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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
1炉★:2007/06/27(水) 00:57:13 ID:???0
書いた赤石サイドストーリーをひたすら揚げていくスレッドです。
作品を書き込むだけでなく、他の人が書いた作品の感想を書いたり、書き込まずに読み専門として過ごすのもありです。
職人の皆さん、前スレに続き大いに腕を奮ってください。

【重要】
下記の項目を読み、しっかり頭にいれておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※スレを上げるときには、時間帯などを考えること。むやみに上げるとスレが荒れる原因となります。
※下げる方法:E-mail欄に半角英数で「sage」と打ち込む。

◇職人の皆さんへ
※技量ではなく、頑張って書いたという雰囲気が何より大事だと思われます。
※短編長編はもちろん関係ありませんし、改変やRS内で本当に起こったネタ話などもOKです。
※エロ、グロ系はなるべく書き込まないこと。エロ系については別スレがあります。(過去ログ参照)

◇読者の皆さんへ
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは放置しましょう。反応してしまうと、その人たちと同類に見られても仕方ありません。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。

【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

2NT:2007/06/27(水) 01:09:36 ID:Hxl1wA1g0
>>1乙です。

勝手にスレ作成依頼を出してしまいましたが…まずかったですかね?

前スレ>>1000
白樺さんお初です。
そして1000お疲れ様です。
詩ですか…
全職分+α全てよくまとまっていると思います。
なかなか他にない感じが出ていて素晴らしいです。
次回作を期待しています。

このスレッドももう5冊目ですね。私が書き込みを始めたのは相当最近ですが
このスレのさらなる発展を祈りつつ、これからも投稿させていただきます。



(自分の書いている話、最終的にちゃんとまとめられるか最近心配になってきました…
途中の肉付けと風呂敷の畳み方がどうも苦手で…)

3 ◆21RFz91GTE:2007/06/27(水) 02:34:48 ID:Ox2kPxN.0
…。(´・ω・`)
覚えてる人がドレだけいるか不安ですがお久しぶりです…。(´・ω・`)
始めに5冊目おめでとう御座います。
そして、話の続き書かないでごめんなさいorz

と言うわけで、これからもSSスレの繁栄を祈ってます。

PS:暫くしたら続き書きますorz

4◇68hJrjtY:2007/06/27(水) 02:58:35 ID:lmH8cVYo0
まずは>>1さん、スレ立てありがとうございます。

>白樺さん
1000おめでとう、そして詩をありがとうです。期待した甲斐がありました(笑)
今のRSの世界の1000年後くらいにどこかの石版にでも書かれていそうな良い詩でした。
これからは白樺さんとして色々と小説をUPしてくれるのでしょうか。期待してます!

>NTさん
依頼ありがとうございます!私はそこまで手が回らなかったorz
NTさんの作品もまた楽しみにしていますよ。
まとめるのが難しいなら各キャラの個性とかを練ってみるとか別の部分を掘り下げるとか色々手はあります。
何はともあれ時間をかけて煮詰めてください。頑張ってくださいね。

>21Rさん
忘れるなんてとんでもない…(汗)
スレの初めの方の頃からの古参職人さんを忘れたらバチが当たる(笑)
手があいた時、気分が乗った時に是非とも続きの方を宜しくお願いします!

5白樺:2007/06/27(水) 16:35:21 ID:RAn6BvyM0
>1さんスレ立てありがとうございます。
とうとう5冊目に・・・って自分は新入りですが(汗
NT氏◇68hJrjtYさん感想ありがとうございます(涙
なんか姫々氏や殺人技術氏などの素晴らしい作家さんがいるのに
自分なんかが1000に書き込んでいいのかしらとすっごく悩みました・・・
どうも皆様、947改めて白樺でございます(土下座
とりあえず私は地震編を仕上げようと思います。
気が向いたら短編とか詩を書く・・・かもしれません(滝汗

PS
導入部分長すぎだろ!というつっこみが来そうで怖いです・・・

6殺人技術:2007/06/27(水) 19:07:22 ID:E9458iSQ0
>>1さん
スレ立てどうもです。
>>◆21さん
すいません自分は21さんの作品は最近のものしか見てないです(´・ω・)

ところで、上の小説まとめサイトですが、誰が管理してるんでしょう?
アドレスにwikiとあるのでwiki方式なのかな……? wikiわからn(ry

7ESCADA a.k.a DIWALI:2007/06/27(水) 21:20:28 ID:8cEwt8B.0
こんなスレがあったなんて知らなかった;;
せっかくなので一発書いてみようかと思います


Episode01-お持ち帰り〜ヤツを説得しにいく〜

「やったぁ〜!ついに説得を覚えたよ〜!」
とあるパーティが廃坑の秘密ダンジョンを突破し、脱出した後のこと・・・一人の少女が歓喜の声をあげた。
彼女の名はミリアもといミリアン・ウォン。黒い装束をまとったビーストテイマー兼サマナーだ。
どうやらダンジョン攻略を重ねるうちに彼女の技術が向上し、説得を覚える運びとなったようだ。
「おぉ、良かったじゃないか!これで神獣系統の魔物も手なずけれるな!」
パーティの仲間の一人であるシーフが、彼女に祝福の言葉を送った。続いて他の仲間たちも祝福する。
「ん〜、そんなに嬉しいってことは、気になるモンスターがいるんでしょ?」ランサーがミリアに問いかけた。
「えへへ、そうなの〜。実はね・・・南フォーリンロードのエルフ戦士長をお持ち帰りしたいな〜って」
ミリアの一言に、彼女以外のメンバーが凍りついた・・・。当のミリアはキョトン顔で首をかしげた。
「うゅ?ミリア変なこと言ったぁ?」少し泣きそうな表情で彼女は問いただした。
「いやいや、ミリアさんが悪いことを言ったのでは無いのですよ。その・・・」ウィザードが口ごもる・・・
そこへ続けて一人の剣士が付け加えた。「アレだ、フォーリンロード一帯は結構危ないんだぜ?いやこれマジだって。
オレなんかあの辺通ったらよォ、鷲剣士の群れに追いかけられて原始人に叩かれてウルフに尻噛まれて・・・・
うぁ〜、思い出したくもねぇ〜!とにかくあそこを通るなら腹くくった方がいいぜ!?」
悲壮な顔を浮かべ、フォーリンロードでの痛々しい思い出を語る剣士・・・。他の者たちも
同様に嫌な思い出を思い出しつつあったのだった・・・・。

「いいのっ!ミリアはぜったいぜぇ〜ったい、エルフを仲間にするんだもんっ!」
子供のだだっこが如く、腕をブンブン振り回して自らの主張をするミリア。周りの者たちはちょっと呆れ顔に・・・
「もぉ〜しょうがないなァ・・・ミリアちゃんにはキツいかもしれないから、アタシが付いていってあげるわ。」
やれやれと苦笑を浮かべ、槍を握るはランサーのラティナ。続いてウィザードのバーソロミューも同行の意を露にした。
「私も同行させて下さい。フォーリンの魔物たちにはお灸を据えてやりたいのですよ、今までのツケとしてね。」
そしてシーフのエディも同行せんと名乗りをあげた・・・!
「オレっちも混ぜてくんねぇかな?あそこのエルフの暗殺能力は一級品だって聞いてるぜ?パク・・・参考にしてみてぇなァ」
有志たちの心優しい言葉に、ミリアは涙目になりながらも、喜びの笑みを浮かべるのだった。
「みんな・・・ありがとう。あ、そうだ!ビショップさんは来てくれるの?」
「いや、俺は子供の世話をしないとな。付いていくこたぁ無理だが、現地に送っていくならできるぜ?」
一人のビショップが微笑み、追放天使へとその姿を変えた・・・!すぐさまポータルを開き、亜空間の入り口を
空中に作製した。「さぁ、早く行くんだ!急がないと消えちまうぞ!」
天使の先導により、ポータルへと足を踏み入れるミリアら一行。向かった先はフォーリンロード・・・
ミリアにとってはエルフ戦士長を仲間にするための、ラティアたちにとっては今までの恨みを晴らすための
それぞれの冒険が今始まるのであった・・・・

To Be Continued...


駄文を長々と書いてすいません;;

8名無しさん:2007/06/27(水) 21:52:24 ID:SusYq7.U0
おお、21Rさん!
忘れるなんてとんでもない、作品楽しみにしてますよー。
・・といっても、前スレの500以降から時間が無く読めず・・。
でもこうやってスレが続いてるのを見ると嬉しくなります。
前スレをさーっと名前だけ見てみたんですが、ドギーマンさんが執筆してないような・・。
また帰って来るのを願ってます。

9名無しさん:2007/06/27(水) 21:56:09 ID:Fx/7bEY20
qw

10名無しさん:2007/06/27(水) 22:34:44 ID:bBn8LyvQ0
スレ違いかもしれませんがエロ系の別スレを教えてもらえないでしょうか?
過去ログの中から見つけられず更に下心満載な頼みで申し訳ありません
どうかお願い致します

11七誌:2007/06/27(水) 22:38:57 ID:8cEwt8B.0
荒れ防止のためのsage進行

12名無しさん:2007/06/28(木) 00:07:31 ID:xcYyRIP60
毎日が忙しくて前スレから小説を全く進めてない私が居る・・orz

13NT:2007/06/28(木) 03:07:49 ID:Hxl1wA1g0
―私には恋人がいた。
とても優しく、私のことを大切にしてくれたのを覚えている。
でも、彼は6年前にいなくなってしまった。
今、私のそばには「彼」がいる。
…彼は私のことをどう思っているのだろう?



彼は寝ている。
今日の見張りは私の役割だ。
適当に周りを警戒しつつ、物思いにふけっていた。
…彼のこと、復讐のことを。
そのとき、
「うぅ…」
彼が唸った。
私は彼のもとに向かう。どうやらうなされているようだ。
「大丈夫?」
一応聞いてみる、もちろん返答はない。
「うぅ…××××」
いま彼は何を言った?
理解できなかった。(理解したくなかった)
そして彼はまたつぶやく。
「行くな…行っちゃダメだ…ラミ…」
このラミは…
私だろうか?それとも彼のいう「昔の大切な人」の方なのだろうか?
前者なら私は嬉しいが、(何がうれしいのだろう?)
後者だと私は…
それに「行くな」とはどういうことだろうか?
私はどこにも行っていない。
ということは…
彼の中は昔のことでいっぱいなのだろうか?
だとしたら彼の中に私の入る隙間はないのでは…

ここまできて、私はマイナスの考えばかり持っていることに気づいた。
…このことは忘れよう。もしくは私の中に封印しておこう。
そう思い、彼を起こし、見張りを交代してから私は眠りに就こうとした。

ダメか…
今日は寝られそうにないかも。



―私の名前が決まってから一週間が経った。
「なあラミ。」
彼はあいかわらず私をラミと呼ぶ。
「なにかしら?」
私は答える。いい加減に慣れがくる。
「次の目的地はどうする?」
私たちは昨日、ビガプール南部付近にあった組織が使っていた旧支部を探索した。
収穫はほとんどなし。
でも一つだけ、
『ブリッジヘッド近郊の支部は各支部からまとめられた報告書を集めて本部に送っている』
という情報を入手した。
となると、行先は一つ、
「ブリッジヘッドの方へ行くわ。」
「ここからブリッジヘッドを目指すとなると…シュトラセラトから船か?」
「そうなるわね。とりあえずここから南にいきましょう。」
目的地はきまった。
私たちは歩きだした。

本来は早く着くために黙々と歩くが、会話がないのはいやだ。
だから毎日私は話題を振ることにしている。
彼と話をしていると楽しいから…
今日の話題は決めている。
いつか聞こうとしていたことだから。

14NT:2007/06/28(木) 03:08:14 ID:Hxl1wA1g0

今日は久しぶりに寝られそうだ。
こういうときは昔の夢を見る。
最愛だった彼女の夢を…


―うっ、うっうっ…
―どうしたの?なぜ泣いているの?
―誰…?
―僕は…正義の味方さ!
―正義の、味方…?
―そう、だから泣いている女の子を放っておけないのさ!
―・・・
―引かないで…ちょっと傷付くよ?
―…ふふっ
―?
―あはははっ
―いきなり笑うかな?
―ごめんなさい。でも面白い人ね。
―変な受け方をされた…まあ泣き止んでくれたならいいか…
―慰めてくれてありがとう。もう大丈夫よ。
―そうかい?苦労してネタを考えた甲斐があったよ。
―…ネタだったの?
―当然さ。正義の味方にはまだなっていないからね。
―…なるつもりなんだ。
―当然。男なら目指してみたいじゃん?
―私にはわからないなぁ。
―いずれわかるよ。…多分
―ねぇ、名前を教えてくれる…?
―ん?名前?
―そう。教えて
―僕の名前はレイ。将来は大盗賊ウィドのようになる男さ!
―えっ?家を継がないの…?
―…それは姉上達に任せた。僕には素質がなかったからね。
―…そう。私と一緒ね…
―?何か言った?
―ううん、なんでもない。
―ふーん。で?君の名前は?
―私の名前はラミ。よろしくね、レイ君。



これが彼女との出会いだった…
今でも鮮明に覚えている。
後から知ったことだったが彼女とおれの境遇はとても似たものだった。
そんな二人だから自然と惹かれていったのかもしれない。
もっとも俺は一目惚れだったが。
でも、
彼女は、おれの前から姿を消した…




彼女は歩きながら話しかけてきた。
「ねえウィド(ねぇレイ君)」
・・・また幻聴か、最近多いな。内の自分やこれなどたちの悪いものばかりだ。
「どうした?ラミ」
言った本人にも、幻聴にも大丈夫な返事をする。(幻聴を無視すればいいのに)
「あなたはどうして旅をしているの?(レイ君の将来の目的は何?)
・・・違う。今、俺は目の前にいるラミと話をしている。もう昔の彼女はいないのだから。
努めて幻聴を無視する。
「俺の目的か…」
「いやなら別にいいけど…(××××)」
彼女は様子をうかがっている。
 (・・・俺をレイと呼ぶな。そんな奴はもういない。)
いやな雰囲気ならすぐに話題を変えるだろう。
でも、ここは言うべきか。
「おれの目的は…しいて言えば復讐になるのかな。」
彼女は驚いた表情になった。
「それは…昔の大切だった人の?(××××)」
彼女が聞いてくる。
 (・・・だから、もうレイという臆病者はいないのに、なぜその名前で呼ぶ?)
俺は幻聴を無視して答えた。
「いや、違う。俺は故郷や家族を奪われた。その復讐であって彼女は関係ない。」
彼女は困惑している。
「でも、故郷がないならその彼女は…(××××)」
普通そう思うよな。
「故郷が消える前におれの前から姿を消したから・・・」
半分嘘の真実をいう。
「…そう(××××)」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
暗い話題だ。自分でも嫌になる。
そして彼女はこの雰囲気をごまかすために走り出した。

幻聴はまだ聞こえる・・・
この幻聴はあれだろうか?
彼女が俺に罪を償え、と言っているのだろうか?
それとも俺に復讐をしろ、と言っているのか?
・・・ばかばかしい
ただの思い込みだ。
彼女がそんなことを言うはずがないのは俺が一番よく分かっているはずなのに…
気分を紛らわすため、彼女に追い付くために俺は走り出した。

15NT:2007/06/28(木) 03:15:40 ID:Hxl1wA1g0
正直驚いている。
彼の目的が復讐だということに。(でも薄々…)
なんだか彼と私は似ている気がした。
でも昔の「ラミ」はどうしたのだろう。
いなくなった…?どういう意味だろうか。
聞きたくても聞けるような内容じゃないし…
というか、この話題を振って雰囲気を壊した自分が嫌になる。
もっと明るい話題にしないと…
ちょうど彼も追い付いてきた。
そして何か話そうとして、
「さっきのお返しだ。ラミが旅する目的を教えてくれ。」
先手を打たれた。

・・・またそんな暗い話題を。
私はただ貴方と明るく話していたいだけなのに。
まあいいか。彼には嘘や隠し事はあまりしたくない。
「私の目的は、私の村、家族、すべてを奪った「あれ」に復讐することよ。」
私は言った。
「もうめどは付いている。もうすぐ叶う…」
「そうか…」
でも、
「で?終わったらどうするつもりだ?」
そんな彼の一言で私の中の全てが止まった。
「終わったら・・・?」
私は聞いた。
「そうだ。目処が付いているならなにも復讐で人生のすべてを使うことはないだろう。
復讐が終わったらどうするつもりだ?」
彼はもう一度聞いてくる。
・・・
考えたこともなかったし、
「考えたくない。それにそんな未来のことは分からないわ。」
私は率直に言った。

復讐が終わる?
そんな後のことを今から考えて何になるというのだろうか?
私はそんな他のことを考えている暇はないのに…
私は復讐者。
それ以外には何も望んでいない。

…でも
この旅が終わった時、彼はどうするのだろう?
できれば、私と一緒に…

「貴方はどうして私について来るの?」
話題を変えてみた。
彼は考え込んでいる。
…何で考え込む?まさか三年もくっついてきたくせに理由がないわけじゃないだろうな?
ふざけたこと言うとぶっとばすわよ?
でも違う理由だったらどうしよう…
(例えば…××××とか…
恥ずかしすぎる…)
気が付いたらいろいろ妄想していた私…
どうしようもないな…私は。
でも本当にそうだったらいいのに。ちょっと期待してみよう。
そしてたっぷり一分悩んだ彼はこう言った。


「…なんとなく、目についたから?」


…期待した私がアホだったか…

よし、殴ろう。

16NT:2007/06/28(木) 03:16:08 ID:Hxl1wA1g0
「…」
「…」
今、俺は彼女が繰り出した高速左フックのダメージを癒しながら歩いている。
右は避けれたのだがな…
というかここまですることはないだろうに。
それにしても左右の連携が見事だったな。あれだけでも世界を狙えるぞ…
そんなことを言ったらもう一回来るのがわかっていたから言わないが。
本当のことなんて言えないからな…
ここはこれでよかったと思う。代償は大きいが…
彼女は今日は機嫌を直してくれないだろう…

それにしても、
先ほどの会話を思い出す。
考えたくない…か。
彼女はそういった。まあ予想していた答えだ。
だから俺は何も言わない。
そこを考えるのは彼女自身だからだ。
でも、
彼女はやはり覚えていないのか。
自分の罪を…
それは、許されることなのか?
…でも、
できれば、忘れていたままでいてほしい…
彼女が真実を知ったとき、
彼女はどうするのか、俺はどうするのか、
正直な話見当もつかない。
(というか、なぜあんなことを聞いたのだろうか?)



いつものように内の俺が話しかけてくる。
(なあ俺)
なんだ?
(いつまで様子を見ているんだ?)
時期を見ている最中だ
(時期をねぇ…)
信じていないのか?
(なぜそう思う?俺は俺のことを完全に信用しているさ)
信じているならもう少し待て
(ふぅ)
…なんだ?
(正直に言おう、そんなに過去を捨てたいか?)

(俺にとって過去はそんなにいらないものか?)

(嫌なことはあったかもしれないが本当にそれだけだったのか?)
あるさ…俺は、最愛の人と会ったからな
(ならば矛盾していないか?俺)
お前こそ、本当にわかっているのか?
(お前とは心外だ。「俺」は俺だろうに?)
だから、お前は本当に俺が言ったことを理解しているのか?
(わかっているさ)
なら…
(つまり、俺は××××)
!!
(そんなことは許されない。すべての人は平等だ。)
…消えろ
(頼むぞ、俺。そんなことはあってはならないのだからな)
…だまれ、消えろ。
(そんなに嫌なら、俺が代わりにやろうか…?)


「さっさと消えろ!」
「?、どうしたの?」
彼女が起きている。
…声が出ていたか。
「なんでもない。ただの独り言さ。」
探られないように慎重に返す。
「…そう。顔色が悪いわよ、大丈夫?」
「…少し気分が悪いかもしれない。」
「わかったわ。少し早いけど見張りを交代しましょう。あなたは少し休むべきだわ。」
「…悪い。」
ここは素直に従うか。
このまま考えていてもろくなことを思いつかない。



だが本当に俺はどうすればいい?
俺は、自分が内の俺の言う通りの最悪な人間だということはわかっている。
でも、それでも…

17NT:2007/06/28(木) 03:34:10 ID:Hxl1wA1g0
to be contined…

この話は前スレ>>987-990の続きです(現在4話目)

これを入れ忘れたorz



皆さんこんばんは。NTです。(こんな時間にだれもいないだろうが)
五冊目一番乗りをESCADA a.k.a DIWALIさんに奪われてしまいました…
狙ってたのに…

ESCADA a.k.a DIWALさん
お初です。
なかなかいいノリの話ですね。でも何か裏があるのかな…?
そのあたりとミリアのハイテンションぶりを次回に期待します(笑)
あとこのスレでは基本sage方針でお願いしますね。

21Rさん
…後光が差して見えます。
はじめまして。NTと申します。
実はあなたの過去の作品を見たのがきっかけで今投稿をしていたりします。(見たのは最近ですが…)
リアルが忙しいかもしれませんがこれからも頑張ってください。

…大したことが言えない自分に嫌気がさしましたorz



無駄に大量に裏設定をしたせいで只今構成に苦しんでおります。
そんな私の駄文ですが生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
ではまた今度。

18名無しさん:2007/06/28(木) 08:03:29 ID:RlYChs6M0
>ESCADA a.k.a DIWALIさん
初めまして!私も同じくこんなスレ知らなかった人の一人でした(笑)
明るくて陽気なストーリーがとても面白そうです。キャラの個性も出ていますし。
勝手な個人的イメージで申し訳ないですがビショップが温厚っぽく感じないというのも意外でした(笑)
しかし、何か事件の幕開けのようですね。続きお待ちしています。

>10さん
実は私も探してみた事があります(笑) も、もちろん後学のために。
しかして見つかったのは過去ログのみ。
恐らくは現行スレのようなものは無いと思います…。書き手さんが居れば立ってくれるかも知れませんがorz
過去ログはこちらです→ http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1123846043.html
力になれたかはわかりませんが、こんな感じです。

>NTさん
ラミ嬢の方はほのかな恋愛感情みたいなのが芽生えてる感じで読んでて私まで(*´д`*)になってしまうのに
ウィド君…レイ君と言うべきなのだろうか、こちらは隠している事がまだあるような感じですね。
特に自分自身との対話での×で消された文字列が大変気になっています(笑) 予想が膨らんでいく…。
何も知らない事と全てを知っている事、どっちが辛いのでしょうか。
生暖かい目で見守らせてもらいます!

19◇68hJrjtY:2007/06/28(木) 08:04:28 ID:RlYChs6M0

コテハン記憶忘れましたorz
68hの提供でした。

20ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/28(木) 11:05:17 ID:OhTl4zsk0
早速続きを書いてみようかな。


Episode02-ハードコア・ハイテンション〜歩く台風、登場〜

追放天使のコーリングによって、フォーリンロード最寄の港湾都市シュトラセラトへ到着したミリア一行。
天使はこれから彼の妻子と外食をするらしく、ここで別れる事となった。
「じゃぁ、気をつけてな!危なくなったらコイツを呼ぶといいぞ。」そう言い残し、ミリアに一枚の紙切れを渡すと
亜空間のトンネルへと姿を消すのだった。すぐさまミリアは紙切れを開き、中身を確認した。
「え〜と・・・『何かあったらアタシに耳ヨロ、すぐ飛んできます!うっひゃっほ〜い!by猛獣女王フィナーア』?どこかで聞いた名前かも・・・」
「『猛獣女王フィナーア』ですか・・・とんだ大物が来ましたね。」バーソロミューが戦慄した表情で語り出した・・・。
「え、そいつのこと知ってるの?バーソロミュー」ランサーが間髪入れずに質問した。
「知ってるも何も、彼女は伝説のビーストテイマーですよ!?そもそも知らない方がおかしいです!とはいえ、彼女に会う機会が
 ここで得られるとは僕も幸運なものですね。是非とも彼女の力をこの目で確かめたいものです。」
どうやら探求欲の強いバーソロミュー、未知の冒険者に期待を寄せ、目を輝かせていた。
「でもそのフィナーアさんとやら、あまりいい噂が無いっぽいぜ?ある人が言うにゃ、アリアンの酒場を一晩でパンクさせたとか
 コロッサス相手に奇妙な足技をキメて瞬殺したとか・・・まさに猛獣女王だな〜こりゃ。」
シーフのエディがフィナーアの噂話をしていると、街の路地から「キャー!」という悲鳴が聞こえた・・・!
「何か事件があったみたいね・・・!ミリアちゃん、皆、行くわよ!」「あぅ〜待ってぇ〜!」「もう〜正義感が強いんですから!」
ラティナが率先するその後に続いてミリアやエディ、バーソロミュー、剣士のトレスヴァントが追いかけていった。


「おぅコラ、ワイのズボンにアイスクリームが付いちまったやないか!?これ高いんやで〜?どないしてくれとんじゃこのクソガキぁ!!」
ゴロツキと思われる男どもが7〜8人、怯えて泣きじゃくる子供と彼を庇う母親を前にすごんでいる・・・。
「どうか・・・どうかうちの坊やには手を出さないで!おねが・・・」「うるせぇんだよっ、このアマぁ!!すっこんでろやぁ!」「あぁっ!」
必死に訴える母親、しかしゴロツキのうちの一人がそれを遮り、彼女を殴り飛ばした・・・!
「ほ〜らボクちゃぁ〜ん、早く謝らへんと痛い目見ることになるんやで〜?あないな風になぁ・・・!?」
あまりの迫力に当の子供は「うぐっ、ひぐ・・・えぅっ」と嗚咽を漏らす程に恐怖していた。
そこへラティアやミリアたちが到着した。すぐさま状況を把握するや否や、こぶしを握り締め
ゴロツキたちに向かおうとするラティア・・・すると彼女を制止する手が伸びた!
「危ないから、ここはアタシに任せて・・・!」一人のビーストテイマーが呟いた。

21ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/28(木) 11:49:33 ID:OhTl4zsk0
「ヘイヘ〜イ、そこの悪人ヅラしたゴロツキたちィ!子供相手にガン垂れてんじゃないよ!」
陽気な笑顔を引っさげて、齢20代前半と思われる一人のビーストテイマーがゴロツキたちの前に仁王立ちする。
「何じゃワレぇ!?ワイらここら辺一帯をシメとるんやで!?喧嘩売ったら最後、ミンチになるまで復讐したるで〜!?」
「あ〜そいつァ無駄無駄。アンタらなんかよりもアタシは10億倍は強いからね、ニヒヒ!ファッキュ〜メ〜ン?」
不敵な笑みを浮かべ、彼女はゴロツキのリーダー格を、中指をおっ立てて挑発した。言われた相手の額には青筋が・・・
「おんどれぇ・・・ワイを真正面からこけにしたんは己が始めてじゃ!そんでワイにブッ殺されるのもなァ〜!」
「ふ〜ん、生き物をヤったこと無いんだ〜?・・・・話にならないね!」そういうと、ゴロツキが手にしたドスを
目にも留まらぬ速さで蹴り上げ、さらにそこから逆立ちし、回転して周りのゴロツキを文字通り一蹴した・・・!
「冒険者をナメちゃいけないよ、修羅場をくぐり抜けて来たんだから・・・!」そう言いながら彼女は腰を低くし
リズムに乗って腕を振り、足を交互に動かしステップを踏んでいた。
「うわぁ、あの女カポエィリスタかよ。なんつー華麗な足技・・・」エディが感嘆の声を上げる。
するとビーストテイマーはミリアたち一行を振り向きざまに見ると、こちらへと駆け寄ってきた。
「あ、ねぇねぇ、あんたミリア?ミリアでしょ!?久しぶり〜、お姉ちゃんだよ〜。覚えてる?」
「あ〜、お姉ちゃ〜ん!久しぶり〜ミリアはちゃんと修行してるよっ、フィナーアお姉ちゃん!」
ミリアの一言に周りが急にどよめきだした・・・!何とミリアの姉が猛獣女王フィナーアだったのだ!
「ん?こいつら皆あんたの仲間かな?姉のフィナーアです、よろしこ〜。」「よ、よろしく、おおお願いしますっ!」
相手が伝説の大物とあって緊張しない訳がない、少しテンパりながらも挨拶するラティナ。
「どうもよろしく〜。・・・しかし、何だってあの猛獣女王がこんな所に?」トレスヴァントが尋ねた。
「ん〜、可愛くて萌え萌えな妹に会いたくなってね〜。成長ぶりも確かめたくてここで待ち伏せしていたんだ〜、ニヒヒ!
 でもさ〜、あんたもいい年こいてその喋り方とかどうよ?・・・って、あんたまだ15歳だったっけ?じゃぁ子供子供〜!」
「やぅ〜、ミリア子供じゃないもんっ!お姉ちゃんのイジワルぅ〜、ぷん!」頬を膨らませて怒るミリア。
「あはは、メンゴメンゴ。でもでもっ、そんなミリアたんも可愛いなぁ〜!あぁ〜妹バンバンザイ!」
これでもかとばかりにミリアに抱きつく姉のフィナーア、その姿からはとても伝説の冒険者とは想像もつかない。
「やぁ〜ん!くすぐったいよ〜お姉ちゃん〜!・・・やぅ、そこはダメぇ〜!」色々な部位を弄られて、ミリアは
顔を真っ赤にしてジタバタしていたが・・・エディをはじめとする男たちは、フィナーアの大胆なスキンシップに
鼻を伸ばして見入っていた。とはいえ、楽しい時間も長くは続かないのが世のセオリー。ラティナが大きく息を吸うと
『喝(かああああつ!)』と気合を込めて叫び、男たちを現実に引き戻した。

夜。
高級ホテル『オクトパス』に宿泊することとなった一行。
ホテル内の大浴場、その中にあるサウナでラティナとフィナーアが汗を流しながら語り合っていた。
「まったく、女の子同士いちゃいちゃしてるのを観察するだなんて!男って皆こうなのかな?」
「そう固いこと言わないの。人生楽しく生きないと、これアタシのモットーなのよ。」
「・・・・そういう・・ものですかぁ?うぅ〜」少し照れたような表情を浮かべ、ラティナがうつむいた。
「・・・ラティナちゃん、あんた好きなやつがミリアのパーティの中にいるんじゃないの?」
フィナーアが突っ込みを入れると、いきなりラティナの頭から蒸気が噴き出した!
「あああああたしに好きな男なんて!いいいいないですよ〜!おお男なんて皆おバカなんだからっ!」
「とか何とかいってぇ、誰かのことが好きなんでしょ?アレかな?ラティナちゃんみたいのをツンデレっていうのかな?」
「・・・・いいですよ〜だ、あたしなんかツンツンで意地っ張りですよ〜だ。」ラティナはいじけてしまった。

22ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/28(木) 12:14:24 ID:OhTl4zsk0
「はぁ〜、ラティナちゃんも相当な頑固者ね〜・・・露天風呂行こうっと♪」
気を取り直して、軽やかな足取りで露天風呂へと向かうフィナーアであった。

一方、男側の露天風呂・・・
「・・・・おい、どうよ?柵の高さはどうだ?」「たいして高いもんじゃないな〜、女の子の裸を見るためなら〜♪」
「あのですね、女性の裸体を見るために覗きを働くだなんて不純ですよっ!」バーソロミューが顔を赤くして憤慨する。
「またまた〜、んなこと言っといて、ホントはお前も見たいんだろ〜?このムッツリく〜ん!」
「かか、からかうのはよして下さいよトレスヴァント!とにかく、僕は絶対覗きなんてやらな・・・」
「あらあらぁ〜?そんなこと言ってちゃ子供もろくに作れないぞぉ〜、ミューたん?」
いつの間に柵を超えてきたのやら、タオルも巻かずに裸一貫のフィナーアがその場にいた・・・。
「うわっ、うぁあぁああ!失礼しました〜!」パニック状態に陥り、すぐさまその場を立ち去る
バーソロミューであった。しかし、エディとトレスヴァントは突如訪れたこのうれし恥ずかしいハプニングを
すんなりと歓迎していた。「うぉ〜、フィナさん乳でけェ〜!」「てかあんな所初めて見たぞオレ」
「いいわよぉ〜、もっとアタシを見てぇ〜!」腰をくねらせセクシーポーズをキメるフィナーア。
男2匹、鼻血を垂らしながら彼女のエロエロパフォーマンスに興奮しまくったのであった。
「神様どうもありがとぉ〜!!!」狂喜の叫び声が深夜の港町に木霊した・・・

戻るは女側の露天風呂・・・
「もぅ・・・トレスヴァントのバカ!えっち!・・・・(アタシに・・・振り向いてよね?)」
心の中で呟くラティナなのであった。

To Be Continued...


>NTさん
はじめまして、感想を頂けて嬉しいです。
裏なんかはなく、純粋に明るく楽しい作品にしたいと思います。
NTさんの小説も見てみましたが、とても繊細で美しい作品だと思います。

・・・隠された人物の名前がすっごい気になる;;

>名無しさん
こういうストーリーは書いていて楽しいです。
BISのキャラクターは、無骨だけども粋で優しいおやっさんキャラみたいなかんじです。

23◇68hJrjtY:2007/06/28(木) 16:29:20 ID:RlYChs6M0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
名無しこと68hです(笑)
やっぱり書いてて楽しいっていうのが一番最高ですよね。気持ちが分かります(笑)
家族みたいなパーティメンバーの騒ぎっぷり、強盗との丁々発止ぶりが楽しいです。
フィナーアもなんだかちゃっかりパーティに加わってしまってますし(笑)
書かれるペースが早いですね、続きお待ちしています。

2410:2007/06/28(木) 22:27:40 ID:bBn8LyvQ0
>18さん
有難うございます
おかげで妄想が・・・w

252/1:2007/06/29(金) 16:36:20 ID:W9iHsBn.0
はじめまして、です。
コメントは何度かしてましたが、職人さんのレベルが高すぎてなかなか投稿出来ず…
今回漸く決心して、投稿してみます。シフ×姫(+アチャ)のシリアス長編です。
時間を持て余した時の暇潰しにでも、読んで頂けたら幸いです…
では、宜しくお願いします。

+++++++++



『6月の雨』





-1-


泣き出しそうな空は今日も私を笑っている。
だから梅雨は嫌いだ。




日に日に変色して行く紫陽花を、憎しみの篭った眼で見詰める。
今日も空はどんよりと曇っていて、憂鬱な気分に拍車を掛けた。
一年前のあの日を思い出してしまいそうになりキツク目を閉じても、降り出した雨の匂いが鼻をついて嫌でも記憶がフラッシュバックしてしまう。




化け物
滅亡の前触れ
前王に掛けられた呪い

変身能力を要する私に、掛けられた罵倒の言葉。
それでも、どんな言葉を投げつけられても母が居れば平気だった。
泣き出す度に母は優しく抱きしめて、私の背中を、それは子供をなだめる様にとんとんと叩き、大丈夫、大丈夫だよと泣き出しそうな顔で微笑む。
今になって思えば、母は私が変化してしまう所を見た事が無かったので優しく出来たんじゃないかとも考えられるのは、私の性格が捻じ曲がっている所為だろうか。

262/2:2007/06/29(金) 16:37:56 ID:W9iHsBn.0
うわ、名前間違えました。2/1じゃなくて、1/2の間違いです…orz
続き投下します
++++++++++


「…っいや、来ないで」




かつて見たことも無い母の歪んだ顔
愕然と見開かれた眼は恐怖そのものを映していて、
薄っすらと開いた薄い唇からはカチカチと歯の音が鳴り、
来ないでと懇願する声は最早母の声とも区別が付かなかった。


そして母が見ているのは、紛れも無く私だった。




案外絆なんて物は脆いものだとあの時私は知った。
それは例え、友人だろうと、恋人だろうと、ましてや実の母でさえ、あっさりと切れてしまうものだ、と。


怯え慄く母を尻目に、チラと鏡を見遣った。
小さかった背がすらりと伸び、肩程までの髪は何時の間にか腰まで伸び高く結われている。
そして何より顔だ。怜悧な鋭い双眸は青く光り、睫はナクエリマ帝國伝統の扇の様。頬は仄かに薔薇色で、肌は陶磁器の様に白い。足の指の先から髪の一本一本まで、完成された美。
見たことも無い様な美貌。戦慄すら覚える程、それは美しすぎて怖ろしかった。
かつての面影などまるで残っていない。この姿に畏怖するのも仕方ないといえば仕方ないのだろう。


ゆっくりと母に向かって歩みを進める。ヒ、と小さく声を漏らし母は一層震え上がった。

もう、無理なのだ。

互いにこんな姿を見ては、絆なと元に戻らないのはとうに解っていた。



「ごめんね」

小さく口の端を不自然に歪めて何とか笑みの形を作ると、私はそう言って踵を返した。

泣くものか。
この、広い城の中でだけは、絶対に泣くものか



全速力で城の中を走る。途中義姉にぶつかったが、姉も母と同様に鋭い叫び声を上げてその場にへたり込んだ。
私はそんな義姉に目をくれる事も無く、小さな痛みだけ胸にチクリと刺さりながらなお走る。
使用人の通用口を飛び出し、城の外に出ると振り出しの雨が土を濡らす匂い
何もかも失った。もう、帰る所さえ無い。

不自然に歪めていた、顔の笑みを消すのを忘れていた。
ずっとこの顔で走っていたのだろうか。
そんな自分に嫌気が差して、同時に滑稽で仕方なく、声を出して、笑った。
笑いながらも、青い瞳からぽろぽろと零れ落ちる涙は、雨と同化して姿を見えなくする。
土の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、私はまた走り出した。



++++++++++++++++

無駄に長いです、シリアスなので読んでて疲れるかも…
コメントやリクエストなど、頂けたら飛び上がって喜びます。スレ汚し失礼しました。

27◇68hJrjtY:2007/06/29(金) 19:00:39 ID:RlYChs6M0
おお、新スレになってから新規書き手さん増えて嬉しいです(n‘∀‘)η

>26さん
初めましてです。投稿ありがとうございます。
でもそんなに躊躇せずに気軽に書いちゃってください、あなたのメモ帳くらいの勢いで(笑)
しかし、いきなり謎めいていて暗澹としているのが妙に引き込まれてしまいます。
姫がリトルウィッチに変身してしまった、という感じでしょうか。確かにあの変貌ぶりはある意味怖いかもしれませんよね…。
今後アチャ嬢やシフ君がどこに絡んでくるのか…楽しみにしています。

28ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/29(金) 20:24:10 ID:CHbQ7pCA0
Episode03-Death13 Crew〜忍び寄る不穏な影〜

港湾都市シュトラセラトの朝、港付近の市場では威勢のいい売り文句が飛び交い、カモメが弧を描き飛んでいる・・・
街一番の高級ホテル『オクトパス』で一晩を過ごした、ビーストテイマーのミリアン・ウォンと彼女の仲間たち。
時刻はAM7:40分、ホテル3階にあるレストラン街で朝食を取ろうと部屋から出てきたところだ。
「ん〜流石は高級ホテルねぇ〜、フランデルでも有名なレストランが勢ぞろいだわ〜!」ミリアの姉、フィナーアが歓喜する。
「ねぇねぇお姉ちゃん、ミリアねっ、あそこのレストランで食べたいの!」姉のローブを引っ張ってミリアがおねだりした。
「いいわよ〜可愛い妹の頼みとあっちゃ聞いてあげないわけにはいかないわね、ゴーゴー!キャッホ〜!」
妹に対してのその溺愛っぷりに、ランサーのラティナらミリアの仲間は少々呆れ顔だった・・・。
「ヒソヒソ・・・(ねぇバーソロミュー、ほんとにあの人が伝説のビーストテイマーなの?どうも普通のお姉さんにしか見えないのに)」
「ゴニョゴニョニョ・・・(わかりませんよ、彼女の名がフィナーアである以上は疑う余地もないですし・・・)」
「ヒソヒソ・・・(アレだよミュー、ギャップ系さ。いざバトルになったらバカ強みたいな!そういうの良くね?)」
「ゴニョニョ・・・(いいこと言うね〜エディ!ってかフィナ姐ってエロカッコイイよね?オレなんか昨日ぱふぱふしてもらっ・・・)」
「クァーッ・・・!(ななな、何してもらってるのよアンタはァ!?トレスヴァントのえっち!おっぱいに挟まれて窒息死しちゃえ〜!)」
「カッ・・・・!(な、何だよぉ〜・・・何ムキになってんだよ、オレだってそういう年頃なんだよっ!別にいいじゃんよ〜)」

・・・と、ひそひそ話に興じる(?)ラティナとバーソロミュー、エディにトレスヴァント。するとそこへ、フィアーナが割って入ってきた。
「あらあら〜?何の噂話をしてるのかしら?あっ、ひょっとしてアタシのこと!?アタシってそんなにセクシ〜?やっだぁ〜アタシ照れちゃうわぁ〜」
勝手に話を捻じ曲げ、挙句の果てには自己陶酔にまで至る始末・・・。ラティナ達のの呆れ顔はますます深みを増すのだった。
「お姉ちゃんってばぁ!早く朝ごはん食べようよ〜、ミリアもうお腹ペコペコなんだからね〜!」「あ、ごめんね〜お姉ちゃん反省反省・・・」

「(・・・この人、大丈夫かな?)」ミリア、フィナーアを除く4人は同時に、同じことを心の中で呟くのであった。


一行が入ることを決めたレストランは、ブリッジヘッドの海鮮料理を扱う人気店『Caipilinha(カイピリーニャ)』だ。
「カイピリーニャですか、僕もここの海鮮料理は一度食べてみたかったんですよね。でもお金は大丈夫ですかね・・・誰が支払うんですか?」
「あ〜んミューたんたら生真面目なんだから。大丈夫よ!これでもアタシ、結構お金持ってるのよ?」そう言いながら、グイッと服の胸座を引っ張り
胸の谷間から札束をひとつ、引っ張り出した・・・!この光景には誰もが仰天し、目を点にして赤面していた・・・。
「え・・・えと〜、フィナーアさん?お財布とか持ってないの?というか、何で胸の谷間に入るんですか?」
赤面したままラティナが質問したが、当のフィナーアは「気にしな〜い気にしな〜い」と受け流すのだった・・・

「ん〜、このツナとカニのシーザーサラダ旨いな!おかわりイケるぞ?」「あぅ〜、それミリアが食べてるんだからぁ〜!」
「こらこらエディ、ミリアちゃんのお皿から勝手に取っちゃだめでしょう!」「いや〜ん困ってるミリアたん可愛いィ〜!萌え〜!!」
「もうフィナーアさんたら、ミリアちゃんにベタベタなんだから・・・」「ちょっ何コレ!?オーガの上腕部の筋肉丸焼きィ!?姐御おごって〜!」

楽しく賑やかな会話が、朝のレストランに心地よく響くのであった・・・。

29◇68hJrjtY:2007/06/29(金) 22:59:01 ID:RlYChs6M0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
面白い、面白いのにサブタイトルが「忍び寄る不吉な影」(笑)
おっぱいに挟まれて窒息死しちゃえで笑っちゃいました。こういうノリは(・∀・)イイ!!
というかフィナさんは本当に謎に包まれ過ぎですね。姐御って感じのようなそうでもないような(笑)
キャラが複数いるのにほぼ全員存在感が失われてないっていうのも凄いと思います。
続きお待ちしています!

しかし、オガの腕の丸焼き…うっ(・x・;)

30ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/30(土) 10:23:01 ID:OhTl4zsk0
続きですよ〜

一方、場所は変わって繁華街からかなり離れた距離にあるスラム街・・・
壁にはF**KやB**C*などの汚いスラングや、いかがわしい性俗的な落書きが所狭しと描かれている。
住人たちも麻薬中毒患者や貧困層、窃盗で日々を生き抜く孤児など、希望無きものが
生気を失ったまま荒んだ生活を送っている・・・そんな場所でのこと。

昨日フィナーアに蹴り飛ばされたゴロツキたちは、ある男・・・いや、魔物の前に立っていた。
魔物の周りにには取り巻きと思われるエルフたちが3〜4人ほどいたが、彼らの表情は何かを悔いるように
曇り、少しうつむき気味であった・・・。巨大な鎌を手にした魔物、ウェアゴートが口を開いた。
「よォ人間のダンナ〜。おめえ昨日、たかが女一匹に蹴り一発でのされたんだって〜?どういうことかなぁ?」
不気味な笑みを浮かべ、開いた口からよだれをボタボタと垂らしてウェアゴートが問い詰める・・・
「すす、すんません!せやかて、あの女が強いやなんて思いもせぇへんかったんや!堪忍して下さい〜・・・」
「まぁ予想外の事態ってーのは世の中どこでもあるもんだわな。俺様は優しいからな、チャンスをやろう・・・」
「お、おおきに!失敗はもうしません!で、ワイら何をすればええんでしょうか、ザッカルさん」
ゴロツキたちのリーダーが、ザッカルという名のウェアゴートに聞き返した。
「いい意気込みだ・・・昨日おめぇらを蹴り飛ばしたクソ生意気な女を拉致ってこい。失敗したら・・・
 その時ゃどうなるか知らねぇわけでもあるめぇ・・・俺様の異名を知っているならなぁ?」
「・・・くく、『首狩りのザッカル』・・・『歩く断頭台』、あんさんの異名は各地でも有名でっせ。」
「ん〜、お利口さんだね〜人間のダンナぁ。俺様の生首コレクションになりたくなけりゃ、とっとと行くんだな!」
「ははは、はいぃっ!」ゴロツキたちが一斉に声を挙げ、すぐさまその場を後にした・・・

「猛獣女王フィナーアか・・・面白れぇ、相手が伝説だろうと知ったこっちゃねぇな。俺様率いる裏ギルド
 『Death13 Crew』・・・売られたケンカは高く買うぜぇ〜?・・・っくくく、久々に首を狩れそうだぁ」


場所は戻り、再び高級ホテル『オクトパス』。
ホテルでのチェックアウトの手続きを済ませ、朝食を摂ったミリアら一行はホテルを後にするのだった。
「ふゅ〜、デザートおいしかったぁ〜!お腹いっぱいパワー満点!エルフ暗殺者を捕まえにいくぞぉ〜!」
両腕を空高く掲げ、エルフ暗殺者の捕獲に意気込むミリア。仲間たちも彼女に賛同し、「おーっ!」と
腕を振り上げるのだった。そしてフォーリンロード側へ向かう街の出口へと差し掛かった時だった・・・!
例のゴロツキたちが入り口付近を通せんぼし、ミリアたちを待ち伏せしていたのだ!

「よ〜、また会ったね〜?昨日はよくもフザけた真似してくはったな、お礼参りさせてくれへんか〜?」
ガンつけ顔で肩をいからせながら、ズイズイとゴロツキのリーダーがフィナーアに詰め寄る。
「や〜ん、アタシしつこい男は嫌いよ!でもベッドインした時にしつこい男は好きよ?うふふ」
さりげなく下ネタを交ぜながら、飄々とした風に言い返すフィナーア。周りは当然赤面していた。
「くっ・・・このアマァ、調子くれてんやないでぇー!?」怒号を上げると同時に、懲りずにドスを手に
フィナーアを刺そうと男が向かってきた・・・!

ミリアが叫んだ。
「お姉ちゃん避けてぇ―――っ!」

31ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/06/30(土) 11:42:00 ID:OhTl4zsk0
ガキィン!と、刃と刃の交わる音が響いた・・・!
フィナーアにドスが刺さる一歩手前、ラティナが自らの槍で短刀をブロックしたのだった。
彼女の手にする槍は、一般のランサーが使うそれとは明らかに異なる。東洋の文字らしき装飾が入った、偃月刀のような槍。
「げ、アニキぃ!この女・・・『蒼龍のラティナ』ですぜ!?」ゴロツキの部下が戦慄しながら言う。
「・・・今更怖気づいても駄目よ?あなた達の粗暴な行いには正直腹が立ったわ・・・!」静かに怒りを燃やし言い続けた。
「悪いけど、ここで寝ていてもらうわ・・・・ハイヤぁーっ!」槍を一振りしたと同時に、驚異的なスピードで駆け出した!
ゴロツキたちの背後に回るまでに1秒もかからなかった・・・しかしゴロツキには何とも無いように思える。
「・・・ん?ははは、何をしたっちゅうねん姉ちゃん!?今のでワイらを攻撃したっちゅ・・・うっ!」
いきなり腹を抱えこみ、ゴロツキたち全員がその場にうずくまりながら悲痛の呻き声を上げた・・・。
「かっ・・・はっ!な、何じばったんや・・・でめっ、ウボエェアッ!」嘔吐物を吐きながら、男はラティナを見上げた。
「安心して、峰打ちよ・・・命が惜しいなら、そこで寝ていなさい・・・!」冷徹な視線でラティナは男を見下ろした。
その迫力にまいったのか、ゴロツキたちはそのままうずくまったまま、ミリアたちを見過ごしたのだった。
「・・・・・!う、うぅっ・・・か、敵わねぇ・・・」

するとどこからともなく、ザシュゥっ!と空を切り裂くような音が聞こえた・・・!
「おいお〜い、どういうことかなコレぇ〜?予想外とかそんな言い訳じゃ済まされねぇな〜」
ザッカルの声がその場に響き渡るが、彼の姿が見えない・・・。ゴロツキらは怯えきっている。
そしてまたザシュゥっ!と音がした後、何も無い空中がいきなり裂け、開いた亜空間からザッカルが姿を現した!
「・・・失敗したらどうなるか、わかってるよなァダンナ〜?もう許されねぇ、死刑執行だわな・・・!」
「うわぁー!や、やめてくれぇ!まだワイら死にとうないねんっ!なぁ!?このとおりや、許してやぁ〜!!」
しかし男の叫びはザッカルに届くはずもない。彼はそのまま巨大な鎌を振り上げ、勢い良く振り回した!
その場には無数の鋭い鎌居達が発生し、次々とゴロツキたちの首を刎ねていく・・・!
鎌居達が治まった頃、辺りには首の無い死体とおびただしい血痕が散乱し、おぞましい風景を作り上げていた・・・。
その中でザッカルはたたずみ、鎌に付いた大量の血をベロリと嘗め尽くし、至福に浸るのであった。
「なるほど、フィナーアだけでなく名のある奴らがあのパーティにいるわけだ・・・くーっくくくく、あぁ〜狩りてぇ、
 狩りてぇよぉぉ・・・アイツらの首をぉぉおぉお!狩りてぇよぉおぉおおおぉおぉぉお!」
発狂したザッカルの狂気じみた雄叫びが、スラム街に不気味に響き渡る・・・・


To Be Continued...

32姫々:2007/06/30(土) 18:52:32 ID:uqnx7QdM0
とりあえず遅れましたが新スレおめっ!
前スレ1000の白樺さん、即興で作ったような設定を
使ってくれてありがとうございます。

ていうか短編も書いてて面白かったんで「こんな設定で書いてくれっ」
ってのがあったら書いてみたいなとも思います。

てなわけで今回は挨拶だけ、タスカ完結編はもうちょっとだけ待っててくださいね、
今頑張ってるんで…。

33◇68hJrjtY:2007/06/30(土) 19:40:11 ID:c/vxkeGs0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ついにバトルシーンが…でもどこかギャグマンガを連想してしまうのはなんでだろう(笑)
関西弁な三下キャラも良い味出してますね。首狩られちゃったようですが( ´・ω・)
魔物がこうして人間社会に溶け込んでる(?)っていうのもRSならではの設定ですよね。
ザッカルvsフィナたちになるのでしょうか。続きお待ちしています。

>姫々さん
おぉ、リクエスト受付ですかそれは!?凄いなぁ。
ともあれタスカ編の執筆中とのこと、そちらに全精力を注いでください!
でもリクなんてもしさせてもらったら農家ネタが大好うわなにをする略

34姫々:2007/07/02(月) 05:06:00 ID:uqnx7QdM0
やっと完結編です、長かった‥‥‥。
何で回想でこんなに時間かけてるんだろうか‥‥、
あれもこれもあそこで妙な切り返しをしたのが拙かったのでしょうね。
さて、本音ぶっちゃけましたがとりあえず完結編です。
とりあえず中編みたいにぐだらない事を意識して頑張りました、多少
ましにはなってるとは思ってます。

>◇68hJrjtYさん シチュのお望みが分からないですがとりあえずリアル落ち着いたら武道家
         ネタ今度書いて見ますー。

では、始めます前スレ>946-950より続きます。


「ならば、私の前を行きなさい。私があなたを護ろう。」
「はい。」
交わす言葉は最小限。姿は見なくても、それがこの人がティエルドさんである証。
「ティエルドさん‥‥‥。」
「何だ?」
「私に村は救えますか‥‥?」
「力はある、後はタスカ殿、あなたの気持ち次第だ。」
生まれて初めて名前で呼ばれた‥‥。『力はある』と断言された事より、
そちらに驚いた。
「分かりました。」
「うむ。」
それからはお互いに、また無言で走り続ける。
何度か骸骨で出来たゴーレムなど、アンデットは出てきたけど、視界に入ると同時に
ティエルドさんが倒してくれたので、私は気にせず走り続ける事が出来た。
「タスカ殿、気をつけられよ。そろそろ敵の本隊だ。」
「はい。」
木々は焼き払われ、もはや身を隠す物は何も無い。ノヴァはこう言った、『敵の
目を見ろ、それで終わる』と。
「ティエルドさん、出切るだけ敵に近づきたいのですが。相手の総大将さんまで
 護っていただけますか?」
「分かっている。既に加護は施した。総大将のカルディアは深紅の鎧を纏ってい
 るから見れば分かる。」
「はい。」
もう後戻りは出来ない。‥‥いや、村を出た時点で既に戻れる場所は無かった、
けれど、敵がすぐそこまで迫っていると聞いて、初めてそれを実感した。
「見えた‥‥。」
敵まで大体150メートル、走れば30秒とかからないだろう。
「タスカ殿、すぐに向こうも我々に気づくだろう、覚悟は出来ているか?」
「はい。」

今さっき敵を見てその覚悟は出来た。折れかけた心はティエルドさんが支えてくれた、
タンと地面を蹴り、私は走り出す。後ろは振り向かない、涙で腫らした目なんか見
せる訳にはいかないから。
(「ノヴァ、信じてるからね)」
そう心の中で呟く、話した時間は殆ど無かったけど、『ケッ、あたしの力じゃねーよ』
と、悪態を付かれた気がした――。

35姫々:2007/07/02(月) 05:06:43 ID:uqnx7QdM0
・・・
・・・
・・・
私は悪魔の前に立ちはだかる、周りの骸骨は全てティエルドさんが相手をしてくれる、
悪魔の炎は全てティエルドさんが肩代わりしてくれる。
『おい――。』
悪魔が話しかけてくる、ここまで私は出切るだけ目を開けないように走ってきた、私
の能力は相手と眼が会った時に発動すると言っていた。信じれないわけじゃない、け
ど、何も起こらないのが怖かった。
『退け。』
肌にチリリと熱風が吹き付ける、ティエルドさんのおかげで殆ど暑くないが、その分
ティエルドさんには負担をかける事になる。
だから――
『退けと、言っているだろう』
「あぐっ‥‥!」
悪魔に払われたのだろうか、私は地面に叩きつけられてしまう。
「タスカ殿っ!――くぅっ‥‥」
何やってんだろ私、このままじゃノヴァに笑われる――。いや、呆れられるかな?
「‥‥‥」
私は立ち上がる、もう泣き言は言わない、覚悟は決めた。
『立ち上がるなら――』
そりゃ怖い気持ちの方が大きかったけど、意を決し、眼を開けた――。
・・・
・・・
・・・
―――、それからは速かった、私の眼を見た悪魔は突然苦しみだしたかと思うと、ポー
タルを開き、逃げて行ってしまったのだった。
その後は残党狩り、ティエルドさんが周りの骸骨を片っ端から壊して行き、戦いは
終わったのだった。
「戦いなんて、終わり方はいつもあっけない物だ。」そうティエルドさんは呟いていた。
「帰るか。」
「はい。」
ティエルドさんがポータルを開き、私達はその中に飛び込んだ。

PM.21:00 〜return〜

「ただいま戻りました。」
「タスカか、どうじゃった‥‥などと訊く必要もなさそうじゃの。ご苦労じゃった。」
私を見て、そう言葉をかけてくれる。
「お姉ちゃんはどうなりました?」
けど、私から出てきた言葉はそんな言葉、それを聞いてクーンさんは「ふむ‥‥」と
小声で呟いた後「明日には目を覚ますじゃろう」と言ってくれた。
「よかった‥‥。」
私にはそれだけが気がかりだった、けどそれも今安心に変わった。

「ティエルドさん、お疲れ様です。」
村の人がティエルドさんに集まっている。
「む?私は何もしていない。悪魔を倒したのは―――」
「ティエルド、ちょっとこちらに来なさい。」
「む?分かりました。」
そうやってティエルドさんを呼び出すと、何かを耳打ちしている。
「流石に‥‥、そんな事は無いと思うのですが‥‥‥。」
「村長であるわしなら言える‥‥、ある、と‥‥‥」
??、真剣な話をしているようだったが、私には何の話かよく分からなかった。ただ、
何度かクーンさんと目が会ったような気がした。

36姫々:2007/07/02(月) 05:07:21 ID:uqnx7QdM0
P.M.21:30 〜end and start〜

「うーん‥‥‥」
「どうした?」
「いや、俺のペットがさっきから何かに怯えてるんだ。」
「まぁ、あんな事の後だししょうがないんじゃないか?」
「そうかなぁ‥‥、さっきまでは普通だったんだが‥‥‥。」
「まぁ今日は大変だったな。」
「本当に。この村に被害が全くでなかったのが信じられないくらいだ。」
「はは、ほんとにな」
そうやって笑い会っている人たちはいても、涙を流している人は誰もいない。それだけで
、私の選択事は間違っていなかったと思えた。
「クーンさん」
一人の男の人がクーンさんに話しかける。
「今日の祭りはやっぱり延期でしょうか‥‥?」
「‥‥、いや、今日中にやってしまおう。精霊様も他の日に召喚に応じてくれるかどうか
 分からぬしな‥‥‥。」
「けど、セラ様があのような事に‥‥」
「大丈夫じゃ、わしとて伊達に村長はやっとらん、その位の力は持っているよ。皆も
 疲れているじゃろうが、祭りを始めようか。皆に伝えてくれ。」



お祭りはすぐに始まった。私はお姉ちゃんが召喚する訳ではないし、クーンさん達に止め
られたという事もあり、皆と一緒にお祭りを見ている事にした。
「――――φ」
ついさっきお姉ちゃんが召喚をしていたときと同じように、クーンさんが手をかざし、何
か呪文を唱えている。
「(お祭りって始めてきたけど‥‥‥、暇だな‥‥‥。)」
それが正直な感想。大切な行事というのは分かっているのだけれど、何となく興味が沸か
ないというかなんと言うか‥‥‥、とりあえずお父さんを探しに行こう、そう思ってその
場を離れようとした時、広場に歓声が上がった。―――まぁ精霊の召喚という事で控えめ
な物だったけれど、広間の炎は大きく燃え上がり、召喚の成功を知らせていた。
「凄い‥‥‥、奇麗‥‥‥。」
ついつい声が出てしまう、炎は空高く燃え上がり、周囲の魔力の収束はますます大きくな
っていく、魔力の光は周りを照らし、村は昼間のように明るくなっていた。
が、それから起こったものは異変‥‥だろうか?周囲に何故かどよめきが広がっている。
「何でだろう?」
初めてお祭りに来た私にとっては、何が起こっているのかわからない。
「(どうしたんだろう?)」
そう思った私は、周りの声に耳を澄ます。
・・・
・・・
・・・
「何で精霊様は降りてこないんだっ!!」
「やっぱりセラ様じゃないと‥‥‥」
「いや、炎を見ろ、召喚は成功しているはずだ‥‥」
そんな声が聞こえてきた、つまり召喚が成功しているのに精霊が降りてこない、そう言う
事だろう。
「何故我の召喚に応じておきながら降りてこぬ精霊よ。何の不満があるのだ、言ってみろ。」
クーンさんがそう叫ぶ。すると、しばらくして炎の中から声が聞こえた。
『ソノ娘ヲ、我ノ前カラ失セサセロ。』
「娘と?誰のことだ。」
その時点で嫌な予感はした。私は場を離れようとしたけれど、その前に精霊は話す。
『トボケルナ‥‥‥魔ノ眼ヲ持ツ、悪魔ノ少女ヲダ‥‥。』
背筋が凍る思いだった‥‥、これはただの直感‥‥けれどある種の確信だった。
それ、私‥‥だ‥‥‥‥。
私はすぐにでも走り出したかった、けれど足が動かなかった。ノヴァが言っていた「進むと
戻れない。」って言葉が胸に突き刺さった。こうなる事を予想していたのだろうか‥‥。
「おい、タスカ。顔色が悪いぞ?どうした。」
肩を掴まれ言われるが、私は言葉を返す余裕も無い。
「あ‥‥、いえ‥‥。」
辛うじてこの言葉だけを喉から絞り出し、私は集団から離れようとした。
『ガルルルルルル‥‥‥』
「ひゃ‥‥」
私の前に、2匹のウルフが立ちふさがり、威嚇してくる。
「退いてっ‥‥お願いっ!」
そう念じながら走っていると、そのウルフ達と目があった
「グル‥‥‥‥くぅるる‥‥‥」
眼が合った途端、威嚇に覇気が無くなり、私に道を開けてくれる。私はその間を抜けて走る。
そこで気づいた。
「見られた、私が力使ってるところ‥‥‥」
多分周りから見たら、明らかに不自然にウルフ達の様子が変わった用に見えただろう、いや、
実際に不自然なんだ、自分でもまだそれほど実感がないのだから。
「おい、タスカ??」
「―――――っ!!!」
私は走り出した。
「あっ、おーいっ!!どうしたんだーっ!!!」
後ろから村の人が叫んでいた。けど、今はそれが怖くて、必死に逃げた‥‥‥。
・・・
・・・
・・・

37姫々:2007/07/02(月) 05:08:18 ID:uqnx7QdM0
「にしても誰だぁ?悪魔に魅入られてる娘って‥‥‥。」
「知らねえよ、けど見つけたら――。」
「生贄ってか?けど人間を生贄にするのは気が引けるんだが‥‥‥。」
「馬鹿野郎、悪魔だぞ?ついさっきあった事を忘れたのかっ!!」
耳に入ってきたのはそんな言葉、その言葉による波紋は周囲に広がり、影響された人々は同じ
ように「生贄」という単語を連呼する。
「‥‥‥、なぁティエルド‥‥‥。」
「杞憂で済みそうに無いですね。」
「あぁ‥‥‥。頼んだ。」
「はい、今すぐタスカ殿の家へ向かいます。」
そう言い天使はポータルを開き、中に飛び込んだ。
・・・
・・・
・・・
「すまぬ、タスカ‥‥‥、わしらではお前を守ってやることは出来んようじゃ‥‥‥。」
『あの時』と同じ‥‥‥、もはや彼女同様、タスカを守る手段はこれしかなかった‥‥。
「力」を制御できない状態で目覚めさせてしまった以上、もはや村の人に気づかれるのは時間の
問題である。そうなる前に、何とか村を出さねばならなかった、「旅に出る」という名目で。
この村のロマは、ある程度力があればレッドストーンを探す旅に出ることを許されていた、
タスカは召喚能力はなかったが、ビーストテイマーとしての能力がずば抜けていたという事を
わしの口から言えば誰も何も言わないだろう‥‥。
タスカとセラには悪い事をする事になるが、生きていれば会えるだろうと考えての決断だった。
「それにしてもまさかとは思ったが‥‥‥、いや‥‥今はそんな事よりも頼んだぞ、ティエルド‥‥。」
・・・
・・・
・・・
「嫌‥‥‥」
何で?私が悪魔に魅入られてる‥‥?違う、そんなのじゃない‥‥‥。
私は部屋で布団に包まっていた、そうしていれば何も無いって訳じゃないだろうけど、それ
以外、何も出来なかった。
「ちがう‥‥‥。信じて‥‥‥。」
誰にともなく言う。
「タスカ殿‥‥‥。」
「ひっ‥‥‥!!?」
誰かは声ですぐに分かった、ただ話しかけられるまで気配を感じなかった。
「ティエルドさん‥‥、違うんです‥‥‥、私は‥‥――」
「分かっている‥‥。」
先の言葉を遮るように、ティエルドさんは言ってくれた。
ティエルドさんの顔はどこか辛そうだったけれど、私の力の事を知っているのに、心配して
くれていると言う事が分かった、私にとってそれが救いだった。
「最近私、ティエルドさんに助けられてばかりです‥‥。」
「そうだろうか?さっき悪魔の所に向かう時だけだと思うのだが‥‥‥」
謙遜だ‥‥。幾度と無く助けられてる‥‥。
こんな事を考えていたのを悟ったのだろうか、しゃがみ込んで私に目線を合せて、ティエルド
さんは私の眼を見て言った。
「タスカ殿、今から大切な話をする。」
と――。まぁ何となく予想は付いてた、こうなる事も、これから先、どんな話をされるかも。
「‥‥‥」
無言を肯定の返事と認識してくれたのだろう、私は何も言えなかったけど、ティエルドさんは
言葉を紡ぐ。
「村を出るんだ、できるだけ急いだ方がいい。セラ殿にはクーン様からきちんと話はされる
 だろう。」
と。なんとあっさりした言葉‥‥‥。あっさりしすぎで逆に実感が沸かないが、これは要するに――
「追放ですか‥‥‥」
悪魔と騒がれているわけだから当然といえば当然だろう‥‥‥。何より精霊に嫌われたのが致命的
だった‥‥。
「それは違う、だから眼の制御が出切るようになったらいつでも帰ってきなさい。」
「それまでは、私達の方で旅に出たということにしておこう。」
正直な話まだ実感が沸かない‥‥‥。
「あの‥‥、お父さんとお姉ちゃんは‥‥‥?」
私には家族がいる‥‥、いくらなんでもそんな勝手は許されるのだろうか‥‥‥。
「セラ殿には悪い事をしてしまうな‥‥‥、しかし父君はおそらく‥‥‥―――」
そこで言葉を切り、私の眼を見たまま静止してしまう。

38姫々:2007/07/02(月) 05:09:00 ID:uqnx7QdM0
「あの‥‥‥。」
「む‥‥、失礼した。まあこの話は今する必要もないだろう‥‥。」
珍しいな‥‥、ティエルドさんが話を自分から切るなんて‥‥。
「分かってくれるか‥‥?」
村を出る事を‥‥と続くのだろうが、流石に口に出すのは憚られたらしい。
「‥‥‥。はい」
―――、実感が余り無かったのが幸いだろうか、案外容易に、私はそう応える事ができた。
「よし、ではポータルを開くぞ‥‥‥‥、む‥‥?」
ティエルドさんはそう言って立ち上がり――再び方膝をついた。
「ティエルドさん‥‥‥?」
「ただの立ちくらみだ‥‥、すぐによくなる。」
そう言って呼吸を整えている。
「本当に大丈夫ですか‥‥‥?」
「あぁ、大丈夫。心配するな。」
そう言って私の眼を見て‥‥‥眼‥‥‥?
「まさか‥‥、ティエルドさん私の眼を―――」
「言うな、立ちくらみだ。」
普段より少し強めの口調で言われ、私は言葉を切ってしまう。
どうやらノヴァが言っていた「人以外には毒」というのは天使も例外ではないらしい。けど、
すぐに分かったはずなのに‥‥。なんで‥‥。
「どうして‥‥‥」
「言―――」
「どうして私の眼を見続けたんですかっ!!」
今度は言葉をさえぎられないように、私が出切る限り強い口調で言う。
「‥‥‥そうだな‥‥。」
少し間をおき、ティエルドさんが言葉を紡ぐ。
「大切な話だったからな、眼を見て話すべきだろう?」
そう言って笑いかけてくる。いかにも笑いなれてないという感じではあったけれど、「こういう人」
がいてくれたから、私は今自分を見失う事無くいる事ができるのだろう‥‥。
「よし‥‥では、始めるぞ。」
そう言って立ち上がり、右腕を天に突き上げると、そこからゆらゆらと蜃気楼のようにポータルが
開いていく。
「行き先はスマグだ、ブルンギルドの影響下から外れているおかげか冒険者が少ない、隠れるには
 丁度いいだろう。」
「はい‥‥」
「不安か‥‥?」
「いいえ‥‥」
そんなはずは無い。むしろ不安しかない、ただ実感が無いだけだ。
「自分で生きていかなければならないぞ?金が尽きたらどうやって食べていく?」
「食べられる木の実とか草とかの見分けはつきます。」
「そうか‥‥‥、では達者でな。制御できるようになったら付近のエンジェルナイトにでも言いなさい、
 すぐに私が迎えに行こう。」
「はい。またいつか‥‥帰ってきます。」
そう言い、私は後ろを振り向かず、ポータルに飛び込んだ
・・・
・・・
・・・

39姫々:2007/07/02(月) 05:09:51 ID:uqnx7QdM0
「ん‥‥‥」
眼を開けると視界には満月、「あぁ、着いたんだ‥‥」そう思って起き上がると、何となく違和感、
さっきまでと着ていた服が違うし、それに何故か成長してる‥‥‥?
「あれ‥‥?」
『なーにが「あれ?」よ。もしかして寝ぼけてる?らしくないわねぇ。』
えっと‥‥。何がどうなって‥‥?
「え‥‥?
『あーっ!!!もう。これでも飲みなさいっ!』
そう言って、口に何か小さな瓶を押し込まれる。
「ん‥‥、んーーーーっ!!!!!!」
私は吐き出してしまいそうになるが、何とか我慢してそれを飲み込んだ。
『どう?理解した?』
「はい‥‥、しかし「アレ」は危険です‥‥、また意識が飛ぶかと思いました‥‥」
『寝ぼけてるのが悪いの、しゃんとしなさいしゃんと。』
そう言われると返す言葉も無い‥‥、そして飲まされたものは言うまでも無くこの前作った失敗作の
気付け薬である。
「はい、申し訳ありません‥‥。というか何故私は寝てしまっていたのですか?」
『さて、帰るわよー、リリィもタスカも立って立って』
「え?あ、はい。――ってルゥ様はっ!!?」
何かごまかされた気がしたが、それどころではない、私は何時間寝ていたのだろう?
『そこ、叫ばない、ルゥちゃんなら別に何も起こって無いから安心しなさい。』
「そ、そうですか‥‥」
一瞬取り乱してしまったが、そう言われて安堵に変わる。と、そういえば‥‥。

40姫々:2007/07/02(月) 05:13:46 ID:uqnx7QdM0
「タスカ、どうしましたか?」
座ったまま俯いているタスカに尋ねてみる。そういえばさっきから一言も口を開いていない。
「見ちゃった‥‥?」
タスカの記憶の事だろうか?
「ええ‥‥、村を出た理由は分かりました。」
「そう‥‥、そんなあたしを見てどう思ったよ‥‥?」
いや、どう思ったかと訊かれても言える事は一つだけ‥‥。
「人の口調って数ヶ月でここまで変わるものなのですね‥‥、驚きです‥‥。」
顔つきとか声はあまり変わってないので本人という事は確かなのだが、ここまで文字で書くと多分
まるで別人だろう。
「は?それだけ?もっと「変な能力」とか無いのかよ」
何を期待してるんだこの子は‥‥。
「そんな物ありませんよ、なんでそんな事訊くのですか?」
「いや‥‥、だって‥‥。」
「(この辺は変わっていないようですね‥‥。)」
心配しないでいい所を心配する所、見た目ほどに芯が強くない所‥‥。この辺りはまるで変わってない。
「誰でも才能って言うものは持っているものなのですよ、たとえそれがコンプレックスになる物でも‥‥
 けれど、それで村を救えたのでしょう?大切な姉も。」
「そりゃそうだけど‥‥」
「それにもう普段は制御できるようになっているのではないですか?」
さっきセラの召喚獣が何も動じなかったのだから多分そうだろう。
「うん‥‥、けど感情が昂るとまだダメっぽい‥‥。」
「そこまで出来ているならあと数ヶ月で制御できるようになりますよ、自信を持ちなさい。」
タスカの頭を撫でながらそう言う。みた感じタスカの能力は魔力的な物だろう‥‥、この手の
能力は制御出来るようになり始めたら上達は早い。
「そうかな‥‥」
不安げに顔を上げてくる。だから私はこう言った。
「頑張ったのですね‥‥。」
「うん‥‥、頑張った。」
そう言ってニッと笑ってくれた。自身の魔力の制御は正直難しいのだ‥‥、これを数ヶ月でこなせる
ようになっているという事は、とんでもない量の努力が必要だっただろう‥‥。
が、そうなると再び疑問が‥‥。
「タスカ、何故いま盗賊など‥‥?」
「え?いや、お金なくなったから食べ物探しにこの辺まで来たんだけどさ、来た時丁度あいつら
 がブラウンベアーに襲われてたからちょっと眼の力で助けてやったら「頭になってくれー」っ
 て言われて今の状況って感じ?」
流石にそれで盗賊になるのはいくらなんでも純粋すぎやしないだろうか‥‥。
「ではその剣術は‥‥?」
「ん?独学だよ?こう見えても運動神経は自信あるしさ。」
独学で魔力制御の練習をしながらあそこまでいけるのか‥‥、末恐ろしい‥‥。
「では‥‥、その口調もやはり‥‥?」
「ん?あぁ、影響されちゃったっぽいねー」
あははと笑いながら言う、やはりタスカは捻くれているどころか人並み外れて純粋なのだろう‥‥。
きっとそうだ。
「では‥‥‥、帰りますか‥‥。あとスピカ」
『何?』
「(結局タスカの能力ってどんなものだったのですか?)」
タスカに聞こえないように小声でそう訊いてみる。
『(あぁ‥‥、簡単に言うと物凄く強力なチャーミング‥‥、凄すぎて洗脳どころで済みそうに
 無い感じだけど‥‥)』
「はぁ‥‥、なるほど‥‥。」
簡単に言いすぎだが何となく理解は出来た気がする。
「ところでスピカ、明らかにタスカの記憶ではない事まで私に流れ込んできたのですがあれは?」
『ぇ゛‥‥‥?』
「いや、タスカがいない所で起こった会話までちょくちょく見れたのですが。」
あの天使とクーンと名乗る老人の会話である。何度かタスカがいない場面での会話があった。
あれがタスカの記憶というならそんな事はありえるのだろうか?
『さ、さー?そう言うこともあるんじゃない?(やっばー‥‥、やっぱ魂を過去に飛ばしちゃってた‥‥、
 戻せてよかったー‥‥)』
「ん?何か言いましたか?」
『え?いや何でもないわよー?さ、私は先行ってるからねーっ!』
そう言ってスピカは飛び去ってしまった。逃げた‥‥、これは後で追及する必要がありそうだ‥‥‥。
「やれやれ‥‥、ではタスカ、行きましょうか。」
「‥‥‥、うん。」
再び俯き加減で立ち尽くしている。
「どうしたのですか?」
「なんでもない‥‥。」
そう言いつつ、タスカの足は重い。
「ねえ‥‥、あたし、どんな顔して会えばいいと思う?」
セラにだろうか‥‥。そんな心配しなくていいだろうに‥‥‥。
「そうですねー‥‥、笑顔が一番ですよ。」
「許してもらえるかな‥‥‥。」
「心配要りませんよ。」
だって相手がセラなのだから。そもそも怒ってすらいないのでは無いだろうか。
「うん、ありがと。」
何に対してのお礼なのか分からなかったが、私達は、さっきまでいた洞窟へと歩き出した。

41姫々:2007/07/02(月) 05:16:21 ID:uqnx7QdM0
なんか変な切りかたしてる所ありますがとりあえずこれで完結です。
次からやっと本編か‥‥‥。
では、一応タスカ編が長すぎて忘れてるかもしれませんがこの章で出すって
言ってた新職その1をタスカ(ビーストテイマー)って事にして新職その2にご期待。
(というか場所的にもう職大体分かっちゃってるでしょうけれども‥‥)

42◇68hJrjtY:2007/07/02(月) 07:23:56 ID:wxMSVF7.0
>姫々さん
おお、完結編お疲れ様です。凄いなぁ一気に8レスも。
表面的には強気なタスカの内面が露呈するとツンデレというか、なんかカワエエです(*´д`)
ということはセラが逆に表面的に天然っぽくても内面は怖かったり…妄想し過ぎかorz
タスカがティエルドや村のみんなにまた笑って再会できる日が来るといいなあ…。

武道ネタ書いてくれるってまじっすかΣ(゚Д゚,,) 言ってみるもんだ!
シチュとかこっちで指定しちゃっていいのかなぁ。姫々さんの書き方で全然良いですよ(笑)
普通に(?)武道×サマナってのも良いですし。それ以外でも。
ダメだ妄想が…(鼻血気絶)

43ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/02(月) 09:20:50 ID:OhTl4zsk0

Episode04-Survivors〜6人vs1匹見たら20匹の法則〜

ゴロツキたちを一蹴し、フォーリンロード/シュトラセラト西部地域へと出たミリアたち。
天気は雲一つ無い快晴ぶり、道の向こうからは見知らぬ冒険者のパーティが会話を弾ませて歩いてくる。
「あ、おはようございます。良い旅を・・・」「おはようございま〜す!」挨拶をし一礼するビショップに、ミリアも元気良く応えた。
ビショップと共に行く者たちも、笑顔のままミリアら一行に手を振って歩いていった・・・

「さ〜て、腕慣らしに・・・ここら辺のモンスターでも狩りますか〜?」トレスヴァントがどこか楽しげな表情で話し出す。
「うんっ、ミリアも鍛えるの〜!説得の技術も少しあげたいし、ファミィも鍛錬したいって言ってるよ!」そう言うと、ミリアは鞄から
一冊の日記帳らしき本を取り出した。「おいで、ファミィ〜!」日記を手にすると、それは独りでに宙に浮かんだ。そしてページが開き
青い光を纏いながら、本の中から一匹のファミリアが出てきたのだ!この様子にはフィナーア以外の皆が驚いていた。
「え・・・ファミリア?ちょっとミリアちゃん、説得覚えたのって昨日のはずでしょ!?何でファミリアがパートナーに・・・」
何がどうなっているのやら、ラティナが理解できないという顔つきで尋ねた。そこにフィナーアが補足する。
「あ〜、このファミリア『ファミィ』はね、4年前にアタシやミリアが暮らしてた村に彷徨ってきたの。とても温厚な子でね、
 村人たちも家族のように接していたわ・・・。この子も村の皆が大好きだけど、特にミリアには弟みたいに懐いちゃって。」
「そーゆーことさ〜、おいらはミリアのパートナーさ〜。皆さんはじみてぃやーさい」ゆるゆるとした口調でファミィが付け足した。
「あ、言い忘れてたけど・・・ファミィはちょっと独特の言葉遣いをするの、今『はじめまして』って言ったんだよっ」
ミリアがちょっとした注意を述べるとファミィは繰り返し「はじみてぃやーさい」と言い放つのであった。
その様子に皆は微笑み、ファミィの頭を撫でるのだった。

44ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/02(月) 10:04:34 ID:OhTl4zsk0
独特な言葉遣いをするファミィもパーティに加わり、一行は道路から北側に広がる草原へと足を踏み入れた。
「ん〜、この辺ちょっと危ないかもしれないさ〜。鷲剣士が いちむどぅいけーむどぅい さ〜」
「いちむどぅ・・・・けむどぅ?ミリア、翻訳おね」「行ったり来たりって言いたいみたいなの」
「ねぇねぇファミィ君、私にもその言葉遣い教えてくれないかな?」ラティナが割って入って尋ねる。
「んぁ?ダメさ〜、ねーねーはちゅらかーぎーさね、こんな言葉遣い似合わないよ〜」
「今ファミィね、『お姉さんは美人だから』って言ったのよ〜」またまたミリアの翻訳が活躍した。
「や・・・・ああ、あ、ありがとうねファミィ君っ!(やだ、あたしってそんなに美人なの〜!?)」
顔を両手で覆い、首を横に振って物思いにふけるラティナ、それを見るトレスヴァントは心の中で
「・・・ヤッベ、ラティナのやつ可愛いじゃねぇか・・・」と呟き、少しキュンとしていた。

グダグダになったがここで戻ろう。道路北部の草原、踏み入った一行はまず一匹の鷲剣士を発見した。
「あ〜、そういえばここ、ロクな思い出無いんだよな〜」とぼやくのはシーフのエディ。

あっと、時間ないのでいったんカット;;
続きは随時書かせていただきます

45◇68hJrjtY:2007/07/02(月) 10:36:01 ID:MEaulwG60
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ロクな思い出が無い…エディに同意です。
自分もテイマでエルフ捕まえに行く時にソロだったもんで大変だったなあとか思い出してます(笑)
というか冒険者同士の挨拶とかなんかイイなぁ…ESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説の世界観は凄く明るいですよね。
ところでファミィの言葉遣いってどこかの方言でしょうか?(笑)
続きお待ちしています。

46NT:2007/07/03(火) 02:45:34 ID:ceEaS9lM0
―私の隣には彼がいる。
いつからこんな関係になったのか。
初めは付きまとわれて邪魔だった。
でも今は、
隣に彼がいない旅なんて考えられない…



会話が聞こえた。
私は聞き耳を立てる。
この声は…彼と、誰だろう?
どこかで聞いたことがある気がするが思い出せない。
「お前こそ…のか?」
「…は俺だろうに?」
よく聞き取れない。
寝袋のせいだがここで出ると私が起きているのがばれる。
なぜだかこの話は隠れて聞かなければいけない気がした。
「だから…理解…のか?」
「わかっているさ」
「だから…」
「つまり…いたいから…見捨てる…」
「っ!!」
「そんなことは…平等…」
「消えろ…」
「頼むぞ…ならないのだから」
「…黙れ、消えろ」
彼の言葉が強くなっていく。
「そんなに…俺が代わりに…」
「さっさと消えろ!」
さすがにこれでは起きるだろうに。
私は彼に話しかけた…

彼は今寝ている。
彼と話していたのは誰だろうか?
その姿も気配も今はない。
毎日話しているその相手を私は未だに見たことがない。
誰なのか、今度聞いてみようか。
…いや
話し方から相当大事な話なのだろう。
そんな深いところまで土足で踏み入れるほど私は愚かではない。

でも、本当に誰だろう?
声を聞く限り、私はどこかで会ったことがあると思うが…


「××××」
また彼はうなされている。
また「ラミ」がどこかに行く夢を見ている。
「行くな…」
私はどこにも行かない。
彼のためにやることがあるから。
「大丈夫、どこにも行かないわ…」
彼の汗を拭き、手を触りながらこう呟く。
彼はまだうなされている。
「行っちゃダメだ…」
そのたびに私は優しく呟く。
「大丈夫、大丈夫よ。どこにも行かないから…」
そうしてやがて彼は静かになる。
はじめてやった時は恥ずかしかったが、そんなことは言っていられない。
彼が苦しむ姿なんて見たくない。
こうしてほとんど毎日私は彼を看病?している。

今は彼のことを心配している。
いつも夢に出るほどの体験を彼はしている…
彼の心は大丈夫だろうか?
いつもは強く振る舞っているが…
本当のところはすごく脆いのでは?

私が彼を支えてあげられればいいのに…
そう思った。


「海だ…」
私は圧倒されていた。
目の前の光景に私は圧倒された。
限りなく広がる海。
実は内海なのを知ってはいるが、それでもすごい。
今、私たちはシュトラ近くの海岸にいる。
ここから頑張れば1日で着くだろうが、たまには寄り道をしたい。
こうして私たちは道から離れ砂浜の上にいる。
「別にもう見慣れたんじゃないのか?」
…空気を読んでよ。
彼はダルそうだ。まあ日差しが強いからかな。
「何度見ても飽きないのよ。」
私は笑いながら答える。今はいい気分だ。
波が来る。
小さい波が私の足元を襲う。
私の足元に冷たい感触がある。
「んっ」
冷たい感じが心地よい。
しばらくこのままでいよう…

47NT:2007/07/03(火) 02:47:27 ID:ceEaS9lM0
―ほとんど毎日俺は夢を見る。
そのほとんどがあの時の夢だ。
彼女が、俺の前からいなくなる夢を…

「行くな…行っちゃダメだ…」
俺は必死に声を出そうとする。
でも出ない、なぜだ?
今出さなければどうなるかなんてわかりきっているのに。
「ラミ…行くな…」
擦れた程度の声がやっと出る。
でも…
もう、彼女はいなかった。

そうして俺は後悔する。
あの時、止められていたなら…と。
六年間ずっと後悔してきた。
でも、
最近、夢の続きがある。
「大丈夫、どこにも行かないわ。」
彼女の声が聞こえる。
この声を聞くと俺は安心できる。
彼女は行かなかった。
こんどは約束を守れた。
そして誓う。
…二度と後悔はしない、と


彼女は海を見たいと言った。
だから今砂浜の上にいる…が、
俺は昔からこの磯の香りが好きではなかったりする…
さらにこの服のせいで日差しが暑い…
「んっ」
彼女は波の感触を楽しんでいるようだ。
…何が楽しいんだろうか。
わからん。
でも、
あんなに楽しそうな彼女の顔を久しぶりに見たな…

「ん、なーに?」
彼女がこちらを向いて聞いて来る。
どうやら彼女の顔に見惚れていたか…
「いや、何がそんなに楽しいのか、と思ってな。」
とりあえずごまかす。
「んーやってみればわかるかもよ?」
「…遠慮しておく。」
「なんで?」
「やりたくないからさ。」
そう言って俺は会話を切った。
「楽しいのに…」
彼女は残念そうだった。

いや…やってもいいんだが…
できん理由があってな…
彼女のその顔を見ていたらそんな言い訳が浮かんできたが、口には出さない。
当たり前だ。自分の弱点はむやみに出すものではない、ということは昔に嫌というほど学んだからな。
まあ彼女が楽しんでいるからいいか。
俺は一歩引いたところから彼女を観察?していた…

48NT:2007/07/03(火) 02:49:00 ID:ceEaS9lM0
彼を誘うのは失敗した。
残念。
今度は強引にやってみようかな?
そんなことを考えていたら向こうから人影が現れた。
人数は…二人。大人の男が二人か。
彼も気づいたのか少し警戒している。
彼らはこっちに近付いてきた。
「ごきげんよう、御二人さん。せっかくのところを邪魔して悪いが尋ねたいことがあるのだが。」
二人のうち背の高いほうが話しかけてきた。
尋ねたいこと?
「かまいませんが、何か?」
私が代表して尋ねる。
「このあたりで五歳ぐらいの少年を見ませんでしたか?」
少年か、私は見ていない。
彼のほうを向く。彼も首を振った。
「残念ですが、このあたりでは見かけていませんよ。」
「そうですか…いえ、ありがとうございました。では御二人の時間をゆっくりと。」
ちょっ、何を言うんだ?この人は。
別にそんなことじゃないのに…
彼らは去っていく。
「訪ね人に扮した強盗かと思ったが…違ったな。」
彼は警戒を解いたようだ。
「周りに潜んでいる気配もなかったし、彼らもそういう感じではなかったからね。」
…冒険者として当たり前だが、私たちは気安く他人を信用しない。
こんな自分が時々すごく嫌になる。
そのたびに割り切っているが…
「少年…ねぇ。家出か?」
彼はいろいろ考えている。
…そろそろ頃合いかな。出発しようか。
「そろそろ…っ!!」
「ラミ!」
彼が走り出した。ということは私の幻聴ではない。
「わかってる!」
私は荷物をすぐにまとめ、
声が聞こえた方向に走り出した。
しかもこの声は…小さい男の子の悲鳴だ。

49NT:2007/07/03(火) 02:53:32 ID:ceEaS9lM0
荷物を早くまとめていた分俺の方が早く行動に移せた。
そこまで遠くない。
このあたりは凶暴な魔物が多数生息している。
早くいかないと手遅れになるな。

見つけた。
砂浜から少し離れた木々の中に男の子と五匹の鷲の魔物が…!
焦るな。落ち着け。
鷲の目標を俺に変えさせろ。
そのためには、俺の姿を晒すか。
俺はそのままのスピードと殺気で走っていく。
全力疾走で近づく俺に鷲達も気付いたようだ。
男の子を無視して俺に突進してくる。
…よし、まずは当初の目的は果たした。
あとはこの五匹だ。
一匹目が剣を振り下ろす。
俺はそれを避けながら袈裟切りを繰り出す二匹目に向かって短剣を投げつける。
「××××」
鷲が頭に短剣を刺しながら奇声をあげて倒れる。
一匹目
短剣を投げると同時に素早く左に飛ぶ。
直後、その空間に鷲の強烈な一撃が飛ぶ。
左に飛ぶとそこからさらに後ろに飛ぶ。
四匹目と五匹目がそこに剣を同時に振り下ろした。
今のは危なかった。
バックジャンプでかわしながら空振りした鷲に短剣を投げつける。
だが投げた体制が悪く避けられた。
…ちっ
俺は少し距離をとった。そこに彼女がやってくる。
「遅いぞ、ラミ。見てわかるな?」
「大丈夫。遅れた分も取り返して見せるわ。」
鷲達が突進してくる。
でも俺は負ける気がしなかった。
彼女と一緒ならな…


「大丈夫か?ボウズ。」
「…」
無反応かよ。
あの後鷲達は全滅させた。
で、この坊主が残ったわけだが…
「ねぇ、君はどこから来たの?」
「…」
さっきからこの調子だ。
彼女はひたすら話しかけているが、坊主はひたすら無言、いや無視か。
俺も少し話してみたがやはりダメ。
どうしたものかね…
「どうしてこんなことになったの?」
「…」
ふぅ…
「ラミ。もう放っておこう。これ以上かまっていると野宿する羽目になるぞ?」
そう、もう時間が夕方だったりする。
「ダメよ、こんな子を一人にしちゃ。」
で、彼女はずっとこんな感じだ。
ったく、どうしろと…?
「これなら…助けなかった方が良かったかな?」
俺はおどけて言った。そうしたら二人に睨まれた。…ん?
「何で坊主に睨まれなきゃいかん?俺らは一応恩人だと思うが?」
一応聞いてみる。
「別に助けてくれなくてよかった。」
驚いたことに返事をした。
だが、なんだと?
「あそこで死んでも良かったのか?」
「そうだよ。生きてたっていいことなんてないなら死んでもいいじゃん。」
…こんな小さな子供がどうなったらそんな結論にたどりつくんだ?
俺は何かを言おうとしたが。
「少年。あなたは間違っている。」
彼女のその言葉を聞いて、
「たとえ生きていて嫌なことしかなくても、いいことが少ししかなくても、死んだらそこで終わりなのよ…?死んでしまったらそこまでなのよ?」
「…うるさいな。僕の生活の何がわかるっていうの?」
「私はあなたの普段の生活ことなんてわからないわ。あなたがどんなにその生活が嫌なものだったのかも。
でも、あなたは自分の意志で生きたことがないのでしょう?
その場の惰性で生きている限り自分の思い通りになんていくはずないわ。
まだ幼い貴方には酷だと思うけれど自分の力で生きていないのに簡単に死ぬなんて言っちゃダメ。」
「…」
「それに…」
「それに?」
「嫌なことしか覚えていなくて死んでいくなんてばからしいじゃない。死ぬときはこれ以上ないくらい幸せに死んでいくべきだわ。
でないと損でしょう?」

長い間のあと
「何言ってるのかさっぱりだよ、お姉ちゃん。」
と少年は言った。
納得していない自殺志願者少年だったがまあ、あの表情を見る限りでは同じことは繰り返さないだろう。
俺は彼女に「お疲れさん。」と声をかけようとして…
「!!っ」
声より先に体が動いていた。
小さい体を吹き飛ばす。
倒れこむ俺。
少年と彼女の驚愕の表情が見えた。
そして夕焼けに染まった空が見える。
胴の左の部分が痛い…
ああ、血が出てるな…
少ししたらラミが飛んできた気がした。
ラミが、俺の顔を覗き込んで何かを言っている…
おいおい…泣くなよ…
俺は…大丈夫…
大丈夫だから…
だから、そんなに悲しまないでいいから…

50NT:2007/07/03(火) 02:55:36 ID:ceEaS9lM0
何があったのか理解できなかった。
突然彼が少年を吹き飛ばした。
そうしたら少年に刺さるはずだった剣が彼に…!
一瞬の隙を突かれた。
まずは目の前の標的を…!
すでに頭に短剣が刺さって瀕死だった鷲は一突きで絶命した。
だがそんなことはどうでもいい。
私は彼のもとに行った。
…この怪我はまずい。
「ウィド!大丈夫?!しっかりして!」
彼に話すが、彼は何も言わない。」
「ダメッ!ねぇ、私がわかる?」
止血をしながら彼に話しかける。
彼は反応がない。
「ダメッ!お願い…目を覚まして!」
気が付いたら涙が出ていた。
必死で止血をしているが止まらない。
このままだと…
「こんなのは嫌だ…また…」
もう何を言っているのか分からない。
でも、
「おいおい…泣くなよ…俺は大丈夫、大丈夫だから…」
彼は確かにそういった。
よかった。まだ死んでいない。
「とうちゃん!こっち!」
あの少年が大人を連れてこっちに来る。
姿が見えないと思ったら…
だが彼は助かりそうだ。感謝しないとな…

血も止まったらしい。
私は止血していた布をとった。

そして見つけた。見つけてしまった。

彼は今受けた突きの傷以外に左胸に傷を負っていた。
もう相当前の傷だろう。
何かに突かれた傷だ。
これは…槍か?
なぜか、吐き気がする。
この傷を見ていると吐き気がする。
全身がこの傷を「見たことがある」と言っている。
心の奥底でこの傷は「××××」と言っている。
…え?
なんでそんなこと…
気づいたら私は倒れこんでいた…


「う…」
私は起きる。
知らない天井。あたりを見回す。
小さい部屋のようだ。窓とドアとベッドが二つ
そして隣のベッドで彼が寝かされていた。
ちゃんとした治療を施されている。
「…よかった…」
私はとりあえず安堵した。
だが、ここはどこだ?
一番あり得るのは少年の家…か?
考えているとドアが開いた。
そこに立っていたのは少年を見つける前に合った二人組の一人だった。
「気分は良くなりましたか?いきなり倒れるものですから焦りましたよ。
ここは私の家です。勝手ながら御二人を運ばせていただきました。」
彼は丁寧に言う。
「彼を助けていただいてありがとうございます。」
「いえ、息子を助けていただいたお礼のようなものです。お気になさらずに。
彼の傷がいえるまでここに居座っても構いませんよ。」
純粋な厚意だろう。
ここはありがたく頂いておこう。
「ありがとうございます。そうさせていただきます。」
「はい。では食事でもいかがでしょうか?」
「あ…彼のそばにいたいので。」
「わかりました。ここに持ってきますね。」
そういって少年の父は去って行った。

彼の顔を見る。
彼は寝ている。
…彼が愛おしい。
でも、
先ほどのことを思い出す。
記憶にはなかったが体、心の深いところが覚えていた。
さっき思いだされた。

心の奥底でこの傷は「自分で衝けた傷だ」と言っていた…

つまり、
私は覚えていないが、
彼と私はもっと昔に会ったことがあって、
さらに私は彼を傷つけたことがある…
記憶にはなくても確信がある。

どうしてだろう、
どうしてそんなことになってしまったのだろう?
…思い出せない
なぜ思い出せないのだろう…?

51◇68hJrjtY:2007/07/03(火) 02:56:21 ID:308UoPgE0
>NTさん
二人の関係がどんどん親密になっていく様が良く分かります。
今更ですが、途切れ途切れなNTさんの書き方も雰囲気作りに一役買っていますよね。
ハッピーエンド好きな私はどうすれば二人が幸せになれるのか、とすぐ考えてしまいがちなのですが
どんな展開になるのかがとても楽しみです。続きお待ちしています。

ところでシフの黒服が猛暑だと厳しそうというのはとても同意です(笑)
でも夏はマッチョな剣士が裸なのに逆に暑苦しいですι(´Д`υ)

52NT:2007/07/03(火) 03:01:22 ID:ceEaS9lM0
この世は知らなければいいことばかりだ。
真実を知って必ず得をするとは限らない。
ならば…いっそ何も知らないほうが「幸せ」だろう?
だって
「死ぬときはこれ以上ないくらい幸せに死んでいくべき」
なんだろう?
真実なんてものは残酷でしかない。
ならば、それは俺だけが背負っていけばいい…
彼女には「幸せ」に生きていってほしいから…


でも…
(そんなことは「俺」が許さない。俺は「俺」を裏切った…)
どこかで、そんな声が聞こえた…

To be continued…





前回>>13-16の続きです。
また入れ忘れかorz

こんばんは。またもおかしい時間帯に投稿します。NTです。
なんとか書きたい事を加えたら視点変更が6回に…orz変更しすぎだろ。
これからどうなることやら、書いている本人が一番わかりません(笑
期待されてもいないでしょうがこれからもよろしくお願いします。
(皆さんの小説の感想はまた今度に…
果てしなく今眠いので何書くかわかったものじゃないので…)

53ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/03(火) 18:07:11 ID:OhTl4zsk0
続きですよ。

一匹の鷲剣士を見つけるや否や、「あぁ〜あ・・・嫌な思い出がフラッシュバックしやがるぅ〜」とボヤきだしたエディ。
実は彼、以前ここでソロで狩りをしようと足を踏み入れたがいいが・・・ここからはVTRをどうぞ。

(VTRスタート!)
『おぉ〜、ここがフォーリンロードかぁ!手応えありそうなヤツらもわんさか・・・あ、早速モンスター発見!』
遠足に来た子供のようなテンションで、エディは道路北部の草原へとやってきた。すぐさま鷲剣士目がけて走っていった。
ダートを投げつつヒットアンドアウェイで攻撃し、接近戦となれば体術を駆使・・・エディが優勢かに見える・・・が。
しかし・・・このフィールドでの恐ろしさがエディを襲うのだった。モンスターの圧倒的な出現頻度だ。
かなり早いペースでモンスターが次々と草原に現れ、図らずもエディは囲まれる体勢となってしまった・・・!
『やっべ〜、ここは一時退却するっきゃないでしょ!』スタコラサッサと、とんずらをしようと猛ダッシュするエディ。
しか〜し!侮る無かれ、鷲剣士たちは足が速い!逃げようとしても一時停止すればすぐ追いつかれる・・・!
『ぜぇ、ぜぇ・・・・ちっくしょ、このオレともあろうものが鷲剣士なんかに殺られてたまるぅおっ!?』
道端の小石に躓き転んでしまった・・・。そして鷲剣士の群れに追いつかれ・・・・ボコボコのギッタギタにされたのだった。

「って、何だよこの回想シーンはァ!?勝手に映像化してんじゃねぇぞゴルァ!」エディが何処かに向かって指を差し憤慨する。
「ってゆーか・・・あたしもここで同じめにあったんですけど・・・」「あ・・・僕もです・・・」ラティナ、バーソロミューも続く。
「もう皆だらしないわね〜、アタシだったら奴ら相手にストリップしてチャーミングしちゃうわよ〜?」フィナーアがまた下ネタ発言。
「だだ、だからそういうネタはやめて下さいよフィナーアさんっ!ミリアちゃんの教育上よくありません!」バーソロミューが憤慨した。
「やぅ〜・・・ミリアえっちぃの嫌なの〜、『めっ』なのよ〜!あぅ〜」顔を真っ赤にし、愚図りながらミリアが言った。
「おいらもそういうのは嫌さ〜、不潔さ〜」ファミィも後に続いて言うのだった。


「さてと、じゃぁ早速狩り(ウザくてしつこい鷲剣士をブッ殺すことも含む)を始めましょう!誰が釣りするの?」
ラティナが狩りの指揮権をミリアから譲ってもらい、ただいまミーティングの最中である。
「はいはいは〜い!アタシが釣って来るわよ〜ん!猛獣女王の名に賭けて!!」フィナーアが意気揚々と名乗り出る。
「じゃぁ、僕は釣られたモンスターの塊を隕石で叩けば良いんですね。ちゃんと隕石を呼べれば良いけど・・・」
「オレは生き残った残党を叩ッ斬ればいいんだな!?」「オイラもにーにー(兄さん)と同じさ〜」バーソロミュー、トレスヴァント
ファミィも続けて役割分担に参加する。エディはトラウマがあるのであいにく参加できないそうだ・・・。
「あのねあのねっ、ミリアもお手伝いしたいのっ!何か出来ることないかな?」ミリアもすすんで参加。
「ミリアちゃんはファミィの戦闘をサポートしてね、それでも十分よ。」「うゅ〜!」


・・・・狩りを始めて数十分。

「遅いな〜フィナ姉、何してるんだろう・・・あ、来たみたいだぜ!?皆ァ、準備しろ!」
トレスヴァントの合図と共に戦闘態勢に入ったラティナ、バーソロミュー、ファミィ、ミリア。
一方、向こう側からは数十匹のモンスターが押し寄せているのだろうか、ものスゴい地響きが大地を伝ってくる・・・!
「・・・来るぜ!(フィナーアの姐御、大丈夫なんだろうな・・・?)」

54ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/03(火) 18:24:32 ID:OhTl4zsk0
「ハァ〜イ皆ぁ〜!お・待・た・せ〜!!」


(・・・・・えぇ〜!?) ←注)フィナーアを除く全員の心の叫び


・・・フィナーアが帰ってきた。帰ってきたのはいいのだが・・・
「イヤああぁあぁぁあ!?ななな、な、なな、何ではは、裸なんですか、ららら、ラティナさ〜ん!?」
「うぉおおぉぉおぉおぉおお姐御ぉおおおぉぉぉおぉぉおぉやったああああぁぁあぁぁああバンザぁぁああぁぁイ!!!」
「ブツブツブツブツ・・・・(反道徳的極まりないというかインモラルというかあの肢体はまるでヴィーナスというか何というか)」
「ふゃ・・・・ふぇええ〜ん!ふゃあ〜ん!あぅう〜、うゅぅ〜」「ミリア〜、泣いてちゃダメさぁ〜」
ラティナは赤面、エディとトレスヴァントは嬉しさのあまり雄叫びをあげ、バーソロミューはブツクサ呟き、ミリアは泣きじゃくり・・・
あまりにも予想外の事態に全員がパニック状態になってしまった。
「はぁ、はぁ・・んっ、皆ただいま〜!釣ってきたわよ〜?」何やら楽しげにフィナーアが話しかけるも、彼女を除く
パーティメンバーの殆どは精神的にダメージを負ってしまい、会話云々どころではない・・・!
このままでは全員がモンスターたちにボコボコにされて全滅してしまうかもしれない・・・!
「あらあらぁ、ちょっとセクシー過ぎたかしら?あ〜んもう、皆ったら免疫抵抗なさすぎよ〜!?」とか言ってる場合ではないぞフィナーア・・・
「そういえば余裕こいてる場合じゃないわ・・・しょうがないわ、セルジオ!カモォ〜ン!」
ミリアと同様に日記帳を取り出し、セルジオという名のモンスターを呼び出したのだった・・・!

55自称支援BIS:2007/07/04(水) 00:58:15 ID:vatQge6g0
こんばんは〜。
小説スレ3で2作品だけ書いた、自称支援BISと申します
丸々1スレ分空いてしまいましたが、久々に投稿させて頂きます。
っとその前に・・・
小説スレ3で感想を下さった方々、ありがとうございました。
そして、お礼を言うのがここまで遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
また何か思い付いたら書かせて頂きます。

では、武道家&サマナーの物語2、どうぞ〜

56自称支援BIS:2007/07/04(水) 00:59:37 ID:vatQge6g0
「・・・まずいな・・・」
「すみません、私のせいで・・・」
「君のせいじゃないさ、気にすることはない」
「でも・・・」
「とにかく、この状況をどうにかしないと・・・」
俺は今、10体程度の敵に囲まれている状態だ
俺だけなら何とか突破できるが、側には少女が居る

何でそんな状態なのかって?
それはだな・・・

〜探索〜
ここはアルパス地下監獄B2
監獄という名の通り、檻がいくつもあるうえに、薄暗い場所だ
古都で、滅多に人が居ないという事を聞いたため、
ソロ狩りが主な武道家の俺は、ここに狩りに来ていた

敵を探しつつ移動していると、かすかに風と炎の音が聞こえてきた
(・・・誰か居るのか・・・?)
そう思った俺は、音のする方に近づいていった

・・・無用心だって?
今から考えたら、そうなのかもしれないな
とにかく、この時はあんな事になるとは思わなかったんだよ

〜再会〜
「ウインディ!」 ゴォォッ
少女の声と、竜巻のような風の音がする
「ふぅ・・・お疲れ様、ウインディ」 ピューイッ
「ケルビーもありがとね」 ガウッ
(ん・・・?この声、どっかで・・・)

ジャリッ(あっ・・・)
「!?・・・」
相手が改めて気を張ったのが分かった
攻撃されてはたまらないので、俺は相手に姿を見せる事にした
「敵じゃねぇから、攻撃だけは勘弁してくれないか?」
「あ・・・」
俺が敵じゃないと分かると、張り詰めていた気が一気に無くなった
「す、すみません・・・あまり人が来ない場所と聞いていたので・・・」
「それはいいよ。ところで・・・俺と一度会った事無いか?」
「え・・・?」
彼女は俺の顔を見て、しばらく考えた後、驚いたように顔を上げた
「もしかして・・・エルフに襲われそうになったのを助けてくれた、あの武道家さん?」
「やっぱりそうか・・・」
そう、俺は彼女を助けた事があった

詳細は小説スレ3の861を見てくれ
・・・その小説なんたらってのは何なんだって?
・・・ノーコメントだ
さて、話を戻そう

〜襲撃〜
「あの時は満足にお礼も言えなくて、ずっと気がかりだったんです」
「え?」
「本当に、ありがとうございましたっ」
「あ、あぁ・・・」
・・・あの時もこんな会話したような・・・

ヒュンッ

「・・・逃げるぞ」
「え?」
「いいからついて来い!こっちだ!」
「は、はい!」

タタタンッ

俺たちが走り出した直後、さっきまで居た場所に矢が降ってきた
俺たちの話し声を聞きつけて、敵が集まってきたんだろう
「・・・ちっ」
B1へのポータルまでもう少しの所に、敵の集団が居た
後ろから追いかけてきている敵との挟み撃ちになってしまった

ここで最初の場面になるわけだ、分かったか?
・・・分かったなら、少し黙っててくれるか?
こいつらの相手しないといけないからよっ!

57自称支援BIS:2007/07/04(水) 01:00:46 ID:vatQge6g0
〜決意〜
(B1へのポータルまでは後少し・・・ここは・・・)
「よし・・・」
「・・・私が敵を引き受けます。その間に武道家さんは逃げてください」
「・・・え?・・・」
「この数を相手に、私とあなただけでは無理です・・・」
「それが分かってるなら、なおさr」
「それに!・・・ウインディ達が戦った直後は、私は逃げられませんから・・・」
そう。ポータルを使って移動するにしろ、帰還の巻物を使うにしろ、
気持ちを落ち着かせなければ使えないのである
当然これはペットや召喚獣にも当てはまり、それを使役している主にも影響する
つまり、彼女がここで戦闘を始めてしまっては、
敵を全滅させないかぎり逃げられないという事だ
「・・・大丈夫、君はこの指輪を着けて、召喚獣をしまって、俺の後をついてくればいい」
「これは・・・?」
「装備すると、気配が消せる指輪だ」
「それなら、あなたが・・・」
「いくぞっ!」
彼女の反応を待たずに、俺は飛び出していった

・・・何だよ、黙ってろって言ったろ?
何?月石?
お、俺はそんな唯一移動制限に引っかからない課金アイテムの事なんかしらねーよっ!
と、とにかく!あいつを逃がしてやらないといけないんだよ!

〜犠牲〜
当然、敵は俺に向かって攻撃を仕掛けてくる
敵は巨人系・骸骨騎士系・アーチャー系の3種類
まずは近くに居た骸骨騎士に向かって、飛び蹴りをかます
急所に当たったらしく1激で倒れたが、喜んでいる暇は無い
巨人の力強いキックと、アーチャーの正確な矢が飛んでくる
キックは難なく回避したが、矢は白羽取りで受け止めた
・・・避けたら、後ろに居るあいつに当たっちまうだろ?
だが、このままではいつか彼女に矢が当たってしまう
そこで、動きの遅い巨人達を無視し、アーチャーに向かって気を込めた1発を放つ
「はぁっ!」
・・・だが、これが間違いだった
倒したと思っていた骸骨騎士が起き上がり、
俺に向かって剣を振り下ろしていたのだ
烈風激の動作中は満足に動けないため、一撃貰う覚悟を決めた
・・・が

「危ないっ!」

ドゴッ
ザンッ

放たれた烈風激がアーチャーに当たるのと、
振り下ろされた剣が「彼女」に当たるのは、ほぼ同時だった


「・・・え?」


地面に倒れる彼女
流れる彼女の血
彼女に止めを刺しに来る敵



彼女が・・・俺の・・・ために・・・?




「うおおぉぉぉおおぉおっ!!」
俺は怒りで我を忘れ、手当たり次第に攻撃をしていった・・・

・・・・・・

58自称支援BIS:2007/07/04(水) 01:01:29 ID:vatQge6g0
〜逃走〜
「はぁ・・・はぁっ・・・・・・」
周りに居た敵は全て倒した
帰還の巻物を持っていなかった俺は、彼女を抱えて古都に向かって走っていた
「頼む・・・間に合ってくれ・・・」
「う・・・」
「!?」
「うぅ・・・ここは・・・?」
「もう少しで古都に着く所だ。傷に障る、あまりしゃべるな」
「で、でも・・・私、怪我とかしてませんよ?」
「え・・・?」
驚いて足を止め、彼女を降ろすと、普通に立っている
「だ、だって、血があんなに・・・」
「血・・・?あ、もしかして・・・これですか?」
彼女がそう言って取り出したのは、ポーションが入っているビンの破片だった
「あの時、ケルビーが出てきて、私をかばってくれたんです。
 多分、地面に倒れた時にビンが割れちゃったんでしょうね」
「じゃあ、ケルビーは・・・」
「あ、それは大丈夫です。私達と違って、あの子達は死ぬ事がありませんから」
「そ、そうなのか?」
「はい。当然、あの子達も攻撃を受けたら痛みは感じますし、
 大ダメージを受けると、一時的に行動不能にはなるので、
 ケルビーには無茶させちゃったなって思ってます・・・」
何はともあれ、彼女は無事だったようだ
よか・っ・・た・・・  ドサッ
「え・・・?」
あ・・・れ・・・?体が・・・うご・・か・・・
・・・・・・
「武道家さん・・・?しっかりして下さい!武道家さん!?」

〜帰還〜
(・・・またこの時間が来てしまった・・・・)
「武道家さ〜ん、ご飯ですよ〜」
「あ、あぁ・・・」
「さ、口を開けて下さい」
「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・」
「?」
「その・・・もう大丈夫だからさ・・・」
「ダメです!きちんと治るまでは、休んでないといけません!」
「でもっ・・・痛っ・・・」
「ほら・・・無理したら余計に治らなくなりますよ?」
「うぅ・・・」

あの後、彼女が俺を病院まで運んだらしい
どうやって?と聞いたら、ウインディとスウェルファー、ヘッジャーに手伝ってもらったとの事
・・・まぁ、彼女が一人で俺を担ぐとかは無理だわな
病院で検査した結果、彼女は特に問題無しだった
だが、俺は腕や足の傷が治るまで、しばらくかかるらしい
あれだけ暴れたから、当然っちゃ当然なんだがな
で、入院してる間、彼女が身の回りの事をしてくれている
助けてくれたお礼です、と言って、何度断ってもやってくれている

一目惚れで片思いの相手に、こんな事をさせているのは、
物凄く恥ずかしいんだよ!
特にこの食事の時間がっ!!

「はい、あ〜ん」
「・・・」

ん?嬉しそうだって?
そりゃ、まぁ・・・悪くは、ないが・・・

「そうだ、怪我が治ったら、あの場所に行きませんか?」
「え?あの場所?」
「私達が始めて出会った、あなたが私を助けてくれた、あの場所です」
「・・・それは構わないけど・・・何で?」
「それはヒミツですっ♪」

・・・何なんだ?一体・・・



後日、嬉しそうな花嫁と少し恥ずかしそうな花婿の結婚式が行われた
4体の召喚獣も、2人の結婚を祝福しているようだ

片思いだと思っていた武道家だったが、実はサマナーも一目惚れしていたのだ
そこで、彼女はあの記念の場所で彼にプロポーズした所、相思相愛という事が分かった
そして、出合った日から丁度1年後の今日、結婚する事になったのである

へへ・・・彼女と結婚する事になるなんて、夢でも見てるみたいだ・・・
ん、これからはしっかりと彼女を守ってやれって?
おう、任せとけ!

59◇68hJrjtY:2007/07/04(水) 01:18:20 ID:LkZonB6w0
>NTさん
前回、執筆投稿中にレスしてしまったようで、分断してしまい済みませんでしたorz
ウィド君の自己犠牲的な気持ちが哀しいですね。
こういう形のラブストーリーも大人っぽいというか、悲恋的な深い話が染み入ります。
視点変更しながらの展開は全然大丈夫ですよ。少なくとも私は戸惑う事はありませんでした。
むしろ、次の話でラミの気持ちが分かる、次の話でウィドの…って感じで、知らずに二人の内面が深く知れられるような。
期待されてないなんてそんな事ありませんよ!続きお待ちしています。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
「やぅ〜」なミリアモエー!(*´д`*) って場合じゃなさそうですが…(爆)
シモネタでもなんでこんなに普通に受け入れられるんだろう、そして楽しいんだろう。。
ラティナのハダカですか!これは釣りに最高のエサ…になってしまってるのかorz (笑)
さて、フィナ姉のペットとはいかなる魔物なのか。何か嫌な予感が…続き待ってます。

>自称支援BISさん
おおっ、前回執筆されていた作品の方は読みましたよ!再会&再開ありがとうです。
武道サマナ第二話キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
シリアスな展開の中にギャグセンスも盛り込まれてて、ニヨニヨしながら読ませて頂きました!
そして「・・・避けたら、後ろに居るあいつに当たっちまうだろ?」で私の心は三連致命打を喰らい
「武道家さ〜ん、ご飯ですよ〜」で心に直接ゲイルパンチ喰らいました(謎)
ああそして結婚ですか!問答無用なハッピーエンド!
…でも、これで武道サマナ話終わりじゃないですよね…?(泣)

60ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/04(水) 07:40:28 ID:hWmp3JY.0
>68hJritY
感想どうも〜、ありがとうございますw
というか服を脱ぎ捨てたのはフィナーアでした、誤爆すいません;;
ラティナは普通に鎧着てますから・・・・

61ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/04(水) 08:35:54 ID:hWmp3JY.0
そして続きです。

モンスターを釣ってきたミリアの姉、フィナーア。しかし彼女はどういう訳だか全ての衣服を脱ぎ捨てて
裸一丁で、モンローウォークのように腰をくねらせながら・・・モンスターを背後に走ってきたのだった。
彼女を除くパーティの仲間たちは彼女の裸にショックを受けたのかどうかはわからないが、混乱してしまう。
そして今、釣ってきてしまったモンスターによるピンチが迫っていたのだ・・・・!

「これじゃ皆が全滅しちゃうわ!・・・しょうがない、セルジオ!カモォ〜ン!」
先ほどのおちゃらけた態度はどこへやら、キッと引き締まった表情を見せると、すぐさま手にしていた日記を
開き、自らが飼育するモンスターを呼び出した!!青い光を纏い、本の中から一匹のリプリートマーキが現れた!

「トルルルぃぃぃいぃいコぉおぉぉ!」少し甲高い奇妙な声を発するは、セルジオという名のリプリートマーキ。
「ヘイヘイヘイヘイ、久しぶりじゃんフィナ姉!ってうぉー!?敵さんうっじゃうじゃ!すげっ!!」
「あぁ〜ん相変わらずハイテンションで可愛いんだからぁ〜!というか、アタシには突っ込まないの?」
「へ?・・・あ、そういえば何でフィナ姉てば脱いでんのさ!?ちょっ、すげぇセクシーなんですけど!」
「って、二人して何ちゃって漫才してる場合じゃないわね・・・。セルジオ、あいつらヤっちゃって!」
「お安い御用だぜ姉御ォ!イ―――っハ―――!撒き散らしてやるぜ、トルルぃいいぃコぉおぉぉ!」
かなりハイなテンションでモンスターの群れに突っ込むセルジオ。そして群れに近づくや否や、地面に腕を突き刺し
聞き取れないほど小さな声で呪文を唱え始めた・・・そして!いきなり地面に開けられた穴から汚水が噴出した!!
「な・・・何だぁ!?汚ねぇ!!」「ぐああ!目が!目がぁあぁああ!!」「くそ、汚水の毒にやられた・・・・」
あっという間に敵モンスターの群れに甚大なダメージを与えるセルジオ、流石は猛獣女王フィナーアに従うだけはある。
「うはっ、スポイルドウォーターがクリーンヒットだぜイェ〜ア!さ〜って、仕上げと行きますか〜?」
そう言うなり、すぐさま別の呪文を唱え始めた。セルジオの周りには黒いオーラが漂いだす・・・
「セルジオ!そろそろ相手をイかせてあげるわよ!!」フィナーアも呪文を唱え、セルジオの戦闘をサポートする!
一方のモンスターの群れは、先ほどの汚水攻撃によるダメージが収まったのか、即座に反撃に転じセルジオに襲い掛かった!!
「この骨野郎がァ!喰らいやがれぇえ!」一匹の鷲剣士が怒りに身を任せ、セルジオに剣を振り下ろすが・・・
「しまっ、バカ!やめ・・・」もう一匹の鷲剣士が制止するが、もう遅かった。振るわれた剣がセルジオを捕らえたと思った
次の瞬間だった・・・!何もないはずの空中、鷲剣士たちの背後から突如、斬撃が敵を襲った!!ザシュウっっと斬る音が響く。
「ヘイヘ〜イ、おれたちリプリートマーキは呪いのエキスパートなんだぜ〜ぃ?下手な攻撃は命取りだよ〜ん、ケケケのケ〜♪」
しかしまだまだ残党はいる。少なくともまだ10匹は生き残っているようだ・・・!
「あらいやん、流石にアタシでもこれは疲れちゃうわ・・・・皆〜!いい加減目を覚ましなさ〜い!」
フィナーアの一声と共に、ミリアたちがハッと我に返った!それから後はストレートに敵を殲滅したので省略・・・・

62ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/04(水) 08:47:33 ID:hWmp3JY.0
「まったくよぉ〜、何だって全裸で釣りしてくるんだよフィナ姉〜!?ビックリしたなァもう〜」
トレスヴァントが気だるげに話しかける。しかしフィナーアは反省の色も見せず、「えへへ〜」と微笑みながら
ペロリとちょっとだけ、はにかみながら舌を出した。と、そこへバーソロミューが。
「・・・あの、フィナーアさん?いい加減、服を着てくださいよ、目のやり場に困りますよ〜・・・」
「でも服はどこかに捨て置いちゃったからな〜・・・あ、そうだ!」フィナーアはその場から立ち上がると
その辺に落ちていた白い布を手にし、それを身に付けた・・・・・・・のだが・・・
「じゃ〜ん!これでどう〜?」とフィナーアが尋ねるも、彼女以外の仲間やペット全員が赤面していた。
というのも、布をさらしとふんどしに見立てて締め込んだだけなのだ・・・ある意味、扇情的な格好ではある。
「もぅ〜お姉ちゃんっ!?えっちぃのは『めっ』てミリア言ってるのよ〜!」ミリアがプンプンと怒り出す。
「いいじゃないのミリアちゃん。だってアタシぃ、お尻にキュッって食い込むこの感覚が・・・はぁ〜」
ちょっと際どいセリフに全員がドン引きしていた・・・・

そんなこんなでハチャメチャなやりとりをしている一行を、遠くの茂みから偵察する一人のエルフがいた。
「・・・あれがザッカルさんの言っていたフィナーア・ウォンっすか。あの戦闘を優位に進める手際のよさは流石っす。
 しかも仲間たちもいい人そうっすね・・・いけないいけない!おれには暗殺の任務があるんす!失敗なんてできない・・・
 でも・・・大好きな人間を殺すなんておれには・・・・できないっす」

この一匹のエルフ暗殺者、クレイグは一人葛藤しながら一行をマーキングしていた・・・。

To Be Continued...

>自称支援BISさん
シリアスとギャグの混ぜ具合がとても良いですねw
終盤の明るい展開とハッピーエンドがとても微笑ましいです。
最後の文章が印象深い・・・!

>NTさん
こういう精神描写がメインなシリアス系も読んでいて惹かれます。
それに主人公やヒロインの心の動きにも何処か共感できるものもありますし。
視点変更という難しい表現方法も活かされていて、読み応えがありますv


そろそろシリアス要素が入ってきそうで腕が鳴ります。
シーフのエディvsエルフ暗殺者クレイグのアサシン対決は是非とも書かなきゃ・・・!

63◇68hJrjtY:2007/07/04(水) 09:02:53 ID:JO4bRbrs0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
うっ、脱いだのはラティナさんじゃなかったんですね。安心というかガッカリしうわなに略
フィナ姉はリプ使いですか、あれってカッコイイですよねぇ。こんなにハイテンションならもっと良いですけど(笑)
そして相変わらず18禁言葉と行動連発なフィナ姉もまったくモエモエです(笑)
なんか良い人(?)っぽいエルフな新キャラのクレイヴさん登場ですね。
エディとの一騎打ちと今後のシリアスシーンも楽しみにしています。

64ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 11:11:01 ID:OhTl4zsk0

Episode05-Midnight Assassin〜暗殺者vs暗殺者〜

フランデル大陸南部、フォーリンロード/シュトラセラト西部地域で狩りを終えたミリアとその仲間たち。
全員が狩りのおかげでそれぞれの能力に磨きがかかり、鷲剣士も屁ではないほどに強くなった。
そういう訳で狩場を変更、そしてエルフ暗殺者が現れる地域へと移動するために、ミリアたちはエルン山脈南部の方へ
足を運ぶのであった。時刻はPM5:50、ちょうど日が沈み始めた頃だ。日が暮れるとモンスターの活動が活発になるので
一行は安全な場所を探し出し、そこでキャンプを張ることにした。

自らが開発した簡易式マジックテントをバーソロミューが鞄の中から取り出し、地の元素を注入すると、おのずからテントが
組み立てられ、1分も掛からないうちにテントが完成した。しかしテントとはいえ、そのクオリティはまるで一軒家だ。
「うぉ〜!なぁなぁミュー、お前よくこんなの発明できたな!?オレにもワンセットくれよぉ〜」
「差し上げたいのは山々なんですけどね、トレスヴァント。これはまだプロトタイプなもので、耐久力はまだ調整中なんですよ」
「でもでもっ、本物のお家みたいに硬いよ〜!・・・あれ?でもゴムみたいに引っ張れるよ?」ミリアがいじりながら言う。
「地の元素による魔法式化学反応ですよ。テントはゴム製ですが、僕が作る地の元素は物質の硬度を操作できますから。」
「いや〜んミューたんったらスゴいわ〜!これさえあれば色んなことして一儲けできるわ!」フィナーアが歓喜して言った。
「姉御、アンタまさかこれ使ってクラブハウス作る気?んでそこでストリップ嬢やってぼったくる気なん?」
フィナーアのペット、リプリートマーキのセルジオがフランクな口調で突っ込むが、フィナーアは間髪入れずに頷いた。
「あ〜!そういえばお姉ちゃんっ!いい加減服着てよ〜、ミリアえっちぃの嫌いなの!『めっ』なのよ〜!」
ミリアに突っ込まれた当のフィナーアは、先程鷲剣士の群れを釣ってくる際に服を脱いで全裸になり、その後
その辺に落ちていた布を、さらしと褌代わりとして身に付けていたのだ。エディとトレスヴァントは鼻を伸ばして彼女に見入っていた。
「裸よりはマシでしょ〜?もう〜ミリアちゃんてばウブなんだから。でもそんな所が可愛いわァ〜!」
いきなりミリアに抱きつき、しかも彼女の身体をベタベタと触りまくるフィナーア・・・セクハラだ。
抱きつかれたミリアはというと、やっぱり顔を真っ赤にし「やぅ〜」とか「やぁ〜ん」などと愚図っていた・・・

65ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 11:42:05 ID:OhTl4zsk0
さてさて、バーソロミューが開発したマジックテント、もとい一軒家モドキに入り
夕食・・・・というか宴会をおっ始める一行。当然フィナーアが原因でこんなことになっている。
「さぁさぁ皆様お立会い〜!あたしフィナーアのセクシーダンスショーの、は・じ・ま・り・よぉ〜ん!」
キュートでエロエロな声とともに、ベリーダンサー顔負けの腰をくねらせる動きや、乳房を揺らしたり大胆な開脚で場を沸かした。
しかも格好が格好なだけに(何しろさらしにふんどしだからね)かなりエロティックな雰囲気を醸し出している・・・。
「ピュ―――イ!姉御サイコぉお――!」とトレスヴァント、それにセルジオが2人同時に歓喜の声を挙げた。
バーソロミューやラティナも酒を飲んでしまったせいか酔っ払ってしまう始末だ・・・。
「ん〜、たまにはこういう余興もいいですね〜!フィナーアさんもいいお尻してますしねぇ〜ウフフ」
「・・・なぁ〜によ〜う、トレスヴァント〜・・うぃっく!あたしだって脱ぐ時ゃ脱ぐんだからねぇ〜!どっせぇ〜い!」
勢い良く装着していた鎧を脱ぎ捨て、レオタード一丁になるラティナ。しかもハイレグ、後ろはTバックときた・・・。
「ちょっとちょっとフィナーアさァ〜ん!?目立ちまくって・・・ヒクっぅ!いい気になってんじゃらいわよぉ〜!?」
「あらぁ〜、ラティナちゃんもいい体つきしてるじゃな〜い!・・でも、アタシの方がもぉ〜っとナイスバディよぉ?うふふ」
セクシーポーズをキメながら、フィナーアが挑発した・・・!当然ラティナは引くはずも無く、さらに喧嘩腰になるのだった。
「うぅ〜言ったわねぇ〜!!?こうなったら勝負よぉ〜・・ウィック!」そう言った途端にフィナーアに掴み掛かり
両者はそのままもちつもたれつ、床に倒れ、そこから寝技の応酬へと発展してしまった。
「うぅ〜ん・・これでどうよぉ〜!?」「んぁっ・・・甘いわ!これでもアタシ、格闘技経験者なのよ〜!?」
際どいアングルや動きを連発しまくりな女同士のケツ丸出しレスリングに、野郎どもも野獣と化す・・・!
「オラぁやれやれぇ〜!」「もっと腰使って組み合わんかいゴルァ!?」「ウゥ〜!ナイス食い込み!!」

もはやテントの中は大人の時間が支配する空間へと変貌してしまっていた・・・

一方こちらはテントの外。
ミリアとファミィが焚き火を囲み、二人で同じ毛布にくるまっていた。あたりにモンスターに気配はない・・・
「まったくぅ〜、フィナ姉はエッチで困るさ〜。おいらたちまだそういうのダメなのに・・・」
「でもね、あんなお姉ちゃんでもミリアは大好きだよ。だって、ミリアのこと大事にしてくれるし、なでなでしてくれるんだもんっ」
「いいなぁミリア、優しいお姉ちゃんがいて・・・おいら、村に来るまで一人ぼっちだったさ〜。いろんな人たちにイジメられたさ〜
 ・・・でもおいら、信じてた。いつかおいらにも友達はできるんだって。人間でもモンスターでも、種族問わずできるんだって。」
「だいじょうぶだよっ!ミリアね、ファミィが村に来たとき、すっごく嬉しかったんだよ。弟ができたみたいな、そんな気分・・・」

66ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 12:04:36 ID:OhTl4zsk0
「だからねっ、そんなに落ち込んじゃダメなの!ファミィはミリアの家族なんだよ。ね?」
「・・・ミリア、おいら元気出てきたさ〜、にふぇーでーびるさ〜」
「ありがとうって言ったの?・・・ミリアも言うね、ありがとう。」

温かい言葉のキャッチボール・・・そのまま時は止まり続けるように思えた・・・。
すると、一本の矢がミリアとファミィ目掛けて勢い良く飛んできて、ミリアたちの足元へと刺さる!
「・・・っ!!・・だれ!?」キッと表情を険しくし、ミリアが矢の飛んできた方向へと問いかけた。
数秒、沈黙が流れた後のこと・・・ミリアの睨んだ先の茂みの中から、一人の小柄なエルフが姿を現した。
「・・・バレてまったっすね。姿を見られたからには、君は生かしてはおけないっす・・・!覚悟ッ!!」
フッと姿を消したかと思うと、もうすでにミリアの背後に回っていた・・・!エルフの手にしたナイフが
ミリアの首へと振り下ろされる・・・!!


キィン・・・!と、金属同士の当たる音が夜の草原に響いた。

幸いナイフはミリアの首を斬るには至らず、無事で済んだ。エルフの足元には一本のダートが転がり落ちていた。
「・・・やれやれ、念のため警戒しておいて正解だったぜ。大丈夫か、ミリア?」
「・・・これが、エルフ暗殺者・・・!」今のエルフの能力を目の当たりにしたミリアは戦慄してしまっている・・・!
そして少しの間を置いた後、エルフ暗殺者が口を開くのだった・・・。
「・・・アンタ、『闇隠れのエディ』っすね。おれもここで出会えるとは思ってなかったっす。」
「オレっちの異名を知ってるたァ、光栄この上ないねぇ・・・暗殺者、お前の名は何ていうんだぃ?」
「おれはクレイグ、クレイグ・クラプトンだ・・・端くれながらもおれは暗殺者・・・エディさん、君に決闘を申し込む!」
「・・・・おあつらえ、今は夜だ。暗殺者同士の決闘には良い時間帯じゃねェか・・・始めようぜ、殺し合いを・・・!」

67 ◆21RFz91GTE:2007/07/05(木) 13:19:18 ID:Ox2kPxN.0

Snow of the NorthWind


■これまでのあらすじ

先の大戦と呼ばれる赤い宝石を巡る大きな戦が有った。古都ブルンネンシュティングの災厄と言われた戦いより二年、二人の英雄が残したギルドを巡って四大派閥ギルドが緊張状態にあった。
一つは古都を中心に活動するミト・メーベ率いる【NorthWind】、その彼らの元に一つの手紙が届いた。依頼を受けたミト・メーベ達はすぐさま炭鉱都市ハノブへと急ぐ。そこで待ち構えていた数千もの魔物の群れ。彼等は魔物の群れをなんとか撃破し坑道へと通じる鉱山へと足を進めていく。

■キャラクター紹介
■ユラン・F・エルフィート(♂)
今作の主人公、WIZの割には魔法が苦手。
何事にも気合が足りないために、進んで行動を起こさない。
備考だが、彼はロリコンである。

■イリア(♀)
今作メインヒロイン、チビで天然でおっちょこちょいなビーストテイマー。
好奇心旺盛で天真爛漫、美味しく頂ける方はどうぞ。

■ミト・メーベ(♀)
前作ヒロイン(二番目の)、現在は英雄達が残したギルドのGM。
昔は臆病で弱弱しかったが、現在は結構ハキハキと物事を言う。

■クラウス・アルフォード(♂)
ミトと同じギルドに所属するGMのお目付け役。
最近は昔のミトと現在のミトを比べてため息ばかりをつく。

■ミルリス(♀)
前作のメインヒロイン、オテンバで実はおっちょこちょい。通称ミル。

■アレン・ケイレンバック(♂)
前作の主人公、設定を無視してスレ内ではロリコンと言われた可哀想な人。
今作では作者が設定を無視してロリコン認定になっている素敵な人

68 ◆21RFz91GTE:2007/07/05(木) 13:22:44 ID:Ox2kPxN.0
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  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■ACT.7:黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>951-952

////**************************************************////

ACT.8:黒衣の焔−TrueEndStory 2



 黒い煙が立ちこめる、月明かりが程よく四人を照らしている。
ミトはゆっくりと倒れた巨人の方へと足を進めていく、慎重且つ冷静とはこの事を言うのだろう。ただしその手には未だに矢を装填した弓が構えられている。
黒焦げになった巨人はピクリとも動かないでいる。これが罠なのか本当に死亡しているのか…。
「…大丈夫そうね。」
ミトはこの巨人腹部を暗いながらも良く見た、魔物とは言え呼吸はするものだ。だが呼吸をする時の胸の動きが全く見られない。逆に息を止めているとも考えにくい。この双方を確認しこの巨人が死亡したものだと考えた。
「さて…坑道の中はどうなっているのでしょうね」
「あまり、深くは考えたくないですね…」
ミトとクラウスがそう言うと、ゆっくりと町の中へと足を進めていく。町の中は既に烏の大群で埋め尽くされている、烏達の目的は…言うまでも無いだろう。
血の匂いがこびりつき、家々は破壊され、そして無残にも数時間前までは「人」だったそのもの達も既に生命は無く、肉と血、そしていくつかの元素の塊へと姿を変えていた。
見るも無残なこの町で行われた残虐と言う名のモンスター達の暴走行為、それとも暴走と言う名の殺戮衝動だったのだろうか…それは今となっては分からない。
ただ一つ言える事は、この坑道の中が一体どうなっているのかさっぱり分からないと言う事だけである。町同様見るも無残な光景が広がっているのか否…人の姿は見られるのか…。
「…暗いですね。」
「そうね、こんなに暗いんじゃ…。」
そこで言葉を止めたミトは後ろで急に輝きを放つものに気が付いた、ふと振り返るとそこにはユランが何かの水晶玉を左手に持っていた。
「ユラン君、それは?」
「あぁ、これは僕が昔に作ったオーブです。本来は覗きや薄暗い町中で…もとい、こんな時に役立つんじゃないかと思って予め持ってきておいたんですよ。」
ミトとクラウスは同時に思った、つい本音が出たなっと…。だが決して口には出さなかった、だが
「すっごーい、ユラン君って準備がいいんだね〜。」
イリアだけは素直に感想を述べている、しかも若干路線がずれている気がするが…。だがユランはその言葉にさらに続ける。
「へっへ〜、まぁイリアみたいなちびっ子にはどんな仕組みになってるか分からないだろうけどね〜。」
「だからちびっ子いうなぁ〜!」
イリアが怒ってユランに飛び蹴りをかます、だがユランはさっとよけた。だがイリアはその行動を呼んでいたのか。右腕を一杯に伸ばした。その右腕が丁度ユランを捉えラリアットのようにユランの喉元を捕らえた。
「ぐぇ。」
ユランはそこで思いっきり咳き込み、イリアと一緒に倒れた。
「ほらほら、二人ともバカやってないで行きますよ。」
見るに見かねたクラウスが一つため息をついてそう言う、その言葉にイリアはえへへとテレながら頭を左手で掻いた、ユランは…お察しいただけると幸いです。

69 ◆21RFz91GTE:2007/07/05(木) 13:23:27 ID:Ox2kPxN.0

 イリアとユランが出来の悪い漫才をしていた頃、坑道の最深部。
鉄分を多く含んだ坑道と今では使われて居ない昔の坑道とが一枚の壁で分かれていた。その壁が先ほどの地震で大きく崩れていた。
その坑道より現れたあの大群、それが先ほどの魔物の群れだと推測がつく。だが…事態は四人が考える以上の事にまで発展してしまっていた。
あの大群をたった一人で殲滅できる者が居るとすれば、それは先の大戦で活躍した英雄達の力をもしのぐ存在になりうる者。そして、人はその時知るだろう。
自らをこの星の最高生命であると考えた由縁の過ち、ただ強く有り、人の生きる世をはかなむ存在。遠く有る存在、伝承上の存在。そして、人は忘れその名を恐れ恐怖の代名詞へと昇格させる。
「この世を儚み、数々の称号を得たあの時代より幾千年…。」
太古の昔より語り継がれ、封印されてもまだ生きる伝承上の生命。黒衣の衣を身にまとい、数千年前の魔女達が愛用した帽子をかぶり、漆黒で吸い込まれそうになる綺麗な黒い髪。
「またこの世界は…人間故の過ちを繰り返そうと言うのか…。」
その昔、赤い宝石を巡って起った世界規模の暴動。その中で作られた擬人は彼をモチーフにして作られた。言わばコピーである。
「あの者達の命だけでは足りぬというのか…。」
そして人は知る。【鬼】という伝承上の生命を、彼の存在を。
「問おう、我の眠りを妨げるのは誰だ…。」
その鬼の前に一匹の巨人が通りかかる、これから崩れた壁を経て表の世界へと血の匂いをかぎ付けて出陣しようとする。だが、それは一瞬にして姿を消した。いや、消し飛んだと言う方が正しいのかもしれない。彼の右手に一つの鋼が光る、そこには巨人の物であろう血液が付着していた。
「我が名は…。」
黒衣の焔、そう彼は呼ばれていた。



ACT.8: 黒衣の焔 TrueEndStory2 END

70 ◆21RFz91GTE:2007/07/05(木) 13:25:04 ID:Ox2kPxN.0
こんにちは、お騒がせ21Rです…。(´・ω・`)
いやぁ、早いものでもう7月…夏ですねぇ〜
この時期どこか海にでも繰り出してしまいたい気分になりますね。

時に、学生の皆さん。
青春してますかぁ?(ぁ

71◇68hJrjtY:2007/07/05(木) 14:12:43 ID:VZO9/3.M0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
夜のテントのひと時…実際RSにも昼夜や天候状態が欲しいと思う今日この頃。重くなっちゃいますかね( ´・ω・)
でも創作アイテムが結構皆さんあるんですね。運営会社さんも一般にアイテム募集とかしてくれたらいいのに…。
しかし、結局ラティナさんまで脱いじゃってもうお祭り騒ぎを通り越してますね(ノ∀`*)
次回、ついにエディとクライグの一騎打ちですね。期待してます!


>21Rさん
久方ぶりの執筆、お待ちしていました。
またまたイリアとユラン君の漫才が飛び交う中で恐ろしい存在が明るみになってきましたね。
これからユラン君たちが対決する相手となるのか、それとも…。実に気になります。

青春ですか…良い響きですねェ…(遠い目)

72プチ:2007/07/05(木) 14:51:34 ID:ZVzQWRAQ0
『魔女は微笑みながら、棒をくるくると回す』


ギルドの威信と賭けた、公開模擬戦。
集団戦闘では決着がつかず、双方二人ずつ代表を選び、雌雄を決することとなった。

戦いに選ばれたのは、まだ駆け出しもいいところの剣士である俺と、ギルド最古参の司祭。模擬戦の経験は浅いが、魔物を屠る剣の腕には自信がある。そこに加護の技に長けた司祭が加われば、攻め、守りともに万全だ。

先手を取ったのは相手方の弓兵だった。時間差を利用した上空と正面からの一斉射撃で、雨のように矢が降り注ぐ。狙いは正確で、俺の盾で守られている部分を避けて身体じゅうに突き刺さった。

すぐさま司祭の癒しの祈りが俺を包む。事前に邪悪からの防護を司祭がかけていなければ、気を失っていたかもしれない。

「ウォォオオオオ!」

気を吐き、弓兵に向かって突進する。戦いの咆哮が戦場を駆け抜けると、弓兵が気を削がれて一瞬萎縮したのを見て取った。これだけの矢に貫かれながら、なお前進してくる者を見れば、躊躇するのも無理はない。

二射目がくる前に片付ける。

そのまま一気に近づこうとした俺の目前に、弓兵の後ろからひとりの女が躍り出た。戦いの場には似つかわしくない、露出度の高いひらひらとした洋服を着ている。

俺の雄叫びにも平然としていたところを見ると……魔女か。

武道家や槍兵などと違い、魔女魔法使いの類はどんな手を使ってくるかわからない。だからこそ、早めに潰すに限る。

攻撃目標を弓兵から魔女に切り替え、盾を目の前に構えて走り出した。相手との間合いをつめる足の速さには自信がある。

あと三歩で剣が届くという距離で、魔女が先端に星のついた棒をくるくると回した。

悪あがきを。

たとえどれほど強力な魔法でも、後方に控える司祭が唱えた、盾の加護が俺を守る。一撃耐えれば、俺の長剣があの魔女をひらひらの洋服ごと切り裂くだろう。

あと二歩。

くると思った魔法の衝撃はない。魔法は不発か。

最後の一歩。

踏み込みつつ袈裟に切り捨てようと、剣を振り上げた。

魔女が微笑んでいる。

俺は……剣を振り下ろすことができなかった。

この距離では当たらない。身体と経験がそう告げている。頭ではあと一歩踏み込めばいいとわかっているが、足がいうことを聞かなかった。

魔女は微笑みながら、棒をくるくると回す。よく見れば、その棒は俺自身ではなく、俺の足元を狙っている。

視線を落とすと、俺の足元では小さな兎たちがぴょんぴょんと跳ね回っていた。

「か、かわぇぇぇ……」

これは、俺がかわぇぇ小動物に弱いと知っての策か!? むやみに動こうとすれば、うさ……なんの罪もないうさたんを踏みつけてしまうかもしれない。

そんなこと、できるわけがない!

