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【艦これSS】その甘さは鈴のカタチ
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対潜哨戒から戦艦との殴り合い、次第によっては航空戦までなんでもござれの私でも、
陸(おか)にあがればまだまだ慣れないことは多い。
家事はその最たるものだ。
掃除や洗濯はスイッチひとつで便利な機械たちが動き出してくれる-それでも面倒くさい- のだが、
特に料理というのはいつまで経っても人の手が必要らしい。
あるいは、人の手で成すことにこそ価値や意味があるのかもしれない。
だからこそ私も今こうしてキッチンに立っているのだろう。
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「はい、あとは冷蔵庫で冷やして化粧したら完成ですね」
漫画などでは女の子同士でキャッキャしながら作ることが多いようだが、
基地の設備を素人集団で占有するわけにもいかない。
餅は餅屋というわけで、給養員に教えを請えばトリュフが簡単だということだった。
慣れない私にはそれでも充分難しかったのだが、
手伝ってもらいながらなんとかカタチにすることが出来た。
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「 司令もきっと喜びますよ」
誰にあげるとはまだ一言も言っていないのだが、まあ今更だろう。
「うん、ありがと。悪いね付き合わせちゃって」
「いえいえ、こちらも楽しかったです」
普段あまり菓子を作ることがない分、新鮮で良かったという。
ならば今度からおやつの時間を設けようかと提案したがそれはやめてくれと断られてしまった。
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翌日、執務室の机の上には可愛いらしい包装がすでに幾つか置かれていた。
「おーおー、モテモテだね〜」
「まぁな」
なんとも余裕の答え。
基地内には男性の隊員もいる、というより軍事施設なのだから当然男性の方が多い。
だが私達艦娘は提督直属の指揮下にあるので、自然と提督と接触する時間が多くなる。
そうなれば必然的にチョコレートを貰える確率も上がるといわけだ。
彼にとって、この日限定のステータスを得ることはそれほど難しくはない。
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「もう少しありがたがったら〜?感じ悪いよ?」
「いや、嬉しいんだけどな」
「だけど、なにさ」
「ウチみたいに小さい基地でもこれだけの数だろ?
他の大きいとこだともっと多いんだろうなって思うと胸焼けが」
この男はなにを言っているんだ。
他所でも同じ待遇を受けられると勝手に妄想して胸焼けとは、
いささか自意識過剰が過ぎるのではないか。
「それにな」
「?」
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「まだ本命が目の前でお預けされてる」
一気に体温が上がるのを感じる。
どうしてこう歯の浮くような事を平然と言ってのけるのだろうか。
「……仕方ないなぁ」
しかし向こうに主導権があるというのは癪に触るので、あくまで平静を装って包みを取り出す。
「ほ〜い、鈴谷のチョコ、あ・げ・る♪ ふふっ」
ヒトの温もり、この世界にある楽しい事、哀しい事、そして左手の指輪。
今まで色んなものを与えてくれた彼にだからこそ、私は敢えてまたこう言うのだ。
「お返し、期待してるからねっ」
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以上、スッズレ番外編でした。
お粗末様でした。
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素晴らし菓子…(チョコレート)
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ヴォエ!(砂糖)
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もう賞味期限切れなのでAILEくんが消しやすいように上げ
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