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春香「千の風になってっていい詩だね、千早ちゃん」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:15:13 vu0ZcGZ2
【注】調子に乗って書き溜めてたので長文注意です、すんません・・・

春香「いわさきちひろ挿絵の絵本『千の風になって・ちひろの空』も好評らしいけど。
同じ風になるのでも、千早ちゃんの『arcadia』とは真逆の方向性だよね、歌詞の内容は似てるのに
しかし、ちひろの空って・・・千の課税にのって大空に吹き散らされていく重課金Pの万札と髪のイメージしか沸かないよってこれ、
千川ちひろの空恐ろしい策略じゃなくて、『千の丘の国』※ことルワンダ共和国のキガリ国際空港だった!」

(※アフリカ中央部に位置する、四国よりも大きく九州よりも小さな、内陸の小国
赤道地帯ながらも全体的に標高が高く、温暖で過ごしやすい気候で居住に適しているために人口密度が高い
人口の8割以上をフツ族が、2割未満をツチ族が占めるが、19世紀に進出したドイツとベルギーは、
ツチ族が優生学的に優れていると断じ、その傀儡王政を利用した植民地支配を行った
1960年にツチ族王家の内紛に乗じてフツ族が決起、反体制派のツチ族とともに革命で王政を打倒、
1962年に選挙で選ばれたフツ族のカイバンダ大統領をリーダーに独立が実現したが、
王党派を中心に数十万のツチ族が隣国のウガンダ、ブルンジに難民として流出した
地形的に丘陵が多いために千の丘の国と呼ばれており、そのフランス語読み『ミル・コリン』が、
『ホテル・ルワンダ』の舞台となったミルコリンホテル、ツチ族大虐殺を煽ったミルコリン自由ラジオの名称元である
※ルワンダの位置→https://www.google.co.jp/maps/@-1.3698635,28.474188,5z?hl=ja
ルワンダの地図→http://www.anzen.mofa.go.jp/attached2_master/2012T067_1.gif

【1965年2月6日 ルワンダ共和国キガリ国際空港】

春香「・・・や、やっと着いた・・・
アフリカの最僻地で陸の孤島、旧宗主国ベルギーにすら半ば見捨てられてる世界最貧国の一つとは聞いてたけど、
首都の国際空港なのに、滑走路は舗装されてないし空港ビルどころか掘っ建て小屋がチラホラあるだけとか・・・
な、なんか、戦時中にいたラバウルの飛行場を思い出すけど、あっちの方がまだ華やかだったような・・・」
ハビャリマナ「・・・服部サン!待ってたヨ、ルワンダ中央銀行新総裁の服部正也※サン!」
春香「あ、ども、すいませんね、大統領の甥で、政府高官自らお出迎えしてもらって・・・
(政府高官なら、ワイシャツくらい裾の擦り切れてないの着ようよって、そんだけ貧乏な国なのかぁ・・・)」
ハビ「じゃ、ワタシの車で中央銀行まで案内するからネ、ほい、はやく乗って!」
春香「は、はぁ・・・(高官自らポンコツ自家用車で運転して送迎って、どうなんだろ)」

(※服部正也。1918年四日市生まれ。幼少期をロンドン・上海で過ごしたため極めて英語に堪能
東京帝大法学部卒業後、海軍兵科予備学生課程を経て、戦時中は暗号解読に従事する海軍将校としてラバウルで終戦を迎える
抜群の英語力と交渉能力を買われて、ラバウル戦犯裁判所特別弁護人にも選任された
復員後は日本銀行に入行、外国局渉外課長としての辣腕を国際通貨基金IMFに評価され、
1965年、独立間もなく財政破綻寸前のルワンダに中央銀行総裁として派遣されることになった・・・)


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:15:53 vu0ZcGZ2
春香「・・・しかし首都って言っても、藁葺き屋根の平屋がちょっと密集してるだけで、何にもないんだね、ハビさん
道路もほとんど泥道だし、市場や商店も全然見かけないなぁ・・・」
ハビ「首都って言っても人口1万人もいないからね。300万人のルワンダ人のほとんどは農村に住んでるヨ!
・・・あっ、あの建物、あれがルワンダ唯一の民間の銀行、ベルギー資本のルワンダ商業銀行ネ!」
春香「うわぁ、こういうの、コロニアル様式っていうのかな、オシャレで綺麗だなぁ!
民間の銀行でこの綺麗さなら、国立の中央銀行は、すごい期待できそうですよ!
・・・あれ、小汚いバラックが密集してる地域に入ったなぁ、ここ労働者街なの、ハビさん?」
ハビ「ん?違うよ、官庁街だよ!あれが国防省で、あっちが農林省で・・・ほい、中央銀行に着いたヨ、春香サン!」
春香「えっ、何これは・・・(困惑)
このボロっちい建物、なんか表の壁に『〜薬局』ってペンキで書いてあるんだけど!?」
ハビ「ああ、ここ元々薬局だったからネ!ベルギー人たち外国人の所有してる建物以外では、かなり良い物件ヨ!よかったね、春香サン!」