魔女は微笑みながら、棒をくるくると回し続ける。そのたびに、足元に召喚されたうさたんたちが懸命に跳ねた。すっかり囲まれている。

どれほど剣の技が優れていても、当たらなければ倒せないのは道理。俺は観念して、あぐらをかいた。こうすれば、うさたんを間近で見られるからだ。

うさたん、なごむわぁ……

ほわーっと幸せな気分に浸る俺めがけて、大量の矢が降ってくる風切り音が聞こえていた。


『魔女は微笑みながら、棒をくるくると回す〜ラビットラッシュ〜』

7325:2007/07/05(木) 14:53:18 ID:W9iHsBn.0
>>25です、こんにちは、お邪魔します。
2話目投下します。要らないとか言われてもめげません。

+++++++++++++++++





-2-






ふいに襲ってきた感傷に首をぶるぶると振って、記憶を締め出した。
後悔などしていない。どの道、あそこに長く居る訳には行かなかったのだ。



一年の年月を経てさえ未だ胸を突き刺す痛みは、鈍く
白い紙に血が滲む様に、じわじわ、じわじわと




ふ、と自嘲混じりに溜息を着いて窓から視線を外す。
雨は上がる様子も無く勢いを増してゆき、遠くの黒い空で稲光が走った。



立ち上がり、ホテルに備え付けの紅茶を入れる。
ここはシュトラセラト―…アイントワール国の隣、ナクエリマ帝國だ。
城を飛び出したあの日から、丸一年掛けてここまで来た。あの日咄嗟に飛び出した私は無一文で、ましてや着替えさえ持っていなかったので、ここの国まで来るのにかなり苦労したのだ。
目的地は、この国の首都、古都ブルネンシュティング。全ての情報が集まる街。
この一年、変身能力のお陰で、そこそこの戦闘が出来る事を身を以って知った。
子供が遊び飽きたであろうスリングを拾い、それを出鱈目に振り回して武器にし、変身能力で身体能力の向上を図る。
そんな風にして、時には死にそうになりながらここまで来た。
情報収集や運び屋、暗殺などを仕事にする事を思いついてからは、財布の中はかなり温かくなったのだが。


ここまで来れば、あと一月もすれば目的地に辿り着けるだろう。
ナクエリマ帝國に来てから、初めての街。どうせ急ぐ用事な訳でもあるまい、少し観光でもしたい気分だったが、この雨だ。
濃い目に入れた熱い紅茶を啜りながら何をするでもなくぼうっとしていると、突如階下から叫び声が聞こえた。



「…っきゃああああああっ」



反射的に顔を上げると、机の上に置いたワンドを掴んで廊下に飛び出す。
今は変身後なので恐らく大丈夫だろうと踏んで、中央に位置する螺旋階段の手摺りを飛び越え3階下のエントランスホールまで降りた。
片足片膝をついて綺麗に着地すると、フロントの前で不穏な動き。


強盗か何かの類だろうか。敵は3人、女性が一人喉元にナイフを突き付けられ、蒼白な顔をしている。




「全員手を上に上げろ。現金と金目の物を全て出せ」


一人がドスの利いた声でボーイに指示を出す。覆面をしているので顔は解らないが、恐らくまだ20代やそこらだろう。
怯えたボーイは覚束ない手付きでフロントにあるレジから現金を全て出し、目の前に差し出された鞄に詰め始めた。


「その時計もだ」


ボーイの腕に光る宝石入の時計。一瞬だけ躊躇った様な表情を見せてから、左腕に手を掛けるも震えの所為でなかなか外れない。チ、と強盗が舌打ちをして足を踏み鳴らす。


私はそろそろかと思い、変身を解いた。幸い全員の目は今起こっている事件に嫌でも釘付けになっていて、別の種類の悲鳴が起こる事は無かった。
装着しているガーターベルトから愛用のボトルを取り出したが、これだと気体が女性に当たりかねない。思い直して何か投げられる物を探したが、生憎何も持ち合わせて居なかった。
辺りを見回すと、テーブルの上にホテルの名前入ライター。丁度3本摘み上げ、スリングに装着する。
渾身の力を込めて、引いた。ギリギリと皮が嫌な音を立て、張り詰めてゆく。
一人の強盗が気付いた。

7425:2007/07/05(木) 14:54:06 ID:W9iHsBn.0



「おい、そこのお前何し








最後までその言葉が発せられる事は無かった。
まず一本目のライターを、人質を取っている男の手に。ナイフがキィンという音を立てて床に転がり、女は唖然とした表情で私を見つめ、それからこちらに向かって駆け出す。
私は二本目のライターをセットすると、二人目の男に。それからもう一本、と立て続けにライターを飛ばし、女が私の所に来るまでに三人の男たちはそれぞれ蹲った。
がはっ、だとか、ぐっ、という呻き声を上げてくず折れる。
ホテルに入る前に、出し渋るロマに無理を言って買った(もとい、売らせた)攻撃速度を上昇させる石を使ってみたのだが、効果絶大。
隣にぼうっと間抜け面で立っていた男に女を託し、強盗の方へ駆け寄る。
さっきしていたのと同じ様に一人の男を掴み上げ、喉元にナイフを突き付けてやり、言った。


「ボーイさん、ロープある?それから警察」
薄く微笑みながら言うと、ボーイは何も言えないのかこくこくと何度も頷き、フロントの引き出しを何やらごそごそとやってビニール紐の様な物を手渡してきた。
余り上等とは言えないが、これで不足は無いだろう。


器用にくるくると、後手に縛ってやる。
残りの二人も、未だ動けない様で縛るのは容易だった。


「これでよし、と」


まとめて縛り上げ、一仕事終えて呟くと、周りから盛大な歓声と拍手が巻き起こる。
私はなんだかむず痒い様な気持ちになり、微笑んでみせた。


「すげーな嬢ちゃん、それ、どうなってんだ?」
「本当に有難う御座います、私もうどうなるかと思って…」


次々沸き起こる歓声、それにしても「嬢ちゃん」は頂けない。
幼く見られるのは慣れていたが、こう呼ばれるとあまりいい気はしない。これでも19なのだ。
ナクエリマ帝國ではどうだか知らないが、私の国では18からもう成人だった。

「いいえ、気にしないで。怪我は無いですか?」
言って女の顔を覗き込む。
有難う有難うと繰り返す女に苦笑しながらも、心の中が何だか暖かくなるのを感じた。
仕事で感謝される事はあったが、それとは別の種類の、純粋な感謝。
そうこうしている内にサイレンの音が響き渡り、ピク、と強盗が顔をほんの僅かだけ上げる。


既に捕獲済、という事もあり景観の数は3人。
非情にも衆人環視の中で覆面を剥ぎ取ると、現れたのはまだ15にも満たないであろう幼い顔、三人ともが、だ。
我がアイントワールこそこの様な事件はあったが、それにしても、この若さは尋常でない。
どうして…という思いと、苛立ちが込み上げて来るのを抑えながら、強盗…もとい少年たちが連行されて行くのをどうする事も出来ず見詰めるだけ



「…どうして、あんな子供が」


独り言のつもりだったが、男が答える。



「ああ、そういえばお嬢ちゃん異人さんだね」


異人、という言葉にぴくと眉根を寄せるも、一瞬で元の顔に戻して
「ええ、そうなんです」
笑顔を取り繕って言った。


「この国はね、貧富の差が激しいんだよ。ここ、シュトラセラトは、基本的には高級住宅街なんだけどね」

男は困った様な表情で続ける

「スラム街はこことは同じ国とは思えない位酷くてね。乞食で溢れ返ってる」


なるほどあの3人の子供たちは、スラム街から来たのだろうか。それなら納得出来ない事も無い。
それにしても…


「それにしても、まだあんな子供が…」

「はは、それを言うならお嬢ちゃんも子供だろう」


あはは、と快活に笑う男。こんな場面を見ても笑える程、この国は麻痺しているんだろうか。
そう言う訳にも行かずに、私はそうですねと苦笑し会釈をして、自室に戻る為に今度は階段を使い3階まで上がった。

7525:2007/07/05(木) 14:55:21 ID:W9iHsBn.0

ドアノブに手を掛ける。何故か、ピインと張詰めた空気。
ス、と目の端を黒い物が横切り、瞬時に振り返ってスリングを構えたが遅く、がしとその右手を掴まれた。
顔を上げ、自分よりも頭ひとつ分ぐらい大きい(といっても私が小さいだけだが)身長をキッと見上げた。
背の高い女だった。すらりと伸びた四肢は長く、一見華奢だが引き締まった、鍛え上げられた体躯。
スリングごと右手を握られた為何も出来ずにいると、女が言った。



「ねえ、見せてよ」





怪訝な表情を浮かべた私をふ、と笑う女。



「何、を」

「変身。出来るんでしょ?」






ビク、と身体が震え上がる。勿論誰かに見られる事も考えては居たが、まさか



「っ出来ない。そんな、事…」



心臓が、バクバクと鳴っているのが自分でも解る。体中の血が沸騰しているかの様に、熱い。
身体から湯気が立っている様に思える。私は下を向いて、平然を装う事さえ出来ずに唇を噛む。
どこからどう見ても、肯定だ。



「嘘。見たのよあたし。美しい女性に変身する所を、ね。」


ツ、と女が首筋に指を這わせる。ゾクリと寒気がした。



「美しくて、ここももっと大きくて、精巧に作られた、人形の様な」

指が胸元に滑り込む。冷たい指にヒ、と声を上げて、自由になる左手でその指を阻止する。



「…触らないで。何が目的なの」


回る頭をどうにか落ち着かせ、ようやく搾り出した声は情けない程に震えていた。




「可愛いわね。あたしは、どちらかというと今の姿の方がタイプかも」

クスリと妖しく微笑んで女は掴んだ右手を背中の後ろに回す。

「っぐ…!!」



関節が悲鳴を上げた。ミシ、と嫌な音がして私は苦痛に顔を歪める。
目的は解らないが、このままでは、やばい。
かといって武器を掴まれている状態ではどうする事も出来ず、私は頭を巡らせてひとつ思いついた。
この上その姿を晒すのは死ぬほど嫌だったが、こうなってしまっては仕方ない。本当に死にかねないのだから。


女の手から私の右腕が消える。正確に言うと、消えた訳では無いのだが。
うさぎに変身して、呪縛から逃れたのだ。

7625:2007/07/05(木) 14:55:50 ID:W9iHsBn.0


「へえ、そんな事も出来るの」


口の端を上げて嬉しそうに言う女、寒気がする。
普通の人間よりも早く走る事の出来るこの姿は、攻撃を受けても無傷だ。
これで武器も元通り手中に。どうする?殺すか?それとも、逃げる…?


3メートル程の間合いを取って、私はうさぎのまま、相手の様子を伺う。
このまま逃げれば、何とか逃げ切れるだろう。
咄嗟の事で気付かなかったが、相手は弓を持っている。変身が解けたら、遠距離でもヤバイ。


ニコニコと不気味に笑いながら女が歩み寄る
間合いが、どんどん詰まってゆく
何故だか私は逃げる事が出来ずに、じり、と後ずさりをするだけ
気迫で、負けているのだ。この私が。


尋常じゃない。この女、強い。





このまま戦闘になれば、ホテルの客を巻き添えにしかねないだろう。
身体全体をバネにして飛び上がり、窓枠に乗り上げる。あわよくば、逃げようとも目論んでいたのだが。
窓ガラスの隙間から身を潜らせて飛び降りる。


「んー、いいバネね。素敵」




うん、と頷いて後を追う女、正直、ここまで追って来られるとは思わなかった。ホテルを背に、走る、走る、走る…
途中後ろを振り返ると、どんどんと距離が縮まっているのが解った。変身した私に人間が敵う筈が無い。おかしい…何故?このままでは、確実に捕まる、焦りが私を何度も振り向かせる。
何時の間にか女は弓を持っていなかった。その代わりに手にしていたのは長い槍。
そしてその槍を旋回させると、回転の力を利用してもの凄い速さで接近して来た。



「―…!!!」


あんな芸当が出来る人間が、この世に居るとは。
ただでさえ重そうなあの長槍を旋回させ、その威力で突進して来るだなんて。
ゾ、と背中に寒気、変身が解けた。立ち止まりもう一度変身しようとする、間に合わない、ヒヤリと鋭い物が背中にほんの僅かだけ刺さる。



「動くと刺すわ」


そう言って槍を持つ手に力を込める。ほんの少しの冷たさが、徐々に痛みに変わってきた。
背中に生温い感触が伝う。血、なのだろうか。
絶体絶命、とはこういう事を言うのだろう。本能が叫ぶ。無理だ、逃げられない、ここで死ぬ、と。
息すら詰まるこの圧迫感は相手との力量の差。そもそも、気迫で劣っている。
勝ち目は、無い。






私は抵抗を諦め、薄く、目を閉じた。










++++++++++++++++
長々とお邪魔しました。
臨場感たっぷりの戦闘シーンが書けない…
なに、この、コマンドみたいな文章。

7725:2007/07/05(木) 14:59:41 ID:W9iHsBn.0
>>72
かなり和みました…
剣士のキャラがいい感じに壊れてて素敵です!
こういう読み切り?的な短編大好きです。次も楽しみにしてます^^

78ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 16:47:29 ID:OhTl4zsk0
Episode05-2 Death Chase in Tram Forest〜闇夜の追撃戦〜

ドンチャン騒ぎで騒々しいテントをよそに、外では一つの戦いが始まろうとしていた・・・
シーフで『闇隠れ』の異名を持つエディ、そして何者かに雇われたエルフ暗殺者・・・クレイグ。


お互い目を逸らさず、そのまま相手を見据えている・・・時は止まったかのように思える。そして次の瞬間!
両者はその場からヒュッという鋭い音と共に消えたかと思うと、空中へと跳び上がっていた・・・!
まずはエディが仕掛けた・・・!空中戦での投擲はリスクが大きいと踏んだか、格闘戦へと持ち込むべく
蹴りを一発放った!鋭い蹴りがクレイグの顔面へと吸い寄せられる・・・・だが間一髪のところで彼は身をかがめ
襲い来る蹴りを回避した。地面に降り立ち、即座に反撃に転じる・・・!まだ滞空状態にあるエディを狙い、弓矢を構えた!
当然エディはそのままでいるわけが無い。弓矢の軌道を予測し、素早くダートを投げる・・・!
放たれた矢とダートは空中で衝突し、ガキィン!と音を立てて地面に落下した。着地したエディ・・・
先程は見えていたクレイグの姿がどこにも見当たらない・・・!!しかし気配と妙な殺意は感じ取れる・・・
(くっ・・・どこだ?どこに隠れやがったんだ!?)焦燥した表情で辺りを見回す。
「・・・!!エディさんっ、真下っ!影に潜ってるよ!」いち早くクレイグの場所を突き止めたミリアが叫んだ!
エディが聞いてから行動するまでわずか0.01秒・・・バク転でその場から後ろに下がった。と同時に
クレイグが影の中からものすごい勢いで飛び出した・・・!そのまま手にしたナイフで仕留めるつもりだったのだろう・・・
「・・・やるじゃねェか、クレイグ。さすがはエルフ暗殺者だ・・・!」どこか楽しげな表情を浮かべ、エディはクールに微笑む。
「あんたには及ばないっすよ、『闇隠れ』・・・動きに無駄がないっす。」クレイグも微笑んではいるが、何かに熱くなっている。

「・・・ここじゃ単調な戦いしかできねェな、クレイグ。森の中ならお前の得意な戦闘ができるだろ?
 オレはお前の本気が見たい・・・!エルフ暗殺者の技術、盗ませてもらうぜ!」
「へへ、上等っすよ・・兄貴ィ。トラン森のエルフ戦士十二傑、序列第2位・・・『ステルス』の名の下に
 あんたを消させてもらう・・・!」そして彼らはまたヒュッと高速移動し、森の中へと消えてゆく・・・


「だ、大丈夫かな・・・エディさん」「大丈夫、エディはきっと帰ってくる・・・!」
心配するミリアを、ファミィが力強く促した。するとそこへ、また一匹のエルフが現れたが・・・
先のクレイグとは違って殺意は何一つ感じられない。蒼い髪の色からして、エルフ戦士のようだ。
「こ、こんばんわ。ボクはサーファイユ、さっきのエルフの弟です。」

79ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 17:23:41 ID:OhTl4zsk0
ミリアとファミィの目の前に現れたのは、サーファイユと名乗る一人のエルフ戦士だった。
口調や表情からは、いかにも争いを好まないという雰囲気が感じ取れそうだ。そんな彼に、ミリアが問いかける。
「えと、サーファイユ君・・・?さっきのエルフが君のお兄ちゃんなのはわかったけど・・・どうしてミリアたちを狙っていたの?」

悲痛な面持ちで、サーファイユが口を開いた。
「・・・実は、ボクたちフォーリンロードやトラン森に住んでいるエルフは、とても人間に対して友好的な種族なんです。
 あ、でも勝手に木を伐採していくような悪党は別ですよ!?数ヶ月まで、ボクたちは平和に暮らしていました・・・・・
 だけどある日、大きな鎌を持った不気味な魔物が村にやってきて、非道の限りを尽くしました。父さんや友達が、ヤツのせいで
 重傷を負ったり、中には首を刎ねられて殺されてしまった者もいるんですっ・・・!これ以上は耐えられないと、長老はヤツと
 交渉に回ったんですが・・・」表情がさらに曇ってゆく・・・
「ヤツは条件に『村にはこれ以上手を出さない代わりに、俺様の配下になれ。人間どもを痛めつけてやれ。』と・・・
 ボクたちエルフに酷な条件を突きつけたんです、ヤツは村を人質に取ったんです!兄さんもこんなことはやりたくないと
 日を追うごとに嘆いていました・・・お願いですっ、兄さんを、ボクたちエルフの村を!ヤツの手から救って下さい!!」
涙交じりに土下座をし、ミリアに嘆願した。ミリアはそのまま「うんっ、エルフの皆は・・・ミリアたちが助けてあげるね!」
と首を縦に振り、願いを受け入れた。「ありがとうっ、ありがとうミリア!それと、お願いがあるんだけど・・・」
「な〜に?」とミリアが微笑みながら尋ねる。
「ボクの・・・ボクのマスターになってくれますか?隣にいるファミリア君との会話に感動したんです。
 君とならとても良い冒険ができそうな気がするんだ。・・・ボクは世界を見て回りたいんだ!」
サーファイユの熱い思いに、ミリアもそれに応えるべく手を差し伸べた・・・!
「ミリアが連れて行ってあげるよ・・・!サ−ファイユ、一緒に冒険しよっ!」「・・・うんっ!」
こうして、ミリアの元に仲間が一人増えた・・・。エルフ戦士サーファイユ、トラン森十二傑の第6位
『豪斬』の称号を持つ戦士・・・新しく迎えられた頼もしい仲間と、ミリアは固く握手を交わすのだった。

「サーファイユ、さっそくお兄ちゃんを止めに行かないと!」「うん!よろしくね、ファミィ!」「よろしくさ〜!行くぞ!」
森の中へと消えたエディとクレイグを追って、ミリアとファミィ、新たに加わったサーファイユら3人は
深く鬱蒼と茂る森の中へと足を運ぶのだった・・・・

一方テントの中・・・・・
「どうれすか〜フィナーアさァ〜ん!?いい加減ギブアップしてくらはいよぉ〜?」
「はぁっ・・・はぁっ・・あんっ、このアタシが・・・レスリングで敗けるなんて、ありえなんだからァ〜!」
全身汗だくになりながらまだ掴み合ったままエロエロレスリングで対決するラティナとフィナーア・・・。
酔っ払ったトレスヴァントとバーソロミュー、セルジオはもう既に爆睡しており
「ぐがァ――ゴォ――・・・・スピュルルル〜」と鼻ちょうちんをぶら下げてイビキをかいているのだった。
・・・・まるでダメな大人たちの夜が終わろうとしていた。

80ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/05(木) 17:57:59 ID:OhTl4zsk0
一方トラン森の入り口から少し入った森の中。
暗い森の道を、3人が出せる限りのスピードで走ってゆく・・・

「そういえばサーファイユ、お兄ちゃんが私たちを狙ったのも、その悪党が仕向けたの?」
「うん。ついボクたちの境遇を訴えたくて、理由を述べるのを忘れていたけど・・・そうなんだ。
 シュトラセラトでミリアたちに一杯喰わされたらしくて、その復讐に兄さんを刺客として送り出したんだ。
 悪党の名前はザッカル、フランデルの各地で殺人や強盗をしてきたんだ。最もひどいのがデフヒルズでの事件さ。
 デフヒルズに住んでる原始人の村を一晩で壊滅させて、族長のシャーマンも殺したんだ。挙句の果てには、近隣に
 生息しているモンスターも根こそぎ狩り尽くしたんだ・・・・ヒドい魔物さ。その事件での原始人の生き残りが、
 あるビーストテイマーに従属しているって噂話を聞いたんだ、確かマスターの名前は・・・フィナーア、とか」

サーファイユの話に、ミリアは不思議な因果関係を感じていた。
(もしかしたら・・・これも運命なのかな?全ての過去が、一つに結びついていくみたい・・・)

「フィナーアはね、ミリアのお姉ちゃんなの。さっきのテントの中で楽しそうに騒いでいたよっ!
 と〜っても明るくて、優しいお姉ちゃんなんだから!ミリア大好きだよっ!」
自らの姉を誇らしげに、明るく語るミリア。サーファイユもそれに頷き言葉を返した。
「ボクの兄さんも、おっちょこちょいだけど・・とても優しくて強いんだ!ザッカルの逆鱗に触れないために
 ああやって冷たい態度を取るようになったけど、本当はそんな奴じゃない!必ず戻してみせるさ!」
「うん、サーファイユは強いさ〜。とても芯のあるとても強いヤツさ!いい友達になりそうさ〜」
サーファイユの心の強さに惹かれ、ファミィも自らの士気を揚げるのだった。

To Be Continued...

次回からはザッカルとの抗争が顕著になるかと・・・
ミリアと仲間たちvsザッカル率いる「Death13 Crew」のガチンコバトルもロケ地を移して描こうと思います。

81◇68hJrjtY:2007/07/05(木) 18:38:21 ID:S5Xzx61Y0
>プチさん
初めましてです。
なんだか最後が和やかな実にのほほんとしたお話ですね(*´д`) でもうさたん可愛いんですよね…orz
それと戦闘シーンもなかなか鮮明だと思いました。
こういうタッグ戦みたいなイベントがあったら楽しそうですよね。優勝者には賞品とか。

>25さん
遠慮なんかせずにどんどんUPしてください。
遂にシフとアチャ(今はランサかな?)という役者が揃いましたね。
何か殺人事件のような、シリアス度が高くて戦闘シーン抜きにしてもじゅうぶん恐ろしいです(涙目)
変身を強要されている理由、そしてシフの方が今後どのように絡んでくるのか。楽しみです。
そしてうさたんハァハァ。゚+.(・∀・)゚+.゚。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
相変わらず書くの早いですね(;゚Д゚)
クライグがどことなく義侠心溢れててカッコイイです(笑)
フィナ姉も随分PETいるみたいですが、しかしPETたちの会話とか想像すると楽しいなあ…。
やっぱり新参PETは先輩PETに色々教わってたりするんだろうかなぁ(笑)
Death13 Crewとの抗争、お待ちしています。


最近スレ進むの早くて嬉しいところ。暑いですが職人の皆様、頑張ってくださいね〜。

82プチ:2007/07/06(金) 02:17:16 ID:ZVzQWRAQ0
『信じれば、そこにある』


地下墓地にはいまだに発見されていないお宝が眠っているという、胡散臭い情報を盗賊が持ってきたのが、ことの始まりだった。

そんな与太話、信じるほうがどうかしている。
地下墓地は熟練の冒険者たちによって、すでに調べつくされていたからだ。
しかし盗賊は証拠となる物を持っていた。神秘的な光を放つ水晶だ。
その魔力が込められた宝石を地下墓地のある場所にかざすと、壁が呼応して扉状に光るらしい。
それこそが魔術による隠し扉で、お宝はその先にあるという。
そこまで話されると、さすがの私も興味が湧いて、盗賊の話に乗ることにした。

盗賊と私だけでは危なかろうということで、みつけたお宝を山分けするのを条件に仲間を募った。
しかし、腕の立ちそうな冒険者には見向きもされない。
やはり最初に私が思ったのと同じように、地下墓地にはもうなにもないとふんでいる冒険者が多いのだろう。
結局集まったのは両手剣を携えた無口な戦士と、それにまけないくらいのごつい司祭、魔術を覚えたての魔術師に若い剣士。
みな私と同じように駆け出し同然の冒険者だが、やる気は十分だった。

83プチ:2007/07/06(金) 02:18:11 ID:ZVzQWRAQ0
装備を整えた私たちは、盗賊に案内されて地下墓地の一角にいた。

「本当に、ここに隠し扉があるんですか?」
「魔術師殿、あんたもくどいねー」

魔術師は疑わしそうに地下墓地の壁を見る。
私から見ても、なんの変哲もない壁だ。

「私にはなんの魔力も感じられませんが……」
「そりゃ、あんたがヘボだからなんじゃねーの?」
「……そういうことなら帰らせてもらいます」
「まあ待て、話せばわかるって! こいつを見ろよ」

帰ろうとする魔術師を引き止め、盗賊が懐から水晶を取り出す。水晶から淡い光がゆらゆらとこぼれ出ていた。

「たしかにその水晶からは魔力を感じますが……どうやってその魔力を発動させるのか、わかっているのですか?」
「それを調べてもらうために、魔術師殿にお越し願ったわけでして」
「ふむ……では、ちょっと貸してください」
「いや、それはできないんですわ」
「なぜです!?」
「他人に渡すと水晶から魔力が消えるかもしれないって、町の鑑定士が言ってたもんで」
「ふむ……」

魔術師は盗賊の手の上にある水晶をしげしげと見る。
そして、盗賊が隠し扉があるという壁をくわしく調べはじめた。
私の目には、やっぱり普通の壁にしか見えない。

「その水晶をはめ込むような仕掛けはないのですね?」
「ああ、物理的なものはないねぇ。でも、これが鍵だってことたしかだと思う」
「ふむ、鍵ですか……いやまて。そうかそうか。これが特別なわけではないんですね、きっと」

魔術師はなにかに思い当たったように、ひとりで納得する。

「使い方がわかったんなら、説明してくれるとありがたいな」
「いいでしょう。盗賊、私の言うとおりに行動してください」
「まかせとけ」
「絶対ですよ?」
「お宝のためなら、盗賊に二言はない」
「まずはその水晶を握り」
「握り?」

魔術師にいわれるがまま、盗賊は水晶をしっかりと握った。

「頭上高く振り上げ」
「振り上げ」

「自分の頭に思いきり叩きつける」
「思いきり叩きつけ……痛い! って、あぁぁああ!」

躊躇することなく盗賊の頭にぶつけられた水晶は、粉々に砕け散った。

「魔術師! 粉々じゃねぇか! どうしてくれる!?」
「もう見えるはずですが、どうかな?」
「見えるって……」

なおも魔術師に食ってかかろうとしていた盗賊が、魔術師が指差す方向に目を向けたとたん、口をつぐんだ。
そこは盗賊が隠し扉があると言っていた壁面。

「開いてる……」
「さあ、みなさんもその水晶の粉を自分の頭にふりかけなさい。早くしないと効力がなくなりますよ」

その言葉を聞いた剣士が盗賊の頭から水晶の粉をひょいとつまみ、自分の頭にふりかけた。

「おお、本当だ! こんなところに通路が!」

剣士の言葉を聞き、戦士と司祭がそれに続く。

「さあ、弓兵さんもどうぞ」
「ありがとう」

言われるままに差し出された水晶の粉をふりかけると、溶けるように壁が消えていき、地下墓地と同じような造りの薄暗い通路が姿を現した。

「いやぁ、魔術ってすごいですねぇ」

そう言いつつ、ぱらりと粉をふりかけた魔術師を、盗賊が不満げな顔でにらんだ。

「ひょっとしてなんだけどさー、オレの頭で水晶を割らなくてもよかったんじゃないか?」
「さあ、進みましょう。どんな財宝が待っているのか、ワクワクしますね!」
「なあおい魔術師、質問に答えろよ」
「盗賊、早くしないと置いていくぞー。先行くからなー」
「待てって。絶対そうだろ魔術師! なぁ!? って、こらみんな、先に行くな! オレを置いて行くなー!」

84プチ:2007/07/06(金) 02:19:45 ID:ZVzQWRAQ0
通路の先には、激戦が待っていた。

隠し扉の先は通路が複雑に入り組んでおり、まるで迷路のようだった。現れる不死の骸骨も、地下墓地にいたものと比べると格段に強い。
全員で力をあわせて撃退していったが、苦戦を強いられて、用意してきた回復薬も矢も底をつきかけていた。

「ここはいったん戻って、態勢を立て直そう」

壁一面に本棚が並んでいる部屋で、歳の割りに意外と冷静な剣士がそう提案した。
連戦で、みな疲弊して座り込んでいる。

「それがいいかもしれんな」

司祭がそれに同意した。癒しの祈りが間に合っていないことを、悔いているのは明白だった。
だが誰もそのことは指摘しない。司祭がいなければここまで進んでこれなかったこともまた事実だからだ。

「まだお宝おがんでないしさ、先進もうぜー」

盗賊は進む気があるようだ。
楽観的なのか、現状を把握してないのか……

「お前、今の状況をわかってて言ってんのかよ?」
「まぁ、戦闘はつらいけどさ、お宝がまってるわけだし〜」

ひとり気楽な盗賊は、本棚を物色している。

「やめておいたほうがいいですよ。こういう場所にある本には、どんなまじないがかけられているかわかりません」

それまで沈黙を保っていた魔術師が、盗賊をたしなめた。

「大丈夫だって。本はお宝じゃないから、オレは興味ない……って、なんだこりゃ?」

盗賊の指先がぴたりと止まると、一冊の本を抜き出した。
表紙が神秘的な色をしている。

「きれいなもんだなぁ。しかし、中身はぼろぼろだ」
「よしなさいと言っているんですが」

魔術師の語調が強くなるが、盗賊は気にせずぱらぱらと本をめくっている。
相当年季の入ったシロモノで、盗賊がページをめくるたびに風化した部分が少しずつ崩れ落ちていく。

「まあ、こんな蛇がのたくったような字、読めないんだけどなー」

盗賊が最後の章を開いたとき、部屋全体が大きく揺れはじめた。

85プチ:2007/07/06(金) 02:20:38 ID:ZVzQWRAQ0
「罠か!?」
「だから言ったでしょう、この間抜けめ!」
「盗賊、扉を!」
「こんなに揺れてちゃ鍵開けなんかできないっての!」
「みんな、伏せろ!」

愛用の弓矢を胸に抱え、頭をかばうようにして床に伏せる。
こんなところで生き埋めになるのか。
こんなところで……仇もとれずに、こんなところで!

「おや……?」

しかし、予想に反して、激しい揺れはすぐに収まった。

「どうやら、助かったらしいな」
「盗賊! お前がよけいなことをするから!」
「みんな生きてるんだからいいじゃん」

めいめいが立ち上がり、身体から埃をはらう。

「盗賊」
「なんだよ?」
「さっきの本を見せてください」
「どうして?」

盗賊がしぶる。

「嫌な予感がするからです」
「何も起こりゃしねーって」
「いいから見せてください。ひととおりの文字は読めますから」

盗賊がしぶしぶ懐から本を取り出し、魔術師に手渡した。

「ほらよ。こういうのはジョークトラップっていって、何か起こるかもしれない、って疑心暗鬼にさせるのが目的の罠なんだ。生真面目なあんたみたいなのが、一番ひっかかりやすいんだぜ?」
「お主、まさかこの期に及んで、そのなにが起こるかわからん本を持ち出そうとしていたのか?」

司祭の言葉に、饒舌だった盗賊の言葉が止まる。

「……さっきの揺れで、たまたま懐に入ってたんだ」
「どうだかな。好事家を騙して売り飛ばそうとでも考えていたんだろう」
「たまたまだって! 信じてよ〜」
「みなさん、聞いてください」

みんなが盗賊を責めたてようとするのを、本を調べていた魔術師がさえぎった。

「どうやら、悪いことが起きるかもしれません」
「おいおい、だからこれはジョークトラップで……」
「彼が開いた最後の章、読み取れる一文にはこう書いてあります。『……そしてこの本を取り出すことで、闇の封印が解けるようになろうぞ』」

一瞬、部屋を嫌な静寂が支配した。

「だから、それもジョークトラップなんだって。心理的な罠ってやつ。みんなでひっかかってどうするんだよ」
「闇の封印、とな……」
「よく考えろって。『この本を取り出すとなんかの封印が解けると書いてある本』なんて、おかしいじゃん。取り出す前に警告しなきゃ、意味ないだろ?」
「それはそうですが……警告ではないとしたら?」
「だから、こうやって不安にさせて、なにかあるぞ、何か起こるぞ、って思わせて、緊張感を高めて心理的に疲労させ、ミスを誘うのが目的なんだってば」

楽観的かもしれないが、盗賊の意見は筋が通っていた。

「たしかに、あなたの言い分には筋が通っています」
「でしょー?」
「ですが、用心するに越したことはありません」
「まあそうりゃそうだけどさ」
「それで、どうする。先へ進むか、戻るか」

いままでのやりとりを聞いていた戦士が、全員の意思を確認する。

「決まっています。戻るしかないでしょう」

魔術師が全員の意見だといわんばかりにそう答えた。
このまま進むのは自殺行為でしかない。

「それなんだけどさー」
「まだお宝とやらにこだわっているのですか? 先へ進みたいなら、なおさら……」
「この迷路に入ってきたときの隠し扉、あるでしょ。あれ、内側からは開かない造りになってるんだなー」
「なんだと!?」
「なぜそれをもっと早く言わん!」
「閉じ込められたってことですか!?」
「だからさ、戻ろうにも戻れないんだよねー」

すでに退路は断たれていた。戻ることはできない。

「では、先へ進んで出口を探すしかないですね」

魔術師の言葉に、全員がうなずいた。
死ぬのではなく、生き延びるために。

86プチ:2007/07/06(金) 02:21:43 ID:ZVzQWRAQ0
「……ドジった」

巨大な骸骨騎士の斬撃を受けて、盗賊が崩れ落ちる。
長い通路を抜け、盗賊が怪しい門を開けた矢先の出来事だった。

「この骸骨野郎!」
盗賊を守るように剣士が前に出る。
三体の骸骨騎士がいっせいに切りかかるが、剣士はそれを危なげなく盾で受け止めた。
戦士が無言でそれに続き、私の弓矢と魔術師の火球の魔術が援護する。

「イケメン! 炎を!」
「イケメンとか呼ばないでください」

剣士が後ろを振り返らずに剣を掲げると、その刀身に炎がまとわりついた。同時に戦士の両手剣と、私の矢尻にも同じ魔法がかかる。
炎の付与魔術。魔術が続く限り、かけられた武器は炎の魔力を帯びる。
しかし、それでも骸骨騎士たちには効果が薄い。

「あとは大丈夫、行ってくれ」
「しかし……いや、わかった」

盗賊に癒しの祈りを必死に唱えていた司祭が立ち上がり、攻撃に加わった。

「迷わず送ってやろう!」

司祭の鈍器は骨を砕くのに適している。それに加えて、司祭が使う鈍器は祝福されており、不死の魔物には絶大な効果を発揮する。

剣士の洗練された袈裟切りが、司祭の鈍重な殴打が、一体、また一体と、骸骨騎士たちを確実に打ち砕く。
そして、私が最後の一矢を射掛けたところで、最後の骸骨騎士が断末魔のような叫び声を上げて、ただの骨と化した。

矢筒に矢はもうない。

「どうにか片付いたか……盗賊、大丈夫か?」
「おっさん、うしろー!」

87プチ:2007/07/06(金) 02:23:10 ID:ZVzQWRAQ0
それは一瞬の出来事だった。
盗賊の様子を見ようと振り返った司祭の肩口を、急に現れた新たな骸骨の巨大な鉤爪が握りつぶした。
そのまま、前のめりに司祭が倒れる。

明らか過ぎる深手。

「おっさん!」
「よくも司祭をっ!」

剣士と戦士が前に出て斬りつける。その斬撃をひらりとかわすと、浮遊する骸骨は大きく手を振った。

「なっ! ぐっ」

剣士と戦士が剣を振るうたび、逆に彼らが苦悶の表情を浮かべる。

「まさか、制約の呪術だと!? そんなものを使う骸骨がいるとは……ふたりとも、攻撃しないでください! すればするだけ自分が傷つきます!」

二人にかけられた呪術を見破った魔術師が、額に脂汗を浮かべながら頭上に浮かべた火球を放つ。

「呪いってやつか……しかし、そいつは聞けねぇ相談だな! やられるのを黙ってみてられるほど、大人じゃないんでね!」

痛みをこらえて剣を振るう二人だが、明らかに動きが鈍い。次第に防戦一方になっていく。

そんな中、私はなす術がなかった。
矢をもっと持ってきていれば、こんなことには……

「弓兵、ちょっといいか」

声は足元から聞こえた。

「肩を、貸してほしいんだ。ひとりじゃ立てなくてな……」
「あ、うん」

盗賊は新たに現れた骸骨をにらみつけている。
たしかに部屋の中央に座っていては、剣士たちが自由に戦えない。
私は盗賊に肩を貸して、部屋の隅へ……

「おいおい、連れて行く方向が逆だ」
「え……?」
「これ以上遠ざかったら、あの骸骨野郎に自慢の短剣を食らわせられないだろ」
「その傷じゃ無理だって!」
「いいから……もう少し前だ。もう少しで、射程に入る」
「でも、呪いが!」

戦士、剣士は深手を負っていなかったから、まだなんとか戦えている。しかし、いま盗賊が短剣を投げれば、呪いで盗賊が……

「ごちゃごちゃうるせぇやつだなぁ」
「ちょ、ちょっと! どこ触って……!」

私の身体を突き放して、盗賊がふらふらと前に出る。
その身体は、骸骨騎士に切りつけられた傷から流れ出た血で、真っ赤に染まっていた。

「弓兵、お前けっこう大きいのな」
「え?」

戸惑う私をよそに、盗賊は短剣を構えた。

「胸だよ、胸」
「あっ!」

さっき突き放したときに……!

「こんな近くにお宝があったなんてな……これが正真正銘、最後の一投だっ!」

盗賊の投げた短剣は、骸骨の眉間を正確に貫いた。

「へっ、どうだ……ざまぁみやがれ」

同時に、盗賊の口の端から血が一筋流れ、支えようとする私の力を無視して、盗賊の身体は床に崩れ落ちた。

こんなときに、私はなにもできないなんて。
ただ見ていることしかできないなんて。

88プチ:2007/07/06(金) 02:24:36 ID:ZVzQWRAQ0
「すまん」

戦士が、短くそういうと片膝をついた。
目だけは骸骨をにらみつけているが、立ち上がることができないでいる。
左足からどくどくと血が流れ出ていた。

剣士は折れた剣を捨て、今にも割れてしまいそうな盾を両手でかまえ、魔術師に近づこうとする骸骨をけん制する。

ここまでなのか。

「イメージするんです!」

魔術師が、叫んだ。

「たとえ矢がなくとも、あなたは弓兵だ! あたなが信じれば、矢はそこにある!」

剣士が骸骨に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。猛攻をしのいできた丸盾が、まっぷたつに割れている。

「そんな魔法みたいなこと、できるわけない!」

「あなたが射るべき真の矢は、あなたの心の中にある! それを矢筒から取り出して、射ればいい!」

魔術師が、杖を両手で構えて骸骨に向かって走っていく。

信じれば、矢はそこに、ある……

一撃で魔術師を吹き飛ばした骸骨が、こちらに気づいた。

「信じれば、矢はそこに、ある」

骸骨がゆっくりと、確実に近づいてくる。
司祭の盾を拾った剣士が、再び骸骨に突進していった。

私が射るべき真の矢は、私の心の中にある?

司祭の盾で骸骨を殴りつけた剣士が、床にひき倒される。

「信じろぉぉぉぉ!」

私は、剣士の叫びを聞いた。

「信じれば、矢はそこに……ある」

骸骨から目をそらさずに、いつもと同じ動作で矢筒に手を伸ばした。
何千回、何万回と繰り返した動作。

骸骨がゆっくりと、近づいてくる。

矢を掴んだ感触はなかった。
それでもかまわない。
いつもと同じ動作で、矢を矢筒から取り出す。

矢に重みはなかった。
それでもかまわない。
いつもと同じ動作で、矢を弓につがえる。

矢は目に見えなかった。
それでもかまわない。
いつもと同じ動作で、矢をつがえた弓を引き絞る。

標的は目の前。

私は弓兵だ。
私が射るべき真の矢は、私の心の中にある。
何千回、何万回と繰り返した動作。
そこに、矢がないはずがない!

「私が射るべき真の矢は、今ここにある!」

その瞬間、私は確信した。
煌めく矢が一条の光となって、標的に命中するのを。





「……それからどうなったか、だって? そこから先が知りたいなら、もう一杯酒を……
 あー、待った待った。話すよ、話す。そもそもなんでオレがその話を知ってると思う?
 誰かが生き残ってなきゃ、こんな話できないだろ? そういうわけさ。
 ……作り話? いや、そりゃ作り話じゃないってのを証明するのは難しいが……
 どうだ、ほら。この頭のたんこぶ。でかいだろ? ほんと、あの魔術師の言うことを信じたオレが馬鹿だったよ。
 ……お、もう一杯おごってくれるのかい? ありがたいねぇ。
 ってことはあんた、オレの話を信じてくれるんだな?」



『信じれば、そこにある〜マジカルアロー〜』

89プチ:2007/07/06(金) 03:05:47 ID:ZVzQWRAQ0
◇68hJrjtYさん、25さん、感想ありがとうございます〜。感想もらえて嬉しいです〜。

最後は死を覚悟した諦観の中での和みを出そうと考えてたんだけど、和みのほうが強かったかー。
精進が足りない。
「なぜラビットラッシュは召喚されたウサギが飛び跳ねてるだけなのに、足止めされるのか」
の、自分説SSでした。
なので、RS内ではみんなかわぇぇもの萌えです。

>25さん
なんだか女スパイみたいなお話ですねー。
後半が非常にエロティックです! 百合百合!
いい具合に萌え萌えしますね!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
独特の流れがありますね。
ファンタジーファンタジーしたお話でスケールありますね!

90◇68hJrjtY:2007/07/06(金) 07:22:09 ID:VZO9/3.M0
>プチさん
秘密ダンジョンとそこに迷い込んだ冒険者たち、とても面白く読ませてもらいました。
誰も思いつかないようなテーマというか、確かにポータルの使い方とか言われてみれば謎ですよね。頭にぶつける…(笑)
最初はどことなく突っ掛かりあってたPTが窮地と戦闘を経て絆が深くなるみたいな。感動です(つд⊂)
単純な冒険小説というだけじゃなくて、マジカルアローの発動シーンなども良い演出ですね!
主人公のアチャはもちろんですが、盗賊君も大活躍でしたね。
なんかほんのりカップリングを連想するのは妄想癖のお陰だろうかorz

9125:2007/07/06(金) 11:49:55 ID:W9iHsBn.0
プチさん、新作読ませて頂きました。
前回に読んだうさぎの印象が強かったので、そういう物を期待して読んだら…
凄く良い意味での期待外れでした!
序盤は笑いながら、後半はどきどきしながら、すぐに読み終えてしまいました。仕事中です。(…
もう、いきなりプチさんの虜になってしまいました。ファンです。大好きです。
次も楽しみにしています!

◇68hJrjtYさん
いつも感想有難うございます><
まだシフは登場してないですが、も少ししたら登場する予定です。予定は未定。
臨場感のある戦闘シーンが書きたいのですが、なかなか上手くいかず…
まだまだ長くなりますが、どうかお付き合い下さい><


そしてプチさんの後に投稿するのはちょっと緊張しますが、続き投下させてもらいます…






-3-












覚悟と同時に目をキツク閉じる。ほんの少しづつ、だけど確実にじわりと広がる背中の生暖かいもの。雨とは異なる温度でゆるりと流れてゆく。
あれから、1年。たったの1年だ。何を為す事も出来ず、ただ逃げる様にあの城を飛び出して、こんな所で死んでしまうというのか







そんなの、嫌だ
絶対に嫌だ







「っわあああああああああああああああ…っ!!!!」











無我夢中で袖口に忍ばせた飴を振りまく。
城を出た後もこういったドレスを着ているのは、誇り、なんかじゃない。
ふわりとした袖口や、オーガンジーやチュールのスカートの中に沢山の武器を仕込めるからだ。



「な…っ!?」





突然の攻撃に女は混乱し、戸惑っている様だ。きっと準備万端で戦闘に望んだ訳じゃないのだろう、万病治療薬すら持っていないらしくうろたえている。実力があり、且つ戦闘経験を積んでいる者に多い傾向だ。自分の実力を過信するために、こういった治療薬を持たないのだ。


これなら、行ける。確信した。窮鼠猫を噛む、とはこの事だ。いや、窮兎、だろうか。
再びうさぎに変身し、一目散に駆ける。今度は、後ろは振り向かなかった。
一歩足を踏み出す度に泥が跳ね、真っ白い毛並を汚した。息が切れ、森に逃げ込んだ頃には既に春の野うさぎと化していた。女が追ってくる気配は、無い。


それもその筈、ここはトラン森。そこそこに経験を積んだ冒険者なら、まず近寄らない場所だ。
ここには莫大な財宝が眠るとも言われているが、それ故に敵のレベルも半端な物ではない。
ここに来るのはよほど強い者か、もしくはただの馬鹿か、そのどちらかだ。
奥まった場所に一本だけ生えている、太い木の後ろに隠れ、息を整えた。まだ6月といえど、湿度が高いだけに物凄く暑い。
もう雨とも汗ともつかないものを手の甲で拭って、ぺたん、と座り込んだ。


逃げ切れた安堵感と同時に襲ってきたのは背中の痛み。思っていたよりも深く刺されていた様だ。
致命傷という程大袈裟でも無かったが、痛いものは痛い。
雨でずっしりと重くなったドレスの裾を豪快に捲り、ポーションを取り出す。スリングに装着し、地面に叩き付けた。バリン、と、いい音がする。


ポーションは気体となって散布され、背中の傷をも癒した。どしりと構えた幹に寄り掛かり、ポーションだけでは癒えなかった、何ともいえない身体の緊張感を解す。

9225:2007/07/06(金) 11:51:26 ID:W9iHsBn.0

『ねぇ、見せてよ』










女の声が蘇る。
全身にさあっと鳥肌が立った。細長い指でなぞられた首筋を、鎖骨を、そして胸元を、まるで汚れを落とす様に袖口で拭ってから、私は目を閉じた。
少しだけ、眠ろう。ここにモンスターが現れないのは先月の依頼で調査済だ。
大きく広げられた葉が雨を遮ってくれる。時たまぽたりぽたりと葉を伝って額を濡らすが、そんな事はもはや気にならない程疲れていた。深い沼に引きずり込まれる様にして、私は意識を手放す。











「…い、おい、大丈夫か?!」









頬にぺちぺちと刺激を感じてゆっくりと目を開くと、至近距離に


「っきゃああああああ!!」




男の顔。思いがけず叫び声を上げ飛びのきスリングを構える。



「おいおい、そりゃないぜ」


苦笑しながら頭を書くのは、帽子を目深に被った色素の薄い男。
柔和に見えるその瞳の奥では、怜悧さが冴え渡っている。人を殺したことのある、目。
吸い込まれそうなぐらい深く、じ、と見つめたまま目を逸らせなくなってしまった。



「…?お嬢ちゃん、俺の顔に何か?」



カチン、と来て目を逸らす。どいつもこいつも、人を子ども扱いしやがって、気に入らない。




「失礼ね、あたしはこれでも19よ。」


19、との言葉に男は目を剥いた。そりゃ失礼、と帽子を取り冗談めかして頭を下げる姿はどこか飄々としていて、神経を逆撫でさせた。



「寝込みを襲うなんて最低」


別に、襲おうとしていた訳じゃないのは一目瞭然だった。大丈夫か、という様な声もうっすら聞こえた様な気もするし、それでも言ってみたかったのだ。苛立っていた。



「おいおい、そりゃないぜ…」


先刻と同じ台詞を吐き、今度は本当に困った様な顔を向けて男は言う



「こんな所でな、子供が倒れてたら誰だって心配するだろうが!あーもう、助けようなんて思うんじゃなかったぜ」


ほとほと困り果てた表所を浮かべて。何だか私は申し訳ない気持ちになり、しゅんと俯いた。

9325:2007/07/06(金) 11:52:01 ID:W9iHsBn.0


「…ごめんなさい。有難う」


ぼそりとぶっきらぼうに、小さく小さく呟いた。聞こえるとは思っていなかったのだが、にかっと歯を剥いて笑顔を向けたのできっと聞こえたのだろう。


「いんや、こっちこそ寝てる所悪かったね。RESDSTONEって知ってるか?この国の伝説なんだけどさ」


知らない、とかぶりを振る私をお構い無しに、嬉々とした表情で男は目を輝かせ


「ここに、その手がかりがあるかもしれないんだ。REDSTONE、全ての願いを叶えてくれるんだぜ。もう数百年も前から伝説はあるが、未だに見つかっちゃいない。俺はね、それを見つけたいんだ」


熱っぽく語るその男は、まるで少年の様にも見えた。先程とは打って変わって微笑ましく感じ、私は目を細める。
全ての願いを叶える…REDSTONE。それは、とても心惹かれる響きだった。







もしも、もしも
どんな願いでも叶うとしたら…

























『私ね、大きくなったらママを守る騎士になるの!』
























傷つけた。怖がらせた。そして、失望させた。
守る、なんて、おこがましいにも程がある。何もー…出来やしない、母のために出来る事など。
あの場所から、消えるより他には。





「それでな、レッドアイっていう組織が―…って、おい、聞いてんのか?」

9425:2007/07/06(金) 11:53:27 ID:W9iHsBn.0

感傷に浸っていた私の顔を覗き込む男。きゃ、と小さく悲鳴を上げ現実に引き戻される。



「ああ、うん、ごめんね」



否定とも肯定とも取れない返事をし、苦笑する。




「何考えてたんだ?」
「願いが叶うなら、何をお願いしようかな、って」


やけに素直に言葉が口をつくのは、夢物語を語る純粋な男の前だからなのだろうか


「オレはね、オレは今のままで、時間を戻すかな。死なせてしまった友達が居るんだ。もし願いが叶うなら、そいつが死ぬ前に戻るんだ。あの時は弱くて助けられなかったから…今の強さのまま、過去に戻って、助けてやりたいんだ」


助けてやるだなんて、おこがましいかなと付け加えて男は笑った。



「ううん、そんな事無い。人の為に…自分以外の誰かの為に、一生見つかるかも解らない物に全てを托せるって、凄いと思う」


本心からそう言うと男はそんな事無いと笑って




「君は?あー、えっと、その前に名前は?俺はレイジね。盗賊さ」

「盗、賊…」


暗殺や情報収集を仕事にして来た身だから、職業に対する偏見などは無い。
それでも、見ず知らずの相手に盗賊だと簡単に言ってのける様な奴は、生まれて初めてだった。
付け加えるなら盗賊に会ったのも初めてだが。



「そう。軽蔑するかい?」



あくまであっけらかんと、男―…レイジは言う。
そう言われて見れば、目深に被った帽子や全体的に暗い色の服、腰に下げたダートを見ると、納得出来なくも無かった。

いいえ、と首を振り私は答える。


「誰かの為に、あんな熱に浮かされた目でREDSTONEを語るあなたが、悪い人だとはとても思えなかったから。びっくりしただけ」

「そっか」


二人の間に、心地よい沈黙が流れる。何時の間にか雨は上がって、木の葉から洩れる光がキラキラとレイジの肌を照らし綺麗だった。

9525:2007/07/06(金) 11:53:47 ID:W9iHsBn.0


「それで、君名前は?」

そうだと思い出した様にレイジが言う



「なま、え…」
「そう、名前。」



名前。
ここ一年、誰かに名前を教える事も、呼ばれる事も無かった。
仕事で使うコードネームはダリア。毒を持つ花。皮肉を込めて、そう付けた。
うっかりその名を口走ってしまいそうになり口を噤む。私の、本当の名前―…




「アヤメ」





幾許かの躊躇いを含んだ声で、まるで無機質な物の名前を呟く様に私は言った。
ひゅう、とレイジが口笛を鳴らす。



「花の名前か。いいね、綺麗な、いい名前だ」


かあっと全身が赤くなるのが解る。
生まれてからこのかた、母意外に名前を呼ばれた事等無かった。
家族からは虐げられ、立場が下であるはずの使用人ですら私を避けていた。
名前を呼ぶ機会が、そもそも無かったのだ。


いい名前。いい名前…心の中で余韻を反芻して、幸せな気持ちになる。



「有難う、嬉しい」



素直に口に出して礼を言うと、レイジは笑う。その綺麗な歯列を見せて。
知りたい、と思った。この人の事を、もっと。



「あの、良かったら」


ん?とレイジが顔をこちらに向ける。端整なその顔を直視出来ずに、私は目を逸らした。



「私にも、REDSTONEを探す手伝いをさせて」

96ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/06(金) 12:28:47 ID:OhTl4zsk0

Episode06-Break da Enemy〜反旗を翻せ!〜

トラン森の夜道・・・鬱蒼と不気味に茂る木々を通り抜け、ミリアとファミィ、サーファイユが駆けてゆく。
「・・・兄さんたちは向こうだな。北に30メートル、西に24メートル・・・2人の気配が感じれる!」
走りながらサーファイユがナビゲートする。エルフたちは木々の声が聞けるらしく、それによって森の中での生き物の動きを探知できるらしい。
「あと18メートル・・・・っ!何かいる!!」サーファイユが言ううちに、目の前に何やら大きな影が見えてきた・・・!
「あの体躯・・・!ジャイアント系のモンスターなのっ!」ミリアが緊迫した面持ちで付け加え、ファミィが槍を構える・・・!!

「・・・・・」一体のコロッサスが道の真ん中で仁王立ちをしていた・・・。色合いからしてコロッサスのようだ。
「ミリア!ここはボクに任せてっ、奴はボクが仕留める・・・!!」サーファイユが率先してコロッサスへと向かっていった。
「気をつけてねっ、サーファイユ!ミリアたちはお兄ちゃんとエディを追いかけるから!」そのまま森の奥へと進んでいった。


「・・・・・・・」仁王立ちのまま、コロッサスは何も言わない。
「・・・Death13 Crewの幹部だな?ルース・ビッグフット・・・」サーファイユが冷たい目つきで言葉を投げ掛ける。
「・・・ボス、言った。たった今お前、ボス、裏切った。俺、命令受けた。お前、踏み潰す!」巨大な足がサーファイユに襲い掛かった・・・!
しかし彼はエルフたちの中でも選りすぐりの戦士「エルフ戦士十二傑」の一人だ、彼にとってルースの一撃は全く遅すぎる!
避けて、すぐさま空中に跳び上がり、そこから弓矢を3発、一斉に発射した!!ルースは何とか矢を一本振り払うも、残る2本の矢を喰らってしまう。
「ぐぅっ・・・!」わずかによろめき、後ろへと交代するルース・・・。すぐに体勢を立て直し、闇雲にラリアットを振り回すが、サーファイユには
一発たりとも当たらない・・・!着地し、高速並みのスピードを維持したまま、サーファイユはルースの懐へと潜り込み、剣に風の魔力を宿し一撃を放った・・・!
「くらえっ、ソニックブロ――っ!!」台風ばりの風圧を纏い、強烈な斬撃の数々がコロッサスの上半身を捉えたっ!!
「・・・・がふっ!」吐血し、ルースは前のめりに倒れ、そのまま地面に這いつくばる形となった。

「よし、まずは一人!急いでミリアに追いつかないと・・・まだザッカルの部下が待ち伏せてるかもしれない!」
剣を鞘に収納し、すぐに木の枝へと跳び上がり、枝から枝へと驚異的なスピードで駆け抜けていった・・・!

97◇68hJrjtY:2007/07/06(金) 13:24:25 ID:VZO9/3.M0
>25さん
おおっと、これは大変失礼しました。まだシフ君は登場してませんでしたね(汗)
つい宿屋に忍び込んできた15歳くらいの少年…というのが彼なのかとorz 申し訳ない。
気を取り直して、改めてシフのレイジ君登場ですね!そして一目ぼれですね(*´д`)
物語の中核を担う主要キャラが揃ったようですが、まだ安心はできないようで…今後どのように話が続くのか。
力を入れたいと仰られる戦闘シーンも楽しみにしてます。
ところで仕事中ですか(゚Д゚;) 私も似たようなものですが無理なさらず(笑)

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
クライグも良いけれどサーファイユも強くて優しくて良い奴だなぁ…おっといかんいかん。
ミリアとファミィ二人になってしまいましたが大丈夫かな…。ファミィも強そうだけど(・ω・)b
ところでラティナさんとフィナ姉のエロエロレスリングとかのその後もその後で気になりますね(笑)
おお、そういえば25さんの小説同様こちらもトラン森が舞台ですね。
こりゃちょっと無意味に丸裸で突撃してきますか!

98 ◆21RFz91GTE:2007/07/06(金) 17:24:50 ID:JuSib7WA0
////**************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7:黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8:黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
////**************************************************////


Act.9: 封印されし鬼の末裔 1


 ミトを中心とした四人組みは問題の崩れた壁にまで足を運んでいた。そこまでこれと言って魔物とは遭遇して居ないのが不思議だった。周りには魔物の気配が一切しないことからこの先もまだしばらくは魔物と遭遇しないであろうと確信できる。だがそれも魔物の策なのか否か…それは四人に知るよしも無かった。
「それにしても気分が悪くなりますね…これだけ血液が付着した坑道と言うのも…。」
クラウスが壁に付着している大量の血液を見る、そっと手をあてがうとまだ僅かながらネトっとした感触がある。最近付けられた物だと直ぐに分かるほどだった。
まだ乾燥していない辺りを見るとあの手紙が届くちょっと前、もしくはその後に付けられた物だと分かる、しかし、この血の持ち主は一体何処に居るのだろう。どこかで息耐えたか…はたまた魔物の胃袋の中か。考えるだけでもおぞましい事だった。
「それにしても厄介ですね、この坑道の作りは歴史的観点からみてもおよそ数千年前の物。どこから何が出てくるか分かったものじゃないですね。」
「そうね、でも調査せずに変えるのもしゃくだわ。」
ミトはそう言うと封印された坑道へと足を進める、とてもかび臭く嫌に湿気がある坑道だった。僅かながら動物の骨が転がっている。その骨は生命の進化から予想するにかなり昔の物だった。それは確かにここに生物が存在していると言う証拠でもある。それが今もなお生きながらえて居る物かどうかは分からない。
「イリアちゃんとユラン君、ちゃんとはぐれないで付いてきてね。」
ミトは一度振り返りそう二人に告げようとした、だが…
「…。」
後ろを振り返ったミトは思わず絶句した、その顔をみてクラウスも後ろを振り返る。そこにはイリアだけが一人ゆっくりと歩いていた。
「…ユラン君。」
そう、感の良い読者の皆様なら直ぐに理解していただけたと思う。ユランは一人迷子になって居るかも知れない。
「…お約束…ですかね?」




 「おーい、イリア〜、クラウスさ〜ん、ミトさ〜〜ん…。」
その頃、ユランは一人坑道の中を彷徨っていた。珍しい鉱石に眼がくらみそれらを意識していた彼はいつの間にか前を歩く三人とはぐれてしまっていた。
「まったく、三人とも迷子になるなんてしょうがないなぁ〜。」
自分の立場を良く理解して居ないのか、それともこれは狙ったギャグなのか、はたまた自分は迷子じゃ無いと暗示をかけているのか。いくら彼がどうおもうとこれは立派な迷子、集団行動ではよくありがちな事である。
「…あ、光?」
ユランの前方に数量ながらの光が見える。それは赤く燃えている。きっと前を歩いていた三人が使ってるたいまつなのだろうと思い込んだ。
「おーい、皆〜。」

99 ◆21RFz91GTE:2007/07/06(金) 17:25:16 ID:JuSib7WA0

その光がする方向へと喜びながら走り出す、やはり彼は自分が迷子になってしまったと自覚しているのだろう。それともこの暗さから来る恐怖から自らを開放するための手段なのだろうか。事実彼が持っていたオーブはその光を失い今ではただの水晶玉になってしまっている。
「まったく、どこに行ってたんだ…って。」
光が強まった瞬間一瞬にして空間が開けた、かなり大きな部屋のような場所にユランはたどり着いた、そこには見た事も聞いた事も無い魔物達が群れを成している。
魔物達は近づいてくるユランの生気を悟り殺気立っている、そしてユランの姿を見た瞬間に口からよだれのような物がたれ始めた。これ以上は語らずとも分かると思う。
「僕って、何時も…いっつも…」
ベソを掻きながら右手に愛用の杖を握る。だがその顔は良く言うところの泣き顔、悪く言えば…いやユランの事を考えてこれ以上話すのはやめよう。
そして魔物達は一斉にユランに遅いかかってきた、鞭を持った人間型の魔物とワーム形の魔物。それらが交互にユランに飛びかかってくる。
「こんなんばっかりぃぃぃぃぃぃ!」
ユランは咄嗟に戦闘体制へと構える、そして左手を前に伸ばし握りこぶしから手を開いた。そこに一気に魔力が集中され一つの魔法陣が出現する。その魔法陣からは灼熱の炎が大気中の元素から引っ張り出されシュルシュルと円を書きながら集まってくる。
「たまには僕にだってぇぇぇぇ!」
存分に集められた炎は次第に球体に姿を変える、その球体は一つではなくいくつかに分散され合計で五個の火炎球へと変わる。それらを一斉に右手に構えている杖で弾くとこうを描き地面に着弾する、すかさず左手を横一杯に広げ手のひらに風を集めだした。左手を横一線に右へと振るうとその風を弾き飛ばした火炎弾の後を追うように吹き荒れた。
風は炎を押し直線状に炎の壁が走る。この攻撃により過半数の魔物達は焼き尽くされ、炎の壁がぶつかる所で一つ爆発が起きた。そしの爆発の振動で部屋の一部はぐらぐらと揺れそして一部の壁を破壊した。残ったもう半数の魔物達の群れが一気にユランへと襲い掛かる。
「続けて…っ!」
もう一度同じ魔法を使おうと左腕を前に伸ばす、魔法陣が出現し同じように炎が渦をまき始める。だが次の瞬間、ポスンと音を立てて煙が出た。そして魔法陣もゆっくりとだが消えていく。
「っな!魔力が…っ!」
次の瞬間、ユランは激しく後方へと弾き飛ばされた。ワーム形のモンスターが勢い良くユランの体を弾いたのだ。弾かれたユランは坑道の岩壁にすさまじい勢いでぶつかる。その衝撃はユランの体の一部を無残にも破壊する。
「がはっ!」
岩壁もその衝撃に耐えられずクレーターのような形を作る。そしてユランの体はゆっくりと地面へと落下して行った。
「ぐ…くっそぉ〜…。」
致命的なダメージを受けてユランは立つこともままら無い状態にまでに居た。そこに腹をすかせた魔物達がゆっくりと足を進めてくる。
ユランの目の前にまで来た魔物達は一斉にユランに襲いかかろうとしていた、鞭を持った人形の魔物はその獲物を振りかざし、ワーム形の魔物はその口を大きく開いた。
「くそぉ…ちくしょうぉぉぉぉぉ!」
魔物達は各々の獲物をユラン目掛けて刃をたてる。そして、広く大きな部屋に悲鳴が響き渡る、その悲鳴は坑道の壁岩を通じて鏡面し山彦のようになって坑道のいたるところに響き渡った。

Act.9: 封印されし鬼の末裔 1 END

100 ◆21RFz91GTE:2007/07/06(金) 17:28:05 ID:JuSib7WA0
100げt…。(´・ω・`)
どうも、お騒がせ21Rです…。(´・ω・`)
時間が取れたので続きを投稿って感じです。
思えばこの話、自分で書いておいて先がドンドンと見えなくなってきましたよヾ(´・ω・`)ノ

というわけで、今回もRS上のスキルではありますが技名の使用は禁止でヾ(´・ω・`)ノ
WIZは派手な魔法が多いから書いてて楽しいです、そろそろ多の職のアクションも考えておかないと…。
えぇ、もちろん槍とWIZと弓と剣士はほとんど使い回しなアクションになりますが(´;ω;`)ブワ

あ、髪きりましたヾ(´・ω・`)ノ(ぁ

101◇68hJrjtY:2007/07/06(金) 19:29:09 ID:VZO9/3.M0
>21Rさん
もうユラン君がピンチ過ぎて見てられない(つд⊂)
迷子になった挙句に強制ソロとは。きっと占いが大凶なんですねorz
戦闘シーン、こと魔法のシーンは書き応えがあるというのにはとても納得します。
いかに自分の想像しているものを文章に置き換えられるか…腕が問われるところですよね。
その点21Rさんの魔法描写はなかなか分かりやすいですよ。
髪を切った21Rさんの新しいパワー(?)で次回作も期待してます!

102ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/06(金) 19:30:40 ID:BnQc0o7w0
続きでございま〜す。

一方、こちらはマジックテントの中。
宴会騒ぎで疲れたのか殆どの者が熟睡しているが、フィナーアだけは寝ていなかった・・・。
「・・・この感じ、何か不穏な動きが近づいてるわね・・・!セルジオ・・・って寝ちゃってるわ。しょうがないわね〜
 久々に出してあげようかしらね・・・おいで、シンバ!」鞄の中からもう一冊、飼育記録帳を取り出したフィナーア。
ページを開き、中から現れたのは一匹の原始人zinだ。名前はシンバ・・・デフヒルズ出身である。
「フィナ、何かあった?さっきから妙な気配がするぞ?」彼もテント周辺の緊迫した空気をすでに察していた・・・
「ええ、何かものスゴく邪悪な気配よ・・・それもとてつもなくドス黒いヤツよ・・・!」眉をひそめ、フィナーアが低い声で言う。
と、その横でラティナが寝言を呟いた。
「ん・・・やぁ・・ん、ダメぇっ・・・そこは・・・うんっ、舐めちゃっ、ダメえぇっ・・・」
顔を紅潮させながら色っぽく艶かしい声での寝言・・・シンバは少し火照ってしまった。
「おいおいフィナ、あんた男じゃ飽き足らず女にまで手ぇ出したのかよ?あぁ〜あ、この性欲女王め。」
「うるさ〜い!アタシは自分の欲求に正直なだけなんだもん!」「いい年こいた大人が『なんだもん!』〜?・・・うわキッツ〜」
「あ〜ん〜た〜ね〜!いい加減にしないとフィナスペシャルの餌食にしちゃうわよォ〜!?」指をわきわきと動かすフィナーア。
「ああ、すまんすまん!お前の投げコンボは即死級だ、喰らうなんざご免こうむる!」シンバは首を横に振った。
「それよりお前、服はどうしたよ?何だってさらしとふんどし一丁なんだ?露出プレイか?ん?」
「あらあらあらぁ〜?そんなにフィナスペシャル喰らいたいんだ〜?・・・生意気なペットはお仕置きよ!」


「ぎゃあああああ!ちょっ、フィナ!俺も口が過ぎた!!お願いだからもう勘弁してゲブホァっ!!」

                    しばらくお待ちください

  「許すわけないでしょ〜!?あと7つの投げ技が残ってるのよ〜!アイヤぁ〜!」「やぁああぁめえぇえぇてぇええ!!」
「フィナ式バックドロ―――ップ!」「ごぱぁっ!」「ウラカン・ラナ――っ!」「あべしっ!」


・・・・ボロボロの雑巾並みにケチョンケチョンにされたシンバ。床にうずくまりケイレンしていた。
「・・・ご、ごめんなさい〜」「わかればオッケー!はい、治療してあげるわよっ」
何とかお仕置きから生還し、治療魔法によって回復したシンバ・・・すぐさま近づく邪悪な気配に
警戒態勢に入った・・・!

っと、以上ギャグパートでした。時間ないので続きは明日!お楽しみに〜

103◇68hJrjtY:2007/07/06(金) 19:36:23 ID:VZO9/3.M0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
おっと、スレ消費すみません。
シンバが例のサーファイユの話に出てきた「フィナ姉に従属している原始人」でしょうか。
という事は今回のDeath13 Crew抗争にも少なからず因縁があるという事ですよね。
これはシンバの活躍を期待…!原始人ってあまりPETにしている人を見かけないもので( ´・ω・)
次回は明日ですね。お待ちしています!

104ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/07(土) 11:03:13 ID:OhTl4zsk0
続き〜続きでございます

「・・・・・!」表情を一層険しくし、シンバは向かってくる邪悪な気配を待ち受けている・・・
「あの時と同じだ・・・おれの村を滅ぼした、あのクソ野郎の邪気だ!!」ギリリと歯を噛み締め、
怒り心頭になるシンバ。しかしフィナーアはあくまでも冷静な状態を保っていた。
「・・・!?おかしいわ、気配がこっちから逸れていく・・・森の方に行く気ね!」
「フィナ、そういえばお前の妹や仲間のシーフも森の中に入っていったぞ。・・・この邪気を発している奴
 そいつらをなぶり殺すつもりだぞ、そういうオーラを発していやがる・・・!急がないと大変なことになるっ!!」
「な、何ですって!?何で森の中へ入っていったのかわからないけど、可愛い妹が殺されるなんてたまったもんじゃないわ!!
 急いで後を追うわよ、シンバ!」「おうよ!(・・・妹は可愛くてもおれにはすぐ体罰かよ、やれやれだぜ)」
「またアタシの悪口言ったわね!?これ片付けたらファイナル☆フィナスペシャルでお仕置きなんだからね〜!」
「・・・うぅえ〜ん・・・」泣きながらフィナとシンバは、共に邪悪な気配を追って森へと入っていった・・・


一方、ここはトラン森中央部。
シーフのエディとエルフ暗殺者、クレイグの一騎打ちはかなりヒートアップしていた・・・・・!!
「ちぃっ・・・・!森の中だと、かはっ・・・格段と、戦闘力が違うな、はぁっ・・・はぁっ・・・」息切れながらにエディが呟く。
負傷したのか、左腹部にわずかながらの切り傷ができていた。真っ白いシャツに、うっすらと血が滲んでゆく・・・・
ガサリと木の枝が揺れた後、エディが座り込んでいる木の枝よりも高いところに、クレイグは姿を現した。
「どうっすか、『闇隠れ』?これがエルフの森での戦闘っす・・・!甘く見られちゃぁ困りまさァ」
「あぁ・・・ぜぇ、ぜぇ・・確かに甘く見ていたよ、『ステルス』・・・(なんつースピードで移動しやがる、くそっ!攻撃が全く当たらねェ!!)
 だがな、『闇隠れ』の本気は、はぁっ・・・まだ見せてないんでね・・・今からご覧に進ぜよう、『影祭り』を!」
そしてすぐさま自らの影に潜り込み、エディは姿を消した・・・!しかしクレイグは余裕の笑みを浮かべたままだ。
「ははっ、悪あがきは勘弁してくださいよ、兄貴ィ!オレらエルフの森での戦闘力は実証済みですぜ!?どこにいようと見つかり・・・」
饒舌に話すクレイグに、初めて焦燥が顔に現れた・・・!「な、何で奴の居場所が探知できないんすか!?何で木々の声を以ってしても
 奴の居場所がわからないんすか!!?」得体の知れぬ恐怖感に、クレイグはすでに深く囚われていた・・・彼にとってこういう事態は生まれて初めてなのだから。



         「・・・ようこそ、影の庭園へ。見えない敵の恐怖をとくと、ご覧あれ・・・」



姿の見えないエディにクレイグは戦慄している。闇夜が森を包む中、エディの声が冷たく響き渡る・・・

バイトの面接があるので本日はこれにて。
次回はエディvsクレイグ、決着です。ザッカルもついにフィナーアやミリアと接触ですよ
こうご期待!

105◇68hJrjtY:2007/07/07(土) 12:05:14 ID:VZO9/3.M0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
エディとクライグ、かなり良い戦いしてますね。
このままエディ有利で戦闘を運べるか、否か…。でもなんか好敵手って感じで(・∀・)イイ!!
エディの影の庭園の攻撃、そして戦いの結末を楽しみにしています。あ、シンバの無事も(笑)
バイトの面接ガンバレです!

106169:2007/07/07(土) 13:45:16 ID:Giu/9Zw60
Red Stone 新人研修

序章 

たびだちの 想いを知るは 紅の水


5歳で父を亡くした時から、母と私は、故郷であるリンケンを離れて、古都に移り住んでいた。
母は、その界隈では結構名の知られた武人で、故郷を遠く離れたこの地であっても仕事に困ることは無かった。
 彼女は母親としてもかなり強かった。
とても厳しく、とても恐ろしく。でも、誰よりも優しかった。
父親の居ない寂しさ、というのは、彼女のお陰で感じることは無かった。

少なくとも、自覚するほどには。

公園で遊ぶ親子や、商店街を歩いている親子を見て、不思議な感覚に陥ったことは覚えている。
今思えば、自覚していなかっただけで本当は私も寂しかったのだろう。
ただ、自分が何故悲しんでいるのか分からなかったのだろう。気付けなかったのだろう。
でも、その不思議な胸の詰まりはずっと私の中に溜まっていた。
思春期の頃には、母から習った槍術を悪用して喧嘩をふっかけて来る男共を叩き伏せた事もあった。

彼と出合ったのはそんな時だった。
今でも覚えている。終春の頃、いつも柔和な微笑を湛えている母の瞳に消えない悲しみが写りこむ日。
 父の命日。
外に出て、古都の四方に設けられた見張り台を目指したのも、母の切な過ぎる顔を見たくなかったからだった。
古都を包む城壁の上。沈んでいく太陽に照らされた街は紅く染まっていて、とても綺麗だった。
城壁よりさらに高い楼閣へと続く螺旋階段。立ち入り禁止の張り紙を無視して先に進む。
--あの高みから見る古都はきっと絶景なんだろうな--
はやる気持ちに足もつられて、少し駆け足で階段を登っていく。

 階段を登りきると、急に視界が開けた。
沈んでいく太陽は、金の雫を古都に落とし、古都は紅に溶けていた。
私は自分の腰までしかない壁に手を置いて、燃える古都を眺めていた。
そして・・・

107169:2007/07/07(土) 13:45:47 ID:Giu/9Zw60
「綺麗だねー」

 突然、上から声が降ってきた。
驚いて顔を上げると、私の居る見張り台の屋根に、一人の男が座っている。
私と、大体同年代。あるいは、男のほうが年上だろうか。

燦然と輝く太陽の赤にも負けない、群青色の髪。
少しまぶしそうに細められた目の奥には、私のそれとは対照的な深い蒼の瞳。
腰に提げられた短剣は、彼が古都の騎士団の一員であることを示していた。

 彼は返答を期待していなかったのか、驚いて何も言えない私を気に掛けることなく、屋根から滑り降りて私の隣に降り立つ。

「ここ、初めて?」

私が無言で頷くと、彼はちらっと微笑を浮かべて視線を古都に戻した。
私から視線を外し、街を眺める彼の横顔から、しかし私は目を離せなかった。

夕焼けに照らされて赤みを帯びた頬、少し引き締められた唇。
そして、どこか悲しい雰囲気を漂わせる、蒼の眼。

彼の眼を見ていると、自分がその中に吸い込まれていくような錯覚を覚える・・・・

彼が私の視線に気付いて振り向く。

「どうかした?」

「あ、いえ。何でも・・・」

・・・ないです。 という言葉は尻すぼみになり、最後は口の中で呟いただけだった。
顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
沈んでいく太陽が私の頬を照らしていなかったら確実に気付かれていた。

(どうして・・・こんなに動悸がするんだろう)

一目惚れという言葉は知っていた。
でも、私はそれを真の恋として認めてはいなかった。
容姿だけに惹かれて恋を語るなど、浅はかだと思っていた。 

でも、今自分はこの男に対して惹かれている?

(違う。私はそんなに軽い女じゃない)

ぶんぶんと頭を振って考えを追い出す。

そうだ。いきなり頭上から声がかかったら、誰だって驚くに決まっている。
驚いた拍子に不整脈が起きたっておかしくない・・・

「太陽が沈む景色ってさ、」

突然、男が話し始める。私は自己弁解を打ち切り、俯けていた顔を上げた。

「見ていて凄く綺麗なんだけど、凄く悲しい景色に見えるんだ。
 地に沈む最後の一瞬まで、輝きを保って、光の残滓を撒き散らして。
 俺達が闇に包まれる時間が、少しでも短くなりますようにって、言っている様に見えるんだ。
  俺は、誰かの庇護の下でのうのうと生きることなんて大嫌いだけど、
 でも、自分を優しく包んでくれるものがあるっていうのはやっぱりいいものだなぁってこの景色見る度に思うんだ」

(・・・この人、何が言いたいの?)
自意識過剰な人間の吐く台詞にしては、若干文章として錬度が足りていない。
それとも、初対面の私に対してこんな感想を真剣にぶつけてくるほど、この男は抜けているのだろうか?

怪訝な思いは顔に出ていたのだろうか。
彼は私の表情を見て笑い始めた。

「変なもの見るような目で見るなよ。君が飼い主さんにつまみだされた猫みたいな目してるからさ、家を飛び出して来たのかと思って。
 帰るように示唆したつもりだったんだけどね。・・・もしかして違った?」

ドキリとした。

私の行動を言い当てたことじゃなくて、彼の目に、だ。
さっきから私の気を引いて離さない目が、私を探るようにすぅっと細くなる。

「ち、がいますよ」

その目を避けるように視線を下に流す。
石作りの足元は、見ているだけで冷え冷えとしていて、
それがまるで、私の熱を煽り立てているかのように感じて、
そう思う自分に腹立たしさを感じ、少しむっとして顔を上げる。

彼は依然私を見つめていたけど、その表情はさっきと違って砕けていた。

「そう。じゃ、そろそろ帰った方がいいよ。最近なにかと物騒だからね。なんなら送っていこうか?」

・・・こんな軽い男に何をときめいていたんだ、私は。

「結構です。こう見えても一応武術の心得があるので」

「ほう。ま、心得があるのは立ち振る舞いで分かってたんだけどね。じゃ、気をつけて」

私はその言葉を背に受けて階段を下る・・・前に、ふと思い立って足を止めた。

「貴方、名前はなんというんですか?」

「ん、俺? ロイだよ。古都騎士団の一員だ」

「私はルチルといいます。・・・それでは」

コンコンと小気味良い音を立てて楼閣を去る私の耳に、やっと普通に喋ってくれたーという、彼の独り言が届いてきた。

108169:2007/07/07(土) 13:46:31 ID:Giu/9Zw60
・・・初対面の時の印象は、はっきり言って悪かった。
でも、何か心に引っかかるものがあったのは確かだ。
引っかかるといっても、それは決して不快なものでなく、むしろ不思議と心を落ち着かせる響きを伴っていた。

彼と次に会ったのは、それから一週間ほど経ってからだった。
私はその日、母と一緒に買い物に出かけていた。
国会議事堂前、彼は軽装な鎧に身を包んでその場所を護っていた。

私たちは同時に相手を見止める。
私の中で一瞬気まずい沈黙があったが、彼は意に介さずといった感じで私に声をかけてきた。
そこからは(何故か)母の独壇場だった。
母は彼を私の恋人だと思ったのだろうか。
激しく反対する私と、意外にもやんわりと母の申し出を辞す彼を相手取ってしつこく家に来るように誘った。

そして、彼女の誘致を受け流し切れなかった彼が、その日の夜、私たちの家を訪れる。
母が張り切って私に手伝わせた夕食を食べつつ、彼は私たちの知らない、東の諸国についての話をしてくれた。
その話は、旅芸人が語る歌の様に整っていながら、彼の深い考察が端々に埋め込まれていて、強く私を惹きつけた。
夜が更けて、彼が私の家を辞す時に、私はいつかと同じようにぶっきらぼうな尋ね方で、彼の住所を聞き出した。

その日を境に、私は彼と一緒にいることが多くなった。

彼は不器用だった私を受け入れて、私が望めば何時でも傍らに在った。
外から見れば、私たちは恋人同士に見えただろうし、少なくとも私は彼に対して恋人のつもりで接していた。
私は奥手だったし彼は意外にも堅気だったので、私たちの関係はただ一緒に居るだけ、という以上には発展しなかった。

それでも、私は彼と居る時間が、ただそれだけで幸せだった。
彼と一緒に散歩をしたり、狩りに出かけたり、食事をとったり・・・

それはありふれた、何処にでもある日常で、
 でも此処にしかない、私たちの大切な時間だった。


 ずっとずっと、続いて欲しいと願っている時間は、想像以上に儚く、そして脆く崩れるものなのだろうか。

『赤い石』。数百年前からの伝承で、手に入れることが出来れば莫大な富と名誉を得ることが出来るという、奇跡の石。
この大陸から遠く東、海を越えた遥か果て。幾つかの列島からなる小さな島国に、それがあるという情報が入ったらしい。
古都騎士団の幾人かが、彼らの威信に掛けて、『赤い石』を手に入れて来るように命じられた。

そして、選ばれた騎士の一人にロイもまた、含まれていた。

名誉なこと、な筈がない。聞こえは良いが、これは結局、壮大な左遷に過ぎないのだから。
最近発言力を強めてきた騎士団の力を抑制するための、政府の計略に過ぎないのだから。


別れの日、それは奇しくも、私たちが初めて出会った日と同じであった。
あの日と同じように古都を染める太陽は、しかし夕日ではなかった。
人通りもまばらな、朝ぼらけの噴水前、太陽の光を反射して紅く光る水には、私たちの顔が映し出されている。
私はただひたすら涙を流して、彼にしがみ付いていた。
彼は私から手を離すと、自分が今まで着けていた胸飾りを外して私に手渡した。
複雑な螺旋の描かれた、銀の胸飾り。彼の一族が代々受け継いできた宝。

「もし、俺を待っていてくれるのなら、それを着けていてくれ。俺を待つ気が失せたら、質にでも入れてくれたら良いから」

そういうと、私に背を向けて歩き始める。
私は追いかけようとして、でも思いとどまった。
あの人は、別れの言葉を述べなかった。生きて還ってくることを前提に、私にこれを預けたのだ。

 朝靄の中に彼の姿が消える。噴水の柔らかな音を聞きながら、私はただ黙って、彼の贈り物を握り締めていた。


・・・・・・


「ルチルぅー!」

噴水の前で物思いに耽っていたランサーは、自分の名を呼ぶ声を受けて顔を上げた。
目をやると、ランサーが妹の様に可愛がっているアーチャーが、彼女のもとへ駆け寄ってきた。

「遅かったね。何かあったの?」

「えっ、あ、ううん。何にも無い」

(この様子だと、リト君関連かな・・・)

親友の恋路に思いを馳せ、彼女は穏やかな笑みを浮かべながら彼女を促す。

「さ、早く行こう。急がないと遅れるよ」

「うんっ」



 彼女の胸元で光る銀の胸飾りは、いつかの様な紅い噴水の光にその意匠を輝かせ、
 これから奇妙な旅へと赴く彼女の決意を、ずっとずっと、見守っているかのようだった。

109169:2007/07/07(土) 13:47:16 ID:Giu/9Zw60
あとがき

皆様こんにちは。覚えておられるでしょうか、前スレにちょこっとだけ姿をみせた169です。
やっと過去スレを大体読み終わったのでこれで晴れてお仲間入りできると思うとwktkな気分です。
今回は研修の序章ということで、半主人公的な位置に収まっているランサの過去を書いてみました、が・・・
小説ってやっぱり難しいですね(汗)完全にグダグダ+尻切れトンボ・・・
大まかな筋書きに肉をつけるのがこんなに難儀とは思いませんでした。
学生家業傍ら書くものでなにかと遅筆です。もし次回作を待ってくださるならどうぞ腰を据えてお待ちください(泣)

>白樺さん
 1000おめでとうございます。
凄く意味深な文ですね・・・。
これからの冒険や試練を予兆させるかの様な文、ゲームのオープニングみたいですね。
地震編も楽しみです。
同じ偏見スレから来た者として白樺さんの活躍にはこれからも目を細めさせていただきます。

>NTさん
 二人の視点で物語を進めていくなんて素敵ですね。
相当高度な力量・・・脱帽です。
ウィドさんの過去・・・ラミさんの過去とどう絡んでくるのか。
楽しみすぎて顔がにやけてしまいます!(キモ)
これからも頑張ってください。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
 三回回って『トルルルぃぃぃいぃいコぉおぉぉ!』って叫びますからどうか私もフィナーア様の下僕に・・・(殴
シリアスと笑いとお色気が上手く入り混じっていて見事に嵌りました。
ファミィの喋り方がいいですね。ほのぼのとさせて貰いました。

> ◆21RFz91GTEさん
 相変わらずの繊細な表現。さすがです。
っていうかユランくーん!!(笑)
運悪すぎてちょっと哀れです・・・が、きっとこの窮地をどう逃れるのか、非常に楽しみです。
そして、鬼・・・。少し和風な容姿を想像しているのは私だけでしょうか。
鬼の立ち回り、これまた非常に楽しみです。

>25さん
 純情って和みます・・・。
前回のランサとの絡みが非常に艶っぽかったので今回との差がまたいいですね。
アヤメさんって孝行娘なんですね・・・。
逃れられなかった運命に抗う為に赤い石を求める。粋なお話ですねぇ。

>プチさん
 シフ格好良いよシフ・・・。
そして、『信じれば、そこにある』
これはもしかしてマジカルアローの誕生秘話ですか!?
意識を集中してマジアロを放とうとしているアチャが素敵・・・。

>自称支援BISさん
 ケルビー!!(え
武道家を助ける為に飛び出すサマナ、サマナを助けるために馳せ参じたケルビー・・・。粋です。
そして結婚しちゃったんですね!!
もう読んでいてテンション上がりまくってました。

110169:2007/07/07(土) 13:53:33 ID:Giu/9Zw60
うがあぁぁぁ・・・読み返して失敗に気付く馬鹿orz
文章がおかしいところは脳内変換お願いします・・・。

111◇68hJrjtY:2007/07/07(土) 14:11:17 ID:VZO9/3.M0
>169さん
おおっ、今度は遂に長編でしょうか。ともあれ、再びの執筆ありがとうです。
剣士×ランサ…とただのカップリング話と捕らえられない壮大な物語のような予感です。
ランサってしっかり者のようなイメージが私もあったりして、母親がランサというのに妙に納得。
主人公のルチルもきっと姉のような感じなのかなぁ。続きの方楽しみにさせてもらいます!

112白樺:2007/07/07(土) 17:16:35 ID:RAn6BvyM0
169氏久しぶりです!
とうとう169氏も小説スレデビューですね。
小説書くの難しいですよね・・私も書いてて全然進みません(涙
しかも今プチスランプ中です・・・
たぶん次あたりで導入部分は終わる・・・と思います・・

ではプチ氏やそのほかの方々の感想は後日 ノシ

113名無しさん:2007/07/08(日) 08:41:05 ID:EfX5rgrI0
ある姫の独白
 
 貴方にこの身を撫でられる度に、心が火照ってしまうのです。
 例え布越しでも、貴方のふしくれた指の硬さ感じれば、情念の炎は身を焦がし、居ても立ってもいられないのです。
 でも、貴方はしっかりと私を掴んで離してくれない。しっかりと私を押さえつけたまま、丹念に布で私の身を隅々まで拭い続ける。
 貴方の吐息が首筋にかかるたびに、震えてしまうのに。
 貴方の指が這わせられるたびに、歓喜が身体を駆け巡るのに。
 朱に染まる頬を隠したいのに、貴方はそれすら許してくれない。羞恥から嗚咽を漏らしそうになった事も多々ありました。
 乙女の私が、殿方の奉仕に淫らに悶えている事を、今は亡き母上がお知りになったら、どんなにお嘆きになるでしょう。
 ですが、どうしようもないのです。この疼きは抑える事が出来ない、貴方への想いなのだから。
 布越しで無く、直接私の身を触れていただけたらと、夢見た時もありました。
 ですが、それは叶わぬ願い。
 何故なら私と貴方は、あまりにも違い過ぎるから。
 
 貴方は私の裸身を眺めては、溜息を漏らしていましたね。
 ある時は、ランプの柔らかな光に当てて。ある時は晴れ空の元、惜しげも無くさんさんと降り注ぐ陽光に私の裸身を照らして。
 貴方のお仲間はよく、貴方を変人だとおっしゃっていますが、なるほどそうかもしれません。
 ですが、そんな事は、私にとっては些細なことです。
 私の裸身を眺め、美しいと一言感嘆の言葉を漏らして頂くことが、どれだけ嬉しい事か。
 私の身体をスミレのようだと形容してくれましたね。また、照り返す輝きを紅水晶のようだとも表現してくれましたね。
 そのような言葉をかけられるたびに、私の女は満たされ、時に微笑みさえ浮かんだのですよ。
 でも、貴方は私のそんな表情には無関心で、しきりに私の裸身に没頭していましたね。
 それはとてももどかしく、悲しいことですが仕方のない事。
 何故なら私と貴方は、あまりにも違い過ぎるから。

 貴方はよく私を叩き付けていましたね。そうかと思えば、遥か遠くまで投げ飛ばしたり。
 最初は慣れない事もあって、とても恐ろしく、不信感さえ覚えました。
 特に投げ飛ばされた時は、もう捨てられたかと思って、心の荒野に涙の嵐が吹き荒れていたのですよ。
 あの時、再び広い上げて頂けかなかったら、私はもう二度と動く事が出来ずに、そのまま朽ち果てていたかもしれません。
 でも、そんな私にお構いなしに、貴方は私を思うがままに振り回し、叩きつけ、投げ飛ばしましたね。
 最近は、ある意味私を信頼してくれているのだと思えるようになりましたが、辛くないわけではありません。
 身体よりも、心が堪らなく痛むのです。ただ、それが耐えられぬほど切ないのです。
 何故なら私と貴方は、あまりにも違い過ぎるから。

 最近の貴方は、他のひとに夢中なようですね。私より少し背の高いそのひとは、くやしいけれどとても魅力的で羨ましいのです。
 緩急のついたプロポーションに、とても大きな……私では太刀打ちできないほど大きな魅力的な胸。
 そのひとのそんな切実な場所をうっとりと眺めては、溜息を漏らすなんて……きっとこれが嫉妬なんでしょうね。
 何となく、哀しいのは何故なのでしょう。これも愛なのでしょうか。
 そう悩んだ時も有りましたが、今はそのひととも仲良くしていますし、やきもちを焼く事も無くなりました。
 何故なら私と貴方は、あまりにも違い過ぎるから。きっと、独り占めなんて、できやしない。

114名無しさん:2007/07/08(日) 08:41:34 ID:EfX5rgrI0
 ここまで聞いたあなたは、私の言う貴方――彼をとても酷い男だと思ったでしょう?
 気分の赴くままに私を弄んで、野獣のように痛めつける。そんな粗野で野蛮な男だと思ったのでしょう?
 ですが、私も彼と変わらない存在のです。何故なら私も、何人もの人々を殺してしまっているから。
 恐らくこの身には、決して拭う事が出来ない血糊と怨念がこびり付いているでしょう。しかし、それもやむをえない事。
 何故なら、今の私はたった一振りの剣だから。
 穢れを知らぬ真の乙女だったのは、とうの昔。
 今はもう、元の姿形に戻る事が出来ない片手剣に過ぎないのです。
 え? それなら私が嫉妬した『あのひと』は誰か、ですって?
 それは巨人の斧さんですよ。メリハリの付いたプロポーションに、優美な曲線を描いた刃。そして刃の胸部分の重量感と言ったら……、とてもこの貧相な身体では太刀打ちできませんわ。はぁ……。
 あらあら、そんなことはない? 私も充分に魅力的ですって?
 おだてても、何も出ませんよ。ふふっ。
 こんな私ですが、あの人に声が届かなくても、笑顔を見せる事が出来なくても、抱き占めてもらえなくても、幸せです。
 彼の命を守り、彼と共に存在しているから。
 知っていますか? 
 彼にとっての武器は、テイマーなどが飼育するペットよりも、ずっとずっと重みが違うんですよ。
 他の人は、武器を相棒なんて言うけれど、彼にとって見れば彼の威厳であり、彼自身の象徴なんです。
 そう言ってくれた時がありましたから。
 でも、本当は一人の女性として、彼の象徴になりたいのですが……あ、今の言葉は絶対内緒ですからね! 書いちゃ駄目ですよ!
−−----------------------------------------------------------------------------------------------

 以上が、私が以前にインタビューしたある’元’プリンセスの証言を纏めたものだ。
 無機物のものでさえ、思念を感じ取ってしまうこの特性を疎ましく感じた時もあったが、今現在はこの能力に感謝している。
 しかし、彼女に’元’プリンセスという表現が適切なのか、判断に迷う。
 何故なら最後の一行にあるように、姿形は変われど一人の女性に変わりは無いことを示しているからだ。
 そして、武器として扱われる事を理屈では解っていても、受け入れられないということもより判断を迷わせる。
 彼女たちプリンセスは謎が多いが、私の無機物・有機物問わずに思念を感じ取る能力が、それらの謎を解決する助けになれば幸いである。
 しかしながら、この事実は世に言う剣士・戦士に知らせないほうが彼らの幸せのためだろう。
 何故なら、元来『男性』性及び男の象徴たる刀剣類の幾つかが、本来は女性であるという事実を教えるのは酷だからだ。
 しかも、良質な、古代エンチャントマジックによる業物の幾つかが、こうした女性あるという事実は、良質な武器を存分に振るう事を彼らに躊躇わせるだろうからだ。

115名無しさん:2007/07/08(日) 09:10:27 ID:EfX5rgrI0
公式設定とかガン無視で、想像だけで書きました。武器変身プリンセス―ストイックバージョン。
使い手と武器の関係は、何となく強固な信頼を通り越した一身同体的なイメージがあります。
しかし、違い過ぎる者に惹かれてしまう、そのもどかしさと切ない感情を書けていたらこれ幸いです。
自分の中では、永続武器プリンセスが存在したとしたら、’彼女’は無機物になったが故に何世代か後に誕生した’彼’に出会えたわけですが、無機物であるがために’彼女’は’彼’の死後、更に何世紀か生き続けそうなイメージがあります。
それは切ないけれど、何故か惹かれるのです。
もし、自分の手持ちのダメージ効率斧が、こんな感じだったら……女性を振り回すより、もっぱら振り回される側な私は倉庫にしまっておいて、二度と使わないでしょう^^;

116◇68hJrjtY:2007/07/08(日) 09:46:49 ID:GAznqdYM0
>>115さん
何か考えさせられるような、ちょっと女の執愛のようなものを感じるお話でした。
武器姫さん本人は純粋に愛しているけれど、使う男が知ったとしたらそれをどう感じてしまうのか…。
別の話ですが船の名前などの語源が女性を表す名前や言葉から来ているのは現実でもよくありますよね。
それがただの名前以外のものを持ってしまったら。霊とか怨念に似た強い感情が具現化してしまったら。
ちょっと怖いですが垣間見てみたい気もしてしまいます。
序盤のエロティックな描写もとても扇情的といいますか、ちょっと大人向けで大変堪能できました(*´д`)

117ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/08(日) 12:06:23 ID:d5HsGgCw0
続き〜

クレイグは恐怖と旋律に駆られていた・・・・
対峙するエディの姿は消え,その居場所がわからなくなってしまったのだ。
「・・・・っ、出て来い『闇隠れ』!!姿を見せろっ、卑怯だぞ!!」クレイグが吼えた。
「・・・卑怯?甘ったれるなよ、暗殺者・・・これは殺し合いなんだぜ?デッドオアアライブ、それだけの世界だ。」
またもエディの冷ややかな声が不気味に響き渡る・・・すると、一本の木の幹に人影が現れた。
黒いテンガロンハット、血の滲んだシャツ・・・・木の幹に寄りかかったエディの姿がそこにあった。
「はっ、ははっ、何でぇ・・・結局は猫ダマシですかぃ!?ビビったおれが情けねぇでさァ!!死ねぇっ!!!」
木の幹へと飛び移り、エディの心臓めがけて、クレイグは短剣を突き出した!ズブシャっという鈍い音と共に
短剣はエディの心臓を貫いた・・・・かに思えたその瞬間!『カチリ』と何やらスイッチの入ったような音が一瞬聞こえた。
「・・・?何だ、今の音は・・・な!?」クレイグが気づいた頃には、刺されたはずのエディの体が黒くなって溶けていた!
そして完全に溶けきった時、クレイグの視界にあるものが入った・・・中型の設置型時限爆弾だ!!さっきの攻撃でスイッチが
入ってしまったのか『ピー!ピー!』と警告音を発している・・・どうやら爆発まで5秒もないらしい!!
(や、ヤバい!ここを離れなくては・・・!)心の中で呟くこと0.8秒、すぐに他の木から木へと飛び移った!

ピーピーピーピーピー!・・・バチバチ・・・ズドガァ―――ン!

黄金のような火花を撒き散らし、爆弾は派手に爆発した・・・!
「くそっ、影の魔法を使ったダミー、しかも電流爆破のトラップ付きか!・・・いた!!」彼の視線の先にはまたエディがいた。
「ヨーホー!こっちだぜ〜暗殺者〜♪」先ほどのクールさはどこへやら、今度はおちゃらけた態度で呼びかける。
「・・・っ!!バカにしやがって!今度こそ死んでもらうっ!!」弓矢を即座に構え、発射するクレイグ。
矢はあっさりとエディの頭部をを射抜いた・・・!!が、エディは倒れるどころか『残念賞〜♪』と嘲笑い、先程と同じように
影に戻り溶けてしまった!(・・・この調子だと・・・またトラップか!!)クレイグの予想は的中し、また何かの罠のスイッチが入る!
しかし爆発は起こらない・・・何も起きそうになく、クレイグは一瞬安堵した・・・がそれが命取りになった!!

遠くからヒュンヒュンと、何かがものすごいスピードで接近してきた・・・。そして気づいた頃にはもう遅い!
四方八方から有刺鉄線が襲い掛かり、クレイグはそれに体を引き裂かれ、同時に捕らえられる形となった・・・。
「・・・うぐぅっ!う、痛えぇっ、痛ぇええっ!!」体中に棘が深く刺さり、クレイグは苦悶の表情を浮かべた・・・傷口から大量の血が
ポタリと流れ落ちていく・・・・
「・・・暗殺者、これがおれっちの本気だ。罠のスペシャリスト相手に追撃戦は相性が悪いからな。勉強になったろ?」
「・・うぅ、おれの・・・負けっす。負けたからにはっ・・・殺してくれっす!」嗚咽とともにクレイグは嘆願した・・。
「潔いな、エルフの暗殺者。まァ、大丈夫だ、お前の死体を残すような真似はしないさ。跡形も残さない・・・!」
ギロリとクレイグを睨むエディ。「・・・っ!」クレイグはその視線に恐怖し、戦慄した・・・!
そしてエディは懐から何やら取り出した。彼の手にはコントローラーらしき小型機械が握られていた・・・
「派手な死に際、味わせてやろう・・・バラ線電流爆破火葬スペシャルだ、覚悟はできてるか?」
ハッとクレイグが自らを束縛する有刺鉄線を見やった。鉄線の棘の根元に、かなり小さい爆弾が仕掛けられていた!
「ひっ・・・や、やめてくれ・・・いやだ、いい、いやだっ!」彼の顔に例えようのない恐怖が浮かび上がる・・・!
「・・・いくら暗殺者とも言えど、死に対する恐怖はぬぐえないか・・・いいだろう、殺すのは止めた!それにオレっち、元々
 そんなにクールなキャラでもないし〜♪」かなりの性格的なギャップに、さすがのクレイグもがくっと肩を落とした。

118ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/08(日) 12:32:24 ID:d5HsGgCw0
有刺鉄線の網から開放され、エディとクレイグは地面に座り込んだ。
エディの応急処置のおかげで、クレイグのダメージもある程度回復していた・・・。
二人はお互いの健闘(?)をわかちあい、少しばかり談笑していた。

「しかしクレイグ、お前森の中だとすごく速いな〜!どうやってあんなスピードで移動してるんだ?」
「おれたちエルフは身のこなしが軽いんすよ。だから木の枝のしなり具合を利用して、その反発力で加速してるんす。」
「ほぉ〜、こりゃいいね。おれにも今度教えてくれないか、マイフレンド?」「もちオッケーっすよ!エディさん、あんたはおれの友っすよ!」
「はは、オレっちもライバルができて嬉しいぜ〜。・・・それと、ちと真面目な話になるんだがいいか?」
エディが切り出した・・・!自分たちを狙ってきた理由を問うた彼に、クレイグは首を縦に振り、頷いた・・・。
「・・・実は、おれらエルフは人間相手にこうした真似はやらないし、過去にやったこともないんす。だけど、アイツが村を襲ってからっす・・・
 おれらエルフはやりたくもない悪事を働かされたんす・・・!歯向かってその場で処刑された仲間達も大勢いたんす。すげぇ、すげぇ悔しいっす!!」
歯をギリリと食いしばり、目には涙を浮かべ、クレイグは悔しそうに言葉を紡いだ・・・


さてさて、次回はミリアとファミィとサーファイユ、フィナーアとシンバたちが、エディとクレイグの2人と合流するところ、
ザッカルの暴走と、ミリアたちと彼との会話を描きたいと思います。ザッカル率いる裏ギルドとの全面バトルは、
麻薬巣窟に特設された地下闘技場で、みたいな設定になるかもしれません。

>>169さん
どうもはじめまして、感想ありがとうございます。
基本ギャグとセクシー中心ですが、ときたまシリアスも混ぜてます。
こんな文章に嵌って頂いて嬉しい限りですw
169さんの作品、ボキャブラリーの多さも相まって比喩表現が巧いですよ〜
情緒溢れるストーリーがとても心地よくて読み易かったです。

>>115さん
プロローグの艶かしい文章に萌えましたw
エロいのにどこかソフトな雰囲気が漂っていていいですね〜
文体も詩のような書き方というのが新鮮です。

119名無しさん.:2007/07/08(日) 13:07:19 ID:ikTwitn.0
age

120169:2007/07/08(日) 13:46:02 ID:RfgvhmYs0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
 クレイグとエディってなんか良いですね〜。
もうすぐ黒幕登場なのかな?
こんなに戦闘力の高いエルフを従えるってどんな存在なのか非常に楽しみです。

>>113さん
 せ、切ない・・・。(;ω;)
武器変身姫・・・なんて健気なんでしょう。
長寿な者から見ると余りに儚い時を過ごす人間という生き物・・・。
一回全部読んでからもう一度最初から読み返すと最初の官能的な部分でさえ
非常に悲しく感じられます。
 凄く切ないのと同時に非常に感動させて頂きました。

121◇68hJrjtY:2007/07/08(日) 17:43:27 ID:kh8tDwCA0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
エディって罠シフだったのか…!
マイナー職であるがゆえか凄く強い存在に見えてます(笑)
罠ってもっと色々増やして欲しいですよね〜。一番イジれるスキルだと思うんですが。合体罠とか。
そしてやっぱり二人は好敵手がピッタリです(`・ω・´)b
麻薬巣窟の地下闘技場ですか…あそこは一時期長いことソロした因縁の場所です(ノ∀`*)
楽しみにしてます。

122名無しさん:2007/07/08(日) 21:54:06 ID:vz4Un8DE0
新しいギルドメンバーがくる。
こんな噂が耳にはいったのは1ヶ月前。
新入りなんて頻繁に入ってくるが、今回はすこし違った―――

そして、ギルドメンバーほぼ全員が集まり集会が開かれた。
月に一度ギルドホールで行われ、これからの方針、ギルド戦の振り返り、いろいろ話し合う。新たに入るメンバーの紹介も行われる。

だが、男性職は皆、話などまともに聞いていなかった――――


ギルドマスターの隣に控えめに座る、とびきりの美女に釘付けだった。


そう、彼女こそが今回新しく入るギルドメンバー。
女性職の人たちもざわついている。嫉妬しているやつもいた。

と、彼女を見つめていると、隣に座っているこうじが話しかけてきた。
「なぁ、けいた、なにボーっとしてんだよ」
ビクッとこうじに目を移す
「ん!ぁ、何でもない…」
「ははぁん、お前もアイツに見とれてたのか」
「うるせぇ!お前だってさっき見てたじゃんか!」
「まぁまぁ、どうせ俺らなんか、近づくことすら出来なさそうだな…」
「ん、そろそろ紹介が始まるぞ。」
そして、ステージの上を見ると、ギルマスさんと美女がいた。ギルマスさんは威厳に満ち溢れた顔と声で話す。

「今から新入ギルドメンバーの紹介をします。 どうぞ」
ギルマスさんが話し終わったとき、ホール内は一気に静かになった。ギルマスさんの威厳か…美女のせいか…。彼女はギルマスさんに手を延べられ、マイクの前に立ち、緊張した、すこし上ずった声で言った。
「こんにちは…初めまして、秋風音葉です。宜しくお願いします。」
言葉少なに話し終わると、一歩下がってお礼をした。拍子に大きな拍手の音が会場に響き渡る。
そして、拍手がおさまるとギルマスさんがまた威厳に満ちた声で
「これにてクロガネギルド総会を閉会します。」
再び拍手が沸き、ゾロゾロとメンバーはホールから出てゆく。その流れにのり、自分もホールをでる。こうじと一緒に。

「じゃあ、俺はもう帰って寝るからまたな!」
「ああ、じゃあな」
辺りはもう薄暗く、古都にも人通りは少ない。こうじと別れを告げたあと、カバンから今日買った新しい剣を取り出し、眺める。剣の名は秋風落葉。
ずっしりとした重み、綺麗に磨かれた神々しい刀身が、けいたの顔を反射する。
「…そういえば、あの人秋風って苗字だ」
ぼそっとつぶやき、剣をカバンにしまおうとしたとき、カン、と金属音が響いた。以前まで使っていた刀とぶつかった。
「銀行に預けてこよう。」
ふと、時計をを見ると7時56分
「やべっ!銀行閉まる!」
急いで剣をしまい、古都を疾走する。ガシャンとカバンが揺れる。

間に合った。
息を切らし、扉に倒れこむように銀行に入る。
「はぁ…あぶなかったぁ」
両手を両膝につき、肩で息をしながら前を見ると、けいたは目を丸くした。秋風音葉がいた。
彼女は銀行員と取引をしていて自分には気づいていないようだ、してなくても気付かないだろうけど…。
けいたはその隣のカウンターにいき、取引をする。

「もしかして…同じギルドの方ですか?」

天使のような声が左耳から入り、脳を突き抜ける。驚いて左を向く。そこには間違いなく秋風音葉さんがいた。
おどおどと質問を投げかけてきた。
「あ、そうだよ。」

「同じ苗字なんですね!宜しくお願いしますっ」
ペコッと頭を下げ、彼女の長い茶色の髪が肩から流れる。
「うん。 こんな時間に何しにきたの?」
気を取り直して、落ち着いて話し掛ける。
「今日、新しく武器を買ったんです。それで、前まで使っていた武器を預けようと…。けいたさんは?」
「まじ!?俺もなんだよ。」
「えーそうなんですか!奇遇ですねェ」
微笑む彼女はやっぱり天使のようだった。
「お客様、もうすぐ閉店いたします。」
不意に張り詰めた声、銀行員に軽くにらまれる。そして2人は足早に銀行を出た。

このまま一緒に帰れちゃったりするかな…。とか考えてながら、自宅の方へ歩き出すと
「あ、私こっちなんで、また明日会いましょう!」
全く正反対だった。彼女は元気な声で、大きく手を振り、走っていった。やがて彼女は闇夜に消えた。
「明日のギル戦、絶対出てやる」
けいたは、うきうきしながら帰路に着いた。

123◇68hJrjtY:2007/07/08(日) 22:38:55 ID:kh8tDwCA0
>122さん
新規職人さんですね、初めまして。
和名登場人物がなかなか良い味出してます。そういえばRSのUも和名がいくつかありますよね。
新ギルメンの美女とけいたの秋風落葉との繋がりが気になるところです。
さりげないほんわか恋愛もかもし出してたりして。続きお待ちしています!

ところで執筆途中でしたら申し訳ないですorz

124ある姫の独白-御感想への返事:2007/07/09(月) 03:27:03 ID:EfX5rgrI0
皆様、-ある姫の独白-の御感想ありがとう御座います。

>>166 :◇68hJrjtY氏
女性をモチーフにした言葉とか結構ありますね。
クイーン・エリザベス級空母しかり。処女航海という言葉然り。
古来より良い意味でも悪い意味でも、男性たちを畏れされ惹きつけつづけた『女性』性を感じます。
ただ、その『女性』性が具現化したら、ただじゃ済まない気がするのは、私が女性恐怖症だからでしょうかw


>>118 : ESCADA a.k.a. DIWALI氏
ソフトエロですか^^;
ポエム娘が妄想を爆発させている感じを出したかったのですが、思惑通り伝わって良かったです。

>>120 : RfgvhmYs0氏
感動していただけて光栄です。肌が触れるほど近くに居ながら、刃を持つが故に触れる事がかなわない。
今改めて見ると、確かに健気ですね。シザーハンズからインスピレーションを貰って書きました。
しかし、鋏男は愛する人をだけないだけでしたが、彼女らは意思疎通をはかることが出来ない、互いに一方通行の想い。
そんなもどかしさも感じてもらえたら幸いです。

PS,いつもの悪い癖だ……。エロで鬼畜っぽいんだけど実は、剣の手入れ>剣の鑑賞>剣の使用をしているだけの話だよ〜んっていうギャグのつもりだったが、今更こんなこと口が避けてもいえないぞ。書きはするけど。

125姫々:2007/07/09(月) 04:42:19 ID:uqnx7QdM0
こんばんはー(´-ω-`)リアルが色々片付いてません。
明後日位から時間出来るようになるので本格的に書き始めます。
今回はリクエ貰って次ぎ書く予定の短編で武道家×サマナ予告的な物を‥‥‥。


潮の香り漂う港町、ブリッジヘッド。灯台にもたれ掛って海を見ていた俺は――
「いい天気ですねー。」
唐突に、フードを被った少女に話しかけられていた‥‥‥。








「あぁ、そうだな‥‥‥」
無視も感じが悪いので何となく応えてみる。応えると少女は、ニコリと笑い、
タタッと走り寄って来る。
「‥‥‥」
「‥‥‥‥♪」
そして,明らかに何か俺が話すのを待っている‥‥‥。
「なんか用‥‥‥?」
「え‥‥‥?」
いや「え?」て‥‥、俺にどんな期待してるんだこの子は‥‥‥。
「‥‥‥‥‥」
が、まだ何か期待しているそぶりで俺の方を見ている。
「質問を変えよう‥‥、君誰?」
「‥‥‥?」
今度は首を傾げられる。これもハズレなようだ。
「あー‥‥、うん、分かった。あんた何者だ?」
「えーっと‥‥‥‥」
お、当たりか?というかノって来た俺が情けない。
「えー‥‥‥っと‥‥?」
「ん?」

「‥」

「‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥えーっと、サマナーですよー」

‥‥‥何この間。
というよりジョブはその周りを待ってる召喚獣とあんたの格好を見れば分かる。
「何で俺に話しかけてきたの?人違いじゃないかい?」
正直こんな奴を見たら忘れるわけ無いのだが、一応聞いてみる。
「いえー、そんな事は無いですよー?」
あれ?ていう事は会った事あったのか‥‥?いったい何処で―――
「だって、誰でもよかったのですからー。」
駄目だこいつ、早く何とかしないと。
そんな事を考える俺を見て、少し心配そうな顔で口を開く。
「お願いがあるんですけど、聞いてもらえないでしょうかー‥‥‥」



って感じで書き始めてみましたがこのサマナはどう見ても‥‥‥。
まぁこんな感じでよければ続き書いていきますー。
ヤダ(´・д・`)って感じならどんな感じか指定してくれたら
そっち方面に持って行きますー。
(ていうか偏見スレを参考にしようと思って見に行ったら恋愛ばっかり
なんですよね‥‥‥、そっち方向に持って行けるか凄い不安‥‥)

126姫々:2007/07/09(月) 04:45:45 ID:uqnx7QdM0
上げてしまった‥‥‥、深夜はこういう初歩的なミスするから困る‥‥‥。

127EfX5rgrI0:2007/07/09(月) 04:50:23 ID:EfX5rgrI0
>>73 : 25(W9iHsBn.0)氏
主人公のカルチャーギャップぶりが、よくわかりました。
時系列で文を構成しているので、臨場感が伝わって良いと思いますよ。
迂遠な描写もいいですが、簡素で直接的な文もいいものです。

>>78 >>96 : ESCADA a.k.a. DIWALI:氏
さてさて、眠りこけるダメ大人を尻目に、暗い森で二人にどんな展開が・・・?
と、思ったら一件落着したようで。しかし、依然、森に忍び寄る陰が気になりますね。

>>82 : プチ氏
墓地秘密って、そんな感じだったのですね。
自分は今までその他のメンバーとしてしか参加してなかったので秘密と言えば、ただ入って殴ってお疲れ様だった訳ですが^^;
その秘密洞窟の理由や、筋書きを考えるのも面白いですね。

>>98 : ◆21RFz91GTE
設定とその描写が凄いですね。湿った匂いが鼻腔をくすぐる感じがします。
話の緩急や、話の引きの良さも感心するばかりです。

>>106 : 169氏
切ない話ですね。絹糸の様な描写が、少女の日常と、最後の幸せそうな弓娘との対比を引き立てるようで、泣けました。
むしろ、グダグダというよりは、日常をあえて淡々と描く事で、淡い情景が浮かぶような感じがして良かったです。

>>122: vz4Un8DE0氏
フランクな会話シーンや文体が、親近感を覚えますね。
何となく、昔の事を思い出してにやけてしまいました。

128EfX5rgrI0:2007/07/09(月) 04:58:44 ID:EfX5rgrI0
>>127
◆21RFz91GTE'氏'を付けるのを忘れてしまいました。申し訳ない。

>>125 : 姫々氏
傍から見ても、ダメだこいつなんとかしないとなサマナーさん。
こういうキャラと方向は嫌いじゃ無いですよ。むしろ、大好物ですΣ=( ̄? ̄* )

129ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/09(月) 10:03:38 ID:OhTl4zsk0
さて、エディとクレイグの音速の戦いは幕を閉じたのであった。
しかし、これから起こり得る本当の大きな戦いは、狂気を撒き散らしながら迫り来る魔獣が
もたらすなど、誰も想像だにしなかった・・・・。

場所は変わって、ミリアとファミィの2人。現在トラン森中央部に向かう道をがむしゃらに走っていた。
「はぁ・・・はぁっ・・・ねぇファミィ〜、ミリアね、足がパンパンして痛いの〜!ちょっと休むのよ〜、やぅ〜」
「ミリアっ!エディがどうなってもいいさ!?早く行かないと手遅れになるさ〜!いっさんばーえー!」
「うゅ・・・だよね、急がないと!ミリアこれくらいの事で泣かないも〜んっ!うにゃ〜!」
目元に少しばかり涙を浮かべながら、ミリアは己に喝を入れて走り続ける・・・・。

そして今度はフィナーアとペットのシンバ、ミリアたちが通っていった道を辿り、後を追っていた。
「なぁフィナ〜、何だってお前はいつも腰をくねらせながら走るんだよ?いい年した年増がブリっ子やってんじゃねぇぞ」
「んぁ〜、さっきから黙ってれば人のことを年増とか言っちゃって〜!!これでもアタシまだ23なのよ〜!?
 これ以上チョーシくれちゃうなら、18歳未満閲覧禁止のエッチな寝技で落としてあげるわよ!?」
「あっあ〜ぅ、あっあっあ〜ぅ、色魔の誘惑が聞こえてくる〜聞こえてくる〜」耳を塞いでシンバはフィナーアを茶化した。
「キィ―――っ!!お、覚えてらっしゃい!ぜぇ〜ったいお仕置きしてあげるんだからっ!!」
頭からマグマをドカンと噴火させ、怒りに燃えるフィナーア。それでもまだ腰をくねくねとさせて走っていた。
そうしているうちに、デコボココンビも森の中央部へと徐々に近付いていった。



そして戻って、エディとクレイグのいる森の中央部。しみじみとした物悲しい雰囲気が、二人を包んでいた・・・
「・・・クレイグ、苦しかったんだな。やりたくもない事やらされて、悔しかったんだな?」
憐れみを含んだ表情で、エディがクレイグに慰めの言葉を投げかけた・・・・。クレイグは拳を握り締め、静かに嗚咽を漏らしていた。
「エディさん・・・ありがとうっ・・!えぐっ、うぇっ・・・うぁあ、うあぁぁあぁ」そして、今までに溜め込んでいた何かが、涙としてこぼれ落ちる。
(・・・苦しかったろうに、愛していた人間たちにいきなり牙を向けるのは・・・かなり、悩み葛藤していたんだな・・・)
すると、茂みの方からガサリと物音がした・・・!「誰だっ!?」咄嗟にエディがダートを片手に身構えた!
「あぅ〜、エディさんたらひどいの〜!ミリアたち、心配で追いかけてきたのよ〜!!ぷぅ〜」頬を赤くし膨らませ、ミリアが出てきた。
「お、なんか決着付いたみたいさ〜。無事で何よりさ、エディ〜」ファミィも安堵した様子でエディに声を掛けた。そしてまた別の茂みから・・・
「ミリアっ!兄さんっ!無事か!?」勢い良くサーファイユが飛び出してきた!すぐさまミリアとクレイグの安全を視野に入れ、彼もまた安堵する。
「ふぅ・・・良かった、皆無事で。あ、そこのシーフさん、兄が迷惑をかけました。ごめんなさいっ!」深々と一礼するサーファイユに、エディは少し
たじろぎ気味になった。「いやいや、そう迷惑でもないよ!戦ってるうちに友情みたいなのが芽生えちゃったみたいだし、オールオッケ!」
にこやかなスマイルとともに、親指を突き立てるエディ。そしてクレイグも少しはにかみながらミリアたちに目を見やった。

130ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/09(月) 12:34:55 ID:OhTl4zsk0
「っと、サーファイユ?そこのビーストテイマーと知り合いのようだが・・・?」
ミリアを指差してクレイグが弟に尋ねた。彼はとまどいも見せず、ありのままのことを打ち明けた。
「兄さん・・・彼女はボクのマスターになってくれたんだ。名前はミリア・・・ミリアン・ウォン。」
「マスター・・・?まさかお前、彼女と主従の契約を結んだのか・・・?ど、どうして・・・」
弟が突如、ビーストテイマーの従者となったことをいきなり告げたのだ、兄として驚くのも無理はない。
「勝手なことしてごめん・・・でも、ボクは子供の頃から、森の外を見て回りたい、ボクたちエルフと友好関係にある人間たちと交流して
 一緒に冒険して、一緒に笑い合いたいんだ!・・そして、いつかこの森に帰ってきて、皆に話してあげたい。ボクの冒険話を・・・」
自らの胸中を、隠し事なく正直に、サーファイユは兄へと訴える。彼の目には揺ぎ無い希望の光が輝いていた。
「・・・そうか、彼女と冒険に出るんだな?・・・ん、いいだろう!思う存分、世界を見て回って来るんだぞ!誇り高きエルフとして、必ず帰って来い!」
「あぁ・・・!ボクは曲がりなりにも兄さんの弟、大戦士の弟なんだ!簡単に死にはしないよ!必ず戻る、約束するさ!!」
互いに微笑み、固く握手を交わすエルフの兄弟。その光景に、エディやファミィ、ミリア、そしてたった今その場に到着した
フィナーアとシンバも、美しい兄弟愛に感動の涙を流していた・・・

「うぅ・・・小さな部族の素晴らしい兄弟愛っ!わかる、わかるぞ〜俺にはよ〜くわかるっ!」シンバが涙ながらに賞賛した。
「ん?何だ何だ・・・?ねぇそこの原始人君、君の隣にいる如何わしい格好の彼女は誰だい?」クレイグが少し顔を赤くしてシンバに尋ねた。
「まぁ!シンバに続いてエルフちゃんまでアタシのことを〜!!まとめてファイナル☆フィナスペシャルの餌食にしてあげるわ!」
しかし怒り心頭の彼女をよそに、クレイグとサーファイユ、シンバにファミィはモンスター同士の話に花を咲かせていた。
「彼女はおいらのマスターの姉ちゃんさ〜。毎度スケベなことするから目に悪いさ〜」「だよね〜、ボクも今思ったよ。人間いろんなのがいるんだね・・・」
「しかも彼女ひどいんだぜ!?いっつも俺にプロレス技でお仕置きするんだ!身がもたねぇったらねェよ」「シンバ君・・・だっけ?大変だね〜、心中お察しするよ」
「なんならミリアと契約するさ〜、ミリアはキュートで優しいピュアな娘さ、楽しいさ〜」「マジ!?俺あいつとの契約破棄しようかな・・・っ!?」

・・・シンバの吐いた台詞で完全にフィナーアはブチ切れてしまった。
指の骨をバキボキと鳴らし、額にしわを寄せて仁王立ちし、背後には炎が燃え盛っている・・・!
「あ〜ん〜た〜ら〜!!もう怒っちゃったわ!4匹まとめてファイナル☆フィナスペシャルでお仕置きしてあげるんだから〜!」

  「やべー!みんな逃げぎゃあああああああ!!」「うわぁああぁあ!ホントに人間かよこの女!?」
     「逃がさないわよォ〜!どっせ―――い!」「わっわっ、兄さ〜ん!怖いよ助けて〜!!」「アイ〜ヤァ〜!!」

                  しばらくお待ちください。

「あがー!やめるさ〜痛いさ〜暴力反対〜!」「おう皆!反撃するんだ!力をあわせれば勝てる!」「無駄よー!無駄無駄無駄無駄ァ!」
     「だ、ダメだ〜!やっぱりこの女の強さ、尋常じゃない〜!」「兄さ〜ん!ボクは必ず生きて帰ってくるからね〜ぐぼふぇ!!」

131ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/09(月) 12:35:32 ID:OhTl4zsk0
5分後には嵐のようなフィナーアの投げコンボは収まっていたが、被害を喰らった4匹のモンスターたちは
ボロボロにされ、地面にうずくまってケイレンするほどにのばされていた・・・・。
「あぅ〜、皆だいじょうぶ?ミリアが治療してあげるからね?ばたんきゅ〜しちゃ『めっ』よ?」
ミリアのキュートで愛らしい口調と天使のような抱擁に、4匹全員はこの上ない至福を味わい・・・・「(ミリアたん・・・・も、萌え〜)」
と心の中で呟くのであった。しかしフィナーアは嫉妬しているのか、ミリアに抱かれている4匹をじっとりと、自らの指を噛み締めて睨みつけていた。
・・・しかしここで一件落着のわけがない!まだ本当の敵が迫っているのは否めない事実、着実にその足音は近づいていた。
森の向こうから何か大きなものが倒れる音が響いてきた・・・!この異常事態にクレイグとサーファイユがすぐに起き上がった。
そして・・・魔獣がごとくの恐ろしい咆哮が森に響くのだった。

「ごるぁああぁああぁああ!!!ビチグソのエルフ兄弟がぁああぁあぁぁああ!!とっとと殺されに出て来おぉぉおおぉぉいぃ!!
 俺様を裏切ろうなんざ5億年早ェんだよぉおおぉぉぉおおヴォケがぁああぁあああ!!」
狂気漂う咆哮とともに、またも何かの倒される音がズズー・・・ンと重く響き渡る・・・・

次回は黒幕、ウェアゴートのザッカルが登場です。お楽しみに〜

132◇68hJrjtY:2007/07/09(月) 13:19:53 ID:1fq1hqCQ0
>EfX5rgrI0さん
女性恐怖症なのですか(;・∀・)
でも、だからこそ書けるものっていうのはありますよね。
絵画などでも同じらしいですが、その状態を一度でも体験しなければ書けないものも多そうです。
戦闘シーンも映画や武術などからヒントを得るとスムーズみたいな感じですね。
ところで本心はギャグを目指していたのですか(汗) 描写力が凄すぎてそう感じる前に切なくなっちゃってましたorz

>姫々さん
おぉ、遂に遂に!リクした日からワクテカしながら待ってました!
偏見スレ等だと武道がサマナに一目ぼれみたいな展開からスタートするのが多いみたいですよね。
恋愛関係でも戦友関係でもその他でもどんなカップリングになっても楽しみです。
こんな展開ヤダなんて口が裂けても言いません!
ウーム、自分で書ければお返しもできるのですが…orz

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
毎回ながらフィナ姉のファイナル☆フィアナスペシャル(少し早口言葉気味ですね!?)には圧倒します(笑)
凄く感動的な兄弟愛シーンの空気を一瞬で変えられる、流石過ぎます!
ミリアが萌えパワーで癒し系ならフィナ姉がそれを全てぶち壊すみたいな…ある意味凄い連携だ…。
ギャグが楽しい場面とはいえ事態はどんどんピンチな方向に向かっているようですね。
毎回の次回予告ありがとうございます!楽しみにしてます。

133名無しさん:2007/07/09(月) 19:42:45 ID:OIIZIZ1M0
i-bbsではない画像掲示板です。
http://lijil.com/bbs/redstone7/index.php

小説の情景を描いたイラストをアップしていただけると
とても楽しいです。お待ちしております。

134名無しさん:2007/07/09(月) 21:17:35 ID:CCTLyyIU0
ts

135殺人技術:2007/07/10(火) 00:46:56 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル
(3スレ目)
1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737
18-20>>795-797
21-22>>872-873
23-27>>913-917
28-31>>979-982
(4スレ目)
32-36>>548-552
37-38>>568-569
39-42>>592-595
43-46>>617-620
47-51>>693-697
52-56>>760-764
57-62>>806-811
63-65>>825-827
66-70>>838-842
71-77>>869-875
78-81>>921-924
82-85>>981-984

3スレに跨ってしつこく続けてるとか掲示板利用者としてどうよって話。

なんだか執筆者が少しずつ増えてるようで何となく嬉しい気分になります。

136殺人技術:2007/07/10(火) 00:47:27 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(86)

 「そうだ……私達はもう戻れない、ならば私と共に歩もう……そして全てを手に入れ……私達と彼女だけの、永遠の時を……」
 F・Fは両手を広げつつ、眼に宿る光をぎらぎらと撒き散らしながら、自らの言葉に酔いしれる様に言った。
 私にはこんなナルシシズムな一面があったのか……と軽く感心しながら、その情けない自分の姿を見ていても嘲りの念を抱かない自分に気がついた。どうやら本当の様らしい。
 「下らんな」
 ファイルは瓦礫から体を起こし、嘲笑するでもなく、毒ずくでもなく、呟いた。
 奴の……いや私の長々とした演説のお陰で、怪我は粗方治っている――ファイルはそう自分に信じ込ませ、見えないように軽く両手を握る。
 ――いや、私と奴は違う、でなければ、私がこんな感情を奴に抱くわけがない。
 「それは私の野望とは異なる、それは貴様がやりたい事だろう? 私には関係のない事だ」
 二人の声が、薄闇に反響して鈍いコーラスとなって戻ってくる。いつのまにか窓から差し込む闇は薄れ、微かにだが赤い物が入り込み始めている。
 瓦礫まみれになった床、その石の棘の合間に横たえる三つの体、うち一つは確実に死んでおり、残り二つは死んでいる確証はないが、生きているかどうかも不明だ。完全に意識を失っている。
 「――ならば今度こそ伺おう、貴様の目的は、何だ?」
 やはり来たか。ファイルはその質問が来ることを想定して、ある程度の答えは考えておいた。
 だが、その答えは答えとしてのはっきりした形を留めておらず、ファイルの釜の中で材料だけがざく切りになって放り込まれている。
 今はまだ、その材料を使って料理を生み出すには至っていない、最後に入れるべき材料が決定的に足りていない。何が足りていないのかも分からないでいた。
 だが、ファイルは言った。
 「貴様を殺し、私は私が犯した全ての禍根に対して償いをする、その為に――どんな手を使ってでも生き続ける、それが目的だ」
 「……それこそ下らない……」
 ファイルが言い終わるとほぼ同時に、F・Fが小さな声で呟く、その体は漲る怒りを放出するためか、小刻みに震えている。
 「貴様はこの地上界の為に生きると言うのか……? あんな愚かで恐ろしい種族の為に償いをすると言うのか……? 彼等は償いでは満足しない、復讐で腹を満たし、他社の苦悩で喉を潤す? ……そんな悪魔は地下界にも生息しない、そんな奴等の為に命を捧げる程……貴様は、私は……落ちぶれたのか!?」

137殺人技術:2007/07/10(火) 00:48:14 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(87)

 F・Fは自分の顔に爪を立てて静かに慷慨の声を上げ、その体のありとあらゆる所から敵意を放射する。
 ファイルは想像以上の自分の憤りっぷりに冷や汗をかきつつ、咄嗟に周りを見渡す。
 何か武器になるもの――金属でできたもの――
 そう考える暇もなく、F・Fはその手に持った燭台の剣を振りかぶって接近する。ファイルは上空に逃げ、武器になる物を探す、先程と全く同じパターンだ
 だが、やっぱり見あたらない――燭台は全てF・Fの武器にされており、額縁に施された薄い鍍金では武器にするには明らかに頼りない。人々が残していった武器も無ければ、転がる矢は粉々に崩れた上に凍り付いてて使い物にならない。
 何らかの魔法で抵抗できるかとも考えた、しかしファイルに扱える魔法は炎と雷、そして油――相手も同じ魔法を扱えるのだから、相殺されるか力負けするかがオチだろう。
 あっと言う間に上空の絵画まで追い詰められ、下方から猛スピードで迫る剣が、微かな暁の光を受けて点滅する。
 だが、一際明るく火花が散り、響いたのは肉を刺し貫く音ではなく、明らかな金属音だった。
 ――いや、金属音というには、少し語弊があるのかもしれない。
 ファイルの両手に握られた、二本の白い短剣、どこか生物的だが硬質的な光沢を持ち、色も完璧な白ではなく様々な色が混じっている。
 ファイルの頭――本来そこにあるはずのピエンドの象徴、二本の禍々しい角が、赤黒い血を垂らしつつその下の仮面を汚している。心なしかファイルの息は荒い。
 暫し二人の体が止まり、ファイルの情けない有様を見たF・Fが口から怒りの吐息を吐き出しつつ一回転し、体勢を変えてF・Fがファイルの上に浮く状態になると、ファイルの胸元を足の裏で力の限り蹴り付けた。
 「本気でピエンドの誇りを捨てた様だな!」
 元々の蹴りの威力に重力と体勢の無理が影響して、ファイルは落下しながら苦しそうに咳き込む。思わず取り落としそうになった短剣を握り直して、上空から真っ逆さまに落ちつつ剣を構えるF・Fを待ち受けた。
 優雅な曲線を描いて翻る剣、激しい刻み模様を空気に入れて襲いかかる短剣。心臓目がけて突進する剣を右手の短剣が打ち据え、左の短剣がぐるりと迂回してF・Fへ伸びる。
 一筋だけ舞い散る鮮血、ファイルの短剣は逆向きに落ちてくるF・Fの右肩を深々と突き刺し、F・Fの剣はファイルの心臓をずれて左の脇腹を貫通する。
 ファイルの短剣がすぐさま回転して肩の傷口を広げ、F・Fの剣が一瞬にして引き抜かれ出血を促す。お互いの剣に全く情は宿っていない。
 二人は互いに距離を取って着地し、それぞれ傷口を押さえる、だが治療の暇がないと分かると猛烈とお互いの懐に飛び込んでいった。
 刃がぶつかり合うけたたましい音は止むことを知らず、時に不規則になっては別の鈍い音や水の音が混じる。
 お互いに灼熱の血を撒き散らし続け、その戦いの激しさは収まらない、しかしこれではいつまで経っても決着は付かない。
 …………そんな不毛な戦いを、瓦礫の隙間から覗き見る人物が、一人だけ居た。暴走したカルスの爪に倒れた、カリオである。

138殺人技術:2007/07/10(火) 00:48:44 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(88)

 あの二人の悪魔の話を、僕は冷たくなったチョキーさんの側で聞いていた。
 ――いや、正確には、一人か、何故かは知らないが、僕にはそれが理解出来た。
 背中の傷はシーフギルドに伝わる応急処置術が功を為して、出血は止まっている。だが既に血を流しすぎたせいか、頭では動こうとしていても、もう小指一本動かせない。
 ……意識も朧気になってきた、だけど、もう少しで、もう少しで、何かが思い出せそうな気がする、あの悪魔達の言葉、いや声を聞いているだけで――カリオは静かに目を閉じる。霞掛かった情景と共に強烈な睡魔が襲いかかってくる。
 僕はあの悪魔に血を流し込まれて、あの悪魔に思うように操られている――違う、そんな事は今やどうでもいい。
 育てて貰ったシーフギルド、そのマスターであり、僕の親父代わりだったケブティス――自分の親の事は常識だが、そんな事すらも忘れてたようだ。
 親父代わりだったケブティスを、僕が最も尊敬するチョキーさんが殺した事――仲間を裏切り、裏切られ、ひっそりと闇に消えるがシーフの本望、そう教えてくれたのは親父だ。
 僕が路傍で横たわって往来の見世物になっていた餓鬼の時、少しの間だけど大陸を一周する商人の旅に連れて行ってくれたチョキーさん――例え親父を殺していても僕は付いて行く。
 そのチョキーさんの、僕や他人とは明らかに違った気配のような、気迫のような何か――そうだ、ちょうどあの悪魔によく似てるな。
 カリオは瞼を上げた。
 瓦礫の隙間で、二人の悪魔が激しく剣を交わしている。
 どちらもその体からは血を迸らせ、片方の悪魔は角が途中で折れてしまっている。最初は二人とも互角だったが、次第に角の折れた方が押され始めた。
 ………………
 ………………
 カリオは力の入らない体を瓦礫に押し当てて無理矢理腰を上げ、震える右手で一本のダートを握り締めるが、一度取り落としてしまう。
 信頼出来ない手の代わりに口でダートを噛み、両手に思い切り力を入れてマントを脱ぐ、マントを縦長に伸ばし、口のダートを右手に巻き付ける様に縛り付ける、こういった器用さはカリオの長所だった。
 カリオは肘を突いて体を微かに起こし、争う二人の悪魔を見る、貧血が五感にまで影響してるのか、もはや自分の耳は自分の心臓の音すらろくに聞けなくなっている。目は先程よりもさらに暗く、時折きらりと刃の光るのが見えるだけだ、充満しているはずの血臭すらない。
 全てが闇、闇闇、闇、だがカリオは自分が止まっているのか歩いているのか、立っているのか寝ているのかすら分からない状態で、ただ朦朧とした意思のままに闇の中を掻き分けた。
 ――二人の悪魔にとって、薄闇の中とはいえ堂々と歩み寄る影に気付かぬ筈は無い、だが二人は気付かなかった。
 ブリッジヘッドのシーフに伝わる、あの姿を消す術すらもなしに、カリオは二人のすぐ側まで歩み寄った。

139殺人技術:2007/07/10(火) 00:49:10 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(89)

 乱闘の最中、突然F・Fの動きが一瞬止まり、ファイルの短剣が両方とも、深々とF・Fの両胸を刺し貫いた。
 突然の事に当のファイルすらも放心状態となり、傷を抉る事も忘れながら、F・Fはどさりと瓦礫の中に倒れた。
 そして、F・Fの横っ腹に根本まで右腕のダートを突き刺したカリオが、その体に覆い被さるようにして倒れる。
 最後に倒れたのはファイルだった、その場に両膝を付き、さながら人形がバランスを崩したかのように倒れた。
 ファイルはなんとか起き上がろうと健闘したが、それも空しくゆっくりと瞼を閉じた。
 周囲の窓から血のように赤い朝焼けが、三人の体をしつこいほどに照りつけていた。
 「勝手に敷地から出てはいけない、暫く反省しているのだ」
 厳つい大柄な男性がそう言って、その膝程度しかない少年が無言で暗闇の中に歩を進める。
 少年は身なりが整っており、見ただけで高貴な生まれであると分かる、少年は振り返って大柄の男を見上げると、男は溜め息混じりに傍らの老婆から蝋燭を一本、受け取って皿に立てると、少年に手渡した。
 扉が閉じられる瞬間、少年は大柄の男の疲れが滲んだ顔と、老婆の女性の心配そうな顔を見た。暗闇の中、少年と一本の蝋燭だけが闇の中に浮かんでいる、蝋燭一本では照らしきれない程、その部屋は広く、不用意に歩けない程、そこには高級な家具が置かれている。
 少年は蝋燭の朧気な明かりを頼りに、青い月明かりが滲むカーテンへと足を運んだ。
 窓を開けると蝋燭は消えなかった、少年は蝋燭を持ったままバルコニーへ出る。本当に風がない。空はとても青いのに、月がどこにも見あたらない。雲の一片だってない、絵画のようにのっぺりとした空がただ無限に広がっている。
 少年はバルコニーの観葉植物の植木鉢を踏み台に、手摺りから身を乗り出して下を見た。真っ暗で何も見えない、落ちたらいつまでも吸い込まれていきそうで、風はなく凪いでいる筈なのにごうごうと低い音がする。
 少年はだんだん空恐ろしくなってきた、植木鉢から降りて蝋燭を手に持ち、部屋の中へ戻ろうとした。
 その時だった、皿にのった蝋燭の火が、突如凪に揺らめいて燐の様に青い光を放ち始めたのは。
 その青い炎を見た瞬間、少年の胸の中で鎌首をもたげ始めていた恐怖は――嘘のように無くなった、少年は振り返った。
 青かった空が黒くなっている、いや、よく見るとその黒い空が白く光っている、いや空じゃない。
 「――君は自由を望んでいるかい?」
 謎の影はそう言って、その姿を現す、少年は頷いた。
 「じゃあ、取引と行こうか、君が憧れていた、商人としての最初の仕事だ――」
 翌日、屋敷は大騒ぎになった、バルコニーは醜く融解し、この屋敷の次期当主は姿を消した。
 そして、およそ50年後にはその人物は商人として名を広める事になっていたのだが、彼の遺族は財産ごと残らず蒸発してしまったのである。

140殺人技術:2007/07/10(火) 00:49:36 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(90)

 朝の日差しが目に眩しい、既に血のような暁は無く、窓の奥に広がる青々とした空が、この議事堂の瓦礫と妙に合っている。
 ファイルは体を起こす、だが痛みはなく、体の何処にも傷がない、完全に治っている。
 体を起こすと、瓦礫の反対側でカリオが横たわっている、こちらも傷がない。
 ――ふと、ファイルはそこにあるはずのものが無いことに気がついた。
 横たわっているのは、カリオだけ――
 F・Fは――私は、何処に行った? 死んで蒸発したのか? 地下界ではそうだろうが、ここは地上界だ、地上界で悪魔が死んだら――。
 突然、ファイルは瓦礫の合間に見慣れない物を発見すると、屈み込んでそれをつまんだ。
 この場に似合わない、赤く長い、一本の髪の毛だ、女性の物だろうか。
 暫しそれを眺めていると、ファイルの指の中でその毛は炎を上げて燃えてしまった。
 周りを見渡してみる、いつのまにか、倒れていたもう一人の人物――カルスの姿がない、だが、よく見ると血痕が窓へと小さく続いている。
 残っていたのは、もう一つの屍――チョキーの屍だ。
 ファイルはその傍らに歩み寄り、その屍に手を置く、当然の事ながら、冷たい。
 死者を生き返らせる方法は無い――そんな事を自然に考えている自分に疑念を感じつつ、頭の中で様々な思考を働かせる。
 ファイルは振り返った、カリオは寝ている。だが、起きたらどうなるのだろう? この男はチョキーにかなりの信頼を置いている、チョキーが死んだら恐らくこいつは自殺しかねないだろう。
 そうなっては面倒だ、何か方法はないものか――。
 その時、ファイルは自分の腰に何かがぶら下がっているのに気がついた、腰を上げて手を伸ばすと、ベルトの様な物が付けられている、緑色の四つ葉のクローバーの刻印がある。
 「……フォーチュン・フィール」
 その時、私は自分で自分の言葉を思い出した。
 ――名前、言葉には魔力がある、それは地下界だろうと地上界だろうと──天上界だろうと同じで、誰も説明出来る者は居ないが──言葉とは、名前とはそういう物なのだ――
 そうか、これは私のユニーク・アイテムか、となると――F・Fは、奴は死んだのか。

141殺人技術:2007/07/10(火) 00:50:04 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(91)

 ファイルはそのベルトを暫し見つめていると、そのベルトを使ってチョキーを蘇生させる方法を探そうと考えた。
 ファイル――F・Fが地下界で他者に嫌われる最も大きな理由、それが、F・Fの能力だった。その能力は――その世界の全ての生物の知覚情報を、リアルタイムで知る事。
 フォーチュン・フィール――さしずめ、未来を感じる――といった所か、あながち間違っては居ない。とファイルは妙に感服した。
 そして、ファイルは大きく深呼吸をすると、そのベルトに魔力を込め始める、ファイルの頭にあらゆる情報が流れて来る。確かに、その感覚は地上界に来て衰える前のファイルの能力そのものだった。
 だが――。
 「――方法はない、か」
 フォーチュン・フィールの力を持ってしても、チョキーを蘇生する方法はなかった。当然だ。
 「どうすれば……どうすればいい」
 ファイルは両手で頭を抑え付ける様にして苦悩する、もはや自分が何を考えているかなど、ファイルにはどうでもよくなっていた。
 ただ、今はチョキーを蘇生させ、それからカリオを起こす、そうでなければ――そうでなければ。
 ――奴に言った目的など、いつまで経っても達成できない。私に目的の有り方を教えた、あの男にも合わせる顔がない!
 ファイルは頭を抑え付けた、だが何も思い浮かばない。ただただチョキーを生き返らせられなかった時の事ばかりが頭に浮かぶ。
 チョキーが死んでしまったら――カリオの奴は、間違いなく死ぬだろう。
 アリアンのブラックスミスとは、新年会パーティ以来会っていない、息災で居るだろうか。
 私が街に訪れるのを望む多くの客も悲しむだろう、ブロームの依頼だって放置したままだ。
 何よりも、私の商人としての誇りが、こんな死に方は許さない。
 あああああぁぁぁ…………どうすれば良いのだ、これではあのバルコニーの男に申し訳が立たない。
 ファイルは一人で苦悩し続けた、チョキーの屍は次第に腐っていった。

142殺人技術:2007/07/10(火) 00:50:40 ID:E9458iSQ0
眠い中どばーーっと書いたので誤字脱字目立つかもしれません……ごめんなさい。

143◇68hJrjtY:2007/07/10(火) 01:58:37 ID:1fq1hqCQ0
>殺人技術さん
殺人技術さんことチョキー・ファイル、お待ちしていました。自分との対決というとってもいいところで終わっていたので(悲)
激戦を経てF・Fも遂にユニークアイテム化ですか。「未来を感じる」。唸ってしまうほど納得してしまいました。
ファイルがチョキーを心の底から蘇生させたいという気持ち、最初の頃のファイルからは想像もつきません。
今回もいいところで終わってしまいましたね( ´・ω・) これは益々以って次回を期待してます。

でも、チョキーを蘇生させる方法が見つかったらこの話も終わりに近づいてしまう気がして・゚・(つД`)・゚・

144 ◆21RFz91GTE:2007/07/10(火) 02:16:31 ID:JuSib7WA0
>>135
ほとんどのスレに登場してる俺なんて…orz

送れましたが皆さん何時もコメントありがとう御座います。
皆さんのコメントを読むのが楽しみで日々生きてます、余裕があるときは俺もコメントしますのでその時は
お手柔らかにお願いします


あ、ご期待に沿えずまだ生きてますヾ(´・ω・`)ノ

145ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/12(木) 10:47:39 ID:OhTl4zsk0
Episode06-2 Break da Enemy Pt.02〜地獄の宴への招待状〜

夜もそろそろ明けようとしている・・・時刻は4:00AM。
トラン森ではこの時間になると小鳥たちがさえずるのだが、この日だけは違う。魔獣の狂気の雄叫びが森中に響き渡っていた・・・!
「うぉえッ、殺す殺す殺す殺す殺す殺すブッ殺すぅうぅぅうぅぅううあぁああぁああぁああ!!!!ギャハ〜ハハハハハハハはぁ〜!!!
 おえぇっ、うぉえぇえっ!うはは〜ははははははぎゃはははははははは〜!!!生首!血ィ!生首ィイィィイィィィィイイイ!!」
そしてまたも何か巨大なものがズズー・・・ンと轟音を轟かせながら倒れていく音が聞こえてきた・・・!
このあまりにも異常過ぎるイカレた来訪者の接近に、ミリアやフィナーア、エディ、彼女らのペット、
そしてサーファイユとクレイグらエルフの兄弟も不意におぞましさを覚える・・・!!
「・・・兄さん、この音・・まさか・・・!?」「あぁ・・・あの野郎っ、闇雲に森の木を斬り倒してやがる!!」
クレイグが唇を噛み、拳をわなわなと震わせていた。額には青筋を浮かべ、瞳孔は完全に開いている・・・!どうやらキレてしまったらしい・・・。
ミリアのペット、ファミィもまた静かに怒りを燃やしていた。しかし身体は強張らず、リラックスした状態を保ったままだ。
同じくフィナーアのペット、原始人のシンバも、ファミィと同じ状態に入っていた。片手で棍棒を担ぎ、肩を軽くトントンと叩いている。
エディ、ミリアも身構えた!ミリアはどこで習ったのかはわからないが、カンフーの類と思われる拳法の構えを取った・・・!

