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【短編】バッジ
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それは私がまだ小学生の頃のことだった。
週末の昼下がり、私は一つ違いの弟と公園を歩いていた。
東京タワーの見える公園だった。
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私はその時、地面に光るものを見つけた。
バッジだ。
好奇心から私はそのバッジを手に取り、そのまま持ち帰った。
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「お父さん、これは何」
家に帰り、私は父に尋ねた。
父の顔が曇った。
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なんか始まってる!
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なんか始まってる!
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「お前、これをどこで拾った」
私が拾ったのは、弁護士バッジであった。
鈍く光るバッジの中心には、天秤が薄気味悪く佇んでいた。
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その日のうちに、公園近くの警察署にバッジを届けに行った。
「これで君も一割だけ弁護士だな」
初老の警官が、冗談交じりに私に言った。
帰り道、辺りはもう暗くなっていた。
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あっ……
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それから程なくして、私はおかしくなった。
「自分は弁護士だ、こいつらとは違う」
「弟を殺せ」
声が、聞こえるようになった。
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これは海原会に通報しなきゃ・・・
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この声は一体誰のものなのか。
気付くのに時間はかからなかった。
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なるほどいい出来だ閉廷!
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「私の一割」、それが醜い叫びを上げていた。
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私が十七の冬のときであった。
よくそれまで気が狂わなかったものだが。
私はそのとき、弟を殺そうとしていた。
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暗い部屋、眠りについた弟。
「弟を殺せ」
声に導かれるままに、私は弟の首に手をかけた。
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私の手は、必死に抵抗していた。
我に返り、私は悪魔の手を振りほどいた。
私は家を飛び出した。
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どれくらい走っただろうか。
訳も分からぬまま、ひたすらに走った。
辿り着いたのは、あの公園だった。
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ずっと昔に、私がバッジを拾った公園。
結局、あのバッジは誰のものだったのだろうか。
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誰かが私を迎えに来た。
ああ、やっと迎えに来てくれたのだ。
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私がゆっくりと振り返ると、男が立っていた。
その胸には、暗くバッジが光っていた。
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東京タワーの赤い光を背に佇む弁護士。
それが、私の見た最期の光景であった。
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えっ、何これは・・(困惑)
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投下は以上になります。
ありがとナス!
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いい文章してんねえ!
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面白かった(小並感)
サクッと読めるところがいいっすねぇ
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純文学理論 固有名詞を一切出さない文学作品なのでセーフという理論
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>>東京タワーの赤い光を背に佇む弁護士
ここぐう格好良い
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ホラー路線に身が震える。
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ruinaの四つの秘宝かな?
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