和久井留美「初めまして、今回ベルギー中央銀行から出向してきた和久井留美よ
アフリカでの経験も豊富だし、君の補佐役として色々役に立てると思うわよ?」
春香「あ、よろしくお願いします!留美さんも出向組なんですね!
・・・ええと、ちょっと質問していいですかね?
この銀行、毎日の帳簿すら間違いだらけな上に遅れがちなのは、いくら何でも酷過ぎじゃないですかね?
お陰でここ数日、中央銀行総裁の春香さんが自ら帳簿つけてるんですけど・・・」
留美「それはそうでしょうね
なにせ行員の大半は、本国でも他の植民地でも役立たずで、僻地に『顧問』名目で島流しされてるベルギー人の底辺の連中だし
まぁ、私みたいな根っからの仕事好きの人間でもなければ、進んでこんな陸の孤島には来ないでしょうね
そして肝心の技術を教えるはずの顧問がそれだから、ハビさんがかき集めてきた、
教育も経験もゼロのルアンダ人の新人行員たちも、仕事を真面目にするはずも、出来るはずもないってわけ」
春香「・・・それで、無断欠勤やら遅刻早退やらが毎日大量にいるんですね、中央銀行なのに・・・」


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:16:25 vu0ZcGZ2
春香「えっとそれから、独立以来、唯一の外貨獲得産物コーヒーの生産高が減少する一方だし、外貨準備高が少ないのは判ってましたけど、
それにしても、いくらなんでも外貨少なすぎるでしょ!
コーヒーの出荷と輸出代金の回金まであと何ヶ月もあるのに、底付きかけてるし・・・」
留美「ええと、君も知ってのとおり、この国の通貨ルワンダフランは、二重相場制・・・
つまり、国務関係の経費およびコーヒーや食料など重要品目のみ1ドル=50フランの公定の固定相場と、
それ以外の貿易品目等に関しての大体1ドル=100フランの半変動相場の二つの通貨相場制度を採用しているわけだけど」
春香「それが実体経済に伴わない不公平な相場すぎるから、IMF加盟と大規模資金援助の条件として、廃止と実態に合う通貨制度への変革を行う、
その技術援助のために春香さんが派遣されてきたわけですからね」

留美「そして、その二重相場制度を活用して、利権を得ているのが大量の外国人顧問や外国商社な訳
まず、各省庁などに大量にいて発言力の大きいベルギー人顧問たちの高額の給与だけれど、
仮に3万フランだとすると、ここから所得税15%4千5百フラン払ったとしても、
4割まで限度額で公定相場で1万2千フランを本国に送金し、即座に自由相場でルワンダに送金し直せば2万4千フラン」
春香「二倍になって返ってくる、倍返しだ!!・・・じゃなかった、つまり、合計で3万7千5百フラン・・・
ずっこい、完全に脱税、いや詐欺じゃないですか!」
留美「その手口をさらに大規模に実現しているのが、この国の貿易を独占している外国人商社ね
ルワンダ当局の無能っぷりと顧問のお友達の力を借りて、公定相場での輸出は過小申告、輸入は過大申告。
差額分は自由相場で送金する場合もあるけど、まあ、大体は本国の口座にストックしちゃってるみたいね」
春香「つ、つまり、入ってくるはずの外貨すら不当に減少したり、逆に不当に流出したりしていると・・・」
留美「そもそも、限られた公定相場での外貨の配分をしているのも財務省のベルギー人顧問
自由相場の外貨を独占して、自分たちに都合よく相場を動かして儲けているのも、国内唯一のベルギー系銀行
まぁ、ここまでやりたい放題なのも珍しいけれど、アフリカじゃあよくある事よ」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:16:57 vu0ZcGZ2
春香「・・・なるほど、じゃあこの無茶苦茶な赤字財政と無秩序な赤字国債のそびえ立つ糞の山も・・・」
留美「当然、財務省のベルギー人顧問たちのズサンでいい加減な仕事の成果ね」
春香「でも、政権を握っているルアンダ人たち、植民地時代に優遇され教育レベルの高い少数派のツチ族はもちろん、
革命で王制を打倒した多数派のフツ族の政治家たちも海外で高等教育受けた人たちでしょ?
何で誰もおかしいって文句つけないんですか?」
留美「無能な怠け者だから、って他の白人たちなら答えるんでしょうね」
春香「・・・私はあいにく、白人でもルワンダ人でもないですからね、直接彼らと話してみて、それから判断します!」