だが一人だけ空気の読めてないバカが一人いた・・・フィナーアだ。
片手で自分の乳房を揉みながら、もう一方では股間に手を当て何やら際どいことをしている・・・。
しかも「・・・んっ・・・あんっ」と小声ながらも喘ぎ声を漏らす・・・この女、事態は緊迫しているというのに
一人勝手にマスタベーションをしていた。これにはさすがにツッコミが来ないはずも無く、その火蓋をサーファイユが切る。
「ちょっ、フィナーアさんっ!あんたこんな時にナニやってるんですか!!?空気読んでくださいよっ、頼むから〜!!」
「だってぇ〜・・・ぁんっ、アタシ緊張しちゃうと××××したくなっちゃうからぁ・・・堪忍してぇ〜」
顔を紅潮させ、目元にかすかな涙を浮かべながら、少し悦楽気味の微笑を浮かべてフィナーアが言うが・・・「できるかこのバカ女!!」
「いったァ〜い!!」あまりにもバカバカしく下らない理由に、思わずシンバが手にした棍棒で彼女の頭を殴打し、大ぶりなコブを作った。

しかしそうしている間にも狂気の足音は、もう一行の近くにまで近づいていた・・・!
「ぐるぁああぁあぁぁあああぁあ!!」と咆哮が聞こえた途端、一本の大木がミリアたちを目掛けて倒れてきた!!

146ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/12(木) 12:42:34 ID:OhTl4zsk0
巨大な大木が影を落とし、ミリアたちを押し潰さんと倒れてきた・・・!!
しかしこのまま立ち止まるような柔な連中ではないのがミリアたちだ、ミリアとファミィが前に出た!
「ファミィ、いっくよー!」「うー!やるさ〜!」構えを維持し、まずはミリアが倒れてくる木の下へと潜り込む・・・!
腰を低く落とし上半身を前屈させ、両腕は鳥の如く開かせ、脚は片脚を伸ばし、もう片足は曲げて大きく開いたまま・・・
その構えはまるで劈掛拳だ。そしてそこから頭上の大木目掛け、勢い良く鋭い蹴りを突き上げた!!
「うゅ〜・・・やぁ―――っ!!」掛け声とともに大木は『ズドン』と大きな音と共に空中へと蹴り上げられた・・・!
続けてファミィが跳び上がり、手にした槍を持つその手に力を籠める・・・そして!
驚異的な速度で槍を何発も、1秒に7発以上は突き出ているように見えるその連撃で、大木をいとも簡単に刻み込んでしまった。
細切れにされた木のブロックがボトボトと、ミリアたちの周りに綺麗な円を描いて落ちていった。

同時に、ミリアたちの目の前に一体のウェアゴートが立っていた・・・。
首には3連の髑髏を首にぶら下げ、目は血走り瞳孔は見開き状態、「ハァア〜」と息を漏らしよだれを垂らす・・・
そのおぞまし過ぎて敵わない風貌に、誰もが身構えるほどの狂気が彼の周りに漂っている・・・
「・・・くく、く―っくくくくく。おいお〜い、ファッキンエルフどもォ・・・おめーらの言動行動はリアルタイムで
 俺様に筒抜けだっていうの、忘れてちゃいねーよなァ?なァ〜、どうなんだよ答えろよ口開けよギャハハハハハ・・・っうぉえぇ!」
いきなり笑い出したかと思えばいきなり嘔吐・・・このウェアゴート、どうやらかなり頭のネジが外れているようだ。
「・・・知ってるぜ?だけどもうそんなの関係無い、オレらエルフはもうあんたみたいなイカレポンチには従わないんでさァ・・・!」
「ボクもだ、『首狩りのザッカル』。もう、お前みたいな殺人狂に従うなんざごめんだね。」クレイグ、サーファイユがザッカルに言葉を放った。
するとザッカルに少しばかりの変化があった。呆然と立ち尽くしたかと思うと、バカにするように耳に手を当て、「はぁ〜?」と聞き返した。
そこへフィナーアが付け足して言い放った。先程のおちゃらけた雰囲気は無く、クールな大人の女といった空気を漂わす・・・。
「ものわかりの悪いおバカさんね・・・あんたみたいな変態でキ○ガイで鎌持ってなきゃ勃たないようなバカには従わないんですって。」
しばしの沈黙が両者の間に流れる・・・・そしていきなり、ザッカルはさっきと同様に狂ったように声を裏返らせて笑い出した。
「ひゃは、ぎゃはは〜ははははははは!!あはははははは・・うぉぉぇええぇっ!おぅえぇぇっ!!・・・・・・・・んだとコラ!?」
笑いと嘔吐が収まると同時に、瞬時にまともな口調に戻り、怒りを露にするザッカル。ようやく理解したと同時にスイッチが入る。

147◇68hJrjtY:2007/07/12(木) 13:07:08 ID:8bW6XRD20
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ザッカルの狂人(人じゃないけど)っぷりの表現が凄く生々しいです(怖)
力と狂気を手にした者はどんな者であれ恐ろしい事には変わりないですね。
またまたのフィナ姉のムードメイキングっぷりというかボケっぷりが会心の一撃的に効きますね(笑)
そしてミリア、武道に転職を是非勧めたい…(*´д`*)
次回はザッカルとの決戦(になるのでしょうか)、お待ちしています。

148ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/12(木) 13:36:51 ID:OhTl4zsk0
クレイグ、サーファイユらエルフ兄弟の反発とフィナーアの言葉にザッカルはキレた。
不気味な笑みを浮かべ、全身をプルプルと震わせ、奇怪なポーズと共に巨大な鎌をゆらりと振り上げる。
「・・・あはは〜、俺様もう我慢できねェや、コイツらの生首・・・ほほほ欲しいぜぇ〜えへひゃへはははははあぁぁあぁ!!」
またも狂った笑い声を発し、そのまま鎌を勢い良く振り下ろす・・・・!!が、その手前、一瞬の出来事だった。
「はいやーっ!」掛け声と共に、既にザッカルの懐に潜り込んでいたミリアが彼の鎌をスパァン!と蹴り上げた!
重さ10kg以上はあろう大鎌は、まるで1kgにも満たない物質の如く2〜3メートル上ほど空中に飛ばされ、地面に落下した・・・。
「うぅ〜う、こいつァ・・・珍しい奴もいたもんだ。功夫が使えるビーストテイマーか、しかも並の武道家に比べりゃ半端なく強ぇ・・・!」
ミリアの体術やその身体能力に、ザッカルは黄色い唸り声をあげる。しかしミリアの表情は怒りの相をそのままキープしていた。
「あなたがエルフ君をいじめてる悪者なのね!?ミリア許さないのよ!!」片足を上げ、構えを取り続けるミリアが言う。
「ん〜可愛らしいじゃねェか、お嬢ちゃ〜ん・・・生意気な口きいてんじゃねェぞガキがぁあぁあ!!犯すぞゴルァあぁああぁあぁ!!」
前触れもなくキレるザッカルに、ミリアは「やぅ〜!」と唸るが、恐怖のあまり思わず目元に涙の粒を浮かべてしまう。
と、そこへフィナーアが割って入り、ザッカルに向かって口を開いた。ミリアの泣き顔に反応したのか、眉間にしわを寄せている。
「・・・よくも可愛い妹を泣かせたわねっ!アタシを怒らせてみなさい・・・5秒で締め落とすわよ!?」
「はっ、あんたが猛獣女王のフィナーアか・・・オレの無能な部下どもをヤっちゃってくれたのがオメーか?くーっくくくく・・・
 しかしイイ女じゃねェか、体つきは良い・・・しかもさらしにふんどし一丁たァ、そそるね〜・・・このクソ淫女が!」
ザッカルの一言でフィナーアが完全にブチ切れてしまった!背後には地獄の業火と思わせんばかりの炎が燃え、美しいシルバーブロンドの
ウェーブがかったロングヘアがざわざわと波打つ・・・!!そして束の間、フィナーアがザッカルに掴み掛かった!
「もう許さないんだからっ!!泣いて土下座するまで投げて投げて投げまくるんだからァっ!!!」
相撲での組み合いのように、自身は股を大きく開いた状態でザッカルの腰の部分を掴み、彼女は力んでいる・・・だがザッカルの身体は全く
微動だにしない。(・・・んんっ、何なの?アタシのパワーを以てしても、全然っ、動かない!?)彼女の素肌に汗が流れる・・・。

「うぅ〜、いい尻してんじゃねェか姉ちゃん!?・・・けど、もう相撲ごっこも飽きたしよォ、終わりにするかよ!?」
首を伸ばしてフィナーアのお尻を覗き込むと、溜め息をついた後・・・フィナーアの喉仏を掴み、そのまま片手のみで彼女を吊るし上げた!
「かはっ・・・あぁっ!」あまりにも強すぎる握力に、フィナーアの呼吸が危うくなる。「こひゅっ、こひゅっ」と、枯れるような息遣いが
微かに聞こえてくる・・・。一方のザッカルは、視線を彼女の股間へと向けて、何かヤバいことでもしそうな笑みを浮かべた。
「よォ姉ちゃん、俺様の指テクはそこらよりは結構スゴいぜ!?何なら悦楽という悦楽に浸って、イカセてやろうかぁ〜?」
舌を出し、「ジュルリ」と自身の口周りを舐め回す・・・!そして小刻みに指を動かし、フィナーアの陰部へと指を近づける。

「やぁ・・いやぁ・・・だめ・・・やめてぇっ・・・」顔を紅潮させながら、普段のエロを楽しむような微笑みもなく、羞恥に赤面する彼女。
「い〜や〜だ〜。いいねぇ〜その恥らう姿・・・もっと泣けよ、恥ずかしがれよォオオォォオォォ!!ぎゃははは〜はははははは!!」
狂い笑いと共に、指がついに彼女の陰部へと到達しようとしていた・・・・その時だった!

突如落雷がザッカルを襲い、思わず手を離したザッカルからフィナーアは開放された!まだダメージがあるのか「かはっ、げほっ!」と
咳込んでいるようだ。ミリアとエディは彼女の元へと駆け寄り、すぐに介抱するのだった。
すると、茂みの中から一人のウィザードと剣士、1匹のリプリートマーキが姿を現した!ミリアの仲間であるバーソロミューとトレスヴァント
そしてフィナーアのペットであるセルジオだった。「皆さんっ!大丈夫ですか!?」バーソロミューが声高にミリアたちに目をやった。

149ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/12(木) 13:48:48 ID:OhTl4zsk0
突如ザッカルを襲った落雷、それはミリアの仲間、魔術師はバーソロミューの魔法だった!
強烈な一撃を喰らい、ザッカルは地面に伏していたがすぐに起き上がり、周りを見渡した。
「ちぃっ・・・まだこんなに仲間がいたとはな!今ここで闘るとなると分が悪りィな・・・この続きはいずれまたどこかで闘ろうぜ?」
「なっ・・・待ちなさい!」バーソロミューが制止する間もなく、ザッカルは鎌で空間を切り裂き、亜空間へと姿を消してしまった・・・
すぐさまバーソロミューたちはミリア、フィナーアたちに駆け寄り、何があったのかを問い詰めた。するとクレイグが割って入り、口を開いた。
「申し訳ないけど、事態はあまりにも複雑なんだ。ここはどうか、おれたちの村に来て話を聞いて欲しい!」真面目な面持ちでクレイグが嘆願した。


To Be Continued...


はい、シリアス過ぎるというか・・・過激な描写、やっちゃいました;;;
あまりにノリノリでやるうちにアブないシーンもどんどん思い浮かんじゃって・・・
せめてここまでブレーキ掛けれたのが幸運のように思えます。

次回はエルフたちの隠れ里でのお話、ブルンネンシュティグギルドの議会とも絡むかもしれません。
ザッカルたちの裏ギルドとの対決はしばらく後になります〜
ミリアたちパーティ、実はひとつのギルドなのでそのギルド名も出てきますよ。お楽しみに〜

150ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/12(木) 13:55:43 ID:OhTl4zsk0
>68h〜さん
いつも感想ありがとうございます!おかげで創作意欲も沸いてきます。
以前ファミィの口調についての質問があったんですが、彼の喋り方は沖縄弁を参考にしてますです。
でも自分青森出身なので・・・いずれ津軽弁しゃべるキャラが出てもおかしくないと思いまs(ry

151◇68hJrjtY:2007/07/12(木) 14:44:09 ID:8bW6XRD20
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
トレスヴァントたちが参戦かと思いきや…ザッカルとの戦いは後のお預けという感じで、楽しみにしています。
きわどいところで邪魔…ゴホゴホ、ストッパーがかかったようですね(笑) でも、エログロ小説用スレが無いので仕方ないですよね。
ところでミリアたちのギルドというのも楽しみです。ギルドって個人的に家族というイメージがあるんですが、今のミリアたちが正にそうですからね(笑)
議会まで登場するとは、またまた話が広がる様子。お待ちしてます。

ファミィは沖縄弁でしたか〜。私も宮城が田舎なもので、そっちの方言なら少しは知っていましたが沖縄弁は知らなかった(汗)
津軽弁キャラも期待してますよ!方言って色々用途があるもんですね(ノ∀`*)

152プチ:2007/07/12(木) 19:40:08 ID:ZVzQWRAQ0
『第三の拳(こぶし)』


いかにこの拳が速く鋭いとしても、届かなければ意味がない。

エルフたちが射掛けてくる矢から倒れた召喚士を守りつつ、武道家は自分の不甲斐なさを呪っていた。

修練が足りないという問題ではない。離れた相手に応じる型がないのだ。
跳躍し、その落差と回転によって威力を増す蹴り技はある。
しかし縮められる距離はほんのひとまたぎでしかない。
矢が届く距離を跳んだのでは、蹴りに威力が乗らないどころか、まともな打撃になるかどうかも怪しい。
それではだめなのだ。
自分が近づいたとたん、血走った目のエルフたちが弱っている召喚士にとどめの矢を放たない保証はどこにもない。

何十本と射掛けられてくる矢を、素手で掴んでは投げ捨てる。
こちらの腕は二本、向こうは数匹。
しだいに掴みきれない矢が身体をかすっていく。

「逃げて……」

背中から弱々しい声が聞こえてくる。
反射的に矢を避けようとする身体を、無理矢理押しとどめた。
後ろには、自分が守らなければならない少女がいる。

矢を掴む手にも、血がにじんできた。
気を抜けば必殺となる矢。掴むことを諦め、弾いていく。

「耐えてみせるさ」

なにがあっても守ると心に決めた。
騎士のように誓うことはできなかったが、この決意だけは曲げない。

矢が太ももを貫く。苦痛が走った。
気が遠くなるのをこらえるために、自分自身に怒号を飛ばす。

「負けない!」

そこで気づいた。
距離の離れた相手に応じる技が、ひとつだけあることを。
怒号。
それは練った気をぶつけることで、相手の身体に流れる気を正常にする技。
練気は間接的に相手に届く。
そう、離れた相手に届くのだ。

気合を入れて、全身の気を左拳に集めていく。
右手で矢の雨をさばいていくが、さばききれなかった矢が肩とわき腹にも突き刺さる。
しかしここで気を乱すわけにはいかない。
守るために。生き延びるために。

左拳を中心に、漏れ出した練気が風となって渦を巻く。
怒号のときとは比べ物にならない、質量を持った練気の塊。
真正面にいたエルフを見据えると、低く構えて投げるように拳を突き出した。

「そんな位置から当たるわけがっ……!」

そのエルフはしゃべり終えることなく、吹き飛ばされた。
残ったエルフたちに動揺が走る。

「まずは一人」

他のエルフたちには、烈しい風によって吹き飛ばされたように見えただろう。
しかしこれはただの風ではない。
生まれ持った二つの拳で生み出した、第三の拳。
武の道の果てにたどり着いた、極限極地の最終奥義!

「烈風撃、ここに開眼!」



『第三の拳〜烈風撃〜』

153◇68hJrjtY:2007/07/12(木) 21:42:10 ID:jAYA9Ve20
>プチさん
個人的に大好物な武道&カップリングに舌鼓打たせてもらいました(*´д`*)
いやー烈風撃良いですよね、こんなかっこよかったら武道スレがテンプレに載せてくれますよ!(謎)
そして召喚士ことサマナを守るという力強さ…もう惚れまくり。(* ∩∩)
剣士も防衛という意味ではとても存在感はあるのですが、武道はまた違うイメージがあります。
鎧も盾も無いけれど、ほとんど精神力と決意だけで耐えてるって感じで。あーもう夢で見てきます(ノ∀`*)

154名無しさん:2007/07/12(木) 22:06:56 ID:Fr4FTmbo0
プチさんの小説、毎回読ませていただいています。
REDSTONEの世界観や設定が上手く活かされていて好きです。

155携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:08:26 ID:kZvX8h4c0
『孤高の軌跡』

俺たちの遥か上空。
月光を跳ね返す、闇より深い闇色の鎧に身を包み、それと対比するように燃える朱の長髪。
正体不明の男が、宙に浮かび俺たちを見下ろしていた。

「誰だ貴様」
ヘルベルトが男を睨み付ける。
しかし男はその視線を涼しい表情で受け流し、逆に俺たちを興味深そうに見つめた。
「同族で殺し合うとは。やはり人間は愚かで愉快だな」
腕を組み、男はさも愉快そうに笑う。
「貴方……何者?」
ニーナが怪訝そうに男を見つめる。
その様子からして、ニーナたちでも知らないのだろう。
問われた男は手を伸ばし、ニーナの胸に指を差した。
「私物を回収しに来ただけだ。1つはある。残りの4つを我に返せ」
そう、意味が判らないことを言った。
「私物? 何のことかしら」
「人間の癖にとぼけるな。我は貴様らが盗んだ赤の秘宝を回収しに来ただけだ」
その言葉で、ニーナたちの表情が固くなる。
そして瞬時に戦闘体勢を作る。
「ほう。人間ごときが我の言葉を聞かないと?」
さも不思議そうに言った後、男は優雅に地面に着地する。
「手間だが、仕方がない」
そう言うと、男は唐突に右腕を振り上げた。
その動作に反応し、ヘルベルトが疾走、ニーナが弓に矢をつがえる。
しかし2人がどんなに速かろうと、男が腕を振り下ろす方が速かった。
男が手を振り下ろすと、突如男の周りに、巨大な赤い魔法陣が浮かび上がる。
続いてそこから大量の影が飛び出した。
それに気付いたヘルベルトは疾走を急停止。影を迎撃する。
続くニーナが矢を大量射出。正確無比な矢は外れることなく影に命中する。
それぞれの攻撃を受けた影は乾いた音を立てて崩れた。
「……これは」
何か判ったのか、ヘルベルトが疑念の声を漏らす。
続く言葉はニーナが引き継いだ。
「アンデット……!」
その言葉が何を意味するのか、2人の表情が焦燥に変わった。
「貴様、悪魔か!」
ヘルベルトが叫ぶ。
2人の反応に満足したのか、男は笑みを浮かべた。
「やっと気付いたか。ふむ、人間は皆鈍いようだな」
「何故その悪魔がここに……どうやって来た!」
ニーナが叫ぶ。その言葉には以前より増して敵意が込められている。
「どうもこうも、貴様らが作った空間の裂目から追ってきただけだ。なに、我等なら造作もないことだ」
そして男は得意げに笑う。
「追ってきたと言うなら、これ以上話し合うことはないわ」
ニーナが再び弓を構える。
ヘルベルトも双剣を構え、敵意を示した。
「ふん、生意気な人間が……!」
男が右腕を上げ、更に大量の影を産む。
よく見ると、その影たちはそれぞれが形の違う骸骨だった。
命令を下すように男の腕が振り下ろされる。
その瞬間、骸骨たちは一斉に突撃を開始した。
「下がれ! リサ、小僧!」
言いながらヘルベルトは骸骨たちを切り崩していく。
ニーナの支援射撃も加わり、骸骨たちは凄い勢いで倒されていく。
「ほう。生き残った2人というだけはあるな。これならあの小娘よりは楽しめる」
小娘……?
俺はその言葉に引っ掛かる。
ニーナたちも互いに顔を見合わしていたことで俺は確信した。
エミリーを殺したのは、ヘルベルトなどではなく、
「てめぇ、エミリーを……!」
怒りが沸騰し、走りだそうとしたところで、近寄ってきたリサという少女に腕を掴まれた。
「死にたいの、あんた!」
「……すまん」
そんな様子を見て、男の表情が冷たくなる。
「誰だ貴様」
今気付いたというように、男が初めて俺に目を向けた。
「気に入らん眼だな」
そう言った瞬間、骸骨の内の1体が矢を放った。
それは正確に俺に向かい――――ニーナの矢によって撃ち落とされた。
「下がってなさい!」
叱咤を食らい、俺と少女は遠くに避難する。
対比するようにニーナたちは男へ向かって行った。

156携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:09:53 ID:kZvX8h4c0
骸骨たちは無限のように沸き上がる。
しかも、骸骨たちは剣などの物理攻撃だと再生するのだった。
そのせいでヘルベルトは近付けず、ニーナは攻撃に転じることができなかった。
「く……きりがない。薙ぎ払うぞ!」
ヘルベルトの双つの剣が輝き、魔力を帯る。
呼応して、ニーナも強力な1撃を弓に籠める。
「「はぁっ――――!」」
ヘルベルトの光の閃光と火炎が右翼左翼へ伸び、その中心をニーナの矢が走る。
直撃を受けた骸骨たちは、再生不能なまでに粉砕された。
「む……」
悪魔の顔が歪む。
無理もない。武器であると共に盾でもあった骸骨たちが一瞬で消えたのだ。
好機と取り、ヘルベルトが疾走する。
幸い相手は素手。ヘルベルトの剣戟を躱せる筈がない。
剣が喉を貫く寸前、ヘルベルトの体が宙に浮いた。
ヘルベルトは初め意味が判らなかった。しかし、その理由はすぐに判明した。
下から突き上げられていたのだ。
突き上げていた物は悪魔が召喚した、下界に住むというワームであった。
下の方で見える悪魔の愉快そうな表情が勘に触り、思わず唇を噛む。
「ぬぁああっ!」
力任せに剣を振り、放たれた閃光でワームが両断された。
ヘルベルトは無音で着地する。
「面白いぞ人間! では特別に面白い物を見せてやろう」
言うと、悪魔は先ほどと同じように右腕を掲げる。
すると、悪魔の周りの空間が歪んだ。
そこから鋭利な腕が現れ、続いて全貌を晒す。
それらは、あまりに異形な生物だった。
「我を守護する三鬼だ。存分に楽しめ」
悪魔を取り巻く3つの巨大な影にニーナたちは戦慄する。
その正体は、フランデル大陸で最強と謳われる悪魔種に次いで、
最も近しい存在であるアンデット種の頂点に立つ者たちだった。
「ネクロマンサーにレイス、ワイトまで……。なるほど、さすが最強と言われる悪魔種ね、こんなものを飼ってるなんて。
どうする? 勝算は絶望的だけど」
ニーナがヘルベルトに冗談混じりに問掛ける。
そうでもしなければ戦う前に心が折れてしまうからだ。
ヘルベルトは1度ニーナに顔を向けると、予想にもしない言葉を発した。
「そうだな……貴様はリサたちを連れて先に引け」
「え……?」
ニーナの目が信じられないとばかりに細まる。
「馬鹿言わないで。貴方1人で何が……」
「何も倒せるとは言っていない。ここは引くべきだ。
懸かっているのは我等の命だけではないのだぞ」
そう言い、ヘルベルトは僅かに梨沙を遠見した。
それからニーナに目線を戻す。その瞳には固い意思が籠められていた。
ニーナはしばらく反抗していたが、先に崩れ、やれやれといった様子で手を振った後背を向ける。
「……判ったわ。私の足なら2分で安全圏まで行ける。貴方はそれまで耐えるだけでいい。
だから、そしたらすぐに戻って。あいつは2人で共闘しないと倒せないみたいだから。決着はその後よ!」
そう言い残し、ニーナは翔太たちの元へ駆けて行く。
悪魔が命令を下すのはそれと同時だった。
三鬼が放った炎が、3本の帯となって殺到する!
炎が全てを焼き尽そうとする寸前、光の壁がその進行を遮断した。
「なに……?」
悪魔が声を漏らす。
防いだ物はヘルベルトが解放したディバインフォートレスの力だった。
だがその壁も、鬼の炎で侵食されつつあった。

ヘルベルトが炎を食い止めている内に、ニーナは翔太たちの元へ辿り着いた。
ニーナは有無を言わずに2人の腕を掴む。
「引くわよ!」
そう言い、走り出そうとするが、1人がニーナの腕を振りほどく。
それは梨沙だった。
「あたしは残るわ。ヘルがまだ戦ってる」
「駄目よ。これは決定したことなの、あの男がね」
そう言われ、梨沙はうなだれるように俯いた。
そしてヘルベルトの方を見つめる。
見えるのは鋼鉄の背中。それは、初めてヘルベルトが梨沙を守った時の物と同じ物だった。
「すまんなリサ。暫し先へ行ってくれ」
彼女の視線に気付いたのか、ヘルベルトが背中越しに告げる。
それを聞き遂げた後、ニーナは2人を抱えて走り出す。
しかし、それを別の声が止めた。
「ほう。逃げるか人間」
それは、楽しむような、哀れるような悪魔の声だった。
悪魔は止めるようとする気配も見せず、逆に楽しむように眺めている。
「1つ言い残したことがあった。小僧、貴様に会いたがっている人間が1人いるぞ。我の元でな」
悪魔の言葉の後、ニーナたちはこの公園を去った。

157携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:10:39 ID:kZvX8h4c0
3人が去ったのを確認した後、ヘルベルトは大きく後退した。
同時に、光の壁が音を立てて崩れる。
悪魔は追撃しようとする三鬼を止め、つまらなそうに呟く。
「引く為に足止め役を引き受けるとはな。貴様、本当に我から逃げ切れると思っているのか?」
「さあな」
「まあ良い。だが、貴様は足止めをした後自らも引こうとでも思っているのだろうが、その仮定は有り得ん。
あの人間共は後で殺すし、貴様も足止めにすらならん。例え、貴様が逃げ帰れたところでその魔力を辿るだけだ」
そう言い、悪魔は得意気に腕を組む。
ヘルベルトは悩むように俯く。そして、決心したように顔を持ち上げた。
「困ったな。――――仕方がない。ならば、貴様を倒してリサの元へ戻るしかあるまい」
「なん、だと……?」
その言葉で、悪魔の表情がみるみる歪んでいく。
「聞こえなかったのか? 貴様を倒して帰ると言ったのだ」
「減らず口を……どうやら死なねば判らんようだな」
悪魔が腕を振り、三鬼に命令を下す。
「言っていろ。その口、今に効けなくしてやる!」
同時にヘルベルトも疾走を開始する。
その前に3つの巨影が立ち防いだ。
ヘルベルトは気にせずに走り続ける。
その内の1体が鋭利な爪でヘルベルトに襲いかかる。
ヘルベルトは屈んで避けるが、躱し切れず、僅かに背を切り裂かれる。
苦鳴を漏らしながらもヘルベルトは止まることなく走行を続ける。
次に無数の火球が殺到する。
それをヘルベルトは業火で逆に焼き払う。続く爪攻撃を躱し、手首を撥ねる。
さらに剣を地面に突き立て、回転運動で鬼を蹴り飛ばした。
再び走ろうとするヘルベルトを炎の帯が襲う。
ヘルベルトは反応に遅れるが、飛び出してきた盾で難を逃れる。
ヘルベルトは盾を壁にして走り出した。
鬼の元まで辿り着くと、そのまま盾をぶつけ、後退する鬼に魔剣を投擲し串刺しにする。
「ぬ……」
身の危険を悟った悪魔は、地に掌を向けてワームを召喚する。
しかしそれは、一瞬で詰めて来たヘルベルトの聖剣の一閃で両断された。
「な……」
その言葉の続きは紡がれなかった。
投擲された聖剣が、悪魔の喉を貫いていたのだ。
ヘルベルトは柄を握ると、そのまま悪魔を地面に縫い付けた。
「詰めだ!」
聖剣から光が溢れる。その瞬間、爆発が起き、悪魔の体が飛び散った。


「はぁ、はぁ」
息を切らしながら、ヘルベルトは地に刺さった聖剣を抜き取った。
そしてふいに思う。
あの少女は無事逃げ切れただろうか?
そんな考えが、ヘルベルトの頭を巡る。
そろそろニーナが言っていた2分だろう。
約束通り自分も戻ろうと身を翻した時――――ヘルベルトの身が硬直した。

「どうした。珍しく焦っているようだが?」

目の前に、先ほど倒したばかりの悪魔が立っていた。
「貴様……そうか、あれは幻影か!」
「その通りだ」
いつもの余裕の表情のまま、悪魔は腕を振り上げた。
すると三鬼が起き上がり、悪魔の周りを取り巻いた。
「詰めだ。1本の剣しか持たぬ貴様では、もはや防ぐことすらできん。諦めろ」
1体の鬼がゆらりと浮かび、両の掌に炎が籠められる。
「だが誇るがいい。幻影とは言え、我に刃を届かせたのだ。
そして我――――このアイザックに倒されるのだからな」
遂にその手が下ろされる。
命令を受けた鬼は、ヘルベルトに向けて炎を放った。
炎はヘルベルトまで伸び、その全身を包み込む。
そして1度激しく燃え猛った後、炎は吸い込まれるように掻き消えた。
「な、に……?」
アイザックに疑念の表情が浮かぶ。
そしてその予感は的中した。

158携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:11:14 ID:kZvX8h4c0
見惚れるような全貌。
長い刀身。その刀身に刻まれた無数のルーン文字。
美しい長剣を握り、ヘルベルトはその場に佇んでいた。
「貴様……! 何だそれはっ!」
「魔力殺しの剣、サウバモルダーだ。俺の剣は2本だけではないぞ」
舌打ちをし、アイザックは再び三鬼に命令を下そうとする。
「無駄だ。この剣は“魔力食い”だぞ。その程度の火炎は無効化できる。
そして、この場は滑降の餌場だよ」
ヘルベルトがサウバモルダーを掲げる。
すると、大気ごと吸収するかのように、刀身が魔力で満ちていく。
「ここならリサの生気を吸い取ることもなく、周りに被害を負わせる心配もない。
――――ようやく、全力で戦えるというものだ」
ヘルベルトが剣を勢いよく振り上げる。
するとヘルベルトを中心に大気の温度が急低下していく。
「調子に……」
アイザックが細い棒状の物を取り出した。
それは以前エミリーのバフォメットを1撃で倒した武器だ。
先端から炎が噴き出し、唸る。
だが、僅かにヘルベルトが早かった。
ヘルベルトが放った物は、氷龍の形状をした魔力そのもの。
気付く時には遅く、三鬼は一瞬の内に飲み込まれた。
続いて氷龍はアイザックを襲う。
「……乗るなよ人間がぁっ!!」
アイザックが得物を振り降ろす。
先端から生まれた巨大過ぎる炎が氷龍に向かって直進した。
「「あぁぁああああああああっ!!」」

159携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:11:45 ID:kZvX8h4c0
俺たちは、ニーナに連れられて俺の家に着いた。
ニーナがようやく腕から俺と少女を解放してくれる。
なんというか、抱きかかえられたまま家々を飛び越えて来たので、腰が痛い。
痛みを堪えたまま、家の鍵を開け2人を招き入れた。

俺の部屋に入ると、皆思い思いの場所に腰をかけた。
共通していることは、全員が落ち着きがないことだ。
梨沙という少女については、道中ずっと泣き出す寸前の顔で、それでも何かを堪えていた。
俺は話し掛けようと思ったが、何を言っていいのか全く判らず、結局何も言葉をかけられなかった。
ニーナも同じで、何か言おうとしてはやめるを繰り返している。
「ヘル……大丈夫よね……?」
誰に言うのでもなく、少女がポツリと零した。
その言葉は懇願に近い。
俺でも判る。あの傷で戦うのは無謀だ。しかもその敵は俺から見ても卑怯臭かった。
それに2分という時間も長い。ヘルベルトは、己の身より少女の安全を願ったのだ。
「大丈夫よ。あの男は私が認めた数少ない騎士なんだから」
ニーナが少女を慰めるように言う。
「そう、よね……」
少女は僅かに顔を持ち上げ、どこか遠くを見つめた。


「これは誤算だったな……」
辺り一面は片や氷結地獄、片や灼熱地獄であった。
その中心に立ち、アイザックが呟いた。
「人間程度にここまで手間をかかされる上、三鬼まで失うとは。
あれは暇潰しで殺した、この世界の人間の魂を食わせてやっていたのにな。責任は取ってもらうぞ」
アイザックが前方を睨む。
そこには、困憊しきったヘルベルトが居た。
その体は、既に薄く霞みがかっている。
「そんな体であのような物を撃つからだ。これでは放っていても勝手に死ぬが……我が許さん」
アイザックは掌を地に向けた。
すると、地下界に住むワームがその姿を現した。
ワームは鎌首をもたげるように起き上がると、ヘルベルトに喰らい付いた。
ヘルベルトはそのまま飲み込まれるかと思われたが、逆に剣をワームの喉に突き立てた。
ワームが奇怪を声を上げて苦しむ。
「まだ動けるだと?」
アイザックが呆気に取られるその一瞬、ヘルベルトが一気に距離を詰めてきた。
渾身の1振りをアイザックは後退して躱す。
それをヘルベルトは追って行く。その目は最早何も見てはいなかった。
「少しはじっとしていろ!」
アイザックが両の掌を地に向けると、幾条もの赤い光がヘルベルトを囲い、檻となって閉じ込めた。
「ぬ……」
ヘルベルトは叩き斬ろうとしたが、呆気なく弾かれた。
「無駄だ。それは地下界に存在する檻ぞ? 貴様などが逃れることなど有り得ん。
そしてこれは、入る物は受け入れ、出ようとするものは逃がさない」
アイザックが再び地に掌を向ける。
すると、今度は無数の黒い矛が地面を突き破り、宙に浮かんだ。
「地獄の矛だ。これに全身を貫かれ死ぬがいい!」
黒い矛が散らばり、様々な角度からヘルベルトに穂先を向ける。
ヘルベルトは、そんな様子を眺めながら、小さく笑い、
「最後に我々の世界にも小さな希望を見た。最早悔いは存在しない」
そう、ここにはいない人間に語りかけた。
アイザックが腕を振り降ろす。
矛は四方八方から殺到し、ヘルベルトの全身を串刺しにした。
それでもヘルベルトは倒れない。
「なに?」
「ああ、すまん。これでも騎士なのでな。決して倒れることだけはしないのだ。
倒れたら、何もかもを屈したことになるからな」
そう言い、ヘルベルトは静かに目を瞑る。
そして最後に何かを呟いた。
「すまんな、リサ……」
しかし、その言葉は誰の耳にも届かなかった。
ヘルベルトは、言葉と共にその姿を消失させた。


「え―――――――――?」
突然少女が声を零した。
「う、そ……」
そして突然狂ったように全身を擦り始める。
彼女の中の見えない何かが途切れたように。
そしてその弱くても大事な大事な何かを必死に探すように。
彼女はさっき俺たちに己は霊感があるからヘルベルトの存在を感じられると言ってくれた。
だから彼女は何か大事な物が消えてしまったことが嫌でも判るのだ。
その何かは、そう、
「あぁぁああああああああああああっ!!」

160携帯物書き屋:2007/07/13(金) 01:24:09 ID:kZvX8h4c0
こんばんわ。お久しぶりです。
というよりこのスレに来て新参の方が増えて自分のこと知っている人少ないだろうから、初めまして。
体は健康なのに、心が元気じゃない携帯です。

誰にも期待されてもいないだろうけど、終わらせるまで頑張ろうとなんとか200までに載せられた・・・・・・
というか忘却されてそうだ(汗
自分でも書いていてありきたりで無理な展開でした。許してください。
そしてなんだかラストスパートぽいです!

>プチさん
初めまして。小説読ませてもらいましたよ。
うーむ・・・たった1レスだけでこれだけ内容を詰め込めるとはすごいです。
次作も楽しみに待っていますね。
お互い頑張りましょう〜

161◇68hJrjtY:2007/07/13(金) 01:44:44 ID:jAYA9Ve20
>携帯物書き屋さん
寝れずにスレに張り付いてたら携帯さんの話がUPされてて有頂天です!
って、うわぁぁ…ヘルゥー!!orz
最後まで地面に膝を着けない、騎士的な倒れ方でしたね…立派だった(´;ω;`)
そして男版悪魔さんが新たに敵としてニーナの前に立ちはだかりましたね。
こうして職の性別が違うキャラも妄想するだけでも面白そうだなぁ。
さて、ラストスパートになってしまうのですか…最後の一文字まで読み切らせてもらいますよ!

162名無しさん:2007/07/13(金) 20:21:12 ID:z8nqaG9.0
亀ですが。
>>ESCADA a.k.a. DIWALI氏
エログロ用の別サイトです。小説スレ三冊目のテンプレにきちんと載っています。
もっとちゃんと探しなさい。
http://jbbs.livedoor.jp/game/27750/#top



べ、別に続きが気になったとかそういうのじゃ・・・(殴

163◇68hJrjtY:2007/07/13(金) 22:53:51 ID:8bW6XRD20
>>162
おぉ、エログロBBSあったんですね〜。
以前ちょこっとググってみて過去スレしか見つからなかったので私は無いと思ってましたorz
で、ちょっと覗いてみましたがこれは完璧にエロ話オンリーのBBSの様子。
個人的にはESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説はエロが主体ではなく物語要素が主だと思っているのですが…。
(ESCADA a.k.a. DIWALIさんのエロ要素はオマケというか、話を緊張させすぎないエッセンスのようなイメージが)

蚊帳の外の私が意見を言えた立場ではありませんが( ´・ω・)
ESCADA a.k.a. DIWALIさんの意向とかもあるでしょうし。

164プチ:2007/07/14(土) 03:12:23 ID:ZVzQWRAQ0
『嵐』


いい天気のうららかな午後、私は暇をもてあましていた。
崩れた王宮跡地はあまり人が来ないので、ぼーっとするには絶好の場所だ。
ファミリアたちも、すやすやと寝息をたてている。

「先輩〜、ファミちゃんたちがまたやられちゃいました〜」

後輩調教師の情けない声が、その静寂を破った。
火の召喚獣ケルビーの背には、ぐったりしたファミリアたちが乗せられている。

「コロ強すぎですよー。反則ですよあのキックは〜」
「あーコロッサスか。あれは強いな、うん」

巨人の怪物コロッサスは難敵だ。それゆえに、腕に覚えのある冒険者たちにとって、腕試しに恰好の相手となっていた。
しかし自分の実力を過信し、コロッサスの強さを甘く見て命を落とす冒険者も多い。
そういう意味で、生き残った後輩のファミリアたちは、運が良かったといえるかもしれない。
ただ、コロッサス討伐は少しばかり早かったのだろう。

ぐったりしている後輩のファミリアたちを見て、私は寝ていた自分のファミリアたちをそっと起こした。

「オハヨー、ダンチョー」
「ダンチョー、オハヨーダゾー」

ファミリアたちに、ケルビーの背から後輩のファミリアたちを下ろしてやるよう、命令する。

「オッケオッケー」
「イイカー、イーチ、ニーノ、サーン、デ、オロスンダゾー」
「オッケオッケー。イーチニーサーン」
「オイー。オマエガ、イウノカヨー。オレ、シタジキダゾー」

「先輩、どうしたらファミちゃんたちを強くできるんですか?」

後輩が横に座り、真剣なまなざしで見つめてくる。

「ツブサレテルンダゾー。チカラ、デナインダゾー」
「オッケオッケー。トウガラシ、モラッテキテヤルー。ダンチョー」
「ヤメロー。オレ、カライノ、キライダゾー」
「オッケオッケー。キャンディSP、ヒロッテキテヤルー。マッテロー」
「イクマエニ、タスケロヨー」

じたばたともがくファミリアから、後輩のファミリアをどかしてやる。
後輩のファミリアたちに応急処置はしてあるようだが、蹴られた傷が痛々しい。
最高級の回復薬を傷口にゆっくりとやさしく塗りこみ、残りを口にふくませた。
じきに回復するだろう。

「ダンチョー、タスカッタンダゾー。デモホントハ、ヘッチャラダッタンダゾー」
「オッケオッケー。ソコノケルビー、コイツノウエニ、スワレー」
「ヤメロー。オレ、マタ、シタジキダゾー」

「そうだなぁ……命令するときに、イメージしてる?」
「イメージ……ですか? ええっと、してませんです〜」
「そっか」

ここで説明するのは簡単だ。
でも実際に見てもらうほうが、後輩にとってわかりやすいだろう。

「じゃあ、明日二人でファミリアの敵討ちに行こう」
「二人だけで、ですか?」
「うん」

どうぜ、暇をもてあましていたところだ。
明日の予定もない。

「イジワル、スルナヨー。トウガラシ、ダンチョーニ、モラッテクルゾー?」
「オッケオッケー。オレ、カライノ、ダイスキー」
「チェー」

「炎の付与魔術とか、地脈の癒しを使う魔術師さんは必要ですよね!」
「いらないよ」
「え? じゃあ、蘇生の秘儀を使う司祭さんは……」
「いらないいらない」
「本当に、ふたりだけですか?」
「そう」
「大丈夫なのかな……」

不安そうな顔をする後輩に、自信をもって答えた。

「大丈夫。ファミリアはかわいいけど、強いんだよ?」

165プチ:2007/07/14(土) 03:13:05 ID:ZVzQWRAQ0


翌日、装備を整えて崩れた王宮跡地で後輩調教師と合流した。
親切な追放天使と交渉して、召集の秘儀を使ってもらう。

「オッケオッケー。ハイコウ、ツイター」
「ナツカシイゾー」

ほどなくコロッサスが棲む廃坑地下九階に到着した。
親切な追放天使とは別れて、廃坑の奥へ奥へと進んでいく。

「召集ってすごいですよねー」
「中継なしの失敗なしか。腕が良かったね」

「トリー、コンニャロメー」
「フワフワー、ナメンジャネーゾー」

途中、コロッサス以外の怪物にも出会ったが、ファミリアたちの敵ではなかった。

「このあたりで、いいかな」

ほかの冒険者たちがこない奥地。
ここなら、静かだ。集中しやすい。

「ダンチョー、アソコニ、コロイルゾー」
「オッケオッケー。オマエ、アイサツシテコイー」
「ヤダゾー」

少し離れたところにいるコロッサスを指差し、ファミリアたちに攻撃命令を出した。
ファミリアたちがとてとてと走っていく。

「コウゲキスルゾー」
「オッケオッケー。オマエ、ヒトリデ、イッテコイー」
「イッショニ、イクゾー。コッチコーイ、コロー」

うるさい蝿でもみつけたといわんばかりに、コロッサスがファミリアたちに向かってくる。

「ペットが強いのはね、命令を出したときのイメージが伝わるからなんだ」
「昨日も言ってましたけど、イメージって……」
「たとえるなら、天気」

まぶたを閉じ、すぅっと息を大きく吸い込む。

「はぁぁぁぁー!」

気を吐くことで、雑念を払った。

「心に描いた命令のイメージは、ファミリアたちが忠実に再現する。私が思い描くのは」

意識が明瞭になり、イメージは確かなものとなる。

「嵐!」

言葉とともに、ファミリアたちに特技を使うよう命令した。

「オッケオッケー」
「ヤッテヤルゾー」

それまでの動きが嘘だったかのように、ファミリアたちの動きが早くなる。
何度も何度も槍を突く。突き出す、突き刺す、突き通す。
それはまさしく槍の雨。

「がんばって!」

励ます声に応えて、ファミリアたちの槍がいっそう力強さを増した。

「オッケオッケー」
「ボコボコニシテヤルゾー」

コロッサスの驚異的な蹴りをものともせずに、ファミリアたちの動きは止まらない。
どれだけ強力な打撃であろうと、しょせんは単なるだたの蹴り。
そんなもので雨がやむわけがない。嵐をとめられるわけがないのだ。
コロッサスはなすすべなく、みるみる穴だらけになっていった。

「オッケオッケー」
「イッチョウアガリダゾー」

ほどなく、嵐はやんだ。
ものの数十秒で、コロッサスは沈んだのだ。

「これが、嵐か……」

あっけにとられていた後輩が、ぽつりとそれだけもらした。
私は振り返ると、笑顔でこう言った。

「ファミリアはかわいいけど、強いんだよ?」





『嵐〜風雨の日〜』

166プチ:2007/07/14(土) 03:55:47 ID:ZVzQWRAQ0
感想を書いてくださるみなさん、ありがとうございます。
とても励みになります。

今回のSSについての秘密。
知ってる方もいるかもしれませんが、スキルには英語名がついてます。
よければ探してみてください(韓国公式HPなど)。

翻訳ってのは、ほんとセンスだなぁと思います。
ゲーム性を加味しつつ考えられている日本語名には、直訳にはない味がありますねぇ。

167ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 11:05:30 ID:OhTl4zsk0
テントで寝ているラティナを叩き起こし、全員が準備を整えた。
クレイグの誘導によりトラン森の小道を小1時間ほど掛けて歩いて行った・・・

トラン森の奥深く・・・ついに目的地へ辿り着いた。そこはエルフが俗世から離れて暮らす楽園のような村。
1年中、草木は生い茂り、花が咲き乱れる。ミリアたちとエルフの兄弟は、村へとやってきたのだった。


Chapter.02 A Month of Elf's Village  Episode01- 12 Soldiers〜特訓開始〜


「ようこそ、人間の皆!ここがおれたちエルフの村、『サニー・ガーデン』だ。まずは長老に会って欲しい。案内するよ!」
ミリアらを促し、クレイグが先頭を切って村の中を進んでいく。住民のエルフたちが興味津々に一行を合間見ようと路地に集まってきた。
それもそのはず、ここ暫くサニー・ガーデンには人間が訪れることが無かったのだから。「やぁ、ウチで食事でもしないかい?」
「ハーブティー飲む?」「ねぇねぇ握手して〜!」道行く住民たちが次々に声を掛けてくる。
陽気なエルフの民たちが気軽に話しかけてくる光景に、ミリアたちはほのぼのとした和んだ微笑みを浮かべた。

歩くこと数分、村の中でも一際大きな建造物へと到着した。建物はブルンネンシュティグの建築様式と似ているが、
それに少しばかりモダンなアレンジが加えられたようなデザインをしていた。その造形美に誰もが溜め息を漏らした・・・
「ここが長老様の住んでいる屋敷だ、あまり無礼の無いようにしてくれ。じゃ、入るよ」そう忠告したクレイグは、屋敷の扉の横にある
呼び鈴を鳴らすためのスイッチなのだろうか、それを押した。『ガラー・・ン・・・ガラー・・ン』とベルが鳴る。少し沈黙が流れるが
「あ〜、はいはい、ただいま行きますよ」低音の聞いた渋い声が聞こえ、扉が開いた。目の前には人間で言うと80歳ほどの老エルフが
杖を突いて姿を現した。しかし腰は曲がっておらず、その上長身で、がたいも良い。穏やかな微笑が彼に好印象をもたらしている。
「いきなり人間を連れてきて申し訳ありません、長老。しかし、彼女たちはこの村を救ってくれるかもしれないのです。どうか・・・」
「・・・クレイグ、そこまで堅くなる必要は無い。客人が来てくれて私は嬉しいよ。さて・・・人間の皆様、よくぞ我らがエルフの村に
 お越し下さいました。私はこの村の村長、エドワード・ルベルアランスと申します。折角ですし、広間にて談話でもしましょうか。」
エドワードは穏やかな口調でミリアたちに挨拶し、そのまま屋敷の中へと一行を誘った。


高級そうな絨毯にアンティーク調の家具の数々、そして天井にはシャンデリア・・・いかにもブルジョワジーな雰囲気の広間だ。
大きな幅のあるテーブルに着き、お抱えのエルフのメイドが運んできた紅茶をすすりながら、一行は会話に花を咲かせていた。
「はぅ〜、紅茶もケーキもおいしいの〜♪ミリア大満足なのよ〜!」「このミントケーキは村の名産品だからね。喜んで頂けて嬉しいよ」
無邪気に喜ぶミリアに、エドワード長老が優しく言葉を返した。・・・そして少し表情を険しくし、指をパチンと鳴らした。
何らかの合図なのだろうか、その場にいたメイドや執事たちは早急にその場を立ち去った。広間を妙な静寂が包んだ・・・。
「では・・・クレイグ、そして冒険家に使役獣の皆様。改めて、今この村の置かれている状況、そしてザッカルのことをお話したい。」

168ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 11:41:53 ID:OhTl4zsk0
ラティナを除く全員が、長老の口から出た『ザッカル』という言葉を聞き、緊張が走る・・・!
当然ラティナはザッカルのことなど全く知らないので、一人首を傾げていた。
「あの・・・エドワードさん?その〜・・・ザッカルて一体何なんですか?」恐る恐る彼女が尋ねた。
「ふむ、君だけは奴の事を知らないようだね・・・では、知っている方でも聞いて頂きたい。ザッカルという最悪な魔獣のことを・・・

 奴がその名を轟かせたのは6年前に遡る・・・モリネルタワーに暮らしていたザッカルは、同じ塔に住む魔物の間でも特別に
 恐れられていたらしい。冒険者の方々で彼に会ったのならわかるかもしれないが、あのおぞましい狂いぶりがその所以なのだ・・・
 そしてある日のことだ。発狂癖の説が強いが、とにかく塔に住むモンスターや、その場に居合わせた冒険者たちを手当たり次第に
 徹底的に痛めつけて惨殺したそうだ・・・聞くにも耐えないくらいの酷い殺し方だったと噂には聞いている・・・
 そこから奴はあらゆる生物を殺すことに快感を覚えてしまったらしい・・・モリネルタワーのあらゆる階をうろついては
 視界に入った生物をすぐなぶり殺し、その肉を喰らって生活していたという・・・塔は血に汚れ、血痕だらけになった。

 その事件から2年後、4年前だ。奴はモリネルタワーをとび出し、今度はデフヒルズ全域に狙いを定めたのだ・・・」
「あぁ・・・俺はその時の事件の生き残りだからな・・・今でもちゃんと覚えてる・・!!」「オレもだ!モリネルのダチも殺られたぜ!?」
フィナーアのペット、原始人のシンバとリプリートマーキのセルジオが割って入った。これにはエドワードも驚いた。
過去の大惨事の生き残りが今こうして、同じ境遇の者としてこの場にいるのだから・・・
「・・・これは驚いた、生き残りがいるとは思わなかったよ。君達にとっては苦い記憶だろう・・・
 ここはデフヒルズの惨事については触れないで置こう。・・・そして、だ。まだまだ奴の暴走は続くんだ。
 デフヒルズをも血に染め上げ、今度は大陸北部に広がるエルベルグ山脈一帯をも惨劇に舞台に仕立て上げた。
 ・・・ん?そこのファミリア君、何か思い当たる節でも?」わなわなと身を震わすファミィに気づいたのか
長老がファミィに話しかける・・・するとファミィは涙を浮かべ、口を開いた・・・

「実は・・・おいらも。おいらの家族もアイツにやられたさ〜。おかげで一人ぼっちで彷徨うハメになったさ。・・・うぁぁ」
泣き出すファミィをミリアは優しく抱擁し、彼女もまた涙を浮かべ「・・・寂しくないよ、寂しくないんだからね!」と
小さな、消え入りそうな声でファミィを抱きしめ続けた・・・・・。

169ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 12:44:25 ID:OhTl4zsk0
「どうやら、これも運命なのかもしれない・・・全ての因果が、今ここで結びついているようだ・・・」
アゴをさすりながら、エドワードが呟いた。そして話を続ける・・・
「そして暴走の矛先はついに我らが住むこのフォーリンロードやトラン森に向けられたのだ・・・!
 半年前だ・・・本来この村はエルフの魔力によって、異次元の中に存在している。出入口の開閉はエルフにしかできないはずなのだ。
 だがザッカルは何らかの方法でこの村への侵入に成功しまった・・・!入るや否や、村中を荒らして回り、何人かが犠牲にもなった。
 そこで私が奴と交渉に回ったが・・・・」
「村には手を出さない代わりに、周辺の人間どもに危害を加える条件を突き出した・・・そうだろう?」
エディがテンガロンハットをクイッと、人差し指で上げながら付け加えた。長老はそのまま頷いた・・・。
「おっしゃるとおりで。クレイグから聞かされたのだろうが、まさにその通り。我らエルフは人間に対しての劣悪感は
 全くといっていいほど皆無、言い換えれば友好的なのです。・・・あまりにも酷な条件でした。葛藤のあまり自ら
 命を絶つ者もかなりいました・・・。しかし、あなた方の来訪おかげで、この状況・・・いや、ザッカルの悪行に
 終止符を打てるかもしれないのです!!どうか、私たちの村を救い・・・以前のような人間との友好関係を取り戻させて欲しい!」
頭を下げ、エドワード長老はミリアたちに懇願した。歯をギリリと噛み締めている様子から、裏表もない願いだとわかる。

しばしの静寂が流れたが、それをミリアが立ち上がって破った!
「ファミィも・・・シンバも、セルジオも、エルフの皆も・・・ミリアたちが助けてあげる!ザッカルをやっつけるんだから〜!!」
彼女の一声に、他のメンバーたちの士気も自ずと上がる!誰もが天に拳を突き上げ「やるぞぉ―――!!」と意気込んだ。
長老は彼女らに「ありがとうっ、ありがとう・・・・・!!」と身を震わせながら感謝した。目にはかすかな涙が輝いていた。


そして夜になった。
エルフの居住区へとクレイグに案内され、一行は彼と弟のサーファイユの家にホームステイすることになった。
大きさは長老の屋敷よりは小さいが、それでも最大20人は入れそうなほど、家の中は広い。
「こんな家だけども、くつろいでいってね。」クレイグがはにかみながら一行に話しかけた。
すると玄関からカランコロンとベルが鳴るのが聞こえた。クレイグが何事かとドアをあけると、そこには・・・
お酒や食物、デザートによくわからない変なグッズを引っさげたエルフの住人たちがわんさか集まっていた!
「よぉクレイグ〜!人間の皆もせっかく来てくれたんだ、騒がずに居られるかよ〜今夜はパァーっといこうぜ!?」
中年の少し小太りなエルフが陽気な笑顔でクレイグたちを誘った。周りの皆も「飲もう〜!」と声を挙げている。
「ん〜・・・この家じゃ狭いからな〜。そうだ、せっかくだからさ、村中の皆を集めてミリアたちの歓迎パーティーをやろうよ!
 長老もきっと許してくれるさ、皆を集めよう!広場に全員集合だ〜!!」クレイグが意気揚々にとびだし、村中を走り回る。
弟のサーファイユ「に、兄さ〜ん!待ってよぉ〜!」とヘタレ気味に彼の後を追っていった・・・。

170ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 13:15:23 ID:OhTl4zsk0
村の広場・・・魔法によって彩られたカラフルなキャンプファイヤーを囲み
村中のエルフが飲んで歌って大騒ぎしていた。当然このドンチャン騒ぎに便乗しない堅物は誰一人とていない!
そして毎度おなじみ、こういう時には先陣をきってハッチャける奴がいる・・・フィナーアだ。

「はァ〜い!またまたヤっちゃうわよぉ〜ん!セクシ〜☆フィナーアちゃんのダンスショーゥ!!」
昨日の夜からそうなのだが、さらしとフンドシ一丁といった格好でフィナーアはまたも踊りまくる!
乳房を揺らし腰を振り、大胆に開脚したりで誰もが興奮の渦に飲み込まれている。それだけじゃない、
テーブルの上に乗った機械で、一人のエルフが音の出る円盤を次々に入れ替えたりスクラッチしたりと
ノリのいい、キャッチーでメロディアスな音楽をつなげまくってムードメイキング。楽しさはさらに加速する!!
「うゅ〜、ミリアもなんかやりたくなっちゃった!よ〜し!!」姉に負けじとミリアもフロアに躍り出た!
自らが体得したカンフーの演舞を披露し、さらに場を沸かした。しかもフィナーアと彼女の動き、そして音楽は
見事にシンクロし、最高のショータイムを演出していた。

同時に、エルフの青少年たちとエディは輪を組み、音楽に合わせて互いにラップを繰り出し合っていた。
先程からエルフたちの交代が早いことから、彼のテクニックがいかに驚異的かが伺える。

ラティナやバーソロミュー、トレスヴァント、そしてシンバとセルジオは酒をがぶ飲みし、酔っ払う始末。
ラティナはまたもや鎧を勢い良く脱ぎ捨て、レオタード一丁でフィナーアに突っかかる。掴みあってまた寝技の応酬。
ケツ丸出しエロエロレスリング、第2ラウンドの開始に男どもは野獣化し、トトカルチョまでおっ始めてしまった。
「はいただ今〜総額4,000,000Gの賭け金〜!賭けに勝てば配当額がもらえるよ〜!!さあ〜賭けた賭けた〜!」
二人の戦いはエロさ、攻防のスリリングさが前日にも増してスゴいことになっている・・・!周りの歓声もスゴい・・・
「おぅ写真取れ写真!!あんないいケツ二度と見れねェぞ!?」「むほ〜!汗で濡れた肌がそそるじゃねェか〜!!」

「はぁっ・・・あんっ!昨日よりは強くなってるじゃないの・・・ラティナちゃん・・・あっ、やぁん!そこは弄っちゃダメぇ!!」
どこをいじくられてるかは敢えて表記しないが、感じてしまって顔を赤らめるフィナーア。一方のラティナは極悪な笑みを浮かべている。
「うるさいれすよ〜・・・ひっく!!男たちも喜んでることですしぃ〜、インモラル上等〜ぅ今夜は無礼講〜♪・・・ひぃっく!!」
とそこへミリアがヒップドロップで乱入し、2人まとめて押し潰した!どうやら間違ってお酒を飲んでしまったらしく、
顔が赤くなっていた。「うにゃ〜ぁ、ミリアだって負けないんだからァ〜!」もはやバトルロイヤル状態・・・

長老やクレイグ、サ−ファイユ、そしてエルフの皆は今までの暗い過去を忘れ、一時の楽しい時間に身を委ねるのであった。

171ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 13:46:27 ID:OhTl4zsk0
宴会を終えた翌朝・・・小鳥がさえずり、朝日が昇った。
散らかった周辺を片付け、村のエルフの皆は自宅へと戻り熟睡した・・・。
ラティナとフィナーアは寝ているにも関わらずまだ寝技の応酬を繰り広げている。
ミリアは昨晩のバトルロイヤルであっけなくのされたので、少し離れたところで伸びていた。

と、そこへ長老がやってきて、手を叩いて大きな音を出しミリアたちの目を覚まさせた。
「皆、起きなさい。まだ眠気が残っているかもしれないが、大事な話があるんだ。まずは付いてきて欲しい」
長老に案内されるがまま、一行は村の外れにある円形の広場へと誘われた。そして指をパチンと鳴らすと
ミリアたちを取り囲むようにして、12人のエルフたちが姿を現した・・・!
その中にはクレイグ、サーファイユの姿もある。「・・・なるほどな」エディが呟いた。

「紹介しよう、彼らはこの村きっての戦士たち『エルフ戦士十二傑』だ。ザッカルを倒すためにも、各々一人ずつ、パートナーに迎え
 特訓に励んでもらいたい。期間は1ヶ月!!その間に君たちはザッカルを超える力を手に入れなくてはならない!」


To Be Continued...

ストーリーも第2部突入です。
ザッカルとの対決に向けての序章みたいなお話でした。
しばらくは各キャラの1日を描いた番外編的な進行具合になるかもです。

172ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/14(土) 13:54:25 ID:OhTl4zsk0
>162さん
ご指摘どうもです。確かにエロも入ってはいますが
あくまでも調味料として付け加えてるだけですので;;
気分を害したようでしたら申し訳ありません。

>68h〜さん
弁護ありがとうございます。
こういう事言われない様にする為にも
さじ加減はちゃんと調整しないと・・・

>プチさん
ファミリアたちのやりとりが楽しくて微笑ましいです。
「オッケオッケー」とか「ヤダゾー」とか、もうとにかく可愛いv
そして決め台詞の「ファミリアはかわいいけど、強いんだよ?」
これでラストを飾る演出には感服します;;

173◇68hJrjtY:2007/07/14(土) 17:07:12 ID:g1IbIIig0
>プチさん
テイマの先輩後輩、そしてファミたちの可愛さも堪能しました(ノ∀`*)
なるほど、風雨の日を命令する時の嵐のイメージというものに置き換えているのですね。
しかしファミたちの会話が凄く可愛らしい…実際にこうして会話してくれたら楽しいんですけどね(笑)
そういえば、韓国公式で武道のスキル名が全部英名になってて凄いと思ってはいました。
でもそのまま日本語名にせずにちゃんと翻訳されているんですよね。なかなか面白いです。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
エルフの集落、良いですね〜。
実際RS内にも人間の町以外の色々な村とか集落とかあってもいいような気もします。
エルフが人間に攻撃してくるという理由が判明ですね。やはり全ての原因はザッカルの魔手。
各キャラの修行風景、楽しみです。
エロ要素は今のままでも問題は無いと思いますよ。
もっと突っ込んだエロが書きたいという場合は>>162さんのエログロBBS利用、って感じで良いと思います(笑)

174パレット:2007/07/14(土) 20:59:16 ID:2AkAQcYo0
「ありがとうございましたー」
「あいあい」
店員から大量のポーションと花束を受け取り店を出る。

「あと10分くらいだな」
けいたはギルド戦会場に向かった。

「こんちゃー」
「こんにちはー」
「おおー遅かったな」
会場にはすでに何人か待機していた。そばに座り込む。
「うわ!なんだよそのかばん!」
こうじが異常に膨れ上がったかばんを見て驚く。
「まぁ、いろいろあってな」
もちろん音葉さんにいいとこ見せるため、なんて言えない。
「まぁ、ギルドに貢献してくれるんなら全然いいけどな」
「そうだうん。今日から俺は変わるぜ!」
「ふーん……。」

「こんにちはー」
隣から不意に天使の声が聞こえ、ビクッと顔を横に向ける。秋風音葉だ。
「昨日はどうもー」
「あ、昨日あいましたよね」
「うん、それ、新しく買った武器?」
「はい!いい槍でしょう!?」
満足気な表情で槍を見せてくる。確かに強そうだ。刀身はまぶしいくらい光っている。
「そういえばまだ名前を聞いてなかったですね…」
「あ、おれ? 秋風けいただよ。けいたって呼んで。」
「じゃあ…けいたさん、あの、刀は?」
「へ?」
背中に手をあてても何もない。銀行に一緒に預けてしまったらしい。顔が蒼ざめる。
とその瞬間に…。

「こんちゃー」
「こんにちはー」

ワープしてしまった。
武器を持たないGvなんて聞いたことがない。かばんの中の大量のポーションが無情にもカチャンと鳴り響く。

そうだ…他の剣士さんに貸してもらおう。1本くらい代えがあるはずだ。
こんにちはー、と声を掛けながらキョロキョロと剣士さんを探す。

いねー!!!!!
もう終わりだ…。そして恐怖のカウントダウンは始まった。あと1分で始まる。
落ち込んでいると
「大丈夫ですか?」
声を掛けてくれたのは先ほどまで一緒に話していた音葉さん。
「いや…かなりやばい…」
ぐったり答えると
「あ、これ使ってください!ちょうど売る用に取っておいたのです!」
「まじで!ありがとうー!」
Gvに参加できるようになった安心と音葉さんから借りられた嬉しさが交錯する。狂いだしそうだ。
そして、音葉さんのかばんから取り出されたのは…

武道グローブ

「へ?」
本日2回目のへ? もう訳がわからない。
「これでぶん殴ってやりましょう!」
いや!無理だから!と言いだす前に、アナウンス。
「ギルド戦が始まりました。」
みんな支援をもらうと意気揚揚と走り出した。

呆気に取られ、いつの間にか支援が掛けられ、右手には武道グローブを握っていた。
いろいろ考えているうちに頭の中が真っ白になってきた。

「うぉーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
謎の雄叫びを上げ信じられない速さで走り出した。

あとがき
前回はなんにも書かずすみませんでした。そしてコメントありがとうございました。
名無し改めパレットです。
表現や構成も未熟で、あんまりここにはこれませんが宜しくおねがします。

175名無しさん:2007/07/14(土) 22:22:15 ID:5MFZrQdg0
162です。
ESCADA a.k.a. DIWALI氏
 ちょっと言い方がきつ過ぎたと今は反省しています。
確かに物語の一部であって主役ではありませんでしたね。すいませんでした。

176◇68hJrjtY:2007/07/15(日) 00:38:51 ID:g1IbIIig0
>パレットさん
おぉ、コテハンも決定されましたか。前回に続いてまたまた読ませてもらいました。
音葉さん…。おしとやかでありそうでいて気合いのある人ですね。好きです、こういう女性(笑)
しかし丸腰Gvは一体どうなってしまうのか(;・∀・)
ゆっくりでも構いません。続きお待ちしています。

>175さん
いえいえ…私も部外者ながら意見など色々済みませんでした。
エロBBSについての紹介、とても感謝しております。次回からテンプレに載せましょう!

177HIMAJIN:2007/07/15(日) 22:29:43 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜血の盟約〜

「ちっ」
口の中に広がる血液の鉄臭を噛み締めながら、思わず舌打ちをした。
「流石の俺も、ここまでか・・・」
ソーサラーの影を追い踏み込んだ先でガゴとメイジの待ち伏せに遭ってしまった。
幾度も重ね過ぎた勝利は、時として、その感覚を鈍らせてしまうものである。
あまりにも単純な敵の罠に嵌ってしまった己を悔やむ思考すら薄れてきた。
もともとWIZにはアスヒがあり、大抵の場合は回復しながら敵を倒すのだが、
3方向からの攻撃に、その暇も無く体力、魔力ともに底を尽きかけていた。
「へへっ、こんな様。あいつにゃあ見せられねぇな。」

 かつて、グランには生涯の友と呼べる男がいた。
共に同じ道を歩み、苦楽を分かち合った男だった。
グランもチリWIZとして最早達人の域に迫っていた。
が、ジロンと呼ばれたその男は、グランよりも速く魔法詠唱をし、
振るうチリは瞬く間に敵を瞬殺していた。
当時ハノブ地方で二人のPTと出遭った敵は悉く灰燼に帰され、その名を知らぬ者はいなかった。

178HIMAJIN:2007/07/15(日) 22:30:25 ID:6wLuC09w0
しかし、ある日。
ほんの一瞬の出来事だった。
いつもの様に狩りをし、いつもの様に振り向いた光景を彼は生涯忘れる事が出来なくなってしまった。
お互いに倒したはずのエルフが、最後の力でグランに狙いをつけ、背後から切りつけた。
グランは、背後で何か大量の水飛沫の様な音を聞いた。
「おいおい^^いつのまにウォーターキャノンなんて覚えたんだよ。」
笑いながら振り向くと、そこには先の折れた杖をエルフに突き刺しながら仰向けに倒れているジロンがいた。
「ジローーーーーン!!!」
ほとんど魂が叫んだ。
慌てて駆け寄りアスヒを施すも、ジロンの胸から流れる赤いものは、その流れを止めなかった。
彼の緑のロングコートは、瞬く間に黒い蒼に変色していく。
「グラン。相変わらずアスヒかけるの上手いなぁ・・・」
「ジロン!しっかりしろ!」
ほどなく彼の身体は冷たくなり、その鼓動を永久に止めた。
グランは、堕落した。
かつての精悍な面影は闇に葬り去られ、ハノブの片隅で生きる屍になっていた。
そんなある日、ブルネンシュティグのブルンギルド連合会から1つの小包が届いた。
包みを開けると中には1通の手紙と紙袋が2つ入っていた。
『これは、君が持つべきだ』
なんの事か分からない。グランは、面倒くさそうに残りの包みを開けた。
そこにはあの日ジロンが着ていた色の変わったコートと、彼愛用の杖の頭の部分が入っていた。
「今更こんなもの・・・俺には資格が・・・」
丸一日考えた後、グランは、そのコートを身にまとい。杖の頭を付け替えると、魔法詠唱をした。
「ジロン。これでいいんだよな・・・」
それからのグランは、正しく修羅に魅入られたかの様に敵を倒していった。
その姿を見た他の狩人達からは、あまりのヘイストの速さとチリの威力から、
「まるでWIZが2人いる様だった」と言わしめた。

179HIMAJIN:2007/07/15(日) 22:30:49 ID:6wLuC09w0
 もう残っているのは気力しかなかった。
囲まれた自分に残された道は屍になる事だけだろう。
最後のチリをソーサラーに当てた。もう何も出来ない。
心なしかモンスター達の顔がにやけて見えた気がした。
「ジロン・・・今行くぜ・・・」
 それは、あまりにも唐突に起こった。
ダンジョン全体に響き渡る地響きと共に、重く鈍い連続音が土煙の中から迫ってきた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びと共にソーサラーがメイジがガゴが倒されていく。
「だ、誰だ・・・」
搾り出すような呻き声でたらんぼが尋ねた。
「おいおい、そんなこっちゃ兄貴に叱られるぜ?」
幾分若いその声の主は自分の背丈ほどもある巨大な斧を振り回しながら、笑顔で語りかけた。
「カ、カイロンか・・・」
カイロンと呼ばれた戦士は、ジロンの弟であった。。
兄と違い体格に恵まれた彼は、戦士として亡き兄の道を進んでいたのだ。
「ジロンさん。死ぬには、まだ早いんでない?」
「ふっ、お前ら兄弟は全く・・・」

数ヵ月後・・・

デフヒルズ地方に、こんな噂が流れた・・・

「今、あの地方で一番怖いのは、鬼と悪魔の二人組みだよ・・・」






180HIMAJIN:2007/07/15(日) 22:35:37 ID:6wLuC09w0
ごめん。179は削除お願いします^^;
名前間違えてるです。

こちらが正校了です。

 もう残っているのは気力しかなかった。
囲まれた自分に残された道は屍になる事だけだろう。
最後のチリをソーサラーに当てた。もう何も出来ない。
心なしかモンスター達の顔がにやけて見えた気がした。
「ジロン・・・今行くぜ・・・」
 それは、あまりにも唐突に起こった。
ダンジョン全体に響き渡る地響きと共に、重く鈍い連続音が土煙の中から迫ってきた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びと共にソーサラーがメイジがガゴが倒されていく。
「だ、誰だ・・・」
搾り出すような呻き声でグランが尋ねた。
「おいおい、そんなこっちゃ兄貴に叱られるぜ?」
幾分若いその声の主は自分の背丈ほどもある巨大な斧を振り回しながら、笑顔で語りかけた。
「カ、カイロンか・・・」
カイロンと呼ばれた戦士は、ジロンの弟であった。。
兄と違い体格に恵まれた彼は、戦士として亡き兄の道を進んでいたのだ。
「グランさん。死ぬには、まだ早いんでない?」
「ふっ、お前ら兄弟は全く・・・」

数ヵ月後・・・

デフヒルズ地方に、こんな噂が流れた・・・

「今、あの地方で一番怖いのは、鬼と悪魔の二人組みだよ・・・」






181名無しさん:2007/07/15(日) 23:28:14 ID:FDijU6TA0
良いなあ。続きも見たくなるなるような作品でした。

182HIMAJIN:2007/07/16(月) 01:47:28 ID:6wLuC09w0
>>181
ありがとうございます。
この作品は、もともとリアルでも友である友人に送ったモノでして、
グランにまつわる話として、もう1作あります(笑)
お邪魔でなければカキコさせていただきます。

183◇68hJrjtY:2007/07/16(月) 04:13:58 ID:g1IbIIig0
>HIMAJINさん
同じく、読ませてもらいました。それと初めましてです。
「(その速さは)まるでWIZが二人いるようだった」という一文に感動しました。
短い文章の中にもグランの決意が伺えるような悲しい話ですね。
>>181さん同様、続きがありそうなラストだと思ったらまだ逸話があるとの事。
是非ともそちらも読ませてもらいたいです。楽しみにしています。

でも、リアルに読ませる相手がいるというのはとっても羨ましいです。
私はRSにもリア友が居ないもので、ついでにいうと一人っ子だったりもして(涙)

184パレット:2007/07/16(月) 09:18:26 ID:0cEYUwWs0
みんなに追いついたころにはすでにギルドどうしの衝突が始まっていた。
無限の金属音の中、何人か倒れているのが見えた。おそらくこちらのギルドであろう、全員見覚えがある。
む…。
音葉さんは複数の敵に囲まれていた、これはチャンス

「いくぜ!」
声とともに大きくジャンプし、音葉さんの周りの敵をラリアット的なもので地面に叩きつけた。
「けいたさん!」
突然の登場に驚いたのか、多少声が上ずっていたように聞こえた。
まだ、2人ほどの剣士に狙われている、美声に聞き浸っている場合ではない。

「じゃあ、俺はあっちの剣士をやるよ」
すぐさまその剣士と向き合い、戦闘の体勢に戻す。

先手をとったのは剣士。垂直斬りや、袈裟斬りなど、多彩な攻撃を仕掛けてくる。
それを盾で防いでいると、剣士の表情が何かおかしい。けいたが剣を装備していないことに気付いたらしい。
それから、少しだけ剣の威力が弱まったように感じた。
「みくびってもらっちゃ困るぜ!」
剣士が剣を振り上げた瞬間、みぞおちに目にも止まらない右ストレート!
あまりの痛さに攻撃を止め、盾を持つ左手で軽くお腹を押さえてけいたを見た。
けいたはお構いなしにひるんだ剣士の胸板に回し蹴りをくらわせ、剣士は呆気なく倒れた。

ふう、といため息をついたあと、後ろを振り返ると音葉さんも剣士を倒したようだ。そばには仰向けに倒れた男の姿があった。
その後もGvか順調に進み、剣を持たない剣士の珍しさも助け、見事勝利を飾った。

185パレット:2007/07/16(月) 09:34:43 ID:0cEYUwWs0
>◇68hJrjtYさん
コメントありがとうございます。
期待にそぐえたかどうか心配です^^;
頑張っていきたいと思います

>HIMAJINさん
小説読ませていただきました。
文章が落ち着いた感じでとても読みやすかったです。
ぜひとも続きを読んでみたいです!

186ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/16(月) 12:14:35 ID:hIuXbFKM0
Episode02-Get the Super Arts:Millia 〜炎華のミリア〜

エルフたちが暮らす村、サニー・ガーデン。そこから少し外れた、例えるならグラウンドのような円形の広場。
村長のエドワード、そしてミリアたちを囲むようにして、12人のエルフ達が真剣な面持ちで腕を組み、その場に立っている。
「彼らは『エルフ戦士十二傑』、このトラン森においてトップクラスの実力者たちだ・・・戦闘力は生半可では無いぞ。」
エドワードの言葉に、思わずミリアたちは周りのエルフらに目を見やった。かなり太った中年のおばさん、痩せこけたメガネ、
マッチョで大柄なドレッドヘアの男・・・・本当に彼らがエルン森で一目置かれる戦士たちなのか?誰もが疑問に思ったその時だ。
「まぁ、その・・・疑問に思うのも仕方ねェ。こういう身なりだが、実力はちゃんと伴ってるぜ?」ドレッドのエルフが注釈した。
「そういうことだ、では!各自専属の戦士たちを発表しよう。・・・まずはミリア!」「ははは、はいぃっ!」
緊張気味に返事をするミリア。そして長老の口から、彼女のパートナーが発表される・・・・!
「君のパートナーはジャファイマ、そこの太ったおばさんに・・あいたっ!!」「太ったってのは無ぇべよ!わ(私)だばまだレディだはんで!!」
妙な訛りで長老にビンタを喰らわせるのは中年風の太った大柄な女性エルフ、ジャファイマだ。長老が怯みながら続ける。

「あぁ・・・彼女は素手の格闘戦においては圧倒的に強い。聞けばミリア、君はビーストテイマーでありながら拳法が使えるらしいね?
 彼女の指導の元、その体術に磨きをかけて欲しい。次にラティナとファミィ!君らは槍使いだ、そこの彼に指導して貰うと良いだろう。」
次に長老が紹介したのは、ドレッドヘアでマッチョのエルフ、アレクシスだ。強面だがかなり陽気な性格らしい。ラティナたちと目が合うと
「やぁ、よろしく!緩やかに特訓していこう、エルフの槍裁きを伝授してやろう。」フランクに挨拶を投げかけた。
「よ、よろしくお願いしますっ!」「はじみてぃや〜さい」
早速パートナーが決まった組は、すぐさま各自のトレーニングする場所へと移動した。

「次にバーソロミュー!君は・・・そこの眼鏡をかけたエルフと特訓に励んで貰いたい。マスケーロ、よろしく頼む。」
「よろしくお願いします、バーソロミューさん。」「こちらこそよろしくお願いします。良い魔法の鍛練ができれば良いですね。」
こちらは性格も言葉遣いも似ているせいか、すぐに意気投合し握手を交わし、同じく修行場へと向かっていった。

187ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/16(月) 12:55:33 ID:hIuXbFKM0
「さて・・・エディ、トレスヴァント。君たちにはクレイグとサーファイユを、それぞれパートナーとして特訓に励んで貰おう。」
「よぅマイフレンド!いっちょヨロシク頼むぜ?」「オッケー!早速トレーニングといこうぜ!」
エディとクレイグは拳を軽くぶつけ合い、意気揚々と広場を後にした・・・。そしてトレスヴァントとサーファイユ。
「よろしくな、サーファイユ。」「こちらこそよろしく。さぁ、早く行きましょう!」
彼らもまた広場をあとにし、残るのはフィナーアと彼女のペット、シンバとセルジオのみとなった。

「ん〜、フィナーア。君はそこの白衣を着たエルフと共に特訓だ。基礎的な能力は十分だから、彼の能力による底上げを期待する。」
長老が指定したエルフは、いかにも医者と思える風貌をしている。名前はエストレーア、端正な容姿は一見女性のようだが男性である。
「いやぁ――――ん!こんな可愛いコがパートナーなんて嬉しいわ!!よろしくね、エストレーアちゃんっ!」「あ・・・よろしくです。」
どうやら少し臆病な性格らしく、小声で挨拶を返すエストレーア。そんな彼の様子も気に留めず、彼女もまた修行場へ向かった。
「セルジオ、シンバ。君たちはフィナーアにちゃんと調教されているようだから・・・食事の用意や私のお世話を手伝って貰えるかな?
 もちろん給料は払うからね、しっかり働いて貰うよ。」「う〜っす!」「わかりやしたぜ旦那ァ!」「こらこら・・・」
こうして各自のパートナーや役割も決まり、1ヶ月の長い特訓が幕を開けた。



まずはミリアとジャファイマのコンビ。ミリアは地面に正座し、師事するジャファイマに対して真剣な眼差しを向け、彼女の話を真剣に聞いた。
「ん〜、わや良い子だね〜。んだば、早速わ(私)の実力ば見してやるはんで、よ〜ぐ見ねばまぃね(ダメ)よ?」と、視線の先には一本のカカシが。
ふぅ〜っ、と深く呼吸し拳を構え、そのまま精神を統一する・・・時間が経つうちに拳に氣が集まるのをミリアはしっかりと視認できた。そして!
突如拳の周りに渦巻いていた氣が炎へと変わり、燃え盛りだした!!そしてジャファイマはそのまま拳をカカシにブチ込んだっ!

ズドォン!!と大砲を放ったような轟音を響かせ、カカシの胴体に綺麗な円形の穴が貫通していた・・・しかも穴の周りは黒コゲだ。
「今のはね、拳さ炎の氣ば込める技なのよ。足さ同じこともできるんだで。・・・技の名は『炎華(えんか)』。これを極めると一撃必殺、
 文字通り炎の一撃を喰らわすことができるんだぁ。ミリアちゃん、おめさこの奥義ば伝授してけらはんで、覚悟するんだよ!」
「うゅ!!」「返事は『ハイ』でしょ〜、でもまぁめんこい娘だびょん。ちゃんと頑張るんだよ?」「うんっ、ミリア頑張っちゃうんだから!!」
「よ〜し、よぐ言った!せば、そこさもう一本カカシっこあるはんで、そいつ相手に打ち込みばやりなさい。一日千本!!」
師である彼女からいきなりハードな課題を突きつけられ、すぐに泣き言を言い出すミリア。しかも目に涙を浮かべ愚図っている。
「やぅ〜、ミリア痛いのイヤなの〜!!あぅ〜」「さっき頑張るって言ったっけさ〜、んな事だば強ぐなんねぇよ?」
「うゅ〜・・・こうなったらヤケだも〜んっ!えいっ!えいっ!えいえいっ!え〜いっ!!」
カカシに向かって正拳突きを左右交互に繰り出すミリア。時折手のダメージに泣きそうになりながらも
懸命に、無我夢中に打ち込みを続け・・・ジャファイマも彼女の懸命な姿をしかと見守っていた。

188ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/16(月) 13:23:50 ID:hIuXbFKM0
さて、正拳打ち込み千本を日課としてから1週間が経った。
カカシは日を増すごとに、その姿を少しづつへこませていく。ミリアの拳はというと、一日にあれだけ打ち込み続けたのだ。
手全体に包帯を巻きつけ、それに血を滲ませるほど・・・懸命にミリアは痛みを堪えて特訓に励んできた。
痛みのあまり泣き出すこともしばしばあったが、それでも彼女はこの1週間を耐え抜いた。


ある日の朝、いつもの修行場でのこと。
ついに次の段階へと進むことがジャファイマの口から告げられた。
「よ〜しよしよし、よぐ耐えたね。痛かったべよ〜?しばらくは打ち込みば休んで、ちゃんと手っこ回復させなさい。な?」
「うん・・・・ふゅ・・ふゃぁ・・ふわぁ―――――ん!!」今までに堪えてきた苦痛を吐き出すように、ミリアは泣き出した。
とめどなく溢れる涙の量が、彼女の痛み苦しみを表しているようであった・・・ジャファイマも「よぐ頑張った、よぐやった・・・!」
とミリアを抱きしめ、優しく撫でながら・・・目元に涙の粒を浮かべていた。

ジャファイマから休養の許可を取り、ミリアは村が一番賑わう表通りへと足を運んだ。
お気に入りのミントケーキを食べようと、村のカフェへと鼻歌交じりに軽やかに歩いていたとき、ラティナとファミィに出くわした。
「あ、ミリアちゃん!調子はどう?」「ミリア〜、うてぃき〜(おはよう)!」ミリアも「おはようなの〜!」と明るく返した。
合流した二人を誘い、ミリアは目的のカフェへと着いた。小洒落たデザインの建物の入り口に、「Open」と書かれた看板が垂れ下がる。
ドアを開けると「カランカラ〜ン」と軽やかにベルが鳴った。奥のダイニングから「いらっしゃ〜い」と声がする・・・。

まだ早朝なのか、人はあまりいないようだ。静かな店内に、心地よいボサノヴァのメロディが流れる。
ダイニングのテーブル席に3人は着き、マスターにそれぞれが食べたいものを注文した・・・・すると
ミリアたちの目の前に見覚えのある顔があらわれた。クレイグである。彼は12人の戦士の一人で、第2位の実力者。
同時にエディの特訓指導に当たっている人物でもある。これには3人も驚きを隠せなかった。
「あ、ミリアさん、ラティナさん・・・それにファミィ君。いらっしゃい、ここはおれが切り盛りする店だよ。
 普段はこうやって、日が昇る間はカフェ、夜にはバーを経営しているんだ。ゆっくりしていってね。」
はにかみを浮かべ、照れくさそうにクレイグが言葉を紡いだ。

189ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/16(月) 13:37:57 ID:hIuXbFKM0
ミリアとラティナ、ファミィはカフェのマスターであるクレイグと会話に興じていた。
エルフの村のことや、森の外のこと・・・ミントケーキと紅茶を片手に、皆が笑い合いながら
楽しそうに話を膨らませる中、カフェにまた来客が。今度はバーソロミューとマスケーロがやってきた。

「やぁ、ミリアちゃんにラティナ、それにファミィ。あ、クレイグさんも・・・おはようございます」
「おはよう、バーソロミューさん。オススメの朝食セットがあるけど、どうです?おいしいですよ。」
「そうですね・・・ではいただきましょうか。ポークソーセージも付けて貰えますか?」
「クレイグ、僕も彼と同じポークソーセージセットをお願いできますか?」
「はは、二人ともそっくりだな〜。修行の方はどうだい、マスケーロ?何か困ってることとか無いかな?」
「いいえ、とても楽しいです。バーソロミューさんの魔法もとても勉強になるし、お互いいい刺激になってます。」
微笑みながら、穏やかに話すマスケーロ。そこへラティナやミリアも割って入り、話はさらに膨らんだ。
「あの、マスケーロ君?エルフにも人間の魔術師と同等の魔法を使える子もいるの?」
「ええ、もちろんいますけど・・・彼等ほどの能力を持ってるエルフは一握りしかいないんですよ。」
「でもでも、ミリアたち人間の使えない魔法も使えるんだから、スゴいと思うの〜!」
「はは、ありがとうミリア。僕もまだ修行の身ですから・・励みになります。」

朝食を食べ終わり、一行は各自の修行へと向かっていった。お互いの事を知ることもできた。
人間とエルフの絆が、またひとつ強固なものへと近づけれた・・・そんな朝がカフェに訪れた。

190ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/16(月) 13:54:57 ID:hIuXbFKM0
あとがき。

まずはミリアの修行風景とイントロ。
そして出ました津軽弁。おばさんキャラに似合いそうだと思ったので早速活かしてみました;;
日本中に存在する方言の中でも、特に難しい部類に入る方言をご堪能あれ・・・・

こういう感じで時間軸をずらしながら、各キャラの修行風景とカフェでの一時を描こうと思います。
次回はついにミリアの必殺技が誕生ですよ!彼女の二つ名も決定します。

>175さん
いえいえ、おかげでさじ加減の意識も強くなりましたので。
ご忠告して頂いて感謝です。エロ板のご紹介もありがたいです。

>HIMAJINさん
なかなか心に響くストーリーでしたw
亡くなった戦友からの届け物、そして受け継がれる遺志・・・
とても感動的な作品をありがとうございます。

>パレットさん
剣士が拳一つでGvで勝利、とても斬新です。
けいたの勇士、とてもカッコイイですぜv
序盤のギャグシーンにも笑わせて頂きました。

191HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:53:59 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜1

 シーフ・・・物や金品を盗む輩。
いつの世もあまり褒められる事柄ではない。
この世界でも、どちらかと言うと忌み嫌われている職業でもある。
しかし、エルベルク山脈ハノブ地方に伝説として語り継がれるシーフがいた。


 オアシス都市アリアン。
 広大な砂漠の外れに古の商人達が命を賭して築いた貿易の都でもあり、
この地方でしか手に入らないレアアイテムを露店している事も珍しくなく、
多くの狩人や商人達が古都ブルネンシュティグから訪れる大都市である。
勿論中には出所の妖しい品々も多く、交渉の最中に争いとなり、命を落とす者も僅かではない。
そういった者の多数は広大な砂漠の砂と風の中に葬り去られるのである。
 砂風酒場の一番奥のテーブルに人目を避けるように男は佇んでいた。
黒いビロード生地の帽子を目深に被り、同じ素材らしいマントで上半身は覆われていた。
足には小さな羽根の形をあしらった装飾が施された見たことも無い素材のブーツを履いていた。
華奢な体型ではあるが、ネコ科の猛獣の様な鋭い眼光が帽子のつばから垣間見える。
 こういった酒場ではギルド連合でも入手出来ない様な裏の情報が手に入り易く、
また、表には流せない商品の取引なども頻繁に行われていた。
男の座る椅子の背中合わせの位置に別の男が音も無く腰を下ろした。
頭に茶色のターバンを巻き、いかにも商人風の体をなしてはいるものの、
やはり、彼も仕草の一つ一つに無駄の無い、ある種の達人の雰囲気が滲み出ている。
だが、それも周囲の飲んだくれや、未熟な狩人達には決してうかがい知れないレヴェルであった。
「神々の品は・・・」
「幻影の中に・・・」
周りの雑音に紛れ込ませながら合言葉が囁かれた。
「ブツだ・・・」
黒い男は、座った椅子と壁の間から包みをそっと手渡した。
商人風の男は手馴れた手つきで包みの中身を確かめると、
口元に僅かに笑みを浮かべて呟いた。
「さすがだな、キース・・・」
「おい・・・」
口調に若干の怒気が込められつつも、静かな低い声が呟かれた。
 往々にしてこの世界の住人は、名前を隠したがる。
もっとも、キースという名前にしても、恐らく本名ではないだろう事は明らかだった。
「ぐっ、す、すまん・・・」
商人風の男の顔が、みるみる蒼白色に変わっていく。
勿論、それは椅子の背もたれの陰から突き立てられている刃によるものであった。
その刃は禍々しい鈍い光を放ち、見る者の魂を凍てつかせる程のオーラを醸し出していた。
「か、金はいつもの通り、ブ、ブルネンシュティグの銀行に振り込んである・・・」
かろうじて答ると、腰に当たっていた刃の感触が消えた。
商人風の男は、ほっと息をついた。それもそのはず、
現に今週だけで、この酒場から永遠に喋れない男が3人出て行った。
危うく自分が4人目になるところだったのだ。
震える膝をかろうじて押さえながら席を立つ。が、後ろの席には決して目を向けない。
そんなことをすれば確実にあの刃が自分の喉下につきたてられるのを知っていたし、
自分のレヴェルでは間違っても勝てないことを分かっていたからだ。
もっとも、既にキースの姿は、そこには無かったのだが・・・。

192HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:54:22 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜2

 シーフは基本的に単独行動を旨とする。
人数が多ければ分け前も減るし、秘密の通路や財宝の在り処などがばれてしまうからだ。
だが、もっとも大きな理由は、自分の存在を隠し、かつ自分の命を守る事にある。
現にキース自身も、若い頃につるんでいた仲間を失っている。
 その日は偶々別行動を取っており、一仕事を終えた後アジトに戻ると仲間は全員殺されていた。
犯人は直ぐわかった。仲間の身体には傷跡が一つしかない。
それも剣や斧のような傷ではなく、確実に一撃で倒されているのだ。
その頃の彼らは、まだ未熟とはいえ、よほどの不注意でもしない限り一撃で倒される事は殆ど無かった。
またシーフは職業上、手持ちの武器を無くした場合に備え徒手空拳の修行を行っている者も多く、
敵の攻撃を回避する術は心得ていた。
しかし、傷跡は、後背部だった。
「マッド・ホーネットだな・・・」
巨大な雀蜂の毒を仕込んだ短剣で、シーフが良く使う武器である。
通常の投擲武器は、常に大量の数を所持し、敵に向けて放つ。
その為、攻撃回数にも限度があり、よって武道の心得も嗜んでいなければならないのだが、
ユニークアイテムと呼ばれるこれらの武器は、そのものを投げるのではなく、
武器から発せられるオーラをその分身として放つ。故に死体にはその傷跡しか残さない。
 勿論、翌週中にカタはつけた。古都の西口をふらついていた初心者(彼から見れば)3人組であった。
殺された仲間も特に気が合う訳ではなかったが、気のいい連中であったことは確かだ。
恐らく技術的に未熟な者達に、過去の自分を重ねたのだろうか。
あるいは、自分達の今までの生き方に対する贖罪のつもりだったのかも知れない。
そんな彼らに言葉巧みに近づき、土足でその想いを踏み躙った3人は、やはり許せなかった。
「出来心だったんだよぉ〜、ゆ、許してくださいよぉ〜」
「わ、悪かったよぉ。金は全部返すから、い、命だけは・・・な?」
一瞬、殺すのを躊躇った。無論、金に目が眩んだ訳でもなく、ましてや慈悲の心が芽生えた訳でもない。
ただ、仇とはいえ、こんな奴らの命を消して何が変わるのだろう。と考えたのだ。
3人はなお不自然で卑しい作り笑いを浮かべ、キースに命乞いを続ける。
「お、お願いしますよぉ〜兄貴ぃ〜。へ、へへへっ」
「兄貴・・・だと・・・」
瞬殺だった。
3人に同時に4発つづ、眉間、喉、心臓、利き手。
彼らには避ける間も、叫ぶ間すら無かった。

193HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:54:44 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜3

 あの日からキースは決して仲間を作らなかった。
むしろ敢えて他人との関係を拒んだと言っていい。シーフという職業が、さらに自然と環境を整えた。
どの町にも宿は持つが、変装と偽名で契約し、部屋に入るのも必ず夜更けを選んだ。
ある夜、東プラトン街道の茂みの中を移動中、変な物音を耳にした。
彼程のシーフならば、人の足音でも遠距離から聞き分けられる。
そして、それが敵なのか一般人なのかの見極めも容易だ。
そんな彼が「変」と判断した。流石は一流のシーフである。先ほどよりも完全に気配を殺し、
その「変」な物音のする方へ近づいた。
「はっ」コーン  (木に当たった)
「はっ」カキーン (木の後ろの岩に当たった)
「はっ」ザクッ  (木の根元の草むらに刺さった)
「はっ」トンッ  (木に下げてある的に当たった)
「ふぃ〜〜、やっと当たったかぁ〜」
まだ若いシーフであった。
(おいおい、なんて呑気な奴なんだ・・・)
あまりにも不規則な物音に流石のキースも失笑するところであった。
あの精度では、恐らく病気のコボルトにでさえ手を焼くだろう。
(ま、俺には関係無い事だがな・・・)
踵を返し、その場から去ろうとした彼は、その若いシーフの手に持たれた写真に目を奪われた。
「ジロンさん。俺が絶対に、あなたの仇を取るからね。」
(何故あいつが兄の写真を持ってるんだ・・・)
ジロン・・・
かつてハノブ地方で名を馳せた有名なWIZである。
現在デフヒルズ地方で「鬼と悪魔」と呼ばれる2人組がいる。
ジロンが「グラン」というWIZの盟友である事は有名だが、
「カイロン」という戦士の実兄であることは、あまり知られていない。
では、何故キースは、ジロンを兄と呼び、この事実を知っているのか。
実はジロンの父「カイジ」は、キースの父でもある。異母兄弟なのだ。
「カイジ」も戦士であった。故に兄(ジロン)は母似、弟(カイロン)は父似だったと思われる。
 キース自身、母親が亡くなる前に異母兄弟の話は聞いていた、
母から「私はこれしか持ってないけどね。」と1枚の写真も手渡されていた。
母の死を契機に兄に逢いに行こうとした矢先、兄の訃報を耳にしたのだった。
突然の肉親の度重なる不幸に押し潰されそうになるものの、兄の盟友である「グラン」にだけでも会い、
生前の兄の記憶に触れようとハノブに向うが、そこには生ける屍と化した一人のWIZがいるだけであった。
しかし、これまでの境遇からか、もしくはシーフという職業柄がそうさせるのか、
町の人々が囁く彼に対する心無い噂話をキースは信じなかった。
それよりも今のグランの姿を目の当たりにして、兄とグランの深い絆をかえって感じ取ることが出来た。
 キースは、グランに自分の素性は明かさなかった。というより、明かせなかったと言った方が正しいだろう。
「昔、世話になった者です・・・」と言って写真を手渡しただけの自分にさえ、彼は
「すまない・・・あいつを・・・」と言ったまま下を向きながら
「俺を・・・殺してくれないか・・・」と呟いたのである。
キースは、ほとほと兄を羨ましく思った。一人の男にここまで云わせる程の間柄だったのだ。
兄は間違いなく幸せだったのであろう。町の人間達が何を言おうと問題ではない。
恐らく、兄が逆の立場に立っても同じ事を言った筈だとまさに確信できた。
「グランさん、あなたにはまだ、やるべき事があるはずです・・・」
それだけ言って彼と別れた。
 余談ではあるが、後日グランの元にジロンの遺品が届けられたのは、キースの手配であった。
それまでの二人の功績を事細かく調べ上げ、ギルド連合会と直談判し、遺品をグランに渡すよう説得したのだ。

194HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:55:05 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜4

(あの写真は、グランさんに渡したはずだ・・・)
「おい、小僧・・・」
キースの突然の声に、若いシーフは驚いて振り向きながら足を滑らせ、腰をイヤと言うほど岩にぶつけた。
「!!!!!!!」
人間、本当に驚いた時は声が出ないらしい。
狼狽する若いシーフを気にもせず、キースは言葉を続けた。
「何故、お前がその写真を持っているんだ・・・」
「だ、誰だ!お前!!」
裏返りそうになる声で何とか切り返したが、キースの目は、あの眼になっていた。
「お前、質問には質問で返す。と、教わったのか?」
地面に落ちていた短剣を数本拾うと、そのまま投げつけた。
といっても、若いシーフには、その行動は見えていなかった。結果として、
その短剣が自分を岩場に釘付け状態にした状況からの判断だった。
しかし、彼の次の台詞は、キースも予想出来なかっただろう。
「すげ〜〜〜!」
「今の、どうやったんすか?」
「自分もシーフなんですけど、なかなか当たらないんすよ。」
「いや、村では結構いける方だったんすよぉ〜」
「武器って何使ってます?」
「良いブーツ履いてますねぇ」
「嫌いな食い物とかあります?」
呆れた。
キースに殺す気は無かったが、殺されていてもおかしくはなかった。
現に短剣を投げるモーションは見えていないのである。
だが、その若いシーフは、自分の命よりも、単純に起こった出来事に対し、歓喜の状態であった。
「黙れ!」
「・・・・」
「もう一度だけ聞く。名前は?」
「愚嵐・・・」
「なっ、グ、グランだと・・・」
キースは彼の服に刺さった短剣を抜き、地面に降ろすと
「場所を変える。ついて来い・・・」と言い、風下にある岩場の陰に連れて行った。
不思議とその若いシーフも弟が兄に従うように従順に後をついて行った。
「火をおこして、待っていろ。」
そう言い残すと、キースは忽然と姿を消した。
一方、愚嵐は当たり前のように言いつけに従い、薪を集めて火をおこした。
10分後、キースはどこからか新鮮な肉と水を調達してきた。
彼が肉を火にかけようとした時、グランが口を挟んだ。
「あ、あの〜。良ければ俺にまかせてもらえませんか?」
一瞬、ぎろりと愚嵐を睨むが、キースは肉を手渡した。
愚嵐は肉を受け取ると、腰に下げてあった小袋の中身を取り出し始めた。
そこには小瓶に詰められたスパイスや液体の調味料が並べられていた。

195HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:55:35 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜5

「お前、元は調理人か?」
「いえ、ただ、命の恩人の役に立ちたくて、我流で覚えました。」
「命の恩人?」
愚嵐は下ごしらえをしながら語り始めた。
「ハノブのグランってWIZ知ってますか?勿論知ってますよね。
 今はデフヒルズで戦士と組んで、鬼と悪魔って恐れられているWIZです。
 俺、あの人に命を救われました。捨て子だったんです。」
肉の焼け具合を計りながら愚嵐は続けた。
「ハノブのシュコブベックさんに預けられた後もグランさんはハノブに寄る度に俺にお土産持ってきてくれて、
 俺にとっては父親であり、兄であり。そんな人でした・・・」
愚嵐は言葉に咽ぶと、目にうっすらと光るものを浮かべた。
「あの事件だな・・・」
その様子を察したキースが、愚嵐に語りかける。
「はい・・・グランさん。ジロンさんが死んだのは、俺のせいだって・・・」
焼けた肉を火から降ろすと愚嵐はうつむいて大粒の涙をこぼし始めた。
「あの事件は古都のギルド連合会でも大騒ぎだった・・・ハノブでは中傷の的にもなったと聞いたが・・・」
 事実、当時の二人はハノブ地方でも有名人であった。しかし、それ故グランに対する心無い町人の誹謗も多く、
実際グランも己の責任と甘んじて受けていた節もあった。
「違います!グランさんは、そんな人じゃありません!」
激昂する愚嵐の握り拳からは血が流れていた。
「だが、人の口に戸は立て掛けられぬものだ・・・」
「だから、俺がジロンさんの仇を取るんです!」
「あの人の仇なら、グランさんが取ったはずだが・・」
「ええ、だから、おいらが取るんです・・・」
愚嵐の言葉が理解できなかった。怪訝そうな顔をするキースに愚嵐は続けた。
「グランさんが悪魔と呼ばれるような狩りの仕方をしてるのは、何故だと思います?」
さっきまで泣きじゃくっていた顔が、なるほど一人前の男の顔になっている。
「グランさん、ハノブを発つ時においらに言ったんです。
『俺ぁよ。ここでくたばる訳にゃぁ行かねぇんだとさ』って・・・」
 まさしく自分の言葉がそうさせたとキースは理解した。
「グランさんは、死に場所を求めてるんです・・・」
 これにはキースも参ってしまった。あの日かけた言葉と行動が
良かれと思いしたものの、グランをそこに向わせてしまったのだ。
「仇は・・・」
キースはやっと、それだけを口にした。
「仇は、グランさんの心の中にいます。今のままの姿は、ジロンさんも望んでないと思うんです。
 おいらは、グランさんに命を救ってもらいました。今度は、おいらが、グランさんの心を救わなきゃって・・・」
 キースは気がついて驚いていた。
まだ幼さの残る顔立ちからは想像も出来ないほどの確固たる決意に。
そして、本当ならば自分がしなければならない行動を出来なかった自分の未熟さに。

196HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:55:58 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜6

「なるほど・・・わかったよ・・・俺も・・・」
「?」
「しかし、あの投擲の腕前では、まだまだ無理だな・・・」
「は、はい・・・おいらも、それは分かってます・・・」
「明日から俺が鍛えてやる」
「えっ!本当ですか!!」
「仮にも悪魔に追いつこうというんだ。容赦せんぞ!」
「は、はい!よろしくお願いします!師匠!!」
突然のキースの言葉に、歓喜の表情で愚嵐は立ち上がった。
その刹那、愚嵐の背中に鈍い痛みが走った。
「ぐわっ!」
「小僧!!」
迂闊だった。キース自身、感情の起伏に飲み込まれ、スパイクワームの接近に気付いていなかった。
あたりをぐるりと十数匹のスパイクワームが取り囲み、一斉に襲い掛かって来たのである。
キースは素早く立ち上がると同時に右手でマントを払い上げ、
腰からルインドライバーを抜き、瞬時にスパイクワーム達を全滅させた。
「師匠・・・かっこいい・・・」
「馬鹿野郎!傷は大丈夫か!」
キースは愚嵐を抱き起こし、背中の傷を見た。
「なっ・・こ、これは・・・」
切り裂かれた愚嵐の服の合間からは
血の滲んだ天使の翼が見えていた。
「お前、追放天使だったのか・・・」
「ははは・・・ばれちゃいましたね・・・」
 追放天使・・・
それは500年以上も前にRED STONE強奪事件の責を問われ
天界より追放された者達であった・・・

197HIMAJIN:2007/07/16(月) 14:56:18 ID:6wLuC09w0
RS外伝 〜幻影の行方〜7

「おいらサンクチュアリしか出来なくて・・・
 狩場で怖くて固まってるとこを、グランさんに助けられたんです。」
「では、愚嵐という名前も・・・」
「はい、偽名です。というか、地上に堕とされた時に記憶を無くしてしまっていて、
 グランさんが、自分の名前をもじって『ラグーン』って付けてくれたんです。」
応急手当をしながらキースが続けた。
「なるほど、言葉遊びか・・・」
「はい(笑)ただ、ちょっとネーミングのセンスが・・・」
「お前・・・グランさんに逢ったら言いつけてやる・・・」
「いや、待って!それだけは!!」
「何しろ悪魔だからな・・・あの人・・・」
巻き終えた包帯の上から患部を軽く叩くとキースは古都に向って歩き出した。
「勘弁して下さいよぉ〜!師匠ぉ〜!」
「誰が師匠だ?グランさんの逆鱗に触れるのは、お前だけだ!」
「そ、そんなぁ〜〜!!」
いつの間にか夜が明けていた。

 数ヵ月後・・・古都ブルネンシュティグ
「くっそ〜!またか!」
「2人組の犯行だって事は分かってるんだが・・・」
「なぁ、知ってるか?ボスの金庫の上に羽が置いてあったんだとよ。」
「じゃぁ犯人は追放天使か?」
「ばか!やつらが鍵を開けられる訳ねぇだろ!」
 最近、悪徳商人のみを狙って盗みを行う者達が出てきた。
盗まれた方は、自分達の素性の事や、金の出所を公に出来ない為、
国やギルド連合にも掛け合えないでいた。
そして、裏の世界で大きな窃盗事件があった次の日は、
決まって古都の平民達が、ささやかな幸せの恩恵を受けた。
「ママ〜!」
「どうしたの?坊や。」
「テーブルの上にお金がいっぱい置いてあるよ?」
「え?まぁ、こんなに沢山・・・」
「ママ〜あとね。とっても綺麗な羽が置いてあったよ。」




198HIMAJIN:2007/07/16(月) 15:00:17 ID:6wLuC09w0
あとがき

思っていたより好感触のお返事が多く、少々戸惑いました(笑
今回は、やや長編?の為、若干分かりづらい部分が多いと思います。
その所は「素人のお遊び」という事でご勘弁を。
まぁ、実際のRSでは(グランもキースも)こんなに格好良くないですが(笑

199HIMAJIN:2007/07/16(月) 15:17:40 ID:6wLuC09w0
あたたたた
またやってしまいました(泣
>>194
彼が肉を火にかけようとした時、グランが口を挟んだ。
 ↓
彼が肉を火にかけようとした時、愚嵐が口を挟んだ。
と、脳内変換お願いします。

200◇68hJrjtY:2007/07/16(月) 15:56:20 ID:g1IbIIig0
>パレット
剣を持たない剣士の珍しさ…それは本当にそうでしょうね(汗)
でも剣士ならば武道並みの格闘攻撃くらいできそうな気がします。
実際の剣士や侍なども窮地で武器が無い時にこうして戦っていたのかもしれませんしね。
だんだんとけいた君が音葉さんと仲良くなっていくのが楽しみです(*´д`*)

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
津軽弁おばさん、何かピッタリしててとっても良いです(笑)
しかしミリアもそうでしたがジャファイマおばさんも格闘技が得意技とは本当に意外で面白いです。
それでいて凄く強そうな…そして、エルフの他の十二傑たちもとても個性的ですね。
各キャラの修行風景も何か想像できそうというか(笑)
一番危なそうなのはフィナ姉ですが(;・∀・) エストレーアさん、襲われてなければいいけdゴホゴホ
ミリアの二つ名も楽しみです。次回またお待ちしています!

>HIMAJINさん
ジロンの死から始まった物語がどんどん広がっていくようですね。
これでグラン+カイロン、キース+愚嵐というコンビが出来上がりですか。
元追放天使だった者がシーフに、という転職(?)が特に面白いと思いました。そういうのもアリですよね。
職性別と違う性別とか転職とか実際のRSでは不可能な事も小説なら自由自在ですよね(笑)
もちろん続編があるならばまたまた期待していますよ。二人同士が会える日が来ると良いですね。

201携帯物書き屋:2007/07/16(月) 23:49:45 ID:7KhMsb260
○3スレ目
プロローグ>645
>646 >693-694 >719-721 >762-764 >823-825 >874-878
○4スレ目
>34-37 >73-75 >95-98 >185-187 >227-229
>306-310 >383-384 >461-465 >556-559 >634-638
>716-719 >812-813 >817-818 >831-832 >877-883
>941-944 >995-997
ネタ話>123-125

あらすじ&キャラ紹介>33 前回>>155-159


どうもこんばんは。今回はわりと早く執筆することができました。
そして上のやつは殺人技術さんのを少し真似てみました・・・・・・ごめんなさい、殺人技術さん。

この前自分のを読んでくれている人数を考えてみたら、軽く凹みました。考えるんじゃなかった……。
やはり長いと読む人も少ないんだろうなぁ。
というかこのスレ知らない人も多そうだなあ。

何だか見た目は最終決戦みたいな雰囲気です!

202携帯物書き屋:2007/07/16(月) 23:50:58 ID:7KhMsb260
『孤高の軌跡』

「いやぁあああっ!! ヘル、ヘル、ヘルゥゥっ!!」
突然狂ったように少女が絶叫する。
今まで耐えていた物が急に途切れたように、少女はただ泣きじゃくった。
「おい……」
俺は声をかけるが、なにぶん今まで人と深く関ることがなかったせいか、続く言葉が見つからず、
それ以上何もできなかった。
俺が対応に困っていると、そっとニーナが少女を抱き締めた。
言葉はない。
だが、そんな物以上に温かい何かがそこには在った。
少女は1度大きく震えると、落ち着いたようにゆっくりと震えを収めてくれた。


しばらくして、少女は少しだけ元気を取り戻した。
だが、それはただの強がりのようでもある。
少女は1度深く俯くと、軽く頬を染めながら俺たちに礼を述べた。
それから余りしんみりともしていられないということで、俺たちは作戦会議を始めることにした。
ニーナを中心にして会議は始まる。
「えっと……まずは今後の方針だけど、2人はここで残って。そもそもこれは私の問題だから……」
「そんな訳にはいくかよ。俺も行く」
「そうよ。あたしも付いて行くわ」
ニーナの意見に俺は当然反論する。
少女まで行くと言うのは少し意外だった。
「ダメよっ。危険さは今までと比にならないわ!」
ニーナは必死にまくしたてて、俺たちの意見に反対する。
だが、それでも俺はニーナの意見に頷く訳にはいかない。
「いや、俺も行く、行かせてくれ。あの悪魔が言っていただろう? 俺を待ってる奴がいるって。
そいつに、俺は会わなければいけない気がするんだ」
「あたしも。ヘルがやられたってのに、じっとしているなんて嫌よ。昔からこんな性格でね」

「……はあ、判ったわよ」
しばらくして、ようやくニーナは折れてくれた。
「でも、絶対に私たちに近付かないで。これだけは絶対よ」
「判ってる。俺たちがいると足手まといだからな。ニーナの戦いの邪魔はしない、ただでさえ相手は強敵だからな」
「そうね。危険なことはしないわ」
妥協案として、俺たちは最低でも敵の目が届かないところで待つ、ということになった。
次の議論に移ろうというところで、俺はふと少女の腰に何かが差してあることに気付く。
「おい、その腰に付いてるやつ、何だ?」
俺が指を差して指摘すると、少女は今思い出したかのように腰に手を当てた。
「え、これって……嘘でしょ?」
「何なんだ?」
身を乗り出して覗いてみる。
それは、小柄な短剣だった。実戦向きではないらしく、様々な模様が彫られている。
「貴方……どうしてこれを持っているの?」
神妙な面持ちでニーナが尋ねる。
なんだか俺だけ除け者にされている気分だった。
「この剣はヘルから貰ったのよ。護身用にって……」
その言葉で俺もニーナの驚きの意味が判った。
ヘルベルトが消えたのに、ヘルベルトの物である剣が残るなんておかしいからだ。
「もしかしたら、所有権ごと貴方に渡したのかもしれないわね」
「どういうこと?」
少女が素早く聞き返す。
ニーナは考え込むように頷くと、再び顔を上げた。
「これは私の考えだけど、つまり、あの人は今みたいなことも考慮して渡したんじゃないかしら。
……こんなところでも、あの人は貴方を守っていたのね」
ニーナが優しく微笑む。
その言葉を聞き、少女の目から再び涙が零れた。
「ごめんなさい。なんだか、最近あたしらしくないなぁ……」
恥ずかしそうに少女は呟くと、真剣な表情でニーナに向き直った。
「ニーナさん、お願いがあるんだけど……」
「なに?」
少女は少し躊躇った後、吐き出すように言った。
「あたしと契約してください。その、あたしも力になりたいんです」
「え……いや、私はもうショウタと……」
「判っています。仕組みについてもヘルから聞いています。でも、相手は強敵なんでしょう?」
「そうだけど……。いいの?」
ニーナが問うと、少女は静かに頷いた。
「貴方に私を受け入れる心があればいいわ。では、いくわよ」

203携帯物書き屋:2007/07/16(月) 23:51:53 ID:7KhMsb260
「……これで、終わり?」
「ええ。霊感を持つ貴方なら変化が判るはずよ」
怪訝な表情で少女は体中に手を当てる。
その、変化とやらを確かめているのだろう。
「さて。それじゃ、そろそろ話の続きを始めるわね。
次は、いつ攻めに行くかなんだけど……私は夜明け前がいいと思うけど、みんなは?」
「ニーナが完全に回復してからの方が良くないか? なにもそんなに急がなくても」
「そうよ。相手はただでさえ強敵なんだから」
「違う、そうじゃない。あいつは私たちをあぶり出す為なら一般人でも巻き込みかねないわ。
そうならない為にも、ね」
ニーナの言葉を聞いて俺たちは反省するしかなかった。
正義ぶっていても、所詮子どもだ。
結局、自分たちのことしか考えていなかった。
「すまんニーナ。そこまで頭が回らなかったよ」
「あたしも。じゃあ、疲れをとるためにも仮眠をとりましょ」
少女の意見に俺は頷く。しかし、ニーナは頷かなかった。
「でも、まだ問題があるのよ。その、相手の居場所が……」
それを聞き少女は、はっとしたように口に手を当てた。
冷静のように見えて、どこか抜けているらしい。
「しまった。すっかり忘れていたわ」
そう言って2人は考え始める。
だが、俺は違う。
俺には僅かだが心当たりがあった。しかし、これは言うべきかどうか。
悩んだ末、俺は言うことにした。
「なあ、1つ心当たりがあるんだが、いいか?」
俺が言うと、2人は頷いた。
「実は、例の白い線なんだが……あれがここに来てからずっと見えるんだ」
「白い線?」
少女が怪訝そうに問掛ける。
俺は少女に今ある情報を述べた。


「……信じられないわ。人間がそんな能力を持つなんて」
「俺だって信じられないさ。でも、確かに見えるんだよ」
俺が言うと、少女はむぅ、と鼻を鳴らすと、考え込むように指に顎を乗せた。
どうやらやっと“素”が出てきたようだ。
「……何度考えても有り得ないわ。だって前例がないもの。
……でも、在るとして、あたしなりの考えとしては、それは“狂気、あるいは不幸が視認できる”のではないかしら?」
一拍置いて少女が続ける。
「原因としては、何らかの形で霊が取り付き、一時的にその断片が見えてしまったのではないかしら。
そして閉じていた能力が、ニーナさんと契約することで再び開いてしまったんじゃないかな」
「……なるほど。それなら色々と説明がつくな」
俺は長年の悩みが解決したような爽快感で頷く。
ふと顔を上げると、そこには哀れむような面持ちをした少女の顔があった。
思わず呼吸が止まる。
今まで意識していなかったが、この梨沙という少女もとんでもなく美人だったからだ。
俺がみとれていると、少女が口を開いた。
「でもね、そんな能力を持った人間は必ずと言っていい程不幸になるものなのよ。
例え能力が閉じていたとしても、ね。狂気や不幸が見えるなんて物はその典型よ。
……よくこれまで、苦痛に耐えてこれたわね……」
「それはっ……」
違う、とは言えなかった。
何故なら父さんは、この能力に、俺に殺されたから。
その後は苦痛と孤独の日々だった。それは苦しくて苦しくて、そしてなにより寂しかった。
誰も俺に振り向いてくれず、俺も、誰にも向き合わなかった。

――――ニーナに逢うまでは。

だから、俺はこんなにもニーナに惹かれ、こんなにも気になるのかもしれない。
気が付くと、俺が黙ってしまったせいか、場の雰囲気が重くなっていた。
「とりあえず、体力回復の為にも今日は寝ましょ」
「そ、そうね!」
気を使ってくれたのか、2人が話題をそらした。
だが、言っていることももっともなので、俺は2人に空き部屋を貸した。

部屋の電気を全て消し、俺もベッドに沈む。
「長い1日だったな」
適当にぼやき、耳を澄ます。
隣からは既に静かな寝息が立てられている。
そして俺も、胸に明日の不安や思いを秘めながら、まどろむように意識が途切れた。

204携帯物書き屋:2007/07/16(月) 23:52:34 ID:7KhMsb260
「……ショウタ、起きて。ショウタ」
「んっ……」
ニーナに揺すられて俺は目が覚めた。
目覚めが悪いせいか、思考の回転が鈍い。
「遅いわよ、アンタ」
―――と、見慣れない少女が顔を覗かせ俺を睨んでくる。
俺は頭を掴み、思考を巡らせた。
「…………あ」
「あ、じゃないわよ。これから戦いに行くっていうのに大丈夫なの?」
ナンダカコノヒトコワイ。
というか別人のような?
「あの、君本当にさっきの……」
言いかけて気付く。
これは恐らく彼女なりの気遣いだろう。
確かに下手に気を遣われるよりもこっちの方が幾分かマシだ。
「なによ」
少女が怪訝な目付きで睨んでくる。
……それにしてもやりすぎのような?
「いや、ありがとう」
俺がそう言って立ち上がると、少女は不思議そうに俺を眺めていた。

棚の引き出しを開ける。そこから現れる銀光。
それは以前俺がニーナに強化してもらい、エアガンにして短銃程の威力を誇る代物だった。
1度だけ構えてみせ、懐にしまう。
「よし、行こう」


時刻は4時十数分前。日が昇るにはもう少し掛る時間だ。
俺たちは、俺が見える線を頼りに進んでいた。
「ねえ、その“線”ってどんな風に見えるの?」
ヘルベルトが託した剣を腰に下げながら、少女が問掛けてきた。
「そうだな……ずっと遠くから線が伸びてきて、俺やニーナや君を指しているって言えば判るか?」
「え。あたしたちにも線が? まあ、当たり前なんだろうけど。それと、あたしの名前は赤川梨沙よ」
「え? あ、ああ」
納得して少女が顔を引っ込める。
どうも、これから戦場に赴くって雰囲気ではなかった。
まあ、虚勢なのだろう。
俺は1人難しそうな顔をしているニーナに話を振った。
「なあニーナ。勝算はどのくらいあるんだ?」
「そうね。能力差的にとことん追い込まれるでしょうね。でも、勝機はある。
それに、2人の為にも絶対に勝つわ」
そう言ってニーナは微笑んだ。
「それよりショウタも気を付けて」
「え?」
「ほら、あの悪魔が言っていたでしょう? 貴方に会いたがっている人がいるって」
「ああ、それのことか。大丈夫だよ、それよりニーナも少しは自分の心配をした方がいいぞ?」
俺の言葉にニーナは笑って答えた。


それからはずっと軽い雑談を混じらせながら進んだ。
しばらく進むと、俺は線の終点が近いことに気が付いた。
「……そろそろだ」
その一言で場の緊張が高まる。
俺は慎重に線を辿った。
線の終点に始点。そこがもう見える。
「ここは……」
「え、ここ?」
「ここは確か魔獣使いの……」
辿り着いた場所はなんと崩れかけた洋介の家だった。
「でも、確かに線はここから伸びているぞ」
「そうね。僅かだけど魔力を感じる。皆、準備はいい?」
俺たちは向かい合い、最後に互いの意思を確認した。
「よし、行くぞ」
意を決し、俺は扉に手を掛けた。

205NT:2007/07/17(火) 03:22:43 ID:7vEYw8h.0
そろそろまとめでも作って置かないと見にくくてしょうがないと思い作成
〜〜〜〜〜前スレ〜〜〜〜
第一話932-934
第二話937-939
第三話987-990
〜〜〜〜〜ここから本スレ〜〜〜〜
第四話>>13-16
第五話>>46-52(51はスルーしてあげてください(笑))


第六話

今日も俺は稽古をさぼった。
理由は簡単、稽古が嫌だからだ。
もちろんちゃんと理由はある。
姉上達と比較されたくないから…

「レイ、今日はちゃんと稽古に出なさいね。」
朝食の席で母上が俺に言った。
最近の俺の態度に困り果てているようだ。
…別に困らせたくてさぼっているわけではない。
そう言おうとしたがやめた。
居づらい雰囲気になったのですぐに食べ終えて席を立った。

「あ、レイ。たまには稽古に顔を出しなさいよ。」
廊下でエレナ姉さまとすれ違う。
…会いたくなかったなぁ。
「…気が向いたらね。」
俺は顔を見ずに答えた。
「んー返事をするときは相手の顔を見て言うってお母様に習わなかった?」
姉上達はよく俺に絡んでくる。
別に姉弟なのだしあたりまえだと思うが稽古のことになると俺は嫌気がさす。
俺は姉上達と比べられたくないからでないんだよ…
まあ俺は口には出せなかったが。
俺は逃げるように走り去った。
「あ、ちょっと…!」
後ろで呼び止める声が聞こえたが無視した。

稽古の時間の15分前。
俺の部屋のドアがノックされた。
「レイ…いる?」
この声は…シリル姉さまか。
「…」
俺は居留守を使う。
返事をしたら姉上の独特の雰囲気に圧されて稽古に出る羽目になるからな。
「あれ…?もういっちゃったのかな?」
そういって去っていく姉上。
本当に人を疑わない人だ。将来が軽く心配だ…
そしていつもの手順で屋敷を抜け出した。

そうしていつも来るお気に入りの草原で寝転ぶ。
…わかっているさ。
姉上達がそこまで天才というわけじゃない。
ただ俺が落ちこぼれなだけなんだ。
俺には母上が読んでくれた童話に出てくる「盗賊」のほうが性に合っている。
細かい作業とかこっそり物を取ることとか人を騙すこととか実は得意だったりするし。
そういえば、あの童話に出てくる盗賊の名前なんだったかな…?

ああ、思い出した。「ウィド」か。
かっこいいよなぁ。
俺もあんな風になってみたいや。
そうして日が暮れるまでいつもここにいる。
稽古のある日はいつもこんな感じだった。

ある時、いつものように抜け出して草原に行くといつもと違う感じがした。
「声…?」
泣き声が聞こえる…女の子の声だ。
どこからだろう?
声のする方に歩いていくと一人の少女がいた。
「あ…」
思わず声が出てしまった。
その少女はとても可愛かった。
でも泣いていた。
俺はそれがなぜか許せなかった。なぜ彼女が泣かなければいけないのだろう?
そして泣きやませてあげたいと思った。
ここは…笑わすのが一番か。
彼女は笑い顔が一番いいだろう。
意を決して俺は彼女に話しかけた…

206◇68hJrjtY:2007/07/17(火) 03:23:22 ID:g1IbIIig0
>携帯物書き屋さん
いよいよ決戦の舞台へと話が進んで行くのが分かります。
ただしかし、ショウタ君の能力の真相とアイザックの言っていた「ショウタと会いたがってる人」が謎のままですね。
エミリーvsアイザックの舞台だった洋介の家が再びの舞台というのも因縁めいてて面白いです。
これが最終決戦となるのか、それとも…。楽しみにしています。

スレを知らない人が多い…私も同様でしたが結構惜しい話ですよね(´Д⊂
赤石小説が公式のイラスト募集と同じようにして募集・優秀作品公開みたいにしてくれたらいいなあ(笑)

207NT:2007/07/17(火) 03:25:32 ID:7vEYw8h.0
あれから一週間がたった。
彼はまだ起きない。
その間、私達は少年…リドの家に厄介になっていた。
リドの父親は長い間いていいと言っていたが…
そんなに迷惑をかけるわけにはいかない。
それよりも…
なぜ彼は起きないのだろうか。


私は起きるとまず隣のベッドで寝ている彼を見る。
起きていないことに若干落胆してリド親子と朝食をとる。
そして軽く運動をした後昼過ぎまで彼のそばにいる。

昼食後はリドの父親の手伝いをする。
無償で食住を提供されるのはあれなので私が強引に引き受けた。
といってもこのあたりの警備で正直暇だ。
(本当は彼のそばにいてあげたいが…)
夕方過ぎまで巡回などをしながら暇をつぶす。
リドと遊んでやるのもこの時間帯だ(もちろん見つかると怒られるが…)

夕食、入浴後は寝るまで彼のそばにいる。
でも彼は起きない。
医者が言うには一種のショック状態らしい。
だからいつ彼が起きてもいいように可能な限りそばにいるつもりだ。
こうして夜が更け私の一日が終わる。

でも
もう一週間だ。
たまに頭の中に最悪の事態を想像してしまう…
リドには「心配症」とよく言われる。
彼も明るさを取り戻した。
初めのころは会うたびに謝られた。
ウィドが切られたのは自分のせいだと思っていたからだ。
そんなことはない。
あれは敵を確実に殺し損ねた私たちの責任だ。
そう言い聞かせてやっと彼は謝るのをやめた。
あとは彼が起きれば万事解決なのだが…
彼は起きなかった。


ある夜
いつものように彼のそばにいる。
ここで眠りに就いてから彼は寝言を言わなくなった。
過去を振り返る寝言を言わなくなった。
それは喜ばしいことなのだろうか?
彼の顔を見る。
「ウィド…」
呼びかけてみるがやはり答えない。
彼の顔を見る。
整った顔。今にも起きそうだ。
「…」
その顔を見ていたら、私はふと思った。
そういえば、一度やりたいことがあったな…
でも…
「…起きていない、よね?」
念のため確認してみる。
当たり前だが返答はない。
キスをしてみたい…
一回ぐらいなら…許されるかな?
そう思って彼の顔に近づく…
やっぱり駄目だよ。
そう思いつつも動きは止めない。
事故なら…うっかり体制を崩して倒れこんでしまったら仕方がないよね…?
自分に言い訳をしてみる。恥ずかしい…
そうしてあと少しで彼の唇に触れるとこまできたところで

「姉ちゃん!この問題がわからない、教え…て…」

乱入者(リド)が現れた。
「きゃあっ!」
あわてて彼から離れる。
「なな、何かしら?」
努めて「平静」に対応する。
リドはそんな私を見て
「ふーん」
明らかにすべてを察している気が…
「べべ、別に何もしていなかったわよ?」
私は「完璧」な返答を返す。
「ボクハナニモミテイマセンヨ。ドウゾツヅキヲ。」
そうして彼は明らかな棒読みで立ち去って行った…
「ちょっと!」
声をかけるがもういない。
ああ…誤解された。
本当に(まだ)何もしていないのに…

208NT:2007/07/17(火) 03:30:58 ID:7vEYw8h.0
あの時から俺とラミはいつも一緒にいるようになった。
二人で稽古をさぼって遊んだ。
そしてある時…
俺たちはあの人に出会った。

彼女が怪我をした。
俺に対抗して木に登ろうとしたら途中で足を滑らせた。
俺は手伝おうか?と聞いたが一人で登ると言ってきかなかった。
そんなに高い木じゃなかったので大したことないだろうと思った。
でも彼女はすぐに起きなかった。
だから今俺は焦っている。
どうにかしないと…!
でもどうする?
俺の家になんて連れて行けないし、俺はラミの家を知らなかった。
今すぐ何とかしないといけなそうだが俺には何もできなかった。
だからいつもの草原の近くに古い家見つけたとき俺はそこに飛び込んだ。

「すみません!だれかいませんか!?」
俺は叫んでみる。
誰かいるならその人に助けてもらおうとしたからだ。
「んー?これはこれはかわいいお客さんなことで。」
そう言って奥の部屋から作業着を着た女の人が出てきた。
「でもね?何回来ても、ましてや子供を使ってもダメなものはダメだからね?
家に帰ってそのことを伝えな…」
「すみません!この子を助けてあげてください!」
女の人の話を途中で遮って俺は頼んだ。
正直こっちの話の方がずっと大事だからな。
「…ふむ。君の「言葉」に嘘はないみたいだね…
わかったわ。彼女をこちらに。」
言ってることがよくわからなかったが彼女を見てくれるらしい。
俺は彼女を言われたとおりにベッドに横にした。
「…大丈夫。医者の心得もあるからそんなに心配しないでいいわ。」
俺の心配な表情を見て彼女はそう言った。
実際この人の処置は素人目で見ても素早かった。
やがて応急措置が終わって女の人は言った。
「外傷の手当ては終わったわ。多分もう傷も見えないから親に見られても大丈夫。
あとは…意識が戻らないのは軽いショック症状だから放っておけばそのうち目が覚めるわ。」
「ありがとうございます…よかった…」
俺は脱力して椅子にへたり込んだ。情けない…
「よかった、じゃないわよ?」
突然怒られた…
「何で彼女が怪我をさせないようにしなかった?それじゃ男として失格よ?」
言われたい放題…
「大体彼女が木に登れそうにないのに薄々気づいていたならなぜ張り合わないように木から下りなかった?この子の傷は貴女の責任よ」
何も言い返せない…ってちょっとまて。
「何でこの子の傷が木から落ちたものとか彼女が俺と張り合っていたとかわかるんだ?」
「少年、世の中には不思議な事がいっぱいあるんだよ?これはきっとそのうちの一つさ。」
うまいことはぐらかされた気が…
「そんなものですかね?」
まさか覗き見していたんじゃ…
「おいおい、少年。言っておくが私にのぞき見の趣味なんてないからね?」
…心でも読んでるのか?
まさか超能力者?そんなことないか…
「んっ…」
「ラミ!」
彼女が目を覚ましたみたいだ。俺は駆け寄る。
「ん…ここは?」
彼女は状況が把握できていないようだった。
「よかった…本当に良かった…」
「????」
「あらら…よかったわねぇ」
三者三様の反応がしばらく続いた


「ありがとうございました。」
ラミはお礼を言ってる。
「いいってことよ。同じ名前だから特別サービス!」
気前よくピースをする人。
同じじゃないだろうに…(と心の中で突っ込みを入れておく)
女の人はラミと名乗った。
本名は「ラズヴェーリア・ミルベストリス」などという長ったるい名前で、
「長いから短くまとめたのよ。」
という考えから始めと後の一文字目を取って「ラミ」にしたらしい。
ラミが二人もいると紛らわしい。
だから俺は、
「じゃあ師匠、また来ますね。」
師匠と呼ぶことにした。
盗賊には洞察力や観察眼も必要という。師匠からあのすさまじい(変な)洞察力を盗もうと決めたからだ。
「んーその師匠ってやめない?あと盗賊にそこまでの洞察力なんていらないわよ?」
「俺はそれがほしいのですよ、師匠。」
「むぅ、さては貴方、一度決めたことは絶対に守るタイプ?損をするわよ?」
何と言われても俺は帰る気はない。それに師匠もまんざらではない表情をしている気が…
「さて、もう暗いから行きなさい。あ、ラミちゃんはまたいつでも来ていいから。
一人だから結構寂しいのよ。」
「来ていいならもちろん!」
「当然俺も来ますからね。」
「さあ、帰った帰った!」
無視かよ…
「あ、お邪魔しました。」
「また来ますからね!」
そう言って俺たちは家から閉め出された。


奇妙な出会いだった。
俺達と師匠は。
師匠には感謝している。
この後入り浸っていろいろと教えてくれたから…

209NT:2007/07/17(火) 03:32:58 ID:7vEYw8h.0
あれから二週間後
私は起きる。
いつものように隣を見ると…
彼がいない。
「…え?」
どうしていない?
誰かが連れ出した?
とりあえず着替えて外に出よう。
そう思って外に出ようとしたら。

「ふぅ、いい湯だった。勝手に使ってよかったのかな…?お、ラミ起きたか。」

彼が部屋に入ってきた。
「…」
「ん?どうした?」
…こいつは、本当にこいつは、
「本当に…」
「本当に?」
これはまずい
「本当に…」
ダメだ、感情が抑えられない。
「本当に心配したんだから…!」
そう言って彼の胸に飛び込む。
彼が起きた。
本当によかった。
「…悪かったな。」
彼はぶっきらぼうに答えた。
彼はそのままでいたので私もしばらくこのままでいた。
涙が止まりそうにないから…



「今までありがとうございました」
「迷惑かけちゃってすみませんね」
私たちは別れの挨拶をした。
彼は起きたが少し身体能力が低下していたので取り戻すのに一週間余計に泊めてもらっていた。
「いえいえ。恩人にこれくらいは尽くさないと罰があたっちゃいますから。」
リドの父親には本当に感謝している。
「あの、リドは…?」
「別れには立ち会いたくないようで…朝から姿が見えないのですよ。すみませんね。」
まったく…
「いつかまた会いに来る、と伝えておいてください。」
「わかりました。」
「それでは、また。」
そう言って私たちは歩き始めた。
「さあ、遅れた分を取り戻すわよ?」
私は軽快に歩きだす。
彼も隣りにいる。
なぜだかこの光景がひどく久しぶりに感じた。
「まあ今までの詫びの分いつもより早く歩くかな。」
そう言って彼は走りだした。
「って、走ってるじゃないの!」
私は彼に追いつくべく走り出した。
これなら今日中にシュトラセラトに着きそうだ…

210NT:2007/07/17(火) 03:38:46 ID:7vEYw8h.0
今日も稽古をさぼってラミと遊び、師匠の家に行き、夜に家に帰って床に就いた。
…なぜだか変な夢を見た。
俺が誰かと話している夢だ。
―坊主…リドだったか?最後にひとつ教えておいてやる。
―…何?
―俺の連れはここを出た後そんなに経たないうちに死ぬ。別れの挨拶はさっさと済ますべきだ。
―な、なんでさ!
―なんでって?それはな…
―それは…?
―俺が、殺すからさ…


俺じゃない俺がそう言った…

To be continued



皆さん、お久しぶりです。そして初めまして。NTと申します
リアルが忙しくて最近サイトに来れない日々を過ごしていました。
で、久しぶりに来たら…
なんでこんなにレス数が伸びているのでしょうか?
軽く浦島太郎の気持ちがわかった気がします。(笑
新人さんや前スレからの方などいろいろな方が今書いていて盛況なのですね…
この波に乗らなければ!と思い急遽UPしました。(相変わらず変な時間帯に…)
まあ駄文ですが楽しんでいただけると幸いです。
さて…前期試験どうしよう…orz

211NT:2007/07/17(火) 03:42:25 ID:7vEYw8h.0
>>206の68hJrjtYさん
まさか2回連続で被るとは…(笑
妙な時間に投稿してすみません…

212◇68hJrjtY:2007/07/17(火) 04:14:53 ID:g1IbIIig0
>NTさん
レイの過去、その中のラミという少女と今共に歩いているラミの繋がり…
話の中でも重要な部分のベールが全てではないまでも少し取り払われたようです。
果たして二人のラミは同一人物なのか、それとも。もう一人のレイがラミを殺そうとしている真相もまだ謎でしたね。
一方でラミのレイへの愛というのも上手く描かれていて。まさに純愛というか、イイです(ノ∀`*)
次の目的地のシュトラセラトで何が起きるのか。楽しみにしています。

私の方こそ小説の流れを分断してしまい申し訳ありませんorz
こちらも書き込んでからNTさんの小説がUPされてましたのでちょっと間を置いて読ませてもらいました(笑)
というか二回目でしたか。ある意味では気が合いますね(*TーT)人(TーT*)
前期試験、頑張って下さい!小説は時間のある時にゆっくりUPしてくださいね。

213ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/17(火) 11:14:17 ID:OhTl4zsk0
修行開始から一週間、ミリアはジャファイマの指導の下、好調に修行に励んでいる。
打ち込みによる攻撃力の向上も成果を見せ、彼女の放つ蹴りや正拳突きはたった一発繰り出しただけで
練習台のカカシが派手に壊れるほどの破壊力を持つまでになった。

今日も今日とてカカシを相手に正拳と蹴りをブチ込んでいる。
修行も一段階レベルアップし、今度は魔力によって一定の行動をプログラムされたカカシ数体を
ミリアは相手取っていた。7体のカカシたちは円を描いた陣形を取り、パンチのみとはいえ
上中下段、3段づつを巧みなコンビネーションでランダムに繰り出す!これにはミリアは苦戦していた。
「ほらほら、止まってたらやられでまるど!避げだらすぐ反撃さねば!」ジャファイマの厳しい指導が入る。
「うゅ〜・・・・ミリアこれくらいの事でヘコたれないんだからね〜!!ハイヤ―――っ!!!」
襲い来るパンチやラリアットを上手く掻い潜り、そこから宙返り、そして滞空状態のまま体を捻って回し蹴りを放つ!
先述のとおり、ミリアの一撃は強烈なまでに威力が上がっている。カカシ全てがまたも派手に大破し、ドサリと地面に倒れた。
苦戦していたとはいえ、たった一度のチャンスで全員をのしてしまう能力にジャファイマは驚愕していた。
「わぃは〜・・・なんぼは〜スゲぇんだして・・こりゃわも負げでらんねェど〜」右肩に手を当て、肩をグルグルと回す。
指をパチンと鳴らすと、さっきまで破壊されたままのカカシが瞬時に元に戻り、今度はジャファイマを取り囲んだ。
「ミリアちゃん、よ〜ぐ見でるんだよ。すぐ終わるで・・・」円陣の中に入り、仁王立ちのまま彼女はミリアに言った。
最初の修行の日に彼女が見せたように、炎の氣を自らの上半身に纏う・・・その姿はまるで・・・・・
ミリアが不安そうに見つめる中、カカシが一斉にジャファイマを襲う・・・!!

「んぬあぁあぁぁああぁああああ!!!!」
ズドドドドドドドォン!!

だがそれよりも早く!ジャファイマの拳はカカシ7体全てにヒットしていた!!
なんとその間1秒にも満たないのだ、あまりの速さに、ミリアには彼女に腕が8本生えたように見えた。
そしてジャファイマが振り向くと、その表情は鬼のような憤怒の相に満ちていた・・・。
あまりの迫力にミリアはすくんでしまい、「あぅ、あぅ〜」と愚図り怯えてしまっている。
しかし憤怒の表情も消え失せ、ジャファイマの顔にはいつもの温かい笑顔が戻っていた。そして言った。
「わはね、12人の戦士の内の第4位『明王』の称号ば授かってらのよ。さっきのわぁば怖がったでしょ〜、ごめんね〜」
「うゅ〜・・・でもでもっ、ミリアも頑張れば炎を出せるようになるの?」無邪気にミリアが尋ねた。
「なるよ〜、明日からやり方教えてけらはんで、今日はゆ〜っくり休みなさい。飯もいっぺけぇ(いっぱい食べて)よ!」
今日の修行を終え、ミリアは意気揚々と「うゅ〜うにゅにゅ〜、うにゅ〜!」と妙な歌を口ずさみ、クレイグのカフェへと向かった。

214ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/17(火) 11:39:02 ID:OhTl4zsk0
さて、仲間やパートナーのエルフたちも修行を終えた夕方。
日は暮れ、クレイグの店の看板には「Bar is opening now...」と書かれている。
ちょうどミリアが着いた頃、エディとトレスヴァント、バーソロミューも到着していた。
「お、ミリアちゃ〜ん。どうだい修行の方は?強くなったか〜?」「うぃ!ミリア強くなったのよ〜!えいっ!やぁっ!はいや〜っ!」
「う"っ・・・・ちょっ、ミリアちゃん・・・そこ・・・みみ、みぞおち・・・ゲフっ」もっとも当たって欲しくない所にミリアの一撃が
クリーンヒット。エディは堪える間もなく倒れてしまった・・・。そこへトレスヴァントが茶々を入れてきた。
「あ〜ら〜らこ〜ら〜ら〜、ミリアったら凶暴〜♪ボクちゃん怖〜い」「うゅ〜!ミリア凶暴じゃないもんっ!」顔を赤くし否定するが・・・
「凶暴〜」「ちがうもんっ!」「ケダモノ〜」「ちがうのっ!!」「や〜いや〜い」「ちゃ・・・ふぇ・・ふやぁ〜ん!」
あらら、トレスヴァントがミリアを泣かせてしまった・・・・ということは・・・・!!

