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【ほぼオリジナルSS】現代の少女病
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参考:少女病 田山花袋
あるところに神山 光太郎という冴えない男がいた
肥満体型でひげも青髭を蓄え、本来40代前半の年齢であるにも拘らず50代の年齢に見られることが多かった
いつも、俯きがちで活発的な性格とは正反対の性格をしており、
会社でも無表情をしていることが多く、公に出来るような趣味を持っていない。
そんな男にある楽しみが一つあった
それは、「少女観察」である。
自分の好みやかわいらしく純粋無垢そうな子を見つけると、妄想を膨らませ楽しむ遊びだ
4月のぽかぽかした天気の中、彼は電車に乗ると、混雑した電車の中で癒しを捜し求めた
「おや、あの子は始めてみるな」
かわいらしい制服に包んだおとなしそうな子が、少々顔を赤くしながら掴むところを目で探していた
おそらく寿司積め状態の電車は初めてなのだろう。
髪を触りながらおどおどしている姿は、一種の悲惨さにも感じられるが
小さな身長とくりくりと大きな目を動かしている姿は小動物を想起させ、愛らしくも思われた
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神山はその少女を見ると想像力を働かせた。
「なんと愛らしいのだろう・・・おそらく彼女はこの電車に乗るのは初めてなのだろう」
「新しいの学生生活と初めての混雑・・・とても緊張しているのだろう」
「それも、1ヶ月もすれば慣れるだろう」
「そして、友達と一緒に満員電車の中で味わった苦痛を共感するのだろう・・・」
電車が右に曲がり、大きく揺れても彼の思考は衰えず、覚醒していった
「彼女は休日何をしているだろう」
「読書をして、現実では味わうことが出来ない空想を楽しむのだろうか」
「それとも、詩を読み 言葉を心で満たし普段の生活に、新しい風を吹き込むのだろうか」
「もしくは、友人と出かけ 服屋で少し背伸びをして高めの服を買ってみたり
一緒に映画を見て楽しいひと時を過ごすのだろうか・・・」
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「○○、○○です」
「あっ、」男はつい呟いた
かわいらしい少女は○○駅で降りてしまったのだ
少々、残念な顔をしながら男は次の癒しを捜し求めた
いつの間に入ってきたのだろうか
日に焼けた活発そうな少女が顔をハンカチで拭きながら「フゥ…フゥ」と息を上げていた
神山は新しい癒しを見つけた
「学校に遅刻しそうになったから走ってきたのだろう」
「顔中、いや体中汗まみれだろう、今は電車に乗れた安心感や走ってきたから
感情が高ぶっていることもあり平気な顔をしているが」
「感情が収まり、冷静になると汗まみれなことに気がつくだろう」
「そしたらどんな表情をするだろう 汗の臭いがしないか嫌悪感を示すだろう」
彼の心も高ぶっていった
「先ほどの子とは正反対の性格をしているかもしれない」
「おそらく休みは、部活をして過ごしているだろう」
「部活は・・・」
「次は×× ××です」
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××は男の降りる駅であった。 活発そうな少女は降りる気配もなく男は渋々電車を降りた
電車を降りた後の男の気分は最悪だった
まるで、世界が滅亡するような暗い表情のまま歩いた
赤信号に捉まり、青になるのを待っているとき 彼は再び活気を取り戻した
なんと、初めに会った少女に出会ったのだ。
彼は砂漠で見つけたオアシスのように心が明るくなり、趣味を楽しんだ
「一体、どうしてここに?」「降りる場所を間違えたのだろうか?」
「私が他の子に気持ちが移っている間に乗ってきたのだろうか」
彼にとって、真実よりも想像を膨らませることのほうが重要であった。
信号が青に変わるも彼はその場に立ち尽くし、少女を見つめていた。
彼が再び意識を取り戻したのは、少女のスカートのポケットから手帳を落としたときであった
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彼は急いで少女の手帳を拾うと、踵を返し少女に話しかけた
「もし・・・」彼の声は小さく少女の耳に入らなかった。
「お譲さん」と少し大きめな声を出すと、体をピクンとさせながら少女が振り向いた。
「手帳を・・・」というと少女は顔を明るくさせながら
「あ! すみません!! ありがとうございます!!」と大きめな声で笑顔を振りまきながら
手帳を受け取ると、歩いていった
彼の頭の中には「勝利」という言葉で埋め尽くされた。
「私が・・・勝利・・・? そうか、これで少女に顔を覚えてもらえた」
「私と一緒の電車に乗ったとき、すれ違うときに、手帳を拾ってくれたおじさんだ と
思い出してくれる」
「私のようなものの顔が、あのかわいらしい少女の頭脳の片隅に埋まってくれるのだ
これを勝利と言わずなんと呼ぶ!」
神山は誇らしい表情になった
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「神山さん、今日何か良いことでもあったんですか?」
男が声をかけてきた
