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小さな箱庭のなかにいるようです
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小さな女の子がいました
小さな小さな、齢三つの女の子
名前はミセリと言いました
女の子はちょっと変わっていました
五人より三人が、三人よりも二人が、二人よりも一人で遊ぶほうが好きでした
一人ならケンカをすることもありません
おままごとでどの役をやるかで揉めません
おにごっこで友達を見捨てることもありません
揉め事が起きると、悲しくなります
だから最初からそんなものを捨ててしまったのです
だけど一人じゃおままごともおにごっこもできません
そこでミセリは考えます
じゃあいうことを聞いてくれる優しい友達を作ろう、と
-
もちろん現実じゃそんなことは無理です
子供は得てしてみんなわがままで、無邪気で強烈な毒を持っているからです
だから女の子は自分のなかで友達を作りました
想像上の優しい隣人を、とりあえず三人作りました
ミセ*゚ー゚)リ「おままごとしよー」
この子がミセリ
空想に入り浸ることが大好きです
川 ゚ -゚)「またおままごと?きのうもしたよー?」
この子は一番最初のお友達
しっかりもので清楚な女の子
o川*゚ー゚)o「ミセリちゃんがやりたいことならキュートはなんでもやるよー?」
この子は二番目のお友達
お調子者で優しくてふわふわした女の子
| l|//ー゚ノl「…………」
この子は三番目のお友達
掴み所がなくて、片目はいつもリボンや包帯でぐるぐるに隠しています
ミセリのそばに佇むことが多くて、こういう遊びにはめったに参加しません
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ミセ*゚ー゚)リ「いいからいいから!クーもキュートもお客さんね!あたしがおうちのひとー」
この配役は、いつもおんなじものでした
ミセリのなかにはお母さんもお父さんもいませんでした
家のなかにいるひとと、外からやってくるお客さんという二種類しかありませんでした
ミセリにはお母さんとお父さんが仲良しだというよくわからなかったのです
他のお友達はみんな家族と旅行に行って楽しそうにするけれど、ミセリのおうちは旅行に行くとみんなケンカしてしまうから、嫌だったのです
ミセ*゚ー゚)リ「いらっしゃいませー!ケーキとおちゃとオムライスつくったよ!」
o川*>ー<)o「ミセリちゃんのすきなものばっかりでうれしー!」
川 ゚ -゚)(くみあわせがひどい)
ミセ*゚ー゚)リ「とぽとぽとぽー、おちゃどうぞ!」
o川*゚ー゚)o「いっただきまーす!」
川 ゚ -゚)「いただきます」
o川*゚ー゚)o「ごくごく、もぐもぐ。おいしいよミセリちゃんのお料理!」
川 ゚ -゚) コクコク
| l|//ー゚ノl「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「えへへーよかったー!」
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絵本みたい
珍しい手法だな
支援
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「……ミセリちゃんっていつもひとりごとが多いよね」
「おままごとにもいれさせてくれないし」
「へんなこだね」
そんな陰口など露知らず、ミセリはどんどんこの遊びにはまっていきました
「ミセリちゃん、なんでバスのせきゆずってくれないの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ここはキュートのせきだもん」
「ちがうもんぼくのせきだもん」
ミセ*゚ー゚)リ「キュートのだもん!」
「せんせー!ミセリちゃんがいじめるー!」
「こら、ミセリちゃん。××くんの席を返しなさい」
ミセ*゚ー゚)リ「どうして?だってキュートがここに座るんだよ?」
「キュート?」
ミセ*゚ー゚)リ「あたしのおともだち!いつもあそんでくれるの」
「ああ、おままごとの相手ね。だけどミセリちゃん、キュートちゃんはこの幼稚園にはいないんだよ?」
ミセ*゚ー゚)リ「いるよ、せんせい。みんないるもの」
駄々をこねるミセリに、幼稚園の先生は手を焼いていました
だってこれじゃあ幼稚園の送り迎えが遅れてしまうんですもの
そこで先生はミセリのお母さんに電話をしました
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その日、ミセリだけはバスに乗らずにお母さんの車に乗って帰りました
ミセリはこの日も、ちゃあんと見えないおともだちのために車の席をあけました
「ミセリ、どうしてそんなすみに座っているの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ここはね、キュートの席でね」
「キュート」
ミセ*゚ー゚)リ「とうめいにんげんのおともだち!みんなにはみえないけどちゃんとようちえんにいくのー」
「ふうん。でもね、ミセリ、キュートなんかいないのよ」
ミセ*゚ー゚)リ「いるよ」
「いないわよ。そんな変な遊びするんだったらお家に入れてあげません。嘘つきのおかしい女の子はいりません」
ミセリは悩みました
