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地縛霊の種

1 名無しさん :2017/07/30(日) 20:01:09 ID:A1LcoeLM0
こういうところに投稿するのは初めてなので、失礼があればお許しください。

私はとある地方都市の比較的人口の多い場所に住んでいた。小学校のころは、学校に通うのに車の交通量の多い道を歩かなくてはならないこともあり、学校や保護者はいつも口を酸っぱくして「車に気を付けるように」と言っていた。
実際、その道路は交通事故が多く発生していたらしく、車同士の接触事故はしょっちゅうで、数年に一度は事故で人が命を落とすこともあったようだ。登校途中で道端に花やタバコ、お菓子が供えられているのを何度か目撃したことがある。
私が小学校高学年、たぶん5年生くらいの時だったと記憶している。いつものように学校に通っていと、件の道路の脇に花束が置かれているのを目にして、そういえば昨日ここで夜、事故があったんだよなと思い出した。その時は特に気に留めることもなく学校に行き、帰りも同じ道を一人で通って帰っていた。そのとき、ふと変な事に気がついた。事故現場の、花が添えられている場所のすぐそばに、なにか薄い透明感のある灰色のような、平べったいものが地面に落ちていたのだ。といっても、日差しの中でそれははっきりとは目にできず、集中しなければ気づかないような不思議な存在だった。そんなものが歩行者道路のやや真ん中寄りの場所に落ちている。
これは何だろう。そう思って近づいてよく見ても、なんだかわからない。言葉にするのは難しいが、目に見えているようで実は見えていないような、そんな物体だった。事故現場ということも相まって、小学高学年特有の好奇心でしばらく見つめていると、後ろから声をかけられた。
「それ、あんまり見つめない方がいいかもよ。」
振り返ると、小学校の同級生で別のクラスに通う秋山だった。彼とは同じ町内に住み、当然学校の行き帰りも一緒になることがたまにあったが、寡黙な性格でクラスの中でもあまり目立たず、活発に外で遊びまわるのが好きな多少やんちゃだった私とは性格が合わず、それほど仲良くない相手だった。

2 名無しさん :2017/07/30(日) 20:02:08 ID:A1LcoeLM0
その秋山が突然話しかけてきたことに多少驚きつつも、私は聞き返した。
「お前、これが何か知ってんの?」
すると秋山は
「この変な物体は昨日の事故で亡くなった人の魂のかけらだよ」
と、私にとってはぶっ飛んだ内容の返事を寄こしてきた。幽霊だのオカルトだのといった話題はもちろん私も好きだったが、目の前にある「それ」と秋山の話とが今一つ結びつかず、さらに、自分がそれまでに耳にしてきた怪談話に登場する幽霊と似ても似つかぬ物体であることも加わって、私は「こいつ、俺をだまそうとしてるな」と心の中でつぶやいた。そこで
「適当なこと言ってんじゃねえよ。魂がバラバラになってかけらだけ残るなんてありえないだろう」
と突っかかるようにして言うと、秋山はこう教えてくれた。
「魂って、死んだあと二つに分かれるんだよ。そのまま天に昇っていく部分と、死んだ場所に残る部分と。ふつう、地面に残る魂もやがて消えていくんだけど、強い苦しみとか悲しみ、恨みを持った魂は、消えずのそうやって同じ場所に残り続けるんだ。それがよくテレビとかで言っている地縛霊だよ。」
そういうと、秋山は私の方にぐいっと顔を近づけてきて、
「でも、この魂はそんなに強い思いを抱いて死んだわけじゃなさそうだから、今はまだ小さいままなんだ。でも、これを大きくする方法があるのを知ってる?」
そんなことを聞いてきた。
はっきりいって、そんな方法知りたくなかったし、これ以上秋山と話をするのも怖くなってきた。普段からそんなにかかわりがないとはいえ、その時の秋山の雰囲気に何か空寒いものを感じたからだ。でも、ここでこいつにそんな弱気なところを見せるのはプライドが許さなかったので、本意に反しておれは尋ねた。
「どうやったら地縛霊になるんだよ」
すると秋山はまるで怖がる私の内心を見透かしたように口の端で笑みを作りながら教えてくれた。
「二つ方法があってね。一つは、近くで同じように無念を抱いたまま人が死ぬこと。その魂がくっついて、どんどん大きくなっていくんだ。もう一つは、この地縛霊の種、そうそう、僕はこれを地縛霊の種って呼んでるんだ。小さくて本当の地縛霊にはなれないけど、そうなる可能性をもったモノだから地縛霊の種。これはずっとここにいて動かないけど、その上を人間が踏みつけるとちょっとずつ成長していくんだ。もちろん、普通の人よりも、心の中で誰かを憎んでいる人とか、すごく怒っている人、死にたいと思っている人。そんな人がこの地縛霊の種を踏みつけると、その人から嫌な養分を吸い取って大きくなるんだ。」