「いえ、普段どおりですよ」というと編集者と打ち合わせをするため、待合室に向かった
「絶対今日、何か良いことあったぜー・・・きっと」
「えー、そうっすかね?」と男二人が缶コーヒーを飲みながら休み時間を過ごしていた
「確かに神山さんの隣だし分かるものなんっすか?」
「いや、全然 多分だけど女関係だなありゃ」
「えー、神山さんモテるかなー・・・風俗でモテたっていうのはノーカンですよ」
「おいおい お前、この業界入って何年目だよ 神山さんの実績知らないの?」
「え、何かやったんすか?」
「お前、モグリかよ! 神山さんといえばベストセラーにもなった小説バンバン出してるじゃねえか」
「あ! もしかして・・・」
「そう! 小山 幸一 といえばあの神山大先生だぜ!!」
「へー・・・でも実名で出せば良いじゃないですか?」
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「お前、アホか 少女に対する恋愛小説なんて実名で出したら親泣くだろ」
「そういう内容だったんですか?」
「お前、俺が社長だったら首にしてるわ・・・」
「すんません、勉強しなおします」
一方、待合室では編集者からのおべっかを聞き流し、妄想にふける神山がいた
「・・・先生? 聞いてます?」
「へ、あぁ失礼しました 次の作品を考えていたもので」
「おぉ! もう次の作品ですか!! 流石ですねー!!」
「ははは・・・」
くだらない時間を過ごした後、家に帰ると食事をとり就寝時間までの間作品の構想を練り続けた
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神山は夢を見た
これまでの人生の中、出会った少女たちの顔や妄想の内容が次々と頭に浮かんでは消えていき
最後に残ったのは、手帳を拾ったあのかわいらしい子だった。
今まで、彼女よりも可愛らしく純粋な少女たちを脳裏に焼き付けてきた
しかし、思い出そうにもあの子の姿が頭の中にちらついていた
その夜、神山は寝ることが出来ず
編集者がもう少し案を練りたいと言い出したため、電車に乗った
「今日はいないのか・・・」落胆しながら電車に乗り
駅に着くと、おさげが可愛らしい中学生くらいの少女が乗ってきた
神山は癒しを求め妄想を膨らますも、あの少女の顔が思い出される
「駄目だ・・・」おどおどした姿や、明るい笑顔、見たことがないはずの
小動物のように怯えた表情、「えっへん」と言いたげな誇らしい表情、静かに嗚咽をもらしながら
両手で目に溢れる涙を拭おうとする表情・・・
神山の意識は彼女に支配された
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「・・・せんせー、小山大先生?」
いつの間にいたのだろう。意識を取り戻すといつもの席に座っていた
「顔色悪いですよ? 大丈夫ですか?」
「申し訳ない、昨日一睡もしていなくて」
「そうだったんですか・・・ もう夕方ですし、帰ります?」
「すみませんが、そうさせて貰って良いですか」
「はい、次の話し合いは3日後でよろしいでしょうか?」
「何から何まですみません」
「いえいえ、先生にはお世話になっていますし 体調管理が一番ですから!」
そうやり取りをすると、神山は帰路についた
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中の信号で引っかかり、青を待っていると
「あ・・・」 神山の目が大きく見開かれた 向こう側にあの手帳の少女がいるのだ
今まで支配していたどの表情よりも愛らしく、美しい
そしてこちらを見て微笑んでいるように見えた。 神山は救われた気分になった。
「やはり私をおぼえていたんだ。君は女神・・・いや心を捉えて逃がさない小悪魔かもしれない」
「これが罠だとしても、良い もう一度、近くで顔を見せてくれ 私の中にいる君の
まやかしを照らして消し去ってくれ」
「危ない!!」 誰かが叫んだ
神山は救いを求めるうちにいつの間にか道路に飛び出していた
神山はこれまでない笑顔を少女に向け「お幸せn・・・」
大型トラックが神山の身体と接触した
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夕方のある道路、飛び出してきた男性が大型トラックに轢かれる事故が起こった。
誰かが通報したのだろう。警察と救急車がすぐに現場に到着し、押し寄せる野次馬の制御や
事情聴取を行っていた。
その中で、顔を真っ青にしながら顔を両手で覆い、体を震わせながら嗚咽を漏らしている少女がいた
女性警察官がなだめながら、落ち着かせようとした
「大丈夫? 怖かったよね」と優しく声をかけながら少女の近くにいた
嗚咽を漏らしながら少女は言った「わたし・・・怖い・・・」
「そうだね、怖いよね いきなり人が死んじゃったんだもの」
「違います・・・」 「え? 何が?」警察官が驚きながら聞いた
「轢かれた人・・・私の顔を見ながら、歩いてきてそれで笑いながら轢かれたんです・・・」
「初めて会った人なのに笑いかけられて、それで轢かれて・・・私、怖いです」
終わり
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表現が一人歩きしてる気がします
もっと飾らない言葉で書いた方がいいと思います
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