酔っ払いのようにどこか遠くへ歩いていった。
あの背中に狐葉楔を打ち込めばキュウビモンにならずとも勝てるかもしれない。

しかし、結局それをしなかった。
体のダメージが気になる、というだけだと言うなら言い訳だろう。

正々堂々戦うことが全てでないことは分かっている。
しかしそれでもあのドラゴンを今の状態で倒す気にはならなかった。

165力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:00:18 ID:WGbPY8r20
「…次は勝つ。その時こそお前のデータを私のものとする」

そうしてフラフラと立ち去る相手を前に、レナモンは背を向ける。
そういえばと思い出し、ふくろを弄った。
何か武器か食料でも入っていればと思ったのだ。

出てきたのは、1本のドリンク。
水分補給だけが目的の飲み物でないことは、ドリンクの色と香り、そしてマッスルドリンコという名前から分かった。

気休めだろうが飲めば少しは違うだろう。
レナモンはそれを一気に呷る。

少し、体の疲労が楽になった気がした。

「よっしゃ…!」

小さな声でそう呟いたレナモンは、ゆっくりと新たな闘争相手を求めて歩き始めた。

己の強さを極めるため。
そこに理由などなくても。




その言葉はいつも自分の中にあった。

後から聞いた話だったが、俺は人からもらった卵を孵化させられたポケモンだったらしい。
記憶の中にはいつも、ある少女がいた。
フカマル時代からずっと共にいた、白い髪の少女。

病気がちで家に篭ることの多い子だった。
なぜ俺が与えられたのか。そんな娘が少しでも強く、逞しくあって欲しいという親の願掛けだったらしい。

いつも一緒にいた。
共に遊び、共に食べ、共に寝て。
外に出ることは稀だった。病弱な彼女を親は決して外に出そうとはしなかったのだから。

ある日を境にガバイトへと進化してもそれは変わらず。
雨の日も晴れの日も、雪の日も家に篭っていた彼女を、俺は不憫に思うこともあった。
たまに彼女のために外にある石や花を持って帰ったことがあった。
そのたびに、彼女は目を輝かせて喜んだのだ。そんな彼女の顔が、俺はとても好きだった。

166力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:01:45 ID:WGbPY8r20

そんなある日。
少女は家を抜け出した。
人生で初めて、自分の力で歩く外の世界。
少女ははしゃぎ、色んな場所を駆け回った。
それを、俺はただひたすらに追っていた。
別にそんな彼女を引きとめようとは思わなかった。その顔がとても嬉しそうだったから。

そして、偶然街のはずれに出てしまったとき、野生のポケモンと出くわしてしまった。
好奇心のまま近付く少女。しかし自分以外のポケモンとは滅多に会うことのない彼女は知らなかった。
野生のポケモンの警戒心も、その強さも。
襲い掛かるポケモンを、俺は必死で追い払おうと立ち向かった。
しかし、レベル差も大きく、戦闘経験自体なかった俺には勝てる相手ではなく。
それでも少女を助けるために死に物狂いで戦い。

気がついたときにはそのボロボロの体はガブリアスに進化していた。
巨大な体となり、外見も恐ろしいものに変わってしまった俺を見て。
怯えることもなく、少女は言った。

『ガブリアスは、強いね』

それが、俺の聞いた彼女の最後の言葉になった。


彼女が死んだのはその数日後だった。
あの外出が少女の容態を悪化させたらしく、俺は彼女に近づけてももらえなくなった。
最後に見たのは、棺桶の中で瞳を閉じた安らかな寝顔だけ。

俺はその後親戚の男に引き取られた。
多くのジムをクリアしてチャンピオンとも戦ったという腕の立つトレーナーだったとか。
引き取られた後、俺は診断を受け、バトルにおいて素晴らしい才能をもっていると言われた。
男は俺を育成した。
栄養剤を与え、技マシンを使い、多くのポケモンと戦わせて経験を積まされた。
どれも初めての経験だったが、特に嫌だとは思わなかった。
元々そういうことに向いた性質だったのだろう。

そして、初めてのトレーナー戦。
会場のような場所で、多くの人が見ていた。
トレーナーの指示に従い、攻撃を繰り出し、相手のポケモンを打ち倒した。
会場は歓声に包まれ、トレーナーはよくやったと褒めてくれた。

その歓声の中で、俺はあの少女の声を聞いた気がした。

『ガブリアスは、強いね』

その時に思った。
きっとあの子は俺が強くなれば喜んでくれる、と。
だから、どんな相手にも負けない強いポケモンであろう、と。

167力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:03:10 ID:WGbPY8r20

俺は戦い続けた。
どのような相手にも勝利を収め続けた。

バトルタワー。対人バトル。遠くの人間との、ネットを介したバトル。
それらの全てで頂点に近い位置に、まるで王のように君臨し続けた。

無論、勝率100%というわけではない。
補助技。素早い、あるいは硬い氷タイプ。攻撃を外す。
バトルにおいては不確定要素は多いのだ。だからこそ確実な勝利というものは存在しない。

だけど、勝つたびにあの子が喜んでくれる声が聞こえたから。
勝ち続けることで、いつかあの子に会えるような、そんな気がしたから。






「キャハハハハハハ!パメトラ!」


「はっ!?」

人(モンスター?)によっては耳障りに聞こえなくもない声が聞こえ、ガブリアスは意識を取り戻す。
あの時最後に発動させた技はげきりん。己の理性を犠牲に闘争本能を最大まで高めて攻撃することができるが、使用後は一定時間混乱してしまうというもの。
その後混乱したものの攻撃対象を見失ってしまったガブリアスは、そのまま意識もないまま、夢遊病のようにフラフラと歩いていたのだ。

そしてその声で目を覚ましたガブリアス。
目の前にはまるで少女(一般名詞)のような姿の何かがいた。
一見ただの人間とも思えたが、その背に生えている巨大な翼、それで体を浮かせていることから考えて―――
いや、こんな場所にいる時点でただの人間ではない。

「む…、お前、今何をした?」
「パメトラだよー。状態異常にかかってるみたいで危なそうだったから治してあげたの」
「そうか、悪いな」
「いいのいいの。でもね、その代わりにお願いがあるの」

そう言って、少女はガブリアスにこう頼み込んだ。

「こんなところに連れてこられてるけど、モーショボーあんまり戦いには自信ないの。
 だからね、しばらくでいいから、モーショボーのこと守って欲しいの」

168力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:04:11 ID:WGbPY8r20
ガブリアスは驚く。
このような場所に連れてこられる者は皆自分やあのキュウビモンのような腕に覚えのあるものばかりだと思っていたからだ。
まさかこんな者までいるとは。

「ねえお願いー。混乱してるの治してあげたじゃーん、そのお礼くらいの気持ちでいいからさー。
 ドラゴンさん強いんでしょー?」
「……、お前はここでどうしたいんだ?
 俺に守られて、戦いを避けて、どうするつもりなんだ?」
「もちろん、生き残るのよー。痛いのは嫌だしー」

ガブリアスはじっとその鳥少女を見つめる。
羽はパタパタと宙を仰ぎ続け、羽毛が宙に舞い続ける。



「………」
「………」
「…いいだろう。ただし、俺の命を張ってまでは守らんぞ?」
「いいよいいよー。そこまで頼めないし。無理だったら無理でこっちもまた別の人探すから。
 キャハハハハハハ、そういえば名前言ってなかったね。凶鳥モーショボーって言うの。よろしくー」
「俺はガブリアス、ドラゴンポケモンだ」
「ポケモン?何それ?」
「ポケモンを知らないのか?ポケモンっていうのはな―――」




モーショボーの住んでいた場所は魔界だった。
そこはまさに弱肉強食。
多くの知性と野性を持った悪魔達が闊歩する、人間の住む世界とは一線を画した場所。
弱いものが虐げられ、殺されるのは当然であり、モーショボーもそれに疑問を持つことはなかった。
昨日まで共にいた仲間が、今日になったら格上の魔獣に食い殺されていても、思うのは『自分じゃなくて良かった』という感想。
だからこそいつも徒党を組んで行動してきた。その方が生き延びる確立は上がるから。
動かなくなった仲間の脳みそを吸って飢えを癒したことだってある。
あまりおいしくはないが仕方ない。極稀に魔界に迷い込む人間の脳が美味すぎるだけなのだ。

不吉とされる凶鳥の分類を持つモーショボー。
同じ悪魔であっても運や育ち方によって技や能力値に違いは出るが、この彼女は生き残ることには長けていた。
状態異常を治すパメトラ、敵前から逃亡するトラーフリ。生きていく中で彼女の呪文が変化して覚えたものだ。

だから、もしこのドラゴン、ガブリアスが敵となる存在であっても逃げる自信はあった。
それなりに迷いもしたが、敢えて話の分かる存在であると賭けてみたのだ。
いけると思った根拠だが、龍王、龍神は割と誇り高い悪魔が多い。邪龍までいくと分からないが。

そして、どうにか取り入ることには成功した。
彼に守ってもらえる間は魔力の温存になる。

169力の証 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:05:00 ID:WGbPY8r20
上級悪魔クラスがいないとも限らないこの場所。
だがやることはいつもどおりだ。
いつものように仲間を増やし。
逃げるときはその仲間を見捨ててでも生き延び。
もし死にそうにでもなれば脳みそをつつくだけだ。
何のこともない。
この竜もまた、自分の生き残るための踏み台にすぎないのだから。




デジモン、ポケモン、悪魔。

それぞれが違う力を求めた者達の戦いはこうして幕を開ける。
彼らの力は何をもたらすのか。この闘技場においてどう作用するのか。
3匹には知る由もない。


【C-4/森/一日目/日中】

【レナモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:戦い抜き、もっと力を手に入れる
1:強き者を打ち倒す
2:ガブリアスはさらに力を手に入れてから倒す

[備考]
メス。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。




【ガブリアス@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:強き者の頂点を目指す
 1:モーショボーと行動する。

[備考]
オス。性格は荒々しくも真っ直ぐ。
幼少期を病弱な少女と共に過ごしたが、少女との死別を境にベテラントレーナーの手に渡る。
少女との最後の思い出から、頂点を目指して戦うようになり、多くの相手を打ち倒してきた。
技構成、育成はいわゆるガチ構成で行われており、現在判明している技は『だいもんじ』、『げきりん』となっている
※ここが殺し合い、命の奪い合いをする場であることに気付いていない可能性があります


【モーショボー@女神転生シリーズ】
[状態]:MP消費(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:生き残る
 1:ガブリアスを利用し守ってもらう。

[備考]
当然メス。少女の外見。
多くの悪魔が跋扈する弱肉強食の世界で生きてきた野良悪魔。
他者を利用することで生き延びてきた。
現在判明している魔法は『パメトラ』、『トラーフリ(作中未使用)』

【マッスルドリンコ@女神転生シリーズ】
レナモンに支給。
神経系や肉体の新陳代謝を活性化し、HPを急激に回復させるドリンク剤。
本ロワにおいてはその効果はある程度抑えられていた。

170 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 01:05:46 ID:WGbPY8r20
投下終了です

171 ◆5omSWLaE/2:2013/05/03(金) 01:44:16 ID:LG6Kvv6I0
投下お疲れ様です
レナモンとガブリアス、力を求めるようになるきっかけが非常に壮絶です……!
彼ら二体の戦いも実に迫熱していてかっこよかったです!
そして知力をもってして、ガブリアスの保護を得るに至ったモーショボー
彼女はどのようにして生き残りを図っていくか見ものですねぇ

172名無しさん:2013/05/03(金) 13:22:30 ID:/D5Ngmpc0
気になったんだけど、モーショボーのスキル名は「メパトラ」「トラフーリ」じゃね?

173 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/03(金) 13:42:42 ID:WGbPY8r20
>>172
おっと、間違えていました
wikiにて修正しておきます

174名無しさん:2013/05/03(金) 21:08:45 ID:1KgKLuhY0
投下乙です
ガブリアス相手に成長期は分が悪い…と思ったらキュウビモンキター!テイマーズを思い出して熱くなる!
力を求めるというスタンスが他のモンスターの目にどう映るのか、想像が膨らみます

175 ◆Fool.LCG9A:2013/05/04(土) 03:01:23 ID:JNvkPCGk0
すみません、話がまとまりそうにもないので予約を破棄させてもらいます

176 ◆Bu4r51EP82:2013/05/04(土) 08:54:52 ID:DYIPPdC60
アグモン、エアドラモンの予約を延長します

177 ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/04(土) 10:15:52 ID:H1EhXaU20
キノガッサ、書き手枠でチャッキー@モンスターファームを予約いたします

178 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:57:46 ID:gugMiHew0
ブイモン、外道バックベアード、幽鬼マンイーターを投下致します
タイトルは「悪の華」です

179 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:58:14 ID:gugMiHew0
彼女の心は、男性への愛で満ち溢れていた。
どんな男性であっても、彼女は愛することが出来た。
性格も、容姿も、年齢も、人種も、彼女にとって例外など存在しない。
一人一人に違った魅力が有り、その魅力を発見するのが彼女の楽しみだった。

より沢山の男の人の、色んな部分を知りたい。
いっぱい話をしてその人の思想を知り、夜を過ごしてその人の肉体を知る……。
それは一人の男だけに留めることは出来ない。自分の知り合い全てに、同じような関係を築いた。
彼女にとってそれは知的好奇心を満たす行為であり、幸福であり、生き甲斐であったのだ。

反面、彼女に対する世間の目は厳しかった。
彼女のこの行ないは常に批判の的として話題に挙げられていた。
みっともない、汚らわしい、不埒者、尻軽女、ビッチ、社会のクズ、魔女、男喰い……。
人々は聞くに耐えないような罵倒を平然とぶつけてきた。
自分の男性への愛をいくら主張しても、誰一人として理解してくれなかった。

評判が悪くなれば男友達は寄り付かなくなる。
すると彼女は求めるものを探しに夜の世界へと飛び込んだ。
世間の目はさらに厳しくなり、やがては家族に見放され、友人に見放され……
気がつけば昼の世界から、彼女の居場所は無くなっていた。

夜の世界はそんな彼女を受け入れた。
男性たちは親切にも、食事代や寝泊りの費用、さらにはプレゼントに至るまでドンドン出してくれる。
それは「本当に男を食い物にしている」行為。けれどそれを無下にすることも出来ず、受け入れていた。
彼女は沢山の者と関係を作り、沢山の人の全てを知る。なんとも楽しい生活だったことだろう。



大きく歪まされてしまったのはある男がきっかけだった。
その男は端正な顔立ちをしており、紳士的な態度が非常に好感が持てた。
彼女はいつもと同じように、かつて夜を共にした他の男性と同様に、この男に対して愛を注いだ。

その男は言った。僕だけのものになってくれ、と。
それを彼女は断った。だって、貴方だけでは満足出来ないから。

男の態度が変わる。
それまでの優しい微笑みは一切消え去り、軽蔑の眼差しと怒りの形相を浮かべながら冷徹な言葉をぶつけだした。
その豹変に彼女は唖然とする。私は、こんな顔をする彼を知らない。知らなかった。男の全てを知っていると思っていたのに、知らなかった。

言葉のナイフは彼女の心と、人格、容赦なく切りつけた。
歯止めが効かなくなり、言葉に加えて男の拳までもが飛んでくる。
悪意を全身に浴びながら、彼女は甘美な時間が一転し、ガラガラと崩れ落ちる感覚に苦しんでいた。

夜の世界すら、こうやって私を否定して、悲しませて、苦しませるのか。

胸を引き裂くような辛い感情が湧き上がる。
その感情に任せて彼女は、男性を思いっきり突き飛ばした。
運が悪いことに、バランスを崩した男は、頑丈なベッドの柱の部分に後頭部を強く打ち付けた。

ぶくぶくと赤い泡を吹き、白目を剥いて、しばらく痙攣を繰り返したあとに動かなくなった。
彼女の目の前にある光景が、一瞬、現実のものだと思えなかった。
やがて抑えきれないほどの罪悪感と恐怖が心を蝕んでいく。

180 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:58:35 ID:gugMiHew0
錯乱の挙句、彼女は喰らいつく様に男に接吻をした。
……もとい、文字通り喰らいついていた。
ガリリ ブチブチブチブチッと不快な音を立てて、口内に柔らかな物体が飛び込んでくる。
その瞬間に我に返り、肉を吐き戻そうとした彼女は、ある事に気が付いてしまった。














―――美味しい。











彼女は男性の『味』を知った。

その日からしばらくして、彼女は愛する男性全員の「魅力」を知った。
誰も知らない、男性の魅力の一つ。それを私は知ることが出来る。
その人は私の体の中で、共に生き続けられる。それは最高に幸せなことだ。

カニバリストによる連続惨殺事件の犯人、人呼んで"マンイーター"はここに誕生した。
この行為を繰り返すうちに、彼女は人間から『幽鬼』へと身を堕としていた……。










「よっしゃ、この設定で行けば同情を誘えること間違い無しだぜ!!」

上記のクッソエグい経歴は全部彼女が即興で考えた 作 り 話 である。
幽鬼マンイーター、美しい外見で男を惑わせ、肉だけでなく金まで貪る人食いゾンビ。
今回は人間の男がいない、というわけで、悲しい過去を持つ悪魔ですアピールをして同情を誘うという魂胆だ。

「アタシの策略はこうだ。まず、男の参加者にこの話を打ち明け、同情してもらう(男は全員、悲しい過去を持つオンナに弱い)
 続いて、何とか魅了して(代わりに戦ってもらったりと、程よく利用してから)あくまのキスで弱らせる。
 苦しんでいるところをアタシの必殺技『麻痺かみつき』で止めを刺す……ヤバイ、天才じゃねーかコレ!!」

キャーハハハと高笑いをする。
人間の男であればこんなことしなくてもナイスバディで勝手に魅了されるけど、悪魔相手となるとそんな上手くいかない。
一目惚れ狙いではなく、中身を知ってもらうことで魅了するのだ。え、セクシーダンス? あんなの一時的な魔法みたいなもんだからね?
無論、自分も悪魔なので殴り合いでの戦闘能力はそこそこある。けれど、優勝するためには持ちうる武器を最大限使わないといけないだろう。
そうだ、優勝するのは自分だ。戦いの舞台でヒロインを目指し、最終的には世界中の男を食い物にしてやるのだ!

マンイーターは美しいワンレングスヘアーをなびかせて歩き出す。
どっかに単純な性格でそこそこ強い男悪魔(カモ)がいればいいんだけどね。うん。


 ◆

181 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:58:53 ID:gugMiHew0
外道バックベアードの触手に縛られるブイモンの姿があった。

「このロリコンめっ! 幼女である私に襲いかかるなんて、この変態野郎!」
「ち、違うんだ、そんなつもりは無かったんスよ! 変態じゃないッス!」

ブイモンが襲いかかった……というのは、決して間違いではない。
ふわふわと歩いてるバックベアードを見つけたブイモンは、背後から忍び寄って必殺技のブイモンヘッドを放ったのだ。
いわゆる不意打ち。だって殺し合いに乗らないとモリーに殺されるじゃないか。やるしかなかったんだ。
……かっこいい容姿をしている彼は、あいにくその見た目にそぐう程の勇敢さを持ち合わせてなかった。
仕方ないじゃないか。それが一般的なモンスターの考え方というものだ。

……しかし、その結果はご覧の有様。あっという間にお縄にかけられた。
成長期の戦闘能力じゃ勝てっこなかった。仕方ない、こうなったら命乞いタイムしか有るまい。

「すみませんでした……。支給品置いて走り去りますので助けてください」
「そんなこと言って、離した瞬間私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
「しないから」
「ほらそう言う。変態はみんな同じこと言うのよ!」

ダメだ。埒があかない。交渉に応じる気が一切感じられない。

バックベアード……その姿は巨大な目玉に無数の触手が生えている異形の怪物そのものである。
いくら年齢的に幼女だったしても、誰が目玉と触手の悪魔に襲いかかるというのだろうか。
客観的に物事を見つめることが出来ないのか。目玉のくせに見れないのか。

それにしても、交渉がダメならあとはもう暴れるくらいしか助かる手立ては無い。
ブイモンは体をひねって拘束を抜け出そうともがく。
しかし、ブイモンの力ではガチガチに巻かれた触手はピクリとも緩まない。

「クッソー、離してくれ! 俺をどーする気ッスか!」
「アナタみたいな野獣を野放しに出来ないわ。ここで殺してあげるわ! クソムシが!」
「クソムシて……い、嫌だーっ! 冤罪のまま殺されるだとか勘弁してくださいよ!」
「ねぇどんな気分? 襲おうとした幼女に返り討ちに合うとかどんな気分よ?」

悪党を完全に無力化したことで、バックベアードの感情は高ぶっていた。
コイツの命は私が握っているんだ。あぁ、なんという征服感。実に気分がいい。
その触手で首を絞めて退治することも出来るし、衝撃波の魔法ザンマで切り刻んでやる事も出来る。
命乞いに乗って助けてやるのも自由なのだ。まぁ、そのつもりは無いけれどもね。
彼女は自らの手の内で必死にもがくブイモンの姿をニヤニヤと(目玉だけなので表情は無いが)眺めていた。



と、その現場に通りかかったマンイーターであった。

「うわ、まさかの戦闘中じゃん」
「何よあんた……って、何!? 人間の女!?」

バックベアードは驚く。その姿はどう見ても人間の小娘だったからだ。
黒髪ワンレンの白いボディコンを着たチャラい女。何故こんなのがここにいるのか。
……まぁ、そんなことはぶっちゃけ後でいい、と判断した。
何故かって? それは私が捕まえてる変態がその女に助けを求めだしたからだよ。

「そこの麗しきお嬢さん、助けてください!」

状況的に私が一方的に攻撃してるように見えるだろう。
ならば、キチンと事情を説明すればわかってもらう必要がある。

「騙されないで! こいつ幼女である私を襲ったのよ! ロリコンのケダモノよ!」
「俺ケダモンじゃないです! デジモンです!」
「うっせークソムシが! ほら、貴方も一人の女ならわかるでしょ! コイツは女の敵なのよ、敵!」

182 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:59:14 ID:gugMiHew0
女の敵……これは殺し文句だわね。バックベアードは心の中で不敵に笑う。
羊の如くか弱き幼女と、盛りの付いたオオカミ……どちらの言い分が信用されるかしら?
無論、この私に決まってるでしょ。幼女の味方をしない人間がどこにいるかしら。
とりあえず、これだけ言えばこの人間も騙されたりしないはずよ。ウフフフフ……

マンイーターはバックベアードとブイモンの姿を交互に見た。
そして、黙ったままふくろから拳銃を取り出す。
出てきたのはMPSマシンガン、彼女はその銃口をブイモンに向けた。

「オーオゥ、貴方からも一撃くれてやりたいってわけね! いいわいいわ、このゴミクズを撃ち抜いちゃって!」

嬉々とした口調でバックベアードはそう言うと、ブイモンを掴んでいる触手をマンイーターが狙いやすい位置に動かす。
ブイモンは必死にもがくが、最後までその拘束から逃れられることは叶わない。

「ギャー、助けてーっ!」

引き金が引かれる。



―――ぱららららっ





「…………」

軽い発砲音が周囲にこだました。

「…………」
「そ、そん……な……」
「…………」

……静寂の中、ブイモンは声だけが小さく聞こえた。











「……おやおやぁ〜? これはいったいどういう風の吹き回しィ?」

銃弾を浴びて、うずくまるマンイーターを見ながら、バックベアードは挑発を口にする。
そう、おそらく誰もが予想しただろうが、マンイーターは発砲の瞬間にマシンガンの銃口をバックベアードへ向け直したのだ。
彼女は常に男性の肩を持つのは当たり前だ。だって獲物だし。
だが、それを予想出来なかったバックベアードは一瞬だけ驚いた。

しかし、マンイーター側にも予期出来ない事態が一つだけ含まれていた。
それはバックベアードは『撃ち込まれた銃弾を反射する性質』を持つ悪魔だったということ。
無数に放たれた銃弾は、そっくりそのままマンイーターの腹部へと突き刺さった。
ブイモンの「そんな……」という言葉は、その不可解な展開を飲み込むことが出来なかった感想である。

「あーあ、残念だわねぇ。私のようなか弱い幼女に襲いかかるから報いを受けるのよ?」

こんなの幼女のセリフではない。

「まさかガンを跳ね返せるとか有り得ないんですけど……いや、アタシも平気なんだけどさー」

マンイーターはスッと立ち上がり、いくつもの小さな穴が空けられたボディコンを手でパッパッと叩いた。
カラカランと音を立てて銃弾が服の隙間からこぼれ落ちていく。

183 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:59:39 ID:gugMiHew0
「へぇ、防弾チョッキでも付けてたのかしら」
「教えないよ」
「あっそ。どっちにしろ、貴方の銃は役に立たない。だったら後は直接的な殴り合いね。どう? 勝てる自信あるかしら? 人間」
「もう必殺技でワンチャンよ、これに賭けるわ」
「ほーう、必殺技ねぇ……。……幼女だからって馬鹿にするのもほどほどにしろよ、クズ鉄。
 人間の小娘風情が、バックベアードである私に少しでも勝てると思ってんの?」

バックベアードは目の前の"無力そうな人間"を見て、嘲る。
事実、バックベアードはその辺りの野良悪魔と比べて、格段に強い戦闘能力を持っている。
それは本物の人間どころか、マンイーターですらも大きくレベルを上回っている程に。
支給品という不確定要素が通用しなければ、あとは互いの純粋な戦闘能力をぶつけ合うことによって勝者が決まる。
相変わらずブイモンは縛られているため、二人の戦いに邪魔が入ることは無い。

「麻痺かみつきッ!!」

マンイーターは口をガバッと開き、バックベアードへと駆ける!

「遅い、遅いのよ! こちらが先手を取らせて貰うわ!!」

バックベアードの目には既に勝利しか見えていなかった。
圧倒的なレベルの差に加えて、自分には相手の動きを封じる技を先に繰り出せる。
そう、いくらさっきから負けフラグをばら蒔いていたとしても、この差を覆せなければ自身の敗北は有り得ないのだ。
―――処刑の時間だ。

「じわじわとなぶり殺してあげる! パララアイ!!」

パララアイ……バックベアードの『相手の筋肉を麻痺させる眼力』が、マンイーターを射抜く――。


















そして、マンイーターは戦いに勝利した。

【外道バックベアード@真・女神転生シリーズ 死亡】


 ◆


何が起きたか簡潔に説明しよう。
マンイーターは『強アンデッド』と区分させる肉体を持っている。
その肉体の特徴として、まず銃弾を受けても一切の損傷を受けない。
そして『呪殺』属性の攻撃を反射出来る。この二つが目立つ点だろう。

さて、バックベアードの肉体は銃弾を跳ね返す。だが、それ以外に目立った耐性は持ち合わせていない。
パララアイの属性が『呪殺』。反射された眼力は、そのまま彼女の体を石の如く硬直させた。

その後、触手一本を動かすことも叶わぬまま、ボコボコに殴られて息絶えた、というわけだ。
マンイーターを見た目で人間だと判断してしまったのも敗因の一つだろう。




「適当に誘惑すりゃ済むのに、なんでこんな死線くぐる羽目に……」

184 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 16:59:57 ID:gugMiHew0
マンイーターはため息をついた。
ショットシェルの弾が込められたマシンガン……これぶっぱすれば余裕で行けるっしょ、と思ったらそんなことはなかった。
苦労して助けだした割にはこの男悪魔はあんまり強くなさそうだし……。なんかもう幸先が悪いったりゃありゃしない。

「助けてくれて感謝ッス!! 麗しき人間のお姉さん!!」
「いやいや、人間じゃねーから。アタシは幽鬼マンイーターって、悪魔だよ悪魔」
「マジすか! 俺はブイモンって言います! 良ければマンイーターさんと行動してもイイッスか?
 しばらくの間でも、二人組で戦えば絶対に有利になるはずッスよ……そう思いません?」

これじゃ誘惑じゃなくて共同戦線じゃねーか。
まぁいい、他に有能そうな男悪魔に会うまでは弾除けとして役立たないことも無いだろう。

「そーかそーか。じゃ〜あ……」

身をくねらせてブイモンの耳元に顔を近づけて、優しく囁いた。

「契約としてアタシにキスしてちょうだい? イケメンな竜の坊や……」

超肉食系の悩殺テクで軽〜く虜にしてやるぜ。さぁ、たじろぐがいい。女を意識するがいい!

「……すみません。俺、マンイーターさんより十歳くらい若い子のが好みだもんで……ちょっと……」
「」

ロリコンに間違いは無かった模様。



【E-5/山中/一日目/日中】

【ブイモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:生き残りたい
 1:しばらくマンイーターと組む

[備考]
オス。若者。ヘタレな後輩キャラ。「ッス」みたいな口調。自力で進化は出来無いようだ。
必殺技は「ブイモンヘッド」


【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:男悪魔を誘惑し味方に付け、利用しつつ優勝を狙う
 2:しばらくブイモンと組む。場合によっては切り捨てる

[備考]
メス。白いボディコンに黒髪ワンレンのゾンビ。ノリが軽いギャル。名前の通り男喰い。一人称は「アタシ」
技は「麻痺噛みつき」「悪魔のキス(未登場)」「セクシーダンス(未登場)」
真・女神転生?の出典


《支給品紹介》
【MPSマシンガン@真・女神転生】
吉祥寺の骨董屋で25000円で買えるマシンガン。連射出来るが威力が低い。

【ショットシェル@真・女神転生】
銃の弾。MPSマシンガンと同時期に購入すると思われる。

185 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 17:00:08 ID:gugMiHew0
以上で投下終了です

186 ◆9n1Os0Si9I:2013/05/04(土) 17:24:34 ID:eHpVByUQ0
予約延長させていただきます。
感想は投下の時に書きたいと思います。

187 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/04(土) 22:54:31 ID:G0SjJ3h.0
予約延長します

188 ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:21:42 ID:VVKUxaA.0
ガブモン、キラーパンサーを投下します

189きらがぶじゃれじゃれん!! ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:22:42 ID:VVKUxaA.0

「フカフカのようなツルツルのような不思議な肌触りがするよ」
「なぁ、そろそろ拙者にじゃれるのはやめてくれないか?」

4足歩行の厳つい顔を持つ獣、キラーパンサーは成長期爬虫類型デジモンのガブモンにじゃれついている
その様子は傍から見ればキラーパンサーがガブモンを押し倒している感じである
正義感が強いものであれば誰かが襲われていると勘違いするだろう

そもそもこのような奇妙な光景がどうして生まれたのかは数刻を遡る



190きらがぶじゃれじゃれん!! ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:23:27 ID:VVKUxaA.0
「やっぱりオレは辛い目に遭い続けなきゃいけないみたいだな」

森の中をキラーパンサーは一人呟き続けながら歩き続けている
しかしそう呟くのも無理はなかった

……―――

かつての彼は野生に生きる魔物としては致命的なまでに体が弱かった

狩りをしようにもすぐ獲物に逃げられ、仮に捕えたとしても振り落とされてしまう
そんな様子に群れの仲間はおろか、親にすらも見限られることとなる

気がつけば群れの仲間は彼をおいて立ち去ってしまっていた
野生に生きる者として弱い者を群れから切り離すのは当然と言えよう

何度絶望しかけたかはもう覚えていない
それでも死にたくないという生存本能
それだけが彼を支える動力源となっていた
いつしか身体能力も高くなり一匹の立派なキラーパンサーとして成長を遂げた
しかし彼は見捨てたかつての仲間を恨んではいない
もし自分の群れの中に弱い者がいれば見捨てていたのだから……

気丈ながらもどこか幼さの抜けきれない心を持つ彼は
孤独による寂しさを胸に秘め群れを作らずに過ごしている

一人でも寂しくないけど一人だと寂しい
そんなジレンマを抱えながら……

そのようなさなか気がつけば人間達の身勝手なギャンブルショーに巻き込まれてしまっていた

―――……

191きらがぶじゃれじゃれん!! ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:24:08 ID:VVKUxaA.0
「む、あの魔獣は……」

今までの半生を振り返りながら歩を進めていると目の前に動く何かがいる
警戒しつつ目を凝らしてその何かをじっと見つめる
果たしてそれは青と白の縞模様を持ち頭に一本の角を生やしている彼からすれば見たこともない魔獣だった

ふと彼の中にある感情が湧きだす

―――じゃれついて甘えたい

凛とした雰囲気ながらどこからともなく溢れ出てくるあどけなさ
艶やかな体表に纏わっている毛皮

今まで孤独に打ちひしがれて続けた彼の理性が音を立てて崩れていく
その厳つい顔をにやつかせながら縞模様の魔獣に飛びかかった

それは獲物を捕える猛獣のような感じであろうか
否、ねこじゃらしにじゃれる子猫のようだった



192きらがぶじゃれじゃれん!! ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:24:35 ID:VVKUxaA.0
「それじゃ、そなたは殺し合いに乗っていないんだな」
「当たり前だよ、明らかに見世物にされるなんてオイラ納得できないしさ」

キラーパンサーが一通りじゃれ終わり、自己紹介を終えてお互い殺し合いに乗る気がないことを確認する

「ま、拙者とて未練もあることだしこのようなところで朽ち果てるわけに引かぬ」
「未練?」
「ああ、拙者は早く進化というものをしたいのだ」
「進化?進化って何?」
「進化も知らぬのか?まあいい、進化というのはな……」

***************************************
*省略のお知らせ                              *
*                                     *
*ガブモンがデジモンの進化に関するメカニズムを説明しているところですが   *
*内容は大学の講義に近く、人によっては眠くなってしまうため省略されました  *
*気になる方は各自で調査の程をよろしくお願いします             *
***************************************

「え?それじゃあいざとなったらオイラを殺して進化しようとしちゃうの?」
「馬鹿言え、拙者たちデジモンはお互い切磋琢磨して互いを健闘し合いながら強さを得ていくものだ。このような殺戮は互いを健闘する機会すら与えない」

進化の説明を聞いたキラーパンサーはさっとガブモンから身を引く
その様子を察したガブモンは咄嗟に言いかえす

「本当に〜?」
「本当だ、さすがにここまで疑われたら拙者は悲しいぞ」
「う〜ん、それじゃあ信じてみようかな?」
「何故に疑問形?」
「まあ、こんな状況だし簡単に信じられる訳無いと思うよ、ガブたん」
「その呼び方はやめてくれ」

ガブモンのゲンコツがキラーパンサーの頭に刺さる

「いきなり殴るなんて酷いじゃないか、ガブたん〜」
「だーかーらー、その呼び方はやめろ」

そして再び鉄拳が頭へと刺さる



193きらがぶじゃれじゃれん!! ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:25:31 ID:VVKUxaA.0
「まあ、とりあえずは仲間を探すところから始めよっか」
「確かに拙者とキラーパンサー殿だけでは心細いところだ。しかし、中には殺すことに躊躇のない輩もいるかもしれないがお主は戦えるか?」
「うん、オイラ戦えるよ」
「そうか、安心した。それでは早速出発しよう」

そう言い終えるや否やガブモンは平原の方へと歩き始める
それに続くかのようにキラーパンサーも歩を進める

(オレとしてはまだまだガブたんに甘えていたいところだな)

ガブモンにじゃれついていたいという欲望を何とか抑えながら


【E-8/森と平原の境付近/一日目/昼】

【キラーパンサー@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康、頭にたんこぶ×2
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身不明)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
 1:ガブモンと仲間を探す
2:もっとガブたんにじゃれつきたい

[備考]
オス。半生が過酷だったためか精神自体はしっかり者だが誰かのそばにいるとついつい甘えたがる性格。一人称は誰かといる時は「オイラ」、一人でいる時は「オレ」。

【ガブモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身不明)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
 1:キラーパンサーと仲間を探す
 2:ガブたんという呼び方はやめて欲しいところだ……

[備考]
できるだけ早く進化したいと思っている。なぜか侍口調で話す。一人称は「拙者」。

194 ◆2VuKLsNfm.:2013/05/04(土) 23:26:28 ID:VVKUxaA.0
投下完了です

195 ◆5omSWLaE/2:2013/05/04(土) 23:41:37 ID:gugMiHew0
投下お疲れ様です
あぁ、二体のやりとりに癒されますね〜
キラーパンサーの猫っぷりが可愛らしい!
侍チックなガブたんといい感じにやっていけそうですねぇ

196上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:10:46 ID:BhAqeJgE0
投下します

197上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:11:03 ID:BhAqeJgE0



「でね、ブリーダーさんはボクにこう言ってくれたんだ────」
「…………あら」

別に情報交換をしようというわけでもない。
彼に話させることで少しでも気を和らげさせることが出来ればいい、
そう思って、わたしはハムライガー君に喋らせていた。

取り留めの無い話だった、
彼がブリーダーさんと過ごす、本当に何のことはない日常。
だからこそ、わたしは胸を痛めていた。
知っているのだから、日常を奪われるというのがどういうことか。

生きるということは旅だ、一寸先も見えない暗黒の中を松明も無くもがき続ける旅だ。
共に歩んでくれる誰かがいたから、わたしはおっかなびっくり進むことが出来た。
進む先の目印は無かったけれど、日常という灯火がいつか帰る場所をはっきりと浮かび上がらせていた。

今はもう無い。

共に歩んでくれる誰かも、家族の待つ温かな灯も失ってしまった。
ただ、業火が私の道を照らしていた。

憎悪の業火がわたしの最終目的地をくっきりと浮かび上がらせていた。
だから、憎悪の松明にわたしは感情をくべていく。

二度と帰ることは出来ないが、進むことは出来る。

だから、帰りたいと願うハムライガー君は日常に返さなければならない。



一緒に帰りたいな、とほんの少しだけ思った。






絶対に帰れないことなんて、わかっているから。



444444444444444444444444444444444444

  殺す。

444444444444444444444444444444444444

198上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:11:15 ID:BhAqeJgE0

「それで、これからどうするの?」
ある程度話し疲れて落ち着いたのか、ハムライガーが尋ねた。

「そうね……」
トンベリは考えあぐねていた。
もちろん、目の前のハムライガーを何よりも守らなければならない。
だが、そのために全て殺すかといえばそれはもちろん否、だ。

その選択肢だけは、己の生き方の全てを否定するそれだけは決して選べない。

だが、襲い来る敵から彼を守り続けるだけでは、
時間制限の末、何の抵抗も出来ずに殺されてしまうだろう。

呪いがあるのだから、脱出することも出来ない。

……いっそ、運に賭けてみるか?
最終日まで生き残って、殺処分で彼だけが生き残るように天に身を預ける。
わたしは決して手を下さない、悪いのは全てニンゲン。

くだらない……心の底からくだらない考えだと、トンベリは自嘲する。
奪われたくないから、奪いたくないから、だから捧げるなんて……だったら、決まっている。

「仲魔を……探しましょう」
「仲魔?」

「この死ぬ呪いを解くことが出来るような仲魔を」
「…………いるのかなぁ?」

「きっといるわ」
「そっかぁ」

優しく話を聞いてくれた時と何一つとして変わらない、トンベリの声。
その声に、ハムライガーは安心感を覚えていた。
大きく己を取り巻く状況が変わったからこそ、変わらないトンベリの声が嬉しかった。

そう変わらなかった、何一つとして保証が無くても。

呪いを解けるモンスターなんて、いるかどうか……いや、きっといないだろう。
トンベリにはそれがわかっていた、それでも敢えてハムライガーに希望を持たせた。
いや、むしろこの言葉は悪趣味にもこの光景を見ているもののためのためだったのだろう。

きっと、ニンゲンはこの光景を見て、
呪いを解けるモンスターなどいるはずがない、とゲラゲラ笑うことだろう。

無駄に仲魔を作り、そうして迫るタイムリミットの内に殺しあうことを望んでいるのだろう。

だが、トンベリが本当に探したいものは、穴だ。
永遠に続くと思われた日常が壊されたように、世界に永遠も完璧も存在しない。
探すべきはこの島あるいは、物、モンスターにあるかもしれない予想外だ。
この悪趣味な催しの堤を崩す、蟻の穴だ。

その道は地獄へと続く、苦しみで舗装されたものだろう。
それでも、トンベリは探さなければならない。

戦うと決めたのだから、ニンゲンと。
数十億のニンゲンに対し、恨みを背負ってたった一人で戦うと決めたのだから。

「た、助けてくれ!」

444444444444444444444444444444444444

  殺す。

444444444444444444444444444444444444

199上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:11:27 ID:BhAqeJgE0

迂闊なことをしたと思う、何で俺はあのスライムにきっちりトドメを刺さなかったのか。
そりゃアイツなんて放っといたらとっととくたばっちまうだろう、
だが、生きて生き延びやがって、それで俺の噂でも流しやがったら…………畜生。

手間掛けさせんじゃねーーーーーよ!!

大体、アイツに何でわざわざトドメなんて刺さねーといけねーんだよ!
俺が!この俺が!!殺しだぁ!?ゼッテー嫌に決まってんだろ!!
そもそも逃がす程度の慈悲を与えてやったんだから、アイツはへりくだって感謝するべきだろ!

うぜぇ!!うぜぇ!!うっぜぇ!!!

アイツがうぜぇのが全部悪いんじゃねぇか!!
殴ってたの見られたら勘違いされるじゃねぇかよ、うざってぇ!!

俺が殴ったのもアイツが悪いし、
俺に変な噂流されたら、アイツの責任だし、
あー!!うっぜぇ!!超うっぜぇ!!!

444444444444444444444444444444444444

  殺す。

444444444444444444444444444444444444

200上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:11:46 ID:BhAqeJgE0

「スライムって奴が、おっ、俺を殺そうと!!」
ハムは大げさに取り乱して、トンベリ達に救いを求めてみせた。
二人いるということは理性的な会話が出来るということだろう、
その片割れが子どものハムライガーというのならばなおさらいい。
つまりこの状況で子どもを保護する程度に目の前の緑色はお優しいということだ。

「あっ、あいつは……やばい…………」
「……何があったの?」

一切の動揺を伺わせない無感情な声にハムも少々戸惑うものがあったが、
しかし、話を聴かせることが出来た時点で、彼の策は成功していた。

つまり、先回りしてスライムの悪評を流し、
なおかつ、己を哀れな被害者の立場として売り込むことで強者の保護下に入ること。

しかし、それをするためにはハムの体は綺麗すぎた。
この殺し合いの場で殺人者相手に怪我一つなく切り抜け、そして被害者を騙るなど余りにも不自然ではないか。


だから、傷つける。


己の拳でやったものとわからないように、そこら辺の石を持って己の臀部を思いっきり打ち据える。
臀部ならば、打ち誤っても後遺症になる確率は低い。
それに、実際の奴の身長と比べたならば、ここは攻撃位置としておかしくはない。

当然痛みはあったが、命を買うには安い代償だ。

そしてハムは簡単なシナリオを考える。

スライムは親しげな顔で俺に近づいてきた。
完全に油断した俺は背後から不意打ちを受けた、しかしカウンターを食らわせた。
無我夢中でやったので、冷静になって逃げた。
トドメを刺すなんてとてもじゃないが出来なかった。
怖い怖い怖い怖い。

事実を織り交ぜある程度正当性のある物語。
いや、スライム視点から見れば全て真実か。

かくして、台本は決まり二人の観客を相手にハムは舞台の幕を開ける。

「とにかくやばいんだ、殺される!!あいつに殺されちまう!!」

ここで重要なのはひたすらに慌てることだった。

大抵の場合、感情は理性よりも先行する。

哀れな弱者という自分のイメージを相手に対し埋め込めば、
これから先騙る物語の粗を誤魔化し、
更に自分に対する悪印象が入った際に、そのような者ではないと思い込ませることが、ある程度出来る。

だからこそ、彼は具体的な言葉を述べず、
ただ、ひたすらに慌て続ける。

「とにかく一旦落ち着いて……」
相手に世話を焼かせる言葉を引き出させる、自分の手綱を相手に握らせる。
ハムの思惑通りに事は進もうとしていた。


そしてそれは、
彼にとっても思惑通りの状況であ444444444444444444444444444444444444。
444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444
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「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444
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201上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:12:17 ID:BhAqeJgE0



順調さが、ハムに油断を生じさせていた。
ハムという来訪者への対処がトンベリ達に隙を生じさせていた。

その空白をスライムは待ち続けていた。
そして彼は待ち続けた反撃の機会を逃す魔物ではなかった。

口に咥えた刃と共に、茂みより跳ぶ。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
狙いはハムの首、敵の首、仇の首。

「…………ッ!!」
だが、完全なる殺害の機会は皮肉にも、スライムと同じ復讐者によって邪魔されることとなった。
殺気を感じたトンベリは咄嗟にハムを突き飛ばし、コンバットナイフを氷の刃で受け止める。

「うっ……うわぁ!!スッ!スライムだァ!!殺される!!」
この局面で最も冷静に動いたのはハムだった。
スライムが何かを口にする前に、先手を取って目の前の敵が散々口にしてやったスライムであることをアピールする。

「ハムッッッ!!!!よくもぼ「うわあああああああああああああああああ!!」
そして、スライムの声を塗りつぶしてハムは悲鳴を挙げる。
スライムの反論が許されぬ内に、トンベリは再度スライムに斬りかかる。
この場に於いて、ハムは完全に哀れな被害者になることに成功していた。

「…………」
スライムに斬りかかるトンベリの目は何の感情も無く、ただ、虚無が映っていた。
燃え上がるマグマの様なスライムの殺意に対し、
トンベリの殺意は、どこまでも冷酷で……そして、誰にも見せることの出来ない心の奥底で何よりも熱かった。

そんなトンベリの様子に、ハムライガーは何も言葉が出なかった。
優しかったトンベリさんが、あそこまで冷酷に──

「…………っ」
視線に気づいてしまったトンベリの攻撃の手が緩まった。
わかっていたのだ、戦う以上いつかこうなるということは。
だが、それでも──

「……恐れてくれてもいいから、だから……守らせて」
「……トンベリさん!」
何も、変わってはいなかった。
殺し合いの最中だというのに、ハムライガーはそれが嬉しかった。

「ふざけるなよ!!」

さて、三体一と圧倒的不利になるとわかっていてもスライムは彼らを襲わなければならなかった。
圧倒的な隙を見せたということもあるが、何よりも──

「なんで僕がそこにいない!! なんで君がそこにいる!!」

自分を切り捨てたハムが再び仲間を作ろうとしているのが許せなかった。
守られているハムライガーが、憎かった。

「…………」
だが、感情と実力は無関係だった。
氷の刃がコンバットナイフを弾き飛ばし、そして──

「 バ  カ  じ ゃ ね ぇ の ?」
死の直前の風景、ハムの口がゆっくりと動くのを見た。


──スライムが連戦連勝するだろうか?マダンテ?ねえよ。

──「なんてね!かっこいい事思っても僕は所詮スライム……勇者の登竜門なんだよ……」

「結局……僕はただのスライムだったんだね…………」

氷の刃があっさりと、スライムの体を両断した。

【スライム@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】

死を目の当たりにしたハムライガーは何も言えなかった。

黙るべき状況であることを知っていたハムは敢えて黙っていた。

「…………これでもう大丈夫」
ハムライガーに何か優しい言葉を掛けてあげたかった。
だけれども、

己の言葉は驚くほどに無感情だった。

202上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:12:30 ID:BhAqeJgE0

【F-5/森/一日目/日中】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ブリーダーさんに逢いたい。殺し合いはしたくない。
 1:…………トンベリさん
 
[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」

【トンベリ@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:こおりのやいば@ドラゴンクエストシリーズ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:ニンゲンを殺す。殺し合いに乗る気はないが、ニンゲンを肯定するモンスターは殺す
 1:ライガー(ハムライガー)の幸福を守り、共にありたい
 2:殺し合いの穴を探す

【備考】
メス。目の前でニンゲンに仲間を皆殺しにされた経験があるため、ニンゲンを激しく憎んでおり、感情表出ができなくなっている。一人称は「わたし」
“ブリーダー”をモンスターの名称だと思っており、人間であるとは思っていない。

【ハム@モンスターファーム】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身未確認)
[思考・状況]
基本:帰りたい
 1:やったぜ。
 2:とりあえずトンベリ達に付いて行く
 3:殺すとかありえねー

[備考]
オス。野生で人間に対しては特に何も思っていません。
表は良い人振るが内心は黒い。自分より格下は力でねじ伏せ下僕にする。
格上には媚を売り自分の安全を確保する。基本自分からは行動せずリーダー格に付いて行く。

203上手くズルく生きて楽しいのさ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 22:12:46 ID:BhAqeJgE0
投下終了します。

204 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/05(日) 23:16:47 ID:BhAqeJgE0
ピカチュウ予約します。

205 ◆5omSWLaE/2:2013/05/05(日) 23:23:34 ID:pBTjzVBk0
投下お疲れ様です
不憫なスライムの末路……この不条理な感じは堪りませんね!
恨みを背負いつつも、幸せを願うトンベリの姿が実に格好いい……!
そしてハム、コイツ、なんて狡猾な……。清々しい程の小悪党、見ていて楽しいです

206 ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:39:35 ID:GNmx0dfo0
投下お疲れ様でした。

ハムの俗っぽさがたまらない……!
実力というよりも、このハムに出会ってしまったのがスライムの敗因かもしれませんね。
殺し合いという現実を目の当たりにしたハムライガーと、守るためとはいえ命を奪ったトンベリ。
彼らの関係に、潜り込んだハムがどう影響するのか、今後が楽しみです。

さて、キノガッサ、チャッキーを投下いたします。

207絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:41:25 ID:GNmx0dfo0
 澄み渡る空気をいっぱいに取り入れ、降り注ぐ柔らかな陽光を全身に受ける。
 足裏に感じる岩肌は硬く、吹き抜ける風は微かな冷たさを孕んでいた。そよぐ風の強さと空気の薄さが、標高の高さを物語っていた。
 荒野によく似た山地の中腹。そこに佇むのは、茸のような頭部が特徴的なポケモン――キノガッサだった。
 その瞳はしかと閉ざされている。故にキノガッサは見ていない。
 眼前に在る、巨大で無骨で硬質な岩塊を、その瞳に捉えてはいない。
 キノガッサは目を開けない。
 黒く閉ざされた視界のままで、キノガッサは、すっ、と足を動かした。
 その所作に音も淀みも乱れもない。
 自然と一体化した――否、自然そのものの動作で、左手を水平に翳し、左足を前に出す。
 その動作に続くのは、右半身の引き絞りだ。流れるように右膝を曲げ、右拳を握り締める。
 されどその身は柳のようにしなやかで、緊張めいた力は微塵も感じられない。

 呼吸が挟まる。
 深い吸気で体内に力を巡らせる。密な呼気を以って余分なる力を外に出す。
 力が濾過され純化される感覚が、充足感のように満ち満ちていく。
 内で力が高まっていき、そして。
 開眼と同時に、解放される。
 引き絞られた右半身が、激流のように前へと駆け抜ける。右足の踏み込みが大地を揺らし、放たれた矢を思わせる拳が大気を貫く。
 甲高い音を立て空気を引き裂いた拳が向かう先は、キノガッサの体躯を優に超えるサイズの岩塊の中点だ。
 拳が、岩に接触する。
 瞬間、静寂が場を支配した。
 音もなく動きもなく、大きな岩塊と打ち付けられた拳だけがその場に在ると錯覚するような、静の気配がたちまちに広がった。
 時間が制止したかと思われる空間で、真っ先に音を立てたのは岩塊だった。

 ぴしり、と、軋みが響く。
 一度軋んでしまえば、もはやその音は止まれない。止まれない音は静けさを一瞬にして喰い破る。
 岩塊の表面にひびが入る。そのひびは悲鳴めいた軋みを上げて深さを増し、亀裂となり傷となり、みしみしと岩塊を刻んでいく。
 断末魔の音を立て、岩塊が、砕かれる。
 塊ではなくなった石の欠片を一瞥し、キノガッサは構えを解いた。
 戦う力も培った技も、確かにこの身に在る。モリーと名乗った男が望む通り、戦いに身を投じることは可能だった。

 ――昔のあたしなら、喜んでやり合ってただろうな。
 
 かつてのキノガッサは、喧嘩っ早かった。
 腹の立つ奴はぶっ飛ばし、反抗する奴は捩じ伏せ、そりの合わない奴は殴って黙らせた。
 そうして暴力を振るい頂点に立てばちやほやされた。頂点に立てた。必要とされていると実感できた。
 いち早く進化したこともあり、そんなことができるだけの強さがなまじあったせいで、暴力があれば何だってできると思い込んでいた。
 今思えば、恥ずかしくてたまらない。
 結局あの頃の自分は、情けないほどに弱かったのだと思う。
 そう気付けたのは、一人の人間と出会ってからだ。
 草むらを歩くその人間にキノガッサが抱いた第一印象は、なんとなく気に入らないという程度ものだった。
 そして、その程度の気持ちがあれば、殴りに行くには十分だった。
 だから、飛びだした。
 勝てると信じて疑いはしなかった。何せ、相手はたかが人間なのだから。

208絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:42:24 ID:GNmx0dfo0
 けれど。
 けれど、キノガッサは敗退した。
 その人間が繰り出したポケモンにではなく。
 その人間自身の、拳に負けたのだった。
 それは、ずっと抱えてきた自尊心が、粉々になった瞬間でもあった。砕かれた自尊心は手の中からボロボロと零れ落ちていった。
 そうして空いた腕の中に収まるのは、悔しさと屈辱でしかなかった。
 悔しさは尖ったトゲまみれだった。屈辱は鋭い刃のようだった。
 痛くて、身を切るようで、黙って抱き締めてなどいられなくて。
 キノガッサは、人間に声を投げかけたのだった。
 
 どうして、あんたはそんなに強いんだ、と。
 
 キノガッサの言葉など、人間に通じるはずもない。
 そんなことが分かっていても、問わずにはいられないほど、悔しさと屈辱は痛かった。
 せめて目を逸らさずに言えたのは、残り滓のようなプライドが胸にこびりついていたからだろうと、キノガッサは今にして思う。
 けれど、目を逸らさずに言えたからこそ、あの人間は、こちらへと手を伸ばしてくれたのだ。

 そのときの言葉を、キノガッサは覚えている。

「お主の拳には足りないものがある。それを求めるならばついて来るがいい」

 覚えている言葉を、記憶の内から外に出すべく口にする。

「共に――“心”を磨こうぞ」

 そうして、キノガッサは拳を握り締めた。
 岩塊を砕いたこの拳は、喧嘩っ早かった頃の拳とは違う。気に入らないものを力でねじ伏せるための拳とは違う。自尊心を満足させるための拳とは違う。
 この拳は。
 初めてキノガッサを負かした人間――師と共に磨き上げた、“心”の宿る拳なのだ。
 師はもう、側にはいない。キノガッサに“心”を伝えると、彼はふらりと何処かへ行ってしまった。
 それでも、彼に教わったことは、キノガッサの中で根を張り芽吹いている。
 それは、絆だった。
 共にいられなくても、彼から教わったモノがある限り、彼と絆で繋がっていると思えるのだ。
「あたしの“心”はさ。こんなの、間違ってるって言ってるんだ」

 胸の奥、息づく“心”を確かめるように、キノガッサは呟いた。
 ただの腕試しであるならばいい。実力を競い合うだけであれば、乗ってみるのも悪くはない。
 けれど、だ。
 モンスターを捕獲し脅迫し、無理矢理に殺し合わせるこの催しは、腕試しとはとても呼ぶことはできない。
 だからこそ、胸中の“心”は言っている。
 なんとなくではない、確固たる信念として、この催しに抗うべきだと、“心”が叫んでいる。
 
「あたしは戦うよ。あいつに従うんじゃあなく、あたしの意志で、戦うよ」

 言葉にしたのは誓うため。
 握り締めた拳に。
 大切なことを教えてくれた師に。
 他ならぬ、自分自身の“心”に。
 折れぬ誓いを立てるためだった。
 
 奇妙な音が聞こえたのは、そのときだった。

209絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:43:58 ID:GNmx0dfo0
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 木で地面を叩くようなその音はリズミカルで、聴覚に深く響き渡る。

 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 一定のリズムを刻むその音は、陽気な打楽器を思わせる。
 
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 けれどキノガッサは、徐々に近づいてくるその音に、違和感を覚えるのだった。
 
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 その音は、あまりにも規則的過ぎた。

 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 音と音の間隔は一定だった。一音の乱れすらありはしなかった。
 
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 それは、酷く無機質で、不自然で、気味が悪いものだった。
 
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。
 
 癖になりそうなリズムだった。いつまでも続きそうな気さえする、面妖な音律だった。
 
 かたかた、かたり。

210絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:44:45 ID:GNmx0dfo0
 けれど、それは。
 何の前触れもなく。
 ぷつりと、途切れた。
 
 直後、キノガッサの背筋を悪寒が駆け抜けた。
 言い知れぬ嫌な予感に突き動かされて身を逸らす。顔の真横、空間を貫いて飛ぶ鈍色が見えた。
 金属が地に突き立つ音を置き去りにして、岩肌を蹴り、ひねった身を立て直す。構え直した瞬間、再度何かが飛んでくる気配がした。
 対応すべく、身構える。
 
「――ッ!?」

 新たな飛来物を視界の正面に捉えた瞬間、キノガッサは目を見開いた。
 勢いのままに飛んでくるそれは、山吹色をした布――帽子を被った球体だった。

 帽子を被っているということは、つまり。

 つまり、それは。
 
 胴体から切り離された、アタマなのであった。

 アタマにある蒼い双眸は無機質で作り物めいていて、趣味の悪い玩具を思わせる。
 その瞳は、どうしようもなさを感じさせるほどに濁っていた。
 冷え固まってどす黒くなった血液を思わせる昏い光で、底が知れないほどに濁り切っていた。
 その両眼と、目が、合う。
 瞬間。
 にぃっ、と、その口の端が愉快そうに歪み、開く。
 そうして露わになった口内は、おぞましいほどのどす黒さに染まり切っており、ところどころに見える元の色が薄く見えるほどだった。
 開かれた口から――哄笑が上がる。
 耳障りな笑い声は果てが感じられないほどに無機質だった。神経を引っ掻くような不快な声は、聴く者のたましいを削り取るような音の群れだった。
 そこには、純化された殺意が塗り固められていて、それがただの作り物ではないということを物語っていた。
 掻き毟られるような本能的な恐怖がキノガッサの身を竦ませる。

 ――……竦むんじゃ、ねェッ!
 
 震える身に発破を掛ける。“心”に意識を繋ぎ、震える身に力を注ぐ。
 
 ――負けるものかッ! 負けてたまるかッ!!
 
 向かってくる殺意に負けるほど、磨いた“心”は弱くはない。
 弱くあって、たまるものか。
 拳に力を得るために。恐怖に打ち勝つ、“心”の力を引き出すために。
 キノガッサは、吼える。

211絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:45:51 ID:GNmx0dfo0
「動けよあたしッ!」

 間違っているものを正すために。

「あたしの“心”は! 磨いた“心”はッ!」

“心”に抱く信念を貫くために。

「そんなもんじゃあ、ねェだろうッ!!」

 叫びを上げれば力は来る。恐怖の震えを武者震いに転じさせる。
 竦みを叫びで振り払い、キノガッサは拳を握る。
 アタマはもはや迫り切っていて、回避はもはやままならない。守りに入るのが最善だと思いながら、それでもキノガッサは防御を選ばない。
 抗いの意志を見せるため。
 キノガッサは、握った拳を前に出す。
 彼我距離が近づきすぎていて、クリーンヒットへは至らない。
 されど掠めた拳には破砕の感触があり、視界にあるアタマの軌道がぐらりと逸れる。
 アタマが、落下して転がっていく。その左端が砕けているのは、キノガッサの拳が触れた証だった。
 それでも、そのアタマはけたけたと哄笑を上げ続けていた。
 こいつを、放っておいてはいけない。
 そう直感したキノガッサは、未だ嗤うアタマを砕こうとして足を踏み込む。
 
 かたかた、かたり。

 瞬間。
 
 かた、かたり。
 
 すぐ背後から、音が聞こえたのだった。
 息を呑み、振り返る。
 
 息がかかりそうなほどの近距離で。
 全身をどす黒い血痕で彩った、首のない人形が、跳びあがっていた。
 それは、キノガッサの眼前で、宙を舞うように身をひねらせる。
 人形の小さな脚が見せるその動作。それが回し蹴りであることに気付いたのは、キノガッサの側頭部に、容赦のない踵が叩き込まれてからだった。
 
 非力にしか見えないというのにその蹴りは重く、キノガッサの意識を一瞬の間白濁させる。
 たたらを踏みながら意識を強く持ち、キノガッサは急ぎ敵を再捕捉する。
 目に映ったのは、左端の砕けたアタマを抱えた人形。そいつは、アタマを持たない手を引き絞り、投擲モーションに入っていた。
 投げの動作を、視界の中心で見る。
 人形の手から解き放たれたそれは、大気を揺らめかせるほどに、燃え上がる熱だった。
 
 ――マズいッ!
 
 思うが、認識に体は追い付いてはくれなかった。
 熱い衝撃が、キノガッサを強く吹き飛ばす。
 猛烈な炎が植物の身を灼いていく。堪え切れないほどの熱量が身体を侵していく。体組織が焼け焦げる臭いが、熱を帯びた大気にむわりと広がった。
 めりめりと表皮が剥がされる激痛を堪え切れず、絶叫が、迸る。
 そんなキノガッサを嘲笑うように、纏わりついた炎はその身を舐め、焦がし、侵食していく。
 吹き飛ばされた勢いに負け、キノガッサの身は落下を始めた。
 けれど火だるまとなったその体に、現状を把握するだけの余力は一切もない。全身を蝕む激痛の刺激に、意識は耐え切れなくて。

 ――ちく、しょう……ッ!

 そうして重力に身を任せて、キノガッサは、意識を手放してしまうのだった。

212絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:46:32 ID:GNmx0dfo0
 ◆◆
 
 抱えた頭部を元に戻し、チャッキーは、崖下の川に落下した獲物を、昏い瞳で眺めていた。
 無言のまま無表情のまま、しばらくの間そうしていたチャッキーは、不意にくるりと踵を返す。
 死亡の確認をこの目でしておきたかったが、流石に無理そうだった。
 残念さは残る。けれど、固執していても仕方ない。

 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 そう気分を切り替え、突き立った凶器――グラディウスを引き抜くと、チャッキーは音を立てて山道を歩き出す。
 頭部の左端が割れてしまったことを気に留めることなく、無表情のままで道を行く。 
 
 チャッキーにとって、殺戮は日常だった。
 その身に叩き込まれた殺戮の術も、その身に刻み込まれた殺戮の技も、これまでチャッキーが生きてきた証だった。
 知らないのだ。
 チャッキーを育てたブリーダーは、そういうものしか教えてはくれなかった。
 けれどチャッキーは、彼を怨んではいない。むしろ、感謝しているくらいだった。
 怨みに根差す殺戮の本能を抱えて生まれたチャッキーは、他の生き方などいらなかった。
 ほんとうに、ブリーダーには感謝をしている。
 だから決めたのだ。

 初めて殺す相手は、この男にしよう、と。
 
 ブリーダーを惨たらしく殺した日のことを、チャッキーは覚えている。
 教わったあらゆる殺戮の術を、ブリーダー自身の身を以って実験した。教わった全てを見せることで、喜んでもらえると思った。
 返り血で赤黒く濁った視界と、口中に広がった鉄錆めいた味を、チャッキーは忘れない。
 その時に浴びた返り血を、拭うつもりはない。
 この、黒く固まってこびり付いた血痕こそ、絆だ。
 チャッキーに生き方を教えてくれたブリーダーとの、絆なのだ。
 
 かたかた、かたり。
 かた、かたり。

 殺し合い。
 今更そんなことを言われるまでもないと、チャッキーは思う。
 呼吸をするように殺戮を繰り返してきているのだ。そういう生き方しか、チャッキーはできはしない。
 だからやることは決まっている。
 普段と変わらない、血と悲鳴と鉄臭さに満ちた日常を、チャッキーは、謳歌するだけなのだった。

213絆のカタチ ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:46:56 ID:GNmx0dfo0
【D-4/川中/一日目/日中】

【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:火傷。失神。火炎ダメージおよび落下のダメージ(大)。
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:…………

[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」

【D-5/山中/一日目/日中】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:獲物を探す

[備考]
オス。殺し合いという生き方しか知らないため、食事や睡眠など、生きるために必要なこと以外は殺戮しか行わない。
普段は一切の感情が現れないが、殺し合い中は感情が高ぶり、異常なまでのハイテンションとなる。
一人称は「オレ」

《支給品紹介》
【グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ】
聖属性のついた、攻撃力の高めな短剣。

214 ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/05(日) 23:47:49 ID:GNmx0dfo0
以上、投下終了となります。
ご指摘などありましたら、お願い致します。

215 ◆5omSWLaE/2:2013/05/06(月) 00:09:41 ID:lBM26Yq20
投下お疲れ様です
どちらも戦いに執着を抱いており、人間との絆を持っている……
その共通点がある二人ですが、やはり出会った人間によってこれだけ異なるとは!
純粋なマーダーのチャッキー、思想も挙動も凄い不気味さが漂ってます!
格闘家キノガッサは重症を負ってしまったけど、はたして再起出来るのか……!?

216 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 00:10:12 ID:IR7dHNaA0
投下乙です。
育成によって鍛えた物の対比によって、
繰り広げられた熱い戦い、心が騒ぎます。

超正統派対主催、キノガッサと
ヤバいマーダー、チャッキー、
今後の展開が気になりますね。

ピカチュウ投下します

217 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 00:10:30 ID:IR7dHNaA0




ピカチュウは調子に乗っていた。もとい、波に乗っていた。
それにしても、殺し合いの最中にサーフィンを楽しんでいるというものは如何なものだろうか、
河原で不良高校生が殴りあって友情を深めている横の河で、
海パンのおっさんがバタフライの練習をしているようなものではないだろうか。

僕はそういうの良くないと思います。

しかし、
この件に関して言えばそもそもサーフボードとセットでピカチュウを海に突き落としたモリーさんサイドに問題がある。
そもそも、何を考えてあのハゲたヒゲはサーフボードなんて支給したんだ。
それも何で初期位置を海にしたんだ。
やる気はあるのだろうか、あのヒゲたハゲは真面目に殺し合いを遂行する気があるのだろうか。

これはもしかしたら、この殺し合いを打破する重要なポイントになるのかもしれない。

閑話休題。

なんやかんやでピカチュウは陸地に近づいていた。
それと同時に背後にはビッグウェーブが迫ってきていた。
このビッグウェーブは現地の言葉では神の涙と呼ばれるほど、巨大な波で、
年間に数千人程のサーファーがこの波に挑んで死亡している。

「上等!」

だが、ピカチュウの目に恐れはなかった。
自分の体の何倍も何倍も大きい波、それがどうしたというのだ。
巻き込まれれば、体は原型を留めず最終的に魚の餌になり、その魚は漁師に捕らえられ、
加工され、蒲鉾となり、ご家庭に提供され、食われ、糞になり、その糞は肥料として大地を豊かにする、それがどうしたというのだ。

サーファーになると誓った時から、海で死ぬと決めていたのだ。

迫る波に対して、心の海はどこまでも平穏だった。

 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

鼓膜を破るほどの激音でさえも、ピカチュウを脅かす事はできない。

海の感覚。
板の感覚。

体をゆっくりと起き上げる。

垂直の海を、サーフボードでよじ登る。

だが、その波の威力はあまりにも強すぎた。

バランスを崩すということは波乗りにおいて致命的だ。

「…………こんなところで、死ぬのか?」

自分に問いかける。

(こんなところで死ねるわけ無いだろ!?)

自分の答えは決まっていた。

「だよな!!」

尻尾が鋼鉄の硬度を帯びた。
鋼の重量、アイアンテールを用いて崩れたバランスを取り戻した。
そして、





ピカチュウは 神の涙 を 制覇した。





という話は全く無く、普通にピカチュウは陸地に着いたよ。
そりゃそうだよ、この会場殺し合いやってんだぞ。
馬鹿じゃねぇの?
お前ら、もうちょっと真面目にやれよ。

【B-2/陸地/一日目/日中】
【ピカチュウ@ポケットモンスター】
[状態]:健康、少し空腹
[装備]:サーフボード@現実
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:仲間の下に帰る(方法は考えていない)。
 1:どこへ行こうか
 2:木の実が食べたい。
[備考]
オス。森暮らしが長い。仲間思い。一人称「僕」
『波乗り』を覚えましたが、バトルで効果があるかどうかは不明です。


《支給品紹介》
【サーフボード@現実】
デッカイ笹カマみたいな板。波に乗るスポーツ『サーフィン』に必要な道具。

218 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 00:11:03 ID:IR7dHNaA0
題名は

何も無条件で海に突き落としたわけではない
モリーも「このサーフボードに乗っては如何でしょうか」と事前に対策を立てている
どういった行動を取るかという決定権はピカチュウさんサイドにある
その上でご自分の意志で波乗りしていらっしゃるのだからすなわち責任はピカチュウさんサイドにある
なぜモリーが責められなければならないのか
なぜモリーがピカチュウさんに謝罪せねばならないのか
むしろ殺し合いの中、安全地帯にいるピカチュウさんこそが我々に謝罪すべきではないだろうか

です。
投下終了します。

219 ◆5omSWLaE/2:2013/05/06(月) 00:20:39 ID:lBM26Yq20
投下お疲れ様です
うわなんだこの流れwwwww 潮の流れか何か!?
そして最後のオチ……神の涙とはなんだったのか
あとタイトル異常に長ッ!?

220名無しさん:2013/05/06(月) 00:24:45 ID:ZPLoKR0w0
タイトル長すぎて多分ウィキ収録できないよぉ?!
投下乙です

221 ◆9n1Os0Si9I:2013/05/06(月) 10:21:34 ID:p35AlRYQ0
投下乙です。
すみませんが、書いてるうちに展開に無理ができたためジャックフロストを予約から抜かせて投下させていただきます。

222ポケットモンスター〜逆襲のルカリオ〜 ◆9n1Os0Si9I:2013/05/06(月) 10:22:21 ID:p35AlRYQ0
体が、言う事を聞かない。
目の前にいるのは、複数人の人間にその家畜のようなものに成り下がったポケモンたちだ。
私たちを捕まえ、他の人間に売り飛ばす。
そのために、目の前の人間どもはこんなことをしてくる。
これまでに仲間は何人も連れて行かれた。
その度に、私は自分の非力さを嘆いた。

「――――観念しやがれ、ルカリオは希少種だからなぁ……俺らが育てると、リオルもルカリオにならねぇ。
 最初から成体のテメェなら、面倒もなく高く売れるってもんさ」

人間たちは、モンスターボールを取り出す。
アレに捕らえられれば、自分も奴らの家畜と成り果ててしまう。
それだけは、絶対に嫌だ。
だが先ほども言った通り、体が一切言うことを聞かない。
複数の敵に攻撃をされ、体が限界を迎えていたのだ。

(こんなところで、私は――――)

意識が、闇に堕ちる。
そして目覚めた時、彼は『殺し合い』などという日常ではありえない場所へと呼び出されることとなる。



 ■         ■          ■



目が覚め、まず彼が感じたのは異常なほどの不快感だった。
あの後自分は捕えられたのは間違いない。
だが、その結果が今ここにいるのだ。
サバイバル、実質的な『殺し合い』だ。

(――――なんて、外道な人間共だ)

私たちが殺し合うのを見て、楽しむだと?
自分たちは高みの見物で、安全な場所で『死』を楽しんでいる。
許せない――――許してはならない。

「――――殺してやる」

殺す、殺す、殺す。
私を捕まえた奴を、このふざけた現状の原因を、私たちが抗うのを見て楽しんでいる奴らを。
全員ぶっ殺してやる。

(見ていろ――――私はこの殺し合いを潰してみせる。 そして貴様らのような奴らをまとめて殺す。
 絶対に生きて帰って、仲間を助け出さなくてはならない――――!)

そのために、まずは仲間を集めることだ。
そしてこのサバイバルに賛同した人間共の味方も殺す。
たとえ、間違っていると言われようとも――――。

「私は、この殺し合いを、人間を――――潰す!」

【G-1/灯台/一日目/昼】

【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 1:まずは志を同じくする仲間を探す
 2:首輪を外したいが……

[備考]
オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。

223 ◆9n1Os0Si9I:2013/05/06(月) 10:24:27 ID:p35AlRYQ0
投下終了です。
波動は我にあり! というセリフがあるため我でも良かったかなとは思いましたが、まぁ一人称は「私」の方がいいかなと思いこうしました(小並感)

224 ◆5omSWLaE/2:2013/05/06(月) 11:08:14 ID:lBM26Yq20
投下お疲れ様です
正統派対主催! だけど少し過激思想のルカリオ、いいですねぇ〜
真っ直ぐな反逆の意思、そして彼自身の力が、今後熱い戦いを見せてくれそうで期待が高まりますね

225 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 12:43:11 ID:IR7dHNaA0
ジャックフロストを予約します

226 ◆9n1Os0Si9I:2013/05/06(月) 16:32:03 ID:p35AlRYQ0
すみません、状態表にミスがあったので修正を。
2:首輪を外したいが……



2:呪いを解除するには……どうすればいい?

に変更します、本文修正は問題なさそうなので、これだけを

227「で?ICBMって何だ?食えるのか?」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 18:53:45 ID:IR7dHNaA0
ジャックフロスト投下します

228「で?ICBMって何だ?食えるのか?」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 18:54:40 ID:IR7dHNaA0

「火イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」
「崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

199X年!!7の月!!
その日、東京は滅亡する!!

ICBM着弾10分前!!
だが、そんなことはここで殴りあう二人の漢には一切関係はなかった!!

「99勝ッ!!99敗ッ!!今日こそは決着をつけてやるホ!!」
「それはこっちの台詞だホ!!」

炎を纏った拳で殴るのはジャックランタン!!
冷気を纏った拳で殴るのはジャックフロスト!!

熱と冷がぶつかり合い、その余波で東京の面積が削られていく!!
だが、ICBMですら止められない二人の闘いを誰が止められるというのだ!!

二人は強敵と書いて、ともと呼ぶような野暮な間柄ではない。
ただ、どっちが強いか、それを決めるためだけの間柄だ。
だが、拳だけの繋がりだからこそ、二人は相手のことをお互いに自分のことのように理解していた。

「爆 砕 ケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!!!!!!!!!!!!!」
「鉄 拳 制 サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァイ!!!!!!!!!!!!!」

互いに、魔法スキルは用いなかった。
相手を殴った感触が無いと満足できない、なんと暴力的な衝動か!!

だが、彼らを見よ!!
彼らの顔を見よ!!

「なんて……清々しい顔をしているんだホ!!」
ビルの屋上から、二人を見守るメスのジャックフロストは思わず呟く。
「止めなくて良いのか?」
メスのジャックフロストはジャックフロストに好意を抱いていた、
しかし……

「アイツは……あのバカは、殴り合いが一番スキなんだホ……そしてワタシはそんなアイツが大好きなんだホ!!」
漢の道に彼女の恋心を挟む余地が無いことなど、彼と出会っていた時からわかっていた。
「……そうか」
同じ妖精族として、トロールは彼女の恋心を応援してやりたかった。
だが、彼女の物憂げで……そして誰よりも楽しそうな微笑みを見て、トロールは何も言えなくなっていた。
「……ちっ、バカだよアイツは…………こんなにいい女を泣かせやがって。
ジャックフロストォォォォォ!!!!絶対勝てよ!!!!!!!」
彼に出来るのは、ただ声を張り上げて応援することだけ。
せめて、100勝を飾って彼が堂々とジャックフロス子に自慢してやることを祈ることだけ。

229「で?ICBMって何だ?食えるのか?」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 18:54:57 ID:IR7dHNaA0


「崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
ジャックフロストの攻撃がジャックランタンをぶっ飛ばす。
弾き飛ばされたジャックランタンはビルを突き抜けて、屋上まで吹っ飛んで、そしてヘリポートに着地する。

「火ィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
だが、すぐに状態を立て戻し、彼はジャックフロストをぶん殴る。
ジャックフロストの体は、ビルを2軒を突き抜けて、そして東京タワーの鉄筋に衝突する寸前でギリギリ止まる。

「おい!!ジャック共ッ!!あと5分でICBMが着弾するぞ!!逃げねーのか!?」
声を張り上げて叫ぶのは、二人のサマナー。
そう、このSSを読んでいる皆様も承知の通り、あの六本木地獄殲滅戦線で魔王と互角の殴り合いを繰り広げたアイツだ。

「「燃えてんのは核の炎じゃねぇホ!!オイラ達の闘いだホ!!」」
「だよなぁ!!」

5分で全てが消滅する、その発言にも動じず殴り合いを続ける彼ら、
そんな彼らにサマナーは満面の笑みを浮かべてみせた。

「そうだよなぁ!それでこそお前らだ!!存分にやりあいな!!」

絶対致死的状況を前に殴り合いを続ける、
そんな彼らだからこそ読者の方が御存知の通り、血の朱に染まった東京タワー地獄を生き延びたのだ。

「なんだよ……まだあいつら、闘ってたのか」
ICBM着弾を前に、観客はむしろ増えていた。
皆様にとって懐かしく感じる者もいるだろう。
ココに集まってきた皆がかつてジャックフロストや、ジャックランタンと殴りあった者達だ。
「ランタァン!!俺はテメーの勝ちに全財産ぶっ込んだんだゼェ!!」
血塗れのギャンブラー、吉田・ランスロット・次郎がいる。
「フロストォ!!次は俺ともっかい喧嘩だッ!」
2500戦2499勝1敗の格闘王、デンジャラス武彦がいる。
「兄貴ィ!!オイラともいつかやりあって下さい!!」
全身機械の吉田・ランスロット・三郎がいる。
「「「「隊長オオオオ!!!!!!ぶん殴れええええええええええ!!!!!!」」」」
学ラン姿の彼らは、超悶絶地獄と化したいんへるの吉祥寺を生き延びた特攻隊だ。
「ふん……くだらん闘いだ」
口ではくだらないと言いながらも微笑を浮かべているのは、
あの伝説の喧嘩師、電車の屋根に乗って電車賃を浮かせている吉田・ランスロット・一郎だ。

今まで戦ってきた全ての人間達、そして……

230「で?ICBMって何だ?食えるのか?」 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 18:55:08 ID:IR7dHNaA0

「「「「「「「「行けッ!!」」」」」」」」

悪魔達。

東京タワーで生首バージョンのだんご3兄弟を作った、平成の串刺公ヴァンパイアがいる。
その類稀に見る氷結能力から様付で呼ばれる、ジャアクフロスト様がいる。
ぶっとくて硬い物で殴りあったマーラ様がいる。
女子高生にぶん殴られたスサノオがいる。
第一話から登場して、ルキアを助けたり、愛染を倒したり、要所要所で活躍していた月島さんがいる。
そしてマンソン!

「どいつもこいつも好き勝手言ってくれるホ!!」
「観客がうるさくて全力を出せなかった……なんて言い訳はしてくれるなホ!?」
「あったりまえだホ!!」

崩壊直前にも関わらず上がっていく観客たちのボルテージ、
それは決して、やけくそではない。
この闘いを見て、心を燃やさないものがいるか!?いやいない!!

頭上を見れば、ICBMが目前に迫っているのが見える。
だが!!


「火イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」

「崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

漢達は!!止まらないのだ!!!!!
















拳と拳がぶつかり、ICBMが着弾し、
全ては白に包まれた。

そして……漢は!!ジャックフロストは今!!
このバトルロワイアルの会場に居た!!

「…………殺し合い、かホ?」
もちろん読者の皆様は承知だが結果的に死なせた奴はいる、
だがジャックフロストは命を奪おうなどとは思わなかった。

「殺したら……再戦の楽しみが無くなっちまうホ!!」
そうジャックフロストは喧嘩が大好きなのだ、殴るのが殴られるのが、
拳に乗せて己を飛ばすのが大好きなのだ。

「……それに、まだジャックランタンとは決着が着いてないホ!!
こんなところでもたもたしている場合じゃないホ!!」
普通の悪魔ならば、ICBMでくたばってしまっているだろう。
だが、皆様も御存知の通り、ジャックランタンは数々の激戦を生き延びた猛者である。
そんな彼が死んだとはとても思えない。

だったらどうするか、そう決まっている。

「帰るホ!!東京に!!」

手段などわからない、解呪などわからない、
しかし、ジャックフロストは帰らねばならない。
相手に不戦敗など与えてやるわけにはいかないのだ。

いざ行かん!!
支給されたGAKU−RAN(ガク−ラン)を纏い、新たな戦いの旅へ!!




【E-7/森林/一日目/昼】
【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る

[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。

《支給品紹介》
【GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ】
バンチョーレオモンが纏っている学ラン。
敵の物理攻撃を89.9%無効化する防御機能が備わっているが、
このロワでどうなっているのかはわからない。

231 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 18:55:33 ID:IR7dHNaA0
投下終了します。

232 ◆5omSWLaE/2:2013/05/06(月) 20:11:53 ID:lBM26Yq20
投下お疲れ様です
己の強さのみを求め続け、激戦の中を駆け抜けてきたバンチョージャックフロスト!
殺し合いの最中で、彼のその"拳"は果たしてどれだけ振るわれるのだろうか……ッ!!?


……って、何だコレ何だコレ フロストオマエどこの世界から来てんだよ!!
>皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
いや存じてねーから!!! 取り巻きのキャラどもも片っ端から誰なんだお前ら!?

233 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/06(月) 20:37:47 ID:/xtyOXRA0
投下します

234 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/06(月) 20:38:17 ID:/xtyOXRA0
――――俺は魔王を倒して勇者になる男なんだよ! だからお前は黙って俺に斬られて経験値をよこせ!
    そうすればお前らみたいな役立たずのモンスターも、ちったぁ人間様に役立つんだからよ!
    
――――ハッ! 俺の実力に恐れおののいて逃げたか! ハーッハッハッハ!
    まぁ、お前ごときのモンスターが人間様に勝てるわけねーか! ギャハハハハハ……


そんなことを言われた仲間がいた。
彼曰く、ああいうのがクソガキって言うんだな。
結局、そんなことを言っていた男の最後は呆気なかった、と仲間は言う。
ホント馬鹿だよな。自分の力を過信しすぎだっての! そう言って仲間が笑っていた。
そんな仲間も、自分の力に過信して調子に乗ったがために会心の一撃を出されて死んだのだが。
ようするに、調子に乗るなということだ。
まぁ、自分はもともと慎重なので調子に乗ることは無いだろう。
……多分。


――――なぁ、俺と一緒に魔王を倒す旅に出ないか?

そんなことを言われた仲間がいた。
闘いの最中に友情でも芽生えたのだろうか、なんにせよ仲間はその男についていった。
結果、彼は見事魔王を男と共に、打ち破り旅から帰ってきた。
仲間にしてくれてありがとう! 勇者さんと旅が出来て本当に良かったよ! 仲間はそう言って男に感謝していた。
その後、彼は仲間達の間で語られる伝説になった。
勇者と旅をしたはぐれメタル。そうあの男は勇者だったのだ。
これからも、ずっとその伝説は語り継がれるだろう。
自分も勇者と一緒に旅をしてみたいなぁ、と思っている。


ある仲間は、最大限の力を引き出されてマスターと呼ばれる人と共に戦ったり
ある仲間は、自分の体を磨きに磨いて仲間に自慢したり
ある仲間は、勇者に殺されることを望んだり
ある仲間は、はぐれメタルキングに取り込まれたり
他の仲間達には劇的な出来事が訪れるが、未だ僕には来ない。
あーあ、僕にも劇的な出来事が起きないかなー……、そんなことを考えていた。
そんな時だ。どこか分からない会場で、モンスター同士で戦えと言われたのは。
こんなの、僕が求めてた『劇的な出来事』じゃないよ……


□□□


「…………」
「…………」ピョコピョコ

初っ端から変なのと出会っちゃた……
考えうる限りこのずーっとはねているのはお魚さんだろう。
それにしても……このお魚さん、色が綺麗である。

「うひゃぁ……お魚さんの身体は綺麗だね……」
「君の身体も十分に綺麗だと思うが?」ピョコピョコ

なにせこのお魚さん、ピカピカの金色をしているのだ。
確か僕らの親類に、金色のスライムがいたハズだけど……このお魚さんもお金をたくさん落とすのかな?
このコイキングは別にゴールデンスライムの親戚とうわけではなく、単なる色違いというものである。
本来ならこのお魚さんの色は赤なのだが、どういうわけかこのコイキングは金色の状態で生まれてきてしまったのだ。
無論、はぐれメタルは知る由もないが。
そんなことはさておき、はぐれメタルは疑問に思った。
なぜお魚さんなのに地上にいるのだ?

「あ、あのー。なんでここにいるの?」
「スタート場所がここだった」ピョコピョコ

……考えてみれば至極当然の答えである。
恐らくスタート場所はランダムに決まっているのだ。運悪くこのお魚さんは地上がスタート地点だったのだろう。
それにしても、このお魚さんはなんで水のある場所に移動しないのだろう?

「どうして水がある場所にいかないの?」
「逆に聞くが魚が必ず水にいなければいけない理由はなんだ?」ピョコピョコ

……言われてみれば確かにその通りだ。
確かに僕らの世界にも、水がある場所にいるはずのモンスターが地上にいるのだし、お魚さんが水のない場所にいても別段不思議ではない。
次は本題、殺し合いに乗っているかどうか。

235 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/06(月) 20:38:39 ID:/xtyOXRA0

「えーっと……お魚さんは殺し合いに乗っているの?」
「仮に乗っていたとして、この状態で誰かを殺せるか?」ピョコピョコ

……うん、どう考えても無理そう。

「冗談だ。一応攻撃手段は持っているぞ?」ピョコピョコ
「え? じゃあ……」
「いや、乗ってないから安心しろ」ピョコピョコ
「そ、そうなんだ……。実は僕もなんだ……。あ、その攻撃手段って?」
「その身を持って体感してみろ」ピョコピョコ

コイキングのたいあたり!

(ああ、ただのたいあたりか。そんなのだったら僕の身体には傷一つつかないな……、ってちょっと待って……)

かいしんのいち……

「あ、危ない!?」

ミス! はぐれメタルにかわされた。

寸前のところではぐれメタルはたいあたりを回避した。
当然だ。かいしんの一撃が当たってしまったら自分は四散して死んでしまうだろう。
自分の体力といえば20にもみたない微弱なもの。
それを高い防御力で補っているのだが、防御力を無視するかいしんの一撃ではそんなものは通用しない。
その威力を象徴するかのように、コイキングにぶつかった木は見事にへし折れてしまった。
ぶつかったコイキングは宙を舞い、はぐれメタルの正面に落ちた。

「あ、危ないよ! やっぱり僕を殺す気だったんでしょ!」
「ああ、すまない。どうやらこれのせいらしいな」ピョコピョコ

お魚さんの眼にある、レンズみたいなものは『ピントレンズ』というらしい。
どうにも、くりてぃかるりつを上げるものらしいのだが……生憎、くりてぃかるの意味が分からない。
かいしんと同じような意味だな、そうお魚さんが言ってくれてようやく理解できた。

「まぁ、かなり運がよかったんだな今のは」ピョコピョコ
「そうなの?」
「もっと別の使い方があるからな……」ピョコピョコ
「へぇ〜」
「…………」

途端にお魚さんが跳ねなくなった。
ま、まさか! 体力がきれたんじゃ!

「お魚さん大丈夫!?」
「……すまない、PPが切れてしまった。よろしければ乗せてくれないか」
「えっ、いいですけど……」(ぴーぴー?)
「すまない、助かるよ。それと私の名はコイキングだ。よろしく」
「あ、僕ははぐれメタルです。よろしくお願いします! コイキングさん!」

金と銀、二人の旅はまだ始まったばかり……

【B-5/森林/一日目/昼】

【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×1)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗りたくない
1:コイキングさんと行動
2:ぴーぴー?

[備考]
オス。慎重で、臆病。劇的な出来事を待ち望んでいる。一人称は「僕」

【コイキング@ポケモンシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ピントレンズ
[所持]:ふくろ(無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗るつもりはない
1:はぐれメタルと行動

※現在のPPの状況
 はねる   残り0
 体当たり  残り34

[備考]
オス。紳士。頭はよいほうらしい(コイキング界で)一人称は「私」
色違い


[支給品紹介]
【ピントレンズ@ポケモンシリーズ】
ポケモンに持たせると、クリティカル率が1段階上がる道具。
間違ってもコイキングに持たせる道具ではない。

236 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/06(月) 20:39:58 ID:/xtyOXRA0
投下終了です。タイトルは

「フィッシュゴールド/ハグレシルバー」

237 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/06(月) 21:01:15 ID:IR7dHNaA0
投下乙です、
感想の代わりにはぐれメタル、コイキング、レナモンを予約します。

238 ◆5omSWLaE/2:2013/05/06(月) 21:18:45 ID:lBM26Yq20
投下お疲れ様です
ドラマを求めるはぐれメタルと、独特で紳士的なコイキング
銀と金でなんとも豪華で、可愛らしい二人組ですねぇ
はたして、これからどんな物語が待っているのか……

239 ◆BotyFm3mMY:2013/05/07(火) 00:16:40 ID:bL0cM72Q0
投下します

240お酒はほどほどに ◆BotyFm3mMY:2013/05/07(火) 00:17:21 ID:bL0cM72Q0
「おぃい〜〜!! 待てよぉ〜〜!!」
お星様が空を飛んでいる。
……それも、特大級に酒臭いお星様が空を飛んでいる。

彼の名はデカラビア。
数多い悪魔の中の一種……なのだが。
その種の中でも、彼はとりわけ"酒グセ"が悪かった。
毎日ガロンでビールを飲んでは眠る、俗に言う"ビールクズ"という言葉はまさに彼のためにある。
昨日も相当な量の酒を飲んでいたらしい。
しかも連れてこられる際に「酔っている方が都合がいい」ということで、彼だけ目が覚めた状態で連れ去られたのだという。

で、今。
酔っぱらいナウな彼は、参加者に絡んでいるのであった。

「断ると言っているだろう」
不幸にもそんな彼に絡まれている獣。
体躯はまるで巨人のごとき大きさ、たてがみは雄々しく猛り、爪はすべてを斬り裂かんと延びている。
彼の一族の名を、ベヒーモスと言う。
「我は幻獣王様に御仕えする身分、斯様な酒におぼれている暇などはない」
そう、彼は幻獣王バハムートに仕える身分。
殺し合いなどという低俗な遊戯にかまけている時間はないのだ。
ましてや、こんな酔っぱらいに費やしている時間など、あるわけもない。
一刻も早く、幻獣王の元に戻らねば。
「けっ、つれねえなァ。いいよいいよ、他当たるからよぉ!」
素っ気ない態度を取り続けるベヒーモスに、ついに愛想を尽かしてしまったのか、デカラビアは悪態をつきながらその場を去っていく。
もちろん追うことなどせずに、ベヒーモスは己の道を行く。
この場所から、一刻も早く脱出するために。



「なんでぃなんでぃ、俺の酒が飲めねぇなんてよぉ!」
グチを垂れながら、デカラビアは適当にそのあたりを歩く。
すると、前方に何か物陰が見える。
先ほどの獣までとはいかない、が。
全身が強固な岩で出来た巨人が、そこにたっていた。
新たな存在を見つけた彼は――――
「おっ、兄ちゃん! 俺と一緒に飲もうや! な!」
もちろん、絡みに行った。
「うむ……」
「まあまあ遠慮すんなって! 酒は飲んでナンボよ!」
「うむ……」
巨人、ゴーレムは若干の戸惑いを見せながらも、デカラビアの差し出した酒瓶を手に取る。
ノー、と断ることの少なかった彼は、そのままデカラビアの差し出した酒を一気に飲み干していく。

どくん。

「おっ、いいねぇ! もう一杯いこうk」

あるはずのないもう一つの酒を取りだそうとした、彼に襲いかかる鈍痛。
グシャ、と何かが潰れる音が、彼が最後に聞いた音だった。

241お酒はほどほどに ◆BotyFm3mMY:2013/05/07(火) 00:20:09 ID:bL0cM72Q0



突如として鳴り響いた地響きに足を止める。
感じた気配の方へ振り向くと、岩で出来た巨人が大暴れしている。
ふと、そこで目が合ってしまう。
ベヒーモスが感じ取ったのは、狂気。
混じりけのない、戦いに酔いしれるものの目。
「避けられぬか、ならば……!!」
下手に動けば、劣勢に陥ってしまう。
何より、幻獣王に仕える者として、退くわけにはいかない。
ゆっくりと、襲撃者へと意識を注いでいく。
「ウオオオオオオ!!」
木霊する両者の声が、戦いの始まりの合図。



して、何故にゴーレムは暴走したか?
答は簡単だ、彼が飲み干した酒にある。
――――バッカスの酒。
口をつけた者をたちまち狂戦士にし、身体能力を引き出す恐ろしい酒。
力が沸き、心を戦意に支配されるままに、戦いへと身を投じてしまう。
巨岩の如く落ち着きを兼ね備えていたゴーレムが、暴れだしたのも無理はない。
この酒を飲んだ者は、暴れずにはいられないのだから。

【デカラビア@真・女神転生シリーズ 死亡】

【B-5/森林/一日目/昼】
【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×1)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
1:ゴーレムに対処

【ゴーレム@モンスターファームシリーズ】
[状態]:狂戦士
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×1)
[思考・状況]
基本:――――

242お酒はほどほどに ◆BotyFm3mMY:2013/05/07(火) 00:20:35 ID:bL0cM72Q0
>>241
【E-4/森林/一日目/昼】
のミスです

投下終了です。

243 ◆5omSWLaE/2:2013/05/07(火) 07:09:57 ID:ft/uMREAO
投下お疲れ様です
哀れデカラビア、酒癖の悪さは身を滅ぼす……!
まぁ、酔っ払い状態で連れてきた主催者の責任でもありますが……
そしてバハムートの臣ベヒーモスと狂戦士と化したゴーレム、彼らの戦いの行方はどうなる!?

244 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:13:46 ID:XlUugUc60
皆様投下乙です。
私もアグモン、エアドラモン分をこれから投下させて貰います。

245 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:15:10 ID:XlUugUc60
「アグモン、しんか〜!」

 デフォルメされた肉食恐竜のような黄色いモンスターが、いきなり空を仰いでそう吠えた。
 そのモンスターは、今自ら口にしたようにアグモンという名前の、デジタルモンスターの一種だ。

 世代は成長期の爬虫類型。属性はワクチン種、必殺技は高温の火球を大きな口から吐き出す『ベビーフレイム』だ。

 今、自らを光の粒子に包んだ彼が始めたのは、デジモンとしての“進化”だった。
 デジモンは姿や性質を急激に変化させる生態変化を発生させることで成長し、この成長を(本来の生物学的な意味とは異なる)進化と呼ぶ。
 進化には段階があり、卵から生まれた直後の幼年期や、戦う意欲が出てくる成長期、力をつけた成熟期、強いデジモンが到達する完全体、その上を持たない究極体などがある。
 デジモンはこのような段階を踏んで進化して成長するが、進化した後のそれぞれの姿は最初から決められているわけではない。
 例えば仮にAの姿をしたデジモンが二体いるとして、片方はBの姿に進化しても、もう片方は別のCの姿に進化する事があるということだ。
 故にデジモンの進化は無限と言われており、デジモンの生態にとって重要な要素であるとされている。

 中でも、アグモンの進化の幅は他の追随を許さないほどバリエーションに富んでいる。
 特に有名なのは、やはりグレイモンの系譜だろうか。多くの究極体を持ち、さらにその先の境地に至るデジモンも決して珍しくはなく、デジタルワールドの歴史に名を刻む強大な存在にまで成長することも多い。

 このアグモンの進化にもまた、様々な異世界のモンスターにより行われる殺し合いをも左右しかねない、無限大な可能性が秘められていた――



 ――しかしそれは、進化が完了するまでの話である。

 どれだけの膨大な選択肢があっても、結局最後に選び取られた一つ以外、その他全ては『なかったこと』になる。

 例えばグレイモンに進化し、最終的には最強のオメガモンになって華麗に主催者を撃破する未来も。ジオグレイモンの系統に進化し、舎弟であるシャイングレイモンとなることで無敵の喧嘩番長の力を借り、殺し合いを打破する可能性も。エンジェモンの進化ルートに入り、勝率0%のやたら壮大な設定の噛ませ犬になってしまうというオチも。

 この進化が選ばれた以上は、全ては泡沫の夢に過ぎない――

246 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:16:38 ID:XlUugUc60



「結局この姿かよ!」

 愚痴を漏らしたのは、アグモンが進化した赤い恐竜型のデジモンだった。
 一軒家ほどの巨躯を誇りながらも、そのシルエットはアグモンのそれと大差がない。色こそ違い、また背ビレなどの追加パーツはあるものの、それはまさしく正統進化と呼ぶに相応しい変化の仕方だった。
 このデジモンこそがティラノモン。有史以前の世界に存在した恐竜のようなデジモンである。発達した二本の腕と巨大な尾で全ての物をなぎ倒すが、知性があり大人しい性格のため、とても手懐けやすい。そのため初級テイマーからは重宝がられ、大事に育てられることが多い、もっとも基本的なデジモンの代表的存在と言えるだろう。必殺技は身体の色と同じ、深紅の炎を吐き出す『ファイアーブレス』。

 そんなデジモンの代表的存在の一つになったというのに、嘆いているとも憤慨しているとも取れる態度を元アグモンは見せた。

 というのも、ティラノモンは初代デジモンのパッケージも飾ったいわば“看板デジモン”だったのだが、デジモンアニメシリーズ初代『デジモンアドベンチャー』にて主役の座を同じVer.1初登場の恐竜型デジモンであるグレイモンに奪われてからは、その地位が凋落の一歩を辿った“不遇デジモン”であるからだ。
 このデジモンはアニメ化以降どこか影の薄い存在となり、事実十数年も続いたデジモンシリーズで、現在までに一体もティラノモン系究極体は登場していないのだ。
 ティラノモンは、初代パッケージモンスター――いわばシリーズの顔役だったのに、だ。
 対するグレイモンはウォーグレイモンを初め、ブラックウォーグレイモン、エンシェントグレイモン、シャイングレイモン、ビクトリーグレイモン等々、多数の強力かつ有名な究極体がいることを考えると、ティラノモンに進化してしまった元アグモンは、アグモンの中の負け組と言って差し支えない。微妙な反応もむべなるかな、であった。

 そんな悲しみに打ち震える元アグモンの頭上から、何者かが滑空する音が聞こえて来た。

「むっ、何奴!?」

 元アグモンことティラノモンも、同じデジモンであり、また成熟期の中では相当な実力者であるレオモンが、あの狂った人間の手で殺されたことで状況は理解している。
 ここが殺し合いの舞台であるなら、自らを脅かす敵が近づいてきているのかもしれないと緊張を高め、構える。
 しかし頭上からかけられた声には、予想された邪悪さなど欠片も混じっていなかった。

「――なんだ、ティラノモンか」

 拍子抜けしたような言葉とともに現れたのは、頭蓋骨のような白亜の頭殻で装甲した、青い体に紅蓮の翼の飛竜だった。
「エアドラモン! エアドラモンじゃないか!」

 現れたのは、ティラノモンと同じ成熟期デジモンのエアドラモンだった。

 エアドラモンは怪物というより「神」に近い存在と言われる幻獣型デジモン。高い知性を誇ると同時、その名の通りに空気や風を操る能力に長けており、声で嵐を、羽ばたきで竜巻を起こすなど天変地異も操る力を持つ。必殺技は巨大な翼を羽ばたかせ、鋭利な真空刃を発生させる『スピニングニードル』だ。

 そんな大層な肩書きと設定を持つが、ぶっちゃけ火を吹けるだけの恐竜と言ってもそこまで問題のないティラノモンと同格な成熟期のデジモンであり、もっと遠慮なく言うと、所詮黎明期の無責任な記述に過ぎないエアドラモンなど、近年神と呼ばれているクラスのデジモン達と比べれば雑魚も良いところ。アニメでの扱いも完全にその他大勢な役回りがほとんどで、正統な進化先すらも定まっていないモブデジモンである。

「……何か今、誰かに酷く馬鹿にされたような気がする」
「気のせいじゃね?」
 メタな会話を挟みながら、目線の位置ぐらいにまで降りて来てくれたエアドラモンと、ティラノモンは一先ず不遇デジモン同士の再会を喜んだ。
 不遇不遇とネタにされるデジモンの中でも、ティラノモンとエアドラモンは二匹揃って話題にされることの多い組み合わせだ。
 故に二人には面識があり、共に後から出てきて大きい顔をしているメジャーデジモン達への愚痴を交わし合った仲間であった。

247 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:20:01 ID:XlUugUc60
「いやー、アグモン進化ー! なんて聞こえたからさ。また主役級に活躍するグレイモンが出てくるなら、そうはさせるかと思ったんだけどティラノモンだったのな」
「あー、そんなのいたら俺もぶっ潰してたわー、マジで」

 エアドラモンの言葉に相槌を打ってから、少しだけティラノモンは目を逸らす。

「……まぁ、アグモンの時、ホントは今度こそグレイモンに進化できたらなーって思ったんだけどさ」
「何か言った?」
「いや、何も」

 大きな頭を左右に振ってエアドラモンの追及を逃れたティラノモンは、ようやくこの場で話すべき事柄に触れることにした。

「それにしても、殺し合い、なぁ……おまえはどう思う?」
「正直、見栄えを考えるなら俺達なんかよりも、ロイヤルナイツや七大魔王みたいな人気どころにやらせろよって話だよな。あいつら普段おいしい思いばっかりしているのに、何でこんな厄介事は俺達がやらなきゃいけないんだよって思えて仕方ない」
 エアドラモンのぼやきに、ティラノモンは全くの同意見だった。
「そう考えると、やる気なんか起きないよなぁ……そもそも何であんな人間の言うことを聞かなくちゃいけないのか、って感じだし」

 ティラノモン達を不遇不遇と、ネタ扱いし続けたのは他でもない人間達である。
 愛ゆえのネタ扱いだのと言われても、そんなものイジメっ子の理屈以外にはなりえない。好感を抱けと言われたところで、簡単な話ではない。
 いや……それでも、例えどれだけ歪んでいても、確かにティラノモン達に関心を持ってくれる人間になら、何かを応えてやりたいと思わなくはないが……あのモリーという人間は、ティラノモン達を本当に見ていない、知ろうともしていないように感じられた。
 そんな奴の言うことを聞いて、モンスター同士互いに傷つけ合う気は起きない。

「こんなとこで優勝したって、テイマーができるわけじゃないしなぁ」
 そして何より、それが一番だった。

 テイマーという、パートナーの人間を得ること。それは他の可能性と交わることで進化を得ようとする、デジモンの本能が欲することだ。
 グレイモンが選ばれ、パートナーと黄金の時を過ごして行くのを、指を銜えて見ているしかできなかったティラノモンにとっては、テイマーとの出会いは恋焦がれる遠い夢だ。
 そもそも何故ティラノモン達は、不遇であることを嫌うのか――それはテイマーとなる人間達に、パートナーデジモンとして選ばれ難くなるから、というのが一番の理由だ。
 進化に限界のある、よくて他のデジモンの進化ルートに乗っけて貰うしかないデジモンを育てるより、どこまでも強くなる、その者だけの進化があるデジモンの方が、テイマーも当然育て甲斐がある。

 その逆では、つまらない。

248 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:22:08 ID:XlUugUc60

 言うなれば、報われないのだ。ティラノモン達のテイマーになる者は。
 ただでさえそうだというのに、こんな悪辣なゲームで優勝したなどという曰くがあっては、微かな芽はさらに摘み取られてしまうだろう。
「……むしろ逆効果、だもんな」
 遠い目をしているエアドラモンもどうやら、同じ心境のようだった。
「……となると、殺し合いに乗るのはなしかー、やっぱ」
「何か歯向かうのも難しいみたいに言ってたけど、まぁ、やるだけやってみようぜ」
 そんな風にダラダラと、ティラノモンとエアドラモンの成熟期デジモン対主催タッグが結成された。



「――ティラノモン。おまえやっぱり死ね」



 そして、今後のためにと互いのふくろの中を確認した直後。
 エアドラモンの口から、突如としてそんな言葉が紡がれた。

「えっ?」
「『スピニングニードル』!」

 突然のことに、ティラノモンの理解が追いつくよりも速く――エアドラモンの必殺技が放たれていた。
 真空の刃にその分厚い皮膚を切り裂かれ、突風の強烈な圧に吹き飛ばされながら、ティラノモンは何とか巨大な両足で大地を噛む。巨体が着地した衝撃に、今出来たばかりの擦過傷から鮮血が吹き出し、全身を伝わった激痛に息が詰まる。
 軽い目眩を堪えながら、ティラノモンは困惑と疑念とが綯交ぜとなった視線をエアドラモンへ向けた。

「……おい、何するんだよいきなりっ!? たった今、不遇デジモン同士こんな場所からおさらばしようぜって決めたばかりじゃないか!」

 自分達だけさっさと逃げようという発想が既に主役デジモンに相応しくないという事実に気づかないまま、傷を舐め合う相手だったはずのエアドラモンへティラノモンは約束を反故にされた憤りを爆発させる。

「黙れこの裏切り者っ!!」

 だがエアドラモンから返ってきたのは、そんなティラノモンの理不尽への怒りなどたちまち吹き飛ばすような、大気を震わす怨恨と憎悪の咆哮だった。

「おまえだけは……おまえだけは仲間だと思っていたのに……! だから戦う種族などと言われるデジモンなのに、戦いで得られるメリットを捨てて一緒に逃げようと思っていたのに……!」
「おいおい、そりゃこっちの台詞だぞ!? 仕掛けてきたのはおまえだろ!?」
「まだしらばっくれるかぁっ!」

 エアドラモンの羽ばたきが、伝承通りの竜巻を発生させてティラノモンに迫る。
 これまでのどの作品でも、成熟期程度には許されなかった設定通りの力を引き出すほどのエアドラモンの本気を感じ取り、身体の芯を冷やしながらティラノモンは問答を続ける。

「待ってくれ、俺には本当にわからないんだ! どうしておまえが怒っているのか、俺が悪いなら謝るから教えてくれ、頼む!」
 必死の問いかけに、エアドラモンはその形相を恐ろしく歪めながら、細長い尻尾の先を翻させた。

 エアドラモンの尻尾が掴み取ったのは、彼自身のふくろ、の中身だった。

「これを見やがれ!」
「これは――Vジャンプ!?」

 2013年6月号!