だってキュートは好きだけど、おうちにはいれないのはとてもこまったことだったからです。
ミセ*゚ー゚)リ「………………」
o川*゚ー゚)o「……ミセリちゃん」
ミセ*゚ー゚)リ「……いない、よ。うそついてごめんなさい、ママ」
o川*゚ー゚)o「…………」
キュートはなんにもいいませんでした。
ただ心の奥底で、ママはとても怖い人なのだなぁと思いました
「もうそのおともだちとはバイバイするのよ」
お母さんの言葉がぐさりと二人に刺さりました
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今日はここまで
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あらら、おつ
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乙
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期待
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次の日の放課後
キュートはみんなに言いました
o川*゚ー゚)o「キュートね、しばらくおやすみするの」
川 ゚ -゚)「どうして?」
o川*゚ー゚)o「うーんとね、ミセリのおかーさんはキュートとかクーのことが嫌いだから」
ミセ* ー )リ「……ごめんね」
o川*゚ー゚)o「ミセリちゃんはなんにもわるくないよ?あたしはちょっとねむくなっちゃっただけだもん」
川 ゚ -゚)「…………」
| l|//ー゚ノl「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「おひるねするだけ?」
少しべそをかいた顔でミセリは聞きます
するとキュートは何度もうなずきました
o川*゚ー゚)o「でもね、おひるねのまえにたくさんあそびたいの」
川 ゚ -゚)「うん、あそぼう」
| l|//ー゚ノl コクン
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあね、きょうはキュートのしたいことしよ?」
ミセリの言葉にキュートはにっこりと笑いました
o川*^ー^)o「じゃあおにごっことおままごととえほんよもう」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!」
それから、お母さんのお迎えが来るまで四人はたくさんたくさん遊びました
この日はお迎えが遅かったので、やりたいことは全部し尽くしました。
だけどキュートがおやすみするころになると、やっぱり寂しくて、ミセリは泣いてしまいました
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o川*゚ー゚)o「なかないで、ミセリちゃん」
ミセ*;ー;)リ「だって、だって」
川 ゚ -゚)「だいじょうぶだよ、きっとまたあそべるよ」
| l|//ー゚ノl「そのうちね」
o川*゚ー゚)o「クーのいうとおりだよ、ね?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん……」
o川*゚ー゚)o「でもね、ミセリちゃん。これだけやくそくしてね」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
小指を差し出し、キュートは言いました
o川*゚ー゚)o「もう、ほかのひとにキュートたちのことはなしちゃだめだよ。そうしたらおひるねしなきゃだから」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん、ゆびきりげんまん」
o川*゚ー゚)o「うっそつーいたーらはりせんぼんのーます!」
ミセ*゚ー゚)リ「ゆーびきった!」
次にまばたきした瞬間、キュートの姿はありませんでした
泣かないで、とは言われましたがやっぱり悲しくてミセリはしょんぼりしました
「あらミセリ、どうしたの?」
お迎えにきたお母さんが不思議そうに聞きます
ミセ*゚ー゚)リ「……なんでもない」
「そう?ところでちゃんとお友達は作ったの?」
お母さんの質問にミセリは黙ってうなずきました
うそをつくのは泥棒のはじまりで、それはとっても怖いことのように思えたのですが、今のミセリはキュートがいなくなって悲しいという気持ちのほうがたくさんでした
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それからミセリは、幼稚園で残った空想上のお友達と遊ぶのをやめてしまいました
その代わり、おうちで一人でいるときにお人形遊びをするようになりました
| l|//ー゚ノl「…………」
名前のないこの子は、お菓子とかプレゼントについてくるリボンが大好きでした
それを使ってぬいぐるみをきれいに、ギチギチと縛り付けるのがお気に入りの遊びでした
そこでミセリもそれにならって、ぬいぐるみを縛りました
首にリボンをかけて、後ろ手に縛って、全身に絡ませながら足をまとめてちょうちょ結びにして、それをまたほどいて、結び直して
意味のない遊びでした
だけど集中するせいか、周りの音が聞こえなくなって、ミセリにはとても楽だったのです
だって、ほら
「お前がちゃんと見てないから、ミセリがそんな遊びをしだしたんだろ」
