この言葉にハルは反応した！
重度のコクトウ中毒に陥り、ズンビーのようにどろどろに脳が溶けたハルが反応したのだ！
それほどまでにアイサツはジャンシの基本なのだ！
おお、ブッダ！ついにハルが意識を取り戻し、アイサツを口にしたその時！ミホコはホウチョウ・ブレードでアンブッシュを仕掛けた！なんたるヒレツ！
「アバー…♪」「なっ…！？」
しかし、ハルは動きを止めることなくミホコに迫る！彼女は痛みを感じていないのか？違う、彼女は愉悦を感じている！
コクトウがもたらす強烈な多幸感作用は、ハルの交感神経を狂わせ痛みですら喜びに変えてしまう！
「…気持ちいいのならもっと喜ばせてあげましょう！」
ミホコはホウチョウ・ブレードを逆手に持ち、ハルの顔を切り裂こうとする！
ハルは顔を切り裂かれ、耳を落とされ、目を潰されても全く意に介さない！コワイ！
だがなおもミホコはホウチョウ・ブレードを振りかざす！だが！
「アバー…モットイタクシテ…」
おお見よ！ハルの顔の傷がみるみると塞がっていく！目は再び輝きを灯し、切り落とされた耳も肉芽が生え、元に戻ろうとしているではないか！
それはイタミ・ジツ！痛みを己の糧とし、痛めつけられれば痛めつけられるほどに強くなる！
「アバー…♪アーイイー…モット、モット…！」
ハルは歓喜の血の涙を流し、子供のように微笑んだ。
「ンアーッ！」
ハルに首をつかまれたミホコはもがくも、ハルの腕はびくともしない！
ハルは右手でミホコの首をつかまえながら、左手でミホコの顔を殴り付ける！「アバー…」「ンアーッ！」「アバー…」「ンアーッ！」「アバー…」「ンアーッ！」「アバー…」「ンアーッ！」
これはハルのユニークジツであるコクトウ・ジツだ！
コクトウ・ジツは手に触れたものをコクトウに変えるおぞましきジツ！しかも変えたコクトウは美味しくいただけるまさにアブハチトラズなジツなのだ！
そしてハルはコクトウに溺れ、正気を失いコクトウ・ジツも失ってしまった。
だが今は違う！イタミ・ジツによる驚異の回復力でハルのどろどろに溶けたニューロンは再び躍動し、ハルは正気を取り戻し、コクトウ・ジツを使えるようになったのだ！
ナムサン！コクトウになりつつあるミホコを食べんとハルは大口をあけ、ミホコの顔に迫る！
「ザッ、ザッケンナコラー！」
ミホコはヤバカバレとなり、ハルの頭にホウチョウ・ブレードを突き立てる！
頭をかき混ぜられたハルはイタミ・ジツを発動！だが！
「アバー…？アバー…？ナオラナイ…？ナオッタ…ナオラナイ…？アバー…？」
「アバー…ホウチョウジャマ…トラナキャ…」
ハルがホウチョウ・ブレードを取り除こうとミホコの首から手を離したその時！
ゴウランガ！ミホコはこの隙を見逃さなかった！ハルの手を掴み裂けた頭に突っ込んだ！
「アバーッ！アバーッ！アバーッ！アバーッ！アバーッ！アバーッ！」
ハルの肉体が意識が自らのコクトウ・ジツによりコクトウと化す！
しかし、イタミ・ジツは己の与えた痛みでは発動しない！集中力を欠いたコクトウ・ジツは最早制御不能！
恐るべきスピードでハルはコクトウと化していく！
「アバー…アバー…アバー…アバー…アバー…アバー………………アマーイ…アーイイー…アババー…アマーイ…アババー…」
コクトウと化した自らの肉体の甘味をハルは感じていた。
恍惚の甘味に溺れるハルをミホコはじっと見つめていた。最早カイシャクの必要もない。ミホコは半分コクトウになったホウチョウ・ブレードを拾い上げ、ふらふらと幽鬼のごとく去っていった。
そして、それから数分して「サヨ…ナ…………」爆発四散することもなくハルはコクトウのオブジェとなってしまったのだった。
欺瞞！