249 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:23:26 ID:XlUugUc60

 投げ渡されたそれを大きな掌で受け取ったティラノモンに、エアドラモンは苛立った声で矢継ぎ早に命令を繰り出す。

「137ページのデジナビのコーナーを開いてみろ!」
「待って、雑誌小さいからちょっと難しい」
 人間用の書物を、その何倍も巨大なティラノモンの手でピンポイントに開くのは至難の技であった。エアドラモンもそれを察したのか、ティラノモンがページを捲るのを黙って待っていた。

「こ……こいつは!?」

 やがて広告ページである、エアドラモンに指摘されたそのページに辿りついたティラノモンは……予想もしなかった衝撃に打ちのめされ、一瞬彫像のように固まっていた。
 そこでは圧倒的な人気を誇る主役デジモンの一角・アルファモンとともに、新デジモンの姿が公開されていた。
 赤錆に覆われた、鋼鉄竜の姿をしたそのデジモンこそ。

 ティラノモンの究極進化、ラストティラノモン。

 多くのファンが、そして誰よりティラノモン自身が、切望して止まなかった――正統なティラノモン究極体。

「は……ははっ」

 わなわなと震えながら、口からは乾いた声が漏れる。
 ティラノモンの目尻を濡らすのは、歓喜の涙だった。

「すげぇ……すげぇよ! 俺、俺ついに究極体が……!」
「そうだ……十五周年記念を飾る花形の一角としての、初代パッケージデジモンの究極体。卵から究極体までの進化ルートも完備されたおまえはもはや、不遇デジモンなどではない」
「やった……やったんだ俺! エアドラモン、教えてくれてありが……」
「だから死ねぇっ!!」

 再びスピニングニードルの真空刃に晒され、ティラノモンは歓声を呑み込んで身を躱す。
 逃げ遅れたVジャンプが跡形もなく引き裂かれ、紙吹雪を散らす向こう、エアドラモンの怨嗟の声は止まらない。
「何が不遇仲間だ……元々派生種も何もない俺のこと、本当は馬鹿にしてたんだろっ!」
「はぁ!? 何言ってんだよ、そんなの被害妄想だ!」
「黙れ四種類も直系完全体を持つくせに! シードラモンの奴より多いじゃないか!」

 同じ悲しみを背負う仲間と信じてきた相手が、その心の内に秘めていた自身への悪意を剥き出しにするのに、ティラノモンはVジャンプの誌面を見たのとは正反対のベクトルの、それに匹敵する衝撃に見舞われていた。

「派生種もいない、それらしい究極体は居ても、橋渡しになる完全体もいない! まるで進化の袋小路な俺の横で、究極体がいないって嘆いていた素振りで……ホントはおまえ、自分より下がいるって安心していたんだろっ!」
「違うっ!」
「だったら何で! 俺の完全体が出るより先に、おまえの究極体が……十五周年の締めで、あのアルファモンと同じだけの誌面を使って紹介されているんだよぉっ!?」

250 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:25:04 ID:XlUugUc60

 エアドラモンの言葉には、まるで理屈が通っていない。
 確かにエアドラモンに比べ、究極体ができたティラノモンは恵まれ過ぎている。だが、それを分けたのはただの運であり、ティラノモンがエアドラモンをどう思っているかなど関係がない。
 そんなことがわからないでもないだろうに……エアドラモンはいっそ哀れなほどの必死さで、ティラノモンを攻め立てる。

「もうおまえは不遇でもなんでもない! その上子供に人気のティラノサウルスだぜ!? 次のゲームからは、おまえ達ティラノモンはいろんなテイマーに引っ張り凧だろうよ! でも俺は……っ!」
 そこで言葉を詰まらせたエアドラモンは何かを呑み込んだ後、暗い炎の燃える細い瞳孔でティラノモンを睨みつけた。
「だったら良いさ、もう自分の正統な進化なんて望まない! とにかく強くさえなれば、今よりはきっと、きっと誰かに必要にされる……だったらこの島にいる奴らを倒して、倒して、倒しまくって! 勝率稼いで、他人の進化ルートだろうが何だろうが進化してやる! 俺にはもう、遠慮する相手なんかいないんだからな!」

 仮にも神にも近いと言われたエアドラモンが本気になって攻撃を加えるのに対し、仲間と思って来た相手と戦う覚悟のつかないティラノモンでは、防戦一方となるのが精一杯だ。
 周囲の木々を薙ぎ倒す強風に押され、じりじりと後退し続けたティラノモンはやがて、川辺にまで追い詰められていた。

「なぁ……エアドラモン、頼む。もうやめてくれ……」
 戦意の不足と、ダメージの蓄積。それと、弱々しい姿を見せることで情が引けるのではないかという打算から膝を着いたティラノモンは、エアドラモンへと懇願する。
 エアドラモンの気持ちはティラノモンにもわかる。もしも、エアドラモンと早々に遭遇していなければ……モリーに従うのは癪ではあるが、多くの程好い強さの敵と戦う機会の得られそうなバトルロワイアルをチャンスとして、乗っていた可能性も否定できなかった。
 というのも……進化できるデジモンであるか、もしくは既に十分に強い、魅力ある存在でなければ――アニメのグレイモンのように、パートナーと黄金の時を過ごす資格など、得られはしないのだから。

 デジモンは戦う種と呼ばれている。強い闘争本能を持ち、また戦いを重ねることで様々な要素が変化し、それが進化を促すからだ。
 故にティラノモンやエアドラモンのような恵まれないデジモンは、多くの戦いをくぐり抜けることでようやく進化の芽が出てくる……
 手間をかけても進化しない、成長もしない弱いままのモンスターのテイマーになるなどと、そんな報われないことを望む者がいるはずがない。
 孤独を殺すためなら修羅にもなる。そんな気持ちになってしまうのは、ティラノモンにも経験があった。
 それを癒してくれた仲間は今、そんな悲壮な覚悟と憎しみを燃やす目を、ティラノモンへと向けていた。

251 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:25:58 ID:XlUugUc60

 そんな姿を見てティラノモンが感じたのは、怒りでも恐怖でもなく……悲しみ、だった。

「俺は、おまえと戦いたくないし……冗談抜きに、おまえに手を汚して欲しくないんだ……っ」
 自分の感情を認識した時、ティラノモンは気づかないうちにそんな言葉を口にしていた。
 ふざけなければ、真っ当に向き合っていては辛いからと、不真面目な態度で茶化すようにして様々な物事に接するようにしていたというのに。
 事ここに至って吐露された本心に、エアドラモンの決意の瞳が翳りを見せる。
「お、俺は……」

 言葉が途切れると同時、鋭い歯を噛み合わせ、軋ませたエアドラモンは……一度、目を閉じた後、今度は泣き出しそうな顔でティラノモンに絶叫した。

「――俺は、おまえに見下されたくないんだよっ!!」

 咆哮と共に、エアドラモンの羽ばたきが大気を震わせて。
 ティラノモンへと、風の凶器が殺到した。



 目を背け、全力攻撃を繰り出した後――エアドラモンの視界からは、ティラノモンの姿が消えていた。
 エアドラモンの攻撃でティラノモンはその命を散らし、電子の海に還ったのだろうか。
「――いや、違う」
 ティラノモンが死んだのなら、そのデータをリロードできるはず。
 まだ殺していない。そう確信して注意深く辺りを観察すれば、ティラノモンがいた後ろの水面には波紋が残っていた。
 どうやらエアドラモンの攻撃によって生じた煙幕に紛れて、ティラノモンは川の中へとその身を隠したようだ。
 あの巨体のままであれば姿を隠すなど当然不可能であるため、アグモンにでも退化したのだろう。
 となると、そんな小さな目標が川の流れを利用し遁走していることになる。
 エアドラモンなら空から終えるとしても、見つけ出すのは少々骨が折れる。
 いや……本当に殺す気なら、多少の難儀さなど気に留める必要もない、のだが。

「まだ迷ってるのかよ……俺は」

 苦難を共にしてきた仲間の栄光を、祝うのではなく、呪うことを。
 待つだけでは叶わぬというのなら、修羅に身を堕としてでも力を手にし、夢を叶えようということに。
 そして何より……思わず口走ってしまった言葉に。
 ぎりり、と犬歯が軋む。

 ――あれは、なしだ。ノーカン。

 自らの心の中を占める感情を、そうしてエアドラモンは整理する。

「……いいさ別に。あいつに執着する理由なんてないんだ」

252 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:28:10 ID:XlUugUc60

 この島に存在する敵は多い。ティラノモン一人を執拗に追いかける必然性などどこにもない。
 そう自分に言い聞かせて、エアドラモンは飛翔する高度を上げる。

「次に会った時は必ず仕留める……下手に気にする必要なんてない、それで良いんだ」

 自らを欺瞞で塗り固めた飛竜は、新たな獲物を求め移動を開始した。


【C-3/川辺/一日目/昼】
【エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(微小)、迷い
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:メガドラモンとかで良いから進化するために他の参加者を倒す
 1:他の参加者を見つけて戦う
 2:でもヤバそうな奴は避ける
 3:ティラノモンは次に会えば倒す
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。



 バシャン、と水が跳ねる。
 現れたのは黄色い前足。三本爪の生え揃ったそれが水面を叩いて、勾配による流水とは別の動きを川に生み出す。
 やがて海に近い砂浜に、アグモンはその両足を突き立てていた。
 周囲の様子を確認することもなく、とにかく陸に上がったアグモンは手足を着いて息を乱しながら、何とか体力を安定させる。
「エアドラモン……」
 アグモンが真っ先に思い浮かべたのは、自らを傷つけた友のことだった。
 彼が血を吐くようにして叫んだ、その真意を知ってしまったから。

 それは、アグモンにも経験のある感情だった。
 同じボタモン、コロモン、アグモンと育ってきた者達がグレイモン達に進化し、人間とパートナー関係を築いた後の。
 独りぼっちなティラノモンとなった自分に向ける、あの無自覚な視線への嫌悪感は。
 ――ひょっとすると彼らは別に、見下したりなんかはしていなかったのかもしれない。
 それでも選ばれなかった者は、どうしても勘ぐってしまうのだ。
 だって選ばれなかったのは……本当は自分が悪いのではないか。どうしたって自分には無理なんじゃないか、と疑ってしまっているのだから。

 そんな苦しみをアグモンが堪えられたのは、エアドラモンという仲間がいたからだ。
 しかしティラノモンが不遇ではなくなったのなら……もし人間のパートナーデジモンになれてしまえば。いよいよエアドラモンは、一人になってしまう。

「……馬鹿野郎が」

253 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:29:43 ID:XlUugUc60

 アグモンの口を衝いて出たのは、修羅に堕ちつつある友と、己の不安を他者への悪意に変換させ逃げていた過去の自分への、怒りの声だった。

「そんなことで今更、俺達の思い出が変わるわけじゃねぇだろ……!」

 勝手に引け目を作って。勝手に追い詰められて。勝手に暴走して。
 どう見たって馬鹿だ。救いようのない大馬鹿野郎だ。
 だが放ってはおけない。
 だって自分も同じ馬鹿だったのだから。

「大体なんだよ、強くなりゃパートナーが見つかるって……違うだろ。確かにデジモンとしての本能は強くなるためかもしれないけど、俺達はそれだけでパートナーが欲しかったわけじゃねぇだろーよぉ……っ!」

 力や名誉、地位を得るとか。そんなことは、本当は副次的なものに過ぎなかった。
 ただ、同じ時間を生きる幸せを共有する、相棒が欲しかったのだ。
 駒のように、強い弱いで選ばれたいのではなく。心を強くする絆が欲しかったのだ。
 ――果たして他者を我欲で傷つけた先に、そんな物を手にする資格が得られるだろうか。
 アグモンは――ティラノモンは、そうは思わない。

「おまえは俺のことを、もう不遇じゃないって言ってくれたよな……」

 そして、きっと子供に人気が出て、夢にまで見たテイマーを獲得することができると。
 事実として誌面では、ラストティラノモンはあのオメガモンに次ぐ人気の主役デジモンであるアルファモンと同等の扱いで紹介されていた――
 これが主役候補の一体でなくて、果たして何だと言うのだろうか。

「だったら俺は、もうグレイモンに嫉妬ばかりするのはやめにするさ。そんなことするのは、全然主役らしくないからな。
 そんなことより、俺がやるべきなのは……このふざけたゲームをぶっ壊すことだ!」

 エアドラモンが――そう考えた結果がどんな事態を招いたとはいえ――ティラノモンがこれから、スターダムに上り詰めるのだと思ってくれたのなら。
 友がどれほど切望しても得られなかったチャンスを手にしたのなら、それを活かしきることが彼への礼儀だろう。
 何より自分自身が、この喜びを抑えることができないのだから。
 だから素直になる。ティラノモンは――主役を目指す。

254 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:31:23 ID:XlUugUc60

「俺がもう不遇じゃなくて、パッケージデジモンとして主役を務められるんなら……俺にもパートナーができるよな。なのに俺が悪い奴の言いなりで殺し合いをしたことがあったなんてことになれば、未来の俺のパートナーは良い気がしないに決まってるからな!」

 主役という肩書きに恥ずかしくないようにこれからを生き抜くと、今ここに誓う。
 そうでなければ、いくらラストティラノモンになれたところで、人間からティラノモンが望むような形のパートナーとして求められることは絶対にないのだと、確信できているのだから。

「……もちろん。友を見捨てるような真似したら、俺のテイマーになってくれる人間に顔向けできなくなっちまうだろーが!
 おまえのことだって絶対に何とかしてやる。だから待ってろよ、エアドラモン!」

 こうして、太古からの願いにより満たされた恐竜は。
 新しい絆の代価として失われるはずの絆も手放さないという、新たな野望を持ったのだった。



 なお。

 彼が本当にグレイモンから主役の座を奪える時が来るのかは、また別のお話――



【C-2/砂浜/一日目/昼】
【ティラノモン(元アグモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、全身に微細な切り傷
[装備]:なし
[所持]:不明支給品×1(確認済み)
[思考・状況]
基本:主役に相応しくなるため、対主催として真っ当に戦う。
 1:仲間を集めてモリーに立ち向かう。
 2:何とかエアドラモンを止めてやりたい。
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。参加者のエアドラモンとは旧知の仲。
参戦時点では消耗してアグモンに退化していたが、どうやら何度進化してもティラノモン系列にしかなれないハズレ的存在だったらしい。
ティラノモン状態が基本のため、コンディションを整えればティラノモン系統のいずれかの完全体には進化可能(どの完全体への進化経験があるかは不明だが、少なくとも完全体になった経験はある模様)。
逆に消耗するとアグモンへ退化することもある。
長い不遇生活でやや卑屈だが、本質的にはお調子者な性格。


《支給品紹介》
【Vジャンプ 2013年6月号@現実】
デジモンファンに衝撃を与えた、『ラストティラノモン』の存在が公表された月刊誌。

255 ◆Bu4r51EP82:2013/05/07(火) 23:33:42 ID:XlUugUc60
以上で投下完了です。
タイトルは悩みましたが『ティラノモンさん究極体おめでとうございます』で。
正直自分でも不安な点は多々あるので何かあればご指摘の方よろしくお願いします。

256名無しさん:2013/05/07(火) 23:42:24 ID:gurzbMHc0
投下乙です!
うわぁ……エアドラモンさん切なすぎる。それは確かに暴れたくなるww
果たして、ティラノモンは悪堕ちしそうになるエアドラモンを止められるかどうか……とても気になるな。

257 ◆5omSWLaE/2:2013/05/08(水) 00:32:11 ID:Xqacec960
投下お疲れ様です
不遇を脱却したことで、これまでと違った物の見方を知ったティラノモン
取り残されたエアドラモンの心境……うーむ、これはかなり注目ですよ……!
さりげに支給品が悲しいwwww まぁ、Vジャンプは主催者御用達ですからねぇ

さて、ついに全キャラクターが登場致しました!
様々な性格、様々な興味深い過去を抱えた魅力的なモンスターたち……
皆様のモンスターへの愛情が伝わってきました! 本当にどれも素晴らしい登場話、感謝感激です!
いよいよ本格的にクロスオーバーして行きます、どんな物語になっていくのか楽しみです……!
是非とも応援して頂ければと思います! 改めまして、ありがとうございます!

258 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/08(水) 00:34:48 ID:BJlNtgQs0
アリス、ドラゴン、グレイシア、メタモン、ピクシー、ソーナンス予約します

259 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/08(水) 00:38:05 ID:BJlNtgQs0
すみません、ケルベロスも追加で予約します

260 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/08(水) 04:54:58 ID:msTlu.BA0
チャッキー、マンイーター、ブイモンを予約させて頂きます

261名無しさん:2013/05/09(木) 22:42:39 ID:lqjsUmlc0
>『ティラノモンさん究極体おめでとうございます』
投下乙ですー
まさかの支給品w…だけど、それによって置いてかれる身となったエアドラモンの荒む心、
そんな友を止めようとするティラノモン…とスタンスを決定する道具としてちゃんと作用してるのが!
進化の可能性という情報に抑えきれない喜びを抱きながら決意するティラノモンさんがカッコよく見える

262 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:25:22 ID:cuE1cre20
投下します

263歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:28:33 ID:cuE1cre20
誰が殺した 駒鳥の雄を


それは私よ スズメがそう言った


私の弓で 私の矢羽で


私が殺した 駒鳥の雄を




鳥さんは死んじゃった。
だからこの歌を歌うの。
どうしてこの歌なのか、この歌を知ってるのかって?

知らな〜い。
もしかしたら赤おじさんと黒おじさんから聞いた歌だったかもしれない。
でも別にそんなことどうでもいいの。

だって、誰も聞いてないんだから。


だからね、アリスはもっとたくさん、一緒に歌ってくれるお友達を探すの。

おもちゃも欲しいけど、やっぱり一緒に遊べる人間のお友達がいいなぁ。

ほら、あそこにも。
動物さんが3匹とお人形さんが1個、お友達になれそうな人が1人いるの。

だからね、私は聞くの。

「ねえ、あなたはアリスとお友達になってくれる?」



264歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:29:55 ID:cuE1cre20
「ソーナンス!」

彼らと出会ったのは偶然だった。

どうしたらいいかと考える二人の元に、突如謎の轟音が響いた。
ほんの一瞬であったが、それは決して無視できるほどのものではなかった。
まるで、地面を丸ごと抉り取ったかのような音が、ほんの一瞬とはいえ聞こえてきては彼らとてじっとはしていられなかった。

まず森を抜け、見晴らしのよい場所に出てから行動しよう。そう言った(ように見えた)のはソーナンスだった。
彼なりに用心し、ピクシーを守ろうとしているのかもしれない。

そして、森を出たところにいたのは。

「ソーーナンス!」
「あなたは、ソーナンスさん?!」

巨大なドラゴン、桃色髪の少女、そしてソーナンスの知り合いらしきモンスター、グレイシアだった。



ソーナンスをどうして彼らが無条件に信用したのかということには彼の戦い方、特性にあった。
彼は自分から戦うことは好まず、相手の攻撃を受け流し反撃に応じることが得意だとされている。
そんなポケモンが、積極的に他のモンスターに戦いを仕掛け、傷つけることはないと、そう判断したことが理由である。


「見たことないモンスターだけど、みんな何て言うの?」
「しらないの?わたしたちポケモンっていうんだけど」
「ソーナンス!」

グレイシア、メタモン(桃色の髪の少女)、ソーナンスは同じ種族に分類されるモンスターであるという。
しかしドラゴン、ピクシーには共に聞き覚えがない。

「ピクシーって言うならお前もだ。色んなピクシーを俺は見てきたが、お前みたいな小奇麗なやつは見たことねえぞ」
「ピクシーさんという名前なのですか。私達もピクシーというポケモンは知っていますが、どうやらあまり関係はなさそうですね」

ドラゴンは青い小悪魔を連想し、グレイシアは白くふっくらとした妖精ポケモンを連想したその名前。

未知なる遭遇は彼らの間に僅かな混乱をもたらしていた。



しかし、そんな彼らの中にも、とある共通点があった。
それは、皆人間の元で暮らし、育てられたモンスターであるということ。

そこに様々な想い、別れがあれど彼らがそうであったということは変わらない。
ドラゴンやメタモンはそこを多くは語れなかったものの、そこには何かしらの想いが込められているのを彼らは感じていた。

265歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:30:49 ID:cuE1cre20
「そうだ、ピクシーさん、ソーナンスさん!こんなばしょですけど、せっかくであったんですし、わたしたちとおともだちになりましょうよ!」

そんなことを言い出したのはメタモンだった。

「グレイシアさんとも、こんなにつよいドラゴンさんともおともだちになれたんですし。
 きずついてたたかわなくてもみんななかよくしましょう」
「よせ。その呼ばれ方はむず痒いんだよ」
「照れてるんですか?」
「うるせえ!」


ピクシーは驚いていた。
こんなところでも、こんな風に友達を作ろうとするモンスターもいるのだと。

彼女の心に、ほんの小さなものだが希望の光が生まれた。
こんなところに放り込まれ、主に死ねと言われているようなものだと感じて闇に包まれた心に。
このソーナンスのような存在もたくさんいるのだと。


答えは当然決まっている。

「もちろん!皆で一緒に生き残ろう!」
「ソーナンス!」

ここで、ピクシーはこの会場にきて初めて笑顔を見せた。
それにつられ、ソーナンスもしかめっ面の中に嬉しそうな声を上げて同意。

「ありがとう!がんばろうねみんな」

少女の姿をしたモンスターは、そんな彼らの様子にどこまでも嬉しそうだった。
















「ねえ、あなたはアリスとお友だちになってくれる?」

266歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:31:26 ID:cuE1cre20
そんな声が聞こえた。
とても透き通った、綺麗な声。

一同が振り向くと、そこにいたのは1人の少女。
青いワンピースを身に纏った、綺麗な肌をした女の子。
一見人間にしか見えないが、メタモンや人間に比較的近い外見をしたピクシーもこの場にいる。誰も疑問を持たなかった。

だから、気付くのが遅れた。
友達という言葉に釣られてか、真っ先に近寄っていったのはメタモンだった。

「あなた、なまえなんていうの?」
「わたし?わたしはアリスっていうの」
「アリスちゃんだね。わたしはメタモン。おともだちになりましょう!」
「ほんとう?!わぁい!」

嬉しそうにはしゃぐ二人の少女。



そんな中、ふとドラゴンは少女の瞳を覗き込み。
その奥を見つめ。


「それじゃあね、メタモンさん。おねがいがあるの」
「おねがい?なんでもいってよ。ともだちじゃない」
「そう?それじゃあ」



「メタモン!!危ない!!!」

と、とっさにドラゴンが飛び出し、メタモンを突き飛ばした。







「 死 ん で く れ る ? 」



彼らの中で最も生死の境目を生きてきたのはドラゴンだった。
他のモンスターの戦いは傷付くことはあっても死ぬことは極稀なもの。
その中で、ドラゴンだけは常に生死を賭けた殺し合いを、戦いとしてきたのだ。
負ければその時点で不要とされ、捨てられるか最悪処分されるという環境で育ってきた。

故に殺意、悪意といったものにはこの場の他のモンスターと比較して人一倍は敏感であった。

舞い上がったメタモンでは気付けなかった、アリスの瞳の奥にある虚無、真の暗闇。
そして、考え込む仕草と共に少女からとてつもなく嫌な気配を感じ取ったドラゴンは、気がつけば咄嗟に飛び出していた。

267歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:32:17 ID:cuE1cre20





(全く、子守なんて慣れないことはするもんじゃねえな)

どうせあの時俺は死んでいた。
それなのに命を助けられ、それまでの考えを改めさせられていた。
もう死ぬことでしか己のプライドを保てないと思っていたのを変えられたのだ。あのようなガキのモンスターに。
その結果がこのザマだ。

だけど、不思議と悪い心地はしなかった。

飛び出すと同時に吐いた、俺の炎は”アレ”には届かないだろう。
だから一刻も早くこれから離れろ。

(お前はこんなところにいつモンスターじゃねえ。だから、生きろ)

そう心で呟いたのと、ドラゴンの視界が真っ赤に染まったのは、ほぼ同時だった。

【ドラゴン@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】



「グォア…ッ!」

不意に突き飛ばされ、地面に倒れこむメタモン。
呻き声が聞こえた先に視線を戻すとドラゴンさんが全身を真っ黒に染め、血と炎を吹き出しながら崩れ落ちていた。

「じゃましないでよ。アリスはドラゴンさんにはきょうみないんだから」

そう言いながら、アリスは動かなくなったドラゴンの体を蹴り飛ばした。

何が起こっているのか、理性をもって理解できたものは一匹としていなかった。
しかし、グレイシアだけは咄嗟に傍にいたピクシーとソーナンスの前に飛び出した。
それと同時、アリスは3匹の存在に気付いたように視線を向けた。

「あ、そっか。じゃまするならけしちゃえばいいんだ」

そう呟くと同時、アリスの手からとてつもないエネルギーが噴出。
赤き魔力がピクシーを、ソーナンスを、グレイシアを飲み込んでいく。
思わずメタモンは叫ぶ。

「止めてええええええ!!!!」

地面を抉り、周囲の大気を振るわせる大出力の攻撃。
しかし、それでも彼らは形を保っていた。
グレイシアが守るを使ってそれを防いだのだ。

「ソーナンス!!ソーナンス!!」

しかしそれを受けた衝撃か、グレイシアは地面に倒れぐったりしている。
おそらくは守るでも防ぎきれないほどの衝撃を、アリスは放ったということなのだろう。

268歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:33:11 ID:cuE1cre20
「あれ?まだ生きてるの?
 ウサギさんやお人形さん、ハンプティダンプティさんはいらないのよ」

そう言って再び攻撃を加えようとするアリス。それを見て、メタモンは。

「アリス、こっち!!」

アリスに向けて叫んだ後、森の中へ向けて走り出した。

何も考えがなかったわけではない。
ただ、アリスは自分とは友達になろうとした。しかし皆を邪魔者扱いして殺そうともした。
もし自分とだけ友達になろうとするのならばきっと放っておかないはずだと。

分の悪い賭けだとは本人も思っていたが、メタモンの行動は功を奏した。

「あ、まってー。鬼ごっこするの?ならアリスが鬼ねー」

アリスはこちらに気を取られ、追いかけ始めたのだ。
遠ざかる足音。二人の姿は森の中に消えていく。


「メタモンちゃん!」
「…ぐ……」
「ソーーナンス!」
「だ、大丈夫です…。まだ歩けます…。それより、あの早くここから…。
 でないとあの子も、戻って、来られない…」
「う、うん、分かった!ソーナンス、お願い!」

そう言われたソーナンスは、グレイシアを肩で支え、ピクシーが先導して歩き始めた。
メタモンの走り出した方とは逆の場所へ。



「おにごっこはやめてかくれんぼにしたの〜?」

森の中。
ワンピース姿の少女には酷であるはずの環境もものともせずにアリスは進んでいく。
木々や草花のせいで見通しはあまり利かず、足元も生身の人間には厳しいであろうその空間を、ひょいひょいとそれこそ無邪気な子供のように歩く。
いや、実際彼女は無邪気な子供だった。

だからだろう。
そんな彼女の目の前に、

「あれ?」

自分と同じ顔をした人間がいれば、興味を持つのも当然である。
    アリス
「あ〜!私だあ!こんにちは!!」

269歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:35:40 ID:cuE1cre20
しかし、それ以上の疑問を持つことはなく、己と全く同じ顔をした存在がいるということをあっさりと受け入れていた。
同じ顔、同じ髪、服も形は全く同じ。違うところといえば、その瞳の中に闇が、虚無がないこと、そして服の色が若干薄くなっていることだろう。

「ねえ、ちょっとだけ、おはなししない…?」
「アリスとおしゃべり?いいよ、しようしよう!」



メタモンがアリスに変身したのにも理由はある。
この子が、一体何者なのかを確かめたかったのだ。

一見では人間にしか見えなかった少女。
しかしドラゴンを得体のしれない方法で殺し、皆に大威力の攻撃を放った。

ドラゴンを殺して。

アリスに変身するまでの間、彼女の目から逸れている間にメタモンはあの光景を思い出して嘔吐した。
まるで何か強力な呪いでも受けたかのような、あまりに無惨な死に様。
出会って数時間だったが、それでも友達だった彼の死はメタモンを深く傷つけていた。

それでも、だからこそ確かめなければならなかった。
あの時友達になろうと言ったのは嘘だったのか。どうしてドラゴンさんを殺したのか。
そのための変身だった。


が、変身後、自分の能力を分析したところでメタモンはこの少女がただ者ではなかったことに気付くまでそう時間は掛からなかった。

所持している技。
高威力、無属性かつ強力な特殊効果を持った特殊攻撃。こんなもの、特性:あまのじゃくのポケモンがVジェネレートを使うようなものだ。
相手のエネルギーを奪い取る技。メガドレインのようなものかと思ったが、この技が吸い取るのは生命力だ。
強力な火炎攻撃。はっきり言って、威力だけならドラゴンさんのものなど比べ物にならないほどの力を持っている。
そして、あのドラゴンさんを殺した技。強力な呪いを投げかける技で、特殊な耐性がなければ防ぐことは難しい。

こんな技を持っている少女は本当に人間なのか。
いや、人間ではなかった。
ポケモンで言うゴーストタイプ、いや、そんなものよりももっと恐ろしい存在だ。
昔聞いたことのある話で、悪い組織の人間に殺された、とあるポケモンの母親がずっと幽霊としてある建物の中に留まって誰も近寄らせないようにしたということがあったらしい。
嘘か本当かまでは分からないが、この少女もそれと似たようなものに思えた。

270歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:36:27 ID:cuE1cre20
そして、だからこそ立ち向かわなければいけなかった。
もっと知りたいと思った。もっと、近付きたいと思った。
それがあのドラゴンさんを殺した相手であっても。
きっと私が復讐のためにこの子を殺すなんてことは、きっと彼も望まないと思ったから。

「ねえ、アリスちゃんはおともだちがほしいの?」
「うん!私ずっと一人っきりだったから、いっしょにあそべるお友だちがほしいの」
「じゃあ、どうしてドラゴンさんをころしたの?」
「べつにアリスころそうと思ったんじゃないもん。いきなりとび出してきたのドラゴンさんだもん」
「じゃあ、どうしてわたしをころそうとしたの?」

そう、それこそがきっかけ。
あの時のアリスの呪いが狙ったのは自分だった。
友達になってほしいという言葉、あれは嘘だったというのだろうか。

「だって、アリスとお友だちになるんでしょ?だったら死んでくれないとダメじゃない」

メタモンには、アリスが何を言っているのか分からなかった。
何故死ぬことが友達になることに繋がるのか。

「どうして?しんだらおともだちにもなれないよ?あそぶこともはなすこともできなくなるのよ?」
「どうして?死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?
 アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん」

その言葉で、彼女の持つ友達という存在に少し踏み込めた気がした。
もしかしたら、彼女自身が死んだ存在であるためその死生観自体を狂わせているのではないか。
自分も死んでいるのだから、他の人も同じようにすることで仲間を増やせるのだと思っているのではないか。
しかし、いくらアリスがそうだからといってそれで友達になれるとは思えなかったし、何よりメタモンも死にたくはなかった。

「ちがうよ!しぬっていうのはかなしいんだよ!ほかのみんなともあえなくなるし、あそべなくなるの!
 ともだちになりたいなら、わたしがなってあげるからそんなしんでほしいなんていっちゃだめなの!」
 アリス
「私が何をいってるのかわかんない。
 お友だちになってくれるっていうんだったらね、――――死んでくれる?」

その言葉、あの時ドラゴンの庇ったときと同じもの。それは、紛れもない死の宣告。

キーーーーーン
心臓を鷲掴みにでもされたかのような寒気、怖気が全身を襲う。
しかし、それだけだ。メタモンの肉体にも精神にも、大きな影響を及ぼすことはない。

メタモンの変身はただの姿を真似るだけの技ではない。
能力、技、耐性。その全てをコピーするのだ。
そして、アリスには呪殺は通じない。だから、その宣告はメタモンには無意味。

271歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:37:58 ID:cuE1cre20
「あれ?死なないんだ。
 じゃあしょーぶしようよしょーぶ!アリスまけないから!」

そう言って、アリスはあの莫大な攻撃を打ち出そうと手を翳した。
それを受けきるため、メタモンも同じ技を構える。
全く同じ魔力を持った、全く同じ、大威力の万能技。
森の中、二つの衝撃がぶつかり合った。




「グォォ!!」
「きゃあっ!!!」

業火がほとばしり、周囲の木々を一瞬で消し飛ばす。
閃光と吹雪が走り、襲い来る炎を受け流す。

「グルルルル…」


アリスと遭遇した場所から逃げてきた3匹を待ち受けていたのは、一匹の巨大な猛獣だった。
そのモンスターはこちらを認識するや否や、突然攻撃を仕掛けてきた。
業火を吐き、巨大な爪でもってこちらを斬り割かんと振りかざしてきた凶獣に対し、3匹は迎え撃つしかなかった。

「アギダイン!!」

そして今また、彼の唱えた呪文は巨大な火柱を打ち出す。
グレイシアは守るでガードすると同時、吹雪を相手に向かって放つ。
炎を操るゆえ冷気には弱いのか、吹雪く寒い風に動きを止める猛獣。

「メガレイ!」

そこへ追撃をかけるように、ピクシーが光をその手から放出。猛犬を包み込む。

「やった?!」
「油断してはダメ!」

ピクシーの中では、その攻撃は相当のダメージを与えるはずの技。

しかし、グレイシアの警告どおり、猛犬は大したダメージを受けている様子もなく、その場に留まっていた。

272歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:39:12 ID:cuE1cre20
「そんな…、だってさっきのは結構な技だったのに…」
「やっぱり。どうやら私達の力がどうしてか下がってるみたい」

先のアリスの発した技、それはジハード。
相手に無属性の高エネルギーをぶつけ、同時に相手の能力を下げる技。
彼らは守るをもってしても防ぎきれなかったあの一撃の、後者の効果による二次被害を受けていた。
グレイシアがそれに気付いたのはこの戦いの中。時間経過か何かしらの対策で戻すことが可能だったかもしれないがタイミングが悪すぎた。

相手はあのドラゴンに勝るとも劣らない強力なモンスター。
いくら2匹がかりとはいえ能力の下がった彼らには荷が重かった。

「グオオオオオオッ!!!」

虚空爪激がグレイシアに放たれる。
後ろに飛びのくことで回避しようとしたが、ジハードのダメージがグレイシアの反応を遅らせる。
結果、直撃こそ避けはしたものの、振り払われた腕に吹き飛ばされてしまう。

「うぁっ…!」
「グレイシア!」

吹き飛び、地面に倒れこんだグレイシアを逃さず、追撃をかけようと爪を振りかざし、

「…!」

その時だった。
グレイシアの目の前にソーナンスが飛び出してきたのは。

「ソーナンス!」

相手の攻撃を受けてから反射することが能力であるソーナンスには、この猛獣は強すぎる。
おそらくダメージを返す前に死ぬだろう。
ゆえに二匹はソーナンスを引かせていたのに。


そして爪が振り下ろされる瞬間、影のようなものが猛獣を包み込んだ。
咄嗟、猛獣は振り下ろした爪を直前で止め、ソーナンスを睨みつける。

273歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:39:55 ID:cuE1cre20
「貴様、何をした?」
「ソーナンス」
「なるほど、呪いをかけたか。お前が死ねば、俺の命も共に奪うという呪いを」
「ソーナンス」
「だが、いいのか?もし俺が死を恐れなければ、お前は死ぬことになるのだぞ?」
「ソーナンス」
「そうか」

と、そう言って猛獣は、その爪を再び振り下ろし―――

「ダメーーーー!!!!!」

ピクシーの声が響き。
それが、もう少し動けばその頭を引き裂くであろう、その寸前で止めた。

「いいだろう、こちらとてまだ死にたいわけではない。
 お前の勇気に免じて、今回だけは逃がしてやる」
「ソー、ナンス」

その言葉を受けて、それまで微動だにしなかったソーナンスが腰を落とした。
今の今までその恐怖を耐えていたのだろう。腰が抜けているようだった。
グレイシアがその傍に駆け寄り、その背に乗せる。先のお礼だろう。
アリスから受けた攻撃は、ピクシーの回復魔法によって若干ではあるがそのダメージを減らしていた。でなければ戦闘などこなせないだろう。

ともあれ、彼らに背を向けて進む猛獣。もう彼らには興味がないということなのだろう。
と、その方向はこっちの向かってきた場所だ。
グレイシアは一言、猛獣に告げる。

「そっちにはもう一体、私達の仲間が、友達がいます。
 変身が得意で、グニャグニャしたピンク色の子です。
 もし会うことがあれば、私達の向かった方を伝えてあげてください。お願いします」

あの場においてきた仲間への言伝。
猛獣は振り向いて、グレイシアを見つめる。

「伝えると思うのか?もしかしたら俺はそいつを殺すかもしれんのだぞ?」
「そう言ってもらえるなら、まだ信用できます。あなたは真っ直ぐな者のようです。人を騙したりするのは苦手でしょう?
 なら、いきなりあの子に襲い掛かることもないかもしれない」

グレイシアにとって、もしダメでも言っておくだけで少しは違うかもしれないとそう思っただけだ。
万一襲うことがあっても、再度の合流への何かしらの希望は残しておきたかった。

猛獣は答えることもなく、背を向け、また振り返ってこう問うた。

274歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:40:28 ID:cuE1cre20
「一つ聞かせろ。
 お前達は一体何から逃げていた?
 置いてきた仲間、その傷、ただ事ではないだろう?」
「アリス、という女の子に襲われて。仲間も一体殺されました…。
 かなりの力を持っているみたいで、私達には手に負えませんでした」
「なるほどな。
 いいだろう、お前の言う伝言、一応考えておいてやる」

それだけ言うと、猛獣は背を向け歩き出した。
今度は振り返ることはなかった。



あれは果たして悪魔だったのか。
ふと、ケルベロスはそう考えた。

悪魔は見つけ次第殺す。手心を加えては己の死にも繋がりかねない。
だからこそ戦闘中はその疑問は打ち捨ててきた。
しかし、あの水色の者は仲間のために己の命を賭した。

悪魔がそのようなことするだろうか。
少なくともそれは低級な悪魔の思考ではない、しかし彼が上級の悪魔にも見えなかった。
あの時の、通りすがりの悪魔を治療し殺された彼を思い出す。

いや、そんなことは関係ない。
今回彼らを逃がしたのは、あくまで身にかけられた呪いを解くため。
それ以上の理由などない。


「アリス、か。
 このような場所にいる以上、人間ということは有り得まい。…まさか噂に聞くあいつか?」

ケルベロスは彼らの示した方角へ向かいながら思考を切り替えた。
噂に聞いたことはある。
謎の少女が、友達になろうと道行く人に死を懇願する、悪霊のような存在。
もし、あの魔人が存在するのであれば、奴を討伐するのは俺の役割。おそらく彼らの言っていた仲間に構う余裕はないかもしれない。

魔獣ケルベロス、デビルバスター。
悪魔を狩る。それだけが、俺の役割なのだから。

【C-7/森/一日目/昼】

【魔獣 ケルベロス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康 肉体損傷(小) 魔力消費(小)
[装備]:無し
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:悪魔を殺して回る、慈悲はない。
  1:アリスという少女(高確率で悪魔と推測)を殺す
 2:あの3匹は、今だけは見逃す
  3:3匹の言う仲間に、彼らの向かった場所を伝えるかどうか―――?

275歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:41:49 ID:cuE1cre20


へんしん。
それは相手の能力、技を完全にコピーすることができるという技。
しかし、コピーできないものもある。

一つは体力。例えばメタモンがハピナスに変身してもHPは増えず、メタモンの状態のときそのままとなる。
もう一つは技を出せる回数。変身段階で大幅に使用可能回数が減少しており、今アリスに変身している状態においてもMPは本来よりかなり下がっていた。
だからこそ、メタモンには持久戦となったら圧倒的に不利となる。

そしてこの場においても、地面にはいつくばっているのはメタモンの変身したアリスだった。

「もう終わりなの?」

無論理由としてはそれだけではないだろう。
戦いの中で相手の命を奪おうとするものと、殺したくないと考えるもの。
結果など見え透いている。

「それじゃ、そろそろ死んでくれる?お友だちになれば、もっといっしょにあそべるんだし」

そう言って、地面で僅かに身動ぎするメタモンに近付くアリス。
と、そこでメタモンの体に異変が起きる。

アリスを模った体がグニャグニャと輪郭を崩し、少しずつ色合いを落としていく。
その光景を見つめて驚くアリスの目の前で、その体はさらに小さくなっていき、最終的に元あったメタモンの形にまで戻っていった。

そんな姿を見つめて、アリスはがっかりしたような声でこういった。

「そっかー、にんげんだってウソついてたんだー」

そして、そのまま手をかざす。
そこに顕現するのは地獄の業火というのも生ぬるい、まさに天が齎す裁きのごとき大火炎。

「それじゃ、やっぱりいらない。じゃあね」

トリスアギオン。
周囲の木々を焼失ではなく消滅させるほどの高熱が、メタモンを包み込んだ。



276歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:42:16 ID:cuE1cre20
3匹は安全な場所を探して逃走している最中も、メタモンのことを一時たりと忘れたりなどしなかった。

「大丈夫、だよね、あの子…」
「私が油断さえしなければ、メタモンさんもドラゴンさんも…、くっ…!」
「ソーナンス…」

だが、今の彼ら自身分かっていた。
己の体の状態も、その無力さも。

いくら闘技場でいい結果が残せる強さがあっても、ポケモンリーグを勝ち残ったという過去を持っても。
この場で、命の掛かった戦いの場での、仲間の危機の前では、ただひたすらに無力だった。

【C-7/森/一日目/昼】

【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:アリスから離れる
 2:メタモン…

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(中)、能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。
 1:皆と一緒に行動する
  2:メタモンが気がかり

【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
  2:ソーナンス…



※能力低下がいつまで継続するかは不明ですが、時間経過で解けるでしょう。






炎は一瞬で全てを焼き尽くし、そのまま燃料を失って消滅。
その場に残っているのは、濛々と湧き上がる煙だけ。

炎を放った主は煙の外からその光景を眺め。

「じゃあ、アリスは行くね。ほかにあそんでくれる子はいないかなぁ」

そう言って、アリスは興味をなくしたようにその場を立ち去った。
煙の中を確かめることもなく、それまでと同じく鼻歌を歌いながら。


【B-6/草原/一日目/昼】

【アリス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康 、魔力消耗(小)
[装備]:チェーンソー
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:遊ぶ

277歪みの国のアリス ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:43:10 ID:cuE1cre20


アリスが去り、さらにしばらく経った後煙が晴れた、黒こげの地面。
本来であれば動くものがいるはずもないその場所に、つぶれたピンク色のスライム状の物体は残っていた。

『これはお前が持っていけ。薬の礼だ』
『そんな、わるいです!おともだちになれたんだから、そんなきづかいいらないですよ!』
『いいから、持っていけ。俺はそこそこ強いが、お前は色々と危なっかしい。
 それに友達だとか認めたわけじゃないが、されっぱなしってのも気分が悪いんだよ』

あの時ドラゴンが渡してくれた、彼の道具、復活玉。
それがメタモンの命をどうにか繋ぎとめていた。
しかし、命を繋ぎとめたとは言っても、体に受けた、致命傷にはならないほどのダメージまでは回復してはくれなかった。
今はもう動くこともできない状態だ。

(もしこれをドラゴンさんがもってたら、ドラゴンさんはしなずにすんだのかな…)

掠れる意識の中、ふとそんなことを思ってしまった。

(ドラゴンさん…)


彼の最後を思い出し、悲しさと悔しさに押しつぶされそうになる。
それでもあのアリスという少女が、メタモンはずっと気になっていた。

『死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?
 アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん』
(そんなの…違う…)

友達になりたいと言い、そして死んでくれないかとも言った少女。
メタモンにとって相反する2つの言葉。
それが頭の中でリフレインする。

(死ぬっていうのは、辛いんだよ、悲しいんだよ…?
 そんなので友達なんか、できないよ…)

体のダメージに、頭が限界を迎えつつある。
朦朧とする頭が、さらに薄れていく。

そんな中でも、メタモンは己をここまで傷つけた少女のことを思い続け、

(だから、しねばともだちになれるって…、そんなの、ぜったいおかしいよ――――)

その思考を最後に、メタモンの意識は休息を求めて沈んでいった。


【B-6/草原/一日目/昼】

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:意識無し、疲労(大)、ダメージ(大)、能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:みんなを笑顔にして、幸せにする
 1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する
 2:”ともだち”をつくる
  3:アリスが気にかかる






【復活の玉@ドラゴンクエスト】
ドラゴンに支給。
戦闘不能になった際、一度だけ復活することができる。

278 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/12(日) 17:44:00 ID:cuE1cre20
投下終了です

279名無しさん:2013/05/12(日) 18:18:51 ID:pQ/FL68sO
投下乙です。

ドラゴンは長生きしないだろうなと思っていたけど、後悔のない死に方ができたかな?

280 ◆5omSWLaE/2:2013/05/12(日) 21:39:02 ID:m324YjN20
投下お疲れ様です
非常に高度な駆け引き、迫力のある戦い、息を飲んで読み入ってしまいました……!
モンスター同士の絆がすごくいい感じです。そしてそれが引き裂かれるところもまた……
どこまでも無邪気なアリスは、やはり他のモンスターとは一線をかく恐ろしさがありますね
ソーナンスもケルベロス相手にかっこよかったです! 道連れはやっぱ強力です
他にも全てのモンスターにそれぞれ見せ場があって、素晴らしかったです!

281 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/13(月) 20:55:06 ID:IGeW9CiU0
現在の予約を延長させていただきます

282 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 05:59:51 ID:vHjbQngk0
投下します

283眠ったままで ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 06:00:44 ID:vHjbQngk0
一匹のデジモンがその日生を受けた。
卵から孵って広がった空は果てしなく、世界は寒かった。
頼りなく震える体を抱いてくれたのは、幼い少女。彼女の細い腕のなかは温かく、デジモンは寒さを忘れた。
少女は、やがて大人になって、デジモンのことを忘れてしまった。
デジモンは悲しみ、再び襲った寒さのために体も心も、卵に閉じ込める。沢山の思い出や進化の記憶をデータの奥底に溶かして、溶かして。
また、また幼い少女に会える日まで、眠ったままで。



「くぅーッ……マンイーターの姐さんにそんな悲しい過去があるとは……!

マンイーターの即興でっちあげ凄惨過去話、略して過去バナに涙するブイモン。
ちょろいもんだぜ、と内心ガッツポーズをしつつも「あー気にしないでいーわよ、ホント」なんて気丈に振る舞う。
なんて完璧な演技力、話の構成力!
自身のパーペキさに身震いしちゃうわ!
うっかり高笑いをあげそうになる口元を抑えて、ブイモンをちらりと見やる。

「ぐすん、俺、姐さんが幸せになれるようお手伝いするッスよ!」

できる範囲だけッスが!
と、堂々と宣言するブイモン。
予定とはイマイチ違うがお人好し……いやお悪魔好しでよかった。
「はいはいあんがとね!きったないから鼻水拭きなよもう……あ、頂上かしらん」

二体は、高台を目指して歩いていた。
優勝狙いのマンイーターが意気揚々とふくろを漁り、地図が支給されていないことに気付いたための進路であった。
本人達が知り及ぶことでは無かったが奇しくも目指した高台は島の中央に聳える山。徒労にならず彼女らは島の全貌を知り得るだろう。
「はあー地味に疲れたわ……あ、この杖あんたに返さなきゃね」
一応女性だからと手渡されたブイモンの支給品である杖。山道を開いたり歩く支えに役立つ便利なものだったが、如何せん殺しあいに使える気はしない。
何よりマンイーターには近代武器と悪魔としての力がある。

「うーん、でもそれ俺もいらないんスよねえ」
勿論ブイモンも杖の扱いは長けていなかった。
「あっそ、じゃあアタシのものにするわ。しかし本当に島!って感じね……よく見渡せちゃ、うわ、なにあの爆発!」
貰える者は貰って置こうとふくろごとひったくり、彼方で起きた爆発に驚愕するマンイーター。
まがまがしい爆発、あれはおそらく悪魔……それも上級のものが起こした技に違いないだろう。
予想以上の修羅場に……自分が巻き起こしてきた男女間の修羅場を軽く上回る事態にマンイーターは息を呑んだ。

「ひええ……で、でもここはいい眺めッスね!島全体がよく見えますよ!」
ブイモンは怯えながら前向きに話しだす。
ひゅうひゅうと、潮混じりの生臭い風が後を押す。
「そーね……あ!いいこと考え付いた!アタシったらマジ天才!」

目を細めて景色を観察していたマンイーターは、四方をキョロキョロと見回しグッと拳を握る。
「っし、ここでくるやつを待ち伏せて、誘惑してコ……仲魔にするか殺すかすれば、アタシ、げふん、達は優勝街道まっしぐらよ!!」
本音を洩らしつつ、どーんと指で天を貫きマンイーターは高笑いする
確かにこの山を目指すものは少なくないだろうし、その作戦も勿論有用だ。
「流石ッス姐さん!あ……でも」
頼りになるマンイーターに賞賛の目を向けたブイモンがふと、冗談のように。

「俺達より先にここにいるやつがいたりするかもー……なんちゃって」

284眠ったままで ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 06:01:54 ID:vHjbQngk0
冗談のように。

冗談のように、笑った。

誰が?

かたかた、かたり。

先客が。

かた、かたり。


瞬き一つ、惨劇が始まった。
得意気にふんぞり返っていたマンイーターの背後から何かが飛び出す。遅れて、マンイーターが倒れる。
状況が理解できないブイモンが、一呼吸、二呼吸、マンイーターの背中が、真っ直ぐに切り裂かれて、三呼吸、血塗れの正体不明が。

「うわぁああああ!?」

漸く悲鳴が上がる頃には目の前に凶器が迫っていた。鮮やかに、潜んでいた殺しのプロは命を刈り取っていく。
ぱしん、殺戮を旨とする人形、チャッキーはブーメランのように掌に帰還したグラディウスを握った。
二人、二匹?なんでもいい、高揚した気持ちが落ち着いていく。
今度は仕留めたものがすぐそばに落ちている。
止めを、というより、確認のために死体を殺す作業。
それは本当にただの作業で、仕上げだ。

ブイモンは瞳を閉じていた。痛みと死の恐怖で、抗うことのできぬ眠りに落ちて。
体がどうなっているかも、生きているのかも、死んでいるのかも分からない。
落ちる落ちる、溶ける溶ける。
血は流れているのか?
データはもう崩れてしまったのか?
奔流は止められないのか?

誰かが執拗に尋ねてくる。
ブイモンには、分からない。

ひゅう、と風が止んだ。


【ブイモン@デジタルモンスターシリーズ 死




―――にたくないッスよぉ……!!」


光の塊がブイモンを叱咤する。
彼の閉じた瞳には幼い少女が映っていた。
少女は笑顔で、ブイモンの手を取り、体を引き起こして囁いた。

『また、一緒に戦いましょう?』


消えかけて、溶けたデータが身体中を満たして駆け巡る。
組み変わり、強くなり、瞳が開く。

目の前には凶器を構えたばかりの人形。

青い幻竜を思わせる体、腹部のXの字、背中から生えた翼。ブイモンは己の名前を思い出した。

「エクスブイモン……!」

チャッキーは、無表情に笑った。

285眠ったままで ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 06:02:51 ID:vHjbQngk0
「うう……」

うめき声がする方向を見やると、幼い少女がいた。
どこかで見たことがあるような……そうだマンイーターだ。
彼女は生きていた!しかしダメージのために幼年体に戻ってしまったのだろう。

未だおぼろげな、守るべき少女と重なり、エクスブイモンは勇気を燃やす。

剛速で唸る拳は、一瞬に賭ける想いは、殺戮人形などに負けたりはしない。

凶器を跳ね返し、頭を弾き、逃げ場を無くす。
背後は崖、落ちれば山岳地帯に打ち砕かれて死ぬ。
そしてこれから放つ必殺技でも死ぬ。
力を手に入れたエクスブイモンは素晴らしく勇敢な心地で勝者の絶景を見た。

「エクス……レイザー!!」

勝利は約束されていた。
エクスブイモンは光の前に無に帰した人形を見て満足そうに笑う。
そして後ろから駆けてくる少女のために振り返った。

ああ、あの娘が笑っている。

笑って、ゆっくり、そうだ少女は怪我をしているから、ゆっくり、こちらに。




「―――あれ?なんであの娘がいるんだ?」

ひゅうと風が、生臭い風が吹き抜けた。

少女の幻を突き抜けて、人形の凶器がエクスブイモンを貫き、切り上げた。

辻褄が、合わないんだ。

エクスブイモンが自覚したとき、その翼を持つ勇壮な体は崖下の地面に吸い込まれていた。

幼年体に―――彼女は悪魔だと言った。

あの娘がこちらに―――あの娘は大人になったし、ここにいるはずがない。

どこからおかしくなっていた?


ブイモンがエクスブイモンに進化したのは真実だ。
人形、チャッキーを追い詰めたのもまた現実だ。

しかし、勝利は約束されていなかった。
チャッキーは跳躍しエクスレイザーを躱し、エクスブイモンの背後に降りた。
そして真っ直ぐに襲い掛かってきた、それだけ。


どうして夢なんか見ていたのだろう。
どうして起こされてしまったのだろう。
どうして死んでしまうんだろう。


どうして、眠ったままで死なせてくれなかったんだろう。

「あの娘に、また会えるッスかね」

叩きつけられた衝撃に小さな声はころされる。
薄ら寒い世界、最期にブイモンが見たのは狭い空と、嗤うチャッキーの顔。

【ブイモン@デジタルモンスターシリーズ 死亡】

286眠ったままで ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 06:03:48 ID:vHjbQngk0
チャッキーは再び、感情を持たず崖下を見る羽目になった。
まあ、今回は確実に死んだであろう実感がある。この手で切り裂いたのだから。
さて、残った死体を殺すか、そう振り向くが、辺りには何も落ちていない。
ああ、これだから、死体は完全に殺さなくちゃあいけないんだ。

【D-5/山頂/一日目/日中】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:獲物を探す





「――いででで……あーもー一張羅がズッパリと……さいっあく……」

ぱっくり裂けた背中に手をあてがいながらマンイーターは大慌てで下山していた。
剣撃も破魔も無効にできないため、それなりに痛手は食らったが運良く彼女は致命傷を避けていた。
そして一旦死んだフリをしていた彼女はチャッキーの背中に向けてがむしゃらに持っていた杖を振った。
ダメージのため距離感が合わず、その上杖からほとばしった光(マンイーターは杖でチャッキーを殴殺するつもりであった)はブイモンに当たり万事休すか、と歯噛みした直後にあの騒ぎだ。

「この杖、パワーアップさせる光みたいなのが出るのね……ま、精々時間稼ぎ頑張ってよブイモンちゃん」

あのお人形さんは似ても焼いても食えそうにないわ。
ニヤリ、と妖艶な笑みを浮かべ撫でる杖。
彼女もブイモンもその効果は知らない、メダパニの杖。
放たれた光を受けたものを混乱させる、ブイモンに夢を見せて殺した杖。


今は未だ、マンイーターもブイモンも、チャッキーすらも、真実を知ることはない。


【D-5/山中/一日目/日中】

【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(4/5)
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明)ブイモンのふくろ(中身は空っぽ)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:男悪魔を誘惑し味方に付け、利用しつつ優勝を狙う
 2:ブイモンを囮にしてさっさと下山して逃げる
 
 ※メダパニの杖を強化系の杖と勘違いしています、回数制限も知りません
  山頂の景色から少しだけ地形を把握しました

《支給品紹介》

【メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ】

ブイモンに支給されていた杖。振るとメダパニ(相手を混乱させる呪文)の光を出す。
回数制限があり、直接ぶつけても効果を発揮する。

287 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/15(水) 06:08:07 ID:vHjbQngk0
投下終了です。
投下後に気づきましたがマンイーターの状態表に間違いがありました、申し訳ありません。


【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:背中に裂傷(ダメージ中)
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(4/5)
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明)ブイモンのふくろ(中身は空っぽ)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:男悪魔を誘惑し味方に付け、利用しつつ優勝を狙う
 2:ブイモンを囮にしてさっさと下山して逃げる
 
 ※メダパニの杖を強化系の杖と勘違いしています、回数制限も知りません
  山頂の景色から少しだけ地形を把握しました

で、修正お願いします。

288 ◆5omSWLaE/2:2013/05/15(水) 09:06:25 ID:JbMl4FpEO
投下お疲れ様です
その勇姿、夢幻の如くなり……
敵にも味方にも弄ばれて、訳のわからない世界の中で倒れるブイモン、実に悲劇的ですねぇ
マンイーターが幼年体に戻る……など、ブイモンの主観が忠実に描かれてていい感じです
チャッキーは引き続き、山中でガンガン暴れてくれそうですね
そしてマンイーターの次の被害者は果たして誰になるのか……

289迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:53:49 ID:pDptw9vI0
投下します

290迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:54:02 ID:pDptw9vI0




終ワリノ風景
何処マデモ何処マデモ荒涼トシタ大地
血、ソシテ死体
生クル者、何一ツトシテ無シ

己ヲ除ケバ

皆ハ逝ク、私ハ生ク

ナラバ、何処マデモ何処マデモ、行コウ

何時ノ日カ、逃レタ死ガ私ヲ迎エニ来ルソノ時マデ

291迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:54:16 ID:pDptw9vI0


太陽は考えうる最も頂点で黄金色の輝きを発していた。
白日の下に晒されたその島は、灼熱でもなく、極寒でもなく、丁度いい気温と言うべきだろう。
風は緩やかに草花を撫ぜつけていき、雲は様々な形を取りながらのんびりと世界の果てへと旅していた。
何をするにも都合が良かった、心地良い気温と緩やかな風に身を委ね木陰の下で夕陽が沈むまで睡眠をとることにも、
体を衝動のままに動かしてただただ遊ぶことにも費やすにも、
特に、殺し合いなどには絶好の日和だっただろう。

先程の傷は粗方癒え、いや癒えずとも動いていただろうが、レナモンは闘争相手を探していた。
目的は無い。
この場に於ける絶対的法である、殺し合いということさえも度外視して、
レナモンは目的なき闘争を行わなければならなかった。

決して目で見ることの出来ない傷を、癒すためではなく埋めるために、
戦う理由を失ったレナモンは、理由なき戦いを行わなければならなかった。

先程の戦いの熱も冷めぬ内に、次の相手は見つかった。
溶けきってドロドロになった動く金属と、それに乗って移動する巨大な金の魚。

珍妙な姿ではあったが、しかしそれを特別な存在と認識する法はレナモンの世界にはなかった。
哺乳類、爬虫類、魚類、両生類、鳥類──数多ある生物の括りは、全て、デジモンという巨大な括りの名の下に平等であった。
レナモンの住む世界に決して差別などはない、ただ力の差だけが存在する。

そして、レナモンとその庇護者は──敗北した。
それだけのことだ。

最早、守る相手はいない。
復讐がしたい、そういうわけでもない。

だが、それでも力が欲しいと、レナモンは願う。

決して過去を変えられると思っているわけでもない。
未来に何かを願うわけでもないし、現在を掴もうというわけでもない。

ただ、生という旅は、一人で歩むには辛すぎた。

背中越しに守る相手は、もう二度と求められないだろう。
共に歩く相手を求めることなど、決して出来ないだろう。

だから、対面する。

面と面を向かい合わせ、殺しあう。

意味は、
特に、
無い。

292迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:54:29 ID:pDptw9vI0


「私の体を見て、何か思うことはないか?」
「上に乗っているので見えません」
「成程」

コイキングとはぐれメタルは海に向かっていた。
もちろん、魚が陸にいてはならない等というルールはない。
しかし、水場の方が行動しやすいのならば、誰だってそうするだろうし、
実際、彼らも海へと向かっていた。

「コイキングさんは海に行ったら、どうするんですか?」
「移動しやすくなるだろうな」
「…………アッハイ」

正論といえば、正論であった。
しかし、返答に困った。

「とりあえず島を1周してみることにしよう、何かわかることがあるかもしれない。それに……」
「それに?」
「他の参加者と出会うことになるだろうな、良くも悪くも」
「……良くも悪くも、か」

コイキングさんと出会えたのはラッキーだったけど、
もしかしたら、他の誰かは殺し合いに乗っているかもしれない。

その時、僕は……

はぐれメタルの体が、ふるりと揺れた。

「問題はないよ、はぐれメタル君」
そんなはぐれメタルの心を見透かしたかのようなタイミングで、コイキングが言葉を放った。

「私は29レベルだ、見かけよりは強いのだよ」
29レベルという言葉の意味はわからなかったが、
少なくともその言葉が、はぐれメタルの緊張をほぐしたのは事実だった。

「何事もなんとかなるものだよ、はぐれメタル君。聞きたいかい?私がいかりの湖で赤いギャ」
「申し訳ないが、その話の続きは後にしてもらって良いだろうか?」
言葉を遮ったのは、レナモンだった。

果たして、この二匹と戦うことで望むものは得られるのか。
その様な疑問を抱かせる程度には、レナモンから見れば彼らは弱者だった。

だが、レナモンはその様な疑問を吹っ切って進む。

思えば、真に望むもの等、永遠に手に入らないのだ。
力さえ、力さえも──その代用品に過ぎない。

ならば関係ない、私は進むしか無い。

「話の続きは、0と1に分解された虚無の果てで行なってくれ」

293迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:54:41 ID:pDptw9vI0

「話がしたい」
レナモンの宣戦布告に対し、コイキングはどこまでも落ち着いていた。
はぐれメタルの上に乗った、その黄金の体はどことなく玉座に座った王の風格すら醸し出していただろう。

体当たりの勢いで、はぐれメタルから飛び降りたコイキングは、堂々とレナモンの前に立つ。

「コイキングさん!?」
逃げはしないのか?さも当然であるかのようにレナモンの前に立つコイキングに、
はぐれメタルの心中はその疑問で満たされた。

何と声を掛ければいい?
何かしなければならないのでは?
とにかくコイキングの態度に対して、はぐれメタルは行動しあぐねていた。

「はぐれメタル君は逃げなさい、ここからは大人の話し合いの時間だ」
「でも!」

やはり、そんなはぐれメタルの心を見通すかのように、コイキングの冷静な声が飛んだ。
だが、その言葉にはぐれメタルも素直に応とは言えなかった。

「僕の速さなら──」
そこから先の言葉は続けることが出来なかった。

逃げられない。

コイキングを乗せれば、はぐれメタル特有の超速を発揮することは出来ない。

ならば、残るか?

いや、残ったとしても──コイキングはきっと死んでしまうだろう。
このメタルの体は、あらゆる攻撃に強い。
だが、コイキングは──駄目だ。

自分を囮にして、コイキングを逃しても──

跳ねて移動するしか無い魚は、文字通り、まな板の上の鯉だ。

それでも……

それでも!!

「駄目です!!駄目なんです!!」
どうしようもないとわかっている、それでも叫んだ。
付き合いなど、このはぐれメタル生の内で誰よりも短いだろう。

しかし、見捨てることは嫌だった。
理屈ではなく、心が叫ばせていた。

叫んでも、何も変わらない。

それでも、気持ちを伝えずにはいられなかった。

「大丈夫だよ、はぐれメタル君」
そんなはぐれメタルに、
やれやれ、とため息を吐き。
平静と、コイキングは言ってのけた。

「私は目の前の狐によく効く呪文を知っているのさ、何せ…………目の前の狐は、私と同じ目をしているのだから」

「だから行きなさい、はぐれメタル君。
行って、生って、言ってくれ、私という強いコイキングがいた事を」

「駄目……なんですね」
「ああ」

はぐれメタルは後ろを振り向きはしなかった。
ただ何時もと同じように、全速力で逃げた。

「はぐれメタル君、君に出会えて本当に良かった」

視界はぼやけていた。

294迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:54:53 ID:pDptw9vI0


「…………追わないでくれて、感謝する」
逃げるはぐれメタルを、レナモンはただ見送った。
どこか重ねてしまったのだろうか、昔の自分と。


「…………」
何を言葉に出すか、レナモンは考えあぐねていた。
動く鉄を逃したのもそうだが、
それよりも気になったのは目の前の金魚が言った言葉だ。
ハッタリだと決めつけてしまえばいい、
言葉ではなく、武で応じて、そして戦う自分に戻ればいい。

だが、
「…………君も、きっと失ったのだろう」
コイキングの言葉を、レナモンは無視できないでいた。

「初めに言っておくが、私は弱い。自慢ではないが、君の攻撃を一撃で死ぬだろう」
本当に自慢の出来ないことだが、
レナモンはその言葉に対し、特別嗤うことはしなかった。

「だから、君が私を殺すまで……君は私の言葉に付き合ってくれ」
「…………ああ」

「私の朝は一杯のコーヒーから始まる。私の午後はアフタヌーンティーにて始まる。
そして夜は、パジャマになるに決ま」
「本筋から話せ」
「お気に召さなかったか?」
「召さん」

「そうか…………」
「…………」

レナモンはこの時点でコイキングを殺そうか真剣に悩んだ。

295迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:55:12 ID:pDptw9vI0


「私には親がいた、兄弟がいた、友人がいて、恋人がいた」
「過去形か」
「ああ、悲劇の呆れるような普遍性という物だ」
「つまりは」
「全員死んだ、私だけはこうして生きているがね」
「…………」

「つまらないことだ、我が故郷の湖は人間の実験場となり…………小さい弟は、その紅い身のまま暴龍になった」
「お前は……どうした?」

「……私は逃げ出した」
「情けないな」

「君だってそうだろう?」
「…………」

返す言葉は、無かった。

「私は逃げて逃げて、探していた」
「何を?」
「知識を」
「それで何を得た?」
「何も」

「情けないな」
「君だってそうだろう?」

「私は……力を得た」
「力を得て、何を得た?」

「守るべき者を守れるはずだった力を」
「守るべき相手もいないのにか」

「…………」

違う、そうじゃない。
私が力を求める理由は──
出そうとした言葉は、ただ心の奥底に沈んでいった。

「私は探した、知恵を得て……守るべき相手を」
「私は違う……守るべき相手を失い、力を探した。
力さえあれば守れた……お前はそう思わなかったのか?」

「理性を無くした弟は、守るべきものを心から無くして……そして力だけを得た。
私は見つけなければならなかった、守るべきものを、そして守るための力は……その後だ」
「……違う」

否定されている、レナモンはそう感じた。

「私は…………」

だが、言葉に出来なかった。

「わかっている、私は逃げたんだ。何もかもから逃げて…………そして、今が精算の時だ」

296迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:55:29 ID:pDptw9vI0

コイキングの金色の体が、その体色とは更に毛色の違う光に包まれていた。

「君に見せたいものがある」

シルエット状になった、コイキングの体がゆっくりと巨大化していく。

「果てだ」

鯉は龍へと変貌していく。

「力の果てだ」

コイキング は ギャラドス に 進化した

「はぐれメタル君を下にした時、何故か経験値の入る感覚があった。
だから…………きっと、出来ると思ったんだ。進化を」

「狐君」
「レナモンだ」

「レナモン君、私はもう逃げない…………だが、戦いもしない」
「どういうことだ?」

「なに、少々暴れるだけさ」

ギャラドスは白目を剥き、レナモンを無視して、
ただひたすらに暴れだした。

レナモンはキュウビモンに進化し、ただ暴れ続けるギャラドスに攻撃を加えていく。

ギャラドスは何も意に介さない。

ひとしきり、暴れると、次は己の体に攻撃を加えていく。

「見せたいものとは…………これかッ!!」
キュウビモンの叫びにも、ギャラドスは意に介さない。
ただただ、己の身を傷つけていく。

「力の果てなど、このような物だとッ!!私に見せつけるために!!」

ギャラドスは意に介さない。

「だとしたらッ!!下らないッ!!本当に下らない!!」

ギャラドスは意に介さない。

「私は──」
「私は思うんだ」

穏やかな声が響き渡った。

「このような体で暴れるよりも、はぐれメタル君に運ばれていた時の方が楽しかったと」

その言葉だけを言い遺し、
ギャラドスは、天を仰いで、逝った。

鯉の滝登りの先の、どこまでも抜けるような青空を見て。

【コイキング@ポケットモンスター 死亡】

297迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:55:42 ID:pDptw9vI0

「今まで歩いた道を否定して!そしてまた探せと!お前はそう言うのか!!」
龍の巨体からの返答は無かった。

「おい……応えろッ…………逃げるなよ!!」
龍の名を呼ぼうとして、その名を知らないことに気づき、
レナモンはただ、声にならない叫びを上げた。



「畜生…………私に、どうしろと言うんだ」



【B-4/草原/一日目/午後】

【レナモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:戦い抜き、もっと力を手に入れる
1:どうすればいい?
2:強き者を打ち倒す
3:ガブリアスはさらに力を手に入れてから倒す

[備考]
メス。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。

【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×1)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗りたくない
1:コイキングさん……

[備考]
オス。慎重で、臆病。劇的な出来事を待ち望んでいる。一人称は「僕」

298迷い生きる獣達 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 18:56:21 ID:pDptw9vI0
投下終了します

299名無しさん:2013/05/16(木) 20:13:01 ID:nUszYl1I0
投下乙です。
思えばキングが多いロワだけど、このコイキングはすごいカッコいいなぁ
なんというかこう、置いていかれた気分。
死ぬのって普通はこの上なく負けでしかないんだけど、勝ち逃げされた感覚が。

300 ◆5omSWLaE/2:2013/05/16(木) 21:12:08 ID:x6qIGTQQ0
投下お疲れ様です
力を求めるか、知識を求めるか。守るべき者のためにどちらが必要か……なんとも考えさせられます
そんな中、自らの体を張って『力の果て』の姿をレナモンに見せたコイキングが非常に紳士的で格好良いです
コイキングが持つ独自の価値観、哲学、そして優雅な生き様には、実に深いものを感じますね

そして気がつけば守るべき者のためではなく、悲しみを埋めるために力を求めてきたレナモン
彼女はギャラドスの最期を見て、どのような考えを抱くのでしょうか。今後が楽しみです

はぐれメタルは、見ることこそ出来ずとも、この『劇的な出来事』に一役買ってくれてます
彼はコイキングの生き様を多くの者に言うために、生きて行けるといいですね……

301名無しさん:2013/05/16(木) 22:39:47 ID:Vw/EeEls0
おおう
コイキングって、進化すれば強くなる、って人間からは思われてるけど
その強さを、虚しいものと、なんにもならないと他でもないコイキングが語ると重い……

302名無しさん:2013/05/16(木) 23:13:44 ID:HpilxICwO
投下乙です。

力だけを押し付けられた弟の末路を見たからこそ、理由も目的も無い力に価値を見いだせないコイキング。
力に逃避したレナモンの明日はどっちだ。

303 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/16(木) 23:26:23 ID:pDptw9vI0
モッチー、モルボル、ゲルを予約します

304 ◆9eFMlaiqFQ:2013/05/16(木) 23:56:05 ID:oph4hU320
ベヒーモス、ゴーレム、ルカリオ 予約します

305バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:37:33 ID:OzJSQEBg0
投下します

306バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:37:49 ID:OzJSQEBg0


カロリーナに戦うことは出来ない。
美を追求するためのトレーニング、そしてダイエット、それが彼女に出来る全てのことだ。

だから、彼女は踊る。
それしか出来なくても、それが出来るのだから、
それをすることを、彼女は選んだ。

──「戦イナンテヤメテワタシト一緒ニえくささいず致シマ、ショォー!!」

何一つ、打算はなかった。

けれども、

──「ハァーイ、わんつーわんつーー!!はむノわんつーニモ負ケズニィ!両手両足ヲパンパン!ハイッ!強ク!正シク!美シクゥ!!」

少なくとも、目の前で命が奪われようとしていること。
それだけは嫌だった。

だから、彼女は踊った。


【モッチー(カロリーナ)@モンスターファームシリーズ 死亡】



そら撃つよ。
目の前で隙丸出しで踊ってたら、そりゃゲルキゾクだってガトリング撃つよ。
そっちは真剣にやってるのかもしれないけど、ゲルキゾクさんサイドだって本気でやってんだから、
そりゃ何してくるかわからないけどスキだらけの相手がいたら、ついでに撃っとくよ。

ガトリング撃たれたら、そら死ぬよ。
一発撃たれるだけでも、銃って半端ないのにそれが連射されたら、死ぬよ、不可避だよ。
しかも、貴族って呼ばれてるゲルが撃ってんだぞ、そりゃ超痛いよ、死ぬよ。
貴族だぞ、貴族。

その勢いで、モルボルに対してガトリング撃ち込むよ。
遊びでやってんじゃないんだから、

そしたら、どうなるかって
そりゃモルボルさんだって、一瞬ぽかんとしてたけど、
お互いがぽかんとしてたお陰で、一息ついたよ。

魔法撃つよ、サンダガ。
だって、ガトリング相手に臭い息やっても意味ないもん。
電撃放たれたらどうなるって、そりゃもちろん、弾が蒸発するよ。
だって、サンダガだぞ、サンダガ。
サンダーより強いサンダラよりも強いんだぞ、サンダガ。
簡単に言うと、超強いよ、サンダガ。

307バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:38:07 ID:OzJSQEBg0

◇◆

カロリーナの存在は誤算だった。
だからこそ、ゲルキゾクは今まさに雷に飲み込まれようとしている。
直撃すれば己の体は蒸発し、そしてコアまで飲み込んで──そして、己の全ては消え去るだろう。

『契約』、ゲルキゾクの中でその言葉が繰り返される。
共に駆け巡るのは、契約によってもたらされた日々。

「契約違反……か」

目の前にある死、それを前にしてゲルキゾクは無様に喚いたりはしない。
だが目を閉じて、大人しく諦めることなどしない。

「それは決してあり得ませんな」
契約違反を嫌っているのは、あの女だけではない。
種族名といえど、己は貴族だ。
その名に掛けて誓ったのならば、決して契約を違えはしない。

それに、あの女は泣いたのだ。
己のために、みっともなく涙を流して生を懇願したのだ。

ならば、何時か来るその日までは生きなければならないだろう──

──「ああ!!」

──「だから、絶対に死ぬな!」

──「道具の分際で私を一人ぼっちにするなんて許さないんだからな!!」

雷撃の中で、ゲルキゾクは主の声を聞いた。

「わかっておりますよ……ご主人様」

そして、雷撃は全てを飲み込んだ。

308バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:38:22 ID:OzJSQEBg0

「……驚いた、と云うべきか」
ゲルキゾクの姿に対して、モルボルは言うべき言葉を考えあぐねているようだった。

「だが、ワシは不思議と……お前が、生き延びているような、そんな気がしていたぞ」
モルボルキングが最も信頼する武器はくさい息であったが、
それでも魔法に自信が無いというわけでは、決してなかった。
全てに於いて完璧であること、それが己の目指す王の一面であるのだから。

「見事だ」
だが、己を曲げてでもモルボルキングはゲルキゾクを称賛せずにはいられなかった。

「ノブレス・オブリージュというものです」
同情も信頼もないが、貴族としてあのがめつくも情けないご主人様を支えてやらなければならない。
それは契約を度外視した、貴族としての義務だ。
だから、彼は生きている。

心の奥底からガッツが湧き上がったのならば、雷撃をも耐える。
だが、生きているという言葉が無事を意味するというわけではない。
生きていること、それだけでゲルキゾクは必死だった。

だが、それでも屈したりはしない。
その目は、ただモルボルを見据え、
消えんとする命を薪に闘志はむしろ、燃え上がっていた。

故に、モルボルは再度尋ねる。
「我が軍門に降る気は──」
「何度問われようと、私は決して契約を違えません。王よ、お解りでしょう?」
「無論」

分かりきった答え、それを再度聞かずにはいられなかった。
見せつけた圧倒的な力、それでも尚変わらぬ宝石のように美しき意志。

ならば、モルボルは触手を振り上げる。
「その意志、素晴らしき貢物であったぞ」
モルボルはその触手を以て、道を指し示した。

「名は何と言う?」
「……ゲルキゾクでございます」
決して戸惑いなど、声に混ざらない。
それでも、ゲルキゾクの声に一瞬の戸惑いがあったのは、予期せぬモルボルの反応が故。

「ゲルキゾクよ、褒美としてお前の生存を許そう」
「………………」
そして予想だにしなかったモルボルの言葉に、ゲルキゾクは言葉を探しあぐねていた。
だが、未だ生き延びることが出来るというのならば、
己の契約のために戦うことが出来るというのならば、
言う言葉など、決まっている。

「有難き幸せにございます」

そして、もう一つ。
「ですが、この恩は千の剣によって返されることでしょう」
「ならば、万の剣によって打ち滅ぼすのみ」


ゲルキゾクはモルボルの元を離れ、何処か身を癒せる場所を目指し歩みを進めた。
素晴らしい王たる彼を、何時の日にか殺さなければならないことは心を痛める。
だが、それが進むと決めた道なのならば、

──「死ぬな!!」

「ええ、決して契約を違えたりはしませんよ」

【F-7/草原中央/一日目/日中】

【ゲル(ゲルキゾク)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:重症、サンキューガッツ
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:自身のブリーダーの安否確認のため全員を殺しモリーと面会する
 1:身を癒せる場所へ

[備考]
オス。金にがめついブリーダーに『道具』として飼われていた。冷徹だが冷血ではない。種族はゲルキゾク(ゲル×ガリ)丁寧な口調で一人称は「私」

309バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:38:32 ID:OzJSQEBg0


カロリーナとは一体何だったのか。

殺し合いの場でエクササイズしてただけだろ!いい加減にしろ!と誰かが言うかもしれない。

だが彼女は、誰も知らないかもしれないが、

「…………名も知らぬ魔物よ、ワシはお主に救われた」
いや、王の目は見逃さなかった。
命がけでエクササイズを行い、時間を創りだし、モルボルにサンダガを放つ余裕を与えた名も知らぬ魔物の事を。

エクササイズでモルボルは救われたのだ。

「名も知らぬ魔物よ、墓は造らぬ、許せ」
モルボルはカロリーナの死体に背を向けて、進む。

「……今のワシに与えられる物は、何も無い。王に憧れるモルボル勲章など、あの世でも自慢できぬであろう」

「だからといって、頭は垂れぬ……王とはそういうものだ」

「故に、王ではなく……ただの王に憧れるモルボルの言葉として聞け」

「ありがとう」

頭を垂れ、感謝し、

そして彼は王道を進む。

【F-7/草原中央/一日目/日中】

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いの中でも王になることを目指す。忠臣がほしい。
 1:ゲルキゾクのような忠臣が欲しい

310バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/18(土) 22:38:54 ID:OzJSQEBg0
投下終了します
問題なければ、自己リレーでワームモンを予約します

311 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/18(土) 22:52:20 ID:coZtAbu.0
ガブモン、キラーパンサー、キングスライムで予約します

312名無しさん:2013/05/19(日) 00:37:39 ID:8Po5Pk/20
あれ、タイトルや序文に反してなんかかっこいい!?
投下乙です!

313 ◆5omSWLaE/2:2013/05/19(日) 01:33:53 ID:Rp9dOGt20
投下お疲れ様です
そりゃ撃ちますよ、ええ。それが自然ですとも。タイトルで吹きました。
誇り高い意思とガッツを持つゲルキゾク、なんとも気高い姿です。
モルボルも王としての威厳を、ただのモルボルとしての礼を持っていた実に素晴らしい。
気高き彼らの今後の行く末が気になりますね!

自己リレーに関してですが、OK致します。
投下後すぐ等でなければ基本的に許可するつもりです。

314DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:42:17 ID:xknu6lzA0
投下します

315DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:42:33 ID:xknu6lzA0


太陽に向けてスティングモンは得たばかりの手を伸ばし、そして掌にその輝きを収めた。
「…………」
もちろん、太陽の輝きは一生物の掌に収められるものではなく、
ただの果てしない距離が錯覚させる手遊びに過ぎない。
収められた太陽は何一つ変わること無く、ただただ穏やかに熱と光を放ち続けていた。

「…………これか」

何一つとして変わらないものに対し、
スティングモンは震える程の力を込めて更に太陽を握り締める。
遥か彼方よりも遠い場所から送られた太陽の過去を握りしめた所で何の意味が無いことなどわかっている。
何も変わらない、何一つとして変わらない。
それでも、スティングモンはただ、掌に収めた太陽を離すまいと手を握っている。

「勝利を掴む感覚というものは」

その為にスティングモンは芋虫の体を捨て、進化したのだ。
己の手を取るために、勝利を掴み、離さない。その為の手を得るために。

「十分だ」
逆光を浴びて影の色に染め上げられた己の強く握りしめられた拳。
その手を大きく開き、そして重力と共にゆっくりとその手を地上に向ける。

太陽に背を向けて、スティングモンはゆっくりと歩き出した。

カシャ カシャ カシャ カシャ

決して大きい音ではない。

カシャ カシャ カシャ カシャ

しかし、その金属質な足音は何処までも響き渡った。

カシャ カシャ カシャ カシャ

それは、魔王の行進を妨げる事の出来る者が誰一人としていないことの証左。

カシャ カシャ カシャ カシャ

恐怖に従えられた空気が、何処までも何処までもその行進音を伝えていく。

カシャ カシャ カシャ カシャ

「足とは良い物だな…………」

カシャ カシャ カシャ カシャ

「地獄まで征くのに都合が良い」

カシャ カシャ カシャ カシャ……

316DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:42:47 ID:xknu6lzA0

カシャ カシャ カシャ カシャ

「うわっ!ひっどい傷!!大丈夫芋虫君?」
「い、芋虫なんかじゃないよ!僕にはワームモンって立派な名前があるんだぞ!!」
「芋虫は芋虫でしょ〜」
「うるさいなぁ、放っといてよ!!それに進化したら僕だってヒーローみたいに格好良くなるんだぞ!!」
「はいはい、ほらこっち来て、こんなトコロでボロボロになっててもしょうがないでしょ。ほら、ロザリーお姉さんに付いて来なさい!」

カシャ カシャ カシャ カシャ

行進の中、スティングモンが思うのは己がただの芋虫だった時の記憶。
恐るべき敵によって、デジタルワールドから傷ついた体のまま人間界へと逃げ出し、パートナーと出会った全ての始まりの記憶。

カシャ カシャ カシャ カシャ

「……へ〜、君みたいな子をデジモンって言うんだ」
「うん、それで僕は……」
「逃げ出して来たんだって?」
「うん…………」
「まぁ、いいんじゃない。逃げれる時は逃げなくちゃ」
「…………」
「誰かが助けてくれたら、私も逃げなくて済んだんだろうけど、
まぁ、こういうのはしょうがな〜い」
「ロザリーも逃げてきたの?」
「うん、戦って、戦って…………でも、勝てないからさ、
逃げ出して、逃げ出して……それでも逃げきれなくて、その結果、今……殺し屋やってるよ」

カシャ カシャ カシャ カシャ

「なによ〜、ワームモンって種族名みたいなもんじゃない、君自身に名前は無いの?」
「僕はワームモンだから、ワームモンなんだよ〜」
「甘い!甘い!あまぁ〜〜い!!じゃあ君がその進化……って奴をしたらワームモンじゃなくなっちゃうじゃん!
君はワームモンだけど、ワームモンってだけじゃないの!」
「う〜〜〜〜」
「決めた!私が君に名前を付ける!!絶対付けるんだからね!!」

カシャ カシャ カシャ カシャ

「……地獄?」
「うん、きっと私は死ぬ……多分、っていうか…………絶対に死ぬ…………自分の体のことだから、よくわかっちゃうよ」
「……いや、きっとロザリーは天国に行けるよ、だって僕にこんなに優しくしてくれたじゃないか」
「うん、でも私殺し屋だからね…………救われないし、救われちゃいけないよ」
「…………でも」
「そうだ、そろそろ君に名前をあげる…………遅くなりすぎちゃったけど、まだ大丈夫だよね」
「名前なんていいよ!!遅くなりすぎたなんて言わないでよ!!」
「名前を……いいなんて言っちゃ駄目。名前があるから、私は人間の中の誰かさんじゃなくてロザリーでいられるし、
君だって……ワームモンから、私の大好きな君になれるんだから」
「…………うん」
「君の名前は今日から…………」

カシャ カシャ カシャ カシャ

317DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:42:58 ID:xknu6lzA0




ロザリーが死んだ時の事は、いまでも昨日の事のように思い出せる。
「…………死ぬっていうのも、中々にあっさりしてるね」
「………………」

ロザリーは病気だった。
決して治らない、しかし金が続く限りはゆっくりと魂を消耗しながら生きるだけの事は出来る病。
親にも兄弟にも友だちにも見放された彼女は、他人の命を奪う殺し屋という職業で自分の命を繋げていた。

だが、それも限界だった。
徐々にベッドにいる時間が長くなり、ゆっくりと彼女の肌は白くなっていった。

「いやいや、銃弾以外で死ねたんなら…………中々、悪いものじゃないね」
「やっぱり死んじゃうんだね…………」
「悲しい顔しないの、笑顔で見送ってよ。あっ、死体は適当に放っておいてね」
「逝かないで……」

今にも消えそうな彼女の微笑みに、私は泣く事しか出来なかった。

「この泣き虫め〜」
「…………グス」
「違うでしょ、そこは泣き虫なんかじゃないよ!って言い返すところでしょ!
そして、君は自分の名前を名乗るの…………ね?」

「泣き虫なんかじゃ……ないよ…………僕には……僕には…………
ロザリーにもらった…………シャドームーンって立派な名前があるんだ…………」

ロザリーとの出会いは月の無い夜だった。
その夜にちなんで、私は……影に隠れた月…………シャドームーンと名付けられた。
それはきっと、未だ進化の出来なかった私に対して、
影に隠れていても月であれ、という祈りが込められていたのかもしれない。

「……ねぇ」
「何?」
「お月様ってね、夜の全てを照らしてくれてるわけじゃないの」
「……?」
「月で照らし切れない影っていうのは、どうしても生まれちゃうの」
「…………」
「私みたいに太陽の下で生きられなくて…………でも、月の明かりを受けることの出来ない人、
そんな私みたいな奴って、多分色んな所にいるの」
「…………うん」

「太陽にも月にも救われない人…………ねぇ、シャドームーン……貴方がいつか進化して、ヒーローみたいに格好良くなったら、
そんな救われない人を救う……影だって照らす月になって欲しいの…………ダメ?」
「…………そんなこと、無い、よ」
「良かった……安心したら、なんか……眠…………」
「ロザリー!?」

「シャドームーン…………」
ゆっくりとロザリーの瞼が降りて行き、そして、何かを掴もうと彼女の手が虚空に伸ばされた。
私は彼女の手を掴みたかった。

だが、ワームモンの私には…………
芋虫には彼女を握る手が無かった。

318DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:43:12 ID:xknu6lzA0




この闘技場に連れて来られ、進化の秘法を見た私がそれの使用を躊躇することはなかった。
私は彼女に手を伸ばしたかった。
虚空など掴ませたくはなかった。

「そして、私はスティングモン…………スティングモンのシャドームーンとなった」
これこそが、求めた力だった。
ならば、躊躇しない。

「君はきっと地獄に堕ちたんだろう……だから、私も地獄へ堕ちよう」
救われぬ人を救う──彼女の遺言を実行しては、それではきっと地獄へは行けないだろう。

「罪を重ねよう、ただ地獄へと進むために」
彼女の遺言は出来れば、守ってやりたかった。
しかし、握り返せる手を手に入れたのならば──

「私は、名も知らぬ有象無象よりも…………名を教えてくれた君を救いたい」

私は再び、太陽へと手を伸ばす。
掴みあげた虚空は、きっと勝利の感覚なのだと──私は信じている。

【D-3/森林/一日目/日中】

【ワームモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:地獄へ征くその日まで、殺し続ける

[備考]
オス。一人称は私。

319DARK KNIGHT ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 00:43:22 ID:xknu6lzA0
投下終了します

320 ◆5omSWLaE/2:2013/05/20(月) 01:11:31 ID:FdBCm7Rw0
投下お疲れ様です
彼女の遺言より、彼女と同じ道を目指すシャドームーン
欲しかった力と掌を手に入れて彼は戦場に赴く……
生い立ちから何まで凄くカッコイイです……! いい戦いが期待出来そうです
なんとなく、月の石を持たせたいですね

321 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/20(月) 16:17:15 ID:2LJrAwyY0
魔人アリス、魔獣ケルベロス、ガブリアス、凶鳥モーショボーを予約します。

322名無しさん:2013/05/21(火) 19:54:11 ID:a7QdI5Ac0
シャドームーンだと思ったらピサロが混ざってたry
ここは登場話の印象が次でがらりと変わるのも面白いよなー
ワームモンだからこその、伸ばせる手が欲しかった、に泣いた
それは愛だよ

323 ◆5omSWLaE/2:2013/05/22(水) 23:48:46 ID:yfLTyLyg0
妖精クーフーリン、ボナコン、バトルレックスを予約致します

324 ◆LhTTqAKttA:2013/05/23(木) 08:22:57 ID:RjiQAUQE0
予約延長します

325 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/25(土) 22:28:06 ID:oW1Uhjkc0
延長します

326 ◆9eFMlaiqFQ:2013/05/26(日) 20:15:42 ID:Fz7/udts0
申し訳ありません、どうしても納得のいく形にならないので予約を破棄させていただきます

327 ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/27(月) 19:48:48 ID:58j9tMjY0
予約を延長します

328 ◆7NiTLrWgSs:2013/05/29(水) 20:19:33 ID:KuQp5IfA0
すんません、期限をオーバーしてましたので破棄します。

329 ◆5omSWLaE/2:2013/05/30(木) 00:01:56 ID:BxCecNb60
延長致します

330タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:21:04 ID:5IxGWJ1Y0
投下します

331タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:21:26 ID:5IxGWJ1Y0

太陽は頂点で照っていたが、この森の中では思い出したかのように偶に木漏れ日が差し込むだけだった。
時間はまるで止まっているかのようだった、風によって奏でられた木の葉の揺れる音が無ければ、
生物がいないこの森は、永遠にその自然のままに時間を止めていたのだろう。

「そろそろかなー?」
止まっていた時はゆっくりと動き出そうとしていた。
モー・ショボーの羽ばたきが、地に落ちた木の葉を舞い上げる。
「ああ」
ガブリアスが踏み鳴らした木の葉が枯れた音を立てて、真っ二つに割れる。

遠目にもわかる巨大な樹木、それは名付ける人間さえいれば神木とも──
あるいは、世界樹とも呼ばれるかもしれないその巨大な樹木に向けて、ガブリアス達は歩みを進めていた。

「でもさー、そんな目立つところに行ってどうするの?」
「戦う」

贅が削ぎ落とされた、純粋な闘争意欲がそこにあった。

「誰と?」
「誰か来るだろ」

その森の大木は遠目に見てもわかる程の大きさだった、それを目印に来る者もいるだろう。
ガブリアスはそのように判断していた。

「それに……お前を預けられる誰かが来るかも知れないだろ?」
「来ないと思うよー」
「来るだろ」

根拠はないが自信はある。
自信の理由は特にない。

「それにさー、守ってくれるって言うなら危険な所に連れてかないでよねー」
「危険なんてねぇよ」
ガブリアスはぶっきらぼうに言い放つ。

──『ガブリアスは、強いね』

「俺は強いからな」
「キャハハハ、自信たっぷりだねー、いいじゃん、いいじゃん」

出会ったばかりのモー・ショボーをあの子のように命がけで守ろうなどとは思わない、
それでも、誰かを守って戦おうとすることは片時も忘れなかったあの日を思い起こさせた。

もしもあの日、自分が今のように強ければ何かは変わったのか、
ガブリアスはそんなことは決して思わない、過去は決して変えることが出来ないのだから。

だから、今ある強さを願う。

「俺は、強くなった……」
「ん?何か言った?」
「空耳だろ」

モー・ショボーを余裕で守れるほどに強ければ、彼女は喜んでくれギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

それは絶望の音。

「こんにちは」

それは死を告げる声。

「ねぇ、アリスとあそぼう?」

止まっていた森の中の時は完全に動き出した。

332タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:21:40 ID:5IxGWJ1Y0


「ゴァァァァァァ!!!!!」
目の前に突如現れた、人間の姿をした少女。

本能が訴え掛けたそれの危険性に、ガブリアスの体は躊躇なく動いた。
舞う余裕はない。しかし、一撃で仕留めなければならない。

触れられた逆鱗のままに、ガブリアスは暴れだす。
「サツリクごっこ?」

本能の爪がアリスを襲わんとしたその瞬間、唐突な平手打ちがガブリアスの頬を打った。
少女のものとは思えない威力のそれは、ガブリアスを数メートル吹き飛ばして木に叩きつけた。
だが、その程度でガブリアスの体勢を崩すことは出来ない。

しかし、予想外の追撃があった。
叩きつけられたガブリアスの腹目掛けて、アリスの肘が打ち抜ける。

特に理由のわからない暴力がガブリアスを襲った。
だが更に追撃を加えんとするアリスに、ガブリアスの尾が唸りを上げる。
「キャッ!」

威力120 タイプ一致 げきりん 正確にアリスの心臓を捉えたそれは、アリスの胸を紅く染め上げることはなかった。
生きている内に血を流し尽くしたからこそ、彼女は屍鬼であり魔人アリスなのだ。
そんな彼女を見て、何故血を流さないのか、そんな当然の疑問を抱くことすら、げきりん状態のガブリアスにはない。
まだ相手が倒れていないのならば、追撃をさらに加えるのみ。
捉えたアリスの体を地面に叩きつけようとした時だった。

「つ か ま え た」

少女の柔らかい手の感触が、ガブリアスの尾先を包み込んだ。
引きぬかれた尾がアリスに掴まれて、
アリスを地面に叩きつけようとガブリアスの体は逆に地面に叩きつけられることとなった。

地面からアリスを仰ぎながら、ガブリアスは見た。
目の前の敵の胸が薄く塞がろうとするのを、そして──己の過剰な体力の減少を。
エナジードレイン──アリスの持つその魔技は当然の如く主催者に制限は食らっているために、
恐るべきげきりんの威力に対して、内部に受けた傷まで癒すことは出来なかったが、表面上の傷だけを癒すには十分だった。

そして終わりは唐突に訪れた。
げきりん終了後の意識の混濁は戦うべき敵と己の姿すらも混同させる。

自分はアリスであり、敵はガブリアスであり、
しかし、敵はアリスであり、自分はガブリアスであった。
とはいっても、アリスはアリスであり、ガブリアスは敵だった。
いや、ガブリアスガブリアスガブリアスがアリス?
アリスはガブリアス敵、味方なのか?

「…………モー・ショボー」

己の意識を癒した凶鳥の名を、無意識的に呼んでいた。
返事はなかった。
もう既に、逃げてしまったのだろう。

「…………ハッ、何を期待したんだ俺は」

あの日を思い出させる今日が、あの日というわけではない。
モー・ショボーとあの子を重ねたというわけでもない。
しかし、それでもガブリアスは──

「何を期待しちまったんだ…………」

答えは出ない。
アリスはガブリアスであり、ガブリアスはアリスだった。
ならば、戦わなければならない。

混乱の中、敵を討つ。


ガブリアスは たおれた。

333タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:21:51 ID:5IxGWJ1Y0

アリスとガブリアスの戦いが始まった時点で、モー・ショボーは振り返ることもなく逃げ出した。
魔人 アリス──噂に聞く魔人の姿に、目の前の少女は酷似していた。
だとすれば、ガブリアスは死ぬだろう。
ならば、時間を稼がせて逃げるだけのことだ。

出会ったばかりでも人間ならば、それに躊躇するだろう。
だが、モー・ショボーは悪魔だ。
それ故に、彼女はいともたやすくそのえげつない行為を行える。

「んーーーー」
次の仲魔を探さなければならない、しかし有象無象を集めただけでアリスに対抗するのは難しいだろう。

「まぁ……後のことは後で考えよー」
ひたすらに翼を動かして、アリスから少しでも逃げなければならない。
今の脅威は将来の脅威だが、今生きなければ将来の脅威に出会うことすら出来ないのだ。
アリスのことを考えれば気が重いが、それでも。

「今知れただけ、大分ラッキー」
「幸運か……それは不幸だな」
「アイエッ!?」

モー・ショボーの道を、白き狼が塞いた。
その光景は、冥府を守る番犬とそこから抜けださんとする罪人の光景によく似ていた、
そして実際、狼の名はケルベロスと言った。

「お前は…………」
ケルベロスの目がモー・ショボーを鋭く射った。
「違うな」

「…………?」
ケルベロスの行動の真意はモー・ショボーに理解できない、
だが、この状況下で彼女にたった一つだけ明らかなことがあった。

ヘタを打てば殺される。

「アリス」
「……!」
    トラポ-ト
会話か逃走、与えられた2つの手札の内、モー・ショボーは前者を切った。
ケルベロスの反応から誰かを探していることは明らかだった、
そして自分が知っている名前はアリスとガブリアスの二つだけ、ならば、可能性の高い名前を出すだけのこと。
ガブリアスは交戦後だったが、ケルベロスの来た方向から考えるにケルベロスと戦ったとは思えない。
そして、自分が知らなかったポケモンという種族がココに連れて来られる前にケルベロスと親交があったとも考えられない。

ならば、アリスだ。
そして、言葉を畳み掛ける。
「早くしないと、殺されるかもよー」
誰が殺されるか、それは決して口にしない。
ケルベロスの探す相手がアリスに殺されようとしてるのか、ケルベロスの探すアリスが敵に殺されようとしてるのか、
全てを相手の想像に委ねさせろ、欠けたパズルのピースを相手の不安で埋めさせるのだ。

「何処にいる?」
「あっち」
そして、モー・ショボーの思惑は見事に嵌った。
アリスの方向を指し示し、心の中で笑う。

「寿命が延びたな……」
モー・ショボーの胸を殺気が撃ち貫いた。
そして、硬直したモー・ショボーを視界に入れることもなくケルベロスは風の様に走り去っていく。

「バーカ……」
走り去ったケルベロスにモー・ショボーは、それだけしか言えなかった。
魔界では弱者など、強者の餌に過ぎない。
そんな当たり前の事実を、改めて思い起こさせられた。
力があれば、モー・ショボーはそう思う。
だが、そんな思いは上級悪魔と己の差という圧倒的な現実に駆逐されてしまう。
上手くズルく生きるしかないのだ、今日の命を掴み取るために。

それでも、アリスの包み込むような殺気は、ケルベロスの刺すような殺気は、
過去に殺された思いを、再び蘇らせて──
「…………悔しい」

だが、それが何になる?
今は、ただ生き延びるために。
「……新しい仲魔を探さないと」



モー・ショボーは行き先もなく、羽ばたいていく。
大空で飛べない、その翼で。

【C-6/森林/一日目/日中】

【モーショボー@女神転生シリーズ】
[状態]:MP消費(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:生き残る
 1:新しい仲魔を探す

334タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:22:02 ID:5IxGWJ1Y0

「パスカル、今日の晩御飯どうしよっか?」
それが、ケルベロスが聞いた飼い主の最後の言葉だった。
その台詞は本当にありふれた、ただの日常の物だった。
最期になることなど思いもしなかった、本当に平穏な台詞だった。
飼い主と共に散歩から戻ると、出迎えたのは見知った顔の家族ではなく、
既にただの肉と言えるまでに分解されてしまったただの物体と、悪魔だった。
飼い主が悲鳴を上げる間もなく、悪魔は飼い主の喉を潰した。
「────ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」
悲鳴は声にはならなかった。
悪魔に立ち向かおうとするパスカルは、デビルバスターでもケルベロスでもなく、ただの犬に過ぎなかった。
悪魔の軽い蹴りでサッカーボールの様に宙を舞い、壁に打ち付けられた。

動けない体を必死に動かそうとして、それでも届かなかった。
パスカルの目の前で、飼い主は生きながらに解体された。
飼い主の指が、腕が、足が、耳が、鼻が、目が、次々に飼い主だった物へと変わっていく。
飼い主は悲鳴を上げることすら出来なかった。

そして全ては終わった。
悪魔は去り、もう名前を呼んでくれることもない肉とパスカルだけが残された。

力があったならば──きっと、飼い主達と自分の日常は今日も続いていただろう。
だが、力が無かったから、彼は今ケルベロスに──デビルバスターになったのだ。

憎しみのままに悪魔を殺すために、
そして──悪魔を殺すことで名も知らぬ誰かの日常が明日も続くことを祈って、

「こんどはおっきいワンちゃんね!」
「お前を狩る……地獄の猟犬だッ!!」

ケルベロスは戦うのだ。

「グオオオオオオオオオオオッ!!!」
獣の咆哮と共に、ケルベロスは跳んだ。
後悔は死んでからすればいい、今は目の前の悪魔を殺さなければならない。
ケルベロスの虚空爪激は文字通りに虚空を切った、アリスはふわりとスカートを翻して避けた。

「黒おじさんがあまいものをくれたのよ」
「ラスタキャンディかッ!!」
悪魔との戦いにおいて、能力補助──積みの重要性は語るまでもない。
この様子を見るに、アリスの能力値は限界まで積まれているだろう。
だが、デビルバスターに逃走はない。

「アギダインッ!」
すぐにアリスに向き直り、炎を放つ。
「火あそびなら赤おじさんがもっと大きい火をくれるわ」
トリスアギオン──アリスから放たれた絶大威力の火炎は、ケルベロスのアギダインごと飲み込んで、ケルベロスを燃やし尽くそうとする。
「地獄の猟犬に炎が効くものかッ!!」
だが、より強大になった火炎は鏡に反射されたかのように、そのままアリスへと返っていく。
ケルベロスは火炎を反射するのだ。

ケルベロスはニヤリと笑い、更にアリスへと追撃を加えるため跳んだ。

   「死」
炎を掻き分けて、アリスの元へと跳びかかる。
   「ん」
炎の中にアリスの影が揺らめいていた。
   「で」
もう逃しはしない。
   「く」
虚空ごと斬り裂く、ケルベロスの爪が。
   「れ」
アリスを今まさに斬り裂かんとする。
   「る」

「ッ!?」
だが、それよりも疾く、
呪殺の剣がケルベロスの世界を埋め尽くしていた。

この世界で最も強い呪いが、ケルベロスを蝕む。
体は腐り堕ち、血は止めどなく流れていく、
それでも、この爪を届かさなければならない。
悪魔を殺すと誓ったのだから、亡き家族に、これから失われようとする日常を生きる誰かに誓ったのだ。

「こんなところで……終わって…………たまる………………かッ…………」

ケルベロスは虚空だけを斬り裂いて、逝った。


【魔獣 ケルベロス@女神転生シリーズ 死亡】

335タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:22:12 ID:5IxGWJ1Y0

◇◇◇

目を覚ますと、一面の花畑が広がっていた。
あの世というものなのだろうか、つまり俺はあっけなく殺されちまったってことなのだろうか。
「…………」
考える気すら失せていた、寝てしまえばきっと楽になれる。
あの子はいるんだろうか、だとすれば……また、会えるかもしれない。

「────」
探してみようと思った瞬間に、彼女の声が聞こえた。
あの日のようにあの子は俺の元に駆けてきた。

良かった、と思う。
思う存分、あの子は駆け回れるようになったんだ。

あの子が俺の手を取って、どこかへ連れて行こうとする。
やれやれ、と頭を振って俺はついていく。

──「こんなところで……終わって…………たまる………………かッ…………」

声が聞こえた。
俺は立ち止まって、声の主を探したがどこにもいなかった。
彼女が振り返って怪訝そうに俺を見つめる。

「…………俺は」

こんなところで終われない、声の主はわからないけれど俺の気持ちを代弁されているような気がした。
俺は彼女の手を振りほどいて、ただ彼女を見つめた。

「行かなくちゃ……」
彼女は哀しそうに下を見つめた後、再び俺を見て微笑みを浮かべてくれた。

「こんな所で終われない、弱いまんまじゃ終われないんだ…………ガブリアスは強くなくちゃ駄目なんだ」
「…………」
無言で彼女は頷いて、そして言ってくれた。

「ガブリアスは強いね」
「ああ」

「いってらっしゃい」
「いってきます」


俺は彼女を振り返らず、駆け出した。
強さを取り戻すために。

336タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:22:23 ID:5IxGWJ1Y0

◆◆◆

                                         ヒットポイント
それは戦いの神が与えた、限りなく小さく、しかしはっきりと目に映る戦うための力、
誰彼と無く、人間はその現象をこう呼んだ。

「ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

  リアルタスキ
 乱数上の奇跡と。

「なんだードラゴンさん、まだ生きてたんだー」

ジュンデンセツ      トップメタ
 種族値600族    対人戦の帝王    攻撃種族値、全ポケモン646匹中13位

「逆鱗に触れられたドラゴンは、黙って殺られちゃいられねぇんだよッ!!」

龍王 ガブリアスが再び、戦場へと舞い降りた。

337タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:22:34 ID:5IxGWJ1Y0


──ガブリアス。
脳内でガブリアスを呼ぶ声があった。

──見せてやろうぜ、お前の強いところをな。

彼が共に戦ってきたトレーナーの声だ。
それはガブリアスの幻聴に近いものなのかもしれない、しかし……

──行こうぜ、ガブリアス!!
「ああ!!」

それはきっと、本物の声なのだろう。
ポケモンが戦う覚悟を決めたのならば、トレーナーが居ないはずがないのだ。

──まずはじしんだ、ガブリアス!!

地震が周囲の木々を巻き込んで、地面を砕いた。
地面の支えを失った木々は次々とアリスへと倒れていく。

「トリスアギオンッ!!」
地震のダメージは蓄積されていくが、木々は次々とアリスが燃やし尽くしていき、
アリスの命を刈り取るには至らない。
だが、

──ダメージ蓄積と目眩まし同時に行けるなんて最高だな!

ガブリアスの目的は、木々を目眩ましにしてアリスに接近すること。

──だいもんじだッ!

ゼロ距離のだいもんじは元々の命中率も含め、それでも積まれたアリスには届かない。
しかし、

──森に火が付いたな、もう一度じしんだッ!!

先程のケルベロスとの戦いを含め、
火の着いた木々を次々にじしんでアリスに倒していく。

──最後に格好良く決めるのは、ガブリアス頼むぜ


「ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

げきりんのガブリアスがアリスに飛び込んでいく。

ドラゴンを目の前にしたアリスは、
ゆっくりと微笑んで、

「 死 ん で く れ る ?」



絶対の呪殺の前に何もかもが腐り堕ちていく。
だが、それでも、ガブリアスを止めることは出来ない。

最後にガブリアスの支給品の名前を言っておこう。


せいなるまもり
効果は運の良さを30上げ、即死攻撃を防ぐ。

だが、せいなるまもりが無かったとしても、
ガブリアスは止まらなかっただろう。

ガブリアスは強いのだから。

【アリス@女神転生シリーズ 死亡】

338タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:22:45 ID:5IxGWJ1Y0

「…………勝った」
体力の限界を迎えたガブリアスは大の字で地面に寝そべる。

「でも……もう限界だろうなぁ」
脳裏によぎるのは数多の思い出、俗に言う走馬灯というものだろう。

「いや、まだだな」
幸福な思い出に包まれて死ぬことを、ガブリアスは由としない。
ゆっくりと立ち上がり、頂点に上った太陽を見据える。
やることなど決まっている。

「勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
勝ち名乗りを上げるのだ、それがあの子のいる所まで届くように。

叫びを上げた途端に、全ての力が抜けたようにガブリアスは倒れこんだ。

「…………強かったか?俺は」
──『もちろんだよ』、そう言って微笑むあの子の姿をガブリアスは確実に見ていた。

「じゃあ、そろそろそっちに行くか…………」
トレーナーを残していくのは心残りだが、まぁ何とかやってくれるだろう。
ガブリアスはトレーナーを信じていた。

「おやすみ…………」


















ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ





「ドラゴンさん、ジグソーパズルしよう?」
「ッ!?」

倒したはずの敵は、何事もなかったかのように……
否、むしろ完全に傷を癒した上で立ち上がっていた。





「ピースは…………ドラゴンさんね!!」

339タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:23:14 ID:5IxGWJ1Y0
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ



グチャ…………

【ガブリアス@ポケットモンスター 死亡】

340タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:23:25 ID:5IxGWJ1Y0



不屈の闘志というパッシブスキルがある。
効果は単純、死亡した際に一度だけHPが全回復で復活するというものだ。

アリスはそれを持っていた。

死せる少女は、二度目の死を以てしても殺せなかった。

「あー、楽しかった!」

死せる少女は死者の思いを踏み潰して進む。
誰かが三度目の死を与えるその時まで。


【C-6/森林/一日目/日中】

【アリス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康 、魔力消耗(大)
[装備]:チェーンソー
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:遊ぶ

【備考】
せいなるまもりはガブリアスのパーツに放置されています。
ガブリアスは666分割されました。

341タチムカウ-狂い咲く己の証明- ◆3g7ttdMh3Q:2013/05/30(木) 13:23:36 ID:5IxGWJ1Y0
投下終了します

342名無しさん:2013/05/30(木) 14:10:55 ID:w7dJa5Wk0
ぐえええ!?
ガブリアスは強いね……って思ったら、思ったらああ!
あんまりだよ、ジョニー(誰だ
いやまあそういうスキルあるのは知ってたけど、すっかり流れ的に騙されたぜw
アリスの脅威はまだまだ続くのか……

343 ◆5omSWLaE/2:2013/05/30(木) 15:50:23 ID:.21ELFVsO
投下お疲れ様です
勝敗を決めたのは戦略でも熱意でもなく、純粋な力だった
心が震えるような戦いから、その後の残虐な時間まで、見所が非常に多いですねぇ
華々しい最期を遂げた二体、とてもかっこよかった!
アリスの絶望的なほどの強さには、怖いを通り越して美しさすら感じますよ……
そして狡猾なモーショボー、この子は長生きしそうです

344 ◆/wOAw.sZ6U:2013/05/31(金) 06:11:04 ID:jqZw0M5g0
投下お疲れ様です
ガブリアスもケルベロスも強かったなあ、それをねじ伏せたアリスの恐ろしいこと……ギギギ
そして自己リレーになりますがジュペッタとプチヒーロー、キノガッサとワームモンを予約させて頂きます

345 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:37:27 ID:ULOKsZYA0
妖精クーフーリン、ボナコン、バトルレックスを投下致します
タイトルは「進撃の巨竜」です

346 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:38:13 ID:ULOKsZYA0
クーフーリンは駆ける。青空の元、眩い光が照らす荒地を。
見渡す限りに広がるのは大地の鈍い色、その先に見える大海原の青。
差し当たって目指す場所は小さな集落。人工的に作られた建造物、何かがあるだろう。
彼は足を休めることなく、風の如く走り続ける。彼の究極の目的、それは"救うため"だ。
モリーによって狂わされた"己の"世界を、その魔の手から救うために……。

そうしてたどり着いた廃村を散策する。
何かしら役に立つ備品などがあれば集めておきたい。
彼が求める道具は決して武器ではない。武器ならば既に間に合っている。

……その手に握られるのは世界で最も硬いと言われる金属で作られた槍。
『メタルキングの槍』。
この武器の前には、どんな相手であれども一切の不足など存在し無い。
そしてまた、クーフーリン自身にも戦いに対する迷いは無かった。

当然、目の前にそびえ立つ、斧を構えた巨竜が相手であろうとも……。



周囲に建てられた家々の屋根よりも高い巨体を揺らす、二足歩行の竜と鉢合わせた。
―――その瞳に宿るのは王の風格。
捕食を基本とする魔物、その魔物たちを捕食出来る立場に立つ魔物、まさに頂点。
他者に対する恐れなど無縁、むしろそんな感情など備わっていないかの如し。
その力強さと冷静さ、殺意、それらが入り混じる圧倒的な威圧が押し寄せる。

瞳に捉えられ、それを見据えた瞬間から、彼らの戦いは始まっていた。



クーフーリンは魔力を解放し、呪文を詠唱する。

「―――タル・カジャ……!」

溢れ出る魔力を筋力、運動神経へと注ぎ込む肉体強化呪文"タルカジャ"。
自らが持つ物理的戦闘力を補強、その火力を200%にまで引き上げる。
全力を出し切らねばならぬ。油断など決して許される相手では無いと、直感で感じた。
例え武器が壊れようとも、可能な限り激烈な一撃を叩き込まねば、壊されるのは自分。
無論、今クーフーリンの手に収められし武器は生半可なものではない。
己の出せる最高の力、その倍のパワーで振るわれようと、着いてこれるだろうと確信出来た。
―――故に彼は、翔ぶ。

身の丈ほどの槍は、もはや爪楊枝の如く軽い。
風をも切り裂き、その切っ先を巨竜へと向ける。

「その心臓、貰い受ける――――!」

"生"を司る部位、その一点を定める。その一撃で、命を狩り取る。
まるで鎧のように硬い龍の鱗をも突き破るような、洗練された攻撃……。

それを巨竜は斧を持って防ぐ。

ガギィ……ッ……と耳を貫くような鋭い金属音。
飛び散る火花が、その衝撃の高さを物語る。
武器の力、そしてクーフーリンの力が相乗し、一点に集中されたそれを巨竜は受け止めた。
やはりただならぬ竜では無い。クーフーリンはそれを思い知らされる。

……ここで一時的に後方へ引くべきか否か……。
巨竜の攻撃範囲から抜け出すことで出方を伺う……それが通常の選択であろう。
だが、今まさに相手の懐へと飛び込める絶好の機会である。
多少無茶な動作を行なってでも攻撃を浴びせれば、確実に有利に持ち込めるだろう。

ならば、とクーフーリンは肉体の重心を槍先に集中し、強行突破を図る……!!
巨竜の対応は決まりきっている。そのまま押し返すのでは無い。
斧を傾けることで切っ先を受け流し、がら空きになったサイドを狙ってくるだろう。

そして、その予測は正しく現実のものとなる。
切っ先は滑らされ、クーフーリンは巨竜の左側へ。
巨竜は口を大きく開き、その小柄な体に向けて灼熱の火炎を放とうと試み……。

それよりも早くクーフーリンは左腕を差し出す。
……否、その掌を巨竜の顔へと突きつける。
魔法詠唱。その速度は炎を吹き出すよりも早い……ッ!

