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怖い話Part2

165『道標(中)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/11(火) 18:27:01 ID:LBhz3as60
 姫は黙ったまま川沿いの歩道を歩いている。その横顔は未だ冷く強張っていた。
「機嫌、悪そうですね。」
「何だか、とても腹が立ちます。力を、あんな風に。」
姫がこれほどストレートに怒りを表すのは見たことがない。
姫の経験した境遇、いつも正面から自分の力と向き合って来た姿勢を考えれば、
力を玩具のように考える少女が腹立たしいのも無理はない。けれども。
「僕は、自分がとても恵まれているんだなって実感しました。」
「何故、ですか?」
「もし母が僕の感覚を封じてくれなかったら、SさんやLさんに会えなかったら、
僕自身があんな風に力を玩具にしてたかも知れないって、そう思ったんです。」
「それで自分が恵まれている、と?」
「そう。逆にあの子はとても不運ですよね。力と向き合う心構えや
力をコントロールする方法を未だ教えてもらっていないんですから。
それに、きっと親身になって生活態度を注意してくれる人もいないんだと思います。」
姫は歩きながら左手を俺の右腕にからめた。
「私とRさんに会ったのはあの子にとって幸運の始まりかもしれない。
怒らないで、そう考えた良いということですね?」
「怒った顔も綺麗ですが、やっぱり僕は笑ってるLさんが好きですから。」
「...私も、Rさんのこと、大好きです。」 姫の頬はほんのりと紅に染まっている。美しい。
駐車場で車に乗り込んだ時には、姫はいつもの笑顔に戻っていた。


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