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ヤクザ・トゥレット・アンド・ニンジャ・リヴェンジ
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「アイエエエ…ナカタ=サン、ナンデ…」
「俺はナカタではない…」
とある暗い一室。タダノは目の前に立つ男をおぼろげに見つめる。
(何故こんなことに…)
タダノはここに至るまでの経緯をソーマト・リコールめいて回想し始めた…
「ヤクザ・トゥレット・アンド・ニンジャ・リヴェンジ」
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「ハハハハ!やりましたね、タダノ=サン!ナイスピッチでしたよ!」
「ふん、あの程度楽勝楽勝!」
夕刻の路地を一台のバンが駆け抜ける。それに乗るのは三人の男だ。
彼らはリッキョ・ユニバーシティの大学生であり、全員がベースボール・クラブに所属している。
今は試合の帰り道だ。
「俺達三人ならどんな相手にだって負けないぜ!」
「ユウジョウ!」
「ユウジョウ!」
得意げに話すのは先輩のタダノ。彼は野球のプロ入りが確定している有望選手である。
バンを運転するのはナカタ。彼は大手塗料会社、ニッポン・ペイント社への就職が決定している。
そして会話に参加しない寡黙な男はハタノ。彼はスミトモ・メガバンク就職が決定している。
彼らはネオシモキタに溢れる無軌道大学生などではない。将来を有望視された、いわばカチグミだ。
試合勝利の余韻とバリキドリンクも相まって、その勢いは留まることを知らない。
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「オイオイ!あまり飛ばしすぎるなよナカタ=サン!」
「わかってますって!…ん?」
その時である。彼らは前方に黒塗りのヤクザ・ベンツが止まっているのに気づいた。
辺りが暗くなっていたせいで気づくのが遅くなったのだ。
「アブナイ!」
ナカタは咄嗟にブレーキを踏んだ。
だが、ナムサン!スピードが出ていて止まりきれずバンはベンツに追突してしまった!
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「アイエエエ…」
「ヤベェヨヤベェヨ…」
ベンツに人が乗っていなければ、逃げることも出来ただろう。
だが残念ながら、ベンツから一人のヤクザが凶悪な顔つきで降りてきた。
「ザッケンナコラー!!」
「アイエエエ!」
ヤクザはヤクザスラングで三人を威圧!コワイ!
「オイお前ら免許持ってんのかコラー!アク免許ダセッコラー!」
ヤクザはバンのドアを開けながらナカタに免許証を要求!
逆らえないナカタはおずおずと免許証をヤクザに渡した。
「オイお前らクルルァニツイテコイッコラー!」
免許証を奪ったヤクザは三人を連行すべくベンツに戻って行く。
その後姿を追いながら、彼らはただそれに従う他なかった。
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ベンツに追随するバンの中で、三人はオツヤめいて沈黙していた。
もはや勝利の余韻もバリキも抜けきってしまった。
「ど、どうしましょうタダノ=サン…」
口を開いたのはナカタだ。追突の原因の罪悪感から、その声色は絶望的だ。
「どうするもないだろ!とりあえずあのヤクザの言うとおりにするしかない!」
タダノは先輩としての威厳を保つ為にも気丈に言い放った。
「下手に抵抗してあのヤクザをこれ以上怒らせたらマズイ…何があっても大人しくしているんだ」
「ハイ…」
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読者の皆さんの中には、彼らの様子に些かの疑問を抱いている人もいるだろう。
彼らは三人であり、かつベースボール・クラブに所属するほどの体格だ。
三人でかかれば負けはしないだろう、と。
しかし、相手がヤクザとなれば話は別だ。
ヤクザとは一般人と遥かに格の違う力量と、オーラを持っている。
体を鍛えた程度の素人では、歯が立たないのだ。
そしてヤクザは面子を重んじる。
クランに所属するヤクザが襲われたとなれば、クラン総出で報復をするだろう。
さらに、タダノらは自身の将来を心配していた。
もしヤクザと揉めたことが発覚すれば、カチグミ人生は永久に閉ざされてしまう。
ヤクザとは、そういうものなのだ。
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10分ほど着いていくと、ベンツはビルディングの前で停車した。
ここがあのヤクザの所属するヤクザ・クラン、タムラハンニャ・ヤクザクランの事務所である。
「お前ら降りろ」
「ハイ」
三人はヤクザの後に続いて事務所へと入っていく。
だが、何らかの事情からか、事務所の中には彼ら以外の人間はいない様である。
ヤクザに囲んで棒で叩かれることを恐れていた三人もこれには安堵したが、状況は何も好転してはいない。
「ここだ」
ヤクザは三人を一室に入れた。
その部屋はソファと机、そして観葉植物しかない粗末な部屋だった。
しかし、それが逆に恐ろしさを助長する。
「まだ名前言ってなかったな。俺はタニオカだ」
「タニオカ=サン、スミマセンでした!」
最初に謝ったのはタダノだ。
「オウとりあえずドゲザしろよ」
「ハイ」
ナムアミダブツ。ドゲザとは相手への服従を示す大変屈辱的な行いだ。
いきなりドゲザを要求するタニオカは相当に無慈悲な男である。
だが彼らは従うしかない。
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「誰の車にぶつけたと思ってんだ?」
「スミマセンでした!」
「許して欲しけりゃ犬の真似しろよオウ、アクシロヨ」
「エッ!?」
おお!何たることか!ドゲザに加えてタニオカはタダノに犬の真似をしろと要求!