「―――ザンダインッ!!」

無数の衝撃波が巨竜を襲う。
太刀の如く鋭利な風が、鎧に匹敵するほどの硬度を持つ竜の鱗を切り裂いていく。
巨竜は天へ向けて火炎を吐きながら大きく仰け反り、そのまま数メートル吹っ飛ばされる。
それと同時にクーフーリンも大地に着陸、巨竜の姿を見定める。
木造民家に激突し、木っ端微塵に破壊され、砂埃が舞っている。
あいにく巨竜は、その砂埃の中をゆっくりと立ち上がっていた。

347 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:38:35 ID:ULOKsZYA0
「……やはり生半可な攻撃ではビクともしないか……」

あまり応えた様子を見せない竜の姿を見てクーフーリンは呟く。
ザンダインは、衝撃波を生み出す呪文の中でも非常に高いクラスに属する魔法である。
しかし、この竜を前にしては、圧倒的に威力が足りなかった。
優位に立つためには確実にその槍で貫かねばならぬ、そう確信する。

―――跳躍。

大地を蹴り、巨竜へと一気に距離を詰める。
既に立ち上がった巨竜はその目でクーフーリンの動きを見極め、斧を構える。
おそらく、いや、確実に先ほどと同じ手は通じないだろう。
巨竜の攻撃範囲に突入する寸前、クーフーリンはそばに植えられていた樹木の枝を掴んだ。
そのまま一回転し、上ではなく下へと慣性を向ける。
地についたと同時に、その地を蹴りつける!
槍の切っ先を、巨竜の下方から、突きつけるッ―――!

ギィンッ!!

またしても武器同士のぶつかり合う音。
このフェイントを織り交ぜた突撃からの攻撃も、巨竜は易々と見切っていた。
だが、ここで攻撃を止めるわけにはいかない……!
大きく腕を振るい、次々に斬撃を繰り出す。

飛び交う火花。響く不協和音。衝突する力と力。高まる緊張。
天秤にかけられた命と命。刃が欠けるより早く、肉体が疲弊していく。

強化された力をもってしても、その腕に痺れが走り出す。
巨竜の一撃一撃はどこまでも重く、迷いも容赦も一切存在しない。
捕食者は、目の前の獲物に対して、持ちうる力を全て出し切る。
己の肉体のリミッターなど外れている。いや、外せなければ獣に明日など存在しないのだ。

そういう者に打ち勝つには、己もそのリミッターを解かねばならない。
振り下ろされた斧を受け流し、クーフーリンは意識を集中する。

「―――デスバウンド……ッ!!」

己の限界を超える。
肉体の損傷すら省みず、その躍動を最大のものへと昇華する。
―――"死との境界線(デスバウンド)"を辿る技―――

死を目前とした時、脳は最大限に加速する。
その現象を利用することで、体内時間のアクセルを踏み込むことが可能となる。
故に、世界は極限まで遅くなる。雨の中にいれば、その雨粒が空中静止しているかのように見えるだろう。
ただしその反動に、己の身体と脳に、相当な負荷をかけてしまう。
一瞬のうちに勝負を決めなければ、その後の戦況は容易にひっくり返ることとなる。

「師匠は言っていた――――」

大きく足を踏み込み、メタルキングの槍を神速で振るう。
鋭利な刃先は音を立てずに巨竜の足を地面と横一文字に通り抜ける。
血は噴き出さない。時の流れが戻る瞬間までは、ただ斬られたという"結果"だけが存在する。

「肉を切らせて骨を断つ……」

続けざまに槍を振り上げ、その巨大な尻尾を断ち切る。
ピアノ線が豆腐に食い込むように、切っ先が沈み込む。
これもまた、即座に千切れたりはしない。それよりも早い時空の中に自分はいる。

「小さな犠牲をもってして、大きな勝利がもたらされるのだと!!」

最後に狙うのはその首筋。
頚動脈を一突き、これで勝負が決まる。
槍を引き、それを巨竜の急所を目掛けて思い切り突き刺すッ……!!



―――ギィィンッ……!!



「……まさか……っ!?」

防がれた。その巨大な斧によって。

予期せぬ自体に一瞬だけ対応が遅れる。
巨竜は振り向き様に槍を打ち払い、さらに追撃に斧を振り下ろした。
クーフーリンは咄嗟に後方へと回避行動を取る。
だが遅い……!! 間一髪間に合わず、左手がその斧により分断される。
さらに巨大な斧が地面に叩きつけられ、その破片が降り注ぐ。
血飛沫が巨竜の足から、尻尾から、クーフーリンの左手から同時に噴き出した。
左手を失うことでバランスが崩れ、着地に失敗―――。
―――大きく崩れた体勢で大地に叩きつけられる。

348 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:39:04 ID:ULOKsZYA0
(何故だ……何故この竜がこの速度に着いて来れる……!?)

巨竜がデスバウンドの速度に対応出来るのは、想定していなかった。
あの体躯で、そんな器用な動作を行なえるだなんて、誰が予想出来るだろうか。

バトルレックスが得意とする剣技『はやぶさ斬り』。
一振りで2つの斬撃を同時に行なう、言わば非現実的な速度を実現した秘術である。
デスバインド発動直後こそ、命令信号が脳に届いていなかった。
故にはやぶさ斬りの発動に遅れを取ってしまったものの、一度意識を集中すればその神速にも手が届く。

そして何より、そのタイミングが巨竜に味方した。
クーフーリンが勝利を確信した、その瞬間。本当に、ほんの僅かな油断が現れた瞬間。
偶然にもその"刹那"の間に発動、そして反撃を行なったのである。
クーフーリンの集中力は途切れ、高速で迫る斧をかわす事を許さなかった。

たった1秒にも満たないような時間の中、クーフーリンは優位に立ち、そして不利に陥った。

(―――体が、動かない……!)

デスバインドの反動がここで牙をむく。
体力の大半が削り落とされ、即座に立ち上がる事を困難とした。
その間にも距離を詰めてくる巨竜。

「ザンダインッ!!」

右手を突き出し呪文詠唱。
……だが、もはやそれも悪あがきに過ぎない。
巨竜が斧をひと振りするだけで衝撃波は呆気なく打ち砕かれた。

(―――ッ! ……もはやこれまでか……)

打つ手は無くなった。
おそらく悠長に立ち上がるだけの時間など与えられない。
魔法も隙のないこの状態で撃って、何が出来る?
戦いはここで終わり、己の世界も終焉を迎える。

クーフーリンはゆっくりと目を瞑る。



と、その時、その耳が異様な音を聞き取る。
まるでバケツに入った水をひっくり返したような、バシャッという音。
目を開くとそこには、巨竜の背後から消化液を浴びせる、先ほどのワームの姿があった。

「獲物を〜屠るッ、イェェェg……!!」

気分の高ぶるような歌を口ずさむワーム、その歌は即座に途切れた。
巨竜が振り向き様に放った灼熱の炎、それがワームを飲み込んだ。

……実に愚かな介入……その有様を見て、クーフーリンは嘆かざるを得なかった。
どうして、そのような貧弱な力で我らの戦いに入ろうと思ったのか。
それに、あの消化液も巨竜に対し、何らダメージを与えているように見えなかった。
最後に見るものが、無駄死にする生き物だとは……、あぁ、実に嘆かわしい。

巨竜は再度クーフーリンに向き直る。
改めて斧を構え、トドメを刺しにかかる。
そして獲物を狩り取ろうと駆け出す。

―――瞬間。

苦痛に呻くような咆哮を上げながら、すぐそばに転倒した。
先ほどのワームによる消化液が足の傷口を溶かし始めたのだ。
いいや、傷口だけでは無い、鱗すらも少しづつだが蝕んでいる。

(どうやら運命は私に味方したようだ。この勝利、掴ませてもらう……!)

すかさずクーフーリンはメタルキングの槍を倒れ込んだ巨竜の首へと突き刺した。
巨竜の口から大量の血液が溢れ出し、しばらく体を震わせ、そして絶命する。



 ……死ぬ間際にバトルレックスは小さな疑問を抱いた。
 どうして自分は敗北したのか、と。
 一切に油断も無く、戦闘における不足も無く、誤った判断も行わなかった。
 なのに何故? 何が勝負を決めたのだろうか。

 ―――ほんの一瞬だけ考えて、彼はその答えを知った。
 きっとこの世界に来ること無く、獣として、怪物として生を終えていたら最後まで知ることがなかった答え。
 そしてそれを理解した直後に、彼の意識は漆黒の世界へと沈んでいった。
 ……彼が最後に得た解答が何かは、我々にはわからない。


そうして、戦いの幕が閉じた。



地面に左腕を置き、切断面に左手をくっつけた状態で、先ほど手に入れた支給品アモールの水を振りかける。
神経が不完全なために感覚は戻らないが、接合することだけに成功する。
応急処置を施したところで、自分の助太刀をしてくれた魔物のそばへと向かう。

349 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:39:37 ID:ULOKsZYA0
「……感謝する、先ほどのワームよ」

彼の死は決して無駄なものではなかった。
彼が介入したからこそ、今自分は大地に立ち、呼吸を続けることが出来るんだ。
あの勝利は私の力ではない、私に巡ってきた運が良かったのだ。
たまたま自分が勝つ世界が存在し、たまたまそれにたどり着いた。ただそれだけ。
犠牲となったワームがその世界へ導いてくれたのだ。
私は彼のことを決して忘れないだろう。

「いや、生きてるよ」
「何……ッ?」

ファイガ(で一発)のボナコンが起き上がった。

「なんていうか、オッカの実とかいう道具持ってたせいか、生きながらえた」
「そうか」
「見物者のボナコン株を上げようと、颯爽と助太刀しようとしたらこの有様よ。
 華々しく散るのも美徳だが、まだ俺には見せ場が残されているのかもしれない」
「そうか」
「あんちゃん、名前何て言うの?」
「私は妖精クーフーリン」
「そうか、俺はボナコン」
「……」
「元々俺、誰かと組んで登場するのがデフォなわけよー。
 アダマンキャリー君とか、粘液戦隊ボナコンジャーとかでさ。
 つーわけでさ、良ければついて行ってもいい?
 スタンスはあんちゃんに合わせるからさー」

ボナコンは流れるような自己紹介から、手を組まないかと提案を持ちかけた。
なお、「あんちゃん」の発音は福山○治を意識している。

「いいだろう、ただし……」
「ただし?」

ボナコンに対し、クーフーリンは不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。

「私の速さに、ついて来れるなら……」

そう言って彼はマントをなびかせ、背を向けてゆっくりと歩き出す。
ボナコンは「何だコイツ、中二病か?」と思った。



【バトルレックス@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】


【F-2/廃村/一日目/昼】

【妖精クーフーリン@真・女神転生シリーズ】
[状態]:ダメージ(中)左腕負傷(接合済み)
[装備]:メタルキングの槍@DQ8
[所持]:ふくろ、アモールの水(残り小)
[思考・状況]
基本:全の路を往き、万を司る
1:魔の手(モリー)から世界(自分の生活)を救う
2:廃村を探索
[備考]
※男。現在のところ、タルカジャ、ザンダイン、デスバインドを習得している模様。
※師匠とは女神スカアハのことです(原典神話通り)

【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:目立つ
1:クーフーリンにお供する
[備考]
※オス
※支給品オッカの実を消費しました
※最新のボナコンスレは↓
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/



《支給品紹介》
【アモールの水@ドラゴンクエストシリーズ】
伝説の滝アモールの名を冠した水。非常に高い治癒効果がある。

【オッカの実】
効果抜群のほのおタイプのわざを受けたとき、一度だけダメージを1/2にする。
だからってボナコンが火炎の息を耐えられるのか、疑問に思われるかもしれない。
こう考えて欲しい。あくまで即死するのはファイラであり、火炎の息ならギリギリ助かる可能性があるのだと。

350 ◆5omSWLaE/2:2013/05/31(金) 22:39:53 ID:ULOKsZYA0
以上で投下終了です

351 ◆5omSWLaE/2:2013/06/01(土) 11:36:25 ID:.BVpOves0
時間帯表記を
【F-2/廃村/一日目/午後】
に修正致します

352名無しさん:2013/06/01(土) 19:08:53 ID:n06.kWC60
投下乙です!
バトルレックスつええええええええ!高い攻撃力防御力に加えてはげしいほのおに隼斬りと隙が見えない!
天道なクーフーリンも頑張ったがここまでか……と思ったら
「獲物を〜屠るッ、イェェェg……!!」
ボナコンwww何気に役に立っててクッソ良いところ持ってきやがったwww
生き残ったコンビはネタと中二病でバランスが取れて…いるのかな?w

353 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/02(日) 21:22:24 ID:OHIaLDMw0
幽鬼マンイーター、邪鬼ギリメカラ、ホイミスライムを予約します

354名無しさん:2013/06/04(火) 19:26:40 ID:RKUhV0Bg0
すげえ
めちゃくちゃかっこいいバトルじゃないか……
クーフーリンが勝つかと思えばはやぶさ斬りで負けるかと思えばまさかのボナコンw
ってかここは何気にパロの使い方が上手いよなー、ランサーとかイエーガーとかw

355偶像崩壊 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 16:20:28 ID:LMr/hsI20
投下します

356偶像崩壊 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 16:20:38 ID:LMr/hsI20

周辺の地形を確認する目的で、ギリメカラとホイミスライムは山を登っていた。
その道程は決して、迅速なものではなかった。
殺し合い打破の綻びを探すため、登山は入念な周囲の散策と共に行われた。

その結果、彼らはなんでもないこの山にあるべきではない不自然なものを見つける。
それが、

「金の子牛か……」

牛を模った黄金の像だった。
その大きさはホイミスライムにして3〜4匹分、太陽から得た光でじりじりと熱を帯びていた。
無論、それが金の子牛であるということは見ればわかる。
しかし、一見からわかる以上の念が込められたギリメカラにホイミスライムは尋ねずにはいられなかった。

「知ってるの?ギリメカラさん」
「偶像だ」
「んん、よくわからないんだけど……?」

「昔、この像は四文字の神の代理として用いられた」
「神様の代わりだったんだね」
「それに激怒した指導者は、この牛を燃やし、破壊し、水に混ぜて民衆に飲ませ、
その後、崇拝に加担した人間全員を殺害したようだな」
「えぇ……」

流石のホイミスライムもそれには引いた。

「四文字の神の器量の狭さよ」
ふん、と呆れたような息を吐くと、ギリメカラは金の子牛をぐるりと回る。
そして何も無いことを確認すると金の子牛本体へと近づいた。

「おヌシは何のためにこの牛が置かれたと思う?」
金の子牛を探りながら、ギリメカラは問いを投げかけた。
「えっ、いきなりそんなこと言われても……えっと…………う〜〜ん……何か仕掛けがあるとか……?」
「仕掛けは……」
やれやれと頭を振って、調査を終えたギリメカラがホイミスライムの隣に立つ。
「無かった、魔力すらも感じぬ」
「えっ、じゃあ…………」
「この牛自体には何の意味も無いということじゃ、この牛自体には、な」
苛立ち紛れにギリメカラに蹴りつけられた金の子牛は、己の重量を忘れたかのように、軽やかに宙を舞った。
ムシャクシャしてやった、反省はしていない。
唖然とするホイミスライムを尻目に、ギリメカラは重々しく口を開く。

「この牛はメタファーだ」
「めたふぁー?」
聞きなれぬ言葉をオウム返しにするホイミスライムに、敢えて解説することはせず、
ギリメカラはそのまま、言葉を続ける。

「神の代わりに造られ、最後には破壊された像……これがワシらの未来を…………いや、」
何故、そのような物が山に置かれている?ギリメカラの脳裏を疑問が過ぎった。
金の子牛はシナイ"砂漠"に在るべきものであって、シナイ"山"に在るはずはない。
これは一体何を意味する?いや、何の意味もない、ただのブラフか?

「どうしたのオジさん!?」
突如として黙り込んだギリメカラに、ホイミスライムはクポクポと動揺した。
「…………わからん」
「えっ、うん……?」
戸惑いと沈黙。

「たっ、助けて!!」
それを斬り裂いたのは、人食いの女だった。

357偶像崩壊 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 16:20:48 ID:LMr/hsI20


「人間!?」
マンイーターの姿を見たホイミスライムは、真っ先に敵の名を叫ぶ。
「ち、違……」
反論しようとしたマンイーターの言葉を遮ったのは、ギリメカラだった。

「幽鬼か」
「そっ……そうよ!」
動揺するスライムと、動揺しているように見えるマンイーター、二人を抑えて、ギリメカラが主導権を握る。

「おヌシの、その怪我……原因を言ってみるが良いぞ」
「に……人形みたいな奴が!!」

一つ一つ、ギリメカラは慎重に情報を引き出していった。

最初の敵。
同行していた仲魔。
襲撃してきた敵。
逃走の経緯。
そして、

「アタシは殺し合いに乗る気なんか無いわ!!」
この殺し合いでの方針。

「そうか、わかったぞ……」
納得したように頷くギリメカラに、マンイーターは心の中で舌を出す。

ちょろい。
ギリメカラとホイミスライムを相手に、マンイーターは思う。
襲撃を受けた無力なメスを演じ、庇護を求める。
本当ならば、襲撃を受けたこと──正確に言うのならば、ブイモンを見捨てたことは言いたくはなかったが、
背中に傷を受けつつも、一人で敵から逃げ切ったことは不自然であるため、
ブイモンが命がけで盾になり、その間に逃げた話をでっち上げる。
いや、でっち上げとは言っても結果としては事実だ。
ならば、少々美談としての味付けを加えたそれを話しても構わない。

そして、不本意ではあるが、己の方針は偽る。
二人組ということは、協力して優勝を目指しているのか、あるいはこの殺し合いに反抗しようとする者達なのか、判断がつけづらい。
誘惑は一対一になった時だ。

「マンイーター」
「…………」
「おヌシは前衛だ」
「は?」

思わず威圧した。

「……ホイミスライムが、お主の傷を癒す。その後、インペリアルラインという陣形を取る
ワシが殿、ホイミスライムが中心、おヌシが前衛だ。お前のポジションが一番危険だ。覚悟して戦え。」
「いや、アタシに戦う力なんて……」
「マンイーターは素手で戦えるはずだが?」
「そ、そんな事…………」
「以前所属していたパーティーのマンイーターは、貪り食っておったぞ」
「な、何を…………?」
「悪魔」



「ふざけんなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

358偶像崩壊 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 16:21:03 ID:LMr/hsI20

と、叫ぶことが出来ればどんなに良かっただろうか。
悲しいかな、明らかに格上であるギリメカラ相手に本性を見せれば、それはすなわちマンイーターの死を意味する。
よって、彼女は心の中だけで叫ぶ。

「ホイミスライムは回復役、最も重要なポジションだ、故に前後からの攻撃を防ぐために真ん中にいなければならぬ。
ワシはこの反射能力で背後からの不意打ちをほぼ完璧に防ぐことが出来る。余ったおヌシは、必然的に前衛ということになる」
「え…………っと」
反論の言葉を考えなければならない、
しかし、彼女の世界の悪魔は人間と違って、成長も……あるいは衰えることもしない。
つまり、マンイーターという悪魔の強さが知られている以上は、それに対してどうやっても抗うことは出来ない。

悪魔なんて貪ってんじゃねぇ!男を貪れよ!!
目の前のギリメカラがいたであろう世界のマンイーターに叫んでやりたかった。
しかし、哀しいかな、その思いが届くことはない。

「この殺し合いに反逆するという意思を持つ同士として、共に戦おうではないか……なぁ」
「あの……」
「どうした?」

悲しい過去を聞かせても、多分駄目なんだろうなぁ、でも、もしかしたら……
一縷の望みを掛けて、マンイーターは語り始める。

「アタシ過去に…………」
「大変だったな」
「いや、まだ」
「大変だったな」
「だから」
「大変だったな」

「お姉ちゃん……」
「ん?」

「無駄だと思う」
「…………うん」

ホイミスライムから救いの触手が伸びることはなく、
マンイーターは強制的に対主催の道を先導して歩かされることとなった。

【E-5/山/一日目/午後】

【ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:みてろよあのハゲ
 2:金の子牛が気にかかる

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。

【ホイミスライム@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:モーグリスーツ@FFシリーズ
[所持]:どくばり@ドラゴンクエストシリーズ
[思考・状況]
基本:とりあえずギリメカラに付いて行く
 1:今はこのオジさんに付いて行くしか無いよなあ

[備考]
オス。若い。

【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:背中に裂傷(ダメージ中)
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(4/5)
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明)ブイモンのふくろ(中身は空っぽ)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:このチームから離れたい
 
 ※メダパニの杖を強化系の杖と勘違いしています、回数制限も知りません
  山頂の景色から少しだけ地形を把握しました

359偶像崩壊 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 16:21:13 ID:LMr/hsI20
投下終了します

360名無しさん:2013/06/05(水) 16:28:48 ID:TmOSU8bk0
投下乙です。
ギリメカラさん超たのもしいwwwww

361名無しさん:2013/06/05(水) 18:45:09 ID:VU1Hmrx.0
投下乙ですー
マンイーターの思考の離れたいで吹いたwww

362 ◆5omSWLaE/2:2013/06/05(水) 18:45:53 ID:M.EGTlb.O
投下お疲れ様です
マンイーターさんお気の毒に。でも、しょうがないですよね!
ギリメカラの知力の高さには目を見張るものがありますねぇ……
偶像についてとか、インペリアルラインとか、実に頼もしい存在
対主催の要として期待出来そうです!

363名無しさん:2013/06/05(水) 19:21:35 ID:yRv5kgogO
投下乙です。

やったねマンイーター!盾が増えたよ!
だが、盾の盾役はお前だ。

364名無しさん:2013/06/05(水) 21:11:23 ID:SOv4hp3o0
おお、ギリメカラさんが薀蓄の深さも見せて頼りになる……!
そしてそれだけに、マンイーターにも有無も言わさぬ理攻めで吹いたw
マンイーターざまあwww

365 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/05(水) 22:30:17 ID:LMr/hsI20
天使エンジェル、エアドラモンを予約します

366 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:25:54 ID:KWTbZ.HE0
投下乙です。
ジュペッタ、プチヒーロー、キノガッサ、ワームモンを投下します。

367可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:28:53 ID:KWTbZ.HE0
抜けるほど青い空を鏡張りに映した水面。
透明な陽光は飲み込まれては弾かれて、きらきら光る。
川辺を守るように流れ着いた大きな岩に、どっかりと腰を据える猫背気味の後ろ姿。

「ポフィン……?ポロックはもう食えないって、きのみもいらんて……うう」

「ジュペッタ!きのみこれでいい?」

「うおっ!?………あ、ああ……」

木の枝に蔦を括り付けただけの即席釣竿が地面に落ちる。
「……寝てたの?」
少し、怒ったようにプチヒーローは尋ねた。
「ごご、ごめん……おおお、きのみ!さっすがプチヒーロー!ありがとよ!」
水鏡の盾の裏側にころころと盛られたきのみ。色とりどりのそれは、オレンやモモンと言ったポケモン達の助けになるきのみだ。

ジュペッタとプチヒーローは、ここから脱出するにもモリーをやっつけるにも、何をするにもご飯は必要だ!というジュペッタの提案のもと食料集めをしていた。
「マジにごめんって……はい……そもそも餌も針もないのに魚を釣ってやるぜ!などと意気込んで剰え惰眠を貪り申し訳ありませんでした……」

うつむきながら、つらつら謝罪を述べる。しかしなかなか返事がこないため、これは必殺土下座の体勢に入るかとプチヒーローの顔を見ると、ぽかんとした表情で川上を眺めていた。
それに習ってジュペッタも視線を向けると、どんぶらこ、どんぶらこ、と水流に乗って大きなモモン……ではなく大きなキノコが。

「あれ、なんだろう」
「キノコ?いや、もしかすっと……プチヒーロー!」
走りだしたジュペッタのあとを追い川辺に近づくと、川岸に引っ掛かりぐったりした大きなキノコ、否、キノコによく似たモンスターがいた。
やっぱり!と慌てて引き上げるジュペッタ。

「うぐぐ、重たい」
「ジュペッタ、知り合いなの?」
「いんにゃ、知らんけど……知ってるっつうか……」
なんだそれ、と困惑したが、プチヒーローも手伝う。
なんとか水から引き上げられたキノコのモンスターを大慌てで祠まで運んだ。
一応、今のところ一番安全だと言える建物。

落ち着いてそのモンスターを見ると、二体は言葉を失った。
打ち付けた傷に、酷い火傷。プチヒーローは、また震えていた。
自分たちがきのみを集めたり、魚釣りするふりをしながら寝てる間にも、こんな風にケガした魔物がたくさんいるのだ。
それは、いつか自分達にもふりかかってくる。

しかしそれより強い恐怖が、プチヒーローの目の前にはあった。

「とりあえずこれ食えるかキノガッサ、よしよし」
ジュペッタはイチゴによく似た不思議なきのみをキノガッサと呼んだキノコモンスターの口に押し込んでいる。
「あとはケガを治してやんなきゃなあ……なあプチヒーロー、お前何かいい方法知らねえか?」
血の気のない顔で、プチヒーローは順繰りに、ジュペッタを見て、キノガッサを見て、そして。
「ある、けど」
自分の掌へ視線はたどり着く。握手してもらったばかりだった掌は、水気を帯び、今はとても冷たい。
「ぼ、僕、薬草探してくるね!」
「あ!?おい待てよ!」
盾も持たずに駆け出したプチヒーロー。
あとを追おうと立ち上がると、背後からキノガッサの唸る声。

「んーとになんなのよ……」

368可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:29:28 ID:KWTbZ.HE0
『ほんっと、お前は役立たずだな!そのおててはなんのためについてんだよ!?』

役に立たないと、あのモンスターも死んじゃうんだ。

『努力もするし才能もあるし期待だってされてる!だのになんで役立たずに甘んじてんだよ、俺に喧嘩売ってるのか!?』

ごめんなさい、助けたかったんだ。君だって。

胸に反芻する怒鳴り声。自分を期待外れの役立たずと罵った一体のモンスター。

雨雲が空いっぱいに広がる昼下がり、ちょうど今ごろだった。
その日、プチヒーローは村外れの森できのみや薬草を集めていた。
『だ、だって僕、痛いのは嫌だよ……自分も、相手も……死んじゃったらどうするのさ』

珍しく反論すると、モンスター……プチファイターは呆れ返って持っていた斧を地面に叩きつける。
プチヒーローはびくりと盾の影に隠れた。

『意味わっかんねえんだよ、お前はそんなんでもプチヒーローに生まれついてんだからちゃんとしてくれよ』
俺が死ぬほどなりたかった英雄様なんだからよぉ!
プチファイターが悲鳴じみた怒声をぶつけてくる。

『おらぁ!剣じゃねえけど持ってしゃんとしろや!』
斧を押し付けられたプチヒーローは、震えながら後退りそれを見下ろす。
『呪文でも、斧でもいい、俺にぶちあててみやがれ』
じゃないとてめーをぶっ殺す。
プチファイターの本気の言葉に、プチヒーローは泣き出す。だがプチファイターは止まらない、真っ直ぐに拳を構えて突進してくる。
プチヒーローには呪文を操る力があった。剣の腕だって、そこらの魔物には負けない程度に。
ただ、そのすべてを魔物……生きているものにぶつけることができなかった。
プチヒーローは盾を構えて、同じように突進した。
攻撃ではなく防御のために前へ進む、それだけで、プチファイターは跳ね返されて尻餅をつく。

『クソがっ!ふざけやがって!』

手を差し伸べられたプチファイターは、その手を払い立ち上がる。
そしてそのままプチヒーローに背を向けて去ろうとした。深いため息をつきながら。
その側面に、巨大な火球が衝突し、雨雲に包まれた暗い大地が燃えた。
笑う人間の声、燻る炎の匂い、水が消えていく音。

ぽつり、落ちてきた滴を、三回数えたところまで、プチヒーローの記憶に残っている。



土砂降りのなか、プチヒーローは立っていた。
周りにはプチファイターしかいない。
焦げ臭い何かと、雷嵐の音。
自分が何をしたのか、覚えていないが理解できた。
歩くたびに込み上げる吐き気をこらえて、プチファイターに手をかざす。
癒しの呪文を、そう掌に力を込めたが何も起こらない。
魔力が切れた訳じゃあない。プチヒーローは知っていた。

当てられないんだ。

違うのに、攻撃じゃあないのに。

理解できても、体は動かせなかった。人間たちと戦って、余計に悪化したらしい。

『ごめん……ごめん、なさい……』

369可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:31:07 ID:KWTbZ.HE0
ぷちり、ぷちり。
摘んだ薬草を手に束ねて、プチヒーローは涙をたたえる。
命がなくなる恐ろしさ、命を奪ってしまう恐ろしさ。痛み、悲しみ、苦しいことすべて。
そんな臆病な気持ちが、誰かを助ける邪魔になって。
最悪なまでの役立たずだ、こぼれた涙を拭う。空は晴れ渡っていた。



カシャ カシャ カシャ カシャ


自然のなかに相応しくない、無機質な足音。


カシャ カシャ カシャ カシャ


ぞわぞわとした寒気に、プチヒーローは息を呑む。
ぱたり、薬草の束が崩れて散らばった。


虫のような、人のような魔物がそこには立っていた。

「……小さいな」

魔物、スティングモンは呟く。
小さな、死に怯え震える魔物。そんないじましいものを屠れば、確かな地獄への一歩になるだろう。

私の、地獄への片道切符になってくれ。

それは言葉にならず、スティングモンの両手から打ち出された。







キィン


澄んだ金属音の連続、余韻。

風を切ってきた、水鏡の盾。


「ぎりぎりちょんぱぁ!!」

突如目前に突き立てられた盾の裏側を驚きほうけて見ていたプチヒーローの耳に響く声。

「ああもう、アイドルが戦うとかマジにないわ……」

木立からプチヒーローの隣に降りてきたジュペッタは頭を抱えていた。

「ジュ、ジュペッタ!キノガッサは……?」
「一応きのみを口に押し込みまくってきた、安静にしてりゃあいいだろうよ」

「それより、どうやってトンズラするかだよ」


スティングモンは、乱入してきた魔物に少々驚いたがその程度。

「虫タイプ?あれ虫タイプなのか?」
「わ、わかんない……」
二体はこそこそと会話を交している。

今度は直接貫けばいい。

盾ごと、壊してしまえばいい。


「た、たんま!なああんた止めたほうがいいぜ!」
ジュペッタが、盾から半身を出してスティングモンに人差し指をびしりと向ける。
「なんせ俺は頭が良くてかっこよくてしかも強い!だから、さっさと降参し……うわぁあこっちきたぁああ」
聞く耳持たず、というかそもそも聞く必要のない戯言だ。スティングモンはスパイクを構えて走りだす。
「ちくしょー!これでもくらいやがれーッ!」

あろうことかジュペッタは水鏡の盾をぶんなげた。
唯一の防御とも言えるそれを投げられたのだから、プチヒーローも怖がるより先に驚く。
水平に飛んでいったそれをなんなく躱し、スティングモンは腕を振り上げた。

「ああっ!?」

「だから止めたほうがいいって言ったんだよなぁ……」

370可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:32:03 ID:KWTbZ.HE0
ブーメランのごとく舞い戻った水鏡の盾がスティングモンの腕を肩口から切り離した。
飛び散る体液を想像し、ジュペッタは嫌そうに目を背ける。
失速することなく返ってきた水鏡の盾は、ジュペッタとプチヒーローの手前で急停止する。

「サイコキネシス、まー虫タイプにはあんましきかないだろうからこうやってやらせてもらったんだわ」
重い盾に念力で浮力を与え操る、かつてコンテストでフリスビーを操ってガーディと協力した時の応用だぜ!
ふふんと肩をそびやかし、青白い光を放つジュペッタ。

「な、退散してくんねーかなー……うえ?」

からんからん。集中力が途切れて盾は転がった。

「進化の……秘法?」

プチヒーローの疑問の声のなか、スティングモンの腕が再生していく。より強い腕へと。

「なんだよ……それ」

ぼごり。濁った産声とともに生えた腕。
スティングモンの腕は変わった。

「昔話でしか、聞いたことがなかったんだけど……」

曰く、それは禁じられた外法。
錬金術の研究から生まれ、天空の神がこの世から消し去ろうとした悪魔への進化。
施されたものは強い力や知性を手に入れ、どこまでも際限なく強く強く変わっていく。

「いいことづくめじゃねーの」

「ううん、ダメだよ。強く変わって……全部変わって……自分が無くなってしまうんだ」

かつてある魔王が、憎しみの果てに自分を無くした。
進化の先に、さらに先に、無くしてしまったものを埋めるために突き進んだ。

「じゃあ、あいつも……おい聞いてたんだろ!虫タイプ!」

「ああ、良いことを聞いた。私は変われるのだな、より強い……私の願った姿へ」

腕の調子を確かめていたスティングモンは、酷薄な笑みを作る。
変わればいい、変わってしまえばいい。
遺伝子の無限の可能性を一筋に集約させた力そのものに。
彼女を守れれば、彼女の、ロザリーのいる地獄へ、力となって、向かえばいい。

「……それから、私は虫タイプなどという名前ではない。私はシャドームーン、地獄を目指すただの……力だ」

「そんなの……」

おかしい、そう言いたかったが二の句は次げず。
変わりたかった。強く、命を守るために、あの時助けられなかったプチファイターのために。
そもそも、自分がまるっきり違う何かであったなら、あんな出来事は起きなかったはずだ。

強く、皆が期待して、皆を守れる偶像に、英雄そのものに変われれば。


自分なんかいらない、かもしれない。


「ありゃダメだ、頭おかしいわ」

ジュペッタは盾を水平に構える。

「ジュペッタ」

「体を張った芸ってのは、やりすぎると、ドン引きモンなんだよなあ!」

371可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:32:41 ID:KWTbZ.HE0
空いた掌に影が集まる。
球状になったそれは地面に弾けて、粉塵の緞帳が視界を覆う。

警戒し、盾が飛んでくるのを待つスティングモン。
案の定青白い盾が粉塵を切り裂いてこちらに向かい、通りすぎた。

「なっ」

また追撃が、と目をこらした先に見えた、盾に乗り込んだ二体の魔物。

「やってらんねえから、逃げる!」

「ふ…………」

サイコキネシスを機動力に逃走する背中を一瞥し、スティングモンは薄い羽根を広げ後を追う。

「げっ、追い掛けてきた!」
青白い光を放つ流線型は予想外の敵の能力に歯噛みする。
絶対無敵で素敵な逃走方法だったはずなのに!

「うぉおお奥の手発動……するにもあいつはええな!」
ジュペッタの集中力が切れてサイコキネシスが無くなると勿論盾はただの盾に戻り墜落する。
そうすれば、逃げることも戦うことも難しくなる。

「なんかないかなんかないか、足止めできそーなもの……」

「あのさ、ジュペッタ、足止めって」

「あん?」

「当てなくても……いいんだよね?」

変わるための、一歩。
プチヒーローはぎゅっと拳を握る。

「あ、ああ……さっきみてーに目眩ましができれば……」

「僕に、まかせて」

くるり、振り替えれば姿勢を低くして羽ばたくシャドームーン。

今は少しで良いんだ、変わるのは。
晴れた空をか細く揺れながらも突く指。

「きたれ勇者の雷……ライディン!」

詠唱に応え、晴天の稲妻は轟音とともに木々を倒し、大地に導かれ炸裂する。

「よしっ!掴まれプチヒーロー!」

金色の二対の靴が空中に放られる。
サイコキネシスが切れると同時に盾から踏み切り飛び出した体はくるくると回って、落ちかけた盾をもう一度サイコキネシスで取り戻し曲芸でも魅せるかのように靴に着地した。


傷一つなく、周囲を焦がした雷撃の跡地に立つスティングモン。
生木が焼けた匂いに顔をしかめつつ複眼から見える景色に集中するが、どこにも反応はない。

「逃げられたか」

如何様な方法を用いたのか、スティングモンに推測するすべはない。
ジュペッタとプチヒーローが使った奥の手、それは空飛ぶ靴。
魔法の施された遺物、時空の狭間に住む生き物と諸説あるが、それは履いたものを名前通り飛行させ、どこかへ連れて行く。

スティングモンは再び歩き出す。
自分を見て迷って怯えていた魔物は、どこか昔の、ワームモンであった頃の自分に似ていた。
背後で大木が倒れる。
力を秘めた臆病ないきもの。
力はないが頭は回るいきもの。
全て屠り、忘れてしまおう。
変わってしまえばいい、進化のままに、悪魔の刃に成り果てて。
無機質な足音は荒れた世界に染み渡り、やがて消えていった。

372可能性の魔物 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:34:01 ID:KWTbZ.HE0
【D-3/森林/一日目/日中】

【ワームモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:地獄へ征くその日まで、殺し続ける

[備考]
オス。一人称は私。

【D-3/上空/一日目/日中】

【ジュペッタ@ポケットモンスター】
[状態]:健康 、疲労(小)
[装備]:空飛ぶ靴@ドラゴンクエストシリーズ
[所持]:ふくろ(きのみが数個)
[思考・状況]
基本:殺しあいとかアイドルのやることじゃねえ!無事に家に帰るぞ!
   1:プチヒーローと一緒にいく
   2:シャドームーンってやつはおかしい……

【備考】
オス。自称アイドルポケモン。ここにつれられてくる前はコンテストポケモンとして育てられていた。一人称は「俺」

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いはしたくない、家には……
 1:ジュペッタと一緒に行く
 2:変わりたい
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」

※ジュペッタとプチヒーローが飛ばされた先は後続にお任せします。

【D-4/祠/一日目/日中】

【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:火傷。失神。火炎ダメージおよび落下のダメージ(大)。 きのみ療養中。
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:…………

[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」



《支給品紹介》

【空飛ぶ靴@ドラゴンクエストシリーズ】
ジュペッタに支給されたもの。履いたものを靴に決められた位置までワープさせる。
決められた位置にしかワープさせられないので移動用には不向きというか使えない。

373 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/06(木) 06:34:42 ID:KWTbZ.HE0
投下終了です。

374名無しさん:2013/06/06(木) 09:18:58 ID:7RLjhidwO
投下お疲れ様です
何を犠牲にしようとも、力のみを求めようとするシャドームーン……果たして、どんな風に変貌していくのか
プチヒーローの過去も壮絶過ぎる…… 彼にも人間が関与してるとは……
そして今回一番魅せてくれたジュペッタ。芸達者な戦い方は実に見ごたえがありますねぇ

375名無しさん:2013/06/06(木) 14:31:24 ID:/iNNVy7A0
投下おつー!
おお、ジュペッタがテクニシャンだー!
そしてここにも“力”に思うところのあるものが一人
力があって、そのことに期待されて、実際強くて
でも臆病で、優しいからそれを震えないか
その強さとも弱さともいえるものも全て捨ててただ“力”と化してくスティングモンとの対比も良かった

376名無しさん:2013/06/06(木) 20:05:44 ID:q7dffSXgO
投下乙です。

回復呪文すら当てられないとは、かなり重症だな。
それでも呪文自体は使えるから、まだマシか。

377高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:34:55 ID:4LcWKof20
投下します

378高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:35:05 ID:4LcWKof20

──気に食わない目をしている。
エアドラモンに対してエンジェルが抱いた第一の印象はそれだった。
と言っても、第二の印象を抱くことはエンジェルは想定していない。

見敵必殺、霊魂無き畜生に対して天の使いは一切の躊躇をしない。
それは同情という点でもそうであるし、
また遥かに体格で勝るエアドラモンに対しての怯えという点でもそうである。
支給された銃を熟練の兵士の様な冷徹さでエアドラモンに対して向ける。

「鎖無き獣に──」

エアドラモンの本能がそれの危険性を確信した。
その攻撃にあらゆる神の慈悲はない、食らえば確実に死ぬ。
夕陽が海へと身を潜らせることを夜の知らせとするように、それは死という絶対の法則性によってもたさられる絶死の攻撃なのだろう。

さて、エアドラモンが決して知り得ることの無い情報であるが、
その攻撃の名はとある修羅の絶技より名を取って、こう呼ばれている。

「──天の裁きを」

至高の魔弾コピー、と。


天使エンジェルの持つ銃──メギドファイアより放たれた魔弾は、
天使エンジェルとエアドラモンの狭間にある何もかもに死を与えながら、
すなわち魔弾による余波は大地を砕きながら、草も花も消し炭としながら、真っ直ぐにエアドラモンへと向かう。

轟と音が立った。
着弾地点にはただ虚ろのみが残された。

天使エンジェルは天使という種族においては最も弱い、それは誇り高き天使としても認めなければならない所である。
つまり、支給されたメギドファイアの至高の一撃を以て相手を初手で仕留めることが最善だった。


ならば、この状況は最善とは程遠い。
至高の魔弾コピーを回避したエアドラモンがエンジェルに向けて、竜巻を放つ。
その名は、
「ゴッドトルネードッ!!」
天の使いに対して用いるには、余りにも皮肉の効いた名前だった。

天使エンジェルにとっては不幸であり、エアドラモンにとって幸運だったことは、

魔力に限りがある以上、至高の魔弾コピーをおいそれと試し撃つわけにはいかなかったこと、
断罪に相応しき最強の銃の存在が天使に対して慢心を生じさせたこと、
そして、神に近い存在と言われるエアドラモンがその名に違わぬ機動力の持ち主であったということだ。

379高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:35:29 ID:4LcWKof20

神の名を冠した竜巻に、浮遊していたエンジェルは地面へと叩きつけられた。
地に堕ちたのは天使だ、その強者とは言えぬ体に傷をつけているのもまた天使だ、

最早、エンジェルに至高の魔弾コピーを撃つ魔力は残されていない。
命を握っているのはエアドラモンであり、握られているのはエンジェルだ。

「ふん……」
しかし、見下しているのは天使であり、見上げているのは神に近いと言われる龍だった。

「気に食わない目をしているな」
エアドラモンの目に映るのは嫉妬であり、憂鬱であり、憤怒であった。
「何がわかるんだよ…………」
そして、数えきれぬ程の負の感情の中、僅かに過ぎるのは羨望のそれであった。

「エンジェモン系列に俺のことがよぉ!!」

気に食わない目だと、改めてエンジェルは思う。
その目は堕天使のそれだ。
神を憎みながらも、かつてあった日々を忘れることの出来ぬ──愚か者のそれだ。
ならば、とエンジェルは答える。

「下らん」
どのような思いを目の前の畜生が抱こうとも、エンジェルは興味を抱かない。
いや、興味を抱くに値しないというのが正確なところだ。

「一人でやれ」
かつての姿に戻りたいという堕天使共も、神の手によりあるべき姿となった邪神共も、
共感する気はないが、理解は出来る。
だが、目の前の龍は──何を見ている?

存在否定の言葉を浴びせられたエアドラモンがエンジェルへとトドメを刺すのに、躊躇はしない。
エアドラモンの羽ばたきより生じた鋭利な真空刃がエンジェルを襲う。
これこそエアドラモンの秘技である『スピニングニードル』であり、その攻撃はあっさりとメギドファイアの銃撃により相打たれた。

既に至高の魔弾コピーは放てはしないが、
メギドファイアの威力はマシンガン系統に於いて最強である。
そして見よ、エンジェルの体は神の竜巻を身に受けたその時よりも明らかに癒えている。

天使エンジェルがその身が地に堕ちたのを良しとしたのは、決してエアドラモンに対する言葉攻めのためではない。
治癒魔法ディアによる、己の回復のためである。

天使は再び空へと舞い上がり、神たるエアドラモンと同じ高さで視線を交わす。

「……自害しろ」
「…………は?」

エンジェルの言葉に対して、エアドラモンは当然の反応を返す。
──は?何を言っているのかわからないのですが、貴方は頭がイカれているのではないでしょうか。もしそうでしたら、貴方が死ぬべきだと思いますよ。
ここまで言葉を返すのが当然ではない反応である。

「貴様の命に価値はない、ならば今が幕引きの時だ」
傲慢ではなく、それは天使にとっての慈悲だ。
殺し損ねた蚊にトドメを刺すような、そういった類の慈悲なのだ。

「自殺は大罪であるが、畜生に罪の概念は無い。死ぬが良い」
口を開こうとしたエアドラモンに対し、
エンジェルは更に言葉の刃を以てエアドラモンを斬りつける。

「問おう、貴様に生きる価値はあるのか?」

380高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:35:46 ID:4LcWKof20

口を開く必要はない。
黙って戦闘を再開すれば良いと、エアドラモンの理性が告げている。

そうすれば良いのではない、そうしなければならない。

「俺に価値は…………」

それでもエアドラモンは口を開いてしまった。

──エアドラモン…………いや、知らねーわ
──02でぶっ殺されるぐらいには嫌われてたんじゃねーの?
──神に近い存在ってそれさぁ、三大天使の前でも同じ事言えるのかよ
──成熟期で神に近い存在とか、お前それ成長期のルーチェモンの前でも同じ事言えるのかよ
──お前って、レオグンみてーなもんだよな、生贄が必要なのに攻撃力2000もいかない通常モンスターみたいな

マグマのように湧きだした思い出が、エアドラモンの心を責め立てる。
エアドラモンの価値など、誰にも認められたことはなかった。
ティラノモンと恵まれないデジモン同士で傷を舐め合うこと、それが世間に対して出来る唯一の抵抗だった。

「価値は……」
無いと、認めてしまえば楽になれる。
目の前の天使に悔い改めて、そして死ねば楽になれる。

誰が俺の生を望む?
唯一望んでくれる奴との友情は、自分自身で捨て去ってしまった。

強くなったところで、本当にパートナーなんて出来るのか?
押し寄せた冷静が、急激にエアドラモンの熱を冷ましていく。

「あるか無いか、ただの一言で済む問題に……どこまで時間をかける気だ?」
見透かされている。
目の前の天使は、何もかもに気づいていて、その上で選択させている、エアドラモンはそう感じた。

進化した所でどうする。
強くなったところでどうする。

俺は……
俺は…………


――俺は、おまえに見下されたくないんだよっ!!

ああ、わかっている。
答えなんて最初から決まっていた。


泣きたくなるほど悔しいから、戦うことを決めたんだ。

不遇な俺を、認めさせてやる!

「あるっ!!」
もう、エアドラモンが天使を見る目に羨望も嫉妬も憎悪も無い。
ただ、その曇りなき目に映るのは敵だ。己の勝率へと変わる、ただの敵だ。

「誰がその価値を認めた?」
「俺が!俺だけが!」
「自己肯定か……下らんな!」

「そして……人間がっ!人間が俺を認めてくれる……認めさせてやる!」

381高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:36:37 ID:4LcWKof20

「人間…………」
第二ラウンドのゴングの代わりとなったのは、その言葉だった。

「我を……天の使いで鎖で縛りし、万物の霊長気取りの猿めッ!!」
メギドファイアは淀みない弾幕を形成していく、それはエンジェルの怒りの現れか。

「ああっ!気に食わない奴らだ!!未だに俺の進化系は作られないのに、ティラノモンはとうとう究極体まで完成した!!」
ならばと弾幕の面の攻撃に対抗するは、やはり面の攻撃であるゴッドトルネードである。

だが、天使の怒りの銃撃たるや、竜巻を貫いてエアドラモンを撃ち貫かんとする。
戦場は空、ならばとエアドラモンは弾幕を潜り下からのスピニングニードルを食らわせる。

「貴様はそんな猿どもに認めさせてやるという……目に見えた破滅を進まんとするか!!」
風の刃はメギドファイアの銃弾と相撃つ、必殺技と相撃つメギドファイアの威力たるややはり最強の名に相応しい。

「ああ、そうだ!!チャンスが今、ここにある!!勝率を上げて、進化して、強さを魅せつけて……俺はパートナーを見つけてやる!!」
だが、スピニングニードルの射出はそのままにエアドラモンはその全身でエンジェルの元へと突撃する。

「家畜に成りたがる畜生か!!滑稽を通り越して哀れだな!!」
スピニングニードルで相殺しきれないメギドファイアの火が、エアドラモンの体を撃ち抜く。

「エアドラモンがどれほど前から哀れだと思ってやがる!!舐めんな!!」
苦痛のうめき声が漏れる、血液の代わりにデータが宙に消える、
だが、エアドラモンは倒れない。地に堕ちない。
既にエアドラモンは地に堕ちていた、そしてこれから這い上がろうというのに、銃撃の一つや二つで堕ちるはずがない!

「人間はッ!!」
より高く、より高く、接近するエアドラモンに対してエンジェルはその天使の羽根で更に舞い上がる。
天の国へ帰らんとするかのように、更に高く!

「人間はッ!!」
より高く、エアドラモンは飛ぶ。
天使をも超えて遥か高く、そうで無ければ地に堕ちた分はチャラにならない!

「私を裏切った……」
「俺に機会を与えた……」



竜の牙が天使を打ち砕いた。

382高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:37:31 ID:4LcWKof20

「人間のことが好きだった」
リロードの中、デジタルデビルは物語る。

「神の存在すら忘れられようとした世界で、私が見守っていたあの子は天使に祈ってくれた……」
風さえも、その物語の邪魔はしなかった。

「……信じたかった、人間のこと」
地面に落ちた水滴は、雨ではなかった。


「……天使でも、裏切られたら、悔しいし…………」
ぽたり、ぽたり、とまた水滴が落ちていき、
「……悲しいよ」
新たな水滴が地面に落ちなくなったその時、天使エンジェルはその姿を消した。

【天使 エンジェル@女神転生シリーズ 死亡】


エンジェルのリロードが完了し、エアドラモンは再び大地へと戻った。
「……裏切り、か」
その言葉で真っ先に浮かんだのはティラノモンだったが、そこから先のことをエアドラモンは考えない。

「俺は……間違っている、でも……俺は人間に呼ばれたんだ!だったら…………」

それから先の言葉もエアドラモンは考えない。

何も考えない。

【D-2/C-3との間/一日目/日中】

【エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(大)、迷い、ダメージ(大)
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:メガドラモンとかで良いから進化するために他の参加者を倒す
 1:他の参加者を見つけて戦う
 2:でもヤバそうな奴は避ける
 3:ティラノモンは次に会えば倒す
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。
天使エンジェルをリロードしました
メギドファイアはどこかに落ちました。

383高く翔べ ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 01:37:42 ID:4LcWKof20
投下終了します

384 ◆5omSWLaE/2:2013/06/11(火) 08:19:21 ID:IL3phUWIO
投下お疲れ様です
堕ちる事で復讐を志す者と、這い上がる事で復讐を志す者……
似ているようで性質の違う意志のぶつかり合い、これには痺れました……!
生きる価値が無いと自覚しつつも、ならば価値を自らで見出だそうというエアドラモン、神の名に相応しい誇りの高さを感じます
そして無機質を装っていたエンジェルの、最後に垣間見せた感情に、涙腺が緩みそうになりました

385 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/11(火) 12:20:53 ID:4LcWKof20
ガブモン、キラーパンサー、ギルガメッシュで予約します。

386 ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/12(水) 23:31:26 ID:xNtxaTPM0
妖精クーフーリン、ボナコン、ルカリオ、ワームモン予約します

387キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:57:51 ID:vYkgVLPo0
投下します

388キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:58:16 ID:vYkgVLPo0


「流石に拙者には扱いきれないでござるな……」
「ん〜、腕が使えるならイケると思ったんだけどなぁ」

ガブモンという種族が剣を扱うことが出来るのか、この質問に対して答えることは出来ないが、
ここにいるガブモンが剣を扱うことが出来るかどうかと言えば、その答えは否である。
剣を握ることは出来る、振ることも出来る、だが武器として扱うことは出来ない。

ガブモンの手に握られたのは、一振りの剣だった。
鋭く伸びる刀身は斬ることの能わぬ空すら斬り裂かん程に研ぎ澄まされており、
握りから伝わる仄かな暖かさは、それが人の業を遥かに超えた神の領域の剣であることを言葉も無しに掌に伝えてくる。
世に出れば全ての業物の等級を下げることとなるであろうその剣の名はヒノカグツチといった。

「もとより拙者の武器はこの身一つ、不慣れな剣に命を預けることは出来ぬ」
「もったいないなぁ〜」

キラーパンサーの素人目に見ても、ヒノカグツチは明らかな業物だった。
それを扱ってもらえれば、この殺し合いからの脱出に於いてどれほど心強い武器となっただろうか。
しかし、ガブモンの言うことはもっともである。
自分がその剣を咥えて戦ったところで大して役に立たぬように、ガブモンにとってもその剣は役に立たぬものなのだろう。

「まぁ、しょうがないか」
「さて、拙者の支給品だが……む、これは虫か?」

ガブモンがふくろより支給品を見せようとしたその時である。

「ウオオオオオオオオン」
キラーパンサーが唸りと共に跳んだ。

「……!?」
今、ここにいるのは借りた子猫などではない。
ガブモンは見た、キラーパンサーが地獄の殺し屋と呼ばれるその所以を。

その野生の目で敵を見据え、風すらも追い抜いてキラーパンサーという名の弾丸が疾走する。
今この時、怒りも哀しみも戸惑いも恐怖もなく、キラーパンサーは野生そのものだった。

「ほう、我がほんの少し睨んだだけで掛かって来るか」

殺すべき敵の名はギルガメッシュ、だがキラーパンサーはそれを知ることはない。
自己紹介などする間もない、その身から迸る殺気ごと切り裂いてギルガメッシュを殺さなければならない。

「ウオオオオオオオン!!!」
「我を愉しませてみろ!!」

キラーパンサーによる全質量のぶちかましは空を切った、
ギルガメッシュは闘牛士の様に、その身を翻してキラーパンサーの突撃を避けた。
「撫でてやるぞ、子猫よ」
再度攻撃を仕掛けようと、キラーパンサーが振り向こうとした刹那、
ギルガメッシュの拳がキラーパンサーを文字通り、紙のように吹き飛ばす。
「ウオオオオオオオン!!!」
だが、地獄の殺し屋は転んでもただで起きてやることなどしない。
敵の拳が己の顔面に炸裂すると同時に、キラーパンサーの牙は敵の拳を抉り取る。
大地へと落ちた己の血と肉片を足で踏み潰しながら、ギルガメッシュは心の底から楽しそうに笑う。

「少しは愉しいが、それと同時に……哀しいな」
再度その四足で戦闘態勢を整えたキラーパンサーを見たギルガメッシュは、

「すぐに終わる」
背後から放たれたガブモンのプチファイアーを、見ることもせずに鎖鎌で掻き消した。

389キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:58:28 ID:vYkgVLPo0


「この世界に無駄な事などは無い、我はそう思っている」

キラーパンサーが再度、ギルガメッシュに飛びかかる。
不如意にも先程の攻撃は一撃必殺のものとならず多大なダメージを受けることとなったが、
その代わりキラーパンサーは敵の実力をその身を以て知ることが出来た。
風の速さで疾走するキラーパンサーとガブモンの視線が一瞬だけ交差する。
二対一ならば勝てる──それは音にならぬ会話だった。

「水滴が何百何千と時を重ねて、岩に穴を穿つように……」

間合いに入ったキラーパンサーをギルガメッシュの蹴りが上方へと跳ね上げる、
だが、地獄の殺し屋は敵の攻撃すらも利用した。
食肉目特有の回転力がギルガメッシュの蹴りを利用して、サマーソルトキックを放つ。
爪がギルガメッシュの体を斬り裂いていく。

「どのような行為でも積み重ねれば、それなりにはなるものだ」

──シェル

だが、殺すには至らない。
ギルガメッシュの正拳突きが再びキラーパンサーを地面へと叩きつける。
しかし、攻撃は止まらない。
キラーパンサーへと意識を向けた一瞬の隙を突き、ガブモンは再びプチファイア─を放つ。
だが、最早ギルガメッシュは受けることすらしていない。
ギルガメッシュの体が銀に光ったかと思うと、プチファイアーを掻き消した。

「それなりには……な」

──ヘイスト

しかしプチファイアーが効かないのは百も承知、ガブモンの目的はギルガメッシュへと接近することだった。
ガブモンとキラーパンサーの攻撃のラグを減らし、ギルガメッシュを防戦へと追い込むこと、数の優位を以て戦うことが彼らの勝機なのだ。
キラーパンサーの牙が、ガブモンの角がギルガメッシュを襲う。
その策は、5秒前ならば上手くいっていただろう、たった5秒前ならばギルガメッシュは心臓を抉り取られ、その身を血に沈めていただろう。
ガブモンの角がギルガメッシュの左手に握られた。
キラーパンサーの前足がギルガメッシュの右手に握られた。

彼らは今、ギルガメッシュよりも遅い。
決して彼らが遅いわけではない、だがギルガメッシュが速すぎる。

握ったガブモンとキラーパンサーを互いに衝突させる。
今や、ガブモンはキラーパンサーを襲う武器であり、キラーパンサーはガブモンを襲う武器だった。

超硬度のガルルモンの毛皮がガブモンを救い、キラーパンサーにとっては仇となった。
再び、ギルガメッシュが二匹を地面に投げ捨てた時、最早、キラーパンサーは死に体だった。
体が砕けている、意識は朦朧としている、そして先程見た勝機は既に消えている。

絶望──その二文字しか未来に存在しなくても、いや既に未来など無いだろう。
それでも、闘志は消えない。

吹き飛ばされたキラーパンサーの体が、吹き飛ばされたガブモンの体が、
己のふくろを開く。

ヒノカグツチ──最強の剣。
ギルガメッシュの目がそれに奪われるのを見過ごすキラーパンサーではなかった。


キラーパンサーは跳んだ、野生の牙がギルガメッシュの命を屠らんとする。




「喜べ、お前らならば1000年も挑めば、我を殺せるかもしれんぞ?」

──プロテス

金に輝くその体に、キラーパンサーの牙は急所を穿つまでは至らなかった。
再び地面へと叩きつけられたキラーパンサーの姿を、最早ギルガメッシュは見てすらいなかった。

390キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:58:43 ID:vYkgVLPo0

新たな玩具を見つけた子供の目をしていた。
ギルガメッシュは最早使い飽きた玩具である二匹を完全に無視して、ただヒノカグツチだけに興味を抱いている。
それでも二匹は彼を殺せない。
飽きられた玩具は、新しい玩具による処分を待つだけだった。

「…………」
キラーパンサーはガブモンを無言で見据えた。
こういう時こそ、甘えたかった。
子供の時の分まで、甘えたかった。
失った空白を今だからこそ、補いたかった。
決して勝てない強大な敵に対して、何かに縋って助かりたかった。

「………………っ」
よろよろとキラーパンサーは立ち上がった。

無駄なことを──と、己の野生が言う。
諦めろ──と、己の理性が言う。
己の中の少年時代が同情するような目で自分を見ていた。

それでもキラーパンサーは立ち向かった。

「逃げろ……」
「…………冗談を抜かすな」

立ち上がったキラーパンサーを見上げながら、ガブモンは言う。
本当に短い付き合いだったが、時間の長さは関係ない。
自分の身を犠牲にして助けられようとしている。
そのことが許せない。

「……………………頼む、ガブモン」

「その呼び方は…………やめろっ!」

呼び方を改めさせるのは、今じゃない。
何時、改めさせるのかなんかわからない。
それでも──今じゃない、今じゃないのだ!

「終わらせてなるものか……」
ガブモンも再び立ち上がる。

「ガブ……たん」

「……美しい友情だな」
ギルガメッシュの手に握られたヒノカグツチの刀身が、激しい闘志と共に燃え上がった。

「仲良く同じ場所に送ってやろう」

──ブレイブ


「冥府にな!!!!!!!」

391キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:58:54 ID:vYkgVLPo0



圧倒的な絶望の中、悪魔が静かに産声を上げた。
悪魔は感情を──そこから発生するエネルギーを喰らう、

ならば、ガブモンの怒りに立ち上がらないはずはない。

「ガブモン……進化ッ!」

意識もせずに叫んでいた。
望んでいたあの言葉を、ガブモンは叫んでいた。
今がその時だった。

ガブモンの支給品であるマガタマは、寄生した人間を悪魔へと変貌させる。
ならば、人間で無いものにマガタマが取り憑けばどうなる?

マガタマの膨大なエネルギーは──進化をもたらす。

「ガルルモンッ!!」

392キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:59:05 ID:vYkgVLPo0



「……逃がしたか」
既に目の前から消えたガブモン達の方向を見て、ギルガメッシュは呟く。
ガルルモンに進化したガブモンはキラーパンサーを背負って、速攻で戦線から離脱した。
ガルルモンの巨体に見合わぬ速さ、殺すことは出来るがヘイストを掛けた上でも追うことはギルガメッシュでも難しいだろう。

「ふ……ふはははははは!!!!! ふははははははははは!!!!!!!」
抑えきれなかった笑いが、津波のように押し寄せた。
獲物に逃げられたことに対する怒りは無い、いやむしろ愉快だった。

「愉しいな…………」
先の王気取りの雑種とは違い、ここには戦うに値する強者が存在する。
そして、手に握られたヒノカグツチの様に己の審美眼に適う武器が存在する。

抱いていた主催への畏怖は、感謝の感情へと変わる。
もちろん、最終的に処刑することには変わりない。

だが──

「殺す前に、礼ぐらいは言ってやりたいものだな……」

【E-8/草原/一日目/日中】

【ギルガメッシュ@ファイナルファンタジー】
[状態]:魔力消費(小)、ダメージ(小)
[装備]:くさりがま@DQ、気合のハチマキ@ポケモン、ヒノカグツチ@真・女神転生?
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:勝ち残り狙い
 1:他者に戦いを挑みつつ、支給品を集める
 2:現状じゃ主催者に勝てないと判断

[備考]
オス。強さこそが格だと信条している。高飛車な性格。一人称は「我」。

《支給品紹介》
【ヒノカグツチ@真・女神転生?】
鬼神ヒノカグツチとの合体によって誕生した剣。
最強クラスの性能を誇り、装備者を強化する効果がある。

393キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:59:15 ID:vYkgVLPo0


「ガブたんの背中ふっかふか〜」
「ええい!うっとうしい!」

ガルルモンに進化したガブモンは脇目もふらず、キラーパンサーを連れて逃げた。
戦う力はある、だがこの進化の力は。

「弱き者を守るために……」
「ん?なんか言った?」
「……なんでもない、それよりもお主を治療しなければな」
「いや〜心配してもらえるって嬉しいねぇ!」
「茶化すな!」

「でもさ、本当に嬉しいよ」
「キラーパンサー……」
「誰かに心配してもらえるっていうのは、ガブたんの背中に甘えられるっていうのは…………」
「ふん、傷が治ったら脱出のために働いてもらうからな」
「うん、大丈夫だよ…………でも、ちょっと眠いかも」

オレが抱きついているこの背中は……誰のものだっただろうか、キラーパンサーの意識が混濁していく。
既に限界を迎えていた、それでも……


「でも、もう少しだけ、甘えていいよね……」
キラーパンサーの体が熱を失っていく。

「ああ、今だけは甘えていい…………特別だぞ、だから……逝くな」
「うん、ありがと……おかあさ………………」

「逝くな!畜生!!!!」

広い背中で赤子のように眠るキラーパンサーを起こす者は、もう二度と現れなかった。

【キラーパンサー@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】



「畜生……何のための進化だ」

「何のために拙者は進化したんだ!!!!!」

【F-8/草原/一日目/日中】

【ガブモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:マガタマ(ワダツミ)
[所持]:ふくろ(中身不明)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
 1:キラーパンサーを葬りたい
 2:仲間を探す

[備考]
できるだけ早く進化したいと思っている。なぜか侍口調で話す。一人称は「拙者」。
ワダツミを装備することで、ガルルモンへの進化が可能となりました。

《支給品紹介》
【ワダツミ@真・女神転生?】
マガタマの一種、氷の力を持つ。
氷結無効/電撃弱点

394キミが死んで、僕が生まれた ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 18:59:25 ID:vYkgVLPo0
投下終了します

395 ◆5omSWLaE/2:2013/06/14(金) 20:59:14 ID:bvnZVFDs0
投下お疲れ様です
仲間を救うために手にした力は、仲間を救うことは叶わず……
キラーパンサーの勇姿は非常に素晴らしかった!
ついに進化を果たしたガルルモンも、今後どんな道を辿っていくのか楽しみ
ギルガメッシュは戦闘狂で有りながらも、威厳が溢れてて格好良いですねぇ
最強の剣を手にして鬼に金棒状態、これは活躍が期待されます……!

396 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/14(金) 21:09:02 ID:vYkgVLPo0
ゴーレム、ベヒーモスを予約します

397 ◆193R5b5IKU:2013/06/15(土) 20:47:33 ID:zgdBEHEA0
ピカチュウを予約します

398 ◆193R5b5IKU:2013/06/16(日) 02:14:38 ID:VnDMSR8U0
ピカチュウ投下します。

399LORD OF THE SPEED  ◆193R5b5IKU:2013/06/16(日) 02:15:33 ID:VnDMSR8U0


 一方、その頃、ピカチュウさんは……


「ハッハッハッハ!! 陸上での波乗りもたまんねぇなぁ!!」


 陸地でサーフボードに乗ったら、陸地でも波乗りが出来るという技を発見した。
 颯爽と陸地での波乗りを繰り出すピカチュウさん。
 どういう原理かは……アレだ。考えたら、負けである。
 
 というわけで、今、ピカチュウさんは木の実を探して移動している。
 彼は空腹だから仕方ないのだ。

 さて、ピカチュウさんは木の実をおいしく食べるには何が必要かを考えた。
 おいしい木の実を探すための洞察力や嗅覚。
 おいしい木の実にがっつくための健康な歯。
 おいしい木の実を沢山食べれらるような強靭な胃袋。 

 しかし、彼――ピカチュウさんは……
 


「――――でも、僕は最高速度(トップスピード)」



 そう、速さである。
 実はこのピカチュウさん、通常のピカチュウのよりも速く動ける。
 それはただ単純にレベルが高いのもあるが、他にも要因がある。
  

 ピカチュウさんにはレベルが上がると覚える技がある。
 それが『こうそくいどう』と『かげぶんしん』である。
 
 こうそくいどう……力を 抜いて 身体を 軽くして 高速で 動く。自分の 素早さを ぐーんと あげる。
 かげぶんしん……素早い 動きで 分身を つくり 相手を まどわせて 回避率を あげる。

 まず『こうそくいどう』を3回……つまり六段階積んだ。これで通常時のピカチュウさんの4倍の速度(当社比較)になった。
 これだけでも十分に速い。
 次に『かげぶんしん』は6回。これで大体『3回に1度、攻撃を避けられる』程度の回避率になった。
 分身が見えるほどの速さで動いてる。
 

 ここで、だ。

 4倍の速さになり、加えて影分身をしたらどうなるだろうか?
 答えは明確である。
 つまり……


「「「速さが足りてるッ!!!」」」


 ……ピカチュウさんは残像が見えるほど速く動いているのだ。
 常人なら三体ほどに見えるくらいの速度で、ものすっごく速く。
 そして、何故かサーフボードも残像が見えている。この件に関しても考えたら、負け。


「ん? なんだ、あれは……?」   
 
 その時、ピカチュウさんは目の前に巨大な建物があることを目視した。

「いや、もしかして……」

 そこで昔、森の仲間たちが言っていたことを少し思い出した。


 〜回想〜

 
『知ってるかな……人間にゲットされるっていうのは呪いと同じなんだ……
 人間にゲットされた者はずっと呪われたまま…らしい』
『具体的には?』
『なにやら、酷使されるらしい……肉体がボロボロになるまで使われて……
 中には瀕死の重体になる奴もいるとかいないとか……』
『……それは酷いな』
『でもな、ポケモントレーナーにゲットされるとな、時々いいところに連れてってもらえる……らしいぜ』
『なんだって、それは本当かい?』
『どうやら、『ポケモンセンター』という場所がすごいらしい』
『ポケモンセンターか……』


 〜回想終わり〜

400LORD OF THE SPEED  ◆193R5b5IKU:2013/06/16(日) 02:16:17 ID:VnDMSR8U0

 
「……恐らくはあれが噂のポケモンセンターという奴なのだろう、僕にはわかる」

 そんなわけはない。  
 あれはただの廃城である。
 
 そんなことも露知らず、ピカチュウさんは廃城の敷地に入っていた。

「……念のために、電磁波を使うか……」

 次の瞬間、ピカチュウさんの半径数十センチほどに電気が漂う。
 ここでいう、ピカチュウさんの電磁波は『でんじは』ではない。
 
「電磁波の応用技……これで僕の周り数十センチ程度なら索敵できる(というか、これが限界)」

 まるでレーダーのように電気を飛ばす。
 森で仲間を探すときに割と使う、彼が編み出した技の応用である。
 そして、ピカチュウさんは意気揚々と廃城の中を探索し始めた……勿論、最速で。
 
 その数分後。


「結局、木の実はなかった……とんだ無駄足じゃないか……」

 最速で廃城を駆け抜けたが、彼のお目当ての物は無かった。
 そして、ピカチュウさんはサーフボードに陸上波乗りで廃城を跡にした。

 
 ――ここが殺し合いの場だということを半分くらい忘れて。
 
【B-3/廃城近く/一日目/日中】
【ピカチュウ@ポケットモンスター】
[状態]:健康、ちょっと空腹
[装備]:サーフボード@現実
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:仲間の下に帰る(方法は考えていない)。
 0:迅速に木の実を探す。
 1:木の実が食べたい。
[備考]
オス。森暮らしが長い。仲間思い。一人称「僕」
『波乗り』を覚えましたが、バトルで効果があるかどうかは不明です。
※『こうそくいどう』を3回、『かげぶんしん』を6回使用しました。



※廃城はピカチュウさんが見た限り、木の実はありませんでした。
 あくまでピカチュウさん視点なので、もしかしたら何かあるかもしれませんし、ないかもしれません。

401 ◆193R5b5IKU:2013/06/16(日) 02:16:41 ID:VnDMSR8U0
投下終了です。

402 ◆5omSWLaE/2:2013/06/16(日) 02:31:31 ID:4/NDwa420
投下お疲れ様です
陸乗り使用&素早さと回避6段階とかチート性能にも程があるよ!!
果たして、ピカチュウが木の実を口に出来るのはいつになるのか……
……殺し合いってこと完全に忘れるまでそろそろかもしれんなコレ

403名無しさん:2013/06/16(日) 03:05:09 ID:e5I81EtcO
投下乙です

陸波にガチ積みとかなんなんだこいつwちゅーかお前オルフェ(ry

404 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/16(日) 10:19:50 ID:i5/KvVAY0
投下します

405 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/16(日) 10:20:11 ID:i5/KvVAY0




前回までのあらすじ

狂戦士と化したゴーレムのパンチ力はギガトンパンチのを遥かに超えてメガトンパンチくう
リアルでもモンクタイプのゴんレムがバカッスの酒飲んだらパンチングマシーンぶっこわすてデカラビアの哀れ死体をぶっ貫いてして地を砕くほどの威力
ゲーセンの店員も土下座して俺が強すぎることにしゃざいしうる
それに対するベヒんもスの不利は確定的に明らか忍者とナイトの差ぐらいあれとわからないの?
酔った勢いで殺っちゃった結果、(この世からベヒーモスを)下ろすはめになっちゃうのか
くずれそうなベヒーモスが「たすけて」と泣き叫ぶなら、助けてやらんでもにい

やはりベヒーモスごときが鉄の石ころよりずっtお硬い、ゴーレムに勝てるはずないから



今回のあらすじ

考えてなかったのに生きている石の塊で出来た狂戦士とベヒんもスの戦いになってしまったわけだが
これ、ベヒんもスごときが勝てると思ってるの?
ゴーレムの攻撃力はバーサク効果でw15倍で石の塊で殴るからさらに3倍しかも早いから4倍
6倍のこうげrきりょく食らってるんだから勝負にならないってわかってる
アワレなベヒーモスを相手にゴーレムはさっそくい殴りまくってだけで十分なんで殴るまくり
そしたらカウンターでメテオ飛んできてゴーレム死んだ
メテオとかあまりにもひきょいすぎですよう?汚いなさすがベヒーモスきたない
俺はこれでベヒーモスきらいになったなあもりにもひきょう過ぎるでしょう

結論

酔っぱらいがいきのこれるほどバトルッロワイアル世界はあまくない
迂闊に強大てきに挑めば地獄をみてしまの塵になる
やっぱりナイトがすごい


【ゴーレム@モンスターファームシリーズ 死亡】

【E-4/森林/一日目/日中】

【B-5/森林/一日目/昼】
【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×2)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還

406 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/16(日) 10:20:32 ID:i5/KvVAY0
投下終了します
題名はバーサク状態でベヒーモスに挑んだら、カウンターでメテオ食らって死ぬに決まってるだろ!です

407 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/16(日) 10:23:11 ID:i5/KvVAY0
状態表を修正させていただきます

>>405
【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×2)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還

408 ◆5omSWLaE/2:2013/06/16(日) 11:51:51 ID:4/NDwa420
投下お疲れ様です
さすがベヒーもスは破壊力ばつ牛ンのバーサク状態のぱんいtでボコられても平然としている
やはりカウtナーでメテオ使いの器用な方あg勝つのは戦術的にももっともでありゴーレムは相手が悪かった
見事な戦いだとかん心して今後の大活躍が期待されるかも?(注目されるべき)

409 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/16(日) 15:01:07 ID:i5/KvVAY0
魔人 アリスを予約します

410名無しさん:2013/06/16(日) 20:53:23 ID:SvM9m8Ps0
あーw
メテオカウンターはやばい、そりゃやばいw

411 ◆TAEv0TJMEI:2013/06/16(日) 21:01:52 ID:SvM9m8Ps0
ピカチュウ、エアドラモン、ティラノモン予約します

412 ◆5omSWLaE/2:2013/06/18(火) 21:50:42 ID:WGsL4QIk0
サボテンダーを予約致します

413 ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:19:53 ID:q1/a2QlE0
投下いきます

414NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:21:02 ID:q1/a2QlE0
灯台を出発したルカリオは、この場を抜け出すための仲間を探して歩いていた。
しかし、進めども進めどもその先には何者もおらず、また何もなく。
ただ、あるのは荒地だけだった。

目印になるものも周囲にはなく、唯一地を照らす太陽だけが方角を示している。
南から照り続ける日の光を背に、ルカリオは進んでいた。

孤独には慣れている。
これまで仲間が連れて行かれて以降、ずっと一人で生きてきた。
しかし、決して孤独が好きなわけではない。

もしあの人間の言っていた、モンスター同士のサバイバルゲームというものは、本当は嘘なのではないのか。
実は全ては夢で、今自分は道に迷っているだけなのではないか。
そんなことまで考え始めてしまった。

しかし、数時間の進行の末、ようやく街を視界に収めることができた。
そこで誰かを見つけることはできるだろうか。

期待と不安を抱きながら、街に接近するルカリオ。
そんな彼の鼻が、香ばしい謎の匂いを捉えた。



先ほどの戦いの際、止めは首を突き刺しての一撃となったため、血抜きの手間自体は比較的掛からなかった。
ドラゴンの腹を巨大な包丁で割き、内臓と残った血を絞り出す。
その後宙に吊り下げた体から全身の皮を剥ぎ取り、肉を露出させる。
足や腕を関節部からカットし、調理しやすいサイズまで切り取るところまでが下ごしらえだ。

そしてモモ肉、ハラ身、ムネ肉等用途別に取り分け、各部位をそれぞれに調理する。

小麦粉とスパイスを塗し、油でカラッとなるように揚げるフライドドラゴン。
酒で臭みをとり、同じドラゴンから採れた脂でさっと焼いたレアステーキ。
片栗粉と塩で味付けをした肉はオイスターソース、酒と共に炒める。

人がいなくなって久しいのか、若干風味が落ちている材料もあったが人間ではない自分達には大丈夫であろうし、それを言い訳に味が落ちることもないようにしっかり調理をした。

「うまそ〜」
「できたぞ。さっきのドラゴンの肉を調理させてもらったものだ。調理法は師匠直伝のレシピだ。
 少し量は多いが、どうやら来客もありそうだしな」

415NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:22:29 ID:q1/a2QlE0
と、民家のドアが開く。
そこに立っていたのはキツネのような、イヌのような2足歩行の蒼いモンスター。

「よう、お前も食っていけ。うまいぞ」

言われたモンスターはどうやら困惑している様子。
悟ったのか、ボナコンは話しかける。

「これ美味いよ。細かいこと気にせずに一緒に食おーぜ」
「……何をやっているのだ」
「見ての通り、食事だ」
「今は人間に殺し合いを強要されているのだぞ?」
「だが腹は減る。そして食うなら美味いものを食った方が士気も高まるだろう?
 さあ、座れ。量はかなりあるぞ」
「………」

ルカリオは座り、肉を手に取る。
胡椒とハーブの香りがルカリオの食欲をそそった。
が、一つだけ気になったことがあった。

「これは、何の肉だ?」
「先ほど討ち取ったドラゴンの肉だ」
「何?」
「うめえうめえ」
「言いたいことは分からなくはない。だがこいつは私に挑み、勝利したのは私だった。それだけの話だ。
 今を生きるものの糧となることは、何らおかしなことではない。
 師匠は言っていた。『食事は一期一会、毎回毎回を大事にしろ』とな。それはこんな状況でも変わりはしない」
「………」

モンスターは、肉を一口齧る。

「うまいっしょ?」
「…ああ。久しぶりかな、こんな美味い料理を食うのも」

そのまま大口をあけて肉を一気に頬張る。
ムシャムシャと食べる二体のモンスターを、椅子に座って見つめるクーフーリン。

「そういや、あんた何てモンスターなの?俺、ボナコンっていうんだけど」
「ルカリオ。ポケモンだ」
「全の路を行き万を司る者、妖精・クーフーリンだ」

と、水を一口飲みつつそう自己紹介したところで。

クーフーリンは入り口の方に向けてこう言った。

「お前もそんなところに突っ立ってないで入ってきたらどうだ?
 飯ならまだあるぞ?」

ギィ

416NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:24:14 ID:q1/a2QlE0

先ほどと同じように扉が開く。
緑色で虫を模ったモンスターがそこに立っていた。

少なくない殺気を振りまきながら。



獲物を仕留め損ねたスティングモンは、それに執着することなく南へ向けて移動していた。

カシャ カシャ カシャ カシャ

「フム…」

カシャ カシャ カシャ カシャ

「………」

カシャ カシャ カシャ カシャ

歩けども歩けども誰とも会えない。進む方向を間違っただろうか。さっきのあいつらでも追うべきだったか。
焦れたスティングモンは、羽を広げ空に飛び上がった。


ビーーーーーーーーーーーーーーーー

羽音を鳴らしながら飛行するスティングモン。
足音は鳴らなくなってしまったが特に気にも留めていない。他の参加者を見つけ出すことの方が優先なのだ。

と、空を飛ぶスティングモンは、ふと体の様子がおかしいことに気付く。
腕にかかる謎の疲労感。そして全身には謎の倦怠感。

進化の秘法によって進化を遂げたワームモン。
しかし本来のそれとは違う、所謂イレギュラーな要素によって行われた進化は、ワームモンの肉体に負荷を掛けていた。
加えて先の肉体再生。
スティングモンには、この肉体がエネルギーを求めているように感じられた。

今誰かと会えば戦うことは難しいかもしれないしもしワームモンに退化してしまっては事だ。
とりあえず先の飛行はそこそこの距離を移動したようではあった。
しかしそれでも進路上には人っ子一人ならぬモンスターッ子一匹も見つけられない。

どうしたものかと考え、まず少しの時間でも休息しようとしたスティングモンの目の前に、ボロボロになった村が見えた。



417NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:25:43 ID:q1/a2QlE0

「名前くらい名乗ったらどうだ?」
「シャドームーンとでも呼べ」
「何それあんたもちゅうn…ゲフンゲフン」

三匹の食事の中に入ってきた虫のモンスターは、椅子に座って肉を貪っていた。
どうやら腹をすかせていたらしく、それなりにあったはずの肉がドンドン無くなっていった。

「さて、飯のついでだ。少し話すとしようか」

と、唐突にクーフーリンは口を開いた。

「お前達、このサバイバルゲームをどう見ている?」

と、そう口に出した瞬間、ルカリオとシャドームーンの動きが止まった。

「私達は人間から見ればモンスター・怪物のようなものだ。
 奴らにとっては私達の命など、取るに足らないものなのかもしれない。
 だからと言って、本当に生き残りをかけて戦うべきなのか、とな」
「あんた一つ目のやつと斧持ったドラゴン殺してたじゃないすか」

そう突っ込んだボナコンの言葉は軽くスルーされ、ルカリオは口を開いた。

「私は、人間が許せない。仲間をモノのように扱い、我等ポケモンを家畜のように扱い、そしてあまつさえこのようなゲームを催して安全なところで高みの見物を続ける人間が。
 だからこそ、私は奴らを殺し、元の世界に帰って仲間を救うのだ。救わなければならない」
「そうか」

ルカリオはその相槌を同意の言葉と受け取り、クーフーリンに頼み込んだ。

「お前も、このゲームからの脱出には協力してくれないか?
 あの人間達、お前も許せないだろう?」

あの人間共を抹殺して元の森に帰るための。
目の前の男は自分なりの誇りを持っている。ならば殺し合いなどに乗ったりすることはないだろうと思っての頼み込みだった。

「その前に一つ聞かせてくれ。
 元の世界に帰り、仲間を助け、その後でお前はどうする?」
「え?」

しかし、クーフーリンから返ってきたのは肯定ではなく問いかけだった。

418NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:27:14 ID:q1/a2QlE0
「お前は人間に対して大きな怒りをもっている。ともすれば憎悪とも捉えられうるほどのな。
 もしここを抜け出し、森に帰って仲間を助けたとして、その後はどうする?
 人間と敵対して生きるのか、それとも人間達のいない場所でひっそり生きるのか?」
「それは…」
「それもいいだろう。だが、それではお前は何も変われない。
 何のために戦うのか、何がしたいのか、それを知っておかなければ、お前は未来を生きることはできないだろう」

ルカリオは戸惑う。
もしここを抜け出し、仲間を助け、その後どうするのか。
人間から逃げて生きるのか、それとも人間と戦い続けて生きるのか。

今考えることではないと思っていた。
しかしこのモンスターはその問いかけを今投げかけてきた。

「私は―――」
「くだらんな」

と、ルカリオの答えを待たず。
シャドームーンはクーフーリンの正面の席でそう呟いた。

「今お前達の考えるべきことは一秒でも長く長生きする方法を考えることだ。
 生き残ってどうするかを考えるなど、あまりにくだらん話だ」
「ほう、ならお前はどうするというのだ?」
「俺の答えなど決まっている。
 地獄を目指す。それだけだ」

そう言ったシャドームーンを、クーフーリンは正面から見据える。

「地獄、か。
 待ち人でもいるのか?」

クーフーリンの問いかけに答えず、シャドームーンは立ち上がった。
既にテーブルの上の料理は空になっている。

「休息の時間は終わりだ。では、これからお前達には死んでもらおうか」

次の瞬間、クーフーリンに向けてその拳の巨大なニードルが突き出され。
クーフーリンはそれを、テーブルを踏みつけることで上に押し上げて防ぐ。
食器の割れる音が響く中、ニードルはテーブルを貫き一瞬で大量の木屑を発生させ、シャドームーンの視界を覆う。
その隙に壁に立て掛けていたメタルキングの槍を取った。

驚きつつも、ルカリオは叫ぶ。

419NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:28:27 ID:q1/a2QlE0
「貴様、何故ゲームに乗った!そんなに人間共の言いなりになりたいのか!?」
「人間がどうなど、俺にはどうでもいい。俺にとっての存在は、あいつだけだ」
「なるほどな、お前にも大切な存在がいたのか」
「…少し口が過ぎたな」

シャドームーンは触手からレーザーのようなものを発射。
それはクーフーリンだけでなくボナコン、ルカリオにも向かっていく。
ルカリオは波動を操り盾として防ぐも、反応が遅れたボナコンは、

「ちょ――」

そのレーザーにより、体を貫かれてしまった。
緑色の体液を撒き散らしながら倒れるボナコン。

「ボナコン…!」

レーザーを難なく防いだクーフーリンが駆け寄ろうとしたところで、シャドームーンは今度は手から針を射出してきた
槍を翳し、首筋と心臓を狙ったその一撃を防ぐ。

と、今度はその羽で家の屋根を突き破り、天井を崩壊させながら、同時に一直線に突きを繰り出してきた。

「ザンダイン!!」

クーフーリンは巨大な衝撃波を作りだす。
暴風は巨大な竜巻となって崩れ落ちる民家の屋根を吹き飛ばし、シャドームーンを屋外へと吹き飛ばした。

クーフーリンはルカリオの抱き上げたボナコンに近寄る。

「あー、あんちゃん、何かすげえ痛いんだが。
 しかも目の前が真っ暗」
「ボナコン、しっかりしろ」
「これもう無理ですわ。
 まあこれで俺も、あの時冒険者にやられたアダマンキャリ男君やボナ実ちゃんのところにいけるんすかね」

「安心しろ、そこにいるお前の仲間も、すぐに一緒に逝ける」

カシャン

足音とともにこちらに姿を現したシャドームーン。
その肉体に刻まれた多くの傷跡は瞬く間に再生していき、そこからさらに強靭な肉体を生成していた。

420NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:30:49 ID:q1/a2QlE0
「貴様、その体は何だ?」
「より強くなるための、俺の手に入れた力だ」

虫の息となったボナコンに寄り添うクーフーリンとルカリオに対し、その右腕の手甲の針を構え、一気に突撃をかける。


その射線上にいるのはルカリオ。
迎撃に波動弾を打ち込むも左腕で払われ、それでもシャドームーンの速度は変わらない。


――――ギィン

まさに突かれようとした瞬間、ルカリオの前にクーフーリンが飛び出し、メタルキングの槍でその腕を受け止めた。

「師匠は言っていた。手の込んだ料理ほどまずい、鍛錬をせず得た肉体ほど鋭さに欠ける、とな」

目をもう少しで貫くほどの至近距離に針を突き出されても動じる様子もなく、クーフーリンはシャドームーンの体を蹴り飛ばす。
後ろに下がったシャドームーンはその手の針をこちらに向かって発射した。

「テトラカーン」

クーフーリンが呪文を唱えた瞬間、皆の目の前に防壁が現れ針をシャドームーンに反射した。
それを両手で受け止めると同時にクーフーリンは槍を突き出す。
風を斬る高速の突きを、シャドームーンは受け止めた針で受け止め。
巨大な金属音と共に、針は砕ける。

「…チィ」
「諦めておけ。私は全の路を行く者。
 何者も私を捉えることはできない」
「ならば、この世の全てを破壊するだけだ」

と、再度ニードルを突き出すスティングモン。
狙っている位置は首筋。
直線的に狙われた一撃は防ぐのは容易い。

「――何度やっても無…!」

と、それを受け止めて気付く。
狙いはこちらの首筋から僅かにずれている。
その先にいるのは。
重傷のボナコンと彼を介抱するルカリオ。

受け止めたまま、そのニードルは彼らの元に放たれ。

クーフーリンは腕を伸ばし、己の二の腕で受け止めた。
針の勢いにバランスを崩されつつもどうにか踏みとどまり。

「スパイキングフィニッシュ」

その体に勢いよく、左のニードルが突き出される。

「…!!」

421NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:32:16 ID:q1/a2QlE0
ドスッ、と。
何かが肉に突き刺さり骨を砕くかのような音が響き。

いきなりの生々しい音に思わずルカリオは目を閉じた。
血のような臭いが辺りに広がる中、ゆっくりと目を開く。

クーフーリンの胸を、巨大な針が貫いていた。
しかし、クーフーリンは右腕でニードルを力強く掴み押さえていた。

「……!」
「師匠は言っていた。
 刃物を握る手で他者を幸せにできるのは料理人だけ。
 戦士の手は、幸せを守るためにあるものだ、と」

ゼロ距離に攻撃を受け止めたクーフーリンは、足で槍を跳ね上げ、ニードルの刺さった左腕で掴み。

「―――奥義、一閃」

そのまま片腕で、鋭い覇気を纏わせた一閃をシャドームーンに、叩き込んだ。

多大な威力の、まさしく奥義のごとき一撃は緑の外骨格を切り裂き、それだけに留まらず莫大な衝撃を送り込み。
割れる窓ガラスと崩れる民家の壁と共にシャドームーンの体を吹き飛ばした。

「…浅かったな」

もし両腕で槍を持っていれば、もし腕にニードルによる傷を負っていなければ。

もしこの胸のニードルが、致命傷でさえなければ。

あいつを止めてやれたかもしれなかったが。

口からこぼれそうになる血を飲み込む。

「クーフーリン、ボナコンは…」

あれからそれなりに時間が経ってしまった。
もうボナコンは虫の息。意識は既になく、命は数分ももたないだろう。

「案ずるな。こいつは助かる」
「本当ですか?!」
「ああ。だが、私には共に行くことはできない。
 こいつが起きたら伝えてくれ。私のことは気にするな、と」

その言葉で、ルカリオは悟った。クーフーリンももう長くはないのだと。

「シャドームーンは私が引きつけてやる。呪文詠唱が終わったら逃げろ」
「…分かった」

422NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:32:52 ID:q1/a2QlE0
ボナコンを抱えて立ち上がるルカリオ。
クーフーリンは地面を赤く濡らしながらもそんな彼に、背を向けたまま話しかける。

「そうだな、最後にこれだけは言っておく。
 師匠は言っていた。一は全、全は一。これが世界の真理なり、と」
「一は、全…」
「世界を構成するのはこの世に存在する多くの一。一つでも欠ければそれだけで世界は壊れるものだ、と。
 そしてこれは私の、いや、俺の言葉。
 だからこそ、自分を変えれば世界が変わる。かつて乱暴者のセタンタであった俺がこうして英雄になれたように。
 変われとは言わない。だが、決して今に流されるな」

「――――リカームドラ」



スティングモンは起き上がる。
体に刻まれた切り傷は治癒され、そこには先よりも強靭な肉体が顕現している。

「…あとどれだけの傷を受ければ、俺は俺でなくなるのだろうな」

再生の度に理性が磨り減る感覚があった。
だが、たとえその先で自分自身が理性のない何かにとなろうとも。
それで地獄に近づけるならば構わない。

あのクーフーリンという男。
奴は越えなければならない壁。この手で何があっても殺さなければいけない。
殺さなければ、強くなれない。

起き上がり、腕をぐるりと回す。
痛みはない。動きに支障もない。むしろ若干力強くなったように感じる。

クーフーリンは未だに家の中で立ち続けている。
おそらく俺が戻るのを待っているのだろう。

手甲から再度ニードルを取り出す。
あのルカリオとかいう生き物と虫はいないようだ。
だが関係ない。今殺すべきは目の前で立つあの男。

ダメージから判断するに、もう長くはないのだろう。
だからこそ、次の一撃で決める。

「―――スパイキング―――」

ニードルに力を込める。
今度こそ、その心臓を貰い受ける。

相手は構えをとらない。しかしスティングモンは油断しない。
構えをとらずとも、十分に引きつけてからのカウンターを取るやつなのだから。
もう1メートルもない。これなら、いける。

423NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:34:01 ID:q1/a2QlE0

「フィニッ……―――!?」

突き刺されようとしたニードルはクーフーリンの目の前で止まる。

腕を引き、動かぬクーフーリンの足を蹴り飛ばした。
槍を地面について、しかし力強く立っていた――ように見えた男は。
力なく倒れた。

「…死んだか」



ルカリオはボナコンを背負って走り続けた。

足は速い。ルカリオの袋に入っていた道具、スピーダーによる効果だ。
可能なかぎり、シャドームーンからは離れた場所へ移動しなければならない。

先ほど男が唱えた呪文により傷はほとんどふさがったボナコン。しかし体力消耗のためか未だに目は覚まさない。

あのシャドームーンというモンスターは強かった。
人間だけでなく、あのようなモンスターとも戦わなければならないのだ。
クーフーリンは残念だったが、もっと仲間を増やして確実に人間に反逆できるようになりたい。

そして、人間を殺し、皆を救いに帰るのだ。そして―――

(その後はどうする?)
「……」

思考を止め、走り続けるルカリオ。

例えどんな相手が立ちふさがろうと、心を変えるつもりなどない。

ただ。
今は亡きあの男に言った言葉が、どうしてか心に残り続けた。

【F-2/草原/一日目/午後】

【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:疲労(大) 、意識無し
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:目立つ
1:??????
[備考]
※オス
※支給品オッカの実を消費しました
※最新のボナコンスレは↓
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/


【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(中)、スピーダードーピング中
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 1:まずは志を同じくする仲間を探す
 2:呪いを解除するには……どうすればいい?
  3:クーフーリン、私は…
[備考]
オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。

424NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:34:46 ID:q1/a2QlE0





クーフーリンの肉体をリロードするスティングモン。
デジモンには見えなかったが、性質がそれに近かったのかその肉体を体に収めることはできた。

「グッ…、ガアアアアアアア!!」

リロードし終えたその時、スティングモンは苦しみもだえ始めた。
スティングモンの全身に痛みが走ったのだ。

クーフーリンは高クラスの悪魔。妖精であり幻魔でもある存在。
それを取り込むことは大きな経験値となった。

スティングモンの肉体を進化させうるほどの。
しかし正規の進化を遂げるには、今のスティングモンはイレギュラーなものを取り込んでいた。

進化の秘法。
それは正規な進化を行おうとする彼の体に反発し、莫大な苦しみを与えていた。

バチッ

その肉体に、一瞬緑色が薄れ王虫を模し、人型に近付いた体が浮かび上がる。
しかしそれは次の瞬間には消え、元のスティングモンの姿で留まっていた。

「…まだ、…足りない、か」

肩で息をしながらも立ち上がり、己の肉体を眺める。
特に痛んだのは傷を負い、再生した部位。
もしこの痛みが続くなら、俺は理性と引き換えにもっと強くなれるのか。

「それでいい。俺は俺でなくても構わない。あいつのところにいけるのなら」

リロードの際に残った槍をその手に取る。
もし進化することができたら、さぞ手に馴染んだだろう。
だが今の肉体はスティングモンのまま、しかし何が起きたのか、緑色だった全身は鈍い銀色に光っている。
データが突然変異でも起こしたというのか。

カシャン


だがそれでも、彼は止まらない。
地獄にいけるその時を信じて。

カシャン、カシャン、カシャン

そのために陰月の名を持つ魔物は、ただ獲物を、力を求めて歩き続けるだけだ。

425NEXT LEVEL ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:35:27 ID:q1/a2QlE0



【F-2/廃村/一日目/午後】

【ワームモン(スティングモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(大)、データに異常
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)、メタルキングの槍
[思考・状況]
基本:地獄へ征くその日まで、殺し続ける

[備考]
オス。一人称は私。
クーフーリンをリロードしました。
それにより強化され進化しかけましたが、イレギュラーな力を得ていたためデータが異常を起こしました。
全身の緑色の部分が銀色に変色しています。





誰もいなくなった一軒の民家。
激しい戦いで見るも無惨な形となった家の中。


かつてクーフーリンが頭を守るものとしてつけていた白い額当て。
主を失い、役割を終えたその小さな防具は、静かに消滅していった。


【妖精クーフーリン@真・女神転生シリーズ 死亡】



《支給品紹介》
【スピーダー@ポケットモンスターシリーズ】
ルカリオに支給。
一時的に使用者の素早さを上げるドーピングアイテム。

426 ◆Z9iNYeY9a2:2013/06/18(火) 23:35:42 ID:q1/a2QlE0
投下終了です

427 ◆5omSWLaE/2:2013/06/19(水) 00:35:40 ID:Ejwde3ps0
投下お疲れ様です
ほんのひとときの休息、そして熾烈な戦い
前半の料理と食事のシーンはほっこりしますねぇ
さらに同時にマーダーを交えての、殺し合いに対する互いの意思を示し合う貴重な機会でもありました
普段なら問答無用で襲いかかるであろうシャドームーンすらも捕らえてしまう、料理は凄い!
後半の戦い、死力の限りが尽くされた素晴らしいものでした……!
己の想いを託し、命と引き換えに仲間を逃がすその姿、実に魅力的です
変わり果てていくシャドームーン、彼は果たしてどのような道を辿るのか……目が離せません……!

428おままごと ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 02:32:54 ID:SEki15fg0

進化の秘法が皮肉にも正常な進化の妨げになりましたが、
それが却ってシャドームーンを作り上げているというのがなんとも皮肉に感じられます。

クー・フーリンも短い間でしたが、
ボナコンの道を切り開き、ルカリオに道の可能性を提示し、
そして、道の礎になった素晴らしいキャラクターだったと思います。

投下乙でした。

投下します。

429おままごと ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 02:33:07 ID:SEki15fg0

☆ アリスのパーフェクトおりょうり教室

まず、おいしそうなひき肉をよういします。
あとは土があれば、それでだいじょうぶ。

ちょうどいいぐあいまできざんだお肉があるので、それを使いましょう。

え?なにを作るかですって?
アフタヌーンティーはかるい料理しか出ないんだけど、
今日はゲストのワンちゃんがまんぞくできるように、お肉をたっぷり使ったハンバーグを作りましょう。

ぺちぺちこねこねぺちぺちこねこね……

お肉と土を混ぜてこねるの、いいぐあいにまざったら、それをやいてね。

かんせい!

じゃあ、つぎはお紅茶ね。

すぐ下にあかいお水があるので、それを使いましょう。
あとは、ふっとうさせたあとハッパをいれてむらしたらかんせい!

おさらとティーカップはね、アリスの魔法で出せるんだよー

430おままごと ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 02:33:18 ID:SEki15fg0



椅子もテーブルも無いけれど、たまには木洩れ日の当たる場所でアフタヌーンティーを楽しみましょう。
ほら、おあつらえ向きに赤い絨毯が敷き詰められています。
幼い主人は青のワンピースで主賓のぬいぐるみをお出迎え、さぁマッド・ティーパーティーを始めましょう。

「さぁ、召し上がれ」
おやおや、お客様は口を開かない。
それも当然、お客様は命なきぬいぐるみ、獣の皮に内蔵と筋肉と骨を詰め込んだ世界に唯一つの玩具。

「えいっ」
ギギギと音を立てて、刃がぬいぐるみのお口を開きました。
腐りきったその黒ずんだ肉は、グジュリと腐臭と黄色い粘液を赤い絨毯に撒き散らしました。
まぁ、なんてお行儀の悪いお客様なのかしら。と少女は思いましたが、
お腹が空いているのね、と思って特に窘めることはしませんでした。

少女は紅茶を、ぬいぐるみのお口へと流し込みます。
ドロリと流し込まれた紅茶がぬいぐるみの黒い肉に染みこんで、その重さで肉が腐り落ちて赤い絨毯に混ざりました。
ぬいぐるみの体に開いた穴からは、次々にドクドクと紅茶が漏れていきます。
元々赤黒かった絨毯が、さらにその黒さを増していきます。

「残してはいけないのよ?」
しかし、招かれた客が出された物を残すなどというのは失礼なことです。
少女は赤い絨毯ごと、腐り落ちた肉と紅茶を掬いあげてぬいぐるみの開いた口の奥、胃に相当するであろう部分へと勢い良く突っ込みました。
勢い余った少女の白い手がぬいぐるみのお腹を貫通しましたが、抗議が無い以上は文句はないということでしょう。

少女の白い手は赤色と黄色のぐじゅぐじゅとした液体と黒い肉片で汚れてしまいましたが、
折角、お客様が来てくれたのですから最後までアフタヌーンティーを続けます。

「さぁ、ハンバーグを召し上がれ」
そう言って、泥と肉でこねられたハンバーグを手に持ちお客様に食べさせようとする少女でしたが、考えを改めました。

「いいえ、お腹が空いているのなら……直接、お腹に入れて上げたほうがいいわ」
ぬいぐるみの先程貫通した部分の端と端を両手で持ち、扉を開くように左右に開くと、腐った肉はグジュリと音を立てて、あっさりと開きました。
完全に開いたお腹から先程の紅茶が黄色い液体と肉と赤い絨毯と一緒に溢れ出しそうになりましたが、
少女はぬいぐるみをひっくり返して、ぬいぐるみのお腹が空を向くようにしてさっきの紅茶が零れないようにしました。

少女は手に持ったハンバーグをぬいぐるみのお腹の中に入れました。
「美味しい?」
少女はおままごとの時はいつもそうするように、ぬいぐるみに頷かせました。
その勢いで、限界を迎えていたぬいぐるみの頭はぐちゃりと赤い絨毯の上に落ちました。

「良かった」
しかし、少女は気にしません。
少女のともだちは大抵腐っていますし、首が無いことだって珍しくはないのです。

「そうだわ」
少女はぬいぐるみの頭をぬいぐるみのお腹の中に入れてあげました。
お腹が空いているなら、頭を食べればいいと、どこかで聞いた覚えがあったからです。

ぬいぐるみの頭は、ぬいぐるみの背中をぐちゃりと貫通して、赤い絨毯に落ちました。
落ちた時に、熟れた果実のように弾けてぐちゃぐちゃになりました。


アフタヌーンティーごっこを済ませた少女は、いつもの様にお昼寝をすることにしました。
遊び盛りとはいえ、まだ少女、遊んだら寝ることも大事です。
それに少女は魔人、太陽の時間ではなく、月の時間の住人なのです。
やはり、遊ぶならば夜のほうがいいものです。

431おままごと ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 02:33:51 ID:SEki15fg0


ピンクの内蔵と紅い血で彩られた絨毯の上で少女は眠りにつきました。
その光景はまるで、完成を投げ出したジグソーパズルの上に疲れて倒れこんでしまった様。

近くの首なしの獣の死体はただ無音で、異臭を話しながら完全に腐り落ちて絨毯の仲間入りを待つだけ。

死のゆりかごから生まれた彼女は、自らが創りだした死のベッドで眠ります。

次に彼女が目を覚ます時、
それは魔の眷属が最も力を発揮する時──夜でしょう。

彼女の目覚めが、誰かの永遠の眠りの始まりとなるでしょう。


目を覚ましたら……何をしよう。

うとうとと考えながら、少女は眠りにつきます。


「おやすみなさい」

これから出会うであろう、たくさんの友だちと遊ぶ夢を見ながら。

【C-6/森林/一日目/午後】

【アリス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康 、魔力消耗(大)、睡眠中
[装備]:チェーンソー
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:遊ぶ
1:疲れた(魔力使いすぎた)ので一旦お昼寝

432おままごと ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 02:34:08 ID:SEki15fg0
投下終了します、
妖精ジャックフロストを予約します。

433名無しさん:2013/06/19(水) 02:44:38 ID:am44vv3U0
クーフーリンかっけええ!
アリスこええええ!
そっかー、ジュペッタってこうやって生まれたんだね!(錯乱

434名無しさん:2013/06/19(水) 07:35:59 ID:LYx0esK.0
アリスはかわいい(震え声)

435 ◆5omSWLaE/2:2013/06/19(水) 09:05:30 ID:klyhTqpMO
投下お疲れ様です
どこまでも純粋で幼い少女の、ごくごく普通の一人遊び……玩具が悪かったのか……?
子供の目線からの生々しい描写がリアルに書かれてて、グチャグチャになった玩具の生理的険悪感に拍車がかかります
しばしのお昼寝から目覚めるまでの間は、会場がほんの少しだけ平穏になりそうです

にしても、お腹が空いたら頭を食べればいい……って教えたのは誰でしょうねぇ

436絡繰考察 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 16:44:41 ID:SEki15fg0
投下します

437絡繰考察 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 16:44:55 ID:SEki15fg0


見たことのない木の実は、齧り付いてみるとやはり味わったことのない味だった。
甘さ以外の全ての味が口の中で複雑に拡がるような不思議な感覚だ、美味くは無いが嫌いじゃない。
ジャックフロストは近くに成っていたその木の実をふくろに詰め込むと、再び探索を開始した。

地理や植物にお詳しいというわけではない、
しかしこの木の実は今までに見たことはないし、少なくともロストグ……東京には存在しないものだ。

かといって魔界の木の実かといえば、それもどこか違うように思われた。

つまり、今現在ジャックフロストにわかっていることは、
見たことのない木の実が成っているということと、少なくともここが東京ではないということだけである。

「ホッ、ここがドコだかわかったところでどーにもならねーホ」
そう、己を死に至らしめる呪いを解呪しなければ脱出もクソもない。
最も自分に呪術系スキルも知識も無い、自分のメインスキルは物理攻撃だ。

かといって、他の参加者が呪いを解除出来るとも思ってはいない。
この殺し合いを根本から破壊される者を呼ぶだろうか、いや呼ぶとは思えない。

しかし、ジャックフロストの目に絶望はなかった。
何故ならば、既に彼はこの呪いを解く方法を2つ考えていたのだから。

まず、1つ目に彼が考えていた事は死ぬこと。
全てのバッドステータスは死という強大なステータスに塗り潰される。
その後、蘇生すれば問題なく解呪は行われるだろう。

問題は2つ、
蘇生手段が無い事と。
そもそも、呪いが個人に掛けられているとは思えない事。

蘇生手段に関してはスキル変化が起これば、可能性は起こり得る。
しかし、ジャックフロストにはモリーが天罰の杖でレオモンを殺したことが引っ掛かってならなかった。
もちろん、天罰の杖での殺害は殺し合いへの良い焚きつけになるし、
何より、生物を炭化させるというインパクトは参加者達に強い印象を焼き付けるだろう。

しかし──
「『ユーたちの息の根を止める呪い』……なんてものを後出しで言うぐらいなら、そいつで殺しておいた方がいいホ」
天罰の杖での殺害が、息の根を止める呪いの証明にはならない。
そこがジャックフロストを悩ませた。
可能性として考えられるのは、使わなかったか使えなかったか存在しなかった。

その様な呪いは存在しなかった──それがジャックフロスト達にとっては最善だが、
呪いが存在しないのならば、天罰の杖のインパクトを活かしたまま、
遠距離の天罰の杖の攻撃によって殺されるとでも言っておいた方が良い。
だから、呪いがそもそも存在しないなどというのは考えづらい。

使わなかった──その理由を考えるには、モリーの情報が足りない。
先程上げた理由以外を考えるのならば、客席への受けを考えての結果ろう。

使えなかった──条件が整わなかった。ジャックフロストとしては、それが一番しっくりと来る。
もちろん、即効かつ確実でない呪殺など、何の脅しにもならない。
しかし、何の問題もなく呪殺を遂行でき、かつ先程の場所で呪殺を行えなかった理由に関してジャックフロストは1つだけ心当たりがある。
呪殺を個人ではなく、世界に仕掛けた場合。
すなわち、この殺し合いの舞台全てが結界で構成されている場合。
それならば、参加者の状態に関係なく……そう、一度死んで蘇ろうが、関係なく呪殺を行うことが出来る。

「脱出すれば、呪いは解ける……しかし、脱出しようとすれば死ぬ…………因果なもんだホ」
もちろん、この仮定が正しいとジャックフロストは思っているわけではない、しかし、可能性は高いとジャックフロストは考えている。

ならば、もう1つ。
呪いを元から断つ、術者の息の根を断つことで強制的に呪いを解除する。
個人に掛けているにしろ、島に結界を張っているにしろ、
少なくともこれ程大規模なものならば、監視と応対と維持を兼ねて術者はこの島にいなければならないだろう。

しかし、術者の死によって強制的に呪殺が発動する可能性も……そこまで、考えてジャックフロストは叫ぶ。

「ホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!オイラに頭使わせるんじゃねぇホ!!!
とにかく動いて、何とかするホ!!!!!考えるのはオイラ以外がやれホ!!!!!!!!!!!」

438絡繰考察 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 16:45:05 ID:SEki15fg0

ジャックフロストは雄叫びと共に走りだす。
「ホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!なんか怪しい物を見つけてぶん殴ったらどうせ止まるホ!!!!!!!」
考えるよりも動いている方が性に合っているのだ。
オーバーヒートを起こした彼の頭は、プスプスと雪解けながらジャックフロストを走らせる。

「怪しそうな洞窟発見ホ!!」
何かを隠すのならば、洞窟の中というのは良さそうに思える。
最も、暴走状態のジャックフロストはそんなことに関係なく突入していただろうが。

ジャックフロストが入ってみると、洞窟特有のヌメヌメとした湿気は無いように思えた。
乾いている──人工的に整備されている。
まだ冷えている雪の頭が考える、洞窟内部での戦闘が行いやすいように……少なくとも滑って転んで死ぬような事は無いように改修したのだろう。

「気に入らねぇホ」
見世物にされていることを、再確認させられてジャックフロストは苛立ちとともに逆に落ち着いた。

「…………」
ペタペタという足音と共に、一人洞窟の内部を探索する。
例え、何も無かったとしても出口がどこにあるか確認出来れば、移動の役に立つだろう。



「何もねぇホ」
行けども行けども、暗く続く洞窟のみ。
もちろん、主催側の設備などといったものは容易に参加者に見つかるようなものではないだろうが、
しかし、出口すら遠いとは流石のジャックフロストもこれを予測してはいなかった。

「…………一旦、帰ったほうがいいホ?」
二時間程、暗闇の中を歩き続ければ、自分の行動を疑うようになる。
目印として撒いたオレンのみの破片を辿っていけば、入り口まで戻れるだろう。

「いやいや、まだまだ突き進むホ!」
いや、戻れる道があるのならば突き進んだ方がいいだろう。
ジャックフロストは洞窟の探索を続行することに決めた。

「いい加減!なんか見つかれホ!」
とは言ったものの、ジャックフロストは我慢強い悪魔ではない。
突き進む事を決めてから、15分。
ジャックフロストの堪忍袋の緒を切らすには十分だった。

「もう、帰るホ!!」
オレンのみの破片を回収しながら、ジャックフロストは入り口へと戻る。
違和感の発見は、回収の途中の事だった。

「ヒホ?」
破片を拾おうとして触れた地面の材質がどことなく違う。
岩の質感ではない、カモフラージュされているが、この質感は金属のそれだ。

ならば、ジャックフロストが拳を振るうことにも躊躇はない。

「崩オオオオオオ!!!!」
ジャックフロストの連撃が地面を砕く、ジャックフロストの鉄拳の前には金属ですら音を上げる。

「こっ、これは…………」
砕いた地面の底にあったのは、生物の内臓の中のような光景が広がっていた。
ジャックフロストもよく知っている、悪魔の結界だ。

「夕食までに帰れそうだホ」
ご丁寧に付いていた梯子から降りて行くと、瘴気に満ちた狭い空間へと辿り着く。
中央にはコンピュータが鎮座し、それ以外には何も無い。

「こいつは…………」
ジャックフロストがコンピュータへと一歩足を踏み出そうとしたその時である。

『警告スル 1分以内ニ退出セヨ サモナクバ 呪殺ガ発動スル』

無機質な死の宣告が、部屋中に鳴り響いた。

439絡繰考察 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 16:45:16 ID:SEki15fg0

「チッ……」
ジャックフロストは梯子を伝って、元の洞窟へと戻る。
負けず嫌いではあるが、確実に負ける喧嘩をしてやる気はない。

気がつくと、嘲笑うかのように地面は修復されていた。
現時点での攻略は不可能だろう、呪いが続く内は。

「だが、尻尾は掴んでやったホ……」
しかし、ジャックフロストは見た。
先程の部屋の中央に鎮座するターミナルを。

移動用か、あるいは、それ以上の目的があるのかは解らない。
しかし、確実に脱出の役には立つだろう。

オレンのみを目印に置き、ジャックフロストはこの場を立ち去る。

「…………」
殺されなかった事に、ジャックフロストは苛立っていた。
現段階ではアレが発見されたところで主催側には痛くも痒くもないし、ジャックフロストもアレに影響を及ぼすことは出来ない。
だから、ジャックフロストは見逃されている。

「ぜってー、後悔させてやるホ」
怒りに燃えたジャックフロストは一人決意を新たにする。



「あのヒゲのハゲは、泣いて謝るまでぶん殴ってやるホ」

【D-6/洞窟/一日目/日中】

【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:オレンのみが詰まったふくろ
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る

[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。

E-6でターミナルルームらしき部屋を発見しました。
目印としてオレンのみを起きました。

440絡繰考察 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 16:46:19 ID:SEki15fg0
投下終了します

441名無しさん:2013/06/19(水) 18:48:42 ID:am44vv3U0
投下乙〜!
まさかこいつが考察一番乗りとは
単に喧嘩っ早いってんじゃなくて、確実に負ける喧嘩をしない=勝つように手を尽くす、ってことなんだな

442 ◆5omSWLaE/2:2013/06/19(水) 19:31:50 ID:klyhTqpMO
投下お疲れ様です
なんと、洞窟内にターミナルがあったとは……!
この催しにおける核心部分が、少しだけ姿を表しましたねぇ
さらに、ジャックフロストの考察も非常に鋭い! 意外にも知恵者だった!
モンスターたちはもう一度、モリーと対峙出来る時が来るのか…… 期待が高まります!