(※この二重相場制度、実は幕末の日本でも一時採用されており、同じような手口で荒稼ぎした外交官たちの例がある)


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:17:24 vu0ZcGZ2
春香「・・・という訳で、早速ハビさんの車で、絶賛無断欠勤中の行員の響の家に来てみましたよ!
てか、なんで中央銀行の行員が仕事サボって家で畑耕してんの!?
農繁期だからって理由で欠勤する日銀マン、見たことないよ!?」
ルワンダ響「いや、だって銀行いたって仕事ないんだもの、しょうがないじゃん!白人の旦那方だって何にも仕事してないしさ!
それに行員の給料だけじゃ少なすぎて、正直食べていけないんだぞ!」
ハビ「うん、そうかもネ。
大臣級のボクでさえ、外人顧問の半分くらい、1万数千フランしか給料貰ってないもの
ボクもカイバンダ大統領の奥さんも、休日は実家の畑仕事してるよ?」
響「それに外貨不足とか輸入規制とか理由つけて、白人やインド人商人がどんどん物価釣り上げててるんだもん
コーヒー作ったって服も農具も買えないし、それならコーヒーじゃなくて自分たちの食べる分作るしかないんだぞ!」
春香「あ、なるほど、ルワンダのコーヒー生産量が独立後に激減した理由は、ルワンダ人が怠け者だからじゃなくて・・・!」
響「当たり前だぞ!白人の旦那様ならともかく、こんな貧乏な国で怠け者が生きていけるわけないじゃん!」
春香「いや、ごめん、良くわかったよ、ありがとうね響!
でも、一気に銀行の人事刷新と綱紀粛正をやって、外国から本当に優秀な顧問をヘッドハントして、
ちゃんと指導も業務もできる体制整えるから、響も出勤してね!」

(※一品目の産物のみを集中栽培させ、それ以外の農産業を未発達のままにして宗主国の産業に依存させる、
いわゆるプランテーション経済は、当然ルワンダでも行われており、極端なコーヒー作付けが行われていた一方で、
本来自国でも栽培できるはずのコメ・砂糖・小麦などの基本的な食糧は、専ら輸入に依存していた)


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:18:06 vu0ZcGZ2
春香「・・・で、次に、ヨーロッパ人以外で貿易・小売流通業で成功しているインド系イスラム教徒のライラさんのお店に来たわけだけど・・・」
ライラ「あー、新しく来られた中央銀行総裁殿でございますですね?わたくしライラと申しますです
今までは白人が儲け放題でございましたですから、今度はわたくし達アジア人が儲ける番でございますです、ヨロシクお願いするでございますですよー!」
春香「いやいや、そういう贔屓はしないからね、わた春香さんは(インド商人は抜け目ないから用心しないと!)
・・・それにしても、響も言ってたけど、品揃えが悪いなぁ、シャツが十枚位と綿布が若干、
あとは缶詰少々、洋酒に鏡って、うわ、この鏡、売り物なのに割れてるじゃん・・・(ドン引き)」

ライラ「それは仕方がないことでございまするなぁ、政府が外貨不足だとかで輸入をとってもとっても規制いたしてますですから!
その上、財務省の白人さんたちは、限られた外貨を白人商社に優先して割り振っておりますです
・・・でも、わたくし知ってますですよ?本当は外貨の割り振りとか、中央銀行殿のお役目でしょう?」
春香「確かに外貨管理は、一般常識でもルワンダの法律でも中央銀行の専権なのに、財務省顧問たちは無茶苦茶だと思う!
・・・あ、もちろん私が総裁になった以上、そんな無茶はこれ以上許さないし、外貨割り当ても公平にするけど、
かといって、あなたたちインド人有利な割り当てにするとか、そんなことはしないからね!?」

