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沙織「結婚します!」
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――結婚はただのスタートであってゴールなんかじゃない。
過去に戻る事が叶うなら、私はきっとあの頃の自分にそう言うだろう。
恋は盲目、あばたも笑くぼ、とは良く言ったものだとつくづく思う。
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私は両親の反対を押し切り、半ば駆け落ちのような形で私は彼と一緒になった。
強引に攫うように私を連れ出してくれた彼、こんなに男らしい彼なら
ずっと私を守ってくれるだろう、そして彼と一緒なら、これからの暮らしに訪れる
困難にも2人で立ち向かって行けるだろう、そう思っていた。
だけど時とともに現実が重くのしかかり、私を夢から叩き起こす。
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男らしいと思った彼は、ただの子供のまま大きくなった計画性のない粗暴な男で、
口では立派なことを言っていても何一つ自分ではやろうとしない。
私がそれを指摘すれば口汚く罵る言葉と容赦のない拳が飛んできて、私を黙らせた。
暮らしていくためのお金も尽きた頃、彼は別の女に入れあげ、
家にはほとんど帰らなくなっていた。
彼のいない日々は平穏ではあったが、彼がいつ帰ってくるか分からない恐怖に
怯える日々でもあった。
帰って来ればお金の無心をし、それがないと分かると暴力と共に
「殴られたくなきゃ金をよこせ」「身体売って金を稼げ」なんて言葉を浴びせられた。
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やめろォ(建前)やめろォ(本音)
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恐怖に耐えられなくて逃げたしたこともある。
だけど彼はどういう訳か私の居場所を突き止め、もう今の私には見せない優しい仮面を被り、
周囲の人間を納得させて私を家まで連れ戻した。
何度逃げ出しても必ず連れ戻され、その度にひどく暴力を振るわれた。
それを繰り返す内に私はもう逃げる気力もなくなって、ただ彼が帰って来ませんように、
平穏な日々が続きますように、そう祈りながら毎日を過ごすようになってしまった。
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みぽりん助けて!
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殺さなきゃ……
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薄暗く、もう何週間も掃除をしていない汚れた部屋で膝を抱えてうずくまる。
――私は結婚にどんな夢を描いていたんだっけ?
優しい旦那さんと一緒になって、毎日彼の帰りを待つ。
旦那さんは仕事を、私は家事をそれぞれ頑張って、週末は2人で仲良く過ごす。
将来的には子どもを儲けて明るくて暖かい家庭を築く、そんな夢だったと思う。
顔を上げて部屋を見渡しても目に入るのは汚れた部屋と出しそびれ続けたゴミばかりで、
現実とのギャップに打ちのめされて絶望すら覚える。
なのに心が凍ってしまったみたいに一筋の涙も流れない。きっと私の心は
直前まで顔を知らなかった男に初めて身体を穢された時に死んでしまったんだ、と思った。
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ああああああ(心が)痛い!痛い!痛いっ!!
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――結婚はただのスタートであってゴールなんかじゃない。
また顔を膝に埋めて、目をつむって昔のことを思い出す。
チームのみんな、戦車道を通じて仲良くなった他校の人たち、そして両親。
みんなのことを懐かしく思ってもう1度会いたいと願う度、こんな身も心も
穢れてしまった私ではもう顔向け出来ないとその分不相応な願いを打ち消す。
それならせめて夢の中で皆に会えたらと、その場に横になって微睡みはじめる。
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やめてくれよ…(絶望)
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――皆の笑顔と明るい声。ずいぶんと長い間忘れていた、日常だったはずの幸せな世界。
その世界から私を強引に攫うように、玄関のロックがガチャリと開く音がした。
【おわり】
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コブラ案件
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オチが入ってないやん!
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もう許さねぇからな〜?
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救いはないんですか!?
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みほ「…沙織さん、迎えに来ました」
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それでも麻子なら…麻子ならきっと何とかしてくれる…
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ありえるから悲しい
ヒスママと化した桃あくしろ
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#ドブにハマったさおりん かな?