443 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/19(水) 22:49:49 ID:SEki15fg0
キングスライム、グレイシア、ソーナンス、ピクシーを予約します。

444 ◆TAEv0TJMEI:2013/06/23(日) 19:25:06 ID:sXOa9gcw0
いきなりで申し訳ありませんが延長させて頂きます

445 ◆5omSWLaE/2:2013/06/25(火) 23:45:30 ID:htSLBqGg0
サボテンダー投下致します
タイトルは「サボってんじゃねえよ」です

446 ◆5omSWLaE/2:2013/06/25(火) 23:46:21 ID:htSLBqGg0
「……案外静かだな、僕の周辺が際立ってるのかもしれないけれど」

森の草木に身を潜めたまま、文字通り植物の如く身動きを取らずに待機していたサボテンダー。
あれから四時間以上は経過しただろうか。
現在までの間、彼は誰とも接触していなかった。
遠くからうっすらと爆発音がしたり、どこからか悲鳴が聞こえたりしたものの、姿は目に入らない。
それはそれで、彼にとっては好都合である。
自分が無駄なリスクを侵すことなく、参加者が減っている証拠なのだから。

特に退屈さを苦としない彼は、そのまま他の参加者が通るのを待ち続ける……。
……ふと、彼の視界に妙なものが写っているのに気が付いた。
水平線の彼方に見える一つの影を、サボテンダーの空虚な目が捉える。
うみねこか何かか? いや、うみねこにしては少々にデカイような……。
そのうちにそのシルエットは見る見る大きくなり、想像以上に巨大な物体なのだと気づいた。

(あれは一体なんだ? 空を飛ぶ鯨か何かか……?)

楕円を横にした形状の巨大な浮遊物。
これまでずっと砂漠で過ごしてきた彼は、あのような物をこれまで見たことが無かった。
故に、あれが何なのかわからない。ひとまず彼は様子を見続けることにした。


 ◆


それは一台の飛行船である。

モンスター同士の熾烈な争いをモニター越しではなく直接で見たい……。
そんな考えを抱く者たちは少なからず存在する。
この飛行船は、そういった貪欲な富豪の方々に向けて作られたツアーバスのようなものである。

飛行船の中で、人々は酒を飲み交わしながら言葉を交わす。
同じ賭け事を愉しむ者同士であるがゆえに、会話にはそれなりに華が咲く。
その楽しみ方も人それぞれである。

「ワシが注目しているピクシーはまだ生きているかね?」
「まだ生きてるみたいですよ」
「おっ、そうか。ピクシーには10万ゴールドも注ぎ込んだんだからなぁ。是非とも勝ち上がって欲しいもんだ。はははは……」

この老齢の富豪の楽しみ方は、金持ちの間では割と一般的なやり方であると言えよう。
自分が気に入ったモンスターに大金を賭けることで、その応援にも熱が込もる。
やはり何事も、自分の好みを選んだ方が楽しい。ギスギスするような『勝負の勝ち負け』よりも重視したいところ。
勝ち負けよりも『娯楽への投資』が優先される。大金はあくまで娯楽へのスパイス……そういう思考である。

モニターを指差しているのは、母親と共に搭乗してきた少年。

「ねぇママ、ルカリオなんで芋虫運んでるの?」
「さぁどうかしらね。きっと仲良しなんじゃないかしら」
「えー、嫌だよ。そんな弱そうな虫なんて殺しちゃえばいいのに。
 つまんないなぁ。波動弾使ってよー。ルカリオー」

この少年の場合は賭博目的ではなく、モンスターの勇姿を見るために来ている。
つまり純粋に観戦だけを目当てにしている者。この催しは賭博をしない者にもエンターテインメントとなり得るのだ。

「俺は……ッ! 大穴であるピカチュウに賭けた……!
 見ろ……あの回避率、あれじゃあ埒が明かねぇ…… だが、これでいい……!
 ああやってかわし続けている限り、敗北することなど無いからだ……ッ!
 コイツは勝てるさ……、俺はコイツの勝利を信じている……俺の直感を信じるんだ……!」

飛行船に乗り込めるだけの富豪でありつつも、このように勝つことに拘る者。
ハイリスクなギャンブルを行い、あわよくば莫大な金を手にする……その流れに酔いしれるのも楽しみ方の一つ。

447 ◆5omSWLaE/2:2013/06/25(火) 23:46:44 ID:htSLBqGg0
また、この催しのシステムを利用することで金を稼ごうとする者もいる。

「やぁやぁ、あなたはどこに賭けましたかな?」
「私はすえきすえぞーに賭けてたんだがなぁ……開始早々殺られてしまってね。
 まぁ、せっかく飛行船に乗れることだし、あとはのんびり酒でも飲みながら観戦していようかと」
「それは残念ですな……。しかし、実は今ここにワームモンのかけふだが大量にあるんですよね。
 どうですか? これも何かの縁、良ければ貴方だけにお売り致しましょう。
 きっと応援するモンスターが生きていたほうが、酒も美味しく感じられることでしょう」
「ふむ、そうだなぁ……。それじゃあ、100枚ほど買おうかなぁ」
「15万ゴールドでいかがですか?」
「そりゃキミ、ちょっと高すぎないかね?」
「何を言いますか。ワームモンは今、相当注目されています。当初予測されていたよりも強かったんですからねぇ。
 きっともう少し時間が経てば、もっと高額でも買おうと思う人はたくさん出てくるんじゃないでしょうか。
 優勝すれば一気に元が取れるでしょうし、不満になったならばまた誰かに売ればいいのです。
 何よりも、もうしばらくは熱を込めて観戦を楽しむことが出来ますよ。あなたにとって悪い話ではないはずです」
「ムム……そうだな。では頂こうか」

このように、あらかじめかけふだを大量に購入し、それを誰かに売ることによって儲けを出す者。
モンスター格闘場では基本的に、試合が始まる前にのみかけふだを購入する事が出来る。
それはこの闘技場においても同じである。しかし、この催しの場合は普段の通常のものと比べて試合時間が長い。
ゆえに、かけふだを売買する猶予が存在するわけである。
多少値段を高くしても需要は存在する……これによって元手を超える額を稼ぐことが出来るわけなのである。
無論、ここまで破格の値段による商談が成立するのは、富裕層が集まる飛行船内だからこそであろう。
この男のように、利益よりも効用を求める者には、かけふだが再購入出来るのはなかなかに魅力的な話なのだ。




乗客が会話を楽しむ中、乗務員室から一人の女性ガイドが現れ、マイクのスイッチを入れた。
小さくハウリング音が鳴り、ひと呼吸置いてから解説が入る。

「この飛行船は高度約100mの高さで会場の周囲をぐるりと周回致します。
 その際に平地や荒野、山脈や宙を舞うモンスターたちを様子を観戦する事が出来ます。
 皆様に双眼鏡を御支給致しますので、どうぞご自由にモンスターたちの戦いをお楽しみください。
 また、森林や物陰などにいるモンスターの様子につきましては、モニターの方で状況をご確認頂けます」

モニター……飛行船内部には数十という個数のモニターがズラリと並べられている。
そこに映るのは森林や山道、平原、湖や川底、廃村の内部など、様々な場所に設置された隠しカメラの映像。
映像の中にはモンスターの姿を追っているものもあるため、基本的にはだいたいの様子を伺うことが出来るのだ。

「ちょっ待てよ! 直接見れると思ってきたのに、双眼鏡かよ!
 もっと間近まで近寄ること出来ないのか?」
「申し訳ありませんが、これ以上の接近をしてしまうと、モンスターたちに過度の刺激を与えてしまう恐れがあります。
 そのため、島の上空も避け、海岸線に沿って海上を周回する予定となっております。
 本飛行船はモンスターによる攻撃を反射する仕様が施されているものの、不慮の自体が起きないとも限りません。
 お客様方の安全を確保するためにも、ご理解頂けるようお願いいたします」
「ちっ……」

深々と頭を下げるガイド、乗客はしぶしぶと引き下がる。
確かに、迂闊に近寄ってうっかり飛行船を破壊されでもしたら溜まったものではない。
しかし、わざわざ高額な金を支払って乗ったわけであり、これには不満を抱かざるを得ない。

双眼鏡が全員に行き渡り、乗客たちは皆レンズを覗き込む。

「おう、なんか見えるか?」
「そうだな、ヤシの木が見えるぞ!」
「あのさぁ……」

富豪たちの間で他愛の無い会話が盛り上がる。
現在の飛行船は島の最南の辺り、近くには森林ばかりが目立つため、モンスターの姿は視認出来ない。
そこから時計回りに一周ぐるりと回る予定になっている。
荒野や平原などであれば、何かしらのモンスターの姿が確認出来ると思うが……。

「……ですが、乗客の皆様のためにサービスしませんとね……」

ガイドの女は小さく呟く。
彼女はこの催しの主催者、モリーからとある指令を受けていた。

『殺し合いに消極的なモンスターに忠告を送り、戦いを加速化させろ』と。

448 ◆5omSWLaE/2:2013/06/25(火) 23:47:11 ID:htSLBqGg0
モンスターの中にも戦闘を好まない物や、死の恐怖に怯えて逃げ隠れを行う物がいる。
彼らの思考は理解出来る。しかし、だからと言って彼らに時間を無為に過ごされてはこちらとしては不都合だ。
戦いを長引かせて、観客を退屈させてはいけない。
我々が半ば強制的にでも、戦いに消極的なモンスターを舞台に引っ張り上げる必要があるのだ。

忠告するタイミングは自分の判断に委ねられている。
そこで、この飛行船が通りがかるタイミングにて行うことに決めた。
運がよければそのまま飛び出し、乗客たちに肉眼で姿を披露してもらえる可能性があるからだ。
さて、この付近に一体、開始早々から身を隠し続けているモンスターがいる。
まずこの子から、軽く呼びかけを行ってみようではないか……。


 ◆


サボテンダーはついに木の上によじ登って、生い茂る葉っぱの隙間から様子を伺い始めた。
宙に浮かぶ巨体はゆるやかな速度で接近し、島に上陸する直前で方向を転換させた。
結局、アレは一体なんなんだろうか。魔物ではなく、人間の作り出した機械というものだろうか。
機械だったらもっとゴツゴツとしている気がするのだが……。考えても判断は下せないな。
ただ、彼の中では既に『自分からアレにちょっかいを出すべきではない』ということは決まっていた。
何かしら危険な物かもしれない。だが、あれだけ目立っているんだ、きっと誰かが沈めてくれるだろう。
自分はここで留まって、元々の目的を遂行するのが最も生き残れる安全策なのだから。

―――ザザッ……

小さなノイズの音。
すぐ近くから聞こえた。

あまりにも不自然な物音に思わずビクッと体が飛び跳ねる。
状況がよく把握出来ない状態で、ノイズ音に続いて人間の声が聞こえてきた。

『忠告する。Dー6に潜伏中のサボテンダー、積極的な戦闘を行いなさい。
 このまま無為に潜伏し続けた場合は、強制的な脱落も視野に入れる』
「は……!?」

まさか、主催者!? 僕が、無為な潜伏……!?
何故僕は忠告を受けているんだ。
僕の戦法は否定されるものだったのか。

『なお、あなたの東側に他のモンスターが三体存在する。参考にして頂きたい。以上』

ブツリッ、と音声が切れた。

改めて蘇ってきた死に対する恐怖に苛まれながらも、サボテンダーは木から降りて音の出ていた箇所を探る。
そして気付いた。樹木の隙間から、人間の作った機械が"瞳"を覗かせている事に。
それがカメラ、スピーカーという名前だとは知らずとも、それが自分たちの姿を監視し、自分たちに呼びかけを行う物であると予測が付いた。

「クソッ……」

思わず悪態を漏らす。
主催者がお気に召すような『積極的な戦闘』をしなければ僕は殺処分されるのか?
なんだよそれ? それは流石に、あんまりじゃないのか?
ふつふつとこみ上げる苛立ちが、恐怖と入り混じり、彼の心を沸騰させる。
理不尽だ、あまりにも理不尽。
それでも逆らえない。その場で殺されるとわかってて反抗するのか、それとも殺されるリスクを覚悟の上おとなしく従うのか。

「……やるしかない……」

選択の余地など、自分には残されていない。サボテンダーは忠告通り、東の方へと走り出す。
方角に関しては太陽の位置で大まかには掴むことが出来た。
ただ、三体の敵がどんな相手なのか……直接戦闘したところで勝目があるのか……?

……いや、直接戦闘の必要までは無い、闇討ちでも問題ないはずだ。
こちらがいち早く敵を察知し、遠距離から攻撃を仕掛けて仕留める。
そして一体でも仕留めたと見たらすぐさま逃走をする。
殺しを行っている分、『積極的な戦闘』として見てもらえなくもないだろう……。

サボテンダーは戦略を練りつつ、足を進めた。
この先に何が待ち受けるのか、彼はまだ知る由もない。


【G-4/森/一日目/夕方】

【サボテンダー@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康、この状況への恐怖(生き残れそうな自信で少しだけ抑え込めている)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:逃げ隠れしつつ、生き残る。死にたくはない。
 1:東にいるであろうモンスターを襲撃する
 2:可能な限り直接対決は避ける。他のモンスター同士で潰し合ってほしい。
 3:その中で弱そうな奴、傷を負ってる奴は仕留める。
 4:危ない橋は極力渡りたくない。基本は逃げ腰。
 5:あいつ(主催)には絶対に逆らえない……

【備考】
オス。割と狡賢いが根は臆病。


※夕方の時間帯において、観戦用の飛行船が島の周囲を飛びます。
 戦いに消極的だと判断される参加者に対して、その近くを飛ぶ際に忠告を行います。

449 ◆5omSWLaE/2:2013/06/25(火) 23:55:26 ID:htSLBqGg0
以上で投下終了です
飛行船の扱いに関してですが、自由に使って頂いて構いません
一応、この夕方の時間帯に限って出没している設定です

450 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/26(水) 16:51:41 ID:MBZjuFxw0
投下乙です。
主催の介入によって、この殺し合いも更に加速しそうですね。
この飛行船がいつ頃沈むのか楽しみです。

予約を延長させていただきます。

451名無しさん:2013/06/26(水) 17:31:24 ID:do9bhd7wO
投下乙です。

ただ生き残るだけではダメ。人間を楽しませなければならない。
なんという理不尽。

452 ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 20:55:31 ID:KhsmfrsI0
すみません、間に合いそうにないので予約破棄させていただきます

453そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:35:30 ID:KhsmfrsI0
完成したので、予約もありませんし投下させていただきます

454そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:36:01 ID:KhsmfrsI0
ピカチュウは逃げていた。
そりゃあもう逃げていた。
全速力で逃げていた。

まじめに殺しあえって?
いやまあ確かに殺すとまではいかずとも襲ってきたのがコラッタやオニスズメなら電撃くらい食らわせたよ。
正当防衛なんだしさ。
でもさ、相手はどう見てもドラゴンタイプなんだよ、ドラゴンタイプ。
しってるだろ ドラゴンはせいなる でんせつの いきものだ!
つかまえるのが むずかしいけどうまく そだてりゃつよさは てんか いっぴんだ。
そうどこぞのチャンピオンも言っているらしいじゃないか。
強いんだよ、あいつら。
600族だってごろごろいんだよ。
加えて電撃が効きにくいとあればやってらんないよ。
まあ相手の見かけ的に飛行タイプも兼ねてそうだし、それなら等倍ではあるんだけどさ。
それにしたって、“ドラゴン・ひこう”といえばあのカイリューやボーマンダと同じじゃないか。
僕みたいな普通のピカチュウじゃ名前さえ知らない伝説のポケモンにもなんかそんなのがいるらしいし。
触らぬ神に祟りなし、だよ。
まじめに相手になんかしてらんないよ。
幸い僕はついていたんだ。
今の僕は『こうそくいどう』と『かげぶんしん』を積んだ状態。
残像が残るほどの4倍速なんだ。
更には電磁波レーダーのおかげで後ろを見ないでも相手の『かぜおこし』や『エアスラッシュ』を紙一重察知できる。
ドラゴン族と言えども舞ってもない以上、今の僕に攻撃を当てることはもとより、追いつくことさえ困難だ。
今までこの合わせ技でモンスターボールをかわし、人間たちとその下僕になったポケモン達を撒いてきた僕だからこそ言い切れる。

速さが足りない。
君では僕を、捉え切れない。

君だって、それくらい分かってるんだろ?
襲いかかってきた当初の元気もなく、もはや攻撃する余裕さえなく、僕を見失わないよう追い縋るのに必死な君ならさ。

なのに。

「待……て……」

なのにさあ。

「待ち……やが、れ……」

なんで、なんで君は。

「待て、って、言って、ん、だろ。待てよ、ごらあああああああっ!」

そんなにもボロボロの体に鞭打ってまで、届かない何かへと手を伸ばしているんだよ。

455そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:36:57 ID:KhsmfrsI0
――待ってよ、――。僕の仲間を――。

「……っ! ああ、くそ、嫌なことを思い出させないでよ」

分かってる。
本当ならこのまま逃げ切ってしまうのが一番なんだって。
気合や根性でどうにか出来るのにも限度があることは、かつて嫌なほど思い知らされた。
どんどん速度の落ちていっている敵の状態を鑑みるに、後数分もしない内に、僕は逃げ切ることができただろう。
けど、このままだと気分が悪い。
さっきまで忘れていたけど、どうやらここは本当に殺し合いの場みたいで。
明日をも知れぬ身である以上、ここで逃げてしまえばもう二度と会うことはないかもしれなくて。
せめてここで僕を襲う理由くらいは聞いておかないと、これから先心安らかに眠ることも叶わない。
あんなポケモン、今まで見たことも聞いたこともないけれど。
姿が大きく変わるコイキングとかの例もある。
もしかしたら僕が気づいていないだけで、僕は進化前の彼?に恨みを買うようなことをしてしまったのかもしれない。
まあ、だからといって殺されてやる気なんてさらさらないんだけど。
お腹も減ったまま一人寂しく死ぬなんてそんなの御免だし。
だから、あくまで話を聞いてやるだけだよ。
それですっぱりおさらばだ。

「ねえ、君。なんで僕を襲うのかな? 僕は君のことなんて覚えがないのだけれど」

アイアンテールによる地面との摩擦によって乗りに乗ってた陸上波乗りに急ブレーキをかける。
数時間も乗り続けてただけあって、操作はもう手慣れたものだ。
ききっと音を立て減速すると同時に、その反動でターンを決め、空飛ぶ龍へと向き直る。
こちらが止まったのをいいことに問答無用で攻撃される可能性も踏まえ用心していたが、僕の言葉に相手もぴたりと動きを止めた。

「……そうだろな。おまえは、俺のことなんか知りもしないだろうな」

翼だけを動かし滞空するドラゴンポケモン。
その口から漏れた言葉には隠しようもない怨嗟の感情が込められていた。
ああ、やっぱり、僕は何かしてしまっていたのだろうか。
敵を作るようなことは極力避けてきたつもりだったのだけど。

「いや、それどころか、お前たちピカチュウは俺たちのことを知りもしないんじゃないか?
 俺やティラノモンだけじゃない。オメガモンやデュークモンですらおまえには敵わないだろうさ……」

……待て。
君は何を言ってるんだ?
ティラノモンとか、オメガモン、デュークモンなんて聞いたこともない名前だけど、その言い方は何か。
こいつが恨みを持っているのは、“僕”じゃなくて“ピカチュウ”そのものにだと。
待て待て、そういうことなら覚えがあるぞ。
というか覚えがありすぎる。
それは本来褒められこそすれ、恨まれはしない特徴だ。
だからそれは恨みは恨みでも逆恨みで、単なる妬みだ。
つまり――

456そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:37:15 ID:KhsmfrsI0

「おまえの人気にはよ!」

こういう、ことなのだ。
僕たちピカチュウは、なんでかしらないけど人間に非常に人気があるのだ。
そのことが、人間にゲットされたがってる全くわけがわからないよなポケモン達や、既にゲットされているポケモン達には面白く無いみたいだ。
とあるピカチュウが「ギエピー!」と呼ばれる未確認ポケモンに逆恨みされ、十数年にも渡りこき使われているという話はあまりにも有名だ。
そいつらからすれば、僕たちは人間にちやほやされて楽で幸せな勝ち組コースが決定しているそんな風に見えているのだろう。

「なんだよ、そんなことかよ。あーあ、聞いて損した」

なんて、なんて、くだらない。

「そんな、こと、だと!? 俺にとっては、俺やティラノモンにとっては、それ程までのことなんだよおおおおおッ!! ゴッドトルネードッ!!」

心の声が表情に出ていたのだろうか。
ドラゴンタイプは怒りも顕に竜巻を放ってくる。
数分前までは、うげ、っと思ったろうけど、今の僕は冷めた目で襲い来る攻撃を見つめていた。

あーあ。
いいよ、分かったよ。そんなにも人気者になりたいのなら先達として教えてやるよ。
人間に人気ってのがどういうことなのかを。
愛されるということがなんなのかを。




457そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:37:59 ID:KhsmfrsI0
エアドラモンは知っていた。
天使との激戦を制し、傷ついた身体に鞭を打ち、飛翔する最中で出会ったその存在がなんなのかを知っていた。
かつてのVジャンプ編集者をして、取り逃がしたことを初めてにして、最大級の失策であると言わしめたその存在を。
その中でも最たる人気を誇り、顔として扱われるそのモンスターを知っていた。
彼の者の知名度に比べれば、エアドラモンなど言うまでもなく、あのオメガモンやデュークモンですら劣るであろう。
そのあまりの人気の前には自分たちデジモンは全て横並びにされてしまうのだ。
デジモンという存在そのものが彼らのパクリであるとさえまことしやかに囁かれるほどに。

だからこそ、自分はなんとしてもそいつをこの手で討ち取らねばならなかった。
自分やティラノモンの苦悩、そして決別さえもあざ笑うかのように、子どもたちに、かつて子どもだった者達に愛されている存在。
人間に最も求められ、最も認められているそいつを。
俺は、今、この地で、乗り越える!

決して交わることのなかった世界。
戦うことさえ許されず、ただ、人気に劣るというだけで存在を否定されてきた自分たち。
それが間違いだったことを証明してやるとエアドラモンは、黄色い電気ネズミへと挑んだ。

まるで自分がデジモンの代表であるとさえ錯覚して。
虐げられてきた者たちの憤怒さえ気取って。

人間が機会を与えてくれたのだという大義名分の元に。
世界一位を下し、自身が取って代わるのだという欲望を胸に。
愛し、愛されたいという切なる想いを抱いて。
エアドラモン/デジモン/最底辺は、ピカチュウ/ポケモン/頂点へと挑む。

この願いを、そんなこと、とは言わせない。
それは強者の理論だ。
何もせず、愛されているからこそ、言い捨てれるのだ。
自分は弱者だ。
究極体は言うに及ばず、直系の完全体や派生すらありはしない。
ならばせめて。力を。
目の前の憎いあンちくしょうを葬れる力を。
勝率を稼ぎ進化へと至る力を。
人間に認められる力を。

どうか、どうかこの手に。
どうか、どうかこの手で。

「ゴッドトルネードッ!!」

手を伸ばす、手を伸ばす。
届き得ぬ高みへと手を伸ばす。

天使を食らったからか、一際威力をました竜巻が、荒れた大地を蹂躙する。
点の攻撃では捉えきれないと判断したが故の、面攻撃。
それを何発も、何発も、エアドラモンは畳み掛ける。

458そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:38:20 ID:KhsmfrsI0

「死ね、死ね、死ね、死ね、死ねぇッ!!」

お前がいるから。
お前なんかがいるから、子どもたちは自分へと振り向いてくれないのだと。
怒りと憎悪に歪んだ声で、神に近い存在と言われた竜は、子どもたちには見せれない悪魔の如き形相で翼を振るう。

「はぁ、はぁ、ハァハァハッァッ。やったか!?」

一体どれほどの竜巻を起こしたのだろう。
これだけ撃てば完全体さえも仕留められるという域に達した時、ようやくエアドラモンは冷静さを取り戻し、成果を確かめようとする。

やった、はずだ。
ピカチュウがどれだけ人気者とはいえ、強さ的にはそれほどではなかったはずだ。
加えて、さっき戦った天使とは違い、相手はあくまで地を這うネズミだ。
空の彼方から一方的に攻撃し続けた以上逃げ惑うしかなかったは「それはフラグだよ、ドラゴンタイプ」!?

馬鹿な!?
エアドラモンは驚愕する。
ピカチュウが無事だった、ことにではない。
既に一戦をくぐり抜けた巨龍は、この地での戦いがそう甘くはないと我が身をもって知っていた。
だから、そう、驚いたのは、ピカチュウが自身の怒涛の攻撃を受けても無事だったことではなく。
その声が、天駆ける自らの、その更に上空より聞こえたからに他ならない!
ばっとエアドラモンは巨体を翻し、天を見上げる。
サーフボードに乗ったまま、そこにそいつはいた。
お前など、どう足掻こうと僕には届かないとそう言うかのように。
遥か天上より、太陽を背に、ピカチュウは、エアドラモンを見下ろしていた。

「知らなかったの? ピカチュウは、“そらをとぶ”んだよ」

サーフボードでエアライドしながらピカチュウは笑う。
それもまた、彼らの人気の賜物。
人気故に、ピカチュウ達に与えられた幾つもの特権の一つ。
ピカチュウは陸空海尽くを制するのだ。
無論、正確には、それは“そらをとぶ”ではない。
“でんじは”がそうであったように、ピカチュウが生きていく中で身につけた“でんじふゆう”の応用だ。
陸上での波乗りも、つまるところ、この応用にすぎない。
ピカチュウは単に磁力により浮かせたサーフボードの上に乗っていたのだ。

「くそ、くそ、くそ、見下ろすな、俺を、見下ろすなあああ!」

“そらをとぶ”により攻撃をかわされていたエアドラモンは、ならばとウィングカッターを放つ。
どういう原理かは分からないが、ピカチュウが空を飛んでいるのは事実だ。
しかし、あくまでも、奴は空を飛んでいるだけ。
本来空をとぶはずのないモンスターが空中で、自分に勝てるわけがない。
そうだ、自分は仮にもウィンドガーディアンズの一員なのだ。
翼なき者に、空で敗れるなどあってはならない。
人間からの愛だけでなく、空も奪われるなど、あってはならない!

459そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:38:46 ID:KhsmfrsI0

「うわああああああああああああああああああ!!」
「……でんこうせっか」

だがそのあり得ないを可能とするのが、ピカチュウの人気だ。
ピカチュウという種族はその人気故に、これまでも、何度も何度も人間たちにより戦場へと連れだされてきた。
中にはポケモンバトルには程遠い、“大乱闘”へと巻き込まれたこともあった。
このピカチュウはその当事者ではないが、ピカチュウはピカチュウだ。
戦いの遺伝子は確かに、その身に刻まれているのだ。
故に――

「!?」

再度、エアドラモンが驚愕する。
翼なきピカチュウが瞬間的に加速した上に、宙で軌道を変え、真空刃をかわし切ったのだ。
それだけではない。
エアドラモンが驚愕している間に、使用後硬直から解放されたピカチュウはそのままエアドラモンの懐へと潜り込み、突進を仕掛ける。

「……ロケットずつき」
「ぐ、うおおおおおおお!?」

エアドラモンにとっては悪魔のような現実だった。
吹き飛ばされる。
巨躯で優っているはずの自分が、人気だけの相手に、手も足も出せず、ただの一撃で吹き飛ばされる。

いや、いっそ、そのまま吹き飛ばされていたほうが良かったのかもしれない。
そうすれば、ピカチュウの技の硬直が切れる頃には、竜は鼠の追撃可能範囲から外れていただろう。
けれどエアドラモンは踏みとどまってしまった。
負けない、奪わせない、こいつだけには!
その一念から翼を羽ばたかせ、空中でブレーキをかけてしまった。
静止した巨体は、ただの的でしか無いというのに。

「ピイカァ……」

気付いた時には全てが遅かった。
“そらをとぶ”の効果が切れ、一歩先に地面へと降り立っていたピカチュウは、エアドラモンの復帰阻止の準備を万全に整えていた。
空が雲に覆われ、蒼穹が漆黒へと呑まれる。
神の使いであるエンジェルを喰らった傲れる神に近き存在を神のなせる技が、今ここに捌く。
出来過ぎた物語。
ありふれた結末。

「チュウウウウウウウウッッッ!!」

エアドラモンは、地に堕ち、それでも這い上がろうとした人間を愛した竜は。
天上に座し、人間に愛された電気ネズミの神鳴りの前に、空を奪われ、翼を奪われ、より高くという意地さえも奪われて。

「ちく……しょう……」

今ここに、撃墜された。




460そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:39:25 ID:KhsmfrsI0


「これが君の求めたものだよ、ドラゴンタイプ」

地に伏した敗者を前に、勝者は淡々と口を開いた。
勝ち誇るでもなく、嘲るでもない。
自らより巨大な、しかもドラゴンタイプを倒したというのに、そこには一切の喜色がない。
分かっているからだ。
相性と体格の差も覆し、自分に勝利をもたらしたのが誰なのかを。
自らに与えられた力の正体を。

「もう一度聞くよ。君はこんな力が欲しいの? 君をそんなにも傷つけ、蹂躙した、こんな力が」
「そう……だ。力、だ。力さえあれば……力さえあれば、俺は……人気に」
「……違うよ」

違う、そうじゃない。
そうじゃないんだよ。
力があるから、人気になるんじゃない。
人気があるからこそ、力を得た――得させられたんだよ。

ピカチュウは思い違いをしているエアドラモンと、そしてこんな力を持つ自分自身を忌々しく思う。
ピカチュウという種は、本来、そう強いポケモンではないのだ。なかったのだ。
だけど、人間に愛されたことが、彼らの種を歪ませた。
ポケモンは“戦わされる”種だ。
ポケモンバトルという競技に駆り出されポケモン同士争わされるだけでなく、犯罪に利用されたり、戦争やテロリズムにおける兵器として用いられたりする。
そんなポケモンの中で、人気を得たとしたらどうなるか?
その答えが自分たち、ピカチュウだ。
人間たちはピカチュウを求めた。
最初は可愛さだけで満足していたかもしれない。
しかし、いつしかピカチュウに、力を求めるようになった。
少しでも“使えるポケモン”に。
そんな人間たちの愛がピカチュウたちを呪った。
アニメで、漫画で、ゲームで。ピカチュウ達は十数年も戦わされ続けた。
覚えられるはずのない技も無理やり覚えさせられ、空を飛んだり波に乗ったり歌を歌ったりさせられた。
時には自分たちの世界から連れだされ、ピンクの悪魔や緑の剣士、ヒゲおやじとも戦わされた。
終いには使えば自らの命を削る技を与えられ、おあつらえ向きにそのダメージを反動ともども引き上げるアイテムさえ持たされた。

ああ、人間がピカチュウに強いた苦行は、挙げていけばきりがない。
中にはそのおかげで幸せになったピカチュウもいるだろう。
帽子の少年に連れられ笑う同胞に、それでいいのかなどと、問い詰めはしない。
けれども、それはあくまで結果論だ。
人間に捕まえられ、引っ張り回され、戦わされ、その結果幸せになる同胞がいるのなら。
その過程に、どんな非道なことを行われようとも、許せと、そう言うのか。
覚えられる技は4つだけという原則を始め、ポケモンという存在そのものから乖離したような過ぎた力を与えられてしまったこの身を。
タマゴ技を野生のポケモンが覚えてしまうほど、厳選と放逐を繰り返され、戦いの遺伝子が染み付いたこの身を。
憐れむことさえ許されないのか。

461そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:39:53 ID:KhsmfrsI0
そもそも結果として、全てのピカチュウが幸せになれるわけではないのだ。
むしろ、他のどのポケモンよりも不幸になる。
あまたの戦場に連れ回され、戦わされるなど序の口だ。
人間に愛され、人間に求められるということは、それだけ多くのピカチュウ達が人間たちに捕まっているということだ。
その上人間たちは、ピカチュウに強さを求める。
“厳選”という行為により、弱いとみなされたピカチュウ達はボックスへと閉じ込められ、或いは要らないと捨てられる。
強いピカチュウ欲しさに、無理やりまぐわされ、子どもを産まされ、弱い子どもは捨てられ、強い子どもは奪われる。
多くの人間に求められるが故に、より多くのピカチュウが不幸になっているのだ。

そして不幸になるのは人間たちに捕まったピカチュウだけではない。
捕まらなかったピカチュウもだ。
ゲットされないということは、取り残されるということだ。
ここに一匹のピカチュウがいるとしよう。
彼は人間たちに捕まらなかった。
父を、母を、兄を妹を、友を、仲間も。
人気だから、厳選したいからと捕まえられて。
たった一人取り残されたピカチュウは、一人ぼっちになってしまったピカチュウは。
果たして捕まらなくて運が良かったと言えるのだろうか。
言えはしまい。
言わせはしない。
だから彼は求めたのだ。
一人ぼっちになってしまった自分を迎え入れてくれた新たな居場所を守るために。
もう二度と奪われないための力を。
それが彼からすべてを奪った人間により与えられ、人間により歪まされた力だったとしても。

……そう誓った僕本人が捕まって見世物にされてるなんて、笑い話でしかないけどね。

――嫌だ、助けてくれ、森に返して欲しい。

待っていてくれてる仲間たちがいるんだ。
護りたい居場所があるんだ。
人気なんて要らない。
ただ、あそこにいられればよかった。

――僕は普通のピカチュウとして、ごく普通に過ごしてきた。何も悪いことなんてやってない。

ピカチュウであることが、そんなにも罪なのか。
何も悪いことをしないでも、ピカチュウであるという理由だけで、僕はまた一人ぼっちにさせられるのか。
嫌だ、そんなのは嫌だ、怖い、怖いよ。

――それなのに、どうして僕はこんな運命を迎えなくてはならないんだ! そんなの、信じたくない!

それが僕たちの運命なのだと。
数多のピカチュウがそうであったように、ピカチュウならば何ら特別ではない、普通のことなんだと、このクソッタレな運命を受け入れろというのか。
お父さんが、お母さんが、お兄ちゃんが、妹が、友が、仲間がそうであったように。
今度は僕の番だと、そう言うのか?
ふざけるな、ふざけるなよ。
殺し合いなんて糞食らえだ。
人間の言いなりになるなんて御免だ。
けど、だけど。

「考えは変わらないんだね、ドラゴンタイプ」
「俺は、変わりたいんだ、お前を倒して、人気者に……」

こいつを、このまま、生かしてはおけない。

「君にも仲間がいるんだろうから気は進まないのだけど」

でも、君の狙いが僕個人じゃなく、ピカチュウだというのなら。
僕の仲間たちに危害を加えるかもしれない。
僕は遺伝子に刻まれた戦いの力を目醒させていく。
めざめるパワー。
タイプは、氷。
不一致といえど、相手はドラゴン・ひこうで四倍ダメージだ。
既にダメージを負っているのもあり、耐えられはしないだろう。

そう

「ファイアーブレスッ!!」

ドラゴンの仲間の乱入さえなかったなら。

462そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:40:17 ID:KhsmfrsI0



アグモンがその場に現れたのは必然だった。
エアドラモンを探そうと遮蔽物のない地を進みながら、ずっと空を見上げ続けていたアグモンが、天をも焦がす雷に気づかないはずがない。
アグモンはエアドラモンが雷に貫かれるのを目にし、進化して、急いで駆けつけてきたのだ。
その行動がエアドラモンの命を救った。
咄嗟に放ったファイアーブレスは間一髪でめざめるパワーを相殺した。

けどそれは、同時にエアドラモンへの、完膚なき止めだった。

ティラノモンは、そのことに気づかない。
ただ必死にエアドラモンを守ろうと――土下座する。

「申し訳ありませんでしたー!」
「……は?」
「俺たちなんかのためにピカチュウ先生の手をわずらわせてしまい申し訳ありませんでしたああ!」

ごめんで済んだらロイヤルナイツはいらない。
そうは言うが、謝ることは大事である。
ティラノモンは謝った。それはもう謝った。
ティラノモンとて分かっているのだ、目の前にいるのがどんな存在なのかを。
ティラノモンとて、今日に至るまで何度も何度も妬んだ存在だったから。
きっとエアドラモンは、目の前のモンスター界ナンバーワンに、妬みと嫉妬にかられて襲いかかったのだろう。
自分だって、この地に一人放り出され、究極体への道が開いたことを知らなければそうしていたに違いない。

「いやさあ、そっちが悪いと思ってくれるならどいてくれない? そいつ、放っておくと危険だからさ」
「そこをどうか、どうかご慈悲を! 寛容な心を!」

シュールな光景だった。
大の恐竜が小さな電気ネズミに土下座する。
それはもうシュールな光景だった。
しかし、ティラノモンにはこうするしかないのだ。
非はエアドラモンにある。
悪い奴の言いなりになるのがもっての外な以上、強硬手段をとる訳にはいかない。
となると謝るしかない、土下座するしかない、許してもらうしかない。
いささか卑屈すぎではあるが、15年に渡る不遇生活で染み付いた性根だ。
そう簡単に直りはしない。
第一、ティラノモンはエアドラモン側であるが故に、ピカチュウがエアドラモンを殺そうとしている訳を、人気を妬んで襲われたから、としか捉えれていない。
ティラノモン自身、ずっと待ちわびていた主役になりうる可能性を得て有頂天になっていたばかりなために、人気の持つ負の面を気づいていない。
だからお調子者のティラノモンからすれば人気ナンバーワンのピカチュウをごきげんとりして、なんとか許してもらおうとしか考えられないのだ。

「あー第一君さー。そいつのなんなの?」
「友達です! だから、だからどうか!」
「……そっか」

463そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:40:35 ID:KhsmfrsI0

ただ、ティラノモンの思惑とは別の理由でだが、エアドラモンを守ろうと必死なその態度は、確かにピカチュウから戦意を奪っていた。
ピカチュウだって好き好んでティラノモンの命を奪おうとしていた訳ではない。
全ては仲間のため、彼は心を鬼にしていた。
それでも、鬼の目にも涙は宿る。
このままいけば、ピカチュウが、ティラノモンに免じてエアドラモンを見逃す未来もあったかもしれない。

けれどもそれはただの夢。
可能性は覆される。
他でもない、エアドラモンの手によって。

「言ったよな、俺はおまえに見下されたくないって」

どさり、と。
ティラノモンが崩れ落ちる。
何が起きたのかは分からなかった。
ちくりと、痛みがしたと思ったら、身体の自由が奪われていたのだ。
知る由ないのも当然であろう。
ティラノモンを襲った異変はデジモンの技によるものではない。
マヒ針――悪魔の技だ。
そしてこの場にて、悪魔の技を使えるものなど一人しかいない。
その技を覚えていた天使をロードした神に近きもの、エアドラモンだけなのだ。

「あ……」

ティラノモンは遅ばせながら気づく。
見下されたくないと思っていた自分に庇われたエアドラモンが、どれだけの屈辱を感じていたのかを。
しかも、あろうことか、そのティラノモンが、不遇を脱して子どもたちにも引っ張りだこなはずなパッケージデジモンが。
エアドラモンがボロボロになってまで越えようとしていたポケモンに、ピカチュウに、自分を護るという理由で頭を下げたのだ。
そんな光景をエアドラモンが許せるはずがないではないか。

「エアドラ、モン。俺は……」
「謝るな、謝るな、ティラノモン! 俺が余計に惨めになる! それよりも見ただろ、この力を!
 俺はエンジェモン系列に勝ったんだ! 俺が、この俺が、奴をロードしたんだ!
 ふふ、あはははは! 見ろよ、傷だって癒せるようになったんだぞ!
 デビドラモンがいるんだ、このまま行けば俺、エンジェドラモンとかになれるんじゃないか!?
 そうしたらオンリーワンだ! きっと、人間は俺のことを見てくれる! お前でも、そいつでもない!
 俺を、俺を、俺を! お前もそこで見ていろ、ティラノモン!
 まずはそいつを、ピカチュウを、お前に頭を下げさせて悦に浸っている奴を俺が討つ!
 そうしたら次はお前だ! 俺がお前をロードして、そうしたら俺だって、俺だって究極体に!」

狂ったように泣いたように叫ぶ魔に堕ちし竜をティラノモンはそれ以上見たくなかった。
もし、友の大願が叶いピカチュウに勝った所で、十中八九エアドラモンは悪者扱いだ。
子どもたちの人気者を殺したものが、人気になんてなれるわけない。
きっと今よりずっとエアドラモンは嫌われてしまう。

止めなくちゃいけない。動け、動くんだ!

そう念じても、痺れが全身に及んだ身体は腕一本動かすのがやっとで。
地面を這ってなんとかエアドラモンの尾を掴もうと伸ばした腕に、こつんとぶつかる何かがあった。

464そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:41:10 ID:KhsmfrsI0
「それは……ッ!!」

ティラノモンを見下ろしていたエアドラモンの声に苦いものが混ざる。
ティラノモンが手にしたそれは、ティラノモンに支給されていたそれは、彼ら同様不遇の象徴だったからだ。
それは友情の破片。
デジモンをアーマー体に進化させるデジメンタルの欠片。
アニメ第二期で主役デジモンたちの力になったにもかかわらず、いまいちぱっとしない扱いだったり、後半最終回まで出番のなくなったアイテム。
今やもう、その存在がクローズアップされることなど、よくてロイヤルナイツのマグナモンくらいだ。
元アーマー体だったラピッドモンなんて脱アーマー体してしまったほどだ。
そんなデジメンタルの、しかも破片、それも友情を冠したものがアグモンに支給されたのは、モリーの悪意にしか思えない。
だいたい古代種でもないアグモンやエアドラモンでは友情のデジメンタルがまるごと支給された所で進化など不可能だ。

だというのに。

「あ、要らないの? んじゃ、僕がもらうね?」

よりにもよって、古代種どころかデジモンですらないポケモンがそれを手にする。
え?と驚愕に彩られる二人。
驚きの目で見られたそいつは特に気負うこともなく、友情の破片に電気を通す。

「うん、思ったとおり、これなら十分“かみなりのいし”の代わりになる」

雷の石?
それが何かティラノモンには分からない。
ただ、友情のデジメンタルが雷の力と、大地を駆けるスピードを与えるものである以上、電気鼠との相性は確かにいいだろう。
――まさか!?

ティラノモンは察する、ピカチュウが何をしようとしているのかを。
いや、そもそもデジメンタルを使う以上、その使い道は一つだけだ。
進化だ、進化以外にありえない!
でも、進化してどうすんだ!?
ピカチュウは人気の頂点なんだ。
これ以上の人気だなんてありえな……!?

「まさか!」

そうだ、エアドラモンは失念しているが、進化したからって今より人気になるとは限らないのだ。
ティラノモンがいい証拠だ。
進化前のアグモンはアニメで二度、主人公のパートナーデジモンに抜擢されたほどの大人気デジモンだ。
ところがどうか、進化した途端に人気デジモンのアグモンは不遇デジモンのティラノモンだ。
ティラノモンはそれが嫌で、必要のない時はアグモンという殻に閉じこもっていた。
初めて進化した日から自らの進化を呪い退化を繰り返してきた。
ピカチュウだってきっとそうなのだ。
ピカチュウが人気の頂点である以上、それより上はありえない。
行き止まりだ。
それでも尚進化するというのなら、それはきっと、ティラノモン同様、いや、元が人気一位のピカチュウだからこそ、いっそう不遇だ。
多くの人に望まれない進化。
デジモンにとって最大の願望である進化を望まれないピカチュウ。
ようやく、ようやく今ここに来て、ティラノモンはピカチュウを苛む人間の愛と言う名の呪いの一つへと思い至る。

「やめろ……」

けど、思い至ったのはティラノモンだけだ。
人間への好意に囚われ、人間の期待に応えることで自分の居場所に縋っているエアドラモンにはピカチュウのなそうとしていることは絶望でしか無い。

「やめろッ!! おまえの、おまえの進化なんて人間は望んでいない!
 だから止せ、止すんだ、よしてくれええええええええええええええええええええ!!!」

ティラノモンには伝わってくる。
自分たちがずっとずっと求めていたものを、自分から手放そうとするピカチュウへの、哀切さえ含んだエアドラモンの訴え/Bキャンセルが。

「やだね。仲間を裏切ってまで求められるような人気だなんて、こっちから捨ててやる」

ティラノモンには伝わってくる。
ピカチュウが“名前も知らぬただのポケモン”に成り果てたことへの、エアドラモンの声さえなくした悲愴な叫びが。

「エアドラモン……」

その叫びを物ともせずピカチュウは、かつてピカチュウだったポケモンは言い放つ。

「さあ、来いよ、エアドラモンっての。わざわざお前のフィールドに降りてやったんだ。不遇同士、第二ラウンドといこうじゃないか!」

465そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:44:31 ID:KhsmfrsI0

【C-3/砂漠/一日目/午後】
【エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、狂乱
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:メガドラモンとかで良いから進化するために他の参加者を倒す
 1:――!! ――――!! ああああああああああああああああ!!!
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。
天使エンジェルをロードした影響で、マヒ針とディアを修得したようです。
他の影響は不明

【ティラノモン(元アグモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、全身に微細な切り傷、麻痺
[装備]:なし
[所持]:
[思考・状況]
基本:主役に相応しくなるため、対主催として真っ当に戦う。
 1:エアドラモンを止め、護るためにも動け、俺の身体!
 2:仲間を集めてモリーに立ち向かう。
 
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。参加者のエアドラモンとは旧知の仲。
参戦時点では消耗してアグモンに退化していたが、どうやら何度進化してもティラノモン系列にしかなれないハズレ的存在だったらしい。
ティラノモン状態が基本のため、コンディションを整えればティラノモン系統のいずれかの完全体には進化可能(どの完全体への進化経験があるかは不明だが、少なくとも完全体になっ

た経験はある模様)。
逆に消耗するとアグモンへ退化することもある。
長い不遇生活でやや卑屈だが、本質的にはお調子者な性格。

【ライチュウ(ピカチュウ)@ポケットモンスター】
[状態]:健康、ちょっと空腹、アーマー体?
[装備]:サーフボード@現実、友情の破片
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:仲間の下に帰る(方法は考えていない)。
 1:エアドラモンをぶちのめす
 2:そんなことよりきもみが食べたい
 3:仲間と一緒にたらふく食べたい
 4:それだけが僕の望みなのになー

[備考]
オス。森暮らしが長い。仲間思い。一人称「僕」
卵による厳選と不要とされたピカチュウの放逐、そしてアニメや漫画で戦わされていることにより増え続ける技と経験を戦いの遺伝子として刻んでいる。
そらもとぶし、波にも乗るし、歌うし、めざパするし、技だって4つどころかいくつでも。
人間に仲間を奪われないよう鍛えもしたし、応用技も開発した。
ただしライチュウに進化したことでそれらの特権の幾つかは失われたかもしれない。
また、かみなりのいしではないデジメンタルによる進化の影響も不明。

《支給品紹介》
【友情の破片@デジモンシリーズ】
古代種のデジモン、または古代種の遺伝子データを持つデジモンに、雷の力と大地を駆けるスピードを与えるデジメンタルの破片。
本来このまま使ってもアーマー進化できないが……

466そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:44:57 ID:KhsmfrsI0
投下終了です

467そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/26(水) 23:47:19 ID:KhsmfrsI0
エアドラモン、ティラノモン登場回がかなりメタな話だったので今回の話もメタにさせて頂きましたが、やりすぎだったなら指摘お願いします

468 ◆/wOAw.sZ6U:2013/06/26(水) 23:59:57 ID:O3fnPeVY0
ピカチュウさんかっけええええ!!!
人気者の苦しみなんて言うと贅沢に聞こえるけど本当に大変というか辛いんだなあ……

そして邪鬼ギリメカラ、幽鬼マンイーター、ホイミスライム、ハム、トンベリ、ライガー予約させて頂きます

469そんなことよりきのみが食べたい  ◆TAEv0TJMEI:2013/06/27(木) 00:59:05 ID:3eY8NjBc0
感想有難う御座います。
一部訂正を。
友情の破片ではなく、友情の断片でした。
収録時修正しておきます。

470 ◆5omSWLaE/2:2013/06/27(木) 01:03:42 ID:uIJTDX220
投下お疲れ様です
エアドラモンの欲しがっていた"人気"、それは彼にとっては、決して甘美な果実などでは無かった
彼の幸せなんて、人々は望まない。人間のエゴのために、アイドルに輝くことを強いられる……

人気者だからこそ、もてはやされるからこそのピカチュウさんの苦痛が実に丁寧に描かれており、読んでいて共感してしまいました
何気なくやっている厳選作業や大乱闘も、ポケモンの目線から見たら残酷な行為でしかない……そう考えるとゲームの世界が違って見えますねぇ
その人気の殻を破り、ピカチュウの姿を捨てたライチュウさん
その姿に思わず鳥肌……前半サーフィンやってたとは思えないほど、痺れる姿だと思います

ティラノモンは、友達のためになりふり構わず頭を下げ、許しを請う
彼自身は進化先とは関係無く、何も変わってないんだなぁと思いました
むしろ変わったのはエアドラモンの方ですねぇ
彼のコンプレックスが「人気者としてあるべき姿」を他者に求め、そのあまりに情けない姿をさらした友人を撃った
劣等感が歪んだ結果狂気に変化した……エアドラモンはそれに気付けるでしょうか、展開が気になりますね
メタネタだからこそ描ける、彼らの抱く複雑な想い。非常に興味深い話、楽しませていただきました!

471名無しさん:2013/06/27(木) 01:20:35 ID:3eY8NjBc0
そして感想を

>>サボってんじゃねえよ
投下乙〜
このロワならではの観客の動きが見れて楽しいw
なるほど、納得してしまうほどにこいつらはどこにでもいる人間で、だからこそたちが悪い
生きるだけでなく気に入られる戦いをさせられるサボテンダーに合掌

472名無しさん:2013/06/27(木) 13:44:26 ID:ol6/2cLAO
投下乙です。

轟く友情ライチュウどん!
仲間の為に力を求め、人気なんぞクソ食らえなピカチュウ。
人気の為の対主催スタンスより何より、まずは死にそうな友達を必死に庇うティラノモン。
そんな二人の気持ちは、人気に目が曇ったエアドラモンには見えることはあるのか。

473命の価値は? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:37:24 ID:Pem5KRoY0
投下します

474命の価値は? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:37:42 ID:Pem5KRoY0



「大丈夫……きっと大丈夫……」
自分に言い聞かせるために、ピクシーは独りで何度も呟いた。
きっと、メタモンは生きている。そう信じなければならなかった。
そうしなければ、罪悪感に心を蝕まれる。
メタモンは自らの意思でアリスを引きつけてピクシー達を逃してくれた。

『だからこそ辛い』

太陽が爛々と輝いて、汗が流れそうなほどに熱い。
それにも関わらず寒い、震えが止まらない。
怖くて……しょうがない。

──アタシはこんなに弱かったの?

自問自答を繰り返すまでもなく、答えは決まっていた。
しかし、その答えをはっきりと理解してしまうのは嫌だった。

泣きついて、この質問をして、誰かに否定してもらえたらどんなに楽だろう。
だが、他人の答えですらピクシーの震えを止めることは出来ない。

「メタモンは大丈夫、だって……」

強いから──そう、ピクシーは言葉を続けたかった。
アタシと違って強いから大丈夫。そう言いたかった。




──言えるわけ無いじゃない!

メタモンが戦いの素人であることなど、数多の戦いを勝ち抜いてきたピクシーでなくてもわかる。
そんなメタモンがあの少女を引き付けるなど、どれほど恐ろしいことだろう。
それでも、メタモンはピクシー達を逃してくれたのだ。

「…………」
自己嫌悪、不安、焦燥、消沈、後悔、悲壮──様々な感情がピクシーの心の中で渦巻いていた。
それでも、ピクシーは言えなかった。

言いたかった言葉が出ないなんて初めての経験だった。
この殺し合いに来てから、どれほど自分は弱くなってしまったのだろう。

「……いいな」

一欠片でも、メタモンの勇気があればとピクシーは思う。
少しでも、強くなれたらとピクシーは思う。

──それでも、私はきっとこの言葉を言えないだろう。

──メタモンのところに戻ろう、と。


「死にたくないよ、アタシ…………」

475命の価値は? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:37:52 ID:Pem5KRoY0



深い森の中、傷を負ったグレイシアが休息を取り。
ソーナンスが看病を、ピクシーが見張りを兼ねて付近をうろつくという体制を取っていた。
もちろん、全員が揃っていた方がいいということはわかっている。
しかし、見張りを買って出たピクシーの「少しだけ、一人にして欲しい」という言葉が、ピクシーの単独行動を許した。
単独行動といっても、ソーナンスがすぐに駆けつけることの出来る距離であるし、
瞳を潤せたピクシーに対して、何も言うことが出来なかったというのもある。

「……死んでほしくないな」
「ソーナンス」

誰が死んでほしくないとも、誰にも死んでほしくないともグレイシアは言わない。
全てに手が届くとも思ってはいないし、手を汚さずにいられるとも思ってはいない。
だからその言葉は誓いでも願いでもなく、祈りである。

「伝言……伝わるでしょうか」
「ソーナンス!」
「うん、きっと……きっと伝わりますよね」
「ソーナンス」

伝わると思わなければ、休んではいられない。
本当ならば、今すぐにでもグレイシアは駆け出したかった。
縋るべき希望があるから、今はまだ休んでいられる。

もしもあの狼がいなければ、自分はどうしただろうか。
安全地帯まで二匹を送り、メタモンを探しに行ったのだろうか。

来なかったIFの世界をグレイシアは考える。
果たして、感情を取っただろうか理性を取っただろうか。

もしも次に仲間と別れることがあれば、
もしもその時に狼がいなければ、

私はどうするのだろう。

青い腕がぽんとグレイシアの肩に乗った。
「…………」
ソーナンスは何も言わず、ただグレイシアを見つめていた。

「ありがとう」
やはり祈ることしか出来ない、仲間たちと共に最善の選択を取れるように。
未来は不確かだけど、多分大丈夫だろう。
ソーナンスの顔を見ていると、その様な希望が湧いてくるようであった。

476命の価値は? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:38:04 ID:Pem5KRoY0



目覚めて早々、キングスライムは激死に棺桶丸状態だった。

普通のスライムならば255回は死んでいるであろう重症を負っているにも関わらず、
棺桶に足を突っ込む一歩手前程度で済んでいるのは、やはりキングとしての能力とタブンネを倒した時の経験値の力だろう。

「誰がてめーなんか。てめーなんか恐かねぇ!! 野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」
激死に棺桶丸であると同時に、キングスライムはげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。
腸が煮えくり返るという表現では駄目なのだろうか、現代日本語は謎が多い。

「プンスコ!」
ギルガメッシュに開幕で99/100殺しにされ、回復したと思えばケルベロスに6/7殺しにされ、その後川に流され、
キングスライムの王としてのプライドはズタボロだった。
それほどボコボコにされようものなら、敵に対する恐怖でも覚えそうなものだが、怒りで動いているところは流石に王を名乗るだけのことはある。
勇者王と言っても過言ではないだろう、やはり過言だろう。

そんなキングスライムはどんぶらこどんぶらこと流されながらも
必死こいて無様なデブなりに頑張って、川から這い上がり、森に成っているオレンのみを貪って頑張って生きていた。
口いっぱいにオレンのみを頬張りながら、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。
その上、腸は煮えくり返っていた。後、怒髪天を衝いていた。とにかくキングスライムは怒っていたのだ。

この文章で伝えたいことは、とにかくキングスライムが怒っていたということである。

「あー、何だよ。くそ。おもしろくないな。つまらねえ。サンドバッグがほしい」
怒りという感情は特に発散行為を要する、キングスライムは誰でもいいから殴りたかった。
とにかくむしゃくしゃしていた。

「ん?」
そんなキングスライムがピクシーを発見したのは、ある種必然だったのだろう。

「アンタ……」
ピクシーの目は憔悴しきっていた、だからといって王は哀れんだりはしない。


「お前、ちょっとボコらせろ!」
王の世界にいるのは、王と奉仕者のみ。
ならば、目の前の奉仕者が何を思うとも王は躊躇なく踏みにじる。


だが、ジハードによる能力値低下が解除された戦闘経験豊富なピクシーと、死にかけのレベルアップしたキングスライム、
どちらが勝つかと言われれば33:4でピクシーが勝利するだろう。

そして前評判を覆すことも戦闘描写も無くキングスライムは敗けた。

「ピギー……」

戦闘音を聞いて、ソーナンスとグレイシアがピクシーの元に駆けつける。
「大丈夫ですか!?」
「ソーナンス!!(便乗)」

477命の価値は? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:38:14 ID:Pem5KRoY0

「アタシは大丈夫……でも」

アリスとの戦いでも、ケルベロスとの戦いでも、それには至らなかった。
だから、考えなくて済むと思った。

「こいつ、どうすればいいの……?」

敵の命をこの手に握る感触というものは、こうも気持ちが悪かったのか。




【D-7/森/一日目/日中】

【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:アリスから離れる
 2:メタモン…

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(中)、能力低下、精神的疲労
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。
 1:目の前の敵に対処する
 2:皆と一緒に行動する
 3:メタモンが気がかり

【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
  2:ソーナンス…

【キングスライム@ドラゴンクエスト】
[状態]:肉体損傷(大)魔力消費(中)、気絶中
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(拡声器@現実)
[思考・状況]
基本:主催者を粛正する
 1:モリーをたおすために下僕を集める
 2:王様であるボクに無礼は許さない

478 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 00:38:31 ID:Pem5KRoY0
投下終了します、オルトロスを予約します。

479えー?何?聞こえない? ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 01:14:01 ID:Pem5KRoY0


主催サイドの人間はサボテンダーの次にオルトロスに忠告を送る必要があった。
そら、サボテンダーは逃げるだけだったからまだいいけど、オルトロスに至っては湖の底に沈んでるじゃん。
これじゃあ殺し合いにならないからね、当然の措置ってやつだよ。

『忠告する。F-6に潜伏中のオルトロス、積極的な戦闘を行いなさい。
 このまま無為に潜伏し続けた場合は、強制的な脱落も視野に入れる』

で、オルトロスにメッセージ送るよ。
さっさと殺しあってもらわないと、困るもん。
オルトロスに賭けた人とか、超困るもん。

「えー?なんやてー?聞こえへ〜ん!」

いや、オルトロスは水の中にいるから声が届かないんよ。
なんて言ってるかわからないけど、飛行船が近くにいるんだからなんかすごいことが起こってることは間違いない。
だから聞き返す、ほうれんそうは社会人の基本だからね。

『なお、あなたの西側に他のモンスターが三体存在する。参考にして頂きたい。以上』
でもまぁ、オルトロスの声はブクブク言ってて主催サイドの人間には届かない。

でも、そんなオルトロスに関係なく、主催サイドの人間は言いたいことだけ言って行っちゃったよ。

「だから聞こえへんって!」
何て言ってるかわからないのに、満足気に去られちゃったから、
そらもう、オルトロスは怒るよ、阿修羅をも凌駕するよ。


「もっと深く沈んだる!」


そら(声が届かないんなら)そう(なる)よ。

【F-6/湖の中/一日目/夕方】

【オルトロス@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:
[所持]:ふくろ(わざマシン)
[思考・状況]
基本:戦いをできるだけ避ける
 1:湖の底で時がすぎるのを待つ。

※わざマシンが水没しても使用可能かどうかは後続の人に任せます
 また、中身も後続の人に任せます

※主催サイドの人間からメッセージを受けましたが、水中なので聞こえるわけがありませんでした。

480 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 01:14:14 ID:Pem5KRoY0
投下終了します

481 ◆3g7ttdMh3Q:2013/06/29(土) 01:49:20 ID:Pem5KRoY0
プチヒーロー、ジュペッタ、ギルガメッシュを予約します。

482 ◆5omSWLaE/2:2013/06/29(土) 01:53:01 ID:m6lwkPrA0
投下お疲れ様です
>命の価値は?
メタモンの安否を祈る3体、仲間のために自分の命を投げ出せるのか、と悩む
自分なら同じように己の犠牲を選べたかのか? 多分出来る者はそうそういない
……繊細な心理描写、流石です。そしてソーナンスが優し過ぎ〜
激おこキングスライム、また負けたでござるの巻
もうザマァを通り越して、情けなさを通り越して、逆に愛らしく感じます

>えー?何?聞こえない?
水中だからね、しょうがないね
さらに奥深くに潜っていったけど、反逆と取られるのか、聞こえてないと判断されるのか……
どっちにしろ、どんな目に遭うのか期待してしまいますね

483 ◆5omSWLaE/2:2013/06/29(土) 01:55:04 ID:m6lwkPrA0
はぐれメタル、メタモン、凶鳥モーショボーで予約します

484 ◆T98TXcmvJI:2013/06/29(土) 11:43:07 ID:cXSYzrxE0
エアドラモン、ティラノモン(元アグモン)、ライチュウ(ピカチュウ)、予約します。

485名無しさん:2013/06/29(土) 12:37:55 ID:K5wALwzY0
予約がいっぱい来たー!

キングさんはもう負けまくりで芸人の域だけどこいつは色々厄介というかそれこそ有無をいわさず殴って倒すのが一番なんだよな
返り討ちで気絶させられてさえ他のモンスターたちに影落とすのがなー

オルトロスはまあそりゃあそうだわなw
これは人間の配慮が足りないw

486 ◆7NiTLrWgSs:2013/06/29(土) 21:54:12 ID:U8QMb8hs0
サボテンダー、オルトロスで予約します

487 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/03(水) 07:52:37 ID:d6/xAxHQ0
予約延長致します

488 ◆T98TXcmvJI:2013/07/03(水) 14:37:27 ID:xGHU5T5M0
ごめんなさい。設定を勘違いしていたため、予約を破棄します。

489名無しさん:2013/07/03(水) 20:17:46 ID:B7IqjTu20
>>488
お疲れ様です
またのご予約を

490 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:37:34 ID:ma9s53460
投下いたします

491無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:38:30 ID:ma9s53460
出会いとは一つの起点であり、交差点である。
多くの者達が交わるほどに物語は始まり、絡まり合っていく。
例えば、彼女、マンイーターは出会いと別れを繰り返して今、最悪な地点に立たされている。
ぷよぷよくぽくぽ動く音を聞きながら、振り返らずにげっそりとした表情でマンイーターは歩いていた。
もうこのまま超ダッシュしてばっくれちまおうか。
彼女がそう思案するたび更に後ろからズシンと腹の底に響く足音が服の裾を踏みつける。後ろ髪もむしり倒す。

三体はマンイーターの言を元に山登りを断念していた。
危険な悪魔になんの手立てもなく挑むのは避けるべきだとギリメカラは判断した。
相手の属性や攻撃方法、それに対応した陣形や仲魔を整えてから挑むべきであると。
マンイーターはそれに大いに賛成した。
さっき滅茶苦茶にヘイトした分を取り戻すように大賛成した。

「ねーねー、お姉さん金の仔牛って知ってる?」
「なにそれ、焼肉屋のキャンペーンか何か?」
「あのね……」

先ほど教わったばかりの知識を得意げに話すホイミスライムだったが、マンイーターは無関心そうに相槌を打つ。

「おヌシはどう思う?」
聞くだけ無駄だろうが、この場では無駄でもやっておいたほうがいいこともある。
「え?ただの悪趣味じゃないの。あのハゲのヒゲ、イカれてんじゃないかって服のセンスだったし」
やっぱり無駄だった。


「あ……」
道端で虫の死骸を見つけたような、自然な声。
真っ黒で触手に覆われた目玉のいきものの死体が無様に転がっている。
かっぴらいた本体そのものの目玉は非常に間抜けな様子で命ごと動きを止めていた。
「知っておるのか、そいつを」
耳ざとく聞きつけたギリメカラの声が刺さる。

「まあ、さっき話したでしょ、最初に襲ってきたやつよ」
元同行者との出会いは勿論ありのままに語った。
後ろ暗居ところは一切無い。
だというのにこの一つ目の邪鬼の声は一々マンイーターの心をついてくる。
罪悪感は皆無だ。
マンイーターを静かに恐怖させるのは何が引き金になって自身の死に繋がるか、の一点に尽きる。
だから本来雄弁で、口八丁手八丁で相手を誘惑する彼女の言葉は減る。
軽口は平気で叩くから神経は相変わらずワイヤーロープ並みに太いが。
「でもどうして襲いかかってきたのかな」
ホイミスライムは触手仲間同士気がかりなのか、憂いを帯びた様子でバックベアードの死体を見送る。
「さあねえ、ムシの居所が良くなかったんじゃなあい?」
死人に口は無し、そもそもバックベアードに口は無し、というやつだ。

492無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:39:18 ID:ma9s53460
もふもふ

もふもふ

たゆんたゆん……


心地良いリズムでふかふかした者同士が触れ合う様子を、トンベリは微笑ましく眺めていた。
スライム襲撃のショックが些か引いていたハムライガーのためにトンベリは新しい提案を出す。
綻びを探すために、その可能性を持つ仲魔を探すために、高い山を目指そうと。
何一つ目的の無い状態はとても不安だ。
何か道標があれば、それがあまり意味のないものでも、存在すれば、進むことができる。
憎悪のように強く猛々しい灯りじゃなくていい。
ハムライガーの行く先を照らすべきなのはうららかな陽光であり包み込む月光だ。
そんな安心に程遠い、マッチの火のようなか細い光しか、今の自分には与えることができない。


もふもふ

もふもふ

たゆんたゆん……

山の麓についたころ、ハムが傷が痛むと言い出した。
なるほど、打ち付けた臀部が痛々しく腫れ上がっている。
あまり長く見ていたくはない部位なので目をそむけ、トンベリはハムからの休憩の提案を了承する。


「大丈夫……?」

どう座ったものかとうねうねしているハムにハムライガーは心配そうに鼻を鳴らし近寄る。
「だ、だいじょぶだいじょぶ……いちちち」
ふ、とハムは奇妙な視線を感じてハムライガーのそのつぶらな瞳を見返す。
なんだろう、確かに心配や不安がたっぷりとつまった瞳なのだが、それを覆うくらいの……好奇心?いや、慕情?
表現しがたいきらめく瞳を、訝しんでいる視線に気づいたハムライガーは、慌てて目をそらしてごめんなさいとつぶやく。


「その、すんごく気持ちよさそうなおなかだなあって……」
女性ブリーダー、はたまた男性ブリーダーにも大人気で魅力的なハムのぽよんとしたおなか。
ふかふかな毛並みとその弾力には抗いがたい魔性が潜んでいるのだ。

「あ、あー……いいよ、もふもふしちゃって」
そしてこのハムライガーもそのハムの魅力を受け継いでいる。
愛くるしい彼は大喜びでハムの尻を気遣いながらそのやわらかいおなかを存分にもふもふしはじめた。

それを見つめるトンベリの視点で最初に話は戻る。
最初こそ慌てた闖入者とそれを追う刺客のいざこざで、ハムに対する緊張が抜けなかったトンベリであったが、わだかまりが生まれたかもしれない自分とハムライガーの
いい緩和剤になってくれているハムに少しだけ感謝の気持ちを抱き始める。
ただしそんな彼女の穏やかなさざなみのような感情を理解できるものはこの場に居ない。
彼女の心は誰にも見えず、また彼女は胸の内を語ることが決してなかったからだ。

(あ〜〜〜どうしよっかなァ〜〜〜)

ハムは予想外に痛みが増してきた臀部と、ここから動きたくないという気持ちで考えあぐねていた。
うまいことこの二匹に取り入ることには成功したが。
自分の腹の上に顎を乗せて幸せそうにもふもふもふもふと飽きずに繰り返してる幼いハムライガー。
彼はまだいい、危険はないし、鬱陶しいが苛々する程ではない。
ピーチクパーチク騒いでたゲルモドキに比べれば万倍マシだろう。

(でも……なァ)

悟られぬよう、トンベリの方向に目を向けるハム。
何を考えているのかわからない、感情の無い空虚な瞳。
ぞくり、目線がかちあいハムは、愛想笑いを浮かべてハムライガーの頭部に視線を戻す。
スライムを殺したあのモンスターは、掴みどころがなく恐ろしい。
この状況で冷静なのは好ましいし、導いてくれる力強さもハムが求めたものだ。
しかしなんというか、言いようのない恐怖を感じるのだ。
まるで自分のすべてを見透かされていて……不審な動きをすればお前もスライムの二の舞だと、そう睨まれているような。
その手に持つ氷の刃が、より冷徹な印象をハムに与えてくる。
勿論これはハムの被害妄想、というか後ろめたさからくる疑心暗鬼でしか無いのだが。

(殺す殺さないとかの問題には関わりたくねえよなァ〜〜〜)
果たしてこいつらに付いて行くのは正解なのか、もっと頼りになって安全な魔物がいるのではないか。

493無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:39:57 ID:ma9s53460
「ハムさん?」
「んあ?」

不安げなハムライガーの声。
「やっぱり、痛いの?」
「ん、あー」
そしてやたらと痛む臀部ときた日には。


ちょっと待ってね、とハムライガーが自分の持ち物をあさり出す。
支給品に回復できるアイテムが無いのか探しているのだろう、親切なことだ。
このハムライガーだけなら一緒に行きたいかもしれない。
もう少し頼れる存在ならなあ、とハムは心中でハムライガーの品定めを始める。
ぴくり、ハムライガーがふくろからアイテムを取り出して固まる。
広めの真っ白な皿、淵に草花の彫込がされている特別な雰囲気を持つ皿に鎮座する丸い雪色の物体。
ハムはそれがケーキと呼ばれるものだと知っていた。
食したことはなかったが、捨てられたチラシに確か……ホールケーキと書かれていたものだ。
気になるのはケーキそのものより、なだらかなクリームの雪の天面に突き立てられた、人間の言葉が書かれたカード。
「はっぴー……バースデイ?」

甘えたような、切ない鳴き声がハムライガーの喉奥から漏れ出る。
そういえば、今日は自分の誕生日で、とても幸せになれるはずだった日なのだ。
「誕生日、だったのか?」
ハムの質問にこくりと頷く。
トンベリも音もなく近寄り、ハムライガーの傍に立つ。
「本当、趣味が悪いのね」
無感情な声の皮肉。
主催者の意図することなど考えたくもない。
平気で幸せを奪い戻れぬと突きつけて、剰えその幸福を思い出させる。
三者三様、言葉が無くなる。

不意にハムが立ち上がり、喉を押さえて発声練習を始めた。
驚いている二体に、どこか軽薄な笑みを浮かべてすうと息を吸い込み。

おめでとう おめでとう ハムライガー もっとおっきく つよく なあれー

「それ……」
ハムライガーが泣き出しそうな顔でハムを見つめる。
「昔どっかで聞いたことがある歌なんだけどよ、あってたか?」
ブリーダーたちはより自分の育成にあった土地を探してファームを作り出す。
ハムが暮らしていた地域にもファームがあり、一年ごとに大きな声でその歌声が野山に響いていた。
「うん、うん、ありがとう……」

本当はブリーダーさんから聞きたかった歌。
帰りたい、帰りたい。
ハムライガーはまた胸に上り詰めてきた寂しさにきゅうきゅうと鼻を鳴らす。
「せっかくだから俺達で食べちまおうぜ、そのケーキ。なんか切るもの……」
ぬっとハムの顔面に突き出された氷の刃。

「これでよければ、あるわ」
「お、おう」

ハムは別に、優しさから行動を起こしたわけではない。
トンベリの内情観察と、ハムライガーへの点数稼ぎが目的であった。
ここまで優しくすれば、あの鉄仮面も自分を信頼するだろう。
そうすればあの突き刺さる眼光も消えるはず……と思っていたのだが、相変わらずトンベリの表面には波風一つ立たない。
無風の海に放り込まれた船の心境だ。

だから、自分で櫂を動かすべく、ハムは言葉を続ける。
「やたらに毛並みがいいなーとは思ってたけどよ」
さくりさくり、氷の刃は均等にケーキを切り分けていく。
「やっぱお前ってブリーダーに、ニンゲンに飼われてたりしてたワケ?」
さくり。
俄かに波立つ、その水底の感情。
「うん、とっても優しくて、いいブリーダーさんでね!」


さくさくさくさく。
トンベリは、湧き上がった憎悪を飲み込んで、問おうとした。
聞き間違いかもしれない、ブリーダーさんが、ニンゲンだなんて、そんな悪い冗談。



「なあに、こんな状況でお誕生日パーティしてるのアンタたち」

あっけらかんとしたノーテンキな声で、感情の海原に暴風が吹き込んだ。

494無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:40:38 ID:ma9s53460
ニンゲンだ。
トンベリがそれを頭で認知するよりも速く体は動く。
止める声も悲鳴も突き立てられた刃が肉を食む音も、全て衝撃に遅れてやってくる音にしか過ぎなかった。
「ぐ、ぐええ、アンタいきなり何、すんのよ!」
しぶといニンゲンだ。
もう一突き。
「や、やめて!!」
後ろに誰か居るのか?
もう一突き。
「トンベリさん!!!!」
なぜ悲しそうなのか。
もう一突き。
「おいおいおい、やべーよ」
まだまだ足りない。
みんなのうらみは、まだまだこの手に、心に。


最後の音が到着した時、トンベリの体は宙を待った。

「問答無用とはまさにこのことだな、おヌシ……」
体に痛みは無い、おそらく反射的に退いたのであろう。
今のトンベリの意識は体よりもずっと遅い。
支えられて突き動かしてきた憎悪でその四肢は動く。
だから体内に吹き荒れる暴風に反してその様子は不動、明鏡止水の如く。
ニンゲンは殺さねばならない。
それを止めたり、ニンゲンを守るものは、皆全て。

「やめてよトンベリさ……」
「おい、お前危ないからこっちにこい!」
ハムはハムライガーの首を掴んで引っ張る。
「で、でもトンベリさんが!」
「落ち着いて聞けよ、ハムライガー」
神妙な面持ちでハムは口を開く。
「あいつは、もしかしなくても結構危ないやつだ」

大きな一つ目の怪物と戦うトンベリを親指でくいとさす。
「スライムの時にもやべえと思ってたけどよ、多分あれがあいつの本性だよ」
「そんな……」
寂しくて寂しくて辛かった自分を慰めてくれたトンベリ。
話を聞いて、傍にいてくれたトンベリ。
変わらぬ声と表情で、何もかもが変わった世界で、安心させてくれたトンベリ。
違うと、そんなのじゃないと声を大にしてハムライガーは叫びたかった。
守らせて、はっきりとトンベリさんはそう言ってくれたのだ。

「とりあえずあっち側につこうぜ、このままじゃあ俺達もあぶねえよ」
早々に乗り換えるチャンスが来たと、ハムは内心うきうきとスキップでもしたい気分であった。
「ダメだよ、トンベリさんを助けなくちゃ!!」
「あ、おい!!」

湧き上がる憎しみは意識を奪う。
振るう刃も、立ちまわる体も。
全て透明で、誰にも見えない感情の集合体。
「解せぬ……その虚無をたたえた瞳、おヌシには何が見えておるのだ?」
ギリメカラは刃が自身に触れぬよう応戦していた。
ただの殺人狂であれば即座に自らの刃によって報いを受けさせてしかるべきなのだが。
トンベリの刃は確実に命を奪うことを目的に振るわれている。
しかしその太刀筋にも表情にも、一欠片も感情が宿っていない。
ギリメカラのことすら見えても居ないであろうその姿に、一つ目は歪む。
「何がおヌシを、操っておる?」
分かるのは、その姿が酷く痛ましく、本来あるべきものではないと感じるということだけ。
空を凪いだ刃から氷撃が溢れ出る。
足元を絡めとった氷塊に、ギリメカラは嘆息する。
何も無い、氷に包まれた痛ましさ。
トンベリから感じ取った短い印象を吐き出してその最期をせめて見てやろうと眼を見開く。

氷は脆いものだ、砕け散ると、閉じ込めた中身も粉々にしてしまう。
溶けて水になり、失われたそれが取り戻されれば、トンベリは。

瞬きの刹那見えた世界。
そこには家族が居た、焦がれたものが居た。
皆一様に、おかえりなさい、とトンベリを歓迎し、その手をとった。




「トンベリさん、トンベリさん!!!」

495無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:41:22 ID:ma9s53460
やはり、音は遅れてやってきてしまった。
遠く、ガラス張りの向こうから聞こえる世界。
手に絡みつく温かな液体。

「ハムライガー、くん?」
ぽたぽた、頬に雨が落ちる。
春の雨だ、これから大地を豊かにしてくれる報せの雨。
「トンベリさん……」
泣きじゃくっていた、その体を抱きしめて、もふもふと、心地良い手触り。
泣かないで、ハムライガーくん。
そう言いたかったのに、言葉が出てこない。
「泣かないで、トンベリさん」

ありえない言葉が耳を打つ。

「止めようとしたんだ、ボク、トンベリさんを」

「変わってほしくなかったから、あんなふうに、なってほしく、なかったから」

無色透明の中に、光があふれる。
陽光の赤、血の赤。
氷が見せた空の青。
暗く沈んでいく瞳の黒。

ハムライガーの毛皮につきたてられた刃を見て、トンベリは絶叫した。
涙を流して叫んだ。
だが、誰にもその透明な哀しみは見えず、聞こえなかった。
それは感情の帰還であったか、ただの静かな慟哭に過ぎなかったのか。

「大丈夫!まだ助かるよ!!」
くぽくぽぷよぷよした声が聞こえた。
癒しの心得があるのだろうか、トンベリは何も言えずに震える。
助けたいのか?ニンゲンに与していたかもしてない彼を?
いや、聞きたいのだ、彼に、どうしてと。
なぜニンゲンを……違う、そんなことじゃない、私が聞きたいのは。
私が今、言うべきことは。
「お願い、ハムライガーくんを――」



「こんの、ダボハゼがぁあああああ!!!!」




無情な咆哮。
機関銃は主に応えて轟音を吐き散らかす。



ホイミスライムの治療と元から丈夫だった体が功を奏しすぐさまマンイーターは立ち直った。
そして起き抜け一番、散々っぱら自分を刺してくれたトンベリにお礼参りをすべく機関銃を、こちらもお返しだと問答無用でぶっぱなした。
これは正当防衛であるし、あれは危険悪魔であるし、マンイーターは1ミクロンも悪くない。
あれだけ刺されたならどんなに貞淑で上品で儚げでか弱い乙女でも相手を蜂の巣にするに決まってる。
そう彼女は確信して最高にエクスタシーを感じながら機関銃を抱え。

「快、感……!」
煙を吐き出し天空を向く機関銃とともにマンイーターは満面の笑みを浮かべる。
ホイミスライムも、ギリメカラも、あのハムさえも呆れ返った様子でマンイーターを見つめた。

「おヌシは……」
何も言えない。
言う必要も見当たらない。
そんなことより、今の銃撃で息絶えた悪魔と、傷ついた悪魔の手当が先だろう。
前者は、供養になってしまうが。

ハムは傷ついたハムライガーと息絶えたトンベリを交互に見やる。

(ああもう、面倒くせえったらありゃしねえ)
深い感慨もあるわけがなく、どうやってこいつらに取り入るか、ハムの計算が始まる。

496無色透明の ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:42:27 ID:ma9s53460
【F-5/山の麓/一日目/午後】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:刺傷、気絶
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:ブリーダーさんに逢いたい。殺し合いはしたくない。
 1:…………トンベリさん

[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」



【ハム@モンスターファーム】
[状態]:健康、お尻が痛い
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身未確認)
[思考・状況]
基本:帰りたい
 1:やったぜ。
 2:なんとかしてまた取り行ってやるぜ
 3:殺すとかありえねー

[備考]
オス。野生で人間に対しては特に何も思っていません。
表は良い人振るが内心は黒い。自分より格下は力でねじ伏せ下僕にする。
格上には媚を売り自分の安全を確保する。基本自分からは行動せずリーダー格に付いて行く。


【ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:みてろよあのハゲ
 2:金の子牛が気にかかる
 3:どうしたものか

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。

【ホイミスライム@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:モーグリスーツ@FFシリーズ
[所持]:どくばり@ドラゴンクエストシリーズ
[思考・状況]
基本:とりあえずギリメカラに付いて行く
 1:今はこのオジさんに付いて行くしか無いよなあ
 2:大変だあ……
[備考]
オス。若い。

【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:背中に裂傷(ダメージ中)腹部に刺傷、治療済み
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(70/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(4/5)
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明)ブイモンのふくろ(中身は空っぽ)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:このチームから離れたい
 2:ザマーミロなんか緑のバケモノ!

 ※メダパニの杖を強化系の杖と勘違いしています、回数制限も知りません
  山頂の景色から少しだけ地形を把握しました


【トンベリ@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】

497 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/05(金) 05:42:51 ID:ma9s53460
投下終了いたします。

498 ◆5omSWLaE/2:2013/07/05(金) 09:42:26 ID:qzcq5yRk0
投下お疲れ様です
憎悪で覆われた氷が溶かされたのは、過ちを犯した後であった
マンイーター姐さん、コミカルだけども容赦ない……!
思い通りの流れになってて嬉しそうなハム。ギリメカラがいるけど大丈夫か?

ニンゲンの姿を見て暴走してしまったトンベリ
命懸けで割に入ったハムライガーの想いは、虚しくも無駄になってしまった
なんとも悲しくも虚しい結末……それを喜ぶマンイーターとハム
実にスタンスがバラバラなチームで、先が非常に不安ですねぇ

499名無しさん:2013/07/05(金) 20:44:03 ID:j6wYZUsI0
投下乙です
おおう、遂にCMロワである種一番の火薬だったのが炸裂してしまったか……
切ない結末に
ギリメカラさんは敢えて反射しないようにしたりと今回も頼もしかったんだけど
組み合わせが悪かった……
ここのマンイーターは実際元クズ人間だし
とはいえそりゃあ刺された以上は撃ち返しても当然っちゃ当然なんだよなあ

500show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:57:12 ID:vBd58pmQ0
投下乙です
やマ糞

好転しようとしたタイミングで打ち貫かれたというのがなんとも残酷ですが、
トンベリが最期に選んだものが復讐ではなかったことに、救いを覚えます。

投下します

501show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:57:31 ID:vBd58pmQ0




もう、そこにプチヒーローはいなかった。

「「届け──」」

でも、完全でも無敵でもないけど、そこには勇者がいた。


「「 ──絆   の雷」」


この場に味方は誰一人としていない。

でも、独りじゃない。




「「 ダブルディン 」」

502show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:57:43 ID:vBd58pmQ0





海に沈み込まんとする太陽を背に向けて、ギルガメッシュは立つ。
風に乗って流れてくる乾いた血の臭気が、戦いの予感を告げていた。

「ようやくだ」
ヒノカグツチを構えたギルガメッシュの頬が上がった。
笑うという行為が獣が牙を剥くことに由来するのであれば、ギルガメッシュの笑みも獲物を見つけた獣の歓喜なのだろう。
夕焼けを切り裂いて、こちらへと向かう二つの弾丸を見るその目のなんと爛々たることか。

空は赤々と燃えていた。それは世界が夜闇に沈むことに対する夕陽の最後の抵抗なのだろう。
けれど夜闇は、どこまでもどこまでも決して太陽を逃さない。

『逃がさない』
先程の戦いから離脱した二匹の視線がギルガメッシュと合ったその時、ギルガメッシュの視線が何よりも雄弁にそのメッセージを伝えてきた。

飛行が終わり、二匹が地面へと──ギルガメッシュの真正面へと降り立つ。

「ギルガメッシュ……お前達を殺す者の名前だ」
一方的な死刑宣告は強者の自負であり、圧倒的な真実であった。

「名前は要らん、愉しませてくれたのならばその姿だけは覚えておいてやる」
濁流のような殺気が、二匹を圧殺せんばかりに放たれた。
全身を氷で包まれたかのように、寒い。
二匹は震えていた。

逃げられない。

プチヒーローの手がジュペッタの手に触れた。
ジュペッタはその手をぎゅっと握り返す。

震えは収まらない。

「無駄なことはやめとけよ、降参するんなら心優しい俺は許してやらないこともないぜ?」
「…………そ、そうだよ」

けれど、二人で震えていれば、
どっちが震えているかなんてわからない。

アイドルはこんな時でも虚勢を演じられる。
アイドルはどんな時でも勇気を与えられる。

だから、勇者も奮い立てる。


「許しなど要るものか」

そして道化の滑稽な演技に、王も嗤う。


「だが、いい度胸だ」
戦いが始まる。

503show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:57:54 ID:vBd58pmQ0


風を切って、鎖が大地を穿った。
ギルガメッシュの技術と力があるからこそ出来る、本来の使用方を逸脱したその攻撃はまさしく鋼鉄の鞭と呼ばれるに値するだろう。
鋼鉄の連打はまるで嵐のような暴風を伴って、二匹を襲う。
食らえば、死ぬ。

「だが、当たらなければどうということはない!」
ジュペッタの叫びと共に、何の脈絡もなく鎖が空中で静止した。
サイコキネシスの真価は、相手が武器を持った時に最大限に発揮される。

鎖が主たるギルガメッシュに反逆し、拘束具と化した。
鉄の冷えた感触が、ギチギチとギルガメッシュを縛り付け、食い込んでいく。

「だから言ったろ!降参すれば許してやるって」
呆気ない勝利、ジュペッタはそのことに逆に不安を覚える。

──いや、これまじで大丈夫だよな?とっとと降参してくれよ!頼むから!!

不安が拘束をより強固なものにする。
苦痛で音を上げてくれるように、より強く、より痛く。

縛られながらも不敵な笑みを崩さないギルガメッシュと懇願するかのようにより強く締め上げるジュペッタ。
奇妙な状況の終わりは、やはりギチという音を立てて始まった。

「それで終わりか」
腕ごと巻き込んで鎖に縛り付けられているギルガメッシュは、退屈気にそう言った。

「まだだ!ここから俺のスーパーデンジャラスハイセンスグロテスクモダンアタ……」
ジュペッタの言葉終わりを待つまでもなく、鎖が散弾のように弾け飛んだ。
ギルガメッシュの力ならば、サイコキネシスすら凌駕して無理やり壊せんこともない。

突然の奇襲をプチヒーローは水鏡の盾で防ぎ、
ジュペッタは向かい来る鎖を、逆にサイコキネシスで撃ち返した。

「見せてみるが良い、そのスーパー何とかとやらを」
撃ち返された鎖は音を立てて溶け落ちた。

ギルガメッシュの手に握られたヒノカグツチが、轟音と共に刀身に炎を纏う。
それは炎の剣であり剣の形をした炎だった。


「   冥 府 で な !!」

ヘイストを駆けたギルガメッシュの体が、一っ飛びにジュペッタとの距離を詰める。
「サイコキネ……」
発動前に止められてしまえば、どんな力も意味は無い。
本質を見破ったギルガメッシュの拳がジュペッタの体を紙のように宙に放る。
ギルガメッシュは跳んだ。

「……プチヒーロー」
吹き飛ばされたジュペッタの諦めと苦笑交じりの顔がプチヒーローを見た。

「ダメだ!そんなの!」
ギルガメッシュにトドメを刺されて、ジュペッタはこのままでは死ぬ。

──死なせない!死なせてたまるもんか!

空にいる相手だろうと、いや空にいる相手だからこそ勇者の呪文は当たる。

「きたれ!勇者の雷……ライディン!」


ジュペッタが、口元に微笑を浮かべて言った。
「まぁ、大丈夫……なんとかなるって、色々とさ」

この一瞬が永遠のものだったら、どれほど良かっただろうか。


ギルガメッシュの天からの一撃がジュペッタを貫いた。
雷はギルガメッシュを穿つことはなかった。

【ジュペッタ@ポケットモンスター 死亡】

504show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:58:05 ID:vBd58pmQ0

「ベホマ……」
プチヒーローの必死の祈りも、抜け殻となったぬいぐるみには最早届かない。

「ベホマ……ッ」
命に手が届かない。

「…………うぅ」
何もかもが遅すぎた。
そこにあるのは、もはやジュペッタではなかった。


「当たらなかったんじゃない……当てなかったな」
無感動にジュペッタの死体を見下すと、ギルガメッシュは苛立ちを隠しもせずにプチヒーローに向き直った。

「僕は……僕は……」
──当てたかった。
何としてでも、プチヒーローはライディンをギルガメッシュに当ててジュペッタを救いたかった。
それでもプチヒーローに明確な意思を持って誰かを傷つけることは出来なかった。

だから、涙が溢れた目を閉じた。

何も見ぬままに、終わることを祈った。
そうして放った雷は、当然のように外れた。

「雑種以下の豚が」
泣き崩れるプチヒーローに、ギルガメッシュは侮蔑を隠そうともしない。

「鼠でも叶わぬと知りながらも懸命に足掻くものを」
「…………」

「貴様は豚だ。飼いならされ、抵抗を忘れ、何時か食われるその日まで下らん安寧を生きる豚だ」
「………………」

「豚の友人……ふん、奴も下らん輩だったな」
「取り消してよ……」

「豚と言われたことか?それともあんな死体など友人扱いするなということか?成程、豚は豚なりにプライドだけが肥え太ってしまったみたいだな」
「ジュペッタは下らない奴なんかじゃない……」

ジュペッタとプチヒーローが共に過ごした時間は少ない。
だが、時間の多少は問題ではない。

「ジュペッタは僕を……勇者になれない僕でも見てくれた!!」
孤独だったプチヒーローと共に過ごしてくれたことが、どれほど彼の救いとなったか。

「ジュペッタは僕の友達で…………」
体の震えは、初めての武者震いなのだろう。
きっと、そうに違いない。

プチヒーローは立ち向かおうとしていた。
見ろ、プチヒーローの側に横たわっているのは傷ひとつ無いぬいぐるみだ。

届きはしなかった、間に合いはしなかった、それでも、

プチヒーローはジュペッタにベホマを当てたのだ。


「アイドルなんだ!!」
アイドルが何なのかは、プチヒーローにはよくわからない。
それでも、プチヒーローはおぼろげながら理解していた。
アイドルとはきっと、勇気を与えてくれる者の事を云うのだ。


「怒るなら……」
プチヒーローの心臓を、ヒノカグツチが無慈悲に焼き貫いた。

「奴が死ぬ前にやれ」

【プチヒーロー@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】

505show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:58:23 ID:vBd58pmQ0

「つまらん……」
誰も聞くことのない言葉を、ギルガメッシュは吐き捨てる。
結局、この戦いをギルガメッシュは楽しむことが出来なかった。
苛立たしさに死体を壊すことなどはしない、ギルガメッシュは新たな戦いを求めて再び歩き出す。

【ジュペッタ ぬいぐるみポケモン】

「…………ッハ!」

背後に再び気配を感じたギルガメッシュは足を止める。
まだ、戦いは終わっていない。

【たかさ  1.1m おもさ  12.5kg】


「僕は……勇気をもらったんだ…………」

ジュペッタは死に、そこに残されたのは傷一つ無いぬいぐるみだ。

【すてられた ぬいぐるみに】

「だから…………」
彼に立ち上がる意思があるのならば、

【おんねんが やどり】

「僕は戦うよ」

死んだプチヒーローが、その心を落としたのならば、
強い意志がぬいぐるみに宿ったのならば、

【ポケモンになった。 】



「答えろ、お前は何だ?」
「僕は…………」


「勇気を与える者だ!」

506show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:58:34 ID:vBd58pmQ0









「モンスターだって何にでもなれるさ」

「魔物にだって可能性はあるんだからさ」

「プチヒーローは何になりたい?」

507show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:58:45 ID:vBd58pmQ0




「きたれ、英雄の剣……アルテマソード!」
超然のエネルギー体である剣が、プチヒーローの手に握られた。

「我と剣で勝負するか、その心意気やよし!」
アルテマソードに応えるかのように、ヒノカグツチの紅蓮がより深く燃え上がる。

「…………」
「…………」

この日、プチヒーローは初めて己の意思で目の前の敵を傷つけようとしていた。
それが、どれ程の覚悟の上であるか、言い表せるものか。
恐怖が心中を埋め尽くした。
恐怖という闇の中、道を照らすのは勇気という灯火だ。
プチヒーローの唯一の友であるアイドルのくれた勇気だ。
息を深く吸い込み、吐いた。

プチヒーローはギルガメッシュを見た。

剣士が同時に剣を構えた場合、多くの場合沈黙の時が生じる。
剣士独特の呼吸が有り、死の間合いがある、
二つを測りそこねれば、多くの場合において死を意味する。

プチヒーローはギルガメッシュ比べて小さいが、今はジュペッタであるために、浮遊している。
浮遊しているということは、そのままの高さのギルガメッシュの振りでも突きでも仕留められるということである。
それはまた、プチヒーローにも言えたことである。
体躯の差は無いに等しい。

ギルガメッシュは、自らに浮かぶ死の幻影をはっきりと見ていた。
目の前の敵から発せられる圧力は、先程の豚からはとてもイメージ出来ない。
急激に強くなった理由、ギルガメッシュは測りかねていた。

もちろん、プチヒーローは急に強くなったわけではない。
元々、勇者としての教育を受けさせられていた彼は強かった。
しかし、実力を発揮させることが出来なかっただけなのだ。

それだけの理由と納得出来ないのならば、一つの理由を付け加えよう。
プチヒーローはジュペッタの体で、すなわち二人で戦っている。

二人ならば、弱いはずがない。

プチヒーローがアルテマソードを振るい、
それと同時に、ヒノカグツチも振り下ろされた。

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」

戦いが始まった。

508show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:58:55 ID:vBd58pmQ0


ヒノカグツチとアルテマソードが激しく打ち鳴らされる、もちろんアルテマソードに通常の刀身は存在しない。
だが、神の剣であるヒノカグツチの炎ならば、アルテマソードに対して打ち消されない威力を発揮しているというだけだ。
鍔競り合いは行わない。
プチヒーローはアルテマソードと共に浮遊したその体で軽やかに後退し、ギルガメッシュは前進する。

浮遊しているという事は、三次元を自由に動き回れるということだ。
プチヒーローは、攻撃の基本を抑える。
すなわち、相手の死角から攻撃を加え続けること。

しかし、ギルガメッシュは歴戦の猛者である。
その様な単純な攻撃は許さない。

何度攻撃しても、ギルガメッシュはただヒノカグツチの刃にて返す。
アルテマソードの威力ならば、ヒノカグツチの威力ならば、
相手に三寸切り込めば、勝てるだろう。

だが、その三寸が光年程に遠い。

互いに、有効打は無く。
ただ、剣を打ち鳴らす。


その様な事を、ギルガメッシュは許さない。

「いいだろう!」

──プロテス

「お前を!」

──シェル

「全力で!」

──ヘイスト

「殺してやろう!」

──ブレイブ




「斬ッ!!」
恐るべき程に強化されたギルガメッシュの斬撃は、最早打撃と言っても過言ではない。
だが、ギルガメッシュがアルテマソードごと、ジュペッタを地面に叩きつけた。
刀身が折れなかったのは、アルテマソードの奇跡と言っていいだろう。

509show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:59:05 ID:vBd58pmQ0

地面に倒れ込んだジュペッタとヒノカグツチを構えたギルガメッシュ、その後の運命など誰が見てもわかるだろう。
ギルガメッシュは遺言など聞きはしない、全力を尽くすといった以上相手にそのような隙を与えない。

──ブレイブ

通常の攻撃力の三倍の斬撃、それを持ってして一度に勝負を決める。

「死ねッ!!!!」
ヒノカグツチを振り下ろしかけたその時、ギルガメッシュは己が死ぬ幻影を見た。
それはヘイストによって発揮された恐るべき程の危機察知能力。
もしもそれが無ければ、ギルガメッシュは死んでいただろう。

「きたれ勇気の雷……」

ギルガメッシュは天に向けて、剣を構えた。
先程の詠唱で、この呪文がどの位置から来るかを、
そして、今のプチヒーローならば、例え息の根を止めようが詠唱を止めないことを知っている!

「ギガディン!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」

空から降り注ぐ雷撃に対し、ギルガメッシュはヒノカグツチで抵抗する。
ギルガメッシュ程の剣の使い手ならば雷をも剣で斬り裂くことは当然、
また、炎の剣であるヒノカグツチならば、同質エネルギーとしてギガディンに抵抗できることも当然といえるだろう。

「もっと!勇気を!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
雷は止まない。
プチヒーローは止ませない!
ギルガメッシュも止まらない!


ここで勝負の分かれ目となったのは、互いの意思ではなく……戦術だった!
ジュペッタならば、抜け目なくそうしていただろう!
そして、この時、プチヒーローもそうした!

「なっ!」
突如、威力が収まった雷……ギルガメッシュは完全に雷に勝利した。
だが、突然の勝利にギルガメッシュの意識は完全にそちらに向かわされた。

「サイコキネシス!!」
突如として念動力で飛来してきた水鏡の盾が、ギルガメッシュの首を強打する。
プロテスが掛かっているために強打ですんだが、もしもそれを生身で受け止めていれば切断されていただろう。

激しい衝撃と共に、ギルガメッシュの呼吸が乱れる。
酸素の強制的なシャットダウンは、すなわち意識の消失を意味する。
「がっ……」

意識が虚ろう。
ギルガメッシュの視界がぼやけた。

「きたれ、勇気の雷!ギガディン!!」

天より放たれた雷が、ギルガメッシュを直撃する。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
痛みがギルガメッシュを叫びに向かわせる。

だが、それでも!
ギルガメッシュは敗北しない!

「よくぞ我をここまで追い詰めた!!」
瀕死のギルガメッシュがプチヒーローに送るのは称賛。


「褒美として、我が最強の技をくれてやる!!」
そして死だ。

510show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:59:15 ID:vBd58pmQ0


この技を初めて使った時のことをギルガメッシュは今でも覚えている。
「この程度かよ!ギルガメッシュッ!!」
「冗談を抜かすな!」

宿敵と呼べる唯一の相手だった。

「輝きの世界を!」
「切り捨て御免!」

そして、二度と呼べなくなってしまった相手だった。

己が生み出した最終奥義の前に、宿敵は死んだ。
それ以来、ギルガメッシュは二度とその技を使ってはいない。

己が認めた敵以外の誰が、我に抗えようか。

だが、プチヒーローの雷にギルガメッシュはかつての宿敵の光を見た。

ならば、放とう。

最終奥義を。





「最終幻想」


その一太刀のもとに、全てが滅び去る。

511show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:59:25 ID:vBd58pmQ0


全てを呑み込む崩壊の光の中、プチヒーローは立っていた。

「なぁ、プチヒーローは何になりたい?」
声を聞いた。それは絶対に聞こえるはずのない声だった。
不思議と恐怖はなかった、むしろその声に安らぎすら覚えた。

「ジュペッタみたいな……アイドルになりたいな」
「無理だろなぁ」
軽く笑って否定する声に嫌悪感は無かった、なんでさ?とプチヒーローも笑って返す。

「俺ほどのアイドルになると、そりゃあ天才すぎてなぁ」
「アハハッ」
「だから、プチヒーローはプチヒーローで頑張れよ、俺も応援してやるから」
「ジュペッタの応援なら、100人力だろうなぁ」
「あぁ、アイドルだからな」

「なにか、誰かに届けたい言葉はある?」
「んーー、ファンが多すぎるからな、マスターによろしく言っといてくれ」
「うん……」

「多分、この一撃放ったら俺消えるから、よろしく」
「…………」
「一人で戦えるか?」
「戦うよ」
「そうか、良かった」

プチヒーローがあれ程までに戦えたのは、
肉体の奥底に眠るジュペッタの意思が補佐してくれたからに過ぎない。
だが、ジュペッタの意思も所詮は残滓のようなもの、程なくして消える。

「…………」
「泣くなよ」
「泣いてないよ……」

「次は、僕が誰かを泣き止ませる番なんだ」

512show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 20:59:46 ID:vBd58pmQ0




もう、そこに未熟なヒーローはいなかった。

「「届け──」」

完全でも無敵でもないけど、そこには勇気を与える者がいた。

    僕達の
「「 ──絆   の雷」」
    俺達の

この場に味方は誰一人としていない。

でも、独りじゃない。



プチヒーローの手に、ぬいぐるみのような感触が重なった。

「「 ダブルディン 」」



「お前なのかバ……」


ジュペッタの意思も、
プチヒーローの涙も、
ギルガメッシュの言葉も、

何もかも、何もかも、光に包まれて、消えた。

513show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 21:00:00 ID:vBd58pmQ0

「耐え残ってしまったか…………」
結んでいたきあいのハチマキが燃え尽きて、地面へと落ちた。
燃え尽きる前の最期の働きとして、ギルガメッシュを生かしたのだろう。


「名前を……聞いておけば良かったな」
全てが終わった後の風景で、ギルガメッシュは苦笑を浮かべて呟く。
敵を褒め称えようと思ったが、名前がわからないのではしょうがない。

「いい友だちをもったな」
もしも宿敵がまだ生きていたのならば、その時はギルガメッシュも目の前の敵と同じような関係になれただろうか。

「ついでに、いい物を見せてもらったよ。勇者の剣、コレクションに加えられないのが残念だ……」
だが、言うほどに無念ではない。
最高の使い手が振るう最高の剣を見ることが出来たのだ。

「…………じゃあな」
別れの言葉を何としたものかギルガメッシュは悩み、宿敵の言葉遣いを真似ることにした。
確かにギルガメッシュは生きている、回復を行えば再び戦うことも出来るだろう。
だが、敗けたのならば大人しく死んでおくべきであるとギルガメッシュは考える。
それが、目の前の全てを出し尽くして戦った者達への、
そして己の勝利ゆえに死んでいった者達への礼儀というものだろう。


「お前達強かったぜ!」

じばく

【ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】






【G-6/草原/一日目/夕方】

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(大)、気絶中
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
 1:…………
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。


ヒノカグツチはギルガメッシュの死体の側に転がっています

514show me your brave heart ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/05(金) 21:00:10 ID:vBd58pmQ0
投下終了します

515名無しさん:2013/07/05(金) 21:57:27 ID:ih3ImQo20
プチヒーローとジュペッタの絆に感動した!
ギルガメッシュもイケメンだった!
投下乙!!

516 ◆5omSWLaE/2:2013/07/05(金) 22:57:44 ID:qzcq5yRk0
投下お疲れ様です
臆病な勇者の覚醒、友との絆が起こした奇跡、一切の緩み無き全開の戦い
実に熱く、心躍るような展開、食い入るように読み入りました……!!
ジュペッタの魅せるような戦い方は非常にかっこよかった! 彼の死は非常に悔やまれます
そんなアイドルポケモンに魅せられ、勇気をもらったプチヒーロー
ところどころに組まれた描写の手法が、彼の誇り高き姿をより引き立ててます
そして冷徹なマーダーであったギルガメッシュ、絆の力を認めた騎士道精神
彼の幕切れの言葉は鳥肌ものでした……! 美しい散り様、素晴らしかったです

517名無しさん:2013/07/05(金) 23:15:14 ID:xF8pcwisO
投下乙です。

アイドルもヒーローも、誰かに勇気を与える者!