「ミリアちゃぁあ〜ん!お姉ちゃんが今助けにイクからねぇ〜ん!!」モンローウォークならぬモンローダッシュで
腰をくねらせながらフィナーアがもの凄い勢いで走ってきた!!隣にはパートナーのエルフ、エストレーアがアゴを上げながら伴走している。
そして現場に着くや否や、トレスヴァントに詰め寄った。エストレーアが「お、落ち着いて」と諭しているが、聞く耳持たずである。
「ちょっとちょっとぉ!?よくもアタシの可愛いくって萌え〜な妹を泣かせてくれたわね〜!?」「す・・すんませんむっ!?」
誤る暇も与えずに、トレスヴァントの顔を自分の豊満な胸の谷間に挟み込む!!俗に言う『ぱふぱふ』を仕掛けたフィナーア、その表情は
悦びに満ち溢れていた・・・。一方トレスヴァントは「む〜っ!む〜っ!!」と両腕を振り回して苦しさを訴えるが・・・無駄に終わる。
「さ〜て、トレスヴァントちゃんは何秒耐えれるかなァ〜?イッツショウタ〜イム!!」地獄のせめぎ合いが始まってしまった。
周りにいつのまにか沸いていた野次馬エルフたちが、今度は「トレスヴァントは何秒で落ちるか」というネタでトトカルチョを始め出す!!
フィナーアもノリノリで乳房を動かし、艶かし過ぎる喘ぎ声を連発する。そしてトレスヴァントも意地なのかまだ意識を保っている。

215ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/17(火) 12:03:35 ID:OhTl4zsk0
エストレーアが両者を説得し、そんな彼にブーイングを浴びせる野次馬。
騒がしい店の外をよそに、店の中では大人しいジャズの音色が流れ、ウィスキーグラスに入った氷が
「キィン」と涼しげな音を立てている・・・。カウンターを挟んで、バーソロミューとマスケーロの二人、
そしてマスターのクレイグはカクテル瓶をシャカシャカと振りながら、会話に興じていた。

「で、最近の調子はどうです?バーソロミューさん」にこやかで涼しげな笑顔を浮かべ、クレイグが訊いた。
「ん〜・・・何かが物足りないんですよ。ねぇ、マスケーロ。」「えぇ・・・四大元素を使った魔術は僕も彼も完璧です。」
「・・・てことは、魔法の精度も限界まで極めちゃって、んで覚えることが無くて退屈してるんだ?」
緑色のカクテルをグラスに注ぎながら、クレイグは彼らの心中を言い当てた。無言で頷く二人の魔術師。
「そういうことです。闇と光の元素を扱える方がいれば、僕の魔法も新境地へと発展できるのに・・・」
「僕も同じ気分ですよ・・・噂に聞く『黒いファイアーエンチャント』、できれば習得したいです・・・」
沈みまくったバーソロミューとマスケーロ・・・そんな浮かない魔術師二人に、ポンと肩に手を当てる者が。
「よう、何か困ってるみたいだねお二人さん?何ならオレのモリネルの友達でも呼ぼうか?お望みの魔法を教えてくれるぜ?」
フランクな口調の声の主は、フィナーアのペットでリプリートマーキzinのセルジオだ。
彼は懐からポータルを取り出し、それを耳に近づけるとバカでかい声で話し始めた。

「あ、もしも〜し!ようディンガ、オレだよ、オレオレ!!・・・はぁ、何?ちげーよこれ詐欺違うから!!
 あのさ、お前今ヒマ!?え、マジで!?やった、じゃ〜さトラン森まで来てくれない?え、何でかって?
 お前の黒エンチャ教わりたいのが二名いるんだと。・・・ちょっ、お前喜びすぎぃ〜、キモいから!!
 んじゃ頼むよ〜、ばいば〜い!・・・・っと、オッケー。明日には着くそうだから楽しみにしててちょ☆」

謎の助っ人が来ることになり、バーソロミューとマスケーロは期待と不安の入り混じった、複雑な気分になった。
しかしそんな二人をよそに、セルジオはカイピリーニャを注文し、クレイグと世間話に興じていた・・・
『黒いファイアーエンチャント』、それを扱える魔物とは一体何なのか・・・明日へと続く。

To Be Continued....

216ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/17(火) 12:09:40 ID:OhTl4zsk0
あとがき

さてさて次回予告から。
ストレートに1キャラが必殺技を編み出してしまうのもオイシくないと思ったので
いきなりスポットライトを当てるキャラが変わるみたいな進み具合いになりそうです。
次回はバーソロミューandマスケーロが、アレな趣味を持つディムジェスターzinに
黒エンチャを教わるお話。気持ちドタバタ劇にしてみようかと・・・・w

そして独り言・・・

ディムジェスターzin捕まえたいいぃぃ!!低レベル出してぇぇええぇぇええ!!

217◇68hJrjtY:2007/07/17(火) 15:05:14 ID:g1IbIIig0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
黒いファイアーエンチャントですか、それはもしかして例の…!?これは楽しみです。
毎回思いますがエルフを含めたペットや魔物が人間と同等な立場で笑ったり泣いたりしている世界観が素敵。
魔物が持ってる特技を人間が教えてもらう、みたいな発想はありませんでした。
ところでぱふぱふが決まっちゃってますね、可哀想なトレスヴァント。面白いけど。
ディムジェスター先生…リプ君同様フランクっぽい印象ですが、さあ、果たして(笑)

218 ◆21RFz91GTE:2007/07/17(火) 15:07:24 ID:hte6XkqY0
////**************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7 黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8 黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
  ■Act.9 封印されし鬼の末裔 1  >>98-99
////**************************************************////

Act10 封印されし鬼の末裔 2




 ピチョン、ピチョンと水滴が坑道の静けさにひとつのナチュラルサウンドを響き渡らせる。どこかに水脈が有るのかもしれないという事が伺える。
その中を三人の人間が移動している、先刻の地震にも似た揺れと爆発音、そして何処からか聞こえてきた断末魔のような悲鳴。そして欠けた一人。三人の頭には最悪の事態まで想像が出来ていた。
「クラウス!もっとスピード出ないの!?」
「これが限界ですよ!」
クラウスと呼ばれた一人のウィザードの魔法により尋常ではないスピードで移動している。浮遊の術で三人を浮かせさらに中級風精霊の力を借りた移動呪文の二つを組み合わせた移動魔術。強いて言うなら三人を浮かせたではなくクラウス本人が浮き背中に小さなビーストテイマーをおぶり、両手にアーチャーをお姫様抱っこした状態で移動していると言うのが正しい。
「それにしてもクラウスさんもタフですねぇ〜。」
「…イリアさん、こんな時に冗談は止めていただきたい。」
「そうよイリア、時と場合を考えなさい。…ちょっとクラウス、あなた何処触ってるのよ!」
「だぁぁぁぁぁ!マスターも笑顔でそんな冗談言わない!」
緊急事態だというのにからかわれているクラウスが多少なり哀れに思えて来る。だが三人はそれほど余裕があるとは到底思えない表情をしていた。
顔には焦りがにじみ出ているのがハッキリと分かる程でもある、そして何より仲間の一大事かも知れないという事を考えると…あまりの空気にこうやって少しでも笑って居られるような状況を作るということはそれほど切羽詰まっていると言う事だと分かった。
「近いわね…ほらクラウスもっとスピード出るでしょ!」
「ですから、これが限界ですってば!」
「あの…私、もっとサービスしましょうか?」
「イリアさんも変な事言わない!って、それ以上体を密着させないで下さい!」
他の人から見ればニヤニヤが止まらないとはまさにこの事だろう、女性二人に逆セクハラを受けているクラウスの表情、リアクション、その困った声質。まさにニヤニヤ物だろう。
だが彼もまた男だった…いや、彼のため、スレの住人に変な誤解をされないようにこれ以上触れるのは止めておこう。何より彼のため、作者のため。
「っ!」
その時、突然クラウスはその移動を止めた。例えるなら赤信号に気が付かずアクセル全開で走っている車が急ブレーキをかけた時と同じような止まり方をする。その反動でミトは無意識にクラウスの首に巻いている手に力を込める。
同時におぶさっているイリアもクラウスの首に巻かれている手に力を込めた。この二つが合わさったとき、絶大なる苦しみがクラウスを襲う事になった。
「ぐぇ…。」
クラウスはそのあまりの衝撃…いや、苦しみに一瞬だが血の気が引いた。強いて言うなら首から上への血の流れが止まったというのが正解だろう。

219 ◆21RFz91GTE:2007/07/17(火) 15:07:53 ID:hte6XkqY0
「ちょっとクラウス…急にブレーキかけないで…って。」
「クラウスさん完全に伸びてます〜。」
立ったまま気を失えるのは世界広しと言えどこの男だけだろう。見事に硬直していた。二人はクラウスの体から降りるとすぐさま戦闘体制へと入る。
「クリーパーが5匹、気味が悪い鞭女が二人かぁ〜。」
そう、クラウスがブレーキをかけた理由がこれだった。目の前に突如として現れた合計7匹もの魔物達の姿を見ての事だった。
「まったく、早い所ユラン君の所へ向かわないといけないのに…。」
そう一言言ってミトは琥珀の人についている魔力増幅装置のつまみを最大にまで上げる。そしてその直後…ほぼ同じ動作と言って良いだろう。数本の矢をセットして一気に魔物立ち目掛けて矢を放った。
まさに神速、初弾がクリーパー3匹を巻き込み緑色の血を吹きながら縮んでいった。残るクリーパーと鞭女も同じように数本の矢が刺さる。
「きゃ!」
ミトはその声に反応してすぐさまイリアの方へと体を向けた、そこには巨大な馬に乗ったリザードの姿が有った。
「なっ!」
リザードは右手に持つ槍でイリアを貫こうと何度も突きだしてきた、それを間一髪の所でイリアがよけている姿がミトの目に写る。
「イリアちゃん!」
ミトがすぐさま矢を装填しリザードへと弓を弾こうとした瞬間、突然景色が変わった。いや後ろへと急に引き戻されたような感覚だった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
気が付けば首に鞭が巻かれていた、その鞭によって後ろへと引き戻されたのだろうと推測がつく。そして手傷を負った魔物達が一斉にミトへと襲い掛かる。
「ミトさん!」
ミトの叫び声に反応してイリアがふと後ろを振り返った。だが、それが結果として命取りとなる。一瞬の隙を見せた事をリザードは見逃さなかった。そしてイリア目掛けて槍を突いてきた。
「っ!」
イリアはその時覚悟した、パーティーが全滅するであろう事を。そして自分の最後になるであろう事も。しかし、それはイリアやミトの予想とは違った方向へと転換される。
突然ガキンと金属同士がはじける音が聞こえた、それと同時にミトの首に巻きついていた鞭がパラパラと黒焦げになって落ちて行く。襲い掛かってくるであろう魔物達もこんがり美味しそうではなく炭へと姿を変えていた。
そしてイリアへと目掛けて一閃されたはずの槍は今だ届かずにいる。何が起きたのかとゆっくりとイリアは目を開けた。
「…。」
目の前には黒い何かが居た。それは紛れもなく人の形をしていて全身黒ずくめの人だった。そのひとはこちらを見ている。右手に持っているであろう巨大な剣を背中に回してリザードの槍を受け止めていた。
「…そんな…まさか…。」
その姿をミトも見た、だがそれは存在するはずのない人、すでにこの世には居ない人、そう自分自身の中で自問自答を繰り返しその結論は出なかった。
「黒衣の焔…"アデル・ロード”!」
その時、クラウスはまだ伸びていた。

220 ◆21RFz91GTE:2007/07/17(火) 15:11:06 ID:hte6XkqY0
こんにちは、毎度お馴染み(?)お騒がせ21Rですヾ(´・ω・`)ノ

と言うわけで始めにコメント下さった皆様本当にありがとう御座います。
コメント返し出来ないでごめんなさいorz

さてさて、どうもWIZをネタに使う方向が強い俺ですが…アレン君、クラウス、ユラン君…
全部ネタですねorz
WIZ書いてて楽しいんですけどねぇ、どうもネタに走っちゃう傾向がorz
思えば、WIZって爆発系のスキルないですよね、RPGで爆発し無いのは聊か物足りないと言うかなんと言うか。

あ、趣味は寝る事ですヾ(´・ω・`)ノ

221◇68hJrjtY:2007/07/17(火) 23:22:27 ID:g1IbIIig0
>21Rさん
クラウスの哀れっぷりにニヤニヤが止まりません(コラ)
でも、あんまり突っ込んだ逆ハーレム状態になると嬉しさよりも怖さが勝ってしまいそうな気はします(笑)
この鞭女とクリーパーがユラン君と交戦中のとは違うならば、かなり多くの魔物がまだまだ居そうな気配ですね。
そしてついに黒幕(?)、アデル・ロードという存在が今明らかに!次回がまたまた楽しみです。

優雅で知的で才色兼備なWIZ殿をあの手この手で可哀想な役にさせるのはとっても面白そうです(ノ∀`*)

222ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/18(水) 17:11:19 ID:OhTl4zsk0
Episode03-Lunatic and Madness〜黒い炎はアレでできている!?〜

さて明くる日のこと。フィナーアのペットであるセルジオ、彼のモリネルタワーに住んでいる親友が来る日だ。
『黒いファイアーエンチャント』を扱える者、いや魔物とは一体何なのか・・・バーソロミューとマスケーロの二人に緊張が走る・・・!
と、村の路地の方から何やら悲鳴が聞こえてきた!しかしそれは恐怖というものではなく、むしろ驚愕に近い叫び声のようだった。
「ちょっ、なな何だよこの黒い竜巻は〜!?」「ママ〜みてみて!面白〜い!」「こらっ、触っちゃいけません!」などと
いろんな声が聞こえてきたが・・・ついにその元凶がバーソロミューたちの前に姿を現した!!
大の大人一人ほどの大きさの黒い竜巻は、彼らの前に移動してきたかと思うと「イ〜ハイ〜ハァ!!トリぃいぃコォぉおおぉぉおおぉ!!」
と甲高い声で奇声を発しながら回転し続ける・・・・一方の魔術師二人は怪訝そうに竜巻を眺めている。
そして竜巻の回転は徐々に収まり、一匹のディムジェスターへと姿を変えた。

「Yo,Yo!久しぶりじゃねェかセルジオ〜、どうだ!?あのエロ姉ちゃんとは上手くやってるかよ!?」
「Yah Man!オレはいつでもHighだって〜の、フィナ姉も相変わらず脳みそはピンク100%だしよ〜、もう最高っ!!
 つーかよオメー、あれ持ってきたんだろうな?黒魔術に必須のあの本は揃えてきたか?」
「お前、俺があの本を手放すわけねーだろうがよォ!?夜のお供・・・じゃねぇ、黒魔術のお供に最適なんだからな!」
「オッケ〜ィ、んじゃ早速お前の『ダークウェポン』をそこの二人に叩き込んでやってくれ!報酬は・・・・だぞ」
「うおスゴいのキタ―――!!!おっしゃセルジオ、やらせてもらうぜ〜トリぃぃいいぃいコおぉおおおぉぉおぉ!!」

223◇68hJrjtY:2007/07/18(水) 22:35:09 ID:.QoMGtnw0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
アメリカンハイテンションな二匹に乾杯。
こういう人(じゃないけど)が居ると毎日が楽しそうです(笑)
ダークウェポン、なにやら名前が物々しいですが果たしてどれほどの効果が…。

炎と光(ブレ?)だけじゃなくて色んな属性の付与魔法ってのもあっても面白そうですよね。
武器のOPがかなり幅を利かせてるRSですが、そんなのもあってもいい気がします。

224名無しさん:2007/07/18(水) 23:49:24 ID:ysFjUIuk0
「またかぁ……」
単独での戦闘経験を黙々と積むランサーの目前を、
ロマ村出身の小娘は颯爽と、しかし狡猾に通り抜ける。
従えて腹心した高位のファミリア二匹が、ランサーの戦闘相手を倒していたのだ。
独特の服装とその言動から、彼女がビーストテイマーであることは誰にでも判った。

このような「衝突」は、彼女ランサーにとっても、また、他の冒険者にとっても、
非日常的なことではなかった。それは、ランサーの嘆きからも読み取れる。
ごくごく一部のビーストテイマーがあまりにおてんば過ぎて、
単独における戦闘をもっぱらこなす者や孤高に狩り続ける者、
攫千金の独り占めを夢見てあえて仲間を募らない者、
それぞれの立場から不評をかうのにそう時間はかからなかった。
ランサーもその一人だった。

ふと、鎮座し一息つくランサーに、ネクロマンサーの面を被った悪魔がやってきた。
表向きはネクロマンサーとして生きているが、その本性は悪魔である。
コトの一部始終や風評を知らないわけがなく、
ある企みと、ほんの悪戯心を持ってランサーに接近したのだ。
「困ったものですね」
「はい」
「しかし、全てのビーストテイマーがそうではな…」
「それは解っていますよ。彼女も、いつか心技が鍛えられる日が来るでしょう」
「明晰ですね。おせっかいが過ぎました。がしかし、狩りに戻られる前に、もう一つお話を」
「はい、なんでしょう」
「彼女らへの不満や不評が日に日に高まっているのはご存知だと思います」
「それは、嫌でも聞こえますね。例外でしょうに、仲間に言っても聴いてもらえない」
「そうですね。このままだと、他のビーストテイマーが不憫に思います」
「それは、わたしも」
「不満に飽きたらず、怒りの矛先の槍玉にさせられてしまう可能性もあるかと…」
「怒りをぶつけるなら、そのビーストテイマーにぶつけるのが筋でしょう!?
 ……すいません、言葉を乱しました。しかし、他の同族にぶつけるなんて。矛盾しています」
「お気持ちお察しします。ただ言えるのは、そのような可能性もある、ということです」
「…えぇ、解ります」
「そこで、私に考えがあるのです。そのような悲劇が生まれないためにも。
 先ほどあなたがおっしゃったように、少しおてんばな子に、しっかり伝えるようにするのです」
「と、いうと?」
「他の冒険者を募って、みんなで『説得』すれば、話も聞いてくれるでしょう。
 今まで根本的に解決されずにいたのは、一対一で話そうとしていたからです。
 何しろすばしっこい彼女らですから、これではお互いに良い方向に行きません」
「…ん……なるほど、そうかもしれません」
「固く考える必要はありません。もし、あなたが『説得』協力をお願いされたら、
 その時は協力する、程度に考えもらえれば」
「そうですか、そのようなことなら是非協力しますよ。みんなも協力すると思います」
「…解決手段の決心が固まりました。お時間を割いていただいてありがとうございました」
「いえいえ」
「……ところで、『キョウリョク』していただけるんですよね?」
「え?」
「『キョウリョク』、です」
「あ、はい、その際には是非協力しますが」
「…契 約 締 結……」
「え!?」
「失礼しました。『協力』という言葉でしたね。まだ地上界に来てから慣れていないもので」
「…あ、あぁそうですか…。どうか気になさらずに」
「お気遣い、感謝します。さてそれでは、他の人にも伝えねばならないので、これにて…」

父と恋人を失ったランサーの過去の負い目と義憤を巧みに引き出し、
悪魔は密やかに、かつ不敵に「契約」した。
悪魔自身の能力を地上界で発揮するのに、地上界の者との盟約は必要不可欠だったからだ。

225名無しさん:2007/07/18(水) 23:50:16 ID:ysFjUIuk0
――一部のロマ村出身冒険者に対してビーストテイマーとしての資質を疑問視する声は、
他の冒険者以上に、同族からも上がっていた。
しかし、元来あまり土着、定着せずに気ままに生きるのを善しとする彼女らにとって、
組織という概念は持ち込みづらかった。
そして何より、同族との接触や交流が少ない。
その結果、自らの職、生業の不評を耳にしながら、
彼女たちは、肩身の狭い思いをする以外にほかなかった。
彼女らもまた、軽率な同族に戦闘を阻害されることもあるのだから。
板挟みに遭うように、彼女ら普遍的なビーストテイマーの中には、
人目を避けた戦闘地域で生きる者も出始めた。


――ここはとある港町の酒場。
真っ先に伝わった――正確には悪魔により伝えられた――のは、主として剣士と戦士が集うこの地だった。
案の定、剣の道に生きるだとか、正義感の強いノーブル・ソルジャー/ファイターは、
さっさと席を立ってしまった。
だがこれも予定通り。堕落した者は必ず居る。残る。
そして、「悪化は良化を駆逐する」――。冒険者として同化し、
ネクロマンサーとしての技量も身に付けていた悪魔にとって、人心掌握はもはや特技でもあった。

悪魔の姿は既になく、残された剣士/戦士たちの会話は、このようなものだった。

「で、面の御仁の提案だが、…やり方が荒いが、……確かに一理あるかもしれないな」
「オマエも堕ちたな、ハハッ」
「幼な子と勘違いしているヤツがいるな。よく思い出してみろ、意外と発達した生娘だぞ」
「フン、オレは幼いほうがいいけどな」
「それで、サマナーとして生きてるロマっ子はどうするつもりだ」
「見分けがつかないな。どうせ同じ身体だ、同罪扱いして楽しもうぜ」
「むしろサマナーのほうが好みだな、オレは」
「よく考えてみろよ。ヤツらは金目の物に恵まれるってウワサに聞くぜ」
「あぁ、それは聞くな。まったく、やりたい放題狩って、金儲けか」
「鉄槌を下さなきゃ、な。今度はオレたちがヤリたい放題か、ハハッ」
「ロマだかジプシーだか知らないが、どうせ流れ者だろう?遠慮など要らないな、こりゃ」
「金も、ヤツらの身に付ける魔法の品も、なにもかも、奪っちまおうか。一石何鳥になるか分かんねぇな」
「シーフのヤツらは情報に目敏いぜ。向こうの港や古都にまで流れないように、情報はここで留めとこうぜ」

その時悪魔が彼らに何を伝えたのかは、誰にも分からない。
ただ一つ言えるのは、あの悪魔の言動が、酒場にいた剣士や戦士だけに留めないだろうというのは、
想像に難くないだろう。
悪魔のもたらした堕落の気運は、確実にフランデル大陸を冒し始めていた。

 →続く

226殺人技術:2007/07/19(木) 00:27:39 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル
(3スレ目)
1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737
18-20>>795-797
21-22>>872-873
23-27>>913-917
28-31>>979-982
(4スレ目)
32-36>>548-552
37-38>>568-569
39-42>>592-595
43-46>>617-620
47-51>>693-697
52-56>>760-764
57-62>>806-811
63-65>>825-827
66-70>>838-842
71-77>>869-875
78-81>>921-924
82-85>>981-984
(5スレ目)
86-91>>136-141

そろそろ終わるかのぉ。

>>144
あ、誤解のある言い方してしまってすいません。
一つの作品を3レスに渡って跨ぐ事を言ったのです(´・ω・)やっぱ邪魔になるよなぁ。

>> ◆21RFz91GTEさん
自分はまだ冬の軌跡の全部を見ては居ませんが、シリアス路線かと思えば急にコメディになったりするところは中だるみが無くて一気に読めますね。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
一昔前のアメリカンコメディを見ている様な気分になりました(´ω`)
ダークウェポンのくだりはどこまで掘り下げられるのだろうか、それが大問題ですね(ぁ

227殺人技術:2007/07/19(木) 00:28:34 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(92)

 ビガプール議場での悪魔襲撃事件から数日後、ビガプールの一角で街並みの一部と貸している宿の窓枠から、長く尾を引く黒い葬列が、ジグザグの道をゆっくりと流れていく。
 葬列に並べなかった多くの人々も道路の脇や裏路地、道に面する建物の窓から顔を出して、黒い喪服に身を包んで葬列を眺めている。チョキーも黒ずくめに着飾り、その隣で向かい側に宿を取る人々が窓を覗いている。
 黒の喪服に埋め尽くされた道路には所々煤けた小汚い色が混ざり、その周りは不自然に隙間が作られている。貧民街の人々が葬列に並ばされる事はない為、葬列を脇から見る事になるのだが、その中でも貧民街の人々はやはり浮いていた。
 葬列の中心では、豪華な棺桶を乗せた馬車を三頭の黒馬が引き、黒いフードを深く被った男が手綱を操る。
 アレクシス議長の亡骸を載せた馬車がチョキーの部屋から見えなくなると、人々は十字架を切って部屋から出て行く。皮肉な事だが、この新興王国ビガプールでは、忙しい街の人々は何時間も葬列を拝む程暇ではないのだ。
 葬列を眺める他の人々は次々に窓を閉め、路地裏に消えていき、各々がそれぞれの生活へと戻っていく。葬列だけがくどくどと重い雰囲気を醸し出していた。
 チョキーはそれらを頬杖を突いて見下ろしながら、思案する。
 葬列の人々は、棺桶の中に一体何が入っているのか、疑うこともなく十字架を切っていく事になるだろう。
 だが、実際はその棺桶の中に骨は入っていない。瓦礫をほじくり返して拾い集めた破片を適当に組み合わせた脆い石像があの中には入っている。それを知るのはチョキーと棺桶師、そして亡骸を拾った人達とその上司くらいのものだろう。
 チョキーは葬列を見るのも飽き始め、木製の窓を閉じると背後から掛けられた声に振り返った。
 「チョキーさん、客人ですよ」
 喪服でなくても真っ黒に身を包んだカリオが言い、チョキーは頷くとカリオに歩み寄って、ポケットから硬化をいくらか取り出して渡す。
 「それで適当に遊んで来い、だが暗くなるまでには戻るんだぞ」
 カリオはそれを受け取ると胸ポケットにしまい込み、幼い笑顔を浮かべてチョキーに頷き返すと、足音も立てずに部屋を出て行った。
 チョキーは溜め息を一つ吐いて喪服のボタンを外し、椅子の背もたれにだらりとぶら下げる。すぐに普段着に着替え、ドアに向かう。
 「どうぞ」
 チョキーがそう言うと、扉が力なく開いて低い位置から水色の布が姿を現す。チョキーは顔を下に向けて笑顔を浮かべながら扉を閉める。
 「久しぶりだね、カイツール」
 「おはようございます、チョキーさん」
 カイツールは重そうな頭を下げて挨拶を言う。見た目に寄らず礼儀正しいようだ。
 「おはよう」
 チョキーも遅れて頭を下げる、カイツールの奥の机に案内し、自分はキッチンに向かうと茶葉の入った金網袋を二つのカップに入れて、沸かして置いた湯を注いでいく。慣れた手つき注ぎ込まれたお湯がたちどころに濁り、芳醇な香りを漂わせると、金網袋を取り出して二つのカップが机に運ばれていく。

228殺人技術:2007/07/19(木) 00:29:05 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(93)

 「ありがとう」
 カイツールは子供用の高い椅子に座ってそう言い、紅茶の前で静止する。そのままでは飲めないが為に匂いだけ味わっているのだろう。
 チョキーは向かいの椅子に座り、紅茶を軽くかき混ぜて、子供っぽく砕けた姿勢で言った。
 「アドナイメレクは、平気かい?」
 チョキーが言うと、カイツールはこくりと頷く。頭の檻が上下するに釣られて、檻の両端につり下げられた鉄球の様な錘がじゃらじゃらと音を立てる。
 「今は忙しいから会う暇がないって、だから私が伝えにきたの」
 「鳩は? アルバートはどうしたんだ?」
 チョキーはすかさずそう問いかけ、カイツールは無言で首を横に振って否定する。
 何のつもりか知らないが、カイツールでなければならないらしい。
 「まぁいいや、何て伝える様に言われてるんだい?」
 チョキーはあくまで紳士的に言い、カイツールは緊張の素振り等を見せず、格子の奥の暗闇から声を反響させてきた。
 「チョキーさん、あなたは今警察に取り調べを受けたりしてない?」
 カイツールは臆する事なく言い放ち、チョキーは何故か苦笑いの様な物を浮かべて応える。
 「全然、アドナイメレクのお陰だよ」
 アドナイメレク――追放天使の能力には、驚嘆せざるを得なかった。
 彼はチョキーが疑われると友人関係にある自分も疑われると踏んだのか、あの悪魔襲撃事件に関係する一切の人物から記憶を抜き出し、書き換えたのだ。
 現在、アレクシス議長は突如議場に襲撃してきた悪魔に殺され、その悪魔はその場に居合わせた三人の冒険者が死闘の末に討伐した、という事になっている。
 「そっか、じゃあ次の質問、約束は守れそう?」
 カイツールはチョキーの言葉を袖から取り出した手紙に書き写しながら言う。チョキーは一瞬口を噤み、一呼吸置いて大きく息を吐いた。
 「それは分からないな、このままいけば、何とか守れそうだよ」
 カイツールはそれも同じように書き写すと、紙を四角に折って袖ではなく水色の衣服の内ポケットに突っ込んだ。
 「ありがとう、チョキーさん」
 カイツールは椅子に座りながらかくりと頭を下げ、またじゃらじゃらと音を立てる。
 「どういたしまして」

229殺人技術:2007/07/19(木) 00:29:38 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(94)

 「じゃあ、次の質問、だけどその前に、ちょっと後ろ向いててくれる? チョキーさん」
 カイツールは感じ取れるかどうかの範囲で語気を強め、チョキーに言う。
 「後ろ? 良いけど、かわりにそっちも後ろ向いててくれるかな」
 カイツールはそう言われて椅子から降りると、体を反転させてまた金属音を鳴らす。カイツールの背丈はチョキーの位置からではテーブルに隠れてしまいそうなほど小さい。
 「で、何故来たんだ?」
 先程までチョキーだったものは蜃気楼の様に体を揺らめかせ、そこに議場に襲撃したという悪魔そのものの姿が現れる。
 「私が……個人的に気になることがあるからよ、色々と」
 同じく、先程まで正体不明の人形の様な姿だった少女が、一瞬炎に包まれたかと思うと、燃える様に赤い長髪を垂らした艶やかな姿の女性へと姿を変える。
 二人はお互いに机を挟んで背を向け合ったまま立ち、チョキーだった方――ファイルは、カイツールをちらちらと横目で見ようとして思いとどまる仕草を何度か繰り返していた。
 「本当にあれで良かったの? 自分の片割れを殺してしまって」
 カイツールは椅子の背もたれに両手を押しつけてゆらゆらと揺らす。
 「愚問だな、あれは片割れでも何でもない、地下界でのハプニングにより同じ物が複製されただけだ。私は地上界で複製品を抹消したまでだ」
 ファイルははっきりと言い、カイツールはそれを聞いて微かに顔を俯かせる。
 「じゃあ、次……チョキーさんの事は? 一体どうなったの?」
 カイツールが言うと同時にファイルは溜め息を吐き、暫し沈黙を喫してから言葉を紡ぎ始めた。
 「……私がこのユニークアイテムの力を使って蘇生の方法を探した時、世界中の医療技術と同時に何か奇妙な物が流れてきた。恐らくはチョキーの記憶だろう。どうやらあの時、チョキーの肉体は極限まで痛めつけられたが死んでは居なかったらしい、植物人間だと言うそうだ。だからユニークアイテムの効力でチョキーの記憶が私に入ってきたのだろう」
 ファイルはそこまで言うと一息付き、手を後ろに回して紅茶を握ると一口だけ口に送る。
 「そして、肉体と精神は常に一つでなければならない――記憶は肉体――どうやら私に、肉体である記憶と一緒に純粋なチョキーの精神までもが流れこんで来てしまったらしい。まだ生まれて数年しか生きていない精神だがな」
 ファイルは椅子の背もたれに腰を掛け、ふらふらとバランスを取った。
 「つまり――今のあなたは、あなたの精神とチョキーさんの精神、そしてあなたの記憶とチョキーさんの記憶を全て持っているのね」
 「チョキーの精神はまだまだ子供だがな、いずれ私の中で成長していく」

230殺人技術:2007/07/19(木) 00:30:14 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(95)

 カイツールとファイルの背中合わせの空間に、窓の奥の鳥のさえずりだけが響く謎の沈黙が立ち込める。
 カイツールはしばしその沈黙に体を預けていたが、ファイルの言葉を吟味すると再び口を開いた。
 「まだ質問――これから、どうするの?」
 カイツールは思わずその問いを噛みかけ、ファイルはそれを知ってか知らずか卑屈さを感じさせず答える。
 「まず、暫く顔を見せていないチョキーの知人に顔を出していく。チョキーの記憶があるせいか私でも簡単にチョキーに変身できるようだからな。そしたら放置していたブロームの依頼の続きを行い、その後は――チョキーと相談して考えるさ」
 ファイルの声には屈託がない。まるでそれが自分に備わった役目だとでも言う様に淡々としている。しかしカイツールは再び問いかけた。
 「あの少年は? カリオとかいう少年はどうするの?」
 「カリオはそばにチョキーさえ居ればどうとでもなる、私の注入した血も抜いた。ケブティスの死については真実を知っている筈だから、彼が付いてくるかどうかはカリオ次第だ、どっちにしろカリオの事について私が手出しする必要はない、場合によっては焼き殺すもやむなしだ」
 ファイルが言い終わると同時に、カイツールが小さく笑いを零す気配を感じて、ファイルは怪訝な顔をする。カイツールは笑みをしまい込むと、途端に感情の読み取れない、微妙な表情になった。
 それはあの時、カイツールがアドナイメレクに連れられてやってきた時の表情――強烈に印象に残るアドナイメレクの表情とは真逆に、残り雪の様に解けて消えてしまうような顔、だがそれをファイルが見る事はない。
 「やむなし――ね、そんな言葉をあなたから聞くだなんて思いもしなかった――あなたは既に人間でも悪魔でもない、もちろん、天使でも魔物でも動物でもない……ユニークアイテムでもない、全てを超越し、全てに属さない種族、それを何と言い表せばいいのか、私はまだ知らないの」
 ファイルはじっと黙し、カイツールは窓の奥の霧に溶け込んでいく街並みをぼんやりと眺める。霧の奥で鳥たちが屋根の上で集まっているのが、スクリーンに投影された影の様にうっすらと見える。
 「最後の質問、私はそれを何と言えばいいの?」
 鳥たちの影が散る、次第に都会の喧噪が戻り始めている。
 カイツールは無駄な応答も、振り向く事もせず、ファイルの答えをただじっと待ち続ける。背を向け合う二人は暫しお互いに沈黙し、やがてファイルが立ち上がる。
 「答えは出た? ……分からなければそれでもいいのよ」
 カイツールは漸く首だけをファイルに向け、背中に垂れる黒いマントと感情の読み取れない後ろ姿を見つめる。
 そして、ファイルは口を開いた。
 「その質問は……」
 ファイルは言いかけた言葉を一度止め、少し息を吸って再び繰り返す。
 「その質問は、論外だ」

231殺人技術:2007/07/19(木) 00:31:34 ID:E9458iSQ0
チョキー・ファイル(96)

 ファイルは短く言い、カイツールは一瞬目を見開いたものの、すぐに元の表情に――微かに笑顔を付け足した表情に変わる。
 「その質問にはいくつか矛盾がある。まず一つ、君にはもう私の名前を呼ぶ必要性もなければ、意味もない」
 ファイルは体をくるりと右に向け、テーブルの隅に立つ燭台に手を翳す。火のついていない乾いた蝋燭に、一点の孤灯が灯る。
 「そして二つ、君は先程人間でも悪魔でもないと言ったが、それは間違いだ。君が私を悪魔だと思いこむ限り私は悪魔だ。愛した人を平気で焼き殺す、な」
 「それは……」
 ファイルの手が右にずれて、真ん中の蝋燭を挟んで反対側の蝋燭も溶け始める。カイツールが言葉を紡ぎそうになったのにも気付かない。
 「最後に三つ、君の質問の意図が分からない、君が私をどう呼ぼうと君の自由であり、私が君に特定の呼び名を押しつける必要はない」
 最後にファイルの手が上に軽く上げられると、中心の蝋燭にも炎が零れる。蝋燭の放つ独特な匂いが漂い始めた。
 「――だが、一応答えてはおこう――私は何も、天使や悪魔、人間などという大きな物差しを必要とする程大きい生き物ではない」
 ファイルは燭台の炎に人差し指を突っ込み、木像のテーブルに黒く文字列を焼き込んだ。
 「私は、ファイルという一人の悪魔であり、チョキーという一人の少年でもある。ならば呼び名は、その二つを簡単に並べただけの物が相応しかろう」
 「――ありがとう、ファイル」
 カイツールは言い、ファイルは頷く。ファイルは一呼吸おくと向きを変え、燭台に再び、今度は両手を掲げる。
 「君に見せたい物がある」
 カイツールはその言葉に反応して怪訝そうに近寄り、ファイルの両手に白い炎が灯ると、ファイルの全身の白い部分から白煙のような物があふれ出す。
 燭台の炎も白く変色し、やがてその炎はゆっくりと立ち上ると、まるで一つの絵画の額縁のように広がって行く。
 「……これは……」
 カイツールは呆然とした様に口を開き、その真っ白な絵画の中に浮かぶ風景画を見て息を飲む。
 「今の地下界の状況だ、私は今まで地上界で掻き集めた人間の魂を使って、地下界と地上界、異なる世界の扉を繋げる事が出来る。今の私なら、悪魔を一人地下界に送り出す事も可能だ――本当は、二人分送り出せる筈だったのだがな……」
 「………………」
 カイツールはファイルの言葉を聞きつつ、炎の中に浮かぶ地下界の姿をまじまじと覗き込んでいる。城下町の民衆の声や、兵隊訓練のホイッスル、城の中の大臣達の会議内容まで聞こえている。
 「――人々は支配者を求めている、途方もない昔から受け継がれて来た血が途絶える事を信じられずに自害する者さえ出る始末だ、王政改革を望んで革命軍に手を貸していた大臣達も考えを戻し始めている。民は平凡な暮らしを渇望し、誰も革命の新しい風など望んでいない」

232◇68hJrjtY:2007/07/19(木) 03:59:32 ID:.QoMGtnw0
>224さん
ええと、初めましてでしょうか。違いましたら失礼しますですorz
テイマによる狩場の横殴り、を発展させたようなお話でしょうか。とても現実味があります(苦笑)
ネクロマンサーは何考えてるのか分からないってキャライメージだったので
このように人心を煽って壮大な計画か契約か、何かを起こそうとするような人物描写は面白そうです。
続きの方お待ちしています。

>殺人技術さん
いきなりのチョキーの登場に驚いていましたが、蘇生させた、などという単純な結末ではありませんでしたね。
そして前回にちょろっと出てきたチョキーの少年時代とも見事にリンクしていて凄いです。
本来の姿になったファイルとカイツール、この二人の邂逅も運命的なものを感じずにはいられません。
カリオもまた、サブキャラという位置づけ以上に存在感を発揮してくれてた気がします。
さて、カイツールが支配者として地下界に戻るか否か…。
最終回のにおいが漂ってきましたが次回も楽しみにしています。

233ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/19(木) 18:29:33 ID:OhTl4zsk0
さて、例の『黒いファイアーエンチャント』もとい『ダークウェポン』を教授しにやってきた、ディムジェスターzinのディンガ。
彼を前にバーソロミューとマスケーロの二人はちゃんと正座しているが・・・・むず痒そうにディンガが言った。

「あ〜・・・その、何だ。そこまで気張る必要ないから楽にしてくれないかなァ?オレそういう堅苦しいのダメなんだわ」
「わ、わかりました。」「僕も・・・わかりました。」そう言いながら、二人は姿勢を崩して楽な座り方になった。
その間、ディンガは持ってきた手提げ袋の中からゴソゴソと何かを取り出している。間もなく彼は数冊の本を取り出し
魔術師コンビにそれらを手渡した。いかにも年季の入っていそうな、埃をかぶったカバー。そして記された六芒星・・・
誰が見ても間違いの無い、闇の元素を扱う禁術・・・黒魔術の本がその手に渡った。
「これが・・・噂に聞く黒魔術の魔導書――っ!」「僕もはじめて見ました・・・エルフの村には全く無い本です・・・」
「はじめに言っておくが、ダークウェポンは闇の元素を乗せたファイアーエンチャントと考えた方が簡単だが・・・問題があるのよ。
 人間界でその闇の元素の扱いに『完璧に』成功した奴の事例をオレは知らない・・・オレらシャドウズ系のモンスターにとって
 闇の元素を扱うのは朝飯前なんだがなァ・・・それ以外の種族が扱うとなると難易度は桁違いだ。だが、マスターした時だ。
 お前らは人間界、エルフ界において初めて闇の元素を扱える魔術師、いや魔導士としてその名を残せるかもしれねェぜ?」
饒舌に闇の元素との関連性を述べるディンガ。そしてバーソロミューらはゴクリと唾を飲み、ついにその魔導書のページをめくった!



「・・・・は?」「ふ・・・・不潔・・です〜、うぁ〜」
ページをめくると、なんとそれはただのエロ本(2次元アニメ系)だった・・・!!
言っておくが、バーソロミューとマスケーロはあまりにも生真面目なため、こういう性俗的なものは
極端に嫌う傾向があるのだ。バーソロミューはカチンコチンに固まり、マスケーロは蒸発して気絶し倒れるなど
その手のネタへの免疫力はゼロといっても過言ではないのだ。一方のディンガは別の意味での呆れ顔を浮かべていた。
「おいおいおい〜い、いくらなんでもそりゃお前・・うぶにも程があるだろうがよォ〜!××××できねェぞ!?」
「って、そういう話じゃなくてっ!ちゃんとした黒魔術の魔導書を出してくださいよっ、お願いしますからっ!!」
バーソロミューは地団太と共に憤慨し、頭からマグマを噴火させて言い寄った。これにはディンガも参った。
「うっ・・・わりィわりィ、ついつい夜中にオ××ーするための魔導書(?)も持ってきちまって・・ってうわァ何チャージしてるんだ!?
 いやホントごめんっ!!悪気はないし、ホラ!黒魔術の魔導書もちゃんと持ってきてるから頼むから隕石呼ぶのは止めて!!」
あまりのおちゃらけぶりにバーソロミューの怒りは隕石まで召喚させようとするほどに沸点まで達していた・・・
と同時にあらゆるアクションを連発しながら、ディンガはすぐに袋の中からあれこれ模索しながら黒魔術書を取り出し
急いでバーソロミューに渡すのだった。さながらその様子はまるでどこかの青くて丸っこい体系の有袋生物(?)のようだったと
後にバーソロミューはバーでの酒の肴として語っている。

さて、ついに本物の黒魔術の魔導書を手にしたバーソロミュー。目を覚ましたメスケーロと共に緊張しながら、そのページをめくった。
そして最初のページにはこう書かれていた・・・・・。

『闇とはそれすなわち"無"なり。汝が闇の力を求めし時、光の無い黒き世界に心を投げよ。一切の光と記憶を捨てよ』

234ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/19(木) 18:46:53 ID:OhTl4zsk0
「・・・これは・・何か重要なヒントが隠されていそうですね」「僕も同感です、バーソロミュー。」
「重要も何も、そいつァ闇の元素を扱うときの基本だぜ?オレらディムジェスターは生まれたときから闇の元素を扱えるが
 いざ使うときは、な〜んも考えないんだよ。何一つ、な。まァやり方がわかったんなら後は実践あるのみだ!オレから
 教えることはこれ以上何もない!あとはその魔導書が教えてくれるはずだ・・・」フッとニヒルな笑みを浮かべ、ディンガが言う。
「え!?本当にこの本ひとつで闇の元素が扱えるのですか!?」いきなりの宣告に二人は驚愕を隠せなかった。何せ、会って間もない
助っ人の教授が、いきなり「自らが教えることは何も無い」と言い出すのだから。しかしディンガは二人の様子に何ら戸惑わなかった。
「・・・ん〜、じゃ最後に一つ教えてやるよ。光と闇の元素は、使用者の精神を反映させてるようなもんだ。つまりは個人個人によって
 どういった形で元素が発現するかは個人次第で、人が教えてそのまま継承されるような代物じゃねェのよ。」
「なるほど・・・自己鍛錬によって習得するんですか、これは面白いっ!!燃えてきましたねマスケーロ!」
「はいっ!!僕も今、とても熱いものが込み上げてきました!頑張りましょう、バーソロミューさん!!」
目を輝かせ、昨日までの退屈を吹き飛ばし、新たな目標へと燃える二人の魔術師。そしてディンガは・・・
「うんうん、その意気なら・・・本当に闇の元素を扱えるほどまでになるかもしれねェな〜、応援してるぜ!
 さ〜てと、オレはこれからセルジオと一緒にフィナ姉とエロ遊びでもしてもらお〜っと!!イ〜ハァ!!」
「俺も含めてんのかよ!?でもフィナ姉と遊ぶなら大歓迎さ〜!いくぜ相棒!!」「おうよ!!」
『トリいぃぃぃいぃぃいいいぃいぃコおぉぉおぉぉおぉおぉぉおおぉお!!!』
おなじみの変な雄叫びを見事にハモりながら、セルジオとディンガは竜巻モードで
その場を後にした。またも村からは「また竜巻が来た〜!しかも増えてるぅ〜!!」
「ママ〜あれ買って〜!」「いけませんっ!」さっきと似たようなやりとりが聞こえてきた。


そして取り残された2人の魔術師は、お互いに肩をポンと叩き・・・
「ねぇ、マスケーロ」「何ですか、バーソロミュー」
「君も同じ考えですか?」「・・・・・はい。」

『彼(ディンガ)の闇の元素は妄想と煩悩で構成されているっ!!間違いない―――――っ!』

二人の心の中で、突っ込みとも取れる雄叫びが木霊するのであった・・・・

To Be Continued...

235ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/19(木) 18:58:44 ID:OhTl4zsk0
あとがき。

さてさて、黒魔術編・・・・なんか読み直すとあっけないオチのような;;
内容濃くできなくて申し訳ない、味のある文章が書けるよう精進したいです。

次回は前から書きたかったネタで・・・ラブストーリーです。
トレスヴァントに好意を寄せるラティナ、でも素直になれない彼女と彼の
恋模様を描きたいと思います。作者としてのラティナの性格はピュアなツンデレですw

236◇68hJrjtY:2007/07/19(木) 21:08:11 ID:.QoMGtnw0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
いやいや、ディンガですから平凡な魔法指導になるとは思いませんでしたが
「どういった形で元素が発現するかは個人次第で〜」など、なかなか含蓄があります(笑)
バーソロミューとマスケーロもこの魔法で二人とも違う元素が出るという感じかな。楽しみです。
やっぱりディンガはフィナ姉派な性格でしたね。エロエロパワーは強し…(笑)
そして遂にツンデレラティナさんのラブストーリーですか、次回作もお待ちしています。

237名無しさん:2007/07/29(日) 20:42:47 ID:.SlwqRq60
この空気に耐えられず…上げます。
スレの皆さん、申し訳ない。

238ドギーマン:2007/07/30(月) 01:12:31 ID:AepyIIHk0
お願いします…どうか、私にもう少しだけ時間を…

男は帰ってきた。
出て行ったあの日と同じ姿で、しかしボロボロに汚れて。
荷物も何も持たず男は花嫁の前に微笑を浮かべて立っていた。
寂しさと悲しさを少し含みながらも、花嫁を祝福する笑みを浮かべていた。
男の姿を見るや花嫁は愛する人の手から離れて駆け出した。
兄さん!
そう言って両手を広げて男に飛びついた。
純白の衣装が汚れるのもお構いなしで、花嫁は既に流れていた涙をさらに溢れかえらせて男の胸に頬をぶつけた。
抱きつかれて少しふらついた男は、そっと愛する妹の背に手を回して優しく撫でた。
すまないな、せっかくの結婚式にこんな格好で 正装する暇がなかったんだ
いいのよ 生きていてくれただけで…
花嫁は男から顔を離すと、潤んだ目で男の顔をじっと見た。
いままでどこに行ってたのよ
とても遠いところだよ
心配したのよ 突然便りがなくなるんだもの
すまない いろいろと大変なことがあってね 手紙も出せなくなってたんだ
妹は男の答えに不満げな表情を浮かべたが、それ以上は問おうとしなかった。
男はきっとロクな答えも用意していないだろう。
本当に綺麗になったな
妹は兄の言葉にまた涙が溢れそうになった。
おいおい 泣き虫なのはちっとも治ってないんだな
もう泣き虫なんかじゃないわ 今日は特別なだけよ
男は妹の言葉にふっと笑うと、彼女の後ろで戸惑っている様子の花婿に声をかけた。
手が掛かるだろうけど、妹を頼んだよ
花婿は男の言葉にはいと言って緊張した様子で頭を下げた。
じゃあ もう行かなきゃあな
男の言葉に花嫁は驚いた様子で小さな声でえっと言った。
すまないな もう時間がないんだ
手を離して離れて行こうする男の手首を、花嫁は待ってと言って捕まえた。
しかし、男の手のあまりの冷たさに驚いて咄嗟に手を引いた。
男は笑顔を崩さぬまま、お幸せにと言い残して花嫁に背を向けて歩いていった。
花嫁は花婿の手に肩を支えられて、男の背中を呆然と見送っていた。


それにしても、あんたも運がなかったな
なぜだ?
俺なんかでなく、ビショップに見つけて貰っていれば生きた身体で戻れたのにな
いやそうは思わない、私は運が良かったよ
…?
あのまま肉体が朽ちてしまっていればいくらビショップでも蘇生は無理だったろうからね
はははははっ
何が可笑しいんだ?
悪魔に出会って運が良かったなんて言う奴は初めてだよ
そうか
男はそう言ってふっと笑った。
そして、その表情のまま崩れ落ちて風に消えた。

239ドギーマン:2007/07/30(月) 01:16:37 ID:AepyIIHk0
全然書きおわってないまま放置したりしてすいませんでした。
しばらく離れていたらついつい疎遠になってしまいました。
久々に書いてみたSSをUPしてみましたが、
どうやら随分と過疎になってしまったみたいですね…。

240NT:2007/07/30(月) 01:38:21 ID:/kR2zotM0
皆さん今晩は。例によって例のごとく変な時間に出没します。NTです。
>>237さん、意図的に上げるときは時間帯に気をつけるように…とテンプレにも載っていますので
できれば深夜帯などにしてほしかったです。

さて、私信ですが試験終わりました。
…半期の単位を半分以上落としましたがorz
試験勉強中にふっと思いついたネタがあったので(早い話が現実逃避です)投稿させていただきます。
今私が書き進めているものとは全く雰囲気の違う?短編を書いてみました。
…即打ちなので誤字脱字が多いと思いますが生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
ちなみに題名はありません。





私の名前はクロマティガード
もちろんちゃんとした名前はあるがこっちの方がわかりやすいだろう。
私の任務はオアシス都市アリアンの警備。
さて、今日のアリアンは平和かな…?

いつもの定位置につく、ここに来るまでにたくさんの露店主を踏みそうになったのは秘密だ。
今日もアリアンは露店だらけだ。アリアンの商業の活発さを見てうかがえる。
だがそこらじゅうに露店を出されると露店を見ない通行人には邪魔以外の何物でもないだろう。

今日も街全体に通るような叫び声がたくさん聞こえる。
××××売ります、とか××××PT××××さん募集とか様々で聞いていて飽きない。
でもたまに同じ叫びを短時間に何回も繰り返している人もいる。迷惑だろうに
さらに言うなら全く関係のない一般人にはただの騒音でしかないだろう。

今日も鍛冶屋さんのお店は大繁盛だ。
時々そちらの方を見るといつも人だかりができている。
さぞ売れているのだろうと思って聞いてみると売り上げは大したことないらしい。
どうやら物の買い取りで賑わっているらしい。
そんなに物を買い取って大丈夫なのだろうか…?一日に軽く千人は来ていた気がする。
はたしてアリアンの物流はどうなるのかちょっと考えさせられた。
          
そして極稀に私に話しかけてくる冒険者の方がいる。
話しかけた方全てがまるでクリックミスをしたかのようにすぐに立ち去ってしまうが
私たちを頼る時は何か異常があるとき。頼られない時は平和だということだ。
だからそういう時私はいつもこう言って対応する。

「勤務状態異常なし!」


以上4点から今日のアリアンはいつも通り、即ち平和であると言えるだろう。



とある日のとあるクロマティガードの日記より



古都以上に人がいる某砂漠の都市の1NPCの視点で日常?を書いてみました。
日本語がおかしいところはスルーでお願いします。
あっちの話も進めないとな…話が思い浮かぶか心配ですorz
それでは、また。

241◇68hJrjtY:2007/07/30(月) 11:03:50 ID:kx4o50DQ0
>ドギーマンさん
おお!復帰でしょうか、お久しぶりです。
今はちょっと過疎気味ですが、実際のところは書き手さんも増えてなかなか盛況ですよ。
小説の方、何か泣きたくなるような凄く悲しい物語ですね…。
自分が死ぬと考えれば、最後に大切な人に会いたいって思うのは自然な気持ちですよね。
でも最後に男が消え去っていくシーンは悲しくて仕方ありませんでした(泣)

>NTさん
こういう小説は本当に面白いです(笑)
RSの実情をNPCという視点から見た場合、果たしてどう思っているのか。謎に尽きますね。
クリックミスでNPCと会話…実は何度もやったことがあったりなかったり(ノ∀`)
アリアンへ露店見学以外で行く場合は露店OFFにしないとクリックミスしまくりですorz
レイとラミの小説も楽しみにしておりますよ!

242名無しさん:2007/07/30(月) 19:26:47 ID:7XJGvdf.0
職人様達によるRS小説投下更新希望(^∀^)ノ

243ドギーマン:2007/07/30(月) 20:48:23 ID:AepyIIHk0
"ライカントロピー"
それはかつてスマグで研究されていたウルフマンの能力を極限にまで高める野生の力。


まさかこんな所でお仲間に会えるとは思わなかったぜ
男は焚き火を挟んで向かい合わせに座っている人物に向かって言った。
こんな寂しいところだもんな 今夜も1人で野宿かと思ったよ
そう言いながら男は鞄の中の食料を探った。
なああんた、フードくらい取ったらどうだ?
男の言葉にその人物は何も返事せず、顔を隠すように俯いたままだった。
男が最初に声をかけたときも、ただ黙って頷くだけだった。
恥ずかしがる事ないだろう あんたも俺と同じなんだろ
男の言葉にようやくその人物は頭に深く被ったフードを取り払った。
フードの下から現れたのは銀色の毛色の大きな狼の顔だった。
焚き火の明かりを反射してきらきらと輝く銀毛、その中で爛々と金色の光を放つ瞳。
あんた、女だったのかい しかも銀色の毛のウルフマンなんて初めて見たぜ
男は驚きと興味に長く裂けた唇の端を緩ませた。長い牙がちらりと覗く。
女は何も答えず男から目を逸らした。
男の表情が余りにも露骨だったからだろうか。
男は慌てて話題を変えようとした。
なあ、あんたもなんか食えよ ないんなら俺のメシを分けてやってもいいぜ
男をじろっと睨んでから、女は自分の鞄の中から小さな肉塊を取り出した。
そしてそれを火にかけるでもなく、生のまま食べ始めた。
なあ、それってもしかして狼の肉か?
女は何も答えない。
ならよお、あまり食いすぎるなよ ダイアウルフの肉は美味いけど、あんまり食うと狼の血が濃くなっちまうらしいぞ
男の言葉に女の食指が止まった。
俺のメシ、分けてやるからよ その肉ほどじゃあないかもしれないが中々いけるぜ
男は手の中の魚の日干しを振った。
しかし女は魚を一瞥すると、すぐに肉を食べ始めた。
女のつれない態度に男は少しがっかりした表情で魚を頭から口に含んだ。

先に食べ終わった男は女が食べ終えるのを待って再び声をかけた。
狼って奴はよ、群れを成すもんなんだよな
男は自分に目を向けた女をじっと見つめて続けた。
そのせいかな 自然と惹きあうんだよな 雄と雌なら、なおさらよ
焚き火がパチパチと音を立てて弾ける。
男は暗い雲に隠れ始めた月に目をやった。
今なら月も見てないぜ… って、おい
荷物をまとめ始めた女に男は慌てた。
き、気を悪くしたんなら謝るからよ 行かないでくれよ こんな所で1人で寝るのはキツいぜ
周囲は真っ暗な闇で、人里は遠い。
鞄の口を締めて、女は立ち上がった。
な、なあ ほんの出来心だったんだよ
しどろもどろとした口調の男に向けられた女の瞳は、予想外に優しい光をたたえていた。
別に怒ってなんていないわ
見た目に似合わない透き通った声。
月が雲の切れ目からまた顔を覗かせた。
銀色の毛並みが美しく輝いて揺れている。
男は呆けた表情で自分を見下ろす女に見とれていた。
焚き火の脇を通って女は男に近づいてくる。
あなたの言う通りよ 狼は自然と惹かれあうものよ
女は男の肩に手を乗せると、その顔を近づけた。
雄と雌なら、なおさらね
男は胸が高鳴っていた。野生の血が滾り始めた。

しかし、次の瞬間女の口は男の喉に喰らい付いていた。
銀色の狼の口の端から漏れる鮮血。肩に掴んでいる手からは鋭い爪が伸びて肩に食い込んでいる。
首を顎で強く圧迫され、雄狼はかすかな声も漏らさず驚愕の表情で雌狼に組み伏せられた。
暴れようにも押さえつける雌狼の力は信じられないほど強く、雄狼はしばしの後に事切れてしまった。
雌狼は雄狼の首に喰らい付いたまますする様に、喉を鳴らして血を飲んでいた。
やがて真っ赤に汚れた口を離すと、狼は月に向かって吼えた。


ライカントロピーにはさらに先があることを知る者は少ない。
濃くなりすぎた狼の血は肉体を変化させ、より強い力を求めてさらに血を欲する。

               シルバリン 
彼らを知る者はその美しい姿から"銀狼"と呼んで恐れている。

244ドギーマン:2007/07/30(月) 20:52:06 ID:AepyIIHk0
久々のウルフマンネタです。
シルバリンは銀狼の上にフリガナみたいな位置になるはずだったんですが…
ずれました。脳内補正をお願いします。

245ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/30(月) 21:07:16 ID:ePSal1UE0
Episode04-Close to you 〜こんなにも好きなのに〜

バーソロミューとマスケーロに闇の元素を教えんがためにモリネルタワーからやってきた、ディムジェスターzinのディンガ。
親友であるリプリートマーキzinのセルジオと共に、彼のマスターであるフィナーアの元へと2匹は向かっていった。
一方、バーソロミューたちは早速準備をし、すぐさま闇の元素を扱うための練習に取り掛かった。
ディンガに教えてもらった「何も考えない」を意識し、目を閉じ、何もかもを考えない状態に入る・・・・

何秒、いや何分経ったのか・・・何も意識せずにいるまま時は経つ・・・・すると次の瞬間だった!
耳元に「ジジジ・・・」と何か火花の散るような微かな音が二人の耳に入ってきた。恐る恐る目をゆっくりと開く・・・
「・・・あ!見て下さいバーソロミュー!!闇の元素です、闇の元素が出ました〜!」マスケーロが歓喜の声を挙げた。
同時に彼の手の平には、石英の結晶のような漆黒の水晶状の物体が出来上がっている。光が反射し、紫色の光沢が浮かぶ。
異変はバーソロミューにも起きていた。マスケーロと同じく手の平の上に闇の元素を発現させたが・・・先の水晶型の元素とは違う
炎球状の元素が浮かび上がっていた。どうやら二人はいきなり闇元素の扱いをマスターしてしまったようである。

「いやはや・・・まさか一発でここまでやってしまうなんて。とはいえマスケーロ、この闇の元素は応用の幅が広いかもしれませんよ?」
「はい、僕も同じ考えです。僕は元素の形からわかるとおり、氷結型の魔法が得意ですから。新しい魔法が出来そうで楽しみです!」
さらにテンションを上げながら、二人の魔術師はディンガが残していった黒魔術の魔導書を開き
闇の元素を応用した魔法の勉強に取り組むのだった。と、そこへ一人の人影が・・・

「あ、バーソロミュー?あの・・・今ちょっと忙しいかな?聞いてもらいたいことが・・・」
顔を赤らめながら、ランサーのラティナが歩み寄ってきた。首をかしげる魔術師二人であったが、お互い顔を合わせて頷くと
バーソロミューはラティナを連れて木陰へと足を運んだ・・・

246ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/30(月) 21:27:58 ID:ePSal1UE0
「・・・ごめんね、せっかく練習してるのに邪魔しちゃって・・・・」
「いえいえ、練習といってもまだ本格的なものではないので・・・で、一体どうしたんですか?」
肝心のことを問い質すバーソロミューに、ラティナは少しうつむきながら「・・・えと、あのね」と呟き、そして言った。
「・・・あたし、トレスヴァントのことが気になってしょうがないのっ!ずっと前からこの思いが止まらないの、ねぇ何で!?
 この気持ちは何なの!?あたし・・・トレスヴァントのことが・・す、すす、す・・・・」
「あ〜・・・なるほど。ラティナさんもそういうお年頃ですからね、恋の一つや二つんぐっ!!?!」
気にも留めずに普通の声量で的を得るバーソロミューの口を、彼女は慌てた様子で塞ぎに掛かった。
「シィーッ!シィ―――っ!!・・・(ちょっと、大きい声で言わないでよ〜!?フィナーアさんに聞かれでもしたら・・・)」
「あらあらあらァ〜ん?・・・うふふ、聞いちゃった聞いちゃったァ♪若い男女のピュアな恋愛・・・あぁん!たまらないわァ〜!」
と自身を抱きしめ悶えるのはビーストテイマーのフィナーア。ペットのセルジオと彼の友人のディンガも一緒だ・・・・
「・・・なァ相棒、こんなときはどうするよ?」「そりゃアレだよお前、オレらにできることはただ一つ・・・」
『言いふらしに行くぞぉ〜!!トリいぃぃいぃぃぃいいぃコぉおブェエえええぇっ!!?!』
村中にこのスクープを言いふらそうとした2匹の後頭部を、ラティナは持っていた槍の柄で殴打した。
「べべ、別にあたしはトレスヴァントのことなんか・・・気にしてな・・あ〜んもうっ!!知らないんだからねっ!」
顔をハバネロ並みに真っ赤に染めて、混乱気味のまま彼女は走り去っていった。途中、木にぶつかるような音もしたが・・・

「・・・うふふふふふ、このアタシが他人の色事をぬけぬけと見過ごすことがあって?追跡するわよミューたん・・とそこのエルフちゃん!」
「・・・は、はい(というか何でこの人は未だにふんどし一丁なんですかね・・・?というか少し汗臭いよこの人、お風呂入って貰わないと)」
「あら、アタシが汗臭いですって?いいじゃないのそんな事、それにスポーツの後に汗を掻いた女って萌えない?ねぇ萌えるでしょ!?」
「・・・・(この人ヘンタイだ、間違いなくヘンタイだ・・・彼女を担当したエストレーアが心配だよ・・・)」
心の中で呟くマスケーロ、バーソロミューと相変わらず曝しとふんどし一丁のラティナは、ラティナの後を追うのだった。

247ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/07/30(月) 21:32:25 ID:ePSal1UE0
あとがき

テスト勉強せにゃならんので、続きはまた次回です。
というわけで今回のお話、槍子はラティナと剣士トレスヴァントのラブストーリー前編でした。
ラティナのツンデレ台詞が一文しか出てこなかったからな・・・今度はツンデレ率をアゲて書きたいです。
次回はラティナとトレスヴァントの夜の会話が中心になります。大人の時間は描写できるほどの文章力が無いので
書かれることの無きはあしからず。

248名無しさん:2007/07/30(月) 22:12:18 ID:7XJGvdf.0
ドギーマン様、ESCADAa.k.aDIWALI様、
読ませて頂きました^^;とても良かったですよぉー(^д^)ノ
またお時間があれば作品投下お願いしますー(^ω^)ノ

249◇68hJrjtY:2007/07/31(火) 01:15:26 ID:CRPxr5tY0
>ドギーマンさん
ドギーマンさんのウルフマンネタは本当にウルフマンが好きなのが伝わります(*´д`*)
雌狼というと個人的なイメージですと美しさや優しさを感じると共にと同等な力強さを感じます。
群れを成す、という表記で確かに狼の習性からすればウルフマンも群れを成してもおかしくないのですが
何故か孤高、とかひとりぼっち、みたいに感じるのはどうしてだろうか…ウーム。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
さて面白くなってきましたね!なんて言ったら私もラティナさんに貫かれそうですが(笑)
青春真っ只中のラティナさん、一方トレスヴァントの方は修行の真っ只中でしょうか…。
しかしフィナ姉に知られてしまった以上これはただ事では済まない気がorz
ってまだフンドシなのかい!(ノ∀`*)
テストとの並行ですか…無理の無い程度に続きの方お願いします。

250ドギーマン:2007/07/31(火) 18:55:08 ID:AepyIIHk0
ある老婦人が息を引き取った。
夫に手を握られて、それは穏やかな死に顔で。

シブレイ夫妻がこの療養所にやってきた時、私は二人が夫婦とは信じられなかった。
母親と息子、いや下手をすると孫にも見えてしまったかもしれない。
それほどにシブレイ氏は若々しかったのだ。
病に倒れた婦人に対して、氏は実に献身的に付き添っていた。
はたから見れば異質な二人だったが、彼らの会話には愛が溢れていた。
彼らが来てから二週間ほど経ったとき、婦人は発作を起こした。
その時はなんとか彼女の命を繋ぐことはできたが、あの氏の表情を私は忘れられない。
眠りについた婦人の手を撫でながら、氏は私にこう言ったのだ。
「私は…、その気になれば彼女の病を治すことが出来るのです」
私には俄かには信じられない事だった。
しかし、すぐに納得させられた。
彼の正体は天使だったのだ。
「何故、ビショップが居ながら死人が出るのか知っていますか」
「それは、この力を使うことが出来る相手が限られて居るからです」
「我々はある目的のために地上へ遣わされました。
 その目的達成のために有益な人間にしか、この力を使うことは許されないのです」
「あなたが思っているほど天使は綺麗な存在ではないのです。
 人間を利用するために生き返らせ、そしてまた戦わせる…そんな卑怯な存在なのです。
 私を軽蔑してください…。私は…、神罰を恐れる余りに彼女を見殺しにしようとしています…」
婦人の手を握りながら、氏は語った。
私は何も言えなかった。

婦人の容態が安定してきた頃、婦人の強い希望により私は彼女に市場までの散歩の許可を出した。
もちろん安定しているように見えていたとはいえいつ容態が急変するか分からなかったため、
二人にとっては残念だったかもしれないが私も付き添うという条件付きだった。
久しぶりの市場の空気に婦人ははしゃいでいるようだった。
ちょっと目を離すと「あら安いじゃない」と露店に夢中になっていた。
しかし氏が夫人に「何か欲しいものはあるかい」と言うと、婦人はすぐにいいえと言うのだった。
休憩しようと公園に入ってベンチに座ると、婦人は私に言った。
「この人ったら変でしょ。こんなに若いのに私みたいなお婆ちゃんと一緒にいて楽しいのかしら」
すると氏は「もちろんだよ」と笑いながら言った。
「わたしもまだまだ捨てたものじゃないわね」
婦人は嬉しそうにそう言った。
またのろけが始まったかなと私が呆れていると、婦人は寂しそうに言った。
「子どもは出来なかったけど私はこの人と一生を生きられて幸せだわ。
 でも一つだけ、我侭なんだけど不満があるの」
「夫婦なんですもの、同じように歳を取りたかったわ」
氏はすまなそうな表情を見せた。
「でもこの人の服を選んでるときは自分の子どもに服を選んであげてるみたいで、それはそれで楽しいのよ」
そう言ってふふふっと笑った。
帰りの道中、氏はずっと黙りこんでいた。
「もうあなた、夫婦に不満なんて付き物なんだからそんな深刻そうな顔しないでよ」

251ドギーマン:2007/07/31(火) 18:55:37 ID:AepyIIHk0
ある晩、珍しく氏が1人で夜空を眺めて立っているのを見つけた。
いつもは婦人が眠るまで付き添っているのだが、その日は姿が見えなかった。
私は氏に声をかけようかとも思ったが、なんとなくそっとしておいた方がいいと思いそのまま通り過ぎた。
翌日、私と婦人は彼の姿に驚かされた。
たったの一晩で、氏は老人となっていた。
別人かとも思ったが、彼の面影をしっかりと残した老人は夫人の傍に寄って「おはよう」と言った。
私はきっと随分と間抜けな顔をしていたことだろう。
婦人も口をパクパクとさせていたが、
「今朝は具合はどうだい」と夫が言うと「馬鹿ね…」と言って彼にすがり付いて泣き出した。
氏は「馬鹿でいいさ」と言ってシワシワになった手を婦人の背に回した。
私はすぐに部屋を出た。
その後二人きりになったときにシブレイ氏は私にこう言った。
「神罰を覚悟で彼女の病を治したとしても、きっと彼女は長くはないでしょう。歳ですからね」
「彼女の最後のために私が出来ることは、こうする事しか思いつきませんでした」
「天使に生まれて、…自分の死を考えたのは初めてです」

婦人の最後の時がついにきた。
最後の発作の死の激痛に苦しみ始めた婦人。
年老いたシブレイ氏は彼女の手をぎゅっと両手で握り締めていた。
誰にも、何も出来ない。ただ見送るだけである。
「あなた…」
婦人は夫の手を握り締めて小さく搾り出すように言った。
「大丈夫、私も必ず同じところへ行くから…」
「そ…う…、待ってるわね…」
その言葉を最後に婦人は息を引き取った。
冷たくなっていく妻の手を、氏はずっと握りながら泣いていた。

そしていま私の前でベッドの中に横たわる老人は、静かに妻のもとへ行くその時を待っている。

252ドギーマン:2007/07/31(火) 19:03:40 ID:AepyIIHk0
あとがき
本当はもっと長く書くつもりで書き出したのですが、すこし強引に短くまとめました。
短いですが書き終わったあとはしんみりした気分になりました。
>>248さん
ありです。また投下しましたので良かったら読んでください。
>68hさん
一匹狼って言葉がありますからね。
私もウルフマンのイメージはそんな感じですよ。

253名無しさん:2007/07/31(火) 22:21:15 ID:ZtaxUoGE0
こんばんは、自称支援BISです
とりあえずお返事を・・・

>68hさん
喜んでいただけて光栄です〜
武道サマナ物語は・・・えっと・・・
元々1話完結のつもりだったのが、ネタが浮かんだので2話構成にしただけだったりw
またその内ネタが浮かんだら書かせて頂きますので、しばしお待ちを・・・

>ESCADAさん
ギャグを混ぜるのは初めてだったので、自分でもどうなるかと思いましたw
楽しんで頂けたようで、嬉しいです


さて、今回は異色カップルの話を書いてみました
・・・やはり無理がありました orz
まぁ、折角書いたので載せますー
では、WIZとネクロの物語、どうぞ〜

254自称支援BIS:2007/07/31(火) 22:21:51 ID:ZtaxUoGE0
「・・・君、名前は?」
「・・・」
「その格好、確かネクロマンサーっていうんだっけ?」
「・・・」
「・・・はぁ・・・」
私が黙っていると、彼は諦めたように溜息をつき、歩き始めた
その後をついていく私
「しっかし、皆どこなんだろうなぁ」
「・・・」
彼が散々話かけてきているが、私は黙っている
だって・・・私は・・・
「っ!気を付けて、敵だ!」
「・・・!」
「なんて数だよ・・・くそっ・・・」
10体を軽く超える敵の集団と遭遇してしまった
彼は私をちらっと見た後、呪文の詠唱に入った
「火の精霊よ、我と仲間に戦う力を!」
「風の精霊よ、私達に天かける翼を!」
体が軽くなり、力が沸いてくるような不思議な感覚の魔法だ
「君、戦える?」
「・・・(こくん)」
私はうなずくと同時に、闇の力を解放した
「分かった、じゃ行くぞっ!」
支援WIZであり、戦いは不向きなはずの彼だが、何故か先に突撃していった
私が戦えないと思っているのだろうか・・・?
敵に向かって杖を振るう彼
だが、簡単にかわされてしまう
敵の反撃が彼を襲う
私は・・・
「・・・・・・!」
「っ・・・?あれ?」
敵の攻撃は確かに彼に当たった
だが、悪態をつかれた敵によるダメージは微々たる物だった
続けざまに私は嫌みを言い、悪口を投げかけ、呪いをかけた

今まで私は、口を開くと相手の悪口ばかり言っていた
だから、今まで出会った人達は、皆私を避けようとしていた
そんな事が続いたため、私は滅多に話さなくなっていた
だが、彼は違った
だって、彼は笑っていたのだから・・・
「おー、やるじゃん君」
「・・・」
「さてと、一気に片をつけるか・・・敵の相手、任せたよ?」
そう言うと、少し後ろに下がって詠唱を始めた
(私を頼ってくれた・・・?私を認めてくれた・・・?)
その思いと共に、敵の注意を引く
「・・・火の精霊よ、我らに刃向かう敵を打ち砕く力となれ!」
詠唱が終わる直前に、私は悪魔の幻影を作り出す
敵はその幻影に向かって攻撃を始めた
それを確認し、私は急いで彼の元へと走った
「いっけぇぇ!」


「ねぇ、それからどうなったの?」
「それがさぁ・・・やっぱり俺のメテオじゃ倒せなくって・・・」
「・・・彼女に倒してもらった、とか?」
「・・・うん・・・」
「あーあ、もう台無しじゃない・・・」
「だ、だって・・・」
「まぁいいわ、他に私達と再会するまでに何か無かったの?」
「ん〜・・・あぁ、一つだけあったな」
「え、何々?」
「ナイショ」
「えー、ケチー!」
「アーチャー、その辺りにしておいたらどうだ?彼だって疲れてるんだし」
「うー・・・」
何があったか、というと・・・

「やっと倒せた・・・」
「・・・」
「ねぇ、君」
「・・・?」
「ありがとう、助かったよ」
「!・・・ ・・・」
「え?」
「・・・」
「・・・どういたしまして、またよろしくね」
「・・・はいっ!」
私、言えた・・・素直に「ありがとう」って言えた・・・
「おーい、WIZ−、ネクロー」
「あ、PTの皆だ。おーい!こっちー!」

こうして私は、始めて他人と会話ができた
今日も彼と私は2人で狩りをしている
「・・・」
「サンキュ。よし、今回は仕留めるぞっ」
「・・・無理じゃない?」
「酷っ!見てろよー・・・」
「フフッ」
・・・ありがとう、本当に、ありがとう・・・

255◇68hJrjtY:2007/07/31(火) 23:34:01 ID:CRPxr5tY0
>ドギーマンさん
またの執筆ありがとうございます。
再びの悲しい作品ですが、今回のものは読み終えてもただ悲しいだけでは無いですね。
どこか幸せな感じがして、死んでもなお結ばれている二人が少し羨ましかったです。
ところで「一匹狼」、その言葉を度忘れしていました。なるほどと納得。
でも時折ウルフ祭りとか開催してるとちょっとだけ覗いてみたくなりますU・x・U♪

>自称支援BISさん
ネクロWIZネタ、とっても和みました(*´д`*)
異色カップルとはいえ、こうして読んでみると結構お似合いに見えるから不思議。
ネクロちゃん(この呼び方でいいものか…)がちょっとだけツンデレ風味なのも良い味出てます。呪文詠唱もさりげなくカッコイイ。
武道サマナ小説とまた同じネタで書いてくれるというのは楽しみにしていますよ!
もちろん他のネタでも大歓迎です。

256ドギーマン:2007/08/02(木) 00:00:24 ID:AepyIIHk0
名も無い塔最上階にて

勢い良く入ってきた戦士が大剣を振りかざして叫んだ。
「ついに見つけたぞ。覚悟しろ!」
背中から声をかけられたリッチはゆっくりと振り向いて一言。
「やり直し」
「へ?」
戦士は間の抜けた声を吐いた。
「なんつーかさ、もーちょっとボキャブラリーってもんがないのかねェ。ニンゲンってやつはよぉ」
「何言ってんだ?」
「だからさあ、たまには変わった煽り文句が聞きたいっつってんだよ。それぐらい気を利かせろよ」
「なんで俺が気を利かさなきゃなんねえんだよ」
「あ、なになに、そーゆー態度取るわけ?ならいいよ。古文書やんねーもんね」
「じゃあ何か?気を利かせたらくれるってのかよ」
「おうよ」
「マジで?」
「マジマジ、お互い痛い目見ずに済むだろ。分かったら入ってくるとこからやり直しな。
 そこのスイッチで下の階に行けるからよ」
「本当にくれるんだろうな?」
「俺は約束は破ったことはねえぜ」
「本当だろうな…」
そう言いながらも戦士はスイッチに触れた。
すると戦士の身体が光に包まれて消えてしまった。
「ま、下の階っつっても地下なんだけどな」

次にやってきたのは武道家だった。
「そ、その顔はまさか!?」
武道家の顔を見るや否や突然リッチは驚愕の声をあげた。
「?」
「な、なあ、お前名前は?」
「え…××だけど…」
「やっぱり!俺だよ。○○だよ!お前の兄さんだよ!」
「は?」
「そうか。覚えてないのも無理ないな。なんせあの頃のお前はこーんなに小さかったもんなぁ…」
「何言ってんだ。おれに兄弟なんか」
「親父から何も聞かされてないのか?…そうか、親父はまだ俺のことを恨んでるんだな…」
「………」
「母ちゃんは元気か?」
「いや、ずっと前に死んじまったけど…」
「そっか…、結局あの人だけだったんだよな。俺のために泣いてくれたのは…」
「………」
「古文書、取りに来たんだろ?」
「あ、ああ」
「いいさ、やるよ。俺のこの頭蓋骨の中にある。俺を殺して持っていってくれ。お前になら殺されてもいい…。
 親にも見放されて、挙句にアンデッドにまで落ちぶれちまった命だ。遠慮せずやってくれ」
「そんなこと…」
「いいんだ!やってくれ!誰にも相手にされないのにいつまでも生きてたってしょうがないんだよ!」
「そんなことない。俺が居るだろ。兄貴!」
「…お前、俺のことを兄貴と呼んでくれるのか?」
「当たり前だろ。兄弟じゃないか」
「ありがとよ…なあ、抱きしめてもいいか。久しぶりに人間の温かさを感じたいんだ」
「ああ」
リッチは大きな手甲に覆われた手で武道家をぎゅっと抱きしめた。
そして一言。
「フレイムストーム」
ブオォォ!!
・・・・・・・・・・・・・・
リッチが焼け焦げた武道家を床にぽいっと放ると、あちこちの物陰からぞろぞろとネクロマンサーが出てきた。
「いやあ、お見事!」
「ゼロ距離フレイムストームとは、やる事が違いますなぁ」
「ま、ざっとこんなもんよ。チョロチョロ避けられても鬱陶しいからな」

257ドギーマン:2007/08/02(木) 00:00:52 ID:AepyIIHk0
今度やってきたのはビショップだった。
「おお、よくぞ来てくださいました。神官様!」
「はい?」
「実はワタクシ、この塔に籠ること三千年。日々殺伐としたこの暗い生活にずっと苦悩しておりました」
「はぁ…」
「いつしか神の愛にすがり、救いを求めたいと思うようになったのでございます」
「なるほど」
「お願いします神官様!どうかこのアンデッドめに救いの手をお差し伸べくださいませんか」
リッチは無い膝をついて両手を胸の前で合わせ、祈るようなポーズをとった。
「なにとぞ…なにとぞ…」
「わかりました。よいでしょう。救いを求める迷える子羊はたとえアンデッドといえど導かなければなりません」
「おお!ありがとうございます」
「では、早速ですが」
「ああ、待ってください」
「なにか?」
「実はワタクシめの下僕達にも、神官様のありがたい説教を聞かせてやりたいのですが」
「構いませんよ。何人でも」
「ありがとうございます。おーい、お前たちー!」
ぞろぞろと数十体のネクロマンサーが集まってきた。
さすがにネクロマンサーたちに取り囲まれてビショップもたじろいだが、平静を装いつつ説教を始めようとした。
「それでは…」
「ああ、待ってください」
「まだ何か…?」
「その鎧を着たままでは重いし暑苦しいでしょう。
 それにわたしどもは神官様のご尊顔を拝しつつ説教を聴きたいのです」
「しかし…」
「アンデッドなど信用できないと…?それも無理からぬことです。
 やはり、所詮アンデッドなどに神の救いの手は差し伸べられないのですね…」
「脱ぎます!」
「おお!ありがとうございます!なんと凛々しいご尊顔。ありがたやありがたや」
ネクロマンサーたちも続いた。
『ありがたやありがたや…』
「で、では、もう説教を始めてよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「では、私の後に続いて復唱してください」
『はい』
「神は何人たろうとも救いの手を差し伸べん。さん、はい!」
リッチとネクロマンサーたちは大きく息を吸った。
『フレイムストーム!!』
ブボオオオオオォォォォォォ!!!!!!

古文書を手に入れるのは容易いことではない。

258ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 10:01:56 ID:Yiy8.GPA0
Extra Episode:Sexy Girl vs Dark Beast 〜フィナ姉19歳の武勇伝(?)〜

火酒倉庫・・・小都市ビッグアイの地下にある、普段なら人間も入らないような地下倉庫。
最近ここに冒険者が入ってくるようになったんだが、入ってくる奴らの十中八九はオレらのいる部屋でボコボコにされて
泣きっ面で帰っていくわけさ・・・おぉっと、紹介が遅れた。オレはその火酒倉庫の住人リプリートマーキzin、いわば闇の神獣よ。
しかし・・・はぁ、冒険者共もよくまァ懲りずにやってくるもんだぜ。どいつもこいつもただオレらを倒すことしか考えてねェじゃんよ。
噂じゃ、人間界にはビーストテイマーとかいうオレら魔物と友達になれる人間がいるそうだが・・・そういや今までこの火酒倉庫に
それらしき人間は来たこと無かったな〜。会ったとしたらどんな奴なのかねェ・・・楽しみだな〜

ある日のことだ。オレらは冒険者が来ない日は、以前にやってきた冒険者共からパクった本やおもちゃで遊んでるのよ。
この日は、そうだなァ・・・・・トランプで色々やったりしたな、ババ抜きとかポーカーとか。もちろん掛け金ありでな。
「おっしゃ!ロイヤルストレート・ハゲ!!」「ちげーよオメー、ロイヤルストレート・フラッシュっつーんだよっ!バカか!!」
「え〜?つーかァ、その呼び方ァ、無駄にカッコ良くてむかつくんですけどォ〜」「あ、言われてみると確かに・・・」
3匹の仲間たちはポーカーしながらバカ話。他の奴らは人間共の水着姿や裸やらが載ってる本を見て、鼻の下を伸ばしてたっけ。

オレはそのエロ本とやらを読んでる奴と一緒に、雑誌を読みふけっていたな〜・・・
「なぁなぁ、この巻頭カラー飾ってる女の子さァ、ビーストテイマーとしても活躍してるらしいぜ?」「へぇ、マジ?」
「いやホントだって。しかもかなり腕っぷしが強くてよ、ブルンネンシュティグ主催のパンクラチオン大会じゃ屈強な男たちを
 次々と倒して、挙句の果てにはチャンピオンにまでなっちまったらしいぜ?見ろよこの写真、ふんどし一丁で寝技掛けてるぜ?」
うわぁ、こいつァ際どい写真だな・・・ナイス食い込み、じゃなくて相手の男側は締め技に苦しんでるというか、早くこの女から
逃げ出したいと言わんばかりのある意味で恐怖の表情をしているのは気のせいか?一方の女は・・・悦んでるのか?
なんかすっげぇイヤらしい笑みなんですけど。下手すると発禁処分なことでもやりかねないな・・・・
「あぁ、この娘さァ、まだ19歳らしいぜ?スタイルいいし可愛いし・・・俺彼女に付いていこうかな〜えへへ」
な〜にがえへへだよ、そいつヤバいから。絶対ヤバいから。オレだったら知り合うなんざ御免被る。

と楽天的な友人をよそに呆れていたオレだったが・・・そこに火酒倉庫一帯を仕切る、赤い悪魔のボスからアナウンスが入った。

259ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 10:43:24 ID:Yiy8.GPA0
『おぅ野郎共!今日も客人がきたぞ、思う存分痛めつけてやれよ、俺は人間相手に威張るの大好きだからな!!
 突破されないように本気で掛かっていけよ!?獲物は1人、ビーストテイマーのフィナーアだ。以上っ!』

この知らせが入ると、火酒倉庫内の魔物たちは休息を止めて戦闘体制に入るんだな。
と、さっきの雑誌を読んでいた奴がまた雑誌を開いて何かを必死に探している・・・一体何を調べてるんだよ?
「いや、もしかすればよォ・・・さっきダンナが言ってた奴、ひょっとしてこの娘なんじゃねェの!?」
そう言いながら開かれたページには、さっきのふんどし一丁の女の写真があった・・・最悪だ!!
何だって今日はついてねぇんだ、よりにもよってパンクラチオン大会のチャンピオン!?しかも変態の匂いが
プンプンしてそうなこの女が来るだなんて・・・オレはその辺の小部屋にでも隠れようとしたが、他の奴らは
むしろ歓迎ムード満点になっていた。あぁ悲しきかな楽天家のバカ野郎どもが〜・・・しかも吹き戻しはプープー吹くし
クラッカーは鳴らすし・・・お前らどこまでお調子者なんだよ、仮にも闇の神獣なんだぜ〜!?
「まぁまぁ、そんな固くなるなって。彼女を倒して着せ替えドール代わりに楽しんだりしてさ〜・・・えへへへへへ」
おいおい何気持ち悪いこと言ってんだよ、あぁもうオレ知らないから。雑誌の写真みたいになってもオレ知らないから。

すると、この部屋でのリーダーのオレが手にするポータルから声が発せられた!炎のフロアの仲間たちからのようだ・・・
「あ、兄貴ぃ!こ、こちら炎のフロアのファイアブロワーでやんす!ヤバいでやんす、この女!ペットも召喚獣もいないのに強過ぎるでやんす!!」
「同じくこちら魔法老じゃ!この女全く手に負えん!わしの炎をヒップアタックでかき消しおったわ・・・ぎゃあぁぁあ来ないで――(プツっ)」
・・・・・なぁ、これを聞いてどう思うよ、マイフレンズ?尻一つであの魔老の炎が消されたんだぞ?ヤバくないか?
「うぉぉおぉスゲぇぇえぇ!エロパワーすげぇよオイ!」「こりゃもう着せ替えごっこの餌食になってもらうしかないですな〜」
「あ〜早くおいらたちの部屋に来ないかな〜」「・・・・くくく」「彼女の×××を××××して×××で×××・・・」
あ、こいつらもう現実見えてねぇな。悪いがオレはお前らと違って現実主義者だから、その女は倒させて貰うがね・・・・

「こちら水のフロアの凍破にごわす!おいどんしか残ってなかね、もう全滅したも同然でごわすよ・・・うわあぁああぁぁ!!?」
ちっ、水のフロアもやられたか・・・・ついにオレらが動くときのようだな、おめぇら!!気張って掛かれよ!?
「ハァ―――――イ!!」とガキの遠足のようなテンションで呼応する仲間達・・・大丈夫なのかよ。
そして間もなくだ、とうとう例の女が来やがった・・・・!!

260ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 11:23:32 ID:Yiy8.GPA0
「んふふっふ〜ん♪いやんばかぁん、そこは×××なのォ、あっは〜ん!」
変な歌を唄いながら現れたのは、どういう訳だか曝しとふんどし一丁の、銀色の波打った長髪をなびかせた
かなりグラマラスな女だった。しかも腰をくねらせながら歩いてやがる・・・バカにされてるみてぇでムカツくぜ。
「あらあらァ、今度はリプリートマーキね!?うふふ、さっきと同様、軽くひねり潰しちゃうんだから!」
「いやいや、そいつァ無理ですよ姐さん。悪いがアンタにはここで帰ってもらう、オレら神獣のプライドに懸けて・・・!」
少し粋な感じを演出しようと、オレはそれらしい口調で言い返した。しかしそれがまずかったのかな、彼女は発情しやがった・・・!
全く気持ち悪いったらありゃしねェ、いきなりてめぇの体中を触って自慰しながらクネクネしやがって・・・掴めない女だ。
「・・・あっ、あぁん、何て渋いコなの!?・・・ん、もうダメぇ、このコお持ち帰り決定よ!カモォ〜ン!!」
とまぁ、このエロ可愛い声にやられちまった仲間たちは当然盛りやがった。ここは集団で襲い掛かるのが、悪役の基本てもんだろ?
だがな、こいつら生粋のおバカだからよ・・・律儀に一匹ずつ掛かっていきやがった。タイマンは奴の独壇場というのに・・・・
1匹につき2〜3分つーところか、ご丁寧に体の触れ合いをじっくり楽しみながら・・・彼女はオレ以外の全ての仲間を
完膚なきまでに叩きのめしやがった。一部のやつらは悦楽の表情を浮かべたまま落ちていたがな・・・
「うふふ、これで残るはあなた一人よ?ねぇ、アタシと一緒に冒険しない?あなたが来れば、これでリプリートマーキのコンビ完成なのに」
「断る。ここはオレの住処、簡単に捨てるわけにはいかねェ。同族を仲間にしたけりゃ、デフヒルズでも当たってくるんだな。」
「ノンノン♪それはダメよ、1年前にある事件があってね、デフヒルズにはもう屍しか転がってないのよ。だから・・・」
「大体推察できた。てめぇはまず1匹の同族を手なずけた。その同族はデフヒルズ出身、だがその事件とやらで孤独になり
 あんたはそいつの虚しさを紛らわしてやろうと、ここに相方を捕まえに来たわけだ・・・泣かせるね。だが、ここは譲らん!
 オレはこの命潰えるまで、冒険者の壁としてここで一生を過ごす!来い、ビーストテイマー!決着を着けるぞ・・・!」
「・・・あなた、最高にクールね。今までいろんな魔物を見てきたけど、あなたみたいなのは初めてだわ。その強い意志には敬意を表するわ。
 その輝かしい心意気、受け止めてあげるわ・・・おいでなさいっ!」

261ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 12:17:41 ID:Yiy8.GPA0
あの女との戦いが、どれだけ長かったかは覚えてない。だがこれだけははっきりと言える。
本気出し合って戦ったんだ。オレは彼女に投げられ、彼女はオレに八つ裂きにされながらも・・・戦い抜いた。
そして決着は着いた・・・オレの負けだった。仰向けに倒れ天井を仰ぐオレを、彼女はいとおしそうに見つめた。
身体のあらゆる部位には切り傷ができ、まるで派手なデスマッチでもやったかのような流血ぶりだった・・・。
彼女の身を包む曝しとふんどしは血で染まり、赤くなっていた・・・。
「ハァ・・・ハァ・・・やっぱりあなた、最高にクールだわ。ねぇ、本当に私についていく気、ないの?」
「ハハッ・・・はぁ、アンタもしつこいなァ、オレは一生ここで過ごすって、ゲホッ!言ったじゃねぇかよ・・・」
「そういうあなたも頑固者よ・・・わかったわ、アタシはあなたを連れて行かない。その気高い意志、ここで貫き通しなさい」
「・・・ゲホッ、ありがてぇや。なぁ、オレさ・・・あんたのこと気に入ったよ。ここは一つ、オレの・・・」
「え、いやぁ〜ん!アタシこれでもまだ処女なのよ!?魔物と初体験しちゃうなんて・・・あぁ〜ん迷っちゃうわァ!」
・・・おいおい、さっきまでの気高さはどこに行ったんだよこの女。いきなり雰囲気崩しやがって・・・どっちが地の性格か
わかったもんじゃねェぞ・・・・はぁ、やれやれだぜ。オレは一人勝手に悶える彼女に向かってこう言った。
「ちげーよ、オレはあんたのことをライバルとして認めたんだ!だから、さ・・・友達にでも、なってくんねーかな?」
「・・・うふふ、良いわよ。アタシのライバルは妹のライバル。いつか彼女もここに来るだろうから、その時はよろしくね?」
「あぁ、会ってみたいな・・・あんたの妹に。その時が来るまで、オレはひたすら精進するのみよ。」
「ふふ、楽しみ・・・じゃ、アタシは次のフロアに行くわね!待っててねぇ〜ん可愛いモンスターちゃ〜ん!うっふ〜ん!」
ハハハ、また会ったばかりのエロキャラに戻ってやがる・・・お、悪魔のダンナからだ、ポータルが光ってら。

『ロッソ、お前とあの女の戦い・・・しかと見届けた。こりゃ面白くなってきたな〜、あやつの妹が来るのが楽しみだぞ!』
「えぇ、オレもです。その時は、彼女と決闘させてください。あの誇り高さを、また見れるような気がするんでさァ・・・」
『それにお前の強い意志もちゃ〜んと聞いてたからな?つーわけで闇のフロアの守護は任せたぞ、ハッハッハ〜!(ブツっ)』

262ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 12:19:50 ID:Yiy8.GPA0
Epilogue:5 Years Letter・・・

あれから5年の月日が経ったようだ。
今日も今日とて、冒険者たちはこの火酒倉庫にやってきて、ある者は火酒を手に入れ、ある者はやられて帰る。
仲間たちも時が流れるごとに人間の世界のことも覚え、中には人間と友好関係を結んだものもいた。
悪魔のダンナもだんだんと人間好きになり、火酒倉庫をトレーニング場として、ペットのテイム場所として開放した。
ある日のことだ、懐かしき戦友からポータルクリスタルに電話が入った。相手が誰だかわかったオレは、意気揚々と
その声の主と陽気に話した。そしてついに、待ちわびた時が来ようとしていた・・・例の妹がここに来るんだそうだ。

そして、オレたちリプリートマーキzinが巣食うこの闇のフロアに、彼女は現れた。
まだ微かな幼さが漂う、いかにも人間の女の子といった可愛らしいオーラ。齢17〜18といった程度だろう。
だがオレにはわかる・・・彼女は間違いなく、わが友の血を受け継いでいる。彼女が口を開いた。
「えと・・・ここにロッソっていう名前のリプリートマーキzinはいますかぁ?」子供っぽい甘い声と口調がフロアに響いた。
オレらの仲間のうち1匹がフランクな口調で「お嬢ちゃん可愛いね〜、おじちゃんと遊ぼっか?ん?」と寄っていったが
「おい、下がってろ・・・」オレはそいつを退け、彼女の元へと移動した。まだ幼さの残る顔に、少し戸惑いが見え隠れしていた。
「ようこそ、火酒倉庫は闇のフロアへ。オレがこの部屋を取り仕切るロッソだ。君のことは5年前から来訪を待っていた。」
「あ、あなたがロッソさん?ミリアって言います、よろしくなの〜!」・・・はは、可愛らしいな。だが、ここは元々はダンジョン。
そこに長年暮らしてきたオレにとっては、来訪者は挑戦者でもある。オレは戦闘体制に入り、己の体に闇のオーラを纏った!
「ミリアはね、ここのリプリートマーキzinをお持ち帰りするために来たのよ!負けないんだからねっ!」
「それを成し遂げたいなら、この部屋の支配者であるオレを負けしてみるんだな。・・・来いミリア!その力、見せてみろ!!」
言われた側のミリアは、「はぁっ・・・!」と手足に炎の氣を纏うと、カンフーと思わしき構えを取った・・・。
この少女、功夫も武道も会得し極めたようだな・・・・幼いながらも気高いオーラは姉譲り、か。

「闇の神獣リプリートマーキ・・・同族を代表し、ロッソ=ブラックアウト・・参る!!」
「ミリアン・ウォン、いきますなのっ!はいやぁ――――――っ!!!」

今日も今日とて、オレは冒険者相手に拳で語り合う。それが、オレの人間への愛情表現だ。

Fin.

263ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/02(木) 12:42:32 ID:Yiy8.GPA0
あとがき。

ちょっとネタに詰まったので、番外編です。
時間軸としては今のストーリーから3年前と、エピローグは2年後という設定。
ミリアのキュートさは全然変わってません。どうも最近リプzinをテイムしたくてたまらなかったので
その愛情がここにきてこういう形でフィードバックされたみたいな、そんなお話です。
ちなみに、フィナーアは本気になると気高い口調と性格になります。ギャップ萌えですn(ry
・・・誤字脱字が多いかもな;;

>自称支援BISさん
ネクロとWIZの二人、いいかんじですねvキャラクターの背景とスキルを絡める辺り、
味が出ていて読み応えがあります。今度はどんなカップルが出るのか楽しみです。

>ドギーマンさん
愉快痛快な作品どうもです。名も無い崩れた塔でのリッチ&ネクロマンサーと冒険者のやりとり
とても面白かったですよ〜、悪知恵の限りを尽くして冒険者を駆逐する・・・こんなMobに倒されるのも
悪くないかもしれません・・・・

264名無しさん:2007/08/02(木) 14:40:30 ID:aBANPeWY0


265ドギーマン:2007/08/02(木) 20:18:19 ID:AepyIIHk0
『コボルトチャンプ』

コボルトチャンプはコボルトの子供達にとって憧れのヒーローだ。
チャンプなのだから当然強い。
パパ達がいくら挑戦してもあっさりと勝ってしまう。
チャンプは森の奥で1人で住んでて、一般のコボルト達の前に姿を現すことは少ない。
でも、やって来るときは決まっていつも夜なんだ。
「いい子にしてたかい」
「強くなって、立派なコボルトになるんだよ」
そう言って飴を配ってまわるんだ。
花畑のほうに居る病気の子たちのところへも行く。
病気が移っちゃうかもしれないのに構わず飴を配りにいくんだ。
「チャンプだから病気なんかヘッチャラさ」
みんなチャンプが来てくれるだけで跳ね回って喜ぶんだ。
生意気なあいつだってチャンプには甘えるんだ。

ニンゲンはパパ達にラクガキして回ってる意地悪なやつら。
子供のコボルトを見つけると捕まえて食べちゃうんだってさ。
ヒドイよね。サイテーだよね。
でもチャンプはあんな奴らには負けないよ。
だって僕見たんだ。
森の中から飛び出してきたチャンプが絨毯に乗って逃げるニンゲンを追いかけてるのを。
あのニンゲンはきっとチャンプに追いつかれてボッコボコにされたに決まってる。ザマアミロ!

でもね、でもね、チャンプだって苦戦することはあるんだ。
どうしても会いたくってパパの目を盗んで森の中に入っていった僕が見たのは傷だらけのチャンプ。
大丈夫?って聞いたらチャンプはちょっとビックリしてたけど、
「ヘッチャラさ!」って胸を張って答えてくれた。
とても強いニンゲンにやられたんだってさ。
苦戦したけど、追い払ってやったってさ。
いつも夜に来るのは、みんなに傷を見せたくないからなんだってさ。
痛くないの辛くないのって聞いたら、
「いいかい。チャンプは絶対に弱音を吐いちゃいけないんだ。なんたってチャンプなんだからね」
そう言ってチャンプは僕の頭を撫でてくれた。
すっごくカッコ良かった。
でもその後怒られちゃった。
「ニンゲンに見つかったら食べられちゃうぞ!」って。
その後、チャンプと話したことはみんなには絶対に秘密だって約束した。
男同士の約束だ。

僕もきっと強くなって、いつかチャンプみたいな男の中の男になるんだ。
そしてみんなをニンゲンたちから守るんだ!

266ドギーマン:2007/08/02(木) 20:19:31 ID:AepyIIHk0
あれから5年たった…。
僕は身体も大きくなって、一人前のコボルトになった。
まだまだニンゲンには敵わないけど、チャンプのようになれる日を夢見て身体を鍛え続けていた。
でも友達とチャンプの話をしてたとき、生意気なヤツが言ったんだ。
「チャンプはニンゲンに勝ったことなんてない。いつもボコボコにやられてるんだ」
僕は信じなかった。そんなの嘘っぱちだ!
「なら本人に聞いてみろよ」
僕はすぐに走り出した。
チャンプはきっと胸を張ってこう言ってくれるはずだ。
「負けるわけないだろう。なんたってチャンプなんだからね」
途中ニンゲンに顔にラクガキされたりしたけど、なんとかチャンプの居る森に着いた。
チャンプ、いますか?
「ク、クウゥゥ…」
チャンプの声だ。呻いてるようだけどどうしたんだろう。
僕が声のしたほうを覗きこむと、チャンプがニンゲンにやられていた。
「ま、まいった。命だけは…」
僕は、頭の中が真っ白になった。
「ケッ、ザコが。これに懲りたらこのベンデルカンプ様に楯突こうなんて考えるなよ」
歩き去っていくニンゲン。
僕は愕然とうずくまっているチャンプを見ていた。
「君は…」
顔を上げたチャンプは僕に気付いた。
「はは、は。かっこ悪いところを見られちゃったな。
 初めてニンゲンに負けちゃったよ。今日のチャンプは調子が悪くってね」
…………………。
見え見えの嘘だった。
僕は泣きそうだった。
こんなのを、今まで目標にしてたなんて…。
所詮コボルトがニンゲンに勝てるわけがないんだ…。
チャンプみたいなになるなんて、皆を守るなんて…。
気が付けば僕は走り出していて、いつの間にか洞窟の自分のねぐらに戻っていた。

267ドギーマン:2007/08/02(木) 20:20:11 ID:AepyIIHk0
その晩、チャンプがやって来た。
洞窟内が賑やかに、騒がしくなった。
きっとチャンプは今晩も子ども達に飴を配っているんだろう。
「おい、チャンプが来たぞ!」
友達が声をかけてきた。でも、僕は出て行く気になれなかった。
チャンプを見たら、僕は泣いてしまうかもしれない。
僕はとても惨めな気持ちで、ねぐらの小さな穴の中で丸くなっていた。
「すまないが、ちょっと彼と二人きりにしてくれないか?」
「は、はい!」
え?
「やあ、やっぱりあの時の子だったね」
僕のねぐらのすぐ外にチャンプが来ていた。
「君の気持ちはよく分かる。出来れば、出てきて私の話を聞いてくれないか?」
僕はもぞもぞとねぐらから這い出すと、チャンプと向かい合って座った。
みんな離れたところから羨ましそうに僕を見ている。
全部、嘘だったんですね。
「…………」
何か言ってください。話をしてくれるんでしょう?
「ああ、確かに私はみんなを騙していた」
僕の胸の中で何かがズキリと傷んだ。
真実を改めて突きつけられて、僕はしゃくり上げていた。
なんで…なんでですか。
「君もよく知っての通り、私たちコボルトはとても弱い存在だ。
 ニンゲンにその時の気分で殺されたりする事も珍しくない」
「ただ居ただけで殺された者。遊び感覚で殺された者。家族を無残に惨殺された者…」
僕も見たことがあった。昔の友達はほとんど殺されてしまった。
「みんながとても悲しくなった、とても惨めな気持ちになった。だから心の支えが必要になった」
……………。
「強くなればコボルトでもいつかきっとニンゲンに勝てる。
 みんなにそんな希望を与えるために、私は立ち上がった。
 そしていつしかチャンプと呼ばれるようになった」
……………。
「君も見ただろう。私の命乞いをするあの情けない姿を。軽蔑されても仕方が無い。
 でもそれでも私は死ぬわけにはいかないんだ。子供達のためにどんなに辛くても絶対に生きなきゃいけないんだ。
 そのためには何度でも地面に這いつくばるし、人間の靴の裏だって舐める」
……………。
「大人のコボルトのほとんどはこの事を知っている。でも決して子ども達にこの事を教えたりしない。
 なぜなら、みんな子ども達を希望だと思っているからだ」
希望……。
「そう、彼らの中からいつかきっと本物のチャンプが現れてくれるその日を夢見ているんだ」
そうだったのか…。
だから、チャンプは絶対に弱音を吐かないのか。
どんなに傷ついても、皆のために胸を張ってきたのか。
皆のために、皆のために…。
たとえ嘘でも、チャンプは男の中の男だった。
僕の中で砕けた夢のカケラが、新しいカタチで蘇った

僕はロマというニンゲンと共に旅に出ることにした。
仲間達から軽蔑されるだろう。ニンゲンに尻尾を振る最低なコボルトとして。
でも、危険だけど強くなるには一番の近道だとチャンプが教えてくれたんだ。
そして僕には新しい目標が出来た。
いつかチャンプのようになる…そんなのじゃない。
『絶対に強くなって帰ってくる。そして本物のチャンプになる』

僕の冒険が始まった。

268ドギーマン:2007/08/02(木) 20:26:28 ID:AepyIIHk0
あとがき
1000文字SSを思い出しつつ書きました。
クエ中居なくなったコボルトチャンプにヤキモキさせられたものです。

>ESCADAさん
感想ありがとうございます。
まだ全部読めてないのでまたこちらからも感想レス書かせて貰いますね。

269◇68hJrjtY:2007/08/02(木) 21:21:18 ID:dpCYqa0M0
>ドギーマンさん
続けて二つとも読ませてもらいました〜。
まずはリッチ…思えば探検ついでで行ってみて瞬殺されてもうどれだけ経つのだろう…orz
話自体はギャグのようにまとめられていますが、体験した人にとっては悲しい物語です(泣)
BISの装甲を脱がすくだりは北風と太陽の話を思い出しました。あの手この手(ノ∀`)

もうひとつのコボルト話、これは普通に悲しいです( ´・ω・)
チャンプはチャンプのままでコボルトたちの希望とならなければいけない。
少年が大人になるという過程が短い中にもそこはかとなく描写されていて良かったです。
そしてこの話のコボルト君が1000文字小説に繋がると思うと…素敵です。


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
火酒倉庫のリプZin…私はあそこのリプが倒せないままもうメインクエ放置していますorz
というわけで個人的な因縁の場所が舞台となって思い入れ深く読ませてもらいました!
エロパワー炸裂なフィナ姉が唯一本気で渡り合った相手、ロッソ。問答無用でカッコイイです。
しかしフィナ姉が寝技マスターならミリアは功夫マスターですか…恐ろしい。恐ろしすぎる。
ボスからのアナウンスとか笑っちゃいました。本当にこんな事してる場面を想像すると面白いです。

270ドギーマン:2007/08/03(金) 18:19:07 ID:AepyIIHk0
みんな、指なし男の話は知ってるかい?
知らない?なら話してあげよう。言っとくけどトイレ先に済ませておいたほうがいいよ。
はははは、それなら始めようか。

そいつは決まって君たちのような小さな子どもの前に現れるんだ。
とても長いコートを着込んで、帽子を深くかぶって顔を隠した男。
そいつは手袋をした手でフトコロから分厚い美味しそうなクッキーを出してね。
「美味しいよ。食べてごらん」っ言うんだ。
そこで逃げても男は追いかけてきたりはしない。
逃げれば絶対に大丈夫なんだ。
でも、うっかりその美味しそうなクッキーを食べちゃうとさあ大変。
クッキーを噛むと変な歯ごたえの何かが入ってるんだ。
なんだろうと思って口を離して見てみると…
なんとクッキーの中に切断された人間の指が入ってるんだ。
そして「どうだい?僕の指は美味しいかい?」
そう言って男がクッキーを取り出したほうの手の手袋をすすーっと脱ぐと…
そこには指が全部切り取られた、手の平だけの手が!!
うわああああああああああああ!!!!!

はははははははっ、びっくりした〜?
あ〜ははははははっ

ごめんごめん、ところでクッキー食べる?
あはははは、怖がりだなあ。ほら、何も入ってないよ(ボリボリ)
うん、美味しい!
ほら、食べてごらん。
美味しいかい?そうか美味しいか。

僕の指は


そう言って男が口を開くと、男の口の中から指がぽとりと落ちた。

271ドギーマン:2007/08/03(金) 18:22:14 ID:AepyIIHk0
あとがき
夏なので何か怖い話。都市伝説的な話を…と思ったのですが、
RSに関係ない話になってしまいました。クッキーだけですね…

272◇68hJrjtY:2007/08/04(土) 02:18:29 ID:/F95HrVg0
>ドギーマンさん
いえいえ…昔読んだ学校の怪談シリーズを彷彿とさせました。
怖い話とかダメなんで…(((((´;ω;)))))
そういえば、幽霊や妖怪の絡んだ怖い話って今まであまり出ていないような気が。
やはりRSで考えるとアンデッドモンスターの方が主役になってしまいますね。
ちょっとした納涼をありがとうございます(笑)

273いいこと♪いい朝♪1/1:2007/08/08(水) 07:28:09 ID:LunaY94M0
チコッとお邪魔します。
スレ4途中で読む方も滞っております……。ブランクって怖い。

_,_,_,,_,_,_,,_,_,_,,_
 タンタタンタタンタン タンタンタ
開け放しの窓から雨が世界と奏でる音を聞いていた。
夏の盛り、深緑の大きな葉が雨粒をはじいてパタパタと音を立てている。
耳を澄ましても聞こえるのは葉を打つ音ばかりで風のささやき一つ聞こえない。
ベッドに潜り込んだまま、薄目で見上げた空は真っ白い雲に覆われている。
少女は雨が止むまでの二度寝を決め込み朝日におやすみを告げて瞼を閉じた。
まどろみの中で、つい先ほどまで見ていた夢を思い返した。
白いうさぎを仰向けにして、白いお腹を逆撫でして、白い毛羽立ちで遊ぶ夢だ。
夢の続きを描きながら、寝返りを打った瞬間だった。
 「にぁ。」
寝ぼけた響きの声と半開きの口から漏れた。
両眼がまんまるに見開かれ、両足を跳ね上げ弾みをつけて起き上った。
その勢いで口から飛び出すままに言葉を続けた。
 「うさぎ! ……違う!ドレス!そうだよ、なんでなかったんだろ〜♪」
目に嬉々とした光を浮かべ、口元は大発見に意識せずほころんでいた。
着替え完了の合図にドアを破裂音とともに叩きつけ、パタパタと足音が遠ざかっていく。
 「おはよー♪ 聞いてっ、いいこと思いついた!」
 「おはよ。今朝も元気だねぇ。まずは朝ごはん食べようね」

 タン…タ……タ……
開け放しの窓辺から雨音が止み、朝もやを貫いて太陽が一条の光線を浮かべる。
お決まりの朝の喧騒を合図に鳩が窓から自分の朝食に出かけていった。

274◇68hJrjtY:2007/08/09(木) 00:36:08 ID:R8FX/d6c0
>273さん
これは…勝手な妄想で申し訳ないですが姫&リトル主人公でしょうか(*´д`*)
全然無関係としたらめっちゃくちゃ恥ずかしいですがorz うさぎとドレスと鳩という単語(?)に反応しただけでして…。
夏休みの日記みたいな爽やかで予感を匂わせる一日の始まりですね。
あえて続かせず切ってしまうというのも短編としては余韻が残って良い感じですね。
またの執筆お待ちしています!

275NT:2007/08/10(金) 01:41:09 ID:1siusxf.0
「変な夢を見るんだ。」
夜、眠れない様子の彼が言った。
「今ではないいつか、ここではない何所か、俺ではない誰か…男か?
そいつが一人の女に振り回されている日常の夢を、ここのところ毎日。」
彼は独り言のように言う。
「あれは…誰なのだろう?俺は多分知っているはずなのだが…思い出せない。」

彼は夜うなされることがなくなった。
ちょうどリドの家から出発したあたりからか?
彼のそばに入れる口実が減ったから私としては不満だったりもするが…
うなされなくなったのはいいことだと思う。
でも、彼は大分悩んでいるようだ。
新たに見るようになったその夢のせいで。

「そいつは初めのうちは女のことを邪魔に感じているんだ。
でも時間がたつにつれて2人でいることを当たり前のように感じていく。
お互いがお互いを…そう、必要としていたんだ。多分そんな感じだ。
で…夢の終わりはいつも同じだ。」
彼が言う夢の終わりは悲惨なものだった。
「男の腕の中で女は…動かない。死んだわけじゃない。そんな感じじゃなくただ永遠に眠っている…そんな感じだ。
で、男がこう言って俺は眼を覚める。

『なぜだ…!彼女が何をしたというのだ!
俺は認めない。たとえ世界、神が敵に回ったとしてもこの理不尽な運命を変えてみせる!
どんな手段を使っても、悪魔に魂を売ったとしても、彼女を…』

途中の日常は毎回違うのに最後だけは必ず同じだ。
それでもって男の後悔か?そんな感情が俺にのしかかってくるんだ。おかげで毎朝つらいさ。」
ったく、なんなんだろうな…と言って彼はまた横になった。

私はかける言葉が思いつかない。
そんな夢を旅を再開する前から…もう10日も見続けているというのか。
私にはわからない。そんな夢をみる理由も。
でも、何か言葉をかけるべきではないか?
そう思って私は意を決していった。
「大丈夫。その夢がどんなに悲惨なものでも夢なら必ず覚めるし、その人と貴方は別人。
それに何かあっても私が、すぐ、隣にいるから…。」
…最後の方は恥ずかしくて小声になってしまった。
「?最後なんて言った?」
彼が聞いてくるが答えられるわけがなく、
「なんでもないわ。さ、もう寝ましょう。」
私は強引に話を切るしかなかった…
歩くペースがだいぶ遅くなってさらに余計な寄り道をしてしまったが明日にはシュトラセラトにつくだろう。
明日のためにも私は見張りながらだがゆっくりと体を休めることにした。


「レイ、ラミ。またね。」
「師匠。また来ますね。」
「ラミさんさようなら。」
今日も夕方が来てしまった。師匠の家の中から
師匠の家から少し進んだところで彼女と別れる。いつものことだ。
「じゃあ、またね。レイ君!」
「ああ、また明日。」
そう言って彼女はいなくなった。
さて、家に帰るか…

家に帰ってきて母や姉たちの注意を聞き流し、やることを済ませてベッドに入った。
…今日はどんな夢を見るのかな?


『なぜだ…!彼女が何をしたというのだ!
俺は認めない。たとえ世界、神が敵に回ったとしてもこの理不尽な運命を変えてみせる!
どんな手段を使っても、悪魔に魂を売ったとしても、彼女を…』



その声で俺は飛び起きた。
その衝動で夢のほとんどを忘れてしまったが、最後のセリフだけはなぜか鮮明に記憶していた…
…嫌な夢を見た。ほとんど忘れてしまったが嫌な夢だったということは覚えている。
朝から嫌な気分になったが、こういう嫌なことは続いて起こるから不思議だ。
朝食の席で母は私にこういった…

「レイ。もうフィール家の三女と会うのは許しません。」

…俺は何を言われたのか理解するのに時間がかかった。
フィール家の三女?
「私の本名はラミ・フィールっていうのよ。」
「私は三人姉妹の末っ子だから…」
彼女の言葉が脳裏から離れず、そのあとの母の言葉が頭に入らなかた…

276NT:2007/08/10(金) 01:49:47 ID:1siusxf.0
To be continued


また入れ忘れか… 何で同じミスを繰り返すのかorz

こんばんは、いつもよりは早いですが例によって変な時間に投稿します。NTです
長く書いていなかったので、リハビリも含めて短めに書いてみました。
即書きだったので視点変更時にレス替えを忘れてしまった… 私は末期のようです。

ドキーマンさんの短編集(?)や273さん、ESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説などと比べると
私のはまるで自由帳の落書きのようですが、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
それでは、また。

PS,ドギーマンさんにESCADA a.k.a. DIWALIさん。どうやったらそんなに書くのが速くなるのですか?
特にESCADA a.k.a. DIWALIさん…私より後からここに書き始めてすでに私の3倍ぐらい書いている気が…
皆さんのその才能がほしいです…

277名無しさん:2007/08/10(金) 08:06:25 ID:LunaY94M0
>>274
感想ありがとうございます。おっしゃるとおり姫でございます(*´д`*)
夢だけのうさぎとセリフだけのドレスと余韻だけの鳩でわかっていただければ本望です。
また騒がしい一日を見かけたらお邪魔させてもらいます!感想ありがとうございます!(2回目)

>>276
私のは中身がないので皆様のと並べられると困ってしまします。
内容は1行で書けちゃいます。言葉遊びだけですから(´ー`;A)
(朝だぁ…もうちょっと寝よ…ハッいいこと思いついた!おはよー!朝ごはーん♪)
短すぎる&一場面のみなんで、小説(短編)というより散文詩ですね。

物書きは、スピードと推敲・校正のバランスは難しいです……。
一息に書くと勢いがつくけど構成が狂う、一晩置くとまとまるけどこじんまりとする。
ジレンマです。
本当にドギーマンさんはなんであんなに濃い物を早くかけるのか!実に気になります。

278名無しさん:2007/08/10(金) 23:14:46 ID:48c2PfDA0
画像一覧機能を使うと、投稿された画像の一覧を見ることができます。
http://lijil.com/bbs/redstone7/index.php

279ドギーマン:2007/08/10(金) 23:52:20 ID:AepyIIHk0
王国犯罪史
4405 ロニーロジャー・ディビジ(17)

深い夜の闇の中、小さな人影が街の郊外にある墓地にやってきた。
頭にかぶった奇妙な兜の上では青白い炎が揺らめいていて、辺りをぼんやりと照らしている。
不気味な雰囲気の墓石の群れの中を彼は迷うことなく進んでいく。
あまりの迷いのなさにただ通り抜けているだけにも見えるほどだった。
しかし彼の手にはシャベルが握られていた。
そしてある小さな墓石の前で立ち止まった。
それはまだ埋められたばかりの女性の墓だった。
彼はその墓石の前の地面におもむろにシャベルを突き立てると、掘り起こし始めた。
息を荒くしながら土を掘り起こしていく。
「もうすぐだからね…もうすぐ出してあげるからね…」
ブツブツとそう呟きながら掘りつづける。
やがて姿を現した棺を前にして彼は少し興奮しているようだった。
釘を打ち付けて固定された蓋の隙間にシャベルの先を突っ込んで強引にこじ開ける。
グギギギギっと唸り声のように軋んで蓋が開くと、乾いた死臭が辺りに広がった。
まだ生前の姿をそのままにとどめ、棺の中で彼女は静かに眠っていた。
「ああ…、エルケ…。僕のエルケ…」
彼は手袋を脱ぎ捨てると、細い指で生気を失った彼女の白い肌を撫でた。
冷たい死の感触しか帰ってこないだろうに、彼の心は喜びに満たされていた。
彼はエルケと呼んだ女性の遺体を棺の中から引きずり出すと、地面に横たえた。
「起きて…エルケ、目を開けて…」
冷たい白い遺体は何も答えない。
死んだ者が蘇るはずがない。その遺体はすでにビショップにすら見放されたのだ。
そうであるにも関わらず、彼は遺体に呼びかけ続けた。
その様子は一般人が見れば正気の沙汰とは思えないだろう。
「エルケ…エルケ…」
呼びかけ続けて数分、遺体の様子に変化が現れた。
遺体の白い手が小さく震え、半開きになった唇の奥から乾いた風音のように息を吸う音が漏れた。
そして重たそうに彼女のまぶたが開いた。
「…う…ぅあ……あ」
「ああ、エルケ…」
彼は動き出した遺体を抱き寄せた。
「デ…ビィ…?一体…う……寒い…」
「寒いのかい?さあ、これを着て。すぐに行こう」
彼はエルケにコートを羽織らせると、彼女を立ち上がらせようとした。
「待って…、おかしいわ……少し、思い出してきた……あたし…」
「僕が君を生き返らせたんだよ。それより早く立って。人が来ないうちに!」
「そんな…、この身体…髪もパサパサじゃない…」
「エルケ…はやく…」
「いや…いや…いやぁ……どうして、どうして」
エルケは顔を覆って泣き出した。
しかしかすれた声が漏れるばかりで、涙は一向にに頬を伝わらない。
「ビショップがやってる事と変わらないよ。エルケ、分かってくれよ。僕には君が必要なんだ」
「どうして…眠らせておいてくれないの…こんな…」
「エルケ!」
彼は怒鳴るとエルケの腰を持ち上げて無理矢理立ち上がらせようとした。
「ふ…うぅ、苦しい…」
「責めてくれてもいい、今は早くこの国から出なきゃいけないんだ」
「待って、違うの…胸が…」
「…エルケ?」
「苦しい…ふ、ぅ…ひどいわ……ディビぃ…」
そう呻くように呟くと、エルケは再び動かなくなった。
「エルケ?エルケ?」
彼は動かなくなったエルケの身体を揺すった。
「エルケ?そんな…」
彼はエルケを抱いたままがくりと膝をついた。
「僕の力じゃ、まだ…たったこれだけの時間しか…」
彼がエルケの遺体を抱いて打ちひしがれていると、突然彼の姿を明かりが照らし出した。
「おい!お前ここで何やってる!?」
墓守が大きな声で怒鳴った。

…ということでほとんど抵抗することなく逮捕されたロニーロジャー・ディビジだが、
法廷においても全く反論することなく、全ての罪状を認めた。
墓荒らしと死者に対する侮辱の罪等により彼はオート地下監獄に投獄されることになった。
法廷でエルケ・オストスの父親はずっと喚き散らし、途中で退場させられてしまった。
しかしそれほどの罵りを受けてなおディビジはずっと俯いたままだった。
その後ディビジがどうなったのかは不明である。
噂に名高い過酷なオート地下監獄の環境で死亡したとも言われているし、
釈放後、エルケの父親によって殺されたとも言われている。
どちらにせよ死んでいるという見方が有力なわけだが、まだ生きているとも言われている。

「君と取引がしたい」
「取引…?あなたは誰なんです?」
「その質問に答えてよいという命令は受けていない」
「………取引というのは?」
「君にやって貰いたい事があるのだよ。引き換えに君の自由と、君の大切な彼女の遺体を引き渡すことを約束しよう」
「…何をすればいいんです?」
「ある遺体を蘇らせて欲しい。出来るね?」

280炉★:削除
削除

281ボセッボぁじゆ:2007/08/11(土) 05:13:13 ID:NjZhKIXU0
ヅヌちざフヂざロモプたわクが
ォメミちヒホせウニレナオナまエウタ
ぢちねグをピケだャめグペむォもぴヘョユゅん
べズネニピコポてざゲ

282ゥぷぴウゲフヒ:2007/08/11(土) 05:24:13 ID:V/EXfZ0Q0
ゴマくポせヤそク
ぬイナルあビべがガザぞわぷョべバ
ビげカまえやらひるげバおユぼァペゅメぬがレヌヌ
カせぉめエちレガれノウアヌンアカロガ
わょゃれレツメツひワなヨけでほふぬびせげなゾこ

283ねゴすたオピオゾヅ:2007/08/11(土) 07:37:24 ID:eJ.V2fuc0
ゼリバたスモぱィきまヤにフ
づシノとキフルひコ
らオすザゴだだテノなくクゾドヌキゴねお
かしュァりもょバさた

284みむあぞサヅ:2007/08/11(土) 09:02:23 ID:3o0YwEzg0
リゃたげタレむユこつイのドフゲ
サァセっザでヅゲズょみぞミばミム
ぺズケブびメむだツえアべエかイた
ぼはウぉろつガぐツサケごイデぼヨャロニマゴィ
ペわヨりシおキはぐビややぃひ

285◇68hJrjtY:2007/08/11(土) 23:08:40 ID:lzDhgItI0
>NTさん
今回はレイの視点の語りが深いですね。こんばんは。
レイの幼い頃の友達であったラミとの母による強制的な離別ですが…これの真意が楽しみです。
一枚ずつレイの過去のベールが取り払われていくたびに物語の全貌が見えてくる気がします。
ただ可哀想なのはラミ嬢ですね…純粋にレイが好き、と言い出せない姿が健気で好きなのですが(笑)
執筆のペースは個人個人違うと思いますよ。NTさんのペースでお願いします。

>ドギーマンさん
こんばんは。こういった史実的な書き方はドギーマンさんの十八番ですね。
これはネクロマンサーの蘇生術をイメージしますが、本当のところはどうなのかが気になります。
最後に出てきた謎の会話(?)もいいところで終わってしまったというか、なんというか(ノ∀`)
ところでオートやアルパスは「監獄」なんですよね…狩場として行っているとつい忘れてしまいます(笑)
続きの方お待ちしています。

286ウル:2007/08/16(木) 07:42:50 ID:CUfmkJI60
|_・)ハジメマシテ

ちょっと長いですが初投稿させて頂きます

【Dr.WIZの診察室】

ランサ「ようこそ Dr.WIZの診察室へ^^
     わたしは看護師のランサ 今日もDr.WIZの診察室は大忙しですw」



ランサ「はーい 次の方どうぞ〜」

入ってきたのは天使さんです

WIZ「天使か いつもの薬か?」
天使「えぇ いつもすいませんね^^;」

天使さんは片翼を事故で亡くした為時々お薬を貰いにいらっしゃいます

WIZ「前にも言ったが手術を受けて翼を再生したらどうだ?」
天使「いえいえ これはワタクシの罪の証 罪を消す事などできませんよ」
WIZ「まぁ オマエさんがそう言うなら無理強いはしないさ お大事にな」
天使「はい ありがとうございます^^」

ランサ「天使さん 受付で処方箋を貰ってくださいね^^」
天使「わかりました いつもありがとう^^」

ランサ「天使さんも強情ですねぇ」
WIZ「薬が切れると痛い筈なんだがな・・・」
ランサ「試練ですねぇ・・・」
WIZ「M なんだろ」
ランサ「それ禁句ですよDr.WIZ・・・」



ランサ「次の方どうぞ〜」


次に来られた方は武道家さんです

WIZ「なんだオマエか珍しい」

Dr.WIZのおっしゃる通り武道家さんは極めて健康でここにいらっしゃるのも初めてです

ランサ「怪我でもなさいましたか?」
武道家「いや・・・」
WIZ「悩み相談かぁ?」
武道家「・・・」

武道家さんはとっても言いづらそうです
彼の悩み相談・・きっと恋愛相談だわぁw(ワクワク


武道家「・・・最近な」
WIZ「うん?」

あの子かしら(ワクワク

武道家「ドッペルゲンガーが見えるんだ」
WIZ・ランサ「('A`)?」
武道家「ホントだって!今日も見たんだって!!」

いつもは(あの子が絡まない限り)冷静な武道家さんが錯乱してます

WIZ「それはオマエの【スキル分身】じゃないのか?」
武道家「違う!分身達はおいらの前に現れたりしない!」
ランサ「前・・・?」
武道家「そうだ!そいつはおいらの前に現れてニヤリって笑うんだ!」

もしかしてそれって恐怖体験・・・((((;゜д゜))))ガクガクブルブル

287ウル:2007/08/16(木) 07:44:19 ID:CUfmkJI60
続き

WIZ「・・・なぁそれって」

Dr.WIZはなんだか困り顔 何か知ってるようです

シフ「おいWIZ ちと急いでくれ オレ様のツレが・・・」
武道家「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁデターーーー!!(烈風撃」
シフ「ぶばっ!?(ノックバック」 (×o×)キュー

シフさんは武道家さんのスキルに突き飛ばされて気絶してます

WIZ「・・・やっぱり」
武道家「なぁ見ただろWIZ!!助けてくれ!おいらはあの子と手をつなぐまで死にたくないんだぁ!」

さり気なくチッチャイ望みを口にする武道家さん
ここまで錯乱してるとあれはシフさんだと言っても理解できなそうです

WIZ「・・・武道家知らないのか?ドッペルゲンガーはその口にミカンを突っ込むと無害になるんだぜ」
武道家「マジで!?」
WIZ「そうだ ほらこれをやろう(ミカン」
武道家「ありがとうWIZ!今のうちに・・」

武道家さんは気絶したシフさんにそっと近づきその口にミカンを丸ごと突っ込みました
シフさんかなり間抜けです

武道家「これで良いんだなWIZ?」
WIZ「あぁ もう大丈夫だ良く頑張ったな^^」
武道家「それじゃ帰ることにするよ ありがとう!」
ランサ「プ・・・お大事に・・・ プクク・・」

武道家さんは元気良く帰って行きましたが
わたしの笑いが収まるまで次の方を呼べませんでした(エヘ

288ウル:2007/08/16(木) 07:45:13 ID:CUfmkJI60
続き2

ランサ「気を取り直して次の方〜」

次の方はアチャさんです

アチャ「うぃず〜 ね〜聞いてよ〜」
WIZ「どうした?」
アチャ「さっきコロに行ったんだけどさぁ〜」
WIZ「うん?」
アチャ「あいつらレベルが上がってて〜しかも沸きがランダムになってんの〜」
WIZ「・・・」
アチャ「チョー痛くってぇ〜」

Dr.WIZはチラリとわたしの方を振り返ります
(-_-#) ピクピク
えぇまだ大丈夫ですDr.WIZ

アチャ「しかもPTMが〜『アチャさんマシン当たって無いですね』とか言うし〜」
WIZ「アチャ・・・オマエのレベルは?」
アチャ「え〜?72よw」

ブチッ
ランサ「きさんなめとんかーーー!!(デザートブラスト」
アチャ「キャーチョット何よ!?カツゥン(ミラーメラーミスト」
ランサ「何がマシンか!レベル72でコロに来るんじゃなか!かえりぃ!!(旋風突き」
アチャ「ちょっと危ないじゃない カツゥン(ミラメラ以下略」
ランサ「マシンがなんば言うとね!?ラピがあるたい!エントラで攻撃するたい!信念で攻撃力だって上がるとよ!?(F&I」
WIZ「ランサ落ち着け!」
ランサ「コロ優遇職が何ほざくとねーー! ドン!(ラジカルアーク」
アチャ「きゃぁぁぁ」
WIZ「うわぁぁ」
ランサ「ふははははは ランサは対人戦で最強ばーい!」

WIZ「仕方ない! ストーンタッチ!!」

カチン(石化

WIZ「アチャ今のうちに帰れ!」
アチャ「は・・はい!」
WIZ「コロの適性はLv95〜だ覚えとけー!」
アチャ「わかったわよー!!」

289ウル:2007/08/16(木) 07:45:55 ID:CUfmkJI60
最後

Dr.WIZは石化したランサを見るとため息をひとつ着きました
部屋の片付けを放棄しナゲヤリに叫びます

WIZ「次の方〜」

シフさんが柑橘系の香りを漂わせながら入ってきます

シフ「モグモグ な〜WIZ なんか目が覚めたらミカンが旨いんだが・・・?」
WIZ「気のせいだ」
シフ「気のせいか・・・うを!?ランサの姐さんじゃねぇか」
WIZ「・・・(目をそらす」
シフ「どうしたんだ急に色黒になっちまって!?」
WIZ「・・・(バーチャルタバコをふかす」
シフ「急な日焼けはシミの原因になるんだぞ?もう若くないんだから気をつけろよ」
WIZ「シフ・・・ランサが正気だったら刺されるぞ・・・」
シフ「冗談に決まってんだろw キャラリン(解毒」
ランサ「ハッΣ わたしは何を・・・」
WIZ「ランサ・・・今日は残業な・・」
ランサ「それは構わないですが・・・まぁ!この部屋どうしたんです!?」
シフ「あ! そんなことよりオレ様のツレを見てくれよ!」
WIZ「あ〜?どこだよ?」
シフ「リトルだよ!見えなくなっちまったんだ!」

シフさんの説明によると
2人でアリアンの露店を散策しているとリトルさんが呪われたワンドを手にとってしまい
その姿が見えなくなってしまったそうです

WIZ「・・・・で?」
シフ「で? じゃねぇ!元に戻してくれ!」
WIZ「・・・リトルはどこだ」
リトル「武道家さんの診察中からずっとここに居ます・・」
WIZ「見てたんなら助けろよ・・・」
リトル「えぇ!?アタシ呪われてるんですよ!?」
WIZ「・・・」
ランサ「姿が見えなくなる呪いなんて恐いですね((((;゜д゜))))ガクガクブルブル」
WIZ「錯乱したランサの方がずっと・・・(ボソッ」
シフ「なんとかしてくれよ!」
WIZ「リトル・・・まずそのワンドを手放せ」
リトル「はい!」

するとリトルさんの姿がはっきりと見えるようになりました


シフ「おぉ!?直った!?」
リトル「キャーよかったぁぁぁ!」
ランサ「今の・・・まさか・・・」

不可視Lv2 俗に言う透明OP ('A`)

WIZ「シフもリトルも少し落ち着けよ・・」
シフ・リトル「(´∀`*)エヘ」

ランサ「はいはい お大事に〜(?)」

ランサ「シフさんもリトルさんも慌て者ですねぇw」
WIZ「まったくだ・・・」



待合室にはもう患者さんはいません

WIZ「なんだかすげぇ疲れた・・・ランサ後は任せた・・」
ランサ「はーいDr.WIZ お疲れ様でした^^」

290ウル:2007/08/16(木) 07:48:54 ID:CUfmkJI60
後書き

文字数制限がイマイチ良く分からなくて変な所で切れててすいません・・・
この話はサイトに書きこんでおいたのですがイマイチ反応が無いので
意見とかお聞きしたいです

修正点がわかったらまた話を書きたいのでよろしくお願いします<(_ _)>

291名無しさん:2007/08/16(木) 12:56:06 ID:vKk/RUsc0
良スレage

292名無しさん:2007/08/16(木) 19:37:33 ID:yxyF1ziI0
>>290
個人的にはかなり好き。
各職のキャラがたってるのがいい。

293◇68hJrjtY:2007/08/16(木) 22:41:38 ID:lzDhgItI0
>ウルさん
初めまして〜。ギャグ系お笑い小説(?)、笑いながら読ませてもらいました。
WIZのドクター姿&ランサのナース姿というのが見事に想像できまして感動したくらいです(笑)
迷信深い武道、内気な(?)リトル…などなど、キャラ同士の絡みの楽しさも良く出ていると思いました。
私個人も小説に対して欠点指摘みたいな事ができないので感想だけですみませんorz
また機会がありましたらぜひ執筆お願いします!