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???「麻子に頼まれてキミを救いに来た王子様さ…」
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もどして
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勝手に続き
こんな地獄のような日々を送る間、私は高校時代の写真やアルバムといった物を全部破棄していた。
以前はそれらで昔の光景に思い浸っていたものだが、そんな物を眺めていても惨めな現実逃避にしかならないばかりでなく、いつしか幸せだった過去を想起させられる物を視界に入れるだけでも辛くなっていたから。
テレビや新聞で戦車道のニュースを目にすると吐き気を催すまでになっていた。
街中で男性が傍に居ると身体の震えが止まらなくなった。
あんなに逃げ出したかったはずなのに、今では外に出ることすら恐ろしくなっていた。
恐怖と絶望で支配された日常で、心の拠り所すら失っていた。
限界だった。
そう、私はもう限界だった。
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自傷行為に走ったことも一度や二度ではなかった。
けれども、自ら身体を傷つけたところで何の満足感も得られず、ただでさえ穢れきった身体に目に見える傷跡が増えただけだった。
カッターをぼんやり眺めていると、あの男のことを殺してしまおうかと思ったこともある。
そうすれば自分に対して怒鳴り声と暴力を飛ばしてくる存在はこの世からいなくなる。
塀の中に入れられるだろうが、それでも今の生活より遥かにマシなのではないかとすら思えてきた。
ただ、それでは家族に多大な迷惑を掛けることになる。
殺人犯の身内を持った両親や妹が社会からどのような扱いを受けることになるかは想像に難くない。
私のせいで家族の人生を壊すことだけはあってはならない。それだけは嫌だ。
ならどうすればいい?
この結果は自業自得なのだ。
自分で招いた状況は自分で終止符を打つしかない。
もう二度と連れ戻されないよう、確実に此処から逃げ出すには、こんな惨めな人生の幕を降ろすしかないのかもしれない。
………死ぬ。
そうだ、死ねばいい。
死ねば楽になるんだ。
全部終わらせちゃおう。だってもう、疲れちゃったから。
暗くて汚い部屋の片隅で、私は乾いた笑い声を上げていた。
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なんでこんなことするの・・・
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それからしばらく経った頃、私は大洗に足を運んでいた。
私の生まれ故郷。大好きだった大洗。
せめて死ぬ前に一度この場所へ帰りたかった。景色を目に焼きつけておきたかった。
それと同時に、この土地で人生を終わらせようと思っていた。自由を奪われた生活を送ってきたけれど、死に場所くらいは自分で選択したかった。
持ち物なんてほとんど無かった。
無論、あの男にも連絡などしていない。
ただひとつ、遺書だけを握りしめてこの土地を訪れていた。
遺書といっても実に簡素なものだった。
両親と妹に対する謝罪の言葉をたった一行書き綴っただけ。それ以上、何かを紙の上に紡ぐ気にはなれなかったから。
学園艦から身投げしてしまおうかと思ったけれど、生憎その辺りのセキュリティは万全で、一般人が艦の縁に近付くことは出来そうにないのは以前そこで暮らしていた私自身よく分かっている。
仕方がないので艦に乗り込むことはせず、大洗の本土へと戻ることにした。
しばらくの間、私は死に場所を求めて当てもなくさ迷い続けていた。
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どれくらい歩き回っただろうか。
めぼしい所が見つからず、足が疲れきって適当な公園のベンチに腰を降ろした頃には夕陽も沈みかけていた。
この町は平和だと、つくづく思う。
どこを歩いても穏やかで、人々は活気に満ちていて、私の知る大洗の町そのものだった。これから命を絶とうとしている人間が歩くには、あまりに長閑で気分が悪くなるくらいに。