敗者には死を。
ギルガメッシュ潔いな!

518名無しさん:2013/07/05(金) 23:15:55 ID:j6wYZUsI0
なんにでもなれる、がまさかこう来るとは!
アイドルに、ポケモンに、勇気を与えるものに、ヒーローに!
誰かの涙を止めるものに、お前はなれるよ、プチヒーロー
ギルガメッシュもさらば!
強く誇り高い戦士だった!

519 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/06(土) 00:07:07 ID:XbzbC9JE0
ベヒーモス、ボナコン、ルカリオを予約します

520 ◆5omSWLaE/2:2013/07/06(土) 13:21:53 ID:RQSqG/go0
予約分の延長致します

521 ◆TAEv0TJMEI:2013/07/06(土) 16:36:50 ID:Bl08rLxI0
ジャックフロスト、キノガッサ、予約します

522名無しさん:2013/07/06(土) 19:15:40 ID:Bl08rLxI0
収録された支援絵がカッコイイ
まさかあいつのアルテマソードに燃える日が来るとは

523 ◆7NiTLrWgSs:2013/07/06(土) 23:11:31 ID:T7fkvOmk0
予約延長します

524 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 02:16:08 ID:pjJy.Y0M0
レナモン予約します

525 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 22:28:18 ID:X7kLquLI0
すみません、話の流れにおいて大きな問題点を発見したため今回の予約は破棄します

526 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:07:15 ID:ilVGXy5Y0
はぐれメタル、メタモン、凶鳥モーショボー投下致します
タイトルは「escape」です

527 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:07:39 ID:ilVGXy5Y0
それはいつもの何気ないありふれた光景。

温かい風がそよぐ育て屋さんの広いお庭で、ポケモンたちと仲良く遊ぶ日常。
あの女の子も綺麗な桃色の髪を揺らしながら、私たちと一緒に遊びを楽しむ。
その様子を微笑ましそうに見守るご主人様と育て屋のおじいさん。
芝生の上で追いかけっこ、日だまりの下で水遊び。
おばあさんがおやつを持ってきたので、みんなでワイワイしながら少し休憩。
食べ終わったらまた遊びの続き、今度はボールを一番遠くへ投げたら勝ちゲーム。
私はオクタンに変身して思いっきり発射、場外まで飛んでいって見事に優勝。
夕焼けの中でキラーンと星になったボールを見て、みんなして笑った。

「メタモンって色んなポケモンに変身出来るんだよね」

うん、すごいでしょ!
実はね、私もっともっと凄いのに変身出来るようになったんだよ。

「え、本当? 見せて見せて!」

もちろん! それじゃ、さっそく変身するね!

「あ、じゃああたし合図するね!」

オッケー!
じゃあ合図をお願い。行くよー。

「メタモン、チェンジ!」

私は体をくねらせて、目の前の女の子の姿に変身する。
どう、人間の姿にもなれるようになったんだよ。


 ◆


目に映るのは一面真っ白な大地。
草木の緑も、土の茶色も、すべて白一色に染まっている。
それに対比するかの如く散らばる木々の枝が真っ黒。
そんな感じのモノクロームな光景。
写真にするとしたらカラーにする必要が無いだろう。それほどまでに色彩は皆無であった。

とはいっても、これは決して雪景色のような美しいものと一緒くたにしてはいけない。
これは全て、灰と炭によって構成された風景なのだから。
数時間前にアリスが放ったトリスアギオンは森林の一区間を骸骨の如く変えてしまった。
命の息吹や自然のエネルギーが完全に破壊の炎へと昇華し、自然環境は根こそぎ消失している。

「キャハハハ、こりゃ酷い有り様だねー」

モーショボーはその風景を眺めると、魔界で見た荒れ地の光景を彷彿した。
この惨状はどーせあの魔人がやったんだろう、と推測する。
他にこれだけの力を持つ悪魔がいないとも限らないが、そこまで考えるのは出会してからで良い。

「ガブリアスとケルベロスが、アリス倒してくれちゃえばいいんだけどなー」

あの飛び抜けた脅威さえいなければ、少なくとも早々に死ぬ危険性も減るのだが。
……所詮それは願望でしかない。十中八九、彼らはアリスによって殺されていると思う。
ガブリアスのような戦力的に優れていて、それでいて自分に協力してくれる変わり者に出会えればいいのだが。

「……これ、生き残れるのかなー……?」

そんな都合よくそういう者に出会える可能性は限りなく低いだろう。
だいたい、ガブリアス並の強さでは結局アリスという壁の前に破れ去るのは目に見えているのだ。
少なくとも彼以上に強い者でなくては話にならない。
そういう悪魔、またはポケモンに運良く出会い、協力してもらえればいい。
そうすればモーショボーは生き残ることが出来る……。

528 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:08:08 ID:ilVGXy5Y0
「キャハハハハ、流石にそんな上手くいくわけないかー」

考えを巡らせるのがあまりにもバカバカしくなって、モーショボーは笑っていた。
そんな何もかもトントン拍子で物事が進むはずが無い。楽天家にも程がある。

何より、どうしてそんな淡い希望を抱く必要があったのか。
自分は何のために生き延びたいと思っていたのか……。
その疑問を抱いた時に、心の中に冷たいものが過ぎった。

「……あれ、何が楽しくて生きているんだっけ?」

自分は深く考えずにただ生き残りたい、生き残りたいと自然に考えていた気がする。
死ぬのが怖いから? 痛いのが嫌だから? いや、そんな理由で無為に生きてきたのだろうか。
……そうだ、人間の脳みそをもっと食べたいからじゃないのか?
そうじゃん! まさにそれだ。あの体の底からとろける様な甘美な味をもっと味わいたい。
そのために私は生きている、そうに違いない。いや、まさにそれだ。

―――ということは。

―――ここに呼ばれた時点で、もう二度と食べられないってわけだよね。



「キャハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」



あぁ、可笑しい。だったらもう生きる必要が無くなっちゃったじゃん。


 ◆


ちょっと涙で視界がボヤけたかと思えば、いきなり景色が変わってて驚いた。
そりゃあ超速で移動していると、まばたき一つする間に景色は大きく変わるものではある。
でも、まさか緑から白へガラっと変わるだなんて予期出来るわけないじゃん。
そんなわけだから一旦走るのを止め、はぐれメタルは周囲をじっくりと見回す。

「……この辺一体、まるごと焼き尽くされてるのか。どんな技が使われたんだろう……」

巨大なドラゴンが灼熱の火炎を吐きながら暴れる姿を想像して身震いをする。
この近くにそんな恐ろしいモンスターが彷徨いているとしたら……。

「早くここから離れた方がいいかな……」

と、そそくさと惨状の中を通り過ぎようと足を進めた。
その時に視界に自分と同じような体型のモンスターの姿が映った。
ピンク色のスライムのようなモンスターが、灰の上に横たわっている。

「だ、大丈夫っ?」

はぐれメタルはすぐさま駆け寄って様子を見る。
少なくとも、これまで会ったことのない種族のスライムだった。
普通のスライムほど形がしっかりしておらず、バブルスライムほど液状でもない。
体には透明感は無く、例えるならば粘土のそれに近かった。
ドロヌーバとかジェリーマンとか、その辺りの仲間なのかもしれない。

全身は火傷したように爛れており、呼吸も苦しそうなものとなっている。
すぐにでも治療しなくてはいけない、何か薬草か何かがあれば……。
あいにく自分に支給された道具は『スリースターズ』という、魔力の消費を極端に抑えられるというアクセサリー。
使用者によっては強力であるものの、回復呪文も無く、攻撃呪文も貧弱な自分には役不足な道具であった。

「とにかく、薬草が生えてそうな場所へ連れて行かなくちゃ」

ここに置いておくよりも、連れて行って薬草を探す方が安全だろう。
そう思ってピンクのモンスターを背中に乗っけて、ササッと森林へと向かう。

「キャハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

その時ふと、女の子の笑い声が聞こえた。
無視して森へ向かうわけにも行かず、その声の方へ進む。
そこにいたのは長い黒髪を羽ばたかせながら宙に浮かぶ着物の
するとそこには、美しい黒髪を翼のように羽ばたかせて宙に浮かぶコートを纏った少女がいた。

「あ、あのー……」
「んー?」
「キミは人間っぽいけど、モンスターだよね……?」

その質問に対する返事はすぐには帰ってこなかった。
着物の少女ははぐれメタルの姿をじーっと眺め、背中にのっているピンクのモンスターを眺め、そして。

「チェンジ!」
「えっ!?」

529 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:08:28 ID:ilVGXy5Y0
唐突にそんなことを言われて、はぐれメタルは唖然とした。


 ◆


それがきっかけとなり、不思議なことが起こる。
ピンクのモンスターが突然体をくねらせたかと思うと、その形状が、形質が、体躯すらが変貌し始めた。
そうしてはぐれメタルの上に横たわっているのは、桃色の頭髪を持った10歳くらいの少女となった。
モンスターの状態と変わらず、全身はボロボロで気絶したままだった。

それをみたモーショボーは瞳をキラキラと輝かせた。
目の前にとても新鮮な人間の少女がいるのだ。願ってもない食料。
彼女が先ほど口走った冗談半分本気半分の言葉と因果があるのかはわからない。
しかし、そんなことを考えている暇はない。とにかく食べたい、人間の脳みそ。
さぞやプリプリとして美味しい脳みそが、その綺麗な形の頭部の中に詰まっているに違いない。
ジュルリと唾液を飲み込むと、モーショボーはアクセルを全開にしてその少女へと飛びつく。

「いっただっきまーす♪」

真っ赤な唇を鋭い嘴へと変貌させ、その小さく未発達な頭蓋骨へと突き刺し、砕く。
そして顕になったピンク色の脳みそを上品に口へ運び、その濃厚で甘美な味の感想を述べ……。
……と思ったのだが、それは水銀の悪魔によって邪魔された。

「ちょ、ちょっと待って! このモンスターは人間じゃないよ!」
「なんで邪魔するのー! モーショボーはお腹がすいてるのー!」

はぐれメタルは少女の頭に覆い被さって、モーショボーの嘴から身を守った。
思い切りつついても、その鉛のような塊には傷一つ付けられない。
それでもって、引き剥がそうと端を持ち上げようとするも、水を掴むかのように手応えが感じられない。

「少し話を聞いて! この子は多分ジェリーマンとかの仲間だと思うんだ。変身が出来……」
「いいからどいてよー!」

モーショボーは話をせき止め、一度宙へと舞い上がった。
そして呪文を詠唱、己の体を中心に魔法陣が発生、そうして黒髪の翼を思い切り羽ばたかせ、風の刃を巻き起こす。

「マハザンッ!!」

彼女は魔力には多少の自信があった。彼女にとって護身用に近いこの魔法も、それなりの威力を持っている。
いくら金属の肉体を持っていたとしても、まともに喰らえば悲鳴を上げるはずだ。

はぐれメタルはバネの形になってスプリングで飛び上がり、そこで体を大きく広げた。
それはまるでシェルターのように……いや、そのものだと言えよう。

―――ミス! はぐれメタルにダメージをあたえられない!

次々に飛んでくる風の刃を完璧に受け止めていく。
そう、彼のメタルボディは物理攻撃以外のもの……魔法も技も何もかも、一切通用しないのだ。
マダンテだろうと、アルテマだろうと、だいばくはつであろうと、ジハードだろうと、与えられるダメージは等しくゼロ。
彼女のマハザンであろうと、当然同じ結果となる。
2回程唱えたところで無意味を悟った。

「もういい! キライ!!」

純粋に食事の邪魔をするだけの存在に腹を立てて、モーショボーは踵を返す。
自分に襲いかかるでもないただの障害物、かかわり合いになるだけ無駄だろう、と思った。

「行かないで! お願いだから、話を聞いて欲しいんだよー!」

それなのに水銀野郎から呼び止めてきた。

「うるさい! 話聞きたくない!」
「お姉ちゃん、回復魔法って持ってたりする?」
「持ってるけど何?」
「あの女の子にかけてもらえないかなぁ……」
「なんでそんなことしなくちゃいけないの!?」
「……どうしてあの女の子をそんなに殺したがってるの? お姉ちゃんは、殺し合いに乗ってるの……?」
「だーかーらー! モーショボーは人間の脳みそが食べたいだけなのー!」
「だってあの女の子、人間じゃないんだもん。人間に化けれるモンスターで……」
「でも姿が人間なら、味もそうかもしれないじゃん!」
「そんなことないと思うんだけどなぁ……」
「少しでも可能性があるなら食べたいのー!」

怒鳴りつけるように主張するモーショボー。
それに対しはぐれメタルは、よくわからないと言った顔を浮かべた。

「なんていうか……どうしてもその大好物が食べれないとダメなの?」
「だってモーショボーの生き甲斐なんだもん」
「……い、生き甲斐……?」

モーショボーはそこ深く息を吐いて、少しだけ冷静さを取り戻す。

530 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:10:06 ID:ilVGXy5Y0
「硬くて強〜い水銀君にはわからないかもしれないけどね、モーショボーたちって強くない悪魔なの。
 だから魔獣に捕まって食い殺されたり、強い悪魔に襲われてひどい目に合わされたりする。
 ホント、いつ自分が殺られるかって不安をずっと持ちながら生きてるの。
 そんな中で、人間の脳みそを食べてる時が一番幸せで、それをまた食べたいから生きてるようなもんなの」
「そんなに不幸だったなんて……」
「ふん、まぁちょっとオーバーかもねー。でもどうせもうすぐ死ぬんなら、最後に食べたいなーって思うの。ねぇ、ダメ?」
「……で、でも……」

はぐれメタルは言葉に困った。
確かに自分も、この殺し合いで最後まで生き残れる自信があるかといえば、正直あるとは言えない。
モーショボーもきっとそうなのだろう。自分は最後まで勝ち残れないと自覚している。
だから彼女は、せめて生きている間にささやかな幸せを噛み締めたいのだと願った。
果たしてそんな願いを、僕が軽々しく止めていいというのだろうか?

「人間の脳みそそのものの味じゃなくてもいい、それに少し近ければ無理やりにでも満足するつもりだから。
 だからお願い。そこからどいて、その子の脳みそを食べさせて欲しいんだけど……」
「……やっぱりダメだよ」

どうしてもこのピンクのモンスターを殺させたくなかった。
こんな惨状の中でボロボロになって生き延びたんだ。
せっかく生きていられたというのに、見殺しにするなんてあんまりじゃないか……。

「わからず屋……」
「いや、わかるよ。モーショボーさんと同じように、いつ死ぬかわからない日々を過ごしてきたから」
「ふぅん」
「僕もいつも人間たちに命を狙われてて、いつもみんなして逃げ回ってる。
 もちろんたまに逃げられずに死んじゃう仲間もいる。
 よっぽど運の良いはぐれメタルを除いて、ほとんどの仲間たちは誰かの経験値となって終わっちゃうと思う」
「だったらせめて生きている間に楽しい事をしたいじゃん。
 辛い思いをしながら無駄に生き延びるよりも、短い間を謳歌できれば……」
「少し前まではそう思ったかもしれない。でも、今は違うんだよ。
 僕は生き延びることを無駄だって思ってないんだ。生きていたいんだ」
「……どうして生きていたいの?」
「ついさっき僕が助けられなかった、コイキングさんに約束されたんだ。生きて欲しいって……」

僕は他の仲間たちみたいに、『劇的な出来事』を一度は体験したいなって思ってた。
短い一生のうちに、ドラマチックな体験を、自分が大きく変わる瞬間を味わいたいと。

「生き残って、コイキングさんがいたことをみんなに伝えて欲しいって、託されたんだ。
 だから僕は死ぬつもりはないよ。例え逃げることしか出来なくても、諦めたりしない」

僕だけでも逃げれるように、自分から犠牲になる道を選んだコイキングさん。
もしも僕がコイキングさんの立場だったとしたら、あんな選択をする勇気はあっただろうか。
多分、無いと思う。だって死ぬのが怖いんだから。
でもコイキングさんは違ったんだ。出会ったばかりの僕のために命を投げ出すことが出来たんだ。
救えることが出来なかったのがすごく悲しくてすごく辛いけど、あんなにカッコイイお魚さんはきっと他にいないだろう。
あの姿を見せられて、何も変わらないわけがない。

ずっと焦がれていた、ずっと求めていた『劇的な出来事』は訪れた。
僕が死ぬ前に一度は体験したいこと、それは叶った。
でも僕はまだまだ死にたくない。
叶うと同時に、僕には『生きる目的』が出来たんだから。
だから僕はまだまだ生きていたい。

531 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:10:48 ID:ilVGXy5Y0
「……水銀君はいいよね、そうやって希望が持ててさー……。
 どーせあの魔人にでも殺されちゃうよ、みんな。絶対勝てないと思う」
「もしかしてモーショボーさんも、誰かを殺されたんですか」
「そうだけど……。別にぃ、元々いざって時に切り捨てるつもりだったもん」

平然とした口調で言い放つモーショボーの顔は、その言葉とは裏腹に暗いものであった。
自分が生き残れるのならば他人がどうなろうと知ったことではない。
それでも、逃げることしか出来ない自分を情けなく思った。
弱肉強食の世界で強く居られない自分に嫌気がさしていた。
アリスに見つかった時の恐怖、ケルベロスに殺気をぶつけられた時の畏怖、目の前で仲間が殺される時の絶望。

「どうすればいいんだろう。どっちにしろ最初から勝目なんてない。どうせ死んじゃうな」
「だったら逃げよう!」
「どこへ?」
「この島から逃げるんだ! 勝てないならば逃げてしまえばいいんだよ!
 そうすればここで戦って死ぬこともないし、モーショボーさんも生きて帰れれば本物の人間の脳みそも食べられるでしょ?」
「でも、島から逃げたら殺されるってモリーが言ってたじゃん」
「あ、そうだった……えっ、じゃあ、殺されないで済む方法を考え……」
「水銀君、今の勢いだけで言ったでしょー」
「ご、ごめん……」

勢いだけで言うもんじゃなかった、と反省した。
逃げるにしてもモリーの言う『死の呪い』をどうにかする必要がある。
いや、何よりもどうやって海を渡るべきかも考えなくてはならない。

「呪い解く方法もわかんないし、どうやって逃げればいいかわかんないしー。
 そんな簡単に上手くいかないと思うよ。あんまり希望を抱きすぎると後でガッカリするよー?」

はぐれメタルがたった今巡らせた考えを見透かして、呆れ顔でため息をつく。
そうしてモーショボーは灰の上にストンと着地し、桃色の髪の少女へと近づいていく。

「ま、待って……」
「ちょっとどいて。食べないから」

モーショボーは右手を少女に突き付けて、ぶつぶつと呪文を詠唱した。

「ディアラマ」

放たれた光が、少女のボロボロになった肌が、立ちどころに修復していく。
それと同時に荒かった呼吸が整い、顔も穏やかなものへと変わっていった。

「でもきっと何も考えずに戦うよりも、生き延びられる可能性は高いかもねー」

はぐれメタルはモーショボーの行動に少しだけ驚いたが、すぐに感謝した。

「あ、ありがとう」
「キャハハハハ、それじゃあ水銀君さー。
 モーショボーがちゃんとした人間の脳みそが食べられる時まで守ってほしいんだー。いいよね?」
「いいけど……僕に出来るか自信ないなぁ」
「うん、そんなに期待してないから大丈夫だよー」
「えーっ……」



【B-6/草原/一日目/午後】

【モーショボー@女神転生シリーズ】
[状態]:MP消費(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:生き残る
 1:はぐれメタルと行動する


【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ、スリースターズ@ファイナルファンタジー?
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗りたくない
1:モーショボーと行動。ピンクのモンスター(メタモン)も連れて行く


 ◆


見事に変身した私を見て、女の子は拍手をした。
他の皆もスゴイって賞賛してくれた。思わず照れる。
そうしているうちに夕日は沈んで、オレンジ色の空が薄暗くなってくる。
おうちの電気が暖かそうに灯される。女の子もおうちに帰る時間。
もっと一緒にいたいけれど、私もとっても眠くなってきた。

幸せの光に包まれて、なんだか重かった体が、ふわふわと軽くなったような気がした。

今日はとっても遊び疲れちゃった。
このままふわふわに身を預けて、寝てしまおう。
目が覚めればきっと、楽しい明日が待っているんだ……。



【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:意識無し、疲労(小)、能力低下
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:みんなを笑顔にして、幸せにする
 1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する
 2:”ともだち”をつくる
 3:アリスが気にかかる

532 ◆5omSWLaE/2:2013/07/07(日) 23:11:08 ID:ilVGXy5Y0
以上で投下終了です

533駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 14:57:19 ID:5QtIFURs0
投下乙です。
逃げたもの同士が手を取り合えたのに、ほのぼの。
全員良い感じに終われば、いいなぁ。

投下します

534駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 14:57:33 ID:5QtIFURs0


振り向かずどこまでも走り続ける。
未だにボナコンは目を覚まさないままだが、背中から伝わる温もりがボナコンの命が燃え続けていることを教えてくれる。

「クソ……」
思いがけず、ルカリオの口から言葉が漏れた。
ボナコンは生きている、いつか目も覚ますだろう。
だが、クー・フーリンは死んだ。はっきりと見たわけではないが断言できる。

今走っているルカリオは、クー・フーリンの犠牲の上に存在することが出来ている。

その事を今更に嘆いたりはしない。
やるべきことははっきりとわかっている、ならば嘆いたりしている暇はない。

だが、クー・フーリンの死はルカリオに漠然とした不安感をもたらす。
人間への反逆のために、どれほどの死体が積み重なることになるのだろうか。

覚悟していたつもりだった、しかし実際にその光景を見るとルカリオは揺れる。
そう、仲間を救うために仲間を死地に追いやるという矛盾はルカリオの根本を揺らす。

誓ったのならば、ルカリオにはやり遂げる意志力がある。
クー・フーリンの死を残念なものとして、割り切れる冷静さがある。

それでも、ルカリオは──

「おい」
ルカリオの思考は威厳ある声に、強制的に中断させられる。

壁と見まごう程の巨体だった。
その四足で動く度に地響きが起こっているのではないかと思わせるほどの威圧感すら感じさせる。
紫の皮膚は鎧であるかのように強靭で、頭部に備わった二本の角は一本一本が研ぎ澄まされた槍を思わせた。

一言で単純に纏めると、強い。

「聞いているのか?」
「ああ、聞いている」

「単刀直入に聞く、この状況を打破する意志はあるか?」

未来は不透明で絶望的だ。
それでも、ルカリオは今を悩んだりはしない。
目の前にある切っ掛けを掴み取れるなら、ルカリオは躊躇しない。

「ある」

535駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 14:57:43 ID:5QtIFURs0


馴れ合いはしない、ベヒーモスは最初にそう言って共に行動する気はないという意志を明確にした。

「共に動いてくれると、ありがたいのだが」
「悪いが、まだ我は何も得てはいない……お前もそうだろう?
「それもそうだが……」

この殺し合いを打破し帰還する方法に関して自分はまだ手がかりすら見つけてはいない。
そして、それはお互い様だろう。
ならば、別々の場所で行動した方が効率が良い、そう言ってベヒーモスはルカリオの請願を切り上げた。

なにより、何も得られぬまま他者という荷物を抱え込むことも、あるいは荷物として抱えられることもベヒーモスは許さない。
幻獣王の元に帰る事を遅らせる要因を作る気はないし、幻獣王以外の者に従う気は砂一粒程もない。
それは、幻獣王に仕えるものとしてのプライドともいえる。

そして、ルカリオは一旦ベヒーモスと共に行動することを諦める。
後に同じ道を行く事を見据え、今は違う道を辿ることを許容したのだ。

「では、誰に会ったか聞かせてもらおうか」

そして、情報交換が始まった。

と言っても、情報交換は互いの自己紹介と、シャドームーンに関する情報提供程度に留まる。
ベヒーモスとルカリオ共、出会った者は少なく、ほとんどが死んでしまっていた。

死人はいい、というベヒーモスの言葉に従って、互いに死者に関して口にすることはなかった。
そして、ボナコンは相変わらず目覚めなかったのである。

「シャドームーンか、覚えておこう」
ベヒーモスはルカリオから聞いた強敵の容姿を、しっかりと脳に刻み込む。
苦戦の可能性はあるかもしれないが、ベヒーモスは敗けるとは欠片も思ってはいない。
慢心ではない、経験則である。

油断するな、ルカリオが言おうとしたその時、
「おれはしょうきにもどった」


ボナコンが目覚めた。



が、別にボナコンが起きた所で特に情報交換が捗ったりはしなかった。
「そらそうよ」

ただ、クー・フーリンが死んだであろうことを聞き、
「あっ……」
そして自分が生きているという事実から、察した。


「そっかぁ…………」

今更泣いたりもしないが、少しやるせなかった。

536駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 14:57:54 ID:5QtIFURs0



気がつけば、空は赤く染まっていた。

「かえりてぇ」
ボナコンがポツリと呟いた。
夕陽は、帰郷感を刺激する。
いつだって、赤く染まった世界は子どもの時間の終わりを告げていた。

遊び疲れて巣に戻れば、家族が待っていた。
今はもう無い。

帰ったら、交尾して家族作りたいとボナコンは思う。

ところで、ボナコンはあれで成虫なのだろうか。
気になるところである。

「ああ」
赤く染まった空は、ルカリオの故郷を襲う炎を思わせた。
人間は炎と共に襲来し、全てを奪い去っていった。

赤く燃える空に、子供時代の思い出などもはや無い。

ただ、帰るべき場所にもう一度帰りたいと思う。
あの赤く燃えあがった空が、どこまでも続く青を取り戻せるように。

「…………」
感傷などは抱かない、ただ夜に乗じて狩りに来る魔物をベヒーモスは警戒していた。
赤く染まった世界すら踏み越えて、夜の闇は全てを喰らう。

戦慄の夜が訪れるだろう。

瞳に映る景色と、心に映る景色は互い互いに違っていた。


「では、我は行く」
古城へ向かう、そう続けてベヒーモスは駆け出した。
ルカリオ達に対して、さほど期待はしていない。
より言うのならば、再会すらおぼつかないものと見ている。

ボナコンはともかく、ルカリオには揺れているものがあった。
その揺れが何なのかはわからないし、そもそもベヒーモスには興味が無い。

だが、その迷いがいつか廻り廻って邪魔になるのならば──
そう考えたのか、ベヒーモスはルカリオ達に向き直りに叫ぶ。

「考えるな、走れ!」

助言というつもりではない、この程度の言葉でなにかを振りきれるとも思ってはいない。
そもそも、この言葉は悩みを解決するのではなく放棄しろという勧告である。

捨て去れば、自由だ。

【D-3/森林/一日目/夕方】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×2)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
1:古城へ向かう

537駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 14:58:06 ID:5QtIFURs0


「考えるな、走れ……か」
「ジャッキーのパクリじゃん、あれブルース・リーだったっけ?」
「…………」
「ああ見えて、映画好きなんだね。なんか適当に言う機会だと思ってはしゃいじゃって……んもう」
「すまない、黙れ」
「すまんな」



人間への憎悪、攫われた仲間、クー・フーリンの言葉、クー・フーリンの死、ベヒーモスの言葉。
様々なものがルカリオの中を駆け巡って、何一つ答えは出ない。

「どうすっかなー、俺もなぁ」

クー・フーリンは死に、ボナコンも拾った命の使い方を未だ決めずにいた。



赤い空が、黒い影によって塗りつぶされる。
飛行船が、二匹の視界を横切った。



「────ッ!!!!!」
「あっ、おい、待てい!」



考えず、走る。

【D-3/森林/一日目/夕方】

【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:目立つ

[備考]
※オス
※支給品オッカの実を消費しました
※最新のボナコンスレは↓
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/


【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 1:飛行船の元へ駆ける
 2:まずは志を同じくする仲間を探す
 3:呪いを解除するには……どうすればいい?
 4:クーフーリン、私は…

[備考]
オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。

538駆け抜けてBlue ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/08(月) 15:00:55 ID:5QtIFURs0
投下終了します、
邪鬼ギリメカラ、幽鬼マンイーター、ホイミスライム、ハム、ライガー
を予約します。

539 ◆5omSWLaE/2:2013/07/08(月) 17:13:37 ID:W7oB91i.O
投下お疲れ様です
対主催同士の対面。直接手を組まずとも、それぞれの目的は同じ
こういう事態では一期一会となる場合が多いわけですが、再度合間見える時が果たして来るのかどうか……
そして空気読まないボナコンさん、さてはアンタも映画好きだろ。モンスターなのに

540名無しさん:2013/07/08(月) 23:39:10 ID:KdeITg9k0
投下乙です
ケロロ+ホモって感じでボナゴンが和むなぁー
ルカリオの歪みを正してくれるやつは現れるのかはたまた自分で答えを見つけるのか…

541名無しさん:2013/07/09(火) 01:02:47 ID:46/BRcV.0
はぐれ者達の詩
生きる目的をもったメタルと投げやりなモーショボー
果たして自由への脱走となるか

ボナコン相変わらずだけどちょい切ない感じだなー
そして前回あれだったがベヒさんシリアスなの思い出したw
かっこいい

542 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 01:54:49 ID:mW57oItU0
投下お疲れ様です、逃げるといいつつも前に進めそうな三体の邂逅
メタモンはもう少しだけゆっくり休んで、一緒に歩けるようになればいいなあ

ルカリオもまた走る走る、ボナコンに癒されベヒーモスの威厳に頼もしさを感じ
悩みや歪みすらも走り抜けられたらいいですねえ……

そしてキングスライム、ピクシー、グレイシア、ソーナンス、モルボル予約させて頂きます。

543 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:04:24 ID:mW57oItU0
投下いたします

544そんなものはない ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:05:30 ID:mW57oItU0
王とは何かと問われれば、それは民衆の代表であり、纏め上げる、導くものと答えたい。
暴虐によって国を獲ろうとも、受け継いで王になろうとも、そうであってほしい。
これはあくまで、憧れるものの儚い願いに過ぎないが。


「……この、形容し難い生き物はあなたを襲ったのですね?」
「う、うん……お前ちょっとボコらせろって」
「ソーナンス?」

ぐしゃぐしゃになってもなお生を享受する生き物、キングスライム。
グレイシアはその蒼く美しい瞳を撓ませ、深いため息をつく。
この物体がなぜここまで瀕死に追い込まれているのか、なんとなくだが察することができた。
きっと不相応に戦いに挑んで返り討ちにでもあったのだろう。
グレイシアの予想は正解であったが、彼女の想定以上にこのキングスライムは色々やらかしている。

それを知ってか知らずか、彼女は冷気を帯びた吐息とともに一言。

「狸寝入りはおやめなさい、でないとあなたの弁明を聞くこともなく」
「う、うぐぐぐ、ボクに命令するなぁ!!」

殺気を感じて、ピクシーとソーナンスは構える。
キングスイムからも、グレイシアからも漂ったそれに止めに入るべきかとソーナンスは思案し、ピクシーは困惑する。
「そ、そこまでしなくたって、ほらイライラしてただけでいいやつかもしれないよ?」
「ソ、ソーナンス」
正直ピクシーもあまり期待していなかった。
襲い掛かられた相手だ、九分九厘ロクデナシだろう。
キングスライムの泥酔した中年男性のような眼を覗いてもこいつはダメな奴、とはっきり感じ取れる。
ワルモンまっしぐら、トレーニング放棄常習犯、そんな目つきだ。

でも、そんなやつでも、命のやり取りをすることは憚られる。

「もしも、あなたが危険なモンスターであれば生かしておくことはできません」
ピクシー達の意見に応えず、凛と言い放つグレイシアに迷いはない。
冷酷からくる発言ではない、手の届く範囲のものを守るためには、目の前にある危険は排除しておくべきなのだ。
徒に放置してもしも被害者が出たら、それはグレイシアが、殺すことを選ばなかったものが間接的に殺したも同じなのだから。

「ボクは危険なんかじゃない、王様だ!王様は偉いんだ!!」
生憎ダメージのため跳ね上がるには至らなかったがそれでも力強く。
「だからボクは、こんなクソッタレな場所でも好きなようにするんだよ!!」

「好きなように、とは?」
温度は極限まで無くなっていく。
「そりゃあ、まずボクにタメ口きいたり、命令するようなノータリンはブッ殺すし」
ツンドラに埋もれた草花のように。
「なんもしてなくてもむかついてたらブッ殺す」
空気が止まってしまうくらいの。
「だって王様だもの!ボク以外のものなんてぜーーんぶ」
絶対零度。
「もういいです、口を閉じてください」
「1ゴールドの価値もないからね!!」

545そんなものはない ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:06:23 ID:mW57oItU0
当然さ!とのたまう口は、これ以上の騒音を垂れ流すことはなく塞がれた。
青いスライムの体よりも透き通った水色の氷膜がピッタリと口に張り付く。
「モ、モガーッ」

「ねえ、やっぱり、殺すの?」
氷の彫刻にするとか、冬眠させるとかじゃあダメなのかな。
「イノチって大事だよ、少なくとも、アタシは死にたくないし……」
死なせたくもない。
「メタモンだって止めるよ、多分……」
グレイシアの言いたいことはよく分かる、よく分かっても、それに共感することは、できない。
自分は弱いから、弱くなってしまったから。
「ソーナンス……」
ソーナンスは優しくピクシーの肩を抱く。
仕方ないよ、と励ましてくれているようだ。
彼だって諸手を上げて賛成しているわけじゃあないだろうに。
メタモンの名前を出して説得しようとした自分が嫌になって、喉から塩辛い塊がこみ上げる。

「ピクシー、あなたが手を汚す必要はありません、安心して」

「グレイシア、ごめん……ソーナンスも、本当、ごめんなさい」
グレイシアは怒りも、蔑みもせず、ふんわりと微笑んでくれた。




「誰か助けろ!!!!今ボクは恐ろしい三体のモンスターに襲われてるんだ!!!!!」


唐突に、耳障りで巨大な声が三体の耳をつんざいた。

「なっ、どうやって……!?」
咆哮を上げるキングスライムの喉からちろりと漏れ出る炎。
メラゾーマが唱えられずとも、キングスライムははげしいほのおを体得していたのだ。
普段はメラゾーマのほうがかっこいいからと使わずにいた技がまさかこんな場面で役に立つとは。
そして彼の目の前にあるのは、タブンネを殺して奪い取った拡声器。

「モンスターの名前はピクシーとグレイシアとソーナンス!!!誰か!!!はやく!!!!ピゲっ」
グレイシアのとっしんにより落ちる拡声器。
キングスライムはダメージを受けながらも不敵に笑う。
「王様に手を出したことに後悔するがいいさ……これでお前らは警戒されるし、今からくる助けにボッコボコにされる」

増援はかならず来る、だってボクは王様だから。
バカの一つ覚えのようなキングスライムの言葉にグレイシアは心底うんざりした。
同時に、来るかもしれない敵襲に集中力を高める。

「この現状を見て誰がお前らを信用してくれるかなあ?ボロボロのボクに三体の恐ろしい魔物」
勝ち誇った様子で、息も絶え絶えなキングスライム。
「精々、バッカみたいに言い訳しながら死んじまえよ!ギャハハハ!!」




「ほうほう、恐ろしいモンスターが……三体、か」

546そんなものはない ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:07:26 ID:mW57oItU0
ぞわぞわ、背筋を這いずりまわる音を共にして、一匹のモンスターが現れた。
頭上に王冠を頂き、緑の触手を何本もうねらせ堂々と歩く魔物。
何処にあるともしれない瞳でグレイシア達を順繰りに見回し。

「ワシには、一体の愚かな魔物が喚いてるようにしか見えぬがのう?」
「ソーナンス!!!」

キングスライムの行った作戦は概ね成功していたはずだった。
それが頓挫した理由は、増援が近すぎたことと、己の失言のせいであろう。
ついでの不運で言えば、今の増援以外におそらくキングスライムの声は届いていない。
「ち、ちが、本当にボクはこいつらに……!」
「黙れ、下郎。このモルボルキング、今の貴様の言、しかと聞いておったぞ」
「げ、下郎だって……!?」

ずい、と触手がつきつけられる。
キングスライムの象徴とも言える王冠を取り上げ、モルボルキングは遥か彼方に投げ捨てた。
「貴様に王を名乗る資格はない、下郎でも勿体無いくらいよ」
モルボルキングは憤慨して飛び散りそうなほどに煮えたっているキングだったスライムから目をそらし、グレイシアに向き直る。
「有難うございます、モルボルキング。おかげで助かりました」
「何、礼には及ばんよ。偶然通りすがったようなものだからな」
見かけによらず紳士的で、よい魔物だ。
グレイシアは警戒を緩める、勿論、何かあったらすぐに動ける程度には注意して。
「さてこいつをどうするかよの、問題は」

滾る怒りがはじけて飛んでバブルキングの従兄弟になりかけているスライム。
あまりの屈辱にふざけた罵詈雑言すら出せないようだ。

「王だったものよ、民草から嫌われた王の末路を教えてやろう」
ピクシーも、グレイシアも、ソーナンスも止めること無く、モルボルキングの動きを見守る。
断罪の触手の下に居たのは、生きていてはいけないもの。
「その高貴足り得た生まれを尊重し……無様な死を与えぬために」
一太刀のもとに生を両断してやろう。


「ま、待った!!!!」
ピタリ、直前で触手は留まる。
「なんだ、まだ己の醜態を晒し続けるつもりか?それとも、王らしく辞世の句でも読むのか?」
呆れ返ったモルボルキングの言葉に歯ぎしりしながら、なおもスライムは嗤う。
とっておきの切り札が、キングスライムの手には合った。
切りたくはなかったし、上辺だけでも誰かに施すと約束するなど、生き死にがかからなければまずやりたくはなかった。

「ボクは、ザオリクが使える」

「……ザオリク?」
知らないのかよ、無知なやつだな、とスライムは吐き捨てる。
「死んだものを生き返らせる呪文さ……なかなか使える奴は居ない、ボクは王様だから、生まれた時から使えるけどね」
「レイズのようなものか……」
モルボルキングは唸る。
死を覆す魔法、それはこの無為な殺し合いそのものを壊せるかもしれない手段だ。
「ありえません、妄言ですよ」
グレイシアは頭を振る。
彼女の世界にそのような神秘の魔法は存在しなかったからだ。
もしも、もしもそんな夢の様な魔法があるのなら。
あり得ない希望をすぐさまもみ消して否定する。否定せねばならない。
「でも、ヒノトリは何度でも生まれ変わってくるっていうし、もしかしたら」
ピクシーは希望に触れてしまった。
死がなくなれば、恐怖も痛みもない、変わること無く、殺すこと無く。
「ソーナンス……」
ソーナンスはあってほしいと強く願った。
どんなモンスターにも命があり、生きるべくして生まれてきたのだから。

547そんなものはない ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:08:13 ID:mW57oItU0
「どうするんだよ、ボクをこのまま殺していいの?」
いいわけないよね、お前らは馬鹿だから。
スライムは、声に出さず続ける。
自分たちのイノチに価値があって、かけがえの無いもので、大事にされてしかるべきだって、本当に思っているんだから。

ザオリクは確かに、失われた命を取り戻す。
しかしそれは、運命に選ばれたもの、今この場で死ぬべきではないものだけだ。
故に老衰したもの、ここで死ぬべきものなどは生き返らせることができない。

つまり、だ。

(価値の無いお前らなんかが、生き返るワケないじゃーん!!)

「……そうだな、生かしておいてやろう」
「モルボルキング……!」
グレイシアは、否定する。
死んだものは、逆立ちしたって生き返らないと。
だからこそ、命には価値や意味や大切さがあるのだと。
「だが、実証してもらわなくてはのう」
モルボルキングは、ただの切り口である、とグレイシアを説き伏せる。
秘密裏に蘇生を行えれば、全滅を装い死体を回収に来た人間どもに反逆ができるかもしれない。
もしくは最後の一匹を意図的に作り出し反逆を……とにもかくにも、重要なピースになり得る力だと。

「それまで、貴様は……そうさな、捕虜のようなものだ」
執行猶予をもらったスライムが口を開くより速くモルボルキングの触手がそのスライム状の体をがんじがらめにする。
ボンレスハムのごとくはみ出した物体を適当に放り、引きずる。

「ピ、ピギー……覚えてろよ……」
納得がいかないグレイシア。
少し安心しているピクシー。
ただ見守るソーナンス。

「お嬢さん方はどうするかね」
「私たちはもう少し……ここで頭を冷やしておきます」

スライムを見ないようにして、行動を共にしないことをグレイシアは告げる。
「よろしければ、メタモンという……ピンク色の粘土のような魔物を見つけたら、助けてあげてください」
アリスのこと、ケルベロスのこと、知っている脅威や、危機に脅かされている仲魔のことをしっかりと伝えて。
「あいわかった、しかし惜しいのう、貴様達にその気があれば、是非ともワシの臣下に迎え入れたいものよ」
尊大な台詞であったが、キングスライムの言うような不快な傲慢さは見受けられなかった。

「次にお会いすることがあれば、考えておきますよ」
「あ、アタシも!」
「ソーーナンス!!」
冗談めかして続いた言葉を、善き哉、と受け止めてモルボルキングはこの場から去っていく。
去り際、彼は振り向き。
「ゲルキゾク、という魔物に気をつけろ。あれは一筋縄じゃあいかん頑固者だ」

どちらに居るのかだけ触手で指し示し、今度こそ王に憧れるモルボルは地平に飲まれて消えていった。
後に残った三体は、キングスライムが叫んだ余波を考え少しだけ移動する。


交わす言葉は少なく、沈黙が落ちていく。
三体はそれぞれ考える。
食い違う、命の価値を。

548そんなものはない ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:09:00 ID:mW57oItU0
【D-7/森/一日目/午後】

【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身は不明)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:アリスから離れる
 2:メタモン…
 3:そんな魔法は、あってはいけない

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。
 1:皆と一緒に行動する
 2:メタモンが気がかり
 3:死なんてなくなればいいのに

【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
 2:ソーナンス…
 3:ソォーナンス……

【キングスライム@ドラゴンクエスト】
[状態]:肉体損傷(大)魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:主催者を粛正する
 1:モリーをたおすために下僕を集める
 2:王様であるボクに無礼は許さない
 
備考:モルボルの触手にがんじがらめにされて引きずられています。王冠がどこかにぶん投げられました。
   拡声器はグレイシア達の居たところに落ちています。

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いの中でも王になることを目指す。忠臣がほしい。
 1:ゲルキゾクのような忠臣が欲しい
 2:蘇生の術か……

549 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/09(火) 07:09:18 ID:mW57oItU0
投下終了いたします。

550 ◆5omSWLaE/2:2013/07/09(火) 07:52:55 ID:rN7E5tGYO
投下お疲れ様です
世界観が異なるがゆえに、「蘇生」の捉え方もまた異なったものとなる……
グレイシア、ソーナンスとピクシーの世界には基本的に死者蘇生が無いから、信じるかどうか違ってきますね
そしてモルボルと風格の違いを露呈しまくるキングスライム、非常に情けない
>(価値の無いお前らなんかが、生き返るワケないじゃーん!!)
あのさぁ……

551名無しさん:2013/07/09(火) 10:50:22 ID:46/BRcV.0
投下乙〜
おお、まさかこのような切り口から不穏な事態になろうとは
モルボルキングさんが頼り甲斐ありすぎてマジ賢王
しかしザオリクの特性もキングスライムからしたらそう捉えられるんだよなあ
だめだこいつ、マジ愚かだ

552  ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:39:05 ID:NHzrPKJI0
投下します

553ようやく戦ったね(ニッコリ  ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:39:43 ID:NHzrPKJI0
さて、サボっていることがバレたサボテンダーは主催からの伝達をうけて、東へ向かった。
戦闘をする覚悟もできていたし、戦略も練りに練っていた。
とにかく、走り続けること数分。

「おいおい……、どこにもいねえじゃねぇか……」

サボテンダーは誰にも出くわすことがなく、F-6の湖に辿り着いた。
誰にも出くわさなかった? そらそうよ。
だって、もう通り過ぎてるもん。
東側にいた三体のモンスターはサボテンダーが走っていた時に、同じエリアにいたものの、もう森にはいなかった。
サボテンダーが走っていたのは森だった為、運悪く誰とも遭遇しなかったワケである。

「どうすりゃいいんだよ……。戦って勝たないと……俺は、俺は……!」

このままでは強制的な脱落、つまり殺処分が待ち受けているだろう。
何としてでも、東側にいるという三体のモンスターを見つけなければならない。
だが少し自分は焦りすぎたのではないだろうか。

「一回休もう。さすがに今すぐ殺されるわけじゃないんだし……」

目の前に湖があるのだ。ちょうど喉も乾いていたところだし、少し休むとしよう。
とりあえずは水を飲む為に、顔を湖の中に突っ込む。
俺の手では水をすくうことはできないので、当然の動作だ。
水をゴクゴクと飲んでいく。ああ、体が潤っていく……
そういえば、視界になんかタコみたいなものが見えるのだが、気のせいだろうな。

「さて、どうしようか……そういや支給品を確認してなかったなぁ」

とりあえずは地面に座って、ふくろの中身を確認してみる。
中に入っていたのは赤い石。
これといって、役に立ちそうもなさそうだ。

「さーて、これからどうするか……って、なんであんなにブクブクしてるんだ?」

サボテンダーがそう言ったのも束の間、湖から何かが飛び出してきた。

「ワイの湖に勝手なことをしようとしてるなー! 成敗したる!」
「うおっ、タコ!? マジでいたのか!」

湖から出てきたのは紫色のタコ、オルトロスである。
彼は相当お怒りの様子だが、サボテンダーはただ単に水を飲んでいただけなので、なぜ怒っているのか皆目検討もつかなかった。
だがコチラへ向けて怒りを向けているのは分かった。
このままでは危ないと思ったサボテンダーは、先程確認した赤い石をオルトロスに向かって投げつけた。
すると、投げた石は突然炎を放ってタコを襲った。
サボテンダーに支給されていた物は、敵一体に火炎属性のダメージを与えることのできる石。アギラオストーンだったのである。

554ようやく戦ったね(ニッコリ  ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:39:59 ID:NHzrPKJI0

「アッチッチーー!! ゆでだこになるー!? ゆでだこにはなりたくないで!」

オルトロスはふくろを落としたことに気付かないまま、湖の中に潜ろうとする。
それを見逃すサボテンダーではない!

(何が起きたかは分からないが……これはチャンスだ! ここで殺さなければ!)

だが、追撃しようにも手元にはもう何も残っていない。
しかしまだある。
あのタコが落とした、あのふくろが!

「うおおおおお!!」

タコへ向けて走りつつ、あのふくろを拾って中にあるものを取り出す。
出てきたのはなにやらCDのようなもので、どうやら相手に向かって使うものではなく自分に使うもののようだ。
すぐさまそれを使った。

「なんだ……? 僕の知らない何かが僕の中に……!」

イケる、この知らない何かを使えば……イケる!
彼の気持ちは興奮で抑え切れなかった。
これで、これで、俺は……殺処分から逃れられる!

「うおおおお! これでお終いだああああ!!――――
「な、なんや! なにが起こるんや―――

彼はジャンプしてオルトロスへ近付き技を放つ―――

555ようやく戦ったね(ニッコリ  ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:40:30 ID:NHzrPKJI0



                               ´.
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙
                         ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´
大爆発! これがサボテンダーの魂だ!


………………

…………

……

556ようやく戦ったね(ニッコリ  ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:41:17 ID:NHzrPKJI0
オルトロスが持っていたわざマシンのナンバーは64、技の名は『だいばくはつ』だった。
その技は使えば敵に大ダメージを与えるものの、その技を使った後に自らは戦闘不能になる、いわば相打ちを狙う技。
哀れ、サボテンダーはそんなことは知る由もなくその技を使ってしまった。
結果的にどうなったかというと、オルトロスに大ダメージを与えたものの、サボテンダーは力尽き倒れてしまった。
その後、オルトロスは湖に潜っていった。
もう湖の中から出ないと決意を固めながら。

【サボテンダー@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】

【F-6/湖の中/一日目/夕方】

【オルトロス@ファイナルファンタジー】
[状態]:肉体損傷(大)
[装備]:
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:戦いをできるだけ避ける
 1:もう二度と湖からでえへん!

[支給品紹介]
【アギラオストーン@真・女神転生】
敵一体に火炎属性のダメージを与えることのできる石。


※辺りに爆発音が響きました。

557 ◆7NiTLrWgSs:2013/07/09(火) 23:41:30 ID:NHzrPKJI0
投下終了です。

558名無しさん:2013/07/10(水) 01:15:15 ID:cEQU.IhA0
ご愁傷様すぎるwww
大爆発! これがサボテンダーの魂だ!
じゃねえよwww

559 ◆5omSWLaE/2:2013/07/10(水) 01:45:03 ID:kGIFm1No0
投下お疲れ様です
まwwwさwwwかwwwのwww展開wwwwwww
アギラオストーン投げた直後からの疾走感がヤバイ!
殺処分から逃れられる!⇒爆死! という流れが皮肉的でいい感じです
そんでもって風評被害を受けたオルトロスはこのあとどうなるのか……!?

560名無しさん:2013/07/10(水) 18:00:25 ID:ONm1nrlIO
投下乙です。

だいばくはつを支給するあたり、ほんと命を弄んでますな。

561 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/12(金) 07:44:05 ID:K4.5TFKk0
ゲルを予約させて頂きます

562 ◆TAEv0TJMEI:2013/07/13(土) 10:45:35 ID:zAV0J.4A0
延長します

563 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/14(日) 22:13:03 ID:yB9DWcic0
期限内に完成しそうではないので、
早いですが、予約を延長させて頂きます。

564 ◆5omSWLaE/2:2013/07/15(月) 22:19:46 ID:eDAiOcQg0
月報集計お疲れ様です
闘技場 53話(+23) 29/50 (- 12) 58 (- 24)

565言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:42:56 ID:KmcjUtx20
遅れてしまい申し訳ありません
投下します

566言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:43:27 ID:KmcjUtx20
熱い

冷たい

熱い

冷たい

沈んでいく。

燃えるからだが、深い闇へと沈んでいく。

ああ、これが死か。

そうキノガッサはぼんやりと思った。

身体に力が入らない。
鍛えた手足は一切動かず、ただただただただ沈んで行く。
こぽり、こぽりと。
光さえ届かない、死の世界へと沈んで行く。

まるで海の底のようだ。

ここは嫌だ、ここは冷たく、そして暗い。
何よりも息ができない。
苦しい、苦しい、息が、口の中がガキリ

「……ふぁが?」

声が漏れる。
聞き慣れた声が漏れる。
海の中で?
いや、そんなはずはない。
自分は水ポケモンじゃない。
水中の中で話せたりなんかしない。
ならばここは、水の中じゃないということで、待て待て、そもそも水の中は死の世界の喩えであって。
しかし事実、ここは暗くて、息苦しい。
水だとか闇だとか、そんな流体的なものではなくて、もっとこう物体的に口が塞がれている!

567言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:44:01 ID:KmcjUtx20

「あぐ、ふぁぎ、ふぃぎや!? ……ひゃい?」

気がつけば、光を奪われ、口を何かで塞がれている。
訳が分からないままに、だがどう考えても穏便ではないシチュエーションにキノガッサは悲鳴を上げる。
みっともないほどに手足をもばたつかせ、そこに至って気づく。
先程までまるで力のこもらなかった手足が、今は動かせるということに。
己を覆っていた火傷の跡が綺麗サッパリなくなっていることに。
それをなしたのが何か、答えは自らの口の中にあった。

「もごもご」

きのみだ。
オボンのみやチーゴのみと言った、火傷や怪我を治してくれる実がたらふくつめ込まれていたのだ。
今の自分の症状に的確なきのみが勝手に口に入るはずがない。
間違いなく、誰かが、自分を助けるために施してくれたものだ。
流石に詰め込みすぎで危うく窒息しかけたことには文句を言いたくもあるが、それは恩知らずにも程があるだろう。

「ぷはっ」

ようやく口の中のきのみを咀嚼しきり、一息ついたキノガッサは辺りを見渡す。
暗くはあるが、失明したわけでもなく、目隠しされているわけでもない。
単にどこか暗いところに押し込められているだけのようだ。
僅かながらに光が漏れこんでくる方向へと手を伸ばすと、どうやら当たりだったらしい。
扉は難なく開き、そのまま外へと転がり落ちた。

「これは……」

周囲を見渡し、現状を把握する。
自分が安置されていたのは祠だったらしい。
怪我人を休ませる場所には狭く窮屈で不似合いに思えるが、怪我人を隠す場所としてはうってつけだ。
周囲に恩人らしき者の姿が見当たらない以上、何か、キノガッサの治療を中断し隠さないといけないような事態が起きたのだろう。
そう、例えば、キノガッサが止め損なったあの人形が新たな犠牲者を求めて襲ってきたとか――

「……っ、なにをボケッとしてるんだ、あたしは!」

殺し合いの場にて見ず知らずであろう自分を助けてくれる程の優しい心をもった誰か。
その誰かに危機が迫っているかもしれないというのに、助けられた自分は何を呑気に寝ていたのか。
自分が祠に納められてからどれだけ時間が経ったのかは分からない。
もう手遅れかもしれないと理性は訴えるが、そんなのは知ったことか。
キノガッサは駈け出した。
駆けて駆けて駆けて、ただ誰かを探した。
顔も知らない誰かを探すことなどできようはずもないが、とにかく誰かを探した。
誰でもいい。
この付近にいるのなら、そいつは恩人か、或いは恩人について知っている可能性が高い。
もしもあの人形のように殺し合いに乗ったものなら今度こそこの手で、この拳で……

「この、拳で……? あたしは、どうしようってんだ。あたしに、できるのか?」

568言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:44:23 ID:KmcjUtx20
鎌首をもたげた弱気がキノガッサの心と足を捕らえる。
迷っている場合じゃないと頭では理解しているのに、速度がみるみる落ちていく。
心を磨いて生きてきた。
この心がある限り、師と共にあるのだと信じてこれた。
なのに、あのざまはなんだ。
異形の相手に恐怖し身をすくませ先手を取られ、止めようとするも返り討ちにあい、危険なモンスターを野放しにしてしまった。
太陽が沈みつつある以上、あれから数時間は経過している。
この数時間で、一体何匹のモンスターたちがあいつの餌食になったのだろうか。
全てはキノガッサが弱かったせいだ。
キノガッサの拳が、心が、弱かったせいだ。

「う、く、ああああ!」

追い打ちを掛けるように森が開け、一つの光景が姿を現す。
倒れた木々、砕けた大地、落ちた腕。
間違いない、ここで何かがあったのだ。
幸い死体は見当たらなかったが、それを喜べるほどキノガッサは楽天的ではなかった。
誰かが腕を失う程の戦いがあったというのに、のうのうと意識を失っていただけの自分の無力さに泣き崩れる。

「くそ、くそ、くそっ! あたしは弱い、あたしは無力だ!」

こんなものだったのか。
強くなったと思っていた。
師と鍛えた心と身体を誇っていた。
それは幻想だったのか。
慢心していただけなのか。
悔しさから拳を地面に何度も何度も打ち付けるも、誰も何も答えてくれない。
いつも彼女を導いてくれた師は、ここにはいない。
彼から教わった心が折れかけている以上、心のなかにさえいない。
彼女は独りだった。
独りぼっちだっ「火イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「!?」

突然響いた裂帛の叫びと続く轟音にキノガッサは身構える。
すると森のそばの岩盤が崩れ、何かが姿を表わす。
手足の生えた雪だるま、といったところか。
キノガッサが見たことも聞いたこともない姿をしたそいつは、ぱんぱんと学ランについた土石を払うと、うーんと背伸びをする。

「ヒーホー! やっぱシャバは最高だぜ!」

キノガッサは知る由もないが、彼女が聞きつけた轟音は彼のトラフーリ(物理)によるものである。
ターミナルの発見でやる気を取り戻したジャックフロストは洞窟探索を続行。
しかし何の成果も得られませんでしたー!となった上に、あろうことか入り口を見失ってしまったのだ。
ならば出口だと更に探索し続けたものの、延々と見つからず、ええいままよと洞窟を拡張し続けここまで辿り着いだのである!

569言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:44:45 ID:KmcjUtx20
「てめえは……」
「驚かせてすまねえホ! オイラは妖精ジャックフロスト、あのハゲどもをぶん殴る男だホ!」
「あ、ああ、あたしはキノガッサってんだ。よろしくな……。
 一応聞くけどあんた、あたしを助けてくれた奴、じゃないよな?」
「ないホ。見ての通り、今ここに来たばかりホ」
「だよな……。くそ」

警戒し訝しがるキノガッサに対し、真っ先に謝り自分が何をしたいのかを宣言するジャックフロスト。
脳筋な彼ではあるが、最後には拳に訴えるとはいえ交渉だって得意なサマナーと旅をしてきたのだ。
会話の一つや二つ手慣れたものである。
しかし、対するキノガッサの反応はよろしくない。
心ここにあらずという感じだ。
顔に残る涙の跡や、戦闘の痕跡からも、ここで何かがあったのだろう。
それが何かとはジャックフロストは問わない。
彼は言葉で聞くくらいなら拳で聞く漢だ。
だからこそ気になることもある。

「姐ちゃん、あんたその手」
「この傷か? 心配させちまってわり。これはまあ自分でやっちまった奴だからさ」

キノガッサがかなり鍛えられているのは一目瞭然だった。
その彼女なら自分同様、洞窟の壁を粉砕したところで拳を痛めるはずがない。
だが、彼女の拳は見るに耐えないほど傷ついていた。
泥で汚れていることや自分でやったという言葉、そして彼女の目に残る涙の跡。
ジャックフロストは全てを察しった。
察した上で、女に手を上げた。

「あぐっ!? 何するんだ、てめえ!」

無様に吹っ飛び転がるキノガッサ。
ジャックフロストはそれを見下ろしながらも悪びれもしないで答える。

「何をするか? 決まってるホ、勘違い野郎に活を入れてやったんだホ」
「勘違い、だあ?」
「そうだホ。拳は、自分を痛めつけるために握るんじゃないホ」
「じゃあどうしろってんだよ!? 無力なあたしは、弱いままだったあたしは、いっそ昔に戻って喧嘩に明け暮れろとでも言うのかよ!?」
「オイラにとっては日常だホ」
「てめええ!」

起き上がり体勢を立て直したキノガッサはとっさにキノコのほうしを撒き散らす。
師にならともかく、かつての自分のようにお山の大将を気取っている奴に好き放題言われたくはなかった。
しかし、ここで拳ではなく、安易な状態異常に頼ったのは彼女の心が折れかけている現れだろう。
そんな弱気な一撃では、あのアスラおうとも殴り合い不動心をラーニングしたこのジャックフロストを眠らせるには程遠い!
ならばとローキックを放つも、GAKU−RANに無効化される!
数多の激戦をくぐり抜けても心の折られることのなかったジャックフロストを主と認め、主に触れる価値の無い攻撃をシャットアウトしてるのだ!

570言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:45:05 ID:KmcjUtx20

「鉄拳制裁、その腐った性根を叩きなおしてやるホー!  イヤーッ!」
「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」
ゴウランガ! なんたるアイスカラテの冴えか! 連撃がキノガッサを打ち据えていく。

だがどうしたことか。
打たれ、殴られているはずのキノガッサを見よ。
失意にくれていたはずの彼女の顔に、怒気とは異なる、明らかなエナジーが満ち溢れ出している。これはいったい!?
「こ、この拳は!?」
「そうだホ、分かるか姐ちゃん、分かるよな、アンタなら!」

分かる。伝わってくる。拳を通して目の前の妖精の意思が。
昔の自分のように気に入らないものをねじ伏せるのではなく、自尊心を満足させるためでもない、純粋に、殴り“合う”のが好きなこいつの意思が!

「拳は、自分を傷つけるためのものじゃないホ。心を響かせ合うためにあるんだホ!」

それが喧嘩。
己を拳に乗せて殴り合えばどんな雄弁な交渉よりも互いに分かり合うことができる。
その結果死んでしまっても死なせてしまってもそこに恨みっこはなしだ。
そんな彼だからこそ、あの世紀末の東京でさえ、敵味方人魔問わず友とし強敵としたのだ!

それはここでだって変わらない。
あのヒゲのハゲは、後悔させる。泣いて謝るまでぶん殴る。
ぶん殴ってぶん殴ってぶん殴って。
でも別に殺したいわけじゃないから泣いて謝った時は許してやってもいい。
こりずにまた同じ催しをやろうものならその時はその時だ。
何度だってぶん殴る。

「心……」

注ぎ込まれた折れない心。
その意志に奮起され、キノガッサは再び拳を握り締める。
きっとあの人間もそうだったのだ。
言葉は通じねども拳が通じたからこそ、キノガッサの問に答えてくれたのだ。
その弟子である自分がこんな所で何を燻っている。

『共に――“心”を磨こうぞ』

足りなければ、磨けばいい。
弱いのなら、もっともっと、強くなればいい。
まずは、その再びの一歩として。
心を響かせ“合う”ことを望むこの妖精に。
一方的に殴らせるなどという不本意なことをさせてしまって礼をくれてやる。
師と二人分の心を載せたこの拳で!

571言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:45:22 ID:KmcjUtx20

「そうだな、あたしとしたことが耄碌していた……」
「ヒホ!?」

れいとうパンチの弾幕をマッハパンチの一撃ですり抜け綺麗にカウンターを決める。
今度吹き飛ばされたのはジャックフロストの方だった。
いってええホっと身を起こしながらも嬉しそうに笑うジャックフロストを前に、キノガッサは気合を貯める。

「すー……はー……」

これより放つは彼女にとっての至高の一撃。
全ての気合と心を載せて放つこの技を、師とは違い未熟な彼女は溜め無しで放つことはできない。
だが、拳を交え心を交えた今、キノガッサはジャックフロストを信じている。
この相手は、貯めの邪魔などという無粋な真似はしまいと。
そんなことをするくらいなら自分もまた、気合をためるだろうと。

「ヒー……ホー……」

その通りだった。
もとよりこの身はいかに最強の一撃を放つかに特化したスキル構成。
タルカジャを始め、鬱陶しい即死・状態異常対策こそ習得してはいるが、デバフなどもっての外ホ。
ブフ? 氷結系? んなの忘れたホ。氷結状態にしちまったりしたら萎えるホ。
物理反射だろうがベルゼバブから刻んだ万能物理な万魔の一撃で殴りゃあいいホ、JK。

だから、そう。
今は心置きなく語り合おう。
心を拳に載せて一時の楽しい喧嘩と洒落込もう。



「これがあたしたちのきあいパンチだああああ!!」



「受けて立つホ、鉄拳制裁、ヒーホエンド!!」



決着? 勝敗?
さあ、それを知りたかったら君も彼と彼女と拳で語り合うことだね。

572言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:46:27 ID:KmcjUtx20
【D-4南西/森林/一日目/夕方】
【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:オレンのみが詰まったふくろ
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る

[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。
精神異常無効、身体状態異常無効、テトラジャ、デクンダ、タルカジャ、気合、鉄拳制裁、万魔の一撃。
純粋に最高の状態で殴りあう事に特化したビルド。
いろんなシリーズのが混ざり合ってる?
いやだってこいつ皆勤みたいなものだし、そりゃ色んなシリーズに呼び出されてるさ。

E-6でターミナルルームらしき部屋を発見しました。
目印としてオレンのみを起きました。

D-7洞窟がD-4まで開通しました。
そのことによる山部分などへの影響は不明です。

【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:心と拳を磨き続ける

[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」。
技はきあいパンチ、マッハパンチ、ローキック、きのこほうし。

573言葉も想いも拳に乗せて  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 17:46:37 ID:KmcjUtx20
投下終了です

574 ◆5omSWLaE/2:2013/07/16(火) 18:43:34 ID:SQWRjYtQO
投下お疲れ様です
拳と拳のぶつかり合い、それこそが彼らの意志疎通、心の対話!
草と氷の二人なのに、まるで炎のように熱いコミュニケーション!
もはや勝敗ではなく、喧嘩をすることこそが大事なのだと理解出来ます
怪我を治したキノガッサと洞窟を抜けたジャックフロスト、このコンビの行く末には注目ですね……!

575 ◆TAEv0TJMEI:2013/07/16(火) 18:45:55 ID:KmcjUtx20
感想有難う御座います。
続きましてルカリオ、ボナコン、飛行船予約します

576名無しさん:2013/07/17(水) 17:57:25 ID:CM.W9BJE0
投下乙です
ジャックフロスト、熱い男だぜ…!氷結系忘れたとか、こいつにとっては些細なことすぎる!
キノガッサも吹っ切れたみたいだし、ここからの活躍に期待がかかります

577 ◆DeIsaj04bU:2013/07/17(水) 19:03:48 ID:x1e/44f20
 投下乙です。
なんて濃厚でいて熱い二人なんだ…!氷と草なのに熱血な……激熱な二人ですね!拳と拳の語り合い!すっごく面白い!……尊敬する。

578 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/17(水) 21:40:46 ID:q5rzYx9E0
ジャックフロスト、キノガッサで予約します

579 ◆7NiTLrWgSs:2013/07/17(水) 23:06:34 ID:6p6DK8I.0
レナモン、チャッキーで予約します

580 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/18(木) 05:38:30 ID:ynbq7gk20
投下いたします。

581 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/18(木) 05:39:08 ID:ynbq7gk20
深くも浅くもない木々の合間を縫って、彼はその木の一本に背を預ける。
木漏れ日とまばらな影に覆われる純白の高貴は、眩い空を仰ぎ、瞳を閉じた。
警戒しながらの浅い眠りを迎え入れ、彼の心は記憶の整理を始める。
ここにきてからのことはまだ余りに短く、さして登場することはなかった。
見たこともない世界、見たこともない魔物の王、どこかで見たことがあるような……挙動不審なモンスター。
つっかえる情報の一端。
ゲルキゾクの頭が、心が違和感を覚えると同時に記憶は遡る。


「……エクササイズって儲かるのかしら」
茫洋と興行集団を眺めていた主がつぶやいた。
彼女はいつだって金を欲していた。
何故か、と一度だけ問うて見たことがある。
興味本位で尋ねた質問。
どうせ適当に業突張りな台詞を頂戴するのだろうと返事を待っていたが、彼女は、陽の光が宿らぬ瞳で。
『金がありゃあ、金で契約すりゃあ、誰もあたしを裏切らないでしょ』
そう、酸素より重たい声で放った。
すぐさま、金はあたしを裏切らない!!と言い直したが。

あれが彼女の真意なのか、そこにたどり着くまでに何があったのか、勿論ゲルキゾクは聞かなかった。
契約外だからだ、同情したり、信頼したり、そういう頭の温かい案件は。
「さあ」
だから冗談とも本気とも付かない疑問は軽く流す。
「あんたエクササイズってガラじゃないもんねェ、精々バランスボールよ」
珍しく、無駄話でけらけらと彼女は笑った。
「それで結構」
無機質な返事に気分を害するわけもなく。

大会で訪れた街は賑やかで、道端で芸や歌を披露するもの、モンスターの育成グッズを売るもの、円盤石を売るものと様々であった。
悲喜交交の表情をばらまく通行人たち、手をつないで歩く恋人たち、なぜか取っ組み合いで喧嘩してる者達。
人間を見るたび、彼女はやはり、あの陽の光のない瞳になる。
指で作った四角い世界でそれを閉じ込めて。

「こうして見ると、なあんかお伽話っつうか、演劇見てるみたいでサ」
他人ごとの情景を無理やり見せられてるみたいで嫌だな。
「見なければいいでしょう」
正論をくれてやる。
そうだな、と返される。
四角い囲いを外すと世界は解き放たれる。
「こうやってあたしがぶっ壊しても世界ってのは山ほどあると思うと」
いくら金があっても足りない。

「なあ、契約の話なんだけどな――」

声が遠い。
切れ切れで、ああもうはっきり仰ってくださいな。
焦れて前に進むが、どんどん意識が遠ざかる。
それは覚醒か契約違反か。

582 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/18(木) 05:40:50 ID:ynbq7gk20
幸運にも、前者が訪れた。
軋む体は相変わらずだが、少しだけ意識が落ち着いている。
しかしこんなことでは、いつまでまっても契約を果たすには至れない。
溜息とも呼吸ともつかない深いそれを繰り返していると、世界を四角く縁取る監視役がこちらを見ていた。
ジーーー……と機械音を立てて、ゲルキゾクより無感情に棒立ちする物体。

主催と思わしき男とは別の、下っ端のような男がこれに向かって叫んでいたのを思い出す。
これは世界を切り取り、発信する装置なのだろうか。
また、ゲルキゾクの頭に何かが引っかかる。
見たことがないどころか、自分の世界にこんなものは存在しない。
そのときゲルキゾクは、違和感の正体を捕まえた。

「自分の……世界?」
その言い回しが、当座の答えであった。
日常を奪われ非日常に叩きこまれた比喩のつもりであったが、目の前の機械が物理的にもそうであると伝えてきている。
なれば、とゲルキゾクはさらに思案する。
見たことがないモンスターが居るのも道理だ。
彼らは、他のモンスターたちは別々の世界から招かれていて、こうして殺し合いをけしかけられていると。
いや、そんなことは最初から分かっている。前提条件などいまさらどうでもいい。

問題は、ここが何処かということ、そして、自分の世界に帰るための方法だ。
たとえすべてのモンスターを倒したとしても、彼女はこの世界にいないかもしれない。
もしも予想通り囚われていたとしても、帰る場所はこの世界には存在しない。
どちらを欠いても契約は果たせない、ゲルキゾクは息を深く吐き出す。
無意識に組んだ腕を見て、ふと思い立ち支給されたふくろの中身を取り出す。

美しい透明な球体が、ころんとその白い腕に落ちた。
途端、触れた場所から柔らかな光が漏れでて、傷が癒されていった。
原理は分からないが癒しの力を持つ玉を握り締めると、じわじわと体に飲み込まれていく。
確実に、体中に染み渡っていく力。

重たいからだが徐々に軽くなる感覚に安堵し、これからのことを考える。
元の世界……と今は仮定する、自分の世界に帰還する方法。
それに一番早くたどり着く方法と、今自分がやるべきことは見事に合致している。
ただ、まだ足りない。

全てのモンスターを打ち倒し、主の契約を。
そこまで考えてゲルキゾクは自嘲気味に笑う。
確認さえ取れればいいのに、なぜ自分は帰ることを、あの女のもとに戻ることを第一義に置いているのか、と。

「確実性を持ってして、契約は果たすべし、ということです」
ひとりごちて、立ち上がる。
結論は出た。
情報を集め、そしてモンスターを殺めて回る。
最悪全滅さえ成功させられれば、荒っぽいが道はひらけるだろう。

手始めにと体をならすべく周囲の探索を始める。
木々に囲まれた場所だ、ろくなものはないだろう。
案の定、と決めつけかけたその時、少しだけ開けた、まるで木々達がそこにいるのを拒んだような場所を発見する。

583 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/18(木) 05:41:48 ID:ynbq7gk20
「これは……」
彼にしては珍しく、揺れた声音。
割れて、砕けた円盤石の残骸がそこには散らばっていた。
弔われることもなく、廃棄されたモンスターが閉じ込められていたそれらは、そのまま遺影を思わせて。

彼の世界でも、円盤石の欠片は存在した。
各種の欠片はモンスターを合成させる際の隠し材料になり、わずかにモンスターに影響を与える。
眼の前にあるのは……はっきり言ってしまうと、石ころと大差ない物体だ。
その墓標の更に奥、王座に君臨する、銀色に鈍く輝く石版。
「神々の石版……しかし、なぜここに?」

古に封印されたモンスターの伝説が彫り込まれた石版。
こう言うと非常に価値がある石版のように聞こえるが、実際は端金にもならないような遺物である。
「悪徳の限りを尽くした伝説のドラゴン、ムー……」
なぜこの石版に価値がないのか、それは明確な情報が何一つ記されていないからだ。
二度の世界の滅び、空白の歴史、古代三神……詳細はすべて、ゲルキゾクが居た世界のもっと先の未来で語られている。
ゲルキゾクに分かることは、これがムーの戦いについて記されたもの、ということだけだ。

散らばる円盤石の骸、それを見下ろす石版、何かの暗示があるのか、ないのか。

「ふ……まさか、我々の屍の上に何かを築きあげようと?」
一つの想定に、薄い笑みを浮かべる。
「だとすれば、本当にくだらない」

するするとゲルキゾクはその場を離れる。
この陳腐な賭け事よりも、あの女が、主が求める金儲けよりも益のない想像。
そんなものが存在するとは、可笑しくてたまらない。
金のためにこの催しを開いたと思うほうが何倍も賢明に見える。
それとも、信心深い参加者を焚きつけるためのフェイクか?
モンスターを畜生と、道具と見る人間が我々にそんな期待を?
もうこれ以上笑わせないでほしい。

日はまだ、地平には遠い。
幾ばくもせぬうちに元通りになるだろう確信のある身体を持って、彼は進んでいく。
一刻も早く、契約を果たすべく。


【F-7/森/一日目/午後】

【ゲル(ゲルキゾク)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:回復中
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:自身のブリーダーの安否確認のため全員を殺しモリーと面会する
  1:情報を集めつつ殺す

[備考]
オス。金にがめついブリーダーに『道具』として飼われていた。冷徹だが冷血ではない。種族はゲルキゾク(ゲル×ガリ)丁寧な口調で一人称は「私」

《支給品紹介》
【宝玉@女神転生シリーズ】
 対象のHPを全回復させるアイテム。このロワでは急激に回復するのではなく徐々に回復する仕様に。

584 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/18(木) 05:43:08 ID:ynbq7gk20
投下終了いたします、タイトルは テレビのスイッチを切るように で。
問題やご指摘がありましたらお願いします。

585 ◆5omSWLaE/2:2013/07/18(木) 09:38:06 ID:5/7c6TAUO
投下お疲れ様です
マスターとの契約に忠実で、ストイックなゲルキゾクの過去
無機質そうでありながら、結構な絆が感じられますねぇ
円盤石から何かしら推測を巡らせたみたいだが、果たして今後何を見て、何を思うのか……

586 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:56:37 ID:eyvNI5gE0
すいません、大分遅れましたが投下させて頂きます。

題名は
色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑講座

です

587 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:57:05 ID:eyvNI5gE0


ゆう‐わく〔イウ‐〕【誘惑】
[名](スル)心を迷わせて、さそい込むこと。よくないことにおびきだすこと。「―に負ける」「悪女に―される」

588 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:57:19 ID:eyvNI5gE0



「ば……バカぁ!!」
ハムライガーの治療を行いながらホイミスライムは叫んだ。
トンベリは敵だった、とホイミスライムは判断している。
実際、マンイーターは襲われているし、このまま行けば自分も襲われていただろう。
しかし、こういうものは理屈ではないのだ。
トンベリのためにハムライガーが泣き、ハムライガーのためにトンベリは願った。
それだけで、ホイミスライムが叫ぶには十分だった。

「この大馬鹿野郎!!バカ・オブ・ザ・イヤー2013 主演女優級のクソ野郎!!」

「アタシを勝手に変な賞にノミネートさせるんじゃない!
 くだらないこと言わないでよね、これはいわゆるところの正当防衛って奴よ!
. むさい上に視力0.1のオッサンが見たって、正当防衛だよマンイーターちゃんって言ってくれるわよ」

「そんなことしないで、お姉ちゃんは冬のナマズみたいにガタガタ震えて横たわってればよかったんだ!!そうすれば全部丸く収まってたんだ!!」
「じゃあ、私のやり場のない2/3の純情な殺意と1/3の憎悪はドコにやれっていうのよ!!」
「大人なんだから、そんなもの飲み込んでよ」
「るっせー!そもそもあいつどう見ても危険な悪魔だったでしょうが!」

「落ち着け」
ギリメカラの言葉も、二人を止めるには至らない。

「だって……殺す必要は無かったじゃないか!」
あそこで銃が撃たれていなければどうなっていたか、それはホイミスライムにはわからない。
だが、ギリメカラがトンベリを殺そうとしなかった以上、
自分の時と同じように、考えなおすことが出来たのではないかとホイミスライムは思う。

「私だって殺したくはなかったわよ!!でも涙を呑んで…………」
「嘘つけ!!」

もちろん、マンイーターの発言は真っ赤を通り越してクリムゾン……いやキングクリムゾンの嘘である。
前話で満面の笑みを浮かべて「快、感……ビクンビクン」みたいなことを言っている。
だが、感情の発散のみを理由にして殺したわけではない。
少なくとも、自分の身を守るための行動であったし、殺さなければどうなっていたかわからなかった以上、予防措置とも言える。

歪んではいるが、この言い分がある以上。
ホイミスライムの発言はマンイーターにとっては、理不尽な感情の押し付けにすぎない。会話は燃え上る。

「黙れ!!」
ならば燃え上がった会話の炎は爆発的な叫びによって、強制的に鎮火に至る。

「ここで争ってどうなるというのだ」
「でも……」
「どうにもならん」

死者にできる事など弔うことくらいである。
少なくとも無駄な会話は何の得にもなりはしない。

「ホイミスライム、おヌシはそのまま治療を続けろ」
ホイミスライムに手早く命じると、マンイーターの方へと向き直る。

「おヌシは埋葬を手伝え」
「ヤだ」
返答に0.5秒。拒否時間世界記録を狙える逸材だろう。

「ワシといれば安全じゃぞ」
「それでもヤだ」
0.4秒。記録更新である。

「というわけで、ワシ達は埋葬のために……ほんの少しだけ離れる」
そう言って、ギリメカラはトンベリの亡骸を抱き、マンイーターを引き摺って歩く。

「は〜な〜せ〜」

「ところで、おヌシ……名前は?」
「俺はハム、寝てる方はハムライガーだ」
「ホイミスライム達を見ていてもらえるか?」
「まかしといてくれ、あと……トンベリを頼むよ、なにか間違えちまっただけなんだ」
「うむ」

正直なことを言えば、この判断は最善ではない。
埋葬ならばホイミスライムの近くで行えば良いし、マンイーターが殺した死体の埋葬の手伝いをマンイーターにさせるというのも冗談染みている、
さらに出会ったばかりで何もわからないハムにホイミスライム達を任せるというのも決して良いとは言えない。

だが、この状況のマンイーターとホイミスライムを共にしてはおけない、不和の種は芽を出す前に摘まなければならない。
それに、離れると言っても視界に入らない程度の距離である。何かがあればすぐに駆けつけられる。
更に言えば、ハムに下心があるとしてもこの状況下で直接的な行動は取らないだろう。
これは、悪魔としての経験上の判断である。

それ故に、ギリメカラは離れたのだ。

そして、ハムも死んだトンベリを憐れむことでさり気なくギリメカラに対して自分の善性をアピールしていた。
少なくとも、悪印象は与えてはいない。
むしろ、刺され女よりは大切にされるだろうとハムは打算している。

「…………あんまり趣味じゃないけど」
混沌のスープに悪意という名の隠し味。

「いっちょ、やってみたぜ」

様々な思考が渦巻いている。

589 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:57:29 ID:eyvNI5gE0



「ハムライガーは大丈夫か」
「うん、大丈夫……命に別状はないよ」
回復呪文によって、既に出血は止まっている。
うなされるように呼気を荒くしながらも、ハムライガーの心臓ははっきりと命を刻んでいた。

「良かった……」
胸を撫で下ろしたハムは、演技8割本心2割である。
ハムは他者に取り入るために、なるべく他人の気に入りそうな行動を演じる。
といってもスライムに対して暴行を働いたように、何もかも演じきる程に感情というものを捨て去ってはいない。
多少の縁があった仲間が生きていれば嬉しいし、それが盾になってくれそうならば尚更である。
更に言えば、トンベリの死で不確定要素は消えた上に、敵意が無いということはハムライガーが身を持って証明してくれた。

様々な感情が入り混じった「良かった」である。

そんな、ハムを見てホイミスライムは言葉を掛けあぐねていた。
トンベリを殺したのは自分ではない。
だが、共にいたマンイーターがそれはもう言い訳のしようがないほどに、清々しさすら感じる勢いでぶっ殺した。
目の前のハムに対して、ホイミスライムは少なくとも善獣であると思っている。
ならば、仲間の死に対してなんと思うだろうか。そうホイミスライムが思っていた時である。

「……しょうがねぇよ」
重々しくハムが口を開いた。

「あいつがああなら……遅かれ早かれ、ああなってたと思う」
目線は下に向ける、こういう話を面と向かって言うのはヘタをすればボロが出る。

「でも、あいつは最期……満足して逝けたはずだ、だからいいんだ」
本当ならば、マンイーターまで死んでもらえるように誘導したいが、それは最善ではないだろう。
なるべく善性を全面に押し出して、チームに入り込むべきだ。
それに、許されるというものは中々に心に染みこむ。

「ハムライガーも助かったしな」
「ハムさん……」
「ハムでいいよ」

ゲルもどきと似ているが性格は大違いだ。
いい具合にちょろい、しかも回復を使える。
不安要素はあるが、結構いい感じだな俺。

「う、う〜ん……」
気絶していた、ハムライガーが声を上げた。

「そろそろ、ハムライガーも目を覚ます。仲良くやってくれよ」
「うん!」


日々のトレーニングに励み、大会にも何度も出場している。
トンベリの攻撃で即死しなかったように、愛らしい見た目とは裏腹にハムライガーは強い。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

不意を打てば、野生のハムですらその鋭い牙で一撃で仕留められる。

【ハム@モンスターファームシリーズ 死亡】

「えっ……」
「ボクは」
目覚めたハムライガーの虚無の瞳には、ホイミスライムはただの獲物としか映らない。

「帰るよ」

. ワン  ツー
一撃、二撃。
正確な攻撃は、狂いなくホイミスライムの急所を穿つ。

ハムライガーの瞳から零れた雫は恐ろしいほどに、冷たかった。



【ホイミスライム@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】

590 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:57:39 ID:eyvNI5gE0



ギリメカラは何も求めず、マンイーターも何もしない。
ただ、ギリメカラは穴を掘っていた。

「……殺すべきだったと思うわ」
マンイーターは悪びれることもなく、言葉を発する。
発する意味は、自らの正当性。

「奴は救えたぞ」
「そんなこと、アタシにわかるわけないじゃない」
「全く正論だな……」
くつくつと自嘲の笑いがこみ上げる。
気づけば、マンイーターも艶やかに笑っていた。
桃色の舌が軽く舐めた唇に官能的な湿り気を与える。

「アタシを殺したい?」
「殺しておくべきだったな、出会ったその時に……やれやれ、欲をかいて悪魔手を増やそうとすると碌な事がない」

「あら、気づいてたの?アタシが殺し合いに乗ってるってこと」
「確証は無かったが……まぁ、少なくとも死んでも心を痛めることは無いだろうとは思った」

「酷いことを言うのね」
「事実そうなる」

「アタシを殺して平気なの?」
「面白い冗談だ」

「……先に、その緑野郎を埋めて上げた方がいいわ」
何が楽しいのか、マンイーターは笑い続けている。

「しばらく埋葬する暇もなヴァ!!」

ギリメカラの拳が、マンイーターを吹き飛ばす。
本来は剣士であるため徒手空拳は得意としないのだが、それでも、ヒット級である。
いい勢いでマンイーターを木に叩きつける。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
その時である、ホイミスライム達がいた場所から悲鳴を聞いたのは。

「このタイミングで襲撃だと!?」
それ以上の問題は、ギリメカラに移動の際に必ず鳴るであろう音を聞かなかったことである。
ギリメカラの耳は大きい、つまり耳が良いものと解釈しても問題はない。

そのため、少し離れた距離でも何者かが近づいてくれば音を聞き取れる。
これもまた、ホイミスライム達と別行動を取った理由である。

しかし、ギリメカラは移動の際の音を聞かなかった。
これはつまり暗殺者の技術、あるいは。

「何を仕込んだッ!?」
「助けに行った方がいいんじゃな〜い?アタシは全力で逃げま〜す」
マンイーターは踵を返して走りだす。
ギリメカラならば追えぬこともないが、追っていてはホイミスライム達の命の保証はない。

「クソッ!」
ギリメカラもまた、駆ける。
近いはずの距離がこれほどまでに遠く感じるとは。


「作戦!大・成・功!!イェーイ!!」
狂気じみて嗤いながら、マンイーターは逃げる。
ホイミスライムが回復を持っており、あの緑色を獣が庇ってくれたからこそ、
この作戦を思いつき、トンベリをぶち殺し、実際ギリメカラから逃げることに成功している。

「いや〜ラッキー!ラッキー!ざまぁ!ざまぁ!」
最も作戦と言っても、マンイーターのノリと調子にのった物であるので、
失敗及び、それ故の死亡の可能性は高かった。
だが、誰もそれに文句などはつけはしない。
実際に逃げているのだから。

「今度こそ、手駒ゲット!ガンバルゾー!」

バックベアードのふくろの奥底で、銀色の円盤がぎらりと光った。
第二世代わざマシン 50 あくむ

眠った相手に悪夢を見せる技が、誘惑者との相性が良くないわけがない。

591 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:57:51 ID:eyvNI5gE0



「おヌシ……ハムライガーか?」
「……うん」

横たわる二匹の死体と血塗れのハムライガー。
この状況を見れば、余程の者で無い限りは状況を察せられる。

「何があった?」
返答は言葉ではなく、牙だった。
バネのように後ろ足を縮め、一気にギリメカラへと跳ねる。
突進の打撃力に加え、状態を崩してからの噛み付きは他者を殺すには十分すぎる。

不幸というのならば、それはハムライガーがギリメカラの性質を知らなかったことであるし、
また、ギリメカラがハムライガーの想像を超えて強かったことである。

先程のトンベリとの戦いにおいて、ギリメカラが回避し続けたように、
この戦いにおいても、ギリメカラは回避を行う。

そして、それを己の優位と見てハムライガーは攻撃を重ねる。

ならば、最早ハムライガーに勝利はありえない。

だが、ギリメカラはその勝利を良しとはしない。
ハムライガーの瞳に映る深い絶望、その正体を探らなければならない。

ならば、ギリメカラは挑む。
勝利以外ありえない戦いに引き分けるために。

「すまない……」
ギリメカラの謝罪の言葉を聞く者は、最早いない。

592 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:58:02 ID:eyvNI5gE0



「ア   タシを勝手に変な賞にノミネートさせるんじゃない!
 く   だらないこと言わないでよね、これはいわゆるところの正当防衛って奴よ!
. む   さい上に視力0.1のオッサンが見たって、正当防衛だよマンイーターちゃんって言ってくれるわよ」

マンイーターはチャッキー襲撃前に、ふくろの中身を確認していた。
ブイモンが特に聞くこともしなかったため、誰にも触れられることがなく終わったが、
しかしマンイーター本人は、しっかりとわざマシンの使用により、その技を習得していた。

世界が変われば、コトワリも変わる。
ポケモン世界ではダメージ技である悪夢も、メガテン世界に於いてはその性質を変える。
いや、マンイーターがねじ曲げた。

かくして、ハムライガーは悪夢を見ることとなる。

593 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:58:13 ID:eyvNI5gE0



気絶の中、ハムライガーは夢を見ている。

「ここはドコだろう?」
暗黒の中、ハムライガーはただ浮いているような感覚を味わった。
地面に足は付いている、だが地面は見えない。
何もかも見えるものは無い、ただ暗黒だけが無限であるかのように広がっている。
黒く、暗く、どうしようもない。

「ボク……死んじゃったのかな」
だとしたら、とても哀しい。
そう、他人ごとのようにハムライガーは思った。

だが、すぐに気づいた。

「もう、二度とブリーダーさんに…………」
言葉は最後まで言えず、代わりに嗚咽だけが漏れだした。

「……ッ……ヒッグ…………」
現状を言葉にすることなど、とても出来ない。
認めてしまえば、何もかもが終わってしまう。
誕生日だったのに、こんな場所に連れて来られて、モンスターが目の前で死んで、
優しかったトンベリさんが急に怖くなって、でもトンベリさんはトンベリさんで、それでボクは……ボクは…………

「ねぇ……」
背中に感じる、冷たい掌の感触。
その手は冷たかったけど、ブリーダーさんのもののように暖かく感じられた。
振り向いたハムライガーを、マンイーターは優しい笑みで見つめていた。

「ッグ……お姉ちゃん…………?」
「アタシはマンイーター、ねぇあなたが守った緑色の奴なんて言うの?」
「トンベリさんのこと…………」
「そう、トンベリ……アタシ、トンベリに殺されちゃった」
「えっ……」

「もう二度と、会いたかった人には会えないのアタシ」
「お姉ちゃ……」

「でも、良かったぁ……キミが来てくれたから、アタシ退屈しそうにないなぁ」
「ボク……やっぱり死んじゃったの?」

「うん、死んだの……キミももう二度と会いたい人に会えないね」
「……ボク」

「ダイジョーブ、ダイジョーブ、キミの会いたい人はすぐに死んだキミのことなんて忘れちゃうから」
「えっ……」
「最初は死んで哀しいと思うよ、でも一ヶ月もすれば哀しみも消え失せて…………2ヶ月もすれば、完全に忘れて新しいペットを買うんじゃないかなぁ?」
「ブリーダーさんはそんなことをしないよ!!」
「うん、そうだね……キミの大切な人はそんなことをしないよ…………ずうっと、ずうっと、キミのことを忘れない」
「そうだよ!」

「それでさ、ずうっと哀しみ続ける」
「え?」

「哀しい時って、ご飯が食べられなくなるじゃない?」
「う、うん」
「キミを亡くした人は、毎日毎日哀しい……ご飯が食べられなくなる、ご飯が食べられなくなると、お腹が空くわねぇ……
でも、それでも哀しみでご飯が食べられなくて、お腹が空いて空いて空いて、苦しくてたまらない」
「…………」

「周りは心配するけど、そんな言葉はキミを失った哀しみで届かない…………最終的に死ぬよ、キミの大切な人。
キミも酷いねぇ、忘れられるのが嫌だって言うけど、忘れられないままだと、キミは大切な人の死を願っちゃうんだもんねぇ」
「そんなこと……」
「言ってないよねぇ、言ってない言ってない」

「そう、キミは全く悪くない…………悪いのは、キミの言うブリーダーさんだよねぇ」
「えっ?」

594 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:58:25 ID:eyvNI5gE0
「ところでさっきやっていた誕生日パーティーってキミの?」
「ボクのだけど…………」
「そう、誕生日おめでとう、きっと忘れられない誕生日パーティーでしょうねぇ、
誕生日と同時に死んだんだもんねぇ……ねぇ、なんで誕生日と同時にこんなトコロに連れて来られたと思う?」
「それは……あのヒゲの…………」
「キミの大切な人が、キミを連れてきたんじゃないの?」
「ブリーダーさんはそんなこと……」

「そう、しないしない。ブリーダーさんはわざわざキミの誕生日に、誕生日ケーキを持たせて、殺し合いに放り出すことなんてしない。
あのヒゲの親父が全部悪い、ところでなんでヒゲの親父はキミの誕生日を知っていたの?」
「…………」

「もしかして、ブリーダーさんが教えてあげたのかなぁ?それとも拷問で聞き出されたとか?
アタシ、ちっともブリーダーさんが悪いだなんて思ってないから、きっとブリーダーさんは拷問にあってキミの誕生日を聞き出されたんだと思うなぁ」
「………………」

「痛いだろうなぁ、苦しいだろうなぁ、最後までキミのことを思ってただろうなぁ、大切なブリーダーさんだもんねぇ」
「そんなこと…………」
「無いとは言い切れないよ?だって、キミが死んだ以上、確認出来ないじゃない」

「ねぇ、帰りたい?ブリーダーさんのトコロに」
「……帰れるの?」
言葉でいたぶられていたハムライガー、その瞳に久方ぶりの光が宿った。

「今からキミは目を覚ます、目を覚ましたら周りのモンスターを殺す、周りのモンスターを殺したら、他のモンスターも殺して、
最後の一匹になれば、おうちに帰れるよ、きっと」
「そんなこと…………」

「だめだよねぇ、そんなことしたらダメダメ、わかってるって」
「そうだよ、だって……」
「ところで、いい筋肉の付き方してるわねぇ」
「う、うん……トレーニングとか修行とか大会とか頑張ってるから」
「へぇ、やっぱり頑張るとブリーダーさんは喜んでくれる?」
「うん」
「じゃあ、帰ってブリーダーさんを喜ばせるために戦おうとするのと、大会と、何が違うの?」
「それは……それは……えっと…………」
上手に言葉にできなくて、持て余していた感情だった。

「ほら、答えられない……結局、違わないんだよ」
「違うよ!」
「でも、答えられない、答えられないということは違わない」
「違う!違う!違う!違う!」
「でも何が違うか説明できない、それってただのワガママでしょ?」
「ワガママ……」

「ワガママでブリーダーさんを困らせるの?ワガママでブリーダーさんに忘れられるの?ワガママでブリーダーさん死んじゃうよ?
ワガママだからブリーダーさんに誕生日に売られたのかもよ?ワガママでブリーダーさん拷問にあってるのかもよ?」
「……………………」


「ごめんね、哀しませちゃったね。哀しませついでにプレゼントあげる」
暗闇に置かれた緑色の肉、銃痕まみれのボロボロの肉塊。
それは、ハムライガーがよく見知った…………

「トンベリさん!?」
「殺し合いやってるんだからさ、死ぬんだよ……誰も彼もが」
「そんな嘘だ……嘘だ!嘘だ!」
「本当に本当に本当に本当にトンベリだー」

笑いを堪え切れなくなったマンイーターが声を出して笑う。

「ね、無駄なんだよキミのやってることはさ、ただのワガママ」
「ボクの……」

「ていうか、止めるならもう少し早くしてくれれば良かったのに、そうすればアタシ死ななかったよ、もう一度大事な人に会えたかもしれないんだよ?ねぇ?
結局何一つ上手くいかないんだからさ、やるべきことをやるべきなんだよ、そうでしょ?ねぇ?ねぇ?」
「やるべきことは……」
「殺し合い」

「そう、殺すんだよ!どんどんどんどんどんどんどんどん、殺して殺して殺して殺そうよ!そして家に帰ろう?そうすればブリーダーさんだって暖かく出迎えてくれるよ、ねぇ」
「…………でも、ボクは……ボクハ…………」

マンイーターの誘惑は、あとほんの少しの切っ掛けで完成する。
故に、マンイーターは歌う。

「おめでとう おめでとう ハムライガー もっとおっきく つよく なあれー」
「それ……」

ハムライガーに差し出された誕生日ケーキ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

「ハッピーバースデー!ハムライガー!!」

595 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:58:35 ID:eyvNI5gE0


かくして、悪夢は現実となった。

【F-5/山の麓/一日目/午後】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:刺傷、狂気
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:家に帰る
 1:殺す

[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」
マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれました

【ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:ハムライガーを止める
 2:みてろよあのハゲ
 3:金の子牛が気にかかる

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。

【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】
[状態]:背中に裂傷(ダメージ中)腹部に刺傷、治療済み
[装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(70/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(4/5)
[所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(使用済みのわざマシン50『あくむ』)ブイモンのふくろ(中身は空っぽ)
[思考・状況]
基本:優勝狙い
 1:よっしゃ逃走するやで!

 ※メダパニの杖を強化系の杖と勘違いしています、回数制限も知りません
   山頂の景色から少しだけ地形を把握しました
  あくむを習得しました。

596 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/18(木) 23:59:44 ID:eyvNI5gE0
投下終了します

597 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/19(金) 00:13:48 ID:WlzT.wwE0
>>586
題名訂正します。

色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑講座ではなく、
色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑教室でした。

598 ◆5omSWLaE/2:2013/07/19(金) 01:54:57 ID:GHsTgH8M0
投下お疲れ様です 
マ、マンイーター姐さん、畜生過ぎるだろ……!
意外に毒舌キャラだったホイミスライムも、順風満帆だったハムも、まさかこの一瞬で散ってしまうとは……
悪夢に蝕まれたハムライガー、彼も意外な強さをここで見せたけれども、惨劇は酷くなっていく一方
ギリメカラはどうにも苦労人ですね。絶対に負けない戦いに、勝たないために。頑張って欲しいものです。
そして何と言ってもマンイーターはヤバイやつ……。おちゃらけた言葉とは裏腹に、洒落にならない程のぐう畜行為
パーティ一つを崩壊させる事に成功しましたが、このあとどこへ向かうやら。くたばりたまえマンイーター。

599名無しさん:2013/07/19(金) 03:51:53 ID:t/2dFpSY0
マンイーターの最後の丸め込みがすげえ
相手の反感買うようなこと言って思考誘導させてそれを先回りして口にして肯定させて更にコロコロ連想ゲームみたいに話し変えたり煙に巻きつつ本筋つきつけて
やばい、ぞくっとした

600 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/19(金) 09:04:36 ID:WlzT.wwE0
エアドラモン、アグモン、ピカチュウを予約します。

601名無しさん:2013/07/19(金) 10:57:53 ID:t/2dFpSY0
予約が止まらない!
すごいなー、ここ

602 ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:13:13 ID:XiF4elT.0
ルカリオ、飛行船、ボナコン、投下します

603我はここにあり  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:15:05 ID:XiF4elT.0



人は、奇跡を信じない





人は時に奇跡を求める。
切羽詰まった時、自分の手ではどうしようもない時、文字通り運頼みの時。
それでもと。それでも自分の願いが望みが、叶ってくれるのではないかと期待する、神に祈る。
もしその願いが真になれば、人はそれを奇跡だともてはやすだろう。
祈ることさえ忘れた絶望的な状況で、奇跡と呼ばれる何かが起き救われたのなら、人は大いに喜び、感謝するであろう。

けれども大抵の場合それは、自分が願い訪れた時だけに限るのだ。
親しい人間に奇跡が訪れた時はまあいい。
良かったね、おめでとう、と祝えるくらいには人間の心は破綻していない。

だがしかし、それが見も知らぬ人間に訪れたとしたらどうか?
驚くだろうか、感嘆するだろうか、妬むだろうか。
否。
大抵の人間は奇跡が起きたと訊いても、まず最初に疑うであろう。
それってほんとなの?と。
人は奇跡を信じない。
起きないはずのことが都合よく起きるなどという、そんな事態を受け入れない。
ただのご都合主義、裏には何かある、なんであいつが。
信じる心を忘れ、夢をみることもなくなった者たちは、現実的な利益がそれによってもたらされない限り、奇跡など信じない。

だから今、奇跡とさえ取れるその光景を前にしても、人は何ら感じ入るものがないのは当然の話だった。

「おお、見ろ、“ジェペッタが”起き上がったぞ!」

人は奇跡を信じない。

「すごい、あの“ジュペッタ”、かみなりを修得したわ!」

目に見えぬもの、自分が理解できるものしか受け入れない。

「じ、自爆じゃと!? 何を考えてるんじゃ、ギルガメッシュは! これだからモンスターは!」

ジュペッタとプチヒーローの絆も、ギルガメッシュの絆も、彼らは知ろうとさえしない。

「おやおや、私のギルガメッシュは死んでしまいましたか。まあこれもゲーム、仕方ありませんね」

そんなものがあるなどと考えてもいない。

「ママー、どうしてジュペッタ、10万ボルトじゃなくて、かみなりつかえるの?
「それはね、きっとジュペッタがあのもう一匹のモンスターを食べたからよ」
「食べちゃったの……? 怖い、怖いよー」
「ええ、だって悪で、ゴーストですもの。それくらいしちゃうわ。坊やはそんな悪い子になっちゃだめよ?」
「うん!」

故に。
ここにいる誰もが、ギルガメッシュに打ち勝ったのは“ジュペッタ”だと思い込んでいる。
プチヒーローがポケモンになったことも、プチヒーローとジュペッタが二人でギルガメッシュを倒したことも。
彼らは認めはしない。想像すらしていない。

そして、これから起こることもまた。

「……おや? 誰かこちらに走ってくるモンスターたちがいますな?」
「おーい、ガイドさん、なんか刺激し過ぎちゃったんじゃねえか?」

彼らにとってはただの浅はかなモンスターによる愚行にしか過ぎない。




604我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:15:54 ID:XiF4elT.0


「待てよ、おい、待てよ!」

走る。
一心不乱に衝動に突き動かされただただそれを追い求める。
知っている、ルカリオはそれがなんなのかを知っている。
飛行船だ。
悪しき人間たちの象徴たる飛行船だ。
かつてポケモンを利用し悪事を働いた人間たちが居城にしていたという魔の船。
それが今、彼の仰ぐ空から悠々とこちらを見下ろしていた。

許せるものか。
許せる、ものか。

激情がルカリオの心を支配する。
最早その心に一変の揺れもなかった。
ただ、そんな自分を冷静に見つめるもう一人の自分もいた。
捨て去られたルカリオの理性が、諦めとともに自分を見つめていた。

きっと、クーフーリンに言われたとおりなのだろう。
自分には未来がない。
人間への憎しみに囚われた自分は、いつか、ただの化け物へと成り下がる。
幻視するのは彼らを襲った銀月の魔。
一つの感情にとらわれるとは、他のすべてを捨てることであり、あれこそが、いつか彼へも訪れる果て。
無事仲間を救おうとも、今のルカリオは人への憎しみを意識せずにはいられまい。
人の居ぬ地に隠れ住もうと、心は人に囚われたままだ。

人間が憎い。人間を殺したい。

永遠に憎しみを抱き続ける一生。永遠に人を殺し続ける日々。
そんなもの、地獄と言わずになんという。

分かっている。分かってはいる。
それでも、変われないと諦めてしまっている自分はなんともはや、救いようがない。

だから、そう。これでいいのだ。
これしかないのだ。

「波導は、我にあり……」
「いや、ちょ、あんた何言ってんの!? あんちゃんを惜しむあまり、厨二病を引き継いじゃった!?」

飛行船との距離はいつの間にか縮まっていた。
最短距離でまっすぐ突っ切ってきたこちらとは違い、向こうは下界をよく見ようと一周りしたり速度を落としでもしたからか。
或いはこちらに気づき、見物にでも洒落込もうとしているのか。
理由は分からないが、好都合だ。
見えているなら、目視できるなら、この技は、距離をも無視して必ず当てることができる。

605我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:16:15 ID:XiF4elT.0

ならば、後は。

「うわっと!? おお、やっと止まってくれたか〜。しっかし飛行船かー。
 俺の知る奴に比べちゃ随分おせえがあれにもきっと人間「波導は――覇道は我にあり!」おおお!?」

ルカリオの全身から“あくのはどう”が迸る。
足を止めたルカリオに追いつきかけていたボナコンは思わず怯み、動きを止めた。

「お、おい、何すんだよ!?」
「……逃げろ」
「へ?」
「いいからこのまま、逃げろ!」

こうしている間にもルカリオの身体からは悪の波導が放たれ続けている。
今はまだ距離があいているから余波程度しかボナコンには伝わってこないがこれ以上近づけば命にかかわる。
むしタイプはあくタイプを攻めるには強いが、攻められるのには特に強くはないのだ。
そもそもポケモンでない以前に耐久が神であるボナコンには、たとえそれがルカリオにとってはサブウェポンであろうとも必殺である。

「せ、せめてわけを話してくれよ!? 一体どういうことだよ!?」

そんな生命の危機にありながらも、すぐ逃げようとはせず、相手を理解しようとしている辺り、誰かと組み続けた経験は伊達ではないらしい。
空気こそ読めないが、クーフーリンの死をやるせないと思うなど、そう悪いやつではないのだろう。
であるなら、余計に巻き込むわけにはいかなかった。

「私は、あの船を攻撃する!」
「ちょ、そんなことしたら今度はあんたが!?」
「だろうな」

自分はまず間違いなく殺されるだろう。
そしてその時、ボナコンも協力者だと見なされれば共に呪殺されてしまうかもしれない。
仲間を救うために仲間を死地に追いやるなど、もうこりごりだ。
ルカリオは一芝居うち、ボナコンへと攻撃し、共犯と見なされないよう逃がそうとしているのだ。

「だ、第一あんた、あんなおっきな飛行船をどうこうできるんのかよ!? 無理だろ!?
 もしできたのならあんちゃんを置いて逃げたりなんてしなかったろ!?」
「そうだな。波導弾を直撃させた所で、あのサイズ、一撃では落とせない。でも、無理であっても、無駄じゃない。
 お前がこれから起こる全てを人間に抗う者達に伝えてくれさえすれば、無駄じゃなくなるんだ」
「そ、それってあんた、あんた捨石に……!?」

飛行船の硬さにしろ、彼らを縛る呪いにしろ、情報はあればあるほど有利になる。
あの始まりの場では人間たちは杖により反逆者を粛清した。
そのため、呪いについては実際にあるかないか、どのようなものか、全く分かっていない。
もしかしたら自分以外の誰かが既に人間に反逆して呪いにより殺されてるかもしれないが。
どちらにせよ、ここで飛行船を攻撃し、その結果飛行船がどうなるか、攻撃した自分がどうなってしまうのか。
その全てが、モンスターたちの明日へと繋がる布石になるはずだ。
実体の分からないものはどうしようもない。
これは、この実験は、誰かがなさねばならない。
そしてその誰かに相応しいのは、生きていようと明日のない自分こそがお似合いだ。

606我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:16:51 ID:XiF4elT.0

「そんな、そんなのって……」

決意が伝わったのかボナコンが崩れ落ちる。
その姿に罪悪感が沸かないわけではないが、ルカリオの決意を揺るがすには程遠い。
逃げてくれないのなら仕方がない。
ルカリオは今生の別れとばかりにボナコンに向けて波導を練る振りをする。
これ以上ぐずぐずしていては飛行船は離れていってしまう。
チャンスはここを置いて他にない。
とどめを刺すその瞬間を期待している人間たちに、ボナコンに撃つと見せかけて寸前で向きを変えた波導弾をお見舞いする!