いくら今回のことは彼らが原因とはいえ、ここまでされる謂れは無い!
「…やれば返していただけるんですか?」
「オウ考えてやるよ。アクシロヨ」
タダノは屈辱に耐えこの要求を飲んだ。
全ては自身の将来と後輩の為だ。
タダノは犬のように四つん這いになる。
「犬が服着るのかよ?裸になるんだよ」
「エッ!?」
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ここでタニオカは、持っていた免許証を見て後ろの後輩の名前を確認した。
「おいお前、ナカタ」
「ハイ」
「こいつ脱がせろ」
「ハイ」
タダノに言われたとおり、ナカタはタニオカに従いタダノを脱がせた。
野球で鍛えられた屈強な体が露となる。
「ワンワン鳴くんだよ」
「ワン、ワン」
「ウウーッ!」
先輩のあられもない姿にナカタは嗚咽を抑えられない!
だが、タニオカの要求はエスカレートする一方だ!
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「なんか犬っぽくねぇなぁ、首輪と尻尾着けてやるか」
「アイエエエ…」
「ナカタ、これを着けてやれ。アクシロヨ」
「ハイ」
ナカタはタダノに犬の首輪とイミテーション尻尾を取り付けた。
もはやタダノの尊厳はロウソク・ビフォア・ザ・ウィンドだ。
「これで犬らしくなったな」
「アイエエエ…」
「じゃあファックするか!」
「アイエエエ!?」
ナムサン!タニオカはゲイだったのだ!
想定外の事態に三人は困惑を隠し切れない!
「オウ!ケツを出すんだよ!アクシロヨ!」
「アイエエエ!ヤメテ!」
「ザッケンナコラー!」
このままタダノはタニオカにファックされてしまうのか!?
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(フザケルナ)
この時、ナカタの心には怒りの感情が涌き上がってきていた。
(タダノ=サンはあんなに従順なのに、なんだあのヤクザは?)
(何でここまでされなきゃならない?)
ナカタの眼光は徐々に鋭くなっていく。
それは、危険な殺人鬼めいていた。
(フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ!)
「アイエッ!?」
「アッコラー!?」
その場の誰もが、空気が変わったことに気づいた。
これまでヤクザが支配していた場が、別の者に支配されたことに。
ナカタはゆっくりと立ち上がり、タニオカを睨み付けた。
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「イヤーッ!」
「グワーッ!」
直後!凄まじい速度のパンチがタニオカに叩き込まれた!
タニオカは壁に激突!
「アイエエエ!?」
またも想定外の事態にタダノは困惑を隠し切れない!
「…ザッケンナコラー!」
だがタニオカも屈強なヤクザである!
パンチのダメージから復帰し懐からチャカ・ガンを取り出し発砲!
「スッゾコラー!」
「イヤーッ!」
だがナカタは銃撃を軽々とジャンプ回避!
タニオカのワンインチ距離へと着地した!
-
ほんやくチームこんなクソの掃き溜めにいないで仕事しろよ
ボンドに言うぞ
-
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
ナムサン!ナカタの連続パンチが容赦なくタニオカに繰り出される!
「ダッテメッコラー…何しやがった…」
朦朧とした意識の中、タニオカはナカタに問いかける。
「何をしたかだって…?俺は、ニンジャになった!」
「ニンジャ…!?」
ナカタはタニオカが落としたチャカ・ガンを拾いタニオカに向ける。
「じゃあ次はお前が犬の真似をしてもらおうか?」
「何だと…!?」
「アクシロヨ!」
タニオカは言われたとおり四つん這いの状態になった。
先程までタダノを好きにしていたタニオカだが、もはや恐ろしさも戦意も無かった。
ニンジャとは、そういうものなのだ。
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「ウウーッ!」
「ハハハ!いい気分だ!」
「アイエエエ…ナカタ=サン…」
ナカタの姿にタダノは呆然とするしかない。
ニンジャリアリティ・ショックの影響だ。
「ケツをこっちに向けろ!」
タニオカは言われるがまま、ナカタに尻を向ける。
ナカタはその肛門にチャカ・ガンを押し当てる。
「アイエエエ…ナカタ=サン、ナンデ…」
「俺はナカタではない…」
ナカタの心は、邪悪なニンジャソウルに飲まれかけていた。
最初はタダノを助ける為だった怒りも、もはやタニオカを殺す為のものでしかない。
「俺はニンジャ!ダイヴォーだ!」
ナムサン!遂にその引鉄が引かれる!