私に対して耳障りな声をかけてくる軽薄な男もいなければ、路上で金銭をたかる薄汚い浮浪者もいない。同じ国とは思えないくらい、都会とは空気が異なっていた。
そんな土地で簡単に自殺場所など見つかるはずもなく、道中の自販機で購入した缶コーヒーを脇に置いて私は途方に暮れていた。
一応帰省ということになるのだろうけれど、実家に帰る気にはならなかった。
もちろん、両親や妹に会いたい。会いたくて堪らない。会って抱き締めてもらいたい。けれども、皆の顔を見た瞬間決意が揺らいでしまいそうで、そうすることは叶わなかった。
………私が死んだら、どうなるのだろう。
事件ひとつ起きなさそうなこの町で妙齢の女の遺体が見つかったら、町中ではちょっとした騒ぎになるのだろうか。
家族やかつてのチームの皆は悲しんでくれるだろうか。
私が死んだとあの男が知った時、どんな反応をするだろうか。自分のせいで身近な女が死んだら、どういう顔をするのだろうか。
罪悪感など感じないのだろうが、そんなものは求めてない。ただ、人を死に追いやったことに対する恐怖を覚えてほしい。どうせなら遺書に血文字で呪詛の言葉でも書き連ねておけば良かったか。死んだらホラー映画とかに出てくる感じの悪霊になって、祟り殺してやろうか。
そんなことをボーッと考えていたら、すっかり周囲が暗くなっていた。
………仕方ない。今夜はもうどこかに泊まって、明日また仕切り直そう。
そう思って重い腰を上げた瞬間、目の前から誰かの声がした。
「………沙織さん?」
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思わず顔を上げ、眼前の人物に目を向ける。
嘘でしょ、と。私は一瞬信じることができなかった。
胸に動悸が走った。暗がりの中に立っていても分かるその女性。見間違えるはずがない。
「………みぽ、りん」
それは、他でもない私がその子に付けたあだ名。弱々しい声が、私の口から自然と漏れていた。
かつてⅣ号戦車の中で私の後方からチームに指示を出し続けていた、その人。
幸せに満ちた青春時代を共に駆け抜けた、大切な大切な仲間。
西住みほが、私の目の前に立っていた。
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「沙織さん、ですよね?あの、分かりますか?私…」
彼女が言い終える前に、私は逃げるように横を素通りしようとした。
まさか、ここでこんなタイミングで会うなんて。
再会を喜んでいる場合じゃない。むしろ、最悪だった。
地元に帰ったのだから、誰かに出くわす可能性はもちろんあった。けれども、誰にも見つからない自信があった。もう何年もここを離れていたし、心身共に荒みきった生活をした影響で容姿の雰囲気がガラリと変わった私のことに気付く人なんて、そうそういないだろうと思っていたから。それこそ、家族でもない限り。
「ま、待ってください!」
パシッと腕を掴まれた。
「沙織さんだよね?私です、西住みほです。分かりますか?」
当たり前でしょ、なんて心の中で吐き捨てた。だからこうして慌てて立ち去ろうとしているというのに。
「………人違いじゃないですか」
顔を俯かせながら、できる限りの冷たい声でそう言い放った。しらばっくれても無意味だったけれど、そうするしかなかった。
その声も、掴まれた腕も、足も、酷く震えていた。
「そんなことないです。どうしたんですか?せっかく久しぶりに会えたのに……沙織さn」
「離してッ!!!」
周囲いっぱいに響き渡ったであろう大声を上げて、私は強引に彼女の手を振り払った。
どうしてなのか。なぜこんな時にかつての仲間と出会ってしまうのだろう。写真で見るのも辛いというのに、どうして本人と顔を合わせることになってしまうのだろう。
なぜ、どうして。神様は最期の時間すら一人にさせてくれないのだろう。
「えっ……沙織、さん……あの……」
彼女が困惑しているのが分かった。
私は頭の中がぐちゃぐちゃになり、その場にへたり込んでしまった。
「違う……違うの…!!私はっ!!私はもう、皆の知ってる武部沙織じゃない…!!」
そして、その場で子供みたいに喚き始めてしまった。身体に力が入らず、自分でももうどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
周りの私達以外の人間がいなかったことだけが幸いだった。
「沙織、さん…」
振り返らなくても、後ろで彼女が呆気に取られているのが分かる。こんなみっともないところを友達に見せるのは初めてだった。
