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【艦これSS】本日天気湿潤ナレドモ波低シ
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※鈴谷スレの設定を基にした短編です
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雨が、特別嫌いという訳ではない。
だが梅雨となれば話は別だ。
身体はベタつくし、装備のメンテナンスも大変、自慢の髪もグシャグシャ。
そして何より……
長い雨は、まるで水の中に沈んでしまっているかのように錯覚する。
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「ずいぶん抜け毛が増えてきたねぇ」
膝の上に抱えた子猫に語りかけながら、ブラッシングをしてやる。
動物というのは、季節の変わり目になるとそれに合わせて毛が生え変わるらしい。
ヒトが服を着替えるのと同じだ。
もっとも、私達も着替えなどといったものを知ったのは、こんな姿 -艦娘- になってからなのだが。
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「は〜ぁ、退屈ゥ〜」
「なんだ、出撃したいのか?俺達が暇なのは良いことだぞ?」
天候の悪い日は、フネというものは活動し辛いものだ。
そしてそれは奴等 -深海棲艦- も同じようだった。
最近は小規模な偵察艦隊がウロつくだけで、海自護衛艦の警備だけで充分対応できている。
いわゆる、束の間の平和というやつだ。
「そうじゃなくってぇ……ほら、どっか出かけたりとかさぁ、ね?」
甘えような声で提案する私に、クイクイと無言で窓のカーテンを指差す提督。
普段の騒がしさが嘘のように、雨の音だけが静かに響いている。
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もう始まってる!
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「もー、せっかくの休みなのにデートにも行けないなんて……。
これならドックで艤装磨いてる方がまだマシだね!」
「そう言うな。たまにはゆっくり読書なんてのもいいもんだぞ?
それに、艦隊旗艦ともあろう鈴谷様がそんな落ち着きの無いようでは、部下に示しがつきませんなぁ」
そう言って珈琲を口に運ぶ。
まるで自分は落ち着きがあるかのようなその振る舞い、非常に腹立たしい。
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「ほらベル、行けっ」
玩具のネズミを提督めがけて投げつけた。
膝の上の毛玉がそれを追って飛び出す。
「うおっ!?あっぶねぇ!!」
「あっははははは!!」
飛びかかられ、珈琲をこぼしかけた提督がこちらを睨む。
「きゃ〜目がこわ〜い。助けて〜〜ベル〜〜」
「残念だったなぁ。ベルはすでにこちらの軍勢に下った!」
提督がベルを抱えあげ、そのままタオルのように
ごしごしと私の服に擦り付けてくる。
「ちょっと!可哀想でしょ……あーっ!毛が!服が!」
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一瞬にして全身が毛だるまになってしまった。
自室での洗濯は私が担当だというのに、なんてことをしてくれたのだ。
「最低〜っ!バカ!禿げちゃえ!」
「ちょ、禿げろはないだろ!お前自分の旦那が禿げててもいいのか!?」
「知らな〜い。いっつも帽子被ってるから判らないし、時間の問題じゃない?」
「お、お前人が気にしてることを……」
激昂した提督といつの間にか取っ組み合いの喧嘩に……
ってちょっと待て。
ドサクサに紛れてどこを触ってるんだ、こいつは。
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「ちょと、あんっ!ナニしてんのよー!!」
「グフフゥ、基地司令に歯向かうような部下にはお仕置きが必要だ」
「やっ、そこは……っ!」
「提督、お休みのところ失礼致します。早急に確認して頂きたい事……が……?」
硬直。
今の状況は……
うん、どう見ても乳繰りあっていたようにしか見えない。
「お、お楽しみ中でしたか。申し訳ありません、ノックもなしに……
そ、それでは私はこれで」
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ナニしてるんですかねえ・・・
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引きつった笑顔で踵を返す神通。
「「待って!」」
「ですが、お邪魔しては……」
「「違うから!!」」
慌てて引き留め、話を聞く。
どうやらレーダーに複数の敵影を捉えたらしい。
やれやれ、やはりあちらさんはこちらの都合などお構いなしのようだ。
「出撃の必要があるかも知れませんが……その、よろしいのですか?」
「まぁ出来れば続きをしたかったが痛ェ!?」
「馬鹿なこと言ってないで、ほら行くよ」
服装を整える。
いつの間にか雨は上がり、無遠慮な日差しが照りつけていた。
さてさて、それでは作戦室に突撃いたしましょう。
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以上です。
鈴谷スレだと鈴谷の語りのみでの進行だったので、たまにはこんなのも良いかなと思いました(KONMAI)
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おつかれぴょん!
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