ライラ「それはもう、十分承知いたしておりますですよ・・・?
それと新総裁殿は、通貨を経済の実態にあった平価に切り下げに来たでございますですよね?」
春香「まぁ、それがIMF加盟と大規模外貨支援の条件だからね」
ライラ「ふむふむ、では通貨引き下げと統一、外貨支援があれば、ルワンダの貿易も自由化されるでございますですな?」
春香「・・・うん、将来的な経済再建と安定化の見通しが立ち、外貨準備が十分になれば、基本的に自由貿易認める方向になるはずだよ
・・・あ、もちろん、物価高騰を避けるための物価統制もありえるから、便乗値上げとか狙っても無駄だからね!?」
ライラ「もちろんでございますです!ただ、いつ引き下げが実施されるか、決まりましたらすぐに教えて欲しいです!
・・・ヨーロッパ人たちは、商品の種類も量も少ないほうが管理も楽だし高値で吹っ掛けられて良い、
あとは輸入で過大申告して差額をたくさん儲ける、それくらいしか考えてこなかった連中でございますですから・・・
公平な価格でも、誰よりも速く大量に商品を自由化と同時に持ち込めば、白人たちをギャフンと言わせるくらい大儲けできますです、フフフ・・・」

(※19世紀以降、イギリスの植民地となったインドからの移民が英領東アフリカに多数流れ込んだ
当初は単純労働者であった彼らは、やがて東南アジアにおける華僑と同じように、アフリカ各地での商工業の担い手に成長した)


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:18:42 vu0ZcGZ2
春香「インド商人は、商魂たくましいなぁ・・・
でも、お陰で自由貿易始まったのに商品が市場になくて、通貨の信用が大暴落って事態は防げそうだけど
そういえば商社ってヨーロッパ人かインド人しか見かけないけど、ルワンダ人商人っていないの?」
ハビ「ほとんどいないヨ!ルワンダ人、ほとんど農村に住んでるけど、そこ回って商売するトラックすら買えないからね、でも・・・」
春香「でも?そういえば、貿易規制かかってるはずの岩塩がハビさんの車にいっぱい積んであったけど・・・」
ハビ「うん、牛にやるための岩塩は・・・実は密輸品ネ
外国商人の持ち込まない商品は、ルワンダ人が小規模だけど隣のウガンダやブルンジから背負って密輸しているんだヨ」
春香「んむむ・・・密輸ってのは言葉悪いけど、ルワンダ人にもちゃんと商才はあるってことだよね
密輸じゃなくて、おおっぴらに少額の国境貿易と外貨取引は無許可でも可能にしてあげれば、もっと活性化するんじゃない!?
あとはルワンダ人にも融資してくれる民間金融があって、安価にトラックが供給されて、
流通網がちゃんと整備できれば、ルワンダ人商人も台頭してこれるチャンスがある、かも・・・!?」

(大統領官邸という名の民家)

カイバンダ大統領「・・・ようこそ、新総裁、早速あちこち見て回っているみたいですね・・・」
春香「初めまして、プレジデンテ!(cv.江原正士の声マネ)
(独特のオーラがあるけど、生真面目そうな人だなぁ、服も貧乏臭いし・・・)」
カイバンダ「わざわざお呼びしたのは他でもない、通貨の平価切り下げの件です
私の外国人顧問たちの中には、1ドル=50フランの平価を切り下げれば深刻なインフレになると主張する者も多いのですが、どうお考えか」
春香「とんでもない誤解です、プレジデンテ!
そもそも現在の不公平な二重相場制度は、一部の外国人企業を儲けさせるだけで、ルワンダ経済の諸悪の根源!
実情に見合わない不正直な通貨制度のままでは、やがて世界経済に完全に相手にされなくなりますよ?」
カイバンダ「しかし、平価切り下げをしたとしても、インフレをエスカレートさせて、
結局また何度も切り下げ続けてざるを得なくなり、通貨も経済も破綻する危険はないのだろうか?」
春香「財政の均衡を実現し、現実的な経済成長プランを打ち出せれば、通貨の信用は崩れません!大丈夫です!」