今すぐ煙のように消えてしまいたかった。
「だ、大丈夫。大丈夫だから……ね?落ち着いて……大丈夫だから……とりあえずそこ座ろう?」
しかし、傍にいる彼女は困惑しつつも優しい声で語りかけて私の背中をさすった。
そして私のことを立たせると、つい先ほどまで座っていたベンチにゆっくりと腰掛けさせて、身体の震えが止まるまで背中を撫で続けた。
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身体の震えが落ち着いてからと、私は顔を上げることが出来ないでいた。
「えっと………」
お互いの間に重い沈黙が流れ続け、横に座る彼女……みぽりんは気まずそうにおどおどしていた。私は自分から口を開く気にはなれなかった。
「沙織さん……何だか痩せたよね…」
他に振る話題が見つからなかったのだろうが、触れられたくないことに触れられてしまい全身が強ばってしまった。
恋愛などという幻想に燃えていた昔は、女子高であるにも関わらず常日頃から身だしなみに気を使い、お洒落もしていた。けれども、外に出ることすらほとんど無くなっていた今現在は、爪や髪の手入れすらもろくにせず、まともな食事もとらず、自分でも分かるくらいに見るからに痩せ細っていた。暴力を受け続け、身体の傷も隠せなくなっていた。
そうしてボロ雑巾のようになったこんな私の姿を見られたくはなかったのだが、今さら言っても仕方ない。
ちらりと横を見ると、みぽりんは私と違って小綺麗な格好をしていた。それだけでも、この子が人並みに順調な日々を送っているのが分かって惨めな嫉妬心を抱いてしまった。それ以上に、友達に対して一瞬でもそうした醜い感情を抱いてしまう矮小な自分に激しい嫌悪感を感じた。
私は決して目を合わせようとはしなかったけれど、みぽりんが心配そうに私を見つめているのが分かった。
「すごく久しぶりだよね……会ったの。何年ぶりだろう」
そんなの私にも分からない。
高校を卒業して県外の大学に進学してからしばらくは連絡を取り続けたり、帰省した時にはあんこうチームの皆と会ったりしたけれど、皆それぞれだんだんと忙しくなって顔を合わせる機会も減っていった。
特に私はあの男と"駆け落ち"してからというもの、皆に自分の救い様の無い近況を知られるのが怖くなって大洗の皆と距離を置いていた。
そのせいで、みぽりん達とはいつしか疎遠になっていた。
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ハッピーエンドをください…
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「あの……さ、沙織さん……」
「………"西住さん"は、ここで何してたの」
他人行儀で、刺々しい言い方をしてしまった。だって、今の私に旧友と昔のように語らう余裕など欠片も持ち合わせていないのだから。
視界の端に、狼狽えるみぽりんが映った。
「わ、私は……たまたまオフだったから、大洗に戻ろうかなって…」
しばらく会っていなかったとはいえ、みぽりんのことはよく知っている。というか、嫌でも耳に入ってくる。
大洗女子を連覇に導いた高校No.1選手として大学に進学。その後大学戦車道を経て今はプロリーグの第一線で大活躍している紛れも無いトップレベルの選手で有名人。テレビや雑誌で何度も目にしてきたし、その度に私は自分の境遇と比較して胸が締めつけられていた。
元あんこうチームの中で、この子が一番多忙なのは言うまでもない。貴重な休日にみぽりんにとって第二の故郷でもある大洗へ羽を伸ばしに来たということだろう。けっこうなことだ。こうして私にさえ会わなければ。
「沙織さんも大洗に戻って来てたんだね」
自殺しにね。
なんて、流石に言えるわけない。
「……久しぶりに会えて嬉しいな」
私はあまり嬉しくないんだ。出来ることなら今すぐにでもこの場を立ち去りたいくらい。
そんな気持ちは心の中に押し留めておく。
「………あの、沙織さん。お節介かもしれないけど、もし何かあったなら、私がお話を聞くことくらい…」
………とうとう聞かれてしまった。
遠慮がちだったけど、心の底から私のことを気遣ってくれている声だった。
見た目からして並々ならぬ私の雰囲気に、そう訊ねずにはいられなかったのだろう。「死にたくなるほど嫌なことしかありませんでした」って、たぶん横顔に書いてある。
