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怖い話Part2

603『約束(上)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/11/14(木) 23:33:57 ID:/QxSN9gc0
 通り過ぎる瞬間、少女は俺を見たが、すぐに海面へと視線を戻した。
そして俺が通り過ぎたタイミングを見計らうようにルアーをキャストする。
通り過ぎてから10m程、俺は立ち止まり海面を見るふりをして少女の様子を窺った。
短めの竿、小さなリール。リールのスプール(糸巻き部分)に肉抜き穴が並んでいる。
特徴的なデザインが懐かしい。S社のリール、『星座』の名を冠したフラッグシップモデルだ。
間違いなく95年型、父親から借りて使った時の感激を昨日のことのように思い出す。
もっと近くから見れば製品名や型番のロゴも確認出来る筈。
おそらく少女が父親か兄から借りて使っていたリールの記憶を再現しているのだろう。
死者が自ら望む姿で現れるのは知っている。
以前関わった事件では、女子高生の霊が持っていた刺繍入りのハンカチが手懸かりになった。
しかし服だけでなく、持ち物=釣り具をこれ程細部まで再現するなんて。
それにしても、この少女に感情が感じられないのは何故だろう。
恨みや憎しみ、あるいは悲しみ。およそ感情らしいものは何一つ伝わってこない。
先日の港で感じた姿の無い悪意と憎悪の塊。この少女の存在はその対極にある。
一心に釣りをする姿を暫く眺めた後、俺はアパートに戻った。


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