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:19:09 vu0ZcGZ2
カイバンダ「ふーむ、いま財政均衡とおっしゃったが、慢性的な財政赤字のこの国で可能だろうか?」
春香「財政赤字の最大の原因は、何といっても不公平な税制です!
だっておかしいでしょ?貧しい農民たちが税収の8割近くを負担しているのに、富のほとんどを独占してる外国人たちは2割しか負担していない!
しかも所得税はじめほとんどの税率が2割なのに、貧農は所得の4割以上を徴税されているんですよ?
これ、表面上こそ独立国ですけど、経済的には完全に植民地同然の搾取構造ですもん、これを打ち破らないと!」

カイバンダ「・・・確かに私も、ルワンダ人が重税を強いられていると感じていたが、そう言ってくれた外国人はあなたが初めてだ
私も外交資本の支配から独立し、ルワンダの農民たち全ての平等な発展の実現を願っているが、
しかし外国との自由貿易に踏み切ってもそれが可能だろうか?」
春香「問題なしですプレジデンテ!ルワンダは小国ですからね、経済の仕組みも単純明快!
内陸国だから他所の国よりも輸出にコストのかかりすぎるコーヒーの生産は、土地を厳選して質で対抗!
他の土地は、現在輸入に頼っているコメ・小麦・砂糖なんかの栽培に当てるようにすれば、
簡単に国民の食生活が向上し、同時に需要のある作物を作る農民の所得も向上、所得の増えた国民の消費活動も盛んになります
国内市場を発展させて、金融や流通の面は政府で援助してあげれば、ルワンダ商人も国民資本も育ってきて、
やがては外国人との対等な競争が可能になり、自由市場の仕組みがうまく機能するようにも!
とにかく序盤は農業振興して国民の食生活向上させつつ、コーヒーや鉱業で稼いだ外貨を貯めながら社会・経済インフラ整備して工業化に備える!
こういうの、春香さん、TROPICOやり込んだから詳しいんですよ!」

カイバンダ「(トロピコ・・・?)いや、実に良くわかった、外国人顧問たちは難しい経済用語を振り回して私を煙に巻いていただけのようだ
よし、私は決断した。あなたに経済再建計画に関する全権を委任する、宜しくお願いします」
春香「素晴らしいご決断です、プレジデンテ・・・って、ほ、ほ、ホントに全権委任ですか!?」
カイバンダ「私が決めたことだ、誰にも口ははさませないから存分にやって下さい」
春香「すばらっ!!捨て駒・・・じゃなかった、経済再建、任されましたァ!(ババァ声)」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:19:39 vu0ZcGZ2
【1966年2月 ニューヨーク 国際通貨基金(IMF)アフリカ局会議室】

IMF理事「ええと、ルワンダのIMF加盟と外貨支援の条件は、財政均衡を前提の通貨切り下げ、という話でしたが・・・」
春香「提出した66年度予算案と経済再建計画も見て欲しいんですが、コーヒーの国際市況やルワンダ経済の実情から、
1ドル=100フランの平価で通貨改革する予定です、物価は3割上昇する計算ですが、同時に減税も行うんで、
一般国民の生活に支障はないどころか、貿易自由化で新しい農具などへの消費も増えるかな、と」
IMF理事「いや、農業を振興して堅実に経済成長を目指すという計画は理解できますが・・・
関税とビール等嗜好品の消費税メインでの歳入増は顕著ですが、それでも1億フランの赤字ですね
やはり国民全般への減税ではなく、ここは増税をしてでも財政均衡を実現していただかないと・・・」
ハビ「(ヒソヒソ)1.5倍くらいまでの人頭税増税ならOKって、大統領言ってたヨ?」
春香「大丈夫、奥の手があるから・・・あ、ちょっと一本、電話してきたいんで、留美さん代わりに交渉しててください、んじゃ!」
留美「あ、ちょっと、総裁!・・・コホン、ええと現状赤字でも、再建計画の計算によれば、
農業の効率化と増産を基盤に商業資本も充実し、コーヒー以外の茶や鉱物資源の産出も軌道に乗り、
5年以内には黒字に転化することが確実でございまして、外貨支援への返済の目処も立ち、
また現在の赤字国債に関しましても、民間銀行への強制保有を義務付けるなどの対策を・・・」