本音を言うと、全部ぶち撒けたかった。
どうすればいいのか、相談したかった。
頼れる隊長に、大好きだった友達に、泣きつきたかった。
けれど、それは出来ない。だって、私はもう死ぬと決めたから。明日の今頃にはアッチの世界で麻子のご両親やおばあに挨拶しているだろうから。
それに、みぽりんにだって迷惑が掛かる。彼女はプロの選手で、私みたいなちっぽけな人間のせいで余計な負担を掛けさせてたくはない。
だから、
「………別に。関係無いから」
私はそうやってそっけない言葉を返すしかなかった。
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ホモは文豪
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「………沙織さん」
「関係無いって言ってるでしょ……もう構わないでよ…!」
「………っ」
語気を強めると、みぽりんはそのまま押し黙ってしまった。顔は見てないけど、たぶんとても悲しそうな表情を浮かべている。
「………分かりました」
今の私には何を言っても無駄だと悟ったのか、観念したようにそう言って引き下がったものの、恐らく納得はしていないのだろう。
私は安心した同時、少し残念な気持ちにもなった。実のところ強引にでも心の奥に踏み込んで行ってもらいたかったのかもしれない。
直後、みぽりんは鞄の中からゴソゴソと何かを取り出した。
それはメモ帳のような物で、みぽりんは適当なページを開いて紙の上にサラサラとペンを走らせたかと思うとビリっとそれを破き、私に差し出してきた。
「………これ、私の連絡先です。何かあったらすぐに言ってください。必ず力になるから」
………ああ。どうしてだろう。
どうしてこの子はこんなにも優しいのだろう。
どうしてその優しさが時には鋭利な刃となって誰かを傷つけるということに気付かないのだろう。
私は死ぬの。お願いだからもう邪魔しないでよ。お願いだから。ずっと会ってない昔の友達のことなんか、忘れてよ。
思えばみぽりんは、どんな困難だって乗り越えてきた。
どんなに絶望的な状況に陥っても、希望を失わずに道を拓いてくれた。
この子の背中について行けば、どんなことでも何とかなる気がした。
だから、もしかしたらこんな私のことも助けてくれるかもなんて―――都合の良すぎることを考えてしまった。
これを受け取ったら、きっと決心が音を立てて崩壊していくだろう。いや駄目だ。そんなの駄目だ。
頭では理解しているはずなのに、指が勝手に差し出された紙を取ろうとしてしまう。
胸の内で葛藤が始まる。
希望を抱きに此処へ来たわけじゃない。分かっているのか、と。
暫しの逡巡の後、私は震える指でそれを掴むと
「―――こんなもの必要無いのっ!!!」
それをその場で破り捨て、そう叫んだ。
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>>32
>麻子のご両親やおばあに挨拶しているだろうから
さり気なく麻子も曇らせるのはやめろォ(本音)
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………そうだ。これでいい。
私はもう楽になるんだ。だから、誰に手を差し伸ばされようがそんなものはね除けてしまえばいいんだ。
「…………ごめんなさい……っ」
みぽりんの声は震えていた。それを聞いて、胸にズキンと大きな痛みが走ったような気がした。
「余計なことしちゃったよね……ごめんね……私もう行くから」
私に強く拒絶されたみぽりんは、ベンチから立ち上がりながらそう言った。その顔を私は見ることが出来ない。
「………じゃあね、沙織さん……またどこかで会えるといいな……」
くるりと背中を向けるみぽりん。そうしてそのまま夜の帳へと歩み出して行く。
謝るのはこっちだよ。
ごめんね。せっかく助けようとしてくれたのに。
戦車道、頑張ってね。向こうに行っても応援してるから。だから、そんな寂しそうな顔しないで。
そんな言葉の数々は、形にすることも出来ずに全て胸の内で溶けていく。
これでいいんだ。姿が見えなくなったら、私も行こう。明日を待たないでもう終わらせてしまおう。場所はもうどこでもいい。死ぬ方法なんていくらでもあるのだから。
もう会えないけど、最期に会えて嬉しかったよ。
ありがとう、私の大切な友達。
大好きだよ、みぽりん。
………嬉しかった?