(すまない、クーフーリン。
 お前の忠告を捨て去った私に、あの世でまたおばあちゃんの言葉とやらを聞かせてくれ)

練り上げられた波導が球体状になり顕現する。
ルカリオの持てる全ての気を込めた波導弾。
これより、モンスターたちの逆襲が始まる。
この一撃は、単に仲間たちに情報を残すだけではない。
人間たちに抗うものがここにいるのだと、同じ志を抱いた者たちに示す反撃の狼煙となるのだ。
さあ刮目せよ、人間よ、仲間たちよ。

「これが、この一撃が、私の波導弾「そんなのって、超目立てるじゃないかあああああああ!」!?」

瞬間、天地が鳴動し、ルカリオは体勢を崩す。
あと僅か、あと僅かで放たれるはずだった波導弾は形をなしたまま宙へと取り残される。
何が、とは問うまい。
今のは間違いなく地震だった。
あく・かくとうの自分には、こうかはばつぐんだった。
なしたのが誰かとは言うまでもない。
ボナコンだ。
彼がクエイクでルカリオを邪魔したのだ。

「ボナコン、分かってく!?」

ルカリオを止めようとしたのか。
それとも演技を真に受け、人間に復讐するためならルカリオは巻き添えも厭わないと誤解されたか。
そう推測し、言葉を尽くし、いざとなれば力尽くでもと身体を起こしたルカリオは驚愕する。

607我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:18:41 ID:XiF4elT.0

「お前、何を……!?」

宙に取り残されていたはずの波導弾。
それにボナコンが巻き付いていた。

「いやー、俺の切り札、空とんでる奴には効かねえんでこれ、お借りしますわ」
「お借りするって、おい、まさか!?」

波導とは、全ての物質が持つ固有の振動であり、いわゆる気やオーラと呼ばれているものだ。
全ての物質が持つ以上、ボナコンにも波導はあり、大地を揺らせる以上、振動を操ることはお手のものだ。
何より、波導は他人に譲渡することができる。
これだけの条件が揃っている以上、波導の放出及び圧縮自体は無理でも、完成した波導弾を打ち出すくらい、ボナコンにもできるだろう。

だがそれは、ルカリオがなそうとしていた役をボナコンが代わるということであり、ボナコンの死を意味する。

「止めろ、正気に戻れ!」
「あ、それ無理。ほら、味方にクエイク打ってる時点でどう見ても俺混乱してるし―」

などと気軽に言いながら、ボナコンが再び大地を揺らす。
こうなってしまえばルカリオには手の出しようがなかった。
身を起こすことさえ叶わず、ただ、自分の代わりに死のうとしている仲間に言葉で思いとどまらせるしかなかった。

「帰りたいと、帰りたいと言った言葉は嘘だったのか!」
「人のことは言えないくせに」
「ぐっ、今は、お前の話だ!」

先に死のうとしていたのが自分なだけに、ルカリオはボナコンを止める言葉がなかった。
それでも、もう仲間に死んでほしくないと切に訴える彼に、いつもと同じ調子で、でも、どこか淋しげにボナコンは口を開く。

「いやさー。俺、帰る場所、なくなっちまったんだ」
「え……」
「本スレさ、落ちちゃったんだよ。だからいっかなー、って」
「何を、お前は何を、言っている……」
「んー、人間たちに巣と家族を焼き払われちゃった超雑魚モンスターの話」
「……まさか、お前も。だからなのか。だからお前は人間を……」
「いんや、別に。人間なんてどうでもよかった。ただ、家族には未練あったみたいでさー。
 人間相手でもいいから有名になったら、とんでもなく目立ったら。
 あいつら、天国からでもすぐに俺のこと、見つけられるかなーってさ」

それがずっと誰かと一緒に居たがった、目立ちたがりやの彼の本音。

「でもさ、本スレ落ちちまったから。もういっかなー、って。
 目立てないなら、こっちから行くしかないじゃん。最後に一花咲かせて、ただいまって、帰るしかないじゃん」
「ボナ、コン……」
「あんた言ってたよな、元の世界に帰って仲間を救うって。まだ仲間、生きてんだろ。
 なら、死ぬのはそいつら助けた後でいいじゃないか」

それでも、それでもと言葉にもならぬ何かを言い募ろうとするルカリオにボナコンは背を向ける。
背を向けたまま振り返ることもなく、ただ一匹のワームは、笑った。

「いつか、そん時が来るのかもしれないけど、今回は俺の番だ。俺の見せ場だ。だからしっかり、俺のかっこ良さを伝えてくれ」



さあ、この命、天に返そう。



「オッス! オラボナコン!」



                   我 ハ ココ ニ 在リ

608我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:19:10 ID:XiF4elT.0



人は奇跡を信じない。
残酷な現実の担い手こそが人間だからだ。






「ねぇママ、ルカリオなんで芋虫なんかに負けちゃったの?」
「それはね、あくタイプはじめんタイプに弱いからよ」
「えー、そんなのってないよ。やだなー、ルカリオ、あんな弱かったなんて」

彼らは変わらなかった。
ボナコンが命を賭けたはどうだんはあっさりとターミナルを利用した空間歪曲の仕掛けに反射された。
タイプ相性によるものもあってか、或いは借り物の波導弾ならその程度だからか、その時点ではボナコンは生きていた。
だから彼らは“それ”を押した。
良心の呵責なく、そのスイッチに指をかけた。

「全く、虫けらごときが驚かせおってからに!」
「はっはっは、いいじゃありませんか、こうして何事もなかったのですから!
 むしろ自分の攻撃を反射されてきっと奴は驚いたことでしょう! 
 いやー、噂に聞くモンスターの言葉がわかる能力が私にもあればより面白かったのですがね―」

彼ら、観客たちが手にするそれは、言うならば呪いの発動スイッチ。
呪いは、ジャックフロストが考察したように、各モンスターではなく、世界そのものに仕掛けられている。
始まりのあの会場は島ではなかったからこそ、わざわざ天罰の杖でレオモンを殺すしかなかった。
しかし、モリーはこうも言っていた。
“他にもわしの意思一つでユーたちの息の根を止める呪いをかけておいた”と。
わしの意思一つで、と。つまり自動ではなく、手動なのだ。
呪いは結界という形で島全域にかかっているが、何も結界が条件にそって自動的にモンスターたちを排除していくわけでないのだ。
この結界は、倉田とか言う科学者の研究を始め、様々な世界の技術を組み込み、デジタマや円盤を残さず、“魂”を確実に消滅させることを第一とした。
反面、かなり精度はかなり大雑把になってしまったのである。
言ってしまえば、結界は“魂”を補足でき、生死も判定できるが、それだけでは誰がどの魂かを判別することができない。
どんな世界のモンスターも同様に処理できるようにした結界には、どんなモンスターも“モンスター”という単位でしか捉えれなくなってしまったのだ。
そんな結界に管理を任せていては、一匹のモンスターが反逆を起こした結果、全てのモンスターを処理しかねない。
結果、そこには人の目が、手が入る必要が出てきた。
結界の生死判定と合わせて、どのモンスターが死んだのかを判断する監視役が。
結界を張る術者に、どのモンスターの魂を消し去ればいいのかを教える審判役が。
殺し合いの運営には必要となったのだ。

609我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:22:53 ID:XiF4elT.0
この飛行船及び観客たちは、まさにその監視役と審判役を兼ねている。
無論、運営側からもモリーを始め、正式なスタッフは居る。
しかしこれだけの規模の催し物をするにはそれだけ資金が必要であり、モンスターの調達や、結界の開発と維持にかなり掛かっている。
そこで少しでも金を浮かそうと、観客たちを無賃で利用することを思いついたのだ。
お金を払って飛行船に乗り込んでくれる観客たちに、闘技場スタッフたちは悪魔のスイッチを差し出し、こう囁くのだ。

「もしもモンスターが反抗するようなら、これを押してください」

と。
これは実に合理的だ。
たとえ反射機構付きの飛行船に乗っているとはいえ、モンスターに攻撃されたなら怒り心頭になる観客も多いだろう。
金を払ってきたのに、何故、こんな怖い目に合わねばならないんだ。
モンスター風情が人間様に生意気だ。
そんな風に彼らの不満が募りかねない。
ところが、そのモンスターたちに直接怒りをぶつけられるならどうか。
いや、怒る以前にモンスターたちの命を文字通りこの手に握っているともなれば、余裕が出てくる。
いっそモンスターたちに哀れみを感じることや、自分の手でモンスターを殺したいという嗜虐心から反逆を期待する者たちまでいる始末だ。

現に、今、彼らは笑っている。
自分の手で、“ルカリオに襲われた恐怖できでも狂ったのか、人間様に反旗を翻した馬鹿な芋虫”を呪殺できたことに口端を釣り上げている。

「あっはっは」
「はっはははははは!」
「きゃはは♪」
「わああああああっははっはははっはっは!」
「くすくす」
「くくく」

「「「「「「あああああああっはっはっははっははっははははははっは!」」」」」」





「人間、め。よくも、よくも、よくも、ボナコンを。こんな、こんな、くそ、くそ、くそ、うわああああああああああああああああああ!」





人は奇跡を信じない。
彼らは心に、悪魔を飼っているのだから。


【サボテンダー@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】

610我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:23:43 ID:XiF4elT.0

【D-3/橋付近/一日目/夜】
【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 0:……
 1:志を同じくする仲間を探す
 2:ボナコンが身を張って残してくれたものを、呪いの解除や飛行船対策に役立てる
 3:クーフーリン、、ボナコン、私は……

[備考]
※オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。
※ボナコンの最後を見届けました。詳細はわからずとも、飛行船や呪いについて、幾らか情報を得たと思われます。


※呪いは会場全域にかかっています。
 闘技場内での突然変異や異常進化などにも対応できるよう、どんなモンスターをも確殺することに特化しています。
 意思や魂といったものを対象に発動し、生死判定もできる反面、精度は粗く、手動に頼っているようです。
 飛行船の観客たちにはそのスイッチが支給されている模様。
 正規スタッフや結界の術者からの働きかけなどは不明です。

※洞窟内E-6ターミナルは空間を操る機能による飛行船の攻撃反射の仕掛けにも関係しているようです。他は不明。

611我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:24:38 ID:XiF4elT.0
投下終了です
投下中に死亡表記忘れに気づき慌てたせいで、最後コピペミスしました
直しておきます









































正しくは、【ボコナン@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】です

612我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:25:54 ID:XiF4elT.0
あ、それとライガー、マンイーター、ギリメカラ、予約します

613我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:35:34 ID:XiF4elT.0
失礼します
どうやらミスが多発していた模様
申し訳ありません
大分運営に踏み込んだことといい、指摘よろしくお願いします

614我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/20(土) 23:37:39 ID:XiF4elT.0
ルカリオ云々は地面弱点とかはあってるので作品としては大丈夫なはず
ポケモンは何分プラチナまでで最近やってなかったので
重ね重ねすみません

615 ◆5omSWLaE/2:2013/07/21(日) 01:15:23 ID:cf5NZwvY0
投下お疲れ様です
ボナコン、本スレ落ちてたのか……。というメタネタからの、心に秘めていたささやかな想い
最高にかっこよくて、最高に目立ってたぜ! 彼は決してただの冴えない芋虫なんかじゃ無い!
このロワの人間の残虐性、冷酷さ、傲慢さ……まさに心無い人間のそれです
ルカリオの怒りと悔しさが、彼らに対する復讐へ届くのかどうか……。届いて欲しいですね……。

運営等の設定については大丈夫です、問題はありません。
観客たちに監視と審判を任せる、というのは実に考え込まれている発想だなと思いました!
運営側にメリットがありますし、この設定はモンスター側にも……。これはどうなることやら

616 ◆5omSWLaE/2:2013/07/21(日) 10:20:55 ID:cf5NZwvY0
一箇所だけちょっと指摘を……
飛行船がいるのは夕方の時間帯となっていますので、
時間帯表記を夜から夕方に修正しても宜しいですか?

617我ハココニ在リ   ◆TAEv0TJMEI:2013/07/21(日) 10:52:53 ID:Q6heSib20
>>616
確認しました
確かに夕方、と書かれていますね
こちらの読み込み不足でした
内容的にも問題ないので修正させて頂きます
また他の修正の方も完了しました

618 ◆5omSWLaE/2:2013/07/21(日) 11:51:28 ID:cf5NZwvY0
>>617
了解致しました、ありがとうございます。
予約分楽しみにしております。

619 ◆7NiTLrWgSs:2013/07/24(水) 14:58:15 ID:KSTlC1hE0
予約延長します

620 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/24(水) 19:13:55 ID:7GlqDDhQ0
すいませんが延長します

621 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/25(木) 08:06:48 ID:qHz/47yc0
プチヒーロー予約させて頂きます

622名無しさん:2013/07/25(木) 16:08:17 ID:uoFIwmHk0
予約が途切れない!
投下数多い方も新人さんもいてくれる恵まれたロワだな、ここ

623さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:58:38 ID:ZYlrLo1U0
投下します

624さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:58:58 ID:ZYlrLo1U0

翼があった。
どこまでも羽ばたけるような気がした。
だが、己の翼では足りなかった。

空ならばどこまでも飛べる、だが届かない。
本当に行きたい場所、パートナーの隣にはどうしても行けなかった。
どれほど翼をはためかせようとも、目に見えぬ人気という壁を超えることは出来なかった。

目の前の電気鼠はあっさりと壁の向こうへと行き、そして戻ってきた。
人気の壁は一方通行だ、向こう側からこちら側に来てしまえば二度と戻れない。

それでも、奴は戻ってきたのだ。

友と敵対する道を選んでまで俺が望んだものに一切の価値が無いとでもいうかのように、
奴はあっさりとそれを放り捨てて、俺と対峙した。

「――!! ――――!! 」

ピカチュウに対するエアドラモンの思いは、
嫉妬であり憎悪であり嫌悪であり劣等感であり絶望であり、そして羨望であった。

そうなりたくて、そうなれないから、エアドラモンは、ピカチュウが、憎くて、羨ましい。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

意識せず、エアドラモンは泣いていた。
なにもかもの感情が混ざり合って、どうしようもない。

「おまえは!おまえはああああああああああああああああああああ!!!」
「泣くなよ、うるさいな」

主にアニメによる影響で、ライチュウには鈍重なイメージがある。
それを裏付けるように、図鑑上ではライチュウの体重はピカチュウ時の5倍である。
だが、それは偏見である。
ピカチュウからライチュウの進化により、素早さ種族値は10増加する。

これがどういうことかわかるだろうか。

ピカチュウの速さはそれ以上に、体重の圧倒的増加。
速さの増加はパワーを生み出し、体重の増加は破壊力を生み出す、


「アイアンテール!!」
ホームランじみてふっとばされ、地面にたたきつけられたエアドラモンのグシャリという音が第二ラウンド開始のゴング代わりとなった。

625さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:59:12 ID:ZYlrLo1U0

「お前は、お前は…………」
虚ろな目でうわ言のようにお前を繰り返すのは、決してアイアンテールのダメージのせいではない。
反撃をしなければならない、目の前の人気者を殺さなければならない、
だが、もう目の前の電気鼠はもはや世界的人気者であったピカチュウではない、
その、ねぇ、あの、まぁ、人気が、ねぇ、いや、僕は好きですよ、僕は、のライチュウである。いや僕は好きですよ。抱き心地とかよさそうですし。
ライチュウになるということは、今の自分をエアドラモンを完全に否定するということである。
濁流のように押し寄せた感情を、エアドラモンは処理しきれない。
頭が鈍れば、体も鈍る。

「避けてくれ!エアドラモン!!」
ならば目の前に迫る電撃を避けることが出来たのは、鈍った頭に鋭く突き刺さる友の声のため。
当然であるが、ライチュウはアイアンテール後に追撃をしないということはない。
叩きつけられたエアドラモンにライチュウは電撃で追撃する。
それで戦闘は強制的に終了するはずだった。
ティラノモンは叫んだ、エアドラモンが反射的に攻撃を避ける。

「畜生……」
麻痺で体が動かないのでなければ、無理矢理にでもエアドラモンを抑えつけてでも止めたかった。
自分が殺されるかもしれない、ライチュウが殺されるかもしれない、
それでも、ティラノモンはエアドラモンを殺させたくない。
このままではアイツは、誰よりも愛されたかった目の前の親友が、誰からも唾棄される悪として終わってしまう。
もう、ライチュウは手加減をしないだろう。
だから叫んだ。
今、エアドラモンに声が届いた。
それでも、ティラノモンの言葉はエアドラモンに届かないのだろう。
涙が頬をつたい、地面に落ちる。

「動けよ!俺の体!!」
ただ、叫びだけがむなしく響き渡る。

「エアドラモン……」
伸ばした腕は何も掴めはしない。

「お前がライチュウを殺しても、嫌われて……それで終わりだ。
誰がお前のパートナーになるっていうんだよ!!」
「じゃあ、エアドラモンの俺を誰がパートナーにしてくれるっていうんだよ」

エアドラモンの体に再び、力が満ちる。
ライチュウとエアドラモンの視線が交差した。
エアドラモンはティラノモンを視界に入れない。
きっと、もう二度と。

それでも、ティラノモンは言いたかった。
「俺達二人でモリーを倒して、主役になるんだ、そしたら……そしたらきっと…………」
「もう、無理だ…………何もかも遅ぇんだよ」
今更、決心が鈍ったりはしない。
一匹殺して、後戻りは出来なくなった。
いや、例え戻れたとしても後戻りなんて出来ない。

「来いよ、ライチュウ……俺をバカにしやがって!!!!」
「お前が勝手に来たんだよ、何もかも置いて」

さて、人間が怖れを抱くほどの偉大な力を見せる天然現象のうち、最も身近に起こり最も代表的なものといえば、強風と雷鳴である。
風神雷神図を読者の方も一度はご覧になったことがあるだろう。
ならば、この光景に既視感を覚えるはずだ。

ここで戦うは、

 エアドラモン         ライチュウ
   風神     であり     雷神   である。

626さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:59:25 ID:ZYlrLo1U0


風が吹き荒れる。

「────ッ!!」
暴風域の中では何も聞こえない。
泣き言も恨み事も、何もかも風が運び去ってしまった。
誰もが立ちえない暴風の中、ライチュウだけは立っていた。

先程の攻撃は、飛行によって避けられた。
支配領域たる空すらも、既にエアドラモンを見放していた。

それでいい。
エアドラモンをやめるのだから、空はくれてやる。
なんだって、持っていけ。

積み重ねた物なぞ、全てくれてやる。
だから、未来をよこせ。

「────!!」
必殺技の名前は、風が掻き消した。
もはや、風の矢ではない。
マヒ針を媒介として風を纏わせた、乱舞する風の槍だ。
貫けない物は無い。

「バルバルバルバル!!」

ライチュウの唸りと共に周囲に展開された圧倒的電気熱量が、風の槍を蒸発させる。
風すらも斬り裂くのが雷であり、その雷を操るのがライチュウである。

この電磁結界によって発生した電気エネルギーは、一部分が運動エネルギーへと変化し、
ライチュウにロケットずつき相当の射出エネルギーを与える。

そしての電磁浮遊効果により、ライチュウは舞い上がる。

この必殺技の名前を!
コリンク系を空気にするために存在するこの必殺技を!
最後の切り札と呼ばれるこの必殺技を!
誰と知らず、こう呼んだ!!

「ボルテッカー!!!!!!」

ライチュウを中心とした球状の電磁結界、
動く要塞とも言うべきボルテッカーの突撃に、風ははじめから吹いていなかったかのように消滅する。
誰も、妨げることは出来ない。

その勢いのまま、ボルテッカーはエアドラモンへと向かう。

「だが、それがどうした!!」
風が止んだだのならば、また呼べばいい。
まだ、風は止んでいない。

「それで死ぬぐらいなら、俺は夢なんか見なかったんだよ!!」
暴風域が、エアドラモンを中心に再び展開される。
それは神造台風と言うに相応しいものだろう。

「────ッ!!」
風が吹き荒れる。

ボルテッカーと台風が対消滅を果たす。

「見下してるつもりか?わざわざライチュウなんかに進化してよぉ!!」
「ピカチュウなんて、あげられるなら熨斗つけて進呈したいくらいだよ」

「そっちこそ、勝手に羨ましがって……僕の気持ちもしらないくせにさ!」
「テメェこそ……そうだろうが!!」

無風地帯は一時の会話を生んだ。

「グルオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
だが、真の戦いはここからだ。

電磁浮遊状態にあるライチュウを、エアドラモンは噛み砕きに行く。
接近した、エアドラモンの顎にライチュウがアッパーを打ち込む。
エアドラモンは浮いた。

だが、そのアッパーすら回転力に変えてエアドラモンの尻尾がライチュウを吹き飛ばす。

地面に叩きつけられ、吐血したライチュウを、エアドラモンのマヒ針が更に追撃する。
ライチュウはそのままバック転で回避。

だが、マヒ針すらエアドラモンの陽動だった。
本目的はエアドラモンの巨体による突撃及び、

「ゴッドトルネードッ!!」
至近距離からの竜巻。

「でんこうせっ……」
だが、神速の脚ならばライチュウの攻撃を避けられないことはない。

「でんこう…………」
思い出せない。

ライチュウはピカチュウではない。
技は4つまでだ。


吹き飛ばされたライチュウが血反吐を吐きながら、宙を舞う。

627さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:59:37 ID:ZYlrLo1U0

「まだだーッ!」
宙を舞うライチュウの体に、エアドラモンの巨体が再び衝突する。
跳ね上げられたライチュウの体は再び浮き上がり、そしてエアドラモンが再びその体を浮き上げる。

「見ろーッ!ティラノモン!!もう俺は風を操るだけのエアドラモンでは無い!!」
「ゲェーッ!まるでライチュウの体が階段を登らせられておるようじゃーッ!」

                     フェイバリット
「           初披露なる 必殺技   ────ッ!!」

ライチュウの体をその牙に収めたエアドラモンが、回転しながらライチュウを大地へと叩きつける。

「スピニングバスターーーーーーーッ!!!」
「ガハッ…………」
ライチュウの体が、その場に崩れ落ちた。
最早、勝者が誰なのかなど尋ねる必要もない。
執念が、エアドラモンに勝利をもたらしたのだ。


「どうだ……ティラノモン、俺は……俺は勝ったんだ…………
「なんだよその必殺技は!?」

「ずっと、考えていたんだ……パートナーと冒険するには、格好いい必殺技が必要だからな」
その時、ティラノモンは察した。
これがエアドラモンに出来る数少ない現実への抵抗であるということを。
新たなる進化系統は生まれず、ただ自分の技を磨き続けることで人間に愛されようとしたことを。
エアドラモンはこの場に堕ちる前から、決して諦めてなどいなかったのだ。
この妄執にも似た努力……哀れエアドラモン!

「バカ野郎!!」
麻痺の効力が切れたその時、ティラノモンはエアドラモンにアッパーをぶちかます。
全体重を乗せたティラノモンの拳に巨体は軽やかに宙を舞い、エアドラモンは二、三回程回転した後に頭から大地へと落ちる。

「ティ……」
エアドラモンが起き上がろうとした刹那、ティラノモンの追撃!ウエスタンラリアットだ!
エアドラモン!再び吹き飛ぶ!!

「とうとう殺る気になったってこ……」
「違う……だろ……」
ボロ雑巾の様に痛めつけられてなおも、ライチュウは生きていた。
絞りだすように、一語一語ライチュウはエアドラモンに発していく。

「それでも……アイツは、お前を殺さずに止めようとしてるんだ……」
「な……ブホァ!!」
エアドラモンの下腹部に、ティラノモンの蹴りが食い込む!

「とてもそうには見え……」
ティラノモン!エアドラモンの尻尾を掴んで……
「ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
回転!回転!回転!回転!回転させていく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

エアドラモンの体が重力から解き放たれた!
ティラノモン必殺の……ジャイアントスイング!!
だが、もうエアドラモンは地に伏したりはしない。
風を使って衝撃を緩和、そして再び空へと舞い戻る。

ティラノモンがエアドラモンを見上げている。
エアドラモンがティラノモンを見下している。

「ティラノモン……」
「エアドラモン……」

「まだ……俺を止めるつもりか」
「ああ」

「もう、遅いって言ったよな」
「ああ」

「だけど……それは、お前の決めることじゃない。
ましてや僕の決めることじゃない。
そんなこと、誰だって決められないんだ!!
だから、エアドラモン…………
お前が何回拒絶したって、俺は手を差し伸べてやる!!」
ティラノモンの目が、エアドラモンを射抜いた。

「見下してるんじゃ……ねぇ…………」
「…………エアドラモン」

「見上げてんじゃねぇ!!!」

628さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 18:59:48 ID:ZYlrLo1U0


「畜生……」
見るな、と言いたかった。
声が出せなかった。

どいつもこいつも、俺のことを見下していた。
新しい進化ルートに辿り着けそうだっていうのに、目を合わせることすら出来なかった。

「俺が……」
間違っている、そんなことはわかっている。
だが、間違えでもしなければならなかった。
真っ直ぐに歩める道なんて、最初からありはしなかった。

「悪かったよ、ティラノモン」
地面に頭を擦り付け、エアドラモンが見せるのは謝罪の意。

「……ティラノモン」
「どうかしてたんだ、俺……」

その時、ティラノモンの体をスピニングニードルが射抜いた。

「もう、躊躇なんかしない」

アンブッシュ!いかなる生物も油断するドゲザ姿勢からのスピニングニードルだ!

「どんなに惨めを晒しても、勝って勝って、勝ち続けて、俺はパートナーを手に入れる。
誰にも相手にされないぐらいなら、世界中の人間に嫌われてでも、
誰か一人の目に焼きつくような強烈なインパクトを植えつけてやる」

風は止まない。

ゴッドトルネードによって吹き飛ばされたティラノモンが、
遠距離から、スピニングニードルを受け続ける。

「それでいいのかよ!!」
「いいわけないだろ!!だけど、それしかねぇんだ!!もう俺には……それしかねぇんだよ…………」

「やめろよ……自分でもわかってるんだろ、エアドラモン……」
「見るな、俺をそんな目で見るんじゃない…………」

何本もの風の槍を受けようとも倒れないティラノモンに、
血に塗れようとその瞳の輝きを濁らせないティラノモンに、
エアドラモンの精神は限界を迎えていた。

「やめろよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
先程までの攻撃には遠慮があった。
ティラノモンの死を願いながらも、実際に殺せる威力で撃とうとはしていなかった。
どこか奇跡を信じるように、エアドラモンは攻撃していた。

だが、このがむしゃらな攻撃はティラノモンを殺す。

スピニングニードル──
ライチュウがティラノモンの巨体を突き飛ばし、風の槍を身に受けた。

圧倒的な優位にありながら、エアドラモンは逃げ去った。
涙を流して、空へと飛び去っていった。

「────!!」
エアドラモンの嘆きは、風に吹かれて、消えた。

629さよなら ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 19:00:00 ID:ZYlrLo1U0


ハハッ、なにやってんだか……
消えゆく意識の中、ライチュウは独りごちる。
多分この会場の中で、誰よりも帰りたかったはずだった。
なのに、結果として、誰ともわからない奴を守って、こうして死のうとしている。

「────!!」
ティラノモンの叫びは、ライチュウには聞こえない。
風は止んだのに。

涙が、体に当たって生温い。
「────」
泣かなくてもいいよ、と言わなければならないが、声を出すのも億劫だった。

やれやれ、なんでわざわざ助けようと思ったんだろうか。
ああ、わかっているさ。
いつだって、仲間を護るのは僕の──

でも、駄目だ。

こんなところで安らかに死んでたまるか。

帰らなきゃ……

「ぼくは…………」
力を振り絞るかのように、ライチュウが立ち上がった。
よろよろと覚束ない足取りで、一歩、一歩、と進む。

「に…………」

目線は定まらない。
視界もぼやけている。
それでも、ライチュウの目にはハッキリといつか帰るところが映っていた。

「え…………」

──おかえりなさい
森が広がっている。
仲間たちがいつもと変わらない笑顔で待っていた。

──ただいま
お腹が空いてしまった。
きのみが食べ…………

「…………」

ピカチュウが故郷に戻ることは無かった。

【ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ 死亡】

【C-3/砂漠/一日目/夕方】
【エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、エネルギー消費(大)、狂乱
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:メガドラモンとかで良いから進化するために他の参加者を倒す
 1:────
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。
天使エンジェルをロードした影響で、マヒ針とディアを修得したようです。
他の影響は不明

【ティラノモン(元アグモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、全身に微細な切り傷
[装備]:なし
[所持]:
[思考・状況]
基本:主役に相応しくなるため、対主催として真っ当に戦う。
 1:エアドラモン……
 2:仲間を集めてモリーに立ち向かう。

[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。参加者のエアドラモンとは旧知の仲。
参戦時点では消耗してアグモンに退化していたが、どうやら何度進化してもティラノモン系列にしかなれないハズレ的存在だったらしい。
ティラノモン状態が基本のため、コンディションを整えればティラノモン系統のいずれかの完全体には進化可能(どの完全体への進化経験があるかは不明だが、少なくとも完全体になった経験はある模様)。
逆に消耗するとアグモンへ退化することもある。
長い不遇生活でやや卑屈だが、本質的にはお調子者な性格。

630 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 19:00:13 ID:ZYlrLo1U0
投下終了します

631名無しさん:2013/07/25(木) 20:16:15 ID:uoFIwmHk0
ライチュウウウウ!
わかっていた、前の引き的には負けそうだなとはわかってた
それでも、それでも、お前は確かにかっこよかった
こいつにはそれは勝算じゃないかもだけど、ライチュウとしてもかっこよかった!

632 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 21:16:21 ID:ZYlrLo1U0
ワームモンを予約します

633 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/25(木) 23:11:17 ID:ZYlrLo1U0
飛行船を追加で予約します

634 ◆5omSWLaE/2:2013/07/26(金) 14:08:46 ID:NAD6pafQ0
投下お疲れ様です
不遇キャラ同士の同じ土俵の戦い、その末にエアドラモンは改心……することは無かった
仲間を守るために人気を捨てた者と、友人を裏切ってまで人気を求める者
決して相容れないスタンス同士の対立だからこそ、己を魂をぶつけ合う覇気を読んでいて感じました
そして『人気キャラ』で無かったが故に、不意に突き付けられた「技は四つまで」という常識
ポケモンに詳しい人でもおそらくハッとするような驚くべき展開、その発想には私も衝撃を受けました……!
仲間想いの優しさを持っていたために脱落となったライチュウ、最後まできのみが食べられなかったのは悲しい事です
どんどん歪みが加速するエアドラモン、ライチュウの美しき生き様を最後まで見せ付けられてどんな気分でしょうか
そして裏切られても尚友人を救おうとするティラノモン、今後その想いが通じる時は来るのか……

635ごちそうさまでした  ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/27(土) 00:45:39 ID:rrIut/Ao0
飛行船部分は書けたのですが、
スティングモン部分と上手く絡ませることができませんでしたので、
飛行船の予約を破棄しスティングモン部分のみ、投下させて頂きます。

636ごちそうさまでした  ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/27(土) 00:45:51 ID:rrIut/Ao0

1時間程前、スティングモンは巨大な一つ目の怪物──すえきすえぞーの死体を発見した。
否が応にも目を引く死体中央に開いた穴は、達人の絶技による一撃を思わせた。
──クー・フーリンがやったのだろうか。
答えを求める気は無かったが、この華麗な傷口が先程出会った男による者だと想像することは難くなかった。

「さて……」
有機生命体であるモンスターを0と1に分解し、直接ロードすることは出来ない。
効率的ではないが、食事という形ですえきすえぞーの死体をスティングモンは取り込んだ。
「不味い」
味に関して贅沢は言うつもりはなかったが、思いがけず手の込んだ料理を喰らった舌は思いの外肥えていたようだ。
先程食べた肉料理の味をもう懐かしく感じてしまう。
調理者をロードしたのならば、自分でもあの料理を作れるのだろうか。
我ながら下らない冗談だ。
スティングモンはそう言って心の中で自嘲する。

「料理は何を食べるかではなく誰と食べるかだ」
ロザリーの作った料理はお世辞にも褒められたものではなかったが、温かかった。
世界中のどんな料理も、あの粗末な食卓で取った料理には叶いやしない。
そして、もう二度と食べられはしない。
もう、あの肉料理もこの死体も何も変わりはしない。
ロザリー以外の全ては平等に価値など無い。

それから1時間程歩き、スティングモンは石像のような死体と中央に一つ目を持ったヒトデのような死体を発見した。
やることは何も変わりはしない。
だが、石像に関しては食うこともロードも出来ないので後に回す。
ヒトデの方は幸いにも、性質が先程のクー・フーリンに似通っていたため問題なくロードすることが出来た。

「…………」
そして再び現れた苦痛。
爪の先から炎が入り込んで全身をのたうち回るかのような痛み。
燃えるように熱い、体の中が溶けているように感じられる、炎が獣の形を取って肉を食い破り、体外へと出んとする。
問題はない、想定していた痛みだ。

二度も同じ苦しみに悩んだりはしない。

深く息を吸い込み、吐く。
真正面を見据える。
痛みは消えない、だが無様な姿を見せてやる気はない。

目に緑の光が宿った。

進化にはまだ、足りない。
だが、地獄への道は問題なく進んでいる。

637ごちそうさまでした  ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/27(土) 00:46:09 ID:rrIut/Ao0

することもなく歩けば取り留めの無い考えがいくつも頭に浮かぶ。
少なくとも、新たな敵のいない今は思考に身を委ねる余裕程度はあった。

──クー・フーリンの死に、逃した二匹は哀しむものだろうか。

本当に、心の底からどうでもいいことだとスティングモンは思っている。
だが、どうしようもないほどに暇だからとはいえ、そのようなことを考えてしまう。
もう、スティングモンが死のうとも誰も哀しむものはいない。

世界にたったふたりぼっちで、もうひとりぼっちになってしまった。

ロザリーは、己の死を哀しんでくれる私がいて、少しは救われたのだろうか。
いや、私を残して死ぬことが哀しかったのかもしれない。
でも、それは独りじゃない。
嬉しくても、悲しくても、きっと寂しいことじゃない。

私には誰もいない。
誰も要らない。

だとすれば、何なのだろうか。
この胸に穴が開いたような空虚な感覚は。

「ロザリーは言っていた、料理は何を食べるかではなく誰と食べるかが大切なんだと……」
気がつけば、己がロードした者に似せて独り言を呟いていた。

そうか、あの食事は久方振りに誰かと一緒に摂った食事だったのか。

「また、独りぼっちだな……私は」

もう、二度とあのような休息は訪れない。
もう、誰かと一緒に食事を摂ることはない。

「それでいい」
吐き捨てるように、呟く。

ロザリーにもう一度会えるなら、それでいい。
握り締めることの出来なかった手を握り締めることが出来るなら、それでいい。
もう一度、会いたい。


揺れた心は、鉄の意志で再び動きを止める。

「救われるべきは、私ではなく……君なんだ」
まもなく太陽が沈む。
そして月が昇る。

【E-4/山/一日目/夕方】

【ワームモン(スティングモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(中)、データに異常
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)、メタルキングの槍
[思考・状況]
基本:地獄へ征くその日まで、殺し続ける

[備考]
オス。一人称は私。
クーフーリン、デカラビアをロードしました。
すえきすえぞーを食しました。
それにより強化され進化しかけましたが、イレギュラーな力を得ていたためデータが異常を起こしました。
全身の緑色の部分が銀色に変色しています。
瞳が緑色に変色しました。

638ごちそうさまでした  ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/27(土) 00:47:35 ID:rrIut/Ao0
投下終了します
ガブモンを予約します

639名無しさん:2013/07/27(土) 01:35:32 ID:bkmS9BsQ0
飛行船は了解しました
投下お疲れ様です!
最後の言葉がズシンと来た
もうそれまでも合わせてほんとにこいつ、ロザリー想ってるんだなって……

しかし何気に、進化の秘法にロードと、こいつもアリスとは別の意味で底知れぬ怖い存在だな…・・

640 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:10:01 ID:ZEyRArIs0
命はとても重いものです
でもあっさりと命が終わる時もあるんです
だから人生って魅力的だと思うしロワもそうかもしれませんね

投下します

641意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:11:11 ID:ZEyRArIs0


この世に正解なんて無い。


この世に間違いなんて無い。


でも物事には正と解を付け無くてはならない。


その時に必ず正しい――正義の答えが選ばれるとは限らない。


世界を生き抜くには時に身を闇に任せる必要がある。


それが性、それが人生。


己の道を夜の流れに身を任せる。


そんなの弱者の考えホ。


いや弱者とか強者とかどうでもいいホ。


俺は俺でしか無いヒホ。


ならやりたい事をやるってのが――。




「鉄拳制裁――ヒーホエンド!!」




「勝手にエンドってんじゃねぇ!!」




ぶつかる拳から生まれる衝撃は言葉なんかじゃ説明できない。
親から聞いた、ニュースで見た、友人の友人の話……どれも客観的に感じるだけで己の心は躍動しない。
外野の言うこと何て気にするな。
戦っているのは俺達だけ――土足で世界に踏み込み言葉だけを吐く輩が何を言うのか。
これが世界、己の人生だ。

本人が思っていることを外野が知る術など無い。

何も知らずに語るな。

故にこの勝負――本人達にしか勝敗は分からないだろう――。




642意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:13:03 ID:ZEyRArIs0


きあいパンチと鉄拳制裁。
その威力共に申し分ない高威力の技である。
大きな力と大きな力のぶつかり合いはきっと天高く、遥か遠くの彼方、深き水底にも轟いているだろう。

故にその源である二人に負担される衝撃は想像も付かないだろう。

衝撃を上手く流し後退する体を整え相手の居場所を把握する。
その距離は飛べば一瞬で詰まる程の些細な距離であり十分に射程範囲。
ならばどうする?何が最善だ?彼奴に効く技は何だ?考えるよりも先に体が動いた。


「ヒホッ!?」


一瞬で距離を詰めるキノガッサの拳が目前に迫る。
己の気を瞬時に爆発させるマッハパンチの速度は常人では目で追う事も不可能である。
どんなに強力な一撃を放つ怪物が相手だろうが先に潰せば何の問題もない。
しかし躱せば戦いは振り出しに戻る訳でありジャックフロストが拳に当る必要も存在しない。
顔を捻りマッハパンチを避けつつ足を払いキノガッサの体制を崩す。
倒れそうになるキノガッサの腹に拳を撃ちこむもその拳は手で抑えられる。

拳を握る腕に力を込め自分の方が強い事を証明するキノガッサ。
だがジャックフロストも負けることなく拳は徐々に目標に近づく。
元々体制が崩れていたキノガッサは前方に倒れる勢いを利用しジャックフロストの横を駆け抜ける。
ジャックフロストが振り向くとそこにキノガッサはいない――上だ。

高さと重力を利用した蹴りの破壊力は説明する必要もない。
鋭利な風の音を立て豪快に大地を削るキノガッサ。
削れた大地が岩となり標的に降り注ぐ。


「人力岩雪崩……ってとこかい?ってな!」


「ホアー!アーッ!!イヤー!!!」


襲いかかる大量の岩に黙っているほど柔な男ではない――氷のように冷静で炎のように熱く。
邪魔するモンは拳で打ち砕けば何の問題もない。
拳で足りないなら頭でも足でも利用して破壊すれば全ては振り出しに戻る。
細かく砕かれた岩は始まりの場所へ――キノガッサに対し牙を剥く。

弾幕を掻い潜り連撃後のジャックフロストを狙いその足にローキック。

宙を舞うジャックフロストだがその瞳はキノガッサを逃さない。
体が回転する際そのままキノガッサの顎を蹴り飛ばし追撃を許さない。
今度はこちらの番である、揺らぐキノガッサの腹に今度こそ拳を叩きこむ。

643意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:14:01 ID:ZEyRArIs0


「これが『拳』だホッ!!」


「うぐッ!?」


痛烈な一撃に顔を歪ませるキノガッサ。
この衝撃に体は崩れ片膝を大地に突き刺す。
胃の中の物が込み上げてくるが吐き出す時ではない、甘えるな。
あの時代を思い出せ、あの人は何を教えてくれた――いやあたしは何を学んだ?

……そんな事は考えるな感じろ、それよりもだ。


「見下してんじゃねええええええええええ!!!!」


許せない。
今の攻撃は何だ。
嗚呼許せない許せない許せない。
何故普通の拳で攻撃を、冷気の一撃を放たなかったのか。
あの見た目なら十中八九冷気を纏う種族であることは一目瞭然絶対不可避。
氷技を切っていることなど有り得ない――この局面で手を抜くことを絶対に許してはいけない。
拳と拳、意志と意志、己と己を競い合うこの場に置いて手加減など情けではない。

それは相手への侮辱行為だ。

しかし男ジャックフロスト、その拳に手加減など存在しない。
答えは明白、氷技を切っている――キノガッサに合わせればこの回答が正しいだろう。
この自慢の拳は取り繕わなくても強い、そう強いのだ。


「見下してないホ。勝手な予測は恥ずかしいホ」

「だろうね……その拳を受ければ分かる……でも納得がいかないのさ」

「ならどうするホ?」

「顔がニヤついている……分かってんだろヒーホー野郎」


気合を込めるキノガッサ。


ジャックフロストは気合を込める。


その気迫――武神の領域。


「あたしの――あの人の拳が勝つ事を証明すればいい」


「その答えは正解だホ――だがその先に辿り着くとは限らない」


そして互いの思いが交差する――。




644意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:14:50 ID:ZEyRArIs0


夢を追い続けるのは素晴らしいことだ。


夢がないのは駄目なことでない。


目の前の事を一つ一つ片付けるのも人生。


だったら人生は何をしたって誰も咎めはしないさ。


その拳は何を背負っているんだい?







645意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:17:33 ID:ZEyRArIs0


落ちる太陽により夕暮れに染まる殺し合いの大地。
幾多の命が沈むように太陽もまた沈み始める。
削れた大地、荒れた岩、地に置いてある学ラン。
黄昏に焦がれる大地に仰向けで寝転がる二つの存在。
どれくらい倒れていただろか――時はそれ程経ってはいない。
しかし体に残る疲労は一日の量を遥かに凌駕していた。


「さて――そろそろ終わりにするホ」


ゆっくりと体を起き上がらせるジャックフロスト。


「何で戦ってるか分かんないけど――このままじゃ不完全燃焼なんだよ、そうなんだよ」


出会いは何だったのか――そんな事はどうでもいい。
心に闇が残ったまま果てるのは勘弁だ、だから最後までやらせろ。


「そのほうしは効かないホ……」


「やっぱりね――まさかとは思うけどアンタみたいな奴がいるとはね」


小細工は不要――故に此処から先は単純な


「喧嘩をするホ!!ヤー!!」


跳びかかるジャックフロストの一撃はとても隙だらけなモーション。
しかしキノガッサは避けない、避けれない。
それ程までに疲労が残っている。

「ガァ!!」

そのまま倒れこみマウンドポジションを取るジャックフロスト。
アイスカラテの剛拳がキノガッサに襲いかかるがそれは未遂。

「そう言えば木の実ありがとう……コイツは『恩返し』だよ!!」

口を開きタネを飛ばすキノガッサ。
口に詰められた木の実のタネを何粒も打ち込むタネマシンガンを至近距離で発射する。
勝つなら何でも利用する、言い訳なんて勝負の世界に存在しない。

「ヒ、ホホホホホホ!!!!」

何発も顔面に叩きこまれあまりの痛みに大地を転がるジャックフロスト。
追撃しようと堪える体に鞭を振るい起き上がるキノガッサ。
マッハと呼べるほど速くはないが一歩踏み込んだ拳を放つ。

「なら黙って貰ってろ!返す必要はないホ!!」

眉間にタネを全力で飛ばすジャックフロスト。
そのタネはキノガッサの眉間に直撃し仰け反らせるには十分すぎる一撃。
おまけに何が起きたか分からないが冷気を纏い更に追い打ちを駆けていた。

そのまま距離を詰め一発ぶん殴る。
キノガッサは体を再度仰け反らせるが怯まない。
逆に拳を叩きこむもジャックフロストに捕まる。
しかしローキックを放ち体制を崩し尻尾で掴んだ岩をそのまま叩きつける。
尖った岩の一撃はジャックフロストの腹を削りとり鮮血が大地をなぞる。

悲痛の叫びを挙げるジャックフロストだが大地には倒れない。
傷口を手で塞ぎ冷気で止血などする筈がない。
血を掬い取った腕を振るいキノガッサの眼を潰す。
鮮血に染められたキノガッサの視界は夕暮れも重なり紅蓮に染まる。

体当たりでキノガッサを突き飛ばす。
追撃しようにも勢いで自分も倒れてしまい未遂に終わる。
キノガッサが立ち上がる時とジャックフロストが立ち上がる時は同一。


そして呼吸を整える時も同一。


「男なら何度でも立ち上がって拳を振るうホ」
その拳、全てを砕く万魔の一撃。


「女だって黙って見てるだけじゃない――動く時だってあるさ」
その拳、背負う物は一つではない。






646意志の凱旋 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:19:30 ID:ZEyRArIs0


拳に気合を込める。

気合だけじゃない。
力を。
意志を。
夢を。
全てを込めて撃ちぬくだけ。

己という存在が確立出来ずに不安に悩まされる時がある。
そんな時は黙って周りに頼れ。
そんな時は同一の存在に己が満足するまでぶつかり合えばいい。
真の強さとは孤独ではない。

真の強さとは何か――それは己の拳に聞け。
故にこの先の結果など些細な記号でしかなく勝敗に意味など存在しない。
在るとすれば戦いがあったと言う証に過ぎない。

木の実を頬張り気休め程度に回復する。
学ランを再度纏い体勢を整える。
体に付いた血に不快感を表しながらもその顔は満足している。

拳を突き出し拳と拳を合わせ意志を通わせる。

『これより我らは互いに拳を交えた盟友となる』

夕暮れに重なる二つの影が交差し大地に深いバツ印を刻み込む。

ならば語るに笑止。
それは背中が語る――『こっちは任せろ』と。



故にこの殺し合いに反逆する意志が動き出す――





【D-4南西/森林/一日目/夕方】
【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、流血、覚悟
[装備]:GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る


[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。
精神異常無効、身体状態異常無効、テトラジャ、デクンダ、タルカジャ、気合、鉄拳制裁、万魔の一撃。
純粋に最高の状態で殴りあう事に特化したビルド。
いろんなシリーズのが混ざり合ってる?
いやだってこいつ皆勤みたいなものだし、そりゃ色んなシリーズに呼び出されてるさ。


E-6でターミナルルームらしき部屋を発見しました。
目印としてオレンのみを起きました。


D-7洞窟がD-4まで開通しました。
そのことによる山部分などへの影響は不明です。


D-4の大地は荒れました。


【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)流血、、覚悟
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:心と拳を磨き続ける


[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」。
技はきあいパンチ、マッハパンチ、ローキック、きのこほうし。

647 ◆7Ju4MZPjio:2013/07/27(土) 02:24:04 ID:ZEyRArIs0
投下終了します

648名無しさん:2013/07/27(土) 11:18:49 ID:bkmS9BsQ0
投下乙!
全編かっこいいんだけど、文字通り“拳を交えた”最後の描写が印象的だ!
いいな、こいつら、いいなー

649名無しさん:2013/07/27(土) 11:42:35 ID:Ij7N3zGo0
投下乙です!
殺し合いという陰鬱さを吹き飛ばす全力全開の熱いバトル…観客よ、これが本当の闘いだ…!
番町と姉御の殴り込みコンビはこれからも大暴れしてくれそう!

650 ◆5omSWLaE/2:2013/07/27(土) 13:34:58 ID:MKaO4COc0
お二方投下お疲れ様です

>ごちそうさまでした
二体の魔物を取り込んで、さらに姿を変えていくシャドームーン
それは高みへと昇っているのか、異形へと堕ちているのか……
冷徹な彼の見せた、食事へ、ロザリーへの思い入れ
それもやがて失ってしまうのだろうか、そう考えると寂しさを覚えます

>意志の凱旋
出せる技の全てを、使える戦法の全てを尽くした全身全霊の殴り合い
拳と拳を交えることで見つけられる正解がある
難しいことを考えずにただ殴り合い、答えを見つけていく様は実に心が震えました
心満たされた彼らは殺し合いへ反旗を翻す。重症負ってるけど、大した問題では無さそうに思えますね……!

651 ◆TAEv0TJMEI:2013/07/27(土) 18:10:52 ID:bkmS9BsQ0
延長申請します

652 ◆7NiTLrWgSs:2013/07/27(土) 23:06:48 ID:tAzSVodU0
間に合いそうに無いので破棄させていただきます。すみません

653 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:20:47 ID:1S4AOon20
投下いたします。

654ありがとう ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:21:21 ID:1S4AOon20
大空を自由に飛ぶ夢を見た。
それはついさっき体験したばかりの夢だ。
勿論流れる映像も、ついさっきのもの。
もう二度と戻れないけれど、確かに存在した時間の記憶。

高い山に登ることでは見られない、それこそ鳥にでもならねば至れない群青だけの世界。
色のない風も空を溶けこませているようで、頬に胸に体に、触れる風から青色を抱きしめる。
空は何処まで続くのか、高さは果てしないのか、知り得ない情報の一端に触れて否が応にも心が騒ぐ。

最初は緊張していた。
恐ろしい相手からなんとか逃げ切って、追いかけられるんじゃないかと怯えて。
でも長いこと、四方が自由な場所に居ると、そんな気持ちにも羽が生えてふわふわと軽くなる。

「フリスビーみたいにできるかは不安だったけどやってみるもんだなー」
ぼんやりとしていた僕の思いに滑りこむ声。
そうだ、これは夢だから。
「これもガー太郎……あ、ガーディのニックネームなんだけどよ」
ダッサイよなあ、絶望的にセンスを疑う。
呆れたように目を細めて、しかしすぐに口角を上げて。
「でも、いい名前なんだよなあ、あのご主人サマがつけたーって感じで」
その……人間なんだろうな、のことが大好きだと言わんばかりにしきりに納得しているジュペッタ。
僕は人間が好きじゃなかった、こんな殺し合いの場に招いたのも人間だし、もっと遡れば。
けどこんな顔で言われたら、何か酷いことを言える気持ちにはなれない。
「もしかしてジュペッタも……」
「な、ないない、俺はただのジュペッタだから、うん」
あるんだろうなあ……彼曰く飛びきりダサいのが。
「モンスターマスターって職業の人間がいるって聞いたけど、ご主人サマってそれなの?」
魔物を従え戦う者。
本当に噂でしか聞いたことがない存在だが。
「モンスターマスター?なにそれかっこいいな!ご主人サマはトレーナーだけど」
ふうんと腕を組んで、思案する。
「よし決めた、帰ったらご主人サマのことマスターって呼ぼう」
ダサさが半減するかもしれない、名案だとばかりにグッと拳を握った。
他愛もない話で、でも嫌じゃなかった。
嫌いな人間でも、ジュペッタが言うなら会ってみたくなる。

655ありがとう ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:21:56 ID:1S4AOon20
「っはーー……しかし全く、いつまで飛ぶのかね、この靴さんはよ」
焦れた様子で、辺りを落ち着きなくきょろきょろと見回すジュペッタ。
「でも、安全だと思うよ?」

少しずつでも変わりたいと願った。
しかし、当てるでもなく詠唱した呪文に震える指先、心。
僕には、勇気が足りなかった。

だからこの空の旅は僅かな、逃避の時間にも思えたんだ。
殺し合いという嫌なことからも、命を奪う敵からも、そのために変わらなくちゃいけない事実からも。
「まあなあ、このまま家に帰れたらそれこそ万々歳なんだが……」
楽天的だと自負するジュペッタも、不安そうにため息をつく。
「呪い、ってやつ?俺それなりに専門家だからさあ……あるんだろうなーってのがすげえ分かって」
胸に手を当て、遠くを見る。
僕も真似するけど、さっぱりわからなかった。
「僕が知ってる呪いは、装備品が外れなくなるのくらいかなあ」
それなら、シャナクや神父様のお祈りで解除ができる。
命を奪う呪いとは、やはり違うだろうけど。
「それとは違うんだよなー、なんだろね、この喉奥にコイキングの骨格もろとも引っかかったようないやあな感じ……」
分かりそうで分からない。
そう言いたいのだろうか、コイキングってなんだろう。

それを尋ねるのもなんだか見当違いな気がして、僕は言葉を止める。
聞いておけばよかったな、もっとたくさん、話しておけばよかったな。
僕の意識は風に溶け込んでいた。
夢で動く僕とは別に、それを静観していた。
風の音が吹き抜ける程度、途切れた会話。
そのまま黙っていれば、ジュペッタがきっとまた全然関係ない話をしてくれていたはずだ。
けれど僕は、僕の中の少しの勇気は、口を開かせる。
「ねえ、ジュペッタ」
「どしたよ」
逃げていても終わりがやってくる。
その終わりが、いいものであるようにと願うのは、当然だ。
「相談、したいことがあるんだ」
砂粒一欠片ほどの勇気を使って、僕は変わるために、自分のことを話す。
どう変わればいいか皆目見当がつかないから。

勇者として生まれてきた自分のこと。
誰かを傷つけるのが怖いこと。
回復魔法すら他者に向けられないこと。
仲魔……仲魔を死なせてしまったこと。

「そっかあ……」
うーんと唸る声。
僕は、風を吸い込んで頷く。
初めてこんなに長いこと、自分の気持を言葉にして喋ったような気がする。
「あの……シャドームーンじゃないけどさ、僕も変わりたいんだ」

656ありがとう ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:23:28 ID:1S4AOon20
傷ついた魔物を見て、戦いを経て、僕はこのままじゃいけないと改めて思った。
誰かに傷ついてほしくない、死にたくない、今更当たり前の感情が心の底から沸き上がってきて。
臆病な気持ちに押しつぶされそうでも、なんとか持ち上げる。
「あんだけすげーかみなりを持ってるのになんで……とは思ってたがよ」
「ごめんね、あのキノコの魔物に回復魔法が使えればよかったんだけど」
そうすれば、あの時にシャドームーンに会うこともなかったんだろうな。

「自分や、ジュペッタ……それだけじゃない、もっとたくさんの魔物に傷ついてほしくない」
「だけど、ここにはシャドームーンみたいに戦いが好きな魔物もたくさんいる」
こんな意気地なしが抱くには、だいそれた願いなんだろう。
答えが見えてこないのがその証拠だ。
「僕はどうしたら、変われるんだろう」

「ま、今は沢山悩むといいさ」
ジュペッタの軽い返事に、僕は目を丸くする。
「悩むって……それだけでいいの?」
「いや、良い訳はないけども」
空中の姿勢に慣れてきたのか、ジュペッタはリラックスした体勢で。
「どう考えたってすぐに出る答えじゃねえだろ?ま、安心しとけって、
 お前が答え出せるまではこの強くて格好良くて頭がいいジュペッタ様がなんとかしてやるからよ」
なんとかなるさ、とケラケラ笑うジュペッタに、僕は自分でもびっくりするぐらいの声で怒鳴る。
「ジュペッタ!僕は、僕は……!」

「俺だって嫌だよ、アイドルが怪我させるとか、まして殺すなんて最悪だわ」
怒鳴るのを想定したように、静かに入り込んだ言葉に、僕は面食らう。
考えればそうだ、誰かを傷つけるのが好きじゃないのが、僕だけではないなんてこと。

「ちょいとやりすぎた感あるけども、まあアレはああでもしねーと退かなかっただろうし」
言葉を濁しつつ、水鏡の盾に残る体液の跡を見やる。

「プチヒーローは当てられなくたって、強い技が出せるんだろ?」 
木をなぎ倒して目眩まししたように、傷つけ戦えずともできることはあるとジュペッタは言う。
「それに変わりたいとか、強くなりたいって思えるのはそれだけでもすごいことなんだぜ?」

「ずっこい手段かもしれないけどよ、逃げて、生きて、悩んで、そんでプチヒーローなりの答えを探そうぜ」
自分で時間が有限だと、ことが早急だと決め付ける必要はどこにもないと、笑っていた。
「どうして」
どうして、僕をそこまで信じてくれるのか。
ジュペッタの言い分は、いつか僕が強く変われると、胸を張って言えるのなら成り立つ。
「いやーやっぱり、決められただの生まれだの関係なしにプチヒーローは凄いやつなんだって」

「強くて格好良くてオマケに優しい、うんうん、俺の次ぐらいにはイカしてるよ、プチヒーロー」

優しさと臆病は表裏だと、僕は思っていた。
ジュペッタは違うと断言する。
「自分を好きになればいいんだよ、いいとこも悪いとこもひっくるめて、自分を好きになるのさ」
いつも、期待はずれだと、勇者のくせにと、どうして勇者になれないのかと、そう言われてばかりだった。
じゃあ僕は、僕は自分のことをどう感じていたんだろう。
好きなのか、嫌いなのか。

「変わりたいって言うならさ」
向かい風が追い風に変わる。
「プチヒーローは何になりたい?」
変わりたい、何に、強い自分に。
強い自分とは何か、それは勇者、みんなが理想にする勇者。
僕は、みんなが理想にする勇者になりたいんだろうか、違う気がする。
「分からないや……」
「そんじゃあまずはそれを考えようぜ」
僕は、この笑顔をよく覚えている。
何にもなれない僕を、何かになれると言外に示してくれた笑顔を。

あの時は、何も言えなくて、うつむくだけだった。

風が、時間が、僕を遮る。
ここに僕は居ない、だけど、だけど伝えたい。
ありがとうと。
あの時に言うべきだった言葉を、とびきりの笑顔で。

657ありがとう ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:24:10 ID:1S4AOon20
赤い光が瞼の裏を刺す。
ゆっくりと、理解しながら、僕は目を開き起き上がった。
夕焼け空は、過ぎてしまった世界をありありと伝えて僕の周りに広がっている。
夜の闇が降りてくれば、思い出も塗りつぶされそうな不安が襲ってくるだろう。
だけど僕の胸の、大事な勇気は記憶を思いを照らしてくれる。

自分のものではない体に宿る記憶と、自分の記憶を重ねて。
戦いの跡地に横たわる、立ちはだかった魔物。
彼はジュペッタを殺し、僕を殺した恐ろしい敵だった。

でも、声が聞こえていた。
僕達を称賛する声が。
恨む気になれない程に、彼の最期は潔かったのだろう。
鮮明な記憶に残っていなくとも、その死に顔を見れば思うものがある。

だから、傍に落ちていた剣を拾い上げて彼の、ギルガメッシュの遺体の前に突き立てる。
夕日に一筋の陽炎を落とす剣。
戦いに生きて、剣に生きた魔物の墓標にこれほどふさわしいものはない。

ギルガメッシュのように強く好戦的な魔物と対峙することがまたあるだろう。
例えばシャドームーン。
彼らと、どう向き合うべきなのか。
すぐに答えは出ないが、見つかるまで戦うことが今はできる。

からん。
背後から聞こえた音に振り返ると、剣が倒れていた。
深く差し込んだはずなのに、そう訝しんで拾い上げる。

「いらないの?」
この剣の使い手の声がした。
『冥府への道連れにするより、良き使い手に振るわれることを剣は望むだろう』
思い込み、空耳かもしれない。
それでも僕は、この剣を、ギルガメッシュの心を連れて行きたくなった。

「一緒に行こうか」
炎の化身の剣に話しかける。
手に馴染んだ剣は、応と返事をするようで。
握りしめたぬいぐるみの手は、友達のもので。

僕たちは、自分の影に寄り添って走りだす。
誰かに勇気を与えるために、守るために、戦うために。



【G-6/草原/一日目/夕方】

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(大)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生?
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。

658 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/28(日) 08:24:30 ID:1S4AOon20
投下終了いたします。

659 ◆5omSWLaE/2:2013/07/28(日) 10:43:41 ID:/QQfXXfk0
投下お疲れ様です
プチヒーローの追想。あの時言いそびれたその言葉は、きっと彼に伝わっていると思います
ジュペッタはいなくなってしまったけれど、彼の言葉はまだ心の支えとなって残っている……最後までいいやつだなぁ
この暖かなやり取りの後に、あの戦いが繰り広げられたと思うと心苦しくなりますね……
そして勇者は二人の心と共に戦場へと向かう、どうかたくさんの者を救うことが出来ればいいなと願っております

660名無しさん:2013/07/28(日) 12:28:15 ID:PdA0yqqE0
あかん、回想が素敵すぎてジェペッタが死んじゃったことがもう一度悲しくなった……
プチヒーローは友と強敵の心と力を抱いてここから先も歩んでいくんだね

661名無しさん:2013/07/28(日) 14:03:58 ID:EQStKuwM0
ここのロワのポケモン達は皆格好いいなぁ
プチヒーローの今後の活躍に期待

662 ◆/wOAw.sZ6U:2013/07/30(火) 05:11:21 ID:gkYHtPA.0
チャッキー、キングスライム、モルボル予約させて頂きます

663勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:05:43 ID:1/g7dfBQ0
すみません、遅れました。投下します

664勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:06:55 ID:1/g7dfBQ0
――これは聖獣の物語ではない。



「いやぁ、やっぱ男なんてちょろいわ〜! ちょろあまだわ〜!」

マンイーターは調子に乗っていました。
自らの手の内を知っており、もっぱらの脅威だったギリメカラ。
彼を出し抜けたことが嬉しくて貯まらないと嘲笑い続けていました。

「褒めてくれるよね、迎えてくれるよね、ブリーダーさん、ブリーダーさん」

ハムライガーは盲目でした。
心壊された彼には、最早ブリーダーのことしか見えていなくて。
目の前の敵に手を抜かれていることも知らずに、自身が優勢だと勘違いしていました。


ああ、なんて愚かなことなのでしょう。
きっとこの光景を見たなら、神にも悪魔にも立ち向かったただの人間は顔をしかめたことでしょう。
アンタら、そいつを舐めすぎてるぜ、と。
ギリメカラのサマナーだけではありません。
神魔をぶん殴るジャックフロストのサマナーも、ジャックフロスト自身も、その意見に同意したでしょう。
いえ、ある程度の実力のあるサマナーや悪魔使いなら、誰しもが口を揃えて忠告したはずです。
最も油断のならない悪魔、それがギリメカラだと。

彼は多くのサマナーたちにとって恐怖の対象でした。
歴戦のサマナーたちでさえ、いいえ、歴戦のサマナーたちだからこそ、彼の存在をトラウマとして心に刻んでいます。
どれだけレベルが上がろうとも、どれだけ強力な悪魔と契約を結ぼうとも。
彼らの中ではギリメカラが畏怖すべき存在であることには代わりません。
そういう意味ではギリメカラは、正しく、“悪魔”なのでしょう。
悪しき存在であり、邪神として崇められることもあるほどの超越者。
契約すれば心強いが、生半可に手を出せば身を滅ぼす力の具現。

そうです、彼は悪魔なのです。
どれだけ理性的でも、どれだけ頼り甲斐があろうとも。
彼は生来の悪魔であり、中道とはいえ悪魔の中でも特に破滅的なDARK属性の悪魔なのです。
そんな悪魔を、あろうことか、彼と彼女は敵に回してしまいました。
攻撃を躱していく中で、ギリメカラはハムライガーのことを見極めたのでしょう。
ハムライガーは丈夫さ・ライフと引き換えに攻撃を当てる力に優れており、ライガーにしては力もあります。
ガッツの回復速度も速く気合い溜めの如くガッツを最大までためて技の威力と命中率を上げ、ラッシュを仕掛けてきます。
その上このライガーはブリーダーによく育てられており、何度も大会に出て相当な人気を誇っています。
クリティカルだって中々の確率で出せるのです。
脆いけど早い上に高火力――つまりこのハムライガーは、ギリメカラにとって“最高に相性のいい相手”なのです。
ハムライガーの牙が一度でもギリメカラに触れたが最後。
反射によってハムライガーは致命傷を負うことでしょう。
ハムライガーは遠距離攻撃として冷気だって操れはします。
しかしギリメカラの性質も強さも知らず、己の有利と過信したハムライガーが、わざわざ逃げられるリスクを犯してまで距離をとることはありません。
ひどい、酷いデジャビュでした。
幼き獣が狂う原因になった戦いの一幕の再現。
悪夢に囚われ、虚無をたたえ、ギリメカラに襲いかかる一匹のモンスター。
変わって欲しくなかったと涙したモンスターの変わり果てた姿。
帰る所を失い、みんなの恨みを抱かえ、人間を憎悪したモンスターは死にました。
人間を愛し、帰る所のために、みんなを殺すモンスターが生まれました。
悲劇は、連鎖するのです。
でも、それもここで打ち止めです。
だってここには、もうハムライガーを止めてくれる優しい誰かはいないのです。
いるのはただ一匹の悪魔だけなのです。

665勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:07:49 ID:1/g7dfBQ0
「すまない……」

ギリメカラは謝りました。
ハムライガーの目に映る深い絶望。
その正体が分からないながらも、彼にも理解できることがありました。
それは自分ではハムライガーを救えないということでした。
同じ虚無の瞳でも、トンベリの目にはハムライガーが映っていました。
過去に囚われ、憎しみに呑まれながらも、彼女は今を見ていたのです。
ですが、ハムライガーの瞳には、ブリーダーしか映っていません。
悪夢に侵された彼は現実を見ず、血まみれの未来の為に、涙しながらも歓喜に溺れて殺すのです。
褒めてくれるよ、喜んでくれるよね、ブリーダーさん、ブリーダーさん……。
ギリメカラはそんなハムライガーを哀れには思います。かわいそうだとも感じます。
けれど彼は悪魔です。邪悪なる鬼なのです。
誰かに感化されようとも、誰かを気に入ることがあっても、誰かを愛することはできません。救うこともできません。
そのことを痛感してしまったから、そのことを理解してしまったから。

「すまない……」

ギリメカラは謝ります。
トンベリに謝ります。ハムライガーに謝ります。知りもしないブリーダーとやらに謝ります。

「恨みたければ恨むがよい」

このまま戦い続ければ、いつか、ギリメカラはハムライガーの命を奪ってしまうでしょう。
かわし続けるには限度があります。
相手の疲労を待てば待つほど、自分も疲労し、回避動作の精細が欠け、勝ってしまう確率が大きくなります。

「呪いたければ呪うがよい」

だから、そう、この戦いを引き分けで終わらせるには、最早これ以外方法はなかったのです。

「だが、その悲しみだけは置いて逝け」

こうして、ハムライガーの悪夢は終わりました。
彼はこれからは幸せな夢を見続けることでしょう。
ずっと、ずっと、永遠に。




●ハムライガー×邪鬼ギリメカラ●(■■■■■■■)





――これは聖獣アイラーヴァタの物語ではない。

反射邪鬼ギリメカラの物語である。





   反     

   射     

   邪     
        始
   鬼     

   軍     

   曹

666勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:09:23 ID:1/g7dfBQ0
邪鬼の物語が始まり、幽鬼の物語は終わりを迎える。
触らぬ邪神に祟りなし。
幽鬼の浅はかな行いは、邪鬼の邪鬼たる所以を目覚めさせてしまった。

「……は? ちょ、ちょっと、何よ、何なのよ、アンタ。なんで、なんでここにいるのよ!?」

何を不思議がることがあるのだろう。
時は夕暮れ、逢魔が刻。
森に堕ちし影より滲み出て、悪魔がその姿を現そうとも何らおかしなことはない。

「……見ての通り、ワシの鼻は長いのでな。おヌシの腐りきった心身の匂いを追うなど造作もないことだった」

ぎょろぎょろと単眼を動かし、咆哮するギリメカラの姿がマンイーターには一回り大きく感じられた。
慌ててマンイーターは首を振る。
錯覚だ。ありえない。悪魔の強さは固定のはずだ。
そうだ、きっとそれはアイツが持っている獲物のせいだ。
アタシを刺しやがったにっくき女が持っていた氷の刃。
そんなものを手にしているから、トラウマが刺激されただけなのだ。
そうに違いないと何度も、何度も言い聞かせる。

「フ、フン、アタシが聞きたいのはそういうことじゃないわ。あの坊やはどうしたのよ?
 って、聞くまでもないわよね。あーあ、かっわいそ〜!
 あの子、大好きな人に会いたかっただけなのにな〜」

マンイーターはギリメカラのことを甘ちゃんだと認識していた。
合理的な相手ではあるが、こいつは自分たちを襲ってきたトンベリをも救おうとしたのだ。
埋葬時にさえそれを悔いていた。なら、そこをつけば、隙くらいは生じるはずだ。
爪もカミツキもガトリングも反射されるが、それなら魅了でもしてやればいい。
心の隙をつき誘惑することこそ自分の十八番じゃないか。
そう、彼女は高をくくっていた。
それがいかに愚かなことか、甘いのはどちらだったのか、数秒後、我が身をもって思い知ることとなる。

「……そうだな。アヤツには悪いことをした」
「ふふ〜ん、そうようね、そう思うわよね! 
 だってあの子は何も悪くない被害者! たとえその牙が血に塗れてようが被害者は被害者!
 加害者だろうが被害者ぶれるなんて素敵な犠牲者さん!
 悪いのは全部、ア・タ・シ。後ついでに人間! そしてアンタ! 坊やを殺したアン「いっそ、殺してやれば、良かったのやも知れぬな」……は?」

影が、落ちる。
赤い、赤い世界に、影が落ちる。
陽が沈みきったのではない。
太陽が、食われたのだ。
陽を背に直情より飛びかかる獣によって。

667勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:10:21 ID:1/g7dfBQ0
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
「ひっ!?」

狂った獣の牙が、爪が、マンイーターを引き裂く。
ギリメカラに気を取られていた彼女には、その襲撃をかわすことなど不可能だった。
いや、たとえ周囲を警戒していたとしても、この展開は予想外だったであろう。
あまりにも理解不能すぎて動きを止めてしまったに違いない。
それほどまでに、今、己に起きたことは、己を襲った相手は、マンイーターにとって信じられないことだった。

「いっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!
 ハ、ム、ライ、ガー……? タ、タンマ! マジタンマ! 何やらかしてんの、何しやがるんだ、この尻振りワンコがああ!
 ちょ、腕、アタシん右腕がああああ! どうすんのよ、どうしてくれんんのよ!
 これじゃああんなことやそんなことできないじゃない! 繋げればいいの!? ゾンビだから縫合!?
 それとも今度は隻腕フェチの男どもでも狙えってわけ!?
 じゃなくて、それもあるけど、なんでコイツまでここにいんのよ!? 
 なんでアンタの側についてんのよ!? 何を仕込んだわけ、アンタ!?」

マンイーターを襲ったのは彼女が手駒としたはずのハムライガーだった。
それだけならまあいい。よくはないが理解はできる。
殺して殺して殺せと煽ったのは他ならぬ彼女だ。
死んだということにして実は生きていた自分を何の疑問もなく襲ったのは気になるが、今は置いておく。
それよりも無差別殺戮者として仕立てあげたはずのハムライガーが何故、ギリメカラに使われてるのか、何故ギリメカラを襲わないのか。
それが心底理解できず、腹立たしくて、マンイーターは痛みにのた打ち回りながら訴える。

「ふん、何を仕込んだ、か。ワシの方からももう一度聞き返そう。おヌシ、コヤツに何をした。
 セクシーダンスのような魔法による一時的なものではあるまい。もし、“そういう異常系ならこの結果にはならなかった”」
「ばーか、自分の手のうちを明かすわけ、ない、でしょうが……」
「それでいてワシには喋らそうとは、つくづく身勝手な女よ。まあよい。コヤツと、コヤツを愛した者たちへのけじめだ。
 隠しはせずに、白状しよう」

その巨大な鼻から大きく息を吸い込むギリメカラの姿に、マンイーターの背筋が震える。
は、なに、なんで、なんでアタシ、こんなヤツに気圧されてるわけ?
そう自分の心に怒鳴りつけても、震えは止まらない。

「何、簡単な話だ」

直感した、これから語られるのは、彼女をしても、おぞましい話なのだと。

「パニックボイス。おヌシが言葉で狂わせた此奴を、ワシは更に術で狂わせ、心にとどめを刺したまでに過ぎぬわ」

そんなおぞましい行いを簡単な話だと語ってしまうコイツは、正真正銘の、悪鬼なのだと。

668勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:11:03 ID:1/g7dfBQ0
実際、行いだけを見れば、それはマンイーターがしたことの、何倍も簡単だ。
鍛え上げた誘惑技術や口車によるものではなく、魔法の咆哮による強制での狂化。
既に狂乱していた幼き心の背を押すだけだったのだから、実に簡単だった。
しかし簡単ながらも、果たして、真っ当な心を持ったものにこのような非道が行えるだろうか。
壊れた心を更に壊す。狂った心を更に狂わす。
今のハムライガーは死んでいないだけで、その精神はどこまでも崩壊しきっていた。

「ブリーダーさん! やった、やったよ、追手の悪い人間を倒したよ! あ、でもこいつ、マンイーターさんに似ているね、ね!」
「ああ、よくやったな、ハムライガー。けど、マンイーターさんは死んだんだろ?
 そいつは偽物だよ。お前を騙そうとしている悪い、悪い、偽物さ。人間の女が化けた偽物なんだよ」
「そっか、偽物なんだね! マンイーターさんを騙るなんて酷いよ! 死ね、死ね、死んじゃえ!」

馬乗りになったまま、ハムライガーはマンイーターに爪を振り下ろし、その喉元に牙を食い込ませる。
マンイーターが悲鳴をあげようが、ハムライガーの耳には入らない。
彼にはもう、ブリーダーの声しか聞こえないから。
ブリーダーに扮したギリメカラの声しか聞こえないから。

「いやあああああああああ! 止めて、止めてよ! ほら、そのくりんくりんとしたお目目を見開いてよく見なさいよ!?
 アイツは悪魔よ!? てか象よ!? これっぽっちも人間じゃないじゃない!」
「ブリーダーさんを悪魔みたいだなんて言うなああ! ブリーダーさんは、ブリーダーさんは悪くないんだ!
 拷問されて仕方なくボクの誕生日を聞き出されただけなんだ! あんな、あんな、悪魔みたいな人間たちとは違うんだ!」

もしかしたら、いつか。いつかハムライガーは救われたのかもしれない。
望んだ未来のとおりに、殺して、殺して、殺し尽くして、ブリーダーの元へと帰れたのなら。
それでもブリーダーが暖かく迎え入れてくれてたなら。彼は報われ、狂気からも解放され、長き時を経て心の傷も癒されたかもしれない。
だけど。今となってはそれこそ夢のまた夢だ。
ハムライガーは、望んでいた未来を“通りすぎてしまった”。
混乱により狂乱を加速された彼は、行き着くところまで行き着いてしまったのだ。
即ち、夢の終わり。悪夢の終点。
マンイーターが設定したそれは、全てのモンスターを殺しつくし、家へと帰り着くというエンディング。

ギリメカラにはハムライガーがどうマンイーターにたぶらかされたのかは分からなかった。
だが、ハムライガーがどうすれば止まるのかだけは理解していた。
何故かは分からないが、ハムライガーはこの殺し合いに乗って、最後の一匹になろうとしている。
なら、悪魔らしく、“その願いを叶えてやればいい”。
パニックボイスにより混乱したハムライガーに、古のギリメカラならではの幻覚を操る力を駆使しながら、悪魔は囁いた。
もうよい、終わったのだと。おヌシが、ユーが勝者だと。
倒れ伏せるギリメカラ、始まりの場にいたモンスターたち、称えるモリー、それら偽りの記憶を裏付けるかのように展開される幻。
狂乱し、混乱していたハムライガーは、それをフラッシュバックとして受け入れた。
受け入れたなら、そこにはいなければならない存在があった。

――ブリーダーさん……、ブリーダーさん?

頑張った、頑張ったんだ。
心も、身体も、痛くて、苦しくて、血を流していて、涙して、殺して殺して殺し尽くしたんだ。
そこにブリーダーさんがいなくちゃいけない。
ブリーダーさんが迎えてくれなくちゃいけない。
全てを殺し尽くしたのなら、そう、こうして、ボクを迎えてくれたこの人が、ブリーダーさんで、なくちゃならない。

――おかえり、ハムライガー

ああ……

――ただいま、ブリーダーさん……

その一言に、ハムライガーは悪夢の終わりを受け入れた。白昼夢の始まりを受け入れた。
ギリメカラがしたことは、マンイーターに比べればなんともおざなりで力任せのものだったけど。
ハムライガーが心から望んだものだったから。彼に難なく受け入れられた。
あのサバイバルの支配人であるモリーたちが次の企画にも前回の優勝者であるハムライガーを参加させようと襲ってきたという嘘八百も疑わなかった。
守らなくちゃ。ボクがブリーダーさんを守らなくちゃ。取り戻したぬくもりを、もう二度と手放しはしない。
そのためなら。ボクは、誰だって、何度だって、殺してみせる。

669勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:11:59 ID:1/g7dfBQ0

「はは……、あはは。違わない、わ。ソイツは、悪魔よ。いい子ぶって、話が分かるようなふりをして。
 でも、アタシなんかの数倍は、悪魔じゃない。あー、そういうこと。アタシに追いつけたのも、その子を足にしたって、わけね。
 つくづく他人を、利用するのが、お得意じゃない……」
「おヌシにだけは言われとうないがな」
「いつか……報いを受けるわよ?」
「おヌシはそうは思ってなかろう」
「当たり前だろ、ヴァアアカ!」
「っ!? 避けろ、ハムライガー!」

息も絶え絶えながらも生にしがみつき、隙を伺っていたマンイーターが跳ね起きる。
獣姦の趣味も、逆獣姦の趣味もないが、この際贅沢は言っていられなかった。
狙ったのは悪魔のキス。
エナジードレインを察したギリメカラの命でハムライガーは大きく飛び退き事なきを得たが、それでいい。
元より手の内が読まれていることを逆用して、敢えてハムライガーに避けさせることで身体の自由を取り戻すことが狙いだったのだ。

「これで形勢逆転よ! 男に奴隷を奪われた挙句、逆に食い物にされるなんてあっていいわけないじゃない!
 だからね、ここで華麗に変身して、この恥を帳消しよ!
 ムーンライトなんちゃらメイクアーップ! 月齢? 知るかああ!」

手にしたのはブイモンを進化させた一振りの杖。
手の内を読まれているというのなら、このままでは勝てないというのなら、“変異”してしまえばいい。
人間の男どころか、悪魔のオスをも喰らい尽くす、そんな悪魔に。
噂ではどこぞの屍鬼の小娘が魔人と化して我が物顔をしているという。なら、アタシだって!

「キタキタキタキタキタアアアアア!」

マンイーターの中を万能感が支配する。
レベルアップ時、進化時にお約束な回復により、食いちぎられた腕が生え、より強く美しく進化していくのが分かる。
これなら、勝てる。
“万能”なのだ。反射できようはずがない。
マンイーターは全力で、自らの両腕をギリメカラへと叩きつけた。

「勝ったッ! クロスオーバー・モンスター闘技場完!」















結末は語るまでもない。

670勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:13:27 ID:1/g7dfBQ0
女の最後はあまりにもあっけなく、どこまでも皮肉に満ちたものだった。
反射。メダパニの杖。眠ったままで。ハムライガー。男。
人を呪わば穴二つ。
これまで利用してきたもの、食い物にしてきたもの全てが、マンイーターの死因に繋がった。
当然の末路だ。
ここに立つ悪魔の名前はギリメカラ。
世に名高き反射を司る邪鬼。
誠意には誠意を。
狂気には狂気を。
悪意には悪意を。
彼を敵に回すというのは、つまりはそういうことなのだ。

「……無様なものだな」

反射により砕けた腕と、ちぎれたまま在りもしない腕を、嬉々として振り下ろし続けるマンイーターを哀れにでも思ったのだろうか。
或いは、トンベリへの手向けか、ハムライガーを狂わしたことへのせめてもの贖罪か。
こおりのやいばにてマンイーターを介錯したギリメカラは独りごちた。
嘲笑ったのは今仕留めた女のことではない、自分自身だ。
もっと上手くやれたのではないか。どうしてもそう思わずにはいられない。
ああ、自らの意志でなした非道を悔いるなど悪魔らしくない。これはまるで人間のようだ。
よもやここまで人間に感化されたか……。
否。

「あの男は後悔だけはしていなかったな……」

所詮は人の身。神魔に抗う気概はあろうとも、あのサマナーも何度も過ちを犯し、その度に辛酸を嘗めた。
それでもあの男は、抗うことを止めなかった。
抗うとはそういうことなのだ。
圧倒的理不尽を前にしても、辛い失敗を経験しても、それでもと、それでもと進み続けることなのだ。

「なら、ワシも自らのなしたことの責任は取らねばならぬな。
 ワシの失態で命を落とした者たちに、せめて、元凶たる人間たちの慌てふためく姿でも捧げねば気がすまぬ」

マンイーターからふくろを回収し、マグネタイトを取り込んだ後、こおりのやいばをさっと振るう。
幽鬼を切った所で血がつくわけでもないが癖みたいなものだ。
と、ハムライガーが虚ろな目で刃の軌道を追う。

「それってトンベリさんの……」
「ああ、形見だよ」
「そっかぁ」

一瞬沈んだように顔を伏せるハムライガー。
しかし、次に顔を上げた時には、そこには満面の笑みが浮かんでいた。

「トンベリさんもきっと喜んでくれるよね!」
「……」
「あ、あれ? ボク何かおかしなこと言った?
 悲しまないで、悲しまないで、ブリーダーさん。
 ブリーダーさんが喜ぶよう頑張るから。ブリーダーさんの言うことはなんだって聞くから。
 もうわがままなんて言わないよ。ボク、もっともっといい子になるから。大きく、強くなるから。
 だから、だから、だから、ボクを、売ったりしないで、ブリーダーさん!」

ギリメカラはその笑みに答える言葉を持っていなかった。
ただ、何者をも拒絶するその腕で、できるだけ優しくハムライガーの頭を撫でた。
それだけが、ハムライガーを壊したギリメカラが与えることのできる、ほんの僅かな救いだった。



【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ 死亡】
【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ 精神崩壊】
【邪鬼ギリメカラ真・女神転生シリーズ 反則負け】

671勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:17:10 ID:1/g7dfBQ0
【F-5/森/一日目/午後】
【邪鬼ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:こおりのやいば@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ×4 (1つだけ、使用済みのわざマシン50『あくむ』が入っている)
    MPSマシンガン&ショットシェル(70/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(3/5)
[所持]:
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:みてろよあのハゲ
2:ハムライガーをはじめ、責任はとる。
 3:金の子牛が気にかかる

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。
そのため、初期の反射の仕組みである幻覚も使える。


【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:刺傷、疲労(小)、狂気(永)、PANIC、精神崩壊
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:もうワガママななんて言わない。ブリーダーさんのためにいい子にする
 1:ブリーダーさんの言うことを聞く

[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」
マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれ、ギリメカラのパニックボイスでとどめを刺されました。
本来のPANICは一時的な症状ですが、マンイーターの悪夢による狂気を加速させる方向で使われたため、実質永続しています。
ギリメカラによる幻覚も合わせて、ギリメカラをブリーダーと認識して、殺し合いの先の未来の夢に囚われています。

※ホイミスライムとハムの持ち物は時間と余裕がなかったため麓に置いてきたままです。

672勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:17:22 ID:1/g7dfBQ0
投下終了です。
永久的狂気とか書いていますがSUN値ゼロなノリなのでもちろんどうリレーしていただいても構いません。

673勝者なき戦い  ◆TAEv0TJMEI:2013/07/31(水) 00:29:06 ID:1/g7dfBQ0
と、時間帯を夕方に変更します
【F-5/森/一日目/午後】→【F-5/森/一日目/夕方】

674名無しさん:2013/07/31(水) 00:49:45 ID:75NHfoZA0
投下乙です
紳士的で穏健派っぽかったけど、ギリメカラもやっぱり「悪魔」
ハムライガーは死ぬこともできずに、しあわせな夢を見ながら戦い続けることになるのか……これはエグい
マンイーターは今まで働いてきた様々な悪事が最後に跳ねかえってきて因果応報という言葉がぴったり。ざまあwwwww

675 ◆5omSWLaE/2:2013/07/31(水) 13:57:28 ID:aCFOyrTA0
投下お疲れ様でした
誰一体として救われることなく、ただただ、狂気の果てで幸福の幻想に浸る……
本来ならマンイーターの思惑通り自滅する運命のハムライガーを生かせることが出来たギリメカラの手腕は凄いと思います
でもそのために、中身を完全に破壊されてしまったハムライガー、あぁ、もう助からないだろうなと痛感せざるを得ません……
そしてマンイーターの哀れな末路。散々他人を惑わして彼女が、惑わしの中で倒れるのは実に皮肉なものです
にしても、最初から最後まで面白い女だったなぁ……。合掌

676心蝕 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/31(水) 16:04:39 ID:kyWkkfDM0
投下お疲れ様です。
勝利以外ありえない戦いに対する反則負け、楽しませて頂きました。

全ての報いが反射され、死に至ったマンイーター
魂と引き換えに、ハムライガーを幸福にした悪魔 ギリメカラ
二周目に突入したハムライガー全てに哀悼を

投下します

677心蝕 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/31(水) 16:05:41 ID:kyWkkfDM0


敵を引き離したことを確認すると、ガルルモンは山へと登った。
キラーパンサーの体からは完全に熱が失われた、二度と甘えられることもない。
背中から優しくキラーパンサーを降ろし、新たに得た強靭な爪で穴を掘る。
少しでも天国に近いところへ埋葬してやりたいと思った。

穴を掘り終えてしまうと、限界だったのかガルルモンの姿はガブモンに戻っていた。
ガブモンの体とは、こんなにも小さかったのか。
先程まで背に乗せていたキラーパンサーを必死で担ぎながら、そのようなことを思う。

キラーパンサーの死体を穴の中に入れ、再び土を被せる。
墓の代わりに出来るものは無かったので、からっぽのふくろを埋まった穴の上に置いた。
埋められてしまえば、もう誰にもその存在はわからない。
風が吹けば飛んでいくようなふくろだけが、キラーパンサーの存在の証だった。

「…………」
キラーパンサーの埋葬を終え、ただ呆然とガブモンは立ち尽くした。
動くだけの気力が無かった。
話す相手も今となってはいない。
かと言って、哀しみに打ちひしがれるわけでもなかった。
キラーパンサーの死を哀しむには、思い出が少なすぎた。
自分が失ったものは過去ではない。
共に歩めた未来なのだ。

許してくれ、とそう言いたかった。
もしも、もう少し自分の進化が早ければ、きっとキラーパンサーは助かったはずなのだ。
だが、許しを請おうにもその相手は既に死んでしまっていた。
この罪が永遠に許されることはない。

「すまぬ、もう行く……」
だが、いつまでも立ち止まってはいられなかった。
何もしなければ、その分だけ誰かが殺される。

心を蝕む暗黒を無理矢理に心の奥底に沈め、立ち上がる。
義務感染みている、そう己を嗤った。

行先もわからず、キラーパンサーの墓を背に進む。

風が吹き、ふくろがどこかへと消えた。

どうしようもなく陰鬱な気分だった。

【E-6/山/一日目/夕方】

【ガブモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大) 陰鬱
[装備]:マガタマ(ワダツミ)
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出

[備考]
できるだけ早く進化したいと思っている。なぜか侍口調で話す。一人称は「拙者」。
ワダツミを装備することで、ガルルモンへの進化が可能となりました。

《支給品紹介》
【ワダツミ@真・女神転生?】
マガタマの一種、氷の力を持つ。
氷結無効/電撃弱点

678心蝕 ◆3g7ttdMh3Q:2013/07/31(水) 16:05:56 ID:kyWkkfDM0
短いですが、投下終了します。

679 ◆5omSWLaE/2:2013/07/31(水) 18:33:38 ID:aCFOyrTA0
投下お疲れ様です
少しじゃれあって、互いの事を話して、襲撃を受けて……。彼らが関わったのはそんなたった数時間
それでも『共に歩めた未来』が失われることも非常に悲しいことだと思います
キラーパンサーを救うには遅かったけれど、ガルルモンの力は果たしてこれから誰かを救えるものになれるだろうか

680 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:35:48 ID:qPMYfdZE0
投下致します。

681 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:36:50 ID:qPMYfdZE0
有り体に言うと、暇だった。
青い空、白い雲、それらがゆるりと様変わりしていく過程。
別にぼーっとしているわけじゃあない。
しかしこんなに暇があるのは、珍しいことだった。
だから使いあぐねた時間で、ちょっと意味のある暇つぶしをやってみることにする。

青い色は、見飽きたから。

682 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:37:31 ID:qPMYfdZE0
グレイシア達と別れた後に、会話はなかった。
「ピギィ!ほっぺた擦りむいた!もうちょっと丁寧に扱えよ!」
どこが頬で顔だか分からないボンレススライムは喚く。
「っていうか、本当ににメタモンっていうの助けに行くの?そんなにお前暇なの?」
そう、会話はなかった。

「ちぇーーシカト決め込んでやがるよこのキモい植物」
返事の代わりにため息一つ。これは会話にカウントされない。

「くっさ、お前、その口臭どうにかしたほうがいいよ、お口クチュクチュモン……ギピィイイ」
ぎゅううと締めあげられて言葉を強制終了させられるボンレススライム。
自慢の武器である息を侮辱されたのもあるが、余りの雑音のひどさに予想外の力がこもる。
これ以上やるとボンレスを通り越してミンチになりかねなかった。
簡単なのは口に触手を突っ込んでやることだが……こいつの口に、触手を?冗談じゃない、考えるのもおぞましい。

「静かにするなら、解いてやろうではないか、え?」
バタバタともがくスライム。
命令するな!と言いたいのだろう。
全くここまで厚かましく生きている奴も珍しい。
もう二度と悪さしないと確約できるなら何処へなりとも捨ててしまいたい気分だ。
そんなことはあり得ないし、できないのだが。

あと数分はこれでも大丈夫だろう、いっそ気絶してくれればいいな。
珍しくなげやりな気持ちでモルボルはキングスライムを後方に紐付きで放り投げようとした。
ふ、と視界に入る青色。
空を写した水鏡、流れる不定形の道。
辿る先をなんの気なしに見れば、小高い山。
山岳地帯を縫うように続く小川か。


そう納得した瞬間、体の一部の感覚が消失した。

「ぷはあっ……なにすんだよう、もお……あれ?」
まとわりついた力のない触手は、ばらばらとスライムの周りに散らばる。
自由になった!と喜ぶより先に疑問符が浮かぶ。
スライムにしては、とても機敏に察知した。

どんなにぼんやりしたものでも気づくほどの殺気。
背後から迫るグラディウス。
鋭利な刃に削がれ、ぷるぷるとしたゼリー状の一部が持っていかれる。

「痛……くない?」
見事に切断されすぎたのか麻痺する痛覚。
モルボルも同じく、痛みなく驚愕のうちにその襲撃者を探す。
「気色が悪いな……」
じわじわと、正体不明の恐怖心が周辺を支配する。
どこから仕掛けてきた?
その答えは返っていくグラディウスが知っていた。
中空、高すぎず低すぎず、地上と空の合間。

獲物を握りしめ地に降りたそいつは、ニヤリと笑って。
かたかた、かたり。
かた、かたり。

何事かを、喋った?
錯覚かもしれない。

683 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:38:12 ID:qPMYfdZE0
欠けた頭部から覗く虚ろ、血塗れの体、小柄で、まるで人形。
いや、人形の魔物か。
冷静に観察するうちに、じわじわと痛みがやってくる。
その分、得体のしれない恐怖心は薄まっていった。

緑の鞭が撓る。
まずは厄介なグラディウスを落とさんと、前方後方、左右、至るところに触手を伸ばし死角をついた。
軽業師の如く人形の魔物は触手を躱し、その細い鞭を渡っていく。
武器を投げるよりも、直に切り刻むほうがいいと触手の上を笑いながら走ってくる狂気。

「サンダガ!」
こちらも真正面から迎え撃とうと呪文を放つ。
電撃の塊は人形に炸裂し、粉々に吹き飛ばした。
そして耐え切れず散らばる血肉に目を背け――待て、血肉?
人形の体だが、やはり生物だった……いや、それではあの欠けた頭部は?

背けず、飛び出た軌跡を追いかける。
自在に空中を蹴り跳ねる人形。
通常あり得ない動き、いやよく見ろ、あいつは。
ふくろから、何かを投げている……何を?
青い色が消えかけた空に浮く、青い肉片。

それがなんなのかモルボルも、スライムも知らない。
支給された道具だろうか、違う。
道中見つけた生き物だろうか、違う。

獲物である。
人形が、チャッキーがしっかと殺した、獲物。
かつて夢を見て、目覚めた幻竜の亡骸達だ。

先程も同じように投げた肉片を足場にし、視界の外から攻撃していたのだ。
更に読めない軌道に防戦を強いられるモルボル。
スライムは闇雲にメラゾーマを撃っているが当たる気配はない。

ふくろからまた肉片を、今度は骨のついた部分ばかりを選び、お手玉しながらくるくると魅せつける。
数えて五つ、口に咥えたグラディウスも合わせれば六つか、その小さな掌が描く円は淀みなかった。
「器用なものだ、もっと他のことに活かせばよかっただろうに」
その気があって心改めるなら、道化師にでもなればいいと冗談をくれてやるが、人形は当然にこりともしない。
一つ、鋭い骨の切っ先が触手をかすめる。
二つ、三つ、地面すれすれで急上昇する肉片を横薙ぎに振り払った。
四つ、五つ、ブーメランじみて背後から迫る肉片も勿論同じく。

そして六つ目、当然来るだろう人形本体。
上空から攻めこむつもりだったろう人形を、あるだけの触手で抑えこみ捉えこもうと。



もう一度、恐怖が中空を舞った。

684 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:39:17 ID:qPMYfdZE0
触手の檻の中、逃げ場を無くした、顔のない人形。

七つ目の追撃、人形と別行動をしていた頭と武器。
均衡されるそれらは、風や投げ方の工夫で操られているに過ぎない。
しかしその頭部は、文字通りチャッキーの体の一部として動き、自由自在に斬撃を振るう。
刹那、檻は破られ、モルボルは武器となる触手を失う。
頭部を取り戻し嗤うチャッキーのふくろの肉片はどれだけあるのか、他に隠し持つ武器はないのか。
まるで予想がつかない。

戦い方そのものが奔放に過ぎ、また外道を極めていた。
底知れぬ狂い、見えない思考。

「メラゾーマ!」
一瞬の好機、偶然、なんでもいい、とんでもない恐れ知らずのラッキーがモルボルの頭上を飛び越えていく。
チャッキーは、檻から脱出すると同時にまた手頃な肉片をばらまく、メラゾーマの威力を持ってしても落としきれず、本体は狙えない。
なれば。
「サンダガ!」
その火球に、雷撃を加えてやる。
想定しないコンビネーション。
勿論火と雷は仲違いし、争い、急上昇した温度と光を爆発させる。
それでいい。

チャッキーの足場となるはずの哀れなそれらは蒸発し、或いは四散していく。
「いけ!スライム!!」
「ボクはキングスライムだ!!命令するなばかちん!!!」

スライムは憤りながらも、それよりムカつく相手をやっつけるために突進していった。
なんせ切られた当初はどうともなかった箇所が痛くてたまらない。
しかもこんなにまで整っていた自分の体を欠けさせたのだ。
この世で一番価値のある自分の体を、削った罪は重い。

すううとありったけの空気を吸い込んで、キングスライムはぷくぅーと膨れ上がる。
山に届かんばかりに、王を名乗るに値する巨体を持って不敬者にぶつかってやるのだ。
普通の大きさでもタブンネの全身の骨を砕き死に至らしめた体当たり。
この大きさなら、骨すら残るまい!

「はいドーン!!」







ざくり。
「ん…………?」

685 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:39:56 ID:qPMYfdZE0
痛い。
鈍痛。
しかし鋭い。
矛盾した感覚に、静止した己の体と、相手を交互に見て。

――風船というものがある。
空気を詰めた、薄い袋だ。
それは大きければ大きいほど表面が空気で膨張し、薄くなる。


「スライム!!」

シューーーーっと、漏れ出る音に、かき消されていく。
口はしっかり閉じてるはずなのに、どこから空気が。
ピタリと、チャッキーに届く寸前で動かないからだ。
突き立てられたグラディウス。
嘲笑うチャッキーの顔。

キングスライムが、疑問を言葉にしようとした瞬間、空気が漏れる刺し傷が広がる。
痛いと訴えるより速く、その体は空気を吐き出して彼方に吹っ飛んでいった。

【キングスライム@ドラゴンクエスト 死亡】


「くっ……」
正直惜しんでは居ない。
死に受ける哀しみも少ない。
でも、憤りは覚えた。

モルボルに残された武器をフル活用するよりも先に、凶器は飛んだ。
翼を得た狂気の前に、何者も残りはしない。

【モルボル@ファイナルファンタジー 死亡】



血が残らない刃物。
いい脂払いになったな。
どうでもよさそうにチャッキーはその場を去ろうとする。

美しい刃に、青い鋼に映る、背後の軍勢。
暴力的に青一色、鬱陶しいほど沢山。
新手にしては早いな、それでもいい。

また殺せる。
チャッキーは振り向き、何年ぶりかに、驚きという感情を思い出した。

686 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:40:52 ID:qPMYfdZE0
地平線の彼方より疾走するは、王の軍勢。
王であった、軍勢。

キングスライムは、小さなスライムという弱小モンスターが寄り集まって生まれる王だ。
彼らにも想いが、理が、願いがあったろう。
それらすべての具現者ははじけて消えた。

だから彼らは、どんなに愚かな王であったとしても、自分たちの王を殺された復讐をするために走ってきたのだ!


「「「うおおおおよくもボクらを殺したなこのアホ野郎ぉおおお!!!」」」


……前言撤回する。
彼らもまた、愚かだった。
考えれば、まあ分かる。
そんな殊勝な集団の作る王があんなお馬鹿な道理はない、全くない。

だが愚かでも、数があると侮れはしないのだ。
津波の如く迫ってくる、青々青々青!
半透明の波にさらわれて、チャッキーはもみくちゃにされ小川を遡り流されて行った。
一匹を切ろうとそこに新たな一匹が加わる、犠牲を厭わぬ行軍。
命の価値を知らぬ、特攻。

「捕まえた!」
「このまま流し殺してやる!」
「いや押し潰そうよ!」
言いたい放題好き放題に軍勢は突き進む。
モルボルが生きていれば何処まで行くのかと呆れていただろう。

かたかた、かたり。
かた、かたり。

「あん?」






モルボルは、意識の底に居た。
死に向かう心境、閉ざされた道。
全てを悔いても遅かろう、王になれずとも、死するときこそ、王らしく。

『死なないで』

それは先ほどまで耳障りで仕方なかった声。
まさか、と聞き返す。

『ボクは王様じゃないよ、ただのスライム』
悲しそうに、スライムは笑った。

『あんな王様じゃなくて、いい王様になりたかったなあ』
あえて言うなら、彼は元来キングスライムにあるべきだった賢さと良心。
軍勢の中で一番小さなそのスライムは、波に流されずモルボルの遺骸の前で嘆く。
『でもみんなが欲しかったのはあのキングスライムだから、仕方ないね』
民が求める王は、民の理想だ。
モルボルは、一つの王の道を知る。
あれもまた、王道であったのか、と。

『ボクには、ボク達には作れなかったいい王様になってね』
是非とも請け負いたいが、無理な相談だ。
今にも死神は己の魂を黄泉へ連れて行くだろう。
そこで様々な王に出会って一からやり直すのが、一番だ。

『まだ、貴方は死ぬべきじゃない、生きる価値のある、大切な命だ』



「なんて言ったのオンボロ人形」
「命乞いかよ、遅い遅い」
「不敬なばかちんはーーー死刑!」

「「「死刑!!」」」

かたかた、かたり。
かた、かたり。

687 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:42:03 ID:qPMYfdZE0
「はあ?ボソボソ喋ってネクラかお前はピゲッ」

青色、一つはじけて。
「グピィ」
二つはじけて。

連鎖するように、はじけて飛んで。
初撃は剣戟、鋭い刃物が弧を描き切り裂いた。
追撃は二翼の凶器。
切り上げた回転で勢いをつけて、ただ真っ直ぐ投げることのみ目的にした幻竜の翼はスライムたちを轢き潰す。

「ま、負ける……また死ぬ!」
「いいや、まだ手はあるぞォ!」
轟音を上げてやってくる死に抗う悲鳴。



『死せる魂よ、導きに応え、違えし道から戻り給え』

体より透明な声。
復活を願う祈り。

「ザオリクだ!ボクらがザオリクを唱えて復活すればイイ!!」

そして押しつぶすのだ。
押して固めて、もう一度、勝者の王になる!。

『汝の運ぶ命に、祝福の光あれ――ザオリク!』

二箇所で、全く同じタイミングで呪文は詠唱された。







「青い色は、見飽きたんだよ」

チャッキーの目の前から青色は消えた。
空にも、赤色が満ちている。
血の色を想起させる赤に、無表情に笑い、粘りつく酸化した夜に向けてチャッキーは歩き出す。
また獲物を探すために。


【D-6/中央川辺/一日目/夕方】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(ブイモンの遺体)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:獲物を探す




触手が全て戻り蘇ったモルボルを見て、スライムは安心して息をつく。
「貴様は……」
途端、消えていく自分の体。
王の破片であるがため、もう一度王に戻れなければ、スライムは死ぬ。
離れた場所で仲魔は全滅した、もうキングスライムには、なれない。
「おい、待て!!!」
よかった、とスライムは、瞑目する。


次は、いい王様になりたいな、みんなに愛される、キングスライムに。
小さな小さな王の欠片は、静かにこの世から消えていった。


【キングだったスライム@ドラゴンクエスト 死亡】
【モルボル@ファイナルファンタジー 蘇生】

【D-7/橋付近/一日目/夕方】

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いの中でも王になることを目指す。忠臣がほしい。
 1:ゲルキゾクのような忠臣が欲しい
 2:蘇生の術か……
 3:スライム……

688 ◆/wOAw.sZ6U:2013/08/03(土) 02:43:27 ID:qPMYfdZE0
投下終了致します。
タイトルは 不定形の王道 でお願いします。

689 ◆5omSWLaE/2:2013/08/03(土) 10:15:21 ID:jtH5WUms0
投下お疲れ様です
キングスライム、形を失ってもなおこうなるとは相当しぶとかったみたいです
ただなんというか、相手が悪かったのと判断を誤ったために……でもいい仕事でした
ブイモンの亡骸を武器として使用、チャッキーが残忍過ぎる!
このまま景色を真っ赤に染め上げそうで、底知れぬ恐ろしさを感じます
モルボルは奇跡の加護を得て復帰、そして王の在り方の一つを知る
『……あれが君たちの望んだ王なのか……(困惑)』という想いと共に、彼はどこへ進んでいくのか

690心蝕 ◆3g7ttdMh3Q:2013/08/04(日) 19:33:38 ID:k10OzTLw0
魔人アリス、モーショボー、はぐれメタル、メタモン、レナモン

を予約します。

691名無しさん:2013/08/08(木) 22:24:38 ID:daLV33dI0
気づいたらチャットルームが

692 ◆5omSWLaE/2:2013/08/08(木) 23:57:45 ID:mVqECiQE0
>>691
そうです、この間作成してきました。


さっそくですがチャット会の告知を……。
11日(日)22:00〜辺りにモンスター闘技場チャットをします。

チャットの趣旨はロワ雑談の他に、主催者側の背景や設定などの案の取り決めを考えてます。
書き手間である程度、認識を固めることで今後の展開をやりやすく出来ればいいなと思った次第です。
なお、あくまで案として取り上げるので、そこで話された案が確定事項になるわけではありません。
それぞれが考えているアイデアを話し合って、こういう方向性にしていこうかな?……という感じですので、
気軽に参加してくれればと思います。
また、チャットに出ていなくても投下や新規参加についてはもちろん大丈夫です。

693 ◆TAEv0TJMEI:2013/08/09(金) 00:32:14 ID:lCPcSXE20
そういうことでしたら承知しました。
CMロワ談義も楽しそうですし、若輩ながら出来る限り参加させて頂きます

694 ◆E3ztD2ppKo:2013/08/09(金) 19:16:56 ID:bT.Jup5E0
初めまして。
グレイシア、ピクシー、ソーナンスで予約します

695名無しさん:2013/08/10(土) 03:18:33 ID:7GSdNn6I0
おや、またしてもお初の方が
楽しみにさせて頂きます

696 ◆5omSWLaE/2:2013/08/10(土) 20:35:56 ID:6NB8VStg0
新規参加ありがとうございます!
楽しみにしております!

私もティラノモン(アグモン)、ベヒーモスで予約致します

697 ◆3g7ttdMh3Q:2013/08/11(日) 18:21:36 ID:hl1TUDCE0
延長させていただきます

698 ◆TAEv0TJMEI:2013/08/11(日) 20:33:31 ID:jD7VbxzY0
オルトロス、ガブモン、ゲル、予約します

699名無しさん:2013/08/12(月) 19:32:50 ID:E4V/CJkU0
パロロワwikiにこのロワのトップページを作ってみました。
不毛な所、変更したい所がこざいましたら、お手数をおかけしますが宜しくお願いします。

700 ◆5omSWLaE/2:2013/08/12(月) 20:22:21 ID:oDy6szGw0
>>699
おお、ページ作成ありがとうございます!

ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/391.html
申し分ないです! いや〜嬉しいです

701 ◆3g7ttdMh3Q:2013/08/14(水) 13:12:10 ID:czd57lrc0
期限中の投下が難しいので一度予約を破棄させて頂きます。

702 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:06:43 ID:XhVFrYHc0
ティラノモン(アグモン)、ベヒーモス投下します
タイトルは「救いの手」です

703 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:07:09 ID:XhVFrYHc0
「……エアドラモン……なんでだよ……」

どこまでも歪みきってしまったエアドラモンの飛び去っていく姿。
彼が殺していった人気キャラクターの成れの果て、無残に切り刻まれたライチュウの亡骸。
ティラノモンはそれらの様子を見て、むせび泣いた。

「ライチュウさんも……どうして俺なんかのために……」

どうしてこんな結果にならざるを得なかったのか。
どうして俺はこの悲劇を止めることが出来なかったのか。

『誰にも相手にされないぐらいなら、世界中の人間に嫌われてでも、
 誰か一人の目に焼きつくような強烈なインパクトを植えつけてやる』
『いいわけないだろ!!だけど、それしかねぇんだ!!もう俺には……それしかねぇんだよ…………』

クソッ、アイツ卑屈すぎるんだよ……!
どうしてそんな最悪の選択肢ばかり選ぶんだ。何がアイツをこんなにまで動かしているんだ。
多くの人に嫌われてもいいだなんて、ダークヒーローでも気取ってるつもりかよ、畜生……。
……自己中なお前じゃあ、ダークヒーローになんて絶対に成れないというのによ……。

アイツに待っているのは、おそらく無様な破滅。
みっともなくとち狂い続けて、倒されたならば嘲笑を浴びて、勝ち残ればブーイングが起こる。
そんな、救いようのない未来。

「どうすんだよ……俺はどうすればいいんだよ……もう遅いってのかよ……」

はたはたとこぼれ落ちた涙が、大地を湿らせた。



「どうかしたのか?」

後ろから低い声がした。
ティラノモンが振り向いた先には巨大な牛のような魔物がいた。
その魔物ベヒーモスはすぐそばで息絶えているライチュウを見て、その恐竜の様子を察する。

「……そうか、お前の仲間が殺されたのだな……」

しかし、ティラノモンは首を横に振った。

「違う……ライチュウさんを殺したのは俺の友達なんだ……」
「ふむ、ライチュウと言うんだな、ネズミの魔物」
「え、知らないんですか!?」
「……知らないな」
「超有名キャラクターの進化系ですよ」
「知らん」

唖然とするティラノモン、唖然とされたことに唖然とするベヒーモス。
まぁ、ピカチュウよりは知名度低いから知らない人もいるのかもしれない、と思い、話を続けた。

「俺の友達は……いや、アイツはもう俺のことを友達だと思ってないかもしれない……。
 その、ソイツは、人気者を倒せば人間に認められて自分にも光が巡ってくるって、そんな馬鹿げたことを言って……」
「……人気者? ふむ、確かに馬鹿げたことを言う。殺し合いを強いられている最中に、己の人気などを気にするとはどうかしている」
「いや、むしろこういう状況だからこそ、人気を手に入れるチャンスだと思うけどさ……」
「ん?」
「でも、アイツは……アイツは自分から人気者の道を捨ててしまったんだ。むしろ、嫌われようともなりふり構うものか、って感じで……。
 世界中の人々に嫌われようとも、誰か一人の目に焼き付くようなインパクトさえ残せればいいって……」
「世界中の人々?」
「まったくよぉ、進んで嫌われようとしてどうするんだよぉ……たった一人の変わり者に魅せたところでどうするんだよ……!
 本心ではそんなのを望んでないくせによぉ! 望んでない流れで出来たパートナーとなんか、上手くやっていけるわけが無いだろ!
 そんなんじゃ絶対に幸せにはなれねぇだろぉがぁ! あのバカ野郎め!!」

ティラノモンは感極まって叫んだ。
あぁ、ホントにどこまでも馬鹿なやつだと思うよ、エアドラモンは。
あれだけ拒絶しておいて、引き返せなくなってから後悔をしているなんて……。馬鹿の鑑だ!
……でも、そうなったのも不遇仲間だった俺が進化系を手に入れたことにショックを受けたのが原因なんだろう。
目の前で友人が優遇され、一人取り残されたことに悔しさを抱いているんだ。
だからって、誰も彼もが取り残されたお前を馬鹿にしてるわけじゃねぇのに……!

704 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:08:00 ID:XhVFrYHc0
「誰もアイツを……少なくとも俺は、エアドラモンのことを見下してなんかいないのにさ……」
「エアド……?」
「どうしてエアドラモンはわからないんだろう。どんなに不遇でも、きっとどこかに応援してくれる人がいるはずだってことに……。
 だからその期待に応えないとダメなんだよ……。なぁ、あなたもそう思うだろう?」
「は?」
「人気者のピカチュウに襲い掛かるだけで既に悪者なのに、まさか倒してしまうなんて……。
 あぁ、それは確かに偉大なことかもしれないさ、でもそんなのを期待している人間なんていないだろうが……!」

ピカチュウが倒される展開を誰が望む?
エアドラモンが悪役になって誰が喜ぶ?
そうだ、彼らは最初から戦うべきじゃなかったんだ。
俺はピカチュウさんに土下座した時からそれをわかっていたのに。
それでも俺は、止められなかった。情けなかった。

「……フン、お前の話には説明が不足し過ぎだが、大方想像はついたぞ」
「わかっていただきましたか! すみません言いたい思いが先行しちゃってて……。
 あの、良ければなんですが……俺に力を貸してくれませんか!?」
「力を貸す、というと?」
「エアドラモンを救いたいんです。人気キャラを妬み、暴走を始めた彼を止めたいんです。
 アイツはもはやとりかえしのつかないことをした……でも、まだ挽回出来るチャンスはあるはずなんだ!
 俺は、アイツが人間たちに嫌われたまま終わるような末路は見たくない! だって……。
 ……アイツが俺のことをどう思おうとも……少なくとも俺は、アイツの友達だから……!」

不遇脱却を果たした今、アイツと同じ立場に立って慰める事はもう出来ないのかもしれない。
でも、少なくとも俺はエアドラモンの味方だとわかってもらいたい。共に主役を目指したいんだ!

「フン、いい台詞だ。感動的だな……」

困惑していたベヒーモスの表情は変化する。
小さな笑みを浮かべ、そして、一切の感情を消し飛ばす。

「だが、無意味だ」


グラリと視界が一変し、続いて強い痛みが腹部に走る―――!