その時である!
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「Wasshoi!」
事務所の窓を突き破り、赤黒の存在がエントリーした!
またも想定外の事態に全員は困惑を隠し切れない!
「アイエエエ!?ニンジャ!?またニンジャナンデ!?」
「何者だ!」
赤黒の存在は立ち上がりオジギの姿勢を取った。
「ドーモ、初めまして。ニンジャスレイヤーです」
「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ダイヴォーです」
ダイヴォーはニンジャスレイヤーにアイサツを返す。
古事記にも書かれている、ニンジャ同士の神聖なやり取りだ。
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「ニンジャスレイヤーだと?何をしにここへ?」
「決まっている。オヌシを、殺す為だ!」
「フザケルナ!イヤーッ!」
ダイヴォーはジャンプパンチで攻撃!
だがニンジャスレイヤーはこれを読んで体を逸らし、紙一重の回避!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
ニンジャスレイヤーの右フックがダイヴォーの脇腹に叩き込まれた!
ダイヴォーはたまらず距離を取る!しかし!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
またもこれを読んでいたニンジャスレイヤーは先んじてスリケン投擲!
ダイヴォーの肩に命中した!
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「アイエエエ…」
そのイクサを、タダノは遠巻きに見ることしか出来なかった。
常人の及ばぬニンジャ同士のイクサであるが、ダイヴォー、ナカタが劣勢であることだけは理解できた。
このまま彼が殺されるのを見ているべきだろうか?
だが割って入れば今度は自分が狙われるのではないか?
タダノの心は揺れ動く。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
ニンジャスレイヤーの容赦なきカラテがダイヴォーに振り下ろされる。
ダイヴォーの死は時間の問題だ。
「待ってください!」
もはやタダノは黙って見ていることは出来なかった。
タダノはニンジャスレイヤーの腰にしがみつく。
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「何のつもりだ?」
「アイツは俺達の大切な仲間なんです!だからやめてください!」
「だが、奴はニンジャだ。私はニンジャを殺す」
「で、でも…」
「あれを見よ」
ニンジャスレイヤーは意識を失い倒れるタニオカを指差した。
「ここで放っておけばそこのヤクザのような犠牲者が出続ける。故に殺すのだ」
「今回のことは全部俺が悪いんです!だからナカタ=サンは許してやってください!」
「タダノ=サン…」
タダノは大粒の涙を流しながらニンジャスレイヤーに縋り付く。
自分を庇うタダノを見て、ダイヴォーは己のすべきことに気づいた。
「スミマセンでした」
ダイヴォーはニンジャスレイヤーに深く頭を下げた。
自身の過ちを、反省する為に。
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「……」
ニンジャスレイヤーは思案する。
彼らをどうするべきか。
確かにここで殺さねば、いずれ暴虐のニンジャになるやもしれぬ。
しかし、復讐心のままに彼らのユウジョウを壊すこともまた、ニンジャの暴虐なのではないか。
「…よかろう」
「エッ?」
ニンジャスレイヤーから出た言葉にタダノは驚いた。
ニンジャスレイヤーの脳裏には、ナラクの罵詈雑言が飛び交っていたが、彼はこれを押しとどめる。
「この場は見逃す。だが、次にこのようなことがあれば、その時は必ず殺す」
「…ハイ!」
「アリガトウゴザイマス!」
タダノとナカタは深々と頭を下げた。
その姿を一瞥した後、ニンジャスレイヤーは去った。
-
―
あれから2年。アマクダリとの戦いを続けるニンジャスレイヤーは一人、居室でテレビを見ていた。
「自分を売れば世界に通用する!ニッポン・ペイント社の塗料!」
テレビのコマーシャルには、かつて彼が見逃したニンジャ、ダイヴォーが映っていた。
あの後、ダイヴォーが何らかの悪事をした情報は入ってこない。
代わりに、三人の現状は知っていた。
タダノはプロリーグで活躍する名投手。
ダイヴォーはニッポン・ペイントの敏腕営業サラリマン。
ハタノは有能銀行員だそうだ。
ヤクザの報復があると思われたが、ニンジャの力を恐れてか、その心配はなかったようだ。
「イヤーッ!」
そして彼は再び飛び立つ。ニンジャへの復讐の為に。
「ヤクザ・トゥレット・アンド・ニンジャ・リヴェンジ」終わり
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オツカレサマドスエ!
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カラテモンスターを相手に1レッスゥーの間耐え抜くとはヤリマスネー!
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ほんやくチーム仕事しろ
ボタンを連打するたびに新作を出すんだよ
アクシロヨ!
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ゴウランガ!なんたるニンジャ文章力か!!
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ポエット!
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オツカレサマドスエ!
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オツカレサマドスエ!
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ワザマエ!
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ワザマエ!ポエット!
>v<(ブルズアイ人形)
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ゴウランガ!おお、ゴウランガ!
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