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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!2

227こっぺぱん:2013/03/07(木) 23:12:06 ID:3CGnJzBA
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅡ :曖昧な境界線6:

「あ、えーと……なんて言ったの?」
「いや……すいません、なんでもないです」
 予想外の質問に狼狽えるマキと、気まずそうに顔を背けるワタル。稽古場に差し込む夕日は徐々にその色を濃くしていき、まだ冬休み中の学校はとても静かだった。
 沈黙はわずかな時間だったのだが、二人にとってはとてつもなく長い時間に感じた。次にどんな言葉を発したらいいか、二人とも必死に考えていた。相手も必死だということに気付かずに。
「処女だったら………どうするの?」
 おずおずとそう口を開いたのはマキだった。日の傾きは徐々に夜へと向かいつつある。
「いや……その……以前オレが童貞なのは知られちゃいましたし、オレも先輩のコト知っててもいいかなって……」
 マキは、そのワタルの発言が本当に言いたいことではないということがわかっていた。自分がワタルの立場だったら、と思うと何を言いたいかは想像がついたし、ワタルの立場になって考えるコトはマキにとって難しいコトではなかった。
 ワタルなりに、この質問ができるだけ不自然じゃないようにしようと必死に考えた末の理由付けだったのだろう。マキはその姿を、いじらしいとかかわいらしいとか、そういう風に感じた。それはマキにとってとても不思議なコトだった。
 マキの足下を見つめてそれ以降何も言い出せないワタルに、マキは少し安心感を覚えた。
「私は処女だよ。でもって、童貞だよ」
 マキは自嘲気味にそう言った。それは女性としては少し恥ずかしいカミングアウトであり、元男性としての重大なカミングアウトでもあった。
「私のコトは誰かにもう聞いてるんでしょ?」
「はい、さっき」
「さっき!? ずっと知らなかったの!?」
 マキは大分前からワタルは自分が元男であることを知っていると思っていた。
「私がそんなに自然に女をやれてたのかなぁ……それともキミが女慣れしてないのかなぁ」
「どっちもじゃないですかね」
「ま、そうだよね、女っ気ありそうには見えないし、童貞だしね」
「なんか、先輩の容姿から童貞って言葉が出てくると変な感じしますね」
「私も、自分のコト言ってるみたいで変な感じするわ」
 そう言って二人は笑い合った。
 そしてマキは、そっとワタルに歩み寄った。
「キミ、私のコト欲しいでしょ」
 ワタルはその質問には答えず、少しの間逡巡してから、不器用にマキの腰を抱き寄せた。マキはワタルがそうするのをあえて待った。自分だったらそうする、と思ったから。
「いいよ、しよっか」
 マキは、何を、とは言わなかった。言う必要は無かったし、それを言葉にするのはなんとなく、自分もワタルも抵抗がある、と感じていた。これからすることはあえてうやむやで、曖昧なままにしておきたかった。
 ワタルは今度は小さく「はい」と言い、両手でマキの体を抱きしめた。
 不器用で未経験の二人はそこからどうしていいかわからず、ワタルはマキの頬にキスをし、首元にキスをし、胸に手を置いた。その膨らみは小さく、ほとんどがブラジャーのパッドで作られている膨らみだったのだが、ワタルはマキの胸に触れているという事実にとても興奮した。
 興奮していることに少し罪悪感を感じながら。ワタルはマキの制服の裾から手を入れてブラジャーの中に手を滑り込ませた。
「うわっ!」
 すると、マキが素っ頓狂な声を上げた。そういう行為をしているときに出る様な声ではなかった。そのコトで二人はまた笑い合い、抱き合ったままそこにしゃがみ込んだ。
「なんか、くすぐったい」
 マキにはまだ胸を触られて気持ちいいという感覚がわからなかったが、嫌だとは感じなかった。
「先輩、寒くないですか」
「寒いけど、大丈夫。でもドアは閉めてね、明るいのは嫌」
 ワタルは防具部屋の中にある、綺麗なタオルを何枚かつかんで床に敷き、ドアをほんの少しの隙間だけ残して閉めた。完全に閉めてしまうと真っ暗になってしまうので、少し開けておいた。
「息、荒いね」
「すいません」
「いいよ、うん、ありがと」
 ワタルはこのとき、マキが言ったこの『ありがと』の意味がわからなかった。それがわかるのはもっとずっと先のことだった。


 −続く−


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