3 名無しさん :2017/07/30(日) 20:02:49 ID:A1LcoeLM0
秋山の言葉を聞いて、私はそれ以上彼と話をしているのが嫌になった。小学生なのに何でそんなことを知ってるんだという気持ちもあったし、それ以上に、秋山が例の地縛霊のタネとやらが大きくなることを願っているかのような口調だったことに、恐怖を感じたからだ。
「そ、そうか。じゃあ、おれもむしゃくしゃしているときはここを通らないようにしないとな。お前も、変なことばっか気にしたら、良くないんじゃないのか。早く帰れよ」
そう言い残して、私はそこを足早に去っていった。なんだか後味の悪い、いやな感じがずっと心の中に残ったままだった。
それから、私はますます秋山とは疎遠になり、例の場所も使わず、遠回りして学校に通うようになった。
やがて、私は中学校に入り、部活に塾にと忙しい生活を送っていた。そんな折、私は秋山が最近学校に来ていないという話を耳にした。どうやら、中学校に入り、二年生になってから、彼はイジメを受けるようになり、それが原因で不登校になったとのことらしい。私はその頃には事故現場で秋山と会ったことや不気味な話を聞かされたことなどだいぶ忘れかけていたので、話を聞いてもふーんとしか思わなかった。
しかし、秋山が学校に来なくなって数カ月たった頃、偶然私は彼と再会を果たすことになる。その日、塾が終わってから友だちとしゃべっていて、帰りが遅くなってしまった。そこで、普段はあまり通らない事故現場の道を通って帰ることにしたのだが、その帰り道でのこと。ほとんど大人ばかりが足早に歩いていくその道で、一人変な動きをしている人間がいることに気がついた。そいつは同じ場所を数歩歩いては反転して元に戻るという動作を繰り返していた。

4 名無しさん :2017/07/30(日) 20:03:24 ID:A1LcoeLM0
いったい何だろうと思って近づくと、それはまさに秋山だった。とたんに俺は、同じ場所で秋山と会話をしたことを思い出したのだが、彼がなぜそんな不思議な行動をしているのか、好奇心の方が勝り、近づいて声をかけてみた。
「よお。久しぶりだな。最近学校に行っていないって聞いたけど、元気してたのか。お前、さっきから見ていると変なことしてるけど、何やってんの?」
「踏んづけてんの」
「踏むって、何を?」
「決まってるだろ。地縛霊の種だよ。あれから、あまり大きく育ってなかったみたいだから。僕がこうやってしてあげてんの」
「・・・なんでそんなことを」
結局、秋山は答えずに私を無視する形で、ひたすら行ったり来たりを繰り返していた。そして、彼が背中を向けるとき、その背中は以前見た時と同じうすい灰色の喪屋みたいなもので覆われていた。私は気味悪くなり、逃げるようにしてその場を去った。振り向くことはできなかった。
後日。秋山がうろうろとしていた地縛霊の場所で、交通事故が起こった。被害者は私と同じ中学二年生のA。話を聞くと、Aは以前から秋山をいじめていたそうだ。秋山が学校に来なくなっても、時々電話で呼び出し、お金をたかっていたとのこと。その日も、秋山に電話してお金を持ってこいと脅しつけると、いつもとは違い、渡す場所を向こうから指定してきた。そう、その場所こそAが事故に遭った場所だ。
仲間と連れ立ってそこに向かったAは、当初なぜこんな人通りの多い場所でといぶかしみ、もしや、人目があると金を払わなくて済むという魂胆かと勘繰ったそうだ。仲間と、そう簡単に逃げられると思うなよなどとしゃべっていると、向こうから秋山が走り寄ってきて、近づくなりAを車道に突き飛ばした。折悪くそこに車が走ってきてAはその車に激突。すぐに救急車で運ばれていった。
そして、やってきた警察官に秋山は補導されていったのだが、わけのわからないことを口走り、正気を失っていたということである。

5 名無しさん :2017/07/30(日) 20:04:04 ID:A1LcoeLM0
結局、Aは命を取り留めたものの、一生車いす生活を余儀なくせざるを得なくなった。秋山は心神喪失状態が続き、処置入院で経緯をみるということだった。
それから13年がたつ。未成年であり、精神疾患であると診断された秋山はそのまま入退院を繰り返し、先日、地縛霊の場所で走っていた自動車に飛び込み自殺した。その知らせを受けて私の脳裏によぎったのは、秋山が地縛霊の種を育てたのは半分自殺、半分復讐のためではなかったかということだ。自分だけでは怖くてAたちに復讐はできない。そこで彼は地縛霊の種を自ら育てることで、その力を借りていじめた奴らに復讐をしようとしたのではないか。そして、地縛霊に取りつかれたら命はないと知りつつ、将来に希望を見いだせないでいた秋山は死を覚悟のうえでそれを遂行したのではないか。私にはそのように思えてならない。
この年になって、かかわりが薄かったとはいえ、秋山に救いの手を差し伸べなかったことが悔やまれる。そして今はただ、秋山の冥福を祈るばかりである。


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