そう、嬉しかった。ずっと会いたかった。本当は嬉しかったんだ。
その背中がどんどん小さくなっていく。
行ってしまう。私を置いて、ずっと先へと。
視界がぐにゃりと歪んだ気がした。
パシッ
「……っ!」
気付くと、私は後ろからその腕を強く掴んでいた。
ぎゅうっと、強く強く。
そして、
「………か……ないでよ……っ」
「………沙織、さん…?」
もう我慢出来なかった。
その時、今日初めて顔を上げて目を合わせた。
ツーと瞳からひと筋の熱い水滴が流れ落ち、次の瞬間それは大粒の涙に変わっていた。
「……やだよ……やだ………行かないでよ……っ……おいていかないでよ…!!行っちゃ……ヒック……えぐっ……、やだよ…!!たすけてよ……!!みぽ、りん……ッ、………うわぁぁぁん…!!」
目の前にいる友達は、私のことを抱き締めてくれた。
小さな子供みたいにひたすら泣きじゃくる私の頭を、涙が止まるまで優しく撫で続けてくれた。
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よかった…
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それから私は全てを包み隠すことなく話した。
みぽりん達と連絡を取らなくなってから自分の身に起きたこと。
身体の傷も見せた。
この命を捨てるために大洗へ帰って来たことも、全部話した。
みぽりんは、私の顔をずっと見つめて何度も頷きながら話を聞いてくれた。初めは真剣な表情で、そして徐々に目尻に涙を溜め込んで。その内とうとう泣き出してしまった。
「ごめんなさい。気付いてあげられなくてごめんなさい」「沙織さんがそんな酷い目に遭っていたのに、今まで何も助けてあげられなくてごめんなさい」と、幾度となく謝られた。
「どうしてみぽりんが泣くの」と、私が宥めることになるくらいに。
此処でみぽりんに出会わなければ、明日には本気で死ぬつもりでいたということを伝えたら、細い腕で強く抱き締められ、消え入りそうな涙声でこう言われた。
「沙織さん。大洗女子学園の隊長として……あんこうチームの車長として命令します。死んじゃうなんて駄目です。絶対に許しません。だから、私に全部任せてください。これは命令です」
命令なら仕方ないか……と苦笑いを溢した後、私は「通信主、了解」と返事をしてみせた。
すると、止まってたはずの涙がまたボロボロと零れ落ち始めた。身体中の水分が無くなって干からびてしまうんじゃないかってくらい、二人で抱き合いながら泣き続けた。
その後、みぽりんの提案でみぽりんが予約していた海辺の大きなホテルへとひとまず移動することになった。
もちろん元々1名での予約だったのだが、ホテル側が直前での人数の追加を悩む間もなく即快諾してくれた。
大洗の住民なら誰もが知ってる戦車道のスター選手でもあり、そして何よりかつて大洗を救ったヒロインである西住みほからどうしてもと頭を下げられたとあっては、拒否する道理などあるはずも無いということだろう。ホテルスタッフの出迎えも一般客に対するそれとは明らかに違っていた。
みぽりん曰く、大洗に来る際はこのホテルをよく利用するらしい。
よく見ると、フロントの傍の目立つ所にみぽりんのサインがババーンと飾ってあった。
改めて、横を歩くこの友達のスゴさを認識することになった。
そして、そんなスゴい人と在りし日に同じ戦車の中で共に戦い、友達として肩を並べて歩ける自分がちょっぴり誇らしかった。
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続き 後ほど
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みぽりんがんばって
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殺ってやる殺ってやる殺ってやるぜ
嫌なアイツをボコボコに
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もう待ちきれないよ!早く出してくれ!
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早くさおりんの笑顔を取り戻してくれ…
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みぽりんの腕を掴まなかったBADルートも書こう(提案)
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レス数が年齢に見えてきたゾ・・・
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待ってるぜ
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がんばれがんばれ
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お待ちしてナス!
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さおりんを守りたい
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続きが無いなら自分BADルートいいすか?
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>>50
えー…どうしてー…
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>>50
いいよ!こいよ!
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いやダメだろ
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みほも巻き込んで沈んでいく展開はよ
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彼殺私幸
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続きを書くのか書かないのかだけハッキリして欲しいですね
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まだ2日しか経ってないやん
ホモは短気
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ちょっとせっかちすぎんよ〜
まあ落ちちゃったら落ちちゃったですね
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俺知ってるんだ
期待かけられすぎた即興で作ったSSはエタるってこと…
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