「見てないっていうけどあたしも働いてるのよ!?あんたが甲斐性なしだからこんな」
「二言目には金金ってどんだけごうつくばりなんだよ」
「家計が苦しいのに酒ばっかり飲んだくれる平社員のくせに!出世のひとつやふたつしなさいよ!」
ミセ*゚ー゚)リ「…………」
| l|//ー゚ノl「…………。これ、こうするともっとつよくなる」
ミセ*゚ー゚)リ「こう?」
| l|//ー゚ノl「そうそう」
二人は楽しそうに、ずっとお人形遊びをしました
夜更かししても怒られません
お父さんもお母さんも、二人とも忙しいからです
仕方がないですね
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やがてミセリは小学生になりました
その頃になると普通のお友達が出来て、一緒に遊ぶようになりました
なんだかんだいって、やっぱり同級生というのはいいものでした
ミセリはたくさん遊んで宿題をサボるようになりました
だからミセリは、三年生になっても時計の針が読めず、通信簿も△ばっかりでした
「外で遊んでばっかりいるからおバカさんになってしまうんだ」
そこでお母さんはミセリを塾に通わせました
月曜と水曜日は公文の日、それ以外も公文の宿題をやらなくてはいけません
ミセリは段々友達と遊ぶことが出来なくなっていきました
だって友達と遊ぶには、歩いて学校までお迎えにくるおばあちゃん(お母さんのお母さんです)に公衆電話で連絡しなきゃいけないし、門限は四時までだから全然遊べなかったのです
ミセリは退屈していました
学校の休み時間だけでは遊び足りなかったのです
仕方がないから、ミセリはまた空想上のお友達と遊ぶようになりました
ただしみんなに見つからないように、ひそひそ声で、こっそりと
ミセ*゚ー゚)リ「最近おかーさんはケンカばっかりしてる」
川 ゚ -゚)「いつもでしょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだけど、最近はおじいちゃんも怒鳴るんだよ」
ミセリのおじいちゃんとおばあちゃんは、ミセリのお家の隣に住んでいました
ミセリのお家がゴトゴトガタガタ揺れると、おじいちゃんが飛んできて、ケンカしている二人をたくさん怒るのでした
-
ミセ*゚ー゚)リ「〇〇ちゃんちのお母さんが欲しいなぁ」
川 ゚ -゚)「優しいの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ご飯作ってくれるよ。おばあちゃんのお料理も好きだけど、おかーさんのご飯食べてみたい」
そのあとミセリは、少しだけおかーさんのご飯、食べたことあるけどね、と付け加えました
ミセリはお家がすっかり嫌になっていました
出来ることなら友達のお母さんと家族になりたいとすら思っていました
ミセ*゚ー゚)リ「結婚って好きだからするんじゃないの?」
川 ゚ -゚)「多分?」
ミセ*゚ー゚)リ「なのにどうしておとーさんとおかーさんは嫌いって言い合うの?」
川 ゚ -゚)「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「そのうち本当に、おかーさんは家出するのかな」
ミセリの呟きに、クーはなんにも答えませんでした
ミセリが五年生になった頃、お父さんがお家を出ていきました
ミセリはお母さんと二人で暮らすこととなりました
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お父さんがいなくなって清々したお母さんは、ミセリにたくさん構うようになりました
「ミセリはいいこね、お父さんに似ないでちょうだいよ」
お父さんに似ないでね、と言われても、ミセリはあんまりお父さんのことを知りません
だからミセリがお風呂上がりに、居間でゴロンと寝転がった時に怒鳴られたのは本当にびっくりしました
「そんなところばかりバカに似て、最悪だ」
ミセリは慌てて座りました
だけどお母さんの口は止まりません
テストの点数が悪かったこと、よちよち歩きをし始めた頃にお母さんの本をビリビリに破いてしまったこと、公文を一回だけサボってしまったこと、おばあちゃんに連絡をしないでお友達と遊びに行ったこと、…………
お母さんの怒鳴り声を聞いているうちにミセリは頭がボーッとしてきました
まばたきすることを忘れ、じぃーっとお母さんの顔を見つめていました
お母さんの目がどろどろと溶けて肌色になり、べちゃくちゃとよく動く口が赤ずきんの狼みたいにずんずんと大きくなって、
ぶつんと意識が途切れました
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おいおい
-
マジでボーッとして意識落ちるんだよな
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・・・なんか嫌にリアルだな
-
気付くとミセリは自分の背中を見つめていました
猫背気味の小さな背中がこっくりこっくりと船を漕いでいます
…いいえ、よく見ると違います
うなずいていたのです
ミセ* ー )リ「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、」
そのミセリはずっとずっとそう謝っていました
もう一人のミセリはわけがわからなくて、なんともいえない表情でそれを眺めていました
なにがどうなったいるんだろう?
