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【短編】首の曲がった男
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私はひどく困っていた。
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端的に言うと、私は精神を病んでいた。
なぜ病んでいるのか、と他人に問われると答えに困窮してしまう。
私は恐らく、物心ついた時から病んでいたのだ。
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生まれた家が悪かった。
私は由緒正しき家の長男として生まれた。
裕福であったし、何も知らない人間は私を羨んだであろう。
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しかし、私の苦しみはそこにあったのだ。
生まれつき鈍かった私は、知恵遅れではないのかと囁かれながら育った。
あの家のお坊ちゃんが、などという周りの冷笑に傷付きながら育った。
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そのような中で少年が感受性を失うのは無理もないことではないのか。
冷笑と無感動、それが私の幼少時代に得たものであった。
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偶に投稿される尊師ショートストーリーすこ
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これはいけない。
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入った学校も悪かった。
私は父のコネで名門私立中学に入学した。
そこで受けた虐めは凄惨なものであった。
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政治家の息子だとかがゴロゴロいる学校であったが、そういったのは大抵意地の悪い奴ばかりであった。
そんな学校にいて鈍いと来れば、私が目を付けられたのは仕方のないことだったのであろう。
とにかく、私は幾度となく辱めを受けたのである。
この頃には、既に私は人間として壊れていたのではないだろうか。
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また、家族についても私は悩み苦しんでいた。
家族とは、本来無償の愛によって繋がっている存在なのであろうが、私には愛などという高貴なものに接する機会は無かった。
私はいつでも無償の愛に飢えていた。
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金と地位を与えることを愛と信じて疑わない父。
私よりも優れた弟。
早すぎた母の死。
これらは私を歪めるのには十分であった。
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さて、私が困っていたというのは、私が精神を病んでしまったということではない(なぜなら、それは昔からのことなのだから)。
ある時から、私の視界が直角に歪むようになったのである。
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これはいけない。
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どうやら、私が激昂すると私の視界は九十度歪むようになってしまったらしい。
幼いころより私は無感動であったので、私が激昂するなどということはこれまで殆ど無かったのである。
そんな私が荒れるようになったのは、ある仕事での失敗がきっかけであった。
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私は弁護士であった(弁護士といっても父のコネでなったのであり、結局父の敷いたレールに乗ったに過ぎない)。
その日の依頼人は高校生であった。
その少年はあるトラブルを起こしたと言い、そしてそれを私に解決しろなどと言ってきた。
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話を聞けば聞くほどそのトラブルは少年の自業自得のようであり、私は呆れ果ててしまった。
その時私は半ば少年に説教をする形で、彼を追い返してしまった。
彼は去り際、私に「無能」「ぼったくり」などといった罵詈雑言を浴びせた(無論私は金など受け取っていないし、ぼったくりなどと言われる筋合いは無かった)。
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>>1さんにお会いしたいですを。
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私が最後にその少年を見たのは、その翌日のことであった。
私の事務所はビルの四階にあるのだが、そこから通りを眺めると昨日の少年が友人と思しき若者数人を引き連れてこちらを指差していた。
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その日からである。
見知らぬ男たちが毎日、入れ替わり立ち代わり私の事務所の前に現れるようになった。
事務所の前でカメラを構える輩も現れ始めた。
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また、私の事務所の悪評が瞬く間に広がっているようであった。
一体どうやったのかは知りたくもないが、あの時の少年が仕組んだことであるのは明白であった。
私に対する逆恨みだったのであろう。
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私はやがて耐え難いほどの恐怖を感じるようになっていた。
突然気分が昂ぶり、夜中に何度も目が覚めるようになった。
護身用のナイフを持つようになった。
そして、私の視界が歪んだ。
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初めて私の視界が歪んだのは、事務所に向けてカメラを構えている男を窓から発見したときであった。
何度も繰り返される異常な行為に、私は疲れ切り、そして憤っていた。
そして突然、私の視界が直角に歪んだ。
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次に気が付いた時には、事務所の中が滅茶苦茶になっていた。
書類は舞い、机はなぎ倒され、そしてソファーはナイフでめった刺しになっていた。
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首の曲がったキリン?
http://i.imgur.com/BE7veCm.jpg
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こういったことが何度も起きるようになっていた。
私は私に恐怖を覚えていた。
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これはいけない
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ある晩のことであった。
私は仕事で外に出ていて、事務所に帰って来るところであった。
事務所の前まで辿り着くと、そこにはまた事務所に向けてシャッターを切る男の姿があった。
私の視界が直角に歪んだ。
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私の脳は驚くほどほど冴えていた。
男を殺す、そのための指令を私の体に駆け巡らせた。
私はそれに従うことにした。
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男は恐怖を覚え後ずさりながらも、私に向けてフラッシュを焚いた。
男のその滑稽な行動に、私はなぜか快感を覚えてしまった。
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脳は私の体に無駄な動きを与えなかった。
私は、男の首をナイフで切り落とした。
いとも容易だったので、その男の首を切る行為に何の感慨も湧かなかった。
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私は血溜まりからカメラを拾い上げ、この男が最期に撮った写真はどのようなものであったのか見てみることにした。
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スレタイで察した通りの内容とは恐れ入った
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写真を見て、私は嬉しくなってしまった。
やっと疑問が解けたのだ。
私の視界が歪むのは、精神作用によるものでも、ましてや私を取り囲む世界が歪むことによるものでもなかったのだ。
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そこには首の曲がった男が写っていた。
そう、私だ。
私の首は、この世に存在するどんな直角よりも、概念上存在するどんな直角よりも、美しく直角に曲がっていた。
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この曲がった首は、さっきの男よりも切り落とすのは難しそうだな、そんなことをふと思いついた。
早速、私は私の首にナイフをかけた。
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この世は不確かなことで溢れている。
それでも、私が私の首を切り落とした時、私が肉体から、そして優しさを失った世界から解放されたことは確かであった。
〜終了〜
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投下は以上になります。
ありがとナス!
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よし、無事終わったな!
インテル長友も疲れたでしょ、体力勝負やしな
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ちょっと長友サイドから上がってくるの早すぎんよ〜
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(お、SSか?)と思って開いたら某弁護士ネタだったら…まぁ、多少はね?
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はぇ^〜…すっごい…
これがノンフィクションだというのはガチなのですか?
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結局何故首が曲がるのかは分からないままっていうのが何か含みがあってイイネ・
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唇の曲がった男パロディだと思ったので平易なわりに示唆的でよくわかりませんでした
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これ面白いですね!
何か原作みたいなものはあるのですか?
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