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怖い話Part2

462『遺産(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/09/12(木) 19:32:18 ID:AZimxqIY0
 「ガポッ!」
少し離れた場所で水音がした。大きいが軽い音。ボラが跳ねた音とは違う。
一気に胸の鼓動が早くなる。もしスズキの捕食音だとすれば、かなりの大物。
音がした方向に眼を凝らすと、ゆるやかに波紋が拡がっていくのが見えた。
まず上流側にキャスト。流れを利用して、音がした付近にルアーを送り込む。
ゆっくりリールを巻き、流れを横切るようにルアーを泳がせた。弱った小魚のイメージ。
姫も遍さんも、俺の緊張を感じ取っている。2人とも、黙ったまま河を見つめていた。
3投目。ルアーを泳がせ始めた途端、巻きが一瞬軽くなった。
ラインが少しだけ緩み、すぐにぴいんと張る、重い。
流木か、大物か。ドラグを信じて思い切り合わせる。
2度、そして3度。 ジリッ、とドラグが滑る。一呼吸置いて、ラインが走った。
もの凄い勢いでドラグが鳴る。大物だ。ラインは真っ直ぐ河口に向かっていく。
止まらない。あっという間に50mほどのラインが引き出された。
さらに10mほど糸を引き出し、ようやく魚は止まったが、なかなか寄せられない。
時折大きな魚体が水面を割る。激しい水しぶき、大きな水音。まるで爆発だ。
その波紋が俺の立つ川岸まで届き、水面が小さく揺れていた。
何度引き寄せても、その度にラインを引き出される。
「もうすぐ7時半、大丈夫かな?」 時計を見た遍さんが独り言のように呟いた。
魚をヒットさせてから既に20分以上経っている。魚体へのダメージを心配しているのだろう。
必死で遣り取りを繰り返す内に、巻き取ったラインが増えてきた。
魚は確実に、寄ってきている。


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