294ドギーマン:2007/08/18(土) 14:33:39 ID:AepyIIHk0
王国犯罪史
4405 シュトロン・パイク(23)

「もちろん協力してくれるわよねぇ?」
ディーナは隣に座らせているダリアの手を揉みながらパイクに言った。
パイクには分かっていた。これは『誘い』などではなく『命令』なのだということを。
拒否すればディーナはシーフギルドに手を回して役に立たない彼を始末するだろう。
他に選択肢がないことを確認するのに要する時間などないはずだが、
それでもパイクは即答することが出来なかった。
捨て駒にされることを覚悟する必要があったからだ。
「わかった…」
「そう」
ようやく搾り出した彼の言葉をディーナは当然のように受け取った。

始まりは友人の借金の保証人になったことだった。
それほど高い金額ではなかったが、友人は金利すらも払わずに蒸発。
数年してシーフギルドの使い走りがパイクを訪ねてきた。
膨らんだ借金はとっくにパイクの手におえるものではなく、
無理だ払えないと言う彼にその使い走りはディーナを紹介してきた。
「彼女に借金を肩代わりして貰え」
こうしてパイクの命はシーフギルドからディーナに売られた。
ディーナ、この小太りの中年女が何者なのかは分からない。
ただシーフギルドのトップに顔が利くらしいということくらいしか分からない。
そして彼女のそばに常に居るダリアという女の子。
人形のように可愛らしいという形容がぴったりな小さな子だ。
初めて会った時にはディーナの娘かとも思ったがどうやら違うようだった。
ディーナに買ってもらったらしいフリルだらけの小さなドレスに身を包んでいる。
あまり喋ることもなくディーナの命令をこなすディーナの右腕的な存在。
右腕であると同時にディーナの『お気に入りのお人形さん』でもあるようだった。
だがダリアのほうはディーナに触れられることを決して喜んでいるようには見えなかった。
大方パイクと同じく何か理由があって逆らえないのだろう。
ねちっこくダリアの手を弄り回すディーナに不快さを覚えたパイクは話を進めることにした。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」
ディーナの目がぎょろりとパイクの顔を睨んだ。
ちっと舌打ちをしてからディーナは説明を始めた。
「まずはターゲットを押さえてちょうだい」

ターゲット、目の前の老人を縛り上げる作業は拍子抜けするほど簡単に終わった。
護衛や見張りが居るわけでもなく、だだっ広い屋敷に世話係と二人きりで生活する老人。
屋敷の主人は怯えた目を向けていたが、パイクはそんな事を気にする暇もなく部屋を漁っていた。
すぐ傍ではダリアが引き出しをひっくり返している。
パイクは手を動かしながらダリアに声をかけた。
「なあ、権利書を見つけたらそれで終わりか?」
「まだよ、権利書はただの紙切れ。役所で権利の譲渡を行わないと土地は売れない」
「それってつまり、この爺さん本人の同意がないとダメなんじゃあないか?」
「そんなことをあなたが気にする必要はない。黙って探して」
そう言ってダリアは本棚の本を床に散らかし始めた。
「なあ」
「…」
「なんで、お前はディーナの命令に従ってるんだ?俺は…」
「言わなくてもあなたの事は知ってる。それより…」
「脅されてるのか?」
ダリアの手が止まった。
「そうなのか?」
「父様のためよ…」
そう小さく答えてダリアは作業を再開した。
パイクはそれ以上深く詮索しなかった。
今の一言で大体の事情は把握できたし、そうする事が彼女を苦しめるかもしれなかった。
でも、それでも彼女に言いたいことがあった。
「君のお父さんのために何か出来ることがあったら言ってくれ」
「やさしいのね」
「それしか無いからな」
「そんな事だから…今みたいになってなってるの。あなたには何も出来ない。
 もう何も言わないで。黙って探して」
「………」
パイクはもう彼女に何も言えなかった。
まだ幼くも見えるダリアは一体何を見てきたのだろうか。
そう思っているとパイクの手が止まった。
「あったぞ」

295ドギーマン:2007/08/18(土) 14:34:48 ID:AepyIIHk0
ダリアが老人を説得している間、パイクは屋敷の廊下で待たされていた。
一体どうやって説得させようというのか。
押し込み強盗相手に土地の権利をタダで全て譲渡させる説得の仕方など考えられない。
シーフギルドの名前を出して脅すのだろうか。
しかしダリアはただの小さな女の子だ。そんな脅し信じるだろうか。
いくら相手が老人でも舐められるのがオチだろう。
せめて俺が居てやるべきではないか?そう思い始めたところでドアが開いた。
ドアを開けて出てきたのは先ほどまで縛られていた屋敷の主人だった。
「話はついたわ」
と老人の後ろからダリアが言った。
「は、早かったな」
パイクには信じられなかった。一体どうやったというのか。
「行きましょ」
「あ、ああ」
歩き出した老人とダリアをパイクは追った。
3人が後にした部屋の中、そこには居るはずの無い人物が横たわっていた。
縛り上げられたままの老人が、首にナイフを突き立てられて血に濡れて横たわっていた。

役所での煩雑な手続きを終えたパイクはダリアと共にディーナの屋敷に戻ってきた。
いまパイクは書類の上ではあの老人が持っていた10億ゴールドにも昇る土地の所有者になっている。
あとはこの土地を売却して金に換えてディーナに渡すだけ。
なけなしの分け前を握らされてパイクは晴れて自由の身になるはずだった。
だが屋敷のなかにはディーナの姿は無かった。
「ディーナ、どこだ?」
広間でパイクがいくら声を張り上げても返事はなかった。
「くそ、報告に来たってのに」
パイクが毒づいているとあの老人が彼の脇を通り過ぎていった。
「おい、なんで勝手について来てるんだ。あんたはもう自分の屋敷に帰れよ」
そう言ってパイクが老人の肩を掴んだ。
肩を掴まれた老人はゆっくりとパイクに顔を向けた。
形の崩れた粘土細工のような顔。それはどろどろに溶けてパイクの手に付着した。
「うあああっ!?」
驚いてパイクは手を引っ込めた。老人はその場にどちゃりと崩れ落ちて溶けた。
手の平についた絵の具のような液体を振り払っいながらパイクは叫んだ。
「なんなんだよ一体!!」
「ディーナなら居ないわ」
背後から聞こえてきたダリアの声にパイクは振り向いた。
「最初から居なかったって言ったほうが正確か」
そう言ってダリアはとことことパイクのほうに歩いてきた。
「何を言ってるんだ?」
「分からない?ホントにやさしさ以外は何もないのね」
そう言って歩いてくるダリアの身体がどんどん大きく伸びた。
目の錯覚かとも思ったが違った。成長している。
そしてパイクのすぐ目の前で立ち止まるころにはパイクと同じくらいの身長になっていた。
「ダリア…?」
パイクは我が目を疑った。人間がこんなに早く成長するわけがない。
「マジカルドローイング」
そう言ってダリアが小さな棒を振るうと、棒の先から光る人形が飛び出してきた。
その人形は光を失うと、その中からパイクと瓜二つの人物が出てきた。
パイクは言葉を失った。
悪い冗談かと思った。もう1人の自分が目の前に居る。
「1度に1体しか作れない。対象が目の前に居ないと作れない。不便なものなのよね、これ」
ダリアはそう言ってもう1人のパイクの肩に手を置いた。
「そうやってディーナの偽者を作って操作してたのか」
「そう、小芝居に付き合ってくれてありがとう。そしてあなたも用済み」
ダリアがそう言うと、偽者のパイクは腰の剣を抜いてパイクの腹を突いた。
「土地はこれが売りさばいてくれるわ。安心して死んで」
ひねり込まれた剣を乱暴に引き抜かれ、パイクは膝をついてうずくまった。
息が自然と荒くなる。喉の奥から血が上ってきてむせた。
「な……なあ、お父さんの…話も芝居だったのか?」
激痛に耐えながらパイクは自分を見下ろしている女に言った。
「さあ?」
パイクは薄れ行く意識の中でその一言だけを最後に聞いた。
「あなたの事、嫌いじゃなかったわよ」
そう言ってダリアはパイクに背を向けた。

296ドギーマン:2007/08/18(土) 14:35:17 ID:AepyIIHk0
…ウェンキンソン氏殺害の容疑がかけられていたパイクだが、その死亡により事件の解決は困難を極め。
結局真相は明らかにされることなく事件は迷宮入りしてしまった。
この事件においてパイクが何らかの形で関係していることは確実だが、
ウェンキンソン氏を殺害したのが彼であるかというと不可解な点もある。
まずウェンキンソン氏の屋敷に押し入ったのはパイクであるが、
殺害に使用されたナイフが彼の物でなかったこと。もし彼なら自分の剣を使うはずだろう。
協力者かあるいは彼を捨て駒に使った黒幕がいるのかもしれないが、
もはや事の真相を知る術はない。

「くそ、遅かったか!」
「…………」
「これでまた振り出しですね」
「いや、手がかりならまだある」
「どこです?」
「これだ」
「死体じゃないですか。死人が喋るとでも?
 罪人の蘇生なんて教会だって協力しちゃくれませんよ」
「世の中にはお前の知らない力もある。自分の視界のなかだけで物を語るな」
「……それで、どうするんですか」
「オート地下監獄に行くぞ」

297ドギーマン:2007/08/18(土) 14:42:32 ID:AepyIIHk0
あとがき
>>279からの続きという形になってます
短くまとめる為にカットしまくったので展開速すぎたかもしれません
ダークな感じのプリ/リトルを書いてみたかったんです

298名無しさん:2007/08/18(土) 18:08:29 ID:qTyp5QVc0
>ウル
批判をお望みとの事なので目を皿のようにして探してみた
まず1つ、【Dr.WIZの診察室】という事なのだが途中【Dr.WIZの相談室】
になっているという事
2つ目、終わり方があっさりしすぎてて物足りない感じがあるという事

かなり頑張ったが2つしか思いつかなかった。

それと・・・この文章の書き方どこかで見たような気がして探してみたんだが
ウル氏はジョブの偏見とイメージスレ5の290氏じゃないかw

道理で各職のイメージが立ってるし絡みが面白い
大ファンです おかえりなさいw

299◇68hJrjtY:2007/08/18(土) 20:47:58 ID:lzDhgItI0
>ドギーマンさん
ダークな感じのプリリトル、ドギーマンさんの手にかかればここまで暗くなるのですね(;・∀・)
リトルウィッチを「魔女」という視点で見ればなるほどこういう性格も良い感じですね。
あまり悪人にされにくい職をあえて悪人にしたり、その逆をしたりというのも面白そうです。
前回同様なんだか余韻を残すように終わってしまいましたが…想像が膨らむばかりですorz
またの執筆お待ちしています。

300ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 16:46:35 ID:Utgqp4JY0
前回の「Close to you」の続きですよ〜

場所は変わって、トレスヴァントとエルフのサーファイユは一対一の実戦形式での特訓に励んでいた。
両者とも本気で斬り合いを演じており、その辺の三流剣士では見切ることなど全く不可能な太刀筋をお互いに繰り出している。
しかもトレスヴァントは炎を象った大剣「フランベルジュ」を軽々しく使いこなし、それを使ってでの高速連続斬りもやってのける。
サーファイユも負けじと襲い来る太刀筋を全ていなしつつ、微かなスキを狙って的確に一撃を放つ・・・がそっちもガードされた。
「(・・・すごい!大剣は振り上げてから降ろすまでに相当のタイムラグがあるはずなのに、彼は自身の腕力でそれを克服してる・・・)」
相手の身体的スペックに驚きながらも、サーファイユはそれ以上の熱い何かが込み上げてくるのを感じていた・・・斬り合いは決着へ。
「いくぞっ、エルフの最強の剣・・・ハードコア・ソニック!!」叫ぶと同時に、彼の剣に風の元素が宿る。集まった風は台風となり
振り下ろされた剣から放たれ、トレスヴァントへと襲い掛かる!!その迫力はまるで、ソニックブローが20発分も放たれたようだ。
「ヒュゥ♪こいつァすげぇや、オレも最終奥義で相手してやらァ!!・・・んん、ドラゴンツイスタあぁ―――――っ!!!」
溜める動作に入り、十分に力が溜まったところでトレスヴァントも迎撃せんとドラゴンツイスターを放った!!両者の激しい斬撃は
ぶつかり合い、ダイナマイトの爆発のような轟音を響かせた!!勢い余って両者とも爆風によって吹き飛ばされ、背後の木に叩きつけられた。


「ゲホっ、うぅ・・・ッはははは、やるじゃねェかサーファイユぅ!こんなに強え奴と斬り合いを演じたのは久々だ〜!!」
木の根元に頭を向ける形で大の字を描いて仰向けになったまま、とても満足したかのような口調でトレスヴァントが笑った。
サーファイユも、トレスヴァント並みとまではいかないが「ははっ、あははは」と軽やかに笑みを浮かべた。
「ははははっ・・・はぁ、嬉しいよ。マスターに剣のライバル・・・色んな人に出会えてとても嬉しいよ。」
2人の剣士が大の字で仰向けに寝そべり談笑している中、彼らに近づく気配があった。
「ようブラザー!随分と派手な特訓してるじゃねェか、ん?」
「サーファイユ!お前いつの間にあんな大技打てるようになったんだよ!」
それぞれがトレスヴァントとサーファイユを覗き込むように、エディとエルフ暗殺者のクレイグがそこにいた。

寝そべっていた二人はゆっくりと起き上がるとその場にあぐらを掻いて座り、エディとクレイグも同じくして座り込む。
そしてそれぞれの特訓の様子や下らない事から何まで、笑い声と共に陽気に語り合っていた。
「え〜!エディとトレスヴァントって双子なんだ!?そういや二人とも顔がそっくりだな〜」
「ま、むしろオレ様の方がめちゃイケメンだけどな〜、ニヒヒ♪」「ざっけんなよエディ!オレなんか超イケメンだぜ!?」
「うっせー!!じゃぁ何か?イケメンだったら自分はチェ○ーじゃねぇのかよ!?」「そりゃむしろお前だろーが!!」
「あらあらあらぁ〜ん?素敵な単語が聞こえてきたから寄ってきちゃったじゃなァ〜い」

301ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 16:54:47 ID:Utgqp4JY0
「うわぁあぁぁああぁああぁぁあぁぁぁああ!!?フフィフィ、フィ、フィナ姉〜!!?!」
前触れも無しにいきなりその場に姿を現したフィナーアに驚き、4人は反射的に後ずさっていた。
彼女の背後には、村長の屋敷でのアルバイトを終えたのか、原始人zinのシンバとリプリートマーキzinのセルジオがいた。
「なァなァ、フィナ姉ってば〜。寄り道してないでさ、早いところビガプールまでのお遣い手伝ってくれよ〜」
「そうだぜフィナ、できるだけ早く行ってパパパのパ〜っと終わらせたいんだ、頼むぜ〜・・・」
両者とも村長のエドワードにお遣いを頼まれていたのか、ブーイングと共に彼女を急かしている。
するとトレスヴァントは立ち上がり、2匹の元へ歩み寄ると彼らに耳打ちで何かを言った。2匹の顔に満面の笑みが浮かぶ。
「え、マジで!?ありがとうトレスヴァントのアニキぃ!!恩に着るよ〜!!」「すまねェ、何てお礼を言ったらいいのか・・・」
「な〜に、良いってことよ。お前らも(魅せたがりで露出狂の)フィナ姉に散々振り回されて・・・っ!!!」
「ちょっとォ〜?さりげにアタシの悪口言ったわね〜!?んもう、イケナイ子ね!!お仕置きしちゃうんだから〜!!」
怒ってるんだか喜んでるんだかよくわからない表情を浮かべ、トレスヴァントの背後に回るや否や
チョークスリーパーをお見舞いするフィナーア。締め上げられてるトレスヴァントはと言うと
それなりに苦しんでいるのだが背中に当たる柔らかい感触に少し鼻の下を伸ばしていた。
「ちょっ、フィナ姉・・・ち、乳が・・あ、あた、当たってるんですけど〜・・・てへへ」
「いやぁ〜んトレスヴァントのエッチ!・・・もっと気持ち良くしてもイイかな?」
と何やら体を密着させる二人・・・・そこへまたも乱入者が。

「ト〜レ〜ス〜ヴァ〜ン〜ト〜!!!何やってるのぉ――――――!!?!?」
背後に炎をたぎらせ、わなわなと身を震わせて怒りに燃えるのは槍使いのラティナ。彼女が怒るのも無理はない。
何故なら彼女が片思いしているトレスヴァントが、フィナーアと体を密着させているのだ。嫉妬の一つぐらいしたくなる。
「おおおオイオイ!?何怒ってるんだよラティナ!!別にヤらしいことなんて何も・・・」
「いや〜んトレスヴァントってば責任逃れするつもり〜!?サイッテ〜!!!」
「え、ちょっ!!?!何誤解を招くような発言してるんスかアンタぁ!!そもそもアンタから仕掛けて・・・」
「うぅ〜・・・トレスヴァントの〜・・・・・トレスヴァントの〜!!!」「ちょっ、おまっ、落ち着けよラティ・・」
「ぶぁあああぁああぁぁぁぁかぁあああぁぁああぁぁああああぁあぁあぁあぁあああ――――!!!!!」
ドゴォン!!と派手な音を響かせ、ラティナの怒りのアッパーカットがトレスヴァントにクリーンヒットしたっ!!
喰らった彼はというと「ばっぷらどんぺりうんぎゃらばらぺらみょ〜!!」と意味不明な雄叫びと共に綺麗な弧を描き
かなりの距離まで吹っ飛んでいった。セルジオが冗談で「ファ〜っ!!」とキャディの物真似をかましていた。
「お、おいおいアンタ・・・ありゃいくら何でも死ぬぜ?助けに行ったほうが・・・」シンバがラティナに声を掛けると
彼女はハッとした素振りを見せ、トレスヴァントが飛んでいった方向へと顔を向け、我に返った。
「ほぇ・・・・ふぇえ!?あ、あぅ・・・ごめんねトレスヴァント〜!!今助けに行くから〜!!」
顔を林檎もしくはトマトのように赤く紅潮させて、叫びながら走り去っていった・・・・

302ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 17:21:30 ID:Utgqp4JY0
エルフの集落からかなり離れたところにある草原、場所としてはリットリン半島周辺である。
そこにトレスヴァントは落下していた。しかも頭は地面に埋まり、図らずも尻が天を仰ぐ恥ずかしいポーズを取っている。
「むぐ・・・んぐ(痛ってぇ〜・・・・・相変わらずアイツったら・・・何でオレにばっかツンツンしてくるんだよぉ〜!?)」
真っ暗な土の中、彼はラティナへの不満を胸の内で愚痴っていた。一方頭の無い胴体を残した地上部では・・・

「おいおい見てみろ、人間がアホなポーズで埋まってんぞ」「ぶぷーっ!!ちょっ、何コレ何コレ?何でケツ突き出してんの超ウケる〜」
「なぁなぁ、今おもしろい事考え付いたんだけどよぉ〜・・・こいつのケツにいたずらしようぜぇ〜ケケケケ」
どうやら地上では原始人と思わしき3体のモンスターが何やら話し合っているが、地面に顔を埋めているトレスヴァントには
誰が一体何を打ち合わせているのかわからなかった・・・しかし間もなく、尻に襲い掛かる衝撃がトレスヴァントに事態を悟らせた!
「は〜いまずはオレ様、第一発を〜・・・・吹きました〜!プぅっ!!」「イェ〜やれやれぇ〜!!」「ケツの穴に刺さったら100点な!」
原始人zinの内1匹が、手にした吹き矢でトレスヴァントの尻を射抜こうとしていた!!照準を合わせ、1発目が放たれる・・・・・
ブスぅっ!と刺々しい物体が刺さる感覚がトレスヴァントを襲った!!「ぅんがぁああぁああぁあああ!!?!!??」と惨い断末魔が響く。
幸い、教育上よろしくない様な事態には至っていないが・・・あまりの痛さにトレスヴァントは間抜けなポーズを取ったままで気絶してしまった。
「おいおいおいお〜い、今度は俺にも吹き矢を撃たせろってんだよぉ〜・・・ん、誰かこっちに来るぞ?」「やっべ、隠れろ!!」「ケケケ!」
その場に近づく者の気配を感じ取り、3匹の原始人zinたちは近くの草むらへと飛び込み、身を隠すのであった。

「はっ・・・はぁっ・・・・と、トレスヴァント!?だだ、だ、大丈夫っ!!?」エルフの集落を出て、ラティナが走ってきた。

303ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 17:58:46 ID:Utgqp4JY0
尻から血を流し、地面に顔を埋めているトレスヴァント・・・そんな彼を笑うことなく真面目に心配するラティナは
彼を介抱しながらどこか近くに小屋か何かは無いかと辺りを見回した。時間的に日が沈み始め、空は紺と橙のグラデーションを
描いていた。幸い近くに小屋はあったが、時間が時間なので、彼女はそこでの野宿を覚悟して入っていった。

小屋に入ると、彼女は重い鎧を全て脱ぎ捨てハイレグレオタード一丁になった。汗を多く掻いた素肌に、夜風が涼しさを与える・・・・
「(・・・どうして、いつも空回りしちゃうんだろう・・・あたしトレスヴァントの事が大好きなのに、いつも怒って八つ当たりしちゃう)」
焚き火を囲み、体育座りで物思いに耽る彼女を他所に、部屋の隅ではトレスヴァントが目を覚ましていた。焚き火の灯りと火の粉の散る音で
彼は自然と彼女の元へと足を運んでいった。「・・・よぉ」無骨にトレスヴァントが彼女に話し掛けた。
「あ・・・トレスヴァント・・・さっきはごめ・・・」謝ろうとラティナはうつむき気味に言葉を紡ぐが、トレスヴァントがそれを遮った。
「うるせぇよ・・・何なんだよ、ブッ飛ばされたと思ったら今度は埋まってるのをいいことにケツに槍かよ・・・何が『ごめん』だよ、フザケんな」
彼の目にいつものような明るさはなく、背筋の凍るような冷たさしか残っていなかった。怯みながらもラティナは反論した。
「ち、違うわよ!あれはあたしがやったんじゃないんだからっ!!何よっ、ちょっと殴り飛ばされたくらいで・・・バッカじゃないの!?」
ついカッとなりラティナもいきり立った態度で言葉を返すが、かえってトレスヴァントのボルテージを上げてしまう・・・!!
彼女がもたれかかる背後の壁に、彼は力強く拳を叩き付けた!!ドンと激しい衝突音・・・突きつけられた拳はラティナの顔の真横にあった。
そしてトレスヴァントはラティナの顔を正視した・・・眉間にしわを寄せ、明らかな怒りを燃やして、彼女の顔を見つめ、そして口を開いた。
「いい加減にしろよテメェ・・・!!オレが・・・オレが・・に・・・オレがお前に何をしたってんだよぉおぉおおおおぉおおお!!?」
断腸の思いを込め、全ての感情を吐き出すようにトレスヴァントが怒鳴る!!!あまりの迫力にラティナは怯えきっていた・・・そして間もなく
彼女の顔に変化が現れた・・・綺麗なその瞳に、微かに輝くしずくがあった。それは彼女の頬を伝い流れ落ち、とめどなく溢れた・・・
「何よぉ・・・何よ何よ何よぉっ!!バカバカバカバカバカあぁっ!!男って何でいつもそうやって怒るの!!?あたし・・・あたし・・・
 トレスヴァントのことが大好きなんだもんっ!ずっとずっと、一緒にいたいんだからぁっ!!だけど・・・どうして気付いてくれないの!?
 ラティナさんの前で鼻の下なんか伸ばして・・・あたしの事も見てよぉっ!!・・ふぇ・・・えぐっ・・・うあぁあぁぁん」
嗚咽を漏らし、顔を両手で覆う彼女を前に、トレスヴァントは呆然と立ち尽くすしかできなかった。後悔の念が彼を捉えていた。

304ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 18:10:49 ID:Utgqp4JY0
しかし彼はその思いを振り切り、ある行動に出た・・・・泣きじゃくる彼女をゆっくりと、力強い両腕で優しく抱きしめた。
突然の抱擁に、泣いていたラティナは驚きを隠せなかった。涙は止まり、今度は赤面する彼女。しかしまどろむように目をトロンとさせ
抱きしめる彼の感触に身を任せていた。言い表すことのできないエクスタシー・・・心の底から湧き出るぬくもり・・・二人の間には既に
敵意だとか猜疑心だとか、そんな負の感情は一切無い。ただ、目の前にいる愛しい人を愛することでいっぱいだった。
「ねぇ・・・トレスヴァント」「ん?」「大好きだよ・・・ずっと一緒にいたいくらい、大好きだよっ」
「あぁ・・・オレも・・・お前のことが大好きになったよ。ずっと、ずっとずっと、一緒にいよう。」「うんっ、うん!」
お互いを見つめ、そして目を閉じ、互いの唇を重ねる・・・口の中で柔らかいものが絡み合う・・・・
体を重ね、抱きしめ、愛撫して・・・二人の愛は確かなものへと移り変わってゆく・・・

           「ラティナ・・・・」    「トレスヴァントぉ・・・・・」

夜は長い・・・だが、時には短くも感じる。二人の間のエクスタシーも同じことだった。

To Be Continued....

305ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/21(火) 18:17:22 ID:Utgqp4JY0
あとがき

ラブストーリー、完結?です。
なんか最後はややディープというか・・・ノリ一発で書いたらこんな風に。
抽象的なストーリー進行で申し訳ないです;;

http://jp.youtube.com/watch?v=gxzZNNBmXP4
↑は終盤を読むときのBGMにどうぞ〜

306◇68hJrjtY:2007/08/22(水) 01:05:02 ID:Uw/jL7lo0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
これはまた大量執筆ですね!でも読んでみると短く思えるのはなぜだろう(笑)
遂に遂に、ラティナさんも告白してしまいましたね!ハラハラしながら見てましたよ(*´д`)
それに対するトレスヴァントも全てを包み込むような、いきなりいい男に変身ですね。
なんというか二人はいつもケンカしてたけど本当は誰よりもお互いが必要だったんだなあみたいな。良かった良かった(ノ∀`*)

なにやらBGMまでつけてくれたのでついでに聴いちゃいました。
洋楽も良いですね。とてもロマンティックになって。音楽と小説が一体化するのも凄いもんだなぁ…。

307之神:2007/08/23(木) 10:25:33 ID:nnKW8fv60
たまには視点を変えて・・・

「毎回この時間が退屈だ・・・」
PCの前で不満を口にする
ゲームを始めるには少し時間がかかるのだ
「ぇーっとパスワードは・・・」
こぅして俺はゲームの世界へ入って行った・・・
俺はメインをWIZとしてプレイしている。
落ちる場所は決まって古都西の広場、エンヘイ広場のような所である。
「おぃおぃ、INしてさっそく『エンヘイおね』は勘弁してくれよ・・・」
と言いつつも辻をかける為にチャージをする。
「あり^^」

ギルチャのマークが光る。どぅやらマスターが近頃INしていない、という話題らしい。
「こん^^」
「ぉ!こんですー」
「こん」
「どもー^^」
確かにマスターがINしていないのは俺も知っている。気になってもいたので
話に参加することにした
「マスター何してるんでしょーねw」
「んー・・・リアでの仕事が忙しいとか、PC壊れちゃったとか?w」
んなアフォなw今7月だぞ?行方不明になったのが3月だから、明らかに
長すぎるだろ・・・。まぁ、修理って事は無いな・・・。
などと思いつつ、何を言うべきか迷った俺は
「ぇーw」
まったくこの「w」というのは便利である。何を言ってもコレを付ければ
なんとかなるようなもので・・・。
そんな「w」に感謝している間に、すでに話は変わっていた。
「今年中受験でさーorz」
「あら、学生だったんだっけ?」
「ですよー」
こんな話に興味も無い俺は、さっさと狩りに出かけることにした。

308之神:2007/08/23(木) 10:44:27 ID:nnKW8fv60
狩場までの移動はカーペット。
これは便利な代物で、走って数分かかるフィールドをあっという間に
移動してしまう課金アイテムであるのだが・・・
残念んながらダンジョンでは使えない。
自分にヘイストをかけ走る。
課金のクセにプチスフィアというオトクなのかどぅかも分からないアイテムを常用している
おかげで、場所記憶という機能が無い・・・orz
下手に出し惜しみする俺の性格が憎い。

さて俺は狩場に着いたワケだが・・・
PTに入り、簡単な挨拶を済ませる
「よろです」
ちなみに自分は「パブル鉱山」という課金エリアの適正である。
俺は迫力があるという理由でメテオWIZという前半はとてもマゾなコースを選んだのだが
今になって自分の選択は正しかったとニヤついている。
ここでは釣りと呼ばれるそこそこ硬い人がmobをわざわざ俺のところまで
持ってくる。いい身分である。
そこへ俺がメテオを数発落とす。これの繰り返しである。
そこへ剣士の人がシマーを俺にかけてくれた。
「シマーありです^^」
「いえいえ、大将ですからw」
「ははw」
まったくもっていい身分である。前半のマゾさを除けば大抵の場所なら
この扱いだ。

2時間程時間が経ち、そろそろ切り上げることにした。目も限界である。
「そろそろ抜けますね^^;」
「はいーおつです」

309之神:2007/08/23(木) 11:03:05 ID:nnKW8fv60
2時間もいたおかげで、どうにかレベルを2つ上げる事が出来た。
「ぁー疲れた」
思わずPCの前で口にした

それにしてもふと思ってしまった・・・。
娯楽のためのゲームでなぜ疲れないといけないのか・・・。
それに楽しむはずの狩りがすでに作業化している。
それを親しい友達に言うと、
「そんな事言ったらクエやギルド活動も作業じゃない。まぁ効率を求める人
が多いし、すぐにレベルを上げたいと思うのが普通じゃない?だから最終的に
作業化されちゃうのよ。」
「fm・・・・」
確かに正論ではあるが・・・。なんと言うか、始めたばかりの頃の方が楽しかった
ような気がする。
発見や未知のmobとの格闘。移動費をケチって古都からブリッジヘッドまで走ったり・・・
「俺、そろそろコレに飽きてきたかも・・・」
「コレって?このゲーム?」
「そそ」
「なんかいきなりだねw引退って事か?w」
「んー・・・・」
正直この作業的な狩りや、わけの分からない叫び、晒しや詐欺など、
それらが原因でこの世界に付き合いきれなくなってきたかもしれない。
欲しいアイテムを買う為に、必死で稼いで、露天巡って・・・
大金を手にしている今、そんな事もしていない。
気がつけばこのゲームの悪い印象ばかり並べていた。

310之神:2007/08/23(木) 11:20:25 ID:nnKW8fv60
〜始めた頃〜
「おーぃ!ちょっと待ってよー」
「遅いと置いていっちゃぅぞーw」
・・・まったくあいつにだけヘイがかかってるってどぅいう事だよ。
そうして赤目まで2人で走って行った。
そこでの狩りは新鮮で、信仰者の声がハラ立つなーなどと思いながら
警備犬に嚙み殺され、魔法士に火あぶりにされ・・・
でも、倒した達成感や落ちるアイテム、そんな事で楽しんでいた。

・・・・。回想してしまった・・・orz
ちなみにその良く共に狩りをした友達は、現在はINをしていない。
なんだかもう、自分の頭の中でも「引退」の文字が揺れていた。
残った金はギルドに寄付だな・・・・装備は1G祭りで・・・それからー
って、もう完全に引退モードじゃないかっ。

自分では自覚が無かったが、少しづつこのゲームもしなくなってきた。
そぅ、引退してしまったのである。しかし何せケチな俺は、寄付や1G祭りなどは
せずに引退していた。
ゲームではいろんな人がいた。おかげで少しは社交性もついたかなと勝手に思っている。
始めたころ、突然プレイしなくなる人たちが不思議であった。
せめて一言言えばいいのに・・・と。
しかし自分も一言も言わずに引退した。気持ちがなんとなくだが分かった気がする。
こうして俺は、このゲームから引退した。

311之神:2007/08/23(木) 11:37:30 ID:nnKW8fv60
1,2年は経ったであろうか。ふとPCをいじっている時、それを見つけた。
ゴミ箱に入っていたそのファイルは
「RED STONE」と書いてあった。
「まぁ・・・ヒマだし少しいじってみるかな。」
なんだか・・・以前の事を思い出した。この少しの時間に不満を持っていた気がする。
パスワードは・・・・なんだっけ・・・思い出せずにあきらめようとした時、
色あせたメモ用紙が目に映った。
パスワードだった。
こうしてログインした俺は、レベルも変わってない自分のWIZを見て少し安心した。
こうしてまた俺は、古都西のエンヘイ辻支援広場に立っていた。
まったく変わっていない。エンヘイを求む人はいつでもいるものだなと思った。
何も変わっていない古都。
しばらく古都を歩いていると、今更に気がついたのだが、なんと
ギルドから追放されていなかった。正直自分を追放しなかったのが不思議でたまらない。
その日はなんだか幸せだった。懐かしいアルバムでも見ているような気分で
たぶん、この時俺はPCの前で笑っていたと思う。
こうしてそろそろ落ちようかと思った時、
ギルドチャットが光った。

「おかー^^」



はぃ、終了です。なんだか書きたくなって書いてしまったのですが、
正直ストーリー構成が自分でも分かりませんw今度しっかり学んで出直してきます。
まぁ・・・一応引退のお話です。
こんな駄文に目を通して下さった方に感謝します。
ちなみに自分は現役ですよーw

312名無しさん:2007/08/23(木) 12:46:59 ID:vKk/RUsc0
上げとくか

313◇68hJrjtY:2007/08/23(木) 14:44:52 ID:Uw/jL7lo0
>之神さん
はじめまして。今現在半引退中な我が事のように読ませてもらいました(ノ∀`)
WIZ君のように無言で友人たちの前から消えてしまいたい、なんて気持ちも多少なりと分かる気がします。
既に引退した友人とメッセ等で話したりすると、RSのSSやBGMを聞くと脊髄反射的に復帰したくなる事もあるとか(苦笑)

ただ、私と決定的に違うのは、私の場合はギルドというものを結局堪能せずにここまで来てしまったというか。
Gvなど楽しんでる友人とかこの小説とか読むとギルドというのはやっぱりいいもんだとつくづく思います。
あ、あと私は生涯これ無課金だったというのも違うところですね(笑)

314之神:2007/08/24(金) 01:47:23 ID:hd5nRhtw0
あ、感想どもです^^
これは視点を変えてゲームの中の人の話を作ってみたかったので書いてみました。
でも、ここの作家さんのように書けないのが現実ですね・・・。
小説と言うより私の場合読みきり短編みたいな感じでしょうかw
できればもっと詳しく、それとリア事情を含めて書いてみたかったナーと思ってます。
また気が向き次第書きたいと思います。

315LunaY94M0:2007/08/25(土) 01:32:15 ID:Np7DkczM0
天然娘は困りものです。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●月×日
 「これ……、俺の代わりだと思って受ッ取ってくれ!!」
大きな右手の中で小さなタートの婚約指輪が揺れている。
彼の震えが大きくなったのは、緊張に大事なところで噛んだ焦りが加わったせいだ。
背中のホルダーにくくりつけた大斧が急に重くなって、彼を後ろに引き倒そうとする。

 「……はい、私でよければ。」
驚いたように彼を見詰めていた彼女だったが、西日を受け赤く染まった頬に笑顔で輝きを添える。
彼、ギルドマスターでもある戦士は、動揺を見抜かれないように素っ気なく答え、背中を向けた。
彼はあとで思い返してもそのとき自分で何を言ってその場を離れたのか思い出せなかったが、
甲冑と矢筒から開放され、金色の髪と白いスカートが風になびく茜色の姿だけは焼きついていた。

翌日。
彼は寝つきの悪かったゆうべをうらみつつ、日の高くなった大通りで生あくびをかみ殺していた。
水音の響きが聞こえる公園の木陰に、彼女が座っているのに気が付いた。
いつもの露天看板をだして、いつものように細い指でポケットにも入る小さな本を読みながら。
いつもの鎧姿なのがいくばくか残念ではあるものの、昼間の熱気の中そこだけは涼しげに見えた。

ふと、遠めに商品を見ていた彼の足が止まる。
そこには昨日、彼が渡した指輪があった。
 「あ、マスター!」
 「代わりに売っといてくれって頼まれた指輪なかなか売れないんですよぉ。
 ついつい値段高めにしちゃって……あの、マスター??」
彼の耳にはサラサラと流れる水の音と、カタカタと喚く大斧のホルダーの音だけが響いていた。
_____________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●月△日
 「ちょっと欲しい物があるんだけど、なかなか見つからなくて」
 「それなら露天看板に書いて募集したらどうですか?私、代わりにやっておきますよ」
 「……いい、自分でやる」
(頼んでくれればいいのになぁ)
相変わらず素っ気ない態度に表情を曇らせながら赤い目で大きな背中を見詰めていた。
“代わり”が半ばトラウマになってる彼の気持ちなど予感できるはずもなく。

その日の夕刻。
彼女は知っている。彼はこの時間しか露天をすることはない。
午前は仕事(ほとんどが狩り)に、昼過ぎに街に戻ってから夕飯までの空いた時間しか使わない。
夜は会議かお酒かその両方で、本人曰く“忙しい”らしい。
露天はすぐには見つからなかった。
噴水通りをまわり銀行周りを巡って古都周遊のあげく、王宮前で彼を見つけた。

大斧を抱くようにして皮の荷物袋の上に座って眠ったまま露天看板を出していた。
品物はもともと無かったのか、眠っているうちに盗られたのか花が一輪並んでいるだけだった。
起さないようにゆっくりと近づいて、彼の探し物をこっそり看板でチェックするつもりだった。
看板を見上げた後、驚きに声をあげそうになりあわてて自分の口をふさいだ。

『買〕力゙一夕―ベノレ卜』
まだ彼が眠ったままなのを確認して、ゆっくりと後ずさりした。
起す心配がなくなるまで距離をおいて一気に走り去った。
 (ガーターベルトってあれだよね?えぇぇどうするんだろ、誰かにプレゼントするのかな?)
 (えぇぇぇぇまさか私にえぇぇぇぇぇぇぇっ、似合いそうなのは姐さんだけどやだなぁ)
 (まさかまさか、自分で履くのかなぁえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)
妄想は止まらない。
______________

316LunaY94M:2007/08/25(土) 01:37:56 ID:Np7DkczM0
お気に入りだったIDが変わったので名前にしてしまいました。
4コマにしたかったけど、私の絵は絶望的に芸術的なので諦めました。
コマを想像してみてもらえると幸いです。
皆さんの想像の中では彼と彼女はどんな顔してるのかな。

>之神
あぁ、わかるわかる!って言いたくなる話ですねぇ。
私はレベル上げしないでお散歩ばかりしてるので回りに置いていかれてしまうほうです。
ちょっといろいろ思い出して切ないです(´・ω・`)

317名無しさん:2007/08/26(日) 01:13:11 ID:.av7BFkg0
某月 某日

今日は、現在のGH<ギルドホール>より一つランクが上のGHを奪取される為に行われるギルド・イベント?攻城戦?ある。
俺はブルンネンシュティグの中央付近にある噴水、その前に居るテレポーターを通じて所属するG<ギルド>のGHへと転送してもらった。
味気の無い、木の板を張り巡らされたようなGH。其処には既に五人のギルドメンバーらが居た。
一人はGM<ギルドマスター>を務める物理アーチャーで、その近くに同職である武道家が一人。知識剣士、悪魔、ビショップも居た。
俺は皆に「こんばんは^^」と挨拶し、GH内に居るテレポーターに攻城戦が行われるフィールドへ転送して貰った。

                       ☆


一面の緑の草木に覆われた場所と、俺たちが破壊するギルド紋章が奥にある大きな白い壁に囲まれた場所。大きく分けてこの二つ。この場所で攻城戦が行われるのだ。
攻城戦の勝敗の決まりは単純である。攻め側は、相手のギルド紋章を破壊すれば攻め側のの勝ち。逆に、破壊出来なければ守る側の勝利となる。
攻め側は草木に覆われた地点に転送され、守る側はギルド紋章付近へと転送される。
俺達は攻め側。遵って草木に覆われた場所へ転送されるのだ。


                       ☆


GMが手短に攻城戦の説明をした後、直ぐに攻城戦は始まった。
此方の参加者は1PTに満たない六人だけ。向こう側の人数が多くない事を願いながらも最初の門を叩く。
苦して門を開けると待ち受けていたのは強力な?パラレルスティング?なる攻撃スキルを持つ剣士が二人、
脅威的な威力と範囲を持ち合わせる?ドラゴンツイスター?を得意とす知識戦士が一人。
?ファイアーエンチャント?での物理攻撃強化、?ヘイスト?による全体速度増加で味方を支援するウィザードが二人。
トップクラスの手数を誇るスキル?ダブルスローイング?を放つシーフが一人。
火力は皆無だが、相手の妨害なら横に出るもの無しと言えるであろうネクロマンサーが一人。
パラレルスティング、ダブルスローイングに並ぶ同時多段攻撃の?エントラップメントピアシング?を使うランサーが一人。
対象のCPを根こそぎ吸い尽くす凶悪な?マジックディスペリング?を持つ追放天使が一人の、計九人だった。


                       ☆

攻城戦開始から数分が経った。圧倒的火力に圧倒され、此方はまだ攻略ポイントを一箇所も破壊していない。
戦略や人数以前に、全体的なLvの差を見せ付けられていた。何度も?中央にある攻略ポイント?を狙ったり、?中央突破?を試みるが、
中央で待ち受ける相手に倒されGHへと送り返される。中央の攻略ポイントを叩いても、ランサーの持つ?ファイアー・アンド・アイス?でフリーズ状態となり一切の行動が取れない間に倒されてしまう。
やはり中央突破は無謀過ぎるようだ・・・。何度も中央へ行きGHへ返される・・・ん?
それって?中央に相手が集中している?と言う事になる。となると、両サイドにある攻略ポイントはがら空きかもしれない・・・・。
これは美味しい誤算だ。俺はありったけの?ラージチャージポーション?を鞄に詰め込み、入らない分はベルトのスタックへ装着し、上側の攻略ポイントへと走った。



昨日あった攻城戦をイメージに書いてみました。
描写が下手で、いまいち掴み辛いと思いますが、語り手は武道家です。
続きは後日書きます。今日はもう眠いです・・・

318◇68hJrjtY:2007/08/26(日) 10:32:56 ID:9LGI4D.A0
>LunaY94Mさん
良いIDコテハンですね(*´д`*) はじめまして。
元々は4コマの想定で書かれたものなのですね。なるほど、起承転結がしっかりしていると思います。
生憎と私も絵心(物書き心もですが)は乏しく、その思いを小説にぶつけるというLunaY94Mさんの気持ちは痛いほど分かります(笑)
私のイメージではズボラだけど一途な戦士君とそんな戦士君を微笑ましく見つめる年上アチャ嬢という感じかなぁ…。
絵にしてみろ、と言われても無理ですがorz
また機会があれば執筆してくださいね。

>>317さん
同じく初めまして。
武道家視点というわけで多少なりと同感できそうです(ノ∀`*)
しかして攻城戦というものは実はいまだ未体験。317さんの小説を読んで色々と想像に頭を巡らせてます(笑)
しかもこれは実体験に基づく(?)お話のようで、確かにリアリティがとても強いですね。
何か戦いというよりも戦闘的スポーツ(なんじゃそりゃ)をしているような雰囲気ですが…。
続きの方期待しています。

319名無しさん:2007/08/26(日) 21:04:40 ID:.s8jVrUw0
煌く(キラメク)銀色の閃光。

突き出される八陣の刃。

迸る(ホトバシル)鮮血。

それが地面に滴り、奇妙な文様を描く。

・・・その文様の中心に崩れ落ちる、せんの細い、華奢な背中。

短く、うめくような声。

宙を掴む手のひら。・・・己を支える魔力の供給を失い、消滅する召喚獣。

人望厚く、それに恥じぬ力と知恵を持った、熟練のサマナー。

我がギルドのギルドマスターであり、同時にオレの配属されたパーティーのリーダーである。

彼女が崩れ落ちる姿は1コマ送りで私の目に映り・・・
・・・そして、今回のギルドバトルは敗戦で、幕を閉じたのだった。








「・・・強かったな〜・・・。あの剣士。」

「ヤツ一人にやられたようなモンじゃね?w」

「心臓切らしてなかったら、オレでも勝ってたぜbb」

「イヤ、ムリだろ。あの火力は神装備の賜物ってヤツさ。」

「そそ。一般人じゃ勝てないってwww」

敗戦直後の、ギルドホール。
イスに腰掛け、適当にテーブルを囲むギルドメンバー達。
軽い冗談を交わしつつ、・・・無駄にスキルを発動させつつ。
敗戦直後だというのに、あまり気を落としている様子は無い。

・・・一人を、除いては。

表面上はみんなの冗談に合わせ、終始ニコニコと微笑む彼女。
ギルドマスターである、サマナーの少女。
しかし、その表情の裏には、かなり落ち込んでいる様子がある。

―ように、オレの目には映っていた。

とは言っても、ギルドに入って間もない、新入りの身空。
彼女と出会って月日も経っていないし、あまり力量があるわけでもない。

オレは、その感覚を気のせいだと思い、胸に封じておくコトにした。

が。

オレのその感覚が当たっていると知ったのは、他のギルドメンバーがホールを出て、、
たまたまポットの補充をしていたオレと、神像を眺めていた彼女の二人きりになった時だった。

320名無しさん:2007/08/26(日) 21:05:29 ID:.s8jVrUw0
取引をしていた雑貨商人の瞳が、一瞬オレから外れ、背後へ向けられる。

・・・思わずつられて振り返ったオレの視線の先には、、
手持ち無沙汰に佇む、サマナーの少女、ギルドマスターの姿があった。

申し訳なさそうに伏せられた瞳が、ときたまオレのご機嫌をうかがうかのように、上がる。
・・・そして、オレと目線が合うと、その視線は急降下し、再び床へと戻るのだ。

「・・・まいど。」

雑貨商人にGを渡し、試しに神像の方へ歩いてみる。
―・・・ついてくる。

今度はギルド飼育のモンスター達の檻へ方向を変える。
―・・・ついてくる。

最後にオレは、先ほどまでギルドメンバー達が談笑していたテーブル群の方へ歩いた。
・・・一番手前にあったテーブルへ、背後を振り向きながら体重を預ける。

「・・・何スか?」

・・・少し、素っ気無さすぎる言葉だったろうか。
ビクリと震えたサマナーの少女の瞳は、さらに降下し、、
・・・ついにはつま先の辺りまで落ち込んでしまったのだ。

「あの、ゴメンね。初めてのギルドバトルなのに、負けちゃって・・・。」

オズオズと切り出す彼女。

―・・・何というか、わざわざ“そんなコト”でずっと声をかけあぐねていたのか、と。

「イヤ、マスターは全然悪く無いッスよ。」

気遣いというよりは、実際現実問題そうだろう。
・・・あの剣士はココ最近有名になった男で、ギルドバトルにかけるGそのものが、オレ達とは違う。

無尽蔵に魔力を生み出すドラゴンの心臓。
体力と魔力を同時に回復してくれる、それも、かなり良質の花。

どれも、決して安い品では無い。

・・・さらに、伝説上の存在、妖精の刃油や古代竜の心臓などを使う、といった馬鹿げた噂まであるほどだ。

「・・・ううん。ホントに、元老さん達に申し訳ないよ・・・。」

と。

オレが剣士にまつわる噂に一瞬頭をかたむけている時に、サマナーの少女が発した言葉。

震える、言葉の端々。
何と、その大きな瞳、それを包み込む二重マブタの端に、涙をたくわえていたのだ。

「・・・あ〜ぁ・・・」

なんとも、めんどくさい。
女というのは、何で適当な理由をつけて自分を守るコトが出来ないのだろうか。

さめざめと泣き続けるサマナーの少女。
・・・放っておけば、いつまで泣き続けるかわからない。

「・・・分かったよ。」
―次のギルドバトル、オレが勝たせてやるよw

効果テキメンだった。

オレの言葉に驚いたように、視線を上げる少女の瞳。
若干疑うような光が混ざっているのが気に食わないが、泣き止んだだけよしとしよう。

「・・・出来るんですか?」

「・・・やってみるさ。」

そこまで言い、少女に背を向ける。
次のギルドバトルは明後日の8時。

・・・しかも、都合の良い事に、再び同じ相手となのだ。

321◇68hJrjtY:2007/08/27(月) 00:10:54 ID:9LGI4D.A0
>>319さん
初めまして。で、大丈夫ですよね(汗)
心情と実際の言葉がきちんと区別されていて読みやすかったです。
私も経験は薄いながらも始めてのGvはとてつもなく緊張したものです。
だからこそこうしてマスターから「勝てなくてごめん」と言われると余計に居たたまれなくなるというか( ´・ω・)
ところでなんだかGvに似合わないくらいか弱くて可愛いサマナに萌えてます(*´д`)

ギルドバトル、つまりはGvは悲喜交々といいますか、語られる舞台としては最高なもののひとつですよね。
319さんの話がどんな風に展開していくのか楽しみにしています。

322之神:2007/08/28(火) 20:49:44 ID:sX6oMXVw0
短編集

ヒマ人PT
☆「! ヒマ人PT募集中〜耳よろー」
★「このゲームって暇だからやってるのでは?」
☆「ごもっとも・・・」

エンヘイおねがいします
☆「エンヘイおんえがいしあmす」
★「エイヘンおねがいします」
◎「エン ヘイ 頼む」
辻支援WIZ「日本語でお願いします」

バイト
☆「! 1レベル5万で手伝います」
★「/○○○ おねがいします」
☆(お、さっそく耳が・・・)
○○○(剣士Lv500)さんがPTに参加しました
☆(・・・・(^ω^;)レベル限定しないとな・・・  )

物足りない
☆「あら、テイマさん、このレベルでまだコボですか・・・^^;?」
★「はい。何か?」
☆「いやぁ・・ホラ、コボだとさ、ちょっとね・・・」
★「あの・・・それってアナタ・・・」
☆(あぁ、言うんじゃ無かったかな;;)
★「この子じゃ物足りないんですか?」
☆(微妙に違うっ・・・)

ハーレム
☆「○○さんて女性キャラ多いですよね」
★「いや、多いって言うか、全部女性キャラですよ〜」
☆「それはたまたま?それとも理由が・・・?」
★「理由ありますよ^^」
☆「ほぉ。どんな理由で?」
★「リアルでさ・・・女の子と関わり無いから・・・せめてこっちくらいは
 って思ってね・・・。」
☆「あら^^;」
 (・・・・不憫だ)

古都西口の不思議
☆「そぅいえば、古都西のアリエルの家の前に、首吊りのロープあるよねぇ?
 あれなんでなんだろ・・・」
★「・・・それはね」
☆「知ってるんですかw」
★「それは、病気のアポドンが楽に逝けるようになの^^」
☆(・・・・イヤァ・・・w)

男子な話
☆「みんなはこのゲームの女性キャラで何が一番好き?俺はランサさん・・・」
★「fm・・・私はテイマですかねぇ・・・」
◎「俺もテイマかなー」
△「僕は悪魔w」
☆「■さんは?」
■「私はプリですね」
★「ほぉ、理由は?」
■「幼女体型とボンキュッボンが両方味わえるじゃないですか。リトルになれば。」
☆★◎△(な、なるほど・・・)


えぇ〜勢いで作りました。短編集ですw
短くて読みやすいのを書きたくて書きました。
読んで少しでも笑ってもらえるとうれしいです。
・・・長いの書けないってのが少しある・・・(ボソ

323名無しさん:2007/08/29(水) 12:57:41 ID:M5mBKWRE0
短編好きにはたまりません

324◇68hJrjtY:2007/08/30(木) 12:20:48 ID:uppkps7U0
>之神さん
短編というかセリフだけの小話というか…それにしても面白いです。
こういう短編を書くことも長編と同じようなセンスが必要だと思いますよ。
どれもRSで時にありそうな話ですよね。それでいて笑ってしまう…。
「ハーレム」と「男子な話」は妙に現実味があるというか、なんというか(ノ∀`)

325名無しさん:2007/08/30(木) 19:18:13 ID:N/AfJeHM0
Episode05-Walk this way.〜帰り道の一コマ〜

剣士のトレスヴァントとランサーのラティナ、二人はビガプールへと続く道の途中の小屋で一夜を過ごした。
日は昇り、白く眩い朝日が窓辺から差し込む。光は二人の眠りを覚まし、ラティナは背伸びして起き上がった。
「ん、ん〜・・・・ふぅ、おはようトレスヴァ・・・あっ!!(あ、あたし何で裸に・・・あ、そっか・・うふふ)」
慌てて何も着ていないことに気づいた彼女。しかしクスっと微笑んだ後、優しく柔和な笑顔でトレスヴァントを見つめた。
当の本人は何事も無かったかのように「グガ〜っ、グォ〜・・・ん、うげっ・・・」と豪快にイビキを掻いていた。
「もう・・・バカっ」とラティナが微笑みながら呟くと、それに反応するかのようにトレスヴァントが起き上がった!
「オレはヴァカじゃないぞぉぉおおぉぉぉおお!!」彼の悲痛の叫びが小屋を中心とした半径500メートル程に響き渡る。
そして彼はハッとした様子でその場に立ち尽くし、側にいたラティナの気配に気が付くと「あっ・・・」と声を漏らした。
「ぷっ・・・もう!ホントにおバカなんだから、トレスヴァント!」可愛らしく人懐こい笑みを浮かべながら、彼の頬を
ぷにっと突付いた。トレスヴァントは気恥ずかしそうに頭をボリボリと掻き「か、からかうんじゃねェよぉ・・・」と
照れることしかできなかった。でもすぐに笑顔に戻り、お互い笑顔を向け合っていた。

326ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/30(木) 20:17:53 ID:N/AfJeHM0
しかしすぐにお互い同士が素っ裸ということに気付き、二人は顔を紅潮させ、慌てて毛布で際どい箇所を隠す。
それでも二人は微笑みあう。「あはは、トレスヴァントってばシャイ〜」「う、うっせぇよ!異性に裸見られて恥ずかしくねぇわけねぇよぉ〜」
しかし二人はまた別のことに気付いた・・・汗臭いのだ。ここ数日、彼らはシャワーも浴びてなければ入浴もしていない!!当然体臭はキツくなる。
「ね、ねぇ・・・水浴びしない?不潔なのはちょっと・・・・ねぇ?」「お、おうよ・・・ワキからすげぇ臭いがするぜ・・・うぉえっ」

とりあえずラティナはレオタード、トレスヴァントはトランクス一丁で小屋の外に出た。
辺りを見回すと、小屋から南西50メートルほど先に湯煙らしきものが立ち上っていた。二人はすぐそれに気付き、猛ダッシュで向かっていった。
「よぉ〜し、あそこまで競走よ!負けないんだからっ!!」「オレの筋力ナメんなよ!!うぉらぁあぁああぁあぁあぁ!!」
砂塵を吹き荒らし、両者は驚異的なスピードで湯煙の元へと走っていった・・・・

「わぁ〜、見てトレスヴァント!天然の温泉だわ〜!!」「うぉ〜スゲェ!!・・・うっ、硫黄臭いなァ〜」
着ていた衣類を脱ぎ捨て、二人は温泉に身を浸した。硫黄泉なので肌にチクリとした感触が伝わってくるが、不思議と疲れも
抜けていくような感覚が彼らを満たしてゆくのだった。隣り合う彼と彼女・・・トレスヴァントはちょっとした悪戯心で
彼女に触れてみた。目を逸らしながらなので、どこに触れるかは指先が触れてからでないとわからない・・・そして肌に触れた。
何やら異様に柔らかい物体・・・思わず調子に乗って揉んでしまうが、振り向くと彼女が顔を紅くしているのに気が付いたのか
トレスヴァントはすぐにイタズラを止めた。一方ラティナは頬を桃色に染めたまま、上目遣いで「・・・えっち」と呟いた。
「・・・はは、悪ぃ悪ぃ」「・・・うふふ、バカっ」「ば、バカってゆうなよ!」「ほんとにバカなんだもん」「うっ・・・」
疲れを癒しながら、二人の恋仲はゆっくりと深まっていくのであった。

327ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/30(木) 20:36:34 ID:N/AfJeHM0
温泉から上がり、小屋に戻って身支度を整えたラティナとトレスヴァント。
日が経ってしまったものの、彼らの仲間であるフィナーアのペット、セルジオとシンバのお遣いを済ますべく
二人は急ぎ足でビガプールへと向かっていった。道中、オクパストンに氷漬けにされたりウルフに尻を噛まれたりと
ドタバタ続きではあったが、何とかしてビガプールへと辿り着いた。


新興王国ビガプール、新しい国家勢力というだけあって建築様式はかなりモダンな方だ。朱色の屋根の建造物が
これでもかと言わんばかりに立ち並ぶ街並み、そして古都ブルンネンシュティグにも劣らない大規模な都市だ。
トレスヴァントがセルジオとシンバから引き継いだお遣いとは、この都市に住む宮廷料理人カープから熊肉のロースを
分けてもらうことだ。彼らは街に着くと市民に聞き込みを行い、彼女の居場所を教えてもらい、すぐにその場へ向かった。

着いたのは住宅街の一軒家。ドアに掛かっているベルを鳴らし、家の主が出るのを待った。
「は〜い、今行きますよ〜」とハスキーな声が聞こえると、ドアの向こうには小柄な女性が現れた。
「ん?・・・あらあら、冒険者さんじゃないの。あたしに何か御用?」フレンドリーな声でカープが
話し掛けた。トレスヴァントは懐からメモを取り出し、それを彼女に手渡した。彼女はそれを手に取ると
少し驚いたような表情を浮かべると、すぐに首を縦に振り、笑顔で答えた。
「オッケー!エルフの人達にも有名とは、料理人冥利に尽きるねぇ。よし、熊肉の生ロースね!
 メモによれば10kg分かぁ・・・ちょっと蔵を見てくるから、その間にでも街を見物してなさいな。
 お望みのものが見つかったら、ポータルクリスタルで連絡するわ。じゃ、楽しんでってね〜」
そう言い残すと、彼女はドタバタと家の奥へと消えていった。せっかくなので、ティナとトレスヴァントは
お言葉に甘えることにし、ビガプールの繁華街へと足を運んでいった。

328ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/30(木) 21:05:01 ID:N/AfJeHM0
昼下がりのビガプ−ルの繁華街。
多くの人でごった返し、オープンカフェが軒を連ねていた。冒険者もそれなりにいて、見ていて退屈しない。
トレスヴァントは途中で見つけた露天で足を止め、売られている貴重な品々に目を奪われていた。
「あ、いらっしゃいませ〜。珍しい武器や防具も置いてますよ〜」売り子のビーストテイマーらしき少女がほのぼのとした口調で
話し掛ける。トレスヴァントはというと、陳列されてるうちの一つの商品に釘付けになっていた。
それは大剣・・・しかもまるで炎のように揺らめくような光沢を放つ、フランベルジュ以上に美しい剣だった。
「あ!お客さんも目が肥えてますね、それは『ビッグ・セイジ』といって、あまり見かけられない物なんですよ〜、いかがです?」
「へぇ〜、いいじゃないかこの剣!ちょっと持ってみていいかい?」「どうぞ〜」「よっとぉ・・・ふんっ!んっ!ふんっっ!!」
「わぁ〜・・・かなり力持ちなんですね〜、ウチなんか持ち上げるのも無理ですよ〜」「結構扱いやすいな!買うよ、いくら?」
「えっとぉ・・・実はそれ、お友達から譲り受けた物なんですよ。売ってしまうのもアレなので、ここはお譲りしますよ〜。
 大事に使ってくださいね!」「おうよ、ありがとうな!!」そうして彼は新たな武器を手に、意気揚々と歩き出した。

ラティナはというと、あちこちで行われているストリート・パフォーマンスを鑑賞していた。
ジャグリングやパントマイム、2本のロープを使ったトリッキーな縄跳びにロマによるシュールな漫才など、様々な催し物が
所狭しと繰り広げられていた。ギャラリーも感嘆の声を漏らしたり腹を抱えて笑ったりと、活気に溢れている。
ラティナも退屈しのぎにそれらを見ていたが、すぐにトレスヴァントが戻ってきた。駆け足で来たのか、少し息を荒くしていた。
「悪ぃ、ちょっと遅くなっちまったぜ・・・」「あら、武器替えたん・・・あ!ビッグ・セイジじゃない!!どうしたのそれ!?」
「ちょっと露天やってるビーストテイマーから譲ってもらったんだ。大事に使ってくれ、ってな。いやぁ得しちゃったぜ〜」
「へぇ〜良かったじゃない!・・・あ、そうだ。今度あたしと稽古しようよっ!本気で掛かっていくわよ〜!!」
「おいおい〜、お前に刃を向けるなんてできねぇよ・・・ケガしちまったらどうすんだよ?」「むぅ〜、いいもんっ!!」
せっかくの稽古の誘いを断られたのが悔しいのか、ラティナは頬を膨らませてブンむくれてしまった。

329ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/30(木) 21:28:32 ID:N/AfJeHM0
街を見て回るうちにポータルクリスタルが光り、カープから熊肉10kgがあったとの連絡が入った。
二人は早速、繁華街を抜けて住宅街へと戻り、カープの家を訪ねて彼女から熊肉10kgを受け取った。
「10kgといったら結構重いよ?大丈夫かい?」「あぁ、大丈夫っす。これでも大剣振り回してるんで。」
「へぇ〜、力持ちってのはいいねぇ、男はそうでなくっちゃ!・・・あ、見たところアンタら二人カップルでしょ?」
「あ・・・えと・・そうですぅっ!」顔を真っ赤にしてラティナが慌て気味に答えた。トレスヴァントも二つ返事で
頷き、彼女の額に軽くキスをした。ますます彼女の顔は赤くなり、頭から湯気が立ち込めていた。
「あははっ、お嬢さんもまだまだウブだねぇ〜・・ま、これからも頑張るんだよ。エルフの人達にもよろしく言っといてね!」
「うっす、ありがとうございました!」「あ、ありがとうございますっ//////」

そしてビガプールからフォーリンロード出口へと続く道を、二人は歩いていく。入り口に差し掛かると
何やら人だかりが出来ていた。しかもその殆どが大柄で太った、体臭が明らかにキツい男性ばかり・・・。
彼らの視線の向こうには一人の金髪でツインテールの少女が、マイク片手に野外ライブを行っていた。
「お、ありゃ噂のリトルウィッチ・・・とかいう奴か?」「うわぁ綺麗・・・はじめて見たわ。」
「でも何つーか・・・媚びてる感が否めねぇなアイツ、ああいうの苦手だわ」「ちょっとォ、聞こえてたらマズいわよ?」
「いいっていいって、あんなのよかラティナの方がずぅ〜・・・・・っと可愛いに決まってるじゃん!」
「あゃ・・や、やだっ、トレスヴァントったらぁ・・・恥ずかしいじゃない〜//////」
そんな会話をしながら二人はその場を通り過ぎ、仲間やエルフたちが待つサニー・ガーデンへの帰路を進んでいった。


しかし、さっきのトレスヴァントの発言が思わぬ喜劇を呼ぼうとは誰も予想だにしない・・・。

「・・・あの筋肉男っ、私(わたくし)よりもあんなありふれた女を可愛いだなんて・・・許しませんことよ!!」
ハンカチーフをギリリと噛み締め、嫉妬の炎を燃やすこのリトルウィッチ、名前はエレナ・クレモンティーネ。
彼女はその後、兎に変身した状態でトレスヴァントとラティナの後を尾行していた・・・。

330ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/08/30(木) 21:36:47 ID:N/AfJeHM0
The☆あとがき

はい、前回の続きということでデレデレなラティナとトレスヴァントのデート的なお話でした。
「ラティナの可愛いところ書きまくろう!」みたいなノリで書いたらこんな感じに。
次回は嫉妬に燃えるリトルウィッチのドタバタギャグとシーフのエディの絡みで
言ってみようと思います。ではでは〜

331ryou:2007/08/31(金) 00:50:22 ID:rBmqXhCw0
こんばんは、前スレで駄作を投稿したryouです。
勝手ながら書き溜めていた続きを投下したいと思います。

前作:前スレ>>286-289 >>293 >>304-305
登場人物:
ダヴィ(戦士)
レナ(ランサ)
シド(ウィズ)
ザック(ビショ)
ソフィ(テイマ)

>之神さん
なんだか本当にありそうな話ですね。
思わず笑いがこみ上げてきましたw

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ラティナのデレっぷりがたまりません(*´Д`*)
トレスヴァントが羨ましいですw
続きが楽しみです。

332ryou:2007/08/31(金) 00:51:37 ID:rBmqXhCw0
『家路』

突然の夕立。大粒の雨粒が石畳を激しく叩く。
その音の中に一人の男の走る足音……。
ギーッ、バタン!
「ただいまぁ〜」
男はズッシリと重く濡れたレインコートを脱ぐと、おもむろにそれを振り払った。
木造りの壁と床が水玉模様で満たされる。
「あらま、シドじゃないの!よく帰ってきてくれたわねぇ。」
奥の部屋から足音とともに懐かしい声が響く。
「ただいま母さん。いやぁ、いきなり降り出したんで驚いたよ。」
「あんたなら氷結魔法で夕立なんかちょちょいのちょいじゃないの?」
「馬鹿言わないでくれよ。」
久々に弾ける二人の笑い声。
「さあ早く上がりなさい。風邪引くわよ。」
「ああ。」

ここは魔法都市スマグ。
フランデル大陸東部に位置するゴドム共和国の、その中でも北東部の山間にある小さな町だ。
ここはシドをはじめ、多くのウィザード達のふるさと……。
「疲れたでしょう、体拭いたらゆっくりしてなさい。もうすぐカリンも帰ってくるわ。」
懐かしい椅子に落ち着くと、窓越しにふと街を眺める。夕立はもう止んでしまったようだ。
公共施設や研究所以外は木造の簡素な家が立ち並び、そして木々の緑が目に鮮やかだ。
五年たっても何一つ変わらない、懐かしい風景。
かつては大いに栄えたそうだが、とある事件以来このようにひなびてしまったらしい。
ただそれも祖父の若かった頃の話だからあまり信じられない。
彼は静かで落ち着いた今のこの町が好きだった。

333ryou:2007/08/31(金) 00:53:43 ID:rBmqXhCw0
「ただいま〜。あら、そこにいるのって……もしかしてシド!?どうしたの急に。」
「おっ、姉さんお帰り。」
驚いて目を丸くしている彼女はカリン。シドの姉である。
今はウィザードギルドの依頼を冒険者に伝える仕事をしている。
「しばらくギルドから休暇をもらえたんだ。」
シド達のギルドは一週間ほど前から夏季休業に入っていた。
他のメンバー達もアリアンを離れ、こうして久々に家族との談笑を楽しんでいることだろう。
「そういうことじゃないわよ。何で一人で帰ってくるの?もしかしてお嫁さんまだなの!?」
「あはは、この子は変なところで奥手だからねぇ。」
「からかわないでくれよ……全く。」
普段はギルドメンバー達をからかう立場のシドも、この二人には敵わないらしい。
「父さんの部屋に行ってくるよ。」
木の階段を上がり、書斎に入る。埃臭い部屋の中にズラリと並んだ本、本、本。
「ただいま、父さん。」
だが返事をする者はいない。
シドの父は優秀なウィザードであり、研究者であった。
しかしそんな彼ですら、最期は自らの魔力に翻弄されて、死んだ。

ウィザードは強力な魔力をその手にする。
しかしそれと同時に副作用の如く現れる症状がある。獣化現象だ。
強力な魔力をその身に宿すことで人間としての『境界』が崩れ、野生の力に目覚めてしまう。
獣化して狼男となったウィザードは、魔力の反作用として高い物理攻撃力を得ることが出来る。
だがしかし、万人がその症状、その力を制御できるわけではない。
シドの父は強力な魔力によって発作的に起こる獣化を自ら抑えられなかった。
正気を失い暴走した彼は、自らの家族を襲い、
手にかけようとした瞬間に意識を取り戻し、自分で自分の喉を引き裂いて死んだ。
そしてその息子シドも……強い魔力とともに受け継いだ、発作的に起こる獣化症状に苦しんでいた。
彼はその野生の力を憎んでいた。
シドが帰郷した理由、それは単に故郷が懐かしくなったからではない。
ある男に会うためであった。

334ryou:2007/08/31(金) 00:56:55 ID:rBmqXhCw0
夜が更けてきた。黒々と横たわるハンヒ山脈から少し欠けた半月が覗く。
とある研究室に立ち寄る。奥を覗くと一人の男。彼の名はアドルフ。
シドの魔術学校時代の恩師である。
「今晩は、先生。」
「いらっしゃいシド。久しぶりだね。」
他のウィザードと同じく長髪をした優しそうな中年の男。一見したところ何の変哲もない。
「今夜はいい夜だ。少し夜風に当たろうか。」
アドルフがウィスキーの瓶を片手ににっこり笑う。
……少しひんやりとした夜風が頬をなで、二人の長い髪を揺らす。
「君の親父さんが亡くなって……君がここを出ていってもう五年になるか。
どうだい、ナクリエマのギルドは?」
「毎日が凄く楽しいです。少し危なっかしいですけれど。」
酒を酌み交わしつつ、しばらく二人は他愛のない会話を交わした。
ギルドで経験してきたこと、スマグで起こったこと、懐かしい昔話……。

月が天高く上ってきた。
「体が冷えてきたんでそろそろ部屋に入りませんか?」
寒そうに両の手で二の腕をさすりつつシドが言った。
「いや……もう少し居よう。」
アドルフはじっと静かに月を見つめている。
シドは発作的な身震いを感じ、やや焦った口調で訴える。
「すみません、風邪を引きそうなんで部屋に戻ります……」
「待てシド。」
突然の強い口調。やはりばれていたようだ。
そう、獣化の発作。勿論このことを話しに来たわけだが……
「……うぐっ!」
シドが呻きながら崩れるように地面に跪く。
抑えきれない衝動。犬歯が伸び、体毛が濃くなり、筋肉が隆起しだす。
「ふうむ、やはり随分と不完全だね。」
アドルフがシドの様子を観察して呟く。
たしかに完全に獣と化している部分と人間の面影を残す部分が混じっている。
「せっかくだ、この際完全に力を解放してみなさい!」
意識が朦朧としているシドに強い語気で語りかけ、同時に魔力を送り込んだ。
「うがあぁぁぁぁぁっ!!!」
意識で抑えていた箍がはずれ、完全に獣化したシド。
硬く長い体毛、鋭く延びた犬歯と鉤爪、発達した口吻と耳、立派な狼男である。
「どうだ、意識は残っているか?」
少し心配そうにアドルフが尋ねる。
「……はぁ……はぁ……はい、なんとか。」
野生の肉体から溢れる力と破壊衝動をなんとか抑える。
呼吸のリズムを整え、精神を安定させる。
「良かった。私の魔力もちゃんと効いてるようだね。
どうだい、ちょっとそこの林で私と一戦交えてみないか?」
「は!?」

335ryou:2007/08/31(金) 01:03:38 ID:rBmqXhCw0
月明かりに照らされる林へと入る。
樹々の葉は濃く黒々と茂っているが、木の間隔が広くあいているため視界は悪くない。
「では私も。」
アドルフがカッと目を見開く。体中の魔力を活性化させる。
あっという間に毛が濃くなり、牙と爪が伸び……狼男へと変身してしまった。
「さあかかってきなさい。」
「しかし……魔法は使い慣れてますが狼男で戦うことは初めてなもので。」
不安そうにシドが言う。
「心配するな。本気で来なさい。暴走してもなんとかしてやる。」
毛むくじゃらな胸をドンと叩いてアドルフが言った。
「では……」
本能に任せてシドが突っ込む。流石野性の力である。並の人間にはとうてい敵わない速さ。
それをアドルフはひらりとかわし、鋭い爪で横腹に一撃を加える。僅かに飛び散る鮮血。
なんのこれしきと首元めがけ飛び掛るシドだが、真正面からそれを受け止められ、捻じ伏せられる。
「獣化は生まれついたときから制御出来る者もいる。
だがそうでないものは鍛錬あるのみだ。まずはお前はその体の扱い方に慣れろ。」
軽くシドを蹴飛ばすと、かかってこいと言うかのように手で挑発する。
興奮するシド。脳に、全身の筋肉に熱い血液が巡るのを感じる。
「グオォォォォォォッ!!!」
夜空に向かって鳴り響く咆哮。
理性のふっ飛んだシドがアドルフに猛スピードで喰らいついた。
「それでいい!」
シドの改心の一撃すらもかわし、逆に喉元をくわえ、数メートル先に振り飛ばす。
なおも闘志を失わず立ち上がるシド。その目は蒼く爛々と輝いている。
「流石あの方の息子さんだ……。」
青い瞳の向こうで燃える潜在能力を感じ取り、アドルフは唾を飲み込んだ。

336ryou:2007/08/31(金) 01:10:01 ID:rBmqXhCw0
「上手く避けてくれよ!!」
そう言い放ち、アドルフは強力な魔力を喉元に集中させ、咆哮とともに解き放った。
ズガァァァァァァァァッ!!!
刹那、高温をともなった衝撃波が辺りを襲った。
その衝撃に抗う間もなく遠く吹き飛ばされるシド。
「おい、大丈夫か!?」
体毛を黒焦げにしつつも、なんとかよろよろと立ち上がった。
「今のは一体……」
正気を戻し、後頭部をおさえながら尋ねるシド。
「炎の気を込めた咆哮だ。少々風の気の力も借りてるがね。
本気を出せば半径数十メートルは吹き飛ばせる。
獣化しても私のように鍛錬を積めばこうして魔法も操れるんだよ。
六つの元素の力は常に我々のそばにある。」
そう言ってアドルフは白い錠剤を渡した。
「飲みなさい。過剰な魔力を放散してくれる。」
シドがそれを飲むと次第に獣化は解け、元の姿に戻った。少し髪が焦げていたが。
「君の親父さんは狼の力を嫌っていた。またウィザードに非常に強い誇りを持っていた。
別にそれは構わない。だけれど、自分の内なる力というものは計り知れないものだ。
それを知ろうとせず、目を伏せていたのが彼の決定的な失敗だった。
自分にはどんな力が眠っているのか、これから長い時間をかけてゆっくり見つめていきなさい。
君は優秀だし、時間だって十分にあるからね。」
アドルフが白い牙を光らせて笑った。
「……はい。」

337ryou:2007/08/31(金) 01:15:37 ID:rBmqXhCw0
翌日、シドは父の墓標を訪れた。
汚れた墓石を磨きあげ、アリアンで買ってきた酒を供えた。
「私も父さんのようにウィザードに誇りを持っています。
いつかきっと大ウィザードにでもなってみせますよ。
大丈夫、自分の力、元素の力、いつか見極めてやります。」
シドはふと立ち上がって呪文を唱え始めた。手のひらに魔力が集中する。
その手を高く掲げ、氷結魔法を召喚した。
噴水の如く激しく噴き上がった冷気が、やがて空からゆっくりと舞い落ちる。
そして父の墓石を季節外れの白い雪の華が彩った。
「ちょっと父さんの真似をしてみました。」
クスッと笑うとシドはゆっくりと家路についた。


『家路』完です。
次の作はだいたい出来てるので後日投下します。
しかしレスごとの文章の切り方が難しいです……。

338◇68hJrjtY:2007/08/31(金) 14:00:51 ID:uppkps7U0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ひと波乱が絶えず、毎回何かしら問題が発生するESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説ですが
今回はなんだかのんびりというか恋愛模様が実にまったりしてました(*´д`*)
ラティナさんの可愛さもそうですがトレスヴァントの意外な面なんかも出てたと思いますよ。
しかし上手く行くかと思いきや新キャラ登場と同時に嫉妬ストーカーに遭うとは…(ノ∀`*)
がんばれトレスヴァント、そしてラティナさん(笑)

>ryouさん
ウィザードとウルフマンの境目ってほんとに不思議ですよね。
公式サイトの職業説明以外にもいろいろと想像できそうです。
ryouさんの小説のシドのように、魔力が高まった結果ウルフマンに変身してしまうというのは面白いです。
だからLvの高いWIZさんはウルフスキルを上げてるんだなぁ…(違

339319:2007/09/01(土) 16:43:26 ID:.s8jVrUw0

1>>319
2>>320

感想アリガトウです。
今までは見ているだけでしたが、自分でも書いてみたくなったので、、
身の程しらずながら、書きなぐってみた未熟者ですたい。

なので、初めましてで当たっておりますb

321様のように感想をくれる方がいるおかげで、、
とても励まされます。アリガトウです。
お話の方は後1話だけ続く予定なので、よろしくお願いします。




首、肩、肘、手首。
・・・腰、膝、ふくらはぎ、足首、腱。

上半身から、順に下って下半身。

全身の筋肉をほぐし、体を温める。

ギルドバトル開始、5分前。
フィールドに移動しても、スキルは使用できない、空白の時間帯。
―・・・柔軟をするには、丁度良い。

相変わらず雑談をするメンバー達。
パーティ振り分けの最終確認をする、サマナーの少女。

ビショップを中心に据え、バランス良くパーティを構成する。
最もポピュラーで、最も確実な配分である。

・・・が。

今回のギルドバトル、オレはあえて単独行動。
―遊撃手として、戦闘に参加する事にしていた。

それを告げたとき、サマナーの少女はかなり反対してきた。
そして今も、まめに心配そうな視線をコチラに寄越してくる。

・・・現にオレの力量、ダレかが決めた強さの指標、レベルは大して高くない。
戦場に出ても、幹部クラスの敵に出会えば、瞬殺されかねないレベルだ。

しかし、統率を要とし、団体で動くパーティに所属していると、、
―・・・何と言おうか、“持ち味”ってヤツが出せないのだ。

と。

柔軟を終え、ギルドバトルの開始まで、ほとんど秒読み段階になった時。
耐えかねたかのように、パーティ振り分けを終えたサマナーの少女が、オレの元へと駆け寄ってきていた。

「・・・本当に、大丈夫何ですね・・・?」

何というか、今生の別れを告げるかのような顔で、オレを見上げるサマナーの少女。
・・・ここまで心配されると、逆に傷つくのは、オレがひねくれているからだろうか。

「・・・見てろって。」

良い感じの汗をかき、完全に温まった体。
いつまでも心配そうな顔をしているサマナーの少女をパーティに戻らせ、オレは駆け出した。



直後、ギルド開始、の合図が戦場に鳴り響く。

340名無しさん:2007/09/01(土) 20:11:02 ID:QTAkIGo60
ところどころ表現にリアルさを感じます。
いいですね。続き楽しみに待ってます。

341◇68hJrjtY:2007/09/02(日) 14:51:42 ID:uppkps7U0
>319さん
Gv直前の五分間、あの緊張感が上手く表現されてますね。
ただの狩りでは体験できないこの緊張感と戦いに燃える人がたくさんいるのも分かる気がします。
しかし剣士君、今回はタイマンでしょうか…サマナ嬢では無いですが心配です。
それとも何か策があるのでしょうか。これはまた次回が楽しみになりました。

私はいつの間にか感想を書くのが楽しくなってしまったのでお気になさらず(笑)
とはいえ勘違いしたり的外れしたり勝手に展開予想したり急かしたりいろいろ迷惑かけてますがorz
これは書き手の皆様にも言えますが、小説に対する文法的・国語的な指摘ができず申し訳ありません。

342319:2007/09/02(日) 21:17:11 ID:.s8jVrUw0

340さん、アリガタイお言葉をどうもです。
先輩方の作品を漁ってみると、何だか恥ずかしい気持ちになりますが、、
少しでも良いと思ってくれるなら、これからも読んでやってください。。

68hJrjtY:さん
またまた感想をいただき、本当に感謝です。
前回に続き、具体的に誉めてくれるので、鼻が伸びまくりです。

迷惑なんてありえないッスよ。。
初のオレにわざわざ感想を書いてくれなかったら、多分挫折してました。

前回後1回と言ったのですが、、
思いのほか長くなってしまったので、後一話だけ続きます。申し訳ない。


「・・・・・・。」

モンスターの断末魔。
身の毛もよだつような呪詛を吐きつつ消滅するヤツらの声は、戦場全体に届く。

…普通のギルドなら、そのモンスターの叫び声で場所がわれる為、、
出来る限りモンスターとの交戦は避けるのが、ギルドバトルの定石とされる。

が。

・・・ギルドバトル開始、スキルの使用が解禁された瞬間から。
戦場は思わず耳を塞ぎたくなるような大絶叫に埋め尽くされていた。

一昨日と同じ戦術。

イヤ、戦術と呼べるのかさえ怪しい。

・・・自分達の戦力を信じきっているがゆえの行動。
わざと居場所を知らせ、ゲリラ戦では無く、総力戦を誘っているのだ。

戦場の中で最もひらけた広場で行われる、モンスターの公開処刑。

圧倒的な力量で叩き潰される、エルフ族の戦士達。
美しい緑色の髪の毛を、彼ら自身の体液が色を曇らせる。

―・・・阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

「・・・・・。」

助けるなどという選択は無い。
・・・ただただ、潜む。

ギルドマスター、サマナーの少女は、モンスターと心を通わせる能力を持つ。
この凶行を、罠と知りつつも、必ず現れるはずだった。

『・・・・・・。』

「・・・・・・。」

フと、エルフ族の悲痛の叫びが止む。
敵ギルドの剣を振り下ろす腕が、空中で停止した。

案の定。

広場の西側の入り口、廃墟の影から、サマナーの少女を先頭に、、
ギルドのメンバーがゆっくりとこの処刑場へ足を踏み入れてきていたのだ。

「・・・フッ・・・」

サマナーの少女が、広場のそこかしこに転がるエルフ族の死体を見る。
・・・まるで、自分自身が傷つけられたかのような、痛々しい表情で。

唐突に、敵ギルドのマスターと思わしきウィザードが微笑む。

「・・・罠と知っていても、絶対に現れる。そう思いましたよ。」

手の中の杖をゆっくりと振り、背後のメンバーに合図を送る。
返り血を拭い、隊列を整える敵ギルド。―臨戦態勢らしい。

・・・ギラギラとした敵ギルドの目が、サマナーの少女、そしてその背後の他のメンバー達の視線と交錯する。

「・・・始めましょうか。」

ウィザードの声が一瞬高くなり、紫色の粒子が彼の体を包み込む。
ウルフマン。蓄えた膨大な知識を、筋力に変える恐ろしき魔術。

・・・敵ギルドマスター、ウルフマンの咆哮(ビーストベルセルク)が、交戦開始の合図となった。

343名無しさん:2007/09/03(月) 19:55:04 ID:.SlwqRq60
こんばんは、前スレ888です。
最後の小説を書き込んだ後、続きも書かずに他の方が折角作ってくださったテンプレに手を出したり、時間帯なんて考えずにスレを上げたりしてました。
…本当に何やってんだろう。申し訳ないorz
6月に自宅の回線がやっと直って「やっほう!これで家でネットができるぜ!」などと喜び遊んでいる間、小説のことはほとんど忘れてました。
そして気付けば夏休み中盤…。二ヶ月以上経ったのに何も書いてない!ということを思い出し、書き始めました。
恐らく執筆するスピードは今までで一番速かったと思います。と言っても、他の方々に比べれば恐ろしく遅いですが(汗

書き込む前に、第一話の訂正を二箇所したいと思います。(今更なものばかり…)
先日英単語を調べていて、libertyは不適切かもしれないということが分かりました。
というわけで、liberatingに訂正します。
(libertyは、『解放』というよりは『自由』『権利』の意が強かったようです)
そしてもう一つ、libertyの「L」が小文字になっていました。
実は三点リーダがあっても大文字になるということは知りませんでした。同じく訂正します。
あぁ…英語、もう基本からやり直しですね。
また、同じく第一話に出てきた『復活確率』も調べた結果、Resurrectionとは異なる単語が使われていました。
しかしこちらについては、「スキルはリザレクションって言うんだからこれで正解だろ!」という意見を無理やり突き通していきます。

また長くなってしまいました。毎回毎回ごめんなさいorz

344名無しさん:2007/09/03(月) 19:56:22 ID:.SlwqRq60
赤に満ちた夜

前話 前スレ>>888-899

3:Avengers ?


「相反する天地、我寧静を望まん」

ドクン…ドクン。

「………っ!…」

……………。


数時間前、彼はそれを幾度も繰り返していた。
彼の背中に重く圧し掛かる罪は、彼が天使の力を使う度に締め付けられるように痛んだ。
回数を重ねるごとに確実に薄れていく期待、だがまだゼロにはなっていない。
今度こそ……。今度こそ………。
イメージを鮮明に浮かべるためか、はたまた失敗の失意から逃れようとするためか。彼は目を閉じる。

彼が頭の中に描くイメージは、美しい噴水が描かれた一枚の絵画。
古都を訪れたことがない彼に希望を持たせる記憶のピースはそれ一つだけだった。
細部の色合いまで大切に留められているそれだけが、彼を古都に運ぶヒントだった。

「……………」
目を開いて飛び込んできたのは、先ほどと全く変わりない砂漠。
「はっ…」
また失敗か…。彼は目頭を熱くしながら思う。
心には理不尽ともいえる苛立ち、そして焦り。

端から成功する見込みのない無駄な試みだった。
しかし、成功させたかった。もしかしたら…という気持ちもあったのかもしれない。

人影がないことを確認し、罪を自分の中に隠した。
彼が移動術を断念した時点で、古都まで辿り着く術は徒歩のみに絞られた――。


鬱蒼としたグレートフォレストは、ノームの森とはまた雰囲気が異なる。
生き物や樹木の種類はもちろんだが、この森に踏み入ったときから微量の魔力を感じていた。
この地の土壌から湧き出る魔力、森の木々の持つ魔力――そして何か、この森に棲む生物の魔力。いずれもそれほど強くは感じられない。
しかし彼は普通の人間とは違った。自分を取り巻く微弱な魔力に強い不安とストレスを抱いていたのだ。
それは何故か?
彼にとって、それらの存在は自分を監視する者のように感じられるのだ。
思えばそれは彼が考えていた以上に大きな失敗だったのかもしれない。
身体に触れる魔力ばかりに気を取られ、迫る魔力を察知するタイミングが遅れる。
それは結果的に彼の行動の選択肢を更に狭めていく。

「……………!」
立ち止まり、道の果てを見据える。
今まで感じていたものよりずっと強く、そして激しい魔力の波が彼を飲み込む。
強い…。
その集中は絞られる。

更に彼に接近する魔力、そして殺気。
彼はその魔力の色を知っていた。
相手の特性が分かるということは、初対面の相手との戦闘で有利にはたらく。
その魔力の持ち主が普通の者だったのなら、その理屈は通用するはずだった。

345名無しさん:2007/09/03(月) 19:57:12 ID:.SlwqRq60

いくら相手が強くても関係ない。彼が迫る相手と戦う気は最初からなかった。
逃げ腰な余裕。選択の必要がない余裕。
相手を悟る一瞬前まで、彼自身が気付かないうちに――緊張の裏に余裕が張り巡らされていた。
それが、油断に繋がった。

…ウィザード…?

記憶の中の男の影が彼の腕を掴み、人々の目が彼の足を縛り付ける。唐突に…翼が毟られるような激痛を発する。

………っ!?
……………!!

彼の四肢は急速に感覚を失っていく。
――冷たい。それに…痛い。
彼の翼は疼き、彼自身に襲いかかる。

(!………っ!!)

魔力が、ウィザードが、彼に迫る。

だが、頭ははっきりしていた。
過去の一点に存在する男への憎しみは身体の中で痛みに変わり、苦しみと共に更に深い悲しみとなる。
腕に強い抵抗を感じたが、動いた。
(くそっ…いらないと思ってたけど、買っておけばよかったな。巻物…)
頭の片隅でそれを考える彼、その腕はボロボロのローブではなく背負う荷物に伸びる。
翼を出す時間もない。彼が掴んだのは、杖。
「我、異界へと赴かん」
杖を天高く掲げながら、呟く。彼はその一瞬、異世界への訪問を許される…。


「…奴等がそんな失敗をするでしょうか。罠では――」
「っせぇな、上の命令だって言ってんだろ。もう何言っても遅ぇよ」
間一髪。数秒後、魔力の持ち主が声を上げながら姿を見せる。
すぐにでも逃げ出したい気持ちを抑え、彼は隠れた低木の葉の隙間からその様子を窺った。

一つは先程の魔力。
容姿を確認しなくても判る、身体の底から湧き出しているかのような濃い魔力。
強い魔力が付加されたショルダーパッド、そしてウィザードが持つものとは思えないほど巨大な剣を背負っている男。
その顔には他人を見下す高慢な表情が張り付いている。
背丈が普通の人間を大きく上回るからなのか、それは他の者のそれよりも一層際立って見える。
以上の男の風貌と魔力の色から、ウィザードの魔力を扱う剣士――魔法戦士ではないかと見当がつく。
そして、他のそれほど強くない魔力。
今までは前者がこれを圧していたためはっきりとは分からなかったが、今ではそれがたった一人の青年だったということを知る。
動き易さを重視した服装をしているが、武器はこれといって見当たらない。
バサバサの黒髪を全て後ろに流し、その表情からは緊張を漂わせている。そのせいか、前者の男よりも若々しく見える。

彼らはそれぞれが浮遊するカーペットのようなものに乗り、それが人間の走力では到底及ばない速さでこちらに向かってくる。
しかし、どうやらこの二人の他に人影は無いようだ。
(たった二人か。)
草陰の中で彼は重い荷物を地に降ろし、万一の場合の算段をする。
あの戦士ほどの魔力があれば、自分が残した魔力の痕跡に容易に気付くだろう。
しかし、彼が今いる側――つまり移動した終着点まで悟られるかどうかは、彼には分からなかった。

346名無しさん:2007/09/03(月) 19:57:56 ID:.SlwqRq60

「待った」
彼が魔法を使用した少し手前まで来たとき、長身の戦士が低い声で言った。
それに合わせて彼のカーペットは移動を止め、その動きは風の中に僅かに靡くのみとなる。もう一人の青年のカーペットもそれに倣う。
「オイ。少し前までここに何かいたみたいだぜ?」
…自然と、握った拳に汗が流れる。
逃れる手順を用意していても過去から戻ってくる恐怖は拭えず、無意識のうちに彼の歯は下唇を噛み締める。
「お前に分かる?この風の魔力」
長身の戦士はまるでその魔力に実際に触れているかのように、腕を、手を、指を、ゆっくりと動かす。
意味の無いように思えるその戦士の行動は何故か、彼のいる離れた場所から見ても異様で恐ろしく、彼の中に居座る不快感を煽った。

彼は考える――。
翼を出し、帰還魔法を唱える。それだけで全てが済む。
しかし、自分と相手との距離は僅かしかない。
ここで翼を解放すれば間違いなく魔力が動き、相手にもそれが伝わる。
二対一はもちろん、もし一対一に持ち込めたとしても…勝ち目はない。
こちらは大して強い魔法を使えるわけでもないし、何より自分の正体を知られたくはない。
それはこの土地にいる間安全に過ごすための絶対条件でもある。
…やはり自分から翼を見せることは極力、避けなければ。

小鳥さえも囀りを止めている。その間にも、各々の考えは進む。
「……………」
長身の戦士の問いの後、二人の敵は一切の音を立てず、一切の動きを見せず。まるで死んでいるかのようだった。
二人がその位置に下り立ってからいくらも経過していない時間が、彼には延々と続く嵐のように感じられていることは言うまでもない。
しかしまだ冷静さを保っていた彼にとっても事態は急速に悪化していく。
その手始めは戦士の選び抜いた次の一言だった。
「いるぜ。まだ近くに…」
戦士の声は彼までギリギリ届くか届かないかの小さなものだったが、その一言で彼の動悸は一段と激しくなった。
巻物を想う後悔は先ほどの比ではなくなっていた。
あの男には自分が見えているのではないか――。そんな不安が次々と浮かび上がる。
彼は覗き見ていた隙間から、いつの間にか取り落としていた自分の杖に目を落とした。
幾度も彼を助けてきた登山用の杖。しかしそれは最早彼の目に映ってはいなかった。
(ま…まだ…大丈夫だ。…場所までは……悟られていない…)
激しい緊張で目が霞んでさえいる状態でも、彼は何とか落ち着きを取り戻そうとしていた。
それは、生きるための――生き抜くための――防衛本能のなせる業ともいえるだろう。

「探査、しますか?」
初めて聞く黒髪の青年の声。彼ほどではないにしろ、その色は明らかに緊張に染まっている。
「してもいい。だがこの程度は俺にもできる」
戦士は青年を侮蔑するような視線を向けていった。それは最初から青年に対して期待薄であることを示している。
緊張のせいか、はたまたそのことを悟っているのか。
黒髪の青年は全く表情を変えず返事も返さなかったが、辛うじて了解の合図を送った。二人は静かに目を閉じた。
それは一般的なシーフが扱うある技術と同一のもの、その準備だった。

347名無しさん:2007/09/03(月) 19:58:50 ID:.SlwqRq60

緊張のピークを通り越し、かえって冷静になったくらいだ。
何もない。誰もいない。彼の頭は必死に動いた。
(…それをできるかできないかを考えるのは無駄だ。できていると考えないと対応できない…!)
彼の考えは更に深く及ぶ。
この二人の行動が自分を誘き出すためのものだとは思えない。それに、目を瞑ってから今までに多くの時間を費やしている。
あれが何の意味もないことならリスクが大きすぎる。正体が分からない敵の目の前で自ら光を閉ざすのは、自殺行為。
私の魔力を感じとって、その余裕のため?――可能性はあるが、相手が自分を避けているときにすることではない。
相手が逃げ腰だと分かっているなら、それを逃がす隙を与えるようなことはしないはずだ。
なら、決まりだ…。奴らは本当に私を探査している。
相手はまだ二人とも探査を続けている。それなら、とるべき行動はたった一つだ。
荷物を持つ余裕はない。彼は杖のみを手に取った。
(…我、異界へと赴かん)
彼は杖の動きを最小限に抑え、再び空間移動を行った。

しかし、『この男』がそれを見逃すはずがなかった。
その逃走の瞬間、戦士は風の魔力が生み出されるのをはっきりと感じ取った。戦士は双眼をギラッと見開き、その方向を睨み付けた。
「俺が行く。後から来い。邪魔するんじゃねぇぞ」
戦士は遅れて目を開いた青年に向かって簡潔にそう言うなり、青年の返事も待たずに、一瞬前まで彼が隠れていた低木に飛び込んでいった。

息をつく暇もない。
少しの油断も許されず、彼は戦士の斬撃を躱しながら空間移動を繰り返す。
しかし戦士は比較的重装備であるにも拘らず空間移動に劣らない速さで彼を追い、恐ろしいほどのスピードで大剣を振り回している。
更に戦士は彼の空間移動の終着点を正確に先読みし、そこに現れた彼に容赦なく攻撃を加える。彼はそれを更なる空間移動で回避する。
「…く……ぅ…っ!」
彼は既に詠唱を諦め、腕の動きのみで空間移動を行っている。当然、そのときの移動距離は格段に短くなる。
その上、彼は自分の身体に限界が近づいてきていることが分かっていた。
足は思うように動かず、杖を持つ右腕の動きも若干鈍ってきている。魔力ももう長くは持たないだろう。

「よく諦めねぇな…、誉めてやるよっ!」
今まで沈黙を守りつつ戦っていた中で、戦士が最初に口に出した言葉だ。彼とは反対に、全く疲弊した様子を見せない。
しかし肉体はそうであっても、戦士の精神は無尽蔵ではない。粘り攻撃を躱し続ける彼を前に、戦士はいい加減痺れを切らした。
「…で、逃げんのもその辺にしとけよな…オイ!」
ギリギリと締め付け搾り出すような音。第二声には明晰な苛立ちが見えていた。
その言葉に耳を貸すような者は一人としていないだろう。当然戦士もそれを理解している。
つまりそれは相手への命令ではなく、己の準備に他ならないのだ。
戦士は大剣を背の鞘に収め、彼を見据えたまま詠唱を始めた。
「皎々たる月輪、耿々たる火輪。薄明に太白輝くとき、蕭条たる矮星遂に甦らん」

「………!」
その詠唱を、彼は聞いたことがあった。
全てを焼き尽くす、ウィザード最高峰の魔法。
予想していなかったわけではない。戦士ほどの魔力を持っていれば、それを扱うことは可能だということは分かっていた。
額に嫌な汗が流れる。しかしまだ、彼の頭は冷静だった。
彼は杖の動きのみで魔力を生み出し、それを自分の足元――地表の一点に設置する。それは明らかに空間移動とは異なる技術。
しかし戦士はそれに気付いていない。否、戦士の集中はそれではない一点に絞られていた。
空中には既に、戦士に生み出された小隕石が在った。
一瞬の空白の後、それは動いた。戦士の腕の動きに合わせ、彼を追うように落下していく。
それから逃れるべく、彼は更に前方に空間移動する。しかしその距離では、隕石を避けきれるはずもない…。
隕石は地に直撃、爆発が起こる。
そこに在る全てのものが焼かれ、死に、消されていった。

348名無しさん:2007/09/03(月) 19:59:38 ID:.SlwqRq60

小さな炎は枯れた草木を絡めとり、爆発を終えてもまだ燻り続けている。
「重力増幅で隕石の軌道をほんの少しずらした…ってか?全く…」
戦士は嘲笑うような口調で呟いた。その目線の先には銀髪の青年が立っている。
左の脚、そして左腕から肩、背中にかけて多少の火傷を負ってはいるが、他の部分に怪我や火傷はない。足もまだあるようだ。
「運任せは無理があるぜ。初心者程度の魔法でよく逃げたなァ、てめぇ…」
そう言いながらも戦士は背に負う剣を抜こうとはしなかった。
することといえば、彼の元へゆっくりと歩き、その距離を縮めていくのみ。
「…ゔ……っ」
もはや彼に空間移動をする体力さえ残されていないことを知っているのだろう。
それでも彼は力を込めて杖を構え、すり足で後退りを始める。

…しかし。戦士の頭が僅かに下がる。
「…オイ……」
舌打ちの後に聞こえるその声。
彼の行動は全く逆効果だったと言ってもいいだろう。その往生際の悪さに、戦士の苛立ちは一気に膨れ上がった。
「……い加減…」
握られた拳、戦士の皮製の戦闘用グローブが両手でギシギシと音を立てているようだ。
戦士の歩む速さが上がる。そして、戦士の二つ目の詠唱の速さも――。
「古より天に仕えし精霊よ、我が力贄とし汝の抑えし翼を解き放て。然らば我如何なる風をも従わせてみせよう」

詠唱を終えた一瞬、戦士の背に巨大な翼の残像が浮かび上がった――次の瞬間、そこに戦士の姿はなかった。
目で追うことのできない速さに、彼の足は止まる。
そして次に彼が戦士の姿を捉えるのは自分の眼前に戦士が現れたその一瞬――
彼は咄嗟に杖を前に構えた。それは恐らく本能の業ではない。彼の中の死への恐怖がその腕を動かしたのだろう。
キィン!!
金属同士のぶつかり合う音。しかし剣と杖、硬度の差は歴然としたものだ。
風の魔法で一段と研ぎ澄まされた大剣は彼の登山用の杖を真っ二つに切り裂いた。
「…――!」
彼自身はなんとかそれを回避したがバランスを崩し、地面に仰向けに叩きつけられた。
切られた杖が手から離れ、彼の5、6メートル後方に音を立てて落ち、止まった。
対して戦士は優雅に地面に降り立ち、彼を持ち前のその表情で見下ろした。
彼が起き上がろうとしたときには既に、勝敗は決していた。

「てめぇ、何処のウィザードだ?」
その声には嘲り、そして自分の力が彼に勝ったという優越感が篭っていた。
戦士は彼の喉元に大剣を突きつけ、答えを促した。
だが彼は何も答えない。勝敗は決していたが、まだ逃げる隙を窺っているのだろう。
「しっかし。どっかで見た顔だなぁ…オイ!」
そう言うなり、戦士は喉元に向けていた剣を軽く上に滑らせた。反射的に首を反らせるが、間に合わない。
「っつ…」
痛みに思わず声を漏らす。彼の顎には血の縦一線が引かれていた。
一方その苦痛の音は戦士の更なる満足感を呼び、その苛立ちを和らげた。
「すぐに殺すこたぁねぇよ。どうせ逃げられねぇからな…」
戦士は悦びの色を噛み殺しながら言った。握る大剣を微かに振るわせながら。

それに必死だった戦士は、彼の『それ』を再び見逃した。
彼が何かを狙っている、諦めの悪い表情を。

「いや、できたら今喋ってもらったほうが都合いいけどよ…」
言いながら、戦士は今度は剣を彼の鼻の頭に向けて構えた。
そして剣先が鋭く動き、彼の左の頬を切り裂いた。
今だ!
相手が武器の切り返しを行う直前、この瞬間の僅かな隙を逃す手はない。
彼はありったけの力を右手に込めて剣を弾き、更にそれを火傷のない方の足で蹴り、その反動で自分の後方に落ちていた杖に飛びついた。
「な……!」
このときは流石に戦士も油断していたようだ。
体勢を立てなおして彼に飛び掛ろうとしたときには、彼は既に杖を振り上げていた。
途端に辺りは見る見るうちに濃霧に包まれ、戦士は完全に視界を奪われた。

349名無しさん:2007/09/03(月) 20:00:22 ID:.SlwqRq60


術者がこの場から消えた後、霧はその後を追うようにして晴れていった。
「………!」
彼の逃走劇から数秒も経たないうちに戦士の元へ辿り着いた黒髪の青年。
あの戦士の二度の隕石が召喚された後だ。敵が生きているはずがないと考えていた青年は、その場の状況に呆気にとられた。
(この人が、敵に逃げられた…負けた?)
青年は戦士が敗北を喫したところを見たことがなかった。想像することさえできなかった。
しかし今。剣を打ち捨て、自身も沈みきっている戦士の表情ははっきりと敗北を示していた。

「あの…」
限りなく慎重に、青年は戦士に話しかける。
しかし戦士は完全に青年を無視している。…いや、もしかしたら彼の声が耳に届いていないのかもしれない。
同じように慎重にすっと戦士の正面に回り、青年は膝をついて話を続けた。
「巻物でしょうか?」
それでも戦士の反応はない。青年は更に続けた。
「空間移動ならまだ遠くには行ってないはずです!」
「変身術を使ったということもあり得ます!」
「霧を使うってことはウィザー…」
「うるせぇよ、オイ!少し黙ってやがれ!!」
刺々しい怒鳴り声が響く。一瞬戦士の腕が大剣へ動いた気がして、青年はぎくりとたじろいだ。
しかし顔を上げた戦士の顔は青く、青年に切りかかるような覇気もないように見えた。
「…本隊に連絡しろ。もう無駄だとは思うが、ここら一帯を探索するように言え…。もしかすると、この森の魔力の渦に足止めされてるかもしれねぇ…」
感情を噛み締め疲れ苛立った声が、戦士から発せられた。
「は…はい」
恐々返事をし、青年は本隊へと耳打ちを始めた。

耳打ちを終えた様子を横目に見ると、戦士は青年に向き直った。
「それよりお前、見てねぇのか?あいつの行動を…」
「え?いえ、霧で……」
戦士の目は青年をジロリと睨み付けた。
それだけで十分心臓に悪いが、これ以上自分が無能だと思われるのは嫌だった。
「見ていました!奴の位置を把握しようとしてました!でも霧もあったし…」
しかし戦士はその弁解を全く意に介さず、自分の話を続けた。
「その時点でお前は終わってんだよ…!視界が良くないとこで相手の位置を掴めねぇような奴は五流以下だ、馬鹿!」
「奴は自分のいる位置を晦ます以外に、ある方法で逃げるためにわざわざ霧を出したんだ!分からなかったのか!?」
理不尽だと知りながらも、戦士は煮え切らない怒りを青年にぶつけていた。
その顔には失望と怒りが入り混じり、持ち前の高慢さは歪んで見る影もなく、その顔に無様に映っていた。
青年は恐れた。その戦士の表情を。戦士に食って掛かり無駄に怒りを煽るような勇気を、青年は持ち合わせていなかった。
また、自分の力不足も十分解っていた。それ故戦士の言うことは尤もだと感じていた。
「すみません…」
まるで子どもが大人に謝るような感覚で頭を下げる青年。
その馬鹿正直な態度を、戦士は不可解な表情で見つめていた。が…

「…フゥー……。…まぁいい、座れ」
苛立っていたはずの戦士の口から思いがけない言葉が飛び出した。普段の『この男』からは考えられない言葉だ。
逃げる相手に余計な猶予を与えず追い、それを確実に捕らえる。
そして必要であれば容赦なく殺す。この男はそんな人間だった。
「あの…それよりも…」
青年は戸惑ったが、恐る恐る尋ねる。
「奴…追わなくていいんですか?」
「本隊にやらせてんだろ?俺はもういい。…それより、さっさと座れ」
その一言で、青年の言葉は簡単に一蹴された。
事を理解できないまま、青年は焼け焦げていない部分の草の絨毯の上に座った。
すると戦士は入れ替わりに立ち、身に着けていたショルダーパッドを脱ぎ捨てた。
「馬鹿が相手だ。話が長くなりそうだからな」
そう言いながらどっしりと腰を下ろすとガリガリと頭を掻き、話を始めた。

350名無しさん:2007/09/03(月) 20:02:05 ID:.SlwqRq60

「まず奴が何かの囮だった可能性を考えろ。もしそうなら、予め何か逃げ切る用意をしていたはずだろ?」
ここで戦士は一瞬間を置き、青年を軽く睨みつけた。
「…まぁ、しょうがねえ。俺が奴を捕まえたときに、まだお前は来てなかったしな」
「帰還の巻物で町へ逃げたってことは?」
早速、青年が急き込んで聞いた。
「ねぇよ。奴が巻物を持っていたら、あそこまで追い詰められないうちに使う。分かんねぇかな、お前…」
呆れ半分で質問に答える。青年がまた何か質問しようとしていたが、戦士はそれの内容を分かっていた。
「ああ、どんな場面だったか、ってか?奴が俺に、喉元に剣突きつけられたときだ」
それを聞いて青年は幾度か頷き、なるほどと考え深い顔を見せた。
しかし実際には、その言葉があまり頭に入っていないことを戦士は知っていた。
「つまり奴は自分から、進んで囮の役をやっていたわけじゃない」
「『奴ら』の仲間じゃないってことですか?」
青年は相変わらず急いで質問した。しかし、戦士はすぐに口を開かない。

少しの間青年の在り来たりな表情を退屈そうに眺めていた戦士は、それを軽く鼻で笑いつつ口を開いた。
「…そんな焦んなよ。まだ時間がある」
このとき初めて、戦士は僅かではあるが青年とのこの会話を楽しむような色を見せた。
それは『この男』を尊敬する青年にとって、胸が高鳴るような素晴らしいことだといえる。
おもむろに、戦士は腰に着けた革ケースのようなものからタバコを取り出し、それを口に咥え火をつける。
それをゆっくりと吸い、その味を肺まで送り、また同じようにゆっくりと吐き出す。
戦士にとってのそれは掛け替えのない時間、青年にとってのそれは耐え難い時間だった。

一通りの動作を終えると、戦士はタバコを持ったまま何事もなかったかのように話を続けた。
「そして奴は霧を出してからすぐに杖を捨てた。杖が必要なかったってことさ」
「え…そんなことまで分かったんですか!?やはり探査を――?」
再び口に持っていこうとしたタバコを持つ手が、途中で止まった。戦士は呆れ顔でフッと笑いを漏らした。
焦る青年のその様子が、話の先を聞きたがる子どもの仕草そのままだったのだ。
質問しようとしていた青年は口を噤み、微かに赤面して肩を窄めた。
「ハッ。確かに探査はした。だがな、ウィザードが視力に頼っててどうすんだ?」
タバコを咥えながら、戦士は呆れた表情で頭をカリカリと掻いた。

「奴が霧を出した後、高い音がしたろ?奴のあの杖は金属製の登山杖だ。…聞いてたか?」
そう言いながら、戦士は切り落とした方の杖を顎で指した。
「…あっ!はい、聞こえまし…」
「まぁ、奴は自分の位置からできるだけ離れた位置に投げただろうな。だが俺は、杖の落下位置と地面を跳ねる音から、大体の奴の位置を掴んだ」
問いの答えを待たずに、戦士は話し続けた。そしてまたタバコを吸い、煙をゆっくりと吐いた。
「そして、間違いなくそこに隕石を落としたはずだった…」
言い終えると戦士はため息を吐いた。それはタバコの煙を吐く動作とは全く異なるもの。そうして目を閉じ、あのときの様子を回顧した。
…召喚した隕石は、不発ではなかった。霧で多少威力が弱まったかもしれないが、大した影響があったとは思えない。
何よりも、独特の爆発音が確かに戦士の耳まで届いていた。奴の術のスピードが、俺を上回った。それだけだ…。
記憶が終わると、戦士はゆっくりと目を開いた。
相変わらずの馬鹿面を引っさげている男が目の前にいる。
「分かるか?」
青年を品定めするかのように、戦士はタバコを咥えながら問いかけた。

「見られると都合が悪い、アイテムやウィザードの魔法じゃない帰還魔ほ…」
ブツブツと今聞いたことを反復していた青年、しかし不意にその小声が止まった。
「…まさか……」
おもむろに顔を上げ、それを口にするのも悍ましいとでもいうように小さく口を動かした。
「…天使の…?」
この一言を聞くと、戦士は咥えていたタバコをゆっくりと口から離し、青年を細い目つきで睨みつけながら舌を軽く鳴らした。
それが何を意味するのか青年には分からなかったが、直感的に悟っていた。それは悪くない回答だったということを。
お互いは少しの間黙ったままでいたが、戦士はタバコを指で叩いて灰を落とした後、遂に重々しく口を開いた。

351名無しさん:2007/09/03(月) 20:03:08 ID:.SlwqRq60

「ああ、奴が杖を投げた後、ビショップが翼を解放するときの魔力を感じた」
憎々しげな目つきで青年を見る。戦士は不機嫌そうに言い、それからタバコを一度だけ大きく吹かした。
「奴が霧を出したのは俺の視界を奪うためで、もしかすると翼の解放と帰還魔法を目撃させないためってのもあるかもしれねぇ」
「だが後者はどうだかな…。俺のミスだが、最初に魔力を感じ取れるのをバラしちまったし。奴も余裕がなかったんだろ」
戦士はそれを補足するように付け加えた。
いくら鈍い青年でも、そこまで分かればその人物を当てるのは容易い。
顔を知らない者はいても、その名を知らない者は大陸中にいない。そう言いきっても間違いではないだろう。
青年は今まで以上に真剣な顔つきになり、一度唾を飲み込んだ後、一言。

「…リバーグルフ?」

それに対して戦士は再び舌を鳴らし、青年を鋭い目つきで見た。
「…当たりだ。正確にはガキの方だけどな…」
戦士はタバコの火をむき出しの地面に押し付けて消し、ため息を吐く。そして立ち上がり、ショルダーパットを着直した。
「奴だったことは間違いねぇ。だが奴らに丸め込まれたかどうかは分かんねぇな」
大剣を背の鞘に戻した後、タバコを取り出した革のケースから何か小さい水晶のような球体を取り出しながら続けた。
「それから、この一件はお前の活躍だって報告しとけ。俺にはこれ以上の手柄は必要ねぇからな」
軽い嫌味も言い終えて、その球体に向けて一言二言呟くと、最初に彼らが乗っていたカーペットが戦士の目の前に召喚された。
「この寄り道も無駄じゃなかったな、お前…」
青年が立ち上がるのを見ながら、戦士はそれに向けて一言呟いた。

戦士はそれから振り向きもせずにカーペットに乗り、青年を待つことなく先に行ってしまった。
しかし青年の足は止まったままだった。
と言っても、自分をアピールするために早速本隊の仲間に耳打ちをしているわけではない。
フランデル大陸極東のこの地に現れた、名の知れた新たな『灰色』、そして最近の『奴ら』の動きへの懸念。
そして戦いの中の力だけではない、改めて戦士の、『この男』の恐ろしさを噛み締めていたのだ。


黒髪の青年は知っていた。
才気も実力もずば抜けている『この男』が何故、今回の任務で先遣隊を務めているのかということを。

「お前、強ぇの?」
この人は出発する間際、俺に向かってそう聞いた。
そして俺はそれを肯定することはできなかった。
魔法と武術のどちらも落ちこぼれた俺の憧れ、それがこの人だった。
この人は部隊で常にトップを走り、他を寄せ付けないセンス、そしてそれを活かした技術を持っていた。
そして、それほどまでの力量を秘めるこの人が突然、先遣隊に回ると言い出したことに驚きを隠せなかった。
そのとき場の雰囲気が変わったのは火を見るよりも明らかだった。
ただでさえ手ごわい相手、しかも性格の悪い実力者が入る。他に希望者がでるとは思えなかった。
しかしそんな空気の中でも、俺の意思は止まらなかった。
この人と任務をこなしてみたい…。この人の戦いを傍で見てみたい…。
胸の高鳴りは止まることを知らなかった。
気付いたときには、俺の腕は、真っ直ぐ天井に向かって伸びていた。

結局、先遣隊はこの人と俺の二人だけになった。そもそも他の者は今回の任務に参加することさえ避けていた。
集会が終わった後、この人は俺に話しかけてくれた。
「オイ、お前。俺の後に手ぇ上げた勇気は誉めてやる…けどな、今回は『相手』が悪すぎるぜ?」
思えばあのとき、この人は明らかに実力のなさそうな俺を嘲笑いに来たのだろう。
そんなことはどうでもよかった。ただただ、感動するしかなかった。
…まぁ、そのときは感動する余裕も無く、まともな返事さえできなかったが。

そして今日になり、任務が実行された。
俺はこの日までずっと疑問に思っていたことを、遂にこの人に聞いてみた。
「何故あなたのような人が先遣隊なんかに申し出たんですか?」
それに対して、この人は回答を強く拒んだ。
「…お前の知ったこっちゃねぇだろ」
しかし、それでは納得できない。しつこく幾度も質問すると怒り、俺は殴られ蹴られたりもした。
だが諦めずに粘り強く聞き続けると、最後には苛立ちを越えて呆れながらも教えてくれた。
「俺の昔のコードネームが、今回俺を先遣隊に追いやったんだよ」
更に俺が頼むと突然頬を殴られたが、今度は渋々答えてくれた。
…名乗ったのだ。この人が普通の隊員だったころのコードネームを、その口で。

“Avn-127”


‘The 127th avenger’(127番目の復讐者)と――。

352名無しさん:2007/09/03(月) 20:04:09 ID:.SlwqRq60
今回からシリアスっぽい内容が続きそうです。
まともな戦闘シーンは初めてでしたが、理屈っぽい部分が目立ってしまっているかもしれません。
書くとなると思った以上に難しかったです。
分かりづらい部分など、あればドンドン突っ込みを入れてください。


参考にしていただけるようなことは書けませんが、自分も感想を…

>◇68hJrjtYさん
前回は感想をありがとうございます。
◇68hJrjtYさんの感想は、こちらが見て欲しい場面のことを書いてくれてとても嬉しいです。
書き手も読者の方々の感想は力になります。これからもよろしくお願いします。

>ウルさん
WIZとランサーの組み合わせの診療所、斬新でした。
最初はWIZが軽くてランサーは常識的な感じでしたが、中盤でランサーがキレてWIZが冷静になる場面で両者の味が一気に引き立ったと思います。
まだ出てないキャラの続編を是非お願いしたいです。
>>298さんの書き込みをみて、これから偏見とイメージを書くスレPart5まで行ってきます。

>ドギーマンさん
連載物なのにここだけの感想で申し訳ないのですが、本当に面白かったです。
自分が書く物語はテンポが悪くて進むのが遅いためどうしても長くなってしまうので、ドギーマンさんのテンポの良さと文章の魅力は憧れです。
また、悪であるキャラの書き方がとても上手いと思いました。見習わせていただきます。
先ずは今週中に作品を読み返していこうと思います。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
すみません、同じくここだけの感想です。前に執筆された作品も確認しておきます。
この文の勢いは自分にはないものです。こういうのが書けるようになりたいなぁ…。
キャラの縺れ合う恋愛関係がどういう方向に向かっていくのか、やはりこのまま終わる気はさせてくれません。
密かに次回のリトルの活躍に期待してます。

>之神さん
長編(かな?)の方では、なんだか自分を見ているような作品でとても共感が持てました。
「下手に出し惜しみする俺の性格が憎い。」
これ凄く分かります…。下手に出し惜しんで結局損する自分。…自己嫌悪orz
気分の良い終わり方はとても良かったです。自分もまたインしてみようかな…って思えました。
短編では素直に笑わせてもらいました。
自分は面白系が苦手なので、軽くこういう話が書けるのは素晴らしいと思います。
こっそり参考にさせていただきます。

>LunaY94M0さん
天然娘っていいなぁ〜…じゃなくて。
自分の視点からでは考えられないようなことをしてくれますから、一緒にいても退屈しないですよね、天然の人。
ただ、一緒にいたらどうしても振り回されそうですが。●月×日の話はまさにそれですね。
自分もこういうキャラが書けるようになるよう、精進します。

>>317さん
攻城戦は自分も未体験なんですが、この物語を読んで中々分かった気がします。
いくつか出てきた専門用語は他のサイトで調べてみようと思います。
その場の状況をリアルに掴むことができ、面白いところで続く…。この終わらせ方は上手いです。
地道なイメージがある武道家は好きなので、何としても突破できるよう応援したいです。

>>319さん
一瞬である中で色々な出来事を見ている最初の場面は印象的でした。
それと、主人公の職が少し気になりました。単独行動が持ち味で相手がサマナーってことは、やっぱり武道家でしょうか?(思い込みの決め手は後者です)
これは恋模様…そして、同じ相手にリベンジなるか!?
負けて慰められて両思いに――という展開も…。想像(妄想?)が膨らみます。

>ryouさん
とても面白く、全体的にまとまっていて読みやすかったです。
自分も今それに似た話を書いているので、獣化の話はとても勉強になります。
スマグのウィザードの家庭での人間らしい一面が綺麗に書かれていて、その反面獣化した者同士の戦いは格好よかったです。
これまでの話、読ませていただきます。


それではまた。今度は早めに書くつもりです(汗

353ryou:2007/09/03(月) 22:37:46 ID:C0b6ByIo0
>319さん
モンスターを殺してサマナさんをおびき寄せるとは・・・相手マスターさん結構怖いですね。
モンスの声が聞こえるってことは狩りとかなんだか辛そう。
単独行動に出た剣士さんの動きがすごい気になります。

>前スレ888さん
面白くて一気に読んでしまいました。
『灰色』とか『奴ら』とか真相がすごく気になります。
天使さんも戦士さんもスキルの使い方がかっこいいですね。
頭脳派というか・・・グラビディ?でメテオをかわすところは特に。
続きが楽しみです。

354◇68hJrjtY:2007/09/03(月) 23:46:46 ID:uppkps7U0
>352さん
お久しぶりな灰色こと天使君のお話にすっかり魅入ってしまいました。
彼は前作のエリス・H=カティナ君ということで良いのでしょうか?間違っていたらすみませんorz
戦闘シーンですが、激戦というわけではなく心の内面を探りあうような静かな戦いでしたね。
双方のがぶつかった瞬間など、読み応えがありました。
戦士の行使する隕石魔法など意外な展開も面白かったです。
各キャラの名前が即座に明らかにされないのもまた良い味出てますね。
戦士の二つ名である「127番目の復讐者」というものが何を意味しているのか…。今後の展開も含めて続きお待ちしています。

しかし、感想に感想をいただけるとは(つд⊂) なんだかとっても嬉しいです。
今後も皆様の小説の感想、書かせてもらいます!

355之神:2007/09/04(火) 19:51:16 ID:C7QolO8k0
また書いてみました。
AFK


俺はいつものように古都を歩いていた。
ウザぃ程の数の露店、絶え間ない叫び、まぁにぎやかでいいんだけどな。
俺はウィザードなんだけど・・・みんなと違って隕石落としたり、雷落としたり、水で壁作ったりと、
そんな魔法的な事は何も出来ないんだよね・・・。
そんな俺なのにちゃっかりギルドマスターだなんて・・・自分でもオカシイと思うよ、うん。
さて、ギルドと言っても戦ったりはしないのね、ウチは。
んじゃ何をしているか・・・
簡単に言えばなんでも屋。
仕事内容はイロイロで、町タクシーから本格的な事件まで・・・。中には、冒険者がやってくれないからとウチに
クエストを依頼してくる人もいる。難しいクエストなのがほとんどなのね・・・。

そんなウチにまた依頼が来た。
内容は以下の通り 「最近古都、狩場問わず’魂の抜けた人間がいる。その大半は冒険者であり、そして魂が抜ける前に
     必ずこう言うのだそうだ。『AFK』 それを口にした後は泡を吹いて反応が無くなるそうだ。
     そして最近には露店業を営む者も泡を吹いて意識がなくなるらしい。
     どうか貴方のギルドにこの問題の原因を解いて欲しい。」
確かに・・・・俺も気になっていた事の一つだ。俺は急いで了解、と返事を書いた。

とりあえずメンバーをかき集めた。天使のジャン、悪魔のアビスが来てくれた。
J「んで内容は・・・?」
俺は先ほどの手紙の内容をそのまま答えた。
A「へぇ・・・そんな大事を私たちに?」
J「確かにな」
「まぁそう言うな、依頼は依頼だ。」
J・A「はいはい」
正直俺も思っていたが・・・何でこんな事をウチに・・・と。
まぁこんな内容でも無いと話が盛り上がらないからヨシとするが・・・
こうして俺たちはまず街で現状を見ることにした。

356之神:2007/09/04(火) 20:38:00 ID:C7QolO8k0
AFKその? 
?→>>355

到着して俺らは露店を一軒づつ見ていくことにした。
なるほど、確かにみんな泡吹いてやがる・・・
見事なまでに一等地から過疎地まで、どの露店営業者も泡を吹いて座っていた。
J「ハハ、確かにこれは魂抜けてますね。話しかけても返事はおろか、動きも何も無いよ。」
A「でもアタシも露店してる時の記憶は確かに無いわねぇ。寝てる、とは違うんだけどなぁ・・・。」
「ほぉ。アビス、お前露店なんかしてるのか。」
A「アラ、知らなかった?楽しいモノたくさん売ってるのよ?私」
J「え・・・楽しいのってあの鞭とか蝋燭の事なんですか・・・?」
A「そうよ。フフフフフ・・・・・」
おぃ、一体お前はどんなシュミだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・興奮なんかしてないんだからねっ
冗談はおいておこう。
確かに古都では魂の抜けた者が多い。
天使のジャンにお願いして他の要の都市にも行ってみたが・・・
どの者も決まって泡を吹き座っていた。
J「気味が悪いな。なんでみんな・・・」
「だが、死んではいないだろう?アビス」
A「ええ。でも本当に意識が無い・・・」
そんなこんな話していると、近くの露店が閉じた。
さっきまで泡を吹いていた者だ。いろいろと聞いてみることにした。
「あの・・・少し聞きたいことがあるのですが」
商人「ん?何?」
「さっきまで泡を吹いて反応も無かったのですが、何か覚えていることは?」
商人「んー。何も覚えていないね。露店をするといつもこうなのよ。」
「魂が抜けるという事件が多発しておりまして・・・」
商人「それでですか。私たち商人にはこれは前からあった事ですからねぇ。別に体には何も影響ありませんよ?」
「そうですか。ありがとうございます。」
商人はそのままどこかへ消えていった・・・
「どう思う?」
A「んー。別に問題ないなら答え見つけなくてもいいんじゃない?」
「これは依頼だ、仕方ないだろう。」
J「ま、とりあえず狩場にも見学がてら調査しに行きましょうか。」

さて、やってきたのはご存知廃坑B9、怪人コロッサスの生息する場所である。
ジャンは移動に関してはまったく困らない、移動特化天使である。・・・故にタクシーの依頼も多いわけだが。
ここでの調査場所は2箇所。入り口の叫び場と狩場である。
・・・・なのだが。入り口では既に魂の抜けた者が何名かいた。
J「おいおい。これじゃ露店と同じじゃないか。」
「むぅ。狩場へ行ってみるか。」
言い遅れたが、悪魔のアビスは何やら『夜の稼業』があるらしく、さきに調査から抜けていた。
ま、なんとなく想像は出来るが・・・。
さて狩場に付くなり、例のあの言葉が出てきた。
☆「AFK」
J 「待ってっ!」
しかし既に遅かった。
ここの狩りPTでは何事も無かったかのように狩りを続行していた。驚かないのか・・・?
「あの、質問がいくつかあるのですが」
PTのリーダーらしき人物が質問に答えてくれた。
★「はい、どーぞ」
 「まず、☆さんがあの状態なのに何も思わないんですか?」
★「ええ、あれは普段からよくありますよ。もう当然みたいにありますが、たまに帰ってこないで
  そのままの人もいますね。」
 「なるほど。AFKと発言したあと、自分の意識で泡を吹くんですか?」
★「いえ、我々戦う冒険家は、トイレと同じでAFKをしてしまいます。自分でも何なのかワカランですが。」
「ふむ。何かAFKについて知っている事はありますか?」
★「AFKの意味なら聞いた事があります。AFK=Away From Keyboard と言うらしいです。」
 「キーボードから離れています・・・・?キーボードって?」
★「それは知りませんね。どこの国のアイテムでしょうか・・・」
 「ありがとうございました。」
★「いえいえ、調査も頑張ってくださいね!」
また謎が増えてしまった。キーボードって何だろう・・・
 「キーボード知ってるか?」
J 「知らないねぇ。なんの道具だろうね。」
 「とりあえず今日はこれで終わりにするか。お疲れ様。移動役ありがとな」
J 「あい、いつでも使ってくだせぇ。また今度会いましょう。」
こうして今日の調査は終了した

357之神:2007/09/04(火) 21:19:51 ID:C7QolO8k0
AFK? 
?→>>355 ?→>>356

さて、調査も行き詰ってしまった。キーボード、AFK、謎の泡。
まったくもぅ、ワケワカランゎ!・・・・だが、依頼を今更断るワケにもいかない。
まずはキーボードと言うモノを調べる事にした。

街での聞き込みを始めたが、まったくもってコレといったものは無かった。
そんな時、ある冒険家が
「キーボードのAにな、・・・・・・・」
ん!キーボードっ!コレは聞くしかないと、その人物に詳しく聞いてみることにした。
「教えてもらえますか?キーボードについて」
冒険家「え?キーボードについてって、一体何を話せばいいのです?」
「うむ、まずキーボードとは何か説明してくれないか?」
冒険家「わかりました。キーボードとは私たちとは違う世界の人類が開発したパソコンの・・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんだなんだ?パソコン?違う世界?」
冒険家「ああ。アナタも知らないんですね、他の世界。」
「教えてくれないか?詳しく」
冒険家「まず、これから言うことは信じられないかもしれませんが、これは事実です。
    それでもちゃんと聞いてくれますか?」
「ああ。」
冒険家「まず私達は、・・・簡単に言えば操り人形なのです。当然操り人形には操り主がいますね。
    それと同じで、私達とは違うもっと高度な文明が作ったパソコンなる物で、私達を使って遊んでいるのです。
    私達にとって無意識ですが、操り主の意思が私達に関係しています。」
「つまり俺らはその文明の作ったオモチャなのか・・・?」
冒険家「そうです。オモチャとは向こうの世界では言いません。ゲームと言います。」
「それじゃあAFKってのはなんだ?」
冒険家「操り主がいない状態、つまり魂が抜けた状態です。操り主の都合で遊びが中断される時の合言葉なのでしょう。
    これで、いいですか?」
「そうか・・・。最後に一ついいか?」
冒険家「はい?」
「アナタ一体何者?」
冒険家「操り主に捨てられた人形とでも、言っておきますね。」
「え・・・」
冒険家「ではまた会いましょう」
「待っ・・・」
もう彼はいなかった。しかし・・・自分が操られている人形に等しきもので、さらに別世界の娯楽のコマとは・・・
こんな不愉快なことは無い。それじゃあ俺の記憶はすべて作られたのか・・・?
もうワケがワカラン。こんな依頼受けなければ知らなくて済んだかもな・・・。

こうして俺は依頼者に報告した。当然信じてもらえなかったし、報酬も貰えなかった。
ああ、無駄走りした上、知らなくて良かった事も知っちまった。なんか憂鬱だ。
しかし、俺はや友達は一体なんなんだろうか・・・。
この間の冒険家が言うにはデータ、と言うらしいが・・・。もうこれ以上知ったら狂っちまうな俺。
こんな事は哲学者にでも任せておけばいいか・・・。

こうしてみんなに話せているってことは、操り主もこれに飽きたワケでも無いようだな。
だが、この操り主がこの世界を、いや、俺を見捨てれば、俺は一体どうなるんだか。
あのいつかの冒険家みたいになるのか、それとも・・・・
俺はこんなことを考えてるウチに、任せておけばいいと言っておきながら自分でその道へ進んだ。
俺の論文はオカルト集団や変な宗教団体から文句が殺到したが、新しい考えとして今後の考察の一部になるらしい。
まぁ、あの冒険家のおかげなんだけどな、実際は。

俺が操り主を失っても、あの冒険家のようになれると自分は信じてる。いや、そう信じたいだけなのだが。
だから、簡単に俺を捨てないでくれよ、たとえそのデータと言う情報だけの存在だとしても。あ、ちょっと、
AFKしますね。



はい、おしまい。なんか簡単にキャラ消す人多いし、引退とかしちゃう人もいますよね。
そんな事をこの話で書いてみました。まぁ、文や内容のまとまりの無さは気にしないでください、はい。
それと、こんな物語や短編に感想を言ってくれる方、ありがとうございます。
これからもこんな之神の文をよろしくお願いします。

358◇68hJrjtY:2007/09/04(火) 23:31:37 ID:uppkps7U0
>之神さん
なにやらMMRのようなノリ(?)の話に仕立ててあってそういう面でも面白く読めました。
今回も之神さん独特の題材といいますか。でも実際問題、AFKって怖いものですね。魂が抜ける…。
色んな職をやっては消してしまい、さらに今現在も露店AFKしながらここを覗いている自分には人事には思えず(汗)

どんなキャラでも愛情持って育ててあげたいものですよね。
そして露店放置は仕方ないとしても、単純に放置するならばログアウトをするように心がけます(ノ∀`)

359ryou:2007/09/05(水) 01:32:56 ID:C0b6ByIo0
>之神さん
視点がすごい独特ですね。
たしかにキャラクター側から見るとプレイヤーの行動は謎だらけですねw
操り主に捨てられたキャラクターはどうなっちゃうんでしょうね。
NPCとかはそういう存在?とか思ったり。(昔剣士だったおじさんとかw)

さて続編を投下したいと思います。
※前作>>332-337

360ryou:2007/09/05(水) 01:35:06 ID:C0b6ByIo0
『記憶』

タバコをふかす一人の戦士が、とある施設の門の前に立っている。
戦士の背にはボロ布にくるまれた大きな斧、門の向こうでは沢山の子供たちが遊びまわっている。
「お前何者だ!?」
戦士を見つけた守衛が怒鳴りつける。だが戦士は答えない。
吸殻を踏みつけて火を消すと、施設の中へズカズカと歩を進めてゆく。
「おい、待て!!」
大股で歩いて戦士は建物の中へと姿を消した。
「こんにちは、お邪魔します。園長先生ですね。」
「ひっ!……あなたは?」
「おっと失礼、昔ここでお世話になったものです。ダヴィと申します。
あ、これお菓子。みんなで分けてください。」
「あ、どうも……。」

ここは古都ブルンネンシュティグの郊外にある孤児院。ダヴィは少年時代をここで過ごした。
そしてここで、とある人に出会った。
「それにしても懐かしい。ここを出てもう十七年だったか。
まだあの頃の面影も残っているな。」
「ええ、長いこと改築もしていないんです。ここも随分と古くなってしまいましたわ。」
「そうだ、園長先生ならご存知かもしれない。
師匠……いや、ブルンギルド連盟員のアリシア・フォスターという女性が何処にいるかご存知ですか?」
「ギルド連盟員のアリシア……えっ、まさかあなた、聞いていないのね。あの人は───」
「えっ?」
二人は孤児院からやや離れたとある施設へとやってきた。
受付の女性に園長が尋ねる。
「アリシアさんは50号室にいらっしゃいます。」
殺風景な廊下。消毒液の匂いがかすかに漂う。
建物の一番奥にある部屋のドアを開けると、ベッドで一人の女性が寝息を立てていた。
「……師匠。」
少しやつれ、目元や首筋に細かなしわが目立つ。
だがすらりと伸びた鼻筋に切れ長の目。かなりの美人のようだ。
彼女がダヴィの師匠、アリシアだった。

361ryou:2007/09/05(水) 01:37:10 ID:C0b6ByIo0
ダヴィが孤児院にいた当時、アリシアはブルンネンシュティグのギルド連盟から依頼され、
冒険者として活躍できそうな人材を引き抜きにたびたび孤児院を訪れた。
そのときに孤児院でリーダー格だった当時15歳のダヴィ他数名の子供たちをスカウトした。
彼らにとっては優しくも厳しい師匠であったが、巷では彼女は別の名で知られていた。
それは『龍の瞳のアリシア』。
冷酷な氷のような瞳をした彼女は、強力な魔物や敵対する人間を容赦なく切り捨てる凄腕の女戦士だった。
男ですら扱うのに苦労する大斧も軽々と振るうほどだったが、
普段は軽くて細身の大剣を愛用していた。
威力に欠ける細身の剣であっても、神速ともいえる斬撃で全ての敵を八つ裂きにした。
そして彼女の召喚する水龍は他者のそれとは一線を画し、
周囲の全てを飲み込むほどの恐ろしく、そして何より美しい技だった。
ダヴィはいまだに彼女を超える水龍の使い手を知らない。

362ryou:2007/09/05(水) 01:44:21 ID:C0b6ByIo0
ダヴィが過去の思い出に浸っていると、アリシアが目を覚ましたようだ。
「目が覚めたようですね、調子はいかがですか?師匠。俺のこと覚えていますか?」
ダヴィが少しはにかんだような表情で語りかける……が。
「おじさん、だあれ?」
「えっ?」
「あ、わかった!今日はお花畑につれてってくれるんでしょ?いん長先生がいってた!」
「……!?」
あまりの衝撃に言葉が出なくなる。これは一体どういうことだ。
「アリシアさんはもう……あなたの知っている方ではありません。
痴呆の一種だそうで、精神が幼児化してしまっているのです。」
園長は驚き打ち震えるダヴィから思わず目をそらした。
「アリシアさんのお知り合いの方ですね。ちょっとこちらへ……」
医師がやってきた。
「……ああ、あとで連れて行ってあげるよ。じゃあね、アリシアちゃん。」
「うん!まってる!」
無理やりに笑顔を作って話を済ませ、『少女』の元を離れる。
「あの、師匠は……」
「ええ、彼女の記憶は幼少期を残してもうほとんど失われています。
大人の精神状態に戻ることは滅多にありません。
ところで……あなたは彼女に師事していたんですね。
彼女の知り合いが見舞いにくることは殆どないんですよ。
ここに入院することは僅かな人にしか話さなかったようで。」
医師は哀れむように彼女の部屋の方向を見つめた。
「そんな……俺にはなんの知らせも来なかった……どういうことなんだ!?」
動揺する姿を見て困惑する医師の様子に気づいたダヴィ。
「あっ……あの先生、師匠はこれからどうなってしまうんですか?」
「いずれは自分の名前も忘れてしまいます。場合によっては言葉すらも。
それに命ももう長くはありません。もってあと数年……。」
「あと数年だと!?」
アリシアはダヴィとは十歳程度しか歳は離れていない。
それなのにあと数年の命しか残されていないという。あまりに信じがたいことだった。

363ryou:2007/09/05(水) 01:48:53 ID:C0b6ByIo0
ダヴィは療養所を出ると、孤児院の園長に礼と別れを言ってとある場所へと足を運んだ。
ブルンネンシュティグのギルド員用寮。ここでアリシアは暮らしていたらしい。
管理人から鍵を借りてドアを開ける。蒸し暑い空気の塊があふれ出す。
「私の教え子が来ても、部屋のありかは教えないでほしい。」
記憶を失う前に彼女はそう言っていたという。
ギルド連盟の幹部を半殺しにしてようやくここを聞き出せた。
部屋の中は綺麗に整頓されている。生活感は残っていない。
部屋の奥に一本の剣が立てかけられていた。
やや細身の、街の何処ででも手に入る長剣、ツヴァイハンダーか。
刀身は傷だらけ、だが刃先は良く研ぎ込まれている。
柄に巻かれた布には手垢が黒々と染み込み、
鍔には殆ど消えかけているが龍の絵のエッチングが施されている。
安物の刀身は戦いのたびに挿げ替えるので鍔に自分のものである印をつけていたのだろう。
おもむろに片手で手に取り、振ってみる。
軽い……でもとても重い……
失われたはずの彼女の記憶がこの剣にこびりついているようだった。
いつの間にか、柄を握る手のひらには汗が滲んでいた。
しばらくの間その剣を眺めていたダヴィだったが、結局元の場所に立てかけて部屋を出た。

364ryou:2007/09/05(水) 01:51:50 ID:C0b6ByIo0
安宿に戻ると、汗も流さないままベッドに身を預けた。
ふと過去の思い出が蘇る。
それはダヴィがアリシアの元から独立するときのこと。
ダヴィは彼女に自分の抱いていた気持ちを告げた。それは弟子としてではなく、男としてのそれ。
彼女は、「私と君とでは歳も、過ぎ行く時の流れも違いすぎる」と言って断った。
真意を尋ねてもうやむやにされてしまったが、その意味が今になって少し分かった気がした。
多くの敵を作りながら生きる彼女は、自分の命がそう長くないことを予感していた。
そして事実、別の形ながら彼女はあまりにも速いスピードで人生のゴールへと突き進んでいる。
記憶という名の砂像は、時間という名の風によってゆっくりと浸食されてゆく。
自身の記憶を亡くし、生活の痕跡を閉ざし、身を隠すように日々を送るアリシア。
ダヴィの中の自分の記憶が時間の風に流されてゆくことをも彼女は望んでいるのだろうか。

何も無い空間、そこでアリシアの砂像が時の風に削られてゆく。
だが彼女の風下に立つ俺の砂像の足元の吹き溜まりにその砂が堆積している。
そしてさらにその風下に……あいつの砂像が立っている。
俺も時の風に流されるまま生きてゆくのだろうか。

そんなことを考えながら、ダヴィは眠れぬ夜を過ごした。

365ryou:2007/09/05(水) 01:54:55 ID:C0b6ByIo0
『記憶』完です。
続編はまた後日投下いたします。
またヘンな区切り方になってしまった……。

366◇68hJrjtY:2007/09/05(水) 19:51:41 ID:MJrYUX160
>ryouさん
秀麗な女戦士、そして彼女に心を奪われつつも師事していた若い戦士のほろ苦いラブストーリー。
しかしそれだけでは括れないもっと大きな意味を残したままの前編、読ませてもらいました。
例えその人物が記憶を失って自分を覚えていなくても、他人同士という関係になることは有り得ませんよね。
だからこそ辛くて悲しい思いをしなければならないのですが…。
大剣を持ったダヴィの「軽い……でもとても重い……」という一言が心に残りました。
後編の方もお待ちしています。

367319:2007/09/05(水) 21:06:12 ID:.s8jVrUw0

サマナーの少女の幼い瞳に、底知れぬ怒りの紅が宿る。
先ほどまでの少女と同一人物とは思えぬほどに強く、鋭い光。

その視線はウルフマンを刺し貫き、その場にいる敵、さらに味方でさえ凍りつかせる。

傍らに佇む二体の召喚獣は、彼女の気持ちの高ぶりに呼応し、すでに人型への変身を遂げている。
―圧倒的な存在感。彼らから伝わる力量。

前のギルドバトルからの経験もあるだろうが、敵ギルドのメンバー達は、むしろ本能で理解していた。
・・・彼女を、サマナーの少女を止める事が出来るのは、自分たちの中に一人しかいないコトを。

重そうな鎧を着込んだ鈍重なビショップの大男でさえ、俊敏な動きで道を開けた。
・・・敵方奥から、まるで注目を楽しむかのようにゆっくりと進み出る、一人の剣士。

口の端を吊り上げ、・・・この場で唯一、余裕だとでも言わんばかりの微笑みを見せつつ。

―・・・しかし、微塵の隙も油断も見せない。


瞬きのように光り輝く、反り身の剣。
全身を覆い尽くせそうなほど巨大な盾。


誰一人として、声を上げる者も無く。
身動き一つさえ、しない。
その場の全員が、サマナーの少女と、剣士の男、二人の人間しか見ていなかった。


ほとんど成人の頭部ほどもありそうな巨大な龍の心臓を、ただの二口で平らげ。
剣を構えなおし、盾を持ち上げ。


―唐突に剣士の男は、駆けた。

その躍動、動きのあまりの疾さに、銀色の煌きが、凶刃が、虚空に一本の軌跡を描く。

が。

銀色の閃光が、標的に、サマナーに届く前に、火の神獣ケルビーが突進する男の眼前を塞ぐ。
広げられた両の腕。灼熱の熱気。―インシナレイト。

ケルビーの周囲が陽炎に包まれるほどの熱量。
並みの魔物ならば、その炎に直接触れずとも絶命しかねないほどの。

しかし。

剣士の男は臆するどころか、一瞬の怯みさえ見せず、ケルビーの灼熱の肌に刃を突き出したのだ。

―既視感。
いや、錯覚では無く、確かに目にした光景。

八陣の刃、剣士の肉体、熱気を放つケルビーの巨躯が重なる。
・・・光の奔流。・・・崩れ落ち、細かい粒子となって霧散するケルビーの体。

―・・・まさに、一瞬の出来事であった。

味方からは絶望で息を呑む声。
敵方からは安堵のため息と、下品な罵声があがる。

依然、その場に立つ剣士の男。
ベルトのパックから淡い黄色みがかったポーションを取り出し、一息に口に含む。

いまだ余裕をたもったままの男の目は、真っ直ぐにサマナーの少女を見据えている。

「・・・・・・。」

にらみ合い、しばし、その場の空気が静止した。
その間に、残ったウィンディはゆっくりと、剣士とサマナーの少女の間に入る。

ゆっくりと剣士の男が手に持った剣を肩の辺りまで持ち上げ、剣の背の部分で自分の肩を叩く。

・・・さほど、意味を持った行動には、見えなかった。
余裕さから現れるクセ、もしくは余裕さを誇示する為に、わざとやっているのか。

その場にいたほとんどの者が、その程度にしか考えていなかったであろう行動。

・・・そう。

サマナーの少女の背後、影の中に潜んでいる敵方のシーフと、剣士の男以外は・・・。

368319:2007/09/05(水) 21:07:30 ID:.s8jVrUw0

突然。

サマナーの少女の小さな影が、地面に張り付いているべき影が。
・・・ゆっくりと、全く音を立てずに立ち上がった。

シーフのスキル。―シャドウスニーキング。

その場にいる誰もが異変に気づいていた。
―その影に背を向ける、立ち上がった影の持ち主と、その召喚獣以外は。

立ち上がった影、シーフの手に握られる、鋭利な刃物。
シャドウスニーキングからの、暗殺。
常套手段であり、使いどころを間違えなければ、完璧に命を取れる戦術。

二体の召喚獣の内、片方だけを倒す。
・・・結果、残った方は剣士とサマナーの間に入り、背後への注意が散漫になる。

余裕さを誇示するかのように、常に笑みを浮かべた表情。
・・・結果、シーフに送る合図を完全にカモフラージュできた。


戦闘能力だけではなく、切れる頭を持った男であった。


・・・咄嗟に動き出す仲間もいたが、助けに入れる距離にはいない。


それさえも計算の内なのだろう。
剣士の顔に浮かんだ笑みが、深くなる。

シーフの手が振り上げられる。
・・・太陽光を反射し、手に持った刃がきらめく。
しかし、それさえもサマナーの少女の目に入る事は無い。

そして、やはり、固まって見守っていた仲間の誰も、割ってはいる事は出来なかった。

―そう。『透明(不可視Lv2)』のリングを身に着けていたオレ以外は。

369319:2007/09/05(水) 21:07:58 ID:.s8jVrUw0
出来れば剣士との交戦の時が理想だったが、今しか、無い。


茂みの底の地面を蹴り、空中へ飛び出す。

この緊迫した空気。

茂みの葉が鳴る音に気づいた者など、いるはずも無く。
サマナーの背後のシーフまで、間にあった絶望的な距離を、飛び蹴りで瞬時に詰める。

突然目の前に現れたオレに、シーフの男は慌てふためき、指示を仰ぐかのように、剣士の方を一瞬見た。
・・・彼の主、剣士の男は、間合いの中で視線を一瞬でもそらす事の愚かさを知っていたというのに。



視線が戻る前に、シーフの鳩尾へ左正拳で、“刺す”。
衝撃で揺れる瞳、そして狙い通り、右肘の射程圏へと落ちてくる顎。
それをすかさず右肘で貫き、昏倒しかけて今度は膝から崩れ落ちるシーフの体へ、三連回し蹴りを叩き込む。



一瞬赤色に輝いたシーフの体は地に沈み、動かなくなった。
これもまた、一瞬の出来事。

今度はさっきケルビーが倒された時と、全く逆のリアクション。

驚いたような顔のサマナー。
途端に無表情になった剣士の男。

なるべく正面きって戦うのは避けたかったが、仕方あるまい。

オレはサマナーの少女へ援護を頼み、周囲の者が動き出す前に、剣士の方へ駆けた。
剣士の瞳孔にオレの五体がしっかりと映っているのを感じる。


・・・間合いに入った瞬間、閃光のごとき速度で突き出された刃を右腕のクローで受け止める。
骨の髄まで響き渡るような、恐ろしい筋力。休む事無く繰り出される、剣撃の雨。コチラ側から攻撃をする間など無い。
動脈を狙った寸分違わぬ完璧な突きを仰け反ってかわし、相手が刃を引き戻す僅かな間に、傷を瞬間的に治療する。

恐ろしく、とてつも無く強い男であった。

それから、幾度か、打ち合う。

狙いはただ一つ。

・・・剣士が龍の心臓を補給する、その瞬間。
それらの道具を過信するあまりに出来る、その僅かな隙。

そして、唯一の、勝機。

周囲の者は、味方も敵も、全く微動だにせず、オレと剣士の戦いに見入っている。
・・・剣士より遥かにレベルの低いオレが、倒されずに戦い続けている現状。


打ち合うこと数百を数える頃。
・・・ついに、その時はきた。

オレの攻撃を数度受け、オレの攻撃が自分を倒すに至らぬ事を知った剣士の余裕。
先ほど見せていた見せ掛けの余裕とは質の違う、傲慢からくる余裕。

レベルの低いオレに傷つけられたプライドを、取り戻すための行動だろうか。
剣士は片手の盾を放りなげ、片手の剣でオレの攻撃を受けつつ、フトコロへ手を伸ばしたのだ。


払い蹴り。

剣士の巨躯が、もんどりうって宙へ浮いた。


―傍らのウィンディに早口で指示するサマナーの声が聞こえる―



・・・剣士の攻撃を仰け反ってかわし、瞬間的な治療を施す。
生き残るため、生存するため、守るため、磨きに磨きぬいた究極の“生存術”。

道具の使用を最低限度に留め、武器も使わず。


戦い、敵を倒す攻撃では無く。


凶刃に狙われる味方を、守るための攻撃。


生存術、そして敵を食い止め、味方の勝機へつなげる攻撃。


それが武道家でるオレの存在意義であり。

一人のサマナーの少女の涙を、涙にさせない為の方法なのだ。



完。

370319:2007/09/05(水) 21:08:57 ID:.s8jVrUw0
出来れば剣士との交戦の時が理想だったが、今しか、無い。


茂みの底の地面を蹴り、空中へ飛び出す。

この緊迫した空気。

茂みの葉が鳴る音に気づいた者など、いるはずも無く。
サマナーの背後のシーフまで、間にあった絶望的な距離を、飛び蹴りで瞬時に詰める。

突然目の前に現れたオレに、シーフの男は慌てふためき、指示を仰ぐかのように、剣士の方を一瞬見た。
・・・彼の主、剣士の男は、間合いの中で視線を一瞬でもそらす事の愚かさを知っていたというのに。



視線が戻る前に、シーフの鳩尾へ左正拳で、“刺す”。
衝撃で揺れる瞳、そして狙い通り、右肘の射程圏へと落ちてくる顎。
それをすかさず右肘で貫き、昏倒しかけて今度は膝から崩れ落ちるシーフの体へ、三連回し蹴りを叩き込む。



一瞬赤色に輝いたシーフの体は地に沈み、動かなくなった。
これもまた、一瞬の出来事。

今度はさっきケルビーが倒された時と、全く逆のリアクション。

驚いたような顔のサマナー。
途端に無表情になった剣士の男。

なるべく正面きって戦うのは避けたかったが、仕方あるまい。

オレはサマナーの少女へ援護を頼み、周囲の者が動き出す前に、剣士の方へ駆けた。
剣士の瞳孔にオレの五体がしっかりと映っているのを感じる。


・・・間合いに入った瞬間、閃光のごとき速度で突き出された刃を右腕のクローで受け止める。
骨の髄まで響き渡るような、恐ろしい筋力。休む事無く繰り出される、剣撃の雨。コチラ側から攻撃をする間など無い。
動脈を狙った寸分違わぬ完璧な突きを仰け反ってかわし、相手が刃を引き戻す僅かな間に、傷を瞬間的に治療する。

恐ろしく、とてつも無く強い男であった。

それから、幾度か、打ち合う。

狙いはただ一つ。

・・・剣士が龍の心臓を補給する、その瞬間。
それらの道具を過信するあまりに出来る、その僅かな隙。

そして、唯一の、勝機。

周囲の者は、味方も敵も、全く微動だにせず、オレと剣士の戦いに見入っている。
・・・剣士より遥かにレベルの低いオレが、倒されずに戦い続けている現状。


打ち合うこと数百を数える頃。
・・・ついに、その時はきた。

オレの攻撃を数度受け、オレの攻撃が自分を倒すに至らぬ事を知った剣士の余裕。
先ほど見せていた見せ掛けの余裕とは質の違う、傲慢からくる余裕。

レベルの低いオレに傷つけられたプライドを、取り戻すための行動だろうか。
剣士は片手の盾を放りなげ、片手の剣でオレの攻撃を受けつつ、フトコロへ手を伸ばしたのだ。


払い蹴り。

剣士の巨躯が、もんどりうって宙へ浮いた。


―傍らのウィンディに早口で指示するサマナーの声が聞こえる―



・・・剣士の攻撃を仰け反ってかわし、瞬間的な治療を施す。
生き残るため、生存するため、守るため、磨きに磨きぬいた究極の“生存術”。

道具の使用を最低限度に留め、武器も使わず。


戦い、敵を倒す攻撃では無く。


凶刃に狙われる味方を、守るための攻撃。


生存術、そして敵を食い止め、味方の勝機へつなげる攻撃。


それが武道家でるオレの存在意義であり。

一人のサマナーの少女の涙を、涙にさせない為の方法なのだ。



完。

371319:2007/09/05(水) 21:15:19 ID:.s8jVrUw0

チキショー。。
せっかく気張って書いたのに、、
ラストシーンを二回投稿しちまった。。

恥ずっ!!!!

