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【超短編SS】白築耕介「黄金のまどろみ」【シノハユ】
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とある日曜日の昼下がり、休みが重なった慕と耕介は昼食を摂り終え、
リビングでそれぞれの時間を過ごしている。
二人の間に会話はないが、暖かく、穏やかな沈黙が流れていた。
窓からはレースのカーテンに遮られた午後の日差しが柔らかく差し込み、
時折吹き込むそよ風に吹かれたカーテンは、ゆっくりと舞うようにたなびき、
まるで雲のように見える。
「ああ……眠い……」
しばらくすると耕介はそうつぶやき、眼鏡を外してソファに横たわった。
「叔父さん、何か上に掛けないと風邪ひくよ?」
慕は耕介にそう注意するが、耕介は既に眠りに落ちかけているのだろう「うーん……」という
おぼろげな返事を返すだけだった。
慕は少しだけ、だらしないなぁ、と思いながら耕介のためにタオルケットを取りその身体に掛けた。
すぅすぅと静かに寝息を立てる耕介の顔を見下ろしながら、しばしの葛藤の後、慕も耕介と共に
昼寝をする事に決め、タオルケットの中に静かに潜り込んだ。
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二人で並んで寝るにはソファは狭く、必然的に身体を寄せる必要がある。
慕は耕介の胸に顔を埋め、落ちない様に軽く背中に手を回した。
(何だか恋人みたい)
ついこの前まではこうする事も多かったが、中学校に上がってからは一緒に眠る事も、抱きつく事も控えていた。
久しぶりに近くに感じる耕介の体温や匂いに少し胸が高鳴り、背中に回した手にぎゅっと力を込める。
「ん…慕……」
それがきっかけになったのか、耕介は小さく声を上げ、慕の身体を包むように背中に腕を回した。
(ひゃあああぁぁっ!)
慕は声にならない悲鳴を上げる。
「お、叔父さん?」
「うーん……」
耕介は曖昧な返事の後、慕の髪に顔を埋め再び寝息を立て始めた。
これまでよりもずっと近く感じる耕介の存在に胸は激しく脈打ち、
顔は鏡で確認しなくても赤く染まっているのが分かるほど、熱を帯びている。
慕は更に腕に力を込めて耕介の胸に顔を押し付け
「耕介、さん……」
と、いつもの呼び方ではなく下の名前を呼び、その後に続く「好き」という言葉は飲み込んで、心の中でつぶやいた。
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中学校に上がるとクラスでは恋愛の話に花を咲かせる事が多くなったが、
慕は同年代の異性には興味が持てなくて、その輪に入れないでいた。
年齢が上がっていろんな事を見聞きして自分の世界が広がる度に、
耕介がいつも優しく見守ってくれ、普通の親よりも愛情を注いでくれている事が分かって、
いつしか家族へ向ける愛情以上の想いを耕介に抱いてしまったからだ。
ふいに慕の目から涙がこぼれる。
慕も自分の気持ちが許されない事くらい分かっている。
――叔父と姪だから。
――家族だから。
――親代わりだから。
――年齢が離れすぎているから。
考えればいくらでも自分と耕介が結ばれない理由が浮かんでくる。
こんなに好きで、誰よりも近くにいるのに、想いを伝える事は出来ない。
――もしこの想いを伝えてしまったら、きっと全てが壊れてしまう。
そうなってしまうのが怖くて、慕は溢れそうになった気持ちに再び蓋をする。
行き場のなくなった気持ちは涙となって溢れ出て、慕の頬を伝った。
それを拭うように回した腕に力を込めて、瞳を閉じる。
押し殺したような泣き声は、いつしか静かな寝息へと変わっていった。
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>慕は更に腕に力を込めて耕介の胸に顔を押し付け
>
> 「耕介、さん……」
やべーぞ
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「……うーん…んん!?」
寝苦しくなって目を覚ました耕介は、腕の中に慕を抱いている事に驚きの声を上げた。
「し、慕……?」
恐る恐る慕の顔を覗き見ると、頬に伝った涙の跡が見え、更に驚く。
耕介は、慕に寂しい思いをさせてしまったのではないか、嫌な事があったのではないか、と
自分の行動と慕の様子を振り返るが、思い当たる事はなく、それが逆に
隠れて無理をさせてしまっていたように思えて、変化に気付く事の出来なかった自分を恥じた。
耕介は再び慕を抱きしめ、絹のような髪を指で梳くように撫でる。
腕の中の慕は中学生になったとはいえ、まだ身体は小さく、すっぽりと包み込めてしまう程だ。
「ごめんな…慕……」
不甲斐なさから、やはり自分には姉の代りは務まらないんだろうかと少し悲しくなる。
どうやっても自分は家族の代わり、親の代わりにしかなれない。
本当はこうして慕を抱きしめる資格なんかないんじゃないかと思えてきて、
慕の背中に回していた手を解き、慕から離れようと身体を起こすと、
慕がシャツを握りしめている手に力を込めた。
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「慕? 起きてるのか?」
慕は変わらず静かに寝息を立て眠り続けている。起こさぬようにその手をそっと解こうと試みるが、
悲しそうな顔をして更に強く握りしめた。
(ああ、赤ん坊の頃もこうだったな……)
遠い記憶が蘇り、穏やかな笑顔を浮かべると、心に掛かっていたもやが晴れた気がした。
耕介は慕から離れるのは諦めて、もう一度横になり慕を優しく抱きしめる。
(いいじゃないか、何かの、誰かの代わりでも。慕が許してくれるなら、それでいい)
そう心に決めて、もう一度目を閉じる。
うとうととし始めた頃、酒の席で友人の周藤 瞬斗に言われた言葉が頭に浮かんできた。
『本当の家族じゃないとか、そんな事気にしてるなら本当の家族になればいいじゃないか。
結構ヨーロッパだと叔姪婚が合法な国が多いらしいぜ?』
(…ありえないな、馬鹿馬鹿しい……)
耕介は頭に浮かんだ言葉を周藤の顔ごとかき消すと、そのまま眠りに落ちていった。
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窓からはレースのカーテンに遮られた午後の日差しが柔らかく差し込み、
吹き込んだそよ風に吹かれたカーテンは、ゆっくりと舞うようにたなびく。
光を湛えたそれは、雲のようにも、純白のドレスのようにも見えた。
【おわり】
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わっふるわっふる
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くぅ疲
投稿しようとしたスレが落ちてしまったので
シノリチャ純愛路線すき
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ええぞ!ええぞ!
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ナイスでーす♂
切ないシノリチャええぞ!
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乙です
いい雰囲気
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綺麗で切ないシノリチャほんとすき
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やっぱシノリチャって神だわ
もそっとやってもええんよ
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中学生で進み過ぎィ!
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これはすばら
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どいつもこいつもやれドイツだ叔父キチだ逆レだとほんとにもう
こういうのでいいんだよ、こういうので
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(まともな)シノハユSS流行れ!
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