(30分後)
春香「・・・あ、皆さん、お待たせして申し訳ナイス!
アメリカ国務省から無償の食糧支援の申し出が急にありまして、それをルワンダ政府が民間に販売することが可能になりました
ええと、概算でも優に1億フラン以上の財源になることが確実ですから、財政均衡は実現されるかと!」
IMF理事「ファッ!?・・・う、うむ、そういうことならば、IMFとしては問題はないですね」
春香「わっほい!」
留美「ちょ、ちょっと君!いったいどんな手を使ったの!?急に1億フランの食糧支援だなんて!」
春香「ん?鉱物資源豊かでアメリカが最重要視しているコンゴ(ザイール)共和国、
ルワンダの西隣のその東部州が白人傭兵部隊の反乱やら、共産主義勢力の増大やらで大混乱なのは知ってますよね?
それでアメリカ国務省さんに教えてあげたんですよ、このままだとルワンダも経済破綻と食糧危機が確実で、
最悪共産革命起きたりしてコンゴ情勢にメチャクチャ影響が出て大変なことになりますよ〜って」
留美「あ、あざとい・・・じゃなくて、あくどい・・・」


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:20:14 vu0ZcGZ2
【1966年4月12日 ルワンダ新通貨制度実施】

春香「土壇場で、12日間も税関と為替取引ストップしたままIMFに許可引き伸ばされてヒヤヒヤしたよ・・・
これ、ルワンダみたいな弱小貧乏国じゃなきゃシャレにならないよ、ホントに!
・・・でも今日から新通貨制度と貿易自由化が開始ですよ!さて、市場はどうなってるかな・・・?」
ライラ「・・・あ、総裁殿!!早速、大量の輸入商品が入ってきたでございますですよ!
白人たちは何も手を打ってなかったですので、わたくしの独占状態でございますです!」
春香「え・・・!?白人商人たちにも通貨改革と平価切り下げ、貿易自由化の方針は、それとなく伝えてたんだけどな・・・(困惑)」
ライラ「ウフフ・・・でも、これから大急ぎで発注かけても間に合わないです!
商品が届く頃には需要もほぼ満たされてますですし、わたくし、容赦なく値下げ競争仕掛けますですから!
お金もたくさんたくさん稼げましたし、偉そうだった白人さん達も大損してざまーみろでございますし!ユカイツーカイです!」
春香「そ、そう、よかったね・・・(こういう抜け目ない連中との自由競争が加速していけば、
ヨーロッパ本国の本社も優秀な社員を送ってくるようになるだろうし、白人商社も経営健全化してくれそうだな・・・)」

ハビ「春香サン!大変ヨ!国境の税関がパンク寸前なくらい、密輸・・・じゃなかったルワンダ人商人が殺到してるって!」
春香「おおお!やっぱ、商機を見て迅速に反応する商才、ルワンダ人にもあるじゃん!
すごいすごい、あとは農民や小売商にも融資してくれる民間銀行や公的金融機関創設したり、
倉庫業やトラック物流網を整備してあげたりすれば、あっという間に外国人企業に肩並べられるところまで成長してくれそう!」
留美「ルワンダ商人から、早速トラック輸入の許可申請も来ているわよ?」
春香「ホントですか!?う〜ん、手頃で丈夫なトラックといったら、やっぱ日本製ですかねぇ・・・
これで総裁の任期もそろそろ終わるし、帰国したらちょっと日本企業に声かけてみようかな?」
ハビ「・・・実はね、大統領がその件で、春香サンの任期は通貨改革までだったけど、
このまま経済再建が軌道に乗るまで全部お任せしたいって・・・」
春香「え、マジですか・・・!?う、嬉しいけど大統領、経済再建丸投げって、春香さん過労死するんじゃないかな・・・」

(※66年の通貨改革は貿易と商業の活性化を促し、物価が上昇するどころかやや下がって安定するほどの大成功となった
服部総裁は、その後もコーヒ以外の換価作物としての茶や鉱物資源の振興、バス会社や倉庫業の立ち上げ、
第二の民間銀行誘致、ルワンダ開発銀行の設立と商業への融資拡大など、中央銀行の枠を大きく超えた政策を、
カイバンダ大統領の全面的な信頼と支持の下、次々と立案・実施して成功を収めた
そして、途中コーヒー市況の暴落や、ツチ族の支配する南のブルンジ王国に支援されたツチ族ゲリラ侵攻・軍事費の増大などの事件もあったが、
5年目の1970年、ルワンダ経済は爆発的な成長を始め、ついに財政黒字に転じることに成功したのである)


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:20:45 vu0ZcGZ2
【1971年1月 キガリ国際空港】