たくさんの感想をアリガトウでした。。
感想もらってばっかりで感想返しをしてないのが心残りですが、、
申し訳ないけども、夏休み終わっちゃったので部活生に戻ります。。

見てくれた方々、アリガトウでした。
明日からオレも、名無しに戻って見学させてもらいます。

そして、気が向いた時に感想を残させてくだせぇ。。

それではノシノシ

372名無しさん:2007/09/06(木) 16:49:35 ID:SbRtXsoI0
>>319さん
最終話を読んだあと、もう一度最初から一気に読んでしまいました
サマナーな私にはアドレナリン以外何も出ません
もっと、もっとサマナー分を!

感動しても感想なんて書けないから普段ROM専だけど、いつも見てます
これからも皆様の作品をこっそり楽しみにしてますー

373◇68hJrjtY:2007/09/06(木) 22:39:16 ID:pQbXLxNQ0
>319さん
同じく武道な私にもアドレナリンが悶々とry
ただのGv話であるだけではなく、武道家そのものの戦闘能力が生き生きと描かれていてもう何も言えないくらいです(ノ∀`*)
なんだか武道でいることに自信を持てたような気がします…Gvでも耐える事しかできないけどさっ。
でも確かに、自分より遥かに高レベルと思える相手の攻撃を耐え切った時の快感は言い表せないくらい嬉しいです(笑)
ついでにほんのりと武道×サマナ話でもあるのでしょうか。サマナたん萌え!

休止宣言了解しました。良い小説をありがとうございました。
部活動に学業に頑張ってくださいね。しかし、部活って懐かしい響きだ…(遠い目)

374ryou:2007/09/07(金) 04:54:26 ID:C0b6ByIo0
>319さん
おお、武道かっこいいですね!
相手剣士よりずっとレベルが低い、ってのが凄い。
サマナもギルマスとしての気高さを感じますね。
ROMに戻られるということでちょっと残念ですw

さて>>360-364の続編です。
忘れちゃうといけないのでちょっと急ぎ目に書きましたw
長くて読むのがだるいかもしれません……。

375ryou:2007/09/07(金) 04:55:34 ID:C0b6ByIo0
『夢の通い路』

窓から漏れる黄色い日差しが、早くも暑い一日になることを予感させる朝。
ダヴィは結局一睡も出来ずに夜を明かした。
水を頭からかぶり、昨日からの汗を流すと、
風通しの良い衣服に袖を通し、斧は持たずに宿を出た。

朝早くから賑わう古都の露店市。
ここの活気のよさは昔から変わらない。
硬めに焼かれたパンと、皮がはぜるまで炙った太いソーセージを齧りながら、
冷やかし程度に市を歩き回った。
市を抜けて古都の南へと歩を進める。
運河にかかる橋を渡ると閑静な下町へと繋がっている。
朝食の支度や、家の前を掃除する箒、庭先で飼われている犬や鶏の鳴き声、
落ち着いた中にも生活感溢れる音が響く。
まだ湿度の低い爽やかな空気を肺へ詰め込むように吸い込む。
しばらく歩くと古都の南門へとたどり着いた。この先は細い旧街道へと続いている。
「おぉ」
そうして南門を抜けた先、目の前に広がる光景に思わず溜め息が出た。

376ryou:2007/09/07(金) 04:56:48 ID:C0b6ByIo0
「アリシアさんは50号室にいらっしゃいます」
見知らぬ男が2日続いて曖昧となってしまった患者を見舞いに訪ねたことに、
受付の女性は驚いていたようだ。それとも好奇の視線だったのかもしれない。
「やあ、アリシアちゃん」
「おじさん、だあれ?」
昨日と全く同じ反応。
姿も、声も、40代半ばの女性にほかならないが、瞳だけは純粋な子供のそれに見えた。
「おじさんはね、アリシアちゃんのパパの友達なんだ」
「えっ、ほんとっ!?」
「ああ、今日は一緒にお花畑に連れて行ってあげようと思ってね」
「うれしい!」
うれしそうにはしゃぐ『少女』の姿に、ダヴィはまだ心から微笑むことは出来なかった。
ダヴィはアリシアを車椅子に乗せ、ゆっくりと押しながら古都の南門へと向かった。
門を抜け、街道へと出ると、道を挟んでそこには見渡す限り、色とりどり花畑が広がっていた。
「すごいっ!!」
アリシアは目を丸くし、車椅子から落ちそうなほど身を乗り出して、慌ててダヴィがそれを支えた。
「もう少し行こうか」
街道から花畑の奥へと進み、人気が無いことを確かめてからアリシアを降ろした。
「おじさん、こんなにいっぱいのお花見たのはじめてだよ!いいにおい!」
両手いっぱいに花を摘んで匂いをかぐ様子を見て、ダヴィは心の中で花畑の持ち主に詫びた。

377ryou:2007/09/07(金) 05:02:44 ID:C0b6ByIo0
「でね、ママとお買いものいったんだけどね――」
アリシアが幼い頃の思い出。
今の彼女の心に残留している記憶はもはやこの頃のものしかないのだろう。
それに引きずられるように人格も幼い少女のものとなっているのか。
「――パパがすっごいおもしろくてさ、ねぇおじさん聞いてる?」
花弁を一枚一枚摘み取りながら『少女』がダヴィに楽しそうに話しかける。
ぎこちないながらもダヴィは相槌を打つ。
彼の手にはまだ編みかけの不細工な花の輪。
「でね、きのうママとお買いものにいってね――パパがさ――」
記憶の欠如ゆえに繰り返される話のループが何度か続いた。
ダヴィはすっかり飽きて疲労を感じつつも、
この面倒事から逃げ出したい邪な心を押さえつけてアリシアに寄り添った。
「ねぇ、おじさんなんだかパパに似てるね!」
思いがけない言葉に動揺しかけたがすぐに冷静を取り戻して微笑むダヴィ。
「ねぇねぇ、おじさん、だれだっけ?」
何度も聞かれた質問に、何度も同じように答える。だが……。
「パパ、今どこにいるのかな……」
「えっ」
「ねぇ、ママもいないの。どこいっちゃったの?
昨日ね、おしごとに行ったまままだかえってこないの。
それでね、家にきんじょのおじさんとかおばさんとか、
しらないおじさんとかが来てね……あっおじさんのことじゃないよ。
それでね、パパもママもとおくにいってるっていうの。
ねぇどこにいるのかな?おじさんしってる?」
恐らくは彼女の両親も冒険者、もしくはそれに準ずる者として生計を立てていたのだろう。
幼いながらも状況を感じ取っていたのだろうか、
ぽろり、ぽろり、とアリシアの瞳から涙が零れ落ちる。
「……パパ……っ!?」
何も言わずダヴィはアリシアを抱きしめていた。
暖かい胸に抱かれて安心したのか、アリシアはボロボロと涙をこぼしながら泣き続けた。

378ryou:2007/09/07(金) 05:04:03 ID:C0b6ByIo0
半刻、いやそれ以上だろうか。
もはやどうして自分が泣いているのかも忘れていただろうが、長い時間アリシアは泣き続けた。
「えぐ、えぐ……っひぐ……」
すでに太陽は傾き、空は茜色に染まりつつある。
ようやく泣き止んだアリシアの顔は、涙の跡がくっきりと残っていたものの驚くほど美しかった。
「さあ、そろそろ帰ろうか」
ダヴィはアリシアの涙で濡れた顔を拭い、車椅子に乗せて歩き出した。
彼女の頭の上には不細工なものや丁寧なものが混じった、いくつもの花輪が冠せられていた。

それから次の日もダヴィはアリシアを花畑へと連れて行った。
この日もやはり「おじさん、だあれ?」から続くお決まりの会話の繰り返しだったが。
病室に戻り、疲れてすぐに寝てしまったアリシア。
窓からそよぐ風で、セミロングの髪が頬をなでる。
こうしている分には、やつれは見られるものの、とても中年に差し掛かった歳とは思えない。
昔の彼女を思い出し、病室を出るときにダヴィはそっとアリシアの額に口付けをした。
ふと、少女の心の彼女を思い出し、なにやら気まずくなって部屋を見回してしまったが。

次の日も、ダヴィはアリシアを花畑へ連れて行った。
無垢な少女そのものの彼女と共に過ごすうち、
ダヴィは無意識に彼女を本当の少女のように見ている自分に気づいた。
だがこうしているうちも彼の心は晴れぬままであった。
このひとときが一体何になるのだろうか、と。
こうしていたところで昔の彼女に戻るわけでもないし、
彼女の記憶は数時間を待たず消え去ってしまう。
ただただ、何かしないと気が済まないというだけだった。
そうこうしているうち、ダヴィは涼しい木陰で眠りの淵に落ちていた。
誰もいないという過信が彼を油断させたのだろう。
花遊びに飽き、街道のほうへとよたよたと力なさげに歩いてゆくアリシアに気づかなかった。

379ryou:2007/09/07(金) 05:05:56 ID:C0b6ByIo0
しばらくしてからダヴィは異変に気づき目を見開いた。
……アリシアがいない!
とっさに背中の斧に手を伸ばそうとするが、武器は宿に置いたままであった。
風の如き疾さでアリシアの気配のするほうへと向かう。
そこには……
「んー!んー!はなして!!」
「ちっ、男がいやがったのか」
短剣を手にした男がアリシアを組み伏せていた。
「おい貴様何をしている!!」
男の背後、街道の端には馬とそれに繋がれた荷車。行商人か。
行商人も山賊に近い者はときおり追い剥ぎをはたらくこともある。
「貴様、古都のすぐそばでたいそうなことをするな。警備兵に突き出すぞ」
男へとにじり寄るダヴィ。
「悪りぃが丸腰の男に警告されても引くつもりはねぇぜ。
この女なんにも持ってねぇしな、旦那のを頂くとするか」
男がアリシアを突き放したのを確認し、すぐさま彼女の前へと回り込む。
「丸腰……か」
ダヴィは目の前に伸びる細い木の枝を折り取ると、男に向かって構えた。
「ハハハハ、馬鹿かよお前、そんな木の枝じゃチャンバラごっこもできねぇぜ」
ダヴィの不可解な行動を見て、自らの勝利を確信した男は真正面から短剣を突き出してきた。
「風よ……」
たった一言の詠唱。
ビュオッ!!風切り音を鳴らしてダヴィが木の枝を振るう。
すると木の葉が粉々に舞い散ると共に、まるで火薬を使ったかのように枝先の空気が弾けた。
「ぐおっ!!」
口から僅かに血を吐きながら男は吹っ飛び、背中を木の幹に打ち付けて呻き声を上げた。
ダヴィは駄目押しとばかりに木の枝を男へ飛ばすと、
ヒュッと音を立てて男の左肩へと突き刺さった。
「がはっ!」
どうやら男は気絶したようである。それを確認して、ハッとダヴィはミスを犯したことに気づいた。
幼い心のアリシアに、血生臭い光景を見せてしまったことを悔やんだのだ、が。
「強くなったのね、ダヴィ」

380ryou:2007/09/07(金) 15:18:08 ID:C0b6ByIo0
振り向くとそこには、先程と変わらない姿、しかしよく知る雰囲気をまとった女性がいた。
「師匠?」
「久しぶりね」
照りつける日差しによって立ち昇る花の香りが鼻腔をくすぐる昼下がり。
「どうしてかしら、すごくいい気分だわ。もしかして、あなたずっと居てくれたのかしら?」
「……ええ」
どっと音を立てるように蘇るかつての記憶。
だがしかし、それはすでに彼ひとりの物となっていることに気付く。
ふと目を移すと、まだ伸びている行商人の姿。手加減はしたから大丈夫だろうか。
「とりあえず、帰りましょうか」
「ええ」
苦笑しながら花畑を後にした。

病室のベッドに腰掛けると、花畑で編んだ花輪を弄びながらアリシアは話し始めた。
「不思議なものだわ。何も思い出せないけど、何も思い出せない自分に気付いているの。
私はずっと眠ったままだったみたいね。さっきまで私、どんなだったのかしら?」
「そうですね、とても可愛い子でしたよ」
もちろんそれはダヴィの正直な感想だったが、アリシアは目を丸くした。
「あら、恥ずかしい姿を見せてしまったわね」
「……いえ」
しばらくの間、穏やかな沈黙が2人を包んだ。
「さっきの男……」
「師匠を襲った行商ですか」
「ええ、あのときもし私があなたの立場なら、きっと容赦なく男を殺したでしょうね。
……ダヴィ、あなた人を殺したことはあるかしら?」
「いえ、俺はありませんが……」
「夢を、見るの」
「夢?」

381ryou:2007/09/07(金) 15:59:25 ID:C0b6ByIo0
窓からの流れる、夏草の香りをまとった風が心地いい。
花輪をいじくるアリシアの手は止まっていた。
「人を斬り裂く夢よ。今まで人を斬り殺してきた情景が浮かんで、その人達が私に迫ってくるの。
それでまた斬り殺して……。私は敵が多かったから何人も人を殺してきたわ。
いくら大義名分があっても、この手に残る感触は消えやしない。
目覚めることなく眠り続ける私は、ずっとその夢を見続けてきたの」
アリシアは窓のほうを向いていたが、その表情は容易に想像できた。
「どうして?」それがダヴィの心に浮かんだ思いだった。

どうしてそんな苦しい夢ばかり見るんだ。
どうして……俺のことは思い出してくれないんだ。

それが自らの傲慢な気持ちであるのは分かっていた。
だが記憶の大半を失ってなお彼女を苦しめる夢は許せなかった。
「師匠と修行をしながら旅した日々は……きつかったけどすごく楽しかった」
「ええ、勿論私もよ。とはいっても殆ど思い出せないんだけどね」
「不思議なもんだ……どうして辛い思い出ばかりが残るのだろう」
独り言のように呟くダヴィ。
アリシアはまた少し顔を暗くした。
「あなたはどうしてだと思う?」
もとより答えなど持ってはいなかった。
強いて言うなれば、その記憶は心が留めておかねばならないと判断したからだろう。
人を殺めたということはそれだけ重い枷となるのに値する事実だ。
だが……今のアリシアには楽しい夢を見せてやりたかった。
「師匠には楽しかった日々の夢を見て欲しいです」
「もう私にはほとんど記憶は残ってないのよ。
それに、私が犯した罪は忘れることは許されないし、残り少ない大事な私の欠片でもあるのよ」
「忘れろとは言いません、でもたまには今日の俺とのことなんかも夢で思い出して欲しい、……なんて」
言ったことを早くも後悔して、窓のほうを眺めるダヴィ。
日が落ち、山の端の空は孔雀石のように輝いている。
「あら、そんな恥ずかしいセリフも言うようになったのね。
……でも、そうね、本当はそんな夢が見たいわ。なんでもない日常の本当に些細な幸せ。
今の私には感じるそばから忘れていってしまうようなことだけど」
なにやらハッとした表情を浮かべたアリシア。
「昔の気持ち、また少し思い出せちゃったみたい」
「何ですか?」
「ふふっ、本当はね、私もあなたのこと好きだったのよ。
少し……肩、借りていいかしら。」
ダヴィは驚き、急いでパンパンと衣服の埃を払った。

382sage:2007/09/07(金) 16:00:43 ID:C0b6ByIo0
だがアリシアはダヴィに寄り添おうとはしない。
「あなたも、もういい年をした大人になったのね」
「えっ……」
「もうあの頃の私を見つめていた眼とは違う。
想い人……いえもう人生の伴侶も見つけたのかしら」
「まだ師匠にはかないませんね。」
ダヴィはなによりアリシアに昔の2人の記憶が残っていることに驚いていた。
そしてふと、”アイツ”のことを思い出していた。
「でも、師匠のそういうところ、あまり好きじゃないな」
「えっ?」
「たまには素直なところ見せてくれるほうが俺は嬉しいんですがね」
「馬鹿ね」
歳に似合わずアリシアの頬に少し赤みが差した。
ダヴィは、普段、人格が幼児退行している影響だろうか、
とつい無粋なことを考えてしまう自分を心の中で小突いた。
「じゃあ、少しだけ……」
月明かりを背に、アリシアはそっと寄り添い、ダヴィは彼女の肩に腕を回した。
「情けないわね。これじゃあ師匠失格だわ」
「いいじゃないですか、もうあれから何年もたった。
俺も、師匠も、昔とは違うんですから」
「ありがと」
「……師匠」
「あら、もう師匠も弟子も無いんじゃなかったかしら?」
「非道いですよ」

383ryou:2007/09/07(金) 16:01:41 ID:C0b6ByIo0
突然アリシアはダヴィの胸に顔をうずめた。
「アリシア?」
「……私、もう死んでしまうの」
「えっ!?」
もしや医師のカルテを見たのだろうか?だがいつの間に?と思惑を巡らせるダヴィ。
「私は……今のこの私はきっともうすぐ消えてなくなってしまうわ。
大事な、大事な記憶も一緒に。きっと今眠ったらまた長いこと戻って来れないとおもう。
あなたにももう二度とは会えない。今日で最後なのよ」
「じゃあ、少しでも長くこうしていよう」
ダヴィは涙を浮かべるアリシアを抱きしめた。
「これで私がもっと若ければ、あんなことやこんなことも出来たのにね」
「俺は別に今のアリシアでも構わないけどな」
「おばさんをからかわないで頂戴」

2人は長い口付けを交わすと、ベッドに重なるようにして横になった。
月の光が、2人の肌に浮かぶ玉のような汗を輝かせる。
白く細い指が、ダヴィの無骨で逞しい背中をつたう。
アリシアの肢体は、顔とともに10歳ほど若く見られてもおかしくないほどだった。
少しハリのない白い肌に、ダヴィがそっと手を這わせる。
静かな吐息だけが部屋に響く。
2人はただ寄り添い、抱擁を重ねているだけだった。
だがそれだけでも2人には満たされた時間が流れていた。
「そろそろ、眠いわね」
アリシアが悲しげに言う。別れの時間が近づいているということを。
夜も更け、月明かりに照らされた重なる2人の影が、反対の壁まで長く伸びている。

384ryou:2007/09/07(金) 16:03:36 ID:C0b6ByIo0
「ありがとう。こんな時間、きっと生まれて初めてよ。
ずっと、ずっと憶えていたいわ……」
だがそれは叶わぬことだと分かっていた。
「俺はきっと、ずっと憶えている」
……もう俺の中の、彼女の記憶の砂像は崩れることはない。
「お願いよ。私も一応頑張ってみるわ。せめて今夜は楽しかった今日をまた夢で見れるように」
「ああ、多分もう辛い夢は見ないと思うよ」
「ええ。それと言い忘れるところだったわ……あなたに私の病のこと隠していてごめんなさい」
あまりに今更ながらでダヴィは思わず苦笑してしまった。
「あら、本当に忘れてたのよ。でも後悔してるわ」
「俺は別にいいよ。今こうしていられるんだから。」
「そうね、でもそろそろお別れだわ。もう1人の私がもうそこまで来てる」
「それは起きていても?」
「たぶん。さっきも一瞬意識が奪われかけたわ。
だから、もう私は眠るの。もう一人の私が来てからじゃあなたの夢も見られないわ」
あなたの夢……最後の彼女の意識に、俺なんかが陣取っていいものかと悩んでしまう。
だけれど、病室に戻ったときのあの表情がすっかり消え去っていることが素直に嬉しかった。
「本当はまだこのまま居たいんだけどね」
「それは私も。でも私だって一人の戦士よ、去るときは潔く去るわ」
「それでこそ俺の師匠だ」
「今夜くらいは『俺の女』って言って欲しかったわね」
最後にまた、長いキスを交わした。
「じゃあ、おやすみなさい、ダヴィ」
「ああ、おやすみ、アリシア」
ダヴィの腕に抱かれ、彼女は再び永遠とも思える暗い世界へと沈んでいった。

翌朝、まだすやすやと眠るアリシアを起こさぬよう、ダヴィはそっとベッドから抜けた。
一晩中の腕枕でジンジンと痺れる手を握ったり開いたりして感触を確かめる。
彼女が起きたときには、きっと再び『少女』に戻っているのだろう。
昨日、花瓶にぎゅうぎゅうに詰め込んだ花束から何本か引き抜き、
慣れた手つきで花輪を編んだ。
アリシアの枕元にそれを置いて、ダヴィは静かに病室を後にした。

さよならは言わない。彼女の記憶は確かに、俺の中に息づいている。

-完-

385ryou:2007/09/07(金) 16:05:41 ID:C0b6ByIo0
『夢の通い路』完です。
sageミスしてしまったのが無念……申し訳ないです。
また新しい話書いたら投下させていただきます。

386名無しさん:2007/09/07(金) 16:31:53 ID:n7DOGEFc0
無料でアニメ見れたぞ
http://yourseroanime.blog111.fc2.com/

387ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/09/07(金) 19:06:53 ID:HGzFVoQo0
さ〜てウィッチ視点のドタバタ劇、はじまりはじまり〜


・・・・フフフフ、あの腹立たしいバカップルを尾行してみればエルフの村に入ってしまいましたわ。
それにあの筋肉男っ、このフランデル美人コンテスト優勝者の私を目の当たりにしておきながらっ・・・あぁ腹立たしい!!!
とにかくっ!!私を怒らせたこの罪、きっちり償ってもらいましてよ!!!・・・・え、私が誰かですって?オホホホホホホホ
よくぞ聞いて下さいましたわ!!私はフランデル一の超絶美少女、その名もエレナ・クレモンティーネでございます!!

・・・って、あらいけない、つい自己紹介してしまいましたわ。え〜と例のナンセンスな二人は・・・ホホホ、見つけましたわ〜
まずは筋肉男、何やらエルフと剣のお稽古でもしていらっしゃ・・・・えぇ〜!?何ですのあのデタラメな斬り合いはァ〜!!?!
私も何度かギルド間の戦いで活躍してきましたが、あんな強さを誇る剣士は見たことありませんわ・・・・ちょっと手強そうね。
そしてお次は・・・平凡女、あっちはファミリアとの試合・・・って、何でファミリアのあの高速連撃をいなしてるんですの!!?
しかもいなしながら反撃、そしてファミリア側も同じことを!?・・・・あ、何か嫌がらせできるのか不安になって参りましたわ。
・・・・って弱気になっちゃダメよエレナ!!私を侮辱した仕返しをするんでしょう!?やり遂げなければっ・・・・!!!


    Extra Episode:Jamming〜腹黒アイドルと宇宙人の嫌がらせ大作戦☆〜

ビガプールへとお遣いに出かけたラティナとトレスヴァント。彼らはそこで熊肉10kgを手に入れて
一時的に身を隠しているエルフの村へと戻ってきた。時刻は朝の8時、ちょうど仲間たちも各自のトレーニングを
始めた頃合いだ。トレスヴァント、ラティナは互いのコーチであるエルフ戦士、サーファイユとアレクシスと共に
合同練習に励んでいる。ファミリアのファミィも槍使いとしてラティナと同様の訓練を受けている。
彼ら共々各コーチからアドバイスを受けたり、参考になるテクニックを実演を通して教えてもらっていた。

一方、ちょっとした因縁によりトレスヴァントとラティナを尾けてきたリトルウィッチのエレナ。
うつ伏せの状態で茂みの中から最新モデルの魔法式双眼鏡で彼らを偵察し、様子を窺っている。
「何てことですの・・・あの二人の強さ、まるで一ギルド分の戦闘力じゃない!!でもここで退いては私のプライドが
 許しませんことよっ!!とにかくとにかくとにかくっ、何としてでも彼らをギャフンと言わせる方法を考えないと・・・」
一人問答をブツブツと呟く彼女、だが後ろにある気配には全く気付いていなかった。その背後の者の声を聞くまでは・・・
「はぁん・・・何て綺麗でムッチムチな太ももなのォ、だめぇ・・アタシ嫉妬しちゃうわァん!!あんっ!」
艶かしくエロ可愛い声のこの女、ビーストテイマーのフィナーアは目の前にあるエレナの太ももに頬を摩り付け悶えていた。
自身の体を勝手にいじくられてるエレナはというと、いきなりのハプニングに仰天、そしてセクハラ行為に鳥肌を立てていた。
「な、なっななな何ですのあなたはァ!!?いやらしいっ!!無礼にも程がありましてよっ、離れなさ〜い!!」

388ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/09/07(金) 19:42:09 ID:HGzFVoQo0
「やんっ、釣れないお嬢様ねぇ・・・それにしてもあなた、ホント綺麗だわ〜。お持ち帰りしちゃいたぁ〜い!!!」
「(き、綺麗!!)わ、私の美しさがわかるようなら良いでしょう、ここは勘弁して差し上げますわ?」
彼女の体のあちこちに何やら妖しい視線を送るフィナーア、エレナはそれを無視しようと努めながら腕を組んで偉そうに
下目使いでフィナーアに言い返したが・・・彼女はエレナの言葉を脳内で誤変換している最中だった。
「(え〜と、今のは言い換えると『自分の美しさがわかったのなら、それを踏まえてアァ〜ンvなことやイヤ〜ンvな事を
  ヤっちゃっても良いということね!!?!・・・・フィナーア・ウォン、秘密の花園の扉を遂に開くのね!!?』)」
「ちょ、ちょっとあなた?さっきから何故私を見ながら顔を赤らめてるんですの?まっ、まさか私相手によからぬ事でも・・・」
「その ま・さ・か・よォ・・・・・・・お姉さんとイイ事しなァい?」「嫌ぁああぁぁぁあぁぁあ来ないでぇえぇぇ!!」


             。*・゚*.゚しばらくお待ちください゚.*゚・*。


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・気絶させるのに手間取りましたわ・・・あ、この女に変身すれば奴らへの接近も容易に・・・ホホホ」
頭に大きなたんこぶをつくり気絶するフィナーアをよそに、エレナは彼女に変身してラティナたちに仕返しすることを思いついた。
ステッキを振り回し「マジカル ルナティク ファンタスティ〜ック☆」と呪文を唱えると、フィナーアそのものに変身した。
「ん〜・・・私に劣らぬ美しさですわね、悪くありませんわ。(う、胸が重い・・・)これで嫌がらせもできますわ、オ――ホホホホ!!」
手の甲を口周りに持ってきて、定番ともいえるお嬢様笑いを誇らしげに放つフィナーアもどき。そしてまた魔法で服を繕い、それを着る。
実際フィナーアはまだ服も着ないでさらしと褌一丁でうろついていたのだ、エレナとしては非常にはしたない格好なのだ。
仲間たちに怪しまれないよう基本的なビーストテイマーのローブを身に纏い、村の方へと足を運んだ。

389ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/09/07(金) 20:25:50 ID:HGzFVoQo0
その頃、エルフの村ではちょっとした騒ぎが起きていた。村の上空で何やら謎の飛行物体が確認されたらしいのだ。
「うぉっ、ありゃ何だぁ!?鳥か?」「バカちげーよ!あれだ、UFOとかいうやつじゃねェの?」「あ〜なるほど〜」
そしてこちらは上空、飛行しているのは・・・・1匹のボイドラスターzinだった!!!何やら謎の鼻歌を唄いながら
高度300メートルの空をふよふよと低速度で飛行している。自身の真下のエルフの村に気付かずに・・・

「♪ 鳥でもな〜くて、スーパーマンでもな〜い、そんなおいらは誰だい?(それは!)ザ☆宇宙人のボイドラスターさ〜ルルル〜」
とはいえこのボイドラスター、かなりの音痴なのか不協和音がところどころ目立つ。しかも声量のデカさゆえか、エルフの村全域に
騒音被害が及ぶ始末。村からは「うっせーぞボケ!!」「万年0点!!」「あんた音痴ですから〜!残念っ!!」「プギャー」
などとクレームの嵐が投げ掛けられている。それらが聞こえていたのか聞こえていないのかわからないが、例のボイドラスターzinは
「おっ電波受信!!なになに〜・・・・・あっ、カッチ――――ン!!いいのかな、おいらを怒らせていいのかな!?許さ〜ん!!
 判決!お前ら全員逝ってよし!!喰らえおいらの必殺技その壱、チキチキ☆ビィ――――――――――――――ム!!!!」
と波○拳みたいに両手を突き出し、そこから黄金色のビームを一発放った!ビームはどんどん村へと落下していき・・・・
チュド〜ン☆と愉快な爆発音を響かせて、路地に半径1.5メートル程のクレーターを作り上げた。エルフの民は当然反発する。
「危ねぇだろうがコノヤロー!!降りて来いやコラ!!」「そうだそうだ、こっち来いや!」「ブッ殺!!!」
するとその場へ姿を現したのがフィナーア・・・・・・に変身したリトルウィッチのエレナだ。その場にいたエルフたちは彼女を見ると
救世主が来たとでも言わんばかりに期待に瞳を輝かせ「アイツを止めて下さいよフィナーアさんっ!!」「やった猛獣女王だぁ!!」
「(まぁ、彼女こんなに有名だったなんて・・・あぁ、このもてはやされる感じがたまらない)ふふ、よろしくてよ・・・」
少し大人びた口調で応えるフィナーアもどき。早速上空に停滞する傍迷惑なボイドラスターを一睨みした。
「・・・お?ありゃフィナーアじゃん、こんなとこで出会うなんて奇遇だな〜。挨拶に行こう〜っと!!」
フィナーアもどきに気が付いたのか、ボイドラスターzinはふよふよとゆっくりとした速度で村へと降り立った。
とはいえ、地面から80cm程の高度で滞空もとい浮遊したままだ。エルフの民たちはフィナーアもどきらを囲むように
見物していた。「なぁなぁ、あんたフィナーアさんでしょ?ボイドラスターのシャギーだよ、覚えてる?」
「(なるほど、この宇宙人さん・・・彼女の知り合いのようね)え、えぇ。久しぶりねシャギー、覚えてるわよ」
これを聞いた周りのエルフたちは「おいおいマジかよぉ〜」「すげぇな、ボイドラスターとも友人とは・・・すげぇな」
などと驚嘆の声を漏らしていた。フィナーアもどきはというと、迷惑を掛けまくったシャギーに謝るよう説得し
彼はというと素直に「あ・・・エルフの皆さん、どうもすいませんでした・・」と深々と一礼し非礼を詫びた。

390ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/09/07(金) 20:44:05 ID:HGzFVoQo0
何とか騒ぎは収まったものの、フィナーアに変身したエレナにとっては少々ややこしい事態になった。
偶然とはいえ変身した元となった人物の知り合いであるモンスターが来てしまったのだ、下手に変身解除はできない。
「(まずいですわね・・・これは迂闊に変身が解けない状況になってしまいましたわ、とはいえ・・・
  このボイドラスターの能力、利用しない手はありませんことよ!!)」心の中で何やら策略を練っている。
そしてボイドラスターのシャギーを振り向くと、フィナーアもどきは彼に耳打ちをした。

To Be Continued...



あとがき
というわけで、リトルの嫌がらせ話の前半でした。ちょっと切り方が変な気もしますがお気になさらず。
次回はフィナーアに変身したエレナとボイドラスターzinのシャギーとのコンビが織り成すドタバタ劇に
したいと思います。毎回ストーリー考えるの大変だ〜;;;;

>319さん
GVストーリーの続き待ってました!スリリングな展開がとても魅力的ですね、自分もまるで
そこにいたような気分になりました。

>ryou
こういう儚さが漂うストーリーも読んでいて心地良いです。アリシアの最期のシーンは不覚にも
涙を流しそうになりましたよ、美しい作品をどうもですv

391◇68hJrjtY:2007/09/07(金) 22:57:11 ID:pQbXLxNQ0
>ryouさん
後編執筆、お疲れ様です。
若い頃とそして成鳥した大人、ふたつの面からの男女の恋愛と交錯と。
でもラストは決して悲恋では無かったですよね。最後の瞬間まで二人の心は繋がっていたんだな、と思いました。
アリシアの記憶が無くなってしまうのにも関わらず毎日通い詰めるダヴィの姿を見て
毎日失い行く記憶、それに負けず何度も思いを伝え続けるというのがどれほど大変なのか、と。
大人のラブストーリーを堪能する傍ら、そのあたりも深く考えさせられました。
次回作もまた期待しています!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ゆ、百合発ry …という事にはならず
またも今後の予測不可能かつ収拾不可能なドタバタを思わせる前菜的展開ですね(笑)
さて、ボイドラスター君が新登場しましたが…フィナ姉の(魔物への)顔の広さに驚愕です。さすが猛獣女王。
しかしそんなフィナ姉を油断していたとはいえのしてしまうエレナもさすがなものがありますけどね(笑)
エレナの入れ替わり魔法で果たしてどうなってしまうのか。読んでいる方としては楽しいことこの上ありませんが(苦笑)
次回のドタバタもお待ちしています!

392ryou:2007/09/12(水) 01:31:58 ID:C0b6ByIo0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
>◇68hJrjtYさん
感想どうもありがとうございます。
恋愛ものはやっぱ難しいです(;´∀`)
次回は自分の好きな戦闘シーン多目のを書こうかと思案しております。

393プチ:2007/09/15(土) 17:43:48 ID:.opVjpMU0
『男の性(さが)』


数日ぶりに再会した私たちは、ブルンネンシュティグにある酒場でささやかな祝杯をあげていた。
まだ日は高いが、私たちと同じような冒険者でにぎわっていて、時折騒々しい笑い声が響く。

「しっかし、不死の怪物どもが権力争いしてたなんて、意外だったよなぁ」

不思議そうな顔をする剣士に、魔術師がうなずいて同意した。
あそこには、徘徊する不死の怪物たちを取り仕切る親玉がいた。正確には元親玉だったけど。
その親玉の頼み――陰謀を企てている現親玉を倒すこと――を聞くことで、あの迷路から出る方法を教えてもらったのだ。

「彼らにも彼らなりの事情がある、ということなんでしょうね」

いまここにいるのは私、剣士、魔術師の三人だけ。
深手を負った戦士、盗賊、司祭の三人は、この街の療養所で怪我を癒している。

「戦士たちの怪我は大丈夫なの?」
「ええ、命に別状はないそうですよ」

私はほとんど傷を負わなかったが、剣士と魔術師は少なからず怪我をしたのでいっしょに治療してもらっていた。

「戦士のやつは膝の傷で動けないだけで、心配ないよ。もう上半身の筋トレしてたぜ」
「そっか」
「盗賊は……動けるようになったら、すぐにいなくなりました」
「え……完治してないのに?」
「酒が呼んでるとか、馬鹿なことを言っていましたね」
「まさかとは思うけど……」

きょろきょろとあたりを見回す。

「捜してるのは、オレのことか〜?」

聞き覚えのある陽気な声に、魔術師が頭を抱えてため息をついた。
振り向くと、ジョッキを片手にふらふらと近づいてくる酔っ払いがひとり。

「盗賊、お酒は怪我によくないですよ。あなたもまだ完治していないんですから」
「こうして生きて酒が飲める、幸せなことじゃねぇか」

盗賊はがたがたと横から椅子を引っ張ってきて、どっかりと腰を下ろした。

「聞くまでもないけど、酔ってるのね」
「まあ、かたいこと言うな。傷の痛みを忘れるには、こいつが一番だからな!」

そう言って、盗賊はジョッキをぐいとあおる。
口を開くたびに、強い酒気が漂った。すでに相当飲んでいる。
たしか、盗賊は腹部と内臓をやられてたはずだけど……

「かっー! 腹にしみるー!」

まあいいか。盗賊だし。

「これはこれでおいとくとして……魔術師、司祭の具合はどうだったの?」
「司祭は……」

魔術師が言葉を詰まらせる。

「ま、言いにくいならオレが言ってやるよ」

盗賊は残った酒を飲み干した。

「司祭は、元通りにはならねぇ」
「え……」
「いや、命に別状はない。ただな、右肩をごっそりやられちまったから、悪けりゃもう自慢の棍棒はぶん回せないだろうな」
「そんな……」

司祭は一番の功労者だった。癒しの祈りと鈍器での強力な打撃に、どれだけ助けられたかわからない。
それなのに……

「そんな深刻そうな顔するなって。あいつもあれで、なんか踏ん切りがついたらしいぜ。これからは加護や祈りに専念できる、とか言ってたな」
「司祭らしいですね」
「ま、しめっぽい話はおいといて、だ」

盗賊は片手をあげ、ウェイトレスらしき女の子に酒のおかわりを注文する。

「魔術師、治療費をかなりぼられただろ?」
「腕がいいぶん、高かったですね……財布がだいぶ軽くなってしまいました」
「戦士や司祭の治療費もバカにならない。そこで、だ」

盗賊がニヤリと笑った。

「儲け話を持ってきたんだ」
『儲け話〜?』

剣士と魔術師の不審そうな声がハモった。

394プチ:2007/09/15(土) 17:44:27 ID:.opVjpMU0
「わかってると思うが、オレたちには金がない。結局、金になるお宝もなかったしな」

盗賊がちらりと私の胸元を見た。
なんだろう?

「盗賊、また胡散臭い話ではないでしょうね?」
「前回みたいなのはごめんだぞ」

……思い出した。
前回の、あの強敵を倒すとき。
突き放された瞬間、盗賊に胸を……

「大丈夫大丈夫。今回はそんなに危険じゃないって。ここから南へ行くと、ギルティス川の近くに沼地があるだろ? そこにある洞窟へ、あるものをとりにいってくるっていう、簡単なお使いさ」

さりげない仕草だったけど、思い返せばあれは故意だったのかもしれない。
突き放される瞬間、軽くもまれたような気もする。

「ん、どうした弓兵。なんだか目が怖いんだが……ぬめぬめした怪物は苦手か?」
「ちょっと、思い出したことがあって」
「どうせお前が弓兵に睨まれるようなことでもしたんだろ。いやらしいこととか」
「まさか、弓兵さんに破廉恥なことをしたんですか!?」
「待て待てお前ら。やましいことは何もしてないぞ!」

助けを求めるように、盗賊が私を見ている。
つられて、剣士と魔術師も私を見た。

「……何も、っていうのは、正確じゃないんじゃない?」
「盗賊ー!」
「愚かだとは思っていましたが、仲間に手を出す下劣な輩だったとは……」
「まあ、俺はいつかやるんじゃないかと思ってたけどな」
「弓兵、誤解を招くような言い方しないで、本当のことを言ってくれよ!」

再び、三人が私に注目した。

「何もしてなくは、ないよねぇ? あんなことしといて」
「盗賊、ちょっと表へ出ろ」

剣士がにこやかに笑っている。

「待て待て! 引っ張るな、オレは怪我人だぞ! いててて……ほら、痛いんだって!  腹がー、腹がー! ……な?」
「弓兵、魔術師、ちょっと席外すぜ。外で盗賊と話し合いをしてくる」
「痛い、痛いって! ひっぱるな! 話し合いって、お前の場合は言葉じゃなくて、拳でだろうがぁぁぁ……」

剣士は嬉しそうに盗賊の首根っこを捕まえて、そのままずるずると酒場の外にひっぱっていく。

「若いっていいですねぇ」

二人を見送りながら、同じような歳のはずの魔術師がしみじみとつぶやいた。

395プチ:2007/09/15(土) 17:45:12 ID:.opVjpMU0
「あ、あの……」

おずおずと、ひとりの少女が声をかけてきた。
たしか、この店で働いている女の子だ。

「なんでしょう、かわいいお嬢さん」

魔術師の言葉に、少女は手に持っていたジョッキを差し出す。

「これ……おかわり、です……」
「ああ、そういえば盗賊が注文していましたね。ありがとうございます」

魔術師は笑顔で少女からジョッキを受け取った。
注文した盗賊がいなかったので、とまどっていたのだろう。

「それで……」
「まだなにか?」
「さっき……沼地の洞窟へ行くって……」
「ええ。くわしい話は聞いていませんが、ちょっとおつかいに行くことになりそうです」
「わたしも連れて行ってください!」

少女が勢いよく頭を下げる。
その真剣な表情からは、なにか事情があるのだと簡単に推測できた。

「ふむ」

魔術師が考え込む。
沼地の洞窟もまた、怪物が住み着いている。
まだ盗賊から仕事の内容を聞いたわけじゃないけど、こんなか弱そうな女の子を怪物から守りつつ探し物をするというのは、いささか骨が折れそうだ。

「なにか事情があるようですが、話してもらえませんか?」

魔術師の勧めで少女は椅子に座ると、静かに語りはじめた。

「わたし、ロマの村から来た……召喚士、です」

396プチ:2007/09/15(土) 17:45:57 ID:.opVjpMU0
彼女によれば、召喚の技を極め、人々の役に立つために村を出てブルンネンシュティグへ来たのだが、右も左もわからない。
そこで酒場で働きながら、街の人の依頼を細々とこなしてきたという。

「冒険者なんだ……」
「ご、ごめんなさい! まだ駆け出しなのに、一人前みたいに冒険者だなんて名乗って……」
「あ、違う違う! そういうことじゃなくって、若いのにすごいなぁって思って」
「え!? あ、そ、そうでしたか。ごめんなさい、早とちりしちゃって……わたし、おっちょこちょいだから……」

若く見える……というよりも、本当に若いんだろうな。
軽くウェーブのかかった銀髪はとても綺麗で、うらやましい。
身体つきも、体術を使う鍛えられた冒険者のそれではなく、本当に年頃の女の子、という感じだ。

「なんでしたら、いま召喚してみせましょうか?」
「え? あ、いいよいいよ。疑ってるわけじゃないから」

まじまじと見ていたのを勘違いされちゃったか。

「それに、酒場の中ではまずいですよ」
「あ! あ、あはは……そうでした。すっかり忘れてました。ごめんなさい」

やんわりとした魔術師の指摘に、召喚士の顔が引きつっている。
酒場のおかみさんは怒ると恐ろしいことが有名で、大王熊も一撃で倒すという評判だ。

「それでですね、つい先日ギルティス川の沼地洞窟に生息する、鉄鱗生物に関する調査の依頼を受けたんですが、怪物が手強くて……」
「その依頼を手伝ってほしい、と?」
「はい……」
「ふむ」

魔術師は再び考え込む。
沈思黙考ののち、魔術師は険しい表情になった。

「失礼ですが、あなたは我々にどれだけ報酬を出すつもりですか」
「えっ、この子からお金をとる気なの!?」
「そうです。残念ながら、無料で手伝えるほど我々の資金は潤沢ではないということ、忘れたわけではないでしょう」
「……ごめん、すっかり忘れてた」

報酬を出せるほど、召喚士がお金を持っているようには見えない。
同じ冒険者なのだから、懐事情も似たようなもののはずだ。
そんな相手から報酬をもらうなんていうのは、気が引ける。

「それでも、この子から報酬をもらうっていうのは、気が引けるわ」
「ふむ……でしたら、召喚士が受けた依頼の報酬から、一部をもらうということでもかまいませんが」
「うーん。でもそれって、額が重要じゃない?」
「そうですね」
「その、報酬のことなんですが、えっと……」

召喚士がごそごそと懐から金貨袋を取り出す。

「い、いま手持ちはこれだけしかないんです」

じゃら、とテーブルの上に金貨袋とおぼしきすかすかの袋が置かれた。
音が軽い。

「これと、あと、依頼の報酬、すべて差し上げます」
「ちょ、ちょっと! それじゃ、あなたの取り分がないじゃない!」
「いえ……できもしない依頼を受けたわたしがすべて悪いので……」
「召喚士ちゃん……」

この子、いい子だ。

「え、えっと、これで足りなかったら、ここで働いてる給金から、少しずつでも……」
「いいの」
「え?」
「報酬は、いらないから」
「えぇぇー!? な、なんでですか!?」
「魔術師も、それでいいわよね?」

魔術師にも同意を求める。

「奇遇ですね。私もそう考え直したところです」
「あ……ありがとうございます……」

召喚士が立ち上がって、おもいっきり頭を下げた。

「でも、まったく差し上げないというのも心苦しいので、えっと……」

そういって、召喚士は再び懐を漁りだす。

「沼地の洞窟で拾った、不思議な宝石をお渡しします」
「不思議な宝石?」

召喚士の懐から宝石が取り出される。
それは前回、盗賊が持ってきたものと同じ光を放つ水晶だった。

397プチ:2007/09/15(土) 17:46:33 ID:.opVjpMU0
「ごめんなざい。もう破廉恥なごどはじまぜん」

戻ってきた盗賊は開口一番、そう謝った。
お酒で真っ赤だった顔に、青あざが増えている。

「こいつ、店を出たらいきなり走って逃げ出そうとしてさ、びっくりしたよ」
「それは自分がやましいことをしたという自覚が少なからずあった、ということですね」
「……だから、悪かったって言ってるのに……っておっと!?」

派手な音をたてて、盗賊がテーブルに倒れかかる。

「いててて……オレとしたことが」
「足元がふらつくほど飲むからよ。テーブルのほうがかわいそうだわ」
「そりゃあんまりだろ、弓兵……」

剣士が盗賊を助け起こす。

「今日は帰って休んだほうがいいんじゃないのか?」
「そうだな……すまんが、そういうことで今日は帰るわ」

同じテーブルについている召喚士についてなにか言うかと思ったけど、盗賊は酒場の出口へと向かう。
なにか、やけに素直だな……

「待ちなさい、盗賊」

魔術師の強い語調に、盗賊の足がぴたりと止まった。

「仕事の話なら、また今度、ってことで……」
「そうではありません。その懐にあるものを出しなさい」
「……いったい、なんのことで?」
「それはこの召喚士の金貨袋です。あなたがくすねていいものではありません」

見れば、テーブルの上にあったはずの金貨袋がない。

「盗賊、お前……」

剣士が盗賊につかつかと歩み寄る。

「まだ話し合いが、足りないみたいだな」

剣士が自分の平手に拳をぱん、ぱん、と打ちつけた。
今度は笑っていない。

「ち、違う違う! これは、よろめいた拍子に、偶然懐に……」
「たしか闇の封印を解いた本のときも、似たようなことを言っていましたねぇ」
「返せよ、それ」
「なんか仕事依頼の手付金かなにかだろ? だったら、みんなの金はオレの金〜、オレの金は酒場の酒代〜、ってことで」
「……返せよ、それ」
「わかったよ! ちょっとからかっただけじゃねぇか。オレが悪かったよ……っと」

掴みかかろうとする剣士に、盗賊が金貨袋を空中にほうり投げた。

「うぉっと! あぶねぇ!」

慌てて剣士がそれをつかむ。

「中身をぶちまけたらどうするつもりだ!」

剣士が袋に気をとられた隙に、盗賊は酒場の戸口まで移動していた。
いつのまに……

「そいじゃ、仕事の件はまた今度ってことで」
「待て!」

剣士の制止に笑顔で手を振って、盗賊は酒場から姿を消した。

「待つのはあなたですよ剣士。とりあえず落ち着きなさい」

魔術師にたしなめられた剣士は、酒場の出口と魔術師の顔を交互に見ていたが、しぶしぶといった感じでテーブルに戻ってくる。

「まったく、あのバカはどうしようもねぇな……で、そちらのかわいいお嬢さんは、酒場の手伝いの子じゃなかったっけ?」

召喚士は椅子から立ち上がると、剣士にペコリとお辞儀をした。

「はい。わたしは、ロマの村から来た、しょ……」
「こらぁぁ!!! ロマっ子! また油売ってるだろ! さっさと料理、運んどくれ!」
「え!? あ! おかみさん、いま行きます!」

厨房の奥から飛んできた怒号に、召喚士はあわてて厨房へ走っていく。

「……ロマの村から来た、ロマっ子?」

怪訝そうな剣士に、魔術師が苦笑いを返した。

398プチ:2007/09/15(土) 17:47:13 ID:.opVjpMU0
「魔女〜?」

剣士が胡散臭そうな声をあげた。

「はい……ダメ、でしょうか?」

召喚士が困った顔をする。

「いや、ダメってわけじゃねぇが……信用できるのか?」
「たぶん……」

召喚士の返答は、なんとも頼りない。
あれから酒場の手伝いが終わるのを待って召喚士と話し合い、依頼を手伝うことで話がまとまった。
水晶を使って沼地洞窟の隠された場所への探索をいっしょに行う、というのが、私たちの報酬だ。
運がよければ、なにかお宝がみつかるかもしれない。

依頼された鉄鱗生物の硬い皮をすんなりと手に入れた私たちは、水晶を使って隠された場所の探索を行うことになった。
しかし戦士、盗賊、司祭の三人は探索ができるような状態ではない。
そこで召喚士の知り合いを紹介してもらうことになり、辻占いをしているという魔女の元へと向かっていた。

「魔女というと聞こえは悪いですが、星魔術を使う、すごい人なんです」
「星魔術ですか。聞いたことはありますが、実際にその使い手がいたんですね。たんなる噂だとばかり思っていました」
「同じ魔術だろ?」

おもしろくなさそうに、剣士がぶっきらぼうに言い放つ。

「いいえ、根本から違います。一般的な魔術は、万物に宿る元素に直接干渉して行います。その元素を司る精霊の眷属を介して元素に干渉するのが、召喚士さんが使う召喚術です」
「へー」
「一方の星魔術は、星の力を借りる術だといわれています」
「星? あの、夜空に浮かんでるやつか?」
「ええ。我々の住むこの世界も、あの夜空に輝く星と同じものらしいのです。夜空に輝く星はもちろんのこと、我々が生きる大地、海、空、動物、植物、そして我々自身をひっくるめたすべてから、力を借り受ける術である、という……」
「なんか、話がでかくないか?」
「我々の知識、常識を超えたところに星魔術があるのは、間違いないでしょう。じつに興味深いですね」

魔術師は嬉しそうな顔をしている。
どうやら魔術師は、未知の知識に触れられることがたまらなく嬉しいらしい。

「あれ? いつもならこの時間には、ここで辻占いをしているんですが……」

ブルンネンシュティグのにぎやかな通りから少し離れた、路地裏。
そこに辻占いの看板はない。

「まあ、約束していたわけじゃないし、こういうこともあるんじゃないか?」
「そうですね。また日を改めて、ということも……」
「待ってー」

声をかけてきたのは、奇抜な服装の女性だった。フリルがたくさんついたスカートに、身体の線を強調する服。

「あ、魔女さん」
「やっほ、召喚士。来るのが占いでわかってたからさー、占いはお休み! 待ってたのよー」
「そうだったんですか。ありがとうございます」

召喚士がていねいに頭を下げた。
その横で、魔術師が固まっている。

「どうしたの?」
「星の神秘が……別次元の知識体系が……やっほ……やっほ……」

ぼそぼそとつぶやいている。
どうやらかなり衝撃を受けているようだ。

私たちより優れた知識を有し、未知の術を操る占い師。
召喚士からそう聞いた魔術師は、もっと大人びた言動や服装をイメージしていたのだろう。
しかし実際は言動が軽くて奇抜な服装、おまけにグラマーだった。
出るところは出て、ひっこむところはひっこんでいるという……
正直、うらやましい。

「私たちの知識、常識を超えてる人だってことは、間違いないんじゃない?」
「た、たしかに……それは間違いなさそうです……」
「あなたたちが召喚士のお仲間さんね。はじめして魔女でーす。よろしくねっ☆」
「おぉ、これぞまさに星魔術……語尾に星が見えるようだ……」

(なぁ……)

魔女に圧倒されつつも、魔術師がいままでの事情を説明していると、横から剣士がひそひそと耳打ちしてきた。

(なによ)
(魔女ってのも、あんがい悪くないな)
(はぁ?)

召喚士から魔女のことを聞かされたとき、剣士が一番胡散臭そうな顔をしていたのに。

(かなり、大きいよな……)

剣士の視線の先には、ふくよかで形のよい魔女のバストがあった。

「痛ぇ!」

剣士のみぞおちに肘鉄を食らわせる。

男はこれだから……まったくもう。

399プチ:2007/09/15(土) 17:48:26 ID:.opVjpMU0
「こ、ここです。ここの壁が水晶と反応してる……みたいです」

私、剣士、魔術師の三人に、召喚士と魔女を加えた一行は、地下墓地のときと同じように水晶と反応する場所まで来ていた。
各自が装備の最終点検をしている。
今回は司祭が同行しないこと、前回の経験から、一度入ると戻ってこれない可能性を考慮して、回復薬などの消耗品をかなり多めにザックに詰め込んでいた。
ただし矢は矢筒にあるだけ。ザックに予備の矢はない。
私に物理的な矢はもう必要ないのだ。
矢筒に少し矢が入っているのは、その重みが魔法の矢を作り出す精神的な手助けになるから入れているだけで、必要がない限り使う気はない。

「弓兵さん。魔法の矢、今回はいけますか?」
「ええ」

手早く点検を終えた魔術師が声をかけてきた。
召喚士と魔女は、何事か話し合っている。
その横で、剣士は召喚士によって呼び出された火の召喚獣ケルビーとにらめっこをしていた。

「最初は少し集中する必要があるけど、それ以降はあまり意識せずに撃てるよ」
「そうですか、それはよかった。頼りにしてます」

うんうんと、嬉しそうに魔術師が頷いている。

「でも、どうしてあのとき、教えてくれなかったの?」
「なんのことですか」
「エリプトの傭兵には、魔法の矢を射る魔術が伝わっているって……」
「ああ、そのことですか」

魔術師が少し難しそうな顔をして腕を組んだ。
ここにくる前、ブルンネンシュティグの街で回復薬などの消耗品を補充するついでに、武具の店で弓の具合を見てもらっている。
そのさい、店の主人に矢の補充を聞かれたので、魔法の矢のことを話したところ、魔法の矢を主な攻撃手段として使用する弓兵は、エリプト傭兵の中で少なくないと聞いたのだ。
矢を買ってくれるお得意様がこれでまたひとり減ったと、主人は苦笑いしていたが。

「我々スマグの魔術師は魔術を体系立てて理解し、学習していくのですが、エリプトの魔術はそれを必要としません」
「学習を、必要としない?」
「スマグの魔術は学問ですが、エリプトの魔術は必要と経験から生み出された、いわば技術の延長。誰かに教えられて、または自ら知り得て術を行使するのではなく、体得するのが筋というもの」

たしかに、私には魔術の知識はほとんどない。しかし、魔法の矢を撃つことはできる。

「もっともあの状況下で、エリプト傭兵に伝わる技術の歴史を語るなんてことは考えもつかなかった、というのが本音です。たしかに、あなたには元々できる素質があるのだと伝えていれば、魔法の矢を会得する可能性は増したのでしょうが」

お恥ずかしい限りですと、魔術師はひかえめに笑った。
普段は穏やかな魔術師も、生きるために必死だったのだ。

「ありがとう」
「いいえ、礼を言うのはこちらですよ。あなたが魔法の矢に開眼しなければ、私たちは全滅していました」

剣士と戦士があの巨大な骸骨を押さえつけ、私が魔法の矢を何発も浴びせ続けた。
まさしく、動かなくなるまで。

「思えば、あの迷宮の存在自体が大きな罠だったのかもしれませんね」
「罠……?」

そういわれれば、そうかもしれない。
一度入ったら出られない、逃げ戻ることはできない構造。
あそこで死んだ冒険者たちは、檻の個室に閉じ込められる。
無謀な挑戦をした自らを呪って、動く骸骨として蘇るまで。
私たちのような人種がいる限り、不死の骸骨は供給され続ける。
まさしく、理想的な罠ではないだろうか。

「そうかもしれないね」

しかし私たちは、罠かもしれない場所へまた赴こうとしている。
地下墓地では死の瀬戸際を体験した。
仲間の命も危険にさらした。
それなのに。

「みなさん、準備はよろしいでしょうか?」

いつのまにか、召喚士と魔女の話し合いは終わっていたようだ。
召喚士がみんなの顔を見回す。

「俺は準備いいぜ」
「私もいつでもいいですよ」

なぜ、危険な場所へ行くのか。
その問いへの答えは、まだない。

「あたしもおっけーだよー」

だからこそ、なのかもしれない。
その答えをみつけるために。

「行きましょう」

召喚士の言葉に、私は大きく頷いた。

400◇68hJrjtY:2007/09/16(日) 01:23:20 ID:waotoGf.0
>プチさん
前回の墓地秘密パーティの面々の再登場に喜んでおります、こんばんは。
もう彼らは"いきずり"から"仲間"になったんだなぁと微笑ましいです(*´д`)
また秘密マニアな私には順々に秘密ダンジョンに潜入する彼らの探索行も読んでいて楽しいです。
新登場というわけでリトルとサマナもパーティに加入した感じですね。
ギルディル川…というと沼秘密ですね。サマナたんの受けた依頼も気になるところですが…。
続きの展開を期待しています。

401之神:2007/09/23(日) 13:19:12 ID:0nlleK.60

リアル


さて、どうするか。
俺の疑問は一つ、ここはどこだ?
見覚えがある町並み、人物、街を行き交うカーペット・・・・
カーペット・・・?まさか・・・・
そう、俺は古都にいた。


俺はいつものように部屋にこもってRSをやっていた。
楽しい狩りやGVを、そうだ、現実よりずっと楽しいをこの世界を・・・
俺は思ったね。RSの世界が現実になればいいと。人は俺を廃人様とか言うが、知ったことでは無いな。
楽しんだ者の勝ちだよ、うん。
正直リアルにはうんざりしていた。いいことなんか1つも無い。
こっちが現実なら・・・・そうして冒頭に至るわけで。

自分は戦士だった。ああ、メインがコレだからね。
しかしゲームじゃ分からないが、実際戦士のこの格好がこんなにツラいとはね。
こんな格好で街を歩くなんて思ってなかったよ、少なくとも昨日まではな・・・
リアルでは自信の持てない俺の顔も、こっちじゃいいツラになっている。・・・のだが・・・
当然俺と同じ顔のやつがいっぱいいるからな、剣士や戦士に会うたびにドキドキしてしまうよ。

俺は一瞬思った。
『リアルに戻りたい』
でも、俺の望んだ現実がここにはある。
ま、とりあえず戻れるだろうし、しばらくこっちを楽しむとするかな。
剣士のこの格好は恥ずかしくてたまらなかったが、思わぬ副産物もこの世界は届けてくれた。アーチャーやランサーなどの美貌が目の前を通って行く。しかも、鎧は木鎧で。皆は変態だの最低だの思うかもしれないがな、実際この状況に出くわしてみろってんだ!目の前をスタイル抜群なお姉さまがたくさん通って行くんだ。座るポーズなんか見せられたらもう勃(ry
・・・・顔が同じなのを除けば・・・・・Good Job!
まぁいいことばかりでもなく、BISのイカツイ装甲がガチャガチャ音を立てて走っていったり、わんこが見たことないようなキレ方してたり、テイマーのペットに威嚇されたりと、現実じゃ確かに味わえない事がたくさんあった。俺は、楽しかった。

402之神:2007/09/23(日) 13:20:33 ID:0nlleK.60
さて、楽しいゲーム世界の探索も終わりにすることにした。正直腹が減ってね、歩き疲れたし・・・。しかし俺は気がついてしまった。
メシ、どこで食えるんだ?
俺が知っているのは、クッキーにキャンディーにケーキ。あとシュトラのフィッシュエッグ。それ以外に覚えている食料が無い。
などと心配することも無かった。定食屋のようなところに列ができている。金はあるし、俺は早速この世界の味を堪能することにした・・・・・。
時間ではもう夜の10時、さぁ寝るかっ・・・・・。宿屋などこの町には無い。そう、ゲームに従うならば野宿だ。街中や狩場関係なく泡を吹いているのがゲーム。なので、木にもたれかかって寝ることにする。それじゃ、十分楽しかったし、このまま夢落ちって事で頼むよ筆者!


おいおい、どういうことだよ。起きた俺は木によりかかっていた。
これはやっぱりマズぃ。うるさい叫び、終わらない昼の中で俺は思った。帰る方法が分からない上、この世界でやっていける自身が無い。自分の手帳の友達リストを確認すると、友達がいるようだった。でも、耳打ちのやり方が分からないな・・・・
まさか/ に半角スペースで・・・・んなワケないし・・・。まったく不便な物である。操作と実際は全く違う。しかし物は試し、というかとにかくやってみることにした。人がいない所で、ね。
ゲームの世界観から分かるように、ケータイとかは無いし、自分に奇怪な魔力が宿っており、そのパワーで・・・・ってワケでも無い。手帳に向かって話してみるが、やっててバカらしい。
F1で質問でもしたいところだが、そんなキーも無い。もう構わない、ここはゲームだ!と割り切り、頭の中で友の名前を呼ぶ。
なんとまぁあっさり、返事が来た。なんでもアリだな、この世界。
耳打ちなんて名前は改善したほうがいいな。これじゃ念力とか、テレパシーのほうが合ってる。しかしこの耳打ち、思ったことが相手に伝わるらしい。
「おい、いきなりテレパシーとか言い始めて、大丈夫か?」
悪いが大丈夫じゃ無いな。もうこの世界から出たくてたまらない気分だよ。
「引退はまだ早いぜ?Lv600目指してるって言ってたじゃねぇか」
そういう意味にも聞こえるか・・・・
俺が今言ったのは、文字通りの意味で、この世界から出たいって事だ。
「ハッ。頭大丈夫か?精神科にでも付き添ってやろうか?」
それじゃまず起こしてほしいね、この夢から。お前は、当たり前だが今パソコンの前だろ?
「パソコンの前じゃなきゃなんの前にいてお前と会話できるんだよ。本当にどうかしてるぞ」
そ、っか・・・・ありがとな。んじゃまた。

今分かった事が一つ。この世界にいるのは俺だけ、ほかの人はいつもと変わらずPCの前でRSをやってるワケか・・・。つまり、世界が変わったとかじゃなくて、俺だけが飛ばされた、って事だな。

403之神:2007/09/23(日) 13:21:53 ID:0nlleK.60
リアルでは俺はどーなってるんだろうなぁ。意識不明とか、それこそ死んでるとか・・・・
そんな事を考えていると、別の友人から耳(テレパシーかと俺は思っている)がきた。
「遺跡がめずらしくガラガラだよ。一緒に狩らない?」
狩るって・・・俺はなんにも・・・いや、俺も行く。
「OKOK それじゃアリアンの右マップのアリアン入り口にいて。私も行くからっ」
了解。
さて、俺がハリケンだのディレイだの、ましてやドラツイなど、出来るとは思っていない。まぁゲームだし、なんでもアリなこの世界なら出来るのかなー・・・・。
カーペットに乗って遺跡まで行く。が、オープンカーとかそんなレベルでは無い。布切れ一枚の上に胡座をかいて飛んで行くのだ。振り落とされそうになる上、風が強すぎて前が見えない。まったく、現実はキビシイものよ・・・
愚痴りながらも到着した・・・・のだが。自分の物とは思えないような筋肉質な身体が巨大な斧を軽々しく持ち上げる。おお、すげぇすげぇ。などと歓心していると、友達から
「今日は変な事言うねぇ」などと言われるので自重することにした。
抵抗装備などとは言っても、所詮抵抗に過ぎない。容赦無く業火を浴びせてくるレイスに斬りつけている俺だが、スキルが使えない・・・。
「打ち下ろしばっかやってないでディレイとか打ってよ!」と、言われてもなぁ。
頭の中でディレイのグラを想像していると、俺の身体はそれを実行していた。

忘れていた、この世界では想像すれば実行できる・・・・。フッ、なんとまぁ都合のいい世界な事か・・・。
友達がAFKするそうだ。キャラはアチャ・・・。ま、ゲームだし・・・ちょっとくらい・・・・。
近くで見るとそれはまた美しい体で、少し汗っぽい体などをみて興奮してきた俺は、気がついたら鎧を脱がせていた・・・。んー許せアチャさん。男の本能が黙っちゃいないんだっ!
廃人であり童○な俺は、女性の裸を見るだけでクラクラしている。情けない。さぁてじっくり味わうぞーっと手をかけた瞬間。
「ただいま」
あ、おかえり・・・・・って・・・
いつの間に鎧を着て普通な顔して目の前に立っていた。うーむ、惜しかった・・・。


さて、狩りも終盤、ヘラヘラしているとPOTが無いことに気がついた。飲むと斬り付けられた身体のキズも回復してしまう素晴らしい飲料である。
ここで、試しに死んでみることにした。死ぬ体験なんてそうそうできないしな。天国ってのを見てみたいし。
敵の群れに突っ込む、同時に激痛が走る。ああ、骨折とかの痛みじゃないな、コレ。
意識が遠のいている割に、平気で話せるのは仕様なのか。それじゃあこのまま寝てしまおう、俺は遠のく意識に任せて眠りについた。

天国はおろか地獄も見れなかった。そして起きた俺はベッドの上だった。
ん・・・俺の部屋・・・・か。夢落ちってやつか、いや待て・・・。時計を見る。
今日は9/24か・・・・って、俺は寝たとしたら22日だったような・・・。
俺は2日も寝ていたのか、いやはや呆れる。ここまで話を盛り上げておいて夢なんて形で終わりにするとは、筆者ももう少し考えたらどうだ。
PCの電源を入れてRSを起動する。メインのステを見ると、デスペナが残っていた。

後にいろいろ調べてみたのだが、夢とは本人の感情、思いなどが反映されることがあるらしい。俺の現実逃避の思いが2日に渡る夢を見させていたのかもしれない。いや、たぶんそうであろう。AFKのアチャさんで最後まで行きたかった事を除けば戻ってこれてよかったと思ってる。いや、ゲームはやる側でいいと実感したよ。それにしても、これで少しはリアルに希望が持てるといいのだが・・・・そうも行かない所が俺であって、またPCに向かっているのであった。




はい、お久しぶりです。なんか書きたい事を書こうとすると上手くまとまりません;
自分はこの主人公みたいにならないように気をつけます・・・・はい。

404◇68hJrjtY:2007/09/23(日) 20:33:21 ID:UkMit9uI0
>之神さん
またも(色んな意味で)リアルな小説、ありがとうございます。
でもこうして考えるとRSの中に入ってしまうというのは怖いものだなぁとつくづく思います。
ちょっと夢見たり、この小説の中の戦士君みたいにあらぬ妄想に耽るのはいいかもしれませんが(笑)、
果たしてそれが現実になってしまったら…つまりはゲームとリアルの入れ替わりと考えるとちょっと怖いですね。
半引退中の今でこそ見ませんが、前は私もRSの夢を見たこともあったりなかったりしたものですorz

405之神:2007/09/24(月) 11:25:56 ID:KawfF4/o0
長編ってのがなかなか書けないです・・・・。
いつも読みきりになってしまう(・ω・`
話の内容とか世界観っぽいものは変える気はありませんが・・・
ほかの人が書いてるような内容の話が思いつかない;
ヒネくれてるのかな、自分orz
◇68hJrjtYさん、感想ありがとですb

406◇68hJrjtY:2007/09/24(月) 18:10:44 ID:VQbQt9DU0
>405
感想では無いですが…
それはヒネくれてるとかではなく、之神さん独自の「味」だと思いますよ。個性と言いますか。

それと。長編が大変なのは見た目だけで、案外書いてしまうとすらすらいけたりしますよヽ(´ー`)ノ
登場キャラとか設定なんかが細かいとある意味では短編より話を考えるのが楽ですしね。
ただ、どのあたりで終わらせるかとか色々別の問題も出てきてしまいますが(苦笑)
このスレへのUP目的ではなく、個人的に書いてみるのがおすすめですよ^^

407名無しさん:2007/09/25(火) 15:07:51 ID:M6pSzzGo0
http://jbbs.livedoor.jp/game/36824/
よかったら来てくださいね。

408プチ:2007/09/26(水) 22:40:11 ID:bUacyKFs0
おひさしぶりですープチですー。

『男の性(さが)』は『信じれば、そこにある』の後日談/続編となります。
いつもは最後にタイトル&スキルがつきますが、今回は前編なのでまだつきません。
気長にお待ちください〜。

そして痛恨のミス……ギルティス→ギルディル
うろ覚えの記憶が恨めしい!!!

>◇68hJrjtYさん
>サマナたんの受けた依頼

Lv20↑で、古都にいるリファシェランから受けられるクエスト『鉄鱗生物に関する噂』です。


後編がなかなかまとまらなくて……

409名無しさん:2007/09/26(水) 23:03:14 ID:8cqS4Ub.0
>>

410◇68hJrjtY:2007/09/27(木) 05:06:16 ID:iB1FOPu.0
>プチさん
いえいえ。ゆっくりでも構いませんよ!
クエストの方はあれですね、確か最後にマグ手が貰えたような。
その時点では装備レベルがむちゃくちゃ高くて泣いた記憶が(笑)
クエスト自体は知っていたのですが、お話の中でどのように描いてくれるのかなぁと思ったのです。
誤解させるレス、申し訳ない _| ̄|○ il||li

411 ◆21RFz91GTE:2007/09/28(金) 02:50:58 ID:xpivRkWM0
…。(´・ω・)
お久しぶりです、21Rです…。(´・ω・)
仕事が忙しくて顔出しできませんでしたorz

なんだか、ものすごく中途半端なところで止まってて申し訳ないですorz
きちんと完結させますのでキリン並に長い首で(何)お待ちくださいorz

>>405
長編を書くのは確かに難しいかもしれませんが、基本短編と同じですよ〜
短編の後に話が思い浮かべればそのまま続編物になりますし、何とか書いて行けば
何とかなりますよ(ぁ
伏線の張り方や、何処で伏線張ったかをメモしておけばおのずと書けるもんですよ〜

そんな伏線だらけでマトメ切れない俺乙orz

と言うわけで、仕事も一段落付いたので投稿再開しますね〜

412プチ:2007/09/28(金) 16:01:34 ID:bUacyKFs0
『男の性(さが)』後編、いきます

413プチ:2007/09/28(金) 16:03:37 ID:bUacyKFs0


私たちは水晶の粉を振りかけ、魔法によって閉ざされた岩の一面を抜けた。
進んだ先は同じようなじめじめした洞窟が続いていたが、前回の地下墓地の迷路とは大きく異なっていることがあった。

「……先客?」

冒険者とおぼしき格好をした男女が三人いたのだ。
地面に腰を下ろした女性のそばに男性が立ち、少しはなれたところに女性の背中が見えた。

「あなた方は、冒険者のパーティですか」
「そうだけど……あんたたち、同業者?」
「安心してください。違いますよ」

男性の言葉を聞いた剣士は警戒を解いて、剣を鞘に収めた。
後から入ってきた冒険者のパーティが先に入っていたパーティと鉢合わせした場合、たいがい、いざこざが起きるからだ。
場所や財宝に関する権利を主張しあったりして、ひどいときには冒険者同士で戦うなんてこともあるという。

「私は傭兵のビゼンペルト。あちらで見張りをしているのがミスティー、座っているのが」
「アイナだよ。自己紹介ぐらい自分でできる」

さっきは遠目でわからなかったが、よく見ればアイナさんの顔色が悪い。
脂汗が浮かんでいる。

「アイナ、そういう言い方は……」

ビゼンペルトさんが声をかけるが、アイナさんは黙ってそっぽを向いてしまった。
少し離れた場所に立っているミスティーさんは一度こちらを見ただけで、あとはずっと柵の外側を警戒している。

「いやぁ、恥ずかしいところをお見せしてすみません。我々はブルンネンシュティグの議員ブルームに雇われて、ギルディル川周辺に発生した異常の原因を調査しにきたのです」
「調査、ね」
「はい。最近、川魚や野うさぎなどの小さな動物が大量に死んでいるのが発見されたのです。その被害は拡大していて、人間にも及ぶ可能性があるということで、その原因を探り、可能なら解決するというのが依頼内容です」
「ふーん」

剣士が興味なさげに相槌を打つ。

「んで、その原因とやらはわかったのか?」
「ええ……」

ビゼンペルトさんが顔を曇らせ、ちらりとアイナさんのほうを見る。

「我々は調査の結果、動物たちがみな毒によって死んでいることを確かめました。そしてその毒が、最近生まれた若い飛海月によるものだと突き止めたのです」
「ほー、やるじゃん」
「ここに棲む若い飛海月は、通常の飛海月より刺胞細胞が異常に発達しています。刺胞は通常の飛海月に比べて驚くほど過剰に反応し、強力な毒素をありえないほど多量に……」
「ちょっと待った」

剣士がなおも語ろうとするビゼンペルトさんをさえぎった。

「そういう話は担当がいるんだ。魔術師、あとよろしく」
「そうくるんじゃないかと思っていましたよ」

それまで黙って話に耳を傾けていた魔術師が進み出る。

「続けてもよろしいでしょうか?」
「まあ、だいたいの事情はわかりました。ようするに、その異常発生した飛海月を退治するためにここまで来た、ということですね?」
「その通りです。この孵化場の外にいた、異常発達した飛海月たちは私たちが処理したので、あとは今この孵化場にいる若い飛海月、飛海月の卵とその母体である女王海月を退治すればいいのですが……」
「こともあろうにそこの男、女王海月を倒せないとかぬかしやがったんだ! こいつがもたもたしていたおかげで、俺はこのザマさ……」

アイナさんが憎々しげにビゼンペルトさんを睨みつけていた。
アイナさん、毒にやられたのか。

「そうだったのですか。倒せないというのは、戦力不足が原因で?」
「いえ……話せば長くなるのですが、私、子供のころペットを飼っておりまして」
「できれば関係ない昔話は、はぶいてもらえるとありがたいのですが」
「いえ、これが関係大ありなのです。そのペットの名前はゼニというのですが、珍しいピンク色の飛海月で」
「ちょっと待った」

剣士がビゼンペルトさんの話をさえぎった。
塩と砂糖を間違えていれたことがわかっているシチューを味見するときみたいな顔をしている。

「なんでしょう?」
「育てきれなくなって捨てたペットが、その女王海月だった、とかいうベタなオチじゃないよな?」
「よくわかりましたね! そのとおりです!」

やっぱり、という文字が剣士の顔にありありと書かれていた。

414プチ:2007/09/28(金) 16:04:31 ID:bUacyKFs0


「はじめはかわいがって育てていたんですが、あれよあれよと大きくなり、餌代も馬鹿にならないということで、泣く泣くこの洞窟へ置き去りにしたのです。そりゃあもう身が引き裂かれる思いでしたよ」
「ふむ」
「ペットとして育てられた飛海月ですから、野生では生きていけないと思っていたのですが、そこはさすが私の育てたゼニ、他の女王候補の飛海月どもを蹴散らして、この洞窟の女王となっていたんです」

嬉しそうに言うビゼンペルトさんに、アイナさんを含めた全員が呆れ顔になった。

「えーっと、つまり異常の原因は、ビゼンペルトさん、ということですか?」
「いやぁ、お恥ずかしい限りです」
「お恥ずかしい限りです、じゃねーだろうが!」

アイナさんがビゼンペルトさんを怒鳴りつけた。

「自分が蒔いた種なんだから、自分で決着つけろよ! それが元飼い主の責任だろ!?」
「そうは言っても、あのピンク色の半透明の頭……触るとヒリヒリ痺れる柔らかな触手……それがふわふわと浮いているなんて、すばらしい癒し効果じゃないですか。そうでしょう?」
「……はいはい、そうですね」

アイナさんが呆れている。

「この馬鹿がこんな調子だから、いったんここまで引き返してきたんだけど、途中でちょっとドジってね。俺が蠍の毒にやられちまった」
「あ、あの……解毒剤でしたら、わたし、持ってますけど……」

召喚士がザックを漁っている。

「心配いらないよ、解毒剤ならもう飲んだ。強力な毒らしくて、動くと痺れるんでね、おさまるまで休憩してるだけさ」
「あ、そですか。よかった……」
「しかし、蠍ですか」
「ああ。ここは飛海月の産卵場であると同時に、蠍の生息地でもあるんだ。お互い餌にならないから共存してるんだな」

魔術師が険しい表情になる。
蠍といえば、小さなものでも子犬ほどの大きさがあり、攻撃的な性格で、外骨格である殻は硬く、毒の一刺しもあるというやっかいな怪物だ。

「そこで、みなさんにお願いがあるのですが……」
「代わりに飛海月たちを退治してくれ、ですか?」
「そのとおりです」
「それは、あなたの元ペットだったゼニも含めて、ということになりますが」
「ええ。倒さなければいけないこともわかっています。しかし子供のころかわいがっていたゼニに刃を向けるなんてこと、私には無理です。ですから、私に代わって、ゼニを……消してください」

ビゼンペルトさんの話を聞き終わった魔術師が、ふむ、とお決まりのポーズで腕を組んだ。

415プチ:2007/09/28(金) 16:05:38 ID:bUacyKFs0


「どうしますか、みなさん?」

魔術師が私たちをゆっくりと見回す。

「俺はかまわないぜ」

剣士が剣の柄をぽんと叩く。

「こいつでぶった斬るだけのことだからな」
「あなたは簡単でいいですね」
「おう。難しいことを考えるのは全部任せるぜ」
「はぁ……まあ、いいですけど。召喚士さんはどうですか?」
「わ、わたしですか!? えっと、えっと……」

意見を聞かれると思ってなかったのか、召喚士があわてている。

「えっと……ビゼンペルトさんのペットを退治するのは、悲しいです」
「そうですか、無理にとはいいませんが……」
「けど、これは正式な依頼ですね」

そこには若い年頃の女の子ではなく、冒険者の真剣な顔があった。

「わたし、やります」
「ふふ、わかりました。頼りにしています」

召喚士の自信に満ちた断言に、魔術師が微笑む。

「はい。わたし、がんばりますっ」
「魔女さんはどうでしょう?」
「やっるよー☆」

魔女が元気いっぱいガッツポーズで答える。

「わかりました。では最後に……」
「んー……? やっるよー?」
「だ、だから、わかりましたって」
「召喚士のときと対応が違ーう! 冷たいよー!?」

魔女は魔術師の態度にご立腹のようで、不満そうな顔で魔術師に詰め寄る。

「どゆこと!?」
「え、えーと……そ、その件については後日改めて、ということで」
「あー、流そうとしてる!」
「……きゅ、弓兵さんはどうでしょう?」

魔術師の声が裏返っている。

「私は、対応が違う理由を教えてあげるべきだと思うけど」
「きゅ、弓兵さん……あなたって人は……」
「そうだそうだー! 差別反対ー」

はぁ、と魔術師が大きなため息をつく。

「では言わせてもらいますが」
「うんうん」
「そんなに近づかれたら目のやり場に困るんですよ……」

そう言って魔術師が魔女から目をそらした。
そういえば、魔女は魔術師に密着する寸前まで近づいている。
魔女が着ているドレスは胸の部分が大胆にカットされているので、そこから豊満な谷間が見て取れた。

「それって、ひょっとして……」
「ひょっとして……じゃありません! もう少し、その……露出の少ない洋服はないんですかっ」

魔術師、顔が真っ赤だ。
意外にウブらしい。
言われた魔女も、少し顔が赤い。

「いーじゃねーか。俺はそのドレス、似合ってると思うぜ。目のほよぅぐべぇっ!」

鼻の下を思いっきり伸ばした剣士の向こう脛を蹴りつけると、剣士は足をおさえてごろごろと地面を転げまわった。

「まあ、個人の趣味嗜好に口を出すのはいかがなものかと思いますし、今から着替えを用意するのも無理がありますし、服装と冒険者としての腕は無関係なわけで、腕さえ良ければ私は……」
「じゃあ、どんどん見ていいよ!」

そう言って、魔女は魔術師の背中に飛びついた。

「なっ!? なぁぁぁああ!?? あ、あた、当たって! あた、た、たっ、た……」

魔術師の背中でやわらかくつぶれる、熟れた2つの乳房。

「魔女、さすがにそれはやりすぎじゃない?」
「いーのいーの、荒療治だから♪」
「あた、あた、あたた、ち、ち、あ、ま、ち、あ、ち……」

耳まで真っ赤な魔術師は、壊れた機械みたいになっている。

「いいなぁ……」

いつのまに復活したのか、地面に転がったままの剣士が魔術師に抱きつく魔女を眺めていた。
鼻の下を伸ばして。

416プチ:2007/09/28(金) 16:06:26 ID:bUacyKFs0


「あのぉ〜」

ビゼンペルトさんが申し訳なさそうに声をかけてくる。

「あ、ビ、ビ、ゼンペ、ルトさっ。あ、あのっ、のっ、の」
「免疫ないんだねー。いじりがいあるわぁ〜」

魔女はいまだに魔術師の背中にくっついたままだ。
魔術師はビゼンペルトさんの言葉に応えようとするが、まともにしゃべれていない。

「ビゼンペルトさん、この依頼、引き受けます」

顔を真っ赤にしたままの魔術師に代わって、私が応える。

「少々ですが報酬も支払いますので、どうかよろしくお願いします」

ビゼンペルトさんが深く頭を下げた。

「わかりました。任せてください」
「あんたら、俺からも頼みがあるんだが、いいか」
「なんですか?」

いくぶん疲れた声で、座っていたアイナさんが声をかけてきた。
顔色は相変わらず悪いが、脂汗は引いたみたいだ。

「飛海月といっしょに、この孵化場にいる蠍も倒してほしいんだ。どうも飛海月の毒が強力になったことで、蠍のほうも凶暴化したらしくてな」
「蠍たちをそのままにしておいても、よくないってこと?」
「ああ。飛海月ほど行動範囲が広くないからそれほど被害は出てないが、飛海月を全部片付けたらここは蠍の天下になる。それで凶暴化した蠍が増殖してたんじゃ、飛海月を倒す意味がねぇ」
「それじゃあ、そっちも任せといてくださいな」
「たのんだぜ。俺たちはここで被害が広がらないように見張ってるから、早めに片付けてきてくれ」
「わかりました」
「やっとまとまったな。それじゃ、行こうぜ!」

剣士が意気揚々と柵のほうへ歩いていく。
話は聞こえていたのだろう、ミスティーさんが柵の扉を開けた。

「必ずすべて処分しなければならないんだよ。わかった?」
「おっけおっけー、任せとけって! それじゃ、いくぞー!」
「おー♪」

いままで魔術師にくっついていた魔女がぱっと離れて、剣士の後を追った。
息を整えている魔術師の顔を、召喚士が心配そうに覗き込む。

「あ、あの……魔術師さん、大丈夫ですか」
「ええ、なんとか……召喚士さん、本当にあの人、腕はたしかなんでしょうね?」
「え、えと……大丈夫だと、思います……」
「その言葉、信じましょう」

大きく息を吐くと、魔術師は歩き出した。
召喚士が消えそうな声で、たぶん、とつぶやいたのを、私は聞き逃さなかった。

417プチ:2007/09/28(金) 16:08:09 ID:bUacyKFs0
「お願いっ、ケルビー!」
「承知」

火の召喚獣ケルビーが、飛海月の群れへ矢のように飛び込んでいった。
飛海月の柔らかい身体を牙で引き裂き、槍の穂先のようになった鋭い尾の一撃が貫く。

「オレも負けてられねぇぜ! うぉおおお!」

水平、垂直、袈裟斬りと、剣士は連続で剣撃を繰り出した。
その動きは目を凝らして見なければわからないほど素早く、飛海月はなすすべもなく切り刻まれていく。

「追い討ちいっくよぉ! それー☆」

魔女が放った星の弾丸がその身体にめり込み、最後の飛海月が力をなくして地面にべしゃりと落ちた。
星の形をした弾丸はキラキラと輝き、見た目には綺麗だが、魔法によって硬質化されているため、飛海月の身体をやすやすと突き破る威力がある。

「これは……強いですねぇ」

炎の付与魔術をかけたあと、魔術師は援護するために火球の呪文を唱えたが、現れた火球は目標を失って霧散した。
私も魔法の矢を数発しか撃っていない。

「この調子で、どんどん進もうぜ〜」
「待って」
「ん?」

歩き出そうとする剣士を止めて、魔女が何事かつぶやき、楽団を指揮するように魔術棒を優雅に振った。

「ほい、おっけー」
「なんだ?」
「ちょっとしたおまじないだよー」
「おまじないって、あれ……? さっきまで感じなかったけど、あの辺り『通ってはいけない気がする』」
「私も同じように感じます……ひょっとして、星魔術ですか?」
「そだよー。星霊界にいる星の精霊に、限定的な予知の力を借りたの〜」

嫌な感じのする場所を避けて、私たちはゆっくりと進んでいく。

「この感覚は……つまり、危険な場所を判別できるということですか?」
「そゆことー。便利っしょ」

少し自慢げに魔女が胸をそらす。

「す、すごいです、やっぱり魔女さんは、すごいです、尊敬ですっ」
「いやぁまあ、欠点もあるんだけどねぇ」
「というと?」
「ほら、こういう場合」

先頭を歩いていた剣士が立ち止まっている。

「なぁ……道幅全部、『通ってはいけない気がする』んだが」
「わかってても避けられないんじゃ、しょうがないよねぇ」
「なるほど」

418プチ:2007/09/28(金) 16:09:34 ID:bUacyKFs0



召喚士が進み出る。

「ケルビー、お願い」
「承知」

ケルビーがゆっくりと慎重に歩いていく。
パーティの全員が危険を感知できるのだから、ケルビーも同じように感じているに違いない。
しかしケルビーは恐怖を微塵も感じさせず、ゆっくりと慎重に進んでいった。
そして『通ってはいけない気がする』場所へケルビーが前足を踏み入れたとたん。

「目が見えぬ」
「わんこ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですよ。ケルビーは精霊界に帰れば、元気になりますから」

召喚士が笛をケルビーに向かって突き出すと、ケルビーの身体が一瞬燃え上がり、その場から消える。

「帰った……のか?」
「はい。それで、もう一度……」

召喚士が両手を突き出すと、その突き出した先の地面から炎が噴き出す。
炎が複雑な魔法円を描いたかと思うと、そこに再びケルビーが現れた。

「おかえりぃ〜」
「わんこ、大丈夫なのか?」
「心配には及ばぬ」
「おぉー、よかったなぁわんこー!」
「……わんこと呼ぶな」

剣士は再び召喚されたケルビーに抱きつき、ほおずりしている。
表情はわからないが、ケルビーは明らかに迷惑そうな顔をしている気がした。

「ふむ……どうやら、少し濃い毒の霧が原因のようですね」

ケルビーが足を踏み入れた場所にしゃがみこんでいた魔術師が、調べ終えて立ち上がった。

「毒霧?」
「ええ。蠍は通常、突き刺してから毒を注入しますが、稀に毒をそのまま放出することがあります。その放出した毒が空気の流れによって、溜まり場ができているようです」
「毒霧って、そんなに効果が続くものなの?」
「通常はそこまで長く持続しません。毒の効果も弱まって、目が見えなくなる程度なのでしょう。これは推測ですが、蠍が過敏になって毒を放出しまくっているのではないでしょうか」
「メイワクな話よねぇ〜」
「ええ、その通りです。ですから、離れてください魔女さん」

難しい話に飽きていたのか、魔女が魔術師の背中にぶらさがっていた。
また胸があたっている。

「……あれ、反応が鈍い?」
「そういう話はまた今度、暇なときにお願いします」

さすがにからかわれているとわかっているせいか、魔術師はいつもどおりの口調だった。
ただし、顔は赤い。

「じゃあ難しい話もまた今度にしよーよー」
「む……」

思いもよらない切り返しに、魔術師が複雑な顔をする。

「いまのは魔女に一本とられたなー、イケメン」
「私は、原因を調べて、みんなにそれがわかるように説明を……」
「だぁってぇ〜、話長いんだもん」
「たしかに長いよなー」
「わかりました。わかりましたから、離れてください魔女さん」
「や〜だ」
「お、あれ、飛海月の卵じゃないか?」
「うそ、どこどこ?」

魔女はあっさり魔術師を開放すると、卵を見つけた剣士のところへ飛んでいった。

「ほんとだー。踏み潰しちゃえ☆」
「あー、触らないで! 卵といえど毒がある可能性がありますから! 魔法で焼きますから、そのまま、そのままで!」

魔術師があわただしく2人のところへ走っていく。

「弓兵さん……」
「どしたの、召喚士ちゃん?」
「魔術師さんって……苦労するタイプ、ですね……」
「そうね、貧乏くじを引くタイプだわ、あれは」

再び魔女に抱きつかれた魔術師が苦労して火球の呪文を唱えている姿を見ながら、しみじみとつぶやいた。

419プチ:2007/09/28(金) 16:10:36 ID:bUacyKFs0



「くっ、また毒液かよ!」
「うーん、硬いよ〜……」
「みなさん、諦めないで! 少しずつですが、確実に効いてますから!」

しばらく進んだところで、私たちは凶暴化した蠍と対峙した。
飛海月とは比べ物にならない硬さと、やっかいな毒液。
毒を吸い込んでしまうと急激に身体が痺れ、そのたびに回復薬に手を伸ばした。

「召喚、ケルビー! 攻撃! ……召喚解除! 召喚、ケルビー!」

ケルビーは回復薬を飲めないので、体力が低くなるたびに召喚士が召喚を解除したのち、再び召喚し戦わせる。
飛海月にはかなり有効だった剣士の剣と魔女の星撃ちは、その硬い殻に阻まれ、有効な打撃にならない。

「イケメン! 火球で!」
「だからイケメンと呼ばないでください」

魔術師の持つ杖が複雑な軌跡を描き、その杖を頭上に力強く掲げる。

「いきますよ!」

魔術師の頭上に現れた火球は、狙いたがわず蠍に命中した。
炎に包まれた蠍は焼け焦げた臭いを振りまきながら、火球を放った魔術師目がけて、ものすごい速さで近づいてくる。

「待てっ、このっ!」

魔術師に近づこうとする蠍を阻もうとする剣士だが、俊敏な動きでその斬撃をかわされた。
蠍の動きについていけるケルビーの牙も、鎧のような殻に阻まれているようだ。
真剣な表情の魔女が懸命に星の弾丸を撃ちこみ、私も神経を研ぎ澄まして魔法の矢を打ち続けた。

「これでっ!」

魔術師の火球が目前に迫った蠍を再び炎に包む。
魔術師にあと一歩というところで、蠍の足が燃え尽き、動かなくなった。
じたばたともがく蠍に、魔女と私でとどめを刺す。

「まったく、なんて生命力だ」
「昆虫系の生物は、各器官がある程度独立していますからねぇ」
「み、みなさん、あ、あれ……」
「なんだ、って……冗談だろ……」

召喚士が指差す方向を見た剣士が、言葉をなくした。
いまてこずっていた蠍の、何倍もの大きさの蠍がゆっくりと近づいてくる。
牛か馬ほどの大きさで、明らかに人間より大きい。

「昆虫系の生物は、脱皮を繰り返して何倍もの大きさに成長します。さきほどの蠍は幼虫で、あれはさしずめ成虫といったところでしょうか……」

成虫の蠍がその大きなハサミをカチカチいわせながら近づいてくる。
状況を確認しつつ、獲物をさぐっているのだろう。

「やるしかねぇな」

剣士が剣を軽く振って、こびりついた蠍の体液を落とした。

「ケルビー、大丈夫?」
「問題ない」

ケルビーが自分より数倍大きな蠍を見据えて、いつでも飛びかかれるように身構える。

「今回はあたしも前に出るよ」

魔女は魔術棒ではなく、司祭が使うホールを手に、剣士の横に並んだ。

「こっちで直接殴ったほうが、どうやら効果あるみたいだし」

みんなの準備が整うのを見計らって、魔術師が順次、炎の付与魔術をかけていく。

「危ないと思ったら、すぐに下がってくださいね。あの大きさですから、噴き出す毒の範囲は相当広いはずです」
「イケメン、火球の魔術、すぐには使うなよ? やつら、火球の魔術が大好きみたいだからな」
「わかりました。なるべく温存しましょう」

魔術をかけ終わった魔術師が、私を見て軽くうなずく。
それを合図に、私は巨大な蠍めがけて光の矢を解き放った。

420プチ:2007/09/28(金) 16:12:33 ID:bUacyKFs0



「くっ! このっ、これでもかっ!」

剣士の連続斬りを受ける成虫蠍は、まったくひるまない。
小さな蠍ほど動きは早くないが、そのぶん殻は相当硬いようで、剣はことごとく弾かれた。
剣士の剣が弾かれるたびに、鎧に当たったかのような金属音が響く。
魔女が振るうホールは鈍器であるため、硬い殻をものともせず着実にその殻を割った。しかし、もともと非力な魔女の一撃は、前回一緒に冒険した司祭の殴打に遠く及ばない。

「まさに怪物ですねぇ」

隣りにいる魔術師が炎の矢を撃ちながら、くやしそうにもらした。
火球の魔術を使えば大きな被害を与えられるが、そうすると蠍は確実に魔術師を狙ってくる。
体術を学んでいない魔術師が狙われれば、やられるのは目に見えていた。
使いたいのに使えないというその葛藤が、ひしひしと伝わってくる。

「ケルビー!」
「承知」

召喚士の命令を受けて、ケルビーが成虫蠍の頭部にひらりと飛び乗った。
槍のように鋭い尾の一撃が即座に放たれ、成虫蠍の頭部を砕く。
尾による必殺の一撃が当たる寸前で、ケルビーはその場を飛びのいた。

「一撃離脱、やるじゃねぇか!」

まともに挟まれれば胴体すらやすやすと切断しそうなハサミの一撃を、剣士が盾を使ってうまく弾く。
続けざまに突き出した剣が、ケルビーが砕いた頭部の柔らかな部分に深く突き刺さった。

「なにっ!?」

成虫蠍はその突き刺さった剣を、もう片方のハサミでしっかりと掴んだ。
蠍の予想外の行動に、剣士の動きが一瞬止まる。

「危ない!」

魔女が体当たりで剣士を転ばせると、剣士の代わりに魔女がハサミの一撃に吹き飛ばされた。

「魔女!」

剣士が叫びつつ、その場を転がって成虫蠍の攻撃をかわす。
けん制するために飛び出たケルビーが、尾の一撃を受け、その身体がしぼんでいった。

「すみません! ケルビー……やられちゃいました!」

召喚士のくやしそうな叫びが響き渡る。
吹き飛ばされた魔女は、地面に倒れ、ぴくりとも動かない。
私は剣士の剣が突き刺さっている部分をめがけて、魔法の矢を連続で叩き込む。
しかし成虫蠍は地面に転がったままの剣士を襲い続け、その狙いは変わらない。

「ここまでです! 解禁しますよ!」

魔術師は呪文を唱え、頭上に生まれた火球が成虫蠍に命中した。
火球は炸裂し、成虫蠍の身体全体を燃え上がらせる。
成虫蠍は剣士を襲うのをやめ、ゆっくり、ゆっくりと魔術師のほうへ向き直った。

「イケメン!」
「1発2発は覚悟の上です!」

魔術師が杖を突き出すと、刺さったままの剣士の剣に再び炎がまとわりつく。
その瞬間、軽く跳躍して魔術師との距離を一気に詰めた成虫蠍が、魔術師の太ももにその太い針を突きたてた。
ずぶり、と耳をふさぎたくなるような嫌な音をたてて、人差し指ほどの長さと太さがある針が半ばまで突き刺さる。


「ぐぁあああああぁぁっ!」

その衝撃で、魔術師が杖を落とす。
痛みに耐えてなお、魔術師は鬼気迫る笑みを浮かべた。

「こうなることは……計算済みです!」

魔術師は剣士の剣を両手で掴むと、一気に引き抜いた。
成虫蠍が両方のハサミで魔術師を締め上げられ、噴き出した体液まみれになりながらも、魔術師は引き抜いた剣を剣士に向けて転がした。

「これ……で!」
「いま助ける!」

剣士は地面に落ちた剣を走りながら掴むと大きく振りあげ、成虫蠍に向けて打ち下ろす。
まさに、一刀両断。
いままで弾かれていたのが嘘のように、剣士の斬撃は成虫蠍のハサミを根元から切り離した。
剣士は返す刀で成虫蠍を斬り上げたが、成虫蠍は素早く後退してそれを避ける。

「魔術師、動かないで!」

切り離されたハサミは、なおも魔術師をぎりぎりと締め上げる。
私と召喚士は魔術師に駆け寄って、そのハサミをはずそうと力を込めるがびくともしない。
魔術師の顔色が、青ざめた色から、どす黒く変わっていく。

「1対1だ! 来い!」

剣士の叫びに反応したのか、成虫蠍が最後の武器である尾を高く振り上げ、威嚇する。
次の瞬間、成虫蠍は毒を噴き出し、くるりと背を向けて逃げ出した。
剣士は毒霧にかまわず走りこみ、成虫蠍の尾を切り落とし、その胴体に深々と剣を突きたてる。
2度、3度と剣を突き立て、原型がわからなくなるほどぐちゃぐちゃになると、成虫蠍はその動きを止めた。

421プチ:2007/09/28(金) 16:13:37 ID:bUacyKFs0



「剣士〜、おかえり〜」
「イケメン、無事だったか……」
「無事だよ〜」

応急手当を終えて、地面に腰を下ろしていた魔女が、ぎこちない笑顔で剣士を迎える。
剣士が戻ってきたときには、魔術師を苦しめていたハサミはなんとかはずせていた。

「これ……解毒剤、です」
「ありがとうございます」

召喚士から受け取った解毒剤を回復薬で飲み下すと、魔術師は微笑んだ。
しかし明らかに無理をしているのがわかって、よけい痛々しい。

「イケメン……大丈夫か?」
「ええ、覚悟してましたから」

魔術師の太ももからは、いまだに血が流れ出ている。

「吸い出したりとかしたほうがいいの?」
「いえ、吸った人も毒に当たる可能性があるのでやめてください。本当は洗うのが一番いいんですが……」
「ここの沼地の水は、水っていうか毒だしね」
「毒が流れ出るに任せるしかないでしょう。すみませんが、しばらく休憩ということで」
「さんせ〜」

そんななか、剣士が立ちあがった。

「ちょっと、この先に卵がないか調べてくる」
「1人では危険ですよ!」
「大丈夫、気をつけるって。危なくなったら、戦わずにここまで戻ってくる」
「それなら、私も行くよ。2人なら、もしものときもなんとかなるでしょ」

そう言って、私も立ち上がる。

「それならかまいませんが……あまり遠くへは行かないでくださいね」
「わかってるよ」

そうつぶやいた剣士はいつになく険しい表情だった。

422プチ:2007/09/28(金) 16:14:16 ID:bUacyKFs0


「弓兵、なんでついてきたんだ?」

沈んだ表情で飛海月の卵を探す剣士が、ぽつりとつぶやいた。

「なんで、なんて、言わなくてもわかってるくせに」
「オレとふたりっきりになりたかったとか?」
「それはない」
「……冷たすぎるぜ、弓兵」

剣士がわざとらしく、がっくりと肩を落とす。
この辺りには、飛海月の卵はありそうもない。
剣士を促すように、先へ進む。

「おちゃらけないでいいんだよ」
「おちゃらけてなんか……」
「じゃあはっきり言うけど、剣士はさっきの戦いのことを後悔してるでしょ?」

一瞬目を大きく見開いた剣士は、苦笑しながら大きなため息をついた。

「オレ、昔から顔に出やすいんだよなぁ……」
「わかりやすすぎるよ」
「だよなぁ……みんなにも、バレてるよなぁ……」
「だろうね」

とぼとぼと歩く剣士の背中は、いかにも小さい。

「あそこでオレが躊躇していなければ、こんなことにはならなかった……なんて考えてない?」
「……よくわかるな」
「だから、わかりやすいんだって……あ、卵みっけ」

きのこにまぎれて、ビゼンペルトさんに教わった飛海月の卵が見える。

「たしかにあのとき、躊躇したよ。剣を引き抜こうか、手を離そうか、ってな」

剣士が目印をきのこに刻むと、先へ進む。

「考えるんだよ。この盾は、なんのための盾なのかって。肝心なときに、この盾は役に立たない。狙われてないオレが盾を持ってたって、意味がないんだ」
「じゃあ、狙わせればいいんじゃない?」
「……え?」

剣士の歩みがぴたりと止まった。

「だから、狙わせればいいんでしょ? 簡単なことじゃない」
「弓兵、お前そう簡単に言うけどな……」
「難しく考えるなんて、性に合わないんじゃない?」
「……それ、褒めてるのか、けなしてるのか、どっちだ」
「さぁね。お、行き止まりだ」
「戻るか」
「そうだね」

周辺を念入りに調べ、飛海月の卵がないことを確認すると、来た道を引き返す。

「まぁ、ぐちぐち悩んでる剣士なんて、らしくないってこと。それだけよ」
「……そうかもしれないな」

剣士はかすかに微笑むと、私の後を追ってきた。

423プチ:2007/09/28(金) 16:14:51 ID:bUacyKFs0



「おかえりなさい、どうでした?」

いくぶん顔色がよくなった魔術師が、立ち上がって私と剣士を出迎えた。

「卵があったよ。それと、この先は行き止まりだった」
「蠍はいましたか? 成虫級のやつとか」
「あんなのが何匹もごろごろしてたら、いまごろオレと弓兵は食われてるっつーの」
「それもそうですね」

ふむふむ、と魔術師が腕を組んでうなずいている。
今後の探索の計画を立てているに違いない。

「魔術師のほうこそ、もう動いても大丈夫なの?」
「ええ。走ったりするのはきついですが、歩いたり、魔術を行使するぶんにはなんとか」
「よかった……」
「うんうん、よかったよねー☆」

私の言葉に、魔女が安心した表情で同意する。
成虫蠍の強烈ななぎ払いを食らった魔女も、回復したようだ。

「それでは卵を処理してから、引き返してまだ探索してないところへ進みましょう」
「いよいよゼニとご対面ってわけだな」
「かわいいのかなぁ?」
「実際に自分の目で見て確かめてみればいいだろ」
「そだねー」

424プチ:2007/09/28(金) 16:15:23 ID:bUacyKFs0



「かわいくない!」

それが、魔女の判定らしい。
卵を処理したあと道なりに進み、卵を燃やし、飛海月を倒していった。
そしてこの隠された孵化場の中心に位置する場所に、飛海月の女王であるゼニがいた。
ゼニは通常の飛海月よりもふたまわりは大きく、特徴的なピンク色をしている。

「ピンク色でかわいいじゃん」
「だって、つるつるのぷるぷるじゃなくて、ぶよぶよだよ、あれ」
「たしかに、年季が入ってますね」
「お肌の手入れは大事ってことか〜」
「そうですね。さて、今回の作戦はどうします?」

魔術師がみんなを見回す。

「オレは前に出るだけだな」
「あ、はーい。あたし、後ろで星撃ちしまーす」
「えと、ケルビーが、がんばります」
「任せておくがいい」
「私も魔法の矢を射るだけだなー」
「ふむ……わかりました。これが最後の戦いですから、出し惜しみせずに全開でいきましょう」
「りょーかいっ☆」

425プチ:2007/09/28(金) 16:16:32 ID:bUacyKFs0



炎の付与魔術で、火の属性をさらに強化したケルビーが、ゼニへと踊りかかる。
ゼニの身体に牙を突き立て、軽く後ろへ跳んで触手で絡めとられるのをかわした。

「蠍ほどではないな」
「ケルビー!」

一瞬ゼニの身体が発光し、ケルビーの視界を奪う。
ゼニの毒霧がケルビーに向けて噴射されるが、一瞬早く、召喚士は召喚を解除した。

「させない! はぁああああああ!」

召喚士が突き出した両手の先に、燃え上がる魔法円が現れる。
召喚士の呼びかけに応じて、火の召喚獣ケルビーが再びこの世界に姿を現した。

「不覚をとった。次はない」
「ケルビー、お願い!」

ケルビーが再びゼニに向かって駆ける。
魔術師による炎の付与魔術がその身体を包んだ。

「頼みます」
「承知!」
「負けてられない!」

魔女が魔術棒をくるくると振ると、魔女の頭上、虚空の一点が輝き出す。
その輝きが頂点に達したとき、魔女はそれをゼニめがけて放出する。

「流星撃ち!」

星撃ちのときの何倍もの星のかけらが集まって、より強固で速さのある星の弾丸が、ゼニの身体を撃ち抜いた。
その輝きは尾を引いて、まさしく流星のよう。

「あたしだって、やるときはやるんだからっ!」
「みなさん、熱いですねぇ」

魔術師が杖を掲げ、その頭上に火球が現れる。

「現実的な意味で、火球が一番熱いですけど」

ケルビーを絡めとろうとしていた触手を、火球が消し炭に変えた。

「これは……みなさん、気合をいれてください! 再生しますよ!」

触手の様子を見ていた魔術師が、声をあげる。
焼けただれ、力なく垂れ下がっていたはずの触手が、うねうねと動きを取り戻していた。

「言われなくても!」

魔女が応えて、続けざまに星の弾丸を放つ。
私は、平常心。
光り輝く魔法の矢を、ゼニの傷ついたところめがけて、正確に射る。
痛みを感じたのか、ゼニがぶるりとその身体を震わせた。
同時に風を切る鋭い音がして、ゼニから毒液が放たれる。

「くっ」
「大丈夫ですか、弓兵さん!」
「このぐらい、どうってことないわ」

この程度で、精神の集中は途切れない。
代わりに闘志が燃え上がる。

「平常心でいなきゃいけないのに……燃えてきちゃった」

剣士がゆっくりとゼニの前に進み出ると、ゼニに向かって剣を突きつけた。

「オレは決闘を申し込む!」

426プチ:2007/09/28(金) 16:17:10 ID:bUacyKFs0



剣士はゼニの目前で大きな声をあげた。
ゼニは強烈な火球を放つ魔術師に毒液を飛ばそうとしていたが、その叫びの意味がわかったのか、剣士に毒液を飛ばした。

「剣士!」

剣士はその毒液をかわそうとせず、巧みに盾で弾き散らす。

「撃ってこい! お前にオレが倒せるか!」

ゼニの身体が発光し、剣士の視力を奪う。
そこに駆けつけたケルビーが鋭い槍のような尾の一撃で、ゼニの柔らかな身体を穿った。

「お前の攻撃はそんなもんか!? 全力でかかってこい!」

剣士は攻撃もせず、ゼニを意思のこもった、力強い瞳で見つめている。
ゼニが毒霧を放出するが、剣士はその場を一歩も引かない。
炎をまとった流星の弾丸が、ケルビーの穿った穴に食い込んだ。
ゼニがその身体を震わせる。

「この盾は、オレを守るためにあるんじゃないと知った!」

魔法の矢が、その触手のことごとくを射抜いていく。
与える傷が、ゼニの再生速度を上回る。

「この盾で、すべてを守る!」

燃え盛る火球が、ゼニのすべてを包み込み、焼き尽くす。
執拗に剣士に毒霧を吐き出すが、剣士はひるむことなく剣を突きつけ、盾をかざした。

「すべてを防ぎ、すべてを阻む!」

剣士のゆるぎない自信が、折れない意思こそが、一番の脅威。排除すべき最大の敵。
ゼニにはそう思えたのかもしれない。

「この盾がある限り、もう誰も傷つけさせはしない!」

その意思は、想いは、なによりも強固。
どんな鎧よりも硬く、厚く、砕けることを知らない無敵の誓い。

「勝負だ! ゼニ!」

剣士がそう叫んだ瞬間、その場にいる全員が、この戦いの勝利を確信した。

427プチ:2007/09/28(金) 16:18:03 ID:bUacyKFs0



「お宝だー」

ゼニを倒したあと、卵がないか辺りを調べていたとき、魔女が古びた宝箱を発見した。

「まるで、ゼニはこの宝箱を守っていたみたいですね」
「なんか価値のありそうなものがでてきそうじゃない?」
「そうですね」

魔術師が腕を組んで考え込む。

「ねーねー、開けようよー」
「みなさん、私からひとつ提案があるのですが、いいですか?」
「なにー?」
「今回の功労者は、剣士であることは疑いありません。ですから、この宝箱から出てきた価値のあるものは、剣士に譲る、ということで、みなさんどうでしょう?」

魔術師がみんなを見る。
強力な飛海月の女王であるゼニと戦って死人が出なかったのは、ひとえに剣士がその攻撃をすべて受けてくれたからだということは、みんなよくわかっていた。
仮に剣士以外の誰かがその攻撃を受けていたら、耐えられなかっただろうことも。

「わたしは、それでいいと思います」
「あたしもそれでいいよー」
「いいんじゃない?」
「という感じですが、剣士はどうです?」
「……もらえるもんは、ありがたく全部もらうぜ」

剣士は少し顔を赤くして、そっぽを向いた。
照れているのがわかりやすい。

「じゃーあっけるよー☆」
「魔女さん、待ってください。宝箱には罠などがですね……」

魔術師の言葉を最後まで聞かずに、あけたくてうずうずしていた魔女が宝箱に手をかけた。
古びた蝶番がきしむ音をたてる。

「……」
「どうしたの?」

宝箱の中を覗き込んだ魔女が、急にまじめな顔つきになった。

「なんだなんだ、すごい武器でも出てきたか!?」
「持ちきれないほどの金貨とか」
「価値のある古文書かもしれませんね」
「これ……」

魔女が震える手で宝箱からとりだしたのは、円形の容器だった。
鉄でできていて、取っ手が両側についている。

「これは……」
「煮物やシチュー、鍋物を作るときに最適ですね」
「鍋じゃねーか!」
「えぇっと……これだけ?」

魔女の顔がひきつっている。

「それとこれ……」

魔女が震える手で宝箱からとりだしたのは、手袋だった。
見た目で、生地が厚いのがわかる。

「これは……」
「熱くなった鍋を持つときに、最適ですね」
「料理用の手袋じゃねーか!!」
「これ、名前、書いてありますね……」

手袋のところに、チョキー、と刺繍してあるのが見て取れた。

「しかも名前入りかよ!!!」
「これで、全部?」
「うん……これで、全部……」

こらえきれなくなった魔女が、声を押し殺して笑っている。

「剣士……」
「わかったよ、わかった! 全部もらってやるよちくしょー!」

剣士はヤケクソになって鍋を被り、料理用の手袋をつけた。
遠目で見れば、被っているのが鍋だとは気づかれない……かもしれない。

「うぉりゃぁああああ!」

剣士は叫び声をあげて、すごい勢いで素振りをはじめた。
心なしか剣士の剣筋が速くなった気がする。
……気のせいかもしれないが。

「剣士、わりと似合ってますよ」
「知るか! こんなオチ、オレは耐えられん! 帰る!」

ヤケクソぎみの剣士を先頭に、私たちは帰路についた。
 
 
 
 
 
『男の性(さが)〜デュエリング〜』

428プチ:2007/09/28(金) 16:58:51 ID:bUacyKFs0
あらためて見ると、推敲が足りない箇所がいくつかあって、恥ずかしいです……
日本語じゃねぇ箇所もいくつか……

ペットは責任を持って飼いましょう、というお話でした。

ネットで調べたところ、強力な毒をもつ蠍ってのは意外と少ないらしいです。
クラゲのほうが危ないらしいですね。
浜辺に打ち上げられたクラゲは触らないように注意しましょう。プチでした。

429◇68hJrjtY:2007/09/29(土) 03:11:51 ID:PbtOA5vE0
>プチさん
笑いあり感動あり…17レスにも及ぶ後編「男の性」、読ませてもらいました。
各キャラの性格がきちんと書き分けられているのが何よりも尊敬できます。
そしてそれぞれの見せ場、というか主役を張るシーンもちゃんと用意されていて。
特に「男の性」はもちろんデュエリングを駆使した剣士が主役とも思えますが
個人的には裏の主役として魔術師も色んな面で味のある役割を演じてくれたと思います(笑)
今は居ない他のPTメンバーたちも含め、またひと回り成長してくれることを祈って次回作の方も期待します!

430 ◆21RFz91GTE:2007/10/01(月) 21:15:35 ID:TKMnQmVU0
■これまでのあらすじ

先の大戦と呼ばれる赤い宝石を巡る大きな戦が有った。古都ブルンネンシュティングの災厄と言われた戦いより二年、二人の英雄が残したギルドを巡って四大派閥ギルドが緊張状態にあった。
一つは古都を中心に活動するミト・メーベ率いるギルド、その彼らの元に一つの手紙が届いた。依頼を受けたミト・メーベ達はすぐさま炭鉱都市ハノブへと急ぐ。そこで待ち構えていた数千もの魔物の群れ。彼等は魔物の群れをなんとか撃破し坑道へと通じる鉱山へと足を進めていく。
道中ユランとはぐれてしまい、ユランとミト達の二手に分かれてしまう。ミト達へと襲いかかる魔物達の前に一人の戦士が立ちはだかった。


////**************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7 黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8 黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
  ■Act.9 封印されし鬼の末裔 1  >>98-99
■Act.10 封印されし鬼の末裔 2  >>218-219
////**************************************************////

431 ◆21RFz91GTE:2007/10/01(月) 21:16:14 ID:TKMnQmVU0
Act11 RED EYES -Person who lives as demon-



 「黒衣の焔…アデル・ロード!」
アデルと呼ばれた全身黒ずくめの男はゆっくりとだがミトの方を見た、そしてひとつ驚いた表情を見せた後ギチギチと音を立ててきしむ剣に力を込めてリザードの槍を弾いた。
「…そうか、お前はあの時の。」
「何故貴方がここに居る!貴方はアレンさんと一緒に!」
「…。」
アデルは何も言わずにすっと後ろを振り返る。イリアを庇うように前に進みリザードに剣を向けた。そしてその場からふっと消えた。いや、消えたように見える位の速度でリザードの後ろへと回ったのか、それともリザードが跨っている馬をすり抜けたのか。その結論は直ぐに分かった。
「ぐぉぉぉぉぉぉ…。」
人の言葉に直せばこの用に聞こえるリザードの叫びだった。その叫びの直後跨っている馬は四つに分断され、そしてリザード自身も体の中心線にそって二つにずれた。
あまりの速さに通常の人間が感知できない程の速さで目の前の魔物を切り捨てていた。幾つ刃を入れたのかを数える暇等ない位だった。魔物の体に亀裂が走った時始めて人はその恐怖と凄まじさを目の当たりにする。
「…奥だ、貴様達の仲間が倒れている。」
アデルは背中をミトの向けたまま腰にぶら下げている鞘に剣をしまう。先ほどの剣技にも驚かされたがそれ以上に驚かされることが有った。アデルの剣には先ほどのリザードだった魔物の血液が付着して居ないことだった。つまるところ神速、そう人は例えるだろう。
「まって、一体何故貴方が…。」
「話は無事に地上に戻ってからにしろ、あのウィザードを助けこの魔物の群れの根源を絶つ。」

432 ◆21RFz91GTE:2007/10/01(月) 21:16:48 ID:TKMnQmVU0

「ぐ…くっそぉ〜…。」
致命的なダメージを受けてユランは立つこともままら無い状態にまでに居た。そこに腹をすかせた魔物達がゆっくりと足を進めてくる。
ユランの目の前にまで来た魔物達は一斉にユランに襲いかかろうとしていた、鞭を持った人形の魔物はその獲物を振りかざし、ワーム形の魔物はその口を大きく開いた。
「くそぉ…ちくしょうぉぉぉぉぉ!」
次の瞬間には、ユランの体はばらばらになり、魔物達の供物や空腹を満たすための貴重な食料になるだろう。だがそれは実現するとするで有ればまだ先の話。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
突然、魔物達の悲鳴が聞こえた。その声に恐る恐る目を開けて見る。そこには全身真っ黒な衣装を纏、巨大な剣を右手で軽々と構える一人の青年がそこには居た。
「なっ…。」
目の前に居た数十という魔物の群れは跡形も無く消え去っていた、一体何が起こったのか良く分からない。分かるはずが無い。神速とも言えるその動きに人間の感知できる速度を遥に超えた斬檄。そして魔物達も何が起きたのか理解できずにその蝋燭の炎を絶つ。
「これで暫くこの空間は平和だろう、人間よ…貴様の仲間が到着するまでしばし安静にして居るがいい。」
「…あ…はい。」
ユランは助けられたとその時ようやく理解した、そして目の前に立つ全身黒ずくめの男にもほのかに見覚えが有った。
「…あんた、一体…。」





 「誰だったんだろうなぁあれ。」
それから二時間後、今だアデルの言いつけ通り魔物達が居なくなった部屋で一人傷を癒しながら体を休めているユラン。
そしてふと思い出すようにアデルの姿を思い浮かべた。確かにあの姿、どこかで見た事の有る姿だった。それが何時何処で見たのかが思い出せない。
だが、それは確かに見た事の有る姿形だった。
「何処で見たんだっけなぁ…。」
そんな事をのん気に喋っている間に安全だと言われた空間に邪気が満ちて来る。色で例えるなら黒をさらに包み込み渦巻いている邪気と例えるのが正しいだろうか。
自然が作り出す邪気を吸い込み強大化していく不の力が働いた結果がこの渦だと言われる。その渦がユランの目の前にまで迫ってきていた。
「…ちょ…。」
考え事に耽っていたユランはその邪気に気が付くことができなかった、気が付けば辺り一面邪気に満ちていた。
「ま…またこんな展開…。」
杖を使ってゆっくりと立ち上がり、戦闘体制を整え右腕を前に翳し
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう叫んで、一目散に逃げた。

Act11 RED EYES -Person who lives as demon-
END

433 ◆21RFz91GTE:2007/10/01(月) 21:18:08 ID:TKMnQmVU0
こんばんは、21Rです…。(´・ω・)
まず始めに、お久しぶりです…
そして次回投稿もかなり先になるかとorz

と言うわけで、久しぶりに投稿の10話目ですヾ(´・ω・`)ノ

434◇68hJrjtY:2007/10/02(火) 05:04:53 ID:uSqcu8gQ0
>21Rさん
お久しぶりの執筆、ありがとうございます!
強すぎるアデル・ロードですが…彼の登場でまたひとつ展開が変わったようですね。
リザードが身体の真ん中ですっぱ抜かれたシーンはなかなか迫力がありました(((((・ω・;)))))
ユラン君はしかし不運も不運、最高の厄日みたいですね(ノ∀`)
毎回あらすじやまとめを簡潔に書いてくれるのも分かりやすくて助かります。
続きお待ちしています。

435ryou:2007/10/02(火) 09:11:39 ID:JeqwHVfU0
おはようございます。
今回は前作までのとは違う一話完結の話を書いてみました。

>之神さん
いつも独特な切り口の話で面白いです。
RSの夢は・・・自分も見たことがあります(;゚д゚)
これだけリアルだと怖いですね。

>プチさん
キャラが立っていて面白いです。
とくに魔女さんが(ry
でもみんなカッコイイですね。いい仲間って風に見えました。

>◆21RFz91GTEさん
待ってました!
アデルがどうしているのか気になります。
しかしすごい強いですねw
次回投稿待ってます。

436ryou:2007/10/02(火) 09:12:46 ID:JeqwHVfU0
『灯火』

「ねぇ、その耳飾り、少し値下げしてもらえないかしら?」
のんびりと煙草をふかしていた露店の主の耳元に、周りに聞こえない魔力を込めた声で話しかける。
「ん?ああ構わないよ。1割まけてあげるよ。」
「ありがとう。」
早速新しい耳飾りをつけ、露店がひしめく噴水広場からブルンギルド連合の建物へと向かった。
ここで仕事の依頼を見つけた後、銀行に預けている必要な装備を引き出し、
その日の分の食料や水、回復薬を買って仕事場へ向かう。これが私の日課だ。

私の名前はエミリー。この古き都を拠点にしている一介の冒険者のランサーだ。
私達冒険者は、その名の通り未開の地を拓くこともあるが、
普段は近隣に現れるモンスターの討伐、日雇いの傭兵、
はては手紙や荷物運びと様々な仕事を請け負う、いわば何でも屋である。
聞くところによれば暗殺稼業までこなすものもいると聞くが、凡人の私には無縁の話である。
ギルド連合の建物から街へ出ると、魔力探知を働かせる。
するとやかましいほどの『叫び』、もとい広域伝達魔法が響いている。
商品の売り買い、ギルドへの勧誘、冒険者同士で組むパーティーの募集など様々だ。
めぼしい情報もないので、とりあえずカバンから2枚の羊皮紙を出した。
1枚は冒険者に支給されるパーティーリスト。
伝達魔法を使い、各地で組まれているパーティーの情報がリアルタイムで更新されて羊皮紙に刻まれてゆく。
ここ数年、伝達魔法の技術の進歩には目を見張るものがある。
かつては周りに聞こえず相手と話す『耳打ち』と広域伝達魔法の『叫び』が使われていたが、
近年はその『声』から相手をたどり、遠隔地でパーティーを組むこともできるようになった。
そしてこのパーティーリスト。これもおそらく同様の技術をもちいたものだろう。

そしてもう1枚の羊皮紙を開く。そこには沢山の名前が刻まれ、その中には点滅しているものもある。
これはフレンドリスト。親しい冒険者どうしが名を刻み、お互いの消息を伝え合うものだ。
私のリストの名前は半数ほどが光り、残りは黒いままである。
光らなくなってしまった名前……その名前の主が冒険者稼業をやめてしまったか、
もしくはすでに命を失ってしまったということだ。
その中で私は少し前から光らなくなったとある名前を指でなぞった。

「ロランさん……」

437ryou:2007/10/02(火) 09:14:38 ID:JeqwHVfU0
「!ロラン 暇人パーティー募集!希望者は東門の手前で集合してね!」
暇人パーティー?仕事の依頼が無いのかしら。でもなぜ?
まだ駆け出しの冒険者で、ろくに仕事も見つからずぶらついていた私に、
変わった『叫び』が耳にとまった。
いや、することが無いわけではない。
若手同士でパーティーを組み、モンスターの巣窟を利用した冒険者育成システム、
通称『秘密ダンジョン』で鍛錬を積むのもいい。
ただしあれはほとんどの場合報酬は出ないから、その日食べるための金は他で工面しなきゃいけない。
たいした腕もないのにいきがる者もあそこには多いから飽きてきたところだ。
そう思って私は東門へと向かった。

「ようこそ、君で5人目だね。これだけいれば十分だろう。」
ロランと名乗る彼は中年のベテランの男アーチャーだった。
中年とはいっても体つきはそこらの若手よりがっちりしていてかなり強そうに見える。
どうしてこんなよく分からないパーティーを作っているんだろう。
「えっと、ロランさん、俺まだ駆け出しで弱いんだが……これからどこに行くんだい?」
1人の剣士が話しかけた。ちょうど聞きたかったことを言ってくれて心の中で感謝した。
「これは暇人パーティーだからね、特に目的はないよ。
楽しくおしゃべりでもしながら適当な場所でハンティングでもしようかと思ってね。」
とりあえずどこかへ行くようだ。もしかすると高値で売れる素材も手に入るかもしれない。
「でも、強いモンスターがいるところは困るんだが……」
私達のようなまだ若手冒険者は街からそう遠くへは足を伸ばさない。
街から離れた場所や、深い地下にはまだ若手にはとうてい太刀打ちできないモンスターがうようよいる。
「問題ないよ。俺がリーダーなんだしね。あ、ビショップさん、回復や蘇生魔法は使えるかい?」
ロランさんは聖書を読んでいたビショップに声を掛けた。
「ええ、勿論大丈夫です。最近は冒険者との仕事が減ってね、暇してたところですよ。」
「じゃあ、早速向かおうか。とっておきの場所があるんだ。」

438ryou:2007/10/02(火) 09:15:52 ID:JeqwHVfU0
しばらく歩いてやってきた場所はグレートフォレストの奥地だった。
私達若手陣はみなここまで足を踏み入れたことは無い。どうしても緊張の糸が張り詰める。
「ここだよ。」
森がひらけた場所に出ると、そこには美しい庭園と白亜の宮殿がそびえていた。
「まさかこんな場所にこんなに立派な宮殿があるなんて……」
一同はあっけにとられてしまう。
「ここはエルフ王族の宮殿なんだ。でもこの中に住んでいるエルフは恐ろしく強い。
俺でも命が危ないほどにね。だから今日相手にするのは庭園にいる下っ端のエルフ。
実は共和国政府からエルフ王族の調査依頼があってね。」
ニヤっと笑ってローランさんは一枚の羊皮紙を見せた。
「すごい……まさかこんな大事な仕事に加えてもらえるなんて!」
古都に住むものなら皆知っているサインと捺印、間違いなく共和国政府のものだ。
でもどうして彼がそのために若手と『暇人パーティー』を組むのか、謎は深まるばかりだった。
「気まぐれってやつだよ。本当に他意はない。ソロでの仕事なんて退屈だろ?
しかもこの程度の難易度の依頼なんて、歩き疲れるだけだからね。」
苦笑するロランさんを見て、私達でもこなせるということにほっとした。

たしかに仕事、庭園のエルフの討伐と調査は簡単に進められた。
といってもロランさんが全てこなしたのだが。
なんせ、私達では攻撃しようにもすべてかわされてかすりもしないのである。
当たらないものは仕方ないととりあえず自分に言い訳をしておいた。

439ryou:2007/10/02(火) 09:18:10 ID:JeqwHVfU0
仕事を済ませた私達は焚き火を囲んで食事をとることにした。
取り留めのない笑い話に興じたり、ロランさんから技術の指南を受けたりと、
普段のパーティーとは違う楽しい時間が過ぎていった。
そろそろ街へ帰ろうか、という時に、1人がフレンドリストに登録しあおうと持ちかけた。
こうして会ったのも何かの縁、ということで皆賛成し、互いの名前を刻み込んだ。
だがロランさんだけは彼のフレンドリストをじっと淋しそうに見つめていた。
ふとそのリストを覗いて驚いた。どの名前も光っていないのである。
「ロランさん、これって……」
「驚いたかい?まあ長いことこの仕事をやっているからね、こういうのも珍しくないんだ。
古い友人はもう皆冒険者を辞めてしまった。死んでしまった奴も多いよ。でも……」
彼が指差した名前は、ただ一つだけ点滅を続けていた。
「冒険者と名乗るようになってもう30年は経つ。昔は右も左も分からなかった。
今と違うことも色々あってね。そうだな、『秘密ダンジョン』だったか、あれも俺の若い頃はなかったよ。
1人で弱いモンスターなんかを相手にしながら少しずつ腕を磨いていったんだ。
君、アルパス地下監獄は知ってるかい?」
アルパス地下監獄……古都の近郊にある百年以上前に廃墟と化した監獄。
たしか以前は多くの冒険者たちが討伐隊を組んで乗り込んでいたと聞く。
「ええ、私は行ったことはありませんが」
「昔はあそこが一番の稼ぎ場でね、よくパーティーで行っては命からがら逃げ出したもんだよ」
カラカラと笑う声からは、どことなく失ってしまったものへの哀しさが感じられた。

440ryou:2007/10/02(火) 09:21:31 ID:JeqwHVfU0
「沢山の知り合いとフレンドリストを登録しあい、ギルドにも入った。
本当に分からないことだらけ、でもどこまでも強くなれる、上を目指せる気がしていた。
思えばあの頃が一番楽しかったし充実していたかもしれないな。
年を重ねても現役で頑張る奴も多いけどね、俺は結局昔にしがみついているままさ。
フレンドリストだってもう随分長いこと更新していない。
……今じゃもう、たった一人しか光っていない」
穏やかに赤く燃える熾き火を見つめながら、ロランさんは語った。
手持ち無沙汰で枝で炭をつついたりしながらも、皆彼の話から耳を背けようとはしなかった。
「実はな、こいつも……もう俺のことは覚えていないんだよ」
「えっ……」
「ひょんなことからあいつと顔をあわせる機会があってね、とあるギルドのマスターをしていたよ。
でも俺が昔話でもしようかと話しかけても、俺のことを思い出さなかった。
所詮はパーティーで偶然会った相手だ。当然かもしれないけどね」
「ロランさん、私とフレンドリスト登録しましょう」
暗く沈んでいた彼の顔がはっと私に向けられた。
「私も、お願いします」
「俺も頼む」
「じゃあ、私も!」
焚き火のせいかもしれないが、ロランさんの表情が明るくなったように見えた。だが。
「いや、もう俺のリストは一杯なんだよ。誰かの名前を消すのもはばかられてね」
ならば、と私達は一方的にリストにロランさんの名前を刻んでもらった。
今まで長い間、光を失ってゆくリストを眺めながらひとり過ごしてきた彼が、
なぜ今になってこんなパーティーを組んだのか。
もしかするとこの一時を楽しんだ後に冒険者を引退するつもりだったのではないか。
「勝手でごめんなさい、でもたまに耳打ちしますから、辞めないで下さいね」
ほんの一瞬驚いた表情を浮かべた。やはり図星だったようだ。
「ありがとう」

441ryou:2007/10/02(火) 09:25:16 ID:JeqwHVfU0
その後、まだまだ若手の私はロランさんに頼ることが何度かあった。
時にはたわいもない会話のために時間を割いてくれることもあった。
誰かに師事していたわけでもない私には、彼は師匠のような存在でもあった。

あのとき刻んでもらった4人の名前、今ではどれも光を失っている。
別に死んでしまったわけではなく、ある人は結婚し、ある人は店を構え、ある人は田舎へと帰った。
ロランさん1人だけは、アリアンへと移り、直接会うことはなくなってしまった。
そうしてこの私にも長い年月が流れていった。
ごく稀に交わしていた『耳打ち』すらも、多忙な日々の中やがてしなくなった。
それでもフレンドリストを開いたときに光るその名前にほっとしたものだ。
だが突然に、その名前は光を失ってしまった。
理由は分からない。辞めてしまったのか、それとも死んでしまったのか。
でも私はその名前を消すことはしなかった。
ロランさんをはじめ、光を失った多くの名前、
それは今まで私を支えてきてくれた大切な仲間の名前だもの。
そうして、まだ半分の名前は点滅を続けている。
彼らはまだ、私の心の拠りどころとなってくれている。

でもたまに駆け出しだった頃の懐かしさにかられることがある。
お酒を呑みながら、古いギルドメンバー達と語らうのもいいけれど、
それができない時はこうしている。


「!エミリー 暇人パーティー募集!興味ある人は東門の手前に集合してね!」

-完-

442ryou:2007/10/02(火) 09:29:44 ID:JeqwHVfU0
『灯火』完です。
これは「昔のRSを懐かしむスレ」を見て思わず書いてしまいました。
自分も随分と長いことRSをやっているので、
半ば体験談みたいな風になってしまいました。

443◇68hJrjtY:2007/10/02(火) 10:49:23 ID:uSqcu8gQ0
>ryou
なんだか、RSの「あるアサシンの物語」を思い出しました。別ネトゲで申し訳ないですが…。
ともあれ、こういった流れていく時代とそこに生きた師匠と弟子、みたいな物語は心に残ります。
RSをβからされている人にたまに会いますが、色々不便で色々大変だった、でも楽しかったと良く聞きます。
今は確かに便利になって町で叫べばレベル上げ手伝いも秘密参加も簡単になったようですが
右も左も分からない者同士で組んだPTなど、初心者の頃の思い出っていうのはいつまでも残りますよね(´;ω;`)

パーティリストや叫び、耳打ちに対するryouさん独自の設定が描かれていて面白かったです。
こういった設定は書き手さんごとに色々考えられているようで、それを垣間見るのも楽しかったり(ノ∀`*)
次回作も楽しみにしています。

444◇68hJrjtY:2007/10/02(火) 10:50:11 ID:uSqcu8gQ0

× RSの「あるアサシンの物語」
○ ROの「あるアサシンの物語」

訂正しますorz

445名無しさん:2007/10/02(火) 22:59:00 ID:LwrZhVKQ0
sage

446ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/03(水) 11:34:54 ID:OhTl4zsk0
続きですよ〜


「むぅ・・・フィナーアさんが倒されるとは、早くもザッカルの刺客が送られたんでしょうか・・・・・?」
不安げな表情を浮かべたバーソロミューが、マスケーロと共に茂みの中に倒れていたフィナーアを見下ろしていた。
彼女は頭に握り拳大ほどのたんこぶをつくり気絶していたのだ。おそらくは棒状の物で殴打されたのだろう・・・・
するとバーソロミューらの気配に気が付いたのか、フィナーアは「うっ・・・痛たたたたたぁ〜」と頭を抱え込んで
ゆっくりと起き上がった・・・・がすぐにバーソロミュートマスケーロに気が付くと、例のエロハイテンションに戻った。
「あっ、いやぁん!何してるのよ二人ともォ!!さてはアタシが気絶してるのをいいことにピ――とかピ――とかしようとしてたのね!?」
「(相変わらずこの人はもう・・・)誰もそんなことするつもりはありませんっ!・・・しかし一体何があったんですか、フィナーアさん?」
バーソロミューが問うと、フィナーアはハッと思い当たるようなリアクションをし、すぐに怒りの表情を浮かべるのだった。この様子に
彼は瞬間的、反射的に怯んだ。「な、いい一体何があったんですかフィナーアさん!?何されたんで・・・」しかしフィナーアは彼の言葉を
遮り、気絶させられたことへの怒りをぶちまけていた・・・・
「んぅ〜・・・よくもよくもよくもォ〜!!アタシが負けるなんてっ、絶対絶対ぜぇ〜ったいありえないんだからぁ〜!!!
 あったま来ちゃったわもう〜っ!!お仕置きしてあげるわ!!」そう言うと大胆にも身に纏っているさらしとフンドシを
ビリリと豪快に破り捨てて、裸一貫でどこへ行くともわからず猛ダッシュするのだった。

その場に残されたバーソロミューとマスケーロ、二人はあまりの不可解な事態に首を傾げていた。
「ほんと・・・何があったんでしょうね、ねぇマスケーロ?」「ボクにも予想が付きませんよ、それよりも彼女を止めないと。」
「あぁ、確かに止めないと後始末が大変ですね・・・例の特訓で会得した闇の魔術も試したいですし、暇つぶしにどうですか?」
「わかりました、んじゃ暴走阻止ついでにフィナーアさんには『ブラック・アート』の実験台になってもらいしょう・・・」
淡々とした口調で話を進める人間とエルフ二人の魔術師は、散歩に行くような足取りでフィナーアが走っていった方向へと歩いていった。

447ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/03(水) 11:55:08 ID:OhTl4zsk0
さて、エルフの村郊外にある秘密の特訓場。フィナーアを気絶させた張本人であるリトルウィッチの美少女、エレナは
フィナーアに変装し、彼女の知り合いであるボイドラスターzinのシャギーを騙して、ある計画に参加させていた。
というのも彼女は先日、この村に滞在している戦士のトレスヴァントと槍使いのラティナとのカップルの間に因縁が生まれたのだ。
その屈辱を晴らすべく、幼稚な嫌がらせを敢行するためにわざわざ尾行までして追ってきたのだ。
察してのとおり、シャギーは知らず知らずのうちに彼女に利用されていることになる。

「なぁなぁフィナ〜、おいらはあそこで特訓してる筋肉くんとハイレグ槍子ちゃんを狙撃すればいいのね?おいらのビームは愉快痛快強烈だお?」
「いいのいいの、そのくらい過激なイタズラしちゃいたい気分だからね(・・・うふふ、何て単純な子。利用し甲斐がありますわ〜オホホホホ)」
「む、電波受信じゅし〜ん・・・・ん?今フィナの意識で別人が呟いていたような・・・あっれぇ〜?な〜んかおかしいゾ☆」
「きき、気のせいよシャギー!アタシはアタシ、何ともないわよォ〜?(む〜、私の考えが読まれてる!?わ、私の正体がバレなきゃいいけど)」
「電波受信じゅし〜ん・・・・む?むむむむ!?あぉっ!!BEEEEP!BEEEEEP!BEEEEEEEEP!!!」いきなり目を見開き、機械のようなブザー音を
やかましく発するシャギー。そのけたたましいまでの警報音は近くで特訓中のトレスヴァントやラティナ、コーチのサーファイユとアレクシスにも
はっきりと聞こえてしまっていた!!練習を止めて、4人とファミリアのファミィはすぐに音の出た茂みへと急いでいった。

っと、時間ないので続きは随時;;;

448◇68hJrjtY:2007/10/03(水) 18:30:46 ID:uSqcu8gQ0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
美味しい…いや、惜しいところで終わっちゃいましたね(ノ∀`)
フィナ姉はバレてシャギーにもバレて、エレナさん一気にピンチになってしまいましたが…。
エレナ、動機は不純ですがどこか憎めないキャラだなぁ。女王様セリフにヤられたようです(;´∀`)
個人的にはバーソロミューとマスケーロの二人が企む(?)「ブラック・アート」が大変興味深いところです(笑)
続きお待ちしていますよ。

449 ◆21RFz91GTE:2007/10/03(水) 23:54:57 ID:TKMnQmVU0
////*****************************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7 黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8 黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
  ■Act.9 封印されし鬼の末裔 1  >>98-99
  ■Act.10 封印されし鬼の末裔 2  >>218-219
  ■Act.11 Act11 RED EYES -Person who lives as demon- >>431-432
////*****************************************************************////

Act12 RED EYES -Memories to the desire going out-



「うわっちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!」
湿度が高くじめじめとした夜の事、この廃坑も同じように熱くジメジメしていた。場所によっては水脈のおかげで自然のクーラーで冷やされた部屋もあるが、それはごく一部の話。
「あっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
その天然クーラーで冷された部屋に一歩、また一歩と…いや、死に物狂いで走ってくる男と魔物が一匹。途方もなく走り、灼熱の炎をギリギリのラインでよけながらその熱さから逃げるために、本能的に涼しい場所を求めているのだろう。
「何で僕だけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
その声は坑道中…いや、多分一部の場所だけ響いていた。
あの漆黒の渦から現れた魔物から逃げるためにユランは必死で走っている。得意の炎系魔法も吸収されまったく歯が立たない。そればかりか、ユランが放った炎を吸収し我が者とするこの魔物。体内で自分好みの炎へと変換し、それをほぼ無詠唱で放つ。ユランでなくとも相手にしたくない魔物だと考えさせられる。
「ぐ…こっのぉ!」
魔物が放った炎をよけるためにユランはジャンプした、そして空中で詠唱を始め左手に炎を作り出した。そして右手に風の中位精霊の力を借りて小さな渦巻きを作り出した。
「さいだらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
多分掛け声なのだろう、深い意味は無い。さかさまの状態でその両手に作り出した元素をぶつけ魔物相手に一直線上の炎の壁を作り出した。ライン上にそれは連なり魔物に当ると瞬時に爆発を起こした。
「焦がれ焦がれては祖に焦がれ…絶え間ぬ瞬きに聳えし咆哮に集いし渦巻く者よ…汝、祖に生きる邪気を持って我の糧とならん!」
高速でその詠唱を行った、高速と言えどクラウスほど早くはないがギルドに加入して以来の特訓の成果なのだろう、彼はその辺に居る並のウィザードよりは詠唱の速度を上げていた。一昔なら途中で詠唱を噛み、未発達の詠唱で失敗するのが落ちだった。だが、彼の努力はかつて見ないほどの成長を遂げていた。ただ、不運は相変わらずだが。
高速詠唱が終了するや否や、ユランの目の前にはピチョンピチョンと落ちる水滴を集め一つの水の渦を作り出し、体制を立て直して着地する。そして右手を大きく振りかぶりその渦を力一杯叩きつけた。
「来たれ…祖は雷神の末裔にして雷雲の児…汝の咆哮は龍の咆哮…汝のより速き閃光をも超え未知に染めるは雷雲の淵底!」
立て続けの三連続詠唱に少し目の前が霞み、一度だけグラリと世界がゆがんだ。まだ若すぎる彼には連続に詠唱するほどの精神力が無かった。だがそれほど甘い事を一てられる状態でも無い事は確かだった。
「その硬い装甲剥がしてやる!」

450 ◆21RFz91GTE:2007/10/03(水) 23:55:38 ID:TKMnQmVU0
先ほどの水の渦が魔物の前で燃え盛る炎をかき消し魔物に直撃する。2トンほどあるその水圧の直撃を受けた魔物は後方へとズルズルと下がっていく。そして
「これでも…。」
大気中に存在する微電子を集め左手で半場スパーク現象を起こしていた、その左手の掌を少し濡れた地面に叩き付ける。するとスパーク現象を起こしていた小さな雷は急速に巨大化し濡れる地面を這ってずぶぬれの魔物とユランを感電させた。
「あばばばばばばばばば!」



一報その頃、ミト達はアデルの後ろを走っていた。
移動魔法が掛かっているわけでもないアデルの移動速度はとても速かった、その後ろをミトとイリアが走る。クラウスはアデルが担いでいる。
「ん…。」
アデルの肩で気を失っていたクラウスが目を覚ます。最初に飛びこんできたのは何故か揺れている地面だった。
「…なんで地面が揺れてるんだ。」
揺れる地面の先を見るとミトとイリアが息を切らしながら走っている。これも不思議な光景にしか見えてしょうがなかった。
「…おかしい、何で二人とも走ってるんだろう。」
その不思議な光景に対し率直な感想を述べているとアデルがその声に気が付いた。
「気が付いたか、暫く動かずにそのままにして居るが良い。」
の声にやっと自分がどうなって居るかに気が付いた。ハっと体を起こそうとしてもそれをアデルが止める。
「まだ動かない方が良い、今は体力を温存させておけ。」
「そうは行かない、第一あんた誰だ!」
「…。」
アデルはその問いかけに何も答えなかった、今は一刻も早く逸れたもう一人のウィザードを助けることが先決だったからである。そして、何よりもその先にある恐怖をアデルは感じ取っていた。同じ時に封印された神話だけの存在。
「この先、その絶望と合い見えるその時まで主は力を温存しておくが良い。」
「先刻から何を分けの分からない事を、この際あんたが誰かは良いとして先の絶望って何だ!」
鬼と呼称された存在が呼ぶところの絶望、それはまだ目に見えない存在であり、そして人間には到底感知できる存在ではなかった。一つの闇から生まれし絶望と言うなの鬼神。太古の人々は鬼同様に恐れ、そして神話に存在する名前を彼に与えた。
「――――――――バフォメット。」



Act12 RED EYES -Memories to the desire going out-
END

451 ◆21RFz91GTE:2007/10/04(木) 00:02:18 ID:TKMnQmVU0
深夜にこんばんは、21Rです…。(´・ω・)
今年も後4ヶ月、速い物ですねぇ〜。
11月の終わりに来ると、大抵の人は必ずいいますよね。「今年は速かった」
確かに速いと思う今日この頃…歳は取りたく無いですねぇ〜orz

>>◇68hJrjtYさん
アデルの強さは前作同様卑怯な設定になってます、ほら…RPGでも居るじゃないですか〜
設定無視のやたら強いひt(うわなにするやめr
ユランの運の悪さは後々解明されてきます、実はここだけの話なんですg(ん、誰だお前たち…うわなにするヤメロその鞭で俺になにをすr

>>ryouさん
そう言えば何でアデルはこの世界に居るんでしょうねぇ(ぁ
俺もさっぱりですヾ(´・ω・`)ノ
あ、でも実はアデルh

ただ今映像が乱れております、少々お待ちくださいませ。

いやぁ〜、世の中物騒ですよね(´・ω・)y-~~

452◇68hJrjtY:2007/10/04(木) 07:32:34 ID:uSqcu8gQ0
>21Rさん
お忙しそうな中、ほとんど間隔をあけずにUPしてくれてありがとうございます!
とはいえ実はアデルは…の続きが気になるorz 今後の展開で判明することを祈ります(ノ∀`)
毎度のことながら詠唱文もカッコ良くて、それでもピンチなユラン君の不運さに一役買っていますね。
さて、バフォメットの名が明らかにされましたが、倒す事になるのか、それとも。
ユラン君の方に現れているモンスターも気になりますけどね(;´∀`) さいだらぁぁぁ!(笑)
続きお待ちしています。

453之神:2007/10/04(木) 19:54:59 ID:KawfF4/o0
賽の河原脱出


さて、今俺は何故ここにいるのだろうかと考えているところである。
見渡す限り見える物は、俺の目の前を流れる河と、俺の後ろに詰まれた石である。
それ以外、どこを見渡しても何も無い。
さて、不思議な事に俺の頭の中には、この河の向こうに早く渡れという考えがあるのだが・・・・。
「渡るにしてもなぁ・・・・」
河は、俺が入れば胸まで水に浸かりそうな水深だ。
うっすら河の向こう側に見える「脱出」と書かれたゲートが目に入る。
濡れる事を気にしないで俺は勢いよく河に飛び込んだ。幅が20mくらいのこの河を渡るくらい、難しい事では無い。
だが、甘かった。
河の中にいたのは、いかにも人間を喰らうような姿の生物で、実際飛び込んだ俺に向かって
大口開けて突進してきたのである。その生物は、額に「鬼」と書かれているハチマキをつけていた。何のつもりだ・・・?
ここがどこだか知らないが、この奇妙な空間で人生を終わらせたいと思う程、腐った人生を歩んできたつもりは無いさ。
俺は必死で岸へと向かった。
その生物は岸には上がってこれないようで、なんとか助かった俺だが、これでは脱出ゲートをくぐる事は出来そうに無いな。

「ん・・・・?」
今までいろいろ考え過ぎたせいか、こちらの岸に立て札があることに気がつかなかった。
「何々・・・・」
そこに書かれていた内容は以下の通り。

あなたはいま、賽の河原にいます。
賽の河原から脱出する方法は、ここに積んである赤石を河に積みあげて、この河を渡ることです。

2時間経つと、積んだ石は頑丈な橋へと変わります。
しかし、2時間以内に河に潜む鬼に積んだ赤石を崩されたら橋はできず、失敗です。
機会をうかがってまた挑戦しましょう。

鬼が見てもわかるように赤石を積みましょう。
自分だけがわかるように積んでも、橋として認められません。
見事橋を完成させ、河の向こう岸のゲートをくぐれたら、脱出宣言をしましょう。

454之神:2007/10/04(木) 20:25:44 ID:KawfF4/o0
sage忘れた;
続きです。



おいおい・・・・・。
まぁとにかくやるしか無い・・・か。
赤石を積むのは案外簡単で、河に石を放り投げれば積みあがる。簡単すぎだろ。
まぁ俺も過酷な労働が決して好きなわけでは無いのでそれは良かった。
鬼、とは河に潜むあの謎の生物の事らしい。積んでも見張っていたかのように、すぐに崩されてしまう。
こんな調子じゃ出れないな・・・。
今は昼だ。時間を置いて夜まで待つ事にする。

おいおいおい・・・orz
なんで夜も崩されるんだよ・・・。鬼は寝ないのか?これじゃあこんな殺風景な空間にいつまでもいることになるじゃねえか。
俺は鬼の気持ちになって考えてみることにした。
分かるわけありません。鬼の気持ちが分かったらそれはそれでヤバぃからな。人間を食おうとする輩だ。分かってたまるか。

それにしても橋が出来そうに無い。
何せ場所を変えようと、静かに石を積もうと、颯爽と現れるその鬼とやらは、なんの躊躇も無しに崩していくのである。
あきらめかけた俺はかなりテンションが下がり(今までも高いわけでは無かったが)、考えるほどまた下がっていった。
やることも無いので石を河に投げる。こうして見るとキレイな河だなぁ・・・などと浸っていると
目の前に立派な橋が現れた。
「えっ・・・もう2時間?てかこんなあっさり・・・?」
せっかく出来た橋だ。と、下がっていたブルーな気分も晴れ、俺は橋を渡り始めた。
正直うれしくて気分が良かったわけだ。こんな空間ともおさらばだっ!
いつの間にかスキップして渡っている始末である。
「さーて最後の一歩!」
そのとき
ガシャーン・・・・・ガラガラガラ・・・・・
「えっちょっ待っ・・・」
叫びも虚しく、俺はまた元の位置だ。
崩れないという頑丈な橋は豪快に崩れ落ちたのだ、豪快に。頑丈な橋も鬼によって消え失せた。
調子に乗りすぎたか・・・なんでテンション上がって橋が崩れるんだよぉ・・・

そうして俺はまだここを脱出できていない。鬼さん、もう少し遠慮してくれません?
もう何チャカ目やら・・・。

455之神:2007/10/04(木) 20:29:07 ID:KawfF4/o0
賽の河原脱出ってのをみて書いてみました。テンションの上がりと下がりでageとsageです。
思いつかないんですもん・・・。
またもや短編になってしまいました。長編を書く日はいつになることやら・・・。

前回の感想を言ってくれた方、感想ありがとうございました。
そして途中でsage忘れ、ごめんなさい。

456◇68hJrjtY:2007/10/05(金) 11:14:52 ID:uSqcu8gQ0
>之神さん
もしやあのスレですね(ノ∀`) 私も何度崩されたか…崩した事もありますけどね(笑)
ああいうお遊び的なスレは大好きですが、賽の河原スレの場合は問答無用で崩されてしまうんですよねorz
IDでギル戦スレも好きなのですが、あまり住民が居ない&私はID変わりにくいので参加し辛いところです。
こういう視点で小説が書けるとは思いませんでした、意外性があって面白かったですよ。
次回作も期待しています。

457ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/05(金) 18:18:35 ID:ZY.IXr860
Extra Episode 2 Battle Show〜バーソロミューvsフィナーア〜

このお話は、ラティナが殴り飛ばしてしまったトレスヴァントを彼女が追いかけていった日の夜のこと。
時刻は16時、鮮やかなオレンジ色の夕日がトラン森を染め上げる頃である。森の中の小さな円形の特訓上では
一人の人間と一人のエルフが魔法の鍛錬を行っていた。人間の名はバーソロミュー、エルフの名はマスケーロ。
諸事情により彼らはザッカルという悪党を倒すための訓練をしている最中なのだ。

「・・・ふぅ〜、闇の元素の扱いもだいぶ安定してきましたね。そっちはどうです、マスケーロ?」
「見てください、闇の氷柱の大きさがまた増えましたよ!これでチリングタッチをやったらどうなるんでしょうね」
「さぁ、それは実践あるのみですよ。今までの練習から考察すると、闇の元素にダメージを与える要素はあまり
 ないように思われます。まぁ、他の元素と混じることではじめて凶器となるようですね・・・」
「ふむ・・・じゃぁボクのこの『闇と水の元素でできた』この氷にもチリングタッチとして扱えるだけのパワーが
 あるんですね」「そういうことですね、ハハハ」と、凡人にはわかりづらいコアな話で盛り上がる二人の魔術師。
しかもこの後、二人はマスケーロの提案により亜流のスポイルドウォーターを3分で開発してしまうのだった。恐るべし。

「ん〜やはり魔法は奥が深いですね、日を追うごとに新しい魔法ができてるような気がしますよ、ねぇマスケーロ?」
「いや、むしろ確実に1日に2〜3個は僕たちだけの闇の元素による魔法ができてますよ?世間にお披露目するのが
 非常に楽しみですね。スマグの古い考えの魔術師たちはさぞビックリするでしょうに。」「間違いないですね〜」
仲のいい兄弟のように笑い合いながら言葉を交わす二人、するとバーソロミューのコートから青白い光が照りだした・・・
「・・・ん、誰からだろう?はいもしもし・・・あ!そうなんですか?はい・・・はいわかりました。すぐ向かいますよ〜」
コートの胸ポケットから小型のポータルスフィアを取り出し、バーソロミューは口元に運んで誰かと会話しているようだ。
「・・・?何かあったんですかバーソロミュー?仕事か何かですかね?」「ん〜・・・ま、そう言ったものですね」
彼は軽く微笑むと、マスケーロにあることを伝えた・・・その仕事とやらで日帰りで古都に向かうので、皆に伝えて欲しい、
とのことだ。




一方こちらは別の練習場。
露出狂なのか(といっても実際そうだが)さらしと褌一丁で一人のエルフとグラウンド・レスリングに興じるのは
ビーストテイマーで『猛獣女王』の異名を持つ女、フィナーア。相手のエルフは女性のようで実は男性という美少年、
エストレーア。彼は特訓中だというのに服装は白衣という医者らしき出で立ち。しかしレスリングが得意という
フィナーアを相手にしているというのに、冷たくも余裕の表情を浮かべる彼。組み倒している側のフィナーアは
なかなか落ちない彼に手を焼いているようだった。焦りと苛立ちの相が顔に浮かび、全身汗だくになっていた。

458ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/05(金) 18:40:11 ID:ZY.IXr860
格闘技の技名で言うなれば『チョークスリーパー』といったところだろうか、エストレーアの首を力強く締め上げるが
締め上げられている当の本人は「全く効いてない」とばかりの無表情。そして深く息を吸い込むと・・・・
今度はフィナーアのスリーパーホールドからスライムのように抜け出し、瞬時に彼女のバックを取る!!そして極めつけは
背後から押し倒してでのSTF・・・!!これには流石のフィナーアも降参のようであり、ギブアップを宣言した・・・

「あ〜んもう〜!また負けちゃったぁ〜!!!何なのよその妙な体は!?」プリプリと怒りながらフィナーアが問い詰めた。
「え、えと・・・僕は医者ですから、その・・人体の構造は全て把握しているんです。で、ですからその〜・・・」
さっきとは違い、おどおどとした様子でドモりながら話し出すエストレーア。フィナーアは少しじれったそうにしていたが
我慢の限界か、エストレーアを掴みあげて自信の豊満なバストに挟みこんだ、はいこれパフパフなり〜。
「んぁっ・・・もう、じれったいんだからぁエストレーアちゃんはっ!!あんっ・・そんな子はお仕置きしちゃうわよ〜!?・・はぁんっ!!」
喘ぎ声も交じえながら、お仕置きと称してエストレーアにスキンシップしまくる彼女だったが・・・
どこからともなく「プァ〜、プァプァプァプァ〜♪」と、いかにもお色気シーンのBGMに使われていそうな音楽が鳴り出した。
「あらあら〜、こんなときに誰かしら?」さらしをグイっと引っ張り、胸の谷間から小型のポータルスフィアを取り出した。
「ハァ〜イ、皆大好きフィナーアちゃんで〜す・・あっ、ほぇ?そうなの?ふむむ〜なるほどなるほど〜・・・・・うん、おっけー!」
「え、えと・・・その、何かあったんですか、フィ、フィナーアさん・・・?」相変わらずエストレーアはビクビクしたように話す。
「大丈夫よっ、ちょっとした、お・し・ご・と・よっ!ちょっと古都に行ってくるから、皆には日帰りだって言っといてねぇ〜ん!」
そういうとポータルの機能の一つ『記憶地点への移動』を使って、彼女は光とともに姿を消した。
一人残されたエストレーアはため息をつき、小言を漏らすのであった・・・

「・・・はぁ、フィナーアさんはどうも苦手なタイプです。とはいえ、僕もこの億劫な性格を何とかしないと・・・」
そう呟くと、女々しいまでの足取りで村へと帰るのであった。

459ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/05(金) 19:02:27 ID:ZY.IXr860
さて、場所は変わって古都ブルンネンシュティグ。
この都市はフランデル大陸東部の中でもかなりの規模を誇る大都市であり、多くの冒険者や物流で溢れかえっている。
そんな大都市の夜。煌びやかなネオンサインが所狭しと輝き、ジャズバーや大人向けのスナックも営業を始める夜20時。
この街の一角にある大きな屋敷。そこはこの都市でも高い人気を誇るバー・・・だが、その辺にありがちなただのバーでは無い。
毎晩多くの冒険者がその腕を振るうべく、見知らぬ者たちと一対一のガチ対決を繰り広げるバトル、その熱い闘いを
見ながらお酒や料理を楽しめるという、その名も『BattleBar Iron Soul』なのだ・・・!!