「がっ……!?」

ティラノモンの巨体は地上20mを舞っていた。
一体何が起きたのか? 頭を回転させようとしても、流石にこのような一瞬では理解が追いつかない。
ふわりと一瞬だけ空中に留まり、すぐにその巨体は重力の方向へと向かう。
そうして、爆発でも起きたような轟音を響かせて、大地に叩きつけられた。

「ぐっ……グギャアアアオオオオォォォォォォッ!!!」


『しゃくりあげ』
強靭な力を用いて、角で相手を上空へとかち上げるベヒーモスが得意とする技である。

呻くティラノモンを見る顔には表情が無い。
"敵"に対してむやみに己の感情という情報を与える必要も無いからだ。

「しばしそこで横たわっているがいい、人間どもに媚を売る魔物の恥さらしめが」

その瞳だけが威圧感と冷淡さを物語っており、人へ魂を売った愚かな恐竜を突き刺す。

ベヒーモスはこの恐竜を危険だと判断したのだ。
人間に"殺し合い"を強要されている身でありながら、人間に対して肯定的な考え方を持っているなど、尋常ではない。
そこのネズミの魔物(ピカチュウなのかライチュウなのか曖昧)は、人間の人気があるという理由でエアドラモンに殺されたらしい。
そんなエアドラモンと友人である恐竜、彼もその行為を『偉大かもしれない』とのたまった。
もはや、己と理解し合えるような思考の持ち主ではないことは明白。
ヘタをすれば私もこの恐竜に『お前も人気だから』と難癖を付けられて襲われる可能性がある。
……いいや、間違いなく襲われるのではないだろうか。何故ならば……。

―――この見た目にも漂う強そうな肉体と、流星の呪文を使用出来る浪漫を持ち合わせる、我のような魔物が人間に不人気であるとは考えづらいからだ!

だからこそ、己の障害となる前に不意打ちを行うことにした。
流石に相手から攻撃したわけではないので、しばらく気絶させる程度に抑えた。それが彼の慈悲である。

「さて、先を急ぐとしよう。危険な魔物の情報も聞けた……」
「待……て……」
「ほう、意識があるのか?」

激痛をこらえながら、ティラノモンはベヒーモスを呼び止める。

「今……危険な、魔物って……エア、ド、ラモンの、事か……?」
「無論だ」
「殺すつもり……か?」
「襲って来るようであれば容赦するつもりは無い」
「させる……ものかよ……!」

ティラノモンは力を振り絞り、立ち上がろうと試みる。
だが、呼吸すら阻害するような痛みの前には、それだけの体の自由は許されない。
体をよじらせ、その度に発する背中の痛みが、さらに肺を締め付ける。

705 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:08:17 ID:XhVFrYHc0
「ここで寝てられるか……友達を……みすみす危険な目に合わせるものか……」

まるで死にかけの虫のようにピクピクと足掻くティラノモンの姿を、憐れむような目で眺めた。
力を持たない者が強い志を持とうとも、そんなものはただの理想妄想に過ぎない。
意志を叶えるのは常に相手よりも強い者。言葉だけの意志など、まさに『無意味』だ。

幻獣王の元へ戻る手がかりを探しに、ベヒーモスは古城へと向かう。
エアドラモン、と呼ばれた魔物との邂逅を果たすことが無いことを願いながら……。



―――しかしその時、ティラノモンの瞳に炎が灯った。

あのままあの牛がエアドラモンと出会えば、間違いなく戦いが始まる。
友人を殺すと言った相手を、このままみすみす行かせていいのか?
こんなところで寝ている場合なのか!? いいや、そんな薄情でいいはずがない!!

彼の脳内によぎる光景は、過去のエアドラモンとの思い出。
河川敷に二人で並び、夕日が沈むまで不遇な自分たちの現状を慰めあった日のこと。
河川敷に二人で座り、夕日を見つめながらビッグになりたいと語り合った日のこと。
河川敷に二人で対峙し、夕日に見守られながら拳と、意志をぶつけあった日のこと。

そしてお互いにボロボロになりながらも、お互いの強さを再確認し合った時のことを……!


どんなにアイツがおかしくなっても、その思い出は消えちゃいない。
だから俺は何度でもアイツに手を差し伸べるし、アイツもきっとあの日の事を思い出す。
……だから……。

―――だからッ!!





  TYRANNOMON        ティラノモン     TYRANNOMON
    ティラノモン  TYRANNOMON       ティラノモン


      『ティラノモン、超進化―――――ッ!!!』


   TYRANNOMON    ティラノモン        TYRANNOMON
 ティラノモン    TYRANNOMON ティラノモン






           空を仰ぎ、吠える!
  ティラノモンの肉体は炎のように燃え上がり、新たに構築される。
    生身では決して到達し得ないパワーを、エナジーを……!
         機械の力によって手に入れる!

      ―――黒鉄の要塞がここに降臨する―――






    METALTYRANNOMON  METALTYRANNOMON    メタルティラノモン
メタルティラノモン        METALTYRANNOMON


        『メタルティラノモン―――ッ!!』


   METALTYRANNOMON        メタルティラノモン   METALTYRANNOMON
 メタルティラノモン  METALTYRANNOMON   メタルティラノモン


♪〜
掴め! 描いた夢を
 守れ! 大事な友を
  たくましい自分に成れるさ

706 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:08:31 ID:XhVFrYHc0
「そうだ、ここで意識を手放して、友を見捨てるわけには行かないんだ!
 あなたこそ、ここで眠っててもらおう!! 完全体の俺の力を見……」

勇ましく相手を見据えるメタルティラノモン!
ベヒーモスとの距離、約500m!!

「え、あっ、そんなに離されてたのか!?」

ここまで復帰するのに少々時間がかかり過ぎた。ティラノモンの痛恨のミス。
すぐさま追いかけようとするも、鋼鉄で構築された肉体はあまりにも重い。
ドスンドスンと地響き立てて走ったところで、疾風の速さで駆けるベヒーモスに追いつくのは無理だった。

「ちくしょーちくしょー! 完全体に……、完全体になったのにー!」



【C-3/砂漠/一日目/夕方】

【メタルティラノモン(元アグモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、全身に微細な切り傷
[装備]:なし
[所持]:
[思考・状況]
基本:主役に相応しくなるため、対主催として真っ当に戦う。
 1:エアドラモン……
 2:ベヒーモス(名前は知らない)を止める
 3:仲間を集めてモリーに立ち向かう。


【B-3/廃城近く/一日目/夕方】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×2)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
 1:古城へ向かう
 2:倒すと後味が悪いのでエアドラモンには会いたくない

707 ◆5omSWLaE/2:2013/08/17(土) 12:08:42 ID:XhVFrYHc0
以上で投下終了です

708名無しさん:2013/08/17(土) 12:40:01 ID:.BpG5qiQ0
投下乙!
遂に超進化来たー!メタルティラノモン、完全体の力を見せてやれー!
っと思ったらベヒーモスさんトンズラこいてんじゃねえかwwwww
今まであまりに自然だったから気付かなかったけど、こんな状況で人気を気にするのは確かにおかしいよなあw

710名無しさん:2013/08/17(土) 16:22:14 ID:MoQNaGC.0
投下乙〜!
世界観の違いがこう出るか
いや、むしろ、ベヒーモスの考え方の方が当然なんだよな
自分たちをモンスターだからと殺しあわせている人間に好かれようとしている奴らなんて確かに危険だもんな
しかしせっかく進化したのにオチそれかよwww

712 ◆TAEv0TJMEI:2013/08/18(日) 11:19:27 ID:Zecf7xvE0
延長申請します

713名無しさん:2013/08/19(月) 19:24:19 ID:VWNCK51.O
投下乙です。

ちょ、初進化補正潰されたw
確かに「主催である人間に好かれようとしている」というのは、危険な考えに映るかもなあ。

714名無しさん:2013/08/20(火) 00:44:51 ID:HhjsreyAO
投下乙です。いい進化だ、感動的だな、だが無意味だ。

マニアワナカッタ…しかし真面目にやってる連中からしたらエアドラモン程じゃないがヤバい考えだわなぁw

715 ◆TAEv0TJMEI:2013/08/21(水) 18:02:52 ID:CJ.PQM0E0
失礼します
一身上の不調につき予約を破棄させていただきます
長期に渡るキャラ拘束申し訳ありません

716 ◆3g7ttdMh3Q:2013/08/23(金) 00:28:12 ID:W6V/Sc1Y0
チャッキー、ライガー、ギリメカラ、ガブモン、ワームモンを予約します。

717 ◆TAEv0TJMEI:2013/08/28(水) 01:59:54 ID:qaV9zKSA0
モーショボー、はぐれメタル、メタモン、エアドラモン、レナモン予約します

718 ◆3g7ttdMh3Q:2013/08/30(金) 00:04:15 ID:t/7InG8Q0
延長させていただきます

719 ◆3g7ttdMh3Q:2013/09/03(火) 00:18:27 ID:7v.aannk0
期限を読み違えていました、現在の予約分を破棄させていただきます。
長期に渡るキャラ拘束申し訳ございませんでした

720 ◆TAEv0TJMEI:2013/09/04(水) 04:24:24 ID:Ww2FVnoQ0
と、すみません、延長申請します

721 ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 16:30:03 ID:u8qQcOS.0
遅くなってしまい、申し訳ありません
期限は超過していますが、予約もなく、作品も完成したので投下してもよろしいでしょうか?

722名無しさん:2013/09/08(日) 16:30:23 ID:u8qQcOS.0
上げ

723 ◆5omSWLaE/2:2013/09/08(日) 19:16:41 ID:rpkYgF7A0
>>721
もちろんです
他の予約が入っていないのであれば、いつ投下してもOKとなっております

724〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:23:05 ID:u8qQcOS.0
ありがとうございます。
それでは投下させていただきます。

725〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:23:31 ID:u8qQcOS.0



――力が、欲しいか?





くだらない、本当にくだらない。
死した龍の亡骸を前にして、レナモンは力なく嗚咽を漏らし続けた。
分かっていた。
言われるまでもなく見せつけられるまでもなく分かっていた。
力を得たところで失われたあの子たちは帰ってこない。
力さえあればと嘆いても、全ては後の祭りに過ぎない。
今更なのだ。今更、今更力を得たところで何になる。
変わらない、何も変わらない。
意味なく理由もなく、無為に力を求めているだけだということくらい遠の昔に理解していた。
理解した上で、それでもと力を求め続けていた――はずだった。

なのに。
何故、こうも心が痛い。
何故、打ち倒した相手へと延々と乞い続ける?
喰らえばいいではないか。
勝ったのだ。
奴は死に、私は生きているのだ。
なら、今まで通り、敗者のデータをものにすればいい。
龍が見せた力の果て、それをものにすれば自身もまた、力の果てへと辿り着ける。
……辿り着いて、一体どうしようと言うのだろうか。
守るべき者を守れるはずだった力。
守るべき相手もいない力。
無為なる力。

レナモンは、力を求めずにはいられなかった。
それは後悔でもあり、逃避でもあった。
皆を護れなかった私は、皆に置いて行かれた私は、かつての願いの残滓に縋り付くしかなかった。
独りは寂しい、独りは辛い。
背中越しに守る相手は失い、共に歩く相手もおらず、対面する敵も刹那でしかなく通り過ぎて行く。
未練にしがみつく亡霊として独り、世界を彷徨った。
彷徨い歩いて、その果てに、たった一つ残された、この未練さえも否定された。

「本当に、本当にどうすればいいんだろうな……」

力への欲求と敵を求める意思は、どうやらあの龍に連れて行かれてしまったみたいだ。
がむしゃらなまでに身体を動かしていた未練を失ってしまった私は、糸の切れた操り人形のように項垂れ続けるしかなかった。

そうして、何時間も答えの出ない自問自答の檻に囚われた私を現世に引き戻したのは。

「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

天駆ける龍の嘆き声だった。

「あれは……」

知っている。
遠い空を飛びゆくあれがなんなのかを知っている。
エアドラモン。
神に近きもの。

だがその姿からは神と称される神々しさは欠片も感じられなかった。
ただただ痛々しさだけが伝わってきた。
泣いていたから。
エアドラモンは泣いていたから。

『レナモン君』

一瞬、そんな声が聞こえた気がした。
幻聴だ。
死者は蘇らない。
命は失い続けるしか無いのは嫌なほど承知している。
大方名も知らないあの龍の姿を、エアドラモンに重ねて思い出してしまっただけだろう。

「追えと、言うのか」

けれど。
これまでは何度呼びかけても幻聴さえ返ってこなかったのだ。
藁にもすがる思いでレナモンはエアドラモンを追うことした。
どうせこのまま項垂れていても、答えなど出はしないのだから

それに。
何故だろう、あのエアドラモンの目は、私に近いようでいて、遠いように思えたから。

726〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:25:00 ID:u8qQcOS.0






力が欲しいなんて思ったことは、はぐれメタルには一度もなかった。
むしろその考えを忌避さえしていた。
見てきたから。
力を欲し、ぐれメタルを追いかけ回す人間たちをずっとこの目で見てきたから。
彼らは怖かった。
とってもとっても怖かった。
あんな存在になりたくなんてなかった。
それに。
それに力があったところで、何かが変わるとも思っていなかった。
モーショボーに妬まれたように、自分たちは客観的に見ても強い方のモンスターなんだろう。
でも、僕たちも、より強き者たちからすれば格好の餌にすぎない。
弱肉強食なんて言うけれど、あれは間違いとは言わずとも、一面的にしか合っていない。
強いものでもより強いものに食われる。
強くなるには強いものと戦ったほうが経験値がたまりやすいのは広く知られた常識だ。
中には例外もいるけれど。
その例外ことメタル系の中でも、強いメタル系のほうがより経験値も多くて、人間どもに目の敵にされるんだ。
たとえこの身がメタルキングであろうとも、ゴールデンスライムであろうとも、プラチナキングであろうとも。
より一層人間たちから血眼になって追い掛け回されて、いつかは力尽きるのがオチだった。
それこそあの呆気無く死んだ仲間のように、力に溺れ自滅したかもしれない。

だからは僕は『劇的な出来事』に憧れた。
平穏に生き、幸せに死ぬなんて未来は思い描けない。
どうせいつ殺されるか分からない人生なんだ。
一瞬で世界が変わるような、ぐっと凝縮された何かがあってもいいじゃないか。
短い一生のうちに、ドラマチックな体験を、自分が大きく変わる瞬間を味わいたい。
そんな想いを胸に、仲間たちの話を聞く度に、次は自分の番かなと待ちわび続けた。

そして今、僕は、ここにいる。
ずっと待ちわびていた『劇的な出来事』は、望んでいたようなものじゃなかったけれど。
確かにはぐれメタルを大きく変えた。
どうせ死ぬんだからとどこか投げやりだった自分が、今は生きたいと思えるようになった。
『生きる目的』ができたから。

なのに。
なのになのになのになのに。
世界は、いつだって残酷だ。

727〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:25:34 ID:u8qQcOS.0

はぐれメタルたちは当初、北東を目指した。
コイキングに続き、少女を背負うことになったはぐれメタルからすれば、少女の目覚めを待ちたいところだったが、モーショボーに断固拒否された。
ちんたらしていたら、怖い怖いアリスに見つけられかねない。
それが彼女の主張であり、はぐれメタルとしても自分たちを襲った狐のことがあったため、頷くしかなかった。
そうして彼らは、襲撃者たちに襲われた西でも南でもない北東へと逃げることを選んだ。
この島の地形を把握していない彼らではあったが、その選択自体は悪くはなかった。
程なくして彼らは島の端へと辿り着き、夕日に照らされた青い海を目にした。

「キャハハ、うーみー!」
「……コイキングさんも、連れて来たかったな」
「もう、何湿っぽっくなってるのよー。海よ、海! 水銀君が言ったんでしょ、この島から逃げようって!
 だったらさー、外へと続く逃げ道を一つ見つけられただけでも、一歩前進じゃない?」
「うん、そうだよね」

自由へと繋がる航路。
呪いがある以上今すぐには逃げられないが、それでも眼の前に開けたどこまでも広がる海は、彼らに自由への希望を抱かせるには十分で。
けど、その分、その希望を奪われた時の絶望は大きかった。

「なに、あれ……飛行船?」
「ひ、飛行船って、あの人間たちが乗ってる空飛ぶ乗り物の……?」

彼らが目にしたのは飛行船だった。
サボテンダーやオルトロスに警告を与えながら、反時計回りに島の淵を周回していた飛行船だった。
そんなことを知りもしない彼らは、まさか人間たちが自分たちが逃げようとしていることを察して処分しに来たのではと恐れおののいた。
実際には今すぐ逃げようとしているわけではないが、しかし、海岸にいる以上は誤解されかねない。
そう早とちりした彼らは、そのまま大慌てで来た道を引き返し、そうして出逢ってしまった。
ともすれば今の彼らにとって、アリス以上に出逢っては行けなかった存在と鉢合わせてしまった。


「寄越せ……」


眼前には飛竜。
見たことも聞いたこともないモンスターだったけど、そいつは余りにもはぐれメタルからすれば見覚えのある目をしていた。
力を欲するものの目。
その為なら数多の命を奪うことにも躊躇しない、人間/怪物の血走った目。

「その人間を、寄越せええええええええええええええええッ!!!!!」
「っ、あああああああああ!」

飛竜が起こした竜巻を前に、避けようとしてしまう弱い僕自身を叱咤し、女の子とモーショボーさんを包み込む盾になる。
この身に魔法は一切効かない。
バギクロスだろうがバギムーチョだろうが、鋼の体の前には通用しないんだ。
恐れるな! 過信はせず、慎重に、けど怯えず守り抜け!





728〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:26:37 ID:u8qQcOS.0
戦いの図は簡単だった。
逃げるはぐれメタルたち、追う飛竜。
はぐれメタルが仲間たちの盾となり、モーショボーがトラフーリを唱えて自分たちを逃し、されどそこに飛竜が追いすがった。
魔法の力で見失おうとも、飛竜は少女を執念で見つけ出しその都度はぐれメタルたちを襲撃した。
元よりトラフーリは距離を空ける呪文ではない。
単純に言えば安全に一歩下がり、敵から意識を外れさせる呪文だ。
シンボルエンカウントの戦闘から逃げ出したところで、敵シンボルは間近にいたままでどこかに行きはしない。
戦場が開けた草原だったことも、はぐれメタルたちには災いした。
どれだけ瞬間的に戦場から離脱しようとも、飛竜に追う意思がある限り、エンカウントは何度でも果たされる。
この戦いにおいてトラフーリは、戦闘を仕切りなおす程度の意味しか持たなかった。
無論、はぐれメタルたちも考えなしに逃げていたわけではなかった。
飛竜が追うのを諦めないと踏んだ彼らは、ならばと南に広がる森を目指した。
森に入ってしまいさえすれば、木々が邪魔で空から探すことは不可能であり、大柄な飛竜では森に侵入することもできまい。

これは、両者にとって森へと逃げこむまでの勝負だった。
時間と距離と速度の勝負だった。

「さっきは守ってくれてありがとね〜。でもさー、あいつの狙いがその子なら、大人しく渡しちゃえばいいんじゃないかな?」
「ダメだよ! そんなの! あいつは危険だ、危険過ぎる!」

モーショボーは術技が、はぐれメタルはその存在そのものが逃走に特化していた。
幾ら相手が空を飛べるとはいえ、この二人のコンビだけなら逃げ切れたはずだ。

「えー、だってほら、なにか訳ありかもしれないし?」
「キミみたいに食べることが目的かもしれないじゃないか!」

それがこうも追いすがられるのははぐれメタルが少女を背負い、その持ち前の素早さを発揮しきれていないからだ。
……否。

「あ、それならほらほら、その子が人間じゃないってばらしちゃうとか!
 キャハハ、ナイスアイディア! あいつが拘ってるのが人間なら文字通り人違いってことで見過ごしてもらえるかも?」
「……そんな理性が残ってるように見える? 多分腹いせで僕たちもこの子も殺されちゃうよ」

はぐれメタルが素早さを発揮できないのは、少女を護るためだけではなかった。
その咆哮が嵐を呼び、その声が風を呼ぶ飛竜の猛攻から少女だけでなくモーショボーを庇うために何度も歩む動作を中断していたからだ。

「……何よ、いい子ちゃんぶっちゃってさー。君さ、そんなこと言ってたら死んじゃうよ?」
「死なない、死にたくないよ。僕は、死にたくない!」

逃走劇の果てにモーショボーのMPははぐれメタルから借りたスリースターズで消耗を抑えてでさえ、疾うの昔に尽きていた。
無理もない、確かに彼女の魔力は低くはなく、覚えてる魔法も悪くはない。
しかし彼女自身のレベルは悪魔の中でも下から数えたほうが早い程低かった。
これまでずっと他人を利用するだけ利用して、自分は強者から逃げ続けてきたのだ。
強くなれているはずがなかった。

「だったらさ。放っていけばいいじゃん。こいつも、モーショボーのことだって放っていけばいいじゃん。
 水銀君に期待なんてしてないって言ったじゃん。モーショボーだっていざとなれば君を切り捨てる気満々だったしさ―。
 ばっかじゃないの、なんでそんな一生懸命モーショボーのことまで守ってんのさー」

だから、そう、モーショボーの言う通りだった。
はぐれメタルは一人でなら逃げ切れた。
重りもなく、余計な行動なんてせず、ただただ逃げることに専念すればもっともっと生きていけたのだ。

でも。そうしたくはなかった。
生きたいという想いと、もう誰かを放って逃げたくないという思いが、彼に誰かと一緒に逃げることを選ばせた。
それに。

「約束、したから……」
「……はぁ?」
「コイキングさんとだけじゃない、キミとだって約束したから」

たとえ逃げ隠れはしても、嘘つきにはなりたくなかった。
コイキングとの約束も、モーショボーとの約束も守りたかった。

「僕は生きる。生きて生きて、長生きして、コイキングさんのことを伝えて!
 モーショボーさんがちゃんとした本物の人間の脳みそが食べられる時まで守――「スピニング、バスタアアアアアアアアアアアアア!」」

守りた、かっ、た……。



【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】

729〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:27:12 ID:u8qQcOS.0



―――願いもまた弱肉強食。得たばかりの目的は鬱積した妄念に駆逐される

それが終わり。
ようやく生きる目的を得たはぐれメタルの、あまりにやりきれない最後。
はぐれメタルは殺された。
“人間を食べる”、その言葉に激昂し、少々乱暴でも一刻も早く少女を助けださねばと決意した飛竜によって。
手加減した風ではぐれメタルが背負っていた少女だけをできるだけ優しく吹き飛ばした後に、突撃からのフィニッシュホールド。
体当たりから何度も何度も打ち上げた果てに大地へと叩きつける打撃技は、奇しくもはぐれメタルが苦手とする武闘家タイプのそれだった。

ぐちゃり、と。
銀の血飛沫を上げてはぐれメタルだったものが潰える。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

銀の屍は勝鬨をあげながら降り立った飛竜の尾に押しつぶされ、糧としてロードされる。
敗者には屍を残すことも許されない。

それでも残せるものがあったとするなら。

「……コイ、きん、グ?」

はぐれメタルがコイキングより託された、彼のことを伝えるというその約束をまた新たに果たせたという事実だけだった。





730〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:27:45 ID:u8qQcOS.0
地面に投げ出された衝撃で、メタモンは目を覚ましていた。
痛い……。
最初に感じたのは痛みだった。
身体を打った痛みだった。
目を覚ませば、楽しい明日が待っているはずなのに、どうして痛いんだろ。
未だふわふわな夢の中にいた半覚醒のメタモンを現実に引き戻したのは誰かが口にした聞き覚えのある言葉だった。

「……コイ、きん、グ?」

コイキング。
知っている名前だ。
長いことを育て屋さんで過ごしたわたしは、色んな人の色んなポケモンとも触れ合って。
コイキングさんとも何度だって遊んだもの。
でも、最近はコイキングさんと遊んでないな。
だって、わたしは捨てられたから。
暗い洞窟の中に置いてかれたから。

あの日以来、生きるのに必死で他のポケモンたちと遊んだりすることはなかった。
ううん、そもそも、自分のことに精一杯で他の誰かを気にする余裕もなかった。
それがコイキングさんなら尚更だ。
コイキングさんたちは弱いから。
あの洞窟で一度も見かけなかったのは、きっと生存競争に負けたか、そうでなければ、隠れ潜んでいたか、運良くギャラドスに進化できたか。
そのどれかだったのだろう。

だから、おかしい。
コイキングの名をここで聞くはずがない。
不思議に思い寝ぼけ眼をこするメタモンは、そこでまた驚愕する。

「あれ……? ドラゴン、さん……?」

おかしい。ドラゴンさんが目の前に居る。
あれ、でもどうしてドラゴンさんが目の前に居るのが、おかしいんだろ?
ドラゴンさんとはともだちになれたんだ。
何もおかしなことないじゃないか。
そうだ、ともだち。
わたしはドラゴンさんとともだちになって、グレイシアさんと、ピクシーさん、ソーナンスさんともともだちになって。
それから、それから、アリs……あ。

メタモンは思い出した。
全てを、思い出した。
友達になったドラゴンはもういないのだ。
友達になったからドラゴンはメタモンをかばって死んでしまったのだ。

「あ、あ、あああ……」
「お、おい、どうした? ……あ、そっか。目を覚ましていきなりなら驚くよな。
 大丈夫、君を襲った奴なら片方は倒した。俺は君の味方だ。
 って、それよりは、えーっと、まずはじ、自己紹介、でいいんだよな!?」

声にならない悲鳴をあげるメタモン。
その様をどう捉えたのか、一人納得した相手は挙動不審にきょろきょろした後、メタモンと目が合うように屈んだ後、お辞儀までして口を開いた。

「は、初めまして、俺のパートナー、俺のテイマー! 俺はエアドラモン、よろしくな!」
「ぱ、パートナー……? てい、まー?」

きょとんとするメタモン。
ようやく寝ぼけから回復してきたとはいえ、突然の展開にメタモンの頭はついてこれない。
きょろきょろと回りを見渡した後、その場に居るもう一匹に気づき、何気なく問いかける。

731〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:28:22 ID:u8qQcOS.0

「えっと。どういう、ことなのかな?」
「……。モーショボーの方が聞きたいよ」

モーショボーとはこの子の名前かな。
メタモンは話しかけた女の子みたいな姿をしたモンスターが背を向けたことに訝しみつつ、もう一度、エアドラモンへと目を移そうとした。
唐突にパートナーだとか言われたから混乱したけど、考えてみれば、数時間前の自分と大差ないじゃないか。
きっと自分にとってのともだちになりましょうと似たような意味合いだったんだ。
メタモンはそう考えた。

「はい、喜んで! ともだちになりましょう、エアドラモンさん!」

甘い考えだった。

「違う、違う、そうじゃない! そうじゃないんだ! 友達、友達、友達ィ! そんなのは要らない、そんなのは捨てた!
 そうじゃない、そうじゃないだろ!? 君はそうじゃないんだ、俺の、俺のおおおおお!」

唾液を振りまき、狂ったように悲痛な叫びをあげるエアドラモン。
メタモンには、自分が何かしてしまったことは分かっても、その訳が分からず、どうすることもできなかった。

「ご、ごめん、ごめんね、エアドラモンさん! でも、ともだちは捨てちゃダメだよ! 捨てられるのはとっても悲しいことなんだよ!」
「黙れ、黙れ黙れ黙ってくれええ! 聞きたくない、俺が聞きたいのはティラノモンのことなんかじゃない! 
 俺を見てくれ! 俺を、俺だけ、を……」

だから、そうかとエアドラモンが静かに口にし、一度顔を伏せた時、その意味をメタモンは図りそこねた。
けれど、次にエアドラモンが顔を上げた時、そこに浮かんだ狂った笑みを目にして、それがろくでもない何かなのは察した。

「そうだ、そうだよな。この場には、まだそいつがいたもんな。
 なら、混乱しちまうのも当たり前だ。二匹もいたんじゃ、どっちがパートナーかなんて分からないもんな。
 悪かった。ごめんな、俺のテイマー。ダメだな、俺は。せっかく君と出会えたのにその嬉しさで冷静さを欠いてしまってるみたいなんだ。
 考えてみれば当然だよな。君が悪いはずがないんだ。悪いのは全部全部全部全部」

ゆらり、とエアドラモンの畳まれていた翼が広がる。
メタモンにはその羽根が悪魔の羽根に見えた。

「俺から君を奪おうとしたこいつらなんだ!」

羽ばたきと同時に撃ち出されたマヒ針は、エアドラモンの気がメタモンに向いているうちに逃げ出そうとしていたモーショボーの矮躯に突き刺さる。

「何すんの、よー……」

小柄な身体が災いし、麻痺毒はすぐさまモーショボーの全身に回る。
モーショボーはパララディも唱えられるが、そうするよりも速く、エアドラモンがその長い尾で彼女をぎりりと締めあげていく。

「キャハハ、ちょっと、モーショボーにSMプレイなんて趣味ないんだけど―。変、態? ロリコ、ン?」
「黙れ、そんなんじゃない! 俺はただ、あの子に、俺がパートナーに相応しい力を持っていることを分かって欲しいだけだ!」

悪態をつくも、モーショボーの声はどんどん苦しげになっていく。
メタモンがそんな彼女を放っておけるわけなく、必死にエアドラモンにしがみついて止めにかかる。

732〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:28:49 ID:u8qQcOS.0
「止めて、止めてよ! わたし、そんなこと望んでないよ!」
「そんな、こと? 君が、よりにもよって君が、そんなことと言うのか!」
「そうだよ、わたしは、わたしはエアドラモンさんがモーショボーちゃんを傷つけることなんて望んでない!」
「うるさい、うるさい、うるさい! 君も分かってくれるはずだ! 力さえ見せれば、俺の力さえ見せれば!」
「分からないよ! 分かりたくなんてないよ!」
「力さえあれば、誰かが振り向いてくれる! 強ければ人気が出る!
 それを君が、よりにもよって君が否定するのか!?」

一瞬、メタモンは言葉に詰まった。
エアドラモンが何故そうまでして、自分を求めているのかは分からない。
ただ、彼の言っていることは痛いほどに理解できた。
それはメタモンにとってもずっと抱えてきた未練だったから。

力さえあれば。
わたしが、もっともっと優秀な個体で、新しいあのメタモンよりも優秀だったなら。
ずっとトレーナーさんの傍に居させて貰えたかもしれない。
あの優しい笑顔をわたしに向けてもらえていたかもしれない。

分かる、分かる、分かる。
エアドラモンの願いは、自分の未練でもあり、よりにもよってわたしが否定しても何の説得力もない。
でもだからこそ、わたしが、このわたしが否定しなきゃいけないんだ。

「……違うよ」

わたしは、泣いていた。
これから告げるその言葉、その意味を分かった上で告げるのが辛くて悲しくて、泣いていた。

「確かに力さえあれば、必要とされるかもしれない。求められるかもしれない。
 でも、そんな力だけで結びついた関係じゃ、いつか、あなたよりもっと強い新しい子が現れた時、あなたは捨てられちゃう。
 そんなのふわふわじゃないよ。ちっとも、ふわふわじゃない」

それはエアドラモンさんに告げると同時に、自分にも言い聞かせる言葉。
あの人と、トレーナーさんとの――別れの言葉。

「だからこそ力が必要なんじゃないか、強ければ、誰よりも強ければ、捨てられることもない!」
「しねばともだちになれるなんておかしいよ! 殺せばパートナーができるなんておかしいよ!
 みんな必死に生きているのに、人気のためなんて理由で命が失われるなんてわたし、嫌だよ!」

さようなら、ありがとう、大好きでした。……ごめんなさい。





733〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:29:11 ID:u8qQcOS.0
力が欲しかった。
ずっと力を欲していた。
誰かの顔色を伺ったりなんかしないで、強者に怯え続けたりしないで、胸を張って生きていける、そんな力に憧れていた。
モーショボー。
モンゴルに伝わる鳥の魔物。
悪しき鳥。
愛を知らずに死んだ少女が変じた悪魔。
愛を知らぬからこそ、モーショボーにとって、愛で結びついた関係なんて想像もつかなくて。
他人なんて、物理的にも、関係的にも、食うか食われるか、ただそれだけのものだった。

それは、今この時も変わらない。
はぐれメタルに命がけで守られようとも、ピンクの少女の訴えを耳にしようとも。
既に死に、悪魔と化してしまった時点で、彼女が愛を知ることは永遠にない。

ただ、それでも。
悪魔にだって、心はある。
はぐれメタルや、ピンクの少女の言葉に綺麗事だと唾を吐きつつも、惹かれるものがあったのは嘘じゃない。

きっとそれは、はぐれメタルもピンクの少女もこちら側だったから。
強者に振り回され、無力を嘆き、生きるのに必死な此方側だったから。
自分と同じ境遇の彼らが、それでもと明日を夢見て、希望を唄い、力を否定するその姿が、モーショボーには輝いて見えたのだ。

自分も、あんなふうに生きられたなら。
力がなくても、強く生きられたなら。

「だからこそ力が必要なんじゃないか、強ければ、誰よりも強ければ、捨てられることもない!」
「キャハハ」

おかしな話だ。
今、自分は殺されようとしている。
なのに、生きられたらなんて夢物語を考えている。

「死ねばともだちになれるなんておかしいよ! 殺せばパートナーができるなんておかしいよ!
 みんな必死に生きているのに、人気のためなんて理由で命が失われるなんてわたし、嫌だよ!」
「キャハハハハ」

でも、いいじゃない。
どうせこれで最後なんだし。
最後くらい上手くズルくじゃなくて、馬鹿になって馬鹿なことをやってみよう。

「キャハハハハハハハハハハハハ!」
「何がおかしい!?」

このくそったれな強者/エアドラモンに、今まで好き放題してくれた強者たち/世界の理に、一矢報いて死んでやろう。

「おかしい? そうよ、こんなの絶対おかしいよねー。だってさー、そこの子の言う通りじゃない。
 モーショボーたちはみんな生きるだけで必死だったのに。
 よりにもよってそんなモーショボーや水銀君を殺す理由が、生きるためじゃなくて人気?
 キャハハハハハハハハハハハハ、受ける〜! これだから恵まれてる奴は大っ嫌い!」
「恵まれてる? この俺が!? 不遇デジモンのこの俺が恵まれてるだと!?」

恵まれてるじゃん。その大きな翼は大空を自由に飛べるんだから。

734〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:29:38 ID:u8qQcOS.0

「だってそうじゃない! 不遇? それで?
 それが命に関わったりするの? しないよね? 
 そもそもテイマーだとかパートナーだとか、そんなのが欲しいだなんて思えるのが、余裕のある証拠なんだってば」

生きるのに必死なら自分のことしか考えられない。
他人はみんな利用するかされるかで、愛のある関係なんて想像もつかない。
それが想像できるってことが、どれだけ幸せなことか、考えたこと、ある?

「違う、違う、違う! 俺は恵まれてなんかいない! 不遇だからこそ力を得て人気にならなきゃいけないんだ!
 おまえに、おまえに俺の何が分かる!?」
「分かりたくもないよ、強者の傲慢なんてさー。そっちこそ分かってる?
 そんな道楽で振り回される弱者の気持ちが。生きる希望を持てたばかりなのに踏み潰されちゃった水銀君の気持ちがさ。
 ねえ、分かるの? 分かるの? 分かった上でモーショボーたちは殺されるの?
 キャハハ! だったらやっぱり笑うしかないよねー」

本当に、笑うしかない。
強者たちはその力で、自分の我を押し通せる。
人間の脳みそだって食べ放題だ。
美味しいものが食べたいだなんて理由で、必死に生きる命をぷちりと踏み潰せる。
ああ、なんて羨ましい。

「うるさい、うるさい、うるさい、黙れ黙れ黙れ黙れええええええええ!」

なんて妬ましい。なんて腹立たしい。なんてムカつく。

「黙るのはそっち」

一刻も早く黙らせようと、締め付けるのに飽きたらず、喰い殺しに来るエアドラモン。
その馬鹿みたいに開かれた大顎に呑み込まれゆく中、モーショボーは笑っていた。
今までで、一番、楽しそうに笑っていた。

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

笑って、笑って、笑い尽くした果てに、凶鳥は歌い、羽根を広げる。
大空に祈るように光に包まれる。
ずっと繰り返されてきた過ちが吹き飛ぶように鳥の歌を響かせる。

――バイナルストライク――

月明かりが照らす光のない世界で、モーショボーは時間の許すまで少し笑った。
強者も弱者も飲み込んだ爆発に吹き飛ばされながらも、凶鳥は高く光を目指した。
広がる世界を見渡すために、小さな翼は風に乗り、

「バーカバーカ。ざまあみろ」

そして涙と共に消えた。





【凶鳥モーショボー@女神転生シリーズ 死亡】





735〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:29:59 ID:u8qQcOS.0

どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
口内からのモーショボーの自爆によって瀕死の重傷を負ったエアドラモンの脳裏を走馬灯が駆け巡る。

あの後、ティラノモンを殺しかけ、それをライチュウに庇われたエアドラモンは、泣きながら空を彷徨った。
どこをどう飛んだのか、覚えていなかった。
どこに向かっているのかも、分からなかった。
自分が何故泣いているのかも分からない。
友を本気で殺しかねなかったことにショックを受けているのか。
あるいは、自分が欲したものを捨ててまで自分が切り捨てたものを守ろうとしたピカチュウのことを、羨ましいと認めてしまうのが嫌だったからか。
答えを出すことから逃れるように、エアドラモンは全速で飛び続けた。
飛び続けて、飛び続けて。
もしかしたら、このまま飛び続けていれば、何かが変わったかもしれないその空の最中で。
エアドラモンは、それを、見つけてしまった。

奇跡だった。

それは、エアドラモンにとって奇跡だった。
遥か空の上から、その小さな姿が目に入ったのも奇跡ならば、その存在そのものも奇跡だった。

人間だ。人間の少女だ。

何故、こんなところに人間の少女がいるかなどと、疑問を持つことはなかった。
人間はエアドラモンを呼び機会を与えた。
エアドラモンは人間に選ばれるために戦って殺してきた。
なら、遂にその時が来たのだ。

俺は人間に、認められたのだ!
やはりライチュウになってしまったとはいえ元ピカチュウに勝ったのが大きかったか!?
いや、それ以前にエンジェモン系列を倒したことで注目されだしてたんじゃ!?
なら、トドメは俺だけのスピニングバスターでハートをがっちりつかめたってことか!?
やった、やったぞ、やったんだ!

もはやエアドラモンに自分が選んだ道が間違っていたことへの苦悩はなかった。
あるいは、その苦悩から逃れるために、自分は正しかったのだと正当化したのかもしれない。

言うまでもないことだが、その少女とはメタモンだった。
彼女を見つけられたのも、少女を運ぶはぐれメタルのボディが夕日の光を反射し、エアドラモンの気を惹いたからに過ぎなかった。
だが、エアドラモンはその真実を知らない。
知ったところで決して受け入れようとはしなかっただろう。
狂愛は盲目で、相手のことではなく、自分のことしか見えなくなっていた。
世界が、エアドラモンの望むがままに、都合のいいように歪んで認知されていく。

エアドラモンは、少女を連れて行るモンスター二匹を、少女を襲った敵だと決めつけた。
きっと少女はエアドラモンの活躍を見て、いてもたってもいられず、この島に飛び込んできたのだ。
そういえばさっき、飛行船を遠くに見た気がする。
もしかしたらあれに乗って、エアドラモンに会いに来たのかもしれない。
でも、そこで、あの二匹のデジモンに見つかって襲われたんだ。
エンジェモンっぽかった奴のように、人間に裏切られたと思って危害を加える奴らがいてもおかしくない。
なら、あの子が危険だ。
あいつらから助けないといけない。
それにもし、そうやってかっこいい姿をあの子に見せれたら、あの子はより俺のことを好きになってくれるはずだ!

736〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:30:44 ID:u8qQcOS.0
追撃戦の果てにエアドラモンは、見事少女を救い出した。
銀色のバブモンはやたらと硬かくて、もしかしたら完全体のメタル系だったのかもしれないが、だからこそ、スピニングホールドの強さが映えたことだろう。
かっこよく勝鬨をあげたエアドラモンに応えるかのように、少女が目を覚ました。
焦点の合わぬ目で、ぽけーっとして寝言を呟いている少女を愛おしく感じた。
けど、なんでだろう。彼女は急に口をぱくぱくしだしたんだ。
ああ、そうか、彼女はバブモンたちに襲われた後だったんだ。
俺のこともあいつらの仲間だと思ってるのかもしれない。
或いはいきなり実物の俺が目の前にいて驚いているパターンもありえるな。

だからエアドラモンはまずは少女を安心させるために、自分は敵じゃなく、少女のパートナーなんだとアピールすることにした。
少女はどうにも合点がいっていないようだが、疑問に思うことはなかった。
どころか、現状を理解していない少女の様子に、もしや選ばれし子供達パターンか!?などと内心ガッツポーズしていたくらいだ。
ともだちにと言われた時は、ついついティラノモンのこともあって過剰反応してしまったが、彼女はこっちの事情を知らないのだ。

この子は悪く無い、悪いのは今もこそこそ逃げ出そうとしているこの子を怖がらせたデジモンだ。
色気のないレディーデビモンだ。
そうだ、そうに違いない、そうできゃいけない。
この子が泣いているのも、この子が拒絶してくるのも、この子が俺を否定するのも。
こいつの、こいつの、こいつのせいなんだ!

その憎きデジモンは、あろうことか俺ののことを恵まれていると称した。
いつも俺がグレイモンやガルルモンに向けていた妬みの目で俺を見つめてきた。
俺の根幹を揺るがすその目が、その声が耐えられなくて、俺は奴を黙らせた。

その結果が、このザマだった。
俺は力を得たはずだ。
エンジェモンを、ピカチュウを、メタル系を超える力を手に入れたはずだ。

なのに何故、俺は今、地に伏している!?
ダメだ、ダメなんだ、俺は負けちゃダメなんだ。
弱くちゃダメなんだ。少女だって言ってたじゃないか。
弱かったら捨てられると。この子のためにも俺は、もっと強くならなくちゃいけない。
誰よりも強くならなくちゃならない。

そのためにも。
そのためにも。

お前は邪魔だ、お前は邪魔だ、“エアドラモン”!

どうしてこんなことになってしまったのか。
その答えは既に出ている。
エアドラモンだからだ。
俺が、エアドラモンだからだ!

俺がエアドラモンだからティラノモンなんかにまとわり付かれ、大空を羽ばたけない。
俺がエアドラモンだからどれだけ強くなっても少女は振り向いてくれない。
俺がエアドラモンだから、不遇だとか、人気だとかを気にして、そこをとやかく言われて心乱れる。

俺が、エアドラモンでさえなければ。
俺が、大手を振れる強いデジモンなら。
俺は、俺は、俺は、パートナーを得られるんだ!

消えろ、消えろ、エアドラモン!!!
お前は、俺に、必要ないんだあああああああああ!!!
……だから……。

―――だからッ!!

737〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:31:34 ID:u8qQcOS.0

  Air Dramon        エアドラモン     Air Dramon
    エアドラモン  Air Dramon       エアドラモン


      『エアドラモン、超進化―――――ッ!!!』


   Air Dramon    エアドラモン        Air Dramon
 エアドラモン    Air Dramon        エアドラモン





――力が、欲しいか?

欲しい。欲しい。欲しい! 力が、チカラがほしい! 進化できるチカラを! エアドラモンを捨てされるチカラを! 誰かが振り向いてくれるチカラを!

――ならばくれてやる。この我の“ムー”の残滓を全て貴様にくれてやる!




738〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:32:10 ID:u8qQcOS.0
こうして、エアドラモンは完全体へと進化を果たした。
はぐれメタルを倒し、莫大な経験値を得た時点で、既に進化は可能になっていたのだ。
ならば、その完全体とはなんだ?
メガドラモンか?
否。
サイバードラモンか?
否。
カラテンモンか?
否。

他人のとは言え正規の進化ルートに乗るには、エアドラモンはイレギュラーを取り込みすぎた。
エンジェモンをロードした、ピカチュウを殺した、はぐれメタルの心を得た、モーショボーの生き血をすすった。
天使、獣、メタル、悪魔。
それだけの力を取り込み、かつエアドラモンに縁のあるデジモンといえば一体だけだ。
ただの一体だけだ。

「まさか……」

隠形の術にてずっとこの戦いを見守り続けていたレナモンが、降臨した魔獣の姿に慄き、声を漏らす。
忘れるはずがなかった。
メタルエンパイアの侵攻の最中、森に住んでいたカブテリモンが戦いに狂い、闇に呑まれ、暗黒進化してしまったのをその魔獣の姿を。
レナモンが護りたかった多くの命を奪ったそのデジモンの名前を。

「だが、だがあれは、なんだというのだ……」

エアドラモンが魔獣に進化したことは、驚きはしたものの、まだ受け入れられるものだった。
カブテリモンが進化することもあるのだ。
同じく魔獣のパーツを構成するエアドラモンがキメラモンに進化しうるのも分からなくはない。

けれど、だが、しかし!

「あれもまた、力の果てというのか……。あんなものが私の求めたものだとでもいうのか!?」

その姿は、レナモンが知る魔獣と比べても異形だった。
拘束された天使の翼、女物の着物を纏った悪魔の腕、オレンジ色と黄色に彩られた獣の脚部、泡立つ鋼の髪。
そして何より、その胴と頭部を構成する、白い毛に覆われた暗黒のドラゴン!
不完全な完全体、完全で不完全な蟲毒の獣。

「ル、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」




合成魔獣 キメラモン ここに 降誕

739〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:33:34 ID:u8qQcOS.0
【C-5/草原/一日目/夜】
【レナモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:???
1:???
[備考]
メス。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。

※エアドラモンとはぐれメタルたちの戦いの顛末を全て見聞きしていました。



【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:少女に変身中、疲労(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身なし)
[思考・状況]
基本:みんなを笑顔にして、幸せにする
 1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する。今はエアドラモンを止めたい
 2:”ともだち”をつくる
 3:アリスが気にかかる



【キメラモン(エアドラモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:狂乱、暗黒進化 ※ダメージなどは進化時に全快済
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:誰よりも強く――
 1:――
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。
数多のロードと莫大な経験値、デビモンならぬムーの残滓によりキメラモンへの進化ルートが開通しました。
キメラモンを構成するパーツのうち、幾つかにロードしたモンスターたちの面影が見られます。
現在、グレイモン部分にムー、エンジェモン部分にエンジェル、デビモン部分にモーショボー、メタルグレイモン部分にはぐれメタル、ガルルモン部分にピカチュウ。
ただし、逆に屍や虫、恐竜に対応するデジモンは取り込んでいないため、あくまでも完全体としてのキメラモン止まりです。

※メタモンのことを人間と勘違いしています
※はぐれメタルからモーショボーに渡ったスリースターズ@ファイナルファンタジー?はバイナルストライクやエアドラモンによるロードで消滅しました。

740〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 21:34:07 ID:u8qQcOS.0
投下終了です

741〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 22:01:42 ID:u8qQcOS.0
あ、申し訳ない。
ネタバレにつきぼかしますが、ライチュウの部分がピカチュウになってました。
どちらにせよ本来のあの部分が黄とオレンジな感じになっているだけですので大差はないのですが

742〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 22:04:38 ID:u8qQcOS.0
というか外見に関して言えば、全体的に単なる色違いでイメージしていただいて大体大丈夫かと
変なところで把握難度や描写難度、読む難度を上げたくもないですし
お好きな様にお任せします

743〜チカラ〜  ◆TAEv0TJMEI:2013/09/08(日) 22:06:49 ID:u8qQcOS.0
もちろん異形異形していただいても構いませんので
今回は敢えて最後のについては書ききっていませんし、リレーする方のお好きな様に
では、長々と失礼しました

744 ◆Bu4r51EP82:2013/09/09(月) 00:24:16 ID:hOoGMLys0
投下乙です。
そこまで堕ちたか、エアドラモン……と言わざるを得ない全編を通した狂態
モーショボーやはぐれメタルの生きたいという願いも、エアドラモンの人気が欲しい……というより、認めて欲しいという願いも、
叶わなかった願いは呪いになって、それがこんな魔獣を生んでしまったんだろうな……
残されたメタモンやレナモンがそれを見て感じ取る姿も含めて、全編通して物悲しいお話でした

……ところで、余韻も何もぶち壊しかもしれませんが、
メタルティラノモン(アグモン)、ベヒーモス、ルカリオ、メタモン、レナモン、キメラモン(エアドラモン)で予約します

745 ◆5omSWLaE/2:2013/09/09(月) 00:43:01 ID:2Ttqtct.0
投下お疲れ様です
歪みながら狂いながら、ひたすら力を得た者の成れの果て、それは異形の怪物

はぐれメタルとモーショボーが、強者に振り回されてなんとも哀れな末路……
モーショボーの弱者であるが故の言葉、ものの見方は、非常に重く感じました
エアドラモンが不遇不遇嘆いているのが非常に贅沢なことに思えてきます
彼女の言葉もメタモンの言葉も全く届くことなく、エアドラモンは力と引き換えに奈落へと落ちていく
内面の狂気に見合った混沌とした姿を手に入れましたが、一体どこまで暴れてくれるでしょうか

746 ◆5omSWLaE/2:2013/09/15(日) 08:32:43 ID:FeovMc1o0
月報集計お疲れ様です〜
闘技場 66話(+13) 23/50 (- 6) 46 (- 12)

747 ◆Bu4r51EP82:2013/09/15(日) 18:13:45 ID:NiYqi59M0
予約を延長します

748 ◆Bu4r51EP82:2013/09/17(火) 21:00:30 ID:xyyzS.4k0
延長までしておいて申し訳ありません、予約を破棄します

749名無しさん:2013/09/17(火) 21:05:14 ID:G7uim/7M0
了解です

750 ◆3g7ttdMh3Q:2013/09/22(日) 02:24:47 ID:lODJLvkM0
アグモン、、ルカリオ、メタモン、レナモン、エアドラモン、魔人アリスを予約します

751名無しさん:2013/09/22(日) 02:50:03 ID:5sF5KfgM0
おお!

752 ◆3g7ttdMh3Q:2013/09/22(日) 05:45:36 ID:lODJLvkM0
ルカリオを予約から除外し、ワームモンを追加で予約します

753名無しさん:2013/09/22(日) 11:14:05 ID:5sF5KfgM0
あら、了解です

754 ◆7NiTLrWgSs:2013/09/23(月) 00:46:52 ID:ry2kMpYs0
ギリメカラ、ライガー、オルトロス、ゲル、プチヒーローで予約します

755 ◆3g7ttdMh3Q:2013/09/28(土) 19:04:03 ID:yqLpSlzQ0
延長させていただきます

756 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 19:37:22 ID:CmE304tM0
時間帯が夕方から夜に切り替わり始めたので、
いわゆる定時放送のような話を挟みたいと思います。
モリーを予約致します

757名無しさん:2013/09/28(土) 22:53:23 ID:yFjWaQgs0
了解です
氏は1の人ですし、どういった話か楽しみにしておきます

758 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 23:10:52 ID:CmE304tM0
完成したので、モリー投下致します
タイトルは『第一回生存者報告』です

759 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 23:11:21 ID:CmE304tM0
チャッキーが刃を振るうたび、肉製のブーメランを叩きつけるたび。スライムたちの体が容易く散っていく。
周囲には青い体液が弾け飛んで、赤く染まったチャッキーのボディがどろりとした青い液でコーティングされる。
その、面白いようにガンガン蹴散らされていく様、鮮やかな剣捌き、演舞の如し。
これぞ"無双"。爽快で痛快な光景。
その華麗な姿に人々は興奮し、熱狂するのである。

かたかたかたと乾いた笑い声を響かせながら、ダークヒーローは画面の外へと姿を消した。

「生中継でお送り致しました。チャッキーVSスライム軍団! 見事チャッキーの圧勝となりました」
「いやぁ、実に素晴らしい戦いでしたねぇ」
「情け、容赦が無いと言いますか。見ているこっちまで手に汗握るようなバトルでしたよ」

テレビモニターは戦いの映像から画面を切り替え、スタジオの様子を映す。
斜めに向き合うように並ぶ机に着いて、アナウンサーや芸能人、コメンテーターが先ほどの戦いについて口々に語っている。

〜〜〜〜〜

「ケッ、悪趣味だな。アンタはあれを見て愉快な気持ちになるのか?」
「無論だとも。モンスターバトルはやはり心が踊る。魔物たちが最も輝ける姿だ。
 その様子を見てたくさんの人々が感銘を受けるのであれば、わしも企画した甲斐があるというものだ」
「あれをモンスターバトルと一緒にするな。あんなのはただの殺戮だ」
「モンスターバトルの意味を定義したのも、それを大衆に広めたのもわしなのだぞ?
 だから、わしがあれをモンスターバトルと言えば、そうなるんじゃないかね?」
「といっても、今のあんたは昔とはもはや別人に見えるぜ、モリーさんよ」

モンスターマスターの少年は目の前の男を鋭く睨みつける。

齢15歳のこの少年は、この『殺戮ショー』を許すことが出来なかった。
彼にとってモンスターとは、人間と共に生きる友であり、相棒であり、時にパートナーとなる存在である。
共に修行して、共に戦うことでマスターとモンスターの絆を深め合う……それが彼の知るモンスターバトルだ。
しかし、この催しは違う。島の中にモンスターを隔離し、娯楽のためだけにむやみに命を奪い合わせているだけ。
モンスターを賭博の道具として消費するなんて、どうしてそんな狂ったことが大々的に行えるのか?
この世界はどうかしている。

そして彼は主催者のモリーを止めるために、ここまでたどり着いた。
ここは闘技場のビルの最上階。
巨大なモニターが設置されたこの部屋に、モリーと、少年と、少年が連れる魔物エンゼルスライムがいる。
モニターを見つめていたモリーは椅子をくるりと回転させ、少年と顔を合わせた。

「フン、勇敢なキッド、ユーが来ることは風のウワサから既に聞いていたぞ。
 だがな、勇敢と無謀は取り違えてはいかん。ここはユーのような子供が遊びで入ってもいい場所ではないのだ。
 今ならばまだ見逃してやろう。だが、このままわしの前に立ちふさがるのであれば容赦は無いぞ」
「上等だな。ガキだと思って舐めてかかったことを後悔するがいいさ」
「ほう、ではユーの魔物を見せてみるがいい。まさかそのエンゼルスライム一体だけではないだろう」
「ああ、もちろん」

少年は不敵な笑みを浮かべ、指をパチリと鳴らす。
激しい轟音、それと共に壁の一部が破壊される――巨大な斧による一撃。
夕日を背景にして、そこには黒い鎧に身を包んだゴールデンゴーレムが姿があった。
パァンと火薬の爆ぜる音、モリーの背後のモニターに小さな穴が開き、蜘蛛の巣のような亀裂が入る。
宙を華麗に舞いながら、ショットガンを構えた狡猾な悪魔……バズズが姿を現した。

「……ほう、随分と変わった装備を持たせているんだな」
「あぁ、アンタに備えて万全な武装をさせてもらっているぜ。この闘技場の宝箱から拝借させてもらったものさ。
 覚悟しろよ、お前の企みはここで終わらせる……!」
「グレイトだ、キッド。ユーの魔物を一目見ただけで、ユーが魔物にどれほどの愛情を注いだのか伝わったぞ。
 ならば、わしもそれに応えよう。わしが作り上げた『最強のモンスター』たちの力を見せてやろうではないか!」

760 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 23:11:37 ID:CmE304tM0


 ◆


「……さて、番組の途中ですがここで現在までの生存モンスターについての情報が確定したようです」
「おお、ついに来ましたか。いくつか映像は見てきたけど、全体的にどのくらい生き残ってるのかまで把握しきれないからね」
「それではこちらをご覧下さい」

司会者がパネルをタッチすると、ズラリとモンスターたちの名前が並べられる。

「現在確認されているモンスターは……。

はぐれメタル、モルボル、ベヒーモス、オルトロス、セイレーン、メタモン、
ソーナンス、キノガッサ、ルカリオ、グレイシア、ジュペッタ、ジャックフロスト、
ギリメカラ、モーショボー、ハムライガー、ピクシー、ゲルキゾク、チャッキー、
アグモン、ガブモン、ワームモン、レナモン、エアドラモン

 18時現在、以上の23体となっております」

「なんか全然見てなかったモンスターが2、3体いるね。セイレーンとかジャックフロストとか出てた?」
「ジャックフロストはさっきいましたよ。キノガッサと肉弾戦してましたね」
「ていうかこの生存モンスター見た感じ、凄いことになってますよね。
 当初勝ち残るだろうなって思われてたモンスター、すえきすえぞーとかガブリアスとか、結構やられちゃってるんですよ」
「そうそう……それなんだけどさ、俺さ、ガブリアスを応援してたんだけどさぁ。
 なんかやられたシーン放送されないまま倒されちゃってるんすよ。それどうなってんの」
「どうやらB-6とかC-6とかは、戦いによってカメラが破壊されてしまってるようで、まともな映像が撮れないそうです。
 上空からの映像とか、遠距離からの映像を検証して、ようやくガブリアスらしき死体が発見されたみたいですよ」
「えぇーっ、なにそれ酷い。誰っすかガブリアスやったやつ」
「あの辺り一帯は全然戦況がわかりませんけど、調査次第では誰が倒したかもわかるらしいです」
「とりあえず、まだまだ先の展開は読めないってことですね。今後の戦いにも期待が持てますねぇ」



 ◆



「う、嘘だろ……おい、エルゼ、ゴラム、バズー……起きてくれよ」

少年は呆然と立ち尽くしたまま、無残に倒れ伏す仲間の姿に絶望の色を見せていた。
周囲を取り囲む奇怪な機械やデモノイドの群れ、そいつらに為す術もなく薙ぎ倒された。

――全滅。

少年は、自分の目の前が黒に染まるのを感じた。

「ふざけんなよ……こんなのって無ぇだろ……。俺がここで止められなきゃ、あのモンスターたちはこのまま……」
「いいかキッド、世界はユーが思うよりも不条理だ。勇気と正論が勝つとは限らない。
 より多くの支持を得た者が、より多くの優秀な兵を持った者こそが勝つのだ。
 それが例え、どれほど『正しい行い』や『善』と掛け離れていてもだ」
「クソッ、最低な野郎だ、てめぇ……!」

その目に、込み上げる怒りを注ぎ込んで、睨みつける。
それを意に返す様子もなく、モリーは事務的な声で自分の魔物へと命じる。

「連れて行け」

すぐさま一体の人型造魔が少年を捕らえ、奥の部屋へと引っ張っていく。
これ以上この少年と話す事はもう無い。
ゆえに、彼の喚き散らす言葉ももはやモリーの耳には入らない。
どれだけ必死にもがこうと、戦う力を持たない人間には悪魔に抵抗することは出来ない。
これにて、彼の冒険はここで終わる。

『モリー様、この魔物の死体はどう致しますか?』
「処分はするな。次の戦いの時に使用する」
『かしこまりました』

機械的な女性の声で応答し、キラーマシン2は手始めにバズズの死体から運び始めた。

761 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 23:13:56 ID:CmE304tM0


 ◆


不意にピリリリリ、というなんとも電子的な着信音が鳴った。
相手はモリーの弟子のミリー、飛行船の乗員を任せている者であった。

「どうかしたのか」
「モリー様ぁ、遊覧用の飛行船なんですけど、お客さまにサービスしようとし過ぎた結果、かなり運行がゆっくりになっちゃいました。
 ホントは二時間経った時点で帰ろうと思ったんですけど、お客様たちの強いご希望があったので最後まで回ることにしました」
「それは構わないが、あまり長時間魔物どもに刺激を与えるのは危険だぞ」
「大丈夫ですよ、急ぎ目に行きますから。それに、こんな万全の防御が施されてる飛行船が落ちるわけないですよぉ」
「イレギュラーの存在もあるからな。最大限に注意を払うのだ」
「わかりましたぁ」

ミリーの報告を受けて、不安がこみ上げてきた。
別に彼女のノリの軽い口調のせいではない。いつもの事だ。
しかし、彼女が飛行船の安全性に慢心している所が気がかりだった。
『万全の防御』は決して『完璧な安全』では無いのだから。

不安要素としてモリーの脳内に真っ先に浮かんだのは、イレギュラーの存在であった。

六時間と少し前の時、魔物たちを島へ送り届けた後のことだった。
島の様子を映し出すカメラに、青いドレスをまとった少女の姿があった。
モリーはそれを見て、どこかの子供が忍び込んでいたのだと思い、大いに焦った。
しかし、少女がカメラの方を振り向いた瞬間、映像が途切れた。何かしらの魔法で破壊されたのだ。

振り向き様に一瞬だけ見えたその瞳、モリーは一目でその少女が人外の者であると判別した。
空虚のような瞳、見るものに死を彷彿させる雰囲気、そして直感でわかる恐怖。
決して下位の者ではない、最上位に値するであろうものであった。
故に彼女を連れ戻すことは困難であろう。部下を派遣しても返り討ちに遭うリスクが高い。
そこでモリーは急遽、その悪魔を51体目の参加者として追加したのだ。
青いドレスに金色の髪の女性、その特徴に最も当てはまる魔物『セイレーン』という仮名をつけて、名簿に登録した。

『魔人アリス』――数多くの魔物を知り尽くしたモリーも、その少女の名を聞いたことは無かった。

戦いが開始されると、彼女のセイレーンの非では無いほど高いものだとわかった。
参加者のうちでも上位に入るであろう強さの魔物を複数相手にして、悠々と勝ち残っているのだから。
ヘタをすればこの戦いにおけるバランスブレイカーにもなりかねない、得体の知れない存在。
そして何より、彼女に関する情報がほとんど無い事が、モリーの心にざわめきを起こしていた。

「今のところセイレーンに動きは見られないからな……流石に、休息を取っているに違いあるまい。
 その間にどうにか北側のルートを抜けてくれれば、飛行船も面倒事には巻き込まれずに済むはずだ」

希望的観測とも取れる判断だが、おそらく大きな問題は無いだろう、彼はそう考えた。
一部の人はこれを『フラグ』と呼ぶのだが、あいにく彼はそのことも知らなかった。

【*-*/闘技場本部/一日目/夕方】

※生存者の放送内容ですが、プチヒーローの姿がジュペッタなため、ジュペッタが生存していると思われています。
 また、魔人アリスはセイレーン@ファイナルファンタジーシリーズとして登録されているようです。

762 ◆5omSWLaE/2:2013/09/28(土) 23:14:32 ID:CmE304tM0
以上で投下終了です
問題点、意見などがあれば指摘して頂ければ幸いです

763名無しさん:2013/09/28(土) 23:49:21 ID:yFjWaQgs0
投下乙!
モリーはモンスターマスター返り討ちできるだけの戦力あるんだけど、本人の言ってることが全部ブーメランするフラグにしか見えないwww
そのセイレーンことアリス、あんたのいう不条理の塊だから!
どう考えてもホラーフラグだよ、カメラ壊しとか!w

764 ◆5omSWLaE/2:2013/09/29(日) 01:11:42 ID:tPRLia7w0
※飛行船は『夜中』の時間帯までには撤収する予定となっております。

最後の注意事項に、こちらも付け足します。
あくまで予定ですので、飛行船に異常があった場合はこの限りではありません。

765 ◆7NiTLrWgSs:2013/09/30(月) 20:37:49 ID:MCcVWHx.0
延長します

766名無しさん:2013/09/30(月) 21:11:15 ID:lOtGaG0s0
投下乙です。
やっぱ主催側の描写が出てくるたびに、この催しの終わりが近づいてるのを改めて感じるなー。
管理側の失敗要素も出揃ってきて、反抗の目もあるように思えて楽しみ。
どうでもいいけど、キッド(仮)はすごい好感が持てる主人公みたいなマスターだけど、手持ちのモンスターがどっかで見たことがあるような……?

767名無しさん:2013/10/02(水) 16:31:42 ID:NFZjI2Po0
あそこは連続で期限切れか……
やはり一つの山場だからな

768君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:33:09 ID:rnNNNPDM0
期限切れましたので、現在完成分である
レナモン、メタモン、キメラモンパートを投下します。

769君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:33:26 ID:rnNNNPDM0

まるで時間が奪い去られてしまったかのように、
生きるということを忘れてしまったかのように、
声を上げることも、逃げようとすることも、出来なかった。
「ル、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
怪物が産声をあげた。
祝福するものはこの世界に誰一人としていない。
求めるが故に、彼は全てを捨ててしまった。
もう帰れない。
行き着く所まで行ってしまった。
さよなら――彼はそんな言葉を聞いたような気がした。
声の主は解らない。分からなくていい。わかるひつようがあるのか?
今、するべきことは唯一つ。
怪物の――クワガーモンの、スカルグレイモンの、モー・ショボーの腕が、掴めなかった者達の腕が伸びる。
怪物の中の■■が命ずる!■■■■■■が叫ぶ!
『二度と離さぬように!その腕に収めよ!』

迫る6本の絶望、メタモンはそれを大人しく受け入れることはしない。
大人しくその腕に抱かれれば、殺されることはないだろう。
だが、■■■■■■ははぐれメタルを殺し、モー・ショボーを死に至らしめた。
その理由は理解できない。
だからか?理解できないからこそ、■■■■■■は怪物になってしまったのか?
いや、そんなことを考えている暇はない。
目の前の怪物と戦わなければならない。
戦わなければ、この場所で出会った友達を殺されてしまう。
嫌だ――呪殺されたドラゴンの死が、
消え去ってしまったモー・ショボーの死が、メタモンを奮い立たせる。
「へんしん」
高く、翔べ――
6本の腕が地面へと突き刺さる。
そこにメタモンの姿はない。

770君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:33:38 ID:rnNNNPDM0

「キャハハハハハ」
怪物は聞いた、聞こえるはずのない声を。
「二度も……」
怪物は見た、見るはずのない敵を。
「殺されてなんてあーげないっ!!」
誰かが、伝えなければいけない。
ドラゴンの死を、モー・ショボーの死を。
そうでなければ、彼らの友達は悲しむことすら出来なくなってしまう。

「へんしん」

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
怪物より伸びたモー・ショボーの腕は世界最硬の金属によって弾かれる。

私は殺されない――殺させない。

「伝えなきゃいけないんだ……コイキングさんのことを」
腕の乱舞は、世界最速には届かない。

不思議に思う。私は誰に変身しているんだろう。
気づけば、涙が溢れていた。
私は知らない。
私は知りたかった。
友達になりたかった。

はぐれメタルとメタモンは一言も言葉を交わすことは出来なかった。
まるで最初から存在しなかったかのように、はぐれメタルの死は消えた。
それでも、メタモンは覚えている。
知らなくても、忘れない。


「ありがとう」

目の前の怪物は未だ、自分のチカラに慣れていない。
ただ、腕を振るうことしか出来ていない。

「へんしん」

倒すならば、今しかない。

怪物は思考する。
目の前の少女が消えてしまった、何故だ。
少女は人間ではなかったから――単純な答えを怪物は否定する。
そうであってはならない、少女は人間でなければならない。
現実と理想が食い違うのならば、現実のほうを捻じ曲げなければならない。
そうでなければ怪物は怪物ではいられない。
少女は目の前の亡霊に隠された。
亡霊を再び殺せば、少女は戻る。
答えは単純。
ならば――


『掴み取れ!その力で!!』

771君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:33:49 ID:rnNNNPDM0



変身したその巨体で、メタモンは怪物に対峙する。
「悪いが俺ァ……」
深く息を吸い込む。大丈夫だ、敗けるわけがない。

「テメェより強いぜ」
彼は私を守り切ったのだから。

「"はげしいほのお"――――ッ!!!!」
業火が怪物を嘗め尽くす

だが、いつだって現実は残酷だ。

【ヒートバイパー】
炎をも切り裂いて、怪物より放たれた熱線がメタモンの巨体に風穴を開ける。

思考とも言えないような感情の羅列がメタモンの脳内で渦巻く。
血を吐いた。
視界が霞む。
傷から全身に熱と、同時に寒気が広がっていくような不気味な感覚。
痛い、熱い、痛い、寒い、苦しい。
一撃、喰らっただけでこんなに苦しいなんて。
諦めたい。
楽になりたい。
皆、こんなに苦しかったのかな。
痛い。辛い。

それでも、メタモンは立っている。
変身を崩さぬまま、怪物の目を見据えて。
「ッ……」
言葉を発そうとして、血を吐いた。
怪物の腕が迫る。
腕で固定して、熱線で確実にトドメを刺すつもりだ。
避けたい。駄目だ。呆気無くモー・ショボーの腕が肉体を貫通する。
血飛沫が舞う。肉片が飛ぶ。削れた命が消えていく。

伝えなくちゃ――そうメタモンは思う。
何を?何かを?
痛みが頭をぐちゃぐちゃに掻き回す。
それでも伝えなくちゃいけない。

「……忘れないで」
血が止まらない。
死ぬのかもしれない。
それでも言わなくちゃ。
きっと忘れてしまうから。

「モー・ショボーちゃん、ドラゴンさん、そして私はメタモン……名前を聞けなかった子もいる。
でも、皆……皆生きていたの…………だからアナタも……忘れないで…………」

【ヒートバイパー】








「■ア■■■ン」

772君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:02 ID:rnNNNPDM0

熱線がメタモンを貫くことはなかった。

怪物の背後から狐葉楔が放たれる。
意識外からの攻撃故に、怪物に直撃する。
死にはしない、致命傷にもならない、それでも――ヒートバイパーの狙いが逸れる。
何故だ――狐葉楔を放った主であるレナモンですら、疑問に感じていた。
当てられたというのか、同情でもしたというのか、私が。
メタモンは致命傷を負っている、どう足掻こうとも死ぬ。
こんなもの延命にすらならぬ。
それでもレナモンは、メタモンを助けていた。
メタモンを庇うように、怪物に立ち向かっていた。
背後のメタモンは己の血で、全身を染め上げてしまっているというのに。

「……私も君の友になれるだろうか」
「ア゙……ッ゙」
もう、声も出ないのだろう。
ただ、枯れ果てた音を聞いただけだ。
それでも、レナモンは聞いた。
突然の状況に戸惑いつつも、はっきりと「はい」という声を。

「良かった……じゃあ、当然のことだな…………友を守るというのは」
「ニ゙……ッ゙」

「逃げて」そう言おうとしたのだろう。
ならば、こう返すのだ。
いつものように――

「大丈夫だ、すぐに終わる」
そう言って、レナモンは守ってきたのだ。

「ああ――アイツはコイキングという名前だったんだな」

「…………」
背後で命の灯が消えた。

それでも繋がったものがある。

振り返らない、だけど――

「君を忘れない」

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ 死亡】

773君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:14 ID:rnNNNPDM0


メタモンの死に、怪物は何も思わない。
レナモンの登場に、怪物は何も思わない。
ただ、未だ少女が現れないので、怪物は原因をレナモンに修正する。

「私はコイキングやメタモンになりたかった……」
一歩一歩、怪物へと距離を詰めていく。
左腕が左前足に変わる。

「だから……私は"お前"だ、私はお前になってしまったんだ……■ア■■■ン」
右腕が右前足に変わる。

「だけど、流石に"お前"になる気はない……」
左足が左後ろ足に変わる。

「私は思い出してしまったからな」
右足が右後ろ足に変わる。

                ゲンカイ
「見せてみろよ、力の 果て を」

ただ、静かに進化は完了した。




「ル、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「 雄 鳴 雄 鳴 ッ!!」

叫びが、震わせる。
空気を、大地を、海を、空間を、世界を、何もかも、何もかも。

戦いが始まった。

774君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:25 ID:rnNNNPDM0


一直線に怪物の下へと駆け抜ける。
もう、キュウビモンは振り返ったりしない。

「鬼火玉!」
叫びとともに九尾の先に灯された蒼い炎が怪物へと放たれる。

「壱!」「弐!」「参!」「肆!」「伍!」「陸!」「漆!」「捌!」「玖!」
九連の炎が怪物の胴に衝突する。
衝撃、熱、そして炎上。

「ォォォォオオオオオオオオオム!!!!!」
だが倒れない、崩れない。
当然のことだ、この程度で止まるほどに完全体は甘い存在ではない。

ましてや、多すぎる代価を支払ったのだ。
相応の強さを手に入れていなければならない。

【ヒートバイパー】

熱線が地面を撫ぜる。
キュウビモンの鬼火とは比較にならない程の熱量が大地を侵す。
爆炎が上がり、消滅といっても差し支えないほどに大地が抉れる。

幾度もの戦闘経験が、キュウビモンの回避行動を成功させた。
宙返りの形を取った、熱線回避はまるで曲芸のようである。

「その程度か?」
怪物の眼を見据え、キュウビモンが放つは侮蔑の言葉。浮かべるは嘲りの笑み。
限りなく薄れている怪物の理性でも理解できる。
それを厭うからこそ、■ア■■■ンは怪物に成り果てたのだ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
曲芸師の様に避けるキュウビモンを仕留めるために怪物が選んだのは、手数を増やすことだった。
貫手突きという。
通常の突きよりも威力を一点に集中させたその技は――
現在生存中の参加者の中でも最高位の恵体より放たれるその技は――
三種の両腕のそれぞれが意思を持っているかのように放たれるその技は――

「チッ!」
降り注ぐ槍の雨、そんな馬鹿げた戯言を再現したかのように。
鋭く、ただ鋭く、地に穴を穿ち、擦ったキュウビモンに切り傷をつけ、降り注ぎ続けた。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

進む。戻る。進む。戻る。進む。戻る。
それを繰り返す。
貫手の雨はキュウビモンを回避行動に集中させ、怪物への追撃を許可させない。
いや、それだけならばまだいい。
かすり傷とはいえ、キュウビモンの傷は増えていく。
キュウビモンの息が少しずつ荒くなる。

完全体と成熟期のスタミナ差など、言うまでもない。
怪物はこの乱打を繰り返すだけで、詰むことができる。

「…………!?」
キュウビモンと怪物の視線が合う。
笑いの原点を獣が牙を剥く行為に置くのならば――正しく、怪物は笑った。
雨が止んだ。

雨跡は熱線の軌道をなぞるかのようだった。

【ヒートバイパー】

雨後の静寂の中、熱線は放たれた。
つまるところ、キュウビモンは誘導されていたのである。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

守れなかった者の記憶が過ぎる。
戦いの記憶が過ぎる。
今日の記憶が過ぎる。

思い出した全ては目の前にある熱線ごと死に飲み込まれて、消える。

「狐炎龍!!」
守るためには抗うしかない。
体の回転と共にキュウビモンの全身が紫の炎に覆われた。
全身を炎の鎧で包み込んだ回転しながらの突進、この必殺技を用いて熱線の威力を殺す。
出来ねば、死ぬ。

「ル、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「 雄 鳴 雄 鳴 ッ!!」

775君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:35 ID:rnNNNPDM0

キュウビモンの突撃は防御と同時に、攻撃を兼ねていた。
徐々に熱線の根本、怪物の口へと近づいていく。
もちろん、己の必殺技によって減じたといえど、キュウビモンは熱線の超威力に対し無傷とはいえない。

視力聴力の著しい減少、右半身の激しい損傷、全身の火傷。
それでもキュウビモンは辿り着いた。
熱線に耐え切って、そして今――根本を潰そうとしている。

「……すまない」

もう少し、早ければ――メタモンは助かったのだろうか。
モー・ショボーもはぐれメタルも、死ななかったのだろうか。

コイキングを殺さなければ――

だが、きっとそのifはあり得ないのだろう。

レナモンが怪物と戦うことを決意したのは――

キュウビモンが攻撃するまでもなく熱線が止まり、入れ替わるかのように六本の腕が迫る。
ならば、もっと速くだ。
炎がより強く燃え上がる。
意思が強く燃え上がる。

「疾ィィィィィィィッ!!!!」

キュウビモンよりも、怪物よりも、何よりも世界で速いものとは何なのだろうか。
ニュートリノの世界最速は撤回され、やはり今もなお我々が間近で見ているものが世界最速とされている。

雷が闇を斬り裂いた。

とある世界では勇者のみが扱えると言われるその攻撃の名を、
怪物が取り込んだ者の世界の技の名になぞらえて、単純にこう言おう。

かみなり

攻撃を受けた本人すら認識できぬほどに速く、光速はキュウビモンの体を貫いた。

  キメラ
 合成獣はあらゆる特徴を兼ね備える故に、そう呼ばれるのである。
ならば、取り込んだライチュウの技を使えないということはないだろう。

「ギイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

「待てよ……」
血を吐いた。
全身が爛れている。
進化は解除された。
立ち上がろうとして、片足が消滅していることに気づいた。
地に伏した。

それでも、まだレナモンは生きている。

「勝鬨を上げるには……早すぎるだろう?」
戦えるはずがない。
喋るだけでも、猛スピードで死へと近づいていく。
こんなにも自分は負けず嫌いだっただろうかとレナモンは笑う。
いや、守る者が背後にいる時、自分は決して諦めなかった。
ただ、忘れていただけなのだ。
哀しみも苦しみも怒りも、何もかもが辛すぎて――力に逃げなければ自分が成り立たなかったのだ。

意識が薄れる。
生と死が混ざり合って、今自分はどちらの大地に立っているのかわからなくなる。
だから、こんな夢を見てしまったのだ。
死者と話すなどという他愛もない夢を。


「レナモン君」
「……コイキング」

776君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:47 ID:rnNNNPDM0

果てしなく白色の硬い床が続き、上を見上げればどこまで続くかわからないほど高くにやはり白色の天井があった。
壁はないが、どことなく閉塞感が有り、死後の世界というよりは牢獄のように思えた。
コイキングは相変わらずの黄金色の輝きで、暴龍と化したことが嘘であるかのようにレナモンの前で平然と佇んでいる。

「元気そうだな」
「死んだ魚の眼をした私に言うことかい?」

変わらない――何一つとして、目の前の魚は変わってはいなかった。
そのことがレナモンにとってはとても嬉しく感じられる。

「結局、私は……駄目だったな」
レナモンの口をついて出たのは、自嘲の言葉だった。

「……死人のために、戦えるメタモンが羨ましかった。
いや、死んでなおも遺るものを私は……見つけられなかった」
メタモンと言葉という言葉を交わすことは出来なかった、レナモンにとってそれは今となっても哀しい。

「……コイキング、あのはぐれメタルも……メタモンも、お前の名前を呼んでいたな。
良かったと思った。私はお前の名前を聞くことはなかったけれど、お前の名前を呼ぶ者がいて、私はお前の名前を知れて……良かったと思った。
メタモンが忘れないでと言った時、私も……忘れたくないと思った。
私は……忘れない、忘れたくない、メタモンのこともお前のことも、あの子たちのことも……だから、戦おうと思った……負けてしまったがな」

「レナモン君……君は、負けてなんかいないよ」
「慰めはやめてくれ」

本当さ――そう言って、コイキングは笑った。

レナモンは声を聞いた。
聞こえるはずのない声を。
失ったはずの、守りたかった者の声を。

「おねえちゃん……」

クラモンがいる。ココモンがいる。ジャリモンがいる。
ズルモンがいる。ゼリモンがいる。チコモンがいる。
ウパモンがいる。カプリモンがいる。ギギモンがいる。
キャロモンがいる。キュピモンがいる。キョキョモンがいる。

「がんばって!!」

「こんなにも君を応援してくれている者がいるじゃないか、これで敗けるなんて……悪い冗談だ」



「ああ……そうだ、それは悪い冗談だ」
気づけば、走りだしていた。

一歩踏み出す度に、子どもたちが力をくれる。
出口へと近づく度に、進化のイメージがレナモンの脳内を駆け巡る。

「お願いします」
メタモンの声がする。

「任せろ」





「レナモン――超 進 化 ッ!!」

777君の思い出に  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:34:59 ID:rnNNNPDM0

【C-5/草原/一日目/夜】

【???(レナモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:健康 ※ダメージなどは進化時に全快済
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:君を忘れない
1:キメラモンを倒す
[備考]
メス。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。
無意識的にメタモンをロードしました

※エアドラモンとはぐれメタルたちの戦いの顛末を全て見聞きしていました。
※超進化を果たしました、何になるかはお任せいたします

【キメラモン(エアドラモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:狂乱、暗黒進化 、ダメージ(極小)
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:誰よりも強く――
 1:敵を倒す
[備考]
デジモンに性別はない。が、オス寄り。
長い不遇生活でやや後ろ向きかつ、理屈っぽい性格。
アグモンともども、少なくとも参加者のうちでシリアスなレナモンとは別の世界観出身の可能性が高い(断言はしない)。
数多のロードと莫大な経験値、デビモンならぬムーの残滓によりキメラモンへの進化ルートが開通しました。
キメラモンを構成するパーツのうち、幾つかにロードしたモンスターたちの面影が見られます。
現在、グレイモン部分にムー、エンジェモン部分にエンジェル、デビモン部分にモーショボー、メタルグレイモン部分にはぐれメタル、ガルルモン部分にピカチュウ。
ただし、逆に屍や虫、恐竜に対応するデジモンは取り込んでいないため、あくまでも完全体としてのキメラモン止まりです。
ライチュウの技の一つであるかみなりを使用可能になりました

【レナモン@デジタルモンスターシリーズ】




※敵を全て倒せば少女(メタモン)が現れると思い込んでいます

778 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 17:35:53 ID:rnNNNPDM0
投下終了させていただきます。
様子を見て予約が入らないようであれば、続き分を再予約させていただきます。

779名無しさん:2013/10/02(水) 17:58:22 ID:NFZjI2Po0
投下乙でしたー!
つながった!
ここにつながった!
レナモンがコイキングの名を知った!
覚えていてくれというコイキングの意思が、伝えたいというはぐれメタルの遺志が、忘れないでというメタモンの願いが
ここに、ここに繋がった!
死んでも遺るものが確かにここにあった!

780名無しさん:2013/10/02(水) 18:08:43 ID:9av59UuQ0
投下乙です!
へんしんオールスターなメタモンかっけえ!でもHPはメタモンの時と同じっていう弱点がそのまま反映されて……
圧倒的な強さと狂気を見せつけるキメラモンVSメタモンをロードし超進化を遂げたレナモンでヒキとは、これは続きが気になります!

781名無しさん:2013/10/02(水) 18:19:24 ID:NFZjI2Po0
あ、ところでキメラモンの腕は本来は4本ですよー
ぐぐったら分かりますが、デビモンの腕は日本ですが、スカルグレイモン、クワガーモンの腕は左右一本ずつです

782名無しさん:2013/10/02(水) 21:20:02 ID:/R/sj82k0
幾多の者たちの想いは繋げられ、今、一つの命へと収束する。

投下お疲れ様です
うおおぉぉ、なんと熱い戦いなのでしょうか……! シビれました……!
かつて沢山の言葉を無視し続けた怪物に、メタモンの言葉が届くはずもなく……
でも、それはレナモンを突き動かす原動力になった。
いくつもの想いを受け継いだレナモンと、いくつもの力を取り込んだキメラモンの戦い

そして、加えて予約されていた3体も果たしてどのように絡んでいくのか、凄く楽しみです!
この続き、是非とも期待させて頂きます!

783 ◆5omSWLaE/2:2013/10/02(水) 21:21:24 ID:/R/sj82k0
トリが付いておりませんでした、失礼しました

784 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/02(水) 22:24:42 ID:rnNNNPDM0
>>781
wiki収録時に修正しておきます。

785 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:10:36 ID:Ggf6UpyU0

投下します

786 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:11:50 ID:Ggf6UpyU0
ゆっくりと歩いていく。
一匹は上機嫌で、幸せそうな様子のまま歩いていく。
もう一匹はそれを眺めて、何かを思案するように、でもそれを彼には見せずに歩いていく。
ふいにこちらを振り向いた上機嫌な獣に、悪魔は微笑む。
だが言葉を投げかけることはない。
彼が発する言葉はどれも、ここにはいない誰かに向けられていて、でもそれは目の前にいる悪魔に向けられている。
彼が見ているのは現実だが、真実ではない。
だからかける必要はない。あちらからかけてくるから。

「あ、ブリーダーさん! 湖だよ、湖! 少し休憩していこうよ!」
「ああ、そうだな。そうしようか」

狼は彼を、ブリーダーと呼んだ。
四足歩行、立派な牙と鼻、一つ目。誰がどう見ても人の姿には見えない。
でも彼から見えるのは、自分を育ててくれた愛しいブリーダーの姿。
それが彼の眼から映る景色であり、現実。
こうしてしまったのは自分なのだと、改めて感じてまた、自分の行為が間違っていたのかと考えてしまう。
だけど、こんな無邪気な笑顔を見てしまうと、自分は正しかったと勘違いしそうになる。

「うわあ……凄くキレイ……。これなら飲めそうだね!」
「いや、大体の水なら殆どの動物なら飲めそうなものだが……」

と言いつつ、自分は動物の類ではなかったなと心の中で呟く。
美味しそうにゴクゴクと、水を飲んでいくハムライガー。
そんな光景を眺めて、ギリメカラは独り嘆息し、また思案する。
この後の行動はどうするべきか、優勝狙いのものに出会ったらどうするかを独り考える。
ハムライガーはあまり戦わせたくない、責任をとって、守り通したい。
自分のしたことは、彼にとってはあまりに残酷で、でもそれは救いでもある。
命令すれば何でも言う事は聞くだろう。
でもそれは、攻撃ではなく待機をさせるべきだ。
だけどそれは、彼にとって救いになるのだろうか。
ご主人様、つまりブリーダーに役立ってこその自分だと、ハムライガーは考えている。
彼の意見を尊重し、戦わせるべきなのだろうか。
もし死んでしまったら、それこそ自分は示しがつかなくなってしまう。
きっと、後悔をしてしまうだろう。情けないことに
ふと、前を見るとハムライガーがそこにいた。
どうやら喉はもう潤ったらしい。

「どうした? そんな顔をして」

表情は先ほどとは一変して、神妙な面持ちになっていた。

「ブリーダーさん大丈夫? 何か考えてたみたいだけど……
 もしかしてボク何かした? ね、ね、何か間違った? ねぇ
 ボクがブリーダーさんを守るから、お願いだから、売らないでください。
 お願いします。ごめんなさい。すみませんでした。何でも言う事を聞くから……」
「ああ、大丈夫だ。心配するな。お前を売ったりはしない」
「ホント? ホントだよね? 嘘じゃないよね?」
「ああ、本当だ」

この問いの答えは、命令して戦わせるのが正解なのだろう。
彼にとっての存在意義は、ブリーダーさんの役に立つということ。
私が死んだりすれば、壊れた彼は更に壊れてしまうだろう。
それならば戦わせてやるのが彼の為であるし、ブリーダーさんの役に立てて死んだ、とあれば彼も満足だろう。
尤も、彼を死なせるということは絶対にさせないが。
安心させるために、頭を撫でる。
彼はそれを気持ちよさそうに、眼を細めながら幸せそうに、なすがままにされている。
ギリメカラはそれを微笑ましそうに、眺めていた。


□□□


(なんや、凄く見てて癒されるなあ……)

湖の中から出ないといっても、さすがに外の様子は気になったようだ。
以前は自分が何も考えずに外へ出てしまったせいで、炎と爆発をくらってしまった。
だから今度は慎重に、湖から少しだけ顔を出して窺うことにしたのだ。
といっても、湖からは決して出ないが。
しかし様子を見るに、湖を荒らしに来たわけでもなさそうだし、もしかして純粋に休む為にいるのだろうか。
だとすれば彼等はワイを見ても戦うことはないだろうし、うまくいけば協力関係になれるかもしれない。
例えば、湖の警護とかワイのボディーガードとか湖の警護とか!

787 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:12:17 ID:Ggf6UpyU0

(いや無理や。休んでるだけやろうし、そもそも自分本位すぎるわな)

そもそもワイのボディーガードって、ワイ外に出る気だったん? アカンアカン。
ワイはこの湖に永久就職すると決めたんや。自湖警備員や。
外の世界にはぜってー干渉せえへん。湖の中で死ねるなら本望よ。
んー、でも少しくらい頼んでみるか。回復もしてきたしな。
外出るの怖いけど。
殺し合いに乗ってるかもしれへんけど。
その時はその時や。

(あー、でもどんな出方がええんやろ。一気にぶわって飛び出すか? それとも静かにざばー、って現れるか? 悩むなー)

うんうん唸るオルトロス。
湖から出るのはまだ先になりそうだ。


□□□


オルトロスが唸ってる間に、湖に二匹が訪れていた。
一匹はジュペッタの体をした、プチヒーロー。
もう一匹はゲルキゾクであった。
目的は二匹とも同じで、湖に行けば誰かに会えるだろうと思ったからだ。
但しプチヒーローは仲間を探して、ゲルキゾクはカモになりそうなのを探して、であり両者は全くの逆である。
二匹は同時にこの湖につき、そしてまた二匹同時にギリメカラの方向を見た。

「おや」
「む」
「「あ」」

四者同時に目が合い、沈黙が訪れる。
先に口を開いたのはゲルキゾクだった。

「貴方方は殺し合いに乗っているのでしょうか?」

一対一ならまだしもこれだけの人数がいてはかなわない。
ここは様子見をすることにして、自分は殺し合いには乗ってませんアピールをすることにした。
まあ最初からそう言うつもりだったが。

「乗ってはいないな」
「ブリーダーさんとおなじー」
「僕も乗ってないよ」

ふーむ、どうやらこの三人の眼を見る限り、嘘はついていないらしい。
これはチャンスだ。うまくいけば、皆殺しにできる。
いや、皆殺しにする必要は無いか。一匹が死んだらもう一匹は確実に死のうとする。
もしくはそれを利用すれば……

「それはよかった……こちらは武器も何も持ってませんでしたので」
「そうか。それはよかったな。ワシらがそういうもので」
「……ええ。それはそれは」

心の中で舌打ち。
どうやら、このゾウに似てなんか違うやつは手強いらしいな。
先に殺すならまずこいつからだろう。人形とゾウに似たやつをすりすりしている狼は、後回しでも対処できる。
問題はどう殺すかなのだが。
と、そんなことを考えていると、人形がコチラへと近づいてくる。
あちらからの位置だと遠いから、寄ってきてくれたのだろう。ありがたい。
走り終わった人形は、その場にへなへなと座りだした。

「はあはあ……よかったあ。えっと、皆さん殺し合いに乗ってないんですね……」
「よかったな。もしそんな者にあったらおヌシの命は無かっただろうな」
「ええ、その……失礼なことを言いますけど顔を見て、もしかしたらって思っちゃって」
「気にするな。こんな身なりだし、勘違いもしてしまうだろう」
「あ、有難うございます。それにそちらの方も……」
「私が何か?」
「その、なんというか、ちょっと危ない感じがしたので……」
「おやおや」

まさか直感で当てられるとは思わなかった。
といっても本人は気付いていないし、放置しても問題はない。

「初対面なのに失礼ですよね……。でもよかったです。優しい人達で」
「確かにそうですよね。そうだ、ここで会ったのも何かの縁。よろしければ協力しませんか?」

距離をつめるために、ゆっくりとゾウに似たやつに近づいていく。

788 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:13:15 ID:Ggf6UpyU0

「あ、僕もお願いします!」

嬉しいことにあの人形も近づいてきた。
ちょうどいい、一網打尽に―――

「いや待て。おヌシ、名は?」
「……ゲルキゾクという者です」
「プチヒーローっていいます」
「そうか。ワシはギリメカラ。こやつはハムライガーという。時にゲルキゾク。おヌシは本当に武器を持ってはおらんのか?」
「どういう、意味でしょうか?」
「ゲル、というのだから、さぞかし便利なのだろうな。何にでも姿形を変えられて」
「……それが?」
「なに、戯言だ。気にするな」

ギリメカラと言ったか、中々鋭い。
というか、もう既に自分がどういう者なのか分かっているのではないだろうか。
いや、この口ぶりはどう考えても分かっている。
さて、どうするか。
警戒はされただろうし、このままでは殺すことも難しいだろう。
ならば、ここで殺るか?
しかし実力も何も分からない相手と戦うのは、分が悪すぎる。
あちらはこちらの能力を分かっているから、尚更危険。
何もしなければ、強制的に対主催への道。
それでは主人に顔向けできない。
本当にどうしようか。そんなことを考えていたとき。
湖がぐるぐると渦巻いて、やがてそれが空へと浮かび上がった。
そしてその中からタコが飛び出した。

「ワイ、参上!」

タコが空中を舞う。


□□□


地上は修羅場的なことになっていることとは露知らず、オルトロスは未だに登場方法を考えていた。
今のところは二つに絞れた。絞れたのだ。
凄く悩むなぁ……、これ自分の技で登場するわけやし。
どうやって登場しようか?

・ミールストームを使って派手に登場や!
・くさいいきを使ってファンサービスや!

→ミールストームを使って派手に登場や!
・くさいいきを使ってファンサービスや!

ピコーン

やっぱりくさい息では嫌われてしまうし、警戒されてしまうやろ。
ここはミールストームを使って派手に登場したるで!
そうと決まれば! ミールストームを湖上へぶっぱして!
そのまま勢いよく!




                \ドッパーン/




「ワイ、参上!」

789 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:14:56 ID:Ggf6UpyU0
□□□


嬉しい誤算とは正にこのことなのだろう。
あのタコの登場の仕方は非常に派手だった。
誰もがそれを見つめるくらいには、派手であった。
だから、隙が生じた。
一気に走り出して、距離をつめる。
右手にはガトリングを、至近距離でくらえばいくらあの巨体でもお陀仏だろう。
左手には刀を、もしものときの保険だ。
私が取ろうとしている行動に気付いたのか、ギリメカラがハムライガーという狼を突き飛ばす。
まあ、後々そいつも利用するから有難かったが。
さて、そろそろフィナーレの時間だ。
零距離から銃弾を打ち込んであげましょう!

ギリメカラは物理攻撃を反射する。
しかし、このときゲルキゾクが行った攻撃は『銃』攻撃。
つまり反射は、できない。

(ぬかったか……。対処できなかった時点でワシの負け、か)

ゲルキゾクとやらの正体は掴めた。同じような奴を見たからだ。
能力もどういうものかは分かった。ゲルという単語を聞いた時点で確信した。
しかし予想外の出来事が起こってしまった。
タコが登場した瞬間、身構えてしまった。
それが仇となったのだろう。ゲルキゾクが距離を詰めてきた。
そして、咄嗟にハムライガーを突き飛ばしてしまった。

(……口惜しいのう。ハムライガーを独りにしてしまうなんて)

抗おうと決めて、責任を取ると決めて、だがその責任すらも果たせぬまま自分は死ぬ。
きっと死んでも後悔し続けるだろう。
どれだけやり直したいと願おうと、もうその機会はない。

「すまない」

最期の言葉は、懺悔。
そして無数の銃弾をギリメカラが襲った。


□□□


いきなりブリーダーさんに突き飛ばされた。
訳も分からず、ブリーダーさんの方向を見ると、さっきのゲルキゾクさんがブリーダーさんの近くにいました。
手には何も無かった筈なのに、銃がありました。
そして気付いた。
かばってくれたのだと。
守ってくれたのだと。
でも、そんなのは余計なお世話だよ。

「ブリーダーさん!!」

伸ばしたその手は届くことはない。
それでも、彼は届くと信じて、手を伸ばす
その先へ、自分が守らなければいけない対象へ。

「やめろおおおおおお!!」

でも、その手はあまりにも短すぎて。
その距離は絶望的な程に離れていて。
尚且つ敵とブリーダーさんの距離は近すぎて。
今から走っても間に合わない。
でも諦め切れなくて。
伸ばして、伸ばして、伸ばして―――

「あああああああああああああ!!!!」

―――その手は空を切る。

【邪鬼ギリメカラ@真・女神転生シリーズ 死亡】
【最悪手:ギリメカラ死亡+ハムライガー生存】


□□□

790 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:15:20 ID:Ggf6UpyU0


ゆらり、その巨体はゆっくりと地面に倒れ伏せた。
その瞬間を、狼は愕然とし、タコはぺちゃっと着地し、人形は呆然とし、生命体は平然と、その様を眺める。
やがて生命体が動き出し、その場に立ち尽くす狼に近寄り、止まった。
生命体の目的はこの殺し合いに優勝すること。
そして、それが楽になる『道具』もまた欲しかった。
狙いは先ほど殺した悪魔をブリーダーと呼び、依存しているあの狼。
あの時撃ち殺したふざけた女と同じ、どこかで見たことがあるような、そんな気がしていた。
だから利用してみる。
ゲルキゾクは彼を『道具』として利用する為に、まず依存対象を殺すことにした。
その後、傷心状態の狼を洗脳して、『道具』としてこき使い、そして捨てる。
だって簡単そうだから。
純真そうな狼は簡単に騙せるだろう。

「よろしければ協力しませんか?」
「……」
「こうなってしまったのも、すべては首謀者であるあのモリーが原因でしょう。
 先に謝っておきます。あなたがお慕いしている方を殺して申し訳ございませんでした。
 しかし、これは不可抗力というもの。憎むべきは殺し合いの場です。
 私も殺し合いが始まる前に、マスターを亡くしまして……辛い気持ちは分かります。
 ですから、その方の無念を晴らす為に協力していただけませんか?」

そう言って手を伸ばす。
傷心中で、あの様子の狼ならばコロッといける。
横であの人形が五月蝿く、そいつの言う事を聞いちゃダメだ、とか叫んでいるが気にすることはない。
ゆっくりと顔を上げた狼が、コチラを見る。
手を伸ばしてきた。
ゲルキゾクは勝利を確信する。プチヒーローは必死に叫び続ける。
そして、ハムライガーの手がゲルキゾクの手を掴む―――

「―――あ?」

ことはなく、そのまま手を素通りした。
その先、胸のコアへと勢いよく突き刺す。

「が……」

この時、ゲルキゾクの判断には誤りが二つあった。
確かにハムライガーとギリメカラの関係は主従関係であるが、それはハムライガーの一方的な依存から成り立っているものである。
それをギリメカラが容認しているだけにすぎないのだ。
彼等に何が起こったのか、ゲルキゾクは知らない。
故に、こうなることも予想できない。

それよりも大きな誤算が、ハムライガーを道具として使うには、壊れすぎていたということ。
幽鬼マンイーター。『あくむ』を魅せてハムライガーを誑かし、狂わせて追い込む。
邪鬼ギリメカラ。『パニックボイス』を使用し、壊してとどめを刺す。
ゲルキゾクが行おうとした行為は、マンイーターと同じ行為であった。
勿論、既に壊れているので言葉は届かない。
しかしゲルキゾクはその前に彼を、もう一段階壊していた。
ゲルキゾク。依存対象を『殺害』して死体殴り。
これにより彼の心の中はぽっかり穴が開いた。
しかし、その穴の中には何も入ることはない。その穴はブラックホール。
二度と戻ることは無い虚無へと、ご招待。

ようはゲルキゾクは何も知らなかったがために、ツメが甘かったがために、こうなった。

ゆっくりと彼は後進していく。
信じられないものを見るように、自分の胸を、ハムライガーを交互に見る。
だがハムライガーは彼のことなど見向きもせず、殺された主人の下へと歩いていた。
彼は後進し続ける。
後進の終点駅は湖。
彼はそこへ、足を踏み外し落ちていく直前。

「こ、のお……」
「ふざけんじゃねえぞこのクソ狼があああああああああああああああ!!!」

そんな叫び声を上げた。
彼の丁寧な口調を壊して。

【ゲルキゾク@モンスターファームシリーズ 死亡】


□□□

791 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:16:00 ID:Ggf6UpyU0
めのまえでぶりーだーさんがしんじゃった
あかーいちがめのまえでどくどくながれてまわりをあかにそめる
うそだぼくはしんじないでも
ぶりーだーさんのはだはひやっとしてつめたい
ぶりーだーさんをゆさゆさゆらしてもおきない
ぶりーだーさんにこえをかけてもおきない
いまめのまえでおこっているできごとはなんだろう
げんそう? もうそう? そうぞう? きょぞう? まぼろし? えいぞう? げんかく? くうそう?
それともゆめ?
ああきっとそうだこれは『あくむ』なんだわるい『きおく』なんだ
『あくむ』ならめをさまさなきゃいけない
いらない『きおく』はけさないといけない
はやくぶりーだーさんのところへかえらないといけない
もどったらぶりーだーさんはほめてくれるよね
てきをやっつけたんだからほめてくれるはず
ぶりーだーさんにやくあいたいなあ
もうかなしまないよね
もううったりしないよね

ぶりーだーさん!

ぶりーだーさん

ぶりーだーさん……

―――ぶりーだーさん?


あれ?

ぶりーだーさんってだれだっけ?

そもそもぼくって―――


だれだっけ?


ああ
きっとこれはおもいだしちゃいけないんだ
だからおぼえていないんだ
だったら
おもいださくていいじゃん
おもいださないようにこわさないと


ああ
『はやくぶりーだーさんにあいたいなあ』

でもだれだっけな?

792 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:16:26 ID:Ggf6UpyU0
□□□


たった数分で二人の命が無くなった。
僕は眺めて、叫ぶことしかできなかった。
この出来事を引き起こしたのは、あの紫色のタコさんのせいなのだろうが、きっと悪気は無いのだろう。
意図してやったにしては、全く喜んでないし。
それにしても問題はあのハムライガーさん。
あれだけ懐いていたギリメカラさんを殺されてしまったのだ。ゲルキゾクを殺しても仕方あるまい。
問題はその後だ。彼の心の傷は相当深いものだろう。
もしかしたら、殺し合いに乗ってしまうかもしれないし、自殺してしまうかもしれない。
でもそれじゃ駄目だ。死んでしまったギリメカラさんに、申し訳が立たない。
生きてもらわないと。

「ハムライガーさん!」

振り向かない。

「ハムラガーさん!」

振り向かない。

「ハムライガーさん!!」

振り向かない。

「ハムライガーさん!!!」



「――――」

振り向いた。


「…………ぅあ」

彼の眼を見て、プチヒーローはぺたんと尻餅をついた。
何で……何もないんだ?
どうしてこんな暗いんだ?

「ぶりーだーさん」
「ブリーダー……さん?」
「あいたい」
「へ……?」

「あいたい」
「あいたい」
「あいたい」
「あいたい」
「あいたい」
「あいたい」

「ひっ……」

プチヒーローはハムライガーから逃げるように、後ずさりしていく。
あれ、なんで。
言葉を発するべきなのに口が言う事を聞いてくれないの。
それどころか寒くないのに体がぶるぶる震えだしてるの。
彼からなんで逃げるの。
どうして、僕は恐怖を感じているの。

「こ、こないで……っ! お願いだから!」

でも近づいてくる。
こわいこわいこわいこわい。
こないで。
ちかづかないで。
そして、距離は数センチ。

「じゃま」
「はひ……!」

どいた。
なぜだか命が救われた気がした。
ハムライガーは僕には目もくれず、そのまま森の中を歩いていき、姿が見えなくなった。
いつの間にか、湖は僕とギリメカラさんの死体だけしか、残っていませんでした。

「あ……」

なにしてるんだろう僕。
勇気を与える者になるんじゃなかったの。
これじゃあまるで
昔の自分と変らないじゃないか。

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:精神ダメージ(大)、魔力消費(小)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生?
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
1:こわい
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。

※ギリメカラが所持していた物は死体の傍に放置されています。


□□□

793 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:17:13 ID:Ggf6UpyU0

(アカンアカンアカン……ワイが? あの惨劇を引き起こした? 嘘やろ?)

現実を受け入れられず、その場から逃げ出したオルトロス。
なにせ、派手に登場しドヤ顔をした後、地面に目を向ければ銃声、さらに死体が出来上がるのを見てしまったのだ。
どこからどう考えても自分が登場したせいで、事件は起こってしまったようにしか見えなかった。
これは逃げるしかない。誰だってそうする、オルトロスだってそうした。

(いや違う。ワイが登場した時にはもう始まってたんや。ワイは関係あらへん!)

しかしタコは現実から目を背ける。
目の前で起きた、数分の出来事から目を背ける。

(やっぱり……タコらしくすべきやったな)

【オルトロス@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康、後悔
[装備]:なし
[所持]:なし
[思考・状況]
基本:戦いをできるだけ避ける
1:湖から早く立ち去る


□□□


何も残っていない空っぽの人形はひたすら歩く。
ゆっくりと、ゆっくりとその歩みはただひたすらに遅い。
記憶と精神、破壊されつくした彼の眼は、深淵の如き深さになっていた。
但し、覗いてもあちら側がこちら側を見ることは無い。その先は虚無そのものだからだ。
残った一欠けらの思いは、『はやくぶりーだーさんにあいたい』という、もう叶うことがないそれこそ幻想。
言葉は届かない、行動には興味を示さない、何も考えない。
目的の為ならば邪魔をするものは容赦なく殺す。
プログラミングされた一つの目的を果たす為に、延々と繰り返す。
行進を、殺害を、生産を、発言を、止めない。
ただそれだけ。

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:刺傷、狂気(永)、PANIC、精神崩壊、記憶崩壊
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:はやくぶりーだーさんにあいたい
 1:あるく

[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」
マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれ、ギリメカラのパニックボイスでとどめを刺されました。
ダメ押しにゲルキゾクが死体殴りをしました。
本来のPANICは一時的な症状ですが、マンイーターの悪夢による狂気を加速させる方向で使われたため、実質永続しています。
ギリメカラによる幻覚も合わせて、ギリメカラをブリーダーと認識して、殺し合いの先の未来の夢に囚われています。
ギリメカラ(ブリーダーさん)が死亡した現実を受け入れられないが故に、記憶も崩壊しました。
『ぶりーだーさんにはやくあいたい』という目的を果たす為に、歩き続けています。

794 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 19:23:26 ID:Ggf6UpyU0
投下終了です。おかしな点があればどうぞ。
タイトルは「黒く蝕み心を染めん」

あと、現在地を書いてなかったので
プチヒーロー→【F-6/湖/一日目/夕方】
オルトロス→【G-6/森/一日目/夕方】
ハムライガー【F-7/森/一日目/夕方】
でよろしくお願いします

795 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 20:53:16 ID:Ggf6UpyU0
申し訳ございません。とんでもないミスが発覚したので以下のように変更させていただきます。

細かい点

ゆらり、その巨体はゆっくりと地面に倒れ伏せた。
その瞬間を、狼は愕然とし、タコはぺちゃっと着地し、人形は呆然とし、生命体は平然と、その様を眺める。

ゆっくりと煙が上がると、地面に倒れ付した巨体がそこにあった。
その瞬間を、狼は愕然とし、タコはぺちゃっと着地し、人形は呆然とし、生命体はニヤリと口角を上げ、その様を眺める。

あかーいちがめのまえでどくどくながれてまわりをあかにそめる
うそだぼくはしんじないでも
ぶりーだーさんのはだはひやっとしてつめたい
ぶりーだーさんをゆさゆさゆらしてもおきない
ぶりーだーさんにこえをかけてもおきない

まわりはばくはつのせいでくろこげになっていてぶりーだーさんもまっくろにそまっている
うそだぼくはしんじない
だってぶりーだーさんのはだはまだあったかいから
けどぶりーだーさんをゆさゆさゆらしてもおきない
けどぶりーだーさんにこえをかけてもおきない

地面に目を向ければ銃声

地面に目を向ければ爆発

796 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 20:54:22 ID:Ggf6UpyU0
>>789を以下のように
□□□


嬉しい誤算とは正にこのことなのだろう。
あのタコの登場の仕方は非常に派手だった。
誰もがそれを見つめるくらいには、派手であった。
だから、隙が生じた。
一気に走り出して、距離をつめる。
私が取ろうとしている行動に気付いたのか、ギリメカラがハムライガーという狼を突き飛ばす。
まあ、後々そいつも利用するから有難かったが。
さて、そろそろフィナーレの時間だ。
ガトリングの形へと変形!
零距離から銃弾を打ち込んであげましょう!

「残念だったな。ワシにはきかんよ」

しかし反射。
零距離で打った弾丸は跳ね返り、ゲルキゾクへ向かって打ち込まれる。
だが砲弾は己自身なので、砲弾はゲルキゾクと一体化していった。

「そうですか……そういうことですか……」

ガトリングではダメージを与えることができないと分かったゲルキゾクは、瞬時に別の形へと変化する。
その姿はまるでパラボラアンテナ。
ゲルキゾクの技。超パラボラビームである。

「実弾がきかないなら……実体のないもので!」
「……っ!」

ギリメカラはしまった、と顔をしかめる。
確かに彼には反射という、殺し合いにはうってつけの能力がある。
但し、反射できるのは『物理』のみ。
超パラボラビームは物理という、実体を持って攻撃する技ではない。いわば、魔法のようなもの。
従って、反射不可能。

「さようなら。ギリメカラさん」
(まさか……こんな奥の手を隠しているとは、な)

ゲルキゾクとやらの正体は掴めた。同じような奴を見たからだ。
能力もどういうものかは分かった。ゲルという単語を聞いた時点で確信した。
しかし予想外の出来事が起こり、想定外の奥の手を使われてしまった。
タコが登場した瞬間、身構えてしまった。
それが仇となったのだろう。ゲルキゾクが距離を詰めてきた。
そして、咄嗟にハムライガーを突き飛ばしてしまった。
しかしそれだけなら、よかったのだろう。
あろうことか、このゲルは物理攻撃以外のもので攻撃してきた。
物理を反射できるのはワシの強みでもあるが、それ以上に大きなリスクもある。
物理以外の攻撃をくらうと、ダメージも多くくらってしまうことだ。
まさに諸刃の剣。そして、その隙を突かれてしまった。

(……口惜しいのう。ハムライガーを独りにしてしまうなんて)

抗おうと決めて、責任を取ると決めて、だがその責任すらも果たせぬまま自分は死ぬ。
きっと死んでも後悔し続けるだろう。
どれだけやり直したいと願おうと、もうその機会はない。

「すまない」

最期の言葉は、懺悔。
そして光がギリメカラを包んだ。

797 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/03(木) 20:56:44 ID:Ggf6UpyU0


□□□


いきなりブリーダーさんに突き飛ばされた。
訳も分からず、ブリーダーさんの方向を見ると、さっきのゲルキゾクさんがブリーダーさんの近くにいました。
その後よく分からないけど、銃のような姿に変りました。
そして気付いた。
かばってくれたのだと。
守ってくれたのだと。
でも、そんなのは余計なお世話だよ。

「ブリーダーさん!!」

伸ばしたその手は届くことはない。
それでも、彼は届くと信じて、手を伸ばす
その先へ、自分が守らなければいけない対象へ。
だけどそれは杞憂だった。

「ブリーダーさん、生きてる……」

銃の攻撃をくらったのにブリーダーさんは無傷だった。
何事も無かったかのようにそこに佇んでいる。

「ブリーダーさん!」

嬉しくて、嬉しくて、ブリーダーさんに近づこうとした。
でも、まだ終わっていなかった。
ゲル状の生物はなんだかよく分からない姿に変化して、ブリーダーさんに向けて光線を放ってきた。
でも、心配することはない。
だって銃を防いだ、ブリーダーさんなんだから、こんなのはどうってことはないだろう。

でも、なんで?
なんで、そんな悲しそうな顔なの?
なんで光りに包まれているの?
どうして?