ハビ「本当に帰国しちゃうのかい?春香サンいなくなってもルワンダ経済、成長続けられるのかナ?」
春香「大丈夫ですよ、少なくとも実体経済の基礎は完璧に立ち上がってますし!
わた春香さんは所詮外国人ですからね、ここから先のルワンダの将来は、ルワンダ人が担うべきだし、担えると思いますよ!」
ハビ「・・・うん、頑張ってみるヨ!」
春香「でも、最後に大事なアドバイスを残していきますね、ハビさん
ルワンダ資本は急速に増加してますけど、これは一部の人たちが浪費したり独占したりするようになったら駄目です!
コーヒー市況は将来的に必ず下落しますから、それに備えて工業化や観光資源開発に再投資して、
さらなる経済発展のサイクルを回していかなきゃ、農業と経済の発展で急激に増えるであろう余剰労働人口を吸収できないですから!」
ハビ「うん、富は独占しない、脱コーヒーの産業を起こすのに投資していく、だネ!」
春香「ルワンダ周辺の国々の工業化は遅れてますし、繊維工業あたりから始めて、
ルワンダが地域の消費財全般の生産工場になれば、成長の余地は十分あると思いますよ?
・・・あとは、おじさんのカイバンダ大統領にはお世話になりました、あの人の質実剛健の精神は大事にしてあげてくださいね?」
ハビ「・・・うん、善処するヨ。それでは、オタッシャデー!!」

留美「・・・本当によかったの?大統領も政府も熱烈に残ってくれって言ってたじゃない」
春香「いいんですよ、ルワンダも小さいながらも独立国、いつまでも一外国人が牛耳ってていい事なんかないですから
・・・でも、心配は心配だなぁ、トロピコでもここからが難しいからなぁ、って何で留美さんもしれっとくっついて来てるんですか!?」
留美「もう、仕事・仕事・仕事で、私が婚期逃しちゃったかもしれない責任は、ちゃんと上司の君にとってもらいますからね・・・?」
春香「え、何それ、怖い・・・」

(※1973年、隣国ブルンジでのツチ族によるフツ族大量虐殺事件に端を発した騒動を機に、
甥のハビャリマナ国防大臣がクーデターにより政権を奪取、以降長期独裁政権を維持した
農業の発展と、野生ゴリラが見れるという観光資源の活用、フランス語圏拡大を狙うフランスの大規模な支援などにより、
ルワンダ経済はハビャリマナ独裁政権下でも70年代から80年代前半にかけて驚異的な発展を続けた
しかし、わずか20年で300万人から750万人に激増した人口爆発は、腐敗し富を独占する富裕階級の土地への乱投機と、
乱開発による土壌・環境破壊の激化、さらには87年のコーヒー価大暴落がトドメとなって、
ルワンダ経済と農村社会を完全に崩壊させ、膨大な失業者と深刻な社会不安を生み出した)


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:21:41 vu0ZcGZ2
【1994年4月6日 キガリ国際空港上空 ルワンダ大統領専用機】

ハビ「・・・夢、か・・・」
ンタリャミラ・ブルンジ大統領(フツ族)「お目覚めですかな、ハビャリマナ大統領」
ハビ「うむ、ちょっと独立当初の頃の夢をね・・・
もうキガリ上空か・・・くそ、私の荘厳な大統領官邸の目の前にRPF(※ルワンダ愛国戦線。
ウガンダ革命の主力となったツチ族難民キャンプ出身者中心のゲリラ)の連中、堂々と要塞を築きやがって!」
ブルンジ大統領「しかし90年のRPF侵攻以来、あなたの腐敗したルワンダ国防軍は負け続けた
フランス軍の介入がなかったら、今頃ルワンダ全土が彼らに支配されていてもおかしくなかったんです
アルーシャ合意(※1993年に、経済破綻寸前のルワンダを支援する諸国の外圧により実現したルワンダ政府とRPFの和平協定)
の内容でも満足しなければ・・・」