そしてここは選手控え室、一室につき一人の選手というVIP待遇であり、選手に与えられるサービスは額にして50万相当。
しかし闘いに挑む冒険者はこれを無料で受けれるというのだから驚きだ。その50万をカヴァーするだけの客足が毎晩来るのだ、
その人気ゆえに成せる厚待遇なのかもしれない。・・・さて話がずれ込んだが、ここで一人の選手にスポットを当てよう。
このバトルバーで最も強く、最も観客を唸らせることができる男・・・・・その名も、バーソロミュー!!!!!
実は彼はウルフマンに変身している時は、この店最強、無敗の野獣レスラーとして君臨しているのだ。
チャンピオンというだけあって、その待遇はサービスの値段にして200万、もしくはそれ以上に相当する程だ。
控え室に一人のスーツ姿の中年男性が入ってきて、朗らかな笑顔とともにウルフマンと化したバーソロミューに話しかけた。
「やぁバーソロミュー。今日もまた、いつもどおりのストロングスタイルでKOしちゃってくれよ?」
「ハハハ、ウルフマンのパワーは魔術師の知識に比例しますからね。勉強した分その力が鍛えられるんです、
 このパワーは誰にも負けませんよ、マスター!」親指を立ててバーソロミューが応える。
「ぷはははははっ、言うじゃねぇかこの若造!じゃ、今日も一発頼むぜ?・・・っとそうだそうだ、
 今日のあんたの対戦相手だが、とんだ大物だぜ?しかもデラべっぴんときたぜ〜、鼻伸ばすなよ?
 ・・・・相手はあの○○年度パンクラチオン大会の覇者、『猛獣女王』のフィナーアだ!!」



「・・・・・な、なんだってェえぇええぇぇぇぇえええぇぇぇええ!!!!!???!?!!」
驚愕を隠せずに咆哮をあげるバーソロミュー・・・何と今日の対戦相手はフィナーアなのだった。

To Be Continued...

460ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/05(金) 19:05:14 ID:ZY.IXr860
ちょっと続きに詰まったので番外編、しかも続きます;;
次回はこのエクストラの後編になりますよ、バーソロミューvsフィナーアの
プロレス対決、お楽しみに〜

それと皆様の作品へのレス、時間があるときにでも書かせて頂きます;;

461◇68hJrjtY:2007/10/05(金) 19:34:17 ID:uSqcu8gQ0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
美少年なのに物凄い体術使いのエストレーアやビーストテイマーなのに体術に精を出すフィナ姉も意外ですが
バーソロミューの意外過ぎる一面(でもウルフマンに変身したならば納得できますが)に驚いてます。
こうなったらバーソロミュー君、バレないように頑張るしかないですね(;・∀・) バレなくてもヤバそうですが(笑)
でも何より、ESCADA a.k.a. DIWALIさんの即興執筆が信じられない…結構練られている感じもするのに。
続きの方お待ちしていますよ。

462 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 00:05:08 ID:TKMnQmVU0
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Act13 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-1


 坑道の最深部、光も通さない程奥の又奥に一つの水晶がある。
その水晶は怪しい輝きを放ち、またそれ故に美しいとも言える。そんな水晶の前に人間が立っていた。
一人は身なりを整えている男性、髪の毛は青く短髪で整った顔立ちをしている。遠くから見ると女性と見間違えるその顔立ち。だが首から下はがっちりと筋肉に覆われている。腰にはシャムシール形の剣をぶら下げ、左手にはどんな鎧でも貫き通すパイルバンカーの異名を持つ短剣が光る。
もう一人は人と呼ぶに値するのか、はたまた人あらざる者なのか。身長は130センチメートル程度で青い甲冑を身に付けている。マスクを着用しているのか、素顔が見えない。アクセサリーなのかはたまたそうで無いのか、頭にかぶる王冠からは炎が微量ながら燃え盛る。
「…ぼっちゃん、本当によろしいので?」
水晶を目の前にした小さい人間はそう隣の男性に問いかけた。青髪の男性は少しの間何も喋らなかったが暫くすると不気味にニヤリと笑みをこぼす。
「…ふふふ、英雄だの何だの古都に居る奴らはみんな腑抜けだ。俺様がその気になればどうなるかを教えてやろうじゃないか。なぁ、ルシファー?」
「しかし坊ちゃん、これを目覚めさせる事は世界の終焉を垣間見るのと同じ事になります。あのギルドを潰すだけでは留まりませんぞ?」
ルシファーと呼ばれた小人はそう隣の男性に問いかける。その問いかけが気に入らなかったのか。腰からシャムシールを取り出しルシファーに付きつける。
「貴様…呪いの墓から貴様の遺骨を掘り出し、蘇らせた俺様の命令が聞けんのか?」
「…。」
剣先がルシファーの喉元に付き付けられる。その剣は紅に染まっていた。察するに人間の血だろう。手入れはおろかサビがつく一歩手前の状態で留まっているその剣を人は呪いの剣と呼ぶだろう。
「あんたもそう思うだろ?」
ルシファーに剣を付きつけながら目の前の水晶を正面に構えそう言った。すると後ろの暗闇から一つの足音がコツ、又一つコツっと音を立てた。
「…。」
「なぁ…―――――さんよ?」

463 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 00:05:51 ID:TKMnQmVU0

 「バ…バフォメットぉ!?」
アデルに担がれているクラウスは叫んだ、有終以来…さまざまな主君達が挑み返り討ちにされたと言われ、伝承にまで刻まれた存在。鬼神の異名を持ち、また終焉をもたらす者の二つ名を持ち合わせる存在。それがバフォメットであった。
「そんな太古の鬼神が何で今更…つか、何であんたがそんな事を知ってるんだ!」
「主達も交えただろう、街の外で巨大な鷹の魔物を。奴が復活したと言う事は既に召還の儀式は始まっている。いけにえになる魔物は後一匹。それを抑えなくてはならない。…いや、封印しなければならない。」
アデルは走りながらクラウスにそう伝える、召還の儀式にていけにえにされる三つの封印されし魔物の内二体は既に倒してしまっている。残る一匹を一刻も早く封印又は討伐すれば召還は失敗すると言うことだそうだ。
「封印って、倒せば言いだけの事なんじゃ…。」
「最後の一匹は今までの二匹とは格が違う、現在の戦力では勝てるかどうかも怪しい所だ。」
その言葉を聴いてクラウスは内心ギョッとした。これほどの身体能力を持ち、尚且つリザードキングなる者を瞬殺したこの男でも太刀打ちできないのかと。
「…あんたでも、太刀打ちできないのか?」
「分からん、だが厳しいだろう。…邪気を感じる、直ぐそこだ。」
一度アデルは後ろを振り返った、少し離れた所にミトとイリアが息を切らしてヘトヘトになりながら走っていた。それを見たアデルは一度立ち止まり、急速に詠唱を始めた。
その詠唱を見てクラウスはさらに驚く。身の丈ほどの巨大な剣を担いでいながら魔法の詠唱を始めた事に驚いていた。そしてアデルの詠唱が終わると同時に四人の体が一斉に光った。それは即効性のある回復魔法だった。一瞬の内に疲れを取り全身にできた傷を修復してくれる。その回復速度は並の術者では到底叶うことができない領域でもあった。細胞レベルの活性化による皮膚の再生速度を見ても大陸ではトップレベルの術だと認知できる。
「…あんた、本当に剣士なのか?」
「区分を付けるのであれば剣士なのかウィザードなのか、はたまたビショップなのか。私が生きてきた時代にそのような区分は無かった。好きに呼ぶがいい。」
後方の二人が追いつき、その光の回復を受けたのを確認した後アデルはすぐさま走り出そうとした。それをミトが止めた。
「待ちなさいアデル・ロード!」
その言葉にピクっと反応したアデルは動かそうとした足をすぐさま止め、ゆっくりとミトの方を振り向いた。そして無言でミトを見つめる。
「一体どういうことなの、何故貴方がここに居るの。」
「…先刻も言ったであろう、その話は無事に地上に帰ってからだ。」
「…貴方は、私たちの見方なの?」
その言葉に即答は無かった、しかし一度笑みをこぼし緊張した顔からいつか見た顔に変わった。そしてゆっくりと前を向いて
「あぁ…。」
と一言だけ言った。





Act13 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-1
END

464 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 00:07:46 ID:TKMnQmVU0
地方によってはかなりの気温差があるようですね…。(´・ω・)
こんばんは、お騒がせ21Rです。
なんだかもうアレですね、伏線張りすぎて何処の伏線が何処に繋がっているとか
忘れてきましたヾ(´・ω・`)ノ

とかく仕事が休みの日はいいもんですねぇ〜
家でまったりとした後にドライブに出かけて、ラーメン食べて、風呂入って寝る。
うん、最高ですねヾ(´・ω・`)ノ


はい…小説書きますorz

465名無しさん:2007/10/06(土) 01:47:43 ID:/Kk2evfA0
序章 【物語は多分始まってもいない】

ガラガラガラガラ…
そんな心地よい音とともに心地よい振動が横になっている体に伝わる。

ガラガラガラガラ…
耳に嫌な音が響く。
届かない・・・

ガラガラガラガラ…
外の天気は晴れ。こんなときは絶好の釣り日和だが…
あいにく釣りをできる道具を持ち合わせていない。残念だ。

ガラガラガラ…
嫌な音が耳に響く。
あと…あとちょっとなのに…

ガラガラガラガラ…
車輪の音に混じって外から人の声が聞こえる。
「もうすぐ着くぞ!」

ガラガラ…
ずっと嫌な音が聞こえる。
ダメだ…もう…

ガラガラガラガラ…
声の主は馬車の主だ。
ここは馬車の中。
俺はたまたま行き先が同じだった主に無理を頼んで便乗させてもらっているわけだ。

ガラ…
嫌な音と大切な何かが止まった。
気がした。

ガラガラガラガラ…
そろそろ着くのか。
俺は起き上った。自分の荷物をまとめる。


あたりは静寂に包まれる。
その中で俺は悟る。
ああ…またか、と。

ガラガラガラガラ…
外を見る。
人の往来が激しくなっていた。
目的地が近付いてきた証拠だ。
ふと車輪の音と振動が止んだ。
「おまえさん。ここからは別の道に入るからここまでだ。
達者でな。」
「ありがとうございました。」
馬車の主にお辞儀をして見送る。馬車が去るまでそこに佇んでいた。
「さて…」
目的地はすぐそこだ。
古都ブルンネンシュティグ。
冒険家達の集う所。俺はそこに行くためにそこにきた。
理由は…「アコガレだった冒険者になるために」
主の言うには半日ぐらいで着くらしい。
よし…いくか。
俺は相棒の剣を片手に歩きだした。


…4日後
俺は古都についた…はずだった。

「あんさん。ここはハノブだよ?通称鉱山町ハノブ。
古都は逆方向だよ。」

町の人にそう言われるまでは。
ま、まじですか?

466名無しさん:2007/10/06(土) 02:03:59 ID:/Kk2evfA0
反省の意をこめて名無しで投稿します。
皆さん今晩は。またしても変な時間に投稿させていただきます。元NTです。
本来はコテハンで投稿していたのですが、ここに載せていた自分の作品を自サイトに載せたところ、
「これはパクリではないか?」(多少表現を変えています)
とのご指摘を頂きました。
その方の指摘した文章を拝見させていただいたところ
確かに酷似している部分が多数見受けられました。(その舞台をRSにそのまま移した感じです)
もちろん私としてはそのような事実は無いのですが、そのように不快感を感じている方がいる以上
今まで続けていた作品を続けるわけにもいかなくなりました。
最後まで書けないのは不本意ですが今まで書いていた私の作品は打ち切りとさせていただきます…
正直残念ですが…


で、気分一新?で新しくやってみようかな…と思って埋まっていたネタを掘り出してみました。
感じ的には一つごとに完結?する短編をたくさん繋げて一つの物語にしてみようかと思っております。
その始まりとしてわけのわからない序章っぽいものを投下させていただきました…
いろいろと現状で参っておりますが他の方に負けないように頑張れたら…いいなとか思っておりますので
引き続きよろしくお願いします。
駄文失礼しました。

PS 最近スレの伸びがいいですね。見ているだけでもうれしい限りです。
  

PS K様これでよろしいでしょうか?レスは不要です

467◇68hJrjtY:2007/10/06(土) 06:57:21 ID:uSqcu8gQ0
>21Rさん
じわじわと展開が進んで行くようで、そして遂にアデルの目的もはっきりして来ましたね。
今回も創作魔法が面白いですが、考えてみれば剣士が回復魔法を使えても良いような気もします。
ゲームバランスを崩さない程度に各職に色々なスキルが欲しいなぁと妄想する毎日です(笑)
アデルが真相を語ってくれるのが楽しみです。
続きお待ちしています。

>466=NTさん
なるほど、そのような事情があったのですか…私も同様に残念ですorz
「話を作る」以上予期せぬ部分でパクりに近い事件は起きてしまいますし、そこまで気にされることは無いと思いますが
NTさん自身がそのように決められたのならば私から継続をお願いすることはできませんね。
新しいお話もスタートされたことですし、今後はこの新米冒険者君の(?)お話を楽しみにさせてもらいます。

468 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 12:41:01 ID:TKMnQmVU0
>>NTさん
お久しぶりです。
そうですかぁ、それは残念です…
でもアレですよね、酷似しているなんて良くある話ですよ〜。いろんな人が居ますから
何処と無く似ていたり、ストーリー背景が似ていたりする事や多々ある事ですよ

むしろアレです、NTさんの書いていらっしゃった小説がその小説に似ていたんではなく
その小説がNTさんの書く小説ににていt(うわなにするやめr

と言うわけで、また暫く仕事が続くのでもう一品投下していきまふ〜ヾ(´・ω・`)ノ

469 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 12:42:59 ID:TKMnQmVU0
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Act14 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-2


 「あばばばばばばばばばばば!」
ユランの放った放電は案の定濡れている地面を通しユランにも感電する、魔力制御がまだ上手くできないユランは全力に近い雷を放ち、自分に帰ってきてしまった。
「くぅ…しびれるぅぅ…。」
バチバチと音を立てて未だにユランの体に電気が流れる、残った電気は微電流と也ユランの筋肉に作用しピクピクと痙攣させていた。
「で…でも…これだけの攻…撃…いくらあいつだ…て無事じゃ…。」
口が上手く回って居ないところを見ると、頬肉にも微電流が流れて居る事が分かる。よほどの雷だったのだと推測が着く。クラウスに修行を付けてもらい魔力制御等を教わったはずだが、今だ慣れない魔法に関してはこの通り。
ユランは辛うじて立ち上がることが出来た、放電の際に感電し立つことが出来なくなったユランはそのまま尻持ちをついていた。
立ち上がったユランの目の前には爆発の煙と放電と水滴によるスパークで視界をさえぎっている状態であった。
「流石に倒れたか…な?」
思えばこの魔物は何なのだろうか、火を吹く魔物と言えばイフリィートで有名な四足歩行の神獣形。フランデル大陸にも十数匹しか存在しない記念神獣。性格は大人しくてこちらから攻撃を仕掛けない限り襲って来ないほど温厚な神獣。
その神獣とはまったく異なる魔物、二足歩行の人形。今まで見た事の無い形をしていてとても人に似ている。
「っな!」
そうこう考えていると、煙の中から一つの炎がユランの所へと飛んできた。ユランはすぐさま詠唱を始め風の暴風壁を目の前に作り出した。炎はその風によって二つに分かれユランの回りにある岩の壁にぶつかった。
「ひぃぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜…。」
灼熱、まさにその名にふさわしいほどの炎が岩の壁をも溶かしていた。どんな優秀なウィザードですら辿り付けない高みにあるその高温。先の大戦の英雄、アレンですらこれほどの高温を作り出す事は不可能だっただろう。
「ユラーン!」
その時、全身から死の恐怖が立ちこめてきたと同時に後方から声が聞こえた。それはつい数時間前まで一緒に行動を共にしていた仲間達の声だと一瞬で理解した。
咄嗟に振り向いたユランだったが、それを魔物は見逃さなかった。後ろへと体を反り返らせ一度に大量の空気を吸い込み。そして体内で沸々と沸きあがる炎を口一杯に溜め込む。
そして一気に口から吸い込んだ空気と一緒に噴出した。噴出された炎は先ほどと同じもしくはさらに高温の炎となりユランへと襲いかかる。
「ユラン君!後ろ!」
「へ?」

470 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 12:43:41 ID:TKMnQmVU0
その声にようやく前を向き目の前に襲い掛かる炎を見た。状況が良く理解できなかったユランだが彼は咄嗟に
「あぁ、楽しかった僕の人生、短かった僕の人生、ありがとう僕に声を掛けてくれたちびっ子…。」
そこまで言うとユランは襲い掛かる炎の中に沈んだ。
「っ!」
数千度に達するであろうその炎の温度を噛み締めながら死んでゆくのだろうと思って居たユランだが意識はハッキリとしていた。
「油断するでない、イル!」
目の前には右手を正面に翳したアデルの姿があった、どの魔法にも属さない何らかの障壁で炎をしのいでいるのが分かる。風、水、炎…どれでもない全く無機質な物がアデルの右手より展開されていた。
「あんたはさっきの!」
「話は後だ、この炎を防ぎきった後アヤツを倒す!」
その言葉が切れた瞬間、炎は何も無かったかのように一瞬で消えた。それと同時にアデルは左手に構える身の丈以上の大剣を振り上げ目の前へと走り出した。
「…。」
だが、その先には何も居なかった。先ほどまで炎を永遠と吐き出していたあの魔物の姿は何処にも見当たらない。そしてアデルは頬に一つの汗を流しすぐさま何かの詠唱を始める。
「あの魔物は何処!」
ミトがユランの隣まで走ってきて言う、それとほぼ同時に坑道全体が揺れ始めた。先の地震とは似て居ないがそれは確かに地響きのようで地震のようだった。
「ゆっくりと会話を楽しむ暇はない、この光の中へと皆はいれ!」
アデルは詠唱を終わらせると目の前に巨大な光を作り出した、それは夜明けの古都の風景が映し出されていた。最初はこれが何か分からなかったがアデルの後ろから迫り来る物をみて四人は驚愕した。
「み…水!?」
「早くこの光の中へと入るんだ、溺死したくなければ急げ!」
最初に飛び出したのはユランだった、チキンといえば事が収まるほどの速さで光の中へと飛びこむ。続いてクラウス、ミトも光の中へと飛びこみ最後にアデルが
「…ちっ!」
と舌打ちをして光の中へと飛びこんだ。






Act14 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-2
END

471 ◆21RFz91GTE:2007/10/06(土) 12:48:38 ID:TKMnQmVU0
と言うわけで後半戦突入です(´・ω・`)
今年中に二部終わるかなぁ…orz
出来れば今年中に二部を終わらせて来年からは三部に突入させたい21Rですヾ(´・ω・`)ノ

>>◇68hJrjtYさん
何時も何時もコメントありがとう御座います
ゲームバランスを崩さない程度ですかぁ〜…アデルがいる時点でバランスブレイカーな気もしますねw
とかく、アデルはバランスブレイカーと言う事で(ぁ

472◇68hJrjtY:2007/10/06(土) 15:27:25 ID:uSqcu8gQ0
>21Rさん
なんだか度々の感想レス、済みませんorz 感想ばかりでスレ消費しすぎですな(;´∀`)
やっとユラン君が助かって良かったですが、この場は一旦退く事になるんでしょうか…。
ピエンドは個人的にメインクエで痛い思いをしているので嫌いです(´;ω;`)
ゆっくりで構いませんので、続きの方執筆頑張ってください。

473名無しさん:2007/10/07(日) 17:37:18 ID:.SlwqRq60
こんばんは、前スレ888及び現スレ343です。
またまた遅くなっていますが、今のところはなんとか書き進んでいます。
Avengers編は今までと違って少々入り組んだ話になりそうです。
途中まででも投稿したいのですが、あちこち隙間や改行だらけなので…(汗

代わりに主人公の天使の名前について分かり難くなっているので、それについて軽く解説します。
ネタバレにはなっていないはず…というより、参考にすらなってないかもしれませんので悪しからず。
つまり全然代わりになってな(ry

1)ユリウス=トワイライト … 第一話で「彼」が心の中で名乗ったもの。
2)エリス・H=カティナ … 第二話で「彼」がヨネスに向けて名乗ったもの。
3)リバーグルフ … 第三話で会話の中に登場。

今まで書いたものを読み返してみると、文体が全く安定していないことに改めて気付かされます。
特に一話目&二話目と三話目では大きく違っているような気がしました。
やはり執筆のスピードの所為でしょうか…?orz

全然文がまとまっていませんが、今日はこの辺で。それではまた。

追伸
他の職業や姫は大体掴めましたが、リトルのキャラ付けが全くできません。
全ての職業を出したいと思っている自分にとって非常に大きな壁です。

474◇68hJrjtY:2007/10/07(日) 18:01:45 ID:mIXKjyZo0
>473=888さん
執筆速度やUPのタイミングは書き手さんの都合に合わせるようにこちらからもお願いします。
無理に急ぐのは禁物だと思いますが、あまり時間が空いてしまうと確かにペースが狂ってしまいますよねorz
なかなか自分に合ったペースというものを掴みづらいのもあると思いますが
完結まで是非とも頑張ってください。いち読み手として大いに楽しみにしていますよ。

全職出したい気持ちはやっぱりありますよね(ノ∀`*)
個人的に性格やキャラ付けが難しいと感じるのはリトルもそうなのですがアチャなんですよ。
どうも自分はテイマと被るようなイメージを持っているようで、その辺の書き分けに苦労したことが。
カップリングを考えると意外にすんなり決められてしまうのに、キャラ単体の性格付けは難しいですよね。

475名無しさん:2007/10/09(火) 16:07:57 ID:cb1ogkdk0
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※電子マネー以外でもできます。

476ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/09(火) 22:42:18 ID:M35Ru9Fc0
Battle Show 〜後編〜

さてさてこちらは別の控え室、というかVIPルーム・・・。
「はぁ・・・ん、やっぱりコレがいいわね〜。でもこっちのレオタードも色が可愛いしぃ、あ〜ん迷っちゃうわ〜!!」
クローゼットに吊るされた十数着ほどのスポーティなレオタードを漁り、お気に入りの一枚を選ぶのは・・・・
ご存知「歩く18禁」や「いちいちエロくてウザい」などと言われる、このお話きってのエロ女・・フィナーアだ。
しかも彼女の趣味なのか、といっても間違いなくそうだが、レオタードは全てハイレグでTバック仕様である。
それらを一着づつ脱ぎ着しながら(あと色々なセクシーポーズをして自己陶酔しながら)試合へ着ていく勝負服(?)を
選びかねていた。とそこへバーのマスターもといこの屋敷の主である男がドアを開けて入ってきた。
「やぁフィナーア、調子はどうだい?相手はあの獣人王だぜ、フルボッコにされても知らねぇぞ〜?ん?」
「うふふっ、アタシを誰だと思ってるの?そこまで弱くないもんっ♪それに・・・アタシと組んだ男はみ〜んな
 アタシのナイスバディにメロメロなのよ〜ん?チャンピオンだろうとお構いなしよ、うふん♪」
四つん這いになり、彼女は男に向けてウィンクと共に挑発的にお尻を振って見せた。
「プハハハハハ!言うじゃねぇかオイ、まぁ・・・今日の試合はちと特別だからな。気を抜くなよ?」
「男相手にアタシは気を抜いたことは無いわよぅ、むしろいつでも発情しちゃうわよ?」「ハハッ、違ぇねぇ!」
二人は談笑し合うと、男は部屋を後に、フィナーアはまたレオタード選びへと勤しむのだった。


一方、ここは試合の行われるメインフロア・・・観客たちの視線は、リングを囲む不気味な檻に向けられていた。
「お、おいおい・・・あんなところで闘うのかよ、オレだったらごめんだぜ!?」「パパぁ・・・怖いよぅ」
「は、ハハハッ・・ここコレじゃまるで・・・デスマッチじゃねぇか、敵わねぇよぉ・・・」
観客の十中八九がその独特の不気味さを放つ闘いの舞台に恐怖の色を隠せなかった。何故なら・・・・・・
その日のリングは普段は金網だけが覆っていたものが・・・有刺鉄線と得体の知れない糸のような物が張り巡らされた
不気味なリングへと姿を変えていたからだ・・・・・。

477ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/09(火) 23:00:21 ID:M35Ru9Fc0
そしてここは屋敷の主のみが入ることを許される部屋・・・男はソファに足を組ませて座っていた。
「キシシ・・・旦那ぁ、リングの設営準備は終わりやしたぜ。ご褒美下さいよォ〜」一匹の蜘蛛が男の足元で
ねだるように言葉を放った。男は椅子から立ち上がると、闇に包まれた部屋の奥へと進み、すぐに戻ってきた。
手には血の滴る何かの生物の肉塊をぶら下げ、それをペットと思わしき一匹の蜘蛛に向けて放り投げた。
蜘蛛は口から糸を伸ばし、それを使って放物線をを描いて落下する肉を捕らえ、嬉しそうにそれを貪っていた。
一方の男は、背広を脱ぎ捨ててネクタイを解き、そしてシャツをも脱ぎ捨てると・・・肌が青白く変化し、髪が
茶色に変色し、八重歯は伸びていた・・・・男の姿はすでに魔物と化していた。

「ククク・・・人間としての生活も悪くないが、たまには魔物としての性も忘れぬようにせねばな。
 アラクノアよ、今宵の血祭りの用意・・・ご苦労であった。最高の血塗られしオペラを見れそうだ・・・」
「久々ですねぇ旦那ぁ・・・あなた様がヴァンパイアとしての姿に戻るのは・・・・」
「あぁ・・・それよりも喉が渇いた。ザッカル様への分もそうだが、私が頂く分の血が流れることを願う・・・



  今日はこのバーの閉館日、そして私とザッカル様に捧げられる血祭りの日だ・・・フハハハハハハ!!
            ハ―――――――ッハハハハハハハハハハハハ!!!!!


ヴァンパイアの足元には、このバーの、そして館の本当の主の亡骸が転がっていた。すでに原型を留めていない
死して半年ほど経ったような腐乱具合だった・・・・・・・。

478◇68hJrjtY:2007/10/10(水) 00:45:52 ID:WmjVAhfg0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
執筆中でしたらすみません…
お色気パワーのフィナ姉が大登場ですね。この姿は子供には刺激的すぎるような(笑)
このリング形態は確かにアラクノフォビアを連想させます。あれは敵に使われるとホントに面倒でしたorz
黒幕もなんとなく明らかになったところで、Battle Show編の続き楽しみにしています。
ところで「歩く18禁」がなんかイヤにツボにハマりました(*´ェ`*)

479名無しさん:2007/10/10(水) 02:03:42 ID:FMDyHMR20
武器には名前がある。
そんなことを聞いたのは、初めてだった。
もちろん、「シャムシール」だの「クレイモア」だの、ということではない。
それらはその武器の製品名、もしくは形状名であって、決して名前ではないのだ。
そのことを、俺はあの時知った。

あのひとは、いつもその剣を大事にしていた。
もちろん俺だって武器は大事にしている。
戦闘ごとに手入れをし、その性能を落とさないよう気を使っていた。
しかしあのひとは、その剣をまるで人間のように、そう、まるで愛する人のように扱っていた。

まだ何もわかっていなかった俺も、仲間たちも、おかしなひとだ、と笑っていた。
あの戦いまでは。

あれは、俺の所属するギルドの仕事でハノブの西にある廃坑の調査に行ったときのことだ。
ハノブの住民たちから、最近妙に魔物が多いとの報告を受け、ギルドの中から調査隊が組まれた。
その中に、俺とあのひとはいた。

古都ブルンネンシュティグから廃坑へ向かう途中から異変に気づいた。
それまでは、その辺りに生息する魔物たちはそれぞれバラバラに縄張りをつくり、侵入してくる人間を襲う程度だった。
その縄張りも、街道からはだいぶ外れたところにあったのだ。
つまり、ほとんど人間に危害はないエリアなはずだった。
しかし、俺たちが向かったとき、魔物たちは街道周辺にいた。それもかなりの数が、だ。
さらに異様だったのは、廃坑へ近づけば近づくほどにその数が増えるということ。
入り口付近にいたっては、完全に魔物たちに封鎖されていた。

俺たち調査隊は、数匹程度がまとめて襲ってこようが何の問題もない、それなりの戦闘力を持ったメンバーを集めている。
しかしそこにいたのは数十匹、いや百数十匹の魔物の群れだった。
いくら斬り捨てても、いくら薙ぎ払っても、いくら焼き尽くしても、その数はなかなか減らない。
やっとの思いで殲滅したときには、俺たちもかなり消耗してしまっていた。
入り口にこれだけの魔物を集めるということは、間違いなくこの廃坑の奥で何かが起きている。
それは、考えるまでもなく誰もが至った結論だった。

480名無しさん:2007/10/10(水) 02:04:26 ID:FMDyHMR20
俺たちはしばしの休憩の後、廃坑内に侵入した。
奥へ進み、地下二階に降りたところで異常なまでの空気の緊張を感じた。
一見通れないように思える壁の隙間から、魔物の瘴気が漏れ出ている。
力ずくで岩をどかし、その奥に踏み込んだとき、そこに充満した闇の空気に少しむせたのを覚えている。

そこには、奇妙な格好をして何かを祈っている魔物たちの姿があった。
周りには巨大なワームが取り巻いている。
一匹のワームが俺たちに気づき、声とも鳴き声とも取れない何かを発した。
その途端に、いっせいにワームたちは襲い掛かってきた。
それらを斬り捨てながら、その先に目をやると、祈りを捧げている魔物たちの前方に黒い煙がたちこめていた。
その中から現れた、巨大な魔物。
漆黒に輝く鎌をきらめかせ、そいつはゆっくりと動き出した。

そいつは、目の前の魔物どもを一瞥するとその漆黒の鎌を一振りし、音もなく跳ね上がった魔物たちの首が地面に落ちると同時に、この世のものとは思えない叫び声を上げた。

俺たちは消耗しすぎていた。
入り口での大量の魔物。ここへ着いた瞬間からのワームとの戦い。数が多すぎた。
そこへ来て、この巨大な魔物の圧倒的な存在感、凶暴性、そしてその強大な力。
俺たちの武器の刃はこぼれ、体は傷つき、魔力は途切れそうになっていた。
そいつの振るう鎌を受け止められず、剣はむなしく折れた。
そいつの皮膚を貫き通せず、槍はむなしく砕けた。

俺たちは死を覚悟した。
武器もなく、逃げ戻る力もなく、助けもあてにはできない。
そいつが鎌を振り上げるのを見て、これで終わりか、と呟いた。

そのとき、その鎌を受け止めた剣。
それが、あのひとの剣だった。
これまでの戦闘に耐え抜き、この凶悪な鎌すらも防いだ。
俺がなんとかするから体制を立て直せ、あのひとは鎌を振り払うと言った。

あのひとは剣を水平に構え、「行こうか、―――――」と呟き魔物に向かっていった。
あの鎌の斬撃を受け止め、受け流し、斬りつける。
俺たちの武器では歯も立たなかったあの魔物の体が、刻まれていく。
なぜ。あのひとだって、俺たちと同じように戦っていたはずだ。
なぜあのひとだけが。なぜあの剣だけが。

あのひとが戦っている間、俺たちはなんとか体制を立て直した。
しかし、俺にはもう武器がない。
なんとか魔力を回復した仲間たちがあのひとをサポートするのを、黙って見ているしかなかった。

481名無しさん:2007/10/10(水) 02:05:43 ID:FMDyHMR20
やがて、大きな地響きとともに魔物は倒れた。
あのひとは、その剣とともに俺たちの元へ戻ってきた。
額から左目にかけて深い斬撃を受け、右脇から血を流し、数え切れないほどの傷を負って。
それでも笑顔で。

応急処置を施している間、あのひとは言った。
「武器とは、ただの物じゃない。壊れたら変えればいいというものじゃない。
武器とは、俺たちにとって唯一のものだ。
そして、その武器にとっても俺たちが唯一のものになったとき、その武器は何物にも変えがたい存在になる。」
「お前の剣に名はあるか?お前の槍に名はあるか?
売り物の名前じゃない、お前だけの名前があるか?」
「俺の剣にはある。
俺はこいつの名を呼べる。こいつも俺の名を呼んでくれる。
だからこそ、俺は戦える。」
「お前には愛するひとがいるか?頼れる友がいるか?
そのひとたちを想うとき、その名を呼ぶだろう?
同じことだ。」
「存在を認めること。そして、存在を認められること。
それが、なにより一番大事なことだ。
いつか、お前も、名を呼び合える剣に出会えるはずだ。
お前が求めていれば、必ず出会えるはずだ。」
「お前だけの剣。お前だけの槍。
その想いが届いたとき、お前は誰よりも強くなれる。」

そこまでしゃべると、あのひとは血を吹いた。
急激に顔が青ざめ、体が細かく震えていた。

「いつか、お前の剣の名を聞きたいものだな。
俺の剣の名か?こいつは」

結局、あのひとの剣の名を聞くことはできなかった。
それでも、なぜあのひとが戦えたのか、心で理解できた。

そしていま、俺の傍には一振りの剣がある。
俺はこいつの名を呼べる。こいつも俺の名を呼んでくれる。
俺は、戦える。

俺の剣の名は――――――。

482名無しさん:2007/10/10(水) 02:08:13 ID:FMDyHMR20
すみません、なんか思いつきだけで書きました。
やっぱりみなさんのようにはいかないや・・・。

ROM専に戻るです・・・
スレ汚し申し訳ないですorz

483◇68hJrjtY:2007/10/10(水) 05:43:32 ID:D4vGmsCA0
>484さん
執筆ありがとうございます。ROM専の方から書き手になってくれるのはなんか嬉しいですね(*´д`)
ただの"モノ"として扱うよりも、命を分け与えた相棒のように武器を見ることができれば。
簡単に武器を持つ世界に生まれてこなかった私でも、そんな関係に憧れみたいなものがあります。
語り手のような剣士君(?)がその意志を継いでいくというのも良いラストシーンでした。
また気が向いたらいつでもUPしてくださいね。お待ちしています。

ところで最初、武器姫さんが出てくるのかなぁと思ってしまった(・∀・)

484姫々:2007/10/15(月) 22:52:37 ID:K.G1/1OU0
|ω・`)・・・
コンバンハ、姫々です。夏前になったらちょっと楽になるかなーと思ってたけど
全くなりませんでした。むしろやらないと駄目な事が大量に浮き彫りになり、
もっと忙しくなりました。
結局リク応えられてません、ごめんなさい。
今日は挨拶だけです、消えません、受験終わったら帰ってきます(´・ω・`)
(あ、私の小説(?)読んでない方は読んででいただければ喜びます、主に私が。)

485◇68hJrjtY:2007/10/16(火) 02:52:58 ID:dbLm/wCE0
>姫々さん
忙しい中で小説まで手を回すのは大変だと思います。
リクの方はお気になさらず。リアル優先してください。
じゅうぶんに時間を回せるようになったらまた来て下さいね。お待ちしていますよ!

486ドリーム:2007/10/19(金) 13:00:52 ID:B.e7ZVj60
>>名無し様
とても印象的な小説だと思いました。人という概念に捕らわれず、剣を中心の話にしたのは良い発想だと思いました。
戦闘部分がやや省かれている面がありましたので、今度はそういう所にも力を入れて欲しいです。

と、久しぶりに沸いてみる。皆さん頑張ってね。

487FAT:2007/10/21(日) 21:54:48 ID:q0JeK8ys0
『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369

―蘇憶―

―1―

 金持ちの家……にしては質素だとジョーイは思った。エイミーの家は地上二階建ての地
下室付きで三フロアある。地下以外はこれといった特徴のない木造りで、基本的に光物を
置いていない。外見ももちろん地味で、店の看板すら出していない。家を訪ねるとき、本
当にここなのかジョーイは不安になったものだ。とても一件一千万以上稼いでいる家には
見えなかった。
「おはよう、ジョーイ君」
 霧が立ち込める窓の外をぼんやりと鏡越しに眺めていたジョーイは振り返り、
「おじさん、おはようさん」朝から笑顔が元気だ。
「どうだね、この村の生活には慣れたかい?」
「ああ、もうすっかり気に入ったよ、この町をね。おじさんこの町嫌いなのか?」
「いやいや、昔の名残でね。そうだね、町だったね」
 奥のほうでごとごとと音がし、コーヒーを載せたトレイが現れた。
「おはよう、ジョーイさん。ご機嫌いかが?」
 遅れて少しぽっちゃりした色白の女性が姿を見せた。自然にちぢれた髪の毛に白い毛が
交ざり始めている。
「おはよう、おばさん。今日もいい気分だよ」
 ジョーイは「今日も」と言ったが、一週間前ならばこんなに自然にこの言葉は出て来な
かった。
 ――あの日、ジョーイはエイミーに眼帯を渡した直後、意識を失った。それは龍の支配
によって疲弊した体が、限界を迎えていた証拠だった。彼はフランの家から逃げるように
去った。あの娘たちを送り届けるという役目は果たしたし、何より彼女の好意を受け入れ
られない自分がその家に長く居てはならないと感じ、激しい反動の軋みを耐え、リンガ村
長老にポータルでここ、トラヴィスまで飛ばしてもらったのだ。
 突如倒れた客に三人娘はテキパキと処置を行い、その後成り行きでジョーイはラスの部
屋を借りることとなったのだった。

488FAT:2007/10/21(日) 21:55:42 ID:q0JeK8ys0
 エイミーの母の差し出したカップの取っ手をつまみ、ジョーイは芳醇な香りに安らぐ。
この町の特産品の一つであるコーヒー豆は本当に素晴しい。昇りかけの陽の光を霧が紫に
包み込み、徐々に白に変えていき、この変化を共にするコーヒーの苦みすら爽やかに感じ
るような気持ちのいい朝だった。
 コーヒーを飲み干すと、ジョーイはカップをエイミーの母に手渡し、既に慣れた足つき
で艶のある階段を上がり、右手の部屋をノックした。返事はなく、戸には鍵がかかってい
ない、ジョーイはそっと、ノブを手に押し開けた。
「エイミー、朝だよ、起きなよ」
 もこっと膨らんでいる布団は微塵も動かない。ジョーイは仕方なく部屋に入り、当たり
障りのなさそうなところを叩いてもう一度繰り返す。
「エイミー、朝だよ、起きなよ」
 んん……と僅かに呻いた声が布団の中から漏れ、白く、細い腕が繭を突き破ったように
布団をはだける。そうして朝の光をまともに浴び、苦くも嬉しそうに顔をくしゃくしゃに
してエイミーは目を開けた。
「あぁ……いつも悪いわね……。……ちょっと起こしてもらえる? まだ体が動かなくっ
て……」
 ジョーイは差し出された手を掴み、ぐだったエイミーの体を引っ張り上げた。体重はそ
んなにないはずなのに、ずっしりと重く、まるで底に沈みこんでいたようだった。
「おはよぅ……」
 力なく階段を下り半死人のような生気のない目をちらつかせ、エイミーは椅子に腰掛け
た。そのまましばらくは、目の前に香ばしい朝食が運ばれてきても、香りの良いコーヒー
が置かれても、ただただ虚ろに頬杖をついて自然に体が、頭が起きるのを待っていた。
 このエイミーの症状は今に始まったことではなく、家の商売を手伝うようになってから
――すなわち、大量の魔力を使うようになってから現れるようになった。十分に仕事をし
た次の日の朝……エイミーは決まって夢を見た。実に様々な夢を見るが、その夢の前に、
こちらは必ず同じ夢が、夜中にエイミーを襲った。明け方の夢は夜中の脅威とは正反対に
楽しく、優しく、暖かな物だと決まっていて、それでエイミーは朝が来たのを忘れて夢か
ら覚めれないで寝坊をした。このことは仕事をした日だけに起こることで、仕事が来なか
った日の次の朝にはなんとも自然に目が覚めるのだった。
 ようやく頭にも、体にも血が巡ってきたかというころ、乱暴に玄関が開き、ぼさぼさの
頭が叫んだ。
「エイミー!! 起きてるかぁ!!」 
「起きてるわよ」
 ずかずかと侵入してきたレンダルはエイミーの顔を見るなり舌打ちをして、
「ちぇ、最近はあのとぼけきった顔が見れなくて、なんだかやるせないな」とジョーイを
軽く睨んだ。

489FAT:2007/10/21(日) 21:56:31 ID:q0JeK8ys0
―2―

 のどかな、どこまでものどかな町だ。草木は緑々しく、朝露がそこらじゅうで日を映し、
放牧されている牛や豚、羊などがおっとりとそのきらめきを口に運ぶ。どこからと言うで
もなく鳥たちの囀りがこだましあうように四方から心地の良い風を運び、さわさわと木々
を揺する。間延びしてしまうような青の展望に、四人は寝転がりながらある者は目を瞑り、
ある者は嬉しそうににやけ、ある者は内緒のおしゃべりをしている。
「ねね、お姉さま、ジョーイさんって本当に素敵だと思いません?」
 ジョーイがエイミー宅で暮らし始めて十日ほど。毎日のようにこの子はジョーイの話を
したがる、そういう年頃なのだ。
「そうね。でもねデルタ、あの人はきっとここまでよ」
 デルタは毎回こう返すエイミーを怪しく思う。それって私が入り込む隙がないっていう
こと? もう二人はそういう仲なの? そんな懐疑な考えがありありと出ているぱっちり
とした瞳をエイミーの優しい瞳がなだめる。目を見られたら負けだ。デルタは甘えるよう
にエイミーの懐に転がり、静かにじゃれた。静かな笑いが風に乗り、その笑いを捕らえよ
うと蒼いカエルがぴょんと跳ねた。
 今日はエイミーの祖母の命日。無職な三人とともに町の北東にあるタワー洞窟へと墓参
りに行く。町のあるアラク湖西部一帯で放牧できるよう、土は耕され、不毛だった土地は
いつからか青々と茂るようになっていた。なので今寝転んでいる北限の地を隔てる川を渡
ると、そこは剥き出しの乾土と艶のない痩せた草木という殺風景なものに早変わりする。
 青空を眺めてにやけていたジョーイはおもむろに立ち上がると、湖の方に歩き出した。
「どうかしたか?」
 眩しそうに目を開けてレンダルが呼びかける。
「トイレ」
 振り返り、振りまかれるまんべんの笑み。そうして湖畔へと消えていった彼を追うよう
にエイミーも同じ方角に消えた。

「お姉さまぁ……」
「ん? なんだよ」
「やはり、エイミーお姉さまとジョーイさんはむふふな関係なのでしょうか?」
 レンダルは厭きれた顔で、「なにがむふふな関係だ、馬鹿が」と寝転んだまま脚を組む。
「でも、だって、一緒に暮らしているのですよ? 一つ屋根の下ですよ?」
 少し興奮しているのか、上体を起こしてめんどくさそうなレンダルを覗き込む。
「あいつはさ、エイミーはさ、きっと俺以上に男ってものに興味がないんだよ……」
「……」
「……」
 始まる二人の沈黙。それは、触れてはならない暗黒の領域に触れてしまいそうだったか
ら。
 エイミーは男に興味がない。
 それが元々のことだったのか、もはや思い出せないが確実に彼女が変わったのはあのと
き……ラスを身籠ったとき……。
 この話はエイミーを知る全ての人たちの中で禁止されている。なぜなら、エイミーは覚
えていないから。どのようにしてラスが出来たのかを、全く、本当に独りでに子供を宿し
たかのように、そう信じ込んでいるから。
「なぁ、デルタ……」
 再び横になっていたデルタは顔だけレンダルを向いた。
「ジョーイにしっかりと教えておいたほうがいいよな……まだこの町に居付くようだし」
「ですね。でも私はきっとうまくしゃべれませんよ? だって、ジョーイさんかっこよす
ぎるんですものっ! きゃっっ!!」
「馬鹿」

 中々、二人は戻って来なかった。

490FAT:2007/10/21(日) 21:57:10 ID:q0JeK8ys0
―3―

「うをっ! 覗きかい!?」
 物音に頭だけ振り返ってみれば、エイミーが少し顔を赤らめて立っていて、申し訳なさ
そうに、
「あら、いやだわ、ちょっと早すぎたみたい……」
 アラク湖に広がりつつある波紋が途切れ、ごそごそしてからジョーイはエイミーの方を
向いた。
「君もトイレかい?」
「ここ、座ってくれる?」
 ジョーイの冗談は彼女の意識に入らずに、やや気まずくエイミーの指定した緑の上に腰
を下ろした。そうして、何も言わない。エイミーは顔を斜めにジョーイから背け、膝の上
に頬を乗せたままで、ジョーイからはその表情は見えなかった。
「どうしたんだい? まさか本当に覗きにきたんじゃ……」
 返事がない。ここに座れと言ったのは彼女のほうで、ジョーイから話すべき話題はなか
った。だから、アラク湖を揺らす風の道をなんとなく目で追っていた。それはまるで魚が
泳いだかのように一本の筋を引き、波紋がVの字に広がっていき、やがては曖昧に湖に戻
った。その境界を確かめようと波の終わりまで必至に目を凝らしてみたが、やはり曖昧で
あった。
「あなたは……」
 ぽつりと言い、ようやく顔がジョーイを向いた。泣いたのか、目が潤んで充血し、白の
肌が所々赤くなっている。
「あなたは……どうしてそんなに明るくいられるの?」
 ジョーイは首を傾げ、ちょっと考える。
「どうしてって何さ。おれってそんなに根暗に見える?」
 エイミーの潤んだ瞳がジョーイの塞がれた方の目を見る。ジョーイはその隠された物の
奥まで見透かしているような悲しい瞳に寒気が走った。
「私、見えちゃったの。話をね、したのよ。だから、卑怯って思うかもしれないけど、あ
なたのことは全て知ってるのよ……」
 ジョーイは生きてきた中で、これほどの恐怖を感じたことが無かったかもしれない。親
友レニィ以外知るはずのない事を、知ってほしくない事を、エイミーは……
「ごめん、意味が良くわからないんだけど……おれにも理解できるように説明してくれな
いかな?」
「ごめんなさい、私だって知りたくなったのよ、でも、流れ込んできちゃったの、一方的
に。一瞬だったわ、そして、長かったわ。一度に入ってきたことがあまりにも多すぎて、
激しすぎて、悲しすぎて……」
「説明になってない。俺の質問に答えてくれ」
「龍よ」
 エイミーは言ってから、ジョーイの眼帯を注視した。いや、もとより警戒し、ずっとそ
こを見張っていた。眼帯はジム=モリとエイミーの手によって恒星のごとく冷たい、研磨
された青に輝いている。
「龍? なんでそのことを知って……」
「あれは巨大な魔法元素の塊のようなもので、私みたいなタイプの人間と波長が合うみた
いなの。あなたと初めて会ったとき、眼帯を外したでしょう? 見たのよ、そのときに。
それで、流れ込んできたの。私が望まずとも、ね」
「どこまで知ってる? 正直に話してくれ」
 空気が変わった。彼が発しているのか、その中に居る者がそうさせているのか、快晴の
青空に似合わない殺気とも取れる威圧がエイミーを息苦しくさせた。
「だ、だから全部よ」
「その全部を言え」
 何かに憑かれたかのように攻撃的なジョーイ。目つきが違う。
「まず、虐待のこと、眼のこと、龍のこと、そして……」
 ジョーイは自分が爆発してしまう予感がしていた。そしてその衝動を抑えきれないとい
うことも分かってしまっていた。
「彼女のこと……」
「……その彼女のことはどこまで知ってるんだ?」
「あなたと出会って、あなたが殺してしまうまで……」
 予想はしていた。けれど、回避することはできなかった。これは、はっきりと伝えてお
かなければならない事だとあの日からずっと理解していたから。
 いま、ジョーイは剣を振るい、エイミーを消そうとした。誰にも見せぬ胸の内々を、記
憶の奥深くを、心の傷を、知られたのが恐かった。恐くて、恐すぎて、自分が見えなくな
った。だから、エイミーに剣を振るった。
 相変わらず、湖面には風の通り道ができては曖昧に消えていた。そして穏やかな湖面は
鏡のように、二人を曖昧に映していた。

491FAT:2007/10/21(日) 22:02:24 ID:q0JeK8ys0
皆様お久しぶりです。というよりも初めまして。

一年以上も間があいてしまいましたが、がんばって完結させたいと思います。
またこのスレッドのお世話になりますがよろしくお願い致します。

492◇68hJrjtY:2007/10/22(月) 10:49:03 ID:hRcu9ViU0
>FATさん
恐らく初めましてだと思います。
FATさんの書かれたこのお話の最初からを読ませてもらいました。
魔法付加を生業とするエイミーとその息子ラスの二つの話が交錯する不思議な話ですね。
今回は悲しい過去を持つであろうジョーイの真実がだんだん判明してきた一話でしたが…、
もっとジョーイの過去を知りたいと思う反面、少し怖いような気持ちでもあります。
ラス側のレルロンドとランクーイの話もちょっと気になりますが、いずれ語られることを楽しみにしてます。
ゆっくりでも構わないので完結まで頑張ってください。読ませてもらいます(笑)

493ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/22(月) 22:25:14 ID:YLpOGogQ0
「・・・えぇ、会場にお越しの皆様、お待たせいたしました。これより本日のメーンイベントを行います。
 名付けて!!『有刺鉄線アラクノフォビア・サンダーボルト・エクスプロージョン・デスマッチ』!!!
 それでは選手入場、まずは!!赤コーナー、チャンピオン・・・『無敗の野獣戦士』バ――――ソ――ロ―ミュ―――!!!」
アナウンサーの熱いコールと共に、さっきまでリングのおぞましさの前にビビっていた観客たちも一転して総立ちで唸りを上げている。
無論、大人も子供も老若男女問わず、だ。そして選手入場口の裾からガスが噴出され、ウルフマンと化したバーソロミューが
力強い足取りで、ヘヴィメタルの様なBGMを引っさげて花道へとその姿を現し・・・轟音のような狼の咆哮をその場で上げた!!
手の甲から手首にかけてのテーピング、迷彩柄のカーゴパンツ、そして筋肉隆々な上半身とその背に彫られた魔法陣の刺青。
指の骨をペキペキと小気味良く鳴らし、彼はリングへと歩を進めていくのだった。
「・・・続きまして青コーナー、『セクシー・サイドワインダー』フィナ―――――ア・ウォン―――!!!」
そしてまたガスが噴き出すと、今度はR&B調のダンスミュージックと共にフィナーアが出てきた。しかもダンス付きで。
控え室で彼女が選びに選び抜いたコスチュームは、無地で茶色のレオタード・・・あのリングを囲む鉄条網に激突すれば
タダじゃ済まされないというのにハイレグでTバック仕様、そんなのを一枚着ただけなのだ。他には肘と膝にそれぞれ
黒のサポーターとリングシューズ。花道の途中で四つん這いになってエロいダンスをした後、彼女もまたリングへと歩み寄る。

そして危険極まりないリングの中に入った二人、両者とも戦いの舞台の中央で睨み合っていた。
「うふふっ・・・まさか、ミューたんがこのバトルバーのチャンピオンだなんてねぇ、でもこの勝負・・・アタシが勝たせてもらうわよぉん!」
「フフフ・・・強気でいられるのも今のうちですよ、フィナーアさん。野生の底力、見せてあげますよ!!」
「その言葉そっくりお返ししちゃうわよっ、ミューたんもアタシのグラウンド・テクニックに酔い痴れちゃダ・メ・よっ!うっふ〜ん」
投げキッスとウィンクとセクシーポーズという、男なら完全にノックアウトな女らしさの詰まったセットをバーソロミューに投げつけると
フィナーアは大胆不敵な笑みを浮かべて、静かに構えを取った・・・!銀色の綺麗な長髪がザワザワと波打つ・・・!!!
そしてバーソロミューも全身を覆う体毛を逆立たせると、狼の唸り声と共に構えを取る・・・・!!



「GET READY?・・・GO!!!!」アナウンサーの声と共にゴングの弾ける音が会場全体に響き渡る!!!

494ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/22(月) 23:04:33 ID:YLpOGogQ0
ゴングが会場に響き渡り、観客たちの歓声がドワぁ―――っ!!!と豪快に木霊する中、試合は幕を開けた!!
まずはお互いじりじりと移動しながら、互いの出る様子を窺うが・・・・その静寂はすぐに破れ、両者はまず組み手に入った。
周囲を囲む鉄条網とアラクノフォビアの網からは硝煙が立ち込め、パチパチと小さな火花を散らしていた・・・・・・・
「フンっ・・んんっ・!!」「うぅ〜んっ・・・んあぁっ!!」両者ともパワーは互角なのか、数秒ほど固まってはいたが、すぐに離脱した!
そして最初の攻撃はフィナーアから仕掛けた!!身を屈めて溜め込んだあと、そこから勢いをつけて弾丸のようなタックルをかます!!
あまりの速さにバーソロミューはそれをもろに喰らってしまい、しかもタックルの勢いのまま、早速鉄条網に激突させられてしまった!!
バチバチと火花が散ったと思った次の瞬間、ドカ―――ンと花火のような爆発が起こり、黄金色の火花が飛び散った・・・!!!
爆発の中、フィナーアはさらにその反動をも利用し、下半身は大股開きでその場に固定、上体を逸らしフロントスープレックスへと派生する。
ドゴォン!!と豪快な音と共に、バーソロミューが逆立ちしているような影が、立ち込める硝煙の向こうに出来上がっていた。
しかし煙が晴れると状況は観客の予想を良い意味で裏切っていた・・・!バーソロミューはかろうじてスープレックスを喰らわずに
落下する直前、両腕で激突を防いでいたのだった!リングの床にめり込んだ指と上腕二等筋に浮かぶ極太の青筋が彼女の放った
スープレックスの威力を物語っていた・・・・。バーソロミューはそこから逆立ち状態のまま腕立て伏せをし起き上がる。
そして肩に手を当てて右腕をグルグル回す・・・その直後、丸太のような腕がフィナーアの頭を狩った!!
しかし彼のラリアットが当たる直前、フィナーアは両腕をX状に交差させてガードしていたが・・・・
あまりのパワーに吹き飛ばされ、今度は彼女が鉄条網に激突、そして爆破の洗礼を喰らわされた。
彼女の背中とお尻には、有刺鉄線による切り傷と爆破による火傷、そして流れる血だけがあった・・・・。
「いやぁ〜ん!!アタシの超ビューティなお肌になんてことするのよ〜!!!もう怒っちゃったんだからァ〜!!!!」
「そんなに肌が傷つくのが嫌ならそんな恰好してこなきゃいいでしょーがっ!!この露出狂――――!!!!」
何やら妙な言い争いも混じっているような気もするが、ハイレベルな対決に観客もかなり満足のようだ。


投げては爆破、殴られては爆破のオンパレード・・・とにかく破格なバトルが繰り広げられている中
観客席では、エルフの村にいるはずのエディにミリア、ラティナとトレスヴァントが観戦していた。
「うゅ〜、お姉ちゃんもバーソロミューも頑張れ〜なの〜!!あっ、ぶつか・・・あぅ〜。そこそこォ〜!!」
カップいっぱいのポップコーンを頬張りながらミリアが腕をブンブン振り回して、両者を応援していた。
「ははははっ、ミリアちゃんもこういうの好きだね〜。何なら乱入してみっか?鉄条網が怖くないならな〜」
「ふゃ、ミリア痛いの嫌なの〜!!!それにレオタードなんて恥ずかしくて着れないもんっ!!ミリアはえっちぃの嫌なの!!」
エディが茶化すが、ミリアはそれに対して顔を真っ赤にして反論していた。なんか・・・可愛いぞ、ミリア。
「しかし意外よね〜、バーソロミューてプロレスラーだったのねぇ・・・あ、あたしも参戦しよう・・・かな??」
「バカ野郎、お前をあんな危険なリングに立たせるなんざできねぇよ。何なら今夜、オレとベッドの上でレスリングでもするかよ?」
「あゃ・・・やややややヤダぁ、トレスヴァントったらァ!!・・・はっ、恥ずかしいじゃないのォ・・・////////」
「うぅうぅ〜、みんなみんなエッチぃの〜!!!!エッチ反対〜!!ふゃ・・・ふゃあ〜ん!!!」トレスヴァントのジョークに
ラティナは頬を桃色に染め、ミリアは愚図る始末・・・しかしこの試合が仕組まれているものだと知る者は
まだいなかった。暗闇に包まれた屋敷の一室で、一人のヴァンパイアが不気味に嘲笑う・・・・!!

495ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/22(月) 23:07:37 ID:YLpOGogQ0
ふぅ・・・そろそろBattle Showも大詰め、次回は黒幕ヴァンパイア登場なり!
BGMにどうぞ〜
http://jp.youtube.com/watch?v=Bndrb_tQMZg

496◇68hJrjtY:2007/10/23(火) 10:04:19 ID:hRcu9ViU0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
なんだかちゃっかり全員観戦しに来てて、いい感じのバーソロミュー見せ場になってますね。
これが禁断の闇魔法を発見して研究しているウィザードだとは思えない(ノ∀`)
ミリア可愛いよミリア!ふゃぁ〜んって泣きはイチコロですな。ラティナも可愛いけど(笑)
黒幕ヴァンパイアがどう出てくるのか、楽しみにしています。

497FAT:2007/10/25(木) 23:03:24 ID:F403Ek8I0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― >>487-490

―4―

 本当に良い日だった。太陽はようようと燃え、草木は精一杯の緑でその天からの恵みを
成長の糧にし、今だけしか自分が伸びることが出来ないということを理解しているかのよ
うに葉の隅々まで広げ、陽を吸っていた。常時茶色く濁った色をしているアラク湖も、岸
から垂れ下がった鮮やかな緑に縁取られ、湖面がきらきらと風や太陽を映して輝いている
のは荘厳な様であった。そして聞こえてくる小鳥の囀りは自然の優しい香りに乗ってやっ
てきて、思わずうっとりするようで、頭を草むらの中にうずめて目を閉じていたいような、
そんな日だった。
 しかし今、アラク湖が映し出している映像はそんな風景には似合わない、男と女の姿だ
った。
 エイミーは目を閉じなかった。ジョーイは目が潰れんばかりに強く瞼を閉じていた。
 彼の振り下ろした大剣は地面を抉り、赤っぽい土が緑を裂いて、まるで緑色の肌から赤
い血液が噴き出したかのように鮮明だった。
 ジョーイは恐る恐る瞼を開けた。するとそこには全てを見透かしたあの瞳が不思議そう
に生きているほうのジョーイの目を見ていた。ジョーイはいつの間にか剣の柄から手を放
し、エイミーに抱きついた。ずっとジョーイの目を見ていたエイミーの瞳は行き場を失っ
たので、そっと瞼をおろした。微かに震えるジョーイの体を抱きしめながら、エイミーは
はっきりと彼の中に居る龍を感じ、その大きさを改めて思い知らされるとジョーイを抱く
腕の締め付けがきつくなった。
 エイミーは胸の辺りが湿ってきているのに気がついた。そしてそれが、左右均等に濡れ
ているということに驚いた。
 ジョーイの左目は死んでいる、だが、涙はそこを流れている、つまりは、死んでいない
のだ。
 エイミーは初めて龍を見たときに流れ込んできた記憶の中で、最も残酷なものを思い出
した。

498FAT:2007/10/25(木) 23:04:51 ID:F403Ek8I0

 ―――ジョーイには昔、愛した人がいた。名前はヒーリィ=サインエクジェ。まだジョ
ーイが十六歳のときに彼を拾ってくれたパーティーのリーダーで、美人な上に気立てが良
かった。他にも三人の仲間がいて、皆仲良く、楽しく毎日を過ごしていた。
 転機がやってきたのはそれから三年後、以前からヒーリィに気のあったジョーイは彼女
に告白する。そして、交際が始まった。
 ここでエイミーは胸の奥が熱くなり、思わず涙した。
 ジョーイ=ブレイズという人物は元々存在していなかったのだ。彼の名は、このヒーリ
ィが彼のために付けた名前で、「楽しくって(joy)、でも炎(blaze)のように強く、激しく
燃え盛っている人だから」という彼女の愛が込められていた。更には、ジョーイが愛着し
ている左目の龍の眼帯を作ったのもヒーリィであった。
 どちらも今のジョーイに無くてはならないもの、と言うよりもジョーイそのものである。
彼はそれほどまでに、ヒーリィを愛している。そして、今も罪を背負い、罪に脅えている。
 そう、罪。罪だ。ジョーイは知らなかったのだ、そんなこと、誰だってわかるはずがな
い、だから、誰も彼を責めない。ただ、彼が自分を責めすぎているだけなのだ。
 ヒーリィは笑顔でこう言った。「ねぇ、赤ちゃんがいるのよ、私の中に。ふふ、わかる?
あなたの子供よ、ジョーイ」
 次からはこうだった。
「もう、鎧なんて着てられないわ。お腹がつっかえちゃう。え? 痩せろって? ばかね
ぇ、今私が痩せたらこの子まで痩せちゃうのよ? ……そっか、ジョーイはそういうこと、
知らないんだ。やだ、謝んないでよ、知らなかったことは罪じゃないのよ? 一度失敗し
ても、次やらなきゃいいの。一度目は罪じゃないわ。少なくとも私はそう思うわ」
「最近、疲れるわ。子供を産むって、体力要るのねぇ……。皆に迷惑かけちゃいけないか
ら、私、子供が産まれるまでこの街でゆっくりしておくわ。―――ん……気持ちはありが
たいけど、ジョーイだけでいいわ。あなたたちは旅を続けて。ね、私のことを本当に思っ
てくれるのなら、そうして」
 ジョーイはヒーリィに付き添い、昼夜を過ごした。仲間たちが街を出たとき、ヒーリィ
はこうジョーイに耳打ちした。
「ようやく二人きりになれたわ」
 耳元に押し当てられた熱っぽいヒーリィの唇の感触がジョーイの記憶に鮮明に刻まれて
いた。どんな体感的な記憶も、このときのヒーリィほど強くジョーイの中に残っているも
のはなかった。それは生きたヒーリィの最後の温もりだったからなのかもしれない。

499FAT:2007/10/25(木) 23:05:18 ID:F403Ek8I0

 ヒーリィに異変が起こったのはその日の真夜中のことだった。いつものようにジョーイ
がベッドの脇に座り、腕組みをして寝ていると突然ヒーリィが起き上がった。
「どうした? トイレかい?」
 月の無い夜だった。部屋の中は完全な闇でヒーリィがどんな状況に陥っているのか目で
は確認できなかった。ヒーリィは何も言わずにドアまで走っていくと、そのまま物凄い勢
いで宿を出た。慌てたジョーイも後を追い、宿から数十mのところでヒーリィの腕を捕ま
えた。
「おい! どうしたんだよ! そんなに激しく動いちゃダメだって、ヒーリィが言ったん
じゃないか!」
「放して! ここじゃダメなのよ、もっと、もっと遠くに、誰もいないところに!」
 不意に、ジョーイはヒーリィの腕を放してしまった。彼女の腕は氷のように冷たく、ま
るで触れるもの全てを拒んでいるかのようにジョーイには感じとられた。
 重たいお腹を揺らして、ヒーリィは走った。明かりがあればその切迫した表情に、誰も
が振り返っただろう。彼女のお腹は変形していた。
 ジョーイは放してしまった手の形のまま、固まっていた。何故か、これから起こること
の全容が既に頭の中で再生されていた。いや、それは起こった後だったのかもしれない。
月の無い夜だと言うのに、辺りが青白く、冷たく照らされた。
 その光を、ジョーイは見たことがあった。数年前、洞窟で出会ったあの龍の輝きだ。冷
たく、突き刺すような澄んだ青の光は、ジョーイの幸せな日常を終わらす使者となり、天
を泳ぎ、どこかへと飛び去っていった。
 もう見なくてもわかっていた。それでも、確かめなければならないとジョーイは虚ろに
歩きだした。あの光のあった場所には天を仰いだまま、苦痛の表情を浮かべたままの愛す
る人の姿があった。あんなに大きく膨らんでいたお腹は空気が抜けたようにへこみ、元の
美しいシルエットに戻っていた。
 ジョーイは醜くなってしまった顔を優しく撫で、口付けをした。まだ死んだばかりだと
いうのにまるで凍りついたように硬く、冷たい唇を、融かさんとばかりに温め続けた。数
時間前、耳元で感じた生が嘘のように、まるでそれが幻想だったかのように冷たい現実が
ここにはあった。

500FAT:2007/10/25(木) 23:05:53 ID:F403Ek8I0

「ねぇ、残酷なようだけど、聴いていいかしら?」
 泣き濡れた顔を持ち上げ、諦めたようにジョーイは首を縦に振った。
「……なぜ、あなたはそれでも龍と共に生きようとするの?」
 ジョーイは丁寧に眼帯を外し、それをエイミーに突きつけた。
「これはヒーリィが俺のために作ってくれたものなんだ。ここに何が彫られてるか、わか
るよな? ヒーリィがくれた最初のプレゼントがこれだったんだ。龍が憎むべき相手と解
っても、これだけは捨てたくない、だから龍も捨てられない」
「そう……」

 暫しの沈黙の後、ジョーイは独りになりたいからとエイミーから離れ、湖畔の乾いた岩
に腰掛け静かな湖面に自分の姿を映してみた。エイミーによって悪戯に掻き毟られた傷は
ジョーイの自責の念を増強させ、どうしようもない程に彼を追い詰め、ヒーリィの虚像を
生み出した。
「ヒーリィ……俺……ごめんよ……」
 薄く、空気のようなヒーリィの像は何も言わずに風に流され、溶けるように消えていっ
た。ジョーイは生前、ヒーリィの言った「一度失敗しても、次やらなきゃいいの。一度目
は罪じゃないわ。少なくとも私はそう思うわ」という言葉を聞いていなかったら彼女を追
って既にこの世に存在しないものとなっていたかもしれない。この言葉はそれほどジョー
イを救い、彼女をより愛させた。
 一度目は罪じゃない。そんなことはありえないと解っていても、ヒーリィなら、本当に
許してくれる気がした。でも、二度目は絶対にない。だからフランという女の子の気持ち
には応えられなかった。
 あの日、青白い光と共に消えた命。二人の子供は龍だったのか、龍に喰われたのか、確
かめることはできない。ただ、ジョーイにはもう子供を望めないということだけは確かだ
った。

501FAT:2007/10/25(木) 23:13:57 ID:F403Ek8I0
>>◇68hJrjtYさん

初めまして。
早速の感想、ありがとうございます。
やはり感想をもらえるということがこの板で書く一番の原動力となります。
本当に感謝です。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん

初めまして。
すごくキャラが生き生きとしていてまるで動画で見ているような錯覚を覚え
ました。
続き、楽しみにしています。

502 ◆21RFz91GTE:2007/10/26(金) 16:15:32 ID:TKMnQmVU0
////**********************************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7 黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8 黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
  ■Act.9 封印されし鬼の末裔 1  >>98-99
  ■Act.10 封印されし鬼の末裔 2  >>218-219
  ■Act.11 RED EYES -Person who lives as demon- >>431-432
  ■Act.12 RED EYES -Memories to the desire going out- >>449-450
  ■Act.13 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-1 >>462-463
  ■Act.14 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-2 >>469-470
////**********************************************************************////

Act15 集いし仲間



 少し雲が多い朝の古都。ことり達がチュンチュンと朝が来た事を知らせ町全体がまた日常を送ろうと準備を整えて居るような街並みだった。
家々の煙突からは朝食を作る際に出る煙が立ちこめる。パン屋も同じような煙を煙突から黙々と吐き出している。
「うわぁ!」
まだ一日と言う歯車の回転が始まるちょっと前、中央広場にある噴水に一人の男が落ちてきた。もちろん空から。ザブーンと大きな音を立てて噴水に着水
また一人、また一人とドンドン噴水に落ちていく、それも皆水しぶきを上げる音を立てびしょびしょになりながら。
「きゃ!」
また一人、声から察するに女性だろう。今では見慣れた元珍種とまで言われたビーストテイマー。彼女も噴水に落ちた。水しぶきは無い。
「あいたたた…。」
イリアはゆっくりと立ち上がると目の前の光景に少し唖然とした、それは何時も見慣れた都市の姿がそのままそこには有った。昨夜まで何の平凡もなく過ごしていた街並みがそこにはある。
「…あれ?」
「あれ?じゃなくてイリア…どいてくれないかな…。」
「ふぁ?」
突然声が聞こえた、イリアはその声が聞こえた場所を向いて見る。そこにはユランの姿が有った。ユランの背中に見事なまでに踏みつけていた。水しぶきがなかったのはユランのおかげなのだろう。
「あ、ごめんユラン君。」
イリアはゆっくりとではあるがユランの背中から足を退かし、噴水から外へと出た。イリア以外は皆ずぶ濡れの状態。特にミトに関しては薄着であったため…いや、あえてここは伏せておこう。
「いててて、全く何だったんだ。」
ユランはずぶ濡れの状態で噴水から出てきた、頭から足のつま先にかけて全身水まみれ。一度大きく頭を振り髪についている水気を飛ばしてから詠唱を始める。詠唱が終わると同時に自分が着ている服に両手を当てた。するとユランの着ている服はバタバタと音を立てて暴れ回り、その水分を全て飛ばし、同時に乾燥までさせる。同じ手法をクラウスも行っていた。
「あー、二人ともずるいよ!」
今だずぶ濡れで危ない姿のミトが叫ぶ、その言葉にビクっと背中を振るわせるウィザードの二人。クラウスが一つため息をついて自分が着ている上着を脱ぎ、それをミトにゆっくりと羽織らせる。
「とかく、アジトに戻りましょう。みんな疲弊しきっている様子ですし。」
クラウスがミトの肩に両手を置いてそう言った、ミトは一つ小さな頷きをした。

503 ◆21RFz91GTE:2007/10/26(金) 16:15:57 ID:TKMnQmVU0

 ギルドのアジトに到着した五人は女性人二人をシャワーに行かせ、一階のカフェでティーをすすっていた。
クラウスはレモン、ユランはミルク、アデルはブラックを飲んでいる。一呼吸置いてからクラウスが窓の外を向いて話し始めた。
「…約束だ、こうして無事に帰ってきたんだ。なんで貴方が誰で何故ここに居るのかお話願おうか。」
ブラックを飲んでいたアデルは無表情のまま一度止まった、数秒間を開けてからカップをテーブルに置きクラウスを見た。
「…何から話せばいい?」
「…そうだな、まずは貴方が一体誰なのか。」
アデルはゆっくりと立ち上がると窓際まで足を運んだ、そして古都の風景を眺めゆっくりと動き出した街並みをどこか悲しそうな目で見ていた。
「我に名は存在しない。」
「名は無い?」
ユランも会話に参加して来た、今までアデルと呼ばれて居た男に放った言葉が不思議に感じられたことがきっかけだった。
「主達が言うところのアデル・ロード、数百年前…私を元に作られたコピーが居た。そのコピーの名前がアデル・ロードだ。」
「それが二年前に起きた災厄時に英雄の体内に住み着いていた黒衣の焔、では貴方は?」
クラウスは懐から一つタバコを取り出し、火をつけて一呼吸おいた。そしてカップを手に取ると口に運び飲む。
「私は”それ”の元となった存在、様々な二つ名はあったが定着した名は無い。この時代では黒衣の焔と呼ばれているようだが…好きに呼ぶがいい。」
「ではアデル、貴方は何故あの坑道に居たのですか?」
「居たというのではなく、封印されていた。今から数千年前、この地にサバトの山羊が生まれた。この世に生を持った瞬間からすさまじい邪気を纏、年に一度ふもとに下りては村人を襲ったという。当時のブルンネンシュティング王家は頭を抱えていた、幾人もの若者が討伐に名乗り出たが、帰ってくる者は一人も居なかった。」
外を見ていたアデルはようやく椅子へと戻り、帽子を取ってゆっくりと語りだす。昔の事を懐かしむように、もっと言えば当時に何があったのかを。
「討伐に名乗り出た者達を喰らい、その力を蓄えたアレはもはや人が敵う相手ではなくなって居た。そこで当時の王家は私を作り出した。魔物と人とドワーフの合成で初めて生まれる存在。」
クラウスはその時驚いた、数年前スマグの魔法学校で教わった中の一項目。禁忌と呼ばれ意味嫌われてきた術法。
「永劫の命の代償に生まれし者…キメラ。」
「…それが私だ。」
クラウスは話の大きさにダンマリを決めてしまった、とてもじゃないが手に負えるような話じゃなかった。未来永劫を約束された存在、禁忌とされた術法で生まれた存在。それが目の前に居る、今自分と話を交わしている。それがクラウスの中で複雑に絡んでいた。
「なるほど、それで魔法が使えたり剣術が優れていたりしたわけだ…。」
「剣術は元の私、魔法は合成に使われた魔物、致命傷を覆わなければ死なない肉体と知識ドワーフ。当時の私はアレの討伐目的だけに作られた存在だった。数百年にも及んだ死闘の結果私は何とかアレを封印する事に成功し、同時に私も封印された。」
そこまで話すと、アデルは微量ながら怒りをあらわにしていた。手に持つカップはカタカタと揺れ、目からはさっきが漂う。
「私は、王家の為に戦い、王家の為にこの姿になった。それを王家は恐れていた…アレを倒した後に私の存在を恐れた…そして封印された。」
アデルから放たれる怒りの感情はクラウスにドシドシと伸し掛かって来る、だが隣で平然とした顔でミルクティーをすすっていたユランが突如口を開いた。
「恐れたんじゃなく、この時を予想してアデルも封印されたんじゃないか?」
ユランは相変わらずとぼけた顔をしてそういった、何か考えでもあるようなそぶりは全く無く、何時ものユランであった。
「恐れていたのはアデルじゃなく、何時の日か封印が解かれた時の世界だった。その時代にアデル程の力を持つ者が居ないだろうと推測した王家はアデルをそのときまで封印させる事にした。って思ったんだけど。」
正直舌を巻く思いだった、当時封印されたあの日からそう言う考えはしていなかった。何時の日か封印が解けた時王家に復習しようとは考えていたものの、ユランが言った考えは無かった。確かにそう考えれば自然とした事だった。

504 ◆21RFz91GTE:2007/10/26(金) 16:16:20 ID:TKMnQmVU0
「…なるほど、それで私の封印も解けた…そう言うわけか。」
アデルは少しほっとした表情を見せた後、また街をガラス越しに眺め始めた。そして、以前王家が住んでいた今では崩れた王城の方角を見て一つため息を付き
「この街も、変わってしまったな…。」
と、一言だけ誰にも聞こえない程小さな声で言った。
「だけど、気がかりなのが一つあるんだよ。」
外の風景を見ていたアデルは再度ユランを見た、気がかりな事があると言われ頭の中に何か気がかりな物があるかどうかを思い浮かべる。
「もしも、今僕が言った推測が正しかったとする。その場合何故アデルは目覚めたのか。」
「…主が先ほど言った推測どおりでは無いのか?」
「いや、そう何だけど…アデルが僕を助けてくれた時――あの時アデルは目覚めていた。しかし、クラウスさんたちが出会った魔物や外で出会った魔物、そして最後に僕が戦っていた魔物はバフォメットの封印を解くための鍵だった。」
そこまで言うとクラウスもその疑問に気が付いた、そしてアデルもその事に気が付く。三人はそれ以上何も喋らずにひたすら考えていた。
「…そうだよな、何故バフォメットの封印が解かれる前にアデルの封印が解かれたのか。可能性としてあるのはアデルを封印する際に使用された魔法陣が何らかの形で崩壊したか、あるいは…。」
「そもそも何故バフォメットの封印が解かれたんだろう、アデルの話だと数千年も眠り続けているはずの二人…この時代でバフォメットが封印されている場所を知ってる人なんて居ないだろうし、僕達魔法学校の古文書にですら記載されて無い事なのに。」
「…。」
ユランとクラウスが同時にそういい、アデルは黙ったままだった。三人は同じ事を考えつつ別の事を考えても居た。あらゆる可能性を考え、そしてその考えを否定した。
「…見つからない答えだ、必要以上に詮索していたところで答え等見つからんだろう。」
カップを口元に運びブラックを一口飲んでそうアデルは言った、それもそうだと二人もアデル同様口元にカップを運ぶ。そして数分が過ぎた後アデルが口を開く。
「…主たちはこれからどうするつもりだ。」
アデルは再び帽子をかぶるとスッと立ち上がった、クラウスはアデルが立ち上がるのを見て一度タバコに火をつけて一服をする。そして外の景色を見ながら
「…これから戦争が始まる、それに備え戦力を強化しようと思う。」
「…戦争か。」
アデルは少し悩むと直ぐにその答えを口にする、その答えはクラウス達に取ってとても大きな意味を持ち、そしてこの先に待ち構える戦争での勝利を確信させるような言葉だった。
「私も共に戦おう、封印が解かれはしたが今だ封印されている記憶や力がある。時間の経過をただジッと待つのではなく主たち人間と共に時間を共有しよう。」



 古都は晴れていた、広く広く何処までも広がる青い空。
朝日が街全体を照らし、街の歯車が回り始める。それと同時に人々は外に出て仕事へと出かける。冒険者、旅人、軍人、主婦、子供、老人―――二つの地平線と水平線が交差する古代の城下町が一日と言う歯車を回し始めた。
まだ暑さが続く稲刈りの季節、冒険者達が集うこの小さく大きな城下町に賑わいと豊かさをもたらす。そんな平凡な日々を送る彼らには過酷とも言える程の未来が生まれ、そして魂は土に帰りまた人へと宿る。それが数千年、数万年と続いてきた流転回流の先に生じた人にして人に有らざる者達の死闘があった事を今の人々は知らない。そしてこの先、何が待ち受けているのか…今の彼らには到底知るよしは無かった。
キメラと呼称される存在、世界の終焉と呼称された存在、そして天より舞い降りし赤い宝石。この三つは複雑に絡み合い、そして一つの咎が生まれる。
人生と言う名のレールに縛られる者、そのレールを自ら壊す者。そんな人々が住まうこの世界。赤い宝石を巡る様々な命の物語が、ここから始まる。






前半 Wind - little summer... END

505 ◆21RFz91GTE:2007/10/26(金) 16:21:28 ID:TKMnQmVU0
お久しぶりです(´・ω・`)ノ
と言うわけで前半戦終了です、これから後半戦に突入します〜。

思えば冬の軌跡で伏線張ってたの忘れてて結構あたふたしてますorz
バフォメットの話になってますが、思えば最初からREDSOTNE絡みの話だったんですよねこれ
それを思い出したのが今し方、というか5分前ですヾ(´・ω・`)ノ
思い出した時「あ…やっべ…。」ってモロに口に出したのは内緒です(´・ω・)y-~~

-あとがき(と言うか独り言)-
最近寒くなりましたよね、なのにまだ舞台は夏真っ盛りですよ…
夏中にこの話終わらせたいなぁって思ったのが8月後半、正直無理ゲーでした
と言うわけで、まだまだ長いお話ですが…これからも宜しくお願いします

あ、初音ミクが欲しいノは内緒です

506◇68hJrjtY:2007/10/26(金) 19:07:07 ID:8mVhLQAA0
>FATさん
感想「しか」書けないので、毎回恐縮です( ´・ω・)
ジョーイの過去も衝撃的なものでしたね。
このように身ごもったために死んでしまう、という結果は妙にリアリティがあって怖い気がします。
こういう捉え方でいいのかは分かりませんが、ホラー的な要素があると思いました。
特にヒーリィとジョーイのように愛し合っていたシーンを見ていると余計に悲しいですね(´;ω;`)
そんなジョーイを包み込んで癒すエイミー、そういえば彼女自身も似たような境遇ですよね。
今後の展開が楽しみです。続きお待ちしています。

>21Rさん
お久しぶりです、お待ちしていましたよ!
遂にアデルの正体が判明…と思ったらなんとアデルはキメラで数千年ぶりの封印解除だったとは(;・∀・)
でもこうしてユランたちと同行するようになってからというもの、人造生命という印象は感じません。
なんだか頼れるお父さん(こら)っぽい感じです(笑) もちろん、もし敵に回ったら…と思うと怖いですが( ´・ω・)
そしてユラン君のナイス閃き。単純化すれば出てくる答えっていうのもありますよね。
アデルという大きな加勢を得て、今後の後半部分の展開がどうなっていくのか楽しみにしています。
しかし初音ミクですか!(笑)

507FAT:2007/10/27(土) 13:26:53 ID:hRBCQW7.0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500

―5―

「おっ、帰ってきた」
 暇を持て余してエイミーの帰りを今か今かと待ち焦がれていたレンダルがいち早く帰還
を察知し、声を上げた。
「あっ……おかえりなさいですぅ」
 うたた寝していたデルタはぼやっとした甘ったるい声で迎え入れ、次の瞬間には目がぎ
んぎんしていた。
「お姉さまっ!! その胸のシミはなんなんですのっ! もしかしてましかしたらこんな
白昼堂々とっ! きゃっ!」
「ましかしたらってなんだ馬鹿」
「やだデルタったら。これはその、あれよ、湖の水が飛んできて」
 そんなことは聞こえずにデルタはエイミーの全身をくるくる回りながら、
「あ、ここにも、ここにも、ここにも、赤土の跡が付いてますわっ! お姉さま、地面抉
るほど激しかったんですかっ!?」
 デルタの妄想は一方的に加速し、もはや誰にも止めることは出来ない。彼女の脳内では
ピーな行為が白昼堂々繰り広げられていた。
「この変態、もうだめだな」
「そういう年頃なのよ。あなたにもあったでしょう? レン」
「ねーよ」

508FAT:2007/10/27(土) 13:27:22 ID:hRBCQW7.0

 草原は、再び静けさを取り戻した。少し風が出てきたようでさらさらと優しい葉の擦れ
あう音が頻繁に聞こえるようになった。その音に混じって風より明らかに質量の重い物が
草葉を圧す振動が寝転がっている三人に伝わった。一番に起き上がったのはデルタで、何
か言いたかったが忘れてしまい、ただ「おかえりなさいです」と言っただけだった。そん
なデルタにジョーイは力なく微笑み、三人から少し距離をおいて青草の上に横たわった。
その行為をデルタは自分が拒絶されたように感じ、膨れっ面を作る。エイミーは帰ってき
たジョーイを完全に無視し、残されたレンダルは退屈で窮屈だった。
「おい、何があったか知らないけどさ、こんな心気臭いピクニックなら俺は帰るぜ。胸糞
悪い」
 すかさずデルタが、
「お姉さま、今日はエイミーお姉さまのおばあさんのお墓参りにゆくのですよ? それを
ピクニックだなんてヒドくないですか?」と尖った。
「はぁ? てめーもさっきまで散々はしゃいでピクニック気分だったじゃねーか! だい
たいな、ジョーイの一挙一動でいちいち尖られちゃこっちも大迷惑なんだよ! とっとと
諦めろこのガキ!!」
 怒鳴りつけたその声はもちろんジョーイの耳にも届き、顔が二人を向く。それを見て顔
が赤くなったデルタは、
「おねぇさまのばかぁーーーーーー!!」とレンダルを突き飛ばす。しかしレンダルはこ
れでも剣士、正面から迫るデルタごとき、不意打ちでもなければ喰らいはしない。ひょい
と横飛びし、相撲取りのように突き出された腕を奪い、反転させる。まるでおもちゃの人
形のように軽々しく体が浮き、宙を半分回って地面に落下した。
「ぎゃっ!!」
 悲鳴を上げたのはデルタではなくジョーイだった。右目を押さえ、頭を抱え込み苦しん
でいる。レンダルは何が起こったのかわからず、ぽかんと口を開け、デルタはひらひらし
たスカートを真っ赤な顔で押さえている。
「パンツが……ピンクのパンツが……」
 ちかちかする目をなんとか開き、涙が右目から零れる。そのジョーイの発言を聞き、デ
ルタの恥ずかしさは頂点を迎えた。
「ちょっと、あなたたち、こんなところで喧嘩はよしなさい!」
 ちょうどエイミーが立ち上がろうとするのとほぼ同時にデルタはウサギに変身した。恥
ずかしさのあまり前が見えていなかったのか、目にも留まらぬスピードで腰の浮きかけた
エイミーの片脚に衝突し、弾かれ、大開脚となった。
「う゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛」
 またもジョーイが、今度は断末魔のような不気味な悲鳴を上げた。
「目がぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
 しばらくは唖然としていたレンダルだったが、ようやく理解し、
「くっくくくく……あはははははははははは!」
 とお腹を抱えて笑い出した。
「お前ら、おしゃれとかいって本当にあのパンティー履いてんのかよ! しかもジョーイ
に見られてやんの……はっはははははは、だめだ、笑いがとまんね、ははははははは」
 やや恥ずかしそうにエイミーがレンダルを上目で、
「あら、そういうあなたも履いてるんじゃないの?」
「あんなもの、とっくに雑巾になってるよ。汚れがよく落ちるっておやじが喜んでたぜ」
「目がぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
「おねぃさまのばかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 どうやらいつもの雰囲気に戻ったようだ。ただ、思った以上にジョーイの受けたダメー
ジは大きく、しばらくは盲目の戦士となりそうだ。

509FAT:2007/10/27(土) 13:38:40 ID:hRBCQW7.0
>>◇68hJrjtYさん
感想しかなんて、少なくともここに書き込む方のほとんどはなんらかの形で
反応がほしくて物語を書いているのですから、そう言った意味合いでは一番
大事なことだと思いますよ。
>>妙にリアリティがあって怖い気がします。
そうですね、自分で読み返してもちょっと恐い気がしました。

>>21Rさん
お久しぶりです。とても。
どのスレを見ても21Rさんの名があり、一ファンとして嬉しいです。
私も季節に追いつけず、追い越されで困っています。
仕切りなおしの後半戦、楽しみにしています。

510◇68hJrjtY:2007/10/27(土) 17:15:57 ID:8mVhLQAA0
>FATさん
> そう言った意味合いでは一番大事なことだと思いますよ。
そう言って頂けると嬉しいです。ヒャッホーです。
皆さんの小説を読ませてもらっている身分としてはもっと気の利いた事を言えたらいいなとは思っているのですが( ´・ω・)

エイミーを混ぜたデルタ、レンダルの姉妹は本当にホンワカしてて好きです(*´ェ`*)
それまでの空気が一変してしまいましたね、ジョーイもムス○大佐のようになってしまったし(笑)
デルタのお嬢様っぷりも可愛いし萌え〜ですが、個人的にはいつかレンにも恋人ができたらいいなぁなんて思ってたりしてます。
続きお待ちしています。

511之神:2007/10/28(日) 11:46:50 ID:EPIWg6gE0
記憶


なぁ戦士さん、その技なんていうんだ?
「これですか、ええと、ディレイですね。ディレイクラッシング」
へぇ・・・・そう。
と、アホな質問をしているのは俺、職は剣士だ。
正直今の会話だけを見たら、スキルについて知識の貧しい者にしか見えないだろうな。
ただ、今の会話を戦士殿にふっかけたのはワケがあっての事だ。
そのワケとは・・・・・
ひどくそれが懐かしい、いや、それを通り越してデジャヴと言うべきか。
スキルの名前といい、その動きといい、なぜか心に引っかかるものがあった。
この時は知らなかったね、こんな事が可能だなんて、そして自分の無知さも。


狩りでは普通に剣士して、敵を引き付けたり、持ち前の速度を生かしての攻撃など、
よーするにフツーに剣士としてやっているのだが・・・。
最近になって、戦士を見るたびに頭が痛くなって、そしてデジャヴとして頭に響くものがある。
治療士に聞いても、
「それは疲労からくるものでしょう。」
などと言われるが、それに納得することが何故か出来ない。
うーん、なんでだろうな。まさかこれが恋・・・!などと考える事も無く、ひたすら悩んでいたワケだ。
剣士と言っても、体力馬鹿みたいな輩だけじゃ無い。読書をしたりもする。
俺のこの既視感や謎の思い出が、どこから来るものなのか。古都の図書館に行って調べたりもした。
だが、情報を得られないで終わり、逆に余計な情報も頭にまわり、かえって余計に混乱した。

512之神:2007/10/28(日) 12:05:25 ID:EPIWg6gE0
俺にも友人は当然いる。その友人の中の一人に相談をすることにした。

なぁ、最近どうも戦士見るとさ、懐かしいっていうか・・・とありのままを説明した。
しばらく俺の話に耳を傾けていた我が友であったが、話を進める内に俺を疑うような目で見始めた。
おい、どうした?俺は本当の事しか言ってねえぞ。
「いや、別に話を信じてないとかじゃなくて・・・・というか・・・。それ以前の問題だ。
 まさかとは思うが、お前、記憶飛んじまったんじゃね?」
そうかもな・・・。が、それにしては剣士としての本分は忘れてなかったけどな。
「やっぱオカシイってお前。一応確認しておくぞ、当たり前すぎて言う気にもなれんが・・・」
なんだ?言えよ。まぁだいたい言いたいことは分かるさ。どうせ・・・・

が、この後友が言った言葉は信じられん事だった。
「俺の知ってるお前はな、戦士だ。」
え?と俺はマヌケな声を出してしまった。そのマヌケさに自分が驚いたくらいだ。
まてまて、お前は戦士だ?有り得ん。俺は剣士だ。戦士の技は懐かしいが使えないぞ?
「おいおい、本当だってば。お前は戦士スキルしか使えない純粋な戦士だった。ならコレ、お前と
 写った写真だ。コレ、右側の青い髪のがお前な。手を見てみろ。お前、斧持ってるぞ?」
確かにそこには巨人の斧を手にして、締まらない顔でカメラ目線の俺がこっちを見ていた。
合成・・・?
「お前本当に大丈夫か?なんでお前を騙してまで、それに、俺に得なんか無いしな、騙したところで・・・」
ま、分かった。お前の頭ん中では俺は戦士なんだな?
「ああ。真性の戦士だ、保障するぜ」

じゃあな、と友は去っていった。その後何名かに耳打ちしたが、やはり俺は戦士らしい。
なんだ、どっちが狂ってるんだ。俺か、みんなか。

513之神:2007/10/28(日) 12:21:17 ID:EPIWg6gE0
この場合、狂っているのは俺なのだろう。友達みんなが総出で騙しても、俺は期待した反応は出来ないしな。
ますますわからない。詳しく聞くと、
今の俺は剣士だ。
だが1週間前まで戦士だった(と友人は口を揃える
今の俺に戦士の技は使えない。
俺の記憶では戦士だった記憶も無いし、根っからの剣士だと思っている。

こんなトコかな。まとめると見やすいもんだよ、まったく。
見やすいのがいいが、さっぱりわからん。俺の記憶をいじくっても得はねえぞ?本当にさ。

だが、当然俺の他にもいたわけだ。他職に懐かしさを感じる奴がな。
たとえばコイツの場合。アーチャーの筈のコイツなのだが・・・
「よくわかんないんだけどさ、なぜかあたしランサーの人見るとね、手が槍を突く動きに
 なってたりね。本当、自分でもわからないわ。」
といった具合だ。俺の他にもいるのはいいが、ここで面白い事が判明する。
基本的に、戦士と剣士、またアーチャーとランサーは、同じ種族、血統だ。つまりこの種族の中なら、
全員に戦士または剣士の血が流れている、当たり前だな。
デジャブが起きたり懐かしさを感じるのは、決まってこの戦士/剣士のような部族同士だ。
ここで過去生だのなんだの言い始めたらおしまいだけどな。
ああ、なんか下手な推理劇みたいだ。まぁこの際気にするな。
さて、俺が思うに・・・
この世のどこかには部族同士の特性を入れ替える道具がある、と思うのだが。
戦士は剣士に、アーチャーはランサーに、みたいにね。
つまり、そうだな・・・。
これは俺の想像だが、スキルの配分を自由に変えられるアイテムがあって、けど記憶も
飛んじゃう。これで説明がつく・・・・けど。
あくまでこれは妄想だ。信じて貰えるなら嬉しい限りだが。

514之神:2007/10/28(日) 12:38:18 ID:EPIWg6gE0
こんな事を考えた俺だったが、後々になってそのアイテムが実在することに気がついて驚いた。
しかし、この記憶変換の実行は、俺らにはなんの断りも無く行われ、さらに俺らのなりたい図には
なってくれない。美容整形とかのレベルじゃ無い。
どこの世界の誰だか知らんが、俺らで遊ぶのもたいがいにしとけよな。
なりたい自分ってのもあるだろうが、それは今の自分がやってる記憶や経験を積んでこそ
のモンじゃ無いのか?一瞬でなりたい自分になれるのはけっこうな事だ。
けど俺は、自分の記憶を大事にして、自分の意思でこれからも歩むつもりだ。
どっかの知らんやつに、強制的に変えられるのはゴメンだな(もうヤラレタけどな・・・
だから、お前らに言っておくぞ。自分のやり方に自信を持てよ。あとから変更して楽しいか?
それじゃ、今やってることは後につながらないのか?
変だろ、そんなの。

なんか説教っぽいな。悪い。
それじゃ俺は、戦士の頃の記憶でも探しに行くさ。
話聞いてくれてありがとよ。じゃぁな!



はい、見て分かると思いますが(?)再振りの話ですねー。後半剣士君の説教タイムに
なってしまいました、ごめんさいw
書いた動機とかは特に無いですが、むやみに再振りとかするのはどーかなーって、このごろ思います。
そんなズレ視点の之神の駄文でした。
目を通してくれた方、最後までこの文章力の無さにお付き合い頂き、ありがとうです。
まともな文書けるように、頑張っていきます!

・・・・あと長編もかけるように・・・orz

515◇68hJrjtY:2007/10/29(月) 01:26:07 ID:8mVhLQAA0
>之神さん
AFK、リアルRS、賽の河原と続いて、今回は再振り巻物がテーマですね。
毎回ながら之神さんだけの世界で執筆されてるのが良く分かって羨ましい限り。何となくシリーズ物になってますしね。
再振りってこんなに簡単にできちゃうMMOは個人的にRSが初めてです。
課金アイテムの中ではポタや装備バッジと並んで中毒症状がありそうなアイテムですよね…。
初志貫徹の精神で、ずっと同じ職を貫ければいいなと思っております(・ω・;)

516之神:2007/10/29(月) 07:17:30 ID:EPIWg6gE0
◇68hJrjtYさん、感想ありがとうです。
次回くらいにでも長編書きたいなぁとか妄想しています。
長編の定義も少しばかり謎ですが、どうせ私のことなので長編らしからぬ
モノが完成するかと思います。
その時は、また駄文にお付き合い下さい。
ではまた。ノシ

517名無しさん:2007/10/29(月) 13:38:10 ID:exD1ab6U0
長くて読む気しませんな

518ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/30(火) 22:06:52 ID:gIcRHyrI0
続きですよ〜

バーソロミューとフィナーアの男女混合プロレス対決はヒートアップし放題、観客も総立ちで唸りを挙げるほどになっていた。
両者ともリングの周りに張り巡らされた、爆破のおまけ付きによる鉄条網に激突を繰り返したおかげで全身血だらけになっている。
「ぜぇ・・・・ぜぇ・・な、なかなか、やりますね・・・フィナーア、さんっ・・!!!あいたたたたっ」
「ハァ・・・ミューたんこそやるじゃないの、見てぇ・・・爆破のせいでコスチュームがボロボロなのよォ・・・」
フラフラになりながらも勝気な微笑を浮かべたまま、セクシーポーズでバーソロミューを挑発するフィナーア。
彼女が言うとおり、何度も鉄条網にぶつかり爆破まで喰らったがために、彼女の身を包むレオタードは無残に破れていた。
良い子の少年少女にはお見せできない際どい箇所以外は殆ど無いといってもいい、乳房ですら丸出しになっている程の損傷ぶり・・・
美しく白い素肌を、ルビーのように輝く鮮血がおびただしく流れ落ちるが、その姿は不思議と一枚の絵画のように見える。
「さァ、決着の時間よ・・・おいでなさいっ!!」「うぉおぉおおおおぁあああぁあぁあああっ!!!!!」
猛々しい咆哮と共に、バーソロミューは渾身の力を込めた右腕を振り上げ、猛ダッシュと共にラリアットを放った!!!
同時にフィナーアもクラウチングスタートのような体勢から力を溜め込み、タックルに移るっ!!!

両者がぶつかり合うその寸前、突如会場の全ての明かりが消えた・・・!予想だにしない事態に会場からはざわめきが
起こり、ぶつかり合う一歩手前だった二人も一時休戦し、その場に立ち尽くしていた・・・・が、今度は何者かが不敵に
笑う声が場内に響き渡るのだった。

「フフフフフ・・・・フハハハハ、ハ―――――ッハハハハハハハ!!!聞きたまえ愚民どもォ!!
 ただいまよりこの茶番は終わり、私のために血が流れる悪夢の舞台となるのだ!!貴様らの・・・」
と、どこからか謎の声が豪語するのが聞こえるが・・・場内360°、全ての観客たちはブーイングし出した。
「うっせーぞボケぇ!!乱入すんならとっとと乱入しろやァ!!」「カッコつけ過ぎィ〜、どんだけぇ〜」
「おいゴミ投げようぜ!何か天井あたりから声がしたからゴミ投げようぜ!!」「おっしゃ投げろやオラァ!」
と、未だ興の冷めない連中はその極悪なテンションをクレームに乗せて、声がした方向へとゴミを投げつける。

519ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/30(火) 22:36:06 ID:gIcRHyrI0
ある意味フーリガンと化してしまった観客たちが投げるゴミの嵐。紙クズ、ウィスキーの瓶、バナナの皮・・・
なかには得体の知れない謎の物体も混じっていたが、とにかくありとあらゆるアイテムが暗闇の支配する場内を飛び交う。
そして会場の照明がその機能を回復したとき、リングの真上にあるスポットライトの縁にあるものが見えた・・・
・・・ヴァンパイアだ、ヴァンパイアがいたのだが・・・何やらゴミの嵐に苦戦している様子である。
「ちょっ、やめてってば・・・うぉぇっ、汚ねェ!!誰だウンコ投げた奴はァァァ!!!ちっきしょ〜、調子のんなよオメーらァ!
 手始めにそこで突っ立ってるウルフマンと痴女をぶっ殺すっ!!!」一人のヴァンパイアは縁から飛び降り、そのまま急降下。
爪を立てた両手には闇のオーラが纏われている・・・一部の闇属性のモンスターが使う攻撃、『デスタッチ』だ。
「ハァ、ハァ・・・あのヴァンパイア、よりにもよってZin型だなんてっ・・・ミューたん、逃げてっ!!」
「くっ・・・体が動かないっ!こんな状態でアレを喰らったら、おしまいだ・・・・!!!」
徐々に迫り来るヴァンパイアの死の掌打に、このまま二人はやられてしまうのか・・・!?



「・・・主よ、邪悪なる魂に聖なるお導きを・・・」
ふとそんな声を聞いたと思うと、二人の目の前が白く輝き出した・・・!!
「―――っ!!!・・・?一体・・・何が??」「あ、見てバーソロミュー!!この人が・・・助けてくれたんだわ!!」
身を屈めていた二人の前に大柄な男が一人、ヴァンパイアの掌打を拳一つで受けきっていた。
両腕の上腕部と背中には十字架の刺青、後ろで結わいた銀色のオールバック、そして褐色色の肌・・・
「間に合った、か・・・大丈夫かい、お二人さん?」「あ、あなたは・・・・!?」
見覚えのある顔に、バーソロミューは驚愕を隠せなかった・・・

520ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/10/30(火) 22:58:47 ID:gIcRHyrI0
あとがき
Battle Show編も佳境に入りました、そろそろ決着つけて前エクストラエピソードも片付けないと;;
それとFAT様、感想頂けてとても嬉しいです!シリアスな描写が苦手なオレにとっては参考にしたい表現が
とても豊富です。落ち着きのある雰囲気を出せる文章力、参考にさせて欲しいです。

521◇68hJrjtY:2007/10/31(水) 02:11:31 ID:J5CCycpQ0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
折角前振りがかっこよかったヴァンパイアもこれでは形無しですね(苦笑)
ウ○コ投げたっていったいどういう状況なんだ(;´∀`) バナナの皮…w
ヴァンパイアの正体を暴くほどある意味最強なのは観客だったんですね(笑) 人民恐るべし。
ESCADA a.k.a. DIWALIさんの話にはピンチの中にも笑いがあり、その中にも逼迫する状況描写があり。
いつの間にか引き込まれてしまいます。
続きお待ちしています。

522名無しさん:2007/10/31(水) 11:25:51 ID:sQ2yPI/o0
【呼ぶ声が、きこえる】


 レナ


 ギルド戦の戦場に転送された。
 戦闘開始までの、静かな5分。
 鉛色の水面を渡るぬるい風が、私の短い髪をかすかになびかせていく。
 静かな、重たい天気。
 これなら矢の軌跡が影響を受けることもなさそうね。湿地に作られた戦場を見渡しながら、今から共に戦う弓を、ぎゅっと握りなおした。
 大丈夫。私は強くなった。
 初めて入団するギルドでの、初めてのギルド戦を前にして、緊張していないといえば嘘になると思う。
 でも
 この戦場でしか、確実に奴を狙えるチャンスは無い。
 私の願いは今日叶うのだ。
 大きく息を吸う。踏みしめた草と水の匂いがした。

 そっと息をつきそっと目を閉じると、まぶたの裏に声がこだます。赤い色が散る。

 『どうしたんだい!?怪我をしてるじゃないか』
 『君はとても強いね、一緒にいかないか?』
 『レナおいで、こっちのほうが暖かいよ』
 返り血だらけの私を恐れなかった、やさしいあなた。
 『レナ』
 いつも一緒にいた。名前を呼んで。背中を預けて。
 スカル。私をかばって死んだ人。
 『レナっ』
 真っ赤な血を流しながら、それでも私を心配してた。
 『退けっ死ぬな!レナ!!』血の臭いがして…
 仇は、とる。
 命に代えてでも。

 『レナ』
 「レナさん」

 ハッと現実に戻る。
 「あ…ごめんなさい、何?」
 「レナさんは俺のパーティーで」
 「了解。」しっかりして、私!
 気を引き締めなきゃ。
 今声をかけてきたのは、ギルドマスターの剣士さんでジャスティンさんっていうの。蒼い髪の印象どおり、いつも一歩引いて全体をみているような冷静な人。
 周りにはぐるりと、味方が勢ぞろいしている。
 武器がきらめく。緑のコートが、黒い防具が、風に揺れる。アーチャーや、武道家。BISに、WIZ。みな戦闘前の緊張感など無いような顔。それぞれに、武器や装備の確認をしているみたい。
 「今日の相手は初めてだね。強いらしい」マスターは、てきぱきと作戦の指示をしながら情報を伝える。
 「人数が多いと聞いた。あまり評判はよくないみたいだけどね。特に赤い剣士が要注意って聞いてる。」WIZさんが続く。
 つい、口をはさんだ。「強盗したり、あげく殺したり、最低の奴らよ」
 吐き捨てるようにいったからか、その内容にか、いぶかしむようにWIZさんが覗き込んできた。いえ、気にしないで、と視線をそらす。
 「じゃあ、その剣士には俺が張り付いとこう」一人の武道家さんが手をあげた。
 自分の頬に、苦い笑いが浮かぶのを自覚した。ふと、BISさんと目が合う。その男がスカルを殺したのよ。彼や他の犠牲者の血を吸ったような、真っ赤な鎧と大剣。相討ちでもいい、殺してみせる。
 ギルドの勝利よりも私怨を優先するなんて、間違ってるのはわかってるの。でも、譲れない。
 「じゃあ、剣士の足止めは任せるよ。他の人は、落とせそうな敵を報告しあいながらターゲットあわせていきましょう」
 ジャスティンさんの言葉に、皆がうなずきを返す。
 はじまる。ドキドキする。
 「いつもの戦闘通りに、落ち着いて行こうね」入団以来、先輩として多くを教えてくれたアチャさんがニコリと微笑みながらポンと肩を叩いてくれた。
 「ジャスさん、こっちきて」BISさんが呼ぶ。「はい、ブレッシング。無茶してらっしゃい」
 「レナさんも」WIZさんがヘイストをかけてくれた。体が軽くなっていく。私もこのスキル使えるようになれたらいいのに。
 「皆、補助ちゃんともらった?」ブンッと音を鳴らして、鋭く輝く剣を一振りしたジャスティンさんに、皆の視線が集まる。あ…ジャスティンさんって瞳も蒼いんだ。
 「「「オッケー!」」」蒼い光と目を合わせて、うなずく。

 「行こう!」

523名無しさん:2007/10/31(水) 11:27:04 ID:sQ2yPI/o0

 (居たっ!)
 敵の集団と衝突した乱戦の中、あの赤い剣の軌跡が見えた。すぐに人ごみに紛れ込んでしまったが、奴は、居る。
 周り中、剣と鎧の金属音や足音で騒々しいかったが、奇妙に心が静まった。やっと会えた。
 「右前、WIZの足止めたっ」
 武道家さんの声に、ザッと仲間が一斉に反応した。
 どこっ?!
 すぐ前に立つ敵のBIS、隠れるように立つリトル、その向こうに───いた!武道とWIZが組み合っている。
 突進したジャスティンが、WIZの体に剣をたたきつけた。
 「ぐっ…!」男が悲鳴をこぼしながら自身にアスヒを掛ける。
 間髪いれずに私とアチャさんの矢が雨のように襲う。風を切る音が響いた。
 行動不能に陥ってもおかしくないような攻撃だったが───耐えられた。どこからか敵の仲間からアスヒが飛んできたきたらしい。
 惜しいっあと少し!それでも相当なダメージがあったはず。
 敵のWIZはテレポートで足止めから抜け出すなり、ばっと身を翻し逃げていく。「逃がさないっ」すぐさま次の矢を放ち、追い討ちを掛ける。
 皆の視線が、攻撃が、後を追う。
 そのとき…
 「きゃぁあ!!」
 先輩!?
 ハッと振り向いたときには、アチャさんの体は崩れ落ちていた。倒れた彼女の向こうには…赤い剣を手にした男が立っている。
 瞬間、何が起きたのか理解できなかった。攻撃を受けている気配もなかったのだ。
 「っ!」
 武道さんが飛び蹴りで一気に肉薄し、剣をはじき、それ以上の動きを封じる。とっさに矢を放ってみたが、敵も私の存在に気づいていた。半分以上が盾ではじかれてしまう。
 カカカンと、高い音が響く。
 味方全員の注意が逃げるWIZに向かっていた 一瞬に やられた。
 また、お前なのか!
 かろうじて当たった矢が与えた傷も、しとめ損ねたWIZのアスヒですぐさま回復されてしまった。
 倒れたアチャさんの姿が、あの時と、あの人の姿と重なる。
 血の臭いが、する。
 目が合った。赤い剣の男は返り血をあびたまま…ニヤッと笑った。
 視界が───赤く染まっていく
 「───貴様っ!!!」。
 まっすぐに、絶対はずさない距離まで駆け寄る。
 レイヤーストーム!
 赤い鎧に突き刺さる。笑みが歪んだ。
 効いている!?何度も攻撃を叩き込む。「! くはっ…」赤い剣士がうめく。執拗に、武道が動きを封じている敵に矢を放つ。
 気づけば隣には青い剣士も共にいた。
 「っう」私も背後から切りかかられる。無視する。振り回される赤い刃が胴をかすめ、木の鎧がくだける
 赤い血が、飛び散る。
 ジャスティンと息を合わせながら、確実に矢で剣で、傷を与えていく。あとすこし、とどめの一撃をくわえれれば…!
 血が飛び散る。
 これは、敵の血?それとも、私の血…?
 赤く染まった視界から、男のニヤついた顔がかすれていく───

 突然、
 強く引っ張られて視界が途切れた。

524名無しさん:2007/10/31(水) 11:27:42 ID:sQ2yPI/o0

 「っ───!?」
 あわてて見回すと、そこは前線から少し離れた木の陰。
 あ…あと少しだったのに。
 味方のBISさん…いや、天使さんにコールされたようだ。アチャさんが蘇生して立ち上がるのが見えた。
 あと少しだったのに。
 私は、回復も補助もまてずに、赤い色を探して走り出した。
 あと少し、だったのに。
 「レナさん戻って!」飛んでくる声を無視する。あいつを、殺さなければ。木や岩の障害物をよけるのでさえ、まどろっこしい。
 あと少しだったのに!
 あいつを殺せば、今度こそスカルと一緒にいける。岩の向こうに、瞬間、赤のきらめきがあった。
 「レナさん!」『レナ!』
 岩を飛び越し、敵陣のど真ん中ある赤に真っ直ぐ突っ込む。
 あと少し!!!
 次々に敵の攻撃を受けた。刃が、矢が、天から雷が、私一人めがけて襲いかかってくる。
 弓を投げ捨て、槍を振るった。なぎ払う。血が舞う。敵を遠ざけ、さらにその反動を利用して剣士へと一気に間合いを詰めた。

 「レナ!」
 『退けっ死ぬな!レナ!!』

 ハッとした。そのためらいが、敵に余裕を与えてしまった。槍を突きたてるよりも早く、腕を切り裂かれる。
 「ぐっ───、!」血が噴出す。
 余裕を取り戻した赤い男は、笑っていた。
 「ぁぁあああ!!!」叫びながら槍を振るう。突く。はじかれる。
 足を払われて地に倒れた。
 赤い光が振りおろされるのが、見えた。
 あ…動けな…い…



 ───『レナ』
 スカル、ごめんなさい。仇とれないみたい。でもやっとあなたの傍にいける。
 『レナっ』
 また、名前を呼んでよ。
 『退けっ死ぬな!レナ!!』
 だってこの世界にはあなたが居ない。なのになぜ生きていけというの…?
 『レナ』


 「レナ!」


 ガキィンッ 
 音と一緒に目に焼きついたのは、蒼い髪の残像。

 「なにしてるっ、退けっ!!!」声が空気をふるわせた
 ───スカル?横を駆け抜けた風が、頬をなでた。
 私は死んでなかった。目の前には広い背中。ギリギリと音を立てて、ジャスティンの盾が剣を押しとどめていた。
 「レナさん、さがって」武道家が、すれ違いざまに言った。
 はっと我に返り、言われた言葉をやっと理解する。跳ね起きて間合いを取った。
 ジャス…ティンさん…なの?
 気がつくと私の傷はすべて回復されていた。撤退してた仲間が私に追いついたらしい。
 「ありがとう」一度、大きく頭を振って、冷静さを呼び戻す。
 急に、草と水の匂いに気づいた。夢から醒めたような、視界が一気にひらけたような感覚。
 視線を戻すと、中央では、青の流れと赤い軌跡がめまぐるしく動き回っていた。
 お互いにダメージを与えているが、双方からの妨害や回復魔法で決着がついていない。
 それなら…
 ぐるりと見回す。
 「右斜め後ろです、レナさん、WIZ!」アチャさんの声が飛んで来た。すぐさま振り返りながら、矢を放つ!
 不意を突かれた敵のWIZは、まともに防御することもできなかった。さっきは逃したWIZが、大量の矢と刃を受け、声もなく崩れ落ちた。
 隙はつくった、今しか、ない!
 赤い剣士は、ジャスティンの刃を受けるが武道の妨害で逃げることもできない。他の敵も味方が牽制意している。
 弓を引き絞る。気配を感じたのか、一瞬男と視線があった。赤い目が見開かれる!
 「くたばれぇぇえええっ!!!」
 もうその顔に、あの傲慢な笑みは浮んでいなかった。

525名無しさん:2007/10/31(水) 11:28:37 ID:sQ2yPI/o0

 *** *** ***

 「なるほどね〜。始まる前からレナさん様子がおかしいとは思ってたんだけど」
 「黙ってたうえに勝手な行動して、すみませんでした…」

 ギルド戦が終わって。
 古都の中心部から離れた、林の中の小さな空き地で反省会がひらかれた。
 そこで私は、勝手な行動を取ったことを謝り、事情を全部打ち明けた。
 「まぁ、結果オーライでしょ」ジャスティンさんは、あっけらかんと許してくれた。
 もっと、黙ってたこととか、振り回したことだとか、怒られるかとおもってただけに少し拍子抜けした。
 ───と思うのはまだ早く、
 「でも今度また特攻したりしたら怒るからね〜〜〜?」めずらしい女性BISのエルさんに釘をさされてしまった。「ジャスさんといい、レナさんといい、他の人もだけど。どうも血の気が多くて特攻したがるよね」
 すみませんでした。。。
 「少しは守ってる側のハラハラ感もわかって欲しいのよ」
 はい…耳が痛いです。。。
 戦闘に関しての話はほとんどおわり、それぞれが雑談をはじめたとき、ツンツンと肩をつつかれた。エルさんだ。ついビクッとしてしまった。
 「レナさん、でもさ?ギルド戦で復讐…でよかったの?公式試合だから、倒したっていっても殺したわけじゃないでしょ」BISという立場で、復讐殺人前提の会話でいいのだろうか。
 「そうだよね」
 「法廷に引きずり出すとか」
 「叩きのめすとか」周りに居た数人のメンバーも…同意している。真剣に。
 それは、何度も何度も、私自身で自問したことだったから、気持ちはよく分かった。
 すらすらと、答えが口からでてくる。
 「当時、証拠がなくって犯人捕まえられませんでした。探して、探し当てたけど、殺したら奴と同じになっちゃうと思って。」
 「レナさんオトナだね…」すっきりしない顔でエルさんがつぶやく。「私はそれじゃあ、なんだか悔しい…」
 苦笑が浮かぶ。そんなことはない。自分ひとりじゃ勝てないと、きっと分かってたからだ。終わってしまった今ならよく分かる。私は…ずるくて弱すぎる。
 知り合って日が浅い私にココまで感情移入してくれて、悔しがってくれる心が、ありがたかった。
 「それで」先輩アチャさんが口をひらく。「これからどうするの?」
 「復讐はおわったけど…いなくなっちゃったり、しないよね?」
 改めて聞かれると、困ったな。今までずっとあの赤い男を倒すことだけが全てで、終わったら死んでもいいと思ってたから。
 でも、今は不思議と、死にたいとは思ってない私がいる。なぜだろう。
 自分の中から答えを探していると、エルさんがじっと見つめる視線に気付いた。いや、先輩も、ジャスティンさんも、気がついてみれば全員が、私の言葉を待っていた。
 「レナさん…、これからも一緒にギルド盛り上げていこうよ!」『レナ』
 はっと、した。
 名前を呼ばれて、心に浮かんだのは赤いスカルの声じゃなかった。
 蒼い───
 「うん」
 うなずく。ギルドマスターに向き直る。
 「こんな私でも、このギルドに居させてもらえませんか」
 「もちろんだよ」
 蒼い瞳が、はじめて笑みを浮かべた。
 「あらためて、BlueRoseにようこそ。レナさん。」



 そっと息をつき、目を閉じると。まぶたの裏に声がこだます。
 『レナ』
 大好きだったスカルの声。
 『レナ!』
 蒼い人の声。
 スカル、あなた以外にも私を呼んでくれる人達がいたよ。あなたを追いかけなくても、生きていけるかもしれない。
 ここで、生きていけるかもしれない。

 呼ぶ声が、きこえる。

526名無しさん:2007/10/31(水) 11:34:32 ID:sQ2yPI/o0
【呼ぶ声が、きこえる】のあとがき。

 初めてSS書きました。
 ずいぶん長いことROM専だったのですが、私も書いてみたいっ!と 突然思い立ちまして・・・。
 初心者なので、読みづらい部分や未熟な所も多いと思います。
 が
 ごく個人的に、完成させることが出来て満足。
 スレ汚し失礼しました。

>>職人の皆様
 いつも楽しく読ませていただいてます。
 これからもひっそり読ませていただきます。がんばってください。

527 ◆21RFz91GTE:2007/10/31(水) 16:26:46 ID:ROcKqTsg0
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後半 Lost Innocent  -Dead of Innocent...-


Act16 Episode 1. -Border of Life-


 星が流れ、別れの歌を奏でる。悲愴とも似た星の記憶。
約束を交わし咆哮へと変わる、帰ると約束した英雄達の叫びを聞き、星の記憶へと帰還する。回帰すれば伝承になり、出会えば死を約束する。
「お願い…私を愛して…。」
少女は言う、愛された事の無い悲しみゆえの想像、未来永劫を約束されし亜種に束縛され融合を願う者。世界の輪廻に狂わされた永劫と言う名の死、叶う事の無い約束の日々。
「お願いします…私を…。」
少女は言う、優しさを知らない記憶。咆哮から生まれる故郷への黒船。ノアの箱舟に乗り込むは流れ込む死者達の怨念。
「お願いします、どうか私を…。」
少女は言う、幸せを知らない未来の先。川の流れのように身を任せゆらりゆらりとその先へと流れ着く五番目の記憶。照らされた古風に聳え立つ大きな破滅。
「幸せを知らないのは…。」
老人が言う、己が出した答えと記憶。幸せを知らないのはまだ幸せが見れないからだと。幸せが見つけられないのはまだ少女が幸せだと言う事。
二人の人間は流転する。その先にある破滅の未来へと足を運び、時には休み、時には急ぐ。幾年も続いたその旅の終焉を迎えるために。
「幸せって…。」
少年はいう。老人が言った言葉の意味を知り、そして幻想する。風の囁きにも似たその大きな動かざる山。太古の昔から聳え立つ回流と言う名の山。
「幸せって…なんですか?」

528 ◆21RFz91GTE:2007/10/31(水) 16:27:25 ID:ROcKqTsg0

 この星が生まれて幾億年。
塵は積もり大陸となった、水素は結集し海となった、大陸はそして退化が同時にあった。有終以来続けられてきた星の記憶の中に人々は生き続ける。
そして、人は一つの絶望の中である物を作り出し、それを奉り称移動をはじめ山を作った、海は生命の源であるプランクトンを作り、そして星を作った。
太古の昔より続く流転回流の流れの中に幾つ物進化があり、えた。それが神という存在でありもう一つの世界でもあった。
天界と名づけられたその異世界で起きる架空の事件。それは人が生み出した咎であり、また未来でもある。数千年という歳月の中で続けられてきたそれは、人が人として生きるために必要な事に也、そしてそれを星が望んでいた。
考えても見れば天界等何処に存在すると言うのであろうか、膨大な宇宙の中に存在する一つの惑星。それがこの星。有機生命体が存在すると言うただそれだけの惑星。この広い宇宙の中での塵の様な存在。また、それが文明でもある。
星の記憶、そう言われ続けてきた過去と言う線路の上に成り立つ現在と未来。過去がなければ現在は無い、同じように未来も現在が存在するからこそ生まれる物であり、全ては過去へと繋がる遠く長い道の様な物。
生命の母と呼ばれる海も、昔は巨大な水溜りであったと同じようにこの星も宇宙から考えれば一つの埃と同じなのだと。また、その埃の中に存在する人も星から見れば小さくはかない存在。
では、それほどまでに大きな存在である宇宙とは一体何か?宇宙と名乗る物の定理とは何か。人が作り出す咎もまた巨大で大きな物、ただ巨大な物と例えるならそれも宇宙と言えるのであろうか。だとすれば目の前に広がるこの巨大な大気も宇宙なのだろうか。
それを無と定理するのであれば、人の中に宇宙は存在する。それも人全ての中に。未来と過去も同じように言えるのであろうか、先が見えない無を持つ未来。現在の一秒後ろは既に過去。人は同じタイムベクトル上を歩き先が見えない未来へと足を運ぶ。
では、未来とは何か。現在と過去が存在しなければ成り立つ事が無い未来とは一体何なのか。例えば今の世界が何らかの影響で崩壊したとして、その未来は?
私達人の未来ではない、この星の未来でもない。それは宇宙の未来である。未来と言う言葉は人が作り出した創造物で現実には無い物。一秒前が過去であれば一秒先は未来である。それは人の未来で有りこの宇宙の未来では無い。誰かが死んでしまえばその人の未来は経たれてしまうが他の人には未来がある。では過去は?
過去はこの星の未来であり、予測できなかったもの。同じ過去を共有する者は少ないが、大きな過去であればそれを認知し、星は記憶する。過去は現在がなければ也たたないとするのであれば現在とは何か。
人が実感するベクトルの基準であり、そして星にとっては過去と平行する現実の未来。では私達が生きるこの星の過去とは一体何か。星が生まれる前に宇宙は何を見たのか。はたまた宇宙はどうやって生まれたのか、宇宙の過去とは何か、未来とは何か、現在とは何か。
それは人にはあまりにも時間が足りない課題であり、見えない未来へと歩ける唯一の力。未来を見出せない者は現在を見つめ、そして過去を見つめる。その先に何があったのか、何をしてきたのか、何が出来たのか。そうして未来が生まれる。
では…この星の人々が言う神や天界とは一体何か。それは人が作り出した小さな宇宙の中に存在する世界であり、またそれは人が作り出した過去を重ねて定義される世界。人が作り出した唯一の宇宙の中に存在する天界、咎の国とも呼ぶ人は居るだろう。その宇宙で起こった出来事を彼ら人は記憶し、そして未来へとつなげる。
では…人が作り出した宇宙の中に存在する天界。神々が住まうと言われる咎の国。それを別宇宙と考えるのであれば。



レ ッ ド ス ト ー ン と は 何 か ?




Act16 Episode 1. -Border of Life-
END

529 ◆21RFz91GTE:2007/10/31(水) 16:33:18 ID:ROcKqTsg0
こんにちは〜(´・ω・`)ノ
どうも、毎度お騒がせ21Rです。

早い物で、もう10月も今日で終わりですね〜。
考えても見れば、今年も後10週切ってるんですよね。歳取りたくねぇなぁ…orz
と言うわけで、毎度毎度感想ありがとう御座います。本当に同じ事しか言えませんが
皆様の感想のコメで毎日生活してますヾ(´・ω・`)ノ

*あとがき*
そう言えば全く関係有りませんが知人が初音ミクを買ったそうなので弄りに行って来ました。
合計3人で弄ってたんですが一人が「これ、エロゲじゃないん?」とか言うんですよ


頑張ればエロくなr(うわ何するやめr…

530◇68hJrjtY:2007/10/31(水) 18:29:17 ID:J5CCycpQ0
>526さん
またもやROM専の方からの投稿、嬉しい限りです(*´ェ`*)
赤と青という対照的な色を人物に見立てての、レナの恋物語と復讐劇が入り交ざっているお語ですね。
復讐を達成しても決して悲しい形では終わらず、レナがその後元気にやってるんだろうなと想像できるラストは良かったです。
毎回Gvを舞台にした小説を読ませてもらうと思いますが、ギルドっていいなぁとつくづく思います。
武道君が結構活躍してて嬉しかったりなんだり(こら
また気分が向いたら是非小説を書いてください。お待ちしています!