ミセリはとても混乱していました
-
――ミセリはお布団のなかに入っていました
パジャマを着ています
髪の毛も濡れていなくて、ちゃんと乾かしてありました
なにがどうなっているんだろう?
ミセリは少し怖くなりました
川 ゚ -゚)「大丈夫だよ」
気付くとクーがそばにいて、ミセリの頭を撫でていました
頭を撫でられたのはいつぶりでしょう、多分幼稚園くらいの時にお母さんにしてもらったきりでした
川 ゚ -゚)「ミセリは痛くないよ」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
それってどういう意味?
ミセリはそう言いたかったのですが、眠くなってしまったので言えませんでした
-
お母さんが怒鳴るたびにミセリは自分の背中を眺めることが多くなりました
そして気付くと目が腫れていたり頭にたんこぶが出来ていたり、怪我をしていることが多くなりました
それは恐らく、自分が泣いたりお母さんが殴ったりしたものだとは思うのですが、ミセリはあんまり思い出せません
ただ唯一、うっすらと覚えているのは「あんな男に似なくていい」とか、「だったらそんな子はいらない」とか、そういう言葉でありました
わたしはここにいてはいけないんだ
ミセリは段々そう思うようになりました
また、最近になってミセリは小さい女の子の夢を見るようになりました
(* ∀ )「…………」
その子は十歳くらいの女の子で、なんとなく自分に似てて、でも全くの別人でありました
その子はなんにもしませんし、ミセリもなんにもしませんでした
ただお互いにその空間を共有しているだけでした
ミセ*゚ー゚)リ(わたしはおかしいのかなぁ)
時々そう思いはするのですが、しかし誰も答えてくれませんでした
クーとはあまり喋らなくなりました
それでもどこかでまだ彼女がいると、ミセリは信じていました
だって彼女がいなかったら自分の味方が誰もいないように思えたからです
もし、ひとりぼっちであったなら、ミセリは……
ミセ*゚ー゚)リ(早く寝なきゃ)
時計を見ると、もう十一時になろうとしていました
離婚してからお金に苦労するようになったお母さんは、夜も働くことになったのです
一人は気楽でとても安らぎます
だけど心のどこかでは寂しい気持ちも甘えたい気持ちもありました
ミセ*゚ー゚)リ(甘えてもいいのかなぁ)
お母さんにとっては要らない子なのに
ミセリは考えます
-
ミセリがやってはいけないことをするとお母さんはとても怒ります
だけどそれさえしなればお母さんはとても優しいです
ミセリが良い子になれば、お母さんは優しいのです
部屋の片付けをするとか、お風呂に早く入るとか、洋服をきちんと畳むとか、そういうことを守ればいいのです
ミセ*゚ー゚)リ(一個一個は簡単なのにどうしてやる気になれないんだろう)
中途半端に開いたタンスから覗く、ぐちゃぐちゃに積み上げられた洋服を眺めながらミセリはため息をつきました
悪い子はいりません
悪いことをしたら罰を受けなくてはいけません
ミセ*゚ー゚)リ「…………」
寝室の入り口の柱に、軽く頭をぶつけました
ゴチン、と鈍い音がして、じんわりと頭の一点に血が集まり、カーッと熱くなりました
ミセ*゚ー゚)リ「…………」
-
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン、
ゴチン
頭がくらくらします
痛くて涙が滲みます
スカッとして気分が晴れます
何故だか辛くて、ごめんなさいとミセリは呟きました
ミセリはほんのすこしホッとして、お風呂に入る支度を始めました
(゚、゚トソン「…………」
黙ってそれを見ていた人がいるとは気付かずに、ミセリはお風呂に入ります
(゚、゚トソン「…………」
白いワンピースのお姉さんは、ただ黙ってミセリを見ていました
そしてため息をひとつついて、悲しそうな顔をしました
だけどやっぱり、ミセリは気付かないのです
-
しえん
-
しえん……
-
ミセリは中学生になりました
ミセリはなにも変わりませんでした
いつも不安で消えたいと感じ、悲しくないのに泣きわめきたくなることが多くなりました
だけどそんなことをしたらお母さんに怒られるので一生懸命我慢していました
ミセリはヒエラルキーの低い少人数のグループに入って、好きなものを好きなだけ話して、たくさんの刺激を受けていました
なぜならそのなかに、親なんか大嫌いでとことん憎んで軽蔑している女の子がいたからです
ミセリには考えのつかない気持ちです
だってミセリは悪い子で、謝らなくてはいけなかったからです
だけどその子は言いました
「親の不仲なんか知らないよ。わたしのこと、巻き込まないでほしかった。親にすがって生きなきゃいけないのに、それを取り引きの材料にしてくるんだもの」
その言葉はとても過激で雷のようでした
鋭くて心に落ちてビリビリとしびれます
ミセリはその子のことが大好きになりました
そしてお母さんが大嫌いになりました
ミセリのお母さんは相変わらず夜の仕事をしていました
だけど最近は好きな人ができたようで、お母さんは家にその人をこっそり連れてくることが多くなりました
だけどみんな遊び人でしたから、お母さんは手酷く裏切られて憤っていました
ミセリは複雑な気持ちでそれを見ていました
男なんか、男なんか、といつも口にしているのに、どうして懲りずに好きになって、同じようなことを繰り返すのか
ミセ*゚ー゚)リ(嫌いなら嫌いなままでいればいいのに)
ミセリは不思議で仕方がありませんでした
-
ある日ミセリは、いつものように学校から帰ろうとしました
すると、一人の同級生から話しかけられました
同級生といっても、話したこともない人なのですが
「ちょっと来てよ」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
ミセリはその人についていきました
学校を出て、家とは反対方向に歩きます
十分もしないうちに、大きな公園につきました
ミセ*゚ー゚)リ「ねえ、どこまで歩」
ドン、と後ろから突き飛ばされました
視界の端には、ニヤニヤと笑みを浮かべる女の子が三、四人いました
それは、あの、雷のような言葉を放つ女の子にいつも嫌がらせをしてくる人たちでした
体勢を直す間もなくミセリは地面に引き倒されて、目隠しをされました
暴れようかと思いましたが怖くて体が動きません
そのうち両手も縛られてしまいました
ずるずると引きずられてコンクリートから茂みに移りました
唐突に頭を踏まれ、お腹を蹴られました
お昼に食べたものが思わず出そうになります
口のなかが酸っぱくて、ミセリはむせました
彼女たちはキーキーした声で罵倒しながらミセリをたくさん蹴りました
だけどミセリは意識がボーッとして、眠くなりました
なんだか全てがどうでもよくて、死んでもいい気がしました
だってどうせ、家に帰ればまた新しくなったお母さんの彼氏が夜中に来るんですから
ミセ* ー )リ「…………」
真っ暗な視界のなかで、ミセリは、早く消えてしまいたいなぁと呪いました
-
ミセリは、泥だらけの制服で地面に座っていました
ミセ*゚ー゚)リ「あれ?」
なんでここにいるんだっけ?
立ち上がると、なぜかお腹や背中が痛くて、なかなか動けません
ミセ*゚ー゚)リ「?」
とりあえず下着は無事でした
なぜかそのことにホッとして、ミセリはよろよろと家に帰りました
そして汚れてしまったシャツを洗濯機に放り込み、ブレザーとスカートは手洗いをして干しました
本当はクリーニングが一番だけど、お金はないし、制服がないことに気付かれたらお母さんになんて説明すればいいのかわからなくて、こうするしかありませんでした
-
その日、久々にクーから話しかけられました
川 ゚ -゚)「守れなくてごめんなさい」
ミセ*゚ー゚)リ「なにが?」
川 ゚ -゚)「お姉ちゃんは知らなくていい」
ミセ*゚ー゚)リ「……お姉ちゃん?」
川 ゚ -゚)「今度は家族になって、あたしが守る」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあクーは妹になるんだぁ」
なんだかそれは素敵なように思えました
ずっと味方でいるからね、と約束されたような気分になったからです
川 ゚ -゚)「今度は絶対に、守る」
ミセ*゚ー゚)リ「……ありがとう、クー」
だけども、ミセリは少し気になることがありました
前はきちんとクーは口を開いて声を発していたのに、今は口を硬く閉ざしてテレパシーかなにかで会話をしているようになったからです
ちゃんと会話はできているからいいけど、なんでそうなってしまったのかミセリは心配になりました
ミセ*゚ー゚)リ「喉、痛いの?」
クーは首を横にふりました
川 ゚ -゚)「喋るのが少し怖いだけ」
大丈夫だよ、と頭を撫でてくれるのは嬉しいのですが、ミセリはクーのことが心配でした
だけど頭を撫でられているうちに段々リラックスしてきて、そんなのどうでもいいかと気にしなくなってしまいました
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別の日、ミセリが学校から帰ってくるとなぜかお母さんの彼氏が家にいました
ミセ*゚ー゚)リ「お仕事は?」
「今日は休みなんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「ふーん」
ミセリはこの人のことが苦手でした
なんとなく目付きは好かないし、お母さんとこの人がいやらしいことをしているのを見たことがあったからでした
ミセ*゚ー゚)リ(今日は、部屋にずっといよう)
ミセリはさっさと部屋に行こうとしたときでした
「ねえ、待ってよ」
と、その人に手をつかまれました
ミセ*゚ー゚)リ「な、なんですか?」
じっとりと手のひらにかいた汗が手首を濡らして気持ちが悪いです
ミセリはなんとなく逃げたくなりました
「ミセリちゃんはかわいいね」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
「まだ中学生だっけ?でもスタイルいいよね」
ミセ*゚ー゚)リ「…………」
「彼氏いるの?」
首を横に振ると、その人は嫌な笑みを浮かべました
-
「じゃあいないんだ、そっかー」
ミセ*゚ー゚)リ「……あの、宿題したいから、部屋に」
からからに乾いた喉で呟くと
「いいじゃん、たまには話そうよ。あんまり俺のこと知らないでしょ?」
と言って、強引に引っ張られました
ミセ*゚ー゚)リ「あっ」
床に倒れこむミセリの体を男さ押さえつけました
「俺、ミセリちゃんのお母さんも好きだけどミセリちゃんのことも好きだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「え……」
「かわいいし、若いし、見てて和むっていうかさぁ」
おかしな空気になって、ミセリは怖くて息ができなくなりました
吸っても吸っても、浅くしか呼吸ができません
ミセ* ー )リ「ぁ……わた、し、」
「ね、シようよ」
川# - )「っ…………」
その言葉を境に、ミセリは気絶しました
そして気付くと、座椅子を片手に、頭を抱えてうずくまっているその人を見下ろしていました
「い……、ぁ、くそ……」
あまりにもおそろしい呻き声に、ミセリはパニックになり、自分の部屋へと駆け込みました
ミセ* ー )リ(わたし、どうしちゃった?)
じんじんと痛む頭で考えましたが、結論は出ませんでした
それからその人がこの家にやってくることはなくなりました
それは、お母さんからお金を盗ろうとして見つかり、追い出されたからでした
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成程な
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ふむ
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しえんしえんしえん……!!
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