ハビ「・・・多数政党と民主選挙の容認はまだいい、数十万人のツチ族難民の帰還も困難だが許容しよう、
しかしRPFのゲリラ部隊を正規軍に編入する代わりに私の兵士たちを失業させ、さらには新政府の重要ポストも寄越せだと!?
くそ、しかも私たち従来の政権担当者への免責特権も保証しないなど、とても受け入れられん!」
ブルンジ大統領「それでも受け入れていただかないと!
あなたの大統領警護隊や与党MRND党は、フツ族の若い失業者たちを焚きつけて国連PKO部隊やRPFを挑発して紛争を起こし、
アルーシャ合意を白紙に戻そうと画策しているようですが、即刻やめて頂きたい!」
ハビ「私はインテラハムウェ(※MRNDの民兵組織。大虐殺を主導した)などには一切関与していない!
だが、長年ツチ族の残酷な支配と戦い、やっと勝ち取った去年の総選挙での史上初のフツ族の大統領を、
すぐにツチ族の支配する軍部に暗殺され、後を継いだあなたならわかるはずだ!
ツチ族のRPFやブルンジ軍部の背後にはウガンダ政府がいる、このままではルワンダやブルンジは彼らの支配に屈服させられてしまう!」
ブルンジ大統領「いえ、だからこそ、ここで終わりにしなければいけないのです!
ルワンダでフツ族とツチ族の全面対決が始まれば、それが周辺諸国が不安定化につながり、
やがては泥沼の戦乱を招くことになるでしょう!」


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:22:12 vu0ZcGZ2
ハビ「くそ・・・しかし、止むなく合意を受け入れたとはいえ、国連はまったく頼りにならん!
同じ外国人でも春香サンとは大違いだ・・・なぁ春香サン、私たちはどこで何を間違えたのかね?
・・・確かに、フランスの支援を受けたとしても我が国に戦争に勝てる経済力も軍事力ももはやない、
飛行機が着陸次第、新たな妥協と歩み寄りを・・・ん?何だあれは・・・ミサイ・・・ル・・・!?」

(※1994年4月6日夜、ハビャリマナ大統領とンタリャミラ大統領及びその側近たちを乗せた大統領専用機が、
キガリ国際空港上空で高性能対空ミサイルによって撃墜された
ハビャリマナの統制を外れたフツ族過激派による暴走説も有力だが、避けられない全面衝突に備えて、
ルワンダ・ブルンジのトップを先制して除こうとしたツチ族・RPF説も有力で、後にフランス政府はRPF幹部を逮捕している
いずれにせよ、深刻な社会不安と恐怖、過激な扇動と挑発行為で爆発寸前だったルワンダ全土は、
これをキッカケに無秩序なツチ族およびフツ族穏健派大虐殺に突入、わずか100日間で80万人が殺害された
一方、名将カガメ司令官率いるRPF軍はウガンダ政府の援助をバックに、虐殺に狂奔しパニック状態のフツ族勢力を各地で撃破、
電撃的にルワンダ全土の制圧に成功、最終的にカガメを大統領とするツチ族政権が成立し、現在に至る)


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/03/25(水) 20:22:39 vu0ZcGZ2
春香「・・・ルワンダ大虐殺は知名度高いけど、結局これが引き金となって発生したアフリカ大戦、
隣国コンゴの傀儡化と利権を狙うルワンダ・ブルンジのツチ族政府とウガンダの連合軍と、
それを阻止しようとする周辺諸国連合軍との10年間の戦争で500〜600万人が殺害されたことはあまり知られていないよね・・・
(※第一次・第二次コンゴ戦争=アフリカ大戦の参戦諸国→
http://image02.seesaawiki.jp/b/i/book-wiki/e787bb14b1dc1197.png
残忍冷酷な人々というイメージの強くなっちゃったフツ族にも、彼らなりの努力と葛藤と事情があったことは知ってほしいなぁ・・・
全部、貧乏・子沢山なのが悪いんだ・・・あと、全然関係ないけど、やよい誕生日おめでとう・・・ぐうぐう」
千早「・・・こんな祝い方がはるか・・・あるか!!」

戦後世界で活躍したチート日本人、第二弾
後に日本人初の世界銀行副総裁になった服部正也氏が、あのままルワンダに留まっていたとして、
それでもルワンダの人口爆発からの経済破綻、悲劇的な大虐殺を避けることができたのか?
主な参考文献は当然、『ルワンダ中央銀行総裁日記・増補版』(服部正也/中公新書)です
無力感に打ちのめされた国連PKO司令官ダレール将軍の回想もほろ苦いけど、
本文の溌剌とした内容から一転、長年の友人ハビャリマナ大統領をはじめ多くの友人を失った晩年の服部氏の、
ルワンダ情勢に寄せた短文からにじみ出る無念さが胸に痛い一冊です
大概の大きな書店で買える本なので、興味があれば是非、超オススメです


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