>21Rさん
後半突入ですね。そして初心に帰れるような神話か哲学書のようなオープニングに没頭です。
あんまり普段気にしていない時間とか現在、過去、未来を改めて考えてみると不思議ですよね。
1秒後は未来、1秒前は過去という表現になぜだかハッとしてしまいました。
時間って動いてるんだなあ。夢も回想も人間だからできる事ですよね。
---
初音ミクは、そういう属性の無い人から見るとエロゲとかそっち方面と思われてるようですよね(笑)
私も週刊少年ジャンプを買ってみた時にコンビニのバイト女子高生の人にエロ本だと思われたという悲劇があります(´;ω;`)
小学生も読んでるジャンプでそれはないだろ!と思いました(苦笑)

531FAT:2007/10/31(水) 19:44:42 ID:BhPv/1kM0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508

―6―

 不安そうに一歩一歩、地面がそこにあることをしっかりと確かめるように足を出す。目
は開いているがどこか不自然にその瞳がせわしく動く。ジョーイは手を引かれ、暗闇の中
を歩かされていた。
「ジョーイさん、ここに石がありますわ。結構大きいのですの。躓かないように気をつけ
てくださいっ」
 どぎまぎとその手を引いているのはピンクの頬をしたデルタ。憧れの美男子、ジョーイ
の男らしい手をはしと掴み、きらきらと光が溢れるような目はジョーイに釘付けだ。
「おい、お前が誘導してんだぞ? そんなにジョーイの顔ばっかみてたらこけんぞ」
「おねぇさまぁ!!」
 もう、なんでレンダルおねえさまには乙女心っていうものが分からないのでしょうか?
などと心の中で反発してみても、今喧嘩になってはせっかく掴んだジョーイを放してしま
うことになりそうで、口には出さなかった。
「あー、ちょっと見えてきたかも……」
 衝撃の瞬間はジョーイに暗闇をもたらしたと同時に、強くその瞬間を脳裏に焼き付けた。
デルタのピンクはまだ光力が弱かったものの、エイミーの白は見た瞬間に脳まで白く、焼
き切れたかと思うほど強い光だった。それで視力を失ったわけではあったが、ようやく黒
が薄まってきていた。とはいっても大地も空気も区別が付かぬほどに全てが一色であるこ
とに変わりはなかった。

532FAT:2007/10/31(水) 19:45:22 ID:BhPv/1kM0
小川一つ跨いだだけでこの変わりよう。あんなに青々と若い香りを振り撒くっていた草
木は姿を潜め、赤茶けた乾燥土が目立つようになった。荒廃した土地、という言葉がぴっ
たりだ。そんな風景によく馴染む、土埃を被った岩に人為的に開けられた穴がある。タワ
ー洞窟と呼ばれる通行用トンネルだ。外からだと、入り口の小ささに加え天気が良かった
ので中は真っ暗に見えた。しかしいざ入ってみると、松明がもうもうと光を発していて足
を運ぶには不都合のないほどで、ジョーイを除く三人は目的の場所に向かって真っ直ぐに
歩いた。ジョーイは手探りで座れそうな石盤を探り当て、腰掛けた。

 この洞窟に入ってからは、誰も何も話さなかった。

 エイミーの祖母、ネイム=ベルツリーはこの洞窟に眠らされている。彼女はここで、八
年前に殺された。そのとき、一緒に居たのは二十歳のエイミーだった。エイミーはその後
身籠っていることがわかり、ラスを出産した。つまり、このことはタブーなのだ。レンダ
ルもデルタも、何があったのかを知ることは出来ない。それは当の本人のエイミーも説明
出来ないから。
 そんなわけで三人の空気は洞窟内の淀んだ空気に取り込まれたかのように湿気を含み、
肩に重く圧し掛かって苦しかった。
「おばあちゃん、今年も私たちは元気よ。どうかいつまでも、私たちを見守っていていて
ね」
 エイミーが祖母の墓に手を合わせる。その墓は洞窟の中央にポツンと、とても寂しげに、
しかし何か意味有り気に建てられていた。
 手を合わせ、目を閉じていたエイミーも、目が見えなくなっていたジョーイも一瞬にし
て目が覚めた、というほどの強烈な衝撃が突如走った。エイミーの目の前には見たことの
ある、半身獣、半身人の大きな男がいつの間にか立っていた。
 そう、ただ、立っていた。

533FAT:2007/10/31(水) 20:06:56 ID:BhPv/1kM0
>>◇68hJrjtYさん
いつも感想ありがとうございます。
実は書いてて楽しいのはこう言ったほんわか話を書いている時だったり 笑

>>之神さん
おっしゃるとおり! 一瞬でなりたい自分になれるというのは、一瞬で今までの
自分を捨てると言うことですものね……
とても共感できました。
長編チャレンジ、がんばってください。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
最強の観客たちに笑ってしまいました。一瞬弱気になったヴァンパイアのギャップ
も面白いです。
シリアスな表現が苦手でも、すでにESCADA a.k.a. DIWALIさんの文章は個性が
出ているので、変わってほしくないなぁ、と勝手に思っています。
続き、楽しみにしています。

>>526さん
悲しい過去から、希望ある未来へ。とても好きな話です。
私もROM専だったのですが、ある日突然書きたい!と思い立ち、今に至ります。
文章は書き慣れることによってある程度までは自然にうまくなっていくと思います。
また書きたくなったら、いつでも投稿してくださいね。お待ちしております。

>>21Rさん
ス、スケールが違いすぎる!21Rさんの物語は宇宙にまで及ぶのですね!
このエピソードからどのように物語が動き出すのか、楽しみです。

534◇68hJrjtY:2007/10/31(水) 21:05:42 ID:J5CCycpQ0
>FATさん
エイミーすらも説明できないような何かがあって、ラスを産む事になった…
全ての発端がこの洞窟から始まっているのでしょうか。それとも別の何かがあるのか。
ゆっくりと謎が分かっていくのがもどかしくもあり、怖くもあり。
現れたこの半身半獣の男の正体など、続きを期待してます。
---
書き手さんのあとがきを読むのも小説本体を読むのと同じくらい毎回楽しみですよ(笑)
裏話とか小説の個人的な設定などはいつも読んでいて脱帽したり面白かったりしています。

535名無しさん:2007/10/31(水) 22:34:43 ID:oxdrjSnc0
 はじめましてこんな良スレ知らなかった自分を後悔orz 過去ログ総ざらいしながらも自分の力量考えずに投下してみます。


  side/A
 西口支援は賛否両論あるが俺は実は別に嫌いじゃない。
 支援がないと称号クエもできない職だって少なくない。秘密ではお世話になった鍵やBISもソロで地図2クエは相当レベルまでできないだろうし、自分も正直お世話になったことは一度や二度じゃない。まあただ、支援かけた1分後に全部支援が切れて戻ってくる火力とかには正直なやむんだが。
 気が向いて覗いた西口で今日は妙にそういうのがおおく、さすがに変身して逃げ出したら画面下に変なやつを見つけた。病気コボを殴る若葉テイマ。・・・なんだが・・・死に戻る距離ではないのにサバイバルになりそうなHPの減り方で、回復せずにひたすら殴る殴る。
「あんた、座ったら?」
 正直褒められたことじゃないが横から殴りとどめを刺すと(いっとくがコボのHPは半分以上、テイマは絶対1桁だ)、そのテイマの動きが止まる。が、反応はない。
 まさかこれは
「Cボタン。はじめに操作法やっただろ。それとそこらに散らばる飴ひろって使わないと」
「あ」
 やっぱり操作法わかってなかったらしいそのテイマが座ると、また立ち上がる。というか拾ってるらしいが、スペースキーで拾うことも知らないらしい。攻略サイト見ずに始めた初心者、というよりも商品のトリセツを読まないタイプだ。絶対。
「ありがとう」
 というがHPはあまり回復する様子もなく。と、急にじわじわ回復しだす。
 ・・・ひょっとして、アイテムの使い方もチャット方法もまともにわかってないんだろうか。
「RS初心者ってか、パソ不慣れ?」
 画面の向こうでどんな顔してるんだか。ちんまり座ったテイマに反応はない。
 今日はとりあえず1レベル上げてポタだしもしたし、秘密は今日は行く気がないし・・・おせっかいだがこういうのもいいだろう。自分が初心者のとき教えてもらう18Lvまでは宝物地図を破壊してたわけだし。
「とりあえずわかることは教えるけど、くる?」


  side/B
 足がふらついて、振り上げる笛が重い。粗末な服を着た生き物が繰り出す槍が、体力を削り血を流させる。こんなとこで倒れるわけには行かない。けど、もう、目が・・・
「あんた、座ったら?」
 いきなり吹っ飛んだ魔物と、さらに大きな茶色の魔物。その魔物はなぜか人の言葉を話しながら、呆然と突っ立っていたあたしの手をわしづかんでで引きずり落とす。これって食べられるのっ!? やだやだまだ村を出てきて間もないのにっ!ごめんね父さん母さん先立つ不幸をお許しくださいウィープの糸取りいやだって駄々こねて飛び出すんじゃなかったっ!
「はじめに冒険者になるとき学問の家で聞いてきたろう。それと落ちてる飴拾って食べたほうが」
「あ」
 じわじわと身体に力が戻ってくるのがわかる。流れてた血も止まっていくのに、慌てて黄色い飴を拾ってみると、いっぱいだったカバンに以外に隅に収まってくれる。束にして持ち歩けばよかったのか。
 一個試しに包装紙をはがして噛み砕いてみると、柔らかな甘さに身体が急に軽くなる。そういえば子供には特殊な飴が体力を回復されるっておじさんが言ってた。そして狼の姿の冒険者がいるということも。
「ありがとう」
 それと襲われると思っちゃってごめんなさい。口には出していえないけれど、なんだか目線が痛い・・・のは気のせいだよね? わたしって顔に出たっけ??
「冒険者の卵というか、親元離れたのも初めて?」
 う、その通りです。古都までおじさんが送ってくれました。なんていえるわけもない。
 何も言えずに黙りこくっていると、狼さんがふさふさの尾をゆっくり振って立ち上がる。ズボンと思ったら腰になんだか服を巻いてるみたいだ。布というより金属の糸を織って作った、銀色のコート。
「とりあえずわかることは教えるが、来るか?」

 こんなんはだめでしょうか@@

536名無しさん:2007/10/31(水) 22:36:35 ID:oxdrjSnc0
なんでさがらないorz

537◇68hJrjtY:2007/10/31(水) 23:35:20 ID:JcNbfLBY0
>536さん
今日はたくさん投稿が多くて嬉しいですヽ|・∀・|ノ 感想を1レスにまとめられず申し訳orz
side/AはWIZを操作しているプレイヤー視点、side/Bは実際のテイマ視点といった感じでしょうか。
この二つの視点は別々に書き分けて進行する小説というのは読むのが初めてなので新鮮です。
恐らくは「出会い」といったようなオープニングの予想ですが、はてさて。
続きお待ちしていますね。
---
ちなみに、スレを下げるにはメール欄に「sage」と半角で入力すると下がりますよ。
536さんは惜しい事に全角で入れてたようですね( ´・ω・)

538 ◆21RFz91GTE:2007/11/01(木) 14:16:36 ID:ROcKqTsg0
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Act17 Episode 2. -Border of World-




 この先の未来で…いや、何を持って未来とするのか。
先に述べた事を省いて進めるのであれば、この先の未来にはどのような歴史が待っているのだろうか。私達が知る未来とは何か。巨大な建造物が立ち並び、星の資源を使いそれを消費して走る鉄塊が無尽に覆い尽くす世界の私達にこのような世界は無かった。
あの世界に住まう人々が描く未来とは何か、未来は全て一つに繋がるものなのだろうか。
もしも時間をさかのぼることが出来るのであれば未来を変えることができるのだろうか、例えばそれがたった十秒前に戻り、現在行っている事を中断させて他の事をしたとしても未来が変わるのであろうか。はたまた十秒前に私は存在するのだろうか。
 時間がタイムライン上にあるとすれば、向いているベクトル方向は一定。そのラインから外れベクトルを遡るとしてそこに世界はあるのか。例えば過去を変えたとして先に変わる未来の何が代わると言うのか。
個人一人であればその未来に影響するのは微量だろう。それが一国の王だとすればどうか。国全土に広がり未来は変わってくる。また、その一国の王も個人一人であることに変わりは無い。だが関わる人の多さによって未来は姿を変えてくる。
それがもし世界ならどうだろうか。世界に何らかの変化があり過去が書き換えられたとするのであればその先の未来に及ぼす影響とは何か。
 話を戻そう、もし過去を変えることが出来るのであれば私たち人は何を変えたいのだろう。また過去に戻れたとしてそこに自分が存在するのだろうか。
歴史というのは幾つ物道があり、そこの一本が私達が今を過ごす時間だとすれば他の時間軸に生きる私とは何か。また、そこに存在する宇宙も別物であるのならばそこに存在する歴史とは何か。
仮に、別宇宙が存在し、そこにも歴史があり、さらにそこに私たちと同じような人が存在するとしよう。その人達の過去現在未来はどのようになって居るのだろうか。

539 ◆21RFz91GTE:2007/11/01(木) 14:16:59 ID:ROcKqTsg0
 例えば、その世界には先に述べたような未来の形があり、鳥を真似た空を飛ぶ鉄塊があるとしよう。そこに現在があるのであればもちろん過去もある。だがその過去で何が起きたのか、何が変わったのだろうか。
先にも述べたが、時間軸が幾つも連なるとすれば、平行する時間軸も存在する。最初は同じ道を歩んでいた時間だがどこかで連鎖反応が起き、時間のずれが生じた世界の未来がそれであれば寸断された未来は何処へ行ってしまったのか。
もしもその未来がどこかの時間軸に存在するのであれば、その過去は何処にあるのか。未来とは現在、過去からの連鎖物であることは先に述べている。では時間軸がずれたその未来とは違う未来の過去とは一体何処にあるのだろうか。それが別宇宙とするのであれば、何を過去と言えるのだろうか。
過去があって、今が存在して、未来を創造する。人はこれを幾千年と続けてきた。それは人が思い実行して来た物ではなく無意識の中で行っている現実。それは誰が決めたとかでは無い。星が決めたわけでも無い。また宇宙の意思でもない。それは人の咎なのだろうか。



 時間軸の話に戻そう、そもそも大元の根源は何処にあるのだろうか。例えば今を生きるこの世界を辿って行くとすれば起源は宇宙の誕生にある。宇宙が誕生したのはビックバーン現象からのエネルギー構築が起源とされている。ではこの宇宙が存在する前には何があったのか。何かがあって引き起こされたビックバーン。では宇宙が生まれる前には何があったのだろう。
私はこう考えた、ビックバーンがおきたのは時間軸の修正のためでは無いだろうかと。
例えば一つの時間軸が存在したとしよう、その時間軸で何らかの支障がおきたとして未来が描き変わってしまった。だが時間軸はそれを許さなかった。時間軸は修正をするために新しい宇宙を別の時間軸に作り出したとすればどうか。それがビックバーンであり宇宙が誕生する。そしてそこにまた新しい宇宙の歴史が作られ時間軸の意思により修正ポイントまで到着したと同時に修正が入る。そして本当なら続くはずだった未来が構築され時間連鎖が始まる。
 では、時間軸の修正により発生したビックバーンで誕生した宇宙があるとしよう。その大元は何なのか。それは分からない。
だが、これでは先に述べている人の中に存在する宇宙が成り立たなくなる。人の中に存在する宇宙とは無であると同時に混沌。人が作り出す混沌と無の事を宇宙とすれば、現在この星が漂う無の空間、宇宙とは別の物なのか。
また、人の中に存在する宇宙にも過去、現在、未来は存在するのだろうか。それは人のタイムベクトルと同様、その個人一人が抱えるタイムベクトルと同じ過去、現在、未来が存在するのかもしれない。
では、今私達が住むこの星。そこにある宇宙がまた誰かの個人一人の中に存在する宇宙だとすればそこに住まう人達の星、宇宙は何か。
それが時間軸が生み出した新しい宇宙だとするのであれば無限連鎖が起きてしまう。有機生命体の中に存在する宇宙の中に存在する有機生命体。時間軸による未来への修正があるとすれば、新しい宇宙が生まれるイコール新しい生命が誕生すると言う事なのだろうか。ではその起源…これもまた無限連鎖になってしまう。
つまり、人は無限連鎖の中に生まれた小さな小さなタイムライン。そのタイムラインの延長にあるのが私達が住まう星、その星のタイムライン上にあるのが宇宙なのかもしれない。
そして、別宇宙が存在するのであればそこは別のタイムライン、時間軸なのかもしれない。では、今私達が住むこのタイムラインは、どこの歴史から外れた時間軸なのだろうか。そしてその時間軸で何があり、何が起こったのか。



世 界 と は 何 か




Act17 Episode 2. -Border of World-
END

540 ◆21RFz91GTE:2007/11/01(木) 14:19:37 ID:ROcKqTsg0
何 だ こ の 電 波

おはよう御座います、21Rです(´・ω・`)ノ
読み返せば読み返すほど電波だなぁって思ったのは俺だけじゃないはず…orz
と言うわけで、もう一個エピソードを書いたら本編はいりますのでご了承ください。

*あとがき*
今日で仕事一段落だぁ…
明日から少し暇できるのでもう少し突っ込んで書いて行こうと思います〜
と言うわけで、久しぶりにキャラ紹介

■キャラクター紹介
■ユラン・F・エルフィート(♂)
今作の主人公、WIZの割には魔法が苦手。
何事にも気合が足りないために、進んで行動を起こさない。
備考だが、彼はロリコンである。

■イリア(♀)
今作メインヒロイン、チビで天然でおっちょこちょいなビーストテイマー。
好奇心旺盛で天真爛漫、美味しく頂ける方はどうぞ。

■ミト・メーベ(♀)
前作ヒロイン(二番目の)、現在は英雄達が残したギルドのGM。
昔は臆病で弱弱しかったが、現在は結構ハキハキと物事を言う。

■クラウス・アルフォード(♂)
ミトと同じギルドに所属するGMのお目付け役。
最近は昔のミトと現在のミトを比べてため息ばかりをつく。

■ミルリス(♀)
前作のメインヒロイン、オテンバで実はおっちょこちょい。通称ミル。

■アレン・ケイレンバック(♂)
前作の主人公、設定を無視してスレ内ではロリコンと言われた可哀想な人。
今作では作者が設定を無視してロリコン認定になっている素敵な人

■アデル・ロード(♂)
古より恐れられた黒衣の焔の称号を持つ鬼の末裔。
ハノブ大地震で崩れた巨大な廃坑に封印されて居たが、岩盤のズレにより封印が解かれ現世に蘇った。前作でも登場したが、その強さは比較にならない。

■バフォメット(?)
世界の終焉、リライト・ザ・ラグナロクの異名を持つ魔獣。
太古の昔に封印されていたが、何者かの手により封印が解かれ現世に復活してしまう。

■作者:◆21RFz91GTE
・ヘタレLv324
・イリアと前作のミトは俺の嫁
・どう見てもおっさんです、本当にありがとう御座いました。
・通称:21R

541◇68hJrjtY:2007/11/01(木) 18:38:47 ID:J5CCycpQ0
>21Rさん
もはや、RSという舞台を忘れてしまうようなエピソードの深さですね。
電波なんてとんでもない、こういう話は好きなのでじっくり読ませてもらいました。
「無限連鎖」、つまりは人の中の宇宙が連なっていくという事を考えると人間ってちっぽけだなぁと痛感します。
なんだか手塚治虫の「火の鳥」や某ゲーム「クロ○クロス」に出てきそうな壮大な話ですね(*゚‐゚)…
とても無理なのですが、いつかこういう話を書いてみたいと思ってみたりしています。
仕事お疲れ様です。続きお待ちしていますよ!

542名無しさん:2007/11/02(金) 19:50:04 ID:MITcSKg20
突発的短編小説

・・・・・・

そうさねぇ〜。何から話そうか。
うん。そうだ、まずこの写真見てくれるかね。
これこれ、若き日の私。プリップリのナイスバデイだった頃の私だよ。

あっはっは、何だいその目つき、怒るよ?

まあ見て欲しいのは体じゃないんだけどね、この写真の私の顔と今の私の顔見比べてなんか思わないかい?
・・・皺が増えたって?余計なお世話だよ。 顎が二重になった?真面目に考えなよ。
 前髪が短くなった? ・・・もういい、あんたには話さない。
謝ったって遅いよ。ったく最近の若い人は洞察力が足りないねぇ。

目だよ。この写真の私と今の私の目、違うだろう?

そう。この時は私の瞳の色、黒かったのさ。
夜の闇を思わせる深い漆黒の瞳。いまじゃあもう見かけない色だ。
・・・もしかしたら黒目の種族はもう途絶えてしまったのかもしれないねぇ。

ねぇあんた、もしこの先、黒い目を持った人間にあったら、私のトコに連れて来ておくれよ。
きっと稀に見る槍使いになるからさ。
 何でこんなこと言うかっていうとね、もともと、エリプトの女傭兵団って言うのは黒目の集団だったからさ。
黒い目って不吉を表すって今でも言うじゃない?
あれ、エリプトの女傭兵団に散々領地を荒らしまわされたブルンの将軍共が私達を恐れて黒目を嫌ったことが始まりなのさ。

・・・おやおや、随分話が逸れちゃったねぇ。ごめんよ。

何の話だったっけ?ああ、そう。じゃあ、私の、いや私じゃあないね、私達の目の色がどうして変わったか、教えてやるさね。
 まぁ、始まりは、赤い石だったのさ。運命を狂わされた人の多くと同じようにね。
赤い石が落ちてきてすぐに、私達傭兵団の元にも捜索命令が出されたのさ。

私達はいろいろな所を巡って赤い石を求めた。
ある時は雲の上に隠された山の頂に望んで、ある時は赤土に染められた河川の源を辿って湖に潜った。
時に皮膚を焦がすような灼熱の砂漠に挑んでは、時に明かりが無ければ一寸先も見えないほど暗闇に染められた洞窟を彷徨った。

そして、ついに見つけちまったのさ。或いは、見つけられちまったのかもしれない。

543名無しさん:2007/11/02(金) 19:50:42 ID:MITcSKg20
赤い石?そんなもんじゃないよ。
悪魔さ。赤い悪魔。歴史の教科書にもそれぐらい載っているだろう?
野山を荒らし回った人間様が悪魔に蹂躙されたってね。

私達は、立ち入っちゃいけない場所まで行ってしまったのさ。そこが、禁忌の場所だと気付いていながらね。
赤い悪魔達との緒戦は、壮絶なものだったよ。あんたには、想像してもらうしかないんだけどね。

まぁ、考えてみてごらんよ。深い洞窟の中での話だ。
私達の見えている景色って言うのは、手に持つ松明があるからこその物だったんだ。
火っていうのは悪魔の統制下にあったんだろうね。特に、闇に染まりながら光を放つ火なんて特ににそうだったんだろう。

悪魔に遭遇して、戦列を構える私達の持つ火がさ、少ーしずつ少ーしずつ小さくなっていくんだ。
それと同時に、私達は物が見えなくなっていく。火が小さくなっていくのと反対に、恐怖がもの凄い勢いで心の中で大きくなるんだ。
それで、最初は明瞭に見えていた悪魔の姿が陰に隠れて見えなくなったとき、後ろの方で悲鳴が上がったのさ。
何があったのかは今でも分からない。悪魔が後ろから襲い掛かってきたのか、単に恐怖に耐え切れなくなっただけなのか。

ただ一声の悲鳴で、私達は全てを決壊させちまったのさ。
陣を崩して、後ろも振り返らず、誰かを気遣う暇も無く、私達は敗走し始めた。
途中で何かにぶつかったり、何かを踏ん付けたりした気がするけど、それは仲間だったのか悪魔だったのか、或いはただの土くれだったのか・・・。

ま、取り敢えず、どうやったのかは分からないけど、私は生きて洞窟を脱出できたんだ。
その時には、私の隣に仲間は一人も居なかったんだけどね。

その後は、野山駆けずり回って何とか国に帰りついた。
もちろん、人里に戻って来られた時には半死半生で意識がぶっ飛ぶほどの苦労はしたんだよ?

他の生き残った仲間と再会して涙を流している時に、悪魔軍が王国の第一防衛線を突破したって知らせが入ったんだ。
私達は、この事態の責任者。当然というか、すぐに前線に配属されて、悪魔共を迎撃することになった。
 悪魔と人間の戦がどういう結果で終わったかは知っているだろう?
私達の守る砦は、一週間と持たなかった。
昼も夜も無く攻め寄せてくる敵に、障壁を整備しなおす時間も無く、傷ついた味方を看病してやる時間も無かった。

今思えば凄いことなんだけどね。
だって、七日七晩不眠不休で闘い続けて砦を守ったんだよ? 最後には落とされちまったけどね。
私は途中から意識が飛んじまってて、気がついた時には悪魔の捕虜として捕らわれていた。

古今東西、戦に敗れて捕らわれた女性士官への対応っていうのはそんなに変わる物じゃない。
それは、例え悪魔でも例外では無かったみたいだね。

・・・何をされたかなんて、説明さすんじゃないよ?
あんたももうガキじゃないだろう、それぐらい察しな。


 ・・・・・・・その時からさ。私の目が赤くなったのは。

544名無しさん:2007/11/02(金) 19:51:25 ID:MITcSKg20
時々見かける悪魔の瞳って、赤いじゃない。
だから、奴等から辱めを受けた時、奴らの霊力に染まっちまったんじゃないかって思うんだけどね。

まぁ、それだけなら、まだ何とか耐えられたのさ。
国も、富も、名誉も家族も、何もかも失って、それでも何とか、耐えて生きていこうと思ってたのさ。

・・・娘を産んでからのこと、なんだけどね。
戦で殺された夫が残した忘れ形見・・・。そう思って、生まれる前からできる限り大事に扱ってきた娘だった。
でもね、違ったのさ。

私の娘は、悪魔の子だったんだよ。

紅い瞳に金色(こんじき)の髪。生まれたばかりだっていうのに完成しつくされた様な美しさ。
そりゃ、最初はね、私の目も赤なんだし、娘もそうであったっておかしくないと思って受け入れたさ。
いや、受け入れようとした、っていったほうが正しいかねぇ。
それでも、娘が成長していくにつれ、どうしてもそれが無視できなくなっていった。
あの娘は、魔法に対してとんでもない程の適応能力を身に付けていた。当時の私達では考えられないくらいに、ね。

言い忘れていたんだけどね、エリプトのアーチャーやランサーっていうのは完全に肉弾戦、白兵戦用兵力だったんだ。
今のアーチャーやランサーが使うような、四大精霊の力を槍に宿して威力を増したり、紅に燃え盛る魔法矢を放ったり、
ましてや幾人もに分身して敵を刺し貫くなんて術は、当時の私達からしてみれば完全に専門外だった。
 て言っても、『エリプシャン』って呼ばれる一部の例外は当然あったけどね。

同じように生き残った傭兵仲間にも聞いたんだけど、やっぱり私達の産んだ『娘』は全員、金髪赤眼。
スマグのウィザード顔負けの魔法を、しかも天性の才能で扱えて、
目を見張る程の容姿端麗、あまつさえ造られたかのような流麗な身体付き・・・。

あっはっは、別にあんたを褒めている訳じゃないから、心配しなくていいよ。

それに、エリプトを壊滅させた悪魔の血を身に受けてそうなったんだからね。あんまり誇れることじゃあないでしょうよ。
・・・そう、悪魔の血を、受けているから、ね。

ああ、今の言葉はそんなに深い意味は無いから、そんなに考え込まなくていいよ。
ただ、ね。私達は、悪魔の血を受けたことで、この世とはちょっとずれた所に生きる存在となっちまったのさ。

545名無しさん:2007/11/02(金) 19:51:49 ID:MITcSKg20
・・・何を言っているか分かんないって顔してるね。

まあ、そうだろうね。私達は現に今此処に居る訳だし、此処にある物体に触れることもできる訳だし。
 あんた、神隠しって知っているかい?
彼方の世界に居る神様が、こっちの世界の人間を気に入って攫っちまうっていう、あれ。
他の人に関しては知らないけどね。
少なくとも、悪魔の血を受けた私達に降りかかる『それ』は、この世界にある次元の裂け目に飲み込まれちまうって事なのさ。

悪魔っていうのはもともとこの世界の住人じゃあない。此処ではない何処か、異次元の住人なのさ。
そして、完全な人間でもなく、かと言って悪魔って訳でもない私達は、この世界の外れに立っている、って事になるんだろうね。

だから、私達はこの世界の裂け目に入ってしまいがちなんだ。この世界のほつれに、引っかかり易いんだ。
私の友達にもね、何人か、大きな裂け目に入っちゃった連中が居るんだ。・・・あいつら、今頃どうなってんだろうね。

私達が、そういう裂け目に引っかかり易い体質だっていうのは、
私達が、数百年経った今でも、金髪赤眼を継承しているのと同じように、私達の中にしつこく残り続けるんだろうね・・・。

・・・異次元に入っていった連中が、どうなったか知りたそうだね。
なんなら、あんたも入ってみる?
感じないかい?ほら、あんたのすぐ隣、大きな裂け目が、あんたを飲み込もうとしているのを・・・・・・・・・





  『赤い眼を持つということ』 −完−

546名無しさん:2007/11/02(金) 19:59:51 ID:MITcSKg20
・・・お久しぶりです。といっても誰も覚えておられないでしょうね(汗

一話目を書き込んで二話目を書き込もうと思ったときに何故かプロキシ制限なるものに
引っかかってしまって、それ以来ずっと疎遠になっていました。

もともと書こうと思っていた話は完全にやる気を失ってしまっているので短編で
再びちょこちょこお邪魔させていただこうかと思っております。

最近職人さんがたくさんおられるみたいでスレが伸びているのを見つける度に目尻が下がる169でした。

547◇68hJrjtY:2007/11/02(金) 20:56:59 ID:6LBoUE3c0
>169さん
お久しぶりです。もちろん覚えていますよ。
老婆の昔語りですが、語り口調は楽しげ(?)でも内容はとても悲しい物語ですね。
悪魔を身ごもってしまって産む事になってしまっても強く生きようとする気持ちだけでここまで来てしまったというか。
女は強くならざるを得なかった、そんな戦争の背景まで伺わせるお話だと思いました。
異次元に入っていった連中という締め括り方も怖さが残りました。
---
復活おめでとうございます。
実を言えば以前のリトとルチルの恋物語っぽい小説の続きも楽しみでしたが…(こら
快活な剣士というのがとても好きなので(笑)
でも、169さんが短編でも書き続けてくれるという事の方が嬉しいです。また短編でも長編でもお待ちしていますよ!

548名無しさん:2007/11/03(土) 00:41:27 ID:4BYUynjs0
初めまして。

このスレだけの、しかもごく数人のものしか見てないんですが、ストーリー決まってもないのに書いてみようと思います。
ネタ切れが起こったら困るとか、そんなに脳内で話が出来上がってないとか・・・いろいろあるので短編で・・・

なお、これは事実のかけらもありません。すぐに分かるとおもいますがねw

             1章
パプル鉱山にて・・・

知り合い5人+3人で普通に狩りをしていた。
その中の会話・・・
「最近バフォメットが強くなって復活したらしいですよ」

「ぁー聞いたことありますよ。いっぱい言葉しゃべるようになって、最初クールだけど互角の戦いをしてたら物凄いハイテンションになるとかw」
「それそんなに関係ないようなw」

この後の1人の発言で方向が一気に変わる。
「じゃぁ、一回行ってみます?もちろん倒すことを目標にー」

「おぉー」
「いいね!」


・・・
「というわけでデルロスさん。送ってください。」
「いいですが・・・バフォメットが強くなって復活してるならあなたたちが危険に襲われると思うんですが・・・」

「いいんです。それに、倒してしまったほうがこの鉱山が安全になりますしね」

「・・・・分かりました。」

        

「ぉーそういえばここ1回来たっけなぁ」
「・・・さて、いますかねー・・・?」

「ぁ!あれそうじゃないかな!?」

見てみると、緑色の体にでかい鎌。姿はバフォメットそのままだ。

「ちょっと待って・・・罠仕掛けるから・・・」

(こーいうときに役に立つよなぁ・・・)

「よし!出来た!」

「ん・・・何このオレンジのでかい罠は」

「踏むと爆発するぜ?」

「・・・お前罠シフ?」

「昔はな。もうちょっと勉強していたら道を踏み外すところだったw」


 1章 完

あとがき的なもの
初挑戦・・・頑張ります。
短編なんで10章持てば長く続いたと思いますよw
後見やすいし、書くのに役に立つのでPT編成を。
剣士 主力スキル:パラ、デュエ
アーチャー 主力スキル:ビット
アーチャー 主力スキル:氷雨、火雨、(F&I)
WIZ 主力スキル:エンチャ、ヘイ、アスヒ、(メテオ)
BIS 主力スキル:PTH、フルヒ、リザ、(コル)
テイマー 主力スキル:風雨の日 特技命令
シーフ 主力スキル:ダブスロ、(ブービートラップ)、(エクスプロージョントラップ)
戦士 主力スキル:ディレイクラッシング

近いうちにまた続き書くとおもいます。

549◇68hJrjtY:2007/11/03(土) 17:05:37 ID:.Am.6WY.0
>548さん
初めまして。小説ありがとうございます!
バフォ討伐(観察?(笑))PTの様相ですが…さて、無事にハイテンション・バフォが拝めるのか否か(笑)
しかし、最初からキャラの職・スキル設定までできているとは。
何も考えずその場の勢いで書くことの多い私などにとっては見習うべき点だと思いました(;´∀`)
構成を頭で練りながらゆっくりで構いません、続きお待ちしていますよ。

550FAT:2007/11/03(土) 19:14:36 ID:A/eucyEw0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508、6>>531-532

―7―

 とても人間とは思えなかった。それほどに、この男の存在は大きく、脅威に感じられた。
エイミーは祖母の墓越しに男と向かい合っていた。レンダルとデルタは自らの存在が消え
てしまったかのように、薄く、透明な気分になっていて、ジョーイは剣を両手で握り締め、
二人に注目した。が、もし何かが起こってしまっても、そのとき自分はその場から動ける
かどうか怪しいとジョーイは無意識のうちに思っていた。
 相手は闇そのものだった。顔に表情は無く、肌の色は褐色なのだが誰の目にもそれは暗
く、黒く映った。真正面から向かい合っているエイミーはその男の何も映っていないかの
ような瞳に毒気されたのか、何かが抜け出てしまったような虚ろな顔になっていて、頭の
中がからっぽになったような無感覚に陥っていた。しかし実際はそうではなかった。エイ
ミーは確かに、恐怖していた。決して記憶しておきたくない事実が、忘れてしまったまま
でいたかった真実が厚い殻の中でうごめき始め、八年の月日を、エイミーの幸せだった月
日を内から突き破ろうとしていた。
「子供はどこだ?」
 低く、太い声だ。男がエイミーを深く暗い瞳で覗き込んだまま、続けた。
「俺の子はどこにいる?」
 その場にいた全員が目を見張り、男をまじまじと見た。逞しい体つき、狼のように茶色
い毛のごうごうと生えた脚、鋭い爪を持った足。そうか、この男がラスの父親なのだと、
誰もが確信した。
「あ、あなたの子供など、知りません」
 がくがくと瞳が震え、焦点は男に合わせられているようで定まってはいない。エイミー
は今、自分が発言をしたことを自覚していない。
「知らぬはずはない。お前の子だ」
「私の子は………わたし…の……子……?」
「そうだ。どこにいる?」
「私の子はラスよっ! あなたの子なんかじゃないわっ!! ラスはいい子よ、私にも、
レンにも、デルタにも優しいんだからっ!! あの子はあんな風貌でもね、心は優しいの
よ!! いつだって他人に興味のない振りをして、実はいっぱいいっぱい他の人のことば
っかり考えちゃうような子なんだから!! あの子は魔法がとても強力だけど、その中で
も最も得意なのはなんだか知っていて? 補助魔法よ、他の人を助ける魔法がいっちばん
得意なのよ! わかった? あの子は優しい子なの、あなたなんかの子じゃないわ
っ!!!」
 叫ぶように、悲鳴をあげるようにエイミーは涙を撒き散らしながら、髪をばっさばっさ
振り乱した。
「なぜ俺の名を呼ぶ?」
「???」
 エイミーはもちろん、一同が首を傾げた。
「あなたの名前なんて知らないわっ!! 私が言っているのはラスのことだけよっ!!」
「知っているではないか。いかにも、俺はラスだ」
 エイミーの顔が青ざめる。そして、
「ラス、嘘よ、あなたなんで……え? ……ラス??」
 エイミーのあの日の記憶が、殻を内から破り、激痛を伴って体外に流れ出した。それは
ラスを産んだときの痛みに似ていて、思わず失神しかけたほどだった。
 失われる記憶などない。どんな些細な事でも、どんなありふれた事でも、思い出せない
としても記憶には全て残っている。どんなに忘れていっても、忘れた振りをしていても、
きっかけが突如記憶を思い出させる。本人が望もうと、望まなくとも。
 エイミーは思い出された。あの日の記憶を。

551FAT:2007/11/03(土) 19:49:45 ID:A/eucyEw0
>>◇68hJrjtYさん
いつも感想ありがとうございます。
あとがき……と言えるのかは謎ですが、エイミーの話はフランたちの話を書いて
いたときから書きたかった話なので、またこうしてこのスレに投稿出来るように
なり、嬉しく思っています。

>>535さん
初めてRSの世界に飛び込んだ初期のころを思い出しました。初めは誰かに
教わり、そしていつか誰かを教える。そういった良い流れがあったことを思い出させて
くれるいい小説だと思いました。
>>こんなんはだめでしょうか@@
もちろんオッケーです。またの投稿、お待ちしております。

>>21Rさん
はぁ……すごい……
21Rさんの作品の考え方だと、今の現実は時間軸の修正のため、何者かが新しく
作り出した宇宙なのだと。いつかそれの気まぐれ(?)によって新しい宇宙が
作り出され、それの望む未来を再構築すると。つまり、ある一定までは同じ人、
同じ文化が発展した宇宙がいくつもあると言うことでしょうか?
う〜ん……難しい……
この壮大なスケールのエピソードから、どのような物語が語られるのか楽しみです。

>>169さん
おばあさん(?)の語り口が上手く、ぐいぐい引き込まれていきました。
人は口より目で語る、と言いますが、目の色というのは深い意味を持つもの
ですねぇ。
最後のセリフはおっかながらせているのか、それともその大きな裂け目への
橋渡しをしているのか、色々と読み手が想像できる締め方でただ読ませるだけ
で終わらない169さんのセンスを感じました。
次の作品も期待しています。

>>548さん
私の作品ではスキル設定などない、暴走状態となっているのでこういったゲームに
忠実なキャラごとのスキル設定のある作品に飢えています 笑
どういった展開になるのか楽しみです。

552◇68hJrjtY:2007/11/04(日) 00:27:13 ID:.Am.6WY.0
>FATさん
うっ…またいいところで終わってしまったっ!
遂にラス出生の秘話が、と思いきや父親と思った人物もまた「ラス」という名。
これがただの同名であるだけなのか、それ以上の意味があるのか。とても気になるところです。
ラスなどすぐにウルフマンを連想してしまうのですが、半身半獣というとやはりニュアンスが違いますね。
ケンタウロスやサテュロス、フォーンなど、実は神話や物語には良く登場する存在なのですよね。
エイミーの記憶の続き、お待ちしています。

553名無しさん:2007/11/04(日) 04:14:38 ID:4BYUynjs0
>>551さん >>549さん
感想感謝します!
よく考えればバフォとの戦いだけで何回も持たないような気が・・・orz
              2章
WIZ「では、準備整ったみたいなんで一斉に攻撃しますか」

シーフ「んじゃ、行こうか・・・食らいやがれー!ダブスロ!」
アーチャー「ビットグライダー!」
WIZ「(普段支援なんですけどね・・・)メテオ!」
テイマー「特技命令!」
剣士、戦士(俺は近づいて攻撃かよ・・・orz)

と、2人がへこみながら全員が戦闘態勢に入る。

バフォメット「ん!?人間共か・・・まとめて片付けてやる!」

ファミが居る場所にバフォメットが攻撃する。が、バフォメットの攻撃はこれまでと違った。

ズゴゴゴ!!!

全員「おぉぉぉぉぉ!!?」

何故攻撃で驚いたのか。
それはバフォメットが攻撃した瞬間、鎌から衝撃波のようなものが直線状に飛んできたのだ。
それによってファミ達2匹が吹っ飛ぶ。そして、8人にも襲い掛かってきた。

剣士「ぐ・・・防いでくれ!俺の盾よ!!」
と言ってシマーを自分にかける。

ガギャァ!!

盾で強引に軌道をずらしたが体の周りを回っていた盾は吹っ飛ばされ、派手に壁にぶつかった。
剣士「よかったー!壊れてなかったー!」
・・・予備の盾を持ってなかったのだろうか、凄く喜んでいる。
しかし、ファミや盾のことからバフォメットの相当な攻撃力が予想される。

シーフ「なぁ剣士、前に出てから攻撃を受けないようにしながら後ろに下がってくれね?」
剣士「なんでだよ・・・前に出るならファミでもいいじゃないか」
シーフ「ファミだとそのまま戦って後ろ下がらないだろ?お前にやってほしいんだ」
剣士「・・・しょうがないなぁ・・・」

シーフ「テイマさん。ちょっと後から特技命令やってもらえます?」
テイマー「ぁ、分かりましたー」

前に出てデュエをしてタゲを取る剣士。バフォメットが剣士にターゲットを合わせた。
そこにビットなどの追撃が飛ぶ。しかし・・・

カキィン!

なんと鎌を回転させ攻撃を防御したのだ。
そして鎌の回転を止めると剣士を追いかけたのだ。

剣士「やっべぇー!!追いつかれるぅ!!」

ある程度しょうがないがいつの間にか追いかけっこになっている。

そのとき、バフォメットの足が地面に着いたとき・・・

カチッ!
ガッ! ドカン!!

激しい爆発が起こった。

シーフ「フフフ・・引っかかったなぁ」
そう。シーフが戦闘前に仕掛けたブービートラップとエクスプロージョントラップである。

シーフ「あいつが防御するのには驚いた。だがこれでしばらく動けない。」
シーフ「思いっきり攻撃しようぜ!」
              2章 完

名無しなんですが・・・コテハン、考えておきます。
いいのが思いついたときにはもう終わってるでしょうがねw
あと剣士がなぜこんなにネタになっているのでしょうかねぇ・・・

554◇68hJrjtY:2007/11/04(日) 06:39:09 ID:.Am.6WY.0
>553さん
回避技の風車まで使いこなすとは…このバフォ、やるな(笑)
仲間同士で連携攻撃の作戦展開!という感じで、まさにMMOっぽくてイイと思います。
自分の傷よりも盾の傷を心配する剣士君萌え(*´ェ`*) 萌えていいのかは分かりませんが(笑)
さりげにシーフ君が司令塔みたいに立ち回っていますね。なるほど、(元)罠シフでしたし頭が良いんですね!(違)
というわけで緊迫した戦闘シーンなのに勝手に妄想全開で面白がってましたorz 大変失礼します。
さて、罠にかかったバフォはどうなったんだろう…。
---
これだけで何回ももたないと感じたら、バフォ戦以外にも別方向に展開しちゃうとか(笑)
キャラの設定なんかもできてるようですし。
コテハンは私もつけるまで時間掛かりました(ノ∀`*) 実は今でも◇68hJrjtYさんとか呼ばれると誰だっけとか(死)

555FAT:2007/11/06(火) 20:23:22 ID:A/eucyEw0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508、6>>531-532、7>>550

―8―

「おばあさま、今日は少しお天気が悪いですわ。雨が降るかしら」
「降るでしょうねぇ。でもね、降るとわかっているからやめるなんてそんな軟弱な考え方
はいけませんよ。決まりごと、約束は守るものです」
 真珠のようなつるっとした透明感のある肌、絹のような繊細な髪、自然に薄紅に色付い
た濡れた小さな唇、二十歳の瑞々しいエイミーが老女と紅茶を飲みながら談話していた。
「わかってますわ。ただ、やっぱり私は晴れの日のほうが好きですの」
 エイミーの祖母、ネイム=ベルツリーは七十を幾ばかか越えた歳ではあるが、背筋はし
ゃんと伸び、全体のたるみも同年齢の者と比べれば少なく、若く見られることが多かった。
「そうですね、人間、誰しも太陽を好み、求めるものです。けれども、雨だってずっと降
らなければ私たち人間はそれこそ困り果ててしまうでしょう。この村ではそんな雨の大切
さを知っているから雨乞いの蛙祭りのような儀式が行われるのです」
「ねぇおばあさま、私あのお祭りで物を配るほうになってみたいわ。家でも何か作りませ
んこと?」
「そうですねぇ、何か作るのも良いことですが、アウグスタのシャロルの作るワインなど
を振る舞うというのはいかがです? 彼女のことはあなたも知っているでしょう?」
 エイミーはシャロルの快活な姿を思い起こした。ネイムとシャロルは静と動といったま
さに対照的な性格をしているが、それでも不思議と仲は良かった。
「あの面白い方ですわね、私、あの方のしゃべり方がおかしくって好きですわ」
「シャロルは本当に正直者で、悪びれなくなんでも口に出しますからねぇ。だからこそ、
私は彼女と何十年も親友でいられるのですよ」
 エイミーはふと、レンダルのことを思った。レンダルもまた、快活で思ったことをずけ
ずけと口に出すタイプである。自分とレンダルもこのネイムとシャロルのように、老いて
なお親友と呼べる仲でありたいと願った。
「さぁさぁ、出かけましょうか、エイミー。あなたももう二十歳になって、立派なエンチ
ャット士としての実力は持っているのですから、後は実践あるのみですね。今日は最も難
しい指輪のエンチャット尽くしですよ。小さな器に強大な魔力を留まらせるのは本当に気
の滅入る作業になります。特にあなたのように自分でも制御できないほどの魔力を持って
いると、その難易度は更にあがるかも知れませんね」
「はい、集中を高めて挑戦させていただきますわ」
 すっとさらうようにエイミーのティーカップを引き寄せ、自分のカップとカチンと片手
に持ちながらネイムは微笑して、
「まだ集中しなくていいですよ、いやですねぇ、老人をからかって」
「あらやだ、違うのよ、おばあさま……」
「わかってます、わかってますよ、あなたの意気込みは重々承知していますよ。さぁ、行
きましょう」
 エイミーはやや頬を赤くしてネイムの後をついて家を出た。ネイムは一家を支えるエン
チャット士であり、魔力の量、質共に彼女の子であり、エイミーの父であるデリックを今
なお凌駕する。そんな祖母にエイミーは幼少のころから憧れており、どうもネイムの前で
はちぐはぐになりがちであった。エイミーは、ネイムの後ろを付いていくのが好きだった。

556FAT:2007/11/06(火) 20:24:54 ID:A/eucyEw0
―9―

 タワー洞窟は通行用トンネルと言っても利用する者はほとんどいない。ここは二人のお
気に入りの修行場となっていた。洞窟の中は松明が灯されており、やけに明るくて外の天
気の悪いのを忘れさせるようだった。
 いつだったか、今日のようにネイムと二人でタワー洞窟に来ていたとき、ふと思い出し
たように「この松明の火は私がエンチャットしたものなのですよ、エイミー。あなたもこ
んな風に人を助ける魔法をよく覚えなさい。そして、責任を持ちなさい。この魔法は私が
死んでも消えません。消えてもらっては困るのです。術者が死ねば魔法が解けるなど、エ
ンチャット士を名乗る上では、あってはならないことなのですよ。私たちの負う役目は大
きいのです。いつまでも、この世で輝かせなさい。それがあなたの、私たちエンチャット
士の役目なのです」と教えてくれた。残念ながらネイムの死去後、灯火の勢いは衰えてし
まったが、それでもまだ、人々の役に立ち続けている。彼女のかけた魔法は世界中でまだ
輝き続けている。
 ネイムはごそごそとバッグを漁ると、中から指を守るための四つ穴の指当て、ドクロの
ついた指輪、メリケンサック、大きな宝石のついた指輪などをぽろぽろ地面にばら撒いた。
「さぁ、エイミー。どれでも好きなものをお選びなさい」
 エイミーは赤い宝石の付いた指輪を手に取った。
「セッティングリングですね。それでは、それに……そうですね、あなたの苦手な闇の魔
力を付加させてみてください」
 エイミーは頷き、手に指輪を包んで目を閉じた。エイミーの頭の中では今、手の中にあ
る指輪がはっきりと映し出されている。そして、その空の容器にゆっくりと、魔力を近づ
ける。エイミーの手の中に魔の力が凝縮され、指輪に隙間を探す。焦らずに、確実に入り
込める隙間を探す。くまなく魔で包み、融合を試み、ようやく見つけた。しかしその安堵
が流量の調節を狂わせ、小さな指輪は膨大な魔の力によって内側から破裂し、こなごなに
砕けた。
「まぁ、一度目から「穴」を見つけ出せるなんて。本当にあなたは素晴しいエンチャット
士になれそうですねぇ。将来が楽しみですよ。さぁ、めげずに何度もチャレンジしましょ
う」
 しかしエイミーは中々その先に進むことは出来なかった。闇という特別な力を扱うのに
慣れていないからか、集中力が足りないのか、指輪は魔力を注ぎ込む度に粉砕された。
「休憩しましょうか、エイミー。休むことで集中力が高まることもあるのですよ」
「はい、おばあさま」
 熱く煮詰まった頭を冷やそうと額に手をあて、手ごろな瓦礫に腰掛けた。
「あなたはそこで休んでいなさい。私が手本に一つ、エンチャットして見せましょう」
 ネイムはメリケンサックを拾いあげると手の中に包み込み、目を閉じ、魔力を全身から
血の巡りのようになめらかに集め、メリケンに流し込んだ。それは始まりから終わりまで
が芸術のように美しい流れで、灯火の中流れる黒の魔力は夜空を流れる天の川を連想させ
た。惚れ惚れとしているエイミーにネイムは、「イメージが掴めましたか? イメージが湧
いている内に挑戦してみなさい。一度コツを掴めば後はあなたのことです、すぐに苦なく
できるようになるでしょう」

557FAT:2007/11/06(火) 20:25:30 ID:A/eucyEw0
 さ、さ、と勧められるままにエイミーはドクロのついた指輪を拾い上げ、ネイムの作り
出した芸術をまねして黒の魔力を全身から腕へ、手の中へと集め、指輪の中へと注ぎこん
だ。エイミーの腕が緊張で震えた。流れは滞ることなく、スムーズに手から指輪の中へと
移り、エイミーの全身から搾り出された闇の魔力は小さなドクロの指輪の中に納まった。
「あ…やったわ、おばあさま、わたし、やったわ!」
 熱っぽい、輝いた目をしてネイムを見ると、そこにはネイムではなく大柄な男が裸で彫
刻のように立っていた。
「お……おばあさま……?」
 ネイムはその男の足元に転がっていた。地面には血溜まりができ、男の足は血に濡れて
いた。その足は獣のように太く茶色い毛が密集して生えていて、まるで上半身とは別の生
き物のようであった。
「良い香りがするはずだ……こんな上質の闇魔法を扱うとは。俺にぴったりの相手だ」
 エイミーにはネイムが倒れ、ピクリとも動かないのが信じられなかった。理解が出来な
かった。そして、ネイムを音も無く殺害したこの男の存在が、エイミーには未知の生き物
に思えた。
「わかるか? いい娘だ。そうしておとなしくしていれば何も恐れることはない。俺の子
を産み、共に地下界に下りるのだ」
 エイミーは抵抗も、反応もしなかった。ただ、屍のように、人形のように子を宿された。
最後の瞬間、エイミーは何かが弾けたような感覚を感じ、一瞬体を震わせた。
「俺の名はラス。子が十分に育った頃にまた上がってこよう」
 そう言い残すと、ラスは消え去った。エイミーは半裸のまま、ネイムの死体と共にその
日の夜発見された。ドクロの指輪が二人を嘲っているように思え、レンダルに蹴り飛ばさ
れた。地面を転がりながらもドクロは笑い続けていた。

558FAT:2007/11/06(火) 21:05:19 ID:A/eucyEw0
>>◇68hJrjtYさん
そうなんですよね、レッドストーンの世界で言ったらパンとかが近い存在ですかね。
あちらは下半身馬ですが。
なるべくレッドストーンの世界から離れないように、表現出来るようになれれば
なぁと思っております。

>>553さん
罠シフいいですよね。ただ罠という武器は駆け引きが必要なもので、私は中々その
職業にチャレンジできないでいます 笑
私はずうずうしくも初投稿のときからコテハンつけてました 笑
名無しのまま投稿を続けている職人さんもいらっしゃいますし、コテをつけるのは
ひらめいたときでいいと思いますよ。
続き、お待ちしております。

559名無しさん:2007/11/07(水) 00:24:57 ID:4BYUynjs0
              3章
剣士、戦士「いよっしゃぁ!初攻撃いくぜ!ディレイクラッシング!
                    パラレルスティング!」
アーチャー「グライディングファイアー!」
アーチャー「ビットグライダー!!」
シーフ「では俺も・・・ダブスr・・・・うぉ!あぶねぇ!スタン切れるの早えぇ!」
テイマー「ぁ、スタン切れましたか・・・特技命令!」

ファミ達が突っ込み、いくらか攻撃をするが・・・バフォメットの攻撃によって吹っ飛ばされてしまいかなりのダメージを受ける。

剣士「んー・・・・・・・ぉ!いい方法あるじゃん!」
剣士「テイマさん!俺がタゲ取りますんで!ファミたちが吹っ飛ばされてばっかりじゃあれですし」

テイマー「分かりましたー」
テイマー「(これできついようなら命令変えてみようかな・・・)攻撃命令!」
とたんに剣士のサポートでファミ達の強烈な一撃が連続で当たる。

その最中・・・

戦士「! バフォの奴、俺から見れば背を向いてるじゃないか!」
と、戦士は閃き、走り出す。

剣士(ぉ!戦士いけー!)

戦士が切りかかるその瞬間バフォメットが、横にステップで回避したのだ!

そして戦士に鎌を振った!

ザッ!!


戦士に振った鎌の先端は血で赤くそまり、戦士の腹を貫通していた。

BIS「これはマズイですね・・・コーリング!」

と、パーティメンバー全てがBISのもとに呼び寄せられた。
さらに全員にPTH、戦士にさらにフルヒーリングを施す。

そして、再び剣士、ファミ達が前線に出て攻撃する。

・・・なぜか槍を持ったアーチャーと戦士が何かを話している。
アーチャー「・・・・・・では、頼みますよ戦士さん!」
戦士「OK!」
その瞬間アーチャーが槍を旋回させる。
アーチャー「サプライジングレイド!」

ヒュン!

剣士「ん?」

ザクッ!

サプライジングレイドで攻撃したとき、バフォメットは鎌を振り上げる瞬間だったので、バフォメットは倒れる。がすぐに起き上がった。

アーチャー「剣士さん。・・・・おっと危ない。・・・・なんでー」
剣士「あぃよー」

そういって剣士はタゲ取りを再開・・・・しない。攻撃している。
アーチャーは弓に持ち直し、近距離でビットを連発している。

フォン・・・

何かの音がしたとき、2人は同時にバフォメットから離れるようにステップする。
2人がどいたところからはなんと、

青い閃光が飛んできた。
攻撃の主は戦士。ソニックブローで攻撃したのだ。
それを判断する時間はなく攻撃が直撃し、後ろに吹っ飛ばされ、壁にぶつかり転がって仰向けになる。

戦士は、さらにバフォメットに向かって走り出す。
戦士「あのときの仕返しはまだ続くぜー!ディレイクラッシング!!」

攻撃を終えると、戦士がすぐどく。上から剣士が来ているからだ。
剣士「いくぜ!パラレルスティング!」
アーチャー「なるほど。上からですか。」
そういってジャンプして、
アーチャー「ビットグライダー!!」
バシュ!

バフォメットはかなりのダメージを負ったようだが、立ち上がる。

剣士「うぇ・・・まだ立てるのかよ・・・」
WIZ「そろそろ力尽きて欲しいんですけどねぇ・・・」
そういってWIZは苦笑いする。
              3章 完

あとがき
FATさん
◇68hJrjtYさん
感想ありがとうございます!
こういう感想って結構気力沸いてきますねー

-------------------------------------
BIS、セリフでは初登場です!w
これを書き上げる時間なんですが・・・途中テレビで爆笑してたこともあり、40分ぐらいかかりましたorz
-------------------------------------
あと、そういえば感想とか書いてないなとか・・・(・∀・;)
1つのレスにかなりの長文を書くのはあれなんで短く済んだときとか、
一区切りついたときとかに書こうと思ってます;;

560◇68hJrjtY:2007/11/07(水) 01:19:18 ID:AaKdyqrY0
>FATさん
エイミーとその祖母ネイム、そしてラスの父となるはずの存在のお話ですね。
想像していたよりもずっと怖い話でした。悲劇で無いはずは無いと思っていましたが…。
たいていの物語では人間と直接敵対しないようなエルフやケンタウロス系が敵として描かれるのはRSの特徴だと思います。
こういう存在が居てもおかしくは無いと思います。
ところでエンチャット士の修行も辛そうですね(ノ∀`) エンチャ文章で一度も成功した事ない私には分かるような気が(笑)
続きお待ちしています。

>559さん
まるでGvのような展開にハラハラしております(*´д`*)
しかし相当しぶといですね!でもそろそろハイテンションモードになりそうな…?(笑)
頭上パラレルは想像すると物凄く怖い気がします。戦士のオルターリングヒッターに似てる感じでしょうか。
突きという攻撃方法はあらゆる攻撃の中でも致死率の高い方法らしいですからね。オルターより怖い。
次回は誰が活躍するのか、楽しみです。

561ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 11:44:16 ID:OhTl4zsk0
Extra Short Episode:デンジャラス・ピクニック〜沼地の猛獣サファリパーク〜

「ん〜と何々?『ビガプール南部の農村近くの沼地での狩りが解禁されました』・・・か。面白そうですね〜」
「わぁ、見て下さいバーソロミュー!出現モンスターリストに今まで聞いたことの無い種類のものが載ってますよ!!
 でもこの『????』で隠されたモンスターも気になりますね・・・う〜ん。」
ここはエルフの村。ここに滞在しているとあるパーティのメンバーである魔術師のバーソロミューは、相棒のエルフ魔術師の
マスケーロと共に、今朝方の朝刊新聞に同封されていたチラシを片手に話し合っているところだ。そのチラシによれば最近になって
ビガプール南部の湿地帯が、狩り解禁となったそうだ。新種のモンスターが確認されたとだけあって、連日多くの冒険者で賑わっている。
「ふむふむ、これは一度行ってみる価値がありそうですねマスケーロ。ブラックアートの精度も上げておきたいですし、是非行きましょうよ。」
「それじゃ、すぐにでも仲間を誘って出発しましょうか。僕が皆を誘ってきますね〜」「お願いしますね〜」
手を振りながらバーソロミューは相棒を見送るのだった・・・

数分後、マスケーロが連れて来たのは・・・
ビーストテイマーで拳法使いの少女ミリアと、彼女のペットはファミリアのファミィ。シーフのエディと彼の親友でエルフ暗殺者のクレイグ。
「やったァ〜、久々にお出かけできるのよ〜!!ミリアとっても嬉しいの〜!うゅ〜♪」「ん〜腕が鳴るさ〜、血が騒ぐさ〜」
「よぉバーソロミュー、何かZinタイプのモンスターも出るらしいな?退屈な狩り場はゴメンだぜ〜?」
「未知の土地の未知なる猛者・・・ハハっ、武者震いが止まんないねぇ〜!!!」
一行は長老に断わり、外出の許可をもらうと、すぐにビガプール南部へと足を運ぶのであった・・・
道中で同じ目的地へと向かう冒険者たちと沼地についての情報をやりとりしたり、アイテムの交換などをしたりして
交流を深めながら、一行は沼地へと歩を進めていく・・・

562ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 12:24:14 ID:OhTl4zsk0
天気は灰色の雲が天を覆う曇り。ここはビガプール南部に広がる湿地帯の一エリア、ノーススワンプ地方。
疎らな草原地帯には点々と木々が茂る、どこか物寂しい場所ではある・・・が、新しい狩場でもあるこの土地は今、大盛況のピークである。
あちこちで冒険者たちが野生のモンスターとバトルを繰り広げていたり、それを見物して驚きの声を挙げる者もいる。
沼地に辿り着いたバーソロミューの一行。すると彼らに近づく一匹のモンスターが姿を現した。
「ぃよ――――う!!久しぶりじゃねぇかエロ抵抗ゼロな魔術師コンビ〜!!再会できて僕ちゃんはっぴーうれぴ〜!!」
この無駄にハイテンションなディムジェスターzin、名はディンガ。先日バーソロミューとマスケーロに黒魔術の手ほどきをした
友好的なモンスターだ。パーティメンバーのミリアの姉、フィナーアの知り合いでもある。
「・・・お?ミリアちゃんじゃないか〜、久しぶり〜。フィナちゃん元気にしてるかい?」「うんっ!お姉ちゃんはいつでも元気なのよ〜!!」
「っくぅ〜相変わらず可愛いな〜ミリアちゃんよぉ、いやホント萌えるね〜」「やぅ〜、ミリアは萌え萌えじゃないもんっ!!ぷぅ〜」
そんなこんなでやり取りをするミリアとディンガ。間に割って入ってバーソロミューが問うたところ、ディンガは暇つぶしでここに遊びに来てるそうな。
しかもこのエリアには親戚や友人もいるとのことなので、ある程度この土地には慣れていて、どこに何が出るかもそれなりに把握している。
というわけで一行は彼にナビゲートを頼み、案内してもらう事にした。



「うぉっ、何だこのデカい牛みてぇなのは!?」「むっ、失礼な冒険者ですね〜。私はバッファロー、これでも神獣なのですよ?」
まず彼らが遭遇したのは大型の神獣系モンスター、バッファロー。彼らは温厚な種族なので決して自らが人を襲うことはしなそうだ。
ちょっと苦笑いを浮かべるバッファローにミリアが近づき、彼の頭を撫でてみる。バッファローもまんざらではないらしく、少し微笑んでいた。
「わぁ〜大きい〜!ねぇねぇバッファローさん、ミリアとお手合わせ願いますなのっ!!」「ん、いいですよ〜。お手柔らかにお願いしますね、いきますよっ!」
まずはミリアと野生のバッファローのタイマン対決!!その巨体から繰り出される攻撃に苦戦するが、自らが体得した破壊力あふれるカンフーを駆使して
危なげなくミリアの勝利に終わる。バッファローは苦笑を浮かべ地面に伏していたが、すぐに立ち上がるとまた微笑み、一行に近づいてきた。
「いやぁ〜いい運動になりました、ありがとうございます。お礼といってはなんですが、この土地で一番強いモンスターが住む場所に連れて行ってあげましょう」
「・・・お、おいおいバッファローの旦那ぁ、ま、まさかアイツと戦わせるってぇ話じゃないですよねぇ??」ディンガが何かを忌避するように問いただす。
「あぁ、ディムジェスターの君ならわかるかもしれませんが・・・そう、アイツです。彼女たちの強さなら彼に勝てるかもしれませんよ?」
「じょじょじょじょ冗談じゃないっすよ!!アイツを怒らせると近くに住んでる仲間達も巻き込まれちまう!!勘弁してくださいよ〜!!!」
「ねぇねぇディンガくん〜、そんなに焦ってどうしたさ〜?そいつそんなにヤバい??」ファミィがのん気に訊くが、ディンガの焦燥はますます濃くなる。
「ヤバいも何もどうもこうも!!おい〜、もうどうなってもオレ知らないぞ〜!!!アイツほんとに危険すぎるんだよ〜、性格も凶暴だしィ〜・・・」
「ちなみに人間の皆さんは私にAランクの危険度を付けましたが、アイツは・・・SSクラスといったところでしょうか。」
バッファローの発現により、ディンガはもはや発狂寸前なまでにビビっていたが、バーソロミューらはむしろ挑戦する気満々だった。


一方、こちらはノーススワンプの沼地西部。とある冒険者のパーティが数人掛りで一体のモンスターと戦っていた。
何が起きたのかはわからないが、3,4人ほどが凍傷に掛かってしまい、戦線を離脱している。
「おいおい何なんだコイツ・・・アルパス監獄の奥深くに生息してる奴よかもっとヤバいじゃねぇかっ!!!!」
一人の剣士が弱音を吐くなか、彼の視線に移るのは・・・・蒼い炎を纏い、小豆色の体色をした不気味な骸骨。
「うひょへ・・・何だよォ、腕の立つ冒険者も俺様君の前じゃ超雑魚じゃ〜ん!!うひょへひょへへへ・・・俺様君つえぇええぇえぇ!!」
奇妙な笑い声を挙げるこのモンスター・・・ダークファイアzinは自身の力を誇示するが如く雄叫びを挙げた・・・!

563ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 12:26:21 ID:OhTl4zsk0
っと、時間が無いので一旦切りますね。
沼地サファリ編、すぐに再開して完結させるつもりです。

564◇68hJrjtY:2007/11/07(水) 15:51:40 ID:AaKdyqrY0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
番外編第二弾(?)、アップデート後いきなりの新マップを小説採用で楽しませてもらいました。
実はまだ新マップはシュトラ↑の村以外行ってなかったり。
こうして読んでる限りでは面白そうですが…どうなんだろうか(苦笑)
新マップに新モンスターでもESCADA a.k.a. DIWALIさんの相変わらずのモンスター擬人化(?)で楽しげに思えます。
完結編お待ちしています。

565ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 16:21:01 ID:OhTl4zsk0
「くっ・・・こいつは危険すぎる!!皆ァ、逃げるぞぉ!!!」「嫌よ、こいつの笑い方すんごくムカツくぅ!!やっつけてやるわ!!」
剣士の退却宣言を無視して、アーチャーは尚も戦闘意欲を剥き出しにダークファイアzinへ攻撃を仕掛けた・・・!!
彼女は天へと矢じりを向け、炎の魔力を込めた弓矢を素早く射出した。遥か上空へと飛んだ矢は放物線を描き、火の雨となってダークファイアzinを襲う!!!
「・・・ひょへ、うひょへへ!!!」未だ癇に障る笑いが止まないダークファイア、そして火の雨が滝のように地面を打った・・・。
ブシャアァアァと激しい音が鳴り響くと、辺りには煙が立ち上っていた。煙が晴れてゆく・・・・そこに立っていたのは・・・



ダークファイアだった。奴は炎の矢がその身に当たる寸前で広範囲に渡るスポイルドウォーターを爆発させ、強引に技を無効化したのだ。
しかもスポイルドウォーターの爆発の影響で、アーチャーや剣士、パーティのメンバーやその場に居合わせてしまった者たちが凍傷の餌食に・・・
「バカ野郎っ・・・!!何で無視してまでコイツの相手すんだよォっ!!!ぐあぁっ!!?」凍傷のダメージに悶えながら剣士が訊いた。
「ぜっ・・・たいに、負け・・ないんだから・・・ね・・・」虚ろな目で敵を睨むも、フラリと地面に倒れるアーチャー。
かろうじて生きてはいるが、バイタリティが追いつかないのか瀕死状態にまでなっていた。しかしここまで凄惨な状況だというのに
ダークファイアzinは未だ攻撃の手を緩めようとしない。その表情はまるで、破壊を楽しむような邪悪な喜びを携えた笑顔のようだ・・・
「ひょへへ、うひょへへへはははははァァ!!!もっと壊したいねぇ〜!!俺様君ってエラい〜!!!」あまりにハイになりすぎたこの猛獣、
瀕死状態のアーチャーを抹殺しようと鋭く尖った鉤爪を振り下ろす・・・!!!
だが、アーチャーにとってはこれ幸い、突如目の前に現れた黒い氷柱のおかげで攻撃は遮られ、しかも氷柱から光が発せられたと思ったその瞬間
「ぶぉあっ!!?!」という悲鳴と共に吹き飛ばされるダークファイアの姿がそこにあった。突然の事態に、凍傷から復活した者たちは仰天するしか
できなかった。そして彼らの元に現れたのは、バーロミュー率いるパーティだった・・・!!

「・・・ふぅ、ブラックアートシリーズ試作品その一『アイススタラグマイト・カウンタブル』、成功のようですね。」

566ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 16:56:13 ID:OhTl4zsk0
「・・・!?一体あの魔法は・・・私は何度か人間の魔法は目にしましたが、あんなのは初めてです・・・!!」
これまでに例を見ない『黒い氷柱』、その謎を漂わす不思議な物体に、周りに居る誰もが見入っていた。
バーソロミューたちを案内するために同行したバッファローも、思わず未知の魔術に驚嘆の声を漏らしていた。
「あ、これは氷柱召喚魔法にミラーカーズを組み合わせた魔法なんですよ。攻撃すればダメージ相当の呪いが返ってくる仕組みなんです。」
「お、おいアンタ・・・まさか闇の元素が扱えるのか!?」「いかにも。」先程の剣士がバーソロミューに問い掛け、彼はそれに応えた。
「ちょうどギャラリーの方々もいますし、ブラックアートのお披露目には持って来いといった感じですね。ミリアちゃん、ファミィ、クレイグさん。
 三人は僕の戦闘の援助を頼みますよ。エディとディンガは怪我人の応急処置と介抱に回ってください。」冷静に周りを見渡し、各位に指示を与える
バーソロミュー。彼の人的能力に誰もが見とれていた・・・しかしダークファイアは、自分がダメージを喰らったことがかなり不満のご様子。
険しい表情を髑髏に浮かべ、体を纏う炎の勢いは増していた。どうやらスイッチが入ってしまったらしい・・・!!!
「てんめぇらァ・・・俺様君を倒そうなんざ千年早ぇんだよォ〜!!まとめてあの世に送ったらァ――ヴォケぇえぇぇぇぇ!!!」
「・・・はァ、やれやれですね。なんて口の聞き方の悪いモンスターでしょう・・・では、アートの時間の始まりです。」

ものすごい勢いでダークファイアzinが迫り来る!!!同時にミリアも踏み込み、そこから水面蹴りを放ち相手の自由を奪う!!
「せいっ、てやっ!!はいやァ―――っ!!!」と肘打ち、鉄山肯、そしてハイキックのコンボを決め、空中へと吹き飛ばす・・・!!
「ぢぃっ!!効くわけねーだろこのカスっ!!」と空中で体勢を立て直すダークファイア、しかし空中にはすでにファミィが跳び上がっていた。
「喰らうさ〜!!『ハンドレッド・ランス』!!!」ファミリア生来の攻撃速度を利用した、それはまさに槍の雨。止まることを知らない突撃が
奴を無我夢中で貫きまくる!!!攻撃の勢いで地面に衝突、相当なダメージを与えることに成功するが、攻撃はまだ止まない。
地上で仰向けに倒れるダークファイアの真上にクレイグが跳び上がり、そこから一撃必殺の矢『スカルペネトレータ』を放った。
しかしダークファイアはニヤリと笑っている。その様子にいち早く気づいた剣士が叫んだ!!!

「・・・マズい!みんな遠くへ逃げろォ!!スポイルドウォーターが来るぞォォオオオ!!!!」

567ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 17:19:24 ID:OhTl4zsk0
「その心配には及びませんよ、剣士さん」「え?」
そう会話する一瞬の間。そして無情にも襲い来るスポイルドウォーター・・・周りの草木には霜が降りるほどの冷気が立ち込める。
「ハァ・・・ハァ・・・ざ、ざまァ見やがれぇ〜、俺様君に勝てる奴は誰もいねぇんだよ・・・・・・・んなァ!!?!」
突如驚愕するダークファイア、彼が見たものは全くダメージを受けてないバーソロミューと、誰もいなくなった草原だった。
「お、おいィィっ!!テメェ一体何しやがった!?何なんだよオメェは〜!!!?!??!!」「・・・言いたい事はそれだけで?」
「うるせぇっ!!何で俺様君のスポイルドウォーターを喰らわずにいられるんだよォ!?」「・・・種明かしの時間ですね。」
バーソロミューが指をパチンと鳴らすと、彼の背後に真っ黒な穴が空き、そこから仲間たちや他の冒険者たちがゾロゾロと出てきた。
「うにゅ〜、なんか面白かったァ〜♪ミリア大歓喜なのよ〜!!」「す、すげぇや・・・!!こんな魔法があるなんて!!!」
「しかも冷蔵庫とか完備だったぜ、おかげで体力回復だ〜!!!」「この魔法俺らも覚えれるかな?」

「・・・ブラックアートが一つ、『エスケープルーム』。理解できましたか、おバカさん?」
穏やかな表情を浮かべ、子猫をじゃらすような猫撫で声で挑発をかますバーソロミュー。
あまりのショックに、ダークファイアの顔に初めて焦燥が浮かび上がる・・・!!
すると奴の前にマスケーロの姿が。ケロリとした笑顔でダークファイアを見上げていた。
「あぁん?何ガンつけてんだエルフのクソガキぃ、俺様君に勝てるとでも思ってんのかァ〜?あァコラ!?」
「ムカツいてますね?なんなら僕を殴ってみて下さいな。スッキリしますよ?」丸型レンズのメガネをくいっと
マスケーロも奴を挑発する。当然ダークファイアはこの案にのったが、罠だとは気付いてない。
「ほぉ〜、さてはお前マゾだな?いいぜいいぜ思う存分痛めつけてやんぜ死ねヴォケぇえぇぇえええ!!」
6元素を拳に纏った技「スペクタクルフィスト」を放つが、拳が当たる寸前・・・マスケーロがにやりと笑った!!


「(あっ・・・・・ヤッベぇ〜・・・・・・)」
心の中で呟くも、もう時既に遅しだった。

568ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 23:17:18 ID:N4VEVGe60
「・・・引っ掛かりましたね、『スポイルドウォーター・エンタシス』!!」
マスケーロが叫ぶと同時に、柱上の汚水がダークファイアの足元から勢い良く噴出した!!!
スポイルドウォーターは広範囲にばら撒かれるだけでも威力は高いというのに、マスケーロが放ったものは
それを一点に圧縮したのだ、威力は元祖の2〜3倍といったところだろう。その技が見事にクリーンヒット、冒険者たちの
K.O勝ちとなった。ダークファイアは気絶して地面に伏している中、その場に居合わせた冒険者たちは歓喜の声を挙げ
バーソロミューにマスケーロ、ミリア、ファミィにクレイグといった5人に拍手喝采を浴びせている。

「おいおい、兄ちゃん達やるじゃねぇか!!アンタらがダークファイアの野郎を初めて倒したんだぜ、おめでとう!!!」
「むぅ・・・何よ〜、アタシだって本気出せばあんなの倒せたんだからねっ!!」「何強がってんだよっ、このバカっ!!」
先ほどのパーティのアーチャーが強がるも、相方の剣士にポカリと拳骨をお見舞いされた。
「あらら・・・何やら大手柄のようですねぇ。」「いいんじゃね〜の?オレっちやディンガのおかげで皆の怪我も治ったみたいだし〜♪」
「おうよ!モンスターだってたまには人助けもするさ!!」「ははっ、そういうのも悪くないですね。」
そうして他の冒険者たちや案内をしてくれた心優しいバッファローも話の輪に加わり、曇り空の下での楽しい座談会が開かれた・・・
ディンガやバッファロー、ファミィやマスケーロ、クレイグら魔物族、そして人間たちとの種族を超えた交流は長い時間続き
あっという間に終わった。バッファローも仲間の元へと帰っていき、ディンガも住処であるモリネルタワーへの帰路に着くのだった。


帰り道。パーティの楽しげな会話はまだ続いている・・・
「そういえばミリアちゃん、あそこのディムジェスターzinはテイムしてみたか?ミリアちゃんならそろそろ捕まえれるはずだぜ?」
「あ!!あぅ〜、うっかり忘れてたよぅ〜・・・ねぇ戻ろっ!!ミリアはディムジェスターをテイムするんだからっ!!」
「ダメですよ、そろそろ帰らないとエルフの長老様や仲間達が心配しちゃいます。」「そうそう、また行けばいいのですから。」
「ヤダヤダヤダヤダや〜だぁ〜!!テイムするったらテイムするの〜っ!!!」「ミリア〜、オイラお腹ペコペコ〜、また明日行くさ〜」
「あははっ、ミリアもまだまだ子供っぽいところがあるんだね。でもそこが可愛かったりね、ヘヘっ」「お?ナンパですかなクレイグ〜?」
「う、うるせーや!!ちょっとからかってみただけだっつーの!!?」「や〜んクレイグってば可愛い〜!うゅ〜♪」

雲は晴れ、鮮やかなオレンジ色の夕日が帰り道を楽しげに歩く一行を照らしていた。





そして倒されたダークファイアはというと・・・・「うぅ・・・アイツらだけは、もう二度と来て欲しくねぇよォ〜・・・うぅっ」
一匹寂しくむせび泣いている中、ディムジェスターzinたちが彼の背中を優しくさすり、慰めていた・・・

fin.

569ESCADA a.k.a. DIWALI:2007/11/07(水) 23:27:58 ID:N4VEVGe60
なんかノリ一発で書いたものって味がないような・・・精進します。

>68hJtrjYさん
いつもコメントありがとうございます。おかげで創作の励みになります〜
オレも新マップで実際にMobを見て回りましたが、ダークファイアzinは極めて危険です;;;
うっかり他PTとの戦闘中に発動したスポイルドウォーターの中に突っ込んでしまって・・・ウゥ。
小説ではモンスターにも台詞や笑い方で個性を持たせるのがオレなりのやり方です。
モンスターとはいえ同じ生き物ですから、個性の一つや二つを与えてあげてもいいかとv

570◇68hJrjtY:2007/11/08(木) 08:33:54 ID:BnuBemCs0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
完結編読ませてもらいました!
モンスターへの個性付けだけではなく、狂ったり凶暴化している人物(モンスター)の描写も上手くて流石です。
今回のダークファイアZinだけでなくウェアゴートのザッカルも同様でしたよね。
そういう描写って実は簡単ではないというのは良く分かりますよ。私には無理ですorz
ミュー君(この呼び方気に入った(笑))とマスケーロが大活躍でしたね、知能班万歳!
---
新マップはそれほど悲惨ですか…昨日、初めてエルン山マップに行ってみました。迷った迷った(;´Д`)
メインクエ、そろそろ手をつけてみようかな…。

571名無しさん:2007/11/08(木) 20:55:20 ID:TzwS25g20
こんばんわ。壁|ヮ<)ノ♪
かつて過去のこのスレに生息していた者です。
書き手からも読み手からも遠ざかってかなりの月日が流れましたが、
FATさんや21Rさんが戻ってきたと風の噂で知り、プチ復帰して見る事にしました。
久々に赤石SSを書くので感覚がなかなか掴めませんが、楽しんでいただければ幸いです。

†          †          †


 サラマンダーの恋煩い亭。
 小さな街に相応しい、小さな酒場だ。
 客のいない店内では、店主であるジャンが無駄と知りつつも、手にした布でジョッキを拭っている。
 まあ、毎年この時期のここは開店休業状態だ。いまさらどうこう言うような物でもない。
 拭き終わったジョッキを戸棚に戻し、しかし溜め息を一つ。
 壁の一角には、古びてインクのかすれた仕事の依頼や冒険仲間募集の紙に混じり、数枚の肖像画が飾られている。
 中でも最も目立つ位置に飾られているのは、かつての彼の家族を描いた一枚だ。
 老いて尚矍鑠とした老婆を中心に、三組の家族が並んでいる。
 オアシス都市アリアンに住んでいた頃の彼の家族と、兄と弟、それぞれの家族。そして彼らの母親だ。
 老婆の横には、短い手製の槍を手に、溌剌とした笑顔を浮かべる一人の少女。
 そして、彼の妻の腕の中には、小さなおくるみが一つ。

 もはや失われた、過去の光景だ。
 ジャンの妻はこの数年後、流行病でこの世を去った。
 弟夫婦は行商の最中モンスターの群れに襲われ帰らぬ人となり、兄夫婦の娘はある時家を飛び出し、それ以来音信不通。
 そして彼は、妻との思い出に縋るように、彼女の生まれ故郷であるこのリンケンに住居を移し、残された息子と共に暮らしている。

「ジョナサン、ジョナサン!いつまでも遊んでいないで、夕飯の準備を手伝ってくれ!」

 沈んだ気持ちを吹き飛ばし、奥の住居スペースに居るはずの息子を呼ぶ。
 わずかに後、ややおとなしい声と共に彼の息子――ジョナサンが姿を現した。

「わかったよ、父さん」

 今年でようやく12歳。
 ライトブラウンの髪に、獅子の月の砂漠の空を思わせる、澄んだ青色の瞳。
 砂漠の民としてはやや細身の体つきは、病弱だった妻譲りか。
 その手には、一巻の羊皮紙。
 昔、冒険者の一人が飲み代替わりに置いていったその古びた羊皮紙を、息子が幾度となく読み返していることを、彼は知っていた。

「またそんなものを読んで……まさか、お前もあの親不孝者の姪っ子みたいに、冒険者になろうなんて考えてるんじゃあないだろうな?」

 詰問するような強い口調の父に、ジョナサンはちょっと困ったような笑みを浮かべ、

「そんな事、ある訳ないだろ父さん。僕は体が弱いし、剣も魔法も使えない。冒険者になんて、なれる訳がないさ」

 そう言う彼の横顔に浮かぶのは、諦めという名の表情だ。
 まだ見ぬ世界に強い憧れを抱きながら、しかし自分はこの街で生きるしかないのだと、悟ってしまっているが故に。
 その表情を見て、ジャンは安堵と悔悟の入り交じったような表情を浮かべ、

「そうか……そうだな」

 自分に言い聞かせるように言う。
 一方ジョナサンは手にした羊皮紙をまるめてカウンターの上に置き、厨房に入った。
 二人の家には店舗スペースの厨房と、住居スペースの厨房の二つが存在する。
 普段は家の食事は住居スペースで作るのだが、この時期は客足がなく、店舗の厨房を使うことが少ない。
 故に、店舗側の厨房に蜘蛛の巣等が張らないよう、定期的にこちらを使ってやる必要があるのだ。

572名無しさん:2007/11/08(木) 20:56:03 ID:TzwS25g20
 地下にある岩塩の鉱脈のせいで、わずかな塩味を含んだリンケンの井戸水を鍋一杯に注ぎ、竈に火を付ける。
 湯が沸くのを待つ間、同じく井戸水でトウモロコシの粉と乾燥させたアリアン砂菊の花弁、さらに香り付けに砕いたルーンスコルピオの殻を手早く混ぜ、塩漬け肉を適当に切り分けた。
 乾いた布で無刺サボテンの表面をざっと拭い、堅い外皮を削り取れば、そこに現れるのは外見からは想像できないほどのみずみずしい果肉。
 ――青臭くて生では食えたものではないが。

 それらの作業を、ジョナサンは父の手を借りる事なく一人でこなす。 
 砂漠の生活は、古都ブルンネンシュティグの様に甘くはない。
 体が弱いならば、狩りや農作以外のことで役に立たなければならないのだ。
 まさに、働かざるもの食うべからず、である。

「なかなか様になってきたじゃあないか」

 ジャンが満足そうに言う。
 父のその言葉に、ジョナサンは安堵の笑みを浮かべ――その時だ。
 やや錆の浮いた蝶番が軋む音と共に、店の両開き戸が開いた。

 この季節に客が来ることなど、本当に珍しい。
 思わず二人が入り口の方に振り向くと、そこに居たのはフード付のローブを纏った人影。
 ジャンは歓迎の声をかけようとして、だがすぐにその様子がおかしいことに気づく。

「おい、あんた……」

 平気か?と声をかけるより早く、人影がふらりと態勢を崩し、崩れ落ちるように倒れた。

「おい、しっかりしろ!」

 二人で駆け寄り、その体を起こす。
 その拍子にフードが外れ、覗いたその顔に二人は驚愕した。
 性別は――恐らく、女。それもまだ、幼さの残る少女だ。
 褐色の肌に白銀の髪。だが、分かるのはそれだけだった。
 少女の顔の上半分は、奇妙な形の仮面――道化師や舞台俳優のそれと異なり、外を見るための覗き穴がどこにも見つからない――に覆われている。
 そして口には球状の拘束具/ボール・ギグ。
 やや躊躇いながらローブの前を開いてみれば、両手は不思議な光沢を持つ金属で造られた、鎖付きの手枷で拘束されており、首には同じ金属で造られた、これまた鎖付きの首輪。
 袖の無い鎧から覗く腕には、肩から手の甲までびっしりと禍々しさすら感じさせる刺青。

 極め付けはその鎧だ。
 それは一見、冒険者がよく身につけているメタルスケイルアーマーに見える。
 だが、よく見れば装甲以外にも、着用者自身を束縛し、あるいは傷つけるための発条や螺子がいたるところに取り付けられていた。
 それだけではない。無意味な装飾としてのベルトや刺、リングで余す所なく装飾されている。
 これは、鎧というより被虐趣味者が身につけるような、拘束服/ストレイト・ジャケットに近い。

 倒れ臥した謎の少女。
 その姿は、譬え様もなく倒錯的で猟奇的で冒涜的で――しかし、美しかった。


 ――砂漠町リンケン。
 時折砂漠に激しい砂嵐の巻き起こるこの山羊の月に、旅人が訪れることなどめったにない。
 そして、街に住む人々もまた、砂漠に生きる砂漠袋鼠達のように、じっと巣穴――己の家の中で、砂嵐の季節が終わるのを待つのだ。
 故に、この季節の街にたった一件しかない酒場に、人が訪れることなどあり得ない。

 その、はずだった。

 それは、激しい砂嵐が束の間収まった、山羊の月のある日。
 砂嵐など比べ物にならない大きな嵐が街を襲う、その前兆であった。

573名無しさん:2007/11/08(木) 21:39:11 ID:TzwS25g20
と言うわけで謎を残したまま次へ。
それだけでは何なのでおまけつきです♪ヽ(>ヮ<ヽ)

http://calmtool.nm.land.to/item/i_view.php?grfc=00160&name=%A5%B4%A5%B7%A5%C3%A5%AF%A5%D0%A5%A4%A5%F3%A5%C9&u=1&set1=%C2%AB%C7%FB%A4%B5%A4%EC%A4%BF%CB%E2%BD%C3&el1=%CB%C9%B8%E6%CE%CF+%7B%7B%A1%DC5%7D%7D&tx1=%B9%B4%C2%AB%C9%FE%A4%CB%A4%E2%BB%F7%A4%BF%A5%C7%A5%B6%A5%A4%A5%F3%A4%CE%B3%BB%A1%A3&lv1=%CE%CF+75&set2=4&el2=%CB%C9%B8%E6%CE%CF+%7B%7B%A1%DC66%7D%7D%A1%F3&tx2=%BC%AB%A4%E9%A4%F2%C2%AB%C7%FB%A4%B7%BD%FD%A4%C4%A4%B1%A4%EB%A4%B3%A4%C8%A4%CB%A4%E8%A4%EA%A1%A2%B9%E2%A4%A4%BD%B8%C3%E6%CE%CF%A4%F2%C6%C0%A4%EB%A4%B3%A4%C8%A4%AC%A4%C7%A4%AD%A4%EB%A1%A3&lv2=%B7%F2%B9%AF+120&el3=%C9%D2%BE%B9%B8%C7%C4%EA+%7B%7B20%7D%7D&lv3=%A5%EC%A5%D9%A5%EB98&el4=%C3%CE%BC%B1%C8%E6%CE%A8+%A1%DC%7B%7B1%2F%A5%EC%A5%D9%A5%EB3%7D%7D&el5=%B9%B6%B7%E2%C2%AE%C5%D9+%7B%7B-20%7D%7D&el6=%BD%B8%C3%E6%CE%CF+%7B%7B%A1%DC15%7D%7D%A1%F3&el7=%A5%C0%A5%E1%A1%BC%A5%B8%A3%C3%A3%D0%CA%D1%B4%B9+50%A1%F3&el8=%A5%C0%A5%E1%A1%BC%A5%B8%C8%BF%BC%CD+150%A1%F3&el9=%C4%E3%B2%BC%B7%CF%C4%F1%B9%B3+%7B%7B%A1%DC50%7D%7D%A1%F3&

・感想とか
>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
はじめまして。
新MAPのお話ですか……新MAPには恐ろしいmobが大量に実装されているようですね((((;゚Д゚)))
私なんて、新MAPどころかちょっと前に実装された秘密ダンジョンとかすらまともに行ってません。
メインクエなんて1で止まってますし……
派手なバトルにポップな会話。ついつい読んでしまう面白さですね。
実のところ、初見は携帯からだったりします。
スレがどのくらい伸びているかだけ確認しようとしただけなのに、ついつい読んじゃいましたw
パケ代かかるのに〜(ノ∀`)
本編(?)の続き方も楽しみにしていますね

>>559さん
チームワークが巧みなPTの面々。
普段ソロばかりなサマナとしては羨ましいです(´・ω・)
こんな風に力をあわせて狩りしたいなぁ……と思っちゃいました。
バフォのタフさは流石と言う感じですね。
しかも何気に芸達者……果たして勝つ事ができるのかっ!?

>>FATさん
どもー♪ヽ(>ヮ<ヽ)お久しぶりです
FATさんならこの顔文字だけでわかってくれるはずっ!
まずは復帰、おめでとうございます。

フランとフプレの物語の頃からの伏線が、徐々に解けて来てますね。
この展開のさせ方……流石です。
それに、精密且つ美しいエンチャットの描写には読んでいて思わずため息が出ました。
非常にイメージが膨らみます。脳内で。
ケンタウロス? サテュロス?な神獣は、出番は決して多くないにも拘らず、圧倒的なカリスマと存在感。
いかにも大物と言う雰囲気がひしひしですね。

お忙しいとお聞きしましたが、体調を崩さぬ程度に頑張って下さい。
続き、楽しみにしていますので(ノ>ヮ<)ノ♪

574◇68hJrjtY:2007/11/09(金) 13:14:57 ID:MK/TfidE0
>573さん
恐らく初めまして、このスレで拙い感想だけ書かせて貰ってる者です(;´Д`A``
スレが立てられて間もない頃などは全く知らない者ですが、盛況だった様子は過去スレを読むと分かります。
まずは復帰おめでとうございます!古参の書き手さんが戻ってきてくれるのは嬉しいことです。
本当に謎めいたまま終わってしまいましたね…少女が何者か、という以前にその格好が実にムハムハな…(死)
大人向けっぽさを残したままのお話、次回を期待しています。
---
アイテムお遊び。のページ読みました(笑) 成る程、この鎧が登場している鎧なのでしょうか…。
このサイト知りませんでしたorz なかなか面白そうですね。

575FAT:2007/11/10(土) 10:55:56 ID:A/eucyEw0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557

―10―

 思い出した。エイミーは突如噴き出した膿のような記憶のショックに更に顔を青ざめる。
既に目は焦点を見失い浮遊し、思考は止まりかけ言葉が出ず、感情が乱れ絡まって泣き笑
い怒りたくなった。しかし、実際には無表情であった。
「そのラスはどこにいる?」
 エイミーとは正反対に冷静、というよりも感情を持たないかのように平然とラスは言う。
当然、エイミーからの返答はない。
「ふん、まあいい、急ぎはしない。ゆっくり探せば良いことだ」
 そう言うと、ラスはデルタの丸く、大きな目を見た。このとき不思議とデルタは恐怖を
感じなかった。むしろ安心というべきか、心が穏やかになるのを感じ、この張り詰めた空
気の中で一人別の空気を吸っている気がした。そう、それは例えるならロウに灯したささ
やかな温かみのある火を眺めているような気分だった。ラスは目を逸らさなかった。より
強く見つめられてデルタの眺めている火は炎のように燃え盛り、ロウを融かしきってしま
った。そして勢いをなくした炎に、やはりどこか懐かしさを抱いた。
 いつの間にかラスはエイミーのことなど忘れたようにデルタだけを見続け、歩みよって
いた。デルタも泣きそうな目をしてラスを見ていた。レンダルにはそんなデルタの涙が恐
怖によるものだと思われた。そして、エイミーのときのように、今度はデルタが標的にさ
れているのだと思い、頼りない小刀を抜いた。
「デルタからはなれろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!!」
 洞窟の空気は重かった。咆哮してもなお、足はもつれそうなほどの重圧に押さえられ、
小刀を構えるのもやっとだった。しかし、その重さを感じていたのはレンダルだけであっ
た。ラスが空気を撫でるように右手を左から右にゆっくりとスライドさせると前方が空間
ごと凍りついた。その空間の中にレンダルは居た。怒りを露にしたままの表情で、彼女は
凍りついた。髪のくせもそのままに、不自然に跳ね上がった横髪が凍りついた。
 彼女が凍るのとほぼ同時にラスを直剣が襲った。しかしラスは動じずレンダルを凍らせ
た手をそのまま襲撃の方向に移し、またも空間を凍らせた。
「俺にそんなの効くかよーー!!」
 ジョーイの眼帯が悲鳴をあげ、ラスの冷波を散らす。割れた鏡のように凍りついた空気
がぱらぱらと音を立て、ラスを再び直剣が襲った。だがラスは鋭い蹴りでそれをいなすと
剣に振られたジョーイの空いた腹に拳をめり込ませ、壁まで吹き飛ばした。
「あがっぅ」
 この破壊力、ジョーイは一撃で吐血し、壁にもたれかかるようになんとか立っていた。

576FAT:2007/11/10(土) 10:56:26 ID:A/eucyEw0

「レン……」
 それはとても小さな、誰かの耳元で囁いたかのような僅かな声だった。
「レン……」
 誰にも聞こえてはいない。エイミーは呪文を唱えているように唇を微かに震わせ、直立
したまま固まっているレンダルの名を呼んだ。
「レン……」
 洞窟が小さく揺れた。ジョーイの立っていた壁が大きく抉られ、埃の中にラスが浮かび
上がる。そのラスは左を向き、しりもちをつきながらも剣を自分に向けている男を殺さん
と蹴りを放とうとした瞬間、背後に魔を見た。
 エイミーはいるのか、ここにいるのだろうか。何を見ているでもない目はまるで別の世
界にいってしまったように思え、美しいはずの顔は死んだように表情を失い、生気を感じ
られない。なのに、誰もが彼女を見ずにはいられぬほどの存在感がそこにはあった。

 エイミーが笑った。

「俺は良い選択をしたようだ、子に会うのが楽しみになったぞ。まさかこれほどの力を持
った女だったとはな」
 笑っているのに表情がない。そんなエイミーを満足気に見てラスはレンダルを解かした。
その場にぐしゃりと倒れこむレンダル。彼女の表面を覆っていた氷が融け透明な血のよう
にレンダルを中心とした水溜りができ、灯火の光がそれを鏡のように反射させ、エイミー
を映し出した。
 もしエイミーがこのときの自分を見たらどんな風に思うだろう。声もなく無表情に笑い、
目は空間に何かを見、手は何かを恐れるかのように爪を立て、足腰は重い。
「おねえさまぁ……」
 デルタはエイミーに泣きながら抱きついた。いつの間にかラスは消え、重症のジョーイ
とレンダルはぐったりと倒れこみ、エイミーは壊れた。デルタはたった一人ぼっちで、こ
んなになってしまってもやはりラスを恐れはしなかった。そして、憎みもしなかった。そ
んな自分が何故だか解らず、デルタは急に不安になった。笑い続けるエイミーを抱きとめ
ながら、不可解な自分が恐くて、いつかとんでもないことをしでかしてしまう気がした。
 突然洞窟内の松明が一斉に消え、闇が四人を飲み込んだ。もう、ここには誰もいない。
巨大な虚無に心を奪われ、心を失い、何も無かった。消し去ろうとした過去は蘇り、それ
まで見てこなかった分の罰を与えた。誰も立ち上がれず、誰も言葉を発しなかった。
 しばらくして、ふと思い出したように松明の火が付いた。明かりに顔を照らされ、それ
でも四人は、動こうとはしなかった。

577◇68hJrjtY:2007/11/10(土) 11:16:37 ID:HuMMBzkg0
>FATさん
(時間的に執筆途中だったら申し訳ありませんorz)
お墓参りが凄惨な結果になってしまいましたね…。
現れた「ラス」と、エイミーの息子である「ラス」との繋がりは血以上のものがあるように思えます。
個人的に気になっているのはやっぱりデルタの状態でしょうか。もしかしてもしかすると…(妄想)
この辺の真相が明らかになってくるのが楽しみです。
続きお待ちしていますね。

578FAT:2007/11/10(土) 11:21:31 ID:A/eucyEw0
>>◇68hJrjtYさん
いつも感想ありがとうございます。
ゲーム内でこんなのあったらいいなぁと思いながらエンチャット士なるものを創ってみました。
まぁ、こんなのがいたらゲームバランスが崩壊するでしょうが 笑

>>♪ヽ(>ヮ<ヽ)さん
復帰おめでとうございます!あえて名前は伏せておきますね。
相変わらずの描写のうまさ、伏線の張り方、一話目からぐいぐい惹きこまれました。
それにしても本当に好きなのですね。ジョナサン!
♪ヽ(>ヮ<ヽ)さんも大変忙しそうですが、息抜きにSS書いてストレス発散しましょう!

>>559さん
パーティーの皆で戦法を考え、役目を果たす。
ゲーム内に通じるところがあり、面白いですね。
この雰囲気でさぼり君がいたりしたら即追放ですね 笑
続き、お待ちしております。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
おお〜、新マップですか!
ESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説に登場する人物(モンスターも)は喜怒哀楽が
あり、ほんとに生き生きとしていて読んでいて楽しいです。
単なる話の中のキャラクターというよりも、実際に生きている人物を小説にした
みたいです。
Battle Show編の続きも楽しみです。

579FAT:2007/11/12(月) 18:49:20 ID:A/eucyEw0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576

―ランクーイ―
―1―

 鉄の道のちょうど中間地点に、それはあった。人間と、おそらくエルフによって踏みつ
くられた草分け道が彼らを導いた。鉄の道から90°方向を変えて丘へとその道はつなが
り、徐々に緑の量が増して日の光が減っていった。歩み進めると、いつしか覆いかぶさる
ように木々が密生し、大きな葉と枝々によって辺りは昼間にもかかわらず暗く、風は森の
上空を撫でるだけで蒸し暑く不快だった。
「なあ師匠、ほんとにここがエルフの巣なのかよ」
「ああ、だろうな」
「巣って割にはあっさり入れちゃったし、いざ入ってみてもなんにもいないぜ?」
 ランクーイはやる気満々、愛用の細身の剣(本来は女性用の軽量なもの)を振り回し、
つまらなさそうにラスを仰ぎ見る。
「言ったろ、やつらの巣はこの森の奥にあると言われてるんだ。こんな入り口付近、何が
入ってこようとやつらには関係ないんだろうよ」
「でもよぉ、入り口に見張りとか、ちょっとはいてほしいもんだぜ。せっかく俺の修行に
師匠が付き合ってくれるんだからよお!」
「油断するなランクーイ、エルフは自然の中に溶け込むのが上手いんだ、どこから狙われ
てるかわかったもんじゃないぞ」
 先ほどから気を張り詰めているレルロンドは一人額に汗を浮かべている。そんな彼の心
配をよそにランクーイはすたすた先頭をゆき、挑発しているかのように無防備だ。レルロ
ンドはランクーイが治癒魔法を覚えたことと、ラスの存在が今のランクーイの無防備さだ
と思った。もし、それが使えなかったら、頼れない状況になったとき、彼はどうするつも
りだろうか。

580FAT:2007/11/12(月) 18:49:52 ID:A/eucyEw0
 ランクーイは一人前を歩く。森は彼らを拒まず、しかし歓迎もせずにおだやかに、一定
のリズムで呼吸する。ランクーイたちのことなど何も無いのと同じなのだろう。だからエ
ルフたちも出てこないのかも知れない、とレルロンドは考えた。
「なぁ師匠、魔法で敵の隠れ場所とかはわからないのかい?」
「わからんな。そういうのは俺たちの専門じゃない」
「ちぇ、何でもできるってもんじゃないんだな……」
 ふくれるランクーイを突然脇の茂みから伸びた棍棒が襲い掛かる。手にしていた剣は反
応しきれず、ランクーイは左肩を突かれ反転した。がさがさっと茂みが動き、中から黒い
肌、か細い手足に不釣合いなでかい頭の不思議な生物がすばやく出てきた。目は今にも飛
び出んばかりに見開かれ、不自然に鼻が長い。頭の後ろ半分は赤や黄の混ざった派手な兜
で守られている。両手に棍棒を持ち、転んだランクーイに追撃する。
「バーバリアンだな、たいした相手じゃない。レルロンド、弓を収めろ。こいつはランク
ーイ一人でやらせる」
 友へ不意打ちした敵に一矢放とうと弦を張っていたレルロンドだったがラスに従い弓を
下ろした。転げながらもラスの声を聞いたランクーイは急に闘志が燃え、振り下ろされた
二本の棍棒を側転し、かわすと左手をバーバリアンに向けた。
「燃えろぉぉぉぉぉ!!」
 ラスから魔法は目に見える想いだと教えられた。ランクーイは手のひらが熱を持つのを
感じ取った。それを熱い気持ちのままに、バーバリアンの胸を目がけて放った。ぼうっと
控えめな火の玉はバーバリアンの胸部に当たり、服から僅かに煙を出して消えた。
「くそっ!!」
 予想外の軟弱な威力にランクーイは腹を立てた。その腹立たしさはバーバリアンの頭突
きによってより強くなる。ずきずきと痛む左肩を再び突かれ、ランクーイの顔が歪む。さ
らに棍棒が同じ位置を狙って振り下ろされるが、これは剣でいなされ、逆にランクーイの
肘打ちがバーバリアンの長い鼻を強打し血が滴った。
「今度こそっ! 燃えろぉぉぉぉぉ!!」
 再び手のひらをバーバリアンに向け、今度は顔を狙った。やはり頼りない火の玉が打ち
出され、左右に振るわれた棍棒にかき消されてしまった。
「ちきしょう! なんでだよっ!!」
 ランクーイは激しく頭を振ると何かを求めるようにラスを強い眼差しで見た。しかしラ
スの瞳は冷たく、見下すようにランクーイを突き放した。
「わかったよ、あんたには頼らないっ!」
 二本の棍棒を不器用に振りかざし、小さく飛び上がったバーバリアンの細い脚をふっき
れたランクーイの細身の剣が薄く切った。着地に失敗し、体勢を崩したバーバリアンの上
に夢中でまたがるとランクーイは剣を投げ捨て、空いた両手に熱を込め棍棒を持つ手首を
掴んだ。
「これならどうだぁぁぁぁあ!」
 ランクーイの想いが火となりバーバリアンの手首を焼く。小さな火でも、直接触れられ
れば皮膚を焦がすほどの熱となる。熱さと痛みに耐え切れず、バーバリアンは棍棒を手放
した。からんからんと乾いた音を立て、バーバリアンは丸腰になった。
「師匠……俺の勝ちだよな?」
 先ほどの冷徹な瞳から一転、ラスは嬉しそうに
「ああ、お前の勝ちさ。自分の能力を理解し、それを有効に使えたのが勝因だな。今は魔
力の弱さに悩む時期じゃない。お前なら自然と魔力も上がっていくだろう。今は戦況に臨
機応変に対応できる柔軟さを体で覚えるべきだ。命の心配があれば俺が助ける。だからお
前は自分の信じた通りに剣を振るえ、魔法を放て。この森にいる間は徹底するぞ」
「おっす! 師匠!!」
 ランクーイはラスをキラキラと見つめ、心底この男が師であることを嬉しく思った。

581FAT:2007/11/12(月) 18:55:08 ID:A/eucyEw0
>>◇68hJrjtYさん
いつも感想ありがとうございます。
ラスとラスなんて同名にしてしまい、読み手の皆様はもちろんのこと、書き手もどちらの
ことを書いているのか分からなくなってしまいそうです 笑
まだエイミーとエイミーもいるし……
デルタのことはただの妄想ロリっ子と思っていてください 笑

582◇68hJrjtY:2007/11/12(月) 22:27:25 ID:Tqcxf/Kk0
>FATさん
遂にラスやランクーイたちの方に話が転じましたね、こっちはこっちで楽しみにしていました。
ランクーイも当初の頃よりは成長したなぁとか勝手に親心になっています(笑)
デルタについては私の方こそ妄想特急してしまったorz 申し訳ない。。
同名という事はこの物語では大きな意味を持っているような気がします。
続きお待ちしていますね。

583 ◆21RFz91GTE:2007/11/13(火) 15:02:05 ID:dO96k./M0
////**********************************************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介  >>67
  ■Act:1 青空     前前前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  前前スレ>>500-501
  ■Act.3 遠い空 前前スレ>>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate 前前スレ>>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  前前スレ>>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  前前スレ>>928-930
  ■Act.7 黒衣の焔−TrueEndStory 1  前前スレ>>951-952
  ■Act.8 黒衣の焔−TrueEndStory 2  >>68-69
  ■Act.9 封印されし鬼の末裔 1  >>98-99
  ■Act.10 封印されし鬼の末裔 2  >>218-219
  ■Act.11 RED EYES -Person who lives as demon- >>431-432
  ■Act.12 RED EYES -Memories to the desire going out- >>449-450
  ■Act.13 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-1 >>462-463
  ■Act.14 RED EYES -End of Strange. Lost Strange the Bafomet-2 >>469-470
  ■Act.15 集いし仲間 >>502-504
  ■Act.16 Episode 1. -Border of Life- >>527-528
  ■Act.17 Episode 2. -Border of World- >>538-539
////**********************************************************************////

584 ◆21RFz91GTE:2007/11/13(火) 15:02:36 ID:dO96k./M0
Act18 Episode 3. -Border of End.Missing Greek-




  アルファとオメガがあるように始まりがあれば終わりは必ず来る。
では、創造された未来の終わりとは何か。例えばこの世界が終わりを迎えたとしてそれを定義させるにはどうしたら良いのだろうか。
一つの星がその命の炎を燃やしつくし、星の一生が終わったとしてその先にある物は何か。何も無い虚無だけがそこに存在し、新たな希望が生まれる。
そうして世界は幾度となく繰り返し、長い時を経て今に至る。まるでインストールで始まり、アンインストールで終わるような世界を幾度となく繰り返してきた。そこには幾億の人々が生き、笑い、怒り、泣き、暮らしていた。
 この世界に暮らす彼らもまた同様、あらゆる種族と共同し、異種と戦い同種と戦う彼らもまたその幾億の人々であり、その中の一つに過ぎない。では彼らと同期させる時間軸には一体何があるのだろう。そこには彼らが居て、先の大戦と呼ばれる戦いがあったのだろうか。
また、その時間軸では彼らにどのような未来を見せるのだろうか。未来が違えば過去にも変化があるように、あの時一人の女性が死ぬ事もなく、また一人の男性が死ぬ事もなかったのだろうか。それはまた別の話、今を生きる時間軸では一人のランサーと一人のウィザードが命を落とした。彼等の意思を次いだアーチャーとそれを支える一人のウィザード。新米の二人組みと黒衣の焔。彼らもまた同様に同期する時間軸に存在するのだろうか。はたまた同期する時間軸には既に彼らは無く、他の未来が築きつつあるのだろうか。
 話を元に戻すとしよう、最初の疑問であったレッドストーン。あの赤い宝石は何を意味し何をしようとするのだろうか。実在するのかも疑わしい宝石を巡る人々と魔物達との戦いは永劫の物なのか?
以前、先の大戦と呼ばれた戦いにも赤い宝石は絡んでいた、人の体内に寄生しその者に力を与える紅き宝石。ではその宝石は今何処に有るのだろうか?先の大戦では英雄ミルリスの体内に寄生し、そのミルリスも既に息絶えている。代々ミルリス家に寄生していたあの宝石は最後の血筋であるミルリスと共に滅んだのだろうか。
もし消滅して居ないとすれば今何処に有るのだろうか、何かに寄生する事は私たちも良く知っているアレに似ている。そうヤドカリである。
ヤドカリは自身の成長と共に殻を乗り換えて生きている。最善の手法だと思われるその行為とあの赤い宝石が酷似していたとすれば今も尚誰かの体の中に寄生している可能性も否定できない。では一体誰の体に寄生していると言うのであろうか。
ヤドカリは自身の成長…つまり小さくなったその器を捨て、新たに大きな器を探し出すという。だが現時点でミルリス以上の力を持つ生命体など存在しては居ない。強いて言うのであれば黒衣の焔と呼ばれるキメラがそうだといえよう。だが、ミルリスが死亡してから二年もの歳月が過ぎて彼は封印から解かれた。その空白の二年と言う時間で人々を転々と渡り、数億物人を介して黒衣の焔に寄生できるのだろうか。その確率は果てしなく低い。
では、優良種でなくとも自身の存続の為に今尚素質が無い者に寄生していたとすればどうだろうか。可能性はあるが優良種ではない人がその赤い宝石の力に耐えうる事が出来るのだろうか。否、耐えるのではなく、赤い宝石自身が何もしなかったとすればどうだろう。例えばその人の生命を少しずつ貪り、それも本人に気づかれるようなこと無い程度だとすればどうだろうか。宝石自身の持つ力…例えば体内寄生をするために使われる力があるとすればどうだろうか。一度何かに寄生するのに力を使い、寄生している者からその生命を喰らい力を蓄え、そしてまた別の者へと寄生する。弱った動物が傷を癒すのと同じように今も尚誰かの体に寄生し力を蓄えていたとすれば…。



 だが、この男だけは知って居た。
失われた記憶がある物の、全てと言うわけでは無いがありとあらゆる事を彼は記憶していた。封印されていたとは言え、そこから見る世界で何が起こったのか、何が始まって何が終わったのか。
そして、あの宝石の在り処さえも…。



Act18 Episode 3. -Border of End.Missing Greek- END

585 ◆21RFz91GTE:2007/11/13(火) 15:04:46 ID:dO96k./M0
平日のお昼からこんばんは(´・ω・`)ノ
お騒がせ21Fですヾ(´・ω・`)ノ

と言うわけで電波はこれにて終了です、次回から第二部の本編に入ります〜
本当なら感想をくれた皆様へレスしたい所なのですが…申し訳無い、これから仕事ですorz
また時間が取れた時にゆっくりとレスしていきますので、見捨てないで下さい(ぁ

と言うわけで、仕事いってきまーすヾ(´・ω・`)ノ

あ、牛乳は好きです(´・ω・`)

586◇68hJrjtY:2007/11/13(火) 19:41:25 ID:z9JyRCOg0
>21Rさん
創生のお話がだんだんとミルリス、そしてキメラことアデルや今までの登場人物へと繋がっていくのが心地よかったです。
全ての物語が繋がっていくとすれば、壮大な物語になりますね。そこまで気力が続いているのも凄い。
そしてこれだけの文章量の語りをほとんど間隔を置かず書けるとは…ただただ脱帽です。
お仕事間際の執筆、ありがとうございました。
二部の方も続けて期待しています!

587FAT:2007/11/16(金) 19:21:38 ID:y60NF23s0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 1>>579-580

―2―

 ランクーイがゆっくりと手を離すと、バーバリアンはせかせかと茂みの奥へ走り去って
いった。かすかに残る、焼け焦げた臭いと、ハの字型に置き去られた二本の棍棒がランク
ーイに勝利の余韻を与える。まだ彼はバーバリアンが逃げ去った茂みのくぼみをやや興奮
ぎみに見つめていた。
「あいつ、仲間を呼んできたりしないですかね」
 レルロンドが心配そうにラスを見る。ラスはランクーイを見ながら、
「呼ぶも何もやつらは本来群れで生活しているはずだ、数でしか物を言えない非力な種だ
からな。だからこそランクーイにはちょうどいいかもしれん。さっきの戦いを見ればやつ
らよりもランクーイのほうがわずかに上。格下でも束になられることの恐ろしさと、それ
を切り抜けられる力を身につけられるいい相手になりそうだ」とまだ茂みの奥を見つめた
ままでいるランクーイに向かって話しているようで、レルロンドは少し黙ってしまった。
そんなレルロンドに気づかないランクーイは剣を拾い上げ、茂みの奥を指した。
「師匠、その群れってのはこっちでいいのか?」
「ああ、だろうな。さっきのは群れに戻ったと考えてまず間違いないしな。しかし群れの
中にわざわざ飛び込みにいく必要はない。自分に有利な土地を考えてそこに誘い込むんだ
な」
 ラスが誘い込む場所を探そうとするとランクーイは、
「おーけー。じゃあ師匠、群れに飛び込んでいこうぜっ!!」と元気よく茂みの中に飛び
込んだ。意表を突かれたラスは珍しく慌ててランクーイを追う。
「待て、お前は俺の言うことを無視するのか」
「無視なんかしないさ。師匠に言われたとおり、俺は俺にとって有利な場所にいくだけだ
いっ!!」
 ラスが不思議そうな顔をするのを見てランクーイはにかっと笑った。
「俺が危なくなったら師匠が助けてくれるんだろ? だったら敵がいっぱいいるところに
飛び込むのが一番効率がいいぜ」

588FAT:2007/11/16(金) 19:23:03 ID:y60NF23s0
 ラスは呆れながらもすこし嬉しそうにランクーイを突き飛ばした。
「それならいってこい。そこに二匹いるだろう、そいつらを倒してみろ」
 ラスに突き飛ばされたランクーイの小さな体は茂みを揺らしながら抜け、少しひらけた
地面に軽い衝撃と共に転がりこんだ。その衝撃の痛みを感じるより先にランクーイは眼前
に突如現れた四つの見開かれた目にびっくりして奇声をあげた。
「ひぎゃーーーーーーーー」
 相手も驚いたらしくすばやく二方に飛び退き、突然現れたランクーイをその見開いた目
でじっと観察する。一瞬気が動転したランクーイも咳払いをして気を落ち着かせ、対峙し
た二匹のバーバリアンに集中しようとすると、茂みの中からラスの声が聞こえた。
「はなから俺を頼ろうなんて考えが甘いんだよ。そら、死ぬ気でやってみろ。そんな雑魚
一匹や二匹増えたって変わるもんじゃねえよ。さっきの要領でやってみるんだな」
 声は聞こえても姿は見えない。最も頼りにしている者の姿が見えないということがラン
クーイの恐怖となり、弱さとなる。その恐怖につけこむように、バーバリアンたちはラン
クーイに襲いかかった。たいていの動物は己に恐怖を抱いている相手に対しては強気にな
るものである。二匹のバーバリアンたちはランクーイの感じた恐怖が自分たちに対する恐
怖だと確信し、一斉に棍棒を力いっぱい振り下ろした。
「うわっ」
 情けない声を出してランクーイは手に持った剣を立てて身を守る。興奮しているのか、
バーバリアンたちの棍棒は両方ともランクーイの一歩前を流れ、空を切るだけだった。バ
ーバリアンが空振りしている隙にランクーイは後方に飛び退き、改めてバーバリアンたち
を観察した。華奢な腕に大きな頭、細く骨ばった脚は押しただけで折れてしまいそうであ
る。
「俺でもできそうだ……俺でもできる……」
 ランクーイは細い剣の柄を握り締め、呪文を唱えるようにつぶやいた。
「一匹ならできた……一匹増えたって……変わるかぁぁぁぁぁぁああ!!」

589FAT:2007/11/16(金) 19:23:38 ID:y60NF23s0
 何かがランクーイの中で弾けたように彼は二匹のバーバリアンの間に突っ込んだ。ラン
クーイの左肩が一匹のバーバリアンを強襲し、そのまま木へ叩きつけた。バーバリアンの
口から「ぐべぇ」と苦しそうな声が漏れると、興奮しているのかバーバリアンの大きな目
玉がぐるんぐるんとまわり、手足をばたばたさせた。しかしランクーイの肩は相手を離さ
ず、木とランクーイに挟まれバーバリアンの自由は奪われていた。ランクーイが右の手に
握っていた細身の剣でそのバーバリアンを突こうとしたときだった、突如ランクーイの腰
を激痛が襲い、ランクーイはごろごろと転がって茂みの中へ逃げた。そこにラスの檄が飛
ぶ。
「ば〜か、相手が二匹だってこと忘れてんじゃねえよ。一匹に集中したら、もう一匹が自
由になるってことぐらいわかるだろうが。どんな相手にも言えることだが敵全てに、いや、
そこにあるもの全てに気をはらわなきゃ戦場では即、死につながるぞ」
 強い口調のラスだが隠された優しさが魔法となりランクーイの体を包み込み、痛めた腰
を癒す。ランクーイは体を包む優しい光に大地の温もりを感じ、安心を取り返した。
「よぅし、見てろよ、師匠」
 ランクーイは茂みから飛び出すと、平行に並んだバーバリアンのうち一匹に片手で斬り
かかり、空いた手からもう一匹に向けて火の玉を打ち出した。火の玉を棍棒で振り払った
バーバリアンはその影に隠れていた剣先に気づけず、お面のような顔から血が噴きあがっ
た。初めに剣を振り払おうとしていたバーバリアンは突然矛先を変えた細い剣が仲間を貫
くのを阻止できなかった。そして調子の上がってきたランクーイの勢いに負け、あっさり
と斬り倒されてしまった。きれいに二匹の獲物を討って見せたランクーイは得意気に剣を
掲げて叫んだ。
「師匠、どうだっ! 俺もたいしたもんだろう?」
 すると木の上からさっとラスが飛び降りてきた。
「ああ、うまくフェイントをつかったな。あれなら弱弱しい魔法も立派な武器になる。先
の戦いもそうだったが、お前は魔法を実力以上の力で発揮できる才能があるみたいだな」
 憧れのラスに褒められてランクーイの胸に熱く込み上げてくるものがあった。
「初めはお前みたいなガキの世話なんて面倒くさくて嫌だったけどよ、こうして俺の手で
だんだんとモノになっていく様を見守るっていうのは、意外と面白いもんだな。お前が一
人前になるまで修行、手伝ってやるぜ」
「し、ししょうぅぅ……」
 ランクーイの胸の奥から込み上げてきた熱いものは涙と鼻水となり、顔を濡らした。真
っ赤になった頬と耳はまだ子供の面影が残っているが、ランクーイは着実に大人へと成長
しつつあった。それをラスも感じ取り、早すぎてからっぽだった自分の思春期を、ランク
ーイの成長を共に感じることで取り戻せたように思い、嬉しかった。

590FAT:2007/11/16(金) 19:30:34 ID:y60NF23s0
>>◇68hJrjtYさん
ランクーイの成長がテーマで書いているので、そういった感想をいただけると
とても嬉しくなります。
しばらくはランクーイの成長にお付き合い下さい。

>>21Rさん
いやいや、電波だなんて……
前作よりも遥かに広大なスケールで語られる物語。それが21Rさんの繊細な
文章でどう表現されるのか、楽しみでなりません。
続き、お待ちしています。

591◇68hJrjtY:2007/11/16(金) 20:15:37 ID:YEIQrt5Q0
>FATさん
なるほど、ラスがランクーイを鍛えているのは「自分と重ねる」という裏の心理もあったのですね。
初戦を勝利できたランクーイも確実に進歩して強くなってると思います(*´ェ`*)
でも本当にラスと出会った頃と比べるとだいぶ違ってきていますよね。成長を描くFATさんの筆運びも素敵です。
ラスが師匠なら、レルロンドは兄貴という感じで…。がんばれランクーイ(笑)
続きお待ちしています。

592之神:2007/11/17(土) 17:53:28 ID:1d3FPy4Y0
あなたどなた

プロローグ

α
この平凡な街での暮らしにも飽き飽きしていた俺だったが、毎日ドキドキする暮らしも疲れるだろうと思うようにし、
つまり俺は幸せだ!と思うように考えるようにしたのはここ何年かの話である。
俺が思うドキドキっていうのは、具体的にはゲームの中の世界とか、そういうアクション的な世界で暮らしたり、戦ったりすることである。
無論、その戦い方も重要だ。
バコバコ隕石降らせたり、なにやら面妖な化け物を召還したり、分身や瞬間移動など、ようするにファンタジーなやり方だ。
俺はそんな世界にあこがれ、夢見てきた。
が、冒頭の通り、今の俺はそんな事が無い平凡に慣れている。むしろ前向きに平和だとも考えている。
でも少しは起きて欲しいと思っているんだ、そんなファンタジーな体験をさ。

前向きに今が平和だ、ファンタジーは所詮空想だ、と思い始めたきっかけは単純で、友達にバカにされたからだ。
「バカじゃね?ありえねぇだろ」と冗談のような顔で真面目に言ってきた。
友達の言うことは正しかった。そんな夢を持つ自分を恥じるようになり、いつしかそんな夢は捨てていた。
おっと、これじゃプロローグにしては長すぎるか。では早速話に入っていくことにするよ。

言い忘れてたな。俺は長嶋徹、高校生2年生だ。


β
もう、本当にウンザリだわ。なんでこんな簡単な事も上手く出来ないんだろう・・・。
私の周りの皆は、簡単に術を行使する。なんで、なんで私だけ上手くいかないのよ・・・。
できれば、こんな危ない世界とは無縁な平和な所で暮らしたいと私は思っているの。
空からメテオが振ってきたり、召還獣相手に苦戦したり、必死で槍で突いても分身に惑わされてただけ・・・。
そもそも戦いのセンスなんて無いのに、親の趣向も手伝って魔法傭兵にされたなんて、ヒドイ話よね。

今はその戦いにも慣れてきて、これが日常だと思ってき始めたけど、できれば戦いの無い平和な世界に行ってみたいなぁ。
でもギルド仲間に話せば
「じゃあアンタなんの為に槍を握ってるんだよ」と言ってくるの。
確かに彼の意見は正しいし、最近では自分の意思で槍を握り始めた私だけど、やっぱりゆったり暮らしたいって今でも思うの。
今では戦いにも慣れて、そんな事忘れかけてるんだけどね・・・。
あ、ゴメンなさい。プロローグにしては長すぎましたね。私が話すこと、聞いてくれますね?

もう、私ったら名前もまだ言ってなかったですね。
私はミカ、17歳。魔法を使うランサーなの。



はい、こんにちわ。初の長編スタートです。主人公は普通の高校2年の徹と、ギルドの中では落ちこぼれのミカです。
えーと、いつもの事ながらズレた世界観になると思います。αとβは視点です。いずれ消えると思います。
では、いつものように短編で終わらないように頑張ります!

593之神:2007/11/17(土) 18:25:35 ID:1d3FPy4Y0
あなたどなた

プロローグ >>592
1章

α
今日から長期休暇だ。待ちわびていた頃は長く感じた日数も徐々に休暇前日に迫り、今日に至る。
学校は嫌いじゃ無いし、むしろ友人との会話や昼食が楽しみなので好きな方だったが、やっぱ休みという物はほとんどの場合嬉しいし、今回の
休みも例外では無い。休暇はなんと丸々1ヶ月近く、とてもラッキーな事なのだが、当然の事ながら課題もたっぷり出る。
大抵の場合、残りの数日で課題を片付けるようにするのが俺で、今回の俺もそれにならうことにした。
さぁて、何するかな。
とは言うものの、することなど決まっている。高校生が休暇にしよう事などたかが知れており、俺もその中の1人なわけで。
友人との遊び、女子との楽しい一時、バイト、のんびりとした生活。このいずれかだろうな。そして今日は俺流「のんびりした生活」
を実行する事にした。いつもより2時間遅れで起き、ダラダラと私服に着替え、朝食をとり・・・。
つまり、ダラけた1日だ。外に出る気も無く、TVをつけたり、ネット徘徊したり。
そんな生活を可能にしてくれた長期休暇万歳な俺に、メールが来た。遊び友達からだ。
「よっ!やっと休暇始まったな^^突然だけど、徹は明日ヒマ?てかヒマだろ。明日いつものトコに10時集合な!」
・・・・・・
ヒマ人扱いされた俺だが、実際ヒマなので言い返せない。なので返信は、
「わかったよ。明日10時に公園の噴水前だな?じゃ、また明日。」などと適当に返事を返し、またネット徘徊に戻った。


β
私達も戦ってばかりじゃ無いの。たまには休暇も貰えるんだけど、その待ちに待った休暇1日目が今日。
あんまり戦いは好きじゃ無いし、そろそろ疲労が溜まってた頃だからちょうど良かったわ。やっと羽を伸ばせるしね。
休みって言っても、やることは決まっていて、槍の手入れとか装備の補充とか、時間が余れば洋服買ったり・・・。
今回の休みもいつも通り、そんな感じに過ごすと思ってたし、実際そうするつもりよ。でもいつもより行動は遅めに。
いつもより30分遅くベッドから出て、シャワー浴びて、久しぶりに私服に着替えて。
重い鎧が外れた体はいつもより軽くて、休暇万歳!な私に手紙が来たの。
「久しぶり、戦術学校以来だね。明日はペイロンさんが休暇くれたのだけど、もし時間が空いてたら
私とお買い物行かない?ミカは忙しいかもしれないけど、もし時間あったら返事ちょーだいな。 アンナより」
・・・・・
珍しく時間、というか休暇中だったから、お手紙の返事を書くことにしたの。
「久しぶりだね。今回は時間あいてます!前回みたいに出張もありません。では明日10時に古都の噴水前で会いましょう」
と返事を書いて、鳩に渡した後は、槍の手入れをして鎧を干して・・・

594◇68hJrjtY:2007/11/17(土) 21:01:10 ID:2RmBikFs0
>之神さん
遂に長編に挑戦ですか!
α視点では現実世界の徹が、β視点でのRS世界のミカがお語を繋いでいく物語ですね。
やっぱり新鮮な、それでいてRSというネトゲ無しでは語れないようなストーリーだと思います(*´ェ`*)
両方の生活の比較がしやすくて読みやすいと思いましたよ。
いずれはこの二つが繋がるのか、それとも…色々な意味でとても楽しみです。
続きお待ちしていますね。

595之神:2007/11/18(日) 15:48:34 ID:1d3FPy4Y0
あなたどなた
プロローグ>>592
1章-1 >>593


α
さて、友人の呼び出しに素直に出向いた俺なのだが・・・・・遅い。
集合時刻の10分前から噴水前に来たのだが、今はもう30分は経過している。まったく、時間にルーズな奴め。
電話をしても出ない。
「ったくよぉ・・・・」などとボヤする俺だったが、あまり悪い気分でも無かった。今日は快晴、いい天気だ。
そしてようやくトボケた顔で、我が友人は歩み寄ってきた。
「悪い悪い、遅れちまったよ」
「んなもん待ってた俺には言わなくても分かるっての」
「そか、んじゃ行こうか」
と行く先は市内のアウトレットモールだ。ここらに住んでる人は皆、大抵ここに来て服などを安く購入する。
俺と友達もそれにならって来たわけだ。
買い物と言っても男2人でそこらをブラブラしながら、店に寄ったり飯を食ったり・・・。
いかにもヒマな男子高校生2人組を満喫していた。ああ、ここに女子がいれば華があったってとこだが・・・。
俺ら2人は女子に嫌われるようなタチでは無いが、かと言ってモテるわけでも無かった。うむ、悲しいことだ。

ブラブラしてる内に夕方になり、無駄な時間を過ごしたと内心後悔しつつも、今日は解散となった。ほんと、何してんだかな。
友人が帰路についている時、俺は意味も無く公園噴水前で黄昏ていた。本当に意味は無い。
ボーっと何も考えないでベンチに座り込み、流れる噴水の水を眺めていた。
この時はまさかあんな事態に遭遇するなんて微塵も考えちゃいなかった。今となっては思い出話として語れるが、その事態とは
まず1人の女性との出会いからだ。

β
約束の時間ぴったりに、私は噴水で待っていた。それにしても・・・・・遅いわね。アンナの時間の感覚は、今も昔も変わってないみたい。
戦術学校では、アンナは遅刻常習犯だったんだけど、まさか今もその癖は直っていないとは・・・呆れるわ。
約束の時間からだいぶ遅れてアンナは
「ごめんごめん!また遅れちゃったよ」
「もう、いつもアンナは・・・」
「えへへ・・・・つい、ね」
「じゃ、行きましょうか」
と向かうのは露店の多い地帯で、私の目当ては可愛い洋服を買うこと。
普段は重苦しい鎧だけど、私服となれば話は別。女はオシャレしないとねっ!って、誰に言ってんだろ私。
ブラブラしながら露店を見て回って、途中で値切り交渉や喫茶店に入ったり、まぁ普通の女2人のお買い物。
かっこいい彼氏も居ない私達だけど、それには理由があって・・・。
単純には戦死。いつ死んじゃうか分からないし、彼氏なんて作っても忙しいから会えなかったり。だから作らない主義なの。
そりゃあもう、彼氏募集なんかしたら引っ張りだこよっ!・・・あ、何その目線は。うそはついてないよ?

フラフラ買い物して、目当ての服を購入した私達は、今日はここで解散になったの。
久しぶりに話も出来たし、充実した1日だったわ。
アンナが帰るころ、私は古都の噴水前で意味も無く空を見上げていた。真っ赤な夕焼けの空、意味も無く腰掛けて。
噴水を眺めながら、何も考えないで座っていると、いきなり周囲の動きが遅くなった。
「重い・・・・!」
でもいつもの事だし、特に何も考えてなかったの。この時は、まさかあんな妙なところへ行くなんて、全く思っても無かったわ。
その妙な所の話はまず、1人の男の人との出会いから始まった。

596之神:2007/11/18(日) 16:51:35 ID:1d3FPy4Y0
あなたどなた
プロローグ>>592
1章-1 >>593
-2 >>595

α
それは突然だった。今まで体験したことの無い、強い目まい、というか、目の前の空間が歪んでいるような。
目の前の噴水はグラグラと揺れ、周りの物もボヤけている。が、俺以外の通行人らはまったく気づいてない、気にもしてなかった。
「なんじゃこりゃ・・・・!」と常套句を放った俺は、思い出す。
・・・・これ、ファンタジー的なモンか・・・!?
幸か不幸か、俺は内心喜んでいるようだ。やっと巡り合えた、物語的世界!飽き飽きしていた日常ともお別れか?
などと考えている始末である。我ながら危機感が全く感じられない。やがてねじれのような、歪みのような、そのユラユラは止まった。

そのユラユラの跡に、1人の女性が立っていた・・・ってか同い年くらいか。挙動不審なその女性は、こちらの視線に気づく。
正直彼女、俺のことガン見だ。なんというか肝が座っている。恐れの無いような、でも挙動不審。そしてその女性は、何より美人だった。
しばらくして近づいてきた。
「あの、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
挨拶も無しか、あなたは。とは言えない・・・。
「ええ、何でしょうかね?」
「ここ、どこ?」と、彼女はハッキリとした口調で聞いてきた。
正直、旅人にも見えない上、いきなり現れたこの人の事だ。下手したら異世界人かも。と妄想をしながら、
「ええと・・・ここは川越市ですが?」まぬけな声で言ってしまった。うう、後悔。
「かわごえ・・・し?ふーん・・・・」彼女は考え込む様な顔をしている。近くで見るとまた、美人だなぁ・・・
「古都ブルンネンシュティグへは、どうしたら帰れるかわかる?」真面目な顔で聞いてきた。
内心、「え?」だ。古都?ブルン・・・・なんたら。どこだそれ、聞いたことねぇ。
「そ、それはどこの国でしょうか・・・?ここは日本ですけど・・・」
「フランデル大陸のグレートマウンテン付近にある都市よ、古都は。知らないの?あんな大きな都市なのに。それにニホンってどこよそれ」
どこと言われても困るし、だいたいフランデルもグレート山も、地理の授業聞いてない俺でも無いことくらいわかる。
「ええとですね・・・・。いろいろ聞きたい事もあるでしょうが、まず名前を教えてもらってもいいですかね?」
「まずアナタから名乗りなさい」相変わらず口調は厳しい。
「お、俺は徹、長嶋徹だよ。よろしく」情けないことに声が震える。
これでもかと言うハッキリした声で、彼女は自己紹介した。
「私はミカよ。魔法を行使するランサー」

こうして俺は、ミカと出会った。

597之神:2007/11/18(日) 16:52:20 ID:1d3FPy4Y0
β
「重い・・・・!」
これはいつも以上に重かった。いつものサーバー落ちでもここまで重くならない筈なのに・・・!
突然、アルファベットや数字の羅列が、青い背景をバックに映し出された。な、なによこれ・・・。
そうして私は、見知らぬ街の公園のようなところに立っていた。
全く知らない場所、人、物。すぐに古都では無いとは気づいた、けど・・・。
辺りを見ていると、いかにもマヌケそうな男がこっちを見ていたの。何見てんのよ。
いつもの戦闘のクセで、相手を睨み返した。でも今は槍も何も持ってない。戦えるかな・・・・?
とりあえず害は無さそうなその男に、私は近づいた。睨みながら。
こういう時はなんて言えばいいのかな・・・?でも、弱いところを見せちゃダメね。
「あの、聞きたい事があるんだけどいいかな?」思わず怖い声で言っちゃった・・・。そして挨拶もしなかった事にも気がついた。
「ええ、なんでしょうかね?」彼は見た目通りのマヌケな声で言う。
「ここ、どこ?」普通の事を聞いたつもりだった、けど・・・彼は驚いたような顔をした。そんな事で驚かないでよ。
「ええと・・・ここは川越ですが?」えっ?一度も聞いたこと無い地名。何も知らないことを悟られないように、
「かわごえ・・・し?ふーん・・・」彼の発音とアクセントがズレているような気もしたけど、この際気にしないでね。
とりあえず帰る事が先決。こんな男に構っているヒマは無いわ。
「古都ブルンネンシュティグへは、どうしたら帰れるかわかる?」また彼は驚いた。
「そ、それはどこの国でしょうか・・・?ここは日本ですが・・」
ニホン?2本?どこよそれ。
「フランデル大陸のグレートマウンテン付近にある都市よ、古都は。知らないの?あんな大きな都市なのに。それにニホンってどこよそれ」
彼の反応からして、古都はかなり遠いか、それともこの男の地理感覚が疎いだけなのか。恐らく前者だ、とまで推測は出来た。
そして彼は口を開いた。
「ええとですね・・・・。いろいろ聞きたい事もあるでしょうが、まず名前を教えてもらってもいいですかね?」
最初のイメージを壊さない為に、強気に出ることに・・・しなきゃ・・。
「まずアナタから名乗りなさい」何言ってんだろ私っ・・!
私の言うことを素直に聞き入れた彼は、
「お、俺は徹、長嶋徹だよ。よろしく」と、またしても耳慣れない名前を言ってきた。
聞いたからには私も名乗る。
「私はミカよ。魔法を行使するランサー」また、怖い声で言っちゃった。もうこの印象は変えられないなぁ・・・。

こうして私は、徹と出会った。

598之神:2007/11/18(日) 16:57:24 ID:1d3FPy4Y0
今日はここまで・・・。
出会っちゃいましたね徹とミカ。しかも無理やりな展開でw
徹のミカの印象は、肝の据わった強い女性、美人って感じで。
ミカの徹の印象は、マヌケで意味が分からない、って感じで。
徹はマヌケな表情や声を悔いて、ミカは怖い印象を与えた事を悔いています。
さて、2人は今後何をしてくれるんでしょうかねぇ・・・(´∀`*

599名無しさん:2007/11/19(月) 00:12:32 ID:E6GhfO2Q0
之神様が描く小説は神すぎますね・・・続き楽しみに待ってます・・。

600◇68hJrjtY:2007/11/19(月) 01:47:37 ID:Ogt5K/UU0
>之神さん
両方の印象とか気持ちが分かりやすくて、思わずニヤリとしてしまうほど楽しかったです(ノ∀`*)
RS世界と現実世界が繋がったという話は無闇にワクワクしてしまう…。
こういう強そうな女性が可愛い洋服とか物色しているシーンは好きだ(笑)
そんな中にも之神さん特有の言い回し「いつものサーバー落ち」とかにまた苦笑。
っていうか川越市ですか!さいたまー(古
続きお待ちしています!

601之神:2007/11/19(月) 16:15:29 ID:1d3FPy4Y0
あなたどなた

プロローグ>>592
1章-1 >>593
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α
・・・・さて。
自己紹介も済み、とりあえず俺は明らかに異世界人のミカさんに、この地域の大まかな流れや常識を説明することにした。
「まず、ここは川越市。少し栄えた・・・まぁ地方都市でいいのかな?そんな所。俺の行っている高校は市立の・・・」と大雑把に話ていると
「寒いわね・・。暖かい所無いかしら?」と聞いてくる。無理も無い、今は11月で冷え込む時期だ。
「じゃあ・・・・その・・」言うべきか迷ったが、言うだけ言ってみる事にした。
「ウチへ来ない?」言っちまった。だがこんな美人をウチに連れ込むチャンスなど、今後無いと思った俺の出来心のせいだが。
返答はあさっり返ってきた。
「いいわね。よろしく頼むわ。」
これは、正直感涙物だ。女に縁の無かった俺にとって人生最初の第一歩だ。神様、感謝感謝。

俺の家は公園から近い一軒家で、自分で言うのもアレだが豪邸の部類に入ると思われる。
昔からこのだだっ広い土地を所有していた我が家系の成す技であり、しかし無駄に広いので手入れも面倒という・・・
まさに一長一短の言葉が相応しいだろう。
「へぇ、洒落た家ねぇ・・。ちょっと屋根の形おかしいけど。」
察するに、彼女`ミカ`の世界ではもっと違う形や色なのだろうな。まぁ、一致したらそれはそれで驚きだが。
「こっち、俺の部屋は2階の・・・ここだ」俺は部屋へ招き入れる・・・というか、彼女が入っていく。
「広いわねぇ。わあっ!これ何?えー不思議ー」などと言っている。まぁ、異世界人というのはこういうものなのだろう。
ここで、公園では出来なかった話しの説明をする。TVやケータイなどの家電や、電車や車などの交通、食や衣料に関しても。
理解が早いようで助かった。証拠に彼女は
「ふんふん、つまりこれが流行の・・・」なんて話を発展させる。俺にも聞きたい事があったので聞いてみる。
「あのさ、そっちの・・・世界の事教えてくれないかな?」

正直、今の俺の頭の中では拍手喝采、思わず叫びたくなるほどの話の内容だった。まさしく俺の求める、It'ファンタジー。
簡単に説明すると、彼女は槍を駆使して戦う傭兵で、魔法が得意な部類だそうで。しかし友人との買い物後にこの空間に飛んできた・・・と。
そして彼女はバッグからいろいろと取り出し始めた。
「これがゴールドで、これがポーションね。こっちが・・・」夢に見た魔法アイテムだ。買い物中にも持ち歩くとは、流石傭兵。
出会ってから4時間は経っている。もう夕飯時で、2人ともお腹の空く頃合いだった。
「今日は、ウチに泊まりなよ。部屋ならいくつか空いてるし、親もなんとか言いくるめる」と言ってやった。
流石に元傭兵とは言え、夜風に晒し突き返すのも悪い。出会っただけの縁だが、それくらいの良心は働いている。ミカは
「あ、ありがと・・・・」と照れたような顔で言ってきた。さっきまでの威勢のいい女はどこへやら・・・

とにかく、ミカとはこれからも何かありそうなのは予感していた。

602之神:2007/11/19(月) 16:16:04 ID:1d3FPy4Y0
β
さてと。
自己紹介も終わって、徹は私にいろいろとこの場所について教えてくれた、けど・・・・寒い。
いろいろと話す徹をさえぎり、
「寒いわね・・。暖かい所無いかしら?」と聞く。古都は夏だったし、かの格好じゃ寒いしね。すると徹は
「じゃあ・・・・その・・」何か言いたげ。何だろう・・・?
「ウチへ来ない?」
ちょっと驚いた。出会ってすぐの私を、家に招いてくれるという。でもここは素直に、
「いいわね。よろしく頼むわ。」と返した。彼も少し驚いたような顔だったけど、家路の案内のためにすぐに先導し始めた。

彼の家は今まで見たことの無い風貌で、変わっていた。レンガも見えないし、煙突も無かった。
しかし敷地面積は明らかに広く、門から家が見えなかった。思わず、
「へぇ、洒落た家ねぇ・・。ちょっと屋根の形おかしいけど。」と最後に余計な一言を加えて・・・。はぁ・・・。
家の中は暖かく、何故か早く部屋に入りたくてあせっていた私は
「こっち、俺の部屋は2階の・・・ここだ」と彼が言う前に部屋に入ってしまった。今思えば、とても失礼な事をしていたのね・・。
部屋の中には知らない物が多すぎて、思わず声をあげてはしゃいで、
「広いわねぇ。わあっ!これ何?えー不思議ー」 本当に見たこと無いものばかり。
それらの説明も含めて、'徹'に話を聞くことにした私は、案外自分の世界に(ミカ的に)似ていることを知り、理解が楽で助かった。
しばらく相槌を打ったり、時々話を広げたり。しばらくして説明が終わると彼は、少し躊躇う様子で、
「あのさ、そっちの・・・世界の事教えてくれないかな?」まぁ、当然の質問だと私も思った。
なので私はバッグに入れていたアイテムを見せながら説明をしたの。
持っていたのはお金大目にと、ポーションと、ハンカチくらいだったけど、傭兵の話とかも混ぜながら話をして・・・
話をしている感じでは、時間の感覚や食べ物、衣服の文化は多少違うだけで、ほとんど同じ。少しは安心できたかな。
彼はまた話を振ってきた。
「今日は、ウチに泊まりなよ。部屋ならいくつか空いてるし、親もなんとか言いくるめる」
正直嬉しかったけど、夜這いなんかされたら振り切れるか・・・って、この男ならしなさそう・・かな?
ここはとりあえず素直に下宿させてもらうことにした。でも今までの恐そうな印象付けで、感謝の言葉を述べるのはちょっと抵抗があって・・・
「あ、ありがと・・・・」目を逸らして、たぶん顔も赤かったかも。とりあえず、しばらくは安心かな。

この徹には、まだお世話になりそう。

603之神:2007/11/19(月) 16:21:36 ID:1d3FPy4Y0
今日はこの辺りで。
ええと、川越ってのは首都圏の地図開いてたら目についた名前であって
私とはなんの関連もございませんw
一応断り入れておきます・・・。まぁ、フィクションだから関係ねぇ(ぁ
とりあえず、ミカさん徹君家に泊まります。無事に朝日が拝めるか、徹。
それと>>599さん、◇68hJrjtYさん感想ありがとうです。
感想を励みに書いて行きます!

604名無しさん:2007/11/19(月) 18:08:16 ID:Tb7V2lWA0
とうとうミニペット実装ですね
みなさん2500円ポタで精一杯ですよね。
でも、みんな持っていたらやっぱり欲しくなるものです

そこでこれです
http://tadaderedstone.web.fc2.com/
私はこれで毎月の課金代を稼いでいます
でもミニペット代捻出のため、私も、もうちょっと頑張らねば><

↑のサイトを赤点占いと同じく定期的にやるように心がけると
収益アップです

お互い頑張りましょう

605◇68hJrjtY:2007/11/19(月) 19:48:23 ID:E1UlYTNw0
>之神さん
やっぱりランサはツンデレ系が似合いますよね!ツンデレ最高!
RSの世界観って個人的には中世+魔法という感じなのですが、確かに似たものも多いかもしれませんね。
POT=栄養剤、青POT=青汁、耳打ち=ケータイ、みたいな…?
方向音痴な私はあの現在地がどこにいても表示されてる地図は欲しいです(こら
さて、徹君とミカの生活(?)がスタートしそうですが…どうなることやら、楽しみにしています(笑)

606名無しさん:2007/11/19(月) 22:48:26 ID:E6GhfO2Q0
之神様・・面白過ぎて堪りません・・なんという神小説・・雅に之は神。

607 ◆21RFz91GTE:2007/11/20(火) 13:02:43 ID:0YQ1S//Q0
瞬間ハッと我に帰った、そして空いた口をゆっくりと閉じて、そして笑顔で
「俺の名前は…。」
その言葉は周りの冒険者たちのざわめきにかき消されたか、はたまた声が小さかったのか、それとも彼等には十分伝わる程度の音量だったのか。ゆっくりと歩き始めた彼はパーティーの面子に暖かく迎え入れられ、そして雪積もるこの街を後にした。


 誰もが初めは一人、だが何をきっかけに仲間が出来るかはその人次第であり、気が付けば周りには仲間と呼べる友人が数多く居る。そんな彼等もまたどんなことが切っ掛けで友人を作るのか、仲間を作るのか。
出会いは一期一会、その時の仲間、あの時の仲間、今でも一緒に居る仲間。そんな彼等と出会い笑える事、それが一番の宝物であり、一番の誇りである。

赤い宝石が奏でる、幾つも物命の物語。

END

608 ◆21RFz91GTE:2007/11/20(火) 13:03:57 ID:0YQ1S//Q0
ゲハΣ(・□・;;)
何で最後だけしかコピー出来て無いんだorz

と言うわけで投稿しなおしでふ…連使い申し訳orz

■唐突番外短編シリーズ No3


 街にも白い妖精達が舞い降り始めた。
この地方では珍しく、氷点下を軽く下回る夕刻時。何時も賑やかで活気だっている街に静寂が走る瞬間であった。まだ夜更け前に振り出した雪はオレンジ色の屋根を白く染める、まるでこれから舞台にでる女優のように化粧をしているかのように。
家々では子供達がはしゃいでいる、朝には積もって居るだろう雪を想像して早く外に出たいと願う子供たちを横目に親達はそれを笑って暖を取る。冒険者たちはそれぞれの宿舎へと戻り、来たばかりの冒険者たちは近場のカフェや酒屋へと姿を消していく。ここにもまだ訪れたばかりの冒険者が一人。宿舎はもちろん無い。周りにつられて彼もまた酒屋へと入っていく。頭、肩に雪がほんのりと被さり、酒屋の前でそれらを払いドアを開けた。
 酒屋は何時も以上に賑わっていた。本来彼等は夜間でも行動するためこうして一箇所に集まるという事は殆ど無いと言う。だが、この雪のせいもあり、暖を取るために本日は夜間休業と言った所だろう。
 どこか空いているテーブルは無いかと周りを見渡す、だが何処もかしこもパーティーで埋め尽くされていて彼が入れる隙間等到底なかった。それを見た一つのパーティーが声をかけてきた。
暖炉の直ぐ近くでテーブルと椅子があり、テーブルの上には多くの料理が並べられている。どこか出稼ぎに出ていた一行なのか、荒々しい面子も居れば大人しそうな面子も居た。そして話に花が咲いている所を見ると長い間一緒に居る面子なのだろうと察しが付く。
 彼はそこのテーブルにお邪魔する事になった、暖かく迎えられた彼は一先ず珈琲を頼み彼らの旅の話を聞いた。彼らもまた出会いはこの酒屋だと言う。年に一度だけ降る雪の夜に偶然立ち寄ったこの酒屋で今のように会話に花が咲いていた時の事だったと言う。
 彼は正直羨ましかった、まだこの街に来たばかりで友人はおろか気軽に喋れる人も居ない。初めこそ会話に参加していたが、後々彼は何も喋らなくなっていた。同時に彼らの会話を邪魔してはいけ無いと思い、席を立とうとした。
「ん、どうした?」
パーティーの一人が声をかけてきた、その言葉に一度背中をビクっとさせながら浮かせた腰をまたゆっくりと椅子へと落ち着かせる。
「何を気にしてるんだか知らないが、あんちゃんも一緒に飲もうぜ?」
そう言うと一つのジョッキを彼の前に差し出す、そのジョッキを受け取ると周りの目線が一気に彼に向いた。そして楽しそうに「いっき!いっき!」と掛け声を始める。その声に反応して周りのパーティーも一緒に掛け声を出してきた。この声を無視できることが出来なかった彼は、周りの空気に飲まれ、そしてジョッキをいっきに傾けた。それまで冷たかった体にアルコールが入り、徐々に体を温めていく。ジョッキの中身を飲み干すと周りから歓声が上がった。そして盛り上がった酒場はそのまま更けていく夜を冷たい空の下、暖かい空気で包み込んでいた。
そして同時に彼も気づいた、こうしてまだ名前も知らない人達も仲間なのだと言う事を。何も知らない、誰も知らない彼でも、こうして酒を交わすことが出来れば立派な冒険者の仲間入りだとその時彼は悟った。

609 ◆21RFz91GTE:2007/11/20(火) 13:04:21 ID:0YQ1S//Q0

 夜が明けて、白い妖精が層をなして積もったこの街にまた冒険者達がゆっくりと徘徊するようになる。同時に彼はまた一人になった。昨夜の出来事がまるで嘘のような虚しさが唐突に彼を襲う。そして右手に握る杖で雪を払いのけ近くの広場に向かおうとしたその時だった。
「おはようあんちゃん、昨日は良い飲みっぷりだったな。」
昨夜のパーティーがそこに居た、彼等もまた出かける身支度をして外へと出てきた所だった。遠出をする準備がされていて、各々の背中には大きめのリュックサックを背負っている。
「さて、これからまた長丁場の旅に出るんだけどあんちゃんもどうだ?」
その言葉に自分の耳を疑った、昨日たった一杯の酒を交わしただけの人から旅の誘いを受けた事が信じられず、少しの間空いた口が塞がらなかった。
「そういやぁあんちゃんの名前聞いてなかったな、名前なんていうんだ?」
瞬間ハッと我に帰っ