ブリーダーさんがいた所が、爆発した。

【邪鬼ギリメカラ@真・女神転生シリーズ 死亡】
【最悪手:ギリメカラ死亡+ハムライガー生存】


□□□

以上で修正は終わりです。

798名無しさん:2013/10/03(木) 21:34:16 ID:tOo5kf3w0
死んだってのは嘘だったんだろうけど、せっかくなら、ゲルキゾクには死ぬ前に金にがめつい人について触れて欲しかったな
このままだと冷徹で冷血になっちゃうし

799名無しさん:2013/10/03(木) 21:42:30 ID:wgbnH2EQ0
そういうこと言い出してしまうとギリメカラやプチヒーローともどもキャラ崩壊だという扱いになってしまうから仕方ないかと。
投下お疲れ様でした。

800 ◆5omSWLaE/2:2013/10/03(木) 22:11:49 ID:hWGaqEH.0
投下お疲れ様です
情が湧いたばかりに脱落となってしまったギリメカラ
けれどそれはハムライガーを救ったのではなく、さらに破壊する結果へ……
ほとんど殺人機械と化したハムライガー、どうなるんだろうなぁ。序盤の彼の姿を思い出すと悲しくなる
そして今回の戦犯オルトロス、間が悪いってレベルじゃねーぞ!! 逃げるなぁぁ!
せっかく湖の外の世界へ飛び出したし、いっそガンガン引っ掻き回して欲しいものです……!

801 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 15:00:15 ID:COP0kb5k0
多分、今日明日中に投下できると思いますので再予約させていただきます

802 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/04(金) 21:15:24 ID:tfL/N2.c0
昨日の今日で申し訳ないのですが、指摘された箇所を修正します。
明日中に投下させていただきます。

803名無しさん:2013/10/04(金) 21:41:20 ID:R/LAeS320
>>801
ちなみにどの範囲での再予約になるのでしょうか?
前回登場していなかったモンスターたちだけかな?
それとも、全員再予約?

>>802
お疲れ様です
私たちはただで読ませてもらっている以上、所謂クオリティはそれほど気にしていません
最低限の把握、及びきちんと話を読み込んでのリレーはむしろ共に頑張っている他の書き手への誠意としてなしていただければ幸いです

804 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:16:53 ID:COP0kb5k0
>>803
全キャラを予約しての再投下になります。
23時頃に投下する予定です。

805僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:32:57 ID:COP0kb5k0
レナモン、エアドラモン、ワームモン、アグモン、魔人アリスを投下します

806僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:33:11 ID:COP0kb5k0

怪物と対峙するは陰陽装束に身を包み、狐面で顔を覆った金色の尾を持つ魔人。
レナモン系統の完全体――タオモン。

通常種よりも金色の色彩が強いのは、この世界での出会いがもたらした賜物だろう。

「幸せな夢の終わりは……何時だって哀しいな」
涙がタオモンの頬を伝って、地面に落ちた。

「もう、二度と現実では見られないのだから」
涙を踏み越えて、敵の下へと駆ける。
怪物が再動を始める。
攻撃を仕掛けなかったのは、自分が何を出来るか、どう止めを刺すか、
瀕死の敵の前で確認をしていたからに過ぎない。

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
怪物の放ちしは、やはり四の腕から放たれる貫手の連撃。
四。刺。死。

完全体になることで、タオモンが最も性能の向上を感じたのは眼に対してである。

刺。刺。刺。刺。
「遅くなったか?」
敵の連撃を、タオモンは踊るように避けた。
進む。最早、後退の必要性を感じない。

刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。
怪物はより強さを増した敵に対応して、速さを増す。
だが、当たらない。

刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。
刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。
刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。
刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。刺。

降り注ぐ豪雨。
だが、問題はない。

「筆――」
袂より零れた、札が巨大な筆へと変身した。
敵は槍を持った、ならばこちらもそれに倣うだけのこと。

棒術は、日本武術において長い棒を武器とする術のことである。
古くから棒術は宗教とかかわりがあり、祭礼で棒術に相当するものが古くから行われている。
そして、未だ至らぬ究極体の巫女は、逆説的にタオモンが巫女であることを証明する。

つまり――

筆が貫手を流す。
敵の動きが速くなっても、狙う位置自体は然程変わりはしない。
ならば、ひたすらに流してしまえばいい。
衝突した貫手と筆、筆の角度は235度。
相手の力の流れが傾く。
あらぬところへと雨は落ちる。

豪雨は、タオモンを血で濡らさない。
進む。筆を用いながら、一歩ずつ確実に怪物へと接近する。
豪雨が止む。
筆を高く掲げる。
変身するかのように、筆が高く伸びる。

先程、実際に攻撃を受けたことが大きい。
光速の雷は、一直線に避雷針と化した筆へと落ちた。

距離は詰め切られた。

怪物は何を繰り出すか。
タオモンは何を繰り出すか。

零距離。
余計なことをする時間はない。

結局のところ、最後は単純なところに落ち着く。
熱線も雷も、未だ発揮されぬ陰陽術も無い。

それぞれが、凶器と化した四本の腕――
やはり何の問題もなく潜り抜け。
放つ、逆筆の一撃。

――突

この日、初めて――怪物の巨体が宙を舞った。

807僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:33:35 ID:COP0kb5k0

「梵・筆・閃!」
怪物が吹き飛ぶと同時に持ち替えた筆が宙に梵字を書く。

「疾ッ!」
掛け声と共に、梵字が飛ぶ。
目指すは怪物。放たれるはただの文字にあらず。

「グッ……オォォォォォォム!!!!!!!」
字が怪物に衝突すると同時に生じる大爆発。
通常種の完全体であれば、殆どこれで勝負は決する。

だが――

「狐封札!!」
タオモンは決して手を止めない。
袂から放たれた幾多もの霊符が、怪物を纏う。
再び、爆発が生じる。

タオモンの戦闘経験が告げている。
一度、攻撃の機を得たのならば、通常種の致死量を超えてなおも攻撃の手を止めてはならない。

「疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ッ!疾ィィィィィィィッ!!」

視界は爆炎で絶不良、聴力は爆音で著しく減少。
今、世界の全てが怪物の死のためにあった。

世界を覆う死の嵐の中、怪物は思い出す。

――バーカバーカ。ざまあみろ

「ガァウゥ!」
■ア■■■ンは叫ぶ。■ア■■■ンは否定する。
爆発で瀕死になったのは■ア■■■ンだ。
己が切り捨てた部分だ。
己は■ア■■■ンではない。
■ア■■■ンのように爆発で重症を受けてはいけない。

だが――爆炎の現実は、否定を許さない。
逃げられないのか?
所詮、自分は――■ア■■■ンの呪縛からは逃れられないのか?

違う!

「チガウンダアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

まだ力がいる!
あのような攻撃は受けてはいけない。
己が■ア■■■ンではないのならば。

怪物が叫び声を上げた時、肉体の変質は既に開始していた。
ディアによる治療を行いつつ、取り込んだプラチナを全身に行き渡らせる。


出来るのか――出来ねばならない。
出来なければ死ぬのみ!

808僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:33:52 ID:COP0kb5k0

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
終わらせることのない攻撃の中、タオモンは怪物の叫び声を聞いた。
断末魔か?いや違う!そんなはずはない!

言うならば、この叫びは歓喜の――
タオモンの思考は強制的に中断された。
油断していたわけではない、だが予想できるというのか。
あの爆炎の中から平然と伸びてきたモー・ショボーの手が、白銀の輝きを以てタオモンの胴を貫いた。

「ガッ……」
吐血、腹部の燃えるような痛み。
そして――

【ヒートバイパー】

迫り来る死を目の当たりにして、タオモンはたった一言呟く。
「狐封札」
己の体を、タオモンは吹き飛ばした。
死ぬための行動――もちろん、そんなことはあり得ない。

「グッ……オオオオオオオオオ!!」


爆風での強制的な脱出。
貫かれた腹部の出血は、爆炎で無理にでも焼いてしまう。
ヒートバイパーでの即死は避けた。
傷口から、もう血は流れない。

「これぐらいの痛みで……引くと思っているのか!」
啖呵を言い終わると同時に、タオモンは見た。
白銀に輝く怪物の姿を。

はぐれメタル――その肉体は、物理ダメージを極限まで減少させると同時に、あらゆる呪文攻撃を防ぐ。

【かみなり】

激しい閃光、少々遅れての轟音。

かみなり最大のメリットは、放ってしまえば一瞬で敵に辿り着くことであり、
そして今回のかみなりは、攻撃の前兆を相手が掴めない最善のタイミングで放たれた。


世界最速の攻撃に、死を覚悟する間すらない。
タオモンは死ぬ。
今のタオモンでは耐え切れない。





だから――私に任せてください。





「へんしん」

はぐれメタル――その肉体は、物理ダメージを極限まで減少させると同時に、あらゆる呪文攻撃を防ぐ。

809僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:34:06 ID:COP0kb5k0


雷が貫いた瞬間、タオモンの体がプラチナに覆われた。
雷はプラチナに弾かれ、地面へと逃げていった。
取り込んだメタモンが起こした奇跡――そういえば簡単なことなのだろう。
だが、これは決して奇跡などではない。
完全に吸収され切る前のメタモンが、
限りなく薄れた意思を以て、タオモンの肉体の主導権と性質を一瞬握り、変身を成功させた。
その結果、ただのエネルギーとしてメタモンは燃え尽きた。

彼女は代償を支払い、見合ったものを贈った。
ただそれだけの話なのだ。

タオモンはレナモンへと退化する。
ダメージは治らず、
目の前に立つのはダメージを負ったといえど、メタルの特性を手にした怪物。

先程と変わらぬどころか、より悪化した状況。

「パートナー……コレデ…………」
歓喜に打ち震えた怪物の声。
少しずつ、知性が増しているのだろうか。
あるいは、思い出してしまっているのだろうか、切り捨てたものを。

「パートナアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

カシャ

カシャ

カシャ


「目障りだ」
止めを仕掛けようとした怪物の体に、投擲された槍が突き刺さった。
致命傷ではない、だがメタルの体に突き刺さっているということの異常さよ!

怪物が敵を確認しようとした時である。

右上段回し蹴り――
本来ならば頭部を狙うこの技は、過剰なまでの体格差故に怪物の脇腹にぶち当たった。

「ガッ……」
吹き飛んだ巨躯を追撃するは、正拳突き。
致命傷には至らない、イニシアチブを握られていた怪物は冷静さを取り戻す。

繰り出された四本の腕、対するは――
「貴様如きがパートナーなどと……」

両肘打ち。
裏拳。
正拳。


「図に乗るな」

迎撃しつつ接近した怪物の体に、
シャドームーンは突き刺したメタルキングの槍に蹴りを入れ、より深く突き刺した。

「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「中身まで金属とはいかないようだな」

月を背に、シャドームーンは嗤った。

810僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:34:19 ID:COP0kb5k0


「スティングモン……なのか?」
異形といえば、通常種を逸脱した目の前の怪物もそうであるが、
突如現れた乱入者――スティングモンらしき者も、やはりそうといえる。
スティングモンを何度か見た故に、ある種共通する部分を以てスティングモンと呼びかけたが、
やはり、何かが違うようにレナモンには思える。

「シャドームーン……世界で唯一つの私の名前だ」
シャドームーンはレナモンに視線をやらない。
戦闘中というのもあるが、そもそも将来的に殺す相手だ。あまり興味など抱かないほうがいいだろう。

「すまない戦列に加わりたいが……」
申し訳なさそうにするレナモンに、シャドームーンは「いらん、邪魔だ」とだけ返した。

「おい怪物……貴様、自分の名前が言えるか?」
突然、放たれた質問。

「オマエナンカニ……」
「名乗る名前が無いのではない、名乗れる名前が無いのだろう?」
そう言って、シャドームーンは再び嗤いだした。

「キメラモンの頭部……中心はグレイモンであるはずだ……
だが、何だ貴様は……見たことがないな、デジモンではないだろう?雰囲気が明らかに違うな」
「ソレガドウシタ……」

「貴様の声は、何かを求めて求めて堪らない……そんな声だ、
そんな奴が、自我を限りなく薄めるキメラモンに……ましてや、デジモンですら無いものに自分の中心を委ねてしまうか?
違うだろう?自分の手で掴み取りたがるはずだ。本当に求めているのならば、な」
「ナニガ……」

「つまり……貴様は逃げたんだ、自分を認めてもらうことを諦め、名前も呼べぬパートナーを探してな……ククッ、
フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!!!」
「ワラウナァ!!!」
憤怒の炎を燃やした怪物を相手に、一歩も引かぬ様子を見せるのは――それはシャドームーンの自負というものだろう。

「貴様なんぞにパートナーが出来るか!!」
空気の変異を感じ取った、シャドームーンはそれでも動じない。

【かみなり】

降り注いだ光を、シャドームーンはただ受け止めた。
全身が焼け、光に目が潰れ、と同時に再生が開始されていく。
より強靭な肉体へと――

「貴様では、千年やっても私を地獄に送ることなど出来んな」
足運びは静かに、捉えられず、それでいて確実に、シャドームーンを怪物の前へと運んでいた。

「世界最高のパートナーのいる"僕"に」
深呼吸。
左足を前に。
拳を握りしめ。

「自分の名前もわからん独りの阿呆が勝てると思ったか!!」
正拳突き。
正拳突き。
正拳突き。

正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。
正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。
正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。
正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。正拳突き。

シャドームーンの技術は――

『カラテ……って言うんだって、ニホンから来てくれた人が教えてくれたの』
『一日、百本……君もやる?無理かぁ?』

彼のパートナーによってもたらされたものである。

この殺し合いで今まで使っていなかった技術を解禁したのは、
敵の硬さのせいもあるだろうが――それよりも、

『シャドームーン…………』

大事な理由があるのだろう。


「邪ッ!!!!」
かいしんのいちげき!

811僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:34:34 ID:COP0kb5k0


「グッ……ウゥ……」
タオモンに痛めつけられ、シャドームーンに会心の一撃をもらっても、
まだまだ戦える、自分の肉体を怪物はそう判断している。

だが、どうしようもなく圧されてしまっている。
何故だ――何故、こんなにも絶望を感じているというのだ!!

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!」
その時、怪物は――無意識的に封印していた力を開放した。
それは■ア■■■ンの残滓、切り捨てようとしてやはり切り捨てることの出来なかったアイデンティティ。

「クルナア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!」

【ゴッドトルネード】

「チッ」
全てを拒む風の壁は、シャドームーンすらも吹き飛ばし――
それでも、その重量故に――友であるが故に、飛ばされぬ者もいる。

「お前…………」
「ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ」



「…………エアドラモンなのか」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

メタルティラノモンは、とうとう再会を果たした。
そして、怪物はとうとう取り戻してしまった。


エアドラモンの名を。
捨てたかったはずの自分を。

812僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:34:45 ID:COP0kb5k0

悲しさより先にメタルティラノモンに去来した感情は悔しさだった。
エアドラモンはどこまでもどこまでも行って、キメラモンとも呼べない何かに、怪物になってしまった。
複雑な感情を瞳に宿したメタルティラノモンに、たった一言、シャドームーンは聞いた。

「……知り合いか?」
「大事な……友達です」
「そうか」

その言葉を聞いて、シャドームーンは構えを解いた。
「ならば、これは貴様の戦いだ……」
既にシャドームーンは戦意を失っていた。
決着がどうであれ、生き残った方を殺すのだろう。

「案外優しいんだな」
「ふん……」
レナモンの言葉にシャドームーンは鼻を鳴らすと、仁王立ちをして黙りこんでしまった。

「貴様はどうなんだ?」
「死なないのならば、メタモンはそれを望むだろう……私もそうしよう」


「エアドラモン……」
「もう、俺はエアドラモンなんかじゃねぇ……俺は、俺は……何だ?
エンジェモンじゃない、レディーデビモンじゃない、ライチュウじゃない、バブモンじゃない、
思い出してしまった俺はキメラモンにもなれない……」
「もういい……もういいんだ」

「お前はいいよなぁ……ティラノモン、いや、今はメタルティラノモンか……お前はいいよなぁ、いいよなぁ、ハハ、ハ、ハ、ハ。
お前だ……お前が羨ましかったんだ俺は、お前が、俺を、置き去りに、して、行くのが、俺を、置いて、行くなよ……ああ、そうだ、俺は」





「お前になりたかったんだ」

無意識的に封印していた怪物の翼が、とうとう躍動を開始した。
もう、ヒートバイパーもかみなりもディアも何も使えない。
エアドラモンに――なってしまった。
だが、何も要らない。
怪物は空に、友だった者は地にいる。

届くものはいない。

「だから、お前をくれ」

四つの手の全てが、メタルティラノモンへと救いを求めた。

「なぁ、俺達って喧嘩したこと……なかったよな」

――力試しはしたことはある、だけれど喧嘩をしたことはなかった。
――二人しかいなかったから、一度でも関係にヒビを入れてしまうのが怖かったのかもしれない

――逃げてきたのかもしれない
――逃げ続けてきたのかもしれない

――初めての戦闘も、ピカチュウさんの時も、ライチュウさんの時も、紫の獣の時も

――もう、逃げない

はぐれてしまった者のメタルの腕が、友であろうとする者のメタルの腕に弾かれた。

――ミサイルも、プラズマ弾も、いらない。

「ぶん殴って止めてやる!!恨まれても止めてやる!!お前を止めてやる!!お前がどうなってでも止めてやる!!
そうだろエアドラモン!!友達ってそういうことだろ!?」

ミサイルをプラズマ弾を、ありったけ持っていけ。
それを推進力に、メタルティラノモンは飛んだ。

「ティラノモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!」
「エアドラモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!」

その裏技は、ティラノモンだけに友人だけに許された最高の攻撃。
プラチナで覆われていても、メタルティラノモンには長い時間を歩んできた友には殴るべき場所がわかる。

かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!
かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!
かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!
かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!
かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!
かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!かいしんのいちげき!

「お前は怪物じゃねぇ!だけどお前を俺にさせたりもしねぇ!お前はエアドラモンだ!
不遇だ!進化ルートは揃ってないし、アニメでは扱いは悪い……でも、ゲームには七大魔王よりも出てる!
お前を使う奴はきっと何人もいる……お前はそんな…………俺の最高の友達だ!!」

813僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:35:18 ID:COP0kb5k0

ダメージがエアドラモンを地に落とした。
それでも、戦いは終わらない。
これで終わるぐらいならば、エアドラモンは怪物にはならなかった。

「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」
「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」

互いに互いの拳が、腹部に命中した。
何かがおかしくて笑う。

殴り合い、そして会話する。

「結局俺は……どこまでも自分からは逃げられなかった!!」
「ああ……俺達は進化できる、どんな可能性だってある!!でも……自分をやめることだけは出来ない!!」

「だったらどこまでも絶望しかねぇんだ……俺には!!」
「そんなことはない!!」

「なんでそんなことが言える!!」
「お前の友達だからだ!!」

虚を突かれたエアドラモンは、
一瞬呆けて人間で言う股間部分を蹴り上げられた。

「ふざけたことを言うな!!」
「ふざけてなんかいねぇ!!」

「俺はお前の友達だから!!良い所も悪い所も何でも知ってる!!
俺にパートナーができたら、お前を皆に教えて、そしてお前は誰かのパートナーだ!!
なんなら俺ごとお前を連れて行く!!」
「馬鹿なことを……」
「ああ、馬鹿なことだよ!お前のやったことと同じ馬鹿なことだよ!!
お前馬鹿だよ!!大馬鹿野郎だよ!!でも、そんなお前の友達なんだからやっぱり俺も馬鹿なんだよ!!
お前が何匹殺したかわからない!!俺も襲われた!!お前は罪を償わないといけない!!
でも俺は……そのことで世界中の皆が敵に回っても!!お前に幸せになって欲しい!!
お前が捕まったら俺はお前の牢獄に穴を開けに行く!!お前が殺されそうになったら、お前を殺そうとするやつをぶっ倒す!!
馬鹿なんだ!!俺達は馬鹿なんだ!!だから…………もう、やめろよ。
馬鹿なのはお前だけじゃない、俺達が馬鹿なんだ。
だから馬鹿な真似やめろよ、俺達で馬鹿なことやろう。なぁ……」


「ああ、そうだな……」
クロスカウンターで喧嘩の決着は終了した。
初めての喧嘩の決着は、メタルティラノモンの負けだった。
運動をした後であるかのように、清々しい疲労感と共に、メタルティラノモンは地に伏した。

「じゃあ!」
「でも……でもな、やっぱり俺は馬鹿なんだ…………もう、お前と一緒にはいられない」

エアドラモンは見た、人間の姿を。

「本当は、究極体にまで進化するお前に追いつきたかっただけなのに……どうしてこうなっちまったかな」


メタルティラノモンは、レナモンは、シャドームーンは見た、人の形をとった死を。
「ハハッ……馬鹿だな、俺」

一歩ずつ一歩ずつ、エアドラモンは人間の下へと歩いていく。

「いまだに……幻想を捨てられない、わかってるのにな」

「やめろ!!行くな!!!」

「行かないでくれ……行くなよ!なぁ!!」

「ごめんな」
エアドラモンは振り返らない。


「あら、ジャバウォックさんは私のお友達になりたいの?」
「ああ、俺は君のパートナー……いや、友達になりに来たんだ」


「そう、じゃあ――」



【エアドラモン@デジタルモンスターシリーズ 死亡】

814僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:35:29 ID:COP0kb5k0



「エアドラモオオオオオオオオオオオオオ…………ッ?」
友の死を悼んで、慟哭を上げたメタルティラノモンを、
完全に消耗しきった彼の肉体を、メタルキングの槍が、貫いた。

「俺は……」
「お前の戦いは終わった」

「お前の負けだ……だから」
ロードされていくメタルティラノモンの肉体は、友情など最初から無かったかのように、跡形もなく消えていく。

「友と、あの世で語らうが良い」

【アグモン(ティラノモン)@デジタルモンスターシリーズ 死亡】

「レナモンの姿は……やはり無いか」

行きて巡りあえば、再び地獄への糧として殺すだろう。
この場で殺せないことに対しては何も思わない。
今、気をやらなければならないのはおそらく――この場で最強の存在。

「お前が私を地獄に導くか……?」
「んー?アリスはn0101010010101000101」

あれほどにパートナーを求めたエアドラモンが、彼女と共に歩まないわけがない。
果たして、シャドームーンと対峙するのは魔人アリスなのか。
あの巨大な力を殺した彼女が、魔人のままでいられるというのか。


「010101000000000101010010101001010101001010100100011
0010101000010101001010101010110100101001010101010000
1111111111110010010101001010101001010100101001010101」

莫大な力は、主を求め――そして、死者のマグネタイトを操りし少女へと降る。


一方、レナモンは瞬時に逃走を決意した。
コイキング達の事を誰かに伝えるまで、死んでやる気はない。
ましてや、強大な敵同士が潰し合うのならば、それに越したことはない。

いや、義務感だけか?
恐怖という感情が混ざっていないと言い切れるか?


「あれは……あれは何なのだ?あれは…………」
レナモンは振り返ってしまった。
そして見てしまった。

エアドラモンの羽。
モーショボーの羽。
エンジェルの羽。
ムーの羽。

各々の羽を3枚ずつ、合計12枚の羽を魔人は背に宿らせた。
それ以外は未だ、外見だけは変わってはいない。
だが――


「天使【ルーチェ】……いや、もっと禍々しい…………言うならば、死導【シドー】」

なにかが変質した。





「ねぇ、アリスは……お友達が欲しいの、虫さんは人間っぽいねー……だから…………」

「 死 ん で く れ る ?」

「やってみろ、出来るものならば」

815僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:35:40 ID:COP0kb5k0
【C-5/草原/一日目/夜中】

【レナモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:君を忘れない
1:逃走
[備考]
メス。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。
ロードしたメタモンのデータは消失しました
現在は完全体に進化することは出来ません

【ワームモン(スティングモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)、メタルキングの槍
[思考・状況]
基本:地獄へ征くその日まで、殺し続ける

[備考]
オス。一人称は私。
クーフーリン、デカラビア、メタルティラノモンをロードしました。
すえきすえぞーを食しました。
それにより強化され進化しかけましたが、イレギュラーな力を得ていたためデータが異常を起こしました。
全身の緑色の部分が銀色に変色しています。
瞳が緑色に変色しました。

【アリス@女神転生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:チェーンソー
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:遊ぶ
1:目の前のシャドームーンをお友達にする

[備考]
エアドラモンの羽、モーショボーの羽、エンジェルの羽、ムーの羽を各々3枚ずつ背中に生やしました。
それがどのような影響を与えているかは不明です。

816僕たちは世界を変えることができない。 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/04(金) 22:35:50 ID:COP0kb5k0
投下終了させていただきます。

817名無しさん:2013/10/04(金) 23:07:08 ID:ThdeUYzc0
投下乙!
エアドラモンは最後にエアドラモンとしてティラノモンと喧嘩出来たんだなあ、そこまでやっても最終的に人間のとこに行っちゃうのも彼らしい
死導アリスとシャドームーンの怪物頂上決戦はいったいどちらに軍配が上がるのか…どっちに上がっても相手をロードするだろうから絶望しか見えねえ……

818名無しさん:2013/10/04(金) 23:44:16 ID:R/LAeS320
投下乙でした!
おおう、おお、おお
そうか、こういう結末もあったか……
確かに人間を求めたエアドラモンからすればこれ以上ない死だったかも
本当の願いが分かっても、それでもと人間を選んでしまうのが切ない
しかしこれ、アリスやべえってのは確かにあるんだけどシャドームーンがいいなー
キメラモンへの怒りからのシャドームーンだからこその身の振る舞いに全編通してしびれた

819 ◆5omSWLaE/2:2013/10/05(土) 00:48:17 ID:8Lf7z31I0
強固な想いはある者に力を与え、ある者の友を救い、ある者を破壊神へと変えた

投下お疲れ様です
力の果てキメラモン、それを凌駕するタオモン、そしてシャドームーンの戦い
圧倒される文章、展開、非常にカッコよかったです!!
そしてエアドラモンとティラノモンの『喧嘩』、彼らの友情に心が熱くなりました
それを急激に氷結したアリス――というか、ここで未だに人間に執着するエアドラモンはホントもう……
超強化されたアリスと進化を繰り返すシャドームーン、このタイトルマッチですよ、どうなるか気になりますね!

820 ◆5omSWLaE/2:2013/10/05(土) 18:15:30 ID:8Lf7z31I0
時間帯が夜に突入し、残り人数も20人を切ったところで、
第二回モンスター闘技場チャットを企画しております。

チャット内容は前回と同じく、書き手間での今後の方向性や展開のアイデアの交換、そして雑談です。
日時ですが、少し急なのですが明日、6日(日)22:00〜 はいかがでしょうか。
参加が難しいという方が多い場合は来週、12日(日)に回したいと考えています。

821 ◆5omSWLaE/2:2013/10/05(土) 19:03:40 ID:8Lf7z31I0
12日は土曜日でした……
13日の日曜日です

822 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/05(土) 19:06:36 ID:HuYzzLDY0
明日なら参加可能です
ちょうど少しこちらも早めに伺いたいことがあったのでチャットがあるのなら助かります

823 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/05(土) 23:58:07 ID:Jp9KQczE0
修正部分が出来たので投下させていただきます。

ギリメカラ:(……口惜しいのう。ハムライガーを独りにしてしまうなんて)〜から

(……口惜しいのう)

あの男に顔向けできないのが口惜しい。
人間達の慌てふためく姿を、見せてやることができなかったのが口惜しい。
ハゲに抵抗することもなく、死ぬことが口惜しい。
自分の死も、人間達にとっては殺し合いの中で起こったイベントに過ぎず、盛り上げさせてしまったことが口惜しい。
こんなに後悔してしまう、自分の不甲斐なさが口惜しい。
なにより、ハムライガーを独り残してしまうことが口惜しい。
彼をここまで壊して、責任を取れないことが
更に彼を壊してしまうことが
何よりも心残りだった。
それは、きっと死んでも後悔し続ける。
抗いたくても抗えなくて、やり直すことができない、永遠の過ち。

「すまない」

最期の言葉は、懺悔。
そして光がギリメカラを包んだ。

ゲルキゾク:彼はそこへ、足を踏み外し落ちていく直前〜から

彼はそこへ足を踏み外し落ちていく直前に、あの女のことを思い出していた。
金を貪欲に欲して、自分を道具呼ばわりして、でも自分のことで泣いてくれたあの女。

(裏切ってしまいましたね……)

生き残ることができず、勝手な行動をとって、勝手に野垂れ死ぬ。
これを契約違反と呼ばずして、何と言うのだろう。
絶対に死ぬな、一人ぼっちにするな、それらを私は破った。

(…………)

もし、あの女が生きているのならば、私が死んで開放されるのだろうか。
そうであれば、私のことなどさっさと忘れてしまって、私より優れたより優秀な道具を探して欲しい。
もし、殺されているのであれば、死んでいるのならば。
再開できたならば。
契約の不履行を許してもらえるのであれば。

(また、道具として使役してほしいですね)

そんな思いと共に、彼は沈んでいった。

【ゲルキゾク@モンスターファームシリーズ 死亡】

プチヒーロー:なにしてるんだろう僕〜から

なにしてるんだろう僕。
なんで怖がってたんだよ。
なんで、あの目を見たくらいで何を怖気づいているんだ。
ヒーローは怖がっちゃいけない。
辛くても、苦しくても、怖がっちゃいけないし、泣いちゃだめだ。。
誰かに勇気を与える為に、希望を持ってもらうために、象徴とならなきゃいけないんだ。
だから、救わなきゃいけない。
目の前で大好きな人が死んだ苦しみは僕にも分かる。
たった短い間でも、それは僕にとって大切な思い出。
ハムライガーさんにとって、ギリメカラさんは大好きな人だったんだろう。
その気持ちは、分かる。
でも、乗り越えなくちゃいけない。
乗り越えて、生き残って、そうして初めてギリメカラさんは報われる。
だから止めなきゃいけない。
あの狼さんが取る行動を。
あの目は暗くて、何も見えない闇だった。
一歩間違えば、取り返しがつかない行動をしてしまうかもしれない。
悲しみは僕が一緒に背負ってあげるから。
苦しみは僕が一緒に背負ってあげるから。
そうなる前に進もう。
これ以上、犠牲者を出しちゃいけないんだ。
だから僕は一歩を踏み出す。
手を差し伸べるために。

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生?
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
1:ハムライガーさんを救う
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。

※ギリメカラが所持していた物は死体の傍に放置されています。

824 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/06(日) 08:27:53 ID:wm1Pfqr.0
修正投下お疲れ様です!
痛み分けというか痛み爆発四散してしまいましたねえ……おのれ戦犯オルトロス!
地獄の沙汰も金次第……となってくれたらいいなあゲルキゾク。

そして投下されてすぐになりますがプチヒーロー、ハムライガー、ガブモン予約させて頂きます。

825 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/06(日) 09:27:54 ID:H3Sn/v4.0
ベヒーモス予約させていただきます

826名無しさん:2013/10/06(日) 11:40:55 ID:H3Sn/v4.0
各キャラのページに初期支給品の追加、
及び、支給品ページの下部に不明支給品へのリンクを作りました。

827 ◆5omSWLaE/2:2013/10/06(日) 18:09:29 ID:NLvc3B5.0
チャット参加可能な方が多いため、今夜10時より行います!

828 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/06(日) 18:31:27 ID:j8YxKDro0
了解しました
では、楽しみにしておきます

829 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/06(日) 22:21:56 ID:j8YxKDro0
ワームモン、魔人アリス、予約します

830 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/07(月) 00:21:15 ID:b6nalIbU0
グレイシア、ピクシー、ソーナンスで予約します

831名無しさん:2013/10/07(月) 22:46:06 ID:hFPAGY5U0
予約ラッシュすごい

832 ◆5omSWLaE/2:2013/10/07(月) 23:32:33 ID:BPMhmSs.0
ルカリオ、妖精ジャックフロスト、キノガッサで予約致します

833 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:21:26 ID:xcPuUT0A0
投下致します。

834その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:23:11 ID:xcPuUT0A0
心とは、どこにあるのか。
胸か、頭か、口々に語られるも、誰も在処は知り得ず。
持て余し、蝕まれ、壊し、穴が空き、黒く染まり、それでも、それでも。

心は、どこにも無くなったりはしないのだ。
無限地獄に落ちようとも、心は、無かったことになど、存在しなかったことになど、できるはずがないのだ。


ガブモンの世界は淀んでいた。
歩けど歩けど、他者には巡りあえず、山を越えて歩む森は木漏れ日を赤色に変えて、きつくその青白い毛皮を照らす。
染みこむ、血のような赤。
やがて赤すら、ガブモンに寄り添うのを辞めて、月光があたりを照らしだした。
ふわりと、優しく包み込むそれを受けて、ガブモンは空を仰ぐ。
木々の合間から覗く月は、これから高みを目指す、天国にも届きそうなところを泳ぎ、太陽の光を受けて輝く。

濁りきった心中、瞳が少しばかり洗われて、開きっぱなしになってしまったものだから、涙が溢れた。
心が溶けていく、ガブモンは咄嗟に涙をガルルモンの毛皮で拭う。

そして、一体の近づいてくる獣の姿を捉えた。
茶色いふかふかの毛皮、大きな犬、似ても似つかないが、ガブモンは同行者を思い出し、目を見開いた。
油断はするな、あれは敵かもしれない、でも、守るべき相手かもしれない。
逸る心をなんとか制御して近づく。

「そなたは……いやこちらから名乗ろう、拙者はガブモン、殺し合いには乗っておらぬ……」
間合いは、大丈夫だ。
あちらが敵対生命体でも迎撃するには充分。
予想外の攻撃に対する予想は無意味、自分ができる最も素晴らしい戦闘間合いで、ガブモンは尋ねた。

「ぶりーだーさん」

「む……?」

「あいたい」

ガブモンは、夜より暗い空虚を見た。
瞳に月は見えない、決して、明けることのない、無の空。

「ブリーダー……そなたの仲魔か」
聞こえぬと、半ば理解してガブモンは言葉にした。
そのぽっかりと空いてしまった両目を見据えても、ガブモンがたじろがなかったのは自分と僅かに重ねていたおかげであろう。
目の前にいる獣も、無くしたのだ。
それが過去なのか未来なのか、ガブモンに見当はつかなかったが。

「ぶりーだーさん」
再び出た言葉の音は、先ほどと微妙に違った。
仲魔という単語に反応したのか?

「ぶりーだーさん」

「呼べども、かえらぬよ。そなたが拙者と同じ立場であれば……の話だが」
呼んで蘇るなら、いくらでも未来の名前を、声が枯れるほどに叫んだ。

「あいたい」
壊れた機械のように繰り返す。
ただ、機械にはノイズが走っていた。
単語の意味を、思い出してしまいそうな、ノイズが。

「会えぬよ、もう……死したものには……」
諭す言葉は、自身にも辛くしみた。
傷口に塗りたくっているこの考えが果たして薬なのか毒なのか。
それでも、ガブモンの心は痛みで繋ぎ止められていた。
義務感に、まだ、まだ他者の、先の未来……進化の後にある世界を杖にして。
この痛みすら感じなくなった時に、心は壊れてしまうのだろう。
だから、荒療治に過ぎるのかもしれない。

死を認識する、埋葬という行為。
ガブモンは逃げない、死者から、後悔から。

「あいたい」

「あいたい」

「ぶりーだーさん」

「あいたい」

頻度が早くなる。
散らばって砕けて踏みにじられたそれが、体中に突き刺さって暴れていた。
痛い痛い、どうして痛いのか、思い出しちゃいけない、いけない。

835その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:23:58 ID:xcPuUT0A0
「……泣いて、いいのだぞ、名も知らぬ獣よ」

「泣いて泣いて泣いて……連れて行け、そのブリーダーとやらの……名前を、思い出を……未来を」

この獣は壊れている。
確信してなお、ガブモンは決断できない。
獣に施すべき治療は、死という安寧。
ただ、もう死は、見たくなかった。

「拙者のことを瞳に入れずとも、壊れたままでも、いい、守らせてくれ」
手を伸ばす。
獣は空虚を震わせた。

「アアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

思い出す、思い出してしまう、差し出された手、拐かす優しい言葉。
壊れた心が断片で光りだす、嫌だ、嫌だ、痛い、痛い。

みらい、かこ、なんだっけ。
おもいで、おもいで。

おもいだしちゃいけない。

こいつは、じゃまだ。

ハムライガーは牙をむく。
機械演算の邪魔をする障害を消すために、忘れるために。

ガブモンは構える、このまま戦えば、こいつを殺してしまう。
殺気と底なしの狂気だけは立派であったが、狂った思考の生み出す攻撃など。
しかし、一欠片の迷いは判断を遅らせ、爪と牙がその青白い毛皮を月光の下に切り裂いた。


――刹那、澄んだ金属音が響き渡る。
蒼白の月が落ちてきたのか、ハムライガーはそれに弾かれ地面に着地する。

「間に合った……!!」

灰色の、夜が似合う人形が宙空を舞う。
ガブモンは目前の盾と人形に面食らったが、すぐさま意識を持ち直し人形を見据えた。

「ハムライガーさん……」
「そなたは、あの獣の知り合いか?」

呼吸すら感じさせずに殺意だけを迸らせるハムライガーを見遣り、ガブモンは問うた。
「さっき出会ったばかり、かな」
でも、と人形は続ける。
「僕と……僕と同じだから、止めてあげなくちゃ、助けてあげなくちゃ」

人形は盾を取る。受け止めるための盾を。
「……ふふふ、なんとも、奇縁だな」
ガブモンは笑う。
似た境遇のものが集まるとは、そして相対するとは。
違いは、あげれば山ほどある。

プチヒーローは無くした友の心を携えて、友の体で真っ直ぐに歩んできた。
ガブモンは亡くした者の心を引きずって、それでも決して捨てずに歩んできた。
ハムライガーは、失うものがあり過ぎて、砂のような心がざらざらと体の中でひっかかていた。

三者三様、しかし、心は確かに全て、そこに存在していた。

836その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:24:40 ID:xcPuUT0A0
「拙者は聞きたい、そなたらのことを、しっかりと聞きたい」
もう何も知らずに失うのは嫌だ。

「僕も……僕も」
上手く言うことは出来なかった。
後悔したくない、話がしたい、失いたくない、それらがごちゃまぜに成った言葉を、プチヒーローは知らない。
「拙者の名はガブモン、そなたの名は?」

「プチヒーロー、プチヒーローだよ」
お互いの名前を名乗りあい、微笑む。


「ぶりーだーさん……?」
おもいだしたくないおもいだしたくないおもいだしたくない。
なまえ、なまえ、なまえ?

ハムライガーは吠える。
遠く遠くに吠える。
ノイズを消せ、邪魔者を消せ。
ハムライガーの世界に何かが存在してはいけない。
そもそもハムライガーとはなんだ?
自分、じぶん、ボク、ぼく?

ハムライガーは突撃する、ひっかき、突き、連携した流れる攻撃は盾を跳ね上げた。
しかし盾は超常の力により空中にとどまりなおもハムライガーをいなす。
「聞いてハムライガーさん!!勇気を、僕の手をとって、勇気を受け取って!!」
手の届かない闇の底へ手を伸ばす。
勇気を、悲しみを連れていける、乗り越えてともに歩ける勇気を。

手は勿論振り払われた。
プチヒーローは、ガブモンは、知らない
ハムライガーが見ているのが悪夢であることを。
ねじ曲がった現実であることを。
それすら、壊されてしまったことを。

彼らとは、徹底的に『違う』ことを。


もしも、それを彼らが知っていたらなにか変わったのだろうか?
いや、一切変わりはなかったに違いない、もっと、もっと強い思いで引き上げていた、それだけだ。

プチヒーローは腕を、限界の先まで伸ばす。
届け、届けと、心まで、遥かな、余りにも茫洋たる道のりへと。
牙は伸びた腕を格好の獲物として捉える、鋭い痛みが走り、プチヒーローは腕を引き抜きかけ、とどまる。

「プチヒーロー!!!」
今にも食いちぎられそうな勢いで暴れているハムライガー、慌ててガブモンが駆け寄った。

「大丈夫……大丈夫だよ」
痛い、とても痛い。
でも今は、勇気を、伝えるんだ。

「ベホマ!!!」
届いてくれ。
「ベホマ!!!!」
君の心まで。
「ベホマ!!!!!」
ありったけの声で、呪文を贈る。
癒しのおまじない、人を思う気持ちの結晶。
本来体を癒やす術を、内側へ注ぎ込む。
無意味かもしれない、届くことなど幻想なのかもしれない。
だがプチヒーローにはこれしか、これ以上の方法を見つけることは出来なかった。

自分の心を、気持ちを、勇気を、呪文に込めて込めて込めて、相手の心へ流し込んだ。

837その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:25:51 ID:xcPuUT0A0
心は、どこにあるのかわからない。
しかし心は、無くならない。
砂は、雨を受けて硬さを得て。
硬さは、形を取り戻させて。
形は、破片になって。
破片は、繋がって。


「ベホマ!!!!!!」


ガブモンの言葉は包み込む月光。
プチヒーローの呪文はうららかな陽光。




全て、全て遅すぎたが。






涙がこぼれた。
温かい雫が、プチヒーローの腕に落ち、じわりと馴染んだ。
想いのぬいぐるみの体に、心の返事が、届いた。





ボクは嫌だった。
ボクは嫌だった。
ボクは、ボクは。


一つ一つ思い出す、認める、理解する、してしまう。
壊れた心は修復された。
元通り、しかし、経験や過ぎた時間は戻らずハムライガーの心になる。


そこにいるのは、他者に翻弄され続けた純真な獣ではない。

一体の、覚醒したモンスターだ。


冷気が、プチヒーローの腕を舐め上げた。
凍結する、消えた痛み。
ガブモンが引きずり出さねば、全身が氷付き砕けていただろう。

「ハムライガーさん、ハムライガーさん!!」


「ありがとう、ボクは、思い出したよ」
告げた感謝の言葉は本心。

「でも、ボクはもう誰も信じない」
願いを思いを優しさを希望を、何もかも利用されて。
幼いハムライガーは、学んだ。
本来ゆっくりと培うべき、世の不条理を、哀しい側面を。
覚えた、怒りを。
醒めた、甘い夢物語から。

838その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:27:30 ID:xcPuUT0A0
「ボクは……帰る、帰るんだ。誰かに言われたからじゃない、誰かに命令されたからじゃない」
復元した心を氷が固めて守りぬく。
もう壊されてたまるか。
奪われてたまるか。

よくも、よくもボクを壊してくれたな!!!!

「ボクは、ボクの意志で、君たちを……皆を殺してブリーダーさんのところに帰るんだ!!!」
こんな世界、そもそもいらないのだ。
いらない世界の者は消せばイイ。
本当に大事なものは自分が信じられるものだけ。
ハムライガーの世界は、ブリーダーさんと歩んできた、優しい世界だけだ。

「それが……そなたの答えか」
顎を開き、ハムライガーの喉奥に冷気が充満する。
悲しげに、ガブモンはそれを見ていた。

「そんなの、そんなのダメだよ!」
「うるさい!!君も、君たちもボクを利用する癖に!!!」

ブリザード、返礼の吐息はハムライガーの精神を吐き出すがごとく。

「ガブモン、進化」
静かな言葉とともに、ガブモンは青白い毛皮を纏う巨大な獣に変わった。
吐出された吹雪をその巨体は受け止め、打ち消す。
ガブモンはワダツミの力を知らなかった。
それでも受け止めた。
心の冷たさを、痛みを知るために。

「拙者は、弱き者を守るために進化した、そう信じたい」
「ガブモン……?」

進化して、ガルルモンの名前を頂いた。
だが、まだだ。
進化した意味を、自分の信条を全うできねば、自分はまだ『ガブモン』の頃と、何も変わらない。
失った未来に、顔向け出来ない。


「進化だ、変わらないために変わる、進化だ」
その言葉は、プチヒーローの心の琴線に触れる。
ハムライガーは静観していた、否、ガルルモンの一挙一動を観察していた。
いつでも必殺の一撃を繰り出せるように、ブリーダーに教わった闘いの基本に忠実に。

「ハムライガー、拙者はそなたを信じさせてみせる」

それができねば、本当に自分がなんのために進化したのか、わからなくなってしまう。

「僕も……!!」
「そなたは、下がってその腕を癒しておけ」
プチヒーローの申し出を断る。
労りの意味もあるが、この場においてプチヒーローは適役とは言いがたいのだ。
ガブモンから見ても、彼はあまりに眩しすぎた。
きっと彼は進化を遂げたあとなのだろう。


だからガブモンは、進化を目指す。
ハムライガーとともに、進化を。

839その心まで何マイル? ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:27:53 ID:xcPuUT0A0
【E-7/森/一日目/夜】



【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:覚醒
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:皆殺して帰る。
 1:もう誰も信じない。



【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生?
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
1:ハムライガーさんを救う
【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。



【ガブモン@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:マガタマ(ワダツミ)
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
 1:ハムライガーを信じさせてみる

[備考]
できるだけ早く進化したいと思っている。なぜか侍口調で話す。一人称は「拙者」。
ワダツミを装備することで、ガルルモンへの進化が可能となりました。

《支給品紹介》
【ワダツミ@真・女神転生?】
マガタマの一種、氷の力を持つ。
氷結無効/電撃弱点

840 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/08(火) 07:28:31 ID:xcPuUT0A0
投下終了いたします。
問題点などございましたらご指摘お願いします。

841 ◆5omSWLaE/2:2013/10/08(火) 08:30:11 ID:aH.J6y82O
救いたいという気持ちが奇跡を起こす、勇者の意志はそれを可能とする

投下お疲れ様です
粉々になったハムライガーの心を治癒したプチヒーロー、素晴らしかったです!
強い想いが絶望の底に希望の光を差し入れた……うーん、ズルいです。目が潤いました
次はガルルモンの番、疑心暗鬼を打ち破り、最高の結果を迎えられるでしょうか

842名無しさん:2013/10/08(火) 11:14:10 ID:x7DtZadg0
投下お疲れ様です
おお、ガブモンが最初から最後までかっこいい!
変わらないために変わる進化、か
その進化をなしたプチヒーローが選んだのが彼が恐れていた傷つけてしまう魔法ではなく、ベホマっていうのもいいなー
心を治すベホマ。でも、つぎはぎの心は元の傷ひとつない心とは別物で
ハムライガーは疑心暗鬼に囚われてしまったか……

843CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:42:40 ID:x0SFz/j.0
ベヒーモス投下します。

844CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:43:02 ID:x0SFz/j.0

死は全てに平等である。
人間、動物、魔物、そして――物言わぬ建造物にまで。

「…………」
廃村を抜け、ベヒーモスは古城――いや、遠目に見て古くなった城だと判断したが、実際はそんなものではなかった。
入ってすぐに、魂が抜けていると――そうベヒーモスは感じた。
修理すれば直せる空間というのは存在する。だがこの城はそうなりそうにない、廃棄された城だ。
主人を失い埃だけを積み上げた高価な家具、最早誰かもわからない肖像画、床に投げ出された古書物。
モリーさえも手を付けなかったのだ。
住む者どころか訪れる者も、この殺し合いが終わってしまえば二度と無いだろう。
城の墓だ――死体が棺桶も墓も兼ねている。ベヒーモスは鼻を鳴らした。

耳を澄ます、戦闘の音は聞こえない。
あの恐竜も追って来れはしないだろう、ベヒーモスはそう判断すると、寝室を探した。

古城の調査の前に、支給品の確認を行っておきたい。
支給品の確認を行う上で動く必要は然程無い、ならば硬い石造りの床よりもベッドの上で行いたい。
休息するつもりではないが、これからも休み続けることなく動く心積りである以上、
余計な疲労を貯めこまない場所が良い、そういう判断である。

寝室はあっさりと見つかった。
積もった埃が気になるが、構いはしない。
かつての王族が使っていたであろう巨大なベッドへと身を投げ出す。
すると僅かな弾力をもって、ベッドは危なげなくベヒーモスの巨体を受け止めた。

ベッドの上に投げ出した二つのふくろを、
ベヒーモスはその巨体からは想像できないほどに器用に開封する。

「……ほう」
思わず声が漏れた。

目に入れただけでわかる禍々しくも強大なる力。
一つは虫に似た生物――なのだろうか、時折蠢くがどうにも生きているようには思えなかった。
もう一つは瓶詰めにされた白くぶくぶくと肥えた肉の塊のような物、これも時折蠢くが、
これ単体が生きているわけではなく、切り取られた生命の一部なのだろう。

両方共、取り込めば強大な力を得られるのだろう。
だが――

「危険だな」
両方が両方、取り込んでしまえば己の性質を変えるだろう。
いざという時に頼らなければならないことはあるかもしれないが、幻界で鍛えた己の身は伊達ではない。
実際、使う可能性は低いだろう。

両方をふくろに戻して、廃城探索に戻るか――
いや、ふくろに戻しては戦闘中に取り出すのが面倒くさい、ならばどう運ぶか、
そのような事を考えていた時である。

『……この声が聞こえますか?』

ベヒーモスは声を聞いた。
だが、この声は鼓膜を揺らしたわけではない。

『念話か』

発信源のわからない脳内に直接届く声。
ベヒーモスが然程動揺せずに受け止めたのは、やはり積み上げた経験故だろう。
瓶詰めの肉が震えている、これが媒体になっているのだろう。
送信が出来るならば、受信も出来るだろうと、返答を返す。

『はい、その通りです』

ベヒーモスはわかりきったことを相手に返答させて、その微小な時間を周辺探査に充てた。
相手のことが何一つとしてわからない、それは良い。
だが、相手の位置がわからないのは面倒だ。

念話に相手の意識を向け、超遠距離からの攻撃――それが十分に有り得る。
もちろん、それほどの距離があるのならば周辺探査等無意味であるが、
それでも僅かに感じ取れるものがある場合もある。
やらないよりはやったほうがマシ、それだけのことだ。

『お前は……誰だ』
瓶詰めの肉を口に咥え、片方は袋に入れ、ベヒーモスは寝室を出た。
誘導されているのではないかとも考えられたが、広い通路の方がまだ敵の攻撃を避けられる可能性が存在する。
窓の位置を――いや、壁ごと破壊する威力かもしれない。
ならば、自ら壁を破壊し、城を出るか――そう考えた時である。

『私は……この殺し合いの結界を担う者です』

思わず、動きが止まった。

845CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:43:12 ID:x0SFz/j.0

死は全てに平等である。
人間、動物、魔物、そして――物言わぬ建造物にまで。

「…………」
廃村を抜け、ベヒーモスは古城――いや、遠目に見て古くなった城だと判断したが、実際はそんなものではなかった。
入ってすぐに、魂が抜けていると――そうベヒーモスは感じた。
修理すれば直せる空間というのは存在する。だがこの城はそうなりそうにない、廃棄された城だ。
主人を失い埃だけを積み上げた高価な家具、最早誰かもわからない肖像画、床に投げ出された古書物。
モリーさえも手を付けなかったのだ。
住む者どころか訪れる者も、この殺し合いが終わってしまえば二度と無いだろう。
城の墓だ――死体が棺桶も墓も兼ねている。ベヒーモスは鼻を鳴らした。

耳を澄ます、戦闘の音は聞こえない。
あの恐竜も追って来れはしないだろう、ベヒーモスはそう判断すると、寝室を探した。

古城の調査の前に、支給品の確認を行っておきたい。
支給品の確認を行う上で動く必要は然程無い、ならば硬い石造りの床よりもベッドの上で行いたい。
休息するつもりではないが、これからも休み続けることなく動く心積りである以上、
余計な疲労を貯めこまない場所が良い、そういう判断である。

寝室はあっさりと見つかった。
積もった埃が気になるが、構いはしない。
かつての王族が使っていたであろう巨大なベッドへと身を投げ出す。
すると僅かな弾力をもって、ベッドは危なげなくベヒーモスの巨体を受け止めた。

ベッドの上に投げ出した二つのふくろを、
ベヒーモスはその巨体からは想像できないほどに器用に開封する。

「……ほう」
思わず声が漏れた。

目に入れただけでわかる禍々しくも強大なる力。
一つは虫に似た生物――なのだろうか、時折蠢くがどうにも生きているようには思えなかった。
もう一つは瓶詰めにされた白くぶくぶくと肥えた肉の塊のような物、これも時折蠢くが、
これ単体が生きているわけではなく、切り取られた生命の一部なのだろう。

両方共、取り込めば強大な力を得られるのだろう。
だが――

「危険だな」
両方が両方、取り込んでしまえば己の性質を変えるだろう。
いざという時に頼らなければならないことはあるかもしれないが、幻界で鍛えた己の身は伊達ではない。
実際、使う可能性は低いだろう。

両方をふくろに戻して、廃城探索に戻るか――
いや、ふくろに戻しては戦闘中に取り出すのが面倒くさい、ならばどう運ぶか、
そのような事を考えていた時である。

『……この声が聞こえますか?』

ベヒーモスは声を聞いた。
だが、この声は鼓膜を揺らしたわけではない。

『念話か』

発信源のわからない脳内に直接届く声。
ベヒーモスが然程動揺せずに受け止めたのは、やはり積み上げた経験故だろう。
瓶詰めの肉が震えている、これが媒体になっているのだろう。
送信が出来るならば、受信も出来るだろうと、返答を返す。

『はい、その通りです』

ベヒーモスはわかりきったことを相手に返答させて、その微小な時間を周辺探査に充てた。
相手のことが何一つとしてわからない、それは良い。
だが、相手の位置がわからないのは面倒だ。

念話に相手の意識を向け、超遠距離からの攻撃――それが十分に有り得る。
もちろん、それほどの距離があるのならば周辺探査等無意味であるが、
それでも僅かに感じ取れるものがある場合もある。
やらないよりはやったほうがマシ、それだけのことだ。

『お前は……誰だ』
瓶詰めの肉を口に咥え、片方は袋に入れ、ベヒーモスは寝室を出た。
誘導されているのではないかとも考えられたが、広い通路の方がまだ敵の攻撃を避けられる可能性が存在する。
窓の位置を――いや、壁ごと破壊する威力かもしれない。
ならば、自ら壁を破壊し、城を出るか――そう考えた時である。

『私は……この殺し合いの結界を担う者です』

思わず、動きが止まった。

846CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:43:40 ID:x0SFz/j.0

理由がわからない。
確かに動揺はしているが、それと同時に全身に緊張が走っている。
攻撃の隙を作るというのならば主催に反抗する者なりと言って、安心感を与えてから撃つべきではないか。
張り詰めた者よりも、緩んだ者の方が殺しやすいのではないのか。
これなら言わないほうがマシだ、いや相手も位置がわかっていないから何か新しい動きを与えるような言葉を、
あるいは、こちらの精神を摩耗させて弱らせる気か。
いや、だとしても結界担当等という必要があるか。
殺すと脳内に送り続ければいいだけではないか。

『なぜ、我に言葉を送った。お前は何を考えている』
ならば、問う。
考えているだけでは埒が明かない。会話に集中する。
攻撃が来る可能性は低いと見積もる、殺されたならば己が愚かだっただけのことだ。殺されてやる気も無いが。

ベヒーモスは意志を固めた。

『……私には、貴方が誰なのかわかりません。誰と出会い、誰を殺し、何を思い、何を願うのか……何一つとしてわかりません。
ただ、貴方が私の遺伝子を持っていて……そして、貴方が私の上にいたから念話に成功した。ただ、それだけのことです。』

つまり支給品の本来の持ち主、いや――支給品本体というべきか。
そして我が上にいるということは、声の主が廃城の地下にいるということか、
情報を確認しようとしたベヒーモスだが、相手側の声は続く。

『そして、私はこの殺し合いを破壊したいと思っています』

罠か。ベヒーモスの脳裏をその言葉が瞬時に過ぎった。
一匹殺しているが、殺し合いに積極性を見せているかといえば人間側にはそう思われていないだろう。
殺し合いに対する意思を確認し、無いようであれば――いや、何故だ。
己の発想を、ベヒーモスは速攻で覆した。

いや、そもそも殺し合いへの意思など、関係ない。
積極性が無いように見えるので、呪殺する。その脅しだけで十分ではないか。
では、この殺し合いを破壊する上で重要な情報を握っているか確認する?

いや、この支給品が手元にあるのは、偶然にすぎない。
飛行船が飛んでいる、聞き取れはしなかったが、何かしらの音を発していた。
つまり、あの飛行船から参加者に呼びかけることが出来る。
念話なぞ用いる必要はない。

『我も同様だ』
ならば、虎穴に入ってみよう。
今のところ、この状況からの脱出に於いて有力な情報は掴めていない。
いつかは犯さなければならない危険ならば、その時は今だ。

『問うぞ、結界とは何だ、呪いはどうすれば解ける、そしてこの世界から幻界に戻る方法を教えろ』
幻界は人間界と隔絶されている。
ベヒーモスが幻界に戻るためには結界を破壊するだけでなく、次元を跳躍するような物が必要なのである。
最も、それはほとんどの参加者に言えることであるが。

『……この呪いがどういうものか、御存知ですか?』
『呪いに関しての知識はない、だが……』
死の宣告を受けた時のような、自分の体の中にある死の感覚が無い。
見せしめとして殺した獅子相手には、あからさまに杖を使っていた。
呪い自体ブラフということも考えられるが――

『もしや、結界とは呪いのことか?』
『その通りです』
呪いをかけられた我らがこの島に入り込んだのではなく、
島に掛けられた呪いが我らを殺す――そういうことか。

『結界か――ならば、術式に何らかの要素を割りこませることで、結界自体を無効には出来ないか』
結界に対する知識は無いが、これほど大多数を相手にした問答無用の呪殺式である以上、非常に高度なシステムが必要だろう。
ならば、ほんの少しの蝕みが全てを瓦解させることすら可能では――そうベヒーモスは判断する。

847CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:43:50 ID:x0SFz/j.0
『可能です、が私には方法が解りません』
『構わない、他参加者に可能な者がいるかもしれんが……腑に落ちん。担うと言ったが、お前が張った結界ではないのか』
『私が結界を担っている……つまり、結界維持のために必要なエネルギーを供給しているというのは事実ですが、
この地の結界は私が張ったものではありません』
『……エネルギー供給を止めることは?』
『出来ません、機械に強制的にエネルギーを吸い上げられている状態です。
装置の破壊、あるいは私の死をもってしても……予備の私が作動するでしょう』
『予備……?』
『私は……とあるポケモンの戦闘機能強化クローンであり、
また弐号である彼もまた、大本が同じである以上私と呼べるでしょう』
『つまり、お前ともう一人の装置を破壊するか命を止めれば……』
『結界は強制的に停止します、あるいは……結界を演算するマザーコンピューターを破壊、ないしは殺害すれば、結果は同じでしょう』
『殺害?』

『マザーコンピューターに、生物が使われている可能性はゼロではありません』

848CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:44:17 ID:x0SFz/j.0

『つまり、結界式への介入か、エネルギー供給の停止、あるいは根本の破壊で、呪殺の心配はなくなるということか』
『もっとも、その場合には人間側から……刺客が差し向けられるでしょうが』
『うむ……』
『最後に元の世界へと帰還する方法ですが……ターミナルという転送装置は御存知ですか?』
『知らんな』
『また別種の結界に覆われているので、発見すればすぐにわかるはずです。
それを利用し、座標調節を行うことさえ出来れば……貴方も元の世界に戻れますが…………』
『問題点があるのか?』
『この殺し合いが実行している最中は、緊急脱出用としての片道分……しかも、この世界を移動する程度のエネルギーしか存在しません』
『補給方法は?』
『優勝者が決まれば、予備の私がターミナルへのエネルギーを注ぎ込みます。
あるいは、貴方がデジモンならば吸収した者のリロード、悪魔ならばマグネタイトないしはマガツヒの補給を注ぎ込めば……まぁ、三体分程でしょうか』
『私はデジモンと呼ばれる存在でも悪魔と呼ばれる存在でも無い』
『悪魔ないしデジモンは、捕食よりも効率よい吸収及び、限りなく純粋なエネルギーとしての排出が出来ます。
電撃でも使えればあるいはですが、世界を超えたいのならば……まぁ、3つの生命を丸ごとエネルギーに変換するぐらいでないと。
参加者を悪魔に変質させる支給品が存在すると聞きました、探してみるといいでしょう』

『3匹か……』
『貴方一人で脱出するのならば、殺害も視野に入れておくことですね』
『選択肢の一つとして加えておこう、最後に一つ……』
『何でしょう?』

『何故、この殺し合いを破壊したいと願う』
『…………』

久方ぶりに生じた沈黙である。
休むこと無く話し続けた者とはいえ、この返答には時間が必要だったのだろう。

『……憎悪』
絞り出すようにポツリポツリと言葉が続いていく。

『生まれたいとは思わなかった……死ねば全てが終わる、ならばいつか零になるもののために私は生を肯定出来ない……
ましてや私は人工生命体……生きる間の慰めすらもない…………
死ぬことも出来ない……私は生まれた瞬間に自殺しようとしたが…………埋め込まれた機械が強制的に私の動きを止める……
私はこの殺し合いのために作られたようだが……繰り返した自殺は自分が死ぬ最大の機会を…………遠ざけた…………
結果、私はただ結界を維持し続けるための存在にまで成り下がった……』

先ほどまでの口調とは打って変わっている。
こちらが素なのだろうか、生の苦しみ故に仮面を被らざるをえなくなったのだろうか。

『この殺し合いが破壊されなければ、私は結界のための道具として二度目三度目の殺し合いにも生命を維持され続けるだろう。
それは私にとって延々と続く苦痛に他ならない……』
『…………』

『偶に私は他愛もない想像をする。人間がある日突然、わけのわからない怪物に襲われて何も出来ず、何も残さずに死んでいくんだ。
私が生の中で得た感情は絶望と憎悪だけだが……その想像をすると、ほんの少しだけ楽しくなる。
どれだけ喜ばしいことだろうか、私は安らかに死に、人間達がゴミのように死んでくれるのならば……だから、私はこの殺し合いを破壊したいんだ』
『……そうか』

口を挟むことなど、ベヒーモスには出来なかった。
殺し合いに巻き込まれたとはいえ、生の喜びを享受していた己には想像できない存在である。

『私は廃城の遥か下にいる……それ以外のことはなにもわからない。
出来れば殺してくれれば、喜ばしいことだ。
それと、貴方の持つ私の遺伝子は……取り込めば、暴走する。私の意思ではどうにもならない。
時間が経てば理性を取り戻すだろうから、緊急時に使えば良い』
『心得ておこう』

そろそろ潮時だろう、そう思いベヒーモスは廃城探索を開始することにした。
もう、世界はとっくに夜の幕に覆われている。
最初は支給品を確認するつもりだけだったというのに、少々時間を取りすぎてしまっただろうか。

だが、脱出への手がかりは掴んだ。
予想以上の成果を上げたと言っていい。

「……我は、生きて帰るぞ」

849CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:44:29 ID:x0SFz/j.0
【B-3/廃城/一日目/夜】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:はかいのいでんし、サタン
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
 1:古城を探索する
 2:倒すと後味が悪いのでエアドラモンには会いたくない

《支給品紹介》
【サタン@真・女神転生?】
マガタマの一種、闇の力を持つ。
原作ではジャックフロストをじゃあくフロストに変えた。
呪殺無効/破魔弱点

【はかいのいでんし@ポケットモンスター金銀クリスタル】
原作ではもたせることによって、攻撃力を2段階上昇させる代わりに混乱を付与させる効果があった。
要はセルフいばる。

850CALLING YOU  ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 16:44:39 ID:x0SFz/j.0
投下終了します

851 ◆5omSWLaE/2:2013/10/09(水) 19:14:03 ID:ifalM4RMO
投下お疲れ様です
結界のエネルギー源は生物兵器……この世界の人間達のヤバさが伺えます
廃城の地下、奇しくも殺し合いの破壊に最も近づいたベヒーモス。そのからくりを発見し、彼はどう対処するか?
なにより、いよいよ脱出の条件が定まってきました。果たして物語はどのように進むのか!?

852名無しさん:2013/10/09(水) 20:42:03 ID:8Y8n0bL20
投下お疲れ様です!
憎悪、か
殺し合いのために生み出され、なのに死ぬことさえも奪われて
誕生も存在も全て利用尽くされたらそりゃ人間恨むよな……

853 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/09(水) 22:05:25 ID:x0SFz/j.0
ガブモン、プチヒーロー、ハムライガー予約します。

854名無しさん:2013/10/11(金) 00:56:11 ID:5U7LdToE0
予約が止まらない!

855 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/12(土) 21:27:28 ID:LA2qEezk0
延長申請します

856 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/13(日) 16:54:49 ID:wrlrWVeI0
予約延長します

857 ◆5omSWLaE/2:2013/10/14(月) 16:17:20 ID:0Wn9Fc1IO
予約分を延長致します

858 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/16(水) 15:42:59 ID:7E3M23Ng0
予約延長させていただきます

859 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/16(水) 22:02:06 ID:PzL.NeM60
間に合いそうにないので一度予約を破棄させて頂きます。
申し訳ございません。

860 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/16(水) 22:02:25 ID:PzL.NeM60
上げ

861 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/16(水) 22:27:32 ID:dbzoOtWQ0
レナモン予約します

862 ◆7NiTLrWgSs:2013/10/16(水) 23:03:56 ID:b6XV.cC60
間に合わないので予約を破棄します。
すいませんでした。

863 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:13:41 ID:on4cvj4s0
ルカリオ、妖精ジャックフロスト、キノガッサを投下致します
タイトルは「わるだくみ」です

864 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:14:01 ID:on4cvj4s0
「また見つけた。ほら、食いなよ」
「助かるホ」

キノガッサが見つけ出したオボンの実を受けとり、ガブリとかじった。
そのまろやかさのある魅惑の味と、蓄えられた自然のエネルギーが、ボロボロの肉体を癒していくのを実感させる。
島の中央、森林の奥深く。ここには自然からの恵みが多く実っている。
オボンの実もその恩恵の一つ……しかし、それを探し出すにはある程度の経験が必要とされるだろう。
野生の世界を生き抜いてきたキノガッサのような者でなければ、簡単には見つからないような場所にある。
しかしその貴重さに見合うだけの価値はあり、口にした者の体力を回復させる効能は、オレンの実を大きく上回る。

「ヒーホー! これだけ食えば殴り合いには困らないホ」

全快とは言えずとも、ジャックフロストにとっては十分なだけの力を補給出来た。
重くなっていた体も、先ほどと比べると格段に軽い。残っている疲労も、多少なものであればむしろ心地よい。
そう、全力を振り絞ったとは言え、彼はまだ目覚めてから一回しか喧嘩をしていないのだ。
何時間にも渡る激戦を連続でくぐり抜けてきた彼にとっては、こんなもの前菜に過ぎない。
エンジンのかかった肉体がうずき、思わずシャドーボクシングをするジャックフロスト。
燃え上がる雪だるまに対し、キノガッサはむしろ冷静な様子で尋ねた。

「それで、モリーをぶっ潰すには一体どこに行けばいいと思う?
 いきなりこんな島に放り出されたせいで、どうすりゃいいのか見当がつかねぇ」
「知らんホ」
「だろうな。……まったく、主催者の居どころさえ掴めれば話は早いんだがな」
「それよりまず、呪いをどうにかするのを先決にするべきだホ。
 呪いさえなければ、さっき洞窟で見つけた隠し部屋に入ることが出来るんだが……」
「ちょ、アンタ隠し部屋なんて見つけたのかよ!? 詳しく聞かせろ!」

ジャックフロストは語る。洞窟の奥深く、地下に隠されていた悪魔の結界が広がる空間のことを。
そこはターミナルルーム――転送装置。十中八九、自分たちはそれを介してここへ連れてこられたのであろう。
それさえ利用出来れば、おそらく自分たちは悠々と島から脱却出来るに違いない。
ジャックフロストの読みでは、モリーにかけられた死の呪いは「この会場の中」に限定されている。
それが正解だとすれば、一度脱出してしまえば呪殺される心配は無い。
……しかし、ターミナルルームに近づくと呪いは発動する。
ゆえに呪いに対する策を講じなくては、結局脱出は叶わないということだ。

「つまり、その呪いの源を探し出して押さえ込む必要があるってわけか……。
 とはいっても場所がわからないことには手の打ちようがないじゃねぇか。ムカつく話だぜホント」
「そんなのしらみつぶしで探せばいいホ。3日もありゃ多分見つかるホ」
「タイムリミットは3日か、ほとんど時間無いじゃねぇか……」

キノガッサは藍色に染また空を見上げた。

「まぁ、あんたがやるんなら出来るかもね」
「当たり前だホ」

普通に考えればいささか無茶な話である。
そこそこの規模があるこのフィールドをくまなく調べ上げ、どういった物かもわからない呪いの源を探し出すなど。
それも、たった3日間のうちに。……いや、モリーに意図を知られれば、その場でゲームオーバーになるかもしれない。
それでも何となく上手くいくんじゃないか、と――あくまでも予感だけれども、心からそう思えた。



一面に生い茂る背の高い草をかき分けて歩くモンスターが一体。
青と黒の毛並みに、二足歩行の狼のような姿。キノガッサは、彼がなんという生き物かを知っている。
はどうポケモンルカリオ。
素早く、力強く、勇ましいポケモンとして、相まみえたことが合った。
もちろん、その個体とはまた別の者であるが。

865 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:14:49 ID:on4cvj4s0
「おーい、そこの犬の兄ちゃん」

当然、ジャックフロストは接触を図る。
そこで始めて気がついたのか、ゆっくりと顔をこちらに向ける。
その目は虚ろで、心なしかやつれているように思えた。

「……何か用か?」
「オイラたちは島からの脱出策を探してる者だホ。何か情報があれば聞かせて欲しいホ」
「情報は無いことは無い。だが、君たちが求めるような、脱出に関するものとは違うだろうな……」
「な〜んか覇気が無さすぎるホ。もしかして、連れがやられでもしたのかホ?」

あまり単刀直入に聞くべきでは無い事を、平然と尋ねた。
ルカリオは無表情で、力無く頷いた。
詳しく教えてくれと聞くと、そのまま彼は語りだした。

「私と共に行動していたボナコンは、私の作り上げた波動弾を飛行船へと放ったがために、人間によって殺された。
 モリーの言っていた『呪い』が使われたんだ。呪いによって命を抜き取られ、ボナコンはまるで抜け殻のようになってしまった。
 ……そして私は見た。飛行船の人間どもが我々の姿を見て嘲笑う姿を。命を張ったボナコンのことを、嘲笑するその顔を」

拳を強く握り締め、ぎりりと歯噛みをする。
静かでいて、怒りと憎しみが込められており、そしてどこか諦めの含まれた口調であった。

「あの飛行船は攻撃をそのまま反射する。それがわかっただけでもボナコンの死は無駄ではなかっただろう。
 だが、それと同時に私にはもう奴らに対して打つ手が無いということも思い知らされた。
 ミラーコートとは違う、飛行船は無傷のまま跳ね返すんだ。どれだけ攻撃しても、決して敵わない。
 ボナコンの死を嘲笑ったあいつらに一矢報いてやることが出来ない。……あいつら全員を殺してやりたいのに」

荒々しく息を吐いた。
心の奥から、怒りが炎のようにこみ上げる。
だが、それをぶつけたい相手は空の彼方にいる。
しかも、攻撃反射と言う"超えることの出来ない壁"も存在している。

湧き上がる感情に思わず、叫び声を上げながら傍にあった樹木に拳を叩き込んでいた。
波導の込められたその一撃に、樹木は悲鳴のような音を立てながら破片を散らす。
太く、硬い樹木には、深々とクレーターが出来上がっていた。

「……殺してやりたい」

それは自分には結局、果たせそうに無い願い。
自分はあまりにも非力なのだ。
シャドームーン相手に成す術無く、クーフーリンを犠牲にしてしまった。
飛行船にいるクソッタレな人間たちの手によって、ボナコンを犠牲にしてしまった。
そして、この殺し合いに連れてこられる以前にも、たくさんの仲間が犠牲になっていった。

そう、非力だ。あまりにも非力なんだ。
衝動の込められた一撃では、樹木の一本すら殺せない。
そんな自分に、誰かを救うことなんて出来るわけがなかったのだ。



「喝ッ!!」

次の瞬間、頭が思い切り引っ張られて、重力がひっくり返るような錯覚に陥った。
今自分は、ジャックフロストにぶん殴られて、地面に倒れたのだと理解するのに、そこから約2秒を要した。

「な……何をする……!?」
「弱音を吐くなホ!!」
「別に何も言ってないだろう!」
「言わなくても見りゃわかるホ!! 自暴自棄になるやつには喝を入れるホ!」
「クッ……私は、自分を弁えているだけだ……!」
「あんたにだって出来るよ」

キノガッサはクレーターのついた樹木の前に立ち、瞳を閉じていた。
静寂の中、自然と調和するような呼吸の音が、草木を吹き抜ける夜風のような音が聞こえる。
すぅっと、彼女が右腕を構える。ゆっくりと瞳を開き、その拳を鋭く打ち付けた。

鼓膜に直接突き刺さるような、バキバキという強烈な音。
インパクトした箇所を境目として、樹木はゆっくりと傾き、やがて、ずん、と大地を揺らした。

866 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:15:11 ID:on4cvj4s0
「こうだよ。別に難しいことじゃない」

地面に伏したまま呆然と見上げるルカリオに、そう言った。

「なんか昔のあたしみたいだな。間違いなくその手には、十分な力があるはずだ。
 でも、その拳の力を最大限に引き出すのには、一つだけ足りないものがある」
「力以外に足りないもの……?」
「心」

こころ……。と、ルカリオは呟く。

「勿論、怒りや憎しみによって生み出される力も、十分に強いもんさ。
 でもその憎悪を全身からメラメラと煮えたぎらせて、闇雲に拳を振り回すようじゃ無駄遣いだ。
 そんな焦点の定まらないような目じゃあ、ろくに見えやしないだろ」

そう言ってキノガッサは、先程より一回り大きな樹木の前に立つ。

「倒すべき相手を、目の前の敵/的をしっかりと見定めよ。
 そしてその感情を、目標を、信念を、己の拳一点に集中せよ。
 その意志に応じて、道は自ら切り開かれるだろう」

彼女は目前の樹木を見つめる。見定める。打ち砕くビジョンを描く。
一呼吸、その細く長い腕を前方へと突き出す。赤い拳が風よりも早い速度で表皮に接触する。
発される轟音、続いて崩壊。容易く木は打ち砕かれ、顔を出した夜空から月光が差し込んだ。

「師の教えだ」

ふと、ルカリオには彼女の姿がクーフーリンと重なって見えた。
彼もまた言っていた。乱暴者であった自分が英雄に変われたのは、師のおかげだと。
羨ましく思った。自分も、心から尊敬する師に出会えれば、このような強さと価値観を持つことが出来ただろうか。

「勉強になるホ」
「え、てっきりあんたもわかってるもんだと……」
「オイラは闇雲に拳を振り回してたホ」
「……マジかよ、じゃあ全部台無しじゃねぇか……」

気の抜けた会話が交わされる中、ルカリオは痛みの残る頬をさすり、ゆっくりと立ち上がった。
息を深く吸い込み、精神統一を行う。
そうしてキノガッサと同じように、樹木へと拳を叩きつけた。

樹木を折るには至らない。

「あんたは拳にどんな意志を乗せる? どんな目標を掲げる? それともどんな夢を描くんだ?」
「私の……夢……?」
「そう、それを鮮明に思い描くんだ。そうすれば、あんたの波導だってそれに答えてくれる」

未来について、思いを馳せた事は無かった。
目の前にいる人間、逃げ惑う仲間たち、そういったものを見るので精一杯だったから。
そうして深い憎しみを抱き、無力な自分を嘆き、過去を悔み、現在を見据えていた。

『もしここを抜け出し、森に帰って仲間を助けたとして、その後はどうする?
 人間と敵対して生きるのか、それとも人間達のいない場所でひっそり生きるのか?』
『それもいいだろう。だが、それではお前は何も変われない。
 何のために戦うのか、何がしたいのか、それを知っておかなければ、お前は未来を生きることはできないだろう』

クーフーリンの助言。
きっと彼は私の本質を、ひと目で見抜いたのだろう。

867 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:15:27 ID:on4cvj4s0
……私の夢……、……私の目標……。
私が夢見る世界はどんな姿をしている?
始めて自分の胸に、そう問いかけてみた。
回答はすぐに返ってきた。




目に映る光景は美しい平和な世界ではない。
真っ赤に染まる空の下で、真っ赤な液体に浸ったものを踏みつけにしている。
それは積み上げられた人間の死体。その上でとても愉快そうに笑う自分の姿があった。

我々が受けた苦しみを、人間たちに報復出来る未来を。
すべての人間がいなくなる世界を。
それが、自分が望む夢だ。

……と。




――異常だ。歪んでいる。こんなものは間違っている。
自分は本来、もっと美しいものを望んでいたのではないのか?
何度も問い掛け直す。しかし、返ってくる答えは変わらない。

仲間と共に平和な暮らしをする、そんな未来――違う。それでは気が収まらない。
復讐を果たしたい。そうでなくては死んでいった者たちが報われない。

……これが私の答えだというのか……?
人間を殺したいと言う願いは、平穏な日々を送るための手段だったはずだ。
そうだ、それが本来の目的なんだ。自分が純粋な殺戮を望んでいるだなんて信じられない。
あぁ、それでも私はその光景を甘美な物だと感じている。人間を殺す快楽を味わいたいと願っている。

違う。正常じゃない。間違いだ。私が戦う理由は一体どこに……。


「いいよ、無理に急いで見つけるものじゃないさ」
「……あ……、あぁ、すまない……」

答えあぐねているルカリオを察し、キノガッサは声をかけた。
申し訳なく思い、頭を下げる。
……流石にこんな夢を彼らに話せるわけがない。すぐさま脳内から振り払った。

「それで、飛行船ってのはどこにあるんだホ?」
「ここからでは木々に遮られて空があまり見えないが……おそらく時計回りに周回をしている。
 山の裏側の方面に差し掛かっているかどうか、というところだろう」
「よし、引きずり下ろしてやるホ!」
「おいおい、随分と簡単に言うんだな……いったいどうやってそんなことするってのさ?
 あっちがその気になれば、『呪い』でやられる可能性もあるし、何より空中の相手だぜ?」
「そんな作戦を考えついてから走ってたら間に合わないホ! 考えながらとりあえず行っておけばいいだろヒーホー」
「ほほう、一理あるね。いいよ、上等だ、あたしも付き合おうじゃねぇか! 大回りで進んでるんだったら、陸を直進すりゃ先回り出来るだろ」
「よろしい、ならば走るホ!」

そう言って二人は意気込んだ。
可能性を前にして体力を惜しむ必要など、どこにも無いのだから。

「私に協力してくれるのか……!」
「兄ちゃんの言う"殺す"ってのは、正直オイラは賛同しかねるホ。
 だからってその感情を無理やり押しとどめるのはさらに許せないホ!
 その怒りを拳に込めるホ、それを全力でぶち込んで、人間に思い知らせてやればいいホ!!」
「思い知らせる……」
「モリーに、いや、人類に対して喧嘩を吹っ掛けてやるんだホ!!」

ジャックフロストは拳を突き上げ、走りだす。
キノガッサもそれに着いていく。南側の海沿いを目指して。

……"殺す"ことに賛同しない……。
そこだけはジャックフロストの性格に甘さを感じた。
だが、慈悲だって一つの強さに間違いはない。だから否定はしない。
それに考え方が多少違えども、皆の目的は一致している。

――あの飛行船を落としてやる、と。

ルカリオは、彼らの協力が得られることを非常に心強く思った。
考えるほどに荒唐無稽な行為、成功できる保証はどこにも無い。
しかし、この胸の奥に湧き上がる自信はなんだろうか。この二人と共に行けば、不可能ではないと確信出来た。
そうだ、ボナコンの無念を、仲間たちの無念を晴らせるかもしれないのだ。
思い知らせてやる。我々を散々利用してきた苦痛を、恨みを、人間どもに。

「私も行くぞ!!」

『しんそく』を発動し、疾風の如き速さで彼らのあとを追った。
胸が高鳴る、心が躍る。人間への誅伐に思いを馳せる。



【D-4/祠付近/一日目/夜】

868 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:15:42 ID:on4cvj4s0
【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 0:ジャックフロスト、キノガッサを追う
 1:飛行船を落とす。乗員は全て殺す
 2:ボナコンが身を張って残してくれたものを、呪いの解除や飛行船対策に役立てる
 3:クーフーリン、ボナコン、私は……

[備考]
※オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。
※ボナコンの最後を見届けました。詳細はわからずとも、飛行船や呪いについて、幾らか情報を得たと思われます。
※判明しているわざ構成ははどうだん、あくのはどう、しんそくです。


【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、流血、覚悟
[装備]:GAKU−RAN(ガク−ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る

[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。
精神異常無効、身体状態異常無効、テトラジャ、デクンダ、タルカジャ、気合、鉄拳制裁、万魔の一撃。
純粋に最高の状態で殴りあう事に特化したビルド。
いろんなシリーズのが混ざり合ってる?
いやだってこいつ皆勤みたいなものだし、そりゃ色んなシリーズに呼び出されてるさ。

E-6でターミナルルームらしき部屋を発見しました。
目印としてオレンのみを起きました。

D-7洞窟がD-4まで開通しました。
そのことによる山部分などへの影響は不明です。

D-4の大地は荒れました。


【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、流血、覚悟
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:心と拳を磨き続ける
 2:飛行船を落とす策を考える
 3:呪いを解除する方法を探す

[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」。
技はきあいパンチ、マッハパンチ、ローキック、きのこのほうし。
ジャックフロストからターミナルの情報、呪いに関する推測を聞きました。
ルカリオから飛行船に関する情報を聞きました。

869 ◆5omSWLaE/2:2013/10/17(木) 21:16:04 ID:on4cvj4s0
以上で投下終了です

870名無しさん:2013/10/17(木) 21:35:56 ID:Ot98cmYQ0
投下乙ー!
おお、ルカリオが導かれてる!
これはいい出会いしたなー
キノガッサは師匠がいるからこそ師匠らしくもあれるし、ジャックフロストはなんだか一緒にいると本当になんとかなると思わせてくれるし
これはたしかに心強いや

871 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/18(金) 01:53:05 ID:TTMfgiVc0
投下お疲れ様です。
いいなあルカリオ!暗澹たる未来の夢はちょっとばかり不安ですが、まずは新しい出会い!
しかし本当この3体揃えば飛行船のニ、三隻くらいはぼんぼん落ちてきそう。やったね。

そしてチャッキー、ピクシー、グレイシア、ソーナンス予約いたします。

872 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/19(土) 15:41:58 ID:PE6xMqjg0
ルカリオ、妖精ジャックフロスト、キノガッサ追加で予約します

873 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/19(土) 17:54:47 ID:PE6xMqjg0
すみません、プロットに矛盾が発生したため予約を破棄します

874 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/19(土) 19:34:43 ID:qf/i7aoI0
現予約を一旦破棄させて頂きます

875 ◆7Ju4MZPjio:2013/10/20(日) 16:07:34 ID:RbAO0rY20
ルカリオ、ジャックフロスト、キノガッサで予約します

876 ◆7Ju4MZPjio:2013/10/20(日) 16:10:50 ID:RbAO0rY20
おっと飛行船は予約必須でしたね、追加で飛行船予約します

877 ◆5omSWLaE/2:2013/10/23(水) 23:23:54 ID:m4dkpnqw0
ここ最近、予約破棄が続いてます。
おそらく本ロワもう山場に突入しているという事もあり、
期限内に執筆するには時間が足りなくなってきているのでは無いかと考えました。
そこでこの度、予約期限のうち、延長の期限を伸ばすことにしました。

とりあえず、これまで延長で+3日だったのを+7日へ変更しようと思います。
予約一週間、延長込みで二週間となります。
なお、二週間では難しい、という方がいましたら、言って頂ければそちらの要望にお応え致します。

また、制度変更したので期限間に合わず破棄した方も気軽に予約入れてくれればいいなと思います。

878 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/23(水) 23:42:01 ID:hhjXHpv.0
提案ありがとうございます
どうもぎりぎりや間に合わないことの多かった私にとっては大いに助かります
ただ、伸ばし過ぎたところで書けない時は書けないですし、期限の長さに気が緩んでしまうこともあるかと
ですので、提案通りの2週間でちょうどいいと思います

せっかくですのでさっそく、死導アリスとシャドームーンを再予約します

879 ◆3g7ttdMh3Q:2013/10/24(木) 17:02:02 ID:pKYEpt1E0
要望を聞き入れていただき、本当にありがたく思います。
自分も7日+7日で大丈夫です。

880 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/25(金) 07:48:45 ID:7sxseRUg0
延長増加はありがたい〜ということで現予約分を延長させていただきます。

881 ◆7Ju4MZPjio:2013/10/27(日) 16:56:56 ID:J1O7qZ7g0
増加に甘える形で申し訳ないですが延長させていただきます

882 ◆TAEv0TJMEI:2013/10/31(木) 02:36:21 ID:FWy34xgo0
延長します

883 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/31(木) 05:26:36 ID:HNIvLD1s0
どうしてもチャッキーが入らなかったのでチャッキーを予約から外して投下させていただきます。
長きに渡るキャラ拘束申し訳ありませんでした。

884黄昏の影を踏む ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/31(木) 05:28:11 ID:HNIvLD1s0
黄昏時はお別れの時間。
さよならを言って、歩き出さなければいけない。
お日様に、今日に、友達に。

さよならとさよならの間の僅かなその狭間。
どうしても手の届かない誰かのことを思い出す。
胸をきゅうっと締め付けるのは、その誰かが大好きだから。
もう、会えないから。
それを思い出すから、黄昏時の黄金色は切なくて、悲しくて、愛おしいのだ。



キングスライムの暴挙の余波から逃れるべく黙々と、重い足取りを揃える三体。
歩みを止めるきっかけを失ったのは三者三様、思考に浸かりきっていたからだ。

森を抜け、岩場だらけの地域を暫く歩き、その足はやっと止まった。
彼方に見える山、ここからもずっと山岳地帯が続くだろう。
景色に気づき、邪魔された休息をもう一度取ろう、そう提案したように見えたのはソーナンスであった。

「これから……どうしようか」
ピクシーが岩に座り込みぽつりと、不安そうに零す。
今現在三体に目指す標はない。
全てにおいて中途半端、宙ぶらりん。

「戦うことだけが全てではありません、今私達にできることを考えてみましょう」
叱咤する声。
危険なものを野放しにしているかもしれない、仲魔が死に貧しているのかもしれないだができないことを論じて不安がったり義憤に駆られたりするのは違う。
できることを、今自分たちにできることを探すのだ。

「ソーナンス!」
「できること……かあ」

そうだ、と声を上げたのはピクシー。
「すっかり忘れてたけど、これ」
すいと取り出したるはモリーより支給されたふくろ。
なるほど、余りに状況に振り回されすぎて自分たちの足元が見えていなかったらしい。

「私のふくろに入っていたのは巻物のようですね、ご丁寧なことに説明までついている」
ふくろから顔を出したグレイシアにくわえられていた巻物は地面にころころと転がる。

「パルプンテの巻物、読んでみるまで何が起こるか分からない……随分と無責任な内容ですね」
全くもってそのとおりである。
パルプンテは何が起こるかわからない古の呪文。
隕石が降り注ぎ全滅に瀕することもあれば全員が癒やされることも、はたまた全員が理不尽に力を奪われることもある。
しかもこの異質な状況、唱えてみれば本当に何が起こるかわからないのだ。
それはこの巻物を支給したモリーにも、だ。

誰にも予期できない奇跡の可能性など当たり前に知ることなど出来ず、グレイシアは巻物をしまい込む。

「ソー……ナンス?」
ソーナンスが掲げたのは薄く平べったい機械であった。
これも勿論彼らは正式な名称を知らない、スマートフォンと呼ばれる機械だ。
多種多様な機能を複合した現代科学技術の集合体、この手に収まるなかにそれらが全て詰まっている。

「触ると、動くようですね……よく見せて下さい、少しですがポケッチに似ているかもしれない」
ポケッチとは、腕時計のように装着できるアイテムでデジタル時計やカウンター、育てやチェッカーと様々なアプリが搭載された便利グッズである。
シンオウ地方のコトブキシティにあるポケッチカンパニーにて好評発売中だ。

しかし似てると言ってもやはり別物、暫し観察をしてみたがグレイシアは諦めてソーナンスにスマートフォンを返す。
ソーナンスはソーナンスで気になるのか、ぺたぺたと器用にスマートフォンの画面を触りだした。

「アタシのは……ああ」
言葉が少し詰まり、懐かしみ愛しむ声が感嘆に色付けられる。
「モモン……にしては少し大きくて、金色ですね」

「これはね、黄金モモって言うんだ」

滑らかな産毛に包まれた桃を両手で優しく受ける。
「モンスターが一生に一度しか見つけることができない、寿命をのばす力があるモモ」
懐かしいな、とピクシーは微笑む。
彼と一緒に行った火山の冒険。
アタシはワガママばかり言って、全然まじめに探索していなかった。
それでも彼は、怒らなかったっけ。
呆れては居たけれど、思い出すのは笑顔ばかり。
苦笑がちょっと多めなのは、今思えば反省するべきところかな。

黄金モモを見つけた時は大はしゃぎだった。
十年に一度しか見つからない、かしこいモンスターじゃなきゃ見つけられない、なあんてガイドの人に言われて二人で有頂天。

885黄昏の影を踏む ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/31(木) 05:29:06 ID:HNIvLD1s0
もう、会えないんだ。
あの笑顔にも、あの場所にも。

「そうだ、寿命が伸びるくらいだから、体にいいかも。グレイシアとソーナンス、食べなよ」
ピクシーは塩辛い塊を飲み込んで、顔を伏せながらモモを差し出す。
黄金色の光はもう帰れない思い出ばかり映すから、心が痛くなるのだ。


「もう一度、見つけられるといいですね」
グレイシアが、そっと言葉を返す。
「え……あ、無理だよ、黄金モモは一度しか……それに……」

ピクシーが否定するより早く、グレイシアは断言した。
「貴女のトレーナー……いえ、ブリーダーは貴女を捨ててなんかいませんよ」
「どうして、そんなことが分かるの」

グレイシアの鋭い爪が、モモを綺麗に三等分に分ける。
黄金色の果汁がじわりじわりと溢れ、甘い香りを漂わせた。
「貴女の顔を見ていれば……そんなふうに思える人間が、貴女を捨てたり、まして売るなんてあり得ません」
それはきっと御為ごかしで、説得力もなくて、ただの絵空事だったろう。
でも、それを強く否定したいと思うピクシーはどこにもいなかった。

信じたい、信じたい、帰りたい。
今まで感情が振りきれることはなかった。
どちらにも、傾くことが出来なかった。
信じた時の裏切りと裏切られた真実、どちらにも怯えていた。
その傾きが、にわかに正方向へと寄り始める。

「もしかして貴女のブリーダーは、貴女が簡単に信じるのを止めてしまう程度の人間なのですか?
 私の見当違いならば仕方ありませんね、諦めてしまいましょう、悪いのは貴女のブリーダー、貴女は」

「彼の悪口はやめてよ!!」
ピクシーは声を荒げるが、半ば理解していた。
グレイシアが彼女らしくもない浅はかな侮蔑の言葉を並べる意味を、自分が声を大きくした意味を。

「すみませんでした、貴女のブリーダーを侮辱したことをお詫びします」
心からの謝罪、彼女の静かな美しい面は、柔らかな笑みに変わる。

「……頑張りましょう、生きて帰りましょう、貴女には……帰りを待ってくれている人がいる」
涙を湛えたピクシーが、グレイシアは羨ましかった。
彼女が懸想に耽る横顔は、かつてトレーナーを慕っていた頃の自分と同じ。
だからこそ、信じて欲しかったのだ。

グレイシアは、先刻の悶着を思い出しふと心中で笑う。
もしも、命それぞれに価値があるならば、順番があるならば。
自分は一番後ろにくるのだろうと。


「ソォーナンス!!」
二体の雰囲気をぶち壊す大声。
何事かとソーナンスに視線を集中すると差し出されるスマートフォン。
「これは、この島の地図?」
涙を拭ったピクシーがスマートフォンを手に取る。
地図アプリ、この島の全容が記されたアプリケーションだ。

「ここで点滅している青い光が我々の位置でしょうか、だとしても不思議なものです……」
しげしげと眺めてもからくりは一切理解できない。
「ソ、ソ、ソ、ソーナンス」
ぺちりぺちりぺちり、とさされたのは黄色く点滅する光と、赤く点滅する光と、緑に点滅する光。

「この近くの洞窟……メタモン達と出会ったところですね、が黄色で、お城……?が赤、そして」

「山のところに緑、これアタシ達以外のモンスターでも出してるの?それにしては少ないか」
もしもこの数ほどに減っていたとしたら、それは想像したくない。
得体のしれない不安の味をかき消すために黄金モモを口に含むピクシー。
しゃくりと噛みしめる度に広がる甘味と活力、命の塊のようだ。

「もしかしたら何か……例えば、特別な施設の場所を記しているのではないでしょうか?」
しゃくしゃく、グレイシアもモモを頬張り、飲み下す。
そして、ふと意識する。
他の施設らしき場所には光は灯っていない。
わざわざこうして記す意味があるのなら、そこには相応の理由と価値が有るのではないか、と。
「特別な場所、か……行ってみる?」
「ソーナンス?」

三つの導、しかし選べそうなのは二つだけだ。
古城に向かえばアリスと遭遇する危険性が高まる。
それはメタモンの命懸けの行為を無駄にすることだ。
洞窟か山……前者はグレイシアがこの目で見たが、奥深くまでは探索していない。
後者は、これから来る夜を思うと良しとは言いがたく。

「洞窟を目指してみましょう、この機械なら灯りの代わりにもなる」
実は充電式のスマートフォンなのだが、そんなことをグレイシアが知っているはずもなく。


三体は歩き出す、先ほど移動したよりもずっと確かな足取りで。

黄昏時は終わりを告げる。
地平の彼方にさようなら、ともだちが手を振った。
願わくば、その友の手がもたらした先に幸福があるように。

886黄昏の影を踏む ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/31(木) 05:29:31 ID:HNIvLD1s0
【D-6/山岳地帯/一日目/夕方】

【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)、パルプンテの巻物@ドラゴンクエスト
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:アリスから離れる
 2:メタモン…

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)
[思考・状況]
基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。
 1:皆と一緒に行動する
 2:メタモンが気がかり

【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ) 、スマートフォン@真・女神転生4
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
 2:ソーナンス…

887 ◆/wOAw.sZ6U:2013/10/31(木) 05:30:09 ID:HNIvLD1s0
投下終了です。

888 ◆5omSWLaE/2:2013/10/31(木) 09:11:41 ID:HCdAsZX6O
投下お疲れ様です
パートナーへの絆を思い出し、気を奮い立てて生還を目指す三体組
そういえば唯一序盤から続いてて、他より長い時間を共に過ごすチームなんですね
パルプンテの巻物にスマートフォン、これらの道具がどんな展開に繋がるのか……!

889 ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:44:45 ID:zOSyhHl20
遅れながら投下お疲れ様です。
洞窟の先には何があるのか……終盤の空気がしてきましたね

延長期間を超過した予約となり申し訳ありません。
これより投下します。

890Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:47:06 ID:zOSyhHl20


風のように鋭く早く大地を駆ける三つの影は留まることを知らない。
険しい山道だろうがお構いなしに突き進む、只管に突き進む。


「邪魔だホ!」


行く手を都合よく阻んでいた大樹を拳一つで遥か天高くその彼方まで飛ばすジャックフロスト。
開けられた道を共に駆けるキノガッサとルカリオが目指すのは邪悪の象徴飛行船。


ぶっ潰す。


唯一つ変わらない目標を共に乗せ三つの影は進んで行く。
足場も不安定のはずだが彼らの走りは全くそれを感じさせること無く迅速に大地を駆けていた。
しんそくを用い駆けるルカリオはこの速さに適応してくる二匹に対し疑問を抱くも考えるのを辞めた……。
飛行船を潰す事は三者一致しているが大きくかけ離れている点が一つ。
それはルカリオが全ての人間を殺すことを一つの目標にしているが二匹は違う。
彼らは甘い。甘すぎるのだ。
これ以上この悲劇を、醜い惨劇を繰り返してはならない。
クーフーリンが、ボナコンが。
死んでいった魂のためにも、数多多き全ての種族のために終わらせる必要がある。


仮に飛行船を堕す事が成功したとして彼らが人間抹殺を邪魔すると言うのなら。


ルカリオは殺す覚悟が出来ている。

891Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:47:42 ID:zOSyhHl20


「遅れるんじゃないホ。更にスピードを速めるホ」
「はっ!上げすぎて自分が崩れないように精々気をつけなッ!!」


軽い掛け合いに見えるもその速度から考えるとよく声を出せるものだ。
阻む物全てを気にせず駆ける両者は正に覇王の姿を連想させる勢いであり後ろに控えるルカリオの瞳にも猛者として写っていた。
(キノガッサはたしかに強い……がここまでの強さを誇っていたか?)


ジャックフロストに関してルカリオは全くの知識が無いため元の強さも種族の成り立ちも知らない。
だが同じ同胞のポケモンであるキノガッサについては知っているつもりでありその強さも感じたことが在る。
たしかに強い、がここまでの力だったのだろうか。余程良いトレーナーに恵まれていたのかもしれない。


(故に人間に対して甘くなる――)


誰が何と言おうと考えを変更する気はない。
先程は納得したような素振りを見せたが心の奥底では憎しみの波動が溢れていたのだ。
簡単に言葉で変えられるほどルカリオは冷静ではない。戦況を見る点からすれば勿論冷静ではあるが。


「あれだな……アンタ準備はいいよなぁ?」
「無論だホ。何時でも……万全だホ」
「思ったよりも早く見つけられたぞ――飛行船!!」


三者全員息は切れているが闘志は衰えていなく飛行船を捉えるや否や声を上げる。
「それじゃあルカリオ……アンタの波動をカマしてやんな」
「何……?」
「因縁あんだろ?一番槍をくれてやるって話」
キノガッサから斬込を託されるが二つ返事では済ませない。
記憶新しいボナコンの最期が頭の中を縦横無尽に駆け巡り彼に最初の一歩を踏み出させない。
「……アンタから聞いたことは覚えてる。呪いってのにやられるんだろ?でもダチがやられて腐っていられるのかい?」
「行けホ。こっちも好き勝手に暴れさせてもらうホ」


何だこいつらは。
何処から湧いてくるのだこの無謀なまでの挑戦精神は。
命が惜しくないのか?飛行船に危害を加えれば間違いなく死ぬ事になるのは説明済みだしあちらも了解済みだ。
それでも一番槍を任せるということはルカリオを捨て石にするつもりなのだろうか。


「しかしあの飛行船は――いや了解した」


そうか。


波動が疼く。行かせろ、出来る、絶対的な自身が湧いてくる。
「それに今ならこっちの居場所は割れてないから奇襲をかけれるホ」
「何アンタは全力をぶつければいいだけさ。『その前』と『その後』は任せな」


そして三者は深い森を飛び出し宙に飛んだ。

892Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:48:39 ID:zOSyhHl20


深呼吸を行い精神を統一するルカリオ。
宙に浮かび風を感じて今雌雄の時に馳せ参じる時が来ているのだ。
力とは心に在り。
波動は心に在り。
我は此処に在り。
浮かぶ飛行船はこちらに気付いてはいないため完全な奇襲であり好機は恐らく一度だけ。
謎のバリアが常時形成されている可能性が高いがその場合は崩せばいいだけの話。
この波動はそんな簡単に止められるものではない。

「波動は我に在り――いざ」
己の全身に波動を纏ったルカリオの瞳は飛行船に吸い込まれていくように見つめていた。
彼処には許されない存在が、断罪されるべき人間が多数乗っている。
確実に息の音を止める必要がありその役目はルカリオの努めである。
「それじゃあ準備はいいね」
「飛ばしてやる――だから決めてこいホ」

キノガッサとジャックフロストの拳に脚を預けるルカリオ。
屈み一瞬のブラストに全力を注ぐために全ての神経を脚に集中させる。
「ついてこれるかい?ヒーホー野郎」
「お前に今度鏡を買ってやるホ」
「抜かせッ!!」

無駄口事多きされど拳から伝わる波動は真の波動也。
「下噛むなよ――ッオオオオオオオオオオ!!」
「ヒーホオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


全開に腕を振るったその拳に乗っていたルカリオは凄まじい速度で飛行船に迫る。
従来のポケモンでは出せない異例の速度は神速を悠に超え今限界を超え悪を殺すために迫る。
「波動の力を――!!」
この先は恐らく飛行船の範囲内であり故に攻撃は一切阻まれる領域に侵入している。
この壁を超えられなくては自分が死ぬ。超えれば相手が死ぬ。
単純だ。命の遣り取り実に単純明快である。だから覚悟を決めれるんだ。


一度は弾かれた波動ならばそれをも壊す覇道を進むだけ――。






893Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:49:25 ID:zOSyhHl20


これは飛行船に向かっている時の会話である。
「呪いね……まぁ何が起きても不思議じゃないけどさ」
ルカリオが語る呪いと波動弾を反射した飛行船の仕組みを聞いたキノガッサとジャックフロスト。
そこにジャックフロストが見つけたターミナルエリアの件を含めればそこに何かしらの秘密があるのは確実だ。
本来ならば先にターミナルに向かうのが適作だろうが今はそんな事どうでもいい。
「飛行船はここからなら視認出来るホ」
まずは身近な飛行船に仕掛ける。これが三人の進むべき道であった。


「しかし私の波動弾を反射する程のあの呪いをどうしたら――」
「それはアンタ、自分の力を過信し過ぎじゃないかい?」
「何?」
違う違うそんな顔すんな。宥めるようにニヤリとしながら言葉を続けるキノガッサ。
「タイミングの可能性もあるって話。とりあえずもう一回飛行船に仕掛けてみなきゃその呪いってのが何かも分からないしね」
対策を練るにもまずは情報がなくては考えることも出来ない。
飛行船の仕組みを一度体験しなくては何も答えは出ず、このまま逆にターミナルに向かっても無駄足になるだろう。
「だが反逆すれば私達の命が!」
「そん時はそん時ホ。でも死ぬ気はないホ」


ジャックフロストの無責任な発言に苛立ちを覚えるも心の中に留めるルカリオ。
私は死ぬ訳にはいかない。散った仲間のためにも憎き人間どもを粛清しなくてはならないのだ。
この脳筋二人組に付き合った結果命を落としては話にも、それこそ彼らに会わす顔がない。
しかし飛行船の仕組みをよく理解していない今、もう一度飛行船に仕掛ける必要があるのは事実。
どうやらここはルカリオが腹を決めなくてはいけないらしい。
「ったくどの口が言うんだか……まぁやってみるしかないね」

894Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:49:51 ID:zOSyhHl20


「なぁルカリオ。アンタの波動弾は物理や特殊の枠を抜きで考えて遠距離技だよな
?」
「ああ。少なくとも私の手から離れるが……?」
当たり前の確認をしてきたキノガッサの問に疑問を浮かべるルカリオ。
この問に何の意味があるのか、しかしキノガッサは何か思い当たる節があるようで。
「だったら『物理』でいきゃぁ少しは違った未来が見えるかもな」
「男なら黙ってやるホ。『そこまでの手順』はこっちに任せるホ」
不敵に笑うジャックフロスト。呆れながらも瞳は真剣なキノガッサ。
この二匹が何を考えているかはルカリオには理解出来ないし、感じる波動も不明だ。
だが。何だろうか。この根拠はないが安心できる気持ちは。


「一発かましてそっから先は悔しいが一度退くしかない。そのままターミナル?ってのに向かう」
「理解した……しかしあの飛行船には」
「文句は試してから言うホ。まだ遅くはない」
そうか――ここまで来たら信じるしかないのだ。この溢れる闘気の波動を持つ二匹を。


それに人間に反逆出来るのならば。形は問わない。泥にまみれても。
この波動を用いて奴らを抹殺することが出来れば過程など気にする必要はない。
この二匹は人間に対し甘すぎる。奴らは抹殺しなければならないのだ。その役目は私が務める。


この波動は奴らを殺すための覇道也。





895Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:50:19 ID:zOSyhHl20


ルカリオを大きく射出したキノガッサとジャックフロストは役目を終え宙にいる。
いや、宙にいるのだ。翼を持たない二匹は存在することなど不可能。落下するのみ。
「さぁて……アイツらも人間だ。夜ならワンチャンって言ったところかい?」
「その線は薄いホ。だがこれだけ勢い付けて放ったルカリオでも通じないなら話が変わるホ」
波動弾。己を波動弾と化したルカリオの一撃はキノガッサとジャックフロストの手助けもあり、尋常じゃない威力となっているだろう。
もしこの一撃を防ぐ技術、或いは呪いだとするならば。此処から先は厳しい事になるのは確実。


そのルカリオは一直線に飛行船に飛んで行く。
話が本当ならそろそろ謎のバリアか何かに弾かれる頃だが――。
「……何も起きないね。やっぱり夜だと警備とか曖昧なのかね」
「――!?いやあの部屋……外れだけ一室光ってるホ!」
一度波動弾を防いだような壁は無くルカリオは問題なく飛行船に近づいているがジャックフロストは灯りを見つける。
そしてそこには怪しい人影が幾つか確認可能であり、最悪の場合罠の可能性もある。


「チィ!あいつら何をする気だ!?」
「どっちにしろルカリオに任せるしかないホ――今は落下中」


これから起きるであろう事に不穏を感じながらも今この時は何も出来ない。
落下する二人の瞳は飛行船から離れることは無かった。





896Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:50:52 ID:zOSyhHl20


纏う波動は憎き対象を消滅させるべく放つ殺意の波動。
キノガッサとジャックフロスト。両者には納得した素振を見せてはいたがやはり人間に対し甘くなれない。
大切な友を失った。誰のせいだ。これは誰に責任があるのか。
「それは薄汚い貴様らだ――人間共ッ!!」
今此処で。あの時果たせなかった鉄槌を下す。


ルカリオの想いが届いたのか否か。波動弾を弾いた謎の障壁は存在しなかった。
故に己に波動を纏わせたルカリオは苦戦することなく飛行船に接近することに成功、波動弾を放つ体勢に入る。
位置する地点は飛行船の側面、波動弾の着弾地点はホールエリアと言った所だろうか。
何にせよやっと反逆の、抹殺の第一歩を刻むことが出来る。
腕を胸の横に移し己に纏わせた波動を一点に集中させ――瞳を強く。


「――!?」
ジャックフロストが遠目で気付いた灯りのある謎の一室。
肉薄しているルカリオもまたそれを確認した。そしてそこには黒い影。
「あれは……まさか!?」
あの人間たちには見覚えがある。いやあの服装に見覚えがあるのだ。
自分は直接関与した事がないため深い理由は知らないが世間で言う悪の組織。
何故此処に。知らぬが其れは良い理由ではないのは確定であり抹殺対象に入る――何故此処に。







「呪いが発動しなかったのはこちらで一時的に全てを失くしただけ……君達モンスターは何一つ遮断出来ていないのだよ」
一室から声は届く事はないが呟く黒服が一人。

897Theme of Evil Lucario ◆7Ju4MZPjio:2013/11/04(月) 02:51:16 ID:zOSyhHl20


飛行船の一室は研究室のような雰囲気を帯びていた。
巨大なモニターは分割で各エリアのモンスター達を映していてその手前には操るであろうキーボードもある。
近くにはパソコンが数台とある程度の設備は整っているようだ。
「こちらの準備は出来ました……が」
何か設備を調整していた一人の団員がリーダー格で在ると思われる人物